●キッズ艦隊、海を征く
白波が弾けていき、飛沫が海面に散る。
蒼海羅針域の破壊を目指すコンキスタドールの大艦隊は今、次々と進軍していた。
その中に火薬をめいっぱいに積載した船、『燃ゆる獅子号』がある。
「花火だー!」
「爆弾だよ~!」
「火薬ばちばちだぞ! 勝手に使ったら怒られるぞ!」
乗り込んでいるのは獅子の体を持つマンティコアキッズ達。その名の通り、ちいさな獣に見えるキッズ達が何故に危険な火薬艦を任されたのかは不明だが、現にこうして存在しているのだから認めるしかない。
「おなかすいた……」
「おやつたべたーい」
「そういえば、今日のキャプテン役はどうする? 誰にする?」
「昨日のキャプテンは爆発したもんね。よーし、じゃんけん大会で決めよー!」
「おー! じゃーんけん、ぽん!」
無邪気にはしゃぐキッズ達は緊張感がないうえに、なんと火薬誤爆の犠牲者まで出ている始末。艦隊がこのまま進んで行けば更に大変なことになるのは間違いない。
そして、現在――燃ゆる獅子号は荒波を越えて、渦潮に迫らんとしていた。
●火花弾ける船上戦
「ということで皆、迎撃の準備だ!」
蒼海羅針域の破壊に向かおうとするコンキスタドールの大艦隊のひとつを捉えたとして、メグメル・チェスナット(渡り兎鳥・f21572)は出港準備の進む鉄甲船を示した。
サムライエンパイアに通じる渦潮。
其処を攻められてしまうと、この戦争の行方が不穏になる。それゆえに少しでも敵の数を減らし、渦潮への動きを食い止めるのが今回の作戦だ。
「敵はマンティコアキッズっていう人食い獣の幼体だよ。可愛らしい見た目で何とも緊張感のない相手だけど、乗ってる船が火薬艦だから凄く危険みたいだ」
船の殆どは火薬庫という名の爆弾の宝庫になっている。
導火線に火を付けるタイプのもの、魔力に反応して作動する爆弾、風を呼ぶロケット弾に自動追尾式魔法弾、雷撃手榴弾や水が弾ける時限爆弾、更には花火ばかりが積まれた倉庫など種類も部屋も様々。
「みんなは船に乗り込んでマンティコアキッズ達を倒して欲しい。あっちは大事な火薬を使ったりはしないけれど、こっちは使い放題!」
万が一に幾つか爆発しても耐え得る防御力を持つ船なので、遠慮は要らない。
マンティコアキッズを倒した後は船の進路も渦潮から外れるので、ひとり残らず骸の海に還してしまうことを優先するといいだろう。
「積載されてるもので特に使い勝手がいいのは魔力爆弾かな。籠める力で自由に威力が変えられるし、放てば周辺の任意の場所で爆発させられるぜ!」
勿論ユーベルコードのみで戦ってもいいので、何をどうするかは猟兵次第。
だが、敵も追い詰められると火薬を使うことを視野に入れるかもしれない。注意してくれ、と告げたメグメルは仲間達を見つめた。その瞳には確かな信頼の色が宿っており、少年は笑顔で皆を送り出す。
「さて、それじゃあ出発だ。取り舵いっぱーい、ってね!」
犬塚ひなこ
こちらは一章で完結する羅針盤戦争のシナリオとなります。
戦場は『燃ゆる獅子号』と呼ばれる、つよい艦上です。
この戦場でのシナリオ成功ひとつにつき、戦争サバイバルの🏅5000を加算します。
早期完結重視のため、採用人数はそれほど多くはならない予定です。
受付状況はタグ欄やマスターページでご確認ください。時間と元気が続く限り頑張りますが、すべてのプレイングが採用できないこともありますので、ご了承の上でご参加くださると幸いです。
●戦闘状況
敵は人食い獣の幼体。腹ペコで無邪気な子達が多いです。
甲板、操舵室、幾つもの部屋に分かれた火薬庫など、艦内のあちこちにいるマンティコアキッズとの戦いになります。
特に場所のご指定がない場合、こちらでランダムに割り振ります。また、リプレイは皆様が船に攻め込んだ後から始まるので、乗り込むための準備などはプレイングに盛り込まずとも大丈夫です。
色々爆発しても船がすぐに沈むことはないので思いっきり戦ってください。
爆発がガンガン起こる可能性がある戦いですが、キッズ達を倒す描写は残酷な雰囲気にはせず、どーんと飛んでいったり、ふわっと消えていく形になります。
●プレイングボーナス
『海上戦、船上戦を工夫する』(海上では飛行や転移が阻害されています)
こちらの船では火薬や爆弾を上手く使うとボーナスが入ります。
また、マンティコアキッズの食欲や興味などを利用した別のアプローチで工夫が見られた場合もプレイングボーナス対象となります。頭が良くない子達なので迂闊に罠や誘導にはまります。
いずれも技能は使っても使わなくても大丈夫です。ただし技能名を並べただけでは工夫とはなりませんので、ご注意ください。
●キッズ艦隊・獅子号
シナリオタグ『#キッズ艦隊』のシナリオと同じ艦隊が相手のふんわり合わせになっています。
攻略対象はシナリオごとに別の艦で、攻略タイミングも別々なので同時参加も大歓迎です! どれでもご自由に、お気軽にご参加ください。
第1章 集団戦
『マンティコアキッズ』
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POW : こいつをたおしたらご飯にしような!
【食欲】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD : もうちょっとだけがんばる!
【お昼寝の時間までがんばる気持ち】を一時的に増強し、全ての能力を6倍にする。ただし、レベル秒後に1分間の昏睡状態に陥る。
WIZ : 今がチャンスだけどおやつが食べたい…
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【おやつ】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
イラスト:芳乃弥生
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
エルヴィン・シュミット
子供に火薬か…普通なら咎める所だが、コンキスタドールのやることならむしろ歓迎するべきか?
まあいい、とりあえず船内に潜入しようか。
【ECLIPSE】の【目立たない】と【闇に紛れる】で船内の火薬の在り処を探ろう。
火薬が保管されている部屋を見つけたら【PUPPY BOMB】を設置してこっそりと離れる。
コイツは【誘惑】されてしまう程にカワイイで迂闊に触ってしまえば【破壊工作】と【爆撃】でドカン…な素敵なぬいぐるみだ。
この【PUPPY BOMB】を奴らがうっかり触って爆発してしまうように仕向けるのが今回の狙いだ。
奴らに見つかった時は【霊刀「菖蒲橋」】の【早業】とUCでの先制攻撃を狙おうか。
ナイ・デス
幼い、オブリビオン……
天寿を全うした人物の、幼い頃がオブリビオンとして、ということもある、ですが
この子達は、どうで(シリアス終了の爆発直撃)
【激痛耐性継戦能力】私はヤドリガミ。本体無事なら、死なない。死ねな(追撃直撃)
『いつか壊れるその日まで』発動。再生!
怒りました、よ……!
【忍び足怪力ダッシュ】静かに、しかし凄い速さで追いかけます
爆発も他の攻撃も、受けてもすぐに再生。不死身の鬼となって
鬼ごっこです!捕まったら、骸の海送り!
全身から光を放って【推力移動】までして
追いかけながら【範囲攻撃】そっと【生命力吸収】する「聖なる光」を放ち続けて
逃げ疲れさせて眠らせ、そのまま骸の海へ還す
……おやすみなさい
●爆発開始!
荒波を越えて進む燃ゆる獅子号。
その進軍を迎え撃つのは猟兵が乗り込む鉄甲船。
大渦へと迫らんとする敵艦と、此方の船の間に激しい波が轟いた瞬間。猟兵達は一気に獅子号に攻め込んでいく。
敵艦には潮風の香りに混じって火薬の匂いがした。
「子供に火薬か……普通なら咎める所だが、コンキスタドールのやることならむしろ歓迎するべきか?」
エルヴィン・シュミット(竜の聖騎士・f25530)は軽く首を傾げ、周囲を見渡す。同時に訪れたナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)もこの船に乗っているマンティコアキッズ達のことを思う。
「幼い、オブリビオン……」
彼女達がどうであるかはわからないが、稀に天寿を全うした人物の幼い頃がオブリビオンとして現れることもあると聞いている。不思議な感覚をおぼえながら、ナイはエルヴィンと頷きを交わし、内部に歩を進めていった。
「まあいい、とりあえず船内に潜入しようか」
「そう、ですね。そっと、目立たないよう、行きましょう」
エルヴィンとナイは火薬庫のひとつを探すために、息を潜めて船内をいく。
だが、そのとき。
ナイが敵影を発見して隠れようとしたときにそれは起こった。
「あの子達が、人食い獣の幼――」
遮られるナイの声。その直後に響き渡る爆音。
どどーん。
どかーん。
何とも気の抜けた音だが、唐突に火薬庫の近くが爆発した。
「わあ~!」
「キャプテンが誤爆にまきこまれたよー!」
「これからはぼくが新キャプテンだ!」
「わー、ぱちぱちー!」
そんな声が聞こえはじめ、キッズ達がわらわらと駆けていった。どうやら火薬を弄っているマンティコアがへまをやらかしたようだ。
「……」
「…………」
エルヴィンとナイは顔を見合わせる。だが、別のところで騒ぎが起こっているならそれでいい。エルヴィンは騒ぎに向かっていったキッズを見送り、誰もいなくなった火薬庫へ駆けていく。
そして、彼は子犬のぬいぐるみ型の爆弾を素早く設置した。
ナイは見張りを務め、爆発物を置き終わったエルヴィンを手招く。これで第一段階は準備万端。こっそりと離れた二人は物陰で様子を窺う。
「可愛らしい、わんちゃんでしたね」
「アイツは誘惑されてしまう程にカワイイからな。だが、迂闊に触ってしまえば、ドカン……な素敵なぬいぐるみだ」
暫くすると戻ってきたマンティコアキッズが、子犬を発見した。
何体かのキッズは興味津々。
「なにこれ?」
「かわいーい!」
「ふわふわだね。みんなでかわりばんこに抱っこしよ――」
それがマンティコアキッズの最期の言葉だった。
再び爆発が起こり、周囲の火薬まで巻き込んで連鎖していった。エルヴィンは咄嗟に身を翻して爆風を避け、ナイは彼を護るために敢えて前に踏み出す。
「私はヤドリガミ。本体無事なら、死なない。死ねな」
どごーん。
ナイに爆風が直撃する。だが、言葉の通りにナイは死ぬことなどない。全身を瞬時に再生させる聖者の聖なる光で覆い、マンティコア達の前に出る。
爆発は凄かったが、相手もコンキスタドールだ。
まだ倒れていないことを確かめたナイはひといきに駆けていく。
「いきます、よ……!」
静かに、されど凄い速さで接敵したナイは一体目を海に投げ飛ばした。たとえ新たな爆発が起こったとしてもすぐに再生できる。不死身の鬼となったナイに続き、エルヴィンも霊刀の菖蒲橋を振り上げた。
「わあっ、てきしゅうだ~! みんなかかれー!」
「悪いが、火遊びは終わりだ」
「鬼ごっこです! 捕まったら、骸の海送り!」
集まってくるキッズ達とエルヴィン、ナイの攻防が巡りはじめる。
向かい来るキッズに逃げるキッズ。それぞれの敵に対抗すべく、エルヴィンは迎撃を担い、ナイは追撃に走った。
ナイは敵を追いかけながら生命力を吸収していき、聖なる光を放ち続ける。
エルヴィンも容赦なく刃を振るい、そのまま骸の海へ還していった。倒れて消えていくキッズ達を見送り、ナイはそっと祈る。
「……おやすみなさい」
「眠れるといいな。……さて、次だ」
エルヴィンは再び可愛い子犬爆弾を手にする。
そう、まだ戦いは終わっていない。寧ろ此処からはじまるのだとして、ふたりは静かな視線を交わしあった。
そしてまた、艦内に爆発音が響き渡っていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
黒鵺・瑞樹
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流
甲板で。甲板が無理なら、引火したとしても海中にすぐ退避できる場所で。
滑りにくい靴を用意し、さらに足場習熟で船上戦に対応。
初めてこの世界に来た時の航海を、嵐の中の戦闘を考えればまだ楽なはずだ。
存在感を消し目立たない様に立ち回る。そして隙をついてマヒ攻撃を乗せた暗殺のUC剣刃一閃で攻撃。
ふと思ったがサイズがでかくなったら船は大丈夫なのか?
敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれないものは本体で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。
それでも喰らうものは激痛耐性で耐える。
爆発には火炎耐性で対応。
いっそ火薬全部に引火させて沈めたほうが早いのでは…。
月舘・夜彦
【華禱】
他の世界での戦いで、またエンパイアの名が出るとは
必ずや阻止しなくてはなりませんね
魔力に反応する爆弾、私も運べる範囲で頂いていきましょう
簪?はい、飛ばされたりしないように懐に仕舞っておきます
食べ物も効果があるのならば持参したおにぎりを使いましょう
馴染みのない見た目かもしれませんが少なくとも武器には見えないはず
倫太郎、それは私が贈った菓子……いえ、囮に使えるのならば活用するべきですね
食べ物に夢中になっている間に爆弾に魔力を込めた爆弾を投げる
私は抜刀術『神風』、2回攻撃で距離を離れた爆弾にそれぞれ当てて起爆
間を空けず引き続き投げて同じく起爆していきましょう
私達が込めた爆弾、威力はどれほどか
篝・倫太郎
【華禱】
エンパイア直通路狙いとか
きちっと阻止させて貰わなきゃな
つーか、何処も彼処も火薬だらけじゃん……
ま、その方がやりやす……これ、かな?
魔力爆弾って
よっし、ちっと頂いてこ!
後、夜彦
あんたは、簪仕舞っといてね!
きっず達と遭遇したら夜彦から貰ったチョコ白玉を餌に誘き寄せ
ふふふ!一つだけ、チョコじゃないのが入ってるぜ!
チョコじゃない当たりを引いたのだーれだ!
これで少しは食欲抑えれたら良い……
あ、ハイ、ごめん
ごめーん!夜彦!
誰が黒蜜引いたかあだこだしてるきっず共に向かって
拘束術の先制攻撃からの拘束!
ついでに魔力込めた爆弾を華焔刀でぶん!とフルスイング
要はノックの要領で!
敵の攻撃は見切りと残像で回避!
●隠密と囮と誘惑と
右手に胡、左手に黒鵺を。
敵船の甲板に訪れた黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)はマストの影に隠れ、周囲の様子を窺っていく。
この広い甲板は見晴らしが良いが、箱や樽などの荷物も多い。
おそらくこの船に乗り込むマンティコアキッズが置いたままにしているのだろう。どうやらあの箱も火薬らしいが、この甲板なら万が一に引火したとしても海中にすぐに退避できるはずだ。
滑りにくい靴を着用している瑞樹は身を潜める。
足場を確かめていく彼はこれからはじまる船上戦に向け、気を引き締めた。
(初めてこの世界に来た時の航海を――あの嵐の中の戦闘を考えればまだ楽なはずだ)
いつかの出来事に思いを馳せ、瑞樹は戦いの機をはかっていく。
同じ頃、甲板に影がふたつ現れた。
月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)と篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)の二人だ。
「他の世界での戦いで、またエンパイアの名が出るとは。この船も必ずや阻止しなくてはなりませんね」
「エンパイア直通路狙いとかきちっと阻止させて貰わなきゃな」
コンキスタドールの艦隊は大渦を目指している。
蒼海羅針域――コンキスタ・ブルー。あの大渦は元より、サムライエンパイアから鉄甲船を出して突破してきたものだ。
倫太郎と夜彦は幾度も対峙してきたあの戦いを思い出す。レディ・オーシャンがエンパイアに落とそうとしたオーシャンボールの事件。それから、遥かな海へと漕ぎ出した鉄甲船。あのときから、今のこの事態が続いている。
夜彦の故郷でもある世界を護るためにも、此処が正念場となるだろう。
「つーか、何処も彼処も火薬だらけじゃん……。ま、その方がやりやすいし」
「これが魔力に反応する爆弾ですか」
「……これ、かな? よっし、ちっと頂いてこ!」
甲板に置かれていた箱を覗き、倫太郎は魔力爆弾を取り出した。夜彦も幾つかを手に取り、小さな瓶型の爆弾をしげしげと見つめていく。
「私も運べる範囲で頂いていきましょう」
「後、夜彦。あんたは、簪も仕舞っといてね!」
「簪? はい、飛ばされたりしないように懐に仕舞っておきます」
倫太郎に言われた通りにした夜彦はそっと頷く。
きっと心配してくれているのだろう。そう感じた時、甲板にぱたぱたと駆ける足音が幾つも響いてきた。どうやらマンティコアキッズが箱を運びにきたらしい。
「あっ、敵だ!」
「みんなー! あつまれー!」
「しかもどろぼうだ! 爆弾ドロボーだよ~!」
わあわあと騒ぎながら集まってくるキッズを見遣り、倫太郎達は身構える。そして、倫太郎は夜彦から貰ったチョコレート白玉を餌に誘き寄せる作戦に出た。
「ふふふ! 一つだけ、チョコじゃないのが入ってるぜ!」
「おやつだ!」
「わーい、やった~!」
「チョコじゃない当たりを引いたのだーれだ!」
「此方にはおにぎりもありますよ」
夜彦も食べ物の効果を狙って、持参した握り飯を差し出した。
「おむすび!」
「にぎりめし!」
「おにぎりー!」
マンティコアキッズ達には馴染みがないかと思っていたが、この海には様々な異世界の島もある。どうやらキッズ達もおにぎりを知っていたらしい。
だが――。
「これで少しは食欲抑えれたら良いけど……」
「倫太郎、それは私が贈った菓子では」
「あ、ハイ、ごめん」
「いえ、囮に使えるのならば活用するべきですね」
「ごめーん! 夜彦!」
一瞬だけ二人の間に不穏な空気が流れたが、マンティコアキッズが次に発した言葉でそんな雰囲気も一蹴される。
「わ、くろみつー!」
「いいなー、おいしそー」
誰が黒蜜を引いたかとわいわいしているキッズ。其処に向けて倫太郎は刃を向け、拘束術からの先制攻撃に入る。
「今だ、夜彦!」
「はい。可哀想ですが容赦はしません」
夜彦は食べ物に夢中になっているキッズ達に向け、魔力を込めた爆弾を投げた。その動きに合わせて倫太郎も魔力爆弾を華焔刀で、ぶん! とフルスイングする。
「要はノックの要領だ!」
「後は私達らしく参りましょうか」
夜彦は抜刀術、神風で以て連続攻撃を行った。距離をわざと話した爆弾にそれぞれの攻撃を当てることで一気に起爆する。
「むぐ……」
「わああ、おにぎりが飛び散ったよぉ」
マンティコアキッズ達は阿鼻叫喚。チョコレート白玉が飛散していき、握り飯を喉につまらせてばたばたと倒れて消えていく。
「私達が力を込めた爆弾、威力はどれほどでしょうね」
「ああ、なかなかいい調子だ。あれ、でも……」
「どうかしましたか、倫太郎」
「なーんか、俺達が倒したのより多い数が倒れてるような?」
倫太郎はふと首を傾げ、骸の海に還っていくマンティコアを見渡していく。
彼がそう感じた理由、それは――。
白玉やおにぎりでわいわいと盛り上がるキッズ達。
其処に密かに駆けた瑞樹の暗殺技術が光る。存在感を消して目立たないように立ち回っていた彼は、倫太郎と夜彦達が起こした爆発の影に紛れていたのだ。
(――この機を逃さない)
隙をついて麻痺攻撃を乗せた剣刃一閃が解き放たれる。瑞樹は敵が巨大化する懸念を抱いていたが、そうなるまえに全てが倒されていた。
(ふと思ったがサイズがでかくなったら船は大丈夫なのか? そんなに大きくはならないからいいのか)
疑問は浮かべど、何か大変なことになる前に倒せているのだからいいとしよう。
そう考えた瑞樹は再び巻き起こった爆発を避け、身を翻す。万が一に喰らったとしても瑞樹には激痛耐性がある。それに爆発が身を包んだとしても対応できるはずだ。
警戒は強めたまま、瑞樹は考えを巡らせる。
(いっそ火薬全部に引火させて沈めたほうが早いのでは……いや、危ないか)
そうするのは最後で良い。
何故なら、この船の中にはまだたくさんの仲間が乗り込んでいるだから。されど全ての敵を倒し終わったならば沈めたとて問題ない。
そうして、瑞樹は身構え直す。
まだまだ敵は多い。キッズ達を屠る心構えを持ち、瑞樹は再び物陰に身を潜めた。
倫太郎と夜彦も更に爆発攻撃を仕掛けていく狙いだ。
こうして、戦いは続いていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴォルフガング・ディーツェ
敵とはいえ幼児に随分と危険な玩具を与え…既に誤爆。て、敵の責任者ちょっとー!?
【指定UC】を展開しつつ火薬庫へ
持参品のヘルメス(魔道鏡)と【メカニック】技術を活用し、爆弾構造を分析し魔改造
【全力魔法】【高速詠唱】を流用し水のルーンの力も付与
衝撃で爆発し敵だけに反応する水圧で空高く吹っ飛ばすようにしよう
流石の俺でも幼児を切り刻むのは気が引けるからねぇ…
併せて扱いやすい魔力爆弾も改造
本能のルーンを刻む【精神攻撃】で魔力爆弾がご馳走に見えるようにしておこう
食べたらどかーんと吹っ飛んで、連鎖爆発の水時限爆弾でお星さまにする寸法さ
後は攻撃をあしらいながら爆弾をばらまくだけ
…来世は真っ当な幼児になるんだよ
栗花落・澪
おなか空いたかぁ、そっか
じゃあはい、飴食べたい子いる?
僕が手作りした、甘くて美味しいキャンディだよー
ニコニコ笑顔で差し出す★Candy pop
甘くて美味しいのは本当だよ、保証する
ただし込めた魔力にこっそり【催眠術】を混ぜさせてもらって
動きながら食べると危ないからちゃんと座りながらね
じゃないともうあげないよ(それっぽい事言って足止め
お代わりもどうぞ
その代わり食べれば食べる程催眠の蓄積量は増えるけど
眠くなったなら素直におやすみ
眠るまでできなくてもそれだけ食べたらろくに動けないでしょ
せめて何もわからないままに、ね
同じく催眠を乗せた【歌唱】で操る【指定UC】の範囲攻撃で
子供達を眠らせたまま攻撃を
鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
WIZ
腹ぺこなキッズ達か…敵とはいえ、なんだか親近感が湧くなぁ
よし、キッズ達をおびき寄せてみよう
懐から取り出したるはお肉!
そして火薬庫から爆弾を拝借
船の周囲の海水、もしくは船の中の無機物を媒体に(拝借した爆弾は使うのでNGとして)固有結界・黄昏の間を発動
火の疑似精霊の力でお肉をその場でこんがり焼く
このお肉の匂いに釣られてキッズ達が出てくるに違いない!
…出て来なかったら俺が食べちゃうぞ?(
お肉に釣られて出て来たらお肉をその場に放り出して逃走~(のフリ
ついでに、着火した爆弾も放り出す
「せっかくだから、これもあげるよ~!」
キッズ達がお肉を食べている間に爆弾がドカンだ!
●星と散る獣
どどーん。
船上に派手な音が響き、爆風が海から吹く風に混じって流れていく。
誰かが何処かで爆発を起こしたのだと悟り、ヴォルフガング・ディーツェ(花葬ラメント・f09192)は周囲の気配を探った。彼の隣には同時に敵船に乗り込んだ鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)も控えている。
「腹ぺこなキッズ達か……敵だけど、なんだか親近感が湧くなぁ」
「しかし、敵とはいえ幼児に随分と危険な玩具を与え――」
ひりょに続き、ヴォルフガングが思いを言葉にしようとしたとき、遠くからマンティコアキッズのものらしき声が聞こえてきた。
「わあ~!」
「キャプテンが誤爆にまきこまれたよー!」
どうやら先程に耳に届いたのは仲間の作戦による爆発ではなく、キッズ達が起こしてしまった音のようだ。
「既に誤爆。て、敵の責任者ちょっとー!?」
「ぼくが責任者だ!」
思わず突っ込み的な言葉をヴォルフガングが紡ぐと、何処からともなく新キャプテンになったらしい僕っ子マンティコアが現れた。
その後ろには何体もの手下キッズが控えており、それぞれに好きなことを語っている。
「おなかすいたー」
「ぺこぺこ! 爆弾も食べられたらいいのに」
「おやつたべたーい」
わらわらと集まってくるマンティコアキッズ。何とも緊張感に欠けているが彼女達もれっきとした敵だ。
しかし、流石に数が多い。そう感じたヴォルフガングが一歩後ろに下がったとき。
後方から新たな猟兵が現れる。
「僕に任せて!」
その声の主は栗花落・澪(泡沫の花・f03165)だ。マンティコアキッズを見渡し、にこっと笑ってみせた澪はごそごそと何かを取り出す。
「おなか空いたかぁ、そっか。じゃあはい、飴食べたい子いる?」
「キャンディだ。やった~!」
「ほしーい!」
「僕が手作りした、甘くて美味しいキャンディだよー」
腹ペコキッズは目を輝かせて澪に近付いてくる。いまのうちに、と澪はヴォルフガングとひりょに目配せを送った。
わかった、と視線だけで答えたヴォルフガングは機神の偏祝を発動させながら、マンティコアキッズの死角に回り込む。
そして、火薬庫に続く通路へと駆け出した。
ひりょも澪に後を任せ、ヴォルフガングの後についていく。彼らが辿り着いたのは魔力爆弾が多く積まれた小部屋だ。
其処から二人は一気に爆弾作戦に入っていった。
ヘルメスの双目鏡を用い、爆弾の構造を分析したヴォルフガングは手早くそれを魔改造していく。
「こんなものかな、っと」
其処に水のルーンの力を付与した彼は、掌の上で軽く爆弾を転がしてみた。きらりとルーンが光ったことで手応えを感じ、ヴォルフガングは静かに笑む。
その横でひりょも固有結界、黄昏の間を巡らせた。
「まだキッズ達が隠れていそうだったからね、誘き寄せの手も作っておこう」
ひりょは火の疑似精霊の力で、用意していた肉をその場でこんがりと焼く。この肉の匂いに釣られてキッズ達も更に出てくるに違いない。
「……出て来なかったら俺が食べちゃうぞ?」
なんてね、と軽く笑ったひりょは魔力爆弾を手に取り、ヴォルフガングと共に先程の場所に戻ることにした。
そして、澪の方はと言うと――。
「甘くて美味しいのは本当だよ、保証するからね」
「うん、おいしー」
(ただし、込めた魔力にこっそり催眠術の力も混ぜさせてもらったけどね!)
「もっとちょうだーい」
すっかりおやつに夢中なキッズ達と戯れており、作戦は上々だ。
「いいよ。だけど動きながら食べると危ないから、ちゃんと座りながらね。じゃないともうあげないよ」
「わかった~。みんなでおすわり!」
「おすわりします! 一列にならべー!」
お代わりもどうぞ、と勧める澪。食べれば食べる程に催眠の蓄積量は増え、マンティコアキッズ達も飴の虜になる。
其処に肉の匂いを漂わせたひりょ達が戻ってきたことで、別の場所にいたキッズも誘き寄せられていく。
「ふわ、飴とお肉がいっぱいでしあわせだ」
「ねむい……お昼寝船にいきたいなあ」
「すやぁ」
マンティコアキッズは戦うどころか催眠と満腹のおかげでお昼寝モードだ。
しかし、彼女達が別艦に移動することはない。何故ならこれから、この場で爆発の餌食になってしまうからだ。
「眠くなったなら素直におやすみ。それに、それだけ食べたらろくに動けないでしょ」
「ごめんね。せめてお腹がいっぱいのまま眠って欲しいな」
「せめて何もわからないままに、ね」
澪とひりょは眠りに落ちはじめたマンティコア達を見つめ、仲間に合図を送った。
催眠を乗せた歌を澪が謳いあげていく中、ヴォルフガングはルーンを刻んだ爆弾を一気に放り投げた。
「流石の俺でも幼児を切り刻むのは気が引けるからねぇ……おやすみ」
刹那、衝撃で爆発した水圧がキッズ達を空高く吹き飛ばした。
其処から巡るのは連鎖爆発。水の時限爆弾は並んでいたマンティコアをどかーんとぶっ飛ばしながら飛沫を上げていく。
「わあ~~」
「もう食べられないよぉ~~~」
寝言なのか断末魔なのか、どちらか分からない声をあげたキッズは次々とお星さまになっていった。ひりょも自分が手にした爆弾をひといきに放り投げる。
「せっかくだから、これもあげるよ~!」
どん、と追撃の音が海上の空に響いて天を彩った。
澪が紡ぎあげる楽園の歌は手向けの花となり、哀れな幼い獣達の葬送となる。
「……来世は真っ当な幼児になるんだよ」
そうして、ヴォルフガング達は空を見上げて祈った。
あの無邪気な獣達が正当なかたちで満腹になれますように、と。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
橙樹・千織
【猫ひげ:2名】
はわわ
ちょっと、あれですが、なんとか!
船が頑丈で良かったですが、音が凄いですねぇ、と
普通の大福だけでなく
豆大福に草大福、苺大福も準備してみました
交渉をふわほわ微笑んで見守りつつ、籠の蓋を開ける
はい、ロキさん。お一つどうぞ
渋るキッズを見たら大福をひとつロキさんへ手渡して
美味しいのに残念ですねぇ
火薬庫を教えていただけないなら大福はお預けですねぇ
ロキさん、帰ったらふたりで大福食べましょうねぇ
蓋をぱたん、と締めて
何だか
ここまで素直だと罪悪感が凄いですねぇ
なんて言っていれば聞こえるロキさんの声
え?ちょっとロキさん!?
アワアワ樽を避けロキさんの隣へ
十分素質はある気がしますよ
なんて、ね
ロキ・バロックヒート
【猫ひげ:2名】
景気よく爆発する船内を眺めて
花火みたいで綺麗だねぇ
ちおりちゃん、お耳だいじょうぶ?
耳ぱたんってしてあげようか?なんて
火薬が置いてるところはどこかなぁ
ねぇねぇ知らない?
キッズたちに聞いて
勿論タダでとは云わないよ
ここにちおりちゃんのおいしい大福があるから
案内してくれるならあげるって交渉
渋るようなら一個食べちゃう
甘酸っぱ甘くて苺大福おいしー
交渉成立して火薬庫に着いたら
あーあっちにおっきな大福があるよーって指差した先へ
ちおりちゃ~んよけて~
のんびりしたこえで注意喚起
慌てる可愛いとこも見たかったけど一応ね
導火線に火を点けて火薬の樽をごろごろどーん
たーまやー?
俺様結構ワルになれるかな?へへ
●甘い誘惑
――どーん。
腹の底に響くような音が木霊する。まるで川辺で空にあがる花火を見ているときのような感覚がしたが、此処は果てしない海上。そのうえ音の主は花火ではなく爆弾だ。
「景気よくて花火みたいで綺麗だねぇ」
「はわわ」
ロキ・バロックヒート(深淵を覗く・f25190)は暢気に、橙樹・千織(藍櫻を舞唄う面影草・f02428)は耳を押さえて爆発音を聞いている。
「ちおりちゃん、お耳だいじょうぶ?」
「ちょっと、あれですが、なんとか!」
「耳ぱたんってしてあげようか?」
「そうするとロキさんの手が塞がってしまいます。本当に音が凄いですねぇ」
そんな遣り取りを交わした二人は周囲を見渡した。
既に艦内では様々な爆発が起こって大騒ぎだ。乗組員のマンティコアキッズは慌てて走り回っており、艦内は混乱の渦の最中。
そんな中、何体かのキッズ達がロキと千織を見つけた。
「侵入者だ! こらーっ!」
「わー、あつまれー!」
「おなかすいた~」
それぞれに好きなことを喋りながら向かってくるマンティコアキッズは戦闘態勢を取っていく。しかし、ロキと千織は動じなかった。
「火薬が置いてあるところはどこかなぁ。ねぇねぇ知らない?」
「むむっ」
「知ってるけどおしえなーい」
ロキが単刀直入に問いかけるとキッズ達はぷいっとそっぽを向いた。
其処へ更に千織があるものを取り出す。ふわほわと微笑んで交渉を見守りつつ、千織は持参した籠の蓋を開けた。
「なにそれ?」
「ふふ」
興味津々のキッズをよそに、千織は何も答えず微笑むだけに留めた。
まずは普通の大福。それから豆大福に草大福、苺大福。籠の中は大福の楽園だ。
「はい、ロキさん。お一つどうぞ」
苺大福をひとつ、ロキへと手渡せば全キッズの視線が其処に注がれた。獅子の身体を低くして、たしっとお座りした個体もいる。
「もちもちのおかしだ」
「あれ、大福っていうんだよー」
「おいしそー」
キッズの尾が揺れており、その瞳は期待に満ち溢れていた。ロキは大福を受け取りながら彼女達に軽く視線を送る。
「勿論タダでとは云わないよ。ここにちおりちゃんのおいしい大福があるから、火薬庫に案内してくれるならあげる」
「えー、そんなのいけないよ」
「でも案内するだけなら……案内するだけでもちもちがもらえる……」
「絶対ダメだよ!」
「大福ください!」
キッズ達は渋りながらも大福に心を奪われている。
千織とロキは相手の様子を察し、自分達だけで大福を食べる動きを見せた。
「美味しいのに残念ですねぇ。豆大福を頂きましょう」
「俺様は苺。んー、甘酸っぱ甘くておいしー」
「火薬庫を教えていただけないなら大福はお預けですねぇ。ロキさん、帰ったらふたりで全部の大福を食べましょうねぇ」
千織は自分達の分だけを取り出してから、ぱたん、と蓋を閉めた。
「わわわ、ずるい!」
「案内する! するから大福ください!」
「くださーい」
美味しそうに大福を味わう二人の様子に耐えきれなくなったのか、マンティコアキッズは任務を放棄した。食欲は正義だ。
「あはは、交渉成立だね」
「ではよろしくお願いします。案内が終わったら差し上げますね」
「こっちー!」
「あっちこっち、こっち~」
二人を先導するようにぱたぱた駆け出したキッズはもう大福のことしか頭にない。可愛いなぁ、と思ってしまうが相手は敵。ロキも千織も気を引き締めた。
そうして、ロキ達は火薬庫に到着する。
「何だかここまで素直だと罪悪感が凄いですねぇ」
千織が小声で呟くと、ロキが何やらごそごそと準備を始めた。キッズはいつ大福がもらえるのかとそわそわしている。
そして――。
「あーあっちにおっきな大福があるよー」
「えっ」
「どこどこ?」
「――え?」
慌てるキッズと首を傾げる千織。双方が指差された方向に目を向ける中、ロキは導火線に火を付けたかと思うと火薬が詰まった樽に爆弾を放り投げた。
「ちおりちゃ~んよけて~」
「え? ちょっとロキさん!?」
一瞬後。
火薬の樽がごろごろどーん! とマンティコアキッズの群に突っ込んでいった。
「にゃああー!?」
「きゃー!」
「大福じゃなくて爆弾だー!?」
「食べたかったよお~~~~」
「ひえ……」
悲鳴をあげるキッズを避けてなんとか爆発範囲から逃れた千織が、命からがらロキの元に駆けてくる。マンティコア達はどかーんと弾けた爆風に飛ばされ、空にきらりと光るお星さまになっていった。
大福の籠をぎゅっと抱き締めた千織は危機一髪。避けれてよかった、と他人事のように笑ったロキは片手を庇代わりにしながら、遠い空を見上げる。
「たーまやー?」
「ロキさん……」
「俺様、結構ワルになれるかな?」
千織に振り向いたロキは、へへ、ともう一度笑ってみせた。
その笑顔は何だか無邪気で、逆に悪っぽい。
「十分素質はある気がしますよ」
なんて、ね。
千織は息をつき、ロキに倣って空を振り仰いだ。蒼海は陽の光を反射して煌めいており、爽やかな海風が頬を擽る。
大福を一口でも食べさせてあげれば良かっただろうか。
そんな思いを抱きながら、千織達は骸の海に還った子供達を見送った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴィクティム・ウィンターミュート
【DARK】
オイオイ、火遊びするにはちょいと早いぜ
もうちょい大人になるまで待てなかったかい?
刺激的なパーティーを楽しむには作法が必要なんだ
俺達が手本を見せてやる
ターゲットセット──『Illusion』
ダメージは無いよ…こいつが活きるのは後さ
それじゃあ次のフェーズだ…爆弾を『俺』に集めな
ハイドラの蛇爆弾にニルの氷柱
オマケにこの船に積まれた爆弾を集めに集めて
おやおやこのままじゃ爆発して俺が吹っ飛んじまう!
大変だ大変だ──お前らの身がな
纏めて座標交換だ、プレゼント交換はお好きかな?
今お前らの足元には大量の爆弾、迫る氷があるわけだが
果たしてどれだけ生き残れるか…
賭け金のベットはお早めに。配当?ないよ
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
【DARK】
やァ可愛い子供たち
敵襲があっても使わないくらい火薬が大事か?
……そうかそうか
ならば私たちが花火をしてやろう!
貴様らでなァ!
今回の私は後衛役
氷の属性攻撃を全力で乗せた魔法弾をばしばし撃ち込んでやろうかな
そうそう、後は――天罰招来、【氷霜】
こいつで突き刺してやろうかな
兄ちゃんが一つ良いことを教えてやろう
氷が炎に弱いなんてのは都市伝説だよ
頑丈な私はともかく、ハイドラとヴィムは吹っ飛びそうだ
氷の柱で爆発の余波から二人を守りつつ
ヴィムとは適宜アイコンタクトを取って
ユーベルコードの発動に合わせて、全ての攻撃をヴィムに集中させる
冥界の竜が二匹と、彼岸の橋渡しが一人
地獄の果てまでご招待――って奴だ
ハイドラ・モリアーティ
【DARK】
おいおいわんぱく小僧ども!
火遊びはその辺にしとけよな――ったく
海にゴミを増やすんじゃねーよって
兄貴に氷の柱で守ってもらいつつ、俺ぁこのミスター十徳ナイフもびっくり
ペテン師くんと仲良くやらせてもらうことにするぜ
【UNCANNYVALLEY】
ヴィクティム、爆弾属性の俺の蛇たちは用意した
派手に綺麗に扱ってやってくれ。どいつもこいつも今にも爆ぜたくてうずうずしてるンだ
それに、俺はあいつらにちゃァんと警告したからな
だからこれはお仕置きだ。大人の言うことを聞かない悪い子たちは
海に沈められて怪物(おれ)に食われちまうぞ!ってな
爆発させる場所はお前に任せるよ
――さあ、悲鳴の準備はいいか?
BOMB!
●戦略と爆発
乗り込んだのは既に爆発音が響きはじめている艦上。
戦場となった艦内に視線を巡らせ、ヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)は口許を薄く緩める。
「オイオイ、火遊びするにはちょいと早いぜ」
その視線の先には侵入者に対応するため、わらわらと大慌てで走り回っているマンティコアキッズ達の姿があった。
「あっ、敵だ!」
「やっつけろー!」
向かってくる仔獅子達を見据え、ハイドラ・モリアーティ(冥海より・f19307)も戦闘態勢を取っていく。
「おいおいわんぱく小僧ども! 火遊びはその辺にしとけよな――ったく」
そういって頭を振ったハイドラに続き、ニルズヘッグ・ニヴルヘイム(竜吼・f01811)もキッズ達の様子を見遣った。
「やァ可愛い子供たち。敵襲があっても使わないくらい火薬が大事か?」
「そうだよ!」
「使ったら怒られるもーん」
「でも、使わなきゃ負けるかも……」
「誤爆こわいよ! ダメだよ~!」
キッズ達はニルズヘッグの問いかけを聞き、それぞれに答える。
ハイドラは無邪気すぎるほどのキッズに対して呆れた表情を浮かべ、ヴィクティムはわざと溜息をついてみせる。
「誤爆ねぇ、海にゴミを増やすんじゃねーよ」
「もうちょい大人になるまで待てなかったかい?刺激的なパーティーを楽しむには作法が必要なんだ」
俺達が手本を見せてやる。
そう語ったヴィクティムが身構えると、ニルズヘッグも敵である獅子達に宣言した。
「……そうかそうか。ならば私たちが花火をしてやろう!」
「ええっ、爆弾じゃなくて花火?」
「いたくないやつ?」
「そうだ。――貴様らでなァ!」
「わああ、やだー!」
何とも緊張感のないキッズ達の声と共に、其処から戦いの幕があがってゆく。
負けないぞ、と床を踏み閉めた仔獅子は食欲と後のお昼寝の楽しみを糧にしていき、力を増幅させていった。飛び掛かってくる個体の軌道を読み、身を翻して避けたヴィクティムは能力を発動させる。
「ターゲットセット――『Illusion』」
「何もおこらない? もう、びっくりしたー」
「ダメージは無いよ……こいつが活きるのは後さ」
キッズは攻撃に備えたが、ヴィクティムは相手に狙いを定めただけ。その間にニルズヘッグが後衛役に入り、氷の魔法弾をキッズの群に撃ち込んでいく。
「そうそう、後は――天罰招来」
氷霜の力が戦場に巡り、凝縮された冷気が無数の氷柱となって敵に迸った。
わあ、とキッズから悲鳴が上がる。
「こいつで突き刺してやろうか」
「やだー! こわいー!」
「兄ちゃんが一つ良いことを教えてやろう。氷が炎に弱いなんてのは都市伝説だよ」
「ひえー!」
キッズは泣き叫びながら氷の柱を躱していく。
ハイドラはあの氷の柱が自分達を守ってくれてもいると感じながら、ヴィクティムの方に目を向けた。
「さてと、俺ぁこのミスター十徳ナイフもびっくりなペテン師くんと仲良くやらせてもらうことにするぜ」
「それじゃあ次のフェーズだ……爆弾を『俺』に集めな」
「ああ!」
――UNCANNYVALLEY.
ヴィクティムの声に応えたハイドラは、蝙蝠翼を生やした多頭蛇を召喚した。
爆発の属性を宿した蛇達は願われた通りにヴィクティムに向かっていく。
「後は託すから、派手に綺麗に扱ってやってくれ。どいつもこいつも今にも爆ぜたくてうずうずしてるンだ」
ハイドラの蛇爆弾。そして、ニルズヘッグの氷柱。
更にはオマケに、艦に積まれていた爆弾を集めに集めていったヴィクティムは静かな笑みを湛え、敵に言い放つ。
「おやおやこのままじゃ爆発して俺が吹っ飛んじまう!」
「えっ、なにしてるの?」
「危ないことはやめなさーい! しんじゃうよ!」
ヴィクティムが大袈裟に語る言葉に反応したキッズは心配している。いくら敵といえど危険過ぎると思ったのだろう。
だが、ヴィクティムはそんな心配など撥ね退けた。
「大変だ大変だ。お前らの身がな」
「???」
マンティコアキッズは彼の言っている意味が分からなかったようだ。しかし、次の瞬間に仔獅子達は全てを理解することになる。
刹那、キッズの座標がずれた。散らばっていた彼女達はヴィクティムが立っていた場所に転送されたかのように移動する。そう、座標交換の力が働いたのだ。
「プレゼント交換はお好きかな?」
キッズの足元には今、大量の爆弾と迫る氷がある。
果たしてどれだけ生き残れるか、とヴィクティムが呟いた直後。
「うわーっ!」
「ぎにゃー!?」
「ぴえええええ」
ハイドラの蛇達による爆発が巻き起こり、キッズが木っ端微塵に弾け飛んだ。その中でニルズヘッグは即座に新たな氷の柱を創り出し、爆発の余波から二人を守った。
「悪いな、兄貴」
「頑丈な私はともかく、ハイドラとヴィムは吹っ飛びそうだったからな」
「助かってるぜ」
二人からのそれぞれの礼を受け取り、ニルズヘッグは残る敵を見据える。ハイドラも残り少ないキッズに向け、新たな多頭蛇を向かわせていった。
「俺はお前らにちゃァんと警告したからな。だからこれはお仕置きだ。大人の言うことを聞かない悪い子たちは海に沈められて怪物に食われちまうぞ!」
怪物――即ち、おれに。
口の端をあげて嗤ったハイドラの笑みを見て、マンティコアキッズ達は震えあがる。
「もうだめだー!」
「最後におやつたべたかったよお……」
始終、テンションとノリがまったく違っていたが終わりはもうすぐだ。ハイドラもヴィクティムも、ニルズヘッグもコンキスタドール相手に容赦する気はない。
「――さあ、悲鳴の準備はいいか?」
「賭け金のベットはお早めに。配当? ないよ」
「冥界の竜が二匹と、彼岸の橋渡しが一人。地獄の果てまでご招待――って奴だ」
彼らは思い思いの言葉を向け、更なる力を紡ぎあげていく。
そして、艦内に鋭い音が疾走る。
――BOMB!
その音は激しく、間もなく訪れる終幕を飾るかのように大きく響き渡った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…此処は、倉庫では無いみたいだけど何とまあ…
爆弾をそのままにして転がしておくなんて、
放っておいてもその内海の藻屑になっていそうね…この船
複数の爆弾が転がっている部屋にて戦闘開始
敵の攻撃を大鎌で受け流し早業のカウンターでUCを発動
…火遊びをする悪い子供がどうなるか知っているかしら?
…泣く子も黙る吸血鬼狩りに狩られるのよ。こんな風にね
存在感の無い不可視の血糸を乱れ撃ちして爆弾を掴み、
戦闘知識を基に敵の配置を見切り血糸から爆弾に魔力を溜め、
死角から魔力爆弾を敵に投げ爆発さていく
…もっとも、今の私は吸血鬼狩りではなく猟兵だからね
…太陽の光が届かなければ吸血鬼の力も使うのよ。こんな風にね
●血と火遊び
「……此処は、倉庫では無いみたいだけど何とまあ……」
少しばかり呆れた様子で呟いたリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は今、足元の爆弾を見下ろしている。
それは火薬庫に続く通路の最中に、無造作に転がっていたものだ。
現在、艦内は混乱の渦の中にある。
慌てて敵襲に対応したマンティコアキッズがうっかり落としてしまっていったのか、爆弾は放置されていた。着火されてはいないとはいえ、この状態で置かれている爆弾は危険極まりない。
「放っておいてもその内海の藻屑になっていそうね……この船」
コンキスタドールではあるが、マンティコアキッズは子供そのものだ。
敵艦隊の配置に不安を覚えながらも、リーヴァルディはこれを好都合と捉えた。素早く艦内を移動した彼女は拾った爆弾を手にしながら、更に多くの爆発物が眠っているであろう火薬庫に向かった。
「むむっ、新しい敵がきたぞ!」
「爆弾をまもれー!」
リーヴァルディの到来に気が付いたマンティコアキッズは身構える。
「こいつをたおしたらご飯にしような!」
「いえ、そんな時間は訪れないわ……」
リーヴァルディは飛び掛かってきた一体目キッズの爪を躱し、二体目の攻撃を大鎌で受け流して反撃に入った。
鋭い斬撃はまさに早業。切り付けられたマンティコアキッズが慌てて後ろに下がる。
だが、リーヴァルディは素早くその後を追った。
「……火遊びをする悪い子供がどうなるか知っているかしら?」
「ひえっ、凄くはやい!」
「し、しーらないっ」
リーヴァルディの速さに驚いたキッズ達がふるふると首を横に振る。対するリーヴァルディは双眸を鋭く細め、そっと告げた。
「……泣く子も黙る吸血鬼狩りに狩られるのよ。こんな風にね」
限定解放・血の魔線――リミテッド・ブラッドワイアード。
リーヴァルディが手をかざせば、存在感の無い不可視の血糸が巡らされていく。乱れ撃つように血の糸で爆弾を掴んだ彼女は一気にそれを放り投げた。
敵の配置は既に見切っている。
血糸から伝わった魔力が爆弾に込められており、後は爆発を待つだけ。任意に魔力を移動させられる爆弾は一体目、二体目、三体目と次々に投げられていき――。
「わー! にげろー!」
「だめだよ、血の糸が出口を塞いでる!」
「わああ、わあーん!」
叫び嘆くマンティコアキッズ達を見据え、リーヴァルディは魔力を解放した。
「もっとも、今の私は吸血鬼狩りではなく猟兵だからね……」
次の瞬間、赤い閃光が疾走る。
鋭い爆発音と共に仔獅子は刃のように鋭い爆風に巻き込まれ、散っていく。
「……太陽の光が届かなければ吸血鬼の力も使うのよ。こんな風にね」
リーヴァルディは倒れた獅子達に背を向け、己に廻らせていた血糸の防護を解いた。されど、その言葉を聞くものは誰も居なかった。
何故なら、彼女の起こした爆発によってこの一帯の獣達は全て葬られたからだ。
そして、リーヴァルディは進む。
艦内に残っている敵を屠り尽くすまで――戦いは未だ、終わらない。
大成功
🔵🔵🔵
祇条・結月
子どもだ……なんて油断していい相手じゃないよね
オブリビオンで、人喰いの獣で、おまけに慣れない船の上
……行こう、できることをするよ
いくらそれなりにしっかりした艦上って言っても波の上
おまけに敵地。地の利は完全に向こうにあるし……すこし、ズルをするよ
わざと見つかる風に姿を見せて
「侵入者だよ。かくれんぼでもしよっか」
って風に挑発
子どもだっていうなら、興味を惹かれて絶対乗って来るでしょ
つかまらないようにぎりぎりで避けながら、追い詰められるふりをして一室へ逃げ込む
……追っかけてこさせるのが狙い
部屋へ入ってきたら集積しておいた爆弾類を【罠使い】で爆発するように仕掛けておく
僕は、壁を抜けて逃げれるから、さ
●かくれんぼ
この艦内に乗り込んでいるのは無邪気な獣の幼体。
祇条・結月(銀の鍵・f02067)は周囲で起こる爆発音を耳にしながら、火薬庫に続く通路を駆けていた。
「子どもだ……なんて油断していい相手じゃないよね」
既に戦いはあちこちで始まっている。
敵襲に気付いたマンティコアキッズも忙しなく動き回っており、いつ接触してもおかしくない状況だ。結月は揺れる艦内の様子を注意深く探りながら進む。
相手はオブリビオン。
そのうえ人喰いの獣で、おまけに慣れない船の上。気を引き締めなければならないとして、結月は決意を固める。
「……行こう、できることをするよ」
そして、結月はひとつの火薬庫の前に辿り着いた。
いくらそれなりにしっかりした艦の上とはいえど此処は海。波の上を揺蕩っているものだ。更におまけに敵地でもある。
「地の利は完全に向こうにあるし……すこし、ズルをしようかな」
そっと覗いた扉の隙間から見えているのは、せっせと爆弾を運ぼうとしているマンティコアキッズ達だ。
おそらく戦況の不利を感じており、爆弾を戦いに持ち込もうとしているのだろう。
「ふわあ、重い~」
「がんばって! これが終わったらおやつたべよ!」
よいしょ、よいしょ、と爆弾を動かしていくキッズ達。
結月は彼女達の前にわざと姿をあらわすことにした。扉を開き、わざと自分が見つかるように堂々と踏み出す。
「あっ、敵だ!」
「わー! かまえろー!」
「侵入者だよ。かくれんぼでもしよっか」
結月は戦闘態勢を取ったキッズを挑発するように手招きをした。マンティコア達は爆弾を持っているが、その敵意は普段の敵よりは薄いように思える。
「かくれんぼ?」
「えー、いまはそういうときじゃないのにー」
「でも楽しそう!」
相手の反応は様々だが、結月は手応えを感じた。子供だというならかくれんぼにも興味を惹かれ、絶対に乗って来ると読んだのだ。
もし乗ってこなくてもこうして姿を見せたのだ。此方が何処かに逃げたり隠れたりすれば追ってくるしかない。
「鬼さんこちら。ああ、これは鬼ごっこだったかな」
「まてー!」
「待て待て~!」
結月は広い火薬庫の樽の影に隠れ、素早く駆けて移動しながら相手を翻弄する。決して捕まらないようにぎりぎりで避けながら、追い詰められるふりをして――そして、更に奥の一室へ逃げ込んだ。
「ふふーん、追いつめたぞ」
「きさまのうんめいもここでおわりだ!」
「……どうかな」
此方を倒す気満々のキッズ達だったが、結月は少しも慌てていない。
結月は逃げ回りながらも爆弾を集積していた。そうして、キッズが多く集まったところでそれを一気に爆発させる狙いだ。
「わあ、爆発させるの!?」
「でもお前も一緒にこっぱみじんになるよ!」
キッズ達は戸惑いながらも、結月も一緒に爆発に巻き込まれるだけだと指摘した。だが、結月とて何も考えていないわけではない。
「いや……僕は、壁を抜けて逃げれるから、さ」
「ええ!?」
「ずるーい! うわーん、負けたー!」
仔獅子達の悲鳴を聞きながら、結月は鍵ノ悪魔の力を発動させて火薬庫から脱出する。
そして――彼が壁を抜けた瞬間、大きな爆発音が轟いた。
大成功
🔵🔵🔵
菱川・彌三八
こ、此奴が獅子か…まァガキなんてなァこんなもんか
此奴等よく自爆しなかったな
マ、善いぜ、ちいと遊んでやら
あの火薬は力に引っ張られるってェ話だったな
其れなら千鳥が善いだろう
一羽も群れも思う侭、爆ぜる力も意の侭ってな
千鳥に色も付けたがドウデ、ほんに花火の様にならねェものか
なあに、戯れだよ
時期外れの花火も悪かねェさ
そら、綺麗なもんだろう
したが一羽ずつぶつけて小さな破裂を繰り返し乍らひと処に追い込み…纏めて打ち上げるか
獅子共が船ン中に居たら?
そん時ァ同じ様に外に追い立てるだけよ
あぁ、丁度飴玉なら持ってんだ、使いでがありゃあちらつかせても善いやもしれねェな
ユヴェン・ポシェット
色々なものがあるな
自身の持つ「avain」以外の爆発物を使用することがないので、なんだか不思議な感じがするな
ミヌレ…無闇に触るなよ
腹減っているのか。まあ、空腹は辛いよな…
肉は無いが果実なら、ほら。
UC「halu」使用
自身の腕を林檎の樹に変え、実った箇所を削り、相手へ向けて放る。
元々は俺の腕なので、俺は痛いし、見た目に反して固く決して美味くはないだろう…
あ、それ食うなら早く食うか捨てるかした方が良いぜ
……悪い、タイミング悪かったか。
中に時限爆弾をしかけてみたんだ、思いっきり水が弾ける奴。
まあ、さっぱりしただろ
仕上げはやっぱりこれか、迫力があって見栄えも良い。
行くぞミヌレ。
花火を打ち上げようぜ!
●仔獅子と花火の彩
「総員、突撃ー! 侵入者をやっつけろ!」
「爆弾も使わないと負けちゃうぞ。どんどんいけーっ!」
艦内に響き渡るのは幼い獅子達が奮闘する騒がしい声。ぱたぱたと駆ける音、手足の爪がちゃっちゃと床に触れて鳴る音や、わいわいと騒がしい声が菱川・彌三八(彌栄・f12195)の耳に届いている。
「こ、此奴が獅子か……まァガキなんてなァこんなもんか」
爆弾があちらこちらで爆発する激戦地だというのに、仔獅子達は何とも緊張感がない様子で走り回っていた。
彌三八の近くには同じタイミングで敵船に乗り込んできたユヴェン・ポシェット(kuilu・f01669)もおり、耳を澄ませている。
「何だか大変なことになっているな」
「……此奴等、よく自爆しなかったな」
だが、そのとき。
「あー! 新キャプテンが爆発したよお!」
「じゃあ、あたしが次の艦長するね。あっ、爆弾が落ち――」
どーん。
ユヴェンと彌三八が呟いた後、遠くからそんな声と爆発音が響いてくる。思わず拝むように両手を合わせてしまった彌三八の傍で、ユヴェンも不安を覚えた。どうやらいちいち深く考えていては気持ちが追いつかない戦場のようだ。
「マ、善いぜ、ちいと遊んでやら」
「敵であるなら倒すしかないか。少し気は引けるけどな」
彌三八とユヴェンは視線を交わし、敵地の奥に進んでいく。その目的は火薬庫に収められているという爆弾だ。
「あの火薬は力に引っ張られるってェ話だったな」
「色々なものがあるらしいな」
まだ手がつけられていない火薬庫を見つけ、二人は其処に潜り込んだ。内部には誰もおらず、敵の邪魔も入らない。
ユヴェンはこれまで自らが持つ爆発果実以外の爆弾に触れたことがない。棚や箱に所狭しと並べられた品々を見渡し、不思議な感覚をおぼえていた。
傍らで興味深そうに爆弾箱を覗いていた槍竜を抱きあげ、ユヴェンは首を振る。
「ミヌレ、無闇に触るなよ」
「お、あった。これがそうか」
同時に彌三八が魔力爆弾が詰められた小箱を発見した。
これを使うならば千鳥の力が善いだろう。そのように判断した彌三八はユヴェン達にも爆弾を手渡し、火薬庫の扉を開いた。
甲板に駆けた二人。後はこれを使って敵と戦うだけ――というとき。
「みんな、敵がこっちにもいたよ!」
「しんにゅうしゃだ。しかも爆弾ももってる!」
「あぶなーい!」
「おなかすいたなー」
彌三八達の前に何体ものマンティコアキッズが現れた。騒がしい声の中には無関係の言葉も混じっており、ユヴェンは軽く首を傾げる。
「腹減っているのか。まあ、空腹は辛いよな……。肉は無いが果実なら、ほら」
そして、ユヴェンは挨拶代わりに自身の腕を林檎の樹に変えた。実った箇所を削り、相手へ向けて放り投げればキッズ達はきらきらと目を輝かせる。
「わっ、もらっていいの?」
「いただきまーす」
「むぐっ!?」
「すまないな。見た目に反して固く決して美味くはないだろう……。あ、それ食うなら早く食うか捨てるかした方が良いぜ」
「だましたな!」
「ゆるさないぞ、って……わああ!」
次の瞬間、果実を中心にしてキッズ達の周囲に水が爆ぜた。悪いな、と告げたユヴェンは時限爆弾を仕掛けていた。それも水流の魔力入りのものだ。
「タイミング悪かったか。まあ、さっぱりしただろ」
「何、気が抜けるってのはこのことかね」
彌三八は仔獅子と仲間の遣り取りを眺めており、肩を竦めた。されど此処からは自分の番。筆を執った彌三八は千鳥を描き、爆弾に力を廻らせていく。
「一羽も群れも思う侭、爆ぜる力も意の侭ってな」
色を得た千鳥の群は戦場に迸った。其処に合わせてユヴェンが植物化した腕を振るい、獅子達を絡め取っていく。
キッズ達も対抗していくが、二人の連携に手も足も出ないようだ。
「ううっ……負けそうだよお」
「ドウデ、ほんに花火の様にならねェものか」
「花火か、良いな」
彌三八とユヴェンが頷きあっていると、キッズがおずおずと話しかけてきた。
「なにするつもりなの……?」
「なあに、戯れだよ。時期外れの花火も悪かねェさ」
そら、と彌三八が筆を振るえば千鳥の力が宿った魔力爆弾が鋭く弾ける。
千鳥は翼を広げて飛んだ。彌三八は敵にその一羽ずつをぶつけて小さな破裂を繰り返しながら、ひとところに追い込み――。
「さァて、纏めて打ち上げるか」
「ああ。仕上げはやっぱりこれか、迫力があって見栄えも良い」
「やっちまおうか」
「ミヌレも行くぞ。花火を打ち上げようぜ!」
そして、彌三八とユヴェンはそれぞれに力を込めた花火爆弾を一気に解き放った。
疾走る彩。響く爆発音。
仔獅子達は色鮮やかな光に包まれ、悲鳴をあげながら空高く打ち出された。
「えーん、負けたー!」
「たまやー」
「かぎやー」
「来世ではおなかいっぱいたべるぞ~~!」
最期の最後まで賑わしい言葉を紡ぐキッズ達は空の彼方で光り輝き、骸の海に還されていく。その姿を見送りながら、ユヴェンはそっと息をついた。
彌三八も頬を掻き、何とも言えぬ終わりを確かめる。
そのとき、ふと気付いた。
「この飴玉、使いでがなかったなァ」
「だったらミヌレに少し分けてくれないか?」
彼が手の中で転がしたものを見遣り、ユヴェンは飴玉に興味津々の相棒竜を示す。
何はともあれ戦況は上々。
そうして、二人と一匹の間で小さな笑みが交わされた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
冴島・類
わあ
火薬庫に突っ込むわけだ
幼体達に管理させる体制が
つっこみ待ちかな?
物理的につっこんで
大きな花火、あげましょうか
潜入したら、火薬庫までは
忍び足使って物音控えていき
見張がいれば
わざと、自分のいる場から離れた
扉や、荷を綾繋ぎの糸で操り物音たて注意引き
その隙に滑り込み物色
花火と、風を呼ぶろけっと弾?とか見繕って
甲板の子らを相手にしようかな
はい、瓜江
僕花火つかって気を引くから
君はこの弾ね
手繰る彼と分かれ
ご機嫌よう、きっず君達!
悪いが、この船の花火はいただいたー
などと言いながら、ぽいぽい花火上げて気を引いて
彼らが、僕を追ってきたら
船のへりに誘導
風呼び弾で吹っ飛ばす
海賊まがいですまないね
止めないと、なんだ
●花火と海風とコンキスタ・ブルー
「――わあ」
火薬艦だという敵の陣地に乗り込んだ後、冴島・類(公孫樹・f13398)は思わずそんな声をあげてしまう。
既に此処は激戦区。あちこちで爆発音や戦闘音、騒がしい子供の声が響いていた。
それはそれはもう阿鼻叫喚だ。
猟兵達が爆発させているものもあるが、マンティコアキッズが誤って爆発させてしまっているものもあるらしい。
「火薬庫に突っ込むわけだけど、幼体達に管理させる体制がつっこみ待ちかな?」
洒落を口にした類も、ある意味でツッコミを待つ身。
されど辺りに更に響いた爆発音によって、その言葉を聞けた者は誰もいなかった。
それならばもう最後まで突っ込もう。そう決めた類は前方から駆けてくるマンティコアキッズの一団に目を向ける。
「物理的につっこんで、大きな花火、あげましょうか」
しかし今は物陰に隠れ、火薬庫を目指す時。
類はキッズ達を避けながら通路へと進み、忍び足で気配を消していく。物音を立てなかったことで彼は無事に火薬庫に辿り着くことができた。
だが、内部にはどうやら別のキッズがいるようだ。
「いいか、ここが最後の爆弾庫だ!」
「あとは花火しかのこってないからね。まもりきるぞー」
「お~!」
会話を聞くに、他の火薬庫は猟兵の手に渡ったらしい。ならば好都合だとして類はこの場の攻略を行うことにした。
類はわざと自分のいる場から離れた扉の方で音を立てた。荷を綾繋ぎの糸で操り、無理矢理に扉にぶつけたのだ。
「にゃっ!?」
「まさかこっちにも敵が!」
狙い通り、マンティコアキッズは別の方向に気を取られた。しかもこの倉庫の守りも忘れて甲板の方に出ていってしまうといううっかり付きだ。やはり思考も行動も単純な子供なのだろう。
その間に類は火薬庫に滑り込み、爆弾を物色していく。
「こっちは花火……これは風を呼ぶ、ろけっと弾? ――よし」
手早くそれらを手に入れた類は、先程のキッズ達が向かった方に急いだ。その際に傍にいる瓜江にロケット弾を手渡す。
「僕は花火をつかって気を引くから、君はこの弾ね」
自ら手繰る彼と分かれた類は甲板で敵を探すキッズの元に敢えて姿を現した。
「むむ!」
「ご機嫌よう、きっず君達!」
「いたよ、敵だー! みんなかかれーっ!」
敵意を向けて飛び掛かってくるキッズを躱し、類は敢えて目立つように語る。
「悪いが、この船の花火はいただいたー」
「あー! こらー!」
ぽいぽいと花火を上げて相手の気を引く類。空で花火が次々と弾ける中で彼が身を翻すと、キッズ達は追いかけてきた。
それもまた類の狙いだ。彼女達を船の縁に誘導した瞬間、瓜江に渡していた風呼びの弾が発動することで、キッズが一気に吹っ飛ばされた。
「あーれー! だまされたー!」
「にゃあああー!? おぼえてろよー!」
「ずっとおなかすいてる~……」
それぞれの断末魔を残して海に放り出されたキッズは、其処で終わりを迎えることになる。頭に輪っかを付けた魂のようなものがすぅっと浮かんだことを確かめ、類はそっと仔獅子達の冥福を祈った。
「海賊まがいですまないね。でも――止めないと、なんだ」
類は海の彼方を見つめ、遠くにある蒼海羅針域と呼ばれる渦を瞳に映す。
彼の眼差しはまっすぐに、この戦いの向こう側を見据えていた。
大成功
🔵🔵🔵
都槻・綾
腹が減っては戦が出来ぬと言いますものね
おやつ、食べますか?
ふわふわの綿菓子に
ぱちぱち弾ける飴が
色とりどりに散りばめられている駄菓子を
ふくふく笑顔でキッズ達へ差し出し
可愛らしく見た目も楽しい其れを
一口頬張って見せれば、ほら
ね、
弾む音が聞こえます?
うんうん頷く様子も
わくわく耀く瞳も
稚く愛らしいけれど
子供は火遊び注意、の鉄則
差し上げたおやつへ夢中になっているところを横目に
花火庫を巻き込んで
鳥葬の炎纏う鳥を放ったなら――此方もほら、
豪快で豪勢に花火が弾ける
どーんと打ちあがって
ぱちぱち弾けて
きらきら消えていくキッズ達も
何処か楽しそう
いっそ歓声まで聞こえてきたり
骸の海にも
今ばかりは
花火の彩りが映ると良いな
●見送りの花火空
「もうだめだ……燃ゆる獅子号はおわりだよお」
「おなかが、へった……ぐぅ~」
戦いは終わりに近付き、この艦に乗り込んでいたマンティコアキッズも残り僅か。
猟兵にはどうあっても勝てないと察した仔獅子達は現在、空腹に襲われながら艦内を逃げ回っていた。疲れ果てているのか、ぽてぽてと歩く足取りはとても重い。
「せめておやつだけでも食べたいよぉ」
「腹が減っては戦が出来ぬと言いますものね」
「うんうん、わたしたちが負けそうなのはごはんをたべてないから!」
「おやつ、食べますか?」
「持ってるなら欲しい! って、あれ? 誰!!??」
キッズの会話の中にいつのまにか見知らぬ青年が混ざっていた。そう、彼こそが都槻・綾(絲遊・f01786)だ。
綾は当たり前のように仔獅子の横に佇み、どうぞ、とお菓子を渡す。
「ありがとー!」
「誰でもいっか。たべるぞー!」
「はい、遠慮はいりませんよ」
綾が手渡したのは、ふわふわの綿菓子にぱちぱちと弾ける飴が入った駄菓子だ。飴の彩は色とりどりで、散りばめられている色彩にキッズも目を輝かせた。
「おいしい!」
「ぱちぱちだー。もっとある?」
「ええ、もうひとつずつありますよ」
ふくふくとした笑顔でキッズ達に駄菓子を差し出す綾は優しいお兄さんといった風だ。そして、綾自身もふわふわのぱちぱちを一口だけそっと頬張る。
キッズ達も、可愛らしくて見た目も楽しい駄菓子を気に入ったようだ。
「ほら、面白いでしょう。弾む音が聞こえます?」
「うん!」
「これ、もっとはやくに知りたかったなー。みんなでわけっこしたかった!」
仔獅子はあまりにもおやつに感動したらしく、戦いのことなど忘れて嬉しがっている。うんうんと頷く様子、わくわくと耀く瞳。それらは稚く愛らしいけれど――。
「子供は火遊び注意、の鉄則を知っていますか?」
「ふえ?」
「火遊びって爆弾の……はっ、そうだ敵だ! 侵入者だ!」
綾の問いかけに対してキッズが気がついたときにはもう時既に遅し。事前に火薬庫から持ってきていた花火爆弾を取り出した綾は一気にそれを放り投げた。
鳥葬の炎纏う鳥も同時に解き放たれる。
そうすれば――此方も、ほら。
次の瞬間、豪快で豪勢な花火が辺りに弾けて猛威をふるっていった。
花火はそのまま仔獅子を巻き込んで、どーんと打ちあがってゆく。わー、きゃー、と響く声は遠くなっていった。
「おやつおいしかったから、もっと食べたかったよおー!」
「えーん、また来世~」
ぱちぱち弾けて、きらきらと消えていくキッズ達。
それが綾には何処か楽しそうに聞こえ、歓声めいた仔獅子の声に耳を澄ませた。そうして、コンキスタドールの居なくなった艦上で綾は空を振り仰ぐ。
果てしなく続く蒼海と青空。
其処に願うことはひとつ。
骸の海にも、今ばかりは――花火の彩りが映ると良いな、ということ。
大成功
🔵🔵🔵
●燃ゆる獅子号の最期
数多の火薬や爆弾を乗せた戦艦は、こうして進むべき路を失った。
蒼海に浮かぶ危険な艦はこのまま放置してはおけない。猟兵達は皆が脱出準備を整えたことを確かめ、積載されていた火薬を一箇所に集めた。
そして、其処にあった時限爆弾を起動する。
鉄甲船に避難した猟兵達が、獅子号と充分な距離を保った後。
海上に火柱があがった。
激しい爆発音と共に戦艦が燃えはじめ、海に沈みながら焔と煙を燻らせていく。
燃える、燃える。獅子の火が燃え盛る。
艦は暫し炎を上げ続けた。蒼海羅針域から続く、勝利の路を示しながら――。