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フロム・ザ・ダークサイド

#スペースシップワールド #猟書家の侵攻 #猟書家 #ミニスター・ブラック #フォースナイト

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 恐らくは辺境。
 少なくとも、スペースシップワールドにおいて人類が観測した内では広い宇宙の中でも知り得るものが少ない宙域に、その船は回遊することで、その存在を秘匿していたという。
 何故の辺境、何故の秘匿。
 その船には、多くの若き戦士の卵が、教練に身を置いていた。
 フォースナイトを育成する機関として、まことしやかに囁かれる程度のその船はそこに確実に存在している。
 サイキックエナジーを武器として使う彼らにとって、その戦闘技術はもとより、一歩間違えれば精神を悪の心に堕としてしまうというリスクがあるために、フォースナイトには強い精神性を求められる。
 心身を鍛え上げ、いかなる困難、巨悪にも屈しない心と、それに伴う肉体と技術を練り上げる。
 それはそんな船であった。
 その特異性ゆえに外界との接触は稀であり、彼らはただひたすらに、誰も知らない闇の中で光を鍛えていた。
 その日は、教官の一人であるウォーマシンが、子供たちを連れて無重力下での戦闘を想定した訓練を行うべく、ドーム状の修練所に出ていた。
 ウォーマシンの名はフラテール。
 年端もゆかぬ子供たちの精神鍛錬とは別に、純粋に戦闘力を鍛えるため作り上げられた教練機械である。
 疲れなく戦いの術を教え続けるロボットながら、恐れや傲慢を抱かせぬよう、その心は穏やかで厳しい。
 重力の薄いドームの中で、彼はフォースセイバーをはじめとしたサイキックエナジーに依らない戦い方を子供たちに丹念に叩き込んでいた。
 純粋な子供たちの吸収力は高く、日に日に教えを己のものにしていく彼らの成長にフラテールも楽しみを覚えていたのだが、その平穏は突如として破られることとなる。
 暗い虚空を見つめ続けるドームの天蓋が外側から破られた。
「なんと他愛のない」
 黒い、金属の塊のようなクリスタリアンにして猟書家の一人、ミニスター・ブラックの巨躯からは、いささか失望の念が感じ取れた。
 破られたドームの天井からは空気が抜けていくのを防ぐため、自動修復ロボットが駆けずり回り中、ミニスター・ブラックの存在を真っ先に脅威と感じたフラテールが前に出る。
「皆さんは避難を! こちらは私が足止めします」
 想定外の事態にも慌てることなく子供たちに指示を飛ばすフラテールを通り抜けるかのように、ミニスター・ブラックの射出した自律機動ビットが光の刃を煌めかせて逃げ惑う子供たちに襲い掛かる。
 が、フラテールがそれを許さない。
 4本の足が跳ね、4本の腕が開き、子供たちに迫るビットを直前で切り落とした。
 その手に握られるのは、フォースセイバーを模した4本のプラズマの光刃。
「さぞ、名のある騎士なのでしょう。されど、子供たちを害する事は許しません」
「我が巨躯を見て、刀間合いにて力技を振るう狂戦士とでも思ったか?
 こうまで容易に侵入を許すとは、我が策を弄するまでもない。
 そして、我が前に立つのがお前のような玩具とはな」
 魔力のこもった拳が巨躯より繰り出され、フラテールはそれを4本腕全てを使ってようやく受け止める。
「……幾星霜の時を経て、宇宙騎士はここまで衰えたか」
 魔法とプラズマが干渉して爆ぜるような激しい音を立てながら、ミニスター・ブラックは恐ろしげな形相の内に落胆と、そして続けて笑みを浮かべる。
「だが、これから死をもって鍛え直してやろう……闇の騎士として!」

「とまぁ以上が、猟書家ミニスター・ブラックの襲撃計画の概要だ」
 グリモアベースはその一角、ファーハットに青灰色の板金コートがトレードマークのリリィ・リリウムは、居並ぶ猟兵たちに告げる。
 スペースシップワールドでは、オウガ・フォーミュラの力を持つプリンセス・エメラルドの目論む「帝国継承軍の誕生」を実現するべく、いくつかの幹部が行動を起こしている。
 ミニスター・ブラックもまたその幹部の一人であり、彼の計画は、フォースナイトを育成する「騎士教練艦」を襲撃し、フォースナイトになるべく育成されている子供たちを殺して闇の騎士としてオブリビオンに仕立て上げるつもりらしい。
「子供を狙うっていうのが気に食わないが、まあ、そう言う事をするだけあって、ミニスター・ブラックは図体に似合わず頭の回る奴だ。
 無論、単体で仕掛けに来てるわけじゃない。足止めを食らう事なんて百も承知だろう。
 自分が遮られてる間は、部下に子供たちを襲わせるつもりのようだな」
 目を細め、まとめた資料の束を指先でとんとんと叩く。
 教官や子供たちも、猟兵には及ばぬとはいえ既にフォースナイトとして戦うことができる。
 とはいえ、それも長くはもたないだろう。
 猟兵たちの助けは不可欠である。
「まずは子供たちの安全が最優先だ。幸いといっていいのか、ミニスターには足止めが付いている。時間稼ぎはしてくれるはずだ。
 順番に事を運び、被害を抑えつつ、奴を叩いてほしい」
 冷静に話しながらも、リリィの顔つきは険しい。
 猟兵でもない者が猟書家と対峙して無事で済むはずがない。
 教官のフラテールというウォーマシンが、いつまでもつかは保証できない。
 彼女の提示した作戦が、苦渋の決断であるのは言うまでもなかった。
「奴らは子供に手を出すような卑劣な敵だ。艦内での戦いだが、手加減の必要はない。
 どうか、力を貸してほしい」
 一通りの説明を終えると、リリィは帽子を取って一礼すると、転送の準備を始めるのだった。


みろりじ
 どうも、こんばんは。流浪の文書書き、みろりじと申します。
 久しぶりのSSWのシナリオであります。凶暴な見た目のクリスタリアンであるミニスター・ブラックの策略を迎え撃つシナリオです。
 幹部シナリオのため、2章編成でお送りします。
 肝心の猟書家は、どこかで見たような奴が足止めしているため、まずは集団戦にて子供たちに降りかかる脅威を排除し、しかる後、ミニスター・ブラックの待つドーム状の修練所で決戦という形になると思います。
 集団戦は、襲撃されてる最中の教練艦での戦いとなります。
 騎士教練のための艦であるため、多くの場所がそれほど狭いと感じない程度には戦うスペースがある設定です。
 また、全編に於いて、子供たちや教官もフォースナイトとして手伝ってくれます。
 協力を求めるのも、素人は黙っとれするのも自由です。
 それではみなさんと一緒に楽しいリプレイを作っていきましょう。
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第1章 集団戦 『量産型戦闘員』

POW   :    戦闘員パンチ
【悪の戦闘員の人海戦術で】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
SPD   :    悪の一般戦闘員的人海戦術
【とびかかる戦闘員A】【おさえつける戦闘員B】【しがみつく戦闘員C】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    悪の一般戦闘員としての誇り
自身の【どこにでもいる一般戦闘員的習性】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

叢雲・源次
【煉鴉】
スペースシップワールドか…訪れるのは久しいが、よもやこのような事態になっているとはな…行くぞ、グウェンドリン。のんびりと宇宙旅行とはいかんらしい。

(背には剣士を志す子供ら、眼前にはその子らを守らんと剣を振るうウォーマシン。傍らには紆余曲折にて剣を教える事になった少女……ふむ、と一つ思案してから)…それもまた、一興か。こちらもかつては教えを授かった身…であればこそ、俺もそれに倣うか…椿流抜刀術が神髄、ご覧頂こう。
(無手にて一歩、二歩と歩みを進め…戦闘員が飛び掛かってくるのに合わせ、後の先にて七閃絶刀で全て斬り捨てんとする)

(刀を納め、残心が如く柄に手を添えて)…他愛無い。


グウェンドリン・グレンジャー
【煉鴉】
邪神に屈しない、心……鍛えられる、子供
何だか、親近感
(自分の精神に宿る堕ちた女神、生体内蔵型クランケヴァッフェとして移植された女神の死骸、己を教え導いてくれる剣の師といえる存在に思いを巡らせ)

……まずは、雑魚、退治
(フォースナイトの卵達を守るように、戦闘員の前に立ち塞がる。腰から、布も皮膚も突き破って生えてくる黒翼)
Feather Rain、羽根、一枚一枚を、呪殺弾として、蹂躙

攻撃、終わって、まだ残ってるヤツ。鈴鹿御前、振るって、処分
第六感、で、チャンスを、見極め
怪力で、斬り上げ、処理、

……危ない
(ブーメランのように鈴鹿御前を投げ、子供達に迫っていた戦闘員を攻撃。念動力で手元へ戻し)



 激しい剣戟が爆ぜる様に響く部屋から出るよう命ぜられたフォースナイトの卵たち。
 それに異議を唱えることも許されず、二体の巨躯のぶつかり合う衝撃に押し出されるかのように教練生たちは部屋から追いやられ、その扉は気圧調整用の緊急シャッターと共に閉ざされてしまう。
「くそっ、フラテール教官が!」
 教練生の一人が声を荒げ、分厚いシャッターを殴りつける。
 戦力外と言われたわけではない。
 しかし、巨悪と戦うために学んでいた力が、いざというときに役に立てないのはやり切れない。
「シャッターを開けるには時間がかかる……武器でこじ開ければすぐじゃないか!」
「俺たちも戦おう!」
 教練生たちは口々に、泡を飛ばして武器を手にする。
 しかしそれを諫めるかのように、年長の教練生が手を上げる。
「いや、なんだか様子がおかしいぞ……。ほかにも侵入してきた者が居るのかもしれない。
 教官がそうしたように、俺たちも若い奴らを守らなきゃダメだ」
「教官を見捨てるのか!」
 怒りに任せて食って掛かる教練生の肩に手を置き、年長の教練生は自身にも言い聞かせるかのように手に力をこめる。
「教官は言った。避難をと。それができない連中を助けるんだ。今は、それが俺たちの戦いだろ」
 見るだけで痛みを覚えるほどの形相で諭すその姿に、食って掛かった教練生も苦い表情で頷いた。
 一呼吸ついたところで、教練艦のあちこちから警報が上がった。
 懸念は当たっていたようである。
 少年たちは顔を見合わせ、それぞれに頷き合うと、サイキックエナジーを力とした武器を手に、高らかに叫ぶ。
「戦えない者を、避難させる。戦える者は、手を取って戦う。そうだ、俺達にはフォースが付いている!」

 場所は変わって、教練艦の別の一角。
 ロビーのような開けた部屋の中央に、投影型モニターが備え付けられており、
 そこには空間戦闘教練用のドームでミニスター・ブラックをたった一人で足止めしたウォーマシンと、それによって逃がされた教練生の少年たちが決起するまでの一部始終が映し出されていた。
「スペースシップワールドか……訪れるのは久しいが、よもやこのような事態になっているとはな……」
 モニターに映る映像が乱れ始めると、それまで黙って様子を見ていた叢雲・源次(DEAD SET・f14403)が表情を変えずにつぶやく。
 表情もそうだが、言葉にもほとんど抑揚が付かないためか、それは独り言のようにも聞こえるが、傍らに並ぶ少女は、彼が無為に言葉を使うことはしない事を知っている。
「邪神に屈しない、心……鍛えられる、子供
 何だか、親近感」
 たどたどしくも聞こえるのんびりとした言葉。グウェンドリン・グレンジャー(Heavenly Daydreamer・f00712)は、源次と同じくらいには表情に乏しいものの、自身の頬を撫でる仕草は、何か暖かいものを見守るかのようでもあった。
 邪な心と語感は同じだが、彼女が指しているのは己の見の内に植え付けられた堕ちた女神の残骸。
 UDC由来の邪神をその身に宿して戦うグールドライバーである彼女は、その心を常に邪神の甘言に付き合わされる。
 それに屈せぬための方法の一つとして、精神修行を兼ねる剣術。
 それを学ぶ上での師は……どうやら自分と同じくらいには表情が乏しい。
 似ていると言っては失礼だろうか。
 腕と足が4本もあるウォーマシンがちらりと見せた眼差し。子供たちを守らんとする優しさ。
 そしてそれは、紆余曲折を経て彼女に剣を教える事となった源次もまた同じような感慨を抱いていた。
 深く彼女の事情に踏み込んでいるというわけでもないが、彼らフォースナイトの関係性は、通じるものがある。
 ふむ、と小さく嘆息する。
「……それもまた一興か」
「ん……」
 小さくつぶやく源次の言葉少なに、グウェンドリンが意味を汲み取ったかどうかは定かではないが、首肯して付き従う事に理由は不要であった。
 そこへ、
「イイーッ!」
 甲高い怪鳥音のような、異様な声が響く。
 見れば、壁際に追い詰められた年端もゆかぬ子供たちへと、黒いタールのようなもので構成された怪人の集団が、今にも飛び掛からんとしていた。
 粘性の高そうなのっぺりとした真っ黒な人型のその顔には、ぎらりとした眼差しを光らせるホッケーマスクが張り付いていた。
 体格は大の大人に相当するが、それらが集団で子供数人をじわじわと追い詰めていく様は、なんとも犯罪的である。
 見るに堪えぬ。
「行くぞ、グウェンドリン。のんびりと宇宙旅行とはいかんらしい」
「うん……」
 いうが早いか、グウェンドリンが滑るように駆ける。
 前のめりに倒れるようなそれは、走るというよりまさに滑るようなものだった。
 常人なら普通にすっころびそうなものだが、直後に腰から皮膚を突き破って生えた黒い翼がその姿勢を制御し、滑空するかのようにして、一瞬で子供たちと怪人との間に割って入るのだった。
「イ、イー?」
 突然の闖入者に小首を傾げる怪人。
 しかし、すぐあとに聞こえよがしの靴音に、思わず目を向ける。
 こつこつと一歩一歩踏みしめるかのように革靴を鳴らす源次のそれは、演出に過ぎない。
 刀が全盛の時代は、彼の故郷からすれば昔の話。
 その時代からすれば、靴はより進化を遂げて音を鳴らさぬように、足が疲れぬようによりよくなっていった。
 それでなくとも、歩幅や間合い、気配などといった一切の情報を与えぬため、足音は出さないべきなのである。
 まして椿流抜刀術の使い手たる源次が、それを敢えてやるというのは、完全に術中に嵌めるための演出に過ぎぬというわけである。
 事実、子供たちを囲っていた筈の怪人たちは、見事に目を奪われた。
 怪人の視線を奪うのは、スーツにベルトで刀を提げた極めてフォーマルな装いである。
 その手に剣は握られておらず、無造作に歩み寄る姿は無防備と言わざるを得ない。
「イイーッ!」
 ならば組み伏すに易しとばかり、複数の怪人が一斉に源次を取り押さえようと飛び掛かる。
 怪人たちは気づていなかったのだ。歩み寄る源次のその肩が、歩いていて尚、上下していない事に。
「──勝負」
 飛び掛かることの利点は、その奇襲性による。
 されど、それが来ることが見えていれば造作もなし。
 地に足がついていなければ、躱すこともかなうまい。
 無造作に刀の鞘口に手をやる段階で、源次の剣は初速を得る。
 飛び掛かる怪人の先手に合わせた後の先【七閃絶刀】は神速の体捌きによって、通り抜ける際に最高速を終える。
 それは踏み込みから繰り出す抜き打ちによって七回斬りつけるだけの技である。
 言葉にすればなんとも色味に欠けるが、言うほど容易いものではない。
 何しろ、飛び掛かる数人の怪人をすり抜ける様にしてすれ違い、瞬く間に鞘鳴りを残したまま、影法師の様に揺らいだ源次が怪人たちと行違った時には、既に刀は鯉口を閉じていたのだ。
 その間に七回。
 不思議そうに振り向いた怪人が、そのまま両断されたときにはじめて、彼らは斬られたことを自覚したのであった。
「……他愛ない」
 残心の如く柄に手を添え、静かに息をつく。
 それを、ほう、とため息交じりに子供たちと一緒に見ていたグウェンドリンは、はっと自分も敵を前にしていたことを思い出す。
「……まずは、雑魚、退治」
 威嚇するかのように広げた黒い翼がわななくように羽毛を揺らす。それは厳密には生物由来の翼ではない。
 刃のような切れ味を持った羽根は、虚数物質で構成され、それらは彼女の意のままに使える。
 たとえば、【Feather Rain】すなわち、雨の様にその刃を飛ばして切り裂くことも。
「みんな、伏せて……」
 広げた翼から放たれるそれが放射状に広がれば、射線上にいた怪人たちは瞬く間に撃ち抜かれ、
「ヒイーッ!」
 悲鳴のような声を上げて一人また一人と倒れていく。
 しかし、怪人たちも一人一人は大した力を持たないようだが、数が多いというのはそれがそのまま耐久度とも言えた。
 羽の穿たれた怪人の影に隠れて難を逃れた一人が、隙を見てグウェンドリンに飛び掛かってきた。
 ぼんやりしているように見えるグウェンドリンなら、隙があると見たところだったが、それでも剣を学ぶだけはあり、グウェンドリンは持ち前の勘の良さでそれを察知。
 『鈴鹿午前』を抜き放ち、迎え撃つかに見せかけ出足を留まらせ、切っ先を下げると、そのまま踏み込んで切り上げる。
「イーッ!」
「ん?」
 一刀両断、と行くはずだったのだが、力任せに振るったせいか、刃が半ばで止まり、そのまま壁に打ち付けて引き抜く動きで、ようやく切り裂いたようだった。
 まあ斬れたならいいか。
 深くは考えず、周囲を見渡すと、まだ生き残りがいた。
 その怪人は、刀の間合いに入る前に近くにいた子供を盾にしようとしているようだった。
「……危ない」
 口調だけはぼんやりしているが、その動きは鋭く、持っていた刀を躊躇せずに投げつけた。
 力持ちであるグウェンドリンが力任せに投げつけた刀の切っ先が、ホッケーマスクに深々と突き刺さった。
「そんな使い方は、教えていない筈だが……」
「急いでたから……」
 肩をすくめる源次の、どこか呆れたような物言いに、グウェンドリンは表情こそ希薄ながら、照れたように頬を掻きつつ、念動力で刀を回収する。
 周囲の子供たちからは、その様を見て「フォースだ」と囁かれるも、二人は気にせず次の戦場を目指すのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

春乃・結希
悪の組織の下っ端の見本みたいな見た目の敵を『with』でボコーっしつつ
興味津々で子供達に話しかけます

ねぇねぇ、フォースって、どうやったら使えるんですか?
心?想い?それなら、私もちょっと自信があります
私の想いの力、よかったら使ってみてください
UC発動
私はみんなみたいに、フォースの力は使えないけど
『with』が側にいる限り、私の心は絶対に闇に負けないし、強くいられるんです
みんなには、一緒に頑張ってる仲間がいるから
苦しい戦いでも、1人やないから
側にいる仲間を信じて戦えば、絶対に乗り越えられます
子供達と動きと合わせて、敵に切り込んでいきます

先生に、みんなのカッコいいところ、見せてあげようよ!


ミフェット・マザーグース
到着したらすぐに子どもたちに合流するよ
端末から〈ハッキング・情報収集〉で訓練所の情報を引き出すね

訓練用の装置で敵の迎撃に使えそうなものを〈メカニック・罠使い〉で動かして、みんなが戦闘員をやっつけるまで子どもたちを守る!
他の猟兵さんと連携できそうなら積極的に声をかけてアドリブでがんばるよ!

UC【嵐に挑んだ騎士の歌】
もし子どもたちが手伝ってくれるなら、歌で応援するね
オトナみたいに戦わなくていいから、装置を動かしたり、モノの投げたり、自分のできることで、戦闘員を足止めする手伝いをしてくれたら、それで十分
みんなが大事なお星さま、一人でもいなくなったら負けって、忘れちゃダメだよ



 ぐらりと地鳴りのような振動が足元を震わせる。
 星の無いこの世界、この辺境の宙域では、この教練艦のみが人の住まう星であり住居である。
 そこへ外からの介入があれば、何かしらの防御機構、あるいは機能を守るための閉鎖弁などが起動し、均衡を崩した個所から大小のひずみを生むこととなる。
 それが衝撃や振動となって、艦を揺らすのである。
「おっとと……ここも閉鎖ですか。思ったより入り組んでますね」
 春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)は、愛する大剣を携えて教練艦の中を一人歩いていた。
 向かう先はミニスター・ブラックを足止めしている空間戦闘教練用ドームだが、肝心の道筋を聞きそびれていた。
 うっかりしたものだが、どうやら敵は一人ではない。
 特段気にすることもなく、結希はいつでも戦えるよう抜身の大剣を担いで早足に進む。
 閉鎖弁が閉じているということは、近くの隔壁が破られたのかもしれない。それはつまり、侵入してきた敵が近いとも言えるわけだ。
 倒しながら、目的地を目指せば一石二鳥だ。
 逆境もうっかりも、彼女にとっては大した障害にならない。
 何故ならば、愛用の大剣『with』を手にしている限り、自分は絶対的に強いと信じているからだ。
 極めてシンプルで、利己的。だからこそ、その思い込みが少女に大剣を担がせ、不倒の超人となさしめている。
 信仰という点に於いて、正しき心を鍛錬する教練艦の子供たちとは、通じるものがあるかもしれない。
 実のところ、結希はこの教練艦に住まうフォースナイトの卵たちと話をしてみたい気持ちがあった。
 一人だと張り合う相手もいない。いや、一人だからこそ、この想いには誰もかなわないと証明したくもある。
 子供っぽいだろうか。
 非常時にはあるまじき呑気で無邪気な疑問が頭に浮かびつつ、警戒だけは怠らず、結希は愛する剣と共に艦内を駆ける。
 ところ変わって、開けた訓練施設の一角には、十代前半の子供たちが立てこもっていた。
 教練艦の施設は、どれも実戦を想定しているらしく、それぞれにかなり頑丈な建材が使用されている。
 出入り口を固めてしまえば、そこそこはもつはずと考えた末の行動であった。
 そして、集まった子供たちが手にしたのは、教練用のフォースセイバー。
 サイキックエナジーを流し込むことで光の刃を作り出すものだが、まさかそれで斬り合ってしまえば大けがは必至。
 教練用はセイフティが施され、非殺設定により当たった相手が焼き切れるより前にセイバーの刃を維持するフィールドに弾かれるようになっている。
「……よし、これでセイフティは解除できたはずだ」
 教練生の一人が行っていたのは、教練用のセイバーを実戦で使えるようにする改造である。
「こんなことできたのかよ!」
「秘密だぞ。こんなの訓練じゃ使えないからな」
「今なら許してもらえるさ。私達だって、いつかは実戦を迎えなきゃいけないんだ」
 戦える武器を手にした少年少女たちが顔を見合わせて立ち上がると、バリケードを積んだ扉が蹴破られた。
「イーッ!」
「イーッ!」
 次々となだれ込んでくるコールタールで塗り固めたような怪人に身構える子供たちは、勇ましく光の刃を構えるも、意志の見えない敵を前にじりじりと壁際に下がる気持ちを抑えきれない。
 当たり前の話だが、子供たちに実戦経験は皆無である。
 体格差、恐れや躊躇の有無、戦闘技術の優劣、と様々な状況分析をなまじ把握できるばかりに、それらが重荷となって子供たちの動きを鈍くしていた。
「まちなさーい!」
 どーんという表現が似合う、それは怪人たちとはいささか毛色の違う黒っぽいタールのつるんとした触手が叩きつけられる音だった。
 打ち据える、というよりかはかき分けるようにして怪人たちと子供たちとの合間に割って入る触手の正体は、いつの間にか戦場に介入していた少女の髪の毛のようであった。
 髪の毛、触手? するすると収縮し、髪の様に、教練生よりも小さな子供のシルエットに収まっていくそれは、ブラックタールの光沢。
 ミフェット・マザーグース(沼の歌声・f09867)は、訓練施設の床に跡が残るほどの怪力を見せつけながらも、誰も傷つけることなく、ただ少女の姿をとって両手を精一杯広げて子供たちの前に立ちはだかった。
「き、君は誰!?」
「ミフェットは、ミフェット。みんなを守りに来たんだよ!」
「え、だって、君、子供じゃないか」
 教練生とそれほど変わらない年恰好のミフェットに対し、教練生たちは困惑の色を隠せない。
 ミフェットにしても、人ならざる怪力を敢えて見せつけたところだというのに、なおも普通の子ども扱いされることにちょっとだけ目を丸くしてしまう。
 フォースナイトとして育てられた子供たちは、子供と言えども生真面目な紳士である。
 戦いを好まないとはいえ、猟兵であるミフェットとの実力差は歴然たるものがあるかもしれないが、それでも子供は守るべきという大原則が教えとして根付いているらしい。
「ミフェットは大丈夫だよ。だから、みんなで、怪人を追っ払おう!」
 子供たちの誠実さにちょっとした感動を覚えるのもつかの間、今にも襲い掛からんとする怪人を目の前にしている以上は、細かなことに構っていられない。
 ミフェット自身が切っ掛けとなるならと、声をかけて扇動する。
 子供たちを焚き付けるのはリスクを伴う。しかし、一人も死なせはしない。
 強い意志と共に、ミフェットがいつでも守れるよう髪に擬態した触手を伸ばそうとした時、
「イ、イーッ!」
 訓練施設の入り口の方で悲鳴のような声と黒い飛沫が上がった。
 重さに任せた筋力と遠心力で、無理矢理叩き斬る大剣が、剣呑な響きと共に一人、また一人と怪人を薙ぎ払いながら訓練施設へと闊歩してくる。
「さあ、どいてどいて。近づいたらボコーっとしますよ」
 結希の刃は、どす黒いヘドロのような怪人の肉体をものともしない。
 飛び散る飛沫すら薙ぎ払う大剣の圧で振り払うかのような苛烈な戦いぶりを見せながらも、結希はにこやかに、フォースセイバーを構える子供たちを見やる。
 それは好奇心の眼差しであった。
「ねぇねぇ、フォースって、どうやったら使えるんですか?」
「へ? あ、え? いきなり、何言ってんだ!?」
 コォン、と剣の切っ先を床につきつつ見栄を切るかのように怪人たちを見回す。
 顔こそ向けないものの、好奇心に弾む問いを向ける結希に、子供たちは困惑の色を隠せない。
「心? 想い? それなら、私もちょっと自信があります」
 背中のみで、視線を手元に落とし再び持ち上げる仕草を見せる。そうして、あくまでも自分勝手に語る結希に返答を投げようとした教練生は、息を呑む。
 決して体格に恵まれているというわけでもない、大ぶりな剣を扱うにはあまりにも普通の少女の域を出ない少女の背中が、異様に大きく見えたからだ。
 一人孤独に戦うには、あまりにも頼りない筈のそれが、戦う姿勢と共にその気配を戦士へと変貌させる。
 そうして発動するユーベルコード【グローウィングゾーン】は、絶望の中で希望を手繰るものだけが大きく見える。
 それは想いの強さであるのか。思い込みの強さであるのか。
 キンッと床から剣を引き抜き、そうして最も愛する『with』を構える。
「私はみんなみたいに、フォースの力は使えないけど
 『with』が側にいる限り、私の心は絶対に闇に負けないし、強くいられるんです
 みんなには、一緒に頑張ってる仲間がいるから
 苦しい戦いでも、1人やないから
 側にいる仲間を信じて戦えば、絶対に乗り越えられます」
 重さを感じるかのように、大剣を前に構えれば、前傾に寄る。
 それが突撃の構えであることは、教練生にはわかった。
 続け、と言うかのようだった。
 子供たちの武器を握る手に力がこもる。
 そこへ、ミフェットの歌が聞こえてくる。
 ユーベルコード【嵐に挑んだ騎士の歌】もまた、教練生たちを鼓舞するものである。
 ただし、心優しいミフェットは、あくまでも彼らを守る意識の方が強い。
「オトナみたいに戦わなくていいから、装置を動かしたり、モノの投げたり、自分のできることで、戦闘員を足止めする手伝いをしてくれたら、それで十分。
 みんなが大事なお星さま、一人でもいなくなったら負けって、忘れちゃダメだよ」
 星の滅びた世界では、命の瞬きこそが星の光。
 それを絶やすまいとする心がある限り、人は絶望に抗い、戦える。
 なんて他人想いな歌声なのだろう。
 結希の頬に笑みが浮かぶ。
「戦えない人は、歌声のする方へ!」
 そうして、どちらが先陣を切ったか。
 ユーベルコードによる力の増強もあったかもしれないが、数で勝っていたはずの怪人たちは、年端もゆかぬ教練生の思わぬ抵抗に次々とその数を減らしていく。
 そこには結希の戦闘力も加担していたが、また彼女の剣が届かない場所に於いても、
「う、うわっ! あれ……?」
 弾かれて尻もちをついた教練生が咄嗟に頭を庇ったが、怪人の追撃はやってこない。
 恐る恐る見上げれば、宙に浮くドローンが光線を放ち、怪人を牽制していた。
「これは、訓練用のドローン?」
 教練生には覚えのあるそれは、フォースセイバーの防御鍛錬で使用する、当たると痛い光線を飛ばす空中自動砲台であった。
 それはミフェットが歌いながら、ちゃっかり触手の一本を訓練施設のコンピューターに繋ぎ、ハッキングついでに訓練設備を利用したものだった。
 なお、こちらも非殺設定がちゃんとされており、当たると痛いのは、着弾と同時に粒子エネルギーを斥力に変換するからである。
「ふー……またぞろ、やってきましたね」
「目的地までの地図は、見つかったよ! ミニスターのドームまで案内できると思う」
「うーん……でも、まずはここを掃除しないとですね」
 空間戦闘教練用ドームまでの道のりを把握したミフェットの提案に思案する結希だが、しかしここを放っておくわけにもいかない。
 もう一息、彼らと共に頑張る必要がありそうだ。
 心配はいらない。今の結希に杞憂を抱くという選択はなかった。
「先生に、みんなのカッコいいところ、見せてあげようよ!」
 勇敢なフォースナイト達と共に、猟兵二人は戦場へと身を投じるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フライディ・ネイバー
ヘイ!ヘイヘイヘイ!!
気合いの入ったウォーマシンがいんじゃねぇの!加勢すっぞ!

とびかかってくる戦闘員達をビームグレイブで斬り払い、
『色彩加速』ガキにゃちかづかせねぇ。飛行ユニットのフライング・ベットで空中浮遊。身軽になり残像、七色に分身して戦闘員どもを翻弄。オーラァラララララ!!!ガキ狙うようなちゃちい奴らが…!(戦闘員を怪力で蹴り、ついでにレッグブースターの熱で焼却)

俺を捉えられると思うんじゃねぇぞスカタァン!!
(再度分身に混じり、俺が持つブレードライフルとビームグレイブを使い戦闘員どもに熱属性攻撃)

おら次じゃいくぜ!爆速だ!!
フラテールつったか、破壊されんじゃねぇぞ!!!


ベルベナ・ラウンドディー
子供の回収、か

昔、死にぞこないの浮浪児が銀河帝国寄りの部隊に拾われ育てられたことがありましてね
状況が状況なら理解を示していたのですが…

…まぁ"今の"私は猟兵だ
理由はどうあれ死んでもらう


現地にて散開
猟兵のカバーが無い方角で子供の足跡を追う
目標は保護対象の確保


敵は恐らく単純な格闘戦が主体なのでしょう
まとめてかかってくるといい
ユーベルコード使用、ブン掴んで地面にダンクします
人質にされたら構いませんし、子供たちはかばうように。




直刀を見て剣士と思えばそれは甘い
フォースセイバーを始め、この手の武器は基本です
相手が対策を取ってない方が珍しい


…フラテールさんが心配ですね
多少の疲弊は厭わず速攻で片付けましょう



 あちこちで衝撃を受けたような揺れを感じる。
 襲撃を受けている真っ最中の教練艦は、今やあちこちで戦闘状態なのだろう。
 それでないにせよ、時間の問題だ。
 その解の一つを、ベルベナ・ラウンドディー(berbenah·∂・f07708)は、手近な床から読み取る。
 なにか重たいものを無理に引きずったような痕跡があった。
 もしかしたら、この近くで子供たちがバリケードを張って、立てこもっているのかもしれない。
 そのために、重たい何かを運んだのだ。
 かつては銀河帝国側の組織に拾われて密偵としての教育を施されたというベルベナは、この手の観察眼を持ち合わせていた。
「……子供の回収、か」
 その昔、遺伝子疾患を抱えたまま死にぞこなった浮浪児が銀河帝国寄りの部隊に拾われたこともあった。
 自嘲するように嘆息するベルベナには懐かしくもあり、今思えばどうにも微妙な心境になってしまう。
 自分がそっち側のままだったなら、あるいは理解できた事かもしれない。
「……まぁ、“今の”私は猟兵だ」
 後ろ暗さを感じないわけでもない。
 そうでもなければ、自分から一人になって、他の猟兵のカバーしていないところをわざわざ選んで行ったりはしない。
 自分から苦労をしょい込んでいるつもりはないが、変に気を使われたり使ったりと言う事もない。
 諜報なんてことをやっていると、どうしても一人になってしまうのだ。
 そう、一人の方が色々とやり易──、
「ヘイ、ヘイヘイ! そこのあんちゃんよ!」
 孤独を噛み締めるベルベナの後方からエンジンの甲高い音が近づいてきた。
 かと思えば、無遠慮な声が降りかかってくるではないか。
 なんだ、トラック運転手か?
 振り向いてみれば、話しかけてきたのは大柄なウォーマシン……厳密には、大柄に見えるフライトユニットを装着して床すれすれを滑るように低空飛行しているようであった。
 艦内で飛んでいるのか。変わった奴もいたものだ。
 変わっていると言う事は、彼もまた猟兵なのだろう。
 ベルベナの予想は正しく、フライディ・ネイバー(ウォーマシンのスカイダンサー・f28636)は、空に恋い焦がれるウォーマシンである。
 なんとこの世界にまだ惑星があった頃のロボットだという。
 あまりにも空を飛ぶことが好き過ぎて欠陥機扱いの末投棄。
 再び目覚めたときは星が一つもなくなっていたという、変わった絶望を抱えている。
「どうかしましたか? こちらには猟兵の方は来ていないと思ったのですが……」
 つとめて冷静に受け応えるベルベナに、フライディは飛行ユニットに吊られる風になっているボディの前で腕を組む。
「いやな。気合の入ったウォーマシンがいるじゃねぇか! ってんで、勇んで出てきたはいいんだが、道がわかんなくなっちまってなぁ。空図なら読めるんだがなぁ」
 わっはっは、とざっくりした調子で笑うフライディに、ベルベナは軽く頭痛を覚える。
 スペースシップワールドにウォーマシンは数あれど、こういった具合に自我を得ている手合いは、どうにも精密機械としての自覚に欠けているケースが多い。
 高速航行ユニットを搭載しているなら、その手のナビゲーションシステムの一つや二つは積んでいそうなものだが、高度な知性を蓄えるほどなぜかアナログな探知法を使いたがる。
 魂とはそこまでリソースを割かれるものなのだろうか。
 思考が変な方向に逸れかけたあたりで、ベルベナは考えを切り替えるべく顎をさする。
 竜派のドラゴニアンである彼は、まさしくドラゴンのような面差しであるが、その眼差しには知性を蓄えた輝きがある。
 偵察専門を自称する彼は、慎重さを求められる仕事ながら、信条は単純明快を好む。
 行きつく先は合理性である。
「……我々の目的は、まず、子供たちの保護です。目的を達成していけば、いずれ最後の目標に到達する筈です」
「んー、そうか! そうだな。子供を狙う連中を片付けていきゃあいいわけだ。ローヨーヨー……いや、スイングバイだな!」
 ちょっと何を言っているかわからないが、多分違う。
 或は、襲撃者たちを恒星と例え、その引力を利用して加速を得るという意味で使っているのなら、わからなくはないが。
 ベルベナからすれば羨ましいくらいにシンプル思考なフライディは、その辺りで悩むことはないのかもしれない。
「とにかく、ここらで子供たちが立てこもっている痕跡があります。襲撃者たちもそこへ狙いを付ける可能性は高い」
「おう、あれだな!」
 フライディの指さす方角には、閉ざされた扉を叩き壊そうとする、怪人の集団が見て取れた。
 なんだかんだ言い合っている間に、目的に近づいていたらしい。
 黒いタールのような体にホッケーマスクの頭。間違いなく怪しい。
 いうが早いか、フライディは飛行ユニットの機動力に任せるまま、怪人の一団に突撃する。
「オラァ、加勢すっぞ! もっとも、お前らを退治する方だけどなぁ! ハッハァ!」
 手前で宙返りをうつようにして、展開した飛行ユニットからビームグレイブの刃を伸ばして怪人の一体を突き刺して放り投げる。
 突然の闖入者に、怪人の一団は道を空けざるを得ず、その開いた道をベルベナが駆け抜け、扉の前まで到達する。
 背中を預けるようにして扉に張り付いて軽くノックする。
「全員無事ですか?」
「……味方なの!?」
「ケガ人がいないのなら、そのまま扉を閉めておいて。こちらは任せてください」
 扉の向こうから帰ってくる子供の声が、切羽詰まったものでなく、安堵があるのを読み取ったベルベナは、それだけ言うと扉から離れて怪人たちに向き直る。
 そしておもむろに直刀を抜き放つと、
「時間が惜しい。まとめてかかってくるといい」
 切っ先を低く構えるベルベナの姿が堂に入っていたのか、怪人たちは迂闊に近寄ろうとしない。
 どうやらフォースナイトを相手にするだけあって、その手の得物の対処には覚えがあるようだ。
「イーッ!」
「むっ!」
 怪人の一人が奇声を発したのに反応しベルベナが目を向けると、その隙に死角から別の怪人が飛び掛かり、刀を握るベルベナの手首を取る。
「しまった……とでも、言うと思ったか?」
 ベルベナの手を掴んで動きを制した筈の怪人の、その上半身が巻き込まれるかのように吸い寄せられる。
 かと思えば、【掌握】によって掴み返された怪人は、直刀を手放したベルベナによって持ち上げられ、そのまま、
「でりゃあっ!」
 裂帛の気合と共に床に叩きつけられ、他の怪人諸共巻き込んでまるで団子の様に押しやられてしまう。
「はーん、やるじゃねぇかあんちゃん。俺だって、ガキどもにゃ近づかせねぇ」
 フライディの飛行ユニットのエンジンが甲高い音を上げると、浮き上がる機体が左右にスライド移動するたびに、表面装甲がまるでプリズムを介したかのように七色に分かれていき、気が付けばフライディは七色の分身を出現させていた。
 【色彩加速】によって超高速機動を得たフライディは、はたして実像分身か虚像なのか、その判別もつかない七色の分身を率いて怪人たちを翻弄する。
「曲芸飛行を見せてやるぜ。オーラァラララララ!!!」
 凄まじいスピードは、それそのものが武器である。
 激しい空気抵抗などものともせず目にも留まらないスピードを出しながらも、怪人たちの中には、それでもフライディに攻撃を加えようとするものがいる。
 それを交差するようにして回避、ベクタードノズルじみたフライトユニットの脚部で蹴りつけ、それを踏みつける。
「ガキ狙うようなちゃちい奴らがぁ……!」
 レッグブースターのスラスター熱で怪人は燃やされる。
 それも一瞬のこと、再び飛び上がり、仕上げとばかり分身と共にブレードライフルによる熱光線を一斉射すれば、
「俺を捉えられると思うんじゃねぇぞスカタァン!!」
 ベルベナが団子状にまとめた怪人諸共にハチの巣にしてしまう。
 後に残ったのは、扉に背を預けるベルベナと、機体から蒸気のようなものを立ち上がらせるフライディのみであった。
 たぶん、扉の方には流れ弾は行っていないはずだ。
「片付いたか?」
「はい。フラテールさんが心配ですね。このまま先を目指しますか」
 思った以上に怪人の数がいたが、疲れたとも言っていられない。
 ミニスター・ブラックは強敵。
 それを一人で足止めするにも限度はあるだろう。
「そうだったな。おっし、じゃあ次に行くぜ。爆速だ!」
 多少の休憩。それもつかの間、フライディはベルベナのことは考えていないのか、再び飛行ユニットの火を入れ、
「フラテールつったか、破壊されんじゃねぇぞ!!!」
 本当に爆速で飛んで行ってしまった。
「……道わかってるんですかね」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユリウス・リウィウス
ふん、やることが小狡いぜ。なあ、おい。
猟書家を抑えてる教官のためにも、戦闘員どもは速攻で片付けよう。

数を頼みというなら、こちらも数で応戦するまでだ。
悪魔召喚「ガミギン」。魔界より来たりし悪魔よ、安らげぬ魂どもに怨念晴らす機会をくれてやれ。
俺も亡霊騎士団を喚起して、戦闘員どもにぶつけよう。

そこの騎士候補、艦内への一斉通達は出来るか? 屍人は味方だということを艦内に知らせてくれ。
数は力。騎士候補達も落ち着いて戦闘員どもと相対してみろ。身体に叩き込まれた戦技は、決してお前達を裏切らない。
一対一になるな。相手より数が多い状況を作ってから斬りかかれ。

屍人どもが通用するのも雑魚程度。猟書家の元へ向かうか。


メイスン・ドットハック
【WIZ】
まったく戦争では弱い者から狙っていくのが王道とは言えのー
新兵ばかりを狙うつまらん奴等はとっとと排除するに限るのー

UC「美しき原初の紫水晶空間」を発動させて、広範囲のフィールドで子供達と戦闘員をアメジストの迷宮に取り込む
迷宮内のアメジストは人には無害だが、オブリビオンは過去を透明化させて消滅させる性質を持つ、猛毒宝石
子供達には宝石の傍に隠れるように指示しつつ、自身は電脳魔術によるミサイル一斉射撃や、AIに操縦させたKIYOMORIで迷宮突破しようとする戦闘員を順次狙っていく

子供相手に狩りかと思ったかのー? 残念、狩られるのはお主達じゃったようじゃのー

アドリブ絡みOK



 フォースナイトの教練艦にミニスター・ブラック率いるオブリビオンが襲来して、そこそこの時間が経過したところだが、一方的にフォースナイトの卵たちが蹂躙されるかと思いきや、猟兵たちの介入もあったにせよ、フォースナイトたちは善戦していた。
 猟兵の介入が迅速であったためであるのか、それとも教練生たちの練度がオブリビオンの想定を超えていたのか。
 それは定かではない。
 とはいえ、実戦経験のない子供たちにとって、過去の遺物であるオブリビオンはやはり脅威である。
 戦いという緊張の中ではベストコンディションを維持するのは難しく、消耗も早い。
 次第に削られる体力。仲間を失う恐怖。いつまで続くかわからない不安。
 泥に足を取られ沈んでいくような絶望が、少年少女たちを支配しようとしていた。
「ふんっ!」
 黒い刀身を持つ双剣が、疲れて膝を折る少年に襲い掛かろうとした怪人を切り伏せる。
 ユリウス・リウィウス(剣の墓標・f00045)は、ダークセイヴァーに於いて泥沼の戦場を経験している。
 この程度の修羅場に今更戸惑うような事はない。
 年端もゆかぬ子どもが戦乱の狂気に当てられて気がふれたように武器を振るうようなひどい戦場に比べれば、ここはまだ正常といってもいいかもしれない。
 戦場ソムリエみたいなことを言い始めるのは、いよいよもっておかしくなってしまったのか。
 そんなものはない方がいい。
「宇宙くんだりまで来て、やることが変わらないとはな」
 見上げる天蓋は宇宙空間が見える透過素材のようで、広い運動場のような空間は開けて見える。
 見渡す限りに暗黒が広がるのは、故郷を思い出してうんざりしてしまうのだが、不思議と光源は維持されているのだから文明の違いを感じずにはいられないところである。
 それにしても、猟書家に限った話ではないが、
「ふん、やることが小狡いぜ。なあ、おい」
 誰ともなしに嘆息し、吐き捨てるように呟くと、傍らにはいつの間にか少女の気配。
「まったく戦争では弱い者から狙っていくのが王道とは言えのー」
 メイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)は、クリスタリアン特有の宝石の光沢をその身に帯びながらくいっと眼鏡を押し上げる。
 普段はあまり前線には立たない彼女が立つ位置は、この戦場に於いても力を持つ部類のユリウスのそばというわけである。
 少なくとも猟兵である以上は常人以上に戦えることは間違いないはずだが、積極的に前に出ないのは本人が自堕落な性質を持つからだろう。
 そんな彼女が最も苛烈な戦場と化した運動場に顔を出すのは、少なからずやる気を出しているからなのだろう。
 利害とは別に、メイスンもまた子供に手を出されるのは気に食わないのだろう。
 今や、視界に広がる限りの広い運動場のあちらこちらで見習いフォースセイバーとオブリビオンとの戦いが繰り広げられている。
「埒が明かないな。早いところ、猟書家を抑えている教官とやらを助けに行きたいところなんだが……」
「同意見だのー。新兵ばかりを狙うつまらん奴等はとっとと排除するに限るのー」
 子供たちを守りながら、ちまちまと相手にしているのではいかにも効率が悪い。
 策があるならいまこそ使い時とばかり、意見が合致したところで、ユリウスとメイスンはそれぞれにユーベルコードを発動させる。
 素早くスクロールを広げ、ユリウスは悪魔の召喚を試みる。
「魔界より来たれ、三十個軍団を率いる死霊の大侯爵ガミギンよ。生命無き者どもを、悉く我が手足の如くせよ」
 【悪魔召喚「ガミギン」】によってスクロールから出現したガミギンは、生ける屍を使役し、死霊術士でもあるユリウスとの契約に従い、戦う死人を怪人たちにけしかける。
 数には数。ただ、ユリウスにとっては慣れ親しんだ戦術ではあっても、共に戦う教練生たちにとっては死人が出歩くのは奇妙な景色である。
 そこでユリウスは手近なところで消耗して座り込んでいる教練生に声をかける。
「そこの騎士候補、艦内への一斉通達は出来るか?」
「え? ま、まぁ……ここからでもできるけど」
 疲れた表情の少年が、戦場を闊歩する死霊戦士に顔を青くしながら答える。
「疲れてるところすまんが、屍人は味方だということを艦内に知らせてくれ」
「味方なの、あれ……わ、わかった」
 少年から見れば、誰よりも騎士らしく戦い……実際騎士なのだが……子供たちを守るべく戦うユリウスの言葉は信用ができる。
 通信端末を取り出して連絡を取り始める少年を見届けると、ユリウスもまた剣を構え戦場へと身を投じる。
「数には数か。単純だが、有効だのー」
 その様子を見ていたメイスンも、ユーベルコードの準備が完了しその範囲を確認すると、発動させる。
 【美しき原初の紫水晶空間】によって作り出されるのは、紫水晶の迷宮。
 メイスンの体を構成する宝石と同じ色彩のアメジストが突如として空間から出現し、凄まじい速度で成長して幾重にも壁を構成して、開けた戦場を阻んでいく。
「イーッ!?」
 その迷宮の壁を乗り越えようとする怪人が、一瞬にして体を維持できなくなって溶けていく。
「迂闊に触らぬ方がいいぞー。そのアメジストはオブリビオンにとっては猛毒。戦えぬ子供は、宝石に隠れるといいのー」
 オブリビオンは忘れ去られた過去。骸の海に捨て去られた過去の遺物に過ぎない。
 迷宮を構成するアメジストは、そんなオブリビオンの過去を透明化する力があるという。
 それを悟った怪人たちは、明確に動きを鈍らせるが、それでも怪人の骸を足場に乗り越えようとする者もいる。
 過去を失ったオブリビオンは消滅する運命だが、そのほんのわずかな時間を足場にして乗り越えようとする者を、今度はメイスンが直接撃ちに行く。
 策は二重三重に巡らせている。
 迷宮を乗り越えようとする不届き者には、電脳魔術からミサイルを投影してぶつけるか、あるいはAI制御の歩行戦車「KIYOMORI」に攻撃させて抑え込む。
「あえて遮蔽物を作るか。今の状況なら、混戦にならずに済むな」
 それに、分断されれば数の不利を一時的に覆すことも可能だ。
 前線に立つユリウスは、今もなお戦う教練生たちを叱咤する。
「いいか、数は力だ。騎士候補達も落ち着いて戦闘員どもと相対してみろ。身体に叩き込まれた戦技は、決してお前達を裏切らない。
 一対一になるな。相手より数が多い状況を作ってから斬りかかれ」
 戦場に綺麗も汚いもない。整頓された戦いではないのだから、勝てる戦いを目指すべきだ。
 生き抜くことに、誰も文句は付けないはずだ。
 自らも前線に出て教練生たちを励ましながら戦うユリウスの姿は、少なくとも誰よりも騎士らしく、子供たちの目には見えたかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アン・カルド
【星雲の司書】として。

猟書家相手って聞いたんだが…ミニスター・ブラックもその部下も本とは縁遠そうだねぇ、彼らが持ってる本読んでみたかったんだけど。
ま、今は目の前のことに集中した方がいいか…友人も一緒にいることだし。

と言っても僕がやることはあまり多くないけどね、ロラン君とウェネーフィカ君の仕込みが終わったら二條君と共に迷路の出口へ…二條君のUCで姿を隠す。
後は出口で足止めされた戦闘員に【蛞蝓】を撃ち込むだけ。
ただでさえ躱しにくいのに疲労し、足止めされ、こちらの姿は見えない…目を瞑っても命中するさ。
少し卑怯な気もするが…恨まないでくれよ?


ロラン・ヒュッテンブレナー
【星雲の司書】隊としてフォースナイトの皆を助けるの

ダークセイヴァーでは、こういう事はよくあるって聞いたの
だから、余計に許せないの
全力で、いくよ

まずは、フォースナイトに近い相手に雷【属性攻撃】の【誘導弾】魔術で追い払って、できるだけたくさんの戦闘員を一か所にまとめるの
フォースナイトを巻き込まないようにUCを【高速詠唱】で発動なの

これでフォースナイトも守れるし、迷路内のトラップで体力を削れるよ
レーザーや熱、ガスみたいに、どんなに身体能力が上がってもどうにもできない罠にしておくね

中の状況は壁に張り巡らせた魔術陣で【情報収集】して、
みんなに伝えるね

後を任せちゃう形になるけど、お願いなの


二條・心春
【星雲の司書】
フォースナイトの方々が犠牲になり、オブリビオンにされるなんて……放ってはおけませんね。

まずは拳銃で牽制して敵を足止めして、フォースナイトさん達と引き離しましょう。
迷路ができたら出口で待機して、「第六感」で敵が近づいてくる気配を感じたら、【見えざる者の影】を使って私とアンさんの姿を隠して待ち伏せましょう。
敵が出口を抜けた瞬間に冷気を纏わせた槍で氷の「属性攻撃」をして動きを封じて、アンさんに止めを刺してもらいます。

戦闘力が上がっているとはいえ、迷路で消耗した状態で不意打ちをかわすのは難しいはずです。
ちょっとかわいそうな気もしますが、子供達を狙うような卑劣な敵です。容赦はしませんから。


アウラ・ウェネーフィカ
【星雲の司書】
敵戦力を減らしつつ、自陣の戦力を増やす……
確かに効果的と言える戦略だが、子供を狙うとは卑劣に過ぎる
悪いが、その企みは打破させて貰おう

■戦闘
罠を仕掛けた迷路に閉じ込める、か
これなら子供達の安全も容易に確保できるな

では私は高速飛翔によって翻弄して敵を一ヵ所に纏めるのを手伝い、
その後は【UC】によって迷路内を闇夜の森の幻影で覆う事でその視界を奪おう
壁や罠を視認出来ない状態にすれば回避し辛いだろうし
時折幻影の景色を変化させてやれば更に混乱するだろう

待ち伏せは……心春さんやアンさんにお任せしよう
出口から見える場所で、魔法に集中してる風に見せかけて囮になれば
彼女達の不意打ちも成功しやすい筈だ



 オブリビオンの強襲を受けたフォースナイトの教練艦は、猟兵たちの介入、そしてフォースナイトの卵たちである教練生の結託もあり、戦いはいつの間にか侵入していたオブリビオンを押し返し始めていた。
 地の利がある教練生の連携、何よりも破格の戦闘力を誇る猟兵の介入は大きく、局所的な勝利を積み重ねることで、徐々に旗色を覆したというわけだ。
 しかしながら、猟兵たちはあくまでも少数精鋭。群になるのは稀だ。
 大攻勢を仕掛けられた場合、局地的な戦力にはなっても、体勢を決するにはどうしても時間を要する。
 数は力とはよく言ったもので、結局のところは戦力の逐次投入をせざるを得ない。
 ただしそれは破格の戦力であるからこそ可能であり、そして有効なのである。
 もはや戦場と化した場所のほとんどで勝利の報告が上がる中、教練艦内の中庭と呼ばれるポイントでは、まだ教練生たちが苦しい戦いを強いられていた。
 各訓練施設や寮との合間に広がる中庭のような地点は、比較的視界が開けており、天井にあたる部分は強固な透過素材を張り巡らせ、宇宙空間が透けて見える。
 質実剛健を物語るかのように余計なものがほとんどない教練艦の中では珍しく、中庭には道しるべとなる街灯や、脇道にはベンチや簡易的な芝生なども備え、モニュメントなども飾られていた。
 ちょっとした公園のような光景は、ここが訓練施設であることを一瞬忘れさせるほどである。
 そこも今は、フォース武器を手にした教練生とオブリビオンの怪人が入り混じる渾沌の様相を呈していた。
 そんな戦場の空をくるりと回って一望して、一人の猟兵が芝生に足先のカギ爪を噛ませる。
「見てきた。思ったより深刻そうだ」
 アウラ・ウェネーフィカ(梟翼の魔女・f25573)は、両手両足が梟のキマイラである。
 その翼で胸を抱くようにして体を包みつつ、羽先で顎を撫でる仕草は、思案しているかのようにも見える。
 【星雲の司書】の名のもとに集った猟兵の中では、状況を鳥瞰できて、それでいて無音飛行もある程度可能である梟の翼を持つアウラは、周囲の偵察を買って出たのであった。
「ここから見える限りでも、フォースナイト側は旗色が悪そうだね」
 アン・カルド(銀の魔術師、或いは銀枠の魔術師・f25409)は、明らかに眠りの足りてないようなどんよりした顔色ながら、オラトリオ特有の翼を引きずるようにして前に出ると、いつの間にか近づいていた怪人の一人を、魔王の守刀(木製)でぽこーんっと一閃して、嘆息する。
 怪人一体一体の戦力はそれほどでもない。
 問題なのは、その圧倒的なまでの物量差である。
「フォースナイトの方々が犠牲になり、オブリビオンにされるなんて……放ってはおけませんね」
 二條・心春(UDC召喚士・f11004)は、普通の女の子である。というのは公称であるが猟兵であるという点を除けば、少なくとも根底にある感性は常人と大差ないものである、筈である。
 強い意志と共に握りしめる槍は、彼女の誠実さを何より物語るものだろう。
「そうだね。フォースナイトの皆を助けるには、ちょっとした工夫が必要なの」
 ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)は、この4人の中では最年少の男の子である。
 その身は人狼と化しているため、本人は人と距離を取るべきとしているが、持ち前の人懐こさと寂しがり屋が災いしているのか功を奏しているのか、とにかくまぁ色々あって不思議と人を寄せる。
 現状ですら、フォースナイトたちの助太刀に入るべく、今すぐにでも飛び出してしまいそうな者もいる中、それをせずにいるには、ロランの策を着実に成立させるためであろう。
「時間がないから手短に言うの。何はなくとも、怪人をフォースナイトから引きはがして、なるべく一か所に集めるの……そう、あのモニュメント辺りがちょうどいいの」
 11歳の子供らしくたどたどしい口調ながら、それは言葉通り手短で簡素である。
「そこに迷宮を作って、囲い込む」
「ほう、罠を仕掛けた迷路に閉じ込める、か。それなら、子供たちの安全を確保できたも同然だな」
 大胆な戦術を提案するロランに、アウラは口癖のように息をつく。
「あとは、出口で出待ちして迎え撃つって寸法か。やる事がえぐいねぇ」
 顔色が優れないせいか、口の端をゆがめるとだいぶ怪しげな雰囲気になるアンの言葉に、ロランは喜んでいいのか複雑そうな笑みを浮かべる。
 が、それもすぐに収めて、ひとつ真面目に口を引き結ぶと、作戦開始の代わりに、
「ぼくたちでフォースナイトの皆を助けるの。
 ダークセイヴァーでは、こういう事はよくあるって聞いたの。
 だから、余計に許せないの。
 全力で、いくよ」
 ぐっと拳を握るロランに一同は首肯し、それぞれに行動を開始する。
 まずは、フォースナイトたちと交戦状態にある怪人たちを引き剥がし、おびき寄せなくてはならない。
 手始めに、アウラはふたたび両手代わりの翼を広げ、再び中庭の空を飛翔する。
 今度は上方ではなく、交戦中の怪人たちの邪魔になるよう、敢えて目の前を煽るようにして横切り、フォースナイトたちとぶつかろうとするのを阻みながら注意を向けさせる。
 それに合わせ、心春が対UDC用特殊拳銃で牽制を撃ち込み、ロランが雷属性の魔法弾を撃ち込めば、怪人の足止めとしては十分である。
「フォースナイトの皆さん! 敵を、あのモニュメントまで押し込みます! 苦しいでしょうが、少しの間だけ力を貸してください!」
 なるべく声を張って、心春がフォースナイトたちに呼び掛ける。
 中庭のほぼ中心部にあるモニュメントまでそう距離はない。
 ある程度牽制を加えて、相手の注意をそらして引き離してやれば、劣勢だったフォースナイトたちも協力して、怪人たちを押しやる事に成功する。
 苦しい中で、心春の優しさがにじみ出る言葉は、教練生たちの勇気を奮い起こしたのかもしれない。
 とはいえ、それも一時程度しかもつまい。そこに特別なことは何もなく、ただ人柄が切っ掛けを作ったに過ぎない。
 いくら人数がいるからといって、アウラや心春の牽制がいつまでも通じるとは限らない。
 ここからが勝負だ。
「展開空間読み取り、定義完了。ラビリンスマップ、作成完了。広域錬成式、描画。ラビリンス、錬成開始」
 ロランの瞳がガラス玉のように透明になり、呟く言葉は機械音声を再生しているかのように滑らかで淀みなく、あらかじめ用意していたかというほど迅速にモニュメント周辺に錬成陣が構成され、見る見るうちに迷宮の岩壁が怪人たちをモニュメントのある一帯ごと丸々覆ってしまう。
 【捕え惑わし疲弊する魔域の監獄】は、トラップをてんこ盛りに仕込んだ迷宮である。おまけに中にいる敵は、体力や魔力を奪われ続けるという、クソゲーもかくやという罠ダンジョンである。
「ぽふぅ……これだけの規模は、さすがにちょっと疲れるの」
 いくら猟書家に付き従うオブリビオンとはいえ、強固なダンジョンに単純な体力ではどうしようもないトラップ群。
 消耗しないわけがない。
 さしものロランもちょっとお疲れモードだが、それにはまだ早い。
 どんな迷宮にも出口は用意しなくてはならない。
 つまりは、いつかは怪人が出てくる。
 というか、今回の迷宮は迷わせるのは二の次で、罠にかけて消耗させるのが目的である。
 理不尽でも出られないことはないのが迷宮の条件である。
 しかし、そのトラップも確実ではなかろう。
「敵戦力を減らしつつ、自陣の戦力を増やす……。
 確かに効果的と言える戦略だが、子供を狙うとは卑劣に過ぎる。
 悪いが、その企みは打破させて貰おう」
 猛禽類のような鋭い目を細め、アウラはそのトラップの確実性を上げるためにユーベルコードを発動させる。
 【深き森の夜嵐】によって、迷宮内は暗闇と幻惑に支配される。
 その景色はさながら、彼女の故郷である大森林の夜。まさしく闇夜の森を再現した異世界の光景であった。
 ただでさえ体力を奪われる迷宮に幻影と暗闇に幻惑され、罠も壁も見分けがつかず、必要以上に罠にかかることもあるだろう。
 中の状況を逐一報告しつつも、ロランは無事に迷宮が生成できたことに安堵の笑みを浮かべる。
「後を任せちゃう形になるけど、お願いなの」
 これが最後ではない。一番の強敵はまだ残っている。
 余力は残さねばならない。
「そうだな、待ち伏せは……心春さんやアンさんにお任せしよう。
 ……念には念を入れておくか」
 出口で待ち伏せする心春とアンのちょっと後ろの空中で、アウラは意味ありげに笑みを浮かべ、謎のオーラをにじませる。
「ふっふっふ」
 これから魔法を出しますよ。と言わんばかりの高圧的な視線は、なんとも目につく。
 それを心配そうに見上げながら、心春はしかし出口に向き直ると、ユーベルコードを使用する。
「影よ、私達を見えなくしてください」
 【見えざる者の影】により、影を纏い心春とその傍に位置するアンは姿が見えなくなる。
 悪魔召喚やUDCなどを使役する能力のある心春は、自身の影とて呼びかけに応じれば使役することができる。
「それにしても……猟書家相手って聞いたんだが……ミニスター・ブラックもその部下も本とは縁遠そうだねぇ、彼らが持ってる本読んでみたかったんだけど。
 ま、今は目の前のことに集中した方がいいか……友人も一緒にいることだし」
「え、何か言いましたか?」
 怪人たちが迷宮を踏破するまでの間、アンが思い出したかのように独り言を呟くが、近くにいる筈の心春は前方に集中していたためよく聞こえなかったようである。
「いやいや、なんでもない。それよりさ、万全を期するためとはいえ、姿を隠して待ち伏せの不意打ちって、二條君は平気なの?」
「うっ……確かにちょっとかわいそうな気もしますけど、子供を狙うような卑劣な敵なんですよ。どんな手でも……私が手を汚すことで子供の命を救えるなら、やっちゃうと思います」
 お互いの姿が見えない中で、ちょっと気落ちしたような心春の様子に、まずったかなぁと睡蓮の花の咲くぼさぼさ髪をわしわしと掻く。
 優しさと甘さは違う。そして、優しさと高潔さも違う。
 それを言葉にしたところで、かみ砕けない事でもあるとは思うのだ。
 そこから先を、アンは口にはしない。理解されない事には慣れている。
 だが、友人にはわかってもらいたい事もある。
「僕だって、人の命を尊いと思わない訳じゃない。友達の手助けだって吝かじゃないさ」
「……ありがとうございます!」
 ほんの短い、なんとも遠回しなやり取りを交わしたところで、迷宮の出口に人影と、ロランの合図が見えた。
 さて、さんざん熱光線やガストラップに当てられて消耗し、その多くを道半ばで失いつつも、何体かの怪人は同法を盾になどしつつ、迷宮を乗り越えて這い出てきた。
 彼らが最初に見たのは、空中に浮かぶアウラが何やら魔法を使おうとしている気配。
 それは一瞬だけとはいえ、怪人たちの目を奪うには十分な隙であった。
「行きます!」
 完全な死角、そしてユーベルコードで姿を消している心春が滑り込むようにして怪人の足元を槍で払う。
 氷の属性攻撃を帯びたその一閃は、油断した怪人たちの足を凍り付かせ、動きを封じるには十分であった。
「少し卑怯な気もするが……恨まないでくれよ?」
 そこでようやく、アンのユーベルコードが発動する。
 彼女の正気の証明である銀の縁取りのされた自作の魔導書がおもむろにそのページを開き、紡ぎ出された物語が顕現する。
 【ライブラの愉快話・蛞蝓】によって呼び出されたのは、その名の通りナメクジ。
 湿気のあるところを蠕動するに過ぎぬ筈のそれは、最初からそうであったかのように、いつの間にか怪人の体に突き刺さっていた。
「イッ、イーッ!?」
 剛速球で次々と突き刺さるナメクジに押し倒され、ついに迷宮を踏破した怪人たちも一体残らず消滅する。
「あー、もういいもういい、もう出てこなくていいぞー」
 なおもぽこぽこと豪速で飛び出すナメクジを送り返すように、アンは本を閉じる。
 それにより、あれほど激しい戦闘もようやく音を失い、疲れ果てた教練生もようやく訪れたひとまずの勝利に歓声を上げる。
 しかしそれもつかの間。
 まだ最大の敵が残っている。
 再び集まった4人の猟兵は、教練生から件の教官が足止めをしているというミニスター・ブラックの居場所を聞き出し、そちらを目指すこととするのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ミニスター・ブラック』

POW   :    マジックブロウ
【魔力を籠めた拳】で攻撃する。[魔力を籠めた拳]に施された【魔力制御】の封印を解除する毎に威力が増加するが、解除度に応じた寿命を削る。
SPD   :    追加装甲
自身に【漆黒の機械装甲】をまとい、高速移動と【自律行動するビット】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    ボミングレイド
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【着弾地点で爆発する魔法弾】で包囲攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ムルヘルベル・アーキロギアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ゲートの機能を破壊され、閉鎖された空間戦闘教練用ドームの向こうでは、今もなお死闘が繰り広げられていた。
 扉越しに聞こえてくる、何かが弾けるような激しい衝突音、爆発音。
 もう幾度、それを繰り返したか。
 やがて、ミニスター・ブラックが送り込んだ部下たちが掃討され、周囲の騒がしさが治まってくると、ドームの中の戦闘はより苛烈さを増したような気さえした。
 教練艦を揺るがす巨大な震動は、もはやドームを残すのみとなっていた。
 そして一層激しい爆発音とともに、ついに崩れかかったゲートそのものが内部から爆ぜて吹き飛ぶ。
 一緒になって吐き出されるかのように転がるのは、この教練艦で教官を務めるウォーマシン・フラテール。
 その姿は、激戦の様相を体現するかの如く、4本腕、4本脚のそれぞれ一つずつの機能を失っていた。
 爆発する魔法弾の直撃を受けてもなお、ウォーマシンは機械ゆえに無機質に立ち上がる。
 その金属の肉体を支えるのは、教育者ゆえの矜持。
「遊びが過ぎたか……我としたことが、すっかり付き合ってしまった。
 それ故の玩具か。しかし、玩具というのは、壊す瞬間が一番、楽しいもの」
 爆炎を上げるドームの中から黒い宝石の装甲が、恐ろし気な笑みを浮かべる。
「……第4腕、第1足部、パージ」
 壊れた手足を切除し、3本足3本腕とすると、フラテールはなおもドームの中へとその足を向ける。
 その挙動は明らかに当初より精彩を欠き、パフォーマンスは低下しているのだが、そんなことは関係なかった。
「どうした。逃げ道は作ってやったと言うのに、まだ遊んでほしいのか。
 それとも、強く打ちすぎて別の場所を壊したか。
 お前の策は成った筈だ。こちらの思惑は外れ、我一人でなんとかせねばならぬ。
 全く忌々しい、猟兵どもよ……もう貴様の出る幕はないぞ、玩具よ」
「私はここの教官です。何人たりと、ここに脅威を持ち込ませはしない」
 再びプラズマの刃を閃かせ、ウォーマシンは加速する。
「ふん……お前達は、本当に清廉さばかりは本物だな。宇宙の騎士よ」
 満身創痍のフォースナイトの突撃を、ミニスター・ブラックは拳とビットで迎え撃つ。
ユリウス・リウィウス
いよいよ最後の一人か。間に合ったようだな。
稀なる素養を持った教育者を、これより救出する!
敵は任せろ。騎士候補達は教官を安全なところへ。

血統覚醒した上で、「恐怖を与える」死霊の霧を展開し、それに紛れて「毒使い」で強酸性を帯びたヴァンパイアミストで接近する。
まあ、これは挨拶代わりだな。種が割れる前に敵の背後で実体化して、「生命力吸収」「精神攻撃」「傷口をえぐる」「なぎ払い」の双剣撃を突き込む。

拳による打撃はバックラーで「盾受け」して受け流そう。
ビットが面倒だな。血統覚醒の膂力にものを言わせて、攻撃を耐えきるか。
さあ、終わりだ。虚空斬!

襲撃者はこれで殲滅した。この船の被害状況をまとめるといい。



 ドームの中は広く、しかし激しい戦闘であちこち損傷が見られ、爆発する魔法弾の影響もあって、周囲には炎が上がっていた。
 激しい戦闘を物語るかのように、あちこち光源も飛んで暗がりもでき始めた中で、プラズマセイバーが数々の光跡を引いてひらめく。
 教練用に作られたウォーマシンは、教練生の子供たちに脅威が及ばぬよう、その身を賭して動力炉に情熱が如き火を灯す。
 灼熱の時。
 だが悲しいかな。そのプラズマの刃は黒光りするミニスター・ブラックの重装甲の前に歯が立たない。
「馬鹿の一つ覚えよな。貴公がもっと狡知に長けていれば、違っていたやも知れぬ……」
 多数の腕から繰り出されるプラズマの刃を、両の腕甲に帯びた魔法が弾く。
 そして防御はそのまま相手の攻撃の隙を掻い潜るかのように伸び、ウォーマシンの身体の芯を捉える。
 地を噛む三本足が衝撃に押しやられ、金属の床との間に激しい擦過音を上げ、フラテールの巨体がドームの壁へと叩きつけられる。
 さて、そこへとどめの魔法弾を撃ち込もう。というところで、ミニスター・ブラックはふと周囲に妙な気配を感じて手を止める。
 見ればドームの中が妙に煙たい。
 どういうことか。うっかりどこかの配線を壊して、パイプに穴でも開けてしまったか。
 いや、と。ミニスター・ブラックはその霧の正体が物理由来のものでない事にすぐ気づいた。
 冷たい恐怖心をあおるかのような霧は、魔術由来、それも死霊術によるものであることを、魔法使いであるミニスター・ブラックは即座に看破する。
「ふむ……既に、何者かが入り込んだか……。そうだ。正面から来るばかりではない、この生き汚い策略。こうでなくでは」
 口汚く罵りながらも、ミニスター・ブラックはその恐ろしげな形相に嬉しそうな笑みを浮かべる。
 そして、重装甲を纏ったミニスターのその腕の表面にぷつぷつと黒い斑紋が浮かんでくる。
「ほう、これは、酸か!」
 視界を覆うだけではない、強い酸性を帯びた霧が、クリスタリアンであるミニスターの体を蝕み始める。
 宝石とて年代を重ねれば輝きに曇りが出てくる。その主な原因は酸化である。
 人の皮脂であっても宝石を酸化させる。故に、宝飾を知るものはあまり素手で宝石を扱わないという。
 なるほど、策を講じるにしても知恵のある者がいるらしい。
 そしてこの敵意。
 お座敷の剣術と座学に染まらない、現場で培った叩き上げの気迫。
 教練艦の一教官、教練生などには出し得ない存在感であった。
「むうんっ!」
 霧を振り払うかのようなミニスターの拳が空を切る。
 今目の前にあるかのような気配を殴った手応えは、当然帰ってこない。
「ならば、これならどうか」
 光輪を帯びる自律機動ビットを射出し、多機能のレーダーで探し当てようという策に出たところで、霧に紛れる気配が性質を変えた。
 灰色の霧に混じった血のような赤が、ミニスター・ブラックの背後に集約し、紅蓮に燃え盛るような相貌を中心に騎士鎧を纏った姿を象っていく。
「むう、後ろか!」
 がぁん! と、激しい衝突音と共に、二振りの黒剣とミニスターの拳とがぶつかり弾き合う。
 ユリウス・リウィウスは、その身に流れるヴァンパイアの血統を呼び起こし、クリスタリアンにとっての毒にもなり得る酸性の霧【ヴァンパイアミスト】と化して、場に紛れて不意打ちを仕掛けたというわけである。
「チッ、仕留めるつもりだったんだが……だがまぁ、間に合ったな」
 弾かれて着地するユリウスは、周囲を囲うビットを見やりながら、それを向上した身体能力で耐えようと考えたが、直後に無用の心配であると思い至る。
 プラズマの残光がビットの軌道を捉え、撃墜する。
「助太刀感謝いたします。しかし……」
「言うなよ。いよいよ最後だ。稀なる素養を持った教育者を、これより救出する!」
 よろよろと立ち上がるフラテールの方は見ないまま、敢えて大声を上げてユリウスはその巨体の背をどんと押す。
「敵は任せろ。騎士候補達は教官を安全なところへ」
「! まさか、貴方は一人で、あやつと戦うおつもりですか?」
「おかしなことを言うな。あんただって、やっていたろう。そういうもんさ」
 食い下がろうとするフラテールに構わず、ユリウスは両の手に双剣を握ったまま、立ちふさがるかの如く、ミニスター・ブラックに向き直る。
「こんなものは、あいさつ代わりだもんなぁ? 仕事はこれからだよな?」
「ふん……貴公も、不器用なものだな」
 ゆるりとした足取りでお互いに歩み寄ると、無造作に武器を突き合わせる。
 策を弄するまでもないのか。あるいはそれを無粋としたのか。
 それはわからない。
 だが、交錯は瞬きの内だったが、ユリウスは幾多の戦いからの知恵もあり、その中でいくつも相手を読み取る。
 あの拳を直接剣で受けるのは剣が負ける可能性がある。
 多数を相手にするときでこそ、双剣はその手数を発揮する。
 致命打を打つには、どちらに剣を握っているにせよ、踏み込まねばならない。
 両の剣を同時に当てるなら、それこそ肉薄する間合いが必要だ。
 それはミニスター・ブラックを相手にした場合、確実なデッドゾーンである。
 だが、敢えてそこに踏み込むからこそ、実を得ると言うもの。
「潰れろ、騎士よ!」
「くぅ……」
 大柄な体格から振り下ろされるかのような拳の一撃を剣で受ける、のではなく、腕にはめたバックラーで受け、角度を付けて力を流す。
 それと同時に腕の内に入り込むように踏み込む。
「らえ、虚空斬!」
 そのまま脇をすり抜ける様に、受けた拳をいなしながら両の黒剣を横薙ぎに振るう。
 手ごたえはあった。
 振り向くミニスター・ブラックは、切り裂かれた脇腹から何やら黒いものを流していた。
「……ふはは。やはりな。やはり、こうでなくては!」
「やれやれ、しんどいぜ……」
 愉快そうに恐ろしい形相を歪めるミニスター・ブラックに対し、今更になってどっと汗が噴き出るユリウスは、一呼吸入れてから、再び剣を構えるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベルベナ・ラウンドディー
殺して自軍の戦力に組み込む事
悪趣味だが正しい手段です
変に生かして恩を売っても裏切られたら悲惨ですからね


実例を見せましょう


●破魔・封印を解く・目立たない・継戦能力

刀でやれば折れますね
槍で防戦主体の白兵戦に臨みます
刃で撃つたび上技能で敵の魔力封印を少しずつ強制解放
此方の仕込みを悟らせず気分よく攻めさせ、ペースを狂わせる

●読心術
…戦闘に関してはバカでは無いな。もう一工夫詰めます
ユーベルコードで素手以外の攻撃手段を牽制
手段を限定させれば防戦も容易いと判断しました
隙あらばドカンと攻撃を入れたいところ


とは言え私は偵察
直接戦闘は専門から少し外れます
機を見てフラテールさんと共に後退し他の猟兵に役目を譲りますよ


フライディ・ネイバー
敵捕捉即座に空中浮遊、フライトユニットでカッ飛び、
シールドバッシュ、エネルギーシールドを叩きつけて、吹き飛ばし。
おう、まだ生きてるか!?生きてるな!!良し!!!

敵から視線は外さず、フラテールに声を掛ける。
敵だからな、非難はしねぇが、よくもやってくれたなテメェ!!

ビームグレイブを展開、ビットの軌道を戦闘知識から見切り、高速機動戦闘へ。敵とはいえ、その追加装甲中々の速度だ。俺も応えてやる!
『空に駆ける』発動。ぶっ飛ぶ!
無敵化、フライトユニット・真赤な加速装置に変化。
ビットを蹴り壊し

しゃらくせぇ!
残像、高速移動の体当たりで残りのビットを破壊。
そのままミニスター・ブラックへ!
ビームグレイブの属性攻撃。



「やれやれ、結局、一人で辿り着いてしまいましたか……」
 空間戦闘教練用ドームへと、足を踏み入れたベルベナ・ラウンドディーはその惨状に軽く肩をすくめる。
 激しい戦闘の形跡を残すドームには、あちこち残り火が立っており、教練設備の一つに過ぎないとはいえ、広い練習場はもはや使用不可能なレベルで崩壊を待つような状況とも言えた。
 ここで長く戦うのは危険かもしれないが、逆に言えば、ここならいくら暴れても周りに影響が出にくいともいえる。
 あちこち照明も飛んで宇宙の闇に飲まれつつあるかのような暗さが目立つドーム内にて待ち受けるかのように、ミニスター・ブラックはその化け物じみた形相をベルベナに向ける。
「まったく、厄介なものだな。猟兵とは……。お陰で、手間を取ることになった」
「しかしながら、殺して自軍の戦力に組み込む事。悪趣味だが正しい手段です。
 変に生かして恩を売っても裏切られたら悲惨ですからね」
 見た目よりかは穏やかな調子に話しかけてくるミニスター・ブラックの様子を伺うかのようにベルベナは槍を手にしつつポーカーフェイスで話に乗る。
「ほう、まるで見てきたかのようなことを言うではないか」
 それが挑発に聞こえたか、煽るような事を言ってくるミニスターに、ベルベナは心にチリっと熱いものが灯りそうになるのを密かに諫める。
 冷静に、間合いを図る。
 相手の体格から逆算するに、もう半歩でも踏み込めばミニスター・ブラックの剛腕が振り下ろされることだろう。
 クリスタリアンの宝石のボディと、機械装甲。その複合素材が繰り出す魔法の拳は、普及品の刀ではもつまい。
 『∂∂∂』という愛用の槍は、かつてとある星を守護していた機械の竜の、その残骸から作り出した槍だ。
 防戦にこれほど適した武器もなかろう。
 そう、こちらから振り込むことはしない。
「むぅん!」
 膠着を懸念したか、ミニスター・ブラックの剛腕が振り下ろされる。
 ベルベナは決して体格に恵まれていないというわけではないが、多くのオブリビオンがそうであるように、ミニスター・ブラックもまた大柄なクリスタリアン。
 振り下ろされる拳が床を穿つごとに、ベルベナは身を翻し、致命打を避け、
 躱しきれないと判断すれば、槍で受けてその力を別方向へ流す。
「実例を見せましょう」
 前のミニスター・ブラックへの返答というわけではないが、ベルベナの言葉は、ぶつかり合う金属音にかき消される。
 魔力を帯びたミニスターの拳は魔力制御が施されており、使うごとにその封印はほつれていき、威力を増していく。
 しかしながら、それこそがベルベナの狙いである。
 槍で受け、流すごとに、その拳に込められた制御術式を解明し、極めて目立たぬようそれを破壊していく。
 強固な拳を正面から破壊するのではない。そこに込められた制御魔法を破壊していくのだ。
 相手は策を弄する。だから、この仕込みに気づかれるわけにはいかない。
「ふはは、どうした。その細腕でどこまでもつか、見ものだな」
「く、うぅ……」
 とはいえ、体格差は歴然。全身が宝石でできているクリスタリアンは、魔術の触媒としてはこの上ない。
 打ち合うごとにその重さ、威力、速さが増していく中、ただでさえ集中して捌かねば腕ごと持っていかれそうな拳の応酬は、容赦なくベルベナの体力を奪っていく。
 だが、奮戦の甲斐あってか、ミニスターはベルベナの策に気づく様子はない。
 しかしそれも、ベルベナの施した術が効果を現し始めると、流石に違和感となってミニスターの調子を狂わせることで気取られ始める。
「む……これは、どうしたことか」
 その金属の腕甲にひずみが生じ始めていることに、ミニスターは首をかしげる。
 その拳にかけていた筈の強化。あるいは、重量を増した攻撃そのものに拳が耐え切れずに自壊するのを防ぐはずの術式は、一体どこへ行ったのか。
「貴公……そういうことか」
「ふぅ、どうです? 自分自身の身体に裏切られた気分は」
「おのれぇ」
 拳を振るえば振るうほど不利になると悟ったミニスターが次に起こす行動を、ベルベナは予想していた。
 そしてそれは正しく、次にミニスターがビットを起動させようとする挙動を完全に見切ったベルベナは、思わず体が動いていた。
「【武器なんぞ使ってんじゃねえ】」
 弾かれたように飛び出した飛び膝が、ミニスターの顔面に直撃する。
「ぐおぉっ!?」
 防戦に徹していたベルベナが、突如として弾丸のように突撃してきた。
 攻撃の姿勢からのカウンターを貰った形のミニスター・ブラックがのけぞり、数歩下がる形となった。
 攻撃パターンを変更するその瞬間の隙をついた攻撃だったが、度重なる攻防に、ベルベナ自身も疲労していた。
 着地すると同時に、足元がふらつくのを、槍の石突で支える様に立つ。
 偵察がアタッカーとは、我ながら無茶をする。
 心中で独り言ちるが、それも甲斐あったと言うもの。
「フラテールさん、少し下がりましょう。うるさいのが間に合ってしまった」
 すぐ近くで控えていたウォーマシンを下がらせるように手で制すと、ベルベナの言葉に応じるかのように、ドームに何かが高速で突っ込んできた。
 ごうっと、ソニックブームじみた暴風が吹き荒れ、ジェットエンジンにも似た轟音が二人の前を横切り、
 飛翔体はその前部をビームシールドで覆いながら、バランスを崩していたミニスターブラックへと体当たりを仕掛けた。
「ぬおおおっ!」
 唐突に表れた飛行物体に体当たりを食らったミニスター・ブラックが壁まで吹き飛ぶと、飛翔体は逆噴射と姿勢制御ブースターをフルに使用して、ようやく空中に静止する。
「おう、まだ生きてるか!? 生きてるな!! 良し!!!」
 フライトユニット越しにぐっと腕を上げて見せながらも、フライディ・ネイバーは油断なく吹き飛ばしたミニスター・ブラックを見据える。
「まったく、あれだけ急いでたのに、結局、私の方が先につきましたよ」
「わっはは、すまねぇ! あちこち、手助けしてたらな!」
 嫌味の一つでもベルベナが投げれば、悪びれた様子もなく快活な調子でフライディは自身の頭をぴたんと打つ。
「有重力下のフライトユニット……また、骨董品を持ってきたものだな」
 がらがらと瓦礫の中からミニスター・ブラックが起き上がってくる。
「こいつの価値がわかるのか? 悪人でも、いいものはわかるんだな?」
「貴様のような馬鹿ばかりいた時代のものだ。似合いだな」
 起き上がるミニスターのその周囲にビットが浮かぶ。
 身に纏う装甲からも不吉な黒い粒子が噴射される。
 恐らくは、フライディが恐ろしいスピードを持つのをみて、それに対抗しようというのだろう。
「なんだ、話せるじゃねぇか。だがよ……マシン仲間をやろうとしやがった敵だ。非難はしねぇが、よくもやってくれたなテメェ!!」
 それを皮切りに、二体はほぼ同時に加速した。
 無理矢理加速するミニスター・ブラックに対し、フライディはもともと空を飛ぶためのユニットを装備している。
 速度差は明らかだが、装甲の厚さにはミニスターに分があった。
 それでも、速度で対応しようとするミニスターに、フライディは敢えてその対抗心に乗っかる。
「いいぜ、俺が空を見せてやる。ぶっ飛ぶぜ!」
 限界の限界、ユニットが赤熱化する勢いでフライディは加速し、真っ赤な加速装置と化して【空に駆ける】。
 極限のスピードは、その機動力そのものが武器となる。
 追い縋るビットを回り込んでバレルロールさながらに噴射方向を変えたレッグブースターで巻き込むように蹴り壊すと、更にその姿は縦横無尽に残像を残して大きくブースターの光跡を残す。
「しゃらくせぇ!」
 軌道上にビットの残数を捉え、更に軌道線上にミニスターを捉えると、加速形態からビームグレイブを展開する。
 大気のある中で加速しながらの変形は、自殺行為といってもいい。
 だが、もともとそういう無茶な運用を想定しているユニットである。
「うおおおっ!!」
「ぬおおお!!」
 空気を切り裂くような加速音と、ベイパーコーンを残す破裂音に、二人の叫び声がかき消される。
 激しい衝突と共に、両者ともはじけ飛ぶ。
 ドームを破壊せん勢いで壁に突き飛ばされるが、それでも二体とも常識外れの頑丈さなのか、ぎぎぎっと起き上がる。
「ほーう、まだ見たりねぇか。俺の空がよ」
「ぐ、おお……貴様のような奴は、いた……何を言っても、聞かん、馬鹿者よ」
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

春乃・結希
子供達の案内でドームへ
あの人がみんなの先生?ロボだ!かっこいいね!
ちょっと行ってくるから、先生の応援してあげてね
猟書家と戦うのはまだ厳しいかもなので、子供達は下がって貰います
今はまだでも、もっと強くなれるはずだから

遠隔で操る『with』でビットを叩き落とし
『wanderer』で敵に着いて行く【ダッシュ】
型なんて知らない、ただ相手を叩き伏せる為だけの拳と蹴りを
【怪力】で打ちつける【鎧無視攻撃】

先生、まだ戦えますよね
あなた程の人なら、何か隙とか見つけられてるんやないですか
1人だと難しくても、誰かと一緒なら絶対上手くいきます
あなたが子供達を守ろうとする想いの為に
『with』と私を使ってください



 争いは収束しつつある。船を揺るがす騒動は、今や一か所の見に留まるだけだ。
 その騒動の中心へと、春乃結希はあどけなさを残す教練生の子供たちの案内で連れられる。
 空間戦闘教練用ドーム。なんだか長い名前だが、最初に入り込まれた現場から被害を広げていないことは驚異的と言えるかもしれない。
 既に半壊しているドームの周囲からは怪しげな煙や火の手が上がり、艦の外からも自動消火や修繕用ドロイドなどが動員される中で、お互いが意地を張ったかのようにドーム内ではいまだに死闘が続いていた。
 ドームの中と外とを隔てるゲートは既に、飴細工を無理矢理引きちぎったかのように壊れており、その中では二体の怪物が激しくぶつかっていた。
 それは互角とは言い難い。
 既に何人もの猟兵との戦いで疲労の色が見えるミニスター・ブラックも負傷しているとはいえ、もう片方のウォーマシン・フラテールは劣勢を強いられている。
 重武装が売りのはずのウォーマシンが、プラズマソードのみで格闘を挑んでいるのだから、その対策さえしてしまえばフラテールの攻撃はほとんど無効化されているといっても過言ではなかった。
 所詮は教練用のドロイド。いや、教練用に調整されたドロイドにしては、あまりにも奮戦していた。
 その洗練された剣術。合理性と連続性、不規則性を織り交ぜたプラズマの光跡は、ほとんどミニスター・ブラックに通用していないながらも、閃光の様に結希の目に焼き付く。
「あの人がみんなの先生? ロボだ! かっこいいね」
 その有様を前に、悔し気に唇をかむ子供たちの肩に手を添え、穏やかな調子で教練生たちの人垣をかき分けて前に出る。
 フォースナイトとしての教育を受ける彼等にはわかっているのだ。
 助太刀の入り込む余地など、未熟な腕では見いだせない。
 明確な力量差、圧倒的実力差。それが見えない壁となって立ちはだかり、教練生たちの足を重たくしている。
 その見えない壁を気軽に乗り越える猟兵一人。
 何の変哲もない少女の背丈しか持たない。しかしそれにしては大ぶりな剣を担ぎ、結希は子供たちに振り返る。
「ちょっと行ってくるから、先生の応援してあげてね」
 それを引き留めるものはおらず、そして結希自身も、自分のことは敢えて勘定に入れない。
 自分の剣術は、人に勧められたものではない。それがわかっているからだ。
 拠り所であり、愛する者である大剣を思う様に振り回してきた結希の剣技は我流。そしてその強さの源は、自分は強いという極めて危うい思い込みに依るところである。
 人に教えられる類のものではない。
 だが同時に、他者の応援などなくとも、自分は最強なのだから何があっても平気であるという尊大な自負とも言える。
 私は十分に強い。だから、彼らの指標、その伸びしろは強い者が残してあげなくてはならない。
 そうして結希は、おもむろに最愛の大剣『with』をブン投げる。
 おいおい、愛する大剣って言ったばっかりじゃないかと思われるかもしれないが、体格に見合わぬパワーで放られた大剣は、凄まじい勢いでミニスター・ブラックとフラテールとの間を切り裂く。
「ぬ、また横やりか!」
 結希の方を向きつつ、ミニスター・ブラックはすかさず多数相手を想定してビットを射出するのだが、
 周囲に展開したビットが、一瞬のうちに何か金属音を立てて壊れされていく。
「心はいつも、貴方と共に」
 照明も壊れ始め、影の落ち始めたドームの中に結希の声が響き、黒い光を反射する大剣が回転しながら意志を持つかのように周囲を飛び交う。
 【コネクション】。それは、剣を思う愛情、想念。それが何らかのサイキックに作用したのかどうかは知らないが、とにかくまぁ、気合で大剣を遠隔操作するユーベルコードである。
「先生、まだ戦えますよね」
「助太刀感謝いたします。レディ」
 フラテール、そしてミニスター・ブラックと目が合うのと同時に、結希は鋭く踏み込む。
 その手には何も持たない。愛する剣は虚空を舞っている。
 魔導蒸気の足具『wanderer』が床を噛み、脚力を何倍にも引き上げて素早く低く加速。
 それに呼応したフラテールが再びプラズマの刃を閃かせれば、ミニスターは反射的にそれを防がずにはいられない。
「せぇいッ!」
 両腕を防御に回したことで空いた腹部を結希の裸拳がえぐり込む。
 型など知らない。ただの力任せなれど、普段から超重量の大剣を持ち歩き振り回す者の拳は加速も乗っているため、重量級のクリスタリアンとて数メートルほど吹き飛ばす威力があった。
「あなた程の人なら、何か隙とか見つけられてるんやないですか。
 1人だと難しくても、誰かと一緒なら絶対上手くいきます」
「お見事です。が、その殴り方では拳を痛めてしまいますよ」
「へ?」
 かっこよく決まった。と思ったのだが、フラテールは別のところが気になったらしい。
「拳の使い方にも作法があるのです。小指から握り込んで、普段は緩く。素早く打つときは真ん中の指三本で打つ。強く芯を穿つときはインパクトの際に親指で蓋をするように強く握る。手打ちでも空間戦闘では特に力が逃れないよう常に対角線上を意識するように。関節の稼働を意識してスピードとパワーをうまく乗せるのです。いいですか?」
「ああ、はい……」
 苦手なタイプだぁ。
 というのを極力顔に出さないよう、話が長引きそうになったので、結希は『with』を呼び戻して、ぱしっとつかみ取る。
「こほん。あなたが子供達を守ろうとする想いの為に、
 『with』と私を使ってください」
「心得ました、レディ。しかし、無茶をしてはいけませんよ」
 ぐっと親しい重みを感じつつ、見た目に厳つい姿をしながら気づかわしげな紳士然とするフラテールにちょっとずれたものをむずがゆく感じながら、二人は剣を構えるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ロラン・ヒュッテンブレナー
【星雲の司書】
あの人が、親玉みたいだね
これ以上、好きにさせないの

まずは狼変身(生後10か月くらいの子狼姿)するよ
アンおねえさんのUCの世界に、この姿なら適応すると思うの

そしたら【ダッシュ】で近づいて、【残像】で魔法弾を撹乱しながら動き方を【情報収集】して【学習力】
避けられなそうなら【誘導弾】の雷【属性攻撃】の魔術で迎撃して近寄るよ

ミニスター・ブラック、ぼくたちが、相手なの
裁縫の世界とぼくの姿に、油断とか侮蔑とかしてくれたら勝ちなの
走ってくる間に【高速詠唱】で設置しておいた魔術陣から、
UC発動なの

ぼく一人でむりでも、仲間がいるの
心春おねえさん、アウラさん、ぼくが抑えてるうちにお願い


二條・心春
【星雲の司書】
ええ、フォースナイトさん達は必ず守って見せます。貴方には負けませんから!

ぬいぐるみさん達のふわもこ世界……とても素敵です!私は「コミュ力」でぬいぐるみさん達に呼びかけて一緒に戦ってもらいます。魔法弾に対して拳銃で【領域強化】の弾丸を打ち込んで爆発させれば、広範囲にみんな強化できるかな。彼らに守ってもらったり、ふわもこに隠れて爆発を軽減したりして魔法弾を減らしていきます。

ロランさんが敵の動きを封じてくれたら、UDCの子達の力を借りて「呪殺弾」の力を籠めた拳銃から【領域強化】の弾丸で攻撃です。UDCの呪いの力、貴方に防げますか?敵が苦しんでいる隙にアウラさんに攻撃してもらいましょう。


アン・カルド
【星雲の司書】として。

実物を見ると想像の倍は厳ついねぇ、性格も…それに見合った恐ろしいものか、実にちょうどいい。

ええとどこだったかな…ああ、ここだ【縫包】。
…いつ見ても大量に降ってくるねぇ、彼らの世界らしくするにはそれだけの量が必要なんだろうけど。
さ、ちょっと手伝ってもらうよぬいぐるみ君、あの黒いのが僕らを虐めてて困ってるんだ…。
と、ぬいぐるみ達にみんなを守ってもらうように頼む、ふわふわのぬいぐるみなら衝撃をしっかり吸収してくれるだろう。

なんとか時間を稼いでウェネーフィカ君のUCまでこぎつければ僕たちの勝ちだ。
それにしてもぬいぐるみの世界に虹の光線がかかるなんて…よくできた物語じゃあないか。


アウラ・ウェネーフィカ
【星雲の司書】
ほう、あれが敵の親玉か
なるほど……あの佇まい、感じる魔力、只者ではないな

■戦闘
アンさんのUCに合わせ、【目立たない】ようにぬいぐるみ達の
影に隠れたら【UC】を発動
創り出した破壊の光に更に魔力を注ぎ込み、増幅させていく

それと制御の傍らで、ぬいぐるみ達に構って遊んでやる事で
この世界に適応も図るとしよう
近くに居れば守って貰う事も可能だろうしな
……それに、こういったものが嫌いとは言っていない(ボソッ)

アンさんのぬいぐるみ達、心春さんの強化と呪い、ロランさんの重力の鎖……
全て心から信頼できる
威力が十分に高まり、敵に隙が出来たら周囲の被害に気を付けつつ
【UC】の破壊光線で一気に倒させて貰おう



 激しい戦闘を経た現場は、そこに猟書家という存在を押しとどめているという事実こそ奇跡的ですらある。
 それを如実に語るかのように、空間戦闘教練用ドームという長ったらしい名称の付いた訓練施設は、今や崩壊寸前である。
 襲撃を受けた教練艦の被害は、猟兵たちの介入もあって、最小限に抑え込まれていたが、この場所だけはさながら爆発事故の現場の様であった。
 間違いなくこの訓練施設は建て替えが必要になるだろう。
 逆に言えば、それだけの被害に留めることに貢献した猟兵でもないウォーマシンの生存能力の高さをこそ評価されるべきか。
 ほんとにもう、なんでこんな長持ちするんだろう。
 そして、【星雲の司書】の名のもとに集った猟兵たちもまた、現場の傷跡に心を痛める者もいた。
 ドームを前にした一同の傍らに、くたびれ果てて膝を折るウォーマシンの姿がった。
 猟兵たちとの度重なる戦いに励まされ、あるいは援護として積極的に戦い続けたフラテールというウォーマシンだったが、教練用にカスタムされたボディではさすがに限界がきたのだろう。
 体のあちこちが傷だらけであった。
「機体損耗率……まだ戦えるはず……」
 ダメージリポートを却下し、再び立ち上がろうとするウォーマシンの前に立ち、幕を引くように片手……猛禽類の翼を広げそれを制すアウラ・ウィネーフィカ。
「ここは、我々に華を持たせてもらえないかな、教官殿」
 食い下がろうとするフラテールにも有無を言わせぬ強い足取りで、他の者たちも前をゆく。
 ロラン・ヒュッテンブレナーの小さな歩幅に合わせ、率いられるままに、4人はドームへと足を踏み入れる。
「ふん、やはりな。あの騎士を破壊したところで、本当の障害は免れぬ……今度はまた、ずいぶんと可愛らしいのが来たものだ」
 いかつい黒光りする金属の装甲に身を包んだクリスタリアンの巨躯、ミニスター・ブラックが、その恐ろし気な形相を、4人に向ける。
 あどけなさを残すロランと、そのほかの面々は見た目には、見た目には多分、か弱い女性である。
 ミニスター・ブラックもまた知恵者。姿かたちで安易に戦力を侮ったりなどはすまいが。
 対する一同は、猟書家にして策略家、強力な魔術師でもあるというミニスター・ブラックを目の前にして、様々に思うことがあるようである。
 アウラはその夜目から感じ取れる威圧感とは別に感じる魔力の圧迫感に、ほうと嘆息。
「なるほど……あの佇まい、感じる魔力、只者ではないな」
「実物を見ると想像の倍は厳ついねぇ、性格も……それに見合った恐ろしいものか、実にちょうどいい」
 アン・カルドもまた、その佇まいから感じるものはあるのだろうが、隈のくっきり浮いた不健康そうな顔でにやりと不敵な笑みを浮かべるとなんだか悪役っぽい気もする。
「最後の一人、あの人が、親玉みたいだね。
 これ以上、好きにさせないの」
「ええ、フォースナイトさん達は必ず守って見せます。貴方には負けませんから!」
 ロランがその中世的な面差しに力強いものを浮かべれば、二條心春もそれに続いて恐れる心に屈しないようぐっと握る拳に力を込めるのであった。
「して、どうする? 見たところ魔導の心得のもとに集まったらしいが……それで我を圧倒するとでもいうのか。どうだ?」
 ミニスター・ブラックが見栄を切るかのように睥睨し、その手の先に浮かべた黒い何か。
 黒い球状のそれが魔法弾であるといち早く気付いた【星雲の司書】の一同は、さっそく行動を開始する。
「何をするって? こうするの!」
 ざっと駆け出すロランは、その姿を11歳の子供から、人狼……いや幼い狼の姿に変身する。
 四つ足で駆ける姿は何とも愛くるしい……もとい、小さな姿は魔法で撃つには標的が小さい。
「そんなもので躱せるつもりでいるのか?」
 もちろん、狙いはそれだけではない。生来の狼とは違い、ロランは人の姿の方が何かと便利である。
 わざわざ狼の姿に変じるにはちゃんとした理由もあった。
 だが、いつ狼の姿になってもいいよう、順応しつつもある。
 それがたとえ病によるものであったとしても、己自身を完全に嫌えるはずもなく。
 魔術を嗜む性分としては、変貌する自らの身体に興味を持たない方がおかしいのである。
 幾何学模様を描いて飛来する魔法弾の嵐を、ロランは器用に軌道を読んで次々と躱していく。
 その間、アンは自身の記した魔導書『銀枠のライブラ』をいそいそとめくる。
 連日寝る間も惜しんで書いているせいか、魔導書のどこに何を書いたかもたまに忘れるが、やる事がわかっていれば求めに応じるのもまた魔導書と言うものである。
「ええとどこだったかな……ああ、ここだ【縫包】」
 【ライブラの愉快話・縫包】は、多岐にわたる彼女の世界の中でも、ひときわファンシーな部類のものである。
 魔導書から展開する輝きがドーム中を照らし、その光の中から何やらぽてっとしたものが一つ二つ……やがては雨の様にばらばらと落ちてくる。
「むぅ、眷属を呼び出したか。これが奥の手か!」
 ロランに気を取られていたミニスターが身構えるが、その周囲に落下してドームを埋め尽くさんとしているものの正体に気づき、思わず動きを止める。
 それは、
「わー、どこだーここ」
「わーわー、床がブリキだー」
 口々に甘ったるい声を上げるそれらは、動くぬいぐるみたち。
 おおよそ自立できないようなふんわりした素材で編み上げられたそれらは、それぞれが意志を持っているようにもこもことそこらじゅうを歩き回る。
 そう、アンのユーベルコードは、大量のぬいぐるみを召喚し、ぬいぐるみの世界を作り出す。いや、正確にはぬいぐるみ達のふわふわもこもこ世界と同じ環境を作り出す。
 どういう環境だ。というツッコミはひとまず置いておいて。
「ふわわ……素敵です! みなさん、こっちですよー。わー、ふわふわ……」
「ほうほう……これはなかなか……よくできている。というか、彼等にはこれが最初からできている姿なのか……君はその羽根で飛べるのか?」
 山と積み上がり各自が好き勝手にあちこち行ったり来たり忙しないぬいぐるみ達に、心春やアウラもまなじりがほんのり下がってしまう。
 可愛いものが大好きな心春はもとより、いかつい猛禽類の雰囲気を持つアウラが興味深げに梟のぬいぐるみを抱え上げてしげしげと眺める様は、ミスマッチとは言わないが……ひょっとしたらギャップに微笑ましく映るのかもしれない。
 満更でもないのかもしれない。
 そして、二人ともぬいぐるみの世界に飲まれてそうなっているわけではなく、このユーベルコードはぬいぐるみの世界に順応するほど力を増す。
 まして最初からその策を用意していた彼女たちに、準備が無いわけもなかった。
 ぬいぐるみ達と戯れながらも、心春はその手に銃把を握りつつ、アウラは呪文詠唱を呟き続けていた。
 そして、敢えて幼い狼の姿を取ったロランもまた、ぬいぐるみの世界に順応するためのものであったというわけだ。
「さ、ちょっと手伝ってもらうよぬいぐるみ君、あの黒いのが僕らを虐めてて困ってるんだ……」
 そのぬいぐるみまみれの中で、アンは歌う様に大げさな身振り手振りを交えてぬいぐるみ達を扇動する。
 そうして、なになにそれは許せんなーと呑気そうに、しかし数千体のぬいぐるみたちの視線がミニスター・ブラックに向かう。
「ミニスター・ブラック、ぼくたちが、相手なの」
「……こんなものが、汝らの手勢か。馬鹿にされたものだな」
 諸手を挙げて無防備に走り寄るぬいぐるみ達を率いるロランが素早く駆ける。
 無論、そんなものは物の数ではないとばかり、ミニスター・ブラックは続けざまに魔法弾を放つ。
 魔法弾が着弾すればぬいぐるみ達は爆炎を上げて吹き飛ぶ。
 体がぬいぐるみでできている彼らは、あっさりと綿をまき散らして吹き飛ぶが、その衝撃は大分軽減され、アンやアウラ、心春のもとには届かない。
 そしてぬいぐるみの軍勢は、数にものを言わせてぞろぞろと前進し、基本的に負傷という概念がない。
「ちっ、おぞましい連中め!」
「皆さん、私も援護します!」
 そして更に密度を上げた魔法弾を繰り出そうとするミニスター・ブラックだが、そこへ心春の放つ銃弾が横やりに入る。
 【領域強化】によって破壊された魔法弾は光の粒子となって飛び散り、ぬいぐるみ達を強化する領域を作り出す。
 ただでさえ止まらないぬいぐるみ達がますます強固になり、気が付けばミニスター・ブラックは自らが後ずさっていることに気が付く。
「馬鹿な……このような、矮小な雑兵如きに……!」
「魔術式構築演算開始…キープロトコル設定…設置空間検索…確定。魔術陣展開…スリープ。トラップ設置完了」
「しまった!」
 動揺したところに、いつの間にか近くまで踏み込んでいたロランがユーベルコードを発動させる。
 【侮る者を捕える虚空の鎖】は、空間に魔術式を設置しておく手間がかかるのだが、多量のぬいぐるみに紛れながら行動していたロランは、魔法弾にも設置にも苦労しなかった。
 そうして設置された魔法陣から伸びた重力の鎖により、ミニスター・ブラックは捕えられる。
 何十倍にも増した重力に押さえつけられ、身動きを封じられたミニスター・ブラックだったが、なおも魔法弾を生成する。
 それを撃ち落す心春の銃弾は、性質を変えていく。
 彼女はガンナーではなく、本来はシャーマン、そして悪魔召喚士。
 心優しい彼女の呼びかけに応じるものは実に多様だが、そこにはUDCの邪神の一部も属する。
 呪いを帯びた邪神の因子を銃弾に乗せれば、身動きに加えて、術式の展開もおぼつかなくなる。
「長くはもちません。アウラさん!」
「うむ、みんな、感謝する」
 拘束を加える過程で、改めてミニスター・ブラックのその存在と力の強大さに身の毛がよだつ。
 心春の呼びかけに、それまでぬいぐるみ達と戯れつつ目立たなぬよう、術式を構築していたアウラは、翼を広げて飛び、心春の銃弾によって強化された領域に陣取ると、練りに練った術式を展開する。ついでに小脇に抱えていたぬいぐるみも下ろしておく。
「アンさんのぬいぐるみ達、心春さんの強化と呪い、ロランさんの重力の鎖……
 全て心から信頼できる」
 穏やかな眼差しは、黒い森で一人生きてきた魔女には似合わぬだろうか。
 いや、生きていくからには不変ではいられない。
 変化に伴う痛みも喜びも、今はアウラの胸の内に暖かく広がるばかりだった。
「魔力よ。我が元に集いて万変に揺らぐ光と化し、その大いなる虹の輝きを解き放て」
 【凄烈なる虹光】。六つの元素をそれぞれに圧縮、対消滅現象を起こすことで圧倒的破壊エネルギーを作り出す。
 ただしそれを構築するには、十分なバランス調整と、入念な呪文詠唱、術式構築が不可欠となる。
 虹色の光は、一つの白へと至り、ミニスター・ブラックを貫く。
「ぐおおおっ!!」
「あっ、ちょ、ちょっとまて」
 激しい光が凄まじい衝撃波を生む中、慌てたアウラの声が光の奔流に流されていく。
 照射はほんの数秒。思った以上に威力が上がってしまったそれは、十分に気を付けたつもりだったが、ドームの崩壊を決定づけてしまう。
「わーわー、にげろー!」
「こわれるこわれるー」
 呑気な声を上げてばらばらと散っていく人形たちと共に、ロラン達一同も崩れ始めるドームから脱出するのだった。
 ミニスター・ブラックは。そして、船は大丈夫だろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミフェット・マザーグース
ここに集まったヒトたちは、みんな強いから
ミフェットはその背中を一押するだけ、腕に手を添えるだけ
子どもたちがその姿を目に焼き付けられるように

〈楽器演奏・歌唱〉でみんなを〈鼓舞〉するよ
できるだけ他の猟兵さんと連携できるようにアドリブで合わせるね

最後まで立って戦えるように、ミフェットはサポートがんばる!
避けにくい爆発する攻撃からは〈ハッキング・操縦〉した訓練補助用のマシンや施設のギミックで〈盾受け・かばう〉よ

UC【荒らしに挑んだ騎士の歌】
はじめて戦うのを決めた時に、心に浮かんだ最初の詩
そうありたいとミフェットが夢見た騎士の姿を、みんな知っているはず


メイスン・ドットハック
【SPD】
清廉も突き抜ければたいしたものじゃけどのー
なら悪辣は僕が担当してやろうかのー

二足歩行戦車型キャバリアKIYOMORIに搭乗して参戦
ビットはレーザー砲ユニットでカバーリングし、高速移動は肩からの誘導ミサイルや榴弾で対応
その間に相手の動きや、ビット、追加装甲の在籍を電脳ハッキングで解析を試みる
それが完了したらUC「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」を発動し、ビットを介して電力を増し機械装甲すらも貫く電脳レーザー兵器を生み出し、強烈な一撃をビットの数だけ撃ち込む

こういうのは敵の攻撃すらも利用するものじゃしのー。それくらいはミニスターであっても把握しておるじゃろーけどのー

アドリブ絡みOK



 ドームがその支えを失い、崩壊していく。
 教練艦の一施設に過ぎないとはいえ、大型の施設は度重なる戦いの余波に、ついに崩壊を始める。
 宇宙空間と繋がっていた天井部分はとっくに隔壁が下りてしまい、崩壊に伴って崩れた部分も即座に安全装置が機能して、船自体の損傷にはならないのだが、それでも、この度の襲撃に於いては、それが最も大きな損害であることは間違いないだろう。
 金属が自重に押しつぶされ拉げる轟音と粉塵の最中、ひときわ激しい衝突音が、崩れるドームの壁面を打ち、破壊する。
 艦を揺るがすかのようなその音は、まぎれもなく金属同士がぶつかり合うような打撃音であった。
 まるで溶岩の中に生じた火山性ガスが泡となって弾けるかの如く、崩れ落ちた瓦礫の一面を突き破るは、黒光りするクリスタリアンの金属装甲。
 すなわち、猟書家ミニスター・ブラックは、猟兵との激しい衝突を経てもなお健在だった。
「大した気概よな。設備ごと我を圧し潰そうなどとは……騎士道などという古臭い習慣を持ち込まぬ者にしか、このようなことは思いつかぬ」
 さしものミニスター・ブラックとはいえ、その恐ろしげな形相には苦渋がにじむ。
 認めたくはなかったのだろう。
 未熟なフォースナイトの芽をつぶし、あまつさえオブリビオンの戦力にしようという、労力も最小限に抑える筈の作戦が、よもやこのような形で凌がれようとは、思いもよらなかった。
 失態は認めよう。しかし、断じて、フォースナイトに後れを取ったのではない。
 未熟な彼等には、かつての仇敵のような、勝つための執念、狡猾さはない。
 故にこそ、それぞれが比類なき地力と策謀を持つ猟兵というイレギュラーさえなければ、ここまでの痴態は晒さなかった筈だ。
 奴らさえ、奴らさえ現れなければ、完璧にこなせる筈だった。
 ぎりぎりと、歯ぎしりのような金属同士のこすれる音を装甲の奥から軋ませながら、苛立たしげに拳を瓦礫に叩きつける。
 と、粉塵にまみれた瓦礫の向こうから、ぽろんと弦楽器の音色が聞こえてくる。
 質実剛健を謳う教練艦に、そのような娯楽はない。
「ひどい有様だのー。容易く終わる筈の仕事を邪魔されて、さぞご立腹といったところかのー」
 能天気にも聞こえる声は、マイク越しの響きを持っていた。
 メイスン・ドットハックのキャバリア「KIYOMORI」は二足歩行型戦車である。
 ウォーマシンより大型であるため、人のサイズに作られた教練艦ではいささか取り回しに難があるものの、広いドームが崩れた今なら乗り込んだ方が派手に動けそうだった。
「汝らさえ出てこなければな。してやられたものよ」
「素直な子供なら、言う事を聞かすに易しと思うたか? お前さんも存外素直だのー」
 瓦礫の上に立ち、対峙する二人の体格差は、さすがにキャバリアに搭乗しているメイスンの方に分があるだろうか。
 ただ、それでもミニスター・ブラックという存在は、金属の鎧越しにもその存在感を覚えるほどの強敵。
 今や手傷を負っている状態とはいえ、本来は後方に徹していたいメイスンが正対するのは危うさを感じていた。
「彼奴等は清廉な精神しか受け継いでおらぬ。だから、我が直々に教育してやろうというのだ。闇の騎士として」
 黒い魔力の奔流が熾火の様にミニスター・ブラックの周囲に立ち上がる。
 やはり、まだ相手は気力十分。むしろ、追い詰められている今こそ強敵かもしれない。
 だが、メイスンはコクピットの中で口の端を歪める。
「ふ、清廉も突き抜ければたいしたものじゃけどのー。
 なら悪辣は僕が担当してやろうかのー」
 もはや話すことはないとばかり、口中で独り言ちて、メイスンはキャバリアの武装を展開する。
 手始めに肩に内蔵された多目的ミサイルポッドを発射。
 魔力を纏い、ビットを展開し、厳つい見た目にそぐわぬほどの高機動を見せるミニスターの動きに遅れないよう、追尾性能を持たせたミサイルが白い尾を引いてミニスターを追いかけるが、あと一歩が足りない。
 瓦礫の上をすべるように移動するミニスターの動きが追えぬではないが、光輪を帯びるビットが飛んできては、こちらも迎撃しなくてはならない。
「うぬー、意外に展開が速いのー」
 浮遊砲台には浮遊砲台。こちらも浮遊するレーザー砲ユニットを飛ばしてかち合わせるが、攻撃と合わせて行うには少々手が足りない。
 何しろ、この合間にもメイスンは相手の能力の詳細を知るために、ハッキングに勤しんでいた。
 普段が自堕落な性格をしているせいか、なにかと忙しい戦闘機動は好まない。
 それをこなしながら情報戦を行うのは、頭が痛くなる。
 とはいえ、決定打を打つためには、より詳細なデータが必要だ。
『もう一度、ミサイルを』
「ほん?」
 唐突に耳に聞こえたメッセージに、メイスンは思わず声を上げる。
 コクピット内にいくつも立ち上がるウィンドウの片隅に、見慣れないチェックが入る。
 同業猟兵に対しては、ある程度の情報を開示しているとはいえ、前触れもなくアクセスを許すとはいい度胸……もとい、大したものだが、そのチェックを確認すると、ニヤッとメイスンはまたも邪悪に口の端を歪める。
「悪い子もおったもんじゃのー」
 意図を把握したメイスンは、その思惑の通りに再び誘導ミサイルを発射してミニスターを誘導する。
 ミサイルの性能では、ミニスターの機動力と逃げ切るだけの小回りに追いつけないのだが、今の戦場はできたての瓦礫の上。
 もとは訓練用のドームであり、壁面には点検用のハッチも存在している。
 ミニスターが回避用に選んだルートにもそのハッチは存在し、崩壊した今も電気的なつながりは生きていた。
 それが唐突に開けば、それは新たな壁となって、ミニスターの逃げ道をふさいだ。
 まるで意思があるかのようだったそれは、まぎれもなくメイスンではない何者かの手引きによるものだった。
 回避も間に合わず、ハッチに激突したミニスターはついにミサイルに追いつかれ、凄まじい爆炎が上がる。
 ぽろん、とそれを見下ろす切り立った瓦礫の上に、ミフェット・マザーグースはリュートを掻き鳴らす。
「ここに集まった人たちはみんな強い。だから、ミフェットはその背を一押しするだけ。
 腕に手を添えるだけ」
 ブラックタールであるミフェットは、電子戦も行える戦闘兵器として捕獲され育てられたはずだった。
 あどけない少女に過ぎぬ彼女は、それでも人を愛するに至り、その力を積極的に人を殺す事には使わない。
 大好きな絵本の様に、必ず平和は訪れて、歌や夢のあふれる物語が世界を癒すと本気で信じている。
 夢は夢。残酷な現実は幾つもやってくる。それでも信じてやまないのだ。
 だからメイスンの様に驚異的な兵器を持たない代わりに、楽器を奏で、歌うのだ。
 残酷な世界が、少しでも素敵になるように。
 【嵐に挑んだ騎士の歌】は、そんな彼女の願いが詰まっている。
 戦うと決めた日、思い描いた理想の存在は、誰かのために戦う騎士の在り方。
「みんな見ていて。みんなが守ろうとしているもの。みんなを守ろうと戦う人たちを!」
「ええい、やかましい! 生易しいことを言いおって!」
 爆炎の中から、黒い魔法弾が複雑な軌跡を描いてミフェットに襲い掛かる。
 ミサイルや榴弾の直撃を貰ってもなお、ミニスターはまだ動けるようであった。
 飛来する魔法弾から、身を隠すこともせず、その周囲から小さな光線で迎撃する。
 ミフェットの周囲には、訓練施設で拝借した訓練用の浮遊砲台を引っ張ってきたままであった。
 火力には乏しくとも、触れれば爆発する魔法弾を迎撃する程度のことはできる。
 爆発する魔法弾の中でも、ミフェットは歌い続ける。
「何のための清廉さよ! 勝たねば意味がない!」
「……それでも、その清廉さを、貴方は最後まで折ることができなかった」
 歌の最中で、ミフェットはミニスターを見下ろす。
 その言葉に顔を上げたのは、くたびれ果てたウォーマシンの教官。
 強大な力を持つはずのミニスター・ブラックは、その力を持ちながらも、フラテールの決死の攻撃の前に、ついに彼を完全に破壊することはできなかった。
「はっはぁ、言ってやったのー。悪い子じゃあー」
 そして、浮遊砲台で迎撃、受け止めていたミニスターのビットから得た情報を、メイスンはついに解析完了する。
 すかさず、メイスンはユーベルコードを発動。
 【彼を知り己を知れば百戦して殆うからず】によって作り出されるのは、解析したデータをもとに、電脳魔術によってデザイン、投影した、ミニスター・ブラック専用の兵器。
 強固な装甲を持つ相手なら、それに対抗したものを作ればいい。
 ユーベルコードによって作り出された電脳レーザー砲は、ビットからエネルギーを拝借し、同質のエネルギーを用いることによって、ミニスターの装甲を貫こうというものだった。
「こういうのは敵の攻撃すらも利用するものじゃしのー。それくらいはミニスターであっても把握しておるじゃろーけどのー」
 すぐさまそれを照射するメイスンだったが、果たしてその予想は正しく、
 ミニスターは即座に対抗魔法を構築し、正面からメイスンのレーザー砲を受ける。
「盗人め。我が策謀を抜けると思うてか」
「無論、僕一人では、そうそう簡単にはいかんだろうのー。仮に、お前さんが万全であったなら、もうちょっと色々用意したもんさ」
 少なくとも、正面から拮抗させるような真似はしない。
 勝算はあった。
 ミニスター・ブラックは魔法使い。とはいえ、猟兵の多くを相手取ったのはその堅固な拳、腕甲であった。
 そしておそらくは、それよりも多くの数を、受けていた筈だ。
 フラテールの4本の腕より繰り出される、プラズマの刃を。
「馬鹿な……!? あの騎士が……一心に打ち続けたそれが、我を滅ぼすというのか……!」
 即席で構築した対抗魔法の綻び。それが生じたのも、対消滅に腕に罅が奔ったのも、これまでの戦いによるものだった。
 電脳レーザーの眩く収束する光が、魔法の、装甲の耐久力を上回り、ついにはその身を貫いて内部から焼き尽くす。
 そこまでしてようやく、即席のレーザー兵器は銃身に異常をきたして機能しなくなってしまう。
 もはや致命的な空洞を得たミニスター・ブラックが瓦礫の上に膝を折る。
「不覚……未熟と、侮るべきではなかったか……騎士よ。そして猟兵どもよ……。これで終わりと……思うな……闇は、いつも汝らの隣に」
 やがて物言わぬ石と金属のなれ果てと化したオブリビオンが崩れる。
 歌を紡ぎ終えたミフェットが胸を撫で下ろし、メイスンの乗機が武装を解除するのがきっかけとなったかのように、周囲から歓声が上がった。
 そうして教練生たちは、不可思議な戦闘能力を持つ猟兵たちと、そして、生き延びた教官を含める、教練艦の教導者たちのもとに駆け寄るのであった。
 眩しいばかりの絆。そして、猟兵の強すぎる力も起因して壊してしまったあちこちの片づけを手伝ったりしながら、猟兵たちは程なくして帰途に就く。
 願わくば、その胸に猟書家の言葉にあったような闇が巣食わぬことを。
 もしくは、巣食ったとして、その闇に飲まれぬことを、静かに祈りながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年12月02日


挿絵イラスト