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ここ掘れない? 地下道塞ぐ番狼!

#ダークセイヴァー #辺境伯の紋章 #番犬の紋章 #地底都市

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●番犬の紋章
 追い掛け、追い詰め、仕留める。
 かつてそういう獣であった彼は、今、巌のごとく不動の様を見せていた。
 彼の腹の下には扉がある。固く閉ざされて久しく開いたことのない、分厚い鋼鉄の円扉。
 下から開ける気概のある者はない。上から開けようとする者もまあほとんどいないが、仮にいた場合、その時に初めて彼が動いて、必ず始末する。
 そのために彼がいる。それが今の彼である。
 瞑目して寝そべりつつ彼は、来るとも知れぬ敵を待つ。
 首の裏に刻まれた、犬の頭と首輪を模した意匠の痣が、妖しげな真紅の光を放った。

●いざ、地底都市へ
「もう話を聞いたって人も多いと思うけど、ダークセイヴァーに広大な地下空間と、それを利用した都市が存在することがわかった」
 その地下都市とやらの地図らしきものが映った大型モニターの前に、大宝寺・朱毘(スウィートロッカー・f02172)は立っていた。
 規模を見るに、都市というよりは村と称した方が正しそうではあるが、ともかくここに住む人々を解放するというのが今回の目的となる。ちなみに、解放された人々の受け入れ先として人類砦の一つが手を挙げており、すでに話はついているのだとか。
「ただ、人類砦でも生活に余裕があるわけでもないから、当座の食料を自前で用意できるなら嬉しいって言ってたんだよな。んで、近場にシカやらイノシシやらの生息地があるから、そこで……って、それはコトが済んでからの話だな」
 咳払いを一つして、話題を改める。
「まず、第一にして最大の関門が、門番だ」
 地下へ通じる道は大きなマンホールめいた扉で塞がっているが、これを守っているのが『番犬の紋章』によって強化された一体のオブリビオンだという。
 番犬の紋章とは、最近ちまたで話題になっている『辺境伯の紋章』と同じく、寄生型オブリビオンの一種である。これによって強化されたオブリビオンは、あらゆる攻撃に対する高い耐性を持つようになり、剣で斬ろうが魔術で焼こうがビクともしない。
 それでは攻略のしようがないという話になりそうだが、実は一つ攻略法がある。紋章の刻まれた部位は弱点となっており、そこへの攻撃はよく通るのである。
「こいつの場合、紋章は首の裏にある。まあまあの大きさの痣が赤く光ってるから、見たらすぐわかるはずだ」
 ペチリと自らの首裏をはたいて、朱毘は言った。
「ただまあ、動きは速えし、近接、遠距離、広範囲と攻撃手段に隙はねーしで……まあ何つーか、マルチに戦える難敵だ。真っ正面からつっかかってピンポイントで攻撃を当てるってのはちと難しいから、何かしらの工夫は必要だと思う」
 他に都市へと至る道がないので、難敵だからといってこれとの戦いを避ける術もない。是が非でも撃破し、押し通らねばならない。
 そして押し通った先で待つのは、ぼんやり光る苔で壁面を覆われた地下洞窟と、そこを切り拓いて造られた村じみた都市。出会えるのは、家畜よろしく隷属を余儀なくされた人々と、それを監視、監督する集団オブリビオンの群れだ。
 これら集団オブリビオンは特別な強化は施されてはいないため、数こそ多いが、先の門番オブリビオンに比べればくみしやすい相手だろう、とのこと。
「んで、一つ頭に入れておいて欲しいのが、その戦いを都市の人たちが見てるってこと。絶対服従が当たり前っていう価値観が植え付けられてんのを、皆の戦いっぷりでブッ壊してもらいてえ。つーわけで、ここはなるべく――ド派手に頼む」
 朱毘は勝ち気そうに目を光らせながら、拳を宙に向かって空打ちした。


大神登良
 オープニングをご覧いただき、ありがとうございます。大神登良(おおかみとら)です。

 第一章は、地下都市へつながる門を守るボスオブリビオンとの戦闘です。『番犬の紋章』によって超強化されており、この部位以外への攻撃は物理、魔術ともにほとんどダメージが通りませんので注意してください(多少の足止め程度の効果はあるものとします)
 紋章は首の裏にあり、視認は容易です。

 第二章は、集団オブリビオンとの戦闘です。第一章とは異なり、特殊な強化は施されていません。ただ、ここでの活躍振りによって現地の人々へ勇気を与えることができ、見栄えや格好良さを意識した立ち回りをすると第三章で有利になります。
 戦場は日光の射さない地下都市ですが、一面に光る苔があるので、戦闘に支障の出るような暗さではありません。

 第三章は、日常パートになります。食料を確保するためシカやイノシシなどを狩猟しますが、強敵でも何でもないので、特に凝ったことをしなくても狩れるものと考えてください。また、地下で生活していた人々と交流を行い、元気づけたりすることもできます。
 このパートに限り大宝寺・朱毘を呼んで手伝わせることができますが、呼ばなくても手が足りないとか何か不都合が起きるということはありません。

 それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『魔狼『ハティ』』

POW   :    魔狼の咆哮
【全てを威圧するような咆哮 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    全てを仕留める牙
【鋭い牙 】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【血の味と習性】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ   :    全てを射殺す魔眼
【赤く光る目 】から【赤い光線】を放ち、【プレッシャー】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は真宮・奏です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●孤狼、醒める
 絶えて久しかった気配を感じ、頭をもたげる。
 それは敵対者の気配であり、戦いの気配であった。
 だからといって、彼に高揚感はない。無謀な者たちへの嘲弄や憐憫もない。冷厳なる使命感――とも、やはり違う。およそ感情と呼べるような心の動きというものなぞ、ない。
 ノブを捻られたドアが開くように、紙上を走ったペンが文字を刻むように、ただひたすらに当たり前の現象として、それは起きる。
 何であれ、近付く者を殺す。それが彼という装置の作用である。いや、正確には彼に寄生する『番犬の紋章』の。
 首裏の紋章が光り、双眸が煌めき、牙が輝き、爪が照る。
 そうして魔狼『ハティ』の無機質な凶猛は、敵対者――猟兵たちに向けられた。
霄・花雫
【しゃるはなうら】

シャルちゃんに手伝ってって言って貰えたんだもん、頑張っちゃう!

さ、狼さん
あたしをよぉく見て、ね?

UCと【誘惑、挑発、パフォーマンス、ダンス】で惹き付け、【浮遊、念動力】で空で踊るよ
だーいじょぶ、【空中戦、見切り、野生の勘、逃げ足】も得意
空はあたしの舞台なんだから!
感情がなくたって、追い掛け回したくなる強烈な衝動を叩き込めたらそれで良い
捕まえられそうで捕まらない位置で行ったり来たり、時々振り付けの一環みたいに紋章を狙ったり、出来る限り後衛から意識を逸らすよ

あは、狼さんったら熱烈
でもね、何か忘れてなぁい?
アウラちゃん、捕縛してくれるの待ってたよー!
よっし、シャルちゃんやっちゃえ!


アウレリア・ウィスタリア
【しゃるはなうら】
今回はシャルロットの手伝いです
花雫が敵の気を引いてこちらに誘導してくれれば……

【血色結界】を発動
シャルロットが狙いをつけて敵を貫く
その時間さえ稼げれば問題ない

血糸の網で敵を捕らえて
編み込んだ血糸でより強く捕縛する
とはいえ、血糸の結界も引き裂かれるのは時間の問題
だからシャルロットの一撃にかけましょう

花雫、殿はボクが引き受けます
血糸の匂いでシャルロットの位置もわかりにくくなっているはず
人語を理解するとは思いませんが……
シャルロットの存在は悟られないよう
その瞬間までひたすらに血糸を重ねて動きを阻害しましょう

そしてシャルロットの一撃と同時に離脱すれば
ミッション終了です


シャルロット・クリスティア
【しゃるはなうら】
ああなっているとはいえ獣、流石に鼻は利くでしょう。
風下、それも相当の距離に陣取らないと気付かれますね。見えはしても、あの機動力に狙撃するのは骨が折れる……。

直接戦闘はお二人に任せます。一瞬でいい、花雫さんに気を取られ、アウラねえさんが動きを止めてくれさえすれば、致命傷は私が入れる。
距離があろうと、私の眼が捉えている、止まっている相手なら十分にピンホールは狙えます!

獣というより、ゴーレムや魔導兵器のようですね……動きに感情が乗っていない。
あの紋章がそうさせているのか……いえ、考察は後に。
まずは……殺る。
お二人に危険な役目を押し付けたんです。応えられなきゃ狙撃手失格ですね……!



●アットピンホール
 元が有能な猟犬――というか猟狼であるからには、魔狼『ハティ』は鼻も利くだろう。
 そう考えた狙撃手シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)は、可能な限り距離を長く開けた風下に陣取った。
 距離はあれ、鷹のごときシャルロットの目は番犬の紋章を捕捉して見逃さない。
 とはいえ、速い。
 大柄でありながら、白狼の俊敏さは迅雷さながらである。雑に胴の真ん中にでも当てるだけならともかくとして、紋章をピンポイントに撃ち抜くとなると話が変わる。弾丸に弾丸を当てろと注文されているようなものだ。
 呼吸一つ分、いや、せめて半分でも動きが止まれば……とまあ、そんな状況になるのは想定済みだったが。
(信じます……!)
 シャルロットの目の焦点はハティを捕捉したままながら、視界の端には霄・花雫(霄を凌ぐ花・f00523)とアウレリア・ウィスタリア(憂愛ラピス・ラズリ・f00068)がちらちらと映り込む。
 そんな花雫の眼前に、鋭く跳躍したハティの牙が迫った。
「あは、狼さんったら熱烈!」
 その牙をワルツめいた空中転身で回避し、花雫は挑発的に笑った。
 単純に最大速度でいえば、ハティの方が花雫を圧倒的に上回っている。しかし、飛翔能力がないハティと空を泳げる熱帯魚たる花雫を比べると、空中機動の巧みさという点では花雫の方に長があった。一撃でも与えられれば大ダメージ必至ながら、直線的な跳躍からのハティの爪、牙は、花雫を紙一重で捉え損ねている。
 それに苛立ちを感じるような『機能』を、番犬の紋章に操られるハティは持ち合わせていない。ただ感情を度外視した合理的判断として、現在の戦法を繰り返していても無意味だと理解はできる。
 飛び跳ねるのをやめ、地を這い回るようにしつつじろりと花雫を見据える。
 様子の変わったハティに花雫は一瞬だけ戸惑ったが、ハティの目をシャルロットから逸らせたい彼女からすれば、己に注意が向くのは願ったり叶ったりであった。
「さ、あたしをよぉく見て、ね?」
 季節外れの薄紅色の花弁が、涼風に乗って花雫の周囲に吹雪く。風に誘われるように右へ左へと花雫がゆらゆらと舞い、その都度にハーフムーンの尾びれめいた月白の長髪が艶やかに翻る。
 紋章によって感情の起伏を失った魔狼さえ虜にならざるを得ないほどの、【桜花のまなざし(ブルーム・ブロッサム)】の蠱惑ぶり――と、思いきや。
「――っ!?」
 ハティの眼光が真紅の輝きを見せた途端、花雫の全身がくまなく糊でもまぶされたように固まった。それまで自在に空を飛べていたのが一転して糸が切れたように落下し、強張った体ゆえにまともな受け身も取れず、乾いた地面と激突する。
 その視線を一身に集めれば、【全てを射殺す魔眼】に刺されやすくなるのは必然といえた。
 身動きの取れなくなった花雫に向かい、ハティが牙を剥く。
 ――同時、花雫はほくそ笑む。
「何か、忘れてなぁい?」
 ハティが踏み込んだ刹那、その体重を支えるべき地面が足下から消える。
 正しくは、地面の代わりに鮮紅色の巨大な網が出現した。ハティが花雫にかまけている数呼吸の間にアウレリアが練り上げ、研ぎ澄ませていた魔力によって生成した、血糸の網である。
 十重、二十重に編まれたそれが、踏み出されたハティの足を瞬時に包むように捉えた。
「殿軍はボクです。楽に突破できると思わないで」
 冴え冴えとしたアウレリアの言葉が、ハティの耳に届く。
 人語を理解するわけではない。足を囚われたことに焦るような『機能』もない。
 ただ、血糸の性質を「断てば切れる」と看破し、即座に逆足の爪を縦横に奔らせる。あるいはガチガチと顎を振るい、牙をもって噛み千切る。
 爪も牙も、鋭く速い。
 だが、その程度のことをしてのける手合いだというのは、アウレリアとて百も承知である。だからこその練りに練った魔力であり、幾重も形成した【血色結界(ブラッド・ブラッド)】である。
 ハティの爪牙の速度を血糸の物量が上回る。足といわず胴といわず首といわず、絡み付き、巻き付き、縛り上げ、締め上げる。
 並のオブリビオンならば、次の瞬間には血糸に断たれてバラバラになるところだ。が、ハティの膂力と番犬の紋章による頑強さが、それを許さない。
 白毛の奥にある超絶の筋肉が、みぢり、と膨張する。その圧に押し負け、真紅の網はあっという間に千切れ、破られていく。
 拘束できたのは、せいぜい三呼吸か四呼吸ほどだろうか。
 それは、シャルロットへプレゼントする時間的猶予としては、お釣りが来るほどの充分さだった。
(お二人に危険を冒させて、応えられないような狙撃手でなんか――!)
 蒼穹のごとき青色の瞳は、冷厳なる威容を誇る銃の筒先は、ずっと赤く光る紋章を捕捉していた。 それが静止した機をすかさず、狙撃手の指は淀みなく絞られた。
 同時、単射に設定されたマギテック・マシンガンから吐き出された紫電の弾丸が、音を置き去りにして一直線を描く。
 ハティの首裏には、犬の頭と首輪を模した意匠の痣が赤く妖しく光っている。魔弾は、その犬頭の眉間を貫いた。
 ハティの目から光が消える。鋭く休みなく何かしら動き回っていた体も、止まる。
 ――が、それは一弾指の間。
 出来の良い電化製品が再起動したかのように、ハティの双眸が再び光った。
「む!?」
 その様にいち早く気付いたアウレリアが、再び血色結界を繰り出して押し包む。
 が、今度はハティを止められるほどの物量が即座には生み出せない――ことに加えて、血糸の味を覚えられたせいで、わずかながらアウレリアの癖を見切られているのかもしれない。神速で振るわれた爪によって、血の包囲網の薄いところに一瞬にして穴を開けられる。
 本来の速度を取り戻したハティが躍り掛かってくるのを、花雫とアウレリアは素速く後方に跳んで回避する。
「直撃したよね!?」
「ええ、間違いなく。しかし、一発では仕留めさせてくれなかったようですね」
 それにしても、普通はもう少し怯むなり何なりするだろうに。
 黒猫の仮面の奥で、アウレリアは渋面を作る。
 それらの様を見るシャルロットは、歯がみしながらマギテック・マシンガンを連射式へと切り替えた。
(あの鈍さ、あの動き……獣らしさはない。まるでゴーレムか何か、魔導兵器のような……いや、今は考察している場合じゃない)
 まずは、殺らなければならない。
 シャルロットは二人を援護するべく盛大に銃弾の嵐を生み出しつつ、暴風のぶつかり合いのごとき激戦へと移行した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

天星・暁音
相手は強敵ってことだね
まあ、俺がやるのは皆の援護、支援、回復だけど…
幾らでも治してあげるけど気をつけてね
弱点を狙うのは大変だろうし、無理する事必要だろうけど無理のしどころはちゃんと見極めるようにね
それにしても…殺戮のための装置か…哀れではあるよね
まあ、相手が何であれ全力は尽くすだけだけど…





回復を最優先に考えながら、銃撃や銀糸、近づいてくるならシュテルシアを刀や槍等に変えて迎撃しつつ味方が弱点を狙いやすいように怯ませるなどして援護しますが基本は何時でも回復に入れるように少し距離は離れた位置で支援を心掛けます

共闘アドリブ歓迎
スキルUCアイテムご自由に。


七那原・望
文字通りの番犬ということですか。

【果実変性・ウィッシーズアリス】を発動。【多重詠唱】【全力魔法】の幻覚で敵の認識を狂わせましょう。

相手の嗅覚も脅威ですね。わたしとしても正直キツいですけど、香りの強いもの、かつ不快な臭いではない物をプレストで周囲一体にばら撒いて、封じてしまいましょう。

背中の翼で【空中戦】。ねこさん達はプレストに乗せます。
【第六感】と【野生の勘】で敵の行動を【見切り】、回避しつつ隙を伺います。

戦闘を続けていればいずれは隙を見せるはず。
その一瞬を狙い【魔力を溜めて】おき、ねこさん達との【多重詠唱】【全力魔法】【一斉発射】【スナイパー】【クイックドロウ】で首の裏を狙い撃ちましょう。



●ハイプレッシャー
「プレスト!」
 七那原・望(封印されし果実・f04836)の号令と同時、騎士鎧のグローブじみた一対の機械が空を舞う。
 さらに機械の手に握られた大きな瓶から、無差別に液体が振りまかれた。
「――?」
 飛び散る飛沫を避けるように、魔狼『ハティ』が跳びすさる。
 毒か何かとでも思ったのかもしれない。が、それはただの香水だった。甘酸っぱい柑橘系の香りが、周囲一帯に充満する。
 望自身も思わず口元を押さえてしまうほどの強烈な香気だが、それでも匂いの性質的にはマシな選択をしたという自負はある。
 一般に犬の嗅覚は人間の数千倍から一億倍にも至るといわれ、犬の祖とされる狼も同様である。それは彼らにとっては狩りにおける有用な武器の一つである。それを無効化できれば、こちらに有利になるはずだと考えたのだった。
「――……」
 ハティに動揺は見られない。実際に妨害として取るに足りないからなのか、番犬の紋章の影響で動揺する『機能』が損なわれているせいなのかは、判然としないが。
 何にせよ、乾いた地を蹴ったハティは濃密な香気を斬り裂きつつ突進し、噛み付きに掛かる。
 その牙が届く寸前、望は背中の白翼をはためかせて飛び上がった。さらに同時。
「わたしは望む……ウィッシーズアリス!」
 弾けるように解放された魔力に応じ、白、黒、茶トラ、そしてチェシャの四匹の猫が出現する。それらは、望の両脇に控えるように飛来したプレストの手の平の上に着地した。
 鋼の手の上から魔狼を睨む八の目が、一斉に金色の輝きを放つ。途端、ハティの周囲の空気が歪む。
 空間歪曲による攻撃魔術――ではなく、何やらそれらしく見えるだけの幻覚魔術に過ぎない。それでも、一瞬ならずハティが望たちの姿を見失うには、充分な効果があった。
 その隙にハティの頭上を越えて背後に回り込み、首裏の紋章に穿奏・ヴィヴァーチェの照準を合わせる。
 が、望がその引き金を引くより先にハティが咆哮を張り上げた。
 ただの声ではない。十数キロのダイナマイトが一度に爆発したような轟音と同時、超常の圧力がハティを中心に膨張する。
「ッ――!?」
 暴圧を真正面から受けた望は木の葉のように吹き飛ばされた。
 幻惑の中にあるハティが望の動きを見切れたわけではない。むしろ逆で、見失ったからこそ、何を狙う必要がない無差別範囲攻撃を放ったのである。
 指向性のない攻撃ゆえに、致命的な威力までは持たない。それでも、一瞬で飛行する余裕を奪われる程度のダメージはある。吹き飛んだ先で鋭角に地面に激突した望は、摺るように転がった。
「う……!」
「望さん!」
 身を持ち上げんとする望に、耳慣れた声が届く。さらに。
「妙なる光よ! 命の新星を持ちて、祝福の抱擁を!」
 綾糸で編まれたような銀光のカーテンが望の全身を包み込む。そして呼吸半分かそれにも満たぬ間に、咆哮によって受けたダメージも、地面を転がされて付いた擦り傷も、綺麗さっぱりと消え失せた。
 頭を巡らせた望は、黄金の杖を構える天星・暁音(貫く想い・f02508)の姿を認めると、淡く笑みを浮かべた。
「暁音さん、助かりました!」
「回復は得意だから」
 照れたように笑みを返しつつ、暁音は言った。
「でも気を付けて。あいつ、本当に強敵……無理のしどころを見誤ったら、俺でも間に合わないかも」
「ええ」
 望は立ち上がり、歩兵銃を構え直す。
「もう一度仕掛けます。援護を」
「うん!」
 暁音は杖を背中に背負い、代わりに金と黒の二丁拳銃を抜いて制圧射撃を見舞った。
 未だ幻惑の中にあるハティはその弾幕を回避できず、全身に直撃を喰らう。紋章にヒットしないうちはノーダメージながら、わずらわしいとでも言うかのように再び咆哮を放った。
 途端に荒れ狂う暴威の轟音。暁音の弾丸とて魔力によって超常の力を得た強力な代物に違いないのだが、それらをものともせずに弾き、押し返す。
「く……!」
 今度は大きく山を描く軌道で飛んでその衝撃波をやり過ごそうとした望であったが、圧の及ぶ範囲は思った以上に広い。
 全身をくまなく叩く圧力に、またもや飛ばされ――ようと思われた、刹那。
「傷付いた翼に再び力を!」
 暁音の【神聖なる祈りの抱擁(ディヴァイン・プリエール・エンブレイス)】の光が、再び望を包む。
 痛めつけられるより、聖光が翼を癒やす速さの方が上回る。
 暴威を押し返すように白翼が羽ばたき、轟音の圧の隙間に望の体をねじ込ませるように、進ませる。
「今……!」
 ハティの首裏に照準を合わせ、マガジン一杯にため込んだ魔力を弾丸にして撃ち放つ。
 白銀の超速が狙い過たず紋章を撃ち抜いた刹那、無感情だった魔狼は初めて大きく苦悶の悲鳴を上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

藤崎・美雪
【WIZ】
アドリブ、他猟兵との連携大歓迎
宿縁主様は自分の店(旅団)の常連

店で憤っているのはなぜかと思っていたが、こういうことか
タチの悪い番犬になっているようだから、ここで退散いただくぞ

とはいえ、私は戦闘力ゼロの支援・回復専門要員
できることは歌う事と、もふもふさん(小動物)を召喚することくらいでな
今回は【もふもふさんたちの励まし】で小動物を召喚
傷を負った者をしっかり励ましてもらって、怪我の治療と戦闘力の増強を図ろうか(鼓舞、元気)

しかし本当に隙がない魔狼だな
赤い光線はなんとか「見切り」で避けてみるが
威圧されて動けないのが一番まずい
皆を励ますような歌を歌い続けよう(パフォーマンス、歌唱)


真宮・響
【真宮家】で参加

ああ、間違いない。この狼だ。コイツが夫を殺した。手負いで戦えなかったアタシと5歳の奏を庇いながら戦わざるを得なかった夫の律を容赦なく殺した。

律の無念、アタシと奏の悲しみ。なおも悲しみを齎す元となってるなら。ここで討ち果たす。

前面の抑えは子供達に任せる。アタシは首の裏の紋章に確実に攻撃を当てれるように、【忍び足】【目立たない】で敵の背後を取る。上手く背後を取れたら、【残像】【見切り】で敵の攻撃を回避、【怪力】【串刺し】で敵の紋章に向かって槍を突き刺し、【炎の拳】で追撃で紋章に正拳を入れる。

嘗てコイツにより律は無念の死を強いられた。あなた、今、仇を討つよ!!


真宮・奏
【真宮家】で参加

・・・お父さんの逞しい背中を見ると安心したものです。

そのお父さんが目の前にいる魔狼の手によって血まみれで倒れた姿は今でも忘れる事が出来ません。お父さんの無念、今こそ晴らします。

私はお母さんと瞬兄さんが攻撃を上手く当てられるようにフォローを。トリニティ・エンハンスで防御力を上げ、【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】で敵の攻撃を引き受けます。後方支援の瞬兄さんに攻撃がいくなら【かばう】。攻撃は考えませんが、必要なら【衝撃波】で牽制を。

もう、救える命は奪わせはしません!!仇たる魔狼を越えた先にいる苦しむ命の為に!!お父さんに護って貰ったこの身で、護ってみせます!!


神城・瞬
【真宮家】で参加

真宮のお父さん。母さんと奏を愛し、身を挺して護った、僕に取って憧れであり手本である人。

目の前の白き魔狼が彼の人を殺し、母さんと奏の心に消えない傷を残した。なら、家族として、狼を討つ。

僕はまず敵の動きを止める事に専念。【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】を仕込んだ【結界術】を【高速詠唱】で敵に向かって展開。ダメージが通らなくても、敵の動きを縛る事は出来るはず。

母さんの攻撃が敵の首の裏の紋章に当ったら、【月白の棘】で追撃。敵の攻撃は【オーラ防御】【第六感】で凌ぐ。

かつてこの魔狼は母さんと奏と律お父さんという家族の悲劇を齎した。これ以上悲劇が齎されないように、ここで討つ!!



●真宮家
 もしもあの時、手負いでなかったなら。
 もしもあの時、ただ守られるだけの存在でなかったなら。
 もしもその時、戦士としてその場に立てる存在であれたなら。
 そんな『もしも』を思った回数は、数え切れない。
 そんな『もしも』を何度思ったところで過去は変わりはしないのもわかっているが、それでも繰り返してしまう。
 真宮家の家族、その誰もが心底に抱える悲しみは――今日、この時に。

「間違いない。この狼だ」
 前に立つ巨躯の白狼を睨み据える真宮・響(赫灼の炎・f00434)が、底冷えするような声を絞り出す。
 響の脇に立つ真宮・奏(絢爛の星・f03210)もまた、眉間に深い険を刻んでいる。
「お父さんを倒した、狼……」
 魔狼『ハティ』――響の夫であり奏の父である真宮・律を葬った、仇敵。
 奏にとっては幼少のころの出来事ではあったが、記憶はある。たくましい父の背中も、それが血の海に倒れて二度と動かなくなったことも、奏は鮮明に覚えていた……というより、忘れることなどできなかった。
 そして、姓は違えど奏と兄妹同然に育った神城・瞬(清光の月・f06558)も、悲しみの感情を二人と共にしている。
 平生の瞬は、何かと突っ走りがちな響や奏をたしなめたりなだめすかしたりする役割を担う。
 だが、今この時ばかりは違う。彼にとっても律は恩人であり、尊敬する戦士である。その仇を眼前にしては、感情が先鋭化するのはどうしても避けられない。
 そんな三者を一歩後ろから見つめるのは、彼らの行きつけの喫茶店店長たる藤崎・美雪(癒しの歌を奏でる歌姫・f06504)だった。
(そりゃあ、荒れるわけだ)
 普段と比べて明らかに様子のおかしな常連客たちを心配していた美雪だが、まあ事情を把握してしまえば「さもありなん」という感想しか出てこない。
 熱くなりすぎるなとか落ち着けとか、戦巧者を気取るがごときアドバイスしたところで無意味、あるいは逆効果だろう。
 ならば――いっそのこと、彼らの背中を押す。
「もふもふさん、存分に励ましてあげてくれ」
 さえずるような呼び声が、美雪の喉から紡がれる。
 同時、地面をボコボコと突き破って数十匹ものプレーリードッグが現れた。
「あら――」
「うわっ」
 真宮家の面々の元にプレーリードッグが駆け寄り、さらに足から駆け上がって彼らの肩やら頭の上やらにわちゃわちゃと陣取っていく。
 不思議と重さは感じない――どころか、かえって力が満ちていった。もふもふゆえの癒やし効果というだけでは説明のできない、暖かさと力強さだった。
「これは……」
「私のユーベルコードで生んだ、もふもふさんたちだ。ちょっとやそっとの怪我なら治療できるし、魔力のリソースにもなってくれるはずだ。私自身は直接戦闘じゃ役に立てないから、これくらいのことしかできないけど……」
「とんでもない。ありがたいよ」
 申し訳なさげに言う美雪に対し、響は微笑しつつ首を横に振った。
 そして子供たちの方に向き直り、言った。
「行くよ」
「うん」
「ええ」
 うなずくや、奏と瞬が前面に立ち、響をかばうように構える。
 仇討ちの激情に駆られていながら、それは整頓された隊伍だった。いや、むしろ敵が仇だったからこそそうだった、というべきか。直情に任せて吶喊すれば勝てるような容易な相手であれば、そもそも真宮・律が後れを取るなどあり得ない。彼を殺せるほどの強敵が相手であるからこそ、油断も隙もなく戦わねばならない。
 沸騰する感情の中であってもそう判断し、そう行動できる程度には、真宮家の人々は戦士であった。
 その三戦士を前にハティは、まずはいっぺんに吹き飛ばすのが上策と断じたのだろう、【魔狼の咆哮】を放った。
「――っ!」
 轟然たる音の鉄壁が迫り来る様は、幾重もの亀裂を刻みゆく乾いた地面によって知れる。
 それと認めた奏が【トリニティ・エンハンス】で強度と範囲とを超強化したオーラの盾を身に纏いつつ、一歩前に踏み出す。
 鉄壁と鉄壁がぶつかり合い、炸裂した衝撃が周囲にまき散らされる。
「あ……ぐっ!」
 強化したオーラの盾をもってしても、重圧を殺しきれるほどハティの咆哮は甘くない。凶悪を極めた圧力によって奏の腕は軋み、胸は潰れ、呼吸は止まり、意識は鈍化する。
 が、それでもなお奏は押し負けず、踏みとどまる。
 彼女自身の気概が、それから彼女に必死にしがみついて魔力供給を行うプレーリードッグたちが、それを可能にした。
 咆哮が過ぎ去ったのは、数瞬か、数秒か――その暴威にさらされていた側からすれば永遠に似た間にも思えたが、しかし終わりは来た。
 その刹那に、瞬と響が飛び出す。
「ここで討つ!」
 先に動いたのは瞬。金鎖の巻き付いた黒杖を掲げつつ、編み上げた術式に魔力を流し込む。
 同時に空間に出現した黄金色の投網じみた結界が、ハティ捕らえに掛かる。
 ハティはそれの動きと範囲を見切り、鋭く横っ跳びにして回避する――しっかりと、目でもって『見切り』つつ。
 それは瞬の読みの内だった。
(今だっ!)
 術式に仕込んだ仕掛けを発動する。と、金の網は自ら千々に砕け散ると同時に強烈な光を放った。
「――!?」
 烈光をもろに受けたハティの両眼は視力を失った。
 瞑目し、頭を振る――紋章によって機械的な動きばかりになっていた魔狼にしては珍しい、生物的な所作。
 その所作の間に、響は練達の足捌きをもってハティの真後ろに回り込んでいた。その手には、彼女の激情を反映するかのように赤々と燃えるブレイズランスが握られている。
「あなた――」
 涙声にも似た気勢が響の喉から滑り出る。
「今、仇を討つよ!」
 妖光をたたえる番犬の紋章目がけ、轟なる炎の刺突が放たれる。
 ――寸前、頭を巡らせたハティが顎を開いて牙を閃かせた。
 そして刹那、ブレイズランスの切っ先はハティの牙に噛み合わされ、止まる。
「ッ!?」
「な――!」
 完璧だったはずの、必殺必中だったはずの一撃が防がれ、猟兵らが驚愕する。
 ――独り、響を除き。
(それくらいしてのけるだろうさ――アタシの夫を殺せた貴様なら!)
 ランスを握るは右手一本。雲耀、体の陰にあった響の左拳が繰り出された。
 その拳は、ランスが纏っていたよりもなお苛烈なる猛炎に包まれている。
「っ――ッ!」
 今度こそ、首を巡らせる間も胴を捻る間もない。
 響の全身全霊をこめた【炎の拳】の一撃が番犬の紋章を撃ち抜き、抉り穿ち、焼き貫く。
 その一点を中心に、神槌が大地を叩いたような轟音と爆圧が広がった。その音に混じって、ハティの絶叫が響く。
 それは魔狼の咆哮にあらず、ただの悲鳴だった。紋章を砕かれ、番犬という『装置』から『獣』に戻ったオブリビオンの、最期の絶叫だった。
 叫びつつ身を震わせ、背に乗る響を振り落とす。が、それ以上の何かができる余力などないのは、誰の目にも明らかだった。
「――もう、お前には」
 ハティの眼前に瞬が歩み寄り、杖の先を向ける。
「さらなる悲劇を生み出せない。ここで、討たれるからだ」
 杖の先から放たれた月白色の魔力弾が、無敵の力を失ったハティの胴に炸裂する。
 途端、ハティの体内を【月白の棘】が食い破り、蹂躙する。
 その断に至ってようやく断末魔の絶叫が消え、魔狼の体は灰の塊のようになって、ひび割れた地面を埋めるように崩れ去る。
 そして瞬き二つか三つの後には、その灰さえもこの世から消えた。

 悲しみは、今日この時に終わりを迎えるのかといえば――否、だろう。
 仇討ちを果たしたとて、真宮・律の死がなかったことになるわけではないからだ。
 つまり、彼を愛した記憶がある限り、その悲しみは消えようがない。
 ならば、仇討ちに意味はないのかといえば――それもまた、否、だろう。

「ちょっと驚いたんだけどさ」
 愛娘の頭にポンと手を置きつつ、響が言う。
「アンタがアタシらをかばって踏ん張った背中、律とダブって見えたわ」
「え」
 奏が目を見開く。
 父の背中とは、戦士の背中だ。たくましく頼もしい、家族を護り、家族以外の誰かをも護る者の背中。
 そんな父の背中と、自分の背中が重なった? 誰より父を知る母が、そう言った。
「いや、まだまだよ? まだまだだけど……それでも、強くなったんだなって。アンタも、それから瞬も」
「……うん」
 くしゃくしゃと母に頭をなでられた奏は、目から涙を溢れさせた。何の感情ゆえの涙か、自分でもわからないような涙だった。
「あー、と」
 そこへ、若干気まずそうな顔になった美雪が声を掛けてくる。
「その、水を差すようだが……やらなければいけないことが残っている。まだ、ゆっくりはしていられないぞ」
 言いつつ美雪が指差す先には、ハティが守っていた鋼鉄の円扉があった。
 ぽん、と、瞬が奏の肩に手を置いた。
「行こう」
「……うん!」
 涙をぬぐい、奏はうなずいた。

 悲劇から人を護る戦士になる。愛した人がそうであったように。
 誓いを胸に、真宮家の人々は歩を進める。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『泥の赤子』

POW   :    まんまー まんまー まんまー まんまー
【生物を捕食せんと自在に伸びる何本もの手】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    どーじょ どーじょ どーじょじょじょ
【腐食性の猛毒をまとった伸縮する手】による素早い一撃を放つ。また、【ばらばらに分裂する】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    ぱぱぱぱぱぱぱぱ ままままままままま
【体表に点在する口から吐いた瘴気を放つ汚泥】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を毒気を放つ汚染された泥地に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●塗炭の澱
 マンホールめいた鋼鉄の扉を開け、鉛直に延びる通路を降りること、数十分ほどか。
 何が機ということもなく出現した地下空間に、猟兵たちは立った。
 その空間は、天井を含めた壁一面が薄い光を放つ苔らしきものに覆われているため、地上と同様の明るさ――まあ、陽光なきダークセイヴァーを基準にしての話なので、そう大した光量でもないが――がある。
 さらに、石組みの家屋が連なり、ぱっと見た感じでは数百人から千人ほどの規模の村が形成されている。住人らしき人々は、予期せぬ闖入者をぼんやりと注目していた。彼らのことごとくは明らかに栄養の足りていない痩身で、目からは生気というものが感じられない。
 そして、どう見ても住『人』ではないモノたちもまた、猟兵たちに視線を送っている。
 それは、何体いるともつかない。単に数が多いからというだけでなく、どこからどこまでをもって一体と数えて良いのかわからないからだ。
 どす黒い飴細工に人間の目鼻口をでたらめに刻みつけたような、奇怪なオブリビオン。一つの巨塊のようでもあり、数千が重なって出来た代物のようでもあるそれが、村中の至る所で蠢きながら、一斉に猟兵たちを見ているのだ。
「あブ……うぁン……バッぱぶ……あば、あばばばばばばばばばばばば」
 喃語じみた、それでいて不快感を禁じ得ない叫声が上がる。
 それが死闘の始まりの号令だった。
七那原・望
奇妙なオブリビオンですね。いったいどういう経緯でこんな存在になってしまったのか……いえ、わたしが気にしても仕方のない事です。わたしの目的には何の関係もないのですから。

【癒竜の大聖炎】を発動し、それを自身やアマービレで召喚したねこさん達に纏わせ、【浄化】【オーラ防御】【結界術】も併用することで敵のユーベルコードを完全に受け止め、無効化しましょう。

ねこさん達と【多重詠唱】【全力魔法】【浄化】【属性攻撃】【誘導弾】【乱れ撃ち】で敵を【蹂躙】します。
ついでに効果があるかは微妙ですけど【浄化】の【魔力を溜めた】歌を【歌って】みましょうか。

もし今此処に在るのが苦しいなら、大人しくこれで逝っておきなさい。


藤崎・美雪
【WIZ】
アドリブ、他猟兵との連携歓迎

あー…こりゃまた奇怪なモノが
…いや、モノじゃないのはわかってるんだが
ここまで出鱈目に人体のパーツが混ざっている生物を「人」と形容するのは憚られてな
住人たちの精神衛生的にも大変よろしくないので早いところ倒してしまおう
余裕があれば「我々はあなた方を助けに来た」くらいは言いたいが

引き続きもふもふさんたちに励ましてもらおうか
「歌唱、鼓舞、優しさ」+【もふもふさんたちの励まし】で
前線に立つ皆の傷を癒し、戦闘力を増強してもらおう
汚泥はがんばって「見切り」でかわしてみるが
泥地に変えられた地面からはさっさと飛び退かないと危なすぎる
…ホントにこういう時は何もできぬ私よ



●イリー・ヴォイス
「ぱぱぱぱぱままままま」
 泥の赤子の群体が奇矯な声を張り上げる。
 それは、聞く者全てが嫌悪感を禁じ得ないであろう醜悪な声である。いや、単純に醜いとか邪悪だとかいう言葉で片付けることのできない、胸を潰されるような愁嘆や悲哀をはらんだ声だ。
「うぷ……」
 胸からこみ上げてきた酸味を、七那原・望(封印されし果実・f04836)は喉の下に押しとどめた。
 そして酸素を求めてあえぐのと同時、辺り一帯の空気がすでに瘴気に毒されていることを知覚する。いつの間にか、望の周りは泥の赤子が吐き捨てた汚泥に侵食されており、足の踏み場を見出すのも困難になっている。
 ユーベルコード由来の猛毒の沼地となった地面は、たとえ猟兵といえども楽に踏破できるものではない。自在に動けるのは、適性を持つ泥の赤子自身くらいのものだろう。
 だが、それより恐ろしいと望が思ってしまうのは、村人たちの様子だった。
(これほどの瘴気の中だというのに、この人たちは……)
 戦闘の気配にも、瘴気に満ちた空気にも、まるで動揺を見せない。度胸云々の問題ではなく、ただただ死んだような顔で呆然と突っ立っているだけ。
 およそ、人間のあるべき姿ではない。だが、環境を思えばそれはむしろ自然だろう。汚泥のオブリビオンによる管理と監視が、ここでは普遍のものであったのだから。
「ぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱ」
 望を包囲するように、泥の赤子が汚泥の沼を奔る。さらに。
「まままままままままま」
 望に向けられた数十もの口から、一斉に汚泥が吐き出された。
 跳んで回避するだけの地面の余裕は、ほとんどない――それでなくとも、毒気に当てられた望の肉体的パフォーマンスは十全でない。
 そんな彼女の足に、不意にこすられるような感触が伝わる。
 驚いてそちらに注意を向けると、そこにはキジトラ、三毛、ブチ……と様々な子猫たちがいた。
 ただの子猫ではない。それらが甘えるように体をこすりつけている箇所から、まるで血流に乗ったかのように望の全身にエネルギーが行き渡る。望に悪辣な酩酊感を与えていた瘴気の汚染が駆逐され、代わりとばかりに精錬された活力が脳に満たされていき、意識が爽快に冴え渡る。
「――癒竜の炎よ、邪悪を祓え!」
 突き刺すように望が声を張り上げるや、その全身が煌々たる白炎に包まれる。
 ヒカリゴケ由来の茫洋とした明かりしかなかった地下空間にあって、その【癒竜の大聖炎(ユリュウノダイセイエン)】の輝きは苛烈だった。望に降り注がんとしていた汚泥の弾幕は、そのことごとくが望の体に触れる寸前に白炎に呑まれ、瞬き一つ二つの間に炭を通り越して蒸発してしまった。
 さらに、地面を侵食していた汚泥も、望を中心に波紋が広がるがごとき挙動で灼き払われていった。
 清浄の力もつ聖炎をもってすれば瘴気に満ちた泥に打ち克つこと自体は別に不自然ではない――が、それでも常のそれを遥かに上回る威力を発揮した炎に、望は驚愕した。
 といって、原因はわかる。すねに体をこすりつけてくる子猫たちだ。
「これは……」
「どうやら、助けになれたかな」
 後頭部に纏めた黒髪をゆらゆらと揺らしながら、藤崎・美雪(癒しの歌を奏でる歌姫・f06504)が望の元へと歩み寄ってくる。
「ホント、直接戦闘の場では私自身は何もできない……が、せめて支援と治療くらいはね」
「いや、助かったです」
 猫たちは美雪の【もふもふさんたちの励まし】によって召喚されたものだった。触れた者の治療と戦闘力の底上げとを、同時に実現させる。瘴気に毒されたままで戦闘を続けていれば、実際危うかったかもしれない。
「に、しても……」
 自分たちを包囲する泥の赤子らに目を走らせ、美雪は表情を暗くする。
「奇怪なモノたちだな」
「ええ。どんな経緯でこんな存在になってしまったのか……」
 オブリビオン――骸の海から復活する、過去そのもの。
 怪物化に伴って元の姿を歪められる存在がほとんどではあるが、泥の赤子の所以となった『過去』が碌なものでないのは、まあ確かだろう。
 とはいえ、それがどんなものであれ猟兵たる彼女たちがすべきことに変わりはない。
「この子たち、もうしばらくお借りします」
「ええ、もちろん。もふもふさんたち、頼んだぞ」
 美雪の言葉の後半は、子猫たちへ向けたもの。猫たちは「にー!」と鳴くなり、望の体をわちゃわちゃとよじ登り、そういう鎧でございとでもいうように肩やら腕やら腹やらにへばりつく。
 傍目にはひどく邪魔くさい格好のようにも見えるが、しかしそれはいわば強力なエンジンとエネルギーゲインを盛られたようなものであって、むしろいつもよりも体が軽く感じるくらいのものだった。
「よし!」
 ごう、と猫アーマーを含んだ望の全身が白炎に包まれる。
 ふと美雪が視線を感じて横に目をやると、周囲にあった村人たちにわずかながら眼光が宿っているのに気付いた。
 それは、絶対の力の持ち主たるオブリビオンの監獄が焼き払われたことで、生まれてこの方見たこともなかった苛烈な輝きを前にしたことで生まれた光だ。希望の光と呼ばれるものだ。
 そのことに淡く微笑を浮かべつつ、美雪は彼らに向かって宣言する。
「長く待たせてすまない! 我々は、あなた方を助けに来た!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

天星・暁音
派手に…派手にねぇ…じゃあメテオ…冗談だよ冗談…
絨毯爆撃は…巻き込むかもしれないし…じゃあこっちにしようか…出きるだけ派手に目の前で合体変形させてドッカドッカと撃ち込むという事で…見た目は派手にだけど威力は多少調整しないとね…地下だし崩れでもしたら大惨事だからね
何も魔力はアンカーだけから集めるものじゃないからね
今回は分かりやすいように光の粒子にして集めるとしようかな
近づいてくるなら派手に立ち回りをしてみますか武器の扱いそこそこ得意なので接近戦もお任せだよ

出来るだけ人目を集める様な場所に陣取り派手な行動を心掛けドラマのも見せ場のような大立ち回りを意識します

共闘アドリブ歓迎
スキルUCアイテム自由に


真宮・響
【真宮家】で参加

(眉を顰め)この奇怪極まりない奴らと一緒にいたらそりゃ陰鬱だろう。アタシも長く正視したくないねえ。まあ、全力で一掃してやるかね。

さて、真紅の騎士団を発動して、いつもの隠密はやめて、正面から立ち向かおうか。【オーラ防御】【見切り】【残像】で敵の攻撃を捌きつつ、容赦無く【衝撃波】【範囲攻撃】でふっ飛ばす。爽快な程にどんどん吹き飛ばしていこうかね。真紅の騎士団と共に混沌を躊躇いも無く気持ちよいぐらいあっさり倒して行く。希望はここにある。人の力は、捨てたものじゃないんだよ。良く見てるんだ!!


真宮・奏
【真宮家】で参加

・・・怖いです。はい。こんなのと同居って住民の方がお気の毒で仕方ありません。住民の皆さんの為に。残らず駆除しましょう!!

何だか分裂したり触手伸ばしたり戦い方が小癪なので、【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】【毒耐性】で触手の被害を減らしながら、彗星の剣を【2回攻撃】で【範囲攻撃】化して、大量の剣で分裂した触手を纏めて薙ぎ払います。足りないなら【衝撃波】でふっ飛ばします。こういうモノは思いっきり片づけた方がいいです。余計な動きされる前に潰しますよ!!住民の皆さん、今片づけますから、待っててくださいね!!


神城・瞬
【真宮家】で参加

これだけ見ただけで潰したいと思うモノは珍しいですね。住民の皆さんはさぞ憂鬱でしょう。お任せください。すぐ跡形もなく駆除しますので。

月光の騎士を発動。移動距離を減らす代わりに装甲値を増強。その場に強く踏み止まり、【オーラ防御】【第六感】で敵の攻撃を凌いで、負けずに【衝撃波】で吹き飛ばします。更に【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】を仕込んだ【結界術】で敵の不利をつくり、【高速詠唱】【全力魔法】【多重詠唱】で必殺の【誘導弾】を放ちます。こんな奇怪なものに人々の生活が脅かされるのは許しません。強い意志を持って、この混沌を打ち破ってみせます!!



●駆逐
 たとえば、利剣の刃。猛炎の煌めき。牙持つ獣――それから、それこそ吸血鬼など。人の身には抗いがたい暴力を所以として、人に恐怖を与えるもの。
 恐るべき殺傷力を持つ泥の赤子も、このカテゴリの中に入るといえば入る。
 だが、それだけではない。
 たとえば、虫の湧いた腐肉のような、醜悪で奇怪なもの。たとえば、蜘蛛の巣に囚われた蝶のように、死そのものを想起させるようなもの。
 それ自体に人を害する力があるわけではないのに、どうしようもなく人に忌避感を与えるもの。そんな陰性の、得体の知れぬプレッシャーを、泥の赤子は恐ろしいほど大量に持っている。
 骸の海から現世への招かれざる客たるオブリビオンとしては、それもまたいかにも『らしい』特性ではあった。
「……怖いです」
 都市の中心部、公園めいた開けた場に立ちつつ、思わずといった様子で真宮・奏(絢爛の星・f03210)がつぶやく。
 年齢は若いが、奏とて決して少なくない戦場を経験し、幾体ものオブリビオンを葬ってきた歴戦の猟兵である。そんな彼女にとってさえ、瘴気を練り固めてこしらえたような汚泥の体を持ち、でたらめな耳目や手足を生やして蠢くモノを前にしては、平静ではいられない。
 そんな存在が常時側にいて、蠢き、監視し、支配してくる。
 ここにいる人々は、そういった暮らしをずっと強いられているわけだ。その陰鬱なることは、想像を絶する。
「これほど、早く叩き潰さなければと思える状況というモノも、珍しいですね」
 表情こそ平生のようなクールさを保つ神城・瞬(清光の月・f06558)ではあったが、その声色には怒りといおうか、邪悪に対する敵愾心のようなものがにじみ出ている。
「本当にねえ。アタシも正直、こんな奴らがいる所に長居したくないよ」
 比すれば、真宮・響(赫灼の炎・f00434)は感情的だった。眉間にしわを深く刻み、敵意の露わな刺々しい声を発する。
 元より、響の気性は豪放、直情。この類の事象を前にした場合、クレバーに平常心を保とうと図るよりは、燃えさかるような戦意をもって萎縮しかかる意識を塗り潰すタイプだった。
「全力で一掃してやろうかね――さあ、出番だよ!」
 ぱちん、と響が指を鳴らす。
 同時、彼女の周囲を取り囲むように、数十もの人影が出現する。そのことごとく、響の戦意をそのまま反映したかのような、炎めいた真紅の全身甲冑姿。前列は盾と長剣、後列は歩兵用長槍を持ち、それぞれ一糸の乱れもなく身構えている。
 なるべく派手に。見る人々に、希望を与えるような。
 グリモアベースで受けた注文に合わせて響が選択した、豪快な正面突破を期したユーベルコードによって生まれた騎士団だった。
「よく見てな!」
 響が声を張り上げる。公園の外縁部、遠巻きに戦場を眺める村人たちにもその声が届くように。
「人の力が、混沌を吹っ飛ばす様をさ!」
 響の大喝を号令として、【真紅の騎士団】は一個の巨大な紅蓮の奔流となって泥の赤子らに殺到した。
「どーじょ」
「どーじょ」
 その騎士団を迎撃するように、泥の赤子らが手を伸ばす。
 『手』といって、それらに胴や腕やらが行儀良い位置に行儀良い形で備わっているわけもなく、形状様々な触手の群れと呼んだ方が近い。ある手は真正面から斬り裂かれるのもいとわず剣を受け止め、ある手は鎧に絡み付き、またある手は盾と押し合う。
 そんな、超常の集団と人外の群体が激突は、空間そのものがひしゃげるような異様な力場を生んだ。鋼鉄の塊を引きちぎるような耳障りな音がそちこちで鳴り響き、拮抗が生じる。
 ただし、それはほんの数秒。
 その数秒に、硬直した泥の赤子の群体の間を、青白く細長い何かがトビウオの群れのように躍り回る。それらは、騎士団を押しとどめていた汚泥の触手を次々と斬り裂き、無力化していった。
 必然、拮抗が崩れて騎士団が押しまくる。
「どーじょ、どーじょ、ど――」
 どどどっ! と、泥の赤子の頭部(だろう、多分)に槍が突き立つ。
 さらに胴体に剣がめり込み、断ち斬り、叩き潰す。それが、幾重も、幾重も重なって汚泥を押しのけていく。
「てやぁっ!」
 騎士団に混じっていた奏が一足で最前列まで躍り出て、青白い刀身を持つ長剣を横一文字に振るう。同時、トビウオの群れ――ではなく、【彗星の剣】によって複製されたブレイズソードの群れも再び乱舞した。大張り切りのルーレット針めいたスピンの軌道に巻き込まれた泥の赤子らは、防御のために掲げたであろう触手も甲斐なく、斬り刻まれていく。
 しかし、何がわかりにくいといって、泥の赤子の体の造り。ある程度分断されてもなお、一に見えていた二のものが二に戻っただけでございとでもいうように、平然と追加の触手を伸ばす個体がいくつもある。
「ひどく粘るのがいる……でも!」
 娘と併走するように突進していた響が、魔力の衝撃波を纏った拳を振り抜く。
 ギッ! と空気が軋んで絶叫する。拳の軌道上、破壊の暴風に呑まれた泥の赤子は一瞬にしてミンチ状になったかと思いきや、さらにザラリと砂のように崩れ、空気に溶けるように消え去った。骸の海に還った証である。
「不死身ってわけじゃないね。ある程度細かくすれば倒せるってわけだ!」
「だったら、何の問題もありません!」
 奏が吼え、縦横無尽の剣閃を生み出す。閃きの網の圏内にあった泥の赤子らは一弾指の間に微塵となり、やはり骸の海へと還された。

「派手に……派手に、か」
 天星・暁音(貫く想い・f02508)は思案した。
 派手にと注文されて真っ先に思い付くのは、広範囲の大規模破壊。だが、この場でたとえば魔力で作った流星群の絨毯爆撃などという真似をしたら、間違いなく村人たちを巻き込む。冗談でも許される思い付きではない。
 では、どうするか。
「よし」
 周囲にぱっと目を走らせ、手近にある内で最も背の高い建物に駆け上がる――何ともつかなかったが、恐らく給水塔か何かだろう。
 その頂上、周囲一帯の村人から見えるであろうその場所で、暁音はエトワール&ノワールを頭上に掲げた。
「魔力、充填!」
 ことさらに大音声を張り上げ、二丁拳銃を合体させる。機械的な轟音が断続的に響くなり、質量保存の法則もものかは、それは合体と同時に巨大なキャノンめいた形状になった。
 さらにそのキャノンのそちこちから、鎖につながれた船の錨のようなものが数本射出され、塔の下の地面まで伸びてどかどかと突き刺さる。
「固定完了! リミットカッ……っと」
 その段に至り、泥の赤子が塔を伝って這い寄ってくる。村人に見せつけるような目立つ動きをすれば、敵集団からも狙われやすくなるのは、まあ必然ではある。
(――まずい、か?)
 暁音がそう思った、その刹那。
「お任せください!」
 瞬が一直線に塔を駆け上がってくるのが見えた。そして、途上にある泥の赤子を黒杖を振るって発する魔力の衝撃波でもって蹴散らしながら、暁音の傍らまで至る。
「ありがたい……けど」
 暁音の頬を冷や汗が伝う。瞬の吶喊で包囲に穴が開いたといって、泥の赤子を殲滅できたわけではなく、危機的状況は継続中だ。
「まんまー、まんまー」
 薄気味悪い声が幾重にも重なる。先端に口の付いた触手が数十、いや数百にも及ぼうかという本数伸び、二人を押し潰しにかかる。
 並の者ならその光景を見ただけで失神してしかるべきだが、しかし瞬は身じろぎもしない。
「大丈夫です――世界を護る力を、僕に!」
 叫び、杖を掲げる。刹那、杖のヘッドがガシャリと甲高い音を立て、翼を広げた鳳凰のごとき形状に変わる。さらに同時、杖を中心にまばゆいオーラが球状に膨張し、満月を思わせる月白色の結界となった。
「まん、まん、まー……まー」
 泥の赤子から伸びる膨大な触手の群れは、しかし一本たりと瞬の張ったオーラの結界を破ることができず、その周囲をうろうろとむなしく蠢くのみである。
「今のうちです」
「よっし! 出力最大! 【栄光ある星のごとく輝く者(グローリーアストライアー)】ッ!!」
 暁音がトリガーを引く。
 同時、キャノンの砲口から金と黒の極彩をたたえる魔力の帯が、螺旋を描きつつ吐き出された。
 それは魔力の砲弾、というよりは奔流である。満月の結界を突き破るように伸びたそれは、無数の触手で成された壁に巨穴を穿つのみならず、余波をもってそのことごとくを灰燼に帰さしめる。
「く、うう――!」
 反動で空まで吹っ飛びそうになるのをぎりぎりでアンカーで支えられつつ、砲塔をぐるりと巡らせる。それに従って破滅の魔力の奔流は都市中にはびこっていた泥の赤子をなぞっていき、それらは消防車の放水を直撃された炎よろしく、奔流に呑まれた端から消し飛んだ。
 アンカーを通じて大地から、無数の光粒子という形で大気からチャージされていた魔力が尽きるまで、数十秒。
 その時間が経った後、塔の上から目が届くほとんどの地面から汚泥の影は消えていた。
「……あらかた駆除できましたか」
「うん。でも、まだあっちこっちに討ち漏らしがあるみたい」
 言われて瞬が眼下を確かめてみると、建物の陰などのそちこちに、未だ健在なものが蠢いているようだった。
「ふむ、この先は細かな作業になりますか。もう一踏ん張りですね」
 暁音と瞬がうなずき合う。
 そして、瞬がその場から誘導エネルギー弾の弾幕を張って援護するのを背にして、暁音は塔を駆け下りていった。

 それから泥の赤子が駆逐されきるまで、ざっと数十分ほど。その時間というものたるや、都市にあった人々にとって『衝撃』などという言葉では片付けられなかった。
 絶対上位、絶対不可壊のモノと信じて疑わなかった、生きる汚泥の監獄。未来永劫、世界が滅ぶその時まで人間という存在を縛り、圧し続けるに違いないと思い込んでいた、オブリビオンの群体。
 それらの全てが、跡形もない。彼ら自らが去ったわけでなく、彼らの主がそうと命じたわけでもなく、自分たちと同じ人間の姿形をした者たちによって、残らず駆逐されたのだ。
 それはまさしく正気を失うほどの――いや、生まれて初めて正気を『取り戻してしまう』ほどの、大激震をもたらす出来事だった。
 呆然とする人々の前に、へとへとに疲れつつも凛と背筋を伸ばした猟兵たちが歩み寄り、告げる。
 支配は終わった、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『猟兵の「猟」は狩猟の「猟」』

POW   :    獲物を仕留める

SPD   :    獲物を追跡する

WIZ   :    獲物を見つける

👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●手土産はお肉で
 汚泥によって成っていた牢獄は砕かれた。番狼が守っていた門も破られた。
 人々は猟兵たちに先導されるままに地下都市を脱し、天へ向かって延びていた通路を通って、地上へと出た。
 誰にとっても生まれて初めての、『地上』という世界。
 無論、だからといって夢のような世界が拡がっているわけでも何でもない。暗雲に包まれた空からこぼれ落ちる光は、地下で感じられたものと大差ない。作物が豊かに実っているわけでもない。何より――ここもまた吸血鬼に支配された世界であるという厳然たる事実がある。
 そんな環境の中で人間が人間として生きていける希少な場所が、人類砦である。
 地下から脱した人々は今後、そんな砦の一つに身を寄せることになる――が、その道行きの途上で一つ、狩猟を行ってある程度の量の食用肉を確保してほしい、という要望があったという。
 確かに、食料を初めとして、あらゆる物資はいつでもどこでも不足傾向にある。といって、村一つ分の増員を補填できるだけの肉が一度に調達されるなどというのは、砦の方でも期待はしていないだろう。意味合いとしての本命は、今後人間同士が助け合って暮らす上で必要な作業がどんなものか、体感させることにあるのだろう。
 猟兵たちも、その道行きにまでは同行することになっている。
 狩猟の対象といえば、オーソドックスなところで野生のシカやイノシシなど。単に手強さだけでいえば、オブリビオンに比すれば何ということもない。人々が明日を生き抜くための糧として、その命をありがたく頂くことにしよう。
七那原・望
今後の為の体験学習のようなものなのですよね。
それなら介入し過ぎず、なるべく彼らの力だけで達成させた方が良いですね。

【第六感】と【野生の勘】で獲物の位置を割り出し、みんなに教えましょう。

狩りが始まったら攻撃には参加せず、【癒竜の大聖炎】を少し離れた所に展開。

もし怪我人が出たらこちらへ運んでください!この炎に触れれば治療出来ます!

本当は炎を操作してこちらから治療しに行ったり、広域に発動し続けられる回復ユーベルコードもありますけど、怪我人の搬送とかも今後覚えるべきでしょうからね。
もちろん危険な状況になりそうならこちらから行動しますけど。

あと少しなのです!ファイトなのです!
みんなを【鼓舞】するのです。


真宮・響
【真宮家】で参加

そうだね、生きて行く為には食料は大切だ。野外生活が長いから狩りはお手の物だ。奏、瞬、行けるかい?

狩りの手は多い方がいい。炎の戦乙女に同行させる。奏、前面の抑えは任せた。瞬は獲物の拘束を頼むよ。子供達が抑えてくれてる間に確実に仕留める。

さあ、大量に採れたよ。豊かな食は人の心を支える。このままでは食べにくいだろうから血抜きはしとくか。燻製にする道具があればいい保存肉が出来る。ああ、慣れてるから全部任せたって構わない。これからの生活を楽にする為、幾らでも手を貸すよ。


真宮・奏
【真宮家】で参加

そうですね、これだけ多数の方が移住となりますと、食料の問題が出てきますよね。お任せください、狩りは慣れたものです。

蒼穹の騎士を発動、騎士と一緒に飛び出してきた敵を抑えにかかります。獲物が逃げようとしたら、前面の抑えを騎士に任せて、私が後ろを抑えるのもいいですね。砦の皆さんの重要なタンパク源、逃がさず仕留めます!!

このままでは食べれませんし、血抜きはしときましょう。燻製にする道具や塩漬けにする材料や保存用の樽があれば、仕込みも任せてください。はい、慣れてますので!!皆さんが新しき地で安心して暮らせるように、なんでもしますよ!!


神城・瞬
【真宮家】で参加

あ、一緒に狩りに行くんですね。ばっちりサポートしますので、付いてきてください。

住民の皆さんは僕達の後ろに。僕達家族が完全に獲物を拘束した所をしとめてください。【マヒ攻撃】【目潰し】を仕込んだ【範囲攻撃】化した結界術と裂帛の束縛で獲物を拘束。さあ、今の内に仕留めてください!!

宜しければ血抜きとか保存食の仕込みも一緒にしますか?人類砦で生活していくには必要ですし。ええ、人類砦の生活も楽ではありません。少しでも活力を持って新生活が出来るように。最大限の協力をしますよ。


天星・暁音
狩り…狩りかあ
手伝いたいのは山々だけど、ごめんね
そっちは皆に任せるよ
動けない人もいるだろうし俺はそっちの力になってあげたいから…
一応、この光には心を癒す力もあるからね
それに、もし怪我してる人がいたら治してあげたいから、見て回ってもおきたいし…
ああ、狩りについてく人もいるだろうけど狩りで怪我した人たちも直ぐに治すから、今だけは安心して行ってきていいよ
それでも何時も俺たちが居られる訳ではないから、なるべく怪我はしないように気を付けてね


怪我人がいないかを見て回りつついるようなら優先的に治療して、少しでも皆が心癒せるようにUCを使用、疲労しても笑顔は崩しません

スキルUCアイテムご自由に
アドリブ共闘歓迎


藤崎・美雪
アドリブ、他者絡み大歓迎

なるほど、人類砦側からの要望か
それなら応えねばならぬな

だが、彼らにとっては慣れぬ作業になるはずだ
野生の生き物を前に怯える者もいるかもしれん
慣れぬ動きに怪我をする者もいるだろうな
…そして困ったことがもうひとつ
戦闘能力皆無の私が狩りについていってもお荷物なのだよ

というわけで【もふもふさんたちの救護活動】
召喚したもふもふさんの群れの半数を狩りに向かう者たちに同行させ
応援と怪我の治療を担当させよう

もふもふさんの残り半分は私と共に残ろう
もふもふさんには狩りについていかなかった者の相手をさせ、心身のケアをさせる
私は美味しいハーブティーを振る舞うよ
もちろん、狩りから戻った者にもな



●人が生きるための
「狩り……狩りかあ」
「人類砦からの要望らしいが……」
 天星・暁音(貫く想い・f02508)がうなるようにつぶやくと、藤崎・美雪(癒しの歌を奏でる歌姫・f06504)は難しげな表情を作った。
「彼らにとっては、慣れない作業だろうな」
 言いつつ、脇に目をやる。
 猟兵たちに守られつつ、人々は森の合間の道を歩いている。オブリビオンに支配された地下都市から脱出できて後の道行きゆえに、それは希望に満ちた力強いもの――かと思いきや、そうでもない。大半の者は、恐らく事の推移に頭が追いついていないのだろう、ゆらゆらと地に着いているやらいないやらわからないような足運びであった。
 どう見ても、これから「さあシカを狩ろうイノシシを狩ろう」と言われて張り切れるようなコンディションではない。それを除外して考えても、都市の中で半ば『飼われる』生活をしていた彼らにとっては、狩猟によって糧を得るという行為それ自体が馴染みのないものだろう。
「野生の獣に怯える者や……怪我をする者も出るかもしれん。困ったものだ」
「それは、そうかもしれませんが……」
 七那原・望(封印されし果実・f04836)が言う。
「これは彼らの体験学習のようなものでもあるのでしょう。慣れていないからこそ、慣れるための機会が必要ということで」
「……まあ、確かに」
 暁音の淡い嘆息が、宙に浮かんで消える。
 人類砦に行けば、直接的には吸血鬼の圧政から解放された生活を送れる。
 とはいえ、ダークセイヴァーという世界が持つ過酷さと完全に無縁でいられるのかといえば、そうではない。災害めいて周囲を跋扈するオブリビオンという脅威は健在だし、日照の都合で動植物の生育は芳しいとはいえない。
 そんな環境の中では食料を手に入れる機会自体が限られており、生きるためにはそれを確実にモノにする必要がある。むしろ、自立ぶりやしたたかさという面では、これまで以上のものが求められるといえる。この先「食料調達なんて慣れてません」は通用しないのだ。
「でも、狩りなんて誰にでもやらせるようになるってものじゃなくない?」
「そうかもしれんな。できそうな者にやらせるにしても、最初から全部やらせるというのは無理がある」
 暁音と美雪が言うと、望もうなずいた。
「ええ。ですから、わたしたちで手助けはするけど、介入は最低限という形にすれば――」
「なるほど。では、最低限というのはどの程度か――」
「じゃあ――」
 角突き合わせて、三人は相談を始めた。

●奪命
 地下都市の人々は、いわゆる狩猟用といえるような武器を持っていなかった。薪割り用の手斧だとか、草刈り鎌だとか、辛うじて使えなくはないといったものはあるが、これで野生動物を仕留めようと思えば、ある程度人間を辞めなければなるまい。
 猟兵たちは思案したものの、その辺の木の枝や石を拾って槍や弓を組み立てたところで今ある道具よりマシなものになるとは思えないため、猟兵たちが持つ武器を貸し与えることにした。重量がありすぎるものや魔導書の類など扱いが極端に困難なものは別として、槍や剣といったごく普通のものならば問題あるまい、と結論を出したのである。
 そして、人々の中から若い男性を中心に体力に余裕のある者を選抜し、彼らに武器を持たせて使い方をレクチャーした。といって、立ち回りができるほどの技術が即席で身に付くわけがないので、体重をしっかり掛けて突き出す、といった程度の本当に簡単な動作を教えるくらいのものだったが。
(……それにしても、覇気ってもんに乏しいな)
 自分が貸した槍を持ちつつおどおどと森中を進む青年を眺めやりつつ、真宮・響(赫灼の炎・f00434)は胸中でぼやく。
 まあ、彼らがこれまで暮らしてきた環境を思えば、そんなような様子になるのも無理はないとは思う。
 閉鎖空間での絶対的な監視と支配にさらされていたことによって、ある種の奴隷根性が身に染みついている。そこから降って湧いたように自決権を得られたところで、喜びよりは戸惑いの方が強いだろう。その上、どことも知れぬ土地で自力をもって生活を成り立たせなければならないと言われれば、その不安はいかばかりか。
(まあ、慣れてもらうしかないわけだけど)
 人類がオブリビオンに搾取されるだけの存在から脱するためには、誰もがいつかは通らなければならない道である。
 猟兵たる自分たちにできるのは、その道行きをほんの少し手助けすることだけ。
「――いました」
 先行していた望が声を掛けてくる。流石猟兵といおうか、深窓令嬢じみた見目にそぐわず野生的な勘働きに長じた望は、率先して獲物の探索を行っていた。
 どこだい、と尋ね返すまでもなく、響は木立の向こうにシカの姿を認めることができた。
 枝分かれした見事な角を備えていることから、牡ジカであると知れる。一匹だけはぐれているものでなく、牡ジカばかりの四、五匹ほどの群れだった。
 暫時、迷う。
 食い扶持が食い扶持である。肉は多い方がいい。しかし、危険度はどうだろう? 複数匹の牡ジカを相手取るというのは、狩猟初心者の村人たちにとっては荷が勝ちすぎてはいないだろうか。どうにか一匹だけをおびき出すなり何なりして……いや、猟兵の手もあるならば、そう恐れるべきでもないか。
「奏、瞬、行けるかい?」
 響が脇に目をやれば、真宮・奏(絢爛の星・f03210)も神城・瞬(清光の月・f06558)も、いかにも準備万端といった風情であった。
「任せて」
「ばっちりです」
 この分なら大丈夫そうか、と響は判断した。野外で活動する機会の多かった【真宮家】の面々は、狩りにも熟達している。しっかりサポートすれば、牡ジカの五匹やそこらに後れを取りはしないだろうし、欲張ったせいで一匹も仕留められないということも起きまい。
「よし……それじゃ、手はず通りだ。行くよ!」
 言うが早いか、響は手にしていた魔法石をバキンと握りつぶした。
 同時、響のかたわらに真紅の鎧を纏った人影が出現する。顔の半ばまでを覆う兜を被っているが、口元の艶めき、それから体のラインが、その人影が女性であることを示している。
 さらに同時。
「共に行きましょう! 力を貸してください!」
 奏の側には青色の全身甲冑を纏い、雲のごとき白色の馬にまたがった騎士が現れる。
 不意に出現した脅威にシカの群れが反応し、ピンと首を立ててこちらを向いた。
 しかしそのタイミングには、すでに【炎の戦乙女(ホノオノヴァルキリー)】と【蒼穹の騎士】は神速にて駆けていた。シカたちががそれと気付いた時には、戦乙女は右、騎士は左から挟撃する形になっている。
 シカらが危機を察する。が、反射的に逃げようとした方向にすでに脅威が回り込んでいたため、動きが一瞬硬直する。
 さらに。
「動きを縛ります!」
 瞬の掲げた杖の先に、魔力の溜まりが生じる。それは瞬時に可視の緑色の塊となり、さらに刹那の後に弾けるように膨張するや、無数の蔓となってシカたちに伸びる。
 シカたちが別の方向に踵を返すより、蔓がその足や胴体に絡み付いて動きを奪う方が早い。
 ピィ! 甲高い悲鳴を上げつつ、シカらがもがく。が、ただの野生動物の膂力よりも、超常のユーベルコードたる【裂帛の束縛】による拘束力の方が上だった。
 元の予定では、この時点で戦乙女や騎士がとどめを刺すつもりでいた。実際、その方が確実だし安全である。
 が、今回はそうしないという風に取り決めをしてあった。
「完全に拘束しました。皆さん、今です!」
 瞬が、同行していた人々に向かって声を張り上げる。
 人々は目を白黒させていた。まあ、これは狩猟に慣れている、いないの問題ではなくして、真宮家の水際立った手早さに、猟兵ならざる者たちの思考が追いついていないというだけの話だ。
 と、まごついているところに、さらに望からも鼓舞の声が飛ぶ。
「みんな、ファイトなのです!」
 望は両手で握り拳を作って、縦にぶんぶんと振った。
「もし怪我をしても、わたしの炎で必ず治療します! 大丈夫です!」
「――……」
 その言葉を疑う者はなかった。地下都市での戦いで、望の【癒竜の大聖炎(ユリュウノダイセイエン)】がどれほど優れた癒やしの力を発揮したかは、その場の誰もが目の当たりにしていたのだから。
「……っ!」
 槍を握り直した青年が、意を決して前に出る。
 そして、数秒ほどシカを見据えてからゴクンと生唾を呑み込み、そしてレクチャーされた通りに槍を突き出した。
 その踏み込みはお世辞にも鋭いとはいえず、その刺突はお世辞にも力強いとはいえなかった。
 それでも、括った腹が生んだ覚悟の重さと、響の渡した槍の鋭利さが、シカの胸を貫いた。
「――――!」
 篠笛の鋭く鳴るような、一際甲高い断末魔の声がシカの喉から出る。
 四肢から力が抜け、その身から命の抜けたシカは、その場にどさりと崩れ落ちた。
「――……」
 青年は、呆然とそのシカを見つめていた。自らの意志でもって何かの命を奪った経験は、恐らく生まれて初めてのこと。その、生々しく肉を貫いた感触というものは、良きにつけ悪しきにつけ、他の何かにたとえられるものではない。
「お見事、です」
 青年の背中に、望がそっと手を当てた。
 青年は弾かれたように身を震わせて、望の方を振り向いた。その双眸は、何かすがるような気配を訴えかけている。
 望は、無言でこくりとうなずいた。青年の行いを、是であると示すように。奪命の業。生きとし生けるもののことごとくが決して避けて通れぬそれを、肯定するように。
「さあ、他の皆も続くんだ!」
「仕留め終えたら、血抜きと保存食の仕込みもしましょう。我々でサポートします」
 響や瞬に呼び掛けられ、促され、他の人々も武器を振るって牡ジカたちの命を奪っていく。
 その後、真宮家の指導の下、仕留めたシカの血抜きや洗浄、解体、さらに塩漬けや燻製といった保存食の作り方を学んでいった。
「いいですか、ここはこうして――」
「樽を使って、保存用の――」
「そう、上手だよ――」
 やってみせて、やらせてみせて。
 そうやって得られた肉と、知識、経験は、彼らの新天地での生活に必ず役立つことだろう。

●人が活きるための
 もふもふとした白い毛並みのウサギが、座り込んでいる女の子の膝に乗った。そのまま、具体的に何をするということもなく、じっと女の子を見つめる。
 女の子は、そんなウサギを見つめ返した。しばらくそうしていたかと思ったら、やがておずおずと手を伸ばし、ウサギの頭をなでる。
 すると、ウサギは気持ちよさげに目を閉じて、女の子の手に顔をこすりつけるような仕草をする。
 それを見た女の子は、虚ろに固まっていた顔に笑みを復活させた。
(……よかった)
 その様を見守っていた美雪は、ほっと吐息を一つもらした。
 それから、湯気を立てるアウトドア用マグカップを持って、暁音の元へと行く。
 暁音は、赤ん坊を抱いた中年女性の手を握って、何やら祈るような姿勢でいるところだった。その全身は淡く銀色に発光しており、さらにその光は女性と赤ん坊にも伝播して、一緒に優しく包み込んでいた。
 そんな様が数秒ほど続いたかと見えたら、気持ち表情の明るくなった女性はぺこりと暁音に頭を下げた。
 そして暁音が笑顔で手を振りつつ女性の元を去ったところで、美雪は暁音にマグカップを差し出した。
「一息つきたまえ」
「え」
 きょとんと目を丸くして、暁音は美雪とカップとを見比べるようにする。
「えっと……いや、俺はまだ全然、平気だから――」
「村の人たち相手ならともかく、猟兵にまで強がる必要はあるまい?」
 声を潜めつつ言うと、暁音は「うっ」と口をへの字に曲げた。
 美雪と暁音がいるのは、狩猟ができない人々が待機している簡易野営地である。二人はそこで、怪我人や病人などのケアをするべく歩き回っていた。無論、医療用の物資が十全に備わっているなどということはないのだが、そこはそれ、二人にはユーベルコードという便利なツールがある。
 ただ、ユーベルコードの力は超常ではあっても、万能では決してない。たとえば暁音の【神聖なる祈りの抱擁(ディヴァイン・プリエール・エンブレイス)】は心身を癒やす強力な効能を発揮するが、その強さに比例して暁音の体力、精神力を奪う。
 それでも人々に不安を与えないため、暁音は疲労を押し隠して笑顔を絶やさずにいた。だが、同じ猟兵たる美雪の目からは、暁音がかなり無理をしているのは明らかだった。
 もちろん、美雪としてもある程度は暁音の意思を尊重したいところではあるが、彼が限界を超えて倒れるなどという事態は避けたかった。それは暁音のためでもあるし、彼の様を心の支えとしている人々のためでもある。
「どんな感じだったい?」
「うん……これっていう怪我や病気よりは、栄養の不足とか、純粋に気力が弱っているっていう人が多い気がする」
 暁音はそう言ってから、マグカップに口を付けた。疲労回復効果のあるハーブティーの湯気が、馥郁たる香りを伴って鼻をくすぐってくる。
「そうか……」
 それはある程度予想通りだったともいえるし、また予想よりはかなりマシな状況だったともいえる。
 地上のそれよりも濃密なオブリビオンの支配にさらされ、精神状態や栄養状態が充実している道理はない。それでも、身動きをするに致命的なレベルの患者が見当たらなかったのは、僥倖に違いなかった。
「手に入るのがどの程度かわかんないけど……狩りに行った人たちが戻ってきたら、少しお肉を都合してもらって、みんなに食べさせたいな」
「いい案だと思う」
 暁音の言葉に、美雪はうなずいた。
 単純に効果だけでいえば、癒やしの力はユーベルコードの方が上であるはずなのだが、それでも『食べ物を口から摂取する』という行為には、それでなくては得られない癒やしの力というか、満足感のようなものがある。この後も続く道行きなり、彼らの健やかさなりのためには、『肉を食べて元気になる』という手順は必須に違いないと思えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シャルロット・クリスティア
【しゃるはなうら】
さてさて、皆さんのほうは……無事に終わったようですね。何よりです。
そうですね、食い扶持が増えるのであれば、食料の確保は必須でしょうし……一狩り、行くとしましょうか。
お任せください、こちとら猟師の娘ですよ。

じゃ、花雫さんが獣を誘い込んでくれるのならこちらは撃つだけですね。
オブリビオンを狙うよりは余程楽な仕事です。極力肉を傷つけないように、一撃で仕留めないとですね。

ふふ、大量ですね。絶滅してもらっても困りますし、このくらいにしておきましょうか。
ねえさん、すみませんが、運搬と血抜き、手伝ってもらえませんか?
腐らせると勿体ないですからね、早いとこ処理しちゃいましょう。


霄・花雫
【しゃるはなうら】

狩りかー、やったコトないけどシャルちゃん居るからだいじょーぶっ
ダークセイヴァー組がふたり居る時点で手馴れ感すごい……

んん、あたしどうしよっかなー
……あ、そーだ
【誘惑、挑発】を【全力魔法】にして獣ホイホイしよう
さ、みーんな出ておいで
あたしのトコに逢いに来て
突っ込まれても【野生の勘、見切り】で避けられるから安心してー
何なら【念動力】で空中に足場作って【空中戦】で走り回って緊急回避も出来るし
みんなのためにいっぱい狩らなきゃね!
干し肉とかジャーキーにしちゃえば保存期間伸びるし

……わぁお
アウラちゃんめっちゃ解体する気満々だね……?
流石に解体の手伝いは……ぅー……ちょっとこわい……


アウレリア・ウィスタリア
【しゃるはなうら】
シャルロットが狩る
花雫が集める
なら、ボクは獲物を運んで食べやすく解体しましょう

シャルロット、風下はこちらで良いですか?
この数をボクだけ運ぶのは難しいので狼を呼びたいのですが、
彼が出てくると獲物はみんな逃げてしまうでしょうから

シャルロットの狩った獲物を魔狼と共に運び
医術知識をいかして血糸で吊るして血抜き、
鞭剣で皮を剥ぎ、解体をしていきましょう

花雫は解体は苦手ですか?
簡単ですよ、こんなの
(以前の話ですけど、自分が解体されかけたこともありましたし。と心の声)
コツを覚えればすぐです

さぁ、はやく届けましょう
干し肉にするにも、ここでやるより砦で皆さんといっしょにやった方がはやいですから



●素人にはお勧めできない
 葉っぱがあるところ草食動物り。そして、草食動物があるところ肉食動物あり。
 要するに、シカやイノシシを求めて森の中を行く場合、遭遇するのは草食獣ばかりとは限らないということだ。
 猟師の娘たるシャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)は、木肌に刻まれた爪の痕をためつすがめつ観察した。それから、その周辺にこすりつけられたような焦げ茶色の獣毛があるのも、確認した。
 彼女は確信を持って答えを出した。
「ヒグマですね」
「あらまあ」
 危機感があるようでないような声を、アウレリア・ウィスタリア(憂愛ラピス・ラズリ・f00068)は上げた。
「数とか大きさとか、わかります?」
「そうですね。恐らくですが、親クマ一頭に、独り立ち寸前くらいの若クマが二頭。大きさは……親クマは二メートルを少し超えたくらいでしょうか。若クマは、それより一、二回り小さいくらいだと思います」
「三……」
 ヒグマといえば肉食寄りの雑食で、頂点捕食者の一角である。少々の刃物などものともしない頑強な毛皮と筋肉の鎧を持ち、体力、運動力にも優れる。人間など平手打ち一発で首を吹っ飛ばされるだろう。
 そんな猛獣の縄張りに、どうやら足を踏み入れたらしい――といって、まあ、人間の埒外である猟兵にしてみれば、だから何だということもない相手ではあるのだが。
 問題は、人々から選抜した狩猟初心者が太刀打ちできる獲物ではなかろうということである。積極的に狩りに行くのはもちろん論外として、たまたま遭遇してしまった場合であっても厳しい。常に猟兵がサポートしているからとはいっても、草食動物を相手にするのと比して危険の度合いが段違いであるのは事実だ。
 それに加えて、非戦闘員を大勢連れての道行きという現状である。これもまた猟兵たちが護衛しているのだから間違いなどそうそう起きはしないだろうが、囲っている人数が人数であるからして、目の行き届かない部分はどうしてもある。
 ここは念には念を入れて、猟兵だけのチームで対処するとしよう。
 そんな風に話がまとまり、【しゃるはなうら】でヒグマ狩りを行うことになった。

●釣られヒグマ
「いた」
「え、どこどこ?」
「あそこです」
 シャルロットの指差す先を霄・花雫(霄を凌ぐ花・f00523)が見ると、木立の向こうに三頭のヒグマが動いているのが見えた。それぞれ柿の木に寄りかかるように立ち、もっしゃもっしゃと実を食べている。
 それと認めてしまえば、その直前まで判別できていなかったのが不思議に思えるほどの巨躯である。が、毛皮の色が周囲の光景に溶け込んでいるため、意外に見つけにくいのだった。
 その辺りを見定める眼力については、狩りに不慣れな花雫とバリバリの猟師たるシャルロットとで差が生じるのは、致し方のないところだろう。
 だがまあ、視認できてしまえば。
「じゃ、お願いします」
「うん」
 花雫がしゃなりと腕と身を震わせるや、錦のごとき桜色の花弁の奔流が生まれる。魔性の風がヒグマらの元へ吹き、それら千万の花弁を運んだ。【桜花のまなざし(ブルーム・ブロッサム)】にあてられたヒグマたちは、それまで夢中だった柿の実のことを忘れ、花雫の魔力に惑い、誘われる。
 そうして、酔っ払ったような足取りのヒグマらは、三頭いっぺんに花雫らのいる方に向かってきた。
 当たり前の感覚でいえば、正気の沙汰ではない。不意討ちを期すでもなく、猟師一人目がけて三頭のヒグマを誘引させるなどというのは。
 だがその猟師にしてみれば、その方が楽だし手間いらずなのだ。一発撃つ都度にどこへやら散り散りになる可能性があるよりは、へべれけにして行動を読みやすくしつつ、かつウィークポイントである頭部が容易に狙える角度を保ってくれるという、この状況の方が。
「オブリビオンに比べれば――」
 猟師――シャルロットは力みもなくマギテック・マシンガンを構えた。
「楽なもんです」
 淀みなく三発の銃声が鳴る。精密に吐き出された弾丸はそれぞれヒグマらの眉間を完璧に捉え、奪命の破壊をもたらした。ただし、その破壊は肉を無闇に傷付けない最小限のものだったが。
「場合によってはボクも助太刀を、とか思っていましたけど……不要でしたね」
 脳のみを撃ち抜かれて地面に倒れ伏すヒグマたちを見やり、アウレリアが猫面の向こうの目を丸くする。
「ふふ、代わりと言ってはなんですけど、解体と運搬を手伝ってくれますか?」
「心得ました」
 うなずくや、アウレリアは血糸を繰り出し、張り巡らせる。その細さで何故と思えるような超常の強度を発揮したそれは、周辺の木々に引っ掛かりつつ三頭のヒグマを縛り上げ、逆さに吊した。
 アウレリアはさらに鞭状の剣を振るって、血抜きの作業に取りかかった。
「わぁお……アウラちゃん、めっちゃ手慣れ感すごいね……」
「そうですか? まあ、コツさえ覚えれば簡単なものですよ、こんなの。ボクなんか、以前に自分が――」
 と、余計なスプラッタ味の情報を口にしようとして、アウレリアは呑み込んだ。花雫の表情から、解体作業の類に若干の恐怖を覚えているのが知れたからだ。
「……そうだ。これだけの肉をボクらだけで運ぶのはちょっと難しいですから、フローズヴィトニルを呼びたいのですが、構いませんか?」
「フローズヴィトニル……アウラねえさんの狼ですよね。いい案だと思います」
 短剣を振るって血抜きの作業をしつつシャルロットが言う。
「そうだね、お肉、いっぱい! みんな喜ぶかな?」
 ぱっと顔を明るくして、花雫がはしゃぐ。
「ええ、もちろんですとも」
「早く処理して、持って行かないとですね」

 命から命へ。
 彼女たちの得た糧は、必ず人々の力になるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月29日
宿敵 『魔狼『ハティ』』 を撃破!


挿絵イラスト