大天使の矛先に見ゆるは
●抑えきれぬもの
サムライエンパアは呪術法力文明によって徳川家光の治世は安定している。
エンパイアウォーという大きな戦いを乗り越えてなお、この世界を脅かすものがいる。それが猟書家『クルセイダー』である。
彼の猟書家の目的は『江戸幕府の転覆』。
これを実現するために行動を開始したわけであるが、その中のひとり『大天使ロロサエル』は本来『七大天使全てを見つけ出す』という目的を帯びているが、どうしても『クルセイダー』の抱く野望に強い興味を覚えてしまうのだ。
それはいかなる理由であるからかわからないが、それでも己の興味は尽きることがない。
「クルセイダーの抱く野望にも、眼下に見える『京の都』にも、先祖代々オブリビオンと戦い続けてきたという『陰陽師』達にも、そしてもちろん……この魔軍将にも、強い興味を覚えてします」
彼の興味は彼の瞳に映る者全てに向けられていたのかも知れない。
その天使の翼を羽撃かせ眼下に見やる『京の都』には『対オブリビオン戦闘』を想定してきた『陰陽師』たちが数百年掛けて張り巡らせた結界が存在している。
「ああ、この結界。これほどまでに綿密に、連綿と紡がれてきた結界が彼等の如何様成る努力のもとになりっているのか。興味を覚えぬわけがありません」
『大天使ロロサエル』の翼が大きく開かれ、その手にした蔵書がはためき、忽然と現れたのは編み笠を目深に被った呪術師たち。
彼等の瞳は全て編み笠に隠れているがゆえに、その表情は定かではない。
『編笠衆』と呼ばれた彼等が一斉に前を向く。
それは過去の化身であり、これより行われる儀式、『超・魔軍転生』によって憑装されるは嘗ての魔軍将『安倍晴明』。
「界渡る者にして魔軍将……『安倍晴明』。興味があります。興味を覚えてしまいます。分裂せよ、私の軍勢全てに憑装せよ!」
その号令とともにクルセイダーの秘術『超・魔軍転生』により『安倍晴明』が『編笠衆』に憑装される。
その恐るべき荒業によって分裂した『安倍晴明』の力が宿りし『編笠衆』たちがの口が一斉に開く。
彼等が一様にして発した言葉は単純であるが、彼の人となりを端的に言い表していたことだろう。
「興が乗りませぬ。とは言え、かような術により分裂されてしまったのならば、致し方ありません。私自身が私に飽いているのだとしても、もしかしたのならば――猟兵が私の心を動かしてくれるやも知れない」
その言葉は、かつてのエンパイアウォーでも聞いたことばであろう。
かつて、不死であり繁殖も可能であり、生存のためのエナジーも必要としない存在であった。いや、成り果てたと言った『安倍晴明』。
彼が今や望むのは凪いだ心にさざなみでもいい、波風を立てる強烈なるものであった。
その姿に『大天使ロロサエル』は強い興味を抱く。
「ならば、そうしましょう。華やかなりし『京の都』。そこに住まう『陰陽師』も人々も全て蹂躙してみせましょう。そうすれば、猟兵達の怒りはさらに燃え上がり、あなたの心をも溶かすかも知れない。それを期待してしまう。私は興味を抱かずには居られない。この戦いの行く末が如何なる結末を、凄惨なる血に塗れた道行になるのかを――!」
●京の都防衛戦線
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回はサムライエンパアに現れた猟書家『大天使ロロサエル』とクルセイダーの『超・魔軍転生』によって大量に複製して召喚した『安倍晴明』の魂を憑装されたオブリビオンの軍勢を撃退していただきたいのです」
彼女は頭を下げて猟兵たちに事のあらましを伝える。
今回の戦いの舞台である『京の都』。
そこは古代より密かに『対オブリビオン戦闘』を想定してきた『陰陽師』たちが存在しているのだという。
そして、彼等が数百年掛けて張り巡らせた結界によって今はオブリビオンの軍勢は押し止められているが時間の問題であることは言うまでもない。
「彼等と協力し、『大天使ロロサエル』とその軍勢を打倒していただきたいのです。無論、『超・魔軍転生』によって憑装された『安倍晴明』によるオブリビオンの強化は凄まじいものです」
だからこそ、『陰陽師』たちの協力が不可欠なのだという。
彼等の力によって結界の力がオブリビオンの軍勢の動きを鈍らせることができるのだという。
「その結界の力の前では憑装されたオブリビオンと言えど、動きを止めるほかありません。長くは保たないでしょうが、みなさんとオブリビオンの戦いにおいては決定的な隙となり得るでしょう」
すでにオブリビオンの軍勢は『京の都』の結界まで迫っている。
華やかな都で行われる戦いであるが、軍勢の数は圧倒的だ。ある程度オブリビオンを倒すと軍勢を率いる猟書家『大天使ロロサエル』が猟兵達の戦いに興味をいだいて現れるのだという。
「彼の本来の目的は『七大天使全てを見つけ出す』というものであるようですが、その声質からか、クルセイダーの野望にも興味をいだいての行動のようです。この機会を逃さず、かの猟書家を打倒するしかありません」
骸の月による世界侵略。
それを止めるためには猟書家を打倒することが確実なる彼等に対する対抗策である。
「『超・魔軍転生』……その力は強大ですが、軍勢を呼び出す『大天使ロロサエル』さえ倒してしまえば、あとのオブリビオンは烏合の衆と言っても差し支えない者たちとなってしまいます。そうすれば全ての軍勢を打ち倒すのにそう手間取ることはありません」
『京の都』は未だ人々が平穏に暮らす街であり、連綿と『陰陽師』たちが紡いできた結界を今此処で失うわけにもいかない。
だからこそ、ナイアルテは頭を下げて猟兵達を見送る。
人々が紡ぎ、築いたものを守る者は猟兵達しかいないのだと――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はサムライエンパヤにおける猟書家との戦いになります。舞台となるのは『京の都』。華やかなる街でのオブリビオン大軍勢から護り切るシナリオになっております。
※このシナリオは二章構成のシナリオです。
●第一章
集団戦です。
嘗ての魔軍将『安倍晴明』を憑装 したオブリビオンの大軍勢との戦闘になります。『安倍晴明』は自身に対してもあまり興味を持たないためか、戦いに関して心が揺らぐことはないようです。
ただ猟兵が向ける怒りが己の心にどれだけの動きをもたらしてくれるのか、それだけが関心事となっています。
●第二章
ボス戦です。
猟書家『大天使ロロサエル』は憑装しておりません。
この猟書家『大天使ロロサエル』は様々なものに興味を示す猟書家であり、魔軍将にも、陰陽師にも興味を見出しています。
彼を打倒した後は、大軍勢とはいえオブリビオンは烏合の衆となって全ての軍勢を叩き潰すことが可能となります。
※プレイングボーナス(全章共通)……陰陽師と協力する(戦力としては不足ですが、結界で敵の動きを鈍らせることができます)。
それはではサムライエンパヤにおける『大天使ロロサエル』が率いる超・魔軍転生によって複製された魂を大量召喚された『安倍晴明』が憑装された大軍勢から『京の都』を守る戦いの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『編笠衆』
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POW : 金剛力
単純で重い【錫杖】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 呪殺符
レベル×5本の【呪殺】属性の【呪符】を放つ。
WIZ : 呪縛術
【両掌】から【呪詛】を放ち、【金縛り】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:V-7
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
華やかなる都、『京の都』。
今やそこに迫るのは『超・魔軍転生』によって凄まじき力を齎されたオブリビオン『編笠衆』たちによる『対オブリビオン戦闘』の要となる結界であった。
「……何百年と無く弛むこと無く紡がれてきた結界……これほどまでに精緻に地道に積み重ねてきたものを壊してもなお、私の心は凪いだよう……」
『編笠衆』に憑装された『安倍晴明』がため息を吐き出すように結界に触れる。
呪術で編み上げられたものであれば、それを解いていけばいい。
どれだけ強固に紡がれたものであったとしても、元は糸のようにか細いものであるがゆえに。
「時間はかかろうとも今は手慰みに結界を破り、『京の都』を蹂躙する……暇つぶしにもなりませんが」
あくまで淡々と。
『安倍晴明』は陰陽師たちが連綿と紡いで来たものを壊していく。
「くそっ! ここで踏ん張らなければ、結界が……! ほどかれていく……我等の術式が解析されているのか……!」
陰陽師たちは結界の中から崩壊していく呪術を食い止めんとしているが、それでも『安倍晴明』の圧倒的な才能と力の前に為す術もない。
このままでは結界はほどかれ、オブリビオンの大軍勢によって『京の都』の住人たちは虐殺されてしまう。
何百年となく紡がれてきたものも壊れる時は一瞬。
だが、それでも諦めなければ、人々の希望は、猟兵は、やってくるのだ――。
月夜・玲
うわーくせーめっちゃくせー!
私の大っっっ嫌いな奴の匂いがするぞー!
いったい何のセイメイなんだ…
もう何て言うか…あいつ無理!
魂のレベルで無理!
いや待てよ…逆に考えたら分裂した奴を殴り放題?
やったね!
●
陰陽師のみなさーん
とりあえず、作戦会議!
まず編笠衆の呪符の動きの抑制お願いね
後はいのちをだいじに!
それから作戦の第2段階
私が突っ込む!
作戦終わり!
完璧じゃん
EX:I.S.T[BK0001]に騎乗し《RE》Incarnationを抜刀
操縦サポートさせながら最大速度で突っ込む!
轢ける編笠衆は轢きながら、勢いをのせた剣でも斬って『なぎ払い』!
呪符は進行方向の邪魔な奴を『念動力』をのせた斬撃で『吹き飛ばし』
編笠を目深にかぶった呪術師然としたオブリビオンの大軍勢が粛々と結界の張られた『京の都』に迫る。
彼等は全て『超・魔軍転生』によって複製し大量召喚された嘗ての魔軍将『安倍晴明』の魂が憑装された存在である。
個ではあるが、彼等は全てが複製存在。
一人ひとりに魔軍将たる力によって強化されたオブリビオンである。彼等が今まさに解析し、破壊しようとしている結界こそ、何百年となく紡がれ積み上げてきた陰陽師たちの努力の結晶なのである。
「何百年と積み上げてきたものも、一瞬にして瓦解する。全て無意味。意味在るものを前にしても尚、これだけの虚無が私の中にある」
まるで興味を抱けない。
過不足のない存在とはあまりにもつまらない存在であると『安倍晴明』は憑装されても尚、その言葉を己の心の内側から溢れ出していた。
「うわーくせーめっちゃくせー! 私の大っっっ嫌いな奴の匂いがするぞー! いったい何のセイメイなんだ……」
模造神器運用補助用に開発された特殊バイクのエンジンが彼女――月夜・玲(頂の探究者・f01605)の心象を顕すかのように唸りを上げる。
探求者たる彼女にとって興味を持ち得ぬ者というのは、対極の存在であるのだろう。
蛇蝎の如く嫌うオブリビオンに対する彼女の言葉は辛辣そのものであった。
「もうなんていうか……あいつ無理! 魂のレベルで無理!」
吐き捨てるように言う玲の顔に浮かぶのは苦み走ったものであったが、同時に名案が閃く。
どれだけ嫌っていても無関心ではいられないのが猟兵とオブリビオンの関係である。知った以上滅ぼさなければならない。
だからこそ、彼女の思考は『そこ』へ至る。
「いや待てよ……逆に考えたら分裂した奴を殴り放題? ――やったね!」
まさかのポジティブシンキング。
嫌いと無関心は別物である。
嫌悪する相手を打倒するのはある意味でストレス解消であるのかもしれない。玲はそのまま結界を維持し、守ろうとする陰陽師たちに呼びかける。
「陰陽師のみなさーん。とりあえず、作戦会議!」
玲の言葉と共にその手にあるのは『天下自在符』。徳川の紋所が刻まれた符は猟兵にとって治外法権の行使そのものである。
「そ、それは! 徳川の紋所……! ご助力感謝いたします!」
陰陽師たちは、その『天下自在符』を与えられた猟兵という存在を肯定的に捉えている。それはかつて猟兵たちがエンパイアウォーにて勝ち取った信頼でもあったことだろう。
「まず編笠衆の呪符の動きの抑制お願いね。後はいのちをだいじに! それから作戦の第二段階。私が突っ込む! 作戦終わり! 完璧じゃん」
まさかの大雑把。ざっくりとした作戦内容に陰陽師たちは戸惑うも、彼等に戦いを任せるしかないのは事実である。
一気に玲は模造神器の搭載された特殊バイク『EX:I.S.T[BK0001]』を駆り、敵陣へと突っ込む。
『BK0001、戦闘支援モードに移行。リンク開始。』
Link=Ex:I.S.T(リンク・エクスアイエスティー)によって彼女の駆る特殊バイクが変形する。
玲自身は変形した特殊バイクの上に二振りの模造神器を抜き払う。操縦サポートを任せながら最大速で突っ込む玲を前に無数の呪符が飛び交う。
「猟兵。やはり来ましたか。ですが、やはり私の心は凪いだまま……その瞳宿る色を見れば判ります。私を嫌悪する瞳……――」
憑装された『安倍晴明』が呟く。
だが、そんなつぶやきなど知ったことではないと言わんばかりに玲は二振りの模造神器からの出力を受けた特殊バイクの車輪でもって編笠衆たちを轢き潰す。
「陰陽師のみなさん、呪符はよろしく!」
結界の力をほどかれる前にオブリビオンである『編笠衆』たちへ向け、彼等の放つ攻撃を鈍らせている。
玲の指示には半信半疑であった陰陽師たちであったが、彼女の無双たる戦いぶりを見れば、その瞳に希望が宿る。
「陰陽師の瞳が絶望ではなく希望に変わっていく。なるほど、一騎当千の猟兵ともなれば……――」
それ以上何を言わせるでもなく特殊バイクがドリフト走行しながら編笠衆達を吹き飛ばし、玲の振るう模造神器の二振りがまさしく嵐のように、竜巻のようにオブリビオンを切薙ぎ払う。
そこへ舞い散る呪符であったが、玲の念動力を増幅させた模造神器の斬撃が放つ風圧によって吹き飛ばされていく。
「問答無用! 興味も探求も何も持たない奴と馴れ合うつもりは――ない!」
玲の放つ模造神器の旋風の如き一撃は、嫌悪する者を尽く霧散し、骸の海へと叩き還すのであった――!
大成功
🔵🔵🔵
月白・雪音
…安倍晴明、平安の世にあって信の高い陰陽師であり、
伝承には異形の封じ手とも描かれる人物と存じておりますが…、
この世界においては変わるものですね。
貴方自身に対しての怒りを抱く程に私は貴方を存じませんが…、
その力を以て『今』を害すとあらば、
化生に近きこの身なれど、御身の前に立ちましょう。
生憎私は超常の力を扱う適正は恵まれていない身です、
皆様は術式にて私が肉薄し拳を届かせる隙を作って頂ければ。
…刹那も有れば充分ですゆえ。
UCを発動し、残像にて肉薄及び見切り、野生の感も使用し攻撃回避。
怪力、グラップル、2回攻撃、範囲攻撃にて
拳や蹴り、投げを用いて適性を殲滅
――我が武を以て、その呪を喰らいましょう。
世界は一つではない。
その事実を知る猟兵にとって、各世界に置いて伝わる同姓同名の人物像が異なることはわかっていたとしても、相対すればまた別種の思いがあるのもまた事実であったことだろう。
「……安倍晴明、平安の世に在って信の高い陰陽師であり、伝承には異形の封じ手とも描かれる人物と存じておりますが……」
月白・雪音(月輪氷華・f29413)にとって目の前の光景はにわかに信じがたい光景でも在ったかも知れない。
華やかなりし『京の都』。
対オブリビオン戦闘のために数百年と掛けて構築された結界をほどこうとするオブリビオンの軍勢は、まさに彼女の言葉の通りの『安倍晴明』が『超・魔軍転生』によって憑装された者たちである。
それは複製にして大量召喚された魂であり、その意識はまさしくエンパイアウォーにて現れた『安倍晴明』であったのだから。
「この世界においては変わるものですね」
彼女の白雪のような髪がなびき、戦場に赤い瞳の残光を残すように駆け抜ける。
彼女の姿はアルビノであるがゆえに自然界においては淘汰される色であったが、此度の洗浄においては彼女の姿はオブリビオンの軍勢に攻め立てられる『京の都』の陰陽師たちにとっては、ありがたい援軍の報せであった。
「ありがたい……! 『天下自在符』を持つ猟兵……! その助力が得られるとは!」
相対するオブリビオンの大軍勢『編笠衆』たちはすでに結界に取り付いて、その結界を破壊しようとしている。
そこへ駆け込むようにして雪音が振りまかれた呪殺の符をかい潜っていく。
「貴方自身に対しての怒りを抱く程には私は貴方を存じませんが……その力を以て『今』を害すとあらば、化生に近きこの身なれど、御身の前に立ちましょう」
相対するは大軍勢。
しかして雪音は一人……否。
彼女の背後には結界を守らんとする陰陽師たちがいる。彼等に表情の機微すら乏しい彼女の赤い瞳がうなずく。
彼等と連携しなければならない。
けれど、言葉で伝えるには拙く、同時に時間も足りない。
「生憎私は超常の力を扱う適正は恵まれていない身です。皆様は術式にて私が肉薄し、拳を届かせる隙を作っていただければ……」
刹那でも良いのだ。
たったそれだけで雪音にとっては十分な時間である。
「何も動かない。その白き姿を見ても、何も思い浮かばない。心は凪いだまま……そして、私の前に立つ猟兵もまた私に対する怒りを抱かぬとなれば、なんとも無意味な戦い……」
だからといって『超・魔軍転生』によって憑装された安倍晴明が猟兵にたいして無抵抗かと言えばそういうわけではない。
オブリビオンと猟兵。
対峙すれば滅ぼし合う関係であればこそ、もはや雪音と安倍晴明の間には言葉は不要であった。
「……弱きヒトが至りし闘争の極地こそ、我が戦の粋なれば」
その赤き瞳がユーベルコードに輝く。
拳武(ヒトナルイクサ)の頂に至ろうとする鋭き拳の一撃。その一撃の前にはオブリビオンと言えど霧散する他無い。
問題はどう当てるかである。
彼女の行動を制限するようにばらまかれる呪殺符。それは彼女の動体視力を持ってしても全てを躱すには難しいものであったが、今の彼女は一人で戦うものではない。
陰陽師たちの結界が呪殺符の動きをスローモーションのようにゆっくりと鈍らせていく。
当たらない。
その呪殺付のどれにもあたってはならない。
残像生み出すほどの高速で敵の合間をすり抜けていく。すり抜けざまに放たれる拳足の鋭き一撃が、編笠衆たちの体を穿ち、その肉体を再び骸の海へと還していく。
「――我が武を以て、その呪を喰らいましょう」
その五体全てを以てして放たれる一撃は、一撃に非ず。一瞬の交錯の間に放たれる二撃によって事をなす必殺の拳であれば、胴を貫き、蹴撃の一撃は薙ぎ払う。
時には投げをも駆使して戦う姿は獅子奮迅なる働きであり、彼女の白き姿はその拳足を以て、サムライエンパアに彼女の武を知らしめるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
京の同胞の方々、此度はよろしくお願いします。敵軍勢の足を止めていただければ何とか致しますので、結界の維持どうぞよしなに。
さて、行くわよ、アヤメ。
安倍晴明と術比べ。腕が鳴るわ。
あたしが「全力魔法」「高速詠唱」「破魔」の不動金縛りで動きを封じて、アヤメが苦無か何かでとどめを刺していこう。
主体とでも言える個体がいれば、口上くらいは上げておきますか。
ご機嫌よう、安倍晴明様。村崎ゆかり、陰陽師。一手お相手仕る。いざ。
囲まれそうになったら、「衝撃波」を伴う薙刀で「なぎ払い」、血路を開いて間合いを取り直す。
呪縛術は「呪詛耐性」で振り払い、反撃に「除霊」の符を投げましょう。
主体を持った個体は討滅しておきたい。
同じ陰陽師であるからこそわかることもあるだろう。
目の前に展開され、数百年とかけて紡がれてきた結界の為す光景の意味を。村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)は同じ陰陽師の同胞であるからというだけでなく、『対オブリビオン戦闘』おける結界の構築をなしてきた先人に対してもまた畏敬の念を以て対する。
「京の同胞の方々、此度はよろしくお願いします。敵軍勢の足を止めていただければ何とか致しますので、結界の維持どうぞよしなに」
彼女の言葉に陰陽師たちは口々に感謝の言葉を告げる。
猟兵は徳川の治世においては『天下自在符』によって、その行動を確約されている。故に彼女の存在は在るだけで陰陽師たちにとっては百万の援軍を得たのと同義であった。
「此方は結界の維持で手一杯だ……! なんとか頼む!」
すでに結界は『超・魔軍転生』によって憑装された『安倍晴明』の力によってほどかれようとしている。
大量召喚によって複製された魂を纏う荒行。
それこそが『魔軍転生』であるが、クルセイダーの扱う『超・魔軍転生』はさらにそれを強化したものである。
「さて、行くわよ、アヤメ。安倍晴明と術くらべ。腕が鳴るわ」
召喚された式神のアヤメと戦場を走り抜ける。
結界を抜けては、憑装された編笠衆たちへと迫る。
「こんなにも猟兵が駆けつけている。だというのに私の心はさざなみも立てない……何処まで行っても平坦そのもの。生きる意味が見出だせない。どれだけの激情をぶつけられても、私の心は何も感じない」
どれだけの猟兵が現れようとも憑装された『安倍晴明』の魂には焦りもなければ心躍るというった動きもない。
ただ淡々と事をなす。
結界を破壊し、猟兵たちの燃える怒りを前にしても彼の心は動かないかもしれない。全てが徒労に終わるだけだとわかりきっているような、そんな情動を反映するようにかざした手がゆかりと、彼女とともに駆ける式神のアヤメに向けられる。
「ご機嫌よう、安倍晴明様。村崎ゆかり、陰陽師。一手お相手仕る。いざ」
放たれた呪詛がゆかりとアヤメを襲う。
それは四方八方から放たれ、彼女たちを握りつぶさんとする。
ゆかりの手にした薙刀が衝撃波を放ち、周囲に迫る呪詛を切り払う。さらにアヤメのはなったクナイが呪詛を撃ち落とし、彼女たちの前に血路を開くのだ。
「今です! この軍勢全てが『安倍晴明』! 『超・魔軍転生』の力は凄まじいですが」
「だからってやらないわけにもいかないでしょう――ノウマクサンマンダ バサラダンセン ダマカラシャダソワタヤ ウンタラタカンマン」
ゆかりの詠唱と共に陰陽師たちの結界が編笠衆たちに延び、その動きを止める。
すでに破壊されかけていたとしても『対オブリビオン戦闘』において独自に対処をしてきた彼等ならではのサポートにゆかりは感謝の一礼をする。
手にした霊符から放たれる不動金縛り法(フドウカナシバリホウ)――即ち不動明王の羂索が編笠衆たちの肉体を縛り上げる。
「見事な術……ですが、己の生命の危機も、個にして全であるがゆえに緩慢なもの……なんとも心躍らぬ……ここまで追い詰められても尚、私は……」
安倍晴明の嘆くような声が聞こえるが、それはゆかりの薙刀の一撃によって中断される。
どれだけ戦意が薄かろうが、相手はあの魔軍将である。
安倍晴明の高名は世界が違えどゆかりもまた知るところであろう。相対する安倍晴明の戦意のなさを差っ引いたとしても、油断はできない。
「全てが安倍晴明だというのなら、なるほど――」
「確かに生命の危機とは程遠いわね。あたしだってそう思うもの。だからこそ、生きている実感がないから、そうやって捨て鉢でいられるのね」
それはゆかりが夢見たような勝負ではなかったのかもしれない。
術を持ってしのぎを削る。
そんな戦いとは縁遠いものであるのは、この魔軍将『安倍晴明』がどれほどまでに全ての何者にも興味を抱かぬが故。
猟書家『大天使ロロサエル』とは真逆の存在。
だからこそ、ゆかりは彼等を全て討滅しなければならない。
その関心のない無意味な一撃こそが、連綿と紡いできた努力の結晶を徒に破壊しようとするのだから――。
成功
🔵🔵🔴
黒髪・名捨
●
超・魔軍転生ねぇ…。
無念とかいうつもりか…。
●
陰陽師ねぇ…
寧々…悪いが手伝ってやってくれ。
得意の『結界術』でな。
『浄化』の結界で動きを封じてくれ。
寧々「うむ。『神罰』も追加しよう。龍神(真偽不明)の『恐怖を与えよ』ぞ」
●
さて、オレはとりあえずできることするか。
つまり殴る。
錫杖の一撃を『オーラ防御』と『覇気』を纏った覇気で『武器受け』で受け止める。
痛いな。口の中切れたじゃねーか(『激痛耐性』で堪えつつ)
んじゃ、反撃だな。
長い髪の毛で編傘衆をまとめて足元を『なぎ払い』『体勢を崩す』
んじゃ、あばよ。
一撃必殺のパンチで腹をぶち抜いてトドメっと。
さて、他の奴も体勢を立て直す前に、連続でぶん殴って倒す。
魔軍将『安倍晴明』はエンパイアウォーにて猟兵たちによって倒されたオブリビオンである。
かのオブリビオンにとって全ては興味無きものである。
本来であればあるはずの生存のために必要なエナジーの補給や、あらゆる欲求が存在しない。
それは己の生に対して飽きていると言っても過言ではなかった。
「超・魔軍転生ねぇ……無念とかいうつもりか……」
黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)にとって黄泉がえりというのはつまりそういうことであった。
無念があるからこそ、現世に執着する。
己の欲望が見果てぬからこそ、『今』を食いつぶさんとオブリビオンと化したのではないかと。
だが、安倍晴明は違う。『超・魔軍転生』によって憑装されてもなお、その心は無いだままであった。
「無念。無念とはまた違った感情ではあるとは言えるでしょうが……ああ、なるほど。私が私自身の生に頓着していないのは、そういうことかもしれませんね。無念すらない」
憑装された編笠衆の持つ錫杖が揺れて、金属同士がこすれる音が響き渡る。
名捨と編笠衆が交錯する。
拳と錫杖が激突し、そのいち撃破錫杖をへし折って余って尚、編笠衆の顔面を叩き潰すには十分な威力であった。
「こ、これは……結界の出力が上がっている……?!」
陰陽師たちは破壊されようとしていた結界の維持に手一杯であった。
だが、あの黒き猟兵が現れてから、途端に結界の出力が上がり、目に見えて編笠衆たちの動きが鈍っていくのだ。
同時に名捨の拳はまさしく一撃必殺である。
「寧々はちゃんとやってくれてるようだな。得意な結界術、浄化の力が増しているんだな……流石は龍神」
「うむ。神罰も近しよう。龍神の恐怖を与えてくれようぞ」
本来はしゃべる蛙である『寧々』が姿を表し、彼女の力を以て結界の力を底上げしているのだ。
それに陰陽師たちが手助けしてくれるおかげで容易に強化された編笠衆たちオブリビオンを叩きのめすことができる。
「そう、オレがとりあえずできることを――つまり殴る」
それは単純明快であったが、こと策動することを得意とする安倍晴明を憑装した編笠衆たちにとっては効果覿面であった。
だが、数で勝る編笠衆にとって名捨は単一の戦力に過ぎない。
どれだけ力を衰えさせられようが、囲んでしまえばいいのだ。
「単純明快。ですが、それだけです。何も恐れない。心が波立たない……」
放つ錫杖の一撃は、それ自体が単純に重たい一撃である。
どれだけ名捨の体捌きが優れていようとも、受け止めていれば隙も生まれる。そこへ打ち込まれる一撃が名捨の頬を打ち、口内に血の味を広げさせる。
「痛いな。口の中切れたじゃねーか……んじゃ、反撃だな」
長い髪の毛の束を振り回し、自身へと群がる編笠衆たちの足元を薙ぎ払う。
それは絶命への一撃の布石である。
体制を崩し、地面へと伏す編笠衆を前に名捨が踏み込む。
「んじゃ、あばよ」
どうしようもない存在と成り果てた安倍晴明。
その大量召喚されし、複製の魂を一撃必殺の元に撃ち抜く名捨の拳が周囲の大地をも穿ち、ひび割り、凄まじき威力を刻み込む。
さらに他の編笠衆たちが体制整わぬ内に撃ち抜く拳が次々と彼等を霧散させ、骸の海へと還していくのだった――。
成功
🔵🔵🔴
フォルク・リア
「成程。聞きしに勝る見事な結界。
今まで都を護ってきたというのも頷ける。」
「そして其れを破ろうとしている術士。
卓越した手腕ではあるだろうが
只々壊すだけのものからは何も学ぶ事はないか。」
陰陽師に
「俺が攻撃して敵の術を乱す。
その間に結界の綻びを修復してくれ。」
そうすれば攻撃の糸口も掴める筈。
死々散霊滅符を発動し符を地表近くに水平展開し敵を攻撃。
同時に呪装銃「カオスエンペラー」を用いた銃撃の雨を降らせる
【2回攻撃】。
二重の弾幕と結界で動きを制限、
何れかの攻撃に対応すれば他の攻撃が襲う体制を構築。
敵の呪詛に対しても弾幕による壁と結界による弱体化。
月光のローブ、【オーラ防御】、【呪詛耐性】
により防御する。
サムライエンパイアにおける『京の都』。
そこは何百年と陰陽師たちが連綿と紡いできた結界に覆われた街だ。対オブリビオン戦闘を前提とした結界であるが、それ故にこの街はオブリビオンの襲来を防いでいた。
しかし、サムライエンパイアに侵攻する猟書家『クルセイダー』の野望に興味をそそられた猟書家『大天使ロロサエル』が起動した『超・魔軍転生』によって大量召喚され魂を複製された嘗ての魔軍将『安倍晴明』を憑装したオブリビオンの大軍勢が迫っていた。
「もはやどうにもならないというのに。崩壊していく結界を前にしても、懸命に維持しようとしているのは最早問題の先送りにもならぬことであるはずなのに……ああ、そんな健気な彼等すらも私の心を波立たせることはない」
かの魔軍将は己の生命すらも飽きていた。
もはや感情らしい感情も湧き上がらない。無為に殺し、無意味に殺す。ただそれだけであった。
憑装したオブリビオン、編笠衆たちが進む。
放たれる呪詛が次々と結界を紐解いていくように破壊されていく。
「成程。聞きしに勝る見事な結界。今まで都を護ってきたというのも頷ける」
それはフードを目深に被ったフォルク・リア(黄泉への導・f05375)の言葉であった。
彼の瞳には『京の都』に紡がれた結界の精緻さが、どれほどの時間と人の叡智が積み重ねられて生み出されたものであるのかをしっかりと理解していた。
人一人では生み出せぬものであったけれど、それでも陰陽師たちは、誰かのためになるようにとこの結界を紡いできたのだ。
「そして其れを破ろうとしている術士。卓越した手腕であるだろうが、ただ壊すだけのものからは何も学ぶことはないか」
安倍晴明。
陰陽師として世界に名を知られる術者である。
フォルクにとって、ただ壊す者と成り果てた安倍晴明には何ら学ぶことはない。
だからこそ、今彼が学ぶべきと思うものは、この陰陽師たちである。
「俺が攻撃して敵の術を乱す。その間に結界の綻びを修復してくれ」
フォルクは結界の中で懸命に安倍晴明による結界の崩壊を食い止めようとしている陰陽師たちに声をかけ、駆け出す。
その手にあるのは数多の死霊を顕現させ放つ呪装銃。
「超・魔軍転生……死せる魔軍将の魂を複製大量召喚してオブリビオンを強化する荒行か……だが! 死より出でて死を招く、呪いを携えしもの。中空に散じ、我が敵を闇に葬れ」
フォルクのユーベルコードが輝く。
その手にあるのは呪符である。陰陽師である安倍晴明であれば、それがなんであるのか即座に看破したことだろう。
「呪符……それも思念で制御するものですか。なるほど。数には数。さらにはそれ自体が……」
瞬間、放たれた死々散霊滅符(シシサンレイメップ)が地表近くで水平展開され一斉に攻撃を開始される。
その呪符は言ってしまえば、超・魔軍転生によって強化されたオブリビオンに叶わうわけがない。
即座に錫杖によって打ちのめされて消滅してしまうが、消滅した瞬間爆散し、その爆炎を上げる。
「見抜いたところで防ぐ術はない。ただ徒に破壊するだけの者にはこれが似合いだ」
フォルクの呪装銃から放たれる死霊が次々と編笠衆の放つ呪詛とぶつかっては消滅していく。
だが、それだけで死々散霊滅符の爆散から放たれる爆風を躱すことなどできようはずもない。さらに爆風によって編笠衆の動きが鈍った瞬間に陰陽師たちによる結界が髪合わさって彼等の動きを止めていく。
「こちらの間隙を――……ここまでしてやられても、私の心は凪いでいる……どこまで言っても私はきっとこのままなのでしょう」
そんな風に嘆く安倍晴明の憑装された編笠衆の編笠ごとフォルクのはなった死霊の弾丸が内貫いていく。
「止まっている。停滞している。だからこそ破壊に寄る再生が必要なのはわかるが……それを為す本人が自身を蔑ろにしてはな。何もお前から学ぶことはない――」
すでに死霊の弾丸を防げなければ、死々散霊滅符が編笠衆を爆散させていく。どちらにしても陰陽師たちによって持ち直した結界の前にはオブリビオンと言えど、連綿と紡がれた数百年の力は振りほどくことはできない。
「だが、他人を傷つけ今を徒に貪るのならば容赦はしない」
フォルクはオブリビオンの大軍勢が再び、陰陽師たちの数百年の結晶によって打倒されていく姿を見遣り、さらなるオブリビオンを駆逐していくのであった――。
大成功
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臥龍岡・群青
陰陽師とやら、お前達の結界のお陰でわしらが間に合ったのだ
存分に胸を張れ
そしてその結界、存分に活用させてもらう!
安倍晴明とやらは哀れだな
世界はこんなにも面白いのに心は凪いだままだという
己が強いからつまらん?
わしは神だが充分に楽しいぞ
見習ってもいいのだぞ
相手は呪術使いか?
なるべく両掌を向けられないよう、相手の動きには注意しないといけないな
幸いなことに相手の動きは結界が阻めてくれている
動きは幾分か読みやすいはずだ
呪詛自体もわしの【祈り】で中和しよう
攻撃をかい潜りつつ、わしも術を使おうか
水船、あの変な編笠軍団を捕らえろ!
上手く敵を拘束出来たら一気に接近
爪や鰭で次々に敵を切り裂くぞ!思い切り【暴力】だ!
数百年前の誰かが決めたのだろう。
決意したのだろう。最初の一歩がどれだけ小さなものであったとしても、誰かのためになるようにと最初の一歩を踏み出したのだ。
それがサムライエンパイアにおける『京の都』を囲い込むようにして展開する『対オブリビオン戦闘』を想定した陰陽師たちが築き上げた結界。
その結界はこれまでの戦いにおいてもオブリビオンの進軍を阻んでいた。
だが、その連綿と紡がれてきた結界も今日、『超・魔軍転生』によって複製された魂を大量召喚した『安倍晴明』を憑装したオブリビオンの大軍勢によって破壊されようとしていた。
「虚しい。いや、虚しいという感情すらも最早あるのかも怪しいですが、それでも私はやりましょう。結界を破壊し、人々を虐殺しましょう。そうすることによって猟兵達の怒りが、激しい怒りが私の心を波立たせることを願って」
その無為なる思考はすでに己の生命すらも飽きている証拠である。
完全無欠の存在。
単一の存在がどれだけ退屈であるかを安倍晴明は知ってしまっていた。
「くそっ! こんな簡単に結界が破られるなんて――!」
陰陽師たちの決死の覚悟で呪術を編み上げるも、安倍晴明の持つ力の前では無力そのもの。
だが、それでも希望の光は在る。
「陰陽師とやら、お前たちの結界のお陰でわしらが間に合ったのだ。存分に胸を晴れ。そして、その結界、存分に活用させてもらう!」
綻びかけた結界からオブリビオンの大軍勢へと飛び込むのは、荒ぶる竜の神――臥龍岡・群青(狂瀾怒濤・f30803)であった。
彼女の言葉はどこか優しかった。
荒れ狂う海を思わせるような気性があれど、時には穏やかに包み込む凪いだような言葉を紡ぐ。
彼女はオブリビオンの軍勢、『超・魔軍転生』によって安倍晴明の魂を憑装された編笠衆たちと対峙する。
「安倍晴明とやらは哀れだな。世界はこんなにも面白いのに心は凪いだままだという。己が強いからつまらん?」
群青は安倍晴明の懊悩を尽く一笑に付す。
意味のない言葉だと蹴り飛ばすように彼女は駆け出す。
「わしは神だが充分に楽しいぞ。見習ってもいいのだぞ」
編笠衆たちから放たれる呪詛。
それは両手から放たれ、彼女の体を掴みあげんとするユーベルコードであった。『超・魔軍転生』によって強化された力は、捕まえられれば万力の如き力で締め付けられてしまうだろう。
だが、群青はからからと笑う。
「幸いなことに貴様たちの動きは結界が、人が積み上げてきた結界によって幅編まれる! その動き、読みやすい!」
彼女の言葉は力だ。
そのまま祈りの力となって対峙する編笠衆たちの動きを陰陽師たちの放つ結界の力も合わさって鈍らせる。
「その積み上げたものをも一瞬にして壊すのも、また人ですよ。あまりにも無意味ではありませんか」
安倍晴明の魂が言う。
その言葉は真理であったのかも知れない。積み上げても、築いても、人は壊す。だが、破壊を為すのが人であるのならば、再生するのもまた人である。
「だからこそ、人は可能性に満ちている。水船、あの変な編笠集団を捕らえろ!」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
それは虚空より現れし、水船(ミズブネ)。
シャボン玉のような薄い膜をしたユーベルコードの輝きが、編笠衆たちの体を捉えて離さない。
どれだけ薄い膜であったとしても、そのユーベルコードの強度を編笠衆たちは打ち破れない。
「これでわしの物だな! ここからがわしの間合いだ!」
一気に距離を詰め、飛びかかりざまに放たれる爪が編笠衆達を切り裂き、ダメ押しのように鰭が強かに打ち据え、大地に叩きつける。
霧散して骸の海へと還っていく編笠衆たちを見送り、群青は手元に誘われるようにして浮かぶシャボン玉――水船を指先で弄び、息を吹き付ける。
「斯様にふんわりとどこへでも飛んでいけばいいものを。それだけでも充分楽しいであろう。世界を移す虹の輝きは――」
大成功
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大町・詩乃
この場の晴明はダメダメですね。
私の世界ではまともでしたが・・・。
暇潰しで人々の命を踏み躙るのは許しません!
UCの飛行能力で結界が破られそうな場所に素早く到着。
「お勤めご苦労様です。私が相手を押し返しますので、援護お願い致します。」と、陰陽師の方々と協力。
相手は多いので、結界術・破魔・浄化で詩乃の周囲に対呪詛結界形成。
更にオーラ防御を纏った天耀鏡で盾受けできる態勢を整えた上で、煌月を振るって切り込みます!
相手の攻撃は第六感と見切りで読んで、躱すか盾受け。
お返しに、多重詠唱による炎と光の属性攻撃&神罰を籠めた煌月による、なぎ払い・衝撃波・貫通攻撃・範囲攻撃で、纏めて斬って焼いて浄化して滅ぼします!
世界は一つではないということを一体どれだけの者が理解していることだろうか。
世界を渡る者。
それは世界の悲鳴に答え、世界に選ばれた戦士である猟兵であるのならば識る。世界はたった一つではないのだと。
数多ある世界の中、その中の一つサムライエンパイア、日本とよく似た世界にオブリビオンの軍勢が迫る。
数百年と紡がれてきた陰陽師たちの努力の結晶である『対オブリビオン戦闘』を想定した結界を破壊せんと『超・魔軍転生』によって憑装された安倍晴明が言う。
「何もかもが壊れてしまうのであれば無意味でありましょう。どれだけの時間を、人力を費やしたとしても破壊されてしまえば一瞬。人々の生命など明滅するが如く儚く消えてしまうものであれば、それを守る意味とは一体何なのでしょう」
それは自己完結できる存在になり得たからこそ得られた言葉であったことだろう。
だが、大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)は神なる身であったとしても、それを無意味であるとは思わない。
「この場の晴明はダメダメですね。私の世界ではまともでしたが……暇つぶしで人々の生命を踏み躙るのは許しません――世の為、人の為、これより祓い清め致します!」
神力発現(シンリョクハツゲン)の光はユーベルコードの輝きとなってオブリビオンの大軍勢が迫る『京の都』に住まう人々の頭上に降り注ぐ。
それは希望の光であったことだろう。
「お勤めご苦労さまです。私が相手を押し返しますので、援護お願いいたします」
詩乃は空を舞い飛びながら陰陽師たちに語りかける。
その神々しき光とともに降臨した詩乃の姿に陰陽師たちは平伏するだろう。例え『天下自在符』がなかったとしても、きっと彼等は神力溢れる詩乃の姿に頭を垂れた。
それほどまでに彼女の姿は圧倒的な存在であった。
「対呪詛結界形成! 天耀鏡!」
彼女の周囲に飛ぶ神鏡が盾のように浮かび、彼女に飛ぶ呪詛を尽く消滅させていく。
神力溢れるオリハルコンの薙刀を構え、詩乃は飛ぶ。
彼女の心にあるのは、護るべき人々の姿であった。人の力によって紡がれ、築かれてきた結界。
それが如何様な思いの産物であるのかを彼女は識る。
誰かのために。
いつかの誰かのためになるようにと紡がれてきた結界。それを己の生命すらも飽きた者に徒に破壊されるわけにはいかないのだ。
「その所業は悪逆無道! ならばこそ討たせていただきます!」
輝く薙刀の刃が月光のように放たれ、振るった斬撃が『超・魔軍転生』によって憑装された安倍晴明と編笠衆たちの体を切り払う。
斬撃の一撃はまさしく月光。
霧散し消えていくオブリビオンたちを尻目に詩乃は戦場を駆ける。
これだけの数である。本来であれば数で圧死してしまうほどの敵。さらには『超・魔軍転生』によって憑装された魔軍将の力は絶大である。
だが、結界の力がオブリビオンたちの動きを鈍らせている。
「どれだけあなたが呪詛を放とうとも、この結界が在る限り、通用するとは思わぬことです」
「触れれば解けるような結界であるというのに、それでもなお編み直しますか……ああ、これほどの抵抗すらも私の心を刺激しない。なんとも」
なんとも物悲しいものである。
心が浮き立つことも沈むこともない存在。その憂いを帯びた言葉ですらも他人のために吐くものではないのだ
「ならば疾く祓います。その自身にも他人にも興味を抱けぬ魂を!」
一気に駆け込む詩乃の薙刀が強く輝き、神力を発し、衝撃波と共に邪なる者の魂を焼いて浄化し滅ぼすのだ。
それは霧散し、骸の海へと還す一撃。
どれだけの大軍勢であろうとも、誰かを護るために戦う者にこそ宿る輝きがある。
その輝きの前に亡者とも言うべき者の力の一端さえも届かせぬ。
詩乃の輝きはより一層眩く『京の都』を照らし出すのであった――。
大成功
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ステラ・リデル
安倍晴明ですが。なかなか悪趣味な方のようですね。
いえ、特に興味はありません。すぐにお別れすることですしね。
(無関心に近い。敵だから倒す。それだけ)
陰陽師の皆さんには一瞬、敵の動きを鈍らせてもらうことを望みます。
(一瞬でも刹那でも敵より早くUCを発動できればそれで十分)
それではさようなら
『破剣乱舞』を発動。周囲の編笠衆を輝く魔力の剣で消滅させます。
ありがとうございます。大天使を名乗るオブリビオンを倒すまで、もう少しの協力をお願いしますね。
『江戸幕府の転覆』。それこそが猟書家『クルセイダー』の目論見である。
その一つとして今まさに数百年掛けて紡いできた結界に守られた『京の都』がオブリビオンの大軍勢によって蹂躙されようとしていた。
しかし、陰陽師たちが紡いできた結界は堅牢堅固。
それもそのはずである。『対オブリビオン戦闘』を想定して築き上げてきた結界が並のオブリビオンが突破できるわけもない。
そう、並のオブリビオンであれば、だ。
だが、猟書家『大天使ロロサエル』が率いるオブリビオンの大軍勢は違う。
彼等に憑装した魔軍将は安倍晴明である。それも『超・魔軍転生』によって強化され、複製された魂を大量召喚したした安倍晴明は編笠衆と呼ばれるオブリビオンに憑依している。
いわば魔軍将そのものの大軍勢によって結界は瓦解しようとしていた。
「なんでこんなに簡単に此方の術式が解明されるのだ……! 編み直した端からほどかれていく……!」
陰陽師たちも抵抗するように結界のほころびを持ち直そうとするが、その端からほどかれていくのだ。
それは安倍晴明の力そのものであった。
「悲しくも、怒りも、何も湧き上がらない。どれだけ連綿と紡がれてきたものでも壊れる時は一瞬」
安倍晴明は平坦な言葉のままに告げる。どうしようもないほどに彼は己に飽きていたのだ。
「安倍晴明ですか。なかなか悪趣味な方のようですね。いえ、特に興味はありません。すぐにお別れすることですしね」
その声は安倍晴明と同じく平坦なものであった。
相対するオブリビオンに対する興味などないというようにステラ・リデル(ウルブス・ノウムの管理者・f13273)は青い髪を翻してサムライエンパイアに降り立つ。
敵であるから倒すだけ。
それが今の彼女を動かす理念であった。それ以外の何者も介在することはない。猟兵とオブリビオンとは得てしてそういう間柄である。
相対するからこそ滅ぼす。それだけなのだ。
「陰陽師の皆さんには敵の動きを鈍らせていただければ……一瞬でも、刹那でも構いません。敵よりも早く私が動ければいいのです」
それは一瞬であった。
結界の力によって安倍晴明を憑装された編笠衆たちの動きが鈍る。
ほんの数瞬にしか満たない時間。だが、ステラにとってはそれで充分だった。
「終末に降り注ぐ、第二の騎士の刃、その身で受けなさい」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
天を仰ぎ見れば識ることだろう。その頭上に生み出された魔力の剣の群れを。その天より降り注ぎし数百の斬撃の雨が編笠衆たちを穿つ。
複雑な幾何学模様を描き飛翔する剣を躱すことなどできようはずもない。
「連綿と紡がれてきた結界の力。確かに壊すは一瞬。けれど、その紡いできたものが無意味であるわけがない。それを理解しない者に明日はない」
オブリビオンであるからこそ、未来を、今を食いつぶす。
そんな者たちにとって過去から紡がれてきた物を尊いと思うことはなかったことだろう。
そこにステラの興味はなかった。
どのみち滅ぼさなければならない存在である。相互理解などどうあがいても不可能であった。
己にも飽きた者。それは哀れの一言で片付けられる者でしかないのだ
「それではさようなら」
降り注ぐ魔力の剣の煌きが彼女の背後で大地を穿つほどに放たれ、編笠衆たちを尽く霧散し骸の海へと還していく。
「ありがとうございます。大天使を名乗るオブリビオンを倒すまで、もう少しの協力をお願いしますね」
微笑むでもなくステラは陰陽師たちに告げる。
結界の維持はもとより、これより現れるであろう猟書家『大天使ロロサエル』との戦いに置いても結界の力は戦いの要となるであろうからだ。
そう、壊れるのは、失われるのは一瞬であるからこそ、人々は己の力を賭して誰かのために戦うのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、世に潜み…今回潜む必要なくないですか?(首傾げ
陰陽師もクノイチも雰囲気的には一緒のグループですから!
助太刀します!
まずは結界術の補助から
敵が編んだものを解くの言うのなら、こちらは織ってしまいましょう
縦の糸が陰陽術なら
横の糸は【VR忍術】です!
「触れるとビリビリするオーラの糸の術!」
漆黒竜ノ牙の矢じり×2にこれの両端を結び付けて
木と木の間とか通路とかに罠のように設置!
害獣避けにはこれが一番です♪
なんか晴明さんは雰囲気が土属性っぽいので
【VR忍術】はりせんぼんの術で
近寄ってくる編笠衆からハリネズミにしていきまーす!
忍術に不可能はないのです♪
※アドリブ連携OK
『京の都』を護る結界はオブリビオンの大軍勢に憑装された魔軍将安倍晴明の力によって綻びを見せていた。
陰陽師たちが数百年に渡って維持してきた結界であったが、その力は安倍晴明の持つ力の前では無意味であった。
即座に解析され編み上げられた力の源はほどかれるようにして破壊されていく。
「こ、こんなことが……! 結界がほどかれている……!? 複雑怪奇な術式のはずだぞ!」
陰陽師達の悲鳴が上がる。
自分たちもまた結界の術式を完全に理解しているわけではないのだ。容易にほどかれぬようにと幾重にも紡がれてきた術式である。
だというのに、目の前のオブリビオンたちは次々とこともなげに解いていくのだ。
「これを複雑怪奇と言える頭をしているのが羨ましい。そんな頭であればどんなに心が浮き沈みすることでしょう」
安倍晴明が平坦な声で言う。
己の生命すらも飽きた者の言葉である。自己完結してしまえる存在。そこに至って漸く、己の心がないでいることに気がついたのだろう。
「このままでは……!」
「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、世に潜み……今回潜む必要なくないですか?」
小首をかしげながら戦場となった『京の都』に舞い降りたのはサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)であった。
彼女はクノイチ。
本来であれば忍んでこそであるが、今回に限って言えば偲ぶ必要など無いのだ。彼女の理論でいくとそうなのである。
「陰陽師もクノイチも雰囲気的には一緒のグループですから! 助太刀します!」
当の陰陽師たちからすれば、ええ!? となることであろうが今は非常時である。そんな些細なことにかまってはいられない。
援軍ともなれば彼等も心強いのだ。
「まずは結界の補助から! 敵が編んだものを解くと言うのなら、こちらは織ってしまいましょう! 縦の糸が陰陽術なら、横の糸は――」
VR忍術(イメージスルノハカッコイイワタシ)である。
専用メモリをコンソールにインストールし、彼女が微笑む。ユーベルコードの輝きは、彼女のもつコンソールから放たれる。
専用メモリに記された術の名は。
「触れるとビリビリするオーラの糸の術!」
発言するオーラの糸。そこに結ばれたのは漆黒の竜のような光沢を持つクナイを投げ放ち、ブービートラップのようにオブリビオンの軍勢が迫る眼前に設置する。
「害獣よけにはこれが一番です♪ なんか清明さんは雰囲気が土属性っぽいので、さらに!」
専用メモリを手で弄び、くるりと一回転させてからコンソールに叩き込む。
VR忍術とはその名の通りバーチャル忍術である。
サージェの持つメモリからインストールされた忍術はユーベルコードによって現界し、彼女の思うままに振る舞うことを可能としている。
「はりせんぼんの術!」
サージェに迫る編笠衆たちの振るう錫杖の一撃を素早く身を翻して躱し、放たれる針が次々と穿っていく。
ハリネズミの様相になった編笠衆たちが結界に捕らわれ次々と霧散し消えていく。
骸の海へと還っていくほかない運命であったとしても、彼等はすでに終わってしまった者たちである。
今を生きる者たちの妨げとなるのであれば、それを振り払うのがクノイチの主命であろう。
「――忍術に不可能はないのです♪」
くるりと一回転してサージェは陰陽術たちに勝利のVサインを送るのであった――!
大成功
🔵🔵🔵
愛久山・清綱
安倍晴明、確かエンパイアの者ではなかったのだよな。
うちの故郷にもあるチェーンソー剣を持ってきて……
マジで一体何者だったのだろうな?
■令
俺が前に立つ故、陰陽師の皆は結界で敵の攻撃を阻害してほしい。
特に『戦法にいる敵』に注意だ。
■闘
その場から動かず、【山蛛・縛】の構え。
一撃目は【早業】の抜刀から【マヒ攻撃】を絡めた空間斬撃を
放ち、周囲の敵の動きを止める。
そこからすっと納刀し、【破魔】の力を込めた無数の刃による
【範囲攻撃】を仕掛け一斉撃破だ。
万一撃ち漏らし等で陰陽師が狙われたら【武器受け】の構えを
取りつつ割って入り、【怪力】を込めて押し返す。
その際は一歩下がるように伝えるぞ。
※アドリブ歓迎・不採用可
「安倍晴明、確かエンパイアの者ではなかったのだよな」
愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)は猛禽の翼を広げ、眼下に広がる『大天使ロロサエル』のオブリビオンの大軍勢の軍容を見やる。
そこにあったのは『超・魔軍転生』によって憑装された安倍晴明の姿があった。オブリビオンである編笠衆たちは全てが魔軍将の力によって強化された存在である。
そんな存在であれば『京の都』を守護する結界を解くことなど造作もなかった。かつてサムライエンパイアにおいて勃発したエンパイアウォーに現れた魔軍将である安倍晴明は彼の知るところの安倍晴明とは違っていたようだった。
「うちの故郷にあるチェーンソー剣を持ってきて……マジで一体何者だったのだろうな?」
世界が数多存在しているとは言え、清綱の故郷であるキマイラフューチャーのものを持つサムライエンパイアに在る者は不可思議な存在であったと言わざるを得ない。
しかし、それも今や魔軍将として打ち倒されている。
それを蘇らせ憑装させる『超・魔軍転生』の力は危険極まりないものである。
「『天下自在符』を持つ者たちが協力してくれる……! 押し返せるのか……! 本当に」
陰陽師たちが必至にほどかれようとしている結界を維持している傍へ清綱は降り立つ。
その姿はまさに天狗か何かと思われたことだろう。だが、清綱は気にした様子もなく陰陽師たちに手助けを求めるのだ。
「俺が前に立つ故、陰陽師の皆は結界で敵の攻撃を阻害してほしい。特に『前方にいる敵』に注意だ」
そう言って清綱は陰陽師たちを護るようにオブリビオンの大軍勢と相対する。
駆け抜けるのではなく、山のように座すようにその場から動かない。初撃は神速の抜刀からの空間斬撃。
しかし、その一撃は編笠衆たちの動きを僅かに止めたに過ぎなかった。『超・魔軍転生』によって強化されている編笠衆たちにとって、その程度の一撃では倒れることはないのだろう。
それでも清綱の剣技に動揺はなかった。
残心を残すようにと納刀した瞬間、現れる霊魂を断つ斬撃の嵐が放たれる。
「捕らわれたが、最期……秘儀・山蛛」
山蛛・縛(ヤマグモ)――それこそが清綱の斬撃の正体である。初撃は即ち確実に敵に当てるための初動でしかない。
本命は納刀した瞬間に現れる斬撃の嵐。
それらは陰陽師たちの放つ結界の力と相まって回避不能なる斬撃となっって編笠衆たちを尽く切り捨てていく。
「これ以上前には行かせぬよ」
それでも突破しようとする編笠衆たちを怪力で押し返し、戦場剣技にて打ち払う。
結界を維持するために陰陽師たちもまたこの場を動けない。誰か一人でも恐怖に負けてしまえば、たちまちに結界は失せてしまうだろう。
だが、それでも彼等は一歩も退かない。
己の持ち場を離れない。それは誰かのために、これ以上何かを失わせぬために戦う者の覚悟を清綱は見ただろう。
だからこそ、一歩下がるように伝えてもそれが無意味であると知る。
「ならば、俺は盾と剣となろう」
振るった刃が一条の線を大地に穿つ。
これより先には一歩足りとて進ませぬと清綱の刃が吠えるように鳴り響く。
放たれた斬撃の嵐は、押し寄せるオブリビオンの大軍勢を押し留め、決して彼の背後へと届かせることはなかったのであった――。
大成功
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本・三六
アドリブ歓迎
これがサムライの国。古の都か。威風がある。いつか見回りたいね
陰陽師の方々、歴史が成せるその技、今お貸し願いたい。
あれに宿るも陰陽師……遠い貴方達の先輩になるのかな?
あの数と強さ、ボク一人じゃどうにも出来そうにない。どうか、よろしく頼むよ。
深々と礼をして願う
『道敷』をかじり【ドーピング・呪詛耐性】を
大量の符か、陰陽師の結界に頼りつつも前進
『ヒーローズマント』で残りを【受け流し、
布の動きで注意を奪って時間稼ぎ】だ。
味方に注意を払い敵のみ狙いUC発動
『鉄芥』を振るい【鎧砕き】を狙うよ
晴明、死してなおとんでもない術師なんだろう
だが彼らは長い時をかけ、技を研鑽してきた
負ける道理もないだろう?
サムライエンパイアは呪術文明と共に在る世界である。
日本に類似するような島国であるし、そこに成り立つ文化もまた似たものがあるのだろう。それ故に別の世界の日本を知る者にとっては、サムライエンパイアは違う世界であったとしても、どこか親近感を覚える世界でもあったのかもしれない。
「これがサムライの国。古の都か。威風がある。いつか見回りたいね……」
本・三六(ぐーたらオーナー・f26725)はどこかのんびりしたような口調で『京の都』を見回す。
数百年と紡がれてきた結界によってオブリビオンを寄せ付けぬ都であったが、猟書家『クルセイダー』の配下である猟書家『大天使ロロサエル』の率いるオブリビオンの大軍勢の前には意味をなしていなかった。
そう、『超・魔軍転生』によって魔軍将であった嘗ての安倍晴明の魂を複製し大量召喚して憑装させる荒行によってオブリビオンたちは全てが安倍晴明と同化しており、彼等の戦闘力は凄まじいものと化しているのだ。
「どれだけ抵抗したとしても結末が変わらぬのであれば、この抵抗は無意味。時間が無為に流れるだけの意味無きもの。だというのに未だ諦めぬとは」
安倍晴明は己の生命にすら飽きた者たちである。
そんな者たちにとって他者の生命とは暇つぶしの玩具以下であった。
「陰陽師の方々、歴史がなせるその技、今お貸し願いたい。あれに宿るも陰陽師……遠い貴方達の先輩になるのかな?」
三六はオブリビオンの大軍勢を見遣り、陰陽師たちに告げる。
彼等は結界の維持で手一杯なのだろう。だが、それでもやり遂げなければならない。三六は猟兵であるが、あれほどの数と強さを自身一人でどうにかできるとは思っていなかった。
だからこそ助力を乞う。
どうすればいいのかをわかっている。誰だって一人では戦えない。どれだけ強かろうが、どれだけ強大な存在であろうが、自己完結する者が己の生命に飽きるように誰一人として一人では自己を肯定できないのだ。
「どうか、よろしく頼むよ」
三六は深々と礼をして願う。
それに応えるように陰陽師たちが結界の力を行使する。言葉は少なかったけれど、彼等は彼等のやるべきことをわかっている。ならば、三六の為すべきことは一つだ。
「なら行こうか――!」
己の力を高める魔法の果実をかじる。
その実が齎す力は強大である。どれだけ相手が凄まじき相手であったとしても退くことは許されない。
己の背に追うのは『京の都』に住まう人々の生命である。だからこそ、戦わねばならないのだ。
陰陽師たちの放つ結界の力に守れられながら三六がオブリビオンの大軍勢へと突っ込む。
どれだけ錫杖の重たい一撃が放たれようとも関係ない。
「清明、死してなおとんでもない術士なんだろう。だが、彼等は長い時をかけ、技を研鑽してきた」
「それに何の意味が? 現にこうしてほどかれている。どれほどの研鑽を重ねようとも、失われる時は一瞬です」
だからこそ意味がないのだというように憑装された安倍晴明たちが口々に言う。
だが、それでも三六は構わなかった。
例え一瞬で失われるものであったとしても、その積み重ねが最大の一瞬を生み出すことだって在るのだ。
現に今もそうだ。
どれだけ一瞬で壊される結界であっても今も三六の体を護ってくれている。黄金のオーラのさらにその上から重ねられた結界の力が、どれだけ錫杖で打ち据えられようとも三六の体にまで到達することはない。
「たしかにそうかも知れない。だが、だからと言って――負ける道理もないだろう?」
人は殺されてしまうかもしれない。
だが、決して敗けない。それを三六は知っている。凄まじき才能の前に凡人は死せるかもしれない。だとしても、そこに敗けるという要素はないのだ。
例え今この瞬間を上回ろうとも、己の生きる力が在る限り、懸命に戦うからこそ、人は尊いのだ。
「だからお前たちも一瞬だ。この一撃で尽く骸の海へと還るといい――!」
放たれた黄金のオーラ纏う拳の一撃が、オブリビオンの大軍勢を海を割るように吹き飛ばす。
その一撃はこれまで紡がれてきた陰陽師たちの研鑽を讃えるように凄まじい勢いで持って迸るのであった――!
大成功
🔵🔵🔵
アルトリウス・セレスタイト
飽きないものだな。滲み出る残骸は
戦況は『天光』で常時把握
自身への攻撃は『絶理』『刻真』で触れた瞬間終わらせ影響を回避
必要魔力は『超克』で“世界の外”から供給
天楼で捕獲
対象は戦域のオブリビオン及びその全行動
原理を編み「迷宮に囚われた」概念で縛る論理の牢獄に閉じ込める
高速詠唱を幾重にも重ね『刻真』『再帰』で無限に加速・循環
現着次第即展開し数の利を奪う
気付かずとも既に虜囚
見えず触れ得ぬ迷宮を解かねば迷宮外へは何も出来んぞ
破壊したくば自壊するそれで足掻くのも良かろう
外から内へは何も制約はなく羅刹達も自由
理不尽はいつも唐突なものだ
出口は自身に設定
万一辿り着くなら『討滅』を乗せ打撃で始末
※アドリブ歓迎
「飽きないものだな。にじみ出る残骸は」
それはアルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)の言葉であり、己の生命に飽きた魔軍将である安倍晴明と同じものであったのかもしれない。
自己完結できるがゆえに発展もなければ衰退もない。
他者を必要としない生き方しかできなかった安倍晴明にとって、人の生命を弄ぶのはただの暇つぶしでしかなかった。
その暇つぶしという名の虐殺によって買う猟兵の怒りがどれほど己の凪いだ心を動かすのかさえも、ただの暇つぶしでしかなかったのだ。
だからこそ滅んだとも言えるのだろうが、それでも安倍晴明は再び猟書家『クルセイダー』の持つ『超・魔軍転生』によって『大天使ロロサエル』の大軍勢、編笠衆に憑装されて『京の都』の結界を打ち破らんとしていた。
「このようなことに意味があるとは思えない。ですが、この行いが猟兵達の怒りを買うのであれば、滅びるまでの時間を遊戯程度にはしてくれるかもしれない」
徒に破壊し、徒に殺す。
それが過去の化身にして魔軍将であった安倍晴明の本質であったのかもしれない。
戦況をすでに把握してたアルトリウスにとってオブリビオンの大軍勢は錚々たる軍容であった。
全てが安倍晴明の複製された魂を大量召喚されたものたちであり、その強化は『超・魔軍転生』のちからの凄まじさを物語っていたかも知れない。
「だが、無意味だ。気づかれずとも既に虜囚。見えず触れ得ぬ迷宮を解かねば迷宮外へは何もできんぞ」
ユーベルコードが淡青の光を放ち、天楼(テンロウ)の迷路へとオブリビオンたちを叩き落とす。
それは任意存在のみ捉え存在を消去する自壊の原理によって生み出されたものであり、原理によって編まれた迷宮に捕らわれたという概念によって論理の牢獄に閉じ込めるのである。
高速詠唱を幾重にも重ね、無限に加速循環する力がアルトリウスの領域に踏み込んだオブリビオンたちを次々に捉えていく。
「破壊したくば自戒するそれであがくのも良かろう。外から内へは何も誓約なく。理不尽はいつも唐突なものだ」
捕らわれたオブリビオンたちは何をするでもなく自壊して霧散していく。
大量に複製召喚されたとは言え、安倍晴明の本質が変わることはない。
強力に強化された力を持っていたとしても、所詮は自己完結した存在である。己の生命すら飽きた者が迷宮に囚われて脱出しようなどと思うことはなかった。
「脱出など無意味。いつかは消えるものであるのならば、このまま消えてしまったとしても構わないでしょう。ああ、なんとも退屈な……いえ、退屈とさえ感じない。飽きている。エナジーも繁殖も必要としない。山も谷もない。そんな生命には、あがくことすら意味を見出だせない」
安倍晴明の言葉は迷宮の中に解けて消えていく。
抵抗されると思っていたかも知れない。
それさえも無意味と化す自壊の原理の迷宮であったが、それでも今までの殆どのオブリビオンは足掻き続けていた。
だからこそ、安倍晴明の在り方はあまりにも無為であったのかもしれない。その意味さえも見出だせぬままに、次々と消えていくオブリビオンたち。
骸の海へと還り、再び滲み出す。
それは時間が過去へと押し出され、未来へと進む限り終わることのない現象でしかなかったのかもしれない。
だとしても、無限に続き、加速していく時間の中でアルトリウスは生きていく他ないのだ。
骸の海よろ這い出す過去の化身が現れ続ける限り、戦いは終わりなどないのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『大天使ロロサエル』
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POW : 月閃乱撃
【日本刀による隙無き連撃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 月呪審判
【三日月の如き刃】【朧月の如き羽】【月蝕の如き呪言】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : 月焔邪視
【魔眼や呪言】を向けた対象に、【精神や身体の内側から蝕む焔】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:秋城結花
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠筧・清史郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
天使の翼を広げ、戦場に舞い降りる姿があった。
猟書家『大天使ロロサエル』。
その姿は光輝放つ姿であり、大天使の名に恥じぬ美麗なる姿であったことだろう。彼の瞳は慈しみに溢れていたし、何よりもそれらを差し置いてでも眩く輝くのは好奇の瞳であった。
「あれほど大量に居た『超・魔軍転生』によって憑装されたオブリビオンたちをこうも葬り去るとは……興味を抱かずにはいられません。猟兵。真の姿も不定形なる者たち。世界に選ばれた戦士。世界が軋む悲鳴に応える者たち。なんとも興味をそそられます」
微笑む。
その微笑みは、どこまでいっても興味でしかなかった。
その生に意味を見出すわけでもなく、その死を惜しみ悼むわけでもなく。
ただただ、興味という一点だけにおいて『大天使ロロサエル』は行動していた。
本来の使命である『七大天使を探す』ということを差し置いてでも、彼は興味だけで動いていた。
そこに戦略もなければ戦術もない。
「知りたい。どの様な姿をしているのか。どの様な過去があるのか。知りたい。私は興味を抱かずにいられません。だからこそ戦いましょう。刃を交えることで理解させてください」
怖気を走らせる重圧。
それは相対する猟書家『大天使ロロサエル』が決定的に猟兵たちとは違う次元の存在であることを示していた。
どこまでいってもオブリビオンでしかない。
滅ぼさなければならない。
かの『大天使ロロサエル』は滅ぼすからこそ、興味を抱くのだ。興味を抱く以上滅ぼさなければならないというように、当たり前のように力を振るう。
「さあ、教えて下さい。私の興味を、好奇を満たす貴方達猟兵の過去を。私は知りたい。興味を抱く。知り尽くしたいのです」
日本刃を抜き払う。
今、ここに大天使としての力が顕現する。
猟兵達を襲うは、圧倒的な猟書家としての力――!
フォルク・リア
「現れたか。
同じ戦場に立てたのなら逃しはしない。
覚悟は良いか?」
生命を喰らう漆黒の息吹を発動。
攻撃を警戒し引き続き陰陽師に支援を頼み
花びらで姿を隠したり
【残像】を伴って攪乱。
隙を突き攻撃に移るが
月焔邪視を受けたら
「(膝をつき)くっ、これは。呪詛か?」
焔の熱を感じ。その性質を【見切り】
花びらを己の周囲に引き防御重視。
「お前の空っぽの興味の為に
京もこの国も、人々も犠牲にさせる訳にはいかない。
これが俺の覚悟だ。」
呪装銃「カオスエンペラー」抜き。
花びらを乗せた死霊を己に向けて放つと
体内の焔を花びらに喰らわせてダメージを受けつつ除去。
守る為の【覚悟】で精神の焔も耐え
花びらを纏ったまま接近し花びらで攻撃。
その好奇心は人をも殺す。
猟書家『大天使ロロサエル』は瞳に好奇の輝きを放ちなながら戦場へと舞い降りる。未だに戦場となった『京の都』は猟兵たちと陰陽師たちの活躍によって結界が維持されている。
『対オブリビオン戦闘』を想定した結界の力は、オブリビオンである以上、その力によって動きを鈍らせることができる。
だからこそ猟兵たちは『超・魔軍転生』によって憑装された安倍晴明という強大なオブリビオンの力を持つ編笠衆たちを打倒することができたのだ。
「教えてください。貴方の過去を。私は興味を抱かずにはいられないのです。そこのフードを目深に被った貴方の素顔を、何を思って何を為そうとしているのかを!」
『大天使ロロサエル』の前に立つ目深にフードを被った猟兵の一人――フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は圧倒的な興味という重圧を無得られながらもたじろぐことなく真正面から見据える。
「現れたか。同じ戦場に立てたのなら逃しはしない。覚悟はいいか?」
その言葉は『大天使ロロサエル』の興味を、好奇心を満たすものではなかった。それ以前にフォルクは『大天使ロロサエル』と問答をしようという気などなかった。
あの好奇心は己が魔術の研究などに向けるものとは別種のものだ。
暴き、かき立てる。
ただそれだけの好奇。それは人を殺す好奇心と言っても過言ではなかった。
「よく見ておけ。これが、お前の命を刈り取る手向けの花だ」
フォルクの周囲に舞うのは無数の花びら。
触れる者の生命を喰らう冥界の鳳仙花である生命を喰らう漆黒の息吹(イノチヲクラウシッコクノイブキ)とも言うべき花弁が舞い散る。
陰陽師たちの結界のバックアップが合っても尚、フォルクと『大天使ロロサエル』との力量差は埋まらないだろう。
だからこといって退く猟兵はどこにも存在していない。
「この花弁。そう、冥界に咲く鳳仙花! ああ、こんな場所で天上の者である私が冥界の花弁を見ようとは! 貴方は一体何を学んでいるのです? 何を目指しているのです? 教えて下さい!」
その好奇の瞳が輝く。
邪眼そのものと言って差し支えない強烈なる視線が呪詛となってフォルクの肉体の内側から、それ自体を蝕む焔が噴出する。
どれだけ残像を伴って撹乱し、花びらで己の身を隠したとしても、その邪眼が捉えるのはフォルクという猟兵の実像のみ。
「くっ、これは……呪詛か?」
膝をつくフォルク。
体の内側から噴出する焔が、フォルクの肉体を、精神を蝕んでいく。
痛みを寄りも先にやってくるのは、己の中にある熱を蝕む感触。
「ええ、呪詛ともいうのかもしれませんね。それは貴方の中にある太陽。月光は太陽の光を受けて眩く夜空に輝く。肉体と精神とはそういうものなのです」
『大天使ロロサエル』が笑う。
その身の内側から焼く焔の強烈さこそが、フォルクの身のうちに秘めた何某かが放つまばゆき輝きであると言うかのように。
「そうか……だからお前は空っぽなのだな」
フォルクはこの呪詛の性質を見抜く。
興味を抱くということは己にないものを持っているから。誰彼構わず興味を抱かずにはいられないというのならば、それは『大天使ロロサエル』が空虚であるからに他ならない。
「お前の空っぽの興味の為に京もこの国も、人々も犠牲にさせる訳にはいかない。これが俺の覚悟だ」
呪装銃を引き抜き、花びらを載せた死霊の弾丸を撃ち放つ。
その花弁が喰らうは己の身のうちから発する熱であり焔。それを喰らわせ、自身の中を蝕む炎を駆逐する。
「俺は護ると決めた。そう決めたのだ。だからこそ、俺は例え膝が折れたとしても、心までは折れぬ。故にこの弾丸こそが――!」
焔を巻き込みながら花弁が燃える。
燃えながら加速した死霊の弾丸が音速を超え、周囲の花弁を巻き込んで『大天使ロロサエル』の肩口へと穿たれ、次々とその体を鳳仙花の花びらが覆い尽くす。
「人の覚悟を好奇で覗くな。それは触れてはならぬものだ。触れればその覚悟に飲み込まれるのだから――」
大成功
🔵🔵🔵
黒髪・名捨
●
過去ねぇ…オレ自身が知りたいわッ!!
●
寧々は引き続き、陰陽師と協力して『浄化』の『結界術』を展開してくれ。
寧々「ふむ。見るがよい。これが愛の力じゃ。」
名捨「何故そこで愛ッ!?」
●
知りたいんだって?オレ達の事を…。
なら教えてやるよ。猟兵の流儀って奴をッ。
『オーラ防御』と覇気で『武器受け』しつつ、日本刀の連撃を『見切り』
『カウンター』で『盗み攻撃』で日本刀をいただく…と同時にスティンガーの『封印を解く』
いただきます。
悪喰発動、ロロサエルに噛付き、『捕食』する。
お前の味を教えてやる…まずい。
さて、悪喰流…月閃乱撃。
うん、自分の技を食らう経験を教えてやる。
寧々「どっちが悪かわからぬのぅ。素敵じゃ。」
冥界の鳳仙花の花弁が猟書家『大天使ロロサエル』の肉体に宿る生命力を吸い上げていく。
肩口に打ち込まれた弾丸の傷跡から溢れる生命力を尽く奪う花びらを天使の翼を広げて『大天使ロロサエル』は吹き飛ばす。
「これが猟兵――猟兵の覚悟。ああ、もっと知りたい。興味が湧き上がってくる。どうしても知りたいものです。なぜ覚悟するのか。如何なる過去がそうさせるのか!」
未だ『大天使ロロサエル』は健在であり、その重圧に些かの衰えも視られない。
「過去ねぇ……オレ自身が知りたいわッ!!」
黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)はしゃべる蛙『寧々』に陰陽師と協力して浄化の結界術を展開してもらいながら戦場を駆け抜ける。
すでに『超・魔軍転生』によって憑装された安倍晴明の魂を宿すオブリビオンの大軍勢は大幅に減らしていた。
だが、まだ戦いの趨勢は決まらない。
ここで猟書家『大天使ロロサエル』を打倒しなければ、『超・魔軍転生』は終わらず、徐々に猟兵たちはすり潰されてしまうであろうし、それより先に結界が破壊されてしまう。
「ほう、過去を知らぬ猟兵。過去無くとも己が存在しているという意義を見出しているのでしょうか。興味深い。過去の化身として、過去がたしかに存在しているのに過去を持たぬという者がいるのであれば、それが如何なる存在であるのか知りたいと願うのは道理でありましょう」
放たれる日本刀からの隙のない斬撃の嵐。
それは無数に放たれた斬撃であったが、一分の隙も見受けられぬほどに洗練された斬撃であった。
それを名捨はオーラの力と覇気でもって受け流すが、見切りきれない。
無数の斬撃に寄る断続的な攻撃。
名捨を近づかせないと同時に彼の間合いをも見切られていることを意味していた。
「知りたいんだって? オレ達の事を……なら教えてやるよ。猟兵の流儀って奴をッ」
放たれる斬撃は『大天使ロロサエル』の持つ日本刀を起点としている。ならば、それを奪わんと急接近する。
斬撃の嵐が名捨の体を切り裂き、血を噴出させる。
だがそれでも手をのばす。手を伸ばさねば得られないものがあることを彼は知っている。
「この斬撃の嵐の中でも来ますか。興味深い!」
伸ばした手が触れる。
日本刀。それを奪い取ろうとするが躱される。だが、同時に名捨のマスクがずり下がり、その開かれた口腔から現れしは謎の魔術装置。
名を『スティンガー』。
オブリビオンを喰らい、吸収する謎の器官。
「ぐっ―――!?」
その日本刀の柄を握る指を食いちぎり、その肉を捕食する。それはまさしく言う成れば、悪喰(アクジキ)そのもの。
手放した日本刀を奪い、名捨が構える。
「いただきます。ごっそうさんとは言わねぇよ……お前の味を教えてやる……まずい」
吐き捨てるようにして名捨が言い放つ。
「さて、悪喰流……月閃乱撃。うん、自分の技を食らう経験を教えてやるよ」
それこそが封印を解除された『スティンガー』の本領である。
取り込んだオブリビオンのユーベルコードをコピーし、己の力量の範囲の時間で使用し続けることができるのだ。
まさしく全てを飲み込み、全てを開放する器。
それこそが名捨という猟兵である。
「貴方は何も持たずに此処までやってきたからこそ、全てを飲み込むと。そういう存在であると。ですが、どうでしょう。様々なものを得ていけば行くほど貴方は弱くなるのでは?」
だが、そんな疑問に名捨が付き合うわけもない。
放たれた斬撃の嵐が『大天使ロロサエル』を切り刻む。全身にくまなく刻まれていく斬撃は、まさに『大天使ロロサエル』が放つユーベルコードそのもである。
「知るかよ、そんなこと。今よりも一歩。そして進んだ先よりも更に一歩進む。それが――……先に言ったよな。これがオレ達猟兵の流儀を教えてやるって。そういうことだ!」
放たれる日本刀の投擲が『大天使ロロサエル』の肩へと突き刺さり、咆哮するように謎の魔術装置『スティンガー』から唸り声が響き渡る。
その光景をして寧々はうっとりとしたように呟く。
「どっちが悪かわからぬのぅ。素敵じゃ」
如何なる美学か。
だが、その光景はまさしく猟兵としてオブリビオンを打倒する姿であったことは間違いようがないのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
陰陽師安倍晴明は退けました。もう結界が解かれることはありません。今のうちに結界の修繕をお願いします。
さ、行こうか、アヤメ。「式神使い」で彼女を強化しつつ。
興味があるから壊してみる。まるで子供ね。
ここまでよ、大天使! あなたはこの先へ進めない。
アヤメの苦無とのコンビネーションで、「衝撃波」とともに薙刀を振るい「なぎ払い」、心臓めがけ「串刺し」を狙う。
突っかかるのは常に前面から側面。敵の視界内。
大天使がそれに慣れてきた頃に、方術『空遁の法』で大天使の背後に転移し、薙刀の連続攻撃をお見舞いする。
後ろを気にしてると、アヤメの苦無が飛んでくるわよ。
以後『空遁の法』を解禁して、大天使を翻弄するように戦う。
『京の都』に張り巡らされていた結界に迫っていた猟書家『大天使ロロサエル』の大軍勢は猟兵達によって、その大部分を骸の海へと還されていた。
未だ軍勢は残っては居るものの現れた『大天使ロロサエル』さえ倒してしまえば後は烏合の衆である。
脅威は排除出来ていないまでも当面の危機は脱したといえよう。
「陰陽師安倍晴明は退けました。もう結界が解かれることはありません。今の内に結界の修繕をお願いします」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)は結界を維持していた陰陽師たちに声をかけ、新たに現れた猟書家『大天使ロロサエル』へと向き直る。
「さ、行こうか、アヤメ」
式神のアヤメと共に再び戦場へと向かう。そこにあったのは猟兵達の攻撃によって消耗され始めている『大天使ロロサエル』の姿があった。
斬撃の嵐によって刻まれた傷跡は痛々しいかも知れないが、それでもなお、その瞳に合ったのは好奇の輝きであった。
本来の彼の役目、使命は『七大天使の捜索』であったが、それは最早頭の隅に置かれたものであったのかもしれない。
今は猟兵という存在に対して興味を抱いているようであった。
「これは珍しい。式神を使う猟兵ですか。かの安倍晴明もまた、それに似たものを扱う術者であったようですが、此度の戦いではあまり見受けられませんでしたね。ああ、それでも気になります。どうしてそんなに人間とは他者を使役したがるのか」
翼を広げ、その白き羽が舞い散る。
戦場にひび渡る『大天使ロロサエル』の言葉は全て呪言である。彼の興味を抱いたという言葉でさえ、相対するゆかりたちを縛り始めている。
これが猟書家と呼ばれるオブリビオンの重圧であろうか。
「興味があるから壊してみる。まるで子供ね」
ゆかりは心底うんざりしたようにため息をつく。
どこまでいってもオブリビオンとは相容れぬ存在である事を自覚させられる。滅ぼし合うほかないのだ。相対しただけで、それは明確なものへと変わっていく。
「ここまでよ、大天使! あなたはこの先へと進めない」
「それはなぜでしょうか。まさか貴方が道を阻むと? なんと、それは興味深い
。生きていたら教えて下さい」
放たれる三日月の如き斬撃が凄まじき速度で放たれる。
それを真っ向から薙刀の斬撃で持って切り払うも、その斬撃の重さに薙刀を振るうてが痺れてしまう。
「くっ――! 大天使って名乗るのも伊達じゃあないわね!」
常に前方から邁進するようにゆかりが突っ込む。彼女たちが警戒しなければならないのは斬撃だけだ。
あの斬撃にあたってしまえば、既に振りまかれた天使の羽、そして呪言の3つの攻撃を受けてユーベルコードが封じられてしまう。
そこまで追い込まれてしまっては完全に詰んでしまう。それまでにゆかりは勝負を決する必要があったのだ。
「もはや慣れて来ましたね。あなたの言う道を阻むということは正面からばかり攻撃を繰り返すことなのですか? それとも――」
大天使の名に恥じぬ微笑みが溢れる。
『大天使ロロサエル』は微笑んだ。この正面からの攻撃に慣れてきた瞬間に、こちらの背後を取るつもりなのかと。
「そうきますよね? わかりますとも。人の意識をひきつけ、反対からの攻撃。それが人の常道ですから」
方術『空遁の法』(ホウジュツ・クウトンノホウ)により、ゆかりは自分の囲む空間を切り取り転移する術式を展開する。
「現世の裏に無我の境地あり。虚実一如。空の一心によりて、我が身あらゆる障害を越えるものなり。疾っ! ――そうね! だけど、目が慣れているでしょう! そしてあたしばかりを気にしていたら!」
振り返った『大天使ロロサエル』に斬撃を放つ。
しかし、それもまたブラフである。ゆかりの言葉、その真意に気がつく『大天使ロロサエル』は、ゆかりに振り返っった後、その自身の背後に迫る式神アヤメの放ったクナイに気を取られた。
「そこです! 背中がお留守ですよ」
クナイが飛び、それを切り払う『大天使ロロサエル』。本来であれば式神を警戒することはなかったことだろう。
だが方便である。
言葉でもって翻弄したゆかりに初撃が放たれ、『大天使ロロサエル』の体へと超高速の連続攻撃が吸い込まれていく。
薙刀の突きが『大天使ロロサエル』を切り刻み、血を吹き出させる。
しかし、それでもなお『大天使ロロサエル』は笑う。
「ああ、これほどまでに多彩な戦術! 見事という他ありません! だというのに、それでもなお私は貴方たちを知りたい! 追い詰められれば追い詰められるほどに!」
「本当に子供ね! それ以外無いの?」
翻弄するように式神アヤメと連携し、ゆかりは斬撃を繰り出していく。
確実に追い詰めているはずなのに、未だ翻弄するように立ち回らなければ仕留めきれない猟書家の実力。
されど、確実に追い詰めている手応えを感じながら、ゆかりは方術を駆使し続け、戦うのだった――!
大成功
🔵🔵🔵
アルトリウス・セレスタイト
どいつもこいつも暇人だらけか
破界で掃討
対象はオブリビオン及びその全行動
それ以外は「障害」故に無視され影響皆無
高速詠唱を幾重にも重ね『刻真』『再帰』で無限に加速・循環
瞬刻で天を覆う数の魔弾を生成、上下含む周囲全方向へ斉射
更に射出の瞬間を『再帰』で無限循環、間断なく継続
戦域を魔弾の軌跡にて埋め尽くす
向けられる全て魔弾で飲み込み圧殺する
創世し最古の理に例外はない
対象外へは作用せぬ故、味方へは無害
魔眼も呪いも飲み込むまで
もとより向ける余地もあるまいが
自身への攻撃は『絶理』で阻み『無現』で否定し影響を回避
必要魔力は『超克』で“世界の外”から供給
※アドリブ歓迎
「どいつもこいつも暇人だらけか」
アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)の言葉は唾棄すべきものであったかのように吐き捨てられていた。
サムライエンパイア、『京の都』に迫るオブリビオンの大軍勢を率いる猟書家『大天使ロロサエル』は猟兵たちと戦い、傷つきながらも未だ健在である。
肩口には深々と刀傷が刻まれ、その身には斬撃の痕がその血の赤さを際立たせていた。
「ええ、とても。ええ、いや、違いますね。私は暇ではないのですが、私の興味を駆り立てる者……貴方達猟兵を知りたいと思ってしまうことは止められないのです」
微笑むように対峙する『大天使ロロサエル』。
その微笑みはまさに天使そのものだったが、アルトリウスは興味がなかった。仄かに青く光る球体が浮かび上がる。
それはユーベルーコード、破界(ハカイ)によって生み出された万象を根源から消去する魔弾。
既に高速詠唱は紡がれ無限に加速、循環する魔弾の数々は天を覆う。
「これは青空の下よりも目映い輝き。原理を知る者としては、この光景は目の当たりにして当然の光景でありましょうが、それでも知らぬ者にとっては奇っ怪なる光景でありましょう」
『大天使ロロサエル』の魔眼と呪言が世界をを満たしていく。
天を覆う魔弾が世界を埋め尽くさんとするならば、その魔眼と呪言は世界を侵食するものである。
「己に向けられる者全てを無に帰す。圧殺する。単純ですが有効な手段ですね。何もかも塗りつぶすようにしてしまえば、下地の色が見えなくなる。そうするだけの力と源を齎すのであれば、それもまた必然でありましょう」
互いのユーベルコードがぶつかる。
淡青の原理と全てを侵食する呪言の焔が相対する『大天使ロロサエル』とアルトリウスの間で対消滅していく。
「創世し最古の理に例外はない。魔眼も呪いも飲み込むまで。もとより向ける余地もあるまいが」
アルトリウスの操る魔弾が次々と焔を飲み込んでいく。
どこまでいっても平行線の戦いにおいて、その原理を知る者は、それが無意味な行いであることを知っている。
だからこそ、どちらかの根源が尽きるまで続いていく千日手。
「それを知るのならば、私も意味があることをなしましょう。全てを無視し、断絶しましょう。それが創世の理であるというのならば、ああ、完全に理解出来ているわけではないからこそ、私の興味は未だ源泉から溢れるようですよ!」
『大天使ロロサエル』が笑う。
天を覆う魔弾の数々にさらされながらも、それでも笑う。
過去の化身であるが故にこれ以上先へは進めない。永遠に此処にとどまりながらも、それでも現在を食い散らかし、己の欲望のままに振る舞う事を望む。
だからこそ世界が軋んでいく。
その悲鳴に応える猟兵が存在するのであれば、その欲望が叶うことなどないのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
今度は天使でありながら興味本位で命を踏み躙る輩ですか、いい齢して度し難い。
貴方の仕える神に代わって神罰を与えましょう。
相手のUCを完全に回避するのは至難。
なので破魔の効果を合わせた結界術で、魔眼や呪言から詩乃を護り、それでも内側に生じた焔は浄化により鎮火します。
日本刀の攻撃は第六感と見切りで読んで、オーラ防御を纏わせた天耀鏡で盾受け。
UC:煌月舞照で作り出した煌月の複製880本の半分にて相手を包囲して退路を断ちつつ牽制し、多重詠唱・高速詠唱・全力魔法で編み出した光と雷の属性攻撃(神罰込み)をスナイパーで照準合わせて、相手の目を灼き身体を痺れさせる。
次の瞬間、残りの複製が相手を貫通攻撃します!
猟書家『大天使ロロサエル』は笑う。
自身の行いが到底許されざることであると彼は自覚していた。本来の役目『七大天使の捜索』。それを放棄し、猟書家『クルセイダー』の野望に興味を覚え、陰陽師の張り巡らせた結界に興味を抱く。
戯れに興味を抱くからこそ、その意識は移ろいやすい。
今も尚、猟兵達と戦いながら己の欲望。
抱かれた興味を、知りたいと願う好奇の輝きを瞳に宿したまま振る舞うのだ。
「なんとも楽しいものです。知りたいと願うものから知らせてくれる。自身はどのような存在であるのかを教えてくれる。ただ、教え方が非常に好戦的であるのは、如何ともし難いわけではありますが、そこには目をつむりましょう」
これほどまでに猟兵に消耗させられていてもなお、その瞳には好奇が満ちている。微笑みを絶やさぬ表情はどこまでいっても純粋なる好奇心のままに彩られていた。
「天使でありながら興味本位で生命を踏み躙る輩ですか、いい齢して度し難い」
大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)にとって、猟書家『大天使ロロサエル』の振る舞いは目に余るものであった。
己の欲望を満たすために行動をするのが過去の化身である。
オブリビオンである以上、大天使の名を冠していたとしても、それは世界にとって悪そのものである。
「貴方の仕える神に代わって神罰を与えましょう」
同じく神たる身。
その申請を発揮するす姿は『大天使ロロサエル』にとっては異教の神に他ならず、言ってしまえば神を騙る者でしかない。
「神騙る者! ああ、なんとも度し難い。ですが、私は興味を抱いてしまう。異教の神。その存在の意義を」
放たれる魔眼が詩乃の紡いだ破魔の結界によって弾き返される。呪言すらも彼女の神性なる精神に入り込むことは叶わなかったことだろう。
だが、それでも戯言のように響き渡る『大天使ロロサエル』の呪言は詩乃の内側から焔として噴出する。
「煌く月よ、空を舞って世界を照らし、清浄なる光と刃で悪しき存在を無に帰しなさい」
オリハルコンの輝きが月光を受けたように輝き、生み出される薙刀。
それは煌月舞照(コウゲツブショウ)。
天上にありて輝くのは、優に百を超え、幾千にも届きそうなほどに輝く月光湛える薙刀の数々。
その光景は凄まじき月光の輝きをもって地上に在る『大天使ロロサエル』を照らし出す。
「なんともまばゆき光! 私の目を焼き、それでもなお止まらぬ月光! なんという美しさでしょう!」
体の内側から噴出する炎を詩乃は浄化し、霧散させ、手にした薙刀を振るう。それは指揮棒を振るう指揮者のようでもあった。
「その美しさを理解しながら、興味を抱くだけで理解をしようとしない貴方には――そこで終わっていただきます。それこそが私が与える神罰」
薙刀が振るわれた瞬間、光と雷を迸らせながら薙刀が『大天使ロロサエル』へと放たれる。
光の雨とも言うべき薙刀の飛翔でもって次々と『大天使ロロサエル』を追い詰めていく。
手にした日本刀で応戦してはいるが、それも時間の問題であろう。
生み出した複製の薙刀の半分は『大天使ロロサエル』を包囲し退路を断つ。さらに半分が降り注ぎ、その体を神罰の如き雷光でもって打ち砕いていく。
どれほどの力を持っていようとも、詩乃は止める気はなかった。
「徒に生命を踏み躙る。興味があれど、そこには理解がない。人々の祈り、願い、想い、それを理解しない。その欲望が世界を破壊すると知りなさい――」
これが神罰である。
あらゆるものに興味を示すというのであれば、その尽くを雷光によって遮る。オリハルコンの輝きが『大天使ロロサエル』を取り囲み、彼の瞳を、視界を塞いでいく。
何も見えず、何も知ることも叶わず。
そのままに『大天使ロロサエル』の瞳を焼き切るように詩乃の神性溢れるユーベルコードが世界を照らすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
えっ私のこの体に興味がある!?
いやーんえっちー♪
……反応しない相手にやっても空しいですね
古来より際限なき欲は周りを壊します
その尽きぬ興味、私が断ち斬りましょう!
連撃には手数で勝負!
漆黒竜ノ牙を全投擲!
とはいえ、相殺し切るのは難しいと思いますので
ショートダッシュ&スライディングで一気に接近します!
多少の傷は気にせずに!
残念ながら教えて差し上げる過去なんてありませーん!
何故なら!私の過去の結晶が今の私だからです!
どーしても知りたければどうぞぐぐってくださいね!
というわけで差し上げるのはこちら!
「この一撃に勝敗をかけて! いざ、参ります!」
【乾坤一擲】の一撃で仕留めますよ!
※アドリブ連携OK
猟兵の放つ神性の輝きが世界を照らし出す。
その好奇心に満ち溢れた猟書家『大天使ロロサエル』の瞳は今、その光によって焼かれる。それが徒に生命を踏み躙る好奇の塊である彼にとっての神罰であるというように。
「ああ、それでも私の興味は終わらない。抱かずにはいられないのです。どこまでいっても興味深い対象! 私は知りたい。知りたいのです!」
そこまで追い詰められても尚、『大天使ロロサエル』は本来の役目すらも放棄し、目の前に対峙する猟兵たちに抱いた興味のままに振る舞う。
「えっ私のこの体に興味がある!? いやーんえっちー♪」
などとクノイチらしく振る舞ってみたものの、瞳が焼かれている『大天使ロロサエル』にとってはイマイチに反応になってしまったのは、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)にとって、ある意味不幸であったのかも知れない。
「ええ、興味があります。その体。その肉体に内包された真なる姿。それに私は興味を抱かずには居られない」
別にそういう意味で言ったわけではないのだが、そんな反応をされるとサージェとしても戸惑うほかないし、有り体に言えば――。
「……反応しない相手にやっても虚しいですね」
そういうことであった。
こういうのは、初な反応を見せてくれるから楽しいかったり、相手の動揺を引き出す事ができるものである。
だからこそ、『大天使ロロサエル』の反応は正直に言って空振りも同然であった。
だが、だからといって戦う理由がなくなったわけではない。
「古来より際限なき欲は周りを壊します。その尽きぬ興味、私が断ち切りましょう!」
サージェが放つ漆黒の龍鱗の如きクナイが無数に投げ放たれるも、それはあっけなく『大天使ロロサエル』の持つ日本刀による乱撃によって弾かれる。
全てを相殺されたわけではないが、それでも殆どを切り払われたのは、猟書家としての実力であると言わざるを得ない。
あの圧倒的な興味、好奇があるからこその重圧。
何処まで行っても相対する者はオブリビオンであることを突きつけられる。
「とは言え、全てを相殺はできないでしょう! 隙あり!」
一気に距離を詰める。
しかし、その距離を詰めたとしても、乱撃の如き刃がサージェへと迫る。多少の切り傷など気にしない。
傷みが走ったとしてもサージェは駆け抜ける。
「傷を物ともせずに迫る。痛みに対する耐性があるのでしょうか? どのような修行をすればそのようなことが可能なのですか?」
『大天使ロロサエル』はあくまで己の興味のままに振る舞う。
斬撃を放つのも、相対する猟兵を知るためである。どれだけの力をもち、どれだけのことができるのか知りたいのだ。
「残念ながら教えて差し上げる過去なんてありませーん! なぜなら! 私の過去の結晶が今の私だからです! どーしても知りたければどうぞぐぐってくださいね!」
ぐぐるとは?
『大天使ロロサエル』の瞳が、そう言っているような気がしたが、サージェはもう答えなかった。
代わりにくれてやるものがあるのだ。
「というわけで差し上げるのはこちら! この一撃に勝敗をかけて! いざ、参ります!」
踏み込んだサージェの瞳がユーベルコードに輝く。
手にした短剣を両手で構え、放たれるは乾坤一擲(ヒッサツノイチゲキ)。その一撃は日本刀による受け流しすらも無視するように『大天使ロロサエル』の体へと衝撃を伝える。
あらゆる障害を無視するような必殺の一撃が、その体を天高く舞い上がらせるほどの衝撃を伴って、オブリビオンとしての『大天使ロロサエル』の肉体を貫く。
「ぐぐるというのは、えっと、あれです。検索ワードは、サージェ・ライトでお願いしますね――!」
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・リデル
初手で『青い光の衣』を纏い、オーラセイバーを振るい、魔法を放ち、戦いながら語りかけます。
安倍晴明と違って貴方には私も興味がありますよ。
大天使を名乗っていますがオラトリオ、またはその一種なのか?
七大天使というのも皆、オブリビオンであるのか?
貴方を含めたオブリビオンの大天使は何に滅ぼされたのか?
ふふ、答えられないのでしたらフェアではありませんね。
私からお教えする事もありません。そして、もう十分です。
それまでに吸収した攻撃を全て魔力に変換して極大の衝撃波を放ちます。
(衝撃波×全力魔法×範囲攻撃)
その青い光の衣(ブルー・アーマー)を纏いし猟兵の姿を猟書家『大天使ロロサエル』は正しく見つめることができなかった。
度重なる猟兵達の攻撃によって、視界は塗りつぶされたような神性の光によってくらまされており、未だ回復しきっていない。
肉体に刻まれた傷跡はどれも軽いものではなかった。
だが、それでもその青い光を放つ衣を纏った猟兵――ステラ・リデル(ウルブス・ノウムの管理者・f13273)の姿は灼けた視界の中で合っても目映いものであるように感じたのかも知れない。
「その光、なんとも興味深い。どれほどの藍を煮詰めればそうなるのか。それが如何なる力の源にして、真なる姿を内包した結果であるのか。私は興味を抱かずにはいられない。いられないのです」
放たれる邪眼と呪言が次々と世界を侵食していく。
だが、ステラは一向に構うことなどしなかった。
そのユーベルコードの蒼き輝きは衣となって彼女へと放たれるあらゆる攻撃を吸収する魔力障壁として顕現している。
「安倍晴明とは違って、貴方には私も興味がありますよ」
その言葉はまさに己と『大天使ロロサエル』が同じであるように感じさせるものであったのかもしれない。
これまでの猟兵たちは己とは相容れぬ存在であることしかわからなかった。けれど、ステラは違う。
それが言葉面の上だけのものであっても、『大天使ロロサエル』は歓喜したように語りだす。
「私を理解しようとする貴方に私も興味を抱かずにはいられません。ああ、なんたる僥倖!」
「大天使を名乗っていますがオラトリオ、またはその一種なのか? 七大天使というのも皆、オブリビオンであるのか? 貴方を含めたオブリビオンの大天使は何に滅ぼされたのか?」
それは矢継ぎ早に語られる質問であり、同時に『大天使ロロサエル』を失望へと叩き落とす言葉であった。
「今まさにそれを私に思い出させるとはなんと酷な方なのでしょう。すっかり忘れさってしまっていたというのに。私の目の前にある興味だけに捉えてくださっていればよかったのに」
放たれる呪言の圧が増す。
それはあらゆる攻撃を吸収する魔力障壁であっても軋むほどであった。手にしたオーラセイバーを振るう。
「ふふ、答えられないのでしたらフェアではありませんね。私からお教えすることもありません。そして、もう充分です」
ステラは手にしたオーラセイバーから魔力障壁によって吸収された呪言の力を開放する。
そう、障壁の役目は『大天使ロロサエル』から放たれる呪詛の如き呪言を防ぐものではない。
それを吸収し、己の力へと変えるためのユーベルコードである。
構えたオーラセイバーから噴出した力は極大なる刃となって天を衝くが如く迸る。
「さようなら。最早二度と会うこともないでしょう。私は貴方に興味がないですから」
放たれた極大のオーラの刃が『大天使ロロサエル』へと放たれる。
それは衝撃波を伴って周囲のなにものをも巻き込んで光の渦の中へと引き込んでは、撒き散らされた呪詛ごと破壊し、骸の海へと還す。
未だ残っていたオブリビオンの大軍勢すらも薙ぎ払う極大の一撃は、『大天使ロロサエル』の興味すらも飲み込んで彼の体を焼き払うのであった――!
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
和装イケメン天使とかあざといなあ…
一応世界観合わせようとした感あるけど
しかしまあ、大天使様は好奇心旺盛なよーで
仕事があるけどほっぽり出して、こっちに来ちゃうアグレッシブさは好きだよ
まあ迷惑だから殴るけど…
●
EX:I.S.T[BK0001]でそのまま突っ込んで乗り捨てアタックドーン!
これは牽制、ちょっとでも体勢を崩せればそれでよし!
途中で飛び降りて【Code:F.F】を起動
技を封じられるなら、封じられる前に一撃喰らわせて離脱する!
加速して一気に接近
まず最初の一太刀で相手の刀を『吹き飛ばし』て刃を喰らわないように対策
そのまま二刀でロロサエルを『串刺し』にして、零距離からエネルギー球をぶちかます!
オーラの奔流が極大になり、猟書家『大天使ロロサエル』と彼の軍勢を飲み込み、焼き払っていく。
その尋常ならざる一撃の痕に立つ者がいる。
そう、『大天使ロロサエル』である。あれだけの一撃を受けて尚、未だ健在であるのは猟書家としての力の強大さを物語っているのかも知れない。
手にした日本刀を振り払い、その天使の翼を広げる。
未だ尽きぬ好奇の輝きを宿す瞳は、その言葉を紡ぐだけで呪言となって世界を侵食していくのだ。
「なんと此処まで追い詰められるとは。私と猟兵の実力差は如何ともし難い差であるはずなのに、それでも尚私を追い詰める。興味深い! どうしてそんなことが可能なのでしょう?」
その微笑みは未だ絶えず。
どこまで行っても、その体には好奇心しか存在していないかのようであった。
「和装イケメン天使とかあざといなあ……一応世界観合わせようとした感があるけど。しかしまあ、大天使様は好奇心旺盛なよーで」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は相対し、数多の猟兵たちが消耗させた姿をしても尚、重圧放つ強大なるオブリビオンの姿を一瞥してそう評した。
「仕事があるけどほっぽり出して、こっちに来ちゃうアグレッシブさは好きだよ」
うんうん、と玲はうなずく。
バイタリティと言えばいいのだろうか、それともフットワークの軽さとでも言えばいいのだろうか。
その言葉を聞いて『大天使ロロサエル』はさらなる好奇に瞳を輝かせる。
「ええ、ええ。そうでしょうとも。私が抱く興味は色褪せることなく。知りたいと願う欲求は生命体にとっては必要不可欠なるものでありましょう」
「まあ迷惑だから殴るけど……」
対する玲の言葉はそっけなく簡潔なものであった。
そう、迷惑千万であるのだ。
オブリビオンは過去の化身。過去よりにじみ出た者が現在を喰らい、未来を閉ざす。それは進化という過程にあってあまりにも邪魔であった。
模造神器運用補助用の特殊バイクをフルスロットルで加速しながら、『大天使ロロサエル』へと突っ込む。
乗り捨てるように玲は身を翻し、宙を舞う。
加速したままの特殊バイクが『大天使ロロサエル』へと激突し、その車体をばらばらにする。
放たれる日本刀の斬撃は、車体を切り刻み鉄くずへと変える。
「ああ、壊してしまった。とても興味があったのに……ただの乗り捨てるようなバイクではありませんよね? そうでしょうとも。何かを補助するための機構……ああ、如何なる機能があったのか! その機能美を見ずに破壊してしまったことが悔やまれます」
だが、その言葉が発し終える前に玲の瞳がユーベルコードに輝く。
かの猟書家『大天使ロロサエル』のユーベルコードがこちらのユーベルコードを封じるものである以上、どんな些細な攻撃も玲は受けるわけには行かなかった。
故に取る戦法はたった一つである。
最大火力で持って有無を言わさない。
「最終公式起動――Code:F.F(コード・ダブルエフ)」
全ての模造神器、その四振りの刀身からエネルギーが玲の体に流れ込んでいく。
それは神速へと至る彼女のユーベルコードであり、輝く瞳は彼女自身がすでに模造神へと至らんとするほどの圧倒的な力の奔流を纏っていることを物語っていた。
「なんと! 模造でありながら再現。再現でありながら凌駕! これほどの力を人が纏う! ああ、興味が尽きない! これだから生命体は楽しい! 私の興味をかき立てる!」
玲の姿を好奇の瞳が捉える。
敵対しているにも関わらず、その瞳に映るのは憎悪でもなければ恐怖でもない。どこまで行っても好奇の輝き。
「全てを零に!」
駆け抜ける。
一瞬で距離を詰め、振り払った模造神器の刀身が日本刀を跳ね飛ばす。そのまま振るわれたニ刀が『大天使ロロサエル』の体を串刺しにする。
「ぐふっ、がっ――! ああ、こんなに近くで見れるとは。なるほど。なるほど、これが異教の神の、異界の神の――」
その言葉を断ち切るようにゼロ距離から放たれる高エネルギーの弾丸が『大天使ロロサエル』の体を打ち貫く。
その一撃は彼の背後のオブリビオンの大軍勢をも吹き飛ばし、地面をえぐり飛ばす。
胴に大穴を開けながらも『大天使ロロサエル』は未だ消滅しない。
だが、致命傷に近い傷を与えたはずだ。玲は即座に離脱する。
「存在そのものが迷惑! さっさとご退場願うねー!」
模造神器の四振りを修め、玲は飛ぶ。
あのユーベルコードはこちらの力を削ぐだけでなく、ユーベルコード事態を無効化する。
此処まで致命傷を与えれば、後は他の猟兵に任せてもいいだろう。
あの好奇の瞳は、嫌いではないけれど。
けれど、どちらにせよ滅ぼさなければならない存在であれば、玲は迷惑以外の感情など湧き上がるはずもないのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月白・雪音
…己が好奇を満たす事のみの為に力を振るいますか。
力とは己が欲のみにて振るうものに在らず、
己を律し力を徒に示すことなく泰然と在る事こそ武の真髄。
故に私には理解致しかねる感情ですが…、
良いでしょう、貴方が『そういうモノ』であるのならば。
貴方のその有り様に、この世界のヒトが紡ぎ上げた陰陽の業、
そして我が武を以て応えましょう。
――今ここよりは、死地なれば。
陰陽師に依頼するのは身体能力で躱せない呪言の相殺ないし軽減、
相手の動きの阻害
UCを発動し、野生の勘、見切りにて鈍った相手の斬撃の軌道を読み、
残像の速度、カウンターにて白刃取り
怪力、部位破壊にて刀をへし折り、
2回攻撃も使用し相手の翼を破壊し逃亡を封じる
胴を穿ち貫通した大穴を開けられても尚、猟書家『大天使ロロサエル』は笑う。
その肉体が完全に滅びるまでに、己の欲求を、興味を抱くものを知りたいと願う心が骸の海へと還ることを拒否するかのようでもあった。
「ああ、私の知らぬことがまだまだたくさんあるようです。なんと素晴らしいことか。『クルセイダー』の野望も、猟兵も何もかもに興味を抱かずにはいられません。知りたい!」
その天使の翼が広げられる。
その羽の一枚一枚が猟兵達の力を減ずる。さらに紡がれる呪言もまた同様である。振るった地面に突き刺さった日本刀を手に取ると『大天使ロロサエル』は再び笑うのだ。
「まだまだ私は存在していますよ。猟兵達。もっと貴方達を知りたい。私の心のなかに浮かぶ興味、それを満たしてください」
「……己が好奇を満たす事のみの為に力を振るいますか。力とは己が欲のみにて振るうものに非ず。己を律し力を徒に示すこと無く泰然と在ることこそ武の神髄」
月白・雪音(月輪氷華・f29413)は白き髪と赤き瞳をユーベルコードに輝かせながら言う。
その身に宿る殺人衝動がどれほど巨大なものであったとしても、彼女の心は静かに律されていた。
それこそが武である。
荒れ狂う力を止めるものである。
自己を練磨し、積み重ねてきた鍛錬の先に己という存在が世界に存在していることを雪音は知らしめる。
「ああ、武! 武の神髄! 新たな概念! 力というものに付随されたもの。人はそれを不純物と呼ぶのかも知れませんが、私にとっては愛すべき不純物! なんということでしょう! 知りたい! その武を!」
『大天使ロロサエル』は笑う。
天使のごとくたおやかな微笑みのままに、呪言を紡ぎ続ける。
それが世界を侵食するものだと知っても尚、その力をいたずらに振るう。こと、この点において雪音と『大天使ロロサエル』は対極の位置にある者であった。
「故に私には理解致しかねる感情ですが……良いでしょう、貴方が『そういうモノ』だえるのならば。貴方の有り様に、この世界のヒトが紡ぎ上げた陰陽の業」
構える。雪音の構えに一分の隙もなかった。
彼女に降り積もるようにして舞い散る天使の翼は、たしかに彼女の体に触れていた。
触れているだけで力を減ずるものであったが、彼女は今、些かも力の衰えを感じていなかった。
「……? なぜです。力が弱まっていませんね? どうしてでしょう! 興味があります!」
手にした日本刀でもって己に斬りかかる『大天使ロロサエル』の姿を雪音は瞳で捉えていた。
赤い瞳。
それは自然界であれば目立ちすぎるがゆえに即座に淘汰されるものである。だが、雪音はそれを乗り越えて此処にいるものであることを『大天使ロロサエル』は知らない。
「……弱きヒトが至りし闘争の極地こそ、我が戦の粋なれば」
その身に宿りし武は頂きへと至る。
拳武(ヒトナルイクサ)。獣の身を持つモノであれど、修める武があるというのならば、彼女はまさしくヒトであった。
連綿と紡がれてきた最先端にいる者である。
「そして、我が武を以て応えましょう――今よりここは、死地なれば」
ユーベルコードの輝きが雪音より発せられる。
荒れ狂う輝きは、彼女が襷を受け取るがごとく連綿と紡がれてきた先人たちの武。
その極みに今彼女は居る。
そして、陰陽の術。
それもまた同様である。彼女のみを苛むはずの呪言も、天使の羽も、尽くが陰陽師たちの結界によって払われている。
「瞬きの間さえ在れば良い……参ります」
放たれた斬撃の一撃を両手で合唱するように頭上で受け止める。
それを人は白刃取りと呼ぶ。
「――!? 素手で刀をっ!」
瞬間、雪音の姿が『大天使ロロサエル』の視界より消える。
圧倒的な速度で持って放たれる神速の拳。へし折った日本刀の刀身が大地に突き刺さるよりも早く、彼女の拳が『大天使ロロサエル』へと放たれる。
その拳がとらえたのは、その天使の翼。
関節を決めるように放たれた拳の一撃が片翼をへし折る。さらにへし折った羽を足場にするようにしてもう片翼もまた蹴撃によってへし折られた。
「もはや逃げることはできないと知りなさい。貴方はあまりにも多くを踏みにじった。その咎は受けるべきなのです」
雪音の流れるような二連撃は、『大天使ロロサエル』の両翼を尽くへし折り、まさしく大地へと失墜させるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
本・三六
拳で相手を知るって趣向はわかるけどね
君の事は先に聞いてるし
少しなら。過去は此方も聞きたいな
先程は結界がなければ危なかった。無理をさせて申し訳ない
あの好奇心なら、痛めつけても止めは興味を失ってからかな
隙を突こう。今暫く力を溜めてもらえるかな
もう一撃だけ防いで欲しい
UCで相棒を合体させ召喚
まず攻撃をかわし見切る事に集中。刃や翼の死角に注意だ……呪言が一番困るなあ
距離を取って黒賽子で制圧射撃。会話で関心も引き
呪言を挟ませぬよう敵の防御手段を見極めてから前進
攻撃は一番のってね
相棒と敵を鈍らせたいが2つ受けても攻勢は崩さない
3つ目はどうか、結界の力も貸して欲しい
万力を込め、その隙に早業で鉄芥を叩き込むよ
「先程は結界がなければ危なかった。無理をさせて申し訳ない……けれど、もう一撃だけ防いでほしい」
そう結界を維持する陰陽師たちに告げるのは、本・三六(ぐーたらオーナー・f26725)であった。
すでにオブリビオンの大軍勢の多くは猟兵たちによって駆逐されてはいるが、それでもまだ敵は残っている。
猟書家『大天使ロロサエル』もまた同様である。
その姿は両翼を失い、胴に大穴を開けられても尚、闘いが始まってからも何ら遜色なく重圧を放っている。
あれが強大なオブリビオンというものであるのならば、おぞけ走るほどの実力であると言わざるを得ない。
「拳で相手を知るって趣向はわかるけどね。君の事は先に聞いてるし、少しなら。過去は此方も聞きたいな」
三六は対峙する猟書家『大天使ロロサエル』を前にして言葉を紡ぐ。
すでにグリモア猟兵から伝え聞く『大天使ロロサエル』の情報は知っている。けれど、此方に興味を抱く彼の姿は未だ些かも曇ってはいなかった。
「いいえ。私の過去は意味がないのです。私の興味をかき立てるのは貴方。猟兵とは斯くも千差万別。あらゆる可能性に溢れている。終わってしまっている私達とは違う存在であるのに私達を滅ぼす存在」
それを知りたいのだと、その瞳が好奇に輝く。
興味を抱くということが猟書『大天使ロロサエル』のちからの源であるというのならば、三六は、その好奇心こそが人の生命を脅かすものであると理解した。
「相棒たち! 行こうか!」
その瞳がユーベルコードに輝き、三六の周囲にバトルキャラクターズの面々があふれかえる。
さらに彼等は一つに合わさり、強大な力の権化として戦場へと召喚される。彼等が前面へと駆け出し、『大天使ロロサエル』と組み合う。
そこへ放たれるはたくさんの数が刻まれた鈍色のダイスから放たれる光線が撃ち放たれ、接近させない。
すでに羽は先行した猟兵たちによってへし折られている。
一番厄介なのは呪言であろう。あの言葉だけは注意を引きつけるという意味では常に聞いていなければならないのだ。
「けどさ、それでも興味を抱くってことは、自分では止められないことなんだろう。だから本来の役目だって忘れてしまう。それほどまでに身に秘めた興味ってなんだい」
「それは私自身も知らぬ興味。知らぬということが世界には溢れているがゆえに。私が知る知識が一握りであるということを知るために私は知り続けるのです。私が私であるためい私は私の興味を一切捨てないのです」
呪言は言葉を紡ぐほどに力を増していく。
だが三六の力は衰えない。彼の身を護っているの陰陽師たちの紡いだ結界の力だ。その一部が彼の中に流れ込み、呪言の力を弱めているのだ。
「だからって現在を食いつぶしていい理由になんてなっていないだろう!」
バトルキャラクターズの相棒が『大天使ロロサエル』を投げ飛ばす。
それも三六へ向かってだ。その投げ飛ばされた『大天使ロロサエル』の瞳は未だ好奇に輝く。
どんな連携を見せるのだろう。
どんな戦術を立てているのだろう。
どんな――。
やはりそうだと三六は確信する。
彼の中にはなにもない。なにもないからこそ、目に映るすべてのものが己の欠けたものにみえるからこそ、興味を抱く。
自分のものではないからこそ、人は強く惹きつけられる。
それを哀れと呼ぶことなかれ。
「知りたいと願うなら、それだけにしておけばよかったんだ。何事も度を越してしまえば、誰かを害する力にしかならないんだから――!」
三六の手にした知恵の輪のように組み上げられた鉄芥を振るう。
鈍器の一撃であったが、彼の中に流れ込んだ結界の力が伝播し、その一撃を持って『大天使ロロサエル』を強かに打ち据え、吹き飛ばす。
「強い興味があればいい――そんなわけないじゃないか。求めてばかりじゃ、誰も君が与えてくれる者ではないと理解してしまう。そうなってしまったら、君自身が誰からも興味を抱かれない者になってしまう」
それはとても悲しいことだというように、すでに過去の化身と成り果てた『大天使ロロサエル』の姿を三六は瞳で追うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
神城・瞬
こういうタイプは嫌いでして。何か余裕のようなので加勢しに来ました。そのふざけた顔、一撃入れたいですねえ。
とはいえ、敵は優れた剣士、そう簡単に近寄らせて貰えませんよね。【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】を仕込んだ【結界術】を【高速詠唱】で敵に向かって展開。念には念を入れて【武器落とし】を併せた【誘導弾】を牽制に撃ち、鴉の朔と共に接近。【オーラ防御】【第六感】で敵の攻撃を凌ぎ、全力の【吹き飛ばし】を併せた裂帛の拳を入れます。
どんな不利な状況でも動じないのは大したものですが、実際の戦場にはそれが命取りになります。覚悟が足りません。退場願います!!
穏やかな微笑みを浮かべる猟書『大天使ロロサエル』。
その姿は確かに天使と呼ぶにふさわしいものであったが、それでもなお、その身に宿した好奇の輝きは猟兵にとっては唾棄すべきものであったのかもしれない。
すでに両翼はへし折られ、胴には大穴が空いている。
だと言うのに未だ『大天使ロロサエル』は消滅していない。骸の海へと還ることはない。
それは執念と呼ぶにはあまりにも純粋なものであったのかもしれない。
単純なる好奇心。
ただそれだけで『大天使ロロサエル』は現界し続ける。そこには『七大天使の捜索』といった使命も何も関係なく、ただただ興味というものだけで猟兵達の前に立ちふさがっていた。
「こんなにも猟兵とは違うものであるのですね。どこまでいっても同じものではない。何一つ同じ法則性を見出すことができない。ああ、知りたい。こんなにも興味をかき立てられるとは!」
笑う。
笑う。その穏やかな微笑みのままに『大天使ロロサエル』はその力を、呪詛を周囲に振りまいていくのだ。
「こういうタイプは嫌いでして。何か余裕のようなので加勢しに来ました。その巫山戯た顔、一撃入れたいですねえ」
神城・瞬(清光の月・f06558)は戦場へと踏み込む。
その手に宿るユーベルコードの輝きが、彼の嫌悪を物語っているようだった。
「私に嫌悪を抱かれている。興味があります。なぜに嫌うのでしょう? なぜに悪し様に思うのでしょうか? その理由を知りたい。私は興味があります!」
手にした日本刀を構える姿は一分の隙のない構え。
それが達人の領域に達しているものだと瞬は知っている。だからこそ、簡単に己が踏み込めぬ事を知っている。
『大天使ロロサエル』と語ることはほぼ無意味だ。
どこまでいっても猟兵とオブリビオンでしかない。そこに相互理解などあるはずもない。
だからこそ、この嫌悪の正体を知ることもできない。
「語るに及ばず。それはあまりにも無為に終わる……僕にも思いっきり殴りたい時がある……そういうことだ」
放たれるは結界術を展開し、鴉の朔と共に接近する。
展開された結界術に阻まれ、『大天使ロロサエル』の身体が止まる。
だが、次の瞬間その結界術は手にした日本刀の斬撃によって尽く切り裂かれ、霧散し消えていく。
高速詠唱であったとしても、あの結界を容易く飴細工を割るように破壊されたことに一瞬、その力の強大さを知る。
だからといって彼の足が止まるわけがない。
猟書家『大天使ロロサエル』もまた同様であろう。襲い来る斬撃の嵐。
それ一つ一つが必殺の一撃であろう。
「どんな不利な状況でも動じないのは対したものですが、実際の戦場にはそれが命取りになります」
今や『大天使ロロサエル』は満身創痍と言っていい身体だ。
だが、それでも彼は向かってくる。退くという概念がないのではないかと思うほどに振るわれる力は、捨て鉢になるでもなく、淡々と放たれているのだ。
「覚悟が足りません。退場願います!!」
放たれるは、裂帛の拳(レッパクノコブシ)。
素手による超高速かつ大威力の一撃。
それは対象に至近距離まで近づくことが条件である。斬撃の嵐をくぐり抜けた瞬の眼前に、あの好奇の輝き放つ瞳が迫る。
こちらが踏み込むのと同様にあちらもまた踏み込んできているのだ。
「知りたい。その拳の一撃が如何なるものであるのか! 私は知りたいのです!」
放つ拳の一撃がユーベルコードの輝きを持って放たれ、『大天使ロロサエル』を強かに打ち据え、吹き飛ばす。
それはまさしく裂帛の気合と共に放たれたものであり、その拳は瞬の覚悟と共にオブリビオンとしての力を削ぎ落とすようでもあった――。
大成功
🔵🔵🔵
愛久山・清綱
ロロサエルとやら、其方と俺は似ているな。
俺も興味本意で戦う術を覚え、興味本位で神に頭を
垂れた身……故郷で知り得ぬものを知るがため。
似た者同士、親睦を深めたかったのだが……任務故、討つ。
■闘
刀を逆手に持ち、いざ勝負。
先ずは振るわれる太刀を目視しつつその軌道を【見切り】、
合わせるように【武器受け】しながら前進を図る。
闇雲に隙を突かず、受け止め続けることを重点に。
距離が詰まったら刀を構え、【残像】を伴う【フェイント】を
絡めた動きで死角に潜り込み、一瞬の【真爪】で断つ。
それまで興味本位で戦ってきた俺が、何かを護るように戦う……
俺も諸行無常の理に踊らされているのかもしれぬな。
※アドリブ歓迎・不採用可
裂帛の気合と共に放たれた拳の一撃は、猟書家『大天使ロロサエル』の身体を盛大に吹き飛ばす。
大地に付した『大天使ロロサエル』の姿は最早満身創痍である。
両翼はへし折られ、胴には大穴が空いている。さらには斬撃による裂傷に打撃による殴打。
その全てが猟書家『大天使ロロサエル』としての力を確実に消耗させ、削ぎ落としている。
「ロロサエルとやら、其方と俺はにているな。俺も興味本位で戦う術を覚え、興味本位で神に頭を垂れた身……故郷で知り得ぬものを知るがため」
愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)は倒れ伏しても尚、立ち上がってくる猟書家『大天使ロロサエル』の姿を見て、そうつぶやいた。
其の言葉は理解の言葉であったかもしれないが、真に理解することができるものではないと清綱は知っていた。
どこまでいっても自身と『大天使ロロサエル』は似通っていたとしても、猟兵とオブリビオンである。
倒さねばならない。
滅ぼさなければならない。
それは己の体に、魂に刻まれた不文律であったのかもしれない。
「似た者同士、親睦を深めたかったが……任務故、討つ」
「似た者同士。私と貴方が? それは違うかも知れませんが、そうであるとも言えますね。興味深い。何処まで行っても興味。興味しか抱かない。それ以外の感情などどこかに置いてきたのかもしれません」
互いに構えるは日本刀。
どちらもその構えに一分の隙もない。まったく違う流派を修めたであろう二人であったが、その構えは似通っていた。
どれほどの研鑽も、練磨も至る頂点は同一であることを示すように二人の構えはにていたのだ。
「いざ勝負」
逆手に構えた刀を清綱は振るう。
それは振るった先に『大天使ロロサエル』の放つ斬撃の嵐が来ることを予見していたかのような一撃であった。
剣戟の音が戦場に響き渡る。
それこそが清綱の戦う術である。
其の瞳で捉えるのは斬撃の嵐が刻む軌道。それを全て見切り、それに合わせるように刀身をぶつけて進む。
一歩先へ、剣戟の音が響き渡ると同時に足をすすめる。
「ああ、何かを考えていますね。興味があります。斬撃の合間に何かを画策している。そういう目をしています。興味深い!」
斬撃の嵐。
その怒涛の如き猛攻を全てしのぎきって、清綱は距離を詰める。
何処まで行ってもやはりにているのだと清綱は思う。それが猟兵とオブリビオンに分かたれていなければどんなに良かっただろう。
「だが、どうあってもオブリビオン。ならば、討たせて頂く――もらったり」
放たれるは真爪(シンソウ)の一撃。
残像を残すフェイントと共に一瞬で『大天使ロロサエル』の死角へと回り込んだ清綱が放つ一撃は、その刃を振るう『大天使ロロサエル』の腕を斬り飛ばす。
凄まじき速度、威力。
どれもがまさしく絶技。
「それまで興味本位で戦ってきた俺が、何かを護るように戦う……俺も諸行無常の理に踊らされているのかもしれぬな」
移ろっていく。
どんなに澄み切った青い空であっても、ずっと同じ青色ではない。
群青へと変わることもあるだろう。燃えるような暁に染まることもあるだろう。夜の帳が落ち、星の明滅が奏でる音を吸い込む闇色になることもあるだろう。
だからこそ、清綱も同じである。
変わっていくことができないのはオブリビオンである『大天使ロロサエル』だけである。
それを哀れと思うことは清綱はしない。
変わることを是とするのならば、変わらない強さもまた在ることを清綱は知っている。だからこそ、その真なる爪をもって彼への手向けとするのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
臥龍岡・群青
さっきのやつよりは幾分か好感が持てるが……
それでも貴様、なんか厭だな
ただ何かを暴いて終わりというか
観察して、そこからは?
そこから先がないのだ
つまらんやつめ
空っぽではないか!
竜の姿になって空を舞おう
あいつも空は飛べるだろうな
接近されないように気を付けなければ
陰陽師達の結界は上空まで届くだろうか
そちらとわしの【神罰】の雷で、敵の足を止めていこう
隙がないならば作ればいいのだ
竜の姿になっても、わしの身体が武器になることに代わりはない
上手く敵の足を止めつつ、爪や鰭でどんどん切り裂いていこう
これで貴様も分かったのではないか?
この地に住まう人々の強さと
わしらの強さ
それをその身に刻み、骸の海で思い返していろ!
猟兵の斬撃の一撃が猟書家『大天使ロロサエル』の片腕を斬り飛ばす。
まさしく絶技たる一撃。
すでに『大天使ロロサエル』の姿は満身創痍そのものである。両翼はへし折られ、胴には大穴。
肉体にはすでに斬撃と殴打の痕が残り、すでに片腕を喪っている。
それでもなお笑う。
その瞳に宿った好奇の輝きによって、その身は突き動かされているとでも言うかのように、笑うのだ。
「なんとも興味深い。何処まで行っても猟兵は、本当に違う者たちばかりだ。同一なものが何処にもない。誰でも合って誰でもない。ああ、興味が尽きない」
溢れんばかりの微笑みは、まさしく天使そのものであったが、同時に見る者にとって、これほどまでに虚ろに見える微笑みもなかったことだろう。
「さっきのやつよりは幾分か交換が持てるが……それでも貴様、なんか厭だな」
そう言葉を紡ぎ相対するのは、臥龍岡・群青(狂瀾怒濤・f30803)であった。
その神たる瞳に映る『大天使ロロサエル』の好奇に輝く瞳は、やはり虚ろそのものであり、虚のようでもあったのだ。
「ただ何かを暴いて終わりというか、観察して、そこからは? そこからが先がないのだ」
「ええ、私は知りたいだけなのです。興味を抱く。その理由を。何が私を此処まで惹きつけるのか。ただそれを知りたい。興味があるのです。ただそれだけなのです」
ふきとばされた片腕が握っていた日本刀を『大天使ロロサエル』は残った片腕で握りしめる。
再び構えた姿は未だ重圧衰えず。
「――つまらんやつめ。己でわからぬようであるから言ってやろう。貴様、空っぽではないか!」
群青が咆哮する。
それは竜神飛翔の如く、その体を完全竜体へと変貌させる。空を駆ける姿は、まさしく龍神。
咆哮が轟けば、陰陽師たちの紡いだ結界が群青を護るように展開される。すでに『大天使ロロサエル』には翼はない。
だが、凄まじき跳躍力で空を舞う群青へと斬撃の嵐が迫る。
「空っぽ? 私が空っぽ。それは興味深い。私が知らぬことを私が知ることができる。なんとも興味をかきたてられる! ああ、私が知りたかったのはそういうことなのでしょうね」
なにもないからこそ、全てを知ろうと思ってしまう。
何処までも果てがない。際限がない。
なぜなら、その心の中が空っぽなのは、心の何処かに穴が空いているからだ。どれだけの興味を詰め込んだとしても、そこから流れ出てしまう。
止めておけないからこそ、あらゆるものを暴き立て、台無しにしてしまう。
それを前にして群青は咆哮した。
放たれる神罰の雷撃が常に『大天使ロロサエル』を穿ち続ける。どれだけの斬撃の嵐が群青を襲おうとも、龍鱗は全てが陰陽師たちが連綿と紡いできた結界の力によって阻まれる。
「これで貴様もわかったのではないか? この地に住まう人々の強さとわしらの強さ」
その竜尾が強かに『大天使ロロサエル』の体に叩きつけられ、大地へと失墜させる。
「強さ? これが強さというのですか? 私にはないもの。私自身が到達できず、後戻りができないもの――」
「ああ、そのとおりだ。それをその身に刻み、骸の海で思い返していろ!」
上空より急降下で放たれる竜神の爪の一撃が『大天使ロロサエル』の体を貫き、今度こそその体を霧散させる。
骸の海へと還す一撃によって群青は変身を解き、大地へと降り立つ。
その瞳が見やるのは、霧散し消えていく粒子たち。
それがかつて『大天使ロロサエル』と呼ばれた空っぽの体で己の中にある好奇心のみを頼りに存在した者であると群青は見送るのだ。
どれだけ『今』刻み込んだとしても、骸の海へと還れば、その意味すらまた喪ってしまうかも知れない。
過去の化身とはそういうものである。
同一であったように思えても、同じ形をした何者かでしかない。
「だが――。変わらぬ者が何度現れようとも、結果は変わらぬよ。因果と言うなよ。『今』を生きる者たちの可能性のためにわしら猟兵は力を振るうのだから。『今』の先を見たい、そう貴様も思えば何かが違ったのやもしれぬな――」
見上げた先に広がる青空が、どこまでも続いていく。
その先に何が在るのか。
群青は其処を見届けるように、その瞳を彼方へと飛ばすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵