羅針盤戦争〜伝説の義務
●トラファルガー
七大海嘯『舵輪』のネルソン提督は猟兵達の圧倒的なまでの速度を前にして己の戦術を捨てざるを得ないことを決断していた。
グリードオーシャンは海洋世界である。
だからこそ、ネルソン提督の海戦における戦術は素晴らしいものであり、猟兵達の多くを苦しめてきた。
けれど、それ以上に猟兵達の海図を開拓する速度は尋常ならざるものであった。
まさか此処までの速度で己の『舵輪』の本拠地を見つけ出されるとは、予想はできたが、それを上回るものであった。
「ならば、俺は俺の義務を果たすとしよう。『侵略形態(大オーシャンボール)』への回帰は、このままでは間に合うまい。『桜花』の姫君も動き出したと成れば、いよいよ事態は逼迫している……」
彼の周囲には天使の軍団が渦を巻くように飛んでいる。
天使達はクレマンソー級空母に在りては、最高の空戦戦力であった。だが、ネルソン提督は決断した。
「遅きに失する前に最大の戦力でもって、猟兵に当たる。俺が滅びるか、猟兵が滅びるか……ふ、今更だな」
天使達の体が光り輝いて、その軍団全てがネルソン提督の肉体へと融合していく。
それこそが彼の決戦形態『トラファルガー・モード』。
『最大戦力による最大火力』を持って猟兵を尽く撃破してみせようというのだ。
「ならば時を稼ごう。俺を超えられると思っているのならば、猟兵よ。それは目論見が甘いと知れ。為すべきことを為す、それがお前たちだけの力ではないことを知らしめてやろう」
膨れ上がる重圧。
天使の軍団全ての力を宿し、ネルソン提督が一歩を踏み出す。
それは言うまでもなく『最強』のオブリビオンそのもの。
全ての戦術を捨てた者が持ち得え、至ることのできる境地。
目の前に在るのは『最大戦力にして最大火力』を持つ単一の存在――。
●羅針盤戦争
グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まりいただきありがとうございます。今回新たに発見された七大海嘯の本拠地は『舵輪』ネルソン提督のものです」
ナイアルテは海図を示す。
其処に在ったのは、確かに七大海嘯『舵輪』の本拠地であった。
多くの猟兵達が対峙したであろう七大海嘯『舵輪』のネルソン提督。彼の戦術は見事の一言に尽き、猟兵達は苦戦を強いられたことだろう。
けれど、その尽くを打ち破ってきたのだ。
今更本体がでてきたところで、と思う者もいたかもしれない。
けれど、ナイアルテの表情は決して明るいものではなかった。
「本拠地における決戦において、ネルソン提督は彼の代名詞とも言うべき海戦での戦術を捨て『最大戦力による最大火力』によって皆さんを打倒しようとしてします」
それは恐るべきことであった。
ネルソン提督と海戦で戦った猟兵達によって、ネルソン提督は他の七大海嘯と比べても接近戦にさえ持ち込めば与し易い敵であった。
だからこそ、彼女の言葉がどれだけの重みを持っているのかを測ることができる。
「全ての天使の軍団を自身の体に融合させた『決戦形態トラファルガー・モード』に成ったネルソン提督は『死ぬまで痛みを感じず、あらゆる状態異常を無影響化』するのです」
即ち、打倒するまでネルソン提督に対する悪影響のたぐいは期待できない。
それだけではなく、天使の軍団の力を取り込んだネルソン提督の単体のオブリビオンとしての力は最強と呼ぶに相応しい力を持っている。
海戦にて対面した猟兵達はネルソン提督に対する認識を改めなければならない。
真っ向勝負で挑めば力に押される。
けれど、策をろうすれば食い破られる。
そんな相手となってしまったネルソン提督を前に猟兵達は如何にして戦うべきか。
「……とても、難しい敵となることは承知の上です」
ナイアルテの瞳はそれでも猟兵たちを見つめていた。
強大なる敵。付け入る隙の見当たらぬネルソン提督の力の強大さ。
けれど、それでも打倒せねば、グリードオーシャンは再び『侵略形態』へと移行し、世界そのものが滅びてしまう。
「強大なオブリビオンによる先制攻撃、そして『決戦形態』へ対抗する術……しかし、私達は猟兵です。私は、私の責務を。みなさんは、皆さんの義務を。それを全うしなければなりません」
期待をするのではない。
そうすると信じている。だからこそ、その背中を送り出すのだ。
誰に願われたわけでもない。己の意志で戦場に進む猟兵たちを――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『羅針盤戦争』の戦争シナリオとなります。
七大海嘯『舵輪』の本拠地へと攻め込み、『決戦形態』へと姿を変えたネルソン提督との死闘となります。
言うまでもなく最強のオブリビオンと呼ぶに相応しい力を持つネルソン提督が一切の戦術を捨てて襲いかかってきます。
加えて、一切の状態異常を無影響化します。喰らっても悪影響を受けずに突き進むネルソン提督に対抗し、これを討たねばなりません。
※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。
プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードと「決戦形態(トラファルガー・モード)」に対抗する。
それでは、羅針盤戦争を戦い抜く皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『七大海嘯『舵輪』ネルソン提督』
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POW : 天使の銃
自身の【肉体に吸収融合した天使の軍勢】を【敵に応じた『天使武装』】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
SPD : 聖守護天使
【手から現れる天使達】で攻撃する。[手から現れる天使達]に施された【瞳を覆う聖なる帯】の封印を解除する毎に威力が増加するが、解除度に応じた寿命を削る。
WIZ : 天使槍兵団
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【舵輪の脚から現れた天使達が放つ光の槍】で包囲攻撃する。
イラスト:シャル
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
メイスン・ドットハック
【SPD】【絆】
痛みがないなら、死ぬまでやるしかないのー
とはいえ、この天使達を何とかせぬとのー、エィミー
キャバリアKIYOMORIに搭乗して参戦
AIアメジスト・アメジストちゃんの予測・観測能力を駆使して、LPL砲・ミサイル榴弾の発射を担当させて、天使達を迎撃
レーザー砲ユニットを操縦して、レーザー射撃でネルソン本体を狙う
先制後は、オブリビオンマシン形態清盛に変形してUC「帝竜を纏いし機竜よ、稲妻となれ」を発動して、天使を振り切り、レーザークローによる超高速斬撃
ジェットパックの加速が切れるまで何とでもその身を斬り刻む
エィミーがやってくれておるからのー。心置きなく粉みじんにしちゃるけーのー!
エィミー・ロストリンク
【SPD】【絆】
天使合体なんて本当に最終形態なんだねー!
でもわたし達は決戦も強いよー? 覚悟してね!
キャバリア・アカハガネに搭乗して参戦
両腕のガトリングキャノンで飛来する天使達に弾幕を張りながら、近寄らせないように連携
主にメイスンの死角を埋めるように行動し、強烈になった時に備えラクチェの要石で作った鉄水を防御壁として咄嗟に展開できるよう準備
先制後はアカハガネから降りて、UC「呪われし財宝に愛されし姫君」を発動
アカハガネ・ナノシリア・ブラックゴーストに各自攻撃させながら、自身はオルトロスでガトリング射撃
近づく敵はベルセルク・ギガンティア・骸魂無双に始末させる
天使は任せて! お義姉ちゃんは提督を!
七大海嘯『舵輪』の本拠地に青と赤のキャバリアが疾駆する。
それは言うまでもなく猟兵が駆る5m級機動兵器であった。一体は青竜の如き姿。もう一体は赤鬼の如き姿。
その姿を認めて、七大海嘯『舵輪』ネルソン提督は一歩を踏み出す。
最早戦術もなにもない。
あるのは単一の存在として最強を自負する己の『最大戦力にして最大火力』。小細工は必要なく、同時にその一歩だけでキャバリアを駆る猟兵達は悟ったことだろう。
「天使合体なんて本当に最終形態なんだねー! でもわたし達は決戦も強いよー? 覚悟してね!」
赤鬼の如きキャバリアを駆るエィミー・ロストリンク(再臨せし絆の乙女・f26184)はガトリングキャノンで開放された天使達の群れを弾幕に寄って近寄らせぬようにと乱れ撃つ。
だが、その弾幕で聖なる帯から開放された天使たちは止まらない。
通常のオブリビオンであれば、それだけで近づくことすらままならなかったであろうが、力を開放された天使たちは弾幕を物ともせずにエィミーの駆るキャバリアへと突っ込んでくるのだ。
「傷みがないなら、死ぬまでやるしかないのー……とはいえ、この天使たちを何とかせぬとのー、エィミー」
メイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)は青龍の如きキャバリアを駆り、AIアメジストからの予測・観測脳力を駆使して、弾幕を突っ切ってくる天使たちを長距離プラズマレーザー砲の一撃に寄って撃ち落とす。
しかし、それだけではキリがない。
ミサイルを解き放ち、乱れ撃つが天使達の層は分厚い。
「……キャバリア、鋼鉄の巨人。やはり猟兵はあらゆるものを使う。俺の戦術を乗り越えてきただけのことはある……だが!」
ネルソン提督の瞳がユーベルコードに輝く。
己の寿命を削ってでも、この猟兵達は打倒しておかなければならない。
例え己の生命が此処で尽きようとも、猟兵は滅ぼさなければならない。そうしなければ、己の義務を果たすことなどできようはずもない。
開放された聖なる帯が天使達の力をさらなる開放へと高めていく。
弾幕を張り巡らせても天使たちは尋常ならざる力でもって、二体のキャバリアを追い詰めていく。
「メガリスを使うか……!」
ネルソン提督の瞳に映ったのは、ラクチェの要石によって鉄水を防御壁として展開したエィミーであった。
だが、それも力を開放された天使たちを阻むには至らない。
「すべてのメガリス達、それぞれ頑張ってねー!」
エィミーは『アカハガネ』と呼ばれたキャバリアから下り、その手に絆律鍵ロスト・リンクを輝かせる。
その光景はユーベルコードの輝きと呪われし財宝に愛されし姫君(ドミネート・オブ・リンク)が、無数のメガリスを同時に操る姿であった。
ホワイトサーペントが空を飛び、黒い幽霊船が巨大化し、砲撃を放つ。自律行動を得たアカハガネが天使達を薙ぎ払い、ネルソン提督への道を切り開くのだ。
「メガリスに愛されているとでもいうのか……! だが、それも本体を!」
だが、彼女の周囲に飛ぶのは全てのメガリスである。
全てが彼女を守らんとしている。その力の発露は凄まじく、力の開放された天使達であったとしても、防ぎ切ることはできなかっただろう。
「エィミーがやってくれておるからのー。心置きなく粉微塵のしちゃるけーのー!」
メイスンが叫ぶ。
オブリビオンマシン『清盛』に変形し、翼の如きジェットパックを展開する。
その姿は雷帝そのものであった。
稲妻の如きユーベルコードに輝きながら、切り開かれた血路を飛ぶ。天使達が清盛に組み付いたとしても振り落とすように速度を上げながら、ネルソン提督に肉薄する。
迸るレーザークローの斬撃は限界を超えた速度であった。
「帝雷を纏いし機竜よ、稲妻となれ(トール・レーゲンブリッツ)……こうなったらもう誰も止められんけーのー!」
竜雷を纏ったレーザークローの斬撃がジェットパックの加速と共にネルソン提督へと放たれる。
だが、それらの尽くを打ち払うのはネルソン提督そのもの拳であった。
威力が低いわけではない。
ただ、目の前のネルソン提督は融合した天使達の力で持って、メイスンの駆るキャバリアと互角に打ち合っているのだ。
ジェットパックの加速が切れる。
だが、未だ決定打を与えられていない。
「おねーちゃん! これっ!」
投げ放たれるは龍鱗を刃とした大斧。だが、それを撃ち落とすのはネルソン提督であった。
「使わせるものかよ……! ――っ!?」
そこへ突っ込むアカハガネ。
大地へと叩きつけられるネルソン提督が見たのは、飛翔し、大斧を手にし、最後の加速に駆けたメイスンの渾身の一撃であった。
「これで、粉砕してくれるけーのー!」
放つ一撃は『舵輪』の本拠地をして地響きでもって揺らすほどの強烈なるものであった。
メイスンとエィミーは手応えを感じながら、キャバリアと共に戦線を離れる。
未だネルソン提督は健在であろうが、それでも消耗させたと判る戦果であった。
互いの絆を感じながら、二人は天使たちの群れを突破するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ラリー・マーレイ
先生が言ってたな。勝負とは力学だと。単純に敵より強ければ勝つ為の工夫は必要なくなる。
今の提督がその状態か。それでも、開ける道があるなら必ず開ける。
光の槍の起点と動きから【瞬間思考力】でその幾何学的軌道を先読みし【見切る】。ランダム性や追尾機能が無いなら予測は可能な筈だ。各種魔法装備で強化した【早業】で弾幕を回避、かわしきれない槍だけを「守りの指輪」の【オーラ防御】で逸らす。
反撃だ。【発火の呪文】を【高速詠唱】し、一点集中させた炎の【属性攻撃】。
物理を無視した純粋な魔力の炎。注ぎ込んだ己の魔力をロス無く威力に変換出来る。【気合い】を込めて【限界突破】させ、今の僕の持つ全ての力を破壊力に変えるよ。
鋼鉄の巨人の二機が織りなす一撃に七大海嘯『舵輪』のネルソン提督は大地へと強かに打ち据えられた。
大斧の一撃は確かに並のオブリビオンであれば、消滅してもおかしくないほどの必殺の一撃であった。
だが、ネルソン提督は今や単一にして軍そのものである。
融合した天使の軍団の数は知れず。けれど、相対する猟兵の尽くが、その凄まじき重圧を感じたことだろう。
「先生が言ってたな。勝負は力学だと。単純に敵より強ければ勝つための工夫は必要なくなる」
ラリー・マーレイ(冒険者・f15107)はアルダワ魔法学園で師事した恩師の言葉を思い出す。
なるほど、とラリーはネルソン提督の姿を見て得心がいった。
全ては己の経験に寄って知識は保管されていく。授業で得た知識が今まさに骨子となって、血肉を形成していくのを感じた。
だが、今相対するのは強大なるオブリビオン。
最強と呼ばれるに相応しい力を持つネルソン提督であった。
「そのとおりだ、猟兵。戦術とは即ち、数の不利、兵の練度、士気、そういったものを覆すためのものだ。故に俺は先頭に立たねばならぬ。誰かの義務を期待することはあれど、己の持てる生命というものを最前線にさらさねばならぬのだ」
一歩踏み出す度に重圧が高まる。
ラリーは吐き気をもよおす程の強烈なる力の前に、しかして一歩も引かなかった。
「俺を前にして惹かぬか、猟兵」
「ああ、それでも、開ける道があるなら必ず開ける」
彼らの頭上に在るのは燦然と輝く天使の軍団である。
彼女たちは皆、一様に槍を構えていた。光の槍、それは全天を覆うかのような数でラリーを迎え撃つ。
放たれる光の槍は幾何学模様を描きながらラリー一人に過剰とも言えるほどの力で持って押しつぶさんと振り下ろされた。
「くっ……! ランダム性……追尾機能が無いなら……!」
予測は可能であった。
だが、見切ると言えど、この数である。尋常ならざる力の奔流。光の槍が降り注ぐ中を駆け運ける。
守りの指輪のオーラが張り巡らされるも、即座に打ち破ってくる。
完全に防ぐことなどできず、軌道を反らすことしかできない。
動く。
動く。動き続ける。ラリーは未だ己の五体が無事であることを感じる。傷みが走るのは生きている証拠であった。
止まらない。足を止めてしまえば、すぐ先にあるのは『死』だ。
明確な死のイメージが頭をよぎる。
「けど……! まずは一歩ずつ進むしかないだろう……!」
どれだけ遠い道のりであったのだとしても。届かぬかもしれない存在を追うのだとしても。
それでも、彼の目には諦観はない。絶望はない。
あるのは反撃の意志。
己が持てる全てを懸けて、戦うと決めた以上、彼は絶望には染まらない。光の槍の雨をくぐり抜けて、ラリーは駆ける。
「来るかよ、猟兵!」
「ヘーア・ラーイ・ターザンメ……」
その瞳がユーベルコードに輝く。
その手に集まるは純粋な魔力によって編み上げられた炎。
発火の呪文(イグナイトファイア)。だが、撃ち放つことなく一点に凝縮していく。
呪文によって形成された炎は物理を無視した純粋なる魔力の炎。
注ぎ込んだ己の魔力をロス無く威力に変換する。その術をラリーはこれまで学んできたのだ。
勝負は力学だと教えられた。
ならば、かのネルソン提督の防御を打ち破るのは、己の心に灯る炎である。
決意と己の限界を今超えていく。
例え、ここが限界点だと言われてもラリーは、己の限界を学ぶことはしない。己を囲うことはいない。
「今の僕の持つ全ての力を――」
破壊の力に変えて、ネルソン提督に肉薄する。
傷だらけになりながら、それでもラリーはネルソン提督に迫り、圧縮された炎を打ち込む。
それはネルソン提督の防御を突き破り、一点によって、その胴を貫くのだ。
「――……見事だ。猟兵。戦術を持って、強大なるものに打ち勝つ。ああ、確かに」
それは見事なことだと、呟いた瞬間、ネルソン提督の背後から極大の炎が吹き荒れ、一撃を持ってラリーはネルソン提督に言えぬ傷を穿つのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ガラティア・ローレライ
〈先制攻撃対策〉
ネルソンに向けてボトルシップから《ピュグマリオーン号》を呼び出して突っ込んでくる天使共に対する盾兼ネルソンへの目くらましとして利用するわ
〈戦闘〉
そのままピュグマリオーンを囮として突っ込ませている間に【歌姫の複製大砲】で複製した《デミカルヴァリンメガリス》を一部を私の周囲を守るように残して
残りをネルソンの全方位を取り囲むように配置!
痛みは感じなくてもダメージ自体は入るんでしょ!?
だったらあんたが死ぬまで砲弾をブチ込み続ければいい!あんたが死ぬかこっちの弾切れが速いか!
複数の砲からの『砲撃』の『一斉発射』で抵抗の間も与えずに『爆撃』していくわよ!
極大の炎が七大海嘯『舵輪』のネルソン提督の身を穿つ。
それは針で穴を開けたような一点集中の一撃であり、ネルソン提督の見た目にはなんんら影響を与えていないようであったが、背から吹き荒れる炎の大きさをみれば、その身を焼き焦がす炎がどれほどの威力であったかを物語る。
「これが猟兵……侮っていたわけではないが、それでも越えてくるか、俺を……!」
だが、それでもネルソン提督が倒れたわけでもなければ、消滅したわけでもない。
むしろ、戦意を高揚させたかのように凄まじい重圧を持って海洋世界であるグリードオーシャンに荒波を立たせるように一歩を踏み出すのだ。
手から生み出される天使達の目を覆う聖なる帯がほどかれていく。
それは封印を解くという行為であり、同時にネルソン提督の寿命をも削っていく。
だが、その天使軍団の力は凄まじいの一言であった。
どれだけ頑強なる防御を猟兵が張り巡らせたとしても、容易く打ち破ってくるのだ。
「……となれば、次はそういう手か……次から次に楽しませてくれる!」
ネルソン提督が見たのは、空より降り注ぐかのように落ちてくるボトルシップから出現した『ピュグマリオーン号』であった。
多数の砲門を備えた魔法のガレオン船が、その巨大なる質量を持ってネルソン提督へと迫るのだ。
天使の軍団が迎え撃とうとするが遅い。
だが、ネルソン提督はそのガレオン船そのものを掌で受け止める。
大地が割れ、凄まじい衝撃が島へと広がっていくが、それは謂わば目くらましであった。
ガラティア・ローレライ(呪歌のローレライ・f26298)は己が駆る『ピュグマリオーン号』を盾とネルソン提督の視界を遮る目くらましとして利用することに寄って、彼から放たれる初撃を防いでみせたのだ。
「呪歌のローレライの自慢の砲列!しかとその目に刻みこみなさい!」
ガラティアの瞳がユーベルコードに輝く。
それは、歌姫の複製大砲(ディーヴァ・レプリケイトカノン)。生み出されたデミカルヴァリンメガリスが砲列のように空中に浮かび、ネルソン提督の全方位を取り囲むように砲口を向けるのだ。
「船は囮か! ならば!」
次ん瞬間一斉に放たれるデミカルヴァリン砲の砲弾。
それは凄まじい勢いと火力で持って天使の軍団とネルソン提督をも巻き込んで爆発を引き起こしていく。
「――お前の放つ砲弾を弾けばいいだけの話だ」
天使たちは木っ端微塵に吹き飛んでいるというのに、ネルソン提督は未だ健在であった。怖気が走るほどの重圧を受けても尚、ガラティアは笑った。
「傷みは感じなくてもダメージ事態は入るんでしょ!? だったらあんたが死ぬまで砲弾をブチ込み続ければいい!」
啖呵を切るようにガラティアが手を掲げる。
己を護るように配置していたデミカルヴァリン砲をも砲列に加える。
此処で守っては敗ける。
一切の妥協を許さず、己の持てる全ての力を注ぎ込まなければネルソン提督は止まらない。
それをガラティアは察知し、さらなる砲列でもってネルソン提督を取り囲むのだ。
「だが、お前の砲列も弾丸がなくなれば、それで終わりだ。行くぞ、猟兵――」
ネルソン提督の鋭い眼光が戦場にありて走る。
ガラティアはそれを真っ向から受け止め、覚悟を決めた。
「あんたが死ぬか――」
「お前の弾切れが先か――」
そこからの言葉は砲撃が轟く音にかき消される。
膨大な数の砲撃が行われた。地形が変わるほどの砲弾の雨。けれど、それだけの物量をもってしてもネルソン提督は死なない。
消耗していることは確かであったが、それでも消滅しない。
これが『最大戦力』と言わしめた、ネルソン提督の力。
けれど、ガラティアは知っている。
この場に転移した猟兵が己だけではないことを。
例え、己という砲弾が弾切れを起こしても、続く者がいる。故に、ガラティアは渾身の力を振るい、新たなる砲弾を装填し、彼女自慢のデミカルヴァリン砲の一斉発射をネルソン提督に叩き込み続け、さらなる消耗へと叩き落とし、地形の変わった島で戦い続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
戒道・蔵乃祐
決戦形態『トラファルガー・モード』 単純な対人処理能力は物量に任せた天使の飽和攻撃に劣るが、生き延びる事に特化した一騎当千の対軍型
遂に奥の手を切ったのですね。『舵輪』のネルソン
確実に、猟兵は七大海嘯を追い込んでいる
しかし時間切れも刻一刻と迫る
此処で止まってはいられない!
押し通る!
◆
※キャバリア騎乗戦闘
【聖守護天使】を見切り+フェイントの機動と切り返しで、爆撃を躱し早業+クイックドロウ
RSティルヴィングの迫撃で天使を撃ち落としながら切り込み
有効射程に際し、弾幕を張り。緊急脱出装置でネルソンに向けて自らを射出する
肉体そのものを砲弾と化して意表を突き、【神速瞬身昇り竜】
限界突破+残像の空中戦で勝負!
砲弾の雨が七大海嘯『舵輪』の本拠地である島の地形を変える。
それほどまでの苛烈なる砲撃にあって尚、ネルソン提督は未だ消滅していない。痛みを感じず、あらゆる悪影響をも無効化するという『最大戦力にして最大火力』と言わしめた力を顕示するように彼は爆心地の如き地形から一歩を踏み出した。
「決戦形態『トラファルガー・モード』……単純な対人処理能力は物量に任せた天使の飽和攻撃に劣るが、生き延びることに特化した一騎当千の対軍型……遂に奥の手を切ったのっですね。『舵輪』のネルソン」
戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)は爆風が荒ぶ中から現れたネルソン提督に相対する。
そこにあったのは在る種の畏敬であったのかもしれない。
これより滅ぼすか、滅ぼされるかの関係でしかない猟兵とオブリビオンの間に流れる空気としては、あまりにも穏やかな空気であった。
互いの健闘を讃えるような、場違いとさえ言える空気。
「ああ、お前たち猟兵の力を認めるからこそ。そこまで知っても尚、俺の前に立つか、猟兵」
こうして相対してわかる。
個としての力の差は歴然である。さらに空に浮かぶ天使達の瞳に帯びた聖なる帯の封印は解かれ、その力をましている。
例え、蔵乃祐が熟練為る猟兵であったとしても、その軍勢を前にしては無力と言わざるを得なかっただろう。
だが、それでも彼の足は止まらない。
「確実に猟兵は七大海嘯を追い込んでいる。しかし時間切れも刻一刻と迫る……故に」
「ああ、故に。俺は俺の義務を果たす」
「――此処で止まっては居られない! 押し通る!」
蔵乃祐は嘗て異なる世界にて擱座し遺棄されていたキャバリアを駆る。
濃い緑の機体は戦場にあって、尚己の意義を果たそうと疾駆する。群がる天使達の一撃一撃が機体のフレームを軋ませる。
攻撃は見切れるとは言え、物量で押される。
さらにネルソン提督をも迫っているのだ。キャバリアライフルで天使達を撃ち落としながら、軍団へと繰り込む。
だが、それでも尚、足りない。
機体の腕が、脚部が、天使達に寄って砕かれていく。
「人は身の丈に合わぬ兵器を持つべきではないのだ。どれだけ技術が発展しようとも、己の腕で、足で、生命を屠らねば、感覚が鈍る」
迫るネルソン提督の重圧は凄まじいものであった。
最強と呼ばれたオブリビオン。
その力はキャバリアの装甲すら易易と貫き、砕かれたフレームが飛散する。
「ええ、そのとおりでありましょう。ですが!」
蔵乃祐は緊急脱出装置を作動させ、ネルソン提督に向けて自らを射出する。
それは凄まじい勢いで己という弾丸を解き放つ行為であった。
本来であれば、敵より遠くへ逃げるための脱出装置。けれど、蔵乃祐は己を打ち出すための射出装置として使った。
「神速瞬身昇り竜(ジンソクシュンシンノボリリュウ)――! 疾 風 迅 雷 !」
コクピットブロックから生身をさらけ出し、蔵乃祐は宙を駆ける。
その瞳に合ったのは、決意と覚悟であった。
そして、輝くはユーベルコード。
彼の鍛え上げられた肉体が、まさしく弾丸のようにネルソン提督に迫る。
「己を弾丸とするか! いや、砲弾……!」
残像を残すほどの速度で蔵乃祐とネルソン提督が空中で交錯する。
大地へと両者は着地し、蔵乃祐の唇の端から鮮血が一筋流れる。完全に虚を突いたつもりであった。
だが、ネルソン提督はそれに対応していたのだ。
一騎当千。
まさのその言葉が当てはまるほどの強敵。その拳の威力を身に受けながら、蔵乃祐はしかして立っていた。
彼の背後では、ネルソン提督が膝をつく。
「……見事だ。己を省みぬ戦い……それこそが、戦士」
その言葉はいっそ、互いがオブリビオンと猟兵でなかったのであれば、また別の運命もあったのではないかと思わせるには十分なものであり。
しかし、それは叶わぬことであると知らしめるには十分であった――。
大成功
🔵🔵🔵
シキ・ジルモント
◆SPD
まずは向かってくる天使の相手を重視する
瞳を覆う帯を解かれていない、まだ強化されていない天使から射撃を撃ち込み、数を減らす
数を減らせば持ち堪える事はできると踏んでいる
ネルソンの攻撃は、天使を常に間に置いて遮蔽物として利用し防ぐ
それでも天使を退かせたりはしないだろうが、ネルソン自らが射線を通す為に移動する事を狙う
どこへ移動すれば射線を確保できるか…こちらも銃を扱う身だ、ある程度予想は出来る
移動先を予測し、そこへの移動に合わせてユーベルコードで狙撃する(『スナイパー』)
一時的に天使への対応が遅れる危険はある
しかし“最大戦力による最大火力”が相手だ、それを超えるにはリスクを取る必要もあるだろう
空中で猟兵と交錯し、先に膝をついたのは七大海嘯『舵輪』のネルソン提督であった。
彼は最強のオブリビオンと呼ばれるに相応しい『最大戦力にして最大火力』を持つ単一の存在であった。
その彼に膝をつかせたことは猟兵たちにとって大きな意味を持つ。
痛みを感じず、全ての悪影響を受けぬ存在。
その存在に膝をつかせたのだ。畳み掛けるならば今しかないと殺到しようとした猟兵たちを遮るのは生み出された天使の軍団の分厚い層であった。
全てが聖なる帯の封印を説かれた尋常ならざる敵。
その敵の軍団を前に猟兵達は戦場と成った『舵輪』の本拠地を疾駆する。
「強化されていない天使からと思ったが……全て解除済みとは……やはり、決死の覚悟というやつか」
シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は、それが寿命を削るユーベルコードであるがゆえに、聖なる帯の封印を解かれていない天使もいるであろうと考えていたが、それは不退転の決意を持つネルソン提督にとって不要なものであったのだろう。
全てが封を解かれ、強大なる力を振るう。
「だが、数を減らせば持ちこたえる事はできる……!」
群れる天使達がシキを襲う。
どれだけ数の劣勢に押されようがシキが為すことは変わらない。ハンドガンを構え、一体一体を確実に消滅させていく。
例え、一撃で消滅させることができなくても、持久戦に持ち込めばネルソン提督の寿命が尽きるのが先のはずである。
「持ち堪える……そのつもりであろうがな――!」
その考えが甘いのだというようにネルソン提督の拳がシキへと振り下ろされ、間一髪のところで躱したシキの眼前をかすめ、大地を割る。
凄まじい一撃。
その拳を受けてしまえば、シキと言えど、どうなるかは明白であった。
これで消耗してきているとは到底思えぬ技のキレ。だからこそ、シキは天使たちを盾にする。
細かく動きながら、周囲の状況を利用していく。
今までだってそうだったのだ。
あらゆるものを利用し、己の持てる力と技量の全てを注ぎ込んで初めて為せることがある。
「射線が通るということは、こちらからも撃てるということだ」
互いの銃口が互いを狙う。
放つ弾丸が互いの肩を掠める。いや、シキに穿たれた弾丸の痕は肉を抉るように痛烈なる痛みを彼に与えるが、眉根をしかめさせる程でしかない。
痛みは今は忘れる。
相対する者は強大なるオブリビオンだ。
リスクはある。当たり前だ。
シキは今、相対するオブリビオンが如何なる存在か、正しく理解していた。『最大戦力に寄る最大火力』を持つ者。
だからこそ、この程度で済んだことが行幸であった。
「……」
「大した集中だ! 痛みで切らさぬ……優れた兵士だ。称賛に値する、猟兵!」
シキの瞳がユーベルコードに輝く。
痛む肩を庇うこと無く血に塗れながらシキはハンドガンを両手で構え狙いを定める。己の背後から迫る天使達の姿は察知している。
だが、この千載一遇の好機を逃すことはできない。
互いの射線が通るこの瞬間。
自身を撃つ弾丸と同じ軌道を描く。
ブルズアイ・エイム――そのユーベルコードによって定められた狙いは、過たず。
放たれた弾丸は天使達の囲いをすり抜けるようにしてネルソン提督の胸へと至るのだ。
打ち込まれた弾丸はネルソン提督の体の内部で弾けるようにしてユーベルコードの力を持って引き裂いていく。
痛みはないだろう。
わかっている。けれど、消耗させたことは間違いない。
天使達の軍団に埋もれるようにしてシキはネルソン提督から引き離されていくが、それでも手応えはあった。
「……掛け値なしの最強のオブリビオン……その力、確かに削いだぞ」
シキは未だ戦いの渦中にありながら、それでも己が狙い放った弾丸が、強敵をうがったことを信じて疑うことなく、生き抜くために天使たちを撃ち落としていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メフィス・フェイスレス
後が無くなったからなりふり構わないってわけ?
ならお望み通り喰らい尽くしてやるわ、天使を貪る悪魔の如く
「飢渇」の霧を躰から噴出させ「闇に紛れて」視界を塞ぎ、【宵闇】の「滑空」で反撃の死角に回り込み、「野生の勘」「先制攻撃」で死角からのさらなる反撃を回避(先制対策1)
空からUCの「範囲攻撃」「貫通攻撃」で空間毎「捕食」
「激痛耐性」「継戦能力」「オーラ防御」で反撃に耐えつつ(先制対策2)
UCで「肉体改造」、『天使武装』を形成しつつ決戦形態の状態異常耐性を獲得
「捨て身の一撃」で自分ごと巻き込むように【微塵】の「爆撃」を喰らわせ爆風の「闇に紛れて」突撃し(先制対策3)
「2回攻撃」でもう一度UCによる追撃
弾丸の一発が人の生命を奪うことはよくあることであろう。
それが英雄であれ、罪人であれ、無辜なる者であれ。
一発の弾丸が人の生命を終わらせる。それはネルソン提督であっても変わることのない事実であったし、かつて在りしいつかの存在もまたそうであったことだろう。
運命というのであれば、それがそうであったし、此度の生もまたそうであったのかもしれない。
けれど、此処に在りし者はそうではない。
最強のオブリビオン。その名を冠するには十分な力を持つ天使の軍団そのものを身にまとい、天使兵装として顕現させる。
その姿は正しく戦いの申し子であった。
「見事だ。猟兵。確かにな。確かに、お前たちは俺を追い詰めている。だが、それで俺が退けられると思うな」
膨れ上がる重圧。
それを前にしても、尚、猟兵は諦めない。恐れない。絶望などしない。
「後がなくなったからなりふり構わないってわけ?」
メフィス・フェイスレス(継ぎ合わされた者達・f27547)は、その瞳を爛々と輝かせながら、戦場を疾駆する。
対するネルソン提督の力がどれだけ強大なものであったのだとしても、彼女には関係なかった。
「ならお望み通り喰らい尽くしてやるわ、天使を貪る悪魔のごとく」
膨れ上がる飢餓衝動により身体から滲み出す眷属がメフィスの身体が噴出し、闇の如き霧でもって視界を塗りつぶす。
如何に単一の存在として強大なものであったとしても、視界を塞げばこちらへと攻撃を届かせることはできない。
メフィスは醜悪な骨身の翼を生やし、黒霧の中を飛ぶ。
回り込み、死角から一撃を見舞おうとして、己の勘が正しかったことを知る。
これほどの視界不良の中にあってネルソン提督はメフィスの位置を捉えていた。
完全なる死角。
それを取ったはずであったが、尋常ならざる反応でもってメフィスの攻撃を防ぐのだ。
「死角……これが死角だと? この程度で、笑わせるな――!」
ネルソン提督の拳が振るわれ、とっさに骨身の翼で身体を覆ってメフィスは衝撃を殺す。
だが、それでおなお身を貫く拳の衝撃は凄まじかった。
身体のあちこちから軋む音がする。
メフィスの心の中にあったのは、飢餓感だけであった。
痛みも、恐れも、なにもない。
在ったのは、飢えだけであった。
「お前美味しそう」
ボソリと呟いた瞬間、メフィスの瞳がユーベルコードに妖しく輝く。
それは喰(クラウ)という意志。空間も、記憶も、脳力すらも喰らう喰牙へと変形した己の躰があらゆるものを喰らう。
ネルソン提督はうめいた。
その姿を、その力を、その威容を。
空間も記憶も、脳力も喰らう。
それこそがメフィスの持つユーベルコードにして己の本質であろう。
故に、彼女の今の姿はネルソン提督と同じ『天使武装』を備えた決戦形態。
「そう、なるほど。やはり、時間稼ぎ……お前事態が戦術……」
メフィスは理解していた。
ネルソン提督が何故、決戦形態となったのかを。そう、猟兵と七大海嘯との戦いは時間との戦いであった。
猟兵達を直接打倒する必要は彼らにはない。
『侵略形態』へとグリードオーシャンを回帰させるだけでいいのだ。そのために必要な時間を稼ぐために、ネルソン提督は己の身を賭した。
だからこそ、メフィスは一撃に駆ける。
一刻でも疾く島を開放し、『王笏』の本拠地を制圧して『侵略形態』への移行を阻止しなければならない。
己の身を爆弾へと変え、メフィスは駆ける。
捨て身の一撃、爆風吹き荒れる中を突き進み、その一撃を、喰牙の一撃をネルソン提督へと届かせる。
「貴様も、捨て身、だと……!?」
ネルソン提督の考えることはよくわかる。
誰しもが生命を捨てる覚悟を期待する。けれど、それが誰しも出来ることではないことも。
だからこそ、メフィスの捨て身の一撃はネルソン提督に届いた。
爆撃の如き暴風が吹き荒れる中、メフィスとネルソン提督は互いの力を持って、爆心地の如き大穴を大地へと穿つのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
エドゥアルト・ルーデル
更に先の戦を見せてやるだけでござる
敵のUC発動から変形完了までの時間が命でござる!
【流体金属】君を一時的に壁にしつつ全身を【ドット絵】に変換!体を平たくさせて被弾面積を少なくし、更に地面に伏せ全身のドットを地面と同じ色にして溶け込む事で敵の目から逃れますぞ
現代戦と言えばステルス戦だ、隠れんぼと行こうじゃないか
移動は匍匐とドットの色変換の同時進行、かつ物音一つ立てぬよう伏せたままですぞ
痛覚無し、状態異常無効なら即死か、そもそも物自体を欠けさせるかでござるか…ならやはり爆発物でござるかね
太陽を背にしたり見つけづらい方角から出来る限り近寄り、足元に手榴弾を複数転がし爆破ですぞ!
凄まじい爆風が七大海嘯『舵輪』の本拠地である島の地形さえも次々と変えていく。
ネルソン提督の『天使兵装』は著しく損壊していたが、再びユーベルコードに輝く。その身に融合した天使の軍団の数は数えることすらも億劫になるほどの尋常ならざる数であったことだろう。
故に、傷を癒やすことなど容易であった。
けれど、融合した天使達を喪うことには変わりない。どれだけ強大な存在であったとしても、消耗させられているのだ。
「誰もが己の義務を全うできる、全うさせることができるとは言わないが……見事だな、猟兵」
ネルソン提督は感嘆していた。
凄まじい速度による進撃。
確実に七大海嘯を追い込む一手。
それらは戦術家としての彼をしても見事と言うほかなかった。
徐々に『天使兵装』が復元されていく。それは猟兵にとって、最大の好機であった。
「更に先の戦いを見せてやるだけでござる!」
そう、その瞬間を狙っていた猟兵が居た。
エドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)である。彼は流体金属を壁にしながら、自身をユーベルコードによってドット絵へと変異させる。
身体を平たくした姿。
所謂二次元の存在の如きぺらぺらなドット絵となりながら、エドゥアルトは地面に伏せて、同じ色へと溶け込むようにして進む。
ドット職人の朝は早い(ドットショクニンノアサハハヤイ)。
まずはカラーパレットの選択からはじまる。
とは言え、彼の存在は完全に島の景色へと同化していた。
「現代戦と言えばステルス戦だ。かくれんぼと移行じゃないか」
戦術とは即ち、日々進化していくものである。
それが例えいたちごっこであったのだとしても、新たな戦術となって敵を打倒せしめるのだ。
エドゥアルトは先の戦いを知る者である。
過去の化身がどれほどの強大な力を持つのだとしても、最新の知を識るものであるからからこそ、過去の威光すらも拭うように圧倒することだってできるのだ。
ぺらぺらのドットの身体と色変換の同時進行かつ物音一つ立てぬように伏せてネルソン提督へと迫るのだ。
目の前では猟兵とネルソン提督の激しい戦いが繰り広げられている。
あの戦いに割って入るのには、あまりも隙がない。
そして、エドゥアルトは見ただろう。
かの敵が凄まじい爆発の中に在りても尚、健在であることを。
どれだけ攻撃を受けても痛覚など無いというように立ち上がってくる。
「痛覚なし、状態異常無効なら……即死か、そもそも物自体を欠けさせるかでごさるか……ならやはり爆発物で誤差るかね」
エドゥアルトはさらに太陽を背にし、見えづらい方角から出来る限り近づき足元に手榴弾を転がす。
「これで……っ!?」
そう、確かにエドゥアルトの擬態は完璧であった。
並のオブリビオンであれば察知すらできずに爆殺されていたことであろう。だが、対するはネルソン提督である。
戦術を捨てたからと言っても、相対するものの戦術に目端が利かぬわけではない。
「爆発物……やはりそう来るか。だが、ここまで接近を赦した以上、俺の負けではるのだが……!」
爆発が巻き起こり、ネルソン提督はその場に膝をつく。
『天使武装』がなければ、それで終わりであったであろう勝負。けれど、それでも、『天使武装』を再び欠損させたことは大きい。
エドゥアルトは、爆発に紛れるようにドット絵のまま、すたこらさっさと撤退する。
素早く退くこともまた戦場においては迅速な判断でなければ行えぬものである。
ネルソン提督は、エドゥアルトの見事な手並みを前に、己が徒に消耗させられたことを悟るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
アルトリウス・セレスタイト
悪くはないが策の一つくらい持つべきだったぞ
戦況は『天光』で逐一把握
攻撃には煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し阻み逸らし捻じ伏せる
全行程必要魔力は『超克』で“世界の外”から常時供給
天位を起動
纏う十一と束ねる一つを統合強化
無限に廻る原理の、無限量の圧を乗せ打撃で討つ
時と因果を繰り逃れるを許さず
破壊の原理を阻むは叶わず
断絶と否定にて天使との同化を断ち分かつ
俺に届かせるならば、無限を超えて尚、無限に超え続けるのが最低限だ
心して挑め。挑める時間は少ないぞ
油断なく、容赦なく
正面から捻じ伏せる
※アドリブ歓迎
爆発物の爆風がネルソン提督を消耗させる。
その身に融合させた天使の軍団の数は減ってきてはいるものの、そもそもが膨大な数である。
消耗させられたとしても、ネルソン提督の『最大戦力にして最大火力』である単一の存在としての力は未だ健在であった。
傷跡は深いものばかりである。
銃弾に寄るもの、打撃に寄るもの。
あらゆる傷跡が、時間を味方にして猟兵はネルソン提督を追い詰めていく。
だが、それは同時にネルソン提督という七大海嘯に懸ける時間が長引いているという証拠であった。
「悪くはないが、策の一つくらい持つべきだったぞ」
アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)はそう呟いたが、対するネルソン提督は笑っていた。
戦術、策謀、それら全てを捨てたように視えるのは、ネルソン提督の術策の一つであったかもしれない。
此度の羅針盤戦争において重要であるのは時間である。
猟兵は確かにネルソン提督を時間を味方につけて消耗させているが、それは即ち、羅針盤戦争における時間でもある。
ネルソン提督という存在自体が既に戦術。
「持つものが最前線に立つ。当然のことだ。お前の持つ鎧がどれだけ強固出会ったのだとしても、時間は逆巻くことはない」
ネルソン提督は天に浮かぶ天使の軍団が構える光の槍をして、アルトリウスへと手を向ける。
これは時間稼ぎの戦いでしかないのだと。
己の存在自体をして、『侵略形態』へと世界を回帰させるための術策の一つと為すことを知らしめる。
例え、雨のように降り注ぐ光の槍がアルトリウスに届かないのだとしても、それ自体に意味はない。
アルトリウス一人が無事であったとしても、『侵略形態』となった世界は、この世界に生きる者たち全てを滅ぼす。
「故に、お前が如何に原理の改変を行ったのだとしても間に合わぬよ」
光の槍がアルトリウスを撃つ。
けれど、それが届くことはない。時と因果を操り逃れることを許さずとアルトリウスはユーベルコードを輝かせる。
具象化し武装と纏う原理を統合強化した状態、即ち天位(テンイ)足りしめる状態へと移行したアルトリウスはネルソン提督に迫る。
断絶と否定にて天使との同化を断ち分かつ斬撃の一撃を見舞っても尚、ネルソン提督と天使は再び同化する。
「俺に届かせるならば、無限を越えて尚、無限に越え続けるのが最低限だ。心して挑め。挑める時間は少ないぞ」
油断なく、容赦なく。正面からねじ伏せるとアルトリウスは戦場を駆ける。
だが、それでもネルソン提督の笑みは最後まで消えなかった。
「時間をかけろ。それでいい。無限に相手をしてくれるというのなら、願ったりだ。例えそれが、俺の敗北を意味するのだとしてもな――!」
互いに穿つ攻撃が互いに触れることは一度たりとてなかった。
あったのは千日手の如き続く打撃の数々。
衝撃が突風のように島に吹き荒れ、周囲の地形を変えるほどの戦いをしても尚、時間だけが過ぎていく。
如何にしてネルソン提督が死せるのかもわからぬまま、いたずらに時間とネルソン提督の力だけが消耗していく。
それはアルトリウスにとっては児戯に等しいことであったが、無限を越えようとして迫るネルソン提督の笑みだけが羅針盤戦争の先行きに暗雲を立ち込めさせる。
だが、蒼光はそれらを切り裂くように、迸るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…戦術を棄てて背水の陣を敷いてきたか
…敵は死兵。最強のオブリビオンの名に相応しい威容ね
過去の戦闘知識から敵UCの天使銃の銃口から射線を見切り、
銃弾を撃ち落とすカウンターで迎撃してUCを発動
…ならばこそ退きはしない。お前が数多の天使を宿すように、
私もまた多くの人々の想いを背負って此処にいる
敵の銃撃を無数の霊魂を降霊した呪詛のオーラで防御して、
多少の負傷は自身の生命力を吸収して治癒し気合いで受け流し、
超々音速の突撃で敵の懐に正面から切り込み、
限界突破した闇の魔力を溜めた大鎌で敵を乱れ撃つ空中戦を行う
…真っ向勝負よ。七大海嘯ネルソン提督
…お前の"最強"を、"私達"の意志で越えてみせる…!
数多の猟兵が強いた消耗は確かに七大海嘯『舵輪』のネルソン提督をして劣勢を強いていた。
かのネルソン提督は『最大戦力にして最大火力』、それを体現する存在であった。
「……戦術を棄てて背水の陣を敷いてきたか」
不退転の決意をリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は見た。
どれだけ猟兵の攻撃にさらされようとも、ネルソン提督は倒れない。
消耗させられたとしても、倒れないのだ。
天使の軍団の数がどれほどであったのか定かではないが、その身に融合した『天使武装』の強力さがそれを物語っている。
「敵は死兵。最強のオブリビオンの名に相応しい威容ね」
降りかかる重圧は、その小さな少女の身には重いものであったかもしれない。されど、ここで退く理由などリーヴァルディにはなかった。
過去、刃を交えたネルソン提督の分身体。
その戦法、そして手にした銃の銃口から射線を見切ろうとしていた。
「俺は俺の義務を果たすだけだ。最強であろうがなかろうが、俺の持てる最大を持ってお前たちを圧倒する!」
ネルソン提督が凄まじい速度で踏み込んでくる。
リーヴァルディにとって、彼はこれまでの戦いから他の七大海嘯から比べれば接近戦に弱いコンキスタドールであった。
だが、今はどうだ。
有り余る速度。
振るわれる拳。
そして、撃ち放たれる銃撃の重さ。どれをとっても油断ならぬ存在であり、分身体とは一線を画するどころの話ではない。
「ならばこそ、退きはしない。お前が数多の天使を宿すように、私もまた多くの人々の想いを背負って此処にいる」
故に敗けるわけにはいかないのだ。
重たい銃撃を無数の霊魂を降霊した呪詛のオーラで包み込む。
下手にぶつかれば容易に破られてしまうことは想像できた故に、包み込む。それでも衝撃は吸収しきれない。
なんという絶技。
これが戦術を棄てた者の力だとでもいうのかとリーヴァルディは圧倒される。だが、それでもリーヴァルディは前に進む。
一歩前に進む度に己の体を傷つける。
自身の生命力を糧として治癒し、裂帛の気合と共に痛みを無視する。
互いに踏み込む速度は最早音速。
雷鳴の如き空気を突き破る音が戦場となった島に鳴り響く。
「……汝ら、この瞳をくぐる者、一切の望みを棄てよ」
その瞳がユーベルコードに輝く。
代行者の羈束・断末魔の瞳(レムナント・ゴーストイグニッション)と呼ばれる輝きが、周囲に在った死霊や怨霊の魂を聖痕が吸収していく。
左眼が酷く痛む。
それは死者の霊魂と精神同調率による弊害であった。
だが、その痛みに足が止まることはない。止まってはならない。リーヴァルディは知っている。
歩みを止めぬ者。己を囲わぬ者。それが常に限界を超えるということであると知っている。だからこそ、聖痕輝く瞳を見開き、ネルソン提督と激突する。
「生命をとして、己の責務を全うしようとするか、猟兵! ならば、俺はお前を打倒してこの戦争に勝つ楔となろう」
時間だけが、コンキスタドールの味方であった。
『侵略形態』へと至れば、グリードオーシャンは滅びる。
故に回帰するまでの時間を稼ぐことがネルソン提督の『戦術』であった。
「……真っ向勝負よ。七大海嘯ネルソン提督……お前の『最強』を」
聖痕がずきりと痛み、瞳から血の涙がこぼれ落ちる。
闇の魔力がほとばしり、構えた大鎌に貯め込まれていく。
構える業はたった一つ。
放つ斬撃は乱れ打たれ、それらの刃は全てがネルソン提督に叩き込まれる。
「――『私達』の意志で越えてみせる……!」
意志が力を持つというのであればこそ、歪んだ過去を切り払う刃となるだろう。
放たれた斬撃の一撃が空を舞うオブリビオンと猟兵の運命を分かつ。
リーヴァルディは失速するように大地ヘと膝をつく。
凄まじ消耗。聖痕疼く左眼が痛む。
けれど、彼女の背後には失墜し、大地へと倒れ伏すネルソン提督の姿があった。未だ消滅しないけれど、それでもリーヴァルディは越えた。
己の限界と、そして最強と呼ばれたオブリビオンの力を――。
大成功
🔵🔵🔵
神代・セシル
死ぬまで痛みを感じず…つまり全力で彼を死ぬまで攻撃の意味ですか?
動的視力を発揮。先制攻撃を見切り、瞬間思考により回避します。回避難しい攻撃はStarlit Shieldを展開して防御します。
攻撃は最大の防御…私の心眼はあなたの弱みを見つけました。
UCを発動。光の剣レオナルソードに【審判の雷】属性を付加。
敵に急接近し、光の剣により切り込みます。
武器を破壊し、攻撃の主導権を握ります。
同時に左の手から天使に効く【闇と炎の合成魔法】を放ち、
斬撃と共に、全力魔法を用いて彼を高速攻撃し続けていきます。
アドリブ絡み歓迎
七大海嘯『舵輪』の本拠地である島での戦いは中盤へと差し掛かっていた。
ネルソン提督は戦術を棄て、己を単一の『最大戦力にして最大火力』を持つ存在へと昇華させた。
その力は凄まじいの一言で言い表すことができたことだろう。
数多の猟兵達が集って尚、未だ倒せていない。
倒れ伏し、失墜し、穿たれる。
それを幾度重ねても尚、ネルソン提督は立ち上がってくる。幽鬼の如き姿。それは最早人という枠組みを越えた何者かでしかなかった。
「俺は俺の義務を果たす。ただそれだけのために存在している。俺が死ぬまで付き合ってもらうぞ、猟兵」
その瞳は笑っていた。
この存在、この体、そのすべてが一つの術策。
時間をかければ懸けるほどに『侵略形態』へと世界は回帰するための時間を得る。
そうなってしまえば、羅針盤戦争はコンキスタドールの勝利で終わる。
どれだけの数の七大海嘯が喪われるかわからぬが、それでも最後に『侵略形態』へと回帰さえすればいいのだ。
「死ぬまで痛みを感じず……つまり全力で彼を死ぬまで攻撃の意味ですか?」
神代・セシル(夜を日に継ぐ・f28562)のモノクルが輝いた。
それは彼女にとって難しことではなかったように思えた。けれど、相対するコンキスタドール、七大海嘯ネルソン提督の威容は凄まじい。
「そのとおりだよ、猟兵。どちらかが全て喪うまで戦う。全てを得るか、全て喪うかだ」
掲げた手の先に浮かぶ天使達が手にするのは光の槍であった。
それ一本一本が凄まじい威力を齎すことは、島でこれまで起こった戦いで知れる。
故にセシルはその瞳で持って先制攻撃たる光の槍の雨を躱す。考えるだけでは到底躱すことはできない。
それほどでの物量であり、複雑な幾何学模様を描いて飛翔する光槍は回避困難な攻撃であった。
けれど、彼女の思考を支えるのは瞬間に答えを出す圧倒的なまでの演算であった。
あらゆる角度、あらゆる方向から降り注ぐ槍の攻撃。
それらを躱しながら、セシルは確かに気がついた。十全ではない。相当に消耗させられている。身体の傷だけではない。
身に融合した天使の数も相当数が滅ぼされているのだ。
「私の心眼はあなたの弱みを見つけました」
Windows of Heart(ウィンドウズ・オブ・ハート)。
それはセシルの持つユーベルコードの力であった。光の剣レオナルソードを掲げ、雷の力を付加しセシルは駆け込む。
互いに切り結ぶ姿は、まるで激突する火花。
武器を破壊して主導権を握ろうとするセシルに対し、天使達の光の槍が襲う。躱し、斬撃を繰り出し、その超絶為る視覚によってセシルは今、ネルソン提督と互角に戦っていた。
「消耗させられているとは言え、ここまで食い下がるか。だが!」
放つ徒手空拳の一撃がセシルを捉える。
星の力を持つ指輪がシールドを発生させるが、それすらも砕いてネルソン提督の拳がセシルの身体を撃つ。
苦い鉄の味が口に広がる。
けれど、セシルの瞳はネルソン提督を捉えて話さなかった。
左手から噴出する闇と炎の合成魔法がほとばしり、ネルソン提督の顔面を焼く。
「これは、っ!」
「効くでしょう。天使に闇と炎は!」
振りかぶる光剣がネルソン提督の身体を十字に切り裂く。
それは痛烈なる一撃であったが、それでも尚ネルソン提督は消えない。
痛覚なく、そして体に対する異常すらも無力化するネルソン提督は無数の斬撃を受けて尚、健在。
けれど、それでもセシルは剣を力の限り古い続けた。
死せるその時まで、ネルソン提督が止まらぬというのであれば、死ぬまで斬撃を見舞い続ける。
後に続く猟兵のためにもセシルは果ての見えぬ消耗戦へと身を投じるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
名将が滅びを覚悟して向かってきますか。
私も全力を尽くしましょう。
相手の使う天使の銃は恐らくは攻撃力や回数強化。
如何にして先制攻撃を凌ぐか。
先ずは天候操作で大雨を降らし、射撃に不向きな環境作成。
空中浮遊・自分への念動力・空中戦能力で自在に空を舞って残像による分身をばら撒いて幻惑。
第六感と見切りで読んで回避し、結界術の防御結界や天耀鏡の盾受けで弾き、オーラ防御で耐えます。
UC使用可能になれば高速移動に切り替え、ネルソンさんの周囲に闇の属性攻撃・高速詠唱・範囲攻撃で視界を閉ざす闇を作る。
第六感で相手の位置を読み、風の属性攻撃・神罰を籠めた煌月による衝撃波を伴うなぎ払い・貫通攻撃・範囲攻撃で斬ります!
「名将が滅びを覚悟して向かってきますか」
大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)は満身創痍に成りながらも立ち上がり、消耗戦を強いられながらも猟兵へと攻撃の手を決して緩めない七大海嘯『舵輪』のネルソン提督の姿を見やり、神として、猟兵としての決意を固める。
「私も全力を尽くしましょう」
例え、己が滅びるのだとしても、この羅針盤戦争における時間は有限である。
故にネルソン提督は己事態を戦術の一つとして、猟兵に対して時間を稼ぐ消耗戦へと向かうのだ。
「義務を果たす……たったそれだけのことができぬ者もいる。己の義務を知らず、何を為せばよいのかもわからない。そんな人間の方が多いのが現実だ。だからこそ、示さなければならない。持つ者が最前線に立って、示さなければならない。義務とは如何なるものであるのかを」
ノブレス・オブリージュ。
その精神を持ってこそ、ネルソン提督は『天使武装』を展開する。
相対する猟兵に有効なる武装。天使の銃を掲げ、詩乃に向けて放つ。一撃で葬りさる事はできないであろうと判っていても、強烈なる一撃を目の当たりにすれば、人は足をすくめさせる。
だからこそ、放たれた一撃は光条となって詩乃へと放たれた。
「やはり攻撃力を増して来ましたか!」
だが、詩乃は己の持てる権能を発揮する。
天候操作で戦場に雨を降らせ、射撃に不向きな状況を生み出す。さらに空中浮遊で残像を振りまきながら幻惑するのだ。
一撃目は反らすことができた。
けれど、二撃目はどうだ。連射ができないとは考えにくい。故に詩乃は念動力によって空中を駆ける。
あれだけの一撃だ。
結界や盾で受け止めることはできない。
けれど、それでもあの狙いは的確であった。
「躱しきれるものかよ、猟兵! 例え防ごうとしても――」
無駄だと、叫ぶようにして放たれた光条の一撃が残像すらも見に切って詩乃に迫る。
だが、詩乃には覚悟があった。
ネルソン提督にももちろん決死の覚悟があったことだろう。だからこそ、相対する己こそが全力を尽くさねばならぬと考えていた。
張り巡らせた結界が光条の前に霧と消えた。
さらに前面に展開した、天耀鏡が放たれた光条の如き銃撃を防ぐ。そこにオーラを重ねてひび割れる鏡面を補強し、凄まじき一撃を受け止めるのだ。
「確かに、己の義務を識る者ばかりではないでしょう。ですが、人々を世界を護る為、全力でお相手致します!」
詩乃には信条がある。
そう、想いがある。人々や世界を守りたいと願う想いが。
それこそが詩乃の神力を通して顕現するユーベルコード。
神性解放(シンセイカイホウ)によって齎されるは危害ある全てを浄化消滅する若草色のオーラ。
光条の如き銃撃を霧散させ、詩乃は駆ける。
ネルソン提督の視界を埋め尽くす闇色。周囲は闇夜のように暗闇に包まれ、詩乃は敢えて声を上げた。
「この世界のため、人々のため、貴方を斬らせていただきます――!」
闇夜の如き暗闇に煌めく月のように詩乃の手にした薙刀が閃く。
「それがお前の義務だというのか、猟兵!」
斬撃の一撃を防ぐネルソン提督と詩乃の視線が交錯する。
互いが互いを滅ぼさなければならない関係であったとしても、互いに譲れぬものがある。
己の義務のため、激突する詩乃とネルソン提督の力の奔流が暗闇を吹き飛ばし、明滅する衝撃波となって島へと広がっていく。
「それが私に託された願いにして祈り。誰かの平穏を願う者にこそ、義務ではなく! 力が宿るのです!」
放たれた横薙ぎの一撃がネルソン提督へと癒えぬ傷を刻む。
例え、『天使武装』に身を包んでいたのだとしても、その強大な力を切り裂く人々の想いを受けて詩乃は神力の発露を持ってネルソン提督を打倒するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
接近できさえすれば倒せた相手が、
死を恐れぬ兵士となった。良い覚悟だ!
回点号に搭乗、操縦。
シールドを展開し、オーラ防御。敵の攻撃を防ぎつつ、
スラスターの推力移動で後方へ下がりながらジグザグ軌道で回避
神器拳銃の力で雷の力をマシンガンに付与、火力増強、属性攻撃
パルスマシンガン2丁による貫通攻撃の弾幕を放ち、ネルソン・天使共を撃ち払う!
だが、特攻、死兵となった経験なら自分とて負けない!
『ディスポーザブル』加速と瞬間思考力で敵の攻撃を回避し、
撃ち切った弾倉をUCで補充、早業、即座に放つ
死を恐れぬからこそ、自身の損傷には無頓着になる。
いつの間にか死んでる。そういう名誉ある死を、兄弟達を何人も見てきた。
「これほどまでとはな……猟兵。俺の天使兵装を破って尚、これだけの消耗を与えるとは」
七大海嘯『舵輪』のネルソン提督は猟兵達の力を正しく認識していたと言えるだろう。
異常なる海図の解明。
迷うこと無く己達の本拠地を目指して島を開放する手際。
分身体によって彼らと対峙してわかったことがある。彼ら猟兵は、己の為せる業を持って全てを救わんとする。
誰一人として欠けてはならぬと戦場を駆け抜ける。
そこにあるのは一人の兵士としての在り方ではなく、世界を救わんとする意志によって走らされているようでもあった。
「だが、死を恐れぬのは己達ばかりであるとは思うまい」
刻み込まれた傷は癒えない。ネルソン提督にとって、それは今はどうでもいいことだった。痛みを感じず、けれど消耗したとしても未だ力は衰えない。
その瞳に合ったのは己という存在を懸けての時間稼ぎであった。
「接近できさえすれば倒せた相手が、死を恐れぬ兵士となった。良い覚悟だ!」
朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)はキャバリア『回天号』を駆り、聖なる帯の封印のほどかれた天使の軍団の中へと突っ込んでいた。
ネルソン提督は未だユーベルコードによる力で天使の軍団を強化して解き放つことができる。
それはその身に融合させた天使の数が膨大であることを示していた。
シールドを展開し、天使達が組み付いてくるのを振り払いながら小枝子は『回天号』と共に飛ぶ。
スラスターを吹かせ、稲妻の如き軌道で天使達を振り払いながら雷の力を付与したパルスマシンガンの二丁で天使達を打ち払う。
だが弾丸がぶつかっても尚、天使達は迫りくる。
それは鬼気迫るものであり、同時に強化された力の強大さを識る。
「一撃で落とせない……! それに食らいつく……! だが、特攻、死兵となった経験あら自分と手負けない!」
『回天号』の片腕が吹き飛ぶ。
足がやられていないだけマシだと小枝子は瞳にユーベルコードの輝きを灯す。
心の内側から声が聞こえる。
それは『この生命を壊せ』という呟きであった。何度も耳にした声だった。恐怖心を消すためのルーチンワークであったとも言える。
死を恐れよと誰かが言った。
けれど、小枝子は恐れない。
彼女が最も恐れなければならないことは、敵ではなかった。
目的を、存在意義を果たせなかったという悔恨だけを恐れなければならない。故に、その瞳に輝くユーベルコードは、ディスポーザブル(コワレロコワレロコワレロ)。
打ち切ったパルスマシンガンに弾倉が装填される。
一瞬の早業であった。
「死を恐れぬからこそ、自身の損傷には無頓着に為る。いつの間にか死んでる。そういう名誉在る死を、兄弟たちを何人も見てきた」
痛覚がないからこそ、痛みを忘れる。
痛みを忘れるからこそ、己の生命すら駒にできる。容易に賭けることができる。
放つ弾丸が乱れ打たれ、天使達を薙ぎ払うようにして『回天号』は疾駆する。
その瞳に映るのは、ネルソン提督だけであった。
「それは義務を果たしたということだ。己に課せられた意義と義務。それを見事に果たしたというのであれば――!」
「その先に在るのが死しかないというのなら、それを背負うのは自分たちのような存在だけでいい」
故に小枝子は駆ける。
弾丸撒き散らしながら、ネルソン提督に肉薄する。
『回天号』には最早弾丸はない。
突きたパルスマシンガンを投げ放ち、残された片腕を振るう。
「全ての人間に義務などないのだから! 私は私の出来ることを、お前たちを壊すということを、為す――!」
放った『回天号』の拳がネルソン提督を捉え、吹き飛ばす。
腕がひしゃげ、スラスターの噴射が止まる。
けれど、小枝子は、それでも己の歩みを止めない。
「戦って、戦い続けねばと叫ぶ自分がいる。今はそれだけが、自分の生命の義務――!」
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
ご機嫌よう、ネルソン提督。いえ、海での戦いを捨てたのなら提督じゃないか。コンキスタドール『舵輪』の本性といったところかしら?
まずは『天使武装』をどうにかしないと。
あたしを相手にするなら、射撃より白兵用の武器?
とにかく出来ることはやりましょ。折紙の束を空高く撒き散らし、「式神使い」で一気に鷹に変換。『舵輪』の顔を狙って攻撃させるわ。これで『舵輪』の攻撃を逸らさせる。
その隙に『鎧装豪腕』顕現。こちらは「怪力」を掴んで足止めさせる。
目標固定。「全力魔法」雷の「属性攻撃」「衝撃波」の九天応元雷声普化天尊玉秘宝経を叩き込む。
状態異常を無影響化出来るって話だけど、神経に大電流が走っても平気なものなの?
キャバリア、鋼鉄の巨人の拳が七大海嘯『舵輪』のネルソン提督の体を吹き飛ばす。
その一撃は再び、ネルソン提督を『天使武装』によって鎧うには十分な威力であり、吹き飛ばされ大地を転がりながら再び立ち上がったネルソン提督には痛みを感じないまでも、苦々しい思いがありありと浮かんでいた。
「戦い続けねばならないだと……? そんなことは判っている……だが、それでも時として人は戦いをやめたく為るものだ」
それは最強のオブリビオンとも言うべき強大なる力を宿したネルソン提督ですら逃れ得ぬ宿命であったのかもしれない。
片時も戦いを忘れたことはなかった。
頭の中は常に戦術の考証と実際に広がる無数の乱数によって満たされていた。彼の人生の大半が戦いに費やしたものであったかもしれない。
己の義務を果たした結果であると言われればそれまでであるが、それでも己だけで為し得たことはない。
誰かの義務によって支えられるものがあるのだとすれば、此度の羅針盤戦争こそ、己は駒の一つであると自覚する。
「ご機嫌よう、ネルソン提督。いえ、海での戦いを棄てたのなら提督じゃないか。コンキスタドール『舵輪』の本性と言ったところかしら?」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)は挑発するように『舵輪』の本拠地、既に猟兵との戦いによって地形すら変わった大地に降り立ち、薙刀を構える。
「挑発ならば間違っているさ。戦いが終わって平時となったとしても俺の名は依然ネルソン提督だ。変わらないのだよ。俺の頭の中で、戦術が、戦いが俺を俺足らしめているのならば、その名は関係ない」
その身に融合した天使達の力が膨れ上がり、『天使武装』へと変形していく。
それは銃の形をしていた。
白兵戦で来ると思っていたが、今のゆかりにはこれが一番最適であると判断したのだろう。
光条の如き銃撃。
それは式神使いであるゆかりをして、防ぐことの難しい威力の凄まじい一撃であった。
「――ッ!」
折り紙の束を空高く撒き散らし、一気に無数の鷹へと変換し、ネルソン提督の眼前を覆う。
だが、それらの全てが光条の如き弾丸の一射によって薙ぎ払われてしまう。
まるで何もなかったかのように尽くが消滅されてしまう。
「気を逸らすのが精一杯だなんて……!」
驚愕せしめるはその威力である。
これまで数多の猟兵達が消耗させようと戦ってきた。事実消耗しているのだが、それをしても尚、有り余る威力。
だが、初撃は凌いだ。
「無駄だ。お前たちに適した形。これがお前たちを滅ぼす光だと知れ。俺は俺の義務を、時間を稼ぐだけだ」
おのれすらも戦術のうちの一つの喪われる予定の駒にすぎない。
時をかければかけるほどに『侵略形態』へと世界は回帰する。そうすれば、コンキスタドールの勝ちだ。
だからこそ、ネルソン提督は己の戦術を棄て『最大戦力にして最大火力』の存在として猟兵に立ちふさがるのだ。
だが、それを乗り越えてこそ猟兵である。
例え、どれだけ絶望的な状況であったのだとしても。
それでも諦めないのが猟兵だ。
ゆかりは式神使いである。それは言うまでもなく、何かを使役することに長けた存在であるということだ。
鎧装豪腕が顕現し、その腕がネルソン提督の足を掴む。
怪力によって動きを止める。それこそがゆかりの狙いであった。
「目標固定。ちょこまか動けないっていうのなら――! 九天応元雷声普化天尊! 疾っ!」
放つは周囲の視界を阻害するほどの激烈なる落雷。
瞳に輝くユーベルコードの輝きは紫電の如く。
九天応元雷声普化天尊玉秘宝経(キュウテンオウゲンライセイフカテンソンギョクヒホウキョウ)。
それがゆかりの持てるユーベルコードの中で最大戦力にして最大火力。
放つ一撃は天上より全てを撃滅する光。
「神経に大電流が走っても平気なものなの――!?」
それは凄まじい光景であった。
痛覚を持たぬ。影響は受けても、無影響化する。それがネルソン提督が戦術を棄て得た力である。
故に、それだけの極大の電流を打ち込んでも尚、ネルソン提督は健在であった。
しかし、『天使武装』が焼け落ちる。
その身に宿した無数の天使が犠牲になったことだろう。
「恐るべきは、その執念ってところね……!」
何度でも立ち上がる。
死せるその時まで、嘗ての英雄は、今にしても尚その力が健在であると知らしめるように。雷撃の一撃を持って証明するようであった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
戦力の集中投入…兵法の初歩にして王道に回帰するのもある意味では必然なのやもしれませんね
七大海嘯『舵輪』最大戦力…騎士として討ち取らせて頂きます、提督
防御得手とする私に対し、それを貫く力求めるはほぼ必然
センサーでの情報収集と瞬間思考力で銃口の向きと引き金を引く動作見切り、横跳び推力移動で攻撃回避
同時に格納銃器での●スナイパー射撃
狙いは耐性持つ肉体では無く『天使武装』の引き金
再変形されるまでの一時でも使用を困難に
その隙に遠隔操縦で呼び寄せた機械飛竜に騎乗
その状態の貴方には強大な一撃が必要です
先の爆撃の意趣返しという訳では参りませんが…受けて頂きます
飛竜の加速も乗せたUCで突撃
痛覚遮断以前の打撃与え
視界を埋め尽くすほどの雷撃の一撃が七大海嘯『舵輪』のネルソン提督を撃つ。
その一撃でもってしても仕留めきれぬネルソン提督という凄まじきコンキスタドールの力は、数多の猟兵が紡いだ戦いの軌跡をその身に刻み続けていた。
黒煙を上げながら一歩、また一歩と足を踏み出す姿は最強のオブリビオンと呼ぶに相応しいほどの力を有していた。
「戦力の集中投入……兵法の初歩にして王道に回帰するのもある意味では必然なのやもしれませんね」
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は機械飛竜『ロシナンテⅢ』を駆り、空よりネルソン提督を目指す。
対するネルソン提督は、その身に融合した天使の力をもって猟兵に対抗する『天使武装』を展開する。
長大なるライフル。
それこそがこの場において、トリテレイアという猟兵に対する最適解であった。
これまで何度も天使銃へと姿を変えた『天使武装』。ここに来て長大なる銃身を持つものに姿を変えたのは、トリテレイアを一撃のもとに打倒しようという意志があったからもしれない。
「そのとおりだよ、猟兵。戦いとは即ち、総て得るか、総て喪うかだ。そのどちらかを選ばなければ、勝利など得られんさ。戦いとは常にそうだ」
「七大海嘯『舵輪』最大戦力……騎士として討ち取らせて頂きます、提督」
戦場にありて、対する両者の思いは如何なるものであったことだろうか。
片やコンキスタドール。片や猟兵。
立場は違えど、そこにあったのは戦いに対する姿勢であったことだろう。全てを護ると決めたものと、全てを打倒すると決めた者。
両者にあった隔てりは、何物よりも深いものであったかもしれない。
長大なる銃身から放たれる光条の如き一撃はトリテレイアを狙いすましていた。
だが、トリテレイアはアイセンサーによって、周囲の状況から情報を精査し、瞬間的に決断していた。
そう、銃口の向きと引き金を退く動作を見切ったのだ。
人の身であればなす事のできなかった芸当であろう。
ネルソン提督が相対するのはウォーマシンである。正確無比なることに懸けては、これに勝る者はいない。
「躱した……! 見切るか、機械じかけの猟兵!」
だが、光条の一撃は再び放たれようとしている。そこへトリテレイアの格納銃器の一撃が走り、引き金を撃ち抜く。
「武装破壊……『天使武装』の再変形までの一時……! そこを!」
機械飛竜と共にトリテレイアは飛翔する。
加速し、一瞬の隙に駆ける。
「その状態の貴方には強大な一撃が必要です。先の爆撃の意趣返しという訳では参りませんが……受けていただきます」
その手に携えるは、艦船強襲用超大型突撃機械槍(ロケットブースターランス・ウォーマシンカスタム)であった。
穂先から傘状のバリアを展開し、再び再変形した『天使武装』の一撃を耐える。
耐えることができたのは、ネルソン提督の力が消耗していたからだろう。
傘上のバリアが一部欠けたが、それでもトリテレイアは『ロシナンテⅢ』の持つ水力と速度でもって一瞬でネルソン提督へと肉薄する。
「その名を持って偉大なる提督を名乗るであれば――!」
「その名はすでお違うものだと知れ、猟兵!」
交錯する機械槍とネルソン提督の体。
彼は機械槍の穂先を受け止め、さらにトリテレイアがスラスターを噴かせ加速する力さえも押し止める。
大地がひび割れ、トリテレイアの動きが止まる。
機械飛竜の加速をも載せた一撃ですら、防がれる。これがネルソン提督というコンキスタドール。
その瞬間、トリテレイアは諦めるのではなくアイセンサーを輝かせる。
機械槍の特性。
それは彼我の間合いを一瞬で詰めることにある。
故に、今までネルソン提督に与えたのは飛竜の加速に寄る突進力。故に、彼のユーベルコードはここから始まるのだ。
「暴れ馬ならぬ暴れ槍ですが……御してみせましょう! この一撃を持って、貴方の提督としての名への手向けといたしましょう!」
放たれた機械槍の一撃は、受け止めたネルソン提督ごと投げ放たれ、その身をはるか遠くまで吹き飛ばし、隆起した大地へとその身を串刺しにするのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
一切の状態異常を無効化
邪神の天敵みたいな存在だね
いっそ邪神だけ封印するとか
都合の良い能力持ったのが出てこないかなぁ
あら、一心同体ですからそれは無理ですの
その時は晶も一緒ですの
まあそうだよねと思いつつ
こちらも覚悟を決めて戦おうか
銃による攻撃は神気による防御を軸に
ワイヤーガンや空中浮遊で回避を狙おう
攻撃を凌いだら邪神の領域を使用
ネルソンを固定できなくても空気なら固定できるからね
透明な土砂に埋もれたような状態にするよ
それくらいで止まりはしないだろうけど
攻撃や回避の邪魔にはなると思うよ
銃による攻撃を阻害しつつ
接近して石化した腕や足で格闘攻撃を仕掛けるよ
そちらも後には引けないみたいだし
我慢比べと行こうか
投げ放たれるように七大海嘯『舵輪』のネルソン提督は機械槍と共に隆起した大地の壁に串刺しにされるように吹き飛ばされた。
その一撃を受けても尚、五体が残っていること事態が驚異的であることは言うまでもない。
これまで数多の猟兵達が立ち向かい、最強のオブリビオンとも呼ばれる強大なるネルソン提督を打ち払ってきた。
けれど、その度にネルソン提督は立ち上がってくる。
それは何故か。
「俺は、俺の義務を果たす。そう期待されている。いつだってそうだ。俺は、そう在るべきと」
期待に答え続け、そして伝説とまで昇華したのだ。
その名がいつだって示している。過去に歪んだのだとしても己が死しても尚、戦争という事柄においてのみ勝利を齎す存在なのだから。
「一切の状態異常を無効化。邪神の天敵みたいな存在だね」
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)はグリモアの予知を聞いた時、そのように思った。
何故なら、晶の体は邪神が融合している。性別すらも反転した姿になってしまった要因であるがゆえに、状態異常の権能を持つ邪神にとっては不得手の存在であると思ったのだ。
「いっそ邪神だけを封印するとか、都合の良い脳力持ったのが出てこないかなぁ……」
「あら、一心同体ですからそれは無理ですの。その時は晶も一緒ですの」
そんなやり取りがあったわけであるけれど、晶はそうだよね、と諦めつつ覚悟を決めて戦場へと躍り出る。
「来るか、猟兵……」
機械槍を投げ棄て、ネルソン提督は立ち上がる。
ゆらりと立ち上がる姿はまるで幽鬼そのものであった。その瞳には未だユーベルコードの輝きが灯っていた。
『天使武装』――それはネルソン提督が持つユーベルコードにして、体に融合した天使たちによって作り出される対猟兵の武装を生み出す能力である。
対する晶という猟兵。
彼女は言うまでもなく邪神の権能齎す神気によって防御を打ち立てるだろう。
故に、その生み出した武装が放つ弾丸は権能の発動すら間に合わぬ最高速の弾丸の射出。
放たれた弾丸は晶を前にして瞬きすら許さぬ速度で打ち込まれる。
だが、ワイヤーガンと空中浮遊によってランダムに空を駆ける晶を狙うのは容易ではなかったし、同時にこれまで消耗させられ、痛みを感じないとは言え、体は満身創痍である。
「狙いが、定まらないか……だが!」
「粗いね、動きが……! だったらさ!」
晶の瞳がユーベルコードに輝く。全身を神気で覆う。
確かにネルソン提督には邪神の権能は届かない。影響を受けぬ力は、凄まじい。けれど、それ以外ならば権能は機能するのだ。
故に、邪神の領域(スタグナント・フィールド)によって固定するのはネルソン提督の周囲の空気である。
自身の体が封印により石化する速度が上がっていく。
ここからは時間との勝負である。
「俺自身を固定させるのではなく、俺の周りの空気を固定……!」
「そういうこと。透明な土砂に埋もれたような状態って言えばいいかな……けど、その程度じゃ止まらないでしょう」
その言葉通りにネルソン提督は動き出す。
固定された空気そのものを押し出すようにして強靭なる肉体でもって拘束を振り払って晶へと迫る。
「銃は使えんが、拳は使える!」
「それはこっちも一緒さ」
石化した拳とネルソン提督の拳がぶつかる。互いに退けぬ状況。不退転の覚悟があるからこそ、晶とネルソン提督は打ち合う。
最早、ここからは我慢比べでしかない。
拳が互いの骨を砕くように放たれる。例え、痛覚が遮断されていたのだとしても、ここまで接近戦をしいれば天使武装は使えない。
故に晶は徐々に石化していく体をきしませながら、それでもなおネルソン提督を消耗させるように拳を固め、維持を張り合うように振り抜くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ナイ・デス
痛みを感じないだけで、傷は負うのですね
なら、それは……最期まで、全力で戦うため、ですか
憧れます、ね
私も、世界に選ばれた、世界を守る猟兵
最期まで、戦いましょう……!
【第六感】で【見切り】
光を噴いて【推力移動】で避け
そのままネルソンさん向かって【ダッシュ】
【念動力オーラ防御】で数瞬阻めれば、その間に私は先へ
槍を受けても【覚悟、激痛耐性、継戦能力】痛みも、これで死ぬことはないのだからと、止まらず
私も『いつか壊れるその日まで』戦います……!
何度でも再生して、喰らいついてく
【生命力吸収】する光を束ね、手から【レーザー射撃】光剣のように【なぎ払い】
吸収し削り取るように【切断】を
あなたに、骸の海へ還る時、を
己が何のために戦うのかと問われるのならば、七大海嘯『舵輪』のネルソン提督はこう応えるだろう。
「俺の義務を果たすために。期待されるものを最大の戦果によって齎すために。そのために俺は戦う。俺の戦術、俺の力、あらゆるものを持ってしてそれを為すために」
故に彼は最強のオブリビオンとしての力を発露させる。
どれだけ数多の猟兵に消耗させられ、傷を負わされても尚、ネルソン提督は倒れない。倒れることなどありえないというかのように彼は立ち上がり続ける。
拳の打撃の痕が残る体を押し上げ、その手に掲げる光が導くのは天使の軍団が持つ光の槍である。
天上に在りて天使達は皆、光の槍を掲げる。
それは複雑なる幾何学模様を描き飛翔する全天を埋め尽くすほどの膨大な数の槍であった。
放たれれば、その切っ先を向けられたものは消滅する他無い。
躱す以外のすべはなく、先制するネルソン提督にとってこれこそが必殺のユーベルコードであった。
「痛みを感じないだけで、傷は負うのですね。なら、それは……最期まで、全力で戦うため、ですか。憧れます、ね」
ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)は猟兵でありながら、光の槍が埋め尽くす全天を前に呟いた。
憧れを口にした。
凶々しいまでに輝く光であれど、その有り様は憧れを持って瞳が見上げる。
其処に在りしは、かつてあった『ネルソン提督』の名を持つ者ではないかもしれない。だが、それでも尚、その名は燦然と輝く。
「そうだ。そのとおりだ。俺は期待に応えるために、その義務を全うする。故に、ここで俺が捨て駒になることが本望。時間を稼ぐ。そうすることで羅針盤戦争は、お前たちに勝利する」
そう、時間こそがコンキスタドールの味方である。
海図は未だ全容を把握されていない。見事な解析に寄って本拠地の方角は知られているが、こうして己が時間を稼げ稼ぐほどに世界は『侵略形態』へと回帰する。
故に、猟兵の戦力を己という最大戦力に集中させればいいのだ。
「私も、世界に選ばれた、世界を護る猟兵。最期まで、戦いましょう……!」
ナイは走る。
戦場にありて、迸るように降り注ぐ光の槍を躱し続けるのは困難であった。光を噴いて飛ぶように駆ける姿に追従する光の槍が彼の体を貫く。
念動力のオーラ防御ですら易易と貫く光の槍。
阻むことのできない一撃は、まさに最強のオブリビオン。
だが、どれだけ槍に貫かれてもナイは足を止めない。
覚悟がある。
痛みを得てもなお、貫くべき覚悟がある。
どれだけの傷みが己を襲ったのだとしてもナイは止まらない。これで死ぬことはないのだからと、己に言い聞かせてネルソン提督へと迫る。
その姿は、ネルソン提督が猟兵と戦う姿と重なったことだろう。
「お前も『最期』まで戦う者か……! ならば、天使共よ、応えろ! アレは此処で滅ぼす!」
掲げたネルソン提督の掌に集まる極光の如き輝き。それは天使達をして凄まじき力を発露させる。
光の槍が再び降り注ぐ。
けれど、ナイはその瞳を見上げたままつぶやくように覚悟を持って、瞳をユーベルコードに輝かせる。
「私も『いつか壊れるその日まで(リジェネレイター)』戦います……!」
私は、死なない。私は、死ねないと、ナイの心から湧き上がるユーベルコードの輝きは光の槍に貫かれても尚、瞬時に再生させる聖者の聖なる光に包まれ、何度も再生していく。
「受け続けるかよ……! だが……まだだ!」
光の槍を受け止め続けながら、ナイの光が束ね光剣へと束ねられていく。
それは極大なる輝き。
放たれる光剣の一撃はまるで直線状に走った光線のようにネルソン提督を貫く。
薙ぎ払った一撃は、ネルソン提督の生命力を吸収し削り取るように切断せしめようとし、その片腕を弾き飛ばす。
「あなたに、骸の海へ還る時、を」
数多の猟兵が紡いだ戦いの軌跡があった。
難攻不落にして最強のオブリビオン。
ネルソン提督の片腕。それを漸くにして落した瞬間であった。誰もが欠けては為し得ぬことであったことだろう。
誰もが義務を果たした。
十全に、為し得ぬと思われたことを為す。その輝きを放つようにユーベルコードの光が、ネルソン提督を打ち据えるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
さて……『死ぬまで痛みを感じずにあらゆる状態異常を無効化』ね……
…それはまた決死の覚悟という事か……油断ならないな…
…改造装甲車【エンバール】に乗ってネルソンへと接近う…
…天使達からの攻撃を運転で回避しながら攻め込もう
…途中から自動運転モードでネルソンへと接近するように設定…
…天使達の一斉攻撃が来たらそのタイミングで爆破術式による迎撃を織り交ぜて発生する土煙で車を隠して飛び降りるよ…
…そのまま車が囮になっている間に心理隠密術式【シュレディンガー】を発動…姿を隠すとしよう…
…そして密かに接近して【起動:海神咆吼】の効果範囲へネルソンと天使達を巻き込んで発動…大火力で焼き尽くすよ…
片腕を喪っても、七大海嘯『舵輪』のネルソン提督はうめき声一つあげなかった。
痛覚はすでにない。
元より決戦形態『トラファルガー・モード』へとなっている時点で痛覚も状態異常のすべてを無効化する。故に、ネルソン提督は立ち上がる。
死せる時は今ではないというように立ち上がってくる。
その姿をして、彼は言う。
「俺の義務を果たす。俺がこの戦争における役割を滅びたとしても果たす」
それは己の生命を投げ出してこそ得られる時間であったことだろう。
元よりコンキスタドールにとって時間こそが味方である。
世界を『侵略形態』へと移行させることさえできれば、グリードオーシャンは滅びる。そうなれば猟兵がどれだけ己たちを滅ぼしたところで戦争の勝利は揺るがない。
ネルソン提督は戦術を棄てたが、己事態が一つの戦術として機能していることをしる。
生み出された天使達の瞳を覆う聖なる帯の封印が次々とほどかれていく。
そこへ飛び込んでいくのは改造装甲車『エンバール』であった。
天使達はそれが猟兵のものであると知る。
「さて……『死ぬまで痛みを感じずにあらゆる状態異常を無効化』ね……それはまた決死の覚悟ということか……油断ならないな……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は『エンバール』を自動運転モードに切り替えながら、ネルソン提督へと一直線に走る。
天使達の総攻撃によって『エンバール』の装甲が次々とひしゃげていく。
それほどまでの猛攻。
これまで幾人もの猟兵達によってネルソン提督は消耗させられているはずだった。けれど、決死の覚悟を持つものほど恐ろしいものはない。
「硬いな……天使共の封印を解いてもこれか」
ネルソン提督は嘆息した。
だが、その意志は未だ折れることはなかった。天使達の乱舞が『エンバール』を襲う。
爆破術式に寄る迎撃が天使達を失墜させるが、それでも天使達が止まることはない。
周囲に土煙を上げながら、『エンバール』は走り抜ける。
天使達が『エンバール』に殺到している間、メンカルは心理隠密術式『シュレディンガー』によって姿を隠す。
初撃はどうあってもネルソン提督にある。
故にメンカルは如何にしてもそれを凌ぐ必要があった。
戦術を棄てた『最大戦力にして最大火力』。最強のオブリビオンとも呼ぶことのできるネルソン提督を撃つにはこうするしかなかったのだ。
「座標リンク完了。魔女が望むは世界繋げる猫の道……」
メンカルのユーベルコードが輝く。
戦術を棄てた者に戦術でもって対抗する。それは皮肉でしかなかったけれど、それでもメンカルの瞳はネルソン提督へと座標を固定する。
彼女が呼び出すは、ワープゲート。
顔を覗かせるのは飛空戦艦ワンダレイ。
「戦艦……! ここに来て戦術を持ち出すか、猟兵!」
ネルソン提督の視線は『エンバール』に釘付けであった。故に、メンカルは最期まで姿を隠す。
この戦いにおいて、戦術こそがネルソン提督を打倒せしめるものであると知る。例え、この戦術が通用しないのだとしても、ネルソン提督を消耗させる。
死せる時まで痛みを感じぬという恐るべき力を持つネルソン提督を打倒するために、後につなげるように、起動:海神咆吼(ラン・ワンダレイ・ハウリング)のユーベルコードは輝く。
「主砲、一斉射!」
放たれるは天使たちを巻き込んでネルソン提督をも焼き尽くす大火力。
降り注ぐ砲撃が雨のように天使たちを吹き飛ばし、ネルソン提督をも巻き込んでいく。
それは持てる最大火力でもって、最大戦力に対抗するメンカルの最大の一撃であったのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
安里・真優
【心境】
「天使の軍団…もう見飽きました。」
いい加減に沈んでください。
【行動】
決戦形態…なら私がとる手は一つです。
全力の一撃でその力を上から破る。それだけです。
すみませんが、ダコタンとカメゴン…それにマンボンは私の護衛お願いします。
天使をお願いします。
ダコタンは触腕で捕獲
カメゴンはブレス攻撃で迎撃を
マンボンは全身の炎で近づく天使を焼却してください。
私は…魔法の準備です。
先制攻撃を三匹の協力で凌ぎつつ、その間に魔力を溜めて行きます。
多重詠唱…同時に同じ魔法の詠唱を重ねて威力を最大に!!
普段の倍の魔力にいつもの倍の詠唱時間…そして三倍の気持ちを込めた。
全力の魔法シャークネス・ボルテックスです!!
「天使の軍団……もう見飽きました」
そう呟いたのは、安里・真優(巨人の冒険商人・f26177)だった。
見つめるさきに在るのは戦艦から放たれた大火力に寄る砲撃の爆炎。そこから天上へと至るように飛び出す天使の軍団。
その天使の軍団の手に在るのは光の槍であった。
最盛期より比べれば、その数は明らかに減っている。
これまで数多の猟兵達が紡いできた戦いの軌跡の結果であったことはいうまでもない。
そう、真優はもう見飽きたのだ。
空を覆う天使の群れ。彼らが描く光の軌跡は槍となって幾何学模様を描きながら複雑に飛翔し、真優へと放たれた。
彼女のペットであるカメゴンのブレスが光の槍を吹き飛ばす。
ダコタンは触腕でそらとぶ天使たちを捕獲し、引きずり下ろす。近づく天使はマンボンの炎が焼き払い、真優は真っ向からネルソン提督の放つユーベルコードを迎え撃つ。
「決戦形態……私が取る手は一つです。全力の一撃でその力を上から破る。それだけです」
彼女の瞳がユーベルコードにかがやく。
魔力を溜める。周囲で三体のペットたちが闘っている。激戦も激戦であろう。
彼らの協力がなければ、真優は魔力を溜めることすらできなかったことだろう。
彼女が紡ぐ詠唱は時間をかければ懸けるほどに威力が無限に上昇していく。
故に真優は集中する。
光の槍が己のみを貫こうとも、痛みが走ったとしても集中を切らさない
「海よりも深きモノ…水よりもなお尊きモノ…深海の悪夢となりて、敵を討たん。その力は深海の鼓動。かの力は深淵の使者。その力を解き放て」
深淵の力を宿した無限破壊波動が象る鮫の姿。
それが彼女のユーベルコードが紡ぐ魔力弾の姿である。
普段の倍の魔力に、さらに倍の詠唱時間。
そして、この世界を護ろうとする気持ちを三倍込める。
どれだけ想いを込めたとしても足りないだろう。
故郷を思う気持ち。
例え、この世界が他世界を侵略するための存在でしかないのだとしても、真優はこの世界で生まれ、この世界で生きてきたのだ。
「この世界を護るために――全力の魔法、シャークネス・ボルテックスです!!」
放つは無数の魔力弾の群れ。
解き放たれた渦巻く鮫の群れが天使達を、そしてネルソン提督を巻き込んで大地をえぐっていく。
島の地形が代わり、えぐられた大地は雨が降れば池となるだろう。
それほどまでの威力を持って、真優は己の故郷を守るための気持ちを解き放ち、ネルソン提督を打倒するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
話を聞けば確かに最強だがな、弱点がないわけじゃない
痛みは動作に支障をきたすが、本来は体への危険信号だ
それをなくして本当によかったか?
SPDで判定
眼帯を外した状態で挑む
まずは銀腕を【武器改造】で幅広い盾のような形状にして【盾受け】【オーラ防御】で身を護る
攻撃は義眼のメガリスで行う
橙の災い:爆破【爆撃】を【範囲攻撃】【全力魔法】【属性攻撃】で広範囲を爆破
同時に【2回攻撃】で藍の災い:圧壊【重量攻撃】を【範囲攻撃】【全力魔法】【継続ダメージ】を使い、徐々に重量を上げて気づかせないようにする
本命は【重量攻撃】による【継続ダメージ】、痛みを感じないなら侮って本命に放置するはず
魔力弾の群れが天使ごと大地を抉るように放たれる。
地形を変えるほどの一撃を受けて尚、七大海嘯『舵輪』のネルソン提督は倒れない。消滅しない。
片腕を欠損しても尚、立ち上がってくる。
その執念は如何なるものに由来するのだろうか。
嘗ての名を持つ者と同じ末路をたどるのだとしても、そこにあったのは戦争という状況を勝利で納めるための唯一の戦術であったのかもしれない。
「俺の義務を、果たす……俺は未だ立っているぞ、猟兵」
執念、というものがあるのが猟兵だけではないことを知らしめるかのような圧倒的な重圧。
それが未だネルソン提督からは発せられていた。
「話を聞けば確かに最強だがな、弱点がないわけじゃない。痛みは動作に支障をきたすが、本来は体への危険信号だ」
ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)はメガリスである義眼を覆う眼帯を外しながら戦場を駆ける。
すでに地形は散々に変わってしまうほどに戦いは苛烈さを極めていた。
だが、それでも尚倒れぬネルソン提督に恐れを抱く暇はない。
ここで時間を食えば食うほどにネルソン提督の思惑通りでしかない。
眼帯のように覆う封印を解除された天使の群れがルイスを襲う。
銀の腕を幅広い盾のように変形汗ながら、オーラの力で天使達の攻撃から身を守る。
「それをなくして本当によかったか?」
「ああ、俺は俺の義務を果たすことができる。命を賭すのがお前たちだけではないのだ、猟兵。俺の生命一つで戦争に勝利できるというのであれば――!」
ネルソン提督が咆哮する。
その身は片腕を喪って、満身創痍。
それでもみなぎる重圧は、最強のオブリビオンと呼ぶに相応しいだろう。死しても尚、伝説的な勝利の権化。
その圧倒的な存在感を前にルイスは何を思っただろうか。
勝利の二文字を得るために己の生命すら駒とする。
時間を稼ぐ。
ただそれだけのために己という最大戦力を猟兵にぶつける気概は、いっそ敬意すら抱くことができたかもしれない。
「――それは捨て鉢じゃないのか」
ネルソン提督は嗤っていた。これをそう見るのならば、それは与し易いものだと。
故にルイスは義眼を輝かせる。
ユーベルコードに寄って強化された橙に輝く災いによって天使達を爆破し、その分厚い層を突っ切っていく。
それでもなお追いすがる天使たちに向けるは藍の災い。
圧潰の力が天使達を失墜させ、身動きを封じる。
「痛みを感じないからこそ、お前は気が付かないだろう」
ルイスは義眼の瞳、メガリスを輝かせ続ける。
圧潰の力がほとばしり、その視界にネルソン提督を納め続けることによって、彼の体をきしませていく。
僅かな継続ダメージ。
ただそれだけのためにルイスは瞳から血の涙を流しながら、ネルソン提督を追い詰める。
これで打倒できるとは思っていない。
痛みを感じぬからこそ、この徐々に蓄積していくダメージを無視する。
多少の消耗など気にも懸けないだろう。
その驕りを、突く。
「痛みをなくしたからといって、誰もが最強になれるわけじゃない。痛みを知ってこそ、得る強さだってあるだろう――!」
大成功
🔵🔵🔵
須藤・莉亜
「前に見た時よりも良い匂いがするね。」
Argentaを周囲に展開し、それらを足場に立体的に動いて天使達を迎撃する。
強欲髪で天使達の血を奪って回復しながら、近くにある槍や二振りの大鎌で天使達を攻撃して行く。
殴った天使を足場にして移動するのもありかな。
悪魔の見えざる手はそんな僕のフォロー。彼の真の出番はもうちっと後で。
あ、天使達の攻撃を凌ぎつつ敵さんの位置もちゃんと把握しとくのも忘れずに。
攻撃を凌げたら悪魔の見えざる手に合図を出し、僕を天使達の少ない方へぶん投げてもらって敵さんらから距離を取ってからUCを発動。
血を捧げに捧げて、太陽を滅ぼす為の一撃を敵さんにぶっ放す。
「天使諸共滅びろ。」
須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は僅かに鼻を鳴らしながら、その香りに微笑んだような気配があった。
その瞳に何が映るのかを問うことは最早野暮であったことだろう。
彼の瞳の先には片腕を欠損し、数多の猟兵達が積み上げてきた戦いの軌跡が刻まれていた。
空を舞う天使の軍団の封印は既にほどかれていた。
寿命を削るユーベルコード故に、刻一刻と七大海嘯『舵輪』のネルソン提督の時間を喪わせていた。
「前に見たときよりも良い匂いがするね」
銀の槍が周囲に浮かぶ。
莉亜の嗅覚は、決戦形態『トラファルガー・モード』へと至ったネルソン提督が極上の獲物のように感じていた。
天使達もそうだ。
今まで見てきた天使の中でも、その味は極上であった。
言い表すこともできないほどの芳醇な力の味わい。強欲髪にて天使達の血を奪いながら、二振りの大鎌を振るっては天使達を切り刻んでいく。
「容易く斬れる……そうか、もう君も大分消耗しているんだね」
力が足りないのだろう。
尽く打ち破られ、消耗しているがゆえに十全の状態ではない。
普通の敵であるのならば、撤退するのが常であろう。そして、ネルソン提督がそれをできないオブリビオンではないこともまた判る。
後退しようと思えばできたはずだ。
それをしないのは何故か。答えはもう知っている。
「俺の義務を果たす。消耗していようが、いまいが俺の生命はこの戦争に置いては戦術の一つ」
猟兵の時を消耗させる。
『侵略形態』へと世界を移行點せれば、この戦いはコンキスタドールの勝利で終わる。故にネルソン提督は己の生命を投げ出して、時間を稼ぐのだ。
「だろうね。この戦いの勝ち筋は、それしかない」
莉亜は天使を踏み台にしながら、悪魔の見えざる手の上をも足場にして飛ぶ。
天使の群れを切り抜け、目指すはネルソン提督。
それを阻もうとするように天使の群れが集まってくる。狙い通りであった。敵の防御、その集団を集めることこそが、莉亜の戦術であった。
ひとまとめにしたほうが一緒くたにできる。
悪魔の見えざる手が莉亜の体を掴んで、後方へと放り投げる。
それまでとは真逆の行動。
だというのに、ネルソン提督は、その狙いがなんであるのかをわかっていたようだった。見上げる瞳にあったのは、さらなるユーベルコードの輝き。
封印をほどかれた天使たちが、その身から現れさらなる壁として展開される。
「――はっ! 天使諸共滅びろ」
莉亜は己の血を代償にする。
吹き荒れる血が魔法陣のように紋を描き、空中に顕現する。
それこそが莉亜のユーベルコード。
――陽滅魔砲(ヒュブリス)。
太陽憎しと咆哮するような魔力の奔流が猛り狂うように空を染め上げていく。
ネルソン提督を守るようにして展開した天使達の輝きこそが陽光の輝きであるというのならば、莉亜はその尽くを討ち滅ぼす。
放たれた極大なる魔蝕の一撃が天使とネルソン提督を穿つ。
大地に大穴を穿ち、迸る魔力の奔流が莉亜の血を吸い上げ、これまで蓄えてきたであろう敵より奪いし血を消耗させていく。
「味わえないからこそ、尊いものだってあるさ……だから――くたばれ」
最強は最強のままに。
莉亜は溢れる激情のままに魔砲の一撃を出し尽くすように、ユーベルコードを輝かせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
シーザー・ゴールドマン
トラファルガー・モードとはなかなか洒落ているね。それとも覚悟を示しているのかな?
まあ、どちらにせよ今回は義務を果たさせる訳にはいかないがね。
敵POWUC先制及び決戦形態対策
痛みがないというのであれば負傷により動きが鈍ることはないと想定した上で動けばいい。そう難しいことではないよ。
変形した天使武装を見た瞬間にその性質を見切って対応。
(第六感×瞬間思考力×見切り)
躱すか、あるいはオーラセイバーの属性を有利なモノに変質(属性攻撃)させて斬る、または逸らす。
さて、そろそろ骸の海に還る時間だ。
『ウルクの黎明』を発動。超音速で粉微塵にする強撃を。
(怪力×貫通攻撃×鎧砕き)
魔砲の一撃が大地を抉る。
そのクレーターの如き大地に在りても尚、七大海嘯『舵輪』のネルソン提督は立ち上がっていた。
その身に宿す天使達。
融合した天使達の力を武装として顕現させるユーベルコードに輝きながら、欠損した片腕を庇うようにして形成されるのは腕と一体化した刃。
「トラファルガー・モードとはなかなか洒落ているね。それとも覚悟を示しているのかな?」
その決戦形態の名をシーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)はそう評した。
ネルソン提督の名を知る者であるのならば、トラファルガーの名が示す意味を知るだろう。
嘗て在りし過去。
そこにあったネルソン提督の名は伝説的なエピソードとして語られる。
故に勝利の権化。
己の生命が喪われるのだとしても、こと『戦争』という名において彼の名は勝利を意味する。
「まあ、どちらにせよ今回は義務を果たさせるわけにはいかないがね」
「いいや、俺は俺の義務を果たす。それは何があろうとも覆ることはない。それが俺という存在であるからだ」
肉薄するネルソン提督とシーザーのオーラセイバーが激突する。
火花が散り、紫電が膨れ上がる。
けれど、相対するのはネルソン提督の『天使武装』である。
互いに性質を変える刃を持っているのだとして、それは常に互角の鍔迫り合いであった。
「痛みがないというのであれば、負傷により動きが鈍ることはないと思っていたが……なるほど、最強のオブリビオンと言うに相応しいね」
だが、とシーザーは戦いに在りて尚微笑んでいた。
目の前のネルソン提督。
その力は最早十全と呼ぶことはできないだろう。
『天使武装』によって欠損した片腕を補っているが、動きに精彩を欠くものであることは間違いない。
むしろ、あれだけの満身創痍でありながらも、この動きを維持していることこそが決戦形態たる所以であろう。
「そんなものに興味はないさ。最強など、勝利の前には霞む」
『天使武装』の刃が次々と性質を変える。
その度にシーザーの持つオーラセイバーも声質を変え、互いに激突しては凄まじい衝撃波を『舵輪』の本拠地、その地形が変わるほどの激戦の中を駆け抜ける。
「さて、そろそろ骸の海に還る時間だ」
シーザーのユーベルコードが輝く。
長く続く戦い、その夜明けを告げるような極大なる真紅のオーラがシーザを包み込んでいく。
己の持つ強大な魔力を纏う姿は、ウルクの黎明(デウス・ポテスタース)の如く。
対するは『トラファルガー・モード』。
必ず命を落とすが、それでも勝利を齎す福音の名。
シーザは、それを差し置いてでもネルソン提督が持つ戦術としての『義務』を果たさせぬと飛翔する。
真紅のオーラが軌跡となって空に刻まれ、超音速へと達したオーラセイバーの一撃が、『天使武装』そのものを砕いて粉砕する。
「楽しませてもらったよ、ネルソン提督。君は君の義務を果たせないであろうが、その働きは確かに……」
一騎当千と呼ぶにふさわしく、勝利の権化として名を残すことになるに相応しいものであったとシーザーは己の剣につぶやく。
きっと彼の耳には届いていないかも知れない。
けれど、それでいい。
その名で呼ばれた彼はいつかの誰かにすぎない。
過去に歪んだがゆえに、その名の持つ義務もまた変容しているであろうから――。
大成功
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ギヨーム・エペー
決戦形態か。きみも必死だな。いいや、煽っているわけじゃないさ
おれはこの海が好きでなー。だから、守るために。きみから世界を奪わせてもらう
その為ならば命を削ろう。凍てつく血脈を滾らせ、半魔半人の狭間に潜む狂気を認め、我が身を今一度支配しよう
汝、何を犠牲に何を生かす。天使の銃は何を貫く。お互い、為すべきことを為そうぜ
覚醒したからって、単に戦闘能力が向上しただけだ。装甲が固くなったわけじゃない。ならば、わしと同じくして攻撃力を増してくるか?
息を止め、弾丸を見つめる。生きもの以外の波長がゆがめる事は初めてだが、弾道にぶれが生じれなくとも学習力で回避を
今だけは無限に生まれる氷槍を扱う片手だけは、死守しよう
『天使武装』が砕けた。
それは決戦形態『トラファルガー・モード』が猟兵達によって遂に破られたという証拠でもあった。
その身に融合した無数の天使。それこそが『トラファルガー・モード』の力の源泉でもある。
数という戦術ではなく、『最大戦力による最大火力』をもって猟兵に当たる。
七大海嘯『舵輪』のネルソン提督にとって、それこそがこの場における最適解であった。或る意味で、その義務は果たされていると言っても過言ではなかったが、ここまで猟兵達が対抗してくるとは予想できなかったのかも知れない。
「見事だと、は言わぬさ。まだ、俺は此処に在るからな……」
ゆらりと立ち上がるネルソン提督の姿は最早満身創痍。
片腕は欠損し、満身創痍であった。
立っているのも、消滅しないのもまた不可思議なる光景であると言えたであろう。 しかし、残された『天使武装』は僅かであった。
欠損した腕を庇うように『天使武装』は銃の形へと変わる。
「決戦形態か。きみも必死だな。いいや、煽っているわけじゃないさ」
ギヨーム・エペー(Brouillard glacé calme・f20226)は黒衣を翻し、ネルソン提督に対峙した。
決して嘲っているわけではないのだと言ったのは、己の語り口がそのように聞こえてしまうかも知れないという危惧があったからだ。
今から相対する者に対する敬意であったのかもしれない。
「おれはこの海が好きでなー。だから、護るために。きみから世界を奪わせてもらう」
「それが貴様の義務か。猟兵」
互いに視線が交錯する。
放たれた弾丸がギヨームを捉える。貫かれた痛みは凄まじいものだった。目にも留まらぬ早打ち。
けれど、ギヨームは瞳にユーベルコードを輝かせる。
「La nuit du coucher du soleil arriva.」
日は沈む。
けれど、己の凍てつく血脈は闇に沈まず。燃え盛るように滾る。氷魔さえも焼べる冷炎が体中を駆け巡っていく。
ギヨーム・エペーはダンピールである。
半魔半人の中にある狂気を認める。命を削ることすら厭わぬ心がある。
それが人の心であるというのならば、己の体は魔性そのもの。
世界のために戦う。
それは狂気にも似たものであったことだろう。己のためにこそ生きるのが生命であるというのならば、世界を救うというのは相反することさえないが、それでも生命を投げ捨てることと同義であった。
「汝、何を犠牲に何を生かす。天使の銃は何を貫く。お互い、為すべきことを為そうぜ」
今此処に謳うがいい。
その生命を、Sang Vampire(ヴァンパイア・ブラッド)――その紫の瞳を輝かせながら、己を穿つ弾丸を見据える。
「それを義務と呼ぶ。俺は俺に課せられた期待を!」
「わしはわしが守りたいもののために!」
息を止める。
放たれた弾丸は超高速。
此処に至りて、ネルソン提督は必ず弾丸を当てることを選択していた。回避不能為る弾丸で、ギヨームを此処に足止めする。
他の島には行かせない。
そうすることが、彼の生命という戦術であった。
『侵略形態』へと世界が移行さえすれば、コンキスタドールの勝利である。故に、ここに長く、一刻でも長く猟兵を押し止めることこそが、ネルソン提督の『必勝』であった。
故に、ギヨームは駆ける。
その瞳に弾丸の回転を見つめ、その波長を歪める。いや、無理だと判断した。すでに一撃を受けている。
ならばこそ、その弾丸を躱す。
視たのだ。
瞬くすること無く、一瞬すらも永遠に感じさせるほどに。
故に、頬を掠める弾丸と共にギヨームはネルソン提督の懐に入り込む。それは一瞬であった。
勝負が決まったのもまた一瞬。
手にした氷の槍。
そろれこそが、黒衣に身を包んだギヨームが嘗ての英雄の名を持つ、義務を果たせと叫んだ男へ送る手向けであった。
「これで終わりだ。世界は護る。わしが、俺が好きだと言った海を護る。そのために、その伝説を越えて征く――」
放った氷槍が最強のオブリビオンとも呼ばれたネルソン提督の体を刺し穿つ。
氷の華のように穿たれた槍がネルソン提督の体を消滅させていく。
死せるときまで痛みはなかったことだろう。
故に、ギヨームは黒衣を翻し、その氷の華をこそ嘗ての英雄に贈るのだった――。
大成功
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