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朝も醒めぬ夢

#カクリヨファンタズム

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#カクリヨファンタズム


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●キャーイキャーイ
「あはははは、気分がいいにゃー」
「うえ……うう、ぅぇええ……、ひどい、ひどいよお……」
「俺の勧める酒が飲めないって訳!?」
「えーん、それめんつゆだよぉ……」
「なんで冷蔵庫が怒るの? 笑うべきじゃない?」

 その日、幽世はめちゃくちゃになった。

 幽世を彷徨く妖怪達は、誰しもが酔っ払っているよう。
 しかし。
 誰しも酒を飲んでいた訳では無かった。
 水を飲んでは笑う者。
 めんつゆにそば湯を足してはべそべそと泣く者。
 いいや。
 何も飲まずとも妖怪達は冷静さを欠き、暴れ、泣き、じゃれあい。
 酔いから醒める事もなく、ふっと眠ってまう。
 それは決して、醒める事の無い眠り。

 その日、幽世から『醒』という概念が消え失せた。
 眠りは幽世の全てを飲み込んで。
 ――唐突に、突然に、カクリヨファンタズムは滅亡した。

●グリモアベース
「と、いう訳でセンセ達にゃ、カクリヨファンタズムの滅亡の危機を阻止して欲しいンスよ~」
 小日向・いすゞ(妖狐の陰陽師・f09058)は狐めいた笑みを浮かべて、小さく頭を下げる。
「あの世界からは今、『醒』という概念が失われているっス。しかも、恐らく騒動を起こした元凶によって、あの世界に足を踏み入れた瞬間に酒を一滴も飲まずとも、まるで泥酔した様な状態になってしまうっス」
 それは醒める事無き、酩酊。
 どれほど酒に強い者でも、どれほど酔いに強い者でも。
 抗えぬ酩酊状態に飲み込まれる、『醒める』という概念の無い世界。
「泣き上戸に笑い上戸、絡み上戸に話し上戸――、まあ、何にせよめちゃくちゃっス。酔っぱらい妖怪達は骸魂に飲み込まれて、酔っ払いながら大暴れしてるっス~」
 その上。
 酔い過ぎて寝てしまうと、――醒める事無き眠りに飲み込まれてしまう。
 全てが眠ってしまった世界は、静かに静かに滅びゆく事だろう。
「ま、ま、ま、センセ達は酔っ払いながらでも世界を救えるに違いないっスから。……違いないっスよね?」
 少しだけ自信がなさそうに尋ねたいすゞは、息を一度吸って、吐いて。
「……今回もよろしくっスよ、センセたち!」
 なんて、大きく頭を下げるのであった。


絲上ゆいこ
 こんにちは、絲上ゆいこ(しじょう・-)です。
 今回はお子様にも安心な酔っ払いシナリオです。
 お酒は一滴も飲めませんが酔っぱらえます。

●第1章:集団戦 『地獄の獄卒・ごめずちゃん』
 カクリヨファンタズムの街中には、骸魂に飲み込まれてごめずちゃんになった妖怪たちが酔っ払って、人を追いかけたり、泣いたり、笑ったり、絡んだりしています。
 ごめずちゃんはそんなに強くはありませんが、猟兵の皆さんも全員酔っ払いです。
 酒に強い、弱い関係無く、酔っ払わないと言う人も全員酩酊します。
 ロボもスライムも全てです。例外はありません。全てです!!!!
 猟兵たちも、人を追いかけたり、泣いたり、笑ったり、絡んだり、寝たら死ぬぞをしたり、突如告白をしたりしています。(確定ロール)
 ほっといたらごめずちゃんは眠るので、好きなだけ、酔っ払ったり、戦ったり、泣いたり、笑ったり、怒ったり、思い思いのトンチキな酔っ払いをお楽しみください!!!

●第2章:ボス戦 『酒呑み竜神・酔いどれオロチ』
 宴もたけなわ。
 いい感じにお酒が足りなくなったオロチが街まで降りてきます。
 ここでも猟兵達は酔っ払っていますが、がんばってみんなでボコってください。

●第3章:日常 『魔女の霊薬』
 酔った後は二日酔いにならないように(お酒は一滴も飲んでいませんが)、幽世の魔女達に伝わる不思議な霊薬の作り方を教えて貰います。
 だいぶ不気味な素材を集めて、霊薬作りにチャレンジしましょう。
 おすすめはシジミとウコンです。
 お望みの方は、惚れ薬やちょっとあやしいお薬等も、魔女に頼めば教えてもらえるでしょう。
 しかし、効果の程は保証致しません。

●迷子防止のおまじない
 ・複数人でのご参加は冒頭に「お相手のキャラクターの呼び方とID」または「共通のグループ名」の明記をお願いします。
 ・3名以上でのご参加は、グループ名推奨です。2名でも文字数が苦しい時はグループ名を使用してみて下さい!

●その他
 ・プレイングが白紙、迷惑行為、指定が一方通行、同行者のID(共通のグループ名)が書かれていない場合は描写できない場合があります。

 受付期間等はマスターページを参考にして頂けますよう、よろしくお願い致します。
 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております!
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第1章 集団戦 『『地獄の獄卒』ごめずちゃん』

POW   :    ごめずちゃんは嘘がキライだぞ
全身を【地獄の炎】で覆い、自身が敵から受けた【嘘の言葉】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
SPD   :    悪い子にはお仕置きだぞ
【ごめずちゃんとの鬼ごっこ】が命中した対象に対し、高威力高命中の【武器「鬼の金棒」によるお尻ぺんぺん】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    悪い子みーつけた
自身が【対象から罪の意識】を感じると、レベル×1体の【ごめずちゃんのお友達】が召喚される。ごめずちゃんのお友達は対象から罪の意識を与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ダンド・スフィダンテ
(隅っこの方で静かに踞ってるドネガティブ泣き上戸)

(ぐすぐす)こんなギャグがメインだろう中で突然シリアス始めるのが先ずどうなの……?(ひっく)
そうやって先の事ちゃんと読めないから、いざって時に役に立たないしミスはするし領は……っ(反芻する過去の痛みに、吐きそうだ。後悔ばかりが積み上がる)
(この生は、あまりに、愚かだ)
うぅ、生きてるの辛い……楽になりたい……(ぐすぐす、ひっく)
ああ、うん。それでも、置いてくわけには、いかないんだ。
まだ、愛されてるから
まだ
死ねない。
(重くて、苦しい。とても苦しい。息が、出来なくても、息をする)
(これまでも、これからも、そうやって)
……生きるとも……生き足掻くとも



 酒の甘い匂いがした気がした。
 いいや、気の所為であったのかもしれない。
 ――何にせよ、世界は終焉の気配に満ち満ちて。
 服を脱ぐわ、人に絡むわ、暴れるわ、吐くわの、どこもかしこも小さな騒動。
 骸魂に飲み込まれた酔っぱらい達が、笑いながらバタバタと街中を闊歩する街中。
 薄暗い路地裏で、一人の男が踞っていた。
 ……ひ、くっ、……ふ。
 あとからあとから涙が溢れ零れ、嗚咽が漏れる。
 その太陽色の髪が薄汚れて見えるのは、きっと建物の影だけでは無く――。
「う、……ぐ、ぅ、ぅうっ」
 ダンド・スフィダンテ(挑む七面鳥・f14230)は頭を抱えながら、地面にその身を投げ出して。
 どんどん薄汚れるダンドの服。
 どんどん薄汚れるダンドの体。
「……まずさぁ……こんな……面白トンチキギャグ展開が求められているだろう中でシリアスを始めるというのはどうなの??? いくら俺様が空気を読まないからって……、……そうやってちゃんと先の事を読めないから……」
 ひぐ、と。
 喉を詰まらせるように鳴らして。
 更に溢れる涙は止めどなく。
「いざって時に役に立たないし、ミスはするし、何も、何も、……う、うううううっ、この木偶の坊、独活の大木、唐変木……」
 自己嫌悪からゴミ山へと頭を突っ込んで、足をばたばたするダンドはそのまま半回転。
 それからゴミの隙間から覗く滲む空を見上げて、彼は細く細く息を吐き出した。
「――俺様が、こんな事だから、領は――」
 痛む頭、痛む胸、こみ上げるすっぱいもの。苦い匂い、苦しい胸。
 下唇をぎゅうっと噛み締めたダンドは、その腕で滲む空を隠す。
 重たい身体、重たい心。
 思考は自らの尾を追う愚かな犬のように。
 同じ場所をぐるぐると周り続けて、しまいにはその尾へと齧り付いたようだ。
 ああ、愚か、愚かな。――この生は、あまりに、愚かだ。
 積み上がる後悔、積み上がった骸。
 何も出来なかった、何も届かなかった。
 いつもそうだ、タイミングが悪かったと言えばそうなのだろう。
 いいや、――そうでは無い。
 何か出来た筈だ、本当は届いた筈だ。
 ああ、愚かだ、愚かだ、愚かだ、愚かだ。
 俺様は、俺様は――。
「ううぅうう、生きてるのが辛い……」
 いっそ、いっそ、楽になってしまいたい。
 しかし『生きてくれ』と願われたのだ。
 いいや、――それだけでは無い。
「置いていくわけには、いかない……だろう?」
 置いていくわけには、いかないんだ。
 瞳の上に置いた腕の掌をぎゅっと握りしめる。
 ゆっくりと吸う空気は、苦くて、重い。
 まるでゴミの中で無理矢理呼吸をしているかのようだ。
 ――まだ、愛されているから。
「まだ、……俺様は、死ねない」
 ざしゃ、と音を立ててゴミ山から上半身を擡げるダンド。
 重い、苦しい。
 それでも、それでも、息がどれ程苦しくとも、――息をする。しなければならない。
 これまでも、これからも、ずっと、ずっと。
 ――そうやって。
 滲む視界の雫を拭って、ダンドは呟く。
「ああ。……生きるとも……、生き足掻くとも」
 誰かに誓うように、――何かに願うように。

大成功 🔵​🔵​🔵​

逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と
酒精にはそれなりに強いと自負していますがこれは……
酩酊状態の頭を振りつつかれに続いて大きな木の木陰に座り

隣に座るかれの顔を見るとどこか小憎らしくなって
……僕だって、きみのように格好よくなりたいんですよ
それをきみはいつも、愛らしいって……
褒めてくれるのは分かりますけど、格好いいと言われたいですし
格好良くなりたいんですよ……!
とクダを巻きつつかれの首筋にぐりぐりと頭を押し付け

かれの返事には唇を尖らせて押し倒し
その胸の上で目蓋を下ろしかければ身を揺すられ起こされる
……よく眠れそうでしたのに
むぅと唇を尖らせたまま
視界に入ったごめずちゃんにべちっと八つ当たりしに行きましょう


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

回る視界に多々良を踏みつつ宵の手を繋がんと試みる
…目立つ場所は何があるか解らぬ故にとふらふらとした足取りで大きな木の木陰に移動
共に木に背を預け座り込もう

…眠ってはいかんのだったな…
だが…酒精を取ると眠くなる性質故どうも瞼が重くなってしまう
宵…俺は宵の方が格好良いと思うのだが…
そう首筋に頭を寄せる宵の頭を撫でつつも、己の上に圧し掛かり眠る体勢に入りかけている宵を見れば慌てて身を揺すろう
…宵、眠ってはならんと言われておるだろう…っ
未だ共に見たい景色が沢山ある故…宵、宵…起きているな…?
やってきたごめずちゃんを見れば宵の危機と何故か判断し【生まれながらの光】を
宵、無事で良かった…



 木陰に吹く風が、優しく頬を撫でた。
 逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)の長髪がさらさらと風に流れて、絹糸の様なすべやかさで首筋を滑り落ちてゆく。
 彼と並んで地へと腰掛けるザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)は、その様子を横目で見やり、細く細く息を吐いた。
 視界がぐずぐずと歪んでいる、回っている。
 鉛を埋め込まれたかのように、頭の芯が重い。
 何も考えられない、何も考えたくない。
「……眠ってはいかんのだったな……」
 回転数の下がりきった脳が何とか言葉を選び、言葉を紡ぐがどうにも出力は遅めだ。
 その上一度座り込んでしまうと、急激に襲い来る眠気。
 眠い、眠い、眠い。
 ――どうして起きて居なければいけなかったのか?
 じわじわととろける思考に、自問自答。
 ゆら、ゆら、ザッフィーロの頭が揺れる。
 そんな彼をじいっと見つめる、艶っぽい熱を宿した紫色の視線。宵は瞳を細めて、ザッフィーロの額辺りを睨め付けて。
「ずるいじゃないですか……」
「……む?」
 ほろりと零れる言葉は、何処か恨めしげに響いた。
 ザッフィーロがそちらを見る前に宵は彼へと撓垂れかかり、首筋にぐりぐりと鼻先を押しつけ。
「……僕だって、きみのように格好よくなりたいんですよ」
「宵……?」
「そーれーをー……、きみはいつも、愛らしいって……」
「!」
 吐露にも似た宵の口調。
 ザッフィーロはただ瞳を少し狭めて、息を呑み。
「褒めてくれているのは分かりますけど、――僕だって格好いいと言われたいですし、格好良くなりたいんですよ……!」
 更にぐりぐりと鼻先に頭を押しつけながら、そのまま噛み付かんばかりの勢いで言い切った宵が、顎をザッフィーロの肩上へと載せるとぐりぐり、ゆらゆら。
「……俺は宵の方が、格好良いと思うのだが……」
 勢いに押されつつも、随分と眠気は奪われた。
 そのは言葉は、ザッフィーロにとって紛れもない本心である。
 視線だけを宵の頭頂部へと向けると、その頬に掌を――。
「ほら。すぐそうして『愛らしい』扱いをしようとしています」
 伸ばせない。
 むっと唇を尖らせた宵が、ザッフィーロの手首を掴んで腕を押さえんでいる。
 そのまま宵は逆の掌をザッフィーロの鎖骨上に手を添えて、前へと体重を掛けて。
 ザッフィーロを押し倒す形で身を寄せれば、瞳を閉じる。
「宵……」
「きみは――」
 ザッフィーロにぴったりと身を寄せた宵はそのまま、地へと彼を引き倒す形で……。
「ぐう」
 寝息を立てた。
「待て、宵。――宵、待て。……眠ってはならんと、言われておるだろう……っ!?」
 ザッフィーロの体を敷き布団代わりに今にも眠らんとする宵を、ザッフィーロは慌ててゆさゆさ揺さぶり。
「ん、んん……」
「宵、……宵? 起きているな……?」
「いやですね、今から眠るのですよ」
「待て、待て待て待て、未だ共に見たい景色が沢山ある故、聞いておるか……宵? 宵……!?」
 慌てたザッフィーロに、更に激しく揺さぶられる宵。
 良く揺れるおふとんだ。
「ん、んんんん……、もう……、よく眠れそうでしたのに」
 ぷうと頬を膨らせて。
 さっと立ち上がった宵は、このままならぬ感情を吐き出す先をまっすぐに見据える。
 ――その目線の向こうには。
「わるいこみーつけた、ぞ!」
 無骨な棍棒を振り上げて、駆けてくる敵の姿があった。
 杖を手に半円を描く形で腕を振るう宵。
「僕の眠りを妨げた悪い子は、そちらですよ」
「何だ、宵――危ない!」
 杖に宿され膨れ上がる魔力。
 今正にその魔力を解き放とうとした宵の体を、ザッフィーロは後ろからぎゅうと抱き留めた。
 彼に目映く宿るは、癒やしの加護を秘めた聖なる光。
「ああ……、宵。無事で良かった」
 別段危ない事はまだ何も起こっていないのだが、ザッフィーロは宵の肩口へと顎を埋めて、ほうと優しく吐息を漏らす。
 そう。
 皆様ご存じの通り、この世界に居る人は現在もれなくへべれけだ。
 つまりこの人も酔っている。
「……またそういう――!」
「なんだ、なんだ、痴情のもつれは罪だぞ!」
「待て、宵……!」
 格好良さとはかけ離れた対応に、唇を尖らせる宵。
 ぶんぶんと棍棒を空中で振り回して注意する獄卒。
 ふるふると首を揺すったザッフィーロはぎゅっと宵を抱き止めたまま、彼が危険に晒されぬように目一杯引き留めて。
「危険だ」
「このままですと、僕が眠れないでしょう……!」
 宵は振りほどくようにぐん、と杖に纏わせた重力の魔力を獄卒へと叩き込み。
「眠らせないのも、罪だぞー!」
 地へと押さえつけられながらも、わあわあと棍棒を振り回す獄卒。

 ――この場はもはや、むちゃくちゃになりだしていた。
 それは今この世界の、何処ででも起こっている事。
 それは今この世界で、世界を崩壊へと導いている事。
 何とか眠らずに二人が耐えて、次なる敵が現れるまでこの小さな騒動は続くのであろう。

「そうやっていつも男前なんですよ……、僕だって格好良いと思われたいのに」
「いいや、宵……俺は宵のほうが……」

 ――泥酔しながら寄り添う二人も、もう少しこのまま。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ライナス・ブレイスフォード
リカルドf15138と

…酩酊状態、なあ
あんまなった事ねえ分、結構きっついな…
滲む汗と回る視界に吐息を漏らしつつシャツの前を寛げながら汗が滲むシャツの中に空気を送り込んでみる
リカルド、あんたは大丈夫なんかよ…って…
…駄目そうだな
そう常よりも表情豊かな相手のその顔に唯でさえ熱い顔に赤みが指すも、冷たく心地よい相手の手を握れば己の瞳を覗き込むリカルドのその姿を隠す様引き寄せつつ道の端へ
…あんたの瞳の方が俺は好きだけどな…って
つうかよ。なんで二人じゃねえ時に素直になんだっつの…
落ち着かなげに視線を漂わせながらその背を軽く撫で叩いてみようと試みんぜ
…馬ぁ鹿。何処にもいかねえよ。だからあんたも眠んなよ?


リカルド・アヴリール
ライナス(f10398)と
アドリブ歓迎

昔は、良く酒盛りに巻き込まれたからな
それなりに耐性はある筈、だと思うんだが……
念の為、気を引き締めて行くか

(数分後?)
……だいじょ、ぶ、だ。
酔ってない、まだ酔ってないからなー
ライナス、熱いか?俺の手、機械だからひえひえだぞー?

(右手でライナスの頬をぺたぺた、ぺたぺたしつつ)
へへっ、ライナスの目……きれーだ
すっごく、きれーで、すきだぞー?
俺の、も……(酔い以外の理由で頬が赤くなる

ライナスに、ぽんぽんって
すっごく、嬉しい気持ちになるから……ありがとう、だな
眠いけど、寝ない
ライナスと、今も、ずっと、一緒がいいって……
だから、起きなきゃ……う゛……(眠い目を擦り



 体の芯に熱が篭もっている。
 はあ、と零れる吐息すら熱っぽい。
 滲む汗、ぐらぐらと揺れる世界。
 瞳を眇めたライナス・ブレイスフォード(ダンピールのグールドライバー・f10398)はシャツを緩めて、差し込んだ人差し指で隙間を開くように寛げ。
「は、あ……、……リカルド、あんたは大丈夫……」
 横目でリカルド・アヴリール(機人背反・f15138)を窺ったライナスは、そのまま片眉を跳ね上げて。
「らぁ、じょぶー、だ」
 常の表情からは想像が付かぬほど幼気にへにゃへにゃ笑うリカルドに、ゆるゆると首を振った。
「……ダメそう、だな?」
「んーあ? ……だぁーーじょ、ぶ、だって。よおーってない、まだ酔ってないかんなぁー」
 腕をぶんぶん振って主張するリカルドは、もう見るからにダメそうだ。
 ライナスは天を一瞬仰いでから、眉間にきゅっと皺を寄せ。
「ああ。あんたがダメになってる事は、良ーく分かったぜ」
 しかし。
 ライナス自身だって、だいぶ参っている事は自分が一番理解している。
 脳の奥がじんと痺れているようだ、体だって随分と重ダルい。
 熱の篭もった息をもう一度吐いたライナスは、まっすぐに前を見やる。
 リカルドがてろてろへにゃへにゃに成っている以上、派手に立ち回るのは得策では無いだろう。
 ライナスがリカルドの腕を引いて、敵の少なそうな路地へと引き込もうとすると――。
「ぁー、ライナス、熱そうだなぁー。俺の手、ひえひえだぞー」
 リカルドはへらへらと笑って、路地へと引き込まれるがままに。
 路地の背へと滑り込んだリカルドはそのままライナスの頬へと右手を添えて。
 そのままライナスの翠瞳をじっと覗き込んだ。
 緑色の、宝石のような瞳。
「……あー、へへへっ、やっぱ、ライナスの目、……きれーだ、な」
「…………」
 彼の言葉に瞳を狭めたライナスは、少しだけその翠を揺らして。
 リカルドはお構いなしに、ぺたりぺたりとライナスの頬を撫でながら更に眦を和らげる。
「んーんー、ライナスの目、きれー。……すっごくきれーで、すきだぞー……?」
 重ねられる言葉にライナスは、瞬きを一度、二度。
 次こそ思わず瞳を逸らしそうになる。
 ――ああ、もう。
 彼の機械の右腕に冷やされるこの頬が熱いのは、きっと酔いだけでは無い。
 細く細く、肺の中の熱を逃がすように。
 言葉を重ねるリカルドの黒耀色の瞳から逃げぬように。
 まっすぐに見据えてから、ライナスは言葉を紡いだ。
「……あんたの瞳の方が俺は好きだけどな……」
「おれ、……の、も?」
 きょとんと。
 次に瞬きを重ねるのは、リカルドの番であった。
 みるみるその頬が朱に染まって行く。
 逆に照れられてしまえば、此方が照れてしまうものだ。
 ライナスは先程には逸らさず済んだ視線を、思わず泳がせてしまうが――。
「…………へへ、へ。……ありがとう、だな」
 ライナスの言葉がなんだかとても、嬉しくて、暖かくて、気持ちが良くて。
 リカルドは頬を染めたままへにゃっと笑って、彼の胸元へと顔を寄せる。
「……ああ」
 ライナスはリカルドの背へ掌を回して、幼子をあやすように、慈しむように。
 その掌をぽんぽんと叩き、撫でるよう。
 しかし、こいつと来たら。
「つうかよ、……なんであんたはこういう時に素直になんだっつの……」
「んー、へ、へへへぇ、……ライナスと、今も、ずっと、一緒がいいって、……おもう、から」
 言葉を漏らしながら、くわあ、とあくびを噛み殺すリカルド。
 ふ、と笑いを混じらせて。
 鼻を小さく鳴らしたライナスは、リカルドの背をもう一度叩く。
 ――全く。
「……馬ァ鹿。何処にもいかねえよ、だからあんたも眠んなよ?」
「んーー、眠いけど、寝ない。……おきな、きゃ……な」
 ごし、ごし。
 リカルドは眠気に今にも閉じてしまいそうな瞳を擦り、ライナスの胸元へとその顔を沈めて――。
「だーぁーかーらー、おーきーろーってのーー」
「らぃじょ、ぶ、ねてな……ぐう……」
 なんて。
 ライナスは半分くらい寝ているリカルドを、めちゃくちゃに揺さぶり起こすのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
お酒が強いりんたろでも酔ってしまうのですね

私は大丈夫ですよ、り・ん・た・ろ・う
ほらこの通りです、りんたろ

お酒で酔ったことは何度かあったのですが
今回ばかりは今までよりも酔いが強く
ふわふわすると言いますか……とても眠いです……

うとうとし始めるものの、彼とは違う何かの気配
考えるよりも先に構えてしまうのは仕事柄
しかし眠りかけている状態での戦いは苛立つ

――邪魔をするな
残像で身を躱し、素早く回り込んで攻撃力を重視した抜刀術『風斬』

刃を納刀すれば拍手の音
褒められれば嬉しく、広げられた両手を見れば
自分も同じく広げて「ん」と小さく返事をして抱きつく

温かくて心地が良いです
大丈夫です、寝ません……寝ません


篝・倫太郎
【華禱】
なるほど、酔っ払うってこんなかぁ
そっかぁ、こんなかぁ

夜彦ー?夜彦さーん?
『う』迷子になってるからー
まーたそーやって『酔ってないです』みたいな顔するぅ
酔ってないなら区切って俺の名前言ってみ?
じゃ、区切らないで言ってみ?
ほら、『う』迷子ですからー!

素面になったのか敵を斬り伏せた夜彦を褒める
おー!夜彦すごーい(ぱちぱちぱちー)
凄い夜彦にはご褒美やろーっと
ほら、おーいで?(両手広げておーいで?からのぎゅーっ!)

は!寝るなよ?寝たら……なんだっけ?
そうだ!目醒めないんだ!

そんなの俺泣くからな?
目玉溶けるまで泣いちゃうからな?
だから、寝ちゃだめですぅ


普段は笊越えて枠なレベルで酒に強く
基本ほぼ素面



 頭の芯がぽうっと動きを止めてしまったような感覚。
 気分が良い、息が熱っぽくなっている事が解る。
 体温も上がっているのであろう、足取りがすこし覚束ない気がする。
「はー……なるほど、こんなかぁ……」
「ふふ。この異変ではお酒に強いりんたろでも、流石に酔ってしまうのですね」
 自らの体の変化に篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は、へえと感心したように声を漏らし。
 そんな彼の様子に、普段よりも甘やかに眦を和らげた月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)がゆるゆると笑う。
「んー? んんー?」
 そんな彼の言葉に引っかかりを覚えた倫太郎が、首を二度傾げて。
「はい?」
「夜彦ー? 夜彦さーん? まぁーた、『う』が迷子になってませーん?」
「全然、大丈夫ですよ」
「んーー? まーーーた、そうやって、『酔ってないです』みたいな顔するぅー。酔ってないなら区切って俺の名前言ってみ?」
 ぐっと顔を寄せて、ねえねえと。
 普段の2倍くらいの面倒臭さで、夜彦へと絡む倫太郎。
 言われた夜彦は涼しい顔で、瞳を狭めて――。
「はい、……り・ん・た・ろ・う」
「じゃあさ、次は、区切らないで言ってみ?」
「大丈夫ですよ、りんたろ」
「ほーーーーら、まーーた『う』迷子になってるからーー」
「ええ、大丈夫ですよ」
「大丈夫じゃねぇーってー」
 倫太郎に絡まれていても、夜彦も夜彦でいつもの2倍くらいマイペース。
 普段酒を呑んだ時よりも、ずっとずっと強い睡眠欲にかぶりをふるふると揺する。
 頭の芯がぽうっと麻痺したかのよう。
 気分は、悪くはない。
 息は熱っぽくなっている。
 それより何より……恐ろしく眠い。
 其の上。
 こんなにも眠いというのに。
「――邪魔をするな」
「ぴゃっ!?」
 これほどの眠気の中で感じる敵の気配は、あまりにもうっとおしい。
 裂帛の気合と共に身を低く構え、強く踏み込んだ瞬間には、う太刀筋は弧を描いている。
 駆けてきた炎を纏う獄卒より、骸魂だけをさぱっと斬り裂いた夜彦は細く細く息を吐いて。
 鍔鳴りを響かせると――、ぱちりぱちりと拍手の音が響いた。
「おおー、すごーい」
 夜彦が顔を向ければ、ぱちぱちと手を叩いている倫太郎。
「そんなすごーい夜彦には、ご褒美だ。……ほら、おーいで?」
 へにゃっと笑った倫太郎は、夜彦に向かって両腕を広げている。
「……ん」
 褒められれば嬉しい。
 ――それが愛おしい人であれば、なおさら。
 夜彦は先程抱いた苛立ちが嘘かのように、穏やかにくっと笑って。
 広げられた倫太郎の腕へと飛び込んで、抱きついた。
 ぎゅう、と背に回されるその腕。
「……あたたかくて、心地が良いですね」
「ああ、……俺も。…………あっ、でも、心地がよくても寝るなよ!? 寝たら……ええと」
 随分と酔いに溶かされた脳は、すぐに結論を引き出せず。
 倫太郎はしばらく悩んでから――。
「ああーっ、そうだ、目が醒めなくなっちまうんだろ!? そんなの俺絶対泣くからな!!? 目玉がとろけて溶け出すまで泣いちゃうからな!?」
 だから、寝ちゃだめだぞ、と夜彦の肩口へと顔を埋める倫太郎。
 夜彦はそれがくすぐったくて、面白くて。
「大丈夫です、寝ません……、よ」
 ――眠たくて。
 かくん、と揺れた頭。
「……夜彦さん?」
 腕の中に懐きながら、彼を揺らす。
 起きてね、寝ないでね、……寝ちゃだめですよ!?
「…………大丈夫です、寝ません」
 はっと顔を上げた夜彦は、ふるふるとかぶりを振って。
 だいぶ怪しい雰囲気がでてきたその言葉に、倫太郎は思わず目を細めるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鈴久名・惟継
【幽蜻蛉】
俺は強い方だな
昔に比べれば随分弱くなった方だが
しかし、踏み入れた瞬間に酔ってしまうのはなぁ
やはり酒は飲んでこそ酔うものだろう?
ということで酒を持って来た
雰囲気だけでなく、酒を頂きながら語り合おうぞ

ほう

うむ

酔っていて遵殿が何を言っているのがさっぱり分からん
普段も機械に関しては饒舌だが今日は益々
とりあえず適当に相槌を打ちながら聞こう

ふむふむ、なるほど

……うん?子供?

はっはっは!ただの子供だぞ?何故そこまで恐れるか
いや、ただの子供では無かったか、敵だ

わかったわかった、早う背に乗れ掴まれ
ついでに奴等を片付けておくかぁ

竜神飛翔にて飛びながら雷を落とす

慌てふためいた次は寝るのか、忙しない奴よの


霞末・遵
【幽蜻蛉】
おじさんお酒あんまり強くないんだ
でも酔うなら飲まないと勿体なくない?
じゃあ飲みながら語ろうかまずは1/10モデルにしたキャバリアの可能性について

やっぱり小さくても自分の手で組んでみるっていうのが大事でね。聞いてる?
まだ火力は搭載してないんだけど問題は動力でね。聞いてる?
そっか聞いてるかお嬢ちゃんえらいねえそれでね

待ってなんで酒の席に子供がいるの!
連れてきたの誰! 親! 親どこ! お子さん迷子だよ!
やだやだ竜神様助けてぽいして! おじさん子供嫌いなのそのただの子供が一番厄介なんだよ!
乗るから乗せて早く飛んで早く はやく!!!

騒いだら疲れた……
ちょっと寝るから用があったら起こしてね……



 ――せっかく酔うのに酒を飲まないなんて勿体無いと、始まる酒盛り。
 溢れる手前まで酒を注いだ杯を唇に寄せると、一気に傾けて。
「おじさん、この間実機をみて感じたのだけれど……、例えばキャバリアを1/10モデルにしたとするだろう?」
「ほう」
「聞いてる?」
「うむ」
 霞末・遵(二分と半分・f28427)が鈴久名・惟継(天ノ雨竜・f27933)の持ち込んだ酒を片手に熱弁を振るい、惟継が適当に返事を返す。
 ――勝手に酒盛りを始めた二人の会話は、遵が一方的に最近見つかった世界の主力兵器について語る会と化していた。
「――実機を工場もラボも無い状態で、あの世界以外でキャバリエを組み上げるのは難しいだろうけれどさ、1/10ならば別世界でも組む事が可能ではないかな? やっぱり小さくても自分の手で組んでみるっていうのは大事でね、解体だってしやすいし、実際に組むことで改造案も生まれやすくなる。やっぱり理解って大切だとおじさんは思うんだ。で、まだ火力は搭載してないんだけれど、問題は動力でね」
「ふむふむ、なるほど」
「聞いてる?」
「うむ」
 話は確かに聞いてるのだけれども。
 それを理解できている、とは言っていない。
 内容自体はさっぱり理解できていない惟継は、何を尋ねられようともとりあえず頷くことができる。
 お酒が美味い。ヨシ!
「あの世界じゃ、基本的にはプラントから生産されるエネルギーインゴットを燃料としているらしいのだけれど、ガソリンやサイキックエナジー等で動く機体も多く存在しているそうでね。で、機体毎の設計図を取り寄せてみない事には詳しく言い切れはできないのだけれど。燃料の代替手段がある事は良いよね、でも5メートルの大きさで人が乗ることを前提のエンジンを積んで言うという事は、設計自体をただ小型化して組んでしまうと、妖精やら小さな種族が中に入らないと動かすことも出来ない代物ができてしまう訳だよ」
「ほう」
「……本当に聞いてる?」
「ああ」
「はーい」
 遵の問いにぴょーんと手を上げてお返事する、ごめずちゃん。
 遵はうん、と頷いて。
「そっか。で、どうせなら自律する機体にしたいじゃないか。いや、ウォーマシンが造りたいわけじゃないのだけれどね。ああ、そりゃウォーマシンも機会があれば触ってみたいけれどさ、怒られるかな、怒られるよね?」
「うむ」
「ちゃんと聞いて返事してる?」
 なにか違和感があった気がして。
 遵は更に疑問を重ね。
「ああ」
「そっか。でも自律させるって事は、純粋なキャバリアを組む事とはまたかけ離れた改造になってしまうからねえ。折角なら1/10で無く本物も組んでみたい所なんだけれどね」
「そうねー」
 もう一度よいこのお返事のごめずちゃん。
「うんうん、話を聞いてくれてお嬢さんえらいねえ、それ……えっ、まって。えっ? なんで?? なんで酒の席に子どもがいるの??」
 いつの間にか増えている声がある。
 流石にやっと違和感に気づいた様子で、遵が片眉を上げて。
 思わず後ずさりながら子ども――、敵より3歩距離を取り。
「……うん? 子ども?」
 惟継もつられた様に、遵の視線の先へと視線を合わせれば。
「どうもー」
 おいっすと『地獄の獄卒』ごめずちゃんは、棍棒を振り上げた。
 そりゃあ妖怪は見た目なんてあてにならないけれど、けれども。
「待って!!! 子どもを連れてきたの誰! 親! 親どこ! お子さん迷子だよー!?」
 すっかり出来上がってしまっている遵は、わあわあと叫び吠え嘆く。
 親は一体なにをしているんだ!
「はっはっは! お前さん、お前さん。こんなただの子供だぞ? 何故そこまで恐れるか……」
「やだやだーーッ! そのただの子供が一番厄介なんだよ! 竜神様助けて! ぽいして! おじさん子供嫌いなの!」
 遵のだだっこの舞いにあれ、そう言えばただの子どもではなかったなあ、と惟継は思い出した顔。
「ごめずちゃんべつに何もしないぞ!」
「ギャーーーッ! 喋った!! ちょっと龍神様!! 乗るから乗せて!早く! 飛んで! 早く! はやく!!!!!!!!」
「はいはい、わかったわかった。早う背に乗れ掴まれ」
 しかしそれ以上に――。
 遵が騒いでいるものだから、惟継はその身を竜と化して大空に飛び立つと、ついでに降り爆ぜる紫電の雨。
 そこでやっと思い出したかのように、遵はほうーっと息を吐いた。
 はー……、びっくりしたなあ、もう。
「……なんだか騒いだら疲れた……、んんん。ちょっと寝るから用があったら起こしてね……」
「全く、忙しない奴よのう。了……いやまて、寝てはいけないと言われていなかったか……??」
「ぐう」
「お前さん、ちょっと、何寝ようとしているんだ。待て、待て待て」
 惟継は街の上をぐーるぐる。
 その上で遵は心地よい振動(ものすごい速度)に揺られ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雨絡・環
アルフィードさん(f00525)と

馴染みある筈の地に降りた途端
くらりと傾ぐ世界
頬が上気してほう、とため息
目の前の人が良く見えないのは目が潤んでいるせい?
嗚呼こんなの久方ぶり

やぁだ、わたくし酔ってしまったみたい
身体に力が入らなくて……火照って仕方がありませんの
ねーえ、冷まして下さらない?
なぁんて撓垂れ掛かり
ほほほ、心惹かれるお誘いですこと
蜘蛛を呼び込もうなんて大胆な方

もっと此方を、わたくしを見て
まあまあ、なんてお上手なお口
でも殿方は寡黙な方が素敵でしてよ
縫ってしまおうかしら

――あら、お邪魔虫さん
いけない子ね?

爪で淡く紅く線を引く
後はほらほら、災にお気をつけあそばせ

やぁねえ
本当にお上手なお口だこと


アルフィード・クローフィ
環ちゃん(f28317)と

くらりと視線が曲がる
足取りが重い、世界が廻る
あぁ、これが酔う事なんだね
俺は酔う事なんてなかったから
これはこれで面白い

どうやら環ちゃんも酔っている様だ
あらあらそんな姿男に魅せたら危険だよ?
そう思いつつも妖艶な雰囲気に寄り添う姿にそっと腰を廻すと
ねぇ、これから何処か行かないかい?
俺と遊びましょう
と敵を放棄して軟派し始める
ん?大丈夫、君だけ見てるよ
あっちのお子様よりも君の方がずっと良い

一あぁ、ごめんね?怒らせちゃたかい?

嫉妬で怒った彼女にプレゼント
死神の導きで地獄を君に

嗚呼、血の馨がするね。
環ちゃんに似合ってる



 幽世は雨絡・環(からからからり・f28317)にとって、馴染み深い故郷たる世界である。
 しかし、しかし。
 今日の幽世は、常とは空気が違っている。
「ん……!」
 彼女と並んで世界へ降り立ったアルフィード・クローフィ(仮面神父・f00525)の踏み込む足が、ぐらりと揺れて。
 視界が回る、歪む、傾ぐ。
 喉の奥から甘い匂いがして、一瞬で全身がかっかと燃えるような熱を持った事が解る。
「わあ、これはこれで面白いね」
 『酔う』という体験が始めてで、くすくす笑ったアルフィードが横の彼女へと振り返ると、そこには――。
「やぁ、……わたくし、酔ってしまったみたい」
 艶っぽく潤む瞳に落ちる長い睫毛の影、朱に染まる頬。
 この世のものとは思えぬほど、美しき彼女の姿。
「あらあら。――そんな艶姿、男に魅せたら危険だよ?」
「ふふ、『どちらが』危険なのでして?」
 嘯く環は黒髪を靡かせて。
 アルフィードへと、縋るように、しなだれかかるように。
 白魚のような指先を胸板に手を這わせて、銀の瞳は上目遣いで彼の翠を見上げる。
「――ねぇ、わたくし、体に力が入らなくて。……それに躰が火照って仕方がありませんの」
 環は熱を吐くように甘やかな声で、懇願するよう。
 ねえ、と言葉を付け足して。
「この熱――、冷まして下さらないかしら?」
「そうだね、ねぇ――これから何処かに俺と二人きりで遊びに行くかい?」
 敵も世界も放り出して、……二人きりで何処かに。
 そうっと環の腰へと手を回したアルフィードは、くすくすと笑って。
「ほほほ、なぁんて心の惹かれるお誘いかしら? 全く――絡新婦を自ら呼び込もうだなんて、大胆なお方」
「例え蜘蛛だと識っていても、美しい女性の誘いを無下にはできないものだよ」
「まあ、なんてお上手なのかしら! ――ならばもっともっと、わたくしを見てくださるかしら?」
 甘えるようにアルフィードの躰に頬を寄せた環は、瞳を瞑って。
「ああ、勿論。――大丈夫、君だけを見ているよ」
 それからちらり、と。
 街中を走り回る獄卒達――ごめずちゃんを見やったアルフィードは、一度肩を竦めて。
「あっちのお子様よりも、君の方がずっと良いしね」
「……――誰かを貶して褒めるのは、あまり褒められた事ではありませんわ」
 くつくつと喉を鳴らして笑う環はたしめるように、アルフィードの唇に人差し指を寄せて内緒の指。
「それに、殿方は寡黙な方が素敵でしてよ?」
 そのお口、――縫ってしまおうかしら?
 なんて。
 瞳を開いて小さく首を傾いだ環は、アルフィードの瞳を見上げる。
「お前たちは、わるいこだな!」「だなー」
 刹那。
 二人の世界を破るは、棍棒を振り上げた小さな獄卒たち。
「――あぁ、ごめんね? 怒らせちゃたかい?」
 人を貶して褒めるものじゃないねえ、とアルフィードはやれやれとかぶりを振り。
「まあ、お邪魔虫さんたちかしら。――あなたたちこそ、いけない子ね」
 それから更に環を引き寄せる彼は、彼女に添えている腕とは逆の腕を大きく振るった。
 宿る力は、死の宣告の魔力。
 死神の導きを与える彼の横で、環は空を絵取るように人差し指を駆けさせる。
 そうしてちょうど飛びかかってきたごめずちゃんの肌を浅く裂くと――。
「――ああ、そんなに炎を燃やして。お気をつけあそばせ。炎はいつだってあなたたちの味方だとは限りませんもの」
「みゃっ!?」
 突如、ごめずちゃんの周りに宿った人魂が彼女へと燃えうつり、燃え上がり。
 ばたばたと駆けてゆく敵達を追うこともなく、アルフィードは環を再び見つめ直した。
「嗚呼。血の馨がする――、環ちゃんによく似合っているね」
「やぁねぇ、――本当にお上手なお口だこと」
 環は瞳を狭めると、その眦に笑みを宿して。
 指先でしい、と言うように。
 再びアルフィードの唇へと指先を、きゅっと押し付けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ハイドラ・モリアーティ
【BAD】
(※甘え上戸でタラシ)
おーい、エコー
お前未成年だったな、じゃあこーいうの初めてだ
ほら、こっちおいで。俺にもたれてていーぜ
今日はのんびりしてようや

酔っ払ってていいって最高だよなぁ
んー?どうした俺の狂犬ちゃん
今日は一際可愛いじゃねえの
よしよし、いい子いい子
なあエコー。どうせ俺たちどっちも死ねないんだぜ
ずっと生きてくじゃん
世界が滅ぶくらいまでさ
思ったんだけど、100年くらい俺と付き合わない?
嫌だったら10年くらいで別れてもいいし
稼ぎもあるし、俺ってばかなり一途よ。どう?
はは!結婚しちゃう?
いーよ。でも、まだ待って?お前が大人になるまでね

なんかとんでもねーこと言ったよーな……
ん〜、まーいっか


エコー・クラストフ
【BAD】
(酔うとボンヤリした感じになります)
あ〜……なんだろう、この感覚。なんか頭がふわふわする
これが酔っ払う……あー、ハイドラがよくやってるやつ。こいつ何やってんだって思ってたけど結構気分悪くはないんだね……
うん……でもやっぱりフラフラするからちょっと肩借りるよ……

狂犬じゃない……なでるな……まぁでもたまにはいいか……
ん? うん……死ねないな
えーと……100年……どれくらいだっけそれ……
うーん……まぁいいよ。ボクもハイドラのこと嫌いじゃないし。死んでお別れにならないのもいいし
でもさぁ、100年付き合ったらそれはもう結婚とかそういうやつなんじゃない?

なんか今結構すごい話した気が……まぁいいか



「あ~……」
 思わず漏らした声が、頭の中でぼやぼやと揺れている。
 ふわふわ、ゆらゆら。
 泡沫が弾けて、消えて。
 始めての感覚を文字通り、酔い『知』るエコー・クラストフ(死海より・f27542)。
 立っているだけでふらふらと覚束ない足取りのエコーに、ハイドラ・モリアーティ(Hydra・f19307)はちょいちょいと掌を揺らして。
「おーい、エコー。大丈夫か?」
「んー、大丈夫。……これが酔っ払う、……って感覚か」
「ああ、そうか、そうだな。お前はかわいいかわいいティーンちゃんだったな」
 ならば、このお嬢さん――否、ミス・アンデッドちゃんからすれば始めての感覚だろう。
 なんたって、こいつはいいこちゃんだ。
 例え血の通わぬ体に成る前にだって、一杯やったことも無いだろう。
「うん、ハイドラがよくやってる時は、何やってんだって思ってたけど。……結構、気分は悪くないんだね」
「ああ、酔っ払いどもはたいてい気分は悪くねェもんさ。ま、始めてならふらふらするだろうよ、――ほら、俺にもたれてていーぜ」
 路地裏の積み上げられたコンテナの上に座りこみ。
 今日はのんびりしてようや、なんて笑ったハイドラの相違う双眸が優しく和らいだ気がして。
 エコーはこっくりと頷き――。
「うん、……ちょっと肩、借りるよ」
 ハイドラの横へと身を寄せると、誘われるが侭に肩へと頭を預け。
 くっと喉を鳴らしたハイドラは、彼女の銀糸めいた灰の髪をさらりと梳くように頭を撫ぜた。
「んー? 俺の狂犬ちゃんが今日は一際素直で可愛いじゃねえの。よーしよし、いい子、いい子」
「……狂犬じゃないし、……なでるな……」
 苦情を口にしつつもエコーはその掌を払うでも無く、身を捩る訳でも無く。
 ハイドラは識っている。
 拒否をしないってェ事は――。
「なぁ、エコー」
 肩へと寄っかかる、ひんやりとしたお嬢さんに甘く甘く囁く声は艶っぽく。
 酔いの熱を零し、吐き出すよう。
「……ん?」
「――どうせ俺たち、どっちも死ねないんだぜ。ずーっと生きてくじゃん?」
「うん、……そうだな」
 この狂犬ちゃんとは、この短い期間の間にも、死なない癖に幾度も痛めつけあった。
 頭の中に宿ったくだらない呪い。
 一度は死した、鼓動も跳ねぬ生ける死者。
 死ねない体に、死んでる体。
 全く、お似合いじゃないか。
 で、さ。
「思ったんだけど、――100年くらい俺と付き合わない?」
 世界が滅ぶ、その日まで。
 ハイドラは笑うように呼気を漏らして、エコーの瞳を覗き込む。
「嫌だったら10年くらいで別れてもいいしさ、――稼ぎもあるし、俺ってばかなり一途よ。どう?」
 意外と良物件かもしれねえよ、なんてハイドラは首を傾ぎ。
「ん? えーと……、100年って、どれくらいだっけ……? まぁ、いいけど……」
 エコーはぼんやりとする頭で、指を折って100を数えようとして途中で断念する。
 どうやら両手の指は10本で打ち止めのようだから。
 兎も角。
 10も100も判らぬが、沢山という事だけは解る。
「ボクもハイドラのこと嫌いじゃないし。……死んでお別れにならないのもいいし」
 うん、と。
 蒼い瞳を一度閉じたエコーは、ハイドラの顔をじっと見据えた。
「……でもさぁ。……100年付き合ったら、それはもう結婚とかそういうやつなんじゃない?」
「はは! ああ、そうかもな、結婚しちゃう?」
 良いね、面白い、と。
 からから笑ったハイドラはエコーの頭を撫でていた掌を、するりと頬へと滑らせて。
 その人差し指を立てると、内緒の指。
 エコーの言葉を封じるように唇に触れると、瞳を細めて。
「――でも、まだ待って? お前が大人になるまで、ね」
 なんて。
 ハイドラはエコーの耳元で囁くと、まるで紅を引くように唇をなぞってから掌を下ろす。
 ああ、そうだ。たしかにハイドラは色々経験があると言っていた。
 薄靄がかかったような思考の中。
 されるがままのエコーは、はたはたと睫毛を揺らしてから気がついた。
 ――……あれ。
 なんか、今、もしかして……?
 結構すごい話を、した、気がする。
「ん~。ま、いっか」
「……まぁ、いいか」
 なんて、ふたりは同時に呟き。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルルチェリア・グレイブキーパー
※アドリブ歓迎
酔っぱらうって一体どんな感じなのかしら
未成年としてはちょっと興味が有るわね

あれ……なにこれ?
暖かくて、なんだかフワフワして、変な感じ……!
自分の中の何かが外れて今なら何でも出来そうなそうでもない様な
もうよくわからないけどたのしー!
あははうふふふ!

骸魂に飲み込まれた妖怪をやっつけなきゃいけにゃいのみ
もうそれどこりょじゃなふふふふ!
だめなお!わらひはりょーへーなんらからやっつけりゅのおー!
(フラフラになりながらごめずちゃんを追っかけて抱き付く)
かくごなはいー!
(へべれけになりながらごめずちゃんをポコポコ叩いたりする)


ティオレンシア・シーディア
あ―…そっち系かぁ。あたし普段はいくら飲んでも酔わないし、今一よくわかんないのよねぇ。なんかいきなり寝ちゃうらしいけど…寝たらまずいのよねぇ…?
(普段の酒の強さ:鬼と飲み比べしてシラフで10タテとかするレベル。端的にバケモノ。

酒癖:笑いと眠りのハイブリッド上戸。勝手にテンション上がってけらけら笑って唐突にブレーカー落ちて寝る。ちなみに記憶は丸ごとすこんとトぶタイプ。実にタチが悪い)

んー?あらぁ、鬼ごっこぉ?うふふ、あたしもまぜてちょうだぁい。
それじゃ、あたしがオニねぇ。(追いかけつつばかすか乱れ撃ち)
きひひひっ、ほぉらぁ、はやくにげないとあぶないわよぉ?(残念ながら全て掛け値なしの本音である)


多々羅・赤銅
ごめずにゃ〜〜〜〜〜〜ん盛り上がってる〜〜〜〜〜〜????↑↑↑(ごめずちゃんを抱きかかえてごろごろ転がっていく)

えっへへへきっもち良いねえ、あー飲んでねえのに変な感じ〜〜〜ごめずちゃんお腹すいたぁ?おっぱいのむ?あ〜〜〜んごめん出ないの〜〜〜(ちゅちゅちゅちゅ)

(キス魔である)
(通常時から酔ったようなテンションであるが、よっぱらうとキス魔なのである)

(ごめずちゃんを抱えたまま他のごめずちゃんにもじゃれ倒して回る)(キス魔)(こども相手なのでほっぺや頭にしといてやるよ!!)

(感情のタガ外れまくりなので何トンチキしてもいいです)



「あははは、うふふふ!」
 あれ、なーにこれ?
 ふわふわ、ぽわぽわ、足が軽くてまるで羽になってしまったみたい。
 体も心も芯から暖かくて、柔らかい風がこんなにも心地よい。
 体の中の今まで閉じられていた扉が、突然開け放たれたよう。
 体の中に風が吹いている。
 そうよ。わたしはいま、――風よ!
「あは、ふふふふ、たのしー!」
 ぴょんぴょんこ飛び跳ねるルルチェリア・グレイブキーパー(墓守のルル・f09202)は楽しげに。
 ひょろりと長い尾も合わせて、ぴょこぴょこ跳ねる、跳ねる。
 ――そう、そうなのね。
 酔っ払うって、こんな感じなのね!
 大人って、いつもこんな感じだったのね!
 楽しい、楽しい、楽しいわ!
「あは、あははっ」
「ぅぇえへへ、えへへへへへへへえぇぇ~~っ」
 そこに。
 楽しげに笑うルルチェリアの声に、割とねったりとした汚げな笑い声が重なった。
「んんんん~~~~!! ご~~~めずにゃあぁぁあん、も~~~~~りあがってるぅうう?」
「んなあああああ、はなすんだぞぉおおおおおっ」
 揺れる揺れるは鮮やかな梅花色。
 組んず解れつ、決して離さぬだいしゅきホールドを獄卒へとガッチリキメた多々羅・赤銅(ヒヒイロカネ・f01007)の地獄車がそこには在った。
「……!?」
 ルルチェリアは少しばかり目を丸くして。坂の上から転がってきた赤銅が、思いっきりゴミ箱にストライクする姿を見た。
「えへへへへぇえ、ふわふわできもち良いよねぇ、気持ちいいねぇ~~~、かわいいねぇ、かわいい~~ねぇ~~」
 しかしその衝撃にも、赤銅の抱きしめる獄卒へのホールドは緩む事無く。
 へにゃへにゃに緩みきった笑顔のままの彼女は、頬やら頭やらに啄むような聖人キッスを獄卒へと幾度も重ねて。
「んびゃぁああああっ、はなっあぶっ、ぷあ、ぷ、」
「ふゃああーー、おんなのこがおしょわれてちゅう!!!?」
 わたわたして逃げ出そうとする獄卒を見るルルチェリアの中に、猟兵としての正義の心が燃え上がる。
 (ふらっふらの千鳥足で膝をガックガクにしながら、自分の中だけでは)格好良いポーズをキメたルルチェリアは、水平に凪いだ掌の先でビシリと赤銅を指し示す。
「わるひひとふぁあぁあ、わらひがぁ、やっりゅけゅぉー! せーふいのりょーへーのまふぇへ、あくひはゆるふぁふぁいッッ! かくごなはい~~っっ!」
 最早回らぬ呂律はガッタガタ。
 ふらふらになりながらもルルチェリアは、小さな子をいじめる悪いやつ――赤銅へと向かって拳を振り上げ――。
 刹那。
「わ、ぉ、とととおとぁわわっ!?」
「ひ、きゃあああっ!?」
 乾いた空気を裂く音と共に、幾度も床を弾いたのは銃声であった。
「わ~~~っ、何なになあにい~!?」
 重なる銃声と跳弾に、思わず立ち上がった赤銅がごめずちゃんを掲げて。
 踊るようにステップを踏めば、ルルチェリアもぴょーんと跳ねて、逃げて、避けて。
「あ、あぶないひひゃはひほ!」
 めちゃくちゃ楽しげな赤銅はさておき、ルルチェリアが苦情を申し出た先には、リボルバーを構えた女――。ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)が、口元を上品に覆って立っていた。
「あらぁー、うふふふ。ほかのコと鬼ごっこの途中だったのだけれど……。うふふふ、うっかり撃っちゃったわ、ごめんなさいねぇ」
 普段は全く酔わぬ故に、酔うとめちゃくちゃをする者も多いものだ。
 かくいうティオレンシアも、その一人のようで。
 ごめずちゃんを俵抱きにする赤銅とルルチェリアが、ダンスで道を開けた瞬間。
 彼女に追われているのであろう、ごめずちゃんの集団がわあっと道を駆け上がって行く。
 逃げ出す彼女たちに対して、細い細い瞳の奥から鋭くねめつけるティオレンシアは容赦が無い。
 添えた掌でハンマーを起こしてはファニングショットの構えで幾度も弾を撃ち放つと、きゃーっとごめずちゃんが跳ねて飛んで。
 まるで蜘蛛の子を散らすように、獄卒達は逃げてゆく。
「わーーーーっ!」「ひゃあああっ、や、やめるんだぞー!!」
「きひひひっ、ざぁんねん~。今はあたしがオニなんだから、みぃーんな捕まえるまでおわらないわよぉ」
 リボルバーだと言うのに弾が切れた瞬間に魔法のようにリロードを重ねるせいで、連射は止まらない。
「ほぉらほらぁ、はやくにげないとあぶないわよぉ?」
「わーーーっ、オニー!!!」
「そう、あたしがオニの番ねぇ」
 多分違う意味合いで呼ばれているのだが、嵐のように訪れて嵐のように去ってゆくごめずちゃんの群れと、それを追うオニのティオレンシア。
「にゃ、にゃんだったのかひら……」
 呆然と立ち尽くすルルチェリアに――。
「あ~~~~、んふふふ、かわいい子捕まえたぁ~~~」
「きゃーーーーっ!?」
 後ろから抱きついたのは、赤銅であった。
「えへへへぇ、なあになに、お腹すいたぁ?おっぱいのむ? うふふふ、ごめんねぇ、おっぱいでないの~~~!」
「ひゃあああーーーーっ、まって、なに、たしゅけっ」
 ちゅっちゅっ、ルルチェリアの頬に、額に、頭に、鼻に、幾度も落とされる聖人の口づけの雨。
 赤銅の腕の中で身を捩って、ぽこぽこ彼女を叩いて抵抗するルルチェリア。
 逆の腕に抱かれて、最早抵抗の意思すら失って為すがままのごめずちゃん。
 そのキスの嵐は、赤銅が飽きるまで開放されるまで、止む事は無いのであろう。
 ルルチェリアは知った、見た。
 ――酔いによってタガが外れて大暴れする大人達を。
 ああ。そう、そうなのね。
 酔っ払うって、こんな感じなのね!
 ――大人って、いつもこんな感じだったのね!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月詠・黎
みい(f29430)と共に

皆酔うておるのう――などと
二人の時はその様に振る舞う必要もないか
頬が赤くなってるな、みい
問には小さく頷き指先で朱色の頬を撫ぜ
いとおしげに目を細める

誰にも見せたくないと思うは独占欲
目立たぬ処へ招き胡座をかいて手を差し伸べる
此処だと言わんばかりに自身の上を指せば
飛び込む猫を抱き入れて
後ろから包む形をとって神は満足気に咲う

酔いの自覚は有るが
俺は疾くに酔っているしなと柔い音を唇で紡ぐ
ずっと酔いしれた侭だ
お前からは醒めなくても佳い
猫の肩付近へ顔を埋め
酔いに任せ、すりと懐くように
左手を重ねれば小指の環がこつりと音を立てるから
みいと名を呼ぶ
猫の鳴き声の様に幾度も
好きだと重ねる様に


猫希・みい
黎くん(f30331)と一緒に

うん、酔ってるね
えへへ。頬が熱くてふわふわして心地良い
これが酔ってるってこと?
少しだけ冷たい指先にもっと撫でてと擦り寄る

人があんまり居ない所に向かって
私の神様は本当に格好いいなあ
ふやけた頭でもそれだけはわかる

差し伸べられた手を取って
そのまま腕の中に飛び込んじゃおう
大好きな神(ひと)の甘い誘惑に逆らえるはずもない
嬉しくってずっと表情がゆるゆる

背中を預けて少し甘えん坊なあなたの髪を優しく梳く
あのね、私もだよ
ずっとあなたに酔ってる
いつもよりふんわりした気分なのは酔いのせい?
初めて見る黎くんの姿とこの体温と、連なるピンキーリングの音
黎くん、大好き
何度も重ねていく



 二人並んで歩む道。柔らかな風からは酒の匂いなんて1つも感じやしないのに。
 行き交う人々や妖怪たちは、皆一様に冷静さを欠いている様子。
 暴れ、泣き、じゃれあい。陽気であったり、陰気であったり。
 月詠・黎(月華宵奇譚・f30331)は、そんな幽世の様子に月色の瞳を狭めて。
 如何にも『神』らしい威厳のある口調で、彼は言葉を紡ぐ。
「皆、すっかり酔うておるのう」
「うん、酔ってるね」
 そんな黎を見上げた猫希・みい(放浪猫奇譚・f29430)は、眦を和らげて笑う。
 ああ。
 頬が暖かい、心がぽかぽかしている。
 脳の芯がとろけて、ふやけて、とろとろになってしまったような気持ちの良さ。
 ――これが酔ってるってことなのかな?
 なんて。
 見上げていた視線がはたと彼の月色と交われば、少しだけくすぐったげにみいは肩を竦めた。
「私も酔ってるのかも」
「――ああ。頬が赤くなってるな、みい」
 彼女のそんな様子に黎は小さく肩を竦めてから立ち止まると、みいの頬へと掌を寄せ。
 彼女の前では、――二人きりの時は。
 常の『月の神』としての振る舞いは、必要では無いだろう。
 黎は神である、黎は月の神である。
 しかし、この猫の前では。
 ――彼女だけの神である。
「ん、えへへ……、そうかも」
 紅潮したみいの頬を、曲げた人差し指の関節で撫でる。
 そのひやりとした黎の指先に、みいが強請るように頬を寄せるものだから。
 黎の細めた瞳には、眩しいものを――愛おしいものを見る光が宿る。
 再び歩みだした足取りは、細道を潜って、遊歩道を抜けて。
 誰にも見せたくない――なんて。
 人気の少ない方へと道を選んでしまうのは、独占欲からだろうか。
 ――幽世は現代地球で失われた『過去の遺物』で組み上げられた、様々な文明様式が無規則が混在する世界だ。
 其れ故にこの世界の道は、デタラメなものも多い。
 1つの町の中でも、文明様式は全く安定していない。
 黄昏の商店街を抜けて、天地の裏返った階段を抜けて、高層ビルを抜けた先には――花畑が広がっている。
「――みい」
 花畑へと胡座をかいて座り込んだ黎が、みいへと向かって手を差し伸ばす。
「……うん」
 それは黎の――神様の膝上へのお招きだ。
 とろけた思考、跳ねる鼓動。
 そんな大好きで大好きで仕方のない、愛しい愛しいみいのヒーロー――神様の甘い誘惑に、この状態のみいが抗える訳も無く。
 彼の膝の間に滑り込んで収まってしまえば、背よりぎゅうと抱きとめられる。
 満足気に咲う彼を見上げると、みいの頬はとろとろに緩んでしまう。
 愛しの神様の体温、匂い。
 触れた背中、重ねた掌。
 ――ああ、格好いいな。ああ、大好きだなあ。
 そこに。
 ぽつり、と黎が零す言葉。
「――随分と酔ってしまったようだな」
 それはこの世界の異変の事では無い。
 ――疾くに酔っていた。
 それは猫を拾ったあの時から、ずっと、ずっと。
 彼の声がとろけてしまいそうに柔く響き、みいは黎の掌を取って自らの頬へと寄せて。
「あのね、私もだよ。――ずっと、ずっと、あなたに酔ってる」
「そうか」
 くっと喉を鳴らして。
 甘やかに花笑んだ黎は、掌に寄せられたみいの頬をゆるりと包む。
 暖かい頬、慣れ親しんだ彼女の匂い、彼女の体温。
 そのどれもが、全てが、心地よい。
 嗚呼。
 ――ずっと酔いしれた侭だ。
「お前からは、醒めなくても佳いよ」
 黎はそのまま彼女の肩口へと顔を埋めると、首筋へと鼻先を寄せる。
 ――酔っているのだから、仕方がないだろう?
 すり、と懐くように顔を寄せて。
 みいは体の奥からこみ上げる熱に、ふるると背を揺らす。
 ねえ。
 いつもよりも、あなたが甘やかしいのは、酔いのせい?
 いつもよりも、ずっと居心地が良いのは、酔いのせい?
 そんな初めて見る、甘えた彼の姿にみいはとろけそうな声。
「うん、……えへへ、…………ね、黎くん」
 重ねた掌の――二人の左の小指の環が触れ合って、こつりと音を立てるものだから。
「ああ。みい、……みい」
「黎くん――……ねえ、黎くん。……大好き」
 重なる声は、猫の鳴き声のよう。
 恋しさを歌うよう。
 好きだと歌うよう。
 何度も、何度も、確かめるように。
 二人は呼び名を重ねて――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

尾白・千歳
【漣千】
お酒飲んでないのに酔っぱらうって変な話~
でも、私、酔っぱらったことなんてないし~
きゃはははは
どんな感じなのかよくわかんなーい!
へべ…?私、酔ってないもーん
神格高いと酔っぱらわない?はいはい、スゴイスゴーイ(雑

ねぇ、私、前から聞いてみたかったんだけど~
さっちゃんの好きな人って誰?
あれ?いないの?
大事…やっぱりいるんだね~(ニヤニヤ
で、誰?
どんな人?私の知ってる人?
早く教えてよー
早く早く早くー!

ん?耳を塞げばいいの?こう?
むーこれじゃ何も聞こえないよ
聞こえなーいーよー!
バカっていう方がバカ!
さっちゃんなんて嫌いっ大嫌いだもんーうわーん!
私もう寝るっおやすみなさいっ(上着被って不貞寝


千々波・漣音
【漣千】

酔ってるちぃ可愛いやばい可愛い(心の声
てかお前、へべれけじゃねェか!
ふははは、神格高いオレは酔ってねェけどな!(酔ってる

何だ?…え、オレの好きな、って!?
オレの好きなヤツ気になるのか…?
…いやまァオレ、大事な人だしなっ(唯一の心の支え
何か今なら言える気が!(酔ってる

よし!ちぃ!(両肩がしっ
よーく聞け、オレが好きなのはな!

…んなの言えるわけねェッ!(心で悶々
可愛くて鈍くて世話が焼けて可愛くて不器用で可愛いヤツだよ…!(心の中で精一杯

くっ、ちょっと耳塞げっ
聞こえない位小さく早口で、お前だよばか、と
え、だ、だいきらい…な、泣くなよ、おい(おろおろ
てかこんなとこで不貞寝かよ!(羽織脱ぎ掛けつつ



 ふわふわ、ゆらゆら。
 何を見たって楽しくて、何を見たって不思議。
 でも、そんなのさー、――いつもどおりでしょ?
「きゃはははっ、酔っ払うってどんな感じなんだろ~?」
 まだまだ幽世の異変を感じる事の無い尾白・千歳(日日是好日・f28195)の歩みは、まるで跳ねるように。
 体はぽかぽかしているし、気分だって良いし、なんだかぴょーんって跳ねたくなるけれど。
 千歳は酔っ払った事なんて、一度だって無いのだから。
 彼女の横を歩む千々波・漣音(漣明神・f28184)は、気分良さげな千歳の姿に瞳を狭めて。
「……いや、お前、へべれけじゃねェか」
 ――彼女の肌がいつもより赤らんでいる。
 いつもよりも更に気の抜けた笑顔、少し潤んだ瞳。
 こんなの、どうみたって、どうしたって。
 ああ~~~~~、酔ってるちぃ可愛くない? ヤバくない? ちょっと色っぽさまで無い?? えええ~~、可愛い~~~~、百点満点! んにゃ、百万点か!? かわいい~~~!
 内心跳ねまくる心臓。
 ときときと動悸が止まらない。
 足取りがひよこみたいにおぼつかない姿も可愛い~。十億点!
 漣音の言葉に、千歳はきょとんと目をまあるくして。
「へ? へべ? へ、ぺ……?? 私、酔ってないもーん!」
 拳を突き上げた千歳が頬を膨らせて、漣音をじいっと見上げ。
「そんな事言ってるさっちゃんのほうが、本当はへべ……へ、へぺ、――へべれけなんじゃないのー?」
 あんまり言えてない~、かーわいっ。
 漣音は腕を組んで高らかに笑う。
「ふははは、なァに言ってんだ。神格高いオレが酔ったりする訳ねェだろう!」
「ふぅーん、そうなんだぁー。はいはい、スゴイスゴーイ」
 確かに、いつもの調子ではある。
 やれやれと塩対応に掌を上げてから、肩を竦める千歳。
 ――けれど、千歳から見れば。
 漣音の顔は普段の倍位赤く染まっているし、足取りだってなんだかおぼつかないように見えるもので。
 もう、さっちゃんったら仕方が無いんだから。
 ――転んだりしないように、お姉ちゃんの私がちゃあんと見ておいてあげなきゃね~。
 なんて、考えた瞬間。
 千歳ははたと思い出して、ぴっと獣の耳を立てると漣音の顔を覗き込んだ。
「ねぇ、そういえばさっちゃん。私、前から聞いてみたかったんだけど~」
「何だ?」
「さっちゃんの好きな人って誰?」
 目を丸くして、肩を跳ねて。
 ぴゃっと全身が粟立つ漣音の肌。
「ヘァッ!? え、お、オレの好き、な、……!?」
 汚い高音の声がひっくり返った。
 しどろ、もどろ、言葉を絞り出して。
 おいおいおいおいおい、何? なんでこんな事を聞かれてんだ?
 えっ、もしかして、えっ、もしかして!?!?
「ん? あれ? ……いないの?」
 目を白黒している彼に、千歳は不思議そうな声を漏らして首を傾いで。
「……お、オレの好きなヤツが気になるのか……?」
 ――いや、まァ、オレは大事な人だしな……?
 そう、言っていたもんな?
 喉を鳴らした漣音は、絞り出すように言葉を紡ぎ。
「……やっぱりいるんだね~?」
「……ああ」
 そのお返事に千歳は、口元へ掌を寄せるとにんまりと笑った。
「え~~、で、誰? どんな人? 私の知ってる人?」
 ずっと一緒だった幼馴染の好きな人、なんて気にならない訳がないでしょう?
 ぐいぐいと漣音に迫る千歳は、目をぴかぴかに輝かせて質問を連ねて。
「――よし、ちぃ! よーく聞け、オレの好きなのはな……!」
「うん」
 意を決した漣音は千歳の両肩をガッチリ掴んで、再び喉を鳴らして――。
 交わされる、蒼と翠の視線。
「…………」
「…………」
 しかし彼は喋らない。なんなら小刻みに震えている。
「……??」
「…………」
「何? さっちゃん、早く教えてよー」
 固まってしまった漣音に千歳は眉を寄せて、くいくい、と漣音の服の裾を引く。
「早く早く早くー! ねー、さっちゃん、すきなひとー、ねえねえ、好きな人って誰誰誰ー?」
 あーー、何その動き? かわいいな~~~~~~~~。
 でーもーなーァー、……言えるわけねェ、だろがッッッ!
 そりゃあ。全て吐き出せてしまえたら、言えるのならば、どれだけ楽だろうか。
 可愛くて、鈍くて、世話が焼けて、可愛くて、不器用で、可愛くて、……可愛い、可愛いヤツが大好きだ、なんて。
 奥歯をギッと噛み締めた漣音は、小さくかぶりを振って真剣な表情を浮かべ。
「…………ちぃ、ちょっと、耳塞げ!」
「……なんで?」
「なー、ん、でー、もー、だっ!」
「むー。……分かったけど、これじゃ何も聞こえないよ?」
 彼の勢いと表情に。
 おとなしく千歳が獣耳をぱたんと両手で畳めば、漣音はそのかんばせを彼女へと寄せて。
「――お前だよ、ばァか」
 きっと聞こえぬほど、小さな小さな早口言葉。
 唇の動きを見た千歳が耳から手を離すも、もう遅い。
「えっ、何々何? 聞こえなかったけどー!?」
「もう言ったからな」
「えっ、何、聞いてないんだけどっ!? もーーーー、バカっていう方がバカ!」
 漣音が視線をぷいと逸らしてしまえば、千歳は拳をぎゅっと握りしめて。その背をぽかぽかぽかぽか。
「さっちゃんなんて嫌いっ! 大嫌いだもんー!! うわーん!」
「え、だ、だいきらい……?? ちょっ、……な、泣くなよ、おい」
 叩かれながらも振り向けば、千歳は頬をぷくーっと膨らせて。
 自分の上着を頭から被ると、地面に転がって丸まってしまった。
「しーーらない! 私もう寝るっ、おやすみなさいっ」
 饅頭みたいに膨らんだ上着の端から零れている獣の尾は、不機嫌そうにはたはたと揺れて。
 慌てて自らの羽織を脱いだ漣音は、千歳が冷えぬようにその上に掛けてやりながら――。
「え、待っ、ちょっと、お前……おい、ちぃ! 千歳! 千歳さん!? こんなとこで不貞寝するんじゃねェー!」
 いや。羽織を掛けてる場合じゃねェ。
 寝たら起きられなくなるじゃねェかと、漣音は慌てて千歳を揺り動かすのであった。
 ――しかし、しかし。
 漣音は気づいていない。
 彼が『バカ』と言った時、千歳が耳を塞いでいた事を。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

終夜・嵐吾
せーちゃん(f00502)と

酒飲んでこそじゃと思うんじゃが…まぁええか
あっ、もうくらっと……ふふ、たーのしい気分じゃね~
ひゃーい!せ~ちゃ~ん
飲んでないのによっとるの~わはは!(尻尾でばしばし叩いてくる)

なにしにここまできたんじゃっけ~
そうじゃ、世界を救いにじゃった~
ふふ、世界すくうなんて~、かんたんじゃ!
わしのしっぽがふっさふさでふっわふわであれば…
すくわれとるじゃろ!そじゃろせーちゃん!
確認?ええよ、もふもふしっぽくらうんじゃ~!(もふっもふっ)

んん?せーちゃんにこにこしとるだけ…
いやいつもよりにこにこじゃしいつもよりもふもふしよるね
ふふーん、わしのしっぽは高くつくからの!(もふっもふふっ


筧・清史郎
らんらん(f05366)と

らんらんとは、普段からよく一緒に酒は飲むが
…ふむ、確かに、酔った時の様な感覚だ
らんらんは酒を飲んだ時の様に既にご機嫌だな
(見た目余り変わらないが若干余計ににこにこ)
ふふ、尻尾ももふもふだ(ちゃっかり掴んでもふもふもふ

何をしに…世界の崩壊を止めに来た、のでは?
確かに、ふわもこは正義だからな(こくり
どれ、らんらんの尻尾が世界を救えるほどのもふもふか、俺が確認しよう(もふもふ
…ふふ、さすがらんらんの尻尾、極上のふわもふだ
これは世界も救えるな(もふもふもふ

…ん?俺もいつもよりにこにこなのか
だがそれは仕方がない
何せらんらんの尻尾が、とてももふもふなのだからな(にこにこもふもふ



 酔うなんて、美味い酒を呑んでこそだと思うのだけれども。
 ――酔うなんて、美味い酒を呑んでこそだと、思っていたのだけれども。
「わははは、せ~ちゃんご機嫌じゃのう~!」
「ああ、そのようだ」
 すっかりご機嫌な様子の終夜・嵐吾(灰青・f05366)に筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)は雅やかに微笑み、確かにご機嫌そうな友の姿にこっくり頷く。
「ふふ、たーのしい気分じゃー。わははは、これはこれで中々悪くないの~」
 酒を飲まずに酔えるなんて、考えてみればなんと経済的な事だろうか。
 ばっしんばっしん獣の尾で横に立つ清史郎の背を叩きまくる嵐吾は、へにゃへにゃ笑顔。
 嵐吾に比べれば常と変わらぬように見える清史郎だって、背にふかふかと触れる尾の感触に普段の5割増しでニコニコ笑顔だ。
 ――ふむ、櫛を持ってきても良かったな。
 いや、背で触れているだけではない。
 清史郎は最早しっかり尾をもふりまくっている。
「そいやー、わしら今日は、なにしにここまできたんじゃったっけ~?」
「おお、らんらん。確か――世界の崩壊を止めに来た……のでは、無かったか?」
「おおー。そうじゃ、そうじゃ~、せーちゃんよーおぼえとるの。わしらは世界を救いに来たんじゃったの~!」
 わはははと、また陽気に笑った嵐吾はその場でくうるりと回って。
 ふかふかの尾が揺れれば、清史郎の視線はそちらへ釘付け。
 うむ、ふかふかだな。
「ふふ。じゃがのー、世界すくうなんて~、かんたんじゃ!」
 きゅっとその場で足を止めて。
 格好良いポーズを取った嵐吾は、琥珀色の瞳をまっすぐに清史郎へと向けて。
 ポーズを向けられた当の清史郎は、ふかふかの尾が弧を描く様をじいっと見ている。
 おお、風に揺られてもっとふかふかだな。
「ほれ、ほれ。世界なんての、わしのしっぽがふっさふさでふっわふわであれば――すくわれとるじゃろ!」
 そじゃろ!? なんて。
 ピカーーーッと瞬く後光。
 嵐吾は聖者なので、光る機能がございます。
 格好良いポーズのまま瞬く嵐吾に、清史郎はおおと声を漏らし。
「なるほど。――どれ、らんらんの尻尾が世界を救えるほどのもふもふなのか、俺がしっかりと確認をするとしよう」
「む、確認? ええよ、ええよ、せーちゃん! もふもふしっぽをくらうんじゃ~!」
 きゅっと一気に踏み込んだ嵐吾が半回転するように距離を詰めれば、尻尾で袈裟斬りに清史郎を撫であげて。
 ふかふかもこもこ。
 手櫛でその柔らかな毛を整えるように、丁寧にもふり撫でる清史郎。
 その表情はずっと変わらず雅やかさを湛えた侭、常のニコニコ5割増。
「ふむ、なるほど。……ふふ、さすがらんらんの尻尾は、極上のふわもふだな」
「そじゃろ、そじゃろ!」
 更に探るように、ふかふか、もふもふ。
 清史郎の指先が別の生き物かのようにうごめき、尾を撫でて、尾を揉んで。
「ああ。これならば、世界も救えるだろう」
「そのとお、……」
 大きく頷いた清史郎の言葉に、嵐吾も納得を、納得を――。
「……ん、んんん? でもせーちゃん。確認っていうか、ただ尾をもふもふしよっただけじゃ……」
 獣耳の先をぴぴぴっと揺らした嵐吾は、顎に掌を寄せて考え込んだ様子。
 酔っ払いも、偶には理性を取り戻すもの。
 ちょっとだけまともな思考を取り戻してしまった様子の嵐吾は少し唸って。
「ふふ、ふかふかもふもふで素晴らしいな」
 しかし。
 未だ尾をもふりながら、いつもより笑みを深めている(ように見えないこともない)清史郎の様子に、うんうんと2度頷いた。
「いや、――せーちゃんもいつもよりにこにこしとるし、しっぽもいつもよりもふもふしよる。――この様子ならいけるじゃろ! 世界もいちころじゃの!」
「ああ、らんらんの尻尾はとてももふもふだからな。きっと世界の崩壊を止められるに違いないな」
「そじゃろ、そじゃろー!」
 酔っ払い成分追加インストール完了。
 少しだけ理性を取り戻した嵐吾であったが、ふかもこしっぽは世界を救う説に脳内が押し切られ、支持する構え。
 清史郎はニコニコ。尾をふかふか、もふもふ。
 しかし、そうだな……。
 ――やはり、櫛を持ってきても良かったな。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

酔うという感覚はどんなものなんだろう

サヨ?!
どうしたの
今日は随分と甘えただね
…そういえばきみは昔から酒癖が…
変わらないね、そういう所も――?
私は何を言って…酔っているんだな

カグラとカラスは留守番だ
つまり私達ふたりきり

猫とはこんななのかな
可愛い桜龍の頬から顎を優しく撫で甘やかす
咲く笑みに高鳴るこの鼓動と熱は何

酔いに任せて秘めた願望が零れる

ねぇ、サヨ

サヨは私に神楽を舞ってくれる
私に祈って
私を信じてくれる
私は櫻宵の神だ

きみが誰をすきでも
誰と何していてもいい
きみの御魂はもう約されているから
結ばれているから
この私と

だからね
サヨは私の巫女なんだ
なってくれるよね?

約束だよ
可愛い私の親友
愛しい私の巫女、


誘名・櫻宵
🌸神櫻

ふかふかしてよい気持ち
カームイ!
私の神様
ずっとあいたかった
嫌われたと思って拗ねてた
でもそうじゃなくて
またかえってきてくれて嬉しい
ふにゃふにゃ笑み咲きながらカムイに甘えかかる
もうすっかり酔っ払い?
ふわふわするわ

梔子の良い香り
落ち着く
小さい頃から大好きな香り
撫でてくれる掌が心地いい
ころころ喉がなるよう

なぁにカムイ

うんあなたにだけ神楽を舞うよ
あなたという神にだけ祈って信仰するよ
カムイは私の神よ
そうね
ずうと昔から
廻り巡って約ばれているのね
うふふ
あなたの待つ世界なら、私は何度だってかえってきたいもの

私が巫女?
カムイの巫女に?
いいよ
私、カムイの巫女になる!

約束よ
約束ね
ずっと一緒よ、私のーースヤァ…



「かー、む、い!」
 咲き乱れる桜の花弁が、はらりはらりと揺れる。
 その白い肌を朱色に染めた誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)は、朱赫七・カムイ(約彩ノ赫・f30062)へと品垂れかかって。
 木陰に腰掛けたカムイは、ふ、と小さく笑った。
「どうしたの、今日は随分と甘えただね」
「うふふ、ずっとあいたかったの。……ずっと、ずっと、嫌われたと思って拗ねていたわ。でも、そうじゃなくて、そうではなくて――」
 ふにゃふにゃととろける櫻宵の語尾。
 ぴったりと抱きつき艷やかに潤む瞳は、カムイに縋るように、甘えるように柔らかく揺らぐ。
「帰ってきてくれて嬉しいわ、――私の神様」
 甘い甘い、おかえりなさいの言葉。
 そう言えば昔から『かれ』は、随分と酒癖が悪かったものだ。
 酒を呑んでは、こうやって甘えて……。
「……変わらないね、そういう所も――」
 言葉を零してから、カムイは瞳を瞬かせた。
 それは知らない記憶。
 識っている訳も無い記憶が、見えた気がして。
 私は、……何を言って?
 噫――成程。
 肩を軽く竦めたカムイは、眦を和らげて1つの結論に至る。
 そうか、私ももう――。
「……酔っているんだな」
「うふふ、あなたももう、すっかり酔ってしまっているのかしら?」
「そのようだね」
「ふふふー、一緒ねえ」
 すり、と首筋に頬を寄せる櫻宵。
 ――梔子の甘くて上品な、良い香り。
 小さな頃から、大好きな香り。
 ――カムイの香り。
 カムイは甘えて花笑むかんばせを寄せる櫻宵の頬を撫ぜ、擽る。
 きっと、飼い猫というのはこういう感じなのだろう。
 世話を焼いてくれている人形も、三つ目のカラスも今日は居ない。
 ――それは今日サヨとふたりきり、と言う事だ。
 意識してしまえば、ときんと肚の奥が甘く疼く。
 高鳴る鼓動、疼く熱。
 櫻宵のとろけた桜色と、カムイの桜色の視線が交わされる。
 噫――酔っている。
 酔いに溶かされた秘めた願望が、溢れてこぼれて……。
 カムイは、口を開いた。
「……ねぇ、サヨ」
「なぁに?」
 幾度も撫でる事を強請るようにカムイの掌に頬を寄せていた櫻宵が、笑む。
 その笑みに許しを得たかのように、カムイは言葉を更に次ぐ。
 ――次いでしまう。
「サヨは私に神楽を舞ってくれるだろう? ――私に祈って、私を信じてくれるだろう」
「ええ、そうよ――私はあなただけに神楽を舞うよ。あなたという神だけを祈って、あなたという神だけを信仰するよ」
 一度言葉を切った櫻宵の桜色の口唇が開かれ、カムイは同時に言葉を紡ぐ。
「――カムイは私の神よ」
「――私は、櫻宵の神だ」
 自然に重なる2つの言葉は、混じって、溶けて。
「……きみが誰をすきでも、誰と何していてもいい。私は、知っているのだから」
 きみの御魂が、もう約されていることを。
 結ばれていることを。
「他の誰でもない、――この私と」
 カムイの言葉に櫻宵は、ふ、と甘く甘く鼻を鳴らして。
 当然の事を告げられたかのように、小さくかんばせを上げた。
「ええ、そうね。――ずうと昔から、廻り巡って約ばれているのね」
 あなたの待つ世界なら、私は何度だってかえってきたいもの、なんて。
 ふふ、と笑った櫻宵が言葉を付け足して。
 それを確かめるように。
 櫻宵の顎先を親指でくっと浮かせたカムイは、見据えるような視線を向けた。
「そうだよ――だから、サヨは私の巫女なんだ……なってくれるよね?」
 溢れ出した言葉はもう止まらない、止められない。
 秘められていた筈のカムイの願望は曝け出され、契りの言葉と成る。
「……わたしが、カムイの巫女に?」
 零すように問う櫻宵に、カムイは頷いて。
「いいよ。――私、カムイの巫女になる!」
 噫、噫、噫!
 その言葉が、どれほど、どれほどのものであるか。
 櫻宵は知っているのだろうか、櫻宵は――。
 カムイは、唇にただ笑みを宿して呟く。
「そう、約束だよ」
 可愛い私の親友。
 ――愛しい私の巫女。
「ええ、約束よ」
 約束ね。
 ずっと、ずっと、一緒よ。
 私の――。
「すう、……すう」
「……サヨ?」
 カムイが瞳を狭めて、櫻宵を見やる。
「…………寝てる? 寝ちゃダメだよ」
 なんたって、寝てしまったら起きられなくなるらしいじゃないか!
 カムイは櫻宵を揺らして、揺らして。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メルト・プティング
大好きなお友達のベアータ(f05212)さんと参加

元々明るく人懐っこい性格だが、酔うとさらに明るくなりめっちゃウザ絡みしてくる

えへへー、べあーたさーん
おぶびりおんなんかほっといて、ボクとあそびましょー

ほっとけば寝ちゃうらしいですし、必要以上に戦うことないじゃないれすか
あと、ボクじゃなくてオブビリオンに構ってるの、なんかヤーです

ところで、なんかぽかぽかして暑くないです?
気持ちはもう春なのです
だからー、ぬぎまーす
ゴーグルとー、上着とー…ほえ、なぜ止めるです?
らいじょぶです、ボクは平気!です!
はっ、もしかして…ベアータさんは、寒いのでは?!
冷やしちゃダメダメなので、ギューってして温めてあげますよー♪


ベアータ・ベルトット
親友のメルト(f00394)と

うっ、着いた途端に眩々してきた…メルト、気分大丈夫?
敵影を認めたら迎撃準備。極力言葉を発さず、獄炎に触れないよう遠距離から攻撃を…ん?な、何よメルト?

…うわー、すっかり出来上がってるし。やれやれ、まずはこっちの対処が先ね。ほら、しっかりなさいよメルト!…ってこ、こらーっ!なに脱いでんのよ!それはダメよ、倫理的に!えっちなのはダメだからッ!に゛ゃー!くっつくなーっ!

…カワイイからって、やりたい放題して…なら、こっちもくっつき返してやるんだから!それっ、ぎゅーっ!!
…あー、頭がポーッてしてきた。えへへー、あったかいわねぇ、メルト

私ら、なにしにきたんらっけ?…まいっか!



 街を行き交う獄卒達の影。
 彼女達もみんな誰しもが酔っ払っているようで、大きな被害こそでていないようだが――。
 否。
 妖怪たちが骸魂に飲み込まれた結果があの姿だと言うのならば、すでに被害はでていると言えよう。
 物陰に隠れて、酔いに侵されぐらぐらと揺れだした頭を抑えたベアータ・ベルトット(餓獣機関BB10・f05212)は、細く細く息を吐き。
「行くわよ、メルト。相手に気取られる前に……」
 自らの背後で構えるメルト・プティング(夢見る電脳タール・f00394)に向かって、小さく小さく抑えた声を零した――瞬間。
 ベアータの体は、背後から拘束されてしまう。
「…………ッ!?」
「えっへへへへー……、べーあーーたさーんっ」
 甘く甘くとろけた声が、ベアータの耳の真横で響く。
 黒い腕がベアータを背後より拘束し、きつくきつく縛っている。
「ねえ、ねえ、おぶりびおんなんかほっといてー、ボクとあそびましょー?」
 ――そう。
 ベアータを捉えたのは、同行者であるメルトその人であった。
 強請るように甘えるように、――いいでしょう? なんて。
「もー、ほっとけば寝ちゃうらしいですしー、必要以上に戦うことないじゃないれすか~~」
 言っている内になにかが気に入らなくなってきたのであろう。
 ぷりぷりと頬を膨らせながら言うと、メルトはベアータの肩口に顎をぐりぐり押し付け。
「それにいーボクじゃなくてオブビリオンに構ってるの、なんかヤーです~~、仕事とボク、どっちが大切なんれふかぁ、ねええ~~、べあーたさん~~」
「……アンタ……」
 メルトにされるがままに拘束されたまま、ベアータは片手でこめかみを抑えた。
 全くもう、メルトは完全にできあがっているようだ。
 ――こうなってしまえば、メルトへの対処を先にするしか無くなってしまうもので。
 ベアータはメルトに言い聞かせるように――。
「ほら、メルト、しっか」「ねえ、ところで、なんかぽかぽかして暑くないです?」
 ベアータが言葉を紡ぎ終える前に、重ねられた言葉。
 メルトが肩口で、首を傾げたのが解った。
 続いて響いたのは衣擦れ音。
 しゅるり、と音を立ててメルトの制服リボンが緩み――。
「ね~~、今日ってばーあったか~~い、気持ちはもう春なので~~す! だからー、ぬぎまーす」
「こ、コラーーーーーーーッッ!! それはダメよ!! 倫理的に!!! えっ、えっちなのはダメーーーっ!!」
 第六猟兵は全年齢対象のブラウザゲームなのだから。
 ぽえっとした表情を浮かべるメルトは、何が悪いのか全くわからない様子。
 上着がほしいのかもしれない、とベアータに手渡して。
「ほえー? でも、もうあったかいですよー?」
「脱がないの! 着てッッ! 着るのよッッ!?」
 なんだかよくわからないけれど、大好きなお友達であるベアータが心配してくれる事がメルトには嬉しくて、楽しくなってきてしまう。
 とろけそうな幸せな笑顔を浮かべたメルトは、更にゴーグルをベアータに手渡して――。
 あっ、そっか――ボクばっかり涼しくなるのは良くないかもしれないです!
「らいじょぶです、ボクは平気! です! ので!」
「へ、平気とかそういう話はしてなーーーいッッ! ふ、服をひっぱらないのーーーッ!!」
 ぐいぐいと引っ張られるベアータの服。
 親友なのに全く話の通じないメルトに、ぷるぷると左右にかんばせを振るベアータ。
「……はれ、……もひかひて……」
 そこまでベアータが嫌がる理由に思い当たったメルトは、次はベアータに――。
「ぬ、脱ぎながらくっつくなーーーーっ!!」 
 ぎゅうっと抱きついた。
「ベアータさんが寒いのならば、ボクが温めますッッ! 体が冷えたらダメダメですからねー♪」
「そういう、ことじゃなくて、……もう。カワイイからって、やりたい放題して……! ――なら、こっちもくっつき返してやるんだから!」
 言いながらなんだか、よく解らなくなってきてしまった。
 ベアータはぎゅうっとメルトの背に腕を回して抱きつき返すと、メルトとぴったりくっついて。
 あれ、……どうして、なにがダメで、なんで止めていたんだっけ。
 ぐらぐら、揺れる頭。
 脳の芯がじーんと痺れて、なんだか楽しくて――。
「えへへへぇ……あったかぁいわねぇ、めるとー……」
「うふふーあったかいれふねえ、べあーたひゃん……」
 ――あれれれ、何をしにきたんらっけなあ。
 ま、……うふふふ、いっかぁ。
 きもちいいー。
 ぽわぽわ、ふわふわ。
 二人は路地裏でぺったりと抱き合ったまま、なんだかとっても幸せになってしまったのでした。
 とっぴんぱらりのぷぅ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

霧島・ニュイ
クロトさんと(f00472)

クロトさん、クロトさーん
目的地について直ぐに後ろからハグする
ねーねー、最近どうなの?エロいことしてる?
きーかーせーてーよー
大切な人ができた、あの世の中の快楽を知り尽くしてそうなクロトさんだもん!
肩に腕を回して絡みまくる

僕もあーそーびーたーいー。なんぱしよーなんぱー
ズルズルとクロトさんを引きずる
えー…男同士なんだからいーじゃんオープンで!(拗ねる)
綺麗なおねーさーん
たわわな身が実ったお姉さん……

(※もふもふがぼんきゅっぼんの美人のお姉さんに見えてる)
大きな毛玉に顔を埋めてご満悦
柔らかい…天国……
僕といいコトしよー…

あ、金平糖だー!
甘いものに飛びついて
ほにゃんと笑顔


クロト・ラトキエ
ニュイ(f12029)と。

酔い、ですか…。
こう(ワクに)なるまで鍛えられた時も、
そんな状態すっ飛ばして意識飛ばされてたからな…。
ちと想像が出来ん、の、だが…


…絡まれてますね。うん。これは、絡まれてます。
こら、ニュイ。
大っぴらにエロいだの快楽だの、いかがわしい事を言うんじゃありませんっ。
秘すれば花なり、とも申します。
その様なお言葉、大っぴらに口にしていては、折角の可愛いお顔も台無しではありませんか。
ナンパもだーめ。

これ、そちらのお嬢さん(ごめずちゃん)達も!
他所様にご迷惑を掛けるなど言語道断。
大人しく…
そうそう、よく出来ました。
ではお菓子をあげましょう(金平糖)

(この人、酔うと真面目…だった…?



「ねええ、クロトさーん、くーろーとーさーんー」
 クロト・ラトキエ(TTX・f00472)の背中にぎゅっと抱きついた霧島・ニュイ(霧雲・f12029)は、クロトの背中に額をぐりぐりと押し付けて。
「ねーねーねー、最近どうなのー? エロいことしてるー? ねーねーねーねー、えっちな話きかせてよー、ねーーー、くーろーとーさーんー」
 ――ああ、コレは絡まれている。力いっぱい絡まれている。
「こら、ニュイ」
 眉間の皺をきゅっと深くしたクロトはメガネのフレームをきゅっと上げて、位置を正して。
「……そんなに大きな声でいかがわしい事を言うものじゃありませんよ。その様なお言葉、大っぴらに口にしていては、折角の可愛いお顔も台無しではありませんか」
 普段より何故か生真面目に響く口調で、クロトはめっとニュイに注意を1つ。
「えーーーーーーーだって、だってさあー、最近クロトさん、大切な人ができたらしいじゃない?」
 クロトの背側から肩に手を回したニュイは、うー、と一度唸って。
 ぐりぐり左右に体を揺り動かして、ぶーらぶら。
「そーんな、大切な人が出来たばかりの――あの世の中の快楽を知り尽くしてそうなクロトさんの話が聞きたくない訳ないじゃないー!! もーー、教えてよー、詳らかに夜を問わずどんなイチャイチャしてるのか、おーしーえーてーよー!」
「…………ニュイ。秘すれば花なり、という言葉もありましてね」
「えーーーッ。教えてくれないの? 男同士なんだからいーじゃんオープンで!」
 ぷう、と頬を膨らせたニュイは、拗ねちゃったもんねのポーズ。
 ぽこぽこと二度クロトの背を叩いてから、唇を突き出して宣言した。
「もーーこうなったら僕だって遊んじゃうんだからねーー! ねー、ねえねえねえねえ、クロトさん、なんぱしよー、なーんーぱー。くーろーとーさーんー」
 最早、底抜け騒ぎ。
 ニュイはクロトの腕を引いて、ぐいぐいと引っ張ろうとするが――。
 そんな彼の唇の前へと人差し指を一本ぴっと立てたクロトは、そのかんばせをゆるゆると左右に振り。
 内緒の指を立てられて、思わずお口チャックしたニュイはクロトを見上げた。
「ナンパもだーめ」
「え、えーーーーーーーーっ! 綺麗なおねーさんは!? たわわな身が実ったお姉さんは……!?」
「こ、こら、ニュイ!」
 ニュイのお口のチャックはチャック失敗。
 再度開いた口は、欲望が源泉かけ流し。
 クロトが大きく肩を竦めると、ニュイはその翠色の瞳をどんぐりみたいに見開いて。
 ちかちかと視線に星光を宿して、ぴょーんと跳ねた。
「お、おねえさーんっ!」
「きゃんっ!?」
 ニュイが飛び込んで抱きついたのは、くりくりの青いおめめともちもちボディの茶色い犬――彼の狛犬のチョビであった。
 酔っ払ってぽわぽわのニュイの目にはどうやら、チョビがぼんきゅっぼんの美人のお姉さんに見えてるようで――。
「ふふふ、やあらかいねえ……おねえさん、かわいいねえ……」
 天国~、と。
 幸せそうにニュイがチョビに囁くと、チョビがぴぴぴと耳を震わせる。
 どうやら吐息が耳にかかって擽ったいらしい。
「ね、ね、おねえさん……僕と、良いコトしよ?」
 甘えるような吐息に溶けるニュイの声音。
 艷やかに揺れる視線は、犬をしっかと捉えて。
 優しく優しく全身を揉みしだかれるチョビ。
 尻尾がピピピピと高速で揺れている。
 どうやらニュイに構ってもらえて楽しいらしい。
「……はい、まあ、そういうコトで」
 なんとか勝手に無力化されたニュイを、クロトはやれやれと一瞥して。
 そうしてくうるりと振り向けば、駆け回る獄卒達を指差した。
「――それにそちらのお嬢さん達! あなた達も他所様にご迷惑を掛けるなど、言語道断ですよ!
 大人しく落ち着きなさい!」
 注意をするクロトが背に隠すように持ったモノは、小さな子に言うことを聞いてもらう時の最終兵器だ。どうしようも無い時は、コレで――。
 そこに。
「あっ、こんぺいとう~~!!」
 その最終兵器を目ざとく発見したのは、チョビを抱きしめたベロベロのニュイであった。
 先程よりもずっとおとなしく静かになったニュイの様子に、クロトは優しくニュイへと笑んで。
「そうそう、悪い言葉を使わなくなりましたね、ニュイ。よく出来ました」
 ではお菓子をあげましょう、とクロトはざらりとあまーい星屑を掌にあけて。
「わーい、あまーい、おいしー!」
 金平糖を口に放り込んだ、ニュイはハッピー。
 呼び止められていた獄卒も、どうやら二人共ただの酔っ払いだと判断したようで再び街をてこてこ駆け出した。
 酔っ払いしか居ない街は、だいたいの事がアバウトに流されてゆく。
 しかし。
 そう、此処に居る人物は本人を含めて未だ誰も気づいていない。
 ――どうやらクロトが酔うと、真面目になってしまう事に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルーシー・ブルーベル
【苺夜】

街中に着いた瞬間、足がもつれてぺしょん!

ほわ?なんかポカポカするわ?
あらら?どうして苺が回って見えるの?
ちがうわ
ちょっと回転してるらけ

まいのようすも何だかおかしいし
本当にいちごみたい
「よう」ってこういう事をいうのね
大人の人がお酒でよっているけれど
まったく、一体にゃにが良いのかしにゃー

にゃ?んふ、んふふふふ
なんだか楽しくなってきちゃったにゃー
でも眠くもあるにゃー
どうしよっかにゃー

ねえねえまい
るーしーといっしょにお休みしましょ?
ぎゅーはあったかにゃー

ごめずちゃんもいっしょにねましょー
【ふわふわなおともだち】でふっかふっかにしてあげましょっ
ほーらいいこ、いいこ
まいにもいいこ、いいこ

すやあ


歌獣・苺
【苺夜】
わわっ!ルーシーだいじょ…!?(同じくぺしょん)

?ほんとら……ぽわぽわ…
えぇ?私回ってな…あはは、
回ってるのはるーしーらよぉ…!

この感じ……
お酒飲んだ時と同じだぁ…♪
気持ちいー…!
……?るーひーちがうよ、まいは、いちごりゃなくて、まいらよ…!

にゃ…?えへへ、るーひー、
猫ひゃんみたい…
まいも猫ににゃるー!
にゃんにゃんにゃ…♪
るーひー寝ひゃうの…?
まいも、まいもねんねすりゅ………うん、いっしょに
おやしゅみすりゅ……(ぎゅ)

ごめずひゃんずるい、
まいもるーひーに
いいこいいこしてもりゃうの。
ごめじゅちゃんは
まいのおうたもきいてね…
ねーんねーんころり…♪
えへへ。

すぴぃ



「ほにゃっ!?」
 街へと降り立った瞬間、もつれた足。
 ルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)は大きく空色の瞳を見開いて。
「わわっ、ルーシー! だいじょっ」
 真横に降り立ったルーシーを助けようと、歌獣・苺(苺一会・f16654)が手を伸ばすが――。
 その手を取る前に、苺もまた同時に足をまろばせて。
 同時に床へとぺったりと倒れ込むルーシーと苺。
 それでも思いっきり転んだというのに、痛みよりも不思議な感覚に二人は瞳を瞬かせた。
「ほわ……? なんか、ポカポカするわ……?」
「へゃ……? ぽわ……? ほんとらあ……」
 上半身だけ起こしたルーシーが首を傾ぐと、すでに呂律が怪しくなってきた苺が不思議そうにきょときょとと周りを見渡す。
「あら、あららら? 苺、回ってる?」
「ふぇっ!? えぇ……私回ってな…、あ、あーーっ、ちがーう。あはは、あはははっ、ちがふわ。回ってるのはるーしーらよぉ?」
「るぅし、は、まわってないわ、ちょっと回転してるらけらの」
 もちろん二人共、地面に座っているだけだ。
 どちらも回転なんてしていない。
 ふわふわ、ふらふら。
「もう、るーしーがしっかりしなきゃ……」
 なんたって、苺の様子だってすっかりおかしくなってしまった。
 ぎゅっと拳を握ってルーシーは決意する。
「あーれもー、これねえー、うふふふ、お酒飲んだ時と同じだぁ……♪ きーもちいいー……!」
「まあ、『よう』って、こういうことをいうのねえ。……まったくこんにゃの、一体なにが良いのかひらにゃあ……?」
 楽しげに笑う苺にルーシーはふるふるとかぶりを振って。
 大人が楽しんでいるお酒は、こんなに世界をぐらぐらふわふらにしてしまうらしい。
 望んで前後不覚になりに行くなんて、本当に大人は不思議なものだ。
 そういえば苺だって、顔が真っ赤になっている。
「なんだかまい、本当にいちごみたいだにゃ……」
「……? るーひーちがうよ、まいは、いちごりゃなくて、まいらよ??」
「んんふ、んふ、でも、まいはいちごにゃー」
 喋っている内に、だんだん気持ちが良くなってきてしまった。
 ルーシーはうふふ、と笑って。金糸のような髪を指先にくるくると巻きつける。
 それがなんだかとっても不思議と楽しくて、ふふふ、とまた笑うルーシー。
 苺はそんなルーシーを、きょとんと不思議そうに眺めて――。
「まいなひょひ……、でも、そんなこというるーひーは、猫ひゃんみたいだねえ」
「にゃー?」
 そう。
 呂律が回らなくなってきたルーシーの口調は、語尾が猫のように苺には聞こえるのだ。
 くすくすと笑った苺は、うさぎの耳をぴょんと跳ねさせてから。
「にゃ! にゃんにゃにゃー♪」
「ふふふふ、んんふふ、にゃあ、にゃあ」
 そんな苺の様子がおかしくて、楽しくて。
 なんだか脳みそがハッピーになってきたルーシーも、猫になることにした。
 二人揃って、今日はねこ!
 にゃあにゃあ。
 にゃにゃにゃ。
 ――しかししかし、猫は一日の半分以上を睡眠で過ごすのだ。
「んにゃー……眠くなってきたにゃー」
 ならば猫になってしまったのならば、この睡魔だって仕方のないモノ。
 くしくしと手首で頬を撫でたルーシーは、うとうとと瞳に睫毛の影を落して。
「んにゅ? るーひー寝ひゃうの……? ならね~、まいも、まいもねんねすりゅ………」
「にゃあ! ねえ、ねえ、それにゃらまい、るーしーといっしょに、おやすみしゅる?」
「うん、いっしょに、おやしゅみすりゅ……」
 そうっと二人は体を寄り合わせて、ぎゅっと抱きしめ合う。
 今の幽世では、街の真ん中で眠ろうとしている人々なんてなあんにも珍しくは無い。
 獄卒達だって、眠ろうとしている二人の横を素通りしてゆくけれど――。
「ねえ、ねえ、ごめずちゃんもいっしょにねましょ?」
 みんなと一緒に眠りたくなったルーシーは、ぎゅうっとロップイヤーのぬいぐるみを抱きしめると、溢れ出す綿。その綿は周りを歩む獄卒達を綿で捉え、拘束して――。
「な、なになになになんだぞー!?」
 慌てる獄卒にルーシーは瞳を眇めると、楽しげに楽しげに微笑んで。
「うふふ、うふふふふ。これでみーんな、いいこ、いいこ」
「うにゃーー! ごめずひゃんずるい!!!! まいもるーひーに……いいこいいこしてもりゃうのーー!」
「にゃ、まいもー、いいこ、いいこ~♪」
「うにゃ……」
 すかさずルーシーに撫でてもらった苺は、とろけそうな幸せスマイル。
 綿からわたわた脱出しようとする獄卒たちに、優しく優しく微笑んで。
 ルーシーは苺がとってしまったから、――彼女たちには変わりに。
「まいのおうた、きいてねえ……」
 苺が歌う子守唄。
 ねんねん、ころりよ、おころりよ。
 獄卒たちも彼女たちも、みんな並んでぐうぐうと眠りだし――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

徒梅木・とわ
ヴィクティム(f01172)と

・瞼が重く、視界不明瞭に
・やりたい事や言いたい事に対して素直になる
・頭が回らないので戦闘は加久留に任せきり

ひー、ふー、みー……随分多いな
こうなったら手早くばーっとやってくれたまえよ――
んん……?
何かキミも多くないか?

……いや、ね、キミ
人に、それだけえ……目を向ける暇があった、ら
そいつを、ちょいとでも、……自分に向けろってんだ!
とわの事はいいんだ、この阿呆
自分を褒めろ、自分を
とわが凄いのなんか、その……あれだあれ、当たり前だ。知ってるから

ああもう、しょぼくれるの禁止っ! 駄目! はい終了!
まったく、うちの弟じゃあないんだから……
もー。ほら、抱っこしてやるから元気出せ


ヴィクティム・ウィンターミュート
・冬梅酩酊

…っはぁぁぁぁぁぁぁぁ
なんつーか…やる気が出ねぇなぁ…(ダウナー)

やる気出ねぇけど……我らが従業員殿は…アレだなぁ…
すっっげー…かぁいいよなぁ…
気立ても良くて、頭も良くて、有能でぇ…いーっつも帰りを待ってる
はぁぁ…これが世に言う良い女ってやつかぁ…
貰った符が無けりゃ今頃…地獄でのたうち回ってたぜ…
きっと野郎はさぁ……お前みたいな奴を好きになるのかもなぁ……

はぁ~~~~どーにかよぉ…
しぁーわせに…なってほしいよなぁ…
一個だけ願いが叶うならよぉ…俺は何よりそう願うぜ……
あーー……良い奴を見つけて欲しいぜ…
(褒め上戸と化して管を巻く)
とりあえずなんか敵いるし…倒そ
はぁぁぁぁっ………



 降り立った先には、沢山の獄卒達が闊歩していた。
「ふうん、なるほど。――ひー、ふー、みーよー……随分と多く集まったものだねえ」
 物陰に身を隠した徒梅木・とわ(流るるは梅蕾・f00573)は、道の向こうから歩んでくる獄卒の数を指折り数えて。
 この世界に起こっている不具合が、確実に自らの体を蝕んで居る事を感じる。
 どうにも定まらぬ視点は、ふわふわと揺れて。
 その上この道も、幾重にも道が重なっているようで複雑な構造になっているようだ。
 こうなれば腕に巻き付かせた二尺程の蛇――水を司る黒竜の式神の加久留に戦闘は委ねるしかないかと、とわは肩を竦め。
「キミ、――こうなったら手早くばーっとやってくれたまえよ。そういうのは得意だろう?」
 共に訪れた本日の相棒、ヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)へと声をかけた。
「……っはぁああぁああああ~~~」
 しかし、返ってきたのはクソデカため息。
「ん……?」
 薄紅色の瞳を瞬かせて、とわがヴィクティムに振り返ると――。
 ヴィクティムが3人に増えていた。
「今日、キミ、なんだか数が多いね」
 なんだかそれが当然の事のような気がして、とわは雑談のように声を掛け。
「はーーーーーー、なんっっつーーーか……やる気、でねぇなあ…………」
 しかし声を掛けられたとて、クソデカため息をもう一度重ねたヴィクティムはゆるゆるとかぶりを振るばかり。
「でも、そうだなぁ……ぜんっっぜんやる気は出ねぇけれど……我らが従業員殿は……アレだなぁ……、すっっげー……かぁいいよなぁ……?」
「……い、いや、いや、ね、キミ?」
「はぁ……、ホントさ。気立ても良くて、頭も良くて、有能でぇ……、いーっつも帰りを待ってくれている。……コレが世に言う良い女ってやつなんだろうなあ……」
「き、キミ!?」
 明らかにおかしい。
 入っては行けない所にスイッチが入ってしまっている様子のヴィクティムに、とわは眉のきゅっと跳ねて。
 そんなとわの様子なんてお構いなしに、ヴィクティムは床にごろんと倒れて尚言葉を次ぐ。
「従業員殿に貰った符が無けりゃ今頃、俺なんてさ……、もうゴミカスみたいにやられちまって、今頃地獄でのたうち回ってたんだろうなァ……、はぁ~~~~…………ッ、きっと野郎はさぁ……お前みたいな奴を好きになるのかもなぁ……」
「ま、まて、まて、まてまて、キミ、人に、それだけ、えっとえ……目を向ける暇があった、ら……
そいつを、ちょいとでも……」
 床を転がるヴィクティムの一人を、とわは引っ掴み。
 そいつの上半身を無理矢理起こしてやると、ヴィクティムはどろんとした瞳でとわの瞳を射抜くように見返して。
「はぁ~~~~、どーーーにか、どうにか、お前にはさぁ……しぁーわせにさぁ、……なってほしいんだよ、俺はさあ……」
「キミは――そいつをちょいとでも、……自分に向けろってんだ! この阿呆ッッ!!」
 ヴィクティムが酔っていれば、とわだって酔っている。
 罵倒だって武力にだって、今日のとわはすぐに訴えることが出来るのだ。
 なんたって酔っているのだから。
 とわは彼の絡みを止めるべく。
 掴んだ上半身をガクガク揺さぶるが、――完全に酔い酔いのヴィクティムは悪い意味でそれを物ともしない。
「「いっこだけっ、願いがっ、叶うならよ……ぉ!」
 褒め上戸となったヴィクティムはかくかく揺さぶられながら、言葉を尚も紡ぐ、紡ぐ。
「俺は、俺は、お前の幸せを、何より願っうっ、ぜっ、ほんっ、とっ、良い、ヤツを、みつけっ、てっ、ほしっ」
「もーーーっ、阿呆! 本当に阿呆だなキミは! 自分を褒めろ、自分を! 自分を大事にしろ! 自分をもっと――……」
 そこで言葉を一瞬詰まらせたとわは、きゅっと息を呑んで。 
「ああああもーっ、とわが凄いのなんか、その……あれだあれ、当たり前だ。知ってるから! 当たり前だから! もう、しょぼくれるの禁止だっ! 駄目! はい終了!」
 ヴィクティムの腕を無理矢理引き上げると、彼をなんとか立ち上がら――られない。
 芯のない人形のように、かくんと倒れるヴィクティム。
 やれやれととわは肩を竦めて。
「……もう、……はあ。ほら、抱っこしてやるから元気出せ、全く……」
 うちの弟じゃないんだから、なんて。
 ヴィクティムを抱き上げてやると、その背をぽんぽん、と優しく撫で叩いてやる。
「あーー……、こんなに優しくて良い女、ほんっっっとーに男が放っておく訳ないのになあ……」
 ヴィクティムの言葉は何度も何度も攻撃を仕掛けられているようなもの。
 ――酔っているから、頬が熱い。
「だー、かー、らー、じーぶーんーをーほーめーてーろーッッ!」
 そうして。
 いまだぐだぐだとするヴィクティムの背をとわは、ばあんと叩くのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

スキアファール・イリャルギ
あー……すごい
頭がふわっふわのぽわっぽわだ
キマイラフューチャーで焼肉食べた時よりすごい酔いかも

あ、コローロ待って
飛び廻っちゃダメだよ、フラフラしてる……堕ちちゃう……
あぁ、そっちに行っちゃ危ない……
(酔いで何度も空ぶっちゃう腕)

……や、やっとつかまえた
マズイな、疲れた
寝ちゃダメなのに眠いぞ……

ん、なに、コローロ
眠らないように歌ってほしい、って?
ふふ、どうしたの
いつもはこっちが歌の要望を訊いても恥ずかしがって何も言わないのに……
あー、そうか
きみって酔うと甘えん坊になるタイプか?
ふふ……そっかぁ……
知らなかった一面を知れたなぁ……

うん、じゃあ歌うよ
酔ってていつもより下手になりそうだけど、許してね



 頭の芯がぼうっととろけてしまったようだ。
 足取りも、頭の中も、ふわふわぽわぽわ。
 あの日の焼肉の時よりも、強い酔いだとスキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)は感じている。
 なんだかんだであの時は食事をしながら呑んでいたから、酔いは多少マシであったのかもしれないけれど。
「あ、……コローロ待って」
 火花のように瞬く光――あの日に残った『あの子』のひかりを追って、スキアファールは手を伸ばす。
 しかしどうにも捕まえられないひかりは、ゆらゆら、ふらふら。
「ダメ、ダメだって、飛び廻っちゃ……ああ、フラフラしてる……」
 なんとも心配な動きをするひかりは、どうにも手が空振りしてしまう。
 いや、なんだかひかりも増えているようだ。
 それでも。
 どれだけ増えてしまったとしてもあの子のひかりは、あの子なのだから。
 どれ1つだって捨て置くこと出来ず、スキアファールは増えて減ってを繰り返すひかりを追って千鳥足。
「そっち、そっち堕ちちゃう……、危ないよ、本当に……」
 ――本当はそのひかりは、そんなに動いていないのかもしれないけれど。
 スキアファールからすれば、あっちにいったりこっちにきたり。
 危ない動きにはらはらしてしまう。
 それに動き回るだけで頭はぐらぐら、吐き気すらこみ上げる胃を抑えて。
「は、はあー……や、やっと捕まえられた……もう、ここにちゃんといてよ」
 なんとかひかりを捕まえた頃には、疲労困憊といった様子であった。
 激しい運動にぺったりと木の幹に背を預けて座り込んだスキアファールは、ひかりを肩の上へと載せて。
 細く細く息を吐くと、眠気が同時に襲ってきてしまう。
 ――しかし、たしか眠るともう起きることができない、と聞いている。
「……マズいな」
 なんて。
 小さく彼が呟けば、肩の上でひかりがはたはたと瞬いた。
「……ん? なに、コローロ」
 瞳を狭めたスキアファールは、ふ、と小さく鼻を鳴らしてから。
 本当におかしげに、どこか幸せそうに笑った。
 なんたって、普段なら歌の要望を聞いたって、恥ずかしがってなあんにも答えてくれないひかりが――。
「眠らないように、歌ってほしい、って?」
 そうか、そっか。
 ――きみって、酔うと甘えん坊になるタイプだったんだなあ。
「……そりゃ、意外な一面だ」
 知らなかった、あの子の一面。
 ――淡い喜びにくつくつとスキアファール・イリャルギはまた笑って。
「うん、じゃあ、歌うよ。――酔ってるから、いつもより下手でも許してね」
 そうして、彼は唇に歌を乗せる。
 肩で安らぐひかりのために。
 ――遠く響く歌声を、高らかに。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天帝峰・クーラカンリ
●普段は冷静で偉そうだが、酔っても性格はそのままにノリツッコミが激しくなるタイプ。一人称が「俺」になる

平素は酒精には強いはずなのだがな…可笑しい、この感覚…酩酊のそれだ
いかん、平常心、平常心…(念じる)
それにしても敵も味方も酔いどれだらけではないか
俺…いや私はこんなものに惑わされたりは…

視界がぐるぐる回る。足取りも覚束ない。全く、なんと厄介な!
おいお前、ごめずちゃんと言ったか。なんとかしろ
…って、寝てる!?

もう何がなんだか
俺だって好きでこんな状態になってるわけじゃないのに…
とりあえず一発殴っておこう

はぁ、絶対あいつら(同僚)には見られたくないな
どうせならちゃんと酒で酔いたい…
帰ったら一杯やるか



 動悸、息切れ。
 ほてりに、足がもつれる。
 揺れる視界。
 おかしい。
 いや、困った。
 ――これは、この感覚は。酩酊のそれではないか。
 髪をかきあげて周りを見渡した天帝峰・クーラカンリ(神の獄卒・f27935)は、眉間に皺をぎゅっと寄せて。
 周りを歩む者たちは、猟兵にしたって、妖怪にしたって、――骸魂に飲み込まれた獄卒にしたって。
 みんなみんな、へらへら笑ったり泣いたり起こったり、情緒不安定な千鳥足。
 いかん、いかん、いかん。
 『醒』という概念が失われた世界、なんて異変に負けるクーラカンリでは無い。
 決して、決して。
「俺……いや私は、こんなものに惑わされたり、は……」
 ぐ、と壁に手を付けてなんとか平行を保つと、視界に入った大きな棍棒。
 角をひっつかんで其れを引き寄せると、クーラカンリは奥歯を噛み締めてなんとか意識を保ちながら言葉を紡ぐ。
「……おい、お前。ごめずちゃん、と言ったか? なんとかしろ。このままではおれ、私は……」
 角をひっつかまれて、ぶらんと揺れるごめずちゃんは――。
「……ぐー」
「ってうぉおおおい、寝てるのか!? お前!?」
 驚いた彼にゆっさゆっさ揺さぶられても、幸せそうな寝姿を晒したままのごめずちゃん。ぐーすかぴー。
 これではどれだけ頼もうが、彼女はどうにも出来なさそうだ。
 ぽいっと獄卒を投げ捨てると、激しい運動による加圧でクーラカンリの視界はぐらりと揺れて、廻って。
「う、うう……、何だ、もう、くそっ。……俺だって好きでこんな状態になってるわけじゃないのに……、誰だ、こんな仕事を振ったヤツは……」
 でもその仕事を受けたのもクーラカンリなのだ。
 ごめずちゃんに取り付いている骸魂だけを殴り倒して、ふらりふらり千鳥足。
 クーラカンリは更に仕事を成すべく、歩みだす。
「はぁー……絶対あいつらには見られたくない姿だな……」
 どうせ酔うのならば、旨い酒で酔いたいものだ。
 気分良く酔うには、それが一番であろうに。
 無事に帰ったら、絶対に旨い酒で一杯やることを心に誓う。
 ――あと同僚にも絶対この状況では会わない事を心に誓う。
 それを誓うことで為せるかどうかは、別として。
「……おい、ごめずちゃん! 聞こえてるならさっさとこっちに来い!」
 大きなため息と共に吠えたクーラカンリは、向こうから獄卒に来てもらう事を選んだ。
 なんたって、歩くと視界がぐるぐる回るもので。
 ――態度の大きな彼の声に、少女達が寄ってきてくれるかは別として。
 嗚呼、ままならないもの。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐々・夕辺
有頂【f22060】と

ふふ、とっても気分がいいわ!
ふわふわして、思わず笑顔になってしまうわ
うちょう、うーちょう。呼んでみただーけ。
すきよ。すき。うふふ、両想い~!

…え?
大丈夫、ちゃんと戦えるわ。管狐をね、指に…
ありゃ? んー?
巧く挟めない……んー!
これはきっとオブリビオンの仕業かしら!
結婚式を邪魔するなんて……結婚式?
有頂、私たち結婚するの!?
こ、こういうのは籍を入れてから…!

って、あー!ごめずちゃんが有頂を見てるわ!
駄目!だーめーー!この人は私のなのー!
有頂のお肉も心も私のものなの!誰にも渡さないんだから!

有頂の腕に縋り付いてうーうー唸る
其のうちに眠った相手につられ、すうすう寝息


日東寺・有頂
夕辺(f00514)と

お〜〜と いかん
新郎が居眠りこいとーたばい
ゆらあと立ち上がってマイク(エア)片手に咳払い
締めの挨拶せんとなあ
え〜〜本日は御足元もフラフラななか!
オイどんのためにお集まり頂きまことに
まこ おいおい皆しゃん見とーけん
そがん好き好き言うたら恥ずかっし…俺も好き〜〜〜

あ?たたかい?ご列席の皆しゃんと?
あれ?なんや披露宴やなかとじゃんちぇ〜〜〜
やてさあ、早う夕辺と一緒なりとーてさあ

ん?誰アンタ ごめず?
お〜うそうそうそうなんよスマンなあ
俺の心も体もモツもアレも、こん夕辺しゃんのもんなの!ウリキレごめんず!(額ピシャッ)

うーうー言うとー夕辺の頭抱えながら
特大イビキで幸せ寝顔



 街中を酔っ払って闊歩する獄卒達は、此方から手を出さない限りは襲いかかってくる事もあまりなさそうで。
 上機嫌の佐々・夕辺(凍梅・f00514)は空色の瞳にとろける甘さを揺らして、横に立つ日東寺・有頂(手放し・f22060)へと飛び切りの笑顔を向ける。
 ――ああ、なんて良い日なのかしら。
 ああ、なんて気持ちが良いのかしら。
「ねえ、うちょう、うーちょう」
 なあんて、呼んでみただけ。
 大きな獣耳も大きな獣尾も、ゆらゆらゆらゆら、彼に向けて揺れて、揺れて。
 ふわふわ、ぷわぷわ。
 とってもとっても今日は、気分が良い。
 ねえ、すき、すきよ。
 ほんとうに、うちょうがすき。
「ねえ、すきよ、……すきよ、うちょう」
 考えているだけでは足りない。
 思わず零れてしまった言葉に、夕辺は自分でくすくすと笑ってしまう。
 うふふ、うふふ。
 夕辺は体のそこからじわじわと湧き上がる感情に、ふるると背を震わせる。
 嬉しい、嬉しい、嬉しい気持ちで一杯になってしまう。
 だいすき、すき、……両思いだなんて、うふふふ、ほんとうに、嬉しくて。
 ――刹那。
 ぐうらり、と頭を揺らした有頂は、はっと肩を跳ねて。
「お~~とっ!? いかん、いかん、新郎が居眠りこいとーたばい」
 くらくらと揺れる頭を掌で抑えた有頂は息を吐く。
 そう、そう。
 今日は確か――。
「え~~本日は御足元もフラフラななか~、オイどんのためにお集まり頂きまことに、まっことにありがとうな~~」
 エアマイクを構えた有頂は、獄卒達を見やって朗々と。
 礼とともに頭をぺこりと下げて。
「え? 有頂、寝てたの?」
 何故か上手に指に挟めぬ管狐の入った竹筒と、格闘していた夕辺は目をまんまるに。
 多分この竹筒が上手に挟めないのはオブリビオンの仕業だと思うのだけれど。
 もう、本当に。
 結婚式を邪魔するなんて悪いオブリビオン達!
 今日は、幸せな、……しあわせな……?
 ううん。
 そこではた、と夕辺は気がついた。
 ――え、……? 今有頂、新郎っていってた?
「おう。元はと言えば、夕辺とオイの出会いは……」
「ま、まままっ、まっ!? 待って!? 有頂、私たち結婚するの!? こっ、こういうのは籍を入れてから……、いやいやいや、ち、ちがうの! 嫌じゃないわ。嫌なんかじゃないけれど! す、すきよ! うちょうのことは、す、すきだけどっ、待って!?」
 ぴゃっと獣の耳を立てた夕辺は、ひゃあっと顔を覆って。
「おいおい皆しゃん見とーけん、そがん好き好き言うたら恥ずかっしわぁ、でも、――俺も好き~~~~!!」
「え、えええーーーっ!? わ、私も好き~~~!! 大好き!!!! でも、ち、ちがうの、有頂、そうじゃなくて! いま、今は……戦闘中なのよ!」
「へぁ? なん? ……え? ご列席の皆しゃんと?」
「オブリビオンの皆さんよ!!!」
 必死に訴える夕辺の言葉に、有頂はやっと周りを見渡し直して――。
 エアマイクを地に落した。
「え? あれ、なんや、なんや。披露宴やなかとじゃんちぇ~~~!」
「そう、そうよ!」
「はーー、でもオイ、やてさあ、早う夕辺と一緒なりとーてさあ……」
「わかった、分かったわ! だ、だからっ、うー……っ、すごく恥ずかしいわ……、そういう事いうのずるい……」
 ふるふるとかぶりを振る夕辺の顔は、酔いでは無い紅潮によって最早熟したりんごの様に赤く、赤く。
 それでも、それでも。
 一人のふらふらの獄卒が有頂に近寄る姿を見てしまったら――。
「あん? 誰、アンタ」
「あーーーーっ! 駄目! だーめーー! この人は私のなのー!」
 一気に有頂の下へと駆け寄った夕辺は獄卒を睨めつけて、うーっと小動物の威嚇のポーズ。
「有頂のお肉も、心も、ぜんぶ、ぜんぶぜーんぶっ、私のものなの! 絶対誰にも渡さないんだからっっ!」
「おおーう。そう、そう。そう、そうなんよ、スマンなあ」
 ぴったりと彼女が腕に抱きついてくるものだから、有頂は唇に笑みを宿して。
 獄卒の額にぴしゃりとデコピンを1つ。
「俺の心も、体も、モツも、――アレも、こん夕辺しゃんのもんなの! ウリキレごめんず!」
「えっ、ごめずちゃん……えっ!?」
 力強い惚気宣言をされたごめずちゃんは目をまあるくして。
「……す、すごいのろけだったんだぞ……」
 夕辺を抱き上げて歩いて行く、有頂の背を見送るばかり。

 ――ああ、なんて良い日なのかしら。
 ああ、なんて気持ちが良いのかしら。
 とってもとっても今日は、気分が良い。
 ねえ、すき、すきよ。
 ほんとうに、うちょうがすき。
 二人並んで、ぎゅうっと抱き合って、ぐうぐう眠って――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

臥待・夏報
風見くん(f14457)と

よーし二軒目だ!
ぶっちゃけ僕はカクリヨファンタズムを飲み屋街だと認識しているぞ!!
いや今回は飲んでないんだけどな
確か飲んでなかったよね?
思い出せない……
寺だか神社だかで、風見くんが高い壺を買わされてたのだけは覚えてる……

寝たら死ぬっては地味にきついよなあ
いつもの夏報さん、大体このくらい飲むと路上とかで寝落ちしちゃうもん
いや飲んでないんだけど
ときすでにねむい……
ときよとまれ……

ひゃあ風見くんだいたーん
最高に熱くて甘い夜にしようぜーッてあっっっつ!!!(地獄の炎)
今のは小粋なジョークっていうか話を盛っただけでつべたっっ!!!(壺の水)

……うう
寝ないことには成功したかな……


風見・ケイ
夏報さん(f15753)と

もう、ここはそんなところじゃないですよ
ええと、……そう、商店街!!
……ですよね? なんかそんな気がする
だから飲んでないんです!
ほらっ、手にしてるのもお酒じゃないし……なんだっけ、この壺
お水を入れるとお酒になるとか……?

夏報さん前にも言ってたな……ほんとそれ危ないからダメですよ
でもだいじょぶ。今夜は私がいるからね……寝かさないぞっ

――夏報さん!?
冷やさなきゃ……そうだ水!
まったく、酔っ払いはどの世界でも危ないなぁ……よし
それなら夏報さんの願い、叶えちゃうね
ときよとまれ……千夜一夜が明けるまで

これで、誰にも邪魔されない
暴れる酔っ払いが寝ちゃうまで飲み明かそっか(ただの水)



「よーし、二軒目だーっ!」
「もう、ここはそんなところじゃないですよ」
 拳をぶんと振り上げる臥待・夏報(終われない夏休み・f15753)に、風見・ケイ(星屑の夢・f14457)は窘めるよう。
 ――しかし窘めてみたものの、どうにも言葉に確信が持てず。
 ケイは水の満たされた壺をぎゅっと抱き寄せて、ぐうるり周りを見渡す。
 だってここは、……ええと、たぶん商店街。
 そう、飲み屋街だったりしないし、ゲームセンターだって見えはしない。
 けれども、街に異変が起こっていないという訳でも無い様子だ。
 周りを歩む人々も妖怪達はみーんなへべれけ笑って、楽しげ。
 ただの商店街ならば、そんな酔っ払いまみれの訳はないのだけれども。
 街の様子に、やっぱりと夏報は少し瞳を狭めて。
「ぶっちゃけ、僕はカクリヨファンタズムを飲み屋街だと認識しているよ」
「そうですね……皆酔っているみたいだし、それは否定しづらくなってきましたけど。……私たち、お酒飲みましたっけ?」
 ケイが壺をなんとなく腕の中で回しながら、夏報へと首を傾ぐと。
「……? えっ、んっ……?」「えっと……?」
 二人の酔いどれ脳は、すでに記憶がふわふわ曖昧。
 今日はお仕事だったような気もするし、ただ単に飲みに来ていたような気もする。
 寄せては返すどうしようも無い記憶と、大切な記憶の波。
 混ざって弾けて、なあんにも思い出せない。
「えーっと……」
 夏報は顎先に指を当てて、思考する。
 飲んだ覚えがないので飲んでいない気もする。
 けれども、体も頭もふーわふわ。
 気だるくて、心地よくて、気持ちのよい、確かに感じる酩酊感。
 ――あとなんとなく寝ると起きられなくなる、という事だけ覚えている。そう、たしかそうだ。
 と、いう事は。多分、うん、たしか、仕事だった気がする。きっと。
 だんだん冬の気候になってきたから、いつもみたいに酔っ払って外で寝ると死にそうになる、みたいな話ではなかった、と、思う。多分。きっと。めいびー。
 夏報はうんうんと一人で何度も頷きながら、ケイへと視線を向け直すと。
 首を傾げているケイ。
「確か仕事で来た気もしますし……、お酒も持っていないですし。飲んでいないとは思うんですけれど……。……なんだっけ、この壺……?」
 お水を入れたらお酒になるとかなら良いなあ、と壺を掲げてくるくると回してみる。
 しかし別段、中に満たされている水は、酒の香りがするとい言う訳でも無い。
「えーっと……、寺だか神社だかので……風見くんが目玉の飛び出そうな値段で買わされていたのは覚えているな……」
 むむむ。
 眉根を寄せた夏報は、ふわふわ仕事を拒否する脳を無理矢理働かせ。
「成程……そうですね、目が飛び出さなくてよかった」
「良かったなあ」
 よかったあ~。
 二人共脳みそがふわふわなので、良いことは良かったのだろう。めいびー。
 なんとなく情報も整理できたような気がするので、醒めぬ酔い醒ましに二人は街をゆるゆると歩み出す。
「しかし。いつもの夏報さんなら、このくらい酔っていると、最早路上でぐっすりコースなんだけれどなあ」
 柔らかく街を吹く風は心地良いが、どうにも酒のような甘さを感じる気がする。
 夏報は瞳を眇めると、ほうと酒気も混じらぬのに熱い吐息を零して。
「それ、前も言ってたけれど……、ほんと危ないからダメですよ?」
 再び嗜めるように言葉を零したケイは、壺をぎゅっと抱きしめた。
「うーん……飲んでないはずなんだけどな……。でも話しているうちに、なんだか眠たくなってきたぞ……」
「たしか、今日は寝たら起きられなくなる……んですよね?」
「そうだった気がする……、しかしときすでにねむし……、ときよとまれー……」
 話しながらだんだん語尾が溶けてきた夏報に、ケイは甘やかに悪戯っぽく笑って。
「もう――、今夜は私がいるんだから……寝かさないぞっ?」
「ひゃーあ、きょうの風見くんはだいたーん。フフフ、最高に熱くて甘い夜にし」
 なんて、嘯いた夏報は――。
「――夏報さん!?」
「っつあああぁあああっ!?」
 燃えていた。
「ごめずちゃんは嘘がキライだぞ!」
 ごうごうと地獄の炎を燃やす骸魂に飲み込まれた獄卒は、けらけらと笑って。
 夏報がぶんぶんと顔を左右に振る。
「あちゃっ、あっつ、あつっ、待って! い、い、いまのは小粋なジョークっていうか話を盛っ」
「あぶなーいっ!!」
 ケイが慌てて夏報を消火すべく、壺に満たされていた水をブチまければ――。
「つ、つべたああっ!?」
 炎こそ消えど、次はびっちゃびちゃになる夏報。
「わはははは、燃えろもえろーっ」
 その周りを火花を散らしながら楽しげにぐるぐる回る獄卒を、ケイは冴えた(ように見える)瞳でしっかと見据えて。
「――まったく、酔っ払いはどの世界でも危ないなぁ……」
 それから夏報の手を取ると、小さく鼻を鳴らして唇に笑みを宿した。
「でも、そうだね。――夏報さんの願い、叶えちゃおう」
 ――ときよ、とまれ。
 Alf laila wa laila。
 これで誰にも邪魔をされる事は無い。
「さあ、暴れる酔っ払いたちが、みーんな寝ちゃうまで飲み明かそっか?」
「……うう、確かに寝ないことには成功したみたいだしね……」
 ケイが笑えば、びちゃびちゃの夏報も水を軽く払って。
 ――千夜一夜の物語が明けるまで、語り合おう、飲み明かそう。
 それがただの水であったとしても、今日は特別。
 二人のお話が終えるまで、時だって止まっているのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

隠・イド
【土蜘蛛】
立ったまま静かに目を閉じ船を漕いでいる
話し掛けられればハッと気付いて平静を装うような応対
卑屈で弱気で面倒くさい男になっている
(普段は一切酔わない)

酔っ払った耀子を支えたり気遣ったりしつつ、自身もヨロヨロしている


耀子様、本当に私など必要なのですか?
道具としても戦力としても中途半端……
耀子様も最後には《クサナギ》を頼りになさるのでしょう?

またまたそんな誤魔化しを……
酔っ払いの発言ほど信頼できぬものはございません。

私ですか?
私が酔うはずなどありません。
盃が酒を湛えようと、酔ったりするとお思いですか?(※酔ってる)
刀やクランケヴァッフェが酒気を帯びて、切れ味が鈍ると?(※鈍ってる)


花剣・耀子
【土蜘蛛】
言わなくていいことは言わない。
それは理性が成すことであって、
酔っ払いができることじゃないのでした。

イドくん、しっかりなさい。お仕事に来たのよ。
……えっ今? そのおはなし今するの?
そのめんどくさくて重っ苦しいおはなしを? いま???

必要じゃなかったら一緒に居ないわよ。
道具を信頼しない遣い手が何処にいるの。
こんなとこじゃ遣えないけれど、手をつないであげましょう。
油断ならなくて不誠実なくそやろうでも弟みたいなものだもの。
はい元気出して。やる気も出して頂戴。いいこだから。

29歳児の手を引いて敵を斬りにゆきましょう。
酔っ払いの話に付き合うと進まないのよ。

うわっめんどくさい!!!!!!!!!!



 幽世の街中に吹く優しい風は、どこか酒に似た甘い香りがする気がした。
 皮膚がぴりぴりと火照っている、足元がふわふわしている気がする。
 定まらぬ視界に、まとまらぬ思考。
「そう、これがこの世界の異変なのね」
 レンズの奥から世界をまっすぐに見据える深い海の色。
 花剣・耀子(Tempest・f12822)は小さく呟き、――……?
 予想していた返事が、無い。
「……イドくん?」
 普段ならば頼まずとも無闇矢鱈に太鼓を持った返事を返してくるであろう、本日の同行者――隠・イド(Hermit・f14583)へと耀子が振り返ると。
 すべやかな黒い肌に、緩やかな黒耀色の巻毛。
 閉じられた瞳の長い睫毛が、ゆらゆらと揺れている。
 呼吸に合わせて上下に小さく揺れる頭。
 それは、どうみたって、どこからどうみたって――。
「……イドくん、眠っているの? しっかりなさい、今日はお仕事に来たのよ」
 耀子の嗜める言葉。
 立ったまま静かに船を漕いでいたイドは、小さく肩を跳ねて。
 本当に薄ーーく瞳を開く事で、あたかもたった今目が乾燥等をしていたので、ちょっとだけ目を閉じていた感じの小芝居をしながら、瞬きを一度、二度。
「はい。耀子様よく存じておりますよ。――体調の方は大丈夫ですか?」
 それから耀子へとまっすぐに顔を上げると、イドは普段どおりの調子で耀子の横へと寄り添った。
 ――いいや、ちょっと傾いてるかな、立ち方が。
「ええ、すこしふわふわしているけれど……、大丈夫よ。イドくんは?」
「……勿論。私が酔う事などありえませんので」
「――そう、なら行きましょう」
「はい」
 さっきの様子と佇まいからすると、耀子からすればイドの言葉はどうにも納得し辛い感じではあるのだけれども。
 本人がそういうのならばそうなのだろう。
 そうして耀子が一歩踏み出すと――。
 思ったように力が入らぬ体は、ずるりと足を滑らせ。
「~~……ッ!」
 なんとか逆の足で粘りを効かせ、踏みとどまった耀子はきゅっと奥歯を噛む。
「耀子様!」
 そこに彼女以上の千鳥足で助けに入ろうとしたイドが、結構な勢いでぶちかましをキメて。
「ちょっ、イドく……っ!?」
 団子になりながら、耀子とイドはズッ転んだ。
「……イドくん、大丈夫?」
「…………」
 倒れたイドの顔の横に、両腕を立てた耀子は彼を見下ろして。
 それはいわゆる、とらぶるって感じの床ドンと言われる体勢だ。
 彼女の影が落ちた、イドの瞳の赤には――。
「……耀子様、本当に私など必要なのですか?」
 ゆらゆらと卑屈な色が揺れている。
「えっ? 何? 今? そのお話、えっ、いま必要なやつ?」
「道具としても戦力としても中途半端……、耀子様も最後には私では無く、クサナギを頼りになさるのでしょう?」
 突然めちゃくちゃ面倒くさそうな話を始められた耀子が、取り繕う事も無く問う言葉。
「待ってくれる? そのめんどくさくて重っ苦しいおはなしを? この体勢でいま??? いま本当にはじめるつもり???」
 『理性』とは、言わなくて良いことは言わないストッパーを司るもの。
 そして酔いは、その『理性』を得てして奪いがちなものだ。
「私はもう、必要とされていないのでしょう……? あまり手に取られる事も無く、ずっとあの最悪白黒男の居る組織に待機させられて、最後には――」
 よよよと。
 あたかも耀子に襲われたかのように、手を顎に寄せるイド。
 耀子は細く息を吐いて。
「……必要じゃなかったら一緒に居ないわよ、道具を信頼しない遣い手が何処にいるの?」
「またまた、……そんな誤魔化しを――。酔っ払いの発言ほど信頼できぬものはございませんよ」
「イドくん、それは今、何を言っても聞き入れないって事かしら?」
 もう、と。
 イドの上から体を起こした耀子は、彼へと手を伸ばす。
「……こんなとこじゃ遣えないけれど、これで少しでも信頼してもらえる? どれだけ油断ならなくて女の子にしか興味がなくて不誠実なくそやろうでも、イドくんは弟みたいなものだもの」
 ねえ、といい事を言った風に。
 言わなくていい事もモリモリいいながら耀子が首を傾ぐと、イドはその手を取って。
「……はい、まあどうせ使い捨てられるまで、秒読みでしょうけれど、……まあ……」
 立ち上がりながらも、まだまだイドはめちゃくちゃ卑屈な言葉を口に。
「はいはい、元気だしてくれるかしら? やる気も出して頂戴。いいこだから」
 割と雑に流しながらやれやれとかぶりを小さく振った耀子は、彼の手を引いて並んで。
 街の中を歩みだす。
「いつでも私はいいこですし、元気ですよ。まあ……、クサナギ程では無いですけれど……」
「はいはい、はいはい。……もう、本当に酔っ払ってしまったのね」 
 耀子の言葉におとなしく手を引かれながら歩んでいたイドが、ふと足を止めた。
 首を傾いだ耀子がイドを見ると――。
「……? 私がですか? え? 耀子様は――私が酔っ払っていると思っていらっしゃる? 道具たるわたくしが???」
「イドくん?」
「盃が酒を湛えようと、酔ったりするとお思いですか?」
「あの、イドくん??」
「刀やクランケヴァッフェが酒気を帯びて、切れ味が鈍ると??」
「うわ……っ、こ、このへべれけくそ29歳児、め・めんどくさい!!!!!!!!!!!」
 ――耀子のへべれけ弱気卑屈くそ29歳児を連れての散策は、まだまだ始まったばかり。
 このあとも、きっと。
 何度と無く彼女には斬るだけでは解決をしない困難が、幾度も襲いかかるのであろう。
 頑張れ、耀子。
 戦え、――耀子!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キラス・レスケール
神ちゅん

俺様は神だからそう簡単に酔いはせんよ
なぁ、おしぇろ!(舌が回らない)(千鳥足)(気分がいいので聖者由来の光がぴっかぴか)

そう泣くでないおしぇろ
お前ほどの男にゃらばいずれモテる日もくるだろう(アガペーよしよし)
お前のよいところは俺しゃまがよく理解している。他の人々にもそれは伝わっているはずだ
(実は:寂しがり屋由来のスキンシップが増える)

おしぇろの泣きは【優しさ】で受けとめよう
ごずめちゃんの攻撃は『無敵城塞』で受けとめよう

※呂律が死んでも神だから身体は死なない俺様神様アガペー系
※煮て焼いてください


オセロ・コールブランド
【神ちゅん】
†神†ニーサン(f16415)と!

(ぐらっ)

ンェエエエエ(※出産するヤギによく似た鳴き声)~~~(ビブラート)!!!
(スライディング技能を併用した無駄のない動きの無駄な土下座)
神エモォン!
(鍛えぬいた背筋によるダイナミックなお手上げ)
レディースにモテたいよォーーーー!!!!
(そのままバックドロップの要領でブリッジ)
俺こんなに鍛えてるしそこそこお仕事頑張ってンしょォー!
(そのまま小刻みに跳ねる)

別にヘンなことしたいワケじゃねえンスよ!
レディースに!キャア言われたいだけ!!
(ここで腕力と腹筋で逆立ち)(まるだしのお腹)(落ちる眼鏡)

神ニーサン…俺どーして黄色い悲鳴貰えないんだろ…



 んーふふ、ふーふふふんふふーふ、ふーん♪
 ご気分の良い調子外れの鼻歌と共に、千鳥足に揺らめく光。
 ぴかぴかと光が瞬いていた。
 ――その眩い光は、幽世の道を照らすよう。
「俺様は神だからそう簡単に酔いはせんが……、まあすこーーーーーーーーーーしばかり気分は良くなるものだなあ、なぁ~~、おしぇろ~~!」
 ご機嫌に上がる語尾は、へべれけに響き。
 無闇に聖人由来の後光を背負って、無駄に眩しいキラス・レスケール(†神†・f16415)が両腕を広げてオセロ・コールブランド(宣誓剣・f05438)へと振り向くと――。
 ズシャッ! シュバッ!
「ンェエエエエェェェェェェンンンン~~~~~~~ッッ!!」
 ヤギの出産めいた、気張るような低くて鈍い鳴き声のビブラードが響いた。
 一気に地を蹴ってスライディング気味に滑り込むと、振り向いたキラスより丁度2メートル開けた位置。OH、ソーシャルディスタンス。
 綺麗な土下座ポーズで無駄の無い無駄な動きの、無駄な土下座をキメたオセロは背筋をピンと伸ばして。
 騎士としての教育をビッシバシに施された肉体から繰り出されるダイナミックな両腕上げ。
「神エモォ~~~~~~ン!!」
 そのまま座ったままの体勢から両足のバネをきかせて跳ねたかと思えば、バックドロップよろしく素晴らしく美しい主に仕える為の剣としての冴え渡りを見せる鍛えられた背筋より繰り出される逆海老反りからのブリッジ。
「レディースにモテたいよォーーーー!!!! 俺こんなに鍛えてるしそこそこお仕事頑張ってンしょォ~~~~~~~~~~~ッッ!!!!」
 ょぉんぉんぉんぉん……。
 響く残響。
 とれたてブリブリの生きの良いエビの動きを腰のバネと腕の筋力でビチビチと再現しながら、オセロは腹の奥から響かせる声で吠えた。
 ――纏った眩き光は、逆光を生み。
 落ちた光によってその表情すら見えなくなってしまったキラスが、霊験あらたかなポーズでオセロへと歩み寄る。
「泣くな――そう泣くでないぞ、おしぇろ」
「神ニーサン……! 俺は……俺は……! 別に、別に……、ヘンなことしたいワケじゃねえンスよ!?」
 そのまま腕力だけで逆立ちしたオセロは、眩しい神――キラスを下から見上げて。
 オセロがそんな服で逆立ちするものだから、服がべろんと落ちてお腹が全部でてしまっているし、眼鏡だって落ちている。
 随分冷えてきた時期ですし、お腹を冷やすと風邪を引きますよ。
「うむ、俺しゃまにはよーーく伝わっている。――お前のよいところは、おえしゃまがよく理解しているひゃはな」
「ウェェェウエエェェエン……」
 あまりに神の神っぽい発言に、晒した腹筋と倒立腕立てで肉体の強靭さをアピールしつつ動物園から響いてくる鳴き声みたいな音を漏らすオセロ。
「俺はただ……俺は………、レディースに! キャア言われたいだけなんスよ!!!!!!! キャンでも言いんスけれど、……俺は……レディースに!!! ンェエエエ!!」
 加速するオセロの腕立て。
 しゃがみこんだキラスは、影で全く見えないけれど自愛に満ちたアガペースマイルを浮かべて。
 心憂い思春期ボーイの頭を優しく撫でてやる。
「おまへの良ひところは、他の人々にもしょれはつたわっているはひゅだ」
「神ニーサン……!」
 更におぼつかなくなってきたキラスの呂律。
 それでもオセロはその言葉に感極まった様子で、逆立ちしたままキラスへと抱きついて。
 逆立ちした蝉みたいな体勢のオセロが膝に腕を回して抱きついてきたものだから。
「……!」
 ――キラスは膝を折られてそのまま膝だけ立った体勢で、綺麗な形で後頭部から地に倒れる。
 しかし大丈夫、キラスは神なので。今はあらゆる攻撃に対しほぼ無敵になっているし、ちょっと自身では全く動けないだけ。強かに打ち据えられた後頭部だって、全然平気だ。
 そんな事はオセロだって承知している。
 だからこそぐずぐずとキラスのボトムスの裾で涙を拭うオセロは、深く深い息を零して――。
「……俺、どーして黄色い悲鳴が貰えないんだろ……??」
「いつか、いつのひか、おまへにもひいろいひへいふふえ……」
「ひいろいひへいふふえ!?」
 ――そこにはめちゃくちゃなんか良い事いってる雰囲気だけが、漂っている。
 もう呂律がぐずぐずになってしまったキラスの言葉はちょっと理解ができない域に達したようで、思わずオセロも復唱を重ねて。
「ふぁふぁへふれるふぃほは……」
 あー、もうだめみたいです。
「神ニーサン!? 神ニーーーーーッッ!?」
 慌てたオセロがキラスをガクガク揺らす。
 大丈夫、今はほぼ無敵だから。
 酔っ払いをシェイクしたって無敵なら平気だから。
「ひょっほはって、はひほ……」
 えっ、なんて?

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フルラ・フィル
🍯横丁

無邪気な焔璃が酔うとどうなるのか
酒呑鬼の彩灯はどうなるのか
楽しみだね

酔うというのはこんな感覚か

込み上げてくる想いがとまらない
こんなのとうに捨てたはずなのに
零れる涙がとまらない

ミエル様
ミエルさま
私のあなた
愛しいお方

逢いたいのに会いたいのに
何処へとけてしまったの
私をおいていかないで

愛しくて恋しくて堪らない
どんな蜜より甘いキミが

酔っている酔っているからだ
みないで、きかないで
お願い
こんな私は忘れて

――魔女にはあいなど在りはしない

アア、酔っているからだ
泣く焔璃に手を伸ばして撫で

これはキミの涙がうつったせいさ

彩灯の手が温かい
甘やかされるのも悪くない、なんて

酔いすぎだ
そんな資格も権利も
私にはないのに


壱織・彩灯
【横丁】

誰しも酔いに耽ることが出来るとは
俺にとっては何とも役得なこと
なあ、焔璃、フルラ。魅せておくれ、

――噫、俺は、そうだな
ほんの少し饒舌に甘言を
お前達を喰ろうて味見してしまうやもしれんなあ
本能、というヤツさ
なあに、酔い前後不覚になろうと鬼とて情は在る
然と甘やかな世界へ此の酒吞が連れて往こう

彼女達の眸から雫が溢れるのを指先で拭って
焔璃も、フルラも、綺麗な涙をしている
そっと背を撫ぜ、幼子を宥めるように
…よいよい、好きなだけ泣き、感傷し、求めればいい
凡ては酔いの所為
焔璃、俺達は傍にいるぞ
フルラ、其方の蜜の涙は秘めやかにすると誓おう

また愛らしい笑顔が見れれば俺の最高の肴よ
心地良き酩酊に妖しく鬼は嗤う


波紫・焔璃
【横丁】
ふふー、酔っ払い疑似体験!
みんなどうなっちゃうか楽しみだねー

…ん?ぁ、あれ?
な、なんか急に…
よくわかんないけど
二人とも傍に居るのに急に寂しくなって
涙が止まらない

うぅ…二人ともあたしと一緒にいて
もう誰にも気付いてもらえないなんて嫌だよ…
ぼんやりした頭じゃ上手く考えられなくて
ぐすぐす泣いて縋って捕まえて

フルラ、フルラ大丈夫
これはあたし達だけの秘蜜
魔女でもあいはあるよ、とは心の内に留め置き
ひどい、あたしのせい?って泣き笑い

彩灯はあたし達をたべちゃう?
甘やかな世界…ちょっと気になる
ほんと?なら、約束ね

あたたかな二人の手が心地良い
溶かされ食べられちゃえばずっと一緒にいれるかな
なんて思ったのは秘密



 ――酒を呑まずとも誰しもが醒めること無き酩酊に耽る、世界の異変。
 柔らかい風に混じる、甘い香り。
 胸の奥がきゅうと締め付けられるように、音も無く軋む。
 その赤に、翠に、なみなみと湛えられる潤み。
「ん? ぁ、あ、……れ?」「……!」
 ほたり、ほたり。
 大粒の涙が波紫・焔璃(彩を羨む迷霧・f28226)とフルラ・フィル(ミエルの柩・f28264)の頬を伝い、こぼれ落ちた。
 抑えられぬ感情、溢れ出した感情。
 皆と一緒にいるのに、どこまでも一人ぼっちで、だれも横にいなくて、寂しい、寂しい、寂しい。
「う、ぅう……どうして、……?」
 どうして、どうして、どうして?
 ねえ。
 嫌だよ。
 嫌だ、嫌だよ。
「……うう、ううううっ……あたしと、あたしと一緒にいて。――もう誰にも気付いてもらえないなんて嫌だよ……」
 焔璃は背をふるふると震わせて、壱織・彩灯(無燭メランコリィ・f28003)の衣をぎゅっと握りしめて縋るように。
「う、ううう……やだ、やだよ、もう誰にも気付いてもらえないなんて嫌だよ……」
 かぶりを振った焔璃は、ぼたぼたと涙を零しながら――。
 彼女の横で苦しげに胸を押さえるフルラもまた、溢れる涙を止める術を持たぬよう。
「……あ、ああ……」
 とうに捨てたはずの想いがこみ上げて、あふれて。
 あとから、あとから、雫となって翠瞳に滲み零れ落ちる。
 ああ、ああ。
 ミエル様、ミエルさま。
 私の、私のあなた。――愛おしい、愛しいお方。
 ――ミエル様。
「……逢いたいのに、会いたいのに……」
 ねえ、何処へとけてしまったの?
 ねえ、私をおいていかないで。
 ――愛しくて、恋しくて、ああ、愛しています、お慕いしております。
 辛い、苦しい、堪らない。
 ……どんな蜜よりも、甘いキミが、居ない。
 苦しげに喉を鳴らして、自らの白い首に掌を当てるフルラ。
 孤独の涙を、孤独の感情を。
 哀しみの涙を、哀しみの感情を。
 感情が押さえきれず、波に飲み込まれてしまった彼女達の姿に、彩灯はくつくつと喉を鳴らして笑んで。
 そうと二人の瞳から零れ落ちる涙を、指で掬ってやった。
「――焔璃も、フルラも、綺麗な涙をしているな」
 それから、縋るような焔璃を、一人震えるフルラを。
 大きく腕を広げて二人を同時に抱き寄せると、幼子を宥めるように背を撫でてやる。
「ふぇ、ぅ、ぐ……彩灯……、フルラ……」
 しゃくりあげる声を漏らして、焔璃はぎゅうっとその腕に縋るよう。
 その横でびく、と肩を一度跳ねたフルラが懇願するように言葉を絞り出す。
「……っ、みないで、……きかないで、お願い」
 ああ、この涙は酔っているからだ。
 酔っているから、それだけなんだ。
 だから――。
 お願い、お願い、お願いだから。
 みないで、きかないで、しらないで。
「……お願い、こんな私は忘れておくれ」
 ――魔女には、あいなど在りはしないんだよ
 フルラは彩灯の肩へと顔を押し付けて、その雫すら隠してしまおうとするように背を震わせて。
「よいよい、……好きなだけ泣き、感傷し、求めればいい」
 瞳を閉じた彩灯は二人へと言い聞かせるように、二人に甘やかに囁く。
「――凡ては酔いの所為」
 暖かな腕、甘やかしい言葉。
 細く、細く息を吐いたフルラは、睫毛を揺らしてその雫を拭い断ち切るように。
「…………ああ、そうだ。これは、酔っているからだ」
 それから未だ背を震わせる焔璃の手をとって、大きな尾をくるりと寄せ。
「ただ、これはキミの涙がうつったせいさ。だから焔璃、キミには責任を取ってもらおう」
「そうだな――焔璃、お前は俺達の傍にいてもらおうか?」
 少しばかり悪戯げに笑った二人に、焔璃はゆっくりと顔を上げて。
「もう、……ひどい、あたしのせい? そんな事いわれたら、離れられなくなっちゃうよ?」
 くしゃりと笑った焔璃は、フルラの手を握り返し。
 ――ねえ。
 魔女でもあいはあるよ、――きっとね。
 秘める言葉は思うだけ、思うだけ。
 そうして、次ぐ言葉は。
「……ね。フルラ、だあれにも言ったりしないよ、これはあたし達だけの秘蜜にしよう」
「ああ、其方の蜜の涙は、秘めやかにすると誓おう」
 彩灯が同意を重ねれば、フルラは二人の気遣いにくすくすと笑った。
 ああ、ああ。
 酔いすぎだ、酔っている。
 ……甘やかされるのも悪くない、なんて思ってしまった、思ってしまう。
 ―そんな資格も権利も、私にはないと言うのに。
 小さくフルラはかぶりを振ると、首を傾いで唇に人差し指を寄せ。
 内緒の指に、言葉を籠める。
「アア、秘蜜だよ。――ばらしたりしたら、……そう、分かっているね?」
「わ、溶かされちゃうのっ? いひひひ、こーわいなあ!」
 如何にも楽しげにけらけらと笑う焔璃には、もう泣いていた様子なんて見られやしない。
 ――でもね。
 溶かされ食べられちゃえば、ずっと一緒にいれるかな、なあんて。
 ……思うだけ、思うだけ。
 それからふと思い出したように、彼女は彩灯を見あげて。
「そう言えば、彩灯はいつもどおりだね?」
「蜜にされるも興味があるがな、だがな――俺も勿論酔ってはおるさ。なあ。これ以上酔うてしまえば、お前達を喰ろうて味見してしまうやもしれんなあ?」
「ひゃあーっ」「フフ……、恐ろしいねえ」
 冗談めかした彼の言葉に、焔璃もフルラも花笑んで。
「なあに、酔い前後不覚になろうと鬼とて情は在る。――然と甘やかな世界へ此の酒吞が連れて往こうぞ」
 なんて。
 彩灯は二人の手を取って、彼女たちが歩み出せるように、立ち上がれるように。
「――何よりも。また愛らしい笑顔が見れる事こそ、俺の最高の肴であるのだからな」
 唇を妖しく歪めて、笑うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

五月雨・亜厂
ニーナ(f03448)と

またたびぶらさげにゃあごと歩く
今日はいつにも増して酔いの賑わい多いこと

人型成した黒猫がふさふさ三つ尾を揺らし
妖怪往く間をすり抜けて
ちょいとそこいくお嬢さん一緒に一杯どうですにゃ
なんてお猪口を寄せるフリひとつ
どうせなら楽しく酔いたいじゃあありませんか
ほうほう、ニーナと。可愛らしいお名前で
こちら、亜厂と申す者
妖しいなれど怪しいものでは御座いませぬと手招きにゃあご
にゃんぱ、かもしれませんな?猫だけに?
おやおや、駄洒落も行けるお口で?
酔いにも釣られて一緒に笑う

何やらこちら目掛けて妖怪たちが
ニーナ、追いかけっこはお好きで?
良い酔いよーいどん
ならば妖怪たちを疲れさせるほど遊びましょ


ニーナ・アーベントロート
亜厂さん(f28246)と

なんだかお祭りみたいだね
浮かれた空気の中漫ろ歩き
一際大きな笑い声や歌声のする方へ

声かけられ招かれて、あらやだナンパ?と冗談めかしつつ
ありがと、ふさふさ猫のおにーさん
亜厂って素敵な名前だね
あたしはニーナだよ、初めまして
お猪口はあと2年ほどお預けなんだけど
一人より誰かといたい気分だし
今宵の醒めない「酔い」ならご一緒に
……あはは、おっかしー。駄洒落になっちゃった!
妖しいにゃんぱが縁紡いだ楽しい時間

笑い転げてたら、向こうから小さな影
うん、追いかけるのも逃げるのも好きだよ
さぁ亜厂さんにその他の皆さん
あたしを捕まえて御覧なさい
ベタな台詞と共に駆け出して
疲れも忘れて大騒ぎしちゃえ!



 喧騒、酩酊、思い思いに妖怪たちは酔いに沸き。
 調子外れの歌声、踊り。
 喧嘩を重ねる普段よりもずいぶんと浮ついた街は、賑々しくも楽しげだ。
 そこに甘い風が街を吹き抜ければ、ぶらさげたまたたびだってゆうらり揺れる。
「……おや」
 そんな中で、何かを見つけた様子。
 尾をゆらゆらと揺らした五月雨・亜厂(赤髪の黒猫・f28246)は、にんまり笑った。
「なんだかお祭りみたいだなー」
 ニーナ・アーベントロート(埋火・f03448)は鈍色の髪を風に遊ばせ、きょろきょろ周りを見渡しながら街を行く。
 酔っ払った妖怪たちがそこら中でぐうぐうと寝ているのは、確かにある種、世界の終焉のようにも見えるだろうか。
「――にゃあ、にゃあ、ちょいとちょいと」
 そんな道をまっすぐ歩んでいたニーナに掛けられた声は、にゃんとも軟派な声。
 彼女が振り向けば手にしたお猪口を口に寄せるフリをする、人型を成した黒猫魈――亜厂は首を傾いで。
「そこいくお嬢さん、一緒に一杯にゃんてどうですにゃ?」
「やー、あらやだ、ナンパかな?」
 ふさふさ尾の猫がお猪口を傾ける姿は、なんとも愛嬌があるように見えて。
 冗談めかして応じたニーナは、くすくす笑い。
 折角だからとお猪口に満たした酒に、マタタビの粉をとさとさと入れながら猫は応じる。
「いいえ、いいえ、にゃんぱかもしれませんな? 猫だけに」
「にゃんぱ」
 思わず復唱したニーナは、ぷは、と吹き出した。
 ふわふわ揺れる酩酊感は大体何を言われたって面白く感じさせる力があるのだ。
「にゃははははは」
 自分で言っておきながら亜厂もつられ笑い。
 酔っ払い達は大体酔い酔いなので、人が笑っているとつられて笑ってしまうのだ。
「素敵なお嬢さん。どうせ酔うならば素敵なお嬢さんと楽しく酔いたいじゃあ、ありませんか」
 亜厂は如何にも楽しげに瞳を狭めると、またたび粉を浮かせた酒で満たしたお猪口を本当に呷る。
 にゃあにゃあご。
 どうせ酩酊しているのならば、いっそ呑んでしまえばもっと気持ちが良い。
 心地よさに猫尾をぐねりと揺らしてから、首を傾ぎ。
「――こちら、亜厂と申す者。妖しいなれど怪しいものでは御座いませぬ」
 なんて、右足を引いてから右手を体に添えて。
 左手を横方向に水平に差し出せば、気取ったお辞儀をひとつ。
「あははっ、あは、……ふふ、うん、ありがと、そっか、そっか、ふさふさ猫のおにーさん。素敵な名前だねえ」
 未だ止まらぬ笑いにお腹を抑えるニーナは、ゆっくりと顔を上げて。
「……お猪口はあと2年ほどお預けなんだけど、一人より誰かといたい気分だし。今宵の醒めない『酔い』ならご一緒に――」
 そこで自分の行った言葉に、ニーナはぴたりと動きを止めた。
「……あはは、おっかしー! 駄洒落になっちゃった!」
「おやおや、駄洒落ならば行けるお口で?」
 酔っ払いは何を言ってもおかしいものなのだ。
 きっと今の彼女は、箸を転がしただけでも笑うってしまうのであろう。
 再びお腹を抑えてひいひいと笑うニーナに、亜厂もまたつられてにゃはにゃは笑って。
「ふ、ふふふっ、あたしはニーナだよ」
「ほうほう、ニーナと。――可愛らしいお名前で」
 なんとか笑いを収めたニーナが名乗れば、亜厂はニーナへと手を伸ばす。
「さあて、それではニーナ。少しばかりお手を拝借。……追いかけっこはお好きで?」
「へっ? うん、――追いかけるのも逃げるのも好きだよ」
 ニーナが瞳をしばたかせて応じれば。
「にゃれば、にゃれば、良い。酔い。――よーいどん!」
 なあんて、にゃあごと駆け出す亜厂。
 そう、そう。
 背後にゃあ、骸魂に飲み込まれた獄卒達が追いかけてきているもので。
 その事に気がついたニーナは、にんまりと笑った。
「あは、そういう事ねー」
 ならば、ならば。
 やることは1つでしょう。
 亜厂の握っていた手を離して、大きく地を蹴って跳ねたニーナはへら、と笑って。
「――さぁ、さあ! 亜厂さんにその他の皆さん、あたしを捕まえて御覧なさい!」
 さあさあ、お立ち会い。
 コレより始まるのは、本物の鬼との鬼ごっこ。
 酔いに満たされた世界で、皆が疲れて眠ってしまうまで。
 ――よーいどん!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

君影・菫
刻(f06028)と

呑まなくても酔うてしまうなんて面白いなあ
みんな楽しそやねえ
他人事のように呟くも既に自身も酔の中

ふわふわする心地で隣を見やる
…ふふ、いきなりどないしはったの?
とき、と
増して幼い音でキミの名をおとにする
すきよ、かわええもの
ときもめっちゃ好きそうやなあ、ふふ
見た目は変わらず
けれどいつもよりゆうるい紡ぎ

もふもふ、ふわふわ
ぜんぶ至福よね
なあ今度うちのもふもふにも逢う?
時間泥棒してもええなら、て
はら、ときの方にも?
なんや、しあわせいっぱいやないの

楽しげな音でキミの隣
ふわふわな心地のままで
ときを教えてと童女のようなおねだりのひとつなぞ
酔いの空気は醒めぬ中
紡いで、紡がれての――ひと時を、


飛白・刻
菫(f14101)と

呑まずも酔うとは不可思議か
崩壊為す原因とあらば放りおけまい

…ところで
菫は動物は好きか?
大きいものに埋もれるもいい
小さいものも愛くるしい
手乗りとなると傷付けてしまわぬか恐る恐るだ
もふもふはいいぞ、ふわふわもいい
あれは一度触ると時間泥棒だからな
けものとはおそろしいものだ

表情こそ真顔まま
緩い口調で語りだす
緩さは次第に増すばかり
酔っているとはつゆ知らず

ほう、菫のところにももふもふが
俺も会わせていないもふがいるな
どちらも会うとならばさらに足りなくなるな
至福には変わりはない

ふむ、今のままの気もするが
同時に菫もしれるだろうか
大人の幼子二人のよう
酔いの空気を纏うままどちらともなく紡ぎ紡いで



 酒を呑まずとも、酔いに酔い痴れるこの世界。
 道行く妖怪達も酩酊感に、陽気に……或いは陰気に賑々しく街を彩っている。
 そんなへべれけな街並みを、並んで歩む男女の姿。
 男は薄鈍の銀髪をさらりと揺らす双眸は、冴えた藍を冷たげに宿し。
 落ち着いた――ともすれば冷たい印象を感じさせる飛白・刻(if・f06028)は、真っ直ぐに街を見据えて。
「ところで、菫は動物は好きか?」
 口を開いたかと思えば驚かんばかりに唐突な問いを、君影・菫(ゆびさき・f14101)へと投げかけた。
「……ふふ、とき。いきなりどないしはったの?」
 常より感情を顔にあまり表さぬ彼が、表情を崩すことすら無くそんな言葉を紡ぐものだから。
 菫は紫色のまばたきに二度長いまつげを揺らして、幼気に彼の名を唇に灯し。
 朱色に染まった頬をへにゃ、と笑みに蕩けさせて。
「うん。すきよ、かわええもの」
 菫の言葉に頷いた刻は、藍色に満足げな色を宿したのだろう。
 その表情の変化は、なかなか読み取りにくいものではあるのだが――。
「そうか。――動物はいい。大きいものに埋もれるもいい、小さいものも愛くるしいものな」
 多分彼は今、楽しいトークをしているのだろう。
 なにか思い出した様子で、掌をぐっぱ、ぐっぱ。
「そうねえ」
 表情も変えずに可愛い内容を語る彼に、菫はへにゃへにゃの笑み。
  ――本人たちが酔っている自覚があろうが、なかろうが。
 この世界へと降り立った以上、どちらも今酔っ払っているのだ。
 もう、酔い酔いだ。
 だからこそ。
 感情や理性のすべての垣根が取っ払われた今。
 ふわふわゆるゆるどうぶつさんとーくを、真顔で花咲かせることもあるだろう。
 刻は如何にも真剣な瞳のまま、言葉を紡ぐ。
「手乗りとなると傷付けてしまわぬか、恐る恐るとなるのだが……」
「……ふふふふ。ときも動物、めっちゃ好きそうやなあ」
 その表情こそ常とは変わりはせぬが、ほつほつと語る言葉はどこか緩い口調。
 内容は最初からもう全開で、ふかふかのぬいぐるみよりふっかふかなのだけれど。
「もふもふはいい、ふわふわもいいな。触っているだけで時間が奪われる。……時間泥棒というやつだ」
「もふもふもふわふわも、至福よねえ」
 うんうんと同意に頷く菫の語尾も、どんどんゆるゆる、ふわふわ。
「けものとは……おそろしいものだ……」
「なあ、なあ、そしたら今度うちの、『おそろしい』もふもふにも逢う?」
 たっぷり冗談めかしながら、刻の言葉を引き句にして菫は笑い。 
 ――時間泥棒してもええならね。なんて、言葉を次いで。
「……ほう、菫のところにも、もふもふが?」
「はら? ところにもって事は……ときのところにも?」
「ああ、俺も菫にはまだ会わせていないもふがいるな」
 しかし、と刻は瞳に睫毛の影を落して、真剣な音を宿して言葉を零す。
「……どちらも会うとならば、さらに時間が足りなくなるな」
「ふふ、時間泥棒がたくさんで、……なんや、しあわせいっぱいやないのー」
「ふむ――、至福の時には変わりない」
 響く音は楽しげで。
 ふわふわゆれる頭に、心。
 心地の良い甘い酩酊は、
「ねえとき、――ときは他に、何がすきやの?」
 ときを、教えて。
 なんて。
 菫は童女のようなおねだりを1つ。
 刻が語るのであれば、菫もきっと、語るのであろう。
 醒めぬ酔いに言葉を紡ぐ二人はまるで、二人の幼子の如く。
 沢山の言葉を、沢山の事を。
 街に酔いながら、きみのことを、紡いで、紡がれて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

深山・鴇
【八重】アドリブ◎
あ、これはダメだな、もう今物凄く楽しくなってるんだが?
(ご機嫌な笑い上戸)
これで戦闘するのは無理じゃないか? いや、はは、あはは
ごめずちゃんたちが眠くて船をこいでる、可愛いな
雲珠君、君言ってることはまともなのに寝そうだが? だめだぞ、寝ると死ぬらしい
(言いながら脱いだ上着を掛けてやっている)
雲珠君よ、そんな目で見ても俺の背中に入れ墨はない。捲ってもないぞ?(首元の釦を外して項から下を見せて
朱酉君、君めちゃくちゃ機嫌がいいじゃないか
いやそれはヤバい奴じゃ、卵はこないだもらっ、あっ
おじいちゃん仕舞っておきなさい、ヤン坊君それ返してきなさい
あっはっは、ダメだっていってるだろ、あはは


朱酉・逢真
【八重】アド◎ 直の接触不可
(こども姿でけらけら笑い)
ひ、ひ、ひ。酔っ払うってこんな感じかい。ああ、いい心地だなァ。ああ、いいこだ。好い子だ。好ましい。なにもかもが。いとおしい"いのち"のお前さんたち。どうあったってかわいいよ。安心してさらけ出すがいい。どうあっても赦(*あい)しているよ。雲珠坊にゃこづかいやろうか。ヒ素で染めた緑のコート。深山さんにゃア祝福やろうか。光にかわって闇見る目玉。どっちもいやかい。ならタマゴやろう。ヤン坊たちよ。俺のかわりにばらまいとくれ。ねじこんでこい。
(前回の戦争で拾いまくった金の卵をおしつけてまわる)(やったらお菓子くれるおじいちゃんムーブ。ぜんぶ好意)


雨野・雲珠
【八重】真顔のままフワッフワに

うわぁ。
下手な薬より危ない気がするんですけど、
お酒飲める人はあんまり抵抗ないんでしょうか…

かみさまは酔っ払うの初めてだそうで。
(真顔ですっと箱を下ろす)
もし吐きそうだったり、お辛そうであれば
(ブーツも脱いで揃える)
俺が介抱してさしあげなくては…
(ころっと丸くなった。寝る体勢)

…ごめずちゃんが通りかかったら
【花吹雪】で寝かしつけておきます…

わあ、なんと綺麗な緑の羽織。
……深山さん(むくり)
おせなに虎とかいますよね?龍とか
(シャツの裾を引き出そうとする)
(上から覗く)
(なかったー)

あ、これは…中におもちゃが入ってる卵!
やったあ。温めなくては…
(ひとつもらって懐に)



 白い白い桜吹雪が街に舞う。
 踊る子、怒る子、泣いている子。
 みんなみんな、眠っておしまいと揺れる優しい花の舞い。
「……この状況、下手な薬より危ない気がするんですけど……えっ、本当によろしくない薬とかそういうのじゃないのですか?」
 炎を纏ってまっすぐに駆けてきた獄卒を優しく寝かしつけた、ちいさいけれどお利口な助手。
 雨野・雲珠(慚愧・f22865)は、あまり感情の出ぬ常と変わらぬいつもの表情。
 そう、この場できっと彼だけが冷静な状態なのであろう。
 お利口な彼は現状――ぐつぐつに煮詰まりつつある同行者の動向をようくよく確認する。
 まず一人目。
「あっははは、あはははは、うん、ははは、そうかもなあ、く、ふふふっ、いや。うん。雲珠君が頼もしくて本当に助かったなあ!」
 随分とウキウキと楽しくなってしまっていそうな深山・鴇(黒花鳥・f22925)は、さっきからずっと笑っている。
「ひ、ひひひひっ、ああ、いい気持ちだなァ。そうだそうだ、雲珠坊。……いんや、雲珠兄ィはああ、ああ、いいこだ。好い子だなぁ」
 ――好ましいな、好ましい。ぜんぶ、ぜんぶだ、何もかも!
 どうあったってかわいいよ。安心してさらけ出すがいい。――いとおし『いのち』のお前さんたち。
「ああ……――どうあっても、赦しているよ」
 あいしているよ、かわいいねえ、なんて。
 眠っている獄卒……ごめずちゃんに囁いている、二人目。
 小さな子どもの姿と成った朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)。
 彼も彼で随分とまずそうな笑い方で、いきいきと自由にかみさまをしている。
 でもお兄さん扱いされるのは嬉しいので、もっとしてほしいと思う。
 ――しかし。
 もう二人共、本当にずっと、何があっても笑いっぱなしなのだ。
 きっと今の彼らならば、箸を転がしただけで呼吸困難を起こしてしまうかもしれない。
 箸を転がして呼吸困難になった時の対処法は、眠らせる事で合っているのか心配だ。
 それに今だって笑い声が気に食わないと言いながら、あの獄卒だって攻撃を仕掛けてきたというのに。
 その様子を見た鴇は、指を指してごきげんに笑っていたし。
 逢真に至っては、かわいいかわいいと仰け反るくらい笑っていた。
 もはや彼らは戦力として数えられないと、冷静に判断した雲珠は真剣な表情を湛えたまま。
「そういえば、かみさまは酔っ払うことが初めてだそうですね」
 背負い箱を下ろして。
「吐き気や頭痛はありませんか?」
 笑いすぎてそのような症状がでている可能性もあるが、兎も角問診は大切な事だ。
 ブーツを脱いだ雲珠は一足をぴったり揃えて、背負箱の横に丁寧に置く。
「なにかご気分が悪い等気になる事があれば、俺にすぐに教えて下さい」
 地面に横になって丸まって、瞳を閉じる。
 ひんやりしていて気持ち良い。
 うん、……このまま――。
「あっはっはっは! 雲珠君、君、言ってることはまともなのに寝そうじゃないか?? だめだぞー、寝ると死ぬらしいからなー、はっはっはっはっ」
 何が可笑しいのか定かでは無いが、またツボに入ってしまったのだろう。
 お腹を抑えて笑う鴇は、脱いだ上着を雲珠に掛けてやる。
 あんまり言ってる事は笑ってる場合じゃないが、それはそれ。
「おや、おやおや、雲珠坊、もう眠るのかい? こづかいをやろうと思っていたンだかなァ。ほォら、ヒ素で染めた緑のコート」
 逢真がごきげんな様子で取り出したのは、鮮やかなパリスグリーン。
「わあ! なんとも綺麗な緑の羽織ですね」
 両手を合わせて枕にした体勢のまま、雲珠は感動したように言葉を漏らした。
 ――その鮮やかな翠をしたその服を羽織れば、場合によっては中毒症状を起こすだろうけれども。真顔で酔っ払っている雲珠は、今日はそれを指摘する事も突っ込む事も無い。
「はははは、朱酉君。君、今日はめちゃくちゃ機嫌がいいじゃないか。でもそれは止めておいたほ」「深山さんにゃア、祝福をやろうなァ。そうだ、そうだ、光にかわって闇を見る目玉なンてどうだ?」
 一応止めようとした鴇に、上機嫌の逢真はとんとんと軽い足取りで近寄って。
 きっと便利だぞう、なんて。
 鴇の眼球の前に指をぴっと差し出し――。
 流石に鴇も笑いを止めて、いやいやいや、と手を振った。
「いや、それ、ヤバい奴じゃ……?」
「ふうん、いやかい? ならタマゴをやろうなぁ」
「いやいや、おじいちゃん金の卵はこないだ配っただろう?」
「やったらめったらあンだよ、タマゴ。そらそら、たァんと持っておいき」
「まって、まっておじいちゃん、そこはタマゴが入る場所じゃあない。待って、破ける! 裂けるから!」
 鴇の服のありとあらゆる場所に金のタマゴをねじ込みだした逢真を、止めようとする鴇。
 そんな彼の危機に立ち上がったのは――。
「……深山さん」
 小さなお利口さん、探偵助手の雲珠であった。
「雲珠君!」
「あなた、おせなに虎とかいますよね? ……龍とか」
 あっ。
 いや、これちがうな。
 そう、雲珠だって酔っ払い。
「……そんな目で見られたって俺の背中に入れ墨はないんだよ、だからそれ以上脱がそうとするのを止めような」
 雲珠は鴇のシャツの裾を引っぱっては覗き込み、よじ登って上から覗いて。
 首元の釦を外して確認させてもらっても、見えるのは詰め込まれたタマゴと、白い肌ばかり。
 終いにはボトムスにまで手を掛けたものだから、鴇は制止して。
 お利口なので雲珠は探索を中止をする。なかったー。ざんねん。
「あっ、でもこのタマゴは中におもちゃが入ってる奴ですね。俺はそういうの結構詳しいんですよ」
 ねじ込まれていたタマゴを1つ拾い上げた雲珠は、そうに違いないと二人を見やり。
「ン、雲珠坊は、タマゴがほしいのか?」
 逢真がはたと気づいた様子で、口端を擡げて赤い瞳をゆうらり揺らした。
「はい、お1ついただいても?」
 雲珠がこっくり頷けば、逢真はいよいよもって上機嫌。
 そう、今日の彼のこのお小遣いをばらまくおじいちゃんムーブは、100%の善意と好意で行われているものなのだ。
 求められれば嬉しいもの。
 ぽこぽことタマゴを取り出して、にんまり笑う逢真。
「おお、おお、持ってけ、持ってけ。トリックオアトリートってやつサ」
「わあ、ありがとうございます!」
 大切に温めなければ、とタマゴを懐にしまう雲珠。それから彼は、抱卵の体勢で地面に再びごろんと寝転がって――。
「ついでに大盤振る舞いだ。――ヤン坊たちよ、俺のかわりにこのタマゴをばらまいとくれ」
 そのまま上機嫌の逢真が眷属を喚び出し出したものだから、鴇は朗らかに笑った。
「あっはっは、おじいちゃんダメだっていってるだろ。仕舞っておきなさい」
 特に今日の逢真は、子どもの姿になれば許されるだろうと思っていそうな顔をしている。
「ほらほら、ヤン坊君それ返してきなさい、メッ!」
 鴇が彼の眷属に注意をしている今だって、ああ、もう。
 じっとあざとーく上目遣いで見上げてきた逢真から、はははと笑って鴇は目を逸らす。
 ああ、そうだ。そうだった。
 ――酔っ払いのする事を、止められる訳なんて無かったなあ……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

宵鍔・千鶴
千織(f02428)と

ふわふわ、ゆるゆる
なんだろ、頭がぼーっとする
顔も心做しか熱くて

ねー、ちおり
こっちむいて
きみは酔ってる……?
覗き込んでにへら、と
猫みたいにごろにゃんして
ちおりへ寄りかかり
にゃあと鳴く彼女に
そっと優しく撫ぜて満足気

ふふ、酔うってこんなにきもちいいきぶんになるんだ
しらなかった
おれ、おさけのめないし
ん、またこんど。やくそくね
ぼんやり意識の中
きみの膝にころりと横になって丸くなるよ
柔い指先で撫でられたら、うとうと夢の中へ誘われ

ちおり、ちおり
ねえ、ぎゅう、ってして
じゃないとねちゃう

駄々こねて幼子のように
広げた両手の中へ飛び込んで
ふわり金木犀と白檀の香りが交われば良い心地
しあわせにゃあ、


橙樹・千織
千鶴(f00683)さんと

はわ…ほんとに、酔うのね…
またたびを嗅いでしまったような
キウイのお酒を飲んでしまったような
ふわふわいい気分

んー?
こてりと首傾げ振り返り
ぁ、ちづる赤くなってる
へにゃりといつも以上に緩い笑み
寄りかかられた重みが嬉しい

ね、ちづる、撫でて
すり、と擦り寄ってにゃあ、と一鳴き
ちづるの手気持ちいい
撫でて貰えば満足げに喉を鳴らし
くるりと彼の脚に尻尾を巻きつける

ふふ、飲めるようになったら今度はちゃんと飲も?
膝に転がる彼の柔らかな髪をさらり撫でて

ん、いいよ
じゃあ、ほら起きて
両腕広げて彼を待つ

ぎゅうと抱きしめればふわりと金木犀と白檀香る
彼の首元に擦り寄り、温もり感じて夢心地
ふふ、しあわせ



 座っていても、足元はふわふわしている。
 頭もぽわぽわしているみたいな、不思議な浮遊感。
 腰掛けた宵鍔・千鶴(nyx・f00683)は、紫の眦をほんにゃり和らげて。
「ねー、ちおり。――こっちむいて?」
 隣に腰掛けている橙樹・千織(藍櫻を舞唄う面影草・f02428)の名を呼んで、彼女の表情を覗き込むように。
「んー?」
 くてん、と首を傾いだ千織は、いつもよりもずうっと緩い笑みを浮かべている。
 なんだかその笑顔が嬉しくて、千鶴だってゆるーく唇を緩めて笑み返して。
「ねえ、きみは酔ってる?」
「ふふふ、そうねえ」
 問いながら千鶴は千織へと甘える猫のように、体を擦り寄せて体重を預けて。
「すごく、すごく、ふわふわいい気分よ」
 彼の寄りかかってくる重みが、なんだかとっても嬉しくて。
 千織はふにゃふにゃの笑顔に語気をとろかせながら、獣の耳をぴぴぴと揺らした。
「それにちづるも、ほっぺたがあかーくなってる」
 なんて。
 つ、と千織は千鶴の頬を突いてから、その頬を軽く指先だけで撫ぜて。
 今度は此方から、体重をぺったり預けて。
「ね、ちづる。……なーでて?」
 甘えた声音でにゃあ、なんて鳴いてみせた。
「ん、いいよ」
 息に混ざる笑い。
 そうっと優しく、千鶴は千織の頭を梳くように撫でて、揺れる耳をくすぐって。
 体をさらに寄せた千織は、瞳を瞑って睫毛を揺らす。
「んー、ちづるの手、――気持ちいい」
 くるりと千鶴の足に尻尾を巻き付けながら、ころころと満足げに千織は喉を鳴らした。
 千鶴はそんな彼女の様子に、心地よさげに瞳を狭め。
「ふふ、酔うってこんなにきもちいいきぶんになるんだ」
「そうよう、気持ちがいいでしょう?」
 千鶴の言葉に、千織はとろけそうな言葉を零す。
 ふわふわ、ゆらゆら。
 マタタビを嗅いだときのような、キウイのお酒を飲んだ時のような。
 ふうわりふわふわ、ぜーんぶ夢に溶けてしまいそうな酩酊感。
「しらなかったな、……おれ、おさけのめないし」
 身を捩るった千鶴は千織の膝へところりと頭を乗せて、彼女を見上げる。
「ふふ、飲めるようになったら今度はちゃんと飲も?」
「ん、またこんど。やくそくね」
「うん、やくそく」
 千鶴の黒耀色の髪を撫でながら、千織はくすくすと笑って。
 遠くて近い未来、4年後の約束を交わす。
「……んー……」
 千織の膝の上に寝転がってしまえば、千鶴はきゅっと体を丸めて。
 柔い指先が撫でてくれる感覚が、心地よくて、気持ちよくて。
 ゆら、ゆら、意識が溶けてゆくよう。
「うう、……ちおり、ちおり。……ねえ、ぎゅう、っとして?」
 じゃないとねちゃうよ、なんて。
 千鶴は駄々をこねる幼子のように、撫でる掌に頭を擦り寄せる。
「ふふ、いいよ。ほら、起きて?」
 甘やかに笑んだ千織が、両手を広げれば。
 千鶴はその両手の中へと体を寄せて。
 ぎゅっとしがみつく様に、抱き寄せる。
 金木犀と白檀の香り。
 ふたりの匂いが、ふうわり交われば――。
「ふふ、しあわせね」
「うん、しあわせにゃあ」
 なあんて。
 くすくすと二人笑い合う。
 ふわふわ、ゆらゆら、酩酊感は空を飛んでいるかのよう。
 気持ちよくて、ここちよくて、あたたかくて。
 ――いいにおい。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
f09129/ユルグさん

共に呑む機会は多々あれど
酩酊した姿を見たことは無い気がしますねぇ
あなたも酔いしれることがあるのかしら

私は、そう――あなたへ酔っていますよ

ふわふわと
浮いた心地の上機嫌

揶揄めいた問い掛け
真実も勿論織り交ぜた応えに乗せる笑みは艶やか

酒精が有ろうと無かろうと
私を酔わせるに充分
あなたは鮮やかですから

ふくふく肩揺らしつつ
悪戯せんと走り回る妖怪の子らへ向け
符をふわりゆらり

酔芙蓉の花筐
花の嵐が
彼らの周りをくるくる

目を回して千鳥足のごめずさん達
楽しそうでしょ

ユルグさんのご機嫌な様子も
やっぱり私を嬉しくさせるから
斯様に醒めぬ酔いならば
ずっと溺れて居たいですねぇ、なんて

ね、
酔狂だと笑うかしら


ユルグ・オルド
f01786/綾と

あん?そっくりそのまま返すわ
いっくら乾しても涼しい顔してンのに
酔った心地も好きだけど、どうせなら

んふふ。そういうのは素面の時に言うもんだぜ
揶揄って返すのも機嫌好く
でもやっぱり酔うなら飲みたいと思わない?

尋ねて返る間にも笑いだすのは愉快な分で
やァね悪酔いすんぜ
ひらり手を振る戯言に
軽い足取りが一歩二歩先
綾は、と浮かべるのは酒の瓶
青磁の徳利に口当たりが良くて気づけば眠るような酒
踊れや踊れと合わせて呼んだのは錬成カミヤドリの剣の舞
手打って終わらぬ宴に口笛ひとつ

そうネ、飲み乾してから、言ってみて



 溶けるような酩酊感。
 幾度も彼と酒を酌み交わしはせど。
 互いに彼が酩酊した所など見た事は無いもので。
 どれほど乾そうが涼しい顔をする彼の、酩酊する姿等――。

 世界に降り立った彼が、一番始めに紡いだ言葉。
「ねえ、私は、そう――あなたへ酔っていますよ」
 道歩む都槻・綾(糸遊・f01786)は、靴底をこん、とタイルに響かせて。
 戯れる言葉を紡ぐ彼が、ふくと花笑むものだから。
 ユルグ・オルド(シャシュカ・f09129)は肩を竦めて、いつもの調子で唇に笑みを宿した。
「んふふ。――そういうのは素面の時に言うもんだぜ?」
 からかうように零す言葉の語気は、気分良さげに跳ねるもの。
 ふうわりふわり、ゆうらゆら。
 体は熱い。
 頭の芯がじいんと痺れている。
 居心地の良い酩酊感。
「いいえ」
 綾はゆるゆるとそのかんばせを振って、陶磁の瞳に睫毛の影を落して肩を揺らした。
「酒精が有ろうと無かろうと、私を酔わせるに充分。なんと言っても、あなたは鮮やかですから」
「やァねェ。どうせ素面で無くなるなら、飲みたいとは思わない?」
 俺で酔うなんて、悪酔いすんぜ。なんて。
 ユルグはからからと笑って手を振り。
 それから。
 すらりと彎刀を引き抜けば、まるで指揮者のように掲げた。
 それを合図に綾も合わせて、まるで口元の笑みを覆い隠すように符を一枚。
「さあて、悪戯子達に悪戯をするなんていかがでしょうか」
「そうネ、良い醒ましには丁度いいワ」
 なあんて、この酔いが醒める事が無いことだって知っている。
 だからこそ、――二人は今日この世界へと。
 幽世へと降り立ったのだから。
 構える二人へと駆け寄ってきたのは、ふらふらの足音だ。
「おまえたちは、悪い子だな!」
「お仕置きだぞーっ!」
 すでに彼女たちだって酔っ払って千鳥足。
 獄卒達は棍棒を振り上げながら、まろぶように駆けてくる。
「まあ、ユルグさん。あなた悪い子なんですって?」
「イーヤイヤ、んふふ、そりゃあ綾の事でしょ?」
 嘯き戯れるように、二人は言葉を重ねて。
 楽しげに笑った綾の符が風に舞ったかと思えば、ふうわり舞う酔芙蓉の花弁へと解け溶けた。
「な、な、なになに?」
「ぐるぐるしてるぞー」
 そうして花弁が踊りだせ、獄卒達を惑わすように、くうるくる。踊り回る花嵐。
 きゅっと踏み込んで、ユルグが刃を振り上げる。
 弧を描いたソレは、二人を攻撃する為に振り上げれた訳では無い。
 本命はユルグの背後へと権限した、数え切れぬ程の片刃の彎刀の群れである。
 嗚呼。
 ユルグが綾を酔わせる酒だと、云うのならば。
 ――綾は青磁の徳利に口当たりが良くて、気づけば眠るような酒なのであろう。
「さあてと、上手に踊って貰いましょうネ」
 花に舞い踊る獄卒の足取りに、つるぎの舞いを交わせばユルグは手を打って拍子を取るよう。
 ひゅうるりと口笛1つ、上機嫌。
 ふふ、と綾は笑む。
 なんだかユルグが楽しげに見える事が、無性に綾には嬉しく思えて。
「……斯様に醒めぬ酔いならば、ずっと溺れて居たいですねぇ」
「そうネェ、――飲み乾してから、言ってみてヨ」
 なあんて、綾の呟きにユルグは笑った。
 嗚呼、なんとも酔狂なお話で。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

縹・朔朗
……こないに酔うたんは久し振りやなぁ…

普段の標準語は意識から外れて
昔住んどった京の言葉に
気も大層大きなってすっかり笑い上戸

ふふ、なんや楽しい気分なってきたわぁ
もっとお酒注いどくれへん?

飲んでるんは只の水のはずやのに
飲めば呑むほど酔に呑まれる

ごめずさん、えらい乗りが悪いんと違います?
ぎょうさん呑みはってええんですよ
ほら、ほら、たんとお呑み。

うふふ……ふふ…
ええ具合なってきましたね



「……こないに酔うたんは久し振りやなぁ……」
 道歩む縹・朔朗(瑠璃揚羽・f25937)は、ほうと息を漏らして。
 ――普段心がけている標準語は、全部解けて。
 昔々に住んでいた、京の言葉もまろびでようもの。
 朗らかに笑んだ朔朗は、ふう、と熱い吐息を零して。
「ふふ、なんやえらい楽しい気分なってきたわぁ、へえ、あんたごめずさんいうんやねえ」
「うむ! ごめずちゃんは、獄卒なんだぞ!」
 からからと笑う獄卒と、彼は水を酌み交わす。
「しかしこの酒、飲みやすいなぁ。もっと注いどくれへんか?」
「はーいはい、しかたがないなあ、わけてやろう!」
 とくとくと水差しから水を注いでくれる獄卒――ごめずちゃん。
 くっと杯を呷れば、なんとも水のように飲みやすい。
 ――実際ただの水なのだから、水以上の何者にもならないのだけれど。
 もう一口水を傾けた朔朗は、瞳を眇めて。
「しかしねえ、ごめずさん。あんた、えらい此方ばかり酒すすめはって、ええんですよ。ぎょうさん呑みましょうよ」
「えっ、ごめずちゃんはそんなに水は呑めな」「ええんですって、遠慮せんで、はい、注ぎますから。ほら、ほら、たんとお呑みな?」
「あの」
「ほら、ごめずさん」
「あっ、は、はい……」
 ぐいぐいと朔朗に勧められるがまま。
 水を一生懸命頂くごめずちゃん。
「うふふ、ふふふ、……ふふ、ええ具合なってきましたねえ」
「げぷ……」
「ほら、ほら、まだありますからね」
「え、えーん!」
 ぐぐいと水を勧め続ける朔朗も、随分と良い気分。
 ふわふわ、ゆらゆら。
 心地の良い酩酊感の中。
 朔朗は楽しげにふふ、と笑って。
「……はあ、楽しいねえ」
 そんな横で、ごめずちゃんは頑張って水を飲んでいた。
 酒は呑んでも呑まれるな、と言いまして。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジン・エラー
【甘くない】
飲まなくても酔うンだってよエリシャ。良かったなァ~~~一足先にオトナの仲間入りだぜ
おォ~~っと!酔ってそのデケェ乳零したりすンなよエリシャァ~~~?
イッヒャッヒャッギャハ!!!

オッヒャエッヒャウッッヒィッフギャハヒヒヒ!!!
あァ~~~~~?オイオイエリシャが二人いンぞ??
文字通り両手に華ってかァ~~~??いいねェ~~~~~~ェ!!!!

おォ~~なァ~~ンだよエリシャ、甘えたか?
しょォ~~~~がねェ~~~~~~なァ~~~~~~~
ほれ、抱いてやる。光栄だろォ~~??

イッヒヒフハ!まだ足りねェって顔だなァ~~~?
いいぜェ~~~~今のオレはご機嫌だからよォ~~

お前は本当に、可愛い女だな


千桜・エリシャ
【甘くない】

酔ったあなたは見慣れたものですが
私も酔ってしまうなんてね
なにか含みがありますわね…
って、またそういうはしたないことを!

ちょっと!ジンさん!
もう一人の私にうつつを抜かさないでくださる!?
むうぅと頬を膨らませては彼の腕を引っ張って
こっち!こっち行きましょ!

んぅ…でも上手く歩けませんわ~!
ねぇ、支えてくださる?
えいっと彼の腕の中に飛び込んでごろごろにゃあん
ふふ、そうですの
今日の私は甘えっ子ですのよ
ちゃんと甘やかしてくださらないと嫌ですわ
こうえい?しあわせ~
ぐいぐいぎゅー

いったでしょう?
鬼の慾に涯はないの
あなたのすべてがほしいわ
ねぇ、ちょーだい?
押し倒して口元をぺろり舐めて
んふふ、おいしぃ



「オッヒャエッヒャウッッヒィッフギャハヒヒヒ!!!」
 ――千桜・エリシャ(春宵・f02565)にとって。
 酒に呑まれて正体を無くすジン・エラー(我済和泥・f08098)等、本当に見慣れたものであった。
 しかし、しかし。
 今日はエリシャ自身も酔ってしまうと言うのだから。
 くらりくらりと体を満たす酩酊感。
 揺れる視界に、燃えるような熱さ。
 ふわふわと脳を痺れさせる甘やかな感覚に、ほうと熱い吐息を零して――。
「あァ~~~~~? オイオイオーーーーイ、なんだこれ、エリシャが二人いンぞ??」
 そんな彼女の後ろでゲラゲラ笑っているジンは、虚空で腕をぱたぱたさせている。
「イヤ~~~~~、いいねェ、いいねェ~~~~~~ェ!!!! 文字通り両手に華ってかァ~~~??」
 その言葉にエリシャが彼へと振り向けば。
 虚空のなにかを抱き寄せるジンの姿。
「ちょっと! ジンさん!」
 桜色を抱く髪を跳ねさせたエリシャは、思わずジンの腕をぎゅっと掴んで引いて。
「――もう一人の私に、うつつを抜かさないでくださる!?」
 あっ、完全にこの人も酔っ払ってる言動ですね。
 そう、日替わりレベルで起こる幽世の世界滅亡の危機の異変。
 本日は、誰しもが酔い酔いのへべれけ酔っ払いの異変なのだから。
 エリシャが酔っ払ってしまっているのも、当たり前の事ではあった。
「もうっ、こっち! こっち行きましょ!」
「おォ~~なァ~~ンだよエリシャ、お前はお前だろう? お前に嫉妬すんなよォ~~~、しかたねえなあ全くよォ~~~~」
 なあんて。
 エリシャはもういつも以上にへべれけ言動なジンの腕を引いて、街を歩みだそうと――。
 ああ、でも。
 そう、今日エリシャは酔っ払っているのであった。
 ならば、ならば――。
「……んぅ、ねえ、あなた。……なんだか私も酔ってしまったみたいで、上手に歩けませんの」
 支えてくださる? とジンの腕の中にエリシャはその身を転がり込ませて。
 お? と首を傾いだジンは、にんまりと瞳を笑みに歪ませた。
「おォ~~なァ~~ンだよエリシャ、甘えたか?」
「……ふふ、そうですの。――今日の私は甘えっ子ですのよ?」
 猫のように体を擦り寄せ、彼の首筋に腕を回したエリシャは花が綻ぶように笑み。
「しょォ~~~~がねェ~~~~~~なァ~~~~~~~。ほれ、抱いてやるよ。光栄だろォ~~??」
 ジンがぎゅっと彼女を抱き寄せてやると、エリシャは彼の肩口に頬を寄せて。
 鼻先で首筋を撫でるように、幾度も擦り寄せる。
 ぎゅ、っと背に回した腕は強く強く。
 彼を抱いて、彼の香りを肺いっぱいに吸い込んで――。
「ふふ、しあわせ……」
「ギヒャハウフェウフヘヒヒヒッ、ホント~~~に今日のお前は甘えただなァ~~~」
「もう、分かっているのならば、ちゃあんと甘やかして下さります?」
 瞳を眇めてエリシャがジンを上目で見やれば、ジンはゲラゲラとまた笑って。
「まだ足りねェってかァ~~~? イッヒヒフハ! いいぜェ~~~~今のオレはご機嫌だからよォ~~」
 なあんてジンが笑えば、それを許可としたエリシャは、ぐっと力を籠めて彼を押し倒して。
「!」
 そのまま後頭部から勢いよく地へと倒れ伏すジン。
 ジンの腹の上に座り跨ったエリシャは、今度は彼を見下ろしてくすくすと笑う。
「――ねえ、いったでしょう?」
 ジンの腹の上を撫でて、胸の上を撫でて。
 細く白い指先が、ジンの体の上を這う様に。
 掌の動きに合わせて体を低くしたエリシャは今にも口づけをしてしまいそうな程、ジンの顔へと顔を寄せて。
「……鬼の慾に涯はないの、あなたのすべてがほしいわ」
 ねえ、頂戴。
 ジンの口元に甘く這う、赤い赤い舌の跡。
「ん、ふふ、……おいしぃ……」
 そして上半身を擡げた彼女が唇を紅を引くように親指で拭いながら、艷やかに笑うものだから。
「……は、――お前は本当に、可愛い女だな」
 相違う瞳を細めたジンは、自らの上に跨る彼女の背へと腕を伸ばして。
 その両腕で華を抱くように、ぎゅうと抱き寄せた。
「あとは、そう、酔ってそのデケェ乳零したりしてくりゃぁ、サイコ~~~~~なんだがなァ~~~、イッヒャッヒャッギャハ!!!」
「ま、またそういうはしたないことを大きな声でっ!?」
 耳元でバカデカボイスで笑われたエリシャは、肩を跳ねて。
 少しだけ近づいた理性に引っ張られて、叫び返すのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蘭・七結
【春嵐】

歩を刻む度に頭のなかが揺すれてゆく
ふわ、ふわとした不思議な浮遊感
まるで宙を歩むかのよう

ふふ、ふふ
なんてかるいのでしょう
この感覚は、はじめてのものだわ
花咲むようなあなたに手を引かれ
先へ、先へとかけてゆく

高鳴る踵の音がきこえない
ぼうとするのはしらんぷり
まっすぐに歩めなくてもかまわないの
なんだかとてもたのしくて
無意識のうちに頬がゆるんでゆく

ゆらゆらとあなたが揺れているの
とてもふしぎね、ふふふ
すぐるさん、すぐるさん
どうしてか、あなたの名を呼びたくて
幾度もかさねて、あなたを紬ぐ

繋いだ手、結いだ指さきに微かな力を込める
まだ、まだ先へとゆけるわ
どうか、はなさないでね

今だけは甘やかな温度に浸りましょう


榎本・英
【春嵐】

足は軽い。
私はこの感覚を知っている。
嗚呼。酔いが回っている。
心が軽く、浮足立つような気持ち。

だらしなく頬は緩み
笑いが止まらない
嗚呼。なゆ。
私達は追いかけられているようだね。
へへへ、楽しいな〜

あの子は鬼の金棒を持っているよ。
ヒヒヒ、楽しいな〜
なぜこんなにも面白いのかは分からない。
完全に酔いが回っているのだと思う。

隣の君の手を引いて、千鳥足の鬼ごっこだ。
笑いを止めようと思うのだが
やはり笑いが止まらない。

笑いすぎて腹が痛い。
なゆはまだ飲めない筈だが
何故か様子がおかしい。
君の手を握っての鬼ごっこはとても楽しいな。

嗚呼。なゆ、まだまだ走れるかい?
ヒヒヒ、へへへ
後で後悔をしてしまいそうだが楽しもう



 はねるように、飛ぶように。
 掛ける足取りは軽く、軽く。
 地を蹴っているというのに、まるで宙を蹴り、宙を駆けているかのよう。
 酩酊感に体も頭も、ふわふわゆらゆら。
 榎本・英(人である・f22898)はこの感覚の名前を知っている。
 酔いだ。
 酔いが回っている。
 心が軽くて、脳が心地よい。
 ああ、楽しい、楽しい、楽しい。
「へへへ、へへへひひ、……楽しいねえ、なゆ」
「ふふ、ふふふ、からだがかるいわ」
 蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)はこの感覚の名前を知らなかった。
 これが酔い。
 これが酔いが回るということ。
 心は軽い、体も軽い。
 ああ、ああ、なんだか、ふふ、全部が揺れているわ。
 二人は追われていた。
 悪い子を追う鬼に、追われていた。
 知っている、そんなこと、知っているわ。
 知っている、そんなこと、知っているよ。
 だから、二人は駆けているのだから。
「ヒヒヒ、ねえ、なゆ、あの子は鬼の棍棒を持っているねえ」
 ゆるゆるとだらしなく緩んだ頬より零れる笑い声は、常では出ぬ音がする。
 追いかけられているのに、こんなに面白いのは――ああ、酔っているからだろう。
 彼女の手を引いて、駆けているというのに。
 こんなに体が軽いと云うのに。
 きっとこの足取りは、まろぶような千鳥足なのだろう。
 それがなんだか面白くて、また英は笑った。
 七結もまた、知らず知らず頬を緩めていた。
 彼に手を引いかれて、駆けているというのに。
 こんなに体が軽いと云うのに。
 二人で駆ける足取りが、まろぶような千鳥足なのだから。
「ねえ、すぐるさん。あなた、ゆらゆらゆらゆら揺れる事にしたのかしら?」
「ひひ、フフフ、なゆ、きみこそ、ゆらゆらゆらゆら揺れているよ」
「ふふふ、すぐるさん、……それはとてもふしぎねえ」
 ねえ、すぐるさん。
 すぐるさん。
 ――どうしてこんなにも、あなたの名を呼びたくて、かさねたくなるのかしら。
 彼の名前を、幾度も幾度も七結は紬ぎ。
「嗚呼。なゆ、ふしぎだねえ」
 ああ、なゆ。
 君はまだ呑めない歳であった筈なのに。
 どうして君まで酔っているような、様子なんだい?
 何も思い出せない。
 ここは何処なのか。
 どうして駆けているのか。
 どうしてこんなに、ひどく酔っているのか。
 ――嗚呼、でも、ふたつばかり分かっている事もある。
「ひひ、ひひひひ」
 思わず零れる緩んだ笑い声。
 嗚呼、困ったな。
 君の手を握っての鬼ごっこは、とても楽しいと云う事。
 結いだ掌が甘やかで、とても愛おしくて暖かいと云う事。
 英は七結を、横目で見やって――。
「……なゆ、まだまだ走れるかい?」
「ええ、すぐるさん、まだ、まだ先へとゆけるわ」
 七結は返事の代わりに、英と結んだ掌へときゅっと微かに微かに力を込めた。
 ――だから、どうかどうか。
 この手を、はなさないでね。
「ヒヒヒ、へへ……嗚呼、分かったよ」
 二人は鬼より逃げて、逃げて、駆け続ける。
 ――嗚呼。
 後悔は先には出来ないものだ。
 ならばそれは、後ですれば良いという事だろう?

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『酒呑み竜神『酔いどれオロチ』』

POW   :    桜に酒はよく似合う
【周囲に咲いている桜の花びら】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    月も酒にはよく似合う
非戦闘行為に没頭している間、自身の【頭上に輝く満月】が【怪しい光を照らして包み込み】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
WIZ   :    やはり祭りに酒はよく似合う
【頭上の提灯の怪しくも楽しそうな灯り】を披露した指定の全対象に【倒れるまで踊り狂いたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は高柳・源三郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●おいしいお酒はとてもおいしい
 ぅる、る、お、おおおおお。
 遠く響く、竜の鳴き声。
 風に混じる甘い匂いが、色濃くなったように感じるだろうか。
 空に影が現れたかと思えば、低く低く地を駆けただした巨大な竜の姿。
 建物を薙いで、妖怪たちを薙ぎ払って。
 竜は夜を引き連れ、空の色を夜へと塗り替え行き。
 そうして長い体を擡げると、まあんまるな大きなお月さまを背負って。
 首を傾げば角の間で、ぴかぴかと瞬く提灯がぷらりと揺れた。
「酒は、……酒はどこかのう?」
 風に混じる甘い匂い。
 ――竜から色濃く香る、酒の匂い。
 そうして竜が探るように地へと鼻を寄せて、鼻を鳴らすと――。 
 ばしん、とその場を思い切り叩きつけた。
 瞬間。
 吹き上がったのは、温泉だ。
 否。
 この色濃く香る酒の香りの中では、温泉すらも酒と成ったかのように感じるだろう。
「ううむ、酒じゃ、酒じゃ! 宴じゃぞ!」
 からからと笑った竜は、吹き出し出した温泉水に顔を突っ込むと――。
「うまーーーーーーーーーい!」
 頭上の提灯をビカビカと瞬かせながら、上機嫌でとぐろを巻いた。
終夜・嵐吾
せーちゃん(f00502)と

せーちゃん!酒のにおいがするんじゃよ!
さーけー、おーさーけー(ご機嫌)
おお、あれじゃな!
あびるほどの、さーけー!わははは
全身で酒を飲めるなんてしあわせじゃの~!
やはりのまんとはじまらん~
ふふ、うぇ~い、うま~(しっぽふっさふっさ)

おお!そうじゃった!
しっぽでせかいを…(しんなり)
せーちゃん…!びしょぬれでざんねんなっとる!
このままではせかいがすくえん、いちどてったいじゃ!
狐火たくさんぽっぽと浮かべてかわかす~
しかしがすがすになりそな…
おお、せーちゃんがしっぽのお世話をしてくれるならふっかふかのふっこふこになるの!
では世界を救うしっぽにしておくれ!(ばたばた


筧・清史郎
らんらん(f05366)と

ふふ、らんらんもご機嫌で何よりだ
まぁ潰れてもいつもの様に俺が連れて帰るから、好きなだけ飲んで良いのでは(にこにこ
おお、尻尾もふっさふさでとても良いな(にこにこにこ

ところでらんらん、酒も良いが
もふもふで世界を救うのだったのでは?
! らんらんの尻尾が…(しんなり尻尾に一瞬しょぼんとするも
だが案ずるな、らんらん
実は携帯用の櫛を持っていたことを忘れていた
そして俺は、そういえば水を操れるからな
尻尾の水を飛ばし狐火で乾かしつつ、俺が櫛で梳きふわふわにする
その間に、らんらんは世界を救ってくれ(きり
邪魔をする桜花弁は桜嵐で吹き飛ばしてやろう
尻尾をがすがすになど、俺がさせない(にこにこ



「せーちゃん! 酒じゃ、酒の雨じゃ!」
 むせかえるほどの酒の匂い。
 それは桃源郷に存在するという、清らかなる酒の泉を彷彿とさせる光景。
 地より吹き出したモノが酒だと言うのだから、最早此の世の天国と言えよう。
 否――それはただの温泉である筈なのだが。水ですら、……水すら無くとも酔えてしまう異変に満たされたこの世界では、温泉なんて最早熱燗と呼んで過言は無い。
 オロチの生み出した間欠泉は温泉の噴水を続け、世界へ降り注ぐ湯は雨の如く。
「さーけ、さけ~、おーさーけー、あっびるほどのおっさけ~」
 即興かつ中身がゼロのお歌を口ずさみながら、嵐吾はとろけてしまいそうな程の幸せスマイル。
 ついでに体も勝手に踊り出してしまうよう。
「ふふ、らんらんがご機嫌で何よりだ」
 友人が喜んでいるとなんとなく友人の毛並みが、喜びの感情で更に整い輝くような気がして、清史郎も嬉しい。
 それに例えベロベロに酔っ払って潰れてしまったとしても、いつものように自分が回収すれば良いだろう、と。そのふかふかの尾が左右に揺れる様に、清史郎もまた幸せスマイルを浮かべる。
「わはははは! 全身で酒を飲めるなんてしあわせじゃの~! ふふ、うま~」
 大きく口を開いているだけで、口に湯……酒が入ってくる。
 そんな友人の思いを知ってか、知らずか、嵐吾は全身で喜びを表し、
 美味しい酒の前で思わず歌って踊ってしまうのは、生き物としての一番芯に存在する原初的かつ根本的な魂の感情の顕れ。
 難しいことを考えてはみたけれど、さけがうま~い!
 しあわせ~、うぇいのうぇいのうえいうぇいえいえい。
 酒の雨を生み出す水柱の向こうに、何やら大きな竜が見えるがソレはソレ~。
 ――しかし、当たり前の事ではあるが。
 水を浴びれば当然、体は水を纏う事となる。
「……!」
 思わず息を呑んだ清史郎は、その瞳に悲しみの色を宿して。
 小さくかぶりを振ると、痛ましき光景に喉を鳴らす。
「――らんらん。らんらんは――もふもふで世界を救うのではなかったか?」
 普段の雅やかでぽやぽやしている彼からは想像が出来ぬほど、真剣な表情。
 漏らした声音には、水底に沈んだかのように深い悲しみと憂いが宿っていた。
「おお、そうじゃった! このしっぽでせかいを……」
 清史郎の言葉にゆるゆるに緩みきった嵐吾が、自らの尾の状態を確認した瞬間。
 その表情は水を打ったように、真剣な色が宿り。
 護れなかったモノを見るかのような憂いを湛えた瞳を細めると、彼はただ下唇を噛んだ。
 嗚呼。
 嵐吾の尻尾は温泉水を浴びた事でしっとりびっしょり。
 とてもふかふかとは言えぬほど細まり、すっかり濡れ鼠となっている。
「わしの……わしのしっぽが……、びしょぬれになってざんねんな事に……」
 さっと酒――温泉水の雨から逃げ出した嵐吾は、ぽぽぽと狐火を纏いながら駆け出す。
 これ以上尻尾を哀れな目に遭わせる訳には行かない。
「せーちゃん、一度撤退するぞ。――このままではせかいなんぞ……とても救う事ができんからの……」
 戦略的撤退を選択した嵐吾は、狐火の熱で尾を炙りながらかぶりを振る。
 例え。この状況で尾が乾いたとしても、とても万全の状態とは言えぬであろう。
 水気を切って乾かしただけの尾は、手入れのされていない竹箒のようにがすがすになってしまうかもしれない。
 そんな事想像するだけで、背がぞわぞわと粟立ってしまうが――。
 ……しかし、このまま放っておくという選択肢だけはあり得ないのだ。
「――案ずるな、らんらん」
 そこに。
 濡れそぼった友人の心に寄り添うが如く。
 空よりはらりはらりと零れる桜の花弁を払った清史郎が、雅やかに微笑んだ。
 そっと差し出した掌の上には、携帯用櫛。
「らんらんが世界を護れるように、俺が支えよう。――尻尾をがすがすになど、俺がさせるものか」
「せーちゃん……!!!!!」
「ああ、任せろ」
 そう。
 清史郎は人の姿と成る前に、水龍の社に奉納されていた事が在る。
 ――その水の加護により、水を操る事は得意とも言えるのだ。
 清史郎が嵐吾の尾へと手を添えると――。
 なんと言うことでしょう。
 水分を飛ばしながら、あたかもドライヤーのように狐火の熱を利用して乾かし。
 的確に梳く毛はが、美しい流れと美しい毛並みを取り戻しだす。
 あそこまで濡れ細っていた尾は、見事匠の手によってふかふかもこもこへの復活を果たしたのです。
「おお……、これは……ふっかふかのふっこふこじゃ! このしっぽなら……せかいを……!」
「ああ、らんらん――これで、世界を救ってくれ」
「勿論――、わしがこのしっぽで世界を救おう!」
 きりりと虚空を睨め付けた二人は、とりあえず尾を強調するポーズで立ち尽くすと格好よいポーズをキメる。
 そう。
 ふかふかの尻尾は必ず世界を救うに、違い無いのだから。
 何やら舞い散っている桜の花弁を払うかのように清史郎が刀を駆けさせれば、嵐吾の狐火が追従するように炎を爆ぜた。
 折角残っていたので、どうせなら格好良いエフェクトとして使用しておいたほうが映えると思ったのだ。なんか向こうのでっかいのに当たった気もせんこともないが、しらんしらん。
「さーて、しっぽも乾いたことじゃし、もう少し飲みなおすかの」
「ああ、らんらん。尻尾に気を付けてな」
「うむ!」
 格好を付け終えた二人は、武器を下ろして再び湯――酒へと向き直るのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

月舘・夜彦
【華禱】
眠気は未だ取れず、抱き着いた相手の心地良さから
ふわふわと、ふわふわと
しかしながら感じる敵の気配
眠気もあって、今ばかりは邪魔にしか思えない

りんたろ、りんたろ、敵が現れました
行かなくては……らいじょうぶれす、戦えます

抱き締める腕を離し、眠気を払うように首を軽く左右に振い、武器を構える
早く終わらせてしまおう
今はそう思うばかり

酔っているような心地であれ、刀の柄を持てば感覚は少しずつ戻っていく
隣で武器を構える倫太郎も同じだと分かれば
彼の動きに合わせて早業の抜刀術『神風』
技は一撃と見せかけたフェイントで2回攻撃
間を開けて二撃目を敵へと放つ

終わったら、また彼の所へ戻ります
早く戻らせてください


篝・倫太郎
【華禱】
酔いが回ってるからか温かいなぁ
それに匂いもいつもより強めに香ってる……
(肩口に顔を埋めてふんす)

寝ちゃ駄目ダヨー……
とか言いながら髪を撫でてたら寝ちまうな、これ

うんうん、敵だな
つーかあんた戦える?だいじょーぶ?

まぁ、敵の気配に不機嫌になってるし
これ、本能っていうか刷り込みじゃん?

夜彦、戦ってアレ倒したら
またぎゅーってしてやっから、がんばろーぜ
あいつ、煩いに眩しいからさ

ふわふわした夜彦の気配がぴりっとしたものに変わる
ん、華焔刀の長柄をしっかりと握れば
自分もつられる様にしゃんとして

拘束術で先制攻撃
オロチを拘束し花びらの攻撃を相殺
休む間もなく華焔刀で一撃叩き込んで
俺との戦闘に意識を向けさせる



 どれほど長い間、こうしていたのだろうか。
 一瞬であったような気もするし、ずっとこうしていたような気もする。
 倫太郎は夜彦の肩口へと頭を埋めて、額をぐり、と押しつける。
 肺一杯に、彼のにおいを満たして。
 腕一杯に、彼の暖かさを感じて。
 うとりうとりと船を漕ぐ夜彦の背を髪を、柔く柔く撫でる。
「夜彦、……寝ちゃ駄目だぞ?」
「んーんん、だいじょぶ、れす。……それよりも、ね、りんたろ。……りんたろ、敵の気配が、します」
「うんうん、敵だな」
 うっそりと睫毛を揺らした夜彦は、瞳を開こうとしてもどうにも開ききれない様子。
 倫太郎はへにゃへにゃと笑いながら、大きな影を見上げた。
 ――先程目前に突如顕れたのは、間欠泉。
 そして、巨大な竜がとぐろを巻く姿であった。
 やれやれと肩を竦めた倫太郎は、腕に抱く夜彦へと再び視線を下ろして。
「……あんた、本当に起きれる? 戦える? だいじょうぶ??」
「らいじょぶでふ、……戦えますよ」
 いまいちどうにも、ふわふわしているようだけれども。
 ご本人の申告では戦えるというのだから、仕方が無いだろう。
 それに夜彦の雰囲気が、敵の気配を感じだした頃からイライラピリピリしだしたのを感じているもので。
 倫太郎が夜彦を抱いていた腕を緩めると、さっと彼は刀の柄へと掌を添えて。
 瞬時にぴりりと冴える、夜彦の雰囲気。
 ――あーらら、随分不機嫌になっちゃって。
 それは敵に対する闘争本能というよりは、敵に対する刷り込みのように倫太郎に感じられ、ほうと酔いに燃える吐息を一つ零した。
 真っ直ぐに敵を睨め付ける夜彦は、一歩前へ。
「……早く終わらせてしまいましょう」
「ん。アレ倒したら、またぎゅーってしてやっから、がんばろーぜ」
 短く言葉を紡いだ夜彦を見ながら、倫太郎がまたへらへらと笑って。
 刀の柄を握る彼に倣って、薙刀の柄をぎゅっと握り締めた。
 ――得物を握れば、少しは普段の様子を取り戻す事もできるだろうか。
 はらはらと零れ落ちだした、桜の花弁。
 触れれば身を裂くその花を、二人は斬り払って薙ぎ払って。合間を縫って駆けて、跳ねて。
 敵は酔っ払ってへべれけとは言え、その願いで世界を壊すほど強大な存在である。
 隙だらけで、だからこそ隙が無いと言えようか。
 相手の体に対して、二人はあまりにちっぽけで、小さくて。
 ――しかし。
 視線を交わし合った二人には憂いなど無く、言葉すら最早必要は無い。
 倫太郎が一気に巨大な竜へと踏み込むと、見えぬ鎖を放ち引きながら竜自身を足場として一気に駆け上り。仕上げにその身を押さえ込むように、鎖を引き絞ると――。
 地上で低く構えていた夜彦が、目にも留まらぬ速さで逆袈裟の形に刃を叩き込んだ。
「ふ……ッ!」
「ッ!」
 それに合わせて倫太郎も薙刀を振り下ろせば、鱗がばちばちと跳ねて。
 ぉる、ぉぉぉぉおっ。
 低く鈍く、よく響く鳴き声を上げた竜は、厭うように身を捩り。
 その勢いに引き摺られて、竜の身に巻き付けた鎖を握る倫太郎の身が宙に浮いた。
「りんたろ……!」
 夜彦が更に踏み込むと、返す手で袈裟斬りにもう一発。
「大丈夫」
 宙に投げ出された倫太郎は、跳ね飛ばされた先の壁を蹴って空中で制動をかけて――。
 緩めていた鎖をぎゅっと再び引き絞ることで、竜への勢いを付ける。
「――はい」
 彼の狙いを理解した夜彦が一歩身を引くと。
 刹那。
 彼は弾かれた玉のように地を蹴って、一気に竜へと肉薄する。
「おらァあっ!」
「……は、ァッ!」
 一人より二人。
 強大な敵ならば攻撃する場所を合わせれば、少しは攻撃だって通るだろう。
 二人は同時に刃を交わして――、同時に刃を叩き込んだ!

 酔いに浮かされる頭は、思う、考える。
 ――嗚呼、早く。早く敵を倒してしまいたい。
 ――嗚呼、早く。早くまた、彼と――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鈴久名・惟継
【幽蜻蛉】
遵殿、寝ておらんだろうな?
あやつが今回の元凶だ
同じ竜神とは……いや、酒好きの竜は居ったような
俺は二人居らんぞ!?

まぁ、倒せば良いのだ
うむ、倒そう

正直俺も酔い心地なもので頭が回らぬ
敵であるか否かさえ判れば良いのだ
俺の背に乗ったままでも戦えるぞ、好きなように戦うといい

よし、往くぞ

雷獣ノ腕にて大太刀を作り出し武器を構える
周囲に飛ぶ花びらはオーラ防御にて対処
その状態を維持しながら大太刀にて花びらごと払う

お、遵殿、今回も何か出すつもりなのか?
ほう、キャバリアに乗せる為の大きな武器か
……俺の上で撃っても問題ないのだろうな?そうだな?

おい、待て待て!寝るでない!
うぅむ、揺さぶって寝ないようにするか


霞末・遵
【幽蜻蛉】
うーん……まだ寝ちゃだめ?
いいでしょ竜神様。竜神様……あれも竜神様だなあ
あー……惟継さぁん、おじさんもうすごく眠くて無理
適当に終わらせといてくれない……?

仕方ないからちょっとだけ何かするか……
何か何か……なんでもいいから撃てそうなやつ何か出てこい
隊列もなんだか歪んで見えるな。これは目のせいかな……

あれね、爆発するやつ。音と煙だけだから痛くないけど
あっちはビーム出すやつ。ちゃんと出てるみたいでよかったあ
それはキャバリアに乗せようかなと思ってとりあえず大きくしたやつだよ
これは……なんだったっけ。撃ってみればわかるさ

あっちの竜神様ぴかぴか光ってきれいだね
なんだかこう……こう……無理寝る……



 竜の背にしがみついたまま。
 遵は辛い顔をしていた。
「うーん……、うー……ん……、まだ寝ちゃだめ?」
「ダメだ、遵殿」
 今にも飛んでしまいそうな意識。
 多分この竜にしがみつく手を離せば、体も飛んでいってしまうのだろうけれど。
 でも今はもはやそれでも良いと思えたのだ。
 なんたって――。
「いいでしょ竜神様? もういいんじゃない? 私が寝ても変わりはいるでしょ?」
「ダメだ、遵殿」
 眠い、眠いと言うのに。
 どうしてダメだとこの竜神は言うのであろうか。
 解るけれど判らない、いや、解るけれどね。
 でも眠いものは仕方ないでしょう、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ。
「あー……、ねえ、ねえ。もうおじさんねぇ、限界。解るでしょ。寄る年波には勝てないよ、あと眠気。なんだか暖かくなってきちゃったしさ。もうすごく眠くて限界なんだよ、解るでしょ」
「ダメだ、遵殿。ほら、恐らくアレが今回の元凶であろう」
 幾度目かも忘れてしまうほど重ねられた却下に、遵は彼の鱗にぺったり頬を押し付けて。
 ひんやりすべやかな鱗に顔を押し付けたまま、視線だけで敵を見やった。
 大きなとぐろを巻いた竜が、吹き出す間欠泉の湯をごくごくと飲んでいる。
 うーん平和な光景。
「んー……そっかそっか……、適当に終わらせといてくれない……? いいでしょ、竜神さ……、……あれ、あれも竜神様じゃない?」
「……俺は二人は居らんぞ?」
「あー……、じゃあ惟継さぁん、おじさんねえ、もうすごく眠いの……。適当に終わらせといて」
「ダメだ、遵殿。共に闘おう。――俺の背に乗ったままでも闘えるのだからな」
「背に乗ったまま闘えるのならば、背に乗ったまま寝てても良くない?」
「ダメだ、遵殿」
 言うが早いか、その掌に雷を纏った惟継は大太刀を生み出して。
 竜へと勢いよく迫っているものだから、遵はのそりと鞄へと手を伸ばして。
「――はー、仕方ないからちょっとだけ何かするか……」
 舞う花弁へと一気に突っ込んだ惟継は、大太刀を大きく払って、薙ぐ。
 そして動き出した背の気配に、肩を小さく竦めて。
「お、やっとやる気になってくれたか、遵殿」
「ちょっとね」
 そうしないと眠れないようだからね、何でもいいから出そうか。
 少しでも意思を示せばやったことになるだろうし、眠る許可を貰えるかもしれない。
 ううん。……なんだか目が霞むな、酔いかな。歳じゃないよね?
「ええと――」
 適当に遵が引っ張り出した銃火器がぷかりと浮かび上がり、――その数は優に700は数えるだろうか。
 適当に出したというには、余りに量が多いソレは。
「……なあ、それは俺の上で撃っても問題ないモノだろうな? そうなのだな?」
「うーん、勝手に自律して飛ぶから……多分」
「多分?」
「めいびー」
 瞬間。
 空気が爆ぜて割れてしまったかのような音が響いて、びりびりと肌が震えた。
 重ねて煙が膨れ上がり、閃光がその煙幕を割くように真っ直ぐに伸びる。
 大砲ほどの弾が吐き出されて――。
「う。おおおっ!?」
 その空気の震えは飛ぶ惟継の動きを阻害して。
 真っ直ぐに往く事すら叶わなくなった惟継は、光と弾の合間を縫って方向を転換してぐうるりと宙を蹴る。
「ほ、本当にそれは俺の上で撃っても問題ないモノなのだな!?」
「うーん……、どうだろう……。これ、なんだっけなあ?」
「なんだっけなあと言いながら撃、」「えい」
 遵の気の抜けた号令によって幾何学模様を描き複雑に飛翔する巨大な銃火器から、まるで雨のごとく放たれる数え切れぬ程の弾。
「あ、危な……ッ!?」
「あー……あっちの竜神様は、なんだか……ぴかぴか光ってきれいだね。なんだかこう……こう……」
 惟継の苦情もなんのその。
 ……すぴー、ぴよぴよ。
 攻撃を全て武器に委ねた遵は、遵自身の攻撃を避け続ける惟継の上で寝息を立て始め――。
「待て、待て待て、遵殿、寝ておらんだろうな?」
「…………」
「おい、待て待て!? 寝るでない!!!?!?! 寝てしまったら、この武器は誰が止めるというのだ!?!?!」
 瞳を閉じた遵は応えない。
 おじさんねぇ。
 ねむたーいので、あとは若い人に任せます。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と

……掘り当てるのがなぜ泉ではなく酒の温泉なんですか
立ち込める湯気に比例して、不満がもくもくと湧き起こる
僕は暑いのが苦手なんですよ
湧き出る温泉のなかで歩くザッフィーロ
熱い温泉の河など止めねばなりませんねと返し
まだ思考は働いていないかもしれない
いいえ、僕は暑さより寒さのほうがマシです
さらに言うならお酒は熱燗よりロックの方が好きです
この温泉も冷えたらロックとして飲めませんかね
そうです、温泉の元を倒してしまいましょう
そうすれば湯も水に早変わりです

自分が何を言っているのか自覚していませんが
とりあえず思い立ったが吉日と龍神に向けて
【天航アストロゲーション】にて攻撃しましょう


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

宵と肩を貸し合い竜の元へ
竜は水を操ると聞くが斯様な川を創り出すとは…!
未だ酩酊が続く頭で温泉を見れば、宵と共に千鳥足で険しい川(に見えている温泉)の中へ
宵…足を取られぬよう気をつけろ…
不機嫌そうな宵の声を聞けば回る思考の中視線を向ける
…湯を水に…?寒さより暑さの方が良いのだが…というか何故川に熱い湯が流れて居るのだ…?
そう混乱と共に何もない所で転びかければ矢張り河は恐ろしいとぽつりと声を

敵が間合いに入ればメイスを支えにしつつ【狼達の饗宴】を放ち攻撃を
勿論宵への敵の攻撃は『盾受け』にて『かば』おうと試みる
どんなに深い河の中でも、宵だけは…護って見せよう…宵、怪我はないか…?



 噴き出した間欠泉は飛沫と成り、湯気と成り。
 水たまりを生み、さらりさらりと流れ零れる。
 噎せ返る程の甘い香り、酒の香り。
 『醒』を失った世界では、その温泉水すら酒のよう。
「……何故、温泉なのですか?」
 宵はその只中で、ぷりぷりと小言を零していた。
「せめて冷泉なら――」
 僕は熱いのが苦手だと言いますのに。
 さらさらと細く流れる水流に逆らうように、宵とザッフィーロは大きな竜が現れた方向へと歩んでいた。
「ああ、竜とは水を操るものも居ると聞きはするが、斯様な険しい川を作り出すとはな……」
 ザッフィーロが顎を伝う汗とも雫とも判らぬ水滴を拭いながら、いまいち噛み合わぬ返事。
「ええ、熱い温泉の川など止めねばなりませんね」
 宵は宵で噛み合わぬ返答を更に重ねてはいるが、恐らく最終目的としては同じ事を目指していそうなので、結果オーライであろう。めいびー。
 醒めることなき酔いは二人の体を蝕み、二人の思考能力も、正常な判断能力も、身体能力も、全てを捻じ曲げてしまって居る。
 定まらぬ足取りは、千鳥のごとく足取りが交差するかのよう。
 揺れる体を支え合い。
「宵、危ない川だ――足を取られぬよう気をつけろ」
 足首ほどをさらさら流れる浅い水流を濁流だと思い込む者。
「……僕は暑い川より冷えた川の方が良かったのですよね」
 張り付く衣服、じわじわと滲む汗。
 巻き起こる湯気を、ひどくうっとおしく感じる者。
「そうですよ……お酒は熱燗よりロックのほうが好きですし。ああ、この温泉を冷やせばロックになりませんかね???」
 ほろほろと宵が零す言葉は、徐々に混乱を極めつつある。
「そうです! 温泉の元を倒してしまいましょう。そうすれば湯だって水に早変わりするに違いありません」
 酔っ払いは得てして、結論の飛躍と筋道の立たぬ結論に至りがちである。
 納得しきった様子で杖を構えた宵。
 そんな彼の体を支えていたザッフィーロもまた、頭が酔い酔いなもので。
「この湯を冷やしてロックに……? 氷河と言う事だろうか……?」
 寒い川より、熱い川のほうが未だ渡渉はしやすいだろう。
 しかし宵の言う事である。
 きっと深い意味があるのであろうとザッフィーロは、あっちこっちに飛び回る思考の尻尾を捕まえようと難しい顔。
 ――そもそも、何故、川に熱い湯が流れて居るのだろうか……?
 暖かいといえば、冬はいつ来ていつ終えるのだろうか。
 人は何故生きるのか。
 ヤドリガミの寿命とは?
 あっちこっちに飛び回る思考の尻尾は、中々囚える事は出来ず。
 もはや明日の朝ごはんにまで思考が至ろうとしたところで、空を駆ける隕石が見えた。
 ――アレは、宵の。
 与えられた視覚情報に一気に定まる行動。
 その先に揺れる提灯を見るとどうにも体の奥からどきどきと胸が震え、踊りたいという気持ちが湧き上がるが――。
 大切な宵が戦っているというのに、踊っている場合では無いだろう。
 獲物たるメイスを握りしめると、放つは天駆ける炎の狼。
 巨大な竜へと向かって、隕石と炎の狼が殺到する。
「……さあ、今こそ湯を水と成しましょう!」
「ああ。…………ああ? ああ」
 宵の言葉に一度頷いて、少し悩んで、まあ良いかと頷いたザッフィーロ。
 最終目的としては竜を倒せば問題が無い筈だ、めいびー。
 かぶりを振った宵が、敵を見上げると――。
 体の奥底から、湧き上がる『踊り』へのパッション。
 無性に跳ねたくなる体、指先を伸ばしたい、足先を舞わせたい。
 水への渇望よりも尚強く湧き上がった感情に、宵は――。
「……宵!」
「ざっふぃ、……ろっ!」
 響くザッフィーロの声、宵は彼の名を口に――。
 同時に抱きとめられる体、ばしゃんと水しぶきを上げて二人は温泉へと倒れ込んだ。
 どの様な深い川の中であろうとも。
 どの様な敵の攻撃からも。
 ――望まない踊りからも。
 宵だけは、――宵だけは。
「――宵、お前だけは護ってみせよう」
「ザッフィー……ロ……」
 さらり、さらり、流れる水流の中。
 二人はぎゅうと抱き合って。
 ザッフィーロは瞳を眇めて、小さく小さく囁いた。
「――しかし川はやはり、恐ろしいな……」
 そう、そう。
 ザッフィーロが宵を温泉へと引き倒したのは、ただたんに千鳥足で足がもつれて転んだだけです。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

キラス・レスケール
うむうむうむ、中々に良い香りがするものだ(気持ちよくぴかぴか)
そうだなおしぇろ、酒と竜といえば古来より生贄的な女性が居たり居なかったりするものだ
俺しゃまは神だからすっごい長生きなのだ、そういった事例もあったような気がする(ふわふわした記憶と思考回路)
怪物に挑む勇気ある者はきっと求める報酬を得られるだろう
さあ、お前の勇気を示すのだ
【優しさ】を持っておしぇろの辿り着いた答えを受け入れ
【威厳】ある態度でおしぇろの背中を押そう
物理的にも背中をぽんぽん撫でておこう

『†光の鉾†』でいい感じになんか戦おう
提灯より俺様達の方が輝いている事を教えてやろう

※オセロの見せ場を優先させようと気持ち離れる後方俺様神様面


オセロ・コールブランド
【神ちゅん】

ヴォエ…ヴォエ…って何かすげーの居んスけどー!
…。もう完全に理解したっス。八割は!
なァ神ニーサン
これあのおデッケー様倒したらこう、人質的なお姫様的なレディが居るやつしょオォオ…?
(ゆらり)
や゛るじがねェ゛…げっぷ!…ニーサンいける?俺は行くスよ、まだ見ぬおレディのために!

ヘヘッ…こんなときに仕事しにいく自分嫌いじゃねースよ…
飲んでんならこれでどうじゃーい!

ジャンプ!空中戦!そいでもって手袋!セイ!
「うまいの飲むなァー!」
「こっち見ないでェエッチー!」(※せっかくの温泉なので)
とか酔ってなきゃ簡単なこと強いりまくるッす!
危なくなったら神ニーサンの槍が来るって寸法スよ…!てゃぶんッ!!



 きっとアレは間欠泉というのであろう。
 噴水した湯は、世界に湯を撒き散らしてもうもうと白い湯気を立て。
 甘い酒に似た香りが、その場に満たされる。
 その中心には、巨大な竜。
 空が地に落ちた世界で、オセロはその瞳をどんぐりのように大きく見開いて。
「ヴォエェ……、って、なんか、えっ、何? なんかすげーーーの来てないスか!?!??! いや……いやいやいや、でも俺、俺……もう、もう完全に理解したっス。八割強は!!!!」
「うむ?」
 ブリッジをキメたまま喚くオセロの上に(そうする事で男があがるので是非にと頼まれた為)腰掛けるキラスは腕を組んだまま。
「これ、あの、ほら、あの、おデッケー様倒したらこう、人質的なお姫様的なレディが居るやつしょオォオ……??」
 フンっと一気に立ち上がったオセロの腹筋に跳ね上げられて、キラスは座ったままの体勢で跳躍させられて適切なたまたま積み上げられていたコンテナの上へと丁度置かれて。
 良い感じに座ったキラスは足を組み直して、ふむ、と頷いた。
「そうだな、おしぇぇろ……、酒と竜といえば古来より、生贄的な女性が居たり居なかったりするものだ」
「神ニーサン!!」
「俺しゃまは神だからな。すっごい長生きなのだ、そういった事例もあったような気がするし、無かったような気もするが、概ねあったと思うぞ」
「ンニャーーーッ!! や゛るじがねェ゛ェエ……ォげェっぷ!」
 汚い音を零したオセロは、キラスの言葉に更にヒートアップ。
 ぴかぴかと後光を瞬かせたキラスはただただ優しい笑みを深める。
「――怪物に挑む勇気ある者はきっと求める報酬を得られるだろう……さあ、お前の勇気を示すのだ!」
 暖かで威厳ある神の声に背を押され、オセロはキリリと竜を睨めつけた。
 ああ、きっとあの辺りに、あの辺りに――。
 今もオセロに助けを求めて、その線の細い体を震わせて怯えるおレディが居るに、違いない。
 違いないのだ!
「うぉ、おおおおおおお、俺は、俺は行くスよ!!!!!!! まだ見ぬ、竜に囚われ怯えているおレディーーーーーの為にィ!!!!」
 吠えるオセロは、獣めいた膂力で地を蹴り跳ねると一気に地を蹴って、壁を踏んで。
 壁と壁を蹴って跳ねて、見る間に建物の屋上まで上り詰めたオセロはその唇に笑みを深めた。
「……ヘヘッ」
 肉薄して対峙するは、巨大な竜の神。
 こういう時に、真っ先に前に出てゆく自分がキライでは無い。
 その結果、誰かが助けられるのならば、――もっと、もっと!
 屋上から飛び降りたオセロは、竜神の背へと飛び乗り駆け上る。
「セーーーイッ!」
 そうして左に嵌めた手袋の先を歯で噛んで引き抜くと、その頬へと手袋を叩きつけて。
「うまいものを、飲むなッッ!!」
 否、そのルールは簡単に守れる、とは言い難い!
 酒飲みに呑まないように強いる事は、平時でも守る事が難しいものだ。
 そうでしょう!?
 尚もガブガブ湯――酒を飲む竜は、ちくちくと体を蝕む痛みに体を捩って。
 る、ぉぉぉぅぁぉ!
 鈍く吠えると、櫻の吹雪を呼ぶ。
「く、……ぅうっ!」
 舞う桜吹雪に飲み込まれたオセロの勇姿を、後方彼氏面で腕を組んだキラスは見守る。
 ――彼が、これしきで倒れる訳が無いことを識っている。
 だからこそ、だからこそ。
 その掌の中に光を纏った侭、キラスは友を信じて見守るのだ。
 ――彼の、彼の見せ場を、未だ見ぬおレディへと新鮮にお届けするが為に!
「っチョエーーーーーイ!」
 待機を圧縮して空を蹴って、オセロは纏わり付く花弁を引っ剥がして。
 もう一枚取り出した手袋をペシーン! と叩きつけるともう一回吠えた。
「ならば――ァァァアッ! こっち見ないでェ、竜神さんのエッチィーッッッ!!!!!」
 嗚呼、そのルールは完全に有効とは言い難いがすこうしばかり有効だろう。
 チョロチョロ走り回る敵を見ない、という事は決して簡単に守れるルールでは無い。
 どちらかと言うと守ることが難しいルールと言えよう。
 しかし、しかしだ。
 オセロのエッチな姿なんて、竜神には全く興味が無くどちらかと言えばできれば目を逸らしていたいモノなのだからッッ!
 オセロはエッチな姿になりながら、竜の前へと駆け込む!
 その彼の勇姿をしかと見守ったキラスは、こっくりと頷く。
 今こそが、友の危機であると。
「……おしぇろ!!!!!!」
「神、ニーサン!!!!!!」
 一喝と共にキラスの放った一撃は、謎の閃光を生み。
 オセロの姿が円盤となった暁には消える光に、飲みこまれ――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

深山・鴇
【八重】アド◎
日本昔話だな…(龍を眺めて)
温泉じゃないか、あっはっは、温泉だな
機嫌良く脱ごうとして公序良俗、と思いとどまり
(服のままで入ればいいんじゃないかと閃いた)
なぁ、朱酉君、服のまま入るのはどう思…あっ龍が増えた
あっはっは!龍が!増えた!いいぞヤン坊君、ヤマタノオロチ略してヤン坊はほんとどうかして(黙)
雲珠君、龍が増え(話を変えようとして話しかけ)
猫、猫じゃないか(温泉の誘惑VS猫の誘惑、猫の勝利)
猫、猫はいいよな(笛の返事に頷き)
猫はいい、龍もいいが猫もいいんだ、なぁ、猫
(猫を撫でてるんだか雲珠を撫でているんだか曖昧)
半裸もアウトじゃ…それは揃うと天気予報じゃないか?(ブハッとふいた)


朱酉・逢真
【八重】アド◎ 直の接触不可
(こども姿)
ひ、ひ。酔っぱだが完全にゃア酔いきれん。俺ぁ疫毒のカタマリさ。崩れて広がっちまったら大迷惑だろぉ。温泉ねェ。入れんこともねェが今はうっかりが怖い。ヤン坊お前、酒強ぇだろう。合体して姿もどして龍どうし、飲み比べしておいで。酒ならホラ・俺がもってる。尽きぬひょうたんだ。攻撃じゃねえ戦闘行為でもねえ。ヒトにゃ毒酒だが龍なら、ああ。そこまで効くまいよ。浴びるほどに飲まなきゃなぁ。ひ、ひ、ひ。
がんばれ雲珠兄ィ、笛吹きじょうず。(その背に猫(*眷属)をつみあげ)
なんでぇ深山兄ィ、全裸がだめなら半裸で入りゃいいだろ。マー坊も呼べってぇ? あとでなぁ。


雨野・雲珠
【八重】いかようにでも!

りゅ…龍だー…!でっかい…かっこいい…!!
(いかにも龍っぽい龍に大興奮)
(※酔ってる)

ヤン坊……やっ……やまたのおろちだー……!?
でっかい…かっこいい…!!
(※酔ってます)

神話の世界みたいですねえ…
いますよね、ほぼ裸で踊る女神様
歌や踊りを捧げたくなる気持ちもわかります
ここで脱ぐのは駄目ですけど

せめて花吹雪でにぎやかしを……あ!とつぜんすごく踊りたい!
(背中に猫を乗せたままぐぐぐ、と起き上がろうとする)
(べしゃ、と潰れる)
立てないので笛を吹きます。いい気持ちなので

(黒くてつやつやの牛の角笛を取り出す)

ぽぽぽぽぽー ぽぴーー
ぺぺぽー

(以降、話しかけられても笛で返事)

ぽぺー



「りゅっ、りゅう、……龍だー……っ!!」
 表情筋の動きの悪さに反して、その瞳は驚く程に物を言う。
 でっかい……かっこいい……!
 街を破壊しているけれど、酔っ払った脳にはそれすら格好良く見えてしまう。
 雲珠はタマゴを温めるポーズから思わず体を擡げると、その眼差しに星をぴかぴかと宿して瞬かせて。
「ああー……日本の昔話だな……」
 なら次に来るのは太郎かいなんて、鴇が応じた瞬間。
 龍の一撃に地が割れて、間欠泉が噴き出した。
 思わず鴇は雲珠と顔を見合わせて。
「うわーーーーー、かっこいい……!? 地面が割れた……!?」
「えっ? 何? あはは、あははははっ。えっ? 何? アレ? えっ! 温泉じゃないか! あっはっはっはっは、温泉が湧くなんてねえ!」
 じょぼじょぼと地に満ちだした暖かな湯。
 甘い香りが立ち上る、まるで酒のような湯に鴇は上機嫌。
「さて……」
 ご気分良く、上着を脱ごうとして――。
 ご機嫌な頭でもなんとか思い出せる事があった。
 そう、公序良俗だ。
 人前で服を脱ぐ事は、余り良い事とはされていない世界の方がよっぽど多いもので。
 鴇が何をしようとしていたのか察したのであろう、ひひ、と小さく引きつるように笑った逢真は瞳を細めて。
 座り込んだコンテナの上で、細っこい足をぱたぱたと揺らした。
「――んー? なんでぇ深山兄ィ、脱がないのかい?」
「えっ、だめですよ。神話みたいにほぼ裸で踊りたくなる気持ちもわかりますけれど、脱ぐのはダメですよ」
 雲珠がぴよっと顔を上げると、鴇は手をふりふり。
「あっはっは、脱ぎたいのは山々だが……人の目があるからね」
「深山の兄さんもそういうの気にすんだねェ、ひ、ひ。全裸がだめなら、半裸で入りゃいいだろぉ?」
 からからと笑う逢真の言葉に、鴇はぴーんと閃いた顔だ。
「成程ね!!!!!!!!!!!!!」
 まあまあ大きな声で人差し指を立てた。
 めちゃ良い事を閃いた顔をしているけれど、そんなに良い事は閃いていないですよと言える者は此処には最早誰も居ない。
「……ひ、ひひ、しかしなぁ。俺ぁ、兄ィ達も知っている通りで崩れて広がっちまったら大迷惑にならぁな」
 疫毒の塊である逢真は、徐々に満ちつつある温水に足を浸す事も憚られる。
 酔いに満たされた脳でもそれくらいは理解出来る。
 なんたって浸かるだけではない、きっとコレを呑もうという者も少なくはないのだろうから、と。
 うっかり零れて仕舞えば、きっと、きっと。碌な事にゃァなりはしない。
 だからこそ逢真はコンテナの上で、掌の上にふうと息を零して。
「よう、ヤン坊お前、酒強ぇだろう? ――龍どうし、飲み比べしておいで」
 喚び出したのは、凶神の寵児たる大蛇共だ。
 指先でその鱗を撫でてやると、その姿は重なり、1つと成って――。
「あっ、あはははは! えっ、何? 龍? 今増やす? もう居るのに? あはははは! それにさ、ヤマタノオロチ略してヤン坊って呼び方どうなんだい?」
 その姿を指差して笑うのは、鴇である。
 完全にできあがってしまっている彼は、もうだいぶダメになっていた。
「へぇ、マー坊も呼べってぇ?」
「あはははははははははははははは、ゲェッホ、ゲホ、あ、あははははははははっっ! それは、それはまずっ」
 笑いすぎて死にそうになっている鴇の気配に、ぱたぱたと掛けてきた雲珠。
 その視線を鴇に……いや、ヤマタノオロチへと向けて。
「やっ、やん……、ヤン坊……やっ……やまたのおろちだー……っ!!!!?」
 表情筋の動きの悪さに反して、雲珠の瞳は驚く程に物を言う。
 でっかい……かっこいい……!
 まるで神話の世界の対決のよう。
 雲珠は直接戦うことは得意ではない、しかし、せめて賑やかしに応援くらいはと笛を取り出して――。
「!」
 どうしてだろうか。
 心が、体が、踊りを求めだす。
 パッションを、踊りを、――とめられない体だ。
 黒くてつやつやの牛の角笛を手に。
 力強く吹きながら、雲珠は華麗なステップで踊りだす。
 ぺぽー。
「あはっ、げほ、う、ぇ、ぐ、ふ、あは、あははははははっ」
 鴇が笑いすぎて瀕死の横。
 なあお。
 逢真の喚び出した眷属は、大蛇だけでは無かった。
「あは、けほ…………げほ、猫、猫じゃないか!」
 それは最早特効薬。
 温泉よりも、笑いよりも、猫は可愛いし愛おしい。
 鴇が抱き上げると、可愛いし愛おしい。
 かわいい~。
 ニアー。
「猫、猫はいいよなあ」
 ニアー。
 ペポー。
 猫にたかられている雲珠も、笛でお返事だ。
「猫はいい、龍もいいが猫もいいんだ、なぁ、猫?」
 ペポー。
 ニアー。
 もうめちゃくちゃに成りつつある鴇と雲珠を置いて、ヤマタノオロチは竜へと向かう。
 その口にはひょうたんを咥えて。
「――なぁ、それに満たされた酒はなぁ。ヒトにゃ毒酒だが龍なら、ああ。そこまで効くまいよ。浴びるほどに飲まなきゃなぁ。ひ、ひ、ひ」
 なあんて、けらけら笑いながら。
 逢真は一生懸命笛を吹いて踊り狂う雲珠へと猫を積み出した。
 ポポポピポー。
 ポー。
 ポペペポー。
「ほら、ほら、がんばれ雲珠兄ィ、笛吹きじょうず」
 彼が踊りを止められぬのならば、物理で止めてしまえ。
 逢真は眷属たる猫をつまんではつみ、つまんではつみ――。
 雲珠は笛でお返事、ポポポ・ポペー。
 そうして。
 猫を積み上げられつづけたた雲珠は、猫の重みで抑えきれぬパッションをステップに籠められなくなりその場にべっしゃりと潰れる。
 ……重い。
 でも、なんだかとっても幸せ。
 ぽぽぽと角には花が咲き乱れる。
 ポペペポー。
「アハハハ、猫、猫はかわいいねえ! アハハハ、猫、猫はいいものだよ。猫はねえ……」
 支離滅裂な言動は全ては猫につながるもの。
 鴇は雲珠に積み上げられた猫ごと、全てを撫でまくる。
 めちゃくちゃになってしまった二人を見やった逢真は、コンテナの上で足を揺らして。
 それは楽しそうにけらけらと笑った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

風見・ケイ
夏報さん(f15753)と

千一夜目が明けちゃったか……残念
ん、いつの間にか温泉が湧いてますね、暖かい……でもここでは――
――って夏報さん、ちょっと(引き止める)……もう、お酒(水)飲んでるんですからね
人目だってあるし……

月見酒なんて洒落ていて、正直なところ、私も温泉に惹かれつつあります
ん、またあの旅館泊まりたいね……夏報さん!?
大丈夫、痛っ!
はっ、そうだ私達、お仕事に来たんだ……たぶん
ほらあいつ、桜を撒き散らしてる
あれがターゲットですよ……めいびー

……ええと、酔っ払いにはお水、いや迎え酒でしたっけ
この壺のお酒(水)を増やして……あっ、壺に触れちゃいました
(竜の頭上に盥……ではなく巨大化した壺)


臥待・夏報
風見くん(f14457)と

うわぁい温泉だあ!(浴びる)
冷えた体に沁みわたる……さてはここが極楽か……(ふらふら)

……は、入りはしないってば(目を逸らす)
大体水着の準備もないし、流石にここで脱ぐわけにも、うーんお酒のいい匂い……
脱がないってば(露骨に目を逸らす)

綺麗な月夜に美味しいお酒(水)、ひと風呂浴びたくもなっちゃうぜ
ほら、この桜吹雪なんて、一緒に行った温泉旅行を思い出す……
ってあいたたた!
桜吹雪超痛くない!?
はっ、思い出の光景を利用して攻撃する系のユーベルコードか!?
親の顔より見たぞ……!(言いがかり)

仕事を思い出すことに成功したよ
ドラゴン退治には女装か酒だ、古事記にもそう書いてある……!



「ん……」
 湿っぽい匂いに瞳を細めると、立ち上る湯気が風に攫われて雲のように流れて全てを霞ませる。
 とぷとぷと水の満たされる音が、世界に密やかに響いていた。
 抱いた壺に預け丸まった上半身をぐうっと伸ばす。
「千一夜目が明けちゃったか……」
 明けない夜はないとは言うけれど、残念、なんて。
 ケイは足首程まで浸かった湯を軽く蹴って跳ねると、相違う赤と青を細めて――。
 あれ。
 そういえば。いつの間にか足元が湯に満たされている、暖かい。
 でも、これは――……。
「うわあぁあーーーーい、温泉だぁー!!」
 ワーイ。
 ぱっしゃぱっしゃと湯を跳ねて駆け回る夏報は、湯を掬う。
 掌の隙間から零れる湯すら、疲れを全て溶かしてくれるような気がする。
 あ~~、はーー。
「冷えた体に沁みわたる……、さーてはここが極楽かな……?」
 よーし、なんか服だって元々びっしゃびしゃに濡れてるし、お湯被っちゃお~。
 ザバー。
 ほこほこと湯気登る湯は、甘い匂い。酒の匂い。
 あたたか~~い!
 え~~~、これお酒じゃない! お酒だ! そんなことある!? すごーい!?
 勿論、そんな事は無いので実はただの温泉では在るのけれども。
 今の夏報には……否、『醒』を失ったこの世界では、此れは紛れもなく酒なのであろう。
 そのまま夏報は溜まった湯の中に、座り込もうとして。
「ちょっと、夏報さん……」
 夏報を追ったケイが彼女の服裾をぐっと引いた。そうしてゆるゆると左右にかぶりを振ると、嗜めるような視線。
「ダメですよ、お酒も飲んでるんですから。……それに、人目だって」
「わ、わかってるよ。は、入りはしないってば、ぬ、脱がないし」
 ケイの追求を避けるように。
 苦い愛想笑いを浮かべた夏報は、その視線を逸らして、盛大に泳がせて。
 やれやれと肩を竦めたケイが壺を抱き直すと、小さく息を零した。
 はらりはらりと零れ落ちる、薄紅色の花弁。
 ぽっかり浮かんだまあるい月に、噴き上がる水柱。
 月と桜がゆらりゆらりと、水面で歪み揺れている。
 大きな竜が空を仰いでいる。
 なんとも風流な光景だ。
 ――思い出すのは別の世界のあの旅館、あの温度。
 跳ねる湯雫。
 六角形の檜風呂に浮かんだ朧色。白い、白い、――月の色。
「……ほら、綺麗な月夜に美味しいお酒。ひと風呂浴びたくもなっちゃうぜ」
「ん。それは、そうかも。月見酒だね」
 夏報の言葉に頷くケイだって、本当は温泉に心を惹かれている。
 それでも。
 ほんの一欠片残った理性が、人前では脱いではいけないと教えてくれているのだ。
 はらり、はらり。
 あの日のように、桜の花弁が零れ落ちる。
 夏報は手を伸ばして――。
「あの旅行を思い出すね」
「うん、……ね、夏報さん。また、あの旅館に……」
 握りしめる花弁。
 夏報の言葉に頷いたケイが、花が綻ぶように笑みを――。
「って、あいたたたた!? え!? 何!? 痛ッ!?」
「えっ!? 何!? えっ、痛ッッ!?!?」
 同時にわめき出す二人。
 そう。
 降り落ちる桜の花弁の触れた部分が、めちゃくちゃ痛い。
「はっ!?!? 分かっちゃったぞ。どうせ思い出の光景を利用して攻撃する系のユーベルコードだろ!? どうせこの後トラウマを抉る系の思い出をゲロらされるんだろ!? 親の顔より見たから知ってるぞ!? どうせなんかいい事を言って、前を見据えたり立ち直ったりするやつだろ!!? 今回はどうやって前をみたり立ち直らされたりするんだ!?」
「えっ!? という事は、私達お仕事に……!?」
 ちょっと夏報さん、あんまりメタな事いうもんじゃありませんよ。
 まあまあ冷静に見えた二人は、実は酔い酔いなので騒ぎだすと一瞬でわあわあになるもので。『静』が一瞬で失われた二人はわあわあする。
 夏報は推測する、考える。
 きっと過去と違う所を探せばなんかこう良い感じに……いや、なんだっけ。思い出せないけど、明らかに変な事は発見した。
「あー! よく見たらドラゴンが居るじゃないか、たしかドラゴンはあんな所に鎮座していない筈だぞ!?」
「はっ、アレがターゲットですよ……めいびー!」
 超痛い花弁を避けるように壺を抱いてステップを踏んだケイは、瞳を狭める。
 よくよく考えてもみれば、頭に提灯を付けた竜がガブガブ酒を飲んでいる光景は異様なのだ。
 えっ、多分異様ですよね? もしかして普通の光景だったり……、いや、いや、変ですよね?
 多分。めいびー、……めいびー。
「ドラゴン退治には女装か酒だって、古事記にもそう書いてある……!」
 夏報が自信ありげにぴしっと竜を指差すと、ケイも真剣な表情で応じて。
「なるほど、女装はどちらがしましょうか!?」
「えっ!?」
 あまりに真剣なケイの表情。
 夏報の困惑の声が上がっているが、ケイは考える、思考する。
 そう、酔っ払いには向かい酒。
 ならば、この壺の中身の水――否、酒を増やして――!
「……ええと、では夏報さんは女装をお願いします。私は――!」
「えっ!?!?」
 ケイが右手で触れたモノを巨大化する力を顕現すれば、抱きしめていた壺がみるみる内に巨大化する。
 触れているものは壺。
 水は中身。
 巨大化したのは壺。
「あれ?」
 そりゃ右手に触れた物が巨大化するのならば、そうなるだろう。
 しかし今のケイには、不思議現象としか思えぬもので。
 なんで壺が? 巨大化して!?
「え、えーーーいっ!!」
 困惑しつつもとりあえずケイは、その壺を思いっきり竜に向かって投げつける!
「僕が、女装を……?」
 その横で瞬きを重ねる夏報は、小さな小さな声で呟くのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

榎本・英
【春嵐】


ヒヒヒ。なゆ、なゆ、宴だ。
君は宴に参加した事はあるかい?
花を見て一杯飲むのだよ。
静かに話をするのもいいね。

私はのんびりと花を見ながら、酒を飲むのが好きだよ。
フヒヒ、ふわもこがいるね。いつの間に。
君たちも酒を飲んだのかい?

酔いどれの一匹が温泉に飛び込んだようだ。
嗚呼。とても幸せそうだ。
君たちが幸せそうで何よりだよ。
そんなに美味しいのかい?

しかし、針はしまって呉れ
ヒヒ、針を振り回しては危ないよ。
ふわもこが針を振り回す姿すらも面白いね。
なぜだが笑いがこみ上げてくるよ。
嗚呼。あかの花もかわいいね。
ふわふわが増したようだよ。

嗚呼。ふわもこの針が竜に。
彼の酔も冷めてしまったかな?


蘭・七結
【春嵐】

うたげ、うたげ
お酒が入った杯を掲げて
かちりとならし合うあのうたげ?
常夜のうたげならば、ほんのすこしだけ

お酒とともに眺むお花は
常よりもずうとステキに感じるのでしょうね
お酒はまだまだのめないけれど
先ほどからずうっと気分がよいの
すぐるさんも、とてもにこやかね

ふふふ、ふわもこさんたち
ふらふらと歩む姿でさえほほえましい
とてもとてもたのしそうね
お気に入りの紫の子を抱いて眺めましょう
今日もあなたはふわふわふかふかね

ふらふらとしながら針を掲げる様子は
まるで不思議な踊りを踊っているかのよう
あいらしさが胸の奥を満たして
気付けばあかい花たちを添えていたわ

鋭い針が突き刺さったのならば
この酔いもさめるのかしらね



 宴、宴だ。
 甘い香りに包まれて、暖かな湯に揺蕩うように。
 ゆらゆら揺れる、ふわふわ揺れる。
 気分はとてもよい。
 ねえ、なゆ。
 横に腰掛ける、彼女の名を英は呼ぶ。
「ヒヒヒ、なゆ、なゆ、宴だ、乾杯しよう。――君は宴に参加した事はあるかい?」
 竜が寄り添う湯の泉。
 間欠泉のように時折吹き出す湯が、湯気を纏って雲のように流れてゆく。
 まあるい月を朧気に覆った雲は、いっそ幻想的で。
「まあ、お酒の入った杯を掲げる、あのうたげ?」
 七結はその様子に見惚れるように、ほうと熱っぽい声を零した。
 薄紅色の花弁がはらりはらりと降っている。
 そらより零れ落ちる花弁は、とてもとても、熱くて。
 嗚呼、今にも蕩けてしまいそう。
 七結はそのまま、英の肩に小さく頭を預けた。
「そう、そうだよ。――花を見て一杯飲むのだよ、静かに話をするのもいいね」
 肩にかかる彼女の頭の重み。
 英がこくりと頷くと、寄り添う七結はその長い睫毛を揺らして応じてくれる。
 それがまた可笑しい気がして、何が可笑しいのかも最早判らぬが、引きつるように英は笑った。
「そう。……うたげ、うたげ。そうね、常夜のうたげならば、ほんのすこしだけ」
「嗚呼。なゆ、私はね。のんびりと花を見ながら、酒を飲むのが好きなんだ」
「まあ、すぐるさん。お酒とともに眺むお花は、ずうとステキに感じるのでしょうね」
「そうだよ、嗚呼。なゆ、なゆと宴がしたいな」
 そう言えば、いつの間に夜になっていたのだろう。
 英には解らない。
 それでも湯面に浮かぶ月は、心地よさげにゆらゆら揺れるものだから。
 そう言えば、いつの間に周りは湯で満たされていたのだろう。
 解らない、わからないな、それでも気持ちがいい事だけはよく分かる。
「ふふふ、すぐるさん。わたしはお酒はまだまだのめないけれど。ふしぎね、今日はずうっと気分がよいの」
「ヒヒヒ、そうだね。楽しいな~、へへへ」
「今日はすぐるさん、とてもにこやかね」
「フ、ヒ、ヒヒ。そうだね、そうさ」
 とろけそうな笑顔の七結に、英もとろけた笑顔で応じて。
 ふと足元を見ると、毛糸玉によく似た球体が足元に丸臥していた。
 ハンプティ・ダンプティ、ころがった。
 嗚呼。
 知らない内にでてきてしまっていたのか。
「フヒヒ、ふわもこたち。……君たちも、酒を飲んだのかい?」
 英は愉快な仲間たちに声をかけると、ふわもこ達はころんとぶつかりあって。
 毛糸玉が一回り大きくなると、湯溜まりにぼちゃんと飛び込む。
 ころり、ころりと転がる毛糸玉達は色とりどり。
 ハンプティ・ダンプティ、おっこちた。
 なあんて。
 いいや、これはたまごではない。
 これは、ふわもこである。
「ふふふ、ふわもこさんたちもふらふら歩いて、とてもとてもたのしそう」
 いっとうお気に入り、紫のふわもこを七結は抱いて、撫でて。
 ふわふわと笑うと、撫でる毛玉はもふもふふかふか。
 きっとふわもこたちも、心地がよいのね。
「嗚呼。とても幸せそうだ。君たちが幸せそうで何よりだよ。ねえ、お酒はそんなに美味しいかい?」
 毛糸玉は英の問いに答える代わりに、針に糸を巻きつけて。
 ぶんぶんと糸を振り回す様は、まるで踊っているようにも見える。
 楽しいのだろう、心地がよいのだろう。
 その愛らしさに七結は瞳を狭めて、またふふふと笑った。
「ヒヒ、危ない、危ないねえ。でも、面白いねえ」
「ええ、あいらしいわ、あいらしいわね」
 はらりはらりと零れる桜の花弁。
 蕩けそうな程熱い薄紅を飲み込むように、あかいあかい牡丹一華が吹きすさぶ。
「まあ、……ふふふ」
「嗚呼。あかの花もかわいいね」
 七結が無意識にふわもこたちのダンスへと添えてしまった、あかいあかい花。
 ふわもこたちは、歓迎するかのように針のダンスを踊っている。
 ふわふわの、ふかふかの、ひらひらの。
 大きな大きな竜へと向かって駆けてゆく毛糸玉たちが、また愛らしく見えて。
 七結も英も、顔を見合わせて笑った。
 柔らかな浮遊感に満たされる感覚、燃えるような熱い痛み。
 ――きっとあの鋭い鋭い針が、竜に刺さる頃には。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

雨絡・環
アルフィードさん(f00525)と

あらあらまあまあ
アルフィードさんたら
先ほどとは一転
童子のようなお姿ですこと

うふふ、本当ですわ
なんて大きな竜でしょう
しかもなんてご機嫌なお姿かしら
竜、お好きですの?
そうねえ格好良いですわねえ

立ち込める湯気と酒気に
ふわりふわりと微笑んで

ええそうねえ
独り占めはいけませんわよう
お酒も湯もみんなで楽しみましょう?
般若湯を楽しまれている間に【肉入】
まあ、お食べになるの?
あまり美味しそうには見えませんけれど
残してはダメですわよ?

お仕置き、よくできましたわね~?
えらい、えらい
ふわりふわりにこにこと
その頭に手を伸ばして撫でようと


アルフィード・クローフィ
環ちゃん(f28317)と

環ちゃん!環ちゃん!!
見てみて!!大きなドラゴンちゃんだよ!!大きいねぇ
子供の様にはしゃぐ
ん?好きだよ?カッコ良いじゃない!!

あぁ!皆のお酒全部飲んじゃうよ?
悪い子にはお仕置きしようね、環ちゃん!

【咎力封じ】で竜の身体を封じて

悪い事し過ぎたら、お料理して食べちゃぞ!!
【最凶クッキングナイフ】でチクンチクンと刺してお仕置き
はーい!全部美味しく食べようね!

やったー!環ちゃんに褒められたよ!
頭に撫でられる感触に
えへへとふにゃりと笑って喜ぶ



 空を見上げれば、まあるい月が浮いていた。
 いつの間にか、夜になっていたらしい。
「わあーーっ、環ちゃん! 環ちゃん!! 見てみて!! 大きなドラゴンちゃんだよ!! 大きいねぇーー!!」
 その上何故だか噴き出した水柱はもうもうと湯気を吐いて、世界を白く朧気に覆って。
 その横でとぐろを巻いている大きな竜を見つけたアルフィードは、ぴしっと指差しぴっかぴかの笑顔ではしゃぐよう。
「あらあらまあまあ、うふふ、本当ですわ。なんて大きな竜でございましょうか」
 先程とは印象が一転したアルフィードの振る舞いは、なんとも童子のようにも感じられて。彼の横を歩む環は上品に袖で口元を覆い隠して、きっと笑っているのだろう。
 それに水柱はどうやら、酒の匂いを纏っている気がして。
 大きな口を開けた竜は、水流ごと噛み砕くようにガブガブと湯を飲んでいる。
 頭の上で揺れる提灯は、如何にも楽しげにゆらゆら瞬いて。
「あのドラゴンちゃん、なんだかとっても楽しそうだねー!」
「ええ、なんともご機嫌なお姿ですね」
「俺も楽しいよー!!!!!!!」
 アルフィードは片手を上げると、わあーーっと宣言した。
 わあーーっ。
 環は唇に笑みを宿すと、瞳を狭めて首を傾いで。
「まあまあ、うふふ。――竜がお好きですのね」
「ん! 好きだよ~~! カッコ良いじゃない!!!!」
「そうねえ、格好良いですわねえ」 
 ぽわぽわふわふわする頭。
 どれほどゆるーい会話でも、今はとても面白い会話に思えてしまう。
 しかし、しかし。
 アルフィードは気づいてしまった。
 この甘い匂いがお酒の匂いだとしたら――。
 いいや、ただの温泉水ではあるのだが。
 『醒』が失われたこの世界では、温泉すら酒に等しいもので。
「わあーーー、でもいくらカッコ良いっていったって、皆のお酒をあんなに飲んだら無くなっちゃうよ!?」
 はしゃいでいた姿とは一転して、ぷりぷりと頬を膨らせるアルフィード。
 環もこっくりと頷いて、そうねえ、なんて。
「あらまあ、独り占めはいけませんわよう」
「環ちゃん! 悪い子にはお仕置きしよう!!」
 言うが早いか、クッキングナイフを取り出したアルフィードは低い体勢で構えて。
「そうねえ、お酒も湯も、みんなで楽しまなければいけませんわね?」
「悪い子は~、お料理して食べちゃうぞ!!」
 顎先に指を当てた環が、ぱちぱちと瞳を瞬かせた。
 あの大きな竜を食べるなんて、お腹が相当一杯になってしまいそうですけれども――。
「まあ、あまり美味しそうには見えませんけれど……、お食べになられるのならば、残してはダメですわよ?」
 ご飯を残す事は、あまり良くない事。
 環が確認するようにアルフィードに伝えれば、勿論とアルフィードはぴょーんと跳ねて。
「はーい! 全部美味しく食べまーーーーーーーす!」
「うふふ、えらい、えらい」
 金糸の髪を梳くように、さら、さら。
 ちゃあんと約束ができた彼を、環は優しく優しく撫でてやる。
「わぁーー、やったーー!! 褒められたからには、もーっと頑張っちゃうぞ!」
 環に褒められたものだから、アルフィードは大喜び。
 ふにゃっと柔らかく柔らかく笑って。
 手にした刃をぎゅっと握りしめた。
「さあ、いこうか環ちゃん!」
「ええ、お仕置きですわね」
 環が見えぬほど細い糸をきゅっと引き絞ると、アルフィードはナイフを手に。
 竜へと一気に飛びかかって――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リカルド・アヴリール
ライナス(f10398)と
アドリブ歓迎

らいじょーぶだ
俺、寝ない……寝ない、から……(ぐしぐし)
ライナスの、傍にいるって……約束した、から
……撫でられたー?(嬉しそうにへにゃりと笑って)

さっきから何だ、お前
俺の(主人の)ライナスに、何をするんだ……!
恥ずかしさや自信のなさから
素面の時は口に出来ない言葉も、すらすらと

眠気に堪えながら、UC:虐
少しでも傷を付けたら
血の臭いを蝙蝠達が辿ってくれると信じて

ライナス、ライナス
俺、頑張った!ちゃんと、寝なかったぞ?
褒めてくれるか?褒めてくれたら、嬉しい(にへへー)
ちゃんと、覚えているから……
ライナスも、覚えていてくれるか?(じっと見つめながら)


ライナス・ブレイスフォード
リカルドf15138と

リカルド、あんた起きてんな?と何度も確認しふらつきながら敵の元へ向かうも、リカルドの声に安堵の吐息を漏らせばその髪をくしゃと撫でんと手を伸ばしてみる
…あんたさ、何で素面ん時それ出さねえわけ?

敵の間合いではリカルドを『かば』い【影なる蝙蝠】を敵へ
暑さと酔いで回る視界に不安になっけど…蝙蝠達は優秀だからな。追跡して喰らってくれんじゃねえのとそう見守る…も
敵の攻撃と共に聞こえたリカルドの声と反撃攻撃を見れば思わず笑みを
…ばぁか。眠らねえのは当たり前なんだっつの
でもま、あんたなら約束護ってくれるって信じてたけどよ
…あ、依頼から帰っても約束有効だからな?
…素面になっても覚えとけよ?



「あんた、起きてんな?」
「らいじょぶ、らいじょーぶう。寝ない、寝てない……、寝ない、から」
 ライナスの確認の声に、リカルドはとろとろに蕩けた声で応じる。
 瞳を擦ってあくびを口の中で噛み殺すと、熱い雫が眦に滲む感覚。
 それでもリカルドは寝る訳にはいかない。
 眠ってはいけない理由が、あるのだから。
「ライナスの、傍にいるって……約束した、から」
「……そっか」
 リカルドのとろけた声に、ライナスは肩を竦めて吐息を零す。
 それから彼の頭をぐしぐしと撫でると、きっと苦笑を浮かべたのだろう。
「……あんたさ、何で素面ん時それ出さねえわけ?」
「んー……? ……ふ、は。らいなす、今……撫でた、撫でたなー?」
 何の話をされているか理解はできていない。
 でも、今のリカルドには撫でられた事だけが何よりもよく分かる。
 へにゃっと表情をほころばせて笑ったリカルドは、くすぐったそうに体をきゅっと竦め。
 瞳を狭めたライナスは、甘える彼を更に甘やかすように撫でて、笑った。
 ――昏い空には、白くて丸い月がぽっかりと浮いていた。
 時折噴き上がる湯が、湯気をたなびかせている。
 その横で大口を開いた竜は湯を喰らい、浮かれた様子ではららと花弁を零して。
 は、とライナスは肩を跳ねる。
「……ッ! リカルド!」
「!?」
 そうして殆ど本能的にライナスは、笑うリカルドを抱き覆った。
「……ぐ、」
 こぼれ落ちた薄紅色の花弁は、焼けるほどの熱を発してライナスを蝕む。
 痛み、熱。
 酔った頭でも相殺しきれぬ痛みにライナスが竜を睨めつけると、影より何羽ものコウモリが糸引くように姿を現し――。
「……お前、――俺のライナスに何をするんだ!」
 それ以上に低い、低い、怒りの声を漏らしたのはリカルドであった。
 『主人』という言葉がすっかりと抜け落ちたまま、ライナスの腕の中で竜へ噛み付くように彼は吠える。
 そう、普段ならばこんな事は絶対に言えはしない。
 恥ずかしさもそうだが、何よりも自信がありやしない。
 しかし、しかし。
 今日は別だ。
 酔いは良くも悪くも、人の気を大きくする。
 酔いは良くも悪くも、自分の判断能力を鈍らせる。
 ――大切な、大切な、俺のライナスを傷つけるなんて。
「壊れろッッ!!」
 ライナスの影より飛び出したコウモリと共に、地を蹴ったリカルドは巨大な斧を振り構えて。
 サイボーグの膂力で得物を振り抜けば、内蔵された大砲より爆ぜる弾。
「――ライナス、ライナス! 俺、頑張るからな! ちゃんと、寝ないぞ!」
 リカルドは竜へと更に踏み込みながら、斧を返す手でもう一発叩き込みながら言葉を紡ぐ。
「それで……俺が寝なかったら、褒めてくれよ? ……俺、褒めてくれたら、嬉しいんだ!」
 そうして一度振り返ってライナスを見やると、くしゃりととろけるように笑って。
「……ばぁか。眠らねえのは当たり前なんだっつの」
 そんなリカルドにまた肩を竦めたライナスも、瞳を眇めて笑った。
 彼より伸びて蠢く影はコウモリの数を増し、リカルドを守るように、覆うように。
「――でもま、あんたなら約束護ってくれるって信じてるよ。……ああ、そうだ。帰ってからも、約束は有効だからな?」
 それからぎゅっと帽子の鍔を引いたライナスは翠の視線で彼を真っ直ぐに見据え、その視線をしかと受け止めたリカルドは息を飲む。
「ん。ちゃんと、覚えているから……。ライナスも、覚えていてくれるか?」
 得物の柄をぎゅうっと握る手に力が籠もるよう。
 言葉を零すリカルドの黒耀色の視線が、ライナスの翠と交わされる。
 ああ。頭の奥が、心の奥がぽうっと暖かくなっているような気がする。
「…………あんたなぁ…………」
 そんな顔をされてしまえば――、次に息を呑むのはライナスの番だ。
「ああ、勿論。――本当、素面になっても覚えとけよ?」
 やれやれとかぶりを降って、帽子の鍔に手を当てたまま。
 肺の中に溜まった熱を吐き出すように、ライナスは瞳を閉じた。
 ――さあて、と。
 さっさとあいつを倒しちまわねえと、な。なんて。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ハイドラ・モリアーティ
【BAD】
おっと悪いね、ここあんたの頭の上か
今ちょっとデート中でさ
巻き込まれて死体に蹴られないようご注意

エコー、俺たちは晴れてお付き合いする訳だが
何事も最初が肝心だ
二人のルールを決めよう
浮気しちゃダメとかそういう――うわ顔怖っ例え話だって
俺からは……「幸せでいて」かな
今んとこはこれだけ

動いてた方が頭回るだろ?
酔いも回るけど
【AUTONOMY】
ここにでっかい肉だか龍だかもあるし
楽しもうぜ。俺たちのランデヴーはいつも殺し合いがお決まり

地獄行きねえ、そりゃ困る
堕ちるならお前と堕ちたいし
お前を幸せにしてやりたい
同じ地獄ならお前と踊りたいってだけだよ
子供にゃちょっと難しい例えか?
なあ、俺のかわい子ちゃん


エコー・クラストフ
【BAD】
(とにかくボンヤリしています)
うー、ふらふらする。ここどこだっけ……帰っていい?

「晴れてお付き合い」……そうだねぇ
お付き合いしたからには――あ? 浮気? 何言ってんの……?
オホン、まぁいいや。とにかくルールね。わかったわかった。何がいいかな〜……

すぐには思いつかないなぁ……よくわからないけど、確かに動きながらのほうが頭が回る……ような気がする
……なんかオブリビオンがうるさいな。ちょっと静かにしててくれ。ボクは真面目なことを考えてるんだ
【嗤え、口が裂けても】で斬りかかり、黙らせる

……わかった、決めたよハイドラ
「ボクを一人にしないこと」。これが約束だ
破ったら地獄行きだからね……ふふっ



 いつの間にか昏くなった空には、ぽっかりと吸い込まれそうなほど大きな白い月が浮かんでいる。
 ――それでも月は遠いものだけれど。
 高い場所、高い光景。揺れる提灯は、赤々と。
「おっと、頭の上にお邪魔して悪いねェ」
 少女を横抱きにしたままワイヤーを滑り降りてきた女は、竜の頭の上へと降り立ち。
「なァ、あんた。俺達今、ちょーっとデート中でさ。――邪魔すると多分、死体に蹴られて死んじまうだろうから、注意してくれよ?」
 女――ハイドラは悪いとも思っていなさそうな口調で、ワイヤーの先に括ったナイフを引き抜いた。
「ううー……、はい、どら……? ここどこだっけ……、うう……ふらふらする……もう、帰っていい?」
 そんなハイドラの腕の中に抱かれた少女。
 エコーは、小さく呻いて。ぽんやりとした様子で、蕩けた青の瞳で周りを見渡そうとして――止めた。
 なんだかとっても、ふわふわする、フラフラする。首を振ったら気持ち悪くなる気もした。
 くっくと喉を鳴らしたハイドラは、そんなエコーの体を大切に掲げるように更に寄せて。彼女の額に頬が今にも触れそうな程に持ち上げ。
「だァめ」
「ん、ぅー……」
 甘やかな一言には、不満げなお返事。
 それはそうと。
 別段ハイドラは死なないだけで、怪力を持ち合わせて居る訳では無い。
 自らよりも身長の高いミス・アンデッドちゃんをずっと姫抱きする程の膂力がある訳でも無い。
 今はそう、少しロマンチックが欲しかったものだから。
 すこーし頑張ってしまっただけだ。
「大丈夫か、エコー?」
 そういう訳で。エコーを下ろしてやったハイドラは覚束ない足取りの彼女の手を取って、彼女が立っていられるように。
 ――竜が酒を首を振ってはガブガブ水を飲んで居るのだから、そりゃあ酔って居なくともふらつきもするだろうが。
「あ」
 そこで大切なことを思い出したハイドラは、相違う瞳を狭めてエコーの青を覗き込んだ。
「そうだ、エコー。――俺たちは晴れてお付き合いする訳だが、何事も最初が肝心だ」
「……ん、んん、そう、だねぇ……?」
 こくりこっくり頷くエコーに、視線の距離は変えぬまま。
 ハイドラは人差し指をピッと立てる。
「――二人のルールを決めよう」
「るーる……?」
「そう、浮気しちゃダメとかそうい「あ? 浮気?? 何言ってんの……?」
 ハイドラの言葉に被せて問うたエコーの顔は超険しいし、その声は超低い。
「うっっっわ、何その顔怖ッ。例え話、――例え話だってッッ!」
 彼女と共闘した時にすら、……相対した時にすら見た事の無い表情をしたエコーに、思わずハイドラは一歩たじろぎ。
 エコーは、オホンとわざとらしい咳払いを1つ。
「……まぁいいや。とにかくルールね。わかったわかった。何がいいかな〜……」
 気を取り直した様子で普段の表情に戻ったエコーは、月を少し見上げて。
 ぱっとすぐにはルールは思いつかない。
 そりゃあ、浮気をしないなんて当たり前だ。
 言葉になりそうでならない気持ちが、浮き上がっては沈んで行く。
 そんなエコーの手をきゅっと握り直したハイドラは、再びしっかと青を見据えて。
「俺からは――『幸せでいて』、かな」
 今んとこはコレだけだよ、とエコーの手を引いたまま、一歩踏み込んだ。
「っつー訳で、動いてた方がお前も頭回るだろ」
 ――酔いも回るだろうけどな。
 なんて。エコーから手を離して腕を振るえば、ハイドラの腕が異形の頭部と化して――。
「さ、ここにでっかい肉だか龍だかもあるし、……楽しもうぜ?」
「そう……だね、うん。……確かにそうかもしれない」
 ――二人のランデヴーは、いつだって殺し合い。
 それがお決まり、いつもの相対方法。
 動きながらのほうが、頭だってきっと回るに違いない。メイビー。
「……でも、ちょっと床がうるさいな。静かにしててくれるか? ボクは真面目なことを考えてるんだ」
 ――口を閉じろ。
 鋭く刃を駆けさせれば、地たる竜の頭を裂いて。
 その口内に生まれたのは鉄の轡だ。
 竜の柔らかな舌を裂いて、硬い顎の骨へと棘がぶづり、ぶづりと捩じ込まれる。
 酒を飲んでいた竜からすればたまったものでも無く、大きく敵は頭を振って。
 足場が大きく揺れて、次の瞬間には失われていた。
 ふわふわしていたけれど、本格的な浮遊感はここにきて始めてだ。
 エコーはまだ考え込んだ様子で、どこかぼんやりと瞬きを重ねて。
 焦ることは無い、だって、だって。
 あ、と一言。
「……わかった、決めたよハイドラ」
「あン!?」
 竜の首へと、ヒュドラの首で食らいつき。
 抵抗もせず落ちて行こうとしたエコーの首根っこを捉えた、ハイドラはギリリと奥歯を噛み締めて力を籠めると、なんとか彼女を竜の首の上へと引き上げて。
 エコーは眦を小さく和らげて、ふふ、と笑った。
 ――そう、ハイドラが迎えに来てくれていたのが見えたから。
「『ボクを一人にしないこと』、これが約束だ。破ったら地獄行きだからね」
「は、……はは、地獄行きねえ、そりゃ困る」
 細く細く息を吐いたハイドラは、自身も竜の首の上へと乗り上げるとエコーの顎を親指だけで擡げ。
「堕ちるならお前と堕ちたいし、お前を幸せにしてやりたい。――同じ地獄ならお前と踊りたいってだけだよ」
 視線を交わして、言葉をただ紡ぐ。
 彼女に向かって、彼女だけに向ける言葉を。
「子供にゃちょっと難しい例えか? ……なあ、俺のかわい子ちゃん」
 ハイドラの相違う瞳と、青を交わしたまま。
 エコーは、口を開いて――。
 ふたりの上には、ぽっかりと吸い込まれそうなほど大きな白い月。
 それでも、それだって、竜の頭上にいたって月は遠い。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

千々波・漣音
【漣千】

おい…ちぃ、起きろよな
く、寝起き可愛すぎだろォ!(心の叫び

…いや、アレ竜じゃね?
てかオレ様の方が神格高いからな!(どや
酒といえばよ、オレが祀られてた時の神事では、オレの為に毎年美味い神酒と超別嬪の巫女が舞をだな…(酔っ払いの長話
あ!いやっ、でも超別嬪でも好みじゃねェから!オレは美人より鈍くて可愛い方が…って、あれ、ちぃ?
え!?何で酒に飛び込もうと…ぎゃあ!(水飛沫にモロ被弾
くそ、水も滴るいい男とはいえ、滴りすぎだろォ!
って、ちぃ?…え、何か沈んでねェ!?
おい、どこだ…どわっ!(慌てすぎて素っ転ぶ

はァ!?溺れてたのちぃだろ…って、酒美味いな
へべれけはお前だし!?(言えてないの最高可愛すぎ


尾白・千歳
【漣千】

うーん、まだ眠いよ~
起きなきゃダメなの?寝てたいよぅ…
何?蛇…?大きな蛇だねぇ
ふーん蛇にも神格あるんだね…(欠伸
蛇さんも神格高い?(長話も言い訳も全然聞いてない

ん?んんんっ?見て!温泉?あれ、お酒?
うーん、よくわかんないから入ってみればいいかな!
せーのぉ!(ザバンと盛大な水飛沫をあげて温泉に飛び込み
すっごーい!これ全部お酒だよ~(ごくんと飲んで
おいしい~!お酒っておいしいんだねぇ、いっぱい飲めるよ!
む、なんか疲れたかも~(ぶくぶく沈むも勝手に浮上
はぁ、楽しかった~満足したから出よ~

やだなぁ、さっちゃんってば、何してるの?
溺れてる~ふふん!
これだからへべ…へべれ、けは困るなぁ~(憐れむ目



 こっくりこっくり船を漕ぐ。
 柔らかで、蕩けそうな、暖かくて、ふわふわ。
 不思議な光景が脳裏を過る、瞼の裏側で見たことの無い光景が溶けて行く。
 このまま、ぽんやりしていたら、きっと、気持ちよく……気持ちよく……。
「……おい、……おい! ちぃ!」
 柔らかく溶ける世界の中で声がする。瞼の裏のきらきらを追いかけているところなのに。
 あともうすこしで、あともうすこしで……。
「ちぃ」
「ん、うー……」
 気持ちよく、眠れた筈なのにい……。
「起きろよ、ちぃ。――ねーるーなーって」
 漣音が千歳を揺さぶると、ゆさゆさ揺られた千歳の大きな尾が忙しく地を叩く。
 ぐしぐしと瞼を擦りながら、ううーっと唸った彼女はぎゅっと眉を寄せて。
「う~~、今起きてるとこ~~……、うう……起きなきゃダメ?」
 ぐずる千歳の姿に、漣音はすこし目を見開いて喉を鳴らした。
 はー……、ほんっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっと。
 こういう無防備な姿を、平気で見せつけるの止めてくれねェかな。
 は~~~。可愛いなァ~~~……、やっぱちぃ、可愛いなァ……。
 内心悶えていたって顔は真顔、平常心。
 あっ、やっぱり真顔は装えてないかもしれない。
 モニョモニョする彼の唇がちょっと笑みに歪んでいる。
 そんな内心を誤魔化すように、やれやれと前髪をかきあげた漣音は努めて瞳を呆れたように細めてみせて。――唇はちょっとモニョモニョしたままですけれど。
「ダメに決まってるだろ……、こんな所で寝るなよ、風邪引くぞ」
「じゃあ、寝ても良いところにさっちゃんが連れて行ってよ~」
「ヘァッ!?!?!?!?!」
 えっっっっ、何言ってくれちゃってんの!? え!? 何!?
 思わず肩を跳ねた漣音は、空を仰ぎ――。
「へ、あ? ……アレ……、何だ?」
「んー……え、何? うん? ……蛇?」
 漣音が指差した先には、長い体を靡かせて空を泳ぐ大きな大きな竜の姿。
「大きな蛇だねえ……」
 二人並んで空を見上げ。千歳がぽやぽやと呟くと、イヤイヤと漣音はかぶりを振った。
「いや、どう見たって竜だろ? あっ、でもオレ様の方が神格は高いからな!?」
「ふーん……、蛇にも神格って、あるんだねえ……」
 くわわ、と千歳は大きな欠伸を掌で覆いながら受け流すようにお返事1つ。
 うーん、うーん……、まだ眠たいな~……。
 なんて千歳がぽんやりしていると、突如。
 竜が降り立った方向から、大きな音と共に水柱が上がった。
「んっ!? わ、見て、見て、ちぃちゃん!」
 噴き出した水流は、見る間に街の道を伝って、街を満たして。
 そこかしこに溜まり留まった湯の様子は、まるで湯治場。あたかも露天温泉の如く。
「……あれ、これ、……もしかしてお酒?」
 湯を掌で掬いあげた千歳が、その香りに鼻を鳴らした。
「へ、……酒の温泉?」
「うーん、そうかも」
 でもよくわかんないな~、入ってみればいいかなあ。千歳は湯をぐるぐるかき混ぜ。
「あ、そう言えばさ」
 はっと思い出した漣音は、あまり言葉を精査する前に口を開く。
 この人達は今酔っ払いなので、基本的に余り相手の話を聴かないし、思いついたままに喋りだすのだ。
「酒といえばよ。オレが祀られてた時の神事では、オレの為に毎年美味い神酒と、超別嬪の巫女が巫女神楽を舞って居たんだが……、あっ、あ! いやっ、でも超別嬪でも好みじゃねェからな?? オレは美人より、どっちかってェと鈍くて可愛い方が好み……って、あれ、ちぃ?」
「せーーーーのぉっ!」
 ざばん。
 酔っ払いの長話――すごい長台詞を吐いた漣音の話の9.9割を聞き流しながら千歳は一気に温泉へと飛び込んだ。
「ギャーーーッ!?」
「あはははは、すっごおーい! これ、全部お酒だよ~!」
 千歳の飛び込んだ勢いで撒き散らされた湯によって、びったびたになった漣音は、思わず持っていたバス停を思い切り投げ飛ばしてしまう。
 なんとなーく竜の方にすっ飛んでいった気がするけれど、彼としては今それどころで無い。
「くそ、……水も滴るいい男とはいえ、滴りすぎだろォ! びっちゃびちゃじゃねェか!」
 わあわあ湯を絞る漣音を尻目に、温泉水を飲む千歳はまたきゃははと笑う。
「はー、美味しいなあー……」
 そして笑いながら瞳を閉じると、千歳はぷくぷくと温泉の中に沈んで行った。
「え、あれ……? ……ち、ちぃ? 何か沈んでねェ? おい、ち、っ、」
 言うが早いか。
 千歳を水面から引き上げるべく、漣音は一歩踏み込み。
 ――そしてそのまま足を滑らせると、派手な水飛沫を上げて漣音は温泉へと頭から突っ込んだ。
「……わっ、さっちゃんってば何してるの~?」
 肩を竦めた千歳は、大げさに肩を竦め。
 もう、さっちゃんたら~、お酒が好きだからって、そんなにはしゃいで仕方ないなあ。
「はァ!? いや、お、お前が溺れてたから、俺は……、俺は……」
 ぶるると体を揺すって水分を跳ね飛ばした漣音は、言葉を一度切り――。
「あ、この酒美味いな」
 口の中に流れ込んできた温泉水に、舌鼓。
 そんな彼の様子を千歳は、本当に楽しげにくすくすと笑う。
「でしょ~! ふふふ、それにしたって転んで溺れるなんて……さっちゃんったらへぺ、……へべれ、けで困っちゃうなあ」
「い、いやいやいやいや!? へべれけはお前だし!?」
 は~、さっちゃんったら本当に酔っちゃってるな~。
 ……私は酔った事なんて、これっぽちも無いのにね!
 なんて。
 酔いに顔を真っ赤に染めた千歳は、ふふんと胸を張るのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ジン・エラー
【甘くない】
服を着たままやってきて、彼女に腕を引かれるまま

そォ~~~ンな浮足立つなってエリシャァ~~~~~
ア?
オブヒェブヒャッヒャッヒャッ!!!
エリシャァ~~~覚悟は出来てンだろォ~~~なッ!!!

やられた分は倍返し、二倍と言わず三倍四倍
結局二人で温泉に浮かんで

あァ~~~~~??エリシャお前、酔ってンのかよォ~~~~
温泉すら呑ンじまうって、鬼はやっぱやることが違うねェ~~~~~!!!ウヒャヒヒャラハハハ!!!

───ア?

こりゃァ極上だ
もっと寄越せよ、なァ
掬って?バカ言えよエリシャ
今度はもっとゆっくり味わわせてくれ
なァ?


千桜・エリシャ
【甘くない】

まあ!ジンさん!ご覧になって!
温泉!温泉ですわ!
彼を引っ張ってどーんっと背中を押して
ふふ、ふふふっ
ぼーっとしてるのが悪いんですのよ~
ほら!よそ見してはめっ!よ!
濡れるのも気にせず
ばしゃばしゃと掛けあっては笑ってきゃっきゃ
暖かくてきもちぃ~

んぅ?なんだかこのお湯、いい香りがするような…
手で掬ってくんくんごっくん
…おいしい~健康になれそうな味で…
あら、あなたに酔わされてしまったかしら
鬼はお酒が好きなものですしね
ほら、ジンさんも呑んでみてくださいまし
彼の口へちゅっ――

…おいしかった?
あら、次はご自分でお呑みになったら?
なんて
野暮なことはいわなくってよ
あなたが満足するまで
つきあってあげるわ



 ふかふかと上がる湯気。
 街の真ん中で噴き上がる温泉は、道を伝って、街を満たして。
 そこかしこに溜まり留まった湯は、まるで湯治場。あたかも露天温泉の如く。
 揺れる湯気の向こう側から現れた、やたらとにぎやかな二人の姿。
「まあ! ジンさん! ご覧になって! 温泉、温泉ですわ!」
 ジンに腕を絡めてぐいぐい歩むエリシャは、瞳をぴかぴかに瞬かせ。
「そォ~~~ンな、浮足立つなってエリシャァ~~~~~」
 ジンはそんな彼女に、やれやれとその身を引かれるがまま。
 遠くに見える巨大な竜の姿なんて、今の二人からすればアウトオブ眼中。
 なんたって酔っ払いなので、見たいものしか見ないもの。
 今の二人の興味は、突如目の前に現れた温泉へと注がれているのだ。
「ふふ、ふふふっ」
 突然笑い出したエリシャは、ジンの腕から自らの腕を解いて。
 悪戯げに瞳を狭めると、ジンへと甘えるように。
 彼の頬に掌を滑らせ添えて、甘やかに甘やかに花笑んだ。
「ねえ、ジンさん」
 彼の名を呼ぶ唇は、桜色に彩られ。
 真っ直ぐに向ける視線。
「ァ?」
 ジンは、自らの名を呼ぶ彼女とその視線を合わせて――。
「ぼーっとしてるのが悪いんですのよ~!」
 刹那。
 エリシャが腕をすいっと滑らせるとジンの背中に触れて、そのまま彼の背を思い切り押した。
 どばしゃあん。
 大きな音と、飛沫が跳ねた。
 ぶく、ぶくぶく。
 ジンの姿が温泉に沈み。
「オブヒェブヒャッヒャッヒャッ!!!」
 ビッシャビシャの濡れ鼠。
 落ちた時より派手な水しぶきを巻き上げながら、水面から姿を見せたジンはやかましく笑って。
「エリシャァ~~~、お前、覚悟は出来てンだろォ~~~なァァァッッ!?」
「きゃっ!」
 今こそ反撃の時、と。
 温泉の縁へと立つエリシャの足にしがみついたジンは、河童めいた動きで彼女を温泉の中へと引き込んだ。
 ぶく、ぶく、ぶく。
 飛沫を上げて、二人が水面より顔を上げた――途端に。
「さ~~~ァ、行くぞエリ……ぷえっ!?」
「ほら、よそ見してはめっ! よ?」
 両掌で掬った湯を更にジンの顔に掛けてやったエリシャは、また笑った。
「わひゃ、はひふふふはははッ! いや〜〜ァいやいや、やったなァ~~!?」
「きゃあーっ」
 二人共もはや、濡れていない場所なんてないもので。
 ばしゃばしゃと温泉水を掛け合う二人は楽しげに。
 暖かくて心地よくて、甘い匂いのするお湯は――。
「んぅ?」
 口へと入ってしまっても、なんだかとっても。
「……おいしい……」
 健康になれそうな味と言おうか、ぽうっと頭がふわふわする味と言おうか。
 兎も角、エリシャはこの温泉水がとても美味しいことに気がついてしまった。
 こくり、こくりと口へと湯を運び――。
 そんな彼女の様子に、ジンは指を指してゲラゲラと笑った。
「あァ~~~~~?? エリシャお前、酔ってンのかよォ~~~~???? 温泉すら呑ンじまうって、鬼はやっぱやることが違うねェ~~~~~!!! ウヒャヒヒャラハハハ!!!」
 エリシャは瞳を眇めて、それこそ何でも無い事のようにかぶりを振って。
「まあ、この温泉とっても美味しいんですよの。――ほら、ジンさんも呑んでみてくださいまし?」
「ア?」
 再び彼の頬へと掌を添えると、ぐいと引き寄せて。
 その唇に噛み付くように、エリシャは口づけを交わした。
 つ、と零れる温泉水。
 それからエリシャは長い睫毛の影を瞳に落して、ゆっくりと顔を離して――。
「……おいしかった?」
 なんて、笑った。
 ジンは彼女の腰へと腕を回すと、ぐいと体を引き寄せて。
「あァ~~、そうな。こりゃァ極上だ」
 逆の手の親指でエリシャの顎をくっと引くと、相違う色の瞳で彼女の桜色を覗き込んだ。
「――もっと寄越せよ、なァ?」
「あら、次はご自分でお呑みになったら?」
 強請るような彼の物言い。
 エリシャは彼の首筋へと腕を回すと、艶やかに瞳を狭める。
「自分で掬って? ――バカ言えよエリシャ」
 エリシャの体を掻き抱いたジンは、零すように言葉を紡ぐ。
「今度はもっとゆっくり味わわせてくれ、なァ?」
 それから彼は彼女の腰へと回した腕を、ぐっと更に自らに寄せて――。

 は、と零れた吐息と吐息が重なる距離。

 エリシャは、ふふふ、と鼻を鳴らして笑う。
「ふふ、……あなたに酔わされてしまったかしら?」
「あーァ、酔わしちまったかもなァ」
「ふふ。……ふふ、そうですわね」
 なんたって、鬼はお酒が好きだと言う。
 ならば、ならば。
 これは、仕方の無い事でしょう?
 ねえ、今日は。
 あなたが満足するまで、つきあってあげるわ。
 ――彼の首筋へと回したエリシャの腕に、力が籠もり。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

メルト・プティング
らいすきなおろもらちのベアータ(f05212)さんとさんか~
※完全に出来上がってる状態

わぁ。街の中に温泉が~
入りたいのにあのウネウネ(オロチ)、邪魔なのですぅ
だから、ぶっとばしちゃえー
《念動波紋》でドーン…あれ?あたんにゃい
まぁあたるまで撃てばいいですね!あははは!

花びら攻撃は華麗に避…って、おろろ
視界も足運びも定まらずふらふら~、逆にその御蔭で当たらない?

はっ。ベアータさんは大丈夫でしょうか?
酩酊しててもそれだけはしっかり意識
攻撃がいくようなら、【念動力】【オーラ防御】の壁を張りながら【かばう】のです
えへへ、ボクもベアータさんのことはだいしゅきなのですよぉ
だから絶対、傷つけさせにゃいのれす!


ベアータ・ベルトット
マブダチのメルト(f00394)とー!
※酔いどれ中

むー、温泉でもーっとぽかぽかしたいのにぃ…何なのよあの長いの!
邪魔するヤツは食べちゃうんだからっ!

先手必勝!メルトと一緒に、敵目がけて吸血光線をドーンッ!血液エネルギー充填よっ

頭のふらつきを堪え、野生の勘を研ぎ澄まし…
敵の攻撃は機腕銃の乱れ撃ちで相殺っ
花びらじゃおなか膨れないのよっ!

また花びら来るわよぉメルト!
右から!次は左、上……た、たくさんっ!やば、避けられな…ッ
……!
これは、メルトのバリアっ!?
メルトぉ…ありがとう!えへへ、だーいすきっ!
ぎゅーっとハグハグして心も充填しちゃお!

よくもやったわねぇ長いの!BEAを発動!
えじきと…にゃれーっ!



 甘いにおいが街を満たし、立ち上る湯気は街を白く霞ませて。
 噴水のように勢いよく噴き出した温泉水は、竜神の出現によって迷宮化した街へと流れ込む。
 そこかしこに湯が溜まり留まる様は、まるで沢山の露天温泉が立ち並んでいるかのように見えた。
「わぁー、街がぜんぶ温泉みたいですよー」
 ベアータと手を繋いだメルトは、そんな街並みを見下ろすとへにゃーっと花のように笑って。
「ふふふー、ほんとねえー」
 そうやって頷いてくれるベアータの笑顔が、なんだかとっても嬉しかったから。
「……えーいっ!」
「わぷっ!?」
 何の躊躇も無くベアータの手を引いたメルトは、まるで露天温泉のような湯溜まりへと、ばしゃんと飛び込んだ。
「うふふふ、ベアータさん、びっくりしましたー?」
「もーっ、びっくりしたに決まってるじゃないの! お仕置きようー!」
 湯の中でぱしゃぱしゃとじゃれ合う二人。
 ベアータがメルトを捕まえると、ぎゅーっと抱きしめて。
 顔を見合わせると、弾けるように笑い合う。
「んんー、きもちいーわねー……」
「んひ、ぽかぽかなのですー……」
 それになんだか、このお湯は甘くて美味しい気がする。
 二人がお湯に浮いてぷかぷかと落ち着いた――その瞬間。
 はらり、はらりと空より桜の花弁が零れ落ちてきた。
「わあ……」
 それは、あの大きな大きな竜が零したもの。
 昏い空にぽっかり浮かんだ、白くて丸い月。
 そこに舞う薄紅色の花弁がとても綺麗に見えて、メルトは思わずほうと吐息を零し――。
「っ、痛ぁっ!?」
「ベアータしゃん!?」
 その花弁は体に触れた瞬間、焼けるような痛みを齎す。
 ベアータがびくっと肩を跳ねると、メルトが慌ててベアータに駆け寄った。
「んもーーーっ、温泉でもーっとぽかぽかしたいのにぃ……何なのよあの長いの!」
 メルトに大丈夫よ、と言ってから。ぷくっと頬を膨らせたベアータは、がぶがぶと温泉水を飲んでいる竜を睨めつけて。
「あのウネウネがベアータさんを傷つけたのですね!? もーー、絶対許しませんからね!」
 そうして同時に湯から飛び出たベアータとメルトは、竜へと向かって一気に駆け出した。
 片腕を支えるように掌を添えたベアータは、腕を前へ差し出して。
「――邪魔するヤツは、食べちゃうんだからっっ!」
「えーーいっ、ぶっとんじゃえーーーっ」
 メルトもベアータと対になるポーズ。
 片腕を支えるように掌を添えると、腕を前へと突き出す。
 膨れ上がる光線。
 ベアータが放ったのは、敵の肉を爆ぜて鮮血を吸収する吸血光線だ。
 対して。
 その横で構えたメルトの掌の前には、青い波動が膨れ上がり――。
「……あれ?」
 メルトが真っ直ぐに放った筈の波動がへろへろと曲がって、なぜだか横の建物をブっ飛ばしていた。
 あれー??
 ぱちぱち、瞬きを重ねてからメルトは――。
「……まぁ、当たるまで撃てばいいですよね~~、あははははははっ!」
 朗らかに笑って幾つも幾つも波動を生み出すと、へろへろ波動で街の破壊を始めるのであった。
 爆ぜる温泉、崩れる家。
 めちゃくちゃに暴れだしたマブダチ。
「……め、メルトー!? うう、……長いのッッ! メルトをこんなにして……、許さないわッッ!」
 こんな事になってしまったのは、きっと全て目の前のオブリビオンが悪いに違いない。いや、そうなのですけれど、いや……ええと。
 更に闘志を燃え上がらせたベアータは腕をがしゃんと変形させ、その機関銃と成った腕を敵へと向ける。
 ベアータだって、頭はぽわぽわしているし、足だってぐらぐらしている。
 それでも、それでも。
 メルトと過ごす大切な時間を、オブリビオンなんかに奪われたくはないのだ。
 はらはらと降り落ちてくる桜の花弁。
「そんな花びらじゃ、おなかが膨れないのよッッ!」
「あははははは、足がもつれて……ふわふわします~」
 花弁だって当たらなければ、痛くは無い。
 全て撃ち落としてやると、ベアータが機腕銃を乱れ撃つ横でメルトはふらふらステップ。
 偶然なのか故意なのか、メルトはなんとなく避けては居るけれど――。
 ベアータは弾を放ちながら、目を見開いた。
「メルト……ッ!? 花びらが増えるわよッ! 右……左、上……うわ、た、たくさん……ッ!?」
 見えているからこそ、ベアータは悟る。
 この量は避けきる事は不可能だろうということを。
 ベアータは来る痛みに耐えるように、目をぎゅうっと瞑って腕をガードに掲げ。
 そこに響いたのは――。
「べあーたしゃんは、もう、傷つけさせにゃーーのれす!」
 メルトの声であった。
 ――ベアータに痛みは、来ない。
「メルト……?」
「えへへ、ベアータさん!」
 ベアータがそっと瞳を開くと、目前には防御壁を張るメルトの背。
 大量に舞い落ちた桜の花弁が、ばちりと念に弾かれて地へと落ちて――。
「メルトぉ……えへへへ、ありがとう! ……だーいすきっ!」
「えへへへ、ボクもベアータさんのことはだいしゅきなのですよぉ」
 思わずベアータはメルトの背に抱きつくと、ぎゅっぎゅのぎゅ。気力も心もこれで充填完了!
 そのままベアータは、メルトに抱きついたままするりと眼帯を引き解き――。
「よーくもやってくれたわね、ぜっらいゆるしゃにゃいんにゃにゃにゃ! ――えじきと、にゃれッッッ!!」
 鋭く、真っ直ぐに。
 命を喰らう獣の舌を敵へと伸ばすのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

歌獣・苺
【苺夜】
ほあ(寝起き)
ん?
なぁにるーし…わん?
今度はるーしー犬になっちゃった…
ほんと!大きい竜さんだぴょん!

ひぇ、濡れるのはちょっと…!
るーしー犬は
とっても頼りになるぴょん!
ありがとぴょん♪
はりゃ、今度はにゃー?
はりゃりゃ、またわん?
ふふ、面白いわんちゃんだぁ♪

月がぴかぴか
竜さんぴかぴか
苺と青の瞳もぴかぴか
えへ、えへへ
なんだかとっても、
良い気持ち…!
るーしーと一緒は
もっと良い気持ち…♪

ぽぽぽのほっぺも
ふわわな頭も
ぜんぶぜーんぶ温泉のせい…♪
るーしーおねむ?
うん、おいで♪
ぎゅっぎゅのぎゅーで
ねんねしよ…♪
たくさんねて
いっしょにつよく
おおきくなろうね
こころも
からだも
この『つながり』も。

すぴぴ…


ルーシー・ブルーベル
【苺夜】
ほえ(寝起き)
わあ、みてみて、まい!
あんなにおっきな竜さんだわん

はっ、まい
おんせんから離れるのだわん
お湯でぬれちゃうからだわん
まいはるーしーの後ろにいるのだわん!
るーしーはまいを
温泉から守ってみせるのにゃー!

わん?ちがうわ
るーしーはるーしーだわん

お月さまぴかぴか
竜さんもぴかぴか
2人の顔もぴかびか
んふ、んふふふふふ
みんなごきげんだとうれしくなっちゃう
ほかほかはきっと温泉のせい
ぐるぐるまわっているのも温泉のせい

んふー、やっぱりねむいにゃー
まい、もう一度ねましょっ
こんどはるーしーがぎゅってするー
夜だからまたオヤスミしたっていいのよ
いっしょに
いっしょにかあ……ステキ、ねえ……

すやすやあ



 体はぽかぽか。
 頭もふわふわ。
 なんだか世界はくるくるり。
 気がつけば夜に沈んだ世界。
 まあるい月が、こちらを見下ろしている。
 ルーシーは金糸の髪をふるると揺すって。
「わあーー、みてみて、まい! おっきなおっきな竜さんだわん!」
「ほあー? わん?」
 さっきまでルーシーはにゃんこだったのに、次はわんこになってしまった。
 苺はぱちぱちとまばたきを重ねて、それでもルーシーの指差す先を見上げると――。
「わあーーっ、ほんと! 大きな竜さんだぴょん!」
 負けじと苺はうさちゃんになって、わんこに対抗するのであった。
 ぐうるりと空を舞って。
 とぐろを巻いた竜が地を叩くと、どかんと世界が揺れた。
「わ、わわわ、なに、なにっ?」
「あ、ああっ、まい! あぶなーーいっ、そこを離れるのだわん!」
「ぴょん!?」
 ルーシーに手を引かれるがままに、苺が駆け出すと。
 とくとくとグラスに酒が満たされるように。
 道に、建物に、街に、噴き出した温泉が満ち満ちて。
 オブリビオンの影響で迷宮と化した街並みは、低い場所には湯が溜まり。
 これはまるで湯治場。
 あたかも露天温泉の如く、街は変貌を始めていた。
「はー、まい、あそこにいたらお湯でぬれちゃってたわん」
「わわわ、るーしー犬はとっても頼りになるぴょん! ありがとぴょん♪」
「えへへ、まいはるーしーが守るのにゃ。 るーしーの後ろにいるのだわん!」
「にゃ?」
「わ、わん!」
「はりゃりゃ、……うふふ、面白いわんちゃんだにゃ~」
「そう、るーしーはるーしーだわん!」
 顔を見合わせた二人は、吹き出すみたいに笑って。
 手を引いて二人は歩き出す。
 はらはらと桜の花弁が舞って。
 ぴかぴかと竜の頭の上が瞬いている。
 まあるいお月さまが二人を見下ろせば。
 二人の瞳もぴかぴかと瞬くよう。
「んふ、んふふふふふ」
「えへ、えへへへへへ」
 ルーシーも、苺も、なんだかとっても楽しくて。
 周りの皆も笑っているものだから、もっと嬉しくて。
 暖かくて気持ちが良いのは、きっとあの温泉のせい。
 頭がぐるぐるふわふわするのも、きっとあの温泉のせい。
 ――気分がとてもワクワクして嬉しいのは、二人で手を繋いで歩いているから!
 ああ、楽しいな。
 ああ、嬉しいな。
 ああ、――……眠たいな。
 暖かくて気持ちが良いものだから、ルーシーは苺の手をきゅっと引いて。
 心地良さげな草むらの上に座り込む。
「んふー、まい、もう一度ねましょっ?」
 苺はルーシーの顔を覗き込むと、首を傾いで。
「んー、るーしーおねむ? なら、ぎゅっぎゅのぎゅーで、ねんねしよっかぁ……」
「んーんー、こんどはるーしーがぎゅってするー」
「えへへ、いいよぉ。おいでえ♪」
 ルーシーが苺へとぴょんと抱きつくと、強く強く抱きしめる。
「ね、たくさんねて、いっしょにつよく、おおきくなろうねえ……」
 苺が瞬きを重ねて、言葉を紡ぐ。
「こころも、からだも、……この、つながりも」
「んぅ……、いっしょに? いっしょにかあ、うふ、ふふ。それとっても、とっても……ステキ、ねえ……」
 ぎゅうっと苺に抱きついたまま、ルーシーはすやすやと寝息を立て出した。
 苺もくうくうと寝息を零す。
 なんたって今は夜なんだから。
 二人が眠るのはなあんにも不思議じゃない事。
 夜なのだから、またオヤスミしたって平気なの。
 ――では、皆様。
 おやすみなさあい、にゃ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

五月蝿い龍だ
今いいところなんだ
黙っていてくれ

サヨ
私を見て

ふにゃふにゃして可愛いね
いつも可愛いけれど
今はたくさん甘えてくれる
桜がまた咲いた
もっと普段から甘えていいのに

ふらついてるね
抱えてあげる
支えてあげる
離れないよう解けないように結んであげる

お湯を飲むの?
飲ませてあげようか(そっと唇をなぞる

私は櫻宵の神で
櫻宵は私の愛しい巫女なのだから
可愛い巫女の世話をするのは当たり前のことだ

厄災である私が
君に降りる神に成りたいなんて
相応しくない
烏滸がましいとずっと

私は何を言っているのかな
相当酔っている

でも今は違う
私の可愛い龍
サヨは私の降りる桜だ

まさか!
酔いが覚めても
例え君が忘れていても
離すわけが無い

勿論!


誘名・櫻宵
🌸神櫻

カムイ!龍がいるわ!
あっちの龍のがいいと言うかも…消すしかない

カムイを見てるよ

ぎゅうと甘えてすりすり
柔い熱にまた桜咲く
普段から甘えんぼよ
…もっといい、なんて
心全てで寄りかかってしまう

寄り添えば杯に掬ったお湯が零れる
美味しいよ
あなたにもあげる
一緒に飲もう?

巫女なのに神様にお世話されてる
いいのかしら
ふにゃりいい気分
甘い梔子、カムイの香り
落ち着く

…何時もそう一歩ひいていたな
私は踏み込んで来て欲しかったのに

私も何をいってるのかしら
変なの

私に降りてきてよ神様
笑って迎えるわ!

でも酔いが覚めたら
やっぱりサヨが巫女なんて…ってクーリングオフされちゃうんだわぁ…(めそめそ

本当?
絶対よ!カムー!(抱きつく



 いつの間にか世界は温泉に沈んでいた。
 でも、それは別に不思議な事では無い。
 だって、世界はそういう風に出来ているものなのだから。
 ――少なくとも醒める事無き世界では、そうなのだ。
「ねえ。カムイ、カムイ、見て、大きな龍がいるわ」
 空を舞う竜を、櫻宵は指差してから――しまった、と思う。
 自分よりも、あの竜のほうがずっと大きい。
 もし、もし。
 あっちの竜のほうが良いなんて言い出されたら、どうしよう。
 否、答えなんて決まっている。
 噫、消すしか無いわ。倒すしか無いわ。
 密かな決意を櫻宵が内心固めていると、カムイはゆるゆると首を振って。
「サヨ、――私を見て」
「……カムイを、見てるよ」
 櫻宵の心配は、杞憂であったのだろう。
 カムイの視界には竜なんて最初から入っていない。
 櫻宵の頬へとカムイが掌を添えるものだから、櫻宵は頬を擦り寄せて――。
「ふふ。ふにゃふにゃして可愛いね」
 いつも櫻宵は可愛いけれど、――今日は、今は、たくさん甘えてくれる、なんて。
 櫻宵の角に櫻の花弁がぽぽぽと咲き乱れる様子に、カムイは唇に深い笑みを宿して。
「ね、もっと普段から甘えてくれて良いのに」
「――ふふ、普段からあまえんぼよ」
 カムイの首筋に腕を回すと、櫻宵はその首筋にくっと顔を埋めた。
 暖かな熱を感じる。
 柔らかな熱を感じる。
 吐息がかかる距離。
 これほどまでに、近いのに。
 ――もっと甘えてくれ、なんて。
 心全てで寄りかかってしまうだろう。
 ふるるとかぶりを小さく振ると、細く細く息を吸って。
 ああ、甘い甘い梔子の香りがする。
 カムイの匂い、神様の匂い。
「……ふらついているなら、支えてあげるよ」
 ただ笑んだカムイは、寄せられた体に応じるように櫻宵の背を掻き抱く。
「離れないよう、解けないように、結んであげる」
「……あ」
 櫻宵の腕がこつ、と杯へと当たって。
 掬って置いてあった湯が、零れ広がる。
 ――それは酒の甘い香りのする湯。
 カムイは広がってしまった雫を指先で掬うと、くっと笑って。
「飲みたかったなら、飲ませてあげるのに」
 酒で櫻宵の唇へと紅を引くよう。
 櫻宵はその桜色の瞳に睫毛の影を落して、ほう、と吐息を零す。
「……ねえ、私は巫女なのでしょう? それなのに神様にお世話されるなんて、いいのかしら?」
「良いに決まっているさ。――私は櫻宵の神で、櫻宵は私の愛しい巫女なのだから」
 言葉を紡ぎながらカムイは櫻宵の後頭部に掌を添えて。
 その髪を梳きながら、櫻宵の頭を自らの胸へと埋めさせるように。
「可愛い巫女の世話を、神がする事は当たり前のことだよ」
「そう、なのかしら……」
「それにね。……厄災である私が、君に降りる神に成りたいなんて相応しくないのだから。せめて、その位は……」
 噫。
 烏滸がましい、烏滸がましい事だ。
 私が巫女を持つなんて、櫻宵の神と成るなんて。
 ずっと、ずっと――。
「……すまない、私は何を……。――酔っているみたいだ」
 零してしまった言葉は、カムイに戻ってくる事は無い。
 一度漏れてしまった思いは、元通りになんてならない。
「……ねえ、あなたはいつも。いつも、そう一歩退いてきたね。……私は踏み込んで来て欲しかったのに」
 ゆるゆると首を振る彼に、櫻宵はただ瞳を閉じて。
 梔子の香りを胸いっぱいに、肺いっぱいに、飲み込んだ。
「……ふふ、ごめんなさい。私も何をいっているのかしら、ね。……きっと私も、酔っているのよ」
 その言葉にカムイは、櫻宵の頭抱く腕に力が篭もってしまう。
 噫、噫。
 ――私の巫女は、なんて、なんて。
「でも、――今は違うんだね。ねえ、私の可愛い龍、愛しい巫女。……サヨは私の降りる桜なのだろう?」
「そうよ、神様。――私に降りてきてよ。笑って迎えるんだから」
 顔を上げた櫻宵とカムイが同じ色の視線を交わせば、その眦を甘く甘く和らげて。
「…………でも、酔いが覚めたら、やっぱりサヨが巫女なんて……、ってクーリングオフするのよねえ……?」
 なんて、櫻宵がおどけるものだから。
 カムイはぎゅうっと櫻宵を抱き直して。
「まさか! 酔いが覚めても、例え君が忘れてしまっていても。――私がサヨを離すわけが無いさ」
「ねえ、本当?」
「勿論」
「絶対よ、約束よ。ねえ、カムー!」
 櫻宵はぐいっとカムイの胸へと頬を擦り寄せて、笑う。
 角に芽吹いた蕾が、また一輪花開き――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

天帝峰・クーラカンリ
酔ってるので一人称が俺でちょっと荒っぽい感じです

そろそろ酔いが醒めても良い頃合いではないか?
このままでは業務に支障をきたすぞ
どいつもこいつも酔いどればかり…いやそれは俺もか
まぁいい、この妖を倒せばみな正気に戻るだろう
というか戻ってくれ
さもないとこの空間に呑み込まれてしまいそうだ(酒だけに)

ぶわっぷ!
なんだ!?酒の地下水!?
こんなものが此のカクリヨに眠っていたとはな…
うちの支部でも掘削してみるか、良い収入減になりそうだし
とりあえずお前は邪魔だ、退いていてもらおう
退かぬと言うなら…こうだ!
(殴ったり蹴ったり)
酒も夢もさめるからこそ美しい
酔ってばかりでは本当に尊いものが何なのかも忘れてしまうぞ


クーナ・セラフィン
あっはっは、お酒の温泉とかもう酒からは逃げられないにゃー。
月も桜も楽しむにはいい景色、骸魂でも風流はいいもの?
どんちゃん騒いで…いや目的は忘れちゃダメダメ。
華麗に華やかに、わるい獄卒とか龍?を倒さないと。
ほらこんなにも沢山いるじゃないか、何か空を飛んだりピンク色してダンスしたりしてるけど(幻覚見えてる)

とりあえずは一番慣れてるUCで纏めて幻に落とし込もう。
最近寒いし吹雪の方もきっといい感じ、特に明るいあれを狙ってー、一瞬提灯に見えたけど気のせいだよね。
雪見花見酒を同時に、もっと見世物欲しいなら踊り明かそうか。
オラクルに持ち替え龍に向かい騎士猫の剣舞、披露差し上げるにゃー!

※アドリブ絡み等お任せ


ティオレンシア・シーディア
(通常の三倍増しでほにゃほにゃのぽえぽえ。
とうの昔にぐっだぐだに呂律が回っていない)

あらあらぁ、そんなにおさけばらまいちゃってもったいにゃいわれぇ?あらひにもちょうらいよぉ。


くひひひっ、ぴっかぴかできれーにぇえ。
ごーるろひーん、いっひょにおどりましょぉ?せっかくらもの、もぉっとはでにひちゃいましょぉよぉ。
きひゃははは、ほぉらどぉっかぁん。
(けたけた笑いながら見境なくド派手に大火力をバラ撒きつつ踊り狂っている。当然ゴールドシーンも酔っているためストッパー不在。もはや踊りは踊りでもトーテンタンツの有様である)

(NGナシ・トンチキ一任。テキトーなとこで寝落としちゃってもいいです)


スキアファール・イリャルギ
わぁ……
龍だぁ
温泉だぁ
お酒だぁ
お祭りだぁ
(ふわふわぽわぽわ)

あーそうか、あの龍が、ん? どれだ……?
見る度に増減しててわからない
でも戦わないと世界が滅びるそれはマズい
立って……
たつ……
た……
立てない……(ぐったり)

あー……体力も気力も無い
座り込んだのはマズかったな……
なんか踊りたいって思ってきたけどそれも無理……
いや、ううん、きみは悪くないよ
酩酊なんてきみは初めてだろうから……あれ、というか
なんで私きみをここに呼んだんだっけ……?
(首傾げ、たら視界がぐらついたヤバイ)

うーん、このままじゃなにもできない
どうしよう
どうしよっか
眩しいなぁ
ぴかぴかしてるなぁ……
(ぼけー)

……歌うかぁ
みんながんばれ……


ルルチェリア・グレイブキーパー
うぅ……よったおねえさんたちは怖いのよ……
……なんだか景色がぐるぐるなのよ……
おっきなりゅうの首が……いっぱいみえるのよ?
ていりゅーヴァル……ヴァル……ヴァルなんとかね!
わたしがやっつけてあげるのよ!

【お子様幽霊たちは成長期】でおっきくさせたゆうれいの子たちで
ばーんと押し潰してやっつけるのよ!
あら?ゆうれいの子たちもよっぱらってる……?
まってまって、わたし敵じゃない、やめて、ギャー!!



 クーラカンリは昏い空にぽっかりと浮かんだ白い月を見上げていた。
「――そろそろ酔いが醒めても良い頃合いでは無いか……?」
 思考が、感覚が、視界が、霞がかっている。
 効率が、能率が下がっている事を、言葉通り肌で感じる。
 このままでは業務に支障をきたしてしまう事は確実であろう。
 やれやれとかぶりを振ったクーラカンリは、猟兵と妖怪が酔いどれる街中を見渡すと――。
「あっはっはっ、あははははは、空にピンク色の獄卒が飛んで踊ってるにゃー」
 勝手に屋上に腰掛けて、グラスを掲げてからからと笑うクーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)。
「くひ、ひひひひっ、んふー……、ほんとぉー。空がピンクにゃってるにぁー」
 小さなケットシーの横にティオレンシアがぺったりと寄りそい、彼女もグラスの中身をぐぐいと呷っている。
 それが酒にせよ、水にせよ、今のこの世界では酔いを加速するアイテムでしか無いと、クーラカンリは知っている。彼はやれやれとまたかぶりを振って、別の方面を見やれば――。
「うぐ、ううう、おねえさんたちから逃げなきゃ……景色、景気がぐるぐるしてるのよ……」
 小さな獄卒達がぐうぐう眠る横。
 よっぽどひどい目にあったのだろう。
 ぺったりと倒れ込んで芋虫のようにのたくりながら、なんとかその場を脱出しようとしているらしきルルチェリアの姿。
 いやあ。
 ――全く、まったくもって、どいつもこいつも酔いどればかりだ。
 クーラカンリは額に掌を当てて、深い溜息を1つ。
 思考が、感覚が、視界が、霞がかっている。
 効率が、能率が下がっている事を、言葉通り肌で感じる。
 ぐらぐらと揺れる頭を抱えて、クーラカンリは思い直す。
 いや、――俺も随分と酔いどれているようだ、と。
 なんたって。
 突然街のど真ん中で水柱が上がって、そのまま道が水に満たされたように見えるのだから。酷い幻覚が見えているとしか言いようがない。
 どう、と体が流されて――。
「ぶわっぷ!? な、なんだ!? これ、酒の、地下水……ッ!?」
 巨大な竜がとぐろを巻いて、街を見下ろしているように見える。
 いいや、いいや。
 どうやらこれは、現実のようだ。
 ――ああ、カクリヨに酒の地下水が沸くのならばうちの支部でも掘削してみれば良い収入源になるかもしれないな、なんて。
  クーラカンリは暖かな湯の濁流に飲み込まれながら、完全に冷静に思えて、混乱しきった思考を巡らせるのであった。

「んきゃーーーーっ、これ、あ、あははは、おいしい! なにこれー、おいしー!」
 地面に転がっていたルルチェリアがけらけら笑いながら流されて行く様を眺めながら、クーナは地面をバンバン叩いて。
「あはははははは、何? 何? お酒の温泉なんて、もーーう、酒から逃げられそうにないにゃーーー」
「うふー、おひゃけー、こんあにばらまいひゃって、もったいにゃいわれぇ~」
 同意しているのか何なのか。
 ティオレンシアが、湯を先程まで呷っていた杯に掬ってちびちび飲みながら、へにゃげにゃと笑う。
「うひひひ、くひひ、あれ、ぴかぴかしてきれーにぇえ」
「ぴかぴか? んー、どれかにゃ……」
 クーナの目には今、見えてはいけないタイプのものがたくさん見えている。
 踊るピンク色の竜に、空を飛ぶ南京錠。お花がはらはらと咲き乱れて、潜水艦はタップダンス。
 目をよーく凝らせばひときわ大きな竜の頭の上に提灯が見えたような、見えなかったような。
「くひひひひっ、きれぇだから、いっしょにおどりまひゅよぉ、ねえ、ごーるろひーん!」
 ティオレンシアは立ち上がり、シトリンの付いたペンの形をした鉱物生命体へと『踊ろう』と祈りを捧げる。
 それからクーナを見やって、にっこりと笑い。
「やあ。お嬢さんが踊るのならば、私も踊らなければ失礼かにゃ? では、お手をどうぞ、共に踊り明かそう!」
 その笑みには、騎士としては応じねばならない。
 クーナはちいさなちいさな手を差し出す。
「せっかくらもの、たのひく、げんきぃい~にー、おどひまひょおー!」
 きしし、と笑ったティオレンシアがクーナの手を取ると、ぐるぐるとゴールドシーンを纏って踊りだす。
 描き出すは、幾何学模様。
 生まれるはその数920の矢と刃。
 クーナの槍が空を割いて、生み出すは雪の結晶花吹雪。
 舞う二人と一本は、踊る、踊る。
 敵が滅びるまで、――Totentanzを共に。
「はぴゃ……、うう、なに、なになに、りゅうが、いっぱい、いっぱいいるわ……!?」
 頭はぐるぐる。
 流されて体もぐるぐる。
 なんとか平らな所まで流されたルルチェリアは、すっかりぐるぐるになってしまった頭をぷるぷると揺すって。
 睨めつけるは、大きな大きな竜の姿。
 なんだか沢山に見えるけれど、ううん、うん。
「あれが……あれがていりゅーヴァル……ヴァル……ヴァルなんとかね!? わたしがーやっつけてあげるのよ!」
「いや、違うとおもうが」
 その横で腕を組んで立ち。まあまあ冷静に突っ込んだのは、びったびたのびっしょびしょのクーラカンリであった。
「えっちがうの!? でもー、えーと、あれがわるいやつ、なのよね!?」
「ああ――、恐らく今回の異変の全ての元凶であろう」
「むむーっ、なら、わたひが、ばばーーんとやっつけるのよ! さあっ、行きなさーい!」
 ルルチェリアが納得した様子で、びしーっと竜を指差すと。
 三人のお子さま幽霊たちが、ぐんぐんと巨大化して――。
「ギャーーーーーーーーッ!! 待ちなさい! マイ!! その図体でわたしの上に乗ろうとするんじゃなーーいッ!!」
「おい、お前! ちょっと! なんだこいつ、俺を殴ろうと、待て、待て待て待て!!!」
 竜の方へと向かったのは、メイだけ。
 マイとタクロウはルルチェリアとクーラカンリを追い出して――。
「ええいっ! クソッ、仕方があるまい――、ついてこいっ!」
「ひゃああああーー、まって、まって、わたし敵じゃないからーーっ」
 幽霊を引き連れたまま、クーラカンリとルルチェリアは竜の元へと駆け出した。

「わー……大きいな、……お祭りかなあ……」
 何やら水音が渦巻いている。
 何やら楽しげな声が聞こえる。
 はらはらと光がスキアファールの周りを心配そうに揺れているが、とてもじゃないけれどスキアファールは立ち上がれそう担い。
 ふわふわする頭。
 ぽわぽわする体。
 あったくて、気持ちが良くて。
 いい匂いがするけれど――。
「あれ、が、多分、えーっと、戦わないと世界が滅びるヤツ、だよな?」
 なんとかスキアファールが動ける範囲で首を動かすだけでも確認できる、巨大な竜。
 アレが今回の異変の元凶に違いがないのだけれど――。
「いや、ううん、きみが悪い訳じゃないよ。……ただ、座りこんだのがちょっとマズかっただけで……」
 光に話しかけるスキアファールは、だんだんうつむく事くらいしかできなくなってきた。
「酩酊なんてきみは初めてだろうから……。……あれ、なんで私きみをここに呼んだんだっけ……?」
 巨大な竜が何頭も居るように見える。
 体がダルい。
 なんだか無性に踊りたいけれど、まず立ち上がることすら出来ない。
 視界がかくん、と揺れて顎が倒れた事だけ解る。
 このままでは座ったまま前向きに倒れてしまいそうだから、なんとかゆっくりと壁に背を預け直したスキアファールは、細く細く息を吐いて。
 擡げた首は、昏い空にぽっかりと浮かんだ白い月を見るばかり。
 視界の端っこで竜がぴかぴかしているのも見えてはいるけれど――。
「…………」
 ほけーっと息を吐いて。
 ああ、このままでは本当に何もしないまま世界が終わるか、世界が救われるかしてしまいそうだ。
 眩しいなあ。
 ぴかぴかしてるなあ。
 はたはたと光が肩に寄り添ってくれたものだから、スキアファールは瞳を一度閉じて――。
「……歌うかあ」
 猟兵の皆の力を信じて。
 戦闘力を増す加護を宿した歌を、口ずさむ。
 みんな、みんな……頑張ってね。
 もう私は寝ないことで精一杯な程、動けないみたいだから……。

 歌が響いていた。
 歌が聞こえていた。
 力がみなぎるような。
 心が熱くなるような。
 微かな歌声が。

 桜の花弁が舞う中で、雪を吹雪かせ。
 刃と矢を纏って、踊る二人の影。
 ティオレンシアが腕を振るえば、合わせて矢が竜へと殺到する。
「きひゃははは、ほぉら、ほら! もぉっともっと、はでにちゃいまひょお、ねえ、ねえ、ねこちゃん! どぉっかぁん!!」
「ん、任せて。もっともっと派手に舞おうか! さあ、――騎士猫の剣舞、披露差し上げるにゃー!」
 クーナが細剣で剣舞を舞えば勇ましく巨大な敵に向かう、小さな勇士となろう。
「あああああああああああ、まって、まってまって、助けてえええええッッッッ!?」
「ぬああああああああああああッッッッ!!!」
 駆ける、駆ける、駆けてくるは、巨大幽霊に追いかけられるルルチェリアとクーラカンリ。
 追いかけてくる幽霊を竜へとけしかけようと勢いよく駆ける二人は、竜まで向かって一直線。
「ぴゃっ」
 ――しかし。
 竜目前で足を引っ掛けて転んでしまったルルチェリアは、ころんころんと地を転がってゆく。
 彼女を追いかけていた大きな幽霊少女は、勢いあまって竜へと思い切りぶちかましをキメて――。
 わあーーーーっ!!
 ぐらりと巨大な竜がその体を傾かせれば、幽霊の少年たちが遊んでという様に飛びかかって行く。
 その中心で地を蹴ったクーラカンリは、竜を睨めつけると固く固く拳を握りしめて――。
「ええいッッ!!! お前、お前のせいで俺まで追いかけられてッッ!!!! ええい、お前なんて――こうだッッ!!」
 とばっちりの八つ当たり。
 全身の筋肉が軋むほどに拳を引き絞ると、一気に振りかぶった拳を竜へと叩き込むッ!
 刃が、矢や、剣が、幽霊達が、棘が、竜へと叩き込まれる。
 ――嗚呼。
 酒も夢もさめるからこそ美しいもの。
「……酔ってばかりでは、本当に尊いものが何なのかも忘れてしまうぞ」
 ふ、と叩き込んだ拳へと息を吹きかけると。
 クーラカンリは竜を背に、瞳を眇めて立ち尽くし――。
「い、いたーい……」
 地面に寝っ転がったルルチェリアは涙目で、できてしまったたんこぶを撫でるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

壱織・彩灯
【横丁】

噫、可愛い仔ら、落ち着いたか?
甘やかすのは酔うてなくともいつでも俺は歓迎だが
ふたりの泪が止まったなら
袖引くぼんやりな焔璃の様子見ながら

……フルラ?
竜と共に誰かを視ているだろうか
くらりと酔う頭は自身も確かにまだ在るが、竜が持つは
……あれは、俺が好きな高級な銘柄の酒瓶か?
ほう、欲しいなあ
フルラを真似て奪ってしまうか
集めてみて近くで見遣ると、いや、ちがう
あれは甘味……団子?

ふふ、団子も俺は好きだからな
食べるが、其れは焔璃のだろう?
くれるならば、と気にもせずぱくりと頬張り

争奪戦ならば負けられんなあ
酌を出来る権利を得るのか?
ならばふたりを饗し更に酔い潰してみるもまた一興よ
勿論、愛情ゆえに、だ。


波紫・焔璃
【横丁】
うーん、何かまだぼんやりするぅ…
んー…フルラをあまやかさなきゃー
二人の服の端をひっそり摘まんだまま、謎の使命感を呟く

んんん?フルラ何か見えてるの?
え?竜の頭に何かいるの?
ぅ、目がチカチカするよぅ…
ああ!フルラー、危ないよー
提灯の眩しさに耐えきれず目を擦ったら、フルラから手が離れていてアワアワ

…お団子?フルラお腹すいてたの?
あたしに?…(もぐ)…んむ、美味しい
彩灯もお団子食べる?
食べかけ?…あ、そか(もぐむぐ)
…へへ、美味し?
団子を食べる彩灯ににへ、と笑って

なら、みんなでお団子食べる宴をしようよ
争奪戦かいしー
と言って開始するも、はたと我に返り
結局寂しくて二人に付いてまわっていた


フルラ・フィル
🍯横丁

酔いすぎた
泣きすぎた
頭がクラクラする―
彩灯にこれでもかと甘やかされた気がする
悪くない、むしろそちらに酔ってしまいそうな危ない感じがす…

あら、ミエルさま、ミエルさまがいるわ
竜の頭のところに座ってらっしゃる?
竜がくわえているのもミエルさま
フフフ、そこに居たの
よかった生きていてくれて

これでまた――あなたを■せる!

穿って、とかして『蜜の杭』
生命を甘い蜜に変える魔法と共に穿ち溶かして

毟るようにミエルさま―お団子を奪いとり首を傾げ
ミエルさまじゃない?
ミエル様が団子になった
幻覚か……?
焔璃、キミにあげる
彩灯も団子集めかい?

いいね
団子を一番多く持ってきたものがお酌をするのはどう?
団子争奪戦というわけだ



 いつの間にか、周りは湯に満たされていた。
 あたかも露天温泉かの如く、溜まり留まる湯はほこほこと湯気を纏って。
 甘い香り、甘い気配。
「噫、可愛い仔ら、落ち着いたか?」
 彩灯の声掛けにフルラと焔璃は同じ様に眦を擦り、ぷるぷるとかぶりを振った。
 頭がふわふわしている。
 眦が熱い。
 涙を零しすぎたのだろう、つんと沁みる鼻の奥。
 フルラはほう、と熱っぽい吐息を1つ。
「頭がクラクラする……」
「うー……なんかまだぼんやりするぅ……。でも、フルラをもっと、もっとあまやかさなきゃあ……」
 ぽんやりした頭でも、強い決意を口に。
 焔璃はフルラと彩灯の服の裾を、きゅっと握って二人を見上げるものだから。
「此れ以上に甘やかされたら、この世界では無く、二人に酔ってしまうよ」
 フルラはきゅっと帽子の鍔を掴んで、瞳を細めて肩を竦めた。
「おや。甘やかすのは酔うてなくとも、いつでも歓迎だぞ?」
「いひひ、フルラを甘やかして、甘やかしてー、溶かしちゃおうか?」
 くすくすと笑った彩灯が二人の頭をまたぽんぽんと撫でると、焔璃がくすぐったげに戯けて。
「アア、そう、……だ、」
 翠の瞳を真っ直ぐにあげたフルラは花が綻ぶように笑み、――そこで息を飲んだ。
 ぴっと獣の耳が立てられてる、獣の尾が動きを止めている。
 ――唇だけで、音のない言葉を紡ぐ。
 ああ。
 みえる、さま。
「……フルラ?」
「……何か、見えてるの?」
 彩灯と焔璃も彼女の異変に気がつけば、視線を追うように。
 その先は温泉と同じく、いつの間にか姿を現していた巨大な竜の頭の上だ。
 はらりはらり、竜の周りを桜の花弁が散り舞っている。
 ゆらりゆらり、眩い提灯が角の合間に揺れている。
 次こそフルラは、しっかりとその言葉を音と成して。
「ミエルさま、ミエルさまがいるわ!」
「えっ、誰か……何がいるの?」
 瞳を凝らした焔璃が竜のかがやきを見据えると、あまりにまばくて、まぶしくて。
 思わずぎゅっと目を瞑った――、その瞬間。
「アア! ミエルさま、ミエルさま!」
 一瞬で踏み込んだフルラは、甘やかな笑みを唇に宿し。
 髪を靡かせ花妖精の箒へと腰掛けたかと思えば、焔璃をその場に置いて空を駆けだしていた。
「ふ、フルラーーーっ!?」
 慌てる焔璃。そんな状態でもフム、と彩灯は冷静に、沈着に、竜の手に注目する。
「……あれは、酒……か?」
 ああ、しかもアレは中々手に入らぬ銘柄の酒瓶に見えるものだから。
 欲しいな、なんて、呟いて。
 彩灯も棍棒を肩に乗せたかと思えば、一気に地を蹴っている。
 なんたって今は、フルラも彩灯もしっかり酔っているのだから。
「あっ、ちょっ、ふ、ふたりともーっ、危ないよー!?」
 置いてゆかれて慌てた焔璃は二人の背へと声を掛けるが、競うように二人は竜へと迫り行き。
 空を裂くように駆けるフルラは、笑っていた、微笑んでいた。
 ああ、ミエルさま、ミエルさま、ミエルさま!
 そちらに座っていらっしゃるのもミエルさま!
 そちらに咥えられているのも、ミエルさま!?
 フフフ、ウフフ。
 そこに居たのね。
 良かった、良かった、良かった、良かった。
 これでまた、あなたを――!
 一息に魔法を竜の掌へと穿ち叩き込むと、敵に肉薄することも構わずフルラは真っ直ぐに飛び込み。
 竜の体を蹴って、跳ねて、一瞬で上り詰めながら。
 フルラに合わせて竜の指先へと棍棒を叩き込んだ彩灯は、目を丸くする。
 だって、そこに在ったのは。
「……ミエルさまじゃ、ない?」
 る、ぉ、ぉぅ、おお。
 低く鈍い鳴き声と共に、桜の花弁が吹雪きだす。
「……酒じゃ、無いな?」
 彩灯の囁く声。
 二人の瞳に見えていたのは、酔いによる錯覚、幻覚。
 彩灯は思わず手を伸ばして其れを捕まえてから、眉根をきゅっと寄せる。
 そう。
 それは勿論、人でもなければ、酒でも無いモノ。
 連撃に思わず竜が手放したのは、巨大な団子であった。
「――彩灯!」
 少しばかり冷静になったのだろう。
 空中を落ちてくる彼を箒で回収したフルラは、花弁の間を縫って。
 二人を待つ焔璃の元へと、一直線に空を駆け。
「…………え? 二人共、お腹すいてたの?」
 戻ってきた二人が大きなお団子を持っていたものだから、首を傾げた焔璃はぱちぱちとまばたきを。
 あんなに急いでお団子を取りに行ったのだから、よっぽど二人共お腹が空いていたのだろう。
 頬をこり、と掻いた彩灯は肩を竦めて。
「そういう訳じゃ無いのだがなぁ……」
「……見間違えてしまったんだ、これは焔璃にあげるよ」
 なんて、フルラが焔璃へと団子を差し出すと。
「え? あたしに?」
 再びぱちぱちと瞳を瞬かせた焔璃は、とりあえず一口ぱくりと齧って。
「彩灯も食べる?」
「ふふ、しかし其れは焔璃のだろう?」
 なんて言いつつも、差し出されれば彩灯も一口ぱくり。
「でもこれじゃ、フルラの分が足りないなあ……あっ! そうだ。皆でお団子を食べる宴をしようよー!」
 お団子をもう一つ齧りながら、焔璃は思いついた様子で二人に提案を。
「フフ、……いいね。竜から一番多く団子を奪ってきたものに、お酌をするのはどう?」
 団子争奪戦というわけだ、とフルラが何時もの調子で笑ったから。
 焔璃はなんだか少し安心して、にぱっと笑う。
「うん、そう! 争奪戦かいしだよ!」
「ふむ、争奪戦ならば負けられんなあ」
 こっくり頷いた彩灯が、再び棍棒を肩へと乗せれば、それは戦いの始まりの合図だ。
 睨めつけるは、巨大な竜。
 あの甘い香りの水流は、酒の匂いがする。
 二人に酌をさせて、団子と酒で、酔って、酔わせて。
 酔い潰してみるのもまた一興だろう。
 ――勿論、勿論。
 其れは深い深い愛情故に、と言うヤツだ。
 彩灯はにいと、その唇に深い笑みを刻んで。
「さあ、行こうか!」
「負けないよーっ!」
「ふふ、……そうだね」
 そうして三人は同時に地を、空を駆け出した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

呉羽・伊織
【狂宴】
もうヤダおさけくさい…鼻につく狐野郎と同じ匂いがする…寄るな!
(一応潰れ気味でも仕事は成さねばという意地か――将又酩酊し過ぎて幻覚でも見たか、半ば自棄気味に竜へUC)
お前…何飲み食いしよーとしてるの…?
わーん酔どれ野郎に絡まれても嬉しかないトラウマしかない!

あっ姐サン
ふらふらするから膝貸して介抱して~
…?
(掴んでしまったモノを見つめ)
うわぁ!!
(今日も元気に投げ飛ばした!)
幻覚じゃなくて現実かよ!
こんなので寝たら余計悪酔する!魘される!悪夢に様変わりだ!
アンタこそ飲むよか被って頭冷やしてろ

うっ…色んな意味で頭が…どーせならせめて介抱してくれる優しい女子の幻覚とか夢見たかった…(くらり)


千家・菊里
【狂宴】
これは実に食べ応えのある肉厚な――いや踊り食いに良さげな――いやいや活きの良い鰻がいたものですねぇ?(※竜です)
ふふふ、これは酒蒸しに丁度良い(UCで蒸すどころか盛大に炙った!)
む、逃げましたか
美味しく出来上がったら伊織にも一口ぐらい恵んであげようと思ったのですが、仕方ない
代わりにお酌してあげましょう(体に優しい白湯♨️をぐいぐいと)

おや、今晩は――二人とも(小町さんと新手の毛玉をみてにこり)
まぁ寝心地は良いと思いますけど、この戦場と渦中で寝たら違う意味で天国送りになっちゃいますからねぇははは(常以上に緩く笑う多分笑い上戸)

もう、寝落ちは駄目ですよ伊織
戦わなきゃ――現実と(序でに鰻と)


花川・小町
【狂宴】
世や身を滅ぼすのは御免だけれど、偶には思い切り酔うのも悪くないわね?
(炙り鰻…竜にも微笑み)
お酒?じゃあこれをどうぞ
(清宵ちゃんの携帯毒酒をなみなみと――酔いが深くてうっかり間違えた不幸な事故よ)

あら、ふふ、本当
それじゃ愉しく世界を救う序で、憐れな子にも優しく手を差し伸べて(面白可笑しく可愛がって)あげましょう

ご機嫌よう、菊ちゃんに伊織ちゃん
あら、枕ならこれ(そっとけだまくら――清宵ちゃんの尻尾を渡し)の方が寝心地良いわよ?
ふらふらがふわふわふかふか極楽夢心地に様変わりよきっと

ふふ、今日もお酒が美味しくて最高だわ(全く収拾がつかぬも気にせず酣気分で一差し舞い――序でに竜へさらりと追撃)


佳月・清宵
【狂宴】
酒も無しに酔い潰れて終いなんて滑稽は笑えねぇが――ま、其処は笑い話で済むよう変えてやるか
(言いつつ小町と月見湯中、竜の珍客が)
おう、飲み足りねぇならたんと煽ってけ
んで其の侭気分良く寝ろ

(毒酒で潰れかけの竜は放置し)
ところで小町、また宴に誂え向きの肴が見えるぜ

(小町の影で狐に変じ、さてどう興を添えるかと窺っていれば)

(この女、俺すら玩具にしようとはやってくれやがるとすぐ人に戻り)
酒なら幾らでも歓迎だが(手触りは兎も角気障り的な意味で)最悪な心地の地獄を味わう趣味はねぇよ
(言葉と裏腹に笑いつつ湯煽り)
――ああ、その温泉以上に沸いた頭に水かけてやろうか?

おい潰れんな
酔狂の本番はこれからだろ



 昏い空にぽっかりと浮かんだ白くて丸い、大きな月。
 湧き出した温泉は、甘い香りに満たされて。
 『醒』が失われた世界では、その湯すら酒のように感じられるもの。
 呉羽・伊織(翳・f03578)は空を仰いで、ふるふると首を揺する。
「アーーー! もうヤダ、おさけくさい……」
 その視線の先は、見上げる程大きな大きな竜の姿。
 噴き出した温水をガブガブと呑むその姿は、その匂いは。
 いつもいつもいつもいつもいつも杯を乾している、鼻につく狐野郎と同じ匂い。
「いやあ、これは実に食べごたえのありそうな、肉厚な……、――踊り食いに良さげな……、活きの良い鰻がいたものですねぇ」
 千家・菊里(隠逸花・f02716)は、獣を尾をふかふか揺らしてからから笑っている。
 ――常よりもよくよく笑むその姿は。
 彼らはいつも酔っ払っているような行動を取りはするが、今日は本格的に酔いに冒されている為だ。
 酒を呑まずとも、酔う世界。
 酒も無しに酔い潰れて終いなんて、詰まらぬ話であるだろうが。
 ――世界を救えば、それだって笑い話と成るだろう。
「ふふふ、これはこれは、酒蒸しに丁度良さそうですねえ」
 未だ笑みを宿したまま、菊里はくすくすと。
 暗器を手に伊織が、狐火を纏う菊里へ向ける瞳は半眼。
「お前……、何? 何飲み食いしようとしてんの……??」
 呆れた様に零す言葉は、きっと本気で呆れているのだろう。
 あのでかい竜を食べる気??? 本気????
 尋ねられた菊里は本気できょとり、と首を傾いで。
「え……? 美味しく出来上がったら、伊織にも一口ぐらい恵んであげようと思ったのですが……」
 仕方ないですねえ、と。
 そそそと伊織に寄り添った菊里は杯へと温泉水を注いでやる。
 ま、ま、ま、一杯。
「代わりにお酌でもしてあげましょうか??」
「ワーーーーン、いらない! 散れ、近寄るな! 酔どれ野郎に絡まれても、嬉しかーーナイ!! トラウマしかナイッッ!!!」
 それがその辺で湧きまくっている湯――酒だと伊織も知っているものだから。
 気兼ねなく菊里の手を払った伊織はわあわあと。
 いつもいつもいつもこのパターンで碌な目に在っていない事は、酔っていようが体の奥に刻まれているものだ。
 ――ちなみに鰻の血には、毒があるので生食はあまりおすすめできるモノではありませんよ。……いいえ、いいえ、竜ですけれども。
 わあわあと喚く、いつもの声が遠く響いてくれば。
 ころりころりと杯の中で湯を転がしていた佳月・清宵(霞・f14015)は、その杯を乾して肩を大きく竦め。
「はン……、また宴に誂え向きの肴が見えたモンだなァ」
 空になってしまった彼の杯へと酌をする、花川・小町(花遊・f03026)はくすくすと笑って首を小さく傾いだ。
「あら、ふふ。本当ねえ。折角だわ――世界を救う序に、憐れな子にも優しく手を差し伸べてあげましょうか?」
「……そうだなァ、今日はどうやって興を添えてやろうか」
 唇に宿った笑みを深めた清宵は杯をその場に置くと、その姿を獣へと変じて。そそそ、と小町の影へと隠れ――。
 そこへ歩んできたのは、予想通り伊織と菊里の姿であった。
 花笑みを唇に。
 小さく手を振る小町は、酒をくっと一口啜り。
「おや、今晩は――」
 そこに居たのが小町だけではなかったものだから、そこで菊里は言葉を止めて。
 ただ柔く、柔く、眦に笑みを宿した。
 なにも気づいていないの伊織ばかり。
 応じるように小町へ大きく大きく手を降ると、ぱたぱたと童のように駆けてきて。
「あっ姐サン! わ~、良い所に! ふらふらするから膝貸して介抱して~」
「まあ、ご機嫌よう、菊ちゃんに伊織ちゃん。ふふ、伊織ちゃんったら甘えたさんねえ」
 でも、と人差し指を立てて、まるで内緒の指。
 言葉を次ぎながら、小町は笑う。
「枕ならこれの方が、寝心地が良いと思うわよ?」
 ふらふらが、ふ-わふわのふかふか。極楽夢心地に様変わりよ、なあんて。
 小町が首根っこをひっつかんで差し出したのは、黒い毛玉。
 きっと、きっと、気に入ってくれるでしょう?
「ええー、何、何、姐さんがくれるモノならなんでも嬉し」
 でれっと目尻を下げて、伊織がそれを受け取ると。
 其れはぱちりと視線をコチラへと向ける。
 交わされた瞳は、イヤという程見覚えがある色だ。
「……?」
「……!」
 ――それは狐と成った、清宵そのものであるからして。
「うわあっ!?」
 伊織は思わず、大きく大きく腕を振るってオーバースロー。
「……ッ!」
 思いっきり投げ飛ばされた清宵は、人の姿に戻って舌打ち一つ。
 ――この女、俺すら玩具にしようとはやってくれやがる。
 地を蹴って体勢を整えると、小町を横目で睨めつけた。
「ちょっ、何!? 幻覚じゃなくて現実かよ!!!!! こんなので寝たら余計悪酔するデショ! 魘される! 悪夢に様変わりだからネ!?!??!?!」
 ぎゃんぎゃん吠える伊織の言葉に、ひいひい笑う菊理はお腹を抑えて。
「まぁ寝心地は良いと思いますけど、……この戦場と渦中で寝たら違う意味で天国送りになっちゃいますからねぇ、はははははは」
「うふふ、そんな、一度試してみれば良いのにねえ」
 いつも以上に楽しげに笑う菊理、小町もその様子を肴に湯を啜る。
「はァ……、酒なら幾らでも歓迎だが、野郎に寄り添われる最悪心地の地獄を味わう趣味はねぇよ」
 やれやれと腰掛け直した清宵は再び杯を手に。
 玩具にされてしまってさぞ居心地が悪いのだろうかと思えば、その唇には言葉とは裏腹、しっかと笑みが宿っている。
 真っ直ぐに伊織の瞳を覗き込むと、和らげた眦を向けて。
「ああ――それとも。――ああ、その温泉以上に沸いた頭に水かけてやろうか?」
「アーーーッ! アンタこそ飲むよか、その酔っぱなしの頭に水を被って冷やすべきダロ!」
 わあっと一気にまくし立てた伊織は、はあーっと大きく息を吐いた。
 ぐらぐら揺れる頭。
 ぐるぐると傾く体。
 酔い切った体で連発させられるツッコミが、体が付いていっていないのだ。
 へた、とその場に崩れるように伊織は座り込み。
 体がぐにゃぐにゃになってしまったかのよう。
 ふわふわ頭が溶けてしまったかのよう。
「う、ウウウウ……ッ、どーせなら、どーせなら……ッ、せめて、せめて……介抱してくれる優しい女子の幻覚とか夢を、見た、かった……」
 くてん、と伊織がその場に倒れ込んでしまえば。
 菊里がはははははなんて笑いながらしゃがみこむと、その頬を突いて、突いて。
「もう、寝落ちは駄目ですよ、死んじゃいますからね。ねえ伊織、戦わなきゃ――現実と」
 あと敵も未だ健在ですし。
 つん、つん。
 突かれてめちゃくちゃ嫌な顔をする伊織の横には、じわじわ広がる涙の痕。
 エーン、吐きそう~~。
「ア? おい、勝手に潰れんな。酔狂の本番はこれからだろうが」
 鷹揚と酒を煽りながら、やれやれと手を振る清宵は肩を竦めて。
 その言葉にめちゃくちゃ嫌な顔をする伊織は、声にならぬ声。
 エーーン、もう帰ってくれ~~~。
 それはまるで、いつもどおりの光景。
 世界の果てでも、変わらぬ皆に小町はふふ、と楽しげに鼻を鳴らして。
 くうるり回って、気分も良さげに薙刀を振るい舞う。
「はあ、ふふ、――今日もお酒が美味しくて最高ねえ」
 なあんて湯を啜ると、ちゃっかりと竜へと一撃を叩き込むのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

橙樹・千織
千鶴(f00683)さんと

んー…?あめ?
ほわほわ、香りに和んでいれば降ってくる温泉
ふふ、この雨あったかいねぇ…?
あれ?お酒の匂いする??
ぽやーっとそれを見上げ、ふにゃり

ふふふ、ちづるも私もびしょ濡れ
風邪ひいちゃうかな?
あったかいから大丈夫かな…
ぴぴぴ、と耳がはためいて

これは…さっきよりも眠くなっちゃうねぇ
ほどよい暖かさでうとうと
んー…ねむぃ……ねる…
ぽて、とその肩に寄りかかり夢うつつ

んんん、何かがぴかぴかまぶし…?
眠りを妨げる光に瞼をあけて
はわ、ちづるあれ見て…竜神さんの角で提灯が灯ってる
ふふ、竜神さんも提灯も楽しそうねぇ
空か…ふふ、確かに。一緒に飛んだらもっと楽しそう
ふわほわ、いいここち


宵鍔・千鶴
千織(f02428)と

降ってくる雫は徐々に
滝みたいにさばっとふたりを濡らしてゆく

温かな水、いや、酒は
更に酔いを回すよう
……ん、あったかい
濡れて張り付く彼女の髪を指先でそっと拭いながら
萎んでしまった耳に
ぼんやりとした頭のまま
可愛いなぁなんて思ってしまう
自分もぷるぷると首を振って雫を落として
風邪、ひいちゃうかな
でも身体はぽかぽかするねって
同じようにゆるく笑う
ちおり、ねむい?
ねる?って肩を貸すように

ん、ほんとだ、
角が光ってきれいだ
あのひかりと竜と
空を飛べたらきっとすごくたのしいね
ふわふわ、微睡み
いいここち
じゃあまずあの竜に
降りてもらわなきゃって
ねむい思考のまま
操る相棒の刀は冴えたように負けじとひかる



 ほたり、ほたり。
 二人へと降り注ぐ雫は暖かく。
 千織は狭めた瞳をやんわりとまたたかせて、空を見上げた。
「んー……? あめ……?」
 空には大きなまあるい満月。
 昏いそらにぽっかり浮かぶ其れは、他に雲一つ見当たらぬ。
 ――いいや、いいや。
 世界は湯気に霞んでいた。
 降り落ちる雨は、暖かくて、優しくて。
 ほわほわ、ぽわぽわ、あまーい香り。
「ふふ、この雨あったかいねぇ……」
「ん、ほんと……あったかい」
 吐息がかかるほどの距離。
 千織の頬にへりついた髪をそっと拭った千織は、その唇に笑みを宿して。
 甘やかな雨、暖かな雨。
「……あれ、これ、お酒のにおい……しない??」
 はた、と気がついたように千織が顔を上げた頃には、二人はもはやびしゃびしゃの濡れ鼠であった。
 よくよく見れば、空に向かって水柱が上がっている。
 間欠泉なのだろう、と蕩けた頭で判断するも、それ以上は深く考える事も出来ない。
 気持ちが良い、心地が良い。
「ふふふ、ちづる、びしょ濡れだよ」
 風邪をひいちゃうかな、あったかいから大丈夫かな。
 なんて、すっかりしぼんでしまった耳をぴぴぴ、とはためかせる千織。
 その姿がなんとも愛おしくて、可愛くて。
 甘い甘い酒の雨に酔わされた頭は、ぽんやりと彼女を見つめてしまう。
「うん、ちおりも、びしょ濡れだ」
 風邪ひいちゃうかな、でも体はぽかぽかするね。
 千鶴はくすくす、ゆるーく笑って。
 そんな千鶴の姿に安心したかのように、千織は掌で口を覆うと大きな大きな欠伸を噛み殺す。
「んふふ、……ふふー……、ねえ、ちづる……これは……さっきよりも眠くなっちゃうねぇ」
 暖かな雨は、まるで打たせ湯の如く。
 体がぽかぽかと温まっているのは、酔いのせいもあるだろうか。
 千織は千鶴の肩へと、自然と寄り添って――。
「ねむいなら、ねる?」
「うんー、……ねむぃ……ねるぅ……」
 うとり、うとり。
 千織は千鶴の肩の上で、船を漕ぐ。
 しと、しと。
 ざあ、ざあ。
 空より溢れる湯は、川の様に流れを作って。
 二人の間をさらさらと流れ行く。
「……んー……」
 しかし、しかし、どうにも何かが遠くで光っている。
 瞳を瞑った千織の瞼裏で、何かがぴかぴかと瞬いている。
 眠りを妨げる光に、千織はゆっくりと瞳を細めて開いて。
 あ、と細く細く彼女は声を上げた。
「はわ、ちづる! あれ見て……、竜神さんの角で提灯が灯ってるよ」
「ん……ほんとうだ、……角がぴかぴか光って、きれいだねえ」
 千織の指差す先には、彼女が言う通り。
 赤に白に、提灯がゆらゆらと揺れていた。
 楽しげに酒を呷る竜神は、笑うように一声鳴いて。
 瞳を薄く開いた千鶴も、つられるようにほんわりと笑って。
「ふふ、竜神さんも提灯も楽しそうねぇ」
「うん、……あのひかりと、竜と、空を飛べたら……きっとすごくたのしいねえ」
「……ふふふ、確かに。一緒に飛んだらもっと楽しそうねえ」
 二人寄り添って、うと、うと、夢見心地に揺れながら。
 ――なら、あの竜には降りてきて、もらわなきゃ。
 千鶴は相棒たる刀をすいと擡げると、花弁と解け溶ける刃。
 ねえ、二人であの背に乗って、一緒に空を。
 千織も笑んで応じれば、とろける花弁が風に舞いあがり。
「ふふふ、楽しみね」
「うん、たのしみだ」
 とろけた紫と橙の瞳の視線が交わされて、二人の言葉は溶けて混ざる。
 刃と化した花弁は、ひゅうるりと風に乗って――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ニーナ・アーベントロート
亜厂さん(f28246)と

酔ってはしゃいで、気付けば随分遠くへ
…このいい匂い、なに?
光に集まる蛾のようにふらり惹かれた先で

あっ、あのドラゴンさんだけなんか楽しそーなことしてる
酒精の魅力は未だ知らないけれど
運動後の一杯(水)は美味しいに決まってる
皆を吹っ飛ばして自分だけお楽しみとか、ずるっこだよー!
あたしも全然酔い足りない、と亜厂さんに首肯を返し

ここはひとつ竜対決を
【Agito】でドラゴンランスに生命力吹き込み
体長5m程度の竜に変える
亜厂さんの手中で生まれる紙製の竜を見て、にっかと笑い
せーの、で仕掛けようと悪戯っ子の顔して
『Dämmerung』、全力で突進だ!
片方で気を引いて、背後を取っちゃえ


五月雨・亜厂
ニーナ(f03448)と

おやおやここは追いかけっこの終点ですかな
いい運動にもなりまして
くんくん薫るはやはり酒でしょか?

ほほう、これまた大きな竜ですこと
そして見えるは水浴び酒浴びなんとずるい
分け前はやはり貰うもの
まだまだ酔えましょ?
とニーナに同意求め

たしか折り紙で作れたよな、いやどうだったか
作ろうにも酔った手付きではふにゃへにょ竜しか作れまいとも
ハリボテにはなりましょと、ドラゴンランスの横で小さい竜がこんにちは
こういうのは勢いともいいましょう?
ニーナと目配せ笑い合う
悪戯なら得意も得意、任せにゃさい!
こっそり作った二頭目もニーナに合わせ背面へ
ふぇいくはお任せ

竜には竜を
さあさあ何方が手強いかご覧あれ



 ――またたびの香りだって、良い香りだけれど。
 この街に漂う香りだって、よい香り。
「おやおや、ここが追いかけっこの終点ですかな?」
 亜厂が空を仰げば知らぬ間に昏く染まった空に、ぽっかり白くて大きな月が浮かんでいた。
 獄卒達との追い駆けっこは、もうお仕舞いなのだろう。
 代わりに響く鈍い鳴き声と、温い水の流れ。
 時折上がる水柱は、湯気を纏って街に湯を満たして、溜めて。
「……このいい匂い、なあに?」
 それは何とも、魅力的な香りで。
 くん、と鼻を鳴らしたニーナは首を傾ぎ。
 にゃあごと湯を掬った亜厂は、ぺろりと一口舐めて。
「うん、これはやはり酒の匂いでしょうねえ」
「へえー……これが? 甘いにおいなんだねえ……」
 夜と共に。
 竜と共に。
 街へ満ちたこの湯は、どうにも酒の香りがする。
 それはこの世界が『醒』める事無き酔いに満たされている為でであって、実際にはただの湯ではあるのだけれど。
 今ここで感じる感覚で言えば、まるで本物でしかない。
 まだまだ酒の味等知らぬニーナは、ただただ知らぬ憧れに瞳を瞬かせるよう。
 見上げた水流の中心では巨大な竜が、がぶがぶと大口をあけて。
 猟兵達に与えられた傷に構う事無く、酒をかっ食らっている。
「……しかし酒で水浴びなんて、なんとずるい!」
 亜厂の言葉にニーナも、もう、と拳を掲げて。
「うんうん。あのドラゴンさん――皆を吹っ飛ばして自分だけお楽しみとか、ずるっこだよねえ!」
「そうにゃ、そうにゃ。――これだけの量を独り占め、なあんてずるっこにゃ」
「ね、ね、亜厂さん」
「ええ、ニーナ」
 橙色と琥珀の視線が交わされれれば、どちらともなく悪戯げに眦を和らげて。
 どちらともなく、二人は一歩踏み出した。
「――まーだまだ、酔えましょ?」
「うん! あたしもまだまだ全然、酔い足りない!」
 ぴぴぴと揺れる亜厂の耳。
 その言葉に頷いたニーナは、にいっと唇を笑みに擡げて。
 ――まだまだ酒の味などニーナは知らぬけれど。
 運動後の水の旨さは知っている。
 握りしめた槍の、影のように真黒な柄を柔く撫でると、彼女は力を注ぎ込む。
 桃紫に滲む刃が瞳と成り。
 きらりと輝いたかと思えば、竜の姿を取り戻したデンメルングが一声鳴いた。
「さあ、竜対決だよ、デンメルング!」
「竜対決とな?」
 亜厂がううん、と小さく唸って。取り出したのは数枚の折り紙だ。
 たしか、たしか。折り紙で作れたよな、いやどうだったか。
「……亜厂さん?」
「にゃにゃにゃ、すこしおまちを」
 酔いに酔った手先でなんとか、へんにゃりふにゃふにゃ。
 小さな小さな竜を折り生み出した亜厂は、ハリボテ程にはなりましょう、にゃんて。
「……そう、こういうのは勢いともいいましょう?」
「ふふ、そうだねえ」
 なあんて。
 二人は目配せ合うと、もう一度笑い合って。
「さあさ、化かし事ならちょいとばかし腕に覚えがありますにゃ。――悪戯なら得意も得意、任せにゃさい!」
「ようし、――デンメルング、全力突撃ッッ!」
 ひゅうるりと折り紙の竜が、巨大な竜を睨め付ける。
 竜には竜を。
 デンメルングが勢いよく地を蹴ると、巨大な竜へと向かって飛び出した。
 さあさあ何方が手強いか、とくとご覧あれ!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

霧島・ニュイ
クロトさんと(f00472)

温泉だー!!温泉が湧いたー!宴だー!!
入ろうかな、チョビ、温泉だよー
(服に手をかけるが、龍を見て止まって)

ちょっと温泉独り占めしないでよー!
しかも温泉酒なの?のみたいなー。
諦めずにズリズリと這って
一口舐めればうまーい!
チョビも一緒にてちてちと飲んで酔っぱらいモード
えー、僕もお酒飲みたいークロトさんも飲もうよー。温泉カクテル作ってー!トマトジュース入れてー。
温泉から離れずに、手てちてち

ふわふわと勿忘草が舞い、温泉に入るべく邪魔な龍にどどどど
隙あらばチョビに抱きついたりクロトさんに絡んだりとべろんべろん
保護者に見切りは教えてもらったので、攻撃は動きをよく見て見切る


クロト・ラトキエ
ニュイ(f12029)と。

…酒?
酒、ですと…?
えぇい!大の大人…竜神…?たる者が、
幼気な若人、未成年等の前で酒に溺れるだけでも大罪というに…!
ニュイもっ!どさくさに紛れて呑まない!!
…これは温泉?
ここまで酒気に満ち満ちて、そんな言い訳が通じるとでも…?(えがお)

…あぁ、もう。諸悪の根源はアレですよね。
というわけで倒します。
もうボッコボコです。
桜の樹の位置、風向き、敵の視線や攻撃の予兆・挙動…
凡ゆるを見切り、
UCで炎の魔力を纏わせた鋼糸舞わせ、花弁を焼きつつ、
オロチへも糸を仕掛け、巻き斬り、断つべし!

(酔うと…やっぱり真面目、かも…?
寧ろずっとこの侭の方が世の為人の為では?とか言ってはいけない!



 竜が引き連れてきた夜に、月は輝き。
 地より吹き上げる温かな水柱は、街を湯で満たしだす。
 低い場所には湯が溜まり。高い場所にはさらりさらりと湯が流れ。
 茶色い毛並みのもちもちボディ――尾をふかふかと揺らすチョビを抱いたニュイは、わあーーっと歓声を上げた。
「チョビ! クロトさん! 温泉、温泉だよーー! 宴だーーッッ!」
 そわそわ、わっくわく。
 早速服を脱ごうとへにゃっと表情を笑みに崩したまま、ニュイはチョビを地に置いて。
「チョビも入りたいよねー、温泉だもんねー、楽し「…………ニュイッッッ! 待ちなさいッッッ!」
「えっ?」
 響く、響くはクロトの制止の声。
 びしっと腕を差し出したクロトは、酷く真面目な表情に座りきった瞳。
 ニュイがぱちぱちと瞬きを重ねて――。
「えぇい、それは温泉に非ずッッ! ここまで酒気に満ちた湯に対して、これは温泉だからセーフなどとッ! そのような言い訳が通じる訳――無いでしょうがッッ! 未成年の飲酒描写に対しての抜け穴的にどうにかなんとかしようとするのをおやめなさいッッッ!!!」
「……クロトさん?」
 えっ、すみません。
 恐ろしく正論を叩き込んでくるクロトの言葉を確かめるべく、ニュイは湯を掬ってこくりと喉へと流し込み。
「あ、ホントだ! おいしーい!」
「コラーーッ!! ニュイーーッ! どさくさに紛れて呑まないッ!」
「えーークロトさんのいけずーー」
 びしっとクロトに注意をされて、ニュイは唇をとがらせて湯の表面をてちてちてち。ぱしゃぱしゃ。
「僕もお酒のみたいよぉー、ずるいよー。ねーねーねーねー、クロトさんものもうよ~~。トマトジュースいれて、温泉カクテルつっくろーよーう」
 ニュイはぶうぶう、未成年の主張。
 主が苦情を行う横で、チョビは自分には関係が無いと言わんばかりにちびちび湯を舐めている。
 え~、チョビずるいよ~。
「ええーーーいっ、駄目です! 駄目ですよッ! あぁ、もう……。こうなれば諸悪の根源を先に叩くべきでしょうね……」
 最早、クロトは笑顔を浮かべて。
 睨め付ける先は、とぐろを巻いて温泉の噴き出す水柱に、大口を開けてがぶがぶと飲んでいる巨大な竜だ。よく見てみると、時折酒の合間に団子まで齧っている。
「はぁ……、大の大人……大の……龍神……?? たる者が……ッ!」
 すこし自信なさげな疑問符が飛び交ったが、それはそれ。
 かっと青い瞳に使命感を燃やしたクロトは、人差し指で竜を指し示すよう。
「幼気な若人、未成年等の前で酒に溺れるだけでも大罪というに――、挙げ句には無差別に振る舞い酒とは! あなたの存在はあまりにニュイの教育に悪すぎますッッッッッ!」
「えー、クロトさんそんな事気にしてたの? 僕は、温泉独り占めずるいなーくらいしか思ってないのにー……」
「諸悪の根源を滅しましょう。……酒に溺れる者は身を滅ぼすと言う事、身を以て理解って頂きますよ。――ニュイの教育の為にもッ!」
「わー、クロトさん目が本気~」
 チョビをぎゅっと抱き上げて、へにゃへにゃニュイは笑っているけれど。
 彼の言うとおり、クロトの瞳に宿った色は本気の色だ。
 大きくしゅるりと腕を払ったかと思えば、鋼糸が張り巡らし――。
 はらりと零れ始めた桜の花弁に、炎の魔力を纏わせた糸を叩き込むと灼き尽くす。
 火花と化した花弁を背負って、クロトは低く低く唸るように言葉を紡いだ。
「――悪竜退治を始めましょう」
「うんうん、邪魔な竜はちゃちゃーっと倒して、僕も温泉にはいりたいしねー」
 ニュイがチョビを地に下ろしてやると、勿忘草の花弁に溶けた得物を侍らせ、指揮するように。
 腕を大きく振るえば、クロトの言葉に同意を重ねて――。
「……温泉? 温泉ですと……!? こんな酒の水たまりにニュイを浸からせる訳にはいきませんけれど!??? 駄目ですよッ!??」
「ワッ!! 今日のクロトさん、勢いすごいねっ!?」
 クロトは同意されてようが、わっと注意。
 やっぱり酔っ払うとクロトは真人間になるようで、喧々囂々。
 そんな彼等を尻目に、チョビはお酒を舐めて飲んで良い気分。
 お腹をみせて、ころんと転がって。
 うと、うと、うと。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴィクティム・ウィンターミュート
・冬梅酩酊

っぁぁぁぁ……ぐわんぐわん揺れるぜ…
ほんっとぉーにお前には…くろぉーをかけるなぁ…
バカめんどくせぇー…雇い主の為に…手ぇ尽くしてくれてさぁ…

なんつーか…俺にとっては希望の光みたいなもんで……
俺を生かしてくれる、一等でかい楔さ……
だから…だから思うんだよ…強くな
どんな形でも…どんなに遠い場所でも…お前なりの幸せを掴んで欲しいのさ…
心おきなくそうできるように、ちゃんと独りでも生きていけるようになるから…安心、しな…

俺を見ててくれて…ありがとうなぁ……
はぁぁぁぁ…さて、ちゃんと仕事は…しねーとな…
自慢の従業員お手製の…世界最高の破魔さ…
酔いを覚ましてよぉ…さっさとあの世に還りな
はぁぁ…


徒梅木・とわ
・冬梅酩酊

おいおい……今度は神仏扱い、か?
幻を見て、るって言うのなら――

ああもう、好き勝手……言って
言われる覚悟は、あるんだろうなあ
……すーーーっ

方向性が可笑しいだろうそれどうして独りなんて言葉が出て来るんだ他の何かを見つけるとかもっとあるだろうこう!
人の幸せを願う前に自分の幸せを願えるようになれってんだ!
それともなんだ独りになるのが幸せってかいやそれは違うよなあなんてったってとわの事を希望だの楔だの言ったところだしなあ!
今がいいならそれに甘んじろ! 目指すなら上を目指せ!
出来ないって言うなら、いいかよく聞け!
とわが!
キミを!
幸せにしてやるからな!
覚悟しておけよ!!

…………寝る!!!(すやあ)



 世界が朧気な湯気に包まれて。
 街へと流れ込む湯は、あたかも露天温泉の如く。
 敵の生み出した間欠泉より噴き上げる温水は、濃い酒の香りに満たされている。
 ――それはただの温泉水では、あるのだが。
 最早、水すらも酒と錯覚をする程。『醒』めること無き酔いに沈んだこの世界では、噴き上げる温泉など酒以外の何者でも無いのであろう。
 甘い香りは、酔いを加速させるよう。
 ぐわぐわ、ぐるぐる。
 揺れる視界。
 揺れる身体。
 生まれたての子鹿のような足取りで、ヴィクティムは掌をこめかみに当てて。
「ほんっとぉによぉー……、お前にゃぁ、くろぉーーをかけるよなぁ……。バッッカめんどっくっせぇー雇い主の為に、手ぇ尽くしてくれてさぁ……、俺は、ほんと、感謝してるだぜ……?」
「はいはい、もー、しょぼくれるのは禁止だと言っただろう?」
 もう、と。
 とわは肩を上げて、下げて。
 ずっとヴィクティムがこの調子のものだから、とわは眉をきゅっと寄せっぱなし。
 褒められるのは嫌いでは無いけれども、こうも下から捻り抉り込むような賛辞はどうにも困ってしまうだろう。
「ちげえぇよう、感謝だよ……、なんっっつーかよう。お前は俺にとって、希望の光みたぃなもんでさぁ……、俺を生かしてくれる……いっとうでっかいなぁ、楔なんだよ……」
「おいおい、次は神仏扱いかい?」
 やれやれととわは瞳を狭める。
 ゆるゆると左右に首を振ったヴィクティムは、その顔をじいっと見つめて。
「だから、だからさ、……余計思うんだよ、強く、強くな」
「……うん?」
「どんな形でも……どんなに遠い場所でも……お前なりの幸せを掴んで欲しい、ってなぁ……。お前がさぁ……心おきなくそうできるように、俺は……ちゃんと独りでも生きていけるようになるから……安心、しな……?」
「……ああ、もう……」
 ヴィクティムは、まっすぐとわを見やったまま言葉を紡ぐ。
「俺をみててくれて、……ありがとなあ」
 それから大きな大きな溜息を吐くとヴィクティムは、とわより預けられた霊符を手に。
「さて、ちゃんと仕事はしねーとなぁ……」
 なんて、踵を返そうとすると――。
 その肩が、ガッと捕まれた。
「好き勝手言ってくれるものだね。――言われる覚悟は、……あるんだろうなあ?」
 振り向いた彼の顔をしっかと見据えたとわは、すーーーーーーーーっ、と。肺にもう入らないと言うほど、深く深く空気を溜め込んで。
「キミの願うとわの幸せの方向性が、可笑しいだろう!? どうして独りなんて言葉が出て来るんだ、他の何かを見つけるとかもっとあるだろう! こう! 人の幸せを願う前に、キミは自分の幸せの一つも願えるようになれってんだッ!」
 ノンブレスで言い切ったとわの視線は、噛み付くようにヴィクティムを見つめたまま。
 もう一度大きく息を吸って更に言葉を紡ぐ――否、吼えた。
「それともなんだい? 独りになるのが幸せってえかい!? いいや、それは違うよなあ! なんてったってキミは、とわの事を希望だの、楔だのと、たった今言ったところだしなあ!」
「お、ぁ、」
 ヴィクティムが相槌を挟もうとする、その言葉すら許さず飲み込んで。
 とわは彼の肩を掴んだままその顔を寄せてると、彼と真っ直ぐに真っ直ぐに対峙する。
「――今がいいなら、それに甘んじろ! 目指すなら、上を目指せ! それも出来ないって言うなら……、いいかよく聞け!」
「は、はい」
 思わず敬語で頷くヴィクティム。
「とわがッッッッッッ!」
 とわは彼の肩を離さない。
「キミをッッッッッッ!」
 とわは彼を独りにしてやらない。
「幸せにしてやるからなッッッッッッッッ!!!」
 言い切ったとわは、ヴィクティムの肩をぱっと離して。
「覚悟しておけよッッ、わかったね!?」
 そうして踵を返すと、ぱっと上着を被って丸まった。
「…………寝るッッッ!!!!!!」
「お、おう」
 ヴィクティムは言葉の勢いに押されて、瞳を瞑ったとわを止める事すら出来ない。
 程なく、小さな寝息が響きだし――……。
「……仕事、すっかあ……」
 ヴィクティムはゆらりと、竜を見上げた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

都槻・綾
09129/ユルグさん

やぁ、豪快
燗酒の間欠泉でしょうか

滾々と吹き上がる湯水を
やんやと拍手で持て囃すも
甘い酒精の香りは
酒であって酒でない

さても
辺りは祭りの如く賑やかで
楽しい気分には違いないから
宴も酣に興を添えて
笛を一奏

此れからの時季の燗は勿論
熱い火鉢の前で
敢えての霙酒も捨て難いですねぇ
ユルグさんのお好みは?

合間に暢気な酒談議
彼の朗らかな笑い声が
酒以上に私を酔わす

軽やかに弾む音律
緩やかな凪の調べ
変調する笛の音に合わせ
右、左と踊る千鳥のような足捌き
ひとつひとつに呪が籠る反閇

召喚するのは炎の羽搏き
灼熱が竜神を満たす酒気に灯れば
篝火のように燃え盛って
ユルグさんの刀身に映る煉獄は
たいそう明々と美しかろう


ユルグ・オルド
f01786/綾と

おーこりゃア見事なもんで
砂丘を酒にかえたかね

パチンと指鳴らして見霽かす
飛び込んだら夜も明けねェわ
盃が足りねェのが惜しいネ
乾せなきゃいっそ憎いもんで

冬の先触れみてェな夜にゃ熱燗がイイな
火の傍なら同じ月日を重ねた赤とかネ
夜長に重ねりゃ話の分だけ深くなる
酒じゃアなくってんとに残念だわァ

心地良い笛の音に、漂う酒精の招く夢
愉快になるのは重ねた記憶があればこそ
その時の気持ち一つで酔えるらしいぜ?

尋ね引くのはいつかの剣閃
炎を焚いたら引導といこう
うつ呪い程の洗練さはないけども
こうも派手に燃したなら転寝する間もねェでしょう
音無く裂く鱗は八十一手
足りない分は、酔いが回って数え損ねたかなつって



 竜の一撃によって、噴き出した間欠泉は水柱を吐いて。
 街へと流れ込む湯気と湯は、低い場所に流れこみ、溜まりこみ。
 それはあたかも、元より幾つもの露天温泉が並ぶ湯治場のような有り様。
 竜に引き連れられた夜に、月がぽっかりと世界を照らせば。
「やぁ、豪快ですね」
「おー、見事なもんだなァ」
 やんやと手を叩く綾とユルグは、甘い酒の香りに誘われるよう。
 噴き出す湯水の全てが、『醒』を失ったこの世界では最早酒と成ってしまったように感じられるもので。
 竜が楽しく成ってしまう気持ちも理解出来なくも無いのだ。
 これほどの量の熱燗が次から次から溢れ出しているというのだから。
「こりゃァ、飛び込んだら夜も明けねェわ。まったく、盃が足りねェのが惜しいネェ」
 くっと肩を竦めて、ユルグは嘯くよう。
 乾せぬならば、いっそ憎いだなんて。
 いいや、いいや、本音かも知れぬ。
 楽しげに揺れる竜の提灯に、瞳を狭めた綾は笛を手に。
 甘い香りは、更なる酔いへと彼等を誘う。
 笑むユルグはその手に得物を。
 眦を和らげて、瞳を薄く閉じて。
「こんな冬の先触れみてェな夜にゃ、熱燗がイイな」
「良いですねえ。しかし此れからの時季燗は勿論、――熱い火鉢の前で、敢えての霙酒も捨て難いでしょう」
「んふふ、確かに。火の傍なら同じ月日を重ねた赤とかネ」
 酒の好みを交わしあい。
 酒こそ飲まずとも朗らかな笑い声が、二人を酔わすだろうか。
 夜長に重ねるのならば、話の分だけ深くもなろうに。
「ああ、ほんっとに酒じゃァなくって、残念だわァ」
「ふふ、本当ですね」
 綾が雅やかに微笑めば、高らかに軽やかに笛の旋律を響かせ紡ぎ出す。
 それは祭りのように賑やかな竜へと送る、祭り囃子だ。
 音律に合わせてあたかも舞踏の如く、ステップを踏んだユルグはその背に沢山の鈍銀色を背負い。
 ――この心が愉快に跳ねるのは、世界に満ちた甘い香りのせいでは無い。
 重ねた記憶がしかと心に宿っているからこそ、その時の気持ち一つで酔えるそうだ。
 ならば、今のこの気持ちはきっと『酔って』いるのであろう。
 揺れるぼんぼりに熱浮かされるように、舞わねばと心が訴える。
 急かされるがままに綾の足取りは、呪いの籠もった反閇と成り。
 喚びだされるは、灼熱纏った炎の羽撃き。
「さあ、そろそろ引導といきましょうかネ」
 応じるように綾の紡ぐ旋律が、変調を重ねて。
 しるべの如く、かがり火の如く。
 炎の彩りを纏った鳥は、まっすぐに敵へとその翼を駆けさせる。
 幾つもの剣戟が煉獄を映し、照り映えれば。
 その鮮やかな色に綾は瞳を眇めた。
 音も無く、八十一手も焼き斬り裂いてみせようか。
 まあ、すこうしばかり足りない刃は、そう。
 今、酔ってるモンで少しばかり数え損ねて、おまけしてしまったのだろうよ。
 なァ。
 そりゃァ世界を終えて仕舞うほど、酒に酔うは魅力的ではあろうが。
 世界が無くなってしまえば、飲む事も出来なくなろう。
 酒ごと燃えてしまえ。
 酒ごと断ってしまえ。
「さァ、おやすみ」
 笛の音に呼び出された大量の炎の鳥は、翼を大きく広げて。
 返す手で再度跳ねた刃と共に、敵へと殺到する。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ダンド・スフィダンテ
【陽】

(ごみ捨て場からキス魔に抱っこされてここまでやってきた190cm)(すごいぞ羅刹!強いぞ羅刹!)

ミューズ、俺様この状態で、戦えると思う……?
俺様は、無理だと思う……むりだよぉーー(ひっく、ぐずぐず)
ふ、ふふ、ミューズくすぐったい、くすぐったいって、ふふ
(めっちゃキスされて自己肯定感が少し上がる酔っ払い)
それ、取ってくれ。
ああ、ありがとう。
(上がったし生きると誓ったので、投擲の構えを取る)
(これね、その辺にあった鉄パイプ)

ああ、ああ、申し訳無い。歓談を歓談のまま終わらせられれば、よかった。そんな力が、無いばっかりに。
でも、帰らなくては、いけないが故。
本当に、すまない。
穿ち、貫き、押し通る。


多々羅・赤銅
【陽】

(スッフィーをお姫様抱っこしたキス魔)(このプレイング中、一切彼を下ろさない)
(すごいぞ羅刹、190cm超えの筋肉だってちゅちゅちゅちゅだ!)

え〜〜〜戦えない?無理かな〜〜赤銅ちゃんのちゅーにめんじてちょっとだけ頑張んば〜〜???
おっ笑った、うひひひ可愛い、笑ってくれてうーれし♡(くるくる)パイプ欲しい?合点!(器用に回転をかけて蹴り上げて、スッフィーに捕ませる)

さあ〜〜て赤銅ちゃん便絶好調、酒と桜の海を最高にランデブーしちゃるぅ
大丈夫、大丈夫、ちゃあんとね
スッフィーの泣き虫の覚悟が届くとこまで、ほんっとーに帰りたいやつの腕の中までぇ
この私が送り届けてやっからねえ♡

(ちゅ!ちゅ!ちゅ!)



 羅刹たる彼女は、時に恐るべき膂力を発揮する。
 羅刹たる彼女は、酒を酌み交わし陽気に過ごす事を好む。
 羅刹たる彼女――赤銅は、二メートルも近いダンドを横抱きに駆けていた。
「……ミューズ、俺様……、この状態で戦えると思う??????」
 ぽーんと流れる水流を避けるように飛び越えた赤銅の腕の中で、本日幾度目かも分からぬ愚図りを始めたダンド。
「え~~~~~~~??? 戦えない? 無理かな~~?」
「俺様は……無理だと思う……むりだよぉーー。もう俺様は……」
 ぐずぐずとまたその瞳を潤ませて。
 たっぷりと水気を含んだ言葉を吐く彼を、赤銅はただただ眦を和らげて見下ろして。
「んーふふ、スッフィー、スッフィー。赤銅ちゃんがちゅーしてやるから、ちょ~~っとだけ頑張んば??」
 言うが早いかぎゅっとダンドを抱き寄せると、彼が先程までゴミ置き場に顔を突っ込んでいた事も厭わず、何度も何度も啄むように口づけを頬に、額に、首に、顔に。
「んひゃっ、ふ、ふふ、くすぐったっ……ミューズ、くすぐったいって、ふふふ」
 鼻先に、こめかみに、髪に、口づけを重ねられて思わず笑ったダンド。
「おっ、笑った方が可愛いねぇ~~~、可愛い顔が見れてうーれし♥ もっと笑って、笑って~~♥♥」
 大本の竜へと向かっているはずの赤銅の足取りがその場をくるくるくるくる回る。
 更に口づけを重ねる赤銅に、ダンドは瞳を眇めて。
 ――ああ、確かに生きているのは辛いことだ。
 愚かな生である事は、誰よりもダンドが一番自覚している。
 それでもこうやって、寄り添ってくれる者がいる。
 ――愛してくれる者がいる。
 生き足掻くと決めたのだ、生きると、決めたのだ。
 執拗なキス魔からのチッスですこしばかり心が回復したダンドは、細く細く息を吐いて。
 彼女の腕に抱かれたまま、落ちている鉄パイプに視線を止めると赤銅にお願いをした。
「それ、取ってくれるか?」
「ん? これぇ? がってーん」
 赤銅としてもダンドを下ろす気は無いらしい。
 パイプを爪先で軽く擡げて軽く浮かせてから、抉るように蹴り上げるとくるくると空中で円を描き。
「ああ、ありがとう」
 ぱしり、と腕を伸ばしたダンドが鉄パイプをしっかと握り締めた事を確認すると、赤銅は酒の温泉に沈んだ街を、更に跳ねて、駆けて。
「さぁーーーーーーーーて、この辺じゃない? スッフィー?」
「ああ、ああ、そうだな」
 赤銅の腕の中で、ぐっと上半身を捻るダンド。
 遠く高く、月を背負ってそびえ立つ竜を見て、思う。――それは祈るように。
 ――申し訳無い。歓談を歓談のまま終わらせられれば、よかった。
 俺に、俺に、そんな力が、無いばっかりに。
 ほそく、ほそく、呟く言葉。
「――でも、本当に、帰らなくては、いけないんだ」
 だから。
 本当に、すまない。
 ――穿ち、貫き、押し通らせて貰うぞ。
 振りかぶった鉄パイプを真っ直ぐに真っ直ぐに竜の頭へと向けて投擲すれば、ダンドは真っ直ぐにそちらを見据えて。
「んーふふ、えらーいえらーい」
 そんな彼に、赤銅はさらにちゅっちゅのちゅっちゅっ。
 ――大丈夫、大丈夫。
 この泣き虫の覚悟が届くとこまで、ほんっとーに帰りたいやつの腕の中まで。
 この赤銅ちゃんが、らんでぶーしながら、ちゃあんと送り届けてやっからねえ♥
 だからちゅー位は許してね♥
 ちゅっちゅっちゅ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

花剣・耀子
【土蜘蛛】

相槌を打ちながら手を引っ張って行きましょう。
こういう時は単に聞いて欲しいだけだと相場が決まっているのよ。
トリセツに書いてあるもの。あたしはくわしい。

あれは竜、竜よね、……セーフ。
八つ首でもないし蛇でもないもの。怖がる理由なんてないもの。
でもちょっとイドくんを前に押し出すわ。
これはべつにあたしが隠れているわけじゃなくてイドくんに先行して貰いたいだけなのでだいじょうぶよ。
怖くないわよ。蛇が嫌いなだけだわ。

元気そうなのでお任せするわ。……たまにはいいでしょう。
手助けが入り用なら斬るけれど。

もしも、なんて。
イドくんでも、そんなことを考えるのね。
……現在でもこれ以上酔いどれるのは勘弁して頂戴。


隠・イド
【土蜘蛛】
オロチ…とは名ばかりの、ただの蛇ですね。
いえ、今の私に分相応の相手と言えばそれまでですが…

頼られて少し得意気になり

ええ、お任せください
あの程度の酔いどれ如き、容易に切り刻んでご覧に入れましょう

自身の分身たるスローイングダガーを両手に複数構え、
華麗に走りだし、俊敏な動きで相手を切り刻もうとする

全然見当違いな事などしても、「おや、手元が狂いましたか」と取り繕い涼しい顔

私の前身もこのような場所で過ごしていたのでしょうか
私はこうして生まれ落ちたことを幸運に思います、が…
もし歯車がひとつ狂えば、あのように酔い潰れ醜態を晒しているのは私だったのかも知れませんね

時と場合も選ばずノスタルジーに浸る



 トリセツに書いてあったもの。
 急に不機嫌になったりするけれど、ほっとくと怒るとか。
 単に話を聞いて欲しいだけだとか、爪が綺麗って褒めろとか。
 そう、耀子は詳しいのだ。
 だから大丈夫。
 付いてきたへべれけ弱気卑屈くそ29歳児がどれほど面倒でも、耀子は負けないのだ。
「……あれは竜、……竜よね? セーフよね?」
「ええ、オロチとは名ばかりの、――ただの蛇ですね」
 いえ、今の私に分相応の相手と言えばそれまでですが……なんて付け加えるイドに耀子は露骨に眉をきゅっと寄せて渋い顔。
「……竜でしょう?」
 なんとなく、なんとなくクサナギを撫でた耀子は何かを確認するよう。
 イドの後ろになんとなく周りながら、なんとなく隠れている訳でもないけれどなんとなくイドを押し出す。
「……耀子様?」
「いいえ、頼れるイドくんに先行して貰おうかなって思っただけよ」
「……!」
 小さく瞳を見開くイド。
 ほわほわと背景にイマジナリー花が咲いているようにも見える。
 しかし耀子としては、あまりそれどころではないもので。
 いいえ、別にだいじょうぶなのだけれども。
 ……なんたってアレは、八つ首でもないし蛇でもない。
 だから大丈夫、だいじょうぶよ。
 例え蛇だったとしても、怖くなんてないもの。
 ――嫌いなだけだわ。
 だからそう、一つも怖がる理由なんてないの。
 イドの後ろに立ったまま、耀子はクサナギを構える。
 まあ、そう。
 そりゃ勿論、最後にはクサナギに頼るのだけれども。
「元気そうなのでお任せするわ。……たまにはいいでしょう?」
 それとも、手助けが入り用かしら。なんて耀子が首を傾げば、イドはふるふると左右にかぶりを振った。
「ええ、ええ、お任せ下さい。――あの程度の酔いどれ如き、このイドが容易に切り刻んでご覧に入れましょう」
 ほわほわと背景にイマジナリー花を撒き散らしながら。
 その両手に自らの器物たるスローイングダガーを指の股へと幾つも挟み構えてイドは一気に敵へと駆け出した。
「――私の前身もこのような場所で過ごしていたのでしょうか」
 そんな彼の背からは、油断ならなくて女の子にしか興味がなくて不誠実なくそやろうの雰囲気など一つも感じられないというのに。
 耀子は一度、大きく肩を竦めて。
「私はこうして生まれ落ちたことを、幸運に思います……。しかし。もし歯車がひとつ狂えば、あのように酔い潰れ醜態を晒しているのは私だったのかも知れませんね」
 しんみりと呟くと、イドは竜の背を蹴って、腹を踏んで。
 突き刺した刃で線を引きながら、イドは敵の背を一気に駆け行き。
 走る痛みにイドを引っぺがそうと、竜は首を大きく振るって地へと頭を思い切り叩き込み。
 ぽーんと跳ねることでソレを回避したイドの瞳には、たっぷり懐古の色が宿ってる。
 クサナギを片手に、耀子は思う。
「――もしも、なんて。イドくんでも、そんなことを考えるのね」
 ああ、でも、そう。
 今はね、戦闘中なの。
 無駄に傷つけて暴れさせるのも止めて欲しいし。
 戦闘中にたっぷりしんみりしてポエムを吐くのも勘弁してほしいわ。
「……現在でもこれ以上酔いどれるのは勘弁して頂戴」
 そう。
 耀子も酔っているので、言わなくていい事も口に出してしまうのだ。
 丁度良い。
 イドも敵が首を振るった勢いでどこかに行っているようだ。
 目前へと倒れてきた頭に向かって、耀子はクサナギを振りかぶり――。
「あっ……」
 そこに頭上より響いた悲しげな声。
 耀子が見上げれば。
 丁度、上から飛び降りて来る事で勢いを付けて、竜の目へと刃を全身の体重を掛けて叩き込もとしていたイドと目があってしまう。
 ――ああ、やはり。
「最後にはクサナギを頼りになさるのですね???」
「あっ」
 耀子だってもう振りかぶった勢いは止める事ができない。
 二人の刃が同時に、竜へと叩き込まれて――!
「……イドくんの爪って綺麗ね」
 ぽつりと耀子は、呟いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 日常 『魔女の霊薬』

POW   :    沢山の素材を混ぜ合わせ、どんな霊薬ができるか試す

SPD   :    正確に素材を計量し、間違いなく霊薬を作る

WIZ   :    魔女のレシピを元に、新たな霊薬を考案する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●魔女の店
 ふと目覚めたレトロウィザード――魔女の薬師は、傍に落ちていた大きな帽子を被り直して周りを見渡した。
 また変貌してしまった街の中。
 新たに生まれた温泉に群がって、楽しげに遊んでいる妖怪たちの姿。
「ンマー、この辺りは温泉になっちゃったのねえ」
 思い出せば今回の
 幽世は地球と骸の海の狭間にある、過去の遺物で組み上げられた世界である。
 ――骸魂に飲み込まれた妖怪が暴れた地域は、迷宮化してしまう。
 だからこそ。
 この世界の全貌は誰も知りはしないし、知ろうともしない。
 なんたって朝起きたと思えば世界が変貌している事なんて、雨が降った程度の『よくある事』なのだから。
 魔女は欠伸を噛み殺すと、杖を振り上げて。
 魔力を籠めるとするするとその場に草が芽吹き、花が咲く。
 ――世界の危機が救われたという事は、猟兵達が来ているという事だ。
 ならば、ならば、それは。
 感情――食糧の備蓄が出来るという事だわ!

 沢山沢山気に入ってもらえるように。
 今日のお店も立派に仕上げて見せるわ。
 レースのテーブルクロスをひいて、すり鉢も、かわいいグラスも用意して。

 ――あなたの助けになる霊薬を作りましょう。
 あなたが望むのならば、レシピを教えたって良いわ。
 ……レシピを教えてしまって、困らないのかって?
 良いのよ。
 どうせ仕上げには、私の魔法の野菜や果物が必要なんだもの。
 うふふ、気に入ったなら、また私の所へ来て頂戴。

 萌え伸びた木の先に生えた、ぷるぷるとした真っ赤な果実。
 鉄の板みたいに硬いキノコに、きれいな目玉みたいな木の実も混ぜて。
 全部砕いて、全部まぜて。
 鮮やかな黄色になったら、氷を入れて。
 ああ、この果物をもたっぷり最後に入れて――。
 これで明日もあなたは元気に違いないわよ。
 ああ。
 そちらの温泉になってしまった泉では、貝も取れるわ。
 煮出した出汁は、二日酔いにも良く効くの。
 うふふ、クッキーにしてあげましょうか?
 まあ、まあ。
 あなたは頭が痛いの? 肩も? お疲れなのねえ。
 すぐに薬を用意しましょう。
 でも、そう、材料集めはセルフサービスでお願いするわ。
 必要なモノは此処にメモをしておいたから。
 好きに器具だって使って良いのよ。

 草木にお花。
 魔女の魔法で彩られた一角はまるでカフェのよう。
 くすくす笑った彼女は、首を傾いで。

 うふふ、そうねえ。
 お代はあなたの感情で、結構よう。
鈴久名・惟継
【幽蜻蛉】
おぉ、目が覚めたか
結局あの後は寝てしまったようだなぁ
落とさぬように移動するのは一苦労だったぞ

あれだけ大量の銃を放っておいたら、パーツの一つや二つ失くしていそうな
……いや、それはそれで面倒なことになりそうだ
そうだ夢だぞ、遵殿!

おう、願い事か、聞こうではないか
……酔い覚まし?
待て待て待て、俺の上で戻すな、絶対に戻すな
まぁ……俺の背に乗って、動き回ったからな
慣れぬ動きで酔ったのも当然か
しかし……折角酔いから醒めたというのに、また別の酔いに悩まされるとはな

今後も同じことがあるかもしれぬ、酔い止めの薬を貰うとするか
俺は良く効く傷薬が欲しいぞ!
あとは貝を煮出した出汁も良いらしいぞ、一緒に頂こう


霞末・遵
【幽蜻蛉】
うーん……動かない……
パーツが……足りない……

はっ なんだ夢か
おはよう竜神様。早速で悪いけど大事なお願いがあるから聞いてほしい
酔い覚まし持ってない……? 乗り物酔いの方……
あっ動かさないで揺らさないでやばいやばい本気本気本気
大丈夫がんばるがんばるからできるだけ静かに急いで

ふう、魔女を名乗るだけあって薬の効き目は抜群だね
なんでこんなに酔ったのか覚えてないけど……
おじさん寝てる間に竜神様何したの? っていうかおじさんが何したの?
やっぱ怖いから聞かなくていいや
覚えてないってことは忘れた方がいいものなんだろう。うん
貝のお出汁は美味しそうだ。お吸い物で頂きたいな
ふーむ、これは

酒によく合いそうだ



 竜と伴に訪れた夜は、竜の退場と伴に明け。
 風の香りからも、湯の香りからも、あの甘い酒の気配は失せていた。
 ――事件が終えようとも、妖怪たちの営みが終える訳では無い。
 例え迷宮化して形を変えてしまった街の中でも、妖怪たちはなんだかんだで逞しく過ごすのだ。
「うーん……うーん……」
 寄れるシャツ、荒い呼吸、唸り声。
 遵は金属の指先を胸元へとぎゅっと押し付けて。
 動かない、動かない、足りていない、ううん、ううん……。
 どうして、どこに。
「――パーツが、……足りない……」
 何かを求めるようにぐっと伸ばした腕。かしり、と音を立てた指先が虚空を掴んで――。
 青い空が、見えた。
「おぉ、目が醒めたか?」
 はっと意識を取り戻した遵は、かけられた声に周りを見渡して。
 胸元へと押し付けた手を、撫で下ろすようにしながら息を呑みこんだ。
 周りは空。
 どうやら惟継の背に乗ったまま、少し眠っていたようだ。
 ふるふるとかぶりを振ると、遵は顔を上げて。
「……おはよう、竜神様」
「おぉ、おはよう、起きたか。眠ってしまった者を落とさぬように移動するのは、なかなか骨が折れるものだなぁ」
 朗らかに応じた惟継に、すっかり明るくなった空に瞳を細めた遵はこっくり頷き。
「うんうん、ありがとう竜神様。それで、……早速で悪いけど、大事なお願いがあるから聞いて欲しい」
「うむ? 聞こうか」
 小さく首を傾いだ惟継が、瞬きを重ねて応じて。
「うんうん、ありがとう竜神様」
 それからたっぷりと息を吸った遵は吐き出すように、音を漏らすように――。
「――酔い覚まし持ってない……?」
 小さく小さく、問うた。
「……うむ?」
 惟継が怪訝な表情を浮かべると、ぷるぷると小さく首を振った遵は更に言葉を付け足す。
「乗り物酔いの方……」
「――待て」
 合点はいった。
 合点がいったからといって、承知ができるかと言えば別であった。
「まだ大丈夫だから……、うぷ……」
 遵のただでさえ白い顔が、白を超えて青くなっている。
 背中に乗った彼の顔色は解りはしないが、彼が爆弾と化していることだけは解る惟継は、全然大丈夫じゃない。
「待て、待て待て待て。俺の上で戻そうとしてないか??」
「まって揺らさないで、揺らさないでやば」
「待て待て待て待て待て待て、絶対に戻すな。そっと、そっと下ろすから、待て!!!!」
「大丈夫がんばるがんばるから、できるだけ静かに急いで」
「がんばれ、がんばれ頼むから急ぐぞ!!!」
「う、うううう、やばいやばいやばいそっと、そっとして!!!!!」
「待てーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!」
 幽世の空を滑るように、竜神が降りてくる、落ちてくる。
 ――その背に限界の悪霊を乗せて。

「――……今後の為にも保存の効く酔い止めも貰えるか? あとは……傷薬を頼めるだろうか」
「はぁい、後で材料を取ってきてくれるかしら?」
「おぉ、相分かった」
 ほこほこと上がる湯気。
 美味しい匂いは、出汁の匂い。
 ずずーっと吸い物を啜ると……、はー、沁みる~。
「……魔女を名乗るだけあって、薬の効き目は抜群だねえ」
 緩む眦。
 魔女の魔法で作られた草のソファに腰掛けて、頭を壁へと預けた体勢。
 遵は若干傾いたままだが、なんとか復活を果たしたらしい。
「戦い以上に危機感を覚えたぞ……」
 注文を終えた惟継はそんな彼の横へと腰掛けて、やれやれと肩を下げて、かぶりを振る。
「そういえば、なんでこんなに酔ったのか覚えてないんだけど……、おじさんが寝てる間に竜神様は何したの? っていうかおじさんが何したの?」
「ああ」
「まって、やっぱ怖いから言わなくていいや。……覚えてないってことは忘れたほうがいいものなんだろう? うん」
「……そうだなあ、そうだろうな」
 遵が納得しているのならば、惟継だって余計な事は言いはしない。
 そう。
 寝かせまいと、めちゃくちゃに揺さぶったのは惟継なのだから。
 遵がこれほどに酔った原因には、きっと惟継にも一因はある。
 ――藪を突かなければ蛇だってでてこない。
 もしかするとめちゃくちゃフレンドリーファイアをしていたものだから、ただ単に夢見が悪かったのかもしれないけれど、そこは惟継にだって解りはしない部分だ。
 あと、うなされていた通りパーツを失くしていたら、それはそれで面倒そうなので継は口を貝に。
 触らぬ神に祟り無しとも言おう。
 ……神は惟継自身であるが。
 瞳を閉じて惟継は言葉を紡ぐ、うむ。別の話題にしよう。
「しかし……折角酔いから醒めたというのに、また別の酔いに悩まされるとはな」
「そうだねえ」
 なんて、瞳を細めて遵は口元だけで淡く笑って。
 ずずーっともう一口吸い物を啜る。
 優しくて、暖かくて、沁みる出汁の味。
「……ふーむ、しかし、これは――酒によく合いそうな味だね」
「…………おう」
 ――せっかく酔いから醒めて、別の酔いもまた醒めてきたというのに。
 更に酔おうと言うのは、あまりに酔狂が過ぎようか。
 惟継はまた肩を竦めて、苦笑に深い青色を細めた。
 そう。
 ――例え迷宮化して形を変えてしまった街の中でも、妖怪たちはなんだかんだで逞しく過ごすものなのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
酔いの所為とは言え、随分と……色々してしまったような
ともかく、今は正気に戻ったのです
早速薬を作って貰いましょう

そういえば感情がお代でしたね
何でも構いませんが……倫太郎は照れたりしないのでしょうか
抵抗もなく言える彼は、すごいと思います
……嫌ではないです
お願いをしましたら、カフェへ向かいます

おにぎりでしたり汁物でしたり、このような食事が一番落ち着きますね
特にこの汁物、貝の出汁が効いていてとても美味しいです
食事をしながら、ふと薬のことを思い出す

そういえば、倫太郎はどんな薬を頼んだのですか?
私は傷薬を頼みました
いえ、お互い戦いに身を置いているのですから私達用です

……惚れ……
も、もう充分なのでは


篝・倫太郎
【華禱】
色々考えてるっぽい夜彦の様子を眺めつつ

魔女のオネーサンに薬、調合して貰ったし!
お代は感情つってたから
夜彦を好きーって気持ちを少し持ってかれたかも
ま、一緒に居ると湧き水みたいに尽きる事のないものだけど

いやだった?そんな風に尋ねながら
カフェで薬膳料理を美味しくいただく

カフェを謳ってても
こういうのが出て来る所が良いよなぁ……なんて笑って
秋野菜たっぷりの野菜炒めと十穀米のおにぎりが載った
和風プレートにシジミの味噌汁とごぼうのお茶

そんな薬膳料理を堪能して

へ?あぁ……つか、夜彦は何頼んだ?
あ、ハイ
なんか、その、ごめん?

あ、俺のだっけ?俺はね、惚れ薬?惚れられ薬?
そんな感じのヤツ!

そう笑って返して



 如何にも美味そうな定食然とした食事を見下ろして、ゆるゆるとかぶりを振った夜彦は瞳を眇めた。 
 酔っていた事は確かだ。
 酩酊していたのだろう、そう聞いている。
 ――しかし、酔っていたとは言え。
「んー? 夜彦? 食わねえの?」
「……いえ、頂きましょう」
 考えていたって過去の時間が取り戻せるわけでも無い。
 不思議そうに首を傾ぐ倫太郎の声にゆるゆると再びかぶりを振った夜彦は、改めて手を合わせて箸を手にして。
 味噌汁を一口啜ると、出汁の良い香りが鼻を抜けてゆく。
「それにしても、落ち着く食事ですね。――この汁物なんて、貝の出汁がよく効いていてとても美味しいです」
「ん。薬膳料理なんて言うから身構えたケド、こういうのなら食べやすくて良いよなぁ」
 笑う倫太郎は、おにぎりを齧りながら応じる。
 ――テーブルの上には二人分の野菜たっぷりの炒めものに、色んな穀物の混ざったおにぎり。それと貝の味噌汁に、根菜茶。
 小洒落た食事と言うよりは、見慣れた食事と行った様子のメニュー。
 肩肘を張らずとも向かい合える食事は、気楽に食べられるものだと感じられるもので。
 そこからして、リラックスして楽しむ『薬膳』は始まっているのかもしれない。
 なんて思いを馳せている中で。ふ、と思い出した夜彦は、顔を上げて瞬きを一つ、二つ。
「――そう言えば、倫太郎はどんな薬を頼んだのですか?」
 食事自体が霊薬だと魔女は言っていたが、他にも二人は薬を頼んでいたのだ。
 尋ねる夜彦の緑色の視線から逃げるように、倫太郎の琥珀色がスーっと泳いだ。
「へ? あぁ……、夜彦は?」
 そのまま倫太郎は質問に対して質問を返す、面接ならば零点の答え。
 いつもの事ではあるので夜彦は気にした様子も無く、野菜炒めを口に運びながら応じる。
「私は傷薬を。――互いに戦いに身を置く者ですから」
「あ、ハイ……、なんかその、ごめん……?」
 そのままどこまでも泳いでいってしまう倫太郎の視線。
 流石に慣れている夜彦だって、その答えには首を傾いで。
「……?」
「えっと……俺はね、その、惚れ薬? 惚れられ薬? そんな感じのヤツ!」
 へらへらと笑う倫太郎の答えに、夜彦は少しだけ目を丸くする。
 えっ?
「……も、もう充分なのでは……?」
 予想外の答えに呆然とする夜彦を、真っ直ぐに見ながら笑った倫太郎は言葉を次いだ。
「……ま、確かに。お代の感情だって、夜彦を好きーって気持ちを少し持ってかれたかもしんないけど、今も一緒に居るだけで後から後から湧き水みたいに尽きる事なく湧いてきてるしな」
「……そういえば感情がお代でしたね」
 全く。
 ――彼は照れたりしないのだろうか。
 夜彦は思わず小さく息を零して、倫太郎の顔をまじまじと見やる。
 そう。
 何の抵抗もなくそういう台詞を言える倫太郎の事を、すごいと夜彦は思うもので。
「……いやだった?」
 そんな風に感じている倫太郎に、琥珀色を細めてたっぷり悪戯げな笑みで尋ねられてしまえば。
「……嫌では無いです」
 夜彦は釣られたように眦を和らげてかぶりを振って――本心を伝えるしか無くなってしまうのだ。
 嗚呼、全く。
 ――本当に、すごい人だなあ。
 そうして少しだけ朱色に染まってしまった頬を誤魔化すように、夜彦は椀を傾ける。
 ほこほこと上がる湯気からは、美味しい出汁の香りがした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルフィード・クローフィ
環ちゃん(f28317)と一緒に

ん?環ちゃんどうしたの??

嗚呼、記憶?俺、記憶ってめちゃ覚えてしまうタイプだからごめんね?
ふふっ、お色気たっぷりの環ちゃんも慈愛ある環ちゃんも素敵だったよ!
どっちも可愛い!!

俺の方が変じゃなかった?迷惑かけてごめんね
しゅんとして

俺は覚えていたいけど!きっとどんな薬でも環ちゃんとの思い出だもの、誰にも消せないよ
環ちゃんは酔い大丈夫?

わぁ!環ちゃんの手作り!!
ありがとう!頂きます!!
躊躇無く一気に吞み干す
お腹??普通に美味しいよ?

俺も作ったの!えっ?飲まないの?
美味しく出来たのに
美味しそうな匂いが漂う効果抜群の薬が出来上がり

わぁい!一口飲んで貰えたと子供の様に喜んで


雨絡・環
アルフィードさん(f00525)と

蘇る痴態の数々

お見苦しいものを
ああお忘れくださいまし
どうかお忘れくださいまし!

ああいうのは現役を退いてから
スッキリサッパリ忘れていたと思っておりましたのに!
例えば酔いから醒めれば全てお忘れになっているとか……
いえなんでも

そうですねえ
少し新鮮なお顔が見れましたかも?

魔女さま
記憶を消し去るお薬はありませんの?あら、そう

無いなら生み出せば良いのです
お忘れくださいまし大丈夫です!

鍋へ妖しく踊るキノコと
歌う木の実を入れて
まあ鮮やかな赤
貝と鬱金を最後に少々
ご迷惑のお詫びの印
所で何故こんな緑色に?

さあめしあがれ
まあ
丈夫なお腹をお持ちだこと

いえわたくしは……
では、一口だけ

あら



 幾ら振り切ろうとしたって、脳裏に何度だって蘇り過る自らの行動。
 ――痴態と言い換えたって良いだろう。
 横に立つアルフィードの顔を見るだけで、朧気ながらにも――否、確りと思い出してしまうのだ。
 彼に縋るようにしなだれかかって、躰が火照るなんて伝える自らの声。
 彼と瞳を合わせて――。
 嗚呼。
 ――ああいうのは現役を退いてから、スッキリサッパリ忘れていたと思っておりましたのに!
「ん? 環ちゃんどうしたの??」
 ぷるぷると両頬を抑えて身悶える環の姿に、アルフィードは首を傾いで。
「いいえ……いいえ、あの。お聞きしたいのですが、例えば全てお忘れになっているとか……」
 ありません、よ、ね?
 先程とは言葉の上では同じ言葉だが全く違った色合いを持つ、環の縋るような視線。
 アルフィードは頬を少し掻いて、へにゃっと笑って。
「嗚呼ー、さっきの酔っていた時の? 俺、めちゃ覚えてしまうタイプみたいだからごめんね……」
「ああ……、お見苦しいものを……」
 やはり覚えてらっしゃいますか……。
 環がほうと細く細く吐息を漏らせば、続くアルフィードの無邪気な追撃。
「ふふふっ、お色気たっぷりの環ちゃんも慈愛ある環ちゃんも素敵だったよ!」
「お忘れくださいまし……」
「どっちも可愛かったよ!!!」
「ああああーっ、どうかお忘れくださいまし!」
 再び身悶える環にアルフィードは先程とは逆方向に首を傾いで、一気にしゅんとした様子で。
「……それより俺の方が変じゃなかった? 迷惑かけてごめんね?」
「……そうですねえ、少し新鮮なお顔が見れましたかも?」
 肩を上げ下げした環が少しだけ笑えば、アルフィードはそう、と瞳を狭め。
 環は改めて――注文を待つ魔女へと振り返った。
「そういう訳でして、魔女さま。記憶を消し去るお薬はありませんの?」
「そ、それでも俺は覚えていたいよ!? でもきっとどんな薬でも環ちゃんとの思い出だもの!! 誰にも消せないよ! ねえ魔女さん!? そうだよね!?」
 わあわあと言葉を重ねるアルフィード。
 魔女は頬杖をついて、ううんと唸って。
「うーん、在ることは在るけれど、完全に脳を破壊するタイプのお薬なのよね」
「ねえ環ちゃん!?!? 無いみたいだよ!?!?!?」
 それは最早霊薬とか薬とか生易しい事を言っていて良いものなのだろうか。
 ぎゅんっと環へと振り返ったアルフィードに、ゆるゆると環は顔を振って。
「あら、そうでございますか……、それならば無いなら生み出せば良いですよね?」
「まあ、チャレンジャー」
「えっ!?」
 そんな環の宣言に、魔女がにんまりと楽しそうに笑い。
 アルフィードはめちゃくちゃびっくりした顔をしている。
「魔女さま、材料のご相談に乗っていただいてもよろしくて?」
「良いけれど、脳を破壊するの?」
「いいえ、脳を破壊するのは最終手段に致しましょう。今日の出来事を忘れてくださるだけで結構なのですが……」
「うーん、そうねえ……、脳を破壊しないとなると……」
 相談に花を咲かせる二人に、アルフィードは目を丸くして――。
「えっ!? 環ちゃん!? 俺達の思い出は永遠じゃないの!? 最後どうにもならなかったら脳を破壊したりしないよね!?」
「大丈夫です、お忘れくださいまし」
 環は目を合わせる事もなく、彼の問いかけに応じた。

 ――ぐつぐつぐわぐわと煮える鍋の中には、妖しく踊るキノコ。
 歌う木の実を入れれば、驚くほどに鮮やかな赤へと染まる。
 貝と鬱金を最後に少々、ご迷惑のお詫びの印。
 薬作りは摩訶不思議。
 さっとビリジアンの絵の具を煮詰めたような色と変化した鍋の中身を、椀へと掬った環はアルフィードへと差し出して。
「さあ、出来ました。――めしあがれ」
「わぁーっ! 環ちゃんの手作り!! ありがとう! 頂きます!!!!」
 先程していた会話を忘れたかのような、アルフィードのテンション。
 ノータイムで一気に飲み干した彼の様子をじっと環は見つめて――。
「お腹は大丈夫でしょうか?」
「え……? お腹? 普通に美味しいし大丈夫だよ!」
「……まあ、丈夫なお腹をお持ちだこと」
 更におかわりまでするアルフィードに、環は目を丸くして。
 あんなに鮮やかな緑色の汁でも、あんなに得体のしれない材料の薬でも、躊躇なく飲んでくれるアルフィードは――。
「ねえねえ、環ちゃん。俺も作ったの! 美味しく出来たから飲んでみてよー!」
 代わりにアルフィードだって、自作の薬を差し出すけれど。
 環は瞳を狭めて、視線を落して。
「……いえわたくしは……」
 なんたって、得体のしれない材料である事だけは共通している。
 異様に鮮やかな桃色の汁を手にする彼に、環は眉を寄せて――。
「えっ、ダメ?」
 それでも、彼は。
 自分の差し出したあんなに得体のしれない材料の薬でも、躊躇なく飲んでくれたのだ。
 やれやれとかぶりを振った環は、アルフィードの顔を見やって。
「……では、一口だけ」
「わぁーい!」
 薬を受け取ってくれただけで無邪気に飛び跳ねた彼に、環は少しだけ笑った。
「……あら?」
 そして、薬を一口啜ると――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エコー・クラストフ
【BAD】
んー……んん……? 薬かぁ。どんな薬?
へぇ、思い出し薬ねえ。そっか、ハイドラってよく記憶なくなっちゃうらしいからね
ボクのこと忘れたくないって? 何恥ずかしいこと言ってるんだよ……
でも、そういうことならボクもその薬作るのに協力するよ。別に欲しい薬とかないしね

あー、それは……シジミかな? アサリはこれ
へへ。伊達に海賊やってないからね。こういうのは詳しいんだ
ん……眠いの? じゃあ、寝てていいよ
残りの材料はボクが調達して渡しておくからさ
大丈夫。ちゃんと明日渡すからさ
そうだね……今日は、その〜……記念すべき日、なのかもしれない……
忘れたりしたら怒るからね。……本当に怒るからね? 聞いてる?


ハイドラ・モリアーティ
【BAD】
薬ねえ
なー、エコー。なんか薬とか作ってくれンだって
まー材料は自分で探せって感じらしいけど
お前は何作るの?俺はね、思い出し薬にしよっかなって
都合いーだろ。でも忘れたくないことっていっぱいあってさ
お前のこととか、いっぱいあるんだ

アサリってこれ?
お前が海に詳しくてよかった。俺あんまり詳しくないからさ
んで、えーと。次のざいりょー……っと、ごめん
いや、やっぱりだいぶ眠いな
頭使いすぎたかなと思ったが違うなコレ
「ヒュドラ」が酔ってるんだ。うわー、マズった
明日二日酔いないといーけど……んー、エコー
寝てもいい?代わりに薬は受け取っといて欲しいかな
――せっかく、お前と結ばれた日なんだし
思い出したいからさ



「アサリってこれ?」
 しゃらり、しゃらり。
 寄り集められた貝達をかき回すハイドラは、一粒の茶黒い二枚貝をつまみ上げて。
「あー……。それは……シジミかな? アサリはこれ」
 ゆるゆると首を振ったエコーが、一回り体の大きなしましまの貝を擡げた。
 籠へと貝を選り分けてゆくエコーの手付きに、ハイドラはぱちぱちと瞳を瞬かせて。
「へぇ、お前が詳しくてよかったな。俺、あんまり詳しくないからさ」
「へへ、伊達に海賊やってないからね。こういうのは詳しいんだ」
 エコーの眦が少しだけ和らいでいるように見える。
 うん、良い雰囲気だ。
 そう、仲睦まじい『恋人』同士なんて感じだろう?
 ハイドラは、へら、と口元を緩めて――。
「あ、……と、……次のざいりょ……、……ん、ん、っと?」
 刹那。
 ぐわぐわと揺れる脳に、眉を寄せた。
「っと、ごめん……」
「ん、……大丈夫?」
「あー……、や。だいぶ眠いかも……、これ、俺じゃなくて……」
 身に宿すオウガ――脳に寄生する『ヒュドラ』が、酔っている。
 彼女と表裏一体たるオウガが酔っていれば、そりゃあガワたる体だって重たくなるものだ。
 あー、でも今か。
 クソ、マズったな。
 ――明日、二日酔いで立てなくなっていたら困るな。
 しかし最早脳も体もぐらぐらで、視界すら歪んできてしまったものだから。
 ハイドラはエコーへと顔を寄せると、霞む瞳を彼女へと向ける
「……んん、エコー。ごめん、ちょっと寝てもいいかな?」
「眠いなら、寝てていいよ。――残りの材料はボクが調達して渡しておくからさ」
「ありがと、――薬も受け取っといて貰えるかな」
「大丈夫、ちゃんと明日渡すよ」
「……ああ、良かった」
 二人でいま材料を集めている薬。
 ――思い出し薬。
 ハイドラが『ヒュドラ』と共存する為に、喰らわれる『幸せな記憶』。
 魔女の霊薬とやらが、どれほどこのくだらない呪いに対抗できるかは判らぬが。
 ――忘れたくないことが、いっぱいあるんだ。
 そうだよお前のこととか、いっぱい、いっぱいさ。
「今日はせっかく、お前と結ばれた日なんだから。――思い出したいからさ」
 なあ、俺の可愛いアンデッドちゃん。
 うと、うと。
 眠気に蕩けたハイドラの瞳。
 柔らかな草がたっぷり生えた木陰に腰掛けた彼女は、エコーを見上げて。
 ひたりと真っ直ぐ向けられる視線があまりに暖かくて。
 エコーは少しばかり、視線を泳がせて逃げてしまう。
「……何恥ずかしいこと言ってるんだよ。でも。……そうだね、今日は、その……記念すべき日、なのかもしれないから……」
 ――記憶を喪ってしまうという彼女が、自らのことを忘れたくないというのならば。
 その気持ちが暖かくて、くすぐったくて。
 ハイドラの顔へと再び視線を戻したエコーは、言葉を紡ぐ。
「……今日のこと、忘れたりしたら怒るからね。……本当に怒るからね?」
「ん、……」
 ハイドラから返ってきたのは、最早寝息なのかどうかも判らぬ返事めいた吐息。
 もう、と肩を擡げたエコーは、無いよりマシだろうとマフラーを彼女の肩へとかけてやる。
「……もう、聞いてる?」
「……」
 小さな寝息、きっと聞いていないのだろう。
 エコーはハイドラの長い睫毛へと顔を寄せて、その揺れる睫毛を眺めてから。
 唇の端を少し擡げてから、立ち上がって踵を返した。
 それは、今日のため、彼女のため。
 薬はちゃあんと仕上げておかなければならないのだ。
 だから、そう。――今は二人共、知りやしない。
 ハイドラが起きた頃には、すっかりさっぱり今日のことを忘れてしまっているなんて。
 昨日のことを尋ねたエコーが、ハイドラを追い回す事になるなんて。
 ……まだ誰も知らない、明日の事。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

榎本・英
【春嵐】

嗚呼。なんだがとても頭が痛いね。
私はこの感覚を知っているよ。
二日酔いだ。
なゆ、君は大丈夫かい?

私は汁でも頂こうか。
二日酔いはひたすら眠って治すのだが
温かい物を含むと良いと教えてもらった事もあるよ。

木の実や貝、目につくものを集めよう。
二日酔いは関係ないが、君はベリーが好きだったね。
あれはどうだい?ベリーが沢山あるよ。

嗚呼。汁は止めてクッキーを頂くのも良いね。
二日酔いは全く関係無いが、ベリーのクッキーも美味しいと思うのだよ。

ふわもこも二日酔いかな?
赤い花を添えたふわもこたちはとても可愛らしい。
君とお揃いだ。
頑張った君たちにも温かいものをあげなければね。

有り難う。


蘭・七結
【春嵐】

なんだか、ふわふわとしていたよう
かさねた記憶は白い霧のむこう
此処に至るまで、なにをしていたのかしら

……嗚呼。あたまがおもたいわ
これが二日酔いという感覚なのね
二度目、とは出会いたくないわ
帰りついたなら、ゆうるりと眠りたい
あなたも、今日限りは眠る?

ベリーは、とてもすきよ
甘くて酸い味。身体に染み渡りそうだわ
彼方にあるものは、なにかしらね

そのまま食むのも良いけれど
焼き菓子に仕立てていただくのもステキね
さっくりクッキーをいただきたいわ

ふわもこさんたちも、酔いは覚めた?
何処かふら、ふらとしているよう
仲良しな紫のあの子はもちろん
皆さんのお陰で進めたわ
ありがとうね

ふわもこさんも、お菓子は食べるかしら?



 どうにも重い足取り。
 ころころと足元を転がるふわもこたちの動きすら鈍い気がする。
「……嗚呼、あたまがおもたいわ」
「嗚呼、何だかとても頭が痛いね」
 ゆるゆるとかぶりを振る七結。
 さもありなんと頷く英。
 英は知っている、この感覚の名前を。
 七結は初めて知った、この感覚の名前を。
「なゆは初めての二日酔いだね」
 英の言葉に七結はゆるゆると頭を振る。
 嗚呼、それだけでもガンガンと頭の芯が疼くのだけれど。
「……そうね、これが初めての二日酔いよ」
「……大丈夫かい?」
 二日酔いには最早慣れっこなのだろう。
 七結に比べれば随分と余裕のある英の問いに七結は瞳を狭めて、灰色の睫毛の影を紫色に落した。
「――無事に帰りついたなら、ゆうるりと眠りたい気分だわ」
 歩む足取りは、よたりよたりと千鳥足。
 二度目に出会いたいとは、とても思えぬ感覚。
「あなたも、今日限りは眠るのかしら?」
「そうだねえ、いつもならば二日酔いはひたすら眠って治すのだが――今日はどうやら薬も貰えるようだから」
 暖かいものなんて、とても具合が良くなると聞いたことがある。
 その為の材料は自分で取ってくるようにと言われたからこそ、二人は重い体を押して籠を抱えているのだけれども。
「そう言えば君はベリーが好きだったね」
「ええ、とてもすきよ。一粒頂こうかしら」
 目につく木の実は、きっと二日酔いには関係ないけれど。
 英の言葉に七結は赤黒い粒を一粒つまんで、口へと運ぶ。
 それに倣って英も、一口ぱくり。
 甘くて酸っぱくて、喉の奥からすっと体に染み渡るような味。
「ふふ、……そのまま食むのも良いけれど、焼き菓子に仕立てて頂くのもステキかもしれないわ」
「嗚呼、そうだねえ。汁は止めてベリーのクッキーを頂くのも良いね」
 もはや薬としては、この二日酔いが改善する気は一つもしないけれど。
 さっくりしたクッキーにこの木の実はぴったりだろう。
 沢山生っているから、籠にたくさん詰めてゆこう。
 貝と木の実を同時に使える薬なんてあるのだろうか。
 無いのならば無いで、それは良いのだけれども。
 ころりころりと足元を転がるふわもこたちも、気がつけば花をその頭に添えている。
 七結がしゃがんで、一番仲良しの紫色のふわもこに手を差し伸ばすと、ころころと転がして。
「まあ、まあ。ふわもこさんたちも、酔いは覚めたかしら?」
 何処か未だにふらふらしている用に見える皆に、首を傾いだ。
「その花は、なゆとお揃いだね」
 英は小さく笑ってから、目についた木の実をもう一種類籠へと収め。
「頑張ったふわもこたちにも温かいものをあげなければ、いけないからね。たくさん、たくさん集めてゆこうか」
「ええ、皆さんのお陰で進めたのだもの。――ふわもこさんたちも、お菓子は食べるかしら?」
「どうだろうねえ」
 ありがとう、と。
 ふわもこたちへの感謝の言葉を重ねる二人は、立ち上がり。
 歩む足取りは、よたりよたりと千鳥足。
 それでもこの籠の中身で、薬を作ってもらえるというのだから。
 暖かなスープに、美味しいクッキー。
 すこうし組み合わせは不思議でも、きっとよくよく体に効いてくれるに違い無い。
 沢山、沢山、材料を集めていこう。
 なんたってふわもこ達は、沢山、沢山、いるのだから。
 ああ、けれども。
 この二日酔いという感覚は、どうにも馴染めそうに無いわ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


 世界が歪んで、撓んでいる。
 頭の芯を中心に、全てがぼわぼわと揺れる度に体が痛みを訴えていた。
 波のように引いては返す体調不良。こみ上げる吐き気、胃もたれ、動悸。
 脂汗が浮かぶ額をぐっと拭って。
「うぐ……うぬ……ウウウウ……」
 唸り声と共に。
 すっかりとぺったんこになってしまった尾を、揺らす事も叶わず横たえた嵐吾は正に瀕死だった。
 頭が割れんばかりに、ガンガンと大騒ぎしている。
 そう。
 酒を飲んですらいない。
 温泉水をたっぷり浴びただけだと言うのに、確りと嵐吾の身へと襲いかかっている二日酔い。
 うなり声以外のまともな言葉を紡ぐだけでも、強い苦痛に苛まれるものだから魔女に分けてもらった貝汁を呑む事で精一杯。
 否。
 貝汁を啜ることだって、限界突破。
「う、ウウ……、せーちゃんは……、材料をちゃんと集めてくれとるじゃろか……」
 この数十分で随分と老け込んでしまった嵐吾は、自らのために二日酔いの薬の材料を取りに行ってくれている友へと思いを馳せながら、頑張ってズズズと汁を啜った。
 あ~~、陽光の眩しさが目に染みる~。
「はー……お出汁がしみる……」
 身体が温まれば、少しばかり和らぐ苦痛。
 これならばなかなか帰らぬ友を、迎えに行く事くらいは出来るだろうか。
「よし……、いこか」
 全てを彼に押しつける訳には行かぬ、と嵐吾は立ち上がり――。

 ――戦いの前には存在しなかったであろう森。
 壊れた建物の瓦礫に寄り添うように萌伸びた草花が、すっかりと実を成している。
「おお、これだな」
 メモと果実を見比べながら、清史郎は手を伸ばし。
 真っ赤な果実に、目玉の木の実。
 メモ通りに実や草を摘むと、どんどん籠へと放り込む。
 ……脳裏に過るは、置いてきた友の姿。
 喋るだけでも頭に響くなんて、随分と辛そうな表情を浮かべて。
 ふかふかであった友の尾はすっかり世界を救うこと等出来ぬほど、ぺったんこになってしまっていた。
 ――そうだな。
 彼のふわもふの尻尾を一刻も早く取り戻す為に、できるだけ早く薬の材料を集めて戻らなければならない。
 内心褌を締め直した清史郎は、よし、と籠を抱き上げて。
「しかし、二日酔いというものを経験するには、どうすれば良いのだろうな……」
 思わず零れてしまったのは、自身の願いであった。
 そう。
 二日酔いになる事は、まだ清史郎が体験した事の無い経験だ。
 そんな貴重な体験をしている友が羨ましい気持ちがある事も、決して否定はできないもの。
「酒の種類を混ぜながら飲んでみると良い、とは聞いたことがあるが……」
 そんな事で本当に二日酔いになれるのだろうか。
 全身で酒を浴びてもなれなかったと言うのに。
 ……なんて。
 清史郎がひとりごちていると、カゴの中にころりと何かが転がってきた気配。
「……ん?」
 見下ろしたカゴの中には木の実の香りに釣られてきたのだろうか、まるまると大きなリスがふかふかもふもふの尾をくるんと揺らしていた。
「ふふ、木の実がほしいのか?」
 清史郎は余分に取ってやった木の実を抱かせてやると、きゅっと木の実にしがみついたリスの尾をつんと突いて。
「……尻尾がもふもふだな」
 指先でこしょこしょ擽ると、ふかふか、もふもふ。
 かわいい小動物に、思わず和らぐ眦も仕方が無いこと。
 ころころ、もふもふ。
 暫し時間を忘れて、戯れようとして――。
「おっと、……らんらんを待たせているのだったな。……なあ、リスさんも一緒に来てくれるか?」
 夢中で集めた材料は、既にすっかり集まっている。
 後は帰るだけなのだから、少しくらいもふもふを連れて行っても良いだろう。
 木の実ごと肩の上へとリスを乗せると、清史郎は歩みだす。
 ――嵐吾の元へと、急いで、急いで。
「……せーちゃん……???」
 そんな彼を、物陰から窺う影。
 なかなか戻らぬ彼を心配して、ふらふらの身体を押して何とか歩んできた嵐吾は、きゅっとイマジナリーハンケチーフを噛む。
 なんで!? どうして!?
「わしの尻尾がありながら、そんな……そんな、ぽっと出の尻尾と…………ッ!?」
 わしの尾というものがありながら、リスの尾とイチャイチャを……!?
 ぽっと出の尻尾なんて生まれて始めて聞くワードをギリリと奥歯で噛み潰した嵐吾は、ぷるぷるとかぶりを振って。
「あの……うわきもの……!!! ひとでなしのはこ……!」
 そうしてぶるぶると拳を握ってみせると、酷い頭痛が戻ってくる。
「ウッ……、あたまが……ッ、しぬ……」
 しかし許せん。わしも死んでしまう前に、あてつけに別の箱と……!!
 二日酔いに揺れる頭は、未だ若干酔っぱらいテンションをひきずったまま。
 嵐吾は体の痛みに苦しみながら、魔女の店へとズルズルと戻るのであった。
 ――8割は薬のために。
 2割は若い尾と浮気をされた新妻ごっこをするために。
尾白・千歳
【漣千】

あれー?いつのまにか蛇さんいなくなっちゃったねぇ
でも、なんかまだまだ楽し~い気分!(酔っ払い

さっちゃん、あそこなんだろ?
誰かいるよ~
なんか私、のどかわいちゃったな~
え?材料は自分で集める?ふーん変わってるねぇ~
でも、宝探しみたいで面白そう
何が必要?
…うーん、私よくわかんない!パス!
さっちゃんに任せる~
美味しいジュース作ってくださ~い!

私、おねーさんと待ってようっと
へぇ~魔女なんだ!すごーい!
何か魔法使えるの?霊薬?お薬ってことかな
すごーい!

あ、ジュース出来た?
オシャレ…?よくわかんないけど
冷たくて甘くておいしい~
さっちゃんもいる?はい、どーぞ!(飲みかけ
えー飲まないなら返してっ!(さっ


千々波・漣音
【漣千】

はー…もう酔っ払いは勘弁して欲しいぜ…(可愛すぎる
いや、オレの方が神格高いケド、竜だしな!?
てかまだ酔ってるのかよ…?(やっぱ可愛い

誰かって、魔女の薬師だろ
…少し酔い覚めるモン頼むかァ(ちら
よし、一緒に探…パスかよ!
仕方ねェなァ、集めてくるから大人しくしてろ

オレにかかれば、まァ材料集めもすぐだな!(パシリ慣れてる
オロ助と大将(使い魔)も手伝ってくれるのか?
って!集めた実食うなよ!?
…味見?美味かったって?…そりゃよかった(集め直し

器用に魔女のレシピ通り作った飲物を、最後にオサレに飾ってドヤ顔
え!?で、でもそれお前がっ(飲みかけに赤面し固まるも
あっ別にいらないわけじゃ…!(儚い夢に終わる



「おいちぃ、……まだ酔ってるのかよ?」
「もー! さっちゃん、私は酔った事なんて無いってばー!」
 そう、ちょーっと楽しい気分なだけ。
 はしゃぐように跳ねると、尾と耳がゆーらゆら。
 あははと笑う千歳に、漣音は肩を上げて下げて。
 酔っ払いは、もう勘弁して欲しいものだ。……いや。
 可愛いから良いのだけれども、いや、本当。可愛いから良……いやいやいや。
 全く勘弁して欲しい、可愛すぎだろ???
 思考が同じ場所でぐーるぐる。
 何とか真顔を維持する漣音からはこう見えてすっかり酔いは抜けている。つまり彼の思考は平常運転。
 だからこそ漣音が時々ぼんやりしてしまう事は、千歳の中ではいつもの事。
 気にする事無く、彼女は周りをぐるりと見渡して。
「あれー? でも、蛇さんはどこいっちゃったんだろー? 突然夜も明けたみたいだし」
「いやちぃ、オレの方が神格は確かに高いケド……。さっきのは蛇じゃなくて竜だし、倒したからな? アレは竜だからな!?」
「あははは、さっちゃん何度も言うねぇ~」
 漣音はぐっと息を呑んで我慢する。
 は~~、無邪気に笑って見上げてくるちぃ可愛い~~、可愛い……、本当に勘弁して欲しい……。
 漣音は下唇を噛んで耐え忍ぶばかり。
 ――そこへ突然。
「あっ、さっちゃん! さっちゃん! 何アレ、何あれ!」
 千歳がぎゅっと腕を引いたものだから、動きを一瞬止めた漣音は目を丸くする。
 彼女が指差す先を見ると、ああ、と何とかフラットな声を作って零して。
「何って……魔女の薬師だよ。まーた感情をダシに商売してるみたいだな」
「へぇ~、なんだかカフェみたいだねぇ、飲み物もあるのかな? なんか私、のど乾いちゃった気がするんだよね~……」
「ふーん、あるんじゃねェの? ま、自分で材料を集めなきゃいけないらしいケド」
「へぇー、変わってるねぇ~! でも宝探しみたいでおもしろそー!」
 どんぐりみたいに大きな瞳をぐりぐりと揺らして、千歳は興味津々。
 ちらりとはしゃぐ彼女を見下ろす漣音は、こくりと喉を鳴らす。
 なんたって。
 ――ここで飲み物を頼むとなれば、二人で材料を集める事となるだろう。
 そう、なんだか、とってもそれって。
 デートみたいじゃねぇか?!
「仕方ねぇなァ。……少し酔いが覚めるモンでも頼むか? 材料なら一緒に「えっ?」
 漣音の言葉に被せられた、千歳の驚いた声。
「でもなんか大変そうだし、何より私酔ってないし。よくわかんないからパスでいっかな~」
「えっパスかよ!?!?!!?」
 漣音の反応が面白かったのだろう。
 またけらけらと笑った千歳は彼を見上げて、尾をゆらゆら。
 その様子がまた可愛くて、漣音は彼女の視線から逃げるように目線を泳がせ。
「全く、仕方ねェなァ。――オレが集めてくるから、大人しくしてろよ?」
「えっ、さっちゃんやさし~い! えへへ、そしたらさっちゃんに任せちゃおうかな~」
 ありがとう! とぴかぴか笑顔を浮かべる千歳に踵を返すと、性根までパシられ根性が染みついてしまっている漣音は、胸をぐっと張って。
「まあー、神格高いオレにかかれば材料集めもすぐだしな!」
 格好良い竜神は、背中でも語るもの。
 その言葉への返事は、きゃっきゃ、うふふ。
「へえー、おねーさん魔女なんだ! すごーい! 何か魔法とか使えるの?」
「ふふ、私はこうやって草木を生やしてねえ――霊薬を作る事が得意よ」
「霊薬? ええー、お薬ってことー!? すごーい!」
「……」
 魔女がひょろひょろと草を伸ばせば、千歳はぱちぱちと拍手を重ね。
 そう。
 漣音が踵を返した事で会話が終えたと判断した千歳は、すでに魔女との会話を始めていたのだ。
「……」
 いや、いいけどさ~~。
 真面目に木の実と向き合う漣音は、籠を抱いて深いため息。
「って、ん?」
 そこに。
 気がつけば、小さなカエルと白蛇――自らの使い魔達が肩へと乗っている事に気がついた。
「そうか、オロ助と大将は手伝ってくれるんだな、……ありが」
 彼らはしゅるりと漣音の腕を伝って――。
「…………って、なんで集めた実を食ってるんだ?」
 味見、って顔をする使い魔達。
 味見かあ、って顔をする漣音。
「そうか……、美味かったなら、そりゃよかった……」
 がっくりと項垂れた漣音は、再び同じ実を集めだすのであった。
 全ては可愛い可愛いあの子に、美味しいジュースを提供するため。
 レシピ通りに材料を集めて、洗って、混ぜて、最後におしゃれに飾り付ければ――。
「あ、さっちゃん、ありがとう~!」
 ほら、千歳の笑顔が出迎えてくれる。
 早速啜った千歳は、漣音を見上げて。
「わー、冷たくて甘くておいしい~。さっちゃん上手だねえ!」
 そうして、一口飲んだグラスを差し出すと――。
「さっちゃんも飲むでしょ? はい、どーぞ!」
「えっ!?? で、でもそれ、おま……っ」
 不意打ちの攻撃に漣音は言葉を詰まらせて、ポーカーフェイスの維持が出来なくなってしまう。
 だってだってそれ、間接……間接ッッ!!
「……飲まないの? なら飲んじゃうよ~」
「あっやっ、べ、べつにいらない訳じゃなく……」
「うーん、やっぱりおいしい~」
 漣音に差し出したジュースを、やっぱり自分で飲み始める千歳。
「あ……」
 世界の絶望を煮詰めたみたいな表情をする漣音。
「――……ううん、ああいうのも青春っていうのかしら」
 なんて。
 くすくすと笑った魔女は、帽子の鍔をきゅっと引いて。
 ――微笑ましい二人のやり取りを、魔女だけが見ていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
…えー、と。終わった…の、かしらぁ…?
(さんざ暴れて踊り狂ってぶっつり意識が切れてからしばらく、実に爽快な目覚めである。
…ちなみにこの女、酔うとその間の記憶が丸ごとトぶ。
すなわち転送されてから今まで、「ごめずちゃん鬼ごっこ乱射事件」も「魔塵狂嵐トーテンタンツ」もやらかしたことは合切纏めて忘却の彼方、すっきりさっぱりすっからかんである。マジでタチ悪いなコイツ)

へぇ、薬膳のカフェ。それじゃ、材料は集めてくるから何か食べるもの頂けないかしらぁ?
なんだかすごぉくお腹空いてるのよぉ。よっぽど暴れたのかしらぁ?…正直、何やったかはぜんっぜん覚えてないんだけれどねぇ。
…洒落になんないことしてないわよねぇ…?



 ここは自室では無い、と思った。勿論、自分の店でも無い。
 なんたって屋根が無いのだから。
 青い空、町中から漂う温泉のにおい。
 周りを見渡せば、何やらカフェのような場所が繁盛している様子だ。
 ティオレンシアはなんとなく周りの情報をインプットしながら、大きな欠伸を掌で覆い隠して猫のような伸び。
「えー、……っと……」
 思い返す。
 ティオレンシアは今日、ここに何をしに来ていたのだったか。
 何かはしていたのであろう、服がそれなりに汚れている。
 ぐうーっと更に身体を伸ばすと、筋が伸びて心地が良い。
 周りの視界情報は整理できた。あと、思い出せるだけの記憶も。
 そう。
 仕事――だった気がする。
「うん、終わったみたいねぇ……?」
 多分そうなのだろう。
 カフェでは猟兵らしき人々が、のんびりと食事をしている様子だし。
 立ち上がったティオレンシアは、折角なのでカフェらしき場所へと歩み寄り。
「へぇ、薬膳――、お薬を食事にして貰えるのねぇ」
 材料さえ自分で集めてくれば、料理にして貰えると魔女がいうものだから。
 訪れたばかりのカフェから、ティオレンシアは踵を返す。
 ――不思議なくらいにお腹が空いているのだ。
 ううん、すこし視線を泳がせれば、青い青い空。
「なぁんにも、ぜんっぜん思い出せないんだけれどねぇ……」
 でも、この身体の疲労感とお腹の空き具合。
 よっぽど大暴れしたのかもしれない、なんて。
 緩く自らのお腹を撫でて、ティオレンシアはぽつりと呟いた。
「……洒落になんないことなんて、してないわよねぇ……?」
 うーん、どうかしらぁ……。
 答えはもはや、消えてしまった記憶の中にだけ。
 あとごめずちゃんに成ってしまっていた妖怪がちょっと避けてきているけれど。
 彼女からすれば、理由の分からぬ事。
 そう。
 ――自分がどれだけ暴れたかだなんて、ティオレンシアの記憶からはすっかりさっぱり排除されてしまっている。
 ティオレンシアは酔うとその間の記憶がスコーンと、まるごとぶっ飛んでしまうタイプなのだ。
 ――兎も角。
 腹が減っては戦はできぬとも言うもの。……これ以上、まだ戦をするのかという点は置いておいて。
 外で気分良く寝ていた事実も、酔いも、けだるさも、全て引き摺ること無く。
 ティオレンシアは食材を集めるべく、妙に妖怪が譲ってくれる道を歩み出す。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スキアファール・イリャルギ
終わっ、た……?
あぁ……きみのおかげでなんとか眠気に耐えきれた……
もう、ゴールしていいか……(かくん)

(スヤァ)


(……はっ)

……そうだ(ふらふら~)
魔女さんにお願いが……
あ、私の分の薬は後程でいいんで……
大丈夫です、なんとか耐えられます……多分……
まずは、彼女に使える薬の作成、お願いできませんか……

ほら、きみを癒す術は現状、歌しかないから
私が歌えなかったり、きみが聴ける状態ではなかったら――ね……

うぅ、立ち座りがまだ辛い……
まだフラフラするから何処かに寄りかかってないと立てない……
手持ちの薬で頭痛はなんとかなるだろうか……(ごそごそピルケース取り出し)
材料……全部呪瘡包帯で採れないかなぁ……



「――終わっ、た……?」
 光がスキアファールに寄り添うように、はためいていた。
 竜が倒れると共に、空も明け色に染まる。
 嗚呼、夜が明ける。
 皆が酔いから醒める、朝が来る。
「あぁ、きみのおかげで、なんとか眠気に耐えきれた――」
 歌を口ずさんでいたスキアファールは、光に声をかけると眦を和らげて。
 もう、眠りが醒めぬ事は無い。
 眠ったとて、皆目覚める事の出来る世界が取り戻されたのだ。
 そのままスキアファールは、瞳を閉じて。
 ……ぱっと開いた。
「あ……、いや、駄目だ……。頼みたい事があったんだ……」
 今にも眠りに負けてしまいそうな身体を押して、歩み出した。
 ――スキアファールには目的が在った。
 それはきっと、自らの『世界』では頼めぬ事。
 この世界でも、作れるかどうかは分からないけれども――。
 ふらふらと歩む彼の後ろを、心配そうに光が寄り添っていた。

 魔女の店へと訪れたスキアファールは、まっすぐに魔女へと向かって。
「……あの、彼女に使える薬の作成、……お願いできませんか?」
「えっ、それよりも今はキミの方が休んだ方が……」
「私は大丈夫です、なんとか耐えられますから……」
 多分、めいびー。
 スキアファールは一度かぶりを振ると、それよりも、と言葉を継いで。
「作れそうですか……?」
 彼女――はためく光を視線で示したスキアファールは、魔女の瞳を真っ直ぐに覗き込んで。その真剣な視線に、魔女はううんと唸った。
「……やって、みましょうか……」
 スキアファールはその言葉にほっと胸をなで下ろして。
「良かったです、では材料を……」
「ただし」
 魔女は人差し指を彼の鼻先に突きつけると、むう、と頬を膨らせた。
「そんなボロボロの状態で、人の心配をしている場合じゃないでしょう。あなたが休まない限り私は薬を作らないわよ」
 ――魔女が好んで喰らう感情は、恐怖や愛情。
 疲れ切った限界の苦しみでは無いのだ。
 手を下ろして肩を竦めると柔らかな草の塊――、ベッドを示して。
「その光――彼女さんについてもすこうし調べさせて貰わないと、薬が効くかも分からないわ。だから、今は、あなたはおやすみなさいな」
「は、はい……」
 勢いに押されたのか目を丸くしたスキアファールに、光もそうよと言わんばかりにはたはたと彼の周りを飛び回る。
 ――彼女を癒やす為には、今はスキアファールの歌しか無い。
 だからこそ、スキアファールが歌う事が出来ずとも、彼女が聴く事の出来ぬ状態でも。
 彼女を癒やす術が欲しかったのだ。
 しかし、しかし。
 彼が辛い思いをしてまで、もしもの薬を手に入れる事は彼女だって望んではいないのだろう。
 光がスキアファールを叱るように、窘めるように。
 ベッドへと腰掛けた彼へと寄り添って。
 さあ、今は――おやすみなさい。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ダンド・スフィダンテ
それなら、甘いものを好きになる薬とか、作れるだろうか?効果は1日で良いんだ。
恋人に、同じ物を美味しいと感じて欲しくて……いや、はは、我が儘だと、分かってはいるんだがな。

材料を集めるのは、不得意ではないぞ。多少の無茶振りにも対応しよう。
潜るのも、岩を割るのも、草や木の実を集めるのも、それを沢山持っていくのも、まぁ人並みに出来たり、人並み以上に出来たりするさ。

ああ、やはりこういう何かを作るための下積みは、楽しいな。
魔女のミューズ、他にも俺様に手伝える事はないか?あれば喜んでやるぞ!

そういえば、感情ってどうやって渡せばいい?
……散々泣いたからか、とてもすっきりしているんだ。
きっと明るい物を渡せるぞ。



 茨の上の、白い花。
 わたあめみたいなキノコ。
 魔女に渡されたメモを手に、ダンドは幽世の森を駆け回る。
 仕事を終えた後の労働ではあるが、目的に向かう為の下積みは彼にとって、苦と成るものでは無かった。
 それどころか、楽しい事ですらある。
 目的――それは些細で小さくて、彼にとっては大きなお願い。
「甘いものを、好きになる薬なんて……作れるだろうか?」
 効果なんて、短くたって良い。
 1日、半日、なんならお茶を飲む間だけでも。
 ――大事な大切なパートナーに、自分が美味しいと思ったものを美味しいと感じて欲しい。
 それが自分の作ったものであったりなんかしたら、それは、もう。
 蔓草の葉っぱに、蜜の樹の樹液。
 たっぷりと材料を籠へと詰め込んで。
 足早に魔女の元へと駆け戻れば――。
「魔女のミューズ! これで材料は全部の筈だ、確かめてくれるか?」
 ダンドの手にはどっさりと山盛りになった籠。
 魔女は眠たげな瞳を少しだけ丸くして、帽子の鍔をきゅっと擡げて笑った。
「あらあら、ままあ、沢山とってきてくれたのねえ。――逆にお礼をしなきゃいけない位だわ」
「おお、そうか。少し張り切りすぎてしまったな。余った材料は良かったら何かに使ってくれれば嬉しいぞ」
 強い気持ちは沢山沢山、すこしばかり詰め込みすぎたようで。
 頬を人差し指で掻いたダンドは淡く笑って。
「ふふふ、ありがとう、ならお薬の量をおまけしておくわよう」
 魔女が掲げたのは、揺らめく度にゆらゆら色を変える怪しげな瓶薬。
 1瓶で半日。
 これだけあれば3瓶はつくれるでしょう、なんて魔女は首を傾いで。
「それより、私は――」
「そうだ、感情が勘定だったな! ……散々泣いたからか、とてもすっきりしているんだ。きっと明るい物を渡せるぞ」
「……ええ、そうねえ」
 あーん、と口を開いた魔女は、気分良さげに眦を和らげて。
 こくん、と喉を鳴らし。
「――ミューズ、もしかしてもう食べたのか?」
「みたらし団子みたいな味ね」
「えっ、みたらし団子!?」
「さあてと、お薬を用意しましょうね」
 ――さあさあ。
 あなたの望むお薬を用意しましょう。
 きっとあなたの頑張った分は、効いてくれるに違いないわ。……きっとね。
 うふふ。
 お代のあなたの感情は、なかなか美味しかったわよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

臥待・夏報
風見くん(f14457)と

へくしっ(ずぶ濡れ)
あの、魔女さん、材料を採りに行く前に……服を貸してはいただけないでしょうか……

(という訳で、レトロウィザード姿になる)
本当に女装する羽目になっちゃったよ
似合ってるかな?
……そういう君は、大体何着ても様になるからずるいよなあ
ま、後はお酒(本物)と――二日酔い対策があれば万全かな!

カクリヨウコンは……これじゃないかな
引っこ抜くと絶叫するのが特徴なんだって
ほら断面が綺麗な黄色(折る)うーん絶叫がうるさいな

ね、折角だからお菓子っぽい薬にしてもらわない?
星とか月とかの形にしてさ
……味はシジミとウコンだけども

完成したらそりゃあ勿論、三軒目
効果を検証しないとね!


風見・ケイ
夏報さん(f15753)と

私もお願いします……(割れた壺の水を被った)

(せっかくなのでお決まりの三角帽子も)
女装というか仮装というか……そういえばそんな時期だった
魔法使い夏報さん、様になってる
そうですね……結局先日も飲み過ぎて、しっかり二日酔いでしたし

カクリヨシジミにカクリヨウコン
シジミはあの泉にいるとか
温泉になったから、そのまま出汁がとれそう
ちょっ、それ抜いて大丈夫?
聞いたら正気を失う、なんてことは……見た目はただのウコンですね

いいね
スパイスを使ったクッキーもあるし(シジミは見ない振り)
TRICK OR TREAT――なんてね
私たちはそれよりもDRINKだな
これがあれば何軒だって行けそうです



 地に刻まれる、二人分の足跡。
「へぷしっ」
 大きなくしゃみをした夏報は、ぶるりと大きく肩を震わせて。
 ――元が温水であろうが、冷えれば水だ。
「うう……」
 二の腕を抱くようにぎゅっと体を抱くケイ。
 ――温水で無い水を頭から被ってしまったのならば、尚更。
 幽世のこの辺りの気候は、しっかり秋というより冬の匂い。
 びたびたになってしまった服と、がぽがぽと音を立てる靴は、夜が明けたと言えどあまりにも寒いというより冷えるもの。
 だからこそ、だからこそ。
 魔女の店にたどり着いた二人の最初のお願いは。
「あの……非常に申し訳ない願い出だとは思うのですが……、服を貸してはいただけないでしょうか……?」
「申し訳ないのですが……、私もお願いしても良いでしょうか……」
「……タオルも必要そうねぇ」
 ――服の借受けの申し出であった。

 乾いた靴は、二人の足跡を残す事は無く。
 ゴシックめいたモノクロを基調とした、如何にもレトロウィザードめいた魔女の服。
 ついでにと貸してもらった、鍔の大きな長い長い魔女帽子。
 長く伸びたリボンのように括られた先が、ゆらりゆらり揺れている。
「うーん、本当に女装をする事になるとはね」
 似合っているかな、なんてくるりと夏報は回ってみせて。
「様になっていますよ」
 なんて応じたケイも、デザインこそ違えど同じ様な雰囲気の服。
 スカートの裾をぴっと引いて膨らみっぷりを確かめてから、彼女は相違う視線を上げ。
「そういう君も、大体何を来ても様になるからずるいよなあ。うーん、やっぱり身長とスタイルかな……」
「魔法使い夏報さんって感じで、私は夏報さんの着こなしも好きですけれどね」
「あー……、女装というか……仮装と言うか……。そういえばそんな時期だったな」
「はい、TRICK OR TREAT……ですね?」
 少しだけ唇の端を擡げて笑んだケイはびびでぃ・ばびでぃ・ぶー、なんて。指をくるりと空気を混ぜるように回す。
「ま、トリックとトリートは置いておくにしても、後はお酒と……二日酔い対策で万全かな」
「そうですね……。結局先日も飲みすぎて、しっかり二日酔いでしたしね」
 何を隠そうこの二人はカクリヨファンタズムの事を、居酒屋だと思いこんでいる節がある。
 なんなら、仕事で来て酒を飲まなかったことが今までに一度も無い。
 強いて言うならば今回は初めてまだ酒を飲んでいないが――、実際飲んでいたようなものだ。
 それに今からちゃんと酒を呑むので、きちんと記録は更新されます。
 仕方ないです、お仕事上がりですからね。
 うん、と頷いて一人で納得した夏報はケイの顔を見上げ。
「えーっと……、それで何を集めるんだっけ」
「カクリヨシジミに、カクリヨウコン……だそうですけれど」
 もともと泉だった場所がいきなり温泉になっても、シジミは生きているのだろうか。
 そのまま出汁がしっかりでていそう、なんてケイは瞳を眇め。
 ふと気がついた様子でしゃがみこんだ夏報が、木の根元を指差した。
「特徴からすると……カクリヨウコンはこれ、じゃない……かな?」
 大きな葉に、重なり合う葉のような花。
 緑に溶けるような白い花をてっぺんに抱いた植物。
 葉の根本をぎゅっと握りしめた夏報は、逆の手に持ったメモを目で追って。
「えーっと、引っこ抜くと絶叫するのが特徴なんだって」
「待ってください、ちょっ、夏報さん!? それ抜いて大丈……っ」
 夏報の言葉にケイは目を丸くした。そんなのお話に聞くところの、マンドラゴラでは無いか。
「えっ?」
 しかし、ケイの制止は間に合わない、勢いよくウコンを夏報が引っこ抜くと――。
 きゃああああああああっ、絹を裂くような叫び声。
「わ、うるさっ」
 とてもうるさかったので、夏報はサクッと半分に折ってしまう。
 うるさかったもんね。
「あ、断面は綺麗な黄色をしてるね」
「容赦無いですね……。ああ、でも、確かに見た目はただのウコンだ」
「うん、匂いもかなりそれっぽいよ」
 こっくり頷いた夏報が籠へとウコンを放り込めば、あ、と思い出したように。
 再びケイを見上げると、首を傾いで。
「ね、折角女装――仮装もしたんだしさ。この薬、お菓子っぽい薬にしてもらわない?」
「ああ、出来ると言ってたもんね。いいね、スパイスを使ったクッキーなんかもあるしね」
 ――シジミの入ったクッキーは知らないけれど、それはそれ。
 星の形や月の形のクッキーなんてきっと可愛くて、二人の魔女姿にもぴったりだろう。
 眦を和らげたケイは、肩を小さく擡げ。
「……ふふ、本当にTRICK OR TREAT――ですね」
 瞳を一度閉じた夏報が、ふ、と呼気に笑いを混じらせた。
「うーん、僕たちはどちらかと言えばDRINKだな」
「ああ……私たちは確かにそうだな……」
「じゃ、三軒目で効果を検証しないといけないね」
 まだまだ開けた空に浮かぶ太陽の位置は高いというのに。
 ――何を隠そうこの二人はカクリヨファンタズムの事を居酒屋だと思いこんでいる節があるので、まあ、仕方がないことなのだろう。
「DRINK AND EATですね」
 なんて。
 即席魔女の二人は残りの材料を集めるべく、泉へと向かうのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オセロ・コールブランド
■神ちゅん

フゥ、すごヤバな敵だったぜ…。
レディースはいなかったけど、よー考えたら誰も彼も無事に越した事ねえんス。
酔っ払っても多少は戦える、俺最高。
覚えた。

覚えたんスけど†神ニーサン†!
†神ニーサン†聞いて!!
ヤッベーパンツ流されたっス!!
やー全裸で戦う騎士とか割と前例あるんでいけんスけど普段からノーパンはちょっ……

(聞き入る)
(聞き入る)

そっか…ズボン流されるよりはよかった…
(そこらから漂うシジミの香り)

俺の勝負は終わっているから…勝負パンツは、いらねーんだァ!!!

そんなことよりお土産探すのが先…そういう事ね!
もう必要以上に理解したわ俺ェ!これは九割!!!

※今回もアドリブとても嬉しいです


キラス・レスケール
【神ちゅん】

生贄的な女性は囚われていなかったが、恐ろしい目に合う女性がいなくて実によか……む、どうしたオセロ?
なんと、パンツが。

まぁ落ち着けオセロ。
生きるためにパンツは必要か?

確かにスボンを履かずにパンツも履いていないのであれば、それは問題だろう。
だが今のお前はズボンを着用している。
言われなければパンツを履いていないことなどわからぬ。
確かに勝負パンツというものはある。
だが今この瞬間必要はないだろう。

今、お前はパンツを履いていない。だが、お前は今生きている。
生きるために、パンツは、必要か?
【威厳】と【存在感】を発揮して語って聞かせよう

※迷える少年に説法を説く俺様神様
※本人は今日はパンツ履いてます



「フゥー……すごヤバな敵だったぜ……」
 竜神が倒れた途端に、開けた夜。
 帳が上がった空は、青々と美しく輝っている。
 美しき夜明けの光を浴びるオセロは清々しい表情で空を見つめて。
 横の瓦礫に優雅に腰掛けるキラスの表情は、自愛に満ち満ちている。
 拭う頬の汗は涙等では無く、確かな戦いの傷跡のようなものだ。
「――まあ、マアーーー、レディースはいなかったスけど、よーよー考えたら誰も彼も無事に越した事ねえんス。それに俺は例え酔っ払っていても多少は戦う事ができると言う事が分かった事は何よりの収穫スよ。俺ってば最強最高天才努力の達人。うーん、さすがっす」
 いやー、覚えちゃったなァ~~!
 瓦礫に片足を掛けたオセロは、波止場立ち。
 いつもどおりの騒々しさにも聞こえるが、そのオセロの言葉中に滲む焦りが感じ取られてキラスは瞳を狭めて。
「ああ、――生贄的な女性は囚われていなかったが、恐ろしい目に合う女性がいなかったという事は、世界が今日も平和であったと言う事だ。実に佳き日であったと言えよう」
 いつも通り無闇に豪然と言葉を紡ぐと。
「そ~~~~れはそうとして、†神ニーサン†!!!! †神ニーサン†聞いてほしいっス!!!!」
「む、どうした」
 どうやら本題のようだ、とキラスは顎を引く。
 キラスは神なので、迷い子にはとても優しく導いてやる心構えがいつだって在るのだ。
 少しばかり背に光を瞬かせて、キラスはオセロの顔を見やり――。
「俺……俺……」
 もじもじと視線を泳がせたオセロが、一瞬言葉を呑み。
 ……決意したようにキリリとキラスの瞳と視線を確り交わして、言葉を紡いだ。
「今……ノーパンなんスよ」
 驚いた、と言えば驚いたのだろう。
 しかしキラスの態度は一つも揺らぐ事は無い。
「ほう、普段から……と言う事か?」
「そうじゃないっス、そうじゃないんスよ。さっきの戦いで知らない内に持っていかれたんス!!!!!!!」
「ほう――、落ち着けオセロ」
 落ち着き払ったキラスは、低く落ち着いた声音でオセロへと伝える。
 だってキラスのパンツは無事だから。
 そういえばさっきめちゃくちゃエッチな事になっていたな……おしぇろよ……。
「やーー、これが落ち着いて居られようもンスか!? 全裸で戦う騎士とか、まあまあ前例はあるんでセーフだとは思うんスけど、普段からノーパンの騎士はちょっと聞いた事が……」
「――オセロよ、落ち着け」
 二度目の忠告。
 キラスの神濃度が高まり、彼の後光がぴかりと瞬いた。
「……はっ、†神ニーサン†……!」
「オセロよ――尋ねよう、生きるためにパンツは必要か?」
「え……パンツは……」
 そりゃ、必要だろう、と言う言葉を飲み込むオセロ。
 ……だって、履いてないと公序良俗的に問題だろう。
「確かにスボンを履かずにパンツも履いていないのであれば、それは問題だろう。しかしだな、民族衣装としてノーパンの民族だっている。いいや、お前は今民族衣装という訳ではない、それは俺様だって重々承知している所だ。しかし、しかしだな――お前はズボンを今着用しているだろう? ならば、何の問題があると言うのだ」
 荘厳かつ尊大な態度ともとれよう。
 しかし、しかし、キラスの光があまりに神々しいものだから、オセロはこくこくと頷いてキラスの言葉に聞き入って。
「そっか……そうスね……、ズボンが流されて無くなってしまうよりはよかった……」
 ポケットに入っていたシジミをこつこつと彼の前へと並べる。
 お供え。
「ズボンを履いているお前は、お前が申告しなければパンツを履いていないことなどわからぬ」
「††神ニーサン††……!」
「確かに勝負パンツというものもある、しかし、しかしだ。今この瞬間のお前には、勝負パンツすら必要はないだろう。――もう勝敗はついているのだから」
「!」
 説教もクライマックス。
 キラスの光も、もはや彼の顔が見えぬほどに輝いて。
 オセロは思わず眩しさにほろりとこぼれてきた涙を拭う。これが感涙というヤツだろうか。
「今、お前はパンツを履いていない。だが、お前は今生きている。――もう一度、問おう、オセロ。……生きるために、パンツは、必要か?」
 静かな、静かな、キラスの問い。
 ふるふるとかぶりを振ったオセロが、ばしっと立ち上がり――。
「……理解ったっス……、俺の勝負は……俺の勝負はもう終わっているから――勝負パンツは、いらねーんだァ!!!!」
「その通りだ、オセロ。――たとえお前はズボンがなかったとしても『勝者』であろうよ」
「うおおおおおおおおおおおおおッッ!! 成程! 理解ったス!!! 必要以上に理解したわ俺ェ! もう八割強とは言わないっス……これは、これは九割!!!!!!!!!!!! あとは土産探しが大切という事……そうっしょ!?」
 ね、と振り返ったオセロは最早笑顔だ。
 ゆっくりと頷くキラスの唇にも、満足げな笑みが宿って――。
「ああ……その通りだ。良く理解したな、オセロ」
「ヘヘッ……、†††神ニーサン†††のおかげっスよ」
 眩いほどに青い空。
 眩いまでに輝かしい神。
 崖の下から二人を見上げる――。
「……ノーパン、ノーパン、ってうるさいわねえ……」
 全く、営業妨害かしらん。
 よく響く二人の声に薬師の魔女は、半眼で崖の上を睨めつけるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

呉羽・伊織
【二次会】(えっ)(は?)(誰か打ち切って!)
うう…もうかえる…オレはかえってねる…ふてねしてやる…どーぞお構い無く!
い~や~!もうちゃんと醒めるハズなのにこの悪夢も酔いどれも何で醒めないの!?
あとソッチの狐は鰻から離れろ諦めろ!

くっ…こーなったら!
ソコの素敵な魔女サン!
オレと好意とか愛情とか交わし合ってウィンウィンな関係築きマセン?
オレも感情ってのには色々とこう良い刺激や活力をもら…
(めげずに無視して)
ホラみてこーいう悪意とか哀情しか寄越してこない連中のせいで頭も心も休まらないの癒して!
いやまって姐サン何混ぜたのコレ??
コレはオレよか悪酔狐に飲ませるべきでしょ!?

(驚愕とか恐怖はきっと山盛)


千家・菊里
【二次会】(俺達の戦いはこれからです)
ふぅ、一仕事終えて(?)丁度お腹も空いたところ
いやぁ、宴に誂え向きな食材の宝庫が広がったものですねぇ
伊織、良い歳をして自棄酒からの不貞寝とか良くないですよ
ほら、それより貝を取りましょう――うーん温泉序でにに鰻も湧いたりしませんかねぇ?

おやおや伊織、そういう下心では腹も心もまともに満たされないと分かっているでしょうに――とりあえずこれでも食べて元気だすといいですよ
(無視られようが至ってマイペースに、そこら辺にあったひび割れたはぁと💔みたいな形のほろ苦そうな木の実をそっと渡して)
ははは、それだけ叫べるなら十分元気ですね?

(ちゃっかり美味しそうな霊薬を頂きつつ)


花川・小町
【二次会】(三次会まで続くんじゃよって誰かが言ってたわ)
ふふ、あんなに酔いが回るなんて中々貴重な経験だったわね(普段は至って素面だとでも言う様な涼しい顔)
世界も無事に救えたなら、後はもう心置き無く打上や祝杯に浸れるというもの――ちょっと伊織ちゃん、お愉しみはこれからよ?

あら…私の誘いを放って、なぁに?良い度胸ね?
まぁいいわ――そんな風にまだ寝惚けた事を言ってる伊織ちゃんに丁度良い薬を、たっぷり真心込めて作ってきてあげましょう
(レシピを借り暫し離れたと思えば、謎の薬を手に戻り)
はい、お口開けて?
薬草とずんだ(みたいな山葵擬き)――目覚ましにはきっと抜群よ

ふふ、元気なら良いわ――さぁ飲み直しましょ


佳月・清宵
【二次会】(ここまで来りゃ飲み明かす他ねぇよなぁ?)
ああ、偶にゃ存分に酔いしれるのも悪かねぇが(普段は特に酔ってないとでもいう顔)――やはり湯よか本物で口直しと洒落込みてぇとこだ
おい、折角構ってやってるってのに不貞寝たぁどういう了見だ?
まぁそう遠慮せずに付き合えよ、暇人

(また突然斜め下に逃げんとした獲物を笑いながら眺め)
ああ悪ぃな魔女殿、此奴はちょいと手の施しようがねぇ重症でな――二日酔いは兎も角、何とかにつける薬はねぇって奴だ
時々腹が捩れたりはするが、腹の足しとしては不毛だろうよ
(言いつつ出汁霊薬をオマケに作ってやり)(妙にしょっぱい――涙の味がするのは気のせい)
俺にゃ百薬の長があるんでな?



 竜によって幽世より失われていた『醒』は、猟兵たちによって取り戻され。
 竜と共に訪れた夜は竜の退場によって明けた。
 残ったのは迷宮化した街に、湧いた温泉。
 しかしそんな事は、幽世にとっては日常茶飯事。
 すぐにカタストロフが訪れがちなこの世界は、それなりに逞しいのだ。
 その逞しさの象徴のように、事件が解決した途端に生まれた店には猟兵達が集まり。
 店主の魔女の目論見通り、彼女の懐も暖まっている様子であった。
 その店の一角。
 柔らかな草で作られたベンチに腰掛ける小町は、楽しげに瞳を細めてくすくすと笑って。
「ふふ……、あーんなに酔いが回るなんて中々貴重な経験だったわね」
「ああ、偶にゃ存分に酔いしれるのも悪かぁ無かったが、――やはり湯よか、本物で口直しと洒落込みてぇとこだなぁ」
 岩塩を一粒口に含んだ清宵は、グラスに入ったくっと透明な水を呷る。
 ……えっ、水ですよね?
 兎も角、普段から素面なんだかへべれけなのか解らぬほど。
 酒を手放した姿の方が観測されづらい、二人の言葉はなんとも力強い。
「しかし、いやぁー。実に宴に誂え向きな食材の宝庫が広がったものですねぇ」
 楽しげに尾を揺らした菊里は、店内をぐるりと見渡す。
 店内どころか、店外まで広がった魔女の森。
 木の実やらキノコ、樹液に、穀物らしき植物に――。
 見ているだけでお腹が空いてきそうだと、菊里は耳の先を気分良さげにぴぴぴと揺らして。
 ――ちなみに菊里も、飯を手放している姿の方が観測されづらいと言うデータがございます。
 三人寄らば、drink and treatと言った態。
「世界も無事救えたしね、後はもう祝杯よねえ」
 小町がくるくると水のグラスを揺らして。
 甘く唇を寄せると、くっと傾けた。
 えっ、水ですよね?
「うう……、ヤダ……オレはもうかえってねる……、もうかえってふてねしてやる……」
 そんな朗らかな三人の横から響く恨みがましい声音。
 清宵の小脇に抱えられた伊織は、ぐすぐすめそめそしていた。
「もう……、ちょっと伊織ちゃん? お愉しみはこれからなのよ?」
 小町が嗜めるように、つん、と鼻先を突いてやると。
 肩を竦めた清宵が瞳を眇めて。
「あァ? おい、折角構ってやってるってのに不貞寝たぁどういう了見だ? 帰ったって暇だろうが、遠慮せずに付き合っていけよ」
「オレはオレで不貞寝で忙しいの!! どーーぞお構いなく!!」
 わっと吠えた伊織に、菊里はふむ、と少しだけ考えた様に自らの顎先に拳を当てて――。
「おやおや、伊織。良い歳をして自棄酒からの不貞寝とか良くないですよ? ほら、それより一緒に貝を取りに行きましょうよ――うーん……、温泉序でに鰻も湧いたりしませんかねぇ?」
「ヤダーーーーッッ!! もーーっ、もうちゃんと醒めてるハズなのに、どうしてこの悪夢も酔いどれも醒めてないの!?」
 もともと真っ当な意見が貰えるとは思っていなかったが、酔っている時と全く変わらぬ言葉に伊織は嘆くばかり。
「うふふふ、今日も元気がいいわねえ」
「よく吠える肴だな、構ってやるんだから素直に喜べよ」
 ――この二人の酔いが醒めないのは、恐らくなのだが飲んでる水がちょっとばかり発酵している可能性が高い為かもしれないけれども。
 それだって小脇に抱えられた伊織には見えぬもの。伊織は体を捩って、ぱたぱたわたわた足と手を遊ばせる。
 そんな彼を見やった菊里は、真顔でこっくり頷き。
「鰻の蒲焼きなんて、薬として優秀そうですよねえ」
「ええいっ、ソッチの狐は鰻から離れろ! 諦めろ! なんで鰻の事が頭から離れなくなってるの!? 鰻に酔ってんの!?!??!」
 こうなったら、とキリリと表情を引き締めた伊織は、横で黙々とすり鉢で何かを潰す薬師の魔女を見上げて――。
「……ソコの素敵な魔女サン! オレと好意とか愛情とか交わし合ってウィンウィンな関係築きマセン?」
「えっ?」
 突然話しかけられた魔女は眠たげな瞳を少しばかり丸くして、伊織を見下ろし。
「オレも感情ってのには、色々とこう良い刺激や活力を貰って……兎も角良い感じにデスネ?」
「成程」
 相槌一つ、ゴリゴリとすりこぎ棒を持つ手を止めぬ魔女。
 ぬるりと小脇から鰻のように抜け出した伊織に、清宵は肩を竦めて笑って。
「ああ悪ぃな魔女殿、此奴はちょいと手の施しようがねぇ重症でな――、二日酔いは兎も角、何とかにつける薬はねぇって奴だ――食べたとしたって、時々腹が捩れたりはするが、腹の足しとしては不毛だろうよ」
「そうですよ、そういう下心では腹も心もまともに満たされないと分かっているでしょうに」
「もう、私の誘いを放って他の女の子の所に行くなんて、良い度胸ねえ」
 うんうんと頷く菊里の横で、小町はやれやれと自らもすりこぎ棒を手に。
 それは何かを作ろうとしているだけで別段伊織を殴ろうと言う訳では無いのだけれども、不思議と威圧感があるその姿。
「ホラ、見て! 魔女サン! こーいう悪意とか哀情しか寄越してこない連中のせいで、頭も心も休まらないの!! 薬だけじゃ無くって、様々な方法で癒してくれマス!? あと姐さんはスミマセン!!!!!!!」
「いやあ、愛されてるみたいねえ」
 からからと笑った魔女がやっと手を止めたかと思うと、カットした柿を彼らの前へと提供して。
 ――柿は悪酔い、二日酔いに効くと言われているのだ。
 菊里がそそくさと一つ摘んで。
「良いのよ、伊織ちゃん」
 そうして笑った小町は、ひたすらすり鉢と向き合っている。
 ゴリ、ゴリ、ゴリ。
「ヒエ……、何を作ってるのソレ……???」
「ふふ、これはね。まだ寝惚けた事を言ってる伊織ちゃんに、た~~っぷり真心を籠めた丁度良い薬よ」
「まあまあ、とりあえずこれでも食べて元気を出してくださいよ」
 怯える伊織に柿を咥えたまま、そっと菊里が差し出したのはひび割れたハートマークのような硬い木の実。
 伊織はめげない気持ちでソレを無視して――。
「ちょっとまって、丁度いい薬ってナニ!?!?!?!? 丁度!?!?!」
「はあい、お口開けてみて?」
 丁度出来上がった、と。
 緑色のツンとする何かの山を、匙にたっぷり掬った小町は伊織の口の前へと差し出して――。
「いやまって姐サン、何混ぜたのコレ?? めちゃくちゃ辛い匂いがするんだけど!?!?!? コレはオレよか、悪酔狐に飲ませるべきでしょ!?」
「これはね、伊織ちゃんの為に作ったのよ。私が。ね、――目覚ましにはきっと抜群よ」
 戦いの時以上の圧。
 小町はにっこり微笑んでいるが、野生下では笑顔は威嚇だといわれているものですからね。
「あっ、あっ」
 ぷるぷる震える伊織は、助けを求めるような視線を泳がせて。
 悪酔狐――清宵は、グラスをまたこっくり傾けるばかり。
「ま、俺にゃ百薬の長があるんでな?」
「あーーーーーーーーーーっっ」
 匙を口にした伊織は、ほろほろと涙を零す。
 それは感情による涙というよりは、ほとんどが生理的な反応だ。
 菊里はそうっと柿と水を伊織の前に差し出して――。
「ははは、それだけ叫べるなら十分元気ですね?」
「ふふ、元気なら良いわ――さぁ飲み直しましょ」
 なんて、当の本人の小町は満足げにグラスを呷り。
 そうして店主の魔女はと言えば――触らぬ神に祟り無しと言った様子で薬作りに戻っているのであった。
 ぐすぐすと伊織は床で不貞寝を始め――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

漸く醒めた酔いと共に先の己の失態を思いだせば思わず頭を抱えつつ宵へ視線を
…宵…覚えて居る…よな…?
そう恐る恐る聞きながらも、宵の様子を見れば背を震わせつつ俺も、覚えて居らん故、だ、大丈夫だとそう声を
…偽りを口にするのはいかぬが…この嘘は許して貰える、だろう…っ
そう震えながらも屋台を見れば誤魔化す様に繋いだ宵の手を引き其方へ

薬師か…俺は二日酔いにかかって居らん故、違う物をと宵と共にバスボム作成をお願いしよう
この地の温泉のようなもの等あれば良いのだが
後途中宵に気づかれぬ様こっそり薬師に近づけば、恋人が甘えてくれる薬等ないか聞いてあれば購入を
ああ、本当に色々と家に帰り試すのが楽しみだ


逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と

ほんの先刻までへべれけになっていた自分のしでかした行動と
かれに吐いた言葉の数々が思い起こされたなら顔を覆いたくなりましょう
躊躇いがちなかれの声には僕は何も覚えていませんと顔を覆ったまま首を振り
覚えていないと返されたなら、黙って頷き

手を引かれて屋台へとともに歩けば
―――霊薬ですか?
それでは、そう、今日あったことの思考を切り替えて、さっぱりして穏やかな気分になれるようなバスボムをと

材料はかれとともに集めつつ
霊薬の調合は実験のようでとても楽しいです
調合中になにやら魔女へと近づいてゆくかれを視線の端で追いながら
さぁ、出来ました
今夜の風呂は一層のリセットタイムになりそうです



 竜と共に訪れた夜は、竜と共に開ける。
 幽世から失われていた『醒』は取り戻され、この世界は平和になったのだ。
 そう、平和に――。
 静かに静かに。
 宵と並んで歩むザッフィーロは、銀色を眇めて何かを窺うよう。
 喉をこく、と鳴らして。
「……宵」
 少しばかり泳いでしまう視線。
 何かに縋るように口元を指先で覆うと、どう言葉を切り出すか困った様子で。
 戸惑うように、ザッフィーロはぽつりぽつりと言葉を紡ぎ始めた。
「……覚えて居る……よな……?」
「……僕は、何も覚えていません」
 震える語気。
 ザッフィーロと視線を交わすことも無く、掌で完全に顔を覆った宵がゆるゆるとかぶりを振って応えるものだから。
 ザッフィーロだってもう、彼の言葉に否を突きつける事等できなくなってしまう。
 なんとなく背をきゅっと伸ばした、ザッフィーロは小さく頷いて。
「そうか……、俺も、覚えて居らん。……故、だ、……大丈夫だ」
 唇は噤んだまま、ザッフィーロの言葉にただ首肯する宵。
 ――勿論。
 ザッフィーロは全て覚えている。
 へべれけになった宵も。
 自分の行った行動も、全部、全部。
 ――覚えてはいるのだが、この偽りの言葉は宵の為の言葉だ。
 普段よりもずっと少ない言葉を交わしながら。
 宵の手を引いたザッフィーロは温泉の湯気が漂う道を真っ直ぐに、猟兵達で賑わう魔女の店で足を止めた。
「へえ、……霊薬を作ってもらえるのですね」
「ふむ。一言に薬と言っても様々な形があるのだな」
「それでは……、そうですね。気分が切り替えられるような入浴剤――バスボムなんて、どうでしょうか?」
「ああ、良いな。自分で作れるというのならば、更に楽しそうだ」
「ふふ、それではザッフィーロ。早速お願いに行ってみましょうか」
 少しばかり気分が切り替わった様子の宵に、ザッフィーロは人心地を付いて。
 ――魔女に言われるが侭に材料を集めだす。
 宵の集める材料は、さっぱりとして穏やかな気分になれるよう。
 エキゾチックな香りの花弁に、甘い柑橘の魔法の精油。それに重曹にクエン酸、コーンスターチに――。
「まるで料理のようだな」
「何かの実験のようでもありますよ、魔法の精油以外はどこでも用意ができそうですねえ」
 二人は会話を重ねながら、混ぜて、型を選んで。
 ――途中、ザッフィーロが一度魔女の方へと、作り方を確かめに行きつつも……。
 最後に星の形にぎゅっと固めれば、甘くてエキゾチックな香りのバスボムの完成だ。
「ふふ。今夜の風呂は、一層のリセットタイムになりそうですね」
「ああ、本当に色々と――家に帰ってから試すのが楽しみだな」
 眦を和らげて笑う宵に、ザッフィーロも唇の端を笑みに擡げて。
 それから先程作り方を確認に行く振りをして、魔女へお願いをした薬。
 ……懐にしまった『相手が本音を曝け出して甘えてくれる薬』を確かめるように撫ぜた。
 
 『恋人が甘えてくれるような薬は無いだろうか』と尋ねられた魔女は、とろける色の水薬を一つ取り出して。
 ――効果の程は、お二人次第かしら、なんて。
 くすくすと笑っていたけれど――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メルト・プティング
お友達のベアータ(f05212)さんと
酩酊時の記憶はバッチリ残ってるタイプ
二日酔いに効くという薬膳カフェでご飯を食べながら

前後不覚になって、街をボッコボコに…
ふふふ…もう住人の方に申し訳なさ過ぎて味もよくわからないのです…

ベアータさんにも戦闘中なのにベッタベタくっついちゃって、迷惑だったのでは…うう、穴があったら入りたい…!

そんなダメダメなボクを励ましてくれるベアータさんは、やっぱりとっても優しいのです
最初は味もわからなかったのに、あーんしてもらう頃には元に戻ってて
ああ、ボクって現金だなぁ、なんて

そう考えてたら、彼女が何か呟いたみたいで
あの、今なんて言ったのです?
もっかい言ってほしいのですよぅ


ベアータ・ベルトット
親友のメルト(f00394)と
酩酊中の記憶は殆ど無い

勝って今日もご飯が美味い、薬膳カフェで舌鼓!…なのに。メルトはずっと気落ちしてる
…他人を思うその優しさが、私は好きだ。だから…

あんなの不可抗力、全部骸魂が悪いのよ
アンタはよくやったわ。万一があったら、私も一緒に謝ったげる
だからほら、メルト…あーんっ
…元気出しなさい。せっかくのご飯、美味しく食べてこそよ

(くすり)アンタがベタベタなのはいつもの事でしょーが
それに……そのお蔭で、助けて貰えたんだしね。…ありがと
――そう、それだけは覚えてる。ぽかぽかした温もりも、自然と蘇ってきて
……だいすき
恥ずかしいから目を逸らし、小さく呟く

なっ、何でもないわよ!



 ゆらゆら立ち上る湯気は、とっても良いかおり。
 薬膳カレーに、特製スープ、卵焼き。
 香草と薬草のサラダだって、とっても美味しそう。
 それでも、それでも。
「ふ、ふふふふ……、住人の方に申し訳が立ちませんよね……」
 ぷるぷるするメルトは、永久に脳内で反省会を行っていた。
 ① 酔っ払った。
 ② めちゃくちゃに暴れて波動を打ちまくった。
 ③ めちゃくちゃに街を破壊した。
 迷宮化した街だ。どうせ滅茶苦茶になってしまっているのだから、破壊されたってそこまで妖怪たちは気にしない、と言われたとしても。
 住人たちの居る街を破壊してしまったのだから、メルトとしては気になってしまって仕方がない。――それに下手に酩酊中の事を全て覚えてしまっている事も、メルトにとって自らを苦しめる一因となっている。
 一緒に仕事に、そう! 仕事! 仕事なのに!
 戦闘中にベタベタベッタベタしてしまったベアータへと、ちらりと視線を向けると――ベアータが困ったように眉根と瞳を狭めているものだから。
 仕事中にベタベタされたら、そりゃあ迷惑ですよね……ううううう。
 ああーー……っ、穴があったら入りたい……!
 メルトはサラダの上に乗ったクルトンを、突いて、突いて。
 食は進まず、お腹の奥がきゅるきゅる重たくなるような感覚。
 自己否定、自己嫌悪。口へと運んだご飯の味だって、もう何を食べているのかだって解りもしない。
「……メルト」
 そんなメルトを確りと見据えたベアータは、言葉を選ぶように。
「はい……」
 スプーンをきゅうっと握ると、その視線にメルトは更にずずんと自己嫌悪の海へと沈んでしまう。
 ああきっと迷惑だった、と告げられるのだろう、なんて――。
「アンタねえ、あんなの不可抗力だからね? ……全部骸魂が悪いのよ! 私はアンタはよくやっていたと思うわ」
「……べ、ベアータさん……」
 ベアータの優しい言葉。
 励ましてくれてると言うことに、メルトのきゅうきゅうする心に明りが灯るよう。
「万一があって妖怪たちが怒ってきたら、……私も一緒に謝ったげる」
「う、うう……、そんな……あんなに戦闘中にベタベタしたボクをそんなに……!」
 ふるふるかぶりを振るメルトは、今にも泣き出しでもしてしまいそうな声。
 もう、と。
 ベアータは肉巻き野菜の天ぷらを、メルトの前へと差し出して。
「だから、メルト……元気、出しなさい?」
 ――はい、あーん。
 差し出されたおかずをぱくりと一口で食べてしまったメルトは、肩をぎゅっと擡げて。こみ上げるぽかぽかとした気持ちと、美味しいごはんにへんにゃりと笑った。
「……え、へへ。美味しいです!」
 ――優しく励まして貰えるだけで、こんなに気持ちが軽くなってしまうなんて本当に現金だなあ、とメルトは思いはするけれど。
 嬉しい気持ちも、軽くなった気持ちも、全部ぜんぶ本当の事。
「ほーらっ、シャキッとしなさいよ。せっかくのご飯なんだから、美味しく食べてこそよ?」
「は、はいっ。そうですね……、……では、えいっ!」
 だからメルトはお返しにと。
 卵焼きをベアータの口へと、はい、あーん。
「……!」
「えへへ、美味しいですか?」
 反射的にもぐもぐ、こくん。
 卵焼きを飲み込んだベアータはこっくり頷いて。
「……ん、そうねえ」
 小さく笑うと、その藍色の眦を和らげた。
「……大体ねぇ、アンタがベタベタなのはいつもの事でしょーが?」
「う、うっ、そ、それは、そう、かも、……ですけれど……!」
 否定も出来ず肩を跳ねたメルトの様子に、ベアータはまた笑って。
 ――そう。
 そのお陰でベアータは助けて貰えたのだ。
 酩酊中の事なんて、ほとんどなあんにも憶えていないけれど。
 暖かくて、心からぽかぽかするような温もりだけは。……助けて貰えた事だけは、確りと心が覚えているのだ。
 メルトの他者を思う、優しい心がベアータは――。
「ありがと、――……だいすき」
 目を逸らして、ぽそりと思わず零してしまった、零れてしまった、小さな言葉。
「……? あの、今なんて言ったのです?」
 その言葉に、メルトは首を傾いで。
「なっ、何でもないわよっ」
 ベアータは目を丸くして、びくんと肩を跳ねて。
 一瞬で頬が暖かくなってしまった事が、自覚できてしまう。
「聞こえなかったので、もっかい言ってほしいのですよぅ!」
「もーっ、言わないわよっ」
 ぐいぐいと寄ってくるメルトは、もうすっかりいつもの様子。
 腕にしがみついてくる彼女をベアータはええいと引き剥がしながら、かぶりを振って。
「えーっ、ベアータさんー!」
「食事中にベタベタするんじゃないわよっ!」
 ――それは暖かくなってしまった頬を、冷やすよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

深山・鴇
【八重】アド◎
俺は一体何を……(膝の上の猫を撫でつつ)
清々しいまでに酔っ払いだったな(記憶を失くさないタイプなのでしっかり覚えている)
いいねぇ、茶を飲めば一層すっきりするってもんだ
ついでに風邪の引き始めや調子の悪い時なんかに効く薬草茶なんてのもないかい?あったら分けてほしいんだが
朱酉君もそのうち飲み食いできるようになればいいんだがなぁ、まぁ神様にも色々あるさな
代わりにヤン坊君飲むかい?そういやマー坊ってのは……君またそういうネーミングセンスを
(センスについては三人どっこいどっこい)
ん?犬…じゃないな、狼…コヨーテか、可愛いな

雲珠君は…ああ、寝付きのよくなるお茶か
いっそ夜更かしも楽しそうだがなぁ


雨野・雲珠
【八重】いかようにでも!

(猫を頭に乗せたまま我に返る)
――は!
なんだか心昂ぶるままに踊る楽しみと
重みの幸せを知ってしまったような…
雑に撫でられたような…
(お茶をいただくうち、花はひらひら散る)
最近わかってきたんです
かみさまが呼び出す名前つきは
ほぼ確で神話生物だと…
わ、かっこいい!もふもふしたい!

賑やかなわんにゃんふれ合い会場を背に、
お手伝いしながら調合を眺めます
深い知識と経験から為る御技に興味津々

桜の癒やし手ですから、
普段お薬とは縁がないのですが…
寝付きのよくなるものとかありますか?

(後ろに聞こえないように)
…「寂しい」とかもお代になるでしょうか。
最近留守番が多くて
すこしもらっていただけると…


朱酉・逢真
【八重】アド◎ 直の接触・飲食不可
(こども姿)(ふたりに積んだ猫をいっぴき残して影にしまって)
宵明け酔い醒め、おはようさん。兄ィたち、楽しかったねェ。俺も長らく忘れんよゥ。頭さっぱりさせんなら、薬茶のひとつももらうといいぜ。ざんねん俺は飲めねえが。
雲珠兄は調薬見学。深山兄はァ…マー坊が気になるってェ? そんじゃあひとつお呼びしよう。マヒ・ナ・ティーヒー。略してマー坊だ。なんだよゥ、わかりやすくていいだろォ。
ああ、魔女さんよ。俺に期待するな。お前さんにやれそなものは、俺ァかけらも持っちゃいねェ。こっちのふたりに馳走しとくれ。俺ァなんにもいらねェよゥ。



 にゃあ、にゃあ、にゃあ。
 ごろ、ごろ、ごろ。
「……!」
 雲珠がはっと上半身を擡げると、猫がぴょいぴょいと彼の体から飛び降りて。
 飛び降りそこねた猫を頭に乗せたまま、雲珠はキョトキョトと周りを見渡した。
「こ、ここは……?」
 空の色に桜色が溶けた瞳の色には確りと正気の色が取り戻されて、雲珠は常通りの少しばかり表情筋のかたいだけのお利口さんの表情。
 背中までぬいっと伸びた猫の腹が首の後ろで暖かくて、余った皮はぽよぽよで。雲珠はなんだかとってもどきどきしてしまうけれど。
 それにしたって、体に残る心地の良い疲労感は、まるで――。
「……なんだか心が昂ぶるままに踊る楽しみと、暖かい命の重みの幸せを知ってしまったような……、こう……雑に撫でられたような……?」
 探偵助手だって推理は出来るもの。
 体の疲労感と周りの状況、それにぼんやりした記憶から推察された事象は中々意味不明で、顎に指を寄せた雲珠はむむむと眉を釣り上げた。
 そんな雲珠より逃げた猫たちが集う先。鴇の周りに集まった猫たち。
 そんな膝に丸まる猫と伸びる猫を順番に撫でながら、鴇はゆるゆるとかぶりを振り。
「……俺も……、清々しいまでに酔っ払いだったみたいだな……」
 確りと残った破茶滅茶な記憶。
 鴇はこう見えて決して普段から笑わぬタイプと言う訳では無いのだが、笑いすぎて頬の筋肉が突っ張ってしまっている。
 これでもし明日頬肉が筋肉痛になってしまっていたら、――頬の筋肉痛ってどう対応してやれば良いんだ? アヒル口トレーニング?
「ああ、そうさァ、その通り。ひ、ひ、宵明け酔い醒め、おはようさん。兄ィたち、楽しかったねェ」
 コンテナからひょいと立ち上がった逢真はひょいひょいと猫を拾い上げると、影へと一匹ずつ収めて、仕舞って、片してにゃんにゃんにゃん。
「そうさなァ、きっと俺も長らく忘れんよゥ。それにしたって、雲珠兄は随分ぼんやりしてるようじゃねえかい。そんなら、頭さっぱりさせんのに薬茶のひとつももらうといいよぅ」
 顔を軽く上げると、そっちに魔女の店があるそうだと、逢真は顎をしゃくって示すよう。
 軽い足取りで歩みだせば、全然吹けてもいない口笛を口ずさみ。
「へぇ、そうなのか。いいねぇ、この様子じゃ世界は無事醒めたようだがね、茶を飲めば一層すっきりするってもんだ」
 猫がいなくなってしまうのはとても寂しい事だ。猫を仕舞われてしまった事に周りに判らぬ程度に少しだけ淋しげに肩を落した鴇はよいしょと立ち上がり。
「そう言えば、お薬の調合をしてくださる魔女さまが居るとおっしゃっていましたね。行きましょう!」
 にあー。
 角と角の間にでろんと伸びる頭上の猫を、落ちぬように両手で抱えた雲珠も二人に付いて歩み出した。
 ――たどり着いた魔女の店は、最早森の如く。
 薬の材料と成る草木が生い茂る中に、机とテーブルが用意されている。
 編み上げられたような柔らかな草のベンチに腰掛けた雲珠は、湯呑を掌におさめてほう、と吐息を零した。
「確かに、暖かいお茶はすっきりしますね……」
 はらりはらりと散る雲珠の角に咲いた花弁は、彼が落ち着いてしまった証拠でも在るのだろう。
「ひひ、そりゃァ何より。ま・俺は飲めねえがね」
 逢真が肩を竦めて笑って、手をひらり。
「ふーむ。朱酉君もそのうち飲み食いできるようになればいいんだがなぁ、――まぁ神様にも色々あるさな」
 そんな彼を見やりながら、雲珠と並んで茶を啜っていた鴇は顔を上げて。
 あとついでに雲珠の横に丸まって落ち着いていた猫を膝の上にさりげなーく回収した、なんたって猫は可愛いので。
「そうそ、色々あるモンさァ」
「ん。じゃあ、そうだな。ヤン坊君、代わりに飲むかい?」
 彼自身は触れる事が出来ずとも使い魔ならば、鴇だって雲珠だって触れる事ができるもの。
 冗句めいて言葉を重ねた鴇は、そこではた、と思い出した様子で。……そう言えば、戦闘中に聞き捨てならない随分とアレな名前を聞いたのだ。
「……そういや朱酉君よ、マー坊ってのは……その、何だい?」
 何だい、と言うのは、やっぱりああいうネーミングセンス? と言う意味合いと、何の生物なんだい? と言う、二つの意味合いが溶ける問い。
 二人のやり取りを静かに聞いていた雲珠は、湯呑を両手で包んでころころしながら、視線を少しだけ横へと泳がせて。
「――なんか、俺、最近わかってきたんです。かみさまが喚び出す名前つきは……ほぼ確定で神話の生き物だって……」
「ひ・ひひ、マー坊ぉ? マー坊に会いたいのかぃ? そんじゃあひとつお呼びしようかぁ、マヒ・ナ・ティーヒー。――略してマー坊だ」
 どろりと逢真が影から引っ張り出されたのは、『化けるコヨーテ』だ。
 化けていない今はもうそりゃあ、小柄な狼のような見た目の獣ではあるのだが。
「わ、かっこいいですね……!」
 ぴかぴか瞳を瞬かせる雲珠は、ぐぐっと拳を握りしめて。
「はー……君、またやっぱりそういうネーミングセンスを……」
 合わせるとやっぱり、天気予報じゃないか。
 それでも喚び出されたコヨーテを、雑にぐしぐし撫でる鴇。
 うんうん。猫も良いけど、犬もかわいいものだ。
「なんだよゥ、わかりやすくていいだろォ?」
「ん、まあ、それはまあ……、……まあ……?」
 首を傾いだ鴇は、ついでにもう一つ思い出した様子。
 薬を調合する魔女にかるーく振り向くと、ひらひらと手を振って。
「ああ、そうだ。魔女さんよ。ついでに風邪の引き始めや調子の悪い時なんかに効く薬草茶なんてあったら、分けてほしいんだが……」
「俺ァなんにもいらねェよゥ。こっちのふたりに馳走しとくれ」
 俺にゃ気を使わずとも良い、と瞳を眇めた逢真。
 ――なんたって逢真には彼女の腹を膨らせられるような感情は、ひとつも持ち合わせがないのだから。
 その言葉にぴょんと立ち上がったお利口さんの雲珠が、手をぴしっとあげて。
「あっ、ではその調合、良ければ俺も手伝わせてください!」
「まあいいの? ワンやらニャンやらはもう撫でなくて大丈夫なのかしら」
「だ、……大丈夫です! 何からお手伝いしましょうか?」
 そりゃ動物達にだって後ろ髪が惹かれはするが、雲珠からすればその辺りに並べられた器具だって、彼女の調合する技だって興味が津々なのだ。
「そうねえ、じゃあそっちの秤に――そっちのカゴの中の葉っぱを乗せてもらって良いかしら? きっかり400gよ。 それからそっちの擂り鉢でつぶしてほしいのよね」
「はいっ、お任せください!」
 ――それに。
 できれば、雲珠の下へと桜の癒やしを求めて来た者達に出してあげられるような薬だって頼みたいのだから――。
 其のためにも、雲珠は小さな小さな声で魔女へと問う。
「えっと、魔女さま。後で俺も調薬をお願いしたいのですが……、その。……『寂しい』とかもお代になるでしょうか?」
 最近は随分とお留守番が多いものだから、少しだけ、少しだけ、貰って貰えると嬉しいと。
 二人に聞こえぬような小さな声で雲珠が言うものだから、魔女はくすくすと笑って。
「……ふふふ、そうねえ、いいわよう?」
 ――小さなお利口さんの頭をくしゃくしゃと撫でた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
魔女がお薬を?
僕はヨルの言葉がわかるようになるお薬がいいな
ヨルとお喋りできたらもっと楽しいもの

眠くなって気がつくと今だった
僕は酔うの駄目だね

寝ぼけ眼を擦りながら魔女から貰った薬をごくり
うへぇ
変な味!と苦笑いする

いつもなら、きゅうと返ってくるはず

酒癖の悪い櫻のことをいえないな
親友と出かけて行った彼を思う
…多分きっと確実に苦労したよ
大丈夫かな

―りるは絡まれて困ってたもんね

誰かの声

え?僕?
櫻は僕の夫のようなものだもの
一ミリも問題ないよ

―ホントはヤキモチ妬いてるんでしょ

な!妬いてないぞ!
本当だよ!櫻が幸せならいいし僕は…
ヤキモチ妬いて刺したりとかもうしない―え?
ヨルの言葉がわかる!?

ヨル
なんか言って!



「僕は酔うのは、駄目みたいだね」
 未だに眠たさの残る眦を、小さく擦る。
 リル・ルリ(『櫻沫の匣舟』・f10762)が小さく呟くと。
 きゅう、とペンギンのヨルが頷いて、まるで同意するように鳴き声を上げた。
 ――幽世に転送された途端。
 抗えぬ程の眠気に襲われて。眠たくて、眠たくて。
 次に気がついた時には、きれいな青空が見えていた。
 周りを見渡せば何故か温泉がこんこんと湧きだしている街の中に、在々と残る戦闘痕。
 恐らく幽世に訪れた途端、寝落ちしてしまったのだろう。
 せめても、と。
 魔女の店へと訪れて調合してしてもらった薬を手に。
 リルが未だに眠たい頭をふるると揺すると、青みがかった乳白色の髪がゆるりゆるり流れた。
「こんなんじゃ、酒癖の悪い櫻のことをいえないな。――きっと、多分、確実に、苦労してるんだろうな」
 大丈夫かなあ、なんて。
 ――この世界へと、親友と出かけて行った彼の事をリルは思う。
 きっと親友は苦労したことだろう。
 なんたって、彼は本当に酷い絡み酒、本当に本当に滅茶苦茶に酒癖が悪いのだから。
 それなのにお酒が好きなものだから、リルは何度も何度もお酒は駄目だと引き止めたものだ。
 それから苦笑を浮かべたまま、リルは小瓶とヨルを交互に見比べて。
 そのまま笑みの種類を楽しげに揺らがせると、くすくす笑った。
 小瓶。
 ――魔女に調合して貰った薬は、ペンギンの言葉が理解できるようになる薬だ。
 しかし。
 効果は保証しない、と魔女は言っていた。
 だからこそ、そんなにリルだって期待はしていないけれど。
 ――ヨルとお喋りができれば、きっと楽しいに違いない。
「……ふふ、本当にそうなったら楽しみだな」
 小瓶の蓋を取って一気に呷れば、そりゃあもう嘔吐いてしまうほど味は酷いもの。
 それでもリルは、ヨルの顔を覗き込み――。
『――りるはからまれて、こまってたもんね』
「……え?」
 ぱち、と瞳を瞬かせて。
 気の所為じゃないよね?
「えっ、……だいじょうぶだよ。櫻は僕の夫のようなものだもの。一ミリも問題なんてないよ」
『――そんなこといって、ホントはヤキモチ妬いてるんでしょ?』
「なっ、ち、ちがう! 妬いてなんかないぞ! 櫻が幸せならいいし……」
 ぷるぷる顔を揺するリルは、じっとヨルを見下ろして。
『――りるはすなおじゃないなあ』
「も、もう、さよの事をヤキモチ妬いて刺したりとかしないからな! だいじょうぶだか、…………えっ、ねえ、ヨル。本当に喋ってる?」
『――ずっとしゃべってるでしょ?』
「えっ、わ、わーーっ、すごい! すごい! ヨルの言葉がわかるぞ!」
 ひょいんと尾鰭を揺らしたリルは、ヨルを抱き上げて、下げて。
 ぐるりと揺らされたヨルは、ひゃーっとフリッパーをぱたぱた。
『――わ、わ、わ。まって、りる、りる、めがまわるよ!』
「ねえ、ヨル! ヨル! もっとなんかお話してよ!」
『――それじゃあ、えすめらるだから、きいたお話をする?』
「……えっ?」
 ぐるぐると周っていたリルは、ぴたりとその動きを止めて。
 そうしてヨルは、語りだす。
『――リルルリ、リルルリルルリ』
 うたわれた泡沫の記憶……愛の歌の物語を。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

酔いが醒めて元通り

無邪気に薬の材料を集める何時ものきみを見つめる
覚えてないかな
忘れてしまったかな

忘れても構わない
約されているから
記憶に無くても

なのに
こんなにも切ない
もう言えない
あんなに私に甘えてくれたのに
もう甘えてくれないのかな
サヨ…
考えていたら涙が出てきた

カグラ…駄目だよ
いつの間に来たの?
カラスは何故か艶々してご機嫌だ

親友に縋るように理由を話す
情けない神だ
きっと嫌になるに違いない

サヨが
酔ってる間の記憶を甦らせる薬…

…本当に?
櫻宵、私の巫女になって
そばにいて
私の降りる桜になって

改めてちゃんと言霊にする

ありがとう
ずっと大切にする
絶対守るよ
立派な神になる

行こう
握られた手があたたかい

幸せだな


誘名・櫻宵
🌸神櫻

カムイー!このお花でいいのかしら?
懐こく親友に駆け寄って摘んできた花や草をみせる
彼が作りたい薬があるというから材料集め
私はすっきりだけどカムイが元気がなくて心配ね

どうしたのかしら

猛スピードでかけてきたカグラに、うちの子に何するんだよの勢いでぶん殴られて瞳をぱちくり
(このッ前世!)
私何もしてないわよ、ねぇカム…
カムイ?!どうして泣いているの
慌てて涙を拭ってあげる

酔っていた間の記憶を甦らせる薬

零された神の言葉にいとしくなって柔く抱きしめる
かぁいいわね
うふふ
大丈夫よう
薬なんて飲まなくても私はしっかり憶えてる
忘れるわけない

勿論よろこんで
私の大好きな神様
不束者の巫女だけど宜しくね

さぁ
次は温泉よ!



 取り戻された『醒』。
 竜と共に訪れた夜は、竜の退場によって明け。
 帳の上がった空は青々と美しく、魔女の魔法によって生まれた森の緑は眩い程。
 ――カムイが作りたい薬があると言ったから、二人はこの森へと訪れていた。
「カムイー! このお花でいいのかしら?」
「……うん、ありがとう」
 ぱたぱたと駆け寄ってきた櫻宵は、懐っこい笑顔。
 カムイへと摘んだ草花を詰めたカゴを差し出すが、しかし受け取ったカムイはどうにも俯いたまま難しい表情。
 酔いから開放されてすっかりと醒めた事で、櫻宵の気分はとてもスッキリと晴れているというのに。
 薬を作りたいと言い出した親友たる彼が沈んでいるものだから、櫻宵も眉を寄せて。
 ――どうしたのかしら? なんて。
 櫻宵が首を傾いだ、次の瞬間――。
「……!?」
 櫻宵は顎下から抉るような拳を、鋭く捩じ込まれていた。
「っ!? な、っ、この……ッ!?」
 ぐらぐら脳天が揺れる程、響く一撃。
 奥歯を噛み締めてなんとか体勢を保った櫻宵は――突然駆けて来て殴りつけてきたカムイの人形、『イザナイカグラ』の魂が宿るカグラを睨めつけた。
 その肩に羽根を休める三つ目のカラスも、艶々ご機嫌な様子で。
「何よ!? 私、何もしてないでしょうっ!? ねえ、カム……」
 噛みつかんばかりの勢いで櫻宵がカグラへと抗議の声を上げながら、カムイへと振り向けば。
「……駄目だよ、カグラ」
 ほつりと制止の声を零すカムイの桜色の瞳には、一杯に涙が湛えられ。
 耐えきれず溢れだした雫が、ほろりほろりと頬を濡らしていた。
「えっ!? カムイ?! どうして泣いているの!? ど、どこか痛いのっ!?」
 櫻宵は慌ててカムイへ駆け寄り、指先でその涙を掬って拭って。
 その櫻宵の行動に肩をぎゅっと竦めたカムイは――ぐっと喉を鳴らしてから彼へと抱きついた。
 ああ、きっときみは覚えていないのだろう。
 忘れてしまったのだろう。
 ――忘れてしまっても、構わないはずなのに。
 約したのだ、約されているのだ。
 例え、たとえ、それがきみの記憶になかったとしたって。
 ――それなのに、どうして。
 忘れてしまっても、構わないはずなのに。
 胸が痛い。
 胸が切ない。
 あんなにも私に甘えてくれたサヨは、もう、きっと全部忘れてしまったのだろう。
 なんて、考えれば考える程につきつきと痛む胸、零れる雫。
 溢れて、零れて、止まらない、涙だって、心だって。
 ああ、ああ。
 情けない、情けない神だ。
 きっと、こんな事を伝えてしまったら、――きみは嫌になるに違いないのに。
 それでも、それでも。
 きみには伝えなければ、いけない言葉があるのだ。
 意を決して零す言葉は、吐露の如く。
「……くすりを、」
「……薬を?」
「薬を、頼んだんだ……、酔っていた間の記憶を甦らせる薬を……」
「……」
 目を丸くした櫻宵は、カムイを見やって――。
「う……」
 それから鼻を小さく鳴らして笑うと、カムイをぎゅうっと抱きしめた。
「もーう、全く、私の神様は……本当にかぁいいわねぇ」
 和らげた眦。
 カムイを抱き寄せて口づけでその涙を拭うと、櫻宵はカムイをあやすように柔らかに背を叩き。
「え……?」
 私の神様。
 その短い言葉にカムイは心臓が止まってしまったかと思うほど驚いてしまう。
 なんたって、それは、櫻宵が全て、全て――。
「……大丈夫よう。薬なんて飲まなくても私はしっかり憶えてるわ」
「……本当、に?」
「ええ、忘れるわけないわ」
 確かめるように、縋るように、カムイは言葉を紡ぐ。
 それを受け止めるように、櫻宵は柔らかく言葉を返して。
「……本当に、本当に? 櫻宵は――私の巫女になってくれるの?」
「勿論、喜んで」
 その言葉に、カムイは息を呑んで。
 ただ、ぎゅうと、ぎゅうと櫻宵を抱き寄せる。
「……傍にいてくれるの? 私の降りる、桜になってくれるの?」
「そうよ」
「――……ありがとう。ありがとう、櫻宵。――ずっと、ずっと大切にするから。絶対に、絶対に守るから」
 立派な神になる、と言葉を紡いだカムイの腕の中で、くすくすと笑った櫻宵は彼の掌に掌を重ね。
「ええ、……私の大好きな神様。不束者の巫女だけど宜しくね?」
「……噫、こちらこそ。不束者の神だけれど――」
 その腕が。
 その言葉が、暖かくて、嬉しくて。
 ――幸せで。
「さ、次は温泉に行くのでしょう?」
「……うん、行こう」
 そうして。
 顔を寄せ合った二人は同じ色の視線を交わすと、どちらともなくまた笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

徒梅木・とわ
・冬梅酩酊

貝……貝だ。貝が要る。らしい
お前達、そこの元泉だかで獲ってきてくれ
とわはここで休んでる……

まっ……たく、こうもしんどいのか二日酔いってのは……正に聞きしに勝るだな
(――頭が痛いのもさることながら、酔っ払って何をしたか覚えてるっていうのも……)
あーーーうーーー
(なんだ幸せにしてやるって。求婚か。小っ恥ずかしい
それを置いておいたとしても、……大袈裟ではあったが、それでも勢い任せの出鱈目を喋ったんじゃあないって、そういう実感まで確かにあるのが――)
性質が悪い
幸せにしてやりたいのか
とわが
自分の手で
アイツを
ああそうかい
……そうかい

五月蠅ーいっ! 頭に響くっ!
はあ
アイツはどこまで覚えているんだか


ヴィクティム・ウィンターミュート
・冬梅酩酊

あったまいてぇ…
これが二日酔いって感覚か…っぁー…ダウナーになってんなこりゃ
俺もとりあえず貝を集めねぇと…行ってくらぁ

(しかし…酔ってる間俺は何をしてたんだ?記憶がおぼろげで、断片的にしか思い出せない。何だかやけに従業員殿があたふたしてたような気がするんだが…チラッと見てみたが、あれは何を考えてるのか全然分からん)

こんだけ貝がありゃとりあえず十分か…?
(……何故か妙にハッキリと、これだけは覚えてるんだが…酔ったアイツはその…なんというか…めっちゃかわ……いやいやまだ酔ってるのか俺、しっかりしろ)

オーーイ!!貝集め終わったぞ!
薬作ってもらおうぜ!
(マインドリセット…いつもどおりいこう)



 ぐるぐる、ぐわぐわ。
 頭の奥に棒でも捩じ込まれて、ぐずぐずにかき混ぜられているかのようだ。
「あっっっったまいてぇ…………」
「まっ……たく、こうもしんどいものなのだな、二日酔いってのは……」
 正に、聞きしに勝る苦痛。
 世界には『醒』が取り戻されて、空だってこんなに青いというのに。
 ヴィクティムにも、とわにも、しっかりと二日酔いは残ってしまった。
 そんな中。
 ――あの貝を集めて行くと、薬師の魔女が二日酔いをマシにしてくれる霊薬を作ってくれるというものだから。
 とわの喚び出したちいさなとわ達が、わいわいと泉に潜って貝を集めている。
 そこから少し離れた瓦礫の上で、本体であるとわは、ぐで、と座り込んだまま。
 こめかみに掌を当てると、少しだけ痛みがマシになるような気がする。
 瞳を瞑って睫毛の影を落したまま、とわは先程からぐるぐると脳裏を巡り回っている思考を再び突いてしまう。
 ああ、もう、考えたくはないのに。
 どうしたってなんだって、思い返してしまう、思い出してしまう。
 ――なんたって、とわにはあの時の記憶が全部、全部残っているのだから。
「あーーー、……うーーー……」
 思い出すだけで身悶えしてしまう、頭を抱えてしまう、唸ってしまう。
 ああもう。
 ……なんだ幸せにしてやるって?
 求婚か? 何を求めているっていうんだ?
「ああーーー、ううーーーー」
 小っ恥ずかしい!
 なんて、なんて! 恥ずかしい台詞を!
 ピピピピピピ、瓦礫を拘束で狐の尾が叩く、叩く。
 頬が熱くなっている気がするが、大丈夫。
 頭痛のお陰で顔はずっと掌で覆っているし、セーフのハズだ。
 いや、何がセーフなんだ?
 身悶えて零す妙な声は、妙な声のまま。
 まあ、それもきっと。頭痛から来るモノだと言い訳はできるだろうけれど。
 長い長い溜息を零して、とわは身悶えすぎて落ちてしまいそうになった瓦礫の上へと体をずるりと戻し。
 しかし、しかしだ。
 ……大袈裟ではあったが。
 それでもとわは、酔った勢い任せの出鱈目を喋ったんじゃあない、なんて。
 そういう実感まで、確かに残っているものだから。
 ああ、ああ。
 これが二日酔いのせいなのだとしたら、本当に本当に酔うなんてコトは性質が悪い。
 ……いいや、性質が悪いのは、とわ自身か。
 息を整えるように、深呼吸。
 何度目かも判らぬ、自問自答。
 ――幸せにしてやりたいのか?
 とわが?
 ……自分の手で?
 アイツを?
 その役目が、……その場所が?
 ああ、そうかい。
 ……そうかい。
 とわは、かぶりを振って――。
「……うう」
 また、唸った。
 巡る思考は、堂々巡り。

「あー……、クソ、ダウナーになってんな……」
 うげ、と吐き気を逃がすかのように口を開いたヴィクティムは、小さなとわたちを侍らせて泉へと足を漬ける。
 暖かな温泉は心地の良いものだが、ぐわぐわ痛みに沸き立つ頭では楽しめる心境にはとてもなれそうには無かった。
 腕を突っ込んで貝を浚い、カゴへと掬い入れる。
 ――しかし。
 ヴィクティムは今日一日、一体何をしていたのだろうか。
 考えようにも、記憶は朧気。
 断片的な記憶を繋ぎあわせるにしたって、そのパーツが余りに少なすぎた。
 何やらとわが、ずっとあたふたしていたような気はするけれども――。
 ちらり、と休んでいるとわをヴィクティムは横目で見やるが、――何やら痛みに唸っている様子。
 よっぽど二日酔いは酷いらしい、アレでは何を考えているかなんて解る訳も無いだろう。
 せいぜいが頭痛が辛い、くらいだろうか。
 やれやれと肩を竦めたヴィクティムは、カゴの底に溜まった小さな二枚貝をざらりと揺らして。
「……はー、こんくらい集めりゃ、とりあえずは十分か……?」
 ――ああ、そうだ。
 何故か妙に、はっきりと思い出せる事が他にも在った。
 そう、酔った従業員殿は――、その、なんというか。
 ……めっちゃかわ……。
 …………。
 いやいやいやいやいや、待て、まだ酔ってるのか俺は?
 ああ、くそ。
 全部二日酔いのせいだろう。
 ……これが二日酔いのせいなのだとしたら、本当に本当に酔うなんてコトは性質が悪いモンだ。
 ――いいや、いつもどおり行こう。
 ヴィクティムは、大きく大きく息を吐いて、吸って。
「オーーイ!! 貝集め終わったぞ! 薬を作って貰いに行こうぜー!」
「あーーーっ、五月蠅ーいっ! 頭に響くだろうっっ!」
 全く。
 アイツはどこまで覚えているんだろうか。
 声に応じて叫んだ事で更にガンガンと痛む頭、とわは眉をきゅっと寄せて薄く瞳を開き。
 そうして、ちらりとヴィクティムの青い瞳を見やった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

隠・イド
【土蜘蛛】
どう考えても黒歴史だろうけど、気に留めた様子もなく
いつもどおり平然としている。
薬膳…もまた、自身に効能があるとは思えないが嗜好品として郷に従う感じで共に食事

ええ、覚えておりますとも。
あれが『酔い』の感覚ですか。概念的なもの、ではありましょうが。
通常のアルコールであれば酩酊などできませんので、希少な体験でした。
もっとも、進んで酔いたいとも思いませんが…

あまりそう悲観せずとも良いと思いますが
結果として邪神は討ち果たし、無事任務は終えた訳ですからね。

主人の苦々しい顔を微笑ましく見守る。

懲り懲り、ですか
耀子様がお酒を嗜むようになるのは、まだもう少し先の話のようですね

お土産など包んでもらいつつ


花剣・耀子
【土蜘蛛】

……めちゃめちゃ頭が痛い気がするわ。
フラフラしながら材料を集めてお薬を作って頂きましょう。
お茶とケーキのセットにして貰って良いかしら。

イドくん、だいじょうぶ? 正気に戻った?
何があったか憶えている?
……憶えていてそれなの。そう。そう……。
そうね。出来れば今後も素面で居て頂戴。ほんとうに。

まあ、一時の事なので忘れましょう。
今日は何もなかったわ。
お仕事ついでに薬膳カフェでお茶をしに来ただけなのよ。
甘味をたくさん取っても許される気がするの。

魔女さんへのお代は、そうね。
酔っ払いはもうこりごりの気持ちをあげるわ……。
……、随分と先のことだもの。そんな日が来たら考えましょう。

お土産よろしくね。



 竜と共に訪れた夜は、竜の討伐と共に開けて。
 青い空は高く高く。
 魔女の店のテラス席で、イドと耀子はテーブル越しに向かい合っていた。
 ケーキとお茶のセットは、とても薬とは思えぬ程にお菓子そのもの。
 細いフォークでケーキを突いた耀子は、イドの顔を見やって。
「イドくんは、――何があったか憶えているの?」
 喋ると頭の奥がつきつき痛むけれど、このお茶とケーキを食べればきっとマシになるはずなのだ。
 甘いクリームを飲み込んでお茶を啜る耀子に、イドは常の表情のまま。
「ええ、勿論、覚えておりますとも。何度もお伝え致しましたが、私が『酔い』等に飲み込まれる訳など無いでしょう? ――感覚はこの度、知りましたがね」
 概念的なもの、ではありましょうが。なんて、平然と応えるイド。
 自らの行いを全て憶えていて、コレなのならば。
 逆に問うた耀子の眉の方がきゅっと下がって、眉間にもきゅっと皺が寄ってしまう。
 気持ちを落ち着けるように、彼女はケーキを突いて、突いて。
「……そう、憶えていてそれなのね、……そう。…………そう」
 言いたい事も、言えないことも、言っても無駄な事も。
 言わなくて良いことは言わない。
 理性を取り戻した耀子は、酔っ払っていないのでソレができてしまう。
 だからこそ、何も言えなくなってしまうのだけれど。
「通常のアルコールであれば酩酊などできませんので、実に希少な体験でした。――もっとも、進んで酔いたいとも思いませんが……」
「そうね、できれば今後もずっと素面で居て頂戴。……ほんとうに」
 イドが酩酊は、そう。……そうね。
 耀子の願いは、最早祈りだ。
 もうあんなになってしまったイドを、二度と構いたいとは思えない。
 しかし、しかし。
 アレだって今回の『お仕事』に付随しての一時の出来事。
 忘れてしまえば、今日は何も無い日になるだろう。
 そう、今日は何もなかったの。
 わかるわね。
 今日は何もなかったわ。
 確かめるように言葉にもしておこう。
「……今日は何もなかったわ。今日は、そう、お仕事ついでに薬膳カフェでお茶をしに来ただけだけですもの」
「ふむ――、あまりそう悲観せずとも良いと思いますが。結果として邪神は討ち果たし、無事任務は終えた訳ですからね」
 イドが平然と言葉を重ねる度に、不思議な場所からぐんぐんと耀子に湧き上がってくる、甘味をたくさん取っても許される気がする感じ。
 細く細く息を吐いた耀子は、すました顔で茶を啜る自らを苦しめた何よりの元凶を、びっくりするくらい冷たく冴えた青が真っ直ぐに見据えて。
 愛らしい表情でコチラをじっと眺めてくる耀子に、イドは微笑ましい気持ちで小さく微笑み返し。……それからふと思い出したように、言葉を次いだ。
「しかし、そう言えば魔女に駄賃代わりに感情を与えねばならぬそうですが――」
「そうね。……あたしからは……酔っ払いはもうこりごり、の気持ちをあげようかしら……」
 ケーキを一気に口に運んでしまえば、次のケーキに目星を付け出す耀子。
 なんたって今日は不思議と甘味をたくさんとっても許される気がしているもの。
 イドは瞳を眇めて、肩を上げて。
「おや。懲り懲り、……ですか? 耀子様がお酒を嗜むようになるのは、まだもう少し先の話のようですね」
「……そんなの、随分と先のことだもの。そんな日が来たら考えましょう」
「ええ、そういたしましょう」
 甘やかに微笑んだイドは、こっくりと頷いて。
 ――そう。
 耀子が20を迎えるなんて。
 そんなこと、ずっと、ずっと先の事。
 そんな、2年も先のことなんて。
 ――ねえ。
「ねえ、そうだわ。イドくん、お土産を買って帰りましょう」
「そうですね、――皆様の分を」
 なんて。
 きっかり室長の分だけ勘定から省いた様子で、イドは持って帰る予定のケーキを指折り数えて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

千桜・エリシャ
【甘くない】

うぅ…頭が痛いですわ…私は一体…
ジンさんの顔を見れば
脳裏に蘇るめくるめくあれそれ
(私ったらなんてことを…!)
な、なんでもなくってよ

明日も宿のお仕事がありますから
すっきりするお薬を作ろうかしら
…その…飲んだら私のことが恋しくなる効能にもできませんこと?(こそっと魔女に耳打ち)

作業中も先程のことが頭を過ぎって
かき消すようにお鍋を力任せにぐるぐるぐるぐる
ちょっと!ジンさん?
サボってないでもう少しお手伝いしてくださらない?
…!
その…あなたはすべて憶えていらっしゃるのかしら?
あっあっ!みなまで仰らないでくださいまし!
恥ずかしがってなんか…

さあ、完成ですわ
ジンさん、飲んでくださいまし?(じっ)


ジン・エラー
【甘くない】

まァ~~~~だ頭フワフワしてンなァ~~~~~ヒヒャヒャ!!
なァエリシャァ~~~……ァ?なンで目ェ逸らすンだよ

つゥ~~~かあンだけ楽しンだ後だってのに地味ィ~~~なことやらせンなよなァ~~~
アァ?キビキビ働けってお前、旅館の仕事じゃあるめェ~~しよォ~~~
ははァ~~~?さてはエリシャお前、今更恥ずかしがってンのかァ~~~??
とォ~~~ぜン、あァ~~~ンなことやこォ~~~~ンな……………ンだよ息苦しい
…………ッヒヒ、カァ~~~~ワイイねェ~~~~~~~!!!!ウッヒャフフフハハハハ!!!!

何を仕込ンだか知らねェ~~~がオレにゃ効かねェぞ?

大体予想がつくし、そもそもオレは初めから────



 ぐるぐるとかき混ぜる鍋は、くつくつ歌うように。
 泡が弾けて、熱が揺れて。
 調薬中だと言うのに、ジンと目線がぱちりとあってしまえばエリシャは思わず視線を逸らしてしまう。
「ぶひゃ、ヒャハハ! なァ、エリシャァ~~~……ァ? なンで目ェ逸らすンだよ」
「な、……なんでもなくってよ?」
 つきつきと痛む、エリシャの頭。
 ずいぶんと考える機能自体は弱ってしまっているようなのに。
 彼の顔を見る度に思い起こされる、――『醒』を喪った自らの行動。
 めくるめくあれそれこれな甘い甘い記憶。
 ああ、ああ、ああ、ああ。
 私ったら! 私ったらなんてことを……!
 考えれば考えるほど、エリシャが鍋をかき混ぜる速度がぐんぐんと上がりゆく。
 ……なんと言ったって。
 この薬は酔い醒ましだけでは無く――。
 ……酔いなんてとっくに醒めて仕舞っているというのに、魔女へと願った事。
 『頭がスッキリして、――エリシャのことが恋しくなる薬』なのだから。
「ア~~~~ン?? もしかして、エリシャ……まァ~~~~だ頭フワフワしてンなァ~~~~~? ウヒヒャヒャ!!」
 けらからと笑うジンに、エリシャは瞳を細めて。
 そう、たしかに頭はフワフワしてしまっているのかもしれない。
 だからといって、ソレを認めたいとは思えないもので。
「ちょっと! ジンさん? サボってないでもう少しお手伝いしてくださらないかしら?」
「あァ~~? キビキビ働けってお前、旅館の仕事じゃあるめェ~~しよォ~~~。
あンだけ楽しンだ後だってのに地味ィ~~~なことやらせンなよなァ~~~!」
「……ッ!?」
 楽しんだ、という言葉にときんと跳ねるエリシャの胸裡。
 もしかして、もしかして。
 ……本当に?
「……ジンさん? ……その、あなたは、……もしかして。すべて憶えていらっしゃるのかしら?」
 こほん、咳払いを一つ。
 できるだけ平静を装って、鍋をかき混ぜながらジンを見やって――。
「アッ! オッ!!? ははァ~~~? さてはエリシャお前、今更恥ずかしがってンのかァ~~~??」
「~~……ッ!? は、恥ずかしがってなんか……」
 この反応は、完全に覚えている時の反応であろう。
 きゅっと息を飲んだエリシャは、口をぱくぱくと開いて、閉じて。
 言葉がうまく紡げない。
「そりゃ~~~~ァ、とォ~~~ぜン、あァ~~~ンなことやこォ~~~~ンな……………「あっあっ! 大丈夫ですわ! みなまで仰らないでくださいまし!」
 ジンの言葉に被せるように、かぶりを振ったエリシャがその言葉を食い止めて。
 ストップ、ストップ。
 それ以上は、そう――。
「…………ッヒヒ、カァ~~~~ワイイねェ~~~~~~~!!!! ウッヒャフフフハハハハ!!!!」
 ゲラゲラと笑ったジンは、笑いながら大鍋のお玉をエリシャから奪って。
「っつ~~かよォ、どうせ何か仕込ンでンだろォ~~~? ウヒヒャ、……オレにゃァ、効かねえけどよォ~~」
「まあ……!」
 ず、とその中身を掬って啜るジンに、エリシャは大きく瞳を見開いて。
 完成はしておらずとも、完成は間近だったのだ。
 つまり、それは。
 『頭がスッキリしてエリシャのことが恋しくなる薬』をジンが飲んだという事。
 ジンはまたゲラゲラと笑ってエリシャの桜色の瞳を、相違う視線で射抜くように見据えて。
「――なァ、お前が何を仕込ンだか知らねェ~~が、大体予想は付いてンだよ」
「ジン、……さん?」
 そもそもそんなモノが無くたって、オレは初めから――。
 くつくつと歌う鍋の前。
 真っ直ぐにエリシャを見据えたジンは、エリシャの掌を捕らえて、握って――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
f09129/ユルグさん

酩酊感は堪能できたものの
酔い足りないのは
実際に乾す杯へ口付けて居ないからに違いなく

悪戯な眼差しでユルグさんを見遣れば
ほぅら、やっぱり
同じ意図の視線とぶつかって
ころころ笑いが込み上げる

ねぇ、
醒めるには未だ早い

魔女さんへ依頼するのは
百薬の長――と言う名の酒精の数々

香りの高さ
仄かな苦み
焼けるような強さ
清涼感を齎す喉越し
不思議な位に無味なもの

主たる薬草から隠し味まで
知識を紐解いて当てっこしたり
知らねば尋ねて帳面に記したり
美味に惹き込まれて只管飲み進めたり

幾つもの盃を交わして
楽しき宴に溺れましょ

浴びる程の酒気はいずれ醒めても
いつでも「愉快」を私にくれる
あなたへの酔いは深まるばかり


ユルグ・オルド
f01786/綾と

まァ美味い酒だったとはいかねェが
イイ気分で眠れはするかもネ
お伺いで覗けば同じ様子
笑うのは悪戯前の気分かね

んふふ、まだまだ明かすにゃ足りねぇわ
つってそこに頼むの

在るかないかの酒だって薬草だもんなと
理屈をひっくり返して次こそ杯の音鳴らせ
舌にのる苦みは眠気覚まし
独特の香りは現の路
朝の心地の清澄さは黎明に似た酩酊の味

掠れとんでくページから、名前を紐解き笑うけど
そこで帳面引っ張り出してくんのが綾だよな
健康になった気がするなンて戯れて
たまの苦みに白黒しても次へと踊る指先に

飲まなくても酔えるッてのは、サ
楽しい記憶があってこそなんだとよ
交わす相手がいればこそだと
鳴らした杯と呑み込んで



 取り戻された『醒』に、酔いに沈んだ世界は晴れて。
 竜の連れてきた昏い夜が開けた、空は青。
 ――しかし、しかし。
 やはり過程を伴わぬ結論は、どうにも寂しいもの。
 それはきっと、良い気分で眠れはしよう。
 しかし、しかし、それだけでは物足りないもの。
「ねえ、ユルグさん?」
「んふふ、まぁね。まだまだ明かすにゃ足りねぇわ」
 悪戯げな視線が交わされれば、二人の気持ちは一つであろう。
 ねえ、ねえ。
 醒めるには、未だ早いでしょう?
「ねえ、魔女さん。――百薬の長は、ございますか?」
「……まあまあ、折角取り戻された概念だと言うのにねえ」
 魔女が浮かべるのは苦笑。
 そりゃあそうだ。
 酔いから醒めたばかりだというのに、酒を飲みたいと言うのだから。
 そこに頼むのか、と瞳を眇めたユルグだが。
 成程、用意をされれば舌を巻くばかり。
「……へェ、成程ネ」
「正に百薬の長でしょう?」
 薬草に漬けこまれた酒。
 その実に魔法が宿る果物酒。
 苦さに甘さ。
 正に薬めいた苦さに、焼けるような強い酒精。
 薄めないととても飲めぬ、苦い味。
 不思議な清涼感の酒に、無味無臭の酒。
「こちらのものは初めて呑む味ですねぇ、――一体、何が漬けこまれているのでしょうね」
 二人並んで酒を酌み交わす中でも、綾はさっと帳面を取り出して。
「……えっ、帳面持ってきてンの?」
「はい、――記しておかねば忘れてしまうでしょう?」
「やー、勉強熱心ねェ」
 魔女に酒の詳細を尋ねる綾を、ユルグはからから笑って。
 呷ったグラスの中身の苦さに、思わず肩を大きく跳ねた。
 ――薬酒の飲み比べなんて、めったに出来る事では無いもの。
 酒の薬草から果物、果てには隠し味まで。
 綾とユルグは知識を紐解き、時にはただ楽しむ様に。
 グラスを、盃を酌み交わし合う。
 ――溺れるは『酔い』では無く。
 友と過ごす、楽しい『宴』に。
 きっと友と交わすのならば、これが酒で無くともきっと『酔える』のであろう。
 浴びるほど溺れた酒気は、いずれ醒めども。
 友と過ごした時間は、醒める事はない。
 交わしたグラスが、また高らかに響いて。
 ――あなたへの酔いは、醒めること無く。
 深まるばかり、溺れるばかり。
「んふふ、さぁて。健康になっちゃうわ?」
「全くですねえ」
 悪戯げに交わす言葉に、ふくふくと肩を揺らして二人は笑って――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

橙樹・千織
千鶴(f00683)さんと

なんだかまだふわふわしているような…
ぼんやり酔いが覚め始め、はたと気付く
あんな、あんな
大人としてあるまじき姿を見せただなんて!

ち、千鶴さん
その、さっきの…
酔っていた時のこと
どうか忘れてください。ね?
え。うぅん…
少し悩んで、じゃあ秘密。約束ですよ?って同じように口元に指を添えて

薬?ふむ…どうします?
何か特別なものをお願いしてみますか?
あら、ふふふ
とても素敵な薬ですねぇ

私は…
迷わずに目的の場所へ行ける薬ですかねぇ
そうしたら、すぐみなさんの所へ行けますし
色んな場所にみなさんとお出かけできそう
自分本位かしら、なんて

私も見てみたいです
まだ残るぬくもりを思いつつ
ふわりと微笑んで


宵鍔・千鶴
千織(f02428)と

夢心地から、醒めてしまえば
さあ、と血の気が引いてゆき
同時に耳まで熱くなる
…俺の方こそ、色々、その、失態を、…!
んん、でも千織のは忘れたくないから
おあいこ、ってことで。
二人だけの内緒ねって人差し指立てながら

薬が作れるの?
そうだなあ、あれこれと悩んでしまうけれど
花を、咲かせる薬が欲しいかな
願えばどんな色や形の花に成る
植物が咲けない地でも彩りを添えることが出来たなら
すごく、素敵だなあって
千織は、どうする?
噫、会いたいときに会えるし
一緒に見たい景色も視られるその薬は
俺も良いなって思うよ
千織らしくてすき

酔醒めても未だ覚えているきみのぬくもりを
千織とも、温かい花を一緒に見れたらいいな



 ふわふわ、ふわわ。
 未だ体に残る浮遊感、酩酊感。
 しかし、しかし。
 夢見心地から心が、体が戻ってくる度に。
 二人の顔からは、血の気が引いてゆくよう。
 ぞっと背に氷柱でも差し込まれたかのような気持ち。
 ――ああ、あんな、あんな。
 大人としてあるまじき姿を見せてしまっただなんて!
 きゅっと山猫の耳を畳んだ千織は、両頬を掌で覆って。
 ……ああ、ああ、あんな姿を。
 あんな風に、彼女を求めてしまっただなんて。
 耳まで真っ赤に染めた千鶴が、きゅっと下唇を噛み締めてかぶりを振る。
「あの」「あっ」
 同時に言葉を漏らした二人は、はたと視線を交わしあい。
 そろそろとそのまま視線を泳がせ合ってから、こほんと咳払いをした千織が先に言葉を紡ぎ直した。
「……あの、ち、千鶴さん。その、さっきの……酔っていた時のこと……」
「あ、わわわっ、ち、千織! 俺の方こそ、そのっ、色々、……し、失態を……!」
 勿論。
 千鶴だって千織が何を言おうとしているかが、分かっていなかった訳では無い。
 先程の酩酊していた時の、二人の姿についてということは、痛いほど理解していた。
 だからこそ慌てて言葉を重ねた千鶴は、掌と頭をぶんぶんと振り。
「……――その、どうか忘れてください。……ね?」
「……んん?」
 しかし。
 千織が次いだ言葉は予想外だったようで、千鶴は瞳の紫を瞬かせて。
「でも、……俺は――千織の姿を忘れたくないな」
「えっ」
 彼の言葉に次に瞳を瞬かせる事となったのは、千織の方だ。
「う、うぅん……え、えっと……でも……」
「だから、……おあいこ、ってことでどう?」
 口ごもってしまった千織は、千鶴よりもずっとずっと大人だと言うのに。
 ――彼が甘えるように人差し指を唇に添えたものだから。
 少しだけ悩んでから肩を竦めて、倣うように秘密の指。
「――じゃあ秘密です、約束ですよ?」
 なんて眦を和らげて、千織は唇の端を擡げて笑った。

 『醒』を取り戻した世界で。
 猟兵達が集まって居るのは、どうやら薬師の魔女が働くお店のよう。
 その魔女に頼めば不思議な薬だって作れると、聞いたものだから。
 二人は並んで歩みながら、理想の薬の話に花を咲かす。

「ねえ俺は、――花を咲かせる薬が欲しいな」
「あら、ふふふ。……とても素敵な薬ですねぇ」
「うん、……そんな薬があったら、素敵だね」
 ――千鶴の願う薬は。
 例え植物が咲けないような地でも彩りを添えることが叶う、願いによって色形を変える花の咲く薬だ。
「ねえ、千織ならどうする?」
「ふふ、そうですねえ。私なら――」
 千織が願う薬は、どんな時だって迷わずに目的の場所へ行ける薬。
 なんたって彼女は、恐ろしいまでの方向音痴。
 迷わずに目的の場所に向かう事ができれば、すぐに皆の所へと向かえるし――色んな場所へと出かける事も叶うだろう。
「……って、そんなの自分本位かしら?」
「んん、そんな事、ないよ。会いたいときに会えるし、一緒に見たい景色も視られる。千織らしくって俺はすきだよ」
「まぁ、ふふふ……ありがとうございます」
 千鶴の肯定の言葉に、ほわりと微笑んだ千織はくすぐったげに肩を竦めて。
 なんとなく自らの掌を、きゅっと握りしめた。
 ――腕に、体に、未だ残るきみのぬくもり。
 それは消えることも、醒める事も無く――。
「ねえ、千織とも、温かい花を一緒に見れたらいいな」
 千鶴が顔を上げて千織に告げる、なんでも無い願い。
「ええ、ええ。是非私も見てみたいです」
 でも、そんな事さえ。
 交わす言葉も未だになんだか、くすぐったくて、暖かくて。
 二人で約した秘密に、視線をどちらともなく交わしあった二人はまた笑いあってから。並んで二人は更に更にと歩みだす。
 さあさ目指すは、魔女の店。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

霧島・ニュイ
クロトさんと(f00472)

クロトさん、媚薬作って兄さんに盛らないの?(・×・)
ちぇーと頬を膨らませ
じゃあおやつ作ろう!
栄養満点の体に良いおやつを作るぞー!(えいえいおー!)
(本当は死者蘇生の薬とか欲しいけど作れるわけないし…媚薬作っても使い所ないしね)

赤い果実に目を瞬かせ
わー、綺麗だね!甘酸っぱい香りがする…
横から食いついたチョビにぱちくり
もー、チョビったら。美味しい?
わふぅとお返事してあぐあぐする愛犬
色とりどりの小さな果実を収穫し
白い花の薬草を掴んで取って
大きな黄色ぶら下がる実を籠に入れ

帰ったらクロトさんの助言を受けつつ作る
仕上がりはしっとりほかほか
果物一杯のパウンドケーキ

いただきまーす!


クロト・ラトキエ
ニュイ(f12029)と。

しません(即答)
(要りません、でないのは大人の嗜み
(酔わなくても根は真面目…なのかもしれない?
(ワクですし

えいえいおーを笑顔で見守りつつ…
ニュイの煩悩具合が心配というか…
寧ろ、ちょっと大人しくなる薬の方を、
この子に気付かれない様にこっそり聞いて混ぜておきましょうかね?
ニュイがケーキなら、では僕はお茶を淹れましょうか。
花は兎も角、果実に野菜に木の実に茸。それも見た事無い物ばかり…
幽世の魔女殿ともなると、知識も技量もスケールが違う。
眺め、おっととメモの通り収穫して。
美味しい霊薬を作れたなら、
いただきます♪

感情、ねぇ。
このひと時が楽しい、なんて…
そんなでもOKなんですかね?



 幽世から失われていた『醒』は取り戻され、この世界は平和になったのだ。
 二回目言いますよ!
 皆が囚われて居た酔いは取り払われ、この世界は平和になったのだ!
 だからこそ、だからこそ。
 先に言っておくのだが、ニュイは完全に素面なのである。
「ねーねーねー? クロトさんー、くーろーとーさーんー、媚薬作って兄さんに盛らないの?」
「しません」
 即答するクロトにニュイはちぇー、なんて頬を膨らせて。
 ――しかしその返事が『要らない』では無いのは、クロト曰く大人の嗜み。
 ニュイからすれば、そんな大人の嗜みが分かっているのか、居ないのか。
 ぷうっと膨らせた頬から空気を抜いて。
「じゃあ、クロトさん! おやつを作ろう! 栄養満点の体に良い元気になるおやつを作ろー!」
 それから拳をきゅっと握って、えいえいおー。
 広がる森に瞳を輝かせて楽しげなニュイの様子は、そこだけ切り取れば幼気にも見えるのだが。
 今日のニュイの一連の動きを覚えているクロトからすれば、なんだかそのおやつの文言にも微妙に何か含みを感じてしまう程。
 煩悩の数は108個とは言うが、今日のニュイの煩悩の数はそれ以上にあるような気すらしている。
 ――元気になるというよりも、ニュイには大人しくなる薬の方が必要なのかもしれない、とすら考えてしまうのだ。
 ぴょっぴょこ跳ねて材料集めを始めたニュイの背を見送りながら、クロトは肩を上げて、下げて。
 ――気付かれないように、こっそりニュイのおやつに混ぜてしまいましょうかね……?
 なんて。
 ニュイの知らない所でクロトもちゃんと心配をしているのだ。
 ――それがニュイの望む所か望まざる所であるかは別として。
 楽しげに森を駆け出したニュイの緑瞳の奥には、冷たく冷たく冴えた色が揺れている。
 ――本当は、本当は、死者蘇生の薬が欲しいと思うけれど。
 そんなもの、作れるわけもないのだから。
 ならば、ならば。……せめて楽しいように。

「わーっ、綺麗な果実、ってー! もう、……チョビったらー」
 真っ赤な果実を摘もうとニュイが手を伸ばした途端。
 横から駆けてきたチョビが、果実をぱくり。
「……ん、美味しい?」
 その様子が本当に美味しそうで。
 わふわふ、と返事をしたチョビがもう一つ果実をかじるものだから。
「そんなに美味しいなら、僕も味見しちゃおっと」
 なんて。
 ニュイもチョビと並んで果実をつまみ食い。
「……!」
 しかし、しかし、次の瞬間ニュイは悶える事となる。
 甘酸っぱい香りから想像していたよりも、ずっと酸っぱくて苦い実にニュイは瞳を白黒。
「その実は、熟しているものと熟していないものの見分けが付きにくいようですね」
 ぐねぐねする彼の背に寄って。
 魔女に彼が手渡されたメモを見やったクロトは、悪戯げに小さく笑って。
「――しかし見たこともない材料ばかりで、幽世の魔女殿と成ると薬の知識も技量もスケールが違うようですねえ」
「うええええ、しゅっぱああい」
 感心するクロトの横で。うえ、と舌を出したニュイはぷるぷると顔を揺するのであった。

 お花に薬草、よく熟れた果実に野菜。
 木の実にキノコ。
 ――レシピ通りに不思議な材料を合わせると、不思議なことに果物がたっぷりつまったあまーいしっとりパウンドケーキと、良い匂いのする花紅茶が完成する。
「ん……、美味しい!」
「本当ですね、霊薬とは思えぬ味ですねぇ」
「わふ!」
 ――楽しくて美味しい、二人と一匹の賑やかで穏やかなひと時。
 どれほど上手に出来たとしても、お勘定の心配はひとつだって無い。
 なんたって。
 彼らが楽しむ感情こそが、魔女にとってなによりのごちそうなのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ライナス・ブレイスフォード
リカルドf15138と

馬ぁ鹿。迷惑なら置いていってるっつの
つかもう何時もの顔に戻ってんのかよと凹むリカルドを見ればにやっと揶揄うような笑みを向けつつリカルドの顔を覗き込まんと試みんぜ
あー俺は少し胸焼けすっけどまあそのうち収まんだろ
あんたは…聞くまでもねえかと己の指を噛み【血の洗礼】漏れた赤をリカルドの口元へ
これで少しは楽になんじゃねえの?

薬屋では二日酔いに効く薬を
へえ?そうやって作んだな。材料さえありゃあんたと又酒飲んだ時作れんだけどよ

あとあんた…表情筋って…
そう笑いつつ相手の頬を指でなぞらんと手を伸ばしてみる
痛くならねえ様に普段からみせりゃいいのに
回復位えなら何時でもしてやっから…な?


リカルド・アヴリール
ライナス(f10398)と
アドリブ歓迎

ライナス、その
本当に、迷惑を掛けてすまなかった……
(あまりにも酷い有様を見せてしまった事実に凹んでいる

正直、頭痛が激しいな……
二日酔いの症状、かもしれない
ライナスは大丈夫か……って、あの顔!?……ぜ、善処する
(自分で出した声にまた頭を抑えつつ、回復効果のある血を舐める

二日酔いの薬の作り方を聞こうかと
材料集めが必要であれば、メモの通りに採取へ赴く
こんな風に作るのか……と感心しながら

また、酒盛りを?
いや、お前とならば嫌ではない
ただ……盛大に酔っ払って、迷惑を掛けないかが心配なだけで
あと、その……表情筋が痛い……(ぽつり)

普段から……す、少しずつ、尽力する……



 つきつきと痛む頭。
 しかしそれ以上に、リカルドの身をつんざく余りに辛い感情。
「……ライナス、その……本当に、迷惑を掛けてすまなかった……」
 深い深い皺を眉間に刻んだリカルドは、かぶりを振って。
 ああ、ああ。
 あの姿を失態と言わず、どの姿を失態と言うのだろうか。
 本当に申し訳無さそうにライナスに頭を下げるリカルドに――。
「馬ぁ鹿。……迷惑なら置いていってるっつの」
 くすくすと笑ったライナスは、とびきり悪戯げな表情で顔を寄せて。
「つか、もう何時もの顔に戻ってんのかよ?」
「ど、どの顔の話だっ!?」
 肩を跳ねたリカルドが甲高い声を上げれば、自分の声にずきずきと痛む頭。
 思わずこめかみを抑えたリカルドに、ライナスはまた笑って。
 それから親指を犬歯でくっと噛み切ると、ぷつりと赤い玉のように血を滲ませた指をリカルドの唇へと押し付けた。
「――どうせあんた、二日酔いしてんだろ。ほら、飲みな?」
 少しは楽になんじゃねえ? なんてそのまま唇に親指を滑らせると、まるで紅をひくかのよう。
「ん、……ぐ、……ありがとう……」
 癒やしの力を秘めた彼の血を舐め取ったリカルドは、誂われっぱなしの事実にむっと眉根を寄せたまま。
 それでも頬が赤くなっている事が自分で分かってしまうものだから、どうにも上手に反論だって出来ないのだ。

 ――猟兵達曰く。
 薬師の魔女が、薬の作り方を教えてくれると言う。
 しかし、しかし、作り方は教えてくれるが、材料は彼女の魔法でしか用意ができないという話なのだ。
 二人並んで歩む道。
 ライナスは肩を竦めて、横目でリカルドを見やり。
「――二日酔いに効く薬をさ。材料さえすぐ調達できるなら、あんたとまた酒を飲む時の為に作れんだがなぁ」
「……また、酒盛りを?」
「ん、嫌か?」
「いや、お前とならば嫌ではない、が……。ただ……盛大に酔っ払って、迷惑を掛けないかが心配なだけで……」
「あんたさぁ、言っただろ。迷惑なら置いていってる、ってな」
 あれ以上にとろける事は滅多にありゃァしないだろ、とライナスは肩を竦めて。
 ふるふるとかぶりを振ったリカルドは、もうひとつ、と。
 小さく小さく言葉を紡ぐ。
「あと、その……頬、と言うか……、表情筋が痛い……」
「……ん?」
 リカルドの顔を覗き込むライナス。
 思いっきり視線を逸らすリカルド。
 ぷは、とライナスは噴き出して――。
「はあ、は、ははははっ、……なんだそりゃ。痛くならねえ様に普段からみせりゃいいのによ」
「う。……普段から……す、少しずつ、尽力する……」
「ああ、そうしてくれ。――回復位えなら何時でもしてやっから、な?」
 リカルドが真剣な表情で頷いたものだから。
 ライナスは彼の頬を指先でなぞりながら、また笑った。
 ――もっともっと、あんたにゃ表情筋の訓練をさせてやらねえとな、なんて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

五月雨・亜厂
ニーナ(f03448)と

走るも跳ぶもお手のものではありますが
流石にくったくったにもなるもので
残る酔いの所為かな千鳥足のよう
なんと薬が作れると

こちら魔術の類はさっぱりですが
ニーナのにゃんと頼もしいこと
鼻も目も利きはするもの知識はさっぱり
ここはお手伝いに徹しましょ

真っ青お薬出来上がり
なんだかどろんとしてますにゃ…?
いえ良薬口に苦しともいいますし
見た目は見た目、お味はお味
勧められればぐいっと一気
これはたまげた、甘旨な飲み心地
流石は魔術師のお家柄
ニーナは将来有望ですな!と拍手喝采

愛らしゅうお嬢さんとの意気投合
竜との対決、そして今と
とっても楽しい一日でしてと語りだす
お代に足るでしょうか、そこな魔女様


ニーナ・アーベントロート
亜厂さん(f28246)と

笑って、身体動かして……とっても疲れたね
元気が出るお薬、魔女さんに教えて貰お

あたしも一応魔術師の家系の出
いい材料は目と鼻でわかるんだ
色と香りが上等な香辛料や薬草を集めて
出来上がったお薬は……
すっごい真っ青なんだけど!?
ほんとに効くのかなぁ
意を決して、恐る恐る舐めたら
……ハーブティーみたいで、甘くておいしい!
亜厂さんも飲んでみて、ってぐいぐいしてみたり
フフフ、誉めても何も出ないって
貸してくれた猫の手も頼もしかったよ

あたし達のお代は「楽しさ」の感情
素敵な猫のお兄さんと出会って
ドラゴン同士の大決戦も凄かったんだよー
沢山楽しい気持ちを貰えたから
魔女さんにもお裾分けってことで!



 走るも跳ぶも、お手の物ではあるのだけれども。
 笑って走って跳んだとなれば、疲れだって出てしまう。
 しかも酔っていたとなれば、疲労は倍にもなろうもの。
 初対面が酔っていたとしたって、一緒に駆ければお知り合い。
 一緒に戦ったとなれば、最早そんなの遊び友達だ。
 そういう訳で、そういう訳だ。
 今日のクッキングレシピは、元気の出る薬茶!
 魔女に教えてもらったレシピのメモを手に、ニーナと亜厂は魔女の作り出した森の前へと立っていた。
「ふふー、こう見えてあたしも一応魔術師の家系の出だよ。いい材料は、この目と鼻で解るからね」
「ほほう、ほう。にゃんとも頼もしいかぎりですにゃ。――にゃれば、ニーナのお手伝いに徹することといたしましょうか」
 亜厂は猫だけに、鼻も目も利きはするものの。
 知識はさっぱり無いものだからニーナが胸を張るのならば、彼女の二歩後ろをキープしよう。
「おっ、任せて任せて! それじゃあ、早速レッツゴー!」
「れっつにゃごー!」
 なあんて。
 森を駆け回り、亜厂の毛に付いたくっつき虫を取り、青いお花に、白いお花。
 沢山の薬草を摘んで、乾かして、お湯で蒸らして――。
「……そして出来たのがコチラのお薬ですにゃ!」
「……えっ、わっ、えっ?! これほんとうにレシピ通り!? すっごい真っ青なんだけど!?」
「しかもなんだか、どろんとしてますにゃあ……」
 恐る恐る。
 カップに注がれたとろりとした青い液体をニーナは舌先でちょいと舐めて――。
 良薬口に苦しと言いはするが、なんともどろどろの青い液体を舐めるには勇気が必要だろう。
 亜厂は彼女の勇気を、固唾を呑んで見守って――。
「わ、わーーっ、ねえね、亜厂さんも飲んでみて!? すごいよ、ハーブティみたいで、甘くて美味しいの!」
 ぱあっとニーナが微笑めば、にゃにゃんと。
 彼女の勇気に応じるべく、亜厂は勧められるがままにカップをぐいっと呷る。
 飲み干したそのお味は――、甘くて、うまーい!
「ほっほーう。……これはたまげた。流石は魔術師のお家柄! 全くニーナは将来有望ですな!」
 その毛並みを青く染めた亜厂が、ぱちぱちと拍手を重ねると。
「やー、どうもどうも! フフフ、でも誉めたって何も出ないからね?」
 きっと大成功したのは、貸してくれた猫の手が優秀で、頼もしかったからだろう。
 空の色よりもずっと真っ青などろどろの入ったカップを片手にニーナは、後ろ頭を掻いて照れ照れ笑い。
「やー、早速体がぽかぽかしてきた気がするよ」
「そうですねえ、にゃんとも疲労が回復している気がしますにゃ」
 なあんて。
 亜厂とニーナは顔を見合わせて、今日の一日を思い出して笑うのだった。
 ――ねえ、ねえ、魔女さん。
 今日はね。
 素敵な素敵なお友達と意気投合をして。
 竜とドラゴンの世紀の大決戦!
 とてもとても、楽しい一日でございましたにゃ。
 とてもとても、楽しい一日だったんだよ!
 そんな気持ちを、お裾分け。
 ――さあさ。お代には、足りますかにゃ?

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

飛白・刻
菫(f14101)と

目の前には酔醒めのクッキーに紅茶
深くも考えずに謎めく材料を集めたはいいもの
いざ作るは何が何やら、奇音に異臭
うまくいかぬと菫と見やって首傾げ
爆ぜる前に魔女へ交代した経緯
酔いの始終、混ざり生まれた感情ままをお代にと

未だ何処かぼうとする心地連れカフェの一角へ
菓子を摘んで一息つけば徐々に戻る感覚に
ぼんやり残るゆるい会話の端々
…何か口走ってはいなかったかと言葉に詰まる
それでも語ったことに偽りは無いものだから
会いたいものは会いたいと、会わせたいものだと
それは変わらず譲らずの
しぃ、と合図を受け取れば
外した羽目は互いそっと胸にしまおうか
変わらず柔く咲む菫に、合わせ倣って秘密を共にと指立てて


君影・菫
刻(f06028)と

薬の形はクッキー
ほんならお茶会でもとカフェの一角
用意した紅茶と一緒に
一枚喰みながらゆうるり醒を招こうか

ふわふわ心地で集めた薬の材料は妙な匂いで
こてり刻と首を傾げてもうて
途中で魔女はんに頼んで正解やったねえ
爆発せんかったしとからころ咲って
渡した感情は酔で生まれた色々
混ぜっこしたのをお代にしておおきにと

少しずつ醒めて来たら酔いの記憶も蘇るから
うちったら、まあ
ふふ、とやっぱり楽しくもなって
酔えど噺にも気持ちにも偽りなどなくて
うちの子に会ってと
刻の子にも会わせてと
醒の心地に約束結んどこ
ほんで、
――ゆうるくなった互いは秘密にしよか?
唇に添えた人差し指で内緒の仕草
ちいさな秘密も、ひとつ



「なあなあ、刻。あまーいお菓子がお薬なんて、素敵やない?」
「そうだな」
 未だ体に残る淡い酩酊感。
 ふわふわと笑う菫の一言で始まった薬作りに集められた材料は、目に付いた素敵なものを全て纏めて。
 混ぜる度に叫び声。
 匂いは何やら、酷い草の匂い。
 慌てて駆けてきた薬師の魔女は、目を丸くして。
 何とか彼女の助力で、クッキーの形にまとまった素敵なお薬。
「うん、途中で魔女はんに頼んで正解やったねえ」
「何故かうまくいかなかったものな」
「ふふ、うん。爆発せんかったし、良かったわあ」
 菫と刻はサクサクに仕上がった、色とりどりのクッキーを齧り、齧り。
 紅茶と合わせれば、なんとも優雅。
 先程までの惨状の面影なんて、とても見えやしない。
 ――ともすれば爆発していたなんて、とてもとても。
「それにしたって、ふふ。……ふわふわやったねえ」
「……」
 クッキーを齧っていれば、じんわりじわじわ酩酊中の事だって思い出せよう。
 微笑む菫に、刻は言葉を詰まらせてしまう。
 なんたって思い出す会話は、大体すべてもふもふ、ふわふわ。
 妙なことを何か口走ってしまったのではないだろうか。
 全ての会話を思い出せる訳では無いが、刻は何となく言葉を詰まらせてしまう。
「ね、刻。――ちゃんとうちの子にも会って、刻の子にも会わせてくれる?」
「……それは、勿論」
 菫の言葉に、こくり頷く刻。
 例え酔いに溶けていようが、会いたいものは会いたい。
 会わせたいものは、会わせたい。
 もふもふの動物がいるのならば、それは変わらない、譲らない。
「ふふ、嬉し。ほんでね、もう一つだけ――」
 菫がくすくすと笑うと、指先を立てて内緒の指。
 しい、と小さく息をこぼすと、瞳を眇めて。
「――ゆうるくなった、互いのことは秘密にしよか?」
「――そうか、そうだな」
 刻も彼女に倣って、内緒の指。
 外れてしまった羽目は、外してしまった羽目は、そうっと胸の内にしまったまま。
 大切なもふもふとの出会いの約束を、ひとつ。
 ――ちいさな秘密の約束を、もひとつ重ねて。
 今日の醒めない夢は、醒めてしまったのだから。
 あとは、そう、ふたりの秘密。
 さくり、さくり、クッキーを齧って、紅茶を啜って。
「刻の子に会えるの、楽しみやわ」
 なんて。
 また菫は、ふんわり笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

歌獣・苺
【苺夜】
はわわ~~~
う、私も…ぴょんとか何とか…?
うん!大丈夫!おめめもぱっちり!

えっ!私に作ってくれるの?!
嬉しい!交換こ、賛成!
よーし!私も頑張るぞ~♪

ルーシーは少し大人びているけれど実は子どもらしくて可愛い所がいっぱい♪
だから渡すなら見た目はオシャレで味は甘いものに…♪

材料集めていざ調理!

液体にしたオシャレな色の果物たちに砂糖を大さじ…3だっけ…?
コップに入れたら
ブルーベリーソースと
ブルーベルのお花で飾り付け♪

……禍々しい青。

最後は言葉のおまじない!

ルーシーが、
希望で満ち溢れた
可愛くて立派な大人に
なれますように…!

私のもどうぞ♪
それじゃあ一緒に、カンパーイ♪

酸ッ…!お、おいしいよっ!


ルーシー・ブルーベル
【苺夜】

ふわわ~~
あんまり良く覚えていないけれど
にゃーとか何とか言っていたような……?
何かよく寝た気がするわ
目覚めはスッキリ
苺はだいじょうぶ?

ふしぎな材料で
ふしぎなお薬をつくれるのね
とっても楽しそう

ねえ
せっかくだから苺に何かつくっても?
こうかんこ、なんてどう?

苺にお渡しするなら
かわいい色の木の実
きれいなお花
ピカピカに光るキノコ
とびきり甘いハチミツ
全部ステキなものがいい

まじょさーん!
これでジュースつくれる?
教えてもらいながらどうにか調理
特製栄養ドリンクのかんせいよ!
すごいピンク色してるけれど

苺のは……青くてステキ!
かんぱーい……!
んー!とっても甘くておいしい

どう?苺
おいしい?
……ハチミツ、足す?



 はわわ、ふわわ。
 醒めたばかりの酔いに、揺れる揺れる記憶。
 なんだかとっても恥ずかしい事を、言っていたような気がするけれど――。
「……にゃあ、とか何とか、言っていた気がするわ」
「うう、……私も、なんだか、ぴょんとか、……言ってなかった?」
 顔を見合わせたルーシーと苺は、互いに確認するかのよう。
 あんまり記憶はちゃあんと残ってはいないけれど、二人は顔を見合わせてから同時にふっと笑みを零して。
「でも、なんだか良く眠れた気がするわ。苺はだいじょうぶ?」
「うん、大丈夫だよ。おめめもぱっちり!」
 二人で今日ここで過ごした記憶は曖昧で、蕩けてしまっているけれど。
 なんだか楽しかった気持ちも、ちゃあんと心に残っている。
「ねえ、苺。魔女さんのお店では、不思議な材料で不思議なお薬を作ってもらえるらしいのよ」
 ねえ、せっかくだから。
 ルーシーは柔らかな金絲の髪を揺らして、苺へと首を傾ぐ。
「――何か作ってこうかんこ、なんてどうかしら?」
「わーっ、ホント? 賛成賛成っ! えへへ、よーしっ、私も頑張るぞ~♪」
 ルーシーの提案には、苺は大賛成。
 ぴょんぴょこ跳ねて、楽しげに。
 ――二人の交換こは、相手には内緒なのだから。
 二人は二手に分かれて、魔女の作った森を駆け回る。

 ――苺にわたすお薬ならば。
 とっても可愛い苺色の木の実。
 ぴかぴかに光るキノコに、綺麗でかわいいお花。
 とびっきりあまーい魔法のはちみつに。
 どうせならば、可愛いカップだって用意をしましょう。
 リボンを尻尾に見立てて、可愛いお耳のようにぴょんと横に跳ねさせて。
 ――かわいくかわいく、仕上げましょう!

 ――ルーシーにわたすお薬ならば。
 少し大人びた果物達をごーろごろ。
 でも、本当は子どもらしくて可愛い所だって一杯。
 あまーいブルーベリーをたっぷりに。
 ブルーベルのお花を添えて。
 ――見た目はおしゃれで、味はあまーく仕上げましょう!

 魔女の知識も借りながら、二人の特製栄養ドリンクは完成だ。
 鮮やかなピンク色の、かわいいドリンク。
 禍々しいほどに青い、おしゃれドリンク。
 二人はそれぞれ、こうかんこ。
「あっ、ルーシー、まってまって! 最後にね、おまじないがあるんだよ!」
「えっ、なあになに?」
 苺の言葉に、ルーシーは首を傾げて。
 心をこめて、苺はちちんぷいぷい。
 ――ルーシーが希望で満ち溢れた、可愛くて立派な大人になれますように!
 祈りを籠めて、願いを籠めて――。
「それじゃあ、一緒にかんぱーいっ♪」
「かんぱーい……!」
 グラスを交わして、一気に二人は唇に寄せて――。
「んーっ、青くて綺麗だし、とってもあまくておいしーいっ」
 へにゃっと笑ったルーシーは、唇の周りのドリンクを舐め取る程。
「…………っ!」
 対する苺は、涙を堪えて。
「お、おおい、しいよっ……!」
 めちゃくちゃ酸っぱい。
 とても酸っぱい。
 でもルーシーの前で、そんな事言えるわけもない。
 ぷるぷる揺れる苺の尻尾。
「……ねえ苺、……はちみつ、足す?」
 しかししかし。
 ルーシーは賢い子なので、苺が隠そうとも、そのぷるぷるで勘付いてしまうのだ。
「うん……」
 ぷるぷると頷いた苺は、はちみつを手にしたルーシーの前へとグラスを差し出して――。
 酸っぱさで勝手にほろりと出てきてしまった涙を、逆の手で拭うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルルチェリア・グレイブキーパー
う゛ぅ……頭、痛い……気持ち悪い……
ぐるぐる回ったり、転んだりしたけど、それだけじゃない様な
これってもしかして……二日酔い……?

魔女の薬師さんに二日酔いに効く薬を作って貰うわ
材料にシジミとウコンなんて良さそうね
早速取りに行かせるわ……私はしんどくて無理……

【サモニング・ガイスト】で古代の戦士を召喚
シジミとウコンを取って来なさい
戦い?無いわよそんなの
(古代の戦士はすごく不服そうに肩を竦め、材料を取りに行った)

材料を取ってきたら薬を作って貰って飲む(きっと飲み薬よね)
……少し調子が良くなったわ、有難う魔女さん
酔っぱらった後ってこんなにしんどいものなのね
これからは酔った人にもう少し優しくしようかしら



 ぐにゃぐにゃ歪む視界、ぐるぐる回る歪んだ世界。
 ずきずき、ずきずき、頭が痛い。
 動悸、吐き気に、頭痛に、胃もたれ。
 波のように、引いては返す体調不良。
 もしかして、もしかして。
「……う、ううう、……もしかして、これが二日酔い、……ってやつなのかしら……?」
 魔女が薬を作ってくれるとは聞きはしたが、最早立っていることすらままならず。
 柔らかな草で編み上げられたベンチに座り込んでしまったルルチェリアは、古代の戦士を何とか喚び出して――。
「……ねえ、あなた。シジミとウコンを取ってきてくれるかしら?」
「……?」
 首を傾ぐ古代の戦士。
「あのね、私は今、しんどくて……無理だから……、シジミとウコンをね……?」
「…………???」
 えっ、戦いに喚びされたんじゃないの? って雰囲気を醸し出す戦士に。
 ルルチェリアは今にもまろびでてしまいそうな内臓の中身をぐうっと飲み込んで、掌だけをひらひらと振った。
「……そうよ、戦いなんて無いわよ。そんなの」
 だってもう随分と前に、戦いは終わってしまったのだから。
「……?????」
 えっ、戦士をそんなふうに使います?
 我、『戦』士ですよ?
 不服げな雰囲気をムンムンに醸し出しながらも肩を竦めた戦士は踵を返し。
 魔女の作り出した森へと歩み出す。
 ――戦いの本番に喚び出される事も無く、本日の古代の戦士のお仕事がシジミとウコン採りだけなんて。勿論ルルチェリアもほんの少しだけ申し訳ない気持ちがある。
 けれど、けれど。
 あの幽霊の子たちにそんな事を頼んでまともに集めてきてくれるとは思えないもの。
 やっぱり最後に頼れるのは、古代の戦士だ。
 有り難う、古代の戦士。
 助かったわ、古代の戦士。
 頭の中だけで適当に褒め称えながら、大きなため息を漏らしたルルチェリアは、瞳を閉じて。
 吹きすさぶ少し冷たい風が、火照ったからだになんとも心地よい。
 ――酔っ払った後がこんなにしんどいものだったなんて。
 ああ。
 ……これからは酔った人にも、もう少しだけ優しくできそうだわ。
 なんて。
 ルルチェリアはただただ戦士の帰りを待ちながら、空を仰ぐのであった。

 ――竜の引き連れてきた酔いも、夜も、全ては醒めて。
 平和の取り戻されたこの世界。
 空は青く、雲は高く。
 二日酔いの人が、空を見上げて眠る事が出来る程に平和な世界。
 ――それこそが猟兵達の護ることのできた、幽世の平和なのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年11月05日
宿敵 『酒呑み竜神『酔いどれオロチ』』 を撃破!


挿絵イラスト