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【Q】【求】お菓子を届けてくれる王子様

#アリスラビリンス #【Q】 #お祭り2020 #ハロウィン

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●絵本ではガラスの靴ですが
「ガラスの靴じゃなくてお菓子を持ってきてくれる王子様をご所望だと」

 地籠・凌牙(黒き竜の報讐者・f26317)は肩を竦めてそう言った。
 何故こんなことを言い出したかと言うと、儀式魔法【Q】の成功によりアリスラビリンス内でオウガ・オリジンが現実改変のユーベルコードを使って「ハロウィンの国」に改変された国が幾つも発見されたのである。
 喋るカボチャやコスプレ衣装が飛び出す森等、ハロウィンらしいコミカルな構造になっているらしい。
 だが、そんな構造とは裏腹にこのハロウィンの国はオウガ・オリジンによって"悲劇を作る"為に生み出されたもので、それぞれの国にオウガ・オリジンから直接力を与えられたオウガが総べているという。
 凌牙が予知したハロウィンの国を支配するオウガはガラスの靴、という言葉から連想される通りのシンデレラその人だそうだ。

「ほら、12時の鐘が鳴る前にシンデレラは城から帰るだろ?その時に履いたガラスの靴が慣れなくって……階段から滑り落ちて死んじまったらしいぜ。
 そんな結末のシンデレラの絵本がある世界もあるんだな……」

 何故か遠い目の凌牙。
 猟兵たちは「まさかこいつまたトンチキな予知したな?」と思った。
 何故ならこのグリモア猟兵がこういう目をしている時はだいたい(色々な意味で)碌でもない予知をした時だからである……!

「いや別に今回はそんなおかしい予知じゃねえんだけどこう、俺の知ってるシンデレラと色々違い過ぎて理解が追いつかねえ。
 具体的に言うとシンデレラが部下としてこき使ってるのが意地悪三姉妹だったりとかな」

 何てこったい。多分シンデレラ自体にそんな自覚はなさそうだけど。
 余談だが意地悪な三姉妹は多分シンデレラの意地悪な三姉妹とは別の三姉妹と思われる……が、意地悪なのに変わりはない。
 だがシンデレラがそんな三姉妹を部下に据えているのは確かに首を傾げたくはなる。

「えーと、まあとりあえずそこらは置いといてだ。このハロウィンの国のオウガ共はコスプレ衣装が飛び出す森のコスプレ衣装を着ることで強化されている。
 これに対抗する手段はたった一つ、俺たちもそのコスプレ衣装を着ることだ。……あーうん、安心してくれ。そんなにアレな衣装は確認されてないっつーか……そのな?

 王子様の衣装しかない」

 えっあの意地悪な三姉妹が王子様の衣装着てるんですか???と聞くと凌牙は真顔で頷いた。何てこったい。

「で、肝心のシンデレラなんだが"美味い料理を食わせない限り無敵"なんだ。
 つまり王子様の衣装を着て、美味い料理を食わせて倒せってこったな。もちろん食わされたらやられるってことで全力で妨害してくるから、頑張れ!」

 王子様衣装で料理という非常にアンバランスな光景。
 しかし確かにこれは色々な意味でガラスの靴ではなくお菓子を持ってきてくれる王子様を待っている、という表現にはなるか。

「あ、そうそう。オウガを倒してもハロウィンの国はハロウィンの国のまんまだから、終わったらハロウィンパーティーの会場にしちまっていいぜ。
 それまでが大変だとは思うがお前らなら大丈夫だろ。準備ができた奴から転送していくぜ」

 というワケで猟兵たちよ、今この時だけプリンスとなれ!


御巫咲絢
 ハッピーハロウィン!(まだ二週間ほど早い)
 こんにちはこんばんはあるいはおはようございます、初めましての方は初めまして、新米MSの御巫咲絢(みかなぎさーや)です。
 当シナリオをご閲覧頂きありがとうございます!初めて御巫のシナリオをご覧になる方はまずお手数ですがMSページをご覧の上で以下にお目通しくださいませ。

●前提
 このシナリオは"全二章構成"となっております。
 また、10/31までに成功したシナリオの本数に応じてハロウィンパーティ当日、そしてやがて始まるであろう「アリスラビリンスでの猟書家戦」に、何らかの影響があるかもしれません。

 というワケで【Q】シナリオです!Qなだけに求……いや何でもないです。
 以下各章概要。

●第一章『集団戦』
 『意地悪な三姉妹』との戦闘です。多分シンデレラのとは別だけど意地悪な三姉妹なのは変わりません。
 三姉妹はそれぞれ王子様の衣装を着てパワーアップしています。
 衣装の飛び出す森で手に入る王子様の衣装を着ることでプレイングボーナスが受けられます。
 この森は王子様の衣装しか飛び出してきませんので女性の猟兵さんは必然的に男装になります、そこだけご注意くださいませ!

●第二章『ボス戦』
『シンデレラ』との戦闘です。
 ただし、ハロウィンの国のパワーによっておいしい料理を食べさせない限り倒すことができません。猟兵の皆さんでおいしい料理、あるいはお菓子を食べさせて幸福昇天させてください。一度料理が完成したら確定で食べさせられますよ!
 もちろんおいしい料理は食べたいけど死にたくない!で全力で妨害をしてきますので基本的には「おいしい料理を作る」か「攻撃を耐え忍ぶ」の二択になります。
 尚、MSがあまり料理には詳しくないので表現には期待しないでください。むしろ皆さんのプレイングで教えてください(土下座)。
 尚、こちらでも王子様の衣装を着ているとプレイングボーナスが受けられます。

●プレイング受付について
 承認が下り次第プレイング受付開始致しますが、大人数はMSのキャパシティ的にお受けし切れない可能性が高いです。大体8人前後までが限界です。
 その為プレイング内容次第によっては不採用の可能性もございますので予めご了承の上プレイングを投げて頂きますようお願い致します。

 それでは皆様の素敵なプレイングをお待ち致しております!
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第1章 集団戦 『意地悪な三姉妹』

POW   :    長女の飽くなき食欲
【あらゆる物を貪り尽くす暴飲暴食モード】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    次女の罵詈雑言の嵐
【悪意と侮蔑に満ちた心ない悪口】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    三女の羨みの手
自身が【羨望心】を感じると、レベル×1体の【相手の物を無理矢理奪おうとする無数の腕】が召喚される。相手の物を無理矢理奪おうとする無数の腕は羨望心を与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

桜宮・縒
世界には色んなシンデレラがいるものだね
……態々つっこまないよ?

それはさておき、王子様ね
長い夜色の髪はゆるく三つ編みにしてまとめよう
聖者の光を自分の回りにキラキラ光らせてみたらいいかな
王子様はキラキラしている存在だもんね
ヤドリガミ人生初の男装&王子様
どうかな、おかしくないかな?
……今思ったけど、みんな王子様ってなかなかすごい絵面だよね
あなたもキミもわたしもみんな王子様

意地悪三姉妹よりも早く動いて、霊力を籠めた栞を投げつけよう
狙いは三女の王子様、キミに決めた
栞はストックがたくさんあるからね、どんどんばしばし投げても大丈夫
王子様覚悟、キミたちを倒してドジっ子お姫様に逢いにいくよ



●百栞を追えば一栞も得られません
「世界にはいろんなシンデレラがいるものだね……」

 しみじみと頷くのは桜宮・縒(桜謐・f30280)。
 世界の数だけきっとシンデレラの物語があるんですよ、きっと。

「……態々つっこまないよ?」

 おっとこちらの考えを読まれてしまった!まあツッコんでもツッコまなくても特に何も変わりはないんですけどね。
 それはさておき、縒の眼前には王子様衣装がぽーんぽーんと飛び出すコスプレ衣装の森、ならぬプリンス衣装の森。
 この世界では王子様の衣装しか出てこないので必然的に女性は皆男装することになる。着なくてもいいが着なかったら着なかったでパワーアップの恩恵が得られないのが難しいところである。

「王子様ね……」

 さて、と衣装が飛び出す森を振り向くとばさ、と飛び出してきた衣装の一つが縒に直撃。
 痛くはないのでそのまま取って着ることにした。
 きっと自分に飛んできたということは自分に着て欲しくて飛び出したのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
 衣装も物もこの人だ、というものを選ぶことがある――ヤドリガミである彼女にはそれがどういうことかをよく理解している。
 きっとここの飛び出してくる衣装もそうなのではないか、と思うと直撃してきたこの衣装を着てみようかという気分にはなるものだ。
 さくっと衣装を着替えてから長い夜色の髪をゆるく三編みにして前に垂らす。丁度黄色系の衣装なのもあって良いアクセントになっている。
 そして聖者として放つ光を自身の周囲に散りばめるように広げれば仕上がりだ。

「――どうかな、おかしくないかな?」

 丁度近くに水辺があるので鏡代わりに確認してみる。
 星を彷彿とさせる衣装に漂う光は、縒本来の夜色の髪と桜色の瞳をより引き立てた素晴らしい出来栄え。
 ヤドリガミ人生初の男装は無事成功したと言っていいだろう。衣装を着たことでいつもより力が増しているという実感も相まっていた。

「……今思ったけど、みんな王子様ってなかなかすごい絵面だよね」

 仰る通りでございます。
 あなたもキミもわたしもみんな王子様。例えどのような種族だろうがどのような容姿であろうが、ここの衣装を着ればみんなたちまち王子様なのだ。
 凄い絵面以外に相応しい表現があるだろうか、いや多分ない。多分。
 何よりこれから待ち受けるオウガが……

「次女!そろそろ無くなりそうだから新しいの持ってきな!」
「なんであんたみたいなクソデブの為にあたしが尽くさなきゃいけないのさ!自分で取ってきてよ!」
「ああんアタシゃ姉だよ!ってこら三女!勝手に人のもの食うんじゃないよ!」
「だっておいしそうだったんだもん!いいじゃないわたしが食べたって!あんたただでさえ太ってんだから我慢した方がいいわよ?」

 とまあ、非常に仲が険悪な上に見た目も心も醜いことこの上ない三姉妹であるのだから。
 そんな三姉妹でも王子様の衣装を着てるんだから絵面が凄い。色々な意味で。
 だがそうして喧嘩しているのは猟兵にとって利以外の何者でもなく、敵影を確認するや否やと縒は早速霊力を込めた栞を投げつけた。

「あっ綺麗な栞!」

 手癖の悪い三女が早速反応、絶対姉二人には取らせるものかと呼び出された無数の腕と共に手を伸ばす。
 使い古されている故の手触りが心地よく、もっと欲しいと思い呼び出された腕が縒目掛けて伸びる伸びる。
 だがそれが縒の狙いであった。

「そんなに欲しいならあげるよ、ストックがたくさんあるからね」

 手元には何枚もの桜の栞。まるで手品のように手からいくらでも出てくるそれを、縒はばしばしと三女目掛けてとにかく投げつけた。
 無限にもあるかのような栞の群れを羨望の腕がひたすら掴んでいく。

「もっと!もっとちょうだい!」

 それでもまだ欲しがる欲張りな手癖の悪い三女。だがそれで欲張ったのが運の尽きであった。

「もうたくさんあげたでしょ?だからこれでおしまい」
「えっそんなぁ――うきゃっ!?」

 そう微笑んだ縒がユーベルコード【七星七縛符】を発動し、今まで投げつけた栞たちが連なり縄のようになって三女を拘束したのである。
 縒の投げつけた桜の栞全てに護符としての機能を有する為の術式が刻み込まれていたのだ。
 相手のユーベルコードでできた無数の腕は消失し、三女は一切身動きが取れない状態。
 長女と次女はくすくすと笑って助けるつもりは全くない模様。仲が険悪なだけありますね!

「あーあー捕まっちゃったよ」
「これだから手癖悪い奴は困るねえ」
「そこまで言うなら覚悟はできてるね?王子様。キミたちを倒してドジっ子お姫様に会いに行くよ」
「はん!三女ほど甘っちょろくないよ!やれるもんならやってみな!」

 バチバチと視線の間に飛び散る火花。
 ここに空前絶後のプリンスバトルの幕が、今、上がった……!

大成功 🔵​🔵​🔵​

霧島・クロト
――いや王子になっても
清廉潔白に見えねぇのは三姉妹補正すぎるだろ。

ったく、早着替えとか何処のアイドルだ。
射出される衣装を【見切り】、不要な衣装は回避しつつ早着替え。
ついでに【高速詠唱】から【指定UC】だ。
ほーれ、高速機動してちょっと口の悪い王子様がそっちいくぜー。

悪口雑言?結構結構。生まれたときから聞き飽きてる。
で、攻撃するように見せかけて――【フェイント】。
「ったく、悪口なんて吐くからその綺麗な顔が台無しじゃねぇか」
少しぐらいは夢見せてやるよ。

……まぁ、俺の間合いに入ったら
【高速詠唱】【属性攻撃】【マヒ攻撃】【罠使い】で
氷結トラップが起動するようになってるんだけどな?

※アドリブ可



●性格の悪い女というものは結構な確率でイケメンムーブに弱い(偏見)
 さて、意地悪な三姉妹であるが食い意地の貼った長女と口の悪い次女と手癖の悪い三女の3人で構成されている。
 見た目もその性格と意地悪さに相応しい見た目だ。
 そんな彼女らが王子様の衣装を着て、シンデレラの元へは向かわせまいと――本人たちがそう思っているかは別として――立ちはだかっているワケであるが。

「――いや、王子になっても清廉潔白に見えねえのは三姉妹補正すぎるだろ」

 グリモア猟兵から話を聞いて想像してみた結果、霧島・クロト(機巧魔術の凍滅機人・f02330)は真顔になった。
 まあ、そうですね確かに清廉潔白とは程遠い(可能な限りオブラートに包んだ表現)ですね!
 しかしそんな清廉潔白のせの字もない三姉妹を相手にするには自らも王子様の衣装に身を包む必要がある。
 何故ならここはハロウィンの国、つまり仮装は最前提中の最前提なのだ。

「ったく、早着替えとか何処のアイドルだ」

 森からぽんぽんぽぽぽんと出てくる王子様の衣装たちを見てぼやきながら見るからにサイズが合わない、柄じゃないといったモノは華麗に軌道を見切って回避。
 ガタイが良いとそれも踏まえてサイズを選ばないといけないのが大変ですね!
 そこまでこだわりがあるワケでもないのでこれでいいか、と思ったものを掴んで早着替え。
 王子様衣装とは言え布で造られた衣服であることに代わりはないし、機甲兵装に比べたら着るまでの過程も随分楽なのかもしれない――慣れている方が楽である可能性もあるにはあるが――。
 そうして着替え終わった衣装はいつも彼が纏ってる衣服に近い紫黒を基調とした王子様衣装。
 ところどころ混ざっている赤と真っ白なファーがワイルドさを彷彿とさせる彼らしいプリンスな装い。

「"北天に座す、貪狼の疾さを"」

 着替え終われば即高速詠唱。
 ユーベルコード【氷戒装法『神速の貪狼』】によりその身に纏う氷の波動が一見誰も寄せ付けぬクールさ……ではなく(衣装によりそれも醸し出す補正がこの時だけかかっているかもしれないが)、対高速戦闘用の魔術強化。
 その名の通り神速の如く森の中の衣装たちを寒風でぴゅん、と飛ばしていきながらちょっと口の悪い王子様が参ります。


「ううっ寒……何で10月なのにこんな寒い風が吹くのよ全くぶつぶつ……」

 その氷の波動が放つ冷気が風に混ざったのか、三姉妹の次女が悪態を吐いた。
 いや10月でも寒いものは寒いし暖かかったらそれはそれで暖冬なので良いかといわれるとそうでもない。
 しかしそんな季節の風にまで文句を垂れるその姿はまさしくNot清廉潔白。むしろ何にでも文句をつける辺りクレーマーそのもの、鯛焼き屋の主人としても理不尽なクレーマーはもちろん相応の対応をせねばなるまい。
 機巧魔術の凍滅機人……いや今この時だけは凍滅王子と呼ぶべきか、とにかくクロトは先手を切らんとそのまま高速機動で突っ込んだ。

「ほーれ、ちょっと口の悪い王子様がそっちいくぜー」
「は?何あんた突然やってきて急に王子様ぶっちゃって確かに王子様っぽいけどエレガントさがねえ――!」
「はいはい結構結構」

 罵詈雑言など生まれた時から飽きる程聞いてきたクロトからすれば次女の罵詈雑言など蚊に刺された程度、軽く受け流してそのまま間合いを詰めていく。

「きっっっっっっっっきなさいよ全く最近の若い男は人の話を聞かないわね前の彼氏もそうだったしその前の前の彼氏もそうだったし男ってみんなそうなのかしらァ!?」

 彼女いたのか、次女。
 無茶苦茶な言い分も当然の如く意に介さずそのままクロトは拳をぐ、と握る。
 あ、ヤバいと思ったのか次女はぎゅ、と眼を瞑った――刹那、少しばかり冷たい手が頬に触れる。

「……え?」
「――ったく、悪口なんて吐くからその綺麗な顔が台無しじゃねえか」

 思わず目を開けたら、至近距離でそう囁く王子様がそこにおりました。
 バイザーをつけたちょっとワイルドな紫黒の装い、年相応の男らしい低音ボイスの囁きに思わずどきん!と次女の心臓が高鳴る。

 ――やだ、よく見たらこいつめっちゃ顔いいじゃん……!!

 ほんのり優しい餡の香りが漂ったような気がしながら口の悪く素直になれない次女は顔を真っ赤にして目を逸らした。

「な、ななななな何よお世辞なんて吐いたところでアタシがのこのこと帰って行くとでmふぎゃっ」

 かち――――――ん。
 とてつもない寒気を感じた時には次女の身体はすっかり凍りついていた。
 こっそりクロトが仕込んでいた間合いに入った相手を氷結させるトラップ式の魔術式によるものである。
 どういうことかと言われると、拳を握ってから甘く囁くまでの過程は全てブラフだったということだ。

「少しは夢見れただろ」

 凍りついて返事もできない次女に対してふっと笑ってやるクロト。
 その姿も三姉妹からしたらすこぶるイケメンであり、だからこそ今の彼による一種のハニートラップは思わず寒気が走った。

「くっ……これだからイケメンは……っ!ちくしょう次女の奴羨ましい……」

 長女よ、それは本音ですか?
 偶然拾った鯛焼きやけ食いしながら次は自分かと怯えて――多分半ば期待して――待つのであった……

大成功 🔵​🔵​🔵​

木々水・サライ
燦斗(f29268)と

王子様の衣装だってよ、親父。
俺もアンタも王子様って言うには程遠いけど。
おい、俺の髪型変えようとするなバカ親父!!

ところで三人の姉妹、見るに耐えねぇなって思ったのは俺だけか?
……あっ、親父今笑ったろ。

さて、戦闘か。
親父が補助するって言うし、俺はメインに徹するか。
UC【強化された白黒人形】を使って一人呼んで、黒鉄刀持たせて溢れる闇に紛れつつ殴る。
親父の強化術も呼んだ方の人形に使わせるぞ。

俺自身は白銀刀で殴り込みに行く。
流石に代償がでけぇからな、少しふらつくかもしれねぇ。
闇に紛れることが出来るって楽だなァ。

っつーか親父、一応相手は女性なんだからよ。
ちょっとは優しくしてやれよ?


金宮・燦斗
サライ(f28416)と

ええ、王子様の衣装ですねえ。
王子様という年齢には程遠いですよ。私は。あなたは似合いますけど。
ああそうだ。その髪型、たまには変えてみたらどうですか?
私と同じ2本の三つ編みに……あ、ダメ?

……ふふっ。とても、麗しいですねぇ。衣装が。
え? 笑っていませんよ。笑うなんてとんでもない。
衣装に対して失礼じゃありませんか。

戦闘、ですか。
サライが呼び出した人形に対し、【ギタギタ血まみれ外科手術】を施してあげましょう。

私自身はサライが呼んだ闇に一緒に紛れつつ、リスティヒ・クリンゲ投げてますねえ。
あ、時々黒コートで相手の視界遮りつつ蹴りますね。

え、女性?
どこにそんなものがいるんでしょう?



●その親父、容赦なし
「王子様の衣装だってよ、親父」
「ええ、王子様の衣装ですねえ」

 顔を見合わせる木々水・サライ(《白黒人形》[モノクローム・ドール]・f28416)と金宮・燦斗(《奈落を好む医者》[Dr.アビス]・f29268)ら親子の目の前には森からぽんぽん飛び出してくる王子様衣装の群れが。
 森から王子様衣装が飛び出してくるって今更だけどめちゃくちゃシュールな光景である。あと森から飛び出す王子様衣装という字面が何か強い。

「俺もアンタも王子様って言うには程遠いけど」
「ええ、王子様という年齢には程遠いですよ、私は。あなたは似合いますけど」
「んなまさか」
「ああそうだ。その髪型たまには変えてみたらどうですか?私と同じ2本の三編みn」
「おい髪型変えようとするなバカ親父!!」
「あ、ダメ?」

 飛び出してくる衣装で手頃なものを掴んで着替えながら行われる親子のやりとり。一切の緊張感を感じさせないのは戦いの経験を積み重ねているからこそか。
 そんな感じで着替えた親子の王子様衣装は多少のデザインの差異はあれど比較的モノクロ調のモノ。アクセントに使われている赤がいい感じに引き立つシックでクールな王子様衣装である。
 例に漏れずそれを着ることによって得られるハロウィンパワー(勝手に名称)を手にいざ戦場へ向かうとかっちーんと凍らされた次女と、きゅぅと栞で締め付けられて気絶している三女。
 そしてイケメン恐ろしいと言いながら鯛焼きを貪っている長女の三姉妹が戦々恐々として――いや長女以外は表情作れる状態ではないが。とにかく戦々恐々として次なる猟兵たちを待ち受けていた。
 衣装はきっちり王子様衣装だが、長女の肥満体質が今にもボタンを跳ね飛ばしそうである。

「(……見るに耐えねぇなって思ったのは俺だけか?)」

 いや多分全員がそう思ってますよサライさん。めっちゃ真顔になるのもわかりますよ、ええ。

「……ふふっ。とても、麗しいですねえ――衣装が」
 
 一方燦斗はそのあまりにも見るに耐えない光景に思わず吹き出したがすぐにしれっと何事もないように感想を述べていた。
 そうっすね衣装は確かに麗しいですね!!

「あっ親父今笑ったろ」
「え?笑っていませんよ、笑うなんてとんでもない。衣 装 に 対 し て 失 礼 じ ゃ あ り ま せ ん か」

 衣装に対して、をやけに強調して言う燦斗にサライは、「そうか……」と棒読み気味に返すしかできなかった。
 尚このやりとり、明らかに相手に聞こえる声で行われている。全部聞こえておりますよお二人共!いや多分それが狙いなんでしょうけども!

「いきなりやってきて何勝手に侮辱してくれてんだよ!!あんたら性格悪いね!!」
「ええ……?」

 お前にだけは言われたかねえよとサライが顔で訴える。全くもってその通りとしか言いようがない。
 意地悪三姉妹って何で言われてるのかを知らないかのような厚顔無恥な台詞を吐かれればそりゃあ引いた顔もするワケで。
 しかし長女の面の皮は残念ながらサライたちが思うよりももっと分厚かった。
 腹を立てて鯛焼きをやけ食いし始めるが、怒りがエネルギーを大量消費するのか空腹により顔が狂気を帯び始め、ただならざる雰囲気を醸し出し始める。
 とそこへ、風で流れたのか森から飛び出してくる王子様衣装がやってくると長女はとてつもない速さでそれに食らいつくではないか。
 動いた者は皆ああして食われるということだろう。

「さて、戦闘か……」

 サライはユーベルコード【強化された白黒人形(エンチャント・モノクローム)】を発動。
 自身がしばらく事実上の血液――という名のオイル――不足になるが、それを代償にしただけの強化を施された複製義体を操ることのできるもの。
 それを確認すると燦斗もさて、と取り出した。……医療ノコギリを。
 一瞬何すんのお前、と思うがこれもちゃんとしたユーベルコード、闇医者らしい荒療治な【ギタギタ血まみれ外科手術】だ。
 ギュイィィィンと勢いよく音を立てる医療ノコギリという名目のチェーンソーで思い切り切りつけて強化、その後サライが『黒鉄刀』を複製義体に持たせると三人を闇が覆う。
 長女はぐるるる……とブルドッグのように唸りながら猟兵たちに即食らいつこうとする、だが闇に紛れた状態では姿を確認することができず先程からスカるばかり。
 それどころか逆に飛び込んできたのをいいことに燦斗は格好の的だと言わんばかりに黒コートで視界を遮りつつ思い切り蹴り飛ばす!

「ぐあぁあああおぅ!」

 最早女性とは思えぬ苦悶の叫びを上げる長女。
 そこにサライと複製義体がそれぞれ『白銀刀』『黒鉄刀』で斬りつけてやれば長女は生存本能が反応したのか一旦距離を取る。

「(闇に紛れることができるって楽だなァ……)」

 実はこの時サライは若干ふらついていたのだが、闇に紛れているのと燦斗がコートで相手の視界を覆った故に気取られずターゲットになることはなかったのだった。
 複製義体に使ったとはいえ400mlも自らの体内のオイルを使用すれば貧血的症状でふらつくのも仕方ない話であり、その分複製義体と燦斗がカバーをする形を取っていたのである。
 そして燦斗は距離を取った長女にこれでもかと愛器の一つである『リスティヒ・クリンゲ』をさくさく投げつけていた。
 長女のぷっくりふくよかな(可能な限り柔らかくかつポジティブにした表現)身体に次々突き刺さる狡猾な刃……流石にいたたまれなかったのかサライが口を挟む。

「……っつーか親父。一応相手は女性なんだからよ、ちょっとは優しくしてやれよ?」
「え、女性……?

 ど こ に そ ん な も の が い る ん で し ょ う ?」

 え、ここにいるのブルドッグでは?と言いたげに首を傾げる父。
 息子は「アッハイ」と答えて何も言わなかったことにした。
 まあ確かにぷくぷくとした柔らかそうな(可能な限りポジティブな表現)容姿だしナイフの一つや二つ突き刺さったところでどうもしないかもしれないけれども……
 敵を倒す上では最適なんだろうけども、女性を一方的に攻撃する様を見るのはやはり何ともいたたまれない気持ちになるジェントルマンなサライであった。
 そういうところ多分王子様に向いてますよ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【不死蝶】
まるでゲームの世界の歌って踊れるイケメンが
着てそうなキラキラ王子様衣装

あはは、王子様スタイルで真っ黒グラサンだなんて
違和感が凄いねー梓
あれかな?グラサンの下には
キラキラの素顔が隠されているとか?

彼女たちがシンデレラにこき使われてる三姉妹かぁ
よし、じゃあそこの(お菓子が)可愛らしい
赤いお嬢さんにお相手願おうか
まずはこっそりとPhantomを戦場に放つ
直後、複数のナイフを念動力で
でたらめに高速で飛ばしまくる
理性を失った彼女は飛んでるナイフすら
食べ物と錯覚して追いかけ回すのかな
敵がナイフに気を取られている隙にUC発動
紅い鎖で捕縛し、動きを封じ込める

さぁ、仕上げは梓王子様にお任せするよ


乱獅子・梓
【不死蝶】
綾とは色違い同デザインの王子様衣装

女装やゲテモノなコスプレをさせられるよりは
よっぽどマシなわけだが…
な、なんか落ち着かないなこのキラキラ感
グラサンはお前もだろうが!

うわぁ、またインパクトのあるオウガだな…
真ん中の赤い奴、ボタンが留められていな……
いや、これ以上は言うのやめておこう

よっしゃ、よくやった綾!
トドメは俺に任せろ!
焔のブレスで丸焼きに…してやろうと思ったが
相手がオウガでも、見た目が何だかアレでも
どうにも気が引ける
もしかしてこの衣装のせいで
気分まで王子様寄りになっている…!?
そんな特殊効果ねーよとセルフツッコミしつつ
ええい、ならば零!来い!
UC発動し、零の咆哮で眠りにつかせる



●王子様衣装による優しさ補正とは
「まるでゲームの世界の歌って踊れるイケメンが着てそうなキラキラ王子様衣装だね」

 灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は自分の選んだ衣装を着てから、改めて感想を口にした。
 今着ているのは赤と黒を基調にした彼の感想通りのアイドル風味を醸し出した動きやすそうな王子様衣装である。
 綾の相棒、乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)も同じアイドル風味で色合いが違うだけの衣装を身に纏っていた。綾とは対照的な青と白の王子様衣装。
 まさに相棒らしい対照感。長身のイケメン二人のアイドルプリンス、売れそうですね!

「……女装やゲテモノなコスプレをさせられるよりはよっぽどマシなワケだが……」

 普段の衣服とは程遠いキラキラ感にもぞもぞと忙しない様子の梓であった。
 確かにダークセイヴァーどころか他の世界でも中々着ることない服ですからね!

「な、なんか……落ち着かないな……このキラキラ感……」
「あはは、王子様スタイルで真っ黒グラサンだなんて違和感が凄いねー梓」
「放っとけっつかグラサンはお前もだろうが!」
「あはははは。あれかな?グラサンの下のはキラキラの素顔が隠されているとか?」

 確かにそのグラサンの下は非常に気になる……とそれはさておき、衣装を着たなら後はやることをやるだけだ。
 先程の戦いから次女と三女は一発でノックアウトされ、残るは長女のみのままである。
 ユーベルコードで超常的な耐久力を手に入れている長女は腹ごしらえにひたすら鯛焼きとクッキーとパンケーキとキャンディとクロワッサンとスティックパンとかぼちゃパイとショートケーキとその他諸々お菓子をとにかく頬張っていた。
 先程から刃をぷすぷすと刺されていたので王子様衣装もボロボロだ。

「彼女たちがシンデレラにこき使われてる三姉妹かあ……何かもう一人しかいないみたいだけど」
「うわぁ……またインパクトのあるオウガだな……ボタンが留められていnいや、これ以上言うのはやめておこう……」

 長女のボタンは空腹でがっついたせいかついにはボタンがぱちーんとはちきれていた。何てこったい。
 それ以上言わずにいてあげた梓の優しさよ……まあ、長女は今完全に理性が飛んでてそんなのわからないのであるが。
 とはいえ今は食べるのに夢中で全く気づいていない――つまり、不意打ちするなら今ということである。

「よし、じゃあ早速(お菓子が)可愛らしい赤いお嬢さんにお相手願おうか」

 そう言って綾が呼び寄せたのは紅に光るオーラで構成された蝶『Phantom』たち。
 ひらひらぱたぱた、綺麗な翅をはためかせて飛ぶ蝶たちが長女の目に映ればぐわ、と口を開けて食べようとする。
 その形相は最早女性とは程遠くただのライオン(※可能な限りポジティブかつ柔らかくした表現)だ。
 しかし目の前を超高速で飛んできたナイフが通り過ぎたことですぐにそちらに意識を奪われ、食べ物と錯覚したのか今まで食べていたものもその場に置き捨てて走り出す。
 そしてその一本にあと少しで届く、といったところで次はまた別のナイフが目の前を通り過ぎる。

「うがァァッ!!」

 女性とは名ばかりな雄叫びを上げ、次々飛んでくるナイフを食らってやろうとひたすら右往左往する長女。
 もちろん、全て綾の手の内である。
 念動力を用いて次々に投げつけてやれば、理性のない状態の長女は食べ物と錯覚しそれをひたすら追いかけ回すだろう――という予測を立てた上での行動だ。
 策士によって踊らされ溺れる結末が既に出来上がっていたのである。

「――"離してあげないから、覚悟してね"?」

 理性を喪失している状態では聞こえないであろう詠唱を、敢えて囁くように。
 多分聞こえていたら長女はあまりのイケメンパワーに沈むこと間違いなし、もったいない!
 というのはさておき、ユーベルコード【ロンサム・ファントム】によりぱたぱたと飛んでいた蝶たちが一瞬にして鎖と化し長女を縛り上げる。
 この鎖は綾が解除しない限りけっして破壊されることはない。
 長女は飛び交うナイフを追いかけようとじたばたもがき、だらだらと流してる唾液があちらこちらに飛び散っていく。女子とは何だっただろうか。

「さあ、仕上げは梓王子様にお任せするよ」
「よっしゃ、よくやった綾!トドメは俺に任せろ!」

 ここでバトンタッチ。
 梓は相棒の一人である炎竜の『焔』を呼び、この子のブレスで丸焼きに――しようと思ったのだが何故か踏み留まる。

「……」
「梓?」
「うーん、どうにも気が引ける……」

 何故だろうか、相手はオウガで見た目が何だかというか何だかという言葉をつける必要もなくアレな状態になってしまっているというのに気が引けてしまうのだ。
 別に容赦する必要は全くないにも関わらず、である。
 普段ならここで容赦なく呼び出して丸焼きにしているハズが、何故か謎の葛藤が始まり踏みとどまってしまう。

「……はっ!もしかしてこの衣装のせいで気分まで王子様寄りになっていrいやそんな特殊効果ねーよ!!!!」

 謎の葛藤が続きすぎてセルフツッコミまでしてしまう始末。
 だがしかし、彼らの前にやってきた親子のやりとりを考えると……もしかしたら王子様衣装の王子様オーラの影響を受けてしまう人もいなくもないのかもしれない。
 ないとは言い切れませんよ梓さん!

「ええい、ならば零!来い!」
「ガウ!」
「"歌え、氷晶の歌姫よ"!」

 代わりに呼んだのはもう一匹の相棒、氷竜の『零』。
 ユーベルコード【葬送龍歌(クリスタルレクイエム)】の術式を施された彼(彼女?)が上げる咆哮はとても神秘的で荘厳な響きで眠りを齎し、生命力に直接ダメージを与える。
 うがーと唸って暴れていた長女はあっという間にいびきを立てて眠り始めたが、生命力そのものを直に削られたため段々いびきも弱々しくなっていく。
 しかし、痛みも何もなく眠るように終わりを迎えられるというのはある意味で幸せなのかもしれない。
 拘束されていた三女と氷漬けになっていた次女も零の咆哮により眠りに誘われ、何が起きたのかを理解することなく力尽き灰になっていった。

「……終わったな」
「じゃあ次行こうか、シンデレラが首を長くして王子様を待ってるだろうしね」
「そうだな……」

 綾が先に歩を進め、その後に梓がついていく形で先へ進む。
 ――もしや、シンデレラと対峙する時も王子様衣装補正により躊躇ったりしてしまわないだろうか。そんな不安が梓の脳内を過った……かもしれないし、そうじゃないかもしれない。

「いやだからそんな特殊効果ねえって!」

 いやマジでないとは言い切れませんよ!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『シンデレラ』

POW   :    カボチャキャバリア
自身が操縦する【カボチャの馬車に乗り、そ】の【UC耐性を持つ馬車の重装甲】と【轢き逃げ攻撃の威力・速度】を増強する。
SPD   :    魔性の硝子細工
【ガラスの靴】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、ガラスの靴から何度でも発動できる。
WIZ   :    ビードロキック
【防御貫通効果を持つ、蹴り】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●食べたい、けど食べられない。そんな葛藤
「ああ、ああ……王子様がせっかく料理を作りにきてくれているのに食べられないなんて……っ」

 シンデレラはガラスのお城で葛藤していた。
 そう、彼女は王子様にガラスの靴じゃなくてお菓子を持って迎えにきて欲しい――ハロウィンの国の力もあるのかそんなことを思っている。
 しかし、一度食べたら最後。

 待つのは 死 のみである。

「オウガ・オリジン様はなんて残酷なことを私に課してしまったのかしら……っ!きっと素敵な王子様がお菓子を持って「トリックオアトリート!」って言ってくれるでしょうのにっ、それを食べたくても食べられないなんて……!」

 このシンデレラはガラスの靴が慣れぬばかりに階段から滑り落ちてその短い生涯を終えてしまった。
 12時の鐘が鳴る前に、夢が終わりを告げる前に。還るどころか三途の川を一度渡ってしまったのがそれは悔しくて悔しくて。
 だから今度こそは私だけの王子様を見つけてみせると気合を入れて現世に還ってきたというのに、その王子様にトリックオアトリートを問われ、トリートを選んでしまったら文字通り最期が待っている。
 ……猟兵やアリスたちより先にシンデレラが絶望寸前じゃね?

「仕方ないわ……こうなったらたくさんトリックしてもらうしか!あっ私の方からトリックしてしまうのもいいわね……」

 そんなことありませんでした。
 すぐに思考を切り替えプラスに考えられるこのシンデレラ、とても逞しい。

 プリンス・イェーガー諸兄に今、こんなおてんばシンデレラの接待が求められていた――!
灰神楽・綾
【不死蝶】
さっきの三姉妹はなかなかに
個性とインパクトのあるオウガだったけど
シンデレラはまともそうだねぇ
俺はトリック、梓はトリート担当か
梓の手料理は美味しいからね
アリスラビリンスの戦争でお菓子作りに目覚め
どんどん女子力が上がってることを俺は知ってる
ちゃんと俺の分も残しておくんだよ?

お姫様、もうすぐ梓王子様が
美味しいお菓子を持ってきてくれるから
それまで俺と踊りましょう?

まずはUC発動、ヴァンパイアへと姿を変え…
ヴァンパイアのプリンスかぁ
ちょっと属性盛り過ぎな気もするけど

敵の射程に入らないように飛翔能力で飛び回りつつ
上空からナイフを投げて動きを妨害
どうせ倒せないし躱して邪魔して時間稼ぎに徹する


乱獅子・梓
【不死蝶】
ガラスの靴で蹴り入れたり
南瓜戦車を乗りこなすシンデレラは
果たしてまともなのか??俺は訝しんだ
まぁとにかく、料理は俺に任せろ
お姫様の相手は頼んだぞ!

今回作るのは…美味しい!可愛い!簡単!
三種類の味が楽しめる一口パイだ!
(料理番組風に喋り始める
パイ生地を一から作るのはかなり大変だが
ここに便利なパイシートがある
あると言ったらある

クッキーの型を使って
パイシートを好きな形にくり抜く
ハート、星、花、猫、おばけ、蝙蝠…
そしてくり抜いた同じ形の2枚のシートで
具材を挟んでオーブンで焼くだけ
具材はチョコ、苺ジャム、
ハロウィンらしい南瓜ジャムを用意
お姫様にぴったりな、見た目も味も
可愛く楽しいお菓子の完成だ



●Shall We?
 シンデレラは今ズギュゥゥゥン、とハートが撃ち抜かれる音がしたのをひしひしと感じていた。

「さっきの三姉妹は中々に個性とインパクトのあるオウガだったけど、シンデレラはまともそうだねぇ」
「ガラスの靴で蹴り入れたり南瓜戦車を乗りこなすシンデレラは果たしてまともなのか??俺は訝しんだ」

 何故なら眼の前に現れたプリンス二人がとてつもなくイケメンだったのである。
 グラサンをかけた対になる赤黒と青白の衣装に身を包んだ二人のプリンス、灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)と乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)。
 ところで梓さんの疑問に答えるとおてんば姫様と考えればガラスの靴で蹴りを入れる部分はまともかと思われます。
 南瓜戦車?ノーコメント。

「……素敵……!」

 頬に手を当て、二人のイケメンっぷりにうっとりのシンデレラ。
 願わくばそのグラサンの下も見たいという欲望が湧き上がる。
 ああ、何故彼らのお菓子を受け取ってはいけないのか!うっとりした後がくっとうなだれた。

「……運命って残酷ね……」

 イケメンに振る舞われた料理を食べたら死ぬのが確定なのは残酷と言えば残酷っすね。

「……まあ、とにかく料理は俺に任せろ」
「梓の手料理はおいしいからね。アリスラビリンスの戦争でお菓子作りに目覚め、どんどん女子力が上がってることを俺は知ってる」
「わざわざ言わんでいいわ!?まあいいや、お姫様の相手は頼んだぞ!」
「ちゃんと俺の分も残しておくんだよ?」

 迷宮災厄戦は様々な経験値を猟兵に与えたものである。
 というワケで、トリート担当梓は厨房へと脚を運んでいく。
 ああ行かないでと手を伸ばすシンデレラの手をさっと取るのはトリック担当の綾の役目だ。

「お姫様、もうすぐ梓王子様が美味しいお菓子を持ってきてくれるから、それまで俺と踊りましょう?」
「あっ……!」

 赤いグラサンから覗かせるにこやかな眼と優しい語り口にシンデレラはまたもや夢見心地のご様子。
 ああこのまま手を取っていたい、私が見ているのは本当に現実?夢なんじゃないの???などなど様々な思考が巡り巡って頭はくらくらだ。
 その間に綾はユーベルコード【オクスブラッド・エンペラー】を発動。
 紅い蝶が回りを羽ばたき始めたかと思うと、目の前の王子様から黒い翼が広がって――ヴァンパイアプリンスの誕生である。
 まあ、とシンデレラは目を丸くしながらもその艶やかな姿に再びうっとり。

「(ヴァンパイアのプリンスってちょっと属性盛りすぎな気もするけど……まあいいか)」

 シンデレラは属性過多でも気にならないみたいだしカッコいいからいいと思います!

●梓王子のハロウィンクッキング
 \テケテンテンテンテンテン♪テケテンテンテンテンテン♪/
 ではここで一旦厨房に視点を移すことにしよう。何かどっかで聴いたことのある音楽が流れてませんかって?気の所為ですよ気の所為。
 梓王子、今回は何をお作りになるんですか?

「今回作るのは……美味しい!可愛い!簡単!三種類の味が楽しめる一口パイだ!」

 さながら料理番組のパーソナリティ顔負けの切り出しから始まった。
 一口パイおいしそうですけどパイ生地を一から作るの大変じゃないですか?

「確かにパイ生地を一から作るのはかなり大変だが――ここに便利なパイシートがある。あると言ったらある」

 そう言うと梓の手元には解凍済みのパイシート。
 ハロウィンの国はオウガ・オリジンの現実改変ユーベルコードによって造られた国である。
 つまり、ハロウィンの国の力はそれの残滓とも言えるワケで。
 あると念じればそこにあったという結果を生み出すことができる――敵の力を有効利用して簡単お手軽クッキングとは、流石梓王子ですね!

「まずはクッキーの型を使ってパイシートを好きな形にくり抜く」

 ハート、星、花、猫、おばけ、蝙蝠などなど。
 たくさんの可愛らしいクッキー型でパイシートを2枚ずつくり抜いてから、次に取り出すのは中に挟む具材。
 
「具材はチョコ、苺ジャム、ハロウィンらしい南瓜ジャムを用意した」

 南瓜ジャムとはまた手の込んだモノが用意されましたね。
 南瓜を使って作るものはだいたい外れがないのでジャムにしても間違いなくおいしいだろう。
 ともあれ取り出した具材をそれぞれ2枚ずつくり抜いたパイ生地で挟み、トレーに乗せた後溶いた卵黄を刷毛で塗ってからオーブンへ……
 十分に熱された中でじっくり焼き上げれば膨らんだ綺麗なきつね色に大変身。
 あとはそれをハロウィンらしくバスケットに飾り付けるように詰め込んで。

「よし、お姫様にぴったりな見た目も味も可愛く楽しいお菓子の完成だ!」

 ウルトラ上手に焼けた一口パイを手に、梓は戦場へと戻るのであった――


 では戦場に視点を戻しまして、シンデレラと綾王子は激しいダンスを繰り広げていた。
 具体的に言うとシンデレラが隙を見て綾に蹴りを入れようとするのでそれを飛び上がって回避し、上空からナイフを投げ続けるだけの簡単な戦闘である。
 どの道料理を食べさせない限り倒す手立てはないので時間稼ぎをしていたのだ。
 
「王子様ぁー!降りてきて私と踊ってくださいましーっ!」
「そうしてあげたいのは山々だけどねえ」

 とにこにことはぐらかしながら厨房へと近づけまいと飛翔した状態で誘導する綾。
 シンデレラは追いかけるのに疲れたのか何と南瓜の馬車まで取り出した。
 とにかく追いかけ続ける気満々であるが、そんな追いかけっこももう終わる。
 香ばしく甘い、とーってもおいしそうなお菓子の匂いが漂ってきたのだ――!

「はっ!このおいしそうな香りは……!」
「お待たせしました、お姫様」

 芝居がかったようにそう言ってみせながら、梓はバスケットの中にある一口パイの群れをシンデレラに見せつけた。
 色々な可愛らしい形の一口パイ、それぞれ中に入っている具材の香りが、口の中で唾液を大量に分泌させざるを得ない程に食欲を刺激してくる……!

「ああっ、食べたい……食べたいけどそれを食べたら私は……っ!」

 葛藤するシンデレラ。
 何でこんなにおいしそうでしかもカッコいい素敵な王子様が作ってくれた一口パイを食べてはいけないのか。
 ……やっぱり猟兵たちよりオウガの方が絶望してませんかこのハロウィンの国。オウガ・オリジンの目論見が本末転倒している瞬間では?

「先一個もらっていい?」
「一個だけな。後はあっちが食ってから」
「はいはい。じゃあ一つだけいただきます」

 一方綾はすたっと降り立って梓からパイを受け取ってひょい、と口に放り込む。
 苺ジャムの甘酸っぱい風味とパイのサクサク感と香ばしさが相まった文句なしの美味しさが口の中いっぱいに広がり、普段からにこやかな綾の表情がますます綻んだ。

「うーん、美味しい。この前食べたパイよりおいしい気がする、梓女子力また上がった?」
「女子力って言うんじゃありません」

 可愛らしいクッキー型取り出している時点で大分女子力高いのでその評価は避けられない気もする。
 ああ本当においしいんだ……と、シンデレラはその光景を見て歯を食い縛る。
 だって食べたくても食べられないんだもん、なら食い縛って耐えるしか――!
 ハロウィンの国のオウガとしての特性――"美味しい料理が出来上がったら食べるしかなくなる"というものに必死に抗うシンデレラであったが。

「はい、お姫様。あーん」
「あーん」

 綾王子がパイを手に差し出してくるという至上の誘惑に速攻で負けを決めたのでありました。
 イケメンにあーんされたら誰だって耐えられないから仕方ないね。

「……ああっ、おいしい……!!」

 口の中に広がるたまらないおいしさにシンデレラは幸せそうな表情を浮かべながら、力を奪われその場に突っ伏したのでありました――……

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

霧島・クロト
いやあ、一説にはシンデレラは
カポエイラの達人って話もあるけどさ……
轢き逃げアタックまでは聞いてねェよ。

(【指定UC】で顔の良い援軍を呼び出し)
……わりぃ、リュウ。
ちょっと暴走気味な姫君に給餌すんの手伝ってくれね?
……衣装は(そこら辺から引っ掴んできたの)貸すから。

かぼちゃの馬車を気合で止めて引きずり下ろす。
具体的には俺かリュウのどっちかで
【見切り】、【怪力】で無理矢理引っ掴んでから車輪を
氷の【属性攻撃】で強制停止させての――

たーく、そんだけ暴れたら折角のモンブラン台無しじゃねぇの。
季節柄かぼちゃのモンブランなんだけどさ。
ぐちゃぐちゃになる前に
「トリック・オア・トリート」……ってな?

※アドリブ可



●パワフル馬車と姫と兄弟とスイーツと
「ううっ、おいしい……おいしいけどこのままじゃ死んでしまうっ!」

 そう焦ったシンデレラは慌てて南瓜の馬車に乗り込んだ。
 先程のおいしい一口パイ、本当においしかったし王子様にあーんしてもらえて最高に夢見心地を味わえたのは本当に幸せだと思う。
 だが、まだ自分は死ねないのだ。運命の王子様にまだ出会えていないのだから……!

「私は……私はっ、王子様にっ、会いに行くのよぉおおおおおおおおおおおおっっ!!!!!」

 がらがらがら、けたたましい音を立てて南瓜の馬車が走る走る。
 運命の王子様を探し、自分で馬の尻を鞭で叩いて走る走る。
 その速度たるや大凡380km/hの速度はあるだろうか――よくまあ馬車でこのような力を出せるものだと感心すらする。
 流石はガラスの靴で盛大に防御貫通の蹴りをぶちかますシンデレラである。
 先程おいしい料理を一つ食べたというにも関わらず元気そうなご様子、南瓜の馬車は衣装の森から飛び出す王子様衣装も轢き飛ばして走っている……

「――いやあ、一説にはシンデレラはカポエイラの達人って話もあるけどさ……轢き逃げアタックまでは聞いてねえよ」

 霧島・クロト(機巧魔術の凍滅機人・f02330)はまた真顔になっていた。
 まあレーシングカーばりの速度の南瓜の馬車で轢き逃げするシンデレラは流石にどこの世界でもいないだろう――いやここも世界なんだけどね、アリスラビリンスっていう。
 とっておきの甘味を用意したはいいが、この状態では食べさせる以前の問題だ。

「はあ……仕方ねえな」

 ため息をついた後、クロトはユーベルコードによる召喚術式を組み上げる。

「"北天に座す、七天よ――凍龍の暴威を、解き放て"」

 自らの魔力を捧げることで呼び出されるはかつてコンキスタドールであった『凍龍の支配者』リュウガ、クロトの弟である。
 色合いの青い龍を象ったボディデザインと派手めな髪型が特徴的だが、本人の気質は至って温厚だ。

「クロ、戦闘か?」
「……わりぃ、リュウ。ちょっと暴走気味な姫君に給餌すんの手伝ってくれね?衣装は……」

 ぽーん、とそこへ飛んでくる王子様衣装。
 多分シンデレラが轢き逃げしていった可哀想な(?)衣装だが、一切汚れてないしサイズも丁度良さそうな上、リュウガが普段纏っているものに近い色合いのものだ。

「貸すから」
「ふむ……」

 丁度いいやとその衣装を引っ掴んでリュウガに手渡すクロト。
 変わった国だな、と思いながら弟は兄から衣装を受け取った……


 南瓜の馬車はハロウィンの国中を所狭しと駆け巡っていた。
 しかし恐らくお菓子を食べたことによるパワーダウンの影響、あるいは元々の特性なのか国から出ることはなく、その上自分が住んでいるお城付近より遠くへは決して向かおうとしない模様。

「あのお姫様を馬車から下ろせばいいんだな?」
「そういうこった。それでこれを食わせる」

 そう言ってクロトが取り出したのは彼の手作りであるとっておきの甘味。
 これを食べることで劇的にパワーダウンするという話は聞いても不思議だなと首を傾げながらもリュウガはそれを見てこう言った。

「なら、俺が馬車を止める役に回った方がいいだろう。菓子の形が崩れるのは避けるべきだ」
「そう言うんならお言葉に甘えようかね。もちろん援護はするぜ、元は俺が頼んだんだから」
「何、兄弟の頼みを聞くのは当然のことだろう?」

 ふ、と微笑んだ後、リュウガは丁度真下を走ろうとしている南瓜の馬車を認識し、立ちふさがるように降り立つ。
 ウォーミングアップに軽く腕を回して立ちはだかる新たな王子にシンデレラは慌てた表情を浮かべた。

「おっ、王子様!?新しい王子様っっ!?あ、ちょ、ちょっと待ってスピード下げらんないあっ待っぶつかる待ってまってまって避けてえええええええ!?」

 突然目の前に壁ができた時に急ブレーキをかけられますか?答えは否だ。
 これが自動車であったならギリギリ間に合う可能性はあるがこちらは馬車、しかもユーベルコードにより極限まで轢き逃げ特化にスピードと威力を増加させられている。
 そんなのが一女性のブレーキで止まるか?止まらないだろう……いやまあ、あんたみたいなお転婆姫がいるかと言われたらおしまいですけど。
 そもそもこんなん操縦してる時点でそういう議論はできないというツッコミもご尤もだが、轢き逃げの威力を特化させながらも王子様は轢きたくないというシンデレラの心情が表れていると思って欲しい。 
 そんなシンデレラと馬車を前にリュウガはすぅ、と息を吸い込んだ後に思い切り真正面から受け止めた。ぶつかっても自身の急所に当たらぬであろう位置を正確に見抜き、そこから馬車を引っ掴んだのである。
 スピードは確かに急激に下がったが、それでもとてつもない勢いで馬車の車輪は周り続ける。

「ちょいと大人しくしな、お姫様ッ!」
「え!?――寒ッ!!!?」

 それを後方からクロトが追いかけ、氷魔法で車輪を地面ごと凍結させる。
 地面を擦る摩擦熱で凍るまでに若干の時間はかかったが、無事リュウガが壁に激突する前に南瓜の馬車を止めることに成功。
 シンデレラはその時発生した寒さに思わず馬車の中に引っ込んでしまったがもちろん、その扉はがちゃりと開けまして。

「……たーく、そんだけ暴れたら折角のモンブラン台無しじゃねぇの。季節柄かぼちゃのモンブランなんだけどさ」

 クロトの手には小皿に乗った綺麗に造られたかぼちゃのモンブラン。
 そしてリュウガがいつの間に用意したのかティーポットとカップの乗ったトレイを携えて、霧島兄弟による給餌が始まる。
 
「ぐちゃぐちゃになる前に"トリック・オア・トリート"……ってな?」
「合う紅茶は用意した。好きなだけ召し上がるといい」

 いきなり顔を覗かせた新たなイケメン王子二人にシンデレラは。

「…………ありがたくいただきます!!!」

 差し出されたモンブランと紅茶を即受け取って舌鼓を打ちましたとさ。
 おいしいけど力が抜けていくのにしくしくと悲しみながら……仕方ないね、そういうオウガになっちゃったんだもん。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木々水・サライ
燦斗(f29268)と

シンデレラってさあ……ガラスの靴を落とすんだよな?
それで魔法が解けるからとそのまま置いて行くんだっけ。

……ハロウィンだから頭おかしくなった? うちの親父みたいに。

って親父いいいいい!!!!
パイ投げ用のパイなんてどっから出したあああ!!??
さっきまで持ってなかっただろおおぉぉ!!??

流石にこれじゃ怒るのも当たり前だよ!!!
UC【無謀な千本刀の白黒人形】使いつつ、刀をフル装備で戦わせてもらう!!
回避率を上げねぇとうちの親父にも当たるからな!!!

だからなんでアンタはいつも煽ることしかやんねぇんだよ!?
俺のツッコミの労力を考えろよバカ親父!!


金宮・燦斗
サライ(f28416)と

ガラスの靴を落とすはずが、ガラスの靴で落としてますねえ。

サライ、今のは聞かなかったことにしますよ。
帰ったらお仕置きですが。

おや、トリートがほしい?
あいにく私達、料理は殆ど作らない主義でしてねぇ……。
(そう言いながらパイ準備)

サライが頑張るみたいですし、私はUC【命削る影の槍】発動させつつ敵の周囲を走りますか。
パイ投げも忘れずに、ね?
叩き込むのもいいかもしれませんね?

たった30cmの相手にしか蹴りを入れられないなんて可哀想ですよねぇ。
その足の長さが短いんでしょうか?
ああ、失礼。あんなご姉妹がいらっしゃるなら身体がさぞ重いんでしょうね。



●サディスティック・トリート
 最後にシンデレラに給餌をするのは木々水・サライ(《白黒人形》[モノクローム・ドール]・f28416)と金宮・燦斗(《奈落を好む医者》[Dr.アビス]・f29268)親子。
 いや、これから行われることを果たして給餌と言って良いのだろうか?

「うええええん!!!おいしいのに、おいしいのにいいいいいいいいいい!!!!」

 シンデレラは泣きながらお城の壁をガラスの靴でごつーんごつーんと蹴っているが、今まで食べたお菓子の力ですっかり弱くなったようでマンホール程度の穴しかできなくなっていた。
 ――いや穴が空くだけで十分では?

「……シンデレラってさあ、ガラスの靴を落とすんだよな?」
「そうですね」
「それで魔法が解けるからとそのまま置いて行くんだっけ」
「ガラスの靴を落とすハズが、ガラスの靴で(壁を)落としてますねえ」

 燦斗はそれをにこにこと眺めているが、サライは真顔になっている。いやむしろ虚無すら見える顔だ。

「…………ハロウィンだから頭おかしくなった?うちの親父みたいに」
「サライ、今のは聞かなかったことにしますよ。帰ったらお仕置きですが」
「聞いてんじゃねえか」

 サライが真横でツッコミを入れるが華麗にスルーし、燦斗はこちらに気づいたシンデレラに応対する。

「貴方たちは……貴方たちも私にお菓子を……?」
「おや、トリートが欲しい?」
「いや、あの私まだ何も」
「あいにく私達、料理は殆ど作らない主義でしてねぇ……」

 シンデレラの言葉を遮り燦斗が用意したのは――パイ。
 ほら、よく番組で見るじゃないですか。顔にぶつけるタイプのやつ。

「って親父。それ何」
「何ってお菓子ですよ」
「いやそうじゃなくてそのパイ投げ用のパイなんてどっから出した」
「ほらシンデレラ、トリートですよー」
「いやだから聞けよ親――」

 \べちゃあ/

 有無を言わさずシンデレラの顔にパイが叩きつけられる。

「親父ィィィィィィィィッッ!!!!!!!!!!!!」

 サライは思わず燦斗の胸ぐらを引っ掴んでぐらぐら揺さぶった。

「さっきまで持ってなかっただろォォオオオオ!!!!?どっから出したァァァァァ!?!?!?」
「はて何のことやら」
「何のことやらじゃねえェェェエエエエエエエエエエエエエエエエッッ!!!!!!」

 戦うよりもこの父親の相手をする方で体力が著しく削られそうである。
 ただでさえさっきオイルを消費して貧血気味なのにこんなに叫べばめまいまでしてくる錯覚すら覚える。

「…………」

 シンデレラは黙ってガァン!と勢いよくガラスの靴のヒールで大地を踏みしめる。
 びきびき、と派手に入るヒビが先程開けた壁の穴にさらなる刺激を加え、壁には立派な大穴が空いた。
 最早語るに及ばず、殺す――そうパイ塗れの顔で語りかけている。

「おやおや、怒らせてしまいましたねえ」
「流石に怒るのも当たり前だよ!!!!!!!!!アンタのせいだろ!!!!!!!!!!!!!!」
「ええ?私はトリートを差し上げただけなんですが……」
「すっとぼけんなァァァ!!!!!!!!!!」

 ひとしきり叫んでぜーはーぜーはーと息を切らすサライ、その顔は最早諦めに満ちていた。
 そうこうしている間にシンデレラはその渾身の蹴りを見舞わんとしてくるのだからやらなければこちらがやられる。
 幸いこのパイも美味しいことには美味しかったようでさらなる弱体化はできているのだが――多分怒りで相殺されてますねこれは?と言わんばかりに勢いよくガラスの靴のヒールが当たった先にクレーターなり大穴なりを作っていた。

「はあ、仕方ねえ……フル装備で戦わせてもらう!!」

 そろそろ親子喧嘩(恐らくほぼほぼ一方的)は置いておかないといけない。サライは諦めて戦闘態勢に入り、自らの持つ刀全てを持ち出しユーベルコード【無謀な千本刀の白黒人形(レックレス・モノクローム)】を発動。
 これは自らの装備している武器の数が相手を上回っていればあらゆる攻撃と威力、回避の精度が通常の3倍にまで跳ね上がるものだ。
 刀を宙に舞わせながら、般若の如き怒りの表情で振るわれるシンデレラの蹴りをかわしつつ一撃を見舞おうとサライは最初の一本を手に取る。
 幸いシンデレラの蹴りは半径30cm以内の対象にしか当てることができないようだ。強化せずとも距離を少し取ればあっという間に不発に終わる。

「たった30cmの相手にしか蹴りを入れられないなんて可哀想ですよねぇ……その足の長さが短いんでしょうか?」

 燦斗は挑発しながらシンデレラの周りを走り回る。シンデレラの般若の顔が般若の領域を越えようとしていた。

「だから親父……ッッ!!」
「ああ、失礼。あんなご姉妹がいらっしゃるなら身体がさぞ重いんでしょうね」
「親父ィイイイイイイイイイイッッ!!!!!!」

 サライは叫びながらシンデレラに一本目、『黒鉄刀』を見舞う。
 燦斗に対しての殺意が膨れ上がりすぎたシンデレラには完全な不意打ちとなったのか悲鳴を上げて傷口を抑える。

 ――そしてそこに燦斗が追い打ちと言わんばかりにパイを追加で顔に投げつけた!

「だァ―――――かァ―――――らァァァァァァァァッッッ!!!!!なんでアンタはいつも煽ることしかやんねえんだよ俺のツッコミの労力を考えろよバカ親父!!!!!!!!!!!」
「ええ、いつもサライのツッコミは見ていて気持ちがいいですよ?」
「そうじゃねえっつってんだろォがァァァァァァァァアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!」

 二本目の『白銀刀』を手に取りながらサライは叫ぶ。
 だがしかしこのドがつくサディストの父親ははて、と首を傾げるばかり。この父親に反してこの息子があるのはきっと反面教師なのかもしれないしそうじゃないかもしれない。
 ともあれ、燦斗のパイ投げは攻撃に該当するのか彼のユーベルコード【命削る影の槍(ソンブラ・ランサ)】のトリガーが満たされたようだ。
 シンデレラの影から足止めをするかのように、黒影の槍がガラスの靴ごとその自慢の脚を貫き、そして次に腹を、腕を突き刺す。
 百舌の早贄のように貫かれたシンデレラは完全に動きを封じられるが、まだその生命は尽きていない。

「さあサライ、今ですよ!」
「やりづれぇサポートしやがって覚えてろよマジで!!!」

 父親に悪態をつきながらも、ここまでくるといっそのことその第二の人生は終わらせてやった方が楽になれるだろう。
 迷いなくサライは二本目の『白銀刀』を用いて斬りつける。
 次に『紅玉刀』で弧を描き、その次は『蒼玉刀』でタトゥーを刻むように、さらに『翠玉刀』で軌跡を残すように走らせて、『琥珀刀』で印をつけ――

「――"これぞ、無謀の刃なり"!」

 そして最後、『燐灰刀』で今までの色を塗り潰す如く叩きつける。
 シンデレラの服を染めた紅が、その紅が滴る白い肌が、一瞬にして酸化し黒く染まっていくかのように灰と化し、風にさらわれていく――

「……また骸の海から帰ってきた時に、この詫びだけは入れるからな……」

 刀を仕舞い、ぐったりとした様子でサライは衣装を着替えることなくグリモアベースに帰投していく。

「おやサライ、疲れているようですね。どこかパーツでも不調になりましたか」
「誰のせいだと思ってんだよバカ親父……」
「はて、何のことやら。私は彼女にお菓子を差し上げただけですよ?」

 しれっと笑顔でそう答える燦斗を横目にしながら、サライは大きくため息をついた。


 かくして、ハロウィンの国での死闘はこれにて幕を閉じたのである。
 つまり、パーティ会場として自由に使えるようになったのです。
 戦いでボロボロになった施設?グリモア猟兵が全部修復してくれましたよ。

 というワケで猟兵の皆さん、心ゆくまでハロウィンパーティをお楽しみくださいませ!ハッピーハロウィン!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月31日


挿絵イラスト