スチーム・コンバット
●"アルダワ世界":ユーバニア
アルダワ魔法学園の外には、広大な蒸気魔導世界が広がっている。
大陸の中央部やや上方に位置する『商会同盟』は、特に商業が盛んな地域だ。
あちこちの風光明媚なスポットを魔法光が照らし、ラジオが人々の耳を楽しませる。
ユーバニアは、そんな同盟に属する港街のひとつであった。
「ニコ爺、まぁたここに居たんすか」
埠頭やってきたのは、体格のいい青年である。装いからして造船所の作業員か。
彼が声をかけた相手は、同じ作業着を着たひとりの老人だ。
「あぁ? オレの勝手だろうが。どこで飯を食おうが」
「あんたがウチで一番の古株でも、一番腕のいいガジェッティアでもなきゃそうですよ」
「やかましい。皮肉を言える歳か、ガキめ」
ニコ爺……ニコラス老人は、青年をジト目で睨み、そして視線を戻す。
見つめる先には、少しずつ港に向かってくる大きな船影があった。
「爺さんも飽きないっすねぇ、もう何十年も眺めて手入れしてるでしょうに」
「年月の問題じゃない。ありゃオレが一番最初に設計した船なんだ」
アルダワ世界では、蒸気魔導機械が人々の生活を支えている。
陸海空の運輸は最たる実例だろう。
船影が蒸気煙を吐き出した。ボー……という汽笛の音が、港まで届く。
「いつ沈んでもおかしくないオンボロ船にしか見え……いったぁ!!」
「アホか。オレが造った船が沈むわきゃねえだろ」
「だからって叩くことないでしょお!?」
「フン」
船の名は『フェザント』。青年の言葉通り、竣工から相当歳月が経過している。
「そもそもどうして船に鳥の名前なんです。フェザント(雉)って」
「お前、雉がどんぐれえ早く走るか知らないんだろ」
「は?」
「いいんだよそれで。あの雉みてえに元気な汽笛が聞けりゃ、それでな」
ニコラス老人は目を細めた。口元には、穏やかな笑みがあった。
――しかし。
「ああ、くだらないくだらない……まったくくだらない」
フェザント号を見つめる眼差しは、ひとつではなかった。
「蒸気魔導機械。下等で愚かな人類が作り出した、もっと下劣で醜いガラクタだ。
おおかた修理に修理を重ね、丹精込めて長年愛されてきたのでしょうねえ」
猟書家、少年型人形『探求のオルガノン』は忌々しげに顔を歪めた。
「実に、吐き気がする。……ですが」
そして笑みを浮かべた。下劣と嘲るその口の形が、何よりも醜悪だった。
破滅と絶望を愛し、それだけを振り撒く外道の笑みである。
「だからこそ、僕が『仕上げて』やる意味があるというものですね」
オルガノンは卵型の物体を太陽にかざし、笑みを深めた。
災魔の卵。
蒸気魔導機械を災魔に変貌せしめる、まさに災厄の種である……。
●グリモアベース:予知者、ムルヘルベル・アーキロギア
「猟書家、探求のオルガノンが動いた。彼奴の狙いは巨大な蒸気船のようだ」
集まった猟兵たちを見渡し、少年めいた賢者が予知を告げる。
「オウガ・フォーミュラ『ミスター・グース』が作り出した"災魔の卵"。
それを使い、蒸気魔導機械を災魔に変え、そして戦力を増すつもりらしい。
残念だが、卵を植え付けること自体を防ぐことは、もう出来ないのだ」
グリモアによる予知にも限界はある。
僥倖なのは、まだ犠牲者がひとりも出ていないことだろう。
「オルガノンはどうにかして船内に忍び込み、出港後卵を植え付けたようだ。
現在、狙いとなった蒸気船……『フェザント号』は沖合を運行しておる。
すでにかなりの変異を起こしておるようでな、大きさはもちろん武装も生えている」
背後のグリモアが映し出したのは、洋上を行く巨大な異形の船のシルエット。
噴き出す蒸気は明らかに致命的な毒を孕んだ、黒紫色をしている。
船のあちこちからはねじくれた大砲が生え、接近の代償を予告していた。
「このまま船がいずれかの大陸に到達してしまえば、とんでもないことになる。
そもそも乗船員が取り残されたままなのだ。まだ、助けられるはずである」
"まだ"。
猟兵が失敗すれば、あるいは遅れてしまえば、その結果は……。
「まず、ワガハイはオヌシらを安全な海域に転移させる。
あちらの妨害を乗り越え、どうにかして船に取り付いてくれ。
もしくは、外側から攻撃して武装を無力化するかだが……方法は任せよう」
乗船者の救助も、武装の無力化も、どちらも重要な仕事だ。
空を飛ぶなり海を泳ぐなり、移動手段は必須である。
「それと、乗船者のなかに重要な人物がひとりいる。ニコラスという老人だ」
グリモアが、問題の人物の姿を浮かび上がらせる。
「彼はなんらかの理由で、船乗りたちとともに災魔化に巻き込まれたようだ。
だが彼はフェザント号の設計者であり、そしてガジェッティアでもある。
無事救助あるいは接触が出来れば、攻略のための力添えをしてくれるであろう」
オルガノンが、そんな人物を見逃してくれるとは思えないが。
「猟書家は船の何処かに居る。わざわざ探さずとも船を制圧しさえすれば、
あれは自ら出てきてくれるであろう。ただ、ひとつ問題があるとすると……」
ムルヘルベルは逡巡しつつ、言った。
「彼奴は高い可能性で、フェザント号そのものに融合するであろう、ということだ。
つまりオルガノンを斃すには、最終的には船を沈めるほかにない……」
生みの親である老人は、その事実をどう受け入れるだろうか。
しかし、手段を選んでいる暇はない。猟書家の侵略は止めるべき災害だ。
「……ある作家に曰く、人生を航海にたとえたこんな言葉がある」
ムルヘルベルは言った。
『風の向きが同じでも、ある船は東を行き、また別の船は西へ行く。
航路を決めるのは凪でも嵐でもなく、帆の向き――心の持ち方である』
本を閉じる。
「破滅を目指す航路は糺さねばなるまい。オヌシらの健闘を祈る」
それが、転移の合図となった。
唐揚げ
モナカです。猟書家シナリオ第四弾はアルダワ魔法学園から!
古びた蒸気船を乗っ取った『探求のオルガノン』を斃しましょう。
猟書家ってなあに? とか詳しい話は、下記のURLをご参照ください。
●参考URL:猟書家の侵略
『 https://tw6.jp/html/world/441_worldxx_ogre.htm 』
●プレイングボーナス条件(全章共通)
『この機械を建造したガジェッティアの助力を得る』
●プレイング受付期間
2020/11/16 08:30前後まで。
第1章 冒険
『巨大なガジェットやビークル、施設が暴走中』
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POW : ●『突撃する』:目標までの道中、蒸気や魔法の防衛装置がある。自分が道を切り開く。
SPD : ●『罠を解除する』:目標までの道中、蒸気や魔法のトラップがある。自分が解除する。
WIZ : ●『暴走を止める』:魔法、アイテム、超能力、知識etc…。それらを使って、暴走を止める
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●アルダワ世界:洋上
「何が起きた!?」
「わ、わかりません! 突然配管が……うわあああっ!!」
上級航海士と思しき中年の男性と、若い整備工のふたりが災難に遭っていた。
突然フェザント号の内部が急速に変異し、彼らを孤立させたのだ。
整備工が手入れしていた配管は、危険な毒蒸気を噴き出す!
「いかん、吸うな! あきらかにまずい!」
「こ、これ、もしかして俺たち、閉じ込められたんですか……?」
「……そういうことになるな。船長は無事だといいのだが……」
同時刻、操舵室。
「だ、ダメだ! 舵が効かない!」
「例の蒸気機械ジャックか? 航路はどうなっている!」
「最寄りの港へ向かっているようです。ただ、船速が……」
船体から生えた真鍮製の砲台は、操舵室からもよく見えた。
船長は苦虫を噛み潰したような渋面を浮かべる。
「手当たりしだいに港を襲うつもりか……!!」
「アッハハハハハ!!」
船の屋上部。探求のオルガノンは空を仰いで哄笑した。
「いいですね、順調だ! さあ、もっと素晴らしい姿へ成長しなさい!
そして陸地を火の海に変えてやりましょう。ああ、胸がすく……!」
そう言うとオルガノンなしゃがみこみ、片手を床につけた。
災魔化したフェザント号は、それを有機的に受け入れ、融合する。
「……チッ。あの老いぼれめ、ちょこまかと。まあいいでしょう。
どうせ人間を殺すなら、僕の憂いが晴れるような素敵なやり方がいい。
逃げれば逃げるだけ無駄なことを痛感させ、絶望させ殺しましょう……!」
……そして、船内!
「なんじゃこれは、何がどうなっとる……!」
ニコラス老人は額に汗を滲ませながら、通路を駆け抜ける。
その後を追い、真鍮色の触手が鋭利な先端を光らせ通路をはびこるのだ!
「まずい、何かわからんがとにかくまずいぞ、この状況は!
ワシの船が、災魔になったのか! こ、こんなことが……」
船そのものが造り手に、そして船乗りたちに牙を剥く。
急げ猟兵、妨害を乗り越え人々を救うのだ!
セツナ・フィアネーヴ
(災魔の卵……『災禍の巨神』と似ている、と思うのは考え過ぎなのか……?)
いや、今はまず船を止める
己の影からサイキックキャバリア『竜神機ケラヴノス』を召喚、航路上に陣取り待ち構える。
ケラヴノスの「雷鳴と嵐」の力(天候操作/吹き飛ばし)での嵐の領域と、
UC【凍える世界】によって周囲の海を凍結させ足を止め、
同時に奴の外部への攻撃に対し囮役を務めるぞ
船、つまり巨大災魔の“体内”までは届かせず
災魔自体には鎮静氷結の効果を発揮させる、というのは難しいだろうが……
“やれるか”じゃない、“やる”だけだ。
え、いや、ガジェットは、その、苦手で
一応購買で本も買ったんだが……まだ読めていなくてだな
※アドリブ他歓迎です
●凍てつく海
「――来い、ケラヴノス!」
セツナ・フィアネーヴの声に応じ、水面に映る彼女自身の影が拡がった。
それはこの世ならざる世界と此方を繋ぐ一種の門。
拡げられた影という世界の穴より現れたるは、雷鳴と影を司るもの。
見よ、あれこそが竜神機ケラヴノス。恐るべきサイキックキャバリアだ!
『おや? あれは……』
船の屋上に悠然と立っていた探求のオルガノンは、それを見て眉根を寄せた。
猟兵が来ることは想定済みだ、迎撃があるのも当然のこと。
しかし、あの女はたったひとりでこの災魔船を攻撃しようというのか?
『まあいいでしょう。ならば――消し飛びなさい!』
融合したオルガノンの意思により、無数の砲塔がセツナを狙う。
だが放たれた砲弾がケラヴノスに命中する寸前――突如として嵐が吹いた!
「うおおおおっ!?」
船内。
異形化した配管触手の攻撃をからくも逃れたニコラス老人は、つんのめった。
突然船が大きく傾き、ものすごい振動が全体を襲ったからだ。
「なんだ? まさかいきなり嵐でも来たってのか……?」
ニコラス老人は船内に居るため外の状況を知らなかった。
それでも彼の予測は、あながち間違ってはいなかった。
『これは……!!』
オルガノンは瞠目した。まず、砲弾を跳ね除けたあの嵐の規模に。
さらに彼を困惑させたのは、ユーベルコードが引き起こした超常現象だ。
すなわち、航路そのもの……海水の大規模な凍結による船の足止め。
『なるほど、考えましたね。しかしこの災魔船の出力ならば……!』
凍りついた海を、まるで砕氷船めいてめきめきと砕き、進むフェザント号。
ケラヴノスを守る嵐がぐんと収束し、まっすぐに災魔船に挑みかかった。
異形の大砲がケラヴノスを追う……いわば、囮役というわけだ。
「どうした、落とせるものならば落としてみろ。それとも、その図体は飾りか!」
セツナはケラヴノスのコクピットから吼えた。そして、船上を睨む。
「小賢しいガラクタめ……醜いゴミの分際でよくも僕の計画を阻んでくれますね!」
怒りの形相を浮かべたオルガノンと、セツナの視線がモニタ越しに交錯する。
オルガノンは、たしかにその機体を――雷鳴と嵐の化身の脅威を認めた。
そして誓ったのだ。なんとしてでも、あの醜悪なガラクタを破壊してみせると。
ヤツの捻れた美的精神にとって、力強く己を阻む竜神は何よりも鬱陶しかった。
それがセツナとケラヴノスの持つ力の証明でもあった。、
大成功
🔵🔵🔵
カタリナ・エスペランサ
人の誇りを穢すような手口、見過ごす訳にはいかないね
何にせよこのまま好きにはさせないさ
【架空神権】発動、此方から展開する黒風は事象の《蹂躙・ハッキング》に特化した瘴気の具現。
尤も既に制圧の進んだ敵の侵蝕に真っ向からぶつける訳じゃない、基本は《偵察+情報収集》の為のセンサー代わりにして罠の感知・ニコラスさんとの合流に用いるよ
勿論途中で他に巻き込まれた人も《救助活動》、黒風のセンサーに《第六感+野生の勘》と《罠使い》の知識も合わせて危険から《庇う》
ニコラスさんと合流できれば反撃開始だ
変異後であろうとこの船に一番詳しいのは彼だろうしね
その協力があれば黒風で侵蝕し返すのも有効打に繋げられるんじゃないかな
●黒風は命を護る
「どうやら、すでに接敵した猟兵がいるようだね……」
戦場に転移したカタリナ・エスペランサは、けたたましい砲声で状況を察した。
囮を引き受けているサイキックキャバリアの機影に一瞥をくれ、
彼女は本来の目的――つまり船内に取り残された人々の救助へと急ぐ。
ばさりと翼をはためかせれば、侵入者を拒む毒色の蒸気煙が吹き飛ばされる。
「間に合ってくれよ……!」
カタリナは甲板めがけ、さらに翼をはためかせて加速した!
同時刻、船のデッキにほど近い連絡通路にて。
「な、なんだこりゃ、何が起きてんだぁ!?」
「わかんねえよ、けどこのままはヤバいぜ!」
「なんでってこんなことに……!」
若い船乗りが三人、通路のど真ん中でへたりこみ泣き言を吐いていた。
そして通路の前後は、まるで怪物の口めいて無数のトゲが生えているのだ。
しかもそれは追い詰めた獲物を弄ぶかのように、徐々に徐々に狭まってくる!
「ふ、船に喰われるなんて最期は、御免だぁ~~~!!」
異形化した災魔船の牙にかかると思われた……その時。
「ここか!」
船乗りたちの真上、天井がバギャン!! と砕け、女がひとり降ってきた。
デッキから船内に潜入し、黒き風によって彼らの位置を察知したカタリナだ。
カタリナは怯えた船員たちと連絡通路の前後を一瞥し、状況を理解した。
「わざわざ獲物を追い詰めて弄ぶとは、まったく趣味が悪いな」
おそらくこれは、探求のオルガノンによる悪趣味なジョークなのだろう。
カタリナは、そんな暴虐を認めない。この船は人々の暮らしを支えてきたのだ。
そんな船と一緒に働いてきた船乗りが、船そのものに喰われるなど……!
「じっとしていてくれ、すぐに済ませるからね」
カタリナは目を閉じて、黒い風を通じて周囲の構造体にアクセスする。
侵食され変異した船の一部を、元の船に近い形に「書き換え直して」いるのだ。
異形の大口がすぐそばまで迫る。2メートル! 1メートル! 30センチ!
「「「も、もうだめだぁ~~~!!」」」
「――いや、もう大丈夫」
カタリナと船員たちを咀嚼するはずだった牙は、ギリギリで止まった。
そしてメキメキとを音を立て、牙や口蓋じみた亀裂が元の通路に戻っていく。
「へ、へえ? な、何が起きて……?」
「もう大丈夫ってことだけ、理解していればいいさ。……と、あともう一つ」
完全に腰が抜けた様子の船員にふわりと微笑を向けて、カタリナは言った。
「ひとり、急いで探さないといけない御仁がいるんだ。
向こうもこちらを妨害しているようでね、探知には骨が折れそうなんだよ。
……だからどうか、力を貸してくれないかな。アタシはそのために来たんだ」
船乗りたちは顔を見合わせ、いまだ腰が抜けた呆けたような顔で頷いた。
ニコラス老人の行方は杳として知れない。だが、ひとつの危機を救えはしたのだ。
大成功
🔵🔵🔵
華日・煙志朗
アドリブ絡み歓迎
外道が。
人の作った正しい技術の結晶を、こうも歪めやがるか
許せん所業だが…まずは人命救助優先か
俺は船員と例の爺さんの救命に腐心しよう
行くぞ…粒子変幻!
ナノロケットドリルを飛行に使う
ドリルで穴をあけるかチェーンアタックで腕を伸ばし船体に取り付く
同時にコード発動
群体ナノマシンへと自らを分解し分散
毒煙を避けつつ船内を【索敵】し
同時に船体構造の【情報収集】を行う
例の爺さんもそうだが、乗員たちも心配だ
発見し次第、同じく乗り込んでるであろう猟兵達に情報を伝達する
ナノマシンで突破できない箇所は群体を集結、ドリルに合体変形させ破壊
毒蒸気の蔓延はナノマシンを集中させ蓋を覆い食い止めてみせる…!
●変幻せよ、煙人間(ナノダイバー)
「まったく、これじゃ怪物の腹の中も同然だな……!」
フェザント号船内、囮を買って出た猟兵が作り出してくれた隙に乗じ、
華日・煙志朗は無事に潜入に成功していた……そこまではよかった。
しかし船内に入り込んだ彼を待っていたのは、予想以上の事態だった。
船の内装はグロテスクで胸のむかつく異形に変じ、あちこちで人を襲う。
しかもそこかしこから毒蒸気が入り込み、徹底的に命を奪おうとしてくるのだ。
彼が肉体そのものをナノマシンの群体に"変幻"出来るのでなければ、
突入直後に毒蒸気を吸ってしまい、すでに命はなかったかもしれない。
「人の造った正しい技術の結晶を、こうも歪めやがるか……」
外道、オルガノンに対する怒りがふつふつと湧き上がる。
しかし煙志朗は頭を振り、目的を思い出した。
いま為すべきことは、失われつつある人命を救うことなのだから。
『――あっはははは! いい気味ですねえ!』
その頃、探求のオルガノンは武装した船乗りたちを甚振っていた。
即死しない程度に弱めた毒蒸気を吸わせ、動けなくした上で追い詰める。
その気になれば、船を変形させて圧し潰すことなどたやすい話だ。
だが、それではオルガノンの気が紛れない。彼は醜悪なサディストである。
「お、俺たちの、船を……よくも……!」
『"よくも"? おかしいことを言うのですね。あなたがすべきなのは感謝ですよ?
なにせあんな醜く歪んだガラクタを、こんなに素敵にしてあげたのはこの僕です』
「黙れ、化け物め! 呪われろ!」
『アハハハ……呪われろ、ですか。低俗な文明にふさわしい低俗な捨て台詞だ。
所詮、付け焼き刃の文明に耽溺した愚かな人類では、最期は迷信に逃げ込むもの』
オルガノンは嗜虐的な笑みを浮かべ、船の一部と腕部を融合させた。
メキメキと外壁から腕を引き剥がすと、それは大斧めいた形を作り上げる。
『――愚かすぎて吐き気がするので、僕が自ら手にかけてあげましょう』
「させるか!!」
『!!』
そこへ煙志朗が間に合った。突入に使ったナノロケットドリルを射出!
オルガノンはとっさに斧型の異形腕で受ける……耐えきれず腕部が破砕!
『チッ、猟兵……! なるほど、この愚かなゴミどもを助けに来たと?』
「蒸気の通り道は蓋をさせてもらった。もうこの区画を覆うことは出来ない」
オルガノンは壁に手を当て、煙志朗の言葉がブラフでないことを理解した。
『……ここで遊んであげてもいいですが、気が変わりました。好きにすればいい。
どのみちこの災魔船に乗り込んだ時点で、お前も消化を待つ獲物同然ですから』
「なんとでも言え。これ以上、貴様に命を奪わせるものか」
オルガノンは舌打ちだけを残し、壁そのものに溶け込むように消えた。
煙志朗はすかさず壁をドリルで削る……しかし、そこに奴はいなかった。
「もうすでに、奴がこれだけ融合できるほどに災魔化が進んでいるのか……」
煙志朗は破壊された壁に手を当てて考えた。なぜ、奴は逃げ出した?
……理由はひとつだ。目下、オルガノンが一番消したい人間がいるとすれば。
「例の爺さんはまだ生き延びている、ということか。ならば、まだ目はある」
煙志朗は頷き、そしてへたりこんでいた船員に手を差し伸べた。
「すまないが、俺はここを離れる。だが、このあたりはもう安全なはずだ。
迂闊に動き回らずに、おとなしく避難していてくれ。この事態は必ず解決する」
「あ、あんたは一体」
駆け出そうとした煙志朗は、船員の言葉に足を止め、肩越しに振り返る。
「――通りすがりの、煙人間だ」
その言葉通り、彼の姿は煙のように霞み、そして消えていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
朱酉・逢真
心情)海の上・空の上どっちだろうと、ヒト運ぶ船は密室どうぜん。なンせ逃げ場が決まってる。ああ、追い立てて殺すにゃ最適ってなァ。船そのものを沈めるがいちばんラクだが、それじゃあ協力は得られまい。なら俺にできることなんざ自然と限られてくるものさ。
行動)船の外に人面鳥どもを放つ。ひどく憎まれるお前たち、飛び回り《過去》の注意をひきつけておやり。そうすりゃニコラス老への追っ手も緩むだろう。眷属ども、お行き。肉盾となり御老体を守っておやり。俺の問いを伝えて、返る言葉を猟兵たちに伝えてやりな。さあ御老体、教えておくれ。壱。この船を止めるならどこを攻める? 弐。お前さんの『雉』を締めてもいいかい?
●人面鳥が伝える言葉
「い、つ、ま、で……い、つま、で……」
それは死人の硬直した口が囁くような、おぞましい悲鳴じみた声だった。
以津真天、あるいは"いつまでん"。屍体の無念を伝える醜き人面鳥。
見た目もそうだが、問題は数である。一羽二羽というレベルではない。
ざっと500、いや1000匹近い人面鳥の群れが、フェザント号の航路を阻んでいた。
『ええい、次から次へと……気色の悪い化け物どもが!』
甲板上に現れたオルガノンは、その醜悪さと行動に苛立った。
物理的にひとつになりつつあるフェザント号の砲塔が、化け物鳥の群れを撃つ。
DOOOM……DOOOOM……砲撃のたびに、何羽も灼かれて、海へ落ちた。
「い、つ、ま、で……いつ、ま、で……」
『やかましい! どれだけの数がいるのですかこの腐れ鳥どもは!!』
DOOM……鳥は徐々に数を減らしている。はずだ。だが一向になくなりはしない。
『――ひひ。そりゃあお前さん。てめぇがあいつらの声を正しく聞くまでさぁ』
『な……!?』
オルガノンの足元にぼとりと落ちた鳥の残骸が、ぱくぱくと喋った。
あの死人の恨み節めいた、意思を感じさせない呻き声とはまったく違う。
オルガノンは、それが朱酉・逢真と呼ばれる神の声であることを知らない。
『なあ、耳をすましてみろよぅ。聞こえるだろ? いつまで、いつまでってよ。
あいつらはずぅっと待ってるのさ。いつまで《世》にへばりついてるのか、てな』
鳥の残骸が笑みらしき形を作った。それは、ことさらに悪趣味だった。
爆ぜた眼球がどろどろと腐りながら新しい形に捏ね合わされ、赤い輝きを放つ。
ぎょろりと、膿汁と腐敗の中から生まれた眼が、オルガノンを見上げた。
『てめぇら《過去》は、いつまで《この世》に居座ってやがるんだろうなあ。
だから"俺"が来るのさ。なにせ、俺は、"そういうもの"だからよぅ――』
『……ッ!! 僕を、死にぞこないとでも言うつもりか!!』
死骸の答えは、ひ、ひひ、というひきつるような笑い声だけ。
オルガノンは怒気満面の表情で、その死骸を踏み潰した。何度も何度も。
『僕は探求者。為すべきことを為すために、この世に再び蘇った存在なのです。
下劣な"神もどき"が僕を見下すなど……忌々しい。猟兵というのはこうも!!』
オルガノンは何度も何度も、死骸のあった場所を踏み続けた。
同じ頃。
『――てなァわけで、だ』
へたりこんだニコラス老の前には、やはり同じ声で喋る獣が一匹。
疫病を運ぶ鼠は、腐敗と病毒を司る逢真のもっともポピュラーな眷属だ。
『俺らは"そのため"にここへ来た。そしてお前さんに聞かなきゃならんのさ』
鼠はちうちうと鳴く。その目が赤く輝いた。
『質問はふたつだ、御老体』
「な、なんじゃと……?」
『壱』
鼠は言った。
『この船を止めるなら、どこを攻める?』
ニコラス老は唸った。状況が変転しすぎていて頭が回らないというのが本音だ。
しかし問われれば、熟練のガジェッティアであるその頭脳は働く。職業病か。
「それは……」
『ああ、もう一つの質問を聞いてからでも遅くはねえさ』
鼠は、言った。
『――お前さんの『雉』を、締めてもいいかい?』
ニコラス老は瞠目した。
言葉の意味するところは、いちいち問い返さないでもわかる。
鼠はちうちうと鳴く。船乗りが忌む害獣が。
最良の報せと最悪の報せをもたらすには、似合いの使いだった。
大成功
🔵🔵🔵
茜崎・トヲル
雉なの? 雉号。ふふは、いいなまえ!
おれも雉ってよばれることあるよ。「白い雉」で「はくち」。あれ、別のいみ?
おれはそれでいいんだ。
いまは猟書家の人をこうげきできねーかんじ? ぽいね。
なら人助けにぜんりょくできんじゃんね!
未来予知れんぱつ! ちかくからやばばなひとを助けていくぜ!
甲板ににげるのがいいのかな? みんなおなじとこ居たほうが守りやすいよね。
ヒナンユードーしてる猟兵の人がいたら、そのひとにしたがって。
いなかったら甲板ににげて! 船のなかよか逃げやすいとおもう。上空いてるし!
サイバーアイにマップひょーじ。ハンマーと斧を片手ずつもって。
待ってて、だいじょーぶ、出口も道もおれがつくるから!
●その者、白痴なれど
「にげて! あっちのほうに全力で走るんだ!!」
茜崎・トヲルは喉が裂けそうなほどの声量で叫び、ハンマーを振るった。
KRAAAAAAASH!! 行く手を塞ごうとせり上がった床があっけなく砕かれる!
『チッ。また新手の猟兵ですか、鬱陶しい』
探求のオルガノン……然り、まさに今船員を殺そうとしていた猟書家当人……は、こちらを見据え全力で駆け込んでくるトヲルを睨み、舌打ちした。
「いまはまだ、攻撃できねーとおもってたけどさ!!」
トヲルはへたりこんだ船員の頭上を、ひょうと軽く飛び越えた。
そして斧を振り下ろす。体重と加速を乗せた、鋼鉄をも断ち切る一撃。
オルガノンは不動。代わりに、真鍮の管が壁から突き出し斧と受け止めた。
尋常のものではない。おそらく、災魔化により硬度が激変している。
「予知がまにあってよかったよ。船のひと、ころされそうだったもんね」
「あ、あ……」
「……船のひと、はやく逃げて! あっちなら安全だから!」
トヲルは腰の抜けた船員を振り返り――そして、斬首された。
『僕を前にして目を離すとか、さては白痴か何かですかねこいつは』
ごとん、ごろごろと生首が転がる。オルガノンは侮蔑の眼差しで見下ろした。
さきほど斧を受け止めた真鍮管を引きずり出し、即席の剣としたのだ。
しかもそれは、オルガノンの身体と癒着し、一心同体となっている。
『まあいいでしょう。これで邪魔な猟兵は片付けられた。それでは早速――!?』
オルガノンは改めて船乗りを殺そうとした……だが身体がそれを妨げた。
そう、トヲルの身体だ。首がないのにひとりでに動き、オルガノンを掴む!
『こいつ、まさか……不死身だとでも!?』
「ふふは。そうだよ」
オルガノンに踏みつけられていた生首が、面白そうに笑った。
オルガノンは生首を踏み潰す。掴みかかっていた身体が痙攣し、後退った。
『船のひと、はやくにげろ! おれがとめるから!!』
「あ、ああああ!」
その声は、切断面からした――そして頸が、喉が、顔が急速に再生する。
取り落したハンマーと斧を拾い、オルガノンの真鍮剣と撃ち合った。
KRASH!! 即席の剣では分が悪い。今度の白兵戦はトヲルの勝利だ。
『チッ!』
オルガノンはハンマーに続く斧斬撃を回避し、壁に背をつける。
すると背後の壁が、まるでスポンジか何かのようにオルガノンを受け止めた。
『よくわからない男ですね。ああ、頭が悪いのはその再生力の代償ですか』
「あんたには誰もころさせないぞ。この船のひとたちは、いいひとたちなんだ」
『……会話が成り立たない。白痴の分際で僕を邪魔するな』
オルガノンはじわじわと壁と融合し撤退しようとしている。トヲルは胸を張った。
「おれはこれでいいんだ。いまだって、そのおかげでひとを守れたから!」
『…………ふん』
トヲルはオルガノンを追わなかった。別の区画で悲劇の未来を予知したからだ。
壁と完全に融合し姿を消した猟書家に構わず、トヲルは通路を駆ける。
去り際の船乗りの声――あれは恐怖の声だった。誰に? ……どちらに?
「さー、じゃんじゃんやばばなひとを助けるぞー!」
トヲルは考えない。……考えられない。
その者、白痴。なれどその在り方は、まさしく――。
成功
🔵🔵🔴
月凪・ハルマ
船内に人が居るのか……マズいな
この状況じゃ、敵の腹ん中に居る様なもんだ
◆SPD
超多目的スマートフォンを使用しての【ハッキング】で
変異速度を少しでも抑えながら船内を捜索
物理的な罠は【早業】で回避、もしくは解除
船内に残された人達を発見次第、保護
予め指定UCでボートを召喚しておき、それで船外に脱出させたい
変異船の外部武装も出来るだけ破壊しておこう
中には責任感とか色々あって残ろうとする人もいるだろう
そういう人は自分達と行動を共にしてもらおう
一緒に居られないと護る事すら難しい
それと、気が重いが……
ニコラスさんにはフェザント号を破壊しなければ
この状況を解決できない、という事を伝えておかないと
(【覚悟】)
●ガジェッティアとしての矜持
「こっちです! 落ち着いて乗り込んでください!」
月凪・ハルマは、甲板に逃げ出してきた船員たちをボートに誘導した。
いまだ災魔船と化したフェザント号の外部武装は破壊しきれていないものの、
囮になった猟兵の活躍により、ボートを出発させる余裕はギリギリありそうだ。
「このあたりの変異は抑えられてます。だから、慌てなくて大丈夫です」
「あ、あんたは……もしかしてアルダワ魔法学園の"転校生"なのか?」
「はい。この事態を止められれば一番よかったんですけどね……」
ハルマは歯噛みした。世界を超え未来を予知する猟兵とて、絶対的英雄ではない。
時として救えない命もある……これはまだマシなほうかもしれないのだ。
「と、俺のことはさておき、皆さんの無事が重要です。さあ、あのボートに」
「あ、ああ。ただ、船長と、あとニコ爺さんがまだ居ないんだ」
「……みたいですね」
ハルマは甲板に逃れられた船員の数を数える……この船の規模にしては少ない。
おそらくまだ、相当数の乗組員が船内に取り残されているのだろう。
「ニコ爺は……あの人、逃げりゃいいのに船に残るって言い出して行っちまったよ」
「え? じゃああなたはニコラスさんと一緒に居たんですか?」
「お、おう。つっても此処に来る最中に出くわしたぐらいでよ」
「……ニコラスさんを最後に見かけたのは?」
「第2ブロックのほうだ、そこからどこへ行ったのかはわかんないよ、この状況だ」
「……ありがとうございます。他の方々は、必ず俺たちが救い出しますから」
ハルマは仲間たちを心配する船乗りに言い聞かせ、ボートを出発させた。
あれは最寄りの陸地まで自走してくれるガジェットだ。追撃される心配はない。
この甲板へ敵の追撃がないあたり、中で別の猟兵が奮戦しているのだろう。
「……船に残る、か。ってなると、もうニコラスさんはあのことを知ってるんだな」
『そうだぜ。あの御老体、自分でなんとかするつもりらしいや』
「!」
ハルマは顔を顰めた。その声は、赤い目をした鼠が発していたのだ。
『場所はわかってるからよう。行って守ってやりな。手はいくらでも要る』
どうやらその鼠は、船内に潜入した別の猟兵の遣いであるらしい。
ハルマの超多目的スマートフォンに、ニコラス老の現在位置がマッピングされる。
「……同じガジェッティアとして気持ちはわかるけど、無茶はしないでくれよ」
ハルマは祈るような声音で言い、あたりに要救助者が居ないことを確認した上で、船内へと突入した。
老人の気持ちは痛いほどよくわかる。
だからこそ、なんとしてでもこの事態を一刻も早く解決しなければならない。
ハルマは焦る気持ちを抑え、変異した船の妨害に対処し、通路を駆けていく……。
大成功
🔵🔵🔵
御門・白
性格が悪いやり口。
作り手のつもりなら他人の創作を弄ぶより、自分で一から作ればいい。
なんて凝り固まった「過去」に言っても無駄
行こう
私単体では半妖怪といえども海を自由に進むことはできない
行こう、ツクヨミ
ツクヨミは海中でも活動できるけれど、それと戦闘行動が出来るかは別の話
それを補うのは私の役目
ツクヨミが進む周囲の海水に【呪詛】を掛けて
ツクヨミは海を統べる神ともされる、それを侵すことは何人たりとも適わず
これで少なくとも接近はできる
あとは……何をするにしても時間稼ぎが必要
フェザント号が陸に近づくのを妨げないと
八岐大蛇をツクヨミに降ろす
蛇は水神、これで起動を確保
蛇体を絡めて進行と、武器の可動域を封じる
●水神は船を喰む
「――性格が悪いやり口だこと」
探求のオルガノンという猟書家の人となりを聞いた時、御門・白が思ったこと。
それは呆れ……というよりも、侮蔑。そして、変わらぬ諦観だった。
オブリビオンとは過去の残骸、すなわち生命を持たない亡者である。
自己のアイデンティティをも、記憶の継続性すらも喪失した不滅のものは、
半妖たる彼女からしてみれば、完全に「終わった」存在であり、事実その通りだ。
オブリビオンは、何も生み出せない。
奴らは未来を破壊するものであり、過去そのものだから。
「――ツクヨミ。お前も、結局は……」
オブリビオンマシン、ツクヨミ。それもまた、過去の残骸のかたちのひとつ。
白は言葉を口に出しかけ、そこでやめた。
今は言うべきではないし……それこそ、"言ったところで無駄"なのだ。
オブリビオンマシンというモノがどのような存在であれ、
その力を己のものとして使役し、そして行使するのは自分である。
「海を統べる神ならば、この海とて……支配し、妨げてみせる」
ツクヨミの身体に降ろすは、日本神話に名を残せし大悪竜、すなわち八俣大蛇。
ツクヨミとは月や夜だけでなく、海をも支配する神だという。
月と海は密接に関係したものだ……敵もまた、骸の海より現れ、月を侵す。
猟書家を敵に回すにあたって、これほど最適な権能はあろうか。
ツクヨミのボディがめきめきと変異し、四肢は蛇体に変じていく……。
『……あれは。ほう。あれは、なるほど、面白いですね!』
同じ頃。
フェザント号の外部に出てきたオルガノンは、ツクヨミの機影を認めた。
苛立つかと思いきや、口元に浮かべたのは紛れもない笑み。
『なるほど、外の世界にはああしたものもある、ということですか。
オブリビオンの力で汚染された機械にオブリビオンの魂を降ろす……ふふふ!』
――なんと、愚かな。
少年型ミレナリィドールの口元は、たしかにそう動いた。
『己が行使する力の代償を知っているのかどうか、どちらにせよ愚かしいですね!
そして、美しいですが、だからこそ忌まわしい。我らの仇敵たる猟兵如きが!』
称賛はない。オルガノンが認めたのはオブリビオンマシンという存在のみだ。
ましてやそれが、巨大な八俣の大蛇となりてフェザント号を阻むとあらば。
『人類に味方する愚か者には、過ぎた玩具だということを教えてあげましょう。
さあ、災魔船よ。あの愚か者を焼き払いなさい。そのための力を僕は与えた!』
ドウ、ドウドウ――DOOOOM……KRA-TOOOM……!!
船体に絡みつく蛇機を、無数の砲塔が狙い、そして焔で包み込む。
蒸気の獣と骸の竜の闘争。どちらが悪なのか、余人では見分けがつくまい。
たしかなのは、ツクヨミと白の力は砲撃に耐え、そして船をとどめていたということだ。
大成功
🔵🔵🔵
御魂・神治
おー、えらい事になっとるやないかい
先ずは結界術の力場で空中浮遊して沈まん様にして
海面突っ走って船までいこか
これで右足沈む前に左足上げるような事せんでもええでな
船に接近したら天将、仕事や
天将を船内に実体化させる
天将は取り残されたジーさんとクルーの救出活動
情報収集で居場所を突き止めてサッサと救出や
ワイは外から兵器の破壊や
エネルギー充填した出雲と高天原の狙撃と爆龍札の範囲攻撃で破壊
カウンターが飛んで来たらオーラ防御と天誅のスナイパー射撃で相殺
中の機械類の暴走は天将のハッキングやジャミングでジャムらせる
...それと、ジーさんから得られた情報はこっちに回してくれんか?
●エセ術師、海を渡る
巨大な異形の船に八俣の大蛇めいたキャバリアがへばりついている。
他方、サイキックキャバリアと思しき別の機体は嵐を起こし敵の砲撃を撹乱。
海は凍りついてはまだらに呪詛で染まり、船は無理矢理に進もうとする。
まるで怪獣大決戦だ。そんな中を、ひとりの男がひょいひょいと渡っていた。
それはたとえるなら、天狗が得意とするという飛び術のようでもあった。
「おー、えらいことになっとるやないかい。あらくたいなあ」
訛りのきつい男……御魂・神治は、飄々とした面持ちであった。
そもそも、これだけ逆巻く海を生身で渡るという時点で只者ではない。
そう、只者ではない……この男の場合、厄介者という意味でだが。
「よいしょっとぉ!」
混迷の海を結界術の応用で渡り終えた神治は、軽々と甲板に着地。
素早く印を結び術式を起動すると、ワイヤフレーム状のヴィジョンが出現した。
「天将、仕事や。取り残されとるジーさんどもを見つけて救出してこい」
『……あなたは?』
「あ? 決まっとるやろ、あの邪魔な砲台とかやぶるんや。適材適所や」
『そうですね。大雑把でいい加減なあなたに最適な仕事だと思います』
「いちいちキッツいなあほんま! ……まあええわ、情報はこっちに回してくれ」
『わかりました』
天将は冷たい一瞥をくれると、神治のそれと同じ銃器を背負い船内へ。
あれは優秀なAIだ。それに、すでに中に突入した猟兵も数多く居る。
天将からさっそく転送されてきた情報には、ニコラス老人の安否も含まれていた。
先立って接触した猟兵が、後続のためにデータをばらまいているのだろう。
「中のことは中の連中に任せりゃええやろ。さて――」
神治は両手に"出雲"と"高天原"、ふたつの神器銃を手にした。
……周囲の甲板がめきめきと変異し、蒸気獣もどきとなって分裂する!
「えらい歓迎してくれるやないか、こりゃ暴れがいがありそうやな!」
神治は前方に跳躍。背後の蒸気獣もどきの爪が、頭があった場所を薙いだ!
甲板をごろごろと転がり、神治は振り向きざまに高天原を撃ち、もどきを破壊。
同時にもう片方の手に持った出雲が、死角に回り込もうとしていたもどきを撃つ!
「こそこそしとったところで丸分かりや。相手が悪かったなあ!」
BLAM、BLAMN!! トリガーが引かれるたび、蒸気獣もどきが爆ぜ砕ける。
まるで銃撃の輪舞だ。そして、擲たれた爆龍符が一斉に起爆し、火柱を噴く!
「どうせ見とんのやろ、猟書家のなんとか。次出したらどうや?」
神治の言葉に呼応するかのように、新たな"もどき"が甲板に出現する。
神器銃に霊力を注ぎ込みながら、神治はコキコキと首を鳴らした。
「数が足らへんやろ数が――倍は持ってこんかい、なぁ!!」
銃火が獣もどきを撃ち殺し、神治は神楽めいてとめどない足取りで舞い踊る。
この男、実に厄介である――敵にとっては厄介なほどに、腕が立つのだ!
大成功
🔵🔵🔵
フェルト・フィルファーデン
なんて悪辣な真似を……!
……いえ、ここは冷静に努めないとね。
猟書家よ、アナタの思い通りにはさせない。アナタを打ち倒し、全てを救ってみせる!
まずは人命を最優先に。空を飛び船内に急いで向かいましょう。
【フェイントをかけつつ【第六感や【野生の勘も駆使して攻撃を掻い潜り進むわ。
わたしの体躯ならどこか入れる隙間があるはず。無ければこじ開けてそこから突入よ。
乗り込んでUCを発動。兵士人形達を呼び出し人海戦術で乗組員の方々を探すわ。
10体1組で行動し常に情報を共有。比較的安全なルートを確保しつつ乗組員の皆の元へ早急に向かってちょうだい。
わたしはその間にある程度船を制圧し安全地帯を作っておくわ。……お願いね?
●悪辣なる猟書家
フェルト・フィルファーデンの放った兵士人形たちが、船の内部に散開する。
先遣の猟兵たちが残したデータにより、船内の状況把握はスムーズに終わった。
異変は現在も進行中であり、逃げ遅れた船員は数多い。
肝心のニコラス老人はというと、事態の解決のため船内に残るつもりらしい。
あるいは、船を破壊しなければならないという事実を受け容れかねて、
ひとりでなんとかしようと独断専行しているのか……そこまではわからなかった。
「なんとか乗り込めたけれど、むしろこれからが本番ね……」
兵士人形の数ならば、船全体をカバーすることが出来るだろう。
ひとまず、船員の身柄は確保出来る……問題があるとすれば、オルガノンだ。
探求のオルガノンは、この災魔船フェザント号と半ば融合している。
つまり、奴は船そのものと同化する形で自在に移動が可能なのだ。
「放っておいたら、安全地帯どころではないわ……なんて悪辣な猟書家なのかしら。
わたしの騎士人形たちよ、全方位を警戒しなさい。まずは敵を見つけ出すわ!」
フェルトの周囲に妖精騎士の人形たちが集い、盾と剣、弓と槍を構える。
そしてフェルトは、兵士人形たちから送られてくる情報を常に参照しつつ、
船内で暗躍するオルガノンを探すため、探索を開始するのだった。
『……また、新手の猟兵ですか』
そんなフェルトの姿を、パイプ管の間から睨みつける影ひとつ。
探求のオルガノンは、次々に現れる猟兵の存在に辟易していた。
『ちっぽけなフェアリー風情が、僕の美しい災魔を破壊しようとするだなんて。
いい加減思い知らせてやらないといけませんね……これ以上は目障りですよ』
オルガノンは片手に蒸気の魔導書を召喚し、邪悪な魔法を解き放った!
「――! 上……!?」
もしもフェルトが兵士人形たちを使って情報共有していなければ、
オルガノンが何処にも居ないことに気付くことはなかったかもしれない。
しかしその情報共有能力のおかげで、フェルトは自衛することが出来たのだ。
騎士人形がいち早く反応し、盾を掲げて邪悪な魔法の弾丸を防ぐ!
『チッ! 小賢しいフェアリーですね……!』
「そこね、猟書家! アナタの思い通りにはさせないわ!」
騎士人形が弓矢を放つと、オルガノンの周囲のパイプ管がうごめいた。
それは盾のように重なって矢を受け止める。オルガノンはにたりと笑った。
『反吐が出ますね、その偽善者めいた顔。そんなに僕が気に入りませんか?』
「偽善でもなんでも構わないわ。アナタを打ち倒し、すべてを救う。それだけよ」
『……いっそうあなたを殺したくなりましたよ。猟兵!!』
パイプ管が鋭利な触手となって襲いかかった。騎士たちの盾が迎え撃つ。
フェルトはオルガノンだけを見据え、触手を切り払い突撃した!
「わたしは死なない。斃れるのはアナタだけよ。他には、誰も死なせない。
ええ、そうよ……絶対に守り抜いてみせる。そのためにわたしは来たのだから!」
剣と魔術とがぶつかりあい、オルガノンは後退を余儀なくされた。
フェルトの持つ気高き意思が、邪悪なる猟書家の嗜虐心を上回ったのだ。
大成功
🔵🔵🔵
ベイメリア・ミハイロフ
ニコラスさまをお守りしに参ります
ニコラスさまに出会う事がなく
他の船員の方にお会いする事になれば
その方々をお守りするように行動を
毒耐性を活用しつつ
空中浮遊・空中戦にて船に近づき
妨害となる機材は第六感にて見切りかわし
或いはUCにて破壊を
…ニコラスさまの大切なお船を
傷つける事になるのは、心が痛みます
しかしながら、そのようなお船に
これ以上悪さをさせるのもまた、悲しく思います
ニコラスさま、もしくは船員の方々をお見つけいたしましたら
オーラ防御を展開しつつかばうようにしながら
どこを破壊すれば沈没する事なく暴走を止められるかの情報収集をし
防衛装置・トラップを破壊、鎮圧し
皆さまが避難できる場所を確保致します
●尊ぶべきもの
「……話は聞いてるよ。この船を壊さなきゃならないんだろう?」
船内に突入したベイメリア・ミハイロフは、ニコラス老人と接触に成功した。
老人の表情は想像よりも厳しく、声音には懊悩と苦渋が滲み出ている。
「ニコラスさま……」
ベイメリアは表情を翳らせた。垣間見えた老人の苦悩が、彼女の心を痛ませる。
平時であれば、きっと彼はこんな辛そうな表情はしないのだろう。
ガジェッティアとして尊敬され、自らが作り出したものを子のように愛する。
そんな好々爺めいた職人ぶりが、眼差しだけでも感じられたからだ。
「……はい。残念ですが、このフェザント号を元通りにすることは出来ません。
災魔化してしまった以上は、最終的には船そのものを破壊しなければ……」
「まあ、そうだろうさ。こんなに別物になっちまったんならな」
ふたりが進む船内は、まるで生き物の体内めいて変異していた。
真鍮のパイプ管は、さながら体内を駆け巡る血管や神経といったところか。
脈動する代わりに流れる毒蒸気が、時折裂け目から吹き出して獲物を脅かす。
ベイメリアの聖者としての浄化の力がなければ、危なかっただろう。
「しかしながら……このままお船にこれ以上の悪さをさせるのも……」
「ああ、わかってるよ。オレだって認められねえ。そんなこたぁ」
だからといって、何もかも納得ずくで飲み込めるわけがないのだ。
外からは、囮役を引き受けた猟兵たちが、砲台や武装を破壊する轟音。
フェザント号は断続的に小さな揺れに襲われる。もう、戦いは止められない。
「だがよ。ひとつよかったこともある」
「……それは?」
「オレが最後に立ち会えるってことさ」
ニコラス老人は不器用に笑った。
「そのための手伝いも出来るとなりゃ、まあ、最悪よりは少しマシさ」
「……ありがとう、ございます。その力を貸していただいて」
ベイメリアは頭を下げた。苦悩の果ての選択に対する、彼女なりの敬意だ。
「ならばこそ、わたくしどもは全力でお船を止め、被害を防ぎきってみせます。
他の船員の方も、地上の方々も、誰一人として傷つけることなく勝利するのです」
そのためには、こんなところで立ち止まっているわけにはいかない。
「……船を沈めるなら、やはり魔導蒸気エンジンをぶっ壊すのが一番だ。
行き方はだいたいわかる。足止めも喰らうだろうが……頼むぜ、お嬢ちゃん」
「ええ! もちろんでございます。何に変えても、お守りいたしましょう」
ベイメリアはようやく微笑み、力強く頷くと、老人とともに駆け出した。
もう取り返しがつかないことになったとしても、それでも護れるものはある。
そう信じて戦うしかない――ベイメリアもニコラスも、それは変わらない。
大成功
🔵🔵🔵
スキアファール・イリャルギ
……また難題を吹っ掛けられた気がします
いえ、でも以前よりは器用になりました、多分
素早さだとか優雅さだとかを求められるのは相変わらず苦手ですが
【Circus】で飛翔形態、腕と脚を影の獣のようにして空から行きます
腕と脚の爪は属性攻撃の炎と雷を纏わせ、さらに化術で鋭くしておく
あと気休め程度にガスマスク装着
蒸気を霊障で払おうにも……ある程度は頑張ってみますが、全部は無理でしょうし
皆さんが救助をし易くなるように武装の無力化に専念
大砲から撃ち出されたモノは避けるかオーラで防壁を張るかで対処
呪瘡包帯を大砲に巻きつけ伸縮させ乍らの移動もよさそうですね
そして呪詛を放ち動きを鈍らせ、爪で大砲を纏めて壊していきます
●化物、空より来たる
「お、おい……なんだありゃ?」
甲板まで逃げ延びたふたりの船乗りが、空を仰いだ。
何かが、来る。鳥? それにしては、シルエットがずいぶんと妙だ。
まるでヒト……いや、違う。どちらでもない。両方の特徴を持った化物だ!
「あ、あれも助けなのか? にしちゃ随分……」
「と、とにかく伏せろぉっ!」
船乗りたちは頭を下げて腹ばいに斃れる……直後、KRA-TOOOOM!!
いびつな角度で生えた砲台が、鳥人間めいた異形のシルエットを砲撃した!
毒蒸気色の爆煙が燃え上がり……焔を引き裂いて、恐るべき爪が飛び出す!
『さすがに次直撃食らったらまずいですね、これは』
ガスマスクの下から漏れたくぐもった声を、船乗りたちは聞きつけただろうか。
鳥人間はその翼をばさばさとはためかせて加速し、猛スピードで砲台に接近。
影の獣じみた漆黒の爪を振るい……真鍮色の砲台を破壊した!
「「うわああああっ!!」」
KA-BOOOM!! 砲台は派手に爆発し、船体を大きく揺らす。
ふたつ、みっつ……新たな砲台が別の箇所に生えると、鳥人間を追った。
『……やっぱりまだまだ上手くいかないなあ』
鳥人間……スキアファール・イリャルギは、不満げな様子で呟いた。
彼の頭の中では、もっと穏やかかつスタイリッシュに決まったはずなのだ。
しかし不器用(スキアファールの基準による)な手足はなかなか応じてくれない。
甲板で怯える船員たちに侘びたいところだが、どうやらその余裕はないらしい。
BOOOM……砲弾が飛来する。翼をはためかせ、ふたつ、みっつと回避した。
『これ以上高度を上げるわけにはいきませんので……っと!』
スキアファールは腕から呪瘡包帯を放ち、ぐるぐると砲台の根本に巻きつけた。
そして翼で加速しながら包帯を巻き上げ、ワイヤーめいて船体に取り付く。
砲塔に爪を突き刺し、がりがりとはらわたを掻き出すようにして真っ二つに裂き、次へ。威力で薙ぎ払うのではなく、ひとつひとつを無力化していくのだ。
抉った爪痕には可視化されるほどの呪詛が残り、異形の再生を許さない。
まるで肉を腐らせる毒虫じみた、効果的だが醜怪な戦い方であった。
ちらりと、甲板に目をやる――船乗りたちは頭を抱えながら怯えていた。
(……まあ、いまさらだな)
スキアファールはそれ以上考えないようにして、次の砲台に飛びかかる。
怪物のように扱われるなど慣れたもの……いや、そうあるべきなのだ。
なぜなら己は怪奇。それを忘れてはならないし、消してもならない。
その力で人の命を救えるならば、スキアファールにはそれでよかった。
大成功
🔵🔵🔵
ユーディット・ウォーカー
列車の次は船ときたか
なんともオブリビオンとは…愉快なものじゃな!
日が差しておるがアンコールに乗ってるのでヘーキじゃ
バーニアと魔術で飛んで武装無力化、そして進入路・脱出路を作成しよう
少しばかり乱暴にはなるが…ま、問題あるまい
設計者のガジェッティア…ニコラスと言ったか?
船の通信網を一部浸蝕するなりなんなりで連絡をつけよう
他の猟兵に助けられておれば楽じゃが
そうでなくともそやつの仲間の船乗りたちを助けるためじゃ、どうにか応えてもらおうぞ
ニコラス
お主の意思で終わらせよ
と船の弱点や構造を聞いていい感じに破壊しよう
災魔の卵で改造されてはおるじゃろうが
素体の味を活かしてこその改造じゃ
そうじゃろう?オルガノンよ
●この世の尽く愉快なり
メキメキと音を立てて、凍りついた海を無理矢理に割って進む災魔船。
それを目の当たりにしたユーディット・ウォーカーは、愉快げに笑った。
「列車の次は船と来たか! なんとも愉快なものよのう、オブリビオンとは!」
骸の海に沈みしオブリビオンマシンと命を共にする吸血鬼にとって、
その醜怪は嫌悪よりもまず愉悦が勝るらしい。だが、危険な災魔である。
「アンコールよ、あまり派手にやりすぎるなよ。船を沈めるのはまだ先じゃ!」
DOOM……異形の砲台が砲撃を開始。ユーディットは魔術結界を形成した。
砲弾が空中の障壁に弾かれて爆砕し、空を毒蒸気色に染め上げる。
そして爆炎を切り裂いて現れた無数の機械剣が、砲弾を叩き斬った。
「じゃが、多少は乱暴になっても仕方あるまい。問題はないじゃろうからな!」
ヒュン、ヒュンヒュン……無数の機械剣が、次々にフェザント号を襲う!
『あれもオブリビオンの機械ですか……猟兵の分際で、忌々しい』
船の外に現れた探求のオルガノンは、アンコールの機影を睨みつけた。
自分たちの仇敵がオブリビオンの力を使役する時点で我慢ならないが、
オルガノンを一番苛立たせたのは、それが「機械である」ということだ。
オブリビオンマシンは美しい――オルガノンの美的感覚では、美しい。
それは、愚かなる人類や奴らに味方する存在が使っていいものではないのだ。
『落ちなさい……!!』
ガシャン! と大量の砲台が出現し、一斉にアンコールを狙う!
「ほぉー……なるほど、あれがオルガノンとやらか。その挑戦、乗ってやろう!」
ユーディットは残りの機械剣を周囲に滞空させ、砲弾を次々に切り裂く。
アンコールを中心として回転する剣の刃が、盾となり矛となるのだ。
「ニコラスよ、聞こえるか!」
『あぁ!? 誰だこの声は。外か!?』
同時にユーディットは侵蝕によって船の通信網を乗っ取り、老人に呼びかけた。
「そうじゃ、我はいま外で、お主の船をこんなふうにした輩と戦っておる」
『……!』
「もう仔細は把握しておるな。彼奴は我が請け負うゆえ、お主がおわらせよ。
もはやこの船は取り戻せぬとしても、終わらせるのはお主の意思であるべきだ」
『……言われなくたってわかってらぁ。外側から後方のブロックを破壊してくれ」
「心得た!」
ユーディットは砲台を破壊しながら、指定された箇所に機械剣を突き立てる。
船内では、今まさに異形化した通路に飲み込まれかけていたニコラスらが、
外側からの破壊により通路を突破し、動力部へ辿り着こうとしていた。
『邪魔をするな! 醜い猟兵の分際でェ!!』
「おうおう、ずいぶんと昂っておるなあオルガノンよ。そんなに悔しいか?
ならば我らを落としてみせよ、それともお主の"もどき"では難しいかのう!」
『だまりなさいッ!!』
ユーディットはけたけたと笑いながら、執拗な砲撃を躱し続ける。
敵の目を引き付け、ニコラス老人と護衛の猟兵たちを支援する。
その作戦は、たしかに上手く行っているようだ。
大成功
🔵🔵🔵
ディルクニア・エリスランサス
あァ?
酒も金もねぇから受けたが、船を沈めるかどうかだのなんだの……
妙な事になってるじゃねぇか
ンなもん、どうせ「敵諸共に壊す」一択だろうになぁ
*
防護魔法
ナ・ティータ・エキルの頑丈さ
種族特有の悪環境への耐性
コレらを頼りに突き進む重装タンク型のパワーファイター
解決方法は大体腕力か魔力で吹き飛ばすという雑なもの
*
方針:
真正面から罠の突破を図る
毒蒸気は劣悪な環境への耐性で凌ぎ、噴出孔をメイスで叩いて潰して塞ぐ
罠や魔法は防護魔法とナ・ティータ・エキルで真正面から耐え、壊しつつ踏み越える
道中に人が居れば、酒でも持ってないかと聞きながら(主に腕力式で)助けていく
見た目は兎も角、解決方法が兎に角男前なヤサグレ女
●巨人の如き
「――ここもダメか」
毒蒸気まみれのブロックを、のしのしと闊歩する女がひとり。
ディルクニア・エリスランサスは、何かを探しているようだった。
要救助者? それとも、倒すべき敵?
……どちらでもない。彼女が探しているのは……。
「船っつーならワインセラーのひとつもあると思ったのによぉ!」
…………酒であった。
元・食料庫を離れたディルクニアは、壁という壁を破壊しながら突き進む。
獲物を追い込むために蔓延した毒蒸気も、ディルクニアには通じない。
むしろ、その毒成分がイイ感じで脳に作用している疑いもあった。
なにせ、一応は要救助者がいないかちらちら見てはいるのだ。見てるだけだが。
「酒も金もねぇから引き受けた仕事だが、どうも妙なことになってやがンな……」
KRAAASH!! メイスが、牢獄の鉄格子めいていたパイプ管を破壊する。
破損箇所から噴き出す毒蒸気……その穴を、さらにメイスでひしゃげさせ粉砕。
「どうせ敵もろともにブッ壊すだろうに、何をそんなに困ってンのかねぇ」
こんな台詞を、もしもニコラス老人が聞いたらどう思うだろうか。
ある意味正しくはある――彼の性格ならば、呆れて呵々大笑するかもしれない。
ディルクニアは豪放磊落な女だ。最終的に結果が達成されれば過程は気にしない。
というよりもそもそも、そんなところへ頭を回さないタイプなのである。
少なくとも、酔えていない時はそうなる。そして、今がそうだった。
「ひいいい! だ、誰か助――え?」
その時、声が聞こえた。今にも死にそうな、怯えた男の声が。
ディルクニアは面倒そうにため息をつきながら、手近な壁を叩き壊した。
KRAAAASH。抜けた先では、船乗りが妙なけだもの"もどき"に襲われている。
それが船から別離した蒸気獣"もどき"であることは、ディルクニアには関係ない。
「こっちは酒が呑みたくてイライラしてんだよ、邪魔するなッ!!」
メイスでは届かない――代わりに、ディルクニアは魔力砲撃をぶっ放した。
レーザーじみた極太の魔力が、"もどき"を飲み込み一瞬で蒸発させる。
「た、たた、助かった! なああんた、礼を」
「酒」
「え?」
「酒はねぇのか。ねえならどっか行け」
ディルクニアは涙ながらにすがりついてきた船員を突き飛ばす。
船員はよろめきつつ、本気でディルクニアが去ろうとしているのを見ると、
「ま、まま、待ってくれ! ある、酒ならあるぜ!」
「――ほぉ」
ディルクニアはにこりともせず振り返った。船員は懐からスキットルを取り出す。
震えながら差し出されたそれをひったくるように奪い、そして一気に嚥下した。
「ああ……ち、ちびちび呑むつもりだった高い酒……」
「…………足りねぇ」
「っておい!? 一気飲みしといて言う台詞がそれかよ!」
「うるせぇな。さっきのは色々要ンだよ、あんま使いたくねぇんだ……」
ディルクニアは空になったスキットルを放り返し、のしのしと歩き始める。
「ま、待った。どっちに逃げりゃいいんだ?」
「さぁな。もう助けたろ」
「……さ、酒がほしいなら、種類が積み込まれてる貨物棟を――うおっ!?」
船乗りの襟首をひっつかむディルクニア。笑顔が、怖い。
「気が変わった。後についてきな」
船乗りは怯えよりも呆れが先に来た。
この女、途方も無い飲兵衛だとようやくわかったからである。
成功
🔵🔵🔴
レイン・レーニア
(アドリブ・連携歓迎)
やっほー!お兄さんだよー!
いやあすごいね!蒸気魔導世界本元の蒸気船!落下で断片的な知識と技術しか残ってない島とは大違…
僕?『レーゲン』と<空中戦>で空飛んできた。
なあに、年中異常気象な海と空に比べれば砲撃なんて!
でも毒の蒸気はねー。救助の邪魔になる。
という訳で外から見えた船内の人に尋ねてるんだけど。
毒を噴き出す管の根元に行って熱を止めてしまえば蒸気も止まるはず。
設計者なら場所分かるかな?
ガジェッティアの末裔のおかげで今の手足があるのだからね。安心して脱出できるようにしてみせるとも!
海から補給したら熱源まで直行だ、『ルルスス・カロ・フィエリ』、冷やして蒸気を止めてしまえ!
●水の翼を雄々しく広げ
災魔船フェザント号の進水速度は、猟兵たちの尽力で止まりつつあった。
しかし問題は次から次に湧いて出てくる無数の砲台、そして毒蒸気の煙である。
明らかに有害なそれは周囲の生態系を破壊し、しかもいまだ止まらない。
どうやら大気中に極めて長く残留する厄介な性質を持っているらしく、
周囲の海域は汚染され、魚が腹を見せて浮かび上がり、ウミネコは水没する。
このあたりが死の土地に変わりつつあるのだ。なんと厄介な蒸気獣か!
「あーあ、大変なことになってるなあ……まったく、悪趣味だよこれは」
レイン・レーニアは水の翼『レーゲン』を背に広げ、船を見下ろしていた。
対空砲火は、キャバリアに騎乗した猟兵たちが請け負ってくれている。
さもなくば、この砲撃のなかをレインが飛んでくるのは難しかっただろう。
難しかったというだけで、それを平気な顔でこなすのがレインの怖いところだが。
「蒸気魔導世界本家本元の蒸気船を、こんな災害の怪物にしてしまうとはね。
まさしく災魔……いや、感心してる場合じゃないな。あの蒸気を止めないと」
レインは時折飛んでくる砲撃を躱しながら、ぐるりと船を一周した。
毒蒸気が噴出している巨大なパイプはいくつもある。対処療法は効果が薄い。
となれば、その根元……つまり蒸気を供給する根幹を叩くしかあるまい。
「もしもし、誰か船の中の人、聞こえるかなー!」
レインは『マーレ』の情報改竄機能を応用し、魔力通信網に介入した。
返ってくる声があるかどうか……ダメ元での試みである。
しかし。
『誰だ、外の奴か! 聞こえとるぞ、こちらニコラス!』
「おお、設計者の人だね! よかった。聞きたいことがあるんだ!」
レインは外の状況と、自身の目的を手短に(かつフレンドリーに)伝えた。
「いますぐあの毒蒸気をなんとかしたいんだ。そのために熱を止めたい。
だから大本の場所が知りたいんだけど……どうかな? わかりそうかい?」
『いくら災魔化っつったって、船の形を根本的には変えられねぇ。それなら――』
「……なるほど、あそこだね。あとはお兄さんに任せて!」
レインは安請け合いして飛翔する。その時、ニコラスが言った。
『なああんた、一体どうしてそこまでして身体を張ってくれるんだ?』
レインは朗らかに笑った。
「詳しい説明は省くけど、今の僕の手足はガジェッティアのおかげであるんだ。
だからその遠回しは恩返し、かな? 同職として思うところもあるしね!」
『そうか。なら――頼んだぜ』
「任せてくれたまえ!」
レインは獲物を狙う猛禽類めいて海水に触れ、燃料=水分を補給。
そしてぐんと急上昇し……目的のポイントに義肢で掴みかかった!
「『ルルスス・カロ・フィエリ』……その力で、蒸気を止めてしまえ!」
融合した秘宝の力により、蒸気管の根元が急速に冷えていく。
毒蒸気は目に見えて薄らぎ、そして船の進行速度も大きく低下した!
成功
🔵🔵🔴
枯井戸・マックス
◇心情
「俺も道具だから主観も混じるが……道具を大事にしない奴は、まあなんだ、大嫌いだね」
だいぶ言葉を選び、異形と化した船を安全な海域から見つめながら
◇UC
陸に向かわれるのも面倒だ
俺は船のタービンを破壊して回ろう
魚座と水瓶座の武装を召喚し潜航【水泳】
両肩に装備した水瓶座は、自身の後方に向けて水流を発することで水中加速
そのまま水面上の砲台に狙われないように進みながらUC発動
「突き詰めれば道具は人の役に立つためにある。人に害する道具は潰れなきゃならない……ごめんな」
粗方船が減速したら乗船して内部の人命救助にあたろう
ニコラス老人らしき人がいれば、船を止めるための心臓部のありかを聞こうか……心苦しいがね
●道具の使い方、道具の想い
「……俺も道具だから、主観も混じるが……」
いまだ蒸気による汚染が届かない海域から、災魔船を見つめる男。
声音は男が発しているように聞こえるが、実際はそうではない。
枯井戸・マックス。彼の本体は、頭に乗せたマスクのほうなのである。
肉人形を利用したヒーローマスク。それが、マックスという猟兵であった。
つまりは、マスクという道具そのものだ。
同化してくれる人間がいなければ、戦うことも難しい特異な生命体。
死霊術の応用で誤魔化しているものの、道具という本質は変わらない。
それはマックスの限界でもあり、同時に誇りでもあった。
だからこそ。マックスは、異形化した蒸気船に強いセンチメントを抱く。
「……道具を大事にしないやつは、まあ……"大嫌い"だね」
嘆息。独り言とはいえ、相当に言葉を選びオブラートに包んでいた。
本音をありのまま吐き出してしまうと、怒りに歯止めがかからなそうだからだ。
「悪いな。――壊させてもらうぜ」
マックスは戦域へと全速力で突入した。
同じ道具を、その手で完膚なきなまでに破壊するために。
猟兵たちの内外同時攻略により、災魔船の勢いは大きく減じられている。
この汚染された海と空の問題は重篤だろうが……今考えることではない。
それでもまだ動きを止めないあたりは、さすがは"もどき"といったところか。
『タービンだ! 誰かタービンを破壊してくれ、船の動きが止まらねえ!』
「! この声は……ニコラス老人か? なるほど、内部からの通信だな」
おそらく、護衛している猟兵がなんらかの形で手を貸しているのだろう。
「こちら船外、いまタービンが何処にあるのかを探してる。場所を教えてくれ」
『おお、助かる! ……なんて台詞、本当は言いたくねえが』
魔力による通信越しでも、ニコラス老人の苦み走った顔はありありと想像できた。
マックスは水中深くに沈み、汚染を避けながら加速する。場所は――あそこか。
『船にこういう台詞を使うのも妙に思われるかもしれねえがよ』
通信越しにニコラスが言った。
『せめて痛みがねえように、一思いにふっとばしてやってくれ』
『……ああ。請け負ったよ』
道具とは、突き詰めれば人の役に立つためにある。
人に害する道具は壊さなければならない。
もしもフェザント号に意思と呼ぶべきものがあったとするならば、
それは自身の現状をどう思い、どう願っただろうか?
拒むか、望むか。それは、もうわからないし、確かめようもない。
「――ごめんな」
声はけして届くことなく、代わりに仕込み鎖と斬撃が船体およびタービンを直撃した。
成功
🔵🔵🔴
ヴィクティム・ウィンターミュート
ハッハー!なるほど、ジューヴが大層はしゃいでるらしい
元気なのはいいことだが、悪いことしちゃいけないって学ばなかったかい?
ちなみに俺は学んだこと無いね
セット、『Alcatraz』
足場を作って跳んで渡る…実にシンプルだ
こちらへの攻撃も問題ない、元々こいつは障壁だ
しっかり射線を遮れば怖くないし…そうだな、武装を『囲む』か
蓋をするみたいに、複数の障壁で閉じてしまえばいい
さて、これで侵入は成功だな
爺さんを探しながら進もう
道中のパンピーはどうにか救助して、障壁で囲んで保護する
首尾よく接触出来たら、船の構造と乗組員を教えてもらう
さて、全員を助けに行くとするか
完璧に勝ち、完璧に負かす
屈辱を与えるには丁度いい
矢来・夕立
移動には【紙技・炎迅】を用います。
モーターボートにしましょう。用があれば誰かを運べますし、乗組員さんの避難にも使っていただいて構いません。
そう考えると逃走経路の確保が一番いいですね。
爆弾、刀、その他式紙。持てる手段は全て使って吹き飛ばします。
もう死ぬしかない船に遠慮することはないでしょう。
クソガキのくだらない遊びで潰されるガジェットがいくつあるのやら。
特に船なんてもの、将来にも大きな利益を作ったはずです。
…とはいえモノが壊れるのには、まあまあ意味があると思います。
新しくモノを作れる人間が生きているのが前提ですが。
次に作られるものが、過去の最高傑作を越えるかもしれません。
●破壊しか出来ずとも
『猟兵ども、次から次へと……!!』
災魔船フェザント号は、もはや完全にその動きを止めていた。
半ば同化した探求のオルガノンが、船外に現れ表情を歪める。
船内の猟兵たちも排除がままならず、結局船員はひとりも殺せていない。
一番忌々しいのはあの老いぼれだ。おお、なんと醜くしぶといゴミどもか。
『この僕が、せめて美しく作り変えてやろうとしているのを邪魔するとは。
……もはや僕自身が相手をするほかにありませんか。ならばまず外の連中を――』
その時である。
突如として、フェザント号を真っ白な壁が折り重なり、ドーム状に包んだ。
『これは……ユーベルコードか!?』
然り。
オルガノンは見た。汚染された海域に鋭く切り込んでくるモーターボートを。
どうやらそれもユーベルコードの産物らしい。問題は乗っている面子だ。
いかにも性根がひねくれた悪童が、ふたり。こちらを睨んでいた。
侮蔑と嘲り――そして、挑発。心の底からどうでもいいものを見る目。
己が人類社会に向けてきたまなざしを、そのまま返されたような屈辱がある。
『猟兵ども……ッ!!』
もはやオルガノンに余裕綽々の笑みはなく、憎悪が少年型人形を染めていた。
悪足掻きじみた砲撃が始まるが、白い壁は壊れることも退くこともない。
こうしてフェザント号は、完全に足止めを喰らい、虜囚の身となったのである。
「便利ですね、あれ。オレがいなかったらあれで移動するつもりだったんですか?」
折り紙で作り出したモーターボートを運転しながら、矢来・夕立は問うた。
挑発的な笑みを浮かべた悪童――ヴィクティム・ウィンターミュートが頷く。
「まあな。だがアシが見つかってよかったぜ。ばっちい水は触りたくねえ」
「同感です。あれを利用すれば、避難経路も構築できそうですね」
「そのための"Alcatraz"だよ。追い打ちなんぞ絶対にさせねぇ」
いかにも義憤に燃える台詞であるが、ヴィクティムの表情は違った。
「完璧に動き、完璧に勝ち、完璧に負かす。それが、一番屈辱的だろ?」
「オレはそこまで性根が腐ってないので、同意はしかねますね」
「ハハハ! 今日聞いた中で一番クールなジョークだな」
「本気なんですが」
「いいから運転集中しろよ――そら、案の定来なすった」
ヴィクティムが顎でしゃくった先、海面に現れたのは真鍮色の怪物だ。
オルガノンが差し向けた蒸気獣"もどき"である。シャチをモチーフにしたか。
「クソガキはクソガキらしく、人形遊びが好きなようですね」
夕立は正面衝突を嫌い、大きくハンドルを動かしてカーブを描いた。
自然モーターボートは派手に揺れる。ヴィクティムは体勢を崩しかけた。
「おいおいチューマ、もう少し落ち着いたドライブを心がけてくれよ!」
「乗り心地に関するクレームは受け付けていません、同乗自体慈善事業でしょう」
「"そこまで性根が腐ってない"って、どの口がほざいたんだ?」
「この口ですが」
「そういうとこだよ、ったく」
シャチ型蒸気獣もどきが追いすがる。ヴィクティムは片手をかざした。
すると電脳魔術の見えない網が"もどき"を絡め取り、自壊プログラムを注入。
真鍮で出来た怪物は、喰らいつくような姿勢からバラバラに崩壊していった。
「これで乗船賃はロハだ。いいだろ?」
「考慮はします」
夕立はぴくりとも笑わず、身動きの取れなくなったフェザント号の側面へ。
甲板に逃げ延びた船員たちが見えた。それを、ヴィクティムの障壁が包み込む。
「ほらよ。これで今度こそ貸し借りなしだ」
「いいでしょう」
夕立は何も言っていない。ただ、ヴィクティムはその狙いを察していた。
次の瞬間カゲの姿は朧に霞み、見上げればすでに空中にいる。
投擲したものは苦無――ただし、即席の爆薬をくくりつけた破壊用だ。
真鍮色の船体に突き刺さった苦無が、派手に爆発する。フェザント号が揺れた。
爆発によって開けられた大穴の向こうには、へたり込んだ船乗りたち。
異形化した船にいまにも殺されかけていたのである。爆破はこのためだった。
「ところで」
モーターボートに着地した夕立は、ヴィクティムをちらりと一瞥した。
「モノを壊すことについて、端役さんはどう思いますか?」
「あ? 勿体ねえの一語だな。ジューヴはモノの道理がわからねえらしい。
"道具は大切に"、それと"悪いことはしちゃいけない"はガキでも知ってる」
「端役さんは学習していると?」
「おいおい、何聞いてやがるんだ」
ヴィクティムは哂った。
「――学んだことなんざねえよ、生まれてこのかた一度もな」
そして悪童たちは水面を跳ぶ。物分りの悪いガキを"わからせる"ために。
オルガノンは船の心臓部に先回りするため、忌々しげに舌打ちし、姿を消した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『探求のオルガノン』
|
POW : スチーム・リフレクション
対象のユーベルコードに対し【魔導書から蒸気魔法】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
SPD : ビースト・ショータイム
いま戦っている対象に有効な【蒸気獣もどき】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ : エレメント・カース
攻撃が命中した対象に【魔術印】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【次々と発生する炎や氷、風の魔法】による追加攻撃を与え続ける。
イラスト:らいらい
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠鴛海・エチカ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●脱出不可能のバトルフィールド
猟兵たちのユーベルコードにより、フェザント号を包む周辺海域は凍りついた。
そして戦場を覆うように、巨大な白い壁がドームめいて折り重なっている。
オルガノンは逃走不可能となった形だ……猟兵全員を殺さない限りは。
同時に猟兵たちの尽力が功を奏し、非戦闘員はほとんど脱出に成功していた。
"ほとんど"――ただひとり、ニコラス老人を除いては。
「この船は、オレの船だ。だから、オレは看取りてえ。看取らせてくれ」
老人とてガジェッティアだ……しかし戦闘力ではあまり期待できないだろう。
それでも、彼は残ることを選んだ。身の危険は承知の上だと言う。
「お前さんたちには迷惑かけちまう。だがどうか、老いぼれのわがままを許してくれ」
彼は、そう言って猟兵たちに頭を下げた。
そして、異形に成り果てたフェザント号が、花開くようにして"広がった"。
立ち込める蒸気は、まるで花弁から漏れ出た芳香のようにも思える。
花びらの中心にあるのは、この蒸気獣もどきの心臓部――つまり蒸気エンジン。
そこには、船体そのものと融合したオルガノンが立っていた。
『ああ、ああ、ああ! まったく、醜く、愚かで、どうしようもない連中ですね。
ならばいいでしょう。全員皆殺しにして、僕自身の力で災厄を引き起こすのみ』
オルガノンは少年型人形のかたちを保っているものの、それはあくまで一部だ。
この異形化したフェザント号そのものが、オルガノンの一部であり舞台である。
そこかしこの壁や床が変異し、真鍮色の怪物――同じ"もどき"を生み出す。
『華やかなりし蒸気に呑まれ死になさい。救う価値もない醜怪なものども。
いずれ滅びるこの世界に、歪んだモノは不要だ。いますぐに消えればいい』
恐るべき蒸気魔法と"もどき"を生み出す猟書家の力が、猟兵たちに牙を剥く!
●プレイング受付期間
2020/11/20 18:59前後まで。
レイン・レーニア
(アドリブ・連携歓迎)
看取るだなんて、詩的な言い回しだね?
まるで親しい友人や家族に向けたかのよう…
…いや、彼にとってはそういうの同然なのかな。この船は。
そっかそっか。…それじゃ、僕は君の意志を尊重しよう。
じゃあ何するかと言うとこの…何だっけ?そうだ!ガジェットハンマー!
本家ガジェッティアから見てどう?エンジンかけるタイミングとかさ。
どう最後の調整すればあの人形君達を一発で打ち壊せる威力が出ると思う?
さて!船はこんな形してないし獣が彷徨いてる訳ないだろ?ちょっと邪魔なんだよね君ら。
『レーゲン』で高く上昇、急降下と『ヒュエトス・ヴロヒ』の降下地一点集中重力乗せたハンマーで潰させてもらうよ!
ベイメリア・ミハイロフ
ニコラスさまのお覚悟、しかと受け取りました
ならば、わたくしは盾となり剣となり、戦うのみでございます
邪なる者よ、黙りなさい
この方の尊き決意、醜怪などとは言わせません
必要ならば毒耐性も活用しつつ
この者の攻撃は、なるべく第六感にて見切り回避を
但しニコラスさまに攻撃が向かうようでしたら
オーラ防御を使用しながら庇うように
攻撃を受けた場合は、環境耐性・火炎耐性を活用し
ダメージ軽減を図ります
近い所に魔術印が付与された場合はその箇所の破壊を試みます
お船を傷つけますこと、どうかご容赦を…!
とにかくニコラスさまのご無事を最優先に
こちらからの攻撃は高速詠唱からの全力魔法で
撃破対象が複数いる場合は範囲攻撃にて抗います
月凪・ハルマ
……ニコラスさん、覚悟を決めたんだな
なら、俺も応えないと
◆SPD
俺の戦い方に有効な蒸気獣……探知能力が高い個体かな
同時に追捕や広範囲の攻撃手段を持っている可能性もある
先手を打ち、攻撃される前に天墜で叩き潰していこう
それ以外の攻撃は【見切り】【残像】で躱し、同時に
ニコラスさんも【武器受け】で守りつつ機を伺う
(【情報収集】)
真に狙うべきは蒸気エンジンのみ
僅かにでも隙があれば、破砕錨・天墜【リミッター解除】
エンジン起動と同時に【破天剛砕錨】発動
蒸気エンジンに向けて【早業】で【捨て身の一撃】
オルガノン
猟兵として
ガジェッティアとして
そして、人と共に在るモノとして
―俺は、お前を許さん
※アドリブ・連携歓迎
カタリナ・エスペランサ
追い詰められた小悪党、人の作品に寄生しないと碌に戦えないようなガラクタが大声で決めつけてくれるじゃないか
過去の亡霊が今に出しゃばる道理も無い。大人しく骸の海に沈むがいいさ
【失楽の呪姫】発動、魔神の魂を励起する事により《封印を解く+リミッター解除+ドーピング+限界突破》で自己強化。
ニコラス翁が残るなら離れないようにして守るよ
《戦闘知識+第六感+見切り》で敵の動きを先読み、攻撃は黒槍の《属性攻撃+カウンター+先制攻撃》で《吹き飛ばし》対処だね
振り撒く《焼却+ハッキング+蹂躙+属性攻撃+範囲攻撃》の劫火は万象を終焉の概念に塗り潰す
有用な対策は物量を浪費しての延命くらいだ、片端から敵を焼き払うとしよう
●その戦い、己だけのものに非ずして
――"看取らせてくれ"。
ニコラス老人の使った言い回しを、レイン・レーニアは好ましく思った。
「詩的な言い回しだね。まるで親しい友人や家族に向けたかのような――」
何気なくそう呟いたところで、レインはふっと笑い、頭を振った。
「いや、失礼したね。"ような"ではなく、"そう"なんだろう。十分伝わったよ。
……だから僕は、君の意志を尊重するよ。全霊を賭けて、汲んでみせるとも」
レインはそう言ってニコラスに微笑みかけた。
年齢は4、50は離れていそうなのに、レインの言葉は年の差を感じさせない。
かといって年長者への敬意を欠いているかというと、それは否。
そう、彼の声音もまた、同じ志を持つ友に向けるそれだったのだ。
ニコラスがこの船を家族のように感じているのと同じように。
レインもまた、ニコラスと同じ打倒の意志を、強く持っているということである。
もちろん、ニコラスの言葉に同調したのはレインだけではない。
「……覚悟を決めたんだな、ニコラスさん」
ヤドリガミであり、そしてガジェッティアでもある月凪・ハルマは静かに言った。
その表情は帽子のつばで伺いにくいが、あえて覗き込むまでもない。
声音と言葉の調子だけで、ハルマのいまの心中は十分に推し量れたからだ。
……彼もまた、覚悟と決意を固めた。
ニコラスの覚悟に応えようという強い意志の力である。
もうひとつ感じられるもの……それは、オブリビオンに対する強い怒りだった。
わずかに面(おもて)を上げたことで、ハルマの片目があらわになる。
彼のことをよく知る者ほど、目つきの鋭さに驚いたことだろう。
睨みつけるのは当然、探求のオルガノン――込められた感情は、義憤だ。
「オルガノン、戦いが始まったら、いちいち言葉を交わしてる余裕はないだろう。
だから、今のうちにあえて言うぜ――俺は、お前を赦さない。何があってもだ」
『ほう? たかが人の似姿を得たガラクタごときが、僕にずいぶんな大口を』
オルガノンは、おそらく魔術師としての優れた慧眼で本性を見抜いていた。
ハルマはたじろがない。敵の挑発や揺さぶりに、いまさら揺れはしないのだ。
「猟兵として、ガジェッティアとして――そして、人とともに在るモノとして。
人の生み出したものを玩弄し、無価値と断ずるお前を認めるわけにはいかない」
『ふん……ならばその怒りごと、あなたという無価値物を破壊してあげましょう』
「おやおや、大口を叩いているのはいったいどちらなんだろうね?」
相変わらず上から目線で見下すオルガノンを、鼻で笑う声。
カタリナ・エスペランサはぎろりと睨みつけられても、少しも臆さない。
神すらも殺す雷の使い手が、猟書家を恐れる理由など欠片もないからだ。
「ガラクタというのはキミのことだろう? 追い詰められた小悪党の分際で。
人の作品に寄生しないとろくに戦えないくせに、決めつけが過ぎるというものさ」
『……貴様……!!』
「図星を突かれて怒髪天を衝いたかい? ならアタシも少しは胸がすく」
カタリナはせせら笑い、赤桃色の瞳を挑戦的に細めた。
「過去の亡霊が、現在(いま)に出しゃばる道理なんてこれっぽっちもない。
そのプライドをズタズタにされて、絶望の顔で骸の海に沈むのが楽しみだよ」
『僕を見下すなッ!!』
怒り狂ったオルガノンの蒸気魔法が、鋭い魔法の矢となって放たれた。
掟破りの不意打ち攻撃――カタリナは避けようともしない。そこに、一陣の風。
「……わたくしは、職人ではございません。ですから、ニコラスさまのお覚悟を、
心の底から理解できる――とは、言えないのでございます」
盾を掲げ、蒸気魔法の矢を受け止めたベイメリア・ミハイロフが言った。
「しかしそれでも、わたくしは人間です。多くの人に助けられ生きる、人間です。
わたくしどもは誰一人とて、決して独りで生きているわけではございません」
青緑色の双眸は、穏やかながらも苛烈な『守る意志』に煌めいていた。
「邪なる者よ、知りなさい。人の世は、多くの人々の意志が重なって続くもの。
そして人を助ける道具こそは、その結実……いわば、人生の結晶なのです。
あなたのような邪悪に、それを無価値と断じて貶める権利などございません!」
『ハハハハッ! だから醜く価値が言っているのさ、僕は!』
オルガノンは嘲笑を浮かべた。
『人間は不完全で愚かで無知で、そしてどうしようもないほど脆弱だ。
人生の結晶? つまりは人間の愚昧さを凝縮したガラクタということだろう?』
「……哀れでございますね。あなたは、そうやって決めつけることしか出来ない。
わたくしはあなたを憐れみます。人の決意の尊さを知らぬ、"終わった者"よ」
『……!!』
侮蔑よりもなおオルガノンを苛立たせるもの――それは、憐憫である。
なぜなら憐れみとは、自分より弱いモノに対して向ける感情だからだ。
ベイメリアは、オルガノンを強大な敵などとこれっぽっちも思っていない。
ただすぐにでも討ち終わらせてやるべき、救われざる弱者とみなしている。
それが、高慢なる少年人形にとっては、なによりも屈辱的だった。
「……ありがとよ、兄ちゃんに姉ちゃんたちよ。オレもこいつも、幸せ者だ」
四人に守られるニコラス老人は、寂しげに笑った。
言葉に偽りはない。フェザント号はこんな暖かな猟兵たちに送られるのだから。
ただその最期が歪められたことだけが、老人にとっては悲しかった。
「頼むぜ――オレも、オレの出来ることをするからよっ!」
『老いぼれめ。貴様に出来ることなど、何一つないッッ!!』
オルガノンが動いた。さきほどの牽制とは比較にならぬ強大な蒸気魔法だ!
「させません! わたくしは盾となり剣となり、その力を否定いたします!」
ベイメリアは己の持つ聖者の力を、輝くオーロラめいた清浄な障壁に凝縮した。
そして盾を掲げ前に飛び出す。蒸気魔法の波動は神々しき力に相殺され、霧散!
しかし散らばった魔力がフェザント号の船体に付着するとその箇所が歪み、
真鍮色の魔物とでも呼ぶべき、"蒸気獣もどき"に変じて雄叫びをあげた!
「あれがオルガノンの侵略蔵書の力か! 手勢を増やさせたりするかよ!」
「所詮"もどき"を生み出しただけじゃ、何も出来ないと教えてあげよう!」
ハルマ、そしてカタリナの両名が動き、両翼に攻撃を飛ばした。
カタリナは魔神の魂を励起し、虹色の羽根から恐ろしい黒雷を迸らせる。
ハルマは爆破手裏剣と魔導トンファーで、出現したもどきを即座に破壊するのだ。
フェザント号が敵の傀儡に利用されることへの怒り、
そして歪められた船体の一部を壊さなければならない無念。
ふたつの感情をさらなる攻撃の活力に変えて、ふたりは広域範囲攻撃を続ける。
蒸気獣もどきの出現速度は、並の大量召喚ユーベルコードを上回るほどだ。
もしもあのレディ・ハンプティが、無事にこの世界に現れていたなら。
魔王の娘たる魔女の生み出す獣は、量も強さもこんなものではなかっただろう。
彼らの戦いは、決して無駄ではなかった――それが、こんな形で証明されるとは。
「うーん、とはいえこのままだと後手後手に回って攻めきれなさそうだね。
となると、まずはお兄さんが活路を拓くとしようか。そしてこういう時は――」
レインは意味深にニコラス老人のほうを一瞥し、不敵に笑った。
彼の義肢が蒸気を吹き出し、そしてユーベルコードを発動する。
水の魔力が液体金属めいてひとりでに集まり、掌の中でひとつの形を得た!
「……ガジェットショータイムか! しかもそりゃ、ハンマーか!?」
「ご明察。本家ガジェッティアから見てどうかな? 良く出来てる?」
「こりゃあたいしたもんだ、急ごしらえにしちゃ強そうだぜ!」
レインはニコラス老人の言葉に、嬉しそうに頬を緩めた。
真鍮色のハンマーは、そもそものサイズが人の背丈を軽く超えている。
しかも豪快なハンマー部分には、これまたゴツい蒸気エンジンがついていた。
つまりエンジンの排気そのものをブースター代わりに使うシンプルな鈍器だ。
「……けど、まだ一つ足りない。あとちょっとの調整が必要な気がするんだ」
レインはニコラス老人に目配せをした。
「教えてくれないか。君の経験と、その知識で。最後の調整の仕方を」
「……よおし! そこまで言われちゃ男がすたるってもんだ!」
ニコラスは愛用のスパナを取り出し、ハンマーの調整にかかる。
当然、そんな無防備な隙をオルガノンが許すわけがない!
『この僕の前で、これ以上醜いガラクタを作るんじゃあないッ!』
「言ったはずでございますよ! あなたに、人の意志を否定する権利はないと!」
ふたりを滅するために凝縮した蒸気魔法の一撃を、ベイメリアが受け止めた。
さらに一歩前へ。剣型のメイスを振るい、蒸気獣もどきを鏖殺する!
「わたくしは職人ではございません。ですから、崇高な道具は作り出せない。
けれども、わたくしには戦う力がある。人を守り、道を拓くこの光の力が!」
『忌々しい聖者め……! 滅びるべき世界を守るのは害悪だと知るがいい!
世界はすべて、骸の海に沈むべきなんだ。破滅こそが最高の完成なのだから!』
「まったく目障りだよ、そのありきたりで陳腐な終末観。腹がよじれそうだ」
ベイメリアの障壁を食い破ろうとした"もどき"を、カタリナの劫火が滅する。
炎は"もどき"の残骸を融解させながら強く燃え上がり、毒蒸気をも塗りつぶした。
オルガノンはそこでようやく、劫火と黒雷が持つ霊性を察する。
『この雷に炎……まさか、僕の施した魔術式を破壊しているのか!?』
「そうとも。これは主神に叛き追放された魔神の魂、それが生み出す神意の欠片。
まあ、これだけの出力を引き出すのは、アタシとしても負担が大きいけどね」
カタリナの片目から、どろりと赤黒い血の涙が流れた。
「だが、キミのことは認めない。キミが生み出す歪んだ粗悪品のことも。
終焉を招く劫火に灼かれ、無力を噛みしめるがいいさ。それがキミには似合いだ」
『この、生意気な女めッ!!』
魔術印を刻み込む魔力の矢が飛来する――カタリナは黒槍を振るい、相殺。
「おっと、いいのかい? アタシにばかりかまけていて」
『――……!!』
オルガノンは、注意を逸らしてしまったことを後悔した。
頭上。とっておきの"破砕錨・天墜"を振り上げたハルマの影!
「うおおおおッ!! 思い知れぇっ!!』
KRAAAAASH!! 全体重と加速を込めたアンカーの振り下ろしが突き刺さった!
オルガノンの人形体は真っ二つが裂ける。血の代わりに噴き出す汚染液体!
『ああああああッ!! こ、こんなガラクタごときが、僕を――!!』
オルガノンは切断面を真鍮色のコードで繋ぎ、急ごしらえの修復を施した。
敵の攻撃の勢いが、目に見えて衰える。ベイメリアは攻撃に転じた!
「裁きの光を受けなさい――ジャッジメント・アロー!!」
八つの属性を束ねた虹色の光が、一条の矢となって戦場を貫いた。
無理矢理につなぎ合わされた傷口を、光の矢がこじ開け、滅ぼし、抉る!
『ぎゃあああああ!?』
「――よし、これでおしまいだ! あとはお前さん次第だ、兄ちゃん!」
「いいね。じゃあもう一発、重いのをお見舞いするとしよう!」
レインは背中に水の翼を生み出し、義足の重力制御魔法で垂直上昇した。
そしてトップスピードに達した瞬間、速度はそのままにベクトルを反転させる!
尋常の飛行術式では絶対に不可能な、360度反転垂直加速……その速度たるや!
「船はこんな形をしないし、獣が彷徨うわけもないよね? ちょっと邪魔なんだ!
彼の覚悟と決意、そして僕らみんなの怒り! とくと味わうがいいさ!!」
蒸気エンジンが最後の加速を担い――破城槌が、真上から突き刺さった!
アンカーが刻みつけ光の矢がこじ開けた傷口を、レインの一撃が割裂する!
『い、猟兵……醜く無価値なゴミどもが、ァアアアアアッ!!』
すさまじい量の汚染液体が噴出し、そして断末魔じみた絶叫が響き渡る。
波及した衝撃がもどきをことごとく吹き飛ばし、粉砕し、すべて否定した。
それはまさしく、四人――いや、五人が叩きつけた渾身の一撃である!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
御門・白
月の神、とは故郷でついた渾名
ヒトではないから人の心がわからない、と
仕方ない
そう振る舞ってきた
ご老体、あなたの感傷は合理的ではない
―――だけど
私の寝首を掻く、ツクヨミ?
……信用はしてないけど、信頼はしてる
あなたは、あんなのに舐められるのは嫌い
厄介な呪詛を起点とする敵の攻撃を耐えながら
式を送ってニコラス翁へ伝言
最期まで見届けてあげて
溜めていた魔力を解き放ち力場を放射
暦の神の神威、ご覧あれ
時間を操り、「猟書家の手で変えられた形」だけを押し戻す
日月の精気とヒトの想念
受け続ければ物とて精神を宿す
私だけじゃない、船が抵抗している
お前の造った姿は嫌いらしい、猟書家
見届けてあげてください
あなたの子の、戦いを
ユーディット・ウォーカー
くふふ、醜怪なのはどちらであろうな
ニコラスの愛したフェザント号…変わり果てた姿じゃ
まあ割と我、こういうの好きじゃけども。かっこよいお花じゃ…
じゃが我とアンコールの方がかっこよいからの?
オルガノンが融合したというのなら我らもまた同様にアンコールと融合するとしよう
我が身を暗黒の炉心と定義し、三つの世界を灰と化した終末を糧にして、再演とゆこう
人機一体と言うやつじゃな。人ではなく鬼であるが、の
ちょっと見た目禍々しくて暴走したオブリビオンかや?
って感じやもしれぬが、格好良いから大丈夫じゃろ…うむ。
ただのオブリビオンではたどり着けぬ、
美しき滅びが此処にあるとオルガノンにも分かってもらえれば良いがのう
セツナ・フィアネーヴ
ああ言う割に、奴は結局思考も行動も蒸気と魔導からは離れられないのか……
ケラヴノスで交戦する。
限定した嵐による妨害を行いつつUC、『災禍の武器』のダガーやジャベリン等を狙いは正確にはつけず敵へと投擲。
奴の性格的に自身を狙ったものをUCで相殺した上で他を外した事を嘲笑いそうだが……構うものか
単なる直接攻撃だと思わせれば、本命の阻止はそれだけ難しくなるだろうからな
そのまま「狙いを外して」敵船体の制御の甘い部位や海氷へと当たった武器を核に周辺無機物を取り込んで氷山・海に関係する『災禍の巨神』を構築。
回避や護りはケラヴノスに、支援はアリシアに任せ私は巨神の攻撃の制御に専念するぞ
※アドリブ連携他歓迎です
●キャバリアたちの戦い
『あ、ああああ……! 僕の、僕の、ボディが……!!』
ニコラスと猟兵たちの想いが籠もった痛烈な一撃を受け、オルガノンは半壊した。
端正な顔立ちは真ん中に無惨な亀裂が走り、それを無理矢理に縫合している。
一撃の衝撃はオルガノンの体のみならずフェザント号だった部分にも波及した。
亀裂の断面から真鍮色のコードが伸びて縫合するさまは、まるで植物の蔦だ。
「歪みを正そうとすれば正そうとするほどさらに歪んでいく……醜いものだな」
竜神機ケラヴノスを駆るセツナ・フィアネーヴは、亀裂を見下ろし顔を顰めた。
聞くところによれば、東洋には『金継ぎ』という修復技術があるらしい。
割れた陶磁器やガラス細工を補強するために、液体化させた金を流し込むのだ。
ただ縫合するのではなく、縫合部分を新たな模様として輝かせる。
まさしく職人の粋と工夫が芸術に昇華された、素晴らしい文化である。
それに対して、この有様はどうだろうか。亀裂はまるで怪物の口のよう。
そこに創造の美は存在しない。いわんや、アレンジメントなど皆無である。
「どれだけ高邁を気取ろうと、結局思考も行動も蒸気と魔導からは逃れられない。
だのに、自分自身では何も創り出せない……いっそ、哀れにすら思えてくる」
セツナは審美眼に秀でた文化人を気取るつもりなど毛頭ない。
それでもなお、これが見過ごすべからざる邪悪であることは一目瞭然だ。
いびつなる"修復"の有様を見て、セツナはその気持ちを一層強めた。
……とはいえ、猟兵のすべてがその有様を醜悪と断じたわけではない。
なかには、個人的センスに割と合致しているようなタイプも居た。
たとえばユーディット・ウォーカーなどは、その好例である。
「くふふ、醜怪なのはどちらであろうな? せっかくの船を台無しにしおって。
……とはいえこれはこれで、我としては嫌いではない、いやなかなか……」
オブリビオンマシン『アンコール』と一体状態にあるユーディットは、
吸血鬼という身の上のせいか、はたまたそれとは関係ない個人的な嗜好なのか、
どうにもセンスがズレていた。彼女的には、これは割とアリらしい。
その"アンコール"もまた、尋常のキャバリアから大きく外れたシルエットだ。
浸食し一体化するアンコールと、融合し歪ませるオルガノン。
ある意味では、その在り方も同一軸にあると言えなくもないだろう。
猟兵とオブリビオン――両者を分ける境界線は、極めて不安定で、だが厳然だ。
「とはいえ、我らは見過ごすつもりはない。むしろ教えてやろうではないか。
ただのオブリビオンでは辿り着けぬ、美しき滅び――"終演"の在り方を、のう!」
一方で、フェザント号やオルガノンではなく、ニコラス老人を思う者も居た。
オブリビオンマシン・ツクヨミに乗る御門・白などがそうだ。
ニコラス老人の感傷は、合理的ではない――極めて、不利ですらある。
オブリビオンを倒すという目的"のみ"に主眼を置いて考えるなら、
ろくに戦えない非戦闘員を戦場に残すのは、褒められたことではない。
ましてや、その理由が個人的かつセンチメントなものであればなおさらだ。
もうこの現象を巻き戻すことは、少なくとも白には出来ない。
おそらく、他の猟兵たちにも……だからこそ倒さねばならない敵だ。
ならば、ニコラス老人の言葉は、込められた思いは、無駄なのだろうか?
一顧だにせず、ただ敵を滅して去るのが猟兵としての正しい姿なのだろうか?
白は、そうは思わなかった。
そしてオブリビオンマシン・ツクヨミもまた、否と答えた。
「私の寝首を掻く、ツクヨミ?」
――否定の思念が返ってくる。
オブリビオンマシンはまったき味方ではない。
それは狂った機械、いずれ叛逆せし時限爆弾……強大ゆえの代償持つ矛。
されど。意志を持つからこそ、ツクヨミはこう考えていた。
「私は、あなたを信用はしてない。けど、信頼はしてる。
――あなたは、"あんなの"に嘗められるのは嫌い。そうでしょう?」
肯定の思念が返ってくる。だが、白にとっては確かめるまでもなかった。
かつて故郷で仇名された、"月の神"という異名について思う。
ヒトではないから、人の心がわからない。だからお前は遠き月の神なのだと。
仕方ないことだと白は思う。事実、そう振る舞ってきたのだ。
けれども。
「――猟書家。私は、お前を認めない」
彼女もまた、嘗められるのは我慢ならない性質(たち)なのだ。
三機はそれぞれ別方向に展開し、弱ったオルガノンを追撃しようとした。
しかし猟書家は、フェザント号の異形化を急速に促進することで対抗した!
「うおっ!? なんだぁこれは……!?」
ニコラス老人と船上の猟兵たちは、強烈な揺れに足を踏み外しかけた。
そして見た――花開くような異形のボディが、獣じみた相を得るのを。
「ふぇ、フェザント号自体を"もどき"にするつもりか、こいつぁ!?」
怒りや無念よりも先に、ニコラス老人は驚愕した。それほどの規模である。
融合と侵蝕がほぼ完全に進んだいまだからこそ出来る、一度きりの大博打だ。
『僕は、そんなガラクタどもは認めない。醜く未完成な積み木細工め!!』
オルガノンは猟兵、そしてキャバリアに対する強烈な敵意を剥き出しにした。
オブリビオンマシンという不安定なモノの存在を、オルガノンは認める。
認めている"からこそ"、これ以上この世界に存在するのが我慢ならないのだ。
オブリビオンでありながら、猟兵に与し――あるいは使役されているモノが!
『……ご老体。どうか、最期まで見届けてあげて』
「! この声は……!」
ニコラス老人に白の声を届けたのは、ツクヨミから放たれた式であった。
では、白自身は。彼女は蓄積した魔力を解き放ち、霊的な力場を展開していた。
噴き出す毒蒸気と、"もどき"と化したフェザント号の咆哮による呪詛。
この二段攻撃を、展開した力場により相殺し、そして耐えているのである。
力場は毒蒸気と魔術印がもたらす嵐をも押しのけ、三機を同時に包み込んだ!
「おうおう、護りは任せてよさそうじゃ。ならば、行くぞアンコール!
とうとう舞台は整った――ならば終末を再演し、解決を始めようではないか!」
ユーディットとアンコールの侵蝕=融合濃度が急激に加速し、完全な一体化を成す。人機一体――否、この場合は人"鬼"一体、というのが正しいか。
傍目には、アンコールが搭乗者の制御を逃れ暴走したようにしか見えない。
放たれる暗黒の闘気たるや、万物を腐敗させる毒蒸気のそれと酷似していた。
だが、決定的に違う点がひとつ……アンコールが終わらせるものは敵、すなわちオブリビオンだけだということだ!
「三界をも灰燼に帰する終末の一撃、"もどき"風情が耐えられるかのう!?」
絶望撒き散らす闇の翼を広げ、アンコール=ユーディットが滑空した。
その手に生まれたのは剣……あるいは、のたうつようにねじくれた杖か。
"Jörmungandr(ヨルムンガンド)"の銘(な)を与えられたその剣杖は、
ひとりでに伸び上がりいびつな螺旋を描き、虚無の魔力を纏い"もどき"を削ぐ。
あるいは、喰らう。そうとしか形容の出来ない奇怪な攻撃であった。
『あ、あああああ……!! う、奪われている、侵されている……僕の躰が!?』
「くふふふ。これなるは物質的でも魔術的でもなく、根幹を滅ぼす術式よ。
生きながらにして塵芥へと堕ちていく恐怖、さぞかし美しく崇高であろう!?」
『なぜだ、どうして僕らの仇敵、猟兵が、こんな力を……!』
「オブリビオンだけでは辿り着けぬ境地があると知るがよい! くふふふふ!」
誰もが言葉を失うほどに、その蹂躙は禍々しく、恐ろしかった。
畏怖と戦慄を振り払うようにして飛翔する翼――すなわち、竜神機ケラヴノス。
巨体を包み込むように嵐が生まれる。それは、すでに目視した攻撃だ。
オルガノン=フェザント号は術式分解蒸気を噴出し、嵐を消し去ってしまう!
『は、はは、ははははは……! この僕に! 同じ手が通用するものか!』
「そうだな。"同じ手"であれば、たしかに通じないだろうとも」
『――?』
セツナの奇妙な言い回しに、オルガノンは怪訝な表情をした。
伊達に優れた魔術師ではない。すぐにその意図を探ろうと状況を俯瞰する。
融合によって拡大された認識能力が、自身と周辺海域を走査し――理解した。
たしかに、ケラヴノスの生み出した嵐と、投擲された武器は跳ね除けられた。
嵐は文字通り霧消し、命中すれば絶大であろう矛の数々は海中に没した。
それこそがセツナの狙いであることに、オルガノンはすぐ行き着いた。
奴にとって不幸なのは、"もうどうしようもないこともわかってしまう"程度には、優れた頭脳を持っていたことだろう。
外させたのではない――最初から、外すつもりで攻撃をしていたのだ。
矛に刻印された融合・吸収術式。そしてめきめきとフェザント号の残骸や、戦闘余波で生じた氷山の数々を取り込み、やがて生まれる巨大なシルエット!
「災いの魔を使役するものよ。これが――災いの巨神の力だ!!」
ケラヴノスをも取り込んだ"災禍の巨神"が、渦潮の拳を振り上げた。
巨大蒸気船を核としたオルガノン=フェザントをすら上回る必滅の一撃……!
「短時間ならば……いけるっ!!」
巨神は崩壊を続けながら、天変地異のごとき拳を降らせた。KRAAAASH!!
激甚たる衝撃は、怒れる海神の起こした大津波めいて"もどき"の装甲を砕く!
「な、なんてえユーベルコードだ……こんなこともできるのか!」
大きく揺れる船体、ニコラス老人は水しぶきでずぶ濡れになりながら瞠目した。
これが、猟兵の力。世界を救った英雄たちの底力なのだと。
しかしここで、ひとつ疑問が生まれる。
セツナ=巨神の一撃は強大だ……強大すぎるほどに。
フェザント号への攻撃は、船体に乗ったニコラスや猟兵にも波及しかねない。
だが、彼女は確信の上で攻撃を放った……"護られるはずだ"と。
そしてそれは正しかった――ニコラス老人らを守るようなドーム型の障壁。
『これは!?』
オルガノンですら驚愕した。あんなものは、自分で生み出すわけがない。
敵を護ってやる理由などない。では、誰だ。姿なき猟兵の防御術式か? 否!
「日月の精気と、ヒトの想念を受け続ければ――モノとて、精神を宿す」
白が言った。
白が展開した力場は、呪詛を跳ね除け時間の流れすらも掌握するもの。
いわんや、器物に萌芽した意志の片鱗をや……神たる威風をもってすれば。
オブリビオンマシンが自我を有するならば、長く愛された船もまた同様!
「私たちだけじゃない。船が……フェザント号が、お前に抵抗しているのよ」
『バカな……! 僕は完全に船体を掌握した。これは、僕の躰であり、蒸気獣だ!』
「すべてが、そうではないということ。――その子は、抗っている」
ニコラスらを護った障壁は、フェザント号の自我が生み出したのだという。
式が言った。
「――見届けてあげてください。あなたの子の、戦いを」
ツクヨミの神威は、障壁を中心として船の制御権を奪い返していく。
時間流を逆回しすることで、侵蝕を受ける前の船体を再現しているのだ。
『ありえない! こんな無価値で醜いガラクタが、僕の、災魔の卵を否定するだなんて!! あってはいけない、そんなことは……!!』
「残念じゃのうオルガノン。やはりお主には、理解できないようじゃ」
ユーディットの声には憐れみと侮蔑と愉悦が混在していた。
「であれば――お主、きっと屈辱の極みで滅びるのじゃろうなあ。可哀想に」
約束された終焉は、確実に近づきつつあった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フェルト・フィルファーデン
ふふっ……それほどまでにこの船を、フェザント号を大事にしているのね!
ええ、ニコラス様。あなたの想い受け取ったわ。
大丈夫よ。あなたはわたし達が絶対に護る。これ以上、好きにはさせない。
まずは護りを固めるわ。騎士人形の盾に【オーラ防御を纏わせ【盾で受け【庇いニコラス様を守り抜く!
ここからが本番よ。UC発動。対象は猟書家を除く、フェザント号の全て。
外壁、配管、歯車も1つ残らず、全力で奪還する!
【ハッキングx限界突破】
【時間稼ぎにはなるはずよ。……上手くいけば、この船を取り戻せるかもしれないしね。
さあ、本当の主を思い出して。主を害する者へ反撃の時よ!
滅ぼさせはしないわ。滅び消えるのはアナタよ、猟書家!!
ディルクニア・エリスランサス
いよぅ爺さん、あんたがこの船作ったんだってな?
この船の最後をキッチリ看取りたいとの事だが…
今のアタシは気分が良い
ちぃと派手になるが、キッチリ見届けさせてやるよォ!
*
貨物棟で大量に飲んできたのか、若干遅れて登場
片手にポールメイス、もう片手には指に挟んだ複数本の酒瓶
船員さんは「正気」を取り戻した為か、ちゃんと脱出を手伝った様子
*
方針:
初撃の魔力砲撃にほぼ全力を注ぐため、飲酒しつつ時間稼ぎ
"もどき"をメイスで殴り飛ばしつつ、酒瓶を傾けマイペースに飲酒
戦場でありながら巫山戯た行動を取ることで敵を挑発
間接的にニコラス氏から敵の目を逸す
酒瓶が全て空になった時点で代替詠唱を終了とし、魔力砲撃を叩き込む
御魂・神治
口ぶりからしてお前、あの魔王の娘の失敗作かぁ?
蒸気獣もパチモンしか生み出せへんしな
そうやったら恨み節まみれなのもよう解るわ
ほな、魂抜いて唯の人形に戻ってもらおか!
オーラ防御の結界術で飛行して今度は空中戦や
パチモン蒸気獣は水と火属性混合の銃撃ぶち込んで
水蒸気爆発を起こして大ダメージを狙う
おいおい、いい加減神作な蒸気獣作れや
ゴミばっか作るんやないで
森羅をリミッター解除し、広範囲に銃弾が食い込む様にして(範囲攻撃・鎧無視攻撃)
UC「万物」を撃つ、属性は金、腐食しいや!(継続ダメージ)
金属部品が多いほどえっらい事になるで
ハッハァー!錆びて醜い姿やないかい!
脆くなったら天誅で破魔の銃弾を本体目掛けて撃つ
●奪われたものを取り戻せ
「――いまなら……フェザント号のすべてを、取り戻せる!!」
猟兵のユーベルコードによる、局所的な時間流の逆転。
それは災魔に成り果てたフェザント号の一部を、侵蝕前の状態に戻してみせた。
フェルト・フィルファーデンはその瞬間にユーベルコードを起動。
術式名は"Sleep-marionette"――対象の意識をウィルスで掌握する電脳魔術だ。
本来は大量の敵の意識を支配し、同士討ちや混乱を起こさせるためのもの。
オルガノンに使ったところで、奴は蒸気魔術士。効果は薄いだろう。
続々と生成される蒸気獣"もどき"に使うのが関の山である。
……そう、ただ"敵を同士討ちさせる"だけなら、そんな使い方しか出来ない。
しかしフェルトは、そのどちらでもない災魔を攻撃目標にした。
この戦場でもっとも巨大で、そしてウィルスへの抵抗力を持たない災魔。
時間流の逆転により侵蝕率が不安定になった、フェザント号そのものに!
『!? そこのフェアリー……貴様、僕の制御を奪うつもりですね!?』
「気付いたところで遅いわ。いまのアナタにはわたしの電脳魔術は止められない!」
然り。オルガノンはボディの修復と侵蝕の維持に全リソースを払っている。
フェルトはその間隙を突き、電脳ウィルスを隅々まで浸透させていく。
外壁、配管、歯車のひとつに至るまでを、災魔化の毒牙から取り戻すために!
『小賢しい……蒸気獣もどきたちよ、あのフェアリーを殺しなさい!』
オルガノンはいまだ支配状態にある船体を変化させ、"もどき"を生み出した。
真鍮色の怪物どもは雄叫びをあげ、蒸気を撒き散らしフェルトに襲いかかる!
「お、おいお嬢ちゃん! 大丈夫か!?」
「心配ないわ、ニコラス様……わたしの騎士人形たちなら……!」
フェルトはウィルス散布と並行して妖精騎士の人形たちを操り、防御陣形を組む。
騎士たちは盾を構え真鍮の怪物を迎え撃つ……だが、絶対的な数の差!
オルガノンとの魔術的闘争をしながらの人形制御は、普段よりもおぼつかない。
かといって人形の操縦に集中すれば、オルガノンは制御を奪い返すだろう。
こうしている間にも、蒸気獣もどきは数を増している。このままでは……!
『ははははは! この僕を相手に、嘗めた真似をするからこうなるのですよ!』
「……!!」
フェルトの人形たちは、このまま蒸気獣もどきに押し切られてしまうのか?
否、戦っているのは――フェルトひとりではないのだ!
「へえ、おっとり刀で来てみれば、ずいぶんみみっちいことをしてるじゃねえか」
SMAAAAASH!! ポールメイスの強烈な殴打が、迫りくる"もどき"の頭を砕いた。
メイスを担ぐ女……ディルクニア・エリスランサスのもう片手には、酒瓶!?
見間違いではない、酒瓶だ。しかも一本や二本どころの話ではない。
この女、あろうことかメイスを振り回しながら酒をラッパ飲みしているのだ!
「おいおいおい、こんなとこで酒盛りとはとんでもねえな!?」
「ハハハ、アタシはこれでいいのさ。爺さん、あんたがこの船作ったんだろ?」
驚いた様子のニコラス老人に、ディルクニアは酒臭い笑みを向けた。
そして必死で電脳魔術を維持する、小さなフェルトの姿を一瞥する。
「今のアタシは気分がいい。そしてこういうみみっちい真似は好きじゃねえんだ。
ってなわけで、この子の代わりにアタシが相手してやるよ。なあ猟書家ァ!」
『なんて女ですか……僕を愚弄しているのか!?』
「アハハハ! 頭に来たか? だったら、ほれ、もっと雑魚を出してみろよ!」
ディルクニアは次の酒瓶を呷りながら、据わった目でちょいちょい手招きした。
不思議なことに、とんでもない飲酒量でありながらメイスの狙いは正確だ。
なにせこの女、酔えば酔うほどまともになるという妙な体質なのである。
そして戦場らしからぬ乱痴気は、けしてふざけているわけではない!
『なら望み通り、僕の蒸気獣ではらわたを食いちぎってやりましょう……!』
「僕の蒸気獣ぉ? ハ、パチモンしか生み出せへんくせによう言うわ」
『……なんだと!?』
BLAMN!! 横合いからの魔弾が、新たな蒸気獣もどきの胴体を貫通した。
重力を感じさせない動きで床に降り立つ男……神器銃の使い手、御魂・神治。
神治は口元にいかにも挑発的な笑みを浮かべ、銃口をオルガノンに向けた。
無造作な銃撃……当然、"もどき"が盾となる。神治は肩をすくめた。
「お前、あの魔王の娘の失敗作やないか? センスと出来がそれっぽいで」
『――貴様、いまなんて言った? この僕のことを』
「なんや、出来損ないは耳も遠いんか。ならもう一回言ったるわ。
このパチモン蒸気獣なんぞより、お前が一番出来が悪いって言っとるんや!」
『き、さ、まぁあああああ!!』
人類とその創造物を見下しあざ笑うオルガノンにとって、これは効いた!
蒸気獣もどきの狙いが、フェルトとニコラスから神治ひとりに集中する。
まさしく神治の思うツボだ。神治は結界術の応用で空中に飛翔し、攻撃を回避!
「ほれみろ、出来が悪いからろくに攻撃も当てられんやないか」
「ハハハハ! いいじゃねえかその啖呵、アタシ気に入ったぜ!」
空中からは神治の魔弾銃撃、そして地上のディルクニアによるメイス攻撃。
たったふたりの猟兵が、すさまじい数の"もどき"を一気に駆逐していく!
『こ、い、つ、ら……!! 許せない、この僕を、この僕の知性を嘲るなんて!
蒸気獣が"もどき"に過ぎないことは認めましょう。だが! その言葉は別だ!!』
「悔しいなら、いい加減神作な蒸気獣作ってみせろや、お?
ゴミばっか作ったって、ほんまもんのゴミが増えるだけやのになあ!」
BLAMBLAMBLAM!! 水と火の複合属性を宿した銃撃が"もどき"を吹き飛ばす!
銃撃の威力もさることながら、体内で起こる水蒸気爆発が厄介なのだ。
外側の攻撃には強固な真鍮の身体も、体内の衝撃にはひどく脆い!
(さて、いい具合にこっちに目を惹きつけられてるみたいだな)
メイスを振り回しながら、ディルクニアはちらりと背後を一瞥した。
フェルトは順調に電脳魔術を展開し、フェザント号の制御を奪いつつある。
実にいい。あのふざけた猟書家には徹底的に"わからせる"べきだ。
ディルクニアは最後の一瓶を呷り――瓶を投げ捨てると、片手を突き出した!
「さあ爺さん、ちいと派手になるが見届けさせてやるよ!!」
『……!! 貴様、まさかあのふざけた飲酒が"詠唱"だったのか!?』
オルガノンもひとかどの魔術士だ、"それ"が術式であることはすぐにわかった。
そして憤慨した。『酒を飲む』などという詠唱で発動する魔術がどこにある!?
いいや、ここにあるのだ。これこそがディルクニアの奥の手、切り札!
『させるか――!』
恐るべきはオルガノンの蒸気魔法と状況判断力か。
奴は一瞬で冷静さを取り戻すと、即座に対抗術式を組み上げてみせた。
ディルクニアの魔力砲撃を霧散させる蒸気魔法――発動すれば、叶うはずだ。
叶うはず、だった。だが、そうはならなかった。
――BLAMN!!
『が……!?』
「ハッハァー! 残念やなあ、その隙をずーっと待っとったでぇ!」
神治だ! オルガノンが術式を発動する一瞬のタイムラグを狙った狙撃!
撃ち込まれた弾丸は、金気を過剰増幅していく――つまり、腐食である!
オルガノンの身体が急激な速度で酸化し、錆び果て、片腕がボロボロと崩れた!
『ぼ、僕のボディが!?』
「残念やったなあ? 俺はこれでも術師なんや、動作予兆ぐらいすぐにわかる。
てめぇのことや、魔術で対抗しようとしたら絶対止めると思っとったで!」
『……!!』
「――てなわけで、残念。てめぇはどっちの魔術でも完全敗北ってわけや」
電脳魔術による支配権の奪取。
魔術とも呼べぬディルクニアの魔力砲撃。
オルガノンは、戦術と戦略の両面で出し抜かれた。なんたる屈辱!
「アナタに滅ぼさせはしない。この世界も、船も、ニコラス様も、誰も!!」
「いいザマだなぁオイ――見物料をやるぜ、しっかり受け取れよォ!!」
フェザント号の一部がオルガノンの身体に巻き付き、動きを止める。
そしてディルクニアが放った極大浄化光が、錆びた身体を飲み込んだ――!!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴィクティム・ウィンターミュート
随分とまぁ潔癖症だことで
歪んでるからこそ良いんじゃねーか
お前が思う綺麗なだけの世界じゃ、俺みたいなクズ野郎は生きていけねぇ
そんなに理想の世界が欲しいなら、自分で作って閉じこもっておけよ
爺さん、あのエンジンはどうすりゃ止められる?一時的にでもそこを押さえちまえば、船の攻勢は多少抑えられるはずだ
壊していいなら壊すし、嫌なら出来るだけ壊さない
さぁ、醜い怪物がお出ましだ
Void Link Start
出来損ないの作品をいくらでも出しなよ
そいつの存在も、お前の一挙手一投足も、悉くを改竄し、無かったことにしてやる
……隙間が出来たな
そのご自慢のボディ、関節を砕きに砕けばどうなるんだ?
試してみようぜ、死ぬまでな
矢来・夕立
この世界が滅びるとか滅びないとか、オレの許可を得ずに決めていいと思ってるんですか?
よくないんですよこれが。
この手のクソガキには「ダメだ」と言っても聞かないでしょう。殴って教えます。
【夜雲】。船そのものが異形化されているのでしたら、なるべく触れない移動手段を講じておきました。
基本的に空中を含む高所を取ります。
召喚された獣を上から斬り殺すこともできますし、必要なら中心部にも近づきやすいですしね。
標的はその時時に応じて変えます。
その動物だってあなたの被造物でしょうが、オレにはそちらのほうが余程センス最悪に見えますね。
なんていうかモノづくりの才能がないんじゃないですか。
●真鍮色の海を割れ
フェザント号が、侵食される前の元通りの姿を少しずつ取り戻す。
猟兵たちの連携と意地が、災魔の卵による変異を『巻き戻して』いるのだ。
強烈なダメージを受けたオルガノンは、もはや融合を維持するので精一杯である。
錆びて浄化された身体を、取り込んだ船のパーツで継ぎ接ぎに補修する。
ガラクタを人型に組み合わせたような、醜く歪んだ有様だった。
「潔癖症なことをほざいてた割には、『醜い』お姿になられたことじゃねえか」
ヴィクティム・ウィンターミュートは鼻でせせら笑った。
「それでわかったろう? お前が思う綺麗なだけの世界に意味はねえのさ。
どんな完璧なものでも、歪みは生まれる。この世に歪みのない円は存在しない。
もしもそんな世界(モン)があったなら、俺みたいなクズは生きていけねぇな」
『……お前のような、存在を……僕は、認めない……生存すらも……!』
「そうかい。そんなに理想の世界が欲しいんなら、殻に閉じこもってりゃいいだろ」
ヴィクティムの身体を、ぞるぞるとうごめく虚無が覆っていく。
まさしく、醜悪な怪物そのものだ。心すらも捧げた虚無の化け物。
「なら俺がテメェを否定してやる。テメェの世界なんざどこにもねえと教えてやる。
この世界にも、骸の海の底にだって、テメェの居場所はありゃしねえんだよ」
オブリビオンに対する純然たる殺意。常人には理解不能の憤怒と、憎悪。
血を流す瞳がじろりとニコラス老人を睨んだ――少なくとも彼はそう見えた。
「爺さん、あのエンジンはどうすりゃ止められる? 奴の心臓みたいなもんだ。
あれを止めれば、もうしぶとく自己再生することもできなくなるだろうな」
「……おそらくだが、あそこに例の卵が植え付けられてるんだ。つまり……」
「物理ハックか? いいぜ、そういうビズもこなしてこそのランナーだ」
ニコラス老人は、蒸気エンジンを破壊する上でのいくつかの注意点を伝えた。
敵は最悪、蒸気エンジンをオーバーヒートさせ自爆しかねないこと。
あの様子では、すでにそのためのエネルギーが詰まっているであろうこと。
破壊できる場所と触れてはならない場所、その順序、構造的欠陥。
「そんなことはさせねえよ。仮にしでかしたとしても、俺の虚無は否定する」
ヴィクティムの声は、伸び切ったビデオテープのようだった。
『醜く矮小な人類ごときが、僕を邪魔するんじゃあない――!!』
オルガノンは修復を続けながら、かき集めたパーツを蒸気獣もどきに変えた。
完成度も造形も度外視して、ひたすら手勢を盾にしようというわけだ。
芸術だの価値だの、小賢しい理屈を並べておきながらこの体たらく。
今のオルガノンに美意識は存在しない。いや、そんなものは最初からなかったか。
「にっちもさっちもいかなくなると、喚いて暴れてわがままを叶えようとする。
まさにクソガキの駄々ですね。言ってダメなら殴って教えるしかありません」
矢来・夕立の声音は、虚無に浸されたヴィクティムほどに冷たい。
夕立にモノに対するセンチメントだのは(見た限りでは)欠片もなかった。
この世界は存続するべき世界であり、それ以外の結果は認めない。
夕立の目的は「それだけ」だ。オルガノンの主張も何もかもどうでもよかった。
端的に言うと――彼は、もうとっくにキレていたのである。
「そういうわけなんで、とりあえずこの邪魔なガラクタどもを壊しますか」
「……好きにしろよ。支援はしねぇ。そもそもお前には必要ねえだろ」
「よくご理解いただけているようで助かります。お互い得意分野でいきましょう」
夕立とヴィクティムは、群れのど真ん中へと無造作に飛び込んだ。
夕立は"夜雲"を使い空を蹴り、ヴィクティムは侵蝕そのものを"改竄"する。
虚無の権能による限定的な過去改変。"もどき"の生成と存在自体を消去するのだ。
夕立の手が霞むと、真下に居た"もどき"がぐしゃんと潰れて爆散する。
苦無、あるいは隠形術で持ち込んだ何かしらの爆発物だろう。
そういった折紙の可能性もある。無防備な頭上を得た忍びは完全に独壇場だ。
生み出される。
壊す。
生み出される。
壊す。
生み出される。
壊す……。
ふたりは壊/殺すことだけを続けて生きてきたプロフェッショナルであり、
相手はいくら数がいようと所詮"もどき"、考えることも出来ないガラクタである。
真鍮色の海が割れる。オルガノンへ斬り込むための活路が。
「センスは最悪、完成度も低すぎる、そしてあなた自身がガラクタ同然。
なんていうか、モノづくりの才能がなければ戦いの才能もなかったみたいですね」
「悪いが俺らはプロなのさ。殺(こわ)してきた獲物なんざ数えてもいねえ。
今回もいつも通りに、単純に、テメェを壊(ころ)しておしまいだ。ガラクタ」
オルガノンは何かを叫び返そうとした。その首がヒュパッと刎ねられた。
斬首。再生。圧潰。再生。粉砕。再生。分解。再生。爆殺。再生……。
「オレの許可なしに、世界を滅ぼすだの滅びないだの決めてはいけないんですよ。
まあ、誰が相手だろうとそんな許可を与えるつもりもありませんが」
『ニ、ンゲン、ど、も……!!』
創造が人類の美徳だとすれば、破壊もまた人類の一番得意なことだ。
淡々と、徹底的に、効率的に、無慈悲に、破壊(コロシ)の作業は続いた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
茜崎・トヲル
あーさん(f23882)みーっけ! いっしょにわるい子におしおきだ!
ともだちパワーで勝つぜ! まず隠れ蓑着る!
スーさんが幹部の人、船からひっぺがしてくれるって。
すげくね? でもじかんせーげんあるから、おれは三十秒で決める!
ひっぺがしてくれた瞬間にスキあり!
隠れたまんま蒸気獣もどき呼ばれるまえにとびこんでしがみついて肋骨バンッってして攻撃! 花火!
呼ばれちまったら武器ぶんなげて隙つくってとびこんで以下略!
サイバーアイで動体視力上げてるからいける!足りなきゃ中も外もパーツ増やす!
いいひとが笑ってくれるなら、いくらだってばけものになるよお!
(あーさん=スーさん=スキアファールさん。入り混じり)
スキアファール・イリャルギ
トーさん(f18631)に見つかりました
えぇ、悪い坊やにはお仕置きですね
友達パワーでとっとと骸の海に還ってもらいましょう
大事な船を勝手に災魔にしたのもヰラつきますが
あいつを船と共に沈ませるのが気に食わないんでね
【Yaka】を発動し敵の有利な状況――船と融合した状態を一時的に無力化させ引き剥がす
トーさん、攻撃は任せますね
顔色一つ変えずに花火を見守りますよ
魔術印を付与しようとも
蒸気獣もどきを召喚しようとも
この瘴気と呪詛がある限り、おまえの有利な状況は「絶対に」ないと思え
あぁそうさ私は怪奇、化物だ
醜怪で、愚かで結構
私はそうやって生きてきた
誰かを護れるなら、この力を誰かが頼ってくれるなら……それでいい
朱酉・逢真
心情)ひ、ひ。こいつァいい。ステキなメンツだ。あの坊っちゃんは間違いなく斃される。なら、ああ。やりてェことがあるのさ。さっきの戦闘を見てたかぎりじゃア、この船惜しむやつが多いようだし。ニコラス老とお仲間だってそうだろう。俺は神。祈りを束ねてチカラと変えて、世に発現させるがお役目の道具だ。為す事があるンでね。戦いは任せるよゥ。
行動)“ニコラス老の『雉』”を助けてほしいという願い。“是”と請うならば、俺は叶えられる。この船は古く、多くに愛されている。彼の仲間・故郷のヒトビト。一部猟兵もかねェ? ひひ。完璧とはいかんでも、かなり直るだろう。奇跡はヒトと神の共同作業。俺も《宿》ひとつ潰して協力すらァ。
●ばけものと、にんげんと、かみさまと
フェザント号は、元の姿をほとんど取り戻しつつあった。
時間流の逆転と、電脳ウィルスによる支配権の奪取。
災魔の卵によって変異させられた歯車のひとつに至るまでを"奪還"する。
荒唐無稽な奇跡こそがユーベルコードの本懐、ありえないはずの再生。
……けれども、この世に在るものはそっくりそのまま巻き戻せるわけではない。
「まったく、誰も彼も頑張るもんだ。こんなに"作り変えちまって"よ」
眷属(ネズミ)どもがより集まり、赤い目をした黒髪の男のかたちを取った。
朱酉・逢真という名を持つそれは、一見元通りになった船体に触れる。
……船体は急速に腐蝕して崩れた。まるで、砂の城のように。
それは、比喩ではない。奇跡にはいつだって代償がつきものである。
不可逆の変異を巻き戻し再生する――つまり、元に近い姿に"作り直す"。
樹を伐ったとする。切断面をぴたりと噛み合わせて接合したとしよう。
一度伐られた樹は元通りにはならない。限りなく元通りに近くなるだけだ。
それが現世の法則である。この船は、どのみちもう長くない。
「ああ、いとおしいぜ。それをわかってて、みんなして"そうした"んだろう。
ヒトの死もモノの滅びも変わりゃあしない。結局は、全部俺の領分さな」
死を司る神はうっそりと言い、そしてまた鼠の群れにばらけて去っていった。
「……これなら十分だろうさ。とびきりの"いのち"が気張っているようだしよ」
赤い瞳が見通した"いのち"はふたつ。にんげんと、ばけものの"いのち"だった。
戦場にして船上。
『うああああ!! 僕の邪魔を、するなああっ!!』
身体中に亀裂を帯び、それをホチキスめいて船体の一部で繋ぎ止めた人形――探求のオルガノンの成れの果て――が、怒り狂い、駄々をこねる子どもめいて蒸気魔法をばらまいた。触れれば肉を腐らせ骨さえも摩滅させる毒蒸気を。
「あ、やべっ!」
「トーさん?」
茜崎・トヲルが蒸気に触れてしまった。片腕が、みるみるうちに萎びていく。
だが、スキアファール・イリャルギは慌てふためいたりはしなかった。
トヲルは「やっちったー」と軽く言いながら、肩口に手をかけ片腕をもいだ。
もだれた片腕は地面に落ちる前に枯死する。そして、切断面から肉が生えた。
急激な速度の再生。トヲルに、死という文字は存在しない。塗り潰されている。
「あーさんが触れたらあぶなかったかもな、あれー!」
「トーさんだって危ないですよ。あと一歩なんですからしっかりしてください」
「ふふは、おれはいーの! それより、あれだよ。ともだちパワー!」
「友情パワーですね。ええ、悪い坊やにお仕置きしましょうか」
スキアファールは両手をかぎ爪めいてこわばらせ、ミシミシと力を込めた。
すると両腕がぼそぼそと崩れて煙のように変じ、立ち込める瘴気となる。
ただの瘴気ではない……敵対者の『運気』そのものを霧散させる呪詛の塊だ。
毒蒸気すらも同化し無効化し、濃霧のように船上を包み込んでいく。
『く……僕の術式を封じるつもりか……!』
「術式だけだと思いますか? ――お前には、悪あがきすらも赦さない」
オルガノンは即席の蒸気魔法の術式を組み上げて、蒸気を無効化しようとした。
だがそこで、唯一死守していたパワーソースがごっそりと抜けたことを感じた。
(蒸気エンジンとの接続が……な、なぜだ!?)
船の心臓部であり、補修のためのエネルギーソース、つまり動力部。
物理的・霊的な融合によって維持されていたラインが、ぷつんと"切れた"のだ。
それがこの瘴気のせいであることは明らかだ。スキアファールの異形は進行する。
『ぼ、僕のエネルギー供給を切断するのが狙いか! なんてことをする……!
こんなめちゃくちゃなユーベルコードは、お前にだって無茶なはずだろう!』
「……そうですね。正直に言うと、私は一分ほど維持するのがせいぜいです」
霧の中から声がした。聳え立つ姿は、まるで都市伝説の怪物めいている。
いや、戯画化された都市伝説に比べると、もっと醜くおぞましい。
怪奇人間。けしてヒトには馴染めず、さりとて完全な化け物ですらないもの。
『ああ、醜い! 汚らわしい! 無価値で未完成で歪んでいて、ゴミのようだ!!』
「あぁ、そうさ。私は怪奇、化け物。醜怪で、愚かで、歪んでいてけっこう」
スキアファールの像が揺らめいた。
「私はそうやって生きてきたし、これからもそうやって生きていくだろう。
詰られようが、謗られようが、笑われようが、やめるつもりはない。
誰かを護れるなら、この力を誰かが頼ってくれるなら――私は、それでいい」
『は、はは! ははははは! 他者を救済することでしか自己を維持できない?
お前のやっていることは自己満足だ! 一切価値のないただの誤魔化しだ!』
オルガノンはスキアファールをあざ笑った。
『お前はけっきょく何も守れない、救えない、そして孤独で在り続けるんだ!
お前には、ゴミである価値すらない! いずれ消えて果てるようなお前には!』
「――捨て台詞のつもりですか。あいにく意味はないですよ。それよりも」
スキアファールの眼球が、じろりとオルガノンの背後を見ていた。
「どうせ吐くなら、断末魔のほうがよほどいい」
『……!!!』
振り返る。トヲルが居た。いつの間に? ……隠れ蓑?
瘴気に乗じて、この一瞬の分断を狙って忍び寄っていたのか?
蒸気獣もどきを潜ませていたはずだ。すべて、枯死していた。
怪奇の煙。これほどの力なのか。命を賭してすべてを"奪う"力。
にんげんには過ぎた力。化け物ですら。ああ、無価値な愚か者め。
「いいひとにさ、笑っててほしいんだ」
トヲルは己の胸部に手を突き刺し、こじ開けた。血の華が咲いた。
「おれがこわれて、いいひとの作ったものをまもれるなら。それでいいよ。
ふふは――おれはばけものだから、みにくくておろかだよな! ごめんな!!」
骨の華が咲いた。オルガノンの傷をこじ開け、歪ませ、切り裂く刃の花びらが。
トヲルは骨を操りオルガノンの身体に突き刺す。逃さない。縫合部分を抉る。
「でもおれ、いいひとを笑わせるためなら、いくらでもばけものになるよお!」
その言葉は、きっとスキアファールに向けられたものなのだろう。
ともだちは泣いていなかった。笑ってもいなかったが、まあ十分だ。
悲しんでいるよりは、ずっといい。トヲルは怪力を込めて人形を砕いた。
「ばいばい、オブリビオンのひと。おれはものを作れないけど、改造は得意なんだ」
『――……ばけ、もの、ども、め』
オルガノンの身体はバラバラに砕け散った。
再生することはない。そのための線は、瘴気がかき消してしまったから。
瘴気が晴れる。
「スーさんだいじょうぶかー? ……だいじょぶじゃなさそうだなー!!」
がくり、と膝を突いたスキアファールのもとに、トヲルが駆け寄った。
「おれ、もしかして時間かけすぎた? ヤバかった?」
「いえ、トーさんはよくやってくれました。私が自分で思っていたより貧弱だっただけですよ」
「そっかー、んじゃうまいもんいーっぱい喰わないとだな!」
スキアファールの身体は、すでに人間らしいかたちを取り戻している。
瘴気は霧散していた――より正確に言えば、元の体に戻っていた。
あれは気体を散布するようなものではない。自分自身を作り変えたモノだ。
制限時間を過ぎれば、スキアファールはスキアファールに戻れなくなる。
痛みと苦しさがある。恐怖もあった。スキアファールはそれを嬉しく思う。
死を恐れられているうちは、自分はにんげんなのだと考えられたから。
「……とんでもねえな、あんたたちは」
戦いを見守っていたニコラス老人はポツリと言い、頬をぴしゃぴしゃと張った。
「さ、とにかくだ! 急いで逃げねえとヤバいぞ、このままじゃ爆発する!」
「ばくはつ!? なんで!?」
「……オレの考え通りだった。あの蒸気エンジンは魔力が込められてたんだ。
だからこの船はもう、ダメだ。けど、形はもとに戻ったんだから十分さ」
「……ニコラスさんがそうおっしゃられるなら、私は何も言いません」
スキアファールの願った、「船を切り離している間に敵を殺す」と云う目的は達成された。
だから彼らはそれ以上何も言わず、急いでフェザント号から避難する。
そして猟兵の手配したボートに乗り込んだ、その時だ。
「あ!!」
「トーさん?」
スキアファールは、口をあんぐり開けたトヲルの様子に気付いた。
「かみさまだ! あんなとこで何やってんだろ?」
「かみさま……?」
スキアファールは"それ"を見た。ウン百を超える鼠の群れだった。
鼠どもはちゅうちゅうとより集まり、赤い目をした男の姿を形作る。
ヒト? ……違う。怪奇でもないようだ。いや、あれは。
「かみさまはなー、すごいんだー! びょーきとか、毒とか出せてさー」
「あの目の色……ありゃあ、オレのとこに来た鼠の主ってわけか」
どうやら、ニコラス老人も覚えがあるらしかった。
「……そのかみさまが、どうしてもう沈むであろう船の上に……?」
『ひ、ひ。そいつぁ野暮な質問ってえもんだ、坊や』
どこからか声。ボートの上に、鼠が一匹乗り込んでいた。そいつが喋ったのだ。
「……坊やってのは私のことですか? 私30ですよ」
『気にするなィ。だが、ああ、よくやったぜ、お前さんたちは。ようくやった』
船が遠のいていく。あちこちで小爆発が起きていた。
『ヒトが、ねがいを抱いて、祈り、そしてヒトの力で成し遂げたわけだ。
ニコラス老も、船のお仲間も、猟兵も……あとまァ、そこの白いのもな』
「ついで扱いはひどくねー!? まあいいけど、ふふはは!」
けらけら笑うトヲルのことは放置して、鼠は続ける。
『壊れちまうものは戻せねえし、壊れちまうことを遅らせも出来ねえ。
だが、一度壊れちまったモンが、壊れたまんまでいなきゃならん理由もない』
フェザント号が炎の包まれる。逢真もまた炎に呑まれていく。
『俺は神だ。ヒトがねがいを抱き、祈り、そしてチカラを尽くしたなら。
そいつをどうにか世に発現させるのがお役目の、道具さ。よく戦ってくれた』
「……まさか、フェザント号を直すつもりなんですか?」
『ひひひ。"直せるようにする"のさ』
人は死ぬ。いのちは尽きる。モノも、いつかは壊れてしまう。
だがいのちとモノに違いがあるとすれば、モノは直せることだ。
いのちとモノに共通点があるとすれば、終わりが次へと続くことだ。
『奇跡ってのァよう、ヒトと神との共同作業なンだ。"情けは人の為ならず"さ。
ニコラス老、ここからが大変だぜ。バラバラんなったモンを必死でかき集めて、
総出で組み上げて、鋳潰して、設計し直して、そしてまた組み上げンだからな』
「……出来るのか。あいつを、フェザント号を、また創り出せるのか!?」
ニコラス老人は身を乗り出して叫び、唸り、頭を振った。
「いや。"やってみせる"さ。現役引退はまだまだ先だ、何年かかってもやってやる!」
『それでいい』
炎が船体を包み込んだ。とてもではないが奇跡など起きないように思えた。
逢真の姿はもう見えない。だがどうやら、炎はむしろ洗い流しているようだった。
災魔の卵による汚染と不可逆の変異を、『再生可能な廃材』として作り直す。
猟兵たちの尽力と、老人の覚悟に報いたいというひたむきな意志。
そこに神のチカラとが合わさり、船一隻に足るモノが残る。
一から作るのではなく、同じモノを作り"直す"ためのモノが。
「やっぱかみさまはすげーなー! ふふふはは!」
トヲルは無邪気に笑っていた。
「……勝ちだな」
「え?」
そこでニコラス老人が呟いた言葉に、スキアファールは問い返した。
「オレはひとりじゃ船を守れなかった。きっと作り直すことも出来やしなかった。
けどよ、あんたたちが来て、戦ってくれて、オレのわがままを聞いてくれた。
最後にはかみさままで力を貸してくれるときた。なら、こりゃあオレの勝ちだ」
ニコラス老人は笑っていた。力強い、ヒトの笑みだった。
「ありがとよ、兄ちゃんも! 若えのに見どころがあるぜ!」
「私30なんですが」
「オレからすりゃ同じだよ、うまいもん食え! 顔色悪いぜ、なあ?」
「そーそー! スーさんもっと食い物くえー!」
トヲルとニコラスにそう言われては、スキアファールもたじたじだった。
「……壊すのは止められない。けれど、そこから直すことは出来る、か」
スキアファールは、ぽつりと呟いた。
考えたこともなかった。いや、考えないようにしていたというべきか。
怪物だとレッテルを貼って、もうこの昏い道をそぞろ歩くしかないのだと。
それでも誰かの笑顔を守れれば、それでいいと思っていた。
……けれども案外、人生ってのはやり直しが効くのかもしれない。
日向から大きく外れてしまっても、またおっかなびっくり戻ってもいい。
そんなふうに思えた――いますぐ実行するのは、とても難しいけれど。
「ともだちパワーのしょーりだな、あーさん!」
「……そうですね。私たちの、友情パワーの勝ちです」
トヲルとスキアファールは拳をこつんと突き合わせた。ふたりとも、笑っていた。
そうして。
海上に残ったのは、"奇跡的に"ほぼそのままの形を保ったフェザント号だった。
炎は汚染部分だけを洗い流し、船体の七割以上の形を残していたのだ。
事件後、ユーバニアの造船所ではフェザント号再生一大プロジェクトがさっそく開始されたという。
もっと頑丈で、もっと長く愛され、そして大きな汽笛がよく響くように。
作業を指揮する老人の活力ときたら、事件前よりずっと精力的なのだとか。
新生フェザント号は、前よりもずっと立派な船になるだろう。
ユーバニアの人々は、誰もがそう語っていた。
職人たちは、みんなそうするつもりで頑張っていた。
蒸気は今日も空に舞う。終わりなどなく、ありふれた日常を象徴するように。
そしてやがて、空にもうひとつ――雉のように力強い汽笛が、鳴り響くことだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2020年11月24日
宿敵
『探求のオルガノン』
を撃破!
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