●
「皆、森羅の巫女達とは遭遇したかしら。彼女達が信仰している存在が見つかったみたいよ」
集合した猟兵達へ向け、そう切り出したのはクリナム・ウィスラー(さかなの魔女・f16893)だ。
彼女がグリモアを起動すれば、そこに映し出されたのは不気味な海獣のようなオブリビオンだった。
「名前は森羅冠す『オルキヌス』よ。この名前でピンときた人もいるでしょうけれど、『三つ目』のバルバロス兄弟が使っていたメガリスの本当の持ち主でもあるみたいね」
オルキヌスは森羅の巫女が信仰する神であり、嘗て「七大海嘯」の一体に数えられる程の強力な存在だったらしい。
しかし、バルバロス兄弟に瞳を奪われたことで失墜し、姿を消していたとのことだ。
「そのオルキヌスが復活し、『フピ島』という小さな島を襲おうとしているみたい。オルキヌスが陸へと上陸する前に、皆に討伐をお願いしたいわ」
オルキヌスは陸に上がった生物達へと恨みを向け、憎悪している。
そのような存在がどこかの島へと辿り着いてしまえば――後の惨劇は簡単に予測出来るだろう。
「オルキヌスから瞳の力は失われているのだけれど、それでも強敵であることに変わりはないでしょうね」
七大海嘯からは外れてしまったが、オルキヌスの能力は全て失われてしまった訳ではない。
海の王者として君臨し、海にどの存在よりも適応し、その力は呪いにすら昇華されている。
そもそもオルキヌスは巨大な存在だ。全長50mはあろうかという巨体は純粋な脅威となるだろう。
「こんな強敵と海で戦うことになるなんて大変でしょうけれど……それでも、ここで食い止めなければ被害が出てしまうものね」
フピ島の住民達も事態を把握しており、必要ならば船も貸してくれる。
海上でも海中でも得意な場所で戦って欲しいとクリナムは付け足した。
「現在復活しているオルキヌスは不完全な存在よ。だからこそ付け入る隙もあるわ」
凶悪な海の王者だろうと、戦える相手ならば勝てる可能性は十分にある。
相手の得意な戦場に出なければいけないのは大変だが――それでも、猟兵達ならば。
「皆のことは心配してないわ。存分に戦ってきてちょうだい。それじゃあ、気をつけて」
ささかまかまだ
こんにちは、ささかまかまだです。
いとしの海へ。
●プレイングボーナス
海上・海中戦を工夫する(敵は先制攻撃しません)。
●森羅冠す『オルキヌス』
嘗て「七大海嘯」の一体だった海の王者です。
『陸上生物を海生生物に強制退化させる力』を失った状態の、不完全な復活を果たした存在です。
それでも強敵であることに変わりはありません。
どうにか海中を進んでいる間に迎撃しましょう。
●フピ島
A&Wから落ちてきた小さな島です。
住民も状況は把握しており、必要なら木製の小さな船を貸してくれます。
●
オープニングが出た時点でプレイングを受付開始します。断章の追加はありません。
シナリオの進行状況などに関しては戦争の詳細ページ、マスターページ等も適宜確認していただければと思います。
また、プレイングの集まり次第で不採用が出てしまうかもしれません。ご了承下さい。
それでは今回もよろしくお願いいたします。
第1章 ボス戦
『森羅冠す『オルキヌス』』
|
POW : 冥海銀河オルキヌス・オルカ
【支配下にある海の生物】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[支配下にある海の生物]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD : 海帝覇濤ディープブルー
敵より【海に適応した生態をしている】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
WIZ : 回帰狂濤ティクターリク
攻撃が命中した対象に【「海に帰りたい」という強迫観念】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【肺から海水が湧き出す呪い】による追加攻撃を与え続ける。
イラスト:山庫
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「曾場八野・熊五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
鈴木・志乃
海に還れ。還ってくれ。
海は好きだが水中戦闘は苦手なんだ。
おお……(遠い目)
ああ……水上を水陸空兼用のヒーローカーで爆走します! ぶっちゃけ地の利はあっちの気がするが仕方ない!
魚雷、収束手榴弾、ロケラン、毒針詰まった爆弾も持ったぞ。さあ戦争だ。
オーラ防御で車体ごと守りつつ、UCは常時発動。高速詠唱の催眠術込みで『敵が味方に、味方が敵に』認識されるよう洗脳、チャーム!
第六感で行動を見切り回避。隙を見てガンガン魚雷を発車。念動力でちっさーーーい毒針や粉ガラス(肺破壊用)、収束手榴弾をガンガン口に向かってシュート!
遠距離からはロケランぶっぱなす! ふぁいやー!
接近されたら高速詠唱でバリア張りまくるよ。
枯井戸・マックス
「随分とデカいな。……いやこれ無理なんじゃねえの?」
って泣き言をいってもどうにもならんか
双魚宮ハープーン・ケンレーンとダイバースーツ型の魚座の星座鎧を召喚し装備
これでとりあえず同じ土俵で戦うことは出来る【水泳、暗視】
だが一人じゃ無理だ
他の猟兵諸君も頼りにさせてもらおう
「仲間頼りは相手も同じだ。攪乱と雑魚の相手は任せな」
海の生物が集まる前に、月牙鏟の鎖仕込み刃を銛のように射出して仕留めていく【スナイパー、釣り】
これでオルカの強化は防げる筈
同時にケンレーンの逆の先端からも鎖を伸ばしながらオルカの周りを泳ぎ回り、隙を見て一気に縛り上げてやるぜ
「うらあ!シャチとったどー!」
行動セリフなどアドリブ歓迎
●
フピ島から望む海は日光の輝きに照らされキラキラと煌めいている。
しかし――猟兵達ならば分かるだろう。その美しい世界の奥に、強烈な憎悪が潜んでいることを。
魚影の状態でも巨大なオルキヌスを見遣り、枯井戸・マックス(マスターピーベリー・f03382)と鈴木・志乃(ブラック・f12101)は同時に溜息を零した。
「随分とデカいな。……いやこれ無理なんじゃねえの?」
「いやほんと……海に還れ。還ってくれ」
二人とも水中での戦いに適した装備は用意してきたが、それと得手不得手は別問題で。
遠い目をしながら志乃は持ち込んだヒーローカーのエンジンをかける。
「ああ……もう。こうなったら爆走しますね! ぶっちゃけ地の利はあっちの気がするが仕方ない!」
「それなら相乗りさせてくれないか? 攪乱と雑魚の相手なら任せてくれて構わないからな」
「こっちも魚雷に収束手榴弾、ロケランに爆弾と色々用意してますよ。こうなったら戦争してやりましょう」
「仲間頼りは相手も同じだ。派手に暴れてやろうぜ」
志乃が準備を進めるのと同時に、マックスもヒーローカーの屋根へと上る。
そして呼吸を整え――。
「星辰の導きに従い来たれ! サモンアーマー!」
叫びと共に装着するのは魚座の星座鎧だ。ダイバースーツ型のこの装備ならば海での戦いにも適している。
同時に『双魚宮ハープーン・ケンレーン』もしっかり構え、見据えるのは迫る魚影。
「こっちはオッケーだ。いつでも出発してくれ!」
「それじゃあ……行きますよ!」
志乃も勢いよく車のエンジンを始動させ、一直線に海へと突っ走った。
着水と同時にオルキヌスが吼える。彼の内に宿る鋭い憎悪を感じ取り、猟兵達の身体にも力が籠もった。
オルキヌスの叫びに応えるように、フピ島の周囲に暮らす海洋生物達が覚醒したようだ。
彼らもまた強い憎悪を抱きつつ、ヒーローカーへと次々に向かってきている。
「この手の相手にはこうするのが一番ですね。私を媒介に今一時繋がれ、世界の意志よ」
車のハンドルを切りながら、志乃は己に宿る聖なる光を収束させていく。
願うのは未来を願う意思、壊すのは敵の認識能力。
志乃の光に照らされた海洋生物達は急に動きを鈍らせはじめた。敵と味方が上手く認識できなくなり、抱いた憎悪を向ける先を見失ったのだ。
「後はあいつらを蹴散らせば十分だな。任せてくれ!」
生じた隙を活かすように、マックスはケンレーンの仕込み刃を作動させる。
そのまま銛のように海中へと射出させれば、刃は次々に敵を切り裂き散らしていく。
数が減れば減るほど海中の憎悪は薄れ、オルキヌスの力も奪っているようだ。
「よし、これであとはあのデカブツだけだぜ」
「道は開けますよ!」
残りの敵とオルキヌス本体を撹乱するため、志乃が手に取ったのは魚雷だ。
次々と発射させれば爆発が魚達を飲み込んでいき、オルキヌスもヒーローカーを見失う。
その煙幕を利用しつつ、マックスもケンレーンを前へと構えた。
「あれだけの巨体に好き勝手されるのは危険だろうな。ここらで大きく出てみるか!」
ケンレーンの先端から鎖を射出、その流れを引き連れながらマックスは海の中へと飛び込んでいく。
そのまま敵との距離を詰め、まずは撹乱するように周囲を泳いで。
しかしオルキヌスの巨体はかなりのものだ。大きな口が開かれただけで背筋に厭な感触が走る。
けれどそこには付け入る隙もあった。
「それだけ口が大きいなら……たっぷり食べさせてあげられそうですね!」
オルキヌスの口元目がけ、志乃は用意してきた道具を投げ込んでいく。
目に見えない程小さな毒針や粉ガラス、更には収束手榴弾――念動力も用い、海の暗闇に紛れるようにどんどん投擲される道具達。
それらはオルキヌスの体内に辿り着くと、次々にその巨体を苛んだ。
「助かったぜ、これなら……!」
敵が苦しみ始めたのを確認し、マックスは再び海の中を泳いでいく。
彼を追随するように鎖が海中を漂い、それらは次第にオルキヌスの周囲を包囲していく。
巨体を包み込むように数周すれば準備は万端。チャンスを窺い、マックスは一気にケンレーンを引っ張り上げる。
「うらあ! シャチとったどー!」
星座鎧によって強化された力も相まって、双魚宮の鎖はあっという間にオルキヌスを縛り上げた。
しかし相手の力もかなりのものだ。思い切り暴れられれば、いつまで拘束が保つかは分からない。
だからこそ、叩き込むなら今だ。
「お嬢さん、今だ!」
「オッケー! それじゃあ……ふぁいやー!」
志乃が返答と共にぶっ放したのはロケットランチャーだ!
放たれた弾は次々にオルキヌスへと殺到し、凄まじい勢いで爆発を巻き起こす。
いくら巨大な海の支配者といえど、身動きの取れない状態で集中砲火されてはひとたまりもない。
巨体には次々と火傷の痕が刻まれ、憎悪の叫びだけが虚しく木霊する。
「案外いけるもんだな。乗せてくれてありがとう、助かったぜ」
「こちらこそ。いやぁ、怖かった……」
戦果を確認し、猟兵達は安堵の息を吐く。
最初の一手は確かに刻んだ。続く戦いにも意識を向けつつ、猟兵達は更に海の中を突き進む。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ
【アドリブ・連係歓迎】POW
シャチだー!
どっちが真の捕食者か教えてあげよーぅ☆
UC【飢餓つくと肉肉しい惨劇】にて、増殖し続ける肉塊に変身!
「肉体改造」を施して、増殖スピードをアップ!
戦場を飛ぶように見せて泳ぎます!
(ペンギンだって飛ぶように泳ぐって言うしね!)
匂いを海水に混ぜる事で、敵の意思を「お腹すいた」「食べたい」と思わせて統一させるよ!
後はあえて食べられて、体内で増殖して……どかーん!!
勝利の暁にはシャチ肉パーティだ☆
もちろん海鮮料理も沢山!?
●
戦いが始まり、オルキヌスの憎悪はより強く海を漂う。
それに呼応するかのように海洋生物達も集まって、猟兵達に狙いを定めているようだ。
そんな戦場を前にしても、ラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ(ハラペコかわいいコックさん(可食・高栄養・美味)・f31483)の表情はキラキラしていた。
「魚がいっぱい! それにでっかいシャチだー! 皆にはどっちが真の捕食者か教えてあげよーぅ☆」
ハイテンションはそのままにラヴィラヴァは勢いよく海へと突っ込む。
同時に彼女の身体は増殖し続ける肉塊へと変わり、不思議な匂いを漂わせ始めた。
「さあさあ、たっぷりたらふく満足するまでオイラを召し上がれ♪」
彼女の言葉の通り、肉塊を認識した海洋生物達は一斉にそちらへ向かって泳ぎだす。
ラヴィラヴァから発せられる匂いは憎悪よりも本能的なもの――強い食欲を湧き起こす力があった。
海洋生物達を誘い込むように、肉塊は海の上を飛び回る。
「こうやってるとペンギンみたいだね。ほら、こっちこっちー!」
ばしゃん、ばしゃん、と水が弾ける度に撒き散らされる肉塊達。それでもラヴィラヴァの体積は減っておらず、むしろ凄まじい勢いで増殖を続けていた。
消えることのない強烈な餌を前に、野生の生き物が耐えられる訳もなく。
その肉はオルキヌスすらも誘い込み、彼らの飢えを次々に満たし始めた。
このままではラヴィラヴァは完全に捕食される側だが――勿論これで終わりではない。
生物達が食べた肉は彼らの腹の中で消える訳ではなかった。
その消化能力を上回る勢いで増殖を続けられ、そして最後には――。
「そろそろかな? こうやって……どかーん、だよ!」
にこにこ笑顔でラヴィラヴァが両腕を上げた瞬間、数匹の魚が弾け飛んだ。
今度はより大きな魚が、サメが、果てはクジラのような存在まで。
増殖し続けた肉は生物達の身体を突き破り、彼らの身体を完全に破壊したのだ。
オルキヌスも異変に気付いていたが、肉は既に食べてしまっている。彼の腹からも肉は弾け、美味しそうな香りが海を漂った。
「えへへー、これだけ魚がいれば海鮮料理も作り放題だね。シャチ肉パーティも出来そう☆」
ラヴィラヴァは上機嫌に鼻歌を奏でつつ、砕けた魚達を回収していく。
勿論オルキヌスの肉片だってばっちりゲットだ。
どんな料理を作ろうか、これでみんなお腹いっぱいになるかな。
ラヴィラヴァの理想と食欲は、海の支配者の憎悪すら飲み込んでいった。
大成功
🔵🔵🔵
クロス・シュバルツ
連携、アドリブ可
海の王者と水中戦というのは随分不利な状況なように思えますが、そうも言っていられない状況、なんとか食い止めないといけませんね
『オーラ防御』で水を防ぎ『継戦能力』で活動限界を伸ばす
水中の機動力では敵に敵わないので、UCを発動して鎖を『串刺し』にして自身と敵を繋ぐことで動きに追従できるようにしながら『継続ダメージ』を与え、更に『生命力吸収』を狙う
鎖を巻き取って敵に接近。『鎧無視攻撃』の黒剣で斬り裂いて攻撃
その後は敵の攻撃に巻き込まれないよう鎖を伸ばして距離を取るなど、随時攻撃と回避を切り替え
呼び出された海の生物はは積極的に狙いはしないが、結果として巻き込む事自体は躊躇わない
●
嘗て海を支配していた存在と、海で戦わなければならない。
改めて状況を認識し、クロス・シュバルツ(血と昏闇・f04034)は静かに目を伏せる。
「随分不利な状況なように思えますが、そうも言っていられない状況、なんとか食い止めないといけませんね」
身体を包み込むようにオーラを展開し、出来る限り呼吸が続くように意識も整えて。
覚悟を決めて海の中へと飛び込めば、強烈な悪意がクロス目がけて向けられた。
身体の大きさも水中での機動力もオルキヌスの方が圧倒的に上だ。
そこでクロスが選んだのは相手を利用する戦いだった。
腕に付けた冥装『罪茨』に意識を向けて、発動するのは埒外の力。
「蛇よ、喰らえ。噛み砕くまでは――離しません」
力の発動と共に罪茨から鎖が放たれ、迫りくる悪意へ向けて一直線に飛んでいく。
その先端は牙の如き刃に変わり、オルキヌスの身体へと突き刺さった。
強烈な生命力が伝わってきたのを確認し、クロスは勢いよく水を蹴る。
「これで敵の動きには追従出来ますね。あとは……」
攻撃を受けたからだろうか、それとも水中の侵入者を改めて認識したからだろうか。
オルキヌスから発せられる怒りに応えるように、水中の生物達もクロスの方へと集まってきている。
彼らに罪はないけれど、邪魔をするのなら躊躇はしない。
「仕方ありませんが……そこをどいて下さい」
オルキヌスから吸収した生命力を糧に、クロスが取り出したのは葬装『黒羽』だ。
展開された刃は次々に迫る敵を切り裂き、進む道を切り拓く。
魚達が散らした命すらも吸収しつつ、クロスは更にオルキヌスとの距離を詰めた。
近くで見ればその巨体はより強い迫力を放っているが――それでも、止まる訳にはいかない。
手にした鎖を巻き取りつつ、恐れず前へ。
一気にオルキヌスの方へと向かいつつ、クロスは黒羽を強く握りしめた。
「この海はもうあなたのものではありません。骸の海にお還り下さい」
勢いのまま、一閃。
クロスの放った斬撃はオルキヌスの巨体に傷を刻み、溢れた血が海の中をゆらゆらと漂った。
鎖を通じてその血もしっかりと吸収しつつ、クロスは再び水を蹴る。
怒りに震えるオルキヌスがすぐに巨体を揺らし、こちらを打ち据えようとしてきたが――既にクロスの姿はそこにはなかった。
気がつくと彼は鎖を伸ばし、再び敵との距離を取っていたのだ。
隙が生まれたのなら再び鎖を手繰り、クロスは次なる斬撃を繰り出していく。
「油断は禁物ですが……足さえ止めなければ、きっと勝機はありますね」
例えどんな敵が相手だろうと、クロスは前に進み続ける。
そんな彼の意思を示すかのように、オルキヌスの身体にも傷は刻まれていった。
大成功
🔵🔵🔵
朱酉・逢真
心情)全長50mたァね。クジラみてェなモンじゃねェか。陸に上ったやつらが憎いか。支配下を抜けられておかんむりだったり? いとけないねェ、かわいいこった。マ・それはそれ。《過去》にァ滅んでもらうよゥ。
行動)海に誰よか適応してると。なら俺ァ《水》そのモンを操ろう。でけェ《虫》に乗って空をいくよ。ンで、オルキヌス。こいつのいる場所から水を抜こう。海の真ん中、干上がらせよう。さすがにチカラがもたンで、ほんの僅かな時間だけだが。その瞬間めがけて、たっぷり《毒》宿した《鳥》の群れ。つつかせに飛ばしてやろうとも。鳥は魚を食うモンさ。ひ、ひ。
●
実物のオルキヌスは、事前に見ていた資料よりも大きく感じられた。
「全長50mたァね。クジラみてェなモンじゃねェか」
驚きと共にどこか楽しげな笑顔を零すのは朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)だ。
そんな彼に気付いたのだろうか。海中からは強烈な憎悪が突き刺さる。
「陸に上ったやつらが憎いか。支配下を抜けられておかんむりだったり?」
確かに海の世界において、オルキヌスは神のような存在だったのだろう。そんな過去に縛られる様は微笑ましさすら感じさせる。
いとけないねェ、かわいいこった。
「マ・それはそれ。《過去》にァ滅んでもらうよゥ」
わざわざ相手の領域に踏み込む必要もないだろう。逢真は己の権能を用いて、巨大な虫をその場に呼び寄せた。
その背に乗って、まずは空へ。
頬を撫でる潮風が少しだけ気になるけれど、耐えられない程ではない。
宿す憎悪を呪いにすら変え睨むオルキヌスを目指し、逢真は悠々と空を突き進んだ。
「ああ、やっぱり上から見るとクジラみてェだな」
虫の背から海を見下ろし、逢真は少しだけ思案する。
純粋な戦闘力なら相手の方が上だ。おまけに戦闘が続く限り、相手が陸に上がることもない。
海の中にいる限り、そこの支配者はオルキヌスになるのだろう。
「なら俺ァ《水》そのモンを操ろう。海の真ん中、干上がらせよう」
権能の残滓を手繰り、海の中へと意識を向けて。
相手が支配する場があるのなら、それをひっくり返してやればいい。
留まらず、逗まれず。オルキヌスの周囲の海流が、不意に不可思議な動きを取った。
そして次の瞬間――どこかの昔話の如く、海が割れた。
「生まれた時から殆ど海ン中にいたんだろうなァ。こういうのは初めてかい?」
埒外の力で海を操り、オルキヌスの周囲から海を奪ったのだ。
しかし相手は巨体。これだけの相手から海を奪い続けるのは難しいだろう。
だから生み出した一瞬を使って、逢真は別の権能を操った。
「こういうのもきっと初めてだろうなァ。ほら、好きなだけ喰いな」
神の呼びかけに応じて空から現れたのは無数の鳥だ。
彼らの嘴には毒が宿り、身動きの取れないオルキヌスへ向けて容赦なく突き立てられる。
何も知らなければ、巨大なクジラを鳥達が啄んでいるようだ。
「世界のどこにでもある光景なんだがね。鳥は魚を食うモンさ。ひ、ひ」
弱肉強食の再現を見下ろしつつ、逢真はくつくつと嗤う。
海の支配者だろうとも――生き物であるならば、その定めには敵わないのだから。
大成功
🔵🔵🔵
塩崎・曲人
へっ、水中戦か
人間様の知恵を見くびるんじゃねぇぞ海産物が
アルダワじゃ水中呼吸の魔法くらい一般的なんだよ!
「まぁ、オレ様はああいう補助系苦手なんだが。――うおおお、死なば諸共ォ!」
戦闘前の掛け声としては明らかにおかしい内容を吠えながら
鼻を摘んで【ドーピングマジカルポーション】を摂取するぜ
これで一定時間は水中呼吸できるし筋力魔力も諸々強化だ
「さあ、勝負と行こうかぁ……うぇっ」
海に飛び込んでオルキヌスと接敵したら
ナイフをぶっ刺して相手の体に組み付いてやる
海の生き物は基本、自分の体に張り付いた相手を攻撃するようにはできてねーのよ
「それがてめぇの生態の弱点だ!ゼロ距離の攻撃魔法を喰らいやがれ!」
●
戦場はオルキヌスが支配する海の中。
だからといって退く訳にはいかない。青い海原を前にして、塩崎・曲人(正義の在り処・f00257)は気合を入れる。
人間様の知恵を見くびるんじゃねぇぞ海産物が。技術に魔術、人間だって海に適応する手段は沢山揃えてきているのだから。
「アルダワじゃ水中呼吸の魔法くらい一般的なんだよ! ……まぁ、オレ様はああいう補助系苦手なんだが」
そう呟きつつ曲人が取り出したのは――明らかに毒々しい色をした水薬だ。
蓋を開ければ異臭が漂い、よく見ると泡もぼこぼこしているけれど、これこそ人間の叡智の一つ。アルダワ特製のドーピングマジカルポーションである。
「こいつがオレのとっておき……出来れば永遠にとっておきたかった手だ……うおおお、死なば諸共ォ!」
鼻を摘んで一気に薬を喉へと流し込み、味を感知する前に一気に飲み込む。
一連の動作を終えた瞬間、曲人の身体には不思議な力が漲ってきた。
流石に魔術の世界で作られた特性の薬だ。効果は覿面、身体強化で暫くは海中戦にも適応出来るだろう。
準備は万端、気合も十分。少しだけ身体を解しつつ、曲人は改めて海と向き合った。
「さあ、勝負と行こうかぁ……うぇっ」
ちょっとだけ喉の奥から迫り上がってくる感覚に後悔なんかもするけれど、とにかく準備は万端なのだ。
曲人は勢いよく前へと駆け出し、青い海の中へと飛び込んだ!
海の中に飛び込んだ直後、目に入るのは巨大なオルキヌスの影。
オルキヌスは侵入者に気がつくと、大きな口を開いて何かを叫んでいた。
その気迫に負けないように、曲人も堂々と啖呵を切る。
「いくぜ海産物! 人間様の底力、見せてやるぜ!」
そんな彼の言葉を理解しているのかしていないのか。オルキヌスは更に怒りに身を震わせ、乱暴に身体を震わせながら迫ってきていた。
少しでも身体がぶつかれば大怪我は免れない。強化された筋力を活かし、曲人は力強く水を蹴る。
接近戦を求めているのはこちらも同じ。曲人はしっかりと相手の姿を見据え――ギリギリのタイミングで相手の突進を躱していく。
同時に振るったのは愛用のギャングスタ・ナイフだ。威圧的な装飾が施されたナイフは深々とオルキヌスの身体へ差し込まれ、同時に曲人の身体をその巨体の側へと安定させる。
オルキヌスは再び身体を動かし曲人を振り落とそうとしてくるが――相手が出来る抵抗はその程度。
「やっぱりな。海の生き物は基本、自分の体に張り付いた相手を攻撃するようにはできてねーのよ。アンタもそこは変わんねーんだな」
人間には積み重ねた知識があり、それを活用する技術がある。
この戦いの勝敗を分けたのはその部分。過去に囚われた支配者よりも、過去を踏まえて未来へ進む者が勝利を掴むのだ。
「という訳で、それがてめぇの生態の弱点だ! ゼロ距離の攻撃魔法を喰らいやがれ!」
曲人はオルキヌスの身体へと掌を付け、そこから全力で術式を唱える。
そこから生じた凄まじいエネルギーは支配者の身体を穿ち――確かな傷を刻み込んでいった。
大成功
🔵🔵🔵
ニィナ・アンエノン
クジラさんみたいだね!
にぃなちゃん、クジラさんやイルカさんと一緒に泳ぐのは夢だったけど……この子はちょっと怖いかな☆
まぁ相手の方が海に適応してるのは仕方ないね、それは諦めよう。
ここは島の人にいい感じの板を借りて【サーフィン】と行こうかな!
水中から攻撃されるタイプの【水上戦】になるだろうから【視力】と【聞き耳】でしっかり【情報収集】して、上手く波に乗って敵の攻撃を避けて行こう!
直撃を避けて【オーラ防御】を使えば多分一発でやられたりはしないはず。
攻撃の為に水面に近付いた時がチャンス!
ユーベルコードのミサイルで【範囲攻撃】だ!
広範囲にばら撒かれたミサイルは【衝撃波】も起こすから逃がさないぞ☆
●
事前に説明は受けていたけれど、実際に目にするオルキヌスの姿は凄まじい迫力を帯びている。
そんな敵を見遣り、ニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)は楽しげにはしゃいでいた。
「すごい! クジラさんみたいだね! でも……この子はちょっと怖いかな☆」
クジラさんやイルカさんと泳いでみたくはあったけれど、流石にこれだけの巨大生物と一緒に泳ぐのは勇気が必要だ。
改めて状況を認識し、ニィナは手にした海を見つめた。
「相手の方が海に適応してるのは仕方ないしね、にぃなちゃんは出来ることをやろう!」
そう言いつつ取り出したのは、フピ島から借りてきたいい感じの板だ。
これに乗れば波に乗って戦うことも出来るはず。
ニィナは板と共に水の中へと乗り込んで、流れる波に身を任せていく。
相手が水中ならばこちらは水上。しっかりと目と耳に意識を集中させ、ニィナは迫りくる敵に備えた。
「一緒に遊ぶのは無理だけど……全力で戦わせてもらうよ!」
弾ける笑顔と共に、ニィナは元気いっぱい気合を入れる。
そんな彼女を迎え撃つのは――オルキヌスの巨体が生み出す凄まじい波だった。
まるで嵐の日のような大波を前に、ニィナは意識を研ぎ澄ませる。
今は荒れ狂う海に集中すればいいが、いつオルキヌス本体が迫ってくるかも分からない。
オーラでしっかり身を守りつつ、ニィナはチャンスを窺っていた。
「っとと……波もどんどん大きくなってるし、そろそろかな?」
彼女が予感したように大きな波が数度続けば、巨大な影がこちらへ向けて迫ってきていた。
そして次の瞬間――海が割れたような錯覚を覚える程、大きな衝撃が襲い来る!
ギリギリのところで直撃を躱し、弾ける海水の奥へ視線を向ければ、そこには確かにオルキヌスの姿があった。
恐らくニィナを殺すべく海の中から飛び出してきたのだろう。だからこそ、このチャンスを見逃す訳にはいかない。
「今がチャンスだね☆ 目標、射程範囲全部ろっくおーん!」
がちゃりとランチャーを構え、しっかり狙いを定めたのなら準備は万端。
「カーニバルだよ、れっつだーんす!!!」
明るい掛け声と共に放たれるのは無数の高機動マイクロミサイルだ!
凄まじい勢いで放たれたミサイルはオルキヌスの身体を次々と打ち据え、爆炎を上げていく。
海上に着弾した弾丸は衝撃波も巻き起こし、決してオルキヌスを逃さない。
相手が海の支配者であり、とんでもない巨体を誇っているならそれを利用してやればいい。
ニィナの作戦は功を奏し、どんどんオルキヌスに傷を与えていっていたのだ。
大成功
🔵🔵🔵
シノギ・リンダリンダリンダ
巨大海獣との決戦。なるほどこれは燃える展開ですね
いいでしょう。決戦らしい戦いをしましょう
【対征服者超振動突撃衝角艦隊】を召喚
その中の一隻に自分は乗り、残りの91隻を使用
この海賊船はあらゆる環境での飛翔能力を持つ
つまり海中や深海にも対応する
海上戦も、深海適応も理解している私に海上での戦いを強いるなんて、ボーナスステージみたいなものですよ?
数にものを言わせ、海上から、海中から、さらに深く深海から
突撃しては切り裂き、突撃しては串刺し、突撃しては蹂躙する
相手の攻撃にも船でガードして自分には被害がないようにしましょう
私は海で生まれ海で育ったドール種です
さぁ、海に還るのはお前ですよ。オルキヌス
●
巨大海獣との決戦。なるほどこれは燃える展開だ。
青い海原を見つめつつ、シノギ・リンダリンダリンダ(強欲の溟海・f03214)は表情を弾ませる。
敵は海の支配者らしい。ならば相手としても不足はなく、全力でぶつかるのも楽しそうだ。
「いいでしょう。決戦らしい戦いをしましょう」
ならばここは海賊らしく。
シノギが海へ向かって手を伸ばせば――呼び出されたのは92隻もの自動操縦型海賊船だ。
そのうちの一隻に飛び乗りつつ、シノギは外套を翻す。
「さあ、誰が本当の海の支配者かを教えてやる時ですよ」
返事とばかりに海賊船達は船首を掲げ、そこに括り付けられた特大チェーンソーが派手な音を立てた。
皆気合いは十分だ。あとは只管前へと進め。
「行きますよ!! 駆けろッ!!飛べッ!!! 跡形も残さずに、全てを蹂躙してください!!!」
船長の号令に合わせ、海賊船は一斉に海へと飛び出した。
ある船は海の上を、またある船は海の中を。空を飛ぶ船も従えつつ、略奪と蹂躙の戦いが始まったのだ。
オルキヌスも異変を察知し、すぐにシノギの方へと向かってきている。
相手は確かに海の支配者で、その巨体を用いた攻撃は脅威だろうが――。
「確かにお前は海の支配者だったのでしょう。ですが……私も、そして海賊船達も。海には十分対応しているのです」
シノギの言うように、海賊船達はオルキヌスの動きに決して負けていない。
彼らは共に連携し合い、次々に敵との距離を詰めている。
必要があればシノギが適宜指示を出し、一糸乱れぬ統率で自由自在に動き回る。
次第にチェーンソーがオルキヌスの巨体を捉え、少しずつ傷も刻み始めていた。
その攻撃に激昂するかのように、オルキヌスは吼える。けれどそれすら受け流すように、シノギは悠々と笑っていた。
「傲りましたね、オルキヌス。私に海上での戦いを強いるなんて、ボーナスステージみたいなものですよ?」
海の支配者は自分だけだと思っていたのだろうか。
それとも長い過去に囚われたせいで、このような事態を予測出来なかったのだろうか。
オルキヌスの攻撃より早く、シノギは船を動かし敵を追い詰めていく。
数にものを言わせ、そして最大限に状況に適応した彼女の戦略。
それにオルキヌスが敵う道理はない。
「私は海で生まれ海で育ったドール種です。あなたの先を行く者ですよ」
今日までの支配者にお別れを。
シノギは堂々と腕を振るい、全ての船に指示を飛ばす。
「さぁ、海に還るのはお前ですよ。オルキヌス」
船長の号令に合わせ、一斉にチェーンソーが振るわれれば――嘗ての支配者の巨体は次々に抉り取られていく。
それはまるで、過去を清算するかのような光景だった。
大成功
🔵🔵🔵
ベアータ・ベルトット
オルキヌス…アンタ自身に恨みはないけど、アンタの瞳には痛い目見せられてるから
ここできっちり意趣返しさせてもらうわよ
私もアンタと同じ、海の獣―水中戦機装・Orcinus Chalybsを纏う。さらにその背に蝙翼機光を展開し、UCを発動させる
飛行能力を阻害されてるとしても、トビウオみたく高速での滑空くらいは出来るでしょう。これで敵の海中適応力を超えてみせる
プログラムを働かせ、野生の勘で敵の立ち回りを予測
巨体を翻弄するように絶えず泳ぎまわり、吸血光線を浴びせ続ける
タイミングを見計らって接近し、機餓獣爪による肉を絶つ一撃を。反撃は滑空でいなしてまた距離を取り…早業を駆使したヒット&アウェイ戦術で挑むわ
●
海を進む巨大な影を睨みつつ、ベアータ・ベルトット(餓獣機関BB10・f05212)はこれまでの戦いを思い返していた。
『三つ目』のバルバロス兄弟との戦いにおいて相対したオルキヌスの瞳。その真の持ち主がこちらへと迫ってきている。
「アンタ自身に恨みはないけど、アンタの瞳には痛い目見せられてるから」
ここできっちり意趣返しをさせてもらう。
覚悟を胸に、ベアータは装着してきた装備を展開していく。
身体には水中戦機装『Orcinus Chalybs』を、背には『蝙翼機光』を展開させれば準備は完了。
アンタと同じ海の獣として、堂々と海を飛んでやろう。
ベアータが光の羽根を広げ、鋼鉄鰭を着水させた瞬間――海の支配者も、サイボーグの少女の元を目指し始めた。
欲の海で自在に空を翔けることは難しい。けれど海上を跳ねるように移動すれば、世界にその道行きを阻まれることはなかった。
トビウオのように海を跳ね、ベアータは徐々にオルキヌスとの距離を詰めていく。
相手は巨体。それが自身の能力を活かし、的確にこちらへ突進してくる光景はなかなか恐ろしいものだ。
けれど、だからといって怖気づいてはいられない。
「アンタの海中適応力、間近で見ればやっぱり凄いと思うわ。でも、私はそれを超えてみせる」
野生獣の如き感覚をプログラムとして用いつつ、ベアータは更に敵を確りと睨む。
そして大きく蝙翼機光を広げれば――そこから放たれるのは無数の吸血光線だ。
放たれた光は次々にオルキヌスの身体を貫き、溢れる鮮血はベアータの身体へと取り込まれていく。
少し啜るだけでもその圧倒的な生命力に気圧されそうだが、それすらも糧に変えてベアータは更に海を跳ね回った。
自分より小さな獣が食らいついてきたのを理解したのだろうか。オルキヌスは何かを吼えつつ、凄まじい勢いでこちらへ迫る。
巨体を物ともしない、弾丸のような突進だ。しかしこれは大きなチャンスでもある。
「そちらがそのつもりなら、私だって……!」
ベアータは機腕から『機餓獣爪』を展開すると、再びプログラムへと意識を向ける。
この戦いは弱肉強食、獣同士がぶつかり合うのならば勝つのはより鋭く、狡猾な方だろう。
ギリギリまで相手を引きつけ、そしてタイミングを見計らい――。
「――今ね!」
鋼鉄鰭で水を蹴り、蝙翼機光で水上を滑空しつつ、相手の身体を最大限に切り裂けるよう。
すれ違うように獣爪を振るい、ベアータはオルキヌスの背に深い傷を刻んでいく。
そのまま衝撃で吹き飛ばされないように滑空を続け、相手との距離が取れれば方向転換。改めて海を見下ろせば、支配者の流す血が海を赤く染めていた。
「自分が支配者だって、ここで一番強い捕食者だって思っていたんでしょう。けれどそれは過去の話、今はもう違うのよ」
過去の獣は食われるのみ。これからを進んでいくのは私達の役割だから。
ベアータの戦いは、オルキヌスに嘘偽りのない事実を叩き込んでいくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィクティム・ウィンターミュート
んだこりゃ…なんつーデカさしてんだよ
こんな矮小な身一つでデカブツ相手にしろってか?
んじゃ小舟一隻貸してくれ
UCセット──『そして、獣が解き放たれた』
幸い奴の攻撃手段は直接的だ…スピードとパワーを活かすだろうから
恐らく海上の俺を、『食いに来る』
それが手っ取り早く、一撃で殺せる手段なはずだ
だから俺は待つのさ…大口開いて食いに来るのを
研ぎ澄まされた危険感知で接近を察知、反射神経で素早く跳びながら、左の仕込みワイヤーアンカーをオルキヌスに射出
高速巻取りで巨体にしがみつく
…んじゃ、俺の手番だな
ナイフで切り刻んで、抉り貫きながら…頭部の破壊を狙いに行く
どれだけ強化されても、組みつかれちゃ避けられねえだろ?
●
借りてきた小舟に乗り込み、ヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)は海を行くオルキヌスへと視線を向ける。
迫る気配、波の音、そして何よりも強烈な憎悪。その全てがオルキヌスの強大さをひしひしと伝えてきていた。
「んだこりゃ……なんつーデカさしてんだよ」
改めて確認した敵の姿に思わず溜息も出てしまう。あんなデカブツに対して使えるのは、矮小な我が身一つ。
けれど、だからこそ――狙うべきは最大のチャンスだ。
少しだけ船を敵の方へと進め、ヴィクティムは静かに呼吸を整える。
相手は海の支配者といえど、本質的には獣そのもの。ならば取ってくる手段も簡単に推測出来た。
「泳ぎ方から見ても間違いなさそうだな。あいつ……俺を『食いに来る』だろ」
巨体を活かし、獲物を一撃で殺すならばそうするのが手っ取り早い。
予測通り、オルキヌスはまっすぐにこちらへ向かい、少しずつ口を開いているようだ。
そんな敵の姿を見つめていたヴィクティムだが――ふいに、彼の瞳が輝きを増す。
同時に神経は研ぎ澄まされ、目の前の存在に対する畏れも少しずつ消えていく。
そして、獣が解き放たれた。
オルキヌスが進む速度は徐々に速くなり、一方でヴィクティムはただ静かに敵の到来を待っている。
互いの距離は少しずつ縮まり、そして緊張が最高潮に達した瞬間――。
「待ってたぜ、オルキヌス」
巨大な影が小舟へと喰らいつく瞬間、ヴィクティムはその残骸を蹴って高く跳び上がった。
埒外の力で強化された危険感知能力を使ったギリギリの回避だ。オルキヌスもすぐに獲物を取り逃がしたことには気付かないだろう。
その隙を活かし、ヴィクティムは左腕のサイバーデッキを敵へと向ける。そこからワイヤーアンカーが射出されれば、蛇のような動きでオルキヌスの身体を捕縛していく。
力は相手の方が上だ、拘束することは難しいだろう。けれどすぐにアンカーを巻き取れば、相手の身体にしがみつくことは出来る。
「……んじゃ、俺の手番だな」
しっかりとオルキヌスへと身体を付け、取り出したのは生体機械ナイフだ。刃をオルキヌスへと突き立てれば、怒りの咆哮が耳に突き刺さった。
同時にオルキヌスの巨体が震えるが、アンカーさえ括り付けていれば振り下ろされる危険もない。
学習する刃に表皮と肉を切り裂かせつつ、目指すは巨大なその頭部。
頭頂の虚ろな瞳と目が合えば、ヴィクティムは見下ろすように笑みを浮かべる。
「俺みたいな小さい相手にやられるとは思わなかったか? 残念だったな」
大物殺しは端役にも為せるもの。
そのことを刻み込むように、ヴィクティムは更に刃を握って前へと進み、オルキヌスへと消えない傷を与えていった。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィクトル・サリヴァン
オルキヌスで海の王者、ねえ。
全盛期だと本当に厄介だったんだろうし、今も十分ヤバそうだけども。
というより色んな意味でふつーのシャチに喧嘩売ってない?
うすらデカいし同族の群引き連れたりしてないし。
ともかく、さっさと仕留めないとね。
木製の船借りオルキヌスの海域へ接近。
できれば水上、無理なら飛び込み素潜り水泳しつつ無酸素の高速詠唱で音の魔法を行使。
クリック音を極端に増幅した指向性の爆音を水中で発生させて集まってきた海の生物に叩き付けて分断を試みるね。
その間に銛を構えUC発動準備、勘を活かし隙を見つけたら投げつけて周囲の海水を取り込み巨大化した水のシャチに喰らわせる!
木製の船借りて
※アドリブ絡み等お任せ
●
「オルキヌスで海の王者、ねえ」
ぽつり、シャチのキマイラであるヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)が呟く。
全盛期のオルキヌスと相対せずに済んでいるのは幸いだが、迫る巨体を見遣れば今でもその強さが十分なのは理解出来た。
だからといって――同じ海に住まう者として、どのような感情を抱くのは別問題で。
「というより色んな意味でふつーのシャチに喧嘩売ってない? うすらデカいし同族の群引き連れたりしてないし」
オルキヌスが引き連れているのは多種多様な海の生物達だ。
確かに『海の王者』という肩書には相応しいかもしれないが、それでも気になるものはやっぱり気になる。
「ともかく、さっさと仕留めないとね」
借りてきた船を漕ぎながら、ヴィクトルは改めて気合を入れる。
海の生き物として気になる部分があるのなら、自分がそれを叩きつけてやればいいのだ。
己の海域へ現れた侵入者を確認し、オルキヌスが大きく吼える。
その声に呼応するように海洋生物達も暴れまわり、真っ直ぐにヴィクトルの元を目指していた。
「キミが海の王者だというのなら、俺はそれを利用させてもらうよ」
敵の元へと姿を晒すように、ヴィクトルは船から下りて海の上へと足を付ける。
そのまま出来るだけ素早く呪文を唱え、魔術の用意が出来たのならば――。
「キミ達にはこういうのがよく効くんだろう?」
そのまま発動した魔術を海へと叩きつければ、凄まじい爆音が周囲に鳴り響いた。
ヴィクトルが発動したのは音の魔法だ。その音に晒された海洋生物達は混乱し、次々に進む方向を見失っている。
シャチの生み出すクリック音を極端なまでに増幅させ、それを指向性の爆音として展開。
それがオルキヌスの生み出すクリック音とも混ざりあえば、ただ付き従ってきた海洋生物達は訳も分からず動き回るしか出来ないだろう。
こうして海の中の統率は乱れ、オルキヌス自身にも隙が生じている。
その混乱に乗じるように、ヴィクトルは力強く『勇魚狩り』を構えた。
「海はキミだけのものじゃない。売られた喧嘩は買わせてもらうよ」
混乱する魚達に囲まれたオルキヌスは身動きが取れていない。そこを狙って三又銛を投げ込めば、その穂先は確りと海の王者の巨体へと突き刺さる。
それを道標に、発動するのは海の魔術だ。
「さあ、追いかけて、齧り付いて――喰い千切れ」
魔力に呼応するように、ヴィクトルの周囲の海水が一つの塊へと変わっていく。
塊はオルキヌスよりも巨大なシャチへと姿を変えて、一直線に三又銛の元へと突き進んだ。
水のシャチは大口を開き、オルキヌスへと一気に牙を突き立てる。
最後に捕食者として勝利したのは――ヴィクトルが生み出したシャチの方だ。
「これでこの海も少しは平和になるかな。魚達も支配されずに済むだろうし」
戦いが終わり暫くすれば、連れてこられた海洋生物達も元の棲家へと戻っていく。
最後に残ったのは元の静かな海だけだ。
戦いはまだ続くけれど、少しの間でも海が穏やかさを取り戻すのなら幸いだ。
そんな光景を見遣りつつ、猟兵達も次の戦場へと向かっていく。
大成功
🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2021年02月10日
宿敵
『森羅冠す『オルキヌス』』
を撃破!
|