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紅茶の友~女王陛下の忠実な紳士

#サクラミラージュ #幻朧戦線 #スパヰ甲冑 #ブルーリボン

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#スパヰ甲冑
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●帝都、カフェーの片隅
「色々と面倒なことになって来たな」
 三つ揃いの男がトーストを片付けて口を開く。
 視線の先にはタートルネックにジャケットの男がスプーンに掬ったジャムを口に含んでいた。
「やはりレモンティーではないんだな」
「それは貴殿の愛する女王陛下だけの特別な茶葉だ。我々労働者たる市民は貴重な砂糖の代わりにジャムを含み、濃いめの紅茶を嗜むのだ」
 薄く入れた紅茶を片手に、同じ色の髪を持った三つ揃いが溜息をつく。正面に座るジャケットを羽織った銀髪の男はその様子に対して赤くなった舌を見せて答えとした。
「まあ、これも最後だと思うと残念だよ」
「ああ、残念だ。本国へ召還されると聞いた、おかげで私は証拠を消すのに苦労した」
「『皇女殿下』は用心であらせられる、私のような口の回る男は放ってはおけないのだろう」
「『女王陛下』は最後まで仕事を全うすることを望まれた。私はもう少しここにいるよ」
 互いに席を立つ。時間が来た。
「残念だ」
「ああ、残念だ」
 あとには空になった二つのティーカップ。

 紅茶を嗜む、二人の時間は終わり。ブーツとオックスフォード、それぞれの足元を泥に汚す時間が始まった。

●グリモアベース
「まあ、そんなわけで。二人ともクロだ……今回はそのうちの一人を捕まえることにしよう。いいね?」
 グリモア猟兵、氏家・禄郎(探偵屋・f22632)がタイプライターのキーをリズミカルに奏でながら、猟兵へと同意を求めた。
「いやあ、まさか幻朧戦線に加担するスパヰが居るだなんてね。こんなワクワクする仕事はないと思うよ……おっと、冗談はこれくらいにして本題だ、君達には今話した幻朧戦線への支援を行っていたスパイを捕まえてもらう。標的は二人いるけれど、私達が捕まえるのは『女王陛下』の忠実な部下だ。どれくらい忠実であるというと……」
 投げる紙は白いまま、何一つ書かれてはいない。
「物証になる物はほとんど消された。あとは彼の手持ちの書類と彼自身……勿論、捕まえれば幻朧戦線に迫る証拠となるだろう。ちなみにもう一人の方は別のグリモア猟兵に予知されている。取りこぼしは無い」
 探偵屋が立ち上がり、タイプライターのレバーを押す。
「彼はとある桜のある公園で後始末をしようとしている。まずはこれを止めてくれ。勿論、素性が分かれば逃走するし、それを邪魔するものもいる――だけど君達なら何とかしてくれると信じている」
 開かれた道筋は桜の舞う公園。
「では、よろしく頼むよ」
 男は事後を託し、そして見送った。


みなさわ
 かくして人は理のために思想に力を貸し、人は信条のために使命を果たす。
 こんにちはみなさわです。
 今回はかやぬまMSとのコラボシナリオとなります。
 こちらが探し求めるのは『女王陛下』の忠実な騎士となります。

●今回のターゲット
『ブルーリボン』
 三つ揃いに青いネクタイの紳士然たるスパヰです。
 上の命令によって幻朧戦線への支援を行っていましたが、思想的には染まっておらず、職業意識に忠実な男です。
 故に全ての物証を消し、唯一の『証拠』へと変わりました。

●第一章
 桜舞う公園にて、彼は最後の後始末をしようとしております。
 話しかけるもよし、後始末を止めて証拠を押さえるもよし。
 最終的には彼がスパヰであると突きつけてください。
 勿論、フラグメントに従って誰かと何かを約束しても構いません。

●第二章
 スパヰであることを知られた彼は逃走を試み、支援者がそれを妨害します。
 妨害を排除し、『ブルーリボン』を追い詰めてください。

●第三章
 追い詰められたスパヰは後始末を果たすために最後の抵抗を試みます。
 最後は猟兵の皆様のご随意に。

●その他
 マスターページも参考にしていただけたら、幸いです。

 それでは皆様、よろしくお願いします。
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第1章 日常 『やくそくの櫻路』

POW   :    桜の杜を花逍遥

SPD   :    自分との約束を結ぶ

WIZ   :    誰かとの約束を結ぶ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●約束

 約束とは破り、破られるものだ。
 この仕事を選んでから、それを思い知ることが多かった。
 吊るしのスーツが三つ揃えのあつらえとなり、数度目のオックスフォードに履き替えた頃、今回の仕事が舞い込んできた。
『大正の世を終わらせる』
『戦乱こそが人を進化させる』
 愚策もいいところ、けれど上役は足を引きずりあうことを好み、そのような輩に支援を行うことに何ら躊躇はなかった。
「陛下もこれで手を引くだろう」
 あとは上の仕事、面倒事は上手く誤魔化すだろう。
 ならば後始末だけだ。
「それにしても……」
 案外、悪い仕事では無かったなと唇が動いた。
 利害関係の一致から組んだ、ジャケットを羽織りブーツで歩く寒い国の男。
 紅茶を嗜む以外、好みも手段も合わない男だったが、不思議と仕事は回った。
 もう、共に茶を飲む機会もないだろうが。

 桜舞う公園。
 桜の和紙に願いを続い、約束すればいつか叶うであろうと言い伝え。
 非現実的だと思いつつも、万年筆を走らせれば、それを幻朧桜の枝に結んだ。

 ――友よ、また紅茶を飲もう。場所は先に確保しておく

 さあ、後始末の時間だ。
 手持ちの書類を焼き、そして全ての証拠たる唯一を消さねばならぬ。
 久しぶりに持った拳銃はやけに重かった。
ミカエル・アレクセイ
面倒だが、弟子もそれなりに頑張っていることであろう
抜けていては師の面目も立たぬというもの
景色を眺めつつそれとなく公園の立地、地形を把握し逃走経路となるものを把握しておく
その後、公園内の人間たちを観察し日常を楽しんでいる人とそうでない人のわずかな違いを把握しておく
スパヰらしき人物を発見し確信を得られたならば自然を近くによってぶつかってみる
避けるならばその避け方も自然であろうし、ぶつかれたなら獲物をすり取ってみるのも面白いが、不利となるならそれは辞めておこう
「ぁぁ、すまない、景色に見とれていた」
「見事な景色だ、弟子でも誘って茶でも飲もうと考えていたら…けがはないか」
自然な雑談で現世へと気を引けるか



●誘引

 ――面倒だが、弟子もそれなりに頑張っていることであろう。

 別の男を追っているであろう弟子の事を気にかけながら、ミカエル・アレクセイ(山猿・f21199)が公園を歩く。
 既に現役から退いた身ではあるが、それでも身内が面倒事に巻き込まれれば自然と足が動く。
 それすらも面倒くさいと思いつつも、自らが動くことを決して否としない。
 ミカエル・アレクセイそういう男であり、だからこそ俯瞰した視野を持つことが出来る。

 彼が把握したのは公園の立地、逃走に至る経路。
 場所は広く、入り口は複数。人々に紛れれば逃走は容易。
 そして人々はというと……日常に生きる者とそれ以外が混ざっている。
 何者だろうか?
 鉄の匂いが残った人間達に疑問を感じつつ、選んだ行動は一石を投じる動き。
 静かな水面に波紋を作れば、潜んでいたものが動き出す。
 ミカエルは日常から外れた者から一人目立つ赤毛の若者に偶然を装って肩をぶつけて、雑踏という名の池に石を投げ込んだ。

「ぁぁ、すまない、景色に見とれていた」
 細身とはいえ、頭一つミカエルが高い。
 尻餅を着いた赤毛の男に、詫びと共に手を差し伸べた。
「仕方がありません。帝都の桜は雪のような覆いつくしておりますから」
 アレクセイの手を握り、男が立ち上がった。
 その振舞いに今を生きる神は面倒を感じた。

 ――この男はわざとぶつかった。

 そうすることで日常と非日常を歩む者達を一つの舞台へと注目させたのだ。
 そして手を握ることで行動を制限し、衆人環視の中、動きをリードする。
「見事な景色だ、弟子でも誘って茶でも飲もうと考えていたら……けがはないか」
 これがスパヰかとミカエルは舌を巻いた。
「ええ、おかげさまで。こちらこそ、不注意を見せてしまって……お召し物に粗相はありませんでしたか?」
「いや、大丈夫だ。そちらも桜に見とれて?」
 会話という名の戦闘に持ち込まれる不利を悟りつつも神は言葉を続ける。
 優位を得る必要はない
「ええ、いや……ちょっと物思いにふけってましてね」
 ――これが現世への誘いになれば、時間を作ることが出来るのだから。
 赤毛の男の言葉に「そうか」と答えるとミカエルは頭を下げ、その場を去った。

 力なき異物の存在。
 遠くで動く弟子に思いを馳せながら、師たる自分も師匠たろう決意し雑踏に消えた。
 仕事はまだ終わっていない――今は息を潜め誘いをかける時。

大成功 🔵​🔵​🔵​

石守・舞花
人違いを装って、スパヰと思しき人に話しかけます
「お父様? あぁ、違いました」
そのまま世間話を始めて、すぐに証拠隠滅をさせないように時間を稼ぎます

※以下、すべて作り話
父はある日急に自殺しました
残された母と幼い私は、わけもわからず新しいお家と食い扶持を与えられて帝都のアパルトマンで暮らしているのです
共に暮らす人々は優しいけれど、どこか監視のような目を感じて窮屈で、たまにふらりとここに逃げてくるのですよ

これで自らを始末することに戸惑いが生じてくれればよいですが……それは都合がよすぎますよね

「もしかしたら、父はスパヰか何かだったのかもしれませんね?」
無邪気な冗談のふりをして、動揺を誘います



●偽装

「お父様?」
 証拠を消す場所に思案していた赤毛の男。
 彼を呼び止めたのは石守・舞花(神石の巫女・f17791)。
「あぁ、違いました」
「オトウサマに似ていたのかい?」
 味方を増やすこともスパヰの仕事、職業柄の癖か、意図的に男はカタコトの単語を用いて、人違いをした少女へと話しかける。
「はい、髪は黒髪でちがいましたが、雰囲気が父を思い出してしまって」
「そうでしたか? お父様は今は遠くへ」
「いいえ……死にました」
 舞花の言葉に男は瞳孔を大きく見開いた。

「父はある日、急に自殺しました」
 寡婦の娘を装った少女が訥々と語りだす。
「残された母と幼い私は、わけもわからず新しいお家と食い扶持を与えられて帝都のアパルトマンで暮らしているのです」
 それは何かに翻弄されし、人々の話。
「共に暮らす人々は優しいけれど、どこか監視のような目を感じて窮屈で、たまにふらりとここに逃げてくるのですよ」
 その人物たる舞花は寂しそうな笑みを見せ、舞い散る桜へと視線を向けた。
「なるほど……」
 赤毛の男の中で何かが計算される。
「私では力になれないかもしれないが……」
 スパヰが選んだ行動は
「もし、困ったことがあるのなら、ここに連絡するといい。私から話を通しておく」
 名刺を渡す姿を『見せること』
 もし、少女の言葉が真実なら、何かが動くだろう。
 もし、少女の言葉が思い違いなら、そこから何かが動くだろう。
 どちらにしても利はあるのだ。
「もしかしたら、父はスパヰか何かだったのかもしれませんね?」
「スパヰか……スパヰはもっと派手なものだと思いますよ。銀幕のようにね」
 舞花の言葉に男は笑った。
 笑うしかなかった。

 少女が偽装した物語。
 スパヰは時間という貨幣を財布から支払い、そして機を奪われつつあることを感じていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
今日は良き日和ですね、少しお話をいたしませんか?
…懐の剣呑な物についてですとか

(マルチセンサーでの●情報収集での金属探知で拳銃と判定)

記憶がすっかり無くなるほどの昔ですが、警護の仕事の経験がありまして
お声をお掛けした次第です
まあ、重武装の私が言う資格も無いのですが

…対象がご自身も含め、おかしな真似をした瞬間に昏倒させますのでそのつもりで

違和感は覚えずともお判りでしょうし、この巨躯です
姿を晒した方が効果があるかと考えた次第で

長閑な公園です

無辜の人々を守護する御伽の騎士のようでありたいと欲するが故に
このような平穏を乱す幻朧戦線と私は相対してきました

貴方の理由…いえ、騎士道を教えて頂けますか



●世間話

「今日は良き日和ですね、少しお話をいたしませんか?」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)に声をかけられ、赤毛の男は監視されていたことに遂に気づいた。
「例えば……懐の剣呑な物についてですとか」
「私がドレッドノートを上回る者と正面からやりあうと思うのかい?」
 続いた言葉にスパヰは苦笑する。
「いいえ、それは貴方の戦い方ではないのでしょう、なので世間話という事で」
「……話を聞こうか」
 赤毛の男が空いているベンチを指ししめした。

「記憶がすっかり無くなるほどの昔ですが、警護の仕事の経験がありまして、お声をお掛けした次第です」
「……なるほど」
 トリテレイアの言葉に堅苦しさをにじませ、スパヰは応えた。
「まあ、重武装の私が言う資格も無いのですが」
「わかった! ベンチに座るのは失敗だったよ……立ち話にしよう!」
 普通のベンチに三メートルに近い戦機と共に座った赤毛はその巨躯に押し出されそうになるのを必死に耐えて、叫んだ。

「……対象がご自身も含め、おかしな真似をした瞬間に昏倒させますのでそのつもりで」
「さすがにここでは何もしないさ。今、ここはそういう舞台じゃない」
 騎士の言葉に三つ揃いの皺を伸ばしつつスパヰが応えた。
「でも、君は姿を見せた」
 上がる舞台が違うと言外に問い、そして戦機の役柄を確認する。
「違和感は覚えずともお判りでしょうし、この巨躯です。姿を晒した方が効果があるかと考えた次第で」
 トリテレイアは登壇の理由を述べ、そして見回した。
「長閑な公園です」
「そうだな。ハイド・パークを思い出す」
 それは世間話の様な
「無辜の人々を守護する御伽の騎士のようでありたいと欲するが故に、このような平穏を乱す幻朧戦線と私は相対してきました」
 血と鉄の話。
「貴方の理由……いえ、騎士道を教えて頂けますか」
 赤毛の男が自分である意味の問い。
 スパヰが右手を懐に入れるが戦機は動くことは無い。
 既に彼のマルチセンサーが何を掴んでいるかを把握しているからだ。
 古城を思わせるロゴが印字された箱を開き、紙巻を咥えるとオイルライターで火を灯し、一息つく。
「私は仕事に忠実なだけだ。女王陛下、ひいては王室の繁栄のため為すべきことをなす」
 赤毛の男の目が変わった。
 どこにでもいる何かから、一人の騎士へと。
「だから、君達や官憲の手段を封じるために全てを私に集約させた。よって君達は捕縛というワンペアのみで戦わなければならない」
 もう一人の騎士が紫煙の向こうから、スパヰを見ていた。

「それが私の戦い方、そして上に対する騎士道だ」
 雑踏に消える男。
 トリテレイアは戦いの始まりを悟った。

成功 🔵​🔵​🔴​

銀星・偵
悉く痕跡を消したスパヰか
この場合、痕跡が殆ど無いと言う事が取っ掛かりとなろう

真逆、これから逃亡しようと言うスパヰが
願掛けの和紙に指紋など残すまい
手袋でもしたのであろう?
物証を消すのにどうしたかね?
入念に燃やしたか?
燃やせぬものは酸でも使ったか?
拠点はどう掃除した?
エタノールでも使ったか?

痕跡を全く残さずに生きられる者など、おらんのだ
生きている限り、誰もが何かしら痕跡を残すもの
故に全てを消したスパヰが最後に消すものなど決まっておる

自分自身だ

さあ、出番である所長!
失せ物探しにピッタリな犬の嗅覚、そして野生の勘で
『痕跡を消した』匂いを探すであるよ

我輩は探偵の勘(第六感)で
自死を覚悟した者を探すである



●痕跡

 舞台は変わり。
 空き家になったマンションの一室。
「悉く痕跡を消したスパヰか」
 役者はインバネスを羽織った男、名は銀星・偵(狙撃探偵・f22733)。
「この場合、痕跡が殆ど無いと言う事が取っ掛かりとなろう」
 役柄は別の側面から真実を追い求める追跡者。

「真逆、これから逃亡しようと言うスパヰが、願掛けの和紙に指紋など残すまい。手袋でもしたのであろう?」
 がらんどうの文字通り何もない部屋。
「物証を消すのにどうしたかね? 入念に燃やしたか? 燃やせぬものは酸でも使ったか?」
 入り口に立ち止まり、部屋に入ろうとしない偵が探るのは――
「拠点はどう掃除した? エタノールでも使ったか?」
 痕跡を消した跡。

「さあ、出番である所長! 失せ物探しにピッタリな犬の嗅覚、そして野生の勘で
『痕跡を消した』匂いを探すであるよ」
 仕事のできる探偵犬が鼻を効かせ、部屋の奥へと進む。

 ――痕跡を全く残さずに生きられる者など、おらんのだ。
 所長が仕事をしている間、銀星の探偵は一人思考する。

 ――生きている限り、誰もが何かしら痕跡を残すもの。
 故に全てを消したスパヰが最後に消すものなど決まっておる。

「自分自身だ」
 推測を言葉にした直後、犬が吠えた
 当たりだ。
 もしここで複数の人間が動いていたのなら、足跡、匂い、そして目撃証言が得られる。
 足跡は無かった、綺麗に『処理』されて。
 そして匂いも――無い、そう何もない。
 業者を装った人間達が全てを消したのだから。
 所長はそれを確かめた。
 偵は証拠を保存するために『入らなかった』のだ。
 だが、部屋の外はどうだろう?
 銀星の探偵が視線を落とした先は廊下、階段といった共用部
 そこの匂いや足跡を消すことは容易ではない。
 それこそ、アパート全体を買い上げない限りは……。

 そして、目撃証言。
 これだけは消すことが出来ない――人の出入りがあったという記憶。
 出入りの数に対して、何一つ残らなければ、それはむしろ矛盾というもの。
 事件性がなければ見過ごされる、小さな綻び。
 それこそが偵の探し求めていたもの。

 あとは官憲が形にしてくれるだろう。
 手配を済ませた銀星の探偵は最後の証拠が消えるのを防ぐために外へと歩き出した。
 ――桜舞う公園へ。

成功 🔵​🔵​🔴​

織部・樒
ザフェルさん(f10233)と行動
アドリブOK

異国の密偵、という事ですね
この世界で目立たずに任務を全うしていたとは驚きです

ザフェルさんのフォローメインに行動します
スパイに近付く前に念の為UCを使用し、可能な範囲で書類と彼自身の無事を依頼
【動物使い】も併用し主に行動の邪魔をお願いします
書類に火が点いてしまっていたら【炎耐性】で耐えつつそれを確保
また彼が自傷する素振りを見せたら【見切り】【早業】で防ぐよう努めます
彼との会話は【礼儀作法】も使いなるべく穏便に
異国のものとは言え茶を嗜む方のようですし、こういう立場で
出会ってしまったのが残念です
約束を結ぶ桜に、何を願ったのでしょうか


ザフェル・エジェデルハ
樒(f10234)と行動。他者連携等OK
POW選択

この世界は帝都の元に全ての国家が統一されていると聞いたが、
『女王陛下』ってのは別国家の元首ってことか…?
そこからのスパヰだとすると、幻朧戦線てのは
想像以上にデカい組織なのかもしれねぇな

公園で紳士然とした人物に声をかけてみる
火を使おうとしているのであれば、この公園は火気厳禁だぜ、という感じで

身なりを偽らずに近づくから、猟兵だと感づかれるだろう
直球で「とある国のスパヰが証拠を隠滅しようとしていると情報があり、
捜査している。悪いが持ち物を見せてくれ」と伝える

さて、敵はどう出るか
ゆっくり桜を愛で、約束を結ぶ風情を楽しむ人々の邪魔を
しないで済めばいいがな



●判明

「この世界は帝都の元に全ての国家が統一されていると聞いたが」
 ザフェル・エジェデルハ(流離う竜・f10233)が呟く。
「『女王陛下』ってのは別国家の元首ってことか……?」
「そうなると異国の密偵、という事になりますね」
 織部・樒(九鼎大呂・f10234)が答えを返す。
「いや、おかしいだろ? だとしたらその国はすぐに滅ぼされる」
 旅に旅を重ねたザフェルが自ら言葉の疑問点に気づく。
 大国にとって小国の独立は将来の禍根となる。
「王族は残っているという可能性もありますね。名ばかりの朝廷の元、政権を維持していた将軍のように」
 樒が解を見出す。
「そうなると合点がいくな。となると幻朧戦線てのは想像以上にデカい組織なのかもしれねぇな」
 話が大きくなるのを想像し、竜の使い手は汗をぬぐう。
「この世界で目立たずに任務を全うしていたとは驚きです……侮れない相手に違いありません」
 天目茶碗のヤドリガミの言葉にザフェルは頷きを返すのみだった。

 衆人の前で強硬策に及ぶのは、いささか乱暴が過ぎる。
 だからこそ、雑踏に紛れるように動けば、スパヰが猟兵の手から逃れることも可能であった。
 だが、見つかってしまった以上、最早手段を選べない。
 すぐに証拠を消さなくてはいけない。
 かと言って、命を絶つのは最後の最後、出なければ持ち出すしかなかった書類が官憲や超弩級戦力の手に渡ってしまう。
 それだけは避けなければならなかった。
 幸いにも、ここには火があった。

 ――焚き上げ。

 桜に結ぶ約束、神事がそれにかかわらない理由がない。
 だからこそ、約束の和紙を結ぶ枝は常に結ばれるために空いているのだ。
 赤毛の男が準備に取り掛かる宮司へと歩もうとしたところへ――
「それを燃やしてしまう前に、いいかな?」
 スパヰが振り向くと緑色の瞳が自分を見ていた。

「とある勢力のスパヰが証拠を隠滅しようとしていると情報があり、捜査している。悪いが持ち物を見せてくれ」
「私がそのとあるスパヰだよ。だから証拠は見せられない」
 単刀直入に話を切り出したザフェルに対し赤毛の男は自らの正体を明かすことで拒絶の姿勢を見せた。
「……普通はもう少し、しらを切るもんじゃねえか?」
「もう君達が私にアタリを付けているのは知っている。なら隠す必要はないだろう? それに……」
 竜の使い手の言葉に対し男は右手に持った革製のアタッシュケースを掲げる。
「封蝋が押された書類は『正しく届けなくてはならない』」
「笑えねえ冗談だな」
 隊商の護衛を経験し、封蝋の意味を知っていたザフェルが渋面を見せた。
「お話は分かりました」
 会話に歩み寄りは無いと悟り、樒が言葉を挟める。
 それは彼自身が知りたいことを探るため。
「こういう立場で出会ってしまったのが残念です」
「ああ、残念だ。小人たる私はあらゆる手段を選んででも果たせばならない仕事があり、君達はそれを阻む立場だということに」
 スパヰは心底にこの状況に対し、そう思っているようだった。
「では一つだけ」
 そこへヤドリガミは問う。
「約束を結ぶ桜に、何を願ったのでしょうか?」
「ああ、それか……」
 赤毛の男が空を見た。
「茶の約束をね」
 それが生きてかなわぬ願いと知りながら、男は笑った。
 二人にとってはその答えで充分であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

荒谷・ひかる
残る物証は、手持ちの書類と「彼自身」……
それって、まさか!?
何とかして、止めないと!

死ぬ覚悟の決まっている人相手に、何とかできるような言葉を私は持っていない
なら、なんとかして「今すぐ死ぬわけにはいかない」状況を作り出すしかない
隠れてスパヰさんの様子を遠巻きに見つつ【風の精霊さん】発動
総勢425体の不可視の風の精霊さん達を召喚
焼くために出した書類を奪い取ってもらうようお願いします
(精霊さんを知らない人は風で飛ばされたように見えるはず)
こうすれば、先に死んでしまうと「証拠」が残ってしまうので止めることが出来るはず
最終的にはわたしの所に集まるようにして、証拠を押さえて突きつけましょう


御桜・八重
【桜天女】を発動して空から捜索。
煙が上がってるところを探す。

公園を見下ろしながら、スパヰさんのことを考える。
幻朧戦線が闊歩すれば何が起きるかは火を見るより明らか。
やむを得ない事情のある人が事件を起こすのはともかく、
悪事に加担するのが仕事だなんて、
「納得いかない」

自分の国や家族に同じことが起きても平気でいられるのかな。
大体、血の通わない冷血漢なら願い事なんてしない。
…そこが引っかかるんだ。
「会わなきゃ。話を聞きたいよ」

焚火をしている外人さんはそんなにいないはず。
煙を見つけたら急降下。急がないと証拠を燃やされちゃう。
…それに、たぶん最後の一つは自分自身。
こんなモヤモヤしたままで、死なせるもんか!


木常野・都月
周辺の植物の精霊様にお願いして[属性攻撃]をしたい。
手加減したい。まだ犯人じゃないから、蔦や根で、この人が動けない程度に、取り押さえて貰いたい。

後始末も出来れば止めたい。
燃えてるなら水の精霊様で消火したい。

確か、スパヰって質問しても答えないんだっけ。
UDCアースの映画で見た。
人もスパヰも、俺には難しい。

何でこんな事をした?って聞きたい。

答えなきゃスパヰだ。
答えたら、念の為証拠を確認して幻朧戦線の物か確認したい。

後、持ち物からこの人の匂いを覚えておく。
万が一何か役立つかも。

見て分かる証拠ならいいけど、俺は難しい文は読めない。
困ったら、UC【妖狐の通し道】で、この人がスパヰである事を特定したい。



●捕縛

 御桜・八重(桜巫女・f23090)が羽衣を纏って空を舞う。
 天女のごとく大地を見下ろせば、人々が行きかう桜の公園。
 八重はその雑踏の中に何かを見ていた。

 ――幻朧戦線が闊歩すれば何が起きるかは火を見るより明らか。
 やむを得ない事情のある人が事件を起こすのはともかく、悪事に加担するのが仕事だなんて。
「納得いかない」
 言葉が出た。
 直後、彼女の思考は空高くまでに舞い上がる強風に遮られた。

 風が――意思を持った。
 それは荒谷・ひかる(精霊寵姫・f07833)の願い。
 総勢四百二十五の風の精霊達。
 瞬間的に発生した旋風はスパヰの右手からアタッシュケースを奪い取り、ひかるの手へと渡す。
「死ぬ覚悟の決まっている人相手に、何とかできるような言葉を私は持っていない」
 証拠はほとんど消え、残るのは羅刹の巫女の右手にある物と彼自身。
 消すという事はそういう事なのだろう。
 悟られた赤毛の男が懐から銃を抜こうとしたとき、土が割れ、突き破った蔦が男に絡みつき、根が足を捕らえる。
 木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)の業だ。
「何でこんな事をした?」
 都月が問いかける。スパヰなら答えないと映画で見た。なら答えないだろうと思い。
「仕事だよ、君達が影朧を打ち倒すように」
 男は平然と答えた。
 職業意識に殉じての行動故、迷いはなかった。
 困惑した狐がひかるを見る。
 羅刹の巫女は黙って革製の鞄を開け、中の文書を手に取った。
「……読めない」
「紡績機械の契約書に、商社名義の武器購入の書類……鉄道のコンテナ使用料金明細」
 近づいた都月が書類を見て挫折し、ひかるは偽装された文書に何かを感じる。
 しかるべき人間が見れば、見抜けるであろう証拠。
 明らかな物証。
 そこへ――桜の巫女が降りてきた。

「話を聞きたいよ」
 拘束されたスパヰに向かって八重は問う。
「公衆の面前でこの状態なのが不満だが、答えられる範囲なら」
 赤毛の男が皮肉を以って答える。
 桜の巫女は深呼吸一つして口を開く。
「もし……自分の故郷や家族に同じことが起きても平気でいられるの?」
「私の仕事はそういうことが起こらないようにすることだ」
 スパヰの返答に八重が固まる。
「それは、帝都に戦場を作ることで、被害が及ばないようにするということですか?」
「そうだね、ここに争いが起これば、それ以外の者は対岸の火事と思い平和を謳歌する――そういうものが人間だと私は思う」
 言葉の意味に気づいたひかるが問う。
 答えは是。
「自分の安全のために周りがどうなってもいいってことか?」
「自分達に被害が及ばなければね……そのために私達は色々としている」
 都月の問いにも答える。最後の言葉の意味は分からないが、二人の巫女の表情を見れば良くないものであることは分かった。
「なんで……そんなことをするの!?」
「――仕事だ。君達が影朧を倒すように、私にとってはこれが仕事なんだよ」
 八重の再びの問いにひかるに問われた様に同じ答えを返し、そして。
「だから仕事の時はスーツを着ている」
 自らの職業意識を服装で例えた。
「だったら! なんで願い事を――約束をしたの? 貴方のそれが……わたしには引っかかる!」
 桜の巫女の問いは最早叫びに等しかった、隔てられた壁、相いれない想い、けれど矛盾しているとしか思えない一つの約束。
 その言葉に赤毛の男が笑みを見せた。
「もうここで紅茶が飲めないのなら……次は地獄だろう。そういう事だよ」
 それは友に対する別れの笑みだったのだろう。

「でも、貴方は死ねない、死なせない」
 だが、それをさせまいとひかるが書類を突きつける。
「私は覚悟を決めている人の心を動かす言葉を持っていない」
 脳裏に一瞬だけ霞んだのは死ぬことを望んだ人の姿をした何か。
「だけど、この証拠がある限り、貴方は死ねなくなる」
 それを振り払い、そして作り上げたのは『すぐに死ねない状況』
「正解だ……おかげで、私は荒事に手を染めることになった」
 空気が裂かれる音が鳴り、スパヰの拘束が断ち切られたのはその時だった。

「気を付けろ……何かが居る」
 遠くより聞こえるエンジン音に対し、都月が牙をむき、唸り声を上げる。

 三人の目の前では鉄の首輪を嵌めた男達が赤毛の男を庇っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『暗躍する幻朧戦線』

POW   :    正面から敵を圧倒し、打ち倒す。

SPD   :    集団戦や周りの物を利用して戦い、確実に倒す。

WIZ   :    策略や魔術で奇襲を仕掛け、一気に倒す。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●幻朧、その影

「同志ブルーリボン」
「私を同志扱いしないでくれ、無関係な諸君」
 軍服に外套を羽織り、鉄の首輪に熱情を捧げた青年将校の呼びかけに赤毛の男は憮然として答えた。
「上からの命令と伝言です、貴方を守れと。そして……」
 軍刀一振り片手に猟兵に立ちはだかる将校は敵から視線を離さずに
「『烈士足らんとする意気、感動した。しかし後始末は日を改めるべし』とのこと」
「そうだな、私は死ねなくなった。そして君達は恩を売り、支援の継続を狙うか」
「――側車を一台、用意しました。運転は?」
 皮肉の混ざったスパヰの言葉。直後、エンジン音が響き渡り男達の背後に停まるのはサイドカーが一台。
「乗馬は嗜みだよ、彼には横に乗ってもらおう」
 将校の問いに笑みを伴って応えれば、側車に飛び乗ってスロットルを開放する。
 排気ガスを伴って、赤毛の男は公園を逃げ出した。

「さて猟兵諸君、我々と付き合ってもらおう」
 青年将校が軍刀を振り下ろすと猟兵の足元に打ち込まれるのは弾痕――つまりは狙撃兵が居る証。
「超弩級戦力には不足だろうが、それなりの布陣はさせてもらった。勿論、君達が狙っている男にも護衛はつけてある」
 戦力を見せているのは明らかに足止めの意図。
 一般人とは言え、簡単には排除は出来ないだろう。」
 悲鳴が上がり、人々が逃げ惑う中、大八車に隠されていた箱から男達が銃を持ち出し次々に構え始めた。
「彼も君も私も、簡単に戦争からは足抜けは出来ないという事さ――幻朧戦線に栄光あれ!」
 将校の叫びと共に四方より弾丸が降り注いだ。

 状況は極めてよろしくない。
 スパヰは公園から逃げ出そうとし、猟兵達を足止めするために幻朧戦線は平和な帝都に戦争を持ち込んだ。
 君達はこの状況を如何様に乗り越えるか?
 全てを一人で成し遂げるか、誰かに託し、己の役目を果たすか。
 答えは――すぐに明らかになるであろう。
ミカエル・アレクセイ
ちっあーくそ面倒くせぇ

過去における長年の指揮経験を元に【戦闘知識】で戦況を素早く把握
敵戦力と猟兵戦力のバランスが取れているなら自分は足止めに動く
接敵の方ならばユーベルコードでの撹乱と合気道での無力化を図る
殺しても問題ないならば首の骨を折るなどの最低限の苦しみで済むようには配慮する

事前に把握しておいた地理から逃走経路を【野生の勘】も用いて推測
逃走先にユーベルコードを召喚し足止めさせる

…まぁ、精霊銃でエンジンやタイヤ撃ち抜くのが一番手っ取り早いんだが、スパヰが死んだり他を巻き込んだら後味悪いしなぁ
取り敢えず運転できない身体にすればいいか?紅茶が飲めなくなるのは可愛そうだが
まぁ、どれも最後の手段だな


ティオレンシア・シーディア
…うっ、わあ…まためんどくさいことを…
足止めもそうだけど、あたしたちが無理矢理突破したらここで戦争バラ撒く気でしょぉ?
人数が少ないってこっちの短所がモロに刺さってるわねぇ…

はぁ…しょうがない、か。追っかけるのは他の人に任せて、あたしはこいつらの殲滅優先しましょ。ゴールドシーン、よろしくねぇ?
エオロー(結界)で○オーラ防御を展開、ミッドナイトレースに○騎乗して●黙殺を発動させつつ走り回って機動戦仕掛けるわぁ。これなら一般人には当たらないし、範囲も十分でしょ。
遅延のルーン3種で○捕縛属性とか帝釈天印で○マヒ属性とかつけたほうがやりやすいかしらぁ?

後でブッ飛ばすから、首洗って待ってなさいな?



●分析、その視点

「……うっ、わあ…まためんどくさいことを……」
 ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)の美しい眉が歪んだ。
「ちっあーくそ面倒くせぇ」
 そしてミカエル・アレクセイも同じ言葉を重ねる……こちらは性格故の言葉だが。
「足止めもそうだけど、あたしたちが無理矢理突破したらここで戦争バラ撒く気でしょぉ?」
「若いのに詳しいな」
「そぉ? うれしいわねぇ」
 戦況を分析したティオレンシアをミカエルが評価すれば、糸目の女は笑みを浮かべる。
 ――神にとっては、みんな人が若いのは置いておくとしてだ。

「でも、人数が少ないってこっちの短所がモロに刺さってるわねぇ……」
「だな、質は上回っても量が上回ってる」
 二人が溜息をついた。
「はぁ……しょうがない、か。追っかけるのは他の人に任せて、あたしはこいつらの殲滅優先しましょ」
 ティオレンシアは自らのやるべきことを選び。
「ああ、面倒くせぇな」
 ミカエルは自らの性に従った。

「ゴールドシーン、よろしくねぇ?」
 宇宙バイク型UFO、ミッドナイトレースのスロットルを右手で開放しつつシトリンのついたペンが刻むのは『ᛉ』――守護のルーン。
 バレルロールを描き、防御フィールドに包まれたバイクが弾丸の雨の中を疾走し、空を駆るティオレンシアが空間にルーンを刻む。
『ᚦᚾᛁ』――まず、刻まれるのは遅延を示す三つのルーン。
 未知の技に横列陣にて前進し射撃を試みようとした一隊の脚が鈍る。
 ――『ई』
 そこへ刻んだ梵字は帝釈の真言。
 足止めの術を重ねられた幻朧戦線の脚が止まり、そして新たに刻んだ魔術文字が門を開く。

 Desire
 黙 殺

 九百に届くであろうほどの膨大な矢と刃。
 幾何学模様を描き複雑に飛翔するそれは、火力集中のために組んだ隊列を訓練場の標的が如く、貫き、切り裂いていく。
 銃声に耳を塞ぎ、その場に伏せていた人々が顔を上げたとき、負傷し横たわる幻朧戦線の男達を尻目に次の戦場へと走る宇宙バイクの排気音だけが残っていた……。

 戦場の混乱。
 その始まりをミカエルは見逃さない。
「ホント、意味解らねぇ」
 熱狂に酔い、勝てない相手に挑みかかる只人の集団。
 様々な道。長く歩んだその過程、今は歩みを止めたはずの神はその熱情を知ってはいるが共感はしたくなかった。
 だから――打ち倒す。
 疾走するのは誰かの悪巫山戯。だが刀と機関魔銃は皮肉が効きすぎる。

 カコニウモレタイモノ
 過去の異者

 百を超える、紅目の黒猫。
 その霊達がバイクを駆って、混乱を拡大すれば、ミカエルが敵へと接近する。
 白く細い腕が伸び、兵士の手首を掴み、捻り、そして力学によって方角を決め、力を込めれば――人が一人倒れる。
 研鑽を要求する武の技法――名は合気道。
「やはり面倒臭ぇ」
 襲いかかる若者の銃剣突撃を片手で逸らし、地面へと転がす。
 敗者が土を舐める中、視線は側車の方へ。
 意に応じてバイクを駆る幽霊を呼ぶが距離の壁は大きい――次々とくる増援に視界を塞がれ、神は妨害を断念せざるを得なかった

「後でブッ飛ばすから、首洗って待ってなさいな?」
 周辺一帯を制圧し、人々の安全を確保したティオレンシアが呟く。
「……物騒だな。紅茶を飲めない程度にしておけよ」
 ミカエルも嗜めようとしなかった。

 どちらにしても……まだ、敵は多い。
 再び対面するには時間が必要だった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

荒谷・ひかる
わたしたちをこの場に足止めして、彼を逃がすという魂胆ですか。
構いませんよ。わたしはこの場を一歩も動く必要ありませんから。

【草木の精霊さん】発動
幻朧桜で溢れるこの公園全てを、幻朧桜の迷宮へと変化させてもらいます
まずは狙撃手の射線を枝や幹の壁を生成し遮り防御しつつ、付近の蔓草等で絡みついて捕縛
スパヰさんが車輛で逃げるのでしたら、曲がりくねる狭い道や根っこがぼこぼこ飛び出す地面でまともに走れなくします
更に花粉を撒いてもらって花粉症を誘発、くしゃみと涙と鼻水で戦いや逃走どころではなくしてあげましょう

(溜息一つ)
……あんまり強くないわたしが言うのも何ですが。
『超弩級戦力』の能力、甘く見すぎでは?


銀星・偵
公園に着いてみれば、この騒ぎ
既にスパヰの正体は割れたのだな
ならば、この鉄火場に探偵として解く謎は存在しない
我輩は狙撃手として道を拓くとするか

しかし幻朧戦線、随分と無粋な連中であるな
一度紐解かれた謎は、どう取り繕っても隠し切れるものではないと言うのに

先ずは逃げ惑う群衆の上空へ眠砂弾をぶっ放す
魔法の眠り粉を降らせることで
混乱を沈めつつ人質としての価値を無くす

逃げる群衆を我等の足枷とするつもりだろうが
眠ってしまった群衆を、逃げる事すら出来ぬ者を、連中は撃てはしまい
どんなお題目も恐怖も眠った者には届かぬ
それでも撃てば、それは戦争ではない
ただの虐殺だ

とでも言いくるめて、隙を作って幻朧戦線共に眠砂弾を乱射



●超弩級、その戦術

「公園に着いてみれば、この騒ぎ」
 銃声の中、二重回しを纏った老齢の男が歩く。
「既にスパヰの正体は割れたのだな」
 名は銀星・偵。最後の証拠を抑えに来たプライベート・アイにして。
「ならば、この鉄火場に探偵として解く謎は存在しない。我輩は狙撃手として道を拓くとするか」
 ――スナイパー。
 永き時を生きる男が回転式拳銃を抜くのは今、この時。

「わたしたちをこの場に足止めして、彼を逃がすという魂胆ですか」
 荒谷・ひかるは幻朧戦線の目的を看破する。
「構いませんよ。わたしはこの場を一歩も動く必要ありませんから」
 だが、彼女がそれを阻むために走ることは無い。
 いや、必要がないのだ。
 姉のような力はないが、代わりに――精霊が居るのだから。
「覆いつくして、精霊さんっ!」
 願いに呼応して幻朧の桜が枝を伸ばし、根を張り、そして迷宮を作り上げた。

 プラント・エレメンタル
 草木の精霊さん
 
 幻朧桜のラビリンスが熱狂と使命に囚われた者達を分断し、幹の壁が狙撃手の射線を遮る。
 今、ひかるの視界にある戦場は精霊とその友が掌握した。

「しかし幻朧戦線、随分と無粋な連中であるな」
 迷い、戸惑う人々をかき分け、偵が輪胴弾倉へ二発、弾を押し込む。
「一度紐解かれた謎は、どう取り繕っても隠し切れるものではないと言うのに」
 装填した銃の重みを確かめると、探偵は天空に向けて銃口を掲げ、撃鉄に指をかける。
 87%の銀と13%の水銀、銀の星が握るその銃の名はARQUERITE。
 そして放つ弾丸の名前は――

 Sandmann's party
 眠  砂   弾

 幻朧桜が頭を垂れ、眠るように揺れる中、空より舞い落ちる魔法の砂が武器を持たない人々を惑わせ、夢の世界へと誘う。
「逃げる群衆を我等の足枷とするつもりだろうが」
 一般市民を人質としようと駆け寄った幻朧戦線の男達の前で偵が口を開いた。
「眠ってしまった群衆を、逃げる事すら出来ぬ者を、お前さんは撃てまい」
 その言葉に理想に燃える男達の一人、軍服を着た若者が拳銃を抜き、今は眠る人々へと向ける。
「どんなお題目も恐怖も眠った者には届かぬ」
 けれど、射止められるのは青年。それは銃口ではなく銀の星の眼光。
「それでも撃てば、それは戦争ではない」
 そして――
「ただの虐殺だ」
 理想という名のハリボテへの証明。矛盾した行為への回答。
 男の手が震え、握った銃は小刻みに揺れる。
 そして――銀色に輝く拳銃が火を吹いた。
 二発目の眠砂弾。
 向けられたのは幻朧戦線の男達。
 理想の時間は終わり、夢の時間が始まる。目覚めたころには。
「――鉄格子の向こう側であるな」
 偵の目は迷宮の遥か向こうを見ていた。

「……あんまり強くないわたしが言うのも何ですが」
 根に囚われ、枝に武器を奪われ、無力化された兵士達を横目にひかるが呟く。
「『超弩級戦力』の能力、甘く見すぎでは?」
 そして、視線を遠く――スパヰへと向ける。
 既に罠は仕掛けてある。
 曲がりくねる狭い道と根でサイドカーの足を殺し、そして花粉を撒くことで花粉症を誘発させ、逃走を防ぐ狙いであったが……。
「どうやら、あのスパヰ、乗り慣れているようであるな」
 自らの仕事を終えた偵が横に立ち、声をかけた。
「思った以上に……強敵みたいですね」
 ひかるの視界には巧みに根を乗り越え、身を伏せて花粉の中を突き抜けた側車の姿。
 呟く言葉に悔しさがないと言ったら嘘になった。

 スパヰは走る、公園の中を――さらなる戦場の向こうへ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

月影・このは
【月銭】
ふむ、微細は分かりませんが悪事の匂いがしますね
以前訪れた時食べた品が美味しかったのでと散策中にこのような事態が起こってるとは
対ヴィラン用ロボとしては見逃せませんね
では、戦闘ロボ518号事態に加勢させてもらいます!


ブラストブーツを炸裂させて前へ【ダッシュ】
前に出て目立つことで此方に意識を集中させ一般人を守る盾となりましょう
そして、近づき自身の手足による近接格闘にて敵を打ち倒します!

敵の攻撃は死角は千里さんの結界に頼り
急所は確実に避け、硬い部分で受けて弾いたり耐えます【盾受け・激痛耐性】


終わったらナイス援護でしたと拳を千里さんと打ち合わせます


六道銭・千里
【月銭】
…なんや慌ただしいと思ったら
色々あってこいつに連れ出されてこういった事件に巻き込まれるとはな
まぁ、周りに一般人のおるのに見てみぬ振りは出来ひんか…
ほんなら、六道銭・千里…助太刀に参る


御縁玉で結界【結界術】を張り一般人への被害を避けさせてもらい
小さい持ち運びできる結界【オーラ防御】をこのはへ貼り付け死角の保護

で、後は閻魔眼で未来を先読みして
冥銭を放ってこのはの後方から『援護射撃』【誘導弾】
このはを狙う攻撃、特に狙撃兵の数を減らさせてもらおうか


ついでに、影鰐にあのバイクは逃げたとしても追わせてもらう【追跡】
これで、後々でも追いつけるわ

おう、このは、お疲れさん



●加勢、背中預けて

「ふむ、微細は分かりませんが悪事の匂いがしますね」
 月影・このは(自分をウォーマシーンと思いこんでいる一般ヤドリガミ・f19303)が幻朧桜の舞う公園へと足を伸ばせば、そこは既に戦場の様。
「……なんや慌ただしいと思ったら、色々あってこいつに連れ出されてこういった事件に巻き込まれるとはな」
 連れだって歩いていた六道銭・千里(冥府への水先案内人・f05038)はその様子を眺め、軽く溜息をついた。
「以前訪れた時食べた品が美味しかったのでと散策中にこのような事態が起こってるとは対ヴィラン用ロボとしては見逃せませんね」
 かつて味わったクリヰムソォダに想いを馳せ、歩むこのは。
 二人の姿に幻朧戦線の男達は警戒の色を見せる。
「まぁ、周りに一般人のおるのに見てみぬ振りは出来ひんか……ほんなら、六道銭・千里……助太刀に参る」
 後に続くように六道の陰陽師が声を上げれると
「では、戦闘ロボ518号。事態に加勢させてもらいます!」
 鋼鉄のヤドリガミもそれに続いた。

「まずは御縁をお借りしますか」
 霊符代わりの五円玉。六道銭の陰陽師が指で弾いて再び掴めば、縁が結ぶは逃げ惑う人々。
 巻き添えを防ぐための結界がまず張られ、そして御縁玉をこのはの背中へ。
「ほな、行ってきな」
「――はい!!」
 千里の言葉を背中に受け、守りを授かった鋼鉄のヤドリガミは対ヴィラン用ロボとしての役目を果たす。
 そう、前に飛び出し人々の盾となり、敵を引き受けるのだ。
 ブーツの底で火薬が爆発し、瞬発力を得た拳が先手を奪い、幻朧戦線の兵士を一人殴り倒す。
 小さな少年の思いもしない強襲に男達の舌打ちが響き、次々と銃を構える。
 ここで倒せなくてもいい、自分達には『支援』がある。
 それを見越しての隊列射撃。
「閻魔さん、ちっと眼借りるで……!」
 けれど、その未来を六道の陰陽師が『視た』

 エンマガン
 閻魔眼

 借りうけた眼が鉛弾を、硝煙を、野伏の持つ鉄の焔を、全てを視る。
 だが、その未来を実現させてやる性分ではない。
 両の掌に冥銭を握り、それを銃を構えている兵士と、隠れて狙撃に備える男へ向かって投擲した。
 まるで導かれるように飛ぶ、呪符代わりの銭。
 金属音が響き渡ると幻朧戦線の若者から得物を失い、忘我への時間を作り出す。
 そこを――このはが見逃さない!

 Assault Combat
 格 闘 開 始

 単純明快な拳による殴打、そして蹴りの一撃。
 派手な技ではない、だが只人たる存在を蹴散らすに十分でかつ、死に至らない程度に鎮圧できる。
 まさしく、鋼鉄のヤドリガミたる業であった。
 単身、暴れるこのは。
 背中は千里が見守ってくれる。
 だから目の前の事に集中できた。
 そして千里は前を進むこのはの周りだけを見て、歩を進めていった。

「ナイス援護でした!」
 鋼鉄のヤドリガミが拳を突き出す。
「おう、このは、お疲れさん」
 それに合わせるように六道の陰陽師が拳を合わせたあと。自らの影から式を呼び、公園を飛び出して行った側車へと走らせる。
 捕まえる必要はない、路行と言った情報を仕入れておけば、後は――他の猟兵が動くのだから。
 二人の加勢により、戦況は猟兵へと傾き始めた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

木常野・都月
[高速詠唱]で雷の精霊様の[オーラ防御]を一般人全体に。
撃たれた銃弾を電磁障壁で受け止めたい。

無関係の人を平気で危険に巻き込むのか。

スパヰは逃す訳にはいかない。
今、逃がしたら、また別の場所で無関係の人が危険に晒されかねない。

スパヰは、UC【狐の追跡】で後を追いたい。
匂いはさっき覚えた。
簡単に逃げ切れると思うなよ。

後は幻朧戦線を手早く無力化したい。

銃弾や金属は電磁障壁で防ぎたい。

風の精霊様の[情報収集]で、鉄の首輪を付けてる人の目印になってもらいたい。

後は風の精霊様の誘導で、雷の精霊様の[属性攻撃、範囲攻撃、気絶攻撃]で制圧したい。

急いで後を追わなきゃ。
狐の姿になって[ダッシュ]で追いかけたい。


トリテレイア・ゼロナイン
ブラフであろうとなかろうと騎士として足止めに応じざるを得ませんね
速やかに制圧させて頂きます

センサーでの●情報収集で複数の銃声や弾痕、地形情報解析
●スナイパーの知識も合わせ狙撃手潜伏場所類推し妖精ロボ達を空へ展開、探査
市民●かばう為銃火に身を晒し●盾受け武器受け防御
全格納銃器と妖精ロボのレーザーの●乱れ撃ち●スナイパー射撃で●武器落とし無力化

制圧後、妖精ロボ一機をブルーリボン逃走方向の上空へ●怪力で●投擲
情報収集しつつ遠隔●操縦で呼んだ機械馬で追跡

今を護る為、過去を討つ
国を護る為、他国を乱す

私達は何かの為に戦うモノ
職務に忠実なその姿勢、騎士として好ましく思えます
だからこそ、阻ませて頂きますよ



●追跡、幻朧の影を払いて

「無関係の人を平気で危険に巻き込むのか」
 木常野・都月が獣のような唸り声を上げ、そして呟く。
「都月様、それがスパヰの戦い方なのです」
 取りなすようにトリテレイア・ゼロナインが声をかけた。
 鋼鉄の戦機から見れば、野生に近い狐の青年は情に動きやすい。
 自らの役割を理解し、その上で
「ブラフであろうとなかろうと騎士として足止めに応じざるを得ませんね――速やかに制圧させて頂きます」
 騎士は敵の策に乗ることを選ぶ。
「スパヰは逃す訳にはいかない」
「わかっております」
 逸る都月の言葉にトリテレイアはまず同意する。
「今、逃がしたら、また別の場所で無関係の人が危険に晒されかねない」
「おそらくはそうでしょう。だからこそ、今、ここで彼らを打ち払うのです。スパヰを追いかけるために」
 狐の懸念は騎士は受け止め、その上で禍根を断つべき提案を行う。
「……そうだな」
 都月の目は今にも迫る幻朧戦線の集団へと向けられていた。

「守りは俺が」
 狐の詠唱が公園に響き。
「では、攻めは私が」
 騎士が妖精を模ったロボを連れ立って前に立つ。
 直後、幻朧戦線の若者達が持つ小銃が火を吹き、見えないところより貫くような弾丸がトリテレイアを打ち倒そうとした。
 だが……
「なるほど、電磁障壁」
 火花が散り、破裂音が響く中、騎士が感心の声を上げる。
 都月が願った精霊は雷の精。
 電気が磁力を授けることを狐は知り、そしてそれが守りの壁になりうることを理解していた。
「これで一般人は大丈夫だ」
「ならば――」
 安全を確認した騎士が逆襲を開始する。
「スティールフェアリーズ、システムリンク。レーザー測定、誤差修正」
 トリテレイアが行程を確認するかの様に言葉を紡ぐと、妖精へ魔法を願うが如く、ロボが飛ぶ。
 戦場の全ての視界を把握し、そして装甲を展開、格納銃器の照準を同調させる。
 そのシステムこそ――

 Steal Fairies  Mode:Attack
 自律式妖精型ロボ 遠隔操作攻撃モード

 それは妖精の魔法にしては苛烈で、制圧射撃としては精密すぎる物であった。
 騎士に秘められた銃火器が、ロボが放つレーザーが、寸分違わない正確さで理想に燃える者達の得物を撃ち落とし寸断する。
 勿論、狙撃手も例外ではない。
 トリテレイアにも狙撃の知識がある。
 そして、広く見える目があるのだ、どんなに隠れても狙撃銃は破壊され、野に隠れるしか道は無かった。
 だが、それだけでは終わらない。
「雷の精霊様!」
 都月の請いに応え、風に導かれた雷撃が鉄の首輪に向かって落とされる。
 それこそが熱情の証、そして幻朧戦線の証。
 雷は鉄に導かれ、その主を分け隔てなく気絶させた。

「スパヰを追う――分身の俺、追跡頼む」
 幻朧戦線を打ち払っても戦いは終わっていない、彼らにはスパヰを追跡するという使命があるのだから。
 都月が呼んだのはもう一人の自分、つまりは狐。
 それは五感を共有し、そして敵に発見されづらい追跡者となる。

 キツネノツイセキ
 狐の追跡

 まさしくそれは狐が獲物を狙う動きであった。
「私も負けてられませんな」
 そのユーベルコードを見たトリテレイアが呟き、妖精ロボの足を掴む。
「――ぬぅぅぅん!!」
 普段の彼にあるまじき、野太い声から投擲された妖精はカタパルト発射されたかのように速度を上乗せし、そして狐についていく。

「今を護る為、過去を討つ。国を護る為、他国を乱す」
 騎士の言葉に都月が顔を上げる。
「私達は何かの為に戦うモノ、職務に忠実なその姿勢、騎士として好ましく思えます」
「トリテレイアはスパヰが好きなのかい?」
 戦機の言葉に狐が問う。
「いいえ」
 騎士は首を振った。
「生き方が好ましいだけです――だからこそ、阻ませて頂きます」
 その言葉は都月の胸に刻まれた。
 今はまだ分からないけれど、いつかその意味を知る日が来るかもしれないと一人思いつつ……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ザフェル・エジェデルハ
樒(f10234)と共闘
穏やかな公園に野暮な登場だな

【高速詠唱】でサファクを呼び出して【騎乗】し、ブルーリボンを追う
こういう場は俺より樒の方が向いているからな。後は任せたぜ樒!

飛び立つ際には羽ばたきで土煙を起こし、敵の視界を奪う
敵の弾丸は槍による【武器受け】や【オーラ防御】で防ぎ、
狙撃兵による銃撃も最初に撃ってきた方向を頼りに【第六感】で防ぐ
また、掴まってくる奴がいたら【衝撃波】で【吹き飛ばし】て対応する

上手くブルーリボンに追いつくことが出来たら敵の攻撃手段を奪い、
側車を壊して足止めして、他猟兵が追いつくまで逃がさないようにする

うちの相棒は美味い茶を淹れるんだぜ。一服してかねぇか?


織部・樒
引き続きザフェルさん(f10233)と行動
アドリブOK

致し方ありませんね
ザフェルさん、この場は私にお任せ下さい
空を飛ぶ竜を持つ彼の方が追跡は容易でしょう

相手はオブリビオンではないのであまりUCに頼りたくはないのですが
いざという時は護法を呼び制圧

錫杖を構え、【早業】【武器受け】【見切り】【オーラ防御】を使用し
攻撃には【呪詛】【マヒ攻撃】を付与
遠くの敵へは【式神使い】【動物使い】にて威嚇や行動阻害をお願いします
また可能なら【地形の利用】にて木の影に入る、桜吹雪に身を隠すなど
撹乱も狙いましょう

制圧出来たら【動物と話す】などで情報を仕入れながら
急いでザフェルさんを追います


御桜・八重
ここを戦場にはさせない!
スパヰを追う人たちが囲みを突破すれば、
足止めの意味が無くなった幻朧戦線は退くはず。

「護りの花よ、咲きほこれ!」
【花筏】を発動、皆の周囲に桜色のバリアを展開して初弾を防ぐ。
「行って!」
続けて追跡する人に髪飾りを飛ばしてバリアで護り、突破を助ける。

以後は皆や周囲の一般人の守りに集中。
髪飾りを操ってバリアで銃弾を防ぐ。
絶対犠牲は出させない!

兵が退いたら深追いせず自分もダッシュで後を追う。
死の覚悟を決めた人に届く言葉は無いのかもしれない。
でも、そんな理不尽やっぱり我慢ならないから、
「もう一度、生きて二人でお茶しなよ。悪企みは全部止めるけどね!」
こちらもまっすぐ理不尽を言うのだ。


石守・舞花


「殿はいしがみさんにお任せください」
スパヰを追う他の方を邪魔しようとする幻朧戦線の人たちを、足止めします

薙刀を大上段に構えて、わざと目立つ動きで挑発します
お供のワニガメにもとびきり怖い顔をしてもらって、とにかく邪魔する意志があるのだということが一目で分かるように派手に立ち回ります

当然攻撃されると思いますので、敢えて皆さんの盾になるようにすべて受け止めます
痛みには【激痛耐性】で耐えます
「大丈夫です、いしがみさんは痛みには強いんです」
こうして痛みに耐えていれば【防衛機晶】が発動して隠れている狙撃手のことも返り討ちにできるでしょう
「いしがみさんも後から向かいます。だから皆さんは気にせず追いかけて」



●捕捉、ティータイムにはまだ早い

「――来い、Safak!!」
 崩れる戦線を好機とみたザフェル・エジェデルハが夜明けの名を持つ竜を呼ぶ。
「こういう場は俺より樒の方が向いているからな。後は任せたぜ樒!」
「致し方ありませんね。ザフェルさん、この場は私にお任せ下さい」
 竜へ飛び乗り追跡を開始するザフェルに対し、織部・樒が理を解し、場を請け負った。
 竜の使い手の頷きに応え、サファクが羽ばたく。
 それは土煙を巻き起こし、竜を飛ばせまいと殺到しようとする幻朧戦線の戦士達の動きを止めた。
 やがて塵芥が色を失い、風が止んだ時、そこに立つのは樒の姿ではなく。
 美しい童の姿をした護法。

 ショウカン・ゴホウドウジ
 召喚・護法童子

「あまりユーベルコードに頼りたくはないのですが」
 桜から桜へと走りながら白天目茶碗のヤドリガミが呟いた。
 次から次に戦線が崩壊している中、立て直しが速い。
 指揮官をどうにかしなくてはならない。
 童子が竜へ殺到しようとした兵士を相手にする中、思考と共に樒は桜に消えた。

「攻撃用意!」
 幻朧戦線の一人、青年将校が軍刀を空に掲げた。
 予想外の結果に頭が痛い。
 足止めに専念すれば、時間を稼げるはずだった。
 だが、実際はどうだ?
 超弩級戦力のユーベルコヲドは人数差を凌駕し、自分は都度、部隊の再編成に力を注がねばならなかった。
 だけど、それも終わりだ。
 同志が減ったことで指揮が届く、戦力は少ないが、せめて飛び立とうとする竜を落とそう。
「撃てぇー!」
「護りの花よ、咲きほこれ!」
 青年将校の声と御桜・八重の声が重なった。

 ハナイカダ
 花 筏

 人々を、竜を、守るように形成された桜の障壁。
「ここを戦場にはさせない!」
 それには八重の強い意志が込められていた。
 故にそれは何者も阻む盾となる。
「行って!」
 敵の対空射撃に備えていたザフェルは桜の巫女の言葉に頷き、そして空を駆ける。
「斉射!」
 直後、八重の障壁へと銃弾が叩き込まれた。
 幻朧戦線の戦士達が敢えて一般人に銃撃しているのだ、狙撃兵も同様に無辜の人々を狙っている。
「抜刀及び着剣! 目標、超弩級戦力!」
 桜の巫女が守りに専念する中、指揮官の声に兵士達が刀を抜き、銃剣を構える。
 狙いは八重。
 銃撃は彼女の動きを止めるための牽制。
「銃撃を続けろ――残りは我に続けぇ!」
 号令一下、兵士達の突撃が桜の巫女を襲う。
 だが、流れる血は違うものであった。

「ここはいしがみさんにお任せください」
 体中を刃で串刺しにされた石守・舞花が薙刀を杖代わりにその場に立っていた。
「石守ちゃん!?」
 八重の顔から色が無くなる。
「大丈夫です、いしがみさんは痛みには強いんです」
 薙刀を振り回して、兵士達に距離を作らせる。
 赤に染まった服、足元へ伝わる紅、構わないとばかりに舞花は大上段に得物を構え、足元ではワニガメのほたるが歯を見せて威嚇する。

 その姿に男達はたじろぎ、心乱れた。
 死んだなら、熱狂に酔うだろう。
 倒れたなら、さらに攻撃を加えようと逸るだろう。
 だが、傷ついてもなお、立っているのだ。
 それも武器を構えて。
「――もう一度、突撃する」
 そんな空気を打ち消すために青年将校が攻撃を指示する。
「今度は確実に殺すぞ」
 指揮官の言葉に男達は覚悟を決め
「石守ちゃん!」
 八重は悲鳴の如く名を呼んだ。

 助けたい、けれど守るべき人々が居る。
 動けない自分が悔しかった。

「いしがみさんも後から向かいます。だから皆さんは気にせず追いかけて」
「――突撃!」
 神石の巫女の願いは将校の号令にかき消される。
「いいえ、皆で後を追いかけるのです」
 硬い、陶器が響くように透き通る声。
 それが号令を更に上書きした。

「他の敵を倒すのに時間がかかりました、申し訳ありません」
 青年将校の刀を錫杖で受け流し、天目茶碗のヤドリガミが謝罪する。
 気が付けば銃撃は収まっており。幻朧戦線の戦士たちは護法童子と樒が呼び寄せた動物達によって、動きを止められている。
「いいのです。いしがみさんと八重さんの力で持ちこたえました」
 舞花も薙刀を振るい、二人は指揮官を追い詰める。
「それにしてもどうして前に出たんです?」
 ヤドリガミが九字を切り、呪詛を以って青年将校の動きを止める。
「そうですね……カウンター狙いでした」
「――カウンター!?」
 神石の巫女の言葉に桜の巫女は思わず声を上げた。
「はい、カウンター――あ、今、行きます」
 舞花の言葉に応えるように、槍状の鉱石結晶が幻朧戦線の指揮官へ向けて飛んでいく。

 Ferden crystal
 防 衛 機 晶

 痛みに耐える意思に呼応して呼び出される鉱石の結晶。
 糸というには太すぎるそれは槍として相手を貫き、倒す。
 だが、今回は――相手の頭を真横から振りぬくように殴りつけ、意識を断つに留めた。
 そして鉱石結晶は一本にとどまらない。
 動きの止まった幻朧戦線に止めを刺すに十分な量があった。
「カウンターとは、こう……身を切らないものだと思うのですが」
 理想に燃える熱狂者が倒れゆく様を見ながら呟いた樒の言葉に、いしがみさんは不思議そうに首を傾げた。

 竜が側車の前に立ちはだかった。
 側車部分――舟に乗った幻朧戦線の若者が銃を構える前にサファクの羽ばたきがサイドカーを吹き飛ばした。
「逃がしてはくれないか」
 側車から飛び降りたスパヰが歩くのは港の一角。遠くより汽笛が鳴り響き、波止場には船が停泊している。
「うちの相棒は美味い茶を淹れるんだぜ。一服してかねぇか?」
 竜から降りたザフェルがポケットに手を入れたまま隣に立ち、呼びかける。
 男が懐中時計を取り出し、視線を落とし
「ティータイムにはまだ早い」
 一言、断りを返した。
「……そうか」
 言葉の意味を察したザフェルがポケットから手を抜き、ゆっくりと距離を取る。
 そこへ、猟兵達が駆け付けた。

「もう一度、生きて二人でお茶しなよ。悪企みは全部止めるけどね!」
 理不尽だけど、それでも生きていてほしいと願うから。
 八重の言葉に三つ揃いの男は困ったように笑った。
「参ったな。私は仕事が終わってから紅茶を飲む主義なんだ。そしてティータイムにはまだ早い」
 スパヰの言葉を聞いた樒が竜の使い手へ視線を送る。
 返ってくるのは頷き一つ。
 全てを理解した白天目茶碗のヤドリガミが八重を庇う様に前に出た。
「……えっ?」
「あいつはこう言ってるんだ『仕事はまだ終わっていない』ってな」
 苦虫を噛み潰した表情でザフェルが口を開く。
「つまりはあきらめてないんですね」
「そういう事だよ。君達のせいで死ねなくなったしね」
 舞花の言葉に頷き、海へと歩く。
「生きて茶……なら、お嬢さんの言葉通り、悪あがきをさせてもらおう」
 懐中時計を口元へ寄せ、スパヰが囁いた。

 Honi soit qui mal y pense
「――悪意を抱く者に災いあれ」

 赤毛の三つ揃い、その背後に広がる海原から水柱が上がった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『スパヰ甲冑』

POW   :    モヲド・零零弐
【マントを翻して高速飛翔形態】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【目からのビーム】を放ち続ける。
SPD   :    影朧機関砲
レベル分の1秒で【両腕に装着された機関砲】を発射できる。
WIZ   :    スパヰ迷彩
自身と自身の装備、【搭乗している】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●スパヰ甲冑『ブルーリボン』

 オックスフォードの靴底がコンクリートの大地を蹴り、スパヰが海へ飛ぶ。
 海中へ飛び込むかと思われた彼を受け止めたのは、水面の底から現れし赤い飛行物体。
「世の中は綺麗でかつ醜いものだ……特に国としての形を奪われた者にとってはね」
 ここにきて、赤毛の男は感情というものを見せ始めたのは気のせいか。
「列強の島国、世界に散らばる宗主たる長、最早形骸化したかつての栄光を取り戻さんとし、このような遺産を大切にしまっている」
 スパヰと猟兵を隔てているのは海一つ。しかし見えない『何か』がもう一枚、壁となり、両者を隔てていた。
「これはスパヰ甲冑という。まあ君達が戦ったことがあろう影朧甲冑の一種だ。乗ったところで死にはしないし……君達を蹴散らして逃げることも可能だ……だが!」
 彼の足元で蒸気が噴出し、歯車の回転音が唸り、変形が始まる。
「君達をここで倒さなければ、後々の禍根になることは間違いない。不本意だが――勝負だ!」

 人型へ変わりゆく機体へ飲み込まれていく赤毛の男が叫ぶその名は――

「ブルーリボン!!」

 それ。細い体躯に似合わないほどに太い四肢、左膝には青いラインが一本引かれているのが目立つ。
 はためくマントは漆黒にして頭には二角帽を模した飾り。
 まるで生き物のように双眸が猟兵を睨み、伝声管を通じて言葉を伝える。

「スパヰ甲冑『ブルーリボン』――それを駆る資格を持つがゆえに私は同じ名を与えられていたのだよ」
 飛行装置で海原に浮かぶ甲冑。
 マントを翻したその姿を祝う曲などなかった。
 スパヰとはそういう物だから。
「来い!!」

 女王陛下の忠実な紳士はそうであらんがために戦いに挑む。
 君達は何を以って戦うのか?
 どうか悔いのなきよう、互いの持てる全てをぶつけ合わんことを。
ミカエル・アレクセイ
おーすげー
俺もそれしたい
力がある奴は凄いねぇ
等と冗談

音も消せよ?こちとら何千年も戦場で生きてたんでね、そんだけデカイのが動くと聞こえるぞ?
【戦闘知識】で戦場での敵の動きを予測
音と空気の動きも合わせて把握し、【野生の勘】も合わせて姿を消した敵を把握し、味方を【鼓舞】しつつ伝達
敵の攻撃はドラゴンが変身した槍を使用し受け流しつつ、味方の射程範囲に叩き込んで自滅を誘う戦い方をする
自身がトドメやそもそもダメージを与えることを考えず捌きつつ味方が有利になるように動く

弟子は上手いことやってんのかねぇ…まぁいいが

俺だって茶をしばきたい相手はいたが役目だなんだと言っているうちに死んだ
後悔しないうちに会いに行けよ


ニコ・ベルクシュタイン
Justitia saepe causa gloriae est.
…「正義は賞賛されど、決して顧みられない」
お前も当然、其の覚悟を背負って此処に居るのだろうな

遅参、失礼する
ニコ・ベルクシュタイン、及ばずながら助力に馳せ参じた

【時計の針は逆さに回る】発動
箒にまたがり飛行し海上へと出よう
たとえ姿を消そうとも、其の巨躯からの駆動音などは消せまい
僅かな音さえ聞き逃さぬよう、後はそうだな
…海上に浮かぶが故の波紋なども見逃さぬようにしようか
眼鏡のお陰で、俺には其れだけの「視力」が有るのでな

威力を増した「Bloom Star」を力いっぱい振り抜こう
命中したら「部位破壊」でその箇所を粉砕したいものだ



●覚悟と後悔と

「おーすげー」
 ミカエル・アレクセイが他人事かのようにスパヰ甲冑へ視線を向けて呟いた。
「俺もそれしたい、力がある奴は凄いねぇ」
「埒外にいる超弩級戦力が何を言っているのかね?」
 返ってくる言葉は伝声管を通している故か、くぐもっていて冷たい。
「君達が影朧甲冑すら破壊できる者だという事は我々の情報網にも挙がっている」
「……ったく、面倒臭ぇ」
 口角を上げてミカエルが呟くのはいつもの常套句だった。

 Justitia saepe causa gloriae est.
『正義は賞賛されど、決して顧みられない』

 硬質なラテン語が波打つ波止場に響く。
「……お前も当然、其の覚悟を背負って此処に居るのだろうな」
「援軍か……過大に評価してくれるな」
 人の目を模したキャメラが見るのは――
「遅参、失礼する。ニコ・ベルクシュタイン、及ばずながら助力に馳せ参じた」
 ニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)。
 構えるのは一輪咲いた星型の花が絡み付く、柊の杖。
「百年の時を経て今此処に甦れ」
 その杖がコンクリートを叩くと
「我が力の根源よ!」
 時計卿は赤の魔法使いへと姿を変える。
 それが最後の戦いの始まりであった。

 ニコが跳躍すると、それに呼応するように空の彼方より飛ぶのは箒が一つ。
 魔法使いらしく箒へ乗れば、海へと飛び出した。

 Remembrance・clockworks
 時計の針 は 逆さに回る

 赤の魔法が紡ぐのは音をも超える超高速飛行。
「たとえ姿を消そうとも、其の巨躯からの駆動音などは消せまい」
 スパヰ迷彩によって姿を消すブルーリボン。
 だが時計卿は音速の世界から雑音ともいえるモーターの音を読み、甲冑の動きを封じるが如く、先んじて回り込んで見えざる者へと牽制する。
 衝撃が海面を揺らし、そして静寂が訪れた。
「そうだ、音も消せよ?」
 だが静寂はすぐに終わり、響くのは金属音。
 ミカエルが竜槍片手にブルーリボンへと一撃を叩き込んでいたのだ。
「こちとら何千年も戦場で生きてたんでね、そんだけデカイのが動くと聞こえるぞ?」
「ならば!」
 槍が空ぶると同時に空より響く声、そして何もない空間より光線が薙ぎ払う様にコンクリートの大地を抉った!
「弟子は上手いことやってんのかねぇ……まぁいいが」
 光線が追いかける中、呟き走る神。
 けれど、それは策謀の内。
 ミカエルの動きに誘引されるように静かだった水面が動く。
「――ここだ、外すなよ」
 神が笑みを浮かべたとき、港のコンクリートから地を這うように風が吹く。
「誘ったのか!?」
「遅ぇ」
 スパヰが意図に気づいた時には、建物の隙間から現れた大型バイクより紅目の黒猫が機関魔銃による斉射を行った。

 カコニウモレタイモノ
 過去の異者

 幽霊猫の魔弾が見えない何かを叩き、熱を持った鉛が地面に転がっていく。

「俺だって茶をしばきたい相手はいたが役目だなんだと言っているうちに死んだ」
 ミカエルの視線の先にはニコ。
 時計卿の視線は眼鏡を通して、弾丸がはじけ飛ぶことで描く『何か』を捕らえた。
「後悔しないうちに会いに行けよ」
 直後、星花の杖がスパヰ甲冑の背部装甲を粉砕した。
「そうだな」
 杖を振るったニコが続く。
「取り戻せないことになるかもしれんぞ」
「私たちの仕事は……取り戻すことではないのさ」

 再び気配は消え、そして殺意が辺りを覆った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

石守・舞花
そうまでして奪い返したい祖国があるというのは、羨ましいことです
いしがみさんにとっての故郷は、控えめに言って早く滅びろとしか思えないような場所ですから

真の姿開放

敵が迷彩を使用しても気配を感じ取れるよう、五感に意識を集中させます
これほどの甲冑ならば、姿を消したところで駆動音や排熱は隠しきれないでしょう
僅かな足音や外気より温かい風を辿り、居場所を絞り込みます
途中不意打ちを食らっても【激痛耐性】で耐えます

攻撃すべき点が定まったらUC使用
アタリをつけた方角に衝撃波を放ちながら、敵のいそうな場所を薙刀で攻撃します
エンジンを【部位破壊】しながら【生命力吸収】で動力を掠めとれればしめたものです


荒谷・ひかる
貴方は、超えてはいけない一線を越えてしまったんです。
『影朧戦線』に関わり、そして今『影朧甲冑』の亜種に乗り込んだ。
『それ』は世界にとって、後々の禍根となる……見過ごしておけないのは、こちらの方です!

【宇宙の精霊さん】発動、更に呼び出した子を「鼓舞」して差し向ける
透明化能力は厄介ですが、元より視力に頼らないこの子なら特に問題無い筈
(どう見ても目とか無いですし)
体当たりや丸呑みで攻撃してもらいますが、中身を殺さないようにきっちり言いつけておきますね
(※ちなみに時間切れで昏睡するのはひかるでなく「宇宙の精霊さん」の方です)
もし昏睡で油断して姿を現すようなら、そこに精霊銃(電撃弾)を撃ち込みます



●一線と同情と

「貴方は、超えてはいけない一線を越えてしまったんです」
 荒谷・ひかるが赤茶色の瞳を空に向ける。
「『幻朧戦線』に関わり、そして今『影朧甲冑』の亜種に乗り込んだ……」
 その言葉は凛として
「『それ』は世界にとって、後々の禍根となる……見過ごしておけないのは、こちらの方です!」
 何者も許さない強さがあった。
「君にとって見過ごせないもの……私にとってはそれが仕事だったという事だよ」
 見えない空の向こうより響くスパヰの言葉は職業意識故の覚悟。
「そうまでして奪い返したい祖国があるというのは、羨ましいことです」
 石守・舞花がそんなブルーリボンの覚悟をいなす様に低めのテンションで感想を述べる。
「いしがみさんにとっての故郷は、控えめに言って早く滅びろとしか思えないような場所ですから」
「それは不幸なことだったなと言っておこう」
 舞花の言葉に返ってくるのは短い答え。
「同情とかはないんですか?」
「同情してほしいのかい?」
「いいえ」
 ちょっとしたやり取り、遠くより来た男は神石の巫女がどこから来たかを知っているからこそ、何も言わない。それを舞花は理解した。
 だから――結んでいた髪を解き、真の姿を以って戦いに臨む。
 人外の巫女達は相応しき決意を以って、影朧を纏う只人と戦うのであった。

 スパヰ甲冑が大地に降りた。
 姿は見えずとも分かった。
 海は揺れるを止め、コンクリートの港に駆動音と足音、そして排気音が聞こえるのだから。
 その姿なき何かに向け人外の四肢を持った神石の巫女が贄として甲冑を狩らんと一歩、また一歩と近づいた。そして一度立ち止まり……一呼吸から飛び出すと――怒涛の攻めが始まった。
 空間に次々と薙刀が打ち込まれる。
 直後散る火花、そして空気の震える音。
 人外の爪が大地を噛み、舞花が震える何かを掻い潜って潜り込む。
 鉄拳らしき一撃が空振ったと同時に巫女の腕が舞い、その爪がまた火花を咲かせる。
「当てることは出来ても――貫けないなら、意味は無いな」
 駆動音、そしてモーターが回転する音が甲高く響く。
「でしたら!」
 その直後、空より『何か』が降ってきた。

 Space Mongolian Death Worm
 宇 宙 の 精 霊 さん

 それは精霊というには禍々しく、かといって荒谷・ひかるが普通に認識するには異質すぎた。
 その生物の名は宇宙モンゴリアンデスワーム。
 数ある世界をまたがると言われている未確認生命体である。
「――っ!」
 舌打ちと共に空へと機関砲弾が発射され、宇宙の精霊が宙を跳ねる。
 だが、ひかるによって力を与えられたモンゴリアンデスワームは体勢を立て直し、大口径の鉛弾をものともせずに飛び込むと見えないはずの甲冑へと噛みついた。
「透明化能力は厄介ですが、元より視力に頼らないこの子なら特に問題無い筈」
 羅刹の巫女の言葉通り、おそらくは精霊であろうものは見えないはずのブルーリボンへ器用に絡みつき、そして機体の動きを止める。
「――今です!」
 ひかるの言葉に舞花が薙刀を構えると身体の中に埋めこまれた神石が力を放つ。

 ――巫覡載霊の舞

 神霊体となった神石の巫女が薙刀を振り下ろす。
 それは一陣の風となり、やがて衝撃波となってスパヰ甲冑の動きを止め、昏倒したスペース・モンゴリアンデスワームを吹き飛ばす。
 そして巫女はためらいもなく飛び込み――空を貫いた。

「エンジンを一部やられたか……」
 やがて姿を現すは赤い機体にブルーのガーターラインを引かれた甲冑『ブルーリボン』
「だが、これが影朧甲冑の一種だと忘れてもらっては困る」
 蒸気機関が駆動を始め、同調する影朧エンジンが回転を上げる。
 黒く禍々しい何かをたなびかせ、甲冑は港に立ち。
 決意を決めた巫女達はなお、その鋼に立ち向かわんと意志を見せていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ティオレンシア・シーディア


祖国がどうの使命がどうの、ってのは正直あたしには縁遠い感覚ではあるけれど。まあそこらは環境と個人の信条だしねぇ。

ミッドナイトレースに◯騎乗して機動力を確保、エオロー(結界)のルーンで○オーラ防御の傾斜装甲を展開。相手は「蒸気機関」、排気は必要なはず。音を頼りに「だいたいあのへん」で接近して遅延のルーン三種をメインに●黙殺バラ撒くわぁ。
スモークとかスタングレネードの◯投擲も織り混ぜればより有効かしらぁ?

…まあ、なんのかんの言っても最終的には。
「余計なことすんじゃないわよ莫ァ迦」って個人的な感想に落ち着くんだけどねぇ。
対処する側からすれば、そう的外れな感想でもないと思うけど?



●信条と感想と

 ミッドナイトレースがエキスゾートを響かせて海面を走る。
「祖国がどうの使命がどうの、ってのは正直あたしには縁遠い感覚ではあるけれど」
 水飛沫を顔に受けながらティオレンシア・シーディアが呟く。
「まあそこらは環境と個人の信条だしねぇ――ゴールドシーン」
 呼びかければシトリンのペンがルーンを描く。
『ᛉ』――それは結界。
 意図的に傾斜したオーラによる装甲を纏った宇宙バイクが海原を疾走し、港に立つブルーリボンへと迫る。
「そんな一直線に来るなど!」
 再びスパヰ迷彩で姿を消した甲冑から火薬の破裂する音が次々と響き、海面に水柱が立つ。
 勿論それは観測射撃。
 すぐにスパヰは弾道を修正し、ティオレンシアへと効力射を叩き込む。
 だが、その弾道は傾斜した障壁によって逸らされるように明後日の方向へ飛んでいく。
「――被弾経始か! なら!」
 ブルーリボンが次の手を打とうと機関砲のトリガーから指を離した直後、閃光と轟音が辺りを包んだ。
 それは糸目の女が投げたスタングレネエド。
 音の反響、弾道、そして排気音、全てを頼りに位置を掴み、閃光手榴弾が作り上げた時間を材料にルーンを編む。

『ᚦ』――其は茨の門
『ᚾ』――其は束縛への固定
『ᛁ』――其は停滞の冬

 Desire
 黙 殺

 鉱物生命体が願いを叶え、遅延を意味する三つのルーンから降り注ぐのは無数ともいえる魔力の矢と鋭き刃。
 文字通りの魔道制圧射撃が魔術文字を体現するかの如く、スパヰ甲冑をその場に縫い留める。
 だが……
「……まあ、なんのかんの言っても最終的には」
 ティオレンシアはいつものように笑う、魔力の雨の中放たれたビームに胸を撃たれつつ。
「『余計なことすんじゃないわよ莫ァ迦』って個人的な感想に落ち着くんだけどねぇ」
 血は流れない、傷口は焼かれたから。
 だが、無事とは言えない、身体を貫かれたから。

 ――対処する側からすれば、そう的外れな感想でもないと思うけど?

 バイクより転落する糸目の女。
 彼女の最後の言葉は海の泡となって消えていった……。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

六道銭・千里
【月銭】
俺はこの世界の人間ちゃうからな…
国同士のいざこざとか、そんなんよう分からへん

まぁ、やからってああいう風に一般人を巻き込んで…ていうんは違うんちゃうかな?


流石にあの動きは厄介やな…足止めは、俺の役目やな…
でっかい一撃は任せたわ

御縁玉の結界術【+オーラ防御】にこのはのバリアを組み合わせて
一時的な身を守る盾に…ほんじゃあ頼むわ

このはの回転動輪に御縁玉を投擲…
カタパルトの要領で、普段より遠くまでばら撒く…

んで、斉符結界を展開!遠くに結界を展開し
飛び回る甲冑の動きを封じ込める結界に…このは!今や!


まあ、結局罪のない人間に被害をもたらす輩にお天道様は微笑まへん
そういうこっちゃ

っておい待て!


月影・このは
【月銭】
国、思想、歴史…ボクにとってはどうでもいいことです
ただ、あの公園で怯える人が居た逃げる人が居た、そして命を脅かされた

であれば貴方は彼らにとってのヴィラン、ボクの敵です
対ヴィラン用量産型戦闘ロボ518号これよりヴィランと交戦に入ります


流石にあの高速飛翔体を捉えるのは困難ですね…
クリスタルウォールを展開【盾受け・オーラ防御】
千里さんの結界と合わせてビームを防ぐ盾へ…
バトルホイールを高速回転し支援


オーラエンジン…フルドライブ…
『エネルギー充填』…


千里さんの合図と共に
今!オーラッ!ブラスタァア!!


任務完了、戦闘後でエネルギーの消耗が激しいですね
千里さんのおごりで、いっぱい食べるとしましょうか



●脅威と天道と

 一人の女が海に沈み、二人の男が港を走る。
 そのタイミングでブルーリボンは迷彩を解除し、マントを翻して飛び上がった。
「流石にあの高速飛翔体を捉えるのは困難ですね……」
「あの動きは厄介やな……なら足止めは、俺の役目やな……」
 月影・このはの呟きに六道銭・千里は自らが為すべき役割を理解する。
「でっかい一撃は任せたわ」
「はい!」
 六道の陰陽師に背中を押され、鋼鉄のヤドリガミは一歩、前に出た。

「国、思想、歴史……ボクにとってはどうでもいいことです」
 このはのクリスタルウォールがビームを受け止め、千里の御縁玉がそれに結界を重ねて、光線を打ち消す。
「ただ、あの公園で怯える人が居た逃げる人が居た、そして命を脅かされた」
 水晶の向こう側よりスパヰ甲冑を睨むのは鋼鉄のヤドリガミ。
「であれば貴方は彼らにとってのヴィラン、ボクの敵です」
 またの名を対ヴィラン用量産型戦闘ロボ518号。
「君にとってどうでもいいものが、人には大切なのだよ」
 二人を睨むブルーリボン、その双眸が光る。
「俺はこの世界の人間ちゃうからな……国同士のいざこざとか、そんなんよう分からへん」
 クリスタルウォールと結界がビームを受け止める中、六道の陰陽師は口を開く。
「まぁ、やからってああいう風に一般人を巻き込んで……ていうんは違うんちゃうかな?」
「そうだな」
 返ってくるのは肯定、そして
「だが、それをするのが私の仕事だ」
 急降下。
 質量と推力の伴った一撃を以ってスパヰ甲冑は防護を粉砕せんとする。
「……ほんじゃあ頼むわ」
 迫りくるブルーリボンを視界に置きながら、千里がこのはへ告げる。
 応えの代わりに、鋼鉄のヤドリガミの両腕に装備されたバトルホイールが回転を始め、唸りを大気へと響かせた。

「……いくら速度に特化したとはいえ、仮にも影朧甲冑。生半可な手は倒せるとは思わないことだな!」
 スパヰ甲冑が降下しながら拳を握る。
 その周囲に飛ぶのは御縁玉、このはのバトルホイールによって射出され、距離を稼いだ結界符。
 直後、網に囚われたように甲冑は空中に停まる。
「この場は俺が占領させて貰うわ」

 ――奥義・斉符結界・守銭土

 霊符代わりの御縁が結ぶはブルーリボンを封じ込める結界陣。
「……このは! 今や!」
「オーラエンジン……フルドライブ……エネルギー充填!」
 呼びかけに応じこのはの胸が展開し
「今!」
 力を放つのは
「オーラッ! ブラスタァア!!」
 熱線砲!

Aura Bluster
 オーラブラスター

 眩い光がスパヰ甲冑を飲み込み、鋼を空高くへと舞い上げた。

「まあ、結局罪のない人間に被害をもたらす輩にお天道様は微笑まへん」
 吹き飛ばされるブルーリボンを見上げて千里が呟く。
「そういうこっちゃな」
 それが道理とばかりに。
「任務完了、戦闘後でエネルギーの消耗が激しいですね」
 けれど、このはの道理は腹の虫の様だ。
「千里さんのおごりで、いっぱい食べるとしましょうか」
「っておい待て!」
 六道の陰陽師が声を上げた直後、竜が空へと飛びあがった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

織部・樒
引き続きザフェルさん(f10233)と行動します
アドリブOK

これ以上の会話は無駄のようですね
残念です…

ザフェルさんの死角を守るように立ち位置調整し彼の竜に
追尾するようにUC発動
姿は見えませんが、可能な限り耳と目を澄まし
【動物と話す】【動物使い】にて彼らの聴覚嗅覚も頼らせて頂きます
此方への攻撃は【早業】【見切り】【武器受け】にていなし、
受け切れない分は【オーラ防御】で凌ぎます
また有効そうなら【結界術】【式神使い】、必要なら【空中浮遊】も併用
機械のようなので【マヒ攻撃】も効くでしょうか

せめて桜の約束を契った大切な方と、お茶を楽しめる事を祈ります


ザフェル・エジェデルハ
樒(f10234)と共闘。他者連携等OK

国としての形を奪われた、か。なんとも辛ぇ話だな…
だが、だからと言って混乱を引き起こすようなことを野放しにできねえな

影視る竜を展開
敵に攻撃が当たったら、燃料タンク等に攻撃を仕掛けるよう仕向け、「自身と自身の装備」以外の透明に出来ない箇所を作り出すようにする

敵の攻撃は、発する音等と【第六感】を頼りに【オーラ防御】【武器受け】で防ぐ
また、近接時は【怪力】による武器攻撃や【衝撃波】でも応戦する

敵は見えなくなる分、疲労も蓄積するようだから、短期で終わらせたい所だろう
もしかしたら、そこに隙が生まれるかもしれねえな



●契りと故国と

 飛び上がるは黒き幻影竜、従うのは陰陽五行の劫火。

 ――影視る竜は招来せし劫火と共に舞い上がる。

「……くっ!」
 爆音の中、スパヰ甲冑から人の声が聞こえたのは気のせいだろうか?
 だが、空中で体勢を立て直したブルーリボンが空に消えたのは確かだ。
 そう――光学ユーベルコヲド、スパヰ迷彩。
 遅れて、銃声が響き、鉛の雨が竜と炎をすれ違う様に降り注ぐ。
「これ以上の会話は無駄のようですね」
「国としての形を奪われた、か。なんとも辛ぇ話だな……」
 織部・樒が状況を把握し、ザフェル・エジェデルハが背景を理解する。
「だからと言って混乱を引き起こすようなことを野放しにできねえな」
「ええ、残念です……」
 けれど、竜の使い手は道理から外れた行為を看過することは出来ず、白天目茶碗のヤドリガミはスパヰの意志を変えられないことを悔やむ。
 そして、二人とも長柄の得物を構えて、自らを殺めんとする雨に立ち向かった!

 金属音が激しく鳴り響き、コンクリートの大地に熱がまだ冷めない鉛が転がっていく。
「防いだ……だと!」
 うめき声は虚空より響く。
 錫杖と戦斧、樒とザフェルは己が得物とオーラの形成によって、弾丸の雨を防ぎ切ったのだ。
「視えないが、音は聞こえるんでね。それに……」
 ザフェルは空を見る。
「てめぇ『急いで』いるだろう?」
「――っ!?」
 竜の使い手の指摘にスパヰの言葉が詰まる。
 直後、幻影竜が空へ牙を突き立てた。

 咆哮が響き、竜が何かを食いちぎる。
 閃光と嫌な臭いが辺りを支配した。
「そのユーベルコヲドは疲労を強いる」
 空に見える火花を眺め、ザフェルが言葉を続けた。
「こちらを翻弄するならまだしも、戦いに使うには消耗も激しいはずです」
 同じように樒も指摘する。
「だから……隙が出来たのです」
 続けざまに打ち込まれる無数の劫火。
 炎は金属を溶かし、甲冑を動かす影朧を焼き尽くす。
「私が迷彩を利用するように、皆で誘ったというのか!?」
 姿を見せたブルーリボンが黒煙と共に、転落する。
「いいや」
 立ち上がろうとする甲冑に対して竜の使い手は否定した。
「偶然、皆が同じことを考えていただけさ。てめぇが戦闘のプロなら気づいていただろう」
「でも、貴方はスパヰだった」
 ヤドリガミが解を示す。
「甲冑を纏っても、所詮はスパヰ……アマチュアということか……」
 体勢を立て直し、機関砲を構えるスパヰ甲冑。
「せめて桜の約束を契った大切な方と、お茶を楽しめる事を祈ります」
 樒が放った追い打ちの炎が鋼を紅蓮に閉じ込めた。

「約束はもう、置いてきた」
 炎を振り払い、ブルーリボンが歩き出す。
「私は、私であるために……お前達を排除しなくてはならない」
 気のせいだろうか。
「それが彼の望む、私なのだろうから」
 男は笑っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御桜・八重
姿を消していても、雨が降れば所在は割れる。
【桜天女】で空高く舞い上がり、海面目指して急降下。
着水直前に急上昇、衝撃波で海を割る。
大量に舞い上げた水飛沫で、スパヰ甲冑を浮かび上がらせる!

飛行速度は向こうが上でも、中身が人間では無茶な機動は出来ないはず。
小回りを利かせて背後から組み付いて呼びかける!

「死んじゃダメだよ!生きて二人でお茶しなよ!」
このまま死んだら影朧になっちゃうかもしれない。
そうしたらもう、今までの様に二人でお茶を楽しむことなんて…

言うだけ言って、敢えて正面で二刀を構える。
伝えるためにはあの人の矜持を超える覚悟を見せなきゃダメだ。
どんなささやかでも、それは大切な願い。
だから、止める!


銀星・偵
訊かせて貰おうか、ブルーリボン

何故、不本意なのかね?
同じ名を与えられたその甲冑で戦う事を、何故名誉と言わぬ
何故、その甲冑、最初から使わなかった?
そいつであのマンションの部屋ごと、悉く破壊しようとは思わなかったのか?
お前さん、まだ女王様の紳士でいられているのかね?

答えなくとも構わん
だが、その答えがお前さんの敗因だろうよ

攻撃は【追窮魔弾】
肝要なのは57mの射程を維持すること
追跡は探偵の領分だが、他の猟兵も当てにさせて貰おう
我輩、飛べんから

生死は問わぬつもりだったが、生かしたい者が多い様子
投降するならトドメは刺さんし、紅茶の約束の実現くらいなら官憲と取引するのも吝かではない
情報という対価は頂くがね?



●追求と意志と

「果たしてそうかね?」
 だが、スパヰがスパヰであろうとする姿に疑問を呈する者が居た。
「訊かせて貰おうか、ブルーリボン――何故、不本意なのかね?」
 この場における唯一の探偵役、銀星・偵が問う。
「同じ名を与えられたその甲冑で戦う事を、何故名誉と言わぬ」
 それは詰問というには柔らかく。
「何故、その甲冑、最初から使わなかった?」
 真実を貫く弾丸としては鋭く硬い。
「そいつであのマンションの部屋ごと、悉く破壊しようとは思わなかったのか?」
 だからこそ、スパヰは答えを返すことなく。
「お前さん、まだ女王様の紳士でいられているのかね?」
 偵の言葉を聞くしかなかった。
「私は……」
「答えなくとも構わん」
 ブルーリボンに対し銀星の探偵は答えを望まなかった。
「ただ、あの娘の前でさっきと同じことを言えるかね?」
 海が割れ、雨が降ったのはその時だった。

 海面ギリギリまで急降下し、着水寸前のところを急上昇することで発生させた衝撃波。
 それが海を割り、跳ね上がった海水が雨を生み出す。
「死んじゃダメだよ! 生きて二人でお茶しなよ!」
 港に降り立ち叫んだのは、濡れた淡い桜色の羽衣をまとった御桜・八重。
「それは……出来ない」
 だが返ってくるのは拒絶。
「なんでよ! このまま死んだら影朧になっちゃうかもしれないのに……」
「一つは、君達が証拠を握った以上、それを取り返さないといけない。もう一つは……」
 少しだけ沈黙が続き、代わりに甲冑を叩く雨音が響く。
「君達に負けて、官憲に捕まったとしたら、私は自由が無くなるだろうから」
「素直に消されるといったらどうかね?」
 ブルーリボンが婉曲的に言った言葉を偵がシンプルに解説した。
 今はそうする役目が必要なのだ。
 目の前で甲冑と相対する少女の為に。
「嘘……」
 そして真実の一端を告げられた八重の顔から色が失われる。
「だが、投降するなら殺されないようにこちらからも念を押しておくし、紅茶の約束の実現くらいなら官憲と取引するのも吝かではない」
 助け船を出す様に銀星の探偵が提案する。
「情報という対価は頂くがね?」
「拒絶という事で勘弁願えないだろうか?」
 軽い世間話のようにスパヰが返した。
「どう……して」
 雨が続く中、かろうじて桜の巫女は言葉を口にした。
「どうして、そんな風に言えるの!? 勝っても負けても死ぬんじゃ……死ぬんじゃ……そうしたらもう、今までの様に二人でお茶を楽しむことなんて……」
「すまないね、レディ。だが、そんな器用な生き方が出来るなら、この甲冑に乗ることは出来ないし、私も仕事を任されない。そうさ、仕事なんだよ、だったら最後まで終わらせないとね――彼の友人たる私であるために」
 伝声管を通して伝わる声はわずかに相手を気遣うようだった。
 けれど、八重は頭を垂れ、その表情は雨に隠れる。
「だが、その答えがお前さんの敗因だろうよ」
 偵が銃を構えたとき、桜の天女は一歩前に進んだ。
「……止める」
「……無理だ」
 八重の言葉をスパヰが否定し
「止める!」
 それを八重が否定する。
 ――どんなささやかでも、彼が願ったものは真実だから、それを果たすために。
「――止める!」
 桜が舞った。

 サクラテンニョ
 桜天女

 桜色のオーラを纏いし八重の両手には陽刀・桜花爛漫、闇刀・宵闇血桜。
 ブルーリボンがスパヰ迷彩によって姿を隠しても、振り続ける雨を弾く空間は隠すことは出来ない上に今までの損傷によって燃える影朧が黒い煙を吐いていた。
 そこを狙った少女の重い一撃が、甲冑と心を揺らした。

「言ったであろう」
 着弾したのは弾丸一発。
「その答えが敗因だろうと――お前さんは友人の望むスパヰであろうとした」
 刻み込んだのは円に囲まれた十字の刻印にして偵のユーベルコヲド。

 Аккерте
 追 窮 魔 弾

 それは近くも遠くも撃ち損じがなく、近くも遠くもえり好みせず、銃身は鋼鉄、銃口はダマスカス。
 硝煙は靄のごとく、そして銃弾は――死。
 二発目の弾丸がスパヰ甲冑を貫くと、ブルーリボンの動きが止まり、そこへ八重は飛び込んだ。

 必ず止めるという強い意志は甲冑を吹き飛ばすに充分な一撃であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木常野・都月
俺は猟兵だ。
そして、人と世界を守りたいと思っている。
今回の任務は、この人を捕まえる事。
人と世界を守るために必要な事を、スパヰは知ってる。
殺す訳にはいかない。

その機械を止めて、中から引き摺り出す必要があるのか。

UC【精霊召喚】で、精霊様には機械の捕縛をお願いしたい。
縋り付いたりまとわりついて貰って動きを封じて欲しい。

敵の攻撃は、[高速詠唱]を乗せた雷の精霊様の[属性攻撃]による電磁障壁の[カウンター]で対処したい。

精霊様が機械を止めてる間に、エレメンタルダガーに持ち替えて装甲を剥がして、スパヰを捉えたい。

必要があれば[属性攻撃(2回攻撃)]で留め金を破壊したい。

多少痛いのは我慢して欲しい。


トリテレイア・ゼロナイン
その忠義に騎士として敬意を
そして人々の安寧の為、貴方を生きて捕縛させていただきます

剣での●武器受けと盾受けでビームから味方をかばい
センサーで挙動や速度計測●情報収集
格納銃器で目や推進器の破壊狙う●スナイパー射撃

その火力では護りを抜けませんよ
速度と質量を活かすべきかと

突撃に合わせ自己●ハッキングで演算速度と出力●限界突破

不退転の影朧甲冑相手には治療効果は望むべくも無かったこの武装
リスクは高いですが…

●怪力大盾殴打で半ば相打ち気味に受け止めアンカーの●ロープワークで拘束

甲冑に侵され頭脳に損傷など負われても困りますし、起きている諜報員など危険極まりません

罅割れから搭乗者にUCを浅く刺し

眠って頂きます



●スパヰと猟兵と

 甲冑はまだ立ち上がる。
 マントは破れ、装甲の所々より火花が散り、黒く汚れた油を垂れ流す。
 まだ、何もしていないのだ。
 だからこそ、どんなに心揺らされる言葉を、魂が震える言葉を受けたとしても立ち上がらなくてはならない。
 私が私であるために。

「その忠義に騎士として敬意を」
 トリテレイア・ゼロナインが尊敬の念を以って、目の前のスパヰ甲冑に告げ。
「そして人々の安寧の為、貴方を生きて捕縛させていただきます」
 自らの矜持を以って、捕縛を宣言した。
「そう言われて、はいと答えられるわけはなかろう」
「だが、俺達は猟兵だ」
 ブルーリボンの言葉に対し次に答えるのは木常野・都月。
「そして、人と世界を守りたいと思っている」
「偶然だな、私も同じ思いだ」
 スパヰの言葉に茶化す意図はない。
 猟兵の言葉に敬意を表したうえで、自らの使命への思い、それだけを述べた。
「人と世界を守るために必要な事を、あんたは知ってる」
 騎士と狐が並んだ。
「だから、捕まえる」
 終わりの始まり、都月の言葉がその火蓋となった。

 最早、スパヰ迷彩を使う体力も無く、機能も損傷している。
 だが高速移動からの攻撃は可能。
 黒煙を吐きながらブルーリボンが飛翔し、機関砲弾とビームを雨霰と叩き込む。
「雷の精霊様!」
 都月の意に応え、雷の精霊が電磁障壁を形成し、磁場に不快感を感じたトリテレイアが盾を構える。
 面を制圧する銃弾を障壁が弾き、点を射抜くビームは盾が防ぐ。
「その火力では護りを抜けませんよ」
 騎士の格納された銃器が展開され、目を模した甲冑のキャメラを撃ち抜く。
「速度と質量を活かすべきかと」
 それは挑発であり、相手の思考をコントロールする作戦。

 おそらくはスパヰ甲冑の本来の役割は透明化や高速機動からの攻撃、および作戦区域からの離脱なのであろう。
 装備されているユーベルコヲドは全て自分が優位に立つべく用意されたもので相手を倒すことに優れてはいないのがその証左。
 けれどスパヰは分かっていて戦いに臨んでいた、甲冑の優位さを武器にできればと信じ、そして自らの職分を果たすため。
 だが、諜報のプロでは戦いの専門家たる猟兵相手には通じなかった。
 選択の余地は無かった――ブルーリボンはトリテレイアの言葉に乗ることを選び、空を舞う。

 ストップ&ゴーを繰り返す不規則な軌道から一転、一気に距離を詰める甲冑。
 その拳は大きく推力が乗れば戦局は逆転するであろう。
 けれど、騎士も自らの限界を――超えた。
 基盤の焼ける匂い、戦機のはずなのに何故か視野が赤く明滅する。
 何度も行ったリミッターへのハッキング。
 それが演算回路まで及んだ代償なのだろうか……しかし!
「止まるわけには行きません」
 両者が相対する。
 一瞬だけ、時間が止まったのは気のせいだろうか?
 互いの視線が交錯し、騎士とスパヰが距離を詰める。わずかに速いのは――ブルーリボン!
「精霊様、ご助力下さい!」
 そこへ都月が叫んだ。

 ――精霊召喚

 瞬間、呼び出された精霊達がスパヰ甲冑にまとわりつき、そして――それが決め手となる時を生み出した。
 大盾の一撃が甲冑を吹き飛ばす。
 直後、射出したワイヤーアンカーがブルーリボンをからめとり、勢いを乗せて鋼をコンクリートに叩きつけた。
 港に大きく亀裂が入ったと同時にスパヰ甲冑は機能を停止した。

 動かなくなったブルーリボン。
 その装甲に都月がダガーを突き立てる。
「無理して全てを開ける必要はありません」
 トリテレイアが短剣を片手に声をかけた。
「起きている諜報員など危険極まりませんし、彼は銃を持っています」
「反撃の可能性があるのか?」
 狐の言葉に騎士は頷く。
 そして、ナイフが剥がした装甲の隙間、罅に近い穴へとトリテレイアは短剣を突き立てた。

 Misericorde
 慈悲の短剣

 スティレットを通して注がれた睡眠誘発剤が中に居たスパヰの意識を完全に断ち、そして殺意を消した。
「これから、どうなる?」
 改めて外装を剥がし、スパヰを操縦席から引きずり出しながら都月は問う。
「わかりません」
 騎士は正直に答えた。
「けれど、すぐに殺されることは無いでしょう。彼は情報を握っており、それに――」
 戦機が振り向けば、見守る猟兵の姿。
「貴方と同じように望む人が居るのなら、そうならないように考える人もいるはずです」
 その言葉に狐は「そうか」と呟いた。

 約束は果たされなかった。
 地獄でのティーパーティーの準備は叶わず。
 虜囚の身となった以上、再会は最早叶わず。
 それが、スパヰの世界。

 ……いや。
 いつか、いつか、彼らが役目を終え、価値を失ったとき、また会える日が来るかもしれない。
 それがいつになるかは……本当に平和になった時に紅茶を入れたときに分かるだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年10月02日


挿絵イラスト