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羅針盤戦争~第四の死闘、未来を握りし銀河の白騎~

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #七大海嘯 #カルロス・グリード #オブリビオン・フォーミュラ #四の王笏島 #執筆はNot先着順です(詳しくはMSコメも御覧ください) #プレイング受付締め切りました #MSコメに追記有(今回は申し訳ありませんでした……!

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#MSコメに追記有(今回は申し訳ありませんでした……!


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●確率は演算で"因果"へ変わる
「――今回ばかりは、熾烈なんて表現ができない戦いになるかもしれない」

 いつにもまして真剣な面持ちで、地籠・陵也(心壊無穢の白き竜・f27047)は招集に応じた猟兵たちへと口を開く。

「みんなのおかげで蒼海羅針域の開拓が進み、オブリビオン・フォーミュラ『カルロス・グリード』の2つ目の本拠地四の王笏島を発見することができた。だが……」

 『カルロス・グリード』の分身はそれぞれの世界に応じた力を操ることができる。
 例えば、『一の王笏』はダークセイヴァーのオブリビオン由来の力を。『三の王笏』はUDC由来の邪神の力を――といったように。
 ……そして、この『四の王笏』は。

「多分、俺よりもみんなの方がよく知っているんじゃないだろうか。かつて銀河帝国攻略戦で戦った、"白騎士"の持つ未来予測演算能力――それが、『四の王笏』が持つ能力だ」

 かつて猟兵たちをとてつもなく苦しめた銀河皇帝の下僕たる『白騎士』、奴の持っていた未来予知にも親しい予測演算能力の秘められた超AIが埋め込まれた『白騎士の鎧』を纏い、あらゆる未来から自らが確定で行動できる未来をほぼ100%に近い確率を以てその手へ引き寄せるのだ。
 故に、無策では決して勝てはしない。
 陵也はこの時まだ猟兵でなかったが故、当時の実際の戦いを目の当たりにしたワケではない。だがそれでも嫌でもわかる。
 下手すれば冗談抜きに自分が仲間たちを死地へと追いやってしまうような結果にしかならないと。
 猟兵たちの目にも、予知内容を告げる陵也の手が先程から震えが止まらないのがわかるだろう。
 その震えをぐっとこらえて話を続ける。

「倒す方法は"相手の未来予測の力を超える速度で未来を予測する"……無茶な話と思うが、それぐらいのことをするしかない。あいつが作り上げた未来という"因果"をブチ壊す。
 どんなに絶望的な確率でも、それを今まで手繰り寄せて戦ってきたのが俺たちだろう?
 だからこの予知の話をした。みんなならきっとそのゼロに近い確率を引き寄せられると信じている。
 ……四の王笏を倒して、そして生きて帰ってきてくれ。もし倒せなくても、絶対に、絶対に生きて帰ってきてくれ。約束だ」

 かくして猟兵たちは出撃した。
 ……彼らが四の王笏島に降り立った時、悪夢の再来とも呼べる死闘が幕を開ける。


御巫咲絢
 正直に白状します、ボスのフラグメントを見たMSの第一声が「えっどうやって倒したの……???」でした。そんな自分は猟兵歴がまだ1年きてません。
 こんにちはこんばんはあるいはおはようございます!
 はじめましての方ははじめまして、御巫咲絢と申します。当シナリオご閲覧ありがとうございます!
 御巫のシナリオが初めてだよって方はお手数ですがMSページをご覧の上以下にお目通しをお願い致します。

 四の王笏島開きましたね!!戦争シナリオ三本目をお届けします。
 未来を予知するオブリビオン・フォーミュラの分身との死闘です。文字通りの死闘です。
 今回ばかりは判定めちゃくちゃ厳しくなります!!ここ重要!!
 予めご了承とお覚悟の上プレイングのご投函をお願い致します!

●シナリオについて
 当シナリオは「戦争シナリオ」です。一章で完結する特殊なシナリオとなっています。
 また、このシナリオには以下のプレイングボーナスが存在しています。

●プレイングボーナス
 敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。
 また、しない限り必ず🔵🔴🔴苦戦か🔴🔴🔴失敗になる。 ←超重要です!

●プレイング受付について
 2/11(木)8:31から、とさせて頂きます。
 開始日以前にご投函頂いたプレイングは全てご返却致しますのであしからずご了承ください。また、ご再送頂いても人数次第ではキャパシティ的にお受けし切れないかもしれません。
 その為プレイング人数が8人を越えました場合は不採用になる場合もありますので、予めご了承の上プレイングを投げて頂きますようお願い致します。

 それでは、皆様の未来を変えるプレイングをお待ち致しております!
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第1章 ボス戦 『七大海嘯『四の王笏』カルロス・グリード』

POW   :    収束する運命の斬光
【対象の未来位置へ放たれる貫通レーザー】が命中した対象を切断する。
SPD   :    ディアブロ・オーバーブースト
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【纏う白騎士の鎧による未来予測】から【判明した敵の攻撃を回避し接近、光剣の斬撃】を放つ。
WIZ   :    デストロイマシン零式
戦闘力のない【66機の動画撮影ドローン】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【正確無比な未来予測シミュレーション】によって武器や防具がパワーアップする。

イラスト:hoi

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 カルロス・グリードはその場に静かに佇む。
 鎧の持つ、否、精確には鎧に備え付けられた超AIによる未来予測演算は既にこの『四の王笏島』が猟兵たちに見つかることを予測していた。
 故に彼は一切動揺しなかった。いや、猟兵の力を考えれば「ここまでは可能性として予測にいれるのは当然のこと」故に動揺する必要はなかった、といった方が正しいだろう。

「麗しの姫君が恐れし"グリモア"……それを握るのだ、一筋縄で行くなどと甘いことを言うつもりはない」
『猟兵、あと40秒後に島に到着。エンゲージします』

 鎧のAIが淡々とアナウンスする中、玉座から腰を上げる。

「くるがいい、猟兵共。我の勝利で終わるという未来の結末を書き換えると思い上がったのだ――その力を示してみせよ」
リーヴァルディ・カーライル
…お前は私ではなく予測した未来の私を攻撃している

…ならば、その殺気を捉え自身の回避動作を予測すれば、
お前が見ている凡その未来は読めるというもの

武器改造を施し大鎌を鏡面の刃を持つ双剣化して切り込み、
今までの戦闘知識と経験から"未来の私"への殺気を見切り、
攻撃予測点に残像が生じる超高速の早業で魔鏡の刃をなぎ払い、
光線を切断し乱反射させて敵UCを受け流し、
余波と陽光を"影精霊装"の闇のオーラで防御してUC発動
限界突破した生命力を吸収する月光で戦場を覆い、
魔力を溜めた双剣で敵を乱れ撃つ

…正確無比な攻撃ね。それ故に、見切るのも容易い

…今度は此方の番よ。未来を予測してもどうしようも無い現実を見せてあげるわ



●洗練されし技術は
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、対峙したカルロスの視線の先を見やる。
 その視線はこちらに向いていた。島に上陸した猟兵たちを迎え撃つべく、目の前の敵を見据えている。

 ――否。
 "見せかけている"。このたった数秒の邂逅から確信できる程に。

「……なる程ね」

 一つの事実に気づき含み笑う。

「ほう、随分と肝の据わる……いや、それとも未来が判りきっている故の自嘲か?」
「さあね?どちらかは既に未来が見ているのではないかしら」

 リーヴァルディの大鎌が彼女の手によって鏡面の双刃へと姿を変える。
 構えられたそれが自らの顔を綺麗に映し出しているこの光景も、当然カルロスは予測済みであった。
 そう、このまま彼女はこちら側に単純にも斬り込んでくる――ならばそれに対して反撃をすればいい。
 カルロスが白騎士の鎧の超AIにて見た未来と寸分違わぬ動きをするリーヴァルディへと、天上から一本のレーザーが降りかかり、

「!」

 一切の迷いなき剣筋にも似た正確無比なる一撃が急所を貫く。

「呆気ない、この程……」

 この程度か、そう言おうとした。
 確かにリーヴァルディは予測通りの位置にいた、急所を確かに貫いた……ハズだ。
 だが彼女は立っていて、その鏡面の刃でレーザーを薙ぎ払っている。貫いたハズの急所から血を流すことなく。

「……何?まさか座標がズレていたとでもいうのか」
『否定。当観測結果の座標とターゲットの現在座標は一致。算出された行動も一致しています』
「ならば何故――」
「……お前が攻撃しているのは、"私ではない"」

 カルロスの視線からリーヴァルディは彼が何を見ているのかを察知していた。
 彼は"未来しか見ていない"。白騎士の鎧が予測した結果の中にいるリーヴァルディを見て行動をしているのだと。
 現在のリーヴァルディがどう行動するかを完全に見切っている故に、最終的に予測された結果のみで判断し行動している……つまりどういうことか。
 故に殺気も"今のリーヴァルディに向けられてはおらず、予測した結果にいるリーヴァルディへと向けられている"ということになる。
 彼女の猟兵としてこれまで戦い、培ってきた戦闘の知識と経験は最早"予測された自身の行動に対して向けられる殺気"を見切る。
 それを捉えた上で自身の回避動作にどのようなものが求められるのか――それを予測すれば擬似的にだがカルロスが見ているものを同じものを見ることができるという、戦士として極致とも言うべき領域へ足を踏み入れていたのだ。

「予測通りに動く……正確無比な攻撃ね。それ故に、見切るのも容易い」

 その擬似的に垣間見た未来を予測し、必要最低限の行動で。未来が違わぬと錯覚させる為に残像を生じさせる程の速度でリーヴァルディは刃を振るい、レーザーを薙ぎ払った。
 ほぼ正確な予測をするとはいえ、AIはAI。一度に処理する情報量は定められているし処理速度もその時の状況に影響を受ける。
 ほんの僅かでも処理落ちをすれば、その処理落ちした間の情報は欠落する可能性は高い――リーヴァルディの動きはまさにその僅かな処理落ちを生じさせるも同然の行動だったというワケである。

「……!」

 カルロスは目で語る。――"認めぬ"と。
 再びリーヴァルディへと向けられた予測位置への正確にして無比なる閃光、だがそれもまた同じ方法でリーヴァルディは見切り、魔鏡の刃にて切断した上で刀身で受けた。
 結果何が起こるか?簡単だ、光の反射である。
 乱反射したことにより最早陽光とも違わぬ影響を戦場に齎したその閃光を、リーヴァルディは『聖霊鎧装』の放つ闇のオーラにて受け止めた。
 溢れる闇のオーラは戦場を夜に染め上げ、紅き月が昇る――ユーベルコード【限定解放・血の神祖(リミテッド・ブラッドドミネーター)】がここに発動したのである。
 当然、カルロスが見た未来にこのような光景はない。

「……何故だ、何故予測できなかった」
『原因と思しきウィルスやバグ検出数、ゼロ。CPU稼働率正常、メモリ容量正常。原因が特定できません』
「何だと……?」

 特定できない理由にカルロスは気づかないだろう。
 極致に達した戦闘技術は最早AIの計算と何ら変わらないが、同時にAIの予測では捉えられない結果を算出することも。
 無我の境地とは、そういうことなのだと。

「……今度は此方の番よ。未来を予測してもどうしようもない現実を見せてあげるわ」

 限界を越え生命力を吸収する赤き月の光の下、リーヴァルディの魔鏡の刃が煌めく。

「く……」
『警告。回避不能。防御行動を推奨します』
「何……!?」

 AIが見せる予測結果にカルロスは動揺を隠せない、だが再計算しても計算が変わることはなく。
 リーヴァルディの言葉通りの"予測してもどうしようもない現実"が、カルロスを地に叩きつけた――

成功 🔵​🔵​🔴​

ジェイ・ランス
【WIZ】※アドリブ、連携歓迎
■心情
銀河帝国の"白騎士"、一度戦ってみたかったんだよねえ~
いやいや、まさかこんな所でお目見え出来るとはね?
模造品とはいえ、実力は本物。全力でいくぜ。

■戦闘
相手のUCが発動したのを確認し、ドローン展開を確認したのちにUCを展開します。そののちに行動を開始。全武装(一斉発射)をもって攻撃(鎧無視攻撃、鎧砕き)します。

……さて、あんたの未来予測には穴がある。
一つ、あんた動く活躍・苦戦する必要がある事。
一つ、ドローンがそれを撮影する必要がある事。
どちらが欠けても未来予測は成り立たない。オレはそれを封殺するだけだ。
どちらにせよ、借り物の能力じゃ、オレには勝てねえよ。



●予測された未来という"概念"の破断
「銀河帝国の"白騎士"、一度戦ってみたかったんだよねえ~」

 未来を予知する白騎を見に鎧ったカルロスを前にしても尚、ジェイ・ランス(電脳の黒獅子・f24255)は普段の調子を崩さず飄々としていた。
 彼は銀河帝国攻略戦以降に猟兵となった者の一人であり、白騎士のことは当時の猟兵たちから聞いた話やデータベース上でしか知らない。
 故に興味はあった。未来を予測する演算の力が如何なるものか……

「いやいや、まさかこんな所でお目見えできるとはね?」
「そうか、ならせいぜい堪能していくがよかろう。時期にその調子も保てなくなるだろうがな」
「んじゃ遠慮なくそうさせてもらうかな~。模造品とはいえ実力は本物。――全力でいくぜ」

 紅い瞳に一瞬だけ無機質的な虹の光が宿る……電脳魔術の行使だ。
 そうして姿を現したのはおよそ全長7m程にも及ぶ巨大なサーフブレイド……の姿をした可変式対艦概念破断剣"ツェアライセン"。
 まるで自身ら人の形をしたものが小人であるかのように錯覚するその概念兵装を目の当たりにしてもカルロスは当然揺らがない。
 もちろん、未来を見て知っているからこそである。

『ドローン、展開します』

 カルロスの周囲に0と1で描かれた電脳魔法陣が展開され、ドローンが次々と姿を現した。
 その数にしておよそ66機、その全てに実装されたカメラがあらゆる角度からジェイとカルロスを撮影している。
 ふーん、とジェイはそれを値踏みするように見やるだけでまだ動こうとはしなかった。
 彼はこれらを見ただけであることに気づいたのだ。
 しかしカルロスは見えるまでに垣間見た未来からそれも相手の確定行動と見て先手を撃つ。

「!」

 どこからともなく放たれたレーザーが"敢えて真横をかすめるように"通り過ぎた。
 着弾地点から放たれる高熱とその衝撃から上がる煙ににジェイは視線を向ける。
 その視線を向ける動作が目に入るや否や、カルロスは次に光剣を生み出し斬撃を見舞った。
 文字通り光の速さでやってくるそれに反応するにはタイミングがあまりにも遅く、ジェイは直撃を受ける。
 ――だが、全く気にも留めないかのように振る舞ってみせた。
 確かに痛みは感じるが、動けなくなる程ではない。

「……ふむ」

 ジェイのその表情は、確かにカルロスが垣間見た未来の中にありここまでは想定通りに動けている。
 だが、次のAIの演算に時間がかかっているようにも見え、カルロスは離れている距離をさらに空けることを選択しゆっくりと下がる。
 ドローンの撮影によりより正確無比な予測結果が期待されるハズなのだが、と思いながらも決して表情を変えないジェイに対し。

「その一撃を食らっても平然としているとは、戦士として称賛に値すると言えるか?」
「お、そりゃどうも。まあこれぐらいの痛みは平気だしね。……さて、一つ話を聞いてくれない?」
「辞世の句ぐらいは止めないでおいても構わん。好きにしろ」
「んじゃお言葉に甘えて……今のでオレ、わかっちまったんだよな」
「ほう?」
「あんたの未来予測には"穴がある"」

 その一言はカルロスが眉を顰めるには十分だった。
 確かに現状こちら側が有利というのに、ジェイはニヤリと不敵に笑っているのも釈然としない。

「我の耳が遠くなったワケではないようだ。耄碌でもしたのか、猟兵よ」
「いいや?オレは事実を述べてるだけだけど?」
「面白い冗談を言うものだ。事実と言うならばそれだけの根拠はあるのであろう」
「簡単さ。一つ、あんたが動き活躍・苦戦する必要がある事。一つ、ドローンがそれを撮影する必要がある事。どちらが欠けても未来予測は成り立たない。なら、オレはそれを封殺するだけだ」
「笑わせる。どうやって――」

 ――がしゃん。
 何かが地に落ちる音がした。
 それはこちらへと転がるように。カルロスがその眼で嫌でも捉えられてしまう位置に、落ちた。

 ……先程呼び出した動画撮影ドローンが。

「何……?」
「あれ?もしかして本当に今のこの光景を撮影してると思ってた?機械の動作は定期的にチェックした方がいいよ、"いつどこで壊れているか"わかったもんじゃないぜ?」
「――まさか、貴様」

 カルロスが上空へと目を向ける。
 13基もの巨大なサーフブレイド――ジェイのユーベルコードによって複製された"ツェアライセン"が円卓を囲うように並んでいるではないか。
 【OP:Dreizehn_Schwarz_Löwe(オペラツィオン・ドライツェン・シュバルツ・ローヴェ)】、凡そ91秒もの間、あらゆる敵勢体と認識したオブリビオンの能力、あるいはオブリビオンを媒体とする機能・装備が動いているという"事象"を"破断"する。
 一日に二度と使えぬそのユーベルコードを発動させる為の時間稼ぎに、敢えてあの時攻撃を受けて"予測通りだ"と油断させていたのだとこの時カルロスはようやく気づいた。
 計算が遅れていると感じた時点で気づくべきだったものに、気づかなかったのである。

「未来予測とかそういった類、持ってると無敵になってる気分が味わえる。気持ちいいからついつい浸って、細かいところを気に留めなくなる――よくある話だよね」

 ジェイは電脳魔術でさらに自身の武装を呼び寄せる。
 630mm仮想電磁加速砲塔(ブリッツカノーネ)、対戦車/対化物機関砲(ローヴェシュトゥント)、重力偏光式全方位光線(ラィヒターレーゲン)、ユーベルコードにより展開された13基の"ツェアライセン"。
 そして、手にはフォールディングマシンピストル――それらが全てカルロスへと矛先を向ける。

「まあ、どちらにせよ模造品――借り物の能力じゃ、オレには勝てねえよ」

 張り上げも囁きもしない、淡々とした声で告げる。
 ジェイの持つ全武装が一斉に発射された瞬間、四の王笏島から眩い閃光が迸った。

成功 🔵​🔵​🔴​

星川・アイ
予測を超える予測、か……
ゲームでさえ頭が痛い事だけど、やるしかない

ジェナスで出撃
まずスカイアイを射出し鎧に対してハッキングで未来予測の阻害を試みつつ、スレイプニルの射撃で回避を誘う
接近してきたら予め組み込んだ機体の装甲排除機能を作動、広域に渡って飛散する装甲で足止めと反撃を同時に仕掛けるよ(武器改造・鎧砕き・範囲攻撃・体勢を崩す・カウンター)
それでも向かってくる場合に備えて剥き出しの部位にオーラを纏わせて致命傷を防ぐね

そうして敵の攻撃を凌いだら、次の予測をされるよりも早く機体やスラスターを最大稼働させて即時UCでケリをつけにいくよ(早業・限界突破)

予測を上回るの機動、無茶だけどこれなら……!




「――ほう、キャバリアか」

 カルロスが興味深そうな視線を向ける。

「海賊なだけに、お高そうなモノには興味あるんだね?」
「海賊というのはそういうものだ。富と宴と、そして武勇――その三つを求める。汝は我が武勇の礎に、そのキャバリアは我らが富の一つに迎え入れる。それが我の見た未来よ」
「……なら、その未来が本当に現実にできるのか見せてくれるよね!」

 ジェナスの背部増設コンテナから放たれるはスカイアイ――偵察用の小型無人航空機。
 その数機が静かに佇む様子をカルロスはただ眺める。値踏みするかのように。
 
「モードA!」

 展開直後にアイは『XS-11Bスレイプニル』の引鉄を引く。
 狙いを定めず乱射されたビームライフルの閃光、その軌道先をカルロスは全て見切っていた。
 この光景は全て"白騎士"の鎧に予知された内容と何ら相違なく、どう移動して避けるべきなのか超AIからデータが直接脳へと送られればあとは最小限の動きで回避するだけ。
 カルロスの身がふわりと宙に浮かび、まるで舞うようにそれら全てをかわした後左手に光剣を生み出し、真っ直ぐにアイへと接敵する。

「(きたね……!)」

 元より『スレイプニル』による乱射は牽制にして相手の動きを誘う為のもの。
 そして相手もそれを知った上で接近を試みていることはアイの目から見ても明らかだ。
 ならば"相手が想定しているであろうこちらの動きの通りに”やってやろうじゃないか。
 この手合に対しては下手にがむしゃらに動くより、相手の思い通りと思わせることにこそ勝機を見出すべきなのだ。

「コード入力!アーマーパージ!」

 『ジェナス』の躯体に取り付けられた装甲が剥がれ、広範囲に飛散!

「なる程、だが――」

 カルロスが纏う鎧はそれすらも予知していたと言わんばかりに飛びかかる装甲の破片を軽々といなす。
 回避し、光剣で切り払い、装甲を失い無防備となった『ジェナス』へと。
 ここまではカルロスの予知に見えている光景であり、確率は100%彼が握っていると言っても過言ではなかった。
 この後接近し、剥き出しとなったパーツを光の斬撃にて破壊すれば終わる。その未来を確信してカルロスは一切の迷いなき一撃を振るう――

「……!」

 しかし、その斬撃が命中したところで初めて"予測とは違う展開が訪れた"。
 カルロスが見た予知では、このまま致命傷に至りジェナスは一度爆散し終わる展開だった。
 だがジェナスは、アイはその斬撃に屈することなく、火花を上げながらもそこに立っている。展開したオーラの防壁によって斬撃が致命傷に至るのを防いだのだ。

「どういうことだ……?バグでも起こしたとでも」
『予測結果が外れました。再度予測し、シマ、予測、よそ、ヨ、yyyyyyyyyyyyyyyyyyyy――』
「何……!?」

 カルロスが超AIの挙動に驚きを隠せない姿を見てアイの口から笑みが溢れる。

「ふふ……一か八かの賭けだったけど、案外何とかなるもんだね!」
「――あの小型無人機か!」
「ご明察!AIに対してのハッキングは常套手段だって覚えておいた方がいいよ!」

 火花が散る勢いを越えてスラスターが作動。限界を超える速度でアイは『ジェナス』を飛翔させる――!

「これで墜とす!『スレイプニル』モードB!!【クトネシリカ・ドライブ】、出力全開ッ!!!」

 ビームライフルからビームサーベルへと変化を遂げた『スレイプニル』を手に、常人では決して見切れぬ勢いの斬撃が繰り出された。
 回避を試みるカルロス、だがしかし超AIはハッキングからの脱却ができておらず座標の予測すらままならない。
 ならばと光剣にて受け止めようとしても、一撃を防ぐ間に三撃、四撃と見舞われれば防いだところで意味はなく、鎧の破片は飛び散った。
 『ジェナス』が散らすその火花に紛れるように……

成功 🔵​🔵​🔴​

ジェイミィ・ブラッディバック
超AIの究極の対処法をお目にかけましょう

UCで呼び出した12機のセラフィム・リッパーと共にキャバリアで出撃
全機密集隊形で布陣
フィールドバリアのリミッター解除、出力限界突破で初撃に備えます
バリアが突破される瞬間にバリアを爆破、被撃墜を偽装してキャバリアから脱出
敵をグラップルで羽交い締めにしてハッキング
超AIをジャミングし敵のアクセス権を奪い、未来視を封じつつ超AIのプログラムコードを情報収集し私のシステムに書き込むことで超AIそのものを入手
超AIは私とセラフィム隊でクラウドコンピューティングし未来演算の精度を向上
以降の敵の動きは全て見切る
全機一斉射撃、集中砲火

略奪者が略奪されるとは皮肉なものです


アハト・アリスズナンバー
白騎士……未来を確定する能力を持った銀河最強存在。
データベースにて把握しておりますが、機械が相手であるならば付け入る隙はあります。

66機のドローンに対してハッキング、およびクイックドロウによる弾幕のマヒ攻撃と目潰しでドローンをショートさせる事を狙い、予測シュミレーションの作業時間を遅らせて出来る限り時間稼ぎします。
同様にUCを発動。未来予測自体を無効にして強化の無効かも図りましょう。
相手の攻撃には激痛耐性と継戦能力を使用。さらにドローンをグラップル弾で掴んで敵を盾にする事で防御を図ります。
防御不可能な攻撃は第六感で事前に察知し、リミッター解除して動きを俊敏に。
アハトコード。これが私の切り札です



●博打と芝居は何をする?確率詐欺だよ。
 カルロスは静かに天空を見やる。
 遥か上空から、まるで大気圏を突破するかのようにやってくるそれに対し、光の剣を構えて飛翔し――光の如き速さで斬り捨てた。
 爆散する音が響く中、そっと地に降り立つカルロスの前には、一人の猟兵が立っていた。

「白騎士……未来を確定する能力を持った銀河最強存在。データベースにて把握しておりますが……」

 アハト・アリスズナンバー(8番目のアリス・f28285)は確認した過去のデータを脳内で反芻させる。
 銀河最強と謳われた存在も、過去に猟兵たちが撃破したのは確かだ。
 そしてその時の対策もデータベースにて記載されている。そして何よりも重要なのは――

「(――機械が相手であるならば、付け入る隙はあります)」

 そう、確実性のある未来を予測して検知するのはカルロス本人の能力ではなく、カルロスの身にまとう鎧の超AIによるものなのだ。
 あくまでAI、機械による人工知能の産物であるならば手を入れることで崩れ去る可能性は十二分にあるのだ。

「死の未来を恐れぬか。良かろう」
『ドローン、展開します』

 0と1で描かれた電脳魔法陣から姿を表す66機もの撮影ドローン。それらのカメラ全てが戦場とアハト、カルロスをみやっている。

『座標、目標、検知確認。これよりシミュレーションを開始します』

 全ドローンから一斉にアナウンスがされると同時に真っ先にアハトが動く。
 携行型のビームライフルからアリスズナンバーネットワークへと接続、エネルギーをチャージして牽制射撃を放っていく。
 カルロスはふむ、と値踏みするようにその行動を見た直後、必要最低限の動きでそれをかわした後アハトに勢いよく接敵。
 薙ぎ払うように振るった光剣が、アハトの身体を切り裂く。だが、アリスズナンバーで最も戦闘に特化したアハトはその程度で怯みはしない。
 痛みに顔を顰めることも、声を上げることもせず引き続きビームライフルにて弾幕を放ち牽制する。

「無駄とわかっていながらもよく抵抗する。次にそれで何をするかは――ん?」

 周辺から機械のショート音が響く――ドローンからだった。
 アハトのビームライフルの射撃を数機程モロに浴びたことにより機能を損失してしまっているようだ。
 だが、数機損傷したところで問題はない。現在も未来予測のシミュレートは滞りなく進行している……そう、そのハズだった。
 突如残る全てのドローンからショートする音が響き渡り、"白騎士"の鎧からアラートが発せられたのである。

『エラー発生。36秒前より電波妨害により全未来観測システムがダウンされています。再起動完了まであと61秒』
「何……!」
『原因となる電波の発信源を検出します』

 そう言ってモニターに映し出されたのはまさしく目の前にいるアハト本人であった。
 発信源としてターゲッティングがされているのは彼女の心臓に当たる部分。

「心臓からの電波だと……?」
「――アハトコード。これが私の切り札です」

 ユーベルコード【アリスオブタイムパラドクス】。アハトの心臓に該当するパーツから発せられるあらゆる未来の可能性の波動が電波となり、カルロスの纏う鎧の超AIに干渉をしかけたのだ。
 ただしこれに97秒という制限時間があり、それを超過して使用すれば死に至る諸刃の刃であるが……アリスズナンバーであるアハトに事実上の死は無い。
 オリジナルアリスが生きている限り、アリスズナンバーのネットワークを経由してアハトのこれまでの記憶と戦闘能力を複写した別個体が現れる。
 彼女にとって使いすぎれば死ぬという代償は現時点代償にはなり得ないのだ。
 だが、その情報はカルロスは知る由もない。となれば?

「――ならば、その心臓に杭を突き立ててくれる」

 当然彼は心臓を狙って攻撃を仕掛けるワケだ。
 放たれたレーザーは未来予測の力を失ってはいれど確実に、的確にターゲッティングした上でアハトを狙う。
 それに対するアハトの対策は瞬時にビームライフルの弾を換装、グラップル弾という特殊な弾に変えてドローンを狙い撃つことでこちらに引き寄せ盾にした。

「く……!」
「仮にも海賊として海を開拓してきたのであれば、それに頼らずともある程度の勘で動けそうなものですがね」

 アリスズナンバーランスに持ち替え、アハトはカルロスに接敵。その槍を突き立てんと前に出す。
 焦燥に駆られるカルロスは光剣でその一撃を受け止めはしたものの反応が遅れ、突き出された時の衝撃をモロに喰らうハメになり吹き飛ばされた。

「ぐ……!」
『再起動まであと20秒――』

 しかし同時に【アリスオブタイムパラドクス】の制限時間が訪れようとしていることを超AIが告げる。 
 ならばあと20秒を凌げば逆転する可能性は大いにある。それまでの時間を稼げば――
 カルロスは接敵をやめ、後方からレーザーによる弾幕での牽制に切り替える。

『あと10秒。9、8――』
「く……」

 まるでスコールと言っても指し支えないその弾幕に流石のアハトも手こずらされることとなる。
 あと5秒でユーベルコードの効果が切れる……そうすれば奴は再び未来予知ができるようになってしまい、勝機を掴むことが難しくなってしまうだろう。
 近づけないのを確信し、カルロスはレーザーの弾幕を止め再び光剣を握った。

「このままでは……」
「あと少し足りなかったな、猟兵――」
「――と言うと思いましたかね?」
「何――っ!?」

 アハトのユーベルコードの効果が切れるまさにその瞬間、カルロスは背後から唐突な羽交い締めを受ける。

「いやあ、流石にひやひやしましたよ。無事間に合って何よりです」

 背後から姿を現したのはジェイミィ・ブラッディバック(脱サラの傭兵/開発コード[Michael]・f29697)であった。

「バカな、貴様は先程――」
「そうですね、キャバリアに乗ってセラフィム・リッパー呼んで突撃仕掛けようとしたら先制仕掛けられてあっさり沈みましたね。"キャバリアは"」

 最初にカルロスが迎え撃ち爆散したのはジェイミィの乗っていたキャバリア『JM-E』。
 正確に言うと、恐らくカルロスが想定している通りの展開と思わせる為に、ジェイミィはわざと防御用に展開したバリアをわざと爆破させることで撃墜を偽装。
 そしてカルロスが地に下り、アハトとの戦闘に気を取られているタイミングでキャバリアから脱出。
 四の王笏島の反対側からバックアタックを狙ったのである。
 アハトの【アリスオブタイムパラドクス】の制限時間内に辿り着けなければジェイミィ自身もまんまと返り討ちに遭ってしまう文字通りの大博打。
 ユーベルコード【SERAPHIM LEGION】で呼び出したセラフィム・リッパー12機を背後に配置し、砲撃させることをブースト代わりにして限界まで加速させた結果ようやっと間に合ったという形であった。

「すみませんねアハトさん、私のわがままを聞いてもらいまして……」
「まあ結構痛かったしキツかったですけど成功すれば結果オーライです。それに私がジェイミィさんでも欲しいと思いますし何より結構なリターンになりますから」
「く……ワケのわからんことを。AI、未来予測の再開を――!」

 白騎士の鎧から反応はない。

「どうした!何故反応しな――っ!?」

 先程まで羽交い締めしていたジェイミィがぱっと手を離したことによりカルロスはまた体勢を崩した。

『『プログラム起動完了。未来予測演算開始します』』

 二重に重なる超AIのアナウンス。
 一つは再起動を完了したカルロスの白騎士の鎧、もうひとつは――ジェイミィから。
 カルロスの頬から脂汗が滴る。先程の羽交い締めの間にこのウォーマシンは、白騎士の鎧から超AIのプログラムコードを盗み出していたのだ。
 これで条件はほぼ互角となるのである。

「……同じモノを用意しただけで倒せるなどと思い上がってくれるなよ……!
「そうですか?では――超AIの究極の対処法をお目にかけましょう」

 ジェイミィはセラフィム・リッパーのAIに自身のシステムを同期させる。
 合計13機によるクラウドコンピューティングにより向上された未来演算の精度は白騎士の鎧たった一つで行うよりも正確なものを、あちらを上回る速度で導き出した。
 故に。

『3.68秒後に敵対勢力の攻撃が発射されます。回避可能確率0.04%。防御行動を推奨します』
「何……!」

 カルロスの見える未来は全てジェイミィとセラフィムリッパー、そしてアハトによる一斉射撃を見舞われる結果に上書きされる。
 ジェイミィの言う"超AIの究極の対処法"により、カルロスの未来予測は事実上封印された。
 自らが勝利するという未来を手にする確率は、博打と芝居というそれぞれの行動によってわざと見せられていたものに過ぎなかったのだと、噴き上がる炎の中でカルロスは嫌でも思い知らされるしかなかったのである。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アリス・セカンドカラー
戦闘時の僅かな時間の“予知”なぞ達人の“読み”となんらかわらない。
深い集中で体感時間を引き伸ばし(瞬間思考力/時間稼ぎ)、神懸かり(降霊/肉体改造/限界突破/リミッター解除)の後の先(早業/先制攻撃)の剣戟結界の盗み攻撃で“予測された未来”を略奪し“新しい未来”を切り開く!これがUCと区別出来ない程に練り上げた私の結界術よ。
そして、先制攻撃を凌ぎきれば私の剣術は神憑りの神域に至る。
「神仏降霊神憑り 捌の型ーー」
それは洪水を神格化した災害の化身。それを再現する怒涛の連撃で蹂躙する奥義。その名は、
「ーー八岐大蛇」
未来予知してなお防げるものではない災害、神域の洪水の如き暴力で呑み込む(捕食)わ



●未来を略奪せしめしは
「白騎士の未来予知……確かに強力で厄介ね」

 アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗のケイオト魔少女・f05202)はかつての銀河帝国攻略戦を思い出しながらカルロスと対峙する。
 あの時の自分には白騎士の力を凌駕し得る程の決定打を持っていなかった。

「でも――戦闘時の僅かな時間の"予知"なぞ、達人の"読み"となんら変わらない」

 あれから2年もの時を経たのなら、同じように決定打を持っていないワケがない。
 猟兵は日々、進化する。さまざまな戦いが、さまざまな経験が、彼女たちを強くする。
 そうしてたくさんもの積み上げを経た結果、アリスは最早カルロスの未来予測に対しそう言い切ってみせる程にまでに成長していた。

「ならば、その言葉に相違がないかを証明して見せよ。猟兵よ」

 カルロス、そしてアリス双方の動きを逃さず捉える撮影ドローンが戦場を取り囲う。
 カメラを一斉に向けられる中、先手を切ったのはカルロスだ。
 ターゲッティングを示すレッドライトがアリスの心臓部辺りの位置を照らし、ダーツで狙うかのように、そして乱れ撃つようにレーザーが放たれる。

「……」

 アリスはすぅ、と息を吸う。深呼吸し、深く、深く集中する。
 身体全体に呼吸を巡らせれば巡らせる程、目の前に迫りくるレーザーの雨が段々と勢いを削いでいるように見える――本来なら光速で飛来するモノを肉眼にて見切ることができる程に、鈍いと思った。
 体感時間が伸びたのを感じると同時にアリスは降霊術式を展開し神憑る。

 そして――

「何……?」

 カルロスは目を丸くした。
 レーザーがアリスに直撃し、予測通りとなった……そう認識した刹那、まるで結界に弾かれるようにレーザーの雨はかき消えたのだ。
 アリスからすれば体感時間数分程の出来事だが、彼からすればたった数秒にも満たない間のこと。例えオブリビオン・フォーミュラであろうと驚きは隠せないだろう。

「貴様、いったい何のユーベルコードを」
「言ったでしょう、僅かな時間の"予知"なぞ達人の"読み"となんら変わらないって」

 神憑りの後アリスは剣戟結界を展開。結界内に投影された剣を持ってカルロスの見た予知を"盗み取る"ことで超AIが予知した未来を"なかったことにする"した上で剣戟結界でレーザーの雨を凌ぎ切ることに成功した。
 体感時間を引き伸ばし、神憑ることで自身の肉体と思考の限界を越える思考力と視覚を手に入れたことによって彼女の予測は未来予知と違わぬ領域にまで達している。
 いかなる科学も極めれば魔導も同然と言われる、ならばその魔導は極めれば何と同一になる?それは、神の権能に他ならない。
 それもそうだ、神憑るとはそういうこと。未来予知という神霊が持つにも等しい権能に親しい力を今のアリスはその身に宿しているも同然だった。

「"予測された未来"を略奪し、"新しい未来"を切り開く!……これが"ユーベルコードと区別できない程に練り上げた"私の結界術よ」
『未来予測結果にエラー発生。使用者に相応しい未来を検出できません』
「く……!」

 予測された未来をその権能も同然の技術にて盗み取られ上書きされたカルロスに最早術はないだろう。
 このアリスにとってはとてつもなく長く、カルロスにとってはあっという間の数秒を乗り切ったことにより、アリスの剣術はまさに神憑りの極致、文字通りの神域に達する――!

「神仏降霊神憑り 捌の型――」

 それは未来予知をしても尚防ぐことはできぬ災害そのものを神格化させし、災いの化身。
 神域より溢れ出る洪水の如き暴力の具現。

「――八岐大蛇」

 その八つの首が目にも留まらぬ勢いで迫りくる圧倒的な暴力の如き怒涛の連撃が繰り出される!!

『警告。このままでは身体損傷率7割を突破。重傷化の恐れがあります』
「ぐ……く、おおおおお……ッ!!』

 カルロスにこの攻撃を避けられる未来はないし防ぎ切る未来もない、全てアリスによって"略奪された"故に。
 あらゆるモノを略奪してきた略奪者は、己が領分としていた略奪行為によって返り討ちに遭うという皮肉な展開となったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクル・クルルク
【農園】の皆さんと一緒に
未来を予測するだなんて、とんでもない力の持ち主ですが……
ルクル達の力で、あなたが予測した未来を変えてみせますよ

対象の未来位置へレーザーが放たれるのでしたら、必ずルクルの位置に放たれるのですよね
ならばこの場で受け止めます! 『盾受け』とユーベルコードで召喚した大勢の騎士達、
使い魔のニクスに張ってもらった守護の『結界術』に『オーラ防御』も重ねた『全力魔法』で防御に徹します
万一、周りの皆にも被害が出そうでしたら騎士達に『かばう』ように指示を

白羅くんにも手伝ってもらって、なんとか相手の先制攻撃を凌げたら即反撃です
騎士様、レーヴァちゃんやレモンちゃんに続いてやっちゃって下さい!


蛇塚・レモン
【農園】
蛇塚わくわく武闘派ファーム、ファイヤァーッ!
みんな、未来を超えるよっ!

それ……既に猟兵側は一度乗り越えたユーベルコードだよっ!
弱点は分かってるっ!

ドローン自体に戦闘力のない
だからドローンへの直接攻撃は防ぎきれない

お願い、すきゅりん!
あたいに力を貸してっ!
『すきゅっ!』

勾玉を媒介に、すきゅりんの霊魂とそのメガリスの力を再現!
(風・雷属性全力魔法+範囲攻撃+衝撃波+なぎ払い+吹き飛ばし)
レーヴァさんの妨害に重ねて、ドローンを一掃だよっ!
同時にUC発動!
飽和火力で回避不能に陥らせて貫通攻撃+乱れ撃ち+念動力+呪殺弾!
敵に不幸(呪詛+精神攻撃)付与して未来改竄!

さあ、どんな未来が見えたかなっ?


槐・白羅
農園
モルス搭乗
猟兵達は星の海でも戦っていたのだな
ロクシアスの様な能力だ
対POW
避ける事は不可能だろう
かと言って受け止めるには危険すぎる

【属性攻撃・受け流し
ルクルと同じ位置で防御を担

光を相殺する闇の障壁をルクルの結界に合わせる!
恐ろしい能力だが…経験がない訳じゃないぞ

彼女の防御障壁を貫通するだろう光線を剣で受け流して着弾位置をずらして致命だけは避ける!

流石王だ
だからこそ俺は挑む

UC発動
我が全霊を以て往かせて貰おう!
俺とモルスの潜在能力を開放する!
【重量攻撃・貫通攻撃・弾幕・空中戦・呪詛】
まず飛び回りながら先ずプラズマライフルで貫通光線を弾幕の如く打ち込み
接近し死の運命で重量をかけ死の呪いを仕掛


レーヴァ・アークルージュ
【農園】
皆と一緒にわたし、参上!
そう言って即座に呪属性と幻属性を合成させた炎を作り出して【封縛炎鎖・バインドオブウルカヌス】を用いてドローンの一つを捕縛。それを基点にして感染魔術を行いドローンからドローンへ呪と幻属性を注ぎ込み、未来予測を使えないものにしていくよ
そして、先制攻撃を凌いだらUCを起動
出でよ、幻属性の爆弾『四の王笏』とその影響の身を吹き飛ばせ
それは『四の王笏』とその影響のみを吹き飛ばしていき、そこから『四の王笏の影響下にある』島全体を可能性侵略していくよ!
さぁ、時空間もここまで浸食すればむしろ私の方が未来を操る性能も高い
――覚悟しろ。今日、大海の王笏が一つ沈むことになるだろうから



●未来を変えろ!蛇塚わくわく武闘派ファーム!
「――猟兵たちは星の海でも戦っていたのだな」

 まるでロクシアスの様な能力だ――槐・白羅(白雷・f30750)は呟く。冥導神機『モルス』に搭乗し、コクピットからカルロスを見据えながら。

「未来を予測するだなんて、とんでもない力の持ち主ですが……ルクルたちの力で、あなたが予測した未来を変えてみせますよ」

 白羅駆るモルスの足元で、ルクル・クルルク(時計ウサギの死霊術士・f31003)が決意を込めた表情を向ける。

「ふむ、猟兵というものは存外根が太いようだ。決まっている未来を前にしても揺らがぬその精神は称賛に値しよう」

 これ程までこの未来予知の力に屈さず立ち向かう者はカルロスの知る限りでは存在していない。
 それこそ猟兵たちぐらいのものである。
 愛しき麗しの姫君(メロディア)が恐れる力を持っているだけのことはあると、改めてカルロスは実感させられていた。

「良いだろう。汝ら二人で乗り越えられるか――」
「二人じゃないよっ!」
「みんなと一緒に私、参上っ!」

 さらにそこに馳せ参じる二人の猟兵、蛇塚・レモン(蛇神憑きの金色巫女・f05152)とレーヴァ・アークルージュ(超学園級の烈焔魔導士・f29627)。
 今ここに『蛇塚わくわく武闘派ファーム』の4人が揃ったのだ。いつでも迎撃に出られるよう各々が構えを取ると同時にカルロスも動く。
 召喚された66機のドローンはまさに今開戦の狼煙を上げようとしているかのようだ。
 レモンたち4人、全員が互いの顔を見合わせる。

「蛇塚わくわく武闘派ファーム、ファイヤァ――――――――ッ!!いくよみんな、未来を超えるよッ!!」

 レモンの号令と共に、壮絶な戦いの幕が上がった。
 オブリビオン・フォーミュラによる特殊なフィールドは猟兵たちに先制攻撃を決して許さない、故に猟兵たちは一度護りに徹することを強いられる。
 カルロスの白騎士の鎧に宿る超AIがコードを送り、上空から何十本ものレーザーが降りてきた!
 4人の中央を陣取っているルクルはレーザーを見て思考する。

「対象の未来位置へレーザーが放たれるのでしたら、必ずルクルたちの位置に放たれるのですよね……」
「ならば避けることは不可能だろう。かといって受け止めるには……」
「ならば、この場で受け止めます!」

 言葉の先を白羅が言うよりも早くきゅう、と響き渡る愛らしいうさぎの鳴き声。
 愛らしい使い魔『ニクス』によって結界術とオーラによる防御力上昇の術式が展開され、ルクルの魔力と合わせて強固な護りとなる。

「危険だろう、と言おうとしたのだがな。……未来予知、恐ろしい能力だが経験がないワケじゃないぞ」

 決意が硬いのであらばそれを尊重するより他にないだろう、白羅はモルスによって光を相殺する闇の障壁を展開しルクルの魔術結界に合わせた。
 そして、障壁とレーザーがぶつかる。凄まじい衝撃に展開している結界を通してルクル自身にも衝撃が伝わってくる。

「く、ぅ……お願い……お願いしますっ、わたしを、みんなを、守ってください……っ!!」

 ルクルの願いに呼応し、ユーベルコードが発動。
 可愛らしい仔ウサギの顔をした死霊騎士たち、数にして81体が各々動く。
 数体はルクル、白羅と一緒に攻撃を凌ぐべく護りに。数体はレモンやレーヴァを庇うように。数体は衝撃に崩折れそうになるルクルを支えるように。
 結界は確かにレーザーを防いでいるが、カルロスはそれももちろん超AIの予測により把握済。
 その光景をドローンに撮影することでシミュレーティングを繰り返す。
 それが出した結果を見て追加で一手を投じれば良いだろうと判断し、非常に極細かつエネルギーを凝縮したレーザーを追い撃つように放った。

「!」

 護りの要であるルクルの眼前に凝縮された超高熱のレーザーが迫る。
 あまりにも細いそれは結界と障壁が受ける攻撃という、術式で組み上げた"規定"に当てはめることができなかったのだ。

「そうくるだろうとは――思っていたッ!!」

 白羅は即座にモルスを動かした。その手に握る『死の運命』の刀身、その切っ先が僅かにレーザーに触れる。
 するとレーザーは予測していた着弾位置より大きく逸れて、コクピット内の白羅の顔の真横を通り過ぎたではないか。
 頬からつう、と紅い血が滴り落ちる。

「白羅くん!」
「案ずるな、致命は避けた!このまま凌ぎ切るぞ!」

 降り注ぐレーザーの熱量が段々と減っていくのを肌で感じる蛇塚わくわく武闘派ファーム一行。
 そしてついに光の雨が止んだ時、障壁が取り払われる。
 五体満足――無傷ではないが至って軽傷につきそれも同然とする――未来予測で観測した座標に放つレーザーを見事凌ぎ切ることに成功したのだ。

「……ドローンの予測結果が間違っていたか?」
「甘いね。それ……すでに猟兵側は一度乗り越えたユーベルコードだよっ!弱点は――わかってるっ!」
「何……?――!」

 カルロスはここでようやくドローンの異変に気がついた。
 66機全てのドローンが陽炎のように揺らめいている――そう、目に見えない炎に包まれていたのだ。
 その透明色の炎は、ドローンが展開された時にレーヴァが既に仕込んでいた"仕掛け"――『封縛炎鎖・バインドオブウルカヌス』の効果によるものだ。
 ウルカヌスの力を宿したその炎の鎖に幻属性と闇属性の魔力を注ぎ込み、カルロスの"白騎士"の鎧による未来予測の対象外とした上でドローンの一体を捕縛。
 それを起点とし発動した感染魔術の術式にてシステムを侵蝕したことでドローンによる未来予測シミュレートをぶち壊したのである。

「ドローン自体に戦闘力はない!だからドローンへの直接攻撃は防ぎきれない!それがそのユーベルコードの弱点だよ!」

 蛇塚家三種の神器、白蛇神オロチヒメの勾玉を触媒にレモンが召喚するのは――

「すきゅりん!あたいに力を貸してっ!」
『すきゅ!』

 すきゅりん。
 ……そう、此度の羅針盤戦争にて突然海上に姿を現し電光竜巻で大暴れしたあのすきゅりんである!
 すきゅりんの霊魂を呼び出したことにより彼(彼女?)の持っていたメガリス「電光の羽衣」の効果が再現され、ドローンを瞬く間に一掃!
 戦場に電光竜巻が再度吹き荒れた!

「おのれ――AIよ、再度予測を――」
『エラー発生。エラー、エラーハッセ、エ、エエエエエラrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr』
「何……!?原因はあの竜巻か……!」

 カルロスは光剣から斬撃による衝撃波を放ち、竜巻を吹き飛ばす。
 だがそれでもAIのエラーは収まらない。それは何故か。
 レモンのユーベルコード【憑装・蛇塚ミツオロチ神楽(ソウルユニゾン・ヘビヅカミツオロチカグラ)】によるものだからに他ならない。
 レモンとその妹ライム、そしてレモンに宿る蛇神オロチヒメの神楽舞が出力源となり、980本もの霊光線がカルロスを包囲、幾何学模様を描きながらオールレンジ攻撃!
 可能な限り回避を試みるカルロスだが、超AIの恩恵をなくした現状で凌げるのはごく僅か。不運を招く呪詛が次第に蝕んでいく……

「"遥か高き者の幻焰よ。その夢も現も閃する劫火によって遍く世界の不条理を蝕み、弾劾の業火として焼き尽くしてほしい"――出でよ爆弾、『四の王笏』とその影響のみを吹き飛ばせッ!!」

 そこにレーヴァからの追撃。
 【夢も現も尽く征する臨界の幻焰(グラジュアルミラージュ・クイーンズフレイム)】にて具現した幻属性の爆弾がカルロスの持つ"白騎士"の鎧の未来予測演算能力を弱らせる!
 その影響は爆弾の着弾点を基準として四の王笏島全体に及び、可能性侵略された島は今やレーヴァが擬似的に予知できる固有結界も同然と化した。

「さあ、時空間もここまで侵蝕すればむしろ私の方が未来を操る可能性も高いよ――覚悟しろ」

 今日、大海の王笏が一つ沈むことになるだろうから――!!

 レーヴァのその言葉の直後、白羅駆る冥導神機『モルス』が飛翔する。

「ここまでの攻撃を受けても尚、顔を焦燥で歪めきらぬ――流石王だ。だからこそ俺は挑む!」
「……調子に乗るなよ、猟兵ッ!」

 未来予測の力は封じれど、武器全てが扱えなくなったワケではない。
 カルロスは光剣を翳し、それにレーザーを経由させ殺傷力を上昇させて白羅、そしてモルスへと向かう。
 だが、未来予測に頼りすぎたカルロスは、この『四の王笏』は、その視野を著しく狭窄させてしまっていたことに気づかなかった。

「騎士さま!やっちゃってください!」

 ルクルの呼び出した仔ウサギのような愛らしい死霊騎士たちが殺到しカルロスを押し倒した!
 一気に雪崩込まれては成人男性相当の体格しかないカルロスは当然体勢を維持することは難しい。

「白羅くん!今ですっ!」
「ああ――我が全霊を以て往かせてもらおうッ!!【四門開門】!!!」

 白羅とモルスに秘められし能力がユーベルコードにより覚醒する!
 目にも留まらぬ速さで飛び回るモルスのプラズマライフルが火を噴き、貫通レーザーの弾幕を雨の如く降らせていく!
 仔ウサギ死霊騎士たちにより体勢を崩されたカルロスは立て直す間もなくその雨に呑まれる。
 ただでさえレモンとレーヴァのユーベルコードにより自身のユーベルコードと白騎士の鎧を封じられ、回避もままならぬ状態。まともに浴びれば大打撃は免れない。
 だがそれでもオブリビオン・フォーミュラの分身体、簡単に終わってくれはしない。

「我が全霊!たっぷりと――楽しめェェッ!!!」
「ぐ、おおおおおおおおおおッ!!!」

 死の運命の刀身を叩きつけ、発生する呪詛がカルロスを蝕み、ついに断末魔の如き咆吼を上げさせる。
 その間際に見たものは自らの確定する運命を覆され、未来の可能性も自身の命も、潰える未来だった……

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

宮落・ライア
真っ直ぐ!

収束する運命。ならこっちが収束させてやろうじゃないか。
真っ直ぐだ。右も左も無しにカルロスへ真っ直ぐ走る。
瞳もカルロスの一挙手一投足とカルロスの目から逸らさずに。
こうすればただ単に、相手が先に撃ったレーザーをどれだけ早くに反応して避けるかってだけの話になる。
カルロスにとってはどれだけ送れる距離で撃つかっていうチキンレースになるのかな?
はは、楽しいな?

未来が見えるなら分かっているだろうが、致命傷止まりだったらボクは止まらないからな?
ボクはずるい後出しを持っているのだから。

まぁ近づけたのなら後は被弾無視してぶん殴るだけよね


雷陣・通
予知は要らないぜ
何故なら正面から突っ込むからな!

突撃開始
下手な回避はレーザーの餌食
ならば、距離を詰め攻撃の選択肢を無くす

奴が出来るのは接近戦か前進を止めるレーザーぐらいだ

後は視力で相手の目とモーションを見て見切り、殺気の込めた残像をフェイントで間合いを取る

『紫電の空手』発動
攻撃回数増やして更に二回攻撃、マヒ攻撃、鎧無視攻撃を重ねてラッシュ!

この距離ならレーザー打つ暇もねえだろ!
奴が出来る対策は無理やり体当たりで崩すかバックしてカウンターのレーザー

勿論、そのタイミングは見切る!
グラップルでしがみつき裸締め

お前は言葉を発した
呼吸器がある
なら、この技は効くよな?

「覚えておけ、未来を潰すのが格闘技だ」



●真っすぐ行って収束させてぶっ潰す
 カルロス・グリードは流石に動揺を隠しきれなかった。
 未来を予知され、その動きを全て特定され見極められてしまうと"知った上で真正面から突っ込むことしかしない"猟兵に遭遇したことがなかったのである。

「収束する運命、ならこっちが収束させてやろうじゃないか」
「言ったろうが、予知は要らない、何故なら正面から突っ込むから――ってな!」

 右へも左へも動くことなく、宮落・ライア(ノゾム者・f05053)と雷陣・通(ライトニングボーイ・f03680)は真っ直ぐこちらに走ってくるのだ。
 その瞳はカルロスの一挙手一投足、そして視線を決して逃さず捉えながら、ただただ一直線にこちらへと接敵を試みる。
 いくら牽制にレーザーを撃とうが怯みはしない――否、二人目掛けてレーザーを撃つことは"今のカルロスにはできない選択肢"であった。
 通に対してはそのレーザー攻撃が通ることである程度威力を削ぐなり何なりが可能だという結果は超AIが検出しているが、問題はライアの方だ。
 彼女に至ってはどれだけ計算をしても"攻撃を与えると逆にこちらが不利になる"という結果しか算出されなかったのである。
 それはもちろん、彼女のユーベルコードに起因するものだ。
 【侵食加速:未到再起(エイユウニイマダイタラズ・イマダシネズ)】……自身の致命傷をトリガーとするこのユーベルコードがあるが故に、カルロスは一撃で仕留めなければならない。
 だが、致命傷を終われば命が尽きるよりももっと早くこの力が発動する。
 通の方に対しては攻撃をすることである程度阻害できる結果を算出しており、幾度か狙ってレーザーを撃ってはいるのだがそれが当たらない。
 せいぜい頬を腕を僅かにかすめる程度の結果に終わり、致命傷を与えるには至らないのである。

「く……何故だ、何故未来を覆す結果を出せる……!?」
「そんなの、お前の目を見るだけでわかるんだよ!」
「はは、楽しいな!こういうのチキンレースになるのかな?――未来が見えるならわかっているだろうが、致命傷止まりだったらボクは止まらないからな?」

 通は真剣に、ライアは楽しそうに。それぞれがカルロスをじわりじわりと追い詰めていく。
 カルロスは己の想像以上に自分自身が焦っていることに気づいていなかった。
 何故通がフェイントを定期的に取るのかも、ライアが何を待っているのかも、一切気づかない程に余裕がなくなってるということに。
 通に関しては今彼自身が言った通りだ。彼の視力は目の動きと身体のモーションだけでどう動くかを見切る超常の領域に至りしもの。
 無自覚とはいえ相手が動揺していれば、よりそこから見えてくる動きもわかりやすいのだ。
 そしてライアは、その未来を観測した結果による"ずるい後出し"を待っているからこそ、敢えて命を顧みないかのような特攻をしかけている。

「(奴ができるのは接近戦か前進を止めるレーザーぐらいだ)」

 ならば、距離を詰めれば後者の選択肢は自ずと消えるのである。

「――おのれッ!」

 カルロスと猟兵二人の距離は最早目と鼻の先。ならば最早迷うことは許されない。
 手に光剣を携え、突き立てんと前に勢いよく出したはいいが焦りからターゲッティングを失念し――その刃はライアの急所へと深く突き刺さる。

「しまっ……」
「ははっ、やっと出してくれたね……でもこれで倒れてる暇なんて……ないッ!!」

 ユーベルコードが発動し、超常的な能力強化を施されたライアの拳がカルロスのみぞおちを深く抉る。
 反吐を吐き捨てながらカルロスの身体は宙を舞おうという直前に、通からの追撃が畳み掛けられる!

「この距離ならレーザー撃つ暇もねえだろ!ライトニングに行くぜッ!!」

 ユーベルコード【紫電の空手(ライトニングファクター)】。生体電流をコントロールさせることで行動回数を増やした少年の成長途中の拳がカルロスの顔を捉える。
 派手に地面に叩きつけられるその前にさらにみぞおちに一発。今度は脇腹に一発。さらに胸元に一発――
 怒涛のラッシュが刻み込まれるが、ライアの一撃による勢いを相殺することで吹き飛ばぬという絶妙なバランスによってカルロスは大きく重心を崩す。

「ぐ、がはァ……ッ!!……まだ、まだだ!!」

 ええいままよとでも思ったか、カルロスはそのまま身を屈めて逆に体当たりに出た。グリード――強欲の意味を持つ名の通り、勝利に対しても強欲であるのだろうか。
 だが、それももちろん通の視力は見切り、回避と見せかけて後ろに回り込んだ!

「ん、な……!」
「これはついでだ、持っていきなよッ!!」

 通がグラップルの技術でカルロスを固めると同時にライアからも再び一撃が入る。
 内蔵が破裂したかのような衝撃に口から血反吐がぶちまけられた。しかし、まだ終わらない。オブリビオン・フォーミュラとしての生命力がこの程度で終わるワケがないからだ。
 そのまま首に片腕を回し、もう片腕の上腕を掴んだ上でカルロスの頭部をへし折らん勢いで倒す。

「が……ぁ……ッ」

 息ができない苦しさに当然悲鳴すらままならない。
 リア・ネイキッド・チョーク――所謂裸絞めという柔道やプロレス、総合格闘技で用いられる一般的な絞め技。
 器官を激しく圧迫しながら通は言う。

「お前は言葉を発した。呼吸器がある、ならこの技は効くよな?

 ――覚えておけ、未来を潰すのが格闘技だ」

 その言葉がカルロスの耳に届いたかどうかは、きっと本人にしかわからない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
人々を守護する騎士を志す身として相容れぬ存在でも
その鎧の力の主が忠誠誓った君主は銀河皇帝只一人
貴方ではありません、王よ
骸の海に還して頂きます

レーザーはSSWで対処法も合わせ普及済み
光線反射処理施した大盾でレーザーを盾受け(世界知識+防具改造)

勿論、一時凌ぎ
ワイヤアンカーで物資収納スペースの催涙手榴弾掴み●投擲
撒かれる内容物の涙とくしゃみで●目潰し行動阻害される以上、敵が出来るのは回避一択

攻め手が緩めばUC

同じ類の力…予測演算の千日手となるのが必定ですが

演算装置への理解度が明暗を分けます
(●ハッキング破壊工作で敵予測演算を妨害)

枷を嵌められた白騎士に…負ける訳には!

予測演算で躱し剣を一閃



●騎士が忠義は只一人の為に
『身体損傷率、6割を突破。撤退を推奨します』

 かは、と血反吐を吐くカルロスに、白騎士の鎧の超AIが淡々と現状を告げる。

「……我が、ここで撤退した場合、どうなる?」
『計測中……算出完了。敵対勢力によって王笏島が制圧される確率、97,6%』
「で、あろうな……ならば、その選択肢はない……っ」

 光剣を支えにぐぐ、と立ち上がり、落とずれた猟兵へとその切っ先をつきつける。

「……まだだ。まだ我は終わってはおらぬぞ、猟兵。貴様たちの、勝利するという未来は……まだ、書き換わっては、いない」

 故に、戦え――目で、そう告げる。
 その顔は略奪者でもありながら、一人の戦士としての矜持も垣間見えるモノ。
 そこまでの意思を秘めておきながらも、この"白騎士"の鎧の力に頼ることにさせたのは一体何なのか、それは本人にしかわからない。
 なら、やることはどの道一つであった。

「人々を守護する騎士として、相容れぬ存在でも」

 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)もまた、自らの剣の切っ先をカルロスへと向ける。

「その鎧の力の主が忠誠誓った君主は、銀河皇帝只一人。貴方ではありません、王よ」

 "白騎士"ディアブロは、高潔なる魂を抱く立派な守護騎士であった。
 その身果てる瞬間まで騎士として、主の為に殉じた……決して相容れぬ存在であったとはいえ、その騎士としての生き様はまさに騎士の鑑と呼ぶべきものだったのである。
 故に、例え"白騎士"の力を模したものだとしてもここで終わらせなければならない。

「――骸の海に還して頂きます」
「やれるものなら、やってみせよ。我から、何度も"略奪"できる……そう思い上がったことを、死の淵にて後悔させてくれる……!」

 カルロスの意に従い、天空からレーザーが降り注ぐ。
 しかしトリテレイアの盾は既に対レーザー用のコーティングがなされており簡単に弾かれて終わる。
 だが、回数を重ねればいかなる武器や防具であろうとも傷みが生じる。その隙間を突いたことによる可能性を超AIにて提示されたカルロスはレーザーの連射を続けた。
 完全に体力が消耗仕切っている現在、予測通りの行動でなければ尚の事敗北する故に。
 もちろんそんなことはトリテレイア自身が一番よく知っている――彼はまさに銀河帝国攻略戦当時を生き延びた歴戦の猟兵。"白騎士"相当の未来予知対策も、当然全て整い切っていた。
 自らの身体に備え付けた物資収納スペースからワイヤーアンカーを用いて取り出したものをカルロス目掛けて投擲する。
 当然、カルロスはそれにレーザーをぶつけ相殺を試みようとするがすぐに見抜いだ。

『検出完了。右45度後方に下がってください』

 超AIの導き出す方向に動き、それはころんと転がるだけに終わった。
 今トリテレイアが投げつけたのは催涙弾――これをレーザーで相殺すれば、当然散布される物質により目と鼻孔を著しく刺激され戦うこともままならない。
 最初から回避するしか術がないとわかった上でトリテレイアはこれをカルロス目掛けて投げつけブラフとしたのだ。

「コード入力【ディアブロ】、戦域全体の未来予測演算を開始――!」

 それにより生まれた隙を突くことこそ本懐。
 【白騎士の背、未だ届かず(ホワイトライト・トゥルーライト・リミテッド)】。
 トリテレイアがこれまで積み上げた戦闘経験と、彼の知能を司る電脳が"白騎士"のそれの設計を一部用いられたが故に習得した、未来予測演算のユーベルコード。
 未来予測には未来予測をぶつければ完全に互角。カルロスが消耗状態であることから元より利はトリテレイア側に偏ってはいるが、油断はできない。
 導き出した計算に基づき、トリテレイアは剣を握り一気に加速、接敵する!

「っ……!AI、解析を――」
『エラー発生。ウィルスの反応を検知。ウィルス駆除及び再起動を開始します。処理終了まであと60秒』
「何……っ、まさか!」
「同じ類のちから……予測演算の千日手となるのが必定――ですが、演算装置への理解度が明暗を分けます」

 カルロスに一番足りていないもの。
 それは驕らぬことでもAIに頼りすぎたことでも、未来を過信しすぎたことでもなく、演算装置という一つの"機械"に対しての理解力であった。
 もし彼がそれらを把握し切っていたならば、猟兵たちの勝ち目はより薄くなっていたことであろう。
 故にこれが彼を打ち破る一番の勝算となっていたのである。
 白騎士は決して自らの見たもののみを過信することなく敵として立ちはだかった。カルロスと彼の違いはまさしくそこにある。
 故に。

「枷を嵌められた白騎士に……負ける訳にはッ!!」

 苦し紛れにカルロスが放ったレーザーを全て予測演算にて交わし、ずっと騎士として握り続けてきた儀礼用長剣の一閃を刻む。
 トリテレイアの一撃は、既に消耗しきっていたカルロスにより深い致命傷を与えただけでなく――その"白騎士"の鎧を超AIごと破壊した。
 破片が飛び散り、砂となって風にさらわれていく。

「……ふ、ふふ。我の負けだ、猟兵よ」

 身体から鮮血を溢れさせ、カルロスは口元を緩ませる。

「だが、我は、所詮分身、体に、過ぎぬ……ゆめゆめ、そのことを、忘れるな……七大、海嘯は……まだ、終わらぬ。我らが、終わら、せ――」

 そこからカルロスの口が動くことは、なかった。
 刀身に飛び散った鮮血を拭い、トリテレイアは静かに踵を返す。

「……我々とて負けるつもりはありません。必ずや、この戦いを終わらせてみせましょう」

 遺体に振り向くことはせず、最期の言葉にそう還してグリモアベースに帰投した。

 ――『四の王笏』、撃破。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月15日


挿絵イラスト