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みんなー! 修行しよー!

#グリードオーシャン

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#グリードオーシャン


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●X月XX日 カラム島 沿岸部
 波が打ち寄せ、崖に叩き付けられる。
 滝が流れ落ち、川に流れ込む。
 鬱蒼とした森が茂り、極彩色の鳥がその中を羽ばたいていく。
 その「カラム島」には、普段人間の息遣いは聞こえなかった。
 代わりにあるのは、厳しい自然の中で生き残る屈強な動植物の声だ。
 しかし、それは同時に、外敵から身を護る術をこの島は持たないということを意味する。
 飛沫に紛れ、水底より。煌びやかな牙を鈍く光らすものが、近付いていた。

●X月XX日 グリモアベース
「みんなー! 修行しよー!」
 グリモアベースにて、そんな明るく楽しげな声が響いた。
 声の主は猟兵の白神杏華。いつになくテンションが高めである。
「修行ってロマンがあるよね……強い相手を思い浮かべながら訓練したり、なんか滝に打たれたり、なんか新しい技を編み出したりさ」
 そう語る彼女の言葉に心なしか熱がこもる。
 本来、修業とは相応の時間がかかる地味なものだが、杏華は気にしていないようだ。
「そこでね! 修行にもってこいな島があるんだよ!」
 もはやそこにいる猟兵たちが修行することが確定事項であるかのように、杏華は続ける。
「場所はグリードオーシャン。島は無人で、周囲の島の人からはカラム島と呼ばれてるよ」
 その島はA&Wより流れ着いた島であるらしく、厳しい自然環境が広がっている。
 非常に急な山であったり、そこから流れ落ちる滝であったり。
 それらを用いて体力をつけたり、精神を鍛えたりといった様々な修行ができるだろう。
 その上、カラム島はどうやら周囲の島の者からも修行のための島と考えられているらしく、外から持ち込まれたトレーニング用の施設も島の入り口に完備されているようだ。

「で……だいたい皆の修行が終わったくらいのタイミングで、この島にコンキスタドール……つまり、オブリビオンが攻めてくるよ」
 コンキスタドールの軍勢は無軌道で、さしたる目的もなく島を破壊しようとする。
 そこで、猟兵の出番だ。修行で得た成果を存分に活かし、敵を撃破するのだ。
「という具合に、修行と実践がセットでできるんだよ。もちろんオブリビオンを倒して、島を守るのも忘れちゃいけない大事なことだけど。
 これを機に、新しい必殺技を身に着けてみたり、新しい武器とか使ってみたりしたらいいかもね!」
 とはいえ、その後にオブリビオンと戦うことも忘れてはいけない。
 心身を壊すほどの過酷な修行に打ち込んだり、新しい必殺技に固執して戦闘で失敗したりしないように注意が必要だろう。
「それじゃ、私は近くの島まで皆を送るから。修行も戦闘も頑張ってね!」
 高いテンションのままで、杏華はグリモアを起動した。


玄野久三郎
 玄野久三郎です。オープニングをご覧いただきありがとうございます。
 今回のシナリオでは、皆さんに修行をしていただきます。
 新しい必殺技を開発してみたり、誰かと一緒に修行してみてはいかがでしょうか。

 第一章では、カラム島の厳しい自然の中で修行に励んでいただきます。
 その後にオブリビオンとの戦いが控えていて危険ですので、ケガを負うレベルの組手などは厳禁です。
 ちなみに修行激押ししておいてですが、グリモア猟兵の白神・杏華は現場には現れませんのでご注意ください。

 第二章・第三章では攻め寄せるオブリビオンと戦っていただきます。
 修行の成果を発揮するようなプレイングだとボーナスが入ったりするかもしれません。

 プレイング受付開始は断章公開からシステム的に受付停止になるまでとなります。ただしド深夜の送信はできればお控えください。寝てるからね。
 それでは、皆さんの熱いプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『強化合宿』

POW   :    体力を鍛錬する

SPD   :    気力を鍛錬する

WIZ   :    超必殺技を編み出す

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●X月XX日 カラム島 港
 船から島に一歩降りると、猟兵たちをまず出迎えたのは大きな木造の建物だった。
 中にはダンベルなどの電気を使わない筋力トレーニング設備、水などが置かれている。
 建物を抜けて奥に進むと、視界一面にジャングルが広がった。
 歓迎的なのかそうでないのか、猟兵が通ると木々の間を鳥が飛び抜けていく。
 ジャングルに看板や地図はなく、突っ切っていけばやがて山や川、大岩などの修行に使えそうなものが目に入るだろう。
 修行するにせよしないにせよ、しばらくは時間を潰す必要があるだろう。
 コンキスタドールは、まだ島に現れないのだから。
シル・ウィンディア
アリスラビリンスの戦争でつかった
ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラスト…

魔力溜めと限界突破しないとまともに使えなかったから
それを何とか解決しないとね

欠点は…
1.詠唱時間の長さ
2.限界突破しているから、継戦能力の低さ

だね

1は攻撃・回避・防御時も詠唱を途切れさせないということができたけど
問題は、2か…
威力落としても、継戦能力あげないとなかなか使いにくいよねぇ…

よし、ここは…

走ったり【空中戦】で飛び回りながら詠唱を開始
武器を素振りしたり、ジグザグに動きながらも詠唱は途切れさせずに…

【多重詠唱】で同じUCを時間差で詠唱

目標物は大岩

【二回攻撃】でのUCの二連射だよっ!

…ふぅ、少しは実戦寄りにできたかな?



●X月XX日 カラム島北西部 『悟りの大岩』前
 ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラスト。
 それは先のアリスラビリンスでの戦争において、多くの戦場をシル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)と共に駆けた彼女の切り札だ。
 それは火、水、風、土、光、闇。六つの元素を全て使い、それらを調和させ、かつそれらを衝突させ、魔力の砲撃とする大魔法。
 彼女の力を持ってしても、それを制御するのは容易くはなかった。
 常人であれば、一度に扱うことができる魔力の属性はせいぜいが一つ。
 それを六つ同時に行使するだけでなく、相反する火と水、光と闇がさらに難易度を高める。
 その大技を使うにあたって、彼女は現在二つの課題を見つけていた。

(一つは詠唱時間の長さ。これはまだ、戦いながら途切れさせなければ何とかなるけど)
 六つの魔力を紡ぐには、相応に纏まった魔力を捻出する必要がある。
 それはそう簡単に用意できるようなものではなく、十全な詠唱が必須だ。
 一つ手元が狂えば命を失う戦場において、武器を振るいながらそんな詠唱を重ねる。
 至難の業ではあるが、十分な集中力と、身体の隅々に刻まれた戦闘経験を持ってすれば可能ではあった。
 事実、シルは多くの戦場において、足を止めることなく幾度もこの必殺技を放っている。

(問題は二つめ……限界突破しないとまともに使えないこと)
 ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラストを放つためには、己の限界を超えねばならない。
 この後の戦闘。撤退。防御。そういったものを捨て、ようやく魔力が満ち足りる。
「……でも、それじゃ使いにくいよねぇ……」
 戦争においては、一つの戦場につき一度の戦闘だけが行われる。
 戦闘が終われば帰還し、体制を立て直すことができる。
 その点、彼女の技は戦争とは非常に相性が良い。だが、その他の戦いではどうか?
 撤退する余裕のない戦い、連戦。そういったシチュエーションにおいて、限界突破が必須となる大技は実に使いづらい代物と言えるのだ。
「よし、ここは……省エネに挑戦してみよう!」

 シルは剣を振るう。光が形を成した剣は僅かな軌跡を残しながら、空中を走る。
「闇夜を照らす炎よ、命育む水よ……!」
 それは素振りではあるが、十分な力の込められた素振りだ。敵に当たれば肉を切り裂き、武器を弾くであろう。
「悠久を舞う風よ、母なる大地よ」
 彼女は地面を蹴り、空中へと逃げた。
 想像上の敵であれ、反撃の一つもしてこない敵などいない。攻撃だけでなく、防御のシミュレーションも欠かせない。
 同時に、彼女の詠唱は周囲に響く。山彦のように、遅れてもう一つの詠唱が聞こえていた。
「暁と宵を告げる光と闇よ……!」
 そして、シルの右手に光が宿る。光は六色の色を纏い、六芒星を描き。
「六芒に集いて、全てを撃ち抜きし力となれ」
 ――莫大な魔力が束となって、森に鎮座する大岩に叩きつけられる!
 虹の暴威が暴れる中、再び、彼女の左手に光が宿った。象られるのは先程と同じ六芒星。
「六芒に、集いて……! 全てを撃ち抜きし力となれっ!」
 もう一つ、虹が迸る。
 それら二つの魔力は、やがて巨大な岩を打ち砕き、千千の石や砂へと変えた。
 多大な魔力を吐き出し、シルはその場に座り込む。だが、体はまだ動いた。
「ふぅ……少しは実戦寄りにできたかな?」
 今の威力ならば、幹部級のオブリビオンを撃破するには届かなくとも、集団で現れる敵をなぎ払うことは簡単だろう。
 シルはそのまま、仰向けに地面に倒れこんむ。
 疲労と充足感。それに、どこかから流れる水の音が彼女の全身を包んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天沢・トキ
にゃにゃにゃ!
はーい修行するするー!!
トキはもっと強くなって立派な化け猫忍者になるの!
だからね、えへへ、師匠にお願いして特訓メニューを作ってもらいましたっ
(満面の笑みで達筆な巻物をばーんと広げ)

岩を背負ってぴょんぴょん飛ぶ?
それとも滝にうたれて瞑想がいいかな?
あ、苦無や手裏剣の練習も必要だよね!
どんな修行でもトキやる気満々だよー!(尻尾超スピードでしたーんしたーん)
えっとなになにー……

お前は落ち着きと術への理解と知能が足りないので
正座してこの巻物をひゃくまんべん書き取りしなさい
by師匠

にゃ
にゃんですって…!!!?

(広がる大自然)
(端っこに正座して無我の境地で筆を動かす少女がひとり)



●X月XX日 カラム島中央部 『迷いの大森』
 鳥の鳴き声、滝の水音。
 その中に混じるりんと鳴る鈴の音は、その島にはないものだ。
 天沢・トキ(にゃんこ忍者バケラー・f29119)は尻尾を時折上下に揺らしながら、楽しげに大自然の中を歩いた。
「にゃにゃ、にゃんでもあるにゃ……!」
 大きく開いたトキの目が光り輝く。彼女にとって、こうした大自然は遊び道具のようなものだ。
 また、彼女は今はまだ未熟ではあるが、忍者の修行中。
 もっと強くなり、もっと立派な化け猫忍者になるのだ。
 この修行の地は、きっとトキのそんな欲求に答えてくれるに違いない。

「あっちに滝……! あっ、でっかい崖も……!」
 滝に打たれる修行は色々とお約束だ。よくわからないが瞑想で精神が鍛えられるらしい。
 それに冷たくて気持ちよさそうでもある――それは置いておいて。
「いやいや、岩をもってぴょんぴょん飛ぶのもアリかも……?」
 この島には急な山道や崖が多数あるのだ。重たい岩を背負い、そこを跳んでいくのも足腰を鍛えられそうだ。
 それにアスレチック的で楽しそうな――それは置いておいて。
「ハッ! 忍者たるもの、やっぱり苦無や手裏剣かな……!?」
 しゃきーん、とトキは苦無を取り出した。
 この辺りにはちょうどいい的もあるし、島の入り口に戻れば器具もある。
「何からやろっかなー! どんな修行でもトキ、やる気満々だよー!」

 とはいえ、さすがに実践する修行は一つに絞らなければならない。
 ここで何泊もするわけではない。結局はオブリビオンを撃退したら帰るのだ。
 トキは悩みに悩む。尻尾がぶんぶんと空を切り――ふと思い出す。
「あ! 師匠からもらった修行の巻物!」
 そう言ってトキが取り出したのは古めかしい巻物だった。封を切り、広げる。
 そこには筆で、流れるような達筆な文字が書かれている。彼女の師匠の筆である。
「師匠なら、トキに一番ちょうどいい修行を教えてくれるハズ!」
 なになに、と彼女は岩に腰掛け巻物を読む。猫耳が風に揺れ、鈴が鳴る。
「お前は落ち着きと術への理解と知能が足りないので、正座してこの巻物をひゃくまんべん書き取りしなさい……バイ、師匠……」
 トキは目の前に広がる文章を受け止めきれず、もう一度最初から読み直した。
 しかし現実は変わらない。師匠が課した彼女への課題は、かくも無慈悲なものだった。ていうかシンプルに「知能が足りない」ってひどいと思う。
「にゃ……」
 愕然の思いでピンと立った猫耳と尻尾が、やがてへなへなとしおれていく。
「にゃんですって……!?」

 ――鳥の鳴き声、滝の水音。
 そこに混じるはずだった鈴の音は静かに、ただ地面に座していた。
 トキの目の前には白紙の巻物と、びっしり文字が書き込まれた巻物。
 島に来た時の光はどこへやら、死んだ眼で彼女は筆を動かした。
 硯に溜まった炭を筆に付け、ごそごそと巻物に書き込んでいく。
(……なぜトキは、この大自然の中巻物を書きとっているのでしょう、師匠……)
 そんな思いが脳裏によぎることもあったが、それでも彼女の手が止まることはない。
 いかなることにも動じないとされる無我の境地。忍者に必要な忍耐というもの。
 トキはその一端に触れた……ような気がした。
(でもやっぱりここでやることじゃないと思うにゃあ……)

大成功 🔵​🔵​🔵​

花盛・乙女
【morgen】丈一・八重・ルイスと同行

修行!うむ、良い響きだな!
自ずと気合も入る…行くぞ!羅刹女ブートキャンプへようこそだ!

得物は二本の木刀を用意していく。
役割分担は遠距離攻撃が丈一殿、近距離攻撃が私だ。
遠慮は無用、何しろ私も加減は不得手だからな!
どこからでもかかってくるがいい!

ルイス殿は変幻自在の右腕が武器だな。
であれば右腕の攻撃は小太刀で払い太刀で打つ。
変幻させたとて届かねば無意味、どう崩す!?

八重殿は奇しくも同じ二刀流、花盛の技も盗むといい
涼風のような剣筋ではこの羅刹女には届かん。
一閃一撃に全精力を込めてみろ!

おっと、私ばかりに構っていてもいけないぞ。
我らが団長も甘くはないのだからな!


御桜・八重
【morgen】4名

「ご指導よろしくお願いします!」
小振りの木刀二本を構え、気合い一発。

わたしは体が小さいから一撃が弱い。
今までは気合いと剣速でカバーして来たけど、
ここぞと言う時の強力な技が欲しい。

「ふぎゃっ」
なんて考えてる余裕もない!
乙女さんは手加減抜きで打ち込んでくるし、
丈一さんは隙を突くように木杭を投げてくるし、
二人とも厳しい〜

でも、甘えてはいられない!
隣でルイスさんも頑張ってる。
「もう一回!」

集中。周囲の状況を肌で掴み、
丈一さんの背後からの投擲を躱す。
「!」
閃いた。
躱した体の回転を殺さず、
勢いを乗せた二刀を乙女さんに叩き込む!

ビリビリと来る手応え。
「…掴んだーっ」

新UC【花旋風】完成!


ルイス・グリッド
【morgen】
今日はよろしく頼む、先生方
確かに上手く扱えるようになってから銀腕に頼り切りだったのは否めないな
こっちは自信がないが、やってみようか

俺と御桜が受講側、花盛と一駒が指導役で稽古をする
花盛が二本の木刀による近距離攻撃、一駒が訓練用の木杭を投擲する遠距離攻撃を捌いて避ける

最初は銀腕を刃の無い剣の形態にして木刀を防ぐが、小太刀で流されて太刀で打たれるし、更には木杭が頭に直撃する

銀腕に頼り切りではいけないと分かると腕を元に戻し、腰を落として構え、木刀は峰の部分に触り受け流しながらカウンターを狙う

木杭は目視や影で当たるかどうかを判断しながら避けて、間合いを詰めて接近戦を挑む


一駒・丈一
【morgen】

乙女と俺が指導役で、八重とルイスが受講側で稽古といこう。

乙女の後方から、彼女を支援するような立ち回りで訓練用の木杭を八重やルイスに【投擲】する。
剣戟だけでなく投擲物への対処も平行して行う必要がある故、応用力もつくだろう。

あえて、当人たちを当てに行く投擲と、ギリギリで当たらない投擲を織り交ぜる。
「戦の場では己の対処範囲が限定される。
 対処要のものと、対処不要なものを見切るのが重要だ」

「相手との間合いを詰めるのであれば、相手の攻撃軌道を読む冷静さ、そして前へ出る気迫も必要だ」

見事に此方の攻撃を掻い潜り間合いを詰め一本を取られたならば
「お見事だ。今の立ち回りを実戦でも忘れぬようにな」



●X月XX日 カラム島中央部 『導きの平野』
 花盛・乙女(羅刹女・f00399)は地面を軽く踏みしめた。土は程良い柔らかさで、表面には背が低く、尖っていない草が茂っている。
「うむ、ここなら良いな……では改めて、羅刹女ブートキャンプへようこそだ!」
 どん、と木刀が地面を突く。大小二つの木刀は、より実践的な形を表していた。

「ご指導よろしくお願いします!」
 そう元気に頭を下げたのは御桜・八重(桜巫女・f23090)だ。髪に結った小さな鈴がしゃりん、と鳴る。
 彼女が手にした獲物もまた二刀の木刀であった。しかし、乙女の持つそれより一回り小さい。
 それは純粋に、乙女と八重との体格の差を反映した姿であった。
 大柄な乙女の持つような大小の太刀は、八重が扱うにはやや難しい。
 木刀であれば扱えるだろうが、本来握るのは遥かに重い刀だ。故に、自然と彼女らの武器は選び出される。

「今日はよろしく頼む、先生方」
 鋭い眼光光るルイス・グリッド(彷徨う海賊・f26203)は、今回は八重と同じ受講者側の立場に立った。
 相応の経験は積んできたが、それは傭兵としての戦いであり猟兵としてではない。
 それに……と、彼は右手に目線をやった。そこにあるのは銀色に光る義手だ。
(これを上手く扱えるようになってからは、少し頼りすぎだったからな)
 彼の持つ特殊な武装、銀腕。流動的な金属で構成されたそれは広い応用力を持ち、かつ攻撃力も高い。
 確かに有効な武装ではあるのだが、しかし、何事も手札は多いほうがいい。
 敵はどんどん強くなる。これまでどおりの戦いだけでは対処しきれなくなる時が来るのだ。

「ちなみに指導教官は乙女だけではない。
 俺もビシバシ……いや、グサグサ……ドスドスと指導していく予定だ。視野狭窄にならぬようにな」
「丈一さん、なんか効果音が……」
 八重は苦笑とともに一駒・丈一(金眼の・f01005)を見るが、すぐにその表情は固まった。
 彼が用意してきたのは木の杭だ。そこまで大きいものではないが、先端はしっかりと細く尖っている。
「一駒、それは……」
「訓練用の木の杭だ。木刀みたいなものだと思ってくれ」
「だいぶ違わないですか!?」
「オホン……とにかく!」
 そこに乙女の号が響いた。その場の空気が張り詰める。
「私はこの二本でお前たちを相手する。丈一殿はそれを援護する形で、木の杭の投擲を行う」
 これは模擬の訓練故に命の危険はないが、それが本物の刀と杭であれば大ダメージは避けられない。
 故に、それらからの攻撃を食らうことは最低限でなければならないのだ。
「遠慮は無用、何しろ私も加減は不得手だからな! どこからでもかかってくるがいい!」
 乙女は二人の前で二刀を構える。同時に丈一もまた、二本杭を持ち上げた。

「それじゃあ、こっちから行くぜ」
 先陣を切ったのはルイスであった。右腕の銀腕を刀状に変形させ、乙女に迫る。
 銀腕が振り下ろされる。しかしそれは、乙女の持つ小太刀の正面を滑り受け流された。
「なにっ……!」
「甘いぞ!」
 攻撃のために乗せた身体の動きは止まることなく、そのまま彼は前に一歩踏み出させられた。
 その瞬間、領域に入る。乙女は大太刀を横薙ぎに振るい、ルイスの胸を打った。
「ぐっ……!」
 身体が後ろに飛ばされる。その先に、木の杭が飛んできていた。
 彼は辛うじて銀腕を鞭のように伸ばして変形させ、木の杭を弾き落とす。ふむ、と丈一がそれを見て呟く。
「痛てて……そう簡単じゃないか」
「変幻させたとて届かねば無意味。さぁ、どう崩す?」
「く……」

「わたしもっ……!」
 ルイスに続き、八重もまた木刀を手に乙女に突撃した。
 一合、二合と刀が打ち合わせられる。しかし、その刀の振るわれ方は対称的であった。
 体重を乗せ、体制を崩しながら攻撃を放つ八重に対し、乙女はその場から動いていない。
 このような事になる理由は、八重の刀の振りにあった。
 彼女は体格が小さく、また腕力にも乏しい。そんな彼女が攻撃の威力を高めるには、気合で剣速を上げる他になかったのだ。
 だが、剣速を高めるために力を込めれば込めるほど、その勢いに八重の体は振り回される。
 乙女のように安定した守りの技術ある者相手では、彼女は一方的に消耗していくばかりだ。
「涼風のような剣筋では、この羅刹女には届かん」
 いかに攻撃しても崩れない、鋼鉄の柳の如き乙女の防御に八重は攻めあぐねた。
 そんな一瞬の迷いに、丈一が杭を投擲する。八重はそれを慌てて弾くが、咄嗟のことに対応しきれず姿勢を崩した。
 その崩れに合わせ、乙女が大太刀を振るった。身体が弾かれ、八重は剣を取り落としかける。
「隙あり!」
「ふぎゃっ!?」
 ごん! と、痛烈な音が響き、八重の頭上に木刀が振り下ろされた。

「――戦の場では己の対処範囲が限定される。
 対処要のものと、対処不要なものを見切るのが重要だ」
 木の杭を地面にドスと起き、丈一が語る。二名の生徒はともに肩を切らしていた。
「うう、二人とも厳しい〜……」
「ははは、我々は厳しいがズルはしないぞ。……だが本当の敵は、どんな手でも躊躇なく使う」
 その時に重要になってくるのが、本当の危険を見切ることなのだと丈一は言う。
「俺は実は、二人に対して当たらない杭を何度か投げている。
 ほとんど弾かれたり避けられているが、実は対処は不要なもののほうが多い」
 特に、と丈一はルイスの銀腕を見た。
「ルイスはその腕の可動範囲が広い。その分対処できる範囲も広いわけだ。
 ……そのために、自分に当たらない範囲の杭までも迎撃してしまっている」
「……!」
 ルイスは、その言葉に思い当たる節があった。
 確かに、彼の腕は柔軟性と延長性があり、飛んでくる杭を撃ち落とすのは難しくない。
 そのため、十分に彼の体に近づく前に腕を伸ばして叩き落とし、結果近距離にいる乙女を相手取るための金属を戻すのが間に合わず、殴られるといった場面があったのだ。
「なるほど……そういうことか」
 ルイスはそれを理解し、思考を回した。ならばどう対処する――?

「さて、講義はこの辺りで止めるとしよう。再開だ!」
 丈一がパンパンと手を叩き、再び杭を構えた。ルイスは、そんな彼の手元を睨む。
 杭が投擲される。その瞬間を、確かにルイスはその目で捉えた。
 投擲物とは、とどのつまり直線的に飛ぶ以外の動きはしない。
 それは即ち、運動を加える瞬間――投げる方向さえ見ていれば、どこに飛んでいくかの予想も付くということ。
(この軌道は、ブラフだ)
 ルイスはそのまま、防御も回避もせずに一直線に丈一の元に走った。その横を杭が掠める。
「そうだ。相手との間合いを詰めるのであれば、相手の攻撃軌道を読む冷静さ、そして前へ出る気迫も必要だ」
 ならば、と丈一はさらに二本の杭を両手でルイスめがけて投げつける。
(避けるのは片方だけだ……!)
 ルイスは眼前に迫った杭を、頭を横に倒して回避。そのままさらに走っていく。

「おっと、私を忘れるなよ。そう簡単に射手の元には――!」
 その行く手を、乙女が阻もうと試みた。大太刀が振り下ろされる。
 それを受け止めたのは、ルイスの銀腕であった。形状は元の腕のままで、ガキンと音が鳴る。
 ――次の瞬間、銀腕の表面がぬるりと動き、その腕を捉えていたはずの乙女の刀が滑った。
「な……!?」
「こいつは流体金属。こういう受け流し方もありってことだ」
 乙女の隙を作り出した彼は、さらに丈一の元に加速。それを追おうとする彼女の前に、八重が立ちはだかる。
「わたしも負けてられない……もう一回!」
「よかろう。来るがいい! 一閃一撃に全精力を込めてみろ!」

 八重は攻撃の機会を伺った。堅牢な乙女の守りを崩すには、生半可な攻撃では意味がない。
 そんな折、八重は背後から迫る気配を感じた。丈一の杭である。彼女はそれを、身体を捻って躱す。
「――!」
 瞬間、八重の脳裏にあるビジョンが浮かんだ。
 それは旋風。回転する風に桜の花びらが混じって渦を巻く。回転だ。
 八重は捻った身体の回転の勢いを殺すことなく、むしろその勢いに身を任せ一回転する。
 さらに身体はもう一度回転する。勢いは先程よりも増し、風が舞う。
「これは……!」
「いくよ! 乙女さん!」
 回転する二刀が揃い、乙女に打ち付けられる。バチン、と大きく空気が叩かれ、乙女は思わず後ずさった。
 その技には「重み」があった。これまでの八重のどの攻撃にも感じられなかったものだ。
「……掴んだーっ!」
 その技の名は『花旋風』。身体の回転によって威力を増強させた、八重の新たなる斬撃であった。

 一方、ルイスは勢いを増した丈一による杭の投擲と戦っていた。
 杭による攻撃は隙間なくルイスに降り注ぐ。その中においてもやはり、対処する必要の無い攻撃は入り交じる。
(あそこが……安全地帯か)
 ルイスは杭の嵐の中、ポツンと空白の空間が浮かび上がっているように見えた。
 数多くの攻撃を見切り、見破ってきたからこそできる芸当。彼はそこに潜り込む。
「見つけたか……!」
「行くぞ」
 さらに道を阻む二本の杭を弾き飛ばし――ルイスは丈一の肩に一撃、パンチを加えた!
 二歩下がった丈一は、どこか楽しげな様子で肩を押さえる。
「おっと……! お見事だ。今の立ち回りを実戦でも忘れぬようにな」
「ああ……ありがとう。良い稽古になった」
「私の方からも礼を言わせてくれ。良い修行になった……私自身のためにもな」
「えへへ……でももう、クタクタです……。そろそろ切り上げましょうよー」
 八重はその場に座り込んだ。地面には突き刺さった杭や、飛び散った汗などが散乱する。
「うむ、休息もまた修行の一つだ。そろそろ一息入れるとしよう」
 それぞれに、掴み難いものを掴み。morgenの面々は、島入口の施設に引き返していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

琶咲・真琴
毎日、鍛錬は欠かさずやっているけれど、そろそろ新しい技も使えるようになりたいな
(終始、素の口調

……というわけで、祖父ちゃん
貂毘流古武術の指南をお願いします(UC使用

今までのオレの攻撃レパートリーって近接だと格闘か槍

遠距離はサイキックエナジーを利用したUCなんだよな

ーーーってことで
剣術を習得することに

竹刀を素振りをしたり型を祖父ちゃんから実践形式で教えてもらう


刀は基本両手持ち
でも鞘も持って二刀流できるようにすると防御に使えるっと…

槍や格闘の型と混ざりすぎないように気を付けなきゃ

というか祖父ちゃん?
オレが学習力あるからって修行の難易度高くしてないっ?!
(限界突破など


アドリブ・遊び大歓迎



●X月XX日 カラム島外周部 『果ての断崖』
 カラム島の外周には高い崖がある。時折波が崖を叩き、飛沫を上げた。
「すごい眺めだな……」
 カラム島の自然は厳しく、ここに登ってくるまでにも相当な筋力と持久力が必要になる。
 だが、普段から鍛錬を欠かさない琶咲・真琴(今は幼き力の継承者・f08611)にとって、その道のりはそう難しいものではない。
 こうして呑気に景色を楽しめる程度には、彼の基礎体力は優れていた。
 ゆえに、彼が今回修行するのは基礎的なものではない。
「そろそろ、新しい技も使えるようになりたいな」
 真琴は今まで、槍と格闘術の訓練を積んできていた。
 近距離においては格闘、中距離においては槍、遠距離においてはサイキックエナジーによる攻撃。
 現時点で大きな隙と呼ばれるものはないが、槍以外の武器も扱えるに越したことはない。
「……というわけで、祖父ちゃん。 貂毘流古武術の指南をお願いします」
 彼は草臥れた人形を取り出す。そこから靄のようなものが立ち上がり、やがて人型になり、若い男性の姿を象った。
 それは真琴の祖父であり、人形に宿る魂であった。
「それじゃ、よろしく。とりあえず、竹刀は持ってきたよ」
 祖父の霊は腕組みし、何事か頷く。
「……え? まず素振りを1000回?」
 祖父の霊は静かに頷いた。孫からの抗議的な視線は無視しているようだ。

「……はぁ、はぁ……! や、やったよ、祖父ちゃん」
 祖父は満足げに頷いた。どうやら間髪入れずに次の修行に移るらしい。
「なになに……『槍や格闘に比べて、剣術は防御力が高い武術』……?」
 祖父が言うには、剣術はすでに真琴が修めている二つの武術と勝手が違うという。
 槍術はいかに相手を近付けさせず、制圧するようにして戦うかが問われる武術。
 格闘術は逆に、相手の懐に入り込み、得意とする間合いを封じて戦う武術。
 そのどちらも、中心となるのは『攻撃によって攻撃を防ぐ』こと。防御の型は存在しないか、あるいは少なくなっている。
 一方の剣術には防御の型が存在する。攻撃のためでありながら、敵の反撃を想定し、斬り結ぶことができるのだ。
「つまり、オレの技の幅を増やしたければ防御系統のほうがいいと……」
 祖父が頷く。……そして、周囲の石が浮かび上がった。
「えっ……投石を全部防御しろって」
 ちょっと待て、と口に出すよりも先に、高速で石が飛んできた。
 真琴は辛うじて身を躱し、続く礫を竹刀で弾く。が、それでもさらに次が飛んでくる。
「ちょ、祖父ちゃん!? オレが相手だからって修行の難易度高くしてないっ!?」
 そう言いながらも真琴は順調に攻撃を弾き続けた。
 その様子に、祖父の霊はやはり満足げに頷いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

荒谷・つかさ
中々に雄大な自然の島ね……こうして目を閉じるだけで、様々な感覚が研ぎ澄まされていくわ。
そうね、折角の機会だし。ここは一つ、修行に励むのもいいかもしれないわ。

ストレッチから山野の走り込み、クライミング、大岩を用いた筋トレ等
一通りの「準備運動」を済ませたら、滝へ
目を閉じ、呼吸を整え、精神を研ぎ澄ませ
目前の瀑布へと【螺旋鬼神拳】を叩き込む
滝は一瞬だけ割れる、けれど即座に戻るでしょう
けれども何度も、何度でもそれを繰り返し、無心に滝の流れを割り続ける

この行為に意味があるのかは、わからない。
けれども、何となく。
この拳の先に、届きそうな「何か」がある。
その「何か」を掴むため……ひたすらに、拳を突き出す。



●X月XX日 カラム島中央部 『始原の滝』
 荒谷・つかさ(逸鬼闘閃・f02032)は静かに目を閉じ、自然に耳を傾けた。
 風が吹き抜け、木が揺れる。滝が流れ、水面が揺れる。
 それらの情景が、目を閉じていても理解できた。感覚が研ぎ澄まされている。
(修行、ね……それも良いかもしれないわね)
 つかさは軽く首を回し、両手の腱を伸ばす。それから、全速で駆け出した。

 その『ジョギング』は真っ直ぐな道を行くものではない。
 彼女は角度の急な山道を、速度を落とすことなく駆け上る。
 ただでさえバランスの悪い足元、滑りやすい斜面に留まるのは並みの体幹では難しい。
 しかし幸いにして、彼女の肉体は並みではなかった。
 進むにつれ、斜面はやがて直角に近くなった。垂直な山肌が立ちはだかる。
 とはいえ、垂直な壁にも凹凸は存在する。雨風に削られた自然の手掛かりがあるのだ。
「……行けそうね」
 それを見て、つかさは登攀に着手した。僅かな凹凸に目を凝らし、掴んで登っていく。
 人工のクライミング施設と違い、そこに『登れる保障』は存在しない。
 時には次に掴むべき取っ掛かりがどこにもないことすらままある。
 そこでつかさは壁に張り付きながら手刀を繰り出した。岩が割れ、罅が生まれる。
 その罅は絶好の足場となった。彼女はそれを掴み、再び登っていく。
 しばらく登り、最後に縁に手をかけ体を持ち上げる。そこは、周囲で一番高い場所だ。
 背の高い木と、それを覆う葉が一面に広がる。緑色の海を見ているようだった。
「なかなか、絶景ね」

 つかさはそこで、手頃な岩を発見し持ち上げた。それをしばらく片手で上下させると、今度はそれを背中で支え腕立て伏せをする。
 強力な荷重によって、その手元は地面に沈んでいた。それでも彼女の体は悲鳴を上げない。
「ふぅ……だいぶ、温まったかしら」
 彼女は岩を地面に置きなおすと、しばらく歩いた。流れの速い川が流れている。
 その先を辿ると、水は滝となって下に落ちていた。つかさが登ってきた分の高さである。
「これなら、問題なさそうね」
 つかさは滝壺を眺め、そのまま飛び降りた。急速に水面が迫り、着水の衝撃が走る。
 水は冷え切っており、彼女の体を冷やした。服についた水を払いながら滝へと向き直る。
 滝は止めどなく流れる。上から下へと、幕となった水が落ちていく。
「――はッ!」
 自然と、つかさはそこに拳を打ち込んでいた。伝わった波紋が水を押しのけ、その瀑布を途切れさせる。
 その拳は滝を割ったが、それは一瞬のことだ。ただ一時水を押しのけたに過ぎない。
 つかさは再び拳を突き出し、滝を砕く。すぐにまた元に戻る。
 この行動の先にいかなる意味があるのかはわからない。或いは何もないのかもしれない。
 しかしそれでも、彼女は滝に向かい続け、滝を割り続けた。
 打ち込んだ拳のその先に、薄い瀑布のその奥に、何か掴めるものがある。そのように感じる。
 ゆえに彼女は無心で繰り返し続けた。幾たびも滝は割れ、また元に戻る。
 その行為はまるで、刹那で逃げゆく「何か」を掴もうと試みるようだった。
(一体、何が……)
 掴もうとするものが判らぬままでも。彼女は今一度拳を打ち込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『グリードミミック』

POW   :    メガリス・ランページ
【纏ったメガリス全て】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
SPD   :    強欲の罠
【触手や巨大な口から敵を取り込み】【武器や装飾を奪って】【装備すること】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    ホシイ!ヨコセ!
レベル×1tまでの対象の【武器や装飾品】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●X月XX日 カラム島 港付近
 それは波に紛れ、流れ着くように現れた。
 黒く淀んだ液に塗れた宝箱である。きらびやかな宝石に、サーベルとフリントロック式の銃。
 それは皆メガリスであった。一つ一つが強大な力を秘めた秘具だ。
 それらを決して離すまいと、粘液がしかと掴んでいた。
「グググ……ガガ、ガァ……」
 淀みの中に眼が現れる。それはグリグリと周囲を見渡すと、島の中央へと向かっていく。
 それは通称、『グリードミミック』。
 曖昧な思考力を素にただ力を求める魔物。彼らはこの島で、ありもしないメガリスを求め、闇雲な破壊を繰り返すだろう。
 しかし、この島を沈めるわけにはいかない。
 今こそ、修行の成果を見せる時だ!
シル・ウィンディア
さて…
せっかく修業したんだしね
実戦でどこまでできるか…
試させてもらうよ!

捕まらない様に
【空中戦】で【残像】ができるまで跳び回って
【残像】の【フェイント】で撹乱しつつ
ヒット&アウェイですれ違いざまに攻撃っ!

攻撃は光刃剣と精霊剣の二刀流で仕掛けるよ

敵の攻撃は
【第六感】を信じて
動きを【見切り】【空中戦】で回避っ!
捕まったら大変なことになりそうだしね

攻撃・回避・機動中も詠唱は途切れさせずに…
タイミングを見計らって
敵が一直線上に並ぶように位置取りをしてから

ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラストッ!
一気に薙ぎ払わせてもらうからっ!

ふぅ、ひとまずはこんな感じかな?
この後にはメインが控えているから、ね?



●X月XX日 カラム島北西部 『恵みの平地』
 ガタガタと箱を揺らしながら、グリードミミックらは進んでいく。
 開いた箱の中から、粘性の強い自らの本体を前方の地面に叩き付け、箱を引き寄せる。
「うえぇ……嫌な動き……」
 それがどこか尺取虫のような動きを連想させ、シルは顔をしかめた。
 だが、怯んではいられない。敵はすぐ近くまで迫っている。
「せっかく修行したんだしね。実戦でどこまでできるか……」
 彼女は二本の小さな銀のロッドをそれぞれの手に握った。
 そこに魔力を通せば、光の刃が二本、顕現する。
「試させてもらうよ!」
 風の力がマントに宿れば、彼女にとって即席の翼となる。
 空中へと踊り出しながら、シルはグリードミミックたちと対峙した。

「闇夜を照らす炎よ」
「ググ、ガガァァ」
 無機質でいながらどこか獣じみた咆哮とともに、黒い粘液が伸びてくる。
 シルは自らに迫るそれらの触手を、光の刃で切り払った。液体が瞬時に焼かれていく。
 しかし、焼かれ、蒸発してもなお、黒い粘液は次々に彼女めがけて飛んできた。
「命育む水よ、おぉっと……!」
 シルはさらに空中高くへと離脱する。
 いかに自由に動かせる粘液といえど、本体である宝箱からの射程には限度がある。
 彼らは一旦シルへの追撃をやめ、伸ばした粘液を縮め、移動に専念する。
「悠久を舞う……風よ!」
 それは好機であった。粘液はその捕縛力と射程、精密動作性こそ脅威であるが、速度は遅い。
 一度引っ込めれば、もう一度伸ばすには少し時間がかかる。
 空に残像を残すようにして飛び回るシルにとって、その時間を縫うのは容易だった。

「母なる大地よ」
 彼女は瞬時にグリードミミックの本体まで肉薄すると、それらを斬り付けた。
「ゲゲガガガァァ」
 宝箱が焼き斬られ、中から粘液が漏れ出した。その奥で、橙の瞳が彼女を睨む。
 光に斬られ、突かれてもなお、グリードミミックは健在である。シルを掴もうと粘液を伸ばす。
「暁と宵を告げる光と闇よ……!」
 しかし、彼らの触腕が空駆ける少女を捉えることはなく。
 シルは再び、危険域から離脱した。しぶとく粘液がその姿を空まで追うが、届かない。
 ならばどうする。戦いにおいて本能に従う他ない彼らに、多くの選択肢は存在しない。
 即ち、先ほどと同じ。伸ばした粘液を縮め、移動を開始するだけだ。
(思った通り。そうするだろうって読んでたよ!)

 シルを取り巻く六つの魔力は、今にも暴れ狂おうと脈動する。
 彼女は精霊剣を構え、そこに指向性を与える。
 目標はグリードミミック。一直線に並び、彼女を追う愚かなオブリビオンたちだ。
「六芒に集いて、全てを撃ち抜きし力となれ――ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラストッ!」
 極光が吹き荒れる。
 その光は、触れるものすべてを灼き尽くす。
 粘性を帯びたグリードミミックの本体は、瞬く間に霧散した。
 仮宿に使う宝の箱は燃え尽き、僅かな灰が暴風に押し流されていく。
 そして彼らが集めた宝石やメガリスもまた、光と闇の中に呑まれていった。
「……ふぅ。よし! まだ魔力には余裕あるみたい!」
 出力を抑えたヘキサドライブ・エレメンタル・ブラストでも、彼らのようなオブリビオンならば殲滅することができるようだ。
 これがあれば、より柔軟に対多数の戦闘が可能だろう。
 この後にはまだ大物が控えている。それでも、今の残った魔力量なら戦えるはずだ。
 そんな戦果を称えるように、一陣の風が彼女の髪をそよがせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天沢・トキ
(ハイライトOFF)
ひとつ~べし
ひとつ~べしべし

教えがエンドレスで頭を巡るよぅししょー
ってなんか外見派手な敵が来てる!?
つまり修行終了!?いにゃー!

もうこの悲しみをぶつけるしか、にゃい

片手持つ飛び苦無へ、威力増す妖の結界を纏わせ
群を相手にするなら
この一つを「化かして増やし」そして「操る」

トキいっつも感覚でぐわーって念じてぶわーってさせるんだけど
この期間ずっとその基礎の書き取りしてたにゃあ
形を捉え、気を練り、縁をなぞり
……あれえ、いつもより楽?それに早い?気がするー!

敵の動きをよく観察し躱して
あらゆる角度から降り注ぐ刃の嵐
瞳、触手、口の中、その手のメガリス
弱点はどこ?当たるまで止まらないよー!



●X月XX日 カラム島中央部 『迷いの大森』
「ひとつ……なになにべし」
 ふらふらとした様子で、トキは森の中を歩いていた。
「ひとつ……なんちゃらべしべし……」
 中身に関してはあまりはっきりとは覚えていないが、その言い回しだけが頭を巡っていた。
 肉体の鍛錬もいくらでもできそうな森の中で、終わりの見えない書き取り修行。
 その退屈さは筆舌に尽くしがたい。時間が無限に引き延ばされたようだった。
 一通り書き終えたトキは、ひと休みするために散歩をしていたのだ。

「……ん? アレは?」
「グガガガ……ガガ」
「なんか外見派手派手な敵が来てる!?」
 彼女の歩む先に現れたのは、金銀の財宝を粘液の中に隠した宝箱。
 そういえば、ここには修行をしに来た「だけ」ではなかった。
 修行の成果を発揮すべき相手が来る。コンキスタドールが攻めてくると言っていた。
「……ってことはつまり、修行終了!? 書き取りしかしてないのに!? いにゃー!」
 トキは悲痛な叫びをあげた。そう、修行の時間は完全に終わったのだ。
 彼女の胸の内は悲しみに満たされた。そして、沸々と怒りが湧き上がってくる。
「この悲しみ……奴らにぶつけるしか、にゃい」

 トキは苦無を一つ取り出した。繰り出すのは、苦無を化かして増やす妖術「猫あらし」。
 普段、彼女はこの術を感覚で成功させていた。
 なんとなくで念じ、なんとなく増やす。そして投げつけるのが常だ。
 しかし、今日、この場でのトキは違った。苦無の形を捉え、練りこんだ気を正確にそこに沿わせていく。
「……あれえ、いつもより楽? それに早い? 気がするー!」
 それは、彼女にとっては無自覚なことではあったが、紛れもなく修行の成果であった。
 彼女が幾度となく書き取りを行った巻物の内容は、妖術の基礎。
 『化かす』には何が必要か。どこまでが現で、どこまでが幻か。

「ひとつ! 己が手に持つ刃、その姿を掴むべし!」
 無数の苦無が舞う。それは通常とは異なる歪な軌道を描き、グリードミミックを襲う。
 苦無は粘液を切り裂き、瞳を貫く。オブリビオンが苦しげに悲鳴を上げた。
「ひとつ! 己が裡より生ずる気を高め、練り上げるべし!」
 さらなる苦無が嵐となって、再生しようとする粘液を斬り苛んだ。
 グリードミミックの本体がばらばらに崩れていく。
「グガガ、ガガ」
 嵐の中で、彼らは懸命に粘液を伸ばした。
 苦無を掴むことができれば。掴み喰らえば、己のものにできる。
 武器は力だ。それを元に、再生も反撃もできるはず――!
 抗うコンキスタドール、その一体が、飛来する苦無を粘液の触手で絡めとった。

 ――その瞬間、苦無は幻のごとく消え去った。

「ひとつ! 現世の縁を象り、何者にも読めぬ幻を……」
 再び、無数の苦無。グリードミミックらは今度こそ、再生も、動くこともままならぬほどにばらばらにされた。
 地面に飛び散った粘液が溶け、消えていく。
「何者にも読めぬ幻を……にゃんだっけ……?」
 頭を巡っていたはずの書き取りの言葉が消えうせた。
 ……文言こそ忘れたものの、教えは消えていない。トキはより正確な妖術の使い方を学ぶことができた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

荒谷・つかさ
もう来ちゃったか……仕方ないわね。
後は実戦の中で感じ取れればいいんだけれど。

修行の続きも兼ね【螺旋鬼神拳】で殴っていく
私の「怪力」での一撃ならば、巨大化したメガリスだろうが容赦なく粉砕できるはず
本体が粘液状であっても、圧倒的な衝撃で弾け飛び霧散するでしょう

……でも、目指す先はそこじゃない
殴れば砕けるメガリスでも、衝撃で霧散する粘液でもなく
割れども割れども元に戻る、形のないモノの「向こう側」
そこを目掛け、拳を振るう――

(【選択UC】発動、ただの腕力のみで「世界の境界」を殴るに至り一瞬だけ罅を入れ、その余波で敵が吹き飛ぶ)

――届い、た?
この感覚……名づけるなら。
【破界拳(ボーダー・ブレイク)】。



●X月XX日 カラム島中央部 『始原の滝』
 石を掻き分け散らす音。草を湿った何かが叩く音。木が擦れる音。
 それらが周囲から近づいてくるにつれ、つかさは敵の接近を悟った。
「もう来ちゃったか……仕方ないわね」
 一心に拳を打ち込み続けた滝に背を向け、つかさは周囲を見やる。
 木漏れ日を反射し、金銀の財宝が見えた。黒い粘液がそこに混じっている。

 つかさの修行はまだ終わっていなかった。何かを掴めそうで掴めない感覚。
 拳の届く先でありながら、遥かに遠いどこかへと手を伸ばす感覚。その正体を。
「グググガガァ……!」
 だが、彼女の修行の完成を、敵は待ってはいない。粘液で絡めたサーベルが巨大化する。
 その刃が、巨大な遠心力でもって振り回される。周囲のグリードミミックも巻き込みながらつかさへと迫る。
 だが――それは彼女を脅かすには至らない。刃であれ、メガリスであれ、それは物質だ。
 つかさが拳を突き出す。鍛え上げられたその拳は、真正面から刃に罅を入れ、砕く。
 並みの武道家であれば、鋼をも上回る拳は一つの終着点と言えるものだっただろう。
 しかし、彼女にとっては違う。「これ」ではただの破壊力に過ぎない。
 砕けた刃の中を掻い潜り、つかさはグリードミミックに肉薄する。
 再び、羅刹鬼神拳。音をも超える一撃が粘液を散らす波紋を呼ぶ。
 それはまるで、先ほど滝を割ったものと同じだった。「ただ割れるだけ」の攻撃だ。

(この先を……!)
 滝の水は、粘液は、拳の衝撃によって離れていく。空間を押しのける一撃によって。
 この一撃には、大砲と同じだけの威力はあるかもしれない。
 だが生身でそれに至ったとて、つかさにとってそれは通過点だ。
 武器よりも、魔法よりも、さらに強い一撃を。そうでなければ、拳を鍛える意味がない。
 飛散したグリードミミックの断片が寄り集まっていく。再生しようとしているのだ。
「滝は割れても元に戻る……これも同じね」
 押しのけた空間のさらに先へ。彼女はその存在と、そして自らがそこに至ることを確信していた。
 鍛えた肉体に、不可能はない。
 鍛錬の先に見出したのだ。全てを超え、すべてを捉える拳があると。
「そこに在りさえするのなら、私の拳は――」
 必ず限界を超えて見せる。つかさは再び、全身の力を総動員させ、片腕に集め――グリードミミックに。否、ただ眼前に突き出した。

 瞬間、彼女は宇宙のような暗闇を見た。視界が黒く変じ、次に白い光に包まれる。
 それらの光と闇は、いずれも自らの拳の先より生じるものだった。
「これは……?」
 拳の先に触れるものはグリードミミックではない。個体でも、液体でも、気体でもない。
 つかさはその正体を直感で理解した。これは、「世界の境界」だ。
 空間を超え、時間をも超えた拳は、ついに境界を砕く。チリ、と音が鳴り――

 ――砕けた亀裂から漏れ出した衝撃は、波となって周囲を駆けた。
 世界の外から齎されたそれは、瞬く間にグリードミミックらを吹き飛ばす。
 さらには、その粘性の肉体を分解し、メガリスを粉々に打ち砕く。再生の余地もなく、彼らを霧散し消失せしめた。
「……届い、た?」
 狂気とも似た鍛錬の末に掴んだ、荒谷・つかさの一つの到達点。
 その銘は、破界拳(ボーダー・ブレイク)。
 文字通り、世界を砕く拳であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルイス・グリッド
【morgen】の仲間と参加

おい!お前が欲しいのはコレだろ
欲しかったら付いてこい!
あぁ、大量に釣れた。頼んだ、御桜
木杭の投擲はさっきの修行と同じ、あの時と同じように着弾地点を読めば避けられる
少しだけ学んだ事を応用してみるか

右腕の手袋と眼帯を外して俺の持っているメガリスを見せたり、UCを使用し【挑発】
そのまま敵を所定の場所まで引き付けて御桜と合流
彼女のUCでテレポートして退路を断たれた敵を叩く

一駒が投擲する木杭を【視力】【戦闘知識】【投擲】で見極め自分は避けて、その場所に敵を誘導する
怯んだところを銀腕そのままの形態で【怪力】【力溜め】【戦闘知識】【重量攻撃】を使い攻撃する


御桜・八重
【morgen】4名

「ルイスさーん、こっちこっち!」
ブンブン手を振って、合図を送る。
「上手く喰いついてきたみたいだね♪」
ルイスさんを追って来たミミックたちは結構な数だけど、
この作戦ならきっと大丈夫!

上手いこと一塊になるようにミミックを誘導。
伸ばされた触手をギリギリまで引き付けて、
「花よ導け、道開け!」
【花小路】を発動!
花吹雪にルイスさんを包んで、丈一さんの元へテレポヲト!

囲みから脱出したら、ミミックたちを4人で囲んで集中攻撃。
特訓の成果を活かし、体捌きをそのまま攻撃動作に繋げて、
流れる様に二刀を振るう!

「あれ?」
乱戦だって言うのに、以前より敵の攻撃が見える気がする。
これも特訓のおかげかな?


一駒・丈一
【morgen】
海より現れしメガリスを求める化け物か。正に強欲の化身だな。

さて、方針は
ルイスが手持ちのメガリスで敵を目標地点まで引き寄せ、
その後に八重がルイスと共にテレポートで脱出後、一網打尽にする作戦だ。

俺は、八重とルイスのテレポート後、UC【罪業罰下】で敵周囲の木々を一閃し倒すことで、敵の退路を断つ。即ち、【地形の利用】を行い易い状況を作り出す。
その後は4人で敵を各個撃破だ。俺は、装備の杭を敵に【投擲】し、敵を着実に仕留めて行く。

ルイスと八重は、早速修行の成果を活かしているようだな。

先ほどの修行の延長で、実戦演習としてチームワークの講習を行おうと思ったが、
どうやらその必要は無さそうだ。


花盛・乙女
【morgen】で参加

さて、有意義な訓練の後は実戦だ!
化生相手なれば遠慮は無用、疾く片付けるとしよう!
羅刹女、花盛乙女。いざ尋常に。

ルイス殿のメガリスに寄って来る化生共。
それを一網打尽にして屠る。
うむ、その戦略この羅刹女も乗ろう。

丈一殿が森への逃走を防ぎ私は海の逃走を防ぐ。
海を背に【黒椿】を肩に当て鬼の笑顔に「殺気」と「覇気」を放ち迎えよう。
釣れないな。折角ここまで来たんだ、私たちと遊んでもらおうか。

うむ、八重殿とルイス殿の連携見事。丈一殿は言わずもがな、だ。
であればこの私も武勇を見せねば始まらん。
【乙女】も抜き、鬼事と参ろうか。
私の『鬼吹雪』で見るもの全てを斬り払ってくれる!

■アドリブ歓迎



●X月XX日 カラム島中央部 『導きの平野』
「――しっ」
 修行を終え、暫くして。丈一は人差し指を口元に当て、三人に目配せをした。
「聞こえたか? 戦闘音だ。敵が来たらしい」
 その言葉に、ルイスと八重が身を引き締め、乙女が楽しげに笑みを浮かべる。
「有意義な訓練のあとは実戦だな! なに、化生相手ならば遠慮も無用だろう?」
「う、うん! 訓練の成果を見せないとね!」
「……なら、作戦はどうする?」
 大木を背にしたルイスがそう投げかけると、ふむ、と丈一が答えた。
「敵はメガリスを求める化物、強欲の化身だ。それなら……」
 彼はルイスの右腕を見つめ、作戦を説明した。

●X月XX日 カラム島東部 『貫きの石場』
「おい! お前たちが欲しいのはこれだろ!」
 ゴツゴツとした岩場。鋭い石柱を意味もなく砕くグリードミミックらを、ルイスが大声で引き付ける。
 声以上にオブリビオン達を引き付けたのは、彼の右腕に輝く銀の手だ。
 それがメガリスであることは、メガリスを求める魔物である彼らが最もよく分かっている。
 本能に従い、彼らはルイスに接近した。黒い粘液の体が濁流のように迫ってくる。
「こっちだ……これが欲しければ付いてこい!」
 ルイスはグリードミミックらに背を向け走り出す。時折振り返り、敵からの遠距離攻撃にも注意しなくてはならない。

(――!?)
 走りながら、彼は背中を叩くような奇妙な感触を受け振り向いた。
 一体のグリードミミック。その粘液が絡み付いた銃が、ルイスの背中を狙っていた。
 カチリと引き金が押し込まれると、それが火を吐く。咄嗟に躱した彼のすぐ横で木が幹からへし折れた。
「……今のは」
 丈一からの投擲では感じられなかった感覚。見ずとも敵の攻撃を直感できるもの。
 彼が感じ取ったそれは、所謂『殺気』と呼ばれるものであった。
 ルイスは先程の訓練を経て、攻撃が起こる瞬間を感じ取る能力が鋭敏化していたのだ。
(よくわからないが、これは便利だ)
 彼は走る脚の速度を上げた。この感覚さえあれば、背後への警戒を担わすことができる。
 目指すは、あの場所だ。

●X月XX日 カラム島中央部 『迷いの大森』中心部
「あっ、ルイスさーん! こっちこっち!」
 木々が生い茂る森の中、やや開けた場所で、八重がルイスに手を振った。
 彼の背後には、黒い河のようなものが迫っていた。グリードミミックの粘性の体が、何体も連なりやって来たのだ。
「上手く喰いついてきたみたいだね♪」
「あぁ、一駒の予想通り……大量に連れた。頼んだ、御桜」
「了解!」
 合流した二人を、囲みこむようにミミックたちが蠢く。
 無機質な、それでいて獣のような唸り声を上げながら、逃げ道を塞ぐように広がっていく。
「グガガガガァァ……!」
 サーベル、銃、そして牙。およそグリードミミックらが持つ武器を総動員した触手が迫る。

「――花よ導け、道開け!」
 窮地に陥ったと見える彼女たちだったが、しかし、その身を花の吹雪が包み込む。
 それは周囲のどの植物からも芽生えぬ桜色。幻想的な桜が晴れる頃、二人の姿は消えていた。
「ググガ……?」
 あと少しで引き裂けるはずだった獲物、あと少しで手に入るはずだったメガリスが消えた。
 匂い、音、視界。彼らが持つ索敵能力を持ってしても、その残滓を追うこともできない。
 すると、突然周囲の木々が倒れた。それはミミックらを囲むように倒れ、逃げ道を塞ぐ。
「さて……良い働きだった、二人とも」
 介錯刀を鞘に納めながら、丈一は倒れた木を足場に立つ。
 彼の斬撃は森の木を一閃し、グリードミミックを閉じ込める枷と成したのだ。
「大成功! うまく行ってよかった〜」
 丈一の隣に、ルイスと八重が姿を現す。オブリビオンらは僅かな知能で、掻き集めた情報を精査した。
 獲物が突然消えた。周りの木が倒れ、来た道を塞がれた。
 つまり、罠に嵌められたということだ。――魔物は牙を打ち鳴らす。
 それがどうした。そう言わんばかりに、ミミックらは変わらずルイスめがけて触腕を伸ばした。
「あくまで狙いは俺か」
 だからといって逃げるつもりはない。彼は一歩前に進み、敵を睨む。
「……ググガガァァ!」
 右の銀腕に向かって飛んできた粘液を、他ならぬ右腕で彼は叩き落とした。
 ミミックの本体である粘液は、執着の対象である銀腕にしばししがみついていたが、やがて落ち消えていく。
 その襲撃と迎撃は、乱戦のはじまりの合図だった。

「行くよ……!」
 八重は二刀を手に、ミミックらの集団に接敵した。
 駆けた姿勢はそのままに、勢いを殺すことなく振るう。それはまさしく、先程の修行で身に着けた攻撃の方法だ。
 粘液を斬り払いながら、八重は違和感を覚えていた。
「あれ……普段より敵がはっきり見える……?」
 より正確に言うならば、敵の動き、その攻撃、味方の攻撃……それら全てが精密に認識できた。
 乱戦では目の前の相手に気を配りながら、視界外からの攻撃にも用心しなければならない。
 だが、こと戦いにおいて、視野を広げるというのはそう簡単な話ではない。
 命を狙い、攻撃を仕掛ける眼前の敵。通常ならば、そこに九割九分の意識を傾けてしまうもの。
 しかし修行により、八重はより広い視線の置き方、警戒の仕方を学んでいたのだ。
「それはとても大事なことだ。二人とも、修行の成果を発揮しているようだな」
 丈一は、ミミックらの攻撃が届き辛い木の上から杭を投擲した。
 此度の攻撃はミミックを狙ってのもの。修行において二人を苦しめた遠距離の攻撃は、同様の、或いはそれ以上の猛威を敵に振るう。
 杭はミミックの箱を砕き割り、粘性の本体を地面に突き刺して固定する。
 そうして動きを止めた相手に、八重やルイスの追撃が続くのだ。

「グググ……ガッ……」
 地面に杭で縫い付けられたグリードミミックの一体が、恨めしげな瞳をルイスに向けた。
 接近し、とどめを刺そうとするルイス。――その右腕に、機敏に触手が纏わり付く。
「お前たちもしつこいな」
「ガガ……ガガ……」
 求めるものはただメガリスのみ。感情も知性もない生物から、この上ない執着を感じる。
「だが、これはそう簡単に渡せるようなものじゃない」
 記憶を失くしたルイスにとって、それを辿る微かな残滓こそが、右腕と左目のメガリス。
 もはやその名も消え果てた友に託されたのだ。いかなる経緯だったのか、いかなる理由だったのか。それを探ることは容易ではない。
 細く、そして薄い糸口だ。それが彼の義眼であり、銀腕だ。
 なおもメガリスを奪おうとするグリードミミックの瞳に、ルイスは右腕の拳を叩き付けた。
 それは単純でありながら強烈な打撃。叩き潰され、ミミックは息絶えた。

「うむ。先ほどの修行の延長として、チームワークの講習を行おうと思ったが……」
 自らの杭を見切り、躱しながら、ミミックたちを各個撃破する二人を見て丈一は頷いた。
「どうやら、その必要はなさそうだ」
 味方がどう動き、どこに攻撃するか。
 攻撃された敵に対して、いかに追撃するか。そしてとどめを刺すか。
 八重とルイスは、その点に関しては既に合格と言える動きを発揮していた。
 みるみるうちに減っていくグリードミミック。不利を悟り、一部は逃走を試みる。
「あ、逃げる……!」
「あぁ。……けど、追う必要はない」
 彼らが逃げた方向を見て、ルイスは軽く肩を竦めた。
 彼らが逃げたのは海の方面。あえて丈一が開けた包囲網の穴。
 そこに逃げたところで意味はないと、三人は理解していたのだ。

●X月XX日 カラム島北西部 『恵みの平地』
 ――誤算だ。
 ――獲物だと思ったそれは狩人だった。
 グリードミミックらは複雑な思考を持たない獣であるが、凡そその程度の考えを巡らすことはできた。その上で、逃走という選択肢を選ぶことも。
 逃げる先は海。包囲を抜けた先。彼らは逃げ道の先に、立ちはだかる人影を見る。
「グルルガガガァ!」
 威嚇するように吠えたミミックに、人影――乙女が好戦的に笑う。
「釣れないな。折角ここまで来たんだ――私とも遊んでもらおうか!」
 逃走してきたミミックの数を見て、乙女は三人の作戦の成功を確信した。
 ルイスを追ってきた数十のミミックに対し、今ここにいる数はものの数体。
 つまり、三人は相当数のミミックをあの作戦で屠ったということだ。
「であれば、その戦果。私が水を差すわけにもいくまい」
 ここで撃ち漏らしでもすれば作戦は不完全で終わる。そうであってはならない。
 ミミックが襲い来る。その波に対し、舞い踊るように踏み込んだ乙女が刀を抜く。
 ――花盛流剣術【鬼吹雪】。
 それは神速にて放たれる斬撃。目に映る全てを切り伏せながら進む鬼の進撃。
 幾度も振るったその剣術に、今更翳りがあるはずもなく。
 赤黒い闘気を放つ黒刀は、ミミックたちの身体を八つ九つに斬って分けた。
 羅刹が巻き起こす吹雪の中で、生きていられるオブリビオンはおらず。彼女は納刀する。
 粘液が崩れ落ち、メガリスが零れ落ちる。
 風に吹かれてそれらが消えればオブリビオンの痕跡の一切はそこから消えていた。
「うむ。これにて、殲滅完了か」
 海から吹き荒ぶ風に、乙女は振り向く。
 それは、新たな凶事が迫る前兆のように思え、彼女は三人との合流に歩き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『堅牢竜『クエレブレ』』

POW   :    意思を持つ城塞の如き巨躯
【怒りや驚き、嫌悪等】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD   :    凶暴かつ無慈悲な竜としての自衛本能
【艶やかで強靭な鱗と、毒を吐く戦闘形態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    堅牢竜ある所以、その身全ての堅牢さ
全身を【通常戦闘形態】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はサジー・パルザンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●X月XX日 カラム島中央部 『迷いの大森』中心部
「ギュアアアァァァァ……!」
 喉から絞り出したような咆哮が響いた。
 その音は森に満ちる木や枝葉に反響し、四方八方から聞こえてくる。
 次に来るのは暴風だ。巨大な翼が羽ばたく度、木々が悲鳴を上げている。
 飛来したその竜は、猟兵たちを視認すると、島の中心――『迷いの大森』に着地した。

 その竜は靭やかな身体を持ちながら、刃を通さぬ堅牢な鱗を持っていた。
 口元から漏れる毒の霧は、植物を枯らし、虫や鳥を空から落とす。
 彼に意思があったとて、或いは無かったとて。その存在が既に災害であり、島を滅ぼすのだ。
 猟兵たちよ。この竜の討伐を以って、修行の完成とするのだ!
シル・ウィンディア
また、大きなドラゴンだこと…
さて、出し惜しみなしていきますかっ!!

【空中戦】で動いて【フェイント】でジグザグに動いて接敵
光刃剣と精霊剣の二刀流でヒット&アウェイっ!
攻撃しつつも詠唱を開始して…

回避は【第六感】を信じて
動きを【見切り】行動だね

対敵UC
詠唱をじっくりしたヘキサドライブ・エレメンタル・ブラストで攻撃だね
これは、あくまで牽制…
本命は【多重詠唱】で3テンポ遅らせて【魔力溜め】を行い
【二回攻撃】でのヘキサドライブ・エレメンタル・ブラスト!
防御が強いなら…その上から吹き飛ばすっ!!
あと先考えず【限界突破】の【全力魔法】!
ここで、全部出し切るっ!!

それじゃ、あとは、まかせたよ…



●X月XX日 カラム島中央部 『迷いの大森』中心部
「これは……!?」
 飛行して駆け付けたシルは、森に現れたその巨大な竜の姿に面食らう。
 軽く空中から全身を見回しても、弱点らしい部位が見当たらない。
 本来弱点となり得る頭部は強固な外骨格らしきものに覆われ、翼の付け根も刃を通すようには見えない。
 となれば、やはり。
「修行したもんね。アレで行くしかない!」
 ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラスト。
 巨大な魔力の波であるそれは、そのまま竜の全身を呑む。そこに防護は関係ない。
 問題は、その技であってもこの竜に傷をつけられるとは限らないことだ。
 少なくとも、グリードミミックらを片付けた際の威力ではダメージになるまい。

「――ギュアアアァァァ!!」
 彼女の思考を待つことなく、竜が吼える。前足を伸ばし、空中のシルを叩き伏せようとする。
 シルはそれを躱しながら、精霊剣でその足を斬り付けた。
 しかし、硬い。振るった剣は丸く分厚い爪に弾き返され、彼女の腕を痺れさせた。
「く……」
 シルは詠唱を開始した。後に控える大魔法のために、極力魔力を回しながら接近する。
 懐に潜り込み、彼女は両手の剣でクエレブレの喉を十字に斬った。
「グルル……!」
(……効いてないか)
 クエレブレはそれなりの不快感を示し、シルを睨みつける。
 しかしそれは、到底『命を脅かす者』を見る視線ではない。せいぜい、邪魔な虫を払う程度の怒りだ。
 その竜の侮りは、シルにとって好機でもあった。
 敵の攻撃はまだ激しくない。今のうちならば、ある程度の余裕をもって魔力を溜められる。

「六芒に集いて――」
 彼女は再び、振り抜かれた前腕による攻撃を避けると、空中高くに躍り出た。
 両手に魔力が満ち、六色の光となって集う。
「全てを撃ち抜きし力となれ!」
 そして、魔力が放たれた。極光は束となり、竜の全身を覆った。
「ギュオオオオオォォ……!」
 その光の中で、翡翠の眼が怒りに細められる。
 ――この一撃を以て、竜からのシルの評価は改められた。この魔力は危険だ。
 竜は咆哮とともに翼を広げ、空を叩いた。巨体が持ち上がり、シルと同じ空中へと飛び上がる。
 巨竜の羽ばたきはただそこにあるだけで彼女の空中制動を乱す。
 先ほどよりも鋭さを増した前足の振りを、彼女は辛うじて躱し、体制を崩された。
「危なっ……!」
「ゴアアアァァァ!」
 続く一撃。クエレブレは身を翻し、大木のような尻尾を彼女めがけて振り下ろした。
 シルはそれを両手の剣を交差して受けるが、衝撃を止めることはできない。その力によって、地面まで吹き飛ばされ、叩き付けられる。
「うぐ……!」

 本来ならば、背中を通り全身に広がるその衝撃を、魔力で和らげることはできた。
 だが、今はそれはできなかった。――彼女の全身の魔力は、余さず今も練られている。
「これが、最後の一発……!」
 今日だけで、すでに四回この魔術を発動させた。撃ち出せる魔力はもう残っていない。
 だから、これが最後だ。そして、最強の一撃だ。
「ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラスト――!」
 空に向けて、巨大な光の柱が撃ち上がる。
 先程よりも威力を増したその砲撃は、空中にいるクエレブレを撃ち抜き、吹き飛ばす。
 破壊的な魔力の洪水は、堅牢竜の鱗を弾き飛ばし、翼を砕き、地に落とした。
「ガアアアアァァァ――!」
 竜は咆哮を上げながら落下する。シルは地面に大の字で倒れながらそれを見た。
 仕留めてはいない。だが、相応のダメージは与えた。
「それじゃ、あとは、まかせたよ……」
 この後は、ほかの猟兵の出番だ。シルは疲労と共に目を閉じた。

成功 🔵​🔵​🔴​

荒谷・つかさ
……やれやれ、開眼した余韻にも浸らせてくれないなんて無粋な竜ね。
でも、まあいいわ。
この拳、より使いこなすための練習台が欲しかった所だしね。

大きくて堅牢、更にはもっと大きくなる訳ね。
でもこの拳の前に、「堅い」とか「靭やか」とかいう概念は最早無意味よ。

ブレスの範囲を警戒しつつ突撃
尾や四肢による打撃は「怪力」でいなしつつ回避し、奴の背中、或いは胴体部へ拳を届かせられる位置へととりつく
準備が整ったら【破界拳】をぶち込む
世界の境界を砕きつつ、その「罅」を奴の身体へと巻き込んで走らせる
上手くいけば、体内へと走った「罅」から「奴の細胞一つ一つ」へ、直接衝撃波をぶち込める筈よ



●X月XX日 カラム島中央部 『迷いの大森』中心部
 竜が、枝葉を砕き折りながら降ってくる。
「ギュアアアァァ……!」
 怒りの感情を滲ませながら、クエレブレが立ち上がる。と、同時にその身体が巨大化する。
「……やれやれ、開眼した余韻にも浸らせてくれないなんて不粋な竜ね」
 その付近にいたのはつかさである。
 彼女の周囲には、境界を殴り抜けた際の余波が広がり、地面や木の幹は砕けていた。
 しかし、その破壊痕がそれほどの一撃によるものであると、クエレブレは気付かない。
 同時に慢心する。この猟兵は武器を持っていない。
 元よりあらゆる武器を通さない身体であるが、武器を持たぬのなら猶更負けるはずもないと。
 竜はその前足でつかさを踏み潰そうと試みる。振り上げた足を、彼女の頭上から振り抜く。
 つかさはそれに対し、爪の側面に打撃を加えることで、クエレブレの攻撃を逸らした。
 彼女の一歩左の位置に大きなクレーターが出来上がる。竜は唸った。
「ギュオオオオオォォ……!」
 なぜこの相手は死んでいない。なぜこの相手は潰れていない。
 竜は己の体躯より遥かに劣る相手が己の攻撃を逸らし、生き延びたという事実に憤慨した。
 そして、怒りに応じてその身体はさらに巨大化していく。

 通常の斬撃や打撃であれば、この時点ですでに効力を発揮しなくなっていた。
 堅牢竜は尋常ならざる強靭さであらゆる物理攻撃を受け止めることができる。
 さらに万一その攻撃が鱗を貫いたとしても、クエレブレに甚大なダメージを与えるためには内臓や骨――とにかく、その内部に攻撃を届かせなければならないのだ。
 だがその身体が巨大化すれば、自然有効なダメージを与える「内部」もまた遠くなる。
「ギュアアアァァ!」
 まさしく常勝の戦術。竜が得意げに吼えるのも無理からぬことと言えただろう。
 しかし――それも無知が故。堅牢竜は知らなかった。
 世界の境界を破る拳の存在を。そして、それを目の前の女が使うということも。
「どれだけ大きくなろうと、どれだけ堅かろうと。この拳の前には無意味よ」
 竜はその言葉を解さない。巨大化した前足で、今度こそつかさを潰そうとする。
 つかさは、今度はそれを受けない。むしろ、前方に向かって走り出し、竜の懐に入り込んだ。

「ゴアァ――」
 脳裏に描くは、割れる滝の情景。拳に掴むは、境界を殴る感覚。
 記憶のすべてを経験に宿し、経験のすべてを実践に移す。
 そして彼女は、再び境界を超える――!
「破界拳(ボーダー・ブレイク)!」
 叩き付けた拳の先に亀裂が走る。それは堅牢竜の体の上をなぞるが、その身体に生じたものではない。
 世界の境界が砕け、瞬く間に罅が入る。その罅を、彼女は竜へと向けた。
 罅の向こうから、「何か」が噴出した。理を超える衝撃が、堅牢竜の全身を駆け巡る。
「ギャアアアァァ……!」
 竜が悲鳴を上げた。表面上、その体に傷はなく、堅牢な鱗もまだ無傷であるにも拘らず。
 世界を砕く衝撃は、あらゆる守りを通り抜ける。
 それは巨大化した堅牢竜の骨を、内臓を、脳を、根こそぎ痛めつける代物であったのだ。
 クエレブレはたまらず翼を広げ、空への逃走を図った。つかさも、それを見送る。
(このまま感覚を掴めれば、空中への攻撃にも使えそうね……)
 しかし、それを試すには今は時期尚早と言えた。境界を殴り抜けるほどの酷使に、彼女の腕も震えていたためだ。
(……筋肉痛かしら。久しぶりね)
 あとは、ほかの猟兵に任せよう。今一度手を握り開き、つかさは空を見つめた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御桜・八重
【morgen】

強い相手と戦う時は、相手の一番得意なものを打ち破ること。
剣術の師匠のおじいちゃんが言ってたよ。
堅牢竜の自慢が固い鱗なら、それを打ち破る!

丈一さんが毒を封じて、ルイスさんが動きを止めてくれたら、
乙女姉さんと二人で突っ込む!
竜が怒って巨大化してもお構いなし。
必ず鱗を破ってアイツを倒す!

『雀蜂』の二連撃に続いて三連撃目!
踏み込みの勢いで旋風の様に二刀を振り抜く。
「いざ吹き散らさん、花旋風っ!!」
気合いを込めた一撃で鱗を砕き、竜の心を折る!

竜が怯んで巨大化が解けたら一斉攻撃。
乙女姉さんと二人で剣舞の様に二刀を閃かせる!

やー、充実した修行でした♪
これからもよろしくお願いします!(ぺこり)


花盛・乙女
【morgen】
さて、羅刹女ブートキャンプの総仕上げといこうか!
猟兵団morgenが一刃、花盛乙女。いざ尋常に。

堅牢な鱗が自慢のようだな。
八重殿…いやさ、八重。
羅刹女と共に彼奴の鱗を捌いてやろうじゃないか!

【黒椿】と【乙女】を両手に構え先手を取る。
丈一殿とルイス殿の支援を受け、八重と共に斬る。
戦場に咲く花の如く、嵐のように激烈な四刀の剣舞だ。
ふん、巨大化したとて我らの牙は止まらんぞ。
「怪力」と「ジャンプ」を駆使し集中攻撃した一点に向け【雀蜂】を放つ。
鬼の拳、次いで奔る八重の桜に見惚れるがいい!

うむ、竜捕物に集団修練。実に充実した時間だったな。
八重、ルイス殿、それに丈一殿。本当にありがとう!


一駒・丈一
【morgen】

俺は敵に気どられぬよう森の木々や身を隠し
気配を消せ…。息を止め、鼓動を鎮め…敵の挙動を冷静に、只々冷静に見つめ、その機を待つ
敵がその口を開き毒を吐き出そうとしたその一瞬…それを見定め
そして敵の口内の喉を目掛けてUC【静寂なる雷】を放つ

敵の喉を穿ち、毒の吐き出しを抑止するのが目的だ
外皮が硬い鱗で覆われようとも、口の中は異なるだろう。喉を穿たれれば、痛みで毒を吐くのもままなるまい

俺のこの行動を皮切りに、ルイスが敵行動を抑止してくれて、乙女と八重が剣戟にて追撃してくれる筈

最後は全員で一斉攻撃を仕掛け、最後の仕上げだ。

最後は修行にしては高難易度だったが、皆無事に乗り越えられて何よりだ。


ルイス・グリッド
【morgen】で参加

ドラゴンか、相手にとって不足なしってやつだ
俺は援護する、花盛、御桜は思いっきり決めてやってくれ
実践も出来ていい修業が出来た。先生方ありがとうございました

一駒が毒を封じたら暴れないように左目の眼帯を取り義眼で敵を捉える
そのまま【スナイパー】【属性攻撃】【マヒ攻撃】を使いながらUCを発動し、敵の動作を止める
花盛と御桜の連携攻撃で怯んだところを一斉に攻撃
俺は【早業】で敵の後ろを取り、銀腕で【怪力】【力溜め】【重量攻撃】【鎧無視攻撃】を使いながら背部を殴りつける
最後は先生をしてくれた一駒と花盛に一礼する



●X月XX日 カラム島中央部 『迷いの大森』中心部
 強い相手と戦う時は、相手の一番得意なものを打ち破ること。
 それは御桜八重の祖父の教えであった。一見すると、それは誤りであるようにも思える。
 強い相手なのであれば、その弱い部分を突く。そこから崩すのが定石だ。
 だが、十分な力があるならば。或いは、仲間と共に戦うならば。
 相手が最も得意とするものに真正面から当たり、それを砕くこともできるだろう。
 強みとは、同時に拠り所でもある。それを失えば、いかなる強敵も脆いもの。
 では、果たして切り崩せるか。そればかりは、戦ってみなければわからない。

 クエレブレが森を闊歩する。その眼は一所を見つめず、ギョロギョロと動いていた。
 獲物とする猟兵を探しているのだ。しかしその索敵は、木の高さゆえ上手くいかない。
 ならば、邪魔なこの木を枯らしてやろう。竜はそう考えたのだろう。口を開いた。
 大きな風が吹く。それは竜の呼気だ。吐き出す毒を乗せる空気を肺に集めているのだ。
 喉の周りが蠢く。毒の分泌が行われたのだろう。そして――
 ――毒が吐き出される寸前、その口内に杭が飛来した。
「ゴアァ……!?」
 喉の深くに突き刺さったそれは、竜のブレスを妨げた。
 毒は外に出ぬままに再び喉を逆流し、竜自身の喉を焼く。
「ガアアアアァァァ――!」
 何者だ。そう怒りを込め竜が咆哮するも、名乗り出る者はいない。
「……成功だな」
 毒のブレスの阻止。その担い手たる丈一は、作戦の第一段階の成功を確信した。
 彼の放つ一撃、【静寂なる雷】。その名の通り、それは音を立てぬ迅雷。
 その軌道は自在にして迅速。丈一に気付かず、防御行動や回避の発想を持たぬ敵であれば、どんな場所にでも命中させてやることができる。
 そして、静寂なる雷が穿った一撃は丈一の想定通りの成果をもたらした。
「今だ!」

 丈一の声と共に、ルイスはその左目を覆う眼帯を外した。
 そこから曝される義眼は、見つめたものに災いを齎す水晶のメガリス。
「俺は願う……我が瞳に映る者に黄色の呪いを!」
 無色であったその水晶は、彼の願いに答え黄色の光を放った。
 黄色の呪いは相手の拘束。彼の視線に沿って、電撃が空を走る。
「ゴアァッ……!」
 電撃が竜に与えるのは「痺れ」と幾ばくかの「痛み」。
 しかしいずれも決定打にはなり得ず、またそれが効果を発揮する時間も短い。
 クエレブレは痺れ、ぎこちない動きでありながらも首を動かし、ルイスを睨んだ。
 貴様が狼藉者か。その瞳は怒りと憎しみを湛え、同時に大きくなっていく。
「あまり長くは持たなそうだ。八重、乙女。頼むぞ」

 牙を打ち鳴らすクエレブレ。その首筋に刃が走り、ガキン、と音が響く。
「かったい……!?」
 飛び出した八重が刃を向けたのは、竜の首に生える逆向きの鱗、逆鱗と呼ばれる部位。
 だが結果はこの通り。到底生物の感触とは思えぬ硬度と密度。
「う……相手の得意分野を叩くとは言ったけど、こんなのホントに壊せるのかな」
「ふふ、弱気を言うな八重殿!」
 続き、悪刀「黒椿」がその逆鱗を叩く。重さを備えるその刃でも、鱗は崩せず。
「ガアアァ……!」
 竜は不快感に咆哮を上げ、彼女らを睨んだ。そしてその巨体は、なおも巨大化していく。
「止まりきらないか……!」
 その巨大化を止めようと、ルイスは瞳の呪いを強め、電撃を太くする。
 それでもその拡大は止まらない。元の姿の数倍にまで膨れ上がった腕が、周囲の木を薙ぎ払った。
「きゃっ……!?」
 そのあまりに大きい攻撃範囲。山が動くような衝撃に、思わず八重が身を引く。
「怯むな八重殿……いや、八重! 共にあの鱗を捌いてやろうじゃないか!」
「……はい!」
 不敵な乙女の笑みに、八重も思わず口元が緩む。
「猟兵団morgenが一刃、花盛乙女」
「同じくmorgenが一刃、御桜八重!」
「「いざ尋常に!」」
 剣気と気勢を掲げ、二人は再び竜の逆鱗へと特攻した。

 鉄と鉄が打ち鳴らされるような音が森に響く。それに混じり、竜の呻きも。
 逆鱗の硬さはもはや生物を超え、鉱物すらも超えていた。
 どれだけ刀をぶつけても、一向に砕ける気配がない。
「グルルルル……!」
 竜が口角を上げた。バカめ、と嘲笑するように。
 小さき者が何をしようが無駄なのだ。竜たる我が身の、その鱗を砕けるはずがない。
 そう、ほくそ笑み――しかし、竜は口を開く。
「毒が来るぞ!」
 竜を視界に捉え続けるルイスが警告した。毒の霧は空気を伝い、周囲に満ちる。
 喉元で剣を振るう二人は、毒が放出されればまずそれを食らうだろう。

「そうはさせない」
 丈一は再び、木の陰から静寂なる雷を放ち、クエレブレの喉に杭を突き立てる。
「ガアアアアァァァ!」
 此度もまた、毒の放出は防がれた。――だが、竜は血走った瞳で正面の木を睨む。
 巨大な腕が、丈一の隠れる木の周辺を砕き払う。
「丈一さん!?」
「問題ない、俺は無事だ……が、隠れる場所がなくなったな」
 砕かれ、吹き飛ばされた木の陰から丈一が立ち上がった。
 クエレブレが暴れる周辺の木はことごとく腕や尻尾で払われ、もはや死角はない。
 かといって、これ以上離れれば射程範囲外だ。もう静寂なる雷は使えない。
「だが、良い兆候だ。乙女もそう思うだろう?」
「ああ。今の毒は、明らかに我らを遠ざけようとしての事。すなわち、この攻撃も無駄ではないということの証左だ」
 もし、乙女と八重の攻撃が全く効いていないとすれば、竜がわざわざ対処する必要もない。
 その事実に、剣を握る拳に力がこもる。
「畳みかけるぞ」

 先陣を切ったのは乙女だ。彼女は飛び上がると、渾身の力で逆鱗に黒椿の刃を叩き付ける。
 しかし、その攻勢は終わりではない。着地した彼女は、まるでそこに吸い込まれるかのように、寸分狂わず同じ個所に拳を叩きこんだ。
 その瞬間――蓄積された二人の斬撃が形となる。逆鱗に罅が走る!
「ガアアァ!?」
「まだだよ!」
 竜が暴れるのも臆さず、八重が踏み込む。同時に、その足には捻りが加えられ。
「いざ吹き散らさん、花旋風っ!!」
 回転する体から繰り出される螺旋の一撃。腕力と速度、回転。それらが合わさった二刀の衝撃は、逆鱗の罅を広げ、広げ――ついに、砕く!
「アアアアァァァァ――!?」
 ――馬鹿な。馬鹿な。馬鹿な。
 ――こんな小さな者どもに、我が鱗が。
 ――我が最強の鱗が。何物をも通さぬ堅牢が。
 絶対の信頼を置く鎧が砕かれたとき、竜は驚愕した。同時に恐怖した。
 ――ここで、負ける――ここで死ぬ――!?

「! 小さくなった! 今だよ!」
 クエレブレの体が縮んでいく。それは当然の帰結と言えた。
 絶対的な防御。それが拠り所となって、竜は今まで巨大であった。
 だが、鱗は破られた。ならば巨大化とは、ただ的を大きくする行為でしかないのだ。
「最後の仕上げだ」
 杭が飛ぶ。再び竜の意識から外れた丈一の杭は、寸分違わず砕けた逆鱗の下。露出した竜の肉に突き刺さる。
「グオオォォォ……!」
「これで……止めだ」
 その杭を、ルイスの銀腕が叩く。大槌のように変形した腕は、そのまま衝撃を杭に伝えた。
 叩かれれば自然、杭は沈む。それは竜の首の内側に。血管を破り生命を断つ。
「オオオォォ……オオオ……」
 呻き、そして項垂れる。クエレブレは最期まで彼らを睨むことをやめることなく息絶えた。

「……最後は修行にしては高難易度だったが、皆無事に乗り越えられて何よりだ」
「うむ、竜捕物に集団修練。実に充実した時間だったな! 八重、ルイス殿、それに丈一殿。本当にありがとう!」
「礼を言うのはこちらだ。実践も出来て良い修行ができた。……先生方、ありがとうございました」
 ルイスが礼儀正しく頭を下げると、それに釣られて八重も頭を下げた。
「ありがとうございました! それに……これからもよろしくお願いします!」
 竜の死体の傍らで、彼らは互いの健闘を称え合った。
 修行というにはやや厳しいものであったが、ともかく、大きな経験になったのは間違いない。
 この経験が、いずれ来る激戦の糧となるよう。
 猟兵たちは、カラム島を後にした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年09月27日


挿絵イラスト