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偽りの聖句が満ちる世界に光明を

#ダークセイヴァー #辺境伯の紋章 #番犬の紋章 #地底都市

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#地底都市


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●ダークセイヴァー某所・地底都市
 ――聖なるかな。
 ――聖なるかな。
 ――聖なるかな。

 厳かに流れる聖句が満ちる聖堂に「お勤め」のために集められた市民たちの前に立つのは、銀の髪を肩口で切り揃え、漆黒のドレスを纏った女性の吸血鬼と、メイド服姿の金髪の従者。
 吸血鬼と従者を見つめる市民たちの表情は、一様に恍惚としていた。
「さあ、ウルカ様に新たな血を捧げる、聖なる儀式の時間です」
 市民たちに見守られる中、従者の合図と共に「ウルカ」と呼ばれた吸血鬼の前に引き出されたのは、不安げな表情を浮かべる若い女性。
「喜びなさい。あなたもわたくしの贄になるのですから」
 ウルカは若い女性にゆっくりと抱きつくと、首筋に牙を立て、血を啜り始めた。
「――――!!」
 一瞬、若い女性は大きく目を見開き全身をこわばらせるが、ウルカが喉を鳴らし血を啜るにつれ、表情から不安が消え、全身の力が抜けてゆく。
 やがて、ウルカが口を離すと、若い女性は二、三歩下がりその場に傅いた。
「ああ……ウルカ様、ありがとうございます」
 ウルカに傅く若い女性の表情は、いつしか恍惚に満ちたものへと変貌していた。

 ふと、顔をあげたウルカの視線の先にあるのは、市民たちが決して気づくことのない、地上への通路。
 彼女の首筋に張り付く三つ首の番犬の紋章が、何らかの警告を発するように疼いていた。
「あなた達、わたくしに替わって血を集めておきなさい」
 ウルカは従者に命じ、その場を立ち去る。
 後に残された従者は、心地よい声で市民たちに呼びかけた。
「さああなた達。ウルカ様のために今日も血を捧げるのです」
「はい」
 その場に傅く市民たちは、恍惚とした表情のまま、疑いひとつ挟まずに頷く。
 その中には、先ほど吸血された女性の姿もあった。

 ――頷く市民らの首筋には、一様に噛み痕が輝いていた。

●グリモアベース
「ダークセイヴァーの地下に隠された地底都市の話を聞いたことはあるか」
 集まった猟兵等を前に口を開く、グリモア猟兵館野・敬輔の声は冷たく響いて。
 猟兵達がまばらに頷くと、敬輔は厳しい口調で話し始める。
「俺のグリモアの予知で、地底都市の場所をひとつ、突き止めたのだが……些か厄介そうだ」
 一般的に、地底都市に住まう人々は、地上の存在を知ることなく、ただ吸血鬼らに隷属を強いられているのだが、敬輔が予知で突き止めた都市は少し事情が異なるらしい。
 その都市に住まう市民は、皆一様に笑みを浮かべ、幸福を享受しているように見える。
 だが、実際は市民のほぼ全員が支配者に洗脳され、生き血を啜られることが何よりの幸福だと刷り込まれている状態らしい。
 ――希望の皮を被った絶望のみが支配する、地底都市ということだ。
「そこで、皆には偽りの希望をはぎ取り、市民を吸血鬼の支配から解放してもらいたい」
 瞳に冷たい光を湛えたまま告げた敬輔に、猟兵達は了承したように頷いた。

「既に複数の地底都市が解放されている以上、『門番』は猟兵による襲撃の可能性を常に考えている。転送と同時に右の首筋に三つ首の番犬の紋章を宿した『門番』が駆け付け、戦いになるから、心の準備をしておいてくれ」
 敬輔いわく、この『門番』が市民を洗脳し、都市を支配している支配者とのこと。
「『門番』たる支配者は、首筋についている三つ首の番犬の紋章によって身体が強化されている。紋章を狙わない限り、大きなダメージは与えられないだろう」
 さらに紋章を宿した『門番』の強さは、あの「同族殺し」すら一太刀で屠る程。
 真正面からぶつかれば死闘は避けられないため、紋章を狙うにはひと工夫必要そうだ。

「支配者を倒せば市民たちの洗脳が解けるが、洗脳が解けたことを悟った従者たちは、事前に厳命を受けていた通りに動き出す」
 ――厳命とはすなわち、市民の虐殺。
 洗脳が解けたばかりの市民が、これに対抗する方法は……皆無。
「ゆえに、支配者を撃破したら急いで地底都市に突入、都市内に散らばった従者を探し出し、撃破してほしい」
 市民たちを助けつつ、猟兵の存在をアピールするよう戦えば、戸惑う市民たちを勇気づけることができるだろう。

「従者を倒せば一時的な平穏は訪れるが、異変を察知した別の吸血鬼がやってくる可能性がある。その前に、市民たちに地上の存在を伝え、地上に誘ってほしい」
 なお、地上での受け入れ先は、既に伝手を頼ってある人類砦に打診済み、とのこと。
「とはいえ、彼らは幸福な生活が偽りであったことにショックを受けているだろう」
 ――洗脳は解けても、洗脳を受けている間の記憶は残るから。
「彼らが偽りの笑みではなく、いつか心の底からの笑みを浮かべられるように、少しでもケアしてあげてくれないか」
 精一杯の笑みを浮かべつつ柔らかい声音で「頼んだ」と告げる敬輔だが、その笑みは何処かぎこちなかった。

「紋章を配布した者の正体とか、今は気になることも多いだろう」
 しかし、地底都市をひとつひとつ解放すれば、必然的に紋章を配布した者に迫ることになるのは、確か。
「だから今は都市の解放を頼む。……幸運を祈る」
 猟兵達に頭を下げた敬輔は、丸盾のグリモアを大きく展開し、転送ゲートを形成して猟兵たちを戦場へと誘った。


北瀬沙希
 北瀬沙希(きたせ・さき)と申します。
 よろしくお願い致します。

 ダークセイヴァーの各所に存在する「隠された地底都市」のひとつを解放するチャンスが訪れました。
 猟兵の皆様、門番たる吸血鬼を撃破し、偽りの希望に満ちた地底都市を解放してください。

●本シナリオの構造
 ボス戦→集団戦→日常です。

 第1章はボス戦です。
 三つ首の番犬の紋章の位置は「右の首筋」となります。
 紋章を積極的に狙い、攻めるようなプレイングには、プレイングボーナスが与えられます。

 第2章は集団戦です。
 ウルカの精神支配から解放され、正気を取り戻しつつある市民にアピールするような戦い方をすれば、プレイングボーナスが与えられます。

 第3章は日常です。
 偽りの笑みしか知らなかった彼らに笑顔を取り戻させ、人類砦に誘って下さい。
 お声がけがあればグリモア猟兵館野・敬輔も同行いたしますが、プレイング内容によってはマスタリングないしは不採用の可能性もございます。

●プレイング受付について
 全章、導入文の執筆後からプレイング受付を開始。
 締め切りはマスターページ及びTwitterで告知致します。

 なお、本シナリオはゆっくり運営させていただきます。
 状況によっては再送をお願いすることもございますので、予めご承知おきいただけると幸いです。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『血と縁を奪う吸血鬼『ウルカ』』

POW   :    貴方がたの現在の主はわたくしなのです
【強力な洗脳効果を持つ精神波】によって、自身の装備する【レベル×1体のレッサーヴァンパイア】を遠隔操作(限界距離はレベルの二乗m)しながら、自身も行動できる。
SPD   :    美食家たるわたくしの下僕になりなさい
【首筋からの吸血行為】【吸血鬼化を促進する呪詛】【精神波による洗脳】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    さあ、新たな主たるわたくしの下へ
妖怪【妖艶な吸血鬼】の描かれたメダルを対象に貼り付けている間、対象に【メダルの持ち主に洗脳され絶対服従する】効果を与え続ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠館野・敬輔です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ダークセイヴァー某所・地底都市入り口
 転送された猟兵達が目にしたのは、鬱蒼と茂った森の中に隠されていた洞窟の入り口。
 耳を良く済ませてみると、洞窟の奥からは微かに聖句が聞こえる気がする。
 ――恐らく、この洞窟が地底都市への入り口なのだろう。
 洞窟の入り口の広さは、人ひとりが屈んでようやく潜れるか潜れないか、という程度しかないが、所々赤と紫で装飾された漆黒のドレスを纏い、舌なめずりをしているヴァンパイアの女性が、入り口を塞ぐように立ちはだかっている。
 彼女の右の首筋に燦然と輝くのは、三つ首の番犬の紋章。

 ――間違いなく、目の前のヴァンパイアが『門番』かつ「支配者」だ。

「あらあら、嫌な予感がしてこちらに参ったら、猟兵がぞろぞろと……」
 女性ヴァンパイア――ウルカは、右手で時折メダルを弾きながら、値踏みするように猟兵等を見つめ、薄い笑みを浮かべる。
「あなた方の狙いはわかっておりますわ。この先に進みたいのでしょう?」
 ウルカは左手で大仰に洞窟を示しながら、しかし「行かせるわけにはいきませんけどね」と口角を上げた笑みとともに切って捨てた。
 紋章の効果で得た力に酔っているのか、それとも己の力に絶対の自信を持っているのか、猟兵を家畜以下の存在であると見下しているようだ。
「そうですわね……今ここで血を差し出してわたくしの忠実な下僕になれば、この先に案内してあげてもよろしいですわよ?」
 カラカラと笑いながら取引を持ち掛けるウルカだが、猟兵側にそのような取引に応じる理由はない。
 猟兵達はそれぞれ得物を構え、ウルカの首筋にある紋章に狙いを定めた。

 さあ、猟兵達よ。
 目の前にいるのは、地底都市を偽りの幸福で染め上げた血と縁の簒奪者。
 偽りに満ちた地底都市の支配者たる彼女を撃破し、都市解放の足掛かりとせよ。

 ただし、己の精神が偽りの幸福に染め上げられることのなきよう……。
アトシュ・スカーレット
は、そんなの願い下げだ。
オレらはテメェらからこの街の人たちを救うために来たんだからな!

腐敗の【呪詛】をかけたJoyeuseと村雨で戦うか
あ、形態はその場の最適解な形態に変更し続けるか
相手さんのUCは【狂気耐性/呪詛耐性】で可能な限り軽減して…【浄化術・月光式】を自身や味方に使用してなかったことにする!
間に合わないと判断した場合は舌でも噛んでおくわ

攻撃に転じれるなら風の【属性攻撃/範囲攻撃/2回攻撃】でどんどん攻めていくか!
可能なら首筋を狙いたいが…
その時は【フェイント】を混ぜて攻撃していくか

「洗脳とか呪詛なら任せろ!呪いの類なら浄化できる!!」



●腐敗を齎す呪詛は、時に浄化を齎して
「は、そんなの願い下げだ」
 あからさまに猟兵を挑発するかのように服従を強いるウルカに、アトシュ・スカーレット(銀目の放浪者・f00811)は奥歯を強く噛みしめながら吐き捨てるが、ウルカは意に介さない。
「あらあら、威勢の良いこと」
「オレらはテメェらからこの街の人たちを救うために来たんだからな!」
「救う、ですって?」
 アトシュの言葉に聞き捨てならぬものを感じたか、ウルカは口元に軽く歪んだ笑みを浮かべ、彼を挑発する。
「家畜を救うとおっしゃるのですね、あなた方家畜以下の存在が」
「彼らもオレらも家畜じゃねえ! 人間だ!!」
 アトシュは叫びながら右手のJoyeuseと左手の村雨に腐敗の呪詛を乗せ、二刀流の構えを取る。
「さあ、私の下僕たちよ、私の盾となりつつ、家畜にすらならぬ者を甚振ってしまいなさい?」
 心地よく響くウルカの声に応え現れたのは、150体以上のレッサーヴァンパイア。
 それは一様に恍惚とした表情を浮かべつつも、アトシュに侮蔑の視線を向けつつ、ウルカの矛や盾となるべく立ち塞がる。
 一方、レッサーヴァンパイアを従えるその心地よい声は直接アトシュの脳にも響き、彼の思考をウルカへの忠誠と恍惚感で縛ろうとするが。
「……っ!! 蝕む黒よ、その魂に汚れを残すことは許さない!!」
 洗脳に抗うために咄嗟に舌を噛みつつ、アトシュは【浄化術・月光式】を発動させながら左手の村雨で右手の甲を斬りつける。
 その剣に宿した腐敗の呪詛は、アトシュを傷つけることなく、彼を縛ろうとしたウルカの精神波のみに干渉し、消し去った。
 異端の神の力の片鱗を引き出したことで銀から金に変貌した右目でウルカを睨みつつ、アトシュは改めてJoyeuseと村雨を構え、レッサーヴァンパイアを待ち受ける。
「ウガアアアアッ!!」
「ガアア……!!」
 殺到するレッサーヴァンパイアに、アトシュはJoyeuseと村雨を立て続けに一閃。
 ――斬!!
 風の魔力が乗った両刀から衝撃波の如く放たれた腐敗の呪詛は、洗脳されウルカの忠実な僕と化しているレッサーヴァンパイアを次々と貫いた。
 貫かれたレッサーヴァンパイアは次々と足を止め、呆けた表情を浮かべながら周囲を見回し始める。
「ウァ……?」
「アアアアア……?」
 まるでここにいる意義が見いだせない、と言いたげに戸惑うレッサーヴァンパイアの制御は、いつしかウルカの手から離れている。
 腐敗の呪詛が呪いとも言えるウルカの精神波に干渉し、レッサーヴァンパイアに施されていた洗脳が解けたのだ。
「まさか、洗脳を解くとは……!」
 ウルカが唖然とするのを金の目で見つめつつ、アトシュは銃形態に変化させた村雨でレッサーヴァンパイアの頭を次々と撃ち抜きながら道を開き、ウルカに肉薄。
 ウルカは新たなレッサーヴァンパイアを盾とすべく呼び寄せるが、アトシュは直前で左に飛び退きフェイントをかけつつJoyeuseを銃形態に変形させ、その銃口をウルカの右の首筋に突き付けた。

 ――ズキューン!!

 Joyeuseから発射された魔力の籠った弾丸は、至近距離から首筋の三つ首の番犬の紋章を撃ち抜く。
 弾丸は紋章そのものが受け止めるが、その紋章自身がじわりと黒く変色し始めた。
 弾丸から浸み出た魔力に含まれる腐敗の呪詛が、紋章の力を「呪い」とみなし打ち消そうとしているのだ。
「ぐあ、あああああっ……!!」
 紋章から得た力が喰われるような感覚に、ウルカは苦しみながらもアトシュを睨みつけるが、動けない。
「洗脳とか呪詛とか、呪いの類なら浄化できるのさ」
 アトシュはJoyeuseを剣形態に戻しながら、さらに紋章の力を削ぐべく、二刀流で斬りつけ続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

七那原・望
そういう風に洗脳して他人を玩具みたいに扱うのって心底虫唾が走るのですよ。

【果実変性・ウィッシーズアリス】を発動し、ねこさん達を呼びます。

自身とねこさん達の【多重詠唱】【全力魔法】で【呪詛耐性】【オーラ防御】【浄化】【結界術】を展開しつつ、敵には【全力魔法】の幻覚を見せてわたしとねこさんの正しい位置を認識出来ないようにしましょう。

【第六感】と【野生の勘】で敵の行動を【見切り】、回避を。

隙を見つけたら【魔力を溜めて】強化したオラトリオの【スナイパー】【クイックドロウ】で敵の右の首筋の紋章を積極的に何度も穿っていきましょう。
可能であれば【全力魔法】の光線やセプテットによる追撃もしていきます。



●望みを込めし光は、望みを簒奪する者を撃ち抜いて
(「そういうふうに洗脳して他人を玩具みたいに扱うのって、心底虫唾が走るのですよ」)
 玩具のようにレッサーヴァンパイアを扱うウルカを見た七那原・望(封印されし果実・f04836)の想いは声には乗らず、ただ心の裡だけで吐き捨てられる。
 ウルカの首筋に輝いていたはずの三つ首の番犬の紋章は、先の猟兵によって何らかの呪詛が施されたのか、輝きが鈍っている。
 それでも、ウルカが猟兵達に、望に向ける視線は未だ鋭い。
「よくもこのわたくしに呪いを施してくれましたわね……」
 ウルカの声音も、言の葉そのものに呪詛を籠めるかのように歪んでいたが、望は揺らぐことなく虚空へと叫ぶ。
「わたしは望む……ウィッシーズアリス!」
 望の魔力を込めた声とともに、身に纏う礼装は黒から鮮やかな水色へ変化し。
 頭のリボンも、黒から水色へ色を変える。
 さらに白のエプロンを着用した姿は、さながら童話に出てくる「アリス」のよう。
 そして、望の傍らに白、黒、三毛猫、チェシャ猫の4匹の猫が現れ、一斉に鳴き始めた。
「「「「にゃああああああん」」」」
 4匹のねこさんの鳴き声とともに、望が水色のリボンが揺らめくロッド、共達・アマービレを一振りすると、呪詛から身を護る浄化の結界が構築された。
「この程度の結界、破るなど造作も……」
 ない、と言い切ろうとしたウルカの口が、突然止まる。
 いつの間にか、目の前から望とねこさん達の姿が消えていたからだ。
「あらまあ、どこへ逃げたのかしら?」
 挑発するかのように呼びかけるウルカの視界の端を、ふっ、と青のドレスが掠める。
 慌ててウルカがそちらを振りむくが、既に青のドレスは、ない。
「あらあら、逃げるだけでわたくしの目は欺けませんわよ?」
 口振りこそ余裕そのものだが、何度青のドレスを視界にとらえても、肝心の望の姿は捕らえられない。
「にゃん」
「にゃ~ん」
 さらに猫の鳴き声も右から、左から聞こえるが、ウルカが左右を振りむいても猫の姿は全く見えなかった。

 ――明らかに、ウルカは幻覚に惑わされていた。

(「幻覚でわたしとねこさんの正しい位置を認識出来ないようにしたのですが、予想以上に惑わされているのですー」)
 幻覚に翻弄されるウルカを少し離れた木の上から俯瞰しながら、内心胸をなでおろす望。
 もし幻覚で惑わさずに接近していたら、今頃首筋に噛みつかれて吸血され、さらに吸血鬼化の呪詛と洗脳を施されていただろうから。
 幻覚に囚われたウルカは必死に望とねこさんを探すが見つからず、表情が徐々に怒りに歪み始める。
 やがて、ウルカの足元に、幻覚のねこさんがすり寄った。
「にゃぁ~ん」
「ああもう、鬱陶しい猫だわ!!」
 苛立ちを隠せなくなったウルカが幻覚のねこさんを蹴り飛ばし、肩を大きく怒らせる。
 その時、無防備な首筋が望の目の前に晒された。
 ――それはウルカが見せた、致命的とも言える隙。
「今なのですー!」
 望は幻覚で惑わすことで稼いだ時間で十分に溜めた魔力を一気に解放し、己の全力を持って数多の光線を放つ。
 その狙いはただ一点――右の首筋にある紋章。
「……なぜ、そこに!!」
 膨大な魔力の気配にウルカが振り向き、本物の望の姿を認めた時には、ウルカの視界を煌めく光線が埋め尽くしていた。

 ――幻覚を切り裂きながら煌めく無数の光線は、狙い違わず紋章を撃ち抜いていた。

 何度も何度も光線で紋章を灼かれ、穿たれ、三つ首の番犬の紋章はさらに輝きを失う。
 そして、さらに降り注ぐ光線が、紋章を貫通し、ウルカの胴を貫き、癒えぬ傷を蓄積させてゆく。
「何故、紋章が弱点とわかっているのですか……家畜以下の存在が!!」
「わたしたちは家畜ではありませんから」
 望はウルカの怒りを冷静に受け流しながら、銃奏・セプテットで紋章にさらに追撃を加え始めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

北条・優希斗
連携可
…俺が視た奴によく似ているなお前は
人々を守るのは無理だが、お前の技を封じることは不可能では無い
永遠の眠りに落ちると良い
先制攻撃+見切り+早業+UC発動
「どうした? お前のそのご自慢のメダルで俺を洗脳してみろ?」
と挑発しつつ、残像+ダッシュ+地形の利用+見切りで肉薄
敢えてメダルを貼り付けやすい所を作ってやりつつメダルを貼り付けてきたらカウンター+【フェイント+二回攻撃+串刺し+薙ぎ払い+属性攻撃+傷口を抉る+鎧無視攻撃】
浄化の炎舞で右の首筋の紋章を狙う
それ以外の場合
残像+見切り+オーラ防御で敵を攪乱被害を最小限にしつつ、右の首筋の紋章目掛けて【】の技能を組み合わせて絶えず剣舞を仕掛けるよ



●過去に導かれし揺蕩う海は、人を操る呪詛を拒んで
 ウルカの姿を認めた北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)の脳裏に過るのは、奇妙な既視感。
「……俺が視た奴によく似ているな、お前は」
 つい先日、優希斗のグリモアが齎した予知の中で見えたのは、白き鎧の吸血鬼と手を組み、憎悪にその顔を歪めた姿。
 あの時見た奴は、先日縁を持つ者の手で滅ぼされたはずだが……。
(「いや……別の過去から蘇ったと考えるべきだな」)
 そもそも地底都市の支配者として君臨し、市民を洗脳している以上、かなり前から存在していたことは確かだろう。
「あら、他人の空似ではないかしら?」
 嘯くウルカに、そうか、と一つ息を吐く、優希斗。
「人々を守るのは無理だが、お前の技を封じることは不可能ではない」
「あら、あなたは家畜を助けに来たわけではないのかしら?」
 揶揄うように挑発するウルカに優希斗は答えず、左手に蒼月・零式を、右手に鏡花水月・真打を握りしめ、静かに呟いた。

 ――永遠の眠りに落ちると良い。

「眠れや、眠れ、存在せし者達よ。海の底で永遠に」
 続けざまに虚空に向けて諳んじるように呟かれた言の葉に導かれ、優希斗の全身から漆黒の液体のようなものが放出され始める。
 それは確かに液体なのだが、絶え間なく形を変え続け捉えどころがなく。
 それは温かくも冷たくもあり、恐怖と安堵という相反する感情を抱かせ。
 そしてそれは放出される今も、世界のどこかで排出される「過去」を貯め込み続け、質量を増しているようにすら錯覚させられる。

 優希斗が呼び出した漆黒の液体、それは。
 ――骸の海、そのものだった。

 それは、優希斗が抱える「贖罪」の意識が呼び寄せたものなのだろうか。
 あるいは、彼が時折見るという「過去」が呼びよせたものだろうか。
 それとも……?
 いずれにせよ、揺蕩うように広がる骸の海を見て、ウルカは驚愕を隠し切れない。
「人の身で、何故それを……!!」
「どうした? お前のそのご自慢のメダルで俺を洗脳してみろ?」
 骸の海を放出し続けたまま、挑発しダッシュで肉薄しようとする優希斗。
 挑発に乗ったウルカはがら空きの優希斗の首筋を狙い、妖艶な吸血鬼の絵が描かれたメダルを指ではじいて飛ばす。
 しかし、メダルは優希斗の周りを覆う骸の海で絡め取られ、届くことなく呑み込まれた。
 驚くウルカの前で、優希斗はフェイントをかけて目の前から姿を消すように左手に回り込み、右の首筋に輝く紋章を貫くように鏡花水月・真打を突き出した。

 ――ズブッ!!

「ああああああっ!!」
 ウルカの絶叫に構うことなく、優希斗はそのまま紋章のみを正確に斬り裂き、抉り続け、体内から浄化するように刀身から炎を放ち、焼き続ける。
 それはさながら浄化の炎舞だが、蒼月・零式を使わぬのは、ウルカに過去と未来を繋がせぬと無意識に使用を避けているからか。

 ――数秒後。
 浄化の炎舞で徹底的に切り刻まれた三つ首の番犬の紋章からは、光がほぼ失われつつあった。
「ああ、わたくしの力が……家畜以下の存在がよくも!!」
 それでも毒舌を崩さぬウルカに優希斗は構わずさらなる追撃を加えようとして……身体に違和感を覚え、足を止めた。
 その直後。
(「ぐっ……!!」)
 ――ズキッ!!
 突然心臓に激しい痛みを覚えた優希斗は、鏡花水月・真打を杖代わりに地面に突き立てながら片膝をついた。
 頭の片隅で、生存本能が激しく警鐘を鳴らしている。
 ――人の手に余る存在を呼び続けていれば、命にかかわると。
(「これ以上骸の海を放出し続ければ……死ぬのは俺か」)
 優希斗はやむなく骸の海の放出を止めたが、あと数秒、放出し続けていたら、おそらく死に至っていただろう。
 大きな隙を晒したにも関わらず、ウルカが追撃しなかったのは、相当量のダメージが蓄積しているからか。

 今はこれ以上の無理はできない。
 ウルカが体勢を立て直す前に、優希斗は後続の猟兵にその場を託し、撤退した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加

どこかで見た顔だね。まあ、血を捧げよとか上から目線で言ってるような奴は願い下げだ。この高慢な顔と態度ごと叩き潰してやるよ。奏、瞬、行けるね。

無敵の相棒を呼び出して、奏と共に前面を抑えて貰う。アタシは【忍び足】【目立たない】で敵の背後を取り、敵の背後から首の紋章を狙う。【グラップル】で足払い、【怪力】で首を狙う。拳の一撃を回避されたってもう片方に槍がある。本命はこちらだ。全力で【串刺し】で紋章を串刺しにしてやるよ。反撃が来るようなら【見切り】【残像】で回避した上で【カウンター】を叩き込む。アンタのような女は見てるだけでムカつくんでね。とっとと消えて貰うよ!!


真宮・奏
【真宮家】で参加

う~ん・・とても綺麗な方ですけど、血を捧げて仕えよ、って言っている時点で危ない存在だって分かります。どうやら猟兵を甘く見ているようですが・・戦いで、相手を甘くみることは敗北に繋がりますよ?

私は本命の母さんと瞬兄さんの攻撃を確実に当てる為にトリニティエンハンスで防御力を上げ、【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】【呪詛耐性】で攻撃を引き受けます。攻撃が必要なら牽制する目的で【衝撃波】で攻撃を。たとえ貴女が強大な力を持っていようと、力を併せれば、貴女を凌ぐことは可能です。さあ、そこをどいてください!!


神城・瞬
【真宮家】で参加

どこかで見た顔ですね?まあ、上から目線で血を捧げて仕えよとか言ってますので、禄でもない輩だということですが。こういうタイプは自分の想定外の出来事に弱いですよね?思う通りにいくとは思わないことです。

襲い掛かって来る従者が厄介ですね・・・【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】【武器落とし】を仕込んだ【結界術】を【範囲攻撃】化して纏めて従者達を拘束。本体は【誘導弾】で牽制。首への攻撃は母さんの攻撃が当たった後で月白の棘で、もちろん首の紋章を狙って攻撃。飛んでくる攻撃は【オーラ防御】【第六感】で凌ぐ。家畜以下と侮りましたか?状況判断が出来なかった、其れが貴女の敗因です!1



●固い絆で結ばれた家族は、「縁」を呼び寄せて
 撤退した別の猟兵と入れ替わるように駆けつけたのは、【真宮家】の3人。
 真宮・響(赫灼の炎・f00434)が横目で見た撤退する猟兵の横顔は、先日グリモアベースで見た顔の気もするが、響にとっては目の前にいる吸血鬼――ウルカの顔のほうが気になるようで、先ほどから頻りに首をひねっていた。
「コイツ、どこかで見た顔だね」
「ええ、どこかで見た顔ですね?」
 響の疑念に、神城・瞬(清光の月・f06558)が同意するかのように頷く。
 つい先日、そろってダークセイヴァーのある村を襲撃することで猟兵を誘き寄せようとしていたある吸血鬼の討伐に赴いていた、真宮家。
 猟兵を誘き寄せた吸血鬼はあの場で討ち果たしたのだが、今目の前にいる吸血鬼は、その時討ち取ったはずの吸血鬼の顔に非常に似ているのだ。

 ――これは何かの偶然なのだろうか。
 ――それとも、先日滅ぼした吸血鬼が、この吸血鬼に似ているだけだろうか。

「3人まとめて来るとは、本当に猟兵は諦めの悪い生物だこと」
 真宮家を目にしたウルカは、左手で首筋の紋章を隠しながらも、高慢な口調は崩さない。
「今ここで血を差し出せば、今の姿をとどめたまま、わたくしが永遠に飼って差し上げますのに?」
「嫌だね。血を捧げよとか上から目線で言ってるような奴は願い下げだ」
「……そう口にする時点で、禄でもない輩だということですが」
 きっぱりとウルカを否定する響と瞬を見ながら、真宮・奏(絢爛の星・f03210)は素直に感じた印象を呟く。
「う~ん……とても綺麗な方ですけど……」
「奏、惑わされるんじゃない」
 響の冷ややかな警告に、しかし奏は大丈夫です、と首を横に振り。
「血を捧げて仕えよ、って言っている時点で危ない存在だって分かりますから」
 シルフィード・セイバーを抜きながら、油断なくウルカを睨みつける義妹の姿に安堵の息をつきながら、瞬がいつもの落ち着いた声でウルカに呼びかける。
「どうやら猟兵を甘く見ているようですが……戦いで、相手を甘くみることは敗北に繋がりますよ?」
「家畜以下……いいえ、家畜にすらならない輩」
 瞬の呼びかけを挑発と受け取ったか、ウルカが微かに肩を震わせながら、その声音に怒りをこめてゆく。
 とはいえ、怒りの声音の裏に焦りが含まれているのを、瞬は聞き逃さない。
 よく見ると、ウルカは表向き無傷に見えるが、時折右の首筋と肩が痛むのか、軽く顔をしかめていた。
 ――ここまで徹底的に紋章が狙われているのが、そもそも想定外なのだろう。
「こういうタイプは自分の想定外の出来事に弱いですよね? 思う通りにいくとは思わないことです」
「慢心などしておりませんわ。むしろ傲慢なあなた達こそ、わたくしを排除できると思いこんでいないかしら?」
「瞬、そこまでにしときな」
 ウルカと瞬の口撃の応酬を、響がぴしゃりと中断させた。
 ――おそらく、時間稼ぎが目的だろうから。
「さっさとこの高慢な顔と態度ごとコイツを叩き潰してやるよ。奏、瞬、行けるね」
「はい!」
「ええ、いきましょう」
 響の怒りすら籠る呼びかけに、奏と瞬は其々の得物をウルカに突き付けた。

●繋ぎし縁の力は、縁の簒奪者を追いつめて
「さあ、アンタの力を借りるよ!! 共に戦おう!!」
 響の呼びかけに応じ、夫・律の姿のゴーレムが、灼熱の槍を手に現れる。
「アンタ、奏、任せたよ」
 ゴーレムと奏に前線の抑えを任せ、響はゴーレムの陰からウルカに見られぬように背後に回り込むため、姿を消した。
「あらあら、下僕はあれだけではありませんわよ?」
 ウルカがゴーレムを一瞥しながら大仰に両腕を広げると、足元から次々とレッサーヴァンパイアが現れる。
「ウァ……」
「アアア……」
 現れたレッサーヴァンパイアは、一様に恍惚とした表情を浮かべていた。
 それを見て瞬が思わず嫌悪感を抱いたか、軽く顔を顰めた。
「さあ下僕たち、まずは私に傅きなさい?」
 朗々とよく響くその声を耳にしたレッサーヴァンパイア達が、一斉にウルカに傅いた。
 その声を耳にした、忍び足で移動していた響の足が、突然止まった。
 ――くらり。
 耳から入ったその声は、直接脳を揺さぶり、精神を甘い蜜に漬け込んだかのように蕩かし、響の精神にウルカへの忠誠心を植え付けようとする。
「ぐ……っ」
 響は大きく目を見開きながらも、心地よく聞こえるその声に我を忘れ、ウルカに従うかのように膝を折りかける。
 しかし……。
「猟兵を甘く見るんじゃ……ないよ!!」
 咄嗟にブレイズランスの石突を地に叩きつけて杖代わりとしながら、響は己の足を折らぬよう耐え、同時に灼熱の穂先で左手の甲を傷つけ、その熱と痛みで強引に精神波を振り払った。
 紋章の力が弱まり、精神波による洗脳の効果がかなり弱まっていたため、傷をつける程度で逃れることができたが、無傷で出会っていたらどうなっていたか。
 響の洗脳に失敗したことを悟ったウルカが軽くちっ、と舌打ちするも、すぐに冷静さを取り戻し、再びレッサーヴァンパイア達に呼びかける。
「さあ下僕たち、目の前の家畜以下の輩を引き裂いてしまいなさい?」
 ウルカが指をさしたのは……炎と水、風の魔力とエレメンタル・シールドで防御を固めた、奏。
 150を超えるレッサーヴァンパイアが身に纏う服装は、簡素ながらも同じ文化やルーツを持つものに見える。
「この人たちは……まさか!」
 ある共通点に気づき声を上げた奏の後を、ウルカがにたぁ、と嗤いながら継ぐ。
「そうですわね。わたくしの都市の家畜たちの成れの果て、ですわ」
「――――!!」
 事実を知った瞬は、静かな怒りのあまり、無意識にぐっと杖を強く握りしめていた。
(「吸血されて死を迎えた後、レッサーヴァンパイアとして蘇った人々を洗脳し、下僕としたわけですか……!!」)
 ウルカにとって、地底都市の市民は「下僕」であり「家畜」。
 ――そして、日々己に血液を捧げる……「贄」。
 毎日のように血を捧げる市民たちは、恍惚の中で知らず知らずのうちに衰弱し、やがて死に至る。
 そして、死に至った市民が骸の海から蘇り、レッサーヴァンパイアになったとしたらどうなるか?
 ……その答えは、今まさに目の前にあった。
 洗脳した市民に対し、あまりにも外道で残酷な仕打ちだが、一方でレッサーヴァンパイアと化した彼らは既に過去の存在であることも、確か。
 ――助けることは、かなわない。
「だったら、ここでまとめて……!」
 瞬が杖を一振りすると、杖の先から銀光が広がり、レッサーヴァンパイア達に降り注ぐ。
「ウァ……!」
「ガアア……!!」
 銀光に編み込まれた結界に触れたレッサーヴァンパイア達が、麻痺毒に侵された後銀光の帯に縛られ、次々と動きを止めた。
「奏!」
「はい、もう……ゆっくりお休みください」
 瞬の後を継いで奏がシルフィード・セイバーを一振りし、風の魔力を乗せた衝撃波が、銀光の結界で縛られたレッサーヴァンパイア達を次々と切り裂いていく。
「容赦ないですわね、家畜以下が、家畜に対して」
 あからさますぎる挑発を無視し、奏がさらに大きく踏み込み、シルフィード・セイバーでウルカに牽制の一閃。
「たとえ貴女が強大な力を持っていようと、力を併せれば、貴女を凌ぐことは可能です。さあ、そこをどいてください!!」
「退くわけがないでしょう? さあ先に護りを打ち崩してしまいなさい?」
 ウルカの細い指が奏を指差し、生き残ったレッサーヴァンパイアが動き出した、その時。

 ――ドスッ!!

「かはっ……!!」
 突如脇腹を拳で殴られたウルカが、大きく仰け反りながら背後を見る。
 そこにいたのは、先ほど洗脳されかけた、響。
 彼女の左の拳は、洗脳されかけた怒りで固く強く握りこまれていた。
 本当は拳で紋章を穿ちたかったが、絶えず動く相手に首筋を狙うのは難しかったため、直前で狙いを脇腹に変えていた。
 ……どのみち拳は前座、本命はこの後だ。
「アンタのような女は見てるだけでムカつくんでね。とっとと消えて貰うよ!!」
 響の一喝と共に、彼女の怒りで赤熱ではなく白熱したブレイズランスの穂先が、力まかせに紋章に叩き込まれた。
「があああああああ!!」
 超高温のブレイズランスの穂先で体内から焼かれたウルカの喉から、絶叫が迸った。
 明らかに大きな隙を晒しているウルカに、瞬は迷わず追撃をかける。
「勝つ為には……こういう手段も必要なのですよ。魔を穿て、月白の棘よ!!」
 瞬が呪とともに打ち出した銀の誘導弾は、複雑な軌道を描いてウルカに迫る。
「これしきの……!」
 首筋が狙いと察し、ウルカは誘導弾を身体をひねって避けようとするが、瞬の意のままに動く誘導弾相手には焼け石に水程度の効果しかなく。
 銀の誘導弾は、避けようとするウルカを嘲笑うように正確に紋章を穿つ。
 誘導弾の先端が紋章に触れた瞬間、先端が無数の棘に変形し、より深く紋章を抉り取り始めた。
「――――!!」
 首筋を抉り取られる痛みに、声なき悲鳴を上げるウルカ。
 無意識に精神波を飛ばしたのか、主人の無言の怒りと悲鳴を受け取ったレッサーヴァンパイアが響と瞬に殺到するも、響は残像を囮にレッサーヴァンパイアの拳を避け、逆にブレイズランスで胴を両断。
 瞬に向かうレッサーヴァンパイアは、ゴーレムが横薙ぎに振るう巨大ブレイズランスが悉く焼き尽くしていった。
「家畜以下と侮りましたか? 状況判断が出来なかった、其れが貴女の敗因です!!」
「家畜以下がよく吠える……吸血鬼を侮りなさらないよう?」
 瞬の糾弾にあくまでも高慢な口調を崩さず言い返すウルカだが、その額にはうっすらと冷汗が浮かんでいるように見えた。

 ――確実に、『門番』たる吸血鬼が追いつめられている、証であった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…吸血鬼を討てば都市の人間達の洗脳は解けるのね?
ならば私はいつも通り、為すべき事を為すだけよ

…さあ。吸血鬼狩りの業を知るがいい

他の猟兵との闘いから敵の能力を自身の戦闘知識に加え、
吸血鬼の気配を第六感で捉えたら魔力を溜めUCを発動
存在感のある残像を敵に向け乱れ撃った隙に自身は闇に紛れる

…お前の忠実な下僕に?やれるものならやってみなさい

…ただし、狩人の狩りから逃れる事ができたら…だけど

分身を囮に敵の死角から懐に切り込み、
大鎌の刃に限界突破した傷口を抉る呪詛を纏わせ、
首の紋章に向け怪力任せに大鎌をなぎ払う闇属性攻撃を放つ

…お前の能力は既に見切っている
いくら幻を相手に洗脳しても無駄よ。残念だったわね?



●吸血鬼狩りの業を持ちし者は、吸血鬼の命脈を断ち切って
 ――他の猟兵が3対1で『門番』たる吸血鬼と交戦している頃。
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、吸血鬼と他の猟兵との戦いを、気配を悟られぬように少し離れた茂みの中から観察していた。
 次々に猟兵たちに三つ首の番犬の紋章を狙われ、力を削がれている、吸血鬼。
 首筋に宿す紋章はほぼ輝きを失っているようにも見えるが、まだわずかに力を残しているのか吸血鬼に力を与え続けているらしく、吸血鬼の心が折れる気配はない。
「……吸血鬼を討てば、都市の人間達の洗脳は解けるのね?」
 リーヴァルティの疑問に明確な答えを齎す者は、この場にはいない。
 だが、グリモア猟兵は確かに『支配者を倒せば市民の洗脳は解ける』と明言した。
 そして、その『支配者』かつ『門番』たる「吸血鬼」は、リーヴァルティの目の前にいる。
 ……ならば、リーヴァルティがやることは自然と定まる。
「ならば私はいつも通り、為すべき事を為すだけよ」
『過去を刻むもの』の銘を持つ漆黒の大鎌を構え、リーヴァルティは機が訪れるのを待つ。
 ウルカの能力は、先に交戦した猟兵達の戦い方を観察することで把握している。
 洗脳によって縁を奪い、血を啜るウルカの能力に対し、リーヴァルティはある仮説を立てていた。

 ――血も縁も存在しない存在であれば、ウルカに洗脳されないのでは?

 リーヴァルティが観察している間に、3人組の猟兵は一時身を引いたようで、剣戟の音は消えていた。
「さあ、他に隠れている猟兵がいるようですが、出てきなさい」
 リーヴァルティの気配に気づいているのか、それとも単なる当てずっぽうなのか。
 いずれか知らぬウルカの呼びかけを、リーヴァルティは黙殺しながら、そっと小声で言の葉を零す。
「……呪式奥義展開。逃れられると思うな」
 言の葉に応え、リーヴァルディの周囲にさあっ……っと現れたのはリーヴァルティと全く同じ姿をし、全く同じ気配を放ち、黒の大鎌を持つ、91体の残像。
「……さあ、吸血鬼狩りの業を知るがいい。行け」
 91体もの残像を乱れ撃つようにウルカに放ちながら、リーヴァルティ自身は闇に紛れつつ、ウルカを挑発した。
「お前の忠実な下僕に? やれるものならやってみなさい」

 ――ただし、狩人の狩りから逃れる事ができたら……だけど。

「家畜以下の存在が、素直に傅けば!」
 見た目とは裏腹に精神的な余裕は既にないのか、あっさりと挑発に乗ったウルカは、大鎌を手に迫るリーヴァルティの分身の首筋を狙い、メダルを弾く。
 しかし、メダルは残像に過ぎない分身をあっさりと貫き、分身を吹き散らしながら地に落ちた。
 ――やはり、血も縁もない分身に対しては、洗脳は効果がないようだ。
「分身……小癪な真似をする」
 ウルカがぎり、と歯噛みするが、その間にも他の分身がウルカとの距離を詰め、大鎌を振るう。
 次々と振るわれる大鎌を避けながら、ウルカは気配で本物のリーヴァルティを探すも、全く同じ気配を放つ分身の中から本物を探すのは至難の業だ。
「くっ……本物は……!!」
 腕で払えどメダルを弾けど、それは全て分身にしか当たらない。
 焦りを深めるウルカの耳元に、突如背後から冷徹な声が響いた。
「お前の能力は既に見切っている。いくら幻を相手に洗脳しても無駄よ?」
「――――!!」
 最後通牒の如く耳に突き刺さった声に身を固くしたウルカに対し、『本物の』リーヴァルティの黒き大鎌が、背後から首筋の紋章を刈り取るように振るわれた。

 ――ズシャアアッ!!

 背後からの一閃は、三つ首の番犬の紋章を大きく斬り裂くとともに、大鎌の刃に施された呪詛を傷口から注ぎこむ。
 漆黒の呪詛は、斬り裂かれた傷口をさらに大きく広げ、紋章を広く深く抉り取った。
 ――それはまるで、過去の所業を罪として刻み、未来への扉を痛みで閉ざすように。
「がああああああああああ!! 家畜以下が! 家畜にすらならない猟兵が……っ!!」
 呪詛によりほぼ消滅した紋章を左手で押さえながら、ウルカは端麗な顔を大きく怒りで歪め、吼えるが、リーヴァルティには何一つ響かない。
「残念だったわね?」

 ――ザシュッ!!

 再度振るわれた大鎌は、三つ首の番犬の紋章ごと、ウルカの首を断ち切っていた。
 ――それが、地底都市を長年支配した吸血鬼の最期となった。

●地底都市へ
 地底都市を支配していた吸血鬼ウルカは、リーヴァルティの大鎌によってその未来を断ち切られた。
 これで市民の洗脳は解けるはずだが、同時に洗脳が解けたことを察した従者たちが市民を皆殺しにすべく動き出すだろう。

 今すぐ突入すれば、市民は助けられるはず。
 猟兵達は目配せしあい、身を屈めながら地底都市への洞窟の入り口を潜った。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『付き従う者共』

POW   :    主の為ならば、この身など惜しくはありません
自身の【心臓】を代償に、【従順な狼の群れ】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【鋭い牙と爪】で戦う。
SPD   :    主様からのご厚意、ありがたく受け取ってくださいね
【人間から絞った血液を混ぜた紅茶】を給仕している間、戦場にいる人間から絞った血液を混ぜた紅茶を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ   :    貴方も、私達と共に仕えませんか?
【蠱惑的な声で、仕える主の素晴らしさ】を披露した指定の全対象に【死ぬまで主に仕えたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●断章:地底都市・聖堂にて
 ――聖なるかな。
 ――聖なるかな。
 ――聖な……。

 厳かに絶え間なく流れていた聖句が、突然途切れる。
「ウルカ様……?」
 従者のひとりが何かを感じ取ったのか、仕える主たるウルカが消えた地上に繋がる道を見上げながら呟くと。

 ――シュゥゥゥ……。

 市民たちの首筋に輝いていた噛み痕から光が失われ、音を立てて霧散する。
 その直後、市民たちの顔に浮かんでいた恍惚感が消え、茫然とした表情に変わった。
「あ、あれ……」
「わたし、たち……」
 突然洗脳から解放された市民たちは、すぐに己らが置かれた状況を把握できない。

 ――頭を押さえて軽く振る者。
 ――己が記憶を必死に辿る者。
 ――ただただ茫然とする者。

 市民たちが三者三様の反応を示す一方、噛み痕が消えた理由を悟った従者たちは、一様に嘆きの涙を流し始める。
「ああ、ああ……」
「ウルカ様が、お隠れあそばしたのですね」
「ウルカ様が、骸の海に還られたのですね」
 諳んじるように、謡うように、嘆くように。
 従者たちは、仕える主を失った悲しみを言の葉に乗せ。
 ――そして「主なき後の命令」を思い出し、声に出す。
「ならば、私たちはウルカ様から命じられていたお勤めを果たしましょう」
「ウルカ様の下僕を、家畜を、『辺境伯の紋章』を宿した他の吸血鬼に奪われることのないよう、念入りに処置を行いましょう」
「この都市の家畜たちは、ウルカ様のもの。誰にも渡しませぬ」
 それはどういうことか、と市民たちが声を上げるより早く。
 従者たちは、死神の如く冷徹な声音を持って、宣告する。

 ――今から、家畜たちを全て、血祭りにあげさせていただきます。

 従者たちの宣告の意味を、市民たちが正確に理解する前に。
 従者のひとりが己が心臓を代償に召喚した狼たちが、市民たちの喉笛を狙って飛び掛かった。

 それと前後するように、従者のひとりが都市内へと飛び出す。
 飛び出した従者の狙いは、聖堂に集められていない子供たちの、殺害。

 ――市民たちの命は、風前の灯だった。

●地底都市・地上に通じる通路
 ――ほんの少しだけ、時は遡る。

 地底都市に通じる洞窟を抜けた猟兵達の目の前に広がる光景は、巨大な地下空洞に広がる、建物が整然と配置された都市。
 そこは地底にもかかわらず、天井にびっしりと貼りついている苔類や、天井近くに充満している魔法のガスが薄ぼんやりと光り、地上とほぼ変わらぬ光量が保たれていた。

 猟兵達は、地上に通じる通路から、ざっと都市を観察する。
 どうやら、都市の最奥部にある聖堂らしき建物に市民たちが集められているらしく、多数の人影が蠢いているのが確認できた。

 支配者たるウルカがいなくなった今、市民たちの洗脳は解けているはず。
 急いで聖堂に向かえば、従者たちが聖堂にいる市民を襲う前に仕掛けられるだろう。

 一方、人の気配があまりせぬ街並みに目をやると、殺意を隠さずに移動する人影があることに気づく。
 おそらく、聖堂にいない市民――主に子供を血祭りにあげるために、従者が聖堂の外へ出て来ているのだろう。

 聖堂に集められた市民たちを救うために。
 家で家族の帰りを待つ子供たちを救うために。

 猟兵達は手分けして都市内に散らばり、従者たちの排除に乗り出した。

※マスターより補足
 第1章の判定の結果、ウルカの撃破に大きく時間がかからなかったことから、現在は猟兵達がギリギリ先手をとれる状況にあります。寄り道せずすぐに聖堂に向かえば、従者が市民たちに狼を放つ直前に乱入することが可能です。
 一方、聖堂にいない子供たちを殺害すべく、従者がひとり都市内に放たれておりますので、こちらへの対応もお願い致します。
 ちなみに誰も手を出さず見守っていた場合、聖堂にいる市民たちは従者が召喚した狼の群れに喉笛を噛み千切られ、子供たちは従者に首を絞められ殺されます。

 従者たちは、ウルカが殺されたことは察していますが、現状ではウルカを殺したのが猟兵であることには気づいていません。
 ウルカを殺したのが猟兵達であることを告げれば、仕える主を失った従者の怒りは猟兵に向き、猟兵を優先して攻撃するようになるため、その時点で市民の安全は確保されます。

 市民たちは洗脳から解放されたばかりのため、現状を正確に把握しているとは言いがたい状態ですが、「自分たちが殺されかけている」ことだけは本能で察しております。
 猟兵達が救出に赴いたことをアピールしながら戦えば、市民たちは徐々に自分たちが置かれていた状況や経緯を理解し、猟兵達を応援してくれるようになるでしょう。(プレイングボーナスが付与されます)

 ――それでは、地上への道を市民に示すべく、最良の救出を。
七那原・望
【第六感】と【野生の勘】で敵の位置、行動、攻撃を【見切り】、適切な対処を。

二手に別れているようですね。

アマービレでねこさんをたくさん呼び出し【動物使い】【動物と話す】で子供達の方へ向かってもらいます。

子供達を発見したら【全力魔法】の【呪詛耐性】【オーラ防御】【結界術】で護りつつ敵を撃退してください。
狼が出てきても大丈夫です。
惜しくない程度の軽い命が代償なら強さはたかが知れてます。

わたし自身は聖堂へ。ねこさんが子供達へしたものと同様の処置を市民達へ。

落ち着いてください!その中は安全です!子供達も既に保護しています!

敵は【全力魔法】【Lux desire】【乱れ撃ち】で狼諸共残らず【蹂躙】します。



●黄金の林檎に秘めた願いは、守るべき者を守る力となりて
「どうやら二手に分かれているようですね」
 街中を疾走する従者の姿を認め、七那原・望は冷静に考える。
 聖堂からひとり離れ、街中を移動する従者の目的は、家族の帰りを待つ子供たちの殺戮。
 もし、この従者を放っておき、子供の無垢な命が奪われてしまえば。
 たとえ聖堂で親の命を守ったとしても、悲嘆にくれた親が絶望することは想像に難くない。
 ――子供の安全確保は、急務とも言える。
 望は少し思案した後、共達・アマービレを構え、軽く一振り。
 現れたのは、白猫や黒猫、愛嬌ある三毛猫など、たくさんのねこさん。
「ねこさんたち、街にいる子供たちを探して、守ってくれますか?」
「「「「にぃああぁぁん」」」」
 望の願いを可愛らしい鳴き声の大合唱と共に聞き届けたねこさんたちは、望から離れ、一斉に街中へ駆け出した。

 街中に散開したねこさんたちは、従者に見つからぬよう子供たちを探し、家屋へと潜り込む。
「あ、ねこだー」
 ねこさんを見つけた子供たちは、ねこさんを迷い猫と思い込み、抱き上げて顔を覗き込む。
「可愛いなー」
「にゃぁん」
 子供の声に反応したと思しきねこさんのひと鳴きとともに、子供たちを淡い乳白色のオーラが包みこむ。
「わぁ……」
 子供たちをくるむ温かいオーラがねこさんの鳴き声で齎されたとは、子供たちは知る由もないけれど。
 いざという時には、そのオーラが悪しき意志から子供たちを守ってくれるはず。

 一方、望自身は背中の翼を羽ばたかせ、聖堂へ急ぐ。
 聖堂まで一息に飛び、転がり込むように突入した望の目に入ったのは、戸惑う市民たちと、彼らに殺意を向ける従者たち。
 望は市民と従者の間に割り込むように降り立つが、闖入者に向ける従者たちの目は険しい。
「突然、何者ですか」
「聖なる場を乱すとは、何事ですか」
 従者たちの容赦なく突き刺さる誰何と非難の声を黙殺し、望は取り出した真核・ユニゾンに己が願望と魔力を注ぎ込み、高く掲げる。
 黄金の林檎を通して放出された魔力は、市民たちを守る黄金の結界と化すが、突然黄金色に包まれた市民たちは驚き、動揺し始めた。
「な、何だ?!」
「落ち着いて下さい! その中は安全です!!」
 望も声を張り上げて市民たちに訴えるが、未知なるものを目にした彼らの動揺はなかなか収まらず。
「子供たちも同じ方法で既に保護しています!」
 子供の安全を確保したことを伝えることで、少しだけ市民たちの動揺は収まった。
 しかし、今の結界術の行使で、従者たちは望が猟兵であることに気づいてしまう。
「なぜ、ここに猟兵が」
「なぜ、ここに家畜にすらならぬ者が」
 従者たちは困惑するも、その対応は考えるまでもないこと。
 ――今ここにいる市民と共に、狼に食らい尽くさせるのみ。
「ならば、家畜ともども食らい尽くしましょう」
「ならば、地に這いつくばらせ、狼に喰いちぎらせましょう」
 従者たちはその場に狼を召喚し、その牙を望と市民に向ける。
 望の背後で市民たちが恐怖に囚われ息を呑むが、望は構わず真核・ユニゾンを高く掲げて願った。

 ――子供たちを守りたい。
 ――大人たちも護りたい。
 ――力なき市民を虐げる従者たちを追い払いたい。

 望の想いが真核・ユニゾンに力を与え、黄金を覆い隠す程の濃密な光が渦巻き始める。
「狼たちよ、家畜を喰らいなさい!」
「狼たちよ、噛みつきなさい!」
 渦巻く光に危機感を抱いた従者たちが、望に向けて一斉に狼を解き放った瞬間。
「全ての望みを束ねて……!」
 望は真核・ユニゾンに集まった魔力と願望を光の奔流として解き放った。

 ――ゴウウウウウウウゥッ!!

 黄金の果実に集まった願望は、敵を滅するための光となって狼ごと従者を呑み込む。
「ああ、ウルカ様……!」
「ああああああ!!」
 光の道筋にいた従者たちは、光の中で存在ごと吹き散らされ、骸の海へと還されていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
ふむ、あの女の置き土産ってことか。主人もあれなら従者もああなるか。

奏、瞬、聖堂の方は任せた。アタシは都市内で暗躍している従者をなんとかする。こういうのはアタシが一番向いてる。

アタシは単独で都市内の従者を追う。あらかじめ【オーラ防御】を展開して、炎の戦乙女と共に【ダッシュ】。従者を発見次第、【衝撃波】で牽制。子狐の茉莉と炎の戦乙女に突撃させて機先を制した後、【グラップル】で足払い。敵の反撃を【残像】と【見切り】で凌いだ後、【怪力】【串刺し】で一気に貫く。さあ、オイタはここまでだ!!主人の元に送ってやるよ!!


アトシュ・スカーレット
オレは子供達の方へ急行するか
出来れば保護もしたいが…間に合うか?

【空中浮遊/残像/聞き耳/情報収集】で可能な限り早く駆けつけるように努力する
あ、【化術】で黒い烏に【変装】しとくぞ
道中に従者を発見できれば【先制攻撃】で【転移術・剣撃式】で攻撃するか
追撃はTyrfingで【怪力/呪詛/鎧無視攻撃】するな

子供達は…【闇に紛れる/目立たない/結界術】で迷彩効果のある結界の中に保護するな
…UCが魔力の消費なしで発動できて助かったわ…結界の数が多くなるほど負担が増えるが…まぁ、魔力量には自信あるし、別にいいが

「ふっざけんなよ、テメェら!!」
「だーいじょうぶ。兄ちゃんがみんなを守ってやるから、な?」



●子を狙いし者への怒りは、闇黒と緋色の力となりて
「ふっざけんなよ、テメェら!!」
 アトシュ・スカーレットの怒りは、無垢な子供たちをも縊り殺そうとしている従者に向いていた。
 一刻も早く、子供たちの下へ急行し、可能なら保護したい。
 ――だが、ひとりで間に合うかどうかは、正直未知数。
 一方、街中で殺気も気配も隠さず疾走する影を見て、真宮・響は妙に納得していた。
「ふむ、あの女の置き土産ってことか。主人もあれなら従者もああなるか」
 ならば、と聖堂の方を家族に任せた響は、暗躍する従者を主人の下へ送るために走り出す。
「こういうのはアタシが一番向いてるからね」
 そう、家族に言い残して。

 響が走り出すのを見たアトシュは黒い鳥に変装して、上空へ。
 風切り音を立てぬ様慎重に飛びながら、耳をすまし、目をこらし、従者の居場所を炙りだそうとする。
 一方、地上からは赤のオーラで防御を固め、魔力が籠められた魔法石を捧げて召喚した炎の戦乙女を従えた響が走りながら探すが、気配を察するのも足跡を追跡することもできない彼女の場合、足音らしき音を聞き分けるだけで一苦労。自分も走っているのならなおさらだ。
 せめて、上空を舞うアトシュの位置を確かめながら勘を頼りに追跡するのが、響に出来る精一杯のことだった。

(「ん……?」)
 従者を追跡中、アトシュが気づいたのは、微かな魔力の存在。
 従者の行く手に点在する以上、その魔力溜まりのような気配は従者の手によるものではないことは、明らかなのだが……アトシュはその魔力の主に心当たりがあった。
(「あー……なるほどな、これは彼女か」)
 普段、旅団で交流があるゆえに、術者の正体に気が付いたのだろう。
 だが、アトシュが感知したのであれば、従者も何らかの理由で魔力が滞留していることに気づいてもおかしくないだろう。
(「先に子供たちを保護しよう」)
 アトシュはいったん従者の追跡を諦め、微かな魔力を辿って手近な家屋に飛び込み、いったん変身を解除。
 そこにいたのは、黒猫を撫でながら笑顔を浮かべている、子供。
 子供の周囲には、乳白色のオーラによる結界が施されていた。
(「やはり、彼女が子供を守るために施した結界だな」)
「ちょっとだけ大人しくしていてね」
 アトシュは子供に一声かけてから、乳白色の結界を強化するように闇の結界を張る。
 先の結界が呪詛と攻撃から身を護る結界なら。
 アトシュの結界は、従者に子供の気配と魔力の存在を悟られぬ様遮断し、迷彩で目をくらます結界。
 これで、子供たちが発見される可能性は、ほぼゼロになったとも言える。
「いいかい? ここで親さんを待っていてくれ」
 真剣なアトシュの頼みに、子供は軽く頷いた。

 その後もアトシュは黒い鳥に変装して魔力を辿り、子供とねこさんを発見したら闇の結界を施して存在を隠す。
 これらを繰り返すと、結界の構築と維持のための魔力の消費も、何より術者への負担も相当なものになるが、魔力量に自信のあるアトシュにとっては苦にならない。
(「ユーベルコードが魔力の消費なしで発動できるのは助かるわ……」)
 それでも、蓄積した疲労の足音が身体と思考に忍び寄りかけている以上、あまり時間はかけられない。急いで最後の魔力の気配を掴み、急行する。
 しかし、駆け込もうとしていた家屋の中から、明らかに子供ではない声が聞こえてくる。
「愚かな家畜よ、役割は終わりました」
 どこまでも高慢なその女性の声は、おそらくウルカの従者。
 ――ほんの僅かだが、従者に先を越されたのだ。
「きゃ……!」
「ここで狼に噛み千切られ、ウルカ様を慰める贄となりなさい」
(「まずい……!!」)
 急いでアトシュが子供の盾になろうとするも、狼が子供に突撃するほうが早い。
 しかし、子供の喉笛を噛み千切ろうとした狼の咢は、首筋に集約した乳白色のオーラに阻まれた。
「キャウンッ!!」
「にゃぁぁん!」
「キャウゥゥ~ン……」
 さらに狼を威嚇するようにひと鳴きした白猫に、狼がなぜか気圧されるように後退する。
 己が身に及ぶ危険に恐怖を覚えたか、子供が白猫を抱える手にぎゅっと力が籠るが、白猫は痛がることもせず、子供を守るように威圧し続け、守る。
 ――従者にとって、狼は所詮、惜しくない程度の軽い命。
 ならば、守る意思が強くこめられたねこさんにかなう道理は、ない。
 しかし、無垢な命が散らされかけたのも、また事実。
 ――それが、アトシュの怒りに火をつけた。
「てっめぇぇぇぇ!! 剣よ、この一撃を手向けとすべく、その力を奮え!」
 怒りを爆発させたアトシュは、従者の背後から魔力を練り上げ錬成した漆黒の短剣を投げつける。
 ――ザシュッ!!
「ぐっ……!!」
 それは狙い違わず従者の背中を貫き、従者に呻き声を上げさせた。
「狼藉者め、何処に……ッ!?」
 険しい表情を浮かべながらゆっくりと振り向いた従者の目の前に、突然アトシュが現れる。
 ――漆黒の短剣は、それそのものが武器であり、アトシュを導く道標。
 投擲後、即座に転移したアトシュは、腐敗の呪詛を纏わせたTyrfingをためらわず真っ直ぐ突き出す。
 ――ザシュッ!!
「が、は……っ!!」
 従者は至近距離から深々と太刀型の神器を胸に沈められ、呻きながら吐血。
「お、おにい……ちゃん」
「だーいじょうぶ。兄ちゃんがみんなを守ってやるから、な?」
 恐怖におびえるか細い子供の声に気づき、アトシュは笑顔を向けるが、さすがに疲労と負担が蓄積し、息を切らし始めているのは否めない。
「家畜にすらならない猟兵……我々吸血鬼に抗う愚か者」
 胸を貫かれてもなお、呪詛を籠めたような低い呻き声が従者の口から紡がれ。
「今ここで、狼の天誅を受けるがいい!」
 息を切らし始めていたアトシュに狼の視線が向いた、その時。
「オイタはそこまでだよ!」
 ――ズバッ!!
 一喝と共に連射された緋色の衝撃波が、アトシュに飛び掛からんとした狼を一気に斬り裂き、蹴散らした。
 続けて従者の顔面に小さな狐が飛び掛かり、その視界を防ぐとともに、炎の疾風と化して飛び込んできた戦乙女の赤熱した槍が、従者の脇腹を貫いた。
「あ、あがあああああああ!!」
「さっさと主人の下へ行きな!!」
 脇腹を貫かれよろめいた従者は、忍び寄った者に背中から足元を掬われ、その場に転倒。
 すぐさま起き上がった従者の視線は、足払いをかけた者――響に向いていた。
 ――従者の長口上のおかげで、居場所を突き止めていたのだ。
「ここにも、家畜にならぬ者が……っ!!」
 従者の表情が、目的を阻む猟兵への怒り一色に染まる。
 脳裏まで怒りの赤に染め上げられ、余裕を失った従者の口から、絶叫と共に凄惨な言の葉が命令となって迸った。
「狼たちよ、家畜と家畜にもならぬ者を全て食らい尽くしなさい!!」
「「「「ガウウウウウウ!!」」」」
 絶叫にも近い声の命令を受けた狼たちは、その場にいる従者以外のすべての存在に牙を剥いて襲い掛かった。
 このままでは、全員身体を喰いちぎられ、鮮血で地面を濡らすところだが……。
「子供は襲わせねえ!!」
 アトシュが残る魔力を振り絞って子供に闇の結界を施すと、子供を襲うつもりだった狼たちは近くにいるはずの子供を見失い、牙を剥いてうろつくだけの存在と化す。
「コーン……」
 真横から狼に突撃された子狐は、ひらりと身を翻して狼の突撃を避け。
 真正面から突撃された戦乙女は、無言のまま狼たちが飛び掛かるのに合わせ、カウンターで赤熱した槍を横薙ぎにふるい、狼たちを両断。
 そして、響の上空から飛び掛かった狼は、響の代わりに残像の彼女を食らい、結果的に空を切った咢と四肢を立て直せずに地面に叩きつけられた。
 すかさずアトシュのTyrfingが狼を片っ端から薙ぎ倒し、その身に腐敗の呪詛を施して無力化。
「狼たちを……!!」
「これでも喰らいな!」
 顔面蒼白と化し、怒りに打ち震える従者が新たな動きを見せるより早く、残像を囮に狼の突撃を回避した響が、怒りで赤ではなく白く輝くブレイズランスを突き出した。

 ――ズブッ!!

「が、が……ッ!!」
 ブレイズランスは深々と喉に突き立ち、高温で声帯を焼き切り、従者に呪詛を吐くことすら許さない。
「骸の海で主と一緒になるがいいよ!」
 響の怒声とともに、さらにブレイズランスが深くねじ込まれると、従者は声すらあげなくなり、超高温の熱で喉を、胴を、四肢を、頭を焼かれていく。
 暫く後、喉から白熱したブレイズランスが引き抜かれると、従者はゆっくりと仰向けに倒れ、灰と化して吹き上げられた。

「なんとかなったか……」
「ああ、早く聖堂にいる猟兵に知らせよう」
 従者が灰となり消滅したことを確認したアトシュと響は、子供の安全が確保されたことを伝えるべく、聖堂へと駆け出した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

真宮・奏
義兄の瞬兄さん(f06558)と聖堂の方へ。

単独行動の母さんも心配ですが、任された以上、聖堂に居る方は護りませんと。ウルカの従者ですか。本当にタチが悪い。

まず【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】で防御を固め、従者の誘惑の言葉に対抗して絢爛のスピリトーソを発動。生き生きとした踊りで悪意に屈しない事を示し、絶対に住民の方を救うという意志表示をします。ウルカを倒したのは自分達と告げ、敵の攻撃を引き受けた上、【シールドバッシュ】で吹き飛ばし、多くの敵を【衝撃波】で吹き飛ばします。醜い悪意に無垢の命を奪わせたりしません!!護る事、これが私の信念です!!


神城・瞬
義妹の奏(f03210)と聖堂の方へ。

まあ、母さんは大丈夫でしょう。僕達はやるべき事をやりましょう。早く行かないと犠牲者が出てしまいます。

【オーラ防御】を展開したら、住民の皆さんの前に壁となるようにたって月光の騎士を発動。ここから動かない不退転の意志を持って、移動距離を犠牲に装甲値を減らします。住民の人達に近付く前に【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】【武器落とし】を仕込んだ【結界術】を【範囲攻撃】化して敵を拘束してしまいたいですね。もちろん、ウルカを倒した事を自分達といい、攻撃を引き付けることを忘れずに。拘束を抜けて来た敵を【衝撃波】で撃退していきます。悪逆はここまでです!!



●信念の踊りとゆるぎない絆は、希望の灯となって
「ウルカの従者ですか……本当にタチが悪い」
 珍しく吐き捨てるように怒りをあらわにする真宮・奏の視線の先にあるのは、淡い灯に囲まれた聖堂。
 先んじて街中に駆け出した母に聖堂の対処を託された以上、聖堂にいる市民たちは必ず護らないといけない、とは奏も思っているのだけど。
 それでも、実の娘としては、一方的に言い残していった母が心配でならない。
 奏の怒りの裏にある不安を感じ取ったか、神城・瞬が奏の肩にぽんと手を置いた。
「まあ、母さんはうまくやってくれるはずですから、大丈夫でしょう。だから、僕たちはやるべきことをやりましょう」
「そうですね」
 肩に置かれた温かい手に不安をぬぐわれたか、頷く奏。
「早く行かないと犠牲者が出てしまいます、急ぎましょう」
「はい!」
 母に対する無言の信頼を胸に、奏と瞬は急ぎ聖堂へと駆け出した。

 奏と瞬が聖堂に駆け込んだ時、従者たちは市民たちに狼をけしかけつつ、滔々と語りかけていた。
 ――カンッ!!
「きゃああ!」
 ――キィンッ!!
「あああ、助けて……!!」
 聖堂内は、市民たちの悲鳴と、何やら甲高い音が支配している。
 どうやら狼たちは、市民たちを囲むように展開された黄金の結界を通り抜けることが出来ず、甲高い音と共にはね返されているようだ。
 恐らく、先んじた猟兵が施し、残していった結界のようだが、この結界のおかげで今のところ市民たちに犠牲者は出ていない。
 だが、願いと共に練り上げられた結界は、攻撃を阻んでも語り掛けられる声までは阻止できない。
「家畜どもよ、抵抗は無意味です」
「諦めて、大人しく狼の牙に身を委ねなさい」
 狼が無力化されても構わず、従者たちは蠱惑的な声で主の素晴らしさを滔々と語り続けている。
「愚かな家畜たちよ、あなたたちはウルカ様の素晴らしさを覚えているはずです」
「ウルカ様に仕え、傅き、血を捧げることの素晴らしさを」
「ウルカ様に与えられた幸福感を」
「証は消えども、その身体は、その心は覚えているはずです」
 従者たちの言葉にうっかり耳を貸してしまった市民たちは、動揺を隠せない。
「なん、だと……?」
 市民たちの同様につけこむように、従者たちはさらに語り掛ける。
「さあ、思い出すのです」
「ウルカ様に与えられた快楽を、幸福を」
「ウルカ様のために生きる事こそ、全てであることを」
 そして、従者たちの睦言は……市民たちの身に刻まれし記憶をよみがえらせた。

 ――吸血された時の至福のひと時を。
 ――吸血鬼に傅くこと、そのもので齎される幸福感と恍惚感を。
 ――そして……ウルカ様に仕える家畜であったことを。

「うあ、あ……」
「わたし、たち、は……」
 洗脳によって無理やり従属を強いられていたとしても、その身に刻まれた記憶と幸福に基づく経験は、容易に消せるものではない。
 蠱惑的な声を耳から流し込まれ、心身に刻まれた記憶の忌まわしさにぶるりと身震いする市民たちの瞳に宿るのは、己が心身を吸血鬼の自儘にされていたことへの絶望と、仕えるべき主を失い未来を見通せないことへの諦念。
「そうか、それなら……」
「私達に、生きる道は……」
 己が身を蝕む忌まわしい記憶に抵抗を諦めた市民たちが、ひとり、またひとりと黄金の結界から足を踏み出し、従者に身を委ねようとするが。
「皆さん、あなた達に従属を強いていたウルカを倒したのは、私たちです!」
 奏が市民を押しとどめるように割り込み、黄金の結界の中へ市民たちを押し戻し。
 そして、悪意に屈しない意思を見せるかのように、元気いっぱいのダンスを踊り始めた。
 ――タンッ、タタタンッ。
 軽やかなステップと、きらきらした光を虚空に描くターンは、市民たちの視線を従者たちから奪い。
「たあっ!!」
 掛け声と共に空へ舞い上がるようなジャンプは、市民たちの耳を奏に釘付けにする。
 奏のダンスは、絶望に満たされた心に一筋の光明を与え、市民たちの絶望を振り払う力を与えていた。
 この機を逃さぬ、と、瞬も急いで割込んだ。
「皆さん! あなたたちの身と心を支配し、血を奪い取っていた吸血鬼は、僕たちが倒しました!」
 瞬はその場で動かぬとの不退転の意思を胸に、六花の杖を必殺モードに変形させて護りを固めつつ、市民に訴えかける。
 その訴えを聞いた従者たちの表情が、一瞬にして怒りに満ちた。
「家畜……いえ、家畜にすらならぬ者、貴様らが!!」
「何の価値もない輩が、ウルカ様を!!」
 瞬の肯定に、従者たちはそろって激高し、糾弾する。
「家畜どもよ、ウルカ様を慰める贄となりなさい!」
「ウルカ様を害した愚か者よ、その命を持って贖いなさい!」
 従者の心臓を犠牲に召喚された多数の狼が一斉に放たれるが、それらは全て瞬へ向かっていた。
 ――市民を贄として捧げる意思より、仕えるべき主を害した猟兵への殺意が勝ったのだ。
 しかし、瞬が必殺モードに変形した六花の杖を一振りすると、杖を中心に淡い銀の結界が一気に広がった。
 それは奏や市民を素通りし、今にも飛び掛かろうとしていた狼の四肢と口を絡め取った。
「キャウッ!!」
「ギャンッ!!」
 銀の結界に触れた狼は、次々と銀の帯で四肢と口を拘束され、ただその場でもがき苦しみ、やがて麻痺毒が全身を回って力尽きる。
 だが、他の狼の影に隠れ、拘束を逃れた数匹の狼が、瞬の喉笛を狙い飛び掛かった。
 咄嗟に六花の杖で喉をかばいつつ、結界を攻性結界から防御結界へと変換し、守りを固めようとするが、狼の牙は結界を容易く噛み破り、そのまま瞬の腕に噛みついた。
「くっ……!!」
 咄嗟に変換したせいか、防御結界の練り上げが不十分だったのか。
 瞬は両腕に走る激痛を必死にこらえつつ、市民のほうに狼を行かせまいと再度攻性結界を展開した。
「瞬兄さん!」
 狼に噛みつかれている義兄を見て、奏が悲鳴をあげる。
「大丈夫ですから、奏はやるべきことを!」
「はい!」
 義兄の声と新たに展開された攻性結界に後押しされた奏は、己に向かった狼を全てエレメンタル・シールドで受け、そのまま思いっきり押し返して吹き飛ばす。
 狼たちがよろめいたところで取り出したのは、瑠璃の短刀。
「吹っ飛んでください!」
 瑠璃色の匕首を真っ直ぐ縦に振り下ろすと、空間をふたつに断ち切るような瑠璃色の衝撃波が出現。
 それは瞬に噛みついている狼にも真っ直ぐ向かい、次々と吹き飛ばした。
「愚かな、愚かな」
「呪われし血を持つその男を見捨てれば、良いものを」
「我らが吸血鬼にすらなれず、家畜にすらならなかった者など、存在価値すらない」
 瞬を守ろうとする奏の行動を、嘲笑う従者たち。
 おそらく、瞬が半人半魔のダンピールであることに気が付いたのだろう。
「我らに従い、その者の命を差し出しなさい」
 魔力の籠った従者の声が、蠱惑的な響きを持って奏の耳を突き、脳を蕩かすとともに心を揺さぶろうとする。

 ――だが。

「醜い悪意に、無垢の命も、ここにいる大人たちの命も、瞬兄さんの命も奪わせたりしません!!」
 確固たる決意と絆、従者への怒りを糧に、奏は一喝と共にあっさりと従者の声を振り払う。
 固い絆で結ばれたきょうだいは、その程度の睦言で引き裂くことはできない。
「これが私の……信念の一撃です!!」
 あっさりと睦言を振り払われ驚く従者に、奏は大きく踏み込み、エレメンタル・シールドでシールドバッシュを敢行。
 盾の強烈な一撃でよろめいた従者に、奏はさらに1歩踏み込み、瑠璃の短刀を横薙ぎに振るって瑠璃色の衝撃波を放った。

 ――ゴウッ!!

「ああああ!」
「口惜しや……家畜以下の存在に!!」
 奏の強き信念のこもった衝撃波に身を引き裂かれた従者たちは、次々と灰と化し、消滅した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…街に向かった吸血鬼は他の者が対処してくれるみたいね
…ならば私は聖堂に向かい残った吸血鬼共を殲滅するまで

…どの道、周囲の民を長時間は護りきれないもの
ならば最初から全力で闘い、敵の注意を引きつける

"血の翼"を広げ高速の空中戦機動で聖堂に切り込みUCを発動
大鎌に吸血鬼のみを浄化する陽光の魔力を溜めてなぎ払い、
太陽のオーラで防御を無視して浄化する光属性攻撃を放つ

…そこまでよ。これ以上、お前達の好きにはさせないわ

…今日、この時を以てお前達の支配は潰える

…さあ、太陽の光に灼かれて滅するがいい

今までの戦闘知識から敵の殺気を暗視して行動を見切り、
敵の攻撃は武器(大鎌)で受け流し早業のカウンターで迎撃する



●闇を照らす陽光は、吸血鬼を滅す光となりて
「街に向かった吸血鬼は他の者が対処してくれるみたいね」
 他の猟兵が街中を走り回り、空から捜索しているのを見たリーヴァルディ・カーライルは、漆黒の大鎌を手に街中に視線を落とす。
 おそらく、街中にいる従者は、このまま上空と地面から追い続ける猟兵達に任せても大丈夫だろう。
「……ならば私は、聖堂に向かい残った吸血鬼どもを殲滅するまで」
 たとえ確実に気を引く手段があったとしても、周囲の市民を長時間護り切るのは困難。
 ならば、リーヴァルディがやることは、自然と定まる。
 ――すなわち、最初から全力で戦い、敵の注意を引き付けるのみ。
 リーヴァルディは背中から血色の魔力の双翼を広げ、ひとつ大きく羽ばたき空へと身を躍らせた。

 血色の翼で滑空しつつ一気に聖堂へ突入したリーヴァルディの目に真っ先に入ったのは、黄金の結界に守られた市民たちと、数名の従者。
 ――どうやら、ある程度までは先の猟兵達が対応してくれたようだ。
 しかし、かろうじて攻撃を免れた従者たちは、リーヴァルディの姿を認めるや否や、腹の底から響く声で彼女を糾弾する。
「ウルカ様を害した狼藉者よ……」
 リーヴァルディは滑空したまま、狼藉者呼ばわりした従者に接近。
 そのまま無言で漆黒の鎌を大きく振りかぶり……。
 ――斬!!
 一息で従者の首を刈り取った。
「まだ家畜にすらならぬ反逆者が……」
 さらにリーヴァルディを糾弾する声は続くが、構わず彼女は漆黒の鎌を空高く掲げる。 
「……天地を照らす日輪よ、我が手に光を宿すがいい」
 リーヴァルディが呪を唱えると、漆黒の鎌が突如眩しく輝き始める。
 ――それは、漆黒の鎌が小さな小さな太陽と化したかのよう。
「これ、は……!」
「ああ、ああ……!!」
 至近距離から陽光を浴びた従者のひとりが、あっというまに全身の細胞を死滅させられ消滅。
 的確に吸血鬼のみを灼き尽くす、疑似的な太陽光を至近距離から浴びては、吸血鬼とてひとたまりもなかった。
 その光は、吸血鬼にとっては細胞ごと無力化する致命的な毒となり、
 ――太陽を知らぬ市民たちにとっては、希望の光となる。
 希望の光に釘付けになる市民たちとは対照に、従者たちは必死に手を翳し己が身を守ろうとするが、半人半魔のリーヴァルディにとっても、この陽光は己が命を削る毒。
 持たせられるのはせいぜい1分半だが……残った従者の数を考えれば十分だろう。
「狼たちよ、喰らいなさい!」
 命に忠実にリーヴァルディに飛び掛かる狼の動きを、しかしリーヴァルディはあっさり見切ってまとめて斬り裂き。
 続けて破れかぶれに突き出された従者の拳は、鎌の柄であっさりといなす。
「あり得ません、あり得ません」
「家畜にすらならぬ、呪われし輩が私たちを滅ぼすなど……!」
 わずかに照らされただけでも皮膚がただれてゆく従者たちは、恐慌状態に陥るも。
「思い出しなさい、ウルカ様に与えられた素晴らしき日々を!」
 喉の奥から振り絞るような声を睦言と変え、市民たちの耳に注ぎ込んだ。

 しかし、絶望を呼び覚まされたはずの市民たちは。
 ――黄金の結界から足を踏み出そうとは、しなかった。

「家畜の身で、受けた恩を忘れたのですか!」
 動かぬ市民たちに従者たちが必死に訴えるが、闇に覆われた現在のダークセイヴァーではあり得ぬ程に降り注ぐ太陽のオーラで大幅に弱体化した従者の睦言では、もはやリーヴァルディや市民たちを篭絡することは叶わない。
「もう、市民たちは思い通りにならない」
「狼藉者が、家畜にすらならぬ者が……!」
 従者たちの雑言を、リーヴァルディは聞き流しながら、光を宿した鎌を振り上げる。
「今日、この時を持ってお前達の支配は潰える」

 ――太陽の光に灼かれて滅するがいい。

 リーヴァルディの冷淡な声と共に、鎌の形に変形した陽光が残った従者の首を纏めてはね飛ばし、一瞬にして蒸発させる。
 残った胴体は力を失いどう、と倒れた後、漆黒の鎌に宿った陽光に浄化され、消滅した。

 かくして、吸血鬼ウルカに仕える従者は、全て排除された。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『人々の笑顔の為に』

POW   :    食料の運搬、建物の修理など力仕事をする

SPD   :    村々を巡って困っている人を探す

WIZ   :    明るい歌や踊りで元気づける

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●地底都市・聖堂
 地底都市は、吸血鬼ウルカ、及びその従者の支配から解放された。
 常に響いていた聖句は、もはや二度と紡がれることはない。

 しかし、聖堂に集まった市民たちの表情は、どうにも浮かない。
 無理もないだろう。吸血鬼に長年洗脳され、身も心も支配され、家畜として飼いならされた記憶は、脳裏に、己が身に焼き付いてしまっているのだ。

 一方、一部の市民たちは吸血鬼の支配から解放してくれた猟兵達に、わずかに羨望の眼差しを向けながら礼を述べている。
「ああ……ありがとうございます」
「あなた達のおかげで、我々は……」
 市民たちが猟兵達に礼を述べる声は、どこかぎこちないけど。
 おそらくそれは、長年心からの礼を述べることがなかったから。

 ……そして。

 人々の心身を掌握し、導いていた支配者がいなくなった今。
 市民たちはこれからどのように暮らしていけばいいのか、途方に暮れている。
 だが、猟兵の助力があれば、偽りの笑みや幸福しか知らなかった市民たちの心を、少しでも癒すことができるはず。
 その上で、『門番』を倒されたことを知った他の吸血鬼がこの地底都市に攻め込む前に、市民たちに地上の存在を伝え、誘う必要もあるだろう。

 長年知らぬうちに蹂躙されてきた市民たちの心を癒すために。
 そして、市民たちを地底から地上へと誘い、人類砦に保護してもらうために。

 猟兵達は、手分けして市民たちに接し始めた。


※マスターより補足
 第3章では、偽りの笑みしか知らなかった市民たちに笑顔を取り戻させ、地上の存在を伝えて人類砦に誘って下さい。
 POW/SPD/WIZは一例ですので、ご自由にプレイングをおかけくださいませ。
 なお、市民たちは一通りの生活能力は身についております。

 聖堂に集まった市民だけでなく、家屋で待つ子供たちへのアプローチも可能です。
 そちらを希望される場合は、プレイングでご指定ください。

 この章は、グリモア猟兵館野・敬輔の同行が可能です。
 もし敬輔の手助けが必要ならば、プレイングでご用命くださいませ。

 それでは、地底都市におけるつかの間のひと時を。
七那原・望
家屋で待つ子供達の所へ行きましょうか。

みんな、良いですか?この黄金のりんごは特別なりんご。触ると美味しい物がたくさんある場所に連れて行ってくれるのですよ。

【望み集いし花園】を発動し、みんなをその中へご招待なのです。

ここにある果物は好きなだけ食べて良いのですよ。
出ようと思えば簡単に出られるので、他にも連れて来たい人がいたら連れて来て良いですよ。

アマービレでねこさんをたくさん呼んだり、一緒に歌を【歌ったり】【踊ったり】しながらみんなと楽しく過ごすのです。

此処は期間限定の場所でずっと居られるわけではないのです。

ただ、地上には自由があるのです。
誰にも縛られずに本当の幸せを求める権利があるのです。



●黄金の果実は子供たちを未来へと導いて
 七那原・望は、聖堂に集まった大人たちのことを他の猟兵に任せ、家屋で待つ子供たちを集めるために広場に向かっていた。
 子供たちは其々の家にいるが、従者から子供を守るために望が送り込んだねこさんが一緒にいるはず。
 そこで望は、子供たちの下にいるねこさんに念を送り、広場に呼び集めた。
「あ、猫さん待ってよー!!」
 ねこさんに懐いていた子供たちは、突然腕の中から逃げ出し、走り出したねこさんを追いかけ始めた。
 ――子供たちには、ウルカの洗脳は施されていない。
 洗脳済みだった大人たちに言い含められていた故に、日々の生活に疑いは持っていなかったけど、魔力で精神を捻じ曲げられたことのない子供たちの反応は、無邪気で明るい。
 ねこさんを追いかけ広場に辿り着いた子供たちが見たのは、背中から純白の両翼を生やし、黒い布で目を隠している、小さな少女――望と、彼女の足元に集まっているねこさんたち。
「こんにちは、少しお話いいでしょうか?」
 大人びた声で話しかけられた子供たちは、「いいよ」と頷いていた。

 望は小さな黄金の林檎を取り出し、子供たちに見せる。
「みんな、良いですか? この黄金の林檎は特別な林檎」
「とくべつ?」
「はい、触ると美味しい物がたくさんある場所に連れて行ってくれるのですよ」
「美味しいもの!?」
 子供たちの目がぱあっ、と輝いた。
「さあ、みんなをご招待なのです」
 望は小さな黄金の林檎を掲げながら、穏やかに歌い上げる。

 ――あなたがそう望むなら……誘いましょう。
 ――ここは世界から隔絶された花園。
 ――わたしというセカイの支配域。
 ――小さく穏やかなわたしのせかい。

 望の声に誘われるように黄金の林檎に触れた子供たちが、次々と中へ吸い込まれていく。
 吸い込まれた子供たちが目にしたのは、あらゆる果物の木が生えた夜明け前の花園。
「わぁ……っ!」
「こんな光景、初めて見た!!」
 子供たちが初めて見る光景と果物が実る木に目を輝かせ、興味深そうに触れ。
 そして、果物が食べられそうだと気づくと、望をじーっと見つめる。
 その視線を受け取った望は、口元に柔らかい笑みを浮かべ、頷いた。
「ここにある果物は、好きなだけ食べて良いのですよ」
「いいの!?」
「わーい、いただきまーす!!」
 子供たちは我先にと木々に殺到し果物をもぎ取って。
 一口齧って新鮮さと甘さに目を白黒させつつも、嬉しそうに頬張る。
「ここからは出ようと思えば簡単に出られるので、他にも連れて来たい人がいたら連れてきて良いですよ」
「じゃあ、じいちゃんとばあちゃんを後で連れて来るよ」
 その後、子供たちが聖堂まで走り、足腰が弱っている年老いた市民たちを連れて来たのだが、それはまた別の話。

 望は共達・アマービレをひとふりして、ねこさんをさらに呼び寄せ。
 時には子供たちを前に歌い、逆に子供たちから歌や踊りを教わりながら、望と子供たちは共に楽しいひと時を過ごす。
 一通り楽しんだところで、望は再度子供たちを集め、話し始めた。
「ここは期間限定の場所で、ずっと居られるわけではないのです」
「なんだぁ……」
 落胆する子供たちを前に、ただ、と望は一呼吸置き、告げる。
「地上には、自由があるのです」
「じゆ、う……?」
「誰にも縛られずに、本当の幸せを求める権利があるのです」
「しあわ、せ……?」
 子供たちは、望が口にした「自由」「幸せ」の意味を測り兼ねている。
 今の子供たちに、「幸せ」が意味することはおそらくわからないけど。

 ――それでも、きっと理解する時が来るはずだから。

「これから向かうのは、幸せを探せる場所ですよ」
 無邪気な子供たちの未来に幸あれと願いを込め、望はアマービレをもう一振りし、子供たちに祝福を与えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加

あれだけに刷り込みを脅迫気味に何日もされたんだ。幾ら解放されたって違う生活に入れたって戸惑うのは当たり前だろう。何とかしないとね。

まず、手作りの燻製の肉や手作りのクッキーを差し出す。ああ、ここから出れば地上に砦がある。1つ知っているが、少し不便だが安定した生活がある。行くには苦労があるだろうが、アタシ達は応援するよ。良ければ、赫灼のグロリアで歌を歌おうかね。まあ、騒がしいのに支障があれば、【歌唱】【パフォーマンス】で和やかに人々を励ます歌を口ずさもうかね。住民達の新たな道に光があるように。出来るだけの事はするよ。


真宮・奏
【真宮家】で参加

あんな悪辣な存在に何度も囁かれたんです。その生活から急に新たな生活に行くのは、大変でしょう。でもここから出て、地上へ出る事をお薦めします。ここは、住民達を苦しめた存在が蔓延ってましたし。

まず、【手をつなぐ】で跪いてご挨拶。疲れた身体には甘いものです。ドライフルーツやクッキーを差し出します。地上には人類砦という所があります。こんな世界ですから危険な所には間違いないですが、安定した人間らしい生活を送れます。そうですね、まずは皆さんを励ます為に絢爛のクレドを踊りますか。どんなどん底にあったって、人はそこから立ち上がる力があります。皆さんの新しい道、私は応援しますよ。


神城・瞬
【真宮家】で参加

実際に洗脳した黒幕に会ってみると、あれだけの事をされていた状況から急に解放されると逆に戸惑いますよね。アレらはそれだけの脅威に値する存在でした。でも、少しでも人間らしい生活を送れるようにサポートするのも使命ですね。

まず、【優しさ】を持って話しかけ、人類砦の事を。確かに危険なのは変わりないですが、安定した暮らしが出来ます。今まで奪われていた自由もありますし、色々な事が学べます。温かい暮らしが、確かに営めますよ。少しでも皆さんの力になるように精霊のフルートで清光のベネディクトゥスを奏でます。これからの皆さんの道のりは祝福されたものとなるでしょう。私達家族が、保証しますよ。



●清浄なる歌は、人類砦へと導く道標となって
 ――別の猟兵が、街中で親を待つ子供たちを集めている頃。
【真宮家】の3人は、聖堂に残り途方に暮れている市民たちを眺めていた。

「あれだけの事をされていた状況から急に解放されると、逆に戸惑いますよね」
 彼らの支配者を目の当たりにし、交戦した経験から、神城・瞬はどこか納得したような表情を浮かべていた。
 吸血鬼ウルカとその従者は、市民たちの生殺与奪を完全に掌握し、彼らを長年支配してきた存在。
 支配者から長年刷り込まれ、知らず知らずのうちに市民たちに連綿と受け継がれてきたのは、「支配されることの素晴らしさ」という歪んだ認識。
 ……それら負の遺産を、正気に戻った人々の記憶から拭い去るのは、簡単なことではない。
 義兄の後を継ぐように、真宮・奏がひとつ頷く。
「あんな悪辣な存在に何度も囁かれたんです。その生活から急に新たな生活に行くのは、大変でしょう」
 ――でも、だからこそ。
「私達は、皆さんにこの都市から出て、地上へ出ることをお勧めしたいです」
 住民たちを苦しめた存在――『辺境伯の紋章』を宿した吸血鬼は、ウルカだけではない。
 他の吸血鬼が空白地帯と化したこの都市を見つける前に、市民たちを地上へと誘導したいのだけど。
「地上へ、か……?」
 突然、「地上」という言葉を出され、戸惑う市民たち。
 ――彼らはここが地下と言う概念すら、持っていない。
「ここではない、どこかに……?」
「あー、ここが地下とは思っていないよねえ。それに……」
 市民の反応を見て、左手を腰に当て、右手で頭を掻きながら、響がフォローするように呟く。
 ――市民たちの声音から、拒否するような空気を感じたから。
「……ずっと脅迫気味に刷り込みをされてきたんだ。幾ら解放されたって違う生活に入れたって戸惑うのは当たり前だろう。何とかしないとね」
「ええ、そうですね。彼らに少しでも人間らしい生活を送れるようにサポートするのも使命ですから」
 義母に同意するように頷いた瞬は、奏が腰に下げていた袋に手を伸ばすのを確認し、口を開く。
「では、手始めに……」
「景気づけの食事といこうかね」
 市民たちの顔色があまり良くないのを見た響が、奏と同じように腰の袋に手を伸ばした。

 偽りの幸福を植え付けられ、偽りの崇拝対象に血を捧げ続けてきた市民たちの表情は浮かないし、顔色も良くない。
 特に、長年血を奪われ続けた壮年や老年の市民たちは、見るからにやつれている。
 ――栄養補給は、急務ではあった。
 そこで響が市民たちに差し出したのは、手作りの燻製肉とクッキー。
 燻製肉を少しずつ食する市民を、響はしばらく見守ることにして、そっと距離を置く。
 少し距離を置いて見守っていると、市民たちの中で最も若い女性が響にそっと近づいてきた。
「あの、ちょっといいですか……? お話、聞いてほしくて」
「構わないよ」
「ありがとうございます」
 まだあどけなさの残る顔を響に向けながら、女性はゆっくりと響に話し始める。
 ――それは、この都市の支配の構図。
 女性曰く、この都市に住まう市民たちは、一定の年齢に達すると、他の市民の手でウルカの下へ連れられ、首筋を噛まれ、洗脳を施されてきたらしい。
 もし頭の片隅に疑問を残しても、周りが既に洗脳済みである以上、逆らうことすらできず、無理やり連れてこられた上、ウルカへの供物として洗脳を施された。
「ウルカ様……あの吸血鬼に逆らってはいけない、従う事こそ素晴らしいとは、延々と父と母に説かれてきました。だから私も、何かおかしいとは察しつつも、拒否することはできなくて」
「……それでは簡単に逃れられるわけがないね」
 小さく舌打ちする響。
 おそらく、この少女の両親も、祖父母に延々と説かれ、それを受け入れることが当然と思わされてきたのだろう。
 ――「偽りの幸福」による支配は市民たちの手で維持されてきた、と言っても過言ではない。
「私もここに連れてこられた時は不安でいっぱいだったんですが、吸血鬼に首筋に噛みつかれた瞬間、不安も恐怖も何もかも吹き飛んで、この人だけに仕えればいいって思うようになって、幸せで頭がいっぱいになって……」
「……あー、そこまでで十分だ。ありがとう」
 女性の表情に多少の恥じらいを見て取った響は、割り込んで話を止める。
 ――今の女性の証言で、この都市の支配構造は十分把握できたから。
 この女性をウルカに差し出し洗脳させたのは、確かに市民たち。
 だが、市民たちもウルカに延々と唆されてきたのは、事実。
 しかし、市民たちが維持してきた支配のサイクルは、猟兵達の手で打ち破られた。
 ――ならば、今こそ。
「だったら、アイツが消えた今が地上に出る時だね」
「地上……?」
「ああ、ここは数多くある地下空洞のひとつだからね」
「ここが地下、ですか!?」
 女性が大声を上げて驚いた。
「ああ、地下さ。だから……」
 響はわざと大きな声で、他の市民たちにも聞こえるように告げる。

 ――アタシはもっと広い世界に出よう、と言っているのさ。

 一方、瞬と奏は、別の市民たちの集団を前に人類砦の事を話していた。
 突然、奏に跪いてあいさつされた時には、市民も戸惑いはしたものの。
 奏に差し出されたドライフルーツやクッキーを口にすると、少しずつ緊張もほぐれてゆく。
「疲れた体には甘いものが良いですから」
 乾燥させた果物は、栄養価も増し、市民たちの身体を癒し。
 手作りのクッキーの優しい甘みは、心を癒す薬となって市民たちの心を落ち着かせてゆく。
「落ち着いたところで、僕の話を聞いていただけないでしょうか」
 市民たちの緊張が取れるのを待ち、人類砦の話を切り出したのは、瞬。
 この都市は、実は地下にあること。
 地上には、吸血鬼に抗う人類の拠点たる「人類砦」があること。
 最も近い砦には、既に話をつけ、この都市の市民たち全員を受け入れてもらう体制が整っていること。
 順序だてて説明する瞬の現に、皆耳を傾けてはくれるけど。
「……ここよりひどい場所じゃ、ないだろうな?」
 瞬の説明を、都合よすぎと感じたのか。
 それとも、全く状況が理解できないからか。
 壮年の男性が瞬に疑問を投げかけるも、瞬は柔らかく頷いて。
「確かに吸血鬼の支配が残っていますから、危険なことに変わりはないです」
「そうか……」
「ただ、人類砦には守り手もいますし、何より安定した暮らしができます」
「安定した暮らし……?」
「今まで知らず知らずに奪われていた自由もあります、色々な事が学べます」
 この地底都市での生活は、全てウルカに血を捧げるためのもの。
 ウルカに新鮮な血を捧げるために、日々健康に気を使い。
 ウルカのご機嫌を取るために、身なりに気を使い。
 そして、ウルカに求められれば、喜んで血を捧げる。
 ――そこに、市民たちの意思で選び取れる自由は、一切存在しなかった。
 しかし、地上では……自ら選ぶ自由が存在する。
 そう、瞬は語る。
「それに、温かい暮らしが確かに営めますよ」
「まあ、行くには苦労があるだろうが、アタシ達は応援するし、護衛もしよう」
 いつの間にか合流していた響が、さりげなく義理の息子の言を捕捉する。
 瞬が改めて見渡すと、いつしか燻製肉を口にしていた市民たちも、瞬の言に耳を傾けていた。
「ところで、その砦の名は……?」
 市民からの問いに、響はさりげなくグリモア猟兵から聞き出しておいた砦の名を告げた。
「ヴェリーナさ」
 その言葉の意味を理解した市民たちが、息を呑んだ。

 ――それは「守護者」を意味する言葉だから。

 かつて響たちは、ヴェリーナ砦を襲撃した無数の飛蝗と女騎士を退け、彼らの冬ごもりの支度を手伝ったことがある。
 あの時は、ヴェリーナと言う名の由来を聞く余裕はなかったけど。
 おそらく、名づけた少年少女たちは、その名そのものに希望と抵抗の意思を籠めたのだろう。

 ――吸血鬼の脅威から、人類を守るべき守護者たれ……と。

 あの時蓄えた食糧だけでは、この街の人々の分まで賄うのは極めて困難だが、この街の蓄えも持っていけば多少は補えるはず。そう響は考えていた。
 もっとも、蓄えや各々の家財道具を持っていく手段は考えなければならないが……。
 そこで響は、別の猟兵が自分に向ける視線に気づく。
(「何か、彼に案があるようだね……?」)
 別の猟兵が任せとけ、と片眼を閉じて合図をしていることに気づき、響は一つ頷いていた。

 響たちの話を聞いた市民の表情は、やや和らぎつつあったが。
 それでも、彼らの背中を押すには、まだ足りない。
 ――ならば、ここは音楽一家らしく、歌と踊りで鼓舞しよう。
 口火を切ったのは、響。
「良ければ、少し歌と踊りでも披露するかね」
「歌と踊り……?」
 市民たちも子供たちに対しては披露したことはあるが、その程度。
 ――ウルカに見せたところで、喜ぶはずもなかったから。
「見せてもらえないだろうか」
 好奇心に惹かれて頼む市民たちに、響は間髪入れず頷く。
「もちろん、市民たちの新たな道に光があるようにね」
「僕もこれで、一曲奏でましょう」
 精霊のフルートを取り出しながら、瞬も笑顔で語り掛ける。
「これからの皆さんの道のりを祝福するために」
「ええ、皆さんの新しい道、応援しますよ」
 奏が頷きながら突然準備運動を始めたのには、市民たちも面食らったけど。
「皆さんを励ますために、私が踊りをひとつ」
「ああ……」
 希望を再び打ち砕かれそうになった時、突然踊り出した奏のことを思い出し、得心行ったように頷く市民たち。
 ――あの踊りに、勇気をもらったから。

 そして、市民を前にした響の口が奏でるのは、彼らの前途に光を与え、励ますために歌い上げられる赫灼のグロリア。
 それは瞬の精霊のフルートから奏でられる清光のベネディクトゥスと重なり、静と動、水と炎が織りなし、市民たちの心を昂らせるハーモニーと化し。
 さらに奏が即席のステップを織り交ぜた絢爛のクレドを披露すると、市民たちの目に徐々に気力と熱気が宿り始める。

 ――それは、一家が市民たちに良き未来が訪れるようにとの願いを込めて奏でられる、応援歌。

 真宮家が応援歌を披露し終わるころには、市民たちの瞳には活気が宿りつつあった。
「今こそ私たちは、自分たちで未来を掴むときなのか……」
「でも、子供たちはどうしたら……」
 家に子供を残してきている若夫婦たちが不安を零すが、瞬は笑みを向けながら伝える。
「子供たちは僕たちの仲間が保護していますから、安心してください」
 瞬は、いつしか足元にすり寄った1匹のねこさんから言伝を受け取っていた。
 ――既に子供たちは、他の猟兵によって異空間に誘われ、安全が確保されている、と。
「なら……決まりだな」
 市民たちのまとめ役らしき男が、立ち上がる。
「我々はこの人たちについていき、ヴェリーナ砦へ向かう」
「だが、荷物は……」
「ああ、取りに行く時間はあるし、運ぶのもアタシたちの仲間がどうにかしてくれる」
 先ほどの目配せの意味を受け取った響が安心させるように告げると、市民たちも安堵の息を漏らしていた。

 集合時刻を決め、市民たちが荷物を取りに行くのを見守りつつ、奏たちはほっと胸をなでおろしていた。
「どうにか、なりそうですね」
「そうですね……あとは僕たちがしっかりと導くだけです」
「さあ、もう一仕事いくよ?」
 響の言に奏も瞬もうなずき、市民たちが集まるのを待つ。

 ――彼らを安全な地へ導くために、もうひと肌脱ぐか、と心に決めて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アトシュ・スカーレット
【POW】
んーと、んーとなにしよう?
取り敢えずラプタに乗って運搬作業を手伝おうかな
他の村まで行く用事があればなんでもどうぞー

【空間作成・家】の中に荷物を放り込んどこ
……あー、外について困ってることがありそうなら、【コミュ力/情報収集/世界知識】で相談に乗ってあげられるけど…

あ、子供たち、もしかしてラプタに興味あったりしないかな?
【動物と話す】でラプタに乗せても大丈夫か聞いとこ
…ふむふむ、「オレ含めてもう1人なら問題ない」?あ、そっか背中の広さの問題か…

あ、子供たちはオレが見てるので大丈夫だよ!何かあっても庇うから!
落ちたら怖いからちゃんと掴まってるんだよ?



●鷲獅子の友は世界を知らしめるきっかけを作って
「んーと、んーと何しよう?」
 聖堂で別の猟兵達が市民たちを説得するのを見守りつつ、アトシュ・スカーレットは少し思案していたが、別の猟兵が何かを悩んでいるのに気づくと、手元に視線を落とした。
 アトシュが目を落とした先にあるのは、Cattleyaという名の魔力を操作しやすくした指輪。
 おそらく、別の猟兵が悩んでいるのは、市民たちの荷物の運搬だろう。
 ――この指輪につながっている異空間のシェアハウスなら、荷物の格納には困らないかも?
 アトシュは顔を上げて目配せをひとつし、別の猟兵に合図を送っていた。

 他の猟兵に活気づけられ、人類砦に行くことに決めた市民たちは、いったんそれぞれの家に戻り、最低限の荷物を手に戻ってくる。
 この人数の荷物となると、最低限でも相当な量になるが……。
「オレが運搬作業を手伝おう」
 グリフォンの女の子・ラプタを呼び出したアトシュは、Cattleyaをはめた指をそっと荷物に触れさせ、瞬時に異空間にあるシェアハウスに格納する。
 驚く市民たちをなだめながら、アトシュは次々と荷物を指輪に吸い込ませつつ、さりげなく市民たちに問いかける。
「外について困ってることってない?」
 この地底都市のみが全てだった彼らにとって、広大な大地が広がる地上は未知の世界。
 相談事、困りごと、不安となると……いくらでも出てくる。
 アトシュはそれらに丁寧に答えつつ、彼らから次々と荷物を受け取り、シェアハウスに格納。
 最後に都市に蓄えられていた食糧といくばくかの金銭をも収納し、地上行きの準備は整った。

 子供と足腰を悪くした市民たちを別の異空間にかくまった別の猟兵と合流し。
 アトシュと市民たちは、他の猟兵達の先導で地上への通路を登り、ヴェリーナ砦へ歩みを進める。
 今歩いているのは、比較的健脚な大人たちと年上の少年少女たちだが。
「なあ、にいちゃん……」
 列の最後尾を守るようにラプタに乗りながら追従するアトシュに、少年がためらいがちに声をかけてきた。
 だが、少年の視線は、しっかりとラプタに向いている。
「あ、もしかして」
 アトシュはくい、と親指でラプタを指差しつつ、少年に質問。
「ラプタに興味ある?」
「うん、乗せて?」
「ちょっと待ってね……」
 アトシュはラプタと二言三言かわし、子供たちへと向き直り。
「オレ含めてもう1人なら問題ない? ……あ、そっか」
 どうやら背中の広さの問題で、2人までが限界らしい。
 目を輝かせている子供たちは複数いるが、交代で乗せるなら問題ないだろう。
 アトシュは順番に希望する子供たちを乗せ、ラプタと共に空へと舞い上がる。
「子供たちはオレが見てるので大丈夫だよ! 何かあっても庇うから!」
 はしゃぐ子供たちにアトシュがさりげなく注意しつつ、短い空中散歩を堪能してもらい。
「落ちたら怖いからちゃんと捕まってるんだよ?」
「わー、楽しい!!」
 地底都市では経験できない空中散歩を経験した子供たちは、大満足!

 アトシュは最後に、最初に声をかけてきた少年を乗せ、何度目かの空中散歩へ。
 少年も最初は驚いていたが、高度が上がるに連れて瞳が好奇心に輝き始めていた。
 アトシュにしがみ付きながら、少年は広大な闇に包まれた大地に目を落とす。
「これが地上?」
「ああ、地上だよ」
「広い……」 少年の目に映る「地上」に広がるのは、吸血鬼が蔓延る闇。
 しかし、所々点在する光は――人類反撃の狼煙を上げる機を伺っている人類砦。
 そこに希望を見出した少年は、アトシュに問いかける。
「俺たち、もう洗脳されることはないんだよな?」
「ない、と思いたいかな」
 アトシュも答えを濁すしかないのは、100%の安全は確約できないから。
 将来、人類砦を別の吸血鬼が襲撃し、蹂躙しようとする可能性もある。
 人類砦に乗り込んできた吸血鬼が、ウルカと同様洗脳を得意とする相手だったら、また洗脳される可能性もある。
 だが。今までと違うのは、アトシュたちがより早く駆けつけられそうなこと。
「まあ、何かあったら駆けつけるさ……お、あそこか」
「あそこが……人類砦?」
「ああ、そうさ」
 目的地が近づいたと見てラプタに降下指令を出しつつ、アトシュが肯定する。
 ゆっくりと降下するアトシュと少年の目には、彼らを誘うヴェリーナ砦の光が差し込んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年11月09日
宿敵 『血と縁を奪う吸血鬼『ウルカ』』 を撃破!


挿絵イラスト