あまのいろは
あまのいろはです。遅すぎる初夢のようなお話。
サクラミラージュにある屋敷にて、影朧退治をお願いします。
屋敷の主は、人のよさそうな老婆。住人は老婆と住み着いた猫がたくさん。
『会いたいひとに会える』という噂が流れており、好奇心から訪れるひとも多いようです。
●シナリオについて
第1章 日常:『帝都猫物語』
危険はありませんので、猫と戯れたり、誰かのことを想ったり、影朧の痕跡を探したり、ご自由にお過ごしください。
会いたい誰かのことを強く想っていると影朧から近づいてくるかもしれませんが、猫と戯れているだけでも問題ありません。
第2章 冒険:『???』
ちょっと変わった屋敷内の探索になります。
もしかしたら今まで消えたひとも見つけることが出来るかもしれません。
第3章 ボス:『???』
見つけた影朧との戦いです。貴方が誰かを想っていたならば、その姿で現れます。
●
プレイングの受付については、マスターページをご確認いただけると助かります。
それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
第1章 日常
『帝都猫物語』
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POW | 猫を抱きしめる |
SPD | 猫を追いかける |
WIZ | 猫を撫でる |
👑11 |
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 |
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
黒猫白猫、まだらの子。垂れたお耳に鍵尻尾。
甘えん坊に食いしん坊、ちょっぴりどんくさい子まで。
飼い猫も野良猫も、このお屋敷に集まってくる。
思い思いに過ごす猫たち。けれど、あなたに気付くとぱっと顔を上げた。
まあるい猫の目があなたを見ている。ただただじぃと、あなたを見ている。
にゃあ。あなたに擦り寄りながら。にゃあ。あなたを見上げて鳴いて。
――――ちりん。どこかで鈴が鳴った。
茜崎・トヲル
にゃんこだー!
っとっと、声ちっさくしねーと。うるさいとね、逃げられちゃうから。ね。
わーもふだ。ふかふかだ。やらけーねえ。生きてるねえ。
会いたいひと。ともだちとか? あ、たぶんちがうね、これね。
めっちゃ見てくるじゃんね。目をあわせるのってよくないんだっけ?
なんかケンカうってんな?お?って思われちまうって聞いた。どっかで。
(目をそらしてみる)(しかしまわりこまれた!)(そっと両手を上げた)(てきいはないよー)
会いたいひとかー。きっと大切なひとのことだよね。ふふ、ははふふ。おれ、そーゆーひといねーや。
いやいたんだよ? たーくさんいたよ。いいひといっぱい。でも昔すぎてさー。顔も思い出せないし。ね。
●
あっちでごろごろ。こっちでもごろごろ。
「にゃんこだー!」
ごとごと戯れる猫たちを見た茜崎・トヲル(白雉・f18631)は、子供のような笑顔をみせる。
「っとっと、声ちっさくしねーと。うるさいとね、逃げられちゃうから。ね」
猫は騒がしいのは苦手だから。むぐ、と口を噤んでしゃがめば、猫はすぐにすりりと擦り寄ってきた。
そろりと手を伸ばして、その背に触れる。指先がもふりと沈み込んであたたかい。そのまま背中を何度か撫でれば、猫がごろろと喉を鳴らした。
「わーもふだ。ふかふかだ。やらけーねえ。生きてるねえ」
指先からじんわり伝わる熱も、撫でる手に合わせて揺れる尻尾も、それらすべてが生きている証だ。
「噂のこと、なんか知ってる? 会いたいひとに会えるっていうの。 ……会いたいひと。ともだちとか? あ、たぶんちがうね、これね」
撫でられて喉を鳴らしながら、猫がトヲルを見上げる。まあるい瞳が、トヲルを見ている。その瞳にはトヲルが映るばかり。
「それにしても、めっちゃ見てくるじゃんね。目をあわせるのってよくないんだっけ?」
目をしっかり合わせるのは、威嚇してることになるからだとか。そんな話を聞いた気がするけれど、どこで聞いたんだったっけ。
トヲルをじぃと見つめる猫の目は、ケンカうってんな? お? なんて、思っているような目ではなかったけれど。
実はそう見えないだけでそう思われていたら困るので、トヲルはぱっと目を逸らした。
『んにゃ』
けれど、猫はトヲルが顔を向けたほうにするっと回り込む。もう一度反対へ逸らしてみる。やっぱり回り込まれた。
「えー、なに? 随分熱烈だなー?」
敵意はないよ! と両手を上げたトヲルだが、猫が膝をてしんてしんと叩いてくるから、トヲルは手を下してその喉元をくすぐってやった。
「……会いたいひとかー。きっと大切なひとのことだよね」
猫はトヲルの膝に飛び乗ると、くるりと体を丸めた。動けなくなってしまったからと、また猫を撫でていたトヲルだったけれど。
――――ふふ、ははふふ。はははふふ。
「おれ、そーゆーひといねーや」
笑いごえが溢れ出す。トヲルは背を丸めて笑いながら思い出す。――思い出す。思い出す。大切なひと、大切な誰か。けれど。
「いやいたんだよ? たーくさんいたよ。いいひといっぱい」
覚えている。大切な誰かがいたことは覚えている。けれど、それだけ。
「でも昔すぎてさー。顔も思い出せないし。ね」
何を話した? 何を貰った? どんな表情をしていたっけ? ――思い出そうとしても、なあんにも、なにひとつ浮かんでこない。
こんなおれの前に、どんな姿をして現れるのかな。ぽつりと呟いたその言葉は、膝に乗った猫だけが聞いていた。
大成功
🔵🔵🔵
ニャコ・ネネコ
アドリブ連携歓迎/SPD
にゃあの会いたい人…
おばあちゃまに会えるなら会いたいにゃ
でも、さびしがらないってきめたにゃ
にゃあはかしこくてつよいねこだから
おばあちゃまに心配はかけないにゃ!
にゃあ、にゃんこがいっぱいいるにゃ!
いごこちのよさそうなお屋敷だからかにゃ?
そこのにゃんこ、いっしょにあそぼにゃ!
(追いかけっこをしたり毛づくろいをしてあげたりしつつ)
…にゃ、おまえ、ここの屋敷の噂って知ってるにゃ?
なんでも、会いたいひとに会えるってきいたにゃ。
もし知ってたら、くわしく教えてほしいにゃ。
ヤニ・デミトリ
あああ生物がこんなに沢山…いいっスねえ
遊び好きの奴ァいるかな
調査もそこそこに
屑鉄の尻尾や掌から形成した猫じゃらしで遊びに誘うっス
会いたい人かァ
君らはそれを求めて来る人を沢山見ました?
猫の眼はヒトに見えないものを映すなんてハナシも聞きますけど
何が見えてるのか聞いてみたいなァ、なァんてね
そういや、あれは猫の相手が苦手だったっけな
好きなのに懐いてくれないからなんて言ってた覚えがある
だから俺が猫の容を覚えた時は触ろうとしてしつこかった
猟兵になった時から連絡も取らなくなったっスけど
今頃どこをほっつき歩いてんスかね
ねえ、他人の姿を騙るモノなんてホントは禄でもないと思うんスよ
だけどお仕事のついでっスから、ね
●
「あああ生物がこんなに沢山……いいっスねえ」
目の前に人慣れしてる猫がいるのなら、遊びたいと猫の目が訴えているのなら、――その誘いを断るなんてのは野暮である。
影朧の調査もそこそこに、遊び好きの奴ァいるかな、と、ヤニ・デミトリ(笑う泥・f13124)は屑鉄の尻尾から自作した猫じゃらしを片手に猫たちを見て回る。
こちらを見ている猫に向かってその猫じゃらしを振ってやれば、猫はすんなりとヤニのもとへ駆け寄ってきた。
「…………思ったより大盛況っスね」
ヤニの作った猫じゃらしは大好評のようで、ふと気付けば彼は猫に囲まれていた。
「しょうがない……。まじまじと見ちゃイヤっスよ」
とてもひとつじゃ足りそうにないので、掌からもうひとつ猫じゃらしを作ると、両手に猫じゃらしを持ってあっちへふりふり、こっちへふりふり。
ヤニの手の動きに合わせて、猫たちが行ったり来たり、飛び跳ねたり。たまにごっつん衝突するのもご愛敬。
猫たちの様子を見てけらけら笑っていたヤニだが、猫じゃらしを揺らす手をふと止めて。
「会いたい人かァ。……君らはそれを求めて来る人を沢山見ました?」
分かっているのかいないのか、彼の言葉に猫が首を傾げる。ぱちり。黒い子猫と目が合った。
「猫の眼はヒトに見えないものを映すなんてハナシも聞きますけど。何が見えてるのか聞いてみたいなァ」
なァんてね、そう言ってヤニが笑えば、黒い子猫はあおい瞳をぱちくり丸くして。
「んにゃ? にゃあに聞いてるのかにゃ?」
「うわっと!?」
思わずその場を飛びのきそうになりながら、ヤニは黒い子猫をじっと見る。
影朧の力影響で猫が喋ることだってあるかもしれない、なんて思ったけれど、子猫の正体はニャコ・ネネコ(影色のストレガ・f31510)。
ニャコは、見ての通り猫の賢い動物である。そんな彼女が猫たちのなかに交じっているのだから、ただの猫と間違えるのも仕方がない話で。
「ごめんにゃの、びっくりさせちゃったかにゃ?」
「いや、大丈夫っスよ」
謝るニャコの瞳がちょっとしょんぼりしているように見えたから、ヤニは慌てて頭を振るのだった。
ぽかぽか陽だまりのなか、猫じゃらしが揺れる。ニャコの尻尾もゆらゆら揺れる。思わず飛びつきそうになって、ニャコは慌てて毛繕いをした。
「ねえ、お兄さんも会いたいひとがいるにゃ?」
「俺は――……」
考えるまでもなく、ぱっと顔が浮かんだ。――そういや、あれは猫の相手が苦手だったっけな。
「そんな感じっスかね」
彼のそんな曖昧な言葉に表情に、込められたものが何なのか、まだ幼いニャコは読み取れない。
――好きなのに懐いてくれないからなんて言ってた覚えがある。だから俺が猫の容を覚えた時は触ろうとしてしつこかった。猟兵になった時から連絡も取らなくなったっスけど――……。
「今頃どこをほっつき歩いてんスかね」
そんな言葉とともに、くるり。猫じゃらしが空中で円を描いた。
「あんたは?」
「にゃあの? にゃあの会いたい人……。……おばあちゃまに会えるなら会いたいにゃ」
出会った日のことは、思い出すまでもなく、忘れたことなどなかった。
拾い上げてくれたあの手のぬくもりさえも。なにひとつ、ぜんぶ。――そして、彼女と別れたあの日のことも。
「でも、さびしがらないってきめたにゃ。にゃあはかしこくてつよいねこだから」
思わず垂れそうになった耳と尻尾をぴぴぴんと伸ばして。ニャコが心なしか胸を張れば、彼女の首輪についている雫型の石がきらりと光った。
「おばあちゃまに心配はかけないにゃ!」
「はは、強いんスねえ」
ヤニは笑いながらニャコの頭を撫でようと手を伸ばすが、猟兵だということを思い出して伸ばしていた手をそっと引っ込めた。
「じゃあ、にゃあはもうすこし調べてくるのにゃ!」
ニャコはぱちくり瞬いてから。言うが早いか立ち上がると、ぴょんっと猫の輪のなかに入っていった。
その姿を見ながらヤニは呟く。――ねえ、他人の姿を騙るモノなんてホントは禄でもないと思うんスよ。
「だけどお仕事のついでっスから、ね」
ざざあと風が吹く。彼の手に握られた猫じゃらしだけが、ゆらゆら揺れていた。
「にゃあ、それにしてもにゃんこがいっぱいいるにゃ! いごこちのよさそうなお屋敷だからかにゃ?」
きょろきょろきょろ。ニャコは遊んでくれそうな猫を見つけると、鼻を近づけ猫同士のご挨拶。挨拶が終わったら、あちらの猫と追いかけっこ。こちらの猫と毛繕い。
「そこのにゃんこも、いっしょにあそぼにゃ!」
ちいさく愛らしいいニャコは、すっかり猫たちの人気者。猫だけしか知らない話も、ニャコには教えてくれたりもするわけで。
『にゃおん、にゃあー』
「……にゃ、おまえ、ここの屋敷の噂って知ってるにゃ? なんでも、会いたいひとに会えるってきいたにゃ」
『んにゃあ。にゃむにゃむにゃむにゃむ……』
「……にゃあ。その話、もっとくわしく教えてほしいにゃ」
ひとから見たら、それはにゃあにゃあ賑やかで可愛らしい猫集会。
けれど、その話にはとっても重要な秘密も含まれている、かもしれない。――――真相を知るのは、猫ばかり。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
神宮時・蒼
…ねこさん、たくさん…。…ねこさん、いっぱい…。
…ここが、天国、ですか…
【WIZ】
…本当に、たくさんの、ねこさんが、いらっしゃる、のですね…
…此の、仮初の、写し身の、君。…あの方も、ねこさん、好き、でした、ね。…其れを、見つめる、創造主、様も…
…もう、逢う事は、叶い、ませんが…
…まあ、逢えたと、しても、ボクは、飾り物の、まま、なので、お話、することは、叶い、ませんが…
…あら、ねこさん、撫でても、いい、のですか
…でしたら、遠慮、なく…。ねこさんを、撫でる、てくにっく、なら、誰にも、負けません、ので…。
ふわふわ、もふもふ。…やっぱり、ねこさんは、いいもの、です…。
ねこさんとの戯れの一時を過ごします
●
神宮時・蒼(終極の花雨・f03681)の視界に広がる、いっぱいのもふもふ。
「……ねこさん、たくさん……。……ねこさん、いっぱい……。……ここが、天国、ですか……」
触ってもいいし、遊んでもいい。それに人懐こいだなんて。
表情は変えず、けれどきょろりと動く蒼の瞳は、心なしか楽しそうだった。
「……本当に、たくさんの、ねこさんが、いらっしゃる、のですね……」
黒猫白猫ブチ猫サビ猫。色違いの瞳の子。お耳がぺたんと垂れた子。長い毛がエレガントな子も見つけた。
どんな猫たちがいるのかじっと見ていた蒼だが、暫くするとその場にすとんと腰を下ろした。
「……此の、仮初の、写し身の、君。……あの方も、ねこさん、好き、でした、ね。…………其れを、見つめる、創造主、様も……」
その想い出を確かめるように。蒼は胸元で光る氷晶石と琥珀のブローチに、するりと指を滑らせる。
――ふたりもこの屋敷へ来ることが出来たなら。きっと喜んだろうけれど。
(……もう、逢う事は、叶い、ませんが……)
喜ぶ姿を思い浮かべることは出来るのに。それは決して叶わない。なんだか胸のあたりが、きゅうと締まる気がした。――それに。
「……まあ、逢えたと、しても、ボクは、飾り物の、まま、なので、お話、することは、叶い、ませんが……」
たとえ、ふたりに逢えたとしても、他の問題もあるのだから。
叶うはずのない願いは、そっとそっと胸の奥へと仕舞い込む。ふう、と息を吐けば、近くに居たハチワレ猫の耳がぴんと立った。
「…………あら?」
ハチワレ猫は蒼のもとへと駆け寄ると、彼女の前でごろんと寝転がった。お腹を見せながら、くねくね揺れている。
「こ、これは……。……ねこさん、撫でても、いい、のですか」
躊躇いがちな蒼を誘うようにハチワレ猫はくねくね揺れていたが、ぱちり。蒼と猫の視線がぶつかる。蒼はこくんと頷いて。
「……でしたら、遠慮、なく……。ねこさんを、撫でる、てくにっく、なら、誰にも、負けません、ので……」
手を伸ばすと、そのお腹に優しく触れた。ハチワレ猫が嬉しそうにみゃあと鳴く。
猫のお腹は、ふわふわ、もふもふ、やわらかい。顔を埋めたくなる衝動に襲われるけれど、流石にそれは我慢と心を強く持つ。
撫でられて気持ちよさそうにハチワレ猫が鳴いたからか、ふと気付けば蒼の周りには猫たちが大集合。にゃあにゃあ鳴いて、こちらも撫でて撫でてと蒼を催促する。
「……ええ、と……。それじゃあ、順番、ですよ……」
順番に披露される、蒼の猫撫でてくにっく。撫でられた猫たちは、幸せそうににゃあと鳴いて尻尾を揺らす。
「ふわふわ、もふもふ。……やっぱり、ねこさんは、いいもの、です……」
――ああ、やっぱり。ここはふわふわもふもふな天国に違いない。
大成功
🔵🔵🔵
栗花落・澪
【対の華】
会いたい人に会える、ねぇ…
火の無いところに煙は立たないって言うし
亡くなった家族とか、恋人とか
本当に会えるかもしれないって考えたら、縋りたい気持ちもわかるんだけど
そっとしゃがんで擦り寄ってきた猫を優しく撫でながら
思い浮かべるのは故郷の家族
と言っても物心の付かないような頃に僕が攫われてそれっきり
滅びたと聞いたのは見つけてくれた従姉弟伝て
だから…会いたいとは思っても、顔も声も覚えてないし
写真一枚すら残ってないんだけど
でももし、会えるなら…
思考を持って行かれる前に
聞こえてきた言葉に耳を傾けて
…うん、きっとお父さんも喜んでるよ
報告、出来ると良いね
はぁ~、猫ちゃんあったかい~(囲まれて幸せモード
百鬼・智夢
【対の華】
ぬいぐるみを片腕で抱きしめながら
澪君の真似をするようにしゃがんで
集まってくる猫ちゃん達をそっと撫で
私…霊は見えるのに、一度も会えないんです
死んだお父さん…
成仏できたなら、って…自分にも言い聞かせたけど
ほんとはずっと、寂しくて
でも…最近、なんだか…違うんです
父の事を思い出す時間が減った気がするの
お父さん以外の思い出が、少しずつ増えて…
父は…今の私を見て、どう思うでしょうか
友達が出来たよって、伝えられたら…喜んでくれるかな…
澪君の言葉にふわりと微笑み
ねぇ、猫ちゃん
貴方達も…応援、してくれますか?
澪君は、本当に動物によく好かれますね?
きっと、澪君が優しい子だからですね…ふふっ…
●
ぽかぽかぬくぬく。あたたかいのは陽ざしのおかげ。――だけではなく。
「はぁ~、猫ちゃんあったかい~」
「澪君は、本当に動物によく好かれますね?」
猫に囲まれた栗花落・澪(泡沫の花・f03165)と、百鬼・智夢(慈愛の巫女・f20354)は、ふたり揃ってほんわか幸せモード。
「きっと、澪君が優しい子だからですね……ふふっ……」
「ありがとう。そうだったら嬉しいなあ」
寄り添う猫たちを慣れた手付きで撫でる澪の真似をして、智夢もテディベア片手に集まってきた猫たちを撫でる。
「会いたい人に会える、ねぇ……」
猫たちと戯れながら、思い出したように澪がぽつりと呟く。
火のないところに煙は立たないというし、会えないひとにまた会えるかもしれないと聞けば、それに縋りたいひとも居るだろう。――それが例え、幻のようなものだったとしても。
そこまでして会いたいひとは、誰だろう。亡くなった家族だとか、恋人だとか。きっと、いろんなひとがいるだろう。
自分は、どうだろうか。優しい手付きで猫たちを撫でながら、澪が想うのは故郷の家族。
とは言え、澪は家族の顔も声も思い出せない。だって、物心もつかないような頃に攫われて、本当の家族とはそれっきりなのだから。
自分を見つけてくれた従姉弟から聞いたのは、故郷が滅びたという現実で。
――燃え盛る街の、死んでいたひとたちの、そんな話を聞いてまだ会えるかもしれないだなんて思えるほど、澪は子供ではなかった。
(でももし、会えるなら……)
どんな姿で現れるのだろう。どんな言葉を掛けてくれるのだろう。やはり、覚えてないひとは現れないだろうか。――それとも、それとも。もしかしたら。
ゆるゆると思考の底に落ちていこうとした澪だが、智夢の視線を感じてふと顔を上げる。
「…………寂しい、ですよね」
「……え?」
「会いたいひとに、会えないのは……、……きっと、寂しいです」
テディベアを抱く智夢の腕に、きゅうと僅かに力が籠る。
「私……霊は見えるのに、一度も会えないんです」
死霊術士でもあり巫女でもある彼女は、『普通』のひとには見えないものもよく見てきた。
生前の姿のまま成仏できずにいる姿や、おぞましい何かに変わっている姿も見たことがあったけれど。
「死んだお父さん……。お父さんだけ、一度も、会えない……」
彼女が腕に抱いているこのテディベアも、父がくれたもの。今は亡き父との、大切な想い出のひとつ。
「成仏できたなら、って……自分にも言い聞かせたけど、……ほんとはずっと、寂しくて」
会いに来てほしかった。一言でもいいから、最後に言葉を交わしたかった。
父が事故にあわなければ。そんなもしもを考えて、悲しくなることも、泣きたくなることも、いっぱいあったけれど。
「でも……最近、なんだか……違うんです」
「違う?」
「お父さんの事を思い出す時間が減った気がするの……」
あの時はすべてといっても過言ではなかった父だけれど。彼以外の想い出が、今はすこしずつすこしずつ増えていく。
「お父さんは……今の私を見て、どう思うでしょうか……。友達が出来たよって、伝えられたら……喜んでくれるかな……」
智夢の表情が僅かに翳る。澪は、智夢の顔を見詰めてふわり微笑んでみせた。
「……うん、きっとお父さんも喜んでるよ。報告、出来ると良いね」
ぱちくり、智夢は瞬いて。暫くしてから、同じようにふわり微笑んだ。自分がそんな表情をしていることを、彼女は気付いているだろうか。
「……ねぇ、猫ちゃん。貴方達も……応援、してくれますか?」
智夢は猫の喉元に手を伸ばす。指先でくすぐれば、返事の代わりに猫の喉がごろごろ鳴った。
忘れたい過去もあるけれど。忘れられない傷もあるけれど。胸に残るものは辛い想い出ばかりではなくて。気付けば、大切な想い出も出来ていたりするものだ。――生きていれば。きっと、きっと。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アルジュン・ラオ
暁彪さん(f11122)と
・心情
会いたい人、あぁ、居た気もしますが所詮私はモノですからね
はてさてあの人は、一体誰だったか、。
「ふむ、暁彪さんは猫に好かれるのですね」
猫に好かれれば影朧も来るでしょうか?
しかし猫に好かれるとはこれ如何に。
暁彪さんの見様見真似をしようにも、とんとわからず、ひとまず近くにいる猫に手を伸ばしてみて
「……これがもふもふですか」
妖にももふもふはおりますし、あぁ、そうですね
「お前たちも猫又になるのですよ」
そう問われればさて、どうでしょう。
「あぁ、これがぷにぷになのですね」
元々モノである私が長生き、それはとても不思議なことですね
桐生・暁彪
アルジュン(f30791)と同道
心情
もうこの世には居ねぇ奴にも獄卒ならあえるかなんて無駄なこと聞いた時期もあったな。好敵手を思い出す真っ直ぐな瞳に珍しく表に出さないが感傷的に猫をモフる。
本質は戦闘狂いの強面獄卒、再会なぞうっかりしたらどうなることか
行動
ビーストマスター故かすり寄ってくる猫を、毛並みを整えるように撫でる
『こんな労いくらいはわけねぇよ。』
一匹そっと抱え上げ、アジュンの頬に肉球で頬ツンしようとする
『なんだ、猫又に一緒に長生きしてもらいてぇのか?』
なれない冗談を交わしながら、いつの間にかできる猫だまりにお前らの大将んとこに連れてってくれやしねぇか
仲良くなってきいてみようかと親睦を図る
●
桐生・暁彪(龍屠りし羅刹・f11122)がわしゃわしゃ猫を撫でる様子を、アルジュン・ラオ(鬼視ノ病・f30791)が見ていた。
撫でられた猫は毛がぼわぼわになりながらも、とても満足そうだ。むしろ、もっとやってくれとでも言いたそうな顔付きである。
暁彪を見る猫の目はどこまでも真っ直ぐで、それが自分の好敵手であるひとに似ていたから。彼にしては珍しく感傷的な気分になったりもする。
(もうこの世には居ねぇ奴にも、獄卒ならあえるかなんて無駄なこと聞いた時期もあったな)
そんな感情を表には出さなかったけれど、ほんのちょっとだけ猫を撫でる手にも力がこもる。猫はもっとぼわぼわになる。
会いたいという気持ちもあるけれど、自分の本質もよく分かっている。――――再会なぞ、うっかりしたらどうなることか。
『みょーう』
「おっと、悪いな」
気付けばすっかりぼわぼわのぼわになった猫の毛並みを整えながら、暁彪が笑った。猫がふるると身体を揺らす。
「ふむ、暁彪さんは猫に好かれるのですね」
「こんな労いくらいはわけねぇよ」
アルジュンが暁彪の顔を覗き込みながら言う。
暁彪はビーストマスターでもあるわけだし。普段は虎やら豹なんていう生き物の相手もしているのだから、猫の扱いなんて朝飯前だ。
「猫に好かれれば影朧も来るでしょうか?」
「どうだかなあ」
他愛のない会話をしながら、アルジュンも暁彪の真似をして近くにいる猫へと手を伸ばしてみる。
「………………」
そぅっと。まるで壊れ物でも扱うように。指先が、そっと猫に触れて。――アルジュンが、そのまま動きを止める。
「どうした?」
「……このあと、どうしたらいいのか。とんと分かりません」
ぎこちない動きのアルジュンを見て、暁彪が可笑しそうにかかかと笑った。
とりあえず真似してみろと、暁彪がまた猫を撫でる。額を指でくすぐって、背を撫でてやり、喉元を掻いてやる。
それを見ながらアルジュンも、おずおずと猫の背に手のひらをくっつけた。もふ、と指先が毛のなかに沈んで。
「……これがもふもふですか」
もふ、もふ。控えめに猫を撫でるアルジュンを見て、こういうのに触るのは初めてか、と暁彪が聞く。
「妖にももふもふはおりますし、――あぁ、そうですね」
猫の妖もいることをふと思い出した。アルジュンは、撫でられて気持ちよさそうにしている猫の耳元をかしかしくすぐると。
「お前たちも猫又になるのですよ」
「……なんだ、猫又に一緒に長生きしてもらいてぇのか?」
そう聞きながら、暁彪は抱き上げた猫の手を持って、猫の手でアルジュンの頬をぷにぷにと突っついた。ぷに、ぷに、肉球がアルジュンの頬に触れる。
「元々モノである私が長生き、それはとても不思議なことですね」
アルジュンがふ、と僅かに微笑む間にも、肉球がぷにぷにいったりきたりしている。ぷに、ぷに。猫の肉球はほんのりあったかい。
「あぁ、これがぷにぷになのですね」
暫く肉球を堪能したふたりは、猫をいつの間にか足元に出来ていた猫だまりのなかへ帰してやった。ふと思いついたように、暁彪が聞く。
「そういえば、お前さんは会いたい奴がいるのか?」
「……さて、どうでしょう」
そう答えるアルジュンはどこか遠くを見ながら、暁彪に聞こえるか聞こえないかの声で、ぽつりと続けた。
「……会いたい人、あぁ、居た気もしますが所詮私はモノですからね」
――――はてさてあの人は、一体誰だったか。
もし、本当に会いたい誰かに会えるのなら。思い出せすことも出来るだろうか。
そんな彼の独り言も、猫だけは聞いていた。――――どこかでちりん、と鈴が鳴る。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エリシャ・パルティエル
ここが猫屋敷…
猫好きのあたしにはまさに夢みたいな場所だけど
帰らない人がいるっていうのは気になるわ
なんとかしなくちゃ
でも今は…
寄ってきてくれた猫ちゃんを順番に撫でていく
ゴロゴロ甘えてくれると嬉しくて
持参したおもちゃのねこじゃらしで
たくさん遊んであげて
ここに来たのは猫ちゃんが好きだから
でも会いたい人に会えるって噂も気になって…
そんな都合のいいことあるはずないのに
あたしの会いたい人は生死もわからずいなくなってしまったから
ずっと寂しくて悲しくて
だから同じ思いをする人をこれ以上増やしちゃいけないと思って来たのに
ひょっとして会えるのかなってどこかで期待してる
おかしいでしょ?
泣きそうな顔で猫ちゃんに訊ねるの
●
「ここが猫屋敷……」
いっぱいの猫たちを見て、思わずほうと息を吐いたエリシャ・パルティエル(暁の星・f03249)は、ぱしぱしと軽く自分の頬を叩く。
(猫好きのあたしにはまさに夢みたいな場所だけど……)
会いたいひとに会える、そんな噂ももちろんだけど、帰らないひとがいる、という話もなかなか気になる。――だって、それは『噂』ではなく、『事実』なのだから。
なんとかしなくちゃ、とエリシャはきゅうと拳を握るけれど。
んにゃお。みゃーう。にゃあーん。――甘えた声で鳴きながら足元に擦り寄ってくるから、決意がちょっとだけ揺らぐ。だって、猫好きのあたしにはまさに夢みたいな場所だもの。
みゃおみゃお。なーぉ。すりすりごろごろ、猫がエリシャを見上げるので。
――――うん。いろいろ気にはなるけれど、でも今は、ちょっとくらいは、猫と遊んであげたっていいだろう。
エリシャがちゃっかり持参していた猫じゃらしを振れば、はっしと猫が食いつく。
片手で猫をじゃらしながら、足元にきた猫を撫でてやる。うっかり噂のことを忘れてしまいそうになるほど、和やかな気持ちになった。
「やっぱり猫ちゃん可愛いー……」
エリシャは猫が好きだ。この屋敷に来たのも、猫が好きだからだ。――けれど、それだけではなくて。
(会いたい人に、会える、かあ……)
それが、もうこの世にいないひとだとしても会えるだなんて。随分とよく出来た、都合がいい話である。そんなことあるはずないのに――、――それに縋りたくなる気持ちも、エリシャには分かる。
(あたしの会いたい人は生死もわからずいなくなってしまったから)
ずっと寂しかった、ずっと悲しかった。だから同じ思いをする人をこれ以上増やしちゃいけないと思って来たのに。
「……ひょっとして会えるのかなってどこかで期待してるの」
猫を撫でていたエリシャの手が、ゆっくりと動きを止める。口をきゅうと結んで、視線を落とすとエリシャは猫に訊ねる。
「――おかしいでしょ?」
エリシャは、くしゃりとぎこちなく笑う。それは今にでも泣き出しそうな彼女の、せいいっぱいの強がり。
思わず、視界がじんわり滲む。――ああ、いけない。泣きたいわけじゃないの。
軽く目を擦って顔を上げれば、エリシャの前からあんなにたくさんいた猫はいなくなっていた。
「猫ちゃん……?」
きょろり、辺りを見回せば、一匹の黒猫がじぃとエリシャを見ていた。
まあるい澄んだ瞳は、心のずぅっと奥まで見透かしているようで、なんだか居心地が悪い。エリシャが目を逸らせずにいると、猫はふと視線を逸らして歩き始めた。
――ちりん。ちりん。ちりん。猫が歩くたびに、寂しそうに鈴のおとが響いていた。
大成功
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澪がきょろりと辺りを見回した。迷宮の壁が削れているのは、どうしてだろう。誰かの目印、のような気もするけれど、影朧の仕業の可能性も捨てきれない。迷っていると――。