羅針盤戦争〜 対爆装天使対空戦用意!
「準備はいいか?戦いの時が来たぞカメラート!」
興奮した声を隠すことなく、集まった猟兵達へと投げかけたミーティア・シュヴァルベ(流星は燕が如く・f11420)。彼女の言う戦いとは無論、先ほど攻勢を開始した七大海嘯達との戦闘に他ならない。
「今回はグリードオーシャンでの戦いと言うだけあって、主に海上での戦闘になる!敵の七大海嘯が一人、『舵輪』ネルソン提督は、海上に浮かぶクレマンソー級空母を拠点として、とある島を襲撃しその島と周辺の海域を制圧した。今回の目標はネルソン提督の撃破だ!奴を撃破すれば制圧された島……特に特徴がないので『橋頭保島』と名付けておくが、橋頭保島を確保し文字通りこの島を私達の前線基地として使えるようにできる。……ああそうだ。島の制圧は特に必要がなければ後でいいぞ。島を制圧と言ったが此処にいるのはネルソン提督一人だ。戦いの最中であっても誰か一人が島に上陸しても問題ない位には誰もいないからな」
何かしらの作戦に使うでもない限り、島の制圧の事は考えなくていいと言葉を添えた上で、ミーティアが語るのは敵となるオブリビオンの能力についてだ。
「知っての通りグリードオーシャンでは、海上における飛行は不可能だ。だが、ネルソン提督が率いる天使達はクレマンソー級空母のカタパルトから射出される事でそれを無効化しカメラート達に高高度からの爆撃を仕掛けてくる。こちらが飛行できない以上、同じように飛んで迎え撃つ事は不可能である。よってこちらが取れる基本戦術は、爆撃してくる天使達を迎撃、または天使達の爆撃を躱しつつクレマンソー級空母へと近づき、ネルソン提督を叩くしかない。奴の能力は天使を操る事に特化しているから接近さえできれば何とかなる相手だ」
当然、敵もその事は分かっている以上簡単に猟兵達を接近させることはないだろう。天使達への対策を怠れば、ネルソン提督に触れる事すら敵わないという事だ。
「一応、海上の移動手段として船は人数分用意してあるので自由に使ってほしい!戦勝報告を期待しているぞカメラート!!」
風狼フー太
戦争の時間だぁ!風狼フー太でございます!!
先ずは戦争恒例のプレイングボーナスの記載をば。
プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。
つまる所、高高度から攻撃を行う天使達の対策をプレイングに記載してください。これがない場合、かなり厳し目の判定となりますのでご注意を。
また、ネルソン提督に制圧された橋頭保島ですが。OPの通り一人で上陸しても問題ありません。何かしらの作戦に使いたい場合はご自由にお使いください。
では、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております!
第1章 ボス戦
『七大海嘯『舵輪』ネルソン提督』
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POW : 天使の行軍
【カタパルトで加速射出された天使の】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【他の天使】の協力があれば威力が倍増する。
SPD : 天使による高高度爆撃
【天使達が投下する爆雷】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【位置と予測される移動範囲】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ : 武装天使隊
召喚したレベル×1体の【透き通った体を持つ天使】に【機関砲や投下用の爆雷】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
イラスト:シャル
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
砲兵は戦場の女神と呼ばれる事があるが、それに倣えば確かに爆撃機という物は戦場の天使と評されてもおかしくはないかもしれない。
勿論これはただの比喩表現に過ぎない。だがしかし、一隻の空母の甲板には何機もの天使が彼の船のカタパルトの上に乗り、その時を待っていた。
「お前達の奇跡等に期待はしない」
七大海嘯の一人、『舵輪』ネルソン提督が一人呟いた言葉は誰の耳に入るわけでもなく海へと消える。
「期待しているのは戦果だ。お前達の魔法とこの船の科学。二つの力でお前達を遮る物はなくなる」
一斉に動き出すカタパルト。その加速と共に空へと飛んだ天使達は、飛べるはずのない空を、翼を上下に動かし空を飛んだのである。
「飛べ。この世界の空はお前達の物だ」
天星・雲雀
「爆撃・・・。その上昇気流は、炎の竜巻をいくつも起こして、建造物と木々薙ぎ払い、一面の焼け野原にしたと聞きます。ここ橋頭保島で同じ事象とか、させられませんね」
「空襲爆撃とか、UDCアースの世界大戦経験者の縁者でしょうか?でも、地上ならいざ知らず、海上では海面を弾くだけ。水中対策はできていますか?」
【行動】[海遊装備]を装着したUC嵐の投入部隊で、海底から空母の艦底に潜入して、推進機関と動力機関を破壊して敵を倒します!
原子力空母もしくはそれに相当する魔力動力なら、一発で海の藻屑になりますね。沈みなさい!
機雷も魚雷も[海遊装備]の[絶無]の水中機動力を持ってかわします。
アドリブ・アレンジ・共闘OK
シャルロット・クリスティア
たしかにこの世界では航空部隊は希少です。
艦対艦の洋上戦が主力の戦場において、空からの強襲は脅威に他ならない。
……ただし、それは一つの前提のもとに成り立っている。
『希少であるがゆえに、対抗手段が発達してこなかった』と言う事です。
即ち……相応の対空戦術の前には絶対的優位にはなり得ない。
せっかくなので、島を使わせて頂きましょう。無人島なら多少は木々もあるでしょうし、足場はしっかりしていてほしいですから。
後は単純。木々や起伏に身を隠しながら、迅雷弾による超長距離狙撃。
アウトレンジから、片っ端から叩き落とす!
空母を直接狙う事は難しいかもしれませんが、それでも天使の数を減らせば援護にはなるでしょうよ。
鈴木・志乃
……オラトリオにはきつい戦争だなぁ。
船も持ってないし、UCは飛ぶやつ多いし。
ぐー、戦術の幅を広げなければ。
やれるだけ、やってみますかぁ。
状況によって変わるな。とりあえずオーラ防御を展開。
高速詠唱で光量を強くしたUCで、敵を味方に、味方を敵に認識するようにしてみます(催眠術込み)
同志討ちしてくれたら御の字。かかってないやつはー、手持ちの狙撃銃として能力もあるアサルトライフルでガンガン撃って行きますか。銃の練習苦労したんだよな、これ……。
高速詠唱の多重詠唱で迎撃した方が早ければそうするよ。敵が固まってたり必要だと思ったらロケランぶち込む。
ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
アドリブ・連携OK
向こうだけ空を飛べるのは便利だねえ。
まあ、飛べないくらいならやりようはあるし、何とかしてみようか。
さて、船を動かす知識なんて無いし、泳いだ方が速いよね。
戦場に出たらすぐに海に飛び込んで、竜の肺腑で思いっきり息を吐いて、
周りを大量の泡でいっぱいにして目くらましをするよ。
船のレーダーだろうと天使の目だろうと、
これならどこに居るか正確な場所は分からなくなるよね。
後は【瞬迅斬鰭】で一気に加速して、爆雷を潜り抜けながら空母に近付こうか。
近くまで行ったらそのままの勢いで水中から飛び出して提督を切りつけるよ。
空はアンタらの物でも、海はそうじゃなかったみたいだね。
朱鷺透・小枝子
空からの攻撃。
クロムキャバリアでは、あまり無かった。
ディスポーザブル03を遠隔操縦、後方から、誘導弾の弾幕を展開
島へ向かいながら、投下される爆雷を処理、位置情報と移動範囲を撹乱
だが、泣き事なんて言ってられない。なんとしてでも、乗り越える!
自身は回点号に搭乗、操縦。オーラ防御、シールドを展開、爆雷を防ぎ、
推力移動で島へ向けて海上を移動する
…距離は十分稼いだ!
行くぞ、回点号!尽く踏み越えろ!!
『劫火戦塵』動体視力と瞬間思考力で爆雷を回避、上陸を果たす
七大海嘯『舵輪』!壊れろぉおお!!
継戦能力、損傷を無視し、敵目掛けてシールドを纏ったキャバリアの飛び蹴りを放つ。
ドロレス・コスタクルタ
両脚部にホバーユニットを装着したキャバリアの肩の上にのって移動。
「物量には物量で対抗です! この世界、海水ならいくらでもありますからね! いきます、必殺のオーシャン・プロミネンス!」
オーケストラの指揮者のように指を振りながら巨大な槍のような水柱を次々と打ち立て、落ちてくる爆雷が海面に届く前に片っ端から跳ね飛ばす。精密さには欠けるが水柱の大きさによる範囲攻撃でカバーする。
撃ち落とすのが間に合わない爆雷はキャバリアのホバー移動と波の操作によるサーフィンを組み合わせて回避。
空母まで辿り着いたらキャバリアに登場。巨大鉄棒を振り回して、文字通り鬼のように暴れまわり手当たり次第に破壊して回る。
敵より高い場所を取るというのは古来から伝わる戦闘の基本だ。上にいる者は下にいる者をすぐに見つけ出す事が出来るし、重力という物が全ての物を地面へと押し付けようとする以上、上にいる者は下にいる者に何かを投げつけるだけで物が当たり、逆に下にいる者は上にいる者へと何かを投げつければ自らを傷つけることになりかねない。全てが全てこの通りであるとは限らないが、多くの場合において上を取られるというのは致命的な事である。
そして此処橋頭保島周辺では、何者も飛べるはずのない海で、人々が見上げる空に無数の天使が舞い踊り、眼下にいる者達へと爆撃と言う名の祝福を与えんと、空を支配した彼女達は最初に見つけた猟兵へと急降下を開始するのであった。
「来ましたわね」
両脚部にホバーユニットを装着した真紅のカラーリングが特徴的なキャバリアが、颯爽と波を切り裂いて透き通る海の上を滑走する。その肩の上に座って乗っていたドロレス・コスタクルタ(ルビーレッド・f12180)は、己に向かい急降下を行う天使達を見上げ、一瞥していた。
一人と一機であるドロレスに対し、敵の数は無数と言って間違いない。圧倒的な物量差で手早く沈めてしまおうと、空中から一斉に爆雷の投下を開始した天使達。その一つが、ドロレスへと命中しかけたその時であった。
「物量には物量で対抗です!」
キャバリアの上でオーケストラの指揮者の様に指を振るドロレスが海面へと指を指すと、海中で突然大爆発が起きたかの様に巨大な水柱が上がり爆雷の軌道を逸らしたのである。彼女の体を構成するナノマシンを、予めキャバリアの周囲に放出、増殖させておく事によって海面を操作したのだ。
「この世界、海水ならいくらでもありますからね! いきます、必殺のオーシャン・プロミネンス!」
かくして猟兵とオブリビオンとの初戦が幕を開ける。天使達の爆雷がドロレスに当たらず海中へと叩きつけられ爆発し水柱を上げれば、ドロレスもまたナノマシンを操作する事によって水柱を上げるという豪快な戦いが橋頭保島とクレマンソー級空母を一直線に結んだ海域の間で繰り広げられる。水面と同化させたナノマシンは、爆雷を避ける水柱を上げるに留まらず、波を創り出してキャバリアの移動を補助するなど万能な活躍を見せつけてゆく。
対して天使達は戦術を変えることなく、ただひたすらにドロレスへと爆雷を投下し続けてゆく。水面にナノマシンを侵食させて海面を操ると言う高度な技術を以て対抗するドロレスと、ただ宙から爆雷を投下し続ければいいだけの天使との間では、精神力や魔力、キャバリアの動力等の全ての力を含めた上でそれ等をエネルギーとして称する事にした時、そのエネルギー消費が圧倒的に少ないのは天使達の方である。
加えてドロレスは前進し、敵を討たねばならない攻め手に対し、天使側はドロレスを近づかせなければ勝てる守り手である。
事実、ゆっくりと前進速度が緩やかになってゆくドロレス。そんな彼女に天使達はあくまで足止めだけすればいいと、群がり続ける。一つの戦いの盛衰が決まろうとしていたその時であった。
天使の一機へと、雷が突き刺さったのである。
時は少し遡る。オブリビオン、ネルソンが制圧した橋頭保島ではあるが、そこに残留している敵戦力らしい姿はない。特に特徴がなく、猟兵達の手に渡ってさえ居なければいいという条件に加え、彼の戦術が天使を用いた爆撃に特化している以上、例え島を猟兵達に奪え返されたとしても海の上に浮かぶ空母から爆撃を行い続ければいいという考えから戦力を残さなかった。
故にシャルロット・クリスティア(弾痕・f00330)と鈴木・志乃(ブラック・f12101)の二人は、何の抵抗も受けることなく島に上陸する事へと成功する。
「……オラトリオにはきつい戦争だなぁ」
上陸し、島を歩く志乃の愚痴も仕方ない事であろう。此処、グリードオーシャンの海は本来ありとあらゆる飛行を禁じる。オラトリオを始め、飛行を得意とする或いは飛行を可能とする戦術が取れる猟兵に対して不利に働くのは仕方ない事だ。
「船も持ってないし、UCは飛ぶやつ多いし……ぐー、戦術の幅を広げなければ」
勿論、だからと言ってやれない事ばかりを嘆いているばかりにはいかない。やれる事をやるだけだと、天使達を一望できる島の端まで移動を終えた志乃。それと同じくして、クリスティアもまた同じような条件、かついざとなればお互いに連携が取れつつ、一度の爆撃に巻き込まれない距離を開けた場所へと陣取る。
「たしかにこの世界では航空部隊は希少です」
飛行が禁じられる以上、グリードオーシャンの海戦とは艦対艦の戦いだ。その洋上戦において、空からの強襲は脅威に他ならない。その事実を肯定しながらもクリスティアは異を唱える。
「……ただし、それは一つの前提のもとに成り立っている」
愛用の魔導銃を目に見える範囲で、手早く、しかし念入りに調べ終えた後、地面に伏せて二脚を展開し魔導銃を構えるクリスティア。それに倣う様に志乃も地面に伏せて狙撃銃として使用できるアサルトライフルを構える。
彼女達が海へと出る事なく、まず島を制圧した理由。一つは身を隠せる場所が欲しかった事、もう一つは彼女達が行おうとしている事に安定した足場というのは好条件であった事。
即ち、対空攻撃手段の確保。もっと平たく言えば、天使達へと狙撃を行う為である。
「『希少であるがゆえに、対抗手段が発達してこなかった』と言う事。即ち……相応の対空戦術の前には絶対的優位にはなり得ない」
島の木々や草に身を隠し狙撃手と化した二人。今まさにドロレスを襲おうとしていた天使の一機へ狙いを付けて引き金を引いたクリスティアの弾丸は、発射と同時に銃弾の中に込められていた雷の術式が発動し、一気に弾速を上げてドロレスに群がっていた天使の一機を撃ち落とす。
当然、島からの狙撃だと気が付いた天使達の一部は島へと進路を取り直し、その一団を近づけさせまいとクリスティアの弾丸が雷の尾を引いて行く。
「……状況によって変わるなこれ」
志乃もまた天使達への狙撃を開始する。彼女の放った弾丸が天使の一機へと命中すると、突然苦しみだした天使は両手に抱えていた爆雷を隣にいた天使へと投げつけ、諸共爆発に巻き込まれた二機は海中へとその身を投じる。志乃の放つ光り輝く弾丸もクリスティアと原理は違うが同じ様に魔力を帯びており、肉体ではなく精神を傷つけ認識能力を阻害させる。それに加えて味方を敵と思わせる術を込める事で、同士討ちを発生させていたのである。
ユーベルコードの効果を確認し、有効であると判断した志乃は高速詠唱を行う事でアサルトライフルの連射に対応して、更に多くの天使を撃ち抜いて行き、その度に同士討ちの爆発が繰り広げられてゆく。
雷が、光が島から筋を描く度に、天使の一団から一機、また一機と海中へ身を投じてゆく。彼女達の弾丸はネルソンを狙撃するには距離が離れて過ぎているが、天使達を撃ち落とすには問題ない距離だ。二人の援護を受けて、ドロレスの進軍も開始するが空母の方からも増援として天使の一団が近づいてくる。このまま持久戦になるかと思われたその時、増援の天使達が発見した物があった。
それは、爆発の余波で発生したにしては余りにも多すぎる大量の泡であった。
竜の吐息と聞いて思い浮かべるのは、先ず破壊力だろう。だが、あの吐息を維持し続ける為には相当の肺活量という物が必要ではないだろうか。
もし人の体で竜の肺を持ち得ていたら何を為し得る事が出来るであろうか。その答えの一つが此処にあり、それはあまりにも奇妙な光景であった。
(見つかったみたいだねぇ)
太陽の光が届かぬ海底でも迷うことなく大量の空気を口から吐き出し続けて泳ぐ生物を先頭に、その泡に隠れ蓑にして、照明を灯した二機のキャバリアが海底を進んでいたのである。深海に居ながらも感覚的に空母の位置を把握し案内を務めていたペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)は天使に発見された事も感知したのだ。
(爆撃……その上昇気流は、炎の竜巻をいくつも起こして、建造物と木々薙ぎ払い、一面の焼け野原にしたと聞きます)
海底の移動中、キャバリアの中で天星・雲雀(妖狐のシャーマン・f27361)が考えていたのは爆撃が引き起こす惨劇の事、そしてネルソン提督の事であった。橋頭保島にてその様な地獄絵図を実現させるわけないと意気込みつつも、気になるのはネルソン提督がどのようにして空襲爆撃と言う存在を知ったかという事である。
だがこれは、本人に聞かなければ分からない問いだろう。彼が歴史上の人物当人であるかどうか、名を借りただけの者なのか、或いは人が想像した誰かなのか、そういった事が分らない以上、推測する為の材料が存在しないのだ。
(まあ何はともあれ、です。地上ならいざ知らず、海上では海面を弾くだけ。水中対策はできていますか?)
事実。海中へと放り込まれた爆撃は、爆発ごとに水を海中にいる猟兵達へと叩きつけはしても、その威力は直接爆撃を喰らうよりもはるかに威力の劣る物であり、至近での爆発でもない限りダメージを負う事もなく、彼らの姿は泡によって隠されている以上まず命中する物ではなかった。
(空からの攻撃……クロムキャバリアでは、あまり無かった)
天使からの感知を受けて、攪乱用に水上へと残したディスポーザブル03へと、海上に煙幕を張る様に、脳につないだ左目の眼帯型デバイスによる遠隔操作を行う朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)が、使用思考要領の空き容量の片隅で考えるのは故郷の事。このグリードオーシャンと同じく、とある理由から飛行技術が失われた陸戦が基本のクロムキャバリアにおいて、空とは浮遊する物であっても飛行する物ではない。故に小枝子自身に対空戦の経験等という物はない。今行っているのも張子の虎なのかもしない。
だが、それでもだ。
(泣き事なんて言ってられない)
胸に抱くこの深海よりも昏い情念が敵を殺せと囁く限り、彼女の足が止まる事はない。今は見えぬ敵へと向けて、一歩、また一歩と踏み出す小枝子。
道なき道に、勝利の道しるべを見出し3人は進む。それと時同じくして、空ではある異変が起こっていた。
「陽動に1、迎撃に2、本命に3……か」
クレマンソー級空母の艦橋から戦場を見下ろし、天使達を指揮していたネルソンの胸の中には冷たい憤慨の念が渦巻いていた。
空を支配し、確かに今現在においても支配し続けている天使達の動きは明らかに精彩を欠いている。元々ネルソンが脳裏に描いていた戦術は、空を支配する事で空母に近づく船へと一方的な攻撃を加える海戦という物が根底にある。
海上を進み進軍を行うドロレスに対してはある程度の応用が効いていたが、島にいる猟兵達は天使達に対して決定的とはいえないまでも効果的に迎撃できる手段を持ち、その二つに対応しながら、攪乱を行い海中に潜む猟兵までに対応するには今の天使達のスペックでは不足しているのである。
特に、海中に潜む猟兵の発見が遅れた事は、かなりの致命的だと考えていた。故に彼がとる行動はただ一つ。
「撤退だ。帆を張れ……いや、全速で面舵に取れ――」
スクリューを回転させて、戦場から離脱する為に舵を取り動き出そうとする空母に、大きな衝撃が奔る。明らかに大波に揺られた訳でもなく、この海域に暗礁らしき暗礁はない。
ではれば、何をしたかはともかくとして、猟兵達が何かしたと言うの事に間違いはない。この戦い初めて海の方へを視線を移したネルソンの目に映った物は、幾つかが空母の船体を貫いて海中から伸びている多数の光の柱だった。それが消えると共に空母全体で大きな爆発が幾つかと、それに連なり細やかな爆発が船全体へと響き渡ってゆく。この船はもう動く事が出来ないと、海の軍人たる勘は告げる程に。
「……やってくれたな」
ユーベルコードを海中で発動させ、自身の乗るキャバリアのコピーを創り出した雲雀は、空母へと銃口を向け一斉に発射。輝く星の光のよりも眩しく、天に向かって伸びた光の柱の幾つかは空母のスクリューや機関室へと直撃してその足を止めたのである。
それを確認して、小枝子のキャバリアのスラスターを噴かせて一気に上昇を開始。海上までその機体を持ち上げて空母の甲板へと降り立った小枝子は、研ぎ澄まされた闘争心を隠すことなく一直線に艦橋を目指す。
最早敗北は避けられないと空母に残っていた天使達は、空母毎爆撃を開始し小枝子と彼女が乗るキャバリエへと損傷を与えてゆく。何度も爆風に晒されながらもシールドを展開し、ぎりぎりの所で爆風を躱し進む小枝子の後ろから、海上を進んでいたドロレスもまた空母の甲板へとクローアンカを装甲に突き刺す事で固定し甲板への上陸を果たしていた。武装格納庫から取り出したクロムキャバリア用戦槌を両手に持つと甲板に残る小枝子へと纏わりついていた天使達へ向けて振るい、そのいくつかを硝子細工を叩き壊したかの様な塵へと変えてゆく。それはつまり、小枝子の足を止めていた足枷が減ったという事に他ならず、一気にスラスターを吹かせて天使達の包囲を抜けて、その先に目にした者は。
「七大海嘯『舵輪』!」
艦橋の上から状況を見下ろしていたネルソンは既に船を降りる為か艦橋の奥へとその身を向けていた。このままだと逃げられると直感した小枝子は、今までの爆風で受けた機体の損傷を顧みぬ事無くスラスターを吹かせ加速、最大速度で艦橋へと向かう。
「壊れろぉおお!!」
キャバリアの質量をもってすれば、ただ加速しただけで武器となる。足を前に出し飛び蹴りの形で艦橋へと衝突した小枝子のキャバリアは大破し、最早修理をしなくては動かないだろう。小枝子自身も衝突の際のダメージがある。
だが、それでも、まだ彼女は動き、考える事が出来た。まだオブリビオンは死んでいないと確信が持てている以上、小枝子がやる事は一つしかない。パイロット席から這う這うの体で脱出し、騎兵刀を支えに空母の中へと突入する小枝子。
一方その頃、ネルソン提督は少なくない傷を追いながらも艦橋からの脱出を果たし、船内を下に、下にと進んでいた。
空母の船体には既に大小幾つもの亀裂が入っている、その内で、自らが通れる程広がった亀裂から海へと脱出を図れば幾らでも逃走できる方法はあると踏んでいたのだ。燃え盛る炎が包む廊下を悪態一つつかずただひたすら前に進むネルソンの前に、遂に海まで一直線に落下できそうな亀裂が開いていた。
「空と……海の戦い、か」
まるで神話の話だと思い、即座に疲れているのだと首を横に振る。次の戦いを勝てばそれでいいのだと、亀裂から海へと身を投じようとするネルソン。
その体を。海から勢いよく飛び出したヒレの付いた体を持つ生物が、亀裂から船内へと投入するとネルソン提督の後ろを取りがっちりと拘束したのである。
「は、放せっ!」
泡として吐いていたにもかかわらず、まだ肺に残っていた空気を一気に放出する事でトビウオが水面を飛ぶが如く、ペトニアロトゥシカは水面から空中へと飛び出しネルソン提督を拘束せしめたのであった。
「放さないよー。でもまあ、海にはあたしも一緒に入ってあげる」
力強く床を蹴り、再び空中に放り出されたペトニアロトゥシカとネルソンの体は今度は重力に従って海へと落ちてゆく。
人が飛行機を用いて空を往こうと、船を漕いで海へ往こうと、或いは宇宙船で銀河を駆けようとそれはあくまで道具を用いて制しただけの事。陸に足を付けている動物は、生身では陸でしか生きる事が出来できず、それはオブリビオンとて例外ではない。
水中でも問題なく活動が出来るペトニアロトゥシカと共に海へと落ちるネルソンは、まさにケルピーに水辺へと引きずり込まれたのと同じような事だ。
「空はアンタらの物でも、海はそうじゃなかったみたいだね」
ペトニアロトゥシカの刃物の様に鋭い鋭いヒレで、水中の中思う様に動けないネルソンの喉元は切り裂かれ、赤い流血が海水の中帯を引いて、昏い海底へと沈んでゆくのであった。
「……終わりましたね」
「みたいだね」
キャバリア組が突入してから暫くの後、島に残り天使達の迎撃していた二人は、ある一瞬野の地全ての天使が一斉に消えた事を確認していた。
ネルソン提督の消滅は確認はできなかったが、確信はあった。ならば此処にいる理由もないと、一足先にグリモアベースへの帰還を開始していたのである。
グリードオーシャンの命運を掛けた猟兵達の戦いは始まったばかりであり、時間を無駄にしすぎるわけにもいかないのだ。
ただ、できるならば、だ。全てが終わった後には、夕日が沈む海を見てほしい。海から吹く風へと耳を澄ませてほしい。これ等を小さいながらも猟兵達は守ったのだ。
そして再び戦いに往く者達よ。
この先の戦いに、勝利の天使が共に在らん事を。
大成功
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