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狂気の囚われて

#ダークセイヴァー #同族殺し

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#ダークセイヴァー
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#同族殺し


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●狂気に囚われて
 白鎧の騎士は領主の居城を単身駆けていた。
 白銀の長剣で警備の配下を切り捨てて、白いサーコートの裾を靡かせて。
 オブリビオンとなったその身を、心を灼くのは憎悪か、怒りか。
 金髪の騎士を排除しようと、ハルピュイアが大挙してその進軍を阻む。

 騎士の視線の先に立つのは、槍と盾を手にしたヴァンパイア――この地を、そして城を治める領主である。
 騎士と領主、互いが互いの実力を理解していた。
 拮抗している、どちらが勝ってもおかしくはないと。
 だがそれは一騎打ちに臨めばの話である。白鎧の騎士の眼前には配下が待ち構えている。
 それでも騎士は引くことなく、手にした剣を構えた。
 ハルピュイアたちを切り捨て、領主へ挑む為に。

●グリモアベースにて
「やあ、集まってくれてありがとう」
 グリモア猟兵アリステル・ブルーは、集まった猟兵たちに礼を告げた。
「同族殺しを知ってるかい? ダークセイヴァーの吸血鬼が最も忌み嫌っている、狂えるオブリビオンのことだよ」
 『同族殺し』は何らかの理由で、同族であるはずのオブリビオンを殺そうとする。時に単身で領主の居館に襲撃をしかけることもあるのだ。
 そして大抵の場合は狂気に囚われた同族殺しとは、まともな会話を交わすこともままならない。
「今回の予知は同族殺しが領主の城を襲撃する事件――もう既に経験してる人もいるかもしれないね」
 襲撃を仕掛けた同族殺しは、領主を守る配下のオブリビオンと戦闘になるだろう。
 予知では、同族殺しは配下を突破したものの手負い故にあと一歩領主に敵わず骸の海に還ってしまうのだ。
「そう、僕の予知ではね。だけどこれはまだ確定していない未来だ。だから皆には、同族殺しと一緒に城の襲撃に乗り込んで、予知を覆して欲しい。どのみち領主の城の警備はとても厳重で、こんな機会でもなければ乗り込むのも難しいし、使える者は何でも利用しよう!」
 言わば同族殺しに味方し、邪魔者を排除して領主とぶつけさせる。
 それが作戦の成否に関わってくる。
「流れはこうだ。同族殺しを援護するように領主の配下と戦う。配下が全滅すれば、いよいよご領主殿の登場だ。同族殺しは領主を狙うから、皆も領主を狙ってほしい」
 いいかい? とグリモア猟兵は付け加える。
「この段階では絶対に同族殺しを攻撃しないで。同族殺しは自分が攻撃されない限りは、敵と判断するのは領主とその配下だけだ。だけど攻撃した瞬間、同族殺しは君たちも『滅ぼすべき敵』として認識するだろう」
 領主やその配下と戦いながら同族殺しを相手をする……それはいかに歴戦の猟兵であろうと間違いなく苦戦するだろう。
 だから避けて欲しいとグリモア猟兵は続けた。
「とはいえ領主が討たれたら話は別だ。最後に残るのは狂える同族殺しだ。道中消耗しているだろうから、そこまで脅威ではないはず……君たちの手で彼を骸の海に還してほしい」
 白鎧の騎士が何故同族殺しになったのかは予知ではわからなかった。
 予知越しに感じたのは、怒りや憎しみのようなもの。
「これは私見だから与太話として聞いて欲しいんだけど、あの同族殺し……何かが違ってたら猟兵になってたかもしれないね。生前は多分悪い人じゃなかったんだと思う」
 もっとも今は過去から蘇った、倒すべきオブリビオンに違いはないのだが。
 参考になるかわからないがと猟兵たちに伝えると、改めてグリモア猟兵は一礼した。
「君たちの幸運と勝利を祈る。どうか無事に帰ってきて」
 転移の光に包まれる猟兵たちに、祈りを捧げる。


いつき
 はじめまして、あるいはこんにちは。
 今回は同族殺しのお話をお送りします。

●目的
 1章 集団戦「ハルピュイア」
 2章 ボス戦「闘将『ノエル』」
 3章 ボス戦「白鎧の騎士『エバイル』」
 上記の撃破。

●注意事項
 今回は「猟兵」「同族殺し」「領主/その配下」の三つ巴の構図となります。
 「同族殺し」は基本的に猟兵を無視し、領主たちのみを狙います。
 1章2章で同族殺しを攻撃した場合、その刃は猟兵にも向けられることでしょう。領主と同族殺しその両方を一度に相手しなければならないので、非常に苦戦するでしょう。
 (メタな話苦戦・失敗判定、不採用の可能性があります) 

●執筆速度…ゆっくりめ
 失効までにリプレイご返却しますが、期限ぎりぎりくらいになります。

 執筆状況その他についきましては随時マスターページにてアナウンスいたします。
 1章断章(状況説明)に当たるものは先にMSページに記載し、OP公開後に断章として改めて掲載します。
 プレイングはOPが公開され次第、お好きなタイミングで送信してください。
 2章以降は断章公開され次第受付となります。

 それではみなさま良き冒険を。
22




第1章 集団戦 『ハルピュイア』

POW   :    アエロー
【爪】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    オーキュペテー
自身に【仲間の怨念】をまとい、高速移動と【羽ばたきによる衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    ケライノー
レベル×5本の【毒】属性の【黒い羽】を放つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●領主の城にて
 猟兵たちが転送された先、戦場となる場所は城のエントランスホールのようだった。
 ホールは広く、天井は高い。ハルピュイアが空を飛んでもまだ余裕があるようだ。
 ホールのずっと奥、階段の上にヴァンパイアの男がひとり、槍を手にこちらを見下ろしていた。
 ハルピュイアを一体切り伏せて、白鎧の騎士が叫んだ。
「ノエル、貴様を許さない」
 そこに滲むのは怨嗟と深い怒りの色。
 深い青の双眸が男をキッと睨みつけている。
 ノエルと呼ばれた男はその様子にハハハと笑って見せた。
「久しいなエバイル! 何故お前がいるのか分からんが……精々俺を楽しませてくれよ?」
 同族殺し――エバイルとノエルの実力は拮抗する。即ちヴァンパイア・ノエルにとっての強敵である。
 戦闘狂たる男にとって、再びエバイルと戦えるのはこの上ない幸運であった。
 だが。
「まずは邪魔なやつらを始末してからだな」
 グリモアの光に包まれてやってきた猟兵たちに気づいていたのだ。
 手振りで指示を下されたハルピュイアたちは、同族殺しエバイルと猟兵めがけて襲いかかってくる。
 同族殺しは猟兵たちに一瞬視線を向けたが、すぐに興味を失ったようにハルピュイアたちの群れに突撃していく。
 ノエルと呼ばれた男は配下にあとを任せると、階段の向こう側へと姿を消した。
 まずはこのハルピュイアたちを打ち倒さなければならないだろう。
星野・蒼火
アドリブ等々歓迎

エバイルさん……そう、あの人は過去に堕ちたのね。

色々と思うところはあるけれど、今は私情を挟む時じゃないね。

刀を構えUCを発動。
刀が届くのならば斬り伏せ、届かないのならばハンドカノンで叩き落とす。
敵の攻撃は……そうね、数で押してくるならばマントを翻して防ごうかな。

貴方は今も、貴方の信じる正義のために戦うの?



 星野・蒼火(潰えぬ蒼炎・f22903)が到着した時、既に交戦ははじまっていた。
 同族殺し――白鎧の騎士エバイルは、この場に現れた猟兵たちを気にせず、ハルピュイアに一人で立ち向かっている。閃く刀身が、城内の明かりを受けて白く輝いて見えた。

「エバイルさん……そう、あの人は過去に堕ちたのね」
 蒼火はその姿を見て、ぽつりとそう零した。
 ひと目見てあの騎士が"彼"だと気がついた。
 あの日、彼の剣が彼女に向けられた事は今でも覚えている。その結果、蒼火自身がどうなったのかも、全てだ。
 蒼火に流れるのは呪われた血だった。それはいつか世界を滅ぼしかねないもので、そして騎士は異端の血を狩る一族の出なのだ。
 その"彼"がオブリビオンとして、今ここにいる。
(色々と思うところはあるけれど、今は私情を挟む時じゃないね)
 そこで思考を打ち切り首を振って、蒼火は騎士からハルピュイアに注意を戻した。
 翼を大きく広げ、半人半鳥のハルピュイアは同族殺しを、そして猟兵たちを狙っている。元は異端の神々だったらしいが、今はヴァンパイアの先兵として使役されているようだった。
「さぁ、始めましょ。これが私の戦いだから!」
 彼女の名前の通りに蒼き炎を纏うと美しい刀を抜いて地を蹴った。翻る蒼炎のマントこそが、彼女の運命に抗う覚悟の証だった。
 刀が届いたハルピュイアを斬り伏せ、すぐさま横へ飛び退る。
 その寸前まで蒼火の居た場所に、黒い羽根が無数に突き立っていた。
(これは……)
 おそらく毒か何かが込められているのだろう、斬られ倒れていたハルピュイアに刺さった部分が瞬く間に変色していく。
「そうね、数で押してくるならばマントを翻して防ごうかな」
 直撃しては目も当てられないだろう。蒼炎のマントで羽を払うと、左手にハンドガンを握り、空中を舞うハルピュイアに炎を込めた弾丸を打ち込んだ。

 炎が広がるその視界の端で、白い裾を翻して騎士が戦っていた。
 それはあの日のようで。
「貴方は今も……」
 溢れた蒼火の声が耳に届いたのか、騎士が彼女に注意を向ける。
「今も、貴方の信じる正義のために戦うの?」
 今度こそ、騎士の青い瞳がはっきりと蒼火を捉える。
 狂気に飲まれているはずの騎士は少しだけ目を見開くと、
「復讐に、来たのか……?」
 問いに答えずそれだけを口にして黙ると、再びハルピュイアを相手するために背を向け駆け出したのだった。ほんのいっときの正気だったのだろう。
 その背を見送りながら、蒼火もまた刀とハンドガンで近づくハルピュイアを牽制する。
 何をどうするにせよ、この先もまだ機会はあるだろう。
 戦いははじまったばかりなのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御剣・刀也
なんとも、目のやり場に困るし、やりにくい相手だな
女子供を斬る、殴るするのは俺の信条に反するんだが
だが、もっと面白そうな相手が後にいるし、猛獣が目の前にいるのに攻撃してこない訳もないか

アエローを第六感、見切り、残像で避け、カウンター、捨て身の一撃で斬り捨てるか、グラップルで足を掴んで地面に叩きつけ、その隙に首を押さえ、へし折る
距離を取られても焦ることなく、相手の動きから攻撃位置と移動先を予測し、ダッシュで先回りして斬り捨てる
「距離をとれば勝てるってか?悪いがそんなんじゃ俺の命には届かねぇよ。ほら、遊ぼうぜ?」
どちらが捕食者なのか、嫌でも理解できるように悠然と



 ハルピュイアの鋭い爪が、綺麗に磨かれた石造りの床を打ち砕いた。遠目に見える階段の手摺りに至っては見事なまでに破壊されている。
 そのどれもが暴れ回る同族殺しに向けて、なのであるが。

「なんとも、目のやり場に困るし、やりにくい相手だな」
 そうぼやいたのは剣豪である御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)だった。
 なにせ相手はハルピュイアである。
 半人半鳥の怪鳥は、人間で言う女性に近い見目をしていて、人の目にはいささか毒な格好をしているのだ。
 そして、女子供に手を出すのは刀也の信条に反するのだが。
「だが、もっと面白そうな相手が後にいるし」
 ノエルと言うのだったか、あのヴァンパイアはなかなかに強そうであった。
 立ち振る舞いに隙はなく、手にした槍や纏う鎧には戦場の名誉傷が数多に刻まれていたように見える。おそらくは戦場に出て最前線で暴れ回るような将なのだろう。
 推測が正しければ、強者との戦いを望む刀也にとって、願ってもない相手である。
「……猛獣が目の前にいるのに攻撃してこない訳もないか」
 刹那放たれるアエロー――鋭い爪の攻撃を見切り残像を残し回避する。
 だがそれだけではない、カウンターとして捨て身の一撃でその身を一刀で斬り捨てる。剣刃一閃―― 天武古砕流の正統後継者であり剣豪となるに至った彼の剣技が閃く。抜かれた刀は美しく見るものを奪うほどであった。
 死角をついた背後からの一撃も第六感が告げる危機に振り返り、突き出された足を掴み地面に叩きつける。
「ぎゃっ」
 と悲鳴を上げるその首を押さえつけ、手折る。人外の悲鳴を残し絶命したハルピュイアを見たほかの怪鳥たちは羽ばたき、刀也から距離を取ろうと移動をはじめた。
 あの刀の間合いに入らなければ大丈夫だろうと考えたのだろう。
 だが刀也にはその作戦など無駄だった。
 歴戦の猟兵である刀也には、実力はもとより今までに積み上げられてきた知識と経験もあるのだ。
 焦る必要はない。
 ハルピュイアの動きから攻撃位置と移動先を予測し、地を蹴り駆け出す。一瞬で距離を詰め、先回りしたその場所で獅子吼の一閃で斬り捨てる。
 ハルピュイアたちは悟り始めた。
「距離をとれば勝てるってか? 悪いがそんなんじゃ俺の命には届かねぇよ」
 悠然と笑う刀也が、来いよと空いた手を振る。
 自分たちは捕食者のつもりだったのだ。
 元は神々だった自分たちに、人間など敵うはずがないと思っていた。現に今まで彼女たちに敵うものなどいなかったのだから。
「ほら、遊ぼうぜ?」
 圧倒的な捕食者の声がエントランスホールに響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
アドリブ・連携歓迎
WIZ

アリステルさんの話から察するとあの同族殺し、何かしらの事情を抱えているのかもしれないな
とはいえ、彼から何か聞き出せる状況じゃないし、今は目の前のハルピュイアを倒さなきゃな
お互いに干渉しない程度の共闘、という感じか

先日、とある任務で接近戦での自分の可能性を見出した
さらなる高み、目指してみるか!
エントランスの無機物を媒介に固有結界・黄昏の間を発動
風の疑似精霊に指示し自分の前面に風の壁を形成
放たれた羽の直撃を風の壁で防御

【高速詠唱】【多重詠唱】により平行して火の疑似精霊に指示を出し、退魔刀に炎を付与
炎と【破魔】の力を付与した【属性攻撃】の【乱れ撃ち】(連続切り)で敵を叩き切る



 一方、鳳凰院・ひりょ(人間の聖者・f27864)もハルピュイアとの交戦を開始していた。ハルピュイアが放った黒い羽の一撃目を見切って躱す。が、一方的にやられるだけではないのだ。
「場よ変われ!」
 と、紡ぐ言葉で場に力が満ち、周囲に転がった無機物から風の擬似精霊が生み出される。それは素早く下された指示の元、主の前面に風の障壁を展開し、二撃目となる羽の軌道を反らしひりょを守る。
 無機物を四大元素の疑似精霊へ変換する、それがひりょの【固有結界・黄昏の間】の効果なのだ。
 さて。
 ひりょは先日とある任務で――仔細は語らぬが、あの筋肉の世界での出来事である――接近戦での自分の可能性を見出していた。
 普段はどちらかというと後衛寄りの戦い方をしている彼ではあったのだが。
(さらなる高み、目指してみるか!)
 せっかく得た力なのだ、試してみるのも悪くはないだろう。
 高速で詠唱を幾重にも重ね、火を司る疑似精霊を呼び出すと退魔刀『迅雷』にその炎を付与する。魔を退ける為に打たれた刀身が、ほのかに赤を帯びた。
(これならいけるかな)
 羽が効かぬならば爪で攻撃するまでと、飛び込んできた怪鳥へ向かって退魔刀で真横に払うように一閃浴びせる。そのまま柄に両手を添え、敵の頭から垂直に振り下ろせば、怪鳥は異形の悲鳴をあげて床に叩き落とされる。炎を浄化の力が宿った二の太刀まで受けたハルピュイアは、切り口を炎で焼かれながら骸の海へと還っていくのだった。
 どうやらこの戦法も効果的に働くようだった。

 ふとひりょが視線を動かせば、同族殺しもまた別のハルピュイアに止めを刺したばかりのようだった。
「話から察するとあの同族殺し、何かしらの事情を抱えているのかもしれないな」
 グリモア猟兵の話を思い返しながらひりょはそう考えた。
 過去の報告書を見れば、同族殺しが抱えている"事情"は様々であることがわかる。そしてそのいずれもが発狂し、元に戻ることがなかったことも。
 前例を考えれば、あの同族殺しにも何らかの事情があるのだろう。
(とはいえ、彼から何か聞き出せる状況じゃないし、今は目の前のハルピュイアを倒さなきゃな)
 同族殺しに話しかけた猟兵も居たようだが、今の彼は次の獲物を見つけては単騎で暴れ回っているだけだ。猟兵のことは気にかけないらしい、あくまで敵意を向けない限り、ではあるが。
「お互いに干渉しない程度の共闘、という感じか」
 ならばひりょたちも、同族殺しに干渉しない程度にハルピュイアたちを排除することを優先するべきだろう。城の警備を任せられているだけあり、別の場所から僅かながら増援のハルピュイアたちがやって来るのが見えた。
「行こうか」
 再び、風と火の擬似精霊へ指示を出しひりょは退魔刀を握る手に力を込めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ハルア・ガーラント
――今、わたしにできることをしなくちゃ

【WIZ】
翼があるのはわたしも同じ、[空中戦]なら負けません!
集団戦で最も気を付けるのは囲まれること
飛翔し敵と一定の距離を保ちながら[おびき寄せる]イメージで動きます
[銀曜銃から誘導属性の魔弾]を放ち、地へ落ちたところを同族殺しさんに倒して貰いましょう

敵の攻撃はタイミングを[第六感]で感知し[滑空]・急旋回で回避
毒羽根は[オーラ防御]を厚く張り防ぎますが、防ぎきれなかったらUCを発動して解除

同族殺しさんの行動を邪魔しないよう注意しつつ[情報収集]を
彼に以前対峙した同族殺しの姿を重ねてしまい胸が痛みます

彼が猟兵ではなくオブリビオンと成り果てた理由を、知りたい



 戦いの中で密やかに決意を胸にした者もいた。
(――今、わたしにできることをしなくちゃ)
 その背に広がるのは美しい純白の翼だった。
 空中戦ができるのは、なにもハルピュイアだけではない。オラトリオである彼女――ハルア・ガーラント(宵啼鳥・f23517)も同じなのだ。

 集団戦で最も気を付けるべきことは多体一の状況に陥らないことだと、ハルアは考える。どれほど強き者でもそれは苦しい戦いになりかねない。故に最大限に警戒しながらハルアは飛翔していた。
 一定の距離を保ちつつ時に速度を落とし誘い込み、放たれる攻撃は第六感が感知し滑空あるいは急旋回で躱していく。追撃の黒い羽は張り巡らせたオーラに弾かれ、ひらひらと力なく地上へ落ちていくのだった。
 彼女には目的があった。時折地上を気にしながら怪鳥たちを誘うように移動していく。そうして腰後ろの鞄から銀曜銃抜き、構える。
 それは小型ではあるがその内部には光の精霊が住み着いている。ハルアが精霊に願い魔力を込めることで、その光量と弾種が変化する。
 彼女が狙うのはハルピュイアの――翼だった。
 自身が翼を持つオラトリオであるが故に、痛いほどにわかる急所。
 翼を傷つけられもがれる痛みは、想像するだけで腹の底がひやりとする程に恐ろしい。
 だからこそ、放たれた魔弾は確実に怪鳥の翼を撃ち抜いた。悲鳴を上げ、空を舞う術を失ったハルピュイアは地上へ叩きつけられる。そこに立ち会うのは件の同族殺し――白鎧の騎士エバイルだった。彼は躊躇いなくその白銀の剣で、ハルピュイアへ止めを刺す。
 それこそが狙いだった。そして、もう一つの理由でもある。
 彼女は、同族殺しの行動を邪魔しないよう注意しつつ、情報収集を試みていたのだ。
(彼が猟兵ではなくオブリビオンと成り果てた理由を、知りたい)
 そう願うのは、彼女が以前対峙した"同族殺し"の姿をあの白鎧の騎士へと重ねるからだろうか。
 "同族殺し"は忠誠を誓った主に裏切られ、守るべき民をも失った。あの戦いを思い出す度に今でも胸がちくりと痛む。
 他の同族殺しと戦ったこともある。いずれもオブリビオンでありながら"誰か"を愛し、不適格の烙印を押され結果正気を失ったのだ。

 ならば彼の騎士にも何らかの事情があるはずで。けれど確信へ至る手がかりを得ることは出来なかった。一度だけ猟兵と何か言葉を交わしている姿を目にしたが、その会話の内容までは届かなかったのだ。
 ただその戦い方を見ていれば、疑問に思うこともあるだろう。
 例外もあろうが、多くの者は戦う時身を守る行動を取る。例えばハルアが囲まれることを避けたように、他の猟兵が回避行動を取るように、だ。
 同族殺したる騎士の本命は、この先にいる領主である。ここで倒れるわけには行かないはずだが、彼にはあまりそれを感じる事ができなかった。
 まるで死に場所を探している、と感じるかもしれない。
 振るう剣筋に迷いは無く、けれど殺されるためにただ敵を屠っているかのようで。
(もう少しだけ探ってみましょうか)
 次なる敵へ銀曜銃を向けながら、新緑の瞳を注意深く同族殺しへと向けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

叢雲・雅
オブビリオンの同士討ちに興味はないが…都合は良い。
そして、都合の良い最中に片側が本懐を遂げるのを邪魔する程野暮ではない。処刑の過程は問わん。
まぁ、そのような感じだ。今のところは。

で、なんだ。鳥か。
数が多いので処刑法に四の五の言ってられんな。取り敢えずは【存在感】で引き付けたところを【鎧無視攻撃】を乗せた【2回攻撃】で近い鳥から確実に処理をして征く。
畏れろ。竦め。私が貴様達の死だ。

…怨敵への道を切り拓いた礼くらいは聞くぞ?
…。
……。
………。
…冗談だ。


西院鬼・織久
狩るべき敵を前に堪えなければならないとは
しかし二兎を追えば逃してしまう
ならば堪えて見せよう
我等が怨念は底無し故に、一兎たりとも見逃せぬ

【行動】POW
戦闘知識を活かす為五感と第六感+野生の勘を働かせ周囲の状況を把握し敵行動を予測する
武器とUCは常に怨念の炎(呪詛+殺意+生命力吸収+継続ダメージ)を纏う

先制攻撃+UCで一体を捕縛、怪力で振り回し周囲の敵をなぎ払い+範囲攻撃の後爆破
巻き込まれて落ちて来たものをまとめて範囲攻撃+なぎ払い、生き延びていたら二回攻撃+串刺しでとどめ
敵の攻撃は体術+武器受けで受け流しカウンター+なぎ払い
残った敵も残像+ダッシュで翻弄しながら全滅まで繰り返す



 そしてこの状況を口惜しく思う者たちもいた。
 咎人殺しであり獄卒でもある叢雲・雅(刻死蝶・f04306)と、ダンピールの黒騎士でありおなじく咎人殺しである西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)だ。
 思惑は違えど、二人の狙いは同じだった。
 即ち――敵であるオブリビオンの討伐である。

「オブビリオンの同士討ちに興味はないが……都合は良い」
 なにせ放っておいても敵同士で潰し合ってくれるのだから。"処刑"する手間が省けるというものである。
 加えて、一方が本懐を遂げるのを邪魔する程、雅は野暮ではなかった。
「ええ、狩るべき敵を前に堪えなければならないとは。しかし二兎を追えば逃してしまう」
 ならば堪えて見せよう、と織久はそう口にした。
 心から惜しんでいる口調であった。
 西院鬼の一門はブリビオン狩りを至上目的とする故に、心情として一兎たりとも見逃すことはできないのである。
 が、この場で行われるのは同士討ちである。
 最終的にどちらが勝つにせよ、残った一方を"始末"できるのであれば、結果として相違はないだろうというのが二人の今の所の見解だった。
 同族殺しの方のオブリビオンは今の所、こちらから手を出さない限り無害に近いのも理由の一つである。

「で、なんだ。鳥か」
「我等を打ち負かすに至らぬとはいえ、面倒だ」
 幾分か数は減ったとはいえ、未だ半人半鳥の怪鳥ハルピュイアの数は未だ多い。わずかながらの増援があったのも影響があるだろう。
「処刑法に四の五の言ってられんな」
 まずは数を減らすことを優先するべきか。
 思案し武器を握る雅の、その堂々たる佇まいに自然ハルピュイアの注意が引き付ける。これまでに倒れ消滅していった仲間の怨念を纏い、ハルピュイアはその羽を大きく広げた。
 だがその行動はハルピュイアにとってはただの命取りだった。
「我等が怨念は底無し故に――何人たりとも死の影より逃れる事能わず」
 真っ先に動いたのは織久だった。漆黒の長い髪が、その動きに合わせて揺れる。
 ハルピュイアが羽ばたきによる衝撃波を放つよりも疾く速く、織久のユーベルコードが発動する。怨念の炎を纏った黒い影が伸び、ハルピュイアの足を掴み宙より引きずり降ろしたのだ。影はハルピュイアを掴んだままその体を力任せに振り回し、周囲の敵を巻き込み薙ぎ払う。勢いのまま床に叩きつけると爆破する。
 爆破の衝撃で落ちてきたものを、織久は今度は黒い大鎌――闇器『闇焔』を手にまとめて薙ぎ払う。まだ息のあるハルピュイアには再び大鎌を向け串刺しにしその息の根を止める。同じく、武器に纏わりつく怨念の炎がハルピュイアを焼いて行く。
 別のハルピュイアも負けじと反撃を繰り出した。
 ここに来て多くの仲間を失ったのだ。今は吸血鬼共に従ってはいるが、自分たちは元は神だったのだ。神格も持たず、神よりも遥かに劣るはずの人間に、ここまで圧倒されるのは誤算といえよう。
 恨みと怒りを込めた、空中から落下の勢いを加算した鋭い爪での攻撃が放たれる。
「その首貰い受けるぞ!」
 だがしかし、ごとりと、重い音を立てハルピュイアの首が落ちたのは同時だった。
 じゃらりと、雅の手の中で鎖が音を立てた。長大な鎖に繋がれた処刑具『逆流レ道満』がその命を刈り取ったのだ。
「畏れろ」
 たとえ空へ逃げ距離を取ったとしても無駄である。
 雅の狙いは正確で、処刑具は確実にその命を刈る。
「竦め。私が貴様達の死だ」
 背後から奇襲を掛けようとしたハルピュイアに、抜いた刀で一太刀くれてやる。返す刀でその胸を貫いた。戦慄く怪鳥たち相手に、雅は表情を動かすことなく粛々と"処刑"を実行していくのだ。
「そのような攻撃で我等が膝を付くとでも?」
 一方の織久もまた天性の勘、そして培われた体術で死角から繰り出される攻撃を大鎌の柄で受け止める。
 拮抗する――。そう見せかけて、織久は爪を受け流す。体勢を崩しがら空きとなった胴へ向け、その大鎌を振り抜いたのだ。それだけではない。残像が見えるほどの速さで距離を詰め翻弄し、武器を振るい続けたのだ。
 空へ逃げても鎖と影が。
 地へ降りれば刀と大鎌がハルピュイアを追い詰め、その命を刈り取る。
 織久の大鎌が最後のハルピュイアの首を刎ね、戦闘が終了するまでそれからそう時間はかからなかった。
 息絶えた怪鳥たちが灰のように姿をかえさらさらと消え、骸の海へ還っていく。
 その中で。
「……怨敵への道を切り拓いた礼くらいは聞くぞ?」
 雅の問いかけに動きを止めた同族殺しは一度だけ、はっとしたようにその青い瞳を見開いた。返答こそないものの、白銀の剣から血を拭い納刀する騎士に、過度の狂気の色は見えなかった。瞳がそっと伏せられ、無言の礼が示される。
「……冗談だ」
 雅の言葉が届いたかはさて置き、同族殺しの邪魔をする者はいなくなった。
 まるで死に場所を探しているかのように無茶な戦いをしていたらしく、白い鎧には幾つもの傷がついている。それでも猟兵たちが敵を引き受けた分、"予知"に比べれば傷は浅い。
 同族殺しである騎士は猟兵たちの顔を見回すと、白かったサーコートの裾を翻し階段を登り始める。
「行きましょうか」
 織久は騎士とは対称的に黒い裾を翻してその後へ続いていく。
 その先にいるのは、この城の主たる男。
 獲物のひとり、"闘将"とよばれるヴァンパイア・ノエルである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『闘将『ノエル』』

POW   :    俺の全力の一撃だ!!喰らいな!!
【自分の槍 】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
SPD   :    倍返しだ!!俺に不可能はねぇ!!
【自分の盾】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、自分の盾から何度でも発動できる。
WIZ   :    俺は勝つ為にはどんな手段でも取る!!
【雄たけびを上げる 】事で【本気モード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は神城・瞬です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●狂気へと至る道
 この地を治める領主であり、この城の主たるヴァンパイア・ノエルは楽しそうに、そして満足そうに笑っていた。
 同族殺しであるエバイルはもちろんのこと、意外や意外、猟兵たちもなかなかに強そうだったからである。
 警備を任せていたハルピュイアも、元は異端の神々に連なるものだったのだ。決して弱くはない。仮に領民が抵抗してきたとしても、あの怪鳥共に任せておけば一瞬で片が付いたであろう。
 もっともあの程度の先兵に苦戦する相手など、闘将とすら呼ばれるノエルにとって敵ではないのだが。

 この城は住居としての意味合いが強く、要塞としての機能はほとんどなかった。元は別のヴァンパイアの居城だったものを、ノエルが領主の地位共々奪い取ったのだ。
 故にノエルにとってこの城の装飾は無駄に豪奢であり、広いエントランスホールは非常に無防備で、階段を登ればすぐこのラウンジが広がっている。夜な夜なこの場所では夜会が開催されていたらしいが、今この場所に邪魔な調度品の類はほとんどない。ほとんどがノエルの部下に下げ渡されているのだ。
 そう、戦いの舞台としては十分に広い。遠慮することなく暴れまわる事ができるだろう。

 複数の足音と共に、扉が乱暴に開かれる。
 同族殺し――白鎧の騎士エバイル。そしてわずかに遅れ猟兵たちが現れた。
「楽しませてもらおうか」
 強い敵を叩き潰す瞬間が何よりも楽しみだった。
 己が勝つためならば、自身が率いる配下の騎士さえ駒として使い潰してきた。
 時に殺戮行為を行い彼らに楯突く傭兵団を滅ぼした時だった、エバイルの姿を見たのは。
  アレが既に"同族"となっていたのか、それとも違ったのか、それはノエルにとってどうでもよい事だった。
 ただ強いか否か、それだけが全てであり、あの男はノエルを満足させるだけの力があった。それだけで十分だ。
「さあ掛かってこい、猟兵ども。そこの同族殺しもな」
 一度だけ、槍で力強く床を叩く。
 合わせて、同族殺しの騎士も白銀の剣を抜き、走り出す。

 さあ、楽しい戦いのはじまりである!!

 ――だがくれぐれも忘れることなかれ。
 現状優先すべきことは『同族殺し』を利用して領主を討つことである。
 領主の力は強大ではあるが、領主一体のみであれば猟兵たちの協力で倒すこともできるだろう。
 同族殺しは、優先して領主を狙い進んで猟兵を攻撃することはない。
 先程までの戦闘で、猟兵たちが敵対することがなかったからだ。
 だがもし同族殺しに敵意を向けることがあるのならば――領主と同族殺しを同時に相手にする辛い戦いとなるだろう。

 武器を握る手に何を思うのか。
 猟兵たちはそれぞれが成すべきことのために、一歩踏み出すだろう。
御剣・刀也
なるほど。腕に覚えのある相手らしいな
俺もお前と同じ、強い奴と闘いたいだけの修羅
さぁ、もう言葉は不要だろう?此処からは剣で語ろうぜ

俺の全力の一撃だ!!喰らいな!!で槍を巨大化させて振り回してきても、焦ることなく冷静に第六感、見切り、残像で避けて、勇気で反撃を恐れずダッシュで懐に飛び込んで捨て身の一撃で斬り捨てる
槍が巨大になれば、重量が増える分、攻撃は薙ぎ払いか振り下ろしが増えると思うので、読みやすいと一気に飛び込む
突き、振り下ろしは飛び込みながら、半身になって避け、薙ぎ払いは屈むか跳躍して避ける
「お前、強いな。俺の中の鬼も起きてきた。こっからは人間の闘いじゃねぇ。どちらかが喰われるまでやろうや」



「さあ掛かってこい、猟兵ども」

 その声に、先陣を切ったのは御剣・刀也だった。
 誰よりも早く闘将『ノエル』へ接近する。
 ――次の瞬間にはキィンと澄んだ音を立て、抜刀された刃が盾に受け流されていた。そこに間髪いれず男の槍が突きを繰り出すが、刀也はその攻撃を予測しすぐさま横へ飛び躱してみせた。
「なるほど。腕に覚えのある相手らしいな」
 刀也の抜刀術は神速にも迫る。常人にはいつ鯉口を切ったのかすら見極めることはできないだろう。それをこの男は凌ぎ、あまつさえ反撃してみせた。
「当たり前だ、この俺を誰だと思っている? そこの同族殺しのおまけ程度にしか考えていなかったが……」
 ちらりと、ヴァンパイアである男は同族殺しを見て、悠然と笑ってさえ見せる。
「なかなか楽しい戦いになりそうだ。精々俺を楽しませてくれよ」
 槍を振り、同族殺しを牽制しながら男は行った。
 今の打ち合いで互いの実力も性質も十分に理解した。
「俺もお前と同じ、強い奴と闘いたいだけの修羅だ」
 さぁ、もう言葉は不要だろう?
 刀也も自然と愛刀『獅子吼』を握る手に力が籠もる。
 先の戦いでこの男を見かけた際、面白そうだと思った直感は正しかったのだ。思わず笑みさえ浮かぶほどに。
「此処からは剣で語ろうぜ」
 応えるように、ノエルがその手にした槍を巨大化させる。
「俺の全力の一撃だ!! 喰らいな!!」
 元の軽く三倍程ありそうなそれを、男は驚異的な力で横薙ぎに振り回す。
 "闘将"を名乗るだけあり、その戦い方はひと目見ただけで素晴らしかった。
(だが、やはり速度は落ちるか)
 先の初撃程、速くはない。
 巨大化した影響で槍自体の重量が増しているためだろう。二撃目、もう一度放たれる薙ぎ払いを冷静に屈んで避ける。
 ノエルの視線、筋肉の動き、体の向きからその動きを読む。
 見上げる刀也を、今ノエルが見下ろしている。その姿を映しているノエルの目は爛々としている。この隙を逃さないぞ、と。
 これまでの経験そして第六感が訴える次撃は――その槍の重さを活かした振り下ろし。
 そこまで読めれば刀也には十分だった。
 前転の要領で躊躇なく間合を詰め、一気に懐まで飛び込むとそのまま零距離からの強烈な突きを放つ。その瞬間、差し込まれるように味方と、そして同族殺しの攻撃が入る。
 ほんの一瞬、生まれた隙。そのまま刀を両手で握り上段へ構え、
「この切っ先に一擲をなして乾坤を賭せん!!」
 刀也の持てる力を振り絞って、雲耀の太刀で上段から振り下ろす。
 勝敗を決したのは、紙一重とも言えるわずかな隙だった。
 盾が重い音を立てて床に落ちる。
 痛みを堪えるように顔を歪め、それでも身軽になったとヴァンパイアの男は楽しそうに笑ったのだ。
「ここまで屈辱を味わったのは久しぶりだ」
「お前、強いな。俺の中の鬼も起きてきた」
 片腕で繰り出される突きを半身になって避けながら、刀也は再び獅子吼を構える。
「こっからは人間の闘いじゃねぇ。どちらかが喰われるまでやろうや」
 心が歓喜しているのだ。この強き者とまだ戦えると。

大成功 🔵​🔵​🔵​

叢雲・雅
さて…戦うのが好きなのか勝つのが好きなのか。
前者ならば喜んで瞑目しろ、後者ならば…悪いが期待には沿えぬな。どのような過程を辿ろうが、貴様の勝利はあり得ぬのだから。

武家の生まれに二言はない。
同族殺しが本懐を遂げるまで彼に手出しはせんし…まぁ、手伝おう。他愛ない冗談に真面目に反応された礼だ。
では、参ろう…死を。

立ち位置的には補助的な役割だな。
【存在感】で同族殺し達の攻撃が通り易いよう気を惹くか。攻撃は【2回攻撃】と【鎧無視攻撃】で強烈に行くが、トドメ等、本懐は同族殺しに遂げさせるぞ。
また、「咎力封じ」も此度の戦闘に関しては有効か。基本に立ち返るのも役に立つ…とは、つまらん感慨だが。



 刀と盾のぶつかる音に、叢雲・雅は冷静に戦況を見極めようとしていた。
「さて……戦うのが好きなのか勝つのが好きなのか」
 前者であるならば喜んで瞑目すればいい。雅を含め、ここにはいずれも実力を備えた強者が揃っている。その欲を満たすため好きなだけ戦って散ることもできよう。
 だが後者ならば――。
「悪いが期待には沿えぬな。貴様の勝利はあり得ぬのだから」
 どのような過程を辿ろうが、オブリビオンに膝を屈する事などありえない。
 この戦い、雅が敗北する未来は決して訪れないのだ。

(立ち位置的には補助的な役割だな)
 本懐を同族殺しに遂げさせるのならば、それが最適だろうと、戦術を編んで行く。
 あのオブリビオンの武装は、身の丈ほどの槍と盾である。身のこなしからも戦いを日常とする強者らしく、どちらも巧みに操ってみせるようだった。
 それは即ち遠近両方の攻撃に対処できる、ということだ。
 となれば。
「【咎力封じ】も此度の戦闘に関しては有効か」
 咎力封じ、それは『手枷』『猿轡』『拘束ロープ』を放ち、全て命中すれば敵の技を封じることができる、雅のユーベルコードである。
 咎人殺しとしては初歩の技でもあるのだが。
「基本に立ち返るのも役に立つ……とは、つまらん感慨だが」
 雅の熟練した技術にかかれば、盾か槍、どちらかだけでも封じる事ができるだろう。相手も強敵であるならば、有利に運べる術を見逃す理由もない。
 算段を付け拷問具を手にするその彼女の傍らを、白が駆け抜けていく。
「武家の生まれに二言はない」
 その同族殺しの背に声を投げた。翻る白が止まる。
 彼に武家の概念が通じるかは定かではないが、雅は宣言した。
「本懐を遂げるまでは手出しはせん……まぁ、手伝おう」
 先の宣言を違える事は武家の出である矜持が許さなかった。
 それは他愛ない冗談に、生前の性格故か真面目に反応された礼でもあった。
 ……そして、たまたま狂気が薄れたタイミングだったのかもしれない。
「正義とはなんなのだろうな」
 虚ろな声が言葉を紡いだ。
「この世界にとって猟兵は正義なのだろう」
 手慣れた美しい動作で白銀の長剣を構えて、騎士が零す。
 会話というよりは思考の欠片が漏れ出すような口調だった。
「知らん。私は私の敵を処刑するだけだ」
 表情を変えず、雅はそれだけを言い切った。
「……ノエル、貴様を許さない」
 再び狂気の色を宿した声が、機械的に許さないと繰り返す。
 おそらくこの会話の継続は不可だ。そう判断して雅も動き始めた。 
「では、参ろう……死を」
 死を齎すために。

 長い黒髪が彼女の動きに合わせて舞う。
 堂々たる振る舞いで拘束ロープを放ち、オブリビオンの気を惹く。槍が鬱陶しそうに振るわれる、そこに絡みつかせ隙を生むのだ。男に斬りかかる猟兵と翻る白を援護するように、他の拷問具も放ち注意を逸らさせる。
 すかさずロープをもう一本放ち、オブリビオンの動きに更に制限を加える。
 白銀が閃き、ガランと金属と石がぶつかる音が室内に響く。
「ここまで屈辱を味わったのは久しぶりだ」
 怒りと屈辱、そして高揚を滲ませた声でオブリビオンが叫んだ。
 盾は潰した、あとは本体を叩くだけだ。
 だから雅は動く。本懐を遂げさせるために。

大成功 🔵​🔵​🔵​

西院鬼・織久
狩れぬ一兎を側に堪えたせいか酷く飢えてしまいました
ここで強者と死合えるとは行幸
我等が血肉もまた怨念滾らす糧となる
共に死合い、互いの血肉で飢えを満たすとしよう

【行動】POW
戦闘知識を活かす為五感と第六感+野生の勘を働かせ状況を把握し敵行動を予測
武器は常に怨念の炎(殺意+呪詛+生命力吸収+継続ダメージ)を纏い弱らせる

先制攻撃+UCに夜砥を忍ばせ、捕縛と同時に麻痺毒+継続ダメージを与え動きを鈍らせたうえでUCの爆破に合わせダッシュ+串刺し。爆破の傷口をえぐる
敵UCや反撃は体術も利用した武器受けで受け流しカウンター+なぎ払い
敵が体勢を素早く立て直すならUCの爆破と残像を目晦ましに死角に回り込み反撃



 盾を持つ手を失っても、まるで身軽になったとばかりにオブリビオンは槍を振るっていた。
「お前の腕はそれほどのものだったか?」
 剣戟が軽い、と同族殺しエバイルの攻撃受け流しがら空きの胴へ蹴りを叩き込んでいた。吹き飛んだ白鎧の騎士は咳き込みながらも立ち上がる。
 迫り来る猟兵、そして屈さぬ同族殺しを相手に一層嬉々として立ち回っている。
「ここで強者と死合えるとは行幸」
 その様子を目に、西院鬼・織久はそう口にした。
 "同族殺しと戦ってはいけない"
 その制約は彼にとって酷い飢えをもたらすものだった。
 飢えた獣の側に決して狩れぬ一兎を置く――それ程に酷い真似である。この乾きを癒やし飢えを満たすには、あの男が必要であった。
「我等が血肉もまた怨念滾らす糧となる。共に死合い、互いの血肉で飢えを満たすとしよう」
 目的は同じなのだ。織久はオブリビオンを、オブリビオンは強者を相手にしたい。
 両者の視線が交わり、それが戦いの合図となった。

「何人たりとも死の影より逃れる事能わず」
 先制したのは織久のユーベルコードだった。
 研ぎ澄まされた五感が場を読み取り、第六感が冴え渡り手にとるようにその行動を予測する。その僅差が場を制する。ノエルの槍が巨大化する寸前に【影面】が生み出す黒い影がオブリビオンの身に纏わりつく。手に、足に、胴に闇は絡みつくように腕の形を取るのだ。
 だがそれは本命ではない。
 振り上げられた男の腕をキリキリ締め上げ止めるのは、影に紛れさせ放った織久の闇器の一つだ。それは無念の死を遂げた者の髪と血をもとに作られた。砥上げられた糸は極めて細く、けれど頑強なそれは『夜砥』という銘を持つ。
「こんな糸など……!」
 引き千切ってやると抵抗の姿勢を見せた男が違和感に気づいたようだ。
 織久は闇器の使い所は心得ている、その特性も、もたらす効果も全てだ。
 甲冑の僅かな隙間から入り込んだ糸。そこに仕込まれた麻痺毒が男の体を蝕み始めたのだ。
 追撃とばかりに影面を爆破させ、一気に距離を詰め大鎌を突き出す。
 傷口を確かに抉る感触を得たのも刹那、大鎌を引き抜き放たれる攻撃を受け止める。
 巨大化した槍と、織久の力が拮抗し鬩ぎ合いが続く中、男がそっと零した。
「お前たち猟兵は"オブリビオン"を狩るのだろう? あいつも相手にしてやったらどうだ」
 ノエルの力がすっと抜ける。男の手は槍を握り織久を相手にしている、もう身を守る盾はない。故に、割り込む同族殺しの攻撃を後方に退いて躱したのだ。
「その兎は後回しだ」
 古来より、二兎を追う者は一兎をも得ずと伝わる諺もある。
 何よりもここに来てどうして他の獲物を狙えようか。あの兎も今はほんの少し見逃すだけだ、この強者を逃す方があまりにも惜しい。
 武器が纏う怨念の炎がより一層強くなる。
「我等が糧となれ」
 その身に宿す怨念は尽きる事なし、貪欲にその血肉を求めるのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
連携・アドリブ歓迎
WIZ

…あの手を使うか?いや…、あの領主の動き、生半可な攻撃は当たらない
皆で連携しないと…最悪、あの騎士の援護をする形を取ってでも倒さなければ

連携相手が
・接近戦得意→光陣の呪札で遠距離から援護
・遠距離戦得意→退魔刀での接近戦
で互いをフォローするように行動

他猟兵と連携無しの場合は同族殺しを援護するよう遠距離戦

・接近戦→相手の動きに惑わされず【落ち着き】、敵の致命傷となる攻撃は【見切り】退魔刀で敵の攻撃を捌く
・遠距離戦→【乱れ撃ち】で攻撃し相手の行動範囲を狭め、接近戦役が攻撃を当てやすい状況を作る

自分達の消耗が激しくなったら【黄昏の翼】発動
消耗を力に変え【リミッター解除】で猛攻撃


ハルア・ガーラント
同族殺しさんを邪魔しない庇わない
何の為ここに来たのか
自分に言い聞かせ戦闘開始

【WIZ】
二人から距離を取り[銀曜銃の誘導魔弾]で同族殺しさんの攻撃に追撃するように立ち回ります

敵の標的がわたしになったことを[第六感]で感知したら[念動力]で天井のシャンデリアを敵目掛け落としますね
同時に[咎人の鎖]を敵の足元に絡みつけ動きを止め[魔力溜めしたマヒ属性の魔弾で攻撃]
同族殺しさんがこの瞬間を見逃す筈がありません!

雄叫びにはこちらもUCで対抗
ペンギンさん達の力で本気モードを解除し戦闘を継続

同族殺しさんのこと何も知らないまま終わるのはいや
敵とは見知った間柄のよう、生前の彼らの身の上を尋ねることはできるかしら



「正義とはなんなのだろうな」
 猟兵と話していた同族殺しは、それだけを口にしてオブリビオンへ立ち向かっていた。
 猟兵がオブリビオンを葬り骸の海へ還そうとするように、騎士もまたオブリビオンでありながらそうしようとするように。

 鳳凰院・ひりょは薙ぎ払われた槍を、とっさに退魔刀で反らし後ろへ跳んで躱した。
 間合を詰め放たれる斬撃の素早さに舌を巻く。猟兵たちの猛攻を受け随分と傷ついているが、その動きに衰えを感じることができなかった。窮地に陥ればより燃え上がる性質を持つのかもしれない。
(あの手を使うか? いや……)
 浮かんだその手を、ひりょは即座に否定する。
 この動きは戦いなれた者のそれだった。おそらく前線に積極的に打って出るタイプの将なのだろう。考えながら振り下ろされる槍を冷静に見つめる。きっと生半可な攻撃は通すことができない。だからとっさに黄昏の間で地の疑似精霊を呼び出し、高速で展開される石の壁で槍の一撃を防ぐ。
 ――通らないならばそれすら打ち砕く戦術で挑めば良いのだ。
(最悪、あの騎士の援護をする形を取ってでも倒さなければ)
 それは自分たちを勝利へ導く一手となるだろう。
 この場にはひりょだけではない。他の猟兵に、そして同族殺しがいる。
 白いサーコートを翻し同族殺しがオブリビオンへ斬りかかる。
 そこに援護するように『光陣の呪札』を放つ。不思議な力を秘めた札は光の束を生み出し敵を刺し貫くのだ。

 ハルア・ガーラントは視線でその騎士の背を追っていた。
(同族殺しさんを邪魔しない、庇わない)
 何の為に自分がここに来たのか、己に言い聞かせるように彼女は決意を秘め銀曜銃を手にする。
(同族殺しさんのこと何も知らないまま終わるのはいや)
 心を占めるのはその思いだ。
 あのオブリビオンとは見知った間柄のようで、彼らの身の上を知りたいと願う。
 そのために出来ることをと考えた刹那、光の束が敵を貫く。
 ハルアとひりょ、二人の猟兵と目線が合う。
 この戦いは"同族殺し"をいかに利用するかが鍵となる。だから、思惑は一致する。
 ハルアは同族殺し、そして領主たるヴァンパイアから距離を取り、迷いを振り払うようにまっすぐに銀曜銃の銃口を向ける。今この場で最も有効な戦術を取るために、誘導性を持つ魔弾で同族殺しの攻撃に追撃するように立ち回る。
 剣を防ごうと構える腕を、或いは足を狙い撃つ。
 幾度も加えられる"横槍"についにオブリビオンがハルアを狙う。向けられる殺気を肌で感じる。オブリビオンが移動しハルアを間合いに捉える、その直前。
「危ない!!」
 ひりょの援護が加わる。無機物から呼び出された風の疑似精霊が風の障壁を張る。そこに火の疑似精霊が乱れ撃ちを交え、ノエルの行動に制限を加えていくのだ。
「当たって!」
 続くハルアの叫びと共に、念動力が豪奢なシャンデリアの鎖を引きちぎる。
 咎人の鎖が淡く光る蔦を這わせてオブリビオンの足元に絡みつき、宿す麻痺の力を発動する。追撃の魔弾が、束となった光が足を貫きその動きを止める。
 その瞬間、オブリビオンの真上にシャンデリアが落ちる。
 重い音と落下の衝撃を伴い、硝子の破片が周囲に飛散し綺羅びやかな光を反射する。

 こんなはずではなかった。
 叩きつけられた衝撃に、ノエルは思わず息を止める。
 この俺が、追い詰められるだと? そんな現実を許すことが出来なかった。
「俺は勝つ為にはどんな手段でも取る!!」
 ノエルは雄たけびを上げる。自身の枷を外し限界を超えるのだ。
 これまでだって、いくらでもそうしてきたのだ。
 幾度も殺戮を阻止された屈辱を晴らす、あらゆる手を利用し奴らの拠点を滅ぼした。あの日だってそうだ。
 この白い鎧の騎士が現れた日。
 時折耳にする"猟兵"のように、その瞳には正義の光が宿っていた。
 広がる光景に憤るように、怒りの色を湛えて。
 そうして騎士は剣を抜く。ノエルたちを憐れみ慈しむようにその命を狩るために。
 だから配下の手勢を幾ばくかを利用した。駒のように扱い、勝利を掴み取ったのだ。
「ここで負けるのはありえない」
 シャンデリアの残骸を跳ね飛ばし、ノエルは槍を杖代わりに立ち上がる。
 屈辱をもたらした猟兵たちに死を与えるために。
「させない、翼よ、今こそ顕現せよ!」
 ひりょの展開したユーベルコード【黄昏の翼】が、彼と仲間たちを黒白のオーラで覆う。受けた傷を癒やし、そして負傷に比例した戦闘力を付与するのだ。
「あなたのその力、この仔達が解除します」
 続くハルアの声と共にユーベルコード【アプテノディテス・ドライヴ】が発動し、複数の天獄産の祝福されたキングペンギンが召喚される。不可視の翼を得たペンギンたちがオブリビオンの強化効果を打ち消していく。
「今だ!」
 ひりょが声を上げた。
 強化効果は打ち消され、あとに残るのは負傷したオブリビオンがひとり。
「行ってください」
 ついに好機が訪れた。同族殺しがこの瞬間を見逃す筈がない。
 白鎧の騎士は走り出し、鋭い突きの一撃を放つ。

 オブリビオン・ノエルが炎に包まれ、騎士の剣がその胸を貫いたのはこの直後の事だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

星野・蒼火
アドリブ等々歓迎
(さっきの言葉……エバイルさんはまだ堕ちてない……?)

いや、この気配はオブリビオンの物……確認するのは後でいいね。

UCを広範囲に展開。
炎の耐性を無くしてしまえば、後は煮るなり焼くなりどうとでもなるね。
「炎はどこにでもあるよ。……例えば燭台とか」



 ――少しだけ時間は巻き戻る。
 星野・蒼火の前で白鎧の騎士が戦っていた、先の戦いのように。翻る白には違う色も滲んでいた。
 猟兵たちがオブリビオンに猛攻を加えていく。
 振るわれる刀が腕を落とし、大鎌がその腹を抉る。仲間をあるいは騎士を援護する為に動きを封じ拘束を試みる、その合間にも騎士は己の持つ白銀の剣を振るっていく。領主であるオブリビオンは傷を負い、着実に追い詰められていく。武器を交える間だけではないのだ。直接的な傷以外にもその体は複数の毒に蝕まれ、怨念の炎に焼かれている。それでもオブリビオンは自身が負けることなどないとばかりに槍を振るい、騎士もまた自身の負傷を顧みず挑み続ける。
(さっきの言葉……エバイルさんはまだ堕ちてない……?)
 蒼火は先程のあまりにも短い会話を思い返す。
 ――"復讐に、来たのか……?"
 会話は出来ないと思っていたのに、あの騎士は確かにそう口にした。
 蒼火に向けられた"復讐"という言葉に他の意味があるだろうか?
 だからこそ浮かぶのはひとつの可能性。
 けれど。
(いや、この気配はオブリビオンの物)
 即座に否定する。
 違うのだ。戦う騎士の纏う気配は、あの日のものと違う。骸の海から滲み出した"過去"――オブリビオンのもので間違いはなかった。
(いえ……確認するのは後でいいね)
 確かめる機会は必ずあるはずだと、思考を切り替えて蒼火は室内を見渡していく。
 室内を煌々と照らす複数のシャンデリア。壁際に並ぶ燭台の炎は、猟兵たちがあるいはオブリビオンが動くたびにその炎を揺らす。
「炎はどこにでもあるよ。……例えば燭台とか」
 炎を見つめて、蒼火は蒼穹と名付けられたハンドガンを手にする。
 猟兵の呼ぶ炎と風が、蔦がオブリビオンの足を止め、シャンデリアを繋ぐ鎖が引きちぎられた。直後、床に叩きつけられたシャンデリアから硝子の破片が飛び散った。
 銃口を向け手握る手に力を込める。
 蒼火に許されたのは一分にも満たない僅かな時間、だからこそ機会は一度きりなのだ。
『ここで負けるのはありえない』
 残骸を跳ね除けて、槍を杖代わりに立ち上がったオブリビオンが叫ぶ。
 その足元を、生まれたばかりの小さな炎が這っていた。蝋燭から溢れた炎はちろちろと床をなめている。
 ここだと、覚悟を決め蒼穹の引き金を引く。放出するのは、蒼火に流れる血に宿る――"焔の魔神"の力だ。
「この力で役に立てるのなら……」
 その覚悟は祈りにも似て、室内を満たしていく。
 ユーベルコード【限定解除-怨嗟の焔-】が放つ力は、焔の魔神の力で範囲内全ての炎への耐性を無力化するものだ。
「炎の耐性を無くしてしまえば、後は煮るなり焼くなりどうとでもなるね」
 足元の炎が喜ぶように大きく笑う。
 猟兵たちが「今だ!」と"同族殺し"の背を押し、白鎧の騎士が走り出した。
 彼の手にする剣がオブリビオンを貫くのと、炎がオブリビオンを飲み込むのはほとんど同じだった。
 がらんと大きな音を立て槍が床を打つ。
「どうして俺が、俺が負けるんだ!」
 オブリビオンが叫び体の端から砂のようにさらさらと消えていく。炎が全てを呑み込む前に騎士はオブリビオンから距離を取り、蒼火もまた力の放出を終える。
「エバイルさん……」
 限定的とはいえ魔神の力を制御し終えた蒼火は、疲労感を覚えながらもそっと騎士の名を呼ぶ。
 またちろちろと床をなめる程度に小さくなった炎を見て、
「ここで終わるのか」
 と騎士は小さく呟いたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『白鎧の騎士『エバイル』』

POW   :    閃
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【神秘を纏った剣の複製 】で包囲攻撃する。
SPD   :    破
対象のユーベルコードに対し【過去に見た、それを打ち消す威力のあるUC】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
WIZ   :    解
【己が使命に対する誓い 】を籠めた【白く輝く剣】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【ユーベルコードの源】のみを攻撃する。
👑8
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠カノン・トライスタです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「ここで終わるのか」
 と、そう思ったことをふと思い出した。
 濁っていた思考が澄んでいくのを自覚する。今までのことはきちんと記憶している、猟兵たちが何をしてくれたのかも全て。夢でも見ていたような心地だったけれど。
 そして、未だ狂気は囁いている。
 剣を取れ。敵を討て。お前の正義を求めろ、と。
 もう二度と戻れない事を思い知る。
 あの日もそうだった。
 炎に囲まれた村で、男が笑っていた。村一つ滅ぼした上で、とても愉快そうに。
 "これを放置しておけば世界に害を成す、故に討て"
 その姿に視界が一瞬で怒りに染まり、囁く声に剣を取ったことまでは覚えている。残念ながら取り逃してしまい、今に至ったのだが。
「頼む」
 性別も種族も様々な猟兵たち、ひとりひとりの顔を見る。
 誰とも知れぬ者に討たれるくらいならば、この猟兵たちがいいなと思った。ただ僅かな時間を共に戦い、その姿が少し羨ましく思ったのだ。
「私を、骸の海へ還してくれないだろうか」
 例え還ったとしても再び蘇る可能性もあるが、此度の命、ここで終わるのも良いなと考えて、エバイルは形式ばった騎士の礼を取る。
 ただ最期に少しばかり、相手をして貰えたらと贅沢な事を考えてしまうのだ。武人として、やはり強者とは手を合わせることは心惹かれる。
 "敵を討て"
 囁く声に眉をしかめて、その声を精神力で捻じ伏せる。
「よろしく頼む、猟兵たち」
 それだけを口にして、愛用の剣を構えたのだ。

 一度正気を失ったオブリビオンは、二度と元に戻る事はない。
 正気に戻ったように見えても、ただ訪れた束の間会話を可能にしているだけだ。
 白鎧の騎士エバイルもまたそうである。
 狂気に囚われた彼は、ほんの僅かの時間自分を取り戻したに過ぎない。
 今彼を見逃したところで、この状況はそう長くは持つまい。
 次に狂気に囚われれば、彼の剣がどこを向くかわからないだろう。
 新たなオブリビオンを見つけ正義を執行する可能性も、未然に防がれ果てる可能性も、無辜の民に向かう可能性も、どれも否定することはできない。
 オブリビオン・エバイルは剣を構えている。

 猟兵たちはなすべきことをなすために、それぞれの想いを秘めて前に進むだろう。
 心残りがないように。

●MSより
 3章プレイング受付は
 10/20(火)8:31〜22(木)23:59 となります。
御剣・刀也
誇り高い騎士だな
最後の相手を務めよう
天武古砕流、御剣刀也だ

閃で剣の複製で攻撃されても、第六感、見切り、残像で避けるか、武器受けで弾き落としながら、勇気で被弾を恐れず、ダッシュで一気に間合いを詰めて、捨て身の一撃で斬り捨てる
剣の複製が正面から来るとは限らないので、三百六十度あらゆる方向から攻撃が来ると予想し立ち止まることなく進み続ける
「さすがは歴戦の強者。その武技は見事としかいいようがない。続きは地獄でやろう。もっと強くなって、お前を待ってる」



「よろしく頼む、猟兵たち」
 そう言ってエバイルが剣を構える姿を前にして、誇り高い騎士だなと御剣・刀也はそう思った。
 過去の亡霊となった身であれ、今ひとときとはいえどあの男は騎士であろうとするのだから。
「最後の相手を務めよう」
 その瞳に戦いの中で散る決意が見えれば、武人としても応えたくなるものだ。だからこそ、刀也はその申し出を受けた。
 強き者と戦いたい、その欲求もまた理解できるから。
 ちらりと獅子吼へ視線を向ける。愛用の刀、その美しき刃に曇りはなく、未だ鋭さは保たれたまま。ここに至るまでの疲労はあれど、戦いに支障をきたすものではなくむしろ高揚感を覚える。まだまだやれる、戦える。
 抜き身の刀を正眼に構える。
「天武古砕流、御剣刀也だ」
「エバイルだ――よろしく頼む」
 交わす言葉はそれだけで十分だった。

 一合、二合と打ち込む中、互いに高揚していくのを感じる。
 上段からとみせかけたフェイントから続く斬り上げの攻撃。騎士が流れるように繰り出す剣技の数々。それを躱した刀也の放つ突き技を騎士は剣で受け流し、騎士が放つ斬撃を刀で受け、あっという間に鍔迫り合いへもつれ込む。
「さすがは歴戦の強者。その武技は見事としかいいようがない」
 それは刀也の率直な感想だった。剣技のどれをとっても一流の剣士であることが伺えるのだから。
「そちらもね。できれば違った形で出会いたかったものだ」
 刀也の神速の踏み込み、そこから放つ天剣の居合術、零距離からの突きを防いで、騎士は笑う。激しい攻防が続いている中、ささやかな詠唱と共についにエバイルのユーベルコードが発動する。
「では、これはどうだろうか?」
 彼の持つ白銀の剣は複製され、その頭上に幾数本も展開される。
 その切っ先全てが猟兵たちに狙いを定めている。
 複雑な幾何学模様を描き飛翔する剣を、刀也は油断なく警戒していた。
(正面から来るとは限らないな?)
 複製された剣、それらが自在に操れるというのであれば三百六十度、どの方向から攻撃されてもおかしくはない。そこまで考えて刀也は躊躇なく移動をはじめた。ただじっと立っているだけではいい的になるからだ。立ち止まることなく、向かい来る剣を弾き、あるいはその軌道を見切り躱していく。
 躱すだけではない、一瞬の攻撃の切れ目。そこを縫うように刀也は駆けた。
 一気に騎士との間合を跳躍し、捨て身を覚悟で放つのは雲耀の太刀。
「続きは地獄でやろう。もっと強くなって、お前を待ってる」
 その日が楽しみだと笑って刀也は持てる全ての力を乗せ、上段から一撃を放つ。振り下ろす瞬間、騎士が笑ったように見えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
WIZ
連携・アドリブ大歓迎
俺達が彼の力になれるのか…
それならば俺は俺の出来る形で彼に応えよう

今こそ領主相手には使わなかった奥の手を使ってみるか!
俺の「生まれながらの光」、これは俺の聖者としての力そのものといってもいい
最初に発現した力でもあるからだ
普段は人の傷を癒す力ではあるが、その根源は聖なる力
不死の存在には強力な対抗手段となるはず

「纏え、聖なる力となって!」
自分が動ける程度の余力は残しつつ、生まれながらの光を自分の退魔刀へ注ぎ込む
折角の力も体が動けなきゃ使えないしね

これは本当の奥の手、だし有効だろう相手も限定される
だが、だからこそ俺の今の全力の力
彼の一撃を見切りで回避し一撃に全てをかける!



 一方で鳳凰院・ひりょは手にした退魔刀へ視線を落としていた。
「俺達が彼の力になれるのか……」
 彼に応えたい。その思いがある一方、懸念することもある。
 今目の前で繰り広げられている熱戦を見ても、あの騎士は熟練の剣士であることがありありと分かるのだ。
 猟兵の放つ突き技を騎士は剣で受け流し、騎士が放つ斬撃を刀で受け、鍔迫り合いへ持ち込む。一合、二合と激しい攻防が続いている。
 もともと後衛よりの戦いを得意とするひりょは、果たしてそれに応えられるのか、と。
「いや……それならば俺は俺の出来る形で彼に応えよう」
 よぎる思いを否定よるかのように首を振り、退魔刀を握る手に力を込める。
 ここで全力を尽くさねば、いつか後悔する可能性だってありえるだろう。
 過ぎ去った時を取り戻すことは出来ない、そしてこの壁はいつか越えなければいけないものである。だからこそひりょは決意した。
「今こそあの手を使ってみるか!」
 それは先の領主戦で使わなかった奥の手である。
 攻防の合間、騎士がひりょを見ていた。剣を握っていない手が、来いと動く。

 ひりょは聖者だ。
 ひりょの持つユーベルコード【生まれながらの光】は、彼が最初に発現した力であり、"聖者"としての力そのものといってもいい。
 人の傷を癒す光、奇跡をもたらす光――その根源にあるのは"聖なる力"である。
(不死の存在には強力な対抗手段となるはず)
 加えてひりょ自身の武器は魔を退ける刀である。効かないはずがない。
「纏え、聖なる力となって!」
 この力は無尽蔵に使えるわけではない、発動する度に発生する負荷は彼の体に疲労という形で現れるのだ。
 故に自身が動ける程度の余力を残し『生まれながらの光』を退魔刀迅雷へ注ぎ込む。
「折角の力も体が動けなきゃ使えないしね」
 刀身に聖なる光を宿して、ひりょは呟いた。
 これは代償故に多用することもできなければ、有効であろう相手も限定される。本当の奥の手であり、だからこそひりょが今出せる全力の力でもあるのだ。
 騎士がまっすぐにひりょ目指して駆けてくる。ついで放たれるのは騎士の"使命"に対する誓いを込めた一撃。ユーベルコードの源、刀身に宿る光を打ち砕かんとする剣閃を、ひりょはひらりと見切り躱す。
(――この一撃に全てをかける!)
 おそらく二度は通じない。だからこそ、ユーベルコードを外し隙の生まれた騎士へ全力の一撃を加える。確かな手応えを刀が伝えてくるがすぐさま飛び退き、ひりょは反撃に備える。
「ありがとう」
 と騎士はそれだけを告げて、再び剣を構えている。
 白鎧を赤が伝っている、その事実が告げている。ひりょは彼の望みに応えられたのだと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

星野・蒼火
「別に復讐するつもりなんて無いよ。私は理解してる。それでも未練があったからここにいるんだけど……」

貴方に復讐するとしたら私じゃない。だとしても、オブリビオンとしてそこに立つなら見逃さない。
貴方が堕ちたことを残念には思う、だからこそ、私が貴方を還す。

貴方のその技なら、私の血も絶てるかもね。でも、私は足掻くと決めた。この血を背負って、利用して、最後まで足掻くと決めた。
だから食らうわけにはいかない。



「別に復讐するつもりなんて無いよ。私は理解してる」
 星野・蒼火は白鎧の騎士・エバイルを前にして、そう口にした。
 蒼火の迎えた結末は遠からず訪れる未来だった。彼が成さずとも他の誰かがそうしていたはずだった。ただその筋書きと配役が『誰か』ではなくエバイルへと、ほんの少し変わっただけなのだから。
「それでも未練があったからここにいるんだけど……」
 その結末は覚悟していたものだった。だから復讐心など抱くはずがないのだ。
 けれどいざその時になって心を占めた、たったひとつの未練が彼女を繋ぎ止めた。
 この騎士に"復讐"する者がいるとしたら、それは自分ではないと蒼火は考える。それを考えるのはきっと――。
 いいえと、蒼火は首を振った。
 だとしても、エバイルがオブリビオンとしてそこに立つならば、その姿を見逃すことは決して出来ない。
 星見の刃を抜いて蒼穹と合わせて構える。
「貴方が堕ちたことを残念には思う、だからこそ、私が貴方を還す」
「ああ、それでいい。掛かってこい猟兵よ」
 エバイルは一瞬笑みを浮かべると次の瞬間には真顔になって、その白銀の刃を天へ向けるように直立させる。そこに込められるのは騎士の誓い――使命を果たすという決意だった。
(貴方のその技なら、私の血も絶てるかもね)
 エバイルは一度は蒼火の命を奪ったのだ。彼が心から願うのであれば、その再現は容易いだろう。彼にとって蒼火は狩るべき異端の血、使命を果たす対象であるからだ。
「この焔は忌まわしき呪いの力。それでも、私は覚悟を決めたんだ」
 けれど蒼火もまた心に決めている。
 この血を背負って、利用して、最後まで足掻くと決めた。その覚悟が先の戦いで見せたユーベルコードであり、蒼火の銃刀戦闘術にも込められているのだ。
「過去はもう戻らない、だから私は明日を望む!」
 抱える未練を断ち切るためにも、あの技を食らうわけにはいかない。
 蒼穹から放つ銃弾にその決意を、その身に宿る炎を込め放つ。
 それは彼女が編み出した銃刀戦闘術奥義――刺炎。
 撃ち込まれた弾丸は白鎧の騎士を貫く。消えることのない炎は、内より貫く蒼炎の槍となり騎士を貫くのだ。
 ぽたりと床に血が落ちて、騎士が膝をつく。それでも騎士は笑っていた。
「そうそれでいい。君たちには未来がある」
 過去から蘇ったオブリビオンはもう未来を紡ぐことができない。
 ただそこにあるだけで世界を滅ぼす存在となるのだから。
「あの時とは逆だな」
 感傷を一瞬だけ見せて、ちろりと炎が見える傷を押さえながら騎士は立ち上がる。
 手には白銀の剣。
 その場にいる猟兵たちの顔を見回して、掛かってくるが良いとばかりに。

大成功 🔵​🔵​🔵​

西院鬼・織久
漸く最後の一兎を狩れるか
その一兎が死に至る牙を持つのであれば尚の事
我等が怨念の飢えを慰めるに足る死合いとなろう

【行動】POW
五感と第六感+野生の勘を働かせ状況把握と敵行動を予測
武器は常に怨念の炎(呪詛+生命力吸収)を纏い触れるだけで継続ダメージを与える

先制攻撃+UCから残像+ダッシュで接近
敵が防御態勢なら回り込んで残像を囮に回り込みなぎ払い。つけた傷を狙い二回攻撃の早業で更に傷口をえぐる
回避しようとするなら夜砥で捕縛し怪力で引き寄せると同時に自身もダッシュ、速度を乗せた串刺しで貫き傷口にUCを流し込む

敵UCは範囲攻撃+なぎ払いの連撃で叩き落とし当たっても各種耐性で耐え反撃


ハルア・ガーラント
彼の申し出を了承します
……それがあなたの望みなら

【SPD】
わたしは戦う者としての多くの経験や戦闘センスがある訳ではないから
とても怖い――けどやらなきゃ

彼の剣戟は[第六感と視力]を活用し応戦
断片的に記憶があるのならわたしが背の翼を使い飛翔することは把握されている
なので敢えて[咎人の鎖]を芯に[オーラの障壁を張り巡らせ防御]を主軸とした立ち回りを
隙を窺い[銀曜銃にマヒ攻撃を込めた誘導弾]で鎧の隙間や肌の露出した部分を攻撃
[念動力]で大きな装飾品を積み上げ即席の障害物も作りましょう

せめて彼が骸の海へ還る時は安らかであって欲しい
[祈りと慰め]を込めUC発動、彼の見知った存在を呼び出し共に見送りたいです


叢雲・雅
では、貴公の処刑を執行する。
執行人は…私、叢雲雅。
最期の刻だ…遠慮無く来い。頼まれたことは引き受けよう。

処刑の過程を問わぬとは言った通り。
狙えるようならば狙うが…基本的には先だっての戦と同様、「咎力封じ」で敵の手を潰して行くのが主眼になるか。無論、私を狙って来るのならば得物を刀として【2回攻撃】と【鎧無視攻撃】で派手に歓迎し斬り結ぶのに否はない。一応、スタイル的には居合に近い…のだがな。

そうだ。正義の話だがな。
そう言うのは私のような無学浅識よりも学者に聞け。
私には、己の己たる全てが己の正義、としか言えんのでな。

十万億土の長途だ、心して逝け。
白鎧の騎士よ、良い途を。



「よろしく頼む、猟兵たち」
 と、その声を聞いた時ついに時は満ちたのだと叢雲・雅は感じていた。
 本懐を遂げるまでは手を貸す――その言葉の通り二言はなく、雅は役割を忠実にこなしてきた。そしてかの騎士は、ようやっとその願いを果たしたのだ。
 物語の主導権は猟兵たちの元へ舞い戻る。
「では……貴公の処刑を執行する」
 堂々とした振る舞いで彼女は宣告を下す。その手に握るのは処刑具だ。
 二人のオブリビオンを打ち倒し骸の海へ還す、最初からこの結末は変わらず決まっていたのだ。
 双方にもう遠慮する理由は存在しない。
「執行人は……私、叢雲雅。最期の刻だ……遠慮無く来い。頼まれたことは引き受けよう」
 そこに間髪を入れず西院鬼・織久が斬り込んでいく。
 彼もまた雅と同じく"その時"を待っていた者だった。
「漸く最後の一兎を狩れるか」
 ここに至るまでの努力がついに報われる時が来たのだ。その心には歓びが満ちていた。
「では、これはどうだろうか?」
 その言葉と共に騎士の放ったユーベルコードは、彼の武器を無数に複製し複雑な幾何学模様を描き飛翔する。頭上に展開されたそれら全てが、猟兵たちに狙いを定める――その瞬間に、織久は即座に自身のユーベルコードを発動させていた。
 呼び出した黒い影を放ち織久を狙う剣に命中させて、次々と爆破し攻撃をかいくぐっていく。
 影面だけで落とし切れなかった剣を、大鎌を振るい薙ぎ払う。
 複製されたそれらは未だ頭上にある。その軌道は複雑で読み切ることは難しい――が、織久はその驚異的な第六感を働かせ次々と躱して、あるいは薙ぎ払ってみせる。狙いを定めるまでは剣は複雑な模様を描いてはいるが、定めた後は別だ。最短距離で一直線に飛んで来る。幾度か相手にし、それさえ把握できれば別に難しいことではないのだ。
「その一兎が死に至る牙を持つのであれば尚の事」
 床を強く蹴り騎士との間合を一気に詰める。
 伸びた黒い影が騎士の回避行動を妨げ、そこに大鎌を渾身の力で振るう。
「我等が怨念の飢えを慰めるに足る死合いとなろう」
 傷口をえぐるように大鎌を引くが、武器が纏う怨念の炎は確実にその身を焼いていく。

『とても怖い』
 ハルア・ガーラントの胸中を占めるのはその気持ちだった。
(わたしは戦う者としての多くの経験や戦闘センスがある訳ではないから)
 鋼と鋼のぶつかる音、飛ぶ火花、散る赤い花。
 眼前で繰り広げられる戦いはどれも激しく、その最中に踏み入るにはとても勇気が必要だった。
(――けどやらなきゃ)
 あの騎士は骸の海へ還してくれとハルアたちに願ったのだ。
 何らかの手段でこの場を離れ再び彷徨うことも、命乞いすることだって出来ただろう。けれどそのどれをも選ばず、ただ海への帰還を望む。
 ハルアは一瞬目を瞑りそっと忍ばせた小瓶に手を伸ばした。触れた指先から温もりが伝い、それが希望の光となるのだ。
 だから彼の申し出を了承した。
「……それがあなたの望みなら」
 まっすぐに騎士を直視する。
 最初に見た時よりずいぶん傷ついている、けれど、誇り高い騎士の姿を。
 彼を骸の海へと還すのは自分の役目だと。

 剣戟を第六感と視力を活用して躱す中、ハルアはその背に騎士の視線を感じた。
 彼女の白き翼は補助なくして飛翔することが可能なのだ。最初の戦いでそれを活用しハルピュイアを打ち倒したことは記憶に新しい。彼にもあの飛翔する剣があるとはいえ、空中戦となればハルアに優位に働く。
 おそらくは、騎士もそれを記憶していて警戒されているのだろう。
 それは雅のユーベルコード【咎力封じ】も同じだった。すこしずつ騎士の攻撃を削いでいくが決定打には至らない。
 ハルアの飛翔能力も雅のその戦術も先の戦いで見られている。もたらす効果を騎士は知っていて、当然対抗策がとられているのだ。
 だがふたりともそれを承知していた。
(それなら敢えてこの戦法で……!)
 ハルアがそれならばと咎人の鎖を操る。
 走り出した騎士が振り下ろす剣を、オーラの障壁を纏った鎖が受け止める。格子状に編み込まれた鎖が芯となって渾身の一撃を耐えてみせる。
 その隙を逃さず斬り込むのが雅だった。その手には刀、刑部少掾龍宗があった。その動きは居合に近く、間合いを一瞬で詰めて瞬く間に抜刀する。
 対策がとられているのならば、騎士が知らぬ技を使えば良いのだ。
「そうだ。正義の話だがな」
 斬り結び鍔迫り合いまで持ち込みながら、雅はそうきりだした。
 先の領主戦、騎士が零していた会話の続きである。
「そう言うのは私のような無学浅識よりも学者に聞け。私には、己の己たる全てが己の正義、としか言えんのでな」
「それは猟兵らしい回答だね」
 笑って騎士は鍔迫り合いを解消し、言葉を躱す前に距離を取ろうとする。そうはさせまいと織久の持つ糸『夜砥』が騎士の腕を絡め取り、間髪をいれず追撃が叩き込まれた。
 そこにハルアの誘導弾が放たれるのだ。鎧で覆われていない場所を撃ち抜かれ、弾に込められた麻痺の力が騎士の体を捕らえる。
 そこに喉元に突きつけられる雅の刀。
 騎士の手から剣がはじかれ、織久の大鎌がその腹を穿つ。
 それが決定打となった。
 

 最後の一撃を受けて、騎士・エバイルは膝をついた。
 その手を離れた白銀の剣は、床を滑って遠くに落ちて。
 その様子を視線で追って思わず笑い出した。
「ああ、私の負けだ!」
 オブリビオンになった身とはいえ武人でもある、敗北の悔しさはたしかにある。けれどそれ以上に心は晴れやかだった。
「ここまで清々しい気持ちになれるとは……無茶な願いを叶えてくれてありがとう」
 荒い息を整えながら、エバイルは最初にしたように猟兵たちひとりひとりの顔を見回す。
 残された時間が僅かなことを実感する。手には力は入らず、もう剣を振るえそうになかった。視界もずいぶんと霞んで見えて、種族も性別も多様な猟兵たちの浮かべる表情を見ることができなかった。けれどそのどれもに感謝を込める。
「最期に君たちに会えてよかった」
「十万億土の長途だ、心して逝け――白鎧の騎士よ、良い途を」
 猟兵のひとりがそう言葉をかけた。
 せめて安らかにと、祈りを込めた歌声が彼の耳に届く。
 歌声はそこにエバイルが望む幻影を生み出した――見知った顔を目にして、
「今いく」
 と、それだけを言い残した。


 こうして、狂気に囚われた同族殺しの物語は終わりを迎えたのだった。
 猟兵たちの目の前で、同族殺しは最期の言葉と共にさらさらとその姿を灰へ変え、骸の海へと還っていった。

 この戦いがもたらした結果として領主は討たれ、街ひとつが解放されたのだ。
 猟兵たちが領主の館を出る頃にはその噂が広まったのか、敗北を悟ったオブリビオンの姿は消え、戸惑いの表情を浮かべ、あるいは歓声を上げる住民たちの姿を目にするだろう。
 やがて猟兵たちも帰還する時が来る。猟兵たちをグリモアの光が包み込み、それぞれの帰る場所へと転送を始めるのだ。
 闇に沈んだ世界に新しい朝がやって来る。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月25日
宿敵 『闘将『ノエル』』 を撃破!


挿絵イラスト