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羅針盤戦争~桜雲秘湯、美肌の湯

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #七大海嘯 #メロディア・グリード #桜雲島

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●尾鰭のいざない
「そろそろ疲れてきた頃じゃない?」
 甘味と思われる容器に両手で触れたまま、視線だけを上げた雅楽代・真珠(水中花・f12752)は静かに口を開いた。容器の中身は、ホットチョコレートドリンクリッチジャンドゥーヤ。甘くて香ばしい香りが辺りを満たしていく。
「お前たちを温泉旅行へ連れて行ってあげる」
 日々頑張るお前たちへの労いだよ。
 花蕾が春の訪れに綻ぶように微笑んだ真珠が告げるのは、とある島への誘いだ。
 その島は『桜雲島』。遠くから見ると、花の雲が空と海との狭間に浮いているように見えるその島は、サクラミラージュから降ってきた、沢山の温泉と豊かな湯脈を保有する島である。
「海域が貯古齢糖になった話は聞いている? 察しの良い者は解るよね。――その島の周りも、貯古齢糖になってしまったんだ」
 これは、七大海嘯『桜花』メロディア・グリードの分身体である『増殖する私の残滓達(スイート・メロディア)』のせいだ。スイート・メロディアは耐久力は低いが、攻撃力は七大海嘯にも引けは取らない。
 ――のだが、温泉の湯脈を沢山有したこの島は温かく、チョコレートもとろりととろけて固まらない。そのため、爪等での通常攻撃は柔らかくなっているし、抱擁もキャンディも御多分に漏れずトロトロだ。
 スイート・メロディアを倒すと、その身はぱしゃんと崩れて辺りをチョコレートまみれにする。当然島に数多に設けられた温泉へとそのチョコレートは降り注いでしまうことだろう。
 しかし。
「……貯古齢糖ぱっくって知っている? 美肌効果が高いんだ」
 保湿力が高く、抗酸化力があるためアンチエイジングに繋がるのだと、真珠はいつになく真面目な顔で説明する。チョコレート好きならば、存分に味わっているような気分にもなれ、リラックス効果も期待できる。倒して倒して倒しまくれば、濃厚なチョコレートを浴びることが叶い、その効果も高まるはずだ。
 元々の温泉の効能の疲労回復や健康増進や筋肉痛解消に加えて、美肌効果がより高まったら? 行きと帰りでは比べ物にならないくらい肌がリフレッシュしていることだろう。
「僕は……安全になったら行くよ」
 皆が敵を倒し終え、安全になったら。
 だから、僕のために確りと倒してきてねと付け加える。
 人魚の掌の上に蓮がふわりと浮かび上がり、蓮の上に金魚が泳げば、海と海賊世界への”門”が開かれる。
「宿もあるから、ゆっくりしてきていいよ」
 後は片がつくのを待つだけだ、と君たちを送り出した人魚は、のんびりとホットチョコレートドリンクへと唇を落とした。


壱花
 チョコレートと温泉の息抜きの旅へとご招待します、壱花と申します。のびのび過ごしていただけましたら幸いです。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。1フラグメントで終了します。

●受付期間
【2/21(日)8:31 ~ 2/23(火)23:29まで】
 スケジュールの都合上、確実に再送になるかと思います。
 再送日は、24日以降に、タグ・Twitter・MS頁にてお知らせします。

●シナリオについて
 グループでのご参加は【4名まで】。
 イベシナ感覚でどうぞ。

●温泉
 スイートさんがウロウロしているので、最初から茶色いです。
 チョコレート色の温泉に、ハラハラと幻朧桜の花弁が舞い降りてきています。
 島内には旅館がいくつかありますので、そこで仕入れられそうなものは温泉に持ち込んでも大丈夫です。アイスとかお茶とかお水とかアヒルさんとか。
 倒したことを前提に温泉に浸かってくださっても大丈夫です。倒してちゃぷちゃぷしていたらまた新手が来た!と倒しても大丈夫です。
 温泉は海岸だったり島の中だったり、色んな場所にあります。スイートさんはウロウロしていますので、見掛けたらエイッとやってください。

 同性のみなら裸でもタオル一枚でも良いですが、異性とご一緒する際は水着の着用をお願いします。公序良俗に反する行為の描写はいたしません。

●プレイングボーナス
 『一斉攻撃を受ける前に、可能な限り多くの「増殖する私の残滓達」を倒す』

●迷子防止とお一人様希望の方
 同行者が居る場合は冒頭に、魔法の言葉【団体名】or【名前(ID)】の記載をお願いします。
 また、文字数軽減用のマークをMSページに用意してありますので、そちらを参照ください。

 それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『増殖する私の残滓『スイート・メロディア』』

POW   :    スイート・エンブレイス
【甘い香りと共に抱きしめること】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    キャンディ・ラプソディ
【肉体を切り離して作った毒入りキャンディ】を給仕している間、戦場にいる肉体を切り離して作った毒入りキャンディを楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ   :    チョコレート・ローズ
対象の攻撃を軽減する【融解体】に変身しつつ、【毒を帯びた薔薇の花型チョコレート】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:hina

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ビスマス・テルマール
◇♡
【なめろうスプラッシュ・サイクロン】を『範囲攻撃』で『なぎ払い』一掃してから水着着用で温泉に

チョコレートの温泉ですか、話に聞くに色々な効能があるみたいですが、戦争も終盤……それに備えて、つかの間の休息も良いかも知れませんね。

あっ、ウルシさんもプカプカ浮かんでますけど、気持ちいいですか?

わたしも気持ちいいですよ、チョコレートの香りも良いですし……疲れも良い感じに解れそうですし

あっ、大人の人はお酒を温泉の上で味わう楽しみもありますよね、わたしは未成年なので無理ですが

でも、可能なら旅館の人に『料理』をお願いして、なめろうを作って貰いお盆に浮かべ、温泉に浸かりつつチビチビ味わい、雰囲気を味わうのも


緋神・美麗
絡み・アドリブ歓迎

偶には一人でゆっくり温泉楽しむのも良いわよね。無粋なスイートはさっさと片付けて温泉を楽しみましょう

スイートさんを発見したら指定UCでまとめて撃ち払う
その後は温泉をゆっくり楽しむ。いくつもあるみたいなので移動中にコーヒー牛乳を飲んだり周りの景色を楽しみながら全制覇する勢いで温泉を巡る。




「なめろうフォースセイバー……ご当地パワー出力全開っ! なめろうスプラッシュ……サイクロンッ!」
「全部まとめて薙ぎ払うわよ」
 甘い香りが漂う島に、ふたつの声が響いた。
 ひとつは『なめろうフォースセイバー』なるエネルギー武器を振るい、背後にアジ――この島のなめろうはアジが一般的だ――の幻影を纏いながら光の旋風刃を放ったビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)。もうひとつは頭上に掲げた手から収束させた光線を放った緋神・美麗(白翼極光砲・f01866)の声だ。
 偶然別方向から『増殖する私の残滓(スイート・メロディア)』たちを見つけたふたりは同時にユーベルコードを放ち、とろりとチョコになって崩れたスイート・メロディアの向こうにお互いの姿を見つけた。
「稀には一人でゆっくりと温泉を楽しもうと思っていたけれど……此処で会ったのも何かの縁ね。よかったらあなた、一緒に楽しまない?」
「はい、喜んで。わたしもウルシさん以外の方とご一緒出来たらと思っていました」
「ウルシさん?」
「はい、ウルシさんです」
 意思を持つ漆塗りのお椀型支援機、通称『ウルシ』さんを「この子です」と見せてビスマスは笑顔を浮かべ、美麗もまた「可愛いわね」と微笑んだ。
「たくさんの温泉があるそうだから、色々と巡ってみたいと思うの。いい?」
「勿論です。もしかしたら温泉ごとに効能が違うかもしれませんし、それに移動中にスイート・メロディアを倒せそうですね。良い考えです」
「ええ。折角の温泉だもの、風景も楽しんでいきましょう」
 どうやらお互いに年も近そうだし、猟兵同士だし、と軽く自己紹介をして、ふたりは目についた温泉をひとつずつ楽しんでいく。いくつか温泉を巡った頃に旅館も見つけ、コーヒー牛乳や冷たい甘酒、火照った体に美味しいアイス。それから海の幸たっぷりな料理を買い込み湯けむり道中。
 アイスを食べながら海沿いの景色が良い岩風呂を見つけたら、ちょうど海から上がってきたスイート・メロディアをさっくりと倒して、ふたりはまた温泉を楽しんだ。
「あっ、ウルシさんもプカプカ浮かんでますけど、気持ちいいですか?」
「ウルシさんにもお湯の効果はあるの?」
「どうなんでしょう? ウルシさーん、どうなんですかー?」
 プカプカとチョコレート色の湯に浮かぶウルシさんを囲んで首を傾げ合えば、笑みが弾けて。チョコレートの香りと温かなお湯が、戦い続きの体に染み入るよう。
 湯船の上に浮かぶのはウルシさんだけではない。お盆に載せた料理と飲み物もいっしょだ。
 成人していないふたりはコーヒー牛乳と冷たい甘酒で乾杯をして、アジのなめろうや新鮮なお寿司に舌鼓。同じ年頃の同性との他愛の無い会話に甘い香り。そして綺麗な景色も揃ったら――ああ明日も戦いを頑張れそう、と。そう思える、ふたりであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

羽々・一姫
戦争だけど温泉に入れるって聞いて来てみたんだけど、正解だったかな。
甘い香りも心地いいし、その上お肌にもいいってことだし、
これはしばらくのんびりしてから、
七大海嘯討伐にいってました、ってことにすればいいよね。

うん。やっぱりサボっての温泉がいちばんね。
近くの宿で飲み物も調達してきたし、これなら何時間でも浸かっていられそう。

……もう、せっかくのんびりしているのにばしゃばしゃうるさい。
それに、今いい感じなんだから、これ以上チョコ分濃くしなくていいわ。
(瞳を一瞬赤く輝かせると、周囲にきていたスイートさんを鎌でバッサリ)

サボりにきているんだから、うろうろしないでほしいわね。
これじゃ仕事しちゃうじゃない。




 ――カポン。
 どこか遠くで、鹿威しが鳴った。きっと近くにある旅館のものだろう。
「戦争だけど温泉に入れるって聞いて来てみたんだけど、正解だったかな」
 甘い香りに満たされた温泉を存分に楽しんで、羽々・一姫(Gatekeeper of Tartarus・f27342)は両手でそっと湯を掬った。ちゃぷりと湯を揺らして肌の上を滑べる湯は、チョコレート色。とろみを帯びたそれは、肌にもとても良いのだと聞く。
 そう、今は戦争中。戦争中なのだが、温泉に浸かって良いと言われている。そう言う依頼をされたのだから、これはサボりではない。サボりではないけれど……島中の『増殖する私の残滓(スイート・メロディア)』たちを倒した後も暫く――いや、一泊や二泊しても許されるのではないだろうか。『七大海嘯討伐にいってました』ってことにすれば、きっと大丈夫。主人にだってバレないはずだ。
「これなら何時間でも浸かっていられそう」
 近くの旅館で仕入れた、瓶に入ったジュースや牛乳を載せたお盆を指先でつんと突付けば、お盆はちゃぷと小さく揺れてチョコレートの湯の上を泳いでいく。
 うん、これはやはり一泊か二泊コースがいい。いっぱいサボって、のんびり羽根を伸ばしてリフレッシュ。それが一番。
 ――だと言うのに。
「……もう、せっかくのんびりしているのにばしゃばしゃうるさい」
 甘い香りが一層濃く顔って、一姫が紫眼を向けた先にはチョコレートのメロディアの姿。溶けたチョコレートのドレスが、引きずられる度にバチャバチャと跳ねている。
 湯の温度も丁度いいし、濃さだって丁度いい。だから、これ以上あなたたちはいらない。
「サボりにきているんだから、うろうろしないでほしいわね。」
 紫眼が赤く輝いて、素早く鎌をザンと払えば――ぱしゃんっと水音だけが響いた。
 これじゃ仕事しちゃうじゃないと不満を口にしながら再び温泉へと身を浸した一姫は、伸ばした繊手に湯を掛ける。傍に出来た新たな茶色いチョコ溜まりには目も向けることも無く。
 のんびりゆっくり、大好きなサボタージュをめいっぱい楽しむのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

瀬古・戒
【ラファン(f18585)】
♢ 昨日のチョコの日で結ばれた恋人と水着…平静装うが内心ドキドキ
おんせーん!…ちょ!ぶはっ口に入ったぁもう!ははッ泳ぎたくなるてカワイーな?
温泉に桜つったら酒がいるだろ?じゃーん、買ってきた、飲も?あとアヒルちゃんもいる
くーッ極楽。堪能しつつも敵見っけたらダッシュで倒そ…て、格好いい事すんなよコラ
彼の頬にチョコパックがてら猫の肉球マーク落書きしちゃる
ははッ、お似合いですにゃん
そだ、コレ知ってる?こー手を組み…てい!水鉄砲。顔めがけ
実はアヒルちゃんも水鉄砲…うりゃ!
桜吹雪に盃持つ姿、様になる…あッども
なぁ、宿…泊ってこ?もう少しお前と一緒にいたい…言わねぇけど


ラファン・クロウフォード
【戒・f19003】恋人の戒と水着で温泉へ。温泉と桜吹雪、綺麗な景色だ。戒の手を握り湯舟に飛び込む。バシャバシャ泳ぐ、ずっとやってみたかった。酒!いいね!戒に酌をして自分も一気に呷る。美味いな!さすが、戒が選んだ酒だ。なぁ、戒、俺の顔に何を描いてる?戒の手元を覗き込み…ぶふぁ!?目と鼻に湯が入り痛くとも、戒の笑い声に釣られて笑い返す。敵に向かう戒の手を掴み引き留め、霊王吠。氷属性雪熊召喚、攻撃重視と数の暴力で倒す。戒の水着姿は俺以外に見せない。今日は独占する。アヒルちゃんは…可愛いから許す。酒盛り再開。花弁を受け止めた酒を戒に差し出す。宿。喜んで。戒と過ごせる時間が増えて嬉しくてにこにこと笑う




 チョコレートの甘い香りの風が、桜花を運ぶ。
 ひらりと舞った薄紅がチョコレート色の湯へと落ちれば、得も言えぬ風情を感じて、ラファン・クロウフォード(武闘神官・f18585)の口は思わずわあと開いてしまう。そんなラファンの横顔を逃さず見つめるのは瀬古・戒(瓦灯・f19003)。先日のチョコレートの祭典――高いビルの屋上で晴れて結ばれた愛しい恋人の表情がとても可愛くて、彼の全てを見ていたいと思うせいでなかなか目が離せない。――という理由もあるのだが、実は顔から下へ視線を向けられないでいるせいでもあった。
 だって、水着! 水着なのである! 先日恋人になったばかりだと言うのに、水着。普段は殆ど肌が見えないラファンの白い肌が惜しげもなく曝け出されている。ドキドキせずにいられようか? いや、そんなことは無理だ。
 常よりも早鐘を打つ胸を持て余しながらも、顔だけは何とか平静を装う戒。
 その心中に気付いていないのか、ラファンは素早く戒の手を取ると湯船へとえーいっと飛び込んだ。
「……ちょ! ぶはっ口に入ったぁもう!」
「バシャバシャ泳ぐ、ずっとやってみたかった」
「ははッ泳ぎたくなるてカワイーな?」
 惚れた弱みかもしれないが、彼がすることが全部可愛く思えて戒も楽しげに破顔して、バチャバチャ泳ぐラファンに暫く付き合った。恋人となって、こうして戯れ合うのも何だかとても新鮮だ。
「そういえばさっき、旅館に寄っただろ?」
「ああ。何か買っていたな」
「温泉に桜つったら酒がいるだろ? じゃーん、買ってきた、飲も?」
「酒! いいね!」
 ついでに購入したアヒルちゃんを湯船に放ち、ふたりで酌をしあったら乾杯!
「くーッ極楽」
「美味いな!」
 桜が見える温泉で、酒。傍らには好いた相手も居て、これが極楽でなければ何と言えよう。二人っきりの時間が愛おしくて幸せだと思う――と、邪魔をする者は現れるもので。
 桜花の向こうに見えた茶色。『増殖する私の残滓(スイート・メロディア)』だと認識した途端に湯船から立ち上がろうとした戒――の手を、ラファンがぐっと掴んで引き止める。
「ラファン……?」
「戒の水着姿は俺以外に見せない。今日は独占する」
「な!?」
 不意打ちですぐそういう格好いい事言うー!
 戒がかっこよさに打たれてクラクラしている内に、素早く氷属性雪熊を召喚したラファンがスイート・メロディアたちを倒してしまった。スイート・メロディアは戒と同性だが、同性にだって駄目だ。だって戒は可愛くてかっこいいのだから。
「アヒルちゃんは……可愛いから許す」
 浸かり直して、ちょんとアヒルちゃんを指でつつくラファン。先程とのギャップが本当にずるい。ずるいから、えいっと彼の頬にチョコパックがてら猫の肉球マーク落書きだ。
「ははッ、お似合いですにゃん」
「なぁ、戒、俺の顔に何を描いてる?」
「ないしょ!」
 湯船はチョコレート色だから顔を映し見ることもできなくて、きょとんと首をかしげるラファンが可愛い。
「そだ、コレ知ってる?」
「なに?」
 両手を組む戒はお湯を掬うようにしているようにも見えて、何だろうと素直にラファンが覗き込む。ニマリと笑む戒の口には気付かずに。
「てい!」
「……ぶふぁ!?」
 顔面への水鉄砲。目と鼻に湯が入って痛くとも、楽しげに笑う彼女の声が心地よい。釣られるように笑えば、「実はアヒルちゃんも水鉄砲なんだぜ」とピューッと掛けられた。
 ふたりっきりの温泉は、ふたりでバチャバチャはしゃいだって誰にも怒られない。
「あー、笑った笑った」
「戒、飲み直そう」
 はいっと花弁を受け止めた酒を差し出せば、戒はぴたりと止まって。
「戒?」
「……あッども」
 思わず見惚れてしまったとは言えずに、戒は慌てて盃を受け取るとそのまま口をつける。慌てて喉へと流し込んだ酒の味は、先程よりも何故だが甘い気がした。
 だからだろうか、こう口にしてしまったのは。
「なぁ、宿……泊ってこ?」
 もう少しお前と居たい。その本心は恥ずかしくて言えないけれど。
 どう? と伺い見れば、嬉しげな笑顔が返ってくる。
「喜んで」
 一緒に時を過ごしたいという気持ちは、きっと一緒だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

末代之光・九十
【藍九十】◆
(藍を見る)
っ!
(肌が見えて慌てて目を逸らす)
…あわわ水着着てるとは言えこの距離で直視は眩すぎるヤバい可愛いのに男の人の色気もあるのはヤバい邪念が。邪念が……落ち着け僕正気とか保て。不味いから。それは不味いから…!

そだ。さっきの戦いを思い返して気を紛らわそう…
藍が巨大ステージ落とし捲って、相手は融解体だから物凄い絵面で。
でも八艘飛びよろしくステージ間跳び回ってチョコ避けてた藍はカッコ良かったな…
(結局我慢できずにまた藍を見る)


どしたの藍顔真っ赤だよ!?
まさか湯あたり!?大丈夫!?
(慌てて近寄って)
あれ?
(足を滑らせて)
!?
(つんのめって抱き着く様に倒れ掛かる)
わきゃあああああ!?


紫・藍
【藍九十】◆再
おねーさんと温泉なのでっす!
水着はこれなのでっすがー
https://tw6.jp/gallery/?id=47601

あやー。
おねーさんに肌を見せるのはなんだか照れてしまう藍ちゃんくんなのでっすよー?
ここは先程のかっこいいおねーさんを思い浮かべて落ち着くのでっす!
眩い弾幕に照らされたお姿はとってもお綺麗で
水着姿だって、あやややー!?
ダメなのです!
余計に顔真っ赤なのでっす!
温泉にぶくぶく沈ん……!?
おねーさん!
頭を打たせないよう抱きつかれるままにクッションに!

えーとでっすね、おねーさん
藍ちゃんくんがあたってるのは、おねーさんに、なのでっすよー?
お顔真っ赤インフレ藍ちゃんくんでっしたー




 甘い甘いチョコレートの香りは、つい先日の出来事を思い起こすもの。
 鮫歯がチョコレートを齧って、そうして押し付けられた甘さと柔らかさ。
(あわわわわわわわ)
 ぽやんぽやんふわわんと浮かんだ甘やかな記憶を末代之光・九十(何時かまた出会う物語・f27635)は慌ててブンブンと頭を振って追い払おうとした。現実逃避と言うか、現実の刺激から逃れるために別のことを考えようとしたのだが、これでは現実と然程大差がない。
 チラッと視線を横へ向ければ、可愛い笑顔がニパッと輝く。釣られてへらりと笑いそうになるも、パッと慌てて目を逸し……逸した瞬間に後悔をする。嫌な態度を取ってしまったのではないか、と。
 そうしてまたちらりと伺おうとするのだが――駄目だ、直視出来ない。紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)が可愛いのはいつものことだけれど、今日はそれだけじゃなくて――彼の服装が問題であった。
(……あわわ水着着てるとは言えこの距離で直視は眩すぎるヤバい可愛いのに男の人の色気もあるのはヤバい邪念が。邪念が……落ち着け僕正気とか保て。不味いから。それは不味いから……!)
 ひらりと波打つ、スカートめいた水着は可愛い。けれど、その上。いつもは隠された素肌が全て見えているというのは頂けない。いつも可愛い服で隠されているそこは、彼が男の人だと意識してしまう聖域。女性とは違う筋肉質な腹に、腕に、目が行って……いけない! 矢張り違うことを考えようと九十は己の中で葛藤し続けていた。
 藍も同じ心境だと、気付かぬままに。
(あやー)
 いつもの藍ならば、今日も可愛い可愛い藍ちゃんくんはすてきでっすのでたっぷり見て褒めてくれてもいいのでっすよー? な気分なのだが、今日は何だかちょっぴり違う。水着だって何度も着てきているはずなのに、隣のおねーさん――九十に見せるのは何だかちょっぴり恥ずかしい。
 先程目があった時に笑ったらパッと顔も背けられてしまったし……もしかして変? いやいやそんなことは! 藍ちゃんくんはいつでも可愛いはずなのでっす!
 そうして慌てて思考を逃がすところが一緒で、矢張りお似合いなふたり。考えることも、やはりお揃い。ここへ来る前の戦いの、相手の姿。
 巨大ステージを落としまくる藍に、眩い弾幕に照らされる九十。
(さっきのおねーさんはかっこいいのにとっても綺麗で……水着姿だって、あやややー!?)
(さっきの戦いの藍、八艘飛びよろしくステージ間跳び回ってチョコ避けててカッコ良かったな……)
 余計にボンと赤くなってしまった藍があわあわとしだしたところに、やっぱり彼を見たいなと視線を向けた九十の視線が合って。
「どしたの藍顔真っ赤だよ!?」
「あややや! ダメなのです!」
「え? 何がダメ? まさか湯あたり!? 大丈夫!?」
 見ちゃダメなのです! 真っ赤な顔を見られたことが恥ずかしくて、ブクブク沈む藍。
 それを湯あたりで沈んでいく姿だと思った九十は大いに慌てた。
 もう、本当に慌てた。
 温泉で慌てれば、どうなるか。
「……あれ?」
「おねーさん!」
 チョコレートでとろみを増している湯に足を取られて、つるん。
 頭を打たせてはいけないと慌てて藍が手を伸ばせば、九十の体は藍の腕の中。尻もちをついたお尻は痛いけれど、九十が無事なら問題ない。
「おねーさん、だいじょー……」
「わきゃあああああ!?」
 間近から顔を覗き込めば、今度は九十の顔が真っ赤だ。
 ケガもしていなさそうだし、「藍ちゃんくんがあたってるのは、おねーさんに、なのでっすよー?」と赤くなりながらも湯あたりじゃないよアピールをしてみたのだが……その言葉は九十に伝わっていないかもしれない。真っ赤な顔についた目がぐるぐる回ってしまっているし、口は半開きでわなないている。お互いにもう、本当にいっぱいいっぱいだ。
(わ、わわわわわ! 藍が抱きとめ……えっ、これ、腕の中!? 体が密着し、ええ!?)
 ああああああ! 邪念が……!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘスティア・イクテュス
【飛剣】♢
ふぅ…1ヶ月、戦い尽くめだものね……流石に疲れたし温泉も良いわよね
綺麗に舞い散る桜に、ぽかぽかお風呂…そして甘いチョコの匂い…

うん、後者は大分特殊な状況だけど…まぁ美容効果があるなら使わない理由はないわよね


プチヘス達には護衛を、メロディアが現れたら撃って撃退よろしくね【集団戦術・弾幕】
わたし達は温泉を満喫

あ~…戦いの疲れが取れるわ…一ヶ月海上ですもの…潮風とかね…
あっ、風月、髪わたしが洗ってあげるわ…
一部分(胸)を見て、同じ年なのにぐぬぬ…と思いながらも髪を洗って
もう、折角綺麗な髪なんだからもう少し気をつかいなさいよ…


これが終わったらまた猟書家との戦い…今のうちに英気を養いましょう


雪華・風月
【飛剣】♢
舞い散る桜に温泉…これ自体はサクラミラージュでも見る光景ですが…
更にチョコの温泉となると…面妖な光景ですね…


ヘスティアさんのプチヘスさん達に任せて温泉へ
可愛いので一体お借りしてもいいですよね?(胸に抱き)

…いいお湯ですね…
海上での戦闘、色々と良い経験になりました…
話しながらも指でチョコを掬って一口、甘いです

はい、お願いしますと洗い場へ連れられ
むっ、殺気…メロディアでしょうか…?
少し気になりながらも洗われて
それなりには気を使っているのですが剣を振る時間に当ててしまいたいと…つい…


では、お返しに洗わさせて頂きますね
サクラミラージュでも色々と不穏な動きが…次は色々落ち着いたら来たいですね




 甘い風が吹いて、乙女たちの髪を揺らした。
(……1ヶ月、戦い尽くめだものね……流石に疲れたし温泉も良いわよね)
 そっと空色の髪を抑えたヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)は、ふうと小さく吐息を吐き出して、桜舞う景色と……それから茶色のチョコレートの温泉へと視線を向けた。
 そう、ヘスティアが今居る旅館の離れのような温泉は、湯は茶色く、甘い香りを放っている。既にここを『増殖する私の残滓(スイート・メロディア)』たちが一度は通り過ぎた証拠でもある。
 甘いチョコレートの湯と言うのはだいぶ特殊な状況であることはヘスティアも、一緒に訪っている雪華・風月(若輩侍少女・f22820)も正しく理解をしているが、猟兵たるもの休める時に休み、英気を養うのは基本中の基本だ。特にこのひとつきは、戦い尽くめ。見た目以上に体は、筋肉は、疲労を蓄積している。
 それに、戦闘が続くとつい疎かになりがちなものもある。
 つまり、――美容である。
 戦場を駆ければ風に晒され髪は傷むし、肌だって荒れる。特に今回の戦場は海上ということもあって、いつも以上に肌も髪も傷んでいる。どうしようもないことなのだが、ヘスティアと風月は年頃の乙女。ケア出来る時にケアはしておきたいものだ。
 タオル一枚を身に纏い、ヘスティアの『プチヘス』――ヘスティアを模した二頭身のロボット《プチヘス部隊》の一体だ――を胸に抱いた風月とヘスティアは、のんびりと温泉へと足を伸ばす。温泉周りにプチヘス部隊を配置して護衛を任せているため、ふたりはゆっくり温泉と景色を楽しむことが出来た。
 湯に体を浸せばとろりとした湯が肌を滑り、しっとりとした肌感を与えてくれる。少し気だるく感じる手足は、じんわりと温泉の効能が効いているのだろう。筋肉が解されていっている証拠だ。
「……いいお湯ですね……」
「あ~……戦いの疲れが取れるわ……一ヶ月海上ですもの……潮風とかね……」
「海上での戦闘、色々と良い経験になりました……」
「この戦いが終わったらまた猟書家との戦いもあるし、今のうちに英気を養いましょう」
「サクラミラージュでも色々と不穏な動きを観測しておりますし、そちらも気になります」
「……あ、こら風月。ダメよ」
「あ、そうでした。つい……」
 話しながらチョコレートのお湯を掬って一口舐めようとした風月に、素早くヘスティアが注意する。とても甘くて美味しそうな香りだけれど、人が浸かっている湯だ。舐めないほうがいい。
「後で、旅館でチョコレートドリンクを飲みましょう?」
「わあ、いいですね。ふふ、お風呂上がりも楽しみです」
 首や肩へ手で掬ったお湯を掛け、のんびりと心地よいひとときをふたりは味わった。
「あっ、風月、髪わたしが洗ってあげるわ……」
「はい、お願いします」
 思いついたヘスティアが提案しながら風月を見――その視線が胸元へと落ちていく。
 同じ年なのに、豊かな胸に、思わずぐぬぬ……と羨むような微妙な気持ちを抱くが、風月の手を引いて洗い場へと移動した。
(むっ、殺気……メロディアでしょうか……?)
 ハッと何かに勘付く風月だが――正しく勘付けてはいないが――プチヘスたちが護衛していることもあって其れ以上は気に留めず、ヘスティアに支持された場所に座って彼女の指を受け入れる。頭皮をマッサージするように動く指が気持ちいい。
「もう、折角綺麗な髪なんだからもう少し気をつかいなさいよ……」
「それなりには気を使っているのですが剣を振る時間に当てたいと……つい……」
「まあ……また洗ってあげるわ」
 乾かす時に椿油あたりを擦り込んであげようかしら。なんて考えつつ、泡を流してさらりと髪を漉いて手遊んで。
「はい、おしまい」
「では、お返しに洗わさせて頂きますね」
 洗い手を交換して、乙女たちは久方ぶりの休暇を楽しむ。
 また色々と落ち着いたときにでも、こうしてのんびりしようと言葉を交わし合い、温かな一日を過ごすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

薄守・黎十
【温泉男子会】◇
男子会だけど水着着ておく

すげぇな、ちょこの温泉…
髪色も似てるから肩まで浸かってたら紛れ込めそうだな
とか言いながら興味深気に覗き込んで尻尾ぶんぶん
いいじゃん、いいじゃん尻尾も元気でさー!楽しめ、楽しめー!!
けらけら笑いながらお湯(チョコ)をべしゃべしゃかける

アイス!!俺も食うー!!
どうせならどんどん盛ろうぜ
ほら、食え。たんと食え
人のアイスを2段3段とどんどん積んでく
わんこアイスっぽくなってきたな
とか他人事のように言いつつ面白いので食べさせていく

メロディアを見かけたら
きゃー!覗きよー!とわざと可愛い声出してUC使用
腕を蛇にしてパクリする
見られると思ったら逆に見せつけてんな…?


木常野・都月
【温泉男子会】◇

温泉だー!
チョコだー!
両方だー!

チョコの温泉は初めて!
尻尾はおお落ち着け?

あったか…トロっとしてる…
普通の温泉よりもあったまりそう…。

栗花落先輩はお肌気になります?
そうか…美肌にいいのか。
尻尾の毛艶良くなる?(尻尾ピコピコ)

ヴォルフさんの尻尾強い…俺だって!
尻尾で温泉掬って…ブルブルブル!

あっ!先輩達!アイスです!
あったかいお湯に浸かって、冷たいアイス、きっと美味しい!

黎十さん!スピード早い!早い!
溶けちゃう!落ちちゃう!(必死もぐもぐ)
キーン!!(尻尾ブワッ)

敵が…
こんなに美味しいチョコとアイスと温泉を邪魔するなんて。
絶対、許されないぞ。
UC【精霊の瞬き】で溶かしてしまおう


栗花落・澪
【温泉男子会】♢

髪はゆったりアップで海パン着用
熱いの苦手だから足先で触ってみて
両手でお湯をかきながら少し奥へ

すごーいトロトロだぁ
桜も綺麗だねぇ
美肌効果…
じっとお湯を見てから濡れた両手を頬にぴとっと当ててみたり

飛んできたお湯にびっくりして
もーこっちまで飛んできたんですけどー
お返しだぁっ
いっそ他の2人も巻き込んでぱしゃぱしゃと

アイスいいね!食べよ食べよ!
えっ、僕そんなに食べれないってー!
お腹壊しちゃう前にヴォルフガングさんにパス
なんとなく…最年長だし(てへぺろ

敵には指先向けるだけで発動可能な【指定UC】で
追尾する花弁による攻撃を
きゃーえっちぃ(棒読み便乗
男の裸より綺麗な桜見た方が絶対楽しいのにね


ヴォルフガング・ディーツェ
【温泉男子会】
男しかいないし全裸でも…(周りを見る)…うん、水着は履くか!仮にも最年長だし?

お、何だい尻尾でチョコ飛ばし大会かい?俺の自慢のふさふさ尻尾も負けないぞう、てい!(3人に尻尾で掬い上げたチョコをぺいっと飛ばそうと)

美容か、食べる分にはカカオは美肌効果があるらしいよね?
ははは、年寄りに冷えが大敵と知っての狼藉かな若人達!あ、俺、肉体は若かったてへぺろ☆(遠慮なくアイスを齧る)

一通り遊んだら不思議な温泉も堪能
いやあホント、櫻とお風呂って良い組み合わせだよね。チョコの重さが癖になりそう
増援は容赦なく水着を脱ぎ捨てて【指定UC】でズタボロに
見たいなら見せてあげよう、冥土の土産ってやつにね




 そろりと伸ばした白い爪先をちょん、とチョコレート色の上で跳ねさせて。熱さを確かめたらゆっくりと沈めて、その身を浸す。白磁のような肌にしっとりと伝う湯は、ホットチョコレートよりはさらりと肌を滑り落ちていく。
 長い髪を結い上げて晒された肩が温かな湯へと沈めば、ホ、と溢れるのは甘い吐息。後ろ姿だけ見たら誤解されてしまいそうだけれど――栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は列記とした男性である。そして、一緒に来た面々も同性だ。
 今日は温泉で男子会。全員男性だから裸を晒してもいい気はするけれど……ほら、一応ね。他の猟兵に会うかもしれないしね。全裸でも……と考えかけて周りを見渡したヴォルフガング・ディーツェ(花葬ラメント・f09192)も、ちゃんと水着を着用している澪と薄守・黎十(怪異喰・f27541)と木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)の姿を見て、ちゃんと履きました! 仮にも最年長だしね!
「あったか……トロっとしてる……」
「すごーいトロトロだぁ」
 肩まで浸かればとても温かい。普通の温泉よりもチョコレートのとろみで熱が逃げにくい温泉は程よく温かく、都月はふああと気の抜けた声とともに大きな黒いお耳をピコピコ。隣で温まる澪もホウとため息をついてから肩へとお湯を掛け、そっと両手で掬ってお湯を見る。
 グリモア猟兵からチョコレートを肌に塗ることの利点も聞いて来ている。肌に塗りこめば、きっと帰りには行きとは少し違う肌になっているはず。
「栗花落先輩はお肌気になります?」
 じぃっと真面目な顔で湯を見る澪へ首を傾げた都月の目の前で、えいっと頬へとぱちゃん。大好きな人の前ではいつだって一番の自分で居たいから、綺麗になって帰りたい!
「そうか……美肌。尻尾の毛艶良くなる?」
 チョコレートの湯でひたひたに濡れた尾を持ち上げてピコピコ揺らしてみせれば、同じようにヴォルフガングも尾を揺らして。
「食べる分にも美肌効果があるらしいよね?」
 食べ過ぎは駄目だけれど、と年長らしく口にした。
「すげぇな、ちょこの温泉……」
 美肌に興味が無い黎十はお湯に浸かりきらずに立ったまま、マジマジとお湯を眺めていた。甘い香りを放つチョコレートの湯は黎十の髪色にも似ている。肩まで浸かったら紛れ込めそうで、悪戯心がむくむくと膨れ上がってくる。
 其れに反応した尻尾がブンブンと振られれば――バシャバシャと湯を跳ね飛ばしてしまうわけで。
「わ! なに!? って、もーこっちまで飛んできたんですけどー」
「おお落ち着け?」
「いいじゃん、いいじゃん尻尾も元気でさー! 楽しめ、楽しめー!!」
 もーっと上がった非難の声をけらけら笑い飛ばして、ついでに尻尾をわざとブンブン振ってチョコレートのお湯も辺りへ飛ばした。えーい、これでもくらえ!
「あっ! もー! お返しだぁっ」
 ゆっくり浸かっていた澪も立ち上がり、両手で掬ってえーい!他の二人にだって、えいえいとパシャパシャと控えめに掛ければ、その倍くらいの豪快さで黎十が三人へ掛けてくる。
「お、何だい尻尾でチョコ飛ばし大会かい?」
 尻尾対決なら、最年長としては見過ごせない。長年の相棒たる自慢の尻尾だ。ここで尻尾パワー見せつけずして、いつ見せつければいいと言うのだ!
「俺の自慢のふさふさ尻尾も負けないぞう、てい!」
「ヴォルフさんの尻尾強い……俺だって!」
「お、都月もやるね!」
「僕だって、尾はないけど負けないんだからっ」
 仁義なきチョコ飛ばし大会尻尾の部に手で混ざっている澪も掛け合って、わあわあと時間も忘れて大いにはしゃいぎあった。
「あー、もう。ゆっくりしにきたのに疲れちゃったよ」
 再び肩まで湯に浸かって温まれば、じんわりと染み入るようで心地よい。
「あっ! 先輩達! 俺さっきアイス買いましたよ!」
 湯から上がって荷物の置いてあるところへトテテと駆けた都月の手には、特大アイス。業務用とかで売られているような大きいやつだ。あったかいお湯に浸かって、冷たいアイスはきっと美味しい! いいや、絶対に美味しい! これなら暫く溶けないからいいかなと思って、旅館の売店を覗いた時に買っておいたのだ。
「アイスいいね! 食べよ食べよ!」
「アイス!! 俺も食うー!!」
 澪と黎十が目を輝かせ、はいはいっと挙手をする。
 しかし。
「か、かたい……!」
 業務用トテモカタイ=アイスは強かった!
 皆で分けたくともスプーンが刺さらずに、ぐぬぬと眉を寄せる。そんな都月にどれ貸してみたまえと黎十の手に渡ったアイスは、容器の外側をお湯で少し温められた。外側がじんわりと溶ければ、業務用トテモカタイ=アイスとて防御力を誇れなくなる。
 けれど、そう、黎十の手に渡ってしまったのは少しいけなかったのかもしれない。
「どうせならどんどん盛ろうぜ。ほら、食え。たんと食え」
「黎十さん! スピード早い! 早い!」
「わんこアイスっぽくなってきたな。ほらほら、早く食べないと落ちるぞ?」
「溶けちゃう! 落ちちゃう!」
 温泉に浸かって食べているため常よりも溶けるのが早く、ゆっくり食べていては溶けてしまう。けれど溶けかけも美味しかったりするのでのんびりと味わうのも楽しいのだが、唐突にアイス奉行になった黎十が次々と人の手元にアイスを積んでいく。
 大急ぎで口へと放べばどうなるか。
「キーン!!」
 避けては通れないアイス頭痛のお出ましだ。都月が頭を抑えるより先に、尻尾がブワワと大きく広がった。
「えっ、僕そんなに食べれないってー!」
 一生懸命パクパクと食べていた澪がお腹壊しちゃうっと音を上げて、ヴォルフガングさんお願い! とパス。なんとなく最年長だし、なんとかしてくれるかなぁなんて。
「ははは、年寄りに冷えが大敵と知っての狼藉かな若人達!」
 可愛いてへぺろに豪快に笑ってそうは言うけれど。
「あ、俺、肉体は若かったてへぺろ☆」
 ヴォルフガングもてへぺろを返してアイスを食べた。
 業務用トテモカタイ=アイスも四人で食べれば、越えられない氷山ではない。温かなチョコレート温泉のお陰もあって、食べきった四人はひと心地。途中でチョコレートを掛けて食べたい欲も湧き上がったけれど、温泉のお湯だからちゃんと我慢した。
「いやあホント、櫻とお風呂って良い組み合わせだよね。チョコの重さが癖になりそう」
 極楽かな。絶景かな。
 しかし、温泉、とくれば、お約束がもうひとつ。
 がさがさと目前の桜花が揺れて。
「きゃー! 覗きよー!」
 黎十が黄色い(?)声を上げて腕を蛇にする。ついに『増殖する私の残滓(スイート・メロディア)』のお出ましだ。ノリノリできゃーっと叫びながら、はいパクッと蛇で甘い体を齧って。
「きゃーえっちぃ」
 澪も棒読みで便乗しながら、指先を向けて花嵐。
「見たいなら見せてあげよう、冥土の土産ってやつにね」
「温泉タイムを邪魔するなんて許されないぞ……って、ええ!? 先輩、見え」
「見せてんの!」
 ヴォルフガングが変身のために、容赦なく水着を脱ぎ捨てた。
 DA・I・TA・N! きゃー! 思わず両手で顔を覆ったメロディアに、そういえば女性だった冷静に澪が思う間にチョコレートがパシャンと跳ねてその姿が消えて早々にご退場。
 湯けむりに、チョコレート。そして桜を見ながらの男子だけの楽しい会話をまた続けた。
 ――男子ばかりの温泉だけれど、ポロリもあったよ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニィエン・バハムート
敵はいつものように【先制攻撃】の爆鳴気炎無限増殖の【範囲攻撃】とその爆発による【衝撃波】などで【蹂躙】して…飛び跳ねたチョコでドロドロですの。今日は温泉に浸かれるというのならお言葉に甘えますわ。

あ゛あ゛~…パックとかは別にいいですけど、海上戦続きで冷えた体が芯から温まって沁みますの…なんか今の私おっさん臭いですわ…。

あっ、メロディアの分身。あなたも入って行きますか?
どうせ今のあなたは攻撃力すらなく、別のあなたとは恋バナもした仲。終わるまでの時間を穏やかに過ごさせるぐらいの慈悲は…。

…ええ、そうですわね。あなたってそういうヤツですの。
その竜王と姫君としての矜持だけは、ほんの少し、尊敬してますわ。




「そこですわね!」
 がさり、と草木が揺れると同時にニィエン・バハムート(竜王のドラゴニアン(自称)・f26511)はクワワッと勇ましく口を開いた。全てを平伏させる竜王(自称)の息吹――爆鳴気炎はゴウと広がり爆発を生み、『増殖する私の残滓(スイート・メロディア)』たちを蹂躙した。
「……もう。飛び跳ねたチョコでドロドロですの」
 勢いよく倒しすぎたかしらと少し思うものの、竜王たるとも派手さと勢いは大切だ。
 今日は温泉にも浸かれるし、宿に泊まっていいとも聞いている。汚れた衣服は洗ってもらって、ユカタなるものに袖を通すのも一興かと、ニィエンは微笑んだ。
 島中にいくつも点在する露天風呂のひとつ。少し小高い崖から海を見渡せる温泉を見つけたニィエンは、そこで景色と湯とを楽しむことにした。望める景色はチョコレートの海で茶色いが、湯船の縁に頭を預けて空を見上げれば、美しい空と風に吹かれて舞う桜花弁を堪能できた。
「あ゛あ゛~……」
 とろりとした湯が、海上戦続きで冷えた体を芯からじんわりと温めていくのが解る。通常の湯よりもとろみのあるチョコレートの湯は保湿力も保温力も高い上、元々の効能である疲労効果も相まって全身の筋肉を程よく解してくれていた。そのせいか何だかとてもおっさんのような声が喉から出てしまうが、心地よいのだから仕方がない。おっさん臭い姿を曝け出したとしても、誰も居ないのだから大丈夫だろう。
 ――と思っていたら、人影が見えた。
 海から上がってきたばかりと思われるスイート・メロディアだ。
「あっ、メロディアの分身。あなたも入って行きますか?」
 別のスイート・メロディアとは恋バナもした仲だ。
 その呼びかけは、このまま徘徊していたとしてもいずれは溶けるか、他の猟兵たちに終わらされるスイート・メロディアにほんの少しの時でも穏やかに過ごさせてあげようと言う、ニィエンの竜王としての慈悲だ。
 しかし、スイート・メロディアはトロトロ溶けて形を留めない爪を身構える。
「……ええ、そうですわね。あなたってそういうヤツですの」
 例え地熱と温泉の熱気で固まれずとも、例え分身であろうとも、メロディアの矜持は遥かに気高い。そんな彼女のことは、(自称ではあるが)同じ竜王として尊敬に値する。ほんの少し、だけだけれど。
 ニィエンは淡く笑んで、そうして息吹を吐くために空気を大きく吸い込んだ。
 その竜王としての、姫君としての矜持に、敬意を表して。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リラ・ラッテ
【nyx】
甘い香りの温泉なんて不思議
チョコレートの中に浸かれるなんて
ほんとう、まるで夢のようね
仕事後のご褒美、堪能しましょう?

桜ちょこ
ふふ、確かに美味しそう
どこかで売られていそうな程だけど
ここのは飲んではいけないわね

美肌効果!それは素敵
千織さんも菫さんも千鶴さんもお肌綺麗ね
普段から何かお手入れとかしてる?
少しでもしてることが素敵だわ
話しながらのんびり寛いでいると
チョコの水鉄砲がぱしゃりとかかる
ふふ、やったわね?…それじゃあ私も
楽しげに笑み咲かせ、水鉄砲に応戦

話にも花咲かせ、心も身体も温まれば
……まあ、チョコミントアイス!
ふふ、チョコレートだらけでほんとう贅沢
幸せすぎて蕩けちゃいそう、ね


宵鍔・千鶴
【nyx】

ふわふわ馨る甘い匂いに包まれて
文字通り、どっぷり浸かれるなんて夢のようだな
仕事後の疲労も吹っ飛んじゃった

花弁もチョコ色に…
なあ、菫、桜ちょこみたいで美味しそうだよ
…そんな飲むわけ……(揺らぐ顔)

ちょこぱっくで美肌に成れるんだって
甘いだけじゃなく効能も有るの凄いね
手入れは特に何も…俺面倒臭がりだしなあ
千織偉い。女性は何かと大変だ
え、もしかして皆はこれ以上美肌に…?
のんびりまったり、油断をついて
指先でチョコ水鉄砲を飛ばせばリラの方へ
当たっちゃった?って悪戯っ子の顔
皆ではしゃいで反撃を

身体が温まってきたら
旅館で貰ってきた秘密のおやつ
じゃん、ちょこみんとあいす!
温泉でアイス、贅沢じゃない?


君影・菫
【nyx】

ふふ、甘い温泉なんて不思議ばっかやんね
包む馨はしあわせの
ちょこに浸かる日が来るなんてなあ
うろうろしとった沢山の敵はん倒した後やもんね
ご褒美は楽しませて貰わんとあかん

ちぃにつられて美味しそうって眺めてまうけど
飲まへんよ、飲まへん
桜ちょこ…ちょっと未練あるけど

ちょこで美肌
千織もリラも肌綺麗やからつるつるになりそ
いうてちぃも綺麗よね、肌とまじまじ眺める娘
うち?手入れはなあんも
ちょこ水鉄砲には疼く童女の精神
咲って、楽しげにえいって
みいんな乗り気で楽し

ちょこでしあわせの心地にぽかぽかしたら
秘密のちょこみんと
最後までちょこで爽やかみんとを選ぶの
ふふ、ちぃ解っとうなあ
贅沢に溺れそうやなあ、なんて


橙樹・千織
【nyx】

チョコ色の温泉…!
まさかチョコに浸かる日が来るとは思いませんでした
程良く甘い香りがいいですねぇ
ふんわり、とろりと夢心地

ふふふ、桜も温泉に浸かりに来たのかしら
あら、千鶴さん飲んじゃ駄目ですよ?
花弁をつまんでくすくす笑う

ちょこぱっく……ぱっく??
美肌効果は嬉しいですねぇ
ふふ、菫さんもリラさんも綺麗ですよ
普段は…少しだけ?
あらあら、まあま…はわ!?
微笑ましいと眺めていれば流れ弾に当たり
…みなさん覚悟!
童心にかえり、参戦

あら、アイスなんていつの間に?
ほこほこ温まった身体に冷たいアイス
チョコミント……!これはまた不思議な味ですねぇ
初体験のスッと抜ける香りに目を丸くして
贅沢なひとときにのんびりと




「そちら、いきましたよぉ」
「任せとき」
 ウロウロとしていた『増殖する私の残滓(スイート・メロディア)』たちを連携して一網打尽にした君影・菫(ゆびさき・f14101)と橙樹・千織(藍櫻を舞唄う面影草・f02428)とリラ・ラッテ(ingénue・f31678)と宵鍔・千鶴(nyx・f00683)の四人は、今、甘やかに薫る茶色の水たまり――否、チョコレート色の温泉と対面していた。
 冷めて固まったチョコレートよりも、温かでとろりと蕩けたチョコレートの方が、甘く広く、美味しそうに薫る。ほこほこと温かな湯気をたてる湯は、まるで湯煎されたばかりのチョコレートのようだった。
「チョコ色の温泉……!」
「ふふ、甘い温泉なんて不思議ばっかやんね」
 まさかチョコに浸かる日が来るとは思いませんでしたとにこやかに口にする千織へと頷き返し、菫ははらりと衣を落とした。――麗しの花たちと見せて、実は白一点。男子の千鶴が居るから、全員水着を着用済み。
 衣の下に先に着込んできた水着姿になったなら、軽く湯で汗を流してから温泉へ。甘く薫る温かな湯へとつま先を落とせば、ちゃぷ、と言うよりは、とぷ、と白磁の肌が茶色へと沈みゆく。
 程良く薫る甘い香りに、ふんわりと柔らかな桜の香りも混ざって。
 ほかほか、とろり、夢心地。
「ちょこに浸かる日が来るなんてなあ」
「文字通り、どっぷり浸かれるなんて夢のようだな」
「チョコレートの中に浸かれるなんて、ほんとう、まるで夢のようね」
 チョコレートフォンデュに落ちた果物か、ホットチョコレートに落とされたマシュマロの気分。空気を吸い込めば甘い香りで胸はいっぱい。とろりと湯よりもとろけて絡むチョコレートのお湯は保湿効果も保温効果も高く、じんわりと肌を温めてくれる。
 ウロウロと彷徨っていたスイート・メロディアを倒して仕事をこなした四人には、このひとときを楽しむ権利がある。ご褒美なのだからめいっぱい楽しみましょうと微笑み合って、戦いで疲れた体を存分に甘やかすことにした。
「ふふふ、桜も温泉に浸かりに来たのかしら」
 ひらひらと辺りを舞う桜花が、ひいらりと四人が浸かる湯にも舞い降りて。
 お客さんが増えたわと揺らせば、池の上の小舟のようにクルクルと回って、桜は四人の間を泳いで回る。
「なあ、菫、桜ちょこみたいで美味しそうだよ」
「ええね、美味しそう」
 近くに来た桜花弁へとさざなみを送れば、くるりと回って菫の元へ。
 薄紅の桜の花弁型チョコレートを飾ったパフェやドリンク。
 それとも、桜風味のピンクの桜チョコレートドリンクが良いだろうか。
 想像すればするほど美味しそうで、思わずリラも「確かに美味しそう」と笑みを咲かせた。けれどここのは温泉の湯に溶け込んだチョコレート。ひとが浸かるものだから飲んではいけない。どこかで売っていなかったかしらと、少し前に立ち寄った旅館へと思いを馳せた。
「あら、千鶴さん飲んじゃ駄目ですよ?」
 あまりにもじいっと千鶴が湯を見るものだから、くすくすと千織が笑って。
「……そんな飲むわけ……」
「飲まへんよ、飲まへん」
 千鶴だけじゃなく、菫まで。ふるふると頭を振ってそんなことしないよと示してみせる。お似合いの、似た者同士だ。
 けれどやはり、気になるのか。千鶴の視線は桜花弁を追い掛ける。
 だって桜チョコとか、絶対美味しそう。チョコレートは食べても塗っても美肌効果のあるスグレモノなのに、美味しさも良い匂いもあるなんて、本当にすごい甘味だ。
「そういえば、ちょこぱっくで美肌に成れるんだって」
「ちょこぱっく……ぱっく??」
 甘いだけじゃなく効能も有るの凄いねと千鶴が口にすれば、千織の頭にハテナマークがポポポポポンと浮かぶ。パックってあれ? あの、顔とかに塗ったりする、あれ?
「美肌効果! それは素敵」
 腕とかに塗っても効果がありそうねと、普段から腕を出しているリラはとろりとする湯に浸かる腕を撫でてみる。既に普段よりしっとりとしている気がして、破顔してしまう。
「千織もリラも肌綺麗やからつるつるになりそ」
「ふふ、菫さんもリラさんも綺麗ですよ」
「いうてちぃも綺麗よね」
「千織さんも菫さんも千鶴さんもお肌綺麗ね。普段から何かお手入れとかしてる?」
 女子の会話が始まるかと思えば、しっかりと白一点の千鶴にも視線が向けられて。
「俺? 手入れは特に何も……俺面倒臭がりだしなあ」
「うち? 手入れはなあんも」
「普段は……少しだけ?」
「少しでもしてることが素敵だわ」
「千織偉い」
 皆十分綺麗なのに、女性は大変だ。「最低限のスキンケアくらいはしておくと、かなり……いえ、だいぶ違いますよぉ」と千織が突然真面目な顔で言うものだから、既に綺麗なのに!? と千鶴は少し驚いた。
 その後も、肌は、髪は、と続く女性陣たちの会話。本性が簪の菫には熱い想いがあるのだろう、よりヒートアップした会話となっていた。その会話をのんびりと、半分ほど右から左へと流しながら聞いていた千鶴は、ちらりと皆の様子を確認する。
 ――今なら、油断していそうだ。
 お湯で指先を遊ばせているように見せかけて――えいっ。
「ひゃ」
 顔に掛かったお湯に目と口を丸くしたリラと、悪戯が成功した顔で手を水鉄砲の形で構えている千鶴の視線が交差した。
「ふふ、やったわね? ……それじゃあ私も」
 しっかりとやり返すのがお約束。子供みたいな笑みを咲かせ、えいっとお返しにチョコ水鉄砲を飛ばせば、えいえいと返ってくる。小さなパシャパシャは次第に大きくなって。童女の精神を疼かせていた菫に掛かればこれしたりと参戦し、戦場を広げていく。
「あらあら、まあま……はわ!?」
 子供のように水鉄砲で遊ぶ皆の姿が微笑ましくて、ニコニコ眺めていた千織まで被弾をすれば、
「……みなさん覚悟!」
 勿論、千織も参戦だ。
 今日はゆっくりと羽根を伸ばす日。
 年も立場も性別も考えず、楽しく遊べばいいのだ。
 それを良しとしてくれる友人たちが傍に居てくれるのだから。

 なんてはしゃいでいたら、随分とはしゃぎ過ぎてしまったような気もする。
 誰が言い出した訳でもないけれど休戦条約が締結され、四人はまたのんびりと手足を湯の中で伸ばす。また突然開戦するかもしれないけれど、それはそでまた楽しい。
 戦いの火蓋を切った千鶴が「あ」と思い出したように湯船から手だけを伸ばせば、三人の視線だけが追い掛ける。
「じゃん、ちょこみんとあいす!」
 旅館で買ってきた、秘密のおやつだ。
「……まあ、チョコミントアイス!」
「最後までちょこで爽やかみんとを選ぶの。ふふ、ちぃ解っとうなあ」
 全員に配って蓋を開ければ、きっと買った時はカチカチのトテモカタイ=アイスだったチョコミントも、程よくスプーンが通る硬さになっている頃だ。
 温まった指先にひんやりと涼を感じながらスプーンで掬って口へと運べば、ミントの爽やかさとチョコレートの甘さが冷たさを伴って口の中で溶けていく。
「チョコミント……! これはまた不思議な味ですねぇ」
 初めて感じたスッと抜ける香りがチョコレートの甘さと手を繋いでいるのが不思議で、頬に手を当てた千織の姿に皆が笑う。
 温かなチョコレートの温泉に、冷たいチョコミントアイス。
 極上で、極楽で、なんて贅沢なひととき。
 ああ、幸せすぎてアイスと一緒に蕩けてしまいそう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティル・レーヴェ
【花結】
甘く浸る時間に思い馳せ
逸る気持ちで倒しゆけたなら
昨年の白き水着でお洒落して

温泉デートなんて嬉しくて
あなたからの誘いならば尚のこと
綻ぶ儘ぴたりと隣に寄り添って
触れ合う其処が
何だか恒より擽ったい

けれども、ねぇ
どうして此方を見てくれないの?
あなたの眸を恋い請うて
その腕にきゅと腕絡め

甘い香りに心地よい温度
あなたもこうして傍にいて
身も裡も艶と潤うよう
ほら、触れてみて
美肌の効果は出ているかしら
惚れ直してくれる?

あなたこそ
今の儘で素敵だけれど
そう願ってくれるのが
己が為に変わる彼が愛しくて

想い馳す様のあなたを
つんと突いて
これからも何度だって
あなたとこうして浸りたいの
湯にも甘き時にも

ね、我儘を叶え続けて


ライラック・エアルオウルズ
【花結】
甘いときと至るため
花弁で薙いだなら
海の装いで共に赴こう
念願の温泉デートにと

然し、旅先の選択として
軽率だった、と今更思う
いっそう近く感じる君に
此処まで心乱すとは

胸の鼓動と妙な緊張で
君を直視出来ないまま
絡む腕に、ぎゅ、と眸閉じ
答は返せるはずもなく

軈て固い身も融ければ
楽しむ余裕も出来たよう
ショコラに浸るなんて
まるで素敵な夢みたい
ね、君も心地良いかい

少し躊躇い、頬に触れて
直さずとも、惚れるままだし
君には必要ないくらいだけど
僕は効果を望みたいな
君に添うのに、若くありたいから

僕が時を止めど、君の時は進む
淑女に想い馳せ、赤らむ身では
先が思いやられるだろうけど

幾度でも、叶えるよ
――僕が慣れるためにもね




 風に乗って薫るチョコレートの香りが、そこかしこ。眼前の『増殖する私の残滓(スイート・メロディア)』から薫る香りよりも甘いひととき過ごすため、淡いリラの花弁が薄紅の花弁に混ざって、鮮やかに世界に華を添えた。
 逸る気持ちに、弾む気持ち。繋いだ手のひらから伝わる気持ちは、同じもの。今そのひとときを同時に確かに感じていることが嬉しくて、ティル・レーヴェ(福音の蕾・f07995)は表情を朝露に濡れる白薔薇の如く綻ばせ、傍らに立つライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)を見上げれば、目尻を柔和に下げた穏やかな笑みが降りてくる。。
 今日の――温泉デートの誘いは、ライラックからのもの。甘やかなチョコレートの温泉に、水着で浸かろう、と。その誘いはチョコレートよりも甘やかに胸を満たし、同時に湧き上がるのは常と違う装いの自分を見て貰いたいと言う気持ち。
 とっておきの白の水着でお洒落をしたティルは、ピタリとライラックに寄り添う。
 常ならば衣服の下に隠されて触れぬ肌と肌。
 二人の間でちゃぷんと揺れたチョコレート色の湯も何だかこそばゆく、けれどもとても心の浮き立つもの。甘い香りが愛おしさの後押しもしてくれるように思え、ぎゅうと腕を絡めて彼の菫を見つめようとした。
「ねぇ」
 その声に、大きくライラックの肩が振るえた。
 ――どうして此方を見てくれないの?
 こちらを見てと恋い請う瞳は菫色を求めて。
 けれどライラックの視線は真直ぐと前方へと向けられている。
 こんなにも距離は近いのに。こんなにも同じ温度を分け合っているのに。ちょっぴりティルは残念に思う。
 然し、だ。然し、ライラックとて致し方が無いのだ。いつもより近い距離が、いつもと違う温度が、いつもと違うティルの装いが――彼女が五感に与えてくれるすべてのものが、ライラックの心を乱していた。
(――軽率だった)
 軽い気持ちで誘ってしまった過去の己に会えるのなら、言って聞かせてやりたい。旅先の選択は慎重に行うことを。傍らの彼女を直視することも、答を返すこともできず、ぎゅっと眸を閉じて裡なる葛藤と戦うこととなる未来を。
 軈て蟹の甲羅のように固い身も、時と香りと温度が融かしてくれる。
 ショコラに浸るなんて、まるで素敵な夢か、書物の中の出来事だ。
「ね、君も心地良いかい」
 のんびりと甘い香りと温かさを楽しみながら尋ねれば、笑みと頷きが返ってきて。
「ほら、触れてみて。美肌の効果は出ているかしら」
 ライラックの手を取り頬へと導けば、ティルの頬に触れるチョコレートの湯のとろりとした感触。
 まだ幼さの残る柔らかな頬は、チョコレートを塗らずともしっとりとしていて。
「惚れ直してくれる?」
 甘やかに問いかける声に、ライラックは笑みを零す。惚れ直すいとまもないくらい、ライラックはティルに惚れるまま、新しい恋のページはいつでも更新されていくばかり。筆の載った作家のごとく、止められない。
「君には必要ないくらいだけど、僕は効果を望みたいな」
 ふたりの間の時の河は縮まらないけれど、君に添うのに若くありたいと、どうしても願ってしまう。そんなことは彼女も全て折込済みなのだろうけれど、つい、幾度もそんなことを想ってしまう。
 そんな彼を、ティルは愛おしく思う。彼が自分のためにそう願うこと、自分のために変わる彼が愛しくて、恋しい。
「これからも何度だって、あなたとこうして浸りたいの」
 つんと突いてのおねだりさえも愛おしくて、ライラックはひとつ吐息を零す。
 ライラックが時を止めても、幼い彼女の時は進む。淑女に成長する日を思えば、今でさえ赤らむ身では先が思いやられるだろうけれど……愛おしくて、可愛いお願いを、断り術など知りはしないし、きっとふたりの物語にも記されていないことだろう。
「ね、我儘を叶え続けて」
「幾度でも、叶えるよ。――僕が慣れるためにもね」
 甘やかな我儘を、一層蕩かす甘さを添えた。
 チョコレートよりも、何よりも、甘く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒鵺・瑞樹
温泉。
甘味苦手だけども、温泉と聞いたら。
久しく温泉にも行けなかったからな。今日ぐらいは良いだろ。
本当は伽羅と陸奥もつれて来たかったけど、チョコまみれはちょっと…って一人で出された…。
自立し始めてるのは嬉しいけどちょっと悲しくもある。

気分を変えてゆっくりと湯につかろう。もちろん後々チョコで面倒にならないように髪はしっかり纏めて。
…背中中程だった髪も一年半かな、それで大分伸びた。でもいくら神降ろし(真の姿)の影響とはいえここ(尻下)まで伸びる事は無いだろうにな。
肩まで湯につかりながらつらつらとそんなことを考えて。そうして疲れを癒す。
もう意味はないかもしれない。けど、楽しかった思い出は作りたいんだ。




 ――かぽん。
 どこか遠くで鹿威しが鳴る。
 大きな岩で囲まれた広い湯船からはほこほこと温かな湯気が立ち上り、浸かる人影を程よく隠してくれる。その湯気の中から見上げる空がまた良いもので、視界の端に白い湯気を映しながら仰ぐ青空――そしてひらりと桜花弁が舞う景色に黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)は穏やかに瞳を細めた。
 ――温泉。
 やはり温泉は良いものである。久しく行けていなかった温泉に浸かれば、日々の疲れが癒えていく。手足の先はじんわりと温まっていくし、疲れた筋肉が解されていくのも分かって心地よい。
 本当は『伽羅』と『陸奥』も連れてきたかったけれど、断られてしまった。小さかった二体が自立し、成長を始めているというのは嬉しい事だけれど、一緒に来たかったなと言う想いは拭えない。
 しかしまあ、仕方がないのだ。彼等が断る理由もわかる。
 桜が舞って美しい景色だけれど、ここには桜以上に甘い香りが漂っている。
 湯は茶色く……茶色すぎるくらいの湯は、チョコレートだ。瑞樹とて甘味は苦手だし『チョコまみれはちょっと……』と言う気持ちは解る。
 けれど、温泉は温泉である。
 しっかりと髪を纏めた頭を岩に預け、ほうと息をつく。
 それにしても……と考えるのは、自身の髪のこと。
 元より背中中程まであった髪が、この一年半ほどでだいぶ伸びた。今までの温泉でも浴場でのマナーとして髪を結い上げてはいたが、これ程にまでなるとかなり大変だ。今までは高いところでひとくくりにし、垂れる髪を持ち上げて止めればなんとか肩辺りといったところであったが、尻下までとなるとそうはいかない。頭頂部で結び目にぐるぐると巻きつけてお団子にしてしまうのが一番なのだが……そうすると頭を預けにくくなるのが難点だ。
(いくら神降ろしの影響とはいえここまで伸びる事は無いだろうにな)
 髪が長いと弊害はたくさん出てくる。座れば踏むし、歩けば引っ掛ける。動く度に静電気が発生して髪は傷む。
 切るか切らないか、どうすべきか実に悩ましい。
 そんなことを考えながらも、楽しかった思い出作りのためにも、瑞樹は温泉で疲れを癒やした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクトル・サリヴァン
♢♡
温泉いいよね。特に冬の海泳いでる時なんか温まりたくなるし。
美肌効果…も少し気になるかな。
元がシャチ肌だからどんな風になるのか的に。
お仕事きっちり果たしてたっぷり楽しもうか。

まずは海岸沿いで温泉探しつつスイートさん?探してみるかな。
UCで空シャチ召喚、敵が気づく前に一気に突っ込んでがぶがぶれっつごー。
シャチに甘いもの…ちゃんと歯磨きすれば大丈夫!(歯ブラシすちゃっ)
いい感じに倒したら空シャチ達も一緒に温泉へ。
服は適当に水着なり場に合わせ、体洗ってどぼん。
…浸かったら結構普通な温泉の感覚だね。べたべたもそこそこ?
なんか肌によさそうな感じはするかも…!
出る時は水魔法でお湯出して体洗い流すかなー。




 冬の海は寒い。それは誰しもが容易に想像できることだろう。――が、わざわざその海に飛び込むひとは少ない。低体温症は命の危機に直結するからだ。
 けれどその寒さを身を以て知る者たちも居る。陸に生きるものではなく、海に住まうものたち――またはそれに近しいものたちだ。
 ザパァァァァン!
 チョコレートの海に水飛沫――チョコ飛沫を立てて、勢いよく海の王者が海上へと顔を出す。パカリと開いた口に、ちょっと海水(チョコレート)が入った。いつもと違って甘いのが何だか不思議に思いながらも、ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)は再びチョコレートの海水へと顔を付けて游ぎだす。
 時折顔を上げ、島の海岸に『増殖する私の残滓(スイート・メロディア)』が上陸していないかを確認し――ついでに良い感じの温泉もないかなと確認し、海岸沿いを泳いでいけば。
「っと、いたね」
 今正に海からよっこいしょと上がっていこうとしているスイート・メロディアを発見したら、即《空泳ぎたちの狂宴(スカイ・オルカ)》を発動させ、空シャチたちを呼び出した。
「そら、がぶがぶれっつごー」
 海から顔を出しているヴィクトルはスイート・メロディアの背後を取っている。無防備な背中へ、空シャチたちが一斉にがぶりと噛み付いた。
「――あ」
 そういえばシャチに甘いものって……と思った時には、すでに空シャチたちはとスイート・メロディアをガブガブしちゃっている。まあ、ちゃんと歯磨きすれば大丈夫だよね!
 後からちゃんと一体ずつ歯ブラシでゴシゴシしてあげようと心に決め、ヴィクトルは空シャチたちとともに陸へと上がって温泉へ。少し小高い崖のような場所に、ほこほこと上がる湯気を見つけていたのだ。絶景ポイント的なものもありそうだと、ウキウキとそちらに着けば、海を泳いでいた時の水着のまま軽く体を洗ってからチョコレートの温泉へとどぼん。
 体の大きなヴィクトルが湯船に浸かれば、ざばぁとお湯が流れていく。勿論、チョコレート色の、だ。
 普通のチョコレートよりはさらりとして、けれどとろみのあるお湯よりはとろり。
「なんか肌によさそうな感じはするかも……!」
 元がシャチ肌だから美肌効果の程は解らないが、ツヤツヤはしそうである。シャチの肌は魚とは違い、擦れば古い角質が取れるため、ある意味人に近い。
 これは効果が期待できそうだと空シャチたちと、のんびりちゃぷちゃぷ温泉を楽しむヴィクトルであった。

 因みに、入浴後は水魔法でお湯を出して空シャチたちを洗い流してあげたし、ちゃんとしっかり歯磨きもして、白い綺麗な歯を見せる空シャチたちを「またよろしくね」と帰還させた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アパラ・ルッサタイン
【願里】

いやー運動した後の温泉は最高だよね!

おお、本当にお湯が茶色いしチョコレートの甘い香りがする
髪を纏め、掛け湯をきちんとしてから
いざ湯船にイン
肩までしっかり浸かり
ああ~水温も大変宜しい

んふふ
こう甘い香りに包まれていると甘いモノが欲しくならないかい?
実はバニラアイスを持って来ているんだよねえ
良ければどうぞ、水分補給も兼ねて
ひとり一つはあるから

美肌効果があるのだっけ
湯を腕や肩に幾度もかけて
泥の様にとろりとしたチョコレートは顔に塗ってしまおう
頬に黒丸……スズメの様な見目になったって気にしない!
此処に居るのは女子友だけだから
皆の姿を見れば笑って

食べてよし肌に塗ってよしだなんて
チョコレートは万能だ


ハーバニー・キーテセラ
【願里】
強敵との戦いの後はぁ、しっかりと身心の洗濯をしないとですよねぇ
チョコレート温泉の感触を確かめつつぅ、いざぁ、入湯!
ざぷん。ではなく、ゆっくりとぉ
足元からじわじわあがってくる感触と温かさに、はぁ~と息一つ
チョコだけにぃ、一層と蕩けますねぇ
なんて冗談交じりに皆さんの様子も伺いましょ~

バニラアイス!
うふふ~、準備が宜しいのですねぇ?
そしてぇ、その甘い誘惑に応えぬではありませんよぅ!
是非是非と頂きましょ~
……あまぁ~い!

と、そういえば効能に美肌効果なんてあるのでしたねぇ
倣って、顔にも躊躇せずチョコをぺたぺた
チョコ塗れで顔見合わせ、心擽られ、思わずくすり
……ふふっ、あ~、楽しいですね


願祈・廻璃
【願里】の4人で

最初お聞きした時はビックリしましたが、泥パックと言われてなるほどと納得してしまいました。
これは飲食用ではなく美容用…。(自分に言い聞かせつつ、皆さんが入る様子を見てからおそるおそる入湯)
通常の温泉でも肌に絡みつく感は多少ありますが、この温泉の密着感は初めてですね。

流石アパラさん!これはありがたいです!
チョコのビターな甘さに負けないバニラのチョイスも素晴らしいですね。
甘い物に囲まれて幸せ気分です。

目や口などに入らないように気を付けながら顔にも塗ってみましょう。
(塗り終わった後、皆さんの顔を見て)
皆さんの顔が泥の水溜まりに倒れ込んだ後みたいになっていて…ふふっ、何だか面白いです…!


リンカ・コーデリア
【願里】
今日の私達が真に相対すべきは、オブリビオンではなく、チョコレートである!
……なんて下心もちょっとだけ覗かせつつ、全力の戦闘後は、いざ入湯

しっかり汗を洗い流してから、甘さ香る湯舟に脚からそろり
おぉ、これがチョコレートに包まれる感触……まさに未知の体験
そのままゆっくり肩まで浸かれば、あぁ~、と満たされた吐息も自然に漏れたり

そこにバニラアイスの差し入れとは、至れり尽くせり!
冷たく爽やかな食感がいつも以上に美味しい
ありがたや、ありがたや

そしてなるほど美肌効果
そういう方面に疎い身としては、皆の様子を見様見真似
もはや全身コーティング状態だけれど、なんだか楽しくなってきちゃったのでこれでよし!




 ――殲滅っ!
 今日の目的は、オブリビオンの殲滅ではなく、チョコレートの温泉! なので『増殖する私の残滓(スイート・メロディア)』たちは見つけら即デストロイに限る。リンカ・コーデリア(タイニーガジェッティア・f02459)は素早くガジェットに内蔵された機関銃をスイート・メロディアめがけてぶっ放した。
 チョコレートへの下心があるものの、スイート・メロディアたちは攻撃力はしっかりあるから油断は禁物。ということで、願祈・廻璃(願い廻る神秘・f04941)とハーバニー・キーテセラ(時渡りの兎・f00548)も全力で戦った。
「強敵との戦いの後はぁ、しっかりと身心の洗濯をしないとですよねぇ」
「いやー運動した後の温泉は最高だよね!」
 ランプの灯りを灯して戦ったアパラ・ルッサタイン(水灯り・f13386)も、戦闘後は早速と見つけた温泉へと近寄る。運動(戦闘)をして程よく汗をかき、その汗を洗い流してからの温かな湯は、じんわりと優しく筋肉を解してくれて心地よいものである。美しい髪を持つ四名は慣れた手付きで素早く髪を纏め上げると、かけ湯をしてしっかりと汗を洗い流し、甘さ薫る湯船へとそろり、つま先を伸ばした。
 白磁のような肌に、とろり。とろみのある湯が伝う。チョコレート色の湯は、チョコレートよりもさらりとして、けれど温泉の湯よりはとろりと柔らかに肌を包んでくれて心地よい。
「チョコだけにぃ、一層と蕩けますねぇ」
「ああ~水温も大変宜しい」
「あぁ~……思わず息が漏れてしまうな」
 肩まで浸かれば、思い思いに満ち足りたため息が自然と喉から溢れて、ひとつきの戦闘で疲れた体がほぐされ伸びていくように感ぜられた。
 そんな三人を見た廻璃も、おそるおそるつま先をチョコレート色の湯へと伸ばしてみる。
「これは飲食用ではなく美容用……」
 最初に聞いた時は驚いたけれど、チョコレートの湯に身が浸されれば、なるほどと納得がいく。とろりとした湯は保湿力の高さを感じられるし、保温効果も高そうだと思えた。湯あたりしづらく、体の冷えが天敵の女性には特にありがたい。
 それに、この甘い香りに包まれているのも良い。甘い甘いお菓子になってしまったような気持ちで、なんだかとてもふわふわとしてしまうのはリラックスしているせいだろう。
「んふふ。こう甘い香りに包まれていると甘いモノが欲しくならないかい?」
 ほうと気持ちよさげに息をつく三人へ、どう? なんて、アパラが意味ありげな笑みを向けた。
「甘いもの?」
「実はバニラアイスを持って来ているんだよねえ」
「バニラアイス! うふふ~、準備が宜しいのですねぇ?」
「流石アパラさん!これはありがたいです!」
「おお、なんと至れり尽くせり!」
 ひとり一つはあるから良ければどうぞと差し出されるアイスクリームに、自然と笑みが溢れた。それぞれへアイスクリームが渡れば、四人で早速冷たさを堪能する。温かな温泉の中で食べる冷たいアイスクリームなんていう甘い誘惑に応えない訳がない。
「……あまぁ~い!」
「ありがたや、ありがたや」
「ん~! チョコのビターな甘さに負けないバニラのチョイスも素晴らしいですね」
「皆が喜んでくれて嬉しいよ」
 体は温かく、けれど口から喉へと落ちる冷たくも甘い気配といったら……実に甘美なこと。筆舌に尽くしがたい幸福を、ともに楽しめる仲間がいることもまた幸せだ。
 温泉まで移動することもあって硬めのカップアイスだったが、それぞれの温まった手の熱や温泉の湯気でほどよくとろけるのがまた美味だ。何個でも食べれてしまいそうだと、美味しく頂いた。
「美肌効果があるのだっけ」
「そういえば効能に美肌効果なんてあるのでしたねぇ」
「食べてよし肌に塗ってよしだなんて、チョコレートは万能だ」
 聞いてきた説明を思い出したアパラが、食べ終えたアイスのカップを回収しながら口にすれば、ハーバニーもそういえばと話に乗っかる。ごちそうさまとカップをアパラへと手渡す廻璃とリンカもこくりと頷けば、四人はそろりとアイコンタクト。
 やってみる? やってみちゃおうか。
 泥パックをするように両手で掬ってとろりとしたチョコレートの湯をアパラが顔に塗ったのを皮切りに、廻璃とハーバニーも倣っていく。お湯を掬って目や口に入らないように気をつけながら顔へぺたりと塗れば、温かさと甘い香りが顔を包んで心地よい。
 美肌方面には疎いリンカも三人の姿を見習って、見様見真似でぺたぺたと顔へ湯をつければ――泥の中へ顔面から転んでしまったような四人の出来上がり。
「……ふふっ、何だか面白いです……!」
「……ふふっ、あ~、楽しいですね」
「なんだ、皆。すごい顔だ」
「んふふ、あなただって……あ、そうだ」
 顔についた湯を拭って、アパラが指先で頬へ丸を描く。
「おお、スズメのようだな」
「羽子板遊びの後にも見えますよぅ」
「皆さんのお顔にお絵かきするのも楽しいかもしれませんね……!」
 それなら私は、なんて真似をしては、またクスクスと笑みが溢れる。
 誰にも見られないことを良いことに、女子友四人、チョコレートの温泉を全身で楽しんだ。
「戻ったら美味しいチョコレートを食べに行きませんかぁ?」
「「「賛成!!」」」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴォルフガング・エアレーザー
【❄花狼】

確かこのあたりにはスイート・メロディアの集団がいたはずだが
狼犬たちが追い回しているうちに全員溶けてしまったようだ
目の前に広がるのは甘い香りと湯けむり漂うチョコの温泉

とろみのある茶色の湯は一見泥のように見えて
ヘルガは汚れるのを嫌がらないだろうかと一瞬躊躇ったりもしたが
どうやらその心配もなさそうだ

……なるほど、体の芯から温まる
戦いの疲れもほぐれよう

ヘルガは今だって十分綺麗だ
だが、その想いが嬉しく、心地良い
風に舞う桜の花びらが、彼女の美しさをより際立たせて

ああ、お前がそんな風に微笑むから

ふと芽生えた悪戯心に
彼女の耳元をそっと甘噛みして
お前のこと、食べてしまいたい

きっとチョコのせいだ
きっと


ヘルガ・リープフラウ
【❄花狼】

ねえ、ヴォルフ。チョコの温泉ですって!
健康促進、疲労回復に美肌効果もあるって
あなたもこのところ戦いの連続で疲れたでしょう
せっかくだからゆっくりしていきましょう

チョコのお湯に浸かっていると
何だかぽかぽかあったまる
きっと温泉のせいだけじゃない
彼と過ごす一時が心地よくて胸がときめくから

のぼせないように、時々冷たい茉莉花茶(ジャスミンティー)で喉を潤して

わたくし、ヴォルフのために
今よりもっと綺麗になりたいの
あなたにもっともっと喜んでほしいから

甘い香りと桜舞う美しい風景
ずっとずっと、この幸せな時を過ごしていたい
きっと、きっと忘れない

ふと耳元に彼を感じて

……あなたになら、食べられてもいいわ




「確かこのあたりに……」
 がさりと茂みを揺らして進めば、そこに広がっているのは茶色の水たまり――いや、ほこほこと温かな湯気を立てる、チョコレートの温泉があった。『増殖する私の残滓(スイート・メロディア)』たちの気配に《獄狼の軍団(ケルベロス・レギオン)》を差し向けたところ、狼犬の群れに追いかけ回されている間にメロディアたちは全員溶けて温泉の湯に混ざってしまったのだろう。
(――ヘルガは汚れるのを嫌がらないだろうか)
 とろみのある茶色の湯は甘い香りを放ってはいるが、一見泥のよう。白の似合うヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)が浸かれば、彼女が泥の中へ転んでしまったように見えなくもない。雪花のように美しい彼女のことを思い、一瞬躊躇したヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)だったが……。
「ねえ、ヴォルフ。チョコの温泉ですって!」
 甘い香りと珍しい温泉に瞳をキラキラと輝かせたヘルガは、立てられている看板に書かれている効能を読み上げる。健康促進、疲労回復。そこにプラスして、チョコレートの美肌効果。前者ふたつを見て最初に思うのは、隣の彼のこと。連日の戦いで彼は傷付き――その都度ヘルガが癒やしてはいるが、精神的なものだったり、疲労感であったり、蓄積していくものはある。
 ――今日は彼にゆっくりと休んでほしい。
 ヴォルフガングを見上げたヘルガは、「せっかくだからゆっくりしていきましょう」と微笑んだ。

 とぷり。
 普通のお湯よりも重みのある音を立て、チョコレートの湯は二人を受け入れる。チョコレートよりはさらりとして、けれどとろみのある湯よりはとろり。それは保湿効果と保温効果も高く、熱を逃がしにくい。
 暫く浸かっていれば、すぐに体はポカポカと温まり、腕や脚といった筋肉はじんわりと解されていくかのよう。
 それはきっと、温泉のせいだけじゃなくて――。
「……なるほど、体の芯から温まる」
 気持ちよさげに目を閉じるヴォルフガングを見て、ヘルガは微笑む。どんなひとときも愛おしくて心地よく感じるのは、胸をときめかせてくれる彼がいつも一緒にいてくれるからだ。
「ヴォルフも飲みますか?」
「ああ、水分補給は大切だな。ありがとう、ヘルガ」
 のぼせないようにと、立ち寄った旅館で買い求めた冷たい茉莉花茶をヴォルフガングの分も注いで手渡せば、彼は一息に飲み干した。湯で温まった体に、冷たいお茶、それから爽やかな香りが心地よい。
 ぱしゃりと音を立て、チョコレートの香りが濃くなる。
 視線を向ければ、腕や肩にとチョコレートの湯をヘルガが掛けていた。
「わたくし、ヴォルフのために今よりもっと綺麗になりたいの」
「ヘルガは今だって十分綺麗だ」
「あなたにもっともっと喜んでほしいの」
「ヘルガ……」
 柔らかな声で紡がれる彼女の言葉の端々から想いが伝わってくるのが嬉しく、胸に、耳に、心地よい。
 風に舞う桜の花びらの中、チョコレートの湯に浸かる彼女はまるで、
(――泥中の蓮、か)
 彼女の見目も、生き様も。全てがぴたりといくようで、ヴォルフガングは穏やかに桜舞う景色と温泉を楽しむヘルガを見守った。
「ヴォルフ、幸せね。わたくし、今日のことをきっと忘れないわ」
 花の舞う景色の中、ヘルガが美しく幸せそうに微笑む。彼女の笑顔こそがヴォルフガングの幸せだ。
 だからだろうか、ほんの少しだけ悪戯心が湧いてしまったのは。
 白い髪についた桜花弁を取ろうとするように見せかけて身を寄せると、かぷり。温泉で血行がよくなっている可愛い耳を甘くひとかじり。何だかとても、美味そうだと思ったから。
 こんなことをするのは、こんなことを思うのは、きっとチョコのせい。
 チョコのせいだから、この言葉だってきっと、彼女は受け入れてくれることだろう。
「お前のこと、食べてしまいたい」
「……あなたになら、食べられてもいいわ」
 湯けむりにふたつの影。
 再びそっと、重なった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

誘名・櫻宵
🌸迎櫻館


チョコレート温泉よー!
チョコに桜だなんて最高の組み合わせね
ひと仕事終えた後の温泉は最高よ!
そう思うでしょう?零時、カムイ

うふふ、よく分かってるわね
私が語りだすと夜が明けるから割愛するけどチョコは美容にもいいのよ

カムイは温泉初めてよね
先ずは身体清めてからお湯に浸かるの
背中を流してあげるわ、私の神様
で、湯船にはタオルはいれないのよ
……何を照れているの?
男しかいないわよ

零時!?光ってるけど大丈夫?
あなたのお肌は宝石みたいにツルツルね
つついてもいい?
チョコパックをしながら頬へ手を伸ばし
いいお湯よねぇ、とリラックス

湯上りには牛乳よ!
今ならチョコミルクになるかしら?
こんな日もあっていいわよね!


朱赫七・カムイ
⛩迎櫻館


之が温泉かい?
チョコの良い香りがするね
2人共張り切って戦っていたからゆるりと疲れを癒すといい

湯にアヒルを浮かべるのが通だと聞いた
人数分かりてきたよ
初めての温泉、楽しみにしていた

チョコが美容に良い?
だから私の巫女はこんなにも美しいのだね
ぱっくというものも興味がある
レイジ
共に試してみるかい?

湯船を楽しむ約束か…心得た
見よう見まねで髪を束ね──え?!
サヨが私の背を…?私は何と幸福な神だ
然し
恥ずかしくてきみを直視できない
両手で顔を覆い指の隙間から見やればレイジが光って?!

おお……眩い…
私もぱっくをすればそなたのようにつるつるになるかな

チョコ牛乳、其れはいい
ひとの温泉なるものを目一杯に楽しもう


兎乃・零時
💎迎櫻館


チョコレート温泉…!
この手の温泉は初めてだけどスッゴイいい場所だな!
依頼も色々言ったしこーゆうのも良いよなぁ

チョコって美容に良いんだ
ほむ…そうだな!折角だし俺様もカムイと一緒にパック試してみる!

事前に髪は纏めておきつつ
あ、タオルつけなくていいのか!
分かった!
そんな事言いつつ体を洗い終えたならさっそく湯へざぶーん!

ん?どうした?
本来は海に入ると肌も宝石に変わり光るのだが(アクアマリンだから)
チョコレートの海が若干海判定入ってた
大丈夫だぞー!
カムイもがんばりゃ光れるかも!

突くのは良いぞ!
…くすぐってぇな…

温泉上がったら牛乳は良い文明だな…
チョコミルク!これ甘くて美味しい…!(きらきら)




 はらり、はらり。桜花が舞う。
 桜の甘い香りよりも甘い、チョコレートの香りとともに。
「之が温泉かい?」
「そう、之が……」
 ものすごいテンションで刀を奮った誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)がピタリと足を止め、彼の肩越しにヒョコリと顔を覗かせた朱赫七・カムイ(約倖ノ赫・f30062)が目をパチリと瞬いた。
 櫻宵の眼前に広がるのは、チョコレートの水たまり……ではなくて。
「之がチョコレート温泉よー!」
「チョコレート温泉……! スッゴイいい場所だな!」
 満ちる甘い香りに兎乃・零時(其は断崖を駆けあがるもの・f00283)も両手をグッと握って瞳をキラキラと輝かせた。海もチョコレートで、敵もチョコレート。それだけでもテンションが上がるのに、チョコレートの温泉! 冷えて固まっている時よりもぽかぽかと湯気を立てるチョコレートの方が甘い香りに奥行きをもたせている。
「チョコの良い香りがするね」
「ええ。それに、チョコに桜だなんて最高の組み合わせね」
 ひと仕事終えた後の温泉なんて最高のご褒美だ。汗を流せて筋肉を労れて、更に美容にもいい温泉だだなんて!
「チョコって美容に良いんだな」
 ゲートを潜る前に聞いた説明を思い出した零時が首を傾げながら口にするのを聞いたカムイは、三羽のアヒルちゃんをチョコレートの温泉へ放ちながら「噫」と彼の巫女たる櫻宵へと視線を送る。だから櫻宵はこんなにも美しいのか、と。因みに、アヒルちゃんを浮かべるのは通だと聞いている。桜花弁の浮かぶチョコレートの湯を泳ぐアヒルちゃん――春の、かおりがした。
 温泉初心者のカムイには気になるものがいっぱいだ。アヒルちゃんもそうだし、作法は――巫女が教えてくれるはず。
「ぱっくというものも興味がある」
「パック?」
「顔や腕、全身に塗るのよ」
「レイジ、共に試してみるかい?」
「ほむ……そうだな! 折角だし俺様もカムイと一緒にパック試してみる!」
「それじゃあふたりとも、私が後からしてあげるわ」
 チョコと美容の関連性について語りたい気もするが、これを話すには時間がいくらあっても足りない。他世界で仕入れないとチョコレートが無いはずのサムライエンパイアでショコラティエをやっている櫻宵だから、その情熱は計り知れないものなのだ。
「先ずは身体清めてからお湯に浸かるの」
 衣服を脱いで、こっちよと櫻宵が洗い場へと導けば、器用に髪を纏めた零時と彼を真似て髪を纏めたカムイが、アヒルの親子みたいについていく。引率は櫻宵ママです。
「温泉――皆で浸かる湯場には約束があるの。皆で楽しむために必要なものよ」
 ひとつ、湯船に髪をつけないように。
 ふたつ、湯船にタオルをいれてはいけない。
 みっつ、身内以外のひとが居たら、その人の時間を邪魔してはいけない。
「分かった!」
 ひとつひとつに頷いて良い子の返事を返した零時は、サクサクと体を洗って「お先に!」と早速湯船へと向かっていく。その姿に櫻宵は「私達もすぐ行くわ」と微笑むが……何やら先程から背中を洗ってあげているカムイの様子が変だ。どことなくソワソワとしているような。これは、もしかして――?
「……何を照れているの? 男しかいないわよ」
「噫、サヨ……」
 麗しい巫女の裸体を直視できない神は両手で顔を覆った。
 しかし――。
「……レイジ!?」
「零時!? 光ってるけど大丈夫?」
 指の隙間から入り込んだ眩い光に湯船へと視線を向ければ、零時が光っていた。
 もう一度言います。零時が光っていた。
「ん? どうした?」
 だのに本人はキョトンと驚く二人を見つめ返してくる。何事もないように。
 実際、零時には何事もない。彼のクリスタリアンとしての性質でそうなっているだけで、零時自身は特に何とも無い。腕を見下ろして、「おお、光ってたか!」くらいのものである。
 大丈夫そうならいいのよと、カムイを伴って洗い場から湯船へと浸かりに来た櫻宵は、早速手につけたチョコレートの湯を頬へとクルクル、チョコパックを施して。
「あなたのお肌は宝石みたいにツルツルね。つついてもいい?」
「突くのは良いぞ!
 宝石の肌に興味を示した櫻宵が、優しく頬をつついた。
「ハハ、くすぐってぇな……!」
「私もぱっくをすればそなたのようにつるつるになるかな」
「カムイもがんばりゃ光れるかも!」
 微笑み合うふたりへと、塗ってあげるわと櫻宵の手が伸びた。
 温かく甘く薫るチョコレートの湯とパックを堪能し、溢れる桜を見ながら、三人ゆるり、湯けむりのなか。

「湯上がりには牛乳よ!」
 定番よね!
 けれど定番だからこそ、温泉初体験の人にはおすすめしたい。
 小指を立てた櫻宵の手の内の瓶の中身は、これまたチョコレート色。コーヒー牛乳ではなく、チョコミルクだ。
 島の周りがチョコレートになってしまったのなら、それも利用して商売にしてしまえばいいんじゃね? と、商魂逞しい島の住人たちが期間限定商品として売りに出してくれたものだ。
「これなるものがチョコミルク……」
「ささ、カムイ。ぐいっと」
「おお、美味そうだな! いただきます!」
 瓶から行くのは新鮮だと漏らしながら瓶を傾ければ、よく冷やされたチョコミルクが喉を流れていく。温泉で温められた体に、冷たさが心地よい。
 チョコミルクも頂いてこれが温泉の醍醐味……とホウとため息をついたところで、カムイは更に桜チョコレートフラペチーノの存在に気付いた。チョコミルクを購入した売店の先、甘味処の入り口に、可愛らしい絵が描かれた看板があったのだ。
「チョコミルク! これ甘くて美味しい……!」
「レイジ、サヨのチョコがある」
 そんなに入るのかとかお腹を冷やさないかとか零時が声を掛ける前に、あれも頂こうとカムイが素早く買いに行く。
 ひとの温泉なるものを目一杯楽しむ神を、こんな日もあっていいわよね! と巫女は愛おしげに見守るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

乱獅子・梓
【不死蝶】♢
チョコレートの風呂……
まさかそんなメルヘンな体験が出来るとは

恐る恐る足を浸け
見た目のインパクトに最初はビビったが
さすがは温泉、何だか疲れが取れてきた気が来る
今回の戦争も色々あったし疲れも溜まるよなぁ…
なんてしみじみ考えながら

少し冷ましたチョコ湯を桶に入れ
その中に焔と零も浸けてやる
こらこら、あんまりそれ舐めるなよ
それにしてもチョコ風呂に浸かる愛竜たち…可愛い
チョコだけに食べてしまいたいくらい(親バカこじらせ

あ?何だ綾……ギャー!?
不意打ちでチョコ鉄砲を喰らって現実に引き戻される
チョコ湯がうっかり口の中に…あっ、甘い
お礼にお前にもチョコパックしてやらないとな…!

そしてチョコ鉄砲合戦勃発


灰神楽・綾
【不死蝶】♢
島の森の中にある秘境的な温泉へ
チョコレート色のお湯が流れ出る滝は
何だかチョコレートファウンテンみたい
じゃあ俺たちがチョコフォンデュの具かな? なんてね

ビクついている梓の横で気にせずざぶーんと入浴
ホットチョコレートに入っているマシュマロって
こんな気分なのかなぁ…このまま溶けていきそう

…って梓がチョコみたいにとろけた顔してる
あーずーさー、えいっ
イタズラ心で、手水鉄砲で梓の顔にチョコをピュッとかける
あはは、梓ってば顔がチョコ色~
チョコパック効果でお肌がツルッツルになるかもね?

チョコ鉄砲合戦の最中に
新手のスイート・メロディアがやって来たけど
気付かず流れ弾で撃退したとか何とか




「そんなに奥へ行くのか?」
 島の森の奥の奥。人気のないところへと、灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は草木を掻き分け進んでいく。足元にはチョコレートの跡があるから、『増殖する私の残滓(スイート・メロディア)』たちはこの辺りにも居るのだろう。……という事は、チョコレートの湯になっているはずだ。誰も手を付けていない温泉なら源泉から湧き出る湯と、混ざっているのはチョコレートのみ。綾の相棒の乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は二匹の仔竜を連れているから、彼等が口にしても問題ない湯にしておきたかった。其れ以外にも、秘境って言葉に憧れたりとか、はしゃいでも他の人に迷惑にならないとか、色んな理由はあるけれど。
「お。あった! あったよ、梓」
「チョコレートの風呂……」
 まさかそんなメルヘンなものが……と思っていたものが、そこにはあった。
 小さな崖の上からチョコレートの滝が流れてくる、崖を背にした小さめの温泉は、まるでチョコレートファウンテンのよう。二人で入るにはちょうど良く、浸かればチョコフォンデュの具になった気分を味わえそうだ。
 パパっと衣服を脱いだらかけ湯をして軽く汗を流し、梓はそろりと足を伸ばす。茶色の……しかもチョコレートの湯だなんて、なんだかとてもインパクトがすごくて引き気味なのだ。
 本当に入っていいんだよな? なんて思いながら恐る恐るつま先を湯につけた梓の横を、綾は気にせずざぶんと入浴。
「わ、綾。湯が飛ぶ。大人しく入れ」
「えー、他に人居ないんだし、いいじゃん」
 梓のきちょうめーん!
 ブーっと頬を膨らませながらもチャプチャプと湯に肩まで浸かれば、ぶーたれた頬はゆるゆると笑みの形に戻っていく。甘いチョコレートの香りが美味しそうで、気分はホットチョコレートに入っているマシュマロ。ココアやチョコレートに入っているマシュマロってこんな気分なのかなぁ……と、蕩けそうな心地よさを味わった。
 最初こそ面食らっていた梓だったが、浸かっていればじんわりと筋肉が解されているような感覚に、さすがは温泉と手足を伸ばして寛いだ。心地よい温かさの湯が体を温め、疲れを癒やしてくれる。戦場に置いては鉄錆めいた香りでいかれてしまう鼻を、甘い香りが優しく薫って落ち着かせてくれる。
(今回の戦争も色々あったし疲れも溜まるよなぁ……)
 こうしてみて初めて気付く。存外疲れが蓄積されていることに。
「そうだ、お前たちもいれてやらないとな」
 湯桶にチョコレートの湯をいれ、少し冷ましてから『焔』と『零』も浸からせてやる。嬉しそうに鳴いてパチャパチャ泳ぐ仔竜たちが可愛くて、それだけで梓の頬は緩んでしまう。温泉の癒やし効果が倍増した気がした。
 ここにカメラが無いのが残念だと、心底思う。
「こらこら、あんまりそれ舐めるなよ」
 ぺろんと湯を舐めて、おいしー! と鳴くものだから、後から旅館に寄ってコーヒー牛乳やチョコレートフラペチーノを買ってあげることを誓う梓の顔はチョコレートのように蕩けていて、その顔をチラッと見た綾は親バカをこじらせた発想をしてそうだなーっと何となく察していた。
(チョコだけに食べてしまいたい、とか思ってそう)
 しかし、梓がデレっとしているということは隙きが出来ているということだ。ピピーンっと悪戯を思いついた綾は素早く手を合わせて。
「あーずーさー、えいっ」
「あ? 何だ綾……ギャー!?」
 綾から放たれたチョコレートの水鉄砲は、見事梓の顔へ命中!
「……あっ、甘い」
「あはは、梓ってば顔がチョコ色~」
 悪戯が成功した顔でプークスクス。
 驚いている間にと続けざまにピュッピュッとまた掛けてやれば、梓とて黙ってやられてはいない。
「お礼にお前にもチョコパックしてやらないとな……!」
「梓の水鉄砲なんてあたらないよー」
 楽しげな笑い声とともに、仁義なきチョコ鉄砲合戦勃発!
 賑やかさにつられてか、チョコ鉄砲合戦の最中に新手のスイート・メロディアがやってきたようだけれど、パパの応援ついでに仔竜たちが追い払っていた。
 勝利の行方など端から無く、お互いが疲れるか満足するまで続けることだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユリィ・ミディット
温泉はシャワーと違う?
お湯を体に浴びるのは同じなのかな。
お店で黄色いのを買ってみた。
鳥の形だけど帽子がついてたり、くちばしがちょっと面白い。
入れ物には、カエルかな…?
これも面白いと思った。

敵が出て来たら沢山倒さないと駄目みたいだから、マシンガンと拳銃を持っていく。
水に濡れないようにするのと、暴発に注意。

体を洗ってから温泉に入るのがルールって聞いたから、その通りにする。
お湯、少し熱いかも。
温泉に入る時はゆっくり入るのもルールなのかな?
皆を見てると、長い時間入ってるから。
足を入れたら、凄く熱い。ジンジンする。
少しずつ慣らさないと駄目かも。
慣れてきたらルール通り、ゆっくり入る。
熱いのも気持ちいいかも




 温泉と聞いたユリィ・ミディット(銀色の月・f30122)には、それがどんなものなのか正しく想像ができなかった。どうやら体を清めるものの一種であるようだが、普段ユリィがプラントで使用しているシャワーとどう違うのかは解らない。
 ひとまず転送された先で旅館を探してそこへ行ってみれば、温泉のマナーが書かれた案内を見つけることが叶った。
 ひとつ、湯船に髪をつけてはいけない。
 ふたつ、湯船にタオルをつけてはいけない。
 みっつ、体を洗ってから入浴しましょう。
 よっつ、他の人に迷惑を掛けないこと。
 じっくりと文字を読んで記憶したら売店で黄色い鳥みたいな何かを買ってみた。『ぷかぷかアヒルちゃん』と書かれたこの黄色い鳥は帽子を被っていたり、くちばしが丸みを帯びたデフォルメが効いていてちょっと面白い。
(これはカエルかな……?)
 これまた可愛い感じのカエルが描かれた桶とユカタと言われる衣服も一緒に手渡される。温泉の後に着るのだそうだ。ユリィが幼いからか、店員が優しく説明してくれた。
(マシンガンと銃は濡らさないようにしないと)
 暴発してしまったら、『増殖する私の残滓(スイート・メロディア)』に遭遇した時に困ってしまうことに気付き、店員にもうひとつ桶を借りることにした。ここに入れておこう。
 道中でやはり遭遇したスイート・メロディアを倒し、見つけた離れめいた温泉へ向かう。温泉マナーは厳守し、体を洗ったらいざ、温泉へ。
(お湯、少し熱いかも)
 宿からほど近い温泉は、他にも人が居た。その人たちを見習いながらそろりと足をチョコレート色の湯に浸ければ、熱さに少し驚いた。一気にざぶんと入ったら、熱くて飛び上がっていたかもしれない。少しずつ湯に慣らしながら、そろりそろりと湯へと足を下ろしていった。
 周りの人を観察してみれば、みなのんびりと浸かっている。シャワーならパパっと洗っておしまいだが、温泉はゆっくりと浸かるのもルールなのかもしれない。気持ちよさそうに寛いだ表情を見せる姿に、ユリィはまた、少し驚いた。
 肩まで浸かることができたら、思わずほうと吐息が溢れた。体全体が温かな気配に包まれ、じんわりと筋肉と心が解れていく。
(熱いのも、気持ちいいかも)
 初めての温泉は、甘くて美味しそうな香りがした。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月28日


挿絵イラスト