羅針盤戦争〜舵輪の聖譚曲
まだ春には早いというのに、淡い桜花が舞い吹雪く島の住民はぽかんとして島の入り江に現れたそれを見上げた。
空母、というらしい。
巨大で、厳つくて、そして――神々しい。
理由は甲板に群れる微光を纏った使いにあった。天使。美しい横顔に慈愛を浮かべ、指揮官らしき男の傍に寄り添っている。
「その男が『舵輪』ことネルソン提督。七大海嘯中もっとも指揮に優れ、その統率力でもってさっそくグリードオーシャンの島のひとつを占拠した」
麒・嵐(東方妖怪の冒険商人・f29276)の示す島には桜が咲いている。ネルソンは島民を一か所に集めて監視し、自らは『クレマンソー級空母』から島外の海を警戒している。島を取り戻そうとやってくるだろう猟兵たちを万全の態勢で迎え撃つためにね」
こちらも島へは鉄甲船で向かうことになるが、ネルソンは射程範囲にこちらを捉えた途端に先制攻撃を仕掛けてくるはずだ。
「そのやり方が空母のカタパルトから射出した天使の群れによる爆撃だっていうんだからえげつないね。要は近づける前に撃ち落としてしまえばいいっていうわけだ。グリードオーシャンの海上では飛行能力が阻害されるから、これじゃうかつに近づけない」
さて、と嵐は席を立った。
「じゃあ、どうする? 船に近づかなければ攻撃もままならないが、近づいてしまいさえすれば与しやすい相手だ。こちらの攻撃の届かない超高度から爆雷を投下してくる天使の群れをどういなすか、皆の手腕を期待してるよ」
ツヅキ
プレイング受付期間:公開時~常時受付中。
リプレイは他の参加者とまとめて判定・執筆する場合があります。
共同プレイングをかけられる場合はプレイング冒頭にお相手の呼び名とID・もしくは団体名をご記載ください。
●第1章 ボス戦
七大海嘯『舵輪』ネルソン提督を倒し、支配された島を解放してください。
プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。
第1章 ボス戦
『七大海嘯『舵輪』ネルソン提督』
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POW : 天使の行軍
【カタパルトで加速射出された天使の】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【他の天使】の協力があれば威力が倍増する。
SPD : 天使による高高度爆撃
【天使達が投下する爆雷】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【位置と予測される移動範囲】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ : 武装天使隊
召喚したレベル×1体の【透き通った体を持つ天使】に【機関砲や投下用の爆雷】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
イラスト:シャル
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
天星・雲雀
「爆撃・・・。その上昇気流は、炎の竜巻をいくつも起こしたと聞きますが、舞い上がるのは桜の花びらだけでいいです!この桜花の島で同じ事象とか、させられませんね!」
「空襲爆撃とか、UDCアースの世界大戦経験者の縁者でしょうか?でも、地上ならいざ知らず、海上では海面を弾くだけ。水中対策はできていますか?」
【行動】[海遊装備]を装着したUC嵐の投入部隊で、海底から空母の艦底に潜入して、推進機関と動力機関を破壊して敵を倒します!
原子力空母もしくはそれに相当する魔力動力なら、一発で海の藻屑になりますね。沈みなさい!
機雷も魚雷も[海遊装備]の[絶無]の水中機動力を持ってかわします。
アドリブ・アレンジ・共闘OK
爆撃――その上昇気流は炎の竜巻をいくつも起こしたと聞く。天星・雲雀(妖狐のシャーマン・f27361)は乗り込んだクロムキャバリアごと海中へと姿を消した。
くすりと微笑し、嵐の投入部隊を展開。
広々とした海中に出現した数十を超えるキャバリア部隊が一斉に空母を目指して進撃を開始したのである。
「空襲爆撃とか、UDCアースの世界大戦経験者の縁者でしょうか? でも、地上ならいざ知らず、海上では海面を弾くだけ。水中対策はできていますか?」
雲雀の問いかけに反応したかのように、空母上のカタパルトが天使の群れを解き放った。だが、爆撃は海面に激しい水飛沫を上げるばかりだ。
「――届かぬだと?」
艦橋のネルソンが眉を顰める。
と、艦底に衝撃が走った。
大きく揺れ、斜めに傾いでいく。
「狙いは推進機関と動力機関です!」
空母までたどり着いた部隊が艦底に張り付き、一斉攻撃を見舞ったのである。耐水モジュールによる海遊装備仕様の機体は海中であっても動きを制限を受けることなく任務の遂行が可能であった。
「空に舞い上がるのは桜の花びらだけでいいです! この桜花の島で戦争時と同じ事象とか、させられませんね!」
空母側も自前の武装で応戦するが、そのようなもので猟兵と彼らが駆るクロムキャバリアに対抗しきれるわけがない。
「絶無、頼みましたよ」
愛機はするりと魚雷群れを躱し、破損した装甲の内部へと更に攻撃を叩き込む。
「――沈みなさい!」
「く……ッ」
動力部をやられては、そう長くはもたない。ほぞを噛むネルソン提督の顔が目に浮かぶかのようだった。
大成功
🔵🔵🔵
ユリウス・リウィウス
天使が降すは慈悲でも神罰でもなく、無骨な爆雷か。風情がねえなぁ。なあ、おい。
血統覚醒でヴァンパイア化してから、ヴァンパイアミストで海風に乗って空母へ近づいていく。
海霧が出ていればなお良しだ。霧のかかる状況に警戒を抱きはしても、霧そのものが敵とは、なかなか思わないだろう。
出来れば霧のまま空母上甲板に昇りたいが、無理なら術を解いて、錨を降ろしている鎖を使って昇っていこう。
お前が『舵輪』のネルソンか。この距離なら外さん!
「精神攻撃」「生命力吸収」「恐怖を与える」双剣での「なぎ払い」だ。
その手の銃で抵抗できるものならするんだな。
『舵輪』の使っていた空母は、鹵獲した後使えるんだろうかな? 便利そうだが。
「霧か……」
ネルソン提督は双眼鏡越しに海上を見渡し、独り言ちた。見晴らしが悪いのは防衛する側において不利だ。
だが、その状況に警戒を抱きはしてもまさか“それ自体”が敵だとは思いもよらないだろう。
「――お前が『舵輪』のネルソンか」
だから、背後から突然名を呼ばれた瞬間、ネルソンは背筋を凍り付かせて言葉を失った。
「ど……こから、」
「こう見えてもダンピールなんでね。海霧だとでも思ったか?」
ふわりと指先を霧に絡めるように動かす。その身を霧に変え、海風に乗って海を渡ったユリウス・リウィウス(剣の墓標・f00045)は虚々として言った。
場所は空母甲板上。
ふたりの距離は百メートルもあらず。
ユリウスは天を仰いだ。天使が円を描くように舞っている。慈悲でもなく神罰でもなく、無骨な爆雷を運ぶとは世も末だ。
「風情がねえなぁ。なあ、おい」
握り直した双剣が、ネルソンの銃口がユリウスに向かうよりも早く左右に薙がれる。ネルソンは後退して立て直そうとするも、がくりと膝をついた。
「こ、れは――!?」
恐怖だ。
心を喰らわれ、命を啜られることへの恐れ。
ユリウスは興味なさげに頭をかき、自らの降り立った空母を見下ろしている。
「何を考えている……?」
「ん? いや……こいつは鹵獲した後、使えるんだろうかな? ってな。もし可能なら、便利そうだと思ったのさ」
大成功
🔵🔵🔵
シズホ・トヒソズマ
天使を召喚し、船に乗る男……
ふふふ、なら、その神秘も騎乗も打ち砕いてあげます!
マインドテンタクルで複数の人形を◆早業で◆操縦します
シュヴェラに乗り◆空中浮遊で海上を進みます
機関砲や機雷投下は六六六の亡霊による自動迎撃やシュヴェラの重力操作光線で機雷や砲弾を浮かせてその間にすり抜けます
激しくなって来たらクロスリベルの移動能力増強効果でスピードアップして回避
UCが使えるようになったなら此方の物!
UCで大量の火縄銃を召喚し◆範囲攻撃
この銃弾は『対召喚』特攻属性のUC効果消滅弾!
呼び出した天使は容赦なく消し去ります!
そしてもう1つ『対騎乗』属性!
空母に乗った貴方には壁も防御も無視して大ダメージです!
仇死原・アンナ
アドリブ歓迎
ついに来たか…あの鉄の船を沈めればいいわけだ…
さぁ行くぞ…私は処刑人だ…!
水着に[早着替え]し
[水上歩行と足場習熟]で海上を[ダッシュ]で駆け抜けよう
敵の攻撃を[見切り]つ[ジャンプ]で回避
時には海中に潜り[水中機動と高速泳法]で
攻撃から逃げつつ敵戦艦へ近づこう
【吊るし首の刑】を発動し
鎖の鞭を巻き付けた鉄塊剣を振るい回し
[範囲攻撃となぎ払い]で天使共を[対空戦闘]で蹴散らそう
天使共を蹴散らしたら敵戦艦を攻撃
[鎧砕きと怪力による地形破壊]で敵もろとも戦艦を
破壊し沈めてやろう…
海の藻屑となれ、亡霊めッ!
栗花落・澪
空中戦がダメでも、僕には別の手があるもんね
【指定UC】で人魚となり飛び込み
海中を進んで一気に近づくよ
爆撃なんて当たらなければ同じ事
そのまま風魔法の【属性攻撃】で水流を操り
人為的な渦潮を作る事でバランスを崩させたい
あわよくば部分的にでも壊せれば儲けものだけど
気づかれそうになってもすぐに深く潜り
こちらの居場所を悟らせないように
残念だけど僕の耳には聞こえてるよ
貴方の慌てる声も、全部(【聞き耳】)
僕の狙いはただ一つ
敵がどこにいるかわからない恐怖と焦りで生まれる隙
そこを突く事
そして敵が海を覗き込むタイミングを見計らいドルフィンジャンプ
残念でした
【高速詠唱】から植物の属性魔法で
伸ばした蔓で切り裂き攻撃を
鳴宮・匡
動力部が既に死んでるんだろ
ならまあ、沈むのは時間の問題だけど――
首魁が万が一でも生き延びちゃ困る
まずは鉄甲船へ殺到する天使を墜とすところから
攻撃手段が爆雷なら、まず船の上空まで届かせなければいい
海上を射出されてくる間に対処するよ
……可能なら射出前だな
眼はいいんだ、それくらい視えてる
爆雷を保持する両腕と――頭部を潰せば自律思考はできないだろう
その二つさえ潰せば無力化できるはずだ
こっちが近づく必要はない
あちらの射程圏内なら、よほどでなければこっちの射程圏内でもある
“天使”の攻勢が途切れた瞬間、一瞬の隙を縫って
『舵輪』本体の頭部を狙って撃つよ
仕事は完璧にこなすのが身上でね
悪いけど、墜ちてもらう
アルトリウス・セレスタイト
邪魔をしに来た。退場しろ
戦況は『天光』で常時把握
受ける攻撃は『再帰』にて自身の周囲に無限遠の空間を構築し到達させない
全行程必要魔力は『超克』で“世界の外”から供給
破界で掃討
対象はオブリビオン及びその全行動
それ以外は「障害」故に無視され影響皆無
高速詠唱を『刻真』『再帰』にて無限に加速・循環
瞬刻で天を覆う数の魔弾を生成、『天冥』にて因果を歪め全目標へ「命中させて」斉射
最速での殲滅を図る
消し飛ばせば後腐れもない
遠慮なく最大規模で
理不尽と憤るか
だが知っていよう。災厄とは突然訪れるものだ
※アドリブ歓迎
鷲生・嵯泉
此れも斃さねば多世界へと手を伸ばす輩と云う訳か……
ならば如何な手段を使おうとも此処で倒してくれよう
成る程、上空を制すれば有利は取れよう
だが其れだけで戦に勝てると思うならば、些かならず早計だと知るがいい
上が取れぬなら下から抉るまで――獲剔、移動は任せる
射程範囲外から爆撃の届かぬ海中より接近し
船底に接したなら一気に甲板へと上がるとしよう
此処まで来たなら為すべきは変わらん
得られる全ての情報を用いて知識と勘にて講じ、攻撃は見切り躱し
――剔遂凄氷、極下へ至れ
囲い飛ばす衝撃波のフェイント絡め、逃さず叩き斬ってくれる
“提督”なぞと称した処で所詮は過去より現れた簒奪者に過ぎん
早々に相応しい場所へと還るがいい
高砂・オリフィス
今日の天気は晴れ時々天使! うそお?! 超常現象か何か? 攻撃か! あははっ
冗談はさておいて早速行動していこう! ごーっごーっ、ぼくのキャバリア、ガオウ!
爆撃されても負けない推進力と敏捷性で一気に肉薄しちゃうもんね。こういうのは引いたりビビった方の負け! 痛くても苦しくても構わず進む、攻める! ど根性ーっ!!
そのまま抜刀、一閃! これが、ガオウだ! これがぼくの力だ! これが! 猟兵たちの力なんだよっ! 負けるもんか!
エドゥアルト・ルーデル
飛べないのは面倒でござるな
まあなんとでもなるが
こっちも船を出して対抗ですぞ!【架空兵器】を創造!超巨大氷山空母!ハバクック!
ライミー野郎相手だしまあええやろ
こっちも空母なのに艦載機が1機もねぇ!こりゃ体当たりするしか無いでござるな!
圧倒的質量とパイクリートの回復力で【天使の突進】をノーダメで蹴散らしながら進軍ですぞ!
なにパイクリート実用化されてないって?想像製だからちゃんと出来てる想定なんでござるよ!
目標のクレマンソー級に向けて機関全速でラムアタック!
衝撃でネルソンがよろけたスキをついて艦橋から狙撃ですぞ!トラファルガーの再現でござる
まあ責務は果たさせないでござるがね
寺内・美月
アドリブ・連携歓迎
・当初持参した発動機付きの小舟により単身上陸、霊兵統帥杖の効果により、出来うる限りの高射部隊を早期に展開。
・高射部隊は展開しつつ段幕を形成し、落下する爆弾の迎撃を行う。この際、煙幕等により位置観測を阻害するなど徹底的に妨害を行う。
※使う兵器として『VADS、LPWS』等の爆弾や接近する天使等を打ち落とす近接装備、大口径高射砲・対空ミサイルによる高度防空装備等、考えつく限りの防空手段を使用。
・頃合いを見て指定UCを発動。対艦ミサイル部隊による総攻撃を行い目標を撃砕する。
・最悪の場合、サイキックキャバリアによる迎撃用ホーミングレーザーや特殊電磁投射器による『対空核攻撃』も発動。
ヴィクティム・ウィンターミュート
空を飛べない上に、向こうは上から殴ってくるわけか
こいつはとても不利な状況じゃねえか
そこら辺の奴なら絶対断ってたと思うね
俺?勿論、やるけど?
『飛ぶ』のがダメなら歩くのはいいわけだ
例えばそう、足場を作ってしまうんだよ──『Alcatraz』
本来は防御障壁なんだが、使いようによっては道を作ることも出来る
水中爆雷は面倒だから、水に入らないように空中に壁を置き、アスレチックの要領でパルクール【ダッシュ】
降りかかる爆撃は当然壁で防御していくぞ
ネルソンの真上を取れたら、奴を壁で囲む
そして上からクロスボウ展開──エクスプロシヴ・ボルトで【爆撃】
壁で蓋をして、密閉空間で爆発のアンサンブルだ
愉しんでもらえたかい?
笑止、と仇死原・アンナ(炎獄の執行人あるいは焔の魔女・f09978)は降り注ぐ爆雷の中を駆け抜けた。
――駆ける?
それを聞いた者がいれば首を傾げたであろう。空母は海のただ中にあって、近付くための足場など皆無であったのだから。
「なら、作ってしまえばいいんだよ」
というのはヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)の言であり、
「僕には別の手があるもんね」
と言って海に飛び込んだ栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は尾ひれを持つ人魚へと姿を変えて深い水中をひた進んだ。
「おやおや、まさかそんな手が?」
飛ぶのが駄目なら、歩く/泳げばいい――双眼鏡を覗くネルソンも舌を巻く発想であった。
海面を遥か遠きに望む深海。鷲生・嵯泉(烈志・f05845)を連れて運ぶ巨大ホウライエソの名を獲剔という。
(「爆撃の具合はどうだ?」)
嵯泉は天を仰ぐが、爆雷は海面を叩くばかりでここまでは到底届きそうもない。
「どうです、私たち猟兵の力は!」
海上ではシズホ・トヒソズマ(因果応報マスクドM・f04564)の操る人形や亡霊が爆雷を迎え撃ち、攻撃の矛先を逸らすことに成功していた。
「シュヴェラ、頼みます!」
――瞬間、機関砲の弾丸が反重力の力場によってふわりと反発するように浮き上がる。
「邪魔をしに来た。退場しろ」
アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)が軽く手を挙げれば、それらの弾丸は瞬く間に無限遠の空間へと吸い込まれるように消え失せた。
「なんどやっても無駄だ」
再びの弾幕も、やはりアルトリウスの頭上に到達した途端に淡青の光へと呑まれてしまう。
「まだ諦めないか」
『天光』は三度の爆撃を告げるが、その腕より爆雷が投下される直前――鳴宮・匡(凪の海・f01612)の撃ち放った弾丸が一直線に眉間を撃ち抜いた。
力なく墜落してゆく個体の後ろから新手が現れる度、腕と頭に狙いを定めた銃撃がとめどなく襲いかかる。
「結構減らせたかな?」
次の弾倉を装填しつつ、匡はアルトリウスに尋ねた。
「上々だな」
頷き、既に開始していた高速詠唱を顕理輝光を通して更に――無限に加速・循環。ずらりと天を覆い尽くすほどの魔弾が揃い、発射する機会を待っている。
「ヒュゥ、派手にやっているでござるな」
エドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)はとんとんとこめかみを叩き、イメージを膨らませる。
勝負は想像力だ。
「――こい! 超巨大氷山空母! ハバクック!」
切り出された氷山が空母となって進水する様は浪漫の一言に尽きる光景だった。
「ちょいと反則技だが、ライミ―野郎相手だしまあええやろ」
揶揄うように片目をつむるエドゥアルドの笑顔は双眼鏡を通じてネルソンの目に入っていた。
「ははッ、クラウトの奴がとんでもないものを出してきたよ」
どうやら艦載機は積んでいないらしく――海上は飛行できないので当然ではあるものの――エドゥアルドは空中戦を仕掛ける代わりに全速前進を命じたのであった。
想像は、時に現実を凌駕する。
「無駄でござるよ、パイクリートの回復力を甘く見ないでほしいでござるな?」
ハバクックの艦体に身を投げ出してくる天使らを迎え撃つのは砲撃ではなく頑丈な装甲――パイクリートなる夢の複合素材。ひとつの穴すら穿つことなく玉砕する天使たちを尻目に寺内・美月(霊軍統べし黒衣の帥・f02790)は小舟で単身上陸を果たし、島嶼部に多数の高射部隊を配置した。
察知したネルソンはそちらにも天使を差し向けるが、煙幕等の妨害もあって爆撃は容易に進まなかった。
「あちらにも軍事に詳しい者がいるようだな」
ネルソンは舌打ち、島から天使を引き上げる。
「いい対空機関砲システムを持っている……他にも最新鋭の軍備が多数か。あの防空対策はさすがに破れん。迫ってくるあの氷山空母を最優先で迎撃せよ!!」
「鉄甲船への攻撃が弱まった!? よーし、今だっ!! 突き進めー!!」
高砂・オリフィス(南の園のなんのその・f24667)は拳を振り上げ、戦意を鼓舞するように高らかと告げた。
「今日の天気は晴れ時々天使! ――ってうそお?! なにこれ爆雷が降って来て――超常現象か何か? あっ、攻撃か! あははっ」
だいぶおさまったとはいえ、降り注ぐ爆撃がひとつでも直撃すれば鉄甲船は沈没を免れない。
鈍い音を立て、巻き付けた鎖によって振り回される鉄塊の剣が敵群を強引に薙ぎ払っていった。
「ふふ……私は処刑人だ……この程度の火力など地獄の業火に比べれば可愛らしいものよ……!」
既にアンナは空母まで数メートルにまで到達していた。伸びやかな肢体に水着を纏い、爆撃から身を躱して海中へと潜り込む。そのまま泳いで近づくと、先客の澪がいた。
水中で振った杖の先端が渦巻いて水流が巻き起こる。動力部を破壊された空母にとっては耐え切れない振動が伝わった。
「どこだ?」
海中を照らすライトから逃げるように更なる深みへと身を隠す。敵がどこにいるのかわからない焦燥は必ず隙を生む。その時を待って、澪は耳を澄ました。ネルソンが海中を狙うよう天使たちに指示している。爆撃は効かないから直接突進しろ、という声。
匡は海風を遮るように手でひさしを作り、遥かな海上を見晴るかして甲板にいるはずのネルソンを探した。
「動力部が既に死んでるならまあ、沈むのは時間の問題だけど――」
「どうせなら、私たちの手で引導を渡して差し上げたいですね」
匡とシズホは射手だ。
近接して空母に乗り移る猟兵らとタイミングを合わせ、狙撃の機会を窺っている。
――こちらが近づく必要はない。
匡の眼が人智を超えた能力を発揮し、この距離ではどうあっても見えないはずの姿を捉えた。
艦底に達してからの嵯泉の行動は早かった。
「!?」
「――剔遂凄氷、極下へ至れ」
突如、甲板へ現れた敵襲にネルソンが声を発する暇も与えない。迸る氷刃が敵を穿ち、攻勢の狼煙となる。
「くッ……」
「ごーっごーっ、ガオウ!」
鉄甲船の甲板より飛び出したオリフィスのキャバリアは突撃する天使と真っ向からぶつかり合った。
「まけるもんかー! 進め、走れ! ど根性ーっ!!」
ぐぐっ、と胸の前で交差した腕に力を込めて一気に跳ね除ける。跳躍し、空母の甲板上へ躍り出た。
「私の天使を正面から破った……だと……?!」
「ガオウの推進力と敏捷性を見たか!」
まるで生きた人間のような動きで、背後にそびえ立つ艦橋ごとネルソンを一閃――!!
「これが、ガオウだ! これがぼくの力だ! これが! 猟兵たちの力なんだよっ!」
「ちッ……、こいつは規格外だな」
ネルソンは舌を打ち、続けざまにカタパルトの発射を命じる。容赦なく襲いかかる機関砲の弾幕をヴィクティムは身軽に避け切った。
「悪いけどこれ、元は防御障壁なんだよね――」
弾丸を『Alcatraz』で受け止め、そのまま足場にして腕一本で乗り越える。空を飛べない上に、向こうは上から殴ってくる状況を何とかしろという無茶振りにヴィクティムは大いに応えた。
「そこら辺の奴なら絶対断ってたと思うね。――俺? 勿論、やるけど?」
キャットタワーのように積み上げた足場を軽々と登り切り、ヴィクティムは遂に空母上空へと達する。
なんて、見晴らしがいい。
ネルソンは嵯泉を相手に苦戦していた。当たり前だ、白兵戦の経験量が違い過ぎる。
「“提督”なぞと称した処で、所詮は過去より現れた簒奪者に過ぎんのだろう?」
「言ってくれる……!」
かろうじて躱した衝撃波は、嵯泉の罠。
「さぁ、処刑の時間だ……!」
海中より水飛沫を纏い、アンナが死角から躍りかかった。逃げ場はない。正面からは刀を抜いた嵯泉が迫っている。
「海の藻屑となれ、亡霊めッ!」
「相応しい場所へと還るがいい」
膂力においては抜きん出るふたりの一撃はネルソンもろとも甲板を砕き、空母を真っ二つに破壊せしめた。
「敵性空母の大破を確認。対艦ミサイル部隊による追撃を開始する」
美月の命令を皮切りに、砲兵部隊による波状攻撃が豪雨のように襲いかかる。
「――いけ」
鉄甲船からは因果律を歪められ、絶対命中の運命を受けし無数の魔弾がアルトリウスの号令によって解き放たれる。
そそり立つ甲板が砕け、折れた艦橋が海中へと落下した。
「これは、もう駄目だな」
ネルソンは顔を覆い、乾いた笑いを漏らす。
「……ならば、死なば諸共といくか」
最初に気付いたのは観測手段を持っていたアルトリウスと美月であった。
「まずい……! フロンティヌス!」
いざという時の切り札に用意していたサイキックキャバリアを美月は躊躇いなく起動。空母よりカタパルトで射出した天使による爆撃戦を行う舵輪にとって、近付かれることは攻撃の手を封じられることと同義である。
「なぜならば、空母に接近あるいは乗船された状態で攻撃を行えば己も爆撃に巻き込まれてしまう……だが、奴はそれを覚悟してでも天使に爆撃を命じた。自爆行為だ」
フロンティヌスより放たれたレーザーと電磁波が空母上にバリアーのような効果をもたらし、時間を稼ぐ。
「ふふ……はははッ、我が空母ごと敵を沈めるがいい……」
だが、死を覚悟したネルソンの足元で不自然な音が鳴り響いた。そういえば、最初に鑑底がやられたのもここではなかったか。
「……誰か、いるのか?」
好奇心は猫をも殺す、という格言の意味をネルソンは最期の最期で思い知るはめになる。空母とともに沈むつもりだった彼の身体を、突如として海中より伸びた植物の蔓が斬り裂いた。
「残念でした」
海面からイルカのように飛び上がった澪が「ばいばい」と手を振る。その隙に空母へと乗り移ったシズホの前面にクロスリベルが躍り出た。その効果は移動能力の増強――シズホは快哉を上げ、空母上空の天使目がけて火縄銃の引き金を引いた。
「どうです、『対召喚』特攻属性の味は!」
一斉砲火を受けた天使たちは完全に消滅し、いまや天は青い空と雲がどこまでも広がっている。返す弾幕で、シズホはカタパルトごとネルソンを撃ち抜いた。
(「きたか」)
ネルソンが傷を負い、天使の攻勢が途切れた瞬間を匡が見逃すはずもない。
「――Hit」
引き金を引いた瞬間、手応えがあった。
狙い通りに、頭部。右向きのこめかみよりやや後頭部寄りの、ちょうど耳の真上に命中した弾丸はそのまま頭蓋骨を突き抜け、真っ赤な血潮が吹いた。
「OK、いい目印だ」
ヴィクティムの指鳴らしひとつでネルソンは逃げ場を断たれる。
「壁……!?」
四方を取り囲まれ、自然と視線が上向いた。――空。そして、クロスボウをこちらに向けるヴィクティムの逆光を背負った影。
「やられたらやり返す。簡単なことさ」
吸い込まれるように矢が命中すると同時に最後に残っていた天井も蓋をして――BAN。三重奏の洗礼を受けたネルソンにはもはや抵抗する力など残されてはいなかった。
「な……」
忘れていた、というのが正しい。
目の前の敵に対応するので精一杯で、進撃していた“それ”の存在はネルソンの頭から消え去っていた。
「やれやれ。七大海嘯随一の指揮力はどうしたのでござるか? ラムアタックで止めを刺してやりますぞ!」
船首から衝突された衝撃で、かろうじて膝をついていたネルソンの体が斜めに傾いだ。
――既視感。
歴史をなぞるように、エドゥアルドは末期の砲撃をくれてやる。
「まあ責務は果たさせないでござるがね。神に祈るくらいは許してやってもいいでござるよ」
空母が海中へ沈みゆくのを美月は岬に佇んで見送った。ふと視線を崖下に向ければ、解放された島民たちの喜ぶ姿が目に入る。
まずは、ひとつ。
桜咲く島は猟兵の手によって無事に取り戻されたのであった。
大成功
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