眼光死灰、過去より来る鬼狩り矢
●サムライエンパイア:信濃国飯縄山
「――がッ!!」
超・長距離から飛来した大弓の一撃を受けた羅刹が、血を吐いて死んだ。
修験者めいた装いは血に染まり、倒れ伏した身体は腐り果てていく。
「「「口ほどもなし飯縄の鬼ども! 我ら編笠衆の敵にあらず!」」」
死体を腐らせたのは、浪人めいた編笠を被った呪術師どもの仕業だ。
その体からは妖気が陽炎のように立ち上り、尋常ならざる力を感じさせる。
「おのれ、今川の狗め!!」
「臆するな、続け! 我ら飯縄の羅刹の底力を見せるときぞ!」
「「「応!!」」」
羅刹たちはリーダー格と思しき男性の喝に鬨の声をあげ、怒涛の勢いを見せた。
だがやんぬるかな、またひとり、またひとりと矢と呪の前に斃れていく。
「お、おのれ、今川義元……! 呪いあれ……!!」
死にゆく羅刹が零した呪詛は届くことなく、その死体もまた腐り果てた。
奇っ怪な走法で駆ける編笠衆は。屍を踏み越え無数の呪符を展開する。
「「「覚悟せよ羅刹ども。今日が汝らの命運尽きたる時なり!」」」
これはいずれ起きる未来の光景、グリモアがもたらした予知の光景。
だが放っておけば、これは現実となってしまうのだ……!
●グリモアベース:予知者、白鐘・耀
「よし、そんじゃ詳細を話し始めるわよ」
呼びかけに応えて集まった猟兵たちを見渡し、メガネをかけた少女が言った。
曰く、今回はあの『猟書家』の悪事を未然に防いでほしいのだという。
「場所はサムライエンパイア、相手は"海道一の弓取り"今川義元。知ってる?
いや私も歴史は詳しくないんだけど、この世界の今川義元はおっかないみたいねえ」
当人の口から出た台詞に曰く、その矢は『過去より放たれ未来に着弾する』という。
つまりは、それほどに必殺の矢ということ。無論恐るべきは弓術のみならず。
「体術も秀でてるし、軍略家としてもなかなかのものみたいね。
なにせけっこう強い、あの羅刹の里をまるごと滅ぼそうってんだから」
舞台となるのは、信濃国上水内郡――つまり現代で言う長野県にある『飯縄山』だ。
「ここにある羅刹の里を襲って、全員ぶっ殺してオブリビオンにするってわけね。
羅刹も戦えないわけじゃないけど、このままだと戦況は火を見るよりなんちゃら、よ」
その理由は、今川義元が従える配下にあるのだという。
かつてサムライエンパイアで巻き起こった大戦争、『エンパイア・ウォー』。
その首魁たる織田信長が用いた外法こそ、『魔軍転生』と呼ばれる邪術だった。
「これは自分の部下を"憑装"……つまり自分に宿すことで、その力を操れたのよ。
猟書家はその強化版、っていうか応用版……『超・魔軍転生』を使うらしいわ。
効果はそのまま、大量のオブリビオンに同時に憑装させられるようになったってわけ」
つまり今川義元の配下は、すべて憑装されパワーアップしている。
しかもそれは、かつて猟兵が滅ぼした魔軍将、武田信玄の力なのだ!
「……ってわけで、もともと強いオブリビオンがさらに強力になってるわけね。
幸い今川義元自身は憑装してないみたい。猟書家だと何かデメリットがあるのかしら」
いずれにせよ、羅刹は数と質両方の面で上回られてしまっている。
ぶつかりあえば、待っているのは必然的な死、そして全滅だ。
「だからまず、今川義元の配下を羅刹と協力して殲滅してほしいのよ。
相手は強いけど、羅刹は地理に詳しいから戦術の役に立ってくれるはずだわ」
羅刹たちは俗世を捨てて隠遁しているが、猟兵たちの威光はよく知られている。
命を奪りあう鉄火場において、協力を取り付けるか心配する必要はない。
「ただ雑魚と戦ってる間も、今川義元は後ろからバンバン弓を射ってくるわ。
相手も呪術とかおっかない体術を使うみたいだから、絶対に油断しないでね」
と言い含める耀の表情は真剣そのものだった。
しかし彼女はニカッと明るい笑顔を浮かべると、火打ち石を取り出した。
「まあ大丈夫よ、あんたたちならやれるわ! 運命を変えてきなさい!」
そして、火打ち石を叩く。
カッカッという小気味いい音が、転移の合図となった。
唐揚げ
天狗の麦飯です。猟書家シナリオ第三弾はサムライエンパイアから。
今回は武侠っぽいバトル物を、テンション高くお届けいたします。
猟書家ってなあに? とか詳しい話は、下記のURLをご参照ください。
●参考URL:猟書家の侵略
『 https://tw6.jp/html/world/441_worldxx_ogre.htm 』
●プレイングボーナス条件
『羅刹達と協力して戦う(猟兵ほど強くないが、周辺地形を熟知している)』
●プレイング受付期間
220/11/11 18:59前後まで。
第1章 集団戦
『編笠衆』
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POW : 金剛力
単純で重い【錫杖】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 呪殺符
レベル×5本の【呪殺】属性の【呪符】を放つ。
WIZ : 呪縛術
【両掌】から【呪詛】を放ち、【金縛り】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:V-7
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●サムライエンパイア:信濃国・飯縄山
この飯縄山は、転じて飯綱――すなわち管狐を使役すると言われた大天狗、飯縄権現ゆかりの地とされる場所だ。
実際にそうした大妖怪ないし神仏がいたのかはさておき、この地に住まう羅刹たちは自らを「飯縄の鬼」と称し、修験者めいた厳しくも奥ゆかしい生活に身を捧げていた。
羅刹の剛力のみならず、数々の古めかしい法力を能くする、まさしく侠の名に相応しい精鋭揃いである。
――しかし。
「飯縄の鬼、かつてはまだしも今の我が敵にするにはあまりにも脆弱なり。
されどその骸、オブリビオンの依代とするには十分。であれば――」
今川義元は天を仰ぎ、そしてカッと目を見開いた。
「クルセイダーの名の元に、超・魔軍転生を執行する!
今ひとたび蘇り、我が軍勢に憑装せよ。
我が盟友にして魔軍将――甲斐の虎「武田信玄」よ!!」
突如として空に黒雲わだかまり、そして! ドドォン!! と、稲妻一条。
それは地に落ちるにあたって無数に分かたれ、編笠の呪術師たちを貫いた!
はたして彼奴らに宿りしは、恐るべき魔軍将が一。
甲斐の虎、武田信玄。獣の剛力と戦略眼を併せ持つ勇将!
「さあ征けぃ! 飯縄の鬼どもを皆殺しにし、この地を血で染めよ!
飯縄山は今日より季節知らずの常紅葉よ! 我が眼は未来を見たり!」
編笠衆は上半身を一切ブレさせぬ奇怪な走法で、山中を駆け巡る!
そして今川義元もまた、二十人張りの大強弓をきりりと引いて身構えた!
急げ猟兵、さもなくばこの飯縄山には雨の如き血が降ろう!
飯縄の鬼と轡を並べ、凶悪無比なる邪兵を討つべし!
アルトリウス・セレスタイト
戦術は正しいが単純が過ぎる
破界で掃討
対象はオブリビオン及びその全行動
それ以外は地形含め「障害」故に無視され影響皆無
高速詠唱を幾重にも重ね『刻真』『再帰』で無限に加速・循環
瞬刻で天を覆う数の魔弾を生成、上下含む周囲全方向へ無差別に斉射
更に射出の瞬間を『再帰』で無限循環
一切間を置かず斉射し続け、戦域を魔弾の軌跡で埋め尽くす
向けられる全て魔弾で飲み込み圧殺する
万象一切に終わりを刻む破壊の原理に例外はない
形なき呪詛も逃れ得ぬ
首魁の矢も飛来するのなら魔弾を抜ける他あるまい
消えずに届けば褒めてやるぞ
尚も届く攻撃は『絶理』『無現』で否定し影響を回避
必要魔力は『超克』で“世界の外”から供給
※アドリブ歓迎
●魔弾、降る
「「「うぬ! 何奴か!!」」」
編笠衆の前に立ちはだかるは、アルトリウス・セレスタイトである。
恐るべき呪術を込め、目の前の敵をねじり殺そうとする編笠衆。
だがその試みは敵わない――空の星が、雨のごとく落ちてきたからだ!
「「「こ、これは!?」」」
驚愕は断末魔の絶叫に変わり、そして滅びが雪崩を撃った。
無限の加速と循環による天を覆う数の魔弾、その全方位無差別斉射!
「万象一切に終わりを刻む破壊の原理に例外はない。お前たちは"ここまで"だ」
然り。滅びの原理を刻まれた魔弾は、触れれば防御も出来ず敵を滅する。
しかしてただひとつ例外あり――魔弾の雨を切り裂く一条の矢!
「ほう」
アルトリウスは原理の時間減速により、その矢を防ごうとした。
だが如何にしてか、矢はその停滞した時間をも泥めいて切り裂く!
「……なるほどな。これが海道一の弓取りとやらの矢か」
アルトリウスは数メートルズレた場所に立っていた。一瞬で回避したのだ。
しかし見よ。矢は彼の上腕を裂いていた。アルトリウスほどの術者ですら!
「……褒めてやろう。だが次はない。命を奪いたければせいぜいあがくがいい」
アルトリウスは魔弾の密度をさらに引き上げ、迫りくる敵を滅ぼす。
姿なき射手と青き燐光のぶつかり合いは、いずれも劣ることなし。
魔弾が空を覆いそして降り注ぐ――ここが、血戦の舞台なのだ!
成功
🔵🔵🔴
花邨・八千代
あっはっは!
鬼がそう易々と死ぬものかよ!
手ェ貸しにきたぜご同輩、楽しそうな鉄火場じゃねぇか
同じ鬼の縁故だ、ちっとばかし混ぜてくんな
里の羅刹共に声を掛けて戦いやすい場所を聞いておくぜ
ついでに降りかかる矢も叩き落すぞ
いくらでも射掛けてこい!片っ端から薙ぎ払ってやらァ!
武器は黒塚、『第六感』を頼りに矢ごと敵を『なぎ払う』ぞ
『怪力』任せに薙刀ぶん回して『二回攻撃』だ
オラオラどうした、鬼を殺すんだろ?
俺の立派な角が見えねェってのかァ?
びっくりするほど美人な女だからって舐めてんじゃねェぞ!
俺ァ力だけならそこらの鬼の倍強ぇんだからなァ!
死にてェ奴から前に出ろ!
まァ前に出てこなくてもこっちから行くんだがな!
●願わくば――
「敵襲だと!?」
「うむ。どうやらあの今川めが黄泉より蘇ったらしい」
「小癪なり亡者ごときが。我らを里ごと滅ぼすてか!」
ここは飯縄山に点在する、羅刹の里のひとつ。
修験者めいた装いの羅刹たちは、飛び込んできた報せに怒りを滲ませた。
卓越した戦闘者である羅刹たちは、里をさらにいくつかの小規模に分けることで、
一網打尽になることを避けているのだ。ここはそのコロニーのひとつである。
「「「飯縄の鬼よ! お命頂戴!!」」」
「「「ぬう!」」」
そこへ来たるは編笠衆! その相貌定かならず、されど放つ妖気は悪辣なり!
降り注ぐ無数の呪符! 羅刹たちは回避するが住処が腐り崩れていく!
「この飯縄山に踏み込んで、生きて帰れると思うなよ!」
「「「その言葉そっくり返してやろう、貴様らは今日が命日なり!」」」
「ほざけぇっ!!」
錫杖と拳が激突――羅刹は瞠目した。押し負ける!?
「ぐ……!」
「「「まずひとり、死ねぃ!!」」」
体勢を崩した羅刹めがけ、致命の呪符が降り注ぐ――!
だが、しかし!
「しゃらくせェッ!!」
ごおう! と暴風一閃、無造作に振るわれた金棒が呪符を切り裂いた!
そして編笠衆を、鋼鉄よりもなお堅固なる拳が叩いて砕く。血しぶき!
「「「何奴!?」」」
「ハ、名乗らなきゃいけねえってのか? やだね!」
金棒を担いだ女羅刹――花邨・八千代は、悪童めいて舌を晒し、おどけた。
そして倒れた羅刹を見下ろし、次いで驚く同胞らを睨みつける。
「手ェ貸しに来たぜご同輩、楽しそうな鉄火場だから邪魔しちまった」
「貴様……猟兵か」
「まァそうとも言うね。で? お邪魔だったかい?」
「……否!」
倒れていた羅刹は地面を殴りつけ起き上がる。八千代はころころと笑った。
「そうこなくっちゃあ!! 鬼が地べた這いつくばる時ってのはよォ!!」
八千代は吼えた。爆発的速度で編笠衆に戦いを挑む!
錫杖と金棒が激突する。八千代はにたりと目を細めた。
「……何!?」
然り、金棒は囮! 手放したそれが地面を耕すのを敵は見た。
そしてそこで終わりだ。編笠衆は正中線を両断されどうと倒れる!
「酒ェかっくらって酔い潰れたときだけってのがお決まりなのサ」
薙刀である。八千代は傾奇者めいてぐるぐると大業物を振り回し担いだ!
「オラオラどうした、鬼を殺すんだろ? かかってこいよ!!」
「「「おのれ小癪な小娘が!」」」
「悪ィな! 俺は今年で21、ついでに愛しい彼氏もいると来た!!」
豪風一閃! 呪符の雨を切り裂き八千代は怒涛の勢いで攻め込む。
「臆するな、我らも参るぞ!」
「「「応!」」」
羅刹たちがあとに続く。たちまち降るは鮮血怒号の雨あられ!
「俺がびっくりするほど美人な女だからって舐めてんじゃあ――ねェぞ!!」
ばきん! と、飛来した矢が薙刀で撃ち落とされる。なんたる慧眼。
「さァさァ祭りだ祭りだ! 派手に暴れて遊ぼうぜェ!!」
ここはもはや人外魔境、鬼と骸が争う地獄絵図。
舞うは血飛沫走るは鋼、悪鬼羅刹は此処にあり!!
成功
🔵🔵🔴
月舘・夜彦
【華禱】
羅刹に向ける憎悪を含んだ殺意
何故、今川は彼等を狙うのか
倫太郎、貴方も羅刹なのです
無理はなさらぬように
羅刹を狙って接近する敵へ水霊『紫水』を召喚
水壁を作り出して敵の攻撃を防ぎながらカウンターにて毒の飛沫
攻撃を防いでいる間に羅刹に声を掛けましょう
私達は猟兵、襲撃を知り加勢に参りました
敵の攻撃は凄まじいですが動きは単純
攻撃を躱すことを優先、足場の悪い所があれば有利になるかもしれません
基本は敵の攻撃を回避した後にカウンター
残像にて回避、地形が破壊される為躱しながら跳んで安全な所へ移動
今川の弓は私達だけではなく、羅刹達も狙うはず
視力と見切りにて矢の軌道を読み、なぎ払いと武器落としで叩き斬ります
篝・倫太郎
【華禱】
こういう気配は里を思い出して懐かしい
尤も、俺の故郷は、もうねぇけど……
昔を懐かしむ為に来てる訳じゃねぇし
それは充分承知してる
往こうぜ、夜彦
拘束術使用
射程内の敵全てを鎖での先制攻撃と同時に拘束
特に錫杖を自由に使わせないように意識して使用
射程に入った敵は随時拘束
羅刹達には風の流れや地盤に関して確認
一撃で射抜いて来る矢が飛来する事も情報として伝えとく
同時に鎧無視攻撃と吹き飛ばしを乗せた華焔刀でなぎ払い
刃先返して2回攻撃
以降はフェイント混ぜつつ確実に倒す
敵の攻撃は見切りと残像で回避し
援護射撃は聞き耳と野生の勘で回避を
また、拘束術で飛来する矢を叩き落す
叩き落せない場合は射線をズラして直撃は回避
●昔日の景色は血に濡れて
「……すでに、始まっているようですね」
「ああ」
飯縄山中腹、月舘・夜彦と篝・倫太郎は獣道をひた走る。
そこかしこから怒号と絶叫、そして衝撃音が響き山を揺るがしていた。
ふたりはそれを頼りに急ぐ……だが倫太郎の表情はアンニュイだ。
「どうしました、倫太郎。何か思うところでも?」
「いや……まあ、なんだ」
足を止めずにふたりは言葉をかわす。
「こういう気配……空気っつーのかな。懐かしいって思ってさ」
「……そうですね。あなたもまた、羅刹。里を思い出しますか」
「ああ」
しかし、倫太郎の里はもうこの世にない。
夜彦はどう声をかけたものかと迷い……しばらくあとに言った。
「無理はなさらぬように。私から言えるのは、それだけです」
「もちろんさ。昔を懐かしむために来てるわけじゃねぇ。往こうぜ、夜彦」
「ええ!」
ふたりは前を見た。ちょうどその時、獣道が抜け視界が晴れる――!
そこは、まさしく阿鼻叫喚の地獄絵図というべき有様だった。
数十の編笠衆と羅刹数人がぶつかり合う。数の利は圧倒的である。
変幻自在の攻撃に包囲され、羅刹たちは満身創痍であった。
「「「いざ、お命頂戴仕る!!」」」
「おのれ、今川の狗どもめ……!」
かくして致命の一撃が振り下ろされ――ない。振り上げられた腕がぎしりと軋む!
「ぬう! これは一体!?」
「させるかよ! その隙、もらったぁ!!」
倫太郎の拘束術だ。見えざる鎖は符呪をもってしても抗いがたい!
敵が鎖を引きちぎるよりも疾く、倫太郎の華焔刀がぞぶりと袈裟懸けに走った。
「「「おのれ猟兵、小賢しい!」」」
「それはこちらの台詞です。お覚悟を!」
次いで飛び出した夜彦の剣が、抜き放たれると同時に水滴を弾いた。
まさに抜けば玉散る氷の刃、迸る水滴は空中できりりと槍に化身する!
「「「がはぁっ!!」」」
動けぬ編笠衆は串刺しだ。だが敵はなおも健在、倫太郎と夜彦は頷き合う。
「さあ俺が相手だ、かかってこい野郎ども!」
「倫太郎、気をつけてください! 相手は手練です!」
「わかってらぁ!」
夜彦は羅刹たちのもとに馳せ参じ、倫太郎が陽動を買って出る。
羅刹たちの周囲を水の壁が包み込み、敵の目と刃から覆い隠した。
「き、貴殿らは」
「私たちは猟兵。この襲撃を知り、加勢に参りました」
「かたじけない……! 我らでは口惜しいが手が足りぬ!」
「いいえ、いいのです。それよりも」
夜彦は大立ち回りを繰り広げる倫太郎の様子を伺いつつ、言った。
「戦いにはあなたがたの知恵が必要です。この山を知り尽くした羅刹の知恵が」
「応とも! 力を貸そうぞ!」
「助太刀された側がこう申すのも心苦しいが、まっこと助かる」
「いざ! 我らも奮起すべし!」
「「「応!」」」
夜彦は安堵のため息をついて立ち上がり――弾かれたように空を見た。
そしてすぐさま倫太郎に警告の声を飛ばす!
「倫太郎、南から来ます!」
「――了解!!」
夜彦の声がなくば、最悪一手遅れていたかもしれぬ。
倫太郎は振り返りながら刀を払い、飛来した矢を叩き落とさんとする。
だが強弓の一撃は鋭く疾い。軌道をいなすにとどまり、鏃が肩を裂いた!
「倫太郎!!」
「かすり傷だ、問題ねえよ! それより次が来るぞ!」
夜彦は眉根を寄せつつ頷き、水の壁を切り裂いた。
斬撃と水の壁。ふたつの勢いで、ようやく飛来した矢を切り払えたのだ。
この距離でなんたる豪腕。今川義元、相手にとって不足なし!
「「「隙ありぞ! 死ねぃ!!」」」
「あぁ? 誰が隙ありだってぇ!?」
「私たちのことを見くびらないでいただきたい!」
四方から襲いかかる編笠衆、倫太郎と夜彦は背中合わせに立った!
そして互いに半円を描くようにぐるりと身をこなせば、合わせて一回転。
華焔刀の鋒が大気を焦がし、怯んだ敵を毒の水が蝕むのである!
「「「なんと!?」」」
「こっちの番だ! 合わせろよ、夜彦!」
「承知……!」
変幻自在の風のごとく、怯んだ敵へと両雄打って出る。
焔と水とが螺旋を描いて混ざりあい、たちまち敵を一網打尽に切り裂いた!
「なんと美しくも淀みなき連携、あれが猟兵の手腕か!」
「うかうかしていられん。我らも続くぞ!」
羅刹たちもその戦いに刺激され、傷ついた身体に鞭打ち反撃に転じる。
未来より過去を貫く強弓とて、ふたりの連携を切り裂くことは出来ないのだ!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ゼイル・パックルード
必殺必中ねぇ、一芸自慢とか戦上手ってどうにかしてコケにしたくならねぇ?
さて、必中とかいうけど、眼に映らないものに当てることはできるのかね?
紅葉狩りを放ち、辺り一帯に炎を燃え上がらせる。遠くから見えないように大きくね。
羅刹共、確実に死ぬのと、苦しく辛い中で生きて足掻くのはどっちが好みだい?
延焼は抑えはするが、触れて熱いのに変わりはない。地の利があるお前らなら炎の中で敵の不意を突くくらいはできるだろ?
他にもっといい案を出してる猟兵もいるだろうから無理にとは言わないけどね、手っ取り早く一矢報いることはできると思うぜ。
無理なら道だけ教えてくれればいいがね。
俺は俺で炎に隠れながら狩りをさせてもらう。
●炎、音なく揺らめきて
冬に入った飯縄山の色合いは、美しくも自然の厳しさを感じさせる。
黄と茶で染め上げたようなその優美なる景色が――今、あかあかと燃えていた。
血ではない。それは、ゼイル・パックルードは振り撒く地獄の業火。
草木を喰みて燃える炎は、狂おしくも身を捩り鉄火場の気配に踊っていた。
「確実に死ぬのと、苦しく辛い中で生きて足掻くの、どっちが好みだい?」
ゼイルは傷つき膝を突いた羅刹たちを見下ろし、あくまで冷たく言った。
戦いで死ぬ弱者に対して、ゼイルが憐憫や哀惜を抱くことはない。
弱いやつから死ぬ――それが戦場の鉄則。誰であろうと変わらないのだ。
「……問われるまでもなし」
「我らは羅刹、鉄火場こそが本懐よ」
「泥を食んでも生き延びてくれるわ!」
「そうかい。なら、這いつくばるのはやめてくれよな」
羅刹たちは挑み返すようににらみながら、ざっと立ち上がった。
「この炎なら敵の目を晦ますには上々だ。不意打ちぐらいはできるだろ?」
「「「……承知!」」」
羅刹たちは風の如く炎に紛れた。そして編笠衆の絶叫が木霊する。
「いいね。その思いきりのよさは嫌いじゃあない」
ゼイルはぎしりと昏く笑う。そして手にした刀の刃を指でなぞった。
地獄の炎が刃に燃え移り、鋼をあかあかと焦がしながら燃え上がる。
「「「この炎、我らの目を謀ろうてか!」」」
「――どうした。ご自慢の呪いとやらで見つけ出してみな」
「「「!?」」」
編笠衆が気づいた時にはもう遅い。ゼイルの刃は風を裂いていた。
遅れて剣閃を炎が焦がし、そして横薙ぎの一撃が敵を真っ二つに両断する。
「な、なんたる疾さ……!」
「果てな。ご所望の紅葉景色は見せてやったろう?」
倒れ伏す屍は炎に呑まれ、塵も残さず灼けていく。
ゼイルはこちらを絶え間なく狙う殺気を感じ、にたりと笑った。
炎を裂いて矢が来たる。炎の影に身を沈め鏃を躱す。
ここは戦場。そして狩り場だ。獲物は掃いて捨てるほどいる!
「じきにその素っ首裂いてやる。楽しみにしているぜ」
ゼイルは静かに言った。その声は、姿見えぬ射手にはたして届いたか。
成功
🔵🔵🔴
エスタシュ・ロックドア
飯縄山、な
俺の実家じゃねぇが助けない理由はねぇ
行くか
よう同族、助太刀に来たぜ
足場の悪い、木が特に鬱蒼と生い茂ってるとこがあればそこに案内してくれ
そこで敵を待ち構えるぜ
悪条件だがそりゃ敵も同じさ
『蹂躙黒鼠』発動
【動物と話す】で指示
よう鼠ども、喜べ飯の時間だ
連中の脚の筋やら腱やら齧り切ってやれ
敵が鼠にかかずらってる隙に、
呪詛や今川の矢を木の陰に隠れて躱しつつ、
【ダッシュ】【地形耐性】【地形の利用】で接近
攻撃が当たっても【激痛耐性】【呪詛耐性】で耐える
近づいたらフリントを【怪力】で振るって大上段から縦に振り降ろす
てめぇらの思い通りにゃさせねぇよ、例えどこの里だろーとな
●閻魔王の名のもとに
草木生い茂り地面はでこぼこに入り組んだ、獣道とすらも呼べぬ悪路。
負傷した羅刹に先導されて、エスタシュ・ロックドアが"其処"へやってきた。
「ここだ。おそらくこの近くだと、ここが一番見つかりにくいだろう」
「……いいね、上々だ。ありがとよ、同族」
エスタシュは羅刹を労り、しゃがみこんだ。
……羅刹は少し逡巡を見せたあと、エスタシュに言った。
「おぬしの力量を疑いはすまい。しかし、よいのか? ひとりで待ち伏せなど」
「ひとりじゃないさ」
エスタシュは振り返って言う。どこからか、ちゅうちゅうと鼠の鳴き声。
「数の利ならいくらでもひっくり返せる。お前は避難しててくれ」
「……かたじけない。この恩は必ず!」
羅刹が去っていくのを見届けると、エスタシュは息を潜め気配を消した。
ちゅうちゅう、ちゅうちゅう。どこからか鼠の鳴き声だけがする。
「さあ、鼠ども。いまにでも餌がこっちに来てくれるぜ――」
その時は、エスタシュが期待するよりもずっと早かった。
「「「逃がすな、追え!」」」
ざざざざ、と悪路をものともせずに疾走する編笠衆。
気配を消したエスタシュに気付きもしない。狙うは羅刹ばかりなり。
「……待て」
しかしそのとき、一体の編笠衆が仲間を呼び止めた。
「何? どうした」
「何か聞こえるぞ。これは――」
ちゅうちゅう、ちゅうちゅう。
「鼠の鳴き声だと? こんな山の中腹で……」
ちゅうちゅう、ちゅうちゅう。ちゅうちゅう、ちゅうちゅう。
「待て、これは!」
ちゅうちゅう、ちゅうちゅうちゅうちゅう――がさがさがさがさ!
「「「なんと!?」」」
気づいた時にはもう遅い。四方八方の茂みから飛び出す黒き奔流!
否、それは黒色鼠の群れだ。その数、見てわかるだけでも400以上!
「さあ飯の時間だ、筋やら腱やら齧りきってやれ。逃がすな!」
「「「伏兵!? うおおおお!!」」」
鼠の群れは怒涛となりて、浮足立った敵を文字通りに呑み込んだ。
そして齧りつく。顔、足、手、肩、喉!
「がぼ……!」
鼠などと侮るなかれ。それは疫病の運び手にして業をもたらすもの、湧き出る黒。
突こうが払おうが群れは離れてくれぬ。すでにエスタシュの術中なり!
「……!」
エスタシュは茂みから飛び出した。直後、頭上を一条の矢が掠める。
「苦しいだろう? 慈悲はくれてやるよ、潰れな!」
鉄塊炸裂、大上段から振り下ろされた鋼が敵をバラバラに砕いた!
断末魔すらもなし。獄卒の働きは、地獄に居る同胞に任せるとした。
「てめぇらの思い通りにゃさせねえよ。たとえどこの里だろーとな……」
顔に付着した血を拭い、エスタシュはうっそりと言った。
逆光がかったその表情は、まさしく悪鬼羅刹に相応しい。
大成功
🔵🔵🔵
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
羅刹には貴方呼びで丁寧に話す
絶対に貴方達を守るから協力を頼みたい
そう簡単に行かないってことを教えてやる
SPDで判定
まずは羅刹達から遮蔽物が多く暗い場所を教えて貰う【情報収集】
敵を【挑発】し教えて貰った場所に【おびき寄せ】【迷彩】と【地形を利用】し隠れ、義眼の橙の災い:爆破【爆撃】を【範囲攻撃】【全力魔法】を使って【地形を破壊】し退路を断つ
それから銀腕を【武器改造】で短剣の形にし【迷彩】【忍び足】【早業】で敵の近くに移動し【怪力】【不意打ち】【暗殺】【鎧無視攻撃】で攻撃し、また隠れて移動、攻撃を繰り返しヒット&アウェイで行動
いざとなれば【覚悟】して矢や攻撃を受ける
●追い詰められた者の意地
「! 誰だ!!」
負傷した羅刹は、茂みの中から気配を感じ鋭い声で誰何した。
彼らは編笠衆の攻撃を逃れ、はぐれた羅刹と合流していたのである。
編笠衆か、はたまた敵の新手か? 羅刹たちの間に緊張が走った。
「……待った。俺は猟兵だ。敵じゃない」
茂みから現れたのはルイス・グリッド。両手を挙げ、さらに天下自在符を見せる。
羅刹たちの身体から力が抜けた。安堵のため息が漏れ聞こえる。
「……失礼し申した。なにぶん状況が状況ゆえ、疑ってしまい……」
「いや、いいさ。連中の目を盗むために、俺も気配を消していたからな」
ルイスは非礼を詫びる羅刹に短く言うと、真剣な表情で顔を見つめた。
「状況は把握している。何を隠そう俺たちは、貴方たちを助けるために来たんだ」
「我々を……? では、あの今川の狗どもを斃そうと?」
「ああ。ただそのためには、この山を熟知した貴方たちの知恵が借りたい」
羅刹たちは顔を見合わせる。他ならぬ猟兵の頼みを無碍にするわけにもいかない。
むしろ彼らが訝しんだのは、こんな手傷を負った自分たちに何が出来るのか、だった。
「……俺たちが力を合わせれば、奴らを一網打尽に出来る。誰一人死なせない」
ルイスは力強く言った。
「絶対に貴方たちを守り抜いてみせる。だから、協力してくれ」
「……分かり申した。そうまで言われて、飯縄の鬼が断るわけにもいきませぬ」
「ありがとう。――奴らに、そう簡単に行かないってことを教えてやるさ」
ルイスには策があった。搦め手には搦め手を、といったところである。
「「「見つけたぞ、羅刹ども! 進退窮まり腹を決めたか!」」」
ざざざざざ、と編笠衆が獣道を駆け抜け、傷ついた羅刹たちを取り囲んだ。
羅刹たちに武器はない。この数を覆せるような奥の手もなかった。
そう、彼らには。
「「「ここで死んでもらうぞ鬼どもよ。いざ、骸の海へと沈むがいい!」」」
「――猟兵殿!!」
「ああ!」
「「「!?」」」
その時である。声とともに、編笠衆の背後、大地が抉れて爆ぜた!
「「「不意打ちだと!?」」」
「気付くのが遅いぞ、そしてもう無駄だ!」
退路を断った隙にルイスは影から忍び寄り、編笠衆の懐を短剣で切り裂いた。
ジグザグに走った銀光を追うように、血が迸る。不意打ちの効果は絶大!
「ば、馬鹿な……!」
「我らを袋の鼠と侮ったが貴様らの命取りよ!」
羅刹たちも力を振り絞り、編笠衆どもにとどめを刺す。
だがルイスはざわざわとした悪寒を覚えていた。そこへ風切り音!
「例の弓か……! くっ!!」
ルイスは避けきれぬと覚悟し、メガリスをかざして矢を受けた。
直撃こそ避けたものの、恐るべき速度の鏃がルイスの身体を切り裂く。
「猟兵殿!」
「……大丈夫だ。あんなことを言った手前、倒れてられないからな」
ルイスは新たな編笠衆の気配を感じ、羅刹に目配せをして姿を消した。
闇に沈んでのヒットアンドアウェイ。地の利を得たルイスは一筋縄ではいかぬ!
成功
🔵🔵🔴
天御鏡・百々
泰平の世を乱す者達よ!
この我が成敗してくれよう!
天下自在符を見せ、救援に来た猟兵と説明して
羅刹達の協力を仰ぐぞ
この戦いは地の利を得ることこそ肝要だ
敵の進軍経路を上から狙える場所は無いだろうか?
迎撃地点で羅刹達と共に待ち伏せ
敵が来たら、羅刹には弓矢で攻撃して貰う
そして我は『天神遍く世界を照らさん』を発動するぞ
(破魔、浄化)
この神域で呪術なぞまともに使えぬ
遠距離の撃ち合いなら錫杖も無意味だ
編笠衆は羅刹達に任せ、我は義元の矢の迎撃に専念
『天之浄魔弓』による光の矢で迎撃して逸らす(誘導弾、スナイパー)
それが敵わぬなら神通力の障壁(オーラ防御、結界術)で防御だ
●神鏡のヤドリガミ
●神鏡へのダメージ描写NG
●泰平の世照らす神鏡
「……羅刹どもめ。身を隠したか」
編笠衆は逃げた羅刹を探していた。手負いの獲物が、そう遠くは逃げられまい。
しかし妙だ。奴らの動きは、追い詰められた獣にしてはいやに決断的だった。
……ここに今川義元がいれば、あるいは狙いを見抜けたかもしれない。
たとえ武田信玄の力を憑装していようと、"そのもの"になれるわけではない。
ましてやここは羅刹のねぐら、地の利は鬼たちにある――そして!
「皆の者、今だ!」
「「「応!!」」」
「「「!?」」」
編笠衆は空を仰いだ。……逃げたはずの羅刹どもが姿を現す!
「頭上を取っただと? あんなところに潜んでいたか!」
「しかし所詮は手負いよ、何ほどのものぞ!」
「――否、あれを見よ! 奴らめ、弓で対抗しようてか……!」
然り。その陣頭指揮を執るのは天御鏡・百々である。
百々は逃げ延びた羅刹たちと密かに接触し、協力を取り付けていたのだ。
これほどの速度で弓矢を準備できたのも、そのユーベルコードの賜物か!
「「「喰らえぃ、今川の狗ども!!」」」
ヒュパパパパパ……と、無数の矢が放たれ、そして降り注いだ。
編笠衆は呪符を束ねて壁のように展開し、降り注ぐ矢を防ぎ切る!
「「「片腹痛し! 我らをこともあろうに矢で討とうなどと!」」」
「否。これは布石よ。一瞬でも、汝らの呪符を封じられればそれでよし!」
「「「何!?」」」
おお、見よ。まばゆいほどに輝く百々の神鏡――まさしく天道の光!
それはたちまち呪符を焼き切り、そしてあたりを清廉なる神域へと変貌せしめる!
「これにてこの地は神域と化した。悪しき者どもに、もはや居場所はなし!」
「「「小癪なり、猟兵! 呪い殺してくれるわ!!」」」
「「「そうはさせるか編笠衆、我らの怒り受けてみよ!!」」」
呪符と矢がぶつかりあう! 普通であればそれは編笠衆が上のはずだ。
しかし百々のもたらした清浄なる神の力は、邪悪なる呪詛を阻害してしまう!
「「「おお、口惜しや――今川様! あるじよ! どうかお力を!」」」
「来るか……!」
百々の予測通り、そこへ今川義元の鋭い矢が飛来した。
その数、一度に十条! 百々は光の矢を放ち、かろうじて相殺した!
「手出しはさせぬぞ今川義元、ここは羅刹の里であり神鏡の照らす神域!
さあ憑装せし黄泉の亡者ども、怒れる鬼の力を浴びて疾く滅びよ!」
「「「うおおおおおっ!!」」」
羅刹たちが三度矢を射掛ける。もはや防ぐ呪詛はなし!
「「「バカな……!!」」」
編笠衆は矢衾と成り果てて、内なる力に燃やされ四散した。
清廉なる神の輝きは、亡者の一片とてこの世に残るを許さない!
成功
🔵🔵🔴
石上・麻琴
・心情
さてさて、よもやまたサムライエンパイアで争乱が起きるとは……
しかしながら見過ごす訳にもいきません
どうにか乗り越えるとしましょう
・戦闘
矢を避ける為に『白虎招来式・虎厳沱』で白虎に乗り機動力をあげつつ、羅刹達の協力を得て戦いましょう
敵の呪符は【なぎ払い】つつ、山にある木々を隠れ蓑にしたりしてゲリラめいた攻撃をしていきましょうか
後は他の方々をどうにか支援できればよいのですが……
・その他
アドリブ等は大歓迎です
●来たれ白虎よ、地を駆けよ
「さてさて、よもやまたサムライエンパイアで争乱が起きるとは……」
石上・麻琴はあるかなしかの笑みを浮かべ、鳴動する飯縄山の気配を感じた。
そこかしこから感じる血の匂い、そして禍々しき呪符の妖気。
それだけではない。こちらを射抜くほどに睨む天眼めいた殺気は……!
「……名就けしは十二天将が一つ、後五白虎金神家在申主疾病喪凶将!」
麻琴は白虎の式神を招来し、ひらりと軽やかに背にまたがった。
白虎はそのたくましい筋肉を躍動させ、悪路もなんのそのに駆け抜ける。
すぐ背後、ヒュンッ! と風を切り裂き飛来するは恐るべき矢!
「この距離で狙いを定めるとは、さすがは海道一の弓取りですか」
麻琴は身を出来るだけ伏せて、次々来たる矢を避ける。
姿すら見えぬ超・長距離。届かせられるのは今川義元を置いて他になし!
「ですが残念、それだけ僕を追うということは、行かせたくないのでしょう?
やめろと言われれば逆にやりたくなるのが人というもの。まかり通ります!」
白虎はジグザグに山道を駆け抜ける。矢、ひとつ、ふたつ、みっつ!
そして見えた! 麻琴の予想通り、羅刹を包囲する編笠衆の群れである!
「そこまで! 双方待ったをかけさせていただきます!」
「「「うぬ! 横入りとは小癪なり、退け猟兵よ!」」」
編笠衆は高速で印を結び、無数の呪符で天を覆った。総数は500をゆうに超える!
「羅刹の皆さん、お力添えを! この数は少々、いえだいぶ荷が勝ちます」
「応とも! 我ら飯縄の鬼、受けたる恩は武勇で返すがしきたりなり!」
「立てよ同胞! 今こそ反撃応報仕るとき!」
「「「うおおおお!!」」」
麻琴の声に突き動かされ、羅刹たちは力を振り絞り戦いを挑んだ。
空を覆う呪符は麻琴が霊力によって吹き飛ばす。すべてというわけにはいかぬ。
(憑装の力、油断なりませんね。やはり地の利を生かさねば)
麻琴は羅刹と目配せし、白虎をたくみに操り木々をぐるりと利用した。
羅刹たちとの即席の連携、こなして見せるは術師の力量か!
「「「おのれ、ちょこまかと!」」」
「すみません、こういう性分なものでして」
麻琴はゲリラめいてヒットアンドアウェイを繰り返し、霊符を繰り出す。
ひとり、またひとり、鬼の爪と霊符に裂かれて編笠衆が倒れていく!
「さあここからが踏ん張りどきですよ、羅刹の皆さん」
「「「承知!」」」
趨勢は逆転せり。猛火怒涛の如くに、鬼どもの猛反撃が幕を開けた!
成功
🔵🔵🔴
茜崎・トヲル
かみさま(f16930)といーっしょ!
オブリビオンの人たちは、おれじゃ助けらんねえ。から助けない。
でも羅刹の人たちはまだ助けられるっぽいから助ける!
ふふは。こまったときの神だのみ。
助けたいんだ。てつだって、かみさま。
はぁいまかせてー! おれがみんなの盾になる!
飛んできた矢をとりこんで、おそってきた敵の人もオフダごととりこんで。
ひとのかたちなんていらないいらない。おっきくなれば、そんだけたくさん守れるし!
ばけものって呼ばれてもぜーんぜん。そうだもんねえ。いまさら!
ってやま!? くずすの!? うひゃー。あは、スケールがちげえー。ふふふあは!
朱酉・逢真
白いのと/f18631
心情)いつものとォり呼ばれましてと。だんだん慣れてきたぜ、ったく。この白いのは…。ああ、赦しているさ。"いのち"だからな。だがタマシイは。いや、いや。いま言うこっちゃねェ。ああ手伝うとも。請われたからな。
行動)羅刹のおヒトにハナシを聞こう。地形にくわしいンだろう。教えておくれ。川・井戸・水の溜まりやすい場所・木の分布。山に走る水脈、あまさず言っとくれ。それから上の方に避難おし。あいつら山攻めするンだろ。山ン中はしる地下水脈。広げて揺らして、なだれを起こすぜ。地中の《獣・虫》にも手伝わしてごっそり面をくずしてやろう。仕込みのあいだ、守っとくれよ白いの。終わったらほめてやる。
●震える山
「「「なんたる怪物、面妖な……!!」」」
編笠衆は戦闘者にして呪術師、すなわち武と術をそれぞれに究めた集団である。
そこに甲斐の虎・武田信玄の力が憑装されたとあっては、もはや一騎当千。
振るわれる錫杖は地を穿ち、呪符は森羅万象を腐らせ滅ぼすのである。
だが。そんな編笠衆をして、茜崎・トヲルのいまの"かたち"はなお醜悪だった。
姿どころの話ではない……変形だ。まさしく、怪物(キマイラ)の名の如く。
人の"かたち"はとうに消え失せ、符と矢を取り込み質量を増していく。
二倍か、三倍か……脈動する肉の塊は常にめきめきと形を変えていた。
『ふふ、ははは。そーだろ、こわいだろ』
恐るべきものに口と思しき裂け目がめりめりと生まれて、言った。
『だから逃げろよ。消えろよ。あんたたちは助けない』
「「「何をわけのわからぬことを、消えよ妖物!」」」
『ふふは! はは! オブリビオンの人たちが、よーぶつだってさ! はは!』
声音だけは普段のトヲルとまったく同じで、それがかえって恐ろしかった。
何がおかしいのか、化け物はけらけらころころと笑う。愉快そうに。
符が放たれる。肉を腐らせるそれは、新たに生まれた肉の波に呑まれた。
腐らせても裂いても抉っても、次から次に新たな肉と骨が生まれてくるのだ。
腐敗を凌駕する速度の再生。呪殺など出来ようはずもない。"死なない"のだから。
『おれは死なないんだ。死ねって言われても、殺されても、死なないぜ。
こわけりゃ逃げなよ、きえなよ! 誰も殺させやしねーもんね、おれ以外!』
ひたむきだった。献身的……いや、自殺めいていると言ってもいいか。
護られる羅刹たちの表情はといえば、なんとも複雑そうであった。
畏れがある。恐怖ではなく、畏怖。
ヒトが神を畏れるように、わけのわからぬものに対する強い警戒心。
だが恐怖ではない――鬼たちは、"それ"の強さを、肌で理解していたからだ。
なによりも自分たちが護られていることは、一目瞭然である。
心無い人間であれば、化け物だ、怪物だと、恩を忘れて言っていただろう。
羅刹たちは違う。自ら世俗を捨てた鬼は、然様なことは言うはずもない。
では他の感情は何か。
まず、護られるしかない自分たちの至らなさに対する苦渋があった。
敵に侮られる屈辱もある。"それ"の強さ、偉大さへのある種の敬意も。
その中でも大きなものは、憐憫である。
「なんと、なんと憐れな。憐れむ資格など、我らにはなかろうが……」
ひとりの羅刹は、はらはらと涙を零しながら拳を握りしめた。
死ねないもの。
かたちすらも定まらぬもの。
それが、ただ護るために、自分の身を盾として、暴れている。
侮蔑出来るはずがあろうか。
排斥出来るはずがあろうか。
『ふふ、ふふははは!』
たとえ本人が、楽しそうに笑っていたとしても。
「よう」
「「「!?」」」
その時である。羅刹たちのそばに、いつの間にか男がひとり。
朱酉・逢真は煙管を手に、軒下の暗がりから見上げていた。赤い瞳で。
「ハナシが聞きてえンだよ、羅刹のおヒト」
「き、貴殿は……」
「まず俺だ。なに、大した質問じゃあないから、どうか教えておくれ」
当惑する羅刹たちの言葉を遮り、平々凡々とした様子で赤い目の男は言った。
目の前で繰り広げられる怪物と術師たちの戦いなど、意の外に置いて。
「川、井戸、水。なンでもいい、そういうのが溜まりやすい場所と、木の分布。
――つまりだ、この山のなかでいっとう大きな水脈が、どこにあるかってことさ」
「水脈を……?」
「そォだ。他にもあンなら、あまさず言っとくれ。それが、必要なのさ」
逢真はにこりと笑うが、目だけは炯々と輝いている。それが恐ろしい。
だがなぜか、口元の笑みは穏やかで暖かく、不思議と安堵させられた。
羅刹たちは悟った。これは――いや、この御方もまた、ヒトならざるもの。
猟兵という生命の埒外にあるもののなかでも、ひときわ"違う"のだと。
「わ、わかり申した。しかし一体何を……」
「あいつらを、追い払うのさ。ああ、それと」
立ち上がった逢真は、とん、と煙管の灰を落とし、羅刹たちを一瞥した。
「ハナシが終わったら、上のほうに避難おし。俺の世話になりてえなら別だが」
数分後、言われたとおりに頂へと避難した羅刹たちは、言葉の意味を理解した。
山が震え、鳴動し、雪崩がまるごと敵を洗い流していったからだ。
草も木も、岩も、敵も、何もかもが洗い流されたあと。
いつかのガラスめいた大地のように、トヲルと逢真は並んでいた。
「さっすがかみさま、スケールがちげーや! あの人らの顔すごかったなー!
編笠かぶってて分かんなかったけどさ、びっくりして飛び上がってたぜ!」
「そオだな」
逢真はふう、と紫煙を吐き出した。
「こまったときの神だのみはするもんだなー、あんがとかみさま!」
「いいさ、もォ慣れたからよ。……しかし」
逢真はトヲルを見やった。その"かたち"は、ヒトらしさを取り戻している。
だが、ヒトではない。獣の混ざりものである――いや、少々意味が違うか。
きっとキマイラたちでも、同じ状況であれば畏怖を抱いただろう。
自分たちとは違う、何かもっとおそろしく、おおいなるものとして。
「ったく、この白いのはよ。赦しちゃいる。赦しちゃいるさ、だが」
「ん? なーに?」
「…………いや。いいさ。お前さんは、たしかに"いのち"なンだ」
逢真は、言いかけた言葉を煙に変えて、またふう、と吐き出した。
「いまはいいさ。まだ、な」
煙が、空にゆっくり上りほどけていった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ジン・エラー
【甘くない】
ビャハヒハハッッ!!!
優しいねェ~~~~~エリシャァ~~~
とォ~~~~ぜン、全部救ってやるよ
オイオイオイオォ~~~~~イ!!オレが囮だァ~~~~??
おもしれェ~~~!!やァ~~~ってやろうじゃねェか
お~~~う雑魚ども、その目ン玉でよォ~~~く………って目ン玉ねェ~~か!!ウッヒャハハハ!!!
じゃァ~~まァ、その身体にでも刻ンで逝けよ
ア?羅刹のお前らはァ~~………オレについてくりゃァいい
呪えるもンなら呪ってみろよ
その代わり、聖者サマをそう簡単に呪えるなンて思うなよ?
──そもそも、とっくにこの体は呪われ尽くしてるンだ
ヒヒャハ、そりゃァ~~もう、お前との良からぬことをなァ~~~~!
千桜・エリシャ
【甘くない】
同胞が無残に討たれるのを
放って置けるほど私は冷たくはなくってよ
同じ羅刹として助太刀致しますわ
ジンさん、手伝ってくださいまし
飛び道具だなんて卑怯なこと
羅刹の皆さんにお願いして地形を利用しましょう
頼りにしておりますわ
目にもの見せてあげましょう
弓が届きにくい障害物の多い場所を掻い潜りながら
雑魚を一箇所へ集めて
ジンさん、囮をよろしくね
ねぇ、あなた方
私の呪詛とどちらが強いか勝負しませんこと?
負けるつもりはありませんが
私と目を合わせたなら最後
すべて蕩かして差し上げましょう
常秋なんてうちの裏山の社だけで十分ですわ
ジンさん?
そんな顔をなさるなんて珍しいこと
良からぬことでも考えていたのではなくて?
●首とり勝負
「ビャハヒハハッッ!!」
土砂崩れを起こした飯縄山の山腹に、タガの外れたような大笑いが響いた。
なんとも下品で、作法も品性の欠片も感じられない、馬鹿笑いである。
当然、敵の注意を惹く。ある意味、それが狙いでもあるようだった。
「優しいねェ~~~~エリシャァ~~~~、こンなとこまで遠路はるばるよォ!
で? 何? 全員首を獲るから力を貸して、だったかァ? ブヒャホハハ!」
「何がおかしいんですの? 同胞の死を放っておくほど私は冷たくありませんわ」
ジン・エラーの言葉に対し、千桜・エリシャはにべもなく言った。
ふたりはいま、羅刹たちを救助しともに野山を駆けていた。
羅刹から得た地形情報をもとに、敵を誘い込んでいるのである。
「そもそもジンさんこそ、私のお願いを聞いてくださったのでしょう?」
「ア? とォ~~~~~ぜンだろ。オレは聖者サマだぜ?」
ジンの目元がにたりと笑みの形に歪んだ。
「全部救ってやるよ。羅刹も、あの雑魚どももなァ」
「なら黙って囮になってくださいまし」
「アァ~~~~??? オイオイオイオォ~~~~~イ!! オレが囮だァ?」
「……そんなつもりでもないのにいつも通りの声出してましたの? 呆れた」
「ギャハヒヒヒ! おもしれェ~~~!! やァ~~ッてやるよォ!!」
エリシャの呆れ顔に笑い転げながら、ジンはざっ! と片足でブレーキした。
そして後から追ってくる編笠衆の群れを前に、尊大な態度で言うのだ。
「お~~~~う雑魚ども、その目ン玉で……いや、その身体に刻ンで逝けよ」
「「「戯言を! たかが人間ひとり呪うのは赤子の手をひねるより容易いわ!」
「聞こえなかったのか? ――オレは、聖者サマだぜ」
ふたつの色を持つ双眸がにたりと、嘲りの三日月を描いた。
その身を覆うほどに降り注ぐ大量の呪符。込められた念は呪・殺の一語。
死を命じ強制する可視化されるほどの呪いが、ジンの全身を襲ったのだ。
「同胞よ! よいのか!? 彼奴らの符は――」
「ええ、大丈夫ですわ。あの人、死んでも死にませんもの」
羅刹に対しエリシャはけろっと言って、そしてこう続けた。
「それよりも、あなたがた。うかうかしていると、首はすべて頂きますわよ?」
「……ッ」
修験者として鍛え上げてきた羅刹たちをして、その笑みは怖気が立った。
おぞましいからでは、ない。この修羅場にありて魅入られそうだったからだ。
エリシャはにこりと笑う。そして、桜の残り香だけを置いて姿を消した。
木々に囲まれた閉鎖地帯、ここではさしもの今川義元の矢も容易には届かぬ。
そもそも必要がなかった。なにせ、符の山がジンを覆っているからだ。
聖者? だからなんだ。呪いに聖者も貧者も関係あるものか。
死ね。
ことごとく死ね。
腐れ爛れ、苦しみ嘆き喘いで呻いて悲と惨にのたうちまわって死ね。
そういう呪(しゅ)を込められた符である。草木すらも枯れ果てていた。
だが。
「ヒヒャハハハハハッ!!」
「「「!?」」」
ぶわっ、と符が舞い上がり、焼き切れて、灰が雪のようにちらちらと降った。
ジン、健在である。それどころか――そもそもどこも、腐っていない。
爛れてもいなければ傷ついてもいない。まったくの、無傷。
「「「バカな!?」」」
「残念だったな雑魚どもォ~~~~~~~~!!」
けたけたけた、と聖者をうそぶく何かは嗤った。
「この身体はもうとっくに、呪われ尽くしてるンだよ。ざまァみやがれ」
その時である。灰の雪は一瞬にして桜の花に変わり、吹雪めいて舞い踊った。
「「「これは!!」」」
「ねえ、あなたがた――私の呪詛とどちらが強いか、勝負しませんこと?」
編笠衆は声の主……つまり、エリシャのほうを見返した。
それがキーだった。おぞましく、美しい瞳は、敵を虜にした。
これは、と奴らは声を出そうとした。出来ない。そもそも形が保てぬ。
ぐずぐずと腐れて爛れるように、溶けてほぐれた。
あとに残るのは桜吹雪。屍体はおろか、骨さえも残さずに。
桜は屍体の養分を吸うという。まさしく、似合いの光景であった。
「囮、ご苦労さまでしたわ……って、あら?」
「あァン? な~~~~~~~~~~ンだよエリシャァ」
「……そんな顔をなさるなんて、珍しいですわね?」
「…………フッ、ヒハハハヒャハ!!」
聖者はいつものように笑い転げた。
「お前とのよからぬことを考えてたら真顔になっちまったよォ」
「……!! な、何を言っていますのこの変態は!」
「ブヒヒャハハハ!! あ~~~~ァおもしれェ!! ――本当におもしれェな」
振り返ったジンの表情は、もう誰にもわからなかった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ウォリア・ノーヴァ
零時(f00283)と
アドリブ歓迎。
独り言の様に話すが、他者の話は一応きちんと聞いてる。
…何かが、呼んでいる。
星と共に忘れ去られた我を、誰が呼ぶ__?
…立ち塞がり、戦を挑むのだな?
…ならば…来たれ…滅ぼすのみ!
…少年…オマエは…?
30cm強の兜のみの状態(セーブモードと呼称)状態でヴォロス(槍である騎竜)に【騎乗】して低空飛行、敵陣へ突撃する
羅刹に危機が迫るその時、【封印を解く】!
「伽藍鎧装!星竜剛身!」
「何者か」の声と共に、現れるは身の丈2m以上の巨躯、大いなる竜たる騎士!
【捨て身の一撃】と【シールドバッシュ】を重ね、【勇星の煩悶】を放ちながら突き進んで立ち塞がる敵を一切合切潰してくれよう!
兎乃・零時
ウォリア(f14305)と!
アドリブ歓迎
この世界にも…あいつらめー!友達とかいんのに!
怖いけど負けな…ん?羅刹と…鎧?
(なにあれ)(そわ
でっかくなった!?
え、なにそれかっけぇ!(輝く
…はっ!
惚けてる場合じゃねぇ
俺様も手伝うー!
「魔導機械箒」に跨り直行!
杖から光属性魔力砲で援護射撃しつつ
俺様は兎乃零時!よろしく!
地形破壊されても「魔導機械箒」で【空中浮遊×空中戦】
そんままUCで杖を銃のⅡ型に【武器改造】しつつ光【魔力溜め】!
攻撃上げ装甲下げ
光の弾丸を創り銃に装填し
『極光弾道』ぶっ放す!
光【属性攻撃×全力魔法】!
初対面だけど頑張って合わせるぜ!
羅刹のお前らも!このままじゃ終われねぇよな!がんばろ!
●来たれ星竜、光とともに悪を討て
「くそっ! 今川の狗ども、なんという狡猾な連中だ……!」
若い羅刹は焼けただれた拳を抑え、ふつふつと脂汗を吹き出した。
次々と襲いかかる編笠衆の攻撃により、散開した羅刹たちは危機にある。
特にここに逃げ込んだ数人の若者たちは、いよいよ絶体絶命であった。
周囲を囲まれ逃走はままならず、攻め込もうとすれば敵が退く。
そして呪符がその身を蝕み、錫杖の打撃による傷も枷となっていた。
真綿でじわじわと首を絞められるかのような、屈辱的な処刑である。
「「「羅刹ども、貴様らに退路はなし。もはや我らの呪縛陣は完成せり」」」
どこからかいくつもの声がする。木々に紛れる卑劣なる者ども。
飯縄山の地理を知り尽くした若者たちですら、見破るのは難しい。
おそらく、編笠衆の中でも特に隠密に長けた外道どもなのであろう。
「「「辞世の句は浮かんだか? 今川義元様の命により、貴様らを討つ!」」」
「おのれ……我らを侮るな! 飯縄の鬼に敗死はなし!」
「応ともよ! こうなればひとりでも多く道連れにしてくれるわ!」
「……来るなら来い、編笠衆! 我らの命、安くはないぞ!!」
若者たちは悲壮な討ち死にの覚悟を決め、背中合わせに身構えた。
唇を血が出るほどに噛みしめる。こんな最期はまっこと御免である――しかし。
「無念……!!」
ひとりが呻いた。それが、彼らの本心であった。
このような場所で、こんな形で、討たれるのは畜生にも劣る。
苦悶。
悲嘆。
そして憤怒。
生きたいと願う魂が、声なき声で叫んでいた――。
『……何かが、呼んでいる』
"それ"は現れた。
『星とともに忘れ去られた我を、誰が呼ぶ__?』
"それ"は、声に引き寄せられるままにやってきた。
死を迎えつつある命があげた、声なき痛恨の叫びを耳にして。
処刑の刃が振り下ろされようとしていた。羅刹たちに襲いかかる編笠衆!
その時、もうひとりある少年がその場に急行していた。
「くっそー! やめろお前ら! やめろーっ!!」
魔導機械箒に跨った兎乃・零時は、喉が枯れそうなほどに強く叫んだ。
目の前で、散らされようとしているいのちがある。
聞こえたのだ。覚悟など出来るはずもなく、運命を呪い、怒る声が。
「何もしてない羅刹たちを、殺すなんて――俺様は、絶対!! 許さないぞ!!!」
だが届かぬ。この身を光と変えようにもあまりにも時間がない。
最強最高の魔術師ならば、きっとさっそうと現れたのであろう。
自分は違う。夢として掲げても、その身はいまだ最高にも最強にも遠く。
これほどまでに、未熟と幼さを痛感させられるのは、屈辱だった。
「やめろぉおおおおおおおッ!!」
だから叫んだ。血が出るほどの、喉が裂けそうなほどの声で。
ふたつの声は、たしかに届いた。
"それ"が、大音声を響かせた。
『伽藍鎧装! 星竜剛身!!』
おお、見よ。振り下ろされたる錫杖は、何かに弾かれ、吹き飛ばされた!
「「「ぬうっ!? な、何奴!!」」」
猿(ましら)めいて空中で身を丸め、一回転して着地する編笠衆。
土煙が吹いていた。衝撃が足元に伝搬し、そして地面に逃されたためだ。
つまり錫杖を同時に受け止めた何かは、その打撃をまともに受けたのである。
……しかして、その巨躯は。片腕を上げた状態で、平然と屹立していた。
「「「……龍の鎧だと!?」」」
然り。聳えたるはおよそ七尺、いや八尺にも手が届くやもしれぬ。
剛健たる鎧は竜のそれ。漲る気迫たるや、編笠衆をして息を呑むほど。
「なんだあれ!? え、なんだぁ!?」
必死に追いつこうとしていた零時ですら、呆気に取られた。
……なにせ、その鎧装ときたら、いかにも"らしい"威風があったからだ。
つまり俗物的な言い方をすれば、「かっこよかった」のである。
少年の少年らしい感性がいたく刺激されるほど、流麗で、堅実で、強壮だった。
『……これは』
鎧を纏いしウォリア・ノーヴァ自身が、なによりも驚いている様子だった。
声が、聞こえた。あの声は、いや、しかし……?
「「「おのれ闖入者め! 我ら編笠衆に仇なすか!」」」
『編笠衆。それが、敵の名か』
ウォリアは背後を……へたりこんだ若者たちを一瞥した。
だがすぐに敵を睨む。襲いかかる錫杖――しかし!
『ぬんッ!!』
一撃。踏み込んでの重い拳が、編笠衆の胴を撃ち、吹き飛ばした。
「ぐ、はっ!?」
「す、すげー! うおおお! 俺様も手伝うぞ!!」
吹き飛んだ編笠衆と入れ替わりに飛んできた零時が、まず鎧を見上げた。
「俺様は兎乃・零時! よろしく!」
『……立ち塞がり、戦を挑むならば、すべて滅ぼすのみ』
「お、おう! ……あ、羅刹のお前たちも! 頑張ろうな、一緒に!」
「あ、ああ……」
若者たちが立ち上がると、零時はにかっと笑って頷いた。
「最高最強の魔術師――に、なる俺様が来たからには、もう大丈夫だから!」
『……少年よ。前に出る』
「おう! って、ええ!? 無視されてると思ってたら聞こえてたのー!?」
と、コミカルな零時のツッコミをスルーして、ウォリアは敵に突っ込んだ。
無謀である。だが振るわれる盾は敵を薙ぎ払い、傷一つ負うことはない。
「俺様も負けてらんねー! 光よ、俺様の意思に従えッ!」
銃型に変形した杖から迸る光の弾丸が、ウォリアの戦いを支援する。
まさしく、無双だ。無双練達たる編笠衆が、まるで紙屑のようだった!
「「「おのれ、おのれ猟兵! おのれェーッ!!」」」
『跪け、力なき者ども__我は、その存在を許容せぬ!』
ドウッ!! とウォリアの全身から溢れ出した、強烈なエネルギー波。
それは編笠衆を吹き飛ばし、そしてめきめきと変形させ、圧し潰す!!
「「「おおおぉおおのれェエエエーッ!!」」」
断末魔の絶叫が響き渡り、かくして――悪しき者どもは、一掃されたのである。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
嵯泉/f05845と
ん、任せろ
好き勝手させてたまるかってんだ
戦いの方でも手が借りられりゃあそれに越したことはないが
奴らの思惑通り命を持って行かれるのも業腹であろう
ここは分担といこう
御仁らは案内に注力して、我らの手並みを披露させてくれないか?
戦場全体へ呪詛幕を展開
攻撃をなるべく絡め取ってやろう
全く呪詛の使い方がなってない
手本を見せてやるからよく見ておけよ
――現世失楽、【悪徳竜】
嵯泉は氷が得意なわけじゃない……よな?
だったらサポートに回るだけだ
目を奪えば避けにくくなるに決まってるし
先に冷やしといた方が固めやすい
嵯泉の刃から、逃れられるかな
この世界は災難続きだな
にしても、怒った嵯泉こえーの……
鷲生・嵯泉
ニルズヘッグ(f01811)同道
連中の目論見なぞ何一つ成就させん
……お前の手を借りるぞ
如何に羅刹の剛力と云えど、あれ等は些か荷が重かろう
我等は云わば専門……だが流石に地の利を得る場が欲しい
里への道中で細くなっている場を教えて貰いたい
其の出口で迎撃するとしよう
集中した第六感からの先読みで攻撃起点と方向を計り
なぎ払い咬ませて叩き落し決して後ろへは通さん
呪詛の扱いで灰の竜に敵う訳が無い
残念だったな愚か者共が
ああ、適性が低いとでも云うか……使い熟すには今一歩足りん
だが――至攻白極、極下へ至れ
氷竜の砥ぎが加わった氷刃の味、骨身の芯まで篤と味わえ
此れ以上、此の世界に疵を付けさせはせん
お前達こそ残さず砕けろ
●けして譲れぬこと
かつて、このサムライエンパイアには永く暗雲が横たわっていた。
第六天魔王・織田信長。すべてのオブリビオンのはじまりたる大魔縁。
国中を巻き込んだ大いくさの末、かの大魔縁は討たれ、平和が訪れた。
残党やレディ・オーシャンという闖入者を除けば、まったく平和だったのだ。
けれどもそれは破られた。
猟書家という、誰にも望まれぬ侵略者たちによって。
「連中の目論見など、何一つ成就させん。私はそのためにここへ来た」
羅刹たちを前にした鷲生・嵯泉は、言い含めるように穏やかに言った。
声音は穏やかである……穏やかすぎるほどに。そう、凪いだ海のように。
それがかえって、奥底に秘められたくろぐろと燃える怒りを引き立てていた。
押し殺しているのだ。爆発しそうなほどのすさまじい憤怒を。
「……まあ、そういうわけでだ。御仁らの知恵を貸してほしい」
ニルズヘッグ・ニヴルヘイムは肩をすくめ、そう続けた。
こちらがどういう身分なのか、何を狙っているのか、説明する手間は不要だ。
羅刹たちも、嵯泉の皮一枚下で燃えるすさまじい憤怒の炎に気づいたゆえに。
「……承知した。猟兵殿、かたじけのうござる」
「礼は不要だ。これは半ば……いや、ほとんど私の怨恨も同然だからな」
嵯泉は深く頭を下げる羅刹に言った。そして、瞑想的に隻眼を閉じる。
……生まれ故郷を陵辱される怒りが、これほど強かろうとは。
復讐を終えて一区切りがついたかと思っていたが、どうやらまだまだらしい。
いや、あるいは"だからこそ"か……であればまだ救われる気持ちだった。
自分は生きたいと願っている。守りたいものがあると思える心があるのだから。
「ニルズへッグよ、お前の手を借りることになる。改めて、すまぬな」
「おいおい、よせよ嵯泉。詫びられてそういう気分になったのか?」
ニルズへッグは朋友に苦笑を浮かべ、おどけてみせる。
「ここに来た時点で、そういうのは言いっこなしだ。いつもそうだろう?」
「……そうだな。私らしくないことをした」
「そうさ、らしくないことはやめとけ。私は、最初からやる気なんだから」
ニルズへッグの見せた明るい笑みに対し、嵯泉は口元を緩めようとした。
けれどもそれは叶わず、かろうじてぴくりと口の端が動いたように見えただけ。
「では、案内いたそう。こちらへ」
「ああ」
「頼むよ。それと、残る御仁はどうか戦いには加わらぬように」
「なにゆえに? 我らとて戦えぬわけではございませぬ」
「……連中の思惑通りに命を持っていかれるのも業腹だろう? というか」
ニルズへッグは、一足先に歩き出した嵯泉の背中を、顎でしゃくった。
「――そうするとあいつが、いよいよ手がつけられなくなる。そういうことさ」
そう言われては、羅刹たちも納得するほかになかった。
そして、案内された場所……里に続くいくつかの道中のひとつ、細道。
深く鬱蒼と木々が生い茂り、横に避けるにはなかなか難しい要所であった。
「「「うぬ! これは!!」」」
そこへ殺到した編笠衆は、鋭い感知能によって布石に気づいた。
すなわち、霧である。視界を奪うほどに濃密にたゆたう、冷気の霧だ。
しかもそれは目に見えぬ呪詛の幕でもあり、物理的・霊的に外敵を阻む。
呪術師たる編笠衆だからこそわかる。この術者は――手練だ。
「ほう、のこのこ飛び込むほど莫迦ではなかったか。まあ及第点をやろう」
冷気の奥から巨躯が現れた。ニルズへッグは、にたりと笑う。
「だが、此処に来るまでに気付けなかった時点で、やはり貴様らは落第だ。
"これ"は手本だ。ようく見て、感じて、そして憶えておくがいい。ただし――」
ただし、と言いかけた瞬間、まるで竜巻が横殴りに飛んできたかのように、
木々を吹き飛ばし、恐るべき何かが円弧を描いて編笠衆を真っ二つにした。
「「「な、何奴!?」」」
……斬撃である。たった一振りの刀を、大きく横に薙いだだけだ。
さらに斬撃の余波はぱきぱきと霧に反応して凍りつき、氷の刃に変じ、
まるで自由気ままな駒のように、あるいは揺れる振り子めいて踊った。
編笠衆は避けようとした。あるいは、呪詛の力で退けようとした。
どちらも叶わぬ。二度目の斬撃がぶおん、と埃を巻き上げて敵を殺し、
さらに氷の刃はすさまじい速度へと突如加速し、編笠衆どもを襲ったからだ。
仕手は、男ひとり。すなわち、嵯泉であった。
「「「……!!」」」
編笠衆はその隻眼を見た。練達無双の呪術師たちが、震え上がった。
霧も、乱舞する氷の刃も、すべて恐ろしく冷たく、そして鋭かった。
だが何より恐ろしく、そして鋭く、凍てつくほどに冷たい眼光だった。
「残さず砕けろ。欠片ひとつとて、この世界に遺すことは許さん」
ただそれだけだった。
名乗りも、激昂の雄叫びも、ありきたりな皮肉もない。
淡々と、そして有り余るほどの憎悪と怒りを込めて、刃風が舞う。
もはや鎧袖一触である。ニルズへッグは、また肩をすくめた。
「この世界は災難続きだと思っていたが、いやはや」
――どうやら、本当に災難を踏んだのは、敵の方であるらしい。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
穂結・神楽耶
ヴィクティムさん/f01172と
何が「未来を見たり」ですか馬鹿馬鹿しい。
それが容易く覆るものだとご存知ないようですね。
貴様等如きがこの世界を穢すな。
あらかじめ羅刹様方に狙撃されやすそうな、目立つ経路を教えて頂きます。
オーケイ、ではそのように。
いざ咲き誇れ、【深緋華裂】――
山を彩るは紅葉に非ざる破滅の炎熱。
呪符にも矢にも、わたくし以外へ余所見させません。
羅刹様方は必ず守り抜きます。
こちらが目立てば目立つほどヴィクティムさんが楽を出来ますし。
はいはい任されますよ。
こちら側の呪符を押し出すように焔を飛ばしましょう。
同じもの同士なら相殺する。
そこに別の力を加えれば結果は明白です。
全員纏めて、灰と帰せ。
ヴィクティム・ウィンターミュート
神楽耶/f15297と
くだらねぇ
空き巣紛いのことをしなきゃ何も出来ねぇカスどもが
クルセイダークルセイダークルセイダー
ペテン師に縋るだけが能か?アァ?
消し尽くしてやる
ここらへんの地形を教えてくれ、2秒で全て覚える
──よし、なら第一波が来るポイントは大きく絞れる
出会いがしら、トップスピードで腕を斬り落とし、奪い取る
なるほど、物騒な符だ…俺が使う、許可はいらん
そっちがどれだけ出してこようと、何度も何度も何度も発動して、食い潰すように押し返す
これで、羅刹は死なないだろう…神楽耶、そっち頼む
一人も逃がさん、残留思念すら残さん
死ぬのは敵だけだ 壊れるのはクソどもだけだ
存在の一切を、俺は認めてやらねェよ
●灰さえも遺さずに
エンパイア・ウォー。
あの大いくさは、猟兵たちにとってまさしく快進撃となった。
魔軍将のすべてを滅殺し、あらゆる困難を超えて信長すらも貪り尽くした。
まさしく神風じみた勝利であった。猟兵の底力とも言えようか。
しかし、それはけして楽観していて得られたようなものではない。
すべての猟兵が死力を尽くして戦い、徹底的に悪を誅戮した上での完全勝利だ。
……その中でも特に、際立って命を削り続けた男がいた。
ヴィクティム・ウィンターミュート。
このサムライエンパイアには、いかにも似つかわしくない男である。
しかし、彼には戦う理由があった。
けして明かせず、明かさず、だが放棄するつもりもなかった理由が。
戦い続けた。
戦場から戦場を渡り歩き……いや、飛び歩き、殺し、騙し、操り、そして殺した。
東に妖怪あると聞けば誰よりも早く向かい、
西に魔軍将がいればたったひとりでも突入し、そして殺した。
ただ護るために。
義憤ではない。憎悪である。光さえも通さぬほどに昏く、苛烈な憎悪だった。
仲間たちはみな、あまりにも前のめりなヴィクティムの身を案じた。
特に戦いが終わって倒れたときは、多くの仲間から言葉を受けたものだ。
こんなことを言えばきっと彼らはまた呆れた顔で怒るだろうが、
その時ヴィクティムは心のどこかでかすかにこう思った――これも悪くない、と。
自分のような許されざる死にぞこないに、あってはならない思いだが。
守り抜けたことに、ヴィクティムはたしかに充足を憶えていたのだ。
憶えて、"いた"。
その充足も、許されぬ喜びも、達成感も、仲間たちの言葉も。
何もかも踏みにじられた。猟書家。侵略者ども、愚か者ども。
「くだらねえ」
羅刹たちから教えられた絶好の地形、隠れる場所など存在しない小さな谷。
その中心で、ヴィクティムは言った――足元には、無数の腕が転がっていた。
「な、何をした……!?」
「なるほど、物騒な符だ」
切断された肩口を抑える編笠衆の問いかけに、ヴィクティムは答えなかった。
一瞥すらしない。そもそも声を発したことすら意識にいれていないのだ。
貴様、とそいつは言おうとした。その首が一瞬にして吹き飛んで消えた。
「「「ば、バカな!!」」」
そこへ、矢が来る。
今川義元が放った、未来より過去へと命中するという大弓であった。
――キン、と。
まじりっ気のない鉄を指で弾いたような、爽快な音がした。
矢が、くの字に折れ曲がった。着弾すらせずに、真っ二つになったのだ。
編笠衆をして見えぬほどの剣技である。いつのまにか、女がひとり。
「咲き誇れ、我が渇望」
女――穂結・神楽耶は、うっそりとした声で謳った。
その身は内側からぼうっと昏い炎を吹き出し、そして焔に呑まれる。
「わたくし以外に、余所見はさせません」
神楽耶は編笠衆を、そして遠く彼方からこちらを見ているであろう今川義元を、
いまにも射殺しそうな、睨まれただけで燃え上がりそうな眼光で見据えた。
「未来はたやすく覆るもの。ましてや、貴様ら如きが語るなど烏滸がましい。
この世界を侵略するなど言語道断。貴様らのような穢れが、言葉を繰るな」
焔が燃え広がり、あっという間に谷の外縁を包んで、そして塞いだ。
矢など通れるはずもなし。ましてや、編笠衆が逃れることも絶対に出来ない。
その化身たる刀神の眼は、一度睨まれればもう二度と隠れられないのだ。
「神楽耶、羅刹の連中は幸い離れてる。代わりに俺を護ってくれ」
「はい、はい。お任せされますよ」
神楽耶は振り返りにこりと笑うと、すぐにまた刀神の相貌に戻った。
始まったのは殺戮だ。それは、とてもではないが平等な戦いとは言えない。
たとえば。攻撃がすべて一切何が何でも防がれ……いや、それどころではない。
"自分の攻撃が相手の胸先三寸で発動し、しかも自分に放たれる"としたら?
制御など許されない。
反撃も、
防御も、
回避も。
一切の抵抗、悪足掻き、叛逆、そのどれもが許容されないとしたら。
蹂躙……と、呼ぶことが出来るのかどうか。
その言葉は、力あるものが一方的に陵辱されるときに使う言葉だ。
此度のそれは、蹂躙にすら劣る。殺戮。鏖殺。殲滅。どれも近いが惜しい。
おそらくもっとも適当な単語を使うなら――"処理"だろう。
敵としてすら認めず、受け容れず、意思疎通をせず、ぶつかりもせず。
淡々と、当然に、しかし常軌を逸した怒りを込めて、消す。
人間に踏みにじられる蟻も同然だ。そういう惨劇が、起きていた。
「ペテン師にすがるしか能のねえクソども。俺は認めねえ」
言葉は、敵にすら向かっていない。ただの独り言だ。
「残留思念すら遺さねえ。滅んで、消えて、一切合切無くなれ」
……神楽耶は呪符の雨を燃やしながら、ヴィクティムを一瞥した。
(わたくしに、何が言えましょうか)
言葉など虚しいだけだ。怒りは、憎悪は、このように己の中でも燃えている。
仲間としてなら、彼に言いたいことはいくらでもあった。
同志であるがゆえに、その言葉も焔に焚べて焼き尽くした。
灰だけが舞い上がる。
それすらも燃えて灼けて、後には何も遺らなかった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
クロム・エルフェルト
甲斐の虎は侮れない
羅刹に呼び掛け[手をつなぎ]、掌を接点とし
法力で地形情報を"記憶ごと"流し込んで欲しい
得られた記憶を基に龍脈に接続
印を手早く結び、急々如律令奉願上候
……結界効果、限定
今川勢の射物に逆風、強く
龍脈そのものを[結界術]の陣と化す
飯縄権現、居られるのならどうか助力を
龍脈が結界陣となるまで[戦闘知識]を総動員、回避防戦
幾らか手傷を許しつつ[咄嗟の一撃]で何とか躱す
結界が発動すれば反転攻勢
葬式華散らすUCで斬りかかり
――風林火山の身体捌き、写させて貰うよ
動きの癖、その裏を掻き弱点を突き
[早業][カウンター]、ダメ押しに刃に[焼却]の焔纏い
速度の鈍った弓矢を打ち落としつつ一息に畳みかける
●逆風、嚆矢を吹き払い
「――結界効果、限定」
印を結び終えたクロム・エルフェルトは、地面に触れ、静かに呟いた。
「今川勢の射物に逆風、強く。――急々如律令奉願上候!」
するとその声は地面を通じて、この地に通じる龍脈にアクセスした。
クロムは羅刹たちから瞬時に得た情報をもとに、この地を解析した。
飯縄大権現ゆかりの地――そこに横たわる霊脈は、力強く声に応えた。
「飯縄大権現よ、おられるならばどうか助力を」
はたして、歴史に名を残した大天狗そのものが居たかどうか。
それはもはやクロムにはわからないし、飯縄の鬼たちにも不明瞭だ。
たしかなのはひとつ。クロムの狙い通り、結界はここになされた!
「「「小癪なり、たかが法力程度で我らの呪符を防げると思うてか!」」」
編笠衆はその努力をあざ笑い、無数の呪符の雨を天へと展開した。
それは大きく弧を描いて降り注ぎ、クロムと羅刹たちを呪うと見えた――しかし!
「「「バカな!?」」」
突然神風一陣逆巻けば、たちまち呪符はごうっと流されてしまった!
まさしくこれぞ法力と、龍脈の加護がもたらした奇跡なり!
「さあ、いまよ! 敵は混乱している、一気に討ち取ろう!」
クロムが先陣を駆け出し、号令をかければ羅刹たちがそれに続いた。
たとえ手傷を受けたとて、彼らは飯縄の鬼、この地で育った羅刹たちである。
呪符を無効化され、あまつさえ隙を晒した編笠衆の蒸れに手管なし!
「錫杖を構えよ! 符がダメなら武で殺せ!」
「し、しかし……!」
「怯むな! 敵の思うつぼ……うおおおおっ!?」
風林火山の体捌きを見せつけるまでもなく、高速の斬撃が首を刎ねた。
ひとつ、ふたつ、みっつ。刃風が三重に重なり、次々と血飛沫舞う!
「甲斐の虎の名が泣いているぞ! お前たちの力はその程度!?」
「「「お、おのれ小癪な女風情! 我らを侮るでないぞ!!」」」
編笠衆は再び術を練り上げ錫杖を構え、怒涛の反撃を押し返さんとする。
ここに地獄が顕現す。鬼と魔とが喰らい合う最中をクロムが駆け抜ける!
「今川義元……このまま、討ち取ってみせる!」
その剣は、杖でも符でも止められはしなかった。
大成功
🔵🔵🔵
月隠・望月
飯縄の鬼の古めかしい法力、興味深い……けれど、今はそれどころではない、ね。奴らを倒すため協力して欲しい。
敵を奇襲するのに敵した場所などあれば教えてもらいたい。特に、身を隠せる遮蔽物が多い場所が好ましい(【地形の利用】)
可能であれば、はじめに敵に奇襲をかけよう(【暗殺】【忍び足】)
敵の呪術は厄介、速やかに勝負をつけたい。素早く接近して(【ダッシュ】)、無銘刀で頸などの急所に一撃加えよう(【切断】)
今川義元の矢と編笠衆の攻撃に備え、陰陽呪符で防御壁を張っておこう(【呪符壁展開】)
編笠衆の攻撃は呪殺属性、であればこちらは【浄化】の力で対抗したい。飯縄の鬼たちが狙われていたら優先的に防御しよう。
●呪い浄め魔を断ち切れ
「おのれ羅刹どもめ……ちょこまかと逃げ回る」
「どうやら猟兵どもも現れたようだ。今川様のお言葉通りぞ」
「案ずるなかれ。我らには海道一の弓取りの目こそある」
編笠衆たちはくつくつと肩を揺らし、邪悪なる殺意に身をよじらせた。
だが連中は忘れていたのだ――猟兵は、時として想像を超えることを。
「――隙だらけ」
「「「!?」」」
突如聞こえた娘の声に、編笠衆が身構えたときにはもう遅い。
すでに刃は走っていて、ひゅぱっ、という風切り音が後に続いた。
音を超えた証左である。そしてずるりと、編笠衆の首が横に"ずれた"。
「ば……」
バカな、と言おうとしたのだろう。そんなところで結末は変わらないのに。
ごとり、と生首が転がった。月隠・望月は、血を払い冷たくそれを見下ろす。
「教えてもらった通り。隠れる場所には事欠かない」
然り。望月はすでに羅刹たちと言葉を交わし、情報を得ていた。
生い茂る木々、苔の蒸した岩岩、あるいはざあざあと流れる川の音。
山とは自然そのものである。そして、そのすべてが望月に味方していた。
いかに憑装した編笠衆とて、自然そのものを味方にした望月の気配は辿れぬ。
すでに十、殺戮の欲求に酔いしれた外道どもを殺してきた。
「「「おのれ、我らを謀る愚か者! その姿は見えておるぞ!」」」
ざっと十五、ようやく数が減ったことに気づいた編笠衆は怒りに震えた。
「さすがに全員仕留めるわけにはいかないか」
望月はあっさりと看破を受け入れると、ひょう、と刀をふるった。
すると如何にしてか、円を描いた軌跡を追うように展開される無数の符。
陰陽呪符は呪殺の符をはねのける浄化の法力を放ち、そして壁となる!
「「「何!!」」」
編笠衆はひとりひとりが練達無双の術師だ。符術には自信があった。
だがそれを阻まれた。そこに、もうひとつの隙が生まれる。
「――さようなら」
陰陽呪符の防御壁をまっぷたちに断ち割り、再び銘刀が走った。
一閃。
その力の本領を発揮することなく、編笠衆はあわれ、飯縄山のシミと化す。
「さあ、次へ行かないと。まだまだ忙しくなりそう」
続く足音と邪悪なる気配が、望月の心を引き締めさせた。
成功
🔵🔵🔴
乙葉・あいね
さあ、これがわたし達「あいね」の初陣なのです!
…とその前に
『戦槍』を敵の方へと投げ込んで宣言します!(槍投げ/鼓舞)
「さあ、戦争の始まりなのです!あなた達みんなわたし達が骸の海に還しちゃうのです!」
矢や呪符を《見切って》、『白陽』の《焼却/破魔》と『黒陰』の《マヒ攻撃》で敵も飛び道具も切り払います
そこに【陰陽の双刃】も使って、追撃、反撃、迎撃として刹那の時間で放たれる「斬撃を行う分身」や《残像》も織り交ぜちゃうのです!
それと、極力羅刹さん達と協力し、特に弓なんかはわたしが対応して、被害を出さないようにするのです
これは単に「倒せば勝ち」って言う戦じゃないですし
※アドリブや連携は歓迎なのです!
●陰陽の双刃
――ガツン!! と、槍が一振り、編笠衆の足元に突き刺さった。
それは決闘を告げる手袋の代わりに、乙葉・あいねが擲った戦槍である。
「「「何者か! 我らを相手に挑発などする愚か者は!」」」
「わたし達なのです!!」
あいねは胸を張り、その存在を編笠衆に知らしめた。
「さあ、戦争の始まりなのです! あなたたちみんな、わたしたちが骸の海に還しちゃうのです!」
「「「なんという増上慢、大言壮語の代償は命で支払うものぞ!」」」
「いいえ、わたしたちは死にません――ここで斃れるのは!!」
びゅんっ、と戦槍が風を切ってあいねの手元へ戻った。
「あなたたち以外には誰もいないのです!」
「「「おのれ小癪な……かかれえっ!!」」」
怒りの編笠衆が飛びかかる。羅刹たちは怯んだ。そこであいねが言う。
「臆する必要はないのです。わたしたちが先陣を切ります!」
あいねは降り注ぐ呪符、あるいは超遠方から飛来する矢を完全に見切った。
そして白黒対照的な二刀――己の本体たる双刃を遺憾なく振るう。
さらに見よ。あいねの影からするりともうひとりのあいねが現れると、
互いに残像すら生み出すスピードで戦場を駆け抜け、斬撃を放つのだ!
「なんと面妖な、だが心強い!」
「ああ、我らも戦うときだ!」
「今川の狗どもに目にもの見せてやろうぞ!」
羅刹たちはあいねの奮戦ぶりに突き動かされ、雪崩を打って戦いを挑んだ。
数の利、手管、そして練度。どれをとっても編笠衆が上のはずである。
しかしなぜだ。劣勢と見えたその戦況は、あいねと羅刹たちが押し返している!
「「「バカな! 我らの符が、今川様の矢が通じぬだと!?」」」
「だから言ったのです――勝つのはわたしたちで、斃れるのはあなたたちだと!」
双刃がきらめけば、そのたびに編笠衆はどうと倒れて血を流す。
今川義元は、きっと遠方よりこのざまを眺めて歯噛みしていよう。
彼奴の謳った常紅葉、なるほどたしかにこの山を染め上げている。
ただしそれは羅刹の血ではなく、編笠衆どもの血なのだ!
「羅刹さん、矢のことはわたしたちにお任せなのです!」
「かたじけない!」
「さあ次だ、我ら鬼の誇りを味わわせてやれぃ!」
疾風怒濤、羅刹たちの猛攻が編笠衆を押し返す。
あいねの初陣は、華々しくも血みどろの形で火蓋を切った!
大成功
🔵🔵🔵
ティオレンシア・シーディア
羅刹さんたちは周辺地形熟知してるのよねぇ?それじゃ、徹底的に〇地形の利用して色々仕掛けましょ。
エオロー(結界)とラグ(浄化)のルーンで○呪詛耐性の○オーラ防御を展開、●黙殺で弾幕を形成して機動戦ねぇ。
〇目潰し・捕縛・マヒ攻撃…足引きの手筋ならいくらでもあるわぁ。動きの鈍ったやつを端から潰してくわねぇ。
別方向からも弾幕は飛んでくるわよぉ。基点の魔術文字は今描いたのじゃなくてもいいんだもの。
言ったでしょぉ、「色々仕掛けた」って。
援護射撃は…あたしが対処するしかないわねぇ。向こうの大将が外すわけないし。
○結界術での防御前提に〇第六感と〇瞬間思考力と動体○視力で見切って撃ち落とすわぁ。
●フィクサーの仕掛け
「な、なんだ!?」
ある編笠衆の断末魔は、そんな情けない言葉で終わった。
何が起きたのか――端的に言えば、茂みからの不意打ちである。
魔力の矢と刃……それが気配もなく突然に放たれ、そして編笠衆を殺した。
「何!? 伏兵だと!?」
「否……生気を感じぬ! これほどの隠形はありえぬぞ!」
「しかし……ぬうっ!?」
さらに別方向から魔力の矢! 呪符を盾にして防ぐ、が!
「背中を見せたわねぇ? 同時に二方向に反応は出来ないでしょお?」
「「「!!」」」
ティオレンシア・シーディアがそこにいて、愛銃を構えていた。
「それじゃあさよならぁ」
BLAMBLAMBLAMBLAMBLAM!!
ファニング射撃が編笠衆を穴だらけにし、あとには屍体すらも遺らない。
ティオレンシアは屍体を確認し、すぐさま身を隠し姿を消した。
彼女は山の中を駆け巡りながら、要所に魔術文字を刻み込んでいる。
先の不意打ちの正体はこれだ。ルーン文字から放たれる自動的魔法弾幕!
ゴールドシーンの魔力が可能とする、いわば魔術版のタレットである!
「ふふふ、ここいいわぁ、あたし久々に色々仕掛けがいがあるかもぉ」
ティオレンシアの笑みは、敵にとってはまっこと恐ろしいことだろう。
魔術文字が放つ魔力の矢と刃は、それ自体が鋭く、そして数が多い。
幾何学模様を描く弾幕を避けることは困難だ。
しかもティオレンシアは常に遊撃的にあちこちを駆けずり回り、
敵が注意を反らした瞬間を虎視眈々と狙っている。
トラップだけで安心するのは二流。これが一流の仕事というものだ。
「どこだ! いや、どれだけの数がいる!?」
「十か、二十か! でなくば説明がつかぬ……!」
編笠衆は疑心暗鬼に囚われ、動きを大きく阻まれた。
それこそが、ティオレンシアの狙いであるとも知らずに。
「数で劣るなら数で劣るなりに、こうやってゲリラ戦をする手もあるのよぉ?
……ああ、でもこの世界にそんな言葉なかったかしらぁ? 残念ねぇ」
BLAMN!! ……弾丸が、迂闊な編笠衆の頭部を貫いた。
「さあ、まだまだ働きましょうかぁ。試したいアイディアもあるしねぇ」
女スイーパーの声は、まるで買い物に出かけるように明るく陽気だった。
大成功
🔵🔵🔵
御狐・稲見之守
[結界術][呪詛]――やれやれ、こうも矢の雨霰では
返し矢の呪どころではないが、さて。
羅刹連中に管狐を使える者がいるならばちょうどよい。
[UC夢と現つの水面]――古来より狐とは夢と現つを行き来する者達
それを使役するに都合のよろしい舞台を用意しようじゃァないか。
さあ、羅刹の飯綱使い達よ。そのお手並み拝見とゆこうか。
霊山なればその脈を知る汝らに分があるはずじゃ。
それともフフッ、飯綱の鬼は女狐に遅れを取るとでもいうのかナ?
[生命力吸収][捕食][式神使い]――さて我が稲荷狐も仕事じゃ。
彼奴らの憑物を喰うてしまえ、そのまま彼奴らごと喰うてもかまわん。
●夢と現に
ヒュンッ、ヒュカッ、ヒュカカカカカッ!!
「くそっ、下がれ! 今川の矢ぞ!」
編笠衆を相手に攻勢にあった羅刹たちは、後退を余儀なくされた。
次々に降り注ぐ矢――言わずもがな、海道一の弓取りの差し金である。
どうやら敵はここを狙いに定めたと思わしく、矢の数たるやまさに雨。
迂闊に前に出た若者が、肩や足を貫かれて悶絶していた。
「どうする、このままでは押し切られるぞ!」
「下手に前に出て無駄死にするほうが悔しいだろう」
「だが……!」
羅刹たちは歯噛みした。編笠衆は、その隙にじわじわと包囲を広げる!
――はたして。
「「「……!? これは、一体!?」」」
絶対優勢と見えた編笠衆は、途端に狐につままれたような面持ちになった。
それは比喩ではない。なにせ……突如として、広大な霧が戦場を覆ったのだから。
「なんと!?」
そして、驚愕したのは羅刹たちも同じである。
これは彼らの差し金ではない。そもそもこんな幻術は出来るはずがない……。
「くふふ。敵も味方も童のように目を丸くして。いっそ可愛らしいナ」
霧のうちより現れたか、あるいは最初からそこにいたのか。
羅刹たちの中心に、ふんわりと降り立つ妖狐――御狐・稲見之守。
「リょ、猟兵か」
「そうじゃが? しかし、その前に妖狐であり……や、まあそれはよかろ。
そういう場合でもなかろ? だって、追い詰められとるし」
「ぐ……!」
屈辱的に顔を歪ませた羅刹を見やり、稲見之守はころころ笑った。
「じゃがこの霧はわしの領域。そして、夢と現を曖昧にする水面である。
水面に映る月はたやすく形を変える……夢は現に、現は夢に。わかるかの?」
「つまり、奴らの呪符はたやすく通らぬということか。……好機と」
「野暮ったい言い方すりゃそうなるのう」
そしてそれは、遠方より飛来する矢も同様であった。
「で。汝らはこのまま座して待っておるつもりか、ん?」
「何が言いたい」
「飯縄とは飯綱、すなわち管狐を操る術法であろう。使い手はおらんかの?」
羅刹たちは唸った。それは、飯縄の鬼にとって秘奥中の秘奥。
管といっても分派は多く、彼らのそれは大権現ゆかりの術理なのだ。
「さあ飯綱使いたちよ、そのお手並みを拝見しようじゃァないか。ん?
それとも――フフッ、あれか? 飯綱の鬼は女狐に遅れを取るてか」
「貴様!!」
「よせ」
冷静そうな羅刹が激高した同胞を制した。
「……助力、感謝いたす。我らの法術、お目にかけて差し上げる!」
稲見之守は尊大に頷いた。まるで、神のように。
そして霧のなかより、飛び出したるは白くほのかに輝く狐たち!
「管か!」
「おのれ、この程度我らの符呪には……バカな!?」
「なんと! 管どもがぐんぐんと大きくなりよる……!?」
駆け出した狐たちは幻の霧の力を得て、曖昧模糊な夢の存在となった。
人は、わからぬものを恐れる。暗闇の中に鬼神を見てきた。
そして鬼神はそのおそれによって生ずる――狐もまた、同じ。
編笠衆の警戒と疑心が味方となり、管狐たちを肉喰らう猛獣へ変えた!
「フフフ! よいよい、なかなかのものじゃアないか」
稲見之守もまた霊獣たちを使役し、血みどろの狩りに参戦する。
憑物まとめて、飢えたる狐たちは次々に獲物を食らっていった。
阿鼻叫喚は届かない。ここは、水面に映る月の裏側であるがゆえ。
大成功
🔵🔵🔵
無銘・飯綱丸
飯綱権現より退魔の役仕る天狗刀、飯綱丸。
義により助太刀する。
羅刹の法師達には山の霊穴へと向かってもらおう。
彼らの助力でそれら霊穴を[UC七星七縛符]で結び
その内にいる彼奴らの動きを封じる。
山神の御座す霊域に足を踏み入れた愚を教えてやろうではないか。
[切断][破魔]――外道共よ、黄泉平坂をくだることなく
その素っ首打ち落とし骸の海へと還してやる。
『未来を見たり』などと腐れた過去が未来を語ることなかれ。
●我斬らん、ゆえに我あり
山神、飯縄(あるいは飯綱)大権現。
大天狗とも偉大なる修験者とも、あるいはその両方とも謳われる大神は、
実在も定かならぬ伝承上の存在である――それもまた天狗の所以か。
だがここにひとり……否、"一振り"、山神の造りし刀がある。
無銘・飯綱丸。そいつは、そう名乗っていた。
なんともぶっきらぼうな名だ。そもそも名として体をなしていない。
ヤドリガミは百年の時を閲した霊体、とはいえ生態はヒトのそれである。
だが無銘は……否、この時は飯綱丸としよう。
ともあれそいつは、人間らしい名前だの所作だのたいして気にしなかった。
ただ斬る。
魔を、
人外の化生を、
斬るべきものを、斬る。
何故か。義憤? あるいは憤懣? はたまた名誉や金のため?
否、否、否。
飯綱丸が斬るのは、"飯綱丸だから"である。
そこに理由などない。
お題目もない。
刀のようにまっすぐで、無駄なく――事実、刀である男だった。
飯綱丸は、いちいち敵に憎悪だの侮蔑だのをぶつけはしない。
斬るための獲物である。刃が、いちいち侍を罵りあげつらうだろうか?
否。であれば、霊体であろうと同じこと。
「羅刹の法師たちよ、感謝いたす」
飯綱丸は、やはり実直に――というよりも無愛想に言った。
ここは飯縄山にある霊穴。山神が修行を究めたというゆかりの地である。
そこへ、編笠衆がやってきた。霊峰を土足で穢すばかりか斯様な聖所まで。
「「「見つけたぞ羅刹ども! そして、我らに仇なす愚か者よ!」」」
「外道どもよ、愚か者と申したか。ならばその言葉はそのまま返す。……いざ」
飯綱丸は印を結び、羅刹の法師たちもまたそれに続く。
すると見よ――ひとりでに符が浮かび上がり、一種の陣を構築した!
「「「何!?」」」
「急々如律令――勅ッ!!」
たちまち霊力を得た符はばちばちと電撃漲らせ霊的な線によって結ばれる。
それは牢獄だ。この霊穴に満ちたる神の気と共鳴し完成した鬼刀一体の陣である。
不浄なる残骸が自由を得られるはずもなし。彼奴らの四肢は符呪に縛られた!
「「「こ、これは……符呪師たる我らを、霊符で縛るとは……!?」」」
「言ったであろう、愚を犯したのはお前たちよ。さあ、参るぞ」
飯綱丸は術の維持を法師たちに任せ、風か韋駄天と見紛う速度で駆けた。
錫杖を構え盾としようとした――しかし無駄だ。
なにせ彼は飯綱丸、あの大権現手ずからこさえし大銘刀!
「お前たちの素っ首など、永の無聊の慰みにもならぬわ」
ぶん、と残心を決める。遅れて、ごとごとと笠ごと首が落ちた。
「未来を見たり、などと。腐れた過去が、未来を語ること烏滸がましき」
そしてびょうと風音ひとつ。舞う鴉羽の如く、飯綱丸は駆け出した。
大成功
🔵🔵🔵
ラニィ・ユン
○アドリブ歓迎
ふつーにしていた人らを攻めて、手駒にしちゃおうなんて、無茶苦茶だよね。
正義の味方なんて言うつもりも無いけど、そんな理不尽に黙っているつもりもないし、ここは助太刀しちゃおう!
羅刹の人に聞いて、迎え撃つのにぴったりな場所を教えてもらおう。
教えてもらうのは、里までの道中、隘路で敵の編笠衆も一人ずつしか通れないような場所。
そこなら、一対一を繰り返せるしね。
それに、一本道なら矢が飛んでくる方向も絞れるから、避けるのも楽になるだろうし。
一対一になれば白兵戦で勝負。
蹴りを主体にした独学の拳法で倒すよ!
●タイマンの真髄
「おりゃーっ!!」
「がはぁっ!?」
威勢のいい鬨の声をあげて、ラニィ・ユンの蹴りが編笠衆を捉えた。
延髄に一撃を受けた編笠衆は、その場に倒れて不規則に痙攣し、やがて死んだ。
「ふー……危機一髪! 羅刹さんたち、大丈夫?」
「あ、ありがとうございます!」
ラニィの笑顔に、うずくまっていた女性の羅刹は表情を明るくした。
飯縄の鬼は精鋭揃いとはいえ、すべての羅刹が戦闘向きなわけではない。
争いを好まぬ女性もいれば、穏やかに書や絵を愛する男もいる。
ラニィは安堵のため息をつきつつも、そんな当たり前の事実に心が痛んだ。
「こんな、何も悪いことをせずふつーにしてた人たちを襲うなんて……」
オブリビオンには道理が通じない。そんなことはわかりきっている。
ただ、この世界はこれまで平和だったのだ。争いは最小限に留まっていた。
羅刹たちの気持ちを思うと陰鬱になる。ラニィは頭を振って切り替えた。
「あいつらを倒すために、この山で一番狭っ苦しいところを教えてほしいの」
「狭いところを、ですか? 心当たりはありますが……」
「ええ。そこなら、この戦いを"いくさ"じゃなく"戦い"に出来るからね」
ラニィは意味深に言い、不敵に笑った。女羅刹は首を傾げつつも、話をする……。
「「「こちらだ! 追え!」」」
所変わって、女羅刹ら数人が住んでいた離れに続く小道。
囮を買って出たラニィを追う編笠衆。この数にぶつかるのは危険だ!
「そうよ、追ってきなさい……さあ、ここならどうっ!?」
ラニィはあらかじめ教えられていた狭所に飛び込むと、ぐるりと振り向いた。
編笠衆は呪符を放つ……しかし、木々や岩が邪魔をし狙いが絞れない!
「おのれ!」
血気盛んな編笠衆がひとり、群れを飛び出しラニィに挑みかかった。
ラニィは口元の笑みを深める。これでこそ狙い通り!
「もらったわ!!」
「何……!?」
後の先を制した前蹴りが、編笠衆の胸部をばきんと砕いた!
倒れ込んだところに逆脚を蹴り上げ、勢いをつけての後ろ回し蹴り。
「ええい、小娘ひとりが小賢しい!」
「我らを嘗めるなよ!」
編笠衆は屍体を押しのけラニィに挑む……必然、一対一の形になる。
これが狙いだ。十を相手にすれば敗北必至なれど、タイマンの繰り返しならば!
「正義の味方なんて言うつもりはないけど、あなたたちの仕業は見過ごせない!
理不尽を前にして黙っているほど、私はおとなしいつもりはないのよっ!」
「ごは……ッ!」
蹴り足が顎を砕き、竜巻じみた速度の鉤突きが新手を斃した。
「さあ、順番にかかってこなさい。ひとり残さず蹴散らしてやるわ!」
その活躍ぶり、目が覚めるほどに爽快で、そして美しい!
成功
🔵🔵🔴
朱赫七・カムイ
⛩神櫻
綺麗な里だね
サヨの故郷は何処も美しい
私はこういう場所も好きだ
噫、勿論
神罰を落としてあげないと
羅刹―そうだ
きみの息子は羅刹だった
なればこそ、より一層
私の護る誘七の地にも羅刹は多く住んでいる
…仲間達を奪わせはしない
カグラ、羅刹の皆やサヨを守るための護結界を
カラス、弓の軌道や敵の位置の偵察を
私はサヨと―我が巫女と地を駆ける
私が先に行くよ
第六感で察し見切り躱し早業で切り込み駆けながら切断し薙ぎ払う
噫、なんて美しい櫻だろう
薄紅が私を祝してくれる
―桜守ノ契
もっと裂いて咲かせて―
さぁ、神罰だ
遺さず枯れ堕ちよ
血に酔う前に繋ぎ止める
サヨ、大蛇の呪にきみを蝕ませなどしない
そなたが護龍なら
私は護神になりたいな
誘名・櫻宵
🌸神櫻
私の故郷に手を出すなんて
いけない子達ね…再びこの地を蹂躙しようだなんて
それに…私の大事なあの子の同族へと手をかけるなんて
ちゃんとお仕置してあげなきゃ
うふふ、カムイ
さすが私の神様だわ
頼もしいわ
ひとりだって骸の海へ沈ませたりなどしない
往くわよ
羅刹の方々と協力し地の利を得ながら戦うの
浄化と破魔を宿した斬撃を千々と放ち
闇を悪を厄を蹂躙して切り刻む
生命喰らう桜咲き乱れ桜嵐をなぎ払い
桜化の神罰を下してあげる
此処には桜が似合う
それに桜は私の神の力と成るの
カムイの剣戟に合わせ
傷を抉って衝撃波でまた抉り咲き
斬って舞って楽しいわ!
大蛇の愛呪が悦び蠢くけれど
神のその手が私を繋ぐ
私は護龍
必ず守ってみせましょう
●神櫻は悪に咲く
サムライエンパイアの自然は、人にとって脅威であり、試練であり、恵みだ。
一部のテクノロジーが進歩した世界は、自然という"壁"を克服している。
だがこの世界は違う。あるがままに厳しく、ゆえに美しい。
「――きれいな里。きれいな山だ」
朱赫七・カムイは目を細め、ほんのりと笑みを浮かべて呟いた。
「サヨ、そなたの故郷は何処も美しい。私はこういう場所も好きだよ」
この季節の飯縄山は、来たる峻厳なる冬に染め上げられつつあった。
草木は母なる死の眠りに向かって少しずつ弱り、いずれ雪が降るだろう。
それは春の芽吹きを待つための輪廻――寂しくも暖かい抱擁に似る。
「うふふ。嬉しいわ。カムイ。ああ、けれど――いえ、だからこそ」
誘名・櫻宵はほう、と憂いを帯びた表情で嘆息した。
そのかんばせもまた美しい。春の暖かさと冬の厳しさが同居している。
護るものであり、伐るもの。矛盾に思えるがそれは表裏一体だ。
そして少なくとも櫻宵のなかで、それらは同居し得る。
「私の故郷に手を出すいけない子たち。ああ、斬ってしまわなきゃ」
「剪定と同じだ。必要なだけ斬れば、この世界も健やかに戻る」
「ええ、ええ。そうね、そうでしょう。あの子の同族たちも可哀想だもの」
齢8つのかわいいかわいい童の顔が脳裏によぎり、櫻宵を余計悲しませた。
今川義元に恨みはない。ただ奴は――否、奴らは、禁忌に足を踏み入れた。
であれば、これは躾だ。やってはいけないことを思い知らせるための。
……もっとも、躾けられた側は、その教訓を"生かせぬ"ことだろうが。
「行こうか、サヨ」
「ええ。私の神様」
向こうに回すは、武田信玄を憑装せし無数の術師軍団。
此方の手勢は神と龍。劣勢である。
――ただし、敵のほうの話だが。
羅刹の子を家族に迎える櫻宵と、神として同胞を護るカムイ。
彼らの言葉は、追い詰められた飯縄の鬼にとっては願ってもない助けだった。
もとよりこの世界において、猟兵は天下御免の英雄として扱われる。
協力に至った一番の理由は、ふたりが危機一髪の場に現れたことだろう。
「かは――」
運のいい編笠衆は、断末魔の吐息を遺すことを許された。
他の連中はというと、それすら出来ずに舞い踊る斬撃に呑まれて散る。
まさしく呑龍のそれ。空間ごと喰らい尽くす牙じみた、櫻宵の剣である。
屍も、流れる血も、すべてが桜の徒花へと変わり、砂埃とともに舞い上がった。
「噫、なんて美しい櫻だろう」
一足早く戦場に飛び込んでいたカムイは、薄紅の祝福に身をよじらせた。
その身もまた朱桜の花弁に変わり、薄紅と踊るようにして戦場を彩る。
呪と、祝。性質は似ているが相反し、そして敵にとっては同じ死という結果だ。
桜の嵐は呪符や錫杖による攻撃のことごとくを否定し、許容しない。
もとより、神とはそういうものだ。
人間の絶対上位たる存在として君臨し、畏れと崇拝を代償に加護をもたらす。
それを忘れた者どもに下されるものは、古今東西ただひとつきり。
「――さぁ、神罰だ。遺さず枯れ堕ちよ」
堕落の都を塩の柱に変えせしめた名状しがたき神の怒りの如く、それは墜ちた。
怒槌の如き斬撃。カムイのそれと、櫻宵の呪いが螺旋を描き混ざり合う。
「ああ、楽しいわ! 斬って、舞って、ふふふ――あははは!」
櫻宵はうっとりとした声で吐息を漏らした。咆哮する龍のようだった。
おとがいをあげて喉元を晒し、血の代わりの薄紅の中哂うさまは恐ろしい。
呪いである。大蛇の愛呪がうごめき、みだらな悦楽で肌を朱に彩った。
「――サヨ」
その白磁たる指先を握りしめたのは、カムイの暖かな手であった。
「きみを、大蛇の呪になど蝕ませるものか」
「……ふふ。ありがとう、カムイ。私の神様」
櫻宵はほんのりと目を細め、笑みで礼を返す。カムイは頷いた。
「「「化生どもめ、墜ちたる神と堕落の龍が我らに挑むか!」
「挑む? それは違うな、骸ども」
カムイは編笠衆に言った。
「私が下すのは罰であり、そなたらが我らに挑むのだ」
「ええ、そうよ。だってこれは、お仕置きだもの」
戦いではない。躾なのだ。
「私は語龍。この世界を護るもの」
「ならば私は護神としよう」
いいわね、と櫻宵は童めいて微笑み、そして敵を睨んだ。
「さあ、おいたの報いを味わいましょうね?」
あとに残るのは、薄紅色の桜の積もる小山だけだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
九十九曲・継宗
○アドリブ等歓迎
羅刹の方々にもプライドがあるでしょうから、協力してもらいましょう。
申し訳ないですが、彼らには囮になり、敵を山中でも特に木々が密集した場所へ誘い込んでもらいます。
くれぐれも無理はしないでくださいね。
私の武器は刀。
木々が生い茂る山中で振るうのは向いていないですが、あいにくと私もただの剣士ではありません。
体に秘められた鉄糸などのカラクリの数々。
それらを使い、木々を登りその合間を渡り、敵を背後やずじょから強襲して回ります。
矢も油断はできませんが、開けた場所よりは多少マシかと。
正々堂々とした果たし合いなら、こんな真似はしたくないですが、これは戦。
なら、どんな手を使っても勝ちますよ。
●からくり剣法仕る
「「「見つけたぞ、飯縄の鬼ども! 覚悟せぃ!」」」
ざざざざ、と山中を駆ける編笠衆。追う獲物は他ならぬ羅刹たち!
あちこちに手傷を追った修験者風の鬼が五名。対して編笠衆は三倍近い。
戦えば結果は火を見るより明らか。羅刹たちは必死で逃げる。
……その逃避行を、木々から木々へ渡り見下ろす影ひとつ。
(あと少し、あと少し先まで追い詰められれば……!)
九十九曲・継宗は、どうか羅刹たちが足を挫いたりしないよう祈りを捧げた。
もはや祈ることしか出来ぬ。己の出番はあとわずかに先なのだ。
ここで仕掛ければ作戦は水泡に帰す。あと少し、そのあと少しが恨めしい。
(……ですが、これは私が提案した作戦。必ず成し遂げねば)
意気込む継宗の脳裏に、つい先刻交わした会話の内容が蘇る――。
「申し訳ないのですが……囮役を務めていただけないでしょうか」
羅刹たちと合流した継宗は、彼らに剣士の礼を払った上でそう提案した。
「私は実のところ、人間ではなくミレナリ……いえ、からくりで動く人形です。
この身体に内蔵されたからくりを使い、編笠衆を背後から強襲いたします」
「なるほど。そこで、我らが最適な地形へ誘い込めばよいということか」
「ええ。ですが、当然危険な役目です。無理は承知……」
「いや、やらせてくれ。我らとて飯縄の鬼、助けられるだけに甘んずるつもりなし」
継宗の予想通り、羅刹たちには相応のプライドがあった。
まっすぐとした目に射抜かれ、継宗は己の不要な気配りを恥じらった。
「……そうですね。そうおっしゃっていただけるのを、私も期待していました」
彼らは応えてくれた。ならば、己がなすべきは。
「くれぐれも無理はしないでください。最後の仕上げは、私が必ず」
この剣に賭けて、己の言葉を証明することのみ。
――そして、ついに羅刹たちは取り囲まれた。
「追い詰めたぞ鬼どもめ」
「世俗を捨てたなどと嘯き、今川様のご盟友を葬った外道ども」
「ほざけ! 織田にも武田にも、貴様らは忠義の欠片すらあるまい!」
「だからどうした? 我らは編笠衆。ただ討つべきを討つのみ!」
羅刹たちは歯噛みした。敵の物言いのなんたる卑劣なことか。
これが、武士としての仇討ちならばまだ納得は出来よう。
しかし大義すらもない山狩りは、もはや虐殺を変わらぬ!
「――そこまでです!」
はたしてその時、颯爽たる声が木々をざわめかせた。
声とともにひょう、と風音ひとつ。軽いが、しかし鋭く剃刀めいた剣である。
「かはっ」
まずひとり。そいつがどうと倒れたときには、近くにいた衆がさらにひとり。
ふたり、三人、四人、五人――姿なき強襲者の刃に消える!
「どこだ!? そしていつの間に!?」
「ええい、姿を現せ卑怯者!」
「小癪なり、我らを謀っておったか……!」
編笠衆は背中合わせに立ち、姿なき襲撃者を警戒する。
「甘いぞ編笠衆、目の前の敵を忘れるとは!」
そこに羅刹たちの剛拳炸裂! 継宗は目を見開いた!
然り、彼らはただ救われる惰弱者に非ず。誇り高き戦士なのだ!
(正々堂々とした果たし合いならば、斯様な振る舞いは言語道断。しかし)
戦ですらない虐殺を謀ったのは彼奴らである。戯言に惑うべからず!
「御免ッ!」
斬光一閃、夏の風の如き爽快な剣が、ついに外道どもの首を刎ねた!
羅刹たちはどよめき、軽やかに着地した継宗に称賛の声を浴びせるのだった。
成功
🔵🔵🔴
フェルト・フィルファーデン
思い通りにはさせないわよ、絶対に。
相手が魔軍将の亡霊であろうと猟書家だろうとね!
UC発動。障壁蝶に【オーラ防御を付与して護りを更に厚くし広域展開。
敵の攻撃から羅刹達を守りきる事を第一に。
そして攻撃の隙を突いて騎士人形達と共に先陣を切り敵を打ち倒しましょう。
【先制攻撃x早業】
羅刹の皆には地形を利用して怪力や法力で距離を取りつつ手伝ってくれると助かるわ。でも、あまり前に出過ぎないで。有利な地形に誘い込み敵一体を複数人で相手する事を心がけて。
障壁蝶の護りはあるけれど、この山の地形だもの。不意打ちの危険もあるし、更に遠方からの矢も的確に狙ってくるでしょうから。
安全を第一に考えて。お願いね?
●誓いの戦に終わりなく
すべての世界、すべての生者を護る。
到底叶いようのない荒唐無稽で子どもじみた理想を、
フェルト・フィルファーデンは心の底から誓い続けてきた。
幾度も心折られ、苦しみ、偽りの希望にすがりつき血の涙を流しもした。
叶わないねがいを抱くことは、救いと呼ぶにはあまりにも艱難辛苦である。
それでもフェルトは戦う。相手が誰であろうとも――。
内なる光にまばゆく輝く蝶の群れが、冬の兆しに染まる飯縄山を染めた。
それは邪悪なる呪いの符を阻み、傷ついた羅刹たちの身を護る。
「わたしの騎士人形たちよ、行って! あの愚か者たちを討ちなさい!」
糸に繰られたからか、はたまたいとしき王女の命に亡き騎士の魂が応えたか。
まるで生きた妖精のように、小さき騎士たちは果敢なる戦いを挑む。
「「「小賢しい! 木偶ごときで我らを倒せるてか!」」」
呪符が通じぬと見た編笠衆は素早く得物を変え、錫杖を振るった。
ぎん、ぎぃん! と杖と剣、あるいは槍や盾が打ち合い、轟音を響かせる。
「なんと。あれが人形? まるで生きているようにしか見えぬ」
「否、それもあるが何より使い手の少女。あれほど小さな身でなんと勇猛な」
猟兵の姿形は余の世界の者に余計な恐れや警戒を抱かせることはない。
だが戦いの場にありて、その小さな身体はむしろかえって勇猛さを際立たせた。
「我らも臆してはいられぬ」
「応とも。起てよ鬼ども!」
「言われずとも!!」
傷ついた身体の活力を振り絞り、羅刹たちは立ち上がった。
そして鬨の声をあげ、先陣切るフェルトに続いて編笠衆を襲う!
「ありがとう、羅刹の皆。でも、前に出ないように気をつけて!
この山を知り尽くしているあなたたちなら、その地の利を活かすのよ!」
「「「承知!」」」
戦いは後退戦に移行した。当然、敵もこちらの狙いはわかっている。
邪魔なのはあの障壁を貼る蝶どもだ。そこへ、海道一の大強弓が降ってきた。
「自分だけ安全な場所から、一方的に攻撃するだなんて、認めない。
わたしは、アナタたちの暴虐を認めない。誰も、殺させたりはしないわ!」
蝶たちの放つ光が、フェルトのけなげな誓いに呼応して強まった。
光は物理的な斥力を発生させ、剃刀じみた矢を押し留め、弾いたのだ!
「「「バカな! 今川様の矢を弾くだと!?」」」
「編笠衆どもめ、慄いたか! 今こそ一気呵成のときよ!」
「「「うおおおおお!!」」」
羅刹たちはいきおい怒涛に攻め込み、人形と並んでその爪牙を振るった。
フェルトは驚いたように目を見開き、そしてすぐに表情を戻す。
(……そうよね。守られるだけじゃない。守るだけでもいけないんだわ)
希望はあまりにまばゆくて、小さな身体とか弱い心には過ぎた毒だ。
たとえ今一時とて、仲間と信を置き肩を並べる。それが勝利を呼ぶ!
「護りはわたしに任せて! この山を守り抜くのよ!」
応、と轟くような大音声がいくつも応えた。
羅刹とともに挑むフェルトの口には、健やかな笑みが浮かんでいた。
成功
🔵🔵🔴
ヒルデガルト・アオスライセン
正面突撃以外の狡い戦技を修めておきたいですね
不死共の悪趣味な罠のうち顔をしかめた出来事の一つが、開戦直後の同士討ちでした
土遁のようにトンネル掘りで忍び
地中に1名引き摺り込んで始末
装備を拝借し、敵に扮装
羅刹の皆様とは
事前に戦地と、閃光瓶の合図を示し合わせて
内外から同時攻撃を仕掛けるのは如何でしょうか
そういえば此の飯縄の地にも忍者が隠れ住んでいるらしいですよご存じですか?
私のような似非物ではなく、いつか本場の術を間近で拝見したいですね
敵陣で変装を解き、忍装束と仕込み傘で回転斬り
錫杖を持つ腕を優先的に焼きます
金剛力は土に埋もれて躱し
今川の矢雨が迫る前に
輪旋傘で放つ結界と敵を壁にして、犠牲を減らします
●敵を討つなら敵に学べ
ダークセイヴァーの吸血鬼どもは、悪辣で、狡猾で、そして下劣だ。
行動のすべてが他者を――ことに生者を苦しめ絶望させることに向いた連中は、
たとえばこういう時、同じような手合いを苦しめるのに絶好の教材となる。
「不死どもの仕業を真似るのは、あまりいい気分はしないわね……」
ヒルデガルト・アオスライセンは嘆息しつつ、パンパンと手を払う。
頬についた土を拭い、一息。見事なトンネルがここに完成した。
頭上に足音……かすかだがよく響く。よもや真下に猟兵が居るとは思うまい。
「ええい、ここに猟兵が居たは、ばッ」
一瞬である。ヒルデガルトは地中より飛び出し口を抑えて首を折った。
敵が妖怪ではなく、人間型のオブリビオンであったのは幸か不幸か。
オブリビオンとはいえこの手で命を奪った感触に顔を顰めつつ、屍体を引き込む。
「この笠、借りるわよ」
装いを剥いで髪を結い上げ編笠を被る。拙いが、戦場では見抜かれまい。
そもそも連中とて、こんなことを思いつく輩がいるとは思わないだろう――。
「例の娘の言っていた場所は、ここで合っていたはずだな」
「ああ。じきに、囮役が連中を引き込んでこよう」
所変わって、視界の効かぬ木々の生い茂った場所で羅刹たちが立ち上がる。
ヒルデガルトから事前の申し出を受け、共闘を決めた若者たちだ。
「自ら似非忍術などと言っていたが、とんでもない。あれは傑物よな」
「それだけえげつない敵を相手にしてきたのだろう。まだ若い身空だろうに」
自ら敵に扮し、誘い込んだ敵を同士討ちで混乱させる――。
羅刹とて眉根を寄せる搦め手。あれを申し出たヒルデガルトの表情を思い起こす。
美しいかんばせに隠された、敵どもに対する冷たくも煮えるような怒り。
乙女などと侮るなかれ。あれは、ともすれば忍びよりも恐ろしい"戦士"だ。
「! 来たぞ!」
「よし……!」
はたして狙い通り、囮役の羅刹たちがこけつまろびつ飛び込んできた。
続けて猿の如く跳び、走り現れたるは、狙いを露も知らぬ編笠衆!
「「「ここにおったか羅刹ども! さあ、年貢の納め時と心得よ!」」」
「ほざけ狗ども。それよりも貴様らの仲間を見たらどうだ?」
「音に聞こえし編笠衆、命が惜しいすくたれ者がいようとはな!」
「「「戯言を――何ッ!?」」」
その時である。一体の編笠衆が、間近にいた同胞の腕を刎ね飛ばした!
「がッ!」
「覚悟!」
編笠を脱ぎ捨て視界を奪い、風の如き仕込み傘の回転斬りで首を裂く。
同時に羅刹たちは目を伏せた。仕込み閃光瓶が炸裂し、衆目を奪う!
「「「こ、これは!!」」」
「今です。矢が来る前に片付けましょう」
「「「応!」」」
そこからは、まるで追い込んだ獣を狩るが如き一方的な戦いである。
先陣を切るヒルデガルトの斬撃に続き、羅刹の爪が、怒りとともに迸った。
「お、おのれ、卑劣な……」
「どの口がほざきますか。せいぜい黄泉路で呻きなさい」
ヒルデガルトは冷たく見下ろし、愚か者に別れを告げた。
敵を侮るなかれ。初心を忘れた増上慢の報いを、敵が支払った形である――。
大成功
🔵🔵🔵
トキワ・ホワード
『過去より放たれ未来に着弾する』
…だが、着弾するはずの未来は本当にお前の思うような的かな?
過去は変えられない。だが未来は今の振る舞い一つで容易に変わる
さぁ、羅刹達
お前達の未来は矢1本で決定づけられる程度のモノではないと教えてやろう
羅刹と共闘
どこか、木々の生い茂る中で僅かに開けた場所はないか?
お前達はそこへ木々を利用して敵を誘い込んでくれ
矢を十分警戒してな
影のできる場所で俺は待機
誘い込まれた敵を目視したらUCを発動
『お前達は、この地に何を望む?』
破壊だ、殺戮だなどと…つまらん答えを返してくれるなよ?
獣と戯れながら、よく考えろ
逃げようと思うなよ?
周りには、お前等の追っていた
獣よりも怖い、鬼がいるぞ
●影よ、肉を喰みて吼え猛れ
『お前たちは、この地に何を望む』
出し抜けに、暗がりから投げかけられたひとつの問い。
それはこの世界の呪いとは異なるもの――すなわち、ユーベルコード。
トキワ・ホワードの操る魔術は、極めて旧く、そして異端なのだ。
「何を……ッ」
編笠衆は警戒した。誘い込まれたことまでは連中もわかっていたのだ。
羅刹どもの動きは妙に挑発的で、しかし活力を隠していた。
おおかた地の利を得ようとやっきになっているのだろう。
多少視界が阻まれようと悪路に苦しめられようと、我らは編笠衆。
呪殺の符と金剛力の錫杖。つまり、武と術に長けた精鋭である。
それにかの甲斐の虎を憑装させたとあらば、向かうところ敵なし。
海道一の弓取りの天眼まで背負っているのだ、もはやこれは戦ですらない。
狩りである。追い詰められたものを好き放題に殺戮する、狩りだ。
編笠衆は昏い喜びに耽溺していた。そこに、冷たい問いかけが染み込んだ。
「破壊だ、殺戮だなどと、つまらん答えを返してくれるなよ?」
影の主……トキワは期待のような、呆れのような、そういう声音で言った。
編笠衆は戯言に構わず、呪符によってその身を呪い殺そうとした。
しかし、出来なかった。なぜか――獣が、二匹。影から飛び出したからだ。
「「「これは!?」」」
『『GRRRRRッ!!』』
漆黒と、白銀。絹糸で一本一本を彩ったような、見事な毛並みである。
だがそれらは人を飲み込むほどに大きく、そして獰猛で、牙は鋭かった。
編笠衆は怯んだ。獣は容赦せぬ。たった二匹、だが精強であり、そして無慈悲。
憐れにも影に近づきすぎていた獲物の喉笛を噛みちぎり、血を啜る。
獣が吼えた。それは、狩人を気取った愚か者に対する、嘲りと宣言だ。
――狩るのは、我らである。獣どもの咆哮が、殺戮の始まりを告げた。
「なんと……あれは一体、いかなる術なのか」
囮役となった羅刹のひとりが、無慈悲なる爪牙を見て呆然と呟いた。
手はずでは、獣どもが敵を足並み乱したところで、羅刹が襲いかかる段だ。
あの術師――つまり、トキワはそう申し出ていた。しかし、その必要はなかった。
「どうした。俺を満足させる答えは、その頭では出せそうにないか」
倒れ伏す愚か者どもを見下ろし、トキワはふう、と頭を振った。
「優勢に驕り、悦楽のためだけに無為な死を振りまき満足しようとする。
お前たちは士(さむらい)にすら劣るな。えせ術師では、この程度であろうよ」
落胆と侮蔑。屈辱であろうが、編笠衆はその眼差しを覆すには力不足だ。
獣がその生を終わらせた。狼の咆哮が、静けさの中にこだました。
大成功
🔵🔵🔵
橙樹・千織
アドリブ歓迎
生まれ故郷があるこの世界
地域こそ違うけれど…血に染めさせたりはしない
呪詛耐性、糸桜のオーラ防御を整え敵を見据える
武器には火の属性と破魔を付与
羅刹達から周辺地理の知識をもらい、死角となる場所を活かして立ち回りましょう
目には目を歯には歯を…呪詛には呪詛を
呪符を範囲攻撃でなぎ払い、破魔の焔で焼き墜とす
間髪入れずにUCで斬込みます
敵の動きを見切り、空中戦も用いて攻撃をいなす
また、羅刹から教えてもらった弓を射るのに適した地にも注意を払う
呪詛を受けてしまったなら歌唱で浄化
命運が尽きたのはお前達の方
大天狗縁の地
荒らした罰を受け、骸の海へ還れ
傷口をえぐるように刃をふるい、悪縁ごと断ち斬る
●その剣の舞を見よ
サムライエンパイアは、世界ひとつに数えるには少々、いやだいぶ手狭である。
UDCアースにおいて「日本」と呼ばれる地理が、この世界のすべてだからだ。
されど、この世界――そう、世界である――で生まれ育った者にとって、
四季巡る自然とともに生きるこの国は、まぎれもなく大いなる生まれ故郷だろう。
ゆえに。
たとえ地域は違えども、橙樹・千織が敵を見過ごすつもりはなかった。
猟書家の侵略を放置しておけば、いずれあの骸の月が闇を放つ。
そして大魔縁・織田信長に続く新たな魔将が、再びこの国を混迷に陥れよう。
「畜生にも劣る外道ども。お前たちの思うがままにさせると思うてか」
常の穏やかでのほほんとした笑顔はなく、千織の眼差しは刀のようであった。
獣の膂力を生かして悪路を走破し、草木を味方につけて刃を振るう。
羅刹たちの入れ知恵である。大きく見れば同郷たる彼女に、彼らは快かった。
『守りたいのだ。父祖より受け継いだこの土地を』
……傷つきながらも助力を買って出た羅刹の言葉が、脳裏によぎる。
(ええ、同じです。この山を、この国を、この世界を。私は守りたい)
猟兵としての義務感は、もちろんある。責任ある戦士としての強い名誉が。
しかしそれ以上に、千織を突き動かすのは、ごくありふれた愛郷の念だった。
「大天狗ゆかりの地、荒らした罰を命で贖え!」
剣閃は燃えて大気を灼き焦がし、降り注ぐ呪符をことごとく薙いだ。
「ええい、囲め! 敵は女ひとりぞ!」
「否、羅刹どもが来よったわ! あの腐れ鼠どもが!」
「鼠はどちらか、鏡でも見つめてみればどうだ? 外道!」
千織は羅刹の援軍に浮足立った編笠衆を、容赦なく斬り、殺し、滅ぼした。
錫杖が突き出されればふわりと飛び上がり、死角の呪符は舞の如くに躱す。
今日はとびきり勘が冴えている。怒りがためか、使命感が身体を突き動かすか。
「猟兵殿に遅れをとるな! ここは我らの飯縄山ぞ!」
「「「応!!」」」
(――ああ、たくましきこの鬨の声。血で染めさせるものですか)
大地を揺るがさんばかりの羅刹たちの大音声を肌に感じ、千織は思った。
研ぎ澄まされた知覚力が、超・長距離から飛来する死の矢を知らせる。
「海道一の弓取り。その首を洗って待っていろ」
ばきん、と。燃え上がる剣が、飛来した矢を断ち切った。
中空を睨む千織の眼差しは、言わずもがな姿なき射手へと向けられている。
「羅刹の皆さん、けして無理をなさらず。敵は私が引き受けます!」
「案ずるなかれ、我らは鬼よ。そちらもぬかるなよ、猟兵殿!」
溌剌な声にほんのりと笑みを浮かべ、千織は外道どもをただ斬り続ける。
玄妙にして苛烈なる巻い。それは、死と滅びをもたらす華のように美しい。
成功
🔵🔵🔴
ルーナ・ユーディコット
平和になったと思ったらこう幾度も侵攻されて
大変だよね、エンパイア
羅刹と聞いて無視はなんとなく出来ないから
――やるよ
案内をしてくれる羅刹の護衛に50の狼の炎を付ける
弾避けか目くらましに
残りは私と行動を
目的は電撃戦を仕掛けて突き崩す事
敵に奇襲を掛けられそうな場に案内して
案内の後は撤退してもいいし、
死なないならついてきてもいい
奇襲できる位置を取れたなら
炎の群れで強襲を掛ける
呪詛で私の動きをとめても
炎が敵に向かって進めばその喉笛を焼き切れる
敵の攻撃の手をいなせたなら後は斬り込む
私に矢が飛来するなら斬って、返す太刀で編笠衆を斬る2回攻撃を
炎は残っていたなら周囲の援護に回す
惨劇は起こさせない
●怒りはなく、恨みもなく
「……おい、よかったのか?」
「いいんだ。だって、あの猟兵殿はおっしゃっていたじゃないか」
とぼとぼと細道を歩くふたりの羅刹、まだ年端も行かぬ小童である。
少年の言葉に、よかったのかと声をかけたほうの小僧はぶるりと身を震わせた。
――死なないなら、ついてきてもいい。
案内を願い出たルーナ・ユーディコットの、あの冷たい瞳。
侮蔑や嘲笑ではなく、純粋に、これから起こる戦いを見据えた戦士の目だ。
ふたりは若い。羅刹としての剛力も、いまだその身には備わっていない。
大人たちは同行を決めた。だが彼らは案内に留まり、背を向けた形である。
「おれじゃあきっと、あの方が危惧する通り死んじまうよ」
「まあ、そうかもしれねえけどさ……だって、相手は術師だぜ」
それでも彼らの表情が浮かばぬのは、やはり負い目があるからだろう。
これは一大事、里が、否、この山が滅びるかどうかの瀬戸際である。
このままでよいのか。安穏と、肩を縮めて怯えているだけでよいのか。
「……あの方は、おれたちを慮ってくれたんだよ」
ルーナの目は冷たかったが、しかし侮り嘲るものではなかった。
少年たちは肩を落として歩く……やがてその足が、止まった。
一方、戦場にて。
「足を止めるな! 符が来るぞ!!」
羅刹の声の直後、空を覆うばかりに降り注ぐ呪殺の符!
それを飛びかかり焼き尽くしたのは、ルーナが生み出した炎の狼ども。
炎の群れはそのまま燃えながら敵を襲い、喉笛を噛み切る。猛烈な焔だった。
「惨劇は、起こさせない」
ルーナは言葉短く言い、飢えた狼のごとくに身を低く伏せて駆けた。
頭上ずれすれを矢が通過する。伏せていなければ鎖骨を割られていたか。
弾丸のような勢いで敵陣に駆け込んだルーナは、立ち上がりながら剣を振った。
昇り龍を幻視させる緩急だった。ただし散る飛沫は、水ではなく敵の血だ。
「ええい、散れ散れィ! 波状攻撃で数を減らせ!」
「数の利は我らにあり! 敵の勢いを削げばあとは根比べぞ!」
「させると思うの? そんなことを」
ルーナと羅刹たちは、数の劣勢を地の利と電撃的強襲で補った。
敵が本腰を整える前に、勢いに乗って滅殺する。つまりは、時間勝負である。
最速が最善に繋がる。ルーナは足を止めずに斬り、斬り、そして斬った。
まるで木々を飛び渡る猿のようだ。姿が霞むたびに血飛沫が迸る。
「誰も殺させない。この国の、この世界の平和を乱すことは許さない」
「ハ! その身ひとつで何が出来るか! いずれ朽ちて斃れるのが似合いよ!」
「――そんなつまらない終わりは、もうとっくにやめにしたの」
円弧を描いた斬撃が、戯言もろとも編笠衆を真っ二つにした。
しかし状況は芳しくない。……新手である。数は先の二倍近いか!
「次から次へと……!」
ルーナは歯噛みし、次の獲物めがけて飛びかかり、殺した。
その時である。矢が再び頭上をかすめた――ただし向きが逆だ。
ルーナや羅刹を狙うのではなく、その鏃は編笠衆を狙い、そして貫いた。
「か、加勢いたします!」
「……死なない程度に!」
頭上。岩場から乗り出した少年ふたり。ルーナは先刻見たその顔を思い出す。
消沈していた子どもたちは、弓矢を担いで踵を返して駆けつけたのである。
「……死なないなら、それでいい」
ルーナはにこりと笑いもせず、けれどもほんの少しだけ柔らかくなった目で見上げ、そして呟いた。
死を厭うのは面倒だからではない――己の過去を思い出すからだ。
羅刹たちは奮起した。やがて趨勢は、ルーナと鬼たちに傾いた。
世界を、住処を、居場所を守る。その意思が、外道どもの悪意に打ち克ったのである。
大成功
🔵🔵🔵
清川・シャル
羅刹の里を狙うとはいい度胸ですね
……このような見た目ですが、角が見えますでしょうか?私も羅刹の端くれ、必ず貴方達のお力になりましょう
なので手伝っていただけませんか?
連携を取りましょう
全力魔法で防御結界を張ります
弓を防がねばいけませんからね
私が蹴散らすので、取りこぼしをお願い出来ますか?
呪詛を帯びたなぎ払い攻撃で敵の統率力を削ぎます
敵攻撃には激痛耐性と武器受け、カウンターで反撃します
櫻鬼のジェットを使って地の利も使用しましょう、風魔法で補助しながらホバリングして機動力抜群です
これ以上好きにはさせないですよ
●羅刹のはしくれとして
清川・シャルは、この世界の純粋な羅刹たちとは少々事情が異なる。
金髪碧眼は血筋にとって忌み子であり、事実彼女は異種の血を引いていた。
猟兵の多種多様な生まれのなかでは目立たぬが、軽い出自かと言えば否。
侮蔑が、嫌悪が、憎悪が――そして殺意が、幼き頃の記憶に多くへばりつく。
それでもシャルは生まれを恥じぬ。胸に大切な思い出が宿っているから。
「このような見た目ですが……この角が、私の証明です」
というシャルの言葉に対し、窮地を救われた羅刹たちは言った。
「見た目がなんだと言おう。同胞よ、貴殿は命を賭して駆けつけてくれた!
ならば鬼だなんだと言う前に、義に応えねば戦士としての名誉に背こうぞ!」
飯縄の鬼たちは竹を割ったような連中ばかりで、清々しい戦士だった。
シャルはほっと安堵のため息をついた。そして少し、誇らしかった。
「……ええ。みんなで一緒に、戦いましょう!」
頷く少女の碧眼は、いつも通りきらきらと明るく輝いていた。
そうして絆を紡いだ羅刹たちの攻勢たるや、編笠衆を飛び上がらせるほどだ。
シャルの敷いた防御結界が、降り注ぐ符と矢のことごとくを退ける。
そればかりか彼女は、生まれ持った剛力を振るって先陣を切りさえした。
「私が蹴散らします、皆さんは取りこぼしをお願いします!」
「なんと勇ましき物言いよ。だが請け負った!」
「されど我らとて座してはおらぬ。喉笛引き裂き血を浴びてくれるわ!」
「応ともよ! 若き同胞に遅れを取るなよ、飯縄の鬼ども!」
豪放磊落たる戦士たちは溌剌と名乗りを上げ、灼ききれた呪符の灰を踏んだ。
戦いは遠距離戦から白兵戦に移行し、大軍同士の乱戦模様を描く。
「地獄へようこそ! そしてさようならッ!!」
よく目立つ鬼棍棒が振るわれるたび、血と肉が混ざりあい飛び散った。
奇しくもその色合いは、羅刹たちにとっての旗印となったのである。
金剛力を込めた錫杖が振り下ろされる。シャルはしゃがみ込み、跳んだ。
「なんと!?」
然り、跳んだのである。高下駄が圧縮空気を吹き出した!
「頭上に注意、ですよ!」
「「「うおおおっ!!」」」
ずしん!! と地面が陥没するほどの一撃。迸る衝撃が雑兵を吹き飛ばす。
「見事なり! 我らも負けておられぬな!」
「続け続け! 奴らはうろたえているぞ!!」
羅刹たちは勢いに乗り、編笠衆を次々にその爪にかける。
「何故だ!? 数も練度も我らのほうが上なはず。なぜ……!」
「いい質問ですね。ならば教えてあげましょう」
シャルは頬についた血を拭い、動転した編笠衆に言った。
「羅刹の里を狙った。それが、唯一にして最大のあなたたちの敗因です!!」
轟雷直撃、再び地が割れ迸る血をよく吸った。
金髪鬼は空を駆ける。身の重さひとつ感じずに、足取りは軽やかだった。
大成功
🔵🔵🔵
御影・しおん
ふふ、こんにちは、救援にきたわ
羅刹達には先にするつもりの行動と、使用するUCの説明をしとくわ
最悪、彼らを退避させるのに使えなくもないし
じゃあ、戦闘開始ね
私自身の守りは《結界術/オーラ防御/闇に紛れる/見切り》あたり
追加で《化術》での偽装も行っておくわ
そして……【境界操作の弐『転移亜空門』】
対象を死角から呑む空間の歪み、亜空間の門でお家強制送還よ
拒否すれば亜空間から戻ってこれるけど、
その出口が「偶々」、例えば遥か空の上だったり(神罰)
「誰かを狙った大強弓の射線上」だったりするかもしれないわね(敵を盾にする)
くすくす。
未来が見えても、目の前の“味方”が見えてないんじゃ……ね?
※アドリブ他歓迎です
●行きはよいよい、かえりは――
「……恐ろしい術式だな」
「ああ」
羅刹たちは珍しく顔をしかめ、先の話を頭の中で反芻していた。
猟兵、御影・しおん。その姿は美しい童女だが、感じる力は恐ろしい。
しかし羅刹たちをもっとも畏怖させたのは、彼女が説明したユーベルコードだ。
いかなる術理によってそれが起こるのか、彼らには見当もつかぬ。
もとよりユーベルコードとはそういうものだが、しおんのそれは格が違う。
まさしく、神の御業。その本性は想像するに余りあった。
「海道一の弓取りの天眼。これほどの遠間を射抜くものではあるが」
「――見抜けるはずがあるまい。あれは紛れもなく、鬼神だ」
彼らは少し、ほんの少しだけ敵を哀れんだ。
少女めいたしおんの笑みはあどけなかったが――だからこそ、恐ろしかった。
一方その頃。
「見つけたぞ、猟兵――何、ひとりだと?」
がさり、と草むらから飛び出した編笠衆は、目の前の光景を訝しんだ。
然り、ひとりである。しおんは、たったひとりで開けた場所に佇んでいた。
敵も莫迦ではない、こちらが取る手管がなんであるか見当はついている。
地の利を生かしての騙し討ち、あるいは挟撃や分散、そんなところだろう。
今川義元の矢はどこへでも届く。敵が一番警戒するのはそれのはずだ。
だが。しおんが彼らを待っていたのは、絶好の景観であった。
符を投げるにせよ、矢で射るにせよ、敵に――こちらにばかり利がある。
そしてひとり。いっそ、こちらを化かしているような気さえした。
「あら? どうしたの? ここに、あなたたちの敵が居るのよ」
しおんは、まるで旅人を誘う狐狸の類のように、きゅうと笑みを釣り上げた。
細めた目は三日月を描き、空恐ろしい。この世のものならざる笑みだ。
「それとも――こおんな幼い小娘ひとりが、恐ろしくて仕方ないのかしら?」
「「「……貴様!!」」」
敵は外道とて術師である。矜持と誇りがあり、許せなかった。
編笠衆が仕掛けた――その時、空間が牙を剥いた。
「でも残念、他人の敷居を踏みつける悪いおあそびはここでおしまいよ」
"境界操作の弐『転移亜空門』"。
境界を司る竜神としての力の片鱗、あるいは残り香。
歪みは獲物を強制的に送還する。無論、それは対処可能な術式だ。
拒めば手痛い代償を支払うとはいえ、無敵無双のものではない。
編笠衆は当然、拒んだ。そして、死んだ。
矢である。
降り注いだ矢が、しおんではなく敵を貫いたのだ。
「がは……ッ!?」
何故、と編笠衆は言おうとした。
おそらく、射抜いた当人もそう思っていただろう。
「あら、こわいこわい。たまたまそんなところに出てしまったのね」
しおんはうそぶく。無論、ここまでがしおんの仕掛けである。
敵が戻ればよし。戻らなければ、向かってくる攻撃の射線上にはじき出す。
童女がくすくすと笑った。もはや、編笠衆は行くも戻るも出来なくなった。
「未来が見えても、目の前の味方が見えてないんじゃ――ね?」
竜の尾を踏んだ。
連中の死に様は、その報いに他ならない。
大成功
🔵🔵🔵
花剣・耀子
一度還したものを引っ張り出さないで頂戴。
どこの世界であれ良いようにされるのは業腹だけれども、
この世界の空が曇るのは赦せないの。
――私情よ。
接敵前に、羅刹の皆に御山の地形を訊いておきましょう。
此処から敵が寄せてくるまでの間に、視界の開けている場所はある?
どれだけ険しくても良いわ。
なければ、出来るだけ高いところを。
やることは単純。
見える限りの全部を斬り果たす。
視界に収めた敵の一軍に向かって、只中へ斬り込みましょう。
編笠衆でも弓でも、あたしを殺すならあたしに触れる。
致命傷になり得るものだけを咄嗟に斬り払いながら、
負った傷より多くを斬れれば上々よ。
御山を壊されても困るの。
その首、さっさと落としなさい。
●どうか晴天あらんことを
あの日――エンパイア・ウォーが勃発した日。
民草の混乱、恐怖、そして空に聳える織田信長の城の威容をよく覚えている。
敵は滅んだ。
大魔縁もその下に額づく魔将も、ことごとくを滅ぼし、いくさは終わった。
それから空は晴れ渡った――もちろん、生き残りの外道どもは少なくないが。
怯え、震え、奪われる時代は終わった。誰もが笑顔で勝利を寿いだ。
仕事がてらの夏祭り。
あるいは、厳しくも敬意を払う職人たちとの交流。
健やかなる世界での諸々。花剣・耀子にとっては忘れられるはずもない。
「この世界の空が曇るのは、赦せないの」
傷ついた羅刹たちを突き動かしたのは、耀子がこぼしたそんな一言だった。
空。山にありては、頂に登らずとも空模様がよく見える。
今はどうだろうか。戦乱に天が慄いてか、曇り空がわだかまっていた。
「……そうさな。我らもこの空を見上げ、そして育ってきたのだ」
羅刹は言った。そこには、言葉にするのも無粋な、ある種の理解があった。
「……ただの、私情なのだけれどね」
耀子は困ったように眉をハの字にして、首を傾げた。
だからこそ、彼らに活力を奮い立たせるには、十分すぎたのだ。
耀子の立てた作戦は、単純至極。
向かってくる敵を、こちらに攻撃した瞬間に切り伏せる。
後の先である。言うは易しとはよく表したもの、無理難題もいいところだった。
敵はひとりではない。
敵は一種ではない。
錫杖は地を砕き、呪符と矢とが空から襲い来る。
それを、斬る。
耀子は、はっきりとそう言ったのだ。
「莫迦な」
その言葉は、はたして助力を決めた羅刹の言葉か、あるいは敵のものか。
両方かもしれぬ。とにかく、彼女はやってのけたのだ。その絵空事を。
「な、何者……斯様な鬼がこの地に在るとは!?」
「いいえ、よそ者よ。でも鬼ではあるの。ただ」
斬撃一閃。狼狽した編笠衆の首が、ぽんと蹴鞠のように空に舞った。
「お前たちを殺すのに、種族も故郷も関係ない。だって、私情だもの」
斬撃、ふたつ。
斬撃、みっつ。
岩をも砕く杖が骨に罅を入れる。
厭わず、斬る。
地をも裂く杖が肉を割る。
厭わず、斬る。
鬼であった。
まさしく、鬼神の如き、凄絶なる戦いぶりだ。
「ことごとく死になさい。それ以外は認めない」
耀子の言葉は懇願でも命令でもなく、宣言、あるいは通告だった。
そして言葉は事実になった――傷よりも多く斬り、すべての敵を殺す。
血まみれの少女は、屍の列を踏みしめ突き進むーー。
成功
🔵🔵🔴
ユーディット・ウォーカー
おお、呪術や呪詛を使うとはなんとも恐ろしい敵じゃ…
(震えるのじゃ)
じゃがそう、我らの勇気と正義の心とかがあれば決して負けることはないじゃろう!
と
羅刹達を奮い立たせてその協力を得よう。
不意の一撃を食らわせられるような地形があると良いが。
纏めてずばっと剣で傷を付けたならばあとは消化試合(試合?)じゃな
我らの呪詛…こほん、我らの正義の行いにより回避不能の数多の剣で針山のようにしてしまおう。
飛んで来た矢は飛ばした剣で相殺しよう。
威力に合わせて複数本を連ねよう。弾かれた剣は呪詛に従って編笠集に刺さるかもしれぬな。
●目には目を、呪詛には呪詛を
「はーっはっはっは! どうじゃ外道ども、正義の力で滅びる気分は!」
……と、どう見ても正義でない顔で高笑いする少女あり。
ユーディット・ウォーカーはノッていた。いつになく、絶好調であった。
「の、のう。儂の記憶がたしかなら、その……」
「うむ……あの童女は正義の心とか、勇気とかそう言っておったな」
後方から続く羅刹たちも、さすがに呆れと云うか、少々ヒいていた。
『恐ろしい呪いの符……ああ、我は心が張り裂けそうじゃ! 主に恐怖で!』
とか涙ながらに震えていたあたりからして、胡散臭くはあったが。
「正義! 正義じゃ! これはまさしく正義、つまりは我らが官軍ぞ!
さあどうした羅刹たちよ、いまこそその勇気と希望で悪を誅戮せよ!」
「「……と、言われてもなあ」」
残念ながら目の前で繰り広げられるのは、呪詛がもたらす殺戮である。
避け得ぬ剣が幾度も"再演"され、符の仕返しとばかりに編笠衆を裂く。
向こうから来るのが呪詛ならば、こちらから返すのもまた呪詛である。
だのにユーディットは、なぜだか正義というあたりにこだわっていた。
「なあ猟兵殿! これはその、あまり相手と変わらんような……」
「何を言う! 我らの呪詛……おほん、勇気の力を疑うか!?」
「今、呪詛と申したよな?」
「うむ……」
羅刹たちは顔を見合わせた。どうも、あまり深く掘らないほうがいいらしい。
「「「な、なんだこの地獄絵図は! 貴様の仕業か、猟兵よ!」」」
「はーはっはっは!! いかにもそのとおりよ、さあ恐ろしければ震えて伏せよ!
額づき咽び泣いて赦しを乞うて見せれば、我らは考えてやらんこともないぞぉ!」
悪役の台詞である。見た目も、バリバリに悪役であった。
時折矢が飛んできたりもするが、まあ通じるわけもなく。
というか時折、弾かれた矢がそのまま編笠衆に刺さっていた。
「お、おのれ外道め、呪われよ……!」
「ほぉ? 術師の分際で、然様な捨て台詞しか吐けぬか。うんうんみじめよのう!
だがこれも、羅刹たちの勇気の力! すなわち天罰と心得よ、はーはっはっは!」
「我らに責任が押し付けられておらぬか?」
「……助かったのは事実であるし、黙っておくとしよう」
「そうだな……」
血みどろの惨劇が続く。死ぬのは鬼ではなく敵の方なのだが。
一番の鬼が誰かと言うと、おそらく満場一致でユーディットだった。
大成功
🔵🔵🔵
杜鬼・クロウ
アドリブ怪我◎
上杉謙信に憑依した奴等と戦ってたら、今度は武田信玄の憑依たァ
そんなに骸に還りたくねェのかね
どのような形であれ過去は過去
未来を征く俺達猟兵を阻めはしねェよ
何度蘇ろうと何度でも止める
金蓮火の火つけては消し
弓の雨は【金蝶華】使用し燃やし尽くす
蝶の防壁
目の前の集団敵にまず集中
まだ使い慣れてない新生の剣を振り下ろし前見据え
敵の集団へ突っ込む
意志を力に
炎属性を出力し敵の攻撃に武器受け・かばう
大剣で圧して敵の武器を叩き斬る
力勝負で敗ける訳にはいかず
戦の中で玄夜叉と波長合わせる
火力が段々UP
調子が右肩上がり
亡き故郷在りしこの世界を
この里を護る
その為に俺の正義(ちから)を揮う
敵の数減らし道切り拓く
●活路を拓け
「チィ! 今度は武田信玄の憑装かよ……!」
杜鬼・クロウは歯噛みした。先頃、上杉謙信を憑装されし手勢を討ったばかり。
どうやら連中は、とことん魔軍将の「再利用」がお好みらしい。
「くたばった奴らはおとなしく寝てりゃアいいものをよォ!!
何度蘇ろうが、俺たちに滅ぼされるのが関の山だぜ! おォらッ!!」
降り注ぐ符と矢の雨を、燃え盛る蝶の群れが迎え撃ち、焼き尽くした。
羽ばたくたびに火の粉が散って、血でまだらに染まった緑を灰に変える。
「ええい、符では埒が明かぬか!」
「者ども、突っ込め! 数の利はこちらにあり!」
「「「覚悟せよ猟兵、我らを敵に回したことが貴様の不幸よ!」」」
編笠衆は符を捨てて錫杖を構えると、三方に展開し同時に襲いかかった。
羅刹たちは劣勢だ。クロウは事実上、たったひとりで敵を相手することになる。
「ハ――前口上は立派だなァ。殺してからほざけや外道ども!!」
クロウが振るうは大魔剣、"玄夜叉・伍輝(アスラデウス・エレメンツ)"。
刀工・永海鋭春が作の大業物。五行陰陽を体現せし魔性の刃である。
豪刃一閃、剣風はひとりでに燃え上がり、愚か者どもを慄かせた。
(相変わらずすげェ力だ……うまく制御しねェと味方まで灼きかねねェな)
孤軍奮闘は、いまだそれの扱いに慣れぬクロウにとっての僥倖か。
此度は友軍を気にせず存分に力を振るえる。大軍呪殺がなんのその!
「死ねィ!!」
突き出された錫杖の狙いは肩。関節を砕いて剣を止めようというつもりか。
クロウは地面に刃を突き立てると、膝と片足で魔剣を支え盾とした。
がいん、と大鐘を突いたような音。激甚たる衝撃が手をしびれさせる。
「……ッッ」
地に刺したことで、クロウは反発力で吹き飛ばされるのをこらえた。
一方、敵はそうもいかぬ。しなやかな玉鋼に跳ね除けられる。好機!
「もらったァ!!」
クロウは支えにした片膝を大きく振り、それで剛健なる刀身を蹴り上げた。
異形の剣技である……喧嘩殺法とでも言うべきか。戦場に相応しい荒々しさ。
土埃を巻き上げながら地から天へと昇った刃が、身動き取れぬ敵を両断!
「――感じるぜ、玄夜叉。生まれ変わったお前の波長」
鉄は声なくして震えた。器物同士の共鳴が、戦場で同調していく。
「俺の手で振るわれるなら、もっと暴れてみせろやァ!!」
ごうっ!! と横薙ぎの刃が燃え上がる。まるで不死鳥の翼のようだ!
間隙を狂い舞う蝶どもが補う。破邪の焔が呪殺の念を滅ぼし敵を襲う!
「な、なんたる剛剣……!」
「これが猟兵の力か!」
「お前らの好きにはさせねェ。それが、俺の正義だ!!」
クロウは傷を厭わず魔剣を振るい、敵のことごとくを滅ぼした。
傷から流れる血さえも力に変えて、偉丈夫堂々此処に立つ!
成功
🔵🔵🔴
第2章 ボス戦
『今川義元』
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POW : 仕留めの矢
【大弓の一矢】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD : 鷹の目
【大弓】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【癖】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ : 飛鳥墜とし
対象のユーベルコードに対し【、蹴鞠の要領で体勢を崩すほどに強烈な蹴り】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:鴇田ケイ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ケーレス・ネメシア」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●眼光死灰、過去より来る鬼狩り矢
「編笠衆を皆殺しにするとは……これでまたしても我が盟友は滅んだか」
飯縄山中腹、隠れ潜んでいた今川義元は、忌々しげに吐き捨てた。
「もはや我が軍勢は滅びたり。されど我が首級、ただでくれてやるつもりなし!
我が強弓は必中必殺、挑む者あらばことごとく射殺すものと知れ!!」
その大音声は、加勢する羅刹たちをして気圧されるに余りあった。
然り――滅び蘇った今川義元の矢は、必中必殺。
因果すらも逆行すると謳われし大強弓……過去の残骸が未来を貫くのだ。
超・長距離からの支援射撃とはわけが違う、ここからが敵の本懐である!
「来るなら来い猟兵ども。しかして必死の覚悟を決めるがよい。
クルセイダーが幹部の一、今川義元。全身全霊で相手をしようぞ!!」
鷹をも居落とす天眼が敵を睨めつける。臆することなく戦いを挑め。
邪悪なる魂に滅びをもたらし、羅刹たちの安寧を取り戻すのだ!
●プレイング受付期間
2020/11/17(火)13:59前後まで。
舞莽・歳三
どんな野郎でも見つからなきゃ攻撃することはねーか
【地形の利用】をしつつ【目立たない】ように羅刹達に夢中になってる敵をナイフで【投擲】するぜ
UCで加速して誰の視界にも入らない速度で移動し、背後から【暗殺】だ
●天眼VS韋駄天
生い茂る木々に紛れて反重力を利用し、高速移動。
敵がこちらを視認する前に、羅刹たちを隠れ蓑に背後を取る……。
舞莽・歳三の立てたプランは単純かつ合理的なものだった。
ひとつ誤算があったとすれば、それだけでは今川義元を欺けなかったことだろう。
『――そこか』
「!」
歳三が背後から奇襲をかけようとした、まさにその時。
今川義元はたしかに振り返り、歳三を睨んでいた。
まずい。
そう思った時にはすでに遅く、きりりと引き絞られた弓が放たれていた。
「――ぐっ!!」
歳三の命を救ったのは、彼女の"韋駄天走法"が単純な加速術式ではなかったこと。
反重力を纏う……それはつまり尋常ならざる機動を可能にするということだ。
たとえば――空中を蹴ることで瞬時に後退し、被弾箇所をずらすといったような。
『ほう』
今川義元は、歳三が致命傷をそのユーベルコードで躱したことに目を細める。
彼女の心臓を貫くはずだった矢は、鎖骨付近の肉を抉るに留まっていた。
『だがその動き、すでに覚えた。二度目はない』
言葉よりも先に矢は番えられており、そして放たれる。
(このままじゃ殺られる。見つかったなら、それはもうしょうがねえ)
歳三はマインドセットによって痛みを意識から追い出し、集中を取り戻した。
もう一歩、疾く。
どのみち当たるというならば、心臓を射抜かれるよりも先に殺せばいい!
『――何!』
今川義元は瞠目した。歳三は倍近い速度に加速し、間合いに踏み込んでいたのだ。
矢が放たれる……それは、歳三が掲げた片腕で、乱暴に払われた。
「二度目はない、とか言ってたよな」
歳三の刃めいた双眸が、今川義元を睨んだ。
「気に入らねえんだよ、そういう強者ぶった物言いが」
刺突。今川義元は飛び退るが……ナイフはたしかにその肉を裂いていた。
『ぬうっ、小癪な……!』
「やってみろよ。三度目、四度目。全部生き延びてやるぜ」
歳三は再び闇に溶け込む。それが、己の流儀だとばかりに。
『……いいだろう、相手になってやる……!』
今川義元は、敵を侮っていた不覚を認め、悔い、そして改めた。
相手は猟兵。盟友をも降した、油断ならぬ強敵なのだということを。
苦戦
🔵🔴🔴
ゼイル・パックルード
芸がないかと思われるかもしれないが、また辺り一面を燃やして目くらまし。
遠距離から炎の竜巻を射出して、その炎自体も目くらましに利用する。
そうすりゃ誰かわかるだろ?宣言通り、首掻っ捌きにきた、その挨拶代わりさ。
できれば羅刹共には大人しくしてもらいたいが、下手すりゃ無駄死にだし。
何かしたければ、炎の影にでも隠れながら弓でも射っててくれ、炎を揺らすようにな。
先の戦いで炎に隠れたのを布石にする。
高速移動を利用して、炎を避けて森から速攻で奇襲。
敵がこちらをワンパターンだと思っている内が勝負、ちょっと考えれば戦上手が気づかないわけない。そのちょっとの時間を与えない。遅行より拙速ってね。
●逆巻くは地獄の焔
『……ぬう、これは!!』
今川義元はその鷹の目を鋭く吊り上げ、周囲の惨状を睨みつけた。
惨状……然り、惨状だ。なにせ戦場は全体が燃え上がり、紅蓮が逆巻いている。
さしもの羅刹たちとて、この文字通り地獄じみた戦場では動けない。
「なんという猛烈な火の勢いだ。しかし必要以上には燃え広がっていない」
「まさしく、地獄の業火よ……獲物を逃さぬ炎の獄、と言ったところか」
羅刹たちは冷や汗を滲ませながら、そう言うのが精一杯だった。
業火はすさまじい熱量でゆらめき、今川義元の視界を大きく遮る。
これは檻であり、目くらましであり、そして敵対宣言でもあった。
その首級を掻っ捌きにやってきた、獰猛なる猟兵からの、死の宣告。
『小癪な――我が眼(まなこ)を、この程度でごまかせると思うてか!!』
しかし、さすがは海道一の弓取りか。
その眼はたしかに捉えていたのだ。炎の影を渡る猟兵の姿を。
『そこだ――増上慢を抱いたままに死ねィ!!』
はたして弓は放たれた……だが、貫いたのは虚像だった。
『なんだと?』
「"馬鹿の一つ覚えだ"って、思ったんだろ?」
『!!』
今川義元の背筋が凍った。獲物の声は、背後からしていたのだ。
そう、今川義元はすでに目撃していた……その天眼によって。
ゼイル・パックルードが、焔に隠れて編笠衆を仕留めていくのを。
だからそれが癖だと思い込んだ。すでに、そこにゼイルの罠が仕掛けられていた。
敵がこちらを見ている――その有利自体を利用したブラフ。
炎の竜巻を射出し、その中に身を投じることで加速し、死角を取る。
2度通じる奇策ではない。ゆえに、この一撃に最大の威力を込める。
「燃え上がれよ。地獄に――いや、骸の海に堕ちるまでな」
今川義元は振り返りざまに蹴り足を繰り出した。だがゼイルの斬撃が疾い!
『がは……!!』
首級を狙った斬撃が鎖骨を割り、すさまじい量の血を吹き出した。
噴出した血をも洗い流すように、紅蓮の炎は燃え続ける。
ここがお前の墓標だと、言葉ではなく熱によって知らしめんばかりに。
成功
🔵🔵🔴
天山・朱里鬼
ほうほう…お主弓取りなのか。因果する逆行する弓、しかと研究させてもらおうかのう
…それに、妾も半ば隠居しているといえ羅刹の端くれ。同胞を痛めつけられるのはちといい気分がせんからな。
まずはユーベルコードで自分の周りに髑髏を展開して、一部を正面から敵にぶつけてみようかの。それと同時に妾も敵に横から突っ込む。髑髏を囮にしての。
上手く敵が蹴り上げた瞬間に爆発させたり、敵の弓は髑髏を盾にふさぎながらや、念動力を使い逸らす。そして懐に飛び込み重い一撃をお見舞いしようか。
くふふ!さすが海道一の弓取り!お見事な腕前!…ただ弓矢だけでは人の信念までは砕けんようじゃな!
エスタシュ・ロックドア
これはこれは、海道一の弓取り今川義元殿
お会いできて誠に嬉しゅう御座いますれば
不肖の身ながら獄卒の血統が御身の御相手仕る
御覚悟召されよ――オブリビオン
堕とすまでもねぇ、地獄の方から来てやるぜ
『群青業火』発動
【範囲攻撃】で常に周囲に業火を燃え上がらせる
無論味方とか余計なモンは燃やさねぇよう適宜消火するが
飛んでくる矢は業火で【焼却】だ
業火を越えてくるようならフリントを盾にするか、
血の代わりに業火垂れ流しながら【激痛耐性】で耐える
敵に【ダッシュ】で接敵
業火を纏わせたフリントを【怪力】で振るって【なぎ払い】【吹き飛ばし】
俺ぁ首級などと御大層なモンはいらねぇや
折檻受けたらとっとと骸の海に還られるが良かろう
月隠・望月
さすがは今川義元、飯縄の鬼が気圧されるのも道理。とはいえ、少し驚いただけ、でしょ? 勝てない相手、ではないのだから。大丈夫、わたしたち猟兵がついている(【鼓舞】)
必中必殺の弓……であれば敵に狙われないのが一番。
遮蔽物に隠れるだけでは敵の目を欺くのは難しいかもしれない、ので、【残像】を残しながら移動することでこちらの位置を特定されないよう工夫したい。体勢を崩さないようにも気をつけよう(【足場習熟】)
遮蔽物に隠れつつ敵に近づき、【剣刃一閃】で一撃入れたい。
可能なら頸など狙いたいが難しそうなら弓手を狙おう。弓がうまく引けなくなれば攻撃力が落ちるはず。
味方の羅刹が狙われていたら、優先的に【かばう】
●羅刹たちの戦い
紅蓮の炎がかき消え、今川義元が飛び出した。
鎖骨に抉るような刀傷を受け、無理やりそれを繋ぎ塞いでいる。
いかなる方法によってかは不明だが、まともな術理ではあるまい。
「今川めが出てきたぞ、健在だ!」
「ええい、まだ足掻こうというか……否、だからこその魔軍将か!」
「なんたる執念、そこまで我らを憎むとは」
羅刹たちは、今川義元が浮かべた凶相に気圧され、たじろぎかけた。
そこに降り注ぐ無数の矢――だがこれを、突如現れた髑髏の壁が防いだ。
『何?』
「くふふ! さすがは海道一の弓取り。因果を逆行するとは伊達ではないか」
この世ならざる術で呼ばわれた髑髏は、矢の威力を受け止めて相殺消滅する。
そして髑髏を生み出したのは、艶やかな女童めいた羅刹だった。
天山・朱里鬼は新たな髑髏たちを周囲に出現させながら、似たりと哂う。
「じゃが、この程度で決着がつくなどとは、おぬしも妾も思うてはおらぬ。のう?
まだ宴は始まったばかりぞ。もっと、もっともっとその技巧を見せておくれ」
『……妖しの羅刹め。いいだろう、望むならば全員矢衾にしてくれる』
ぎらりと、鷹の目が羅刹たちを睥睨する。それはおよそ人の目つきではない。
黄泉路より蘇り、魔軍将という外道に成り果てた、化物の眼であった。
飯縄の鬼たちは峻厳なれど、どちらかと言えば人界寄りに過ごしてきた連中だ。
この行き着く果てに行き果てた化生の眼差しは、彼らの心を大きく揺らした。
「――あんな人ならざるモノに成り果てていたら、飯縄の鬼が気圧されるも道理か」
ざり、と……焼け焦げた草木の灰を踏みしめて、月隠・望月が一歩前に出る。
「とはいえ、少し驚いただけ、でしょ? ……だって、勝てない相手では、ない」
『なんだと? 我を愚弄するか、小娘!』
「――うるさい」
望月の眼には殺意があった。羅刹としての、猟兵としての、剣士としての怒りが。
「逆恨みも甚だしい理由で御山を土足で踏み荒らし、平和を奪っておいて。
まるで自分が被害者のような面で、べらべらと御高説を垂れるな。死人」
『笑止。俗世を離れたとうそぶきながら、信長を謀ったは貴様ら羅刹であろうに!』
「それは、この里の鬼たちがやったこと? そして、誰かが仇討ちを頼んだとでも?
……お前の理屈は、徹頭徹尾、死人の世迷い言。一方的な屁垂れの能書き」
今川義元の眉間に青筋が浮かんだ。強烈な殺意を浴びて周囲の小枝がパキンと折れる……だが望月は、その凝視を真っ向見返し、さらに言ったのだ。
「わたしたち猟兵は、お前のようなモノを滅ぼすために、戦い続ける。
……そしてわたし自身も、ひとりの羅刹として、お前を絶対に許さない」
『小娘が……!!』
「言い負かされたからってそうかっかすんなよ、今川義元"殿"?」
ずしゃり、ずしゃりと、重たい足音が望月の隣に続いた。
浅黒い肌の羅刹、エスタシュ・ロックドアはこれみよがしに表情を歪める。
片眉を吊り上げ侮蔑に近い笑みを浮かべた、あからさまに挑発的な顔だ。
「屁垂れの死人とは実に言い得て妙、お会いできてまことに嬉しゅう御座いまする。
――不詳の身ながら、オレは獄卒の血統。御身を冥府へ送るため推参いたした」
『ほう? 我を閻魔王の名において裁こうてか。貴様のような未熟者が』
エスタシュは大きく胸をそらす。2メートル近い体躯がさらに大きく見えた。
「仰る通り。御身の御相手仕るには役不足でしょうとも。――だが」
言葉と裏腹に、その表情は笑みを深める。今川義元はさらに苛立った。
慇懃無礼とはまさにこのこと。エスタシュは、敵を徹底的に侮蔑しているのだ。
「死人が参る先は現世に非ず、冥府と相場が決まっておりますれば。
……いい加減にお覚悟めされよ、オブリビオン。もう逃げ場はありゃしねえぜ」
『ほざけェ!!』
今川義元は瞬時に弓を引き絞り、獲物ごと背後の大木をも貫くであろうすさまじい矢を放った。しかも、一発ではない、一度に五発!
だがそれは朱里鬼が遣わせた髑髏と、エスタシュ自身の身体から噴き出す群青色の炎――地獄の業火によって、五条すべてが雲散霧消する。
雲散霧消。然り、朱里鬼の髑髏は、ただ空を飛ぶ防御用の術式ではない。
それは触れた瞬間に爆裂し、呪詛によって獲物を苛む妖しの術なのだ!
戦いは今川義元が火蓋を切る形で始まった。
羅刹三人の戦いぶりに勢いを得た飯縄の鬼たちも、敵を取り囲み援護する。
今川義元に退路はない――だがもとより敵に退くつもりはなかった。
遠きにあれば矢を放ち、近くに来ればその蹴り足で頭蓋を砕き、殺す。
弓取りは体術もまた一流であり、身のこなしは風に舞う布めいて軽妙である。
おそらくは内功の一種であろう。噛み砕いた言い方をすれば呪力の応用か。
「弓矢だけでは、人の、鬼の信念までは貫けぬぞ、今川義元!」
『信念? くだらぬ! 我が弓は未来より過去を貫き、以て過去より引導を渡す。
貴様らはみな死ぬのだ。信長の、そして我が盟友の仇をここで取らせてもらう!
』
「羅刹の縄張りに踏み込んだ外道が、情に篤いようなことをほざきやがるなァ!!」
矢と髑髏が乱舞する戦場を、エスタシュは無造作に見える足取りで横断した。
危険である。空中に跳躍した今川義元は、逆さ姿勢で矢を引き絞り、放った。
一射目。業火で焼き尽くす。
二射目。一射目そのものを盾として飛来した矢を、鉄塊剣フリントで弾く。
……さらに三射目! エスタシュは片腕を掲げ、これを受け止めた!
『チィ!』
「どうした、オレはまだ生きてるぜ――死ぬつもりもねェがよ!!」
傷口から吹き出した血すらも群青色に燃え上がり、今川義元を責め苛んだ。
さらなる髑髏の飛来を嫌い、今川義元は着地と同時に飛び退る。
「――貰った」
『!!』
そこに望月が潜んでいた。乱戦を利用して回り込んでいたか!
『小賢しい!!』
剣刃一閃と同時に走った蹴り足が、望月の胴におもいきり突き刺さる。
だが不安定な姿勢から無理矢理に繰り出したゆえ、威力は十全ではない。
望月を吹き飛ばすというよりも、義元が腹を踏み台に跳ぶようなものである。
対して望月の斬撃は、この一瞬を狙い研ぎ澄まされた一閃であった。
勝負は明白――今川義元の肩から腕にかけて、ばっくりと血の華が咲いた。
『ぬうっ!!』
「だから言うたであろうに。同胞を痛めつけた罰はこの程度ではあるまいて」
頭上に嗤笑する朱里鬼。直後、周囲に展開した髑髏が次々に爆砕する!
望月への追撃の矢を放つことも出来ぬ。今川義元は呪いを浴びながら吼えた。
『腐れ鬼どもが……!!』
「腐れ外道に言われたかねぇや」
エスタシュ。片腕を群青色の焔に包み、鉄塊剣を肩に担いでいる。
炎はその無骨な刃に乗り移り、ばちばちと青い火の粉を散らしていた。
「報いを、受けろ」
体勢を立て直した望月が、そう言い放っているのがなぜかよく聞こえる。
今川義元は目を見開いた。――燃え上がる鉄塊が、地から天へと迸る!
「折檻受けたら、とっとと骸の海に還るがよろしかろう――!!」
閻魔の裁きじみた強烈な一撃が、業火とともに死人の身を灼いた……!
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
乙葉・あいね
?
弓を射れば次の瞬間にはそれは既に過去の事で、
でもその時はまだ命中はしてなくて、当たるのは未来の事で……
過去放った矢が命中するのは未来の事、なのは普通なのでは?
それはそうと、「命中した~」なのが厄介なのです
知ってるのです!こういうのは武器で切り払っても「武器に当たった」とか言い出すのです!
だから、《見切り/残像》とUCでの分身での迎撃を中心に組み立てて、
頑張って近づいて、二刀での《焼却/マヒ攻撃/なぎ払い》なのです!
それに……愛音(わたし)の癖を覚えても、
(雰囲気が変わり、本体以外の装備の白と黒が反転する)
……哀音(ボク)の癖は、どうなのかなー?
さあ、やっちゃうよ!
※アドリブ歓迎だよ!
アルトリウス・セレスタイト
口上の前に撃てば一人くらいは撃ち抜けように
目立ちたがりなのだな
戦況は『天光』で常時把握
無数の薄膜状に分割し纏うオーラへ『刻真』で干渉
触れる攻撃を部分的な加減速で偏向させ自身から逸らし、尚も迫るなら『超克』で世界外へ「捨て」て回避
必要魔力は『超克』で“世界の外”から供給
絢爛を起動
起点は目の前の空気
時と秩序の原理を以て戦域の空間を支配
高速詠唱を『刻真』で無限加速し即時起動
一つの法則を「遥か昔から敷いておく」
全ての攻撃はオブリビオンのみ狙い、オブリビオンにのみ作用する
矢も蹴りもお前しか狙わぬし、お前にしか当たらぬ
必中必殺の矢であればさぞ痛いのだろう
己の磨き上げた技、存分に堪能しておけ
※アドリブ歓迎
御影・しおん
まあ、必殺ではあったわね
守りはさっきと同様に、加えて《化術》での偽装を重視し、狙わせない事を念頭に
射程内まで近づければ《弾幕》や行動の隙へ合わせ『影刃縛』、どれか一つでも当たればそれでいいわ。
そして【境界操作の壱『現在進行中の過去』】
“過去”と“現在”を分かつ境界線を曖昧にし、
数秒前の刃も、
数分前の傷も、
数刻前の痛みも
“もう過ぎた過去”でなく“たった今進行中の現在の事象”なのだと、定義を書き換え世界を騙す。後は維持に専念よ
さて、ここまで何人と刃を交え、いくつの傷を刻み、刻まれたのかしら?
何度でも、彼ら猟兵達の振るった……
いいえ、“振るう”刃を、届かせてあげる
※アドリブ連携他歓迎です。
●鷹の目と猟兵たちの戦い
今川義元が放った矢が、空中で不自然に静止した。
一瞬あと、矢は突然に動き出す――ただし、まったく逆のベクトルを向いて。
『何……!』
意図しないあまりにも不可解な軌道で"戻って"きた矢を、義元はかろうじて回避。
頬が浅く裂け、血が一筋。そして睨みつけたのはアルトリウス・セレスタイトだ。
『貴様か……! なにかしらのユーベルコードを敷いておるな!』
「それがわかったところで、いまのお前に解除する手立てはない」
『ほざけ! 因果すら捻じ曲げる我が弓術、甘く見るでないわ!』
アルトリウスが発動した根源術式"絢爛"は、周囲の空間そのものを支配する。
アルトリウスはそれによって、戦闘領域の時と秩序を掌握したのだ。
つまり何が起きるのか――放たれた攻撃の、完全な逆行。
矢も、蹴りも、義元だけを狙うという、徹底的なまでの自傷法則であった。
しかし、恐るべきは海道一の弓取りといったところか。
オブリビオン化によってさらなる高みへ達した弓術は、それ自体が異能である。
過去(オブリビオン)が未来(いま)を射殺す。
"放たれて"から"当たる"のではなく、"当たる"という結果に"攻撃"の過程が追従する。
……そんなレベルにまで練り上げられたユーベルコードは、術式を凌駕した。
早い話が、今川義元は支配された空間の法則を強引に切り開いてみせたのである。
己めがけて戻ってくる矢を掴み、二の矢、三の矢をすさまじい速度で放つ。
被弾を恐れぬ連続射撃は、むしろ逆に不可解な軌道を伴う矢の乱舞を生み出した。
放たれた矢がどこへ向かうのか、今川義元にすらもわからない。
ともすれば自分を貫きかけない攻撃を、それでもなおひたすらに放つ。
これほどの執念と憎悪なくして、魔軍将を名乗ることは出来ないのだろう。
だが、戦場に敷かれた法則はひとつきりではない。
「どこまでも世界を脅かそうとする"過去"……本当に、醜い限りね。
まあ、憎悪と憤怒に凝り固まったあなたに何を言おうと、無駄なのでしょう」
御影・しおんは得意の化術を利用し、義元の狙いを撹乱しながら言った。
滅ぶべしという世界そのものからの押しつけを跳ね除け、妄執を叶えようとする。
まさしく世界を滅ぼす過去の残骸……未来を汚染し破壊するオブリビオンだ。
「ならば、その過去によって滅びなさい。あなたを滅ぼすのは"いま"だけじゃない。
過去にあなたが受けた傷、受けた痛み、それを"呼び起こして"あげましょう!」
竜神たるしおんの司る権能は境界……すなわち、物事を分かつ"線"である。
アルトリウスが空間とその法則を支配してみせるように、彼女の権能は(往時のそれに比べれば大きく弱体化しているとはいえ)概念の境界線にすら作用する。
過去と、現在――それはもっとも単純で、そして交わることのない概念だ。
しおんはアルトリウスのユーベルコードによって不安定化した領域に"後乗り"し、この「過去」と「現在」という概念の境界線を曖昧化させた。
何が起きるか……端的に言えばそれは、過去に受けた攻撃の再現である。
今川義元の全身におびただしい刀傷や刺突による裂傷が生まれ、血が噴き出す。
『ぬう……ッ!!』
体勢を崩したところへ、アルトリウスの術式で捻じ曲げられた矢が飛来する。
「必中必殺の矢、己が磨き上げたものをせいぜい堪能するがいい」
「わたしたち猟兵の……いえ、それだけではない。過去にあなたを殺した侍たち。
そしてあなたの横暴に怒る羅刹たち……すべての過去を、届かせてあげるわ」
『おのれ、猟兵ども……ッ!!』
世界そのものが牙を剥く。過去よ、骸の海に還るべしと最期を告げる。
矢を躱す。だが避けきれず突き刺さる――当然だ、それは海道一の弓取りの矢。
皮肉にも、今川義元の腕前が、今川義元当人を脅かしているのである。
『否、否、否! 我が盟友の無念、織田信長の無念! いまだ晴らせておらず!
我は魔軍将・今川義元……積年の怨念を晴らすために蘇った亡者よッ!!』
「かつてのあなたの無念は、それはさぞかし深いものだったと思うのです」
乙葉・あいねは己の本体たる陰陽剣を両手に構えながら、疾走した。
いまこの一瞬ならば、警戒すべき矢は飛来しない。つまり、斬り込む隙がある!
「だからといって、蘇ったあなたに羅刹さんたちを殺させるつもりはないのです!
あなたが倒れたあとに築かれたこの世界を護ることこそ、あいねたちの使命!」
『我はそれを認めぬ! 認めぬぞ、猟兵ァアアッ!!』
「――なら、ただ切り捨てるのみですっ!!」
今川義元はすさまじい妄執と憤怒の力で立ち上がり、弓を引いた。
双眸は爆ぜそうなほどに血走り、向かってくるあいねを睨んでいる。
放たれれば必中必殺、仮に防いだとてそれは二の矢で獲物を殺すだろう。
この真正面からの射撃ならばなおのこと、空間支配や境界の曖昧化があろうと。
あいねは覚悟の上の吶喊であった。そして彼女には、策がひとつあった。
『――死ね!!』
矢が放たれる。その瞬間……見よ、あいねの姿がふたつに分かれた!?
現れた分身は、あいねと同じ姿をしていながらただひとつだけ違いがあった。
それは、色だ。まるで相克し相生する陰陽の理めいて、白と黒だけが別である。
「"哀音"、頼むのです!」
『うん――たとえ、"愛音"を射抜けたとしても!』
分身……"哀音"と呼ばれたその半身は、放たれた矢の軌道をかいくぐった。
矢を受け止めるのは"愛音"の仕事だ。がら空きの胴へ、"哀音"が迫る!
『何――』
『――ボクの剣は、防げないッ!』
然り……斬撃がついに到達し、今川義元の脇腹を横薙ぎに裂いた。
死中に活あり。見事なりしは、海道一の弓取りの目すらも欺くその布石か。
世界を侵す過去を許さぬ猟兵たちの意気が、その一撃を届かせたのである!
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
羅刹には貴方呼び
ただで首級が取れるなんて思ってないさ
そっちこそ無傷で目的が達成できると思うな
SPDで判定
まずは【挑発】で狙いを自分に向けるように仕向け、羅刹達は大狼に任せる
【視力】【聞き耳】を使い【情報収集】しながら【早業】【見切り】で避ける
避けられなければ【覚悟】して受けて【気合い】で耐える
義眼の橙の災い【爆撃】を【範囲攻撃】【全力魔法】で放ち【目潰し】し【迷彩】【早業】【悪路走破】で背後に回り、銀腕を【武器改造】で一度盾にして攻撃を【盾受け】
そのまま【シールドバッシュ】を当てた後【二回攻撃】
腕を剣にし【怪力】【鎧無視攻撃】を使い【切断】し【串刺しする】
ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
弱点らしい弱点のないシンプルに地力の高い相手ってホント面倒よねぇ。
まあ敵の幹部連中は大体そんなのばっかりだけど。
なんとか短期決戦仕掛けないと、長引けば長引くだけジリ貧ねぇ。
…弓ってのは構造上「引かないと放てない」もの、どんな矢継ぎ早だろうと必ず攻撃の途切れる瞬間はあるわよねぇ?その刹那を〇見切って●明殺を差し込むわぁ。
あとはラグ(幻影)と摩利支天印(陽炎)による〇残像と迷彩で認識ズラしましょうか。
ダメで元々悪あがき上等、ちょっとでも精度が狂えば万々歳。明らかな格上相手に人事を尽くさないほどあたし自分に自信持ってないもの、できることは何でもやるわよぉ?
石上・麻琴
・心情
さて、姿を捉えましたよ今川義元
お覚悟を
・戦闘
こちらはユーベルコード『勾陳凶将・急急如律令』で大蛇を召喚し、攻撃を行わせます
さて、どうもこちらの技を相殺する模様……ええ、いいでしょう、相殺できるのならどうぞ?
大蛇の攻撃に対し、体勢を崩す程の蹴りを見せてもらいましょう
その瞬間を狙って、【破魔
】、【属性攻撃】、【鎧無視攻撃】を乗せた霊符による一撃を叩き込みます
・その他
アドリブや共闘は大歓迎です
天御鏡・百々
●プレイング
なるほど、今川義元……聞きしに勝る強者よ
しかし、羅刹達を皆殺しにするなど看過出来ぬ!
ここで成敗してくれようぞ!
如何な強弓といえ、光の速さは超えられまい
受けよ! 『天鏡破魔光』!!
ユーベルコードで攻撃し、『飛鳥墜とし』による迎撃を誘発する
弓で対処出来ぬ光ならば、対処するには使うしかあるまい
そして体勢を崩したところに、必殺の一矢を狙う
『天之浄魔弓』による光の矢を敵の鎧の隙間に向けて放つぞ!
(破魔114、誘導弾25、スナイパー10、鎧無視攻撃10)
弓の腕では敵わぬとしても、我も猟兵
戦術を駆使し、汝を討伐してくれよう!
●神鏡のヤドリガミ
●本体の神鏡へのダメージ描写NG
●妄執と覚悟
「名就けしは十二天将が一つ――前四勾陳土神家在辰主戦闘諍訟凶将!」
石上・麻琴が朗々たる口訣とともに印を結び、霊符を擲った。
するとその符は空中でみるみるうちに形を変え、巨大な大蛇に变化する。
これぞ"勾陳凶将・急急如律令"……大蛇は恐ろしい黄金の闘気に輝いている。
そして金色の波動を放ち、飛来する矢を跳ね除けながら地を走るのだ!
『小賢しい、式神ごときで我を滅ぼせると思うてかッ!!』
「式神"だけ"が相手だと思ってるなら、そっちこそ甘いんじゃないかしらぁ?」
『!』
今川義元が矢を放とうとしたその瞬間、女の声とともに銃弾が飛来した。
一瞬早く攻撃を察知した今川義元は、横っ飛びに回避しながら二矢を同時に放つ。
しかし不安定な体勢での射撃である。矢は、射手たる女の頬をかすめたのみ。
「弱点らしい弱点のない相手って、ホント面倒よねぇ。ま、いいけれど」
ティオレンシア・シーディアは親指で頬の傷跡を拭い、くすりと笑った。
もう片手は愛銃オブシディアンを一瞬でリロードし、次の弾丸を放っている。
今川義元は大蛇の攻撃を回避しながら、さらに矢を放つ……命中、しかし。
『残像か……チィ!』
居ぬいたと見えたティオレンシアは、弾丸の魔力が生み出した残像であった。
BLAMN!! 死角からの射撃、さらに地形をこそぎ取るような大蛇の尾!
「な、なんという猛烈な戦いだ、我らでは立ち入ることさえ出来ぬ……!」
羅刹たちは、刹那を縫うような敵味方の攻防を目の当たりにして萎縮した。
彼らとて精強な鬼ではあるが、その実力は残念ながら猟兵には敵わない。
そもそもこの戦場に立てるかどうかで、まず線引が始まっているのだ。
「否! 臆するべからず。それとも羅刹たちよ、先程までの意気は虚言だったか?」
そんな羅刹たちを、幼い少女の姿をしたヤドリガミ、天御鏡・百々が檄した。
「そ、そんなことはない! ここは我らが父祖より受け継いだ山なのだ!
我らの力で守らねば、代々この土地を守り抜いてきた先祖に申し訳が立たぬ」
「ならば力をひねり出すのだ。たとえ敵わぬとしても一矢報いてみせよ。
案ずるなかれ、我らは皆の命を必ず守り抜こう――ともに戦う、仲間として」
百々の周囲にいくつもの神鏡……百々の本体の分身体が現れた。
それは太陽の光を受けてさらに輝き、清廉たる光をもって御山を照らし出す。
まるで地平線から昇る暁を思わせるような光は、羅刹たちの心に力をもたらした。
「……白瑛、みんなを守ってやってくれ。俺は、前に出る」
ルイス・グリッドはフードを目深に被りながら、相棒たる大白狼に言った。
白瑛と名付けられたそれは、このサムライエンパイアで得た無二の仲間である。
白大狼は勇ましく吼え、意気軒昂たる羅刹たちの盾として地を駆けた。
「羅刹よ……あなたたちの怒り、そして屈辱、この俺が思い知らせてみせる……!」
ルイスはフードの下の隻眼をぎらつかせ、影のような速度で義元へと挑む。
すぐ真横を、黄金の大蛇の尾が薙ぎ払った。立ち込める土煙は矢への目眩ましだ。
「今川義元よ、殺すならばまず俺を殺してみせろ。一度死したるこの俺を!
お前が必中必殺を謳うならば、同じ死人である俺を殺すなど造作もあるまい!」
『貴様……我を験すか? 驕るなよ、猟兵!!』
メガリスの力で蘇ったデッドマン……それが、ルイスの正体だ。
同じ死者として本能的にその死臭を感じ取った義元は、挑発に激昂した。
そして鏃がルイスを狙う――実際これは、危険な賭けである。
(ただで首級が取れるとは思っちゃいない。俺も、命を賭けなきゃな)
あの必中必殺の矢をまともに受ければ、この身は今度こそ完全に死ぬだろう。
漠然とした確信がある。それほどまでに、義元の妄執はすさまじかった。
鷹の目に睨みつけられたとき、さしものルイスですら気圧されかけたほどだ。
(……いいや、俺が前に立つ。もう奴に、誰にも傷つけさせないためにも)
ルイスは覚悟を決めて、闇の淵から覗き込むような凝視に耐えた。
全神経を敵の一挙一動に集中させ、"最悪の場合"に備えて銀の腕を構える。
流体金属が盾型に変形した。はたして、これでどれほどの備えになるか。
『――死ね!!』
そして引き絞られた矢が放たれようとした……まさに、その瞬間である。
「隙を見せましたね、今川義元!」
「視えてるわよぉ――狙い放題だわぁ」
麻琴、そしてティオレンシアが、両翼から同時に攻撃を叩き込んだ!
放たれた霊符と神速の弾丸、それらは今川義元の攻撃の合間を縫う妨害だ。
ルイスが挑発で狙いを絞ったことにより、この妨害がついに差し込まれた。
弾丸が肩口を貫き、霊符が腕を灼く。一瞬だが、矢を放つタイミングが遅れる!
『ぬう……!? 小癪な……!』
されど、海道一の弓取りと仇名される男はその名にそぐう執念を見せた。
肩を貫かれ腕を灼かれながらも、無理矢理に矢を放ったのである。
だが一瞬――最適最良の射撃からコンマゼロ秒ほどの、刹那のズレ。
それが、ルイスに突撃のチャンスをもたらす。銀の盾が、必殺の矢を弾いた!
「届かせてみせる……!」
『愚かなり、我が矢が一撃のみだと誰が――ぐおッ!?』
今川義元は即座に二の矢を番えた……しかし、そこに光が先んじた。
「いかな強弓といえど、光の速さは超えられまい。さあ、我が破魔の光を受けよ!」
百々の神鏡から放たれた浄化の輝きが、死霊たるその身を灼き焦がしたのだ!
三度の妨害、これを受けてはさしもの弓取りとて膝を突くのが必定。
「この傷は、俺たちの……そして、羅刹すべての怒りだと知れ……!」
ルイスは銀の盾で苦し紛れの蹴りを防ぎ、押しのけ、そして腕を突き出した。
銀腕は一瞬にして盾から剣に変化し、ぞぶりと義元の肉体を切り裂く。
さらに百々の放った浄化の光と、黄金の大蛇の尾が今川義元を襲う!
『我が執念すらも凌駕するか、おのれ仇敵ども……!!』
一度は平和を取り戻した世界を、けっして再び侵させはしない。
猟兵と、そして羅刹たちの意思が、激烈たる攻撃となって叩き込まれる――!
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
誘名・櫻宵
🌸神櫻
そんなに大声出さずとも聞こえているわ
過去が未来を穿ち亡ぼすと云うのでしょう
あなたに穿たれる未来など否定する
そんな約は破ってしまいましょ―なんて
約結びの神の前で言ったら怒られる?
カムイ
隣りに並び立つあなたの頼もしいこと
矢が何処から飛んでくるかわかるの?
破魔の気を巡らせ浄化して
『散華』
狙い飛んできたところを斬って壊して
桜と散らし嵐と成して蹂躙するわ
宿す属性は雷撃
その鷹の瞳潰す閃光をよく見ていて
桜罰と共に衝撃波放ち
斬り祓いながら駆け抜ける
私はあなたの降りる桜
私が神の路をつくる
残骸などに行く路を邪魔などさせない
あなたの首に価値など無いけれど
神の太刀筋に合わせ重ねる
未来往く門出に飾るのも悪くない
朱赫七・カムイ
⛩神櫻
サヨ
耳を塞いであげようか
必ず当たると約された弓?
それは面白い
然れどその矢で、私の大切な親友(巫女)を穿たせるわけにはいかない
その約は結ばない―いや
断ち斬るべき厄
何となくね
第六感
矢の気配を察すればカグラに防護結界を張り巡らせて貰う
桜吹雪と共に駆けるそなたは、嵐のようだ
龍とはそんな存在だったかと不思議と懐かしくなる
見切り躱して切り込む
切断し―決して怯みはしない
必中の矢に神罰を
決して―当たることは無いと不幸と厄す
可愛い巫女がつくった路を無駄にはできない
化術―舞い躍る花弁のひとつに姿を眩ませて
そのまま懐に舞いこみ
『黄泉ノ絶華』
二つの太刀筋を重ね厄災を斬る
サヨ
それは全く祝す門出の飾りに相応しくない
●嵐、厄災斬りて逆巻いて
今川義元の放つ矢は、必ずしもまっすぐに来たるとは限らない。
オブリビオンという超常の存在になった――成り果てたそれの矢は、いわば凶兆。
矢に当たったから死ぬのではなく、死という結果に対して矢が放たれる……。
つまりはそういうレベルの、必中・必殺の一撃である。歪曲など当然のこと。
目で見て肌で感じる程度では、あの魔弓を攻略することなど不可能だ。
「――面白い」
されど神は言った。手強いでも恐ろしいでもなく、愉快であると。
たとえその身が君臨者にして絶対者たる神のそれに比肩せざるものであれ、
神とは神というモノ――ヒトとも過去の残骸とも異なる、別種の生命体だ。
ゆえに、愉しむのだ。致死的戦場にありて、妄執の敵が放つ殺意すらも。
「さあ、来るよサヨ。我らを狙う矢が――北北西、さらに南東から。同時だ」
カムイは動かない。ただ、その神の知覚力で得た情報を伝えるまで。
言葉では追いつかぬ……音など、必殺の矢の前では亀も同然ゆえに。
神の言葉は思考の速度で伝わる。巫女と神ならばそれが出来る。
「わかったわ」
誘名・櫻宵もまた、思念で応えた。そのときにはもう桜吹雪が咲いていた。
脳が思考し判断するよりもなお疾く、そして獲物を切り裂く超反射の斬撃。
血と屍を重ねて広げて塗り固め、黄泉路の如き修羅場を踏み越えた魔の剣技。
それをもってすれば、思考速度に追いつくほどの斬撃を放てる。
しかも櫻宵の斬撃は、ただ振って斬るだけのものではない。
斬撃そのものが、根源的な存在力を喰らい、そして桜に変える呪詛である。
加えて疾すぎる剣風はかまいたちめいた鋭い烈風を巻き起こし、桜を舞わせる。
つまりは、一撃を以て十、二十……見える範囲すべてを"斬る"散華の剣。
剣が振られた。桜吹雪がごうごうと舞い上がり、視界を埋め尽くした。
そのすべてが斬撃であるとするならば、もはや常人が太刀打ちできる領域ではない。
『うぬ……!!』
されど、敵は常人ではない。魔軍将、今川義元。
雷撃の呪いが付与された斬撃、およびそれが起こした烈風と桜の呪詛を払う。
矢はふたつ放たれていた。それが切り払われたとあれば、今度は四条。
「次が来るよ。四方――うん、よく狙っている。時間差を加えているね」
「ふふ、さすがは海道一の弓取りかしら? けれど路は拓きましょう」
櫻宵は駆け出した。斬撃が四度、四重に重ねた剣風が時間差の矢を吹き払う。
カムイの姿はなし。義元は状況判断した――櫻宵の突撃は明らかな目眩ましである。
『化生めが。龍ごときが我が血道を阻むべからず!』
「あら。死人ごときが巫女の路を阻むほうがよほど失礼ではないかしら?」
斬撃と蹴り足が激突する。至近距離で矢が放たれ、弓が打ち合い、桜が咲いた。
瞬きのうちに十の攻防。今川義元は超至近距離においても練達である。
明後日の方向へ放った矢がぐいんと弧を描き、櫻宵の背を狙う。死角だ。
カムイは居ない――その声は届かない。ゆえに、ついに矢は巫女を貫くと見えた。
だが。
「その約は、結ばない」
はらはらと舞い散る桜が、ぞぞぞとより集まり、カムイのかたちを作った。
『桜花に紛れ込んでいたか! 小癪!!』
然り。カムイはその身を化術によって変異させ、花弁に変えていたのだ。
死角狙いの矢は神の太刀に払われる。義元の胴は――がら空き!
苦し紛れの打撃は、櫻宵は振るった剣によって血の代償を支払われる。好機到来。
「――唯春の夜の夢のごとし。 たけき者も遂にはほろびぬ」
音は斬撃のあとに……空間を抉る黄泉路参りの斬撃が遅れて咲いた。
剣風、もうひとつ。巫女たる龍の振るった剣が、バツ字の軌跡を描く。
『かは……!!』
「偏に、風の前の塵に同じ。……その厄を、私は認めないよ」
「せめて美しい桜に変わって散りなさい。その色で門出を飾るのも悪くないわ」
神の物言いたげな眼差しを受けて、巫女はくすりといたずらっぽく笑った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
兎乃・零時
ウォリア(f14305)と!
詠唱含めアドリブ歓迎
(怖い、けど)
…良いぜ、やったろうじゃねぇか!
俺様はいづれ全世界!最強!最高の魔術師になる男!
是が非でも!お前を!超える!!
それが俺様の決意であり、覚悟なのだから
分かった!
ウォリアの声と共に、反射的に彼の…その竜が如き巨神たる英雄に飛び乗る!
ウォリアが攻撃するまで守ってくれるなら
詠唱が完了するまで光【魔力溜め×リミッター解除】
此処までされたんだ
応えなくっちゃ、なぁ!
詠唱完了したらUC起動!
物体変質〖輝光〗!
装甲はいらん!
火力を上げろ!
俺様の…いや、俺様達の全力を叩き込む!!
ぶっ貫け!
〖全力魔法×属性攻撃×貫通攻撃×零距離射撃×限界突破〗
輝光閃!!
ウォリア・ノーヴァ
零時(f00283)と
アドリブ歓迎。
(「最強」を吼える「彼」を見る)
虐げられる者達の声だけではない…呼んだのは…
___いいだろう…見極めさせてもらうぞ、少年!
己ですら「本当の姿」か解らないとしても…存在するのは、今この「真の姿」
「励起…開放!戦神竜皇!」
現れしは巨大な城にも等しき勇姿…英傑「戦神竜皇」…推して参る…!
「___乗れ!」
零時を搭乗させた巨体の全てを盾として「シールドバッシュ」で突撃
零時や羅刹達への攻撃は全て受け止め、弾き潰しながら義元を「威圧」して「恐怖を与え」、渾身の一撃を確実に叩き込む!
全身全霊で立ち向かおうとも、過去は忘れ去られるが必定!
今、終焉の星となりて…運命を告げよう!
●凶星、降り立つ
――怖い。
戦いの中で恐怖を認めるのは、とてもとても勇気の要ることだ。
兵士は恐怖を忘れる。心を鈍麻させることでそもそも感じることを辞める。
認めるというのは、まったく違う――受け入れるということなのだから。
(けど……俺は、目を逸らしなんかしない!)
兎乃・零時はグッと帽子のつばを抑え、そして意を決して顔を上げた。
鬼神の如き形相たる、今川義元の凝視を真っ向から受け止める。
「俺様はいづれ! 全世界で最強! 最高の魔術師になる男!!
だから――今川義元! 是が非でも! お前を!! 超える!!!」
『よくぞ吼えた小僧……その大言壮語の代償は命で支払うことになるぞ』
「やってみろ! 俺様は、ひとりじゃないんだ……!!」
零時は肩越しに、羅刹たちを振り返った。萎縮しかけた戦士たちを。
「そうだろ、みんな! 一緒に戦ってくれる羅刹たち!!」
「「「……!」」」
自分たちよりも年若い少年の、まっすぐな瞳と言葉。
それを受けて、意気を震わせぬようではすくたれ者の誹りを受けよう。
羅刹たちは示し合わせるでもなく、鬨の声とともに拳を突き上げた!
「……そして、あんたもだ」
『…………』
傍らに立つウォリア・ノーヴァは、零時の視線を見下ろした。
山に轟く力強き生命たちの咆哮、そして対峙せし過去そのもの……。
『……虐げられる者たちの超えだけではない。我を喚んだのは……なるほどな』
ウォリアは謎めいてひとりごち、こくりと頷いた。
『____いいだろう……見極めさせてもらうぞ、少年!』
「おう! 俺様が最高最強の魔術師になる男だってこと、見せてやる!」
零時は力強くうなずき、そしてウォリアと肩を並べて地を蹴った。
今川義元の妄執と殺意が、羅刹連合軍を迎え撃つ!
放たれたるは無双の矢、それは歪曲し左右どころか背後からすら強襲する。
必中、必殺。まともに受ければ、零時はおろかウォリアとて耐えきれまい。
『死ねぃ、猟兵ども! 何も出来ず、成すことなく、泥のように死ね!』
『__否。その矢、もはや我らを傷つけること能わず』
『ほざけ!!』
必殺の矢が放たれた――そのとき、ウォリアは朗々たる声で言った。
『励起……解放! 戦神竜皇!!』
見よ。猛きその姿はくろぐろとした闇に包まれ、そして稲光の如き煌めきが闇を裂く。
束の間己の身体を覆いたる闇から生まれしは、城の如き聳え立つ勇姿だ!
「うおお!? なんだそれぇ!?」
驚く零時を肩に乗せ、ウォリアは……英傑「戦神竜皇(ウォリア)」が大地に立つ。
その巨躯には、いかな必中必殺の矢とて、たとえ突き刺さろうと一撃では足らぬ!
『真の姿を解き放ったか! だが、我が矢は城とて堕とす戦略兵器なり!』
今川義元は目にも止まらぬ速度で矢を放つ。十! 二十! 三十!
ウォリアは猛然たる速度で駆け出した。飛来する矢をすべて受け止める構えだ!
「後に続け!」
「我らの意地を見せつけるのだ!」
「今川義元、覚悟ーっ!!」
羅刹たちもまた勢いに乗り、今川義元を包囲、そして波状攻撃を仕掛けた。
ウォリアの身体から迸る焔と雷が、羅刹たちを狙う矢を着弾前に焼き払う!
『バカな……! 我が未来より過去を貫く魔弓が、こうもたやすく……!?』
『全身全霊で立ち向かおうとも、過去は忘れ去られるが必定』
ぎらりと、ウォリアの双眸が燃えるように輝いた。
『我、いま終焉の星となりて――汝に運命を告げよう。オブリビオンよ!!』
「――行くぜ、俺様の最大の一撃! これが、最強最高の魔術師の全力だぁ!!」
肩にしがみつく零時の身体が輝くほどの光を放ち――光が一点に収束する。
「応えてみせるぜ、この一撃だ! ぶっ貫け――輝光閃ッ!!」
『うおおお――!!』
その一撃はまさしく光そのもの。因果すら逆行する矢を超えた滅びの一撃。
輝きは一点に窄まり、焔と雷を重ねて三重の魔力を伴った。
ウォリアが放った渾身の一撃とともに、閃光は矢のように奔り、敵を貫く――!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鷲生・嵯泉
ニルズヘッグ(f01811)同道
必死の覚悟だと…?
其れはお前がすべきものだ、残骸めが
……いや、単に死との距離が近いだけだ
……出来るだけ前へは出ぬ様に
巻き込まれての死なぞ不要だろう
矢での攻撃には当たる迄の距離と云う隙がある
集中した第六感で以って視線や指の動きから起点と向きを読み
衝撃波を咬ませて威力を削り、護りの負担を軽減させよう
過去の残滓如きの弓が世界を護る竜の鱗を射貫けるとでも思ったか
――剔遂凄氷、極氷と為せ
四肢狙う氷刃で囲い切り裂き、追って一気に距離を詰め
怪力に鎧砕きの力も乗せ、御自慢の大強弓ごと斬り捨てて呉れる
何度蘇ろうとも逃しはせん
見逃す事は元よりお前達の存在を赦す心算も無い
疾く潰えろ
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
嵯泉/f05845と
エンパイアの奴らって決死迫ってくる奴が多いよな……
そういう教育なの……?
メメント・モリみたいな……
御仁たちよ、今度は開けた場所にでも連れて行ってくれ
貴様らの塒を破壊するのは忍びないのでな
私は死んでも守る覚悟はあっても決死の覚悟など持っていないし
有利な戦場で戦いたいのさ
起動術式、【怒りに燃えて蹲る者】
羅刹らごと嵯泉を囲い、弓の一撃を防いでくれよう
剛弓の一矢、人間相手ならば必殺となろうが
悪竜の命を砕くまでとは至るまい
氷の属性攻撃で嵯泉の援護を行いながら
私は羅刹らの防衛に努めよう
そういう役割分担なんだ、我らはな
怒った嵯泉と出くわしちまったのが運の尽きだ
ゆっくり凍って行くが良い
●必死、必殺、決死、決殺
「こちらだ! 相手をしすぎるなよ、踏み込めば死ぬぞ!」
陣頭指揮を執る羅刹めがけ、恐るべき速度で矢が飛来した。
鷲生・嵯泉がその射線上へ割って入り、斬撃で矢を切り払う。
「りょ、猟兵殿! かたじけない、危ないところでござった……!」
「仔細なし。このまま敵を引き付けてくれ」
「承知!」
羅刹たちの任務――それは、今川義元を戦闘領域まで引きずり込むこと。
ニルズヘッグ・ニヴルヘイムの提案による、一種の陽動である。
『貴様らのねぐらを破壊するのは忍びないのでな』
という言葉を受けて、羅刹たちが総出で囮を買って出たのだ。
「奴め、焦れているな。挑まれる覚悟はあっても挑む側に回るのは癪に障るか」
「あのような残骸の機嫌など、私はどうでもいい。好きなだけ屈辱を感じてもらいたいものだ」
「同感だよ。決死の覚悟など、押し付けられる筋合いも決めるつもりもない」
嵯泉とニルズへッグは防戦に努め、出来る限り敵の視界に入らないように心がけた。
ヤツの目的はあくまで羅刹の鏖殺――であれば、追ってこざるを得ない。
敵の妄執を評価した上で利用した、ニルズへッグの作戦勝ちだろう。
『小癪な……だが、もはや遠間からの狙撃では当たる見込みなしか。屈辱なり!』
今川義元は手応えのなさに苛立ち、眉間に青筋を立てた。
もはや、どちらが鬼かわからない――ただしこちらの形相は悪鬼のそれ。
『いいだろう。ならば貴様らの得意な戦場に立ち、その増上慢もろとも叩き潰してくれるわ……!!』
その怒りが冷静さを損なわせ、まんまと策にかかる愚を生んだ。
あるいは義元自身が盟友・武田信玄を憑装していれば話は別だったかもしれぬ。
しかしそれは、魔軍将にして猟書家たる義元個人の戦力を損なうことになる。
義元はたしかに強大な弓術家であり戦士だったが、信玄ほどの軍師ではないのだ。
翻って言えば、その時点でこの勝敗は見えていたのかもしれない。
はたして両軍――個対多ではあるが、敵の戦力は一軍に匹敵する――は、大きく開けた川原へとなだれ込んだ。
心地よいせせらぎは途端に鬨の声と怒号、そして悲鳴とで上書きされる。
今川義元は羅刹たちを追いながら、とてつもない量の矢を放っていた。
嵯泉とニルズへッグをしても、そのすべてをカヴァー出来るわけではない。
落命する者こそ出ていないが、羅刹たちの負傷はもはや限界に達しつつある。
「猟兵殿! ここであれば……!」
「応。御仁たちよ、よくやってくれた」
ニルズへッグは頷き、足を止め……そして、義元を睨み前に出る。
「起動術式――」
その姿がヒトの形を失った。めきめきと音を立て、皮が裂けて骨が育つ。
血を啜りながら骨を覆う筋と肉。それらを覆うのは皮ではなく……鱗である。
『邪竜めが! 退治てくれるわ!!』
戦場にやってきた義元は、怒りの形相を浮かべて矢を一度に十も放った。
一撃一撃が必殺の威力を込めた矢である……ニルズへッグは、真正面から受けた。
『なんと! 我が必中必殺の矢が、通らぬだと!?』
『人間相手ならば必殺であろうよ。だが――この身は悪竜。命は易くないぞ』
ニルズへッグ……否、"怒りに燃えて蹲る者(ニーズヘッグ)"は目を細めた。
ぐるぐるという喉の唸り声は、敵にとっては屈辱的である。激憤する義元。
『おのれ、なおも我の怒りを煽るか、邪竜めがぁッ!!』
「――怒りか」
底冷えするような冷たい声。義元は反射的に狙いを竜からそちらへ変えた。
ガギン!! ……と、飛来した矢を、嵯泉はほぼ無意識の斬撃で切り捨てる。
「怒りならば、私も覚えている。お前に対する、どうしようもない怒りを」
『死にぞこないめが……!』
「それはこちらの台詞だ。私は、お前たちの存在を決して赦さない」
義元は矢をつがえる。両者の距離は離れており、そして嵯泉の得物は刀だ。
仮に悪竜が割って入ったとしても、刃を届かせるならば近づかざるを得ない。
ならばその前に殺す。それが出来るという自負があり、事実そうだった。
ただし嵯泉の剣は、もはや達人の域を超えて魔道に踏み込んでいた。
義元はそれを失念していた……見くびっていた、というべきだろう。
『――なんと?』
斬撃は届かぬはずだった。されど、その四肢は凍りつき、縫い留められていた。
距離をも不問とする万象不妨の必殺剣。これぞ、"剔遂凄氷"。
「氷獄の味を知るがいい。何度蘇ろうとも、お前たちは決して逃さん……!!」
『うおおおおッ!!』
凍った四肢を無理矢理に動かし、矢をつがえる。肌が裂けて血が迸った。
しかし不安定な状態の矢では、立ちはだかる悪竜を貫くことが出来ぬ。
『怒った嵯泉と出くわしちまったのが運の尽きだ。そしてなにより――』
悪竜は言った。
『私は決死の覚悟など決めない。ただ、守りたいものを死んでも守る。それだけだ』
鷹の目は見た。竜を乗り越え猛烈なる速度で迫る修羅を。
羅刹よりも悪竜よりも、これなる隻眼の鬼をこそ警戒すべきだったのだ。
「疾く潰えろ――その残骸とて、私は赦さない」
絶対零度をも凍てつかせる斬撃が、義元の胴を横薙ぎに伐った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルーナ・ユーディコット
実力に裏打ちされた気迫
強さを感じるには十分だけど
私はもうそれだけで怯む程
死を覚悟する程青くはないつもり
自分を囮にする作戦を取るから
リスクは高いんだけどね
先ず矢を躱しながら相手に向けて駆ける
ただで躱せるとは思っていない
余すことなく全力を振り絞って躱す
名のある敵がいきなり王手をかけてくるとは考えにくい
幾らかの牽制の後隙を狙って必殺の一矢がくると思う
なら、勝負を掛けるなら相手がトドメに放つ最後の矢
それが来ると確信をしたら
剣狼で飛翔しその場を離れてから突貫する
目指し狙い切り裂くは急所
疲労も怪我も限界も振り切って
私はこの戦いには勝つし、生き残る!
鷹を落とす矢で
星も落とせるか、試してみるといい
●強敵だからこそ
ルーナ・ユーディコットは、今川義元という強敵を侮ってはいなかった。
その実力はもとより、必ず羅刹を皆殺しにするというおぞましい執念。
命を賭けて数々の強敵と相対してきたからこそ、ルーナは確信したのだ。
(――この敵は、一撃で終わらせることなんてない。絶対に確殺を選ぶはず)
と。
敵を侮らず、むしろその実力を正しく見定め、畏怖ではなく分析する。
それは生半な覚悟で出来ることではない――恐怖はたやすく人を惑わせる。
ルーナはあくまで冷静に、己の命すらも賭けのチップとして勝負に乗せた。
自暴自棄な勝負ではなく、冷静沈着なままに勝利を得る代償として。
『――その目。我を見くびることなく、されど視線を逸らすこともしないか』
相対したとき、今川義元は言った。
『まさしく戦士の目なり。ならば我もまた、貴様をけして侮るまい』
両者の間の大気が、凝縮され濁って見えるほどに張り詰めた。
羅刹たちは身動きを取れず、ただ必殺同士の勝負を見守る他にない。
「な、なんという緊張感だ……あの場に立てるだけでも一流……」
「ああ……猟兵殿は、ああして睨み合っているだけで消耗しているはず」
羅刹たちの読み通り、ルーナはただそこにいるだけで心身を消耗していた。
悲鳴を上げて逃げ出したくなる緊張感、心臓を鷲掴みにするような殺意。
ただ敵の前に立つだけで、ある程度の線引が必要になるのである。
(けれど、私は逃げない。退かない。――挑んで、勝つ)
限界寸前の疲労と緊張がのしかかり、視界が霞む。
その集中が逆にある種の明鏡止水にルーナを誘う――そして!
『もらった!!』
今川義元が迅雷の速度で矢を放った。ルーナはまっすぐに前に出る!
そして身を沈めた……避けた! 海道一の弓取り、所詮は肩透かしか!?
「やったぞ!」
「否、違う! "あれは牽制だ"!!」
ある羅刹が叫んだ通りだ。矢の影に隠れるように放たれた二の矢こそが本領!
ルーナはそれを読んでいた。敵がそうすることを、そう出来ることを。
敵に対する信頼という奇妙な矛盾……それが、ルーナの命を繋ぐ。
『何!?』
二の矢がルーナを貫くことはなかった。矢は、二の腕をやや裂くにとどまる。
ルーナはほぼ直角に飛翔し、射線をずらした上で地を蹴って加速したのだ。
剣狼の赤い輝きがその身を包み、大気を灼きながらまっすぐに飛翔する!
『猟兵……よもや、そこまで練り上げていたか……!』
「たとえ、その矢が鷹すら落とすとしても」
――声は、背後から聞こえた。
「星を堕とすことは、決して出来ない」
『……見事、なり……!!』
今川義元の胴体をばっくりと裂く斬撃。敵は血を吐いて崩折れた。
死線を踏み越え明日を掴む。その覚悟と決意が、天眼を上回ったのである……!
大成功
🔵🔵🔵
橙樹・千織
アドリブ歓迎
戦国武将ともあろう者が未練がましい
覚悟を決めるはお前の方だ
今一度、オーラを練り直し、破魔と風の属性を纏う
過去が放つ矢に射貫かれ、倒れるわけにはいかない
大弓の構え・矢の軌道を見切り、躱して斬り落とす
難しければなぎ払い、起きた衝撃波で吹き飛ばし致命傷は避ける
彼らの意志を護り
そしてこの地を護る…それが私の役目!
先刻、羅刹から得た地形の情報と知識を活かし飛び回り、斬り結ぶ
過去の積み重ねが今となる
過去のおかげで今がある
しかし
その過去が今を、未来を射貫き壊すことなど許されぬ
邪に蝕まれたその魂、再び骸の海へ送り還す
矢を放つのを遮る風を吹かせ
動きが鈍ったその時に、致命傷となりうる場所を狙いなぎ払う
●風よ、いまこそ吹きすさべ
『……まだだ。我は死なぬ。我は滅びぬ。この怨恨果たすまで!』
「戦国武将ともあろうものが、未練がましい。覚悟を決めよ!」
今川義元は地面を殴りつけて立ち上がり、頭上の橙樹・千織を睨んだ。
義元ほどの射手ともなれば、敵を視認するのと矢を放つのはほぼ同義である。
狙いは必殺、そして必中――しかし、矢が千織を貫くことはなかった。
『……風か! 破魔の霊力を宿し、我が必殺の矢を阻むとは小癪なり!』
然り。千織の破魔の魔力はオーラとなり、風めいて渦巻いていた。
千織を中心として吹きすさぶその霊的な風が、矢の起動を逸らしたのだ。
「もらった!!」
『嘗めるなよ、女ァ!!』
千織は翼をはためかせ斜めに滑空、飛来する二の矢を切り払う。
そして交錯……尋常の立ち合いであれば間合いに踏み込んだ時点で刃の勝ちだ。
しかしこれは超常の戦い。今川義元はその脚力で刃を跳ねていた!
『うぬ!』
「どこまでもしぶとい……!」
両者は反発力でざりざりと地を滑る。体勢を立て直したのは義元が先。
不安定な姿勢からの矢、同時に三発。狙いは喉と両腕!
「その程度、必中必殺の名が泣くぞ!」
千織は獣の相を生かしてぐるりと回転し、風の力を借りて刃を振った。
矢を切り払いつつさらに後退。追い打ちの矢を木々を利用して回避する。
(このあたりの地形については先刻承知済み。地の利は私にある……!)
『逃げるか、すくたれ者が! その命狙い貫いてくれるわ!』
矢が頬を、腕をかすめる。千織は息を整え、挑発を冷静な心で受け流した。
「――羅刹たちの意思を守り、この地を守る。それが、この私の役目!」
傷の痛みを覚悟と決意で押し殺し、千織は敵の死角へと回り込んだ。
義元はそれすらも看破している――しかし、地の利が千織に味方した!
『外しただと!?』
千織は木々を隠れ蓑に敵の目を欺いた。急所狙いの矢は肩を貫くに留まる。
「――過去が未来を壊すことなど赦されぬ。邪に蝕まれた、哀れな残骸よ!」
迅雷の如き速度で千織が駆けた。義元は矢をつがえるが……遅い。
「その魂、再び骸の海へ送り返す――!」
風が吹いた。千織にとっては追い風であり、義元にとっては向かい風だ。
それが最後の間合いを詰めさせ……破魔の剣が、ついに義元を捉える!
『ぐ、が……! これが、我が仇敵の力、か……!!』
正しき終わりをもたらす破魔の霊力に、義元は悶え苦しんだ。
その差を埋めたのは力量だけではなく、技量だけでもない。
必ず護ってみせるという覚悟と意思、心の力こそが明暗を分けたのだ!
成功
🔵🔵🔴
トキワ・ホワード
引き続き羅刹達との共闘を
さて、どう攻めたものかな
羅刹よ
お前達の力、期待してるぞ
奴に弓を引く間も与えぬ程に畳みかける、そこに活路を見出せ
弾数には限りがある魔法なんでな。短期で攻め立てるぞ
UCを発動、氷塊の砲弾と雷の砲弾を限界量まで生成
氷塊は本体狙い及び羅刹へ向けられた攻撃へのカウンター
断続的に雷の弾も撃ち込むことにより雷の閃きで目眩しをすることにより羅刹達への弓の直撃を防いでいく
…さて、ここまで『魔法使い』に徹すれば虚を衝く一撃の1つくらいは通るか?
魔法弾の残りが少なくなれば氷塊を一気に今川の周囲へ斉射し巻き上げた土で視野を阻害
腰の魔導書に手をかけ
次の魔術と思わせ、取り出した銃での一撃を放つ
●魔法使いの奥の手
「恐るべし今川義元……あれほどの疵を帯びてまだ健在とは!」
筆舌に尽くしがたい憤怒とともに現れた義元の姿に、羅刹軍は揺れた。
その凝縮された妄執と殺意は、彼らをして心胆寒からしめるほどなのだ。
「羅刹よ、揺れるなかれ。お前たちの力に、俺は期待している」
そんな彼らの乱れかけた足並みを、トキワ・ホワードの冷静な言葉が支えた。
「ここには俺がいる。これより我が魔術のすべてを以て奴を圧倒しよう。
いかな弓取りと言えど、弓を引くまもなく畳み掛ければ勝機はあるはずだ」
「……応! 猟兵殿を前にして、我らが臆していらいでか!」
トキワの言葉に激励された羅刹たちは、轟くような鬨の声をあげた。
まずはこれでよし。布石のためには、羅刹たちの協力が必要不可欠だ。
(奴とて猟書家にして魔軍将、騙し討つには命を賭けねばなるまい――)
トキワにはある秘策があった。
魔法使いだからこそできる、だが魔法使いとしては型破りな秘策が。
「凝った術式は必要ない……だが限りはある。短期決戦で攻め立てるぞ!」
トキワはユーベルコードを起動、氷と雷の元素魔力を凝縮し、砲弾を生成。
バチバチと火花を散らす雷撃が大気を灼きながら、義元へと殺到する。
その煌めき自体が、敵の目を眩ませる仕掛けになっているのだ。
『飛び道具で我と立ち会おうてか? 愚かなり!!』
しかし恐るべきは海道一の弓取り、その弓は形なき魔力をも射殺す!
攻め込む羅刹たちは、この砲撃合戦がなくばすでに全滅していただろう!
『視えたぞ猟兵、貴様の命、貰った!』
「――やってみるがいい今川義元。俺の命とて易くはないぞ」
トキワは不遜な面持ちで言い、氷塊の魔法弾を盾めいて展開し矢を受けた。
数は圧倒的にトキワが上だ。だが敵の矢はその威力と速度で猛追する。
つまり砲撃合戦はほぼ実力伯仲……否、義元が勝ったか!
『取ったり!!』
「猟兵殿!」
「……!」
トキワは致命的射撃を防ぐためか、周囲に浮かんでいた氷塊のすべてを殺到させた。
今川義元はそれに騙されることなく、必殺の矢をつがえる――その時だ!
『…………な、に?』
突如響いた銃声に、誰もが瞠目した。
銃弾を受けた今川義元ですら、信じられないという顔をしていた。
「ここまで"魔法使い"に徹したのだ。その鷹の目とて、俺の次の手は読めなかったようだな」
銃声――然り。銃声だ。トキワの手にはたしかに銃があった。
すべてはこのため。今川義元の天眼すら欺くための、布石に次ぐ布石。
羅刹と魔弾の雨、二重の隠れ蓑を使った騙し討ち。なんたる度胸か!
『こ、小癪、なり……!』
「勝てば官軍、という言葉を知っているか? ――それでいいんだよ、俺はな」
トキワにとって魔術とは、あくまで戦法であり、そして戦術である。
敵を欺くためならば味方すらも騙してみせる。それが、男の戦い方だった。
大成功
🔵🔵🔵
クロム・エルフェルト
先の戦いで羅刹に流し込んで貰った記憶
遮蔽物の多い地形
そして地を這うような走法
義元に接近する為に活用させて貰う
背後から高速抜刀術による奇襲
ノールックで放たれる迎撃の矢を斬り落とす
奇襲が失敗するのは計算の内
でも、これで間合いに潜り込めた
近距離の射撃に体術
刀でギリギリ防戦しながら更に接近、[早業]の斬撃を浴びせる
肉薄し、掴み技を受ければ好機
貴殿は今一度、織田の縁者により討たれる
そう……歴史は繰り返す、ってね
UC解放、身に纏うは本能寺を呑んだ刧火
零距離の義元を[カウンター]で灼き
距離を離した所で火災旋風を発動
起点、義元の中心。
内側から焼かれる義元目掛け、[焼却]の焔を纏わせた刀身で胴薙ぎの一閃を放つ
●燃え盛り、灼け落ちる
『うぬぅう……! 猟兵どもめ、なんとこしゃくな……!!』
もはや、今川義元の全身は朱に染まり、形相は鬼の如しであった。
羅刹とどちらが悪鬼かわからない――そういう妄執を抱えていたのである。
対峙するだけでも心折れよう、ごく一握りの勇者だけが挑むことを可能とする。
そういう死地にありて、クロム・エルフェルトは深く息を潜め気配を殺す。
(この地形ならば、敵に気取られる前に近づけるはず……)
先の前哨戦において羅刹から受け取った記憶が、クロムに味方した。
今川義元は、波状攻撃を仕掛ける羅刹たちに注意を向けている。
このまま行けば背後を取れる……それは間違いない。しかし。
(なんという憎悪……踏み込めば、命を取られてしまいそう)
見えない壁が聳えているかのように、ただ一歩があまりにも恐ろしく、重い。
踏み越えれば二度と戻れぬ境界線が、敵味方の間に走っているようだった。
「――!」
その境界線を、クロムは踏み越えた。まさしく死線へと踏み込んだのである。
でなければ勝てない。命を賭けて、命を奪う。その覚悟こそが勝利を呼ぶ!
『――そこか!!』
今川義元は弾かれたように振り返り、背後からの奇襲に対して矢を放った。
クロムはほぼ反射に近い動きでこれを斬り落とす。両者の視線が交錯した。
『間合いに入れば形無しと思うたか? 浅慮が過ぎるぞ、猟兵!』
今川義元はたしかに無双の弓兵。されど白兵戦においても一流である。
クロムはけして敵を見くびっていなかった。"ここまですべて想定通り"なのだ。
でなければ、あのような速度で迎撃の矢を斬り落とすことは出来ない。
そして続けざまの蹴撃。クロムは刀を掲げ、刃の腹で蹴り足を受け止める!
『チィ!!』
「――貴殿は強い。けれど、私はそれを侮らない。決して!」
敵の技量を恐れることなく正しく見定めるというのは、並々ならぬことだ。
過信しても、見くびっても、どちらでも死ぬ。真剣勝負とはそういうもの。
クロムは今川義元という猛将を信じた。そこに、死中の活があった!
『ならば我が鷹の目を以て――何ッ!?』
焔である。クロムの全身を、燃え盛る紅蓮の焔が包み込んでいた。
「貴殿は今一度、織田の縁者により討たれる。歴史は繰り返す、というところかな」
歴史に名高き本能寺の変において、第六天魔王を飲み込んだ劫火。
"灼落伽藍・敷火"――十面埋伏の埋め火こそが、クロムの奥の手!
『お、おのれぇっ!!』
義元は反射的に飛び退った。死人だからこそ、その劫火を許容出来なかった。
距離が開く。――クロムの狙い通りに。そして彼女は動いた。
「劫火の熱量、身を以て思い知れ!!」
火炎旋風が義元の足元から生まれ、天を焦がさんばかりに燃え上がる!
『ぐ、がぁあああ……我が、燃える、ああああああッ!!』
悪鬼の苦悶が山を轟かす――それを断ち切るは焔纏いし横薙ぎの一閃!
過去の残骸を灼け落とす必殺の剣が、義元の身へと届いた瞬間である。
大成功
🔵🔵🔵
花邨・八千代
いいねいいねぇ!やっぱ喧嘩するなら強いやつに限る!
それでこそ殺し甲斐ってのがあるもんだ
海道一の弓取り、相手にとって不足はねぇ
腹の底から「大声」出して「恫喝」でご挨拶だ
今からその首引き千切りに行くから覚悟しな!
黒塚で降り注ぐ矢を片っ端から「薙ぎ払い」だ
「第六感」で致命傷になる矢をメインに払って、一気に近付く!
ある程度距離を詰めたら薙刀をぶん投げて怯ませ、間合いに踏み込むぞ
薙刀で足りなきゃそこらの大岩でも良い!兎に角投げつける!
多少の傷は構いやしねェ、俺の手が届く位置まで行けたら俺の勝ちだ
「怪力」任せに敵を掴んで【落花】!
掴んで捩じって所かまわず叩きつけるぞ!
鬼ごっこは捕まった方の負けなんだぜ?
●鬼さんこちら、弓鳴るほうへ
矢が来る。当たれば必殺、そもそも避けようのない必中の矢が。
花邨・八千代は避けるということを考えなかった。なにせ必中必殺なのだ。
ただ防ぎ、あるいは逸らす。わずかに、被弾箇所をずらすのである。
心臓狙いの矢であれば、肋骨の合間を抜けて突き抜けるように。
眉間を狙った矢であれば、角をぶつけて砕けながらも弾くというふうに。
「っハハハハハハァ!!」
顔面が血でまだらに染まり、哄笑のたびに血飛沫が舞った。
哂っていた。それはまさしく、豪放磊落なる"鬼"の形相である。
「いいね、いいねぇ!! 喧嘩するなら、強いやつに限るよなァ!!」
『醜怪なる羅刹めが! 退治てくれる!!』
「やってみろよ! 殺しに来やがれ! でなきゃ殺し甲斐がねえぜ!!」
心臓狙いの矢、ふたつ―ー八千代は片腕を掲げ、骨で挟むことで受け止めた。
そして腕を振るい矢を放り落とす。傷口は筋肉の緊張で止血する。
途方も無い馬鹿力である。だが、鬼とは"そういうもの"だ。
「その首! 引きちぎってやるぜェ! 海道一の弓取りサンよォ!!!」
『……!!』
山をも揺るがすほどの大音声は、かの今川義元をして気圧されるほどだった。
戦場において、最後に雌雄を決するのは力量でも技量でも運でもない。
意気、執念、覚悟、決意……つまりは、意思。この時点で雌雄は決した。
「百発千発一万発、たとえ喰らったって俺は止まらねぇ! 止まりたくねぇ!!」
なんたる豪胆さ。そしてなんたる自分勝手さか。
八千代は呵々大笑しながら薙刀を投げつけ、義元の注意を反らした。
一瞬。その一瞬があればよい――間合いに、踏み込む。鬼が、至近に届いた!
『貴様……!』
「アンタ強いぜ。最高だ。顔立ちだって悪かねえな――ああ、けど」
八千代は陶然と目を細め、手を伸ばした――うなじを抱きしめるように。
「悪いね。俺にゃもう、愛しい愛しい恋人がいるんだよ」
熱っぽい吐息は媚的……だが義元を寒からしめたのは死の予感であった。
それは火照った女の吐息などではない――獲物を目の前にした、獣の法悦。
「鬼ごっこは、捕まったほうの負けなんだぜェッ!!」
ぐおん、と視界が色つきの奔流となった。
首根っこを捕まれ放り投げられたと気づいたのは、激突の瞬間である。
……轟音。そして、大地が爆ぜ、土埃が十メートルばかり舞い上がる!
『がはァッ!!』
「ハハハハハハ! さあ起てよ、喧嘩の続きしようじゃねえか!!」
これこそ羅刹。
これこそ悪鬼。
血まみれ疵だらけの有様で――八千代は、むしろ炯々と両目を輝かせていた。
大成功
🔵🔵🔵
ユーディット・ウォーカー
ほう、ここからが本懐とは期待させてくれるのう。
じゃが先程の支援射撃では仲間にも刺さっておったぞ?(我が弾きました)(✌✨)
蹴鞠の名手と聞くが、我もスポーツならば並ぶものはそうそうおらぬ。
(体育委員長であるのでな!)
ということでお気にの日傘を象った混沌の魔力を構えて弓矢を打ち返そう。
ファールで周りの羅刹がちびっておらぬかは心配じゃが、軌道は計算済みじゃよ(ほんとじゃよ?)(あっ)(結果オーライって良い言葉じゃのう)
野球?は9回裏つーあうとからである!
つまり、舞台は整ったということよ。
そんな感じでノリに巻き込みつつ最後には互いの健闘を讃えたりしたいのう。
さらば義元……お主はまさしく好敵手じゃった。
ラニィ・ユン
今川義元って蹴鞠が得意な人だっけ?息子のほうだっけ?
ま、どっちでもいいか。そっちが蹴鞠(サッカー)なら、こっちは野球で対抗するよ!
手頃なサイズの石を拾ったら、それに炎を纏わせて。
そのまま大きく振りかぶって、敵に向かって全力投球!
と、同時に炎を球を作って、さらに分裂させて。これが必殺の分裂魔球!!
……なんて、言ってみたりするけど、全部囮。
分裂した球で四海を塞いで、意識もそっちにむけて。
その隙に私は敵の懐に潜り込む。
実は私もただの蹴りの方が得意なんだよね。
羅刹のみんなにしたこと、当然腹立ってるし、私の全力の回し蹴りくらってみる?
●炸裂 猟兵ベースボール!
「そっちが蹴鞠なら……こっちは野球で対抗よ!!」
仮にも決戦の場において、とんでもないことを言い出す女がいた。
それが、ラニィ・ユンである。さすがの今川義元も呆れた顔で固まった。
『……何を言っておる? 貴様、ふざけるためにここへ参ったのか?』
「ふ、ふざけてなんかないわ! だってあなた、蹴鞠が得意なんでしょう?
……あれ? 蹴鞠が得意なのは息子のほうだっけ? あってたよね……?」
『ええい、埒が明かぬ。我はそうした冗談は好まぬぞ、小娘!!』
今川義元は侮辱されたと感じ、激高すると神速の矢を放った。
ラニィが攻撃や防御に転ずる前にさっさと殺してしまおうというわけだ。
さしものラニィでも、これは防ぎきれないと見えた――が。
『はっはっは! いいのう、そのノリ気に入ったぞ!』
ずしーん! と目の前に降り立った一体のキャバリアが、矢を防いだ。
それはオブリビオンマシン、"アンコール"。操縦者の名は、ユーディット・ウォーカー。人間ではない……れっきとした吸血鬼である。
「わあっ!? び、びっくりした! いや助かったけど!」
『くふふふ、我がアンコールに矢の一本二本ごときで疵がつくものか。
そして今川義元よ。我とて、体育委員長としてスポーツならば負けるつもりはない!』
『……くだらぬ。からくりを使ったから我が矢を防げると思うなど、笑止!』
今川義元はさらに鋭く強い矢を、一度に五……いや、10射も撃ち出した!
『ぬおっ! さすがに直撃はまずいか……日傘で防御じゃ!』
ユーディットは魔力を日傘の形に集めることで、即席の盾とした。
そして矢を防ぐ……というより、腰を捻って矢を打ち返した。バット代わりに!
「うわーっ!? ちょっと、跳ね返った矢が私や羅刹のみんなの頭の上に降ってくるんだけどー!?」
『おおっと、すまぬすまぬ。いや、軌道はきちんと計算しておるんじゃよ?』
「いまめちゃくちゃ危なかったよ!? 信用できないよその言葉!」
などと、ラニィとユーディットは漫才のようなやりとりをしていた。
今川義元には、我慢ならない振る舞いだ……ひたすらに屈辱感が増していく。
『死ねぇ、猟兵ッ!!』
矢の勢いはさらに増す。いかなオブリビオンマシンとして防げぬほどに……!
『くっ、なかなかノリに巻き込まれてはくれぬか。じゃが、いいペースじゃぞ!』
「……そうだね。この調子なら、いけるかも」
どうやらラニィには、ラニィの作戦があったようだ。
彼女もユーディットも、本気で今川義元をナメているわけではない。
あえておどけてみせることで、敵の怒りを誘い、そして油断させる。
少しずつだが、その作戦は効果を発揮しつつあった!
今川義元の矢は、その身に受けた疵のせいもあって徐々に精彩を欠く。
ひたすら敵の調子を小馬鹿にするようなユーディットの言葉も効果ありだ。
怒りが鷹の目を鈍らせ、矢の勢いは減じられていく。とはいえ……。
『ええい、次から次へと威力が増しておる! さすがのアンコールとて、
これ以上は受けきれんぞ! 何か、起死回生の一手がなくば厳しいのう!』
「まさしく、9回裏ツーアウトってとこかな? 面白くなってきた!」
ラニィはアンコールの影から飛び出した。敵の狙いがラニィにずれる。
「残念だけど、球を投げるのはあなたじゃなくて、この私だよ!」
その手には小ぶりな石ひとつ。それが、ぼうっと炎で燃え上がった!
『何!?』
「せぇー、のっ!!」
ラニィは燃える石をおもいっきり振りかぶり、今川義元めがけ全力投球した。
炎が石の……球の分身を生み出す。これこそ、ラニィ必殺の分裂魔球だ!
『このような見掛け倒しに、我が惑わされるとでも――』
『いや? もはや術中であるぞ!』
『……!?』
ユーディットの声が聞こえた瞬間、今川義元は吹き飛んでいた。
まるで強烈な拳を受けたかのような違和感、そして激痛!
なぜだ? あの機体が近づけぬように射撃をしていたはず。
実際、アンコールは動いてもいない。何が起きたのだ!?
『これぞ"無色未染の夢記文(オーバーコーズ)"。我がアンコールの因果再演よ。
我らのノリに多少なりとも気を取られた時点で、見えざる一撃の布石は整った!』
アンコール――それは因果を再演する能力から取られた異名。
時空も因果をも超越した不可避の一撃が、"当てた"という結果だけもたらされたのである。
そう、まるで未来から過去へ逆行するという義元の矢への意趣返しめいて!
『き、さま……!!』
そしてラニィの分裂魔球もまた、敵の意識をそらすための最後の囮だった。
吹き飛んだ義元の眼前に、憤然たる勢いで潜り込んだラニィあり!
「おちょくられてるのが気に食わない、って顔してるよね。
――あなたの一方的な恨みで苦しめられた羅刹のみんなを棚に上げておいて!」
ラニィは、怒っていたのだ。敵の横暴、そして自分買ってさに。
「私の全力の回し蹴り、叩き込んであげるよ。さあ、受けろっ!!」
加速を乗せた全力のソバットが、義元の顔面をサッカーボールめいて叩いた。
彼女らとて猟兵。その実力は、けっしておふざけなどではないのである!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
千桜・エリシャ
【甘くない】
いよいよ大将首のお出ましですわね
強弓と名高い武人の御首ですもの
ふふ…是非とも頂戴したいですわ
皆さん、ここが正念場でしてよ
羅刹の矜持を見せてくださいまし
彼らに戦いやすい地形の進路を教えてもらいつつ
あら、ジンさんにしては良案ですこと
もちろん
見くびってもらっては困りましてよ
空間ごと飛んできた矢を斬り裂いて
その隙に加速して距離を詰めましょうか
って、ちょっとジンさん!?
あなた…またそんな無茶を…もう!
帰ったら覚悟しておくことです
けれど、あなたの決死の行動を無駄にはしませんことよ
押し出された勢いのまま更に加速して
飛び道具なんて
間合いに入ってしまえばこちらのものですわ
その御首、いただきますわね
ジン・エラー
【甘くない】
なァ~~~ンだよどいつもこいつもビビっちまって
ほら、救いに来てやったぜ 聖者サマと鬼女将がな
これ以上頼りになることなンてねェだろ?ウッヒャヘヒャヒ!!!
絶対当たるッつゥ~~~~ンなら、考えがあるぜエリシャ
ぜェ~~ンぶ止めりゃァイ~~イじゃねェか!
出来るだろ?オレとお前なら なァ?
通せるモンなら通してみろや弓武者ァ!
絶対当たるっつゥ~~~ンならよォ
それをズラせばい~~ィンじゃねェか?
例えば──目の前の女の背中を蹴り飛ばすとかな
往けよエリシャ
聖者サマを心配する暇があンなら、オレの代わりに救って来いや
●救済の輝き
海道一の弓取り、今川義元。
サムライエンパイアに暮らす者で、その名を知らぬ者は居ないだろう。
千桜・エリシャですら、それは例外ではない。相手は名だたる武人なのだ。
「その首級を賭けて戦えるだなんて……ふふ、こんな愉しいことはありませんわ」
「おいおォ~~~~い、うっとりしてる場合かよエ~~~リシャァ」
ジン・エラーはいつも通りのニタニタとした笑みで、きゅうと目を細めた。
――視線の先には、今川義元。全身傷だらけだが、放つ闘気はすさまじい。
「アッチはそんなノリじゃ来てくれねえみてェ~~~~だぜェ?」
「ふふ……"だからこそいい"のではないですか、ジンさん?」
「フヒャホハハハ! お前は本当に度し難い女だよなァ~~~!!」
下品に哂うジンをさておき、エリシャはにこりと羅刹たちを振り返った。
「さあ皆さん、ここが正念場でしてよ。羅刹の矜持、見せてさしあげましょう。
嘗められて黙っていられるような臆病者は、此処には居ないはずでしょう?」
……などとエリシャに言われては、彼らもビビっている場合ではない。
羅刹軍は鬨の声をあげ、ふたりを支援するために援護を始める!
『……鬼の小娘ごときが、小賢しい。我が必中必殺の矢、その身で味わい、死ね!』
きりりと弓弦が引かれ、そして因果すら超越するという強弓がふたりを狙う。
「ホヒャハハハ!! おいおい、救いに来てやった聖者サマに失礼だぜェ?
――だがまァ、なるほどたしかにお前のソレは、百発百中なんだろうなァ~~~」
ジンの異色の双眸が、ことさら皮肉げに弧を描く。
「そンなモン、ぜェ~~~ンぶ止めてみせるぜェ? なァ~~~エリシャア?」
「あら、ジンさんにしては名案ですわね! けれどあなたに出来るかしら?」
「ウッヒャヘヒャヒ!! そンなの愚問だろ――なぜなら」
ジンは耳元で囁く。
「"オレとお前"なら、出来るだろ?」
「――ふふふ、そうですわね。私の剣技、お見せいたしますわ!」
エリシャの剣は魔剣――すなわち路外れた魔道の剣技である。
空間をも断ち切るその斬撃は、飛来した矢を空間ごと切り捨ててみせる。
しかし、矢はひとつきりではない。ふたつ、みっつ、よっつ――。
「その首級、頂戴に参りますわ!」
エリシャは鬼の如き笑みを浮かべ、飛来する矢のことごとくを切り払う。
ジンもまたそのあとに続く。目元は相変わらず哂っていた。
(フン、なるほどたしかに練り上げられた剣よ。だが、我のほうが疾い)
一方で今川義元は、あくまで冷静に彼我の戦力差を分析していた。
奴とてひとかどの弓取りであり、そして魔軍将にして猟書家。
剣と弓は弓が圧倒的に有利――超常の戦いにおいてもそれは同じだ。
エリシャの剣を侮りはすまい。それでも、己が上と確信していた。
そして事実、矢はついに斬撃の嵐を掻い潜るかと見えた――しかし。
「絶対当たるっつゥ~~~~ンならよォ!!」
「!?」
エリシャは驚いた。ジンの大声に? ――違う。
彼が、自分の背中をおもいきり蹴り飛ばして、前に押し出したからである。
「ジンさ……」
「――それを"ズラせば"い~~~ィンじゃねェか? なァ!!」
エリシャを穿つはずだった矢は、前のめりにつんのめった彼女のうなじを通り過ぎる。
そしてジンの土手っ腹を貫く……同時に、ジンの身体が光り輝いた。
「ジンさん!?」
「往けよ、エリシャ。聖者サマを心配する暇があンならなァ!!」
光はなおも強まり、周囲の……傷つき疲れ果てた羅刹たちの傷を癒やす。
エリシャもまた、その光に背中を押されているかのような力強さを覚えた。
『小癪なり! 貴様から死にたいというならばそうしてくれよう!』
矢は飛来する。次々と飛来する。……次々と!
「オレの代わりに! 救ってこいやァ!!」
「――帰ったら、覚悟しておくことですわ!」
エリシャはもはや振り返らず、加速の勢いをつけて懐に潜り込んだ。
今川義元は近距離においても一流である。しかし、この瞬間ばかりは。
『貴様――』
「さあ、救いに来て差し上げましたわ。私と、遊びましょう?」
にこりという笑みを斬撃の風が覆い、そして吹き抜けた。
桜吹雪とともに、血飛沫が舞い散り、飯縄山の緑をあかあかと染め上げた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フェルト・フィルファーデン
その言葉、そっくりそのまま返させてもらうわ。必死の覚悟を決めるのはアナタよ、猟書家!!
しかし相手は油断出来ない強敵。先程受けた弓の威力も相当なものだったわ。あれは何度も受けれるものじゃない。かといって必中の弓矢を躱すのも至難の技。……だったら、狙われないようにすればいい!
UC発動。電子の蝶を創り出し、幻を見せる力でわたしや羅刹達の幻を見せて狙いを定められないようにするわ。
それでもこれは時間稼ぎ。惑わされているうちに羅刹達と共に騎士人形で攻撃しつつ撹乱し、致命の一撃を狙いましょう。いざとなれば護身剣に【オーラ防御を纏わせ【庇い護るわね。
ここは一度は救った世界。もう二度と侵させはしない……!!
●幻を切り裂いて
『……これは、幻術か……!?』
今川義元を……いや、戦場を包み込むほどの、蝶の群れ。
この世ならざる輝きを放つそれらは、よく見れば現実のものではない。
電子の蝶――すなわち、電脳魔術によって生み出された、架空のヴィジョンだ。
しかも蝶のはばたきは輝く鱗粉めいたなんらかの幻覚物質を散布し、
使用者……フェルト・フィルファーデンが望んだ幻を、敵に見せるのである。
今川義元が垣間見たのは、無数の羅刹。そして、死にゆく自分自身。
『このようなもので、我が鷹の目を欺けるなどと……思い上がるなァ!!』
されど、幻とわかっていて惑わされるようでは魔軍将は務まらない。
怒りに満ちた指先が弓弦を引き矢を放てば、電子の蝶はたちまち数を減らす。
この幻惑に満ちた蝶の群れも、数十秒で全滅しきるのは誰の目にも明らかだった。
――しかし。
その程度のことは、フェルトにとっても織り込み済みだったのだ。
(ええ、そうでしょうね。アナタは強いもの。この程度では惑わせられない)
フェルトは数多くの世界で、数多くの強敵相手に死闘を繰り広げてきた。
猟書家であれ、幹部級オブリビオンであれ、フォーミュラであれ。
その小さな体で強敵に挑み、時には苦戦を強いられ、時には上回ってきた。
易かった勝利などひとつもない。敵を侮ることなど、決してありえないのだ。
だからフェルトは知っていた。敵が、この幻を克服することを。
最初から時間稼ぎだったのだ――そしていま、フェルトは義元の死角に立つ!
「……アナタのその強さを、わたしはきちんと認め、計算に入れていたわ!」
『!? その、声は……!』
「けれどね。わたしは、そんな強敵を、もう何人も斃してここへ来たのよ。
この世界を救ったときもそう。――だからもう、この世界は侵させない!」
それは今川義元への……そして、すべての猟書家への敵対宣言だった。
敵が振り返るより先に、フェルトの騎士人形たちが間合いを詰める。
「報いを受けなさい、今川義元ッ!!」
そして妖精騎士たちの剣が――呪われた死者の身体を、深々と貫いた!
大成功
🔵🔵🔵
九十九曲・継宗
刀と弓、間合いの上では不利ですね。
しかし、海道一のゆみとり相手に不馴れな遠間から挑んだところで、返り討ちあうのが落ちでしょう。
やはり、不利は承知の上で、刀で挑むしかないようです。
今川義元の前に姿を見せ、正面から対します。
こちらが狙うのは最速で接近しての一太刀。
車輪のカラクリを使えば速度に自信はありますが、ただ速いだけで接近を許すほど、甘い相手では無いでしょうね。
ならば、兵法と呼べるものでは無いですが、一手加えます。
敵が弓を引き絞り、矢を放つ瞬間、鞘を地面に突き立てることで急ブレーキをかけます。
一矢をすかしたら、再加速。
わずかな隙を逃さずに一太刀浴びせます。
●ただ一刀に命を賭ける
「……これが、海道一の弓取りの殺気、ですか」
九十九曲・継宗は、戦場のど真ん中で今川義元と相対していた。
両者の間合いは10メートル以上……刀の間合いではない。
中には卓越した剣技によって、遠間の斬撃や超高速の踏み込みを会得した剣豪もいるだろう。
しかし、継宗は違う。畢竟、彼の剣は真似事であり、秘奥にはいまだ遠い。
継宗自身がそう考えているのだから、そう表現するしかないのである。
この距離は、届かない。そもそも刀と弓、間合いがあれば有利不利は一目瞭然。
『……それをわかっていてなお、そのような面持ちで我と相対するとは』
だが継宗の表情は、死んでいない。むしろ不利を承知で、覚悟の表情である。
この不利を覆し、なんとしてでも一太刀をもたらす。そういう顔をしていた。
今川義元は目を細める。あれは、不肖の剣士などではあるまいと認めた。
紛うことなき強敵――全身全霊を尽くさねば、殺されるのはこちらなのだと。
傷を帯びてなお立ち続ける義元の妄執と憎悪が、継宗の全身を打つ。
まるで押し寄せる波濤のごとき殺気。彼が生身なら総身が震えたことだろう。
鍛え上げた精神をもってすら、こうして構えているだけで怖気が立つ。
(気を抜けば殺らえる……いや、一切の油断をせずとも、届くかどうか)
継宗は心のなかでそうひとりごち、そして己を叱咤した。
(弱音を吐いていては、勝利を引き寄せることは出来ない……。出来るかどうかではなく、"やってみせ"なければ、ここへ来た意味が、ない……!)
然り。真剣勝負において、ifの可能性はあり得ない。
やるか、やられるか――やってみせるか、出来ずに死ぬかだ。
両者は睨み合う。羅刹たちは、誰も手出しできなかった。
張り詰めた緊張感が、部外者の立ち入りを禁ずるかのように彼らを押し留めていた。
――誰かが、ごくりと喉を鳴らした。
その瞬間、弾かれたようにふたりは動いた。
『もらった!!』
「――!!」
今川義元は神速の手さばきで弓を引く。継宗は車輪からくりを起動。
猛烈な速度で間合いを詰める――だがやはり届かぬ。本人の思っていた通り。
そして狙い通り、放たれた矢は眉間を――貫かない!? 素通りした!
「あ、あれは!!」
羅刹たちが叫んだ。今川義元ですら瞠目していた。
見よ。継宗は――地面に鞘を突き立てることで、ブレーキをかけたのだ。
最速、最短で間合いを詰める。それが最良であり、最高の戦術であった。
"だからそれを裏切った"。すべてはこのための布石!
『……おのれ、敵ながれ天晴な一手よ!!』
今川義元は強力な弓兵ではあるが、軍略家ではない。
盟友ならば見抜いただろう。だが、彼の鷹の目は出し抜かれた。
「――いざ」
継宗が加速する。今川義元の二射目は……間に合わない!
「参りますッ!!」
斬撃、到達。
何のてらいもない、しかしそれゆえに単純に疾く鋭い居合が、ほとばしった。
遅れて剣風が吹き抜け、周囲の木々をなぎ倒す。いわんや、義元をや!
『がは……ッ!!』
傷口と口元から血を撒き散らし、今川義元はごろごろと地面を転がった……!
成功
🔵🔵🔴
杜鬼・クロウ
アドリブ怪我◎
弓に対しては相当の自信と腕前
必中と豪語するならば
俺は其れを総て払い落す迄
殺意が伴い正確性が高ければ高い程、途はよく見えるだろうよ
(頭もキレそうだし、そう易々と俺を近付けさせねェだろうな
ハッタリが通用するとは思えねェが…出来る手段は取るべきか)
敵への煽り等はお任せ
UC使用した事は言わず魔術に見せかける
重力で弓を全て討ち落すか逸らす
可能なら指を向けた方向へ軌道変えカウンター
その間に敵へ接近
蹴りは大剣で武器受け・かばう
意志を力に、剣に炎属性を出力させ紅蓮焔の一閃
相応の覚悟を以てしても、お前に俺の大義は絶対射抜けねェ
為すべきコトをしきれてねェ俺は、
こんな所で立ち止まってはいられねェンだわ
●射抜けぬ大義
敵は、弓に関しては間違いなく杜鬼・クロウより上手だ。
戦士としてはどうか――ある一点では劣り、ある一点ではこちらが勝る。
たとえば反射神経なら、今川義元のほうが一枚上手だろう。
対して膂力ならば、クロウに分がある。総合的に言えば……甲乙つけがたい。
(頭もキレそうだし、そうやすやすと俺を近づけさせねェだろうな……)
クロウは身構えたまま、じりじりと間合いを詰めていく。
弓を引いた状態の今川義元は、決してある一定の距離を縮めさせない。
一進、一退。この睨み合いはすでに5分以上続いていた。
極限の緊張は心身をヤスリのごとくすり減らす。クロウの黒髪は汗でしっとりと濡れ、顎をぽたぽたと汗が伝っていた。
こうして相対して機を伺えるかどうか――その時点でもう、相応の腕前と、覚悟、そして辛抱が必要とされるのだ。
『……猟兵よ、貴様の狙いを看破してみせよう』
弓を構えたまま、今川義元は言った。
『ハッタリで我の目をごまかし、矢を切り落としながら間合いを詰める。
……そうだろう? 弓と剣ならば、間合いを詰めなければ話にならぬゆえな』
事実だ。クロウは何も言わない。ただ、じっと敵を睨む。
『我の鷹の目に、些末な小細工など通用しないと知るがよい。
我こそは海道一の弓取り、今川義元。その信念すらも射抜いてみせるわ!』
「……信念すらも、ね」
クロウは低く、重い声音で言った。
「お前に、俺の大義は射抜けねェよ。何があろうと、絶対にだ」
『何……?』
「俺はまだ、為すべきコトをしきれちゃいねェ」
クロウがぐっと腰を落とす。体重が、前足にかかった。
「――だから、こンなところで立ち止まってはいられねェんだわ」
『我は道程に過ぎぬと? ――ほざけッ!!』
張り詰めた風船が割れるように、両者は同時に動いた。
クロウは大地を砕くほどの勢いで踏み込み、そして駆け出す。
対する今川義元は大きく飛び退り、空中で弓弦にかけた指を――放した!
狙いはクロウの眉間! しかも矢は一度に三! 三発である!
『死ねィ、猟兵! 己の大義を抱えたまま堕ちよッ!!』
「言ったはずだぜ――お前に、俺の大義も! 信念も! 射抜けねェってなァ!!」
見よ。クロウはまっすぐ足を止めない……逆に道を開いたのは矢のほうだ!
『何!?』
今川義元は、クロウがユーベルコードを発動する瞬間を見逃さないよう一挙一動を注視していた。
まさか彼の身につけたピアスそのものが、その焦点具であるとは露ほども考えていなかったのだ。
重力の見えざる盾は、飛来した矢をすべてそらす。鏃がクロウの頬を裂く。
今川義元は着地と同時に蹴り足を繰り出した。苦し紛れの一撃!
「お前の弓は超一流だ。だが――剣に関しちゃ、俺のほうが上だぜ、青二才!!」
百年を閲したヤドリガミとしての"時の重み"が、つかの間義元を圧倒した。
その身が竦み、止まる――迸るは焔纏いし紅蓮の一閃!
『バカな……!』
「覚悟の差ってヤツだ。死者(おまえ)と生者(おれ)じゃ、覚悟するものも、その重さも、何もかも違うのさ」
剣が横薙ぎに奔り、大気を灼き焦がしながら義元の胴を裂いた。
己の勝利のために、臆することなく前に進む強き心。
勝敗を分けたのは、まさしく射抜けぬ大義と覚悟だったのである。
大成功
🔵🔵🔵
花剣・耀子
タダで寄越せとは言わないわよ。
――其処まで行くから、覚悟なさい。
必中必殺、上等よ。
放たれた弓は戻らないなんて言うけれど、おまえに至っては違うのでしょう。
踏み込むだけでは速度が足りない。
地にあっては方向が限られる。
情報を増やしましょう。
地を蹴った脚は、そのまま宙を蹴る。
機械剣のトリガーを引いて加速を乗せ、
鋼糸のアンカーで制動をかけながら、
鷹撃つ弓を掻い潜って敵の元まで。
タダで寄越せとは言わないといったでしょう。
手足の一本二本はくれてやる。
空を征くなら、些末なことよ。
致命的な狙いに至られる前に辿り着くわ。
狙い易かったでしょう?
――あたしからも、おまえが良く見えたの。
清算の時間よ。
首を寄越しなさい。
●肉を切らせて骨を断つ
一度弓から放たれた矢は、ひっくり返って戻ることなどない。
それが当然だ。水が上から下に流れ落ちるように、太陽が東から西に行くように。
けれどもその当然は、ユーベルコード使い同士の戦闘ではもろくも崩れる。
水は下から上に流れ、太陽すらも西から東へ動くこともあるだろう。
人が神を殺し、魔が永遠を砕くことも。――であれば。
「おまえに至っては、矢を捻じ曲げることなどたやすいのでしょう。
必中、必殺。おまえの謳ったその言葉を、あえて疑うべくもないわ」
花剣・耀子は、レンズの奥の眼差しをぎらつかせながら言った。
「――上等よ。あたしはそのすべてを踏み越えて、おまえを討ってみせましょう。
其処まで行くから、覚悟なさい。おまえの言葉を、ことごとく覆してみせる」
『小娘が……!!』
「敵を侮るようでは、海道一の弓取りの名が泣くわね」
罵詈雑言にも揺らぐことなく、耀子は刃のごとく鋭い目で敵を睨む。
そして一歩、二歩……三歩目は地を蹴った。身体が地面と平行に滑る。
今川義元は当然のように矢を射る。耀子は無造作に機械剣を振るい、撃墜。
四歩目。耀子の身体は地面と平行ではなく、斜め上に"宙を蹴る"。
そして五歩、六歩! 空中を蹴るという非常識を見せながらさらに加速!
「なんと! あれではまさしく天狗の如し!」
ある羅刹が叫んだのも無理はない。これが、ユーベルコードなのだ。
耀子は空中を蹴りながら機械剣のトリガーを引き、さらなる加速を得た。
矢が来たる――撃墜を諦め、鋼糸のアンカーを射出。矢が片腕を貫いた。
羅刹の怪力で筋肉を緊張させ、食い込んだ鏃を砕く。腕を振り残骸を摘出。
さらに、飛来。耀子はもはや迎撃はおろか回避する挙動すらも見せない。
太ももを矢が貫く。視線をそらさない。手傷を負う回数は耀子のほうが多かった。
だが。気圧されているのは義元であり、そして追い詰められているのも同様。
『なぜだ。なぜ我が必殺必中の矢を浴びて――なぜ!』
なぜ、そこまで研ぎ澄まされた殺意を、揺るがさずにいられるのか。
「言ったでしょう」
――声は、後ろから聞こえた。
「あたしは、お前のことごとくを覆す。すべてを踏み越えておまえを斬ると」
鷹の目ですら捉えきれぬ神速。斬撃は、すでに接近と一体だったのだ。
「狙いやすかったでしょう? ――あたしからも、おまえがよく見えたわ」
残心。遅れて剣閃がぞぶりと大気を切り裂き、ぞっとするような量の血が飛沫をあげた。
それは義元の血であり、腕・足、そして脇腹を射抜かれた耀子の血でもある。
「清算の時間よ。おまえが為してきたことすべての、代償を支払いなさい」
満身創痍の状態でありながら、耀子の瞳は寸分たりとも揺るがない。
まっすぐな刀のように、どこまでも研ぎ澄まされ、そして鋭かった。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィクティム・ウィンターミュート
神楽耶/f15297と
Void Link Start
神楽耶に虚ろの加護を与える
過去より放たれ未来を穿つ?だったら『過去』を削り取っちまえばよォ…どこにも向かうことは無ェよなァ
蹴りで神楽耶の刀を落とそうって腹なんだろう?ならそれも削り取る
俺か神楽耶か──どっち蹴り落とすか選べ
知啓を削ぎ落す
思想を削ぎ落す
技術を削ぎ落す
希望を削ぎ落す
大義を削ぎ落す
生命?尊厳?知らねぇ、どうでもいい──削ぎ落す
積み上げた全てを無意味に沈める
"海"に還ったらクルセイダーに伝えとけ
『テメェが消えるまで永遠に殺してやる』
──遺書の用意は待たない
行くぞ羅刹ども…加護を掲げて、奴を殺せ
頭からつま先まで……一欠片も残すんじゃねェ
穂結・神楽耶
ヴィクティムさん/f01172
決死の覚悟?
全身全霊で?
そんなもの、最初から決めてるに決まってるでしょうが。
腹据えるのが遅すぎません? それでも武士ですか?
迅速に始めて手早く終わらせましょう。
ヴィクティムさん。それ、借りますよ。
おいで、【神遊銀朱】。
そちらの攻撃が当たるならこちらからのものだって当たる。
撃ち比べと参りましょう?
確実に当たる一射でなくていい。
蹴り落とされようが撃ち落とされようが、
いつか斬り落とす未来に辿り着ければ構いません。
積み上げてきたすべてを削られて、
ありとあらゆる『過去』を破滅させられて、
それでも慣れられる前に斬り捨てましょう。
羅刹様方、行きますよ。
必ず、此処で、殺します。
●カット、カット、カット、カット、カット
「――決死の覚悟? 全身全霊?」
ゆらり、と。
陽炎めいて可視化されそうなほどの憤怒を抱え、穂結・神楽耶が前に出た。
「そんなもの、最初から決めているに決まっているでしょうが。
腹を据えるのが遅すぎませんか? それでも武士ですか、今川義元」
『何だと……!』
「貴様の台詞はことごとくが耳障りで腹に据えかねます。ええ、何もかも」
「――言葉なんざ要らねえのさ。俺らがやることは最初から決まってんだ」
ヴィクティム・ウィンターミュートの目は落ちくぼみ、そして昏い。
ぞるぞると凝り固まった虚無が、その身を包み込み、目元から血が溢れた。
「俺は、お前らを、殺す。誰一人遺さず、一切の躊躇もなく、一切の容赦もしねぇ。
妥協はねえ。逡巡もねえ。迷いもねえ。見逃しも、しくじりも、失敗も、ない」
形容しがたきその憎悪は、今川義元をして気圧されるほどであった。
「――海に還ったらクルセイダーに伝えとけ。
"テメェが消えるまで永遠に殺してやる"……遺言は必要姉ってな」
味方であるはずの羅刹たちですら、あまりの殺意に息を呑んだ。
山を襲われた羅刹たちよりも、誰よりもヴィクティムの怒りは強く烈しい。
それでいて……そう、燃え上がるような怒りでありながら、"冷たい"のだ。
まるで冬の吹雪のように。
何もかもが死に絶えた、生命なき白銀の世界の静寂のように。
『そのような意気だけで、我を討てると思うてかッ!!』
今川義元は激昂と裂帛の気合をあげ、そして矢を無数に放った。
無数である。一射二射という話ではない……まさしく、矢の雨だ。
それはひとりでありながら大軍に匹敵する、魔軍将の本領といっていい。
「ヴィクティムさん。それ、借りますよ」
「ああ」
虚無が、ぞるりと神楽耶の身体を包み、加護(のろい)を与えた。
噫。永劫この身を己の怒りと憎悪に灼きたる神楽耶にとって、その苦痛は救いですらあった。
痛みは許しの証――赦されることなき己でも、そう感じられるのだ。
虚無を得た瞬間、神楽耶の周囲に無数の複製刀が出現し、矢を迎え撃つ。
迎え撃つ、迎え撃つ、迎撃迎撃迎撃迎撃迎撃――!
『なんだと……!? 我が矢を、たかが刀で、相殺しているだと!?』
「撃ち比べと参りましょう? ただし、敗けるのは貴様で確定していますが」
百、千、万――仮に義元が億の矢を放ったとて、神楽耶は諦めずに射抜こうとするだろう。
それは敵の攻撃を妨害するという、戦略上の意味だけにとどまらない。
知啓。
思想。
技術。
希望。
大義。
自信。
覚悟。
決意。
憤怒。
憎悪――。
今川義元という個を構成する、ありとあらゆるエゴを削ぎ落とすような。
『う、うおおおお……ッ!!』
何もかもを削ぎ落とし、絶望の究極を味わわせたはてに殺す。
この世のあらゆる悪意よりも凶悪でおぞましい虚無、そのものだ。
「テメェには何も必要ねえ」
間合いを詰めたヴィクティムの指が触れる。虚無が触れる。
今川義元という死者の、かつて在りし生者のすべてを否定し、削ぎ落とす。
「欠片も遺さねぇ。テメェが何かを成し遂げたという概念すらも消し去ってやる」
今川義元は男の目を覗いた。そして識った。
そこにはなにもない。
憎悪も、怒りも。
「テメェは、何もかもに絶望して死ぬべきなんだ」
希望すらも、そこには残っていなかった。
大成功
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茜崎・トヲル
なんで泣いてたのかなあ。かみさま(f16930)わかる?
ふふ、そう。うん。あーあ、おれ笑ってたのに。へーきなのになあ。
いいひとは青空のしたで笑ってるのがいい。大切な人のことだけかんがえてたらいいのにね。
そっか。そうだね。ふふ、ひはは。そーゆーひとがね、おれはたいせつ。
あんたはおれのために泣かないでね。かみさま。
あっはっはははぁ、そゆとこすきだぜー。
自分の未来予知しながらばーっとちかづいてしがみつく! 骨も肉も変形させて、ぐるぐるーって。
過去の人は生まれ変わって天下取りするのがいいよ。過去から未来いぬけるんなら、現在はもっとすごいでしょ?
あはは! かみさまに肩くまれちゃった。てれるー。
朱酉・逢真
白いのと/f18631
心情)俺よかお前さんのほうがわかってンじゃねェかい。どうでもいいやつのことまで考えちまうから“いいヒト”なんて言われンだろ。言われるまでもねェし、この《宿》にナミダなんて機能はついちゃいねェ。安心してひき肉になりな。
行動)白いのがしがみついて抑えたら、俺は《黯(*くらがり)》を通って白いのの影から出ていこう。白いのごと腕に抱いてやろう。今川さんの目、覗いてやろう。さあ、かみさまがきたよ。すべて蕩かして俺とおいで。いまここにいる欠片でいい。泡沫のような過去の“いのち”よ。また別のとこに湧き上がるまで、彼岸の暗がりにお眠りな。
●
今川義元を発見する少し前のこと。
「なあ、かみさま」
「あン?」
「羅刹のひとたちさー、なんで泣いてたのかなあ?」
かみさまはわかる? と、茜崎・トヲルは首をかしげた。
そんなトヲルの顔をしばし見つめたのち、朱酉・逢真はぽつりと言った。
「俺よか、お前さんのほうがわかってンじゃねェのかい」
「ふふ、どうしてさ」
「"お前さんこそがそういういのちだから"だよ」
「…………ふふは!」
トヲルは逢真の言葉に吹き出し、そして、静かに言った。
「うん。わかるよ。わかりたくねーのになあ。笑ってたのに、へーきなのになあ」
「…………」
「いいひとは、もっと青空の下で笑って、しあわせでいるべきなんだよ。
おれなんかじゃなくて、大切なひとのことだけかんがえてたら、いいのにね」
「それでもどうでもいいやつのことまで考えちまうから、"いいヒト"なンだろ。
お前さん自身も、お前さんが"笑っていてほしい"なんて考えるような連中もよ」
「おれ? おれはどうでもいいよ。でも、いいひとはそういうひとだ」
トヲルは笑ったままだ。それ以外の表情なんて知らないかのように。
「おれは、そーゆーひとがたいせつなんだ。だから、おれはいいんだ」
「……そォかい」
「ねえかみさま」
逢真は視線を動かした。トヲルは――笑っていなかった。
「あんたはおれのために泣かないでね」
「……言われンでも、この《宿(からだ)》にナミダを流す機能はねえよ」
「……あっはっはははぁ。そゆとこすきだぜー」
「やめろ。気色悪い」
「ふふ、ひはは」
トヲルはまた笑い始めた。
逢真は、笑っていなかった。最初から、ずっと。
●涙なんて必要ない
『――なんだ、こいつは』
今川義元とトヲル・逢真両名の戦いは、あっけない幕切れだった。
なにせトヲルは死なない。そして、未来を予知することが出来る。
たとえ因果を逆行する矢であれ、未来を読み、そして被弾しても死なずに近づけるのならば、そもそも勝負の土台に上がることすら出来ない。
逆に言えば、"それだけ"だ。トヲルだけでは、死なないが、死なせることも出来ない。
「過去の人はさー、生まれ変わって天下取りするのがいいよ!
だって、あんたの戦いはもう終わっちゃってるもん。だから、ここまでだ」
骨も肉も変形させたトヲルは、義元の身体をぐるりと取り囲み、縛った。
肉色の蛇である。全身は矢衾状態であり、力を込めれば矢が折れてめきりと鳴った。
「だから、さあ。かみさま、終わらせちゃってよ!」
「――あいよ」
そして肉の暗がりから、唐突に、出し抜けに、当然のように、陰が起き上がった。
赤い目をした"それ"は、今川義元がよく知っているものだった。
――死である。そして毒であり病であり、苦しみであり救いでもあった。
「さあ、かみさまがきたよ」
赤い目が瞳を覗き込む。義元は震えた。
「すべて蕩かして、俺とおいで。いま、ここにいる欠片だけでいいさ」
『貴様……』
「泡沫のような過去の"いのち"よ、いまはもう、おやすみする頃なんだぜ」
死が、触れる。今川義元は致命的な病を受け、血を吐いた。
死はいのちを抱きしめる。白痴のいのちと、過去のいのちを、一緒に。
「彼岸の暗がりでお眠りな――俺は、いつでもそこにいる」
今川義元は死ぬ。すでに死したる残骸が、再び滅びるのだ。
「いいなあ」
トヲルは言った。
「かみさまに抱きしめられてさあ、俺も肩くまれちった。へへへ」
死なない獣は笑っていた。
死だけが、最初から笑っていなかった。
大成功
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篝・倫太郎
【華禱】
私怨塗れでも弓の腕は本物
それはさっきの戦闘で充分承知してる
夜彦の気配につられる様に五感が冴える気がする
攻撃力強化に篝火使用
飛来した矢は念動力と神力の力で速度や威力を軽減
同時に吹き飛ばしを乗せた華焔刀で射線を変える
弾けりゃ良いけど、どうだろな
矢の威力と、羅刹の馬鹿力と
どっちが上かの力比べみたいなもんだ
初撃を防いだらダッシュで接近
生命力吸収と鎧砕きを乗せた華焔刀でのなぎ払い
フェイント混ぜつつ刃先返して2回攻撃で傷口をえぐる
敵の攻撃は初撃同様に対処
回避不能な場合はオーラ防御で防いで凌ぎ
負傷は激痛耐性で耐える
過去は過去でしかない
確かに未来を築く礎ではある
でも、未来を創るのは『今』の積み重ねだ
月舘・夜彦
【華禱】
今川義元……彼が本物ならば海道一の弓取りと呼ばれた通り、弓の名手
必中必殺となれば、此方も身を隠さず挑もうではありませんか
私の剣が、彼の弓を超えるか否か
――勝負
強者に挑む覚悟と立ち向かう勇気を以て納刀、集中
第六感による気配の察知、視力と聞き耳にて瞬時に判断
矢が来た所で見切りの早業の抜刀術『八重辻』
武器落としとカウンターにて矢を刃で弾いて凌ぐ
体勢さえ崩さなければ、致命傷にはならない
負傷は激痛耐性、継戦能力にて刃を振るう手は止めない
彼が武人ならば、正面から挑む相手を避けるようなことはしないはず
此方が攻撃を引き受けている間に倫太郎に向かって貰います
彼が攻めるのを合図に此方も駆け出して攻撃します
●武人の矜持と、定められた終わりと
『……かはっ』
今川義元は血を吐いた。おびただしい量の、毒々しい色の、血だ。
明らかに末期を思わせる血。それは、死そのものがもたらした終わりの兆し。
義元はもはや死ぬ。ここで殺さずとも必ず斃れる。そう定められた。
「……なんと哀れな」
しかし武人として、どうしても見ていられぬ男が居た。
月舘・夜彦である。憤怒ではなく、哀愍を込めた眼差しで義元を見る。
「海道一の弓取り、紛うことなき本物の武人が、こうも醜く歪んでしまうとは。
恐るべきは骸の海より現れる残骸の力……いえ、あるいはこれこそが彼の……」
「……どうだろうな。もう死んじまったお武家様のこたぁ、わからねえよ」
篝・倫太郎は夜彦の言葉を遮り、首を振った。
「もしかしたら、生前はもっと立派で、名にし負うだけの人物だったのかもしれん。
けどここに居るのは、違う。結局のとこ、残骸ってのは残骸でしかねえんだ」
「……そうですね、倫太郎。だからこそ、私たちは戦わねばならない」
「ああ。俺たちのためにも、羅刹たちのためにも――そして、奴さんのためにも」
倫太郎の目に怒りはなく、けれども憐れみもなかった。
終わらせるという確固たる決意、そのためならば命をも賭けるという覚悟。
双眸に燃えるのは、まさしく未来を切り拓くため過去を乗り越える生命の炎だ。
夜彦は、それを眩しく思った。結局のところ、己は人ならざるものなのだから。
百年を閲して霊性を得た己は、胎から生まれ育った人々とはやはり違う。
その姿形もまた借り受けたようなものであり、負い目のようなものがある。
だからこそ、彼の隣りにいたい――そして、ともに戦いたいと、心から思う。
「征きましょう、倫太郎。この戦いを終わらせるために」
「ああ。やろうぜ、夜彦。……新しく始めるためによ」
羅刹たちが見守る中、ふたりはそれぞれの得物を抜き、そして踏み出した。
血をしとどに溢れさせていた義元が、ぎらつく眼光で二人を睨む。
『羅刹……! 我が盟友、そして、信長を殺した、怨むべき畜生、ども……。
我は、今川義元……骸の海より来たりて、未来を破壊する亡者、なり……!!』
「亡者には、亡者の逝く場所ってのがあるんだぜ」
「――我らがそこへ送りましょう。今を生きる生命として」
そしてふたりは駆け出した。
鷹の目が、ふたりを迎え撃つ!
海道一の弓取り。
かつての猛将は骸の海より還りし残骸と成り果て、新たな力を得た。
必中、必殺。未来より過去へ着弾し、以て過去が未来を破壊する必滅の矢。
それはまさしく超常の力――ユーベルコード。道理など何も通用しない。
狙った場所に当たるその矢の恐ろしさを、ふたりは先刻重々承知している。
ならばどうするか……やることは、簡単だ。
真正面から挑む。ただ、それだけ。
『死ねェ――ッ!!』
矢が放たれた。ふたりは、極限の集中でそれを目視していた。
過集中により脳内麻薬が分泌され、主観的時間がひどく遅く引き伸ばされる。
走馬灯の正体は、死という逃れ得ぬ危機に対する脳の最後の悪足掻き。
極限まで引き伸ばされたスローな時間の中、ふたりはただ技を振るった。
鍛え上げ、積み重ね、敵を討ち、世界に知らしめてきたその技を。
剣を、振るう。炎を助けとして、閲した礎を助けとして、振るう。
敵のユーベルコードが、その人生を賭けて積み上げたモノの極北であるならば、
それを打ち砕くのもまた、積み重ねた技術という名の結実であるべきだ。
矢が来る。刃が……ふたり並んだ刃が、それぞれの心臓を狙う矢を伐った。
真っ二つになった矢は互いの頬をかすめ、肌が裂けて血が飛沫をあげる。
止まらずに、走る。義元は矢をつがえようとする――疾いが、ふたりよりは遅い。
『噫』
と、その口元が言葉を紡いだように見えた。
『我は、またしても死ぬか。だが――』
倫太郎と夜彦の剣が、バツ字を描く。交錯点は、すなわち。
『……斯様な武人の手にかかるならば、後悔まみれの我が生にも救いはあった』
今川義元という敵、終わらせるべきもの、哀れなる死者の胴体。
刃が抜けた。
『――……』
今川義元は、何かを紡ごうとした。
それは恨み節なのか、
ふたりへの感謝なのか、
はたまた別の何かなのか。
声は吐息に変わって抜けていく。誰にもそれはわからない。
確かめることもない――死者の念は、もうとうに遺されているのだから。
屍は倒れ、そして、消えた。
最初から何もなかったように。何もなせぬまま、変えぬまま、滅びた。
「……いつも寂しいもんだな。決着ってのはよ」
倫太郎が言った。
「勝負のもたらす充足など、畢竟そんなものです。酔いしれてはならないものなのでしょう」
夜彦が答えた。
……僅かな瞑目は、眠りについた亡者への黙祷か。
「行こうぜ、夜彦。凱旋の時間だ」
「……ええ、倫太郎。いつも通りに、帰りましょう」
ふたりは微笑みあい、そして歓声を上げる羅刹たちのもとへ歩いていく。
こうして戦いは、ありふれたものとしてありふれた終わりを迎えた。
世界は変わらない。侵されることなく、今日を経て明日がやってくる。
平穏な終わりは、侵略者どもへの宣戦布告のようでもあった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵