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羅針盤戦争〜TRICK Blooder

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #七大海嘯 #カルロス・グリード #オブリビオン・フォーミュラ #六の王笏島 #開放された島の座標N13E15

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#開放された島の座標N13E15


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●六の王笏島
 8つあるうちの、一つ。七大海嘯『王笏』カルロス・グリードの所有物。
 いや少々この表記は正しくない。正しくは『六の王笏』である。
 この島は分身体が、手にしているのだ。
『来たいのならば、堂々とくればいい』
 その顔は漆黒に呑まれていて、見て取れない。
 "アリスラビリンス"の力の具現――あのような顔だったモノに覚えがあるだろう?
 しかし、漆黒なのは顔だけではない。体全てがそう。
 虚無と化した漆黒の体に全てを飲み込む強欲の者である。
『逃げも隠れもする気はない。だが、間合いに入るというなら心せよ猟兵共』
 その手に持つ大鋏は『銀の鋏』。元の名をメガリス『ヤヌスの鏡』という。
 分身を作る鏡の効果は、鋏の概念に上書きされて、自分を裂くことで自分が殖える効果へと転じていた。
 もう一つの大鋏は『金の鋏』。元の名をメガリス『玉鋼の塗箱』という。
 死者の力を奪う玉鋼の塗箱の効果は、鋏の概念にとって喰われて、切り裂いた敵の能力をコピーするモノへと転じている。
『喉元の刃を突きつけてきたのはそちらだ。心せよ。心せよ』
 正気と狂気の間にでもあるように、男は同じ言葉を繰り返す。
 手には、形を変えた二対の鋏だ。武器であり、武装であり財宝だ。
 持ち主によって形を変えてられても"メガリス"なのには変わりない。
 元の形状よりも、狂気に染まるそのさまは、まるでアリスラビリンスに迷い込んだ錯覚を君に与えるだろう。
 分身体といえど、男が『カルロス・グリード』なのにも、――変わりはないのだ。

●TRICK bleeder
「オブリビオン・フォーミュラーの一形態。それと決戦と行こう」
 フィッダ・ヨクセム(f18408)は不敵に笑う。
「『六の王笏』だ。他の同じ男を見た奴はいるか?そいつだ、そいつ。ソイツの分身体」
 立ち塞がる者、カルロス・グリード。強欲の海の上で、権力を持ちコンキスタドールの王たる者。つまり、オブリビオン・フォーミュラー。
「さァ男は少々正気とは言い難い。二対のメガリスに、"アリスラビリンス"の具現化だ。何の変調もない方がおかしい」
 たとえどんな実力者でも、全てを統べられるものというのは"本物"だけだ。
 分身体に、同じことは果たして出来るだろうか?
「何にせよ、王の島に乗り込むんだぜ?遊びではないにしろ、ワクワクしてねえ?」
 ――まあ島に面白いもんは特にねェと思うけど。
 フィッダの小声はそんなふうに戯れていた。
「島の大体は……そうだな。アリスラビリンスにあるような風景、と思ッて貰えば」
 妙に刃物の草木が生えていて、足元をざくざくと切り刻んでくる。草木の葉が鋭利な場合もあるが、何故か短刀やナイフが物理的に生えている、なんて状態もある。
 だが、単純に茨だらけの島だと考えて貰えばいい。
 足場悪いが、悪夢をその身一つで演じようとするカルロスは、もちろん地上での戦闘を行うだろう。
「男は先制攻撃に興じるぜ?まあ、――"狂人の相手をしている"と思ッた方がいい。まともな対処をしようとするな」
 人生は驚きがあるべきで、人の心は驚き一つでも奪えるものなのだ。
 単純なら、単純なほど、いい。
 例え相手が狂っていようと無かろうと、心に訴えかけたモノ勝ちだ。
「攻撃を攻撃で封殺するより狂人を驚かせた隙を狙え」
 フィッダはどこまでも楽しそうにする。
「渾身のトリックに自信はあるか?暗闇の向こうに表情を隠した"血まみれ"の王を綺麗に彩ッてやれよ」


タテガミ
 こんにちは、タテガミです。
 この依頼は【一章で完結する】戦争系のシナリオです。
 とりっく・ぶらっだー。さあだましてちまみれにしてやるぞ。

 プレイングボーナスは、敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。

 このシナリオでは、OP上にヒントになりそうな事を記載しているつもりです。
 ご理解してプレイングを書いていただければ、プレイングボーナスをそれほど重視しなくて大丈夫。上記プレボを実行したのと同様の補正を掛けます。
 男は闇です。闇なのでどこへでもいけて、どこまでも侵食することに長けます。
 気軽に触ろうとするのは、避けたほうがいいかもしれません。

 無事にこの根拠地での戦闘に勝利できたなら、この島(本拠地)ではない、七大海嘯支配下の別な島をひとつ解放できるらしいです。支配化にある島を放っておくわけにもいきませんので、誰かのための自由をぶんどってしまいましょう?

 尚、全採用は難しく、もしかしたら少なめの採用でサクサク返却を行う可能性があります。場合によっては可能な範囲全員を採用してギリギリまで熟考しての返却になる場合もあります。お急ぎの方には向かないかもしれないので……その事をご留意いただけますと、幸いです。
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第1章 ボス戦 『七大海嘯『六の王笏』カルロス・グリード』

POW   :    メガリス『銀の鋏』
自身の【体をメガリス『銀の鋏』で切り裂くこと】を代償に、【新たな自分】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【全てを飲み込む『虚無と化した漆黒の体』】で戦う。
SPD   :    メガリス『金の鋏』
【メガリス『金の鋏』の刃】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、メガリス『金の鋏』の刃から何度でも発動できる。
WIZ   :    虚無なる起源
自身が【地面や床に足を付けて】いる間、レベルm半径内の対象全てに【全てを飲み込む『虚無と化した漆黒の体』】によるダメージか【飲み込んだ物体を分解吸収し力と為すこと】による治癒を与え続ける。

イラスト:hoi

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

泉・火華流
目には目をっ…鋏には鋏よっ!!

行動
先制攻撃でも相手は『こちらの行動待ち』

相手が迎撃準備(UC使用)したら、こちらもUC使用して強化
相手へと切り込むと同時に…ナイトメア&クロノス・シザーズの【封印を解く】

【範囲攻撃・時間稼ぎ・結界術】による『時間の流れが遅くなる空間(動きも遅くなる)』を形成
自分は【オーラ防御・破魔・結界術】で『時間の流れが遅くなる効果』を相殺

その鋏の刃で受け止めたら…っていうなら…
エアシューズの【ダッシュ・悪路走破・リミッター解除】…更に【迷彩】による周囲の景色と同化させて横を通り過ぎざま、自身の鋏を二刀形態にして【早業・切断・乱れ撃ち】で…
…それ以外の所を斬れば良いだけでしょ



●オレイカルロスの結界

『猟兵。何を考えているかは分らんが、動かぬ事はイコールで繋がらないと知れ』
 虚無の顔を勇ましく睨みつけ、何故か動かない泉・火華流(人間のガジェッティア・f11305)。
 七大海嘯『六の王笏』カルロス・グリードからこぼれたのは、呆れのような狂気の誘い。
『来ぬのならば、先を斬ろう。賽は既に投げられた』
 金の大鋏のメガリスを、ぐるんぐるんと回しながら狂気が来る。
 凶器が、歩きながら迫って来る。
「目には目をっ……鋏には鋏よっ!!」
 ――だって、その鋏は刃で受けて割り裂いたチカラを"返してくる"のよね?
 その鋏はコピーに長けるチカラを持っている。つまり、こちらに刃を常に向けているのは何時でも"反射"するの意思表示。
 表情はなくとも、それくらいはお見通し。
「HIKARU・GEAR発動!!アンタが強いのなら、私はその想像を超えて行く!」
 十一歳の少女ならぬ身体能力強化はその足に。
 男が悠々と歩んで来ていたので気にしていなかったが、火華流の足元は刃が如き短い草がたくさん生えていた。
 故にその足は小さな鋭利な刃を踏むことは免れても、躱すに踏み止まれなかった事を注釈しよう。
「……っ、でも速攻で攻めて立てられたらコピーどころじゃないでしょ!」
 痛みを感じる足を叩き、飛び上がった火華流が振り上げるナイトメア&クロノス・シザーズ。
 アリスラビリンスで入手したという、二つの鋏の融合体。
 これにたいしてカルロスは金の鋏で受ける。

 カキーン。

 澄んだ音が二人の間に響く。
 ここで特殊効果、<<封印解除>>が発動。
 ナイトメア&クロノス・シザーズの効果により封印から目覚めしフィールドが展開!
 範囲に渡る広い結界が広がり、二人を包み込む。
 そのフィールド内にいる存在は全て、時間の流れが遅くなる――体感も、動きも言葉も全てが遅れだすのだ。
 時間の齟齬は致命的と成れば命取り。
 ただし、この空間内から逃れるすべがあるならば、である。
「私が作り出した空間だからね、相殺なんて簡単なの」
 特殊なオーラを身にまとった火華流が、なんか神々しい光を放ち結果内に齎される時間の流れを拒絶するように、離脱する。
 つまり結界内で影響を受けない存在となったのだ(このフィールド内に限る)。
「どうせ、体感時間が遅くなってて抵抗できないでしょ」
 ゆっくりとした時間の中に取り残されたカルロスをみて、火華流は迷彩効果を更に追加して発動。
 マントでも着るように景色と自身を同化させて足元の悪路を気にせず歩く。
 その一撃は――全てを絶つ。
 一撃ではない。実は乱れ撃つ、早業だ。
 横を通り過ぎざまに、鋏を二刀形態へと変形させて、連続斬りを叩き込む。
 ――……その手はもう飾りね。
 ――それ以外の所を斬ればいいだけの話よ。
 切り裂かれたカルロスが、その痛みと出血に気がつくまでの時差は在る。
 
 ターンエンド。

 斬られた部位に気づくまで。反撃の足が、飛び出すまで。
 その鋏が首を狙い出すまで、まだ少し――時間の誤差が、存在するのである。

成功 🔵​🔵​🔴​

アルジュン・ラオ
イアレス(f32294)さんと

・心情
はてさて、自らを切り裂くとはこれ如何に

・行動
イアレスさんが神器開放をするとのこと
一体どんな”驚き”を与えられるでしょうか
「ほぅ、なるほど?そういう能力なのですね」
私も腕の一本でもくれてやりましょう、ヤドリガミゆえ壊されても平気ですから
イアレスさんをできるだけかばいつつ、攻撃は私が主体となって
攻撃はinfernusで【鎧を砕く】ように同じ個所へ【傷口を抉る】ようにしながら閻魔断罪撃を
「お前の嘘はどれだけあったのでしょうね?」


イアレス・ラーデン
アジュン(f30791)さんと

「強い光が薄れれば闇もまた曖昧になるのでは?」
 この事件に対してこう感じ、猟兵として参加します。

 戦闘中、ユーベルコード「神器解放(SPD)」の封印解除を行い、間合の外から攻撃する機会を伺います。
また、七大海嘯『六の王笏』カルロス・グリードの「虚無なる起源」に対しては、「天叢雲剣」の天候操作を行い、日差しを遮ぎる事で闇の形を曖昧にしようとし、同時にアジュンから目をそらさせようとします。
 最大の目的は、敵を撹乱しながら戦闘を有利に進め、勝利に導くことです。
 その為なら、ある程度のダメージはやむを得ないものとします。



●惨事(三時)の雨

 カチ、カチ、カチ。
 時を刻むような音。時計の針のような音。それは七大海嘯『六の王笏』カルロス・グリードの虚無と化した顔や胴の黒から響く。
『ああ、そろそろ"定時の給餌"が来る頃ではないか?』
 ぽつりと零したその言葉、意味するところは食休み――おやつの時間。
 首を傾げるようにして、傾いたままの頭で迎えるのは給餌をする"妻"ではなく猟兵達。言っていることに正気の欠片が見えやしない。
 ――この方は、何を言っているのでしょう……。
 アルジュン・ラオ(鬼視ノ病・f30791)の双で異なる目の色には、カルロスはただの狂人にしか映らなかった。
 なにしろ、顔がない。表情もない。
 なのにゆったりした速度で此方へ歩んで来る。大きく開いたメガリス"銀の鋏"をしゃこしゃこと。鋏が潤滑に動くのを軽く確認してその刃でざくりと躊躇なく自分の腹部へと切り込む。
 闇が斬られる、切り裂かれた闇から"闇が膨れ上がる"。
 ぞおお、と立ち上がる"新しいカルロス"。ああ、駆けてくる。
 足場の鋭利さを気にしない虚無の漆黒の体が駆けてくる!
 ――流血は特に無い?
 ――はてさて、どのようなカラクリでしょう?
 ――自ら切り裂いて現れる分身とはこれ如何に。
「そちらは闇、深淵から来たる闇だそうですね。この地は……少々、強い光が差し込みすぎですね」
 漆黒の髪を揺らし、イアレス・ラーデン(桜の精の戦巫女・f32294)は携える天叢雲剣を空にかざす。
 鋏の音が近づいてくるが、それは空から落ちる光が在るから。
「足元が危ない刃だらけだというのでしたら、空も同じでなくてはならないでしょう?」
 緩く撫でる刃にイアレスが求めるのは解放のチカラ。
 ――目醒める時は、今此処に。
 まるで水の中にしずくが一滴落ちるような音が響く。
 一振りの天叢雲剣はその数を増殖させて、ずらあああと並ぶ。
 一度の神器解除で空は剣に埋め尽くされる。
『空を何かが横切ったか?』
 カルロスが空を見た、新しく生み出された虚無もまた足を止めて空を見る。
 ああ確かめるために男の足が停まった。停まったとも。
 驚きでこそ無いが、確かに停まった。
「強い光が薄れれば闇もまた曖昧になるのでは?さあ――行ってください!」
 無限複製された天叢雲剣の一部を、カルロスに向けて降り注がせる。
 まるで雨のよう。イアレスの雨で隠すのは己とアルジェン。
 天候操作の能力自体も開放し、降り注ぐ剣の雨に本物の雨も付随させる。
 剣の雲の上空に雨雲がみるみる集まって、ああ、輝かしい太陽を覆い隠した。
 ――事前に、イアレスさんが神器解放する、とは聞いていましたが。
 此処までの荒業を、神器使いは行うのか。
 その目で見たアルジェンの内心は関心に傾く。これは頼もしい、――味方だと。
「闇として強く存在しなければならない。そんな迷宮(アリスラビリンス)要素に身を染めていては……」
『空。ソラ。……心せよ。主力メガリスは此処にはない。だが、だがだが心せよ』
 壊れたラジオのように無意味な音を喋るカルロスは意識が余計に迷宮に呑まれたように、狂う。向けられた剣の雨の数振りを、この場における本物の『六の王笏』が"金の鋏"の刃で弾いた。
 正気がなくとも、飛んでくるものを払っただけだが。

 確かに男は――"弾いた"のだ。

 受け止めた刃が覚醒めたユーベルコードが反される。神器解放状態となった"金の鋏"が無限に殖えて、空間が刃物だらけで侵食されていく。
 足元に空に、ああ、まるで迷宮(ラビリンス)。
 虚無の中に、虚空より現れた"アリスの為の狂気の箱庭"。
「ほぅ、成程?そういう能力なのですね?」
「アルジュンさん……頼めますか」
「……もちろん。そのための"私"ですから」
 刃×刃×刃の中、身を翻して飛び込むアルジュンの手に握られているのはinfernus。二メートルもある丈の鬼棍棒の持ち手で、土鈴が揺れる。
 ――これに掠らなければ、どうということは無いです。
 ――私は、"ヤドリガミ"ですから。
 剣での牽制に務めるイアレスの援護があっても、カルロスの無限に殖えた鋏を全て砂漠というのは難しい。
 何しろ、鋏だ。挟むための刃がある。単体の"刃物ではない"から。
 infernusで無理やり叩き落として進むが、アルジュンは利き手ではない方に意識がいかないことに気がつく。
 ――ああ、腕の一本なら、易いものです。
 ――此処に本体は無いので、壊れても平気ですから。
「イアレスさんの方へだけは、ご遠慮願いましょう」
 ずぃい、と負傷の腕を無視して近づいたアルジュンが思い切り振りかぶってカルロスの体を叩く!
 渾身の力でぶん殴り、虚無に"手応え"があるのを感じて、軽くにやりと微笑む。
『猟兵共に容赦などしていられるか』
 まともな事を喋ったかと思えばカルロスの口が在る(だろうと思われる)付近から凄まじい量の棘が生えた。
 ずぁああ、と貫く棘が虚無を貫通している。
 これは狂人だろうと痛いはずだ。
「お前の嘘はどれだけあったのでしょうね?」
 口から頭の奥まで貫くほどの長さ、太さ。
 男の罪(嘘)は強欲の分だけ――人に部下に海に嘘を吐いて来たのだろう。"新しいカルロス"も無限に増えた鋏も、何時の間にか雨上がりの空の下に消えていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シン・コーエン
相手を驚かせる、か。
戦は変幻自在に行うのが望ましい。やってみよう。

灼星剣を振るっての衝撃波・範囲攻撃で戦場付近の刃物の草木を切り払い、灼星剣を印象付けた上で、戦闘突入直前に「これ、やるよ。」と愛刀をカルロスに向かって放り投げて虚を突く。
カルロスが思わず受け取ろうとした時に念動力で手元に引き戻して戦闘突入。

光の属性攻撃・結界術で闇を退ける結界を周囲に展開の上、第六感・見切りで躱すか、灼星剣から衝撃波を放ちつつ武器受けする事で、相手には触れずに攻撃に対応。

灼星剣に光の属性攻撃を籠め、斬り上げ斬り下げる2回攻撃・鎧無視攻撃と同時にUC発動。
闇であろうが虚無であろうが、この灼星剣に斬れぬものは無い!



●虚を衝く

 ――相手を驚かせる、か。
 シン・コーエン(灼閃・f13886)は目の間にした現実と、聞いた話の辻褄を合わせるために考える。
 黒いモヤが、敵対する男から立ち上るのが見えるのだ。目に見えておかしな現象だった。流血らしいものは不思議と見て取れないが、ぼうぼうと、燃える火のように闇が解けるように上がっては消える。
 ――迷宮化(アリスラビリンス化)した闇が分離でもしている、と……?
 あれこそ七大海嘯『六の王笏』カルロス・グリード。
 表情が見て取れないのだ、怪我で苦痛に歪んでいるのかも分からなければ驚く表情等見て取れないのではないか。
『猟兵、どこを見ている?』
 かしゃりかしゃりと銀の鋏で自分の体を切り刻み始めると黒いモヤの出る量が増え始める。だが、同時にカルロスの体からぶわあ、と威圧的な闇が吹き上がる。
 カルロスの隣に並び立って、かしゃかしゃと鋏を鳴らす"新しいカルロス"。
『どちらも我。そして新しい我こそは、我の中の我だ』
「何を言ってるんだい……?」
 ――戦は変幻自在に行うのが望ましい、とは思うけれどね。
 ――やってみようか、真剣に"驚かす"という攻撃を。
 深紅に輝くサイキックエナジーの剣。それはシンの愛刀であり分身。
 灼星剣を手に、その攻撃に備えるとい構えを見せたのもつかの間だ。
 駆け出てくる"傷のない新品状態の新しいカルロス"に当てるためではない衝撃波を、全力で撃ち込む。紅い燐光がキラリと跳ねる。広範囲に広げて放たれたのは、決してカルロス目当てではないのだ。戦場付近の刃物だらけの草木を切り捨てて、フィールドを整地したといえば聞こえはいいだろう。
『その刃の一閃で我も"新しい我"も斬り伏せるつもりか』
『いいや、そうはいかない。覆い尽くす虚無とした体はどこまでも手を伸ばせる!』
 ぞぞぞと輪郭を溶かしてシンへ迫ろうとする"新しい闇"も本物のカルロスへの印象は、斬るつもりで定まった。
 ――想定通りだ。狂うと本当に、真実が見えなくなるようで。
「これ、やるよ」
 シンは迫ってきた"闇"を無視して、カルロスへ愛刀を放り投げる。
 大事な分身を、まるで用済みだからと投げて寄越してきた。
『『……は?』』
 どちらのカルロスも虚を付かれる。
 当然だ、今から敵と斬り結ぶ戦いが起こると想像してやまなかったのだから。
『いらぬのなら、受け取っておくが』
 カルロスが灼星剣を思わず受け取ろうと手を伸ばしたところで、くん、と剣は放られた起動を急激にかえる。
 念動力によって、引き寄せられてシンの手元にすっぽり収まる。
「残念――簡単に、手放すつもりは、ない!」
 渾身のトリックで魅せて武器を取り戻し、速攻戦闘状態へと立ち戻るシンの速度に狂人どもは置き去りを食らった。
「この剣の煌めきは、闇を断ち切り拒絶する光だ!」
 光の属性を付与した結界術で闇を退ける結界を周囲に展開し、"闇"の立ち入りを禁ずる。それでも滲み入り込もうとする"新しい闇"の抵抗に、灼星剣から衝撃を放ち一定の距離を保ちながらシンは立ち回る。
 カルロスの鋏が届かない距離。"新しい闇"の手が届かない距離。
 この距離を絶対に保ちながら、鋏は受けて、闇は拒絶する。足場の問題は既に片付いている為に、何の心配もいらない――だからこそ、敵だけを見れる。
『距離を保つだけでは、何も変わらない』
『我の手がいずれ届く。全て飲み干してやろう』
 どちらが喋っているかの判断こそ、シンには付かなかった。
 いや、どちらでもいいのだ。どちらも黙らせればいいのだから。
 ――光の属性を、一点集中……。
 短く息を吐いて、灼星剣に籠めた力を駆け出しと共に気合もさらに乗せる。
「灼光の刃よ全てを両断せよ!」
 斬り上げる一撃、そして斬り下げる二撃目。
 どちらもがカルロス共を切断するように結ばれる。
 万物は形があるものであるからこそ、斬れものはなし――。
「闇であろうが虚無であろうが、この灼星剣に斬れぬものは無い!」
 "新しいカルロス"は虚構となって霞んで溶けて、残された本物はうずくまるようにして闇のこぼれを深くする。
 両断されたはずの体がゆっくりとずずずとくっつく様は、まるで悪夢のよう。
 斬った。それは間違いない。底なしの闇であるはずは、ないのだ。
 明確なダメージは、――血煙のように噴いている闇が良い証拠だろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…オウガ・オリジンの力をその身に宿したか

多種多様な異世界の業を扱うのは見事だけど、
どうやら扱いきれていないみたいね?

過ぎたる力は身を滅ぼす…それを教えてあげるわ

島の草葉を"怪力の呪詛"のオーラで防御して、
今までの戦闘知識と経験を頼りに敵の攻撃を見切り、
黄金の鋏の攻撃を多少の負傷は無視して最小限の回避動作で受け流しカウンターで迎撃し、
敵にコピーした自身のUCを発動し太陽下で吸血鬼化するように誘導する

…っ、速い。だけどね…

…残念。太陽の下で使うには一工夫がいるの、私の御業はね
…手本を見せてあげるわ、六の王笏

右腕に"影精霊装"を巻きUC発動
完全に吸血鬼化した右腕で大鎌を乱れ撃ち超高速の連続攻撃を行う



●既視感

「……オウガ・オリジンの力をその身に宿したか」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は感じていた。
 アリスラビリンスで見た、沢山の"オウガ・オリジン"。
 その相手をした思い出せて三十はあっただろう。
 どれもこれも少女のような姿を起点に"悪夢"を実体化させていたのを、リーヴァルディは覚えている。
 だが、――目の前にいる男の分身体はどうだ。
「多種多様な世界の業を扱うのは見事だけど、どうやら扱いきれていないみたいね?」
 七大海嘯『六の王笏』カルロス・グリードの悪夢の規模はとても小さい。
 悪夢の範囲は己だけ。ああ、とても小さい。
 解れて溶ける闇の残滓が、この男の"命の灯火"だというのならあまりに儚い。
 闇に埋もれた顔は、今どんな顔をしているというのだろう。
『小規模だろうと迷宮(アリスラビリンス)化を体現は出来ている。悪夢は我から始まるのだ猟兵』
「過ぎた力は身を滅ぼすって言ってるの。……それを教えてあげるわ」
『教える。そうか、では心して我に教えて魅せるがいい!』
 メガリス"金の鋏"の刃を向けて、先制のユーベルコードを構えるカルロス。
 当然先制だが、受け止めるべき力はまだ発揮されていない。
 返すべき力が発動していないからといって、"模倣"のチカラを発動させて鋏で斬りかかってくる。
 ――怪力の呪詛、の効果は……うん、大丈夫そう。
 魔力で全身を覆って上げた防御力。これがあれば足場や草木に注力する必要は全く無い。今まで蓄えて来た戦闘知識と経験を頼りに、襲いかかってくる敵の動きを予測できる。
「……っ、速い」
 想像する動きよりも"悪夢のように男"は早く接近してきた。
 男は"闇"――その言葉に偽りはなく、疾走る足を虚無として機能させて滑るように近づいてきたのだ。
 カルロスからすれば、駆ける必要もないくらい迷宮化が進んでいる。
 びゅ、と振りかざされる鋏の刃を、ギリギリのところで回避するが――髪の毛先が持っていかれた。
 髪型が変わるほどではない。だが、女性の髪を鋏でカットするデリカシーの無さにはため息も出る。
「……はあ。悪夢のように速いだけね、私をズタズタにするんじゃなかったの?」
『悪夢の中に囚われた鼠を、ゆっくり刻む楽しみくらいは我の勝手だ』
「そう。……だけどね」
 ざわり。鋏の刃はリーヴァルディの髪を斬った。
 刃で使おうとするユーベルコードのチカラを映しとり、異形の腕がゆらりとその腕に反映される。
 武器を振るう腕だけの、吸血鬼化。
 しゅぅうう、と肉が焼ける音がする。
 カルロスの腕が、"吸血鬼化"したことで太陽の光に負けて、焼かれる音だ。
 リーヴァルディの"血の閃刃"の予兆を写し取って使ったのが仇となった。
 攻撃の攻めは先程より苛烈さを増し、超高速連撃となって襲撃してくる。
 回避されても止まれない。両腕が太陽に焼かれるのを、止められない!
『……っ!』
「……残念ね、それは太陽の下で使うには一工夫がいるの。オウガ・オリジンなら"全部再現"したわ?」
 これは正しい悪夢ではない。
 リーヴァルディはそう断言できる。
「私の御業はね……こうするべきなの。手本を見せてあげるわ、六の王笏」
 右腕に、影精霊装を巻き――腕へ陽光を遮断した。
 物質化した闇で編まれたモノだ。
 使う腕に巻いたならば腕は"陽光"を知らずにチカラを発揮できる。
「……限定解放。微塵と化せ、血の閃刃……!」
 暴走しだす腕が太陽光で男のように焼かれることはない。
 リーヴァルディは戦いに慣れている。大鎌グリムリーパーを握る手が完全に吸血鬼化を成し遂げて、攻め立てるのは今は半端な"吸血鬼"になったカルロス。
「やられたこと……やり返すから」
『……ッ』
 "教えてあげる"。その言葉にも嘘はない。
 カルロスがやったモノと同等、いやそれ以上の機敏さで超高速の乱れ撃ちが飛ぶ。
 コピー時間が解けて残された、両腕を大きく火傷。負傷した手に持つ鋏で連続攻撃を迎え撃つことなど不可能だ。避けきれなければ模倣した腕が飛ぶ、闇としか言えない脚が飛ぶ。連続攻撃の中で、――カルロスが捌けるものなどたかが知れた。
 流血代わりのような闇が溢れて溢れて、消える。
 狂っていても男は感じただろう――吸血鬼狩りの前で吸血鬼化してはならないと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
刃物の草木を踏み抜かないよう足場に気を配り、樹の幹など周囲の植物を盾にして敵の攻撃を防ぎたい
防戦一方になっても構わない、こちらが追い詰められていると思わせたい

防戦の末に追い込まれて刃物の草木や生えている刃物に倒れ込み、大量に血を流して致命傷を受けた…ように見せかける
実際は刃物の植物を利用して服に仕込んだ血糊袋を破っただけ、簡単な仕掛けだ

油断して鋏を下してくれたら跳ね起きて反撃に転じる
死んだ、もしくは致命傷で倒れた筈の相手が動き出せば、少しは驚かせてやる事もできるだろう
その一瞬が反撃の隙になる

構え直される前にユーベルコードで反撃を試みる
こちらはこれだけ血塗れになってやったんだ、今度はあんたの番だ



●Deception

 ざり。ざり。じゃりり。
 靴音が鳴る。何かを踏みながら歩く音がする。
 足元を気にせず歩く存在。あれこそが七大海嘯『六の王笏』カルロス・グリードが徘徊してる音だ。
 既に島への来島に気付かれている。
 ――刃物の草木を踏み抜かないよう、足元は見るべきだな。
 シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は冷静だ。
 樹の幹など周囲の植物を盾にできる場所に身を置いている。
 見つかった瞬間来るだろうが、それはそれで構わなかった。
『どこへ逃げたのだろうな?』
 メガリス"金の鋏"をシャキシャキと鳴らして、カルロスが傍を歩いてくる。
 ざくざくと足を剣山のような草が刺さるが気に留める様子がない。コピーの力を発動しているようだが、受け止めるべきユーベルコードは未だ受けず。
『常時どこからでもくるがいい猟兵』
「逃げてなどいない。始めから此処に居た」
『そうか!そこだったか!』
 顔色は全くわからないが、男は悪魔のような速度で鋏を振りかざし斬りつけてくる。軽く身を反らして鋏の刃を避けるシキ。その手には愛用のハンドガン。
 しかし、まだ撃たない。打つべきは此処ではないからだ。
 悪魔のような速度で、悪夢のような切れ味を見せつけてくる男には殺気しか無い。
「狙いが甘いな。俺の尾ですら掠めないその鋏で俺を殺すのは出来そうにないな」
『刻んでほしいと聞こえる。いいだろう、尾だな』
 シキの尾に狙いをつけて、しゃきしゃきと嫌な音を立てながらカルロスが追いかけてくる。
 この状態は防戦一方。刃に銃弾を当てようものならコピーされてしまうのが見えているからこそ、隙を狙う唯一の機会をシキは狙っている。
 ――奴が徘徊している間に確認したが。
 ――少し先の草はこの辺のよりも鋭利そうだった。
 事前に見た風景を思い出しながらカルロスの凶器を避けつつ。
 まるで焦った表情を浮かべて、シキは逃走を続ける。
『まるで追い詰められたイヌだな』
 ――掛かった。こちらをまんまと追い詰めていると思い込んだようだな。
「……!」
 突然シキが足元を何かに取られて転ぶ。
 刃物の草木が群衆する、生えてる刃物に向かって倒れ込み、その行動を止めた。
 じんわりと周囲の草木が赤に濡れていく――。
『勝手に罠に掛かるなど、畜生の極じゃないか。無様なイヌめ』
 大量に出血した赤が染み渡るのを見て、カルロスはそう言い捨てる。
 ――誰がイヌだ。
 ――俺は別に致命傷なんて受けてないんだがな。
 ――血糊袋が派手に破れて赤が大量に、周囲を濡らしたに過ぎない。
 ――もう少し、……近づいてこい。
 追い詰めたはずの猟兵が勝手に致命傷を追った。なんてつまらない終幕だ。
『どれ、息の根を止めてやろう。せめてもの手向けにな』
 ざく、ざく。足が本物の刃に貫かれる音。
 男に痛みという概念は無いのだろうか。
 ――死んだ、とは思わなかったようだが……。
 ――近づいてくるなら、問題はどこにもない。
 ――たった一度の"フェイク"に盛大に騙されろ。
 鋏を構えて首を跳ねようとシキを跨いだ矢先、飛び起きる男の姿が、カルロスを異常なほどに驚かせる。
「手向けはどっちだ。全弾くれてやる」
 弾倉内の弾を全て撃ち切る高速の連射がカルロスの顔に直接ご馳走された。
 ――殺意しか無かったはずの気配が、驚きでうわ塗られたか?
 ――まるで驚きで停まっているような気配だったな。
 闇に吸い込まれていく弾丸。フルバースト・ショット全てが、確実に命中した――はずだ。顔の造形を見て取れないのは残念だが。
「こちらはこれだけ血まみれになってやったんだ、今度はあんたの番だろ?」

大成功 🔵​🔵​🔵​

鬼桐・相馬
●POW
〈軍制コート・アシモフゲアスの刻印〉の制御機能を切断
溢れ出た諸々を〈冥府の槍〉へ流し込み火力増強を図る

獄卒たる俺にこんな衆合地獄の真似事が通用すると思うか
それに〈軍靴〉もある

敵には炎で触れる
UCを発動し激しく燃え盛る炎で本体に喰らい付こう

己の[暴力・蹂躙]の渇望を始めとした嗜虐性を存分に発揮
刃の大地に広がるのは何色の海だろうか
そもそもあのナカには何が詰まっているんだ
引き裂いて抉り出して、それから

なあ、〈冥府の槍〉
愉しみだな?

自らの身体を斬りつけ[激痛耐性]で痛みを遣り過ごし、自身と分身を炎で人型に創り上げていく
地面の刃を手に敵へ襲い掛かって貰おう

虚無が虚無を呑み込めるのか
試させて貰うよ



●いろおに

 男は"それ"を目撃して、"一体何を見ているのか"と見ているものを疑った。
 居るというのは七大海嘯『六の王笏』カルロス・グリード、らしい。
 各支配する島に、分身体のカルロスが在るという話まではひとまずは納得したものだが、先に相まみえた『一の王笏』と何もかもが異なった。
 一致するのは面影のみ。
 こんな印象から発生する奇妙な"欠落"があっていいはずはない――それに、過去に数回"貌のないオブリビオン・フォーミュラー"は確かに見た覚えがある。
 片方は存在そのものが迷宮(アリスラビリンス)のようなそれで、もう片方『一の王笏』は黒い霧の中に潜む吸血鬼のようだった。
「……そういうものか」
 具現化する、とは。では擬似的に『六の王笏』は迷宮化しているということになる。ただ、一点。明らかに異質な気配は"狂人"のそれだ。
『そうともいうし、そうとはいわぬ――だが、だがだ猟兵』
 それが――どうかしたか。
 表情が伺えない事だけを特筆すれば、知性在る生き物は慄き、怯えを心に宿した者が多かったことだろう。
 鬼桐・相馬(一角鬼・f23529)は幼子ではなく、獄卒――このような悪夢のような光景などにさほど心は揺らがない。
「別にどうもしない。……ああ、でも俺は既に間合いに居るが"それがどうかしたのか"とは言おう」
 堂々と言い返す程だ。
 確かにカルロスは言っていた――"間合いに入ったならば心せよ"。
 ――先に仕掛けた言葉の爆弾を、先に踏みにじられては先に動く他ないだろう
『それこそ、別にどうということはない』
 メガリス『銀の鋏』をくるりくるりと手遊びするように回しながらちゃきちゃきと。無造作に鳴らす金属音。カルロスは折り紙でも切るように、当たり前のように自分の体を斬っていく。
『"既に居る"のだから、あとは消すだけだ。獄の匂いを連れ歩く猟兵、そんなものは此処に居なかったと』
 ずずずず、今ある闇が割かれて分裂するように"新しいカルロス"が発生した。
 気配は一つから二つに。闇の大本を"割いて分けて"ダメージを分散している。
「俺を消す。虚無如きが勝手なことを……」
 ああ漆黒の闇が這いずってくる。見て取れる明らかな"終焉"だ。
 相馬の方が何もしないということはない。
 身に纏う制御(リミッター)をぶつりぶつりと切断している。
 精神拘束の装備品の、制御をだ。
 対象は――軍服コートとアシモフゲアスの刻印。此度は二種の切断に留める。
 暴力性、蹂躙の渇望を始めとした嗜虐性の色が凄まじい勢いで悪意の手を伸ばしてくるが、溢れ出た諸々全てを冥府の槍に流し込むためだ。
 ――こうすれば、よく燃える。
 嗜虐の色はよおく薪となって炎の勢いを加速させていく。
 ああばちばちと爆ぜる音が、鋏の音を今、凌駕した。
「獄卒たる俺にこんな衆合地獄の真似事が通用すると思うか」
 足元は踏み抜き防止を徹底した重い靴が固めている。例え草木に紛れた本物の刃が有ろうとも、容易く貫くのは困難な――比重がそこにはあった。
『轟々燃える青に、何を映す?我に触れれば猟兵、お前は――』
「狂人(罪人)の戯言を聞いてる時間が無駄だな」
 眼前まで踊り込んできたカルロスに堂々と槍の紺青の炎で触れて、男を突き刺す。
 ぶわあああと冥府の炎が過激さを増して、捕食形態となって燃える渦中に男を飲み込んでいく。
「おいお前。刃の大地などどこにも見えないが――そこから見えるのは何色だ」
 環境そのものを地獄と化した紺青に燃える海の中へとさらされて、無事な"闇"など居やしない。
「そもそもそのナカには何が詰まってるんだ。ナニモナイはずはないだろう」
 ――引き裂いて、抉り出して、一体何が出る。
 ――それから、ああ。貌のナカに痛みを感じる顔の有無も気になる。
 人の形をした、得体のしれないそんなモノに寄せる関心は、破滅の瞬間に何を視るか、その一点。
「なあ、"冥府の槍"――愉しみだな?」
 ユーベルコード『銀の鋏』が行った事を、そっくりそのまま相馬はやり返す。
 自らの体をカルロスがやったように、斬りつけたのだ。
 激痛耐性があるほうだ、痛みはこの際あとで味わったっていい。
 今は知らん、と強引にやり過ごし、ずずずと紺青の炎を纏う相馬の形を真似る人型が創られていく。
「地面の刃を手に、一緒に愉しもう。それがいい」
 炎の人型が踊り込んでいくさまはまるで子鬼。まあ相馬が羅刹なのだから、珍しく部下を従えている気分。
「虚無だから無敵ということはあるまい。どこまで呑み込めるのか試させて貰うよ」
 一斉に突き刺さる短い刃。全てを飲み込む虚無と化した炎の体がカルロスを取り囲む。どちらの虚無が勝つのか、それとも部分的に刳り喰らうのか。
『試す。試させてやるものか、我のコピー能力など喰らい返すだけだ』
 地獄と虚無。二重局面が此処で、領土争いを始める。
 カルロスはもちろん気がついていない。彼のコピーは一体のみだ。多数に無勢負けの色がとても強い。
 つまり――喰らわれて困るものは、己自身の"闇"まで含まれて居るのだと。
 減った質量が何を意味するのか。相馬が理解して、カルロスが理解しないこの境界線にこそ、致命的な絶望の隔たりがあるのである。
「ほら、早く言え。時間がないぞ、――何色が見えるんだ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ファン・ティンタン
【POW】お宝比べ
ペイン(f04450)と

殴れない相手は不得手なのだけれど……
ま、やれる事をやろう

敵の分身生成は阻止し得ない
でもそれは、自傷を誘発させる事と同義
敵の地力も有限だ
総力を削げれば、私の任は十分

【混成合掌】
ペイン、ジョンの力を借りるよ

ジョン・フットwith星灯

カンテラ出力をジョンの蒼炎で強化
機を見て【浄化】の権能をのせた最大光量の解放
扱いを誤れば自爆しかねない、精神を透過する輝きに目眩せよ
ペインには、予め合図を教えておこうか
無貌相手に【目潰し】が有効か知らないけれど、闇を照らし払うのはいつだって火の閃きだ

それに、私は【時間稼ぎ】が目的でね
あなたの腹の中、渦巻くソレを消化しきれるかな?


ペイン・フィン
ファン(f07547)と

……コードのコピー、か
ああ、なら……、それにのってみよう、か

コードを、使用
戦争、それ以前からの闘争
この世界、全ての怨念を
憤怒を
絶望を
喰らい、宿し、力と成す

扱うのは、自分の拷問具の兄姉の一人
拷問用多機能ナイフ"インモラル"
強化を含め、傷を付け、それを抉り、恐怖を与える

こちらのコードをコピーするのは、想定内
まあ、強化されるのは、正直辛いけど……
でもそれは、この世界の怨み
あらゆる苦痛と怒りと絶望から来る怨念
100年、それらを喰らい、また、世界の戦争が起きる度にも喰らってきた自分が、尚食い切れぬそれ
……高々、ここ1月にも満たない間で手に入れた狂気ごときで
さて、耐えられるのかな?



●冥き怨と導きの輝き

「……きこえる?」
 問うたのはあの存在に"おわり"を告げる終焉の音があったかどうか。
「軋むような音。ああ、足元じゃなく、ね」
 返答はただ、存在の歪さを指摘した。
「こっちは……聞こえない。"虚無"にしては、なにもない」
 ファン・ティンタン(天津華・f07547)とペイン・フィン(“指潰し”のヤドリガミ・f04450)の囀るような話し声に、気がついたカルロス・グリード。七大海嘯『王笏』、その中でも分身体として『六の王笏』と名乗る虚無を貌に出す男。
『ない?そんなことがあるはずがない。我は我、この海で誰よりも"持っている"』
 数え切れない財宝、島。それから、"メガリス"。
 それを所有するのはこの『六の王笏』ではない。『本物の王笏』だ。
 二人の猟兵が当然気がつく。分身体で、迷宮(アリスラビリンス)の力を具現化させた反動で、男は正気を見失っている。
 虚無の貌で負傷の度合いは眼に見えない。
 だが――質量として、"在り方"として綻びが、確かに存在するのを感じる。
 そのきっかけは、当然行動と言動のみで判断するしかないのだが――。
『これを見ろ、此方を見ろ。"銀の鋏"は我の特性に合わせてこうなった。ただ斬れ増やせとはしゃぐのだ』
 チャキチャキと縦横無尽。無作為に自分の体を切り刻もうとする。
 斬れる場所がなかろうと、闇はどこまでも広がれる。
 広げる体の隅々まで、手が手として動くまでチャキチャキ切り裂き続けてその欠片は――"新たなカルロス"と成って立ち上がる。
 ひいふうみぃ……数えだせばキリがない。
 闇はどんなに分かれても結果的に集めれば一つ。自由に足を体を伸ばす闇が複数体こうしてバラバラに敵対してくるのでは――危険だ。触れてしまう。

「殴れない相手は不得手なのだけど……まあ、やれる事をやろう」
 ――折角殖やした所悪いけどね。
 敵の分身作成を阻止するべきだともちろんファンは考えた。
 だが、派手に切り裂き殖える様。後先考えず、自身を八つ裂きにするあの凶行は。
 逆を返せば己が資源を叩き売るラストアタックを仕掛けようとしているよう。
 ――なんだ"狂"に溶けているわりに、"自分の終焉"に意識があるじゃない。
 有限の地力を投げ売って、総力を上げて向かってくるか。
 ――なら――――私の任は、成せれば十分。
「ペイン、ジョンの力を借りるよ」
「……うん」
 借り受けた焼き鏝"ジョン・フット"に、ファンの星灯を。
「モノ共此処に出会え、我らは異なるも近しきモノなり」
 任意の所有物を合わせて、その力を目の前に。
 カンテラ出力を、ジョンの蒼炎で強化する。星空を一つ詰めたような闇色の内側に煌めきを内包するカンテラの、煌めきが上がる。
 そうだ煌々と、燃える蒼が照らし出す。
「それだけ沢山分かれると大変でしょ」
 ぞぞぞぞ、と地を滑るように"増えた新しいカルロス達が存在を虚無化させて"這いずってくる。数が在るはずなのに、人の気配はなし。全てを飲む闇、ただ、虚無としてファンたちへと迫ってくる。
「そう、良い子」
 輝きは浄化のちからを乗せていた。光源を最大まで上げて一番星の煌めきが頂点に達した頃じゅぅうと嫌な音が闇を焼く。
 そうだ文字通り無形のカルロスを焼いたのだ。
「扱いを誤ってるね、自爆行為だよ。――精神を透過する輝きに目眩せよ」
 狂った考えが透過される。見通される。浄化の輝きに潰される。
 真新しきものこそ、炎の熱量で魂を焼かれ、闇を焦がし、朽ちていく痛みを得よ。
『……間違ってなどいない。我は、我のすべき事を』
「よく聞いて。間違いじゃない、誤ってる」
 闇全てを輝きの下に見事縫い止めたファン。銀の鋏から発生した"新しいカルロス"達が体を人状態に戻したとしても、決して無傷ではないだろう。
 だからこそ、これが――明確な合図となる。
「無貌相手に目潰しが有効かは賭けだったけど……ビンゴ、だね。支配者の称号を名乗るくせに、道しるべ無く冥き場所で蠢くモノに告ぐ。闇を照らし払うのはいつだって火の閃きだ」
『……閃き』
「そう。わかった?私の話を聞くということは"この場の本物"への警戒はがら空きだってこと」
 時間稼ぎが目的であるファンは、もちろんそれを漏らした所でその場に闇を縛り付け続ける。
「あなたの腹の中、渦巻くソレを消化しきれるかな――やりきれてしまったら『王笏』はどう思うんだろうね」

「闇の中の闇……ズタズタでも、敵対する気、なんだね」
『"王笏"の地位は伊達ではない。分身でも、我には我の誇り、考えの行き着く地点が在る』
 かろうじて持ち得るメガリス『金の鋏』を構え、堂々と振る舞う無貌の男。
 鋏の刃を開き、鋭利な刃を見せつける。
 来るなら来い、と挑発しているようにペインは感じた。
「……コピーする宣言?ああ、なら…………それにのってみよう、か」
 コピーとして受け止める行動を見て"あえて"ペインは自分のちからを開放する。
「でも……いい?自分は、それらをどう合ったって喰らうよ」
 "王"の無言を肯定として、――戦争、それ以前からの闘争の記憶を胸に湧き上がらせる。流れるようにある感情を湧き上がらせるのだ――地続きに存在する"この世界、全ての怨念を"。
 周囲環境に紡ぐこの世界全てに存在する憤怒を、絶望を。
 渇望するように喰らい、宿して力と成す。
 これはペインの力を強化する――だが、超強化には当然代償が引き起こる。
 扱うのは拷問具の兄姉の一人、拷問用多機能ナイフ"インモラル"。
 強化を含めて、その鋏を撃とう。
 一刀が受け止められるのは承知の上、だがインモラルの煌めきを、罪の重さを一つの鋏で受けきれるものだろうか。
 虚無を討つより、最も壊すべきモノが鋏。さあ罅を受けよ。
 さあ、さあ、小さな罅でも見逃すまい。抉ろう。そして――与えられた傷から持ち主に伝播して染み渡るいずれ壊れる恐怖とともに与えよう。
『喰らいきれるか、猟兵。少食そうな見た目だ、我の業(やみ)は底を知らぬ!』
 "金の鋏"の刃で受けたペインの超強化を写し取り、カルロスはその身に同一のコードを身に堕ろす。ペインが抱く感情を、――怨念と恐怖、憤怒と憎悪、悲哀と絶望が虚無に紛れ込む。
 貌に――明確な変化が訪れた。
 猟兵達が訪れたときから、はじめから狂いだしていた男が、だばぁあと血を吐き零した。口の場所が解る。吐き零すのは闇ではない、明確に流血だ。
 おびただしい量のBlooder。
 狂う歯車が幾つも足されて、強欲の男には身に余る感情の特盛が内側から暴れだしたのだ。
『そら!それで、何度も、何度も受けられるか!!』
 金の鋏で、インモラルを執拗に狙うカルロスは、何度も、何度も何度もユーベルコードの超強化を続ける。
「……受ける。全部」
 ――こちらのコードをコピーするのは、想定内。
 ――……まさか、何度も行うとは想定外だけど。
 踏み込みが重くなる。質量が鉛のようになっていく。
 血を吐く混沌が、虚無がペインを漆黒の体のうちに沈めこもうとしてくる。
 ――ああ、そうか。最低一人は連れてくつもり……。
「今、……何を胸に抱く?」
 ペインには解る。渦巻くものはこの世界の怨み、そのもの。
 あらゆる苦痛と怒り、絶望から来る――怨念だ。
「その虚無には……身に余るんじゃない」
『ぐ、ぐぐ……』
「100年、それらを喰らい、また、世界の戦争が起きる度にも喰らってきた自分が、尚食い切れぬ今や濃厚すぎるほどの、それ」
 打ち合いを重ねて、それでもカルロスは自身を強化し続ける。
 溢れ出す流血に加えて、体への呪縛が色濃くその身を縫い止める。
 盛られた猛毒(かんじょう)に、内側から押しつぶされるまで――ペインはその時をただ、ひたすら待つ。
「刃こぼれのない鋏で、ナイフを折れないなんて……高々、ここ1月にも満たない間で手に入れた狂気ごときで」
 踏み込み、鋏の乱舞を強く押し返す。
 ――ほら、チャンスは作ったよ。あと一度、強化して。
 ――呪縛の体を強引に千切って、最後の重い一撃を入れにおいでよ。
『アアアアアアアアアアアアアア!!!!!』
「……耐えられるものではなかったね」
 最後に加えた鋏の打撃と繰り返されたコピーの再発動。
 悲鳴と同時に、黒い煙となって瓦解する虚無の闇。
 精神が先に悲鳴をあげて、限界を超えた体が気体となって霧散していく。
 カルロス・グリードを持ってしても、狂気に狂う根源を抱える事は不可能だった。
 全てをなげうち、それでも手に入れることの無かった勝利。
 悪夢の終わりは、悲劇の幕切れのようにあっけなく。
『六の王笏』カルロスの消滅に伴い、島中の凶器的草木たちが一斉に枯れだした。
 あれもこれも、凶器の庭へ猟兵を誘い込むように見せつけていた彼の悪夢。

 悪夢の終わりは、新しい覚醒め(はじまり)。
 時間を稼ぐとずっと闇を照らしていた輝かしい閃光。
 全ては蒼炎の向こうで――根絶するように消し潰されたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月24日


挿絵イラスト