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地湧き肉躍り、忘年会

#アックス&ウィザーズ #戦後 #忘年会


●とある冒険者からの依頼
「……誰かに、受けて欲しい討伐依頼がある。敵は俺が倒せなかったモンスターだ」
 猟兵達がアックス&ウィザーズと呼ぶ世界の、とある町の酒場。
 冒険者と呼ばれる者たちが集うその場所で、自身も冒険者である壮年の男が、周囲の冒険者達に話を切り出していた。
「一昨日まで、俺は街外れの牧場の警護をしていた」
 牛に豚、鳥。
 様々な食用の動物を育てている牧場だ。
「野生の獣から家畜を守る仕事だったんだが……冬眠前のクマなんか目じゃねえ、ヤバいのに襲われたんだ」
 男の真剣そのものな表情に、周囲の冒険者たちもゴクリと喉を鳴らす。

「フライドチキンとローストターキーで武装した、鳥モンスターの群れだ」

 張りつめていた空気が、何とも言えない空気に一瞬で変わっていた。
「どういう理屈かわからねえが、まるで揚げたてみたいに衣の表面で油が爆ぜる音が響いてくるし、パリッとした皮からは香辛料と油の混ざった香が漂って来やがってな」
 これ、戦闘経験の話だよね?
「何を言っているかわからないかもしれないが、俺も全てを言い表せてる気がしねえ。とにかく、耳と鼻から食欲に直撃され続けるんだ」
 ある種の精神攻撃――なのだろうか、それは。
「それに恐らくだが、あの鳥どもは、ただの鳥じゃない。俺は、あの伝説の鳥、フェニックスに連なる種族じゃないかと思っている」
 そんな馬鹿な――男の口から飛び出した思わぬ言葉を、冒険者達は一笑に付す。
 だが、当の男は真剣そのものの顔のまま、言葉を続けた。
「恐ろしくしぶいとい連中だった。攻撃は当たるんだが、倒せそうだと思うと、どこからともなく新しい鳥が現れるんだ」
 まるで、灰の中からでも甦って来るかのようなしぶとい敵集団との終わりの見えない戦いに、いつしか男の気力と体力は尽きて、膝をついた所に口にフライドチキンをねじ込まれて倒れてしまったそうだ。
「俺を倒した連中は、牧場の鳥を奪って逃げていった――あのヘル・マウンテンにな」
「「「!?」」」
 その名前を聞いた瞬間、周囲の冒険者たちの顔色が変わった。

 ヘル・マウンテン。
 あちこちで地面は裂けて高温の炎が噴き出し、溶岩が流れ、空はなぜかいつも黒雲に覆われて雷鳴が鳴り響く――まさに地獄と呼ばれるに相応しい光景の火山である。
 獣ですら、炎を恐れて近づかないような地域だ。
 そこに踏み込んでいったというのなら、男が鳥のモンスターがフェニックスに連なるという考えに至ったのも、強ち的外れでもなくなる。
「どうする……?」
「どうするたって、あのヘル・マウンテンじゃ……」
 代わって依頼を受けてやろうと思っていたであろう冒険者達も、一様に表情を暗くして勢いが萎んでいた。
 生半可な装備では、立ち入る事すら難しい。命あっての物種だ。
 だが――。
「その話、乗ろう」
 酒場の隅で、声が上がる。
「竜殺しに伝手がある。その代わり――報酬の方は弾んで貰うよ?」
 立ち上がった蒼い目のエルフは、微笑を浮かべて男に告げていた。

●で、グリモアベース
「というわけで、大見得切ってきちゃったんで、よろしく!」
 自分がしてきた安請け合いの顛末を、ルシル・フューラー(ノーザンエルフ・f03676)が集まった猟兵達に告げていた。
「牧場に併設されている酒場兼食堂を貸し切っての、町の奢りで食べ放題飲み放題の宴会の約束を取り付けてあるからさ。忘年会代わりにどうだい?」
 この報酬を引き出すために、このエルフ、大見得を切ってきたわけだ。

「件の鳥のモンスターは、恐らくオブリビオンだしね。ケキリキターキーだろう」
 冬のこの時期に食われまくった鳥のオブビリオンの集合体と言う説もある、鳥型のオブリビオンである。
 とはいえ冬以外にも出現した記録もあるので、よくわからない。
「ケキリキターキーなら、瀕死になると仲間が召喚される。そこが注意かな」
 とは言え、瀕死にしなければいいのだ。
 一撃で仕留めるなり、跡形もなく吹っ飛ばすなり、やりようは幾らでもある。
「ただ、ケキリキターキーが武装として持ってるチキンもターキーも食えるし、本体だって美味しいらしいんだよね」
 オブリビオンを食べる事に抵抗がない人は、ハントを試みても良いかもしれない。
「じゃあそう言う事で、よろしく頼むよ。宴会の準備して待ってるからさ」


泰月
 泰月(たいげつ)です。
 目を通して頂き、ありがとうございます。

 ちょっと色々ありましてお久しぶりです。
 さて、今回ですが。

 A&Wで一仕事してから、忘年会しよう!

 と言う事です。本音を隠さないスタイル。
 1、2章は冒険と集団戦で、(多分きっと)それなりにシリアスになりますが、3章は食べ放題飲み放題の宴会です。
 1、2章もネタになりそう?ハハハ。
 別に一仕事しないで3章の宴会からだけ来てもOKですよ。3章はルシルも声掛けがあった場合に出てくる程度に混ざる予定ですし。

 とはいえ、そんなノリですがこれも現地の冒険者では手に負えない案件。
 立派に猟兵の出番です。

 1章のプレイングは12/10(木)8:30~からの受付です。
 締切、次章以降の予定は、いつも通り都度、ツイッター、マスターページ等で告知の形となります。

 ではでは、よろしければご参加下さい。
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第1章 冒険 『荒れ狂う大地』

POW   :    気合で耐える。

SPD   :    素早く駆け抜ける。

WIZ   :    工夫で切り抜ける。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
榎・うさみっち
仕事しながらチキンが食べ放題!?
仕事終えたあとも奢りでうめぇもん食べ放題!?
なんて二重の意味でおいしいお仕事!
俺に任せなー!

…と、意気揚々と受けてきたはいいけど
あつい~~!!ちぬ~~!!
このままじゃ蒸しみっちになってしまう!

UC発動!まほみっちゆたんぽを複製!
俺の前後左右囲むように満遍なく配置し
俺をがっちり守らせながら先に進む!
進みながら氷属性の魔法を定期的に発動して
涼しい空気をお届けしてもらう
更に、例え炎が噴き出してきても、雷が落ちてきても
まほみっちたちが盾となってくれる!
ゆたんぽボディが燃えたり溶けたり
パカーンと割れてしまう様はなかなかショッキングだが…!
お前たちの犠牲は無駄にはしない!



●がんばれゆたんぽ
 ――ヘル・マウンテン。
 地獄の山と呼ばれる火山地帯。

「あつい~~!! ちぬ~~!!」

 そんな炎の世界に、榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)の声が木霊した。
「意気揚々と受けてきたはいいけど、このままじゃ蒸しみっちになってしまう!」
 うさみっちが死の危険を感じたのは、大袈裟ではない。
 そこら中から溶岩混じりの炎が轟々と噴き上がり、溶岩は冷えて固まらずに川となって流れ続けているのだ。
 その熱気は、喋るだけで口に飛び込んでくるのだ。吸い込むだけで肺が焼けるような高温ではないが、猟兵でも危険を感じるレベルの熱気ではある。

 だが、うさみっちだって、そのくらいはわかって来ている。
 だから、作戦だってちゃんと考えてあるのだ。
「いくぜ、かくせいのうさみっちスピリッツ!」
 うさみっちが掲げたのは、ゆたんぽ。三角帽子とローブと杖の魔法使い風3点セットを身に着けたまほみっちが、ぺかーっと輝きを放つ。
 光が収まると、うさみっちの周りには80体を超えるまほみっちが漂っていた。
「よし! まずは氷魔法だ! 涼しさカモン!」
 複製したまほみっちたちの杖が、一斉に青白い輝きを放ち始める。
 放たれた氷の魔法が、うさみっちの周囲の熱気を和らげていく。
 まほみっちは、ただのゆたんぽではない。その杖は、ちゃんと魔法を使えるのだ。
 だが――ゆたんぽである。

 ドーンッ!

 噴き上がった溶岩混じりの炎が、まほみっちの複製体の1体を飲み込んだ。
 炎が収まると、その熱を耐えたまほみっちの姿が見える。
「――ンンンッ?」
 顔が顔と判別できないほどに溶けてしまったまほみっちに、うさみっちが思わずバッテン口になる。
 もうこのまほみっちでは、次は耐えられないかもしれない。
 だが、そもそもゆたんぽなのだから、よく耐えたと言うべきだろう。
「ふ……ふふふ。そ、想定内だ! ゆたんぽボディが炎で燃えたり溶けたり、雷でパカーンッと割れてしまうショッキングな光景を見る事になるかもしれない覚悟くらいは、し、してあるぜっ!」
 想定内と言いつつ、うさみっちの声が若干震えているのは、突っ込まない方向でお願いします。
 だが――声が震えても、うさみっちの中に撤退と言う選択肢はなかった。
「仕事しながらチキンが食べ放題! 仕事終えたあとも奢りでうめぇもん食べ放題! そんな二重の意味でおいしいお仕事、逃す手はねぇ!」
 欲が恐怖を凌駕している。
「行くぞ、まほみっち軍団! 命が宿ったゆたんぽの本気、見せてやれ!」
 残るまほみっちにがっちりと周囲を固めさせ、うさみっちはゴールを目指してぶーんっと飛んでいく。
「お前たちの犠牲は無駄にはしないぜー!」
 半数以上のまほみっちを、炎や雷の盾にしながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バルタン・ノーヴェ
POW行動、連携OK、アドリブOKデース!

「フライドチキン……ローストターキー……。オーケー! レパートリーに追加しマショー!」
とケ○タ○キーのレシピを増やすべく味見もとい捕食するのデース!

まずは現場に到着しなければ始まりマセーン。
プラズマジェットで飛行することも考えマシタガ……のんびり飛んでいると、炎や雷で焦げちゃいそうデスネー。
ならば! ここはかっ飛ばして行きマショー! UC《荷電粒子体》起動、「六式武装展開、雷の番!」全力でワタシを射出しマース!
感じる前に貫通すれば問題ありマセーン! レッツゴーデース!
あ。もし同行希望の方がおられマシタラ、お手をどうぞデース!(なお帯電状態であります)



●最強の弾丸とは
 冒険者すら二の足を踏む火山地帯。
「ワオ。文字通り、地獄のような光景デース」
 そんな所に、バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)はいつものメイド服姿で踏み込んでいた。
「のんびり歩いてたら、焦げちゃいそうデスネー」
 まるで買い物でも行くかのような軽い足取りで、バルタンはメイド服のスカートをひらりと翻し、飛んできた炎の欠片を躱す。
「プラズマジェット――も、ダメそうデスネ。空は雷ゴロピッシャン、デース」
 見上げる空は、今も黒雲の中を雷光が迸っている。
 噴き上がる炎が届かない高さを飛べば、雷に打たれる可能性は高まるだろう。
「ならば! 感じる前に貫通すれば問題ありマセーン!」
 だがバルタンは、そんな空を見上げて笑みを浮かべてぐっと握った。

「六式武装展開、雷の番!」

 バヂヂヂィィィィッ!
 生まれた紫電が電撃となって迸り、バルタンの身体を覆っていく。
 頭のホワイトブリムから靴の先まで電撃に覆われたバルタンの身体が、ふわりと浮き上がった。
「さてと。エブリワン、飛行代行サービスは不要そうデスネー!」
 地面から少し浮いたまま、バルタンは他の猟兵達の様子を伺う。皆それぞれに、この火山地帯を越える術は持っているようだ。
「ではお先に! レッツゴーデース!」
 手伝いは不要だろうと踏んで、バルタンは空に飛びあがった。

 ピシャーンッ!

 そして、上と下から迸った雷に打たれた。

 火山地帯では、雷が発生する事がある。
 乾燥した空気、巻き上げられた灰や岩石の欠片で生じる摩擦電気。幾つかの要因で生じる『火山雷』と呼ばれる自然現象である。
 そうした自然現象が起こり得る場所で、自ら電撃を纏えばどうなるか。
 バルタンの身に起きた現象が、その答え。

「HAHAHA! この程度の電撃、何するものデース!」

 だが2つの雷は、バルタンの纏う電撃に弾かれていた。
 荷電粒子体――チャージパーティクルボディ。
 全身を電撃で覆う事で、飛翔能力を得る業。
 その電撃の強さは、バルタンのボルテージ――要するに、気合に比例する。
「フライドチキン……ローストターキー……レパートリーに追加するのデース! かっ飛ばして行きマショー!」
 それはメイドとしての情熱か。
 鶏料理のレパートリーを増やすという目的が、バルタンに強い電撃を纏わせていた。

 ――最強の弾丸とは! 自分自身を射出することだぁー!

 雷をものともせずに飛ぶバルタンの脳裏に、製造主の言葉が何故か甦った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
WIZ

仲間達と一緒に参加…とも考えていたのだけど…ちょっと色々あって今回は仲間達とは別行動
人付き合いに少し疲れてしまった時は単独行動もあり…だよね?

さて、かなり厳しい環境の中を進まないといけないみたいだな
【環境耐性】【火炎耐性】なんかはあるけれど、それだけだと心許ない
ここは、疑似精霊達の力を借りよう
周囲の無機物を媒体に固有結界・黄昏の間を発動
風の疑似精霊に自分の周囲に風の断層を形成させ熱風に晒されるのを防ぐ
水の疑似精霊の力で自分の周囲の温度を適温まで下降させる
上より飛来物、落雷対策として地の疑似精霊に岩のバリケードを上空に展開させる
溶岩などが道を塞ぐ場合は火の疑似精霊に吸収させる



●黄昏の間――無機物支配領域
「ふぅ……どんどん、暑くなって来たな」
 拭う前に汗が乾いていくのを感じて、鳳凰院・ひりょ(人間の聖者・f27864)が独り言ちる。開いた口にも、熱気が飛び込んで来た。
「かなり厳しい環境だな。この中を進まないといけないのか……」
 ヘル・マウンテンとは聞いていたが、聞きしに勝る地獄っぷり。
 そんな中を、ひりょは単独行動を取っていた。
 一人になりたい時と言うものはあるものだ。
 とは言え、単独行動は独力とは限らない。

「ここは、疑似精霊達の力を借りよう――場よ変われ!」

 ひりょの身体から、夕日に似た――黄昏色の光が広がっていく。
 ドーンッ!
 そこに、ひりょのすぐ隣で溶岩の混ざった炎が噴き上がった。
「――まずは火の疑似精霊」
 しかし光の中に飛び込んだ溶岩は――空中で、ピタリと静止した。
 炎の疑似精霊となった溶岩は、反転し、続く炎とぶつかって対消滅する。

 固有結界・黄昏の間。

 範囲内の無機物を疑似精霊と変える結界術。
 変換できるのは地・水・火・風の四大元素の属性の精霊のみだが、変換対象となる無機物は、この場所ならば事欠かない。
 炎を噴き出す岩盤も、流れる溶岩も、噴火で弾き飛ばされる岩石も無機物だ。
 そうでないのは、炎や雷と言った現象くらいのものだ。
 この結界を展開した時点で、ひりょの安全は確保されたも同然と言えた。
 だが、それだけでは満足するつもりはない。
「次は風と水の疑似精霊だな」
 続けて、ひりょは足元の岩の欠片を風と水の疑似精霊に変換した。
 風の疑似精霊の力で二つの風の流れを生み、空気の断層を作って熱風を遮断。
 水の疑似精霊の力で、自身の周囲の空気を冷やす。
「ふぅ……これで熱さは大分遮れたな」
 頬を伝うようになった汗を拭いながら、ひりょは深く息を吸い込んで、吐き出す。
 まだ涼しいと言える程ではないにせよ、サウナくらいにはなっていた。
 水の疑似精霊でも、時間をかければもっと冷やせるだろう。
「まあ、涼むより先を急いだ方がいいよね」
 目的は進み易くする事であって、此処に留まる事ではないのだ。
 先を急ごうと、ひりょは止めていた足を再び動かし――。

 ピシャーンッ!

 聞こえた音に、思わず足を止めた。
 空を見上げれば電光を纏った猟兵が、雷に打たれながら猛スピードで空を飛んで行くのが見えた。
「落雷対策もしておこうかな……」
 それを見たひりょは、地の疑似精霊も変換で生み出し、その力で岩を操り頭上にバリケードを展開する。
「あ……この中の空気を冷やせばいいのか」
 雷対策に作ったそれが、日傘のように外の熱からもひりょを守っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

明石・鷲穂
【壁】
チキン本体か武器を食うか迷うよなあ。 ターキーってんだから焼いたらさぞ美味いんだろう。
オブリビオン食うのは一筋縄ではいかないだろうが…忘年会が楽しみでなあ。栴と一緒に前仕込みだ。
腕も鳴るし、腹はもう鳴ってるぜ。

さすがの地獄様。まずは食前運動だな。
最短で向かうためにも、障害物があれば怪力で破壊。
落雷には武器「地霊礼賛」を避雷針に、かばうように電撃耐性。
足場の氷のおかげで進みやすいな。炎に対しては栴に頼って、翼で滑空しつつ連携して進もうぜ。

さすがに熱いな!ジンギスカンにされるまえに抜けちまおう。
頂上に着く前にこっちが料理されたら適わないからなあ。


生浦・栴
【壁】にて
壁面(カベメン)で忘年会に参加予定だが
一瞬でテーブルの一角が蒸発しかねんからな
可能な限り回収して来よう
山羊の、現地で全部喰うて仕舞わんでくれよ?

流石は地獄と呼ばれるだけの場所だな
高く飛ぶと上昇気流もありそうだし
山羊の別行動になって仕舞うので
低めに飛んで属性魔法の氷でバリアのようにして進むか
魔法は山羊のが足を付けるより前に発動していなければならぬので
自分たちとその数メートル先に大して細く放つ
防御で足りぬ分はUCで強化して適宜バトルオーラで炎を凌ぐか
俺の翼は元々早くないのと
俊足について行くのがなかなか厳しい
途中の障害物と雷の対処は任せる



●魔術師と破戒僧の食材調達
「うーむ……迷うなあ」
 明石・鷲穂(真朱の薄・f02320)が腕を組んだまま、カッポカッポと蹄の音を響かせ歩いていた。
「どうした、山羊の。何を迷うている」
 隣を進む生浦・栴(calling・f00276)が、思案顔の鷲穂に横から声をかける。
「なに。チキン本体か武器を食うか、迷ってなあ。ターキーってんだから、焼いたらさぞ美味いんだろうし」
「……おい」
 鷲穂が真顔で返した言葉に、栴は思わず眉根を寄せた。
「忘れてないだろうな? 壁面の分を可能な限り回収しに来たのだぞ?」
「わかってるわかってる。忘年会の前仕込みだろ?」
 栴の言葉に、鷲穂が笑って頷く。
「その忘年会が楽しみでなあ」
 報酬として用意されている忘年会には、【壁】の仲間も加わる予定だ。
 その顔触れに、栴がとある懸念を抱いた。

 並みの食べ放題では、一瞬でテーブルの一角が蒸発しかねん――と。

 そしてそれに頷いた鷲穂と、こうして食材を増やしに来たというわけだ。
「山羊の、現地で全部喰うて仕舞わんでくれよ?」
「うむ。オブリビオン食うのは一筋縄ではいかないだろうしな」
 回収する分がなくなりはしないかと言う懸念が新たに生まれた栴に、鷲穂が食い気を隠さず頷く。
「まあ、一度置いておくさ」
 目の前の光景に向けた鷲穂の視線から、食い気の色がスッと消えた。
 ここはもう、ヘル・マウンテンの中だ。
 炎があちこちから噴き出し、空には雷鳴が響いている。
「流石は地獄と呼ばれるだけの場所だな」
「うむ。焦熱地獄もかくやと言う地獄様。さすがに熱いな!」
 噴き出す炎と流れる溶岩を前に、栴も鷲穂も、思わず足を止めていた。
「栴。どう抜ける? 先ほど見たように、飛ぶか?」
「――いや。これだけの熱があるのだ。上昇気流もあるだろう。高く飛ぼうにも、上の風の流れが全く読めん上に、あの雷雲だ」
 鷲穂に方針を訊ねられ、栴が視線を空に向ける。
 空を覆う黒雲の中、雷光が今も迸っていた。先ほど、電気を纏って飛び上がった猟兵が雷に撃たれたのは、2人も見ていた。
「飛べば飛べるだろうが、あまり高く飛ぶと、山羊のとも別行動になって仕舞うしな。だから――こうだ」
 栴が闇く紅いオーブ『Ancient deep sea』を掲げる。
 その表面が、微かに揺らぎ、水音の様な音が小さな音が2人の耳朶に届く。
 直後、『Ancient deep sea』から地表に放たれた闇い氷が、真っすぐ伸びていった。

「駆けろ、山羊の」
「応! ジンギスカンにされるまえに抜けちまおう」
 炎の熱気に包まれた中に生まれた氷の道。その上を、鷲穂が駆け出した。山羊の足の蹄が氷に亀裂の跡を刻んだ後を、竜の翼を背に広げた栴が低空飛行で続いていく。
 空を行かないのであれば、この炎の大地を抜けるより他にない。
「栴。氷が途切れて――」
「そのまま往け。先の道は、このまま作る」
 振り向いた鷲穂に告げて、栴は低空飛行を続けながら『Ancient deep sea』を構え、再び氷の魔法を放ち、道の先を作る。
「足場の氷のおかげで進みやすいが――もつのか?」
 新たに伸びた氷の道の上を駆けながら、鷲穂は横を飛ぶ栴の様子を伺う。
「気にするな。この程度の術なら、連発も難しくはない」
 栴はそういうが、一度に作れる氷の道の長さには限りがある。
 この危険地帯を抜けるのに、栴はあと何度、氷の術を使う事になるか。
「いや――次の道を作る場所は、もう少し先でいいぜ!」
「何?」
 鷲穂が何を言い出したのかと栴が訝しんだ直後、背中の鷲の翼を広げた鷲穂が、氷を蹴り砕く勢いで跳び上がった。
 そのまま、広げた鷲の翼で熱い風を受け止めた。
「滑空か」
「ああ。走り続けるより、距離も稼げるだろ」
 緩やかに降下し始めた鷲穂の着地点を予想して、栴がそこに新たな氷の道を作る。
「氷の足場がないと、滑空も出来ないしなあ。それで頂上に着く前に、こっちが料理されたら適わないからなあ」
「そうか。ならば山羊の。もう少し働いて貰おうか」
 氷の上に降りて再び駆け出す鷲穂の背中に、小さな笑みを浮かべて栴が告げる。
「俺の翼は元々早くない。山羊のの俊足について行くのが、なかなか厳しいのでな? 途中の障害物と雷の対処は任せるぞ」
「任された!」
 いつでも避雷針に出来るようにと全鉛製の錫杖『地精礼賛』を構えて、鷲穂は栴が作る氷の道の上を駆け抜けていく。
「待っていろ、鳥! 腕も鳴るし、腹はもう鳴ってるぜ!」
「本当に、全部喰わんでくれよ?」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リュカ・エンキアンサス
オズお兄さんf01136と
まずはバイクの後ろをあけて…
お兄さん
乗って
後は一気に駆け抜ける予定
なるべく地形を見て地割れや炎が噴き出してる場所なんかは避けて走行するけれども、いざというときはあとはお兄さん、任せた

移動には気を払うけれども気分は半ば観光気分で行く
最近段々朝夕寒くなってきたから、こういう所も暖かくていいかもしれない
お兄さんは大丈夫?とけてない?
サウナ?サウナはない…っと、
お兄さん、前方…っ
!?
わ、ほんとだ、飛んだ…っ
て、お兄さんがなんで驚いて…(落ちる
(なんとかうまいこと着地しつつ
危ない…なんかすごくびっくりした
面白かったけど
けど、大丈夫。うん、あとは任せて
とばすよ。しっかり掴まってて


オズ・ケストナー
リュカ(f02586)と

やったあ、のるっ
ぴょんと乗ってぎゅっと掴まる
疾走感にわくわく
わかった、いざってときはなんとかするからねっ
何も考えないまま頷いて

尋ねられたら自分の手に触って確認
だいじょうぶ、とけてないよっ
リュカこそ、あつくない?
ふふ、真夏よりあちあちだねえ
あ、サウナっ
サウナってこんなかんじかな?
リュカは入ったことある?

いざっ
ガジェットショータイム
現れたジェットエンジンがバイクに装着されて
一瞬空を飛ぶ

わあ、とんだっ

着陸は心配してない
だってリュカだもの
衝撃を和らげるためにまたジェットがゴォォ

リュカすごい、すごい
わたしもおもしろかったっ

これでいざってときもへいきだねっ
うんうん、リュカごーごーっ



●アルビレオ、飛ぶ
「オズお兄さん、乗って」
 リュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)は、しばらくぶりに見えたアルビレオの古びた後部席のシートを、ぽんっと叩いてオズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)に座る様に促した。
「やったあ、のるっ」
 いつもアルビレオの後部席を占領している鞄は、そこにぴょんっと飛び乗ったオズの背中に括り付けられていた。
「一気に駆け抜ける予定だから。落ちないでね」
「わかった!」
 運転席に乗ったリュカの背中から、オズが手を回しぎゅっとする。
 リュカの荷物をリュカではなくオズが背負っているのは、こうするのに邪魔になりそうだったからだ。
「なるべく地割れや炎が噴き出してる場所なんかは避けて走行するけれども、初めての場所だし、地図なんてないから。いざというときはお兄さん、任せた」
「わかった、いざってときはなんとかするからねっ」
 大雑把に丸投げるリュカに、オズも深く考えずに頷く。2人を乗せたアルビレオは、一路ヘル・マウンテンへ疾走していった。

 そして――。

「これが、ヘル・マウンテン……地獄の山か」
「ピカピカ、ドーンって、すごいね、すごいね!」
 感心したように青い瞳を細めて呟くリュカの後ろで、オズがキトンブルーの瞳を輝かせている。
 いつの間にやら、2人とも半ば観光気分になっていた。
「最近段々、朝夕寒くなってきたから、こういう所も暖かくていいかもしれない」
「ふふ、真夏よりあちあちだねえ」
 会話だけを聞くと、暖かい土地をツーリング中と言った風情である。
 頭上の黒雲で瞬く雷鳴と、後ろで吹き荒れる炎がなければ。
「あ、サウナっ! サウナってこんなかんじかな?」
「サウナ? ……こんなに暑いのかな」
「リュカは入ったことある?」
「サウナはないけど……岩が融けるサウナって、ないと思う」
 オズの問いに、リュカは流れる溶岩を見やり首を振って背中で返す。
 サウナとの決定的な違いは、空気が乾いているところだろう。
「お兄さんは大丈夫? とけてない?」
「とけ……」
 リュカに問われたオズは、ペタペタと両手を合わせて、いつも通りの自分の手がそこにある事を確かめる。
「だいじょうぶ、とけてないよっ」
 きっといつもと同じ笑顔で言ったであろうオズの声がリュカの耳に届いた瞬間、アルビレオの進行方向の地面が、ドロリと溶け出した。
「っ! お兄さん、前方……っ」
 咄嗟にハンドルを切りかけたリュカだが、それでは厳しいと判断して声を上げる。
「いざっ! ガジェットショータイム」
 リュカの肩越しに状況を見たオズはリュカに掴まったままパチンッと指を鳴らした。

 ガシャン、ガッション。

 召喚されたガジェットが、アルビレオの後輪――のすぐ横にあるエンジンに、ほぼ同じ形の複数の気筒となって装着された。
「っと。お兄さん、何を――」
 急に車体の重量が変わって、リュカがハンドルを握る手に力を込めてバランスを取ろうとした、直後。
 ガジェット製のエンジン――ジェットエンジンが、火を噴いた。
「っ!?」
 その勢いで、アルビレオの前輪が持ち上がる。ジェットエンジンの噴射はそこからさらに強くなって――2人を乗せたアルビレオの車体は、空に舞い上がった。

「わあ、とんだっ」
「わ、ほんとだ、飛んだ……っ」

 完全に飛んでいるアルビレオの上で、飛ばしたオズもハンドルを握るリュカも、驚きに目を丸くして声を上げる。
「て、お兄さんがなんで驚いて……」
 飛ばしたのはオズのガジェットなのに。
 そこにリュカが気づいた時には、高度の頂点は過ぎていた。
「お兄さん。これ、もう落ちてるよね? 着地は?」
「心配してない。だってリュカだもの」
 まさかと訊ねるリュカの背中に、オズのまっすぐな期待が突き刺さる。
 ガジェットのエンジンは、先ほどの反対側からゴォォォッと逆噴射して勢いを和らげてはいるが、要の部分はリュカのハンドル捌きにかかっていた。
「やるしかない」
 刻々と近づいてくる地面を前に、リュカの目が銃口を敵に向けている時のような真剣なそれになった。
 ズザシャァッッ!
 まずアルビレオの前輪が。一瞬遅れて後輪が地面に着く。前輪後輪の着地に生じた僅かなラグで、機体が横に滑り出していた。
 リュカは横になった機体を立て直す前に、アルビレオのエンジンを強く吹かせる。
 二輪車が転ばないのは走っているから。
 ならば――走り続ければいい。
「リュカすごい、すごい」
「なんかすごくびっくりした。面白かったけど」
 オズの喝采を背中に聞きながら、リュカはほぅっと大きく息を吐く。知らずに肩に入っていた力が、吐息と共に抜けていった。
「これでいざってときもへいきだねっ」
「うん、大丈夫。コツはつかめたと思う。あとは任せて」
 だから声を弾ませるオズに、リュカは背中で頷いた。
「とばすよ。しっかり掴まってて」
「うんうん、リュカごーごーっ」
 2人を乗せたアルビレオは、地獄の中を駆け抜けていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

小夜啼・ルイ
ミケ(f01267)と

…オレの周りは食う事に結びつく奴らが大半なのか(頭痛
なんか頑張る気が中々起きねぇ…

冷ましてって…オレは冷房係じゃねーよ!
しかしまあ、確かに暑いわな此処…オレは寒いのは耐えられるケド暑過ぎるのは苦手だわ…

【Congelatio】で溶岩や炎を冷ましてく
凍らせるよりも、冷ますって表現が合ってるような気がする
さっさと進むぞ。モタモタしてるとまた噴き出すだろうからな

あ…?
おんぶしねぇよ!一応気にするんだよ!!何をって詳しくは聞くな!!
猫だけだったら…許す


いや、鳥仲間を出荷されてたまるか的な理由じゃねーの?
料理じゃ共食いになっちまうし


舞音・ミケ
ルイ(f18236)と。

ケキリターキー……戦闘経験者に話聞いたことあるよ。
「奴の肉はああ見えて武器であり自身の強化にも使われる」
「そして美味い。味も香りも素晴らしい!」
「一度食べたら忘れられん熱々パリッパリの一級品だ!」
って。
ルイ、今日はがんばろうね、ね。(嬉しそう)

けど……この山、暑い。
寒くないのは嬉しいけど、熱すぎて溶けそう……。
ルイ、冷まして……あとおんぶ……はだめ?
何か気になるの? 私は気にしないよ?
(ルイの肩や頭に猫を積みつつ)

じゃあ私は……「静かな黒猫がついて行く」
……黒猫と私で安全なルートを探して誘導するね。

鳥だけ奪ったのは、鳥料理にするため?
料理される前に助けないとね。急ごう。



●身長差20センチはおんぶしても良いと思う
「美味しい鳥が、なんで鳥だけ奪ったんだろう」
「考えるだけ無駄な気がするが……」
 舞音・ミケ(キマイラのサイキッカー・f01267)と小夜啼・ルイ(xeno・f18236)は、ケキリキターキーが鳥を奪っていった理由を考えながら、歩いていた。
「鳥料理にするため?」
「いや、鳥仲間を出荷されてたまるか的な理由じゃねーの?」
 ミケが挙げた可能性に、ルイは首を横に振る。
「だって、料理じゃ共食いになっちまう」
 ルイの言う通りであろう――相手が普通の鳥だったなら。
「私、聞いたんだ。ケキリキターキーの戦闘経験者に、話を」
 だがミケは首をふるふる横に振ってルイに否定の意を示すと、経験者に聞いてきたという話を指折り数えて語り始めた。

 ――奴の肉はああ見えて武器であり、自身の強化にも使われる。
 ――そして美味い。味も香りも素晴らしい!
 ――あれは一度食べたら忘れられん熱々パリッパリの一級品だ!

「だって」
「戦闘経験1つだけじゃねえか!」
 ミケが語った話に、ルイが思わず声を張り上げる。
「料理される前に助けないとね。ルイ、今日はがんばろうね、ね?」
「なんか頑張る気が中々起きねぇ……」
 早く助けないと、と言いつつも嬉しそうなミケに、ルイは内心で思わず頭を抱える。
(「……何で、オレの周りには食う事に結びつく奴らが大半なんだ」)
 それはミケに限った話ではない。どこかで見覚えのある顔、ルイが初めて見る顔――今回は頓に、食う事に結び付けているのが多い気がしていた。

 ――フライドチキン……ローストターキー……レパートリーに追加するのデース!

 そんな声が、空の方から聞こえてくるくらいである。
(「オブリビオンを食う方が普通……だとは思いたくねえ」)
「ルイ、ルイ」
 ぐるぐると思考が渦巻いて止まらなくなってきていたルイの袖を引いて、ミケが現実に呼び戻す。
「冷まして……」
 ミケが指で示した先で、ドーンッと溶岩混じりの炎が噴き上がった。
「冷ましてって……オレは冷房係じゃねーよ!」
「だって……この山、暑い」
 ルイのツッコミに、ミケの耳がぺたーんと折れる。
「寒くないのは嬉しいけど、熱すぎて溶けそう……」
「まあ、確かにやたらと暑いわな此処……オレは寒いのは耐えられるケド、暑過ぎるのは苦手だわ……」
「でしょ? だから、冷まそう?」
「仕方ねぇな……」
 じぃっと懇願してくるミケにため息を返して、ルイは前方に掌を向けた。
「凍ってろ」

 Congelatio。

 ルイの掌から放たれた絶対零度の冷気が、炎を吹き消し、流れる溶岩を固めていく。
「おー。どんどん、冷めていくね」
「……確かに、凍らせるよりも、冷ますって表現が合ってるような気がするな……」
 一度は否定したミケの言葉だが、その方が今はしっくり来る気がしていた。
「よし。さっさと進むぞ」
 前方から火の気がなくなったところで、ルイは冷気の放出をやめて、冷えた溶岩の上に足を伸ばして――。
「待って」
 進もうとしたルイの袖を、再びミケが引いた。
「あ……今度はなんだ?」
「おんぶ……はだめ?」
 ルイが振り向くと、ミケが新たな期待に満ちた目で見上げていた。
「おんぶしねぇよ! 一応気にするんだよ!!」
「何か気になるの? 私は気にしないよ?」
「何をって詳しくは聞くな!!」
 頑なにおんぶをしようとはしないルイに、ミケは首を傾げる。
「じゃあ……せめて、この子達を」

 にゃーん。
 にゃー。
 にゃおーん。

 こんな場所でも付いてきている猫達を、ミケはルイの頭や肩に乗せてみた。
「猫だけだったら……許す」
「いいんだ……」
 肩と頭で始まった猫の合唱も気にせず受け入れたルイに、なんでおんぶはダメだったのかと、ミケはますます不思議がる。
「いいから行くぞ。モタモタしてるとまた噴き出すだろうからな」
 ルイは踵を返す事で、これ以上質問は受け付けないと示して進み出す。
「ん。じゃあ――安全なルート、探すね」
 軽い足取りで、ミケがルイを追い越す。その足元には、いつの間にか黒猫がまとわり付いていた。良く見れば、その黒猫は――透けている。
「追いかけて」

 静かな黒猫がついて行く。

 ミケの五感を共有する黒猫の霊が、音もなく駆け出して行った。
「……こっち大丈夫」
 ややあって、黒猫の霊が進んだ方に、ミケが小走りに駆けていく。そのあとを、猫を乗せたままのルイが、ついて行く。
 黒猫の霊が安全な道を探し、安全な道が無ければルイが冷やして作る。
 そうして2人は、着実にヘル・マウンテンの奥へと進んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

備傘・剱
つまり、美味いものが攻めてきたから、攻め返せ、という事だな
よし、クリスマスの食材確保懸案、ゲットだぜ!

素直に地上を歩いていくから、苦労するのだよ
レッツ、鳥獣技発動!
隼になって空から移動するぞ
あ、炎とか落石とか、そういったもんが飛んできてもオーラ防御と、念動力で跳ね返してやろう
空中移動も合わせて、鳥ではできない急後退や、急旋回も合わせれば、よほどの事がない限り、何とかなるもんだ
火炎耐性もあるから、熱にも強いぜ!

あの焼き鳥候補の奴ら、こんな所を通ってきたって事なんだよな?
…まさか、仲間をここで、焼いてきたとかいう事、無いよ、な?
だとしたら、ちょっと、語り合ってみたい気がする

アドリブ、好きにしてくれ



●翼
 もしもの話だ。
 人間が背中に鳥類の翼を翼を持つことが出来たとしても、飛べるに足るだけの揚力は得られないと言われている。逆に飛べるに足る揚力を得られる翼は、人間の力では十分に動かせない、とも。
 つまりヒトは翼を手に入れたところで、空を飛ぶことは出来ない。
 ――それは、常識の範囲の話。

「獣の戯れ、鳥の群。交り変わりて常世に姿を映せ。百鬼夜行も、旅の道連れ」

 備傘・剱(絶路・f01759)の背中が、内側から蠢いて形を変える。
 骨格を無視して肩甲骨の辺りが膨らみ出して、人間にはない筈の羽毛が生える。
 剱の背中に、大きな隼の翼が生まれていた。

 鳥獣技――メタモルモーフ。

 剱の身体の彼方此方に埋め込まれた機械の1つ。
 背骨にある資源複製モジュールによって、身体の内側で分解と再構築が行い、骨格から身体を作り変える変異の業。
「行くか」
 短く呟いて、剱は背中の翼を大きく羽ばたかせる。
 一度目でふわりと浮き上がり、二度目でさらに浮き上がり、三度目で一気に上空まで飛び上がった。
 人体を飛ばすに足る翼を得た剱は、悠々と空を飛んで行く。

「予想通り、この高さまで上がってくる炎や溶岩はほとんどないな」
 流れる溶岩はもはや障害にならず、噴き上がる炎もこの高さに届くものは少ない。熱い岩石が飛んで来ても、剱は己の炎に対する耐性に自信を持っていた。
「むしろ、俺が気を付けるべきは雷だな」
 地上で見上げたよりも大分近くに迫った黒雲を見やり、剱は呟く。
 熱に対する耐性はあれど、雷撃に対する耐性は持ち合わせていない。
 ならば多少なら当たっても耐えられる方に、リスクを寄せるべきだろう。
 剱は念のために高度を下げて、雷雲から遠ざかる。地上に近づくと、その熱は先ほどより感じられるようになった。
 その熱に、ふと思う。
「ケキリキターキー、だったか? 焼き鳥候補の奴ら、こんな所を通ってきたって事なんだよな?」
 情報を合わせれば、少なくとも一往復はしている筈だ。
「……まさか、仲間をここで焼いてきた、とかいう事、無いよ、な?」
 ケキリキターキーが持っているという、フライドチキンやローストターキー。それをどこで手に入れたのかと言う問題が、剱がまさかと思った事が事実ならば、辻褄が合う。
「だとしたら、ちょっと、語り合ってみたい気がする。まあ語り合ったとしても、クリスマスの食材にするんだがな」
 地上から噴き出した炎を、くるりと回転して躱しながら、剱はヘル・マウンテンの奥を目指して飛び続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

浮世・綾華
【暁】

きよしうるせーなとか
汗くせーなとか思いながら進む

俺熱いのかなり得意なんだよネ
炎の技散々操ってきてるしなぁ
ってもこれは熱すぎだケドも

耐熱防具姿のきよし
動きづらそうだしなんかダサい
正直着たくないが一応?着ておいた方が無難だろう

着てみれば確かに少しは熱さが和らいだ
すごいと思ったが言いたくなかったので言わない

うるさ
水ならセンセーいんじゃん

妖怪メダルから出ずに言葉だけ発する先生に
きよしがうざいのは分かるがそう言わずに
このままじゃきよしがアチーアチーうるせーんだ
どうか何卒、と千変万化ノ鍵で胡瓜を山ほど出す

噴水のように水を撒き散らすセンセーと一緒に苦難を乗り越えていく
きよし?いいから胡瓜ちゃんと運べよ


砂羽風・きよ
【暁】

汗がだらだらだら

ア、アチーアチ―!!
半端なくアチー!なんじゃこりゃ!

スクラップで作った耐熱防具を装備して
のたのた歩く
綾華待ってくれ!歩くの早い!

そーだ綾華も着るか?俺特製耐熱防具
我ながらいい出来だとは思ったんだが
やっぱアチ―な

綾華ー、アチーよぉ
水、水持ってねーか?

先生!そーだ、俺には先生がいる!

先生!キュウリやるから水、水を出してくれ!
「暑いから嫌じゃ」

なんでだよ!少しくらいいーじゃねぇか!なぁ、綾華!
綾華からも頼んでくれよぉ

くそ、キュウリ6本!8本…わかった10本!10本やるから!

うおー!綾華スゲー!めっちゃキュウリ!

よっしゃ、早速水を掛けてくれ!
って俺の方にも掛けてくれよ!

くそー!!



●言うなればフルアーマーきよし
「ふぅ……」
 浮世・綾華(千日紅・f01194)のこめかみを、汗が伝って落ちる。
(「熱……」)
 ガシャン――ガシャンッ!
 胸中で呟く綾華の後ろで、厚みのある金属と金属がぶつかる類の音が響いていた。
「ア、アチーアチ―!!」
 金属音に混ざって、砂羽風・きよ(ナマケきよし・f21482)の声が、少しくぐもった感じで聞こえてくる。
(「きよしうるせーな」)
 綾華がちらりと視線を後ろに向けると、そこには不揃いな全身鎧と言った風の金属製の人型が、のたのた、と歩いていた。
 スクラップで作った耐熱防具を着込んだ、きよである。
「綾華待ってくれ! 歩くの早い!」
 ガシャン――ガシャンッ!
 いつの間にか開いていた距離を詰めようと、きよは頑張っているようだが、その一歩に綾華なら数歩分の時間がかかっていた。
 重そうだし、バランスが悪そうに見える。多分その辺りがネックになっているのだろう。
「早く来い、きよし。置いてくぞ」
「んなこと言ってもよー! これアチーんだって。半端なくアチー!」
 嘆息混じりの綾華に、きよは防具の中から返す。
 暑いものは暑いのだ。
 溶岩や炎の熱を浴びない為――その目的は果たせていたが、さりとて、外気の熱を完全に遮れているわけではなかった。
 『熱い』を『暑い』程度に抑える事は出来ても、温度高めの蒸し風呂状態である。
「くっそー、汗だらだらで止まらん!」
 しかも全身鎧の言った風の構造上、その内部にいるきよは、汗がダラダラと流れるのを耐えるしかなかったりする。
(「……汗くせーな」)
「綾華、今汗くせーとか思っただろ!」
 胸中で呟いた綾華の視線を察して、追いついたきよが防具の中で指を突き付ける。
「仕方ねーだろ。我ながらいい出来だとは思ったんだが、やっぱアチーんだ。綾華だって汗くらいかく……って、あまりかいてなさそうだな?」
 自分に比べれば、遥かに涼し気な綾華の様子に、きよはギギィッと防具の軋む音を立てながら、首を傾げる
「俺、熱いのかなり得意なんだよネ。炎の技散々操ってきてるしなぁ」
 きよの仕草に苦笑しつつ、綾華はさらりと返した。
「ま、ここは熱すぎだケドも」
「熱いよな! 熱すぎるよな!」
 熱すぎる――綾華からその言葉を聞き出したきよは、防具の中で笑みを浮かべた。
「綾華も着てみないか? 俺特製、耐熱防具」
 きよ謹製スクラップ製耐熱防具2号が、綾華の前に差し出された。
「……え?」
「ん!」

 ガシャン――ガシャンッ!
 ガシャン――ガシャンッ!

 金属音立てて歩くのが、2人になった。

●鍵が開く扉は
(「動きづらそうだしなんかダサいし、正直着たくなかったが……」)
 スクラップ製耐熱防具2号の中で、綾華は内心、舌を巻いていた。
(「着ておいた方が無難だろうくらいに思ってたが、確かに少しは熱さが和らぐな」)
 思っていたよりすごい――それが、綾華の素直な感想だった。
(「きよしには……言わね」)
 なんとなく、すごいと感じたことを言いたくなくて、綾華はガシャンガシャンと防具を打ち鳴らしながら歩いていく。
「アチー、アチーよぉ」
 まあ、言っても気にしたかどうか。
 今のきよ、暑さで大分やられてるし。
「綾華ー。水、水持ってねーか?」
「うるさ。水ならセンセーいんじゃん」
 後ろから聞こえるきよの声に、綾華は投げやりに返す。
「先生! そーだ、俺には先生がいる!」
 その言葉でその思い出したきよは、あやかしメダル『カッパのトム』を取り出す。
「先生! キュウリやるから水、水を出してくれ!」

「暑いから嫌じゃ」

 きよのお願いに、メダルの中からにべもない答えが返ってきた。
「なんでだよ!」
「暑いから嫌じゃ」
「少しくらいいーじゃねぇか!」
「暑いから嫌じゃ」
「くそ、キュウリ6本! 8本…わかった10本! 10本やるから!」
「10本? 暑いから嫌じゃ」
「なぁ、綾華! 綾華からも言ってくれ!」
 お願いしてもキュウリで釣ろうとしても、一向に妖怪メダルから出てきてくれる様子のないカッパの声に、きよが綾華にも加勢を願い出る。
「……きよしがうざいのは分かる。分かるが、そう言わずに。このままじゃ、きよしがアチーアチーうるせーんだ」
 妖怪メダルに声をかけ、綾華は掌に濃い緑色の鍵を喚び出した。

「――開け」

 綾華はその鍵を、きよのスクラップ製耐熱防具の額に突き立てた。
「へ?」
 千変万化ノ鍵――あらゆる困難を打開する鍵が、この灼熱の環境と言う困難を打開する為に、きよの防具に扉を開く。
 大量のキュウリが出てくる扉を。
「うおー! 綾華スゲー! めっちゃキュウリ!」
 自分の防具に起きた謎の現象に、きよは驚くよりも興奮して、目の前を流れ落ちていくキュウリを受け止める。
『むむ……メダルの中からでもわかる。瑞々しいきゅうりの気配じゃ!』
「これで水、出してやってくれ。どうか何卒」
 大量のキュウリの気配に、カッパの先生がどろんっと妖怪メダルの中から出てくる。
「よっしゃ、早速水を掛けてくれ!」
『よかろう』
 きよが上げた弾んだ声に先生は厳かに頷いて、ムゲンジョウロを掲げる。
 ジョウロの口から、噴水のような勢いで水が放たれた。

 ――綾華だけに。

「って俺の方にも掛けてくれよ!」
『キュウリを出したのは、綾華なのじゃ』
「きよし? いいから胡瓜ちゃんと運べよ」
「くそー!!!」
 額からキュウリは出続けているのに水を浴びせて貰えないきよの悲しげな叫びが、ヘル・マウンテンに響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

イデアール・モラクス
【PPP】

私は全魔術から浮遊魔術式、耐熱結界魔術式を用い生身で空中浮遊して行動。

あー暑い暑い、これは服なんぞ着てられぬな!(本当は暑くないのに徐に服を脱いで紅い露出過多のビキニ姿になり、やざわざフィーナ達が乗っている機体のモニターから見えるように豊満な胸を揺らす)

カオスの囁きに耳を傾け過ぎだろ、アイツら…。
私はカオスを繰り広げるフィーナ達を横目に魔術でマグマを凍結させ、障害物を隕石で吹き飛ばし、あらゆる障害を全魔術を駆使して粉砕し突き進んでゆこう。

鳥はどこかなぁ?
探知魔法で『範囲攻撃』並の広範囲を探索して鳥を探すぞ、ついでに行方不明になってる仲間がいたら…セシルとか…も探すぞ。

※アドリブ大歓迎


天星・雲雀
【PPP】

眼前に広がる秘境を抜けた先に、蘇りし不死の鶏肉が待っています。

オブリビオンに成っても、鶏肉で有り続ける事を選んだ至高のチキンにほかなりません!必ずや、パーティーのメイン食材に据えたいですね。

皆さん、キャバリアで行く感じですか?(自分も絶無を呼ぼうかと思った矢先、空間がひび割れて、絶無の姿が出てくる)
・・・行きましょうか。
(一瞬放置する事も考えたけど、弾ける溶岩が頬を掠めたので乗って行く事にしました)

まずは、鶏肉探しですね!

UC空々落ち葉を、香り立つチキンやターキーを思い浮かべながら自分に掛けます。
技能【火炎耐性】と、いたずらな風で、熱対策は完璧です。

おや?探索目標をセシルさんに変更!


フィーナ・ステラガーデン
【PPP】
じゃあ今回はおもむろに誕生日プレゼントで夜姫から貰ったステラガーガン(アイテム参照デザイン自由)で行くわ!
運転始めてだけど何とかなるわよきっと!(ロボ音痴)
ナビはお願いするわねセシル(同乗してるセシルに呼びかけ)

さあ出発よ!発進ーーー!!(壁に激突する)
さすがステラガーガンね!何とも無いわ!!
あぁん!?あの巨乳何したり顔で見せつけてんの!?
絶対許さないわ!行くわよ!イデアールを追い抜かすわよ!全速前進ー!!
(マグマに潜っては飛び魚のように飛び跳ね壁を破壊し狂ったように前進)
ふがあああ!待ちなさいこの脂肪の塊ぃぃいい!!
ってあら?セシル?セシルー!?
(アレンジアドリブ歓迎)


神代・セシル
【PPP】
ある本を見ている
ヘルマウンテン…生身対応は難しそうですので、フィーナ先輩と同乗で行きます

「ナビゲーションおまかせください、つい先【初心者必見!サバイバルガイド in ヘルマウンテン】の内容を全部覚えましたので、一番楽な路線を導きます」本を閉じる(自信を持つ顔

「なんか変な物がモニターの画面に出てきましたね、無視しまし…待って先輩落ち着いてください、安全一です!!」

大きな衝撃をうけ、椅子と共に何処へ飛んでいた(頭が緊急脱離ボタンにぶつかった)
フィーナ先輩、操縦すること…優しくしてお願いします…

アレンジ・アドリブ歓迎


響・夜姫
【PPP】

「チキンパーティー。ハラショー」
両手鍋を兜の様にかぶり、キャバリア《ダイペンギン》に搭乗。【火炎耐性/環境耐性】でマグマでも平気。
お肉の前では。世界観とか空気を読むとか、そういうのは無力。
ナイフや串、焼き網とかの調理器具も持参。
「んん。カオスすぎ、かも。セシル、アイ。お姉ちゃんのフォローお願い」
邪魔な炎や障害物は、めんちのぶれす【滅びの吐息】で消し飛ばして進む。
「イデアール。そのたゆんは、ちょっとぎるてぃ」
ロックオン。撃たないけど。たぶん。

「ターキーハントのコツは、数羽残しておく事。仲間を呼ぶから、おかわりし放題になる」

ぺっとのぺんぎんとめんちは元気にお供、わには街でお留守番。


アイ・リスパー
【PPP】
「ヘルマウンテンに住む鳥のオブリビオンですか」(じゅるり

冒険者の皆さんの期待に応えるためにも邪悪なオブリビオンをゲット……もとい、倒すとしましょう!

「たとえ、高温の炎が吹き出し溶岩が流れ、雷鳴轟くヘルマウンテンでも、私の頼もしい相棒がいれば大丈夫です!」

【クラインの壺】で電脳空間から『機動戦車オベイロン』を実体化し操縦席に乗り込みます。
炎を突っ切り、溶岩を抜け、落雷に耐えてヘルマウンテンを進んでいきましょう。

「この程度、オベイロンの鋼鉄の装甲ならどうということはありません!
……それに装甲も肉を焼くのに程よい温度になりましたしね!
料理用鉄板の準備は万全です!」

オベイロンAI『えっ!?』



●進撃――出来るかな?
「ほう。ここか。ヘル・マウンテンなんて大層な名前と思ったが、まあまあの熱さだな。地獄と言えなくもない」
 炎が噴き出し、溶岩が流れる。
 この世界の住人達がヘル・マウンテンと名付けた灼熱の火山地帯を、イデアール・モラクス(暴虐の魔女・f04845)が涼し顔で不敵な笑みを浮かべていた。
「これがヘル・マウンテン……」
 対照的に、神代・セシル(夜を日に継ぐ・f28562)は神妙な表情で、道すがら読んでいた【初心者必見! サバイバルガイド in ヘルマウンテン】なる書物を閉じる。
「この奥に、鳥のオブリビオンが住んでいるような事は書いてありました?」
「ないですね。最近、復活してきたのでしょうか」
 アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)の問いに、セシルは小さく首を横に振る。
「そうですか……」
 アイは険しい視線を、目の前の光景に向け――。
「冒険者の皆さんの期待に応えるためにも、美味しい、じゃなくて邪悪なオブリビオンをゲット……もとい、倒すとしましょう!」
 あ、違う。
 アイの向けた険しさは、狩人のそれだ。この環境よりも、その先にいる獲物の方に意識が向けられている。
 その証左に、アイはじゅるりと緩んだ口元を隠しきれていなかった。
 まあ、取り繕おうとしているだけ良いのかもしれない。
「この灼熱の秘境を抜けた先に待つ、蘇りし不死の鶏肉。オブリビオンに成っても、鶏肉で有り続ける事を選んだ至高のチキンにほかなりません!」
 天星・雲雀(妖狐のシャーマン・f27361)は、鶏肉食べたいという気持ちを隠そうとすらしていない。
「チキンパーティー。ハラショー」
 響・夜姫(真夏の星の夢・f11389)に至っては、頭には鍋を頭、左手に焼き網、右手に串とナイフと、これからキャンプでも始めそうな格好である。
「ですが、どう抜けるかですね。生身対応は難しそうですよ」
 ガイドブックを読んでただけあって、セシルはこの環境の危険度を――もしかしたらただ1人だけ――確りと受け止めているようだ。
「大丈夫よ、セシル」
 そんなセシルの背後で、フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)が、にんまりと不敵な笑みを浮かべていた。
「こんな事もあろうかと――準備してきたから。来なさい! ステラガーガン!」
 高らかに告げたフィーナの背後に、炎が立ち昇る。
 紅と黒の混ざりあった、ヘル・マウンテンのそこかしこで噴き出している炎とは、異なる炎。その中から、5mはあろうかと言う人型が現れる。
 その全身は炎の様に紅く、黒い炎模様(フレイムパターン)が描かれた、炎の精霊の加護を受けしフィーナ専用クロムキャバリア。

 ――紅蓮炎嬢・ステラガーガン。

「うん、良い感じよ。夜姫」
「むふー」
 送り主である夜姫に親指立てて、フィーナはコクピットのラダーに足をかける。
「後ろに乗って、セシル。代わりに、ナビはお願いするわね」
「ナビゲーションならお任せください。サバイバルガイドの内容は全て暗記しました」
 フィーナが伸ばした手を取って、セシルはフィーナと共に『ステラガーデン』のコクピットに乗り込んだ。
「お姉ちゃんがステラガーデンに乗るなら、私も。かもん、ダイペンギン」
 夜姫がぱちんっと指を鳴らすと、後ろの空間にやはり5mほどの人型機体が現れた。

 ――南極皇帝ダイペンギン。

 嘴の様なフェイスガードを持つ、夜姫のサイキックキャバリアである。
 後ろの複座には宇宙ペンギンが乗り込み、どらごんのめんちは、『ダイペンギン』の肩にちょこんと乗った。
「なるほど、皆さん、キャバリアで行く感じですか?」
 フィーナ、夜姫と続けてキャバリアを呼び出すのを見て、雲雀は自身もキャバリアを使おうかと逡巡する。
 すると、雲雀の背後の空間が、ひび割れるように裂けた。

 ――魔神・絶無。

「え? 乗れと?」
 なんか勝手に出てきた炎と風と光の力を宿す白いサイキックキャバリアに、雲雀が何故出てきたと首を傾げる。
「それ、乗った方が良いと思いますよー」
 そんな雲雀の横で、アイは掌に小さな黒い渦を生み出した。
「マイクロブラックホール生成完了。空間歪曲率固定。電脳空間アクセスゲート解放」
 そのブラックホールは、アイの電脳空間との出入口になる特異点。

 ――クラインの壺。

「だって片方は『フィーナさんが』操縦するんですよ?」
 アイは電脳空間から出した水陸両用の機動戦車『オベイロン』の中に、そそくさと乗り込んだ。
 その直後である。
『さあ出発よ! 発進ーーー!!』
 威勢のいいフィーナの声が響いて『ステラガーデン』が動き出し――その足先にあった地面の隆起と言う段差に蹴躓いて、溶岩の川にダイブしたのは。
 ザバーンッと飛び散った溶岩の一部が、雲雀の頬を掠め、足元に小さな穴を穿つ。
『先輩、何が起きたんですか?』
『ん? そんなの私にわかるわけないじゃない!』
 聞こえてくるその声が、セシルもフィーナもロボ音痴であると証明している。
「……行きましょうか」
 雲雀は、素直に『絶無』に乗り込んだ。

●魔女がもたらす混沌
「まあフィーナがロボに乗って、何事も起きない筈がないな」
 3機のキャバリアと1機の機動戦車が揃った中、イデアールは生身のまま、フィーナの『ステラガーデン』がコケるのをくつくつと笑って眺めていた。
「どれ、少し本気を見せてやるとするか」
 飛んできた溶岩を、イデアールの眼前で何かに遮られて、落ちる。
 イデアールの周囲は、殆ど透明で薄っすらとだけ見える幾つもの小さなルーン文字による結界で覆われていた。

 魔導覚醒――フルブラスト。

 敵の攻撃を軽減し、浮遊可能となる結界を纏う魔術式。溶岩の熱さを遮る事くらいわけはない。そして、寿命を代償とする術式がそれだけである筈がなかった。
「まずは整地してやろう」
 宙に浮かんだイデアールが、伸ばした人差し指をくいっと地面に向ける。
 ただそれだけで、前触れもなくどこからか飛んできた隕石が、ヘル・マウンテンの一角に直撃した。
 イデアールが指を動かす度に、ドカンドカンッと隕石が飛んでくる。
 隕石招来だろうが無詠唱で連発するという飛んでもない芸当も、魔導覚醒のもう一つの効果である。
 ドカンドカンッと降り注ぐ隕石。
『あ、あの……やめ、やめて……』
 その光景に『ステラガーデン』の中で、セシルが頭を抱えていた。
『イデアール! ストーップ! 止まんなさい!』
「む?」
 フィーナが大声でストップかけた頃には、セシルがガイドブックで覚えた地形は、跡形もなくすっかり変わってしまっていた。

『絶無に乗っておいてよかったです……』
 キャバリアの中で胸をなでおろしながら、雲雀はイデアールがドカンドカンと隕石で鳴らした地形を歩いていく。
『私は走り易くなりましたけどね』
『まあ、こっちもすすみやすい』
 地形が平坦になったおかげで、アイは『オベイロン』で真っすぐ走るのが容易になっているし、夜姫も『ダイペンギン』をスムーズに動かせている。
 だというのに――。
『先輩、そっちじゃありません!? 反対! 左にー』
『大丈夫よ、セシル。ステラガーガンは、この程度何とも無いわ!!』
 フィーナの操る『ステラガーデン』だけは、相変わらず溶岩流にダイブしたり、炎が噴き出す地面を踏み抜いてこけたりしながら、右へ左へ、蛇行しまくっていた。
(「たいきゅうせいマシマシにしておいてよかった」)
 なんともないのは、夜姫のおかげのようだ。
「……」
 その様子を結界の中から眺めていたイデアールは、何を思ったか『ステラガーデン』の前の方に、ふよふよと移動していく。
「ふう」
 そして――そこで、徐に。脱ぎだした。
「あー暑い暑い、これは服なんぞ着てられぬな!」
 結界のおかげで暑さなど感じていないのに、イデアールはわざとらしく言いながら、マント、上着と脱いでいく。
 あっという間に露出過多な紅いビキニ姿になると、イデアールは、豊かな谷間を見せつけるように、これ見よがしに腕を組んだ。
 『ステラガーデン』の前で。
「あぁん!?」
 その光景は、中のフィーナにバッチリ見えていた。
『そこの巨乳! 何したり顔で見せつけてんの!?』
「何のことだ? 暑いから仕方なくだぞ」
 響いたフィーナの声に、イデアールはしれっと返して腕を組み直した。
 たゆん、と揺らして強調するように。
『イデアール。そのたゆんは、ちょっとぎるてぃ』
『撃っちゃっても良いと思いますよーあはは』
 それを眺めていた夜姫が『ダイペンギン』の照準をイデアールに合わせ、アイも『オベイロン』の中から声を上げる。
 3人の脳裏には、いつかどこかで弾け飛んだボタンが浮かんでいたとかいないとか。
「おお怖い。私は先に行くとしよう」
 おどけるように両手を上げたイデアールは、そのまま後ろ向きにすぃーっと空中を滑るように移動していく。
『絶対許さないわ! 行くわよ! イデアールを追い抜かすわよ! 全速前進ー!!』
『ちょ、フィーナ先輩、待っ――』
 興奮したフィーナの声と慌てたセシルの声が響いて、『ステラガーデン』の機体が文字通り、狂ったようにイデアールを追って走り出す。
 ガシャーンッ、ザバーンッ、ドガシャーン!
 相変わらず、滑ったり転んだり溶岩ダイブしたりしながら。
 変わったのは、それでもイデアールの方へ真っすぐ向かい出したと言う事だ。
『ふがあああ! 待ちなさいこの脂肪の塊ぃぃいい!!』
「……ちょっと効き過ぎたか。カオスの囁きに耳を傾け過ぎだろ、アイツ……」
 狙い通りに自分に真っすぐ向かってきてはいるものの、『ステラガーデン』から響いて来るフィーナの絶叫に、イデアールが溜息を零す。
『キャバリア、あんな動きも出来るんですね』
 四つん這いになって走り出した『ステラガーデン』に、『絶無』の中で雲雀が感心したように呟く。
『んん。カオスすぎ、かも。セシル、アイ。お姉ちゃんのフォローお願い』
 夜姫はフィーナの声と『ステラガーデン』の動きに、危機感を感じる。
『フォローと言われましてもぉぉぉ!?』
 そういわれても、セシルは色々と耐えるので精いっぱいだった。
『なんか変な物がモニターの画面に出てきました! 無視しまし……待って先輩落ち着いてください、安全第一です!!』
 あれだけ激しく動き回っている『ステラガーデン』の中が、平穏である筈がない。
「フォローですか……オベイロン、何とかできそうですか?」
 アイは機動戦車のAIに訊ねながら、何故か両手でハンドルを握る。
『離れることを推奨します』
「ですよねー」
 AIの答えは、アイの予想通りだった。
『無理です! たとえ、高温の炎が吹き出し溶岩が流れ、雷鳴轟いても、私の頼もしい相棒は大丈夫ですが、それは無理です! AIがそう判断したので仕方ないのです!』
 車外スピーカーできっぱりと告げて、アイはアクセルを踏み込む。
『きっと追いついてくると信じて、ここは先行してますねー!』
 アイはオベイロンの速度を上げて、走り去っていった。

「自分も行きます。鶏肉探しですね」
 そのすぐ隣に、雲雀が『絶無』を駆って付いてきた。
「櫛の歯が抜けるように、あなたの物語が終わりへと向かう」
 そのコクピットの中で、雲雀が召喚の言葉を唱えた。

 ――空々落ち葉。

 燃ゆる導び木の舞い落ち葉を纏った『絶無』の腕から、進むべき道を示すいたずらな風が真っすぐに放たれる。
『風が吹く方が、進むべき道です。そこに鶏がいる筈です』
『成程。ありがとうございます』
 雲雀の声に返して、アイは再びアクセルを踏み込む。風の吹いた方で丁度噴き出した炎に突っ込んで、そのまま突っ切った。
『あの……少しは炎を避けようとして欲しいのですが』
 運転席に、AIからの抗議の声が響く。
「この程度、オベイロンの鋼鉄の装甲ならどうということはないでしょう? それに装甲も肉を焼くのに程よい温度にしたいですし! 料理用鉄板の準備をしないと!」
『――え?』
 「嘘でしょう?」みたいなAIの声は無視して、アイはアクセル踏み込んで、もう一度炎の中に突っ込んだ。

●自爆装置とセットでなくてよかったね
『複座緊急脱出システム作動』
 イデアールに追いつく。
 それしか頭になくなっていたフィーナには、そんな機械音声なんて、右から左に耳を通り抜けていた。
「んぱい、これとめ――」
「セシル?」
 何か慌てたようなセシルの声が聞こえて、フィーナはやっと後ろを振り向く。
 そこにいた筈のセシルの姿が、なかった。
「あら? セシル? セシルー!?」
 あちこち弄っていた手を止めて、フィーナが周囲を見回す。足元もどこを見ても、セシルの姿はコクピットには見当たらなかった。
『ねえ、お姉ちゃん。セシルを緊急脱出させたけど、なにがおきたの?』
『緊急脱出? 夜姫、何それ?』
 そこに入った夜姫からの通信に、フィーナが目を丸くした。

 縦に横に揺られる『ステラガーデン』の中で、何とかフィーナを落ち着かせようと座席から乗り出したのがいけなかった。
 がくんと揺れた機体にセシルの身体が跳ねて、頭が何かにぶつかる。
 その時――セシルは押してはいけないスイッチに触れてしまったようだ。
『複座緊急脱出システム作動』
 そんな機械音声が聞こえた直後、セシルの身体に猛烈な負荷がかかって、気が付いた時には座席ごと射出されていた。
「読む本を、間違えましたね」
 自分がどんどん上昇していくのを感じながら、セシルはぽつりと呟く。
「ガイドマップじゃなくてステラガーデンのマニュアルを読んでおくべきでした」
 あるなら読んでおこう。ないなら、作ってもらおう。
 そう思いながらシートベルトを外して、セシルはずぼっと雷雲の中に突っ込んだ。
「これは、まずいですね」
 見渡す限り黒い雲が広がっていて、ゴロゴロと雷鳴の前触れが鳴り響いている。
 間近で起きた雷が、セシルの視界を白く染める。
 だが予想した衝撃は、襲ってこなかった。
「間に合ったな」
 探知魔法でセシルの位置を特定したイデアールが、結界で雷を遮っていた。
「……鳥がいるのは向こうだな。このまま行くぞ?」
「は、はい」
 イデアールは回収したセシルを抱えると、そのまま先行したアイと雲雀の方へと飛んで行った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

遠吠・狛
【桔梗】

おいしそうな敵、ちがう。おそろしい敵だねえ!
でぃあにゃんとかなぴょん一緒にがんばろ!肉!

気を付けないと地獄の山の炎で、こっちが炙り焼かれて調理されちゃいそうだねえ。

わたしは水先案内人をするよ。【野生の勘】を働かせ、迫りくる危険を本能で察知して安全な道を選んで進んでいくね。ペースはディアナと叶と合わせつつって感じ。
例えば高温の炎が噴き出す所は避けて道を変えて、溶岩の川は跳び越えるなりこちらも道を変えるなり。落雷は自分は寸ででかわして、仲間に落雷が行きそうなら止まって!とか横に避けて!とか声掛けするよ。
それでも危険が全部回避できるわけじゃないから、仲間の助けも借りつつだね。

アドリブ歓迎!


ディアナ・ロドクルーン
【桔梗】
荒れ狂う大地の向こうに私たちが目指すモノがある
―― 肉。
スパイシーでぱりっとした衣、柔らかくジューシーな肉が最高の…(考えただけでゴクリと喉を鳴らすのであった)

かなぴょん、こまたん、楽しい忘年会の為に頑張りましょうね!
なんかすっごい所だけど私たちが力を合わせたら乗り越えられるわ

ほら、かなぴょんという肉の壁(物理)があるから
何かあっても大丈夫と私信じている!(曇りのない眼を向け

場所が場所なので、熱に強い靴を人数分用意
火傷して歩けなくなったら大変

【足場習熟】で足元が崩れないか注意を払いながら狛さんの後ろをついていく
流石に熱いところだし水分補給も忘れずに
火傷とか負ってもUCで治すから安心して


白霧・叶
『桔梗』
なあ、二人ともその呼び方やめないか?ほら、周りの人もみてる気がするんだが…いやなんでもない。頑張ろうか、こまたん、ディアにゃん、…はずいわ!

さてさて、取り合えずご馳走の前に運動と行こうぜ? どんなにウマイものでもお腹を空かせておかないと美味しく食べれないし丁度いいな……って随分熱いところだな。ほんとにここいくのか…?ってまてディアにゃん、そんな瞳で俺を見つめるんじゃねぇ!?

こまたん、ディアにゃんに遅れないように付いていかないとな。【団体行動】でなるべくはぐれないようにしつつお互い、危ないところは声を掛け合っていこう。 待ってろよ肉め! こんなとこ通らせやがって腹一杯食ってやるからなぁ!



●かなぴょんのぴょんはどこからきているのだろう
 ヘル・マウンテン。
 地獄の名を冠し、冒険者でもおいそれとは立ち入ろうとしない場所へ、猟兵達が次々と踏み込んでいく。
「かなぴょん、こまたん。美味しい肉と楽しい忘年会の為に頑張りましょうね!」
「でぃあにゃんとかなぴょん! 一緒にがんばろ! 肉!」
 そんな中、ディアナ・ロドクルーン(天満月の訃言師・f01023)と遠吠・狛(野生の狛犬・f28522)は、笑顔で顔を見合わせていた。
 2人とも、目の前の自然の驚異よりもその先のお肉の方が楽しみなのだ。
「なあ、二人とも……」
 そんなディアナと狛に、白霧・叶(潤色・f30497)が声をかける。
 その表情に2人の様な笑みはなく、真顔で何か言おうとしている。
 叶は違う世界では、軍人の職に在る者だ。
 並みの戦場よりも険しいヘル・マウンテンの光景に、叶の軍人として身体に染みついたものが何かの危険を感じ取っているのでは――。
「その呼び方やめないか?」
 と言うような事ではなく、叶が気にしていたのは2人が口にした『かなぴょん』と言う呼び名だった。
「どうしたの、かなぴょん」
「かなぴょん、かわいいじゃない?」
「だからだよ……」
 首を傾げた狛とディアナに、叶が小さくため息を零す。
 軍でそんな風にかわいい呼び名が付くなんて、ある筈もない。ましてや叶の場合、その出世に対する妬みから、軍はあまり居心地の良い場所とは言えないのだから。
「いやだって言うんじゃないけど、なんだかむず痒いと言うか……」
 そんな叶の反応に、狛とディアナは再び顔を見合わせて――。
「「かなぴょん」」
「だからはずいわ!」
 声を揃えてきた2人に、叶が声を張り上げる。
「それにほら、周りの人も見てる気がす――あれ?」
 そう言って周りを示した叶の動きが、止まった。
 さっきまで、周りには他の猟兵が何人かいた筈だが、いない。皆、それぞれの手段で炎や溶岩に対抗しながら、既にヘル・マウンテンを進んでいっている。
「い、いやなんでもない。 頑張ろうか、こまたん、ディアにゃん」
 説得を諦めて、叶は目の前の景色に視線を戻した。

●肉のために
「気を取り直して――随分熱いところだけど、どう進む?」
「気を付けないと山の炎で、こっちが炙り焼かれて調理されちゃいそうだねえ」
 かなぴょんを受け入れた叶が指で示した先を見て、狛がほぅと溜息を零す。
 炎が噴き出し、ドロリとした溶岩が流れるヘル・マウンテン。油断すれば、猟兵とてただでは済まない。
「大丈夫よ。なんかすっごい所だけど私たちが力を合わせたら乗り越えられるわ」
 思案する2人に、ディアナは自信あり気な表情を向けた。
「まず、私たちは歩いていくわ。その為の靴も用意したでしょ?」
 3人が履いているのは、ディアナが用意した熱に強い靴である。靴底に耐熱素材を使っているらしく、多少の炎なら踏んでも耐えらえるだろう。
「歩くなら、わたし水先案内人するよ! 危ないのは、本能で察知できると思う!」
「そうね。こまたんには、先頭をお願いしたいわ」
「ああ。こまたんが適任だろう」
 自ら先頭を買って出た狛の言葉に、ディアナも叶も頷く。
 狛の野生の勘の鋭さは、ディアナも叶も知っている所だ。
「察知出来ても、全部回避できるわけじゃないけれど……」
「足元は私も察知できる筈よ。だから、こまたんは周りとか、空からの雷に注意しておいて欲しいの」
「ん、わかった!」
 ディアナの言葉に、狛は再び、こくんと頷いた。
「そうすると、俺は殿か」
「かなぴょんは、真ん中で」
 自分の役割を確かめる叶に、ディアナが迷わず告げる。
「真ん中? いいけど、なんで――」
「かなぴょんには、ほら。肉の壁(物理)っていう役割があるから」
 首を傾げた叶に、ディアナがイイ笑顔で告げた。
 歯に衣を着せぬというのは、まさにこう言う事だ。
「かなぴょんなら何かあっても大丈夫と、私信じている!」
「待てディアにゃん、そんな瞳で俺を見つめるんじゃねぇ!?」
 ディアナは曇りのない瞳でじっと視線を叶に向けるて来るが、かなぴょんを受け入れられても、これは流石に頷けない。
「火傷とか負っても、ちゃんと治すから安心して? 水も付けるわ?」
「安心できねぇよ!?」
 小首を傾げて続けるディアナに、叶が返す。
「……かなぴょん」
 ならばと、ディアナは攻め方を変えた。
「荒れ狂う大地の向こうに私たちが目指すモノがあるのよ」
 静かに腕を掲げ、指先を向ける。
 これから踏み入る、ヘル・マウンテンへ。
「――肉が」
 美味しいお肉食べたいという意思を込めて。
「スパイシーでぱりっとした衣、柔らかくジューシーな肉が最高の……」
「おいしそうな敵、ちがう。おそろしい敵だねえ!」
 考えただけでゴクリと喉を鳴らすディアナに釣られて、狛も口元がじゅるりと緩む。
「ここでもたもたしてたら、私達の食べる肉が減ってしまうかもしれないのよ」
「おいしそうな敵の肉、たくさん食べたい」
 ディアナは叶の目を見て静かに続け、狛はもの欲しそうに叶を見上げる。
 そして――。
「そうだな。肉は食べたい。そして、ご馳走の前に運動は必要だ」
 お肉食べたいのは、叶だって同じだった。
「どんなにウマイものでも、お腹を空かせておかないと美味しく食べれないからな」
 運動のあとのご飯は美味しいと、知っている。
 空腹は最高の調味料だ。
「よし、行くか! こまたん、ディアにゃんに遅れないように付いて行くぞ」
 叶の目から、迷いが消えた。

「ディアにゃん、かなぴょん。雷がきそう!」
「地面からも来るわよ、炎」
 狛が空を見て警戒を促す声を上げると同時に、ディアナは足元からの脅威の気配を感じて警戒を促す。
「雷は……そこの背の高い岩に落ちそうだな。離れた方がよさそうだ。こまたん、前を流れてる溶岩は飛び越えられそうか」
「大丈夫!」
 叶の問いに応えて走り出した狛を追って、2人もついて行く。
 道なき道の中から、狛が安全と思われるルートを勘で探り出し、ディアナが足場として使えるかを足で確かめる。
「熱い石、降って来るよー!」
「お願いね、かなぴょん」
「だからそんな瞳で見つめるのは、やめろって!」
 ディアナのみならず狛までする様になった期待に満ちた視線を浴びながら、叶は空から降ってくる溶岩の破片や炎を退魔刀で叩き落す。

 ――叶には箒やキャバリアに乗るという方法も取れた筈だ。
 自分ひとりだけ、此処を通れれば良いのなら、それでもよかった筈だ。
 叶がそんな考えを思い付いていたのかどうかは、彼しか分からない。だが思いついていたとしても、叶は一言も言わなかった。
「待ってろよ肉め! こんなとこ通らせやがって。腹一杯食ってやるからなぁ!」
 環境に文句を言ったり、そんな目で見るなとは言っても――壁役をする事に、仲間を守る事に躊躇いはなかった。
 そんな叶だから、ディアナも狛も、そんな役目を任せたのかもしれない。
 ともあれ、桔梗の3人は力を合わせて、ヘル・マウンテンを確実に攻略していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルーファ・カタラ
※アドリブ、他者との絡み等OK
※カオス上等なので好きに動かしてください

チキン食べ放題!って聞いてきたのに
まさかの現地調達とは…!!

ヘルだかヘブンだか知らないけど超暑ーい!
苦労した分だけご飯が美味しく感じるから頑張ろう…

目的地に着くまでの障害はサイコキネシスや聖刃を使って遠くから早めに対応するよ
溶岩で通れないなら近くの岩とか壊して持ってきて足場にしてみようかな
暑いのは気合いでガマンするしかない…

あー働いたらお腹すいてきた…
こんな時は持ってきたお弁当(骨付き肉)を食べようかな!
働いたあとのご飯は超美味しいよね
道もよくわかんないし迷子にならないようにしないとだね

このあとのチキン食べ放題も楽しみだなぁ


本・三六
アドリブ歓迎

火山で悪さをする鳥を?
楽しそうだね。ボクも一枚、噛ませてもらおうか
依頼主もそんなの相手じゃあ
悩まされたろうね。油の匂いがする?へえ……?

地獄の山……これが
(初めての世界だ、没頭して探検を真剣に楽しむよ)
こんな所にいるんじゃ、ホントにすごい鳥かもしれないね

おっと危ない
ああ、対策はしているよ。ほら、ボク便利な体だからさ。
【ハイカラさんは止まらない】をね?
はは、炎が眩しいからわかりにくいね。
でもこれ制御が難しいんだよ、戦ってる最中は無理かな
周りをよく観察して、危ない岩場の特徴なんかを
覚えながら行こう。
足場に気をつけて、礫なんかは『鉄芥』や咄嗟の一撃で対応だね

不死鳥か、ご利益ありそうだなあ



●何もしないと言う事
 ドーンッ!
「おおー!」
 爆発にも似た轟音を立てて、地面が裂けて炎が噴き出す。それを見た本・三六(ぐーたらオーナー・f26725)の口から、感嘆の声が上がっていた。
「これがマグマか……肉焼いたら焦げそ」
 流れるマグマも、三六は興味深げに見やり。
「わぉ、凄い走った!」
 空を覆う黒雲の間を迸る雷光に、目を輝かせる。
「これが地獄の山……ヘル・マウンテンか」
 ここが、現地の冒険者が地獄と呼ぶ、そういう場所だと認識している。
「こんな所にいるんじゃ、ホントにすごい鳥かもしれないね。依頼主もそんなの相手じゃあ、悩まされたろうね」
 此処を通って行ったという敵が油断できない存在だというのも、認識している。
 そう認識していて、三六は物見遊山と言うか、観光を楽しんでいるように見えた。
 三六本人にそう訊けば、探検を真剣に楽しんでいるんだよ、答えただろう。

 ドーンッ!

「おっと」
 突然足元から噴き出した炎が、三六の姿を飲み込む。
「ふぅ。危なかった」
 しかし炎が収まると、三六はケロリとしてそこに立っていた。服の袖すら燃えず、頬に煤の一つもついていない。
 まるで炎など浴びてもいないかのように。
 実際、炎は三六の身体に届いてすらいなかった。

 それが――三六が物見遊山をしていたように見えた理由。
 楽しむ事が三六がこのヘル・マウンテンを抜ける為の手段なのだ。
 三六はハイカラさんだから。
 周り中に高温の炎やマグマがあり、その熱による輝きがあるせいで判りにくいが、今の三六の後ろでは、後光が激しく輝いている。
 その輝きがある限り、三六は誰にも害されない。
 どんなに高温の炎だろうが、今の三六には届かない。
 ただし、非戦闘行為に没頭していなければ、その後光を維持する事は出来ない。
 例えば三六よりも大きな岩が転がってきても、砕こうとは出来ない。
 だから三六は、精神を戦闘に近い状態から遠ざけるための手段として、『探検を真剣に楽しむ』と言う事を選んだのだ。
(「――まあ、初めての世界を楽しみたいというのも、若干あるけれどね」)
 三六が胸中で呟いた、その時。

 ぐぅぅぅぅっ。

 誰かの腹の虫の音が聞こえてきた。

●食べ放題の為に開くお弁当の箱
 時間は少し遡る。

 ドーンッ!
 ヘル・マウンテンのそこかしこでなり続けている、炎が爆ぜて噴き出す音が、ルーファ・カタラ(神のフォースナイト・f18662)の耳にも届いていた。
「またかぁ……ええと、あ、あれだ」
 視線を巡らせたルーファは、左後方に噴き出した炎を見つける。
 距離はあるので、放っておいても大きな問題はなかろう。ただ――
「やっぱりまた来た!」
 炎が一緒に巻き上げた、炎で赤くなるまで熱せられた岩が飛んでくることはある。
 それに気づいたルーファは、片手を掲げて迫る赤岩の方に掌を向けた。
 ぴたり、と赤岩が空中で静止する。

 サイコキネシス。

 目に見えないルーファのサイキックエナジーが、そこに大きな手がある様に、赤岩を空中で受け止めていた。
 そのまま、適当なところに放り捨てる。
「あーつーいー」
 無事に赤岩をやり過ごし、ルーファが気の抜けた声を上げる。
「ヘルだかヘブンだか知らないけど超暑ーい!」
 噴き出した炎を抑えたり、飛ばされてきた岩を止める術はあっても、この凄まじい暑さをどうにかする術は、ルーファは持っていなかった。
 だから、気合いで暑さを耐え続けるしかないだ。
 体力的には、まだまだ耐えられる。
 けれども、気力はそうはいかない。
 その最たる原因が――。

「あー働いたらお腹すいてきた……」

 悲し気なルーファの呟きの直後に、きゅるるっと腹の虫も主張した空腹だ。
 腹が減っては戦は出来ぬという言葉もある。
 空腹は、気力を減衰させる。
「チキン食べ放題!って聞いてきたのにまさかの現地調達とは……!!」
 ここに来れば鶏肉食べ放題、と思っていたルーファの、ちょっとした思い違いも空腹を助長させていたかもしれない。
「でも、頑張ろう……苦労した分だけご飯が美味しく感じるから……」
 運動の後のご飯は、なぜか少し美味しく感じる。
 それを知っているから、ルーファは我慢して――。
 きゅるるるっ。
「我慢、我慢。働いた後のご飯は超美味しいんだから」
 我慢して――。
 くきゅるるるっ。
 我慢――。
 ぐぅぅぅぅっ。
「無理!」
 空腹には、敵わなかった。
「こんな時は持ってきたお弁当を食べよう!」
 ルーファは骨付き肉を取り出すと、笑顔でそれに噛り付――。
「ん?」
 噛り付いた時、ルーファは視線を感じた。

●利害の一致
(「……めっちゃ食べてる……」)
 三六は、肉を食べるなんて、まさに非戦闘行為をしているルーファに気づいた。
(「なんか光ってる……」)
 ルーファは、降ってくる瓦礫を浴びても平然としている三六に気づいた。
「それ、持ってきたの?」
「お肉? うん、お弁当。良く考えたら、道もよくわかんないし、どこまで行けばいいのかもわかんないし。空腹で迷子にならないようにしないとって思って」
 がぶりと骨付き肉を齧るルーファの前で、赤熱した瓦礫が、三六に当たる寸前、その後光に遮られてコツンと落ちる。
「その光、すごいね」
「ああ、うん。でもこれ制御が難しいんだよ、戦ってる最中は無理だから、観光気分で歩いていたんだ」
 ルーファの言葉に、三六はひとつ頷いて――さらに言葉を続ける。
「食べ歩きって言う手もあったね。思いつかなかったよ」
「……一緒にゴール探してくれるなら、お肉少しあげようか? まだあるし」
 非戦闘状態の精神状態を維持したい三六と、ひとりで探索することにそろそろ疲れていたルーファの利害が、此処に一致した。

「この後のチキン食べ放題も楽しみだなぁ」
「不死鳥か、ご利益ありそうだなあ」
 険しい岩場も噴き出す炎もなんのその。
 たまたま道行に出会ったルーファと三六の食べ歩きは、ケキリキターキーのものらしい喧しい鳥の声が聞こえてくるまで続いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

空目・キサラ
藍々君(f16744)と
全く、仮に藍々君が敵対者だったら薬は盛れそうにないなぁ…
まー、声だけでなく薬の匂いでも僕という個人を認識できているのならいいのかな

それよりもターキーがチキン背負ってくるなんて、鴨ネギどころか一石何鳥になるんだろうね?
…んー。藍々君よ、なんで動こうとしてくれないのかな?

いや確かに暑いのだが…こんなに暑いと、連れ去られた鳥達はもしかしたら焼き鳥どころか丸焦げになっているのではなかろうか

そうだね藍々君。ぼんじり食べられるね。獲り放題だね
それにオブリビオンだから乱獲しても誰も怒らないね
(ターキーの方は丸焦げになっていないと思うけど…藍々くんも扱いやすいなぁ…)


黎・飛藍
キサラ(f22432)と
新しく薬を増やしたな。前のと違う匂いが増えた
…昔色々あって、薬品の匂いには特に過敏になってるだけだ

ターキーだろうとチキンだろうと、鶏肉なことには変わりないだろう
けれど暑い。動いたら余計暑くなりそうだから、キサラだけで鶏肉狩りに行って来てくれ

…丸焦げは困る。食べられる肉が減るのは困る(オブリビオンも連れ去られた鶏も等しく鶏肉扱い)
肉は火を通せば美味くなるが、火を通し過ぎるとダメになる。焦げたら元に戻らないし、不味い

そういえば鶏肉ということは、ぼんじりが食えるということでいいんだろうか
ならば走るしか無い。ぼんじりの為に。こんな所に長居は無用だ



●単純にして、多分地元の人が聞いたら正気を疑いそうな手段
「薬変えた――いや、新しく増やしたな」
 顔を合わせるなり開口一番。黎・飛藍(視界はまだらに世界を映す・f16744)が告げた一言に、空目・キサラ(時雨夜想・f22432)が目を丸くした。
「……真逆、わかるのかい?」
「ああ。前のと違う匂いが増えた」
 キサラが問い返せば、飛藍はもう迷わずに頷き告げる。
 その通りだった。
「全く、仮に藍々君が敵対者だったら薬は盛れそうにないなぁ……」
「……昔色々あって、薬品の匂いには特に過敏になってるだけだ」
 敵わないとぼやくキサラに、飛藍は面白くなさそうに返す。
 実験を受け続けた過去なんて、飛藍には思い出したくもないものだ。だが、他人の顔が判別がうまく出来ないという影響が、今でも付きまとう。
「まー、そんな表情をするなよ、藍々君。声だけでなく薬の匂いでも僕という個人を認識できているなら、いいのではないかな」
 飛藍の顔を見たキサラが、努めて明るい声で告げた。
「そういうものか?」
「僕にとってはね。間違えて切られたりせずに済むだろう?」
 首を傾げる飛藍に、キサラは冗談めかした口調で返す。

「それよりもターキーがチキン背負ってくるなんて、鴨ネギどころか一石何鳥になるんだろうね?」
「ターキーだろうとチキンだろうと、鶏肉なことには変わりないだろう」
 キサラが話題を変えると、飛藍から身も蓋もない言葉が返ってきた。
「食えるなら、等しく鶏肉だ」
「……そうだね。鶏肉だね」
 キサラも敢えてそこを訂正しようともせず、飛藍の言葉に首肯して歩き出す。
「さて。鶏肉取りに行こうじゃないか――なんてね」
 1歩、2歩、3歩、4――。
「……」
 5歩歩いても足音が自分のしか聞こえず、キサラは足を止めて振り向く。そこには、一歩も動いていない飛藍の姿があった。
「……んー。藍々君よ、なんで動こうとしてくれないのかな?」
 振り向いた態勢のまま、キサラが動かない飛藍に訊ねる。

「暑い」

 めちゃくちゃ端的な答えが、飛藍の口から出てきた。
「いや確かに暑いのだけどね……? そういう場所だからね?」
「動いたら余計暑くなりそうだから、キサラだけで鶏肉狩りに行って来てくれ」
 何を言い出すんだ――と言いたげなキサラの表情は見えていないものだから、飛藍は悪びれることなくさらりと告げる。
(「ふむ――……どう動かしたものかな」)
 キサラとて、一人で行く気など毛頭ない。
(「藍々君は食べる気はある。けれども、自分が動かずとも食べられるなら、それでいいと思っている。ならば、動かなければ食べられない状況にしてやればいいかな」)
 何とか飛藍を動く気にさせようと、探偵として培った頭脳をフル回転させて、ひとつの答えを導き出した。
「こんなに熱いと、連れ去られた鳥達はもしかしたら焼き鳥どころか丸焦げになっているのではなかろうかな?」
「何?」
 キサラの言葉を聞いた飛藍の眉が、ぴくりと動いた。
「……丸焦げは困る。食べられる肉が減るのは困る」
 まるで食べられる肉しかないような物言いである。飛藍の中では、オブリビオンも連れ去られた鶏も鶏肉としてしか考えていなかった。
「肉は火を通せば美味くなるが、火を通し過ぎるとダメになるぞ。焦げたら元に戻らないし、不味い」
 一体、何が飛藍をここまで鶏肉に駆り立てるのか。
(「気になるけど、今は利用させて貰おう」)
「藍々君。僕一人では丸焦げの不味い鶏肉しか取れないかもしれないぞ?」
「それは良くないな」
 キサラの思惑通り、鶏肉をだしにすれば飛藍はあっさり頷いた。
(「少なくともケキリキターキーの方は丸焦げになっていないと思うけど……藍々くんも扱いやすいなぁ……」)
 胸中で呟くキサラの前で、その評価は、やや早計だったかもしれない。
「ん? 鶏肉ということは、ぼんじりが食えるということでいいんだろうか」
 立ち上がった飛藍が、ぼんじりに並々ならぬ食い気を見せたからだ。
「そうだね藍々君。ぼんじり食べられるね」
 またぼんじりか、と思いながら、キサラは続ける。
「しかも獲り放題だよ。オブリビオンだから乱獲しても誰も怒らないね」
「そうか」
 キサラの言葉を聞いた飛藍は、短く頷くなりその場から駆け出した。
「お、おい。藍々君。真逆そのまま走って行く気かい?」
「無論だ。ぼんじりの為ならば、走るしかない」
 慌てて追いかけるキサラに、飛藍は走る速度を緩めずに告げる。
「何か策を――」
「そんなものはない」
 考えよう、とキサラが言いかけたのを遮って、飛藍は走り続ける。
 ついさっき『暑いから』と言う理由で一歩も動こうとしなかった男と、同一人物だとはとても思えない走りっぷりである。
(「ぼんじり一つでこうも変わるか……人の欲とは凄まじいものだね」)
 胸中で感嘆しながら、キサラも覚悟を決める。
「時間をかければ、ぼんじりが焼けて不味くなる。こんな所に長居は無用だ」
「そうだね。ぼんじりの為だね」
 ぼんじり目指して駆ける飛藍の後を、ついて行こうと。
 こうなった以上、飛藍の熱が冷めないように焚き付けながら、素早く駆け抜けるしかなさそうだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木元・祭莉
【かんにき】で!

忘年会付き遠足なんだって!
張り切って行っちゃうよー♪(ぴょんぴょん)

おいら、空中浮遊でふよふよ行こうっと。
あ、何か飛んできたり落ちてきたりしたら嫌だし、護衛を呼んでおくね。

ぴよこ、ひなこ、まっきー、かもーん♪
(人間サイズの青銅・黄金・白銀のぴかぴかロボたちが登場)
みんながケガしないように守ってね?

ついでに、歌いながら行こう♪
ぴょんぴょん跳ねながら、進もう♪
(るんるん、ぴよぴよ、ひなひな、がうがう 騒がしい)

何かあったら、大声で呼んでね?
ぴょいって飛んで行くから。
こんな風にね?(仲間の傍にひょこひょこと瞬間移動)

キャバリアもいいよねー。(肩にひょこっと)
でも、鳥型はぴよこで十分!


ガーネット・グレイローズ
【かんにき】
さて、ここがモンスターの生息地か。
まずはこのヘルマウンテンを踏破しなければ。マグマが通行の妨げになっているのか。よし!
キャバリアを起動!「夜の女王」が灼熱の大地に聳え立つ。
そしてレーザー兵器『PSDホーネット』を射出し、《属性攻撃》の冷凍光線を放ってマグマを凍らせていこう。ある程度冷え固まったら、徒歩でなんとか通行できるはずだ。大きな岩の塊は『JOXブレイド』で斬って破壊していこう。
溶岩だけじゃなく、硫化水素のような有毒ガスにも注意しなくては。
シリン、真琴。何か変な匂いはしないか?
そういえば双子たちは何をしているんだろう(ちらっ)うん。あっちはあっちでなかなかカオスだな…(苦笑)


木元・杏
【かんにき】
食べ放題につられてやって来たでは無い、決して
ターキーは美味し…手強い相手。皆、頑張ろう
熱い大地を見据え、ぐっと気合いをいれる
そう、終わった後の食べ放題を思えば熱さもまた涼し>環境耐性
ところで皆、ターキーはいかほど召し上がる?(そわそわ

ごつごつした地形を利用し、岩をジャンプで跳び進んでいく
足場を確保すれば進むのも早くなるやも

ん、うさみん☆もぴよこ達に混ざりたい?
ならメイドさんズも引き連れいってらっしゃい?
進路の岩をどかして地をならしていってね
巨石はわたしが怪力でぽーい

ガーネットの夜の女王様!(かっこいい、と、目をきらきら)
まつりん、帰ったらわたし達もたまこ(飼い鶏)のキャバリア作ろう


琶咲・真琴
【かんにき】
わわっ、被害に遭った人は大変でしたね
現地の人も尻込みするぐらいに大変な場所みたいです

ボクの故郷でも火山があるところは
噴火などで大騒ぎになりますし
準備はしっかりしないとですね(耐性技能活用

というわけで
詠唱系技能フル稼働でUC使用
キンキンに冷えた無色水性の水及び氷弾と有毒ガスや熱気を吹き飛ばす風の弾を交互に撃ちながら
涼をとって進みましょう
……気休めかもしれないけど(ボソリ

偵察は白鷹(氣鷹翔駆)にお願いして
杏姉さんやまつりん兄さんのサポート

念動力ですぐにカバーできるようにします

あ、ガーネットさん
進路確保でガスは吹き飛ばしてますが
油断はできないですね

シリンさんの方は大丈夫です?


アドリブ歓迎


シリン・カービン
【かんにき】

「鳥撃ちは得意です」
どんな獲物も好き嫌いなく狩りますが。
狩場につくまでには、出来るだけ消耗を避けたいところ。
皆も色々考えてはいるようですが、私も一つ手を打ちます。

【Shape of Memory】で灼熱の地を氷雪の平原に変化させます。
周囲の熱波も私たちに届くころには和らいでいるでしょう。
風の精霊にも呼びかけ、有毒ガスを感じたら吹き散らしてもらいます。
真琴の力も助かりますね。

「これがキャバリア…」
まだクロムキャバリアの地を踏んだことのない私には、
鋼鉄の巨人は初邂逅。新たな力を興味深く眺めます。
…ガーネット、ノッてますね。

双子が迷子にならぬよう、誘導も忘れずに。
お楽しみはこれからです。



●心頭滅却――出来てない
「わーお……」
 炎噴き出し溶岩流れる光景に、さしもの木元・祭莉(まつりんではない別の何か・f16554)も思わず足が止まっていた。
「こんなところにも、モンスターの生息地があったのか」
 ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)の口からも、驚嘆の呟きがこぼれる。
 目の前のヘル・マウンテンの険しさもさることながら、例えオブリビオンと言えども、ここに住む存在がいる事に、ガーネットは驚きを感じていた。
「モンスターと言うものは、どんな環境でもいるものですが……ここは相当ですね」
 シリン・カービン(緑の狩り人・f04146)も、伝わる熱に眉をしかめている。
「これなら、現地の人も尻込みするのもわかります。大変な場所ですね」
 琶咲・真琴(今は幼き力の継承者・f08611)も表情を引き締める。
 真琴の故郷にも、火山がある地域と言うものはあった。
 噴火などで大騒ぎになるのも、知っている。
 だからこそ、此処に入るのに準備が必要だというのもわかるし――。
「こんな所を往復する敵がいるというのなら、現地の人の手に負えないのも頷けます。被害にあった人は、大変でしたね……」
 チキン持った鳥に襲われるという非常識を想像し、真琴は小さく溜息を吐く。
「そう。ターキーは美味し……手強い相手。炎よりも手強い」
 そんな真琴に、木元・杏(きゅぴん。・f16565)がきりりとした顔で頷いた。
「強敵を倒しに来たの。食べ放題につられてやって来たのでは無い、決して」
「安心してください、杏」
(「つられたんですね……」)
 胸中で呟きながら、シリンが杏に静かに告げる。
「鳥撃ちは得意ですから」
 背中の銃の端に触れながら告げるシリンの言葉には、自信が籠っていた。
 シリンは森から糧を得る守り人で、まだ弓を得物にしていた頃から、どんな獲物も好き嫌いなく狩ってきた。その中でも、鳥は良く狩ったと思う。
 鳥は小さく、速く、空も飛ぶが――大型の獣に比べれば、反撃を受ける事も少ないという意味で、安全に狩り易いのだ。
「とは言え、狩場に着くまでは、出来るだけ消耗を避けたいところですね」
「それなら大丈夫」
 炎が広がる光景に視線を戻そうとしたシリンに、杏がきっぱりと告げた。
「この程度の熱さなら、終わった後の食べ放題を思えば熱さもまた涼し」
 仲間を見回し、杏は小さなぐっと握り締める。
 心頭滅却すれば火もまた涼し――と言う言葉がある。
 どんな苦境も、心の持ちようで苦境ではなくなるという意味合いだ。心頭滅却とは、心を消し去った、つまり無念無想の境地の事だとされているが。
 食べ放題を思ってと言うのは、無念無想の対極ではなかろうか。
「杏姉さん、それは流石に……」
「出来るよ?」
 無茶では、と言いかけた真琴に、杏が首を横に振る。
「さっき、ぼんじりぼんじりって言いながら走って行った人がいたよ?」
 確かにいた。
 ほとんど入れ違いに駆け出して行ったけど。

●夜の女王と守護神
 真琴が杏に絶句させられている頃。
「噴き出す炎にマグマ、雷も危ない……よし!」
 ガーネットは、自分の取る手段を決めていた。

「来い――夜の女王!」

 ガーネットの背後に光が立ち昇り、光の中に大きな影が現れる。
 その影は、膝をついた態勢の金属の人型――キャバリアであった。
 そのコクピットにガーネットが乗り込むと、黒と赤を基調とした、ややスリムなデザインのキャバリア――ブラッドギア『夜の女王』が、灼熱の大地に立ち上がる。
 ヘル・マウンテンにキャバリア。
 それがガーネットの出した答えだ。

「これがキャバリア……」
 現れた『夜の女王』を、シリンが驚いた顔で見上げていた。
 キャバリアと言う鋼鉄の巨人の存在は、耳にはしていた。
 だが、まだクロムキャバリアの地を訪れたことがないシリンにとって、『夜の女王』が初めて見るキャバリアだったのだ。
「なるほど、ゴーレムとも違うのですね。これは興味深いですね」
「ガーネットの夜の女王様! ――かっこいい!」
 杏が目をきらきらさせて、その雄姿を見上げる。
「キャバリアもいいよねー」
 いつの間に上ったのか、祭莉は『夜の女王』の肩の上から顔を出した。
「まつりん、帰ったらわたし達もたまこのキャバリア作ろう?」
 祭莉を見上げて、杏が目をきらきらさせたまま、そんなことを言い出す。
「ええ……メカタマコは、いっぱいいるじゃないですか」
 まだ増やすんですか、と真琴はいつかの船の引き上げのメカタマコ海から大行進を思い出しながら、口を挟んだ。
「でも、鳥型はぴよこもいるし、十分! ――あ」
 そのやり取りで、祭莉は思い出した。
 そうだ。あの3体がいるじゃないかと。
『まつりん、動くから降りてくれ。危ないぞ』
「はーい」
 祭莉はガーネットの声に促され、『夜の女王』の肩から、ぴょんと飛び降りて――着地の前に、ふわりと空中に留まる。
「おいら、空中浮遊でふよふよ行こうっと」
 キャバリアの肩に乗っている間、足元が熱くなかった事に気づいた祭莉は、歩くという行為を諦めた。
 さらに、思い出したお供を、祭莉は喚び出す。
「火山だと、何か飛んで来たり落ちてきたりもするかもしれないから、護衛を呼んでおこっと。ぴよこ、ひなこ、まっきー、かもーん♪」

 イツデモ・ドコニデモ――守護神来臨。
 青銅の雌鶏ロボ、黄金の向日葵ロボ、白銀の狼ロボ。良く磨かれたように外装がピカピカ輝いている3体のロボが、祭莉の周囲に現れた。
「みんながケガしないように守ってね?」
 祭莉の言葉に、雌鶏と狼ロボがこくんと頷き、向日葵ロボがくねくね動く。
 準備は整った。多分。

●水剋火、転じて氷
「この世を彩りしものよ、舞い踊れっ!」
 真琴の周りに透明な気が流れ、集う。気が色を持ち、また色を失う。

「―――神羅写成・彩色演舞っ!!」

 真琴が口に出したそれは、陰陽五行思想の属性を選べる魔法の塗料を放つ業。
 陰陽五行。
 即ち、木、火、土、金、水。
 相剋に倣うのならば、火に剋つのは水――水剋火。
「水行!」
 水の属性に変えた魔法の塗料を、真琴は次々と放っていく。
 氷の様に冷たい水――それだけだったなら、マグマを冷やすには少し役不足。自分ひとりだったら、真琴も水気を高めて氷の弾丸も混ぜようとしただろう。
 だが、その必要はない。
「ガーネットさん、これでいいんですね?」
『ああ、十分だよ。真琴。次は私の番だ』
 振り向いて見上げてきた真琴に、『夜の女王』の中からガーネットが返す。

 何故、ガーネットはキャバリアを選んだのか。
 この環境でも活動を可能にする装備なら、他にもガーネットは持っている。だが、この『夜の女王』でなければできない事がある。
「PSDホーネット起動」
 『夜の女王』の腰部装甲が少し動いて、その裏側からRS-F浮遊自走砲――遠隔レーザー射撃デバイスの群れが射出される。
「冷凍光線、射出」
 PSDホーネットから放たれた冷たい光線が、流れるマグマとぶつかって、そこから白い水蒸気が立ち込めた。

「その蒸気、吹き散らしますね――木行!」
 水蒸気を見た真琴が、魔法の塗料の属性を変える。
 陰陽五行では、風は木行に属するとされる。薄く緑を帯びた塗料は、放たれるなり風と変わって、水蒸気に当たるとそれを吹き散らした。
『よし、見えた』
 ガーネットの操作で、PSDホーネットはハチを思わせる動きで水蒸気の濃い部分を避けながら、冷凍光線を集中してマグマに浴びせていく。
 氷とは、水の状態が変化したもの。
 ものが凍るには水分が必要だ――物理学の常識の範囲では。
 埒外の存在である猟兵ならば、冷気だけでマグマを凍らせる事も出来るが、水気があった方が凍らせ易いのも事実。
 故に先に真琴が水を撒いて、ガーネットが冷凍光線を浴びせた。
 固まった溶岩が白い霜に覆われていく。
『よし、マグマが凍ってきたぞ!』
「……ガーネット、ノッてますね」
 『夜の女王』から響くガーネットの声に、シリンが見上げる。
 中のガーネットの様子はシリンからは見えていないが、きっと楽しんでいるのだろう言うのは、想像が付いていた。
『シリンは大丈夫か?』
「ええ。二人のおかげで涼しくなりましたので、これで一手、打てそうです」
 シリンも、ヘル・マウンテンの環境に対する手段を考えていた。
 真琴とガーネットによって、その機が熟した。
「あなたは、適応できますか?」
 ――♪
 ――♪
 空から音が、人でないものの声が降ってくる。
 ――♪
 精霊の声が降ってくる。

 Shape of Memory――キオクノカタチ。

 精霊を喚び、その声を降らせることでシリンの記憶にある場所の環境を再現する術。
 今回シリンが喚んだ精霊は、氷。
 再現したのは、氷雪の平原。
「ガーネットと真琴が流れる炎の水を凍らせてくれたから、氷の精霊を喚べました」
 ザァッと、風が変わった。
 3人の立つ場所の空気が、むわっとした熱気を帯びていたものから、カラカラと乾いた冷たい風になっている。
 見渡す限り広がっていた荒涼な炎の大地が、雪と氷に覆われていく。

 その氷の下を、ガーネットが『夜の女王』内で調べていた。
「硫化水素に近い成分の毒性か。やはり問題はマグマだけじゃなかったか」
 モニターに映った情報は、ガーネットの予想通り、地中に有毒なガスがある事を示唆していた。尤も、そのガスも氷に閉ざされたが。
『シリン、真琴。何か変な匂いはしないか? 一応、有毒ガスにも注意しなくては』
「特には。さっきの木行の風で、吹き飛ばしてしまったかもしれません」
「真琴に同じくです」
 ガーネットの声に、真琴とシリンは首を横に振る。
「風の精霊で吹き散らしましょうか?」
『いや。周りに飛ばすのも。そこに他の猟兵がいるかもしれな――』
 シリンの提案に言いかけて、ガーネットは気づいた。
『そういえば双子たちは何をしているんだろう』

●木元さんちのマーチ
 時間を少し戻そう。
 真琴が水を撒いて、ガーネットが冷気を放っていた頃。
 杏は少し離れたところで、ごつごつとした起伏を登ろうとしていた。
「よい――しょっ!」
 ぴょーん!
 深く膝を沈めて、一気に伸ばす。
 動作としてはうさぎ跳びの要領で、杏は大きな距離を跳んで移動していた。
 ごつごつとした地形は歩きにくいが、杏の様に跳躍するには、その起伏が足をかける取っ掛かりとなる。
 その後ろを、3体のお供を連れた祭莉がふよふよと漂って続いていた。

 2人が他の3人と別れて進んでいるのは、念のため。
 凍らせる作戦がうまく行けばいいが、自然が相手だ。
「何かあったら、大声で呼んでね?
 保険として、祭莉と杏が先に進んでおけば、あとから合流することも出来る。
「ぴょいって飛んで行くから。こんな風にね?」
 杏とガーネットの間を、テレポートで行ったり来たりして見せながら、祭莉はそう伝えていた。
 守護神来臨で、祭莉はお供と共に仲間の元への瞬間移動も可能になっている。
 その為に、杏も一緒にいるのだ。
「忘年会付き遠足なんだって! 張り切って行っちゃうよー♪」
 決して、忘年会と食べ放題に逸っているわけではない。
「もっと楽しく、歌いながら行こう♪ ぴょんぴょん跳ねながら、進もう♪」

 ――るんるん。
 ――ぴよぴよ。
 ――ひなひな。
 ――がうがう。

 ふよふよ浮かんで鼻歌交じりに進んでいく祭莉の後に、3体のロボがリズムを合わせて鳴きながら続き出す。
「まつりん、にぎやか」
 祭莉と3体のロボが始めた賑やかな行進に、杏が小さな笑みを浮かべる。
「ん?」
 気が付くと、うさみみメイド・うさみん☆も同じものをじっと見ていた。
「うさみん☆もぴよこ達に混ざりたい?」
 すごく、混ざりたそうだ。
「ならメイドさんズも引き連れいってらっしゃい?」

 うさみみメイドさんΩ。

 杏はうさみみメイドさんを複製する業を使い、92体のうさみみメイドさん軍団を、祭莉と3体のロボの賑やかな行進に混ざらせる。
「ついでに、進路の岩をどかして地を均していってね」

 ――るんるん。
 ――ぴよぴよ。
 ――ひなひな。
 ――がうがう。
 ――ぴょんぴょん(×92)

 すごい大所帯となった祭莉一行は、主にメイドさんズのパワーで、地面のでこぼこを解消しながら、進んでいく。
 その上を、白銀に輝く鳥の形をしたものが羽ばたきもせず飛んでいた。
 真琴が祭莉と杏の位置を把握しようと飛ばしていた、鷹の気――『氣鷹翔駆』だ。
「ほら。何だか賑やかにしてます」
『うん。なかなかカオスだな……』
 その気を頼りにしてきた真琴の案内で、周囲を凍らせながら来たガーネットとシリンも合流した。
「あ。見てください。あんな大きなマグマの流れが」
 シリンが気づいたのは、賑やかな行列の前に広がる溶岩。
 浮いている祭莉はともかく、特にメイドさん達が――。
「ガーネットさん!」
『ああ!!』
 凍らせようと、真琴とガーネットが身構える。ここからで、間に合うだろうか。
「あ。まつりん、ちょっとストップ。足場作るから」
 が、そんな2人の心配をよそに、杏は祭莉を静止して――。
「よっと」
 どこから拾ってきたのか。杏の何倍もあろうかと言う巨大な岩を、流れるマグマめがけて、ぽーいとぶん投げた。
 どぼんっ!
 マグマの上に、岩が落ちる。小さな岩ならすぐに溶けてしまっただろうが、これほど大きい岩ならば、しばらくは持つだろう――つまり、橋ができた。
「おっけ」
「さすが、杏ちゃん♪」
 ぐっと親指立てた杏に祭莉も親指立てて返して、お供とメイドさん引き連れ溶岩を渡っていく。
「……杏姉さん、どんどん頼もしくなってますね」
『さすがだな、杏』
 後ろに聞こえた真琴とガーネットの声に、杏が振り向く。
「見てたんだ?」
「此処からは一緒に行きましょう。迷子になってもつまらないでしょうし。お楽しみはこれからですから」
「おいらはいいよー」
 シリンの言葉に、マグマの向こうで手を振って祭莉が頷く。
「んむ。そういえば、皆に聞きたい事があった」
 杏も頷いて、仲間の顔を見回し――そわそわとした様子で、口を開いた。
「ところで皆、ターキーはいかほど召し上がる?」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

九瀬・夏梅
忘年会かい。いいねえ。1つ行ってみようか。
と、その前に仕事だね。
働かざる者食うべからず、といったところかね。

しかし、なかなか豪快な山じゃないか。
簡単には通れなさそうだが……
ディリュー、頼めるかい?

『いいわよ、夏梅』
UCで、笑顔の白い仮面をつけた足のない女性の影を呼び出す。
道案内、というか、先に行ってるだろう誰かを追いかけとくれ。
誰かが通ったのと同じ道を通れば行けるだろうさ。

『子供はいるかしら?
 私、子供が好きなのよ。知ってるでしょう?』
『ふふ。思い悩んでいる子は、とっても好き』

追いかけるのは誰でもいいが、私を案内してることを忘れないどくれよ。



●迷い夢が辿る足跡
「なかなか豪快な山じゃないか。簡単には通れなさそうだねぇ」
 かつて『白鷺』の名で知られた盗賊である九瀬・夏梅(白鷺は塵土の穢れを禁ぜず・f06453)をしても――或いはだからこそと言うべきか――ヘル・マウンテンは、容易に踏み入れる場所ではないと思わせていた。
 だが、夏梅がそこに着いた時には、先行した筈の猟兵達の姿はなかった。
 他の猟兵達はヘル・マウンテンを通り抜けようと踏み込んで、進んでいるのだ。
 己の持つ技術で。
 或いは異世界の道具を駆使して。
「皆、頑張ってるようだね。重畳重畳。若いモンはそうでなくちゃな」
 自分よりも若い猟兵の働きぶりを感じ、夏梅は満足げに頷く。
「さて。私も忘年会前の一仕事といくか」
 尤も、夏梅とて、ただ若者たちの活躍に想いを馳せに来たのではない。
「働かざる者食うべからず、といったところさね」
 ヘル・マウンテンを抜けるために来たのだ。

「ディリュー、頼めるかい?」
 夏梅が、笑顔を刻んだ白い仮面――『迷夢』を掲げる。
 その影から、何かが出てきた。

 瞑色の迷い夢――リディキュール・ディリュージョン。

『いいわよ、夏梅』
 ディリューと呼ばれた影から現れた女性が、夏梅に返す。
 その顔には、夏梅が持っているのと同じ白い仮面を着けられていた。もう一つ、特徴的な部分がある。
 ――ないのだ。スペード柄のスカートから延びる足の先が。
『道案内すればいいのね?』
「というか、先に行ってるだろう誰かを追いかけておくれよ」
 召喚の目的を訊ねるディリューに、夏梅は先行した猟兵の誰かを探すよう伝える。
「誰かが通ったのと、同じ道を通れば行けるだろうさ」
『狡くないかしら、それ』
「年寄りの知恵と言っとくれ」
 小首を傾げたディリューの言葉に、夏梅は笑って返す。
 夏梅が他の猟兵達が進んでいくのを眺めていた理由のもう一つが、それであった。
 誰かが踏破した道をなぞる。実利を優先するのであれば、それが迷宮であれ、自然の難所であれ、確実な手段と言えよう。
『まあいいわ。それより――子供はいるかしら?』
 夏海にくるりと背を向けて、ディリューは視線を巡らせるように首を動かす。
『私、子供が好きなのよ。知ってるでしょう?』
「追いかけるのは誰でもいいが、私を案内してることを忘れないどくれよ」
 喚び出した手前、ディリューに嗜好を無視しろと言えず、夏梅は小さく溜息を吐く。
『あら……いるじゃない、子供!』
 そんな夏梅を他所に、ディリューが楽しそうな声を上げた。
『ふふ。思い悩んでいる子じゃないけれど、とっても元気が良さそう。夏梅も良く知ってる筈の子たちよ?』
「ん? ――ああ、そうかい。あの子らなら間違いないだろう。案内しとくれ」
 ディリューが言った相手の予想がついた夏梅は、ディリューを急かし、その後を軽い足取りでついて行った。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ケキリキターキー』

POW   :    フェニックス・リボーン
自身が戦闘で瀕死になると【別のケキリキターキー】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    パーフェクト・ディナー
【パチパチと油のはぜる音】【香辛料の胃を刺激する香り】【鮮やかな彩り】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    フライド・チキンorローストターキーアタック
【武器に超高温の油・衣、または水飴をまぶす】事で【熱々出来立てモード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●種族間戦争、なのかもしれない
 地には炎と溶岩が溢れ、空は黒雲と雷鳴に覆われたヘル・マウンテン。
 冒険者ですら二の足を踏む場所に、案内板などある筈がない。
 猟兵達だって、全員が同じルートを通ってなどいない。
 それでも――猟兵達は、ヘル・マウンテンの中核を成す巨大火山の向こう、ケキリキターキーが集う地に辿り着けていた。

 クエー!だのコケー!だの、鳥の声が遠くから響いていたからだ。

 その鳴き声の主――ケキリキターキーの群れは、今、猟兵達の目の前にいる。
 なんか、整列していた。
 まるで――そう、まるで軍隊の様に。
『クェェェェェェッ!』
 そんな中、一羽のケキリキターキーが、甲高い鳴き声を上げた。

※以下、()内は謎の自動翻訳機能が働いた結果です。
 動物と話す、などの技能で判ってもいいですし、なんとなく雰囲気で把握してもいいですし、鳥の言ってることなど知らん!でもいいです。お好きにどーぞ。

『クエッ! コケケケクワックワー!
(諸君ッ! ついにこの季節が来た!)』

『クエクエ、コケココケケ、クククコケッケケケェ!
(人間共が、我らの同胞を、何故か貪り食う季節だ!)』

『ケッケェェ! コケコケ、コケケケケクェェェェ!
(反撃の時だ! 人間共に、鳥類が鉄槌を下す時だ!)』

『クワックワックワワッケケクェェ! コケコケコココッケケックエクワワ! ココケコクェックェックケ!
(その身を炎に捧げた同胞達の肉を! もう鳥を食べる気がなくなるくらい! 人間の口に捻じ込んでやれ!)』

『クワッ!(戦争だ!)』

 彼らの鳴き声の意味がわかろうがわかるまいが、ひとつだけ確かな事がある。
 今回のケキリキターキー、とっっっっても――活きが良いみたいだ。

=================================
 2章になりました。
 ケキリキターキーとの集団戦です。
 倒す、捕らえる、さばく、焼く、食う。
 好きにどうぞ。
 活きの良いのが沢山いますよ。

 なお、戦場はヘル・マウンテンの外れの岩場になります。
 1章程の危険地帯ではないですが、まだ炎が噴いたり雷落ちたりは、するかもしれません(プレイングで希望があれば)(敢えて危険を望みます?)

 プレイング受付期間について。
 1章で想定より多いご参加を頂いたのもあり、今回は再送にならないよう、期間を決めさせて頂きます。(それでも再送になったらごめんなさい)

 12/22(火)8:30~12/26(土)2:00頃まで

 25日は生放送あるので、生放送終わってから2時間くらいは開けておきます。
=================================
備傘・剱
よし、言いたいことはわかった
全員ちょっとそこに整列
そして、動物との会話技能はオフ

そして、レッツ発動、調理開始
なぁ、お前ら、肉だろ?
鳥肉共、その体と同胞の肉、おいていけ!

オーラ防御で閉じ込めて、結界術で一匹づつ、早業と調理と鎧無視攻撃でさばいて念動力で衛生的に保管できるよう、こっそり持ち込んだクーラーボックスに優しく保管してやろう
しってるか?鳥の体って捨てる所がないんだぜ?
クリスマスも近いし、全部美味しくみんなで食べてやるから、安心しろ
育てよう、もったいない精神!
広めよう、命のリサイクル!

店の売り上げにも貢献してくれるだなんて、なんていい奴らなんだろう…
感謝感謝だぜ

アドリブ、絡み、好きにしてくれ


榎・うさみっち
うおおおお!!
カモがネギしょってきたならぬ
チキンがチキンをしょってきた!!

もう鳥を食べる気がなくなるくらい、だと?
強欲の権化であるこいつらにはそんな甘い考えは通じないぜ!
さぁいでよ、デビみっち軍団!(UC発動
手段は問わん、あのターキー集団を
狩って狩って狩りまくれぃ!
報酬はターキーそのものだ!
お前たちはあいつらの武器を奪って食ってもいいし
何ならあいつら自身を噴き出す炎に放り込んで
出来たての焼き鳥をむしゃむしゃしても構わない
そして、俺にも定期的に焼き立てターキーを献上すること!

ふふふ、こうして俺は戦わずして
うめぇチキンにありつけるわけだ!なんて天才的な発想

ぴゃあああ!?(不意打ち炎に逃げ回りつつ


空目・キサラ
藍々君(f16744)と

瀕死になると増えるタイプの敵で、敢えて増やして狩るというのは中々の食い意地だね藍々君よ

先刻みたいに無策で突っ走るのはよしたまえ(飛藍の後ろ髪引っ張る)
数が増えすぎると厄介な事になるよ。飯テロ的意味で。誘惑に耐えられ無くなったその時、ぼんじりが入る胃のスペースが無くなってしまう
だから、食べられる分だけの乱獲にしなよ

んー、とりあえずは藍々君、斬っちゃってていいよ
これくらいでいいって思ったら声をかけてくれ

お声が掛かったら【一蓮托生インソムニア】を使おう
ん?そんな苦い顔しないでさ。まー、見てなよ
…ほら、ターキー達の動きが鈍くなっているだろう
今のうちだよ藍々君。素早く狩り獲るのだ


黎・飛藍
キサラ(f22432)と

一撃で仕留めないと、仲間を呼ばれる…だったか
つまり瀕死にさせると、増える…鶏肉が増やせる
…瀕死にさせれば1羽から1つしか取れないぼんじりが増やせるな

キサラ、活きのいいぼんじり増やすぞ
…髪を引っ張るな。抜ける
まぁ、確かに奴らはかなり美味そうだな
確実に、余裕をもって狩る方法でもあるのか?

よく分からないが策があるんだろう。仕込み刀で仕留めない程度の加減をして鶏肉を増やす
その際キサラに鶏肉が近づかないようには気を使う

少し増やし過ぎた気がするが、多分大丈夫だろう
キサラに声を掛けるが…また薬か
…おー、鶏肉の動きが鈍くなった
動きが鈍い内に【生の始めに暗く、死の終わりに冥し】で仕留める


バルタン・ノーヴェ
POW 連携・アドリブOK!

「ケキリキターキーたちよ、感謝をささげるデス。
アナタたちの命、……いただきマス!」
HAHAHA! ケキリキターキーの収穫祭デース!
武器だけでなく、本体もいただきたいところ。銃器では火薬の臭いが付いてしまいマース。
なので、UC《火炎放射器》で焼き払いマース! ヒャッハー!
火加減は【料理】の経験で調整しマース!
ほどよくこんがり焼けた鳥たちは、武装もろとも冷めないうちに格納型メイド用キッチンに収納していきマショー。
もしも生き残ってしまって増えたお肉たちがいるのなら、ファルシオンで下ごしらえして回収しマショー。
さぁ、量はあるだけよろしい。逃がしマセーン、いっぱい狩るデース!


鳳凰院・ひりょ
WIZ
アドリブ歓迎

うん、どうしてこうなったんだっけ…
敵の大群と交戦しながら心の中で愚痴る
瀕死にさせると仲間を呼ばれる、って話があったものな…
1人での戦いだと追撃が間に合わなくて、そのタイミングを突かれて仲間を呼ばれてしまった

俺、なんでここに1人でいるんだっけ…
そうか、ちょっと1人になりたい気分だったから…だ
…あぁ、もう…、うじうじ悩んでるなんて、もうやめだ!
敵の大群による猛攻でダメージを負った状態から黄昏の翼を発動
受けた負傷の分俺の力は増す
この状態なら一体ずつを確実に仕留められる
一体一体倒していくのは非常に面倒だ
上空に飛び周囲に噴いている炎を光陣の呪札へ付与、乱れ撃ちで各個一撃でローストに



●油断大敵――うさみっち
「もう鳥を食べる気がなくなるくらい、だと?」
 榎・うさみっちは、コケコケクェクェと鳴いてるケキリキターキーたちの言わんとする所を把握し、そこに込められた欲求を感じ取っていた。
「だったら、そんな甘い考えが通じない強欲の権化の出番だぜ!」
 うさみっちは、今回使う手札を決めた。
 自分の持つ業の中でも、最も強欲な力を持つものを使おうと。
「こーして、あーすれば……なんて天才的な発想!」
 その後の段取りを頭の中でシミュレーションして、その段取りの完璧さに、うさみっちがほくそ笑む。
 得てして――いい気になっている時ほど隙があるものだ。
「さぁいで――」
 ドーンッ!
 さっとゆたんぽを掲げたうさみっちの真下で、炎が立ち昇る。
「ぴゃぁぁぁぁぁっ!?」
 先ほどまでに比べれば弱い炎だったが、不意を突かれたうさみっちは吃驚して空に飛び上がっていた。

●聞こえない方がいい事もある――剱
「よし、言いたいことはわかった」
 或いはわかってしまった、と言うべきか。
 コケコケクェクェと喧しく鳴いてるケキリキターキー達の言わんとする所を、備傘・剱も余すところなく理解してしまっていた。
「……全員ちょっとそこに整列」
『クゥェコケコケケケコゥェェェェ!(そっちから来るとは良い度胸だな!)』
 既に整列してる感のあるケキリキターキーの群れに告げれば、剱に浴びせられた怪鳥音の様な鳴き声。
 やれ、戦争だ、と息巻いていたケキリキターキー達が、標的である人間を前にして落ち着いていられるはずもなかった。
「……聞くのやめるか」
 どうにも意味が分かると、気になってしまう。
 降り降ろされたフライドチキンを避けながら、剱は意識して、ケキリキターキー達の言葉を聞かないようにシャットアウトした。

●鶏肉を目にしたメイドがとるべきたった1つの行動――バルタン
『ココケコクェックェックケ! クワッ!』
「ケキリキターキーたちよ、感謝をささげるデス」
 目を閉じ、両手の指を組んで膝を地面について、バルタン・ノーヴェは気勢を上げるケキリキターキーの群れに感謝の祈りを捧げる。
 此処はもう、戦場だ。
 それでもバルタンは、祈らずにはいられなかった。
 祈りを捧げるべきだと思ったのだ。
「アナタたちの命、……いただきマス!」
 だって目の前にいるのは、鶏肉だから。
 食材に対して、食べる前、あるいは調理する前に感謝をささげるのは、メイドとしては至極当然の事なのだから。

 
●強欲の権化――うさみっち
「さぁいでよ、デビみっち軍団!」
 気を取り直してうさみっちが掲げた『うさみっちゆたんぽ』から、黒い煙がもくもくと立ち昇る。
 煙の中から、悪三叉槍を持つ小さな悪魔、デビみっち軍団が飛び出して――。

『『『『……? ……はぁーぁあぁぁー……』』』』

 85体分の盛大な溜息が重なった。
『うーわっ、なにここ?』
『地獄ですかー?』
『労働環境がクソ最悪じゃねーか』
『こんなところで働けとか、なめてんですかぁー!?』
 出て来るなり、文句のオンパレードである。これでも、ヘル・マウンテンとしては大分マシな環境になったというのに。
 だが、こうなりそうな事はうさみっちだって予想していた。
「うるせーぞ、お前たち。今回は、報酬が目の前にある!」
 だから、うさみっちは四の五の言わずに報酬の話を切り出した。
『目の前?』
『なんか肥えた鳥しか』
「報酬はあのターキー集団そのものだ」
 訝しむデビみっち軍団に、うさみっちがケキリキターキーを指して告げる。
「あいつらが持ってる鳥肉も、あいつら自身も食える。つまり、カモがネギしょってきたならぬ、チキンがチキンをしょってきた状態!!」
『チキンがチキンをしょってきた!』
『意味は良くわからねーが、すごそうじゃねえか!』
 うさみっちの言葉にざわつくデビみっち軍団。
「お前たちはあいつらの武器を奪って食ってもいいし、その辺から噴き出す炎にあいつら自身を放り込んで、出来たての焼き鳥をむしゃむしゃしても構わない」
『それってもしかして!』
『食べ放題ってことか!』
「そうだ! 手段は問わん、あのターキー集団を狩って狩って狩りまくれぃ! そして、俺にも定期的に焼き立てターキーを献上するのだ!」
 うさみっちの言葉に、デビみっち軍団の目がギュピーンッと欲で輝いた。
『食べ放題!』
『食って食って食いまくれー!』
『クォッッケ! コッケェェェェェェェ!』
 三叉槍を手に群がってくるデビみっち軍団に、ケキリキターキーたちも、負けじとフライドチキンとターキーに超高温の油をかけ、熱々出来立てモードになる。
『さらに美味そうになりやがったぜー!』
『ごちそうじゃねーか』
『悪魔の食欲を、思い知れー!』
 だがそれは、デビみっち軍団の食欲にさらなる火をつける行為でしかなかった。

●戦場クッキング――剱
 コケーッ!
 クエッ!!
「なぁ、お前ら――肉だろ?」
 ただの鳥類の鳴き声にしか聞こえなくなったケキリキターキー達に、剱は『Orthrus』の切っ先を突き付ける。
『クゥゥワッ!』
「肉、つまり食材! オブリ飯の神髄見せてやるぜ。調理開始、だ!」
 ケキリキターキーの一羽と剱が、殆ど同時に地を蹴って飛び出す。
『ケェェェェェッ!』
「鳥肉共、その体と同胞の肉、おいていけ!」
 刃の光が閃き、フライドチキンの油が爆ぜる。
 ――次の瞬間、黒と赤の羽毛がふぁさぁっと舞って、ケキリキターキーがバラバラになっていた。
 ただのバラバラではない。
 羽毛を落とし、骨の関節部に刃を入れて腿と手羽を切り離す。
 剱は捌いたのだ。一瞬で、ケキリキターキーを。

 ――調理開始。

 そう告げた時、剱は料理を中心に幾つかの技能を飛躍的に上昇させるユーベルコードを使っていた。
『クコケコッケェェェェェェェ!』
 当のケキリキターキー達は、それに気づいていた。
 目の前のニンゲンは、自分達を食材扱いしていると。
 その怒りが、手にした肉に熱を与える。
 ケキリキターキーの持つフライドチキンからパチパチと油のはぜる音が鳴り、ローストターキーからは胃を刺激し食欲を誘う香辛料の香りも漂う。
 どちらも、彩りも鮮やかになっていた。
「おっと」
『クェッ!?』
 しかし剱は防御に使うオーラと結界術の合わせ技で、ケキリキターキーを自身のオーラで作った箱の様なものの中に閉じ込めた。
「知ってるか? 鳥の体って捨てる所がないんだぜ?」
 閉じ込めたケキリキターキーの一羽に、剱が刃を手にゆっくりと近づく。
 食えない部位などないし、骨は良い出汁が取れる。
 羽毛だって衣料品の類の材料と言う用途もある。
「クリスマスも近いし、全部美味しくみんなで食べてやるから、安心しろ」
 ケキリキターキーには全然安心できない事を言いながら、剱は光を湛える刃を、ケキリキターキーに突き立てた。

●戦場BBQ――バルタン
「六式武装展開、炎の番!」

 ガシャコンと機械が動く音が鳴って、サイボーグであるバルタンの身体に内蔵されている火炎放射器が姿を現した。
「フランメヴェアファー、発射デース!」
 ゴォォォォッ!
 火炎放射器から放たれた炎が、ケキリキターキーの群れに迫る。
『クエッケー!』
『コケッコー!』
 しかしケキリキターキーは、炎を恐れずにバルタンに向かって飛び出した。
 あのヘル・マウンテンを越えて動けるという自負があったのだろうか。
 だが――それが、ケキリキターキーの命取りだった。
「甘いデース!」
『クワッ!?』
『コケケ!?』
 ヘル・マウンテンすら耐えるケキリキターキーが、バルタンの炎が焼かれていく。
『クェェッ!?』
『コケ! コケ!』
 慌てて炎を消そうと、お互いにバサバサと羽を動かした炎を叩いてみたり、地面を転げまわったりするケキリキターキー達。
「無駄デース! その火はそう簡単に消えマセン」
 バルタンの告げた通り、そのどれも徒労に過ぎなかった。
 火炎放射器からバルタンが放った炎は、ユーベルコードで作られた粘着性を持つ特殊な炎だ。その程度で消える炎ではない。
「それでも手加減してマスヨ。最大火力を生き物に使うのは、マジヤベェデース」
 バルタンは笑って、ケキリキターキーに炎を浴びせ続ける。
 本来は、塹壕戦や障害物排除を用途とした武装なのだ。
 その最大火力は、推して知るべし。
 バルタンは火力を抑えて、強すぎず弱すぎず、ケキリキターキーの身体にじわじわと熱を加えていた。
 これもまた――料理である。
 倒すだけならば、他にも武器はある。だが銃はダメだ。弾丸の金属、火薬。そういった匂いが、肉についてしまう。
 だからこそ、バルタンは火炎放射器を選択したのだ。
 この場で調理してしまう事を選んだのだ。
 美味しい鶏肉を、届ける為に。
『コケケケェ……』
「HAHAHA! 武装もろとも、ほどよくこんがり焼けるが良いデスヨ!」
 炎を恐れて後ずさるケキリキターキーに、バルタンは容赦なく炎を浴びせていく。

●ぼんじりの為に――キサラ&飛藍
「キサラ、活きのいいぼんじり増やすぞ」
「ちょっと待とうか、藍々君」
 ケキリキターキーの群れに駆け出そうとした黎・飛藍の後ろで束ねた髪を掴んで、空目・キサラがストップをかける。
「……髪を引っ張るな。抜ける」
「それは失敬。しかし、先刻みたいに無策で突っ走るのはよしたまえ」
 飛藍が背中で告げる不平に、キサラはその後ろ髪から手を離そうとはしない。
「藍々君よ。そもそも君、あの鳥の群れが何を言っているのかわかってないだろう?」
「ああ。わからん」
 キサラが手を放す気がないのを悟ったか、飛藍は完全に足を止めて声と薬の匂いを頼りに振り向き、頷いた。
「だが特性は覚えている。一撃で仕留めず瀕死にさせると、仲間を呼ばれるんだろう」
 その通りだ。
 飛藍も話を聞いていたか。
 だがキサラは何か嫌な予感を感じながら、無言で飛藍に続きを促した。
「つまり瀕死にさせると、増える……鶏肉が増やせる。……瀕死にさせれば、1羽から1つしか取れないぼんじりが増やせるな」
「瀕死になると増えるタイプの敵で、敢えて増やして狩るというのは……中々の食い意地だね藍々君よ」
 やはりと言うべきか。
 ぼんじりファーストな飛藍の作戦に、キサラが溜息をこぼす。
 ぼんじりは、尻尾の付け根の周りの部位の事だ。
 必然的に、1羽の鶏から少量しか取れない希少な部位でもある。それはケキリキターキーだって同じことであろう。
 ならば、鶏の方を増やせば良いというのは、合理的ですらある。
 相手が一応オブリビオンだと言うリスクを気にしなければ。
「数が増えすぎると厄介な事になるよ。他の猟兵にだってリスクが――」
 ケキリキターキーの数もさることながら、今回は集まった猟兵の数も多い。どうしても多少戦場が被る事になるのは避けられないだろう。
 そこにケキリキターキーの数が増えれば、彼らの作戦に支障をきたしかねない。
 そう危惧したキサラの言葉だったが――。

●増えても構わない人達
「俺は構わないぞ?」
 やり取りを聞いていた剱が、捌いたケキリキターキーをクーラーボックスに詰め込みながら口を開いた。
「宴会で食いきれないくらい増えたなら、店の在庫にすればいいしな。店の売り上げにも貢献してくれるだなんて、なんていい奴らなんだろう……」
 剱にとって、ケキリキターキーは完全に食材になっていた。
「ワタシも増えても構わないデース!」
 続いてあがった声は、バルタンだ。
 今度は肉切り包丁のように無骨な刀を振り回し、ケキリキターキーをばっさばっさと解体している。
「下ごしらえして回収しマース! 量はあるだけよろしいデース!」
 バルタンによって捌かれたケキリキターキーは、『格納型メイド用キッチン』に放り込まれていく。
「俺も構わないぜ!」
 空からは、うさみっちの声が降ってくる。
「ふふふ、こうして俺は戦わずしてうめぇチキンにありつけてるからな!」
 見上げれば、うさみっちは空中でフライドチキンをもしゃもしゃ食いながら、デビみっち軍団とケキリキターキーの群れの戦いを、文字通り高みの見物と洒落込んでいた。

●乱獲の定義とは――キサラ&飛藍
「大丈夫そうだぞ」
「……そうだね」
 食欲逞しい猟兵達の様子に、キサラは飛藍に頷くしかなかった。
「キサラには、確実に、余裕をもって狩る方法でもあるのか?」
「んー、とりあえずは藍々君、斬っちゃってていいよ」
 あるなら聞くぞ、と言う飛藍にキサラはそう促す。
「但し、やはり数は増やし過ぎない方がいい。飯テロ的意味で。彼らの誘惑に耐えられ無くなった時、ぼんじりが入る胃のスペースが無くなってしまっていたら悲劇だろう?」
「まぁ、確かに奴らはかなり美味そうだな」
 キサラの言葉に頷きながら、飛藍は紅い和傘の中の仕込み刀をスラリと抜き放つ。
「そうそう。だから、食べられる分だけの乱獲にしなよ」
 食べられる分だけ狩るなら、それは乱獲とは呼べない気もするが。
『クケェェェェェッッ!』
「貰うぞ、ぼんじり」
 そんなことは気にせずに、飛藍は、振り下ろされるフライドチキンを避けながら手にした刃を横なぎに振るい、ケキリキターキーの尾羽の辺りを切り落とした。

●1人で戦うと言う事――ひりょ
『ケキョー!』
『クエェェッ!』
「ちっ」
 甲高く鳴いて左右から同時に飛び掛かってくるケキリキターキーに、鳳凰院・ひりょは小さく舌を打ちながら身構える。
 ホカホカと湯気が立っている熱々ローストビーフを横っ飛びに避けて、表面で油が弾ける熱々フライドチキンを、退魔刀『迅雷』で受け流し――。
 流した、と思ったのも束の間。
 背中に感じた熱に振り向けば、流したのとは別のフライドチキンが、目と鼻の先に迫っていた。
「くっ!」
 咄嗟に首を傾けたひりょの頬を、熱々チキンが掠めていく。
 軽い火傷を負ったが、口にねじ込まれるのは避けられた。
(「うん、どうしてこうなったんだっけ」)
 ほぅ、と肺にたまっていた空気を吐き出しながら、ひりょは胸中で呟いた。
 周囲を見回せば、いつの間にか、すっかりケキリキターキーに囲まれている。
「瀕死にさせると仲間を呼ばれる、って話があったな……」
 ひりょとて、それを忘れたつもりはなかったが。
 一撃で倒しそびれていたのだろう。いつの間にか仲間を呼ばれていて――気が付いたら敵の数が随分と増えていた。
(「1人だと、これが限界なのかな……」)
 胸中で呟きながら、状況を打開する糸口を探して、ひりょは視線を巡らせる。
「ん? あれ?」
 そして、ひりょは、己の目に映った光景に目を疑った。

●増えても構わない人達2
「育てよう、もったいない精神! 広めよう、命のリサイクル!」
 剱はどこかのポスターの標語の様な事を言いながら、相変わらずケキリキターキーを解体し続けていた。
 一撃で仕留めてはいないので、たまに新たなケキリキターキーが現れている。
「HAHAHA! ケキリキターキーの収穫祭デース!」
 バルタンは再び火炎放射器に切り替えて、ケキリキターキー達に炎を浴びせていた。
「逃がしマセーン、いっぱい狩るデース!」
 容赦なく炎を放ち数羽まとめて、じっくりこんがりと焼き続けている。
 やっぱり一撃では仕留めていないので、たまに新たなケキリキターキーが以下略。
「藍々君、まだかい? もう十分ではないかな?」
「いや。もう少し。こんなにぼんじりが取れる機会は、次はいつになるかわからない」
 キサラが止めるのも聞かず、飛藍も仕込み刀振り回して、特にぼんじりを狙ってケキリキターキーを掻っ捌いていた。
 やっぱり一撃では仕留めていないので以下略。
「いいぞ、デビみっち軍団! 次はターキー持ってこい!」
 うさみっちも、相変わらず高みの見物決め込んでいた。
「来た来た。やはり天才的な発想だぜ!」
 新たに献上された美味しいローストターキーを味わいながら、うさみっちは肉と自分に酔いしれていた。

●他人の振り見て気づく事――ひりょ
(「そうか……俺だけじゃないんだ」)
 1人で戦っているが故に、対応が追い付いていない。
 ひりょはそのせいでケキリキターキーに囲まれたと思っていた。そういう部分が、一切ないというわけでもないだろう。
 だが落ち着いて状況を見れば、他の猟兵も一撃では仕留めていない。
 故意にそうしている部分もありそうだが――逆に言えば、落ち着いて戦えば、敢えて数を増やすだけの余裕を持てる敵だと言う事。
「よし……やるか」
 少し落ち着きを取り戻したひりょは、ケキリキターキーの群れに向き直った。

●不眠の先は暗く、冥し――キサラ&飛藍
 気が付けば、飛藍の手元には結構な数のぼんじりを含む鳥肉が集まっていた。
「少し増やし過ぎた気がするが……まあ、多い分には大丈夫だろう」
 大丈夫な根拠は無いような気がする鳥肉を抱えて、飛藍はキサラの方に顔を向けた。
「キサラ。もういいぞ」
「やっとかい。これ以上増えたらどうしようかと思っていたよ」
 実は結構ヤキモキしていたらしいキサラが、組んでいた両腕を解いて、飛藍に代わってケキリキターキー達の前に出る。
「眠れないんだ。君たちもだろう。だから一緒に――」
 ケキリキターキーの前に進みながら、キサラは袖に腕を入れ――。
「また薬か」
「ん? そんな苦い顔しないでさ。まー、見てなよ」
 匂いで気づいた飛藍にそう言いながら、キサラは取り出した小瓶の蓋を開けて、中の高度に成分濃縮された睡眠薬を一気に煽った。
「さあ。君たちも飲み――」
『コケクワッッッ!』
 キサラが差し出した小瓶を、ケキリキターキーがフライドチキンで弾き飛ばす。そんなものは要らないと言わんばかりの激しさで。
 次の瞬間、ケキリキターキーの動きが一気に遅くなった。

 一連托生インソムニア。

 キサラが差し出した睡眠薬を楽しまないケキリキターキーには、あらゆる動きが極端に遅くなる業だ。楽しめば眠りに落ち、楽しまなくともまともには動けない。
「ほら、ターキー達の動きが鈍くなっているだろう」
「……おー、本当だ。鶏肉の動きが鈍くなった」
 キサラの言葉に、頷く飛藍。
「と言うわけで今のうちだよ、藍々君。素早く狩り獲るのだ」
「わかった。もうぼんじりは十分だからな」
 促すキサラに頷いて、飛藍は再び仕込み刀を手に前に出る。
「素直に失せろ」
 生の始めに暗く、死の終わりに冥し――仕込み刀の一刀で、敵を両断する斬撃の業でもって、飛藍は次々とケキリキターキーを両断していった。

●1人で戦ったからできた事――ひりょ
 ケキリキターキー達が増えてた原因が自分だけにないと判ったところで、ひりょが1人で囲まれているという現実は、変わっていない。
 今のひりょは、ケキリキターキー達の、熱々焼き立てモードのスピードに対応するのに精いっぱい。
(「そもそも、俺、なんでここに1人でいるんだっけ……」)
 それが、ひりょが今、苦労している最たる原因だ。
(「そうか、ちょっと1人になりたい気分だったから……だ」)
 だとしたら、今はとても落ち着いて考えられない。ほとんどの猟兵が鳥肉扱いしていようが、ケキリキターキーもオブリビオンなのだから。
 その時、ひりょの足に何かがぶつかった。
 視線を落とすと、薬瓶のようだ。さっきまで中身が入っていたのか、まだ水滴が幾つか残っているのが見える。
 それに気づいた時、ひりょを囲んでいたケキリキターキーの半数――右側半分ほどが、急に動きが遅くなった。
 薬瓶は、キサラの手からケキリキターキーが叩き落したものだ。
 キサラの業の効果の一部が、ひりょの戦場にも届いていた。
「……あぁ、もう……、うじうじ悩んでるなんて、もうやめだ!」
 この好機に、ひりょは迷いを幾らか払拭し、足に力を籠める。

「翼よ、今こそ顕現せよ!」

 ひりょの背中に、黒白の混ざりあった光の翼が現れる。
『ケェェェェッ!』
 そこに、ケキリキターキーの1羽が、ひりょを狙って持っていた皿ごと、熱々ローストターキーをぶん投げた。
「……無駄だよ」
 だがローストターキーが当たった瞬間、ひりょの背中から延びる翼の光が僅かながら強い輝きになった。
「今の俺は、受けた負傷の分、俺の力が増す」

 ――黄昏の翼。

 自身と仲間の負傷によって、翼の光は強さを増す。
 この状態のひりょならば、1羽ずつ一撃で撃破するのも難しくないだろう。
「でも、非常に面倒だ」
 光の翼を広げたひりょが、地を蹴って空に飛びあがる。
「これで、一気に仕留めてやる!」
 ひりょが掲げた『光陣の呪札』から、光が迸って、眼下のケキリキターキーを次々と撃ち抜いていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

小夜啼・ルイ
ミケ(f01267)と

何て言ってんのかわかんねーよ。ミケ、わかるか?
は? 同胞の肉を口に捻じ込め?
…まさかコイツら連れ去った鶏を調理…いや、考えるな考えるな

なんでそうなるんだよ! 肉食べ放題じゃねーよ!!
ホントなんでオレの周りは…

冷凍出来るかって…俺は冷凍係じゃねー!!
…なんだこの既視感。あ、そういえば去年も似たような事あった気がする…

あー、もうコケコケ喧しいんだよ!
【Congelatio】で物理的に黙らす。色々考えるのはやめだ、考えたら頭が痛くなる…

ちっげーよそういう意味での頭痛じゃ…!
…山登りの最中も思ってたケド、猫の毛がもふもふしててヤバい。癒される
肉球ヤバい。めっちゃぷにぷにしてる…


舞音・ミケ
ルイ(f18236)と。

(鳥の言葉分かる)(ルイに翻訳して伝えつつ)
つまり、焼肉・生肉・たべほうだい。
たくさん食べようね、ルイ(嬉しそう)

一撃で仕留めなきゃだよね。
「まんまる猫は転がり上手」……まる、ごはんの時間だよ。
パンチで落としても直接食べても。
転がってまとめて潰してから食べてもいいよ。
でも「八分目」にしてね。いなくなっちゃうから。

私は短剣「ネコノツメ」で仕留めて回る。
猫の皆も戦える子は狩りを。首噛んでさくっと仕留めてね。
ルイ、冷凍できる?
町の皆と猫の皆へのおみやげにしたい。
暑さで悪くなっちゃう。

ルイ、頭痛いの?(そっと猫を乗せる)
コケコケがうるさいの?(猫が両耳をふさぐ)



●加熱は大事です
 コケコケッ!
 クワックワッ!
 気勢を上げるように鳴き声を響かせ、声に合わせて手羽に持ったフライドチキンかローストターキーを上下させる。
「何て言ってんのかわかんねーよ。ミケ、わかるか?」
「わかる」
 まるで鳥のシュプレヒコールのようなケキリキターキーの様子に首を傾げる小夜啼・ルイに、舞音・ミケは小さく頷いた。
「えーと……人間共に、鳥類が鉄槌を下す時だ! その身を炎に捧げた同胞達の肉を! もう鳥を食べる気がなくなるくらい! 人間の口に捻じ込んでやれ! ――だって」
「は? 同胞の肉を? 口に捻じ込め?」
 ミケの翻訳を聞いて、ルイの眉間にしわが寄る。
(「……まさかコイツら連れ去った鶏を調理……いや、考えるな考えるな」)
 考えないようにしても、ルイの目の前にある現実が物語っている。
 ケキリキターキーしか見当たらない。牧場から奪い去られたという鶏は、どこにも見当たらないのだ。それが意味することは、つまり――。

「つまり、焼肉・生肉・たべほうだい」
「なんでそうなるんだよ! 肉食べ放題じゃねーよ!!」

 すごく嬉しそうな顔で、期待で目をキラキラ輝かせたミケの言葉に、ルイがたまらずツッコミ返す。
「たくさん食べようね、ルイ」
 だがミケの抱いた大きな期待に、ルイのツッコミは届かなかった。
 そんな期待に満ちたミケの顔を見てしまうと、ルイも食べるなとは言えなくなる。
「……せめて生肉はやめとけ」
 もうそれしか、言えなかった。

●弱肉強食
「一撃で仕留めなきゃだよね……まる、来て」
 ミケがその名を呼ぶと、背後に超巨大な猫が突如として現れた。
 ぶにゃーお、と鳴くその猫を良く見れば、透けている。
「……まる、ごはんの時間だよ」
 まんまる猫は転がり上手――召喚した超巨大猫の霊の丸々としたもちもちのお腹をぽふぽふ叩いて、ミケが告げる。
「パンチで落としても、直接食べても、転がってまとめて潰してから食べてもいいよ」
「……え? 食うのか? 霊だろ?」
 ミケがまるに出した指示に、ルイが首を傾げる。
 霊なのに、食べるのかと。
「……? だって、まるだから」
「また理屈じゃねえやつか。聞いた俺が悪かった」
 逆にミケに首を傾げられ、ルイは眉間を抑えて溜息を吐く。
「……まあいいや。まる、食べるのは『八分目』にしてね。いなくなっちゃうから」
 ――ぶみー。
 ミケの言葉になんだか不服そうに返すと、超巨大猫霊まるは、のっそのっそとケキリキターキーの群れに近づいていく。
『……』
『……』
 見下ろすまると、見上げるケキリキターキー。
『ケシャァッ!』
 奇声を上げて、ケキリキターキーが地を蹴って飛び上が――。
『にゃ』
『コケッ!?』
 べしっ。
 まるの投げやりな猫パンチに、叩き落された。
「いや、あの体格差で正面から突っ込めばそうなるだろ……」
『にゃ、にゃ』
 思わず呟くルイの視線の先で、まるは落としたケキリキターキーを、前足でちょいちょい突いている。
 かと思えば――ばくんっ。
 2,3度突いたあと、まるはおもむろにケキリキターキーを、一口に食らった。
『みゃーう!』
 美味しかったのだろう。
 丸くした目を爛々と輝かせ、まるがケキリキターキーの群れを追い回し始めた。

●肉球が開く扉
「まるだけに任せてられない。猫の皆も、一緒に狩りを」
 スイッチ入ったまるは一旦置いといて、ミケは他の普通サイズの猫達を引き連れ、真っ白な短剣『ネコノツメ』を手に駆け出す。
「首を噛んでしと――」
 急所を狙えと言う指示を出しかけて、ミケは言葉を飲み込んだ。
 ケキリキターキーの体形、首がわからない。
「押さえつけて。仕留めるから」
 にゃーん!
『コケケコ!?』
 ミケの指示で猫達がケキリキターキーに飛び掛かり、牙を突き立て動きを封じる。そこにミケが、『ネコノツメ』をずぶりと突き立てた。
「ルイ、冷凍できる?」
 短剣の先にケキリキターキーを突き刺したまま、ミケがルイを振り向き訊ねる。
「冷凍出来るかって……俺は冷凍係じゃねー!!」
「でも冷凍出来るよね。町の皆と猫の皆へのおみやげにしたい。この暑さだと、冷凍しないと悪くなっちゃう」
 こちらが否定しようが冷凍役を求めてくるミケに、ルイが感じる既視感。
(「あー……そうか。去年も似たような事あった気がする……」)
 しかも、同じ世界ではなかっただろうか。地域は違うけれど。
「ホントなんでオレの周りは……」
 はぁぁ――ルイの口から、盛大な溜息がこぼれる。
「冷凍して。ルイ、れいと――危ない!」
 冷凍をせがんでいたミケの声のトーンが、変わった。
 同時に、ルイの後ろで響く羽ばたきの音。
 いつの間にか熱々出来立てモードになっていたケキリキターキーの1羽が、ルイの後ろに回り込んで、フライドチキンを振りかざしている。
『コケェッ!』
「あー、もうコケコケ喧しいんだよ! 凍ってろ!」
 ルイの中で、何かが決壊した。

 Congelatio。

 掌から迸る絶対零度の冷気が、手にした肉ごと、ケキリキターキーを一瞬で氷の中に封じ込める。
「もう色々考えるのはやめだ……考えたら頭が痛くなる」
 ついにキレてしまったルイは、ミケが仕留めたケキリキターキーも、まだ挑みかかってくるケキリキターキーも、手当たり次第に凍らせていく。

 冷気が迸り、ケキリキターキーが凍る。
 それが何度も続けば、ルイの周りからコケコケと言う声は聞こえなくなっていた。
「ふー……ふー……――これで、ちったぁ静かに……」
「ルイ、頭痛いの?」
 色んな意味で少し落ち着いたルイの頭に、ミケがまた猫を乗せた。
「ちっげーよ。そういう意味での頭痛じゃ……!」
「コケコケがうるさいの?」
 まだ少し語気が強いルイを心配そうに見上げながら、ミケはもう一匹、猫をルイに乗せると、その手で耳をぴとっと塞がせる。
 とはいえ、音を遮るという点では、それは微妙と言えよう。
 猫の手では、人間の耳を塞ぎきる事は出来ない。人間自身の手ですら、それで塞いだだけでは、耳を塞いだとは言えないのだから。
 だが――。
(「山登りの最中も思ってたケド、猫の毛がもふもふしててヤバい……癒される」)
 違う意味で、効果は抜群だった。
「肉球ヤバい。めっちゃぷにぷにしてる……」
「ルイ、肉球気に入った? じゃあ猫の皆、もっとぷにぷにしてあげて」
 ルイが思わず口走った言葉を聞いて、ミケがさらに猫を乗せていく。
 ルイの中で、猫の肉球の良さと言う新たな扉が開れた瞬間だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

本・三六
UC常時発動

いやあ、ご馳走様
美味しい弁当だった。此処はいい所だね
あ、彼らが不死鳥か
何かな?こういう時は文明の利器を、ね
『試作八八號』の動物言語翻訳を作動

……少し。元気がよすぎるみたいだね?
『道敷』を齧りドーピング
あ、先の彼女がいたら
無傷のこれをお礼にあげたいね

無理せずとも素直に戴くよ
『鉄芥』で下から手元を強打、弾いて丸ごと貰おうか
この香りは凶悪だなあ

そうだ、来る前に話したら知人が興味を持ってね
祝い事も近い
羽を頂きたいな
ヒーローズマントで視界を奪い、少し拝借

ん、増えた?だがやることは一つ
観察を活かし
炎の吹くポイントで足元を払うよ
攫われた鳥たちだけ、可哀想だろ?
君もそこでたんと揚げてもらうといいよ


ルーファ・カタラ
※アドリブ、他者との絡み等OK
※カオス上等なので好きに動かしてください

念願の!チキン食べ放題!!
ヤッター!さぁ食べるぞー

近くにいるケキリキターキーをサイコキネシスで捕まえて焼いて食う!
むっコイツ何て活きがいいんだ…!
ここまで来るのにも苦労したし働いたあとのご飯は美味しいって決まってるから負けないもんね!

な…なんだと!?
自分から食われにくるなんて…!
いいよ、受けて立つ!!
私が完食できるか、お前達が勝つか正々堂々勝負だっ!
襲ってくるケキリキターキーを本体ごと焼いて全部美味しくイタダキマス!!
あぁ美味しーい!
どれだけあっても食べられちゃう
ケキリキターキー、ありがとう…
おかげで美味しい肉が食べられるよ



●食前酒ならぬ食前果
『クケケコケッ!』
『ケケキョー!』
「彼らが不死鳥か」
 奇声じみた鳴き声を上げるケキリキターキー達を見下ろし、本・三六がどこか楽し気な声音で呟く。
「不死鳥にも会えたし、他では見られない景色を沢山見れたし。此処は良い所だね」
 ケキリキターキーを珍しい生物扱いと言うのは、まあ、ある意味そうだろう。だが三六は、ヘル・マウンテンまでも珍しい景色のある山扱いしていた。
 意識して続けていたからか。まだ観光気分が抜けきっていないように見える。
「ヤッター! 念願の! チキン食べ放題!!」
 そして――ある意味(食欲的な意味)で三六以上に盛り上がっているのが、ルーファ・カタラである。
「さぁ、食べるぞー!」
「あ、ちょっと待って」
 滾る食欲で目を輝かせてケキリキターキーに向かって駆け出そうとしたルーファを、三六が呼び止めた。
「どうしたの?」
「――って、おっと」
 振り向いたルーファが伸ばした手に、三六が放り投げた何かが収まった。
「果物?」
 見覚えのない果実に、ルーファが首を傾げる。
「お肉食べる前に、それ齧るといいよ。きっと『お肉を美味しく食べられる』から」
 三六その言葉の意味はわからなかったが、ルーファは疑うでもなく、言われるままに掌に収まった果実を齧ってみた。
 口に広がった味も、やはり覚えがない――だが。
「!?」
 咀嚼し、喉を滑り落ちたところで、ルーファは己の身体に起きた変化に気づく。
 くぅぅとと胃袋が再び目覚めたかのように主張し、食欲が湧いてくる。
「これって――」
「美味しい弁当、ご馳走様」
 ――食べ歩きの為に道中に分けた肉のお返し、と言う事なのだろう。
 驚くルーファにひらひらと手を振って、三六は別のケキリキターキーの群れへと歩き出していいた。

●羽毛は鳥の命
『クワッ! クォケカケコケッ!』
『ウケキョキョカキョー!』
 三六が近づくにつれ、ケキリキターキーの鳴き方が激しさを増してくる。
「何かな? こういう時は文明の利器を、ね」
 喧しい鳴き声の中にケキリキターキーの意思を感じて、三六は電脳ゴーグル『試作八八號』の動物翻訳機能を作動させた。
『クワエッ! クォケカケコケッココケコケケキョ!(人間めッ! 鳥肉食わずに巣に帰れると思うなよ!)』
『ココココッケケコッコケキョカキョ!(二度と鳥肉食えない身体にしてやる!)』
「……少し。元気がよすぎるみたいだね?」
 翻訳してみたらすっごく憎悪に塗れていると判ったケキリキターキーに、三六は胸中で溜息を付きながら、先ほどルーファに渡したものと同じ果実を取り出し齧る。
 その名は『道敷』――力と癒しを齎す、魔法の果実。
『コォォオッケコッコォォォ!』
 力の入った鳴き声を上げて、フライドチキンを振りかざしたケキリキターキーが、地を蹴って跳び上がる。
「無理せずとも素直に戴くよ」
 その瞬間、三六が片手を振り上げた。
 『鉄芥』――幾らか柄を長くしてしなる様にしたメカ鈍器で、ケキリキターキーの手羽元を叩く。
『ククァッ!?』
「この香りは凶悪だなあ」
 キリキターキーの手羽から放り出されたフライドチキンが、三六の掌に収まった。
 思わず噛り付きたくなる香が、三六の鼻腔をくすぐる。
『コケケキョー!』
 その隙を突くつもりだったのか、そこにローストターキーを構えたケキリキターキーが三六の飛び掛かって――。
「来る前に話したら知人が興味を持ってね」
 三六の背中のマントが、大きく翻った。
『クケケッ!?』
 翻って広がったマントに視界を遮られ、ケキリキターキーが三六を見失う。
「祝い事も近い。その羽、少し頂くよ」
 ブチィッ!
 背後に回り込んだ三六は、ケキリキターキーの羽毛を容赦なく引っこ抜いた。
 ――その直後。
『クワッケケェェェェ!』
「おっと」
 背後から聞こえたケキリキターキーの声に、三六が咄嗟にその場を離れる。振り下ろされたフライドチキンが、空を切った。
「増えた? あれで?」
 羽毟っただけで、瀕死になるとは。
 予想外ではあったが、三六はそれ以上慌てることなく、増えたケキリキターキーを見据えて、身構えた。やる事は一つだ。
『ケキョ――』
「そうはさせないよ」
 ケキリキターキーが跳ぼうとした瞬間、三六は身を沈めて、足を払った。
『コケキョ!?』
 ドーンッ!
 転がりそうになったケキリキターキーが、噴き出した炎に焼かれて吹っ飛ばされる。
「攫われた鳥たちだけ、可哀想だろ? 君もそこでたんと揚げてもらうといいよ」
 落ちてきたケキリキターキーは、揚げたというより焦げていた。

●フードファイト
『コクケケギョケッケ!』
「さぁ、来い!」
 やけに力の籠った鳴き声を上げて地を蹴ったケキリキターキーを見て、ルーファが両手を広げて前に出す。
 ――サイコキネシス。
 見えない手がある様に、離れたものも動かす念動力。
『ケキョッ!』
「むっ。コイツ何て活きがいいんだ…!」
 溶岩塊ですら受け止めた念動力に抗おうとするケキリキターキーを、ルーファは力をさらに強めて空中で止める。
 ここまで活きが良いのなら、その肉の味も期待できるというものだ。
「ここまで来るのにも苦労したし、働いたあとのご飯は美味しいって決まってるから、負けないもんね!」
 唐揚げ、照り焼き、塩焼き――。
 ルーファの頭の頭の中に、鳥肉の色々な食べ方が去来する。
 その食欲が、ルーファの口元を緩めつつ、サイコキネシスを強めていく。
『キョケケッキョー!』
「むぐっ!?」
 思わず緩んでいたルーファの口に、別のケキリキターキーが投じたフライドチキンがすぽんっとはまった。
「もご……もごご……もごぐっ!?」
 パリッと揚がった衣の熱さを耐えて咀嚼すれば、口の中に熱々の肉汁が溢れる。衣と肉汁と言う熱さのダブルパンチ。だがそれさえ耐えられれば――。
「あぁ美味しーい! どれだけあっても食べられちゃう」
 その肉は、とても美味しかった。
「ケキリキターキー、ありがとう……でも、もっとだ!」
 後味を噛みしめるも全然満足していないルーファに、詰め寄るケキリキターキー。
『ケッコケケケココケッククェッ!(くっやはり一本では足りないか!)』
『ココケケコッコッコククエコケケケココキョー!(ならば最後はこの身の鳥肉をお見舞いしてやる!)』
「な……なんだと!? 自分から食われにくるなんて……!」
 ケキリキターキーの言葉が判ったルーファは、聞き取れたその覚悟に――またしても、思わず口元が緩んでいた。
「いいよ、受けて立つ!! 私が完食できるか、お前達が勝つか正々堂々勝負だっ!」
『クワギャギャー!』
 ケキリキターキーと視線をぶつけるルーファの背中で、お誂え向きに、炎がドーンッと噴き上がる。
 『道敷』のおすそ分けのおかげで、ルーファの胃の調子はすこぶる良い。
 食うものと、食われるものの戦いは、まだしばらくは終わらなかった。

 なおケキリキターキー本体は、フライドチキン以上に美味しかったそうな。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浮世・綾華
【暁】

けきりきたーきー?
知り合い?

知り合いなんだろ
なんか怒らせることしたんじゃね
ほら、あやまってこいよ
そーなの?変な奴等だからてっきりきよしの知り合いかと
まあいいや
あやまってこいって

うまいのか…
でも無理やり食わせられるのはやだ
食いながら話すなよ
行儀悪いぞ

UCで扇操ってチキンを払い飛ばす
え――ああ…そうだな
見た目で判断すんのも良くねえし
どうせ倒さなきゃなんねーなら料理してやんのもありかも
ってわけできよしよろ

ご要望通り
扇から放つ炎属性攻撃で火炙り

きよしー、出来た?
あれ、焦げきよし
お前がちゃんと避けねーのが悪いんだろ

ネーミングクソじゃん
見た目は…普通のちきん?
でも美味そうな香り
あいつ喜んでくれっかな


砂羽風・きよ
【暁】

なんか聞こえて来ねぇ?
げ、幻聴か!?暑すぎて幻聴が聴こえる!

うおお、鳴き声がどんどん近づいてくるぞ?!
ってケキリキターキーか
いや、知り合いじゃねーよ!

なんかめっちゃ言ってるし
こっちめっちゃ睨んでるのはなんでだ

いやいや、知り合いじゃねーよ!
俺のダチに鳥はいなかったぞ?!

んぐg?!
お、おいおい!いきなり口につっこんぐ?!
だっでよ!

もごもご…

別に旨いからいいけどよ!
けど折角だから宴会に持って行きてーよな?
なぁ、綾華

へへ、任せろ!俺が煮たり揚げたりしてやるぜ!
綾華は火で炙っちまえ!
って、おいおい?!俺まで炙るんじゃねー!

よっしゃ、完成だ!名付けてモリモリチキン!
あいつなら喜んで食ってくれるだろ!



●犯人はあいつです?
 ――コケーコココッケコキョキョカカキョ!
「ん? なんだこれ、なんか聞こえて来ねぇ?」
 どこからか聞こえてくる謎の怪音に、砂羽風・きよの目が泳ぐ。
 その音は、大分前からきよの耳に届いてはいた。聞こえてはいたが、かなり遠くに聞こえていたのだ。
 風の音か何かだろうと、気にしていなかったが――次第に近くなった。
 ――クワーックワクワッコカカキョー!
「うおお、鳴き声がどんどん近づいてくるぞ?!」
 今や、きよの周囲の彼方此方から聞こえてくる。しかも、くぐもっているようでありながら、何かに反響してもいる様な、不気味な感じに聞こえているのだ。
「げ、幻聴か!? 暑すぎて幻聴が聴こえるのか!」
「んなわけねーだろ、落ち着けきよし」
 困惑のあまり、怪音を幻聴かと慌てるきよの耳に、浮世・綾華の声と、ゴンッと言う鈍く響いた音が届く。
「――ゴン?」
「とりあえず、それ脱げきよし。もうそんな熱くねーから」
「あ、そっか」
 綾華の声で、きよも鳴き声が響いていた理由に気づく。
 装着しっぱなしだった、耐熱防具だ。いつの間に脱いだのか、綾華はとっくに防具を外していつもの恰好に戻っている。
「ふぅ……あー、やっと頭がさっぱりしたー」
 風が髪を揺らした。ただそれだけの、外にいれば当たり前な事に開放感を感じて、きよは思わず目を細める。
『クワワッ! ケコココケ、ケキョー!』
「ん?」
 だが、まだ謎の音は聞こえていた。さっきよりも鮮明に。
「何の音――ってケキリキターキーか」
「けきりきたーきー? こいつらの名前か」
 きよが呟いた名前に、綾華が首を傾げる。
 2人の周りには、フライドチキンとローストターキーを持った、ケキリキターキーが群れを成している。
「ふーん。知り合い?」
「いや、知り合いじゃねーよ!」
 綾華の言葉に、きよが間髪入れずに返す。
 だが綾華がそう感じたのも無理はない。何故か――本当に何故か、きよの方が、周りにケキリキターキーが多くいるのだ。
『クェックェックッケェェッ』
『コーココケココキョケー』
「なんかめっちゃ言ってるし。こっちめっちゃ睨んでるのはなんでだ」
 しかも、単に周りにいるだけじゃなくて鳴き声と視線をきよに浴びせている。そのせいで、耐熱防具の中に音が届いて反響していたのだが。
「知り合いなんだろ」
「いやいや、知り合いじゃねーよ!」
 その様子に、綾華は再び訊ねる綾華に、やっぱり間髪入れずにきよが返す。
「なんか怒らせることしたんじゃね? ほら、あやまってこいよ」
「なんでだよ! 俺のダチに鳥はいなかったぞ?」
 知り合い疑惑ばかりか、何かやらかした疑惑まで重ねてくる綾華に、きよは残りの耐熱防具を外しながら返す。
「そーなの? 変な奴等だからてっきりきよしの知り合いかと」
「こんな平凡な青年に、こんな変な鳥の知り合いいるわけがな――」
「まあいいや。あやまってこいって」
 きよの訴えをしれっと遮った綾華が、イイ笑顔できよに告げる。
「だから俺は何もしてねー!」
 そんな必死な訴えと共に、きよは耐熱防具のパーツを思いきり脱ぎ捨てた。

 実際、きよはケキリキターキーに何もしていなかった――綾華だって、本気できよが何かしたと思っていたわけではないだろう。
 この時までは。
「「あ」」
 きよの手を離れたパーツが、放物線を描いて落ちる。
 ケキリキターキーの1羽の頭上に、ごっつんと。
『クゥゥワワワッケコッケッケーーッッ!!!』
「ま、待て今のは不可こう――んぐg?!」
 動物と話せなくてもわかる、怒りの籠ったケキリキターキーの声と共に、フライドチキンがきよの口に捻じ込まれた。

●ブラックきよし爆誕
「お、おいおい! いきなり口につっこんぐ?! だっでよもごっ!」
「うん。あれはきよしが悪い」
 口いっぱいに鶏肉を詰め込まれるきよを、綾華が手を合わせて見守る。
 だが――。
『クゥオッキョー!!』
「っと」
 きよの口がいっぱいになると、矛先は綾華に向かった。
『ケケキョコケー!』
「だから悪いのはきよし……って聞こえないか」
 次々と向けられるフライドチキンとローストターキーを、綾華は闇黒と黄金が交互に重なる扇、『夏ハ夜』を開いて――放った。

「――コレをこうして、こうな?」

 93個に増えた『夏ハ夜』がバラバラに動いて、チキンとターキーを打ち払う。
「無理やり食わせられるのはやだからな」
 絡繰ル指。
 複製した道具をバラバラに操る念力の業で、チキンもターキーも寄せ付けない綾華を眺めながら、きよは口の中の鶏肉を、もぐもぐしていた。
「もごもご……」
「食いながら話すなよ。行儀悪いぞ」」
「もごごご」
 綾華の指摘に頷いて、ごくん。
「そうだぞ! 無理やりは良くない! 別に旨いからいいけどよ!」
「うまいのか……」
 律儀に全部食べ切ったきよに、まじか、と綾華が視線を向けると、丁度きよも綾華に視線を向けていた。
「折角だから宴会に持って行きてーよな? なぁ、綾華」
「え――ああ…そうだな」
 きよの一言が、予想外だったのか。
 一瞬呆けたような表情を見せた綾華の耳と鼻に、とある音と匂いが届いた。
 フライドチキンの衣で、パチパチと油が爆ぜる音。
 ローストターキーから漂う、程よい香辛料の香り。
 流石に綾華も、それには食欲を刺激されずにはいられなかったのだろう。
「……見た目で判断すんのも良くねえし。どうせ倒さなきゃなんねーなら、料理してやんのもありかも」
「だろ?」
 とは言え、そんなのは表に出さずに同意を示す綾華に、きよが笑って頷く。
「ってわけできよしよろ」
「へへ、任せろ! 俺が煮たり揚げたりしてやるぜ! 今日の屋台のきよしは、チキン尽くしだ!」
 丸投げしてくる綾華に、きよが輝く銀色のコテ『銀虹』を手に頷いた。
 屋台をやっているだけあって、料理に関してはきよも自信のあるところだ。
「あ、でも焼くのは頼むぜ。綾華は火が得意だろ。炙っちまえ!」
「ま、そのくらいならしてやるよ」
 きよの要望に応えて、綾華が扇から炎を放つ。
 93個の『夏ハ夜』、その全てから。
『ピピピキョー!?』
「ア、アチー!?」
『ココケココ!?』
 ケキリキターキーの悲鳴に混ざる誰かの声。炎で聞こえていないのか、綾華は声に構わず炎をしばらく放ち続けて――。
「こんなもんか? きよしー、出来た?」
 静かになったところで、炎を止める。
 そこには、召喚する暇もなく焦んがり焼かれて倒れたケキリキターキーと……。
「あれ? 焦げきよし」
 焦げてるきよが立っていた。
「俺まで炙るんじゃねー!」
「お前がちゃんと避けねーのが悪いんだろ」
「あんなの避けきれるかー!」「きれるかー!」「かー!」
 しれっと無茶振る綾華に叫び返したきよの声が、辺りに響き渡った。

●誰かのための料理
「よっしゃ、完成だ! 名付けてモリモリチキン!」
「ネーミングクソじゃん」
 きよの手で手際よく調理されたケキリキターキーの、ド直球なその名前に、綾華が遠慮のない意見を述べる。
「見た目も……普通のちきん? でも美味そうな香りだな」
「だろ? こういうのは普通がいいんだよ」
 綾華の評価に、きよは笑って返す。
 料理に奇抜さは必要ない。
「あいつ喜んでくれっかな」
「あいつなら喜んで食ってくれるだろ!」
 同じ顔を思い浮かべて、綾華ときよは笑って顔を見合わせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リュカ・エンキアンサス
オズお兄さんf01136と

なる…ほど?
…取りあえず倒すか
え、貰うのそれ
なんか食べた途端に悪いことが起きない?
俺は動物とは会話できないけど、何か執念を感じる
……ええー
まあ、お兄さんがそういうなら、貰うけれど

貰うもの貰った後できっちり倒せばいいんだな
わかった。そっちの方は任せて
と、いうわけで貰うもの貰ったら容赦なく倒しておく
倒してはおくんだけど…
…本当に大丈夫かなあ(って、お兄さんを心配そうに見ながら
(大丈夫そうなのでちょっとほっとして

というわけで
任せて。鳥は良く捌いてるから。倒すのは得意だから…
って、!?(なんかでっかいの出た
(そして潰した!
…大丈夫、問題ない
敵だし
今日はなんか、驚いてばかりだな


オズ・ケストナー
リュカ(f02586)と

うんうん
なんていってるかはわからないけど
チキンくれるみたいだよ、リュカっ
ありがとうっ

きっとだいじょうぶだよ
おいしそうなにおいがするものっ

ぐいぐいチキンをおしつけられながら
ほら、という顔

いただきまーすっ(むぐむぐ)
おいしいっ
もっと食べていいの?
わあい

もぐもぐしながらどうやって倒そうかの顔でリュカを見る
ターキーが自らおいしくなる準備をしているように見えて

そっかっ
ひらめいた顔でガジェットショータイム
どーんと空からオーブンが

これで焼けばいいんだねっ
あれ?
ここにいたケキリキターキーは?(オーブンの下に見つける)
あっ……

……つぶれちゃってもだいじょうぶ?
よかった、さすがリュカだねっ



●優しさは通じてる?
『ケーキョケーキョ!』
『ココケコケッケー!』
「うんうん、それで?」
 フライドチキンとローストターキー振り回し、喧しく鳴いてるケキリキターキに、オズ・ケストナーは屈んで目線の高さを合わせて頷いていた。
「えーと。お兄さん……何言ってるかわかるの?」
「ううん? なんていってるかはわからない!」
 背中に聞こえたリュカ・エンキアンサスの遠慮がちな声に振り向いて、オズはにぱっと笑って答える。
 もし通じているのなら話の邪魔しては悪い――そんなリュカの心配は、杞憂だった。
(「……取りあえず、オズお兄さんの気が済んだら倒すか」)
 胸中で呟きながら、リュカは愛用のアサルトライフル『灯り木』を、何かあればすぐに構えて狙撃出来る位置に携えた。
 弾倉は新しいものにしてあるし、薬室にも1発入っている。
「うん、うんうん。ありがとうっ」
 いざと言う時の準備をするリュカの前で、オズが無邪気にお礼を述べていた。
(「ありがとう?」)
 胸中で首を傾げるリュカの目の前で、オズがぺこりと頭を下げると、ケキリキターキも釣られて頭をぺこりと下げる。
(「????」)
 何が起きているのか分からず、リュカの胸中で首がますます傾く。
「チキンくれるみたいだよ、リュカっ」
 まだ屈んだまま振り向いたオズが、笑顔で告げてきた。
「え、貰うの? それ」
 驚くリュカの目の前で、ケキリキターキーがフライドチキンとローストターキーを、オズの頬にグリグリ押し付けだす。
『ケキョケキョコケケコケ!』
「……ええー」
 相変わらずケキリキターキーが何を言っているのか、リュカにはわからない。
 わからないが――。
「なんか食べた途端に悪いことが起きない?」
 何か執念じみたものを感じて、リュカは思わずそう訊ねていた。
「きっとだいじょうぶだよ。おいしそうなにおいがするものっ」
 ほら、と言う顔でオズが言った『おいしそうなにおい』は、リュカにも届いていた。
 確かに美味しそうなチキンの匂いだが、無味無臭の毒と言うものもなくはない。とは言え、このヘル・マウンテンで植物を見た覚えもない。
「まあ、お兄さんがそういうなら、貰うけれど」
 近寄ったリュカの前に、ずいっと出てくるフライドチキン。
「……」
「いただきまーすっ」
 まだ警戒を拭いきれないリュカより早く、オズは何の躊躇いもなく大きく口を開けて、フライドチキンにかぶりついた。
「いただき、ます」
 オズだけ食べさせるわけにもいかない。リュカも、おずおずと噛り付く。
 カラっと揚がった衣がパリッと弾けて、肉を噛めば溢れる肉汁。
「「……」」
 むぐむぐ咀嚼しながら、無言で視線を交わす2人。
「おいしいっ」
「確かに。これは美味しい鳥肉だ」
 ぱぁっと満面の笑みを浮かべたオズに、リュカも頷く。フライドチキンもローストターキーも美味しいと認めざるを得ない出来栄えだった。
『コケッコ!』
『ケキョッコ!』
『ココケコ!』
 もっと食え――そう言わんばかりに、チキンとターキーを掲げて突き付けてくる、ケキリキターキー達。
「もっと食べていいの? わあい」
 無邪気に喜ぶオズを見ながら、リュカは決心を固めた。

 ――貰うもの貰った後できっちり倒せばいいんだな、と。

●ハンティング&クッキング
 チキン。ターキー。チキン。ターキー。
 放っておけば、無限に出てきそうな鳥肉攻め。
 きっと依頼主もこれにやられたんだろうと言うものを、オズが笑顔でもぐもぐ食べ続けている。
(「貰うもの貰ったら容赦なく倒す……つもりだったんだけどなぁ」)
 容赦なく倒すタイミングがつかめず、リュカは内心で首を捻っていた。
(「……本当に大丈夫かなあ」)
 胸中で呟くリュカに、オズが視線を向ける。
(「リュカっ。どうやって倒そうか?」)
 オズの目が、そう言っていた。
(「あ。大丈夫そう。良かった」)
 目的を忘れてなかったオズに安堵しながら、リュカが『灯り木』を構え直す。
「任せて」
 短く告げたリュカの指が、引き金を引いた。
 ――ターンッ!
『コケェッ!?』
 ――ターンッ!
『クキュ!!』
 ――ターンッ!
『クルックェ!?』
 銃声が響く度に、眉間を撃ち抜かれたケキリキターキーが、瀕死になる間も与えられずにひっくり返る。
「わあ、リュカ、すごいすごい」
「鳥は良く捌いてるから。倒すのは得意だから……」
 オズの賛辞と拍手を聞きながら、リュカは次のケキリキターキーに照準を合わせて、何度目かの引き金を引く。
 リュカの様に銃と言う飛び道具を使える旅人が、自然から食料を得ようと思ったら、鳥は獲り易い獲物と言えよう。
 ましてや――ケキリキターキーは、その手羽にチキンとターキーを持っているのだ。
『ケキョッ! ココケッケケケー!』
『コォッケコケココケケッコー!』
「願いの重さに負けない強さを」
 怒りの籠った荒々しい鳴き声あげて突撃してくるケキリキターキー達の方に銃口を向けて、リュカが短く告げる。

 凶星砕き――イノリヲココニ。

 ターンッ!
 響いた銃声は1つ。
 数多の敵を、悲劇を、乗り越える為の弾丸が、向かってきた数羽のケキリキターキーをまとめて撃ち倒す。
「飛ばない鳥は、ただの的だよ」
 熱々出来立てモードになろうが駆けてくるだけのケキリキターキーは、リュカにとって空を飛ぶ鳥よりも狙い易い獲物だった。
「……美味しくなる準備、してるみたい」
 手羽にかかるのも構わず超高温の油をフライドチキンに塗して突撃し、リュカに倒されるケキリキターキーの姿は、オズにそんな風に見えていた。
「あ! そっかっ」
 そういう事なら――オズの中に、何かが閃く。
「ガジェットショータイム!」
 パチンッとオズが指を鳴らす。
 だが――今回は、すぐは何も起きなかった。
「お兄さん。今度は何を――って」
 何も起きない事を訝しんだ直後、リュカはそれに気づいた。
 上空に作られていた、大きなものに。
(「なんかでっかいの出てた」)
「これで焼けばいいんだねっ!」
 オズの声と共に、それが降ってきた。

 ケキリキターキーを群れで焼けそうな、巨大なオーブンが。

(「そして潰した!」)
 リュカの目の前で、数羽のケキリキターキーが降ってきたオーブンの下敷きになって潰される。
「あれ? ここにいたケキリキターキーは?」
 自分がしたことに気づいていないオズに、リュカは黙ってオーブンの下を指さした。
「あっ……つぶれちゃってもだいじょうぶ?」
「……大丈夫、問題ない。敵だし」
 やってしまったかと不安な顔になったオズを安心させるように、リュカは頷く。
「よかった、さすがリュカだねっ」
「お兄さんの方がさすがだと思うよ……」
(「今日はなんか、驚いてばかりだな」)
 笑顔に戻ったオズの顔を見ながら、リュカは胸中で呟いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

生浦・栴
【壁】にて
連中は共食いする気は無さそうなのに
何ゆえ自ら揚がったり同胞を揚げたりするのだろうな
仕舞いには歓待されている気にさえなって来るのだが

とは云え高温の攻撃を受けるのは厳しそうだ
オーラ防御で防ぎながら
山羊のがある程度半殺しにするのを待つ
うむ、増えて来たな
UCの気配を感じさせるために魔鍵に触れながら弱った者にちらりと目を走らせよう
うむ、良いきつね色になってきたな
では魔力を上げて円盤状の氷の刃を作り適宜首を落としに行こう
倒した先から魔力で冷凍しUCで保存する
生きたまま瞬間冷凍すると、解凍した時に復活されても困るのでな

ああ、武器の方のチキンはいくつか取って置こうか
多少味見をしても差し支えなかろう


明石・鷲穂
【壁】
何言ってるがわからんが…チキンを掲げて並んでるってことは歓迎されてるよな?
張りきってメインディッシュ狩りと行こうぜ。
お招きありがとな!いただきます!

岩場は山羊にうってつけなんでな。
地形を利用して駆け回り、追いかけていくぞ。
掛かってきたターキーにはカウンターで迎撃。
武器はありがたく食べようなあ。
…美味いな!熱々で山登りに疲れた身に染みる。
栴もどうだ?たくさんあるし先に来た得ってことで。

ああ。
どんどん栴の冷蔵庫…じゃなくて魔鍵に吸い込まれてくな……諸行無常。
あれ解凍してもう揚げたら美味いんだろうな…漬け込んで照り焼きにするか…?燻製もいいよなあ。

合掌。



●知らぬが仏
『ククケクワーッ!』
『ココケッコッケコー!』
 ケキリキターキーの群れから、鳴き声が重なり響いている。
「ああ。武器も確か食えるという事だったな。幾つか取っておくか」
 鳴き声に合わせて上下するチキンとターキーを目で追いながら、生浦・栴はそれもこの後の足しにすることを思いついていた。
「山羊のが多少味見をしても、差し支えなかろう」
「いいのか? なら、武器はありがたく食べようなあ」
 栴から出た味見の許可に、明石・鷲穂の口に笑みが浮かぶ。
「それよりも、山羊の。連中の囀りが判ったりするか?」
「え? 何言ってるか? 全然わからん」
 栴に訊ねられた鷲穂は、あっさりと首を左右に振った。山羊や鷲と言ったいくつかの獣の混じった獣人である鷲穂ならわかりそうなイメージはあるが、動物の言葉が全てわかるというわけでもないらしい。
「山羊のでも、判らんか……」
「どうした、栴。何か気になるのか?」
 いつも以上に難しい顔になる栴に、鷲穂が問い返す。
「気になるというか……解せんのだ。連中は共食いする気は無さそうなのに、何ゆえ自ら揚がったり同胞を揚げたりするのだろうな」
 そういう風に、理論的に考えてしまうのは栴の性分なのだろう。
 そしてそう考えてしまうと――ケキリキターキーの行動は、謎が多くなる。
「そうさなぁ。これは聞いた話なんだが……」
 悩む栴に、鷲穂は廃寺にいた頃に聞いた話を、記憶を探りながら訥々と話した。

 山の中で老人が倒れていた。それを見つけた山の獣達は、自分に取れる山の恵みを取ってきて、老人に与えた。だが、うさぎだけは何も取れなかった。それでも老人の為に何かしようとしたうさぎは――自ら炎に身を投じた。己を老人の糧と差し出す為に。

「真逆、そんな自己犠牲の精神の現れだと?」
「さて。俺にはわからんが、多分違うだろうな。チキンを掲げて並んでるってことは歓迎されてるんだろうしな?」
 話を聞いてなお訝し気な栴に、鷲穂はカラカラと笑って告げる。
「成程。歓待されている気にさえなっていたのは、俺だけでなかったか」
 栴も、そんな気になっていた。。
『クォッケコォオォッ!』
『ケケーッケッケキョ!』
 ケキリキターキーが何やら不満そうに鳴いているのは、気のせいだろう。多分。
「歓迎に応えて、張りきってメインディッシュ狩りと行こうぜ」
「そうだな。壁の面子の分も歓待されるか」
 左の拳を握って開いてと繰り返す鷲穂に、栴も頷いて手に魔鍵を構えた。

●慈悲の拳
『クォケコッケキョキョー!』
 もはや何の鳥なのかもわからない鳴き声を上げて、ケキリキターキーが地を蹴る。手羽に持ったフライドチキンを頭上に掲げて――。
「よっと」
『クエェェェッ!?』
 鷲穂の伸ばした右手が、ケキリキターキーの頭をむんずと掴んだ。
『クケー! ココケコケココッケー!』
「お招きありがとな! いただきます!」
 リーチの差で届かないチキンを振り回すケキリキターキーを右手で掴んだまま、鷲穂は左の拳をぐっと握り締める。
「お前さんたちが、奪った鳥をそんな風にしたのが慈悲の心からなのか、俺にはわからんが……これは、慈悲だ」

 一切合掌・蓮解経――カマラ・カルマ。

『グゲッ!?』
 拳打の衝撃で、ケキリキターキーの骨が砕け、肺が圧し潰される。
『クェェ……』
「おっと」
 だらんと下がった手羽から落ちるフライドチキンを、鷲穂は拳を解いた左手でキャッチして――そのままガブッと噛り付いた。
 次の瞬間、鷲穂の目が輝いた。口に入れれば揚げ衣はカリッと砕け、肉を噛めば肉汁が口の中に広がっていく。
「……美味いな! 熱々で山登りに疲れた身に染みる」
 肉質も硬すぎず柔らかすぎず、喉の通りが実にいい。1つ食べ終わる頃には、鷲穂は身体の疲れが少し取れている気がしていた。
「もう少し食いたいなあ……栴もどうだ? たくさんあるし、先に来た得ってことで」
「そうだな。ついでに頼めるか、山羊の」
「良し来た!」
 栴の頼みに頷いた鷲穂の目が、ギラリと輝く。
 カコン、カコッ、と山羊の蹄が岩を蹴る軽快な音を響かせ、鷲穂はケキリキターキーに向かって駆け出した。
『キュエックェー!?』
『ケコッコッコッケ!?』
「悪いな、岩場は山羊にうってつけなんでな」
 その速度に、ケキリキターキーも驚いたように鳴き喚く。山の羊と言うだけあって、山羊には山の斜面に住まう種もいる。岩場と言う地形は、鷲穂に向いていた。
 だが――。
『クワッキョー!』
「お!」
 横から聞こえた鳴き声に、鷲穂が視線を向ける。
 先の拳の一撃で、鷲穂はケキリキターキーを倒しきってはいなかった。それ故に召喚されたケキリキターキーの横槍。
「これで2羽目!」
 それでも鷲穂が左で放つ蓮解経の拳の方が、速かった。

●鍵の中
「成程、確かに美味いな」
 鷲穂がケキリキターキーから奪って寄越したフライドチキンの味に、栴が思わず声に出して頷く。
(「これなら、壁の面子も好んで食らうだろう」)
「栴、投げるぞ!」
 胸中で呟く栴の耳に、鷲穂の声が聞こえてくる。
 栴が無言で頷いて小さな鍵を掲げると、フライドチキンが飛んで来た。ふわりと浮かんで位置を調整し、栴は鍵でフライドチキンを受け止める。

「大人しくして居れ」

 その瞬間、鍵にフライドチキンが吸い込まれた。
 ――Saved area。
 魔鍵『prison cell』触れた対象を、魔鍵の中に作られたユーベルコード製の【保冷庫】に吸い込む業。
 次々と、ケキリキターキーの武器が魔鍵の中に回収されていく。
『コォォッケコケッケ!』
『ケキョキョキョッ!』
 そんなことをしていて、ケキリキターキーが黙っている筈もない。
 オイコラ鳥肉返せと言わんばかりに栴に群がっているが、その攻撃は全て、オーラの壁に阻まれて栴に届いてはいなかった。
(「高温の攻撃を、まともに受けるのは厳しそうだからな」)
 所詮フライドチキンやローストターキーだと、侮る事はしない。
 そうしてまず武器を奪っている内に、倒れたケキリキターキーの数が増えていく。
「うむ、虫の息が増えて来たな」
 ――もう充分だろう。
「山羊の。もう良かろう。回収するから、周りのを頼む」
「はいよ!」
 栴の声に戻ってきた鷲穂が、栴の周りに群がっていたケキリキターキーを文字通り、山羊の足で蹴散らしていく。
 その様を眺める栴の掌に冷気の魔力が集っていた。
 冷気は凝縮され――丸く、鋭く、形を成していく。
「まずは――とどめだ」
 栴が放った円盤状の氷の刃――氷の戦輪が、蹴散らされたケキリキターキーの首を切り落とした。
「生きたまま瞬間冷凍して、解凍した時に復活されても困るのでな」
 虫の息のケキリキターキーも、栴は氷の刃で次々とどめを刺していく。
 そうしておいて――魔鍵『prison cell』の中へ、回収していく。
「ああ。どんどん栴の冷蔵庫……じゃなくて魔鍵に吸い込まれてくな……諸行無常」
 栴の魔鍵にケキリキターキーが吸い込まれる様を眺めていた鷲穂は、そっと目を閉じ、交わした拳を開いて、掌を合わせる。
 合掌。
 せめて往生を願って――。
(「あれ解凍して揚げたら、もうそれだけで美味いんだろうな……漬け込んで照り焼きにするか……? 燻製もいいよなあ」)
 なんて言う事は無くて、割と煩悩に満ちていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

白霧・叶
【桔梗】
お、こいつがご馳走―…じゃなかった、今回の本命か? なんて禍々しい奴らなんだ、一匹残らず食べ、じゃなかった。 駆逐してやるぜ

しかし困ったなぁ、割りと戦闘得意な二人がいるしここは最初は支援に徹するか。まっ、本領発揮ってところだな。【偵察】【索敵】を駆使して敵の動きを見極めて味方の支援、援護に徹しようか。 その時にUCを使いつつ少しでも有利な戦闘に―……ん? なんつうかみんな強くね? 俺の支援、いるか?

【戦闘知識】も使いつつディアナが弱らせた敵に止め。……摘まみ食いしたい気持ちはぐっと抑えて。

戦闘が終わったらいよいよお待ちかねだぜ。 お、焼くのは任せてくれていいぜ? さ、みんなで楽しもうか


ディアナ・ロドクルーン
【桔梗】
きたきた、飛んで火にいる夏のむ…冬の鳥。

あー、うんうん。鳥さんたちものすごくやる気に溢れているわ
お肉を口に捻じ込んでくれるって
(動物と話すで何となくわかってしまう人狼である)


「Principessa da strappare」で仲間の援護もかねて
これでばりばり攻撃していきましょう

ああ、いい匂いね。後でゆっくりと頂きましょうか
【恐怖を与える】で相手を威圧し、【マヒ攻撃】で動きを鈍らせていくから、狛ちゃんと叶さんにとどめを任せるわ

ふふ、狛ちゃん捌き具合がとても上手ね。じゃあ、私は下味付けていくから焼くのは叶さんにお願いしようかしら

アドリブ大歓迎


遠吠・狛
【桔梗】

さあ狩りの時間だよ!あ、よだれが(ふきふき)

開幕早々、【魔破封陣】で光の五芒星結界を戦場全体に展開するよ!
ケキリキターキーの動きを制限して鈍らせつつ、攻撃手段を封じて敵の混乱を狙うね。
叶とディアナと連携しつつ、敵があたふたしてる間に速攻!【ダッシュ】で近寄っては一匹ずつ【怪力】による【グラップル】で一撃必倒を狙うね。ぶん殴ったり蹴っ飛ばしたりで、敵を【吹き飛ばし】て戦闘不能にさせるんだよ。
タイムリミットきっかりでUCを解除で一丁上がり!あとは倒れてるケキリキターキーを集めてさばいて、噴き上がる炎でじっくり焼いちゃおうか!いい焼き具合に思わずおなかも鳴っちゃうねえ。

絡み、アドリブ大歓迎!



●ご馳走を、狩ろう
『クエーックエックワッ!』
『コーココケコッコケ!』
 喧しく鳴くケキリキターキーの群れは、【桔梗】の3人の前にも見えていた。
「こいつがご馳走―…じゃなかった、今回の本命か? 」
 鳴き声で判る活きの良さに、白霧・叶の口から隠しきれない本音が零れる。
「そうね。飛んで火にいる夏のむ……冬の鳥ね」
 ディアナ・ロドクルーンは悠然と微笑みを浮かべて叶に頷くが、内心はかなりそわそわしているのだろうというのが見て取れた。
 頭の狼耳が、そわそわぴくぴく動いているから。
「あー、うんうん。鳥さんたち、ものすごくやる気に溢れているわ。お肉を口に捻じ込んでくれるって」
 期待で忙しなく動いてしまう狼耳は、ケキリキターキーの鳴き声に込められた意図を、余すところなくディアナに伝えていた。
「わかるんだ、さすが」
「人狼だもの」
 感心して目を丸くする叶に、くすりと笑ってディアナが返す。
 そんな2人の隣で――。
「お肉……食べさせてもらえる……?」
 遠吠・狛の口が、緩み切っていた。
「「こまたん、よだれよだれ」」
「おっと!」
 叶とディアナの声が重なったツッコミに、狛もはっとなって口元を拭う。
「でも、持ってるの美味しそうで……」
 狛の言う事もわかる。
 ケキリキターキーが手羽で持っているフライドチキンも、ローストターキーも、食べれば絶対美味しいものだと、見た目と匂いで判ってしまう。
「いきなりこっちの食欲を刺激してくるとは、なんて禍々しい奴らなんだ、一匹残らず食べ――……じゃなかった。 駆逐してやるぜ」
 拳を握った手をわなわな震わせ、叶はじっとケキリキターキーの群れを見据える。
「こまたん、我慢よ。ここは我慢して、本命を狙うの」
「うん。狩りの時間だね!」
 屈んで目線を合わせて、じっと見つめて告げてくるディアナに、狛も表情をキリッと引き締めて頷いた。

●潤色の策の上で、黒と白の獣舞う
 【桔梗】の3人の気配を感じ取ったのか。
『コオォォォケコケコケッッ!!!』
『クワワワクワクワクワァッ!!!』
 フライドチキンかローストターキー掲げたケキリキターキーの群れが、俄かに騒がしくなった。
「最初は支援に徹するよ。2人の方が戦闘は得意だろう?」
 ディアナと狛に笑って告げて、叶が騒がしい群れに視線を向ける。
(「索敵は不要。布陣は……あってないようなもの。ディアナ曰く、連中はこっちの口にチキンとかを捻じ込もうとしている――あの体格で、か」)
 目を細めた叶の頭の中で、思考が巡る。
 ケキリキターキーの目的に関しては、ディアナが聞き取ったのが本当ならば、と言う仮定条件が付くが、叶はそこに関しての疑いは持っていなかった。
 偵察と索敵。及び、その情報から敵の布陣に対応する策と共に、策に共感した仲間の能力を高めるのが、叶の本領にしてユーベルコード。

 ――潤色の立案。

 仲間の能力を疑っていては、策を立案できる筈も、策に共感して貰える筈もない。
 信じて、実行を頼る事が、策士の領域だ。
「よし、策が出来たよ」
 頭の中で組み立てた策を、叶が言葉に出して告げる。
 尤も――今回に関して言えば、とても楽な作業だった。
「あの鳥たちは、俺達に肉を食わせたい。なら、投げて来るとは考えにくいから、接近戦を挑んでくるだろう。布陣らしいものもない。ただし、数は向こうが有利。
 だから、小細工は無用だ。力で数の差を覆せばそれでいい。ディアナと狛なら、出来るだろう?」
 策など要らない。それが叶の立てた策。
「あら。期待されちゃったわね」
「頑張ろうね!」
 ディアナと狛もそれをわかって、叶と3人、顔を見合わせ笑い合う。
「さぁ、そろそろ行動に移そうじゃないか」
 叶の言葉を合図に、ディアナと狛がケキリキターキーの群れに向き直った。
「74秒が限界だよ!」
「了解。70秒でカウントしとくよ」
 狛の上げた言葉の意味を察して、叶が頷き時計を合わせる。
 直後、狛の足元から光が溢れて、迸った。
「ここから少しの間、わたしたちの独壇場だよ!」
 光が描いた星形の文様――狛を中心とした五芒星が、狛の足元から広がっていく。ケキリキターキーの群れの後方に届くまで。
『クーワーァーワークーワー』
『コーケーケーコーケー』
 広がった光の上に踏み込んだケキリキターキーの動きが、急激に遅くなった。喋る口すらも遅くなっているのか、発せられる声が間延びしている。

 ――魔破封陣。

 五芒星は、狛の結界の術だ。
 狛と敵対する全ての敵の行動を阻害し、その全ての攻撃を向こうにする術。
 つまり光の中にいる限り、ケキリキターキーは逃げられないし、攻撃をすることも出来ないと言う事だ

 これほどの術、いかに猟兵でも何の代償もなしとは言わない。
 使える時間の限界がある。それを過ぎれば、命に係わるレベルでの。
 だから狛は可能に時間を告げたのだ。
「あと67秒」
「わかったわ」
 叶が告げた狛の限界時間に頷いて、ディアナが飛び出す。
 その手に携えるは、クリスタルオパールの白き刀身を持つ剣『Halos Lila』。その刀身の鍔元の彩にも似た輝きが、ディアナの身体に刻まれた刻印からも放たれる。
 直後、ディアナの駆ける速度が跳ねあがった。
「一閃」
 ケキリキターキーの横を駆け抜け様に斬り払い、ディアナはその場で身を翻す。
「一閃」
 地を蹴って飛び出し、斬りつける。
「また一閃」
 反転しては飛び出し、斬りつける。
『『『『『『『『『コ……コケーッ!?』』』』』』』』』
 ディアナが振るう刃が風を斬る音に遅れて、9羽以上のケキリキターキーの悲鳴が響き渡った。

 Principessa da strappare――キリサキヒメ。

 身体の刻印が輝く間、ディアナの攻撃は敵より9倍速くなる。狛の陣で動きが鈍っている今は、ケキリキターキーとの差はそれ以上であろう。
「無慈悲な歌が耳を裂く 高鳴る鼓動に身を任せ 足音高く舞い踊れ」
 ディアナの姿はもうケキリキターキーにはまともに見えず、詠う様な声と刃が風を斬る音だけが聞こえていた。音しか聞こえないという恐怖が、ケキリキターキー達の身体を竦み上がらせる。
 それほどの速さを生み出すディアナの業も、代償があった。
 けれどもディアナは仲間を斬らねば減る寿命を惜しまず、漆黒のドレスを翻し、白い刀身で描く三日月が如き剣閃で敵だけを斬って斬って、舞い続ける。
 まさにキリサキヒメが如く。
 そして、姫とは誰かが伴うものだ。
 仲間を斬るどころか、ディアナの業の効力は仲間にも及んでいた。
「お肉も早く食べたいし! 速攻!」
 狛は両手につけられた白い毛皮の手袋『犬狼の剛拳』の狼爪に犬狼の霊力を込めて、ディアナと同じ速度に怪力を加えて、ケキリキターキーに叩き込んでいく。
 黒い人狼と、白い狛犬。
 五芒星の上は、2人の獣の狩場となっていた。
「なんつうか、2人とも強くね? 俺の支援、いるか?」
 なんてぼやきつつ、叶も同じ速度の中で霊刀『散桜』を抜き、まだ体力が残っているケキリキターキーに刃を突き立て、とどめを加えていく。
 そして、狛の限界が近づいていた。
「あと5秒。――4――3――2――狛、解除!」
「一丁上がり!」
 叶の合図で、狛が魔破封陣を解除する。
 光が薄れ、五芒星が消える。斬られて散ったまま中空にとどまっていた羽毛が、ふわりふわりと舞い落ちていく。
『クワッケキョ――!』
 僅かに1羽、残っていたケキリキターキーが気勢を上げて跳びかかる。
「させないわ」
 その身体を、ディアナの剣が貫いた。

●さあ、お肉の時間だ
 もう周りに動くケキリキターキーはいない。他の群れがまだいても、他の猟兵達に任せてもいいだろう。あとは、帰って宴会に――。

「鳥はね、こうやって羽毟ったら、掻っ捌いて――」
「ふふ、狛ちゃん捌き具合がとても上手ね」
 狛が集めたケキリキターキーを手際よく捌いていくのを、ディアナが微笑み浮かべて眺めている。
「じゃあ、私は下味付けていくから焼くのは……」
「お、焼くのは任せてくれていいぜ?」
 味付け役を買って出たディアナの視線に、叶が頷き返す。
 帰って宴会で――なんて、3人が待てる筈がない。
 お肉を食べたい。
 それが、3人の原動力だったのだから。
 桔梗の3人は、帰るの待たずに、ヘル・マウンテンの外れ故に噴き出す炎を利用し、この場でケキリキターキーの調理を始めていた。
「早く焼けないかなぁ。思わずおなかも鳴っちゃうよ」
「焼ける間の音がたまらないわね。きっと良い脂のお肉よ」
「そそるなぁ。さっきから、つまみ食いしたくてたまらなくなってたんだ」
 もう、狛もディアナも叶も、頬が緩みっぱなしである。
 3人の食欲を止める者は、誰もいなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

イデアール・モラクス
【PPP】
おお、わざわざ鳥が自ら飛び込んで来るぞ…まさに飛んで火に入るナントヤラだ(魔術で言語は理解しているがあえて翻訳しない魔女)

・鳥カーニバル
私は魔術により『空中浮遊』しながら向かって来る鳥達へUC【魔剣帝の至宝】を『全力魔法』によるブーストで召喚される魔剣の威力を増し『高速詠唱』を用いて『一斉発射』と『乱れ撃ち』による二種の『制圧射撃』を敢行。
圧倒的な『範囲攻撃』を行い一部の鳥は『串刺し』にして串焼き鳥に、また一部は『切断』してローストチキンに、敵勢を『蹂躙』して解体し我が魔剣の嵐で鳥達を食べ易いディナーにしてやる。
「皆が食べ易いように切って、貫いて、バラバラにしてやるよ」

※アドリブ歓迎


天星・雲雀
【PPP】

「食うか、食わされるかの聖戦。己の信念に背を向けられない者達の魂の慟哭が食欲を誘いますね」

味付けと調理は、セシルさん達に任せて、自分は下拵えでもしましょう。
血抜きでがんばりますよ。

【行動】[絶無]に乗った状態から、UCで、敵の動脈を数カ所切り、サイコキャバリアで強化した念力で、敵の体内の圧力を急激に上げて、霧スプレーの様に抜きます。絶命する前に仲間を呼ばせる事も忘れません。無限湧きです。

技能【動物と話す】で、敵がどこから攻めてくるのか丸聞こえです。
たっぷり誘い出してヘルマウンテンを焼き鳥の山に変えます!

山頂から山肌を下る風は、いつしか焼き鳥の匂いに変わります。(人里の有無は不明です)


神代・セシル
【PPP】

「かわいそうなものは、きっと憎たらしいな所がある。」何故食べられるか、ケキリキターキーさんあなた達自身は一番分かると思います。(『世界知識』で話を理解してみる)

お料理の必要がありますか?私にもお任せください。その前に、食材を集めなければなりませんね。
UC【Windows of Heart】を常時発動にします。『見切り』で攻撃を回避してみて、魔力放出と伴い光の剣を最大出力化させ、とりを切り刻む。先輩方をサポートする場合があれば、支援します。

料理をするために先輩方から調理器具をお借りしたいです。

【アレンジ・アドリブ歓迎】


響・夜姫
【PPP】

【動物と話す】技能で聞いた。
「つまり。何もしなくても。勝手におかわりを持ってきてくれる」
おかわり自由。素晴らしい。暫く通いたい。

華焔の【誘導弾/2回攻撃/先制攻撃】で適当なのを撃ち抜いていく。
時々【範囲攻撃/制圧射撃】で雑に数匹まとめて焼く。
PPPメンバーへは【援護射撃】。
途中でおかわり召喚用に1羽捕獲しておこう。
【ロープワーク】で縛ればなんとかなる。たぶん。
物理的に痛めつけるよりは、精神的に。瀕死にさせる方向で。

「……1羽、持って帰りたい」
だめ?だめかー。残念。


ぺんぎんさんとめんちは後方で簡易補給所作って料理担当。
味方が捌いたり焼いたりしたお肉を調理して給仕。


フィーナ・ステラガーデン
【PPP】
さあ!ここからは戦争よ!(クワッ!)
というわけで戦闘は涼音と仲間に任せて私は下ごしらえをするわよ!
涼音がごねたら味が落ちないように斬る修行よ!とか何とか言って誤魔化し、ゴリ押しよ!

仲間が無力化させた鶏が出来たら私は鶏に馬乗りになって
両手で羽を引きちぎるように毟るわ!
んふふふー、観念なさい!良い子のネンネじゃないのよ!
おらあ!丸裸になりなさいよ!(ぶちぶちー)
終わったら流れ作業で料理しそうなメンバーに投げつけて次の獲物よ!

後でご飯食べれるけれど容赦はしないわ!
鶏が焼ければ片っ端から食べていくわ!
今!食べれる時に食べるべきよ!

(アレンジアドリブ大歓迎)


アイ・リスパー
【PPP】
「さあ、料理(ルビ:バトル)の始まりです!
行きましょう、皆さん!」

装甲がいい具合に熱くなった機動戦車オベイロンを駆り、鳥の群れを迎え撃ちます。

ミサイルランチャー、レーザーガトリング、荷電粒子砲を放ち、油と衣と水飴を纏った鳥たちを焼いていきましょう。
さらに【アインシュタイン・レンズ】で太陽光を収束させ、程よく焼き上げます。

「自分から料理されやすい姿になるとは愚かな……
さあ、焼く係は任せてください!」

後方支援役である私は、仲間が下ごしらえしてくれた肉を熱くなっているオベイロンの鉄板上で焼いていきます。

「さあ、召し上がれっ!」

絶妙な焼き加減になった肉を仲間たちに提供していきましょう。



●ケキリキターキーは相手が悪いと悟った
『コケケッコッコケッコー』
『ケーキョココケクエッ』
「おお、見ろ。わざわざ鳥が自らこちらに飛び込んで来るぞ」
 フライドチキンとローストターキー振りかざし、奇妙な鳴き声あげて行進してくるケキリキターキーの群れに、イデアール・モラクスがニヤリと笑みを浮かべる。
「まさに飛んで火に入るナントヤラだ」
 そうではないと言う事は、ケキリキターキーなりの意志と目的がある事は、イデアールは魔術で判っている筈である。
 判っていて――無視していた。
 まして、他のメンバー向けに翻訳する気など、この魔女には皆無である。
「……」
 一方、響・夜姫は目を閉じ、群れの声に耳を傾けていた。
 ミレナリィドールである夜姫は、野生のドラゴンを三食昼寝におやつ付きで従えたり、宇宙ペンギンなるペンギンを飼ったり、様々な世界で様々な生き物と触れ合う内に、動物の鳴き声を翻訳する機能を獲得している。
「成程。何もしなくても。勝手におかわりを持ってきてくれると」
 ついでに、自分の都合のいいように翻訳するという事も、夜姫は覚えていた。
「おかわり自由。素晴らしい」
 何なら通いたいくらいだと、夜姫は目を輝かせる。
「おかわり自由? 持ってきてくれる? 甘いわよ、夜姫!」
 そんな夜姫に、フィーナ・ステラガーデンの力強い声が届く。
「だめですか、お姉ちゃん」
「だめよ! ここからは戦争なのよ!」
 声の方に向いて首を傾げた夜姫に、フィーナがクワっと目を見開いて告げた。
『食うか、食わされるかの聖戦なんですよね。わかります』
「わかってるじゃない!」
 まだキャバリア――『絶無』の中から聞こえた天星・雲雀の声に、フィーナはびしっと親指立てて返す。
「つまり、おかわりを待つんじゃなく、狩りに行くのよ!」
「なるほど。らじゃーです」
 フィーナの剣幕に、夜姫がこくこく頷いた。

 猟兵には、ケキリキターキーの鳴き声を理解する者もいる。
 では、ケキリキターキーはどうなのであろうか。
 人語を解し、その嘴から片言で喋る鳥型オブリビオンもいると言うが、少なくとも今回のケキリキターキーは人語を発していない。
『クェェ』
『クワクワ』
『コケッコケ』
 だが、そんなケキリキターキー達が、顔を見合わせ何やら囀りあっていた。
「何を相談しているのか良くわかりませんが、きっと無駄ですよ」
 そんなケキリキターキーに、神代・セシルが声をかける。
 セシルは豊富な世界知識でケキリキターキーの鳴き声を、何とか理解していた。とは言え動物と直接的に話せているわけではないので、やや断片的だが。
「ケキリキターキーさん。あなた達は、ここで食べられます」
 彼らが認めたくなかったであろう現実を、セシルは淡々と突き付ける。
「何故食べられるのか。それは、あなた達自身が一番わかっていると思います」
 セシルは自分の言葉がケキリキターキーに通じているのか定かではなかったが、それでも続けた。
「わからないのですか? それは、あなた達が鳥だからです」
『……!!!』
 セシルの言葉に、ケキリキターキー達の嘴がぽかーんと開く。
「ケキリキターキーと言う鳥であること。そして鳥肉は食べられる肉である以上――もう食べられるのは、避けられない事なのです」
 淡々と続けるセシルの言葉が、その通りにケキリキターキーに届いていたなら。
 それはもう、死刑宣告も同じこと。
「弱肉強食です」
 平たく言えばこういう事になるのだから。

「全く、この人達は……」
 ケキリキターキーを食材としか見ていない仲間達の様子に、機動戦車『オベイロン』の中でアイ・リスパーは、1人小さく溜息を吐いていた。
「これから何をするか判ってるんですかね? ここはもう戦場で、あの鳥はオブリビオンだと言うのに」
『良かった。アイは流石に状況を正しく理解しているようですね』
「当然でしょう」
 安堵したような『オベイロン』のAIの声に頷いて、アイは車外スピーカーにつながるマイクのスイッチを入れる。
「さあ、料理(バトル)の始まりです! 行きましょう、皆さん!」
『今のバトルの言い方、料理の単語に降られたルビとして翻訳されたんですけど、何かおかしくないですか!?』
 車外に響いたアイの声に、オベイロンAIが車内でツッコミを入れた。

 ケキリキターキーを食材として見ていない者など、この6人の中にはいない。

●地獄を抜けた先で、魔剣が作る地獄
『ク、クワーッ、クワーッ!』
『クェッケックェックェ!』
 俄かにケキリキターキー達が、喧しく鳴き喚き出す。
「おっと。逃がしはしないぞ」
 しれっとその意図を理解したイデアールが、ふわりと浮き上がる。
 そのまま空中で、イデアールが軽く片手を掲げると、その頭上の空間が水面の様に揺らめいて、剣の切っ先が現れた。
「魔剣を統べる女帝の力……その一端を見せてやろう」
 イデアールが掲げた手を振れば、射出された剣が、先ずはケキリキターキーの群れの後方に、退路を塞ぐように地面に突き刺さり壁を成す。
「そら。どんどん行くぞ」
 イデアールは次から次へと、何もない空間から剣を放ち続けた。

 魔剣帝の至宝――アンリミテッドブレイド。

 何処かに在りて決して尽きぬ剣の宝庫より魔剣を召喚するイデアールの術。今のイデアールが召喚できる魔剣の数は、900を超える。
「鳥ども。我が魔剣の嵐でディナーの食材になるがいい」
『コッ……コケッコー!?』
 まさに剣の雨が、容赦なくケキリキターキーの群れに降り注いでいく。

●鈴の音響いて
 チリーン。
 そんな魔剣が雨と降り注ぐ中、フィーナの耳に鈴の音が聞こえる。
「久しぶりね、涼音」
 鈴の音と共に現れた和装の少女――涼音に、フィーナが呼びかけた。
『そうですね。今日は何を斬れ……と……』
 ここではない世界で、かつて妖刀に魅入られ、今はフィーナに喚ばれる霊となった女剣士は、挨拶もそこそこに視線を巡らせ、目を丸くして固まった。
 イデアールの術によって、剣が降り注ぐ光景を見て。
『な……なんですか、あのバカげた数の刃は』
「ああ。あれは気にしないで。アンタに切って欲しいのは、鳥の方だから」
『鳥……?』
 フィーナの言葉に涼音は眉根を寄せて、剣が降り注ぐ方に再び視線を向ける。そしてケキリキターキーの存在に気づいて――。
『嫌です』
 ぷいっと横を向いた。
『今は妖刀ではないとはいえ、刀をなんだと思っているのです。包丁ではな――』
「なら、包丁でも斬れるものを斬れないとは、言わないわよね?」
『――っ』
 言い終わるのを待たずに遮ってフィーナが告げた言葉に、涼音が押し黙る。
「包丁よりも綺麗に! そして味が落ちないように斬る修行よ! あとついでに降ってる剣を避けながらってのもいい修行になりそうじゃない!」
『むぐぐ……斬ればいいのでしょう、斬れば!』
 フィーナに言いくるめられ、涼音は刀を手に駆け出していった。

●魔剣が多すぎる
「ふははは! 串刺しか切断かくらいは、好きな方を選ばせてやるぞ!」
 空中に浮かんだイデアールは、どんどん魔剣を放ち続けていた。空から降り注ぐ魔剣はその数を増やし続け、放たれた魔剣は消えることなく飛翔し続けている。
 魔剣の数に物を言わせた、圧倒的な範囲殲滅。
 獅子は兎を狩るにも全力を尽くす――と言う言葉もあるが、まさにイデアールはそれを地でいっていた。
 だが――その全力が、強すぎる人もいたのだ。
『あの。ちょっと抑えて貰えませんか?』
「イデアール、ブレーキ。ブレーキ」
 そんなイデアールに、『絶無』に乗った雲雀と、その掌の上から夜姫が声をかけた。
「む? 何故だ?」
 追加で放ちかけていた魔剣を止めて、イデアールが2人に視線を向ける。
「イデアール、全力出しすぎ」
「なんだと?」
 夜姫からの予想外の言葉に、イデアールの眉がぴくりと動いた。
『あの勢いでは、仲間を呼ばせる前に絶命してますよ』
「イデアールの全力は、頭おかしい。精神的に瀕死にさせる暇もない」
 雲雀と夜姫は、それぞれにケキリキターキーを弱らせて、敢えてケキリキターキーを追加で召喚させようと企んでいた。
 だがそれには、魔剣の嵐と言えるイデアールの全力があまりにも強力過ぎた。
「鳥に鳥を呼ばせて増やすか。皆が食べ易いように切って、貫いて、バラバラにしてやろうと思っていたが、増やすというのは盲点だったな」
 ふむ、とイデアールは細い顎に指をあててしばし考え込む。
 気の向くままに破壊を齎す暴虐の魔女――そう呼ばれるイデアールだが、その実、定められたルールを破るという事も、実は少ない。
「わかった。幾らかそちらに回すし、こっちでも瀕死の鳥を作ろう」
 夜姫と雲雀の言葉を受け入れ、イデアールは剣の宝庫より放つ魔剣の数と勢いを、幾らか抑えるようになった。

●血の雨を降らす
「さて、やっと血抜きを始められます」
 絶無の中で、雲雀が小さく笑みを浮かべていた。
 血抜き。肉の臭みを取る為、食中毒の防止などの理由で生きた鳥を食肉に変える際に行われるものである。
 通常は吊るして行うのだが、そもそも今回は鳥自体が普通じゃない。
 だから、雲雀も普通の方法をする気なんて、なかった。
「確実に仕留める!」
 キャバリア――魔神『絶無』の掌から、目に見えない光粒子を凝縮した糸が放たれ、ケキリキターキーの一羽に絡みついて行く。
 スパーンッと光の糸が、ケキリキターキーの多分首っぽい所を切り裂けば、そこから鮮血が噴き上がった。
「ここから……絞ります!」
 雲雀は『絶無』の中で高めた念力を、光粒子の糸を通じてケキリキターキーの体内へと送り込んで、その血圧を高めていく。
 そうなれば当然、噴き出る血の勢いも強くなる。
 噴き出る血が、ケキリキターキーの命。
『クケッ……コケ……ケェ……』
 どんどん弱って行ったケキリキターキーの身体から、カクンと力が抜けた。
『クワッキャァァッ!』
 そこに響く、新たな怪鳥音。
「ああ、そこから来るのは判っていましたよ」
 血を抜かれ弱る中で瀕死になったケキリキターキーに喚ばれて現れた、新たなケキリキターキーに、雲雀が放った光粒子の糸が絡みつく。
『クワァァッッ!??』
 まるでそこに来るのが判っていたかのように。
 実際、雲雀は判っていたのだ。
 妖狐である雲雀は、本当はケキリキターキーの鳴き声を解しているのだから。
「さあ、どんどん血を抜いていきます。この調子で無限に湧かせましょう」
 光で捉えて、斬って、念力を送りこんで。
 いつしか、『絶無』の白い機体は、雲雀がケキリキターキーから絞り出した血で、真っ赤に染まっていた。

●炙って毟って
 ヒュンヒュンヒュン。
 夜姫が、頭上でロープを振り回していた。その先端は、輪になっている。
「そぉい」
 夜姫は振り回していたロープを、投げ縄の要領でぽーんと投げる。
『コケッ!? ケカー!』
 迫る投げ縄に気づいたケキリキターキーが、それを避けようと――。
『捕縛ですか。手伝いましょう』
 その意図に気づいた涼音が、ケキリキターキーの動きを阻むように刀を振るった。
「ん、ありがと。それ」
 涼音に短く礼を告げて、夜姫はきゅっとロープを引いてケキリキターキーに丸っとしたボディにきゅっと巻き付けた。そのままズルズルと、引き寄せる。
「捕まえた。けど。思ったより重い……」
 夜姫は直立させたダイペンギンの腕を柱に、ケキリキターキーを宙づり状態にする。
「めんち、おいでー」
 そして待機させていたどらごんを呼びつけて――。
「そこにふぁいやーして」
 宙づりにしたケキリキターキーの下に、火を噴かせた。
『コケェェッェェッッ!?』
 火炙りにされ、慌てふためくケキリキターキー。
「早くおかわり。早くおかわり。早くおかわり」
 焼かれる熱よりも、焼かれる恐怖で精神的に追い詰める事で、夜姫はケキリキターキーを追い込もうと言うのだ。
「お姉ちゃん言ってたし。おかわりを待ってるだけじゃダメだって」
 夜姫がこんな行動に出た原因は、フィーナの一言にあった。
『ケッキョー! ケキョキョコケーッ!』
「やった。おかわり、げっとする」
 目論見通りに現れた新たなケキリキターキーに、夜姫はロープを手に跳びかかる。
「えい、この、おとなしく……!」
『クワッコケェェェ!』
 縛ろうとする夜姫と、縛られてたまるかと言うケキリキターキーの格闘。
「どっせい!」
 そこに、フィーナが加わった。
「お姉ちゃん?」
「見てなさい、夜姫! 火炙りも良いけど、もっと手っ取り早い方法があるわ」
 驚く夜姫の前で、フィーナはケキリキターキーに馬乗りになる。
「んふふふー、観念なさい、鳥! 良い子のネンネじゃないのよ!」
 足で挟み込むようにしてケキリキターキーを押さえつけたフィーナは、空いた両手の指をわきわきさせて――。
「おらあ!」
『クケェェェッ!?』
 毟った。
「丸裸になりなさいよ!」
 ケキリキターキーの羽毛を。
 素手でひっつかんで。ぶちぶちぃっと。
『ク、クワァァァッァ!!』
「ないへほふはほ!(鳴いても無駄よ!) ひっほんほほはふむしっへはら、ふっへひゃるんははら!(一本残らず毟ってから、食ってやるんだから!)」
 ケキリキターキーが苦し紛れに突き出してきたフライドチキンを口で迎えに行って、フィーナは両手で羽を毟り続けた。

●心の窓を開いて
『コケッコォォォッ!』
『!』
 跳びかかってきたケキリキターキーが振り下ろすフライドチキン――を持つ手羽を、振り上げた刀で切り落とす。
『揚げ物と斬り合うのは、存外に新鮮な経験ですね』
 肉の脂は、刃を曇らせる。揚げ物と切り結べば、自ずと刀の切れ味は鈍る。
 敵の得物と己の得物を合わせずに斬り合う――涼音はこの状況でも、自分なりに剣の鍛錬になる道を見出していた。
 そんな涼音の視界の端で、何か尖がったものがひょこひょこと揺れている。
『あれは……フィーナの連れですね』
 セシルのとんがり帽子だった。
『クワァァッ!』
 ひょい。
『クォォオォケケェェェ!』
 ひょこん。
『ケッケキョー!』
 ひょい。
 ケキリキターキー達が振るうフライドチキンとローストターキーを、セシルはまるで背中に目があるかの様に、そちらを見もせずに屈んだり半歩動いたりと、無駄のない動きで避け続けている。

 ――Windows of Heart(ウィンドウズ・オブ・ハート)

 術が開くは心の窓。或いは、心の眼によって能力を高めたセシルは、ケキリキターキーの攻撃を見ずとも避けられるレベルになっていた。
 そうなるには、敵より視力が良いという条件がある。
 大抵の鳥類は、ヒトよりも視力が優れているという。ケキリキターキーの正確な視力はおそらく誰も知らないが――セシルの視力は猟兵の中でも相当に高いレベルであった。
 そして涼音の目から見て、それは達人の域の動きに見えた。
 だからこそ、解せない。
『なぜ、攻撃しないのですか?』
「今は食材を集める方が忙しいのです」
 涼音の疑問に、セシルが顔を上げる。
「切り刻む刃はもう充分そうですので、お料理も進めないといけませんから」
 その顔は、身体は、抱えた肉片から滴る紅い血でべっとりと染まっていた。
 セシルが拾い集めていたのは、主にイデアールの魔剣にぶった切られてそのままになっている、ケキリキターキーのお肉だったのである。

●熱々出来立ての風が吹く
「セシルさん、こっちです、こっち」
 血塗れになりながら大量の鳥肉を集めてきたセシルの耳に、アイの声が届く。
 こっち――と呼ぶ声に導かれ進むと、アイが『オベイロン』の中から顔を出した。
「フライパン代わりに使ってください。装甲、いい具合に熱くなってますから」
『フライパン代わり!? フライパン代わりって言い切りましたね!?』
 AIの声を無視してアイがセシルが抱えた鳥肉を一切れ取って、オベイロンの装甲に乗せれば、ジュゥッと肉が焼けだす音が響いた。
「これなら、一度に大量に焼けますね!」
 セシルも目を輝かせて、せっせと『オベイロン』の上に鳥肉を並べていく。
『…………』
 オベイロンのAIは、ついに黙り込んだ。

 退路は封じられ、どこにも逃げ場はない。
 ケキリキターキーは、もはや風前の灯だった。
 ならばせめて、一矢報いよう。そんな思いが、その鳩胸に去来したか。
『クォォッケクゥゥォォォッコォォォォォッ!』
 やたら気合の入った鳴き声を上げて、戦う意思を取り戻したケキリキターキーは、超高温の油を自分の手羽にかかるのも構わず武器に浴びせた。
 熱々出来立てモードになったのだ。

 ――それすらも狙われていたとも、知らずに。

「自分から料理されやすい姿になるとは愚かな……」
 ケキリキターキーのフライドチキンと手羽の表面温度の変化を、『オベイロン』のセンサーで把握して何が起きたか悟ったアイの声に、雲雀も絶無の中から返す。
「油を纏うなんて……あとは揚げるだけですよ」
 だったら、揚げてやろうじゃないか。
『セシルさん。ちょっと離れててくださいねー。ミサイルランチャーと、レーザーガトリング……あと荷電粒子砲も使いましょう』
 アイは再び『オベイロン』に乗り込むと、装甲の上の鳥肉はそのままに、搭載されている3つの火器を稼働させる。
「重力レンズ生成。ターゲットロック。光線発射準備完了」
「あ。まとめて一気に焼く? てつだうよ」
 さらに電脳魔術を行使するアイの意図を察して、夜姫が背中から何かを展開する。
 翼の様に広がったそれは、三対六門の十字架砲。

「オベイロン、兵装発射。アインシュタイン・レンズ、照射」
『ばーにんぐ、ちゃーじ。ふぁいやー』

 火器兵器。重力レンズで太陽光を束ねた高熱光線。機動浮遊砲盾【サバーニャ】から放たれた焔の華を纏った砲弾。
 熱と、光と、衝撃と、爆発。それらが合わさり、ケキリキターキーのいる一帯が、眩い光を伴う爆発に包まれる。
「風が……唐揚げと焼き鳥の匂いになっています」
 絶無の中から顔を出して、雲雀が鳥肉の香り混ざる風を浴びる。
 その香りにそそられたか、雲雀のお腹がくぅと小さく鳴った。
「己の信念に背を向けられない者達。その魂の慟哭が、食欲を誘いますね」
 断末魔の鳴き声すらかき消される爆発の中で焼かれていったケキリキターキーが最後に残した香に腹の虫を刺激されながら、雲雀が呟く。
 麓に人里があれば、この香りは届いているだろうか。
「これだけぶっ放せば、オベイロンの装甲もまたいい感じに暖まって、そろそろ焼けてると思いますよ! さあ、召し上がれっ!」
「アイー、セシルー。これも焼いといてー」
 砲撃と料理を同時にこなしてやり切った顔でオベイロンからアイが下りてきた所に、ブチブチ毟った鳥肉持ったフィーナが近づいてくる。
「あと、さっきから涼音が見当たらないんだけど、誰か知らない?」
「刀持った黒髪の女性の霊でしたら――あの辺で見ましたけど」
「あの剣士の霊なら、その辺で鳥を斬ってたぞ?」
 首を傾げたフィーナに、セシルとイデアールが答えて、指で同じ方向を示す。
 未だ光と爆炎が冷めやらぬ、その中を――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木元・杏
【かんにき】
夏梅と小太刀も合流!

んむ、ターキーが整列してる
わたしの第六感が告げる(周囲の匂いをくんくん)
これは美味し……強敵の予感

はっ、グレイローズ家皆さん
そしてメカたまこも
…ガーネットとまつりんの食す本気を見た感
シリンと真琴も…(ごくり)。これは負けられぬ
うさみん☆、【Shall we Dance?】
踊りでターキー達の動きをゆっくりにして、小太刀の矢を当たりやすくしよう
ふふ、ターキーの皆さん。わたしの口目掛け、かもーん
灯る陽光をナイフにし、用意したフォークを片手にディナーの体勢

手羽に胸、そして足も
皆で倒し、食すこそ美味しきターキーへの敬意

…!?
おにくが消えた!
夏梅、見た?とんだミステリー


ガーネット・グレイローズ
【かんにき】

なにやら食欲をそそる匂いがしてきたぞ…ふむ、あれが今回のターゲットか。よし…!

「今こそ甦れ、灰薔薇の血族よ…!」
腕を天に向けて突き上げ、ユーベルコードを宣言するぞ。
暗黒の空に巨大な宇宙船が出現、そこから降下してくるのは戦闘服を着た屈強な集団!
武装したグレイローズ家の幽霊兵団が現れ、飛行ユニットによる《推力移動》で空中を飛びまわる!
「これよりクリスマス恒例(嘘)の、フライドチキン掴み取り大会を行うッ!」
『HAHAHA! メリークリスマス!』

ふふ、杏の食欲に勝てるかな?夏梅の盗みの腕はお見事!私は夜の女王に乗って出撃、メカたまこEXと共に、まつりんの軍団と共同戦線だ!


九瀬・夏梅
【かんにき】
おや、皆来てたのかい。
追いついて合流。

忘年会前の一仕事……と思っていたが、食料調達だったんだねぇ。
だんだんこの山がオーブンかフライパンに見えてきたよ。

のんびりと皆の活躍を見て楽しむ。
ガーネットの質量は流石だねぇ。
祭莉と小太刀は、倒してるのやら調理してるのやら。
辛いのは、まあ、私はほどほどに好きだよ。
シリンと真琴も見事なもんだ。
杏は……よしよし、残念だったね。

苦笑しながら、慰めて。
それじゃ、とUCでタガーを一閃。
この相手なら、右手の一刀だけで充分かね。
盗み攻撃でフライド・チキンやらローストターキーやらを奪い取って杏へ。

こりゃ忘年会は御馳走だねぇ。


琶咲・真琴
【かんにき】
あ、杏姉さんが狩猟モードに入った

姉さんと夏梅さんとも合流したし
気合い入れ直していこう

これだけ多いと倒すにしても
食べるにしても大変ですね

詠唱系技能フル稼働でUC使用
魔力溜めからの限界突破な全力魔法で一気にターキーを薙ぎ払って
足止めしましょう

以後は動いているターキー集団を見つけ次第
先程と同様にUCを使っていきますよ

これでガーネットさんの家の人たちもチキンが取りやすくなるかな?
あ、フライドチキンをもっと香ばしくするなら幻畏白炎でやりますよー

ボクはフライドチキンにはウースターソースだなぁ
ケチャップはトマトだから無理っ(トマト嫌い

シリンさんやまつりん兄さんの方はどうなっているかな


アドリブ歓迎


シリン・カービン
【かんにき】

夏梅と小太刀も合流して、
いよいよお待ちかねの狩りの時間です。
いずれも活きのいい極上の鳥たち。
鮮度が落ちないよう確実に絞めねば。

精霊猟銃を構え【精霊の呼び声】を発動。
五感を研ぎ澄まし、精霊の声に耳を傾けます。
「…聞こえます」
旨味の精霊の声が。

活きの良い鳥が熱々出来立てモードになると、
その肉も油もよりジューシーに、より香ばしく、
食欲をそそる旨味に溢れて行く。
旨味の精霊の大合唱に陶然としながらも、
的確に急所を撃ち抜きます。

鳥たちの強化も私の強化には届かない。
「あなたには聞こえますか?」
あなた達の内から溢れる滋味の声が。
「あなたたちは、私たちの獲物」
今日ばかりは文字通りの意味になりました。


木元・祭莉
【かんにき】のクリスマスチキン!

わあい、ターキーが出たー!
おー、キレイに並んだね?
それじゃ、コッチも!

出でよー、メカたまこー♪(コケコケ91体)
それー、二体(ずつ)合体だー!
(46体に)(24体に)(14体に)(8体に)(6体に)(5体に)

額に1が1体! 2が1体! 8が1体! 16が1体! 64が1体!

5体揃って、クリメカたまこー!(今つけた名前)

ハイ、これ背負ってね。
(黒胡椒、柚子七味、みりん醤油、すりおろし林檎、ちりめん山椒の入った竹筒を渡す)
いけー、突けー、啄めー、蹴り飛ばせー!
あ、食べられる範囲でね? 汚しちゃダメだよ♪

ん、いい匂い!
美味しくなったかな?(ぱく)
うー、甘辛いー(涙)


鈍・小太刀
【かんにき】

やっと追いついた!
成程これは
飛ばず火(山)に居る冬の鳥?

危ない!
祭莉んへ飛ぶフライドチキンを横取……庇い、もぐもぐ
べ、別に、お肉に釣られた訳じゃないからね?(釣られた

まあそれはさておいて
胡椒も醤油もいいけれど大事な事を忘れてるわ(真顔で諭し
フライドチキンと言えばこれ、スイートチリソースでしょ!(ドヤ顔で勧め
え?食べた事無いの!?そんな勿体ない!!
ほら、騙されたと思って食べてみてよ
すっごく美味しいから!(チキン握り締め、力強く勧め

グレイローズ家の皆さんも張り切ってるね
掴み取り大会、私も負けないから!

うさみんのダンスに合わせ
おいしくなぁれの願いを込めて
白雨の矢を、えいっ!

※アドリブ歓迎



●鳥には鶏を
 ヘル・マウンテンの灼熱地帯の熱が薄れてきた頃、九瀬・夏梅は【かんさつにっき】の面々と顔を合わせていた。
「皆も来てたのかい」
「夏梅こそ、こんなところで会うとは」
 意外そうな夏梅の言葉に、シリン・カービンが目を細めて頷く。
 これも何かの縁。夏梅も加わって6人になった一行は、聞こえる鳥の鳴き声を頼りにヘル・マウンテンを進んでいった。
「なにやら食欲をそそる匂いがしてきたぞ……?」
 カラカラと乾いた風に混ざる匂いに、ガーネット・グレイローズが気づく。
「わたしの第六感が告げる。これは美味し……強敵の予感」
 周囲の匂いをくんくんと嗅いで、木元・杏がガーネットに頷く。
 第六感と言いながら、思いっきり嗅覚である。
 だが、誰もそこには突っ込もうとせず、足を動かして――見えた。
『コケケケクワックワー!』
『コケコケ、コケケケケクェェェェ!』
 気勢を上げるように鳴き声を響かせている、ケキリキターキーの群れが。
「わあい、ターキーが出たー!」
 見えたケキリキターキーの群れに、木元・祭莉の口から歓声が上がる。
「しかも、キレイに並んでるね?」
「んむ、ターキーが整列してる」
 祭莉の言葉に、杏がこくりと頷く。
「あれが今回のターゲットか。食べ応えがありそうだな」
「この距離でもわかります。活きのいい極上の鳥たちです」
 遠目にもわかるケキリキターキーの身の丸さにガーネットが瞠目し、鳴き声で判る活きの良さにシリンの中で狩人の血のようなものが騒ぎ出す。
「これだけ多いと、倒すにしても食べるにしても、大変ですね」
 ケキリキターキーの群れの規模に、琶咲・真琴だけは僅かに表情を曇らせた。戦いにおいて、数は力となり得るものだ。
「だったら、おいら達も増やせばいいんだよ!」
 だがそんな憂い顔の真琴に、祭莉がにぱっと笑って告げる。
「出でよー、メカたまこー♪」

 守護神降臨。

 コケコケコケと現れる、額に【1】と刻まれたニワトリロボが91体。
「量と質もってことで、2体合体だー!」
 祭莉の声で、メカたまこ軍団が合体していく。
 まずは半端な1体を除いた90体のメカたまこが2体ずつ合体して、【2】と刻まれたメカたまこ45体に。
 その45体が、また半端な1体を除いた44体で2体ずつ合体して、【4】と刻まれたメカたまこ22体に。
 さらにさらに、その22体で2体ずつ合体して【8】と刻まれたメカたまこ11体に。
 さらにさらにさらに、また半端になった1体を除いた10体で以下略して、【16】と刻まれたメカたまこ5体に。そこからさらに――。

 とまあこれでもまだ終わらないメカたまこの合体には、それなりの時間がかかる。
『クゥゥゥオォコォケッッッッコォォォッ!』
 合体が終わり切る前に、ケキリキターキーの気合入りまくった鳴き声が響く。
 見れば、1羽のケキリキターキーだけが、こちらに突進してきていた。
「むむ……まずはチキン」
 それを見た杏が、白銀の光の剣『灯る陽光』をテーブルナイフサイズに縮めて右手に構え、左手に持参したフォークを構える。
「あ、杏姉さんが狩猟モードに入った」
 すっかりランチかディナーと言った杏の様子だが、真琴によると狩猟モードらしい。
「まずは1羽だけか。杏の食欲に勝てるかな?」
「ふふ……ターキーさん。わたしの口目掛け、かもーん」
 任せて問題ないだろうと見守るガーネットの視線を受けながら、杏は食べる気満々でケキリキターキーの前に出て――。
『クワッ!』
 しかしケキリキターキーに、跳び越えられた。
「な、なんで!?」
 驚愕に目を見開いて振り向く杏の視線の先で、ケキリキターキーは合体中のメカたまこの群れの前で、さらに跳躍した。その先にいるのは――祭莉。

 合体するメカたまこのコケコケと言う鳴き声。
 合体の指示を出す祭りの姿は、ケキリキターキーにも届いていたのだ。
 それがケキリキターキーの目にどう映ったかは、鳥にしかわからない。
 案外、この鳥類の敵め、と思ったのかもしれない。だから1羽だけ逸ったか。
「まだまだ、メカたまこ合体――って、ええ?」
 祭莉が気づいた時には、メカたまこの群れを飛び越えたケキリキターキーが、フライドチキンを振り下ろしていて――。

「祭莉ん、危ない!」

 そこに新たな――そして聞き覚えのある声が響いた。

●真打登場?
 近づいてくる足音。2つに束ねた白灰の髪が揺れて、飛び出した影が祭莉とケキリキターキーの間に割り込む。
『クェッ?』
 ケキリキターキーの手羽から、フライドチキンが消えていた。
「……!? おにくが消えた!」
 杏の目が、再び驚愕で見開かれる。
「夏梅、見た? とんだミステリー」
「あー……杏。良く見てごらん」
 杏の様子に苦笑しながら、夏梅は指でケキリキターキーの後ろを示す。
 そこには――。
「助かったよ、コダちゃん」
「もー、祭莉ん。油断大敵よ」
 フライドチキンもぐもぐしてる鈍・小太刀(ある雨の日の猟兵・f12224)が、祭莉と掌パチンとハイタッチしていた。
「あれ、小太刀だ」
 その様子を見た杏の脳内で、点と点がつながる。
 つまるところ、間一髪で祭莉の前に飛び込んだ小太刀が、ケキリキターキーからフライドチキンを奪って難を逃れた、と言うわけだ。
「美味しいわね、このチキン」
「この場合、美味しいのは姉さんですよ?」
 やっと来たかと思えば、文字通り美味しい所を持って行った姉に、真琴が苦笑交じりに言いながらも、何処か嬉しそうに駆け寄る。
「ガーネット」
「どうした、シリン」
 合流を喜び合う姉弟の姿を眺めながら、シリンがぽつりとガーネットに声をかける。
「私達でもそこそこ苦労したあの山、小太刀がどうやって越えてきたと思います」
「それは……」
 シリンの問いに、ガーネットはしばし黙考し――。
「多分、アレだろう」
「やはりアレだと思いますか」
 答えを出したガーネットが、シリンと顔を見合わせ頷き合った。
「「うさみみ」」
 真実は、小太刀の記憶の中に。

●91は割り切れない
「ちょっとびっくりしたけど、メカたまこ合体完了!」
 フライドチキンの洗礼を浴びかけた祭莉だが、無事に考えた通りにメカたまこの合体を終えていた。
 今、祭莉の前には5体のメカたまこがコケコケ言っている。
「額に1が1体! 2が1体! 8が1体! 16が1体! 64が1体!
 5体揃って……揃って……、クリメカたまこー!」
「あれは、今考えたんだろうねぇ」
 名前の前に一瞬詰まった祭莉を見た夏梅の一言に、他のメンバーが揃って頷く。
「ハイ、これ背負ってね」
 そんな周りの様子を気にした風もなく、祭莉はクリメカたまこ1体1体の背中に、何やら竹筒を括り付ける。
 そして――。
「いけー、突けー、啄めー、蹴り飛ばせー!」
 祭りの声で、クリメカたまこが走り出す。
 何故か広がる柚子とリンゴと胡椒の香りに、ケキリキターキー達からも、パチパチと油が爆ぜる音と、香辛料の食欲をそそる香が漂ってくる。
「あ、食べられる範囲でね? 汚しちゃダメだよ♪」
 付け足す祭莉の声に、コケッとメカたまこのどれかから返事が返ってくる。
 こうして、美味しい匂いと音の中、戦いの火蓋が切って落とされた。

●灰薔薇の英霊達
「よし。まつりんが質を上げたなら、私は数で行くか。夜の女王は要らないかな」
 それを見たガーネットが、己の方針を決めた。
「今こそ甦れ、灰薔薇の血族よ……!」
 片腕をまだ黒雲に覆われた空に突き上げ、高らかに声を響かせる。
 すると、暗黒の雲を巨大な何かが引き裂いた。現れたのは、この世界には存在しない筈の空を飛ぶ巨大な物体――宇宙船。
『クワワワッ!?』
『クゥオッケェ!?』
 ケキリキターキーすら驚いて素っ頓狂な鳴き声が上がる中、宇宙船から揃いの戦闘服を纏った屈強な兵士たちが降下してくる。

 灰薔薇の旗の下に――アンダー・ザ・フラッグ。

 かつて銀河帝国とたたかったグレイローズ家の精鋭たちの霊を喚ぶ業。
 ある兵はガーネットの前で膝を突き、ある兵は飛行ユニットで空中に留まり、ガーネットに視線を向けている。
「ほう。この質量は大したもんだ」
 夏梅も瞠目するかつての英雄たちを見回し、ガーネットは――。

「これより! 我らがグレイローズ家のクリスマスホリデー恒例っ! フライドチキン掴み取り大会を行うッ!」

 しれっと大嘘を言い放った。
 そんな恒例行事があるなんて、ガーネットですら聞いたことはない。
『HAHAHA! メリークリスマス!』
 だが、兵士の皆さん、めっちゃノリ良かった。
『ウーラー!』
 470体の精鋭兵の霊が、空を飛び回ってケキリキターキーの群れに襲い掛かっていく。

●meat dance
 盛り上がるグレイローズ家の皆さん。
 そして計算して合体させたメカたまこ。
「ガーネットとまつりんの、食す本気を見た」
 シリンと真琴も何かをしようと狙っているようだ
「これは負けられぬ」
 ごくりと喉を鳴らした杏の瞳に、食欲の炎が灯る。
「うさみん☆、音楽スタート?」
 杏の手から離れたうさみみメイドさん人形うさみん☆が、ぴょんぴょんくるりんと、軽快に踊りだす。
 すると――。
『コォ……ケェ……?』
『クェ……クワァ……』
 ケキリキターキー達の動きが、パタッと遅くなった。

 Shall we Dance?

 うさみみメイドさんがダンスを楽しんでいない対象の動きを遅くする業。
 そしてメイドさんにとって――鳥がダンスの対象になる筈がない。あれは食材だ。
「ターキーの皆さん。もう、わたしの口にかもんなんて言わない」
 動きが遅くなったケキリキターキーを見据えて、杏が再び、光の剣のナイフと普通のフォークを構える。
 杏が狙うは、ケキリキターキーが手羽に持つチキンとターキー。
 これから仕留めるターキーは、皆で倒し、手羽に胸、足も残さず食すこそ美味しき鳥肉としての敬意となろう。
 ならば、既に調理済みの鳥肉は?
 無駄にせずに、食すしかあるまい。
 それにだ。

 ――美味しいわね、このチキン――美味しいわね、このチキン――美味しいわね、このチキン――。

 杏の頭の中には、さあ来いと待ち構えて跳び越えられた末に持ってかれたフライドチキンに対する小太刀の感想が、未だ消えずにリフレインしていた。
 この悔しさを消すには、食べるしかあるまい。フライドチキンを。
「今度こそ……お肉、いただく!」
 決意を胸に秘め、杏が地を蹴った。

●白き炎、蜃気楼が如く
(「杏姉さん、おかげでやり易くなりました」)
 ケキリキターキーの群れへ駆けだした杏の背中を見送って、真琴が胸中で呟く。
 その身体から、サイキックエナジーが白い炎となって溢れ出ていた。
 炎の色は、燃えた物質の反応か、炎の温度で決まる。
 どちらでも白い炎と言うのは珍しいものだ。
 自然には発生しない色の炎は、さらにあり得ない現象を見せた。
 真琴の周りの空気に――風に溶け込んだ。
 消えたのではない事は、ゆらゆらと蜃気楼のように揺らめく空気が証明している。そしてその揺らめきこそ、真琴が放つ業の骨子と言えた。

「蜃気楼の如く、虚像で惑わせよ――――楼炎白風っ!」

 真琴が魔力を限界以上にためて一気に解き放った白き炎の風が、ケキリキターキー達の間を吹き荒れた。
『コケコキョコココココココッ!?』
『ケキョ! コココケックエックエッ!』
 風を浴びたケキリキターキーが、走るのも忘れて、何やら挙動不審にきょろきょろと辺りを見回し始めた。プルプル震えてる個体すらいる。
「ほう。動かなくなったね。何をしたんだい?」
「幻覚を見せたのですが……」
 夏梅に訊ねられ、真琴は小さく首を傾げる。
 風に溶けて揺らめく白き炎は、それを浴びたものに幻覚を見せる。
 幻覚と言うものは、そのもののそれまでの経験――そのもの過去が生み出すものだ。故に対象がどんな幻覚を見るのかは、真琴にも使うまでわからない。
「何にしても、凄いおびえようだねぇ」
「……クマ」
 瞠目する夏梅に、真琴が短く呟く。
「冬眠前のクマが何でこんなところに……って言ってるのがわかりました」
 動物と話す力でケキリキターキーの鳴き声の意味を解した真琴が把握したのは、自然界の厳しさの一端だった。

●香辛料多すぎた気がする
 ダンスの対象にならずに動きが遅くなり。白い炎の風が見せるクマの幻覚で怯えて動かなくなったケキリキターキー。
 それでは、掴み取り大会としては――やや面白みに欠ける。
「やれやれ。のんびり皆の活躍を眺めて、適当に働いとこうと思ってたんだが……どうしてこうなったんだろうね」
 夏梅はぼやきながら、散歩でもしているかの様な足取りで歩いていた。たまに愛用の短剣『ルズパリアス』を持った右手を、無造作に振るう。
 刃振るう業はシーブズ・ギャンビット。
「さすがだな。見事な盗みの腕だ」
 そこに乗せた盗みの技術に、ガーネットが賛辞を贈る。
 斬撃が閃くその度に、ケキリキターキーの手からチキンかターキーが消えて、夏梅が掠め取ったそれを左手で無造作に放り投げていた。
『6時の方向!』
『動かないターキーなんてイージーゲームより、この方が面白いぜ!』
「む。負けない」
「私も負けないから!」
 そこ殺到するのが、グレイローズ家の霊の皆さん――と混ざってる杏と小太刀。
「お前たち、杏と小太刀に負けたらブートキャンプだぞ!」
『イエス、マム!』
 時折、ガーネットがグレイローズ家の霊達に発破をかける声が響く。
 そんな掴み取り大会が続く中――。
『コケ!』
『コケ!』
『コケ!』
『コケ!』
『コケ!』
 クリメカたまこが、ケキリキターキーを突いて啄み蹴散らしながら駆け抜けていた。
 その背中で、竹筒がカラカラと軽い音を立てていた。
「あ、空っぽになったね」
 その音で竹筒が空になったと気づいた祭莉が、クリメカたまこを停止させ、動けないでいるケキリキターキーから、ぱっとチキンを奪い取った。
「美味しくなったかな?」
 うきうきと期待で尻尾を揺らして、噛り付き――祭莉の表情が一変する。
「うー、甘辛いー」
 祭莉が期待したようには、美味しくなっていなかった。
「まつりん兄さん、どうしたんですか?」
「メカたまこに調味料乗せて撒かせたんだけど、美味しくならなかった」
 その表情を見て寄ってきた真琴に、祭莉はやろうとしてた事を告げる。メカたまこの背中に乗せた竹筒の中身は、その全てが調味料だったのだ。
「調味料って……何を使ったんですか?」
「黒胡椒、柚子七味、みりん醤油、すりおろし林檎、ちりめん山椒!」
 指折り数えた祭莉の答えを聞いて、真琴がぽかんと目を丸くする。
「……塩は? お砂糖は?」
「ないよ?」
 なんで要るの?みたいに祭莉に訊き返されて、真琴はますます目を丸くした。
 もしかしたら、祭莉は『料理のさしすせそ』を知らないのかもしれない。
「話は聞かせて貰ったわ」
 そこに、掴み取りに混ざっていた小太刀が話に加わってきた。
「祭莉ん。胡椒も醤油もいいけれど大事な事を忘れてるわ」
 小太刀が真顔で、何かを取り出す。
「フライドチキンと言えばこれ、ス――」
 がしっ!
 ドヤ顔の小太刀の手に『何か赤い調味料』が入った容器を目にした真琴が、小太刀の腕を掴んで止めていた。
「ま、真琴?」
「姉さん……それ、ケチャップじゃないよな?」
 若干、素の口調にすらなりながら、真琴が小太刀に訊ねる。腕を掴む手に込められた力が、ケチャップは許さないと告げていた。
 真琴のトマト嫌い、極まれり。
「落ち着いて真琴! これはトマト使ってないから。スイートチリソースよ!」
「トマト使ってないならいいです」
 いつもの様子に戻った真琴が、ぱっと手を放す。
「……あれ?」
 だが小太刀は別な意味で、首を傾げていた。周りの反応が、薄いのだ。
「え? フライドチキンと言えばこれ、スイートチリソースでしょ!」
「さて。どうだろうね。辛いのは、まあ、私はほどほどに好きだよ」
「まあチリ系は酒にも合うが……」
「ボクはフライドチキンにはウースターソースだなぁ」
 小太刀の視線を受けて、夏梅とガーネットと真琴が目を見合わせる。
 どちらも、フライドチキンと言えば、と言うほどかと言うと、素直には頷けないと言った風だ。そんな反応だけなら、まだ良かった。それは好みの問題だ。
「おいら、それ食べたことないかも」
「私もない気がする」
「食べた事無いの!? そんな勿体ない!!」
 だが祭莉と杏にそんな事を言われては、小太刀も黙ってられなくなる。
「ほら、騙されたと思って食べてみてよ! すっごく美味しいから!」
 掴み取り大会でゲットしていたフライドチキンとスイートチリソースを、小太刀は祭莉に差し出す。
「どれどれ?」
 2人は勧められるままにスイートチリソースをかけて、フライドチキンを一口。
「!? ピリッときた!」
 その辛さに杏は目を丸くして。
「あ、でも美味しい」
 辛みの中の美味しさに気づいて、祭莉が目を輝かせる。
「コダちゃん。これちょうだい! クリメカたまこに乗せて、もう一回撒いて来」
「――だめですよ」
 安易にチリソースを撒くと言い出した祭莉を、シリンの静かな声が遮った。

●Sprit of taste
「だめですよ、祭莉。調味料は足せば良いというものではありません」
 静かに、しかし有無を言わさぬ調子でシリンが告げる。
 祭莉ですら、思わずこくんと無言で頷く何かが、今のシリンにはあった。
「そんな事では、精霊が泣いてしまいます」
 料理で泣く精霊――?
 そんな精霊がいるのだろうか、と言う空気が流れる。
『ケ、ケ、コォォッケケキョォオオッ!』
 そこに、ケキリキターキーの鳴き声が響いた。何とか動こうとして超高温の油と衣を塗して、熱々出来立てモードになった鳴き声だ。
 そうなったのは、油弾ける香ばしい匂いでもわかる。
「あなた達がそう来るとこうなるのは、判っていました」
 元々活きの良かったケキリキターキーが熱々出来立てモードになれば、どうなるか。それをシリンは聞いていた。
 今もシリンには聞こえている。

 ――ね。肉も油もよりジューシーになったでしょう?
 ――香ばしくもなったよね?
 ――食欲をそそる旨味に溢れているでしょう?

「今も教えてくれていますから――旨味の精霊が」
 自身にだけに聞こえているであろう声に陶然としながら、シリンは告げた。

 旨味の精霊、と。

 シリンと同じ精霊術士でもある夏梅に、祭莉と杏と小太刀と真琴が『何それ』と言う顔になって視線が向けられる。
「そんな目で見られても、私だって全ての精霊を知ってるわけじゃないからね」
 だが夏梅も、説明を求める視線に肩を竦める事しか出来なかった。
 精霊についての解釈は、人によって様々だ。
 この世に存在するあらゆるものに宿る存在、自然物にのみ宿る霊的な存在、自然を構成しているそのもの足る存在――等々。
 その姿は誰にでも見えるものではなく、その声は誰にでも聞こえるものではない。
 故に旨味の精霊なる存在がいるのかどうかは、この時点ではシリンにしかわからないと言えよう。
「まあ、つまりだ。シリンがいるって言うんなら、いるんだろうさ」
「今回は随分と静かだと思ったが……とんでもない精霊の声を聞いていたな」
 夏梅とガーネットの言葉に、シリンは微笑を浮かべて黙って頷く。
 実際、静かに五感を研ぎ澄まし、精霊の声に耳を傾けていた。
 極上の鳥を、最高の状態で、鮮度が落ちないよう確実に仕留める為に最適な精霊の声を探して、深く深く、己と世界の奥へと意識を向けて――。
 ついに聞こえたのが、旨味の精霊の声。

「あなた達には聞こえますか?」
『クケーコケケ?』
 シリンの声に、ケキリキターキーは何言ってんだみたいに首を傾げるばかり。
 聞こえる筈もないか。
 自分達の内から溢れる滋味の声など。
「私には聞こえます。あなた達の内から溢れる滋味の声が。今があなた達が一番に美味しくなっているという声が」
 精霊は、己の声を深く聞いたものに力を与えるという。
 今も、聞こえる旨味の精霊の大合唱が、シリンに力を与えていた。

 精霊の呼び声――スピリット・コール。

 構えた精霊猟銃を、シリンは照準器を使わずに狙いを定めて、引き金を引く。
 眉間と、首。
 出血と肉の損傷を抑えつつ生命活動を止めて、熱々出来立てモードの状態のケキリキターキーの旨味を逃さないポイントを、シリンの弾丸が撃ち抜いていく。
「わかったわ、シリン」
 その様子を見て、小太刀が黒漆塗の和弓を手に取った。
「わかりますか?」
「精霊の声は聞こえないけど――シリンが美味しくしようとしてる事はわかる」
 訊ねるシリンに、矢を番えながら小太刀が返す。
 その答えに満足そうにシリンは頷いて、精霊猟銃を構え直した。
「仕上げは任せますよ、小太刀」
 旨味の精霊の声に導かれるままに、シリンは銃口を向け、引き金を引いていく。

「おいしくなぁれの願いを込めて――白き矢よ、射貫け!」

 その背中を見ながら、小太刀は真白い輝きを纏う破魔の矢――白雨を放った。
 白光を纏った矢は真っすぐ飛んで行く。直線状のケキリキターキーを射抜きながら。
「あなたたちは、私たちの獲物」
 今日ばかりは文字通りの意味になりました。
 動くケキリキターキーがいなくなったのを確認し、シリンは小さな笑みを浮かべてそう告げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『全部終わったら後は宴会だ!』

POW   :    食え! 飲め! 倒れるまで!

SPD   :    食べよう、飲もう。誰かに押し付けつつも目分量で。

WIZ   :    食べよう、飲もう。但し己の腹のお肉と要相談で。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●帰還~そして宴へ
 猟兵達がヘル・マウンテンを越え、その向こうでケキリキターキーを倒して依頼主のいる街に戻った時には、もう日が暮れて空の色が変わっていた。
「お、おい…………帰ってきたぞ!」
「まじか……ヘル・マウンテンから本当に帰ってきたぞ」
 帰還したという事実に、先ず街がざわつく。
 それだけでも、快挙なのだ。
 そして――。
「なんだ、あの鳥の量は」
「こりゃあすげえ……」
 猟兵達が持ち帰った、ケキリキターキーだった鳥肉の量に。
「この羽毛の色……この体格、間違いない! こいつらだ! この鳥の群れに、俺はやられたんだ……良く、良くやってくれた!」
 依頼主の壮年の冒険者も、それが依頼の討伐対象だと認める。
「この数を仕留めて、ヘル・マウンテンを踏破して、半日足らずだと?」
「しかも、なんかもう調理されてる感じのもあるぞ」
「ドラゴンスレイヤー……流石だな」
 ざわざわと、話が続く。
 猟兵達が成し遂げた事に対する、人々の感嘆の声が街をざわつかせる。
 その騒ぎの中、依頼主の男よりも少しだけ齢がいってそうな、身なりの良い初老の男が猟兵達の前に現れた。

「私が町長です」

 だろうな。
「これにて依頼は完遂となります。お陰様で、近くに魔物がいるという恐怖を忘れて年を越すことが出来る……」
 戦う力を持たない人々にとっては、ケキリキターキーでも脅威なのだ。
 まあフライドチキンだって喉に詰まらせたら危ないしな。
「ではしばし、身体を休めてくだされ。日が完全に落ちて夜になったら、お約束の宴会を始めるよう、酒場には伝えておきますので」
 人によって色々あった。
 結構時間のかかる仕事でもあったが――やっとこの時が来た。

 さあ。宴会だ!

=================================
 3章になりました。
 予告通りの宴会です。

 食べる、飲む、厨房借りて何かを作る、お好きにどうぞ。
 2章で取ってきたチキンにターキーに、ケキリキの肉、食べられます。
 それ以外にも、アックス&ウィザーズにありそうなものは大抵あります。すごーい高級品とか、ドラゴン肉とか珍しいものはないかもしれません。
 あとお酒とたばこは未成年だめです。

 ああ、あとルシルも酒場にいます。
 何かありましたら声かけ頂ければ顔出します。特になければ裏方してます。

 MSコメントの通り、3章から、宴会だけの参加も歓迎です。
 1、2章で頂いたプレイングで、3章ではお連れ様増えるのかな、と思われるものも見られたので、そのつもりでいますので。
 人数など! 気にせずにどうぞ!

 ただその代わりというのもなんですが、日常章で成功度低いのもあり、3章は再送前提の以下のスケジュールとさせていただきます。

 プレイング受付期間:公開時点~2020年中予定。
 再送:年明け、1/2(土)か1/3(日)から受付にしたいと思いますが、進捗状況次第となります。頂いたプレイングは保存しておきますので、再送はこちらから告知があってからでお願いします。

 なお、再送が三箇日だと困るという方がおられましたら、担当キャラ当てやTwitterなどでご連絡頂ければ、後ろにずらす方向で調整致します。

 忘年会と銘打っておきながら、完成は年明けとなってしまいますが、よろしくお願いいたします。
=================================
ルーファ・カタラ
※アドリブ、他者との絡み等OK
※カオス上等なので好きに動かしてください

お疲れ様ー!
あー働いたらお腹が空いてきた…!
食べ放題の宴会とか楽しみすぎる…!!
私は肉食だから肉を食べるよー
お肉!をくださーい!

シンプルに焼いたケキリキの肉も美味しかったけど色々な調理法で味つけされてる肉も超美味しーい!
これはいくらでも食べられちゃう…!
食べたいものがたくさんあって困っちゃうなー持ち帰りはできるのかな?
でもこんなに美味しいお肉を我慢して持ち帰るのは…

無理!!

全種類食べられるか挑戦しちゃおうかなぁ

食べ放題の宴会を用意してくれたルシルに感謝だねー
ありがとー!おかげで美味しいお肉がたくさん食べられて幸せだよー!


鳳凰院・ひりょ
POW
アドリブ歓迎

討伐も終わったか…それにしても、今回の事にかなりの人数の猟兵が参加しているみたいだね…
物凄い量の食材ががが…(苦笑

折角だし、俺も何か料理しようかな?出来なくはないのだし。
鶏肉を使った料理っていうと、一番好きなのはオーソドックスだけど唐揚げだな、うん、唐揚げ作ろう
折角の食材だから無駄には出来ないしね

さて、宴会が始まったらガンガン食べさせてもらおう
実際、相当お腹が空いている
だいぶ大立ち回りもしたし、実はちょっとこちらに向かう前に摂った食事、少なめにしてたんだよね
この宴会で美味しく料理を食べる為に我慢していたのだ!
周りにドン引きされるかもだけど、ま、今日は無礼講(?)さっ!


備傘・剱
こんな奴らでも、脅威だったんだなぁ…
と言うわけで、みんなで食べて、供養してやらなきゃ

そだてよう、もったいない精神、はぐくもう、命のリサイクル
調理開始、又も発動

今度は料理方面で発動して、異国風味の味付けでふるまってくれるわ!
他の世界の食材は持ってこれない、高級な食材は無いだろうが、料理のやり方ひとつでそれを上回る味に仕上げる事は出来るのだよ!
料理法に異次元の壁など、存在しないのだよ!

とまぁ、息巻いているが、口に合えばいいんだがなぁ…
あ、酒場があるのなら、酒もあるだろ?
カクテル作って、ふるまってみようか

…なんか、酒場の主人みたいなこと、してるなぁ…
いや、本業だけれども

アドリブ、絡み、好きにしてくれ



●猟兵達が本気を出した結果
 宴会の場となる食堂兼酒場には、厨房のすぐ近くに貯蔵庫があった。
 冷蔵庫と言ったものがない――少なくともどこのご家庭でもある家具感覚ではないだろう――この世界では、それほど珍しい事でもあるまい。
 食材の全てを、厨房に置いておくというのも現実的ではない。

 その貯蔵庫に、鳥肉が次々と運ばれていた。増えていた。
 どんどん増えていた。
 どんどこ増えていた。
「物凄い量の食材ががが……」
 貯蔵庫を埋め尽くしそうな程に増えたケキリキターキーの肉の量に、鳳凰院・ひりょは苦笑していた。
 ひりょだって、倒したケキリキターキーを幾らかは持って帰ってきた。無理なく持てる分くらいだが。
「今回の事、こんなに大勢の猟兵が参加してたのか……」
 一体、何人の猟兵が集まって狩ってきたら、これほどの量となるのか。

「すげえ……まだ出てくる」
「あんな小さな鍵にどれだけ入ってるんだ……」

 まあ中には、ユーベルコードまで使ってた猟兵もいたようなので、さもありなんと言ったところである。
 そして、その肉の量は、ひりょにとある懸念を抱かせた。
 ――料理しきれるのだろうか、と。
 この店に何人の料理人がいるにせよ、大変な事になるのではなかろうか。
「折角だし、俺も何か料理しようかな? 出来なくはないのだし」
 一人でも手が多い方が良いかもしれない。
 ひりょは貯蔵庫からケキリキターキーの肉を一つ掴むと、厨房へと向かう。
「――ちょっといいかな? 料理を手伝おうと思うんだけど」
「いいぜ! あるものは、好きなように使ってくれ!」
 顔だけ覗かせたひりょの問いに、あっさりと許可の言葉が返って来る。
 同じことを考えた猟兵は、ひりょだけではなかったのだ。

●ジビエの範囲が広い世界で
「悪いな。討伐して貰った上に調理まで手伝って貰って!」
「なに。折角狩った肉だしな」
 厨房では、既に備傘・剱が調理に加わっていた。
「帰って来た時わかった。こんな奴らでも、脅威だったんだなぁって。だからこそ、みんなで食べて、供養してやらなきゃな」
 猟兵にとっては数多く現れる集団オブリビオンで、剱にとってはオブリ飯の食材のひとつに過ぎなくとも、ここではモンスター。そこらの野山の鳥とはわけが違う。
 そう感じたからこそ、剱は自らも調理すると言っている。
 全てはケキリキターキーを無駄なく食べる為――。
「へえ、流石、竜殺しの冒険者! 話がわかる!」
「モンスターを食べる事に抵抗ねえか。腕の振るい甲斐があるぜ!」
(「……おや?」)
 だが、店の料理人達の反応は、剱の思っていたものと違った。
「脅威なのでは?」
「生きてりゃな」
「死ねば獣もモンスターも変わらない。食えるもんは食うだけだ」
 狩るのも大変だし、毒を持っている種もいたり、そもそも食えないようなモンスターもいる。だから人を選ぶ部分はあるのだが。
 ヘル・マウンテンの近くに住んでいるからか、中々逞しい人々のようだ。
「そちらこそ、話の分かる方達だ。そだてよう、もったいない精神、はぐくもう、命のリサイクル――と言う必要はないな」
 剱の差し出した手を、料理人の1人がしっかりと握った。

●サブリミナル効果疑惑
(「さて。何を作ろうか、だ」)
 食材を物色しながら、ひりょは胸中で思案していた。
 鳥肉は文字通り『山ほど』ある。
 これだけの鳥肉を使った料理となると――。
「一番好きなのはオーソドックスだけど唐揚げだな、うん」
 元々ニワトリが飼われている牧場なのだ。卵はあるし小麦粉――の様なものもある。
 作る料理を決めると、ひりょは忙しく動き始めた。
 鳥肉を一口大に切り分け、ニンニクとショウガ(っぽいもの)で下味をつけておく。
 大きな鍋に油をはって、火にかけておく。
 鶏卵を幾つか割って、かき混ぜ溶き卵に。肉をたまごに潜らせて、小麦粉(っぽいもの)をまぶして、油に投入。
「これはフライドチキンかな?」
 パチパチと油の爆ぜる音で気づいたか、料理人の一人が声をかけてきた。
「ああ、いや。これはフライドチキンじゃなくて、唐揚げって言う俺の故郷でよく食べられてる鳥肉料理……――あ」
 料理人に返しながら、ひりょの脳裏にはケキリキターキーの姿が浮かんでいた。
 正確には、その手羽に持っていたフライドチキンが。
 囲まれて、目の前を何度も通り過ぎた、フライドチキンが!
(「もしかして、唐揚げを作ろうと思ったのは……まあ、いいか」)
 そうだとしても問題はない。
 今、ひりょが気にするべきは唐揚げ以外にないのだから。

●振って振って振りまくって
(「唐揚げか……そう言えば、アレが見当たらないな。アレを増やすか」)
 何を作ればいいのか迷っていた剱は、ひりょが唐揚げを作り出したのを見て、ある閃きを得ると同時に、それに必要な調味料が見当たらない事に気づいた。
「……よし」
 ないなら作れば良い。
 鶏卵を幾つか割って、中身の卵黄だけを別の容器に移す。軽く卵黄をかき混ぜたところに植物性のオイルとフルーツビネガー、塩と胡椒を少々加えて混ぜ合わせる。
 ある程度混ぜたら、自前の別の容器に移して――。
「調理開始、発動」
 シュババババババッ!
 わざわざユーベルコードまで使って、凄まじい勢いで容器を振り始めた。
「他の世界の食材は持って来ていない! 高級な食材は無い! だが、料理のやり方ひとつでそれを上回る味に仕上げる事は出来るのだよ!」
 シャカシャカシャカシャカッ!
 めっちゃ振る。振り続ける。
「異国風味の味付けでふるまってくれるわ!」
 息巻く剱が作っているもの――それはマヨネーズだ。
 卵黄ベースのものを振って作るなど、普通のやり方ではない。だが、そこはそれ。剱が高めた料理と早業の技能を駆使すれば、人間の常識など打ち破れる。
「料理法に異次元の壁など、存在しないのだよ!」
「あの人は何をしているんだ……?」
「さぁ……?」
 振る手が見えないほどに速く瓶を振る剱を、料理人達は不思議そうに見ていた。

●肉食さんいらっしゃい
「食べ放題の宴会……ついにこの時が!」
 ルーファ・カタラが両手の拳をぐっと握る。
 待ちに待ったこの時だ。働いて減ったお腹が『早よ』と急かすのを抑えて待っていた時間がついに来たのだ。
「お肉を! くださーい!」
 席に着くのも待たずにルーファが上げた声が、宴会場の酒場に響き渡った。

●衣に感じる異世界
「おお……こりゃ美味いな」
 ひとりテーブルに着いたひりょが、目を丸くしている。
 前にあるのは自分で作った唐揚げと、こちらの料理人が作った鳥肉の揚げ物。
「こっちの方が、衣がふわっとしてるな」
 ひりょも気づいた衣の違い。
 それは剱のマヨネーズ作りで余った卵白をこちらの料理人が衣に使ったからだ。UDCアースなどでフリットと呼ばれる揚げ物に近い物だろう。
「さすがに本職の人達。美味いなぁ」
 感心しながら、ひりょは空いた皿を横に置く。
 そこには、既に食べ終えた皿が幾つも積み上がっていた。
 ひりょだって、お腹がすいていたのだ。
 ケキリキターキーに囲まれて、フライドチキンとローストターキーで攻撃され続けたのだから。
 それに、食べ放題だと聞いていたから、出発前の食事を少なめにしていたし。
「すいません、このフリットおかわりを!」
 もしかしたらこの世界の人々に引かれるかもしれないが、今日は遠慮なく食ってやろうとひりょは心に決めていた。
 だが、ひりょが引かれる事はおそらくないだろう。
 食欲だって、上には上がいるものだ。

●肉三昧
 鳥肉が出てくる。
 ケキリキターキーのお肉が、様々な見た目の、様々な香りを放つ料理となって、どんどんルーファの目の前に出てくる。
「おいしーい!」
 そして、ルーファの胃袋に消えていく。
「シンプルに焼いたケキリキの肉も美味しかったけど、どれももっと美味しい!」
 もっぎゅもっぎゅと、ルーファは満面の笑みで鳥肉を噛み締める。
「これもお勧めだぜ! お仲間さんが作ったもんで、美味いぞ」
 ルーファの前に、頼む前に出てきた皿が置かれた。
 皿の上にあったのは、ひりょが作った唐揚げと、それをベースに剱がタルタルソースを加えた南蛮チキン風である。
「フライドチキンは戦いながらも食べたけど、唐揚げだとまた変わるなぁ。こっちのソースかかったのも、また違ってて美味しい!」
 大きさ故に食べ易いのか、唐揚げと南蛮チキン風がすごい勢いでルーファの胃袋に消えていく。
「これはいくらでも食べられちゃう……! でも他のも食べたいしなぁ」
 ケキリキターキーも持っていたフライドチキンに、ローストターキーもあるが、それ以外のメニューも豊富なのだ。トマトベースのソースで煮込んだもの、ホワイトソースで鳥肉を煮込んだグラタン風、ハーブを効かせた塩焼き……etc。
「食べたいものがたくさんあって困っちゃうなー」
 次はどれを頼もうか。
 ルーファの中で、鳥肉が渦巻く。
「持ち帰りはできるのかな?」
 持ち帰りしにくそうな料理もあるが、出来そうな料理もある。
 だが――料理が持ち帰り出来るかどうかとは、別な問題があった。
「でもこんなに美味しいお肉を我慢して持ち帰るのは……」
 持ち帰りにするという事は、ここでは全部食べないと言う事だ。それは、肉食を自称するルーファにとって、美味しいお肉を我慢するという事に等しい。
 そんな事――。

「無理!!」

 言い切ったルーファを後押しするかの様に、腹の虫がきゅぅと鳴る。
「うん。やっぱりまだまだ食べたいよね。全種類食べられるか挑戦しちゃおうかなぁ……よし! グラタン風くださーい!」
 その音に、胃袋の限界に挑戦してみようという考えすら浮かんで、ルーファは即座にそれを実行に移す。
「良く食べるねぇ」
 そんなルーファの背中に、声がかかった。
 振り向けば、銀髪のエルフが感心したような微笑を浮かべている。
「食べ放題の宴会のおかげで、美味しいお肉がたくさん食べられて幸せだよー! ありがとー!」
 笑って鳥肉を頬張るルーファに、ルシルは微笑を浮かべて頷いた。

●変わらぬ夜
(「この世界の人々の口にもあったようで、何よりだ」)
 作ったマヨネーズを使った南蛮チキン風が、店の者からルーファに勧められるのを、剱はカウンターの中から眺めていた。
 いつもやっているように、シェイカーを振ってカクテルを作りながら。
 試しにやってみたら、珍しがられてしまったのだ。
 幾つかの酒類を混ぜたもの、と言う意味でのカクテルはこの世界にも存在しているのだろうが、シェイカーを使う様なものはその限りではないのかもしれない。
 少なくとも、この町ではそうなのだろう。
(「……なんか、酒場の主人みたいなこと、してるなぁ……いや、本業だけれども」)
 普段と変わらない事をしていると思いながら、剱はシャカシャカと軽快にシェイカーを振り続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木元・杏
【かんにき】
鶏肉の価値…(ごくり)
ん、具体的に価値を知らしめる
【お肉のチカラ】
わたしの秘蔵のお肉(背丈の倍程のリュックの中)を皆に振る舞う、それが代償
さあ、この宴会場の全ての人への料理を一気に作る腕前、かもん

大人数分のローストターキー、チキンカレー、ターキーサラダを素早く仕上げ
更にはコーンスープに、デザートのプリンをも

夏梅、お味見お願いしていい?
まつりん、こちらはあっちのテーブルの皆さんへ
小太刀。チリソース味のも作ろう

作り終えたらおいしい時間
ん、至福…
…はっ!
串に刺された、焼き鳥なる一品
おとうさんが言ってた、
これはお酒によく合う、大人の食すお肉、と

こ、これでわたしも今日から大人…(ぱくり)


琶咲・真琴
【かんにき】
無事にターキー狩り完了で宴会ですね

こんなに賑やかですし、呼ばない手はないでしょう
ねー
お祖父ちゃん、お祖母ちゃん(UC使用

ボクはメイドを活かしてまつりん兄さんと一緒に配膳のお仕事です!

え、お祖父ちゃんは食べるお酒呑むがお仕事?意気揚々と酒盛りに飛び込もうとしないでよっ
あ、お祖母ちゃんの笑顔で止まった

杏姉さんのやターキーのお肉もお祖母ちゃんに掛かれば色んな料理に大変身

姉さんはボクと一緒に皆に色々と配ろ?

夏梅さん用のノンアルも確保しよう

シリンさん達の串焼き、とても美味しいです
杏姉さんの料理を見て
そろそろボクも料理を教わりたいなと思いつつ、桜茶で乾杯

来年も、よろしくお願いします


アドリブ歓迎


木元・祭莉
【かんにき】で忘年&新年会!

ただいまーっ♪
いっぱい獲ってきたから、みんなで食べようー!

ルシル兄ちゃんも、お留守番お疲れさまー。
ターキー、元気だったー。いっぱい増殖したから、大漁だったよ♪

街のおいちゃんたちにもご挨拶して回るよ。
お待たせしましたー、いよいよ宴会の時間でっす!

くるり回って、舞妓さんにチェンジ!
ハイ、お料理の足りないトコ、ないですかぁー♪

異国の衣装でくるくるり。お給仕して回るよー。
お座敷遊びもできるんだよ、おいちゃんも一緒におひとついかが?

ちんとんしゃん、と楽しく盛り上がった後は。
未成年組と夏梅ばあちゃんには桜茶、酔っ払い組にはサムエンの米酒。

来年もヨロシクお願いしまっす♪(にぱり)


シリン・カービン
【かんにき】で宴会モードです。

見る人が見ればわかるでしょう。
溢れんばかりの旨味が封じ込められた、
この鶏肉の価値が。(ざわめく旨味の精霊)

「焼き場をお借りします」
サムライエンパイアで覚えた鳥の串焼き料理。
今こそ『焼き鳥』の真価を披露する時。
そのために私も本気を出しましょう。

五感を共有する自分の影と、完璧な連携で次々と調理。
塩、タレを基本に、祭莉と小太刀が持ち込んだ調味料もお好みで。

あらかた焼いたら、自分も宴会の輪の中へ。
一年の労を労い、ガーネット、夏梅、オジサンと杯を傾けます。
(夏梅はノンアルコール)
「いつか、あの子たちと呑むのが楽しみですね」
子どもたちの騒ぎを眺めながら、串を頬張ります。


鈍・小太刀
【かんにき】

旨味の精霊…
耳をすませば確かに聞こえてくるような(←一応シャーマン

も一人増えても良いかな?
忘年会だって言ったら
オジサンも来たいって聞かなくて

溜息と共に召喚すれば
日本酒を樽で抱え準備万端なオジサンが
でも働かざる者食うべからず
ほらほらさっさと手伝って!

働けば食べられるという事で
嬉々としてシリンの助手になるオジサン
槍と炎を串と炭火に持ち替えて…あれ?意外と才能あるかも?
むむむ、私も負けてられないし
私も料理の手伝いを…お皿の用意して欲しい?仕方ないなぁ(←料理下手

あ、大人組が飲み始めた!
でもこっちにだって
祭莉んの美味しい桜茶があるもんねーだ!(←無駄に張り合うお子様
皆で乾杯
勿論ルシルもね♪


ガーネット・グレイローズ
【かんにき】

秘蔵の肉…ちょっ、杏、こんなにお肉を貯蔵してたのかい?
ケキリキターキーの肉もあるし、これは精を出して食べねばなるまい。

集まってきたのはガーネット商会の船乗りたち。彼らにはテーブルを設営してもらったり、食器の用意を頼もう。
オジサン、てきぱき動くな……シリンはさすが狩人、鳥料理はお手のものだね。調味料は色々あるけど、何を試してみようかな。旨味の精霊、教えてくれ!
「さて、それでは乾杯だ」
深い赤の杯に酒を注ぎ、シリンと夏梅と共に祝杯を。色々な人に支えられて、なんとかやってきた一年。来年もひとつよろしく。
「いつか、あの子たちと一緒にか……それは楽しみだね」


九瀬・夏梅
【かんにき】
旨味の精霊、ねぇ……
確かに、この鶏肉には見える気がするよ。

焼き鳥ってことなら手伝いを呼ぼうか。
ツイナ、ちょいと頼むよ。
UCで呼び出した紅炎の大狼が炎を操りお手伝い。
無言のまま優しい青瞳が鶏肉を見守る。

私は料理が苦手でね。小太刀もかい?
ああ、味見なら手伝えるねぇ。

シリンやガーネットに酒を勧められるけれども、私は下戸でね。
酒に見えるノンアルコールで杯を合わせる。
今年も世話になったね。ありがとよ。
フューラーのもお疲れ。一杯どうだい?

祭莉から桜茶受け取り、また乾杯。
子供らと今から一緒に飲めるのが下戸の利点、かね(苦笑)
皆が酒を呑めるようになるのも楽しみだけれど、
少し寂しいかもしれないねぇ。



●価値を知る者たち
 貯蔵庫を埋め尽くしそうだった鳥肉が、さらに増える。
 さらにフライドチキンとローストターキーも混ざった肉の山。
「まあ、君たちの事だからね。遠慮なく獲ってくるだろうと……思っていたけれどね」
「ターキー、元気でね。いっぱい増殖したから、大漁だったよ♪」
 ルシルも驚きを隠しきれない量の肉を、木元・祭莉が笑顔で誇る。
「ま、まだ増えたのか……」
 宴会の準備にかかろうと肉を取りに来たお店の料理人の人達も、さらに増えていた鳥肉に目を丸くして驚いている。
 だが彼らは――驚きこそすれ、頭を抱える事はなかった。
「見ろ。まただ! どれもこれも、良い肉ばかりだ!」
「ああ。牧場の鶏はやられたが……それ以上かもしれない」
「こんな肉を使う機会に恵まれるとはな……!」
 長年、厨房に立ち包丁を握ってきた彼らは、ケキリキターキーの鳥肉として上質さを感じ取っていた。
「ほら。見る人が見れば、わかったでしょう? 旨味の精霊が囁く程の溢れんばかりの旨味が封じ込められた、この鶏肉の価値が」
 そんな料理人達の動向に、シリン・カービンが少し誇らしげだった。
 料理人達が目を輝かせる程、上質な鳥肉。
 それは、シリンが声を聞いた旨味の精霊の証明になるのだから。
「成程、旨味の精霊か」
 しかも、ルシルも何やらしたり顔で頷いている。
 なんだろう、旨味の精霊ってエルフには聞こえるんだろうか。
「旨味の精霊、ねぇ……確かに、この鶏肉には見える気がするよ」
「旨味の精霊……耳をすませば確かに聞こえてくるような」
 精霊術士でもある九瀬・夏梅とシャーマンでもある鈍・小太刀は、あの戦場よりは、旨味の精霊の存在を感じ取れた気がした。
「この鶏肉の価値……」
 木元・杏もシリンの言った言葉を反芻して、ごくりと喉を鳴らす。
 旨味の精霊が宿り、大人の料理人も認める鶏肉。
 その価値を活かす為には――。
「足りない」
「杏姉さん? どうしたんですか?」
 杏の短い呟きに気づいた琶咲・真琴が、首を傾げる。
「代償、取ってくる」
 真琴にそれだけ言い残して、杏は一目散に何処かへ駆けて行った。

●大人の交渉術
 一方その頃。
「準備は、我がガーネット商会に……」
「いえいえ、準備は我らでやりますから……!」
 ガーネット・グレイローズと、町の町長が何やら言い合っていた。
「あの量の鶏肉は見ただろう。調理で人手がいっぱいなのではないか?」
「それはまあ、そうなのですが……」
 料理以外の宴会の準備をしようというガーネットに、それは申し訳ないという町長が首を縦に触れないでいる。
「この宴会は、皆さまに対する依頼の報酬の一環なのですから……」
 それを手伝わせてしまっては、報酬にならない。
 ――それが、町長が頷けない一番の理由。
「町長。私が人手を出しても、報酬になるんだよ」
 ガーネットの言葉に、町長がどういう事かと首を傾げる。
「食器や飾りには、ガーネット商会の品を使う。それらは提供するので、このままこの牧場の店使ってもらいたい――ガーネット商会の名と共にね。わかるだろう?」
「ははあ、成程。そういうお考えですか」
 ガーネットの言葉でその意図に気づいて、ようやく町長も首を縦に振った。
「さあ、仕事だ。ガーネット商会」
 ガーネットが手を叩くと、どこからともなく商会の船乗りたちが現れる。
「まずはテーブルの設営。その後、食器の用意と、会場の飾りつけだ。どちらもガーネット商会のものを使うように」
『『了解でさぁ、会長!』』
 ガーネットの指示で、船乗りたちは動き出す。
 ガーネットが得られるのは、商会の宣伝の場。準備を手伝う人手を出すだけで、そんな店を得られるのなら安いものだ。

●ユーベルコードの無駄使いが多すぎない?
 思惑を通したガーネットによって、店の者の多くが料理に専念できるようになった。
 料理人たちが忙しくする調理場の中には、何人か猟兵も混ざっている。
 シリンも、その中の一人だった。
 大量のケキリキターキーの肉を、一口大に切り分けている。
 その傍らには、シリンに瓜二つの真っ黒な人影が並んで同じ作業をしていた。

 ――シャドウ・ダブル。

 闇の精霊が作った、シリンの分身。五感を共有しているだけあって、鳥肉を切る動きもシリンと全く同じである。
 鳥肉を切り分け終えたシリンは、闇色の分身と共に、同じ動きで同じ速さで、切り分けた鳥肉を4、5個ずつ、凄い勢いで串に刺していく。
「あ。も一人増えても良いかな?」
 シリンの作業を見守っていた小太刀が、そこに声を上げた。
「忘年会だって言ったら、オジサンも来たいって聞かなくて」
 溜息交じりに告げた小太刀の背後に、光が昇り出し、光の中から何か大きなものを担いだ大きな影が現れる。
 それは小太刀が良く召喚する鎧武者――通称、オジサンであった。
 今回は、樽を抱えての登場である。
 一応、サモニング・ガイストで召喚された古代の戦士の霊の筈なのだが。この霊、何しに来たんだろう。
「お酒飲む気満々だし!」
 抱えた樽の中身がお酒と気づいて、小太刀は内心頭を抱えた。
「でも働かざる者食うべからず!」
 だがすぐに気を取り直して、小太刀はオジサンにびしっと指を突き付けた。
「ほらほら、樽はガーネットに預けて、さっさとシリンを手伝って!」
 ぺしぺしと小太刀に甲冑を叩いて急かされて、オジサンはそれはそれは、惜しむ様子で樽を手放した。
「うむ。商会の力自慢に運ばせておこう」
 苦笑を浮かべたガーネットが呼んだ商会の人間が樽を運んでいくのを、オジサンは名残惜し気に見送って立ち尽くす。
「手伝ってください。焼き鳥を」
 だが、シリンの一言でオジサンの態度が変わった。
 焼き鳥は――お酒に合う。
 槍をぽいっと捨てて串を持ち、せっせと鳥肉を刺し始めた。
「ほう。これは……」
 その手際を見たシリンは、串打ちをオジサンに任せ、分身と手分けして味付けの方に作業をシフトする。最低でも、塩とタレの二種は作っておきたい。
「シリンはさすが狩人と言う手際だが……オジサン、意外にてきぱき動くな」
 焼き鳥陣の手際の良さに、ガーネットも思わず感心している。
「焼き鳥かい。なら手伝いを呼ぼうか――ツイナ、ちょいと頼むよ」
 焼き鳥ならば火がいるだろうと、夏梅はパチンと指をひとつ鳴らした。
 夏梅の傍らに、紅炎の大狼が現れる。
『……』
「……」
 何故こんな所に呼ばれたのだと言いたげに見上げるツイナに、夏梅は視線と顎をしゃくる動きだけでかまどを示す。
 ふぅ――紅炎の大狼が吐いた溜息で、かまどに火が灯った。
「エレメンタルファンタジア? 火の精霊で着火する人、割といるね」
 他にもそう言う事をした猟兵を知っているらしい口ぶりで、ルシルが呟いた。
 スパーンッ!
「ただいま」
 そこに、何処かに行っていた杏が勢い良く扉を開けて厨房に飛び込んで来た。
「杏姉さん、どこに行ってたんですか?」
「ん。これ持ってきた」
 真琴の問いに、杏は自身の背丈の倍もありそうなリュックを背中から降ろした。
「わたしの秘蔵の肉を」
「「「秘蔵の肉?」」」
 なんのことかと、祭莉と真琴とガーネットがリュックの中を覗き込む。
 中は、どこまでも赤かった。肉しか入っていないのだ。
 ――肉。肉。肉。ひたすら、肉。
「ちょっ、杏、こんなにお肉を貯蔵してたのかい?」
 その光景には、流石にガーネットも驚きを露わにする。
「あれ? これシャトー何とか?」
「シャトーブリアン」
 祭莉は、いつか別の世界で見たのに良く似た霜降りのお肉に気づいた。
 もしかして――?
「ケキリキの鳥肉の価値を、具体的に知らしめる。その為には、わたしはまだ料理の腕が足りない。だから――代償持ってきた」
 その瞳に決意を込めて、杏はリュックから、そのシャトーブリアンを取り出す。
「この秘蔵のお肉を……お肉を……み、皆に振る舞う、それが代償」
 まだ捨てきれていなかった躊躇いをぐっと振り切って、杏はお肉をまな板に載せた。

「さあ、この宴会場の全ての肉を使い、全ての人への料理を作る腕前、かもん!」

 ぺかーっ!
 杏が掲げた両腕が、謎の輝きに包まれる。
「とうっ」
 杏の両手が残像も残さない速度で振るわれ、ステーキ肉に切り込みが入って、食べにくさの元となる脂の筋が綺麗に取り除かれていた。
 しかも、絶妙な加減で塩胡椒まで振られる。
「次はスパイスを炒めて――」
 杏は大鍋を取ると、水も入れずにスパイスを鍋に入れて、焙煎し始めた。チキンカレーでも作ろうというのか。
「杏姉さん、すごい……」
 いつも以上に凄まじい杏の料理スピード。お肉を代償にしたお肉のチカラ――オニクパワーで得た料理の力に、真琴が羨望の眼差しを向ける。
(「そろそろボクも料理を教わりたいなぁ……でも今は」)
「杏姉さんも戻ってきて、賑やかですし、呼ばない手はないでしょう」
 羨望と願望を抑えて、真琴はいつも持ち歩いている2体の男女の人形を掲げる。今の杏の料理の速度について行けるのは、あの人しかいない。
「ねー。お祖父ちゃん、お祖母ちゃん」

 サモン・ディア・グランパーズ――敬愛するあなた達へ。

 2体の人形『familia pupa』から、人形に宿る2人の霊が現れた。
『……』
『……』
 人形の面影を持つ2人の霊は、それぞれに辺りを見回して――。
『……♪』
 男の霊の方が、何かに気づいた様子で厨房の外に向かおうとした。
「待ってお祖父ちゃん、どこに行くの……え? 食べるお酒呑むがお仕事?」
「ああ……さてはオジサンが持ってきたお酒の匂いに気づいたわね」
 行かせまいと前に出て首を傾げた真琴の隣で、小太刀が小さく溜息を吐く。
 だがこのお祖父ちゃんが、それ以上進む事はなかった。
『……』
 真琴と小太刀の間から、女の霊――お祖母ちゃんが笑顔で睨み利かせていた。
「さすがお祖母ちゃん。でも、お祖父ちゃんはボクが見てるから、お祖母ちゃんは杏姉さんを手伝ってあげて下さい」
『――』
 お祖父ちゃんに視線で釘刺しつつ、ぽんぽんと真琴の頭を撫でてから、お祖母ちゃんは頼みを受けて杏の隣についた。
「ん。よろしく。ローストターキーにチキンカレー、ターキーサラダ。デザートのプリンも作りたい」
 ぺこりと礼した杏に、真琴のお祖母ちゃんもぺこりと頷き返す。
 真琴のお祖母ちゃんのサポートを受け、杏の料理速度はさらに上がった。
「小太刀、チリソース貸して。夏梅、辛いの大丈夫って言ってたよね? お味見お願いしていい? まつりんは、出来上がった料理をどんどんテーブルに運んで」
 杏と真琴のお祖母ちゃんは、幾つもの料理を平行作業で作って行く。
「焼き場をお借りします」
 その後ろで、焼き鳥の仕込みを終えたシリンが、ツイナが火をつけた焼き場の上に焼き網を置いた。
「旨味の精霊がざわつく程の鳥肉を活かす為に、サムライエンパイアで覚えた鳥の串焼き料理――焼き鳥の真価を披露する時です」
 焼き網の上に、串に刺した鳥肉を並べていく。
 あとは、炎と向き合い、肉を炙り続けるのみ。
「……」
『……』
『…………』
 シリンもシリンの闇色の分身も小太刀のオジサンも、無言が続いた。
 目の前の肉の丁度良い焼き加減を逃さぬよう、3人とも凄い集中力だ。
『……』
 夏梅の紅炎の大狼も優し気な青瞳を向けて、見守っている。
(「あれ? オジサン、意外と才能あるかも?」)
 その姿に、小太刀は内心首を傾げていた。
 何しろ、シリンと並んで料理できているというのだから。
「むむむ、私も負けてられないし。私も料理の手伝いを……」
「姉さんはボクと一緒に皆に色々と配ろ?」
「うん。コダちゃんはこっちこっち」
 小太刀の中で燃えだした料理への情熱を察して、真琴と祭莉が両腕掴んで、ずるずると厨房の外に引き摺って行った。

●可愛い給仕たち
 ずらりと並んだテーブル。
 その全てに食器と皿、そしてアルコールノンアルコール問わずに様々な種類のドリンクの瓶が置かれていた。
 椅子を引いた時にぶつからないよう、テーブルの感覚、椅子の配置まで計算しつくされた配置だ。
「良くやってくれたな、諸君」
 その準備を済ませてテーブルに着いた商会員を、ガーネットが見回していた。
「では報酬の時間だ――頼むよ、皆」
「お待たせしましたー、いよいよ宴会の時間でっす!」
 ガーネットに促され、両手に料理の乗った大皿を持った祭莉が出てきた。

「ご覧じ入り奉り候へ」

 両手の大皿を置いて、祭莉がくるんとその場で回る。
 その姿が、一瞬で舞妓姿に変わった。
 白蓮の舞――フェスティバル・オン・ステージ。
 舞妓姿に変身しつつ、舞扇から白炎を放つ業だが、扇を開かなければただの舞妓姿に変身する業となる。
「ハイ、お料理の足りないトコ、ないですかぁー♪」
 くるりくるりと回りながら、祭莉はガーネット商会院たちの間を給仕して回る。
「お座敷遊びもできるよ、おいちゃんも一緒におひとついかが?」
 ちんとんしゃん、と口三味線を口ずさみながら、祭莉は料理を配って回る。
「はい、お料理どんどんありますからねー」
 祭莉に続いて、真琴も大皿持って奥から出てきた。その服装は、真琴が普段から着ているフリフリなうさ耳メイド服(膝上15cm)である。
 こういう場で給仕役するには、似合い過ぎている。
「……なんか、負けた気がする……」
 2人の後から料理持って出てきた小太刀が、祭莉と真琴の――弟分と弟の可愛い給仕っぷりに、謎の敗北感を感じて――。
「負けてられないし!」
 すちゃっと、銀のうさみみを被った。

●そう遠くない未来を想って
 深い赤色の杯に、独特の匂いを持つ透明な液体が注がれる。
「はいシリン」
「ありがとうございます」
 ガーネットから酒杯を受け取り、シリンが微笑む。
「オジサン――はもう始めてたか」
 小太刀の鎧武者と真琴のお祖父ちゃんは、酒樽挟んで既に一献始めていた。あれは放っておいても良いだろう。真琴のお祖母ちゃんの方は、呆れ顔だけど。
「夏梅は?」
「私は下戸でね」
 ガーネットから空の杯だけ受け取って、夏梅はノンアルコールの飲み物を注ぐ。
「さて、それでは乾杯だ」
 最後にガーネットが自身の杯に酒を注いで、掲げる。
「色々な人に支えられて、なんとかやってきた一年。来年もひとつよろしく」
「ええ、来年もよろしくお願いします」
「今年も世話になったね。ありがとよ」
 ガーネットの音頭に、シリンと夏梅がカツンと杯を打ち合わせた。
 シリンはぐいっと杯の中身を飲み干して、焼き鳥を一つ頬張る。酒精の熱さが通り抜けた口の中に、鳥の旨味が広がった。
「旨味の精霊の言っていた通り――美味です」
「これは本当に美味いな」
「茶にも合う肉だね」
 祈る様に天井を仰ぐシリンに頷きながら、ガーネットと夏梅も焼き鳥を頬張る。
「いつか、あの子たちと呑むのが楽しみですね」
 少し目を細めて微笑を浮かべて、シリンは給仕をしている祭莉と真琴と小太刀に視線を巡らせる。
「いつか、あの子たちと一緒にか……それは楽しみだね」
 ガーネットも釣られて視線を巡らせ――2人同時に、隣のテーブルに視線を向けた。
「んん?」
 視線を感じた杏が、口いっぱいにお肉頬張ったまま首を傾げる。
 料理で疲れた両手にフォークを握って、杏はお肉食べ尽くす勢いで食べていた。
「んん、至福……」
 そのお肉のいくつかは、料理の腕を得る為に代償にしたものもある。自分で代償にしておいて自分で食う――とんだマッチポンプである。
「杏は、酒よりお肉に育ちそうな気がしないか?」
「……言わないであげましょう」
 ガーネットもシリンも、そっと目を伏せる――そこに焼き鳥があった。
 杏に釣られたか、ガーネットもシリンも思わず焼き鳥を手に取る。
「……はっ!! それは!」
 それを見た杏が、ガタッと立ち上がって駆けよってきた。
「串に刺された、それは、焼き鳥なる一品では……」
 その視線は、焼き鳥にロックオンされている。
 杏は代償のお肉取りに行ったり、戻ってきたら自分で調理してたから、シリンが焼き鳥作っているところを良く見ていなかったのだ。
 そして、今ここで、その存在に気づいた。
「おとうさんが言ってた、これはお酒によく合う、大人の食すお肉、と」
 間違ってないが、偏っている。
「つまり、こ、これを食せば……わたしも今日から大人……」
「……」
「……」
 緊張した面持ちで焼き鳥を取ってぱくりと口に入れる杏に、シリンとガーネットが微笑を浮かべて顔を見合わせる。
 本人の想いとは裏腹に――まだ大人になる日は遠そうだ、と。

(「皆が酒を呑めるようになる日、か……」)
 焼き鳥に大人っぽさを求める杏に苦笑しながら、夏梅はちびちびと杯を傾け胸中で呟いていた。
 成長が楽しみだというシリンとガーネットに、頷ける部分もある。
(「けど、少し寂しいかもしれないねぇ」)
 子供たちが大人になるという事は、自分はさらに老いるという事だ。
 そんな一抹の寂しさを、夏梅は焼き鳥と共に呑み込んだ。
「あ、大人組が飲み始めてる!」
 そこに、小太刀の声が響いた。
「でもこっちにだって、祭莉んの美味しい桜茶があるもんねーだ!」
 何故か無駄に張り合う小太刀のお子様ぶりに、大人3人は顔を見合わせ苦笑した。
「小太刀と真琴は、ひょっとすると酒に強く育ちそうじゃないか?」
「素養はありそうですよね」
 既に樽を半分開けてるオジサンとお祖父ちゃんの飲みっぷりに、ガーネットとシリンは頷き合う。
「桜茶、入りましたー♪ はい、コダちゃん」
 聞きつけた祭莉が、くるくる回って仄かに桜香る桜茶を持ってきた。
「ハイ、真琴。アンちゃん。夏梅ばあちゃんも、桜茶いる?」
「ああ、それじゃ頂こうか」
 頷いた夏梅の前にも、祭莉が桜香る茶の杯を置く。
「酔っ払い組とオジサンは、木元村の地酒も後でどーぞ」
 どこに持っていたのか、祭莉は大人組の前に地酒の瓶をどっかと置いた。
「地酒……」
「素養有り、ですかね」
「あるだろうねぇ」
 祭莉も呑兵衛になるかもしれないと、大人達が思わず祭莉に視線を向ける。
「ん? どしたの?」
 何故か集まる大人達の視線に首を傾げながら、祭莉も自分の杯に桜茶を淹れていた。
「それじゃ――あ、ルシルも。ほら、こっち」
「ん? なになに。乾杯かい?」
 宴会の手伝いに回ってたルシルも、小太刀に呼ばれて輪に加わる。
「それじゃ、改めて――乾杯!」
「来年も、よろしくお願いします」
 小太刀と真琴の声を合図に、オジサンや祖父母の霊達も併せて、2桁に届く数の杯が一斉に掲げられた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サンディ・ノックス
【壁】
宴会にお呼ばれ、とても楽しみ

わぁ、チキンがいっぱい
美味しそう
保管されていたケキリキを見て
ああ、これ彼らの持ち物か
美味しそうって思ってたんだよね
以前依頼で戦って存在を知ってるので微笑む
問題ないよ、前は味わう余裕が無かったし

ケキリキの調理を酒場に交渉する栴さんの手際の良さに感心しつつ
地獄の配膳にも顔色一つ変えず
マイペースにチキンを食べて時々サラダやパンを戴く
食べているだけ、でも盛り上がった中にいると楽しい
それにきっとお祭り騒ぎは始まるさ

ん、腕相撲?いいね、やろう
と腕まくりをして
手加減しないよ?とにっこり
鳥獣戯画さんにも鷲穂さんにも負ける気はしない
(隠しているけど本性は自信家)(結果はお任せ)


末代之光・九十
【壁】コンパニオンすっるよー!
え?何でって?ノリで。
ユベコで増えて人手も多め!
ってもコンパニオンって何するのか全然知らないけどー!
取り敢えず可愛い恰好して来ました特に菊花。主に菊花!
見て見てこの子滅ッ茶苦茶可愛いよ。ほらほら崇め讃えろよ(命令形)

調理も手伝うよー。焼くのだけは得意なんだ。狂った様な大量のバターと大蒜を後先考えずにぶち込んで焼こうね。匂いとかカロリーとか知らん。知らん。

配膳とお酌もするよー。おら食え食え。呑め呑め。
特に栴と鷲穂は働いた分超食べなきゃ!体重の倍位。
え?もう良い?
はは何言ってるんだよまだ行けるでしょー
(終わりなく勧めて来る地獄(胃容量的な意味で)のコンパニオンその2)


明石・鷲穂
【壁】
お互いお疲れ様だな、栴。
ん?考えてたこと?
……ああ、食べ方か!
唐揚げ、照り焼き、燻製!
問題は誰が料理するんだってことだが…。

菊花と九十の料理スキルに感謝。
可愛さ加えて料理上手。疲れも吹っ飛んじうよなあ。二人も座って食べようぜ。
それに酒も……大半が未成年か!?
俺は遠慮なく頂いちまうぞ。
ギガは素面か?飲めるだけ飲もうなあ。な!(注ぎ足し)
今年も早かったなあ。年の暮れにチキンな敵に会えて…強烈な思い出になったな。今食ってるわけだが。

余興か!余興に腕相撲ってのは良いな。
任せろ……サンディの笑顔が怖いんだが!?
フードをファイトしたギガ、代わりにどうだ…?


八重垣・菊花
【壁】カロリーは力!カロリーが高いものは美味しい!これは自然の摂理やで!
というわけでやな、宴会準備が出来上がったこちらに九十ちゃんとお邪魔やで。
可愛いうちらのチキンが食えへんとは言わせへんよ(地獄の(ように可愛らしい)コンパニオンその1が現れた)
まずはケキリキを華麗に捌いて唐揚げ!(生姜大蒜醤油味)揚げ物は揚げたてが一番美味しいんやで!
まずは功労者の生浦さんと明石さんに!たーんとお食べよし!
それからサンディさんとギガちゃんやな、ギガちゃんはめっちゃ食べるからな、わんこそばならぬわんこ唐揚げや!
さすがうちの彼ぴっぴ(超仲良しの意味だと思ってる幼女)食べっぷりが最高なんよ。
あ、うちも食べるー!


桜田・鳥獣戯画
【壁】
鶏が美味いと聞いてな!オブリビオンなら食える!!
栴、鷲穂、誘いに感謝するぞ!まず仕事をしてきた貴様らを飲ませる!!
鷲穂はいける口であろう?いやキャラ的に絶対そう!よし飲め!!
ふははは栴は葡萄ジュースだ!! 熱い土地であったようだな、二人ともおつかれだった!

私は喰い専だが力仕事あらば受け持つぞ!!酒場の定番行事「腕相撲」などはないのか!ない?でしょうね!!
忘年会、新年会どちらでも良い。生傷絶えぬ猟兵仕事、皆と生きて新しい年を迎えられるだけでめっけものよ!
今年も良い年であるよう、祝いで福を呼ぼうではないか!と仲間を飲ませて回る!!
私か!やめておけ、私は飲み過ぎると絡むだけ絡んで寝るぞ!!


生浦・栴
【壁】
美味いのは保証するが獲り過ぎたな
保存食用にある程度残し
会場内で消費できそうな量を出す
温め直し等は店の調理場の者へ
の前に山羊の、先ほど肉を見て何か考えておらなんだか?
…という訳で燻製以外への調理も願えぬだろうか
半分は店へ提供する条件で交渉しよう

酒は数年先かと果実水を受取るが
二人を見るに成人したら両脇を固められる気しかせぬ
先に成人するノックスの場合を見て対策しよう
ノックスのは此れは二度目か?飽きておらねば良いのだが
カワイイの二人は無理を云うな
フューラーのも一緒にどうだ
今年は料理不要で助かった
その分の礼と云う事で

腕相撲は俺は無理だな
山羊のの領分では?
ノックスのも参戦するか
では俺が勝敗を数えよう



●自重しなかった結果
 鳥肉、鳥肉、鳥肉。
「わぁ、チキンがいっぱい」
 サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)も驚く程の量の鳥肉は、現在進行形で貯蔵庫の中に増え続けていた。
 生浦・栴が小さな鍵――魔鍵『prison cell』の中から、ケキリキターキーの肉を放出しているからである。
「すげえ……まだ出てくる」
「あんな小さな鍵にどれだけ入ってるんだ……」
(「こんな所か」)
 町の人々の感嘆の声を聞き流しながら、鍵からの放出をやめた。
「あれ? もう終わりか? もっと取ってなかったか?」
 それを眺めていた明石・鷲穂が、鍵をしまう栴に声をかけた。
「これ以上は貯蔵庫が狭くなりすぎるだろうからな。これで十分だと判断した」
 鷲穂が気づいた通り、栴は魔鍵の中から肉を全部出し切ってはいない。
 むしろ栴の最初の想定よりも、鍵の中には肉が残っていた。
「少々、獲り過ぎたな」
「まあ足りないよりいいだろ」
 自嘲気味な栴の呟きを、鷲穂があっさりと笑い飛ばす。
 想定より肉が余ったところで、別に栴も鷲穂も損をするわけでもない。栴の魔鍵の中に入れたままにしておけば、当分は持つのだから。
「これでもまだ遠慮したとか、貴様らどんだけ獲ってきた。ご苦労だったな!」
 桜田・鳥獣戯画(デスメンタル・f09037)が、栴の方と鷲穂の山羊の背中をバシバシと叩いて労をねぎらう。
「さて。まずは仕事をしてきた貴様らを飲ませるぞ!!」
「一寸待て」
「待った待った」
 そのまま酒場の方へ歩き出そうとした鳥獣戯画を、当の栴と鷲穂が止めた。
「ん? お? どうした貴様ら」
「食べ方をな、考えたんだ! 唐揚げ、照り焼き、燻製! とか色々な」
 止められ首を傾げる鳥獣戯画に、鷲穂は脳裏に浮かんだ鳥肉の食べ方と言うか調理方法を指折り数えて告げる。
「先ほど、肉を見て何か考えておったと思えば、そういう事か……」
「他はともかく、燻製は時間的に厳しんじゃないかな?」
「だよな。大体、問題は誰が料理するんだってことだが……」
 それを聞いて軽く嘆息する栴と苦笑するサンディに、鷲穂も腕を組んで頷く。
 だがその問題の答えは、栴に当てがあった。
「料理の事なら料理を生業とする者。店の料理人に頼むのが最適解であろうさ。他に頼みたい事もあるし、厨房に――」
「まあ待て。そういう事なら、丁度いいものがいるぞ」
 踵を返して厨房に向かおうとした栴と続こうとした鷲穂の背中に、今度は鳥獣戯画がストップをかけた。

●カロリー系女子
「うお、すげえこの匂い」
 厨房に入るなり鼻にツンと来た匂いに、鷲穂が思わず声を上げる。
 立ち込める独特の匂いの中で、栴の見覚えのある顔が2人、忙しそうにしていた。
「こんなところで何をして居る」
「なにって、調理の手伝い」
「うちは九十ちゃんのお手伝い!」
 栴に訊ねられ、末代之光・九十(何時かまた出会う物語・f27635)と八重垣・菊花(翡翠菊・f24068)が振り向いた。
 調理なのは、厨房にいるのだからみればわかる。2人の手がニンニク塗れであることからも、それは明らかである。
 ただ、栴も鷲穂も2人が厨房にいると思っていなかった。
「栴と鷲穂こそ、どうしたの? ここは僕と菊花に任せなよ」
「サンディさんとギガちゃんと先に飲んでるんじゃ?」
 逆に九十と菊花も、2人が厨房に来るとは思っていなかったのだろう。
「二人とも、料理の事で厨房に用があると言うからな。知った顔の方が話が早かろうと連れて来たぞ!」
「ちょいと料理頼みに来たんだ。唐揚げと、照り焼きを」
 事情を伝えた鳥獣戯画の後に、鷲穂は2人に注文を告げる。
「唐揚げ! それ、作ろうとしてたんよ」
「照り焼きは僕が作るよー。焼くのだけは得意なんだ」
 鷲穂のリクエストに丁度良いと菊花が笑みを見せる横で、九十が――増えた。

 然れど、死と生命が対であると言う定義は理である――イシカ・ホノリ。

 分身の様に実体化したのは、九十自身の逆側面。
「人手増やしてどんどん作るよー!」
「……何やっても面倒そう……」
 逆側面だけあって、九十本人よりテンションが低い分身だが、この状況では何を言っても仕方がないと、料理の手伝いに動き出した。
 その様子を眺めていた栴は、魔鍵を再び取り出す。
「こっちは温め直しで頼む」
 魔鍵から大量のフライドチキンとローストターキーが出てきた。
「ああ、これ彼らの持ち物だね。これも取ってきたんだね」
 ケキリキターキーと以前にも戦った事があるサンディは、それがどちらもケキリキターキーが武器にしていたものだと、一目で気づく。
「ノックスのは此れは二度目か? 飽きておらねば良いのだが」
「問題ないよ、前は味わう余裕が無かったし。でも美味しそうって思ってたんだよ」
 気遣う栴に、サンディは微笑を浮かべて首を横に振った。
 食べられるオブリビオンだからとて、いつでも食べられるというわけではない。
「そうか。美味いのは保証す――」
「あかんよ、生浦さん!」
 サンディに頷きかけた栴を、菊花が遮った。
「これは揚げ直し一択や! 唐揚げは二度揚げ三度揚げする事もあるし、揚げ物は揚げたてが一番美味しいんやで!」
「う、うむ。そうか……」
 ニンニク塗れの両手をぎゅっと握って力説する菊花に、栴は思わず後ずさりそうになりながら頷く。
(「味は戦場で確かめた。温め直すだけで良いと思っていたが……」)
 ニンニク塗れの両手のまま、菊花が深めの大鍋を用意してドバドバと油を入れるのを見やり、栴は胸中で呟く。
「まあ方法は任せるが……良いのか? 揚げ直しとなると、気にはならんのか? カロリーとかそう言ったも――」
「知らん」
 その油の量に思わず瞠目した栴の言葉を、九十が短く遮った。
「匂いとかカロリーとか知らん。そんなの気にしてたら、美味い料理は作れない!」
「カロリーはパワー! カロリーが高いものは美味しい! これは自然の摂理やで!」
 狂ったかの様に大きく切ったバターの塊をフライパンに投入する九十の隣で、菊花も唐揚げの準備をしながら力強く言い放つ。
「菊花と九十、料理に詳しいんだな。頼もしいじゃないか。なぁ、栴」
 押し黙る栴の後ろで、鷲穂は呑気に笑っていた。

●余興とは
 ――料理以外にも準備があるから、先始めてて。
 ――ウチらも後から行くから。
 と言う九十と菊花に半ば追い出されるようにして厨房を後にした4人は、2人の言葉通り、先に飲み始める事にした。
「では改めて! 栴、鷲穂! 誘いに感謝するぞ!」
「今日はお誘いありがとうございます」
 いつもの太く大きな声で鳥獣戯画が礼を伝える中、サンディが栴と鷲穂の前にグラスを並べていく。
「まず仕事をしてきた貴様らを飲ませる!!」
 鳥獣戯画の手が葡萄酒――を通り過ぎて、その奥の果実水の瓶に伸びる。
「ふははは栴は葡萄ジュースだ!!」
「ああ。酒は数年先だな」
 頷く栴のグラスに、濃紫色の果実水が注がれる。
「葡萄の香りが濃いね。俺も同じのにするかな」
 それを見たサンディも、同じ果実水を自分のグラスに注いだ。
「鷲穂はいける口であろう?」
「酒か? 勿論、遠慮なく頂いちまうぞ」
「よし飲め!!
 破戒僧とは言え一応僧侶な鷲穂に鳥獣戯画は遠慮の欠片もなく酒を勧め、鷲穂もなんの躊躇いもなくグラスを向けて注いでもらう。
 そして鳥獣戯画自身も、果実水を自分のグラスに注いで――。
「熱い土地であったようだな、二人ともおつかれだった! 飲め!」
 鳥獣戯画の声を合図に、4つのグラスがコツンと打ち合わされた。

「フューラーの。どうだ。少し飲んでいかんか。直に料理も来るぞ」
 通りかかったルシルを、栴が呼び止める。
「じゃあお言葉に甘えて」
 ひとつ頷いてテーブルに着いたルシルは、4人の顔を見回し口を開いた。
「……一年前と少し、顔触れ違うね」
「ああ。もうあの蟹食った夜から1年か。今年も早かったなあ」
 ルシルの言葉に、鷲穂がしみじみ呟いた。
「今年は年の暮れにチキンな敵に会えて……強烈な思い出になったな。ま、これからそれを食うわけだが」
 カラカラと笑って、空になったガラスを置く。
「鷲穂、グラスが空いているではないか! 飲め飲め!」
 誰かのグラスが空になると、鳥獣戯画は飲み物を注いでいた。
「ギガは素面か? 飲まないでいいのか?」
 当の本人のグラスが空である事に、酒を注がれながら鷲穂が気づいた。
「やめておけ、私は飲み過ぎると絡むだけ絡んで寝るぞ!!」
 あまり誇れない事を堂々と言って、鳥獣戯画はやんわりと酒を拒む。自分の酒癖と限界を把握している辺り、ちゃんと大人だ。
「生傷絶えぬ猟兵仕事、皆と生きて新しい年を迎えられるだけでめっけものよ! 今年も良い年であるよう、祝いで福を呼ぼうではないか!」
 次の一年の為の祝いの場と捉えているから、鳥獣戯画は今日は素面でいるのだ。
「祝いなら、一杯くらい付き合えよ。な!」
「そこまで言われては、仕方ないな!」
(「二人の勢いを見るに、成人したら両脇を固められる予感しかせぬな」)
 酒を注ぐ鷲穂と押し切られている鳥獣戯画の様子に、栴は胸中で呟いていた。だが、それまでまだ数年はある。焦る必要はない。
(「先に成人するノックスの場合を見て対策しよう」)
 勝手に胸中でそんな決意をしながら、栴は果実水をグイっと飲み干す。
 その時だった。

「料理が来るまでの余興に、酒場の定番行事『腕相撲』などは如何だろうか!」

 酒が入ったせいだろうか。
 鳥獣戯画が、唐突にそんな事を言い出したのは。
「余興に腕相撲ってのは良いな」
「腕相撲?いいね、やろう」
 鷲穂もサンディも、それに乗っかる。
「お主らと腕相撲など、俺には無理だな。俺は勝敗を数えておこう」
 肩を竦めて、栴は審判と記録役に回る。
 こうして、突発的に【ザ・ウォール腕相撲最強決定戦(3人だけだけど)】が開催される運びとなった。

●鳥獣戯画VSサンディ
「ふっ……来い!」
「手加減しないよ?」
 不敵な笑みを浮かべた鳥獣戯画と、微笑みを浮かべたサンディがテーブルに腕を突いて握り合わせる。
 勝負は、一瞬だった。
「よっ!」
「あいったーっ!?」
 倒された鳥獣戯画の腕がテーブルに当たって、バターンッと音を立てる。
 勝者、サンディ。

●鳥獣戯画VS鷲穂
「ギガ、フードをファイトしなくていいのか?」
「ふっ……要らん!」
 強化しても良いと笑顔で告げる鷲穂に、鳥獣戯画が不敵に笑う。
 一度負けたのに、この自身はどこから来るのか。
 そして――。
「っらぁ!」
「ぐはぁー!?」
 勝者、鷲穂。

●鷲穂VSサンディ
「鷲穂さんにも負ける気はしないから」
「サンディの笑顔が怖いんだが!?」
 内に秘めた自信家が滲み出てる笑みを浮かべるサンディに、鷲穂がその笑みに怖さを感じながら、テーブルに肘をつく。
 サンディも肘をついて、鷲穂の手を握った。
「山羊のもノックスのも、一勝同士。これで勝った方が、今回の勝者だ」
 栴の言葉に、二人は黙って頷く。
 そして――。
「ふんっ!」
「おおっ!」
 ギシィッ!
 今度は、一瞬の勝負とはならなかった。
 そも、鳥獣戯画を含めて3人、素の腕力自体はそこまでの差はない。それでも鳥獣戯画が連敗する事になったのは、怪力の有無が大きかった。
 そして、鷲穂とサンディの怪力は、サンディの方がやや高いが、容易に押し切れるほどの差でもない。
「やるなぁ、サンディ!」
「鷲穂さんこそ!」
 2人とも、空いている手はテーブルの淵を掴んでいるものだから、ミシミシとテーブルが軋んで音を立てている。
「貴様ら! やめろ、このままでは二人の腕が……!」
「余興ではないのか……」
 見ている鳥獣戯画の声にも思わず力が籠り、逆に栴は嘆息混じりに呟く。
 とは言え、2人の腕力はほぼ拮抗している。このままでは千日手になりかねない――かと思われた。
 サンディが身体を傾けるまでは。
 力負けした――のではない。わざと力を抜いたのだ。
「っ!」
 予想外に力の拮抗が崩れて、鷲穂の方がバランスを崩した。少なからず酔っていなければ、バランスを崩す事もなかったかもしれない。
「せいっ!」
 ともあれ、サンディが一気に力を込めて鷲穂の腕を倒した。
 サンディのフェイントと騙し討ちが、鷲穂の野生の勘を上回り、カウンターの暇も与えずに勝負が決まったのだ。

「おっまたせー」
「料理持ってきたでー」

 【ザ・ウォール】腕相撲王者が決まったところに、九十と菊花の声が響いた。

●地獄のコンパニオンガールズ
 九十も菊花も、先ほど厨房の中にいた時と服装が違う。いつの間に着替えたのか。
 料理で汚れたから着替えた――と言う感じでもない。九十も菊花も、普段と異なる可愛らしい服なのだ。しかもデザインが似ている。
「この格好? コンパニオンだよ!」
 視線と空気で察したか、誰かから疑問が出る前に九十が服装の理由を告げる。
「――何故、コンパニオンなんです?」
「え? ノリ」
 サンディの問いに、運んできた料理を並べ終えた九十はあっさりと返した。
「取り敢えず可愛い恰好して来ました! 特に菊花! 主に菊花!」
「えへへー。うち、いつもより可愛よな?」
 やけに菊花を押す九十と、くるくると嬉しそうに回る菊花の様子に、4人は察した。

 ――この2人、コンパニオンの意味を分かってて言ってるわけじゃないと。

「見て見てこの子! 滅ッ茶苦茶可愛いよ」
 九十が言った通り、本当にノリでやってそうだ。
「ほらほら崇め讃えろよ。可愛かろ?」
「ウチ、可愛いよな?」
 無言の4人に命令形で圧をかける九十に、当の菊花も便乗する。可愛い以外の返答をしたらどうなるのだろう。地獄かな?
「おう、二人とも可愛いぞ。疲れも吹っ飛んじまう」
 褒める言葉が、鷲穂の口からさらりと出てきた。さすが破戒僧。
「二人も座って食べようぜ」
「それじゃ、お言葉に甘えて」
「うん。うちも食べるー!」
 鷲穂に勧められ、九十も菊花もテーブルに着く。
 2人にも果実水を注いだグラスが回され、再び6人でグラスを掲げて乾杯する。
 あとは宴を楽しむばかり――?
 いいや。
 ここからが、地獄の始まりだ。

「まずは功労者の生浦さんと明石さんに! たーんとお食べよし!」
 ドサドサドサッ。
 菊花が栴と鷲穂の要求も聞かずに、2人の前の皿に唐揚げを山盛りにした。
「そうそう。2人とも働いた分、超食べなきゃ!」
 さらに、九十は栴と鷲穂の前に別の皿を置いて、こんがりと焼けた照り焼きチキン(ガーリック風味)を並べる。
 お皿を別にしている辺りに、優しさが残っている。
「すげえ盛り盛りだな」
「体重の倍くらい食べようねー」
 流石に驚く鷲穂に、九十がしれっと言ってくる。
「物理的に胃袋に入らん量を進めるな。殺す気か」
「可愛いうちらのチキンが食えへんとは言わせへんよ」
「はは何言ってるんだよ、そのくらい行けるでしょー」
 真顔で返した栴に、菊花も九十も飛び切りのスマイルを浮かべて、容赦なく唐揚げと照り焼きをさらに大盛にした。地獄かな?
「おい、フューラーの……」
 栴が振り向くも、そこにルシルの姿はない。あのエルフ、逃げたな。
「コンパニオンって……こういうものでしたっけ」
「せやでー。次は、サンディさんな?」
「働いてなくても、体重分くらいは食べようか」
 思わず呟いたサンディに、菊花と九十のお玉の矛先が向けられた。
「ええ、どうぞ。多分食べられますよ」
 スマイル継続で地獄に落とそうとしてくるコンパニオン達を、サンディは顔色一つ変えずに涼し気な笑顔でさらりと受け流した。
 笑っているだけではなく、唐揚げと照り焼きをひょいひょい食べている。
「わあ、いい食べっぷりやねー。さ、次はギガちゃんや!」
 サンディの食べっぷりに満足げに頷いて、菊花は鳥獣戯画に笑顔で迫る。
「ギガちゃんはめっちゃ食べるからな、わんこそばならぬわんこ唐揚げや!」
「おら食え食え。呑め呑め」
「ふっ! 喰い専の本領を見せてやろう!」
 笑顔でサラッと無茶ぶり度上げて来る菊花と九十を、鳥獣戯画はマントをバサッと翻して迎え撃つ。
「美味い鶏だな。このオブリビオンなら、食える!」
「さすがうちの彼ぴっぴ! 食べっぷりが最高なんよ」
 カッと眼帯のない方の目を見開いて、猛然と唐揚げと照り焼きをバクバク食べていく鳥獣戯画に、菊花が唐揚げどんどん追加していく。
(「……鳥肉増やしておいて……良かった……のだろうか」)
 その光景を眺めながら、栴は胸中で呟いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

本・三六
【幸あれ】絡み&アドリブ歓迎
ベル嬢、ジアム嬢と


この羽、余程大事なものなのか……驚いたなあ
大切にしないとバチが当たるな、使い道を考えよう
埃を払って店へ
あ、二人は先に来ていたようだね

『食神』からケキリキターキーを見せ応え
や、遠路ご苦労さま
すぐ袋に入れたけど、どうかな
少し貰った手羽先は、なかなかだったよ?
餅は餅屋。店へ調理をお願いしてみよう

二人が話す間は聞き役
店内や景色を眺めつつ、飲み物から貰おうか
お薦めを頼むよ
誰かいれば気軽に話し
肉が来たら、改めて合掌
君らの命はしっかり戴こう
……うーん、びっくりするくらい美味しいね

色々あったね
オリジンとか。キャバリアを譲り受けたりとか
※『Mr.』はベル嬢経由で入手


ジャム・ジアム
【幸あれ】
ベルちゃん、店長と

きちんと小柄な体で到着
何かお祝いがあるんでしょ?
年も変わるし
ベルちゃんの誕生日も近いもの。ジアムたちもお祝いしましょ!
手を引いて窓際の席へ

中は大丈夫?
だって勿体無いもの、ちゃんと戴きたい
ベルちゃんも食べる?
にんにく?レモンかしら。辛めも合うかも!

綺麗な羽ね。素敵。
ベルちゃん楽しそう。ふふ、うん、ジアムも手伝うわ
素敵なものができるといいわね

運ばれた切り分けられたお肉やスープ、サラダ・串焼き等見て
わあ!すごい、すごいわ!さすが料理人さんよ!
このソース!最高よ、ぱりっとした皮の付け合わせも!

ねえねえ、ベルちゃん
ほら、外の星、とっても綺麗よ
ええ。来年もいい年になりますように


ラ・ベル
【幸あれ】
ジアム様、其方の男(貴方呼び)と

手を引かれ、コートを畳みつつ席へ
顔に素直にでる方ではありませんが
嬉しさで一杯・探究心で参りました

賑やかな所ですね
それが噂の——不死鳥ですか?
……焦げてますね
ええ、敵を食した事は未だありませんので。この機会を逃しては

不死鳥の……そうですね、利用できるかもしれません
調べてみましょうか
魔導に携わる者として。腕が疼きます
私もです。ジアム様

香ばしい。これがオブリビオンの?
そんな、私、こんな味初めてです
香草とさっぱりとした風味も堪らなく
ええ。シェフに後で話を。焦げ肉がこんな事になるなんて

美しいです
今年も終わり……そう、でしたね…
今この平穏がどうか
祈ります、よき年を



●光と焦げた肉
 ずらりと並んだ、幾つものテーブル。
 大小幾つかサイズのあるどの卓上にも、ランプが置かれていた。
 壁際や梁にはクリスマスリースの様な植物を使った飾りに紛れるようにして、小さな照明が配され店内全体を仄かな明るさに包んでいた。
「わあ、凄い」
 想像したよりも明るい店内に、黄色い果実を模した髪飾りを付けた小柄な少女――ジャム・ジアム(はりの子・f26053)が歓声を上げる。
「明るく、賑やかな所ですね」
 ジャムに手を引かれたコート姿の女性――ラ・ベル(おくりもの・f29950)は、既に宴が始まっているテーブルと、準備に忙しくしている様な音の聞こえる店の奥とに視線を巡らせる。
「年も変わるし、何かお祝いがあるのかな?」
「祝勝会の様なものだと聞きましたが……」
 楽し気なジャムに手を引かれるまま、ベルは窓際のテーブルへと向かっていく。
 テーブルに着けば、卓上のランプの光は炎ではなく光そのものだった。
 魔法で作られた光源のようだ。
 だが、店内全体を明るくしている、壁や天井の梁につけられた明かりは、魔法とは全く別の技術の産物に見える。
 おそらく、誰か猟兵が準備に手を貸したのだろう。
「ベルちゃんの誕生日も近いもの。ジアムたちもお祝いしましょ!」
 周囲に気を取られていたベルに、ジャムが笑顔を近づけて告げた。
「誕生日……ああ、そうでしたね」
 ジャムの言葉に2,3度目を瞬かせ、ベルは小首を傾げながらコートを畳んで椅子の背にかけて、席に着いた。
 ジャムに比べて表情が出ていないベルだが、嬉しくないわけではない。
 むしろその胸中は、嬉しさと探究心で一杯だった。

「あ、2人とも。先に来てたんだ」

 そこに、2人が聞き覚えがある声が聞こえる。ジャムとベルが視線を向けると、本・三六が服の裾を払って店に入ってきた所だった。
「や、遠路ご苦労さま」
「それが噂の――—不死鳥に連なると思しき鳥のものですか?」
 同じテーブルに着いた三六に、ベルは挨拶もそこそこにその手にしている羽根にじぃっと視線を向けていた。
「そうそう。これは羽根で――本体はこっち」
 大抵のものが入る魔導袋『食神』の口を開くと、三六はヘル・マウンテンの向こうで取ってきた鳥肉を取り出して、テーブルの上に置いた。
 黒焦げになった、鳥肉を。
「……焦げてますね」
 ベルがフォークで突いてみれば、炭化した何かがパラッと崩れて落ちた。
「転ばせて、溶岩混ざった炎に突っ込ませて焼いたからね」
「え、それ中は大丈夫?」
 三六の言葉を聞いて、ジャムがガタンッと椅子を鳴らして立ち上がる。
「すぐ袋に入れたから、大丈夫だと思う。気になる?」
 少し不安そうなジャムに、三六は曖昧に笑って頷いた。
「だって勿体無いもの、ちゃんと戴きたい。ベルちゃんも食べる?」
「ええ、敵を食した事は未だありませんので。この機会を逃したくはないですね」
 ジャムの言葉に、ベルが迷いなく頷いた。
 ベルの探求心はケキリキターキーに向けられている。当然、その味も。
「にんにく? レモンかしら。辛めも合うかも!」
「まあ、そこは餅は餅屋。店へ調理をお願いしてみよう。すみませーん!」
 どんな味が合うだろうと想像を膨らませるジャムの隣で、三六は手を上げ、店の人間を呼び止める。
「これ、料理して下さい。調理法とか味付けは任せるから」
「……。わかりましたー!」
 黒焦げの肉を目にした店員は、二、三度目を瞬かせてから笑顔で頷いて、店の奥へと引っ込んでいく。
「注文入りましたー。あとまたお肉増えました。黒焦げでーす」
 そんな店員の声の後に、『またか!!!』と言う数人分の声が重なって聞こえた。

●羽根と生まれ変わった肉
「話を戻しますと、その羽根が?」
「綺麗な羽ね。素敵」
「そうそう」
 テーブルの上に置いた羽根にじっと視線を向けるベルとジャムに、三六が頷く。
「余程大事なものみたいで、毟っただけで仲間が召喚されたよ」
 その時を思い出しながら、三六は話を続ける。
「結局、本当に不死鳥に連なる力があるかは、わからなかったけれどね。大切にしないとバチが当たるような気がして。使い道を考えようと思う」
「不死鳥の……そうですね、利用できるかもしれません。調べてみましょうか」
 三六の言葉に頷きながら、ベルは羽根を摘まみ上げ、しげしげと見つめる。
「ベルちゃん楽しそう」
 表情にこそ出ていないが、ベルなりに目を輝かせているのがジャムには判っていた。
「魔導に携わる者として。腕が疼きます」
「ふふ、うん、ジアムも手伝うわ。素敵なものができるといいわね」
 羽根から目を離さず頷くベルに、ジャムが微笑みかける。
「お待ちどうですー」
 そこに、頼んだ料理が出てきた。

 葉物野菜中心のサラダ、湯気の立つスープ。
 順番に、いくつかの皿が3人の前に並べられていく。
 黒焦げだったお肉は、変貌していた。
「わあ! すごい、すごいわ!」
「君らの命はしっかり戴こう」
 その変わりようにジャムが興奮気味に声を上げ、三六は静かに両手を併せる。
「このソース! 最高よ、ぱりっとした皮の付け合わせも!」
 ジャムが特に興奮したのは、白く変わった鳥肉の一皿。
 チーズを混ぜたホワイトソースの様なものをかけているのだが、肉についていたかもしれない焦げた匂いも、ソースで見事に中和されている。
 それでいて、とろみのあるソースは肉の旨味を逃さず封じ込めていた。
「香ばしい。これがオブリビオンの?」
 ベルも目を丸くしたのは、串焼きの盛り合わせ。
「香草のさっぱりとした風味も堪らなく、私、こんな味初めてです」
 焦げていた外側を落とし、中の肉をハーブで香付けつつ焼かれている。つくねには、焦げてた部分も幾らか混ぜているようで、アクセントになっていた。
「……うーん、びっくりするくらい美味しいね」
「さすが料理人さんよ!」
「ええ。シェフに後で話を。焦げ肉がこんな事になるなんて」
 感心する三六の前で、ジャムとベルは顔を見合わせ頷いた。

●幸あれと、星空に
 テーブルに並んだ数々の鳥肉料理は綺麗に食べつくされ、テーブルの上には、店のお勧めの飲み物が並んでいた。
「もうすぐ、今年も終わるんだね」
 ホットワインの入ったカップを手に、三六が呟く。
「色々あったね。オリジンとか。キャバリアを譲り受けたりとか」
 今回は使う事がなかったが、三六が所有しているキャバリアは、ベルを通じて三六の所有となったものだ。
「今年も終わり……そう、でしたね……」
 その言葉に、ベルがふいに視線を伏せる。
「ねえねえ、ベルちゃん」
 その肩を、ジャムがそっと叩いた。
「ほら、外の星、とっても綺麗よ」
 ジャムの指さす窓を見やると、窓越しでも判る星空が広がっている。
「……美しいですね」
 その光景に、ベルも思わず息を呑む。外に出れば、もっと綺麗に見えるだろう。
「来年も、よき年を」
「ええ。来年もいい年になりますように」
 今この平穏がどうか続くように――祈る様に組んだベルの手にジャムが手を添えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

舞音・ミケ
ルイ(f18236)と。

狩り、おわり。
おいしかったね、ルイ。
まだまだおいしいもの食べられる……幸せだね、ルイ。
ケキリの肉もたくさんあるから食べて。
……生じゃないよ?
血を抜いて捌いて、薄ーーく切ってカチカチに乾燥させたから。
味付けないけどおいしいよ(がじがじ)。

食べる側、希望?
(ルイの皿に取り分けつつ)これ食べてみて、おいしいよ。ほら、あの料理もおいしそうだよ。

……レパートリー増えそうだし、あとでごちそうになりに行こうね(と猫たちと内緒話)

ルイみたいに冷たさの力使えれば狩りのとき便利だよね。
ルイ、使い方教えて。
私も力の使い方は感覚でだし、なんとなくでいいよ。
私にが無理なら猫の誰かにでもいいから。


小夜啼・ルイ
ミケ(f01267)と

オレは一切食ってねぇ
…なんか、いや…もういい。そうか幸せかよかったな

…いや、食わねーぞ? 今回オレは普通のやつを食う
つか何だその干し肉みたいな…
いつの間にそんなん作ってんだお前。遠慮するわ

今日は普通のメシを食っていたい。たまには作らさせられるんじゃ無くて、作られたのを食いたいんだよ(とか言いつつ自然にケキターキーを手にとってる

使い方を教えろ…って言われてもな(めっちゃ渋い顔。サイキッカーになった経緯を話したくない
何つーか、感覚的なモンだしなぁ…あと感情とリンクしてる気がするし
オレがこう言うのもアレだけどさ…理屈じゃねぇと思うぞ
いや猫にはもっと無理だろ



●今日は2人とも食べる側
「狩り、おいしかったね、ルイ」
「オレは一切食ってねぇ」
 テーブルの向かいで同意を求めるような視線を向けてくる舞音・ミケに、小夜啼・ルイが溜息交じりに返す。
「まだまだおいしいもの食べられる……幸せだね、ルイ」
「……なんか、いや……もういい」
 ゆらゆらと尻尾が左右に揺れているミケに何か言おうとして、ルイは言葉にもならなかった胸中をそのまま呑み込んだ。
 何とか言葉にして口に出したところで、もう遅い。
 焼き鳥盛り合わせ、チキンステーキ、唐揚げ――様々な鳥肉料理が、2人のいるテーブルの上にに並べられているのだから。
「幸せだぞーそうかお前も幸せかよかったな」
 早口で捲し立ててミケの追求を躱しつつ、ルイはミケがさっそく取り分け始めている料理の全てに視線を巡らせる。
 どれがケキリキターキーの肉かを、見極めんとして。
(「……くそ、見た目じゃ全然わからないな」)
 どれも同じような鳥肉に見えて、ルイは胸中で溜息を吐く。
 先のタイミングで『幸せだ』とミケに言ってしまった手前、今更、ケキリキターキーの肉は食べたくないとは言い出せない。
「――……」
 取り分けた分をさっそく食べていたミケが、ルイがじっと肉に視線を向けていることに気づいて手を止める。
「ケキリの肉もたくさんあるから食べて」
 そして、その熱意をルイの本心とは逆の方向に解釈した。
「いや、食わねーぞ?」
 大皿から鳥肉を取り分けようとするミケを、ルイがやんわりと静止させる。
「今回、オレは普通のやつを食う。そう決めて……んだ?」
 ルイは大皿用のスプーンとフォークを手に取ろうとして、気づいた。
 料理の中に、見覚えのないもの――カラカラに乾いた鳥肉がある事に。
「あ。それもケキリのお肉」
「絶対食わねえ!!!」
 当然の様に返して来たミケに、ルイが間髪入れずに言い返す。
「でも……これ生じゃないよ?」
「なに?」
 続くミケの言いように、ルイが思わず眉間を寄せる。
 生じゃないのは、ルイとてみればわかる。だが、今のミケの物言いは、まるで自分で作ったかのような口ぶりだ。
「血を抜いて捌いて、薄ーーく切って、帰りにカチカチに乾燥させたから」
 火山地帯の、灼熱の炎に熱せられて乾いた風は、干物を作りに適していたようだ。
「いつの間にそんなん作ってんだ、お前」
「味付けしてないけどおいしいよ」
 呆れと感心が混ざったように軽く目を丸くするルイに、ミケは干し鳥肉をガジガジと齧って見せる。
「遠慮するわ」
 その様子を見ても、ルイは首を横に振った。
「さっきも言ったが、今日は普通のメシを食っていたい。たまには作らさせられるんじゃ無くて、作られてる普通のを食いたいんだよ」
 再び大皿用のスプーンとフォークに手を伸ばすルイの脳裏に浮かんでいたのは、別の世界の島での事か。
「食べる側、希望? それなら――貸して」
 それを聞いたミケは何を思ったから、ルイの手から取り分け用の食器を強引に奪い取ると、代わりにルイの皿に取り分け始めた。
「おい何を――」
「ルイ、冷凍もしてくれたから。これ食べてみて、おいしいから」
 ルイが本当に『食べるだけの側』になれるようにと言うそれは、今日の労に対するミケなりのお返しだったのだろう。
「ほら、あの料理もおいしそうだよ」
「……その干肉は食わないぞ」
 どんどん取り分けるルイを止める気も起きず、ルイは苦笑を浮かべながら、皿の上の鳥肉にフォークを突き刺した。
 ――それも、厨房で料理されたケキリキターキーの肉とは知らずに。

●それぞれのサイキック
 ――にゃー。
 もぎゅもぎゅと、口いっぱいに肉を頬張っているミケの足元で、猫の鳴き声がする。
 ヘル・マウンテンでも一緒だった猫達は、ここでも一緒だった。ミケの椅子の下に大人しく座って、時折、肉を貰っている。
「またお肉? うん、うん……あの料理が欲しいんだ? レパートリー増えそうだし、あとでごちそうになろうね」
「まだ食べる気か……」
 猫と話ながら次に頼むのを決めるミケの食欲に、感心したようにルイが呟く。
 ルイ自身はすっかり満ち足りて、食後のお茶を啜っていた。
「しかし、良く猫の言ってる事、そんなにわかるな……」
 ルイが感心していたのは、ミケの食欲だけではない。自分には『にゃー』としか聞こえない猫の鳴き声に、色々な意味を聞き取る能力にもだ。
「そういう事なら、ルイの方がすごいと思う」
「ん?」
 しかし逆にミケに話を返され、ルイが目を丸くした。
「ルイの冷たさの力。使えれば狩りのとき便利だよね」
「……」
 また冷蔵庫扱いされるのではと、内心で身構えて無言になるルイだったが、続くミケの言葉は予想の斜め上をいっていた。
「使い方教えて」
「……何?」
 一瞬目を丸くしたルイだが、だんだんその表情が渋いものになる。
「……って言われてもな……何つーか、感覚的なモンだしなぁ……あと感情とリンクしてる気がするし」
 ルイにとって、その能力を得た経緯は思い出したくない過去だし、進んで誰かに話したいものでもない。
 しかしそれ故に、ルイはそこを隠す事にある意味慣れ過ぎていた。
「オレがこう言うのもアレだけどさ……言葉で説明できる様な理屈じゃねぇと思うぞ」
「私も力の使い方は感覚でだし、なんとなくでいいよ」
 言いたくない理由を隠したままのルイに、ミケが食い下がる。
「私にが無理なら猫の誰かにでもいいから」
「いや猫にはもっと無理だろ」
 ルイが告げた言葉を否定するかの様に、ミケの足元で猫達が一斉に鳴き声を上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黎・飛藍
ついにぼんじり食べ放題の時間が来たぞ
この時間を待っていた。胃が許す限りぼんじりを食う
噛むと油が溢れて美味い…

……鶏肉の説明の時にも思ったが、聞き覚えのある声
…あ、蟹と鮟鱇の寄せ鍋だ

違う。いつだか蟹と鮟鱇の寄せ鍋を食った時、途中から一緒に食った声と同じだったからだ
違ったらすまない、完全なる人違いだ

流石に人の顔が食い物に見えるいい加減な視界じゃない
ただ人の顔がうまく認識出来ないから、顔で個人を覚えられないだけで

後はキサラがさらっと説明してるから、その間俺はぼんじりにかじりつく
肉は熱いうちが美味い。冷めても美味いが味は劣る

そうだ。ぼんじり食うか?(ルシルへと尋ねてみる


空目・キサラ
藍々君(f16744)と

藍々君、ほんとぼんじり好きだねぇ…
確かに美味なのだが何故…いや、今は追求なぞ野暮だね
さ、獲りたてチキンに舌鼓を打とうか

おや。そこなエルフ君(ルシルの事)よ
ルッシー、ルシルシ、フュー君など…色々呼び方を考えたのだけどどれがいいかな
ああ、僕は他者にあだ名を付けるのが好きなだけさ

え、藍々君…まさか彼は食料として見えているのかい…?
何だ違うのか。少し驚いたよ

故に、藍々君は他者の憶え方が独特なのだよ
声とその人物であると断定出来る他の要素があって、誰であるかを判別する
要素が無い時は探りを入れて判別したりするから、少し怖いよ?

…で、話は戻るけど呼び方。どれがいいかな?



●A&Wでもぼんじりで通じた件
「ぼんじりだ」
 テーブルに着くなり開口一番、黎・飛藍はその言葉を告げていた。
「ぼんじりを頼む。ぼんじりだけあればいい」
「藍々君、ほんとぼんじり好きだねぇ……」
「……」
 あまりにも偏ったそのオーダーに、空目・キサラは苦笑し店の人間は言葉を失う。
「味付けは……?」
「任せるが、付け合わせの類は不要だ。胃が許す限りぼんじりを食えればいい」
(「確かに美味なのだが何故……いや、今は追求なぞ野暮だね」)
 強い、とても強い意思の籠った飛藍の言葉に浮かんだ疑問を、キサラは胸中で呑み込んでしまいこむ。
 ふと視線を向けると、店の人間は救いを求めるようにキサラに視線を向けていた。

 ――いいんですか?
 ――その通りにしてやってくれ。

 そんなやり取りを視線だけでキサラと交わして、店の人間は奥へと戻って行く。
 ほどなくして、ぼんじりの塩焼きが山と盛られた大皿が、2人のついたテーブルに運ばれてきた。

●至高のぼんじり
 ぼんじりとは、鳥の尾の付け根の肉である。
 それはケキリキターキーであっても同じ事だが、ケキリキターキーとニワトリとでは身体のサイズがまるで違う。
 となれば当然、ぼんじりのサイズだって変わってくる。
「さ、獲りたてチキンに舌鼓を打とうか」
「この時間を待っていた」
 ぼんじりステーキと言えそうなくらいのぼんじりに、2人同時にナイフを当てた。
 刃から伝わって来る、切られるのを拒むような肉の弾力。それを無視して刃を滑らせると、ぷつっと切れた肉の表面から、目の細かい脂がトロリと流れ出る。
 そのままサクっと切り分けた身を口に入れれば、脂の旨味が口に広がった。
「噛むと脂が溢れて……美味い……染みる……」
 他の部位にはないぷりぷりとした食感と、鳥肉の大トロとも言われる甘みのある脂。飛藍の口の中に、念願のぼんじりの旨味が広がった。
「無限――とは言わないが、どんどん食える」
「藍々君がぼんじり、ぼんじりと言うのも頷けるね」
 飛藍が早々に2枚目のぼんじりに手を出すのを眺めながら、キサラもぼんじりを切り分け口に入れていく。

●蟹+鮟鱇+ぼんじり
「ふぅ……」
 何枚のぼんじりを食べただろうか。
 飛藍は無言で、ぼんじりを切って食べて切って食べて食べ続けているが、キサラは流石にお腹が満たされた気分になってきていた。
(「まだ食べようと思えば食べられるが……さて」)
 2人で食べきれなさそうなら、巻き込めばいい。
(「問題は誰を呼ぶかと、ぼんじりに拘ってる藍々君をどう説得するかだが……」)
 適当な相手がいないかと、キサラが視線を彷徨わせる。
 そして、見つけた。
「おおい、そこなエルフ君よ!」
「ん? 私のことかい?」
 キサラに呼ばれたエルフ――ルシルが、2人のテーブルに近づいてくる。
「うむ、君だ。まずなんて呼ぼうか。ルッシー、ルシルシ、フュー君など……色々呼び方を考えたのだけど、どれがいいかな?」
「藪から棒になんなんだい?」
 呼ばれたと思ったら、聞いたことのない呼び名を並べるキサラに、ルシルが少し驚いたように目を丸くする。
「ああ、僕は他者にあだ名を付けるのが好きなだけさ」
「そうだね。その中からなら――……」
 キサラの並べたあだ名に、ルシルが腕を組んで考え込む。

「……あ、蟹と鮟鱇の寄せ鍋だ」

 そこに、ぼんじりもぐもぐしていた飛藍がぽつりと口を開いた。
 何事だろうかとキサラとルシルが視線を向ければ、飛藍はルシルを指さしている。
「え、藍々君……まさか彼は食料として見えているのかい……?」
「違う」
 愕然としたようなキサラの声に、飛藍はやや憮然として返す。
「何だ違うのか。少し驚いたよ」
「いつだか蟹と鮟鱇の寄せ鍋を食った時、途中から一緒に食った声と同じだったからだ。流石に人の顔が食い物に見えるほど、いい加減な視界じゃない」
 安堵したように息を吐いたキサラに、飛藍はぼんじり切る手を止めて告げた。
「えーと、さっきから何の話だい?」
 事情について行けてないのが、ルシルである。
「俺は人の顔がうまく認識出来ない。だから、顔で個人を覚えられないだけだ」
「故に、藍々君は他者の憶え方が独特なのだよ。声とその人物であると断定出来る他の要素があって、誰であるかを判別する」
 飛藍の説明の不足点を、キサラが補足していく。
「鳥肉の説明の時から、聞き覚えのある声だと思っていた」
「ふむ。つまり蟹と鮟鱇の寄せ鍋が、他の要素、というわけか」
 飛藍の言葉に、ルシルも得心を得た顔で頷く。
「違ったらすまない、完全なる人違いだ」
「いや。当たってるよ。蟹と鮟鱇の寄せ鍋、丁度去年の今くらいで、砂漠だろう?」
「そうか。それなら良かった」
 記憶違いでなかった事に安堵したか、飛藍は一つ頷くと、新しいぼんじりを大皿から自分の皿へと移し始める。
(「ちなみに冗談は言わずに、正直に言った方がいいよ。要素が無い時は探りを入れて判別したりするから、少し怖い」)
 本人には聞こえないように小声で、キサラは飛藍の怖いと感じている部分をルシルに耳打ちする。
 だが、そう聞いてルシルが視線を送ると、飛藍は再びぼんじりをザクっと切って、口いっぱいに頬張っていた。
 ――怖いの?
「……で、話は戻るけど呼び方。どれがいいかな?」
 目で物言ってきたルシルに、キサラが話題を戻して逸らす。
「ああ。それはルッシーで。UDCアースの湖の都市伝説みたいじゃないか」
「……それでいいのかい?」
 ルシルのあだ名を決めた理由に、候補を上げたキサラの方が眉根を寄せる。
「……」
 そのやり取りを、飛藍は無言でぼんじりもぐもぐしながら聞いていて――。
「そうだ。ぼんじり食うか? 都市伝説」
「良いのかい。ではありがたく」
 キサラのもう一つの懸念は、当の飛藍があっさりと払拭していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニコ・ベルクシュタイン
【ニコうさ】
うさみよ、本当にお疲れ様だ
助太刀出来ず申し訳無い、其の上楽しい忘年会にお誘い頂けるとは
(…こう、大丈夫か?美味い話には裏があると言うが
…俺は生きて帰れるのか?などと内心悶々としつつ)

やきゅみっちも呼ぶか、そうかそうか、其れは良い
(良し、彼奴等に毒味役をさせようと内心決意しつつ)
(けれどどちらかと言えばデビみっちを毒味役にしたいと思い)
デビみっちは良いのか、彼らも相当釣り合わぬ代償で働いたろう
…ああ、そう言う事情が…

宴が始まってみれば、俺の懸念はすぐ杞憂であると知れる
うさみの武勇伝を安心して聞けるというもの
ああ、また口の周りをそんなにしてからに…(拭き拭き)

うさみよ、来年もよろしくな


榎・うさみっち
【ニコうさ】
いよぅニコ!よく来たな!
今日は楽しい忘年会!
なんと食べ放題!飲み放題!しかもタダ!

そうだ、せっかくだからこいつらも呼ぼう!
おなじみやきゅみっち軍団を召喚
今回の仕事には直接関わっていないが
今年もたくさん働かせたしな
デビみっち?あいつらはヘルマウンテンで
たらふくターキー貪っていたからいいだろう

…それで、まほみっち達の尊い犠牲のもと
幾多のピンチを乗り越えて~
俺はデビみっち達に的確な指示を与えて
凶悪なケキリキターキーを一網打尽にして~
などなど、肉を食いながらニコに武勇伝を語ってやる
口の周りは肉汁でベタベタ

そういえばニコの伴侶??になって一年経つんだな!
来年も俺の為にいっぱい働くんだぞ!



●スポーツマンはよく食べる(偏見)
「……」
 そこかしこで宴が始まっている酒場に、ニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)が何故か難しい顔をして入ってきた。
「いよぅニコ! よく来たな!」
 気づいた榎・うさみっちが、足の高い椅子の上で手を上げる。
「うさみよ、本当にお疲れ様だ」
 その向かいに座りながら、ニコはまずうさみっちの労を労った。
「助太刀出来ず申し訳無い」
「気にするな! いつか、今回の分は3倍にして働いて貰うからな!」
「……」
 全然安心できない事をサラッと言ってくるうさみっちに、ニコが一瞬言葉を失う。
 とはいえ、うさみっちも宴会の席で、それ以上こんな話を引っ張るほど鬼ではない。
「まあ、今日は忘れとけ。なにせ今日は楽しい忘年会!」
「そうだな。楽しい忘年会にお誘い頂けるとは、有難い」
「ただの忘年会じゃねえぞ。なんと食べ放題! 飲み放題! しかもタダ!」
 頷くニコに、うさみっちは興奮した様子で捲し立てる。
(「……こう、大丈夫か? 美味い話には裏があると言うが……俺は今夜、生きて帰れるのか?」)
 だがその言葉こそが、ニコが難しい顔をして店に入ってきた原因であった。

「そうだ! せっかくだからこいつらも呼ぼう!」

 そんなニコの目の前で、うさみっちが何かを思いついた。
「出でよ! こんとんのやきゅみっちファイターズ!」
「は??????」
 何度も聞いたうさみっちが口にしたフレーズに、ニコが思わず目を丸くする。
 寝落ちが記憶に残る、野球服うさみっち団。
 しかしその実、奴らはスポーツマンシップの代わりに釘バットや鉄ボールを持つ、立派な戦闘要員である。
『肉だー!』
『にーく!』『にーく!』『にーく!』『にーく!』
『にーく!』『にーく!』『にーく!』『にーく!』
「うるせー整列!」
 スポーツマンシップはないくせに、スポーツマン並みの食い気で肉に気づいて騒ぎ出したやきゅみっち軍団を、うさみっちが一喝した。
「うるせー整列! 釘バットと鉄ボールは、置いてこい!」
 さらにうさみっちは、やきゅみっち達のトレードマークとも言える極悪武器をしまっておくように伝える。
「大人しくしてれば――お前たちにも肉を食わせてやる!」
『『『はいっ!』』』
 肉の魅力、おそるべし。やきゅみっち軍団は反論のひとつもなく、釘バットと鉄ボールをポイっと放り捨てる。
「騒がせねーようにするから、いいだろ、ニコ。今回の仕事には直接関わっていないが、今年もたくさん働かせたしな」
「それでやきゅみっちを呼んだか。そうかそうか、其れは良い」
 一度は驚いたニコも、うさみっちが喚んだ理由に合点がいって大きく頷いた。
(「良し、彼奴等に毒味役をさせよう」)
 内心で結構ひどい決意を固めていたりする。
 その直後、ニコの脳裏に別のうさみっちシリーズの顔が浮かんで来た。三叉槍を持つ、悪魔達の顔が。
「うさみよ。デビみっちは良いのか?」
 毒味役を任せたいから――などと言う内心は隠して、ニコが訊ねる。
「彼らも相当釣り合わぬ代償で働いたのではないか?」
「デビみっち? あいつらはいいだろう。今回はヘル・マウンテンで、たらふくターキー貪っていたからな!」
「……ああ、そう言う事情が……」
 もうデビみっち召喚済みと聞いたニコは、安堵と残念さとが混ざった溜息を零した。

●変わっても変わらぬ関係
「ケキリキターキーの丸焼きと、フライドケキリキ、カラアゲとナンバンの三種揚げ物盛り合わせです」
 ホカホカと湯気を立てている焼き物と、見ただけで揚げたてと判る揚げ物の2皿が、うさみっちとニコのテーブルに置かれる。
 他にも次々と並ぶ鳥料理。
「……本当に食べ放題なのか?」
「はい。って言うか、ちょっと凄い量の鳥肉があるんで、どんどん食べてください」
 念のためにとニコが訊ねてみれば、店の人間は笑顔で返して来た。
 事ここにきて、ニコの中で悶々と渦巻いていた懸念は、完全に杞憂になった。
 それと同時に――。
(「デビみっち呼ばせなくて良かった……! うさみよ、疑って済まない!」)
 ニコの中に懺悔の念が沸き起こる。
「ニコ~? 聞いてるか?」
 それを払拭したのは、他ならぬうさみっちであった。
「あ、ああ。聞いているぞ。料理の量に少し驚いていただけだ。まほみっちが溶けてしまったのだろう?」
 はっと我に返ったニコは、取り繕うように丸焼きをほぐしにかかる。
「それでも、俺はまほみっち達の尊い犠牲のもと、幾多のピンチを乗り越えて――」
「無事に、ヘル・マウンテンとやらを抜けたのか」
 うさみっちの武勇伝に相槌を打ちながら、ニコはほぐした鳥肉を、うさみっちと自分の皿へと取り分ける。
 正座で待機してるやきゅみっち軍団の分も忘れずに。
「ついに出てきたケキリキターキー! その数を見た俺は、デビみっちを召喚! しかしあいつら熱いとか地獄だとかうるさくってなー」
 話がケキリキターキーとの戦いに入りながら、うさみっちは取り分けられた鳥肉を話の合間に食らいつく。
「目に浮かぶな……」
 ニコもうさみっちの話を安心して聞きながら、鳥肉を口に入れた。
 見た目は普通の鳥肉ながら、パリっと焼き上げられた皮は脂が乗っていて、身も歯ごたえがありながらも口の中でほろりと崩れる。
「それでも俺はデビみっち達に的確な指示を与えて、奴らを働かせつつ、凶悪なケキリキターキーを一網打尽にして~」
 話している内に自分に酔ってきたのか、うさみっちの武勇伝を語る声に熱が籠る。
 というか――少々、籠りすぎていた。
「ああ、また口の周りをそんなにしてからに……」
「むぐぐっ」
 いつしか肉汁ベタベタになっているうさみっちの口周りを、ニコがふきんを持った左手を伸ばして拭ってやる。
 拭われるうさみっちの目に、ニコの指にある指輪が見えた。
「そういえばニコの伴侶??になって一年経つんだな!」
「!!」
 突然の不意打ちに、ニコが一瞬言葉を失う。
「そうだな。うさみよ、来年もよろしくな」
「おう。来年も俺の為にいっぱい働くんだぞ!」
 嬉しさからの動揺を押し殺し頷くニコに、うさみっちは欲望丸出しの笑顔で告げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

バルタン・ノーヴェ
【ワンダレイ】 アドリブ歓迎デース!

「さあ、エブリワン! レッツパーティターイム!」

山を越え、炎雷を潜り抜け、獲得してきたケキリキターキーの実食デース!
キッチンから取り出してテーブルに並べまして、準備OK!
まずは乾杯からデース! お疲れ様デス、ワタシ! ありがとうデス、皆様ー!
そして、こんがり焼けたケキリキからいただきマース! 我ながら良い味を出せたと思いマース。
チキンもターキーも、たまにパンやスープで舌を整えながら、たっぷり食べて味わいマース!

「実においしいデスネー! HAHAHA!」という感じにハイテンションでエンジョイしマース!
おっと、ワタシは未成年なのでノンアルコールでお願いしマース。


兎乃・零時
【ワンダレイ】
アドリブ大歓迎

へぇー、宴会かぁ…めっちゃ楽しそうじゃん!
え、リーゼロッテまじかその話!
生身でオブリビオンマシン仕留めるだなんてすげぇなバルタン!
でもあんま無茶しすぎんじゃねぇぞ?するときは俺様も呼んでくれよな!無茶は分担した方が負担も減るしさ!

いぇーい!かんぱーい!
ん?この肉って普通の肉じゃねぇの?
ケキリキターキー…オブリビオンって食えるのか…覚えとこ
あ、すっごい美味しいな!(ご満悦
もしかしてこれバルタンが創ったの!?
すげぇな…
バルタンはお疲れさまだ!

ほらパル(UC)も見てみろよ、すげぇぞこれ!
飲み物はジュースかな
俺様に成人云々適用されっか分かんねぇけど酒よかこれのがおいしいし!


リーゼロッテ・ローデンヴァルト
【ワンダレイ】
※アドリブ大歓迎、ギャグ可
※時々バルタンさんを『バルたん』呼び
※「理由?カワイイからだっ」

別件でバルタンさん無茶したから、
忘年会ついでに労わないとね♪

相席のレイジさん(零時)に解説
バルたんってば、先日キャバリアから生身で飛び出して
自前のパイルでオブリビオンマシン仕留めたのさ…
(『死ぬ気で働けば国は栄える?』より)

んじゃかんぱーい♪
そういや、この肉どこでゲットしたの?
(由来を聞くとコッソリ生体電脳で毒性検査)
た、食べられるのコレ…?(はむ)美味しいっ

あ、安物でいいから赤ワインない?
何ならエールでも…アタシ27歳だよ
※外見が14歳前後故に可否一任
※OKなら飲酒、NGなら葡萄ジュース



●カワイイ以上の理由は要らない
「へぇー、宴会かぁ……めっちゃ楽しそうじゃん!」
 既に宴が始まっているテーブルもある店内の賑やかさに、兎乃・零時(其は断崖を駆けあがるもの・f00283)の口元に小さな笑みが浮かぶ。
「で、バルたんはどこかしら?」
(「――ん?」)
 この場に呼んだ知人を探すリーゼロッテ・ローデンヴァルト(リリー先生って呼んでよ・f30386)の口にした『呼び方』に、零時が内心で首を傾げた。
 ――リーゼロッテは他人を呼び捨てしていただろうか。
「リーゼロッテってバルタンの事、呼び捨てにしてたっけ?」
「違うわよ、レイジさん」
 その疑問を口に出した零時に、リーゼロッテはいつもの通りの呼び方で返して来る。
「バルタン、って呼び捨てにしたのではなくて――バル『たん』よ!」
 あるのだ。そういう呼び方も。
「あ、あぁ……そう言う事」
 そういう呼び方――ある種の文化と言うか――があるのは、零時も知ってはいる。
「ちなみに何で?」
「理由? カワイイからだっ!」
 再び内心で首を傾げた零時に、リーゼロッテは真顔で言い切った。

「エブリワン! こっちデース!」

 そこに当の本人、バルタン・ノーヴェの声が響き渡る。
 2人が視線を向ければ、店の奥のテーブルで、メイド姿のバルタンがぶんぶんと手を振って呼んでいた。
「ハリー! ハリー! レッツパーティターイム!」
 早くパーティーしたい。
 まだ距離があるのに、バルタンの顔にそう書いてあるのが、2人は見えた気がした。

「さあ、まずは乾杯からデース!」
 零時とリーゼロッテがテーブルに着くと、既に乾杯用のグラス3つと、アルコールからノンアルコールまで、多種多様な飲み物が準備されていた。
「とりあえず、この店にあるドリンクを全部集めマシタ!」
 2人の好みがわからないからと、バルタンが手当たり次第にやりました。
「ほらパルも見てみろ。飲み物の数、すげーぞ」
 並んだ瓶の数に驚いて、零時は肩の紙兎の式神パルに見せながら手を伸ばす。すると、紙兎パルが、零時の腕をするすると降りて、1本の瓶の上に乗った。
「それにしろってか?」
 パルが選んだのは、果実水――いわゆるジュースの瓶だ。
「ま、俺様は成人扱いされるかわからんし。酒よかこれのがおいしいしな!」
 元々アルコール類を選ぶ気のなかった零時は、その瓶を取って手酌で注ぐ。
「ワタシもノンアルコールのドリンクにしまーす!」
 バルタンも、別のジュースの瓶に手を伸ばす。
「あら。赤ワインがあるじゃない」
 3人の最も小柄で見た目が幼いが実は一番年上なリーゼロッテは、一人用の小振りなワインの瓶に手を伸ばした。
 店の人間の中に、それを咎める者は誰もいない。
 エルフが珍しくない世界だ。見た目と年齢が一致しない程度、良くあるのだろう。
「それじゃ忘年会と、別件で無茶したバルタンさんを労う場って事で、かんぱーい♪」
「いぇーい! かんぱーい!」
「お疲れ様デス、ワタシ! ありがとうデス、皆様ー!」
 リーゼロッテの音頭で、零時とバルタンもグラスを掲げてコンッと打ち合わせた。

●無茶の定義
「で、別件ってなんだそれ。バルタン、どんな無茶したんだよ?」
 乾杯を終えて椅子に座るなり、リーゼロッテが言った『無茶』に、零時が食いつき詳しい話を求める。
「……ワタシ、なにかしマシタカ?」
「あのねぇ……」
 自覚のなさそうなバルタンの様子に軽く溜息を吐いて、リーゼロッテは視線を零時の方に向ける。
「先日のことさ。バルたんってば、キャバリアから生身で飛び出して、自前のパイルバンカーでオブリビオンマシン仕留めたのさ……」
「え、リーゼロッテまじかその話!」
 リーゼロッテが語る別の世界でのバルタンの戦いの一幕に、零時が目を丸くする。
「ああ、それならマジ、デス。やりマシタ」
 当のバルタン本人が、あっさりと認めた。
「生身でオブリビオンマシン仕留めるだなんて、すげぇなバルタン!」
「付け焼刃のキャバリア操作では無理と判断しました。あの時は、あれがラストリゾートだと確信していたのデス」
 感心して少し声を上ずらせる零時に、バルタンは淡々と返す。
 普段はたまに不可思議な言動で周囲を困惑させる事もあるが、事戦いとなれば、バルタンは熟練の戦士だ。
「でもあんま無茶しすぎんじゃねぇぞ?」
「そうだよ。まあ、アタシも自分に投薬したり、人のこと言えない部分あるけど」
 零時の言葉に、リーゼロッテもしみじみと頷いた。
 だが零時が言いたい事は、リーゼロッテの思うところとは少し違った。
「無茶する時は俺様も呼んでくれよな!」
 全世界最強最高の魔術師――そんな夢を持つ零時に、無茶自体をどうこう言う気が、ある筈がなかった。
 無茶しなければ勝てない相手。そんな敵との戦いは、成長するには持ってこいだ。
「無茶は分担した方が負担も減るしさ!」
「エブリバディで無茶すれば怖くない、デスネー!」
(「話す相手間違ったかな……」)
 笑い合う零時とバルタンを横目に、リーゼロッテは胸中で呟きグラスの中のワインを一気に煽った。

●魚類系も食べられる奴います
「それはさておき、お肉の実食デース」
 立ち上がったバルタンが『格納型メイド用キッチン』を展開し、中に保存していた既に焼かれた鳥肉をテーブルの上に並べていく。
 鳥肉に合うものを、と店に頼んだパンやスープもそこに加わった。
「こんがり焼けたケキリキデース! 我ながら良い味を出せたと思いマース!」
「「ケキリキ?」」
 自ら並べた鳥の丸焼きらしきものを指したバルタンの言葉に、リーゼロッテと零時が首を傾げる。
 確か、そんなオブリビオンがいたとか――。
「えーと。この肉どこでゲットしたの?」
 産地を訊ねながら、リーゼロッテは生体電脳でこっそりと毒性を検査する。
「すぐ近くで獲得してきたデス。ちょっと山を越え、炎雷を潜り抜けた先にいたオブリビオンの肉デスヨ」
 バルタンはバルタンで、空を飛んだ際に雷に打たれたという部分をしれっと抜いてリーゼロッテに答えていた。
「近くでもなさそうだが……てかオブリビオンって食えるのか……覚えとこ」
 それがオブリビオンの肉だと知って、零時が少し緊張した面持ちで取り分ける。
「本当に……た、食べられるのコレ……?」
 毒性なし――生体電脳からその検査結果が出ても、リーゼロッテは恐る恐る鳥肉を自分の皿に取り分けた。
 そして2人同時に口に入れる。
「!? 美味しいっ」
「ああ、すっごい美味しいな!」
 その味に、リーゼロッテと零時は思わず顔を見合わせた。
 確かに鳥肉だが、ニワトリの類では中々ないであろうしっかりとした肉質。それでいて硬すぎず、脂も口の中に残りにくい。
「実においしいデスネー! HAHAHA!」
 戦いながら焼いた肉の味に、バルタンも舌鼓を打つ。肉の味を損なわないよう、使う武器を選んだ甲斐があったというものだ。
「これバルタンが作ったの!? すげぇな……お疲れさまだ!」
「うんうん。さすがバルたんだね」
「お気に召したなら、たっぷり食べて味わいマショウ!」
 バルタンのキッチンからケキリキターキーの肉がなくなるのが先か、3人のお腹が限界になるのが先か――ワンダレイの3人の宴会は、夜も遅くまで続くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神代・セシル
「宴会…知らない方が多い…」(人見知りを発揮)
食べる量はすくないので、トマトジュースを一杯だけ飲みます。
キッチンの人数はもう十分だと思い、みんなが宴会を楽しむために、給仕人として給仕をします。
参加者が多いかもしれませんが、それでも頑張ります。(フラグ)

メイド服に着替えて宴会場にいくしかない。あまり人に見られたくないですが。
みんなのテーブルへ料理と飲み物を運びます。

アドリブアレンジ歓迎


アイ・リスパー
「さあ、宴会の時間です!」

大量にゲットしてきた肉を皆さんに振る舞うため、メイド姿で給仕をしましょう。

「さあ、皆さん、召し上がれっ!
……あっ!」(注:ドジっ娘

うっかりグラスを倒したりして大惨事に!?

……うん、見なかったことにしましょう。

私は飲み物はジュースですが……
パーティーの雰囲気に当てられ、ハイテンションに!

「さあ、今年最後の宴会です!
盛り上がっていきましょう!
オベイロンも遠慮せずに飲んでくださいね!」

『お酒を私の給油タンクに入れないでください。
あと、私は鉄板ではないと何度言えばよいのですか!?』
(【マックスウェルの悪魔】で熱されつつ)

(アドリブアレンジ暴走キャラ崩壊おまかせ大歓迎)


響・夜姫
【PPP】
アドリブOK

お酒……だめ?だめかー。
仕方が無いので調理班へ。
つまみ食いをしながら、ぺんぎんさんと手分けして鶏肉を捌き、焼き鳥やカレーや唐揚げ、てんぷら等へ。
料理スキルは普通。中の上~上の下くらい。
出来上がったら給仕のわにとめんちに乗せて運ばせる。
適当なところで切り上げ、宴会参戦。飲めないけど。

PPP開発室の皆は……(惨状を見る)
「……知ってた」
ひょっとして。今回、私が良識枠なのでは?
「……まぁ。楽しいのが、一番」

「だが巨乳が脱ぐのはぎるてぃなのだわ!」
適当にゴム弾を撃つかもしれない。

・ぺんぎんさん
タンドリーチキンを作る。私より美味しい。
宴会では歌って踊っておひねりを貰う。


イデアール・モラクス
【PPP】
さぁ宴だ宴だ、飲むぞ!
まずは乾杯!!
(ジョッキを片手に打ち合わせて)
せっかく手に入れたチキンをジャンジャン食って、バンバン飲むぞ!
私は激辛チキンを所望する、後フィーナと同じものを!
(激辛からは平然と食べ、フィーナと同じのは反応お任せ)

途中からはフィーナと飲み勝負だ。
私は酒に強いのでな、ドンドン飲むぞ!

アッハッハ!どうしたフィーナ!アーハッハッハ!

(アレンジアドリブ連携大歓迎!)


フィーナ・ステラガーデン
【PPP】
さあって宴会の時間ね!まずは無事依頼が終わったことによる乾杯よー!!
(ジョッキを片手に)
もりもりとチキンを齧りながらドンドン飲むわ!
ちょっと変わったものとか無いのかしら?そこのあんたー!(店員さん)
何か普段食べれない変わった、それでいて美味しいお肉持ってきなさい!
(食べた後の反応お任せ)

適当にお酒が進んだ所でイデアールに飲み比べ勝負を挑むとするわよ!
どんどん持ってきなさい!
ぶっちゃけそんなに飲めないから途中で机に突っ伏して倒れると思うわ!
世界がまわるわあああ・・・・ぐるぐるぐる

(アレンジアドリブ連携大歓迎!)


天星・雲雀
喉元に迫る鶏肉の驚異から町が救われましたね。

宴会場にて
すでにお酒の入ってる人もいるようですが、自分は、お酒が飲めない体質なので、近くに有るお酒は、『オトモ』に飲み干してもらいます。

A&Wの各地の名産盛り合わせ贅沢仕様の、おでんでもつつきます。

UCオトモ楽団で、追加召喚した『オトモ』達にジャズを奏でてもらいグラスに注いだオレンジジュースで、雰囲気を楽しみます。

騒がしい時間も良いものです。

気化したアルコールを吸っただけで、酔いつぶれそうに成ります。

異変に気づいて、意識を強く繋ぎ止めると、お酒を飲んでいたオトモが高温に成っていました。
アルコールを燃料にし過ぎた様ですね。

※アドリブ大歓迎



●テラス席にご案内(冬ですが)
「さあ、宴会の時間です!」
 アイ・リスパーの声が、夜風に流れていく。
「宴だ宴だ! 飲むぞ!」
「まずは無事依頼が終わったことによる乾杯よー!!」
 泡立つビールの入ったジョッキが2つ、打ち合わされてガチャンと音を立てた。
 乾杯したイデアール・モラクスとフィーナ・ステラガーデンの影が、周囲でゆらゆらと揺らめく狐火に照らされて草の上で踊っている。
 【PPP】の6人がいるのは、宴会場の酒場のすぐ外――昼間は放牧地帯になっている場所に用意した、屋外テラス席である。
 冬だというのに、なんでそんな所にいるのかと言うと、幾つか理由がある。
「まさか、そんなにお酒に弱かったとはね」
「私達が飲んでいても大丈夫なのか?」
「そのくらいなら。今はオトモに吸収して貰っていますから」
 ジョッキを置いたフィーナとイデアールに、雲雀が微笑を浮かべて頷く。周囲に浮かぶ青と赤の狐火はいつもよりも大きく揺らめいている。
 雲雀の後頭部にある、でっかいたんこぶこが理由のひとつ。
「落ち着きました?」
「何とか……壁の向こうなら……」
 もうひとつが、アイが置いたトマトジュースのグラスにちびりと口をつける神代・セシルである。

 まず、酒場に入るなりセシルが硬直した。
「し……知らない方が多い……」
 セシルの人見知りが出てしまったのだ。
 ヘル・マウンテンにいる間だって他の猟兵もいたが、ヘル・マウンテンと酒場では広さがまるで違う。
 仲間達以外の表情まで見えて声が聞こえるという事は、多くなかった。
 それに、ここには猟兵以外の店の人達もいる。
 一度そう思ってしまうと、セシルは周りが気になって仕方なくなってしまった。帽子をぎゅぅっと目深に被って、仲間達の陰に隠れてしまう。

 その状況で、天星・雲雀が突然ぶっ倒れた。
 ばたーんっ、と大きな音がしたので振り向いたら、雲雀が倒れていた。
 酔っぱらって、目を回してしまったのだ。
 雲雀がお酒を飲み過ぎた――とかではない。まだテーブルにもついていなかったのだから、誰も飲んでいなかった。
 それなのに雲雀は酔ってしまったのだ。
 既に宴が始まっていた事で、酒場の中の空気に混ざっていた気化したアルコールで。

 人見知り&アルコールにめっちゃ弱い。
 セシルと雲雀を外に引っ張り出して、2人の事情を把握すれば、そのまま外で宴会と言う事になるのは自然な流れであった。
「オトモ楽団。今日はオールで頼む」
 雲雀の召喚した85体の狐火――オトモおーけすとら楽団が、周囲をぐるりと囲んで揺らめいているので、その熱で凍える心配もない。
「それじゃ改めて――ドンドン飲むわ!」
「うむ。ジャンジャン食って、バンバン飲むぞ!」
 フィーナとイデアールは、そもそもこの程度の寒さなどへっちゃらそうだ。
「お酒が足りなくなりそうですね」
 2人の飲むペースの早さを見て、アイは席を立って小走りに店内に向かう。
 今日はそういう役割をするつもりで、アイはメイド服姿であった。
 だが――ここは屋外なのだ。
 そして狐火の明かりがあるとはいえ、足元は流石に暗い。
「お酒のおかわりですよ――あっ!」
 小石があったのか、土の出っ張りがあったのか、はたまた何もないのに転んだのか。
 理由はともあれ、アイは転んだ。
 転んでしまった。
 アイの手から離れたジョッキが、宙を舞う。
「……うん、見なかったことにしましょう」
『……後で洗車してくださいね』
 頭と言うか屋根からアルコールを浴びる羽目になった機動戦車と言う惨事から目を背けたアイに、『オベイロン』のAIが機械音声ながらさめざめとした響きで告げた。

●街中でどらごんはやめとこうね
 一方、その頃。
「うーん。生はいまいちだね」
 響・夜姫は時々つまみ食いしながら、ケキリキターキーの鳥肉を焼いたり、鍋にぶち込んで煮込んだり、油で揚げたりしていた。
『グワーッ』
「え? 生の方が好き? ぺんぎんさんはそうか……」
 夜姫の隣では、宇宙ペンギンのぺんぎんさんも、夜姫の料理を手伝いながら、やはり同じように時々ケキリキターキーの肉をつまみ食いしている。
 ……。
 これ、広い意味で共食いにならないのだろうか。
 厨房にいる料理人達は、謎の鳥が料理を手伝っているという光景を、特に驚くでもなく受け入れている。
 既に何人かの猟兵が厨房に入って、分身したり光ったりしていたので、謎の鳥が手伝ってるくらいで驚かなくなってしまったのだろう。
「まあ、好都合。はい、ぺんぎんさん。カレー粉」
『グァー』
 鳥肉と幾つかの野菜を煮込んでる寸胴鍋に振りかけたカレー粉を、夜姫はぺんぎんさんに渡す。
 ペンギンさんは、カレー粉と粉にした唐辛子を混ぜ合わせると、ぶつ切りにした鳥肉に振りかけた。良く揉みこんでから、焼き始める。
 火にかけられた事で、香辛料の香りが一気に立ち昇った。
「香辛料の香りが……」
「さっきも似た香りしてたが、これはまた別の……たまらん」
 その独特の香りは、料理人たちの鼻腔もくすぐっていた。
「ぺんぎんさん、出来る?」
『グァ』
「ん。わにー、わにー。出番だよー」
 ぺんぎんさんの料理が出来上がりそうなので、夜姫は運搬役を喚び寄せた。

●まだ平和だった頃
 屋外テーブルの周囲に、ジャズのリズムが流れている。
 85体のオトモ楽団が、全周囲を囲んで奏でるサラウンド。
 その音に耳を傾けながら、雲雀は『各地名産品おでん盛り合わせ』なる料理に舌鼓を打っていた。アックス&ウィザーズにおでんがあるとは。
 時折強くなる冬の夜風が、おでんの温かさをより際立たせている。
「染みますね……」
 汁を飲み干し目を閉じれば、壁の向こうの賑わいが聞こえてきた。
 その賑やかさは自分達への報酬であり、この町が救われたからこそのものだ。
「喉元に迫る鶏肉の驚異から救われた町の夜……大変に賑やかです」

「アポカリプスヘルの拠点の時は平気でしたよね?」
「あの時は……建物の中でも、人に見られないように隠れられる所が沢山あったので」
 アイとセシルは、人見知り相談の会になっていた。
「あまり人に見られたくないのです」
「……つまり、目立たなければ問題ないと言う事ですね」
 セシルの言葉に、アイはうんうんと何度か頷いて――。
「セシルさん。お着換えしましょうか!」
「……え?」
 どういう事かと目を丸くするセシルを、アイは有無を言わさず『オベイロン』の中に引っ張り込んだ。

 そして――ストッパー役が減ると、この人たちが賑やかしくなる。
「そこのあんたー!」
「はい? なんでしょう」
 店の入り口付近を通りかかった店員を、フィーナが呼び止める。
「ちょっと変わったものとか無いのかしら?」
「変わったもの……ですか?」
 ふわっとしたフィーナの注文に、店員が流石に首を傾げる。
「何か普段食べれない変わった、それでいて美味しいお肉とか」
「今お出ししてるのが、まさにそれなのですが……」
 困り顔になって、店員はフィーナの前の皿を指さす。
 ケキリキターキーは確かに『普段食べられない変わった美味しいお肉』だろう。
「でもこれって、美味しい鳥肉と変わらないじゃない!」
「ええー……」
 フィーナの言い分に、店員は内心で頭を抱える。
 確かにそうだけど。そうだけど。
「私は激辛チキンを所望する!」
 そこに、イデアールからも注文が入った。
「あとフィーナと同じものを!」
「わあ、困りました」
 ついに頭を抱えたい内心を隠せなくなった店員は、それでも何とかしますと店の中に戻って行く。入れ違いで、何かがノソノソ歩いてきた。
『がうー』
 何かの鳴き声が聞こえて、同時に辛みのある香りも漂う。
「ん? あら、夜姫のわにじゃない」
 フィーナが振り向くと、夜姫の『野生のワニ』がそこにいた。背中に何かを乗せているようで、香はそこからしている。
「お。あれはタンドリーチキンではないか」
 イデアールが、わにの背中から皿を取ると、皿の下にメモが置かれていた。

 ――イデアール用。激辛にしといた。

 夜姫の字で、そう書かれていた。

●魔女達の意地
「砂漠のコブ馬の肉でございます」
 フィーナとイデアールの無茶ぶりに出てきた肉が、テーブルに置かれる。
 コブ馬とは、ラクダの様なものだろうか。
 肉自体は脂身の少ないさっぱり目だが、程よく歯応えのあり味わいのある肉で、やや辛口の濃いめのソースとの相性が抜群である。
「うまっ! これはお酒が進むわね!」
「おい、フィーナ。少しは遠慮しろ」
「イデアールはさっきの激辛独り占めしたでしょうが!」
 美味しい肉を巡って、フィーナとイデアールがフォークをぶつけて火花を散らす。
 そうしている内に――残り1切れとなった。
「……」
「……」
 フィーナもイデアールも、譲る気などない。
 となれば、やる事は1つ。
「酒場なら酒場らしく、飲み比べ勝負よ!」
「良かろう! 受けて立つ!」
 こうして、フィーナとイデアールの飲み比べが勃発した。
 ――いやうん。何でこうなったのだろう。もう1つ注文すれば良いじゃないと思わなくもないが、そういう問題でもないのだろう。
「話は聞かせてもらいました! 給仕は私達にお任せあれ!」
 そこにオベイロンの扉をバーンと開いて、アイが出てくる。
「何でこんなことに……」
 その後ろに続いて出てきたセシルも、メイド服に着替えていた。着替えさせられたというべきか。
「店員みたいな恰好してれば、皆気にしないですって」
 セシルの人見知りをどうにかしようという、アイなりの考えである。
(「2人なら、私がまたドジっ娘しても大丈夫でしょう!」)
 若干、私情も入っていた。
「こうなったら……行くしかないですね」
「その意気です、女は度胸と言いますから!」
 意を決したセシルの手を引いて、アイは店内に向かう。

「では、どちらかが酔いつぶれるまでと言う事で――スタートです」
 消去法で審判役をやる事になってしまった雲雀が、赤と青のオトモの陰から飲み比べ開始の合図を告げる。
「潰してやるわ、イデアール!」
「その言葉、そっくり返してやるぞ!」
 互いにメンチ切りながら、フィーナとイデアールはジョッキを掴んで、グビッグビッと中身を一気に飲み干した。
「どんどん持ってきなさい!」
「もっと大きいジョッキでもいいぞ!」
 フィーナとイデアールが、殆ど同時に空になったジョッキを置く。
 そこに、アイとセシルが新しいジョッキを持ってくる。
 賑やかな宴会の場は、いつしか熱い飲み比べの場に変わっていた。
 そして――。

●明朝が怖い
「えーと……」
 もう調理を手伝わなくていいだろうと、夜姫が厨房を出てきた時には。
 そこはまさに、惨劇の場と化していた。
「……知ってた」
 この顔ぶれで、大人しく静かな宴会になっているなんて夜姫も思っていない。
 ここまでとは思わなかったけれど。

「うう……ああ……世界が、世界がまわるわあああ……」
 真っ赤な顔になったフィーナが、立ったままフラフラゆらゆらしている。なんかUDCアースにある、音楽に反応して揺れる玩具みたいに揺れている。
「アッハッハ! どうしたフィーナ! アーハッハッハ!」
 その向かいでは、イデアールが勝ち誇って高笑いを上げていた。
(「さてはお姉ちゃん、イデアールと飲み比べたね。お酒弱いくせに」)
 夜姫は2人を一瞥しただけで、状況を把握していた。
「この肉を譲ってやろうか? ん?」
「や、やめれー……世界と一緒に胃の中で鳥がまわって……うぷっ」
 イデアールが近づけた肉から顔を背ける辺り、フィーナは限界寸前っぽいが、あれはもう、何をどうしても明日の二日酔いを回避する手立てはないだろう。
 むしろ、自覚ないのだろうが豊かな胸部を見せつけるように勝ち誇っているイデアールの方が、憎らしいというか、ぎるてぃと言うか。
 とりあえず色々脇に置いて、2人を放って視線を巡らせる。

「今年最後の宴会なんですよ! オベイロンも遠慮せずに飲んでくださいね!」
『お酒を私の給油タンクに入れないでください!?』
 メイド服姿のアイが、自分の機動戦車のAIに絡んでいた。
 どこから持ってきたのか、酒瓶をガソリンタンクの口に突っ込んでいる。
「飲み比べが終わらないから、お肉冷めてそうですよね……」
『私は鉄板ではないと何度言えばよいのですか!?』
 またアイに焼かれそうな気配を察したAIから、抗議の声が上がった。
「お姉ちゃんとイデアールの勝負の熱に当てられたってとこかな……」
 アイの様子をこれまた的確に看破する夜姫は、機動戦車の前に回る。
 機動戦車の中では、メイド服姿のセシルが助手席で膝を抱えて座っていた。
「……」
 光の消えた目で、パラパラと本を捲っている。
 人見知り特訓の給仕が、ちょっと荒療治だったようだ。
「なにがあったかわからないけど、そっとしておこう……」
 そして夜姫は、地面に視線を向けた。
 雲雀が、またぶっ倒れてた。
「おきてー、おきてー」
「……はっ!」
 ゆさゆさ揺すると、あっさりと雲雀が目を覚ます。
「……危ない所でした」
 今回は、屋外だったので、雲雀が吸い込んだアルコールは微量だったようだ。
「それ、大丈夫?」
「オトモは……アルコールを吸わせ過ぎてるようですね」
 雲雀の頭上で、青と赤の狐火はゆらゆらと言うよりめらめらと燃えていた。
「どうしてそんなになるまで止めなかった?」
「騒がしい時間も良いものです」
 夜姫の問いに、雲雀は迷うことなく返して来る。
「ひょっとして。今回、私が良識枠なのでは?」
 ひょっとしなくても、最初からそうじゃなかった?
「……まぁ。楽しいのが、一番」
 後片付けどうしようとかその辺を全部放り投げて、夜姫は天を仰ぐ。
 地上がどんな惨状でも、きれいな星空が広がっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

白霧・叶
【桔梗】
お、美羽も来たか、こっちこっち。 さてさてみんな揃ったところで始めよっか、ちょいと寂しいけど忘年会さ

飲み物も準備してもらったりで申し訳ないし料理は俺もちょいと手伝うか。 あ、皮をぱりっぱりにして塩で食べたいな俺。みんなも食べるだろ?

お、酌までしてもらってすまん。 なんだか至れり尽くせりになってるけどこんな風にみんなで楽しめるとは思わなかったから今日はいい記念になりそうだなぁ

お、美羽は歌か。こいつぁ祭りっぽくなってきた―…なんて言ってたら俺もか!? 俺にそういうのを期待されても、困るんだけど―…!!? あ、ディアナも一緒にやるか。 一人じゃ思い付かねぇけど二人なら……!

アドリブ大歓迎です


月見里・美羽
【桔梗】
叶さん、狛ちゃん、ディアナさん、お疲れ様!
……すごい鶏肉の量!担いで持ってきたの!?

忘年会の準備手伝って待ってたよ
武勇伝は後で聞かせてもらうとして、まずは食べる?食べちゃう?
(てきぱきと飲み物を配って)

じゃあ、乾杯!お疲れ様でした!

お肉、現地でも食べてきたの?すごいすごい
ボク、やっぱり焼き鳥が食べたいかな
いただきます(もぐもぐ)うん、やっぱり美味しいや
狛ちゃん、持ってきてくれてありがとう!
ディアナさんと叶さんにはお酌するね

歌?な、何か歌える歌あるかな…
じゃあ、一曲(こほん)(ファンタジー系のお祭りの歌を)

ボクはジュースで鶏のもも肉に齧りついて
みんなが無事でよかった

アドリブ歓迎


ディアナ・ロドクルーン
【桔梗】
忘年会!宴会という名の忘年会!
此処に来る前にお肉を堪能したけど、ここでもたっぷりとお肉、お酒!その他!(雑)を堪能しましょう
山を下りるもの一苦労だったし、お腹空いたでしょ?
ねー?こまたん

あ、月見里さんこっちこっちー。ゴメンね、待った?
みんなと一緒にご馳走になりましょう
かなぴょんはお酒で良い?
じゃあ今年一年お疲れ様!(ソフトドリンクを二人勧めてみんなで乾杯を

月見里さん、歌を披露してくれるの?わあ、嬉しい
とても綺麗な歌ね、お上手
ふふ、こまたんも可愛らしい踊りが素敵よ
叶さんは何か一発芸でも披露してくれるのかしら(無茶ぶり)
私は、見る専門だかr…って駄目?えー…許して~~

アドリブ大歓迎


遠吠・狛
【桔梗】
肉だ!肉食うよ!
ほんとだよ、でぃあにゃん!
大量の鶏肉担いで山降りるだけで、おなかぺこぺこなんだよ!(ぐー)
はやて丸にも手伝わせたけど、何この量!

あ、美羽がいる!忘年会しよ!一緒に騒いで肉食べよう!
かなぴょんは育ち盛りだから(?)、もっと肉食え!(押し込む勢い)

手羽先に鳥ももの照り焼きに、あっちには焼き鳥もあるねえ!
片っ端から平らげちゃうんだよ!みんなの分の肉も取ってくるね!

忘年会だし美羽、何か一曲歌ってよ!
忘年会ライブだよ!わたし合わせて踊るから!

わたしはソフトドリンクで乾杯!
今年はみんなと出会えてうれしかったよ!
来年もよろしくねえ!



●桔梗四輪
「忘年会! 宴会という名の忘年会!」
 報酬の宴会が開かれる酒場への道を歩くディアナ・ロドクルーンの足取りは、文字通り弾んでいた。
「お肉、お酒! その他!を堪能しましょう」
 食欲は、時に人の足を弾ませる。
 そしてそれはディアナに限った話ではない。
「肉だね! 肉食うよ!」
 遠吠・狛も同様、足取りも白い尾も弾みまくっていた。
「2人とも、落ち着けよ。もう肉は逃げないんだから」
 そんな2人の様子に苦笑しながら、白霧・叶は後ろに続いている。
「あ、いや。あの時も、逃げはしなかったな」
 戦いの時を思い出し、叶は自らの言葉を訂正した。
 ケキリキターキー達は逃げる素振りを見せなかった気がする。逃げる暇も与えずに、狩りまくったとも言うが。
「そうねえ、逃げなかったかも。忘年会のお肉も逃げないでしょうね」
 叶の言葉に、ディアナは二度、首を縦に振る。
 だが――それとこれとは話は別だ。
「でも落ち着けないわよ。だって、お腹空いたでしょ?」
 くるりと踵をを返して叶に告げると、ディアナはそのまま隣の狛に視線を向けた。
「山を下りるもの一苦労だったもの。ねー? こまたん」
「ほんとだよ、でぃあにゃん!」
 同意を求めるディアナと顔を見合わせ、狛も力強く頷いた。
「大量の鶏肉担いで山降りるだけで、おなかぺこぺこなんだよ!」
 狛の言葉を証明するように、ぐぅぅと、そのお腹から腹の虫が主張する。
 ――ぐぅぅぅ。
 その音に釣られたように、もう1匹の腹の虫が叶のお腹から主張してきた。
「まあ……俺も腹は、うん。減ってる」
 ディアナと狛の視線を浴びながら、叶も空腹を認める。
「鳥肉運んだ帰りは、行きよりも大変だった」
「え……すごい鶏肉の量だったけど、まさか担いで持ってきたの!?」
 叶が呟いたそこに、3人の知っている声が聞こえた。
 声の方に視線を向けると、月見里・美羽(星歌い・f24139)が驚いたように青い瞳を3人に向けている。
「あ、美羽がいる!」
「狛ちゃん、叶さん、ディアナさんも、お疲れ様!」
 真っ先に気づいて駆け出し、そのまま胸に飛び込んだ狛を受け止めながら、美羽は叶とディアナにも労う声をかけた。
「もう来てたのか、美羽」
「月見里さん。ゴメンね、待った?」
「ううん。忘年会の準備手伝って待ってたよ」
「美羽、お肉はね。はやて丸にも手伝わせたけど――」
 肉を運んだ苦労を話そうとした狛を、美羽は指を一つ立てて遮った。
「武勇伝は後で聞かせてもらうとして、まずは食べる? 食べちゃう? 食べちゃお? 4人掛けのテーブル、予約しておいたよ?」
 準備もそれなりに労働である。
 待っていた美羽も、3人に負けず劣らず空腹を抱えていた。
「そうだな。みんな揃ったところで始めよっか、ちょいと寂しいけど忘年会をさ」
「うん、忘年会しよ! 一緒に騒いで肉食べよう!」
「ええ。みんなと一緒にご馳走になりましょう」
 叶の言葉に狛とディアナも頷いて、4人は美羽の抑えておいたテーブルに着いた。

●桔梗宴席
「忘年会なら、まずは乾杯だよね」
 テーブルに着くなり、美羽がてきぱきとグラスを配る。
「どのお酒にしようかな……かなぴょんもお酒でいい?」
「俺はビール……はあるのかな」
「ビール……これかしら」
 ディアナと叶は、準備されていた酒を物色し始める。
「ボクたちは、ソフトドリンクだね」
「お肉に合うのはどれかな?」
 美羽と狛はノンアルのドリンクから、それぞれ好みのものを選んだ。
 4人のグラスに、それぞれ色の違う液体が注がれる。
「さて。色々あったが今年ももうすぐ終わりだ」
 叶が、気泡湧く黄金色の液体の上に白泡が乗ったビールの入ったグラスを掲げる。
「じゃあまずは、今年一年お疲れ様!」
 ディアナが掲げたグラスの中は、淡く仄かな黄緑の白ワイン。
「本当に、今日も、お疲れさまでした」
「今年はみんなと出会えてうれしかったよ! 来年もよろしくねえ!」
 美羽と狛のグラスは、お肉との相性優先でアイスティー。
 グラスを掲げた4人は、顔を見合わせグラスを皿に前に出す。
「「「「乾杯!」」」」
 4人の声が重なって、打ち合わせた4つのグラスがコツンッと音を立てた。

 乾杯が終われば、お待ちかねの食事の時間だ。
「ふぅ……」
 空になったグラスを置いたディアナの呼気に、ワインの酒気と余韻が残る。
「さあ、食べましょう! 向こうでもお肉を堪能したけど、ここでもたっぷりと」
 だがやおら席を立って、小走りに肉を取りに行った。
 余韻を楽しむより、今のディアナは肉に意識が向いている。
「みんなの分の肉も取ってくるね!」
 ディアナに続いて、狛も席を立って駆け出した。
「うーん。色々あって迷うわね」
「手羽先に鳥ももの照り焼きに、あっちには焼き鳥もあるねえ!」
「丸焼き一羽くらい、4人なら余裕よね?」
「片っ端から平らげちゃおう!」
 ディアナと狛は共に一番大きな皿を取ると、思い思いに鳥肉を乗せていく。
「お肉、現地でも食べてきたの?」
「ああ……食べた」
 そんな2人を横目に訊ねてくる美羽に、叶がしみじみと頷いた。
「そんなにお腹がすくくらい、大変だったの?」
「まずそこまで行くだけでお腹すいたから……」
 首を傾げる美羽に、叶が遠い目で返す。
「本当に火山を歩く方が大変だった。肉壁になるし。戦いになれば2人とも強いから、俺はとどめ刺してたくらいだったよ」
「「おまたせ!」」
 美羽に叶が、昼間あった事を話していると、狛とディアナが戻ってきた。
 2人とも、両手に肉だらけの大皿を持っている。合わせて4枚――乗っている量は、並みの4人前以上あるだろう。
 そして、肉の時間が始まる。

●桔梗舞楽
「山で焼いて食べたのも美味しかったけど、これも、これも、どれも美味しい!」
 照り焼き、唐揚げ、串焼き、チーズを絡めて焼いたもの。
 鳥肉食べて、また鳥肉食べて。
 狛のお腹に、様々に調理されたケキリキターキーのお肉が消えていく。
「この、皮をぱりっぱりに焼いて塩降ったの、酒に合うなぁ」
「かなぴょんは育ち盛りだから、もっと肉食え!」
 酒のつまみになりそうなものにばかり手が出る叶に、狛が押し込む勢いでもも肉を焼いた物を皿に乗せた。
「あ、これダメなやつだわ。お肉もお酒も止まらなくなるやつ」
 叶が取ろうとしていた鳥皮を、ディアナの前の皿にも乗っている。
「ディアナさん、空になってるよ。叶さんもどう?」
 肉も酒もどんどん進んでいるディアナと叶のグラスが空になると、美羽が気づいてそつなく注いでいた。
「お、酌までしてもらってすまん。美羽も食べてくれ」
「そうよ、月見里さん。お酒は良いから食べて――るわね」
 気にした叶とディアナに、美羽は確保したもも肉の照り焼きを片手に持って、がぶりと噛り付く。
 あれほどあったケキリキターキーの肉は、4人の前から次々と消えていった。
「会場も飲み物も準備して貰って。 なんだか至れり尽くせりになってるなぁ」
 しみじみと言って、叶が酒を煽る。
「けど、こんな風にみんなで楽しめるとは思わなかったから……今日はいい記念になりそうだなぁ」
 火山を行くのは大変だったけれど、この時間は苦労に見合う――充分以上の報酬だと、叶は酒気を帯びた息を吐いた。
「じゃあ、もっと記念にしよ! 美羽!」
 それを聞いた狛が、何かを思いついた。
「忘年会だし、何か一曲歌ってよ!」
「え、歌?」
 狛に唐突に歌を求められ、美羽は目を瞬かせる。
 美羽は嘗て、この世界とは違う宇宙世界で、覆面のシンガーソングライターをしていたという過去がある。
 その時の場は――『Miiw』として歌う機会は、今はもうない。
「忘年会ライブだよ! わたし合わせて踊るから!」
 狛が口にした『ライブ』と言う言葉を聞くのは、いつぶりだろう。
 ましてそれを求められるなんて。
 だけれども――たとえ歌う場も故郷も失っても、美羽は歌う事まで忘れてはない。
 美羽は今でも、音楽が好きなのだ。
 色々な世界の音楽を聞くのが好きなのだ。
 歌う事だって――。
「じゃあ、1曲」
「月見里さん、歌を披露してくれるの? わあ、嬉しい」
「お、美羽は歌か。 こいつぁ祭りっぽくなってきた」
 はにかむように微笑んで席を立った美羽を、ディアナと叶もある種の期待の籠った視線を向けていた。
 そんな視線を受けてしまっては。
 誰かに歌う事を求められてしまっては。

「~~♪ ――♪ ――♪~~♪♪」

 美羽の口が、旋律を紡ぐ。
 色々な世界を旅して聞いた中で得た、お祭りの歌。
 軽快で、弾むような楽し気なメロディの歌。

「っ♪♪ っ♪」

 タンッ、タンッと、狛が木の床を蹴る音が、歌と同じリズムを刻む。
 即興でぴょんぴょこ跳ねて踊りながら、狛は歌の邪魔をしないよう、声には出さずに「楽しいね」と口だけ動かした。
「――♪~~♪♪」
 歌いながら、美羽も小さく頷いた。

 ――パチパチパチ。
 歌と踊りの即興ライブを終えて少し顔を上気させている美羽と狛に、ディアナと叶のみならず、見ていた何人かからも拍手が送られた。
「とても綺麗な歌ね、お上手。ふふ、こまたんも可愛らしい踊りが素敵よ」
「うん、美羽の歌もこまたんの踊りも、良かったぞ」
 テーブルに戻った2人に、ディアナと叶が賛辞を贈る。
「是非、もう一曲お願いしたいくらいだよ」
 やんわりとアンコールをと告げる叶が、この時ディアナの方を気にしていれば、向けられる視線に気づいただろう。ディアナの浮かべた、少し悪戯な笑みも。
「次は、叶さんは何か一発芸でも披露してくれるのかしら」
「俺!? 」
 突然のディアナの無茶振りに、叶が驚き目を見開く。
「いや、俺にそういうのを期待されても、困るんだけど―……!!?」
「かなぴょんなら出来るって、私信じている!」
 困惑する叶に、ディアナが曇りのない視線を向ける。
「だからそんな瞳で俺を見るんじゃ――あ」
 半日ぶりな既視感しかないやり取りに、叶が何かを閃いた。
「ディアナも一緒にやろう」
「え?」
 叶の予想外の返しに、ディアナは一瞬言葉を失う。
「えーと……私は、見る専門だかr――」
「俺もだ!」
 逆に言葉に詰まったディアナに、叶がきっぱり告げる。
「こまたんと美羽も二人でやっただろ。だから、こっちも二人で。一人じゃ思い付かねぇけど二人なら……!」
「えー……」
 有無を言わさず手を取って立ち上がらせる叶に、ディアナが流石に困り顔になる。
「許して~~」
「許さない」
「かなぴょん、でぃあにゃん、頑張って」
「楽しみにしてますね」
 珍しく狼狽えて叶に手を引かれるディアナを、狛も美羽も笑顔で見送ってくれた。
 2人がどんな一発芸をしたのかは――4人だけの秘密である。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セツナ・クラルス
【幽幻】
大人組のワインを少し気にしつつノンアルで乾杯

始めはカエナさんと同じくナイフとフォークで食事をしていたが
男性陣の豪快にターキーを齧る様子を見て
決意を固めると、手で肉を掴みそのまま齧り付く
ふふ、たまには「悪い子」になってみたいからね
お行儀悪く指についた脂を舐め嬉しそうに笑って

気が大きくなったらしく
私はこう見えても成人しているのだからね
お酒だって問題なく飲めるのだよ
等と言いながら、得意げに初体験のビールを一口
…ううん、ええと…なんというか難しい味?だね
私にもジンジャーエールを貰えるかい?


四月一日・浬
【幽幻】
チキンもターキーも食べ放題とは
大盤振る舞いな忘年会じゃのう
食欲旺盛な若人たちと共に楽しませて貰うとするか

色んな世界に行けると言うことは
様々なグルメが楽しめるということ、
A&Wは肉が美味い。覚えた
慣れた食べ方をするのが一番じゃろうが
量を食べようと思うなら手掴みも良いよな、
腹八分目を弁えながらするする鶏肉を食してゆく

ワインもビールも酔いすぎぬよう、お気をつけよと
わしもジンジャーエールで乾杯としようか
ふふ、賑やかなこの光景だけでも充分
腹いっぱいになるというもの
良き出会いの年に感謝せんとなぁ


葉山・鈴成り
【幽幻】

シシッ、どこ見ても豪華っスねぇ。
鈴成とハイタッチ交わしてパーティを楽しむ気満々
大人組はワインにビールか〜、かっこいいっス。
ジョッキを掲げて盛大に乾杯

うまそうっスね〜、俺はこのケキリキの肉にしようかな。
初めて食べる肉にドキドキしつつ頬張る
う、美味いっす…!!
カエナちゃんの心配には口いっぱいに肉を入れたままコクコクと頷いて
もぐもぐ、ごくん
へへ、なんか恥ずかしいとこ見られちゃったっすねぇ。
子供っぽい姿を見られて照れ笑い

A&Wの肉はワイルドだけどジューシーでうまっ。
浬くんと味の感想を言い合いながら、どんどん消えていく鶏肉に
やるっすねぇ。と負けじと食べていく

みんな来年もよろしくお願いするっス!


葉山・鈴成
【幽幻】

ヒャハっ!ターキー食べ放題っス!
やったー!とテンションMAXではしゃぐ俺と鈴成り

酒飲めないからジンジャーエールをジョッキで!
意気揚々と特大のグラスを片手に
それじゃあ、みんな楽しんで盛り上がろうってことで、かんぱ〜い!

一番最初にかぶりつくのはもちろんターキーっスよ!
あーん、ガブッ!と豪快にいくっス
う、うまーっ!!
あまりの美味しさに目はキラキラ
肉を頬張ったらジンジャーエールでこれまた豪快に流し込む
ぷはーっ!最高っス!

セツナの旦那も悪い子仲間入りっスかー?うはは
ルーファスの旦那も良い食べっぷりっすねぇ。
よーっし、誰が一番ワイルドに食べれるか勝負っス!
謎の勝負持ちかけつつ楽しい宴に笑顔が溢れる


ルーファス・グレンヴィル
【幽幻】
チキンもターキーも、だろ?
食べ放題なんて贅沢だな
どうせなら腹一杯食べ尽くそうか

カエナ、ワイン飲むのか
一人で飲むならオレも付き合うよ
グラスを傾けて乾杯の音頭を待って
ほら、大人同士でも乾杯しようか
浬の言葉には微笑み、気をつけるよ、と

お、鈴成、良い食べっぷりだな
オレも見習って、がぶり!
丸齧りで溢れ出す肉汁
ごくりと喉を通って

めちゃくちゃ、うめえ!

これは病み付きになるな
ターキー片手にワインを楽しむ
最高の忘年会じゃねえか

勝負するなら
いつだって相手になるぜ?

──って、何だ
セツナ、ビール初めてなのか
あの味が美味いんだけどな

鈴成りの挨拶にけらりと笑って
ああ、来年もよろしく頼むよ


カエナ・ネオフォカエナ
【幽幻】

チキンにターキー食べ放題…!
何とも心躍るパーティではないか
料理を眺め、きらきら瞳を輝かせる
ふふふ、宴のはじまりぞ!

肉といったらワインじゃろう?
酒場の店主おすすめの赤ワインでも用意してもらおうかの
おや。ルーファスも飲む?嬉しいのう。
乾杯、じゃの。わらわも今日は楽しむぞい。

これこれそんなにがっつくと喉を詰まらせてしまうぞ、と
言いつつも視線はお肉へ

さすがにかぶりつくのは女子として恥ずかしいものがあるのでの。
と、指先で口元を隠して、こほん。
フォークとナイフで切り分けて食べるのじゃ。
口の中に広がる肉汁…柔らかでしっとりとした食感。
ううむ。なんとも美味じゃのう…!
皆と楽しむ宴はほんとうに楽しいのう



●宴に誘われて
 ほろ酔いの猟兵も増えて来た頃、【幽幻】の6人が酒場の扉を開いていた。
「――本当に、食べ放題みたいですね」
 店の中の様子を一瞥して、セツナ・クラルス(つみとるもの・f07060)が呟く。
 大体のテーブルには、山盛りの肉を筆頭とした料理の数々が並んでいた。食べ放題でもなければ、そんな量があちこちのテーブルに並ぶ筈もない。

 セツナのすぐ後ろには、白髪と黒髪の少年2人が続いていた。
「シシッ、どこ見ても豪華っスね」
 面白がるような笑みを浮かべる白髪の方が葉山・鈴成り(左魂・f28040)で――。
「ヒャハっ! ターキー食べ放題っス!」
 誰の目にも明らかなくらいテンションが上がっている黒髪の方が、葉山・鈴成(右魂・f28041)である。
 2人の姿はほぼ瓜二つだ。まるで鏡に映った像が鏡から出てきて、片方の髪と瞳の色を変えたかのように。

 それもその筈。
 鈴成と鈴成りは、元々は同じ存在――『ナリキリ』と言う妖怪だったのだから。
 人に化けて人を化かして揶揄うのを好む妖怪だったが、その為に化け術を多用している内に、何故か魂が左右に分離してしまい、二人で一人の妖怪となってしまった。
 尤も、当の本人達がそれを気にしていない。
 一人の頃よりも手が増えていい、なんて思っているくらいだ。
「どっち食う?」
「一番最初にかぶりつくのはもちろんターキーっスよ!」
「そっちもうまそうっスね~。じゃ、俺はこっちのケキリキの肉にしようかな」
 今だって、鈴成と鈴成りでどの肉から食べるか相談している。1人の身体より2人の方が、食べられる肉の量も増えてラッキー、とか思っているのだろう。
「どっちかなんて、気にすることか?」
 そんな鈴成と鈴成りに、ルーファス・グレンヴィル(常夜・f06629)が後ろから声をかけた。
「折角、食べ放題なんて贅沢な席なんだぜ」
 ルーファスはニヤリと笑って、続ける。
「チキンもターキーも、だろ? どうせなら腹一杯食べ尽くそうじゃねえか」
「「その通りッスね」」
 ルーファスの言葉に、鈴成と鈴成りはパンッと音を鳴らして、掌を打ち合わせた。

「チキンもターキーも食べ放題……!」
 4人に続いて店に入ったカエナ・ネオフォカエナ(彼の背骨・f27672)も、思わず声が弾んでいた。
「本当にチキンもターキーも食べ放題とは、大盤振る舞いな忘年会じゃのう」
 最後の一人、四月一日・浬(ムジナ・f29293)も、物珍し気に周囲を見回して小さな笑みを浮かべる。
 フライドチキンにロースト―ターキーの鳥肉料理ばかりではない。
 牛や豚と言った他の肉を使ている料理も見えるし、湯気の立つ暖かいスープやサラダ、デザートの類もちらほら見えていた。
 それが全部食べ放題だなんて。
「何とも心躍るパーティではないか」
 海底に隠れ住むカエナだが、こうした宴が嫌いなわけではない。
「ふふふ、宴のはじまりぞ!」
 数々の料理に、カエナの青い瞳はきらきらと輝いていた。

●乾杯
 空いているテーブルに案内された6人は、適当に椅子に――。
「あれ? カエナさんは?」
 ふとセツナが1人足りない事に気づいた。
「あそこじゃな」
 気づいた浬が示す方に視線を向ければ、カエナの青い髪はすぐに見つかった。店のカウンターの方で、壮年の店員と何やら話している。
「待たせてしまったかの。これを貰って来たのじゃ」
 ほどなくしてテーブルに来たカエナは、何かを抱えていた。
「肉といったらワインじゃろう?」
 ワインの瓶である。それも複数。
「わらわも今日は楽しむぞい」
 見た目は少女にしか見えないカエナだが、実は齢三桁に突入した長生きさんである。そう説明したらあっさりとワインを貰えたのは、この世界だからこそであろう。
「カエナ、ワイン飲むのか」
 カエナが卓上に置いたワインに、ルーファスが視線を向ける。
「おや。ルーファスも飲む? 店主お勧めの赤ワインぞ」
「そいつはいいな。一人で飲むならオレも付き合うよ」
 ルーファスはそう言うとコルク抜きとワインの瓶を手に取った。程なく、きゅぽんっと空気の抜ける音がして、コルクが引き抜かれる。
 封じ込められていたワインの香りが、ふわりと広がった。
「嬉しいのう」
 漂う香に本当に嬉しそうに呟くカエナのグラスに、ルーファスが赫い葡萄酒を静かに注いでいく。
「大人組はワインにビールか~、かっこいいっス」
「オレらはジンジャエールだな」
 今度はカエナがルーファスのグラスに注ぐのを眺める鈴成りと鈴成の手元には、小さな気泡が幾つも泳ぐ薄い琥珀色の液体が入ったジョッキがあった。
「わしもジンジャーエールじゃな」
 浬も2人と同じ飲み物を、自分のグラスに注ぐ。
「……」
 ルーファスとカエナのワイングラスが気になりながら、セツナも鈴成達や浬と同じ飲み物を手元のグラスに注いでいた。
 セツナとて飲もうとすれば、誰に咎められる事もなくワインでも飲める年齢。
 まだ――そういう気分にはなれないだけで。
「それじゃあ、みんな楽しんで盛り上がろうってことで」
 全員の手に飲み物が入った杯があるのを確認し、鈴成がジョッキを掲げる。
「かんぱ~い!」
「乾杯!」
 鈴成の声に、鈴成りがジョッキを打ち合わせる。
「うむ。乾杯じゃ」
「はい、乾杯」
 一拍遅れて浬とセツナもそこにグラスをコツンと合わせる。
「ほら、大人同士でも乾杯しようか」
「乾杯、じゃの」
 ルーファスとカエナも、4人と同じ高さに掲げたワイングラスを打ち合わせ、チンッと小さな音を立てた。

●美味しいお肉の食べ方
「それじゃ……」
「いただくッス」
 初めてのケキリキターキーの鳥肉。鈴成と鈴成りはやや緊張した面持ちながら、胸の高鳴りに突き動かされ、手で掴んでガブッと噛り付いた。
「う、うまーっ!!」
「う、美味いっす…!!」
 鈴成と鈴成りの口から、同時に感動の声が上がった。
 紫と緑、色の違う4つの瞳が、感動にキラキラと輝いている。
 二口、三口と続けて噛り付いて、2人同時にジョッキを掴んで、ジンジャエールをぐいっと流し込んだ。

 ――っぷはーっ。

 鈴成と鈴成りの口から、やはり同時に感嘆の息が漏れた。
 かと思うと、2人はまたすぐに肉を掴んで食べ始める。
「これこれそんなにがっつくと喉を詰まらせてしまうぞ」
 窘めるようなカエナの声に、鈴成も鈴成りも、肉の脂に塗れた親指を無言で立てるだけしかできなかった。
 2人で1人の存在でも、2人とも口いっぱいに肉を食べていたら、喋る口はない。

「お、鈴成達、良い食べっぷりだな」
 2人の食べる勢いに、ルーファスも刺激された。
 お酒を飲む時は何か食べながらの方が良いものだ。
 ルーファスも2人に倣って、素手で肉を掴み取って噛り付く。
「――!」
 ガブリと大きく肉を齧った直後、ルーファスの瞳が思わず見開かれていた。
 火を通した後の鳥肉とは思えない、弾力のある歯応え。それを無視して噛みつけば、ほろりと肉が崩れて、溢れ出した熱い肉汁が口の中に広がる。
「めちゃくちゃ、うめえ!」
 肉の旨味が口に広がり、ごくりと喉を通っていった感覚に、ルーファスの口からも思わず声が上がっていた。
「ルーファスの旦那も良い食べっぷりっすねぇ」
 次の肉に手を伸ばすルーファスに、鈴成も肉を取りながら声をかける。
 その顔には、挑戦的な笑みが浮かんでいた。
「よーっし、誰が一番ワイルドに食べれるか勝負っス!」
「勝負するなら、いつだって相手になるぜ?」
 食事の席だろうと、戦闘狂のルーファスが挑まれた勝負に頷かない筈はなかった。

 猟兵の活動の場は、幾つもの世界に及ぶ。
 幾つもの世界を行き来する――そう言葉にすると大変そうだが、そんな中にも利点があるのだと、浬は己の舌と口で感じ取っていた。
「色々な世界に行けるということは、様々なグルメが楽しめるということじゃな」
 その通りである。
 こればかりは猟兵の役得だ。
「アックス&ウィザーズの肉はワイルドだけどジューシーでうまっ」
「うむ。このアックス&ウィザーズは肉が美味い。覚えた」
 笑顔で次の肉を取る鈴成りに頷いて、しみじみと浬が呟く。
 浬が普段暮らしている幽世にも、肉がないわけではない。
 だが、こんなに美味い肉はあまり記憶になかった。
「あの食べっぷりも、頷けるというものじゃ」
 浬の視線の先では、鈴成とルーファスが凄まじい勢いで肉を食べ続けていた。
「やるっスねぇ」
 鈴成りも、負けじと肉に噛り付く。
「食欲旺盛な若人たちと共に楽しませて貰うとするか」
 その様子を眺める浬の口から、まるで自分が若くないような言葉が零れていあ。
 それもその筈。
 浬は99年使われた器物が身体を得た存在である、ヤドリガミなのだから。
 そして浬は、かつて妖怪に使われていた。
 今の、茶色い髪の若い青年と言った姿は、変化の術で作ったものだ。
 故にその姿は、浬の本当の姿ではない。明日は違う姿に化ける事だって出来る。何なら今すぐにでも。
 浬の本当の姿は――本人しか知らないのかもしれない。

 カチャカチャと、ナイフとフォークの音が響いている。
 先ほどは鈴成達を窘めるような事を言ったカエナだが、そう言いながらもあの時既に、視線は肉に釘付けになっていた。
 とはいえカエナは女子である。
 いくら無礼講の場とは言え――だからこそ――鈴成と鈴成りの様に、手掴みで食べるというのは。
「さすがにかぶりつくのは女子として恥ずかしいものがあるのでの」
 齢三桁になっていようが、女子は女子である。
 というわけで、カエナはナイフとフォークを使い、骨の少ない肉を皿に取り、ナイフとフォークを使って食べていた。
 それでも、口に入れればほろりと肉が崩れ旨味が肉汁と共に広がる。
 柔らかでしっとりとした食感ながら、確りとした旨味が広がる。
「ううむ。なんとも美味じゃのう……!」
 自分の口元が緩んでいるであろうとカエナは自覚していたが、同時にそれを隠すことを諦めていた。こんなに美味しいのだ――無理である。

 一方、セツナもナイフとフォークで鳥肉を食べていた。
(「骨付きの鳥肉って、ナイフ入れにくいんですよね……」)
 フォークで抑えてナイフを斜めに入れながら、セツナは胸中で呟く。
 弾力があり締まった肉とは言え、切る事は難しくない。だがテーブルナイフで、鳥の骨まで切るというのは難しい。
 おまけに調理されてもオブリビオンと言う事か、鳥類にしては骨が丈夫で、とても並みの食器では切れそうにはなかった。
 だから骨の周りの肉をある程度食べてしまえば、あとは骨に沿ってナイフを入れて削ぎ落としていくしかない。
 セツナがそこに苦労している内に、鈴成とルーファスの食べ比べが始まり、肉はどんどん消えていく。
(「手掴み……」)
 してみようかと、セツナが自分の掌を見る。
「慣れた食べ方をするのが一番じゃろう」
 そんなセツナの様子に気づいて、浬が口直しのグラスを傾けながら声を上げた。
「じゃが、量を食べようと思うなら手掴みも良いよな」
(「……よし」)
 独り言ちるような浬の言葉で、セツナの決意は固まった。
 素手で肉を取って、そのままガブリと噛り付く。
「っ!」
 セツナの目が、見開かれた。
 ナイフで切ると、どうしても皿の上に肉汁や脂が流れてしまう。だがこうして噛り付く事で、その大半は口の中に広がるのだ。
 肉自体が変わったわけではない。
 それなのに、食べ方を変えただけでこうも変わるものか。
「セツナの旦那も悪い子仲間入りっスかー?」
「ふふ、たまには『悪い子』になってみるのも、悪くないものだね」
 鈴成の言葉に頷いて、セツナは指についた脂を舐めるという、セツナの基準では行儀が悪い部類になる行為を、しかし嬉しそうにやってみせた。
「……」
 悪い子になってナイフを手放したセツナに、女子を捨てきれないが故にナイフを捨てきれないカエナが何か言いたげな視線を向けていた。


 理性の箍と言うものは、一度外せば外れやすいものだ。
 まして――こんな宴会の場では。
 一度席を立ったセツナが戻ってきたとき、その手にあるものを見て、5人とも少なからず驚いていた。
 ビールの瓶だったのだ。
「私はこう見えても成人しているのだからね。お酒だって問題なく飲めるのだよ」
「なんじゃおぬし飲めたのか。どれ、注いでやろう」
 何処か得意げなセツナのグラスに、カエナがビールを注ぐ。気泡が湧く黄金色の上に白い泡がいい塩梅に作られた。
 ゴクリと喉を鳴らし、セツナはグイっと一口。
「……」
 初めての苦みが、セツナの口の中に広がり喉を滑り落ちた。
「……ううん、ええと……初めて飲んだけど、なんというか難しい味? だね」
「──って、何だ。セツナ、ビール初めてなのか」
 なんだか微妙な表情になったセツナに、ルーファスも声をかける。
「うん。私にはジンジャーエールの方があってそうだよ。いるかい?」
「そういう事なら。あの味が美味いんだけどな」
「あ、わらわも飲むのじゃ」
 セツナが飲み切れない分のビールは、ルーファスとカエナの胃に消えそうだ。
「ワインもビールも酔いすぎぬよう、お気をつけよ」
「気をつけるよ」
 浬がぽつりと言葉に、ルーファスは微笑んで頷く。
「酔い潰れる醜態は見せぬよ。皆と楽しむ宴はほんとうに楽しいからのう」
 ビールを注ぎながら、宴に水を差すような真似はしないとカエナも頷いた。
「浬。食べないん? 俺ら食っちゃうっスよ」
 なんだかんだ周りに気を使っている浬に、鈴成が声をかけた。確かに、テーブルの上にあれほどあった料理は少なくなっている。店に言えば、まだ出てくるだろうが。
「ふふ、賑やかなこの光景だけでも、充分。腹いっぱいになるというもの」
 鈴成達に比べれば、浬の食べた肉は多くない。
 だが浬は、満ち足りた気分を抱えていた。
「良き出会いの年に感謝せんとなぁ」
「みんな来年もよろしくお願いするっス!」
 しみじみと浬が呟いた後に、鈴成りが親指立てて大きな声で告げる。
 同じ魂である鈴成は、その横で笑顔を浮かべている。
「ええ、よろしく」
 先のビールで酔ったか少し赤い顔のセツナも、笑顔で頷く。
「ああ、来年もよろしく頼むよ」
「うむ。よろしく頼むぞい」
 ルーファスは酔いの影響を感じさせずにけらりと笑って返し、カエナも最初にワインを持ってきた変わらぬ顔色と笑顔で頷いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

砂羽風・きよ
【賭事】

宴会だ!
食って食って食いまくるぜ!

ディイ、見ろよ!
俺と綾華が汗水垂らして作ったモリモリチキン!
めっちゃ旨そうだろ
なんかやだって言うなよ!ほんとのことじゃねーか!

俺が考えたネーミングセンスいいだろ
なんでだよ!ぴったりだろ!

早速食おうぜ!乾杯!
うおお、やっぱうめー!

いやー、めっちゃ火山が暑くてよ
焦げてる後ろ髪に指差して
ケキリキターキーと一緒に俺のことまで炙るんだぜ?!

え、もちろん綾華のこと好きだぞ!
ディイのことだって好きだ!

他につまめるもの作るか
なんか作ってほしいのあるか?モリチキ?
モリチキ以外かよ!さっぱりめな

――なんだ、ディイ改まって
照れるじゃねぇか!

いつも感謝してるだろ!
ありがとな!


浮世・綾華
【賭事】

さけさけ!
めっちゃ飲んで食べる

汗水…俺は別に垂らしてない
汗臭いのはきよしだけだ

モリモリチキンって名前もダサくねえ?
でもま、味はフツーだったからディイも食えよ

はぁい、かんぱーい

俺の鬼火がきよしを敵って判断したんだ
いつも嫌がることしてくるから
つーか避けねえきよしが悪い
は?んなわけねーだろ
次はちゃんと避けろよ
ハゲきよしの隣歩きたくねーもん

うん、俺は頑張った
きよしは相変わらず戦闘中に料理してた
――ディイ、今の話聞いてた?

モリモリチキン以外
さっぱりしてるやつがいいな

言うならディイだけで言ってくれ
俺はぜってーいや
むしろ感謝してほしいくらいだろ

ほら、早く言えよ
ありがとうございますって
はよはよ。はよ!


ディイ・ディー
【賭事】

いえーい、宴だ!
俺も大いにご相伴に預かるぜ

きよ、正直に言うとだな
ネーミングセンスは悪い……
けど味に関係はないから俺は気にしねーよ

乾杯!
うわ、すげー美味いじゃん
これが勝利と平和の味ってわけか

二人の話を聞きながら
相変わらず喧嘩する程の仲の良さに思わず笑う
お前ら二人、なかなかに頑張ってきたんだな
その恩恵で俺も此処に居られるわけだ

いつも思ってんだけどさ
綾華はきよのことがかなり好きなんだな
それに逆も然り

同じくモリモリチキン以外で
そうだな、俺は……きよにお任せ!
お前の料理の腕も信用してるからさ

綾華もさ、たまにはアレ言おうぜアレ
きよ、ありがとう――ってさ!

……あ、またいつものじゃれあいが始まった



●ニューとスーパーも候補でした
「宴会だ!」
「いえーい、宴だ!」
「「乾杯!」」
 砂羽風・きよとディイ・ディー(Six Sides・f21861)の声が続いて、コンッとグラスを打ち合わせる音が鳴る。
「はぁい、かんぱーい」
 一拍遅れて、浮世・綾華もそこにグラスをコツンと打ち合わせる。
「ふぃー。2人とも、ありがとな。俺も大いにご相伴に預かるぜ」
 討伐には参加していなかったディイが、きよと綾華に宴の礼を述べる。
「いいってことよ。料理すぐ持ってくるから、食って食って食いまくろうぜ!」
 ディイに向かって頷くと、きよは席を立って駆けていった。
「結構大変だったって?」
「ま、そこそこな。敵もきよしもうるさくて」
 その背中をディイと見送りながら、綾華は空になったグラスに手酌で酒を注ぐ。
「ディイ、見ろよ!」
 そこに、きよが大皿を持って戻ってきた。
 きよが置いた大皿は、煮たり焼いたり揚げたりと、色々な形で調理された鳥肉――もといケキリキターキーのお肉――の盛り合わせが乗っている。
「これが――俺と綾華が汗水垂らして作ったモリモリチキンだ!」
「汗水……俺は別に垂らしてないし」
 自分も汗まみれになったようなきよの物言いに、綾華がぽそりとツッコミを入れる。
「そんな事言うなよ、綾華。一緒に特性耐熱防具でアチー思いしたじゃねーか!」
「汗臭かったのはきよしだけだ」
 食い下がるきよに、綾華がしれっと返す。
「それに、モリモリチキンって名前もダサくねえ?」
「ダサいって言うなよ!」
 戦場でも起きたきよのネーミングセンス論、再燃。
(「あ、さっそく始まった」)
 またか、という顔で、ディイはしばしの傍観を決め込んだ。
「いいか! これは、綾華が知ってるモリモリチキンじゃねーんだぞ」
「ん?」
 きよの言葉に、綾華が首を傾げる。
 そういえば、店の厨房を借りるとか話していたような――。
「あそこは火山の近くだし、道具は限られてたし、綾華に敵ごと炙られたりして、料理に専念できなかったからさ。店の厨房借りて、ちょいちょいっとな」
 厨房を借りたきよが手を加えた今のモリモリチキンは、綾華が知っているモリモリチキンとは似て非なるものである。
「新たなモリモリチキン――名付けてネオモリモリチキン!」
「まんまじゃねーか」
 きよの口にした新たな名前に、綾華は思わずツッコミを入れてしまった。
「俺が考えたネーミングセンスいいだろ、ディイ」
 綾華のその反応は予想の内だったので、きよはディイに感想を訊ねる。
「えーとだな……」
 傍観決め込んでたら、いきなり話を振られたディイは、なんと言ったら良いものかと視線を彷徨わせる。
 だが、綾華の方に視線を向けると、あからさまに視線を逸らされた。
 絶対に目を合わせないぞと、全身で語っている。
 さっき傍観決め込んだお返しか。
「きよ、正直に言うとだな……」
 援護が期待できない以上、ディイは覚悟を決めるしかない。
「そのモリモリチキンのネーミングセンスは悪い……」
「っ!!」
 結局、ディイがずばりと言った時のきよの表情は、ガーンッと言う文字を背景に乗せたくなるものだったと、後に綾華は語ったという。
「なんでだよ! ぴったりだろ!」
「ま、味はフツーだったからディイも食えよ」
「だな。味に名前は関係ないから俺は気にしねーよ」
 納得がいかないと騒ぐきよをよそに、綾華とディイはネオモリモリチキンを、大皿から自分たちの皿に取り分け始めた。

●変わっても美味
 結論から言えば、ネオモリモリチキンは、美味しかった。
「うわ、すげー美味いじゃん」
「うおお、やっぱうめー!」
 ディイが一口食べて思わず声を上げ、作ったきよ自身も自讃の声を上げる。
 アウトドア料理では、どうしても出来る事に限りがある。細かな味付けなどは、その範疇だろう。
 だからきよは、帰ってから手を加えてネオモリモリチキンにしたのだ。
(「……酒に合いやがるな」)
 その味付けは、綾華が好んで飲む酒に良く合う味付けに変わっていた。
 それ故に肉も酒も進む。それがネオモリモリチキンが酒に合うからだと感じながら、綾華はそれを口には出さなかった。
 火山を進む中、きよの防具の効果を幾らか認めても、悔しいからと口には出さなかったのと同じように。

●変わらぬ語らい
 ――幾らか食べて空腹が落ち着いた頃。
「いやー、めっちゃ火山が暑くてよ」
 きよは、ディイに道中の苦労話を語っている。
「やっと火山を抜けたと思ったら、綾華が、ケキリキターキーと一緒に俺のことまで炙るんだぜ?! ほら、これ」
 ディイに背中を向けて、まだ焦げてちりちりになった跡が残る後ろ髪を見せる。
「あれは、避けねえきよしが悪い」
「だからあんな不意打ち避けきれるかー!」
 ぼそっと口を挟んだ綾華に、きよがぐりんっと振り向いて言い返す。
「俺の鬼火がきよしを敵って判断したんだ。いつも嫌がることしてくるから」
 その視線を柳に風と受け流し、綾華はしれっと返す。
「俺のせい? 俺が悪いのか?!」
「次はちゃんと避けろよ。ハゲきよしの隣歩きたくねーもん」
「俺ごと炙らない戦い方する気はー!?」
 始まった綾華ときよのじゃれ合うような言い合いに、ディイは思わず、口の端に笑みを浮かべていた。
(「相変わらずだな」)
 喧嘩する程に仲がいい――まさにこの2人にぴったりの言葉ではないか。
 とはいえ、放っておいたらしばらく続きそうなので。
「わかったわかった。お前ら二人、なかなかに頑張ってきたんだな」
 ディイは2人に聞こえるように声を上げ、座ったまま話に割り込んだ。
「その恩恵で俺も此処に居られるわけだ」
 そのまま話題を変えようとするディイだが。
「うん、俺『は』頑張った。きよしは相変わらず戦闘中に料理してた」
「今回は料理してやんのもありって、綾華も言っただろー!」
 綾華が蒸し返すものだから、再びきよとの言い合いに話が戻りかける。
「そうだっけ?」
「いつも思ってんだけどさ」
 言い合いが本格化する前に、ディイは空とぼける綾華に視線を向けて――告げた。
「綾華はきよのことが、かなり好きなんだな」
 常々思っていた事を。
「――ディイ、今の話聞いてた?」
「それに、逆も然り」
 綾華の声を無視して、ディイはきよに視線を向けて続ける。
「え、もちろん綾華のこと好きだぞ!」
 対照的に、きよはあっさりとディイの言葉に頷く。
 ――臆面もなくそういう事を言えるのが、きよだ。
「……」
 これには綾華も、押し黙って無言で酒を煽る。
 気づけば、ネオモリモリチキンのあった皿は、空になっていた。
「綾華まだ飲めそうだし、他につまめるもの作るか。なんか作ってほしいのあるか? モリチキ?」
 気づいたきよが、椅子から立ち上がる。
「モリモリチキン以外。さっぱりしてるやつがいいな」
「同じくモリモリチキン以外で。そうだな、俺は……きよにお任せ!」
「モリチキ以外かよ! まあいいけど。さっぱりめな」
 綾華とディイから返ってきた言葉に苦笑しながら、きよは空いた皿を持ち上げた。
「きよ」
 その背中に、ディイが声をかける。
「ありがとうな。お前の料理の腕も信用してるからさ」
「――なんだ、ディイ改まって。照れるじゃねぇか!」
 空いている片手で、くすぐったそうに頬をかきながら、きよはディイに笑いかける。
 その顔を見ながら、ディイは綾華に視線を向けた。
「綾華もさ、たまには言おうぜ」
「ん?」
 話を振られると思っていなかったのか、少し意外そうに顔を上げた綾華に、ディイは言葉の続けた。
「きよ、ありがとう――ってさ!」
 聞いた途端、綾華は――すごくいやそうな顔になった。
「言うならディイだけで言ってくれ」
 絶対言ってやるものか、と綾華の顔に書いてある。
「むしろ感謝してほしいくらいだろ」
「いつも感謝してるだろ!」
 綾華が矛先を変えれば、きよがすかさず言い返す。
「綾華こそ、たまには俺にもっと優しく――」
「ぜってーいや」
 きよが大皿置いて身を乗り出せば、綾華はふいと顔を背ける。
「……あ、またいつものじゃれあいが始まった」
 また始まってしまった2人のやり取りを、ディイは――どこか眩しそうに目を細めて眺めていた。
 こんなやり取りを、来年もまた見る事になるんだろうと思いながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オズ・ケストナー
リュカ(f02586)と

ぼうねんかいっ
ううん、のまないよ
だってリュカはのまないでしょ?

注がれたら
じゃあのむっ
くぴくぴと水を飲むみたいに

(これ以上飲むとスヤァとなる直前で
うんうん、お肉も食べようっ
ケキリキターキーもせっかく焼いたものね

キャンプで焼きおにぎり食べたよっ
海でジェラート食べて
アイス食べて
図書館はくじらさんとさかなつりしたけど食べてないし
あ、花のつぼみつけておどったときは食べものあったっ

たくさんあそんだねっ
ふふ、あとねえ
リュカがたくさんねてた
前はね、わたしのほうがうとうとぽかぽかーってしてたけど
リュカもおやすみってするようになった

その理由はわからなくてもうれしくて

うん、来年もよろしくねっ


リュカ・エンキアンサス
オズお兄さんf01136と

忘年会といえばお酒らしい
お兄さん、飲む?
俺が?いいよ、俺は気にしないから飲みなよ、折角だし
酔っぱらいの扱いは、実は慣れてるんだ


……
(どうしようお兄さんの顔色が全然変わらない、逆に心配になってきた
えー…っと
まあいいや。お肉食べる?
折角だもの、沢山食べて、飲んでいこう
なんか一年も終わりだけど、今年も本当にいろんなもの食べた気がする
あれ、そんなこともなかったっけ?
おかしいな。たくさん遊んだ記憶はあるけど…
寝てた?
そっか、そういうことも増えたかもしれない
人間としての進歩かな…
とか、一年のことを何となく振り返りながら

改めて
お兄さん
今年もお世話になりました
来年も、よろしくね



●幼い大人と大人びた少年
「ぼうねんかいっ」
 弾む足取りで酒場の中に入っていくオズ・ケストナーの後を、リュカ・エンキアンサスが黙ってついて行く。
 既に宴席が始まっているテーブルもあるようだ。
 そこら中に漂う肉の焼けた匂いに混ざる酒精の匂いが、それを伝えてくる。
「忘年会といえばお酒らしいけど、お兄さん、飲む?」
 空いているテーブルに着いたリュカは、脱いだ帽子を椅子の背にかけながら、向かいに座ったオズにそう訊ねる。
「おさけ? ううん、のまないよ」
 しかしオズのキトンブルーの瞳は、意外な事を訊かれたように丸くなっていた。
「だってリュカはのまないでしょ?」
「俺が?」
 今度はリュカの方が、意外そうに目を瞬かせる。
「いいよ、俺は気にしないから飲みなよ、折角だし」
 だがリュカはすぐにいつもの表情に戻ると、近くにいる店の人間に、お勧めの酒をオズに持って来て貰うように伝える。
「いいの?」
 首を傾げるオズの前に、果実酒の瓶が運ばれてくる。
「酔っぱらいの扱いは、実は慣れてるんだ」
 その言葉を証明するかの様に、リュカは愛用の短剣を使い、慣れた手つきでコルクを抜いてみせた。

●血も涙もないと言うこと
「……」
 くいっ。
「………」
 くぴくぴっ。
「…………」
 果実酒が、まるで水を飲んでいるかの様にオズの中に消えていく。
(「どうしよう。お兄さんの顔色が全然変わらない」)
 予想を上回る飲みっぷりな上に、限界の兆候が目に見えてこないオズに、リュカは逆に心配になってきていた。
 それもその筈である。
 普段はそう思わせないほど表情豊かで、好奇心の塊のようなオズだが、その身体は血も涙もない人形のものなのだ。
 血の流れがなければ、酔いが顔色に出てこなくともおかしくはない。
(「流石に止めた方がいいのかな……でも平気そうだしな……」)
 だがリュカが胸中で案じている懸念は、しかし杞憂であった。
(「あ。これ以上飲んだら、スヤァってなりそう」)
 オズの中で、何かがアルコール摂取の限界が近いと告げてくるような感覚が生じる。
「えー……っと」
 突然、酒を飲む手が止まったオズを、リュカが心配そうに見やる。
「ん。おさけはごちそうさまっ」
 丁度そこに、頼んでいたお肉――鳥肉の丸焼きが運ばれてきた。
「お肉食べる?」
「うんうん、お肉も食べようっ」
 食べられるかと訊ねるリュカに、オズはいつもの笑顔で頷く。
(「え? もしかして、あれだけ飲んでも全然酔ってない?」)
 そういう事でもないのだが、リュカの中でオズのうわばみっぷりが急上昇。
 だがそんな疑念を――焼き立てのお肉の匂いが流していく。
「まあいいや。折角だもの、沢山食べて、飲んでいこう」
「うんっ、ケキリキターキーもせっかく焼いたものね」
 リュカとオズは頷き合うと、ケキリキターキーの丸焼きに取り掛かった。

●振り返って、感じること
 お酒の影響はオズの食欲には影響なくて、リュカも食べ盛り。
 大皿で運ばれたケキリキターキーの丸焼きは、ぺろりと2人のお腹に消えていた。
「食べた食べた」
「ケキリキターキー、おいしかったね」
 満たされた気分で椅子の背にもたれて、2人は食後のお茶を楽しんでいる。
「なんか一年も終わりだけど、今年も本当にいろんなもの食べた気がする」
 カップから立つ湯気を見ながら、リュカがぽつりと呟いた。
「えーっと。あ。キャンプで焼きおにぎり食べたよっ」
 オズは指を一つ立てると、隣の指も続けて立てる。
「海でジェラート食べて、アイス食べて。図書館はくじらさんとさかなつりしたけど、食べてないし――あ、花のつぼみつけておどったときは食べものあったっ」
 指を立てたり戻したり。
 けれども指折り数えるオズの指は、片手の数を越えてこない。
「あれ、そんなこともなかったっけ?」
 それを見ていたリュカが、自分の感覚との違いに内心で首を傾げる。
「おかしいな。たくさん遊んだ記憶はあるけど……」
「たくさんあそんだねっ」
 それにはオズもすぐに頷く。
「ふふ、あとねえ。リュカがたくさんねてた」
「寝てた?」
 オズの続けた言葉に、リュカが今夜一番驚いたように目を丸くした。
「うんっ。前はね、わたしのほうがうとうとぽかぽかーってしてたけど、リュカもおやすみってするようになった」
 オズの脳裏に浮かんでいたのは、別の世界の島。
 森にハンモックをかけて、先に寝たのはオズの方だったけれど。オズが目を覚ました時には、リュカも読みかけの本をお腹に乗せて穏やかな寝顔を見せていた。
「……そっか」
 何故か嬉しそうにオズが話すのを黙って聞いていたリュカは、それだけ呟いて頷く。
 そういうことも増えたかもしれない。
 人前で熟睡なんて、戦場を渡り歩いていた頃のリュカならしなかっただろう。出来る筈もなかった。
 自分の生き方は変えられないと思っていたけれど。変えられないのは、これまでの生き方で。これからの生き方は――変えられるのかもしれない。
 もう、変わり出しているのかもしれない。
「人間としての進歩かな……」
「リュカ?」
 ぽつりと呟いたリュカに、オズが首を傾げる。

 リュカが寝てた話をしながら、オズは嬉しい気持ちになっていた。
 それが何でかはオズ自身判っていなかったけれど。

「何でもないよ。それより――お兄さん。改めて、今年もお世話になりました。来年も、よろしくね」
「うん、来年もよろしくねっ」
 小さく笑って告げるリュカの顔にますます嬉しくなって、オズはいつも以上に目を輝かせた笑顔で頷いた。


●次の年へ
 年の終わりのある夜が、更けていく。
 ある猟兵にとっては、いつもより賑やかな夜だっただろう。
 ある猟兵にとっては、いつもとあまり変わらない夜だっただろう。

 夜が更けていく。
 月が沈んで星が回れば、また陽が昇り明日が来る。
 新しい年は、もうすぐそこまで来ていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年01月10日


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挿絵イラスト