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晩夏祭りの百鬼夜行

#カクリヨファンタズム

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#カクリヨファンタズム


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 九月、某日。
 去り行く夏を惜しむように、カクリヨファンタズムのとある一角で催される祭りがある。

 主が誰かもわからぬ社から、まっすぐ伸びた大通り。
 ぼんやりと蒼く光る提灯たちは、触るとなぜかひんやりしている。妖怪たちは『そりゃあ人魂だからね』と笑うが、本当のところは誰も知らない。
 ずらりと並ぶ屋台に、これまたずらりと並べられた売り物たち。
 焼きそばに焼きトウモロコシ。りんご飴にチョコバナナ。
 ぱちぱち弾けるサイダーは、何故かフラスコに入っていて、中に入った小さなライトが七色に光る仕掛けつき。「若い妖怪連中がこういうの好きでねぇ」とはろくろ首の店主談。
 金魚すくいにスーパーボールすくい。お面屋さんには定番の狐面から、子供に人気の妖怪アニメのキャラクターまで。当たるかわからない豪華景品がウリの怪しいくじ引きに、綺麗に抜ければおまけが貰える型抜きやさん。クローズドパッケージで売っているあやかしメダルもある。

 昔懐かしいものから、この世界にしては新しいものまで。ごった返しに並ぶ、そんな屋台。


「もうひとつ、素敵な催しがあるのです」
 そう微笑んだのは無供華・リア(夢のヤドリギ・f00380)。集まった猟兵たちに一礼しつつ。
「百鬼夜行――妖怪達の行進と同じ名のついた、パレードのようなものでしょうか」
 要するに妖怪たちが集まって通りを練り歩く、ただそれだけなのではあるが。
「妖怪さま方は、それはそれは個性的な見た目の方々が多いですから。そんな方々が祭りに合わせて着飾って練り歩いていらっしゃるのです。眺めているだけでも楽しいと思いますわ」
 このパレード目当てに遠方から訪れる妖怪も多いらしく、日頃目にしたことのないような個性的なビジュアルの妖怪が見られるのは、多少の不可思議なら見慣れている妖怪達にとっても楽しいものであるらしい。
 ――そうそう、この世界では妖怪達を見る事が出来、かつ世界を滅亡から救う力を持つ猟兵達は大変に歓迎される。
 本物の妖怪じゃなくたって、妖怪めいたコスプレで参加するのも歓迎されるし、何ならお祭りを訪れた格好そのままだって大丈夫。浴衣に甚平、おのおの好きな格好で、是非。
「さながらちょっぴり早いハロウィン・パーティも兼ねているかのようですわね」と、リアは付け耳らしい狐耳をぴょこぴょこさせる。

「さて、ですが問題がございまして。屋台が立ち並び、パレードが行われる大通り。その一本道が――忽然と消えてしまったのです」
 こんなことをするのは、オブリビオンに違いない、というわけで。
「皆様には夜になるまでに、犯人を討伐していただきたいのです」
 一本道だった場所は、今では迷路のように入り組んだ通りとなってしまっている。出口のない異界は、迷い込んだ妖怪たちを疲弊させる罠のようなものだ。しかし猟兵ならば、オブリビオンを見つけ、退治することができるだろう。
「……と、いうよりも。此度の首魁は、どうも強者との死闘を好んでいるように御座います。罠を仕掛けたのも、妖怪たちを弱らせたり捕えたりすることが目的というよりも、事件を起こす事によって強者……つまり猟兵を呼び寄せようとしているのかも知れません。雑魚を蹴散らしこちらの力を示せば、おのずと首魁への道が拓けることでしょう」
 迷路を攻略するための工夫はそれほど必要ない、ということらしい。

「しかしこのまま放っておけば、オブリビオンの魔の手はこの道路だけでは済まなくなります。道の消失がやがて世界を覆えば、それは滅びと同義。楽しいお祭りの為にも、この幽世のためにも、きっちりと斃してきてくださいませね」


ion
●お世話になっております。ionです。
 幽世縁日&妖怪パレードなシナリオです。

●概要
・第一章『集団戦』
 迷路のあちこちにいるオブリビオンとのバトルです。沢山います。うにゃっと倒してください。

・第二章『ボス戦』
 集団戦の敵を斃していくと迷宮のどこからか現れます。ばしっと倒してください。

・三章『日常』
 晩夏の夏祭りを楽しむ場面です。真夏よりは涼しくなりましたが、浴衣でも問題ないくらいの過ごしやすい気温です。
 縁日はUDCアースの日本でもお目にかかれるものから、カクリヨらしいちょっと変わったものまで、いろいろ取り揃えられています。
 百鬼夜行パレードは見るのも参加するのもOKです。ご自由にどうぞ。
 その他、お祭りにあるものは大体あると思ってプレイングを書いて頂いて大丈夫です。やりたい事はある程度絞って頂いた方が書きやすいかもです。
 必要であればOPに登場したグリモア猟兵が同行します。お気軽に声をかけてください。

●いろいろ
 お連れ様やグループ様でご参加の際は、プレ冒頭の目立つ場所にお名前&IDか、合言葉を書いてくださいませ。
 リプレイはのんびり進行で参ります。各章、追加OPと共にスケジュールをお知らせする予定です。
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第1章 集団戦 『ねこまたウィスプ』

POW   :    惑わしの鬼火
【二股に分かれた尾の先端に浮かぶ炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【相手を幻惑する効果のある青白い】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    顔を洗う
【夢中で顔を洗うことで】、自身や対象の摩擦抵抗を極限まで減らす。
WIZ   :    化け猫の集会
戦闘力のない、レベル×1体の【化け猫達】を召喚する。応援や助言、技能「【『おどろかす』や『化術』】」を使った支援をしてくれる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 どこまでも薄暗いその空間。
 どんよりと重たい霧が立ち込め、少し先の景色すらもあやふやだ。
 罠と知りながら、猟兵達はその地に降り立った。迷路のような世界へと。

 ふと、あなたは襲い来る何かを本能的に察知し、身を捩る。
「にゃっ」
 それは猫だった。鋭い爪であなたを斬り刻もうとした猫はしゅたっと地面に降り立ち、そして。
「うにゃあん」
 愛くるしい仕草で顔を洗い始める。戦意があるのかないのか。よくよく見ればその尾は二股に分かれ、どちらも蒼白い炎を宿している。
 どうやら元々この地に住んでいた猫叉が、骸魂に取り込まれることによってオブリビオン化してしまった存在らしい。
「うにゃっ」
「みゃあ」
 迷路のここそこから、猫たちがわらわらと現れる。
 倒せば中の妖怪たちは排出され、元の無害な猫叉に戻るだろう。遠慮は要らない。しかし――。
「みゃおん」
 どうにも戦意を削がれてしまう見た目である。

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 プレイング受付:9/13(日)朝8:31~
 終了日時はMSページにてお知らせいたします。
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真宮・響
子供達が忙しくてねえ。先に来た。まあ、後から追い付いてくるだろう。

後続の子供達の為に道は拓いて置かないと。(みゃあと鳴く敵を見て)奏を連れてこなくてよかったよ。もふもふ大好きな奏にはとても戦い辛いだろう。

飛んでくる炎が厄介なので【忍び足】【目立たない】で敵の集団の背後を取り、【範囲攻撃】【二回攻撃】【除霊】【浄化】【破魔】を込めた竜牙で一気に薙ぎ払う。時間はかけたくない、一刻も早く元の猫に戻すよ!!




「うみゃっ」
「な~~ご」
 愛らしい鳴き声。猫そのものの姿かたちをしたオブリビオンが、ゆらゆら揺らしているのは二股の尾。
「やれやれ、子供たちが忙しいみたいだからアタシ一人で先に来たわけだけど」
 結果としてはそれで良かったね、と真宮・響(赫灼の炎・f00434)は肩をすくめる。自慢の子供たちがオブリビオンごときに後れを取るとは思えないが、もふもふと可愛いものが大好きな娘、奏にはとても辛い戦いになったことだろう、と。
 その優しさこそ、響が奏を誇らしく思う理由のひとつでもあるのだが。
「みゃ?」
 こてり、あざとく首を傾げ、響を見上げてくる猫たち。
「いっとくけど、アタシにその手は通用しないよ」
 ――愛らしさで惑わせる、なんて戦法はね。
「にゃにゃ?」
「みゃ!」
 途端に猫たちが一斉に地を蹴り、宙へと身を躍らせる。響を取り囲むように襲い掛かって来る蒼白い炎はさながら幽幻の鬼火。連撃を見切ろうと見据える響の視界がくらりと霞む。この世ならざるものの炎には心を乱す何かがあるようだ。
 鬼火に魂を持っていかれないように、炎ではなくその先、尻尾の動きを見切る事に注力する。薄暗い戦場の中、微かに光を受け浮かび上がるだけの尾に。
 攻撃が手薄な箇所を狙い、龍の槍を振るう。怯んだ隙を逃さず身を躍らせ、群れを突破し、そのまま薄闇に身をくらませる。
「にゃ!?」
 消えてしまった獲物を探すように、猫たちは炎を燈がわりに辺りを見回している。
(「あの炎は周りに燃え移るんだったね。一刻も早く片をつけよう」)
 後から追いかけて来てくれるであろう子供たちに、無様な姿は見せられない。道はきっちり拓いておかないと。
 手にした槍に宿るのは、魔を祓う浄化の力。それこそ猫のように足音を消してひたひたと歩み寄る響の接近に、猫たちがようやく気付いた時にはもう遅い。
「この一撃は竜の牙の如く! 喰らいな!!」
 薙ぎ払うように振るわれた一撃は、さながら獲物の群れごと一噛みで食らい尽くすように。
 魔の炎宿る尾を引き裂き、その骸魂を切り離していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【不死蝶】
強者との死闘を好む、か
その点においては俺と気が合いそうだねぇ
どんな奴かなーとルンルンとナイフ回し

わ、可愛らしいねぇ
この子たちを斬り刻むのは気が引けちゃうなと
手にしていたナイフを思わず仕舞い
最終的に倒して助けてあげれば良いわけだし
ちょっとくらい遊んでもいいよね?

ほらほら、お手ー
…あたっ、引っかかれちゃった
うーん、さすが腐ってもオブリビオン
でもこれならどうかな?
首の下をこちょこちょとくすぐり撫でてあげる
お、ごろごろ言い出した
こういうところは普通の猫みたいで可愛いなぁ

さて、そろそろおやすみの時間だよ
大丈夫、痛くないからね
UC発動し、花弁を猫たちに向けて放つ
この仕事が終わったら、また遊ぼうね


乱獅子・梓
【不死蝶】
綾のやつ、見るからにテンション上がってるな…
強者と戦いたいのは結構だが
その為に他の妖怪を巻き込むのはいただけないな

…で、その前哨戦と言うには妙に気の抜ける奴らだな…
もしやこんな愛らしい猫たちも
容赦なく倒せるかということを試されている…?

それは犬にするものじゃなかろうか
と、綾の行動に心の中でツッコミつつ
…なんかめちゃくちゃ数増えてないか?
多分こいつらのUCなんだろう
焔、零、お前たちもちょっくら遊んでやれ
猫の群れの中に焔と零を放つ
追いかけっこしたり
たまにおどろかされてビビったりする様子が可愛い

じゃあちょっとじっとしててくれよ
UC発動し、猫たちの動きを封じる
トドメは綾に任せる




 白い手の中で、くるくるとナイフが踊っている。
 器用にナイフを弄ぶ青年――灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)が、赤いレンズの奥の眸を普段よりも更に細めて笑う。
「随分と機嫌がいいな、綾」
 長い付き合いになる乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)には手に取るようにわかる。飄々とした笑みも、昂る期待を隠しきれていない。
「強者との死闘を好むだなんて、俺と気が合いそうだからねぇ」
「強者と戦いたいのは結構だが、その為に他の妖怪を巻き込むのは頂けないな」
 世間話でもするような気楽なトーンで話しつつ、梓は迷宮に潜むのだというオブリビオンを見つけようと油断なく視線を巡らせている。骸魂に取り込まれたのだという妖怪たち。殲滅が首魁をおびき寄せる手っ取り早い方法だとも聞いているし、斃せば解放できるとも聞いている。
「さて、そんな戦闘狂の配下ってのは一体どんな物騒な――……」
 そこまで云いかけた梓が口をつぐむ。迷宮の中、ちらと青い炎が揺らめいた。
 隣の綾も、パフォーマンスのように回していたナイフを油断なく構えている。

 ――みゃあ、とそいつは鳴いた。

「……猫?」
「わ、可愛らしいねぇ」
 白黒のハチワレにゃんこたちが二人の足元にとててと歩み寄り、気ままに顔を洗ったり、寝そべったり。その尾は二股に分かれ、先端には鬼火が宿っている。確実に普通の猫ではない。……ないのだが。
「……前哨戦と言うには妙に気の抜ける奴らだな」
「この子たちを斬り刻むのはちょっと気が引けちゃうねぇ」
 綾などは、構えていたナイフを思わずコートの内側に仕舞い直してしまう有様である。
「いや、もしや、こんな愛らしい猫たちも容赦なく倒せるかということを試されている……?」
 そんな綾を横目に梓は思案する。
「考えすぎじゃない? それよりもさぁ」
「……何してるんだ、綾」
「何って、お手だよ、お手」
 野良猫でも見つけたかのようにしゃがみ込み、綾がにゃんこに手を差し出した。
「最終的に倒して助けてあげれば良いわけだし、ちょっとくらい遊んでもいいよね?」
「……まあ、いいんじゃないか?」
 ――しかしそれは犬にするものじゃなかろうか、と心の中でツッコミを入れずにはいられない梓だった。
「に゛ゃ゛っ!」
「あたっ、引っ掛かれちゃった」
 白い甲に刻まれた三本線をさすりさすりしつつも、綾はどこか楽しげな表情のまま。
「うーん、さすが腐ってもオブリビオン。でもこれならどうかな?」
 こちょこちょ攻撃だよー、と首の下をくすぐりつつ撫でてやれば、途端にうっとり目を細めたにゃんこからごろごろと心地よさそうな音。
「こういうところは普通の猫みたいで可愛いなぁ」
「それはいいが」
 じゃれる猫とじゃらす綾から外された梓の視線は、迷宮の奥へ。
「……なんかめちゃくちゃ数増えてないか?」
「あら、ほんとだ」
 うみゃっ、にゃにゃーん、なぁーご。
 にゃんこたちがひしめき合ってこちらに押し寄せてくる。色も形も様々だが、二股尾に鬼火を纏っているのだけは共通している。
「あれがこいつらのUCか」
「困ったなぁ、俺だけじゃみんなと遊んであげられない」
「焔、零、お前達もちょっくら遊んでやれ」
 よし来た! とばかりに人懐こい炎竜・焔が飛び出し、やや遅れてクールな氷竜・零もやれやれとかぶりを振りつつ後を追う。群れの中に放たれた二匹の仔竜は大きさも丁度猫たちと同じくらいで、たちまち打ち解けて仲良く遊びだす。
 すばしっこいにゃんこを楽しそうに追いかける焔。零はマイペースに寝そべったまま尻尾を揺らす猫の様子に興味津々。不思議な尾にそっと前脚を伸ばす――。
 ぶわっ、と鬼火がいきなり激しく燃え上がって、ガウッと驚いて前脚を引っ込める。まるで人間が笑うようににゃにゃにゃっと化け猫が鳴いた。どうやらからかわれてしまったらしい。この場合は化かされた、だろうか。
 そうして、ひとしきり遊んだ頃。
「さて、そろそろお休みの時間だよ」
「ちょっとばかり良心が咎めるが、じっとしててくれよ」
 焔の咆哮が猫たちの動きを止め、幻覚の炎が逃げ場を封じれば。
「大丈夫、痛くないからね」
 紅く光る蝶が炎に紛れるようにひらりと舞い、骸の海へと誘うのだった。
「――この仕事が終わったら、また遊ぼうね」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鈴桜・雪風
町並みは昔の日本の様式
しかしこの重々しい空気はそれにそぐうものではないですね
これはどちらかといえば霧烟る倫敦のような……
「しかし、出たのは鬼でも蛇でもなく猫ですのね。良いでしょう、本命の前に此方の事件を解決します」

「猫又さんたち、しばしの間頑張ってくださいませ。今解放致しますわ」
【その導きは幻灯のように】を使用
骸魂に取り込まれた猫又の魂を応援・活性化
それによって動きの鈍くなった猫又ウィスプを傘から抜いた仕込み刀で撃破していきます

「身軽でしなやかな猫を斬るは難行……ですが、身体を操るのが鬼火となれば話は別。わたくしの剣は避けられない」




「確かに、街並みは日本の様式ですが……」
 辺りを見回しながら、優美な桜傘を携え通りを往く少女がひとり。
「しかしこの重々しい空気はそれにそぐうものではないですね。これはどちらかといえば……」
 じっとりと立ち込める重たい空気は霧烟る街――鈴桜・雪風(回遊幻灯・f25900)の住まう帝都の都市のひとつ、倫敦のようではないか。
 そして霧に覆われた暗路に出でたるは鬼でも蛇でもなく、愛くるしい見た目に鬼火を宿したにゃんこ達。
「良いでしょう、本命の前に此方の事件を解決します」
 一見、護身具のひとつも持たぬたおやかな令嬢。但し雪風の細い指が傘の柄に添えられると、そこから現れたるは凛と光る刃。
「にゃあん」
 交戦の意志ありと見做したのか、気ままに顔を洗っていた猫たちが一斉に身体をぴくりとさせ、じいと雪風を見上げる。彼女が一歩歩を進めたのとほぼ同時、猫たちは四方八方に飛び散った。
 彼らもただのんびりと猫の習性に興じていたわけではないらしい。顔を洗う動作は摩擦抵抗に作用する。自在に操れる力を自身に使えば猫らしい身軽な動きをより活性化させ、敵に行使すればその脚を阻む効果もある。
 ぬかるみに足を取られたように、雪風の歩みが滑る。畳みかけるように襲い掛かる猫の爪を身体を捻って避け、再び確りと地面を踏みしめる。
「確かに、侮るべき相手ではありませんわね。しかし」
 この世界のオブリビオンは、妖怪を呑み込むことで顕現している。厄介な習性だが、そこに付け入る隙がある。
「猫又さんたち、しばしの間頑張ってくださいませ。今解放致しますわ」
 雪風の言葉が導くのは、生命そのものが持ち合わせている輝きそのものだ。傷ついた魂をも救う桜の精の力が、骸魂に捕らえられた猫叉たちの魂を応援・活性化してゆく。
「……にゃ?」
 人間がするように首を傾げ、猫はその内部に生まれたあたたかさを不思議がる。それを本当の意味で彼らが取り戻すにはもうひとつ、骸魂の討伐が必要となる。
 身軽でしなやかな猫を斬るは難行……けれど、身体を操るのが鬼火となれば話は別。
「わたくしの剣は避けられない」
 足を止めた猫叉ウィスプへと、雪風の仕込み刀が振り下ろされる。鮮やかな剣筋が一撃でオブリビオンを仕留め、元の無害で悪戯好きな猫叉へと戻してゆくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と

猫又……!
エンパイアの世界では伝承に謳われるのみでついぞ見ませんでしたが、この世界にはいるのですね……と
ちらりと隣に立つ伴侶を見あげて
……ザッフィーロ、気を確かに。彼らは元は妖怪とはいえ、現在は取りこまれています
そう、言うなれば悪しき猫なのです
和解するためには一度倒さねばなりません
わかりますね?

敵の攻撃から守ってくれたかれに笑い
ふふ、僕は洗脳されませんのでご安心を
きみのことで頭がいっぱいで、入り込む余地などありませんからね
ええ、かれらを解放いたしましょう

「高速詠唱」「範囲攻撃」「属性攻撃」「一斉発射」を付加した
【天撃アストロフィジックス】にて攻撃いたしましょう


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

!斯様に愛らしい物に攻撃なd…と絶望の表情を浮かべながらも
見上げ来る宵の紫の瞳に促されるかの様に頷き心を決めようと思う
洗脳されている状態の様ならば…この愛らしい生き物を倒す事がこの者達の幸せになるのならば俺は…鬼にならねばならん…っ

戦闘時は痛みを与えぬ様【罪告げの黒霧】にて麻痺させ動きを止めて行こう
…正気に戻るまでの、辛抱故に…っ
だが宵に猫又の攻撃が迫ったならば『盾受け』にて『かば』う…も
…宵、お前迄洗脳されたならば俺は…!と猫を攻撃する辛さから混乱した思考の中常日頃黒猫に似て居ると感じている宵へ混乱の声を向けてしまうやもしれん
だ、大丈夫だ。俺は正気ゆえ、猫達を正気に戻すぞ、宵




 ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)は絶望していた。
「エンパイアの世界では伝承に謳われるのみでついぞ見ませんでしたが、この世界には猫叉がいるのですね」
 傍らでは最愛の伴侶、逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)が静かな感嘆の聲を上げていたが、それでも絶望していた。
「斯様に愛らしい物に攻撃など、どうして出来ようか……!」
 ダメ押しとばかりに猫叉がにゃあんとあざとく鳴けば、ザッフィーロの喉からうっと呻くような聲が漏れた。
「……ザッフィーロ」
 少しばかり背の高い恋人を見上げながら、宵は息を吐く。
「気を確かに。彼らは元は妖怪とはいえ、現在は取り込まれています。そう、言うなれば悪しき猫なのです」
「悪しき……猫に悪しき者などいるだろうか」
 いたずらっ子ややんちゃすぎる子はいても、悪しき者など果たして。思案するザッフィーロだが。
「しかし、言わば洗脳されている状態の様なものということか」
 そう、猫は悪くない。悪いのは骸魂だ。そう結論付けた。
「ええ。和解する為には一度倒さねばなりません」
 わかりますね? ――静かに見上げてくる紫の瞳に促され、ザッフィーロも漸く心を決める。
「ああ、この愛らしい生き物を倒す事がこの者達の幸せになるのならば俺は……鬼にならねばならん……!」
 許してくれ、と眉間に深い皺を刻み込む彼に、宵も心の中でくすりと笑む。
 きみは本当に猫が好きですね――と。


 そんなやりとりこそあったものの、一度やると決め通したザッフィーロの行動は早かった。呼気に毒を乗せ、猫の群れへと飛ばしていく。
「痛みはない筈だ。……正気に戻るまでの、辛抱故に……っ」
 罪なき者には効かぬといわれのある瘴気が猫たちを蝕み、動きを麻痺させていく。やはり彼らは罪な生き物なのだろうか。ぴんっと尻尾を硬直させたまま動けなくなっているにゃんこの、何かを訴えかけるような眼差しと視線がかち合ってしまったザッフィーロは思わず視線を逸らす。
「愛らしすぎるのも罪といいますからね」
 揶揄うような物言いと共に、宵が天からの連撃を放つ。眩いほどの流星の煌めきが降り注ぎ、猫の群れを一気に蹂躙していった。
 容赦のかけらもない猛攻のようだが、その実彼らを苦しませたくないという伴侶の想いを汲んでの事でもある。仕留める時は、一撃で。
「にゃ!」
 流星の雨が止んだ一瞬を狙い、暗闇に紛れていた猫が宵へと牙を剥く。すぐにザッフィーロが身を躍らせ、エネルギーの盾でそれを阻んだ。おいたが過ぎたにゃんこは、すぐさま宵の繰り出す天撃の餌食となった。
「大丈夫か、宵」
「ええ、きみが護ってくれましたから」
「しかし愛らしい猫が斯様に狂暴になってしまうなど……ッ」
 は、とザッフィーロが銀の眸を強張らせる。頼もしそうに見上げてくる宵の頭に、ぴこぴこ動く黒い猫耳が見えた気がして。
 勿論錯覚だ。わかっている。だが宵は現実、何度かこのような愛らしい姿を見せてくれた事がある。何だったらこの間の戦争時などは耳や尻尾をつけるだけではなく、猫に成り切った姿まで見せてくれた。すまほに収められなかったのは残念だが、今も尚その愛くるしさを確りと心に留めている。何せ好きなものと好きなものの愛すべきこらぼれーしょんだったのだ。
「宵、お前迄洗脳されたならば俺は……!」
「ふふ、僕は洗脳されませんのでご安心を」
 猫を攻撃する辛さのあまり錯乱してしまうザッフィーロだが、そんな事はお見通しとばかり、宵が笑って見せた。
「……本当か?」
「ええ。だって」
 ――きみのことで頭がいっぱいで、入り込む余地などありませんからね。
 さらりと告げられた言葉は、確かな愛に満ちていて。
「そう、か」
 胸を撫でおろしたザッフィーロが、はっと居住まいを正す。
「きみの方が、余程オブリビオンに魂を持っていかれてしまいそうですよ」
「だ、大丈夫だ。俺は正気ゆえ、猫達を正気に戻すぞ、宵」
「ええ、彼らを解放いたしましょう」
 きみが愛らしい魔物に誘惑されてしまう前にね、と宵が付け加えれば、精悍な目元が困ったように伏せられる。本体に鎮座するサファイアのように、人々を導く聖職者のように、静かで堂々としたたたずまいの彼が。
 自分と猫が絡むとすぐに冷静さを欠いてしまうのが、宵をたまらなく温かい気持ちにさせる。
 降り注ぐ閃光は魔を祓うが如く、迷宮を明るく照らしていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エルフリーデ・ヒルデブラント
オスカーくん(f19434)と
よろしくね。

オスカーくんは猫、だめなのかい?
大丈夫さ、二人でやったら怖くないよ。

のんきに顔なんて洗って……なんだか戦意を削がれるね……
なるべく、傷つけずに助けてあげる方法は……

ぼくの身体じゃ、たくさんいるこの子たちを追うのは難しいからね。
オスカーくんの弓でぼくのところまで集めてもらおう。
オスカーくん、頼んだよ。

猫たちが逃げる先には、水の巨龍が待ち構えているから、勢いよく飛び込むしかないよね。
【浄化の水脈】で猫たちに流水プールのプレゼントだ。
万が一、止まれたとしてもこの龍は動くからね……きみたちをぱくっと丸呑みしてしまうよ。
君たちに憑いたものを洗い流してあげるよ。


オスカー・ローレスト
エルフリーデ(f06295)と……
初対面だけど……よ、よろしく。

ぴええ……ね、猫……!
こ、こっちに来ないでおくれ……!
(猫が苦手な小雀、盛大にビビる)

そ、そう、かな……あ、あり、がとう……

俺なんかよりも……猫に襲われたら、ひとたまりもない子が、頑張ろうとしてる……お、俺もしっかりしない、と……まだちょっと、こ、怖い、けど……(ふるふる

敵の足元を狙って、【切実なる願いの矢】の早撃ちをして……エルフリーデの所まで追い立てて、挟み撃ちみたいな状態に持っていく、よ……(【スナイパー】、【クイックドロウ】使用)




「……な、なんだか、不気味なところ、だね……」
「うん、油断せずに行こうね」
 片方は、迷宮に響く自分の足音すらにも肩を強張らせながら慎重に。
 もう片方は、白から薄桃へのグラデーションが美しい羽を羽搏かせ。
 オスカー・ローレスト(小さくとも奮う者・f19434)とエルフリーデ・ヒルデブラント(小さな森の守り神・f06295)。二人は今日出逢ったばかりだが、この地を救いたいという思いは同じ。
 不安定な世界に介入し、迷宮を生み出して強者を誘い込むオブリビオン。その配下がここには蔓延っているのだという。
「一体どんなおそろしい敵が……」
 呟くエルフリーデに、何か白いものが爪を翳し飛び掛かってきた。身を翻して避けたエルフリーデが、それを眼で追うと。
「……なんだ、猫か」
 振り返った猫が、追撃をするでもなくにゃあんとひと声啼いてみせた。その様子はごく普通の猫にしか見えない。ちょっぴり尻尾が割れていて、その先に鬼火が宿っているという違和感はあれど、妖怪世界の猫ということを鑑みればそれも大した問題ではないように感じられる。
 拍子抜けしたようなエルフリーデとは対照的に、オスカーはひっと喉を鳴らして身を強張らせていた。
「ぴええ……ね、猫……!」
 じり、と後ろに注意を払う事もなく後ずさる。もし、相棒が大柄な男性だったら、思わずその背にすっぽりと隠れていたことだろう。それは味方を盾にするという意思が働いているのではなく、ほとんど本能的な防衛であり、恐怖だ。小さな鳥は、猫の格好の餌食となる。
 しかし、相棒は屈強な男性ではなく、それどころか小柄なオスカーの頭ほどしかない小さなフェアリーだった。ゆえにオスカーは「こっちに来ないでおくれ……!」と弱々しく呟きながら距離を置くことしか出来なかった。
「おや、オスカーくんは猫、だめなのかい?」
 こくこく、と青ざめた顔が何度も頷いた。
「大丈夫さ、二人でやったら怖くないよ。というよりも、ぼくだけじゃ心許ない」
 なにせたくさんいるからね、とエルフリーデ。入り組んだ迷路のあちこちから、同じようなハチワレにゃんこが顔を覗かせる。
「オスカーくんの力が必要なんだ。頼りにしているよ」
「そ、そう、かな……うん、そうだね。あ、ありが、とう」
 奮い立たせられるように、オスカーが頷いた。


 そんなエルフリーデとて、戦場に立つ恐怖と無縁なわけではない。
 いかに敵が小さな猫といっても、その身体はエルフリーデよりも何周りも大きいのだ。そしてそれが何匹もいる。
 あの爪に引っ掛かれても人間ならば痛いだけで済むだろうが、小さなフェアリーはそうはいかない。
 それでもエルフリーデが凛と背を伸ばし魔力を練り上げるのは、一人前の守護精霊になりたいという願いのため。愛する森を護れる力を身に付けるため。
 いつしか少女はいっぱしの戦士のような大人びた振る舞いをするようになった。実力の方はまだまだでも、今こうして取り込まれ、苦しんでいる猫を助けてあげるくらいは出来る筈だ。
 ……その爪は今では引っ込んでいて、にゃんこは熱心に顔を洗っているわけだが。
「……なんだか戦意を削がれるね。なるべく、傷付けずに助けてあげたいな」
 時々思いついたように飛びかかって爪を振るったり、尻尾で打擲しようとしてきたりはするものの、すぐに飽きてごろごろ寝転がりだしたり、と思えば他の個体が唸りながら掴みかかってきたり。気ままなにゃんこ達相手はどうにもやり辛い。
「そう、だね……猫は、怖い……けど」
(「でも、あの子の方が……猫に襲われたら、ひとたまりもないんだ……それなのに、頑張ろうとしてる……」)
 ――俺も、しっかりしないと。
 脳裡に最悪のビジョンが浮かんでしまう前に、オスカーは次々と矢を放っていく。装填不要の魔力の矢ゆえの目にも留まらぬ早撃ちだ。どんなに敵味方が入り混じっても、決して味方は傷付けたくないという祈りが、百発百中の矢となって猫達を追い立てる。
(「やっぱり彼が来てくれて助かったね。ぼくひとりじゃ、あの子たち皆を追いかけるのは難しかった」)
 エルフリーデが行使するのは魔力の水で形成される巨龍。矢の雨から逃げのびてきた猫達は、そこでようやく自分たちが誘導させられていた事を知る。流水のように絶えず流れる身体をした龍の、その口の中へと。
 ぱくっ、と龍がひとのみすれば、浄化の水脈が彼らに憑いたものを洗い流していく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

百々海・パンドラ
旭まどか(f18469)と参加

縁日に百鬼夜行パレード!ワクワクする響きね
あぁ、でもその前に一仕事
頑張りましょうね、まどか

「夢見る羊」を使って猫さん達と遊んであげましよう
全力魔法を使い沢山の羊を転がして
ほらほら、猫さん追いかけなさい
追っかけないならこっちから行くわよ?
沢山の羊で埋めてあげる

迷路もちょっとわくわくするわ
まどか、迷わないように手を繋いであげる
こうしてると、ヘンゼルとグレーテルみたい
目指すはお菓子の家では無くて縁日だけど

まどか、型抜きもあるみたいよ
私、林檎飴とチョコバナナも食べたいわ
彷徨う道中もこの先の縁日を思うと楽しくて仕方がないわ!
沢山遊びましょうね、まどか!


旭・まどか
パンドラ(f12938)と

折角の目に楽しい催しだ
それが邪魔されるとあっては、黙って居られないよね

不規則に動き回る羊たちを追い掛ける姿は宛ら
猫じゃらしで遊ぶ仔猫の様だけれど……
君たちはどうも、可愛気に欠けるね?

この場に沿う様
いつもよりも幾分か縮めた騎士と蛇竜を喚び出して
一体づつ確実に
彼女の陽動に気を取られている隙を狙って屠って行こう

憑き物を落とす為なんだ
躊躇う必要なんて何処にも無いでしょう?

はいはい
逸れ無い様確り握っていて
パンを落とすのは僕の役目かな
角から飛び出して来る猫又にも気を付けてよ

期待に胸躍らせるのは構わないけれど
まだこの先に面倒なのがいるんだから
遊びを想うのは其を片付けてから、ね?




 少女が抱くのは、ふわふわ羊のぬいぐるみ。
「縁日に百鬼夜行パレード! ワクワクする響きね」
 百々海・パンドラ(箱の底の希望・f12938)の、普段は深海の如き静かな眸が、ふと少女らしいきらめきを宿す。
「あぁ、でもそのまえに一仕事。頑張りましょうね、まどか」
「折角の目に楽しい催しだ。それが邪魔されるとあっては、黙って居られないよね」
 名を呼ばれたひとはそう云って頷く――旭・まどか(MementoMori・f18469)。中性的な名前の印象通り、少女のように繊細な容色。柔らかそうな金の髪、苺シロップのような甘やかな色の眸。ただし紡がれる言葉は、見た目にそぐわず淡々と、冷ややかさすら感じられる。
 そんな二人組の行く手を阻むのは、ちょっと不思議な見た目をした無数のにゃんこ達。
「うみゃぁん」
 あざとい仕草で顔を洗ったり、化け猫たちを呼び寄せたり。充分に準備を整えたところで、侵入者を阻むべく襲い掛かって来る。
「遊んであげるわ、猫さんたち」
 パンドラがその身に宿る魔力を惜しみなく解き放てば、羊のぬいぐるみがみるみるうちに数を増やしていく。
「うみゃ!」
「にゃ!」
 ばらばらに動き回る羊たちは、眠れない夜のおまじないのように数え切ることは難しいけれど。ぴんっと幽幻の二股尻尾を立てた猫たちの視線は、途端にふわふわのぬいぐるみに釘付けだ。
 それはそうだろう。白いふわふわが何十体も、それも全てパンドラの魔力によって不規則にころころ転がったり弾んだりしているのだから。途端に本能を刺激され、追いかけ回しては猫パンチでてしてし弾いてみたり、抱えてじゃれてみたりと楽しそうだ。
 中には猟兵をやっつけるという目的を忘れない生真面目さんもいたけれど、そんな子にはパンドラが特別サービス。
「ふかふかで埋め尽くしてあげるわ」
 余った羊さんを総動員、もふもふっと圧迫して動けなくしてしまう。
「こうして見ると、宛ら猫じゃらしで遊ぶ仔猫の様だけれど……」
 ――君たちはどうも、可愛げに欠けるね?
 まどかが息を吐く。見た目や仕草は無邪気でも、彼らの立ち位置を思えば愛でてやろうとは思えない。
 呼び寄せたのは死霊の騎士と蛇龍。おそろしい見た目の彼らだが、実は普段よりも幾分か背丈が小さい。まるで羊とにゃんこのダブルもふもふで埋め尽くされた空間に沿うように。
「ほらほら、もっと追いかけなさい」
 猫たちの遊び心を刺激するように、パンドラがより激しく、より不規則に羊たちを操る。すっかり気を取られている猫を、一体ずつ確実にまどかの眷属が仕留めていった。
 そこに躊躇いは一切ない。憑き物を落とす為なのだから、その必要など微塵もないのだ。
 小さめの死霊たちは、不意打ちを仕掛けるのにも適していた。猫達はあっという間に数を減らしていく。


「ふう、これで全部かしら」
 猫たちがすっかり消えてしまったころ、ぬいぐるみ達もどんどん減っていき、最後にはパンドラが抱きかかえる蜂蜜色の眸の子だけに元通り。まどかの操る死霊たちも眠りにつく。
「あとは勝手に元凶がやって来るって聞いたけれど」
「でも、迷路ってちょっとわくわくしない?」
 普段は大人びているパンドラが、ちょっと進んでみましょうよ、なんてわくわく顔で云うものだから。
「……まあ、いいけど」
「まどか、迷わないように手を繋いであげる」
 どっちがだろう、とは、この時は云わなかったけれど。
「はいはい、逸れ無いよう確り握っていて」
「こうしてると、ヘンゼルとグレーテルみたい。目指すはお菓子の家では無くて縁日だけど」
「パンを落とすのは僕の役目かな」
 遠回しにそう零してしまうまどかなのだった。
「まだ猫叉がいるかもしれない。角から飛び出してこないか気を付けて見ていてよ」
「勿論よ」
 そう答えるものの、パンドラの興味はすっかり縁日に持っていかれている。
「まどか、型抜きもあるみたいよ。私、林檎飴とチョコバナナも食べたいわ」
「……期待に胸躍らせるのは構わないけれど、まだ先に面倒なのがいるんだから。遊びを想うのは其を片付けてから、ね?」
 ――縁日という目的地に子供を食べる魔女はいないけれど、その代わり道中に不意打ちを仕掛けてくるらしいし。
「大丈夫よ。楽しみが待っているからこそ、油断はしないわ」
 それよりも、とパンドラは笑う。
「沢山遊びましょうね、まどか!」
「わかったわかった」
 根負けしたように頷きながらも、まどかはしっかりパンドラの手を握りながら、迷宮の奥へと歩んでいくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ネーヴェ・ノアイユ
一本道がこのような迷路に変わってしまうなんて……。カクリヨファンタズムもまた不思議なことが起こる世界なのですね……。それにしても……。此度のお相手様は可愛らしすぎではないでしょうか……。攻撃を行いにくい気持ちはありますけれど……。迷路を突破するために心を鬼にしないと……。ですね。

やはり攻撃は行いにくいので……。出口がないか探してみましたけれど……。なかったですね……。その間に増えた化け猫様たちに驚かされ続けるだけでした……。ですので……。覚悟を決めてUCの鋏を上空に展開し……。雨のように周囲へと全力魔法にてうにゃっと降り注がせますね。これで……。道が開けるとよいのですけど……。




「なんとか……まけないかと、思ったのですが……」
 ぱたぱたと少女が走れば、鮮やかな青いリボンも、雪の結晶のようなレース飾りもふわりと揺れていた。
 時は少し遡る。ネーヴェ・ノアイユ(冷たい魔法使い・f28873)が最初ににゃんこオブリビオンを見た時、彼らはほんものの猫さながらの動作で顔を洗ったり、ぺろぺろ毛づくろいしているところだった。
(「これは……此度のお相手様は、可愛らしすぎではないでしょうか……」)
 真理を求めし名うての猟兵とあっても、本来はたった13歳の女の子。大切なリボンに合わせたお気に入りのドレスが示す通り、可愛いものには目が無いのだ。
 何とか攻撃せず迷宮を脱出する手段はないかと、猫がこちらに気づく前に踵を返してはみたのだが。
「見つかりませんね……出口……」
 文字通り『迷宮』の名を冠す世界が記憶の始まりであるネーヴェは、多少の不思議には慣れている。さしてうろたえる事もなく、出口を探してみるのだけれども。
「に゛ゃ゛ーーっ」
「!」
 突如物陰から飛び出てきたにゃんこに驚いて足を止める。先程からこんな調子なのだ。猟兵が攻撃を仕掛けてこないと見るや、戦闘能力に乏しい化け猫を呼び寄せて脅かす作戦に出て来たらしい。
「私は大丈夫ですが……一般人の妖怪様がここで迷っている最中に……こうして驚かされ続けたら……堪えてしまいますね」
 疲弊させて骸魂に取り込むまでが狙いなのだろうか。彼らは猫らしく気ままに遊んでいるようにしか見えないが、だからこそ厄介な相手だ。
「仕方ありません……。覚悟を決めましょう……」
 遥か上空で、ちかりと何かが瞬いた。
 それはネーヴェの魔力が作り出した小型の氷鋏だ。みるみるうちに数を増やした氷鋏が、雨のように氷柱のように、戦場へと落下する。
「うにゃっ!」
 入り組んだ迷宮の中にあっても、何百本もの刃が降り注げば文字通り一網打尽。増え続けるにゃんこ達もみるみるうちに消え、辺りには静寂が満ちた。
「これで……道が開けるとよいのですけど……」
 ごめんなさい、と胸中で呟きながら、ネーヴェが迷宮を仰ぎ見る。
 ――その灰色の壁が突如、ぐにゃり、と揺れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『剣鬼『彼岸花のおゆう』』

POW   :    悪鬼剣『彼岸花』
【血を滴らせた大太刀『三途丸』】が命中した対象を切断する。
SPD   :    悪童の爪
【鬼としての力を解放した左手】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【血の臭いと味】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ   :    鬼神妖術『羅生門』
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【血で作られた紅の斬馬刀】で包囲攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はガイ・レックウです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ある者は猫たちを殲滅した直後。ある者は奥へと歩み始めた頃。
 ふと、ぐらりと迷宮の壁が、地面が、ぐにゃりと捻じ曲がった。
 まるでまやかしが崩れ去るように宙に消え、辺りには何もない空間が満ちた。
 何者かが歩み寄って来る音がする。ひたひたと裸足の迫る音と、衣擦れの音。あなたが目を向けると、ひとりの女がそこに居た。
「奴らを斃したのかい」
 くつくつと喉を鳴らして女が嗤う。その双眸は油断なくあなたを見定めていた。
「あいつらは随分気ままだが、腑抜けじゃあない。……少しは楽しめそうじゃないか」
 ――罠の中でじっと身を潜めるだなんて、性に合わない事をした甲斐があったよ、と。
「あたしの三途丸も歓びに震えている。忘れられないひと時になりそうだ」
 その大太刀からは絶えず血が滴っている。その紅に美しい着物が汚れるのも厭わず、背に担いでみせた。刀を握っていない左手はまるで悪鬼のようなかたちをしており、動くたびに鋭い爪がかちゃかちゃと音を立てている。
「すぐに意味を成さなくなるかも知れないが、名乗っておこうか。あたしはおゆう。彼岸花のおゆうと呼ばれた事もある。――御託はここまでにしておこうかね」
 ふっ、と女の眼がぞっとするほど冷たく細められる。
「さあ、死合おうか」

=========================
 プレイング受付:9/21(月)朝8:31~
 終了日時はMSページにてお知らせします。
=========================
逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と

おやおや、血気盛んな女性ですねぇ
喜んでお相手したいところですが……
と、ザッフィーロ
きみとあちらの二人で手合わせなんてずるいですよ
僕も混ぜてくださいと茶々を入れて

前に立つザッフィーロに時間と距離を稼いでもらいつつ「魔力溜め」し、
「高速詠唱」「属性攻撃」「全力魔法」をのせた
【天響アストロノミカル】で攻撃します

こちらに攻撃が来そう、あるいはザッフィーロが攻撃されそうになったなら
「野生の勘」「第六感」「見切り」で敵の攻撃モーションを予測して察知し、
「衝撃波」で敵を「吹き飛ばし」ましょう

その血と業で汚れた手で僕のザッフィーロに触れないでいただけますか
かれは、僕のものです


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

信念を持ち戦う女性は美しいが、唯戦の高揚に魅入られた者に持ち得る感情はない
戦がしたいならば俺が相手をしようと、敵と宵の間に立ちメイスを構えよう
武器が得意ならば此方の方が宵に注意が行かぬだろうと
『怪力』を乗せ鎖を伸ばしたメイスを振るい【stella della sera】
敵の足や武器に鎖を絡め動きを鈍らせようと試みよう
鬼の手はソードブレイカーで『武器受』を試みるが…もし宵へ攻撃が行きそうな場合は『オーラ防御』宵を『かば』う事を優先しよう
…宵、後ろに居ろと…っ
宵に庇われた場合はその隙にメイスを振るおう
…同じ気持ち、か。ならば、背後に居ろとは言えんな
まあ俺も俺の宵に触れさせんが、な




「ああ、俺は何という事を……」
「気を落とさないでください、ザッフィーロ」
 にゃんこバトルを制した二人組だが、色の黒い精悍な男性――ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)の足取りは重い。
「きみのお陰で、僕も本来の猫妖怪たちも無事なのですから」
「そう云って貰えると有難いが……」
 逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)の励ましに、何とか気を持ち直し。
 辿り着いた先で出逢ったのが――そう、『彼岸花のおゆう』だった。
「あなたが首謀者ですか」
「如何にも」
 血よりも赤いおゆうの眸を真っ向から見据え、宵はあくまで柔和に笑んだ。
「おやおや、血気盛んな女性ですねぇ。喜んでお相手したいところですが……」
「戦がしたいならば俺が相手をしよう」
 宵とおゆうの間に割り行ったザッフィーロが静かにメイスを構える。信念を持ち戦う女性は美しいが、唯戦の高揚に魅入られた者に持ち得る感情はない、と。
「は、良い武器を持っているじゃないか」
 女がザッフィーロとメイスを順に見遣り、云った。
 深まる笑み。ザッフィーロも唇の端を微かに上げ――直後、鋭く重い一撃が女へと振り翳される。
 その時には既に女は跳んでいた。頑丈な地面が容易く砕ける。メイスの柄の長さからして届く位置ではなかった。ザッフィーロのメイスは内部に仕込んだ鎖によって、鞭のように伸び、しなる。不意打ちの先制は、だが見切られていた。
 跳躍した女が巨大な手を振り下ろす。頑丈なソードブレイカーが其れを受け止めた。
「やるじゃないか」
「そちらもな」
 ぎりりと女が鬼の手に力を込める。血管が禍々しく脈を打っている。
(「……すさまじい力だ」)
 鍛え上げられているとはいえ女の腕だ。それなのに押し返せない。
「おや、ザッフィーロ。きみとあちらの二人で手合わせなんてずるいですよ」
 ふふ、と宵が茶々を入れるように微笑んで、歩み寄った。
「僕も混ぜてください」
「! 宵、後ろに居ろと……っ」
 銀の眸が見開かれる。一瞬の隙を突くように女の爪がザッフィーロの頸へと迫る。
 その手が見えない何かに弾かれたように軌道を逸らした。すぐさまメイスの鎖が伸び、鬼の手が宿る左手をがんじがらめにする。
「……!」
「その血と業で汚れた手で、僕のザッフィーロに触れないでいただけますか」
 ――かれは、僕のものです。
 宵の表情はあくまで柔らかく、それゆえにぞっとするほど冷たく冴え渡るふたつの紫がひたすらに異質だった。
「妬いているのかい。可愛いじゃないか」
「宵」
「僕だって、騎士に護られてばかりのお姫様ではありませんよ」
「……同じ気持ち、か」
 ザッフィーロが笑みを込めた息を吐いた。
「ならば背後に居ろとはいえない、な」
 ぐん、と鎖を更に伸ばす。鎖が更に女の刀までもをがんじがらめにした。
「引き千切ってやるさ」
「やってみろ」
 女が両手に力を込める。ザッフィーロの意識がそこに注力された直後、護りの薄い胴体を全力で蹴り上げられた。オブリビオンの脚にしたたかに打たれ、それでもザッフィーロの躰はびくともしない。
「まあ俺も、俺の宵には触れさせんが、な」
 その宵が魔導書を手に何かを唱えているのに、気づかない女ではなかったが。
 鎖に囚われた状態では宵まで攻撃が届かない。とはいえ宵もその力に全力を注いでいる以上、先程女を妨害してみせた衝撃波を再び繰り出してくる事はないだろう。
 女の左手がいっそう禍々しく脈打ち、とうとう鎖の呪縛を断ち切った。
「……っ」
「あんたが先だ」
 ひゅ、と空気が唸る。ザッフィーロは己に迫る爪を見ても眉一つ動かさなかった。
 ただ静かに呟く。
「いや。お前からだ」
 女の視界がふと暗くなる。疑問符を貌に浮かべたままの女が天を仰げば、そこには無数の隕石が顕現していた。
「あの男、これだけの魔法をこの一瞬で……?」
 にこ、と宵が微笑んだ。
「触れないでいただけますかと、僕は云った筈ですよ」
 二人を阻む者に襲い掛かるのは、桁外れの連撃たち。
 天罰と呼ぶのでさえ生温い雨が、女を穿つだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加

ふむ、戦狂いの女か。まあ、アタシと同類らしいが、世界崩壊の元となれば話は別だ。(駆けつけて来た奏と瞬に気付いて)ああ、間に合ったみたいだね。正直、アタシ1人では手に余る相手だ。三人で立ち向かうよ!!

正面の抑えは奏に任せて、【忍び足】【目立たない】で背後に回り込む。武器で普通に攻撃する手は通用しないだろうから、【残像】【見切り】で敵の攻撃を回避してから身を屈めて【グラップル】で足払いを仕掛けてから態勢を崩してから【怪力】で全力の炎の拳をぶち込んで、追撃で【グラップル】で蹴り飛ばす。腕に大分自信があるようだが、アンタは単独だ。家族3人で力を併せれば、充分対抗できるさ。


真宮・奏
【真宮家】で参加

遅くなってすみません!!なんとか間に合いましたね。(目の前の敵を見て)母さんと気が合いそうですが、血を見るのが好きなんて危ない人ですね。無辜の命が失われる前に倒さなければ。

母さんが確実に背後を取れるように敵の注意をこちらに引き付けます。トリニティ・エンハンスで防御力を高め、【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【激痛耐性】で敵の攻撃をしっかりと受け止めます。母さんの背後からの攻撃が当たったら、【二回攻撃】【衝撃波】で攻撃に加勢します。この世界は妖怪の皆さんの物ですから、貴女のような物騒な存在はいりません。即刻退場願います!!


神城・瞬
【真宮家】で参加

来ましたよ。母さん。厄介事には間に合ったようで。成程。構えた刀と漂う威圧感。母さん1人では手に余るでしょうね。大丈夫、僕と奏がいますので、三人で頑張りましょう。

僕は後方でサポートを。まず【高速詠唱】で【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】を仕込んだ結界術を敵に向かって展開。更に月白の棘で徹底的に敵の動きを制限。敵の攻撃が僕に来た時は【オーラ防御】【第六感】で凌ぎます。貴女の戦はここまでです。死合いは僕達猟兵の勝ちとさせて貰いましょうか。




 ぽたぽたと、血の滴る音がする。
 大太刀『三途丸』に宿る禍々しい氣を、真宮・響(赫灼の炎・f00434)は本能的に感じ取っていた。騎士としての本能で。
「ふむ、戦狂いの女か」
 刀から落ちて地面に吸い込まれていく血。交戦した猟兵の血というにはあまりに邪悪。あれはきっと、女が斬り続けてきた獲物の象徴だ。骸魂となってから――或いは、それよりもずっと前からの。
 磨き上げられた刀身に、響の姿が映り込む。血の中に映る自分を見、響はふっと笑んだ。
「まあ、アタシと同類らしいね」
「武器を抜きな」
 女は肯定も否定もせず、顎でしゃくって促してみせた。
「このままで十分さ」
「ほう……?」
 暫しの沈黙が満ちた。
 二人の躰が跳んだのは同時。女が踏み込み、血まみれの刀を振るう。宙を奔る銀が閃光のようだった。
 片や響は大きく後方に跳び、直撃を避ける。充分に距離を置いた筈なのに、腹部の布が裂け、その下の皮膚に薄く赤い線が刻まれていた。
「成程、剣鬼というだけのことはある」
 それを知って尚、楽しそうに響は笑んだ。笑みを深めかけたオブリビオンの視線が横に逸れる。足音が聞こえたからだ。
「ああ、間に合ったみたいだね。奏、瞬」
「母さん」
「母さん!!」
 駆け寄ってきた二人は、誰よりも頼もしい自慢の子供たち。
「遅くなってすみません!!」
 響とよく似たウェーブがかった髪をなびかせ、真宮・奏(絢爛の星・f03210)が母と女の間に身を躍らせる。
「来ましたよ、母さん。厄介事には間に合ったようで」
 その名の通りの早業で結界術を展開させながら、オッドアイの青年、神城・瞬(清光の月・f06558)が二人を支援するように寄り添う。
「成程。いくら母さんでも、少し手に余る相手ですね」
 敵の構え。張り詰めた空気。その強さを感じ取り瞬が呟く。
「母さんと気が合いそうですが、血を見るのが好きなんて危ない人ですね」
 早速類似点を見出す奏の後方で、響が肩を竦めた。
「無辜の命が失われる前に倒さなければ」
「母さんだけでは難しくとも、僕と奏がいれば」
「ああ。アタシ達三人なら立ち向かえるはずだ」
「やってみな」
 薙ぎ払うように大太刀が振るわれる。誰よりも速く、奏が動いた。


 その身に宿す魔力。両親を追いかけ培った騎士の力。
 双方を研ぎ澄ませる時、華奢な奏からは想像もつかぬ程の鉄壁の防御が編み出される。
「ほう。あたしの刃を受け止めるか」
 斬る為の刀を、護る為の剣が真っ向から捉えていた。女が赤い舌を覗かせ唇を舐めた。楽しそうに。
 薙ぐように振るわれる。吹き飛ばされないように地面を確りと踏みしめ、奏は喰らいつく。
 返す刃が奏の頸を狙っていた。武器にオーラの防御を纏わせて受け止める。弾き返して隙を生み出したいところだったが、反対にこちらの武器が飛ばされないようにするので精いっぱいだった。
 一撃一撃が重い。だが奏の顔に焦りはない。
(「母さんも、瞬兄さんもいる」)
 叩き込むように振るわれた刀を痺れる手で受け止める。衝撃で見えない防御に罅が入り、掻き消されていくのを奏は感じた。
 女が唇の端を吊り上げた瞬間、視界を灼くような閃光が辺りに満ちた。
「ッ、何だ!?」
 視界が眩む中、女は自らの足元から何かが伸びて絡みつくのを感じとった。目をこじ開けて見下ろせば、無数の棘がその脚に突き刺さっている。
「あの男か」
 流血した脚をつまらなそうに見下ろしてから、女が瞬に目を遣る。
「勝つためには……二人を護る為には、こういう手段も必要なのですよ」
 その言葉には、大切な家族であるという以上の意味が込められていた。オブリビオンも、そして奏も、それに気づくことは無かったが。
「この程度であたしを止めるつもりかい」
「止めてみせます」
 棘が更に深々と女を貫く。獣の咆哮のような聲と共に、女が瞬目掛けて走る。奏の剣が閃いて、女の鎖骨の辺りを斬り上げた。
「あなたの相手は、この私です」
 大きな眸に強い意志を瞬かせ、奏が正面から女を見据える。
 その隙に、猫のように音を立てず響が女の背後に周り込む。独りでは到底後ろを取れる相手ではなかったが、奏と瞬が引き付けてくれているお陰だ。
(「本当、立派に育ってくれたもんだよ」)
 目立たぬ様屈んだ姿勢のまま、渾身の力で足払いを放つ。
「ッ!?」
 女が大きく体勢を崩す。剣鬼相手に武器も持たず挑んだのは、こうして不意打ちを仕掛ける為だった。けれどそれも、武器に頼らずとも戦い抜く響の力があってこそだ。
 驚愕の表情と共に振り返る女。その顔面に拳を叩き込んでやる。只の拳ではない。ありったけの気力をくべて燃やした炎の拳だ。
「ぐ……っ」
 血反吐を撒き散らす女を更に蹴り飛ばす。とうとう女の躰が宙を舞い、地面に叩きつけられた。
「やはり、母さんの拳が一番恐ろしい」
 溜息と共に呟かれた瞬の言葉は揶揄でも何でもなく、子供としての本心。直後に母の視線を感じ咳払いで誤魔化した。炎など纏わせなくとも母の拳骨はとても痛いものだ。
「貴女の戦はここまでです」
 結界と、脚に突き刺した月白の棘。その双方に更なる魔力を巡らせる。結界が女の視界と動きを阻み、刺がその身を蝕んでいく。
「死合いは僕達猟兵の勝ちとさせてもらいましょうか」
「この世界は妖怪の皆さんの物ですから、貴女のような物騒な存在はいりません」
 奏の剣が、その意志に答えるように光を反射して瞬く。
「即刻、退場願います!!」
 破壊された防御の代わり、剣に宿らせるは衝撃波。目にも留まらぬ連撃が、女を斬り伏せた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鈴桜・雪風
剣のやり取りを至上とし、それ以外は瑣事とする手合ですか
平和に馴染めず、戦場以外に居場所のない者……
「はた迷惑以上の何者でも有りませんが。名乗られた以上は礼を持って応えましょう。わたくしは鈴桜雪風。一介の探偵ですわ」
(傘から仕込み刀を抜きつつ)

敵手は待ち焦がれた獲物が現れ気が逸って居ると見受けました
落ち着いていれば初手は見切って躱せましょう
「あら、帝都ではこれぐらい出来ないと探偵は務まりませんので」

あちらはどうだか存じませんが
わたくし、時間を掛けるつもりはありませんの
【鈴純流剣術『鈴鳴』】
一合あれば、貴女を斬り伏せるには十分すぎます




 探偵としての観察眼。猟兵としての場数。
 その双方を研ぎ澄ませ、鈴桜・雪風(回遊幻灯・f25900)は相手取る敵手を冷静に見据えていた。
(「剣のやり取りを至上とし、それ以外は瑣事とする手合ですか。平和に馴染めず、戦場以外に居場所のない者……」)
「はた迷惑以上の何者でも有りませんが。名乗られた以上は礼を持って応えましょう」
 手にした傘から抜かれる仕込み刀。おゆうのものに比べれば細く小さいが、その鋭さは引けを取らぬ。
「わたくしは鈴桜雪風。一介の探偵ですわ」
 ――そう、まるで。
 鬼の手を持つ屈強な女を、少女のように小柄な雪風が真っ向から迎え撃つ今の図、そのものだった。
「ハ、探偵だって?」
 女が喉を鳴らす。獲物を目前にした獣の様だと雪風は思った。それも猟兵によって傷の刻まれた、手負いの獣だ。
 女が地を蹴った。その足元で通り名である彼岸花のように血が滴り、その直後にはもう、女は雪風へと迫っていた。
 内臓まで引き裂かれそうな鋭く長い鬼の爪を、雪風は鮮やかな動作で舞うように躱して見せた。チ、と舌打ちを零しながらも女は嗤う。
「只の探偵があたしの一撃を躱せる筈がない。そうだろう?」
「あら、帝都ではこれぐらい出来ないと探偵は務まりませんので」
 美しい桜が永久に咲き続けるかの世界では、怪奇事件もまた然り。
『犯人』がこの世の者とは限らない。傷つき弱った魂たちは、時に救いを求めて生者に牙を剥く。
(「矢張り、待ち焦がれた獲物に気が逸って居るのでしょうね」)
 女の爪は重く、鋭かった。しかし狙いが荒い。自らの心に翻弄されるうちは頂点に立つ事は出来ぬだろう。
 或いはこのオブリビオンに『生前』があるのなら、それが命取りになったのか。
「おっかないお嬢ちゃん。その貌を引き裂く時が楽しみだよ」
 女が再び爪を振るう。言葉とは裏腹に、その魔手は雪風の腕を狙っていた。刀を持つ腕を。
(「じわじわと甚振るのがお好みですか。ですが生憎」)
 くるりと身を回転させ避けた雪風は、最後まで涼やかな眼差しで女を見上げながら、云った。
「わたくし、時間を掛けるつもりはありませんの」
 刀が桜色に光った。女が近く出来たのは、それまでだった。
 その直後には、女は全身から血を噴出させ、苦悶に呻く事になったのだから。

 ――これが、鈴純流剣術『鈴鳴』。
 一刀を持って全てを断つ、その覚悟。

大成功 🔵​🔵​🔵​

百々海・パンドラ
旭まどか(f18469)と参加

残念だけど、貴女と遊んでる暇は無いのよ?
私達、これから縁日を周らないといけないんだから
一分一秒だって惜しいの!

全力魔法で強化した海神の刃で彼女を切り裂く
折角新調した浴衣なのよ、お気に入りなの!
その無粋な刀、振り回さないでよ
汚れたらどうしてくれるの!
もう、さっきの猫といい我慢の限界よ!

まどかの風の仔の動きに合わせて刃を放つ
その子も私のお友達、傷一つつけるのは許さないわ
風の仔に向けられた刃は水の刃で守る
さぁ、とどめは任せたわよ

お疲れ様、まどか
やっと遊べるわね!
まずはそうね、お揃いのお面!
何事もこういうのは見た目から入らないと
動いたからお腹も空いたし、ふふ大忙しね!


旭・まどか
パンドラ(f12938)と

彼女と縁日を周るのが『約束』でね
邪魔をしないで貰えるかな?

さぁ、今度はお前の出番
しっかり僕の為に働いてきて

送り出す隸に能力強化のまじないを掛け
迫りくる斬撃の隙間を縫って懐へ飛び込ませよう

死角からの一撃は彼女の水刃が引き受けてくれるから
落着いて斬馬刀の動きを観察して

不規則な様で一定の軌跡を描く弾道を理解出来れば
後は隸が喉を掻き切れる様指示を出せば良いだけだ

さぁ、仕留めるのはお前の仕事
折角花を持たせて貰ったんだ
仕損じるなんて、有り得ないよね?

お疲れさま
君が待ち望んだ縁日だよ
何処から周る?

お面?
嗚呼、形から入るのは大切だものね

再び繋いだ手を引いて
弾む君の声音に耳を傾けようか




「行っておいで」
 女の刀から流れる血が、地面に落ちる前に宙に留まる。
 それは紅き斬馬刀となり、猛然と飛翔する。
 鋭利な刃がつけ狙うのは二つの影。百々海・パンドラ(箱の底の希望・f12938)と旭・まどか(MementoMori・f18469)が身を翻した直後、目標を見失った無数の刃が地面に突き刺さった。
「無粋な刀ね」
「同感だね」
 パンドラの静かな海の眸に、怒りという波がさざめいている。だって。
「これね、折角新調した浴衣なのよ、お気に入りなの!」
 あとは、この浴衣と共に楽しい思い出を積み重ねて行けたら。そんな思いを込めてばっちり着付けてきたというのに。
 あんな血の刀で斬り刻まれようものなら、ずたずたにされるだけではなくべっとり汚れて台無しになってしまいそうだ。直接斬られはせずとも、戦闘の混乱のうちに装飾が傷ついてしまうかもしれない。
 そんな事は許されない。あってはならない。
「もう、さっきの猫といい我慢の限界よ!」
「ふうん、自分の身より浴衣の心配なの」
 まどかは静かに呟いただけだが、内心ではおおむねパンドラに同意していた。確かに浴衣の汚れを嘆く以上の惨事は起こらないだろう。だって今日は僕が居る――ああそうだ、それに僕だけじゃない。
「さぁ、今度はお前の出番。しっかり僕の為に働いてきて」
 送り出す隸に空じゅうを照らす月の加護を与えれば、頼もしい風の仔は無数の斬撃も厭わず敵の懐目掛けて飛び込んでいく。
「心配は要らないよ。全部血で染めちまえば洒落た装いにもなるだろうさ」
 数多の斬馬刀が宙を飛び交うさまは、それそのものが複雑な紋様を描き出しているかのようだ。不規則な乱舞に身を裂かれぬ様注意を払いながらも、パンドラはその手から水の刃を放出させる。
「わかってないのね。楽しい縁日に血はご法度よ。そう、私達これから縁日を周らないといけないんだから。貴女と遊んでる暇は無いのよ?」
 一分一秒だって惜しいの、と。繰り出される水の刃の数は血の刀には遠く及ばないが、それで充分。空を覆い尽くす刀全てを叩き落す必要はないのだ。
 直接パンドラやまどか、それにまどかの風の仔を狙う物さえ阻んでしまえばいい。今まさにまどかの仔を串刺しにしようと飛来した刃がパンドラの刃に受け止められる。液体の刃同士がぶつかって、血は文字通り水に洗われるように溶けていった。
「そういう事。彼女と縁日を周るのが『約束』でね」
 パンドラが刃を阻んでくれると知っているからこそ、まどかは不規則な弾道を見極める事に注力し続けられた。刃の数は数百をゆうに超える。それだけに着目すれば恐ろしいが、ひとつひとつ操り分けるなど不可能に決まっている。ある程度自動化しているなら、そこに付け入る隙がある。
 ――何てことないね。
 つまらなそうに息を吐いた。こんなもの、ちょっと派手なだけの見せかけだ。
「邪魔をしないで貰えるかな?」
「大人しく引き下がるとでも思ったかい?」
「まさか。云ってみただけだよ」
 最も手薄な地帯を突っ切るように風の仔が走る。穴を見極められた事を悟った女が斬馬刀を仕向けても、パンドラの刃が全て打ち払っていく。
「その子も私の大切なお友達。傷一つつけるのは許さないわ」
「折角花を持たせてやったんだ。仕損じるなんて、――有り得ないよね?」
 二人の激励を受けながら、風の仔が女めがけて牙を剥いた。


 そのあとももう少し、猟兵とオブリビオンの交戦は続き。
 すべてが終わった頃、はしゃぐ少女と相槌を打つ少年の姿があったという。
「お疲れ様、まどか。やっと遊べるわね!」
「お疲れ様。君が待ち望んだ縁日だよ。どこから周る?」
「まずはそうね、お揃いのお面!」
「お面?」
「何事もこういうのは見た目から入らないと」
「嗚呼、形から入るのは大切だものね」
「動いたからお腹も空いたし、ふふっ、大忙しね!」
 再び繋いだ手を引きながら、少年は少女の声音に耳を傾ける。
 ――確かに、退屈な戦闘よりよほど忙しくなりそうだ。
 呟くまどかの聲も、いつもよりほんの少し、弾んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ネーヴェ・ノアイユ
まるで悪鬼のようなお姿に血の滴る刀……。あの方はオウガではないと分かっていても本能的に怖さを感じてしまうところがありますね……。

確かあの方は強者を呼び寄せようとしている可能性がありましたね。ご様子を窺う限りその可能性は高そうですので……。ここは一打必勝を狙った賭けに出てみましょうか……。
牽制や防御にて余分な魔力は使用せず済むように……。おゆう様に一つの提案を。「互いに全力の一撃にて雌雄を決しませんか……?」

この挑発に乗っていただけましたら……。私は氷の拳にリボンに魔力溜めしていた魔力の全てを込めて全力魔法の一撃を繰り出します。
この一撃に全てを込めましたので……。どうかおゆう様に届くと信じて。




 空気が震えている。
 まるで悪鬼のような姿に血の滴る刀。膚で感じ取れるほどの殺気。
(「あの方はオウガではないと分かっていても、本能的に怖さを感じてしまうところがありますね……」)
 少女を――ネーヴェ・ノアイユ(冷たい魔法使い・f28873)を追う者達でないと判っていても、ぞくりと背筋が冷たくなる心地だった。
(「けれど……私が退くわけにはいきません……」)
 ちいさな手をぎゅっと握り、恐怖が滲みだしてしまいそうになるのを押し留める。
「おや、随分可愛い子が現れたねぇ。嬢ちゃんは迷子かい?」
 せせら笑うように女が云った。その眸が笑っていないのをネーヴェははっきりと見た。見た目に惑わされる程、女は短絡的ではない。
(「……つまり、お強い、ということでしょう」)
 だからこそ、思惑がうまくいくはずだとネーヴェは再確認していた。
「……おゆう様」
 真っ向から女を見、ネーヴェは云った。
「互いに全力の一撃にて雌雄を決しませんか……?」
 女は一瞬だけ虚を突かれたような表情を浮かべたが、すぐにニイと唇の端を吊り上げた。
「いいねえ、その眸。気に入ったよ」
 じゃらり、金属音と共に、おゆうが血の刀を構え直す。
「――いざ」
「参ります」
 ネーヴェのリボンから空気が凍るほどの冷気が放出される。それは巨大な氷の拳となり、真っ向からおゆう目掛けて振るわれる。
 はったりでも何でもない。全ての魔力を込めた渾身の一撃。
 相手は強敵。牽制や防御に魔力を消費してしまえば、枯渇したところを押し切られる可能性がある。だからこそネーヴェは、一打必勝を狙った賭けに出る事を選んだ。
「叩き斬ってやる」
 おゆうもまた、避けようともせず真向から刀を翳した。氷と金属がぶつかり、キィンと高い音が響く。
 元より小細工を好む方ではないのだろう。そこにネーヴェが真っ向勝負を仕掛けてきた。力を力で捻じ伏せるのが強者だと女の眸が云っていた。
(「どうか……届いてください」)
 ネーヴェも一片も譲る道理はない。扉も見つけていないうちに道を閉ざされたくはない。
(「お願い……!」)
 刀がぶつかったところから氷の拳が削られていく。罅が刻まれていく。耐え切れず砕けてしまう直前、拳が猛然と唸った。ネーヴェの決意を示すように。
「……ハ」
 女が嗤った。漏れ出すような笑みだった。
「敗けたよ、お嬢ちゃん」
 血の刀ごと、拳がおゆうを殴り飛ばしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エルフリーデ・ヒルデブラント
オスカーくん(f19434)と。
あれは血かい?あのカタナ、何なんだ……
それにあの左手……嫌な感じだ。猫の爪より禍々しい。
気を引き締めて行こう。

ぼくは、素早く練り上げた魔力を水に変換し創造した腕を呑み込む程度のサイズの【浄化の水脈】を両腕目掛けて放つよ。
敵の正面で行うのはこちらに気を引くため。
ぼくの水龍に気を取られている敵は、オスカーくんが狙いを定めていることに気付けるかな……?

オスカーくんの矢で足止めを成功させたら、先ほどよりも丁寧に魔力を練り上げ、とびきり大きな水龍を造り、敵目掛けて放とう。


オスカー・ローレスト
エルフリーデ(f06295)と……

ぴぇ……また当たったら怖いものを持った敵、が……な、なんでカタナから血なんて……(カタカタぶるぶる震える小雀

あ、あの左手、怖いし嫌な感じが、する……ね。当たらないように、しないと……でも、避けられるか、な……(当たった時を想像して足も震えてきた

けど、それ、なら……正面から戦うのは避けて、後方で【目立たない】ように気配を殺して矢を構える、よ。敵がエルフリーデの水龍に、気を取られやすいよう、に……

エルフリーデの水龍に、敵が気を取られてる隙に……【切実なる願いの矢】を、敵の足を狙って撃ち込む、よ……文字通りの、足止めをするのが、狙い……(【スナイパー】使用)




 ぼたぼたと流れる赤が、いつまでも止まらない。
「あれは血かい? あのカタナ、何なんだ……」
「ぴぇ……な、なんでカタナから血なんて……」
 捕食者に見つかった哀れな獲物のように、オスカー・ローレスト(小さくとも奮う者・f19434)がぶるぶると全身を震わせている。敵の纏う殺気に、エルフリーデ・ヒルデブラント(小さな森の守り神・f06295)もごくりと唾を呑み込んだ程だ。
「あんな……怖いもの……」
「ぼくは一撃でも喰らったらあの世行きだろうね」
 は、とオスカーは目を見開いた。そうだ。小さな小さなフェアリーが逃げ場を失ったら、簡単に真っ二つにされてしまうに違いない。
(「お、俺が……震えてる場合じゃ……」)
 一瞬、その光景を想像してしまった『殺人鬼』は、吐き気をもよおす程の自己嫌悪で恐怖を打ち消そうとする。
「それにあの左手……嫌な感じだ。猫の爪より禍々しい」
「あっちにも、気を付けないと……ね。でも……避けられるか、な」
 抗いきれぬ恐怖がまた湧き上がる。足が、すくむ。
「敵の間合いに入ってしまったら不利だ。遠くから迎え撃とう」
 早速エルフリーデが魔力を練り始める。
「……う、うん」
「気を引き締めて行こう。楽しいお祭りが待っているもんね」
 少しでも緊張を解くように、云った。
 半分はオスカーに。半分は自分自身に。


 突入のタイミングは、女が他の猟兵と交戦した直後。
 負傷の重なった女目掛け、エルフリーデが放つのは『浄化の水脈』。魔力の水で形成された龍は、当たれば女の魔手も丸呑みにするほどのサイズだ。
「新しい獲物が来たね」
 女の眸に獰猛ないろが宿る。鬼の手が翻り、牙剥く龍の首元を抉り切った。
「……!」
「随分と可愛らしいお嬢さんじゃないか。よく躾けられたペットまで連れている」
 続けて放った龍は女の顔めがけて。これも鋭い爪に打ち払われた。
「殺戮は楽しいが、水の龍というのはどうも味気ないね。血の匂いが何もしない」
「血が欲しいなら、ぼくじゃあんまりご希望に沿えないと思うけど」
 焦らず龍を放ち続ける。余裕綽々といった様子で女が龍を斬り伏せていく。拮抗状態が続いた。
「小さい妖なら、骨ごと味わうというのも悪くない」
 女が舌なめずりをした。エルフリーデの背筋を冷たいものが駆け抜けていく。
(「いや、このくらいが丁度いい。ぼくを狩るのに夢中になっているくらいが」)


 その頃、オスカーは暗がりに身を隠すようにして、じっと弓を構えていた。
 貌を隠す薄布も、喪に伏す為の服も、オスカーの姿を目立たなくしてくれる。死者を忘れないための服が暗殺に役立つのだから、皮肉なものだ。
(「でも、これは……死なせないための、矢だ、から……」)
 それが言い訳に過ぎない事を、他ならぬオスカー自身が知っている。
 けれどひとたび弓を引き絞れば、その時だけは昏い藍色から迷いが消える。
(「エルフリーデには、当たらないでくれ、よ……!」)
 願いを乗せて打たれた矢は、吸い込まれるように女の脚を貫いていた。
「ぐぅッ」
 背後から打たれた女が膝を打つ。ぎろり、と肩越しにオスカーを睨みつけた。
「ぴゃあ……!」
 文字通り鬼のような形相にオスカーが全身を震わせる。弓を腕に括り付けていなければ、きっと恐怖で取り落としてしまっていたに違いない。
「お仲間がいたのかい」
 にたぁ、と女が避けるほどに口元を歪ませて嗤う。鬼の爪ががちゃがちゃと音を立てている。オスカーは一歩も動けない。わなわなと唇を震わせながら――けれど、勝利を確信していた。
「そこまでだよ」
 エルフリーデの水龍が繰り出される。再度打ち払おうと爪を翳した女の眼が驚愕に見開かれた。
 その水龍は、今までエルフリーデが召喚してみせたものとは比べ物にならないほどに精巧で、巨大で、清浄な気に満ちていた。小さな妖精の操ってみせたそれが口を開けば、たちまちに女を丸ごと呑み込んでいく。
「……すごい」
 慌てて水流の及ぶ範囲から逃れたオスカーが改めて龍を見上げ、その大きさに圧倒されるほどだった。
「ぼくが小さいから、最初に呼んだ水龍の大きさが精一杯って油断してたかな?」
 小さい者には小さい者なりの戦い方があるのだと、エルフリーデは満足そうに頷いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【不死蝶】
ようやく黒幕のご登場だね
準備運動も完了したし、張り切って行こうか
先程とうって変わって好戦的な笑み

UC発動し、飛翔能力で敵へ真っ直ぐ接近
飛んでくる刀は、無数のナイフを念動力で飛ばし迎撃
当たっても激痛耐性で耐え、ひるまず距離詰める
厄介な技だけど、本体さえ倒しちゃえばいいんだし

大太刀と鬼の手…実質二刀流か
ならこちらも二刀流で挑もうかな
両手に構えたDuoで斬りかかる
時に片方で攻撃し、片方で受け止め
臨機応変に対応しながら真っ向勝負

おっと、熱くなりすぎて梓のこと忘れてた
もう十分楽しませてもらったからね
そろそろおしまいにしようか
Douを放り投げEmperorに持ち替え
力溜めた渾身の一撃を叩きつける


乱獅子・梓
【不死蝶】
さっきまでのは準備運動というか
ほぼ遊んでいたような気もするが…
だがさっきとは明らかに空気が違う
気を引き締めろよ

戦場を飛び交う無数の斬馬刀にうげっ
焔、俺を守れ!
成竜に変身させた焔に
俺の身体を覆わせて刀攻撃から守ってもらう
(かばう・激痛耐性
綾はノリノリのようだが流石に
いつまでも耐えきるのは厳しいだろう
…というわけで、任せたぞお前たち
使い魔の颯の背に仔竜の零を乗せ、そっと放つ

颯が目立たないように大きく迂回し
風を操り刀の軌道をズラして躱しながら接敵
敵の意識が綾に向いている隙を狙い
死角から零のブレス攻撃を浴びせUC発動
縛り上げ、邪魔な刀を封じる
楽しく一騎打ちしているところに水を差して悪いな!




「ようやく黒幕のご登場だね。準備運動も完了したし、張り切って行こうか」
「……さっきまでのは準備運動というか」
 ほぼ遊んでいただけじゃなかったか、と乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は呟く。
「だがさっきとは明らかに空気が違う。気を引き締めろよ」
 率先して猫と遊んでいた張本人、灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)の顔をちらと覗き見ながら忠告する。
「ま、わざわざ云う必要もなさそうだが」
 にこ、と綾は目を細めて返す。穏やかなかんばせに、ぞっとするほど好戦的な光を宿して。
 何だかんだ付き合いの長い梓にしてみれば、綾のこんな表情も見慣れたものだ。
 視界の先、猟兵に深く疵を刻まれて尚、獰猛に笑う女が立っていた。
「無傷の状態で戦えなくて残念か、綾」
「ああいった手合いは、手負いになってからの方が厄介だよ。きっとね」
 死闘を求めてやまぬ青年は、事もなげにそう云ったものだった。
 ――ひゅ、と梓の顔のすぐそばを何かが掠めていった。避けながら目で追いかけた梓の視界に赤黒いものが映る。一瞬自分の頬が深々と斬られてしまったのかと錯覚するほどだった。
 そうではなかった。女の得物の方が――空を駆ける斬馬刀の方が血で形成されていたのだ。
「うげっ、何だこれ」
 梓が驚きに貌をしかめたのは一瞬のこと。
「焔、俺を護れ!」
 すぐさま相棒の仔竜に命ずれば、大きな成竜へと変身して梓の身体を覆い隠す。頑丈な鱗が刃を弾き、纏う炎が血を蒸発させていく。
「この姿、あんまり好きじゃないんだけどね。今日は特別だよ」
 綾の周りをひらひらと紅い蝶が舞う。その背にはいつの間にか、綾の出自を示すヴァンパイアの羽が宿っていた。
 ばさりと羽搏いては女へと距離を詰めていく。飛び交う斬馬刀は、同じように宙を舞う無数のナイフが弾き返していった。
 無論、数百の刃全てを相手取れるわけではない。ナイフ群の隙間をすり抜けた斬馬刀が綾の太腿を掠めていく事もあった。蝶の群れの間に新たな赤がしぶく。それでも呻き声ひとつ漏らさず、綾は女へと肉薄する。
「厄介な技だけど、本体さえ倒しちゃえばいいんだし」
「やってみるがいいさ」
 綾の振り下ろした一対の大鎌を、大太刀と鬼の手が受け止める。それこそ竜の頸さえ落とせそうな金属の塊を容易く片手で操る綾も綾だが、それを余裕で受け切る女も女だ。
「やるじゃないか」
「そっちもね」
 自然、互いを称える言葉が漏れる。笑みを交わし合った直後、それは目にも留まらぬ刃の応酬となる。
 二つの得物は時に攻撃と防御を分担し、時に二つを合わせた捨て身の一撃となる。
「……随分楽しそうに戦う奴らだ」
 梓が溜息を零した。綾は勿論だが、あの女の戦狂いもなかなかのものだ。
「綾はノリノリだが、流石にこの状態でいつまでも耐えきるのは難しいな。……援護を任せたぞ、お前たち」
 焔は忠実に盾の役割を果たしてくれているが、綾が満足するまで攻撃に晒され続けるのも酷というものだろう。
 風を司るカラスの颯は、音も立てずに飛翔する事が可能だ。その背に氷竜の零を乗せ、女に気づかれないようにそっと飛び立たせた。
 羽搏きが空を飛び交う刀の軌道をずらし、撃ち落されないように女の背後に迫る。
「ッ、な、ん……」
 女が零の存在に気づいたのは、絶対零度のブレスを背後から浴びせられたあとだった。その時には氷の鎖が女を縛り上げ、空を飛び交う刀を封じていた。
「く、手も足も出まいと思っていたのに」
 忌ま忌ましげに吐き棄てる女が鎖を脱しようとするが、氷の鎖は女の皮膚に張り付いて剥がれない。
「楽しい一騎打ちに水を差して悪いな!」
「ああ、梓か」
「そいつから注意を逸らすために、あたしに接近戦を仕掛けて来たのか。してやられたね」
 その言葉に、綾はぽかんと口を開けた。
「いや、熱くなりすぎて梓のこと忘れてた」
「だろうと思った」
「ま、もう十分楽しませてもらったからね」
 ――丁度いい。そろそろおしまいにしようか。
 巨大な鎌を無造作に放り投げ、代わりに握られたのはハルバード。
 解放した力のすべてを乗せて、渾身の一撃を叩きつけた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

パウル・ブラフマン
どもー!エイリアンツアーズでっす☆
社員旅行の前乗りでやって来たけれど
どーやらお取込み中ってカンジ?

Hey-Yo!機動力マシマシご希望の方は後部座席へどーぞ♪
愛機Glanzをゴキゲンな【運転】テクで駆り乍ら
展開させたKrakeで狙撃していくね。

敵間合いに入らないように留意。
特に左手には当たらないように【見切り】たいな。
んでもって―…UC発動!射程はコレでカバーするよん☆

頭部をわざとラフに【乱れ撃ち】して油断を誘おう。
アハッ☆ノーコンだと想った?
ざァんねん!オレの本当の狙いは…
おねーさんの膝下を破壊して、機動力を大幅に削ぐコト。
這って両腕を振り回してみる?
ならオレも全力で―全砲門【一斉発射】ァ!!




「どもー!エイリアンツアーズでっす☆ Hey-Yo!機動力マシマシご希望の方は後部座席へどーぞ♪ ……なーんて必要もなさそうだね」
 楽しい社員旅行スポットの気配を感じ、前乗りと称してパウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)がこの地を訪れた頃には、もうすっかり先に現地入りしていた猟兵達が交戦を果たした後だったらしい。
 後に残るのは、白い膚を赤く染め、骸の海に還る時を待つだけのオブリビオン――。
「な、わけあるか」
 ニイ、と女が歯をむき出しにして嗤った。最期まで強者と刃を交える事を臨んでいる表情だった。ぎり、と手の鉤爪が音を立てる。
「おねーさんのお眼鏡にかなうかはわかんないけど、楽しいお祭りの為にタコも一肌脱いじゃいまっす!!」
 最後の方は、展開する固定砲台からの発射音で掻き消されていた。
 満身創痍を感じさせぬ速さで女が身を翻す。砲撃音の轟いた方へ鬼の手を振るが、その時にはもうパウルはGlanzを駆り、女の間合いから離れている。
「UC発動――ココから先はオレの海域だよ!」
 悪魔の魚が触手を一斉に広げれば、繰り出される乱れ撃ちは地獄へいざなうビートが如く。常識外の距離からの狙撃も可能とする、パウルの力だ。
 だがその砲撃も、舞うように駆ける女には届かない。正面から頭を狙った見え透いた砲撃は、女が身を捻るだけで躱されてしまう。
「うっそー、今の自信あったのに」
「距離を置く判断は褒めてやろうか」
 鋭い爪に舌を這わせながら――まるでそれが抉り取るものに想いを馳せるように――女が云った。
「だが、あたしの命を呉れてやる程の器じゃなかったみたいだね」
 終わりだよ、と女が一斉に距離を詰めようとする。鬼の手がすばしっこく逃げ惑う運転手を切り裂くまで、あとほんの少し――。
 突如、今までとは比べ物にならないほどの閃光が炸裂した。
「……な」
 限界まで威力を研ぎ澄ませたKrakeが女の脚を撃ち抜いていた。高温の光線に灼かれた傷口からは血も流れず、ただ空虚な穴が拡がっていた。
「アハッ☆ノーコンだと想った?」
 笑うパウルの声も、どこか遠い。脚が身体を支えられなくなり、女が前のめりに転がった。
 油断を誘う事こそが彼の狙いだったのだと、女は漸く悟った。
「まだ、だ」
 鬼の手に力を込めて。大太刀を握りしめて。女はまだ抗おうとする。
「ううん、終わりだよ」
 触手から伸びる全砲門が、女を睨みつけていた。
「……一斉発射ァ!!」
 耳を劈く轟音と光の後に、静寂が満ちた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『百鬼夜行のお祭り騒ぎ!』

POW   :    縁日のごちそうに舌鼓!

SPD   :    幻想的な情景を堪能する!

WIZ   :    お祭りグッズを見て回る!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「やっぱり猟兵ってェのは強いんだってなあ。こうやって無事に祭りが出来るのも、兄ちゃん姉ちゃんたちのおかげなんだって?」
 射的屋台の店主が商品を並べながら笑っていた。
 ――そう、待ちに待ったお祭りが、無事に開催されるのだ。
 元の大通りが取り戻されるや否や、わっと集まってきた妖怪たちによって、ものの数時間ほどで会場の設営が完了した。それだけ彼らも楽しみにしていたのだろう。猟兵への感謝は惜しみない。
 UDCアースの極東の島国の特色を色濃く残したこの辺りは、出店もそのようなものが多いようだ。先程の射的に加え、金魚やスーパーボール、ヨーヨーすくいにお面屋さん、型抜きといった遊戯から、焼きそばにわたあめといった食品などなど、お馴染みのものが揃っている。
 特別目を惹く百鬼夜行パレードも、きっと猟兵ならばどんな格好でも大歓迎だ。
 少し前にお披露目した自慢の浴衣をアピールするのもいいし、一足早いハロウィン気分で妖怪のコスプレを楽しんでもいい。
 この時ばかりは戦いの日々を忘れ、心行くまではしゃいでいっても大丈夫。

========================================
 ゆるっと追加OP投稿しておりますが、要するに「縁日にありそうなものor妖怪パレードだったら何でも大丈夫なのでご自由にプレ書いてください」という感じです。
 公序良俗に反するものだけは駄目ですが、それ以外は明記ないものでもご自由に。
 お連れ様との相談などもあるかと思うので少し間を頂きまして、プレイングは30日(水)朝8:31~受付開始といたします。終了日時は集まりを見ながらMSページにてお知らせします。
========================================
雫石・凛香(サポート)
○アドリブ・MSさんの解釈による下記に沿わない動きも歓迎

オブリビオンへの恐怖で眠れなくなった姉のため戦う妹キャラ
基本的な性格はクール枠。冷静に物事を見て、必要そうな行動をとれます
戦闘外では子供としての面が強め。甘いものに目が無く面白そうなものがあれば見て回るような行動をとります
他、姉へのお土産になるものが無いか色々なお店を探す姿も見かけます。

魔剣【鞘】という凛香の意思に従い姿を変える剣を持っており、戦闘時はこれを使って戦いますが、戦闘を行わないシーンでもこの剣は常に持ち歩いています。




「綿あめに、チョコバナナに……色々あるのね」
 大きな剣を携えた少女が、通りを歩いている。
 一見すると祭の会場とは不釣り合いな光景だが、この上なく似合っているともいえる。彼女の小さめの背丈や愛らしい顔立ち。それらは、大事そうに抱えている剣を祭りの会場で購入した模造品と見せるには十分すぎるほどだった。
 彼女の名は雫石・凛香(鞘の少女・f02364)。年齢にそぐわぬ冷徹な表情も、お祭りの煌びやかな雰囲気の前ではほんの少し綻んでいる。
「いえ、駄目よ。今日は姉さんへのお土産を選びに来たのだから」
 ふるふると首を振り、当初の目的へと赴こうとする。
 だが、そんな時に限ってあまーい馨が凛香の鼻腔をくすぐるのだ。
 ベビーカステラと書かれた屋台に目を遣れば、妖怪の店主とばっちり目が合ってしまう。
「今なら五個につき一個増量中だよ」
 殺し文句だった。
「……そうね、これなら歩きながらでも食べやすいし」
 なんて言い訳とともにカップ入りのそれを購入する凛香は、年相応の女の子のようであったという。


「……あ」
 凛香が次に目を止めたのは、小さなぬいぐるみを扱っている屋台だった。
 何の変哲もないテディベアに見えるが、抱きかかえて顔を寄せると微かに花の馨がする。
「ぬいぐるみの色や形に合わせて匂いを変えているんだよ」
 と、すかさず店主の営業トーク。
「これって、馨はどれくらい持つものなのかしら?」
「大体一ヶ月半から二ヶ月ってところだね。けれどこれ、中身を変えられるんだ」
 ほら、と店主がぬいぐるみの背中にあるチャックを下げると、中にポプリを入れられるスペースが開いていた。
「ふぅん……」
 双子の姉。
 凄惨な過去に心を壊され、幸せな眠りを失ってしまったひと。
 吸血鬼たちの足音に怯え、震えながら朝を待つひと。
(「ねえ、あなた……わたしが傍にいられない時も、姉さんの心を少しだけ安らげてくれないかしら?」)
 それが気休めだとはわかっている。姉さんのためには、魔剣を振るえるわたしがあいつらを狩り尽くさねばならない――けれど。
「これ、包んでもらうことってできる?」
「勿論だよ」
 凛香が選び取ったのは、優しいアイボリーのテディベア。
 ふわりと馨るのは、心を和らげる効果があるのだという――カモミール。

成功 🔵​🔵​🔴​

真宮・響
【真宮家】で参加。

さて、物騒な存在は退場したし、家族で祭りを楽しもうかね。え?お面屋さんでお面を買って屋台の食べ物の食べ歩き?そうだね、奏は一杯動いてお腹空いてるだろうね。

狐のお面を頭に付けながら、奏と瞬が仲良く食べ歩きしている後ろについていく。もちろん自分も焼き鳥やトウモロコシを頬張る事を忘れない。ああ、財布が軽くなるねえ。まあ、そういう日もいいか。せっかくのお祭りだしね。(奏に渡された綿あめを笑顔で食べる)


真宮・奏
【真宮家】で参加。

やっとお祭りです!!まずお面を買って食べ歩きしたいです!!お腹ペコペコです!!

狛犬のお面を頭に付けて、フラスコに入ったサイダーに目をキラキラ。兄さん、まずこれ飲みましょう!!焼きそば、トウモロコシ、焼きいか、焼き鳥・・・ああ、まだお腹に入ります!!瞬兄さんはりんご飴にチョコバナナですか!!やっぱり甘味好きな兄さんらしいですね。あ、家族で綿あめ食べましょう!!家族で過ごす楽しいお祭り、最高です!!


神城・瞬
【真宮家】で参加。

さて、ようやくお祭りが楽しめますね。折角妖怪の皆さんが祭りの会場を用意してくれたんです。存分に満喫しましょうか。え?お面買って食べ歩き?じゃあ、そうしましょうか。

奏と隣にならんで、まずはサイダーを。どんどん食べ物を食べて行く奏に微笑みながら、僕も両手にりんご飴とチョコバナナを持ってたり。家族で綿あめ、いいですね。家族で過ごす祭りの時間、ゆっくりと楽しみます。




 家族が無事合流を果たし、巨悪も討ち取って。
 そうなれば残るやるべきことといえば、思いっきり祭りを楽しむ事、これに尽きる。
「折角妖怪の皆さんが祭りの会場を用意してくれたんです。存分に満喫しましょうか」
 賑やかな会場を見渡して、神城・瞬(清光の月・f06558)が目を細める。
「さて、そしたらどこから周ろうか?」
 真宮・響(赫灼の炎・f00434)が子どもたちに問いかけると。
「まずお面を買って食べ歩きしたいです!!」
 真っ先に、真宮・奏(絢爛の星・f03210)が元気よく挙手。
「そうだね、奏は一杯動いてお腹空いてるだろうね」
「はい、もうお腹ペコペコです!!」
「じゃあ、そうしましょうか」
 頷きながらも瞬はふと思う。
 あの剣鬼と激しく鍔迫り合いを繰り広げた奏は、実際一刻でも早く空っぽのお腹を満たしたいに違いない。
 それでも祭りらしいお面を先に買って、着飾りながら屋台を周りたいというのが、なんというか――。
(「普段は本当に、普通の女の子なんですよね。奏は」)
 義理の兄妹同士、秘め続けている想い。さっそくお面屋さんを見かけてはしゃいでいる奏を見ていると、普段は胸の奥に押しやっているそれを自覚する。

「兄さん、母さん、これなんてどうですか? 似合ってます?」
 奏が見付けたのは狛犬のお面。少しデフォルメされた造形が、愛らしい奏の顔にもよく似合っている。
「いいと思いますよ」
「うんうん、祭りって感じで気分が上がって来るね」
「兄さんと母さんもどれか買っていきますか?」
「え、アタシもいいのかい?」
「僕はちょっと……」
「えー」
 瞬兄さんも絶対似合いますよー、なんて不満を云う奏だが、響がお面を選びだすとすぐに一緒になって楽しんでいた。
「これは?」
「あっ、かわいい」
「これ」
「ちょっと地味かな……」
「これなんかどうだろう」
「それ、さっきのより好きです!」
(「母さんも満更ではなさそうですね」)
 同い年くらいの女の子が仲良くはしゃいでいるみたいだ、なんて感想を瞬は抱く。
 結局響は狐のお面を選び、三人はお面屋さんを後にした。
 食べ物の屋台巡りでは奏と瞬が並んで歩き、響が一歩下がってそのあとに続く形となる。
「兄さん、まずこれ飲みましょう!!」
 奏が見付けたのはフラスコに入ったサイダー。ただ入れ物が奇抜なだけかと思いきや、ぴかぴか光る七色ライトが仕込まれている。摩訶不思議な研究をイメージした代物らしい。
「いいですね。お祭りならではという感じがします」
 同じものを飲みながら、奏は怪しまれないように気を付けながら隣に立つ瞬をちらちら見上げる。
(「いつか家族としてだけじゃなく、もっと違う関係で、瞬兄さんとお祭りに来れたらいいのにな」)
 今は、その想いを口にすることはできないけれど。

 綺麗なサイダーをすっかり飲み干してしまったら、いよいよお待ちかねの食い倒れツアー!
「母さん、今日はいっぱい食べていいですよね!?」
「ああ、もちろんだよ」
「やったあ!」
 先陣を切る奏は、屋台のほとんどを巡る勢いで次々と食べ物を注文していく。
 焼きそばにトウモロコシ、焼きイカに焼き鳥、フランクフルトにお好み焼きにじゃがバター……気に入ったものは再度注文したりしつつ、みるみるうちにお腹に収めていく。
「相変わらずの食べっぷりですね」
 微笑ましそうに瞬が云う。奏は女性の平均より少しばかり背が高いだけで、特別身体が大きいというわけではないのに、とにかくよく食べるのだ。それでいて全然体型が変わらないのだから驚かされる。
「誰に似たんだかねえ」
 そんな奏にくっついていきながら、響も気になったものを買っては頬張っていた。肉のジューシーさをしっかり封じ込めた焼き鳥も、バターの馨るトウモロコシも、お祭り気分を盛り上げてくれる絶品だ。
「ん、瞬兄さんはりんご飴にチョコバナナですか!」
「はい、なかなか美味しいですよ」
 そう。奏ほどではないが、瞬もちゃっかり両手を食べ物で満たしていた。
「さすがの甘味好きです」
「奏もそろそろデザートに移行したい頃なんじゃないのかい?」
「甘い物も確かに気になります! でもでも、食事もまだまだお腹に入れたい……!」
「甘い物のあとに再度食事を摂ってはいけないというルールは無いんじゃないでしょうか?」
「あっ、確かに!」
 ならここでひとつ甘い物を、と奏はきょろきょろと辺りを見回して。
「あ、じゃあ皆で綿あめ食べましょう!」
「アタシ達も?」
「はい、家族で綿あめです!」
「いいですね。家族で綿あめ」
 奏が買ってきたのは、お祭りならではの袋に入れられ吊り下げられた綿あめみっつ。流行の妖怪アニメのカラフルな包装を解けば、中からふわふわが現れる。
 どこか昔懐かしいそれを受け取りながら、瞬は目を細める。
「……いつぶりでしょうか、こういうのは」
 いつも通り冷静に振る舞いつつも、まるで子供のように祭りを楽しんでいる自分がいるのを瞬は自覚していた。
「はい、母さんも」
「ありがと、奏」
 礼を言いつつ綿あめを受け取る響だが、子供たちがまだ未成年である以上、家族の飲食代は響の財布から出ている。今までの総計とこれからもう少し嵩むであろう金額を考えると、少しばかり恐ろしくはなるのだが。
「まあ、そういう日もたまにはいいか」
 折角のお祭りだしね、と綿あめを口に含めば、素朴な甘さが舌を満たしてくれる。
「家族で過ごす楽しいお祭り、最高です!!」
「ええ。ゆっくりできていいですね」
 何より瞬も奏もとても楽しそうだ。それを見ているだけでも、来て良かったと心から思える。
 ――奏がまだ小さい頃に夫が亡くなり、それから孤児となった瞬と出逢い、がむしゃらに二人を育ててきた。
 自分は本当に良い母で在れているのか。悩まなかったといえば嘘になる。
 それでも結果として、瞬も奏も、こんなにいい子に育ってくれた。
(「アタシには、それだけで充分だよ」)
 お揃いの綿あめを頬張りながら、響は嬉しそうに空を見上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【不死蝶】
黒の浴衣に着替えて参加

イチゴ味のかき氷を食べつつ
そういえば、さっき遊んだ猫たちもどこかに居るのかな?
あとで会いに行ってみようよ
なんて話していたらとある屋台が目に入り

梓、梓、型抜きって何だろう?
へぇ、上手く出来たらおまけが貰えるのかぁ
せっかくだからチャレンジしてみようよ梓
どっちがより速く上手にクリア出来るか勝負だ

ふむふむ、まずは余分な粉を払って、と…
いきなり絵柄の溝にブスッと刺すと壊れやすいのか
まずは単純なところから割っていって…
複雑な部分は少しずつ少しずつ削って…
よーし、出来たっ

え?スマホで「型抜き コツ」で調べてたんだよ
えー、攻略法調べちゃいけないなんて
ルールは無かったしー?


乱獅子・梓
【不死蝶】
綾と色違いの浴衣姿

露店のベビーカステラを焔と零に喰わせてやりつつ
ああ、「また遊ぼう」って言ってたもんなお前
猫だし、祭りの賑わいから離れた所に居るのかもな

型抜き…何だろうな、初めて聞いた
店主から説明を聞いて、なるほど
型に描かれた模様の通りにくり抜けば良いのか
なんだ簡単じゃないか(フラグ)
よし、良いだろう、その勝負乗った!

さてまずはどこから攻めるか
やはりここは端の方から…(ブスッ バキッ
……店主、もう一枚くれ
そして気付けば○枚目
……だあぁぁ!思った以上にキツい!!
あと一歩というところで崩れた時の
喪失感は半端ない…

お、上手いじゃないか綾
…ってなに見てるんだ?
は!?それはズルだろうお前!




 揃いの浴衣に身を包む、二つの影。
 普段の服装の印象にも似た、黒い浴衣を着ているのが灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)。
 同じ仕立ての色違いのものに袖を通しているのが乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)だ。
 イチゴ味のかき氷を食べながら、そういえば、と綾は云った。
「さっき遊んでた猫たちもどこかに居るのかな?」
「ああ、「また遊ぼう」って云ってたもんな、お前」
 梓のほうは、露店で買ったベビーカステラを焔と零に喰わせてやっているところだった。元より人懐こい焔はもちろん、いつもはクールな零だって、ころころ小さくておいしい甘さにすっかり夢中のようだ。
「そうそう。きっと今頃元の無害な妖怪に戻っていると思うんだよね」
「猫だし、祭りの賑わいから離れた所に居るのかもな」
「後で逢いに行ってみようよ」
「そうだな、悪くな……」
「キュー!」
「ガウガウ!」
「何だ、お前達もまた遊びたいのか?」
 一緒に目いっぱい駆け回っていた彼らの事が恋しいのかと梓が問えば、二匹の仔ドラたちは手にしたベビーカステラをしきりに見せてくる。
 それにはどうやら色々な妖怪の焼印が押されているようで、デフォルメされたドラゴンと猫の柄をみつけてはしゃいでいるらしい。
「へえ、良かったじゃないか」
 猫たちにまた逢いたいというのも、外れではなかったようだ。
「ねえ梓、あれなんだろう?」
 綾が指差しているのは『型抜き』と書かれた屋台だ。
「型抜き……何だろうな、初めて聞いた」
 興味深そうな二人組に、店主があれこれ説明をしてくれる。二人はグラスの奥の目をぱちぱちさせながら聞いていた。食糧事情の芳しくないダークセイヴァー出身の二人組にしてみれば、食べ物そのものを玩具にしてしまうという発想がそもそも新鮮だ。
「なるほど。型に描かれた模様の通りにくり抜けばいいのか。なんだ、簡単じゃないか」
 これが後々お手本のようなフラグとなることを、この時点ではだれも知らない。
「綺麗に抜けたらおまけもプレゼントするよ」
「せっかくだからチャレンジしてみようよ梓」
 綾の笑顔に、ちょっぴり悪戯っぽさが宿る。
「どっちがより速く上手にクリア出来るか勝負だ」
「よし、良いだろう。その勝負乗った!」
 この世界の通貨を同時に台の上に置き、熱きバトルがスタート!?

「さて、まずはどこから攻めるか。やはりここは端の方から……」
 ブスッ。梓が押しピンを一刺ししたと同時、見事に亀裂が走る。
「……店主、もう一枚くれ」
「あいよ」
「さっきは力を入れ過ぎたんだろうな、もっと慎重に……」
 ぷす。ぷすぷす。
「お、いいぞ。この調子で……あともうちょっと……」
 ボキッ。
「しまった、チューリップの花と茎が離れてしまった。もう一枚!」
 もう一枚、もう一枚が積み重なり、気づけば梓の傍らでは型抜きの残骸たちがちょっとした塔を形成していた。
 一方、綾はといえば。
「ふむふむ、まずは余分な粉を払って、と……いきなり絵柄の溝にブスッと刺すと壊れやすいのか」
 下調べはしっかりと。コツをしっかり頭に叩き込んだら、いざスタート。
「まずは単純なところから割っていって……複雑な部分は少しずつ少しずつ」
「……だあぁぁ!思った以上にキツい!!」
 〇回目の失敗に打ちひしがれる梓の悲鳴も凪の精神でスルーし、ちまちまと地道にピンを押していく。
「あと一歩というところで崩れた時の喪失感は半端ない……ん? 上手いじゃないか綾」
「でしょ? ふむふむ、最後の仕上げは……」
「って何見てるんだ?」
「スマホで「型抜き コツ」で調べてたんだよ」
「は!? それはズルだろうお前!」
「えー、攻略法調べちゃいけないなんてルールは無かったしー?」
 しれっと云ってのける綾に、
「確かに無いねえ」とは店主談。
「店のルール的にアリでも勝負としてはどうなんだ?」
「よーし、出来たっ」
「兄ちゃんやるじゃないか」
「おい、話を聞けよ」
 ともあれ、勝ちは勝ち、負けは負け、ということらしく。
 後には景品の妖怪マスコットをぶら下げてご機嫌な綾と、そのあとを釈然としない様子でついていく梓の姿があったとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ライラック・エアルオウルズ
クラウ(f03642)と

猫面に黒地に赤花舞う浴衣

ふふ、クラウは元気だねえ
くつくつ笑い乍ら、後追いの

しゅわり溢れないよう、乾杯して
この“薬”で僕らも七色に光るかな?
フラスコ眺めて冗談粧し、ひとくち

――おっと、早く混ざらないとね
友達を連れ去らせはしないけれども
こうしていれば安心だと、繋いで
此度は、僕が貴方の手を引いてゆこう

ああ、きっと、認めて貰えるさ
彼らを思い切り驚かしてみよう

僕だって出来るとも
てのひらから沢山の花出し
最後は薔薇を手に、得意気
どうだい、中々だろう?

林檎飴かあ、良いね、是非是非
渡されたなら早速と口開けるも
――えっ!待って、凄い食べ難い

記念になる土産は嬉しくて
メダル、一緒に開けてみよう


クラウン・メリー
ライラ(f01246)と

道化狐のお面にトランプ浴衣

ライラ、ライラ!こっちこっち!
彼を手招きしてくるりと回る

最初はフラスコサイダーを買い
溢さずに乾杯!ふふ、美味しいな!

あ、パレード始まった!
迷子になったら連れ去られちゃうかな?
なんて手を伸ばし繋げば
迷わないように手を引いてくれる彼にふにゃりと微笑む

ライラ、妖怪さん驚かせれたら俺達も仲間になれる?

よーし!見ててね!
口からながーい風船を取り出して
あっという間にきりんさん!
ふふ、驚いた?

あ、りんご飴売ってる!食べよっ!
二つ買ったら一つは彼に手渡して
いただきま――
わ!りんご飴がお喋りしてる!

お土産にメダルを買って
うん、いっしょに開けよ!

なにかはお楽しみ!




 楽しい楽しいお祭りの日なら、子供は勿論、大人だって全力で楽しまなければ損というもの。
 いつもは白黒衣装の多めなピエロ、クラウン・メリー(愉快なピエロ・f03642)だって、トランプ浴衣に虹の帯を合わせてカラフルな装いに興じている。
「ライラ、ライラ! こっちこっち!」
 手招きしつつ楽しそうにくるりと身体を回してみれば、道化師の化粧を施した狐面の隣で、自前のフリチラリアがベルのようにふわふわ揺れていた。
「ふふ、クラウは元気だねえ」
 ライラと呼ばれた男性は、こちらもクラウンを愛称で呼び返す。はやくはやくと急かすようなクラウンに、くつくつと笑みを零し乍ら後追いするのはライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)だ。黒地に赤花舞う浴衣を纏い、クラウンに倣って猫の面を合わせている。
 祭りを最大限楽しむためには、喉の渇きは大敵だ。まずは七色フラスコサイダーを二人で買って、
「かんぱーい!」
「乾杯」
 しゅわりと溢れてしまわないように、優しくフラスコをかちりと合わせる。
「ふふ、美味しいな!」
「この“薬”で僕らも七色に光るかな?」
 フラスコを眺めながら笑うライラックは冗談のつもりだったけれど。
「ほんとに七色に光ったら楽しそう! 玉乗りの動きに合わせて色が変わったりして」
 ますます皆が笑ってくれそうだよ、なんて生粋の道化師気質で笑みを深めるクラウンだった。
「あ、パレード始まった!」
「おっと、早く混ざらないとね」
 通りが賑やかさを増してきたころ、ちょうど無くなりかけていたサイダーを一気に飲み干した。
「百鬼夜行だって。迷子になったら連れ去られちゃうかな?」
「友達を連れ去らせはしないけれど」
 こうしていれば安心だと、ライラックがクラウンの手を取る。
「ふふ、ありがと」
 此度は僕が、と優しく手を引いてくれる友に、クラウンもへにゃりと笑む。
 想像を紡ぐ人と、芸を披露する人と。夢を生む二つの手が楽しそうにつながっていた。

 通りを闊歩する妖怪たちは、大きな足や長い舌や、みんなそれぞれ不思議な見た目をしていたけれど。
「ライラ、妖怪さん驚かせれたら俺達も仲間になれる?」
「ああ、きっと、認めて貰えるさ」
 それを怖がるばかりか、逆に驚かせようと企てる『人間』たちに、妖怪たちも興味を示したようだ。
「へえ、おれ達が人間を驚かせるんじゃなくて、人間がおれ達を驚かせるっての?」
「さすが、私達のことが見える人間ってのは変わってるわね」
「よーし、見ててね!」
 目を離しちゃだめだよ、とクラウンは自分の口を指で示す。先程から楽しくおしゃべりしていた筈の口から、ぷくうっと長い風船が飛び出すように膨らんだ。それだけでも妖怪たちは目をぱちくりさせたのに、クラウンが慣れた手つきでねじっていくと、
「あっという間にきりんさん!」
「うお、すげえ!」
「なあにそれ、魔法?」
 わっと声をあげる妖怪たち。特に子供の妖怪たちなどは、目をきらきらさせてもっとやってとせがみだすほどだ。
「んー、じゃあ次はねえ」
「おっと、僕だって負けていないよ」
 ライラックが緩く握っていた手を開くと、いつの間にかその手には一輪の花が握られていた。あれっと目を瞬かせた妖怪に花を差し出しつつ、両手をひらひらと示してみせる。タネも仕掛けもありませんよ、とばかりに。
 だというのに、ライラックの手には次々と花が現れる。最後には大輪の薔薇の花束をどこかから取り出して、得意げに笑って見せた。
「どうだい、中々だろう?」
「すごーい! お兄さんは手品師なの?」
 物珍しいものを素直に褒めてくれる妖怪たちの歓声。すっかり打ち解けた二人だった。
「あ、りんご飴売ってる! ねえライラ、一緒に食べよっ!」
「林檎飴かあ、良いね、是非是非」
 美味しそうなものを見つけたクラウンがすぐさま二つ買ってきて、仲良くいただきまーすと口を開きかけたところ。
『えらんでくれてありがと』
『おいしくたべてね』
「わ! りんご飴がお喋りしてる!」
「――えっ! ……待って、凄い食べ難い」
 今度は二人が驚かされる番だった。
 そんな二人のお土産は、この世界で人気だというあやかしメダル。
「一緒に開けてみよう」
「うん、せーのでね!」
 何が出たのかは、二人だけの秘密。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鈴桜・雪風
うふふ
前々からこの世界の暮らしには興味がありましたので
お祭りは良い機会でしょう
のんびりと気ままに、雑踏の中を回遊させて頂きますわ

見知った縁日の様な、それでいて見慣れぬ種族ばかりの不可思議な光景を楽しみつつ
現地の方とお話できたら良いですわね
「ごきげんよう、店主さん。このお祭りはいつもこんなに賑わっていますの?」(売っている一つ目小僧のお面を買い求めつつ)

大人、子供、男、女、それらの判別もつかぬ者達
多種多様な妖怪達が皆、祭りを楽しんでいる様子を確かめて
「嗚呼、やはり。ここに居るのは『ヒト』ですね。異貌異形多々あれど、その有り様はわたくしの知る町人、市民の姿と相違なし」
それに満足し
納得したように頷く




 祭りの喧騒に耳を傾けながら、のんびり気ままに桜傘の少女は往く。
 鈴桜・雪風(回遊幻灯・f25900)の足取りは、戦狂いの女と剣を交えた時と変わらずたおやかで、洗練されていた。先端にだけ桜色の混じる結い髪や長い袖が、まるで金魚の袖のように優雅に漂っていた。
 ――前々からこの世界の暮らしには興味がありましたので、お祭りは良い機会でしょう。
 雪風の目に映る光景は、帝都に居を構える彼女もよく見知った縁日の様な、それでいて見慣れぬ種族ばかりの不可思議な光景。色々な獣や鳥に似た妖怪がいると思えば、見た目は人間と変わらない者たちもいる。けれどこの世界に生きているのは皆、かつて人々に忘れ去られた妖怪や神の末裔であるらしい。
 まさにそんな竜神の血を引く者なのだろうか、ところどころ鱗に覆われた肌と蛇の下半身を持つ男が営むお面屋で、雪風は目についた一つ目小僧のお面を買い求めつつたずねてみた。
「ごきげんよう、店主さん。このお祭りはいつもこんなに賑わっていますの?」
「何かと皆楽しい事が好きだからねえ」と店主。「この街も娯楽がないわけじゃないけどさ、やっぱりご先祖様が地球で暮らしていた頃よりは退屈なんだと思うよ。俺らを見てくれる人間もいないしね」
「成程……」
 人間に忘れ去られ、過去の思い出たちを糧に生き延びてきた妖怪たち。物悲しい成り立ちの世界でも、彼らはこうして楽しそうに生きている。
 大人、子供、男、女、それらの判別もつかぬ者達――多種多様な妖怪達が皆、入り乱れるように祭りを楽しんでいる。
「嗚呼、やはり。ここに居るのは『ヒト』ですね」
 納得したように雪風は頷いた。
「異貌異形多々あれど、その有り様はわたくしの知る町人、市民の姿と相違なし」
「そうかもね。人間たちは俺らのことを不思議がるけど、俺らにしても人間の事が不思議だもの。……おや、お嬢さんは人間なのかい? 俺らが見えるって事は、救ってくれた猟兵さんかな」
「どうでしょうか。わたくしにも些細な問題と思えて参りました」
 お面を頭に括り付けてみせつつ、雪風は微笑んだのだった。桜から生まれる生命というのは、ある意味では妖怪に近い存在なのかもしれない。
 ――生まれた世界が違えば、少しずつその外見や内面も変わっていくけれど。
 本質的にはきっと、同じものなのだろう。
 店主に礼を云った雪風は、満足そうに雑踏へと消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と

いいえ、僕もきみを守りたいですからと笑み返し
かれの大きな手に自分の手を絡めて縁日に繰り出しましょう

ヨーヨー釣りにくじ引きに、射的と型抜き
UDCアースのそれに似た屋台に視線を巡らせて
手渡されたのはチョコレートがけのバナナの甘味
ありがとうございますと受け取って、かれと腕を組み
ミルクティも差し出されたなら首を伸ばして飲みましょう
うん、甘くて美味しいです
きみと一緒なのでより一層ですねと笑いかけて

それからチョコバナナを食べてミルクティも飲み干したなら
金魚すくいが目に入り
ザッフィーロ、あれがやりたいです
金魚すくいはしたことがなかったので
――格好いいところ、見せてくれますよね?


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

宵、先程は助かったと笑いつつ手を繋ぎ屋台を巡ろう
辺りを見回せば、まず目が惹かれるのは矢張り甘味
チョコバナナと並ぶタピオカミルクティを見れば二人分のチョコバナナを買い一つ宵へと渡そう
ミルクティはその、何だ。二人とも両手が塞がってしまうからな
二人で飲めば良いのではないかと、ストローを宵の口元に差し出しながらも序に己の腕も差し出してみよう
…俺の手は繋げない故…なんだ。その…腕を…だな…?

宵と交互に飲んでいたミルクティを飲み干すと共に聞こえた宵の声には笑みを
ああ、任せておけ
望み通り沢山とって見せよ…、…う…
…。…何だ、その…ミニュイに狙われ大変だろう?
これで良かったのではないか…?




「宵、先程は助かった」
 ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)が微笑めば。
「いいえ、僕もきみを守りたいですから」
 逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)も微笑み返した。
 揃いの浴衣を纏ったら、ふたり手を繋いで屋台を巡りだす。
 蒼白い提灯が連なる不思議な通り。だがそこに並ぶ屋台たちは、宵にも見覚えのあるものたちばかり。
 ヨーヨー釣りにくじ引きに、射的と型抜き――……。
(「初めて訪れたのに、懐かしいような……不思議な感覚ですね」)
 UDCアースのそれに似た屋台に宵が視線を巡らせているころ、ザッフィーロはやっぱり甘味に目を奪われていた。
 チョコバナナとタピオカミルクティを順に眺めた後、少し待っててくれ、と宵に断って手を解く。
 戻ってきたザッフィーロの手には、まず右手にチョコバナナが二本。片方は宵に差し出して。
「ありがとうございます」
 素直に受け取った宵が、ザッフィーロがもう片方の手に持っているタピオカミルクティに気づく。そちらはひとつだけだ。
「その、何だ。一人ひとつずつだと、二人とも両手が塞がってしまうからな」
 だから二人で飲めばよいのではないかと、ストローを宵の口元に差し出した。
そして、序に一緒に差し出された腕は。
「……俺の手は繋げない故……なんだ。その……腕を……だな…?」
「勿論ですよ」
 宵が微笑んで素直に腕を絡めつつ、首を伸ばしてタピオカミルクティを一口。
「うん、甘くて美味しいです」
「そうか。良かった」
「きみと一緒なのでより一層ですね」
 宵が笑いかければ、ザッフィーロの褐色肌にほんの少し朱が混じる。
 ――チョコバナナもタピオカミルクティも、とっても甘くて美味しいけれど。
 ひょっとしたら今この時ばかりは、二人の方が甘いかもしれない。

 そうしてチョコバナナもタピオカミルクティも、すっかり胃の中におさまってしまったころ。
 宵が視線がふとひとつの屋台にとまった。
「ザッフィーロ、あれがやりたいです」
「ん……? 金魚すくいか」
 そう。大きな容器の中を所せましと泳ぐ金魚たちとの真剣バトル。
「金魚すくいはしたことがなかったので――ザッフィーロも格好いいところ、見せてくれますよね?」
 宵の言葉に、ザッフィーロも頷いた。
「ああ、任せておけ」
 浴衣の袖をまくり、逞しい腕でポイを受け取る。
「望み通り沢山とって見せ……」
 狙いを定めたのは一匹の出目金。その個体自体が立派で目を惹かれたのも勿論だが、周りに金魚が沢山群がっている分、ひと掬いで二匹以上の捕獲も狙えると踏んだのだ。
「見せよ……う……」
 だが大物は想像以上に大物だった。ポイに乗せて掬おうとした瞬間、ビチビチィ! と勢いよく尾びれに叩かれたポイがあっけなく破れてしまう。
「何だと……!?」
 穴から脱出した出目金は悠然と群れに溶け込んでいき、後には破れたポイだけが残った。
「……」
「……」
 あまりの呆気なさに、宵もからかうのもフォローも忘れて無残なポイを見下ろすだけだったという。
「……。……何だ、その……ミニュイに狙われ大変だろう? これで良かったのではないか……?」
 連れ帰った後の事を考えれば、と云われれば、宵も確かにと頷くしかない。
「小さい容器で飼えないくらいとれてしまったら、お店に返すことにしましょう」
 宵も代金を支払い、ポイを受け取っていた。は、とザッフィーロがそのポイを見遣る。
(「そういえば、ポイは同じように見えて、丈夫さの異なる規格が数種類あると聞いたな」)
 子供には丈夫なポイを渡し、大人には脆いものを渡す店もあるという。自分のポイがあっけなく破れてしまったのも、ポイそのものが脆すぎるのではないかとザッフィーロは推測した。
(「俺が無残なところを晒してしまったのはまだいいが、宵も取れなかったらがっかりしてしまうだろうな。ここはしっかり後でフォローを……」)
「ザッフィーロ? 随分ぼうっとしてますけど、そんなにショックだったんですか?」
 その宵の聲でザッフィーロが我に返ると、彼のお椀の中には二匹の金魚が泳いでいたという。
「…………」
「なかなか楽しいですね、金魚すくい」
 完敗だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

旭・まどか
パンドラ(f12938)と

白と黒
どちらも好きだけれど黒い方を貰おうかな
どう?これで普段着のぼくでも馴染めそうだね

そういえば君の浴衣への感想が未だだったね
紅がかった桔梗色の生地に白抜きの曼殊沙華が映えて
君にはやっぱり、寒色の方が良く似合う
白の稲荷面も良く似合っているよ

嗚呼、次は型抜きね
挑戦は画鋲選びから始まっているんだよ
だから難しいと言ったでしょう?

電飾を反射する七色の飴に眇め
手早く生み出される君の友達は正に芸術品
食べるのが勿体無い程綺麗だ
チョコバナナは食べなくても構わない?

それは『お願い』?それともただの『約束』?
構わないよ
またひととせ巡った後でも変わらずに在れたら
その年の縁日も共に過ごそうか


百々海・パンドラ
旭まどか(f18469)と参加
WIZ
先ずは、お面屋さん
この狐さんなんかお洒落じゃない
白と黒、まどかはどちらがいい?
ふふ、似合ってるわ
これを着けてるとカクリヨの仲間入りしたみたいね

浴衣への言葉はくすぐったいけどとても嬉しい

次は、型抜きがいいわ!
景品は何かしら
まどかのやり方を見て見よう見まねで挑戦
結構、難しいのね(判定はお任せ)

次は飴細工
あれね、まどかがお話してくれたの
わぁ…すごいわ!本当に色んなものを作れるのね
店員に腕に抱きしめた羊を見せて、この子を作って貰うの

勿論、後でチョコバナナも食べるわよ

ねぇ、まどか
また約束してくれる?そうね、これは、『お願い』
あなたとまた、来年も一緒に夏祭りに行きたいわ




 大切な浴衣を無事護り抜いた百々海・パンドラ(箱の底の希望・f12938)が、旭・まどか(MementoMori・f18469)と共に先ず向かったのはお面屋さん。
 流行のキャラクターものや定番の妖怪を模したものまでがずらりと並ぶ中、パンドラが選び取ったのは。
「この狐さんなんかお洒落じゃない」
 色違いで二つ並んでいた、定番の狐面。
「白と黒、まどかはどちらがいい?」
 白と黒か、とまどかは呟く。
「どちらも好きだけれど黒い方を貰おうかな」
「じゃあ、私が白い方」
 二人お揃いで狐面を装着すれば、お祭り気分も盛り上がるというもので。
「どう? これでぼくでも馴染めそうだね」
「ふふ、似合ってるわ。これを着けてるとカクリヨの仲間入りしたみたいね」
 そう。浴衣姿のパンドラとは異なり、まどかは普段着。それでもお面ひとつで途端にお祭りムードが漂って来るから不思議なものだ。
 改めて、まどかはパンドラを上から下まで眺めてみた。お気に入りだという浴衣に狐面を合わせた事で、ますます完成度の高い装いになっているように見える。
「そういえば君の浴衣への感想が未だだったね」
「あら、気を使わなくてもいいのに」
 そうは云いつつも、パンドラも満更ではなさそうだ。
「紅がかった桔梗色の生地に白抜きの曼殊沙華が映えて、君にはやっぱり、寒色の方が良く似合う。白の稲荷面も良く似合っているよ」
「ふふ、ありがと」
 くすぐったそうに笑うパンドラ。甘やかしたいひとの祝辞は、ちょっぴり恥ずかしいけど、とっても嬉しいものだった。

「次は、型抜きがいいわ!」
 景品は何かしらと見れば、かわいい妖怪マスコットがぶら下がっているのが目に飛び込んできた。
「あれが欲しいわね」
「嗚呼、次は型抜きね」
 いいよ、と請け負ったまどかは早速料金を支払い、画鋲を手にすいすいと進めていく。見よう見まねでパンドラも続いた。
「結構、難しいのね」
「挑戦は画鋲選びから始まっているんだよ」
「そうなの!?」
「だから難しいと言ったでしょう?」
 筆を選ばず――なんて慣用句は、道具を問わぬほどの技術があるからこそ通用するわけで。
 とはいえ最後まで危なげなく進めていったまどかも、そして慎重に慎重に進めたパンドラも、揃いのくまさん型抜きを無事クリア。特にパンドラなどは、愛らしいマスコットにすっかりご機嫌だった。

 ますます軽くなった足取りで、次に向かうのは飴細工の屋台。
「あれね、まどかがお話してくれたの」
「そうだったね」
「わぁ……すごいわ! 本当に色んなものを作れるのね」
 うんとデフォルメされた丸っこい河童から、今にも宙を泳ぎ出しそうな精巧な金魚まで。ありとあらゆる造形が揃ったその光景に、パンドラが瞳をきらきらとさせた。
「何か希望の形があったら、それを作る事も出来るよ」
「本当? それならこの子をお願いできる?」
 パンドラが店員に見せたのは勿論、いつも抱きしめている大切な羊のぬいぐるみ。
「勿論だとも」
 熱した飴を手早く指先でつまみ、捏ね、鋏で手を加えていく。作品が生み出される工程まで一連の芸術のようで、まどかも目を細めてじっと見つめていた。
 出来上がった小さくて甘いRacheleは、もこもこの毛並みまで本物そっくり。毛並みはみるく飴のように不透明に見えて、祭りの電飾にあたると微かに七色を帯びる仕上がりだった。
「食べるのが勿体無い程綺麗だ」
「ほんと、ほんとね!」
 目に焼き付けておかなくちゃ、とパンドラは棒を回し、色々な角度から眺めている。
「チョコバナナは食べなくても構わない?」
「勿論、後でチョコバナナも食べるわよ」
 甘い物同士だからって、それとこれとは別問題なのだ。

 そうして、たっぷり満喫した後。
「ねぇ、まどか」
 帰路につく中、名残惜しそうにパンドラが云った。
「また約束してくれる?」
「それは『お願い』? それともただの『約束』?」
 パンドラの云いたいことを見透かしたように、まどかが問う。
 ふわり、パンドラが笑んだ。
「そうね、これは、『お願い』。あなたとまた、来年も一緒に夏祭りに行きたいわ」
「構わないよ。またひととせ巡った後でも変わらずに在れたら」

 ――その年の縁日も、共に過ごそうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オスカー・ローレスト
【雀と妖精】

この前仕立ててもらった浴衣で、縁日に行く、よ……(浴衣イェカ参照)
爪……お、おしゃれ……そ、そうかな……ありが、とう(ホッとした様子で

射的……い、いや、した事はない……かな……祭りでは、ああいうことも、やるんだね……(遠目に見ながら

(お菓子が欲しそうなエルフリーデをみて)
……ちょっと、やってみる、よ……洋弓銃とは勝手が違うから、最初は上手くいかないかも、だけど……慣れれば当てられる、はず。多分……狙いはもちろん、エルフリーデが見ていたお菓子、で。

無事に取れたら、エルフリーデに渡す、よ……うん、今日は色々助けて貰ったから、その、お、お礼にと、思って……

一緒……い、良いの、かい?


エルフリーデ・ヒルデブラント
【雀と妖精】

紺の花の意匠の浴衣に濃桃の帯で楽しむよ。

いつもと雰囲気が違うね。爪先までお洒落さんだ。

見て…あそこ、射的ができるんだって。
きみは射的、したことある?
へぇ。おもちゃに、お菓子に、ゲーム機もあるんだ。
狙ってるものにあてられた時、気持ちがいいんだろうなぁ。

あれ、どんな味なんだろう?一人で食べるには大きいけど、気になるなぁ。
でも、ぼくじゃあの鉄砲は持てないしな…

オスカーくん、やってみるんだね。
何か気になるものがあったのかな。
集中しているだろうし、声をかけないほうがいいだろうか?
…あとちょっと…頑張って!

え。きみが取った物なのに、貰ってしまっていいのかい…?
ありがとう…
きみも一緒にどうかな?




 祭りの道を往くは、ひとりの青年と、ひとりの少女。
 エルフリーデ・ヒルデブラント(小さな森の守り神・f06295)は花の意匠の浴衣。浴衣の紺と引き立て合う濃桃の帯を合わせている。
 オスカー・ローレスト(小さくとも奮う者・f19434)は黒の浴衣。シンプルなものと見せかけて、袖が鳥の羽のような形状になっている。
「いつもと雰囲気が違うね。爪先までお洒落さんだ」
 そんなオスカーの周りをひらひら翔んでは眺めていたエルフリーデが注目したのは、彼の指先を密かに彩る色。浴衣と同じ黒が艶々ときらめいていたのだ。
「爪……お、おしゃれ……そ、そうかな……ありが、とう」
 恥ずかしそうに視線を逸らしながら、オスカーはほっと胸を撫でおろしていた。
(「俺がお洒落するなんて……へ、変じゃないかなって思ってたけど」)
 想い想いに着飾る同僚たちが眩しくて。勇気を振り絞って小さな小さな一歩を踏み出してみたのだ。
 そんなオスカーの事をまだよく知らない彼女が気づいてくれたのも、似合うと云ってくれたのも、嬉しかった。
「エルフリーデも、その……似合ってる、よ」
「ふふ、ありがとう」
 見て見て、とくるくる回りながら宙を飛ぶエルフリーデだって、きっといつもよりもはしゃいでいたに違いない。

「見て…あそこ、射的ができるんだって。きみは射的、したことある?」
 たくさんの景品が並んだ屋台を、エルフリーデが興味深そうに眺めていた。
「射的……い、いや、した事はない……かな……祭りでは、ああいうことも、やるんだね……」
「子供も遊べるみたいだけど、結構ちゃんと銃の形をしているんだね」
 自身も八歳の少女なのに、そんな大人びたことを云うエルフリーデ。確かに、とオスカーは頷いた。プラスチックの本体にコルク玉とはいえ、形状は猟銃そっくりだ。
「へぇ。おもちゃに、お菓子に、ゲーム機もあるんだ。狙ってるものにあてられた時、気持ちがいいんだろうなぁ」
 品々を眺めていったエルフリーデの視線が、星型の容器に詰められた色とりどりの金平糖の前で止まる。
「あれ、どんな味なんだろう? 一人で食べるには大きいけど、気になるなぁ。でも、ぼくじゃあの鉄砲は持てないしな……」
「……俺、ちょっと、やってみる、よ……」
「オスカーくん、がんばってね」
 何か気になったものがあったのかな、とエルフリーデはオスカーを見上げたけれど。
 オスカーの狙いは勿論、エルフリーデが釘付けになっていたお菓子。
 同じ狙撃といえど洋弓銃とは勝手が異なる。流石のオスカーも最初は大きく狙いを外してしまった。
 ドンマイだよ、と云いかけて、エルフリーデは聲を呑み込んだ。射的に打ち込むオスカーの真剣なまなざしに、聲をかけない方がいいだろうかと思ったのだ。
 二回目の挑戦では、玉がお菓子のすぐそばをすり抜けていった。台の上で容器がぐらりと揺れて踏みとどまる。
(「あとちょっと……頑張って!」)
 聲をかけられない代わりに、思わずきつく拳を握って見守るエルフリーデ。
 少しずつ慣れてきたオスカーの三回目の射撃が、とうとう真っ直ぐにお菓子を捉えた。
「すごい、オスカーくん!」
 恥ずかしそうに曖昧に笑うオスカーに、店主が景品が手渡そうとする。
「あの、……それは、この子に」
 オスカーにお菓子を譲られて、エルフリーデが目をぱちくりさせた。
「え。きみが取った物なのに、貰ってしまっていいのかい……?」
「うん、今日は色々助けて貰ったから、その、お、お礼にと、思って……」
「ありがとう……」
 きゅ、と大切そうに、エルフリーデには大きな容器を抱きかかえてから。
「甘いの嫌いじゃなかったら、きみも一緒にどうかな?」
「一緒……い、良いの、かい?」
「勿論だよ。お礼をしたいのはぼくも一緒だしね」
 ぱかりと開けた色の洪水から、甘い星のかけらを取り出して。
「優しい味がするね」
「う、うん」
 ふと、どちらからともなく同じことを考えていた。
 今日逢ったばかりなのに、そうとは思えないな、と。
 命を預け合った死闘がそう感じさせるのか、それとも今この時が楽しいからこそなのか。
 どちらにせよ、お菓子の星にこう願わずはいられなかった。
 ――またどこかで巡り合えますように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エンジ・カラカ
【灰】

コレはオオカミの仮装をするする。
オオカミ男ー。
耳と尻尾も出して歩く歩く。
赤い糸の賢い君も一緒、一緒。

百鬼夜行って妖怪のお祭りなンだっけ?
オオカミは妖怪じゃ無いケド、大丈夫大丈夫。
アァ、ミンナの仮装も様になっているなァ。

アレは本物の妖怪?
コッチはニセモノ?
色んなヤツがいるなァ……。

妖怪の真似をして歩こう歩こう
オオカミ男は凶暴で、それから吠えるンだ。
うんうん。
ワッ!て声をあげて見ている誰かを驚かそう。
賢い君も蛇みたいにぐねぐね動く
驚いた?驚いた?

妖怪はビックリさせると喜ぶンだ。
ミンナもやってみるとイイヨ。
何かがもらえるカモしれないなァ……。

全員で大道芸ー。
アァ……楽しいなァ…。


宵雛花・十雉
【灰】

烏天狗に化けて参加しよ
山伏の装束に高下駄履いて、カラスの面で顔を隠しゃ立派な妖怪さんに見えっかい?
おっと、背中の真っ黒い羽も忘れちゃいけねぇ

お、皆の妖怪姿もばっちり決まってんなァ
まるでホンモノの妖怪みてぇ…
いや、エンジはホンモノみたいなモンなのか?

へぇ、びっくりさせてやんのか
面白そうじゃん
常盤の管狐に嵯泉の烏まで加わりゃ、随分と賑やかなパレードになったなぁ
気分はさしずめ大道芸人

んじゃあオレも…
懐から千代紙を取り出せば器用にそれを折って
あっという間に赤鬼と青鬼の完成だ
そいつを宙に放り投げてやりゃ、ホンモノの鬼たちのお出ましよ

驚いたかい?
へへ、おひねりは甘いモンでいいよ


鷲生・嵯泉
【灰】(呼称:灰の主・宵の探偵・白の探偵)
さて化けるなぞ慣れぬものだが物は試しだ
一目連にでも化けるとしよう
片目の潰れた竜神――私には丁度良い

其々に中々様に成っている様だな
さて化けているのか素なのかが解らん者も居る様だが
其れは其れで悪くないと云うもの
『本物』が交じればこそ、百鬼夜行の醍醐味だろうよ

着かず離れず、ゆるりと着いて歩く
驚かす様子を咽喉奥で微かに笑って見遣り
――では、こんな手はどうだ
(弾き飛ばした黒符が焔と変じ、更に単眼の烏へと姿を変えて
一声鳴いて飛び立つや、再び焔へと変じて燃え尽きる)
術としては初歩だが目は惹けよう

……陽煌、お前も行ってはどうだ
竜の眷属らしく、「宝」を集めてくるといい


神埜・常盤
【灰】

僕は九尾の狐に化けよう
壮麗な漢服に身を包み
狐の耳と九本の尾を揺らして

式神の管狐――九堕を侍らせ
序にペットの「もふ」も毛羽毛現に見立て
一緒にパレェド、パレェド

エンジ君の仮装は君らしいねェ
鷲生くんの一目連も、十雉くんの鴉天狗も
其々の雰囲気に合っていて格好いいなァ

九堕に人魂めいた焔を操らせながら
ゆるゆると歩いて行こう

狼男に、烏に、鬼たちに……
本格的な百鬼夜行で凄いなァ
僕の見目は怖くないから脅かせないケド
もふと九堕がカワイイのは幸いだ

――さァ、ふたりとも、行っておいで
見物人ともふもふ戯れ序に、菓子でも貰って来ると良い
そして僕に分けてくれ




 折角の妖怪パレード。思いっきり妖怪になりきって楽しもうと集まったのは四人の男性たち。
「お、やってるやってる」
 にへら、と笑う男性は、まるでオオカミ男みたいな姿をしていた。
 エンジ・カラカ(六月・f06959)。今日は自前のオオカミ耳と尻尾もぴょっこり出している。
 しゅるしゅる伸びる赤い糸。エンジが賢い君と呼ぶ相棒だって、勿論一緒。
「コレはオオカミの仮装をするする。オオカミ男ー」
「お、皆ホンモノの妖怪みてぇ……いや、エンジはホンモノみたいなモンなのか?」
 どうなんだろうと思案する宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)の方は紛れもない人間だが、エンジと並んでも見劣りしない程に作り込まれた仮装だった。山伏の装束に高下駄を履いて、カラスの面で顔を隠せば――。
「烏天狗に見えっかな? 背中の真っ黒い羽も忘れちゃいねぇぜ」
「……灰の主の場合、化けているのか素なのか解らんな」
「確かにね。ところで鷲生くんの仮装は……?」
「慣れぬものだが、物は試しだ。一目蓮に化けてみた」
 神埜・常盤(宵色ガイヤルド・f04783)の視線の先、重厚な雰囲気の和装に身を包んだ鷲生・嵯泉(烈志・f05845)が言葉を返す。片目を覆う眼帯は常のものだが、よくよく見れば頬や頸に薄く鱗を纏わせている。
「確か、東洋の竜神の名前だったね」
「それも片目の潰れた、な。私に丁度いい」
 自嘲というには静かな声音だった。常盤もそれ以上の言及は避け、似合っているよと穏やかに微笑んだ。
「宵の探偵の仮装は判るぞ。九尾狐だろう?」
「うん。人を化かせそうな雰囲気出ているかな?」
 嬉しそうに髪と同じ琥珀色の耳と九尾を揺らす常盤は、壮麗な漢服に身を包んでいる。霊力の高い九尾狐らしく、二匹の共を侍らせていた。管狐の九堕に、毛羽毛現のようにも見える毛むくじゃらは、主人の意思によって姿を変える綿毛のような不思議なペット、通称「もふ」。
「イイねェ、雰囲気出てる」
「うんうん、ミンナの仮装も様になっているなァ」
「灰の主のように『本物』が交じればこそ、百鬼夜行の醍醐味だろうよ」
 それに、と嵯泉が思案する。その方が我らの仮装も信憑性が増すのではないか、と。
「百鬼夜行って妖怪のお祭りなンだっけ? オオカミは妖怪じゃ無いケド大丈夫だよネ」
「西洋の怪奇もここじゃ等しく妖怪と呼ばれているみたいだからなァ」
 人狼も似たようなモンだろうよと十雉が笑った。
「さて、それじゃみんなで一緒にパレェドと洒落こもうか」
 常盤の言葉に合わせるように、九堕が無数の焔を放つ。人魂めかして宙を漂わせれば、ヒュウと十雉が口笛を吹いた。
「本格的ィ」
「何事もやるなら徹底的に、なんてね」
 飄々と笑って歩き出す常盤に、三人も続いていく。
「おー、あれが本隊かァ」
 オオカミ耳をぴょこんと揺らし、エンジが見遣る先には無数の妖怪たち。
 やたら大きいのに小さいの。膚が赤いの金ピカの。舌がやたら長いのに、大きな翼を持っているの。いろんな妖怪たちがひしめきあって、がやがや列をなして歩いている。
「へェ、見事なもんだ」
「最後尾が見えないンだけど、どこに続けばいいんだろう」
「適当に合流して良いみたいだな」
 嵯泉が指差した先では、途中からやってきたらしい三人組が列の妖怪にひとことふたこと聲をかけて列に入れて貰っているところだった。よく見ればあちこちで合流が発生していて、列が乱れたり止まったりもしているが、特に誰も気にする様子もなくパレードを続けている。
「自由だねェ」
「オレらも続くかァ」
 わいのわいのと盛り上がって列に入るエンジや常盤に十雉、ついでに九堕ともふの後を、嵯泉はつかず離れず、けれど列の中でも決してはぐれないようについていく。
「それにしても、色んなヤツがいるなァ」
 やたら冷気が漂って来ると思ったら、白い和装のいかにもな雪女がいたり。
 只の人間に動物の耳がついているだけのやつは、ひょっとしたら妖怪に化けている猟兵かもしれないし、本当に人間に近い見た目の妖怪なのかもしれない。
「アレは本物の妖怪? コッチはニセモノ?」
「僕たちだって本物と思われているかも」
 こんなにうまく化けているんだからねェ、と常盤。
「じゃーもっと本格的にしよ。オオカミ男は狂暴で、それから吠えるンだ」
 うんうん、と頷いて、エンジはすっかりいたずらっこの顔。
 隣の二人組はもちろん、一歩後を往く嵯泉にもちょいちょいと手招きして、皆にこっそり耳打ちする。
「へぇ、面白そうじゃん」
「エンジ君らしいねェ」
「そうと決まれば、俺が一番乗り」
 たたた、と小走りで駆けて行ったエンジが狙いを定めたのは、一本足の大きな妖怪。背後からそうっと忍び寄って――。
「ワッ!!」
「わあっ!」
 突然ばあっと両手を上げて驚かせるエンジ。賢い君も賢いから、蛇みたいにぐねぐね動いて不気味さに一役買っている。バランスの悪い一本足で尻もちをつきそうになった妖怪が、すんでのところで踏みとどまった。
「あはは、驚いた? 驚いた?」
「……ものすごく驚いた」
 妖怪はドキドキする胸を抑えていたけれど、すぐに笑顔になる。
「あんたこの辺の妖怪じゃないだろ? なかなか驚かせるのがうまいじゃないか」
 面白かったからこれやるよ、とエンジの手にあやかしメダル型のチョコを握らせてくれた。
「やっぱり、妖怪はビックリさせると喜ぶンだ」
 人間を驚かせるのが本来の『生業』のようなものだ。現世を離れた今でもその本性が根付いているのだろう。
「やるじゃん、エンジ」
「ミンナもやってみるとイイヨ。何かもらえるカモしれないし」
「んじゃあオレも」
 すでにエンジのおかげで妖怪たちの注目は集まっている。大道芸人気分で装束の懐から千代紙を取り出した烏天狗こと十雉が、器用にそれを折っていけば、あっという間に赤鬼と青鬼の完成だ。これだけでもちょっとした歓声が辺りから上がったものだけれど。
「驚くのはまだ早いぜ、皆様方」
 それを鮮やかな手つきで宙に放り投げると、みるみるうちに千代紙の鬼が本物になったではないか。恐ろしい形相の鬼がどすんと地面に降り立って、棍棒を掲げて吼えた。
「わー、すごい!」
「あんな術が使えたら、人間なんてみんな腰を抜かしちまうよ!」
 わっと湧くギャラリーにすっかり気をよくした十雉が、ぱちりとウインクして微笑んだ。
「へへ、おひねりは甘いモンでいいよ」
 冗談めかして両手を差し出してみれば、その上に収まりきらないほどのお菓子が殺到する。
「うーん、本格的な芸のあとに続くのは気が引けるねェ。僕の見目は怖くないし」
 あのあとでは人魂を揺らしたところでたかが知れている。けれど常盤にだって秘策がある。
「――さァ、ふたりとも、行っておいで」
 集まってきた妖怪たちの間を、九堕ともふが駆け回る。
「なあに、この妖怪。はじめて見た」
「わ、もふもふしてる。かわいい!」
 愛くるしい管狐と綿毛の二体は、若い女性妖怪を中心にすっかり人気の的だ。
「お菓子食べる? おせんべいとキャンディどっちが好き?」
「わ、この子達全然逃げないね。ふわふわで気持ちいい」
 もふもふ戯れて序にお菓子をたんまり貰って来るカワイイ二人組に、常盤はちゃあんと言いつけてあるのだ。
 ――貰ってきたお菓子、僕にも分けてね、と。
 そんな三者三様の様子を、嵯泉はやはりつかず離れず眺めていたけれど。
 がおーっ! とますます精度の上がった脅かし方のエンジに妖怪がとうとうヒェッと叫んで尻もちをついたのを見て、ほんの少しだけ咽喉奥で笑って見せた。
「――では、こんな手はどうだ」
ぴん、と黒符を弾き飛ばす。嵯泉の静かな言葉を聞き漏らした妖怪たちも、黒符が焔へ転じ、更に単眼の烏へと姿を変えた頃には、すっかり目が釘付けになっていた。
「何だあれ、カッコいい」
烏は一声鳴いて飛び立ち、悠然と空を舞っては再び焔へと変じて燃え尽きる。わあ、とどよめきが起きた。
「嵯泉、ひょっとしてなかなか張り切ってる?」
「術としては初歩のものだ」
 だが目を惹くには丁度いいと、あくまでいつも通りに云うのだった。
「いやー、結構気合い入ってるっショ」
「うんうん」
「……陽煌、お前も行ってはどうだ」
 茶化すオオカミと九尾狐を華麗にスルーしつつ、金の仔竜をけしかける。
「竜の眷属らしく、「宝」を集めてくるといい」
 忠実な陽煌はひと聲鳴いて、主人の芸の成果をばっちり回収しに周っていた。

 ――四人と二匹の元に集まったのは楽しい思い出と、食べきれないほどのお菓子。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

パウル・ブラフマン
【エイリアンツアーズ】
▼浴衣
2019年度浴衣コンテストの物を着用
※真の姿はまだ内緒の為

▼合流
無事にフェスが開催できて良かったぁ。
クルーの皆と待合せの時間まで
屋台を観て周っておこっかな☆

合流したらあつあつタコ焼きを差し入れ!
さっきタコ入道さんの屋台の呼び込みを手伝ったら貰ったんだ~♪
ジャスパーへのお土産は
光る玩具屋台で買った『火の玉スピナー(ヨーヨー)』。
えへへっ、歓んでくれるかな?

▼百鬼夜行
スゲー面白そう!
オレらも折角だし、パレードに参加しちゃう?
よぅっし…じゃあオレは妖怪タコ野郎ね!
『えいつあ一座』、いっきまーす♪
光るスピナーでループ技を決めながら
【パフォーマンス】力全開で練り歩いちゃうゾ☆


蓮条・凪紗
【エイリアンツアーズ】
浴衣姿で
カクリヨのお祭りに興味津々
この世界にもお社あるんやなぁ、と其方にそっと手を合わせ
今度ゆっくりお参りします、言うて

綿飴の誘惑に途中敗北しながら合流
皆、浴衣お似合いやなぁ?
たこ焼きは遠慮無く頬張りつつ、綿飴も手で千切ってお裾分け
パウルの手にした玩具には目を見張り
何それ格好良い…男の子の好きな奴やん
お土産は飴細工屋さんでタコの形に作って貰った飴を
勿体無くて食べられへん図が浮かぶわ(くく)

百鬼夜行はただ歩くんも面白ぅないな
式神顕現『力(パワー)』
ライオン喚び出してその背に乗ってついていこ
おや、おおきになファルシェ♪
(彼に嬉しそうにすりすりするライオン君の頭撫でて)


ファルシェ・ユヴェール
【エイリアンツアーズ】

浴衣着用

■合流
待ち合わせはこの辺りでしょうか……おや
彼方に見えるのは八雲さん
…屋台には近付かず終わってからお声掛けしましょう(目を逸らす重度ノーコン)

先行したパウルさんに怪我が無いのを確認すれば笑って手を振り

パウルさん、お疲れ様でした
恙無く終わったようで何よりです

たこ焼きは有難く受け取りつつ
彼の手にある光に目を輝かせ
なんと不思議な
これは玩具なのですか
きっと喜んで下さる事でしょう

私は此方を土産にと
かなり詰まった鈴かすてらの紙袋を

■パレード
凪紗さんの獅子に
折角ですから、と手持ちの宝石で飾り立て
自身は演出として宝石の小鳥を造る
鬼灯ランプをひとつ咥えさせ
周囲を飛ばしておきましょう


出雲・八雲
【エイリアンツアーズ】
浴衣で参加


合流するまでにちィと射的っつーのやってみたかったンだよなァ
とてもじゃねェが見せれるもンじゃねェンでこっそりとな

後は連れてきた朝陽と一緒に出店の甘味をぶらりと堪能しつつ
ジャスパーにはアマビエの形をした人形焼きとさっき貰った吹き戻しを土産にするか

皆で食べる用に買った人形焼きの大袋から少し摘み食いしながら合流
よォ、パウルはお疲れさンだったなァ

皆からお裾分けが貰えるンなら口開けて待機
(貰ったら静かにもぐもぐしている)

……はァ?パレードだァ??
あー……。一緒に歩く程度なら…まァ…良いか
【餓者髑髏】に乗り、とりあえず一緒に練り歩く
(芸は覚えてないのであしからず)




 スペースシップワールドに存在する旅行会社の面々が、この世界で合流するよりも少し前のこと。
「無事にフェスが開催できて良かったぁ」
 屋台を見て回るパウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)が身に付けているのは迷彩柄のRockな浴衣。今年も新しい浴衣を仕立てて貰ったパウルだけれど、「あの姿」はまだ内緒にしたいから。
 待ち合わせまではまだ時間がある。折角なら何かお土産を……と辺りをきょろきょろするパウルは、思わぬ「同種」と巡り合う。
 パウルが持つ触手の元となった生物。大きなタコの妖怪が、たくさんの「手」を駆使してせっせとタコ焼きを焼いていた。
「タコ入道さんかな」
 これは聲をかけずにはいられなかった。

(「この世界にもお社あるんやなぁ」)
 そちらの方角へ、そっと手を合わせているのは羅刹の蓮条・凪紗(魂喰の翡翠・f12887)。何かと現代的な印象の彼だが、小さいながらに代々続いているある神社の跡継ぎなのだ。術士として研鑽を重ねた結果、他世界の神や思想に触れ、その力を揮う事はある。それでも元の精神は凪紗の中に確りと根付いている。
「今度ゆっくりお参りします」
 今日は約束があるんでと軽く頭を下げて、浴衣姿の凪紗は踵を返す。そのまま真っ直ぐに皆と合流するつもりだったのだが。
「……綿飴くらいなら買ってってええかなぁ。腹にも溜まらんし」
 鼻腔をくすぐる甘い馨に、ついつい敗北してしまった。

 耳をぴんとそばだて、辺りを見回しているのは白い浴衣の狐キマイラ、出雲・八雲(白狐・f21561)。
「……まだ誰も来てねェな?」
 落胆ではない。確認だ。このために少し早く会場を訪れていたのだ。
「ちィと射撃っつーのをやってみたかったンだよなァ」
 とてもじゃないが、見せられる腕前ではない。だからこっそり一人だけで挑戦したかったのだ。
「あの箱菓子狙ってみっかァ」
 真剣な眼差しで狙いを定め、射的銃の引き金を引く八雲だが。
「あだぁッ!?」
 発射されたコルク玉は、何故か妖怪店主の頭にヒット。
「あァ、悪ィ」
「何でこっちに飛んでくるんだ!?」
「何でだろうなァ……」
 真面目に狙ったんだけどなァと頭を掻く。

「おや、あれは八雲さんでしょうか」
 一方その頃、黒い浴衣のダンピール、ファルシェ・ユヴェール(宝石商・f21045)は同僚の姿に気づきはしたのだけれども、彼が射的をしているのを見てそっと目を逸らす。
「……少し早いですが、待ち合わせ場所に向かっておきましょう」
 万一見付かって、一緒にやろうと声をかけられてしまったら申し訳ない。こう見えて重度のノーコンの自覚があるファルシェなのだった。すぐさま踵を返したファルシェだが、もし少しでも八雲の様子を見続けていたら、今以上の冷や汗をかくことになっただろう。――他人事とは想えない、と。


「おっ、ファルシェさん早~い!」
 そんなこんなで真っ先に待ち合わせ場所についていたファルシェに、パウルが大きく手を振った。
「パウルさん、お疲れさまでした。恙無く終わったようで何よりです」
 オブリビオン退治もこなしてきたのだというパウルに怪我がないのを確認し、ファルシェもほっと笑みを零す。
「パウルもお疲れさンだったなァ」
「皆早いなぁ。それにしても浴衣お似合いやなぁ?」
 ほどなくして八雲と凪紗もやってきて、無事に合流を果たす。
「凪紗さんもとてもお似合いですよ」
 ファルシェの目線が八雲の手元に落ちる。人形焼きの大袋を手にしていたのだ。ついでに少し摘まみ食いもしていた。
(「先ほどの景品でしょうか。八雲さんは腕が立つのですね」)
 実は売店で買ってきたものなのだが、惨状を眼にしていないファルシェの誤解が解けることはなかった。
「いるかァ?」
「良いのですか?」
「そんつもりだったしなァ。ジャスパーへの土産も、ほら」
 アマビエの形をした小分けの人形焼きと、何とかゲットした吹き戻しを見せて。
「ええやん、疫病退散。オレの綿飴もどーぞ」
 手で千切って綿飴を配る凪紗。
「オレも勿論おすそ分けあるよ。じゃーん!」
 パウルがビニール袋から取り出したのは、まだあつあつのタコ焼き。
「さっき呼び込みを手伝ったら貰ったんだ~♪」
 タコが宣伝してタコが焼くタコ焼きやさんはなかなか盛況だったようだ。
「んー、んまい」
 早速頬張ってご機嫌の凪紗の横で、八雲も無言でおすそ分けにあやかっていた。
「それとね、ジャスパーへのお土産も!」
 じゃじゃんと掲げたのは光る玩具屋台で買ったヨーヨー、その名も『火の玉スピナー』!
「なんと不思議な。これは玩具なのですか」
 人魂のように青白く光るそれに、ファルシェが目を丸くする。
「何それ格好いい……男の子の好きな奴やん」
「えへへっ、歓んでくれるかな?」
「ジャスパーはんの好みには違いあらへんけど」
「そもそもパウルの土産で歓ばれない方が難しそうだなァ」
「そうそう、それや」
「ええ。きっと喜んで下さる事でしょう」
 頷くファルシェも、私は此方を土産にと、ぎっしり詰まった鈴かすてらの紙袋を見せる。
「皆様の分もありますよ」
 綿飴を食べきった八雲がさっそくぴくっと反応し、口を開けて待機していた。
「オレもジャスパーはんに、これ買うてきたんよ」
 と凪紗が取り出したのは、飴細工屋さんで作って貰ったタコ型の飴。
「うわー、スゲーかわいいね!」
「勿体無くて食べられへん図が目に浮かぶわ」
 くくく、と悪戯笑みの凪紗なのだった。

「あ、見て見て、パレード始まってるみたい!」
 パウルが指差した先、早速妖怪たちが列を成して練り歩いている。
「……はァ? パレードだァ??」
 すっかり縁日グルメを満喫していた八雲が目を顰める。そういえばそんな催しがあるとも聞いたような。
「あー……一緒に歩く程度なら、まァ良いか」
「ただ歩くんも面白ぅないな」
 凪紗が取り出したのは『力』のタロット。描かれたライオンを具現化し、その背に騎乗する。
「よし、ほんなら行こ……」
「あ、少し待ってもらえますか」
 折角ですから、とライオンの元に歩み寄ったファルシェが、その首に大きな宝石の首飾りをかける。数多の宝石を連ねた、人間ならば迫力敗けしてしまいそうなデザインだが、獅子の立派な体躯と鬣にはよく似合っていた。
「おや、おおきになファルシェ♪」
「恐縮です」
 微笑むファルシェに、ライオンも嬉しそうにすりすりと頬を寄せる。
「見た目は勇猛ですが、とても心優しい方ですね」
「せやろ」
 式神が褒められれば悪い気はしない。ライオン君の頭を撫でてやりながら、凪紗も笑った。
 そんなファルシェ自身は、貴石から魔法仕掛けの小鳥を造りあげる。手にした鬼灯ランプをひとつ咥えさせ、周囲を飛んでもらうのだ。
「俺は……ここは大将に頼むかァ」
 八雲もまた、巨大な餓者髑髏を召喚し、騎乗する。
「ワオ、八雲さんの髑髏さんもマジイカしてるね!」
「云っとくけど、芸とかは出来ねェぞ」
 ぶっきらぼうに云う八雲だが、巨大な髑髏が軋むような音とともに辺りを闊歩しているのは、妖怪パレードの中でも人目を惹くものだった。
「芸が必要なら、この妖怪タコ野郎にお任せ! な~んてね」
 パウルがお土産とは別に買ってきた火の玉スピナーを開封する。
「『えいつあ一座』、いっきまーす♪」
 流れるようなループ・ザ・ループ。からの各種トリックに、ファルシェたちや他の妖怪も目を奪われる。
「器用やなぁ」
 いつの間にかヨーヨーが二つに増えていて、トリックは複雑さを増す。と思えば、
「……あれ、もっと増えとる?」
「光が四つになってますね」
 触手二本もプラスして、人間では不可能なパフォーマンスをキメるパウル。自称通り『タコ野郎』の本領発揮だ。
「引っ絡まりそうだなァ」
 四つの糸と光を器用に操るパウルに、八雲も舌を巻いた。


「ん~、楽しかった~!」
「ええ。とても充実したひと時でした」
「帰る前に屋台一巡りしとくかァ」
「確かに歩いたらまた小腹減ってきた気もするなぁ」
 少し遅めの夏祭りのような。少し早めのハロウィンのような。
 そんな楽しいひと時は、帰ってからも各人の心の中と、そしてエイツアの社員旅行ファイルにばっちり収められていたという。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ネーヴェ・ノアイユ
せっかくですしと雪女様と呼ばれる方のような服装をしてお祭りへと参加致しますね。
百鬼夜行パレードまでは時間もありますし……。かき氷を片手に様々なお店を見て歩きたいですね……!

お面に焼きトウモロコシ……。あ、わたあめの屋台も気になりますね……。そしてあれは……。型抜き……。ですか……?いったいどのようなお店なのか気になりますので……。行ってみましょう……!
むむ……。これは綺麗に型抜きをしようと思うと予想以上に難しいですね……。ですが成功してみたいので……。何度も再挑戦しながら完璧な型抜きを目指してみようと思います……!

百鬼夜行パレードには型抜きが成功した際にこっそり混ざらせていただけたらと……!




 いつものリボンはそのままに、雪の結晶の模様をあしらった白い着物に袖を通す。
 ついでにほんの少しだけ氷の魔力を使って、自身の周りにきらきらと氷を纏わせてみる。近づいただけでひんやり冷気を感じるようにしてみれば、ネーヴェ・ノアイユ(冷たい魔法使い・f28873)の仮装も完成だ。
「これで……雪女様に見えるでしょうか……?」
 せっかくですしと妖怪に扮してみたネーヴェの手にはかき氷。ブルーハワイだなんて南国を思わせる名前の鮮やかな青だって、今のネーヴェの手の中では冷たく冴え渡る色彩に見える。
「百鬼夜行パレードまでは時間もありますし……。様々なお店を見て歩きたいですね……!」
 氷の魔法使いだって、ひとたび戦場を離れてみれば楽しいことも美味しいものも大好きな十三歳の女の子。それに妖怪たちが折角開催してくれたお祭りなのだから、思い切り楽しまないと失礼というものだ。
「お面に焼きトウモロコシ……。あ、わたあめの屋台も気になりますね……お腹を満たすのを先にしましょうか、それともお土産や遊戯から参りましょうか……」
 たっぷり時間はあるといっても、こう目移りばかりしていては周りきれない。
「目を惹かれるものばかりで困ってしまいますね……。ん、あれは……」
 そんなネーヴェが足を止めたのは、「型抜き」と書かれたこじんまりとした屋台。
「おや、いらっしゃい」
「ここは、いったいどのようなお店なのでしょうか……?」
 店主の説明を聞いたネーヴェは、軽い気持ちでやってみる事にしたのだけれど。
「むむ……。これは綺麗に型抜きをしようと思うと予想以上に難しいですね……」
 割れないようにと安全に進めすぎると、余計な端っこがちょっぴり残ったりしてしまう。画鋲を手に唸るネーヴェに、店主は「それなりに形通りになっていれば成功として景品をあげるよ」とは云ってくれたけれど。
「いえ、折角なので……完璧な型抜きを目指してみようと思います……!」
 少女らしい懸命さと負けず嫌いで、何度も何度も挑戦するネーヴェの姿があったという。


「アリスラビリンスにも不思議な見た目の方々がいらっしゃいますが……こちらの妖怪様はまた雰囲気が違いますね……」
 傘に脚の生えたもの。布のようにぺらぺらのもの。多種多様な妖怪たちを興味深そうに見遣りながら、大きなリボンの雪女もこっそりパレードに参加していた。
 その手には、型抜き屋で景品として貰った小さな雪だるまのマスコットがあったという。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月06日


挿絵イラスト