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迷宮災厄戦⑲〜虚構より生まれる怪物

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #サー・ジャバウォック

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「諸君等の奮闘によって猟書家『サー・ジャバウォック』への道が拓かれた」
 煙立つ焼け焦げた森の国を映すグリモアベースで、バルモア・グレンブレア(人間の戦場傭兵・f02136)が猟兵達を出迎えた。
「サー・ジャバウォックはヒーローズアースを狙う猟書家だ。放置すればヒーローズアースに戦火が広がってしまうだろう」
 それぞれの猟書家は、他の世界を狙って暗躍している。このままでは平和になったヒーローズアースに災いが訪れるだろう。
「そこで諸君にはそれを阻止する為に、サー・ジャバウォックを討ってもらいたい」
 この任務を遂行できるのは猟兵だけだ。強敵である猟書家を討たねば世界の平和は守れない。

「サー・ジャバウォックは『書架の王』を除けば最も強いようだ。強敵であるだけに、しっかりと準備して戦いに臨まねば危険だ。敵は侵略蔵書『秘密結社スナーク』と青白き斬竜剣『ヴォーパル・ソード』」で武装している」
 両方とも人知を超えた能力を持つ武器だ。十分に警戒しなければならない。
「そして最も危険なのが、先制攻撃の能力だ。必ずこちらに先んじて攻撃を仕掛けて来る。これに対処しなければ、攻撃する間もなく倒されてしまうだろう」
 敵の先制攻撃によるユーベルコードを凌がなくては、反撃の芽さえ摘まれてしまう。
「戦場となるのは焼け焦げた森なので、邪魔になるようなものはない。存分に戦える。それは相手にも言えることだがな」
 黒焦げの木が残る程度で、殆どは焼き払われて黒焦げになった草木が残っているだけだ。戦うには支障のない場所だろう。

「猟書家を倒せば『オウガ・オリジン』が力を取り戻す。そんな難しい戦いだが、全ての猟書家を逃せば大変な事になるだろう。まずは一人目を確実に仕留めてもらいたい」
 説明を終えたバルモアが焼け焦げた戦場へと繋がるゲートを開いた。
「強敵中の強敵だ。だが仲間を信じ、己を信じろ。全力を尽くし力を合わせれば必ず道は拓けるはずだ!」


天木一
 こんにちは天木一です。猟書家の一人、サー・ジャバウォックとの戦いとなります! 勝利してヒーローズアースを守りましょう!

 強敵ですので難易度は高めになります。
 このシナリオは、1章だけで完結する戦争シナリオとなります。
 戦場は広く見通しも良い場所です。

 サー・ジャバウォックは必ず先制攻撃を行うので、それに対する対処法が必要となります。上手い対処法が用意されていればプレイングボーナスを得る事ができます。
 使ってくるユーベルコードは皆様が設定しているユーベルコードの種類(POW・SPD・WIZ)と同じものです。

 複数人で参加する方は最初にグループ名などをご記入ください。
 プレイングの締め切り日などは決まり次第マスターページにて。
 強敵である猟書家『サー・ジャバウォック』を全力で撃破しましょう!
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第1章 ボス戦 『猟書家『サー・ジャバウォック』』

POW   :    侵略蔵書「秘密結社スナーク」
見えない【架空の怪物スナーク】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    ヴォーパル・ソード
【青白き斬竜剣ヴォーパル・ソード】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    プロジェクト・ジャバウォック
【人間の『黒き悪意』を纏いし竜人形態】に変身し、武器「【ヴォーパル・ソード】」の威力増強と、【触れた者の五感を奪う黒翼】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●猟書家『サー・ジャバウォック』
 焼け焦げた臭いが煙に乗って漂う。無残に焼けて黒焦げになった草木がまだ火種を残してちろちろと燃えている。
「この気配……猟兵がこの地に訪れたようです」
 その黒焦げの大地に立っていた猟書家『サー・ジャバウォック』が、侵入者の気配に気付いた。
「ではこの書……『秘密結社スナーク』の性能を試す実験動物となって貰いましょう」
 サー・ジャバウォックが左手に持つ瀟洒な書を開く。
「これは、実在しない秘密結社スナークについて、その退廃的かつ猟奇的な全容を克明に記載した、完全なる虚構の創作物です。本書には一片の真実も無く、それ故に、人は本書から『実経験に基づく明らかな間違い』を見出すことができません」
 それゆえに人々は真実に辿り着けずこう思うだろう。

 ――スナークは実在するのでは?

「その疑念がやがて本物のスナークを生み出します。世界のあらゆるものはスナークになり得るのです」
 サー・ジャバウォックが悪戯っぽく口元に笑みを浮かべる。
「何を信じ、誰と戦うか……猟兵がスナークにどう抗うか、楽しみにさせて貰いましょう」
上野・修介
※アドリブ・連携・負傷歓迎

相手は強者。
チャンスはそう多くないだろう。

――為すべきを定め、心は水鏡に

「推して参る」

――先ずは観る

不可視だろうと実体があるなら動けば兆候があるはず。

視線と殺気から攻撃軌道とタイミングの予測、タクティカルペン投擲よる牽制と視線誘導、遮蔽物の利用、左右への緩急と地面を打撃することで急停止・急旋回による運足の偽装を以て、最短を行くのではなく、可能な限り被弾を減らすように間合いを詰める。

やや派手に動きながら周囲の灰や煤等を巻き上げ『目印』とし、その動きから『スナーク』の軌道を予測しカウンターで叩き落とす。

初撃を凌いだら懐に飛び込み、UCによる寸勁に続けてラッシュを叩き込む。



●剣と拳
「相手は強者。チャンスはそう多くないだろう」
 一瞬のチャンスを逃さないと、上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)は集中して敵に視線を定める。

 ――為すべきを定め、心は水鏡に

「推して参る」

 ――先ずは観る

 修介は慎重に敵に近づきながらその動きをじっと観察する。一挙一動、僅かな兆候も見逃すまいと、瞬きを忘れたように凝視していた。
「私に挑もうというその気概、この書を試すには丁度良い相手です」
 サー・ジャバウォックが左手に持つ書を開いた。
「スナークの力をお見せしましょう」
 見えない【架空の怪物スナーク】が野に放たれる。それは見えてはいないが確実に修介へと気配が迫っていた。
「不可視だろうと実体があるなら動けば兆候があるはず……」
 修介が足を止めて襲撃に備えて集中力を極限まで高めた。するとサー・ジャバウォックの視線が僅かに右に動いた。
「来る――」
 殺気を感じた修介が左に跳ぶと、先程まで立っていた場所で風を切るような音が聞こえる。そして脇腹に爪で裂かれたような浅い傷痕が走った。
「躱した、反撃に――」

 ――否、強敵相手に安易に考えるな

 サー・ジャバウォックが微動だにせず、本が開かれたままなのを観た修介が牽制にタクティカルペンを投げつける。すると透明の壁にぶつかったように弾かれた。
「まだそこに居る」
「ほう、気付きましたか。貴方を仕留めるまでスナークは追い続けます」
 修介が咄嗟に黒焦げの木の裏に隠れると、その木がスライスされるようにバラバラに切られた。だがそこには既に修介の姿はなく、右に左にと足を止めずに動き続ける。それを追う見えぬ怪物が焼けた大地に破壊の爪痕を刻んでいった。

 ――間合いを詰める

 不可視の攻撃を避けながらも、修介はサー・ジャバウォックとの距離を徐々に詰める。すると怪物の動きが激しくなった。巨大な肉食獣の爪のような斬撃が修介を掠め始める。それを緩急をつけた動きと、地面を殴ることで急停止したりと、工夫することで直撃を避けていた。
「見えなかろうと、そこにあるのならば――」
 修介は派手に回避運動を起こし、周囲の灰や煤を巻き上げる。するとそれを押し退けるように動く存在を確認できた。獣じみた人型の怪物がその鉤爪を振るった。

 ――観えた

 修介は爪をフックで横から殴りつけて逸らし地面を抉らせ、その脇をすり抜けてサー・ジャバウォックの元へと飛び込んだ。
「ほう!」
 驚嘆するサー・ジャバウォックの懐に入ると、密着状態から寸勁を腹に打ち込んだ。
「ぬっ」
 僅かに苦悶の声を漏らして動きを止めた敵に、修介は拳のラッシュを叩き込んだ。相手に何もさせぬまま決めようと、無呼吸のまま修介は拳を打ち続ける。

 ――このまま……!?

 だが鋭い殺気を感じ、身体を投げ出すように地面を転がる。するとその首が浅く切られ血が流れていた。
「見事、人の身でこれほどまでに体術を磨き上げるとは称賛に値します」
 いつ剣を振るったのか、サー・ジャバウォックは右手の『ヴォーパル・ソード』を振り抜いた状態で立っていた。その口の端から血が流れ落ちる。
 もう一度仕掛けられるかと修介が考えた時、背後からの殺気に横に飛び退く。すると地面が爪で抉られた。肌を刺すような殺気に不可視の怪物が戻った事を理解する。
「ここまでか、ならこいつを引き付けるとしよう」
 修介は獣の如き不可視の怪物の攻撃を避け、少しずつ距離を取ってサー・ジャバウォックから引き離した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オーガスト・メルト
やれやれ、武器に頼り切って振り回してるだけの相手なら楽だったんだがな。
さすがにそこまで甘くはないか…しかも斬「竜」剣とはね。
デイズ、ナイツ、【竜鱗飛甲】を召喚だ!『うきゅー!』『うにゃー!』

【SPD】連携・アドリブ歓迎
敵の先制攻撃を【見切り】、一撃目と二撃目を竜鱗飛甲で【盾受け】して受け流す。
最後の三撃目はランス化したデイズの【武器受け】で逸らす。

次の攻撃が来る前に【ダッシュ】で接近し、武器を【焔迅刀】に持ち換え、竜鱗飛甲を足場として利用しつつUC【竜神乱舞】による炎の【属性攻撃】を籠めた斬撃を敵に叩きこむ。

…ああ、お前も竜なのか?
なら、俺たちに狩られるのは必然だったな。


ユウキ・スズキ
年寄りを嬲る趣味は無いんだがな
(戦闘知識)
剣が武器なら攻撃は点か線。かつ、そこまでデカくなるならむしろ間合いに入ればもっとも素早く恐ろしい突きは意味がなくなる
振るう腕は変わらんのだからな
そして攻撃そのものは最大で3発
(切り込み、情報収集)
剣を巨大化する際の初手
この時ばかりは突きの可能性が高い
武器の切っ先に集中し、真横に回避、敵の間合いに斬り込む
横に逃げれば2撃目は薙ぎだろう
その場に伏せ回避
(地形利用)
最終撃は地面を抉るように再び薙いで来ると予想
攻撃の起点。つまり本体付近の地面にアンカーを打ち込んでUCを発動しつつ急接近
なに、刃物を持った敵の制圧など馴れている
さて、何発耐えられるか……見物だな



●斬撃を越えて
「やれやれ、武器に頼り切って振り回してるだけの相手なら楽だったんだがな」
 攻撃を受けても冷静な敵の動きを見て、オーガスト・メルト(竜喰らいの末裔・f03147)は溜息を吐く。
「さすがにそこまで甘くはないか……しかも斬『竜』剣とはね」
 竜騎士として厄介な相手だと思いながらも、オーガストは両肩に乗る相棒達に呼びかける。
「デイズ、ナイツ、【竜鱗飛甲】を召喚だ!」
『うきゅー!』
『うにゃー!』
 可愛らしい白と黒の竜達が鳴き声を上げると、陰陽二枚の夫婦盾『竜鱗飛甲』が召喚される。
「それで私の攻撃を防ぐつもりですかな? ふむ、試してみるとしましょう」
 そうサー・ジャバウォックが口にした瞬間、青白き斬竜剣『ヴォーパル・ソード』を巨大化させて振り抜いた。頭から叩き割るような一撃。それを竜鱗飛甲で受け止める。続く首を刎ねるような一撃を二枚目の竜鱗飛甲で防ぎ、さらに続く胸に突き入れる一撃を、ランス化したデイズを手にして受け流す。しかし逸らし切れずに左腕を抉られた。
「っ、最後にしくじったか……だけどこの程度なら問題ない」
 右腕は支障なく動くと、ランスを手放して紅い刀身の小太刀『焔迅刀』を抜き打つ。胸を薙ぐ一刀は、サー・ジャバウォックに届かない。
「私の剣を凌ぐとは、いやはや、侮っていたのは私の方のようですな」
 攻撃に失敗するや否や、サー・ジャバウォックはすぐさま飛び退いて間合いを開けていた。


「年寄りを嬲る趣味は無いんだがな」
 ユウキ・スズキ((自称)不審者さん【少尉】・f07020)は敵の老年といってもいい姿を見て、見た目通りなら戦う気も起きないが、他の猟兵との戦いからその戦闘力は本物だと油断なく戦闘態勢に入る。
「剣が武器なら攻撃は点か線。かつ、そこまでデカくなるならむしろ間合いに入ればもっとも素早く恐ろしい突きは意味がなくなる」
 死中にこそ活路があると、ユウキは前に駆け出して間合いを詰める。
「攻撃は最大で3発……なに、刃物を持った敵の制圧など馴れている」
 ユウキは敵の攻撃を想定しながらしっかりと挙動を観察する。
「ほう、決死の特攻ですか、ならばこちらは近づかせなければ勝ちということです」
 サー・ジャバウォックが巨大なヴォーパル・ソードで突き放すように刺突を行う。リーチを最大に活かした一撃が避けにくい胴を狙う。
(予想通り初手に突きが来たな)
 冷静にユウキは横に跳び退いて必殺の一撃を逃れる。
「ほう、ではこれはどうです?」
 続けてサー・ジャバウォックが大剣を横に薙ぐ。それも予測していたユウキは伏せて回避した。
「これも躱しましたか、では次です」
 サー・ジャバウォックは大剣を振り上げ、伏せるユウキを地面ごと断ち切る勢いで振り下ろされる。
「最後で読み違えたか」
 再び薙ぎ払いで来ると予想していたが、上段からの振り下ろしが迫る。それでもユウキは落ち着いて地面を転がって避けながら、敵の足元に左腕義手に内臓されたアンカーを撃ち込んだ。そこで敵の大剣が地面に叩きつけられ、衝撃波が巻き起こって土塊と共にユウキは吹き飛ばされる。

「最後まで直撃を回避しましたか、中々やるものです。しかし今ので動きは覚えました。次は外しません」
 斬撃の後は土煙が巻き起こり黒い地面が大きく抉れてクレーターが出来ている。ここで仕切り直しと、サー・ジャバウォックが連撃を止める。
「命懸けの戦場に次なんてものはねぇんだよ」
 土煙の中をユウキが突っ込む。吹き飛ばされそうになるのをユーベルコードを発動して高めた怪力でアンカーを引っ張って堪え、逆に力任せに強引に前へと突っ込み急接近して腹を義手で殴りつけ、近接戦へと持ち込んだ。
「ぐっ、これは老骨には堪えますね」
 サー・ジャバウォックはよろめきながら後退し、自然と剣の間合いに戻そうとする。だがそれを許さぬようにユウキが踏み込み今度は顔面を殴りつけた。
「さて、何発耐えられるか……見物だな」
 硬い義手による乱打を浴びせ、反抗する間も与えぬ連撃は敵を一方的に痛めつける。
「これは、何とも、厄介、な」
 サー・ジャバウォックが剣でガードしようとするが、それを巧みに躱しユウキが休みなく身体の何処かを殴りつける。
「隙を見せたな」
 サー・ジャバウォックが抗おうとして、がら空きになった脇腹に左拳を打ち込む。メキメキと骨が折れる手応え。サー・ジャバウォックの身体が崩れ落ちる。だがユウキは敵の冷静な視線に気付き、怖気を感じて後ろに跳ぶ。下から掬い上げるような剣の一閃が放たれた。地面を切り裂き股から頭までを断ち切るような一撃。避けきれぬとユウキは左腕で受け、剣の勢いを利用して後ろに吹き飛ばされることで間合いを取った。
「年寄りとは思えないタフさだな」
 ユウキは今の一撃で左腕が動かなくなったのを隠しながら、何気ない調子で話しかける。
「人の身でありながら私をここまで追い込んだのは見事。ですが勝つのは私です」
 サー・ジャバウォックが踏み込み仕留めようと剣を振りかぶる。


「竜から逃げられると思うな」
 そこへオーガストは竜鱗飛甲を足場にして宙を飛ぶように敵に向かい、ユーベルコードを発動し加速した。そして盾や作り出した足場を蹴って跳ね返る球のように立体乱反射攻撃を開始する。
「これは、速い」
 上からの斬撃をサー・ジャバウォックは剣で受け止め、横から首を狙う斬撃を剣で弾く。そして正面から胸を狙う突きを剣で弾き上げた。
「私の真似ですかな、ならばここから反撃しましょう」
 サー・ジャバウォックが一刀両断するように剣を振り下ろす。だがそこには既にオーガストの姿は無く。背中から痛みが走った。
「真似じゃない、その上を行かせてもらった」
 振り返れば背後に回ったオーガストが焔迅刀を背中に突き入れていた。
「何と見事な、竜翼が無ければ致命傷を受けていたかもしれません」
 サー・ジャバウォックの背から生える竜の片翼を貫いたことで刃が勢いを弱め、心の臓まで届かなかった。
「……ああ、お前も竜なのか? なら、俺たちに狩られるのは必然だったな」
 オーガストは敵の背を蹴って焔迅刀を抜いて、また跳ね返るように足場を蹴ってまた立体攻撃を続ける。
「見事な軽業。しかし一度見れば対処は可能です」
 サー・ジャバウォックが剣を一閃し、オーガストの足場を吹き飛ばし、バランスを崩したところに斬撃を浴びせる。それを焔迅刀で受け止めるが、空中では勢いを殺せずにバランスを崩す。そこへ逃れようのない一刀が振り下ろされる。だがその一撃は外れて地面をざっくりと斬り裂いた。
「ここは退くとするか」
「狩り損ねたか……」
 剣の腹を右手で殴りつけて軌道を逸らしたユウキが反撃が来る前に駆け出し、オーガストも反対方向へと戻した竜鱗飛甲を蹴って飛び退いた。
「ふむ、引き時も弁えている。一流の戦士が集まっているようです」
 その後姿を追わず見送り、サー・ジャバウォックは強者との戦いを愉しんでいた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

黒影・兵庫
【蜂皇族】
ヒーローズアースが再び戦禍にさらされるようなこと
あってはなりません!
必ずここで奴を倒します!
(「細身だけどバリバリの武闘派よ!気を付けて!」と頭の中の教導虫が警告する)
はい!せんせー!
いくよ!クロリア!

●防御
クロリアと同じ『ダンス』をして動きを同調させ『第六感』で敵の攻撃を察知し『オーラ防御』壁と『衝撃波』による迎撃で防御しつつ敵の注意がクロリアに向いていたら{錨虫}を『念動力』で操作し攻撃の邪魔をする

●反撃
クロリアのUCで奴の動きが鈍くなったらUC【蟷螂の鋸】を発動します!
(両腕が回転鋸の蟷螂が召喚される)
伐採兵さん!皆さんの鋸に『呪詛』を付与したので奴に向けて一斉射してください!


播州・クロリア
【蜂皇族】
表面は静かに燃える炎ですが内側は嵐のように荒れ狂っている
そんなリズムです
思わず身震いしてしまいますが
ここで退くつもりは毛頭ございません
えぇ、あにさん、いきましょう。
(目を閉じ、すっと手を真横にピンと伸ばすと{絢爛の旋律}で『ダンス』を始める)

●防御
黒影と同じ『ダンス』をして動きを同調し『催眠術』による認識阻害で生んだ『残像』で攻撃を回避しながら敵の注意が黒影に向いていたら{絢爛の旋律}で生み出した光と『衝撃波』をぶつけ攻撃を邪魔する

●反撃
ところでダンスは好きですか?
戦争よりダンスがリアですよ
今この瞬間だと特に
(UC【蠱の宴】を発動し敵の動きを遅くする)



●リズムに乗って
「ヒーローズアースが再び戦禍にさらされるようなことがあってはなりません! 必ずここで奴を倒します!」
 黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)は決してヒーローズアースには行かせないと気合を入れて老紳士風のオブリビオンを見た。
「表面は静かに燃える炎ですが内側は嵐のように荒れ狂っている、そんなリズムです」
 敵の見た目ではなく、その内から響く色とリズムを播州・クロリア(リアを充足せし者・f23522)は感じ取る。
「思わず身震いしてしまいますが、ここで退くつもりは毛頭ございません」
 嵐を前にしたように身体は逃げろと訴えかける。だがそれを強い意思で抑え込み、クロリアは天を焼くような炎の嵐に見立てた敵に立ち向かう。
(細身だけどバリバリの武闘派よ! 気を付けて!)
 頭の中の教導虫も兵庫に強く警告した。
「はい! せんせー! いくよ! クロリア!」
「えぇ、あにさん、いきましょう」
 兵庫は大きな声で返事をするとクロリアに呼びかけ、クロリアは目を閉じ、すっと手を真横にピンと伸ばすと『絢爛の旋律』でダンスを始める。それに合わせて兵庫も踊り始め、共に楽しそうにダンスしながら戦いに挑む。

「ほう、ダンスですか。私の脅威を察しているようですが、それでも踊り続けられますか。それが勇気か蛮勇か、見せて貰いましょう」
 サー・ジャバウォックが『ヴォーパル・ソード』を大剣に変えて、一太刀で二人を纏めて両断しようと横に振り抜いた。
「荒れ狂う炎。攻撃のリズムです」
「了解です!」
 轟々と燃える炎のリズムを察知したクロリアが声をかけて、兵庫と二人で息を合わせてダンスをして敵を惑わし、残像を残す激しい動きで屈んで攻撃を躱した。
「ほう、ならばこれはどうです」
 屈んだところへサー・ジャバウォックは地を薙ぐような斬撃を放つ。
「次が来ます。跳ねるようなダンスです」
「こうですね!」
 クロリアと兵庫が同時に飛び跳ね、斬撃を飛び越した。
「面白いですね、舞踊で私の攻撃を避けようとするとは、ではこれで最後です」
 愉快そうに笑みを浮かべ、サー・ジャバウォックが烈火の如き斬撃を上から振り下ろした。その一撃はクロリアを狙う。
「あにさん、私が引き付けます」
 狙いにいち早く気付いたクロリアは『絢爛の旋律』で生み出した光と衝撃波をぶつけ攻撃を防ごうとする。
「手伝います!」
 兵庫も衝撃波を放って大剣にぶつけて勢いを削いでいく。
「これならば――」
 剣速が落ちるとクロリアは剣の軌跡に巻き込まれないようにステップする。だがサー・ジャバウォックの大剣はクロリアを追うように踏み込んだ。
「させません!」
 兵庫が横から錨となった錨虫を念動力で操り大剣の腹にぶつけて軌道を逸らすと、全てを叩き切る刃はクロリアの横の地面を抉った。だがそれと同時に放たれる衝撃波がクロリアと兵庫を宙に飛ばした。

「うわっ! 外れてもこの威力ですか!」
 空中で兵庫は目を丸くして驚きながら地上の敵を見下ろす。
「ですが初撃の直撃は避けられました。ここから反撃といきましょう」
 クロリアは宙でくるりと回転すると着地し、軽やかにステップを踏む。
「ところでダンスは好きですか? 戦争よりダンスがリアですよ。今この瞬間だと特に」
 クロリアが楽しそうに踊り出し、ユーベルコードを発動して軽快なダンスが旋律を生み出す。それは踊りを楽しまぬものに負荷を掛ける効果を持っていた。
「これは……身体の動きが鈍い?」
 するとサー・ジャバウォックの動きが鈍くなり、身体を重そうに動かして怪訝な顔を浮かべた。
「チャンスです!」
 同じく踊りながら兵庫もユーベルコードによって両腕が回転ノコギリの蟷螂の群れを召喚した。
「伐採兵さん! 皆さんの鋸に『呪詛』を付与したので奴に向けて一斉射してください!」
 蟷螂が両腕を上げて回転ノコギリを高速回転させ、振り下ろしてノコギリを射出した。
「む……これでは避けきれませんね」
 動きの鈍ったサー・ジャバウォックは回避を諦め、剣を盾にして受け止める。だが無数の蟷螂の群れが四方に回り込んでノコギリを放ち、防ぎ切れずに身体のあちこちを負傷していった。傷口は浅いが、そこから黒く呪詛が侵食していく。
「成程。そのダンスがキーとなっているようですね」
 攻撃を捌きながら冷静に観察していたサー・ジャバウォックが、剣を大きくしてクロリアへと突きを放つ。
「気付かれてしまったようです」
 クロリアはそれを仰け反ってブリッジするように躱し、バク転してそこからダンスを繋げる。しかし僅かな間、ダンスが途切れた。
「一太刀振るう間があれば十分です」
 その一瞬だけ動きが戻ったサー・ジャバウォックが大剣を薙ぎ払った。剣の刃ではなく腹を向け、まるで鉄の壁が迫るように襲い掛かる。
「危ない! 伐採兵さん! 援護をお願いします!」
 兵庫の声に従い蟷螂達が一斉に大剣に回転ノコギリをぶつける。ガリガリと音を立てて削ろうとするが、逆にノコギリの方が削れていった。それでも数が当たれば勢いは弱まり、少しの間が出来る。その間にクロリアと兵庫は高く跳躍し、迫る大剣の攻撃を逃れた。

「危なかったですね!」
「はい、しかしこれでは戦闘継続は難しそうです」
 兵庫とクロリアが無事に着地するが、既に敵は体勢を立て直し、ダンスの効果も途切れていた。一度見せた手は二度は通じないだろう。
「ダメージは与えましたし、後は他の人に任せましょう!」
「えぇ、そうですね。では次の方に引き継いでもらいましょう」
 二人は衝撃波をぶつけ、その間に間合いを開けた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ベイメリア・ミハイロフ
スナーク…それがいるとしたならば
サー・ジャバウォックが作り上げたというだけのもの
そういう事なのでは…
とにかく、わたくしは、スナークになるつもりは毛頭ございません

3回攻撃をされるならば、3回回避・捌き、受け止めを
五感を奪うならば、第六感を使用するまででございます

激痛耐性・呪詛耐性を活用しつつ
ダッシュ・フェイントで牽制しながら
初撃はどこから来るのかを第六感・野生の勘
可能であれば絶望の福音も加え見切り回避を
不可であれば体全体にオーラ防御を施しつつ
方向を見切り武器受けにて受け止めます

受けきれなかった場合もそこからカウンターを狙います
早業・高速詠唱からの2回攻撃を狙いながら、破魔を乗せた全力魔法で攻撃を


愛久山・清綱
貴方がジャバウォック卿。いきなりで申し訳ないが
その書は戦乱を呼ぶ禁忌の書だ。
故に如何なる手を用いてでも討たせて貰う……覚悟。
■決
二刀流で戦うぞ。右手に『心切』、左手に『空薙』。

■闘
あの巨大な剣を無理に避けようとするのは、危険を伴いそうだ……
戦闘時は常に【野生の勘】を巡らせ敵の動きを警戒しよう。

振るってくる剣の軌道を【見切り】つつ、その一撃を【怪力】を
用いた二刀の【武器受け】で弾きつつ凌ぎきる。
万一受けそうになったら、一刀手放してでも逃れるぞ。

三撃受け止めたら此方の番。
残った刀を瞬時に構えジャバウォック目掛けて神速の
【薙鎌】を放ち、全身を風の刃で切り裂いてやろう。

※アドリブ歓迎・不採用可



●竜人
「スナーク……それがいるとしたならば、サー・ジャバウォックが作り上げたというだけのもの。そういう事なのでは……」
 ベイメリア・ミハイロフ(紅い羊・f01781)はスナークという存在について考え、敵が生み出しただけの怪物なのではと推論を口にした。
「とにかく、わたくしは、スナークになるつもりは毛頭ございません」
 怪物になるのは遠慮しますと、ベイメリアは切先のない剣を模したメイスを手に戦いに挑む。
「強い。猟兵とはこれほどの使い手の集団でしたか。ならばこちらも本気を見せるのが礼儀でしょう」
 サー・ジャバウォックの身体が黒い霧のようなものに包まれる。

 ――コロセコロセコロセ
 ――ニクイ、アア、コロシテヤリタイ

 それは人々の悪意の塊だった。それをサー・ジャバウォックが纏うと、その身体が竜の鱗に覆われ、顔も竜に近しいものへと変化し、竜人へと変身した。
「さあ、私の本気をお見せしましょう」
 サー・ジャバウォックが黒翼を広げて低空を飛翔し、ベイメリアへと『ヴォーパル・ソード』で斬り掛かる。
「3回攻撃をされるならば、それぞれに回避・捌き、受け止めを。五感を奪うならば、第六感を使用するまででございます」
 敵の情報は得ている。ならばそれを受け切るだけだと、ベイメリアは正面から迫る敵に構える。
「防げるものなら防いでみなさい」
 飛んですれ違いながらサー・ジャバウォックが首を飛ばすような斬撃を放つ。それをベイメリアは頭を下げて躱す。そして振り向いてメイスを構えると、すぐ目の前に反転して敵の姿があった。振り下ろされる斬撃をメイスで受け流し、次の攻撃に備える。だがその視界がぐにゃりと歪む。先の攻撃の時に敵の黒翼が触れていたのだ。五感が狂う感覚に自分が立っているのかも分からなくなる。
(次はどこから……)
 視覚を失ったベイメリアが暗闇の中に閉じ込められているような感覚でいると、光が差すように、胸元のクロスが左方向へと揺れた映像が脳裏に浮かんだ。
(そちらです!)
 その勘を信じてベイメリアがメイスを左に向ける。するとそこにガツンッと強い衝撃が襲い、ベイメリアの身体は吹き飛ばされた。
「ほう、見えていないはずですが、偶然……否、直感の類でしょうか」
 必殺の一撃を受けられ、サー・ジャバウォックは驚きを顔に浮かべた。そして止めを刺そうとベイメリアの元へと向かおうとする。しかしその前に人影が割り込んだ。


「貴方がジャバウォック卿。いきなりで申し訳ないが、その書は戦乱を呼ぶ禁忌の書だ」
 割って入った愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)が、敵の持つ豪華な装飾が施された書に鋭い視線を向けた。
「故に如何なる手を用いてでも討たせて貰う……覚悟」
 そう言い放ち、清綱は右手に『心切』、左手に『空薙』の二刀を抜き放って二刀流の構えを取った。
「ほう、この書の危険性をよく分かっているようですね。ですがこの書は私の目的に必要なものです」
 対して竜人サー・ジャバウォックは右手でヴォーパル・ソードを構えた。両者とも剣の間合いには入っていない。だが清綱は既に間合いに入っているように緊張し、汗を流して出方を待っていた。
「剣の勝負です。私の剣を受けられますか」
 ヴォーパル・ソードが一瞬にして巨大化する。その長さは既に清綱を間合いの内に捉えていた。
 袈裟懸けに振り下ろされる刃を、清綱は刀を振るって弾いて軌道を逸らした。するとすぐさま横薙ぎの一線が胴に迫る。それを今度は二刀をクロスして受け止める。押し切られそうになるのを全身の力を込めて、地面に足を食い込ませながら耐えた。
「ほほう、ではこれでどうです」
 今までよりも速い斬撃。下から地面を切り裂き掬い上げるような大剣が迫る。
(速い!)
 考えるよりも身体が先に反応し、清綱は下に向けて二刀を構えていた。そこへ刃が辺り、清綱の身体が上へと持っていかれそうになる。そこで清綱は逆らわず横に倒れ込むように力を逃し、大剣は左手に持っていた空薙を宙へと弾き飛ばしていた。
「私の連撃を見事に躱しましたか」
 連撃と止まり、くるくる回転した刀が地面に突き刺さる。
「今度は此方の番だ」
 清綱は心切を両手で握り、神速の一太刀を振り抜いた。斬撃は風の刃となって放たれ。間合いの外にいる敵へと一瞬で届く。不可視の刃。しかしサー・ジャバウォックはそれに反応して剣を盾にする。
「これは風を刃にしているようですね」
「反応したのは流石だが、風を防ぎ切るのは不可能だ」
 清綱の放つ風の刃は曲線を描き、大剣の盾を迂回して敵の左腕をざっくりと切り裂いた。
「風の刃で全身を切り裂いてやろう」
 目にも留まらぬ速さで幾重にも清綱が刀を振るい、無数の風の刃を放った。それが手足だけでなく背中にも竜の鱗を割って裂傷を刻む。
「剣の腕だけでその域に至るとは見事なものです。では私も稚拙ながら剣の技をお見せしましょう」
 サー・ジャバウォックが大上段に大剣を構える。
「剣とは相手を倒すためのもの。ならば一太刀で倒すのが最も効率が良いはずです」
 そして真っ直ぐ剣を振り下ろした。大剣は大地に叩きつけられ、爆発のような衝撃波を起こす。それは風の刃を吹き飛ばし、危険を察知し刀で身を護ろうとした清綱をも後方へと薙ぎ払った。


「こほっこほっ、何とか初撃は防ぎました」
 地面を転がり巻き起こる砂埃の中で咳き込んだベイメリアは、倒れながらも耐性によって感覚の戻った目で敵の姿を捉える。
「次はわたくしの番です」
 ベイメリアが敵を指さす。すると天から一筋の光が降り注ぎ、竜人の身体に直撃した。
「これは、ぬぅっ、光の魔法ですか」
 一瞬動きを止めたサー・ジャバウォックがベイメリアへと視線を向ける。そこへ連続してもう一発の光が空から落ちて来た。それをサー・ジャバウォックは剣で受け止めた。
「驚きました。もう感覚が戻っているようですね」
 油断なく剣を構え、一太刀でベイメリアを仕留めようと翼を広げ地を蹴った。

「させん!」
 そこへ矢のように翼を広げて飛び込んだ清綱が刀を振り下ろした。それを受けるサー・ジャバウォックを地面に押し戻す。
「直撃でなくともあの衝撃波を受けて戻るとは、猟兵とは想像を超える強さを持っているようです」
 サー・ジャバウォックは振り下ろされる刃を巧みに受け流し、体勢を崩して下から胴を斬り上げようとする。
「危ない――!」
 その斬撃が繰り出される前に、ベイメリアの放った炎の魔法が敵に当たる。一瞬サー・ジャバウォックの意識がベイメリアへと向けられる。その隙に着地した清綱は本を持つ左手に向けて刀を振り下ろす。しかしその刃は青き剣によって阻まれた。
「残念でしたね、こちらを狙ってくるのは分かっていました」
 サー・ジャバウォックが刀を巻き上げるように弾き上げ、清綱の手から刀が飛んで行った。
「これで終わりです」
 無造作にサー・ジャバウォックが清綱の首を落とそうとする。
「否、まだ終わってはいない」
 身を低くした清綱は地面に刺さっていた空薙を抜き、下から斬り上げて左腕を斬る。斬撃は鱗を破り肉を断ち骨に達する。だがガキッと金属を切ったような音と共に硬い手応えが返る。
「まさか剣で私の骨を欠けさせるとは……本当に驚かせてくれますね」
 サー・ジャバウォックは驚いたと顔を歪ませ、楽しげに笑みを浮かべて剣を振り抜いた。斬撃を剣で受け止めた清綱はふっ飛ばされ、遅れて届く衝撃波はベイメリアも一緒に間合いの外へと追いやった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

御剣・刀也
遠距離戦もできるのか
遠、近、中と隙は少なさそうだ
こういうオールラウンダーは厄介だな。ま、それでも俺のやることは変わらない
前に出て、斬り捨てるだけだ

侵略蔵書「秘密結社スナーク」による遠距離攻撃が先にやってくるのはわかっているので、勇気で被弾を恐れず、ダッシュで一気に間合いを詰め、避けれるものは第六感、見切り、残像で避けつつ、避けきれないものは武器受けで弾き、一気に距離を詰めて、捨て身の一撃で斬り捨てる
「近付く迄は苦労したが、ここは、俺の距離だ!」


鞍馬・景正
不可視の怪物――何と厄介な。
ですが恐怖に囚われては向こうの思う壺。

臆せず、侮らず進みましょう。


足音を殺して森を進み、全方位を警戒。
特に視界の及ばぬ後方には耳を澄まして。

己以外の発する物音は無いか、焼けた草木以外の匂いは混ざり込んでいないか。

見えずとも何かの移動し、迫る気配など【第六感】も信じて感知に集中。

少しでも違和感を覚えれば、その場から緊急退避するか、斬撃の【衝撃波】を四方に放ち索敵代わりに。

何かいると確信出来れば、その方向に徳利の酒を浴びせ、空中に滴る液を目印に。
【怪力】の限り【鞍切】を打ち込み、退けさせて頂く。

ジャバウォック殿を補足すればそのまま斬り込み、動きを【見切り】つつ一閃を。



●不可視の怪物
「手強い敵がまだまだ居るようです。短期決戦といきませんか」
 サー・ジャバウォックは竜人化を解き、長期戦に備えて力の浪費を抑えた。
「遠距離戦もできるのか、遠、近、中と隙は少なさそうだ」
 敵の戦い方を遠目に観察していた御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)は、その隙の無い冷静な戦いぶりに強敵だと認識する。
「こういうオールラウンダーは厄介だな。ま、それでも俺のやることは変わらない。前に出て、斬り捨てるだけだ」
 刀也は不屈の獅子の様に煌く刀『獅子吼』を抜き放った。
「ふむ、次の相手は貴方ですか、愉しませて貰いましょう」
 狂暴な笑みを浮かべたサー・ジャバウォックが左手に持つ本が、勝手に開いてページが捲れていく。
「先程の戦いで秘密結社スナークが猟兵を追いかけていったままのようだが……」
 刀也はぞわっとした殺気を肌で感じ取る。
「一体だけの訳がないということか」
 目には見えないが本から何かが出現したのが感じられる。
「スナークは人の数ほど存在する……新たなスナークの力を堪能してください」
 サー・ジャバウォックの言葉に従うように、見えない怪物は刀也へと忍び寄る。
「見えないからと恐れていては不利になるだけだ」
 心に生まれる恐れを勇気で塗り替え、刀也はサー・ジャバウォックに向かって駆け出す。
「不可視の怪物が居ると知りながら前に出る。勇敢な戦士です。ならばこそ倒す価値があるというもの」
 サー・ジャバウォックの視線が下がる。その瞬間、刀也の第六感が危険を知らせるようにゾクッと背筋に氷でも当てたように冷たい感覚が走る。その予感に従って刀也が跳躍した。すると風切り音と共に何かが足元を通り過ぎ、地面を穿ち小さな穴を開けた。
「気配を近くに感じない……飛び道具の類か!」
 その攻撃から見えない飛び道具だと推測し、刀也は残像を残して移動して敵を惑わす。そしてサー・ジャバウォックへと距離を詰めようとした。
「正解です……半分は」
 サー・ジャバウォックがそう告げた瞬間、刀也は頭上からの殺気に気付き刀を上げた。すると衝撃と共に金属がぶつかり合う音が響く。
「さっきとは違う? ナイフの類か……2体いるのか!」
 思い切り刀也が刀を振り抜くと、軽く小さな見えない何かが遠退くのを感じた。だがその次の瞬間、横手から何かが飛来し、太腿に突き刺さった。
「これは、矢傷か。ナイフ使いと弓使いか、厄介な連携だ」
 見えていれば躱すのは容易いだろう。だが見えぬ敵相手の攻撃を凌ぐのは難しい。僅かに刀也の動きが鈍る。そこへまた小さな気配が近づいて来るのを察すると、刀を振るって追い払い、そして返す刀で新たな見えぬ矢を弾き返した。


「不可視の怪物――何と厄介な。ですが恐怖に囚われては向こうの思う壺」
 足を音を殺した鞍馬・景正(言ヲ成ス・f02972)が、焼け焦げた森の中を慎重に進み敵の背後へと近づいていた。
「臆せず、侮らず進みましょう」
 見えぬ敵という恐るべき怪物が相手でも、己を保ち意思の力で歩を進める。
「後方からも来ましたか。挟撃という訳ですね」
 サー・ジャバウォックが振り返ってちらりと視線を向ける。すると何かの気配が動いた。
「これは――足音か」
 景正が息を殺して耳を澄ますと、軽い足音がこちらに向かって来るのに気付いた。
(足音が軽く歩幅が短い……小型の敵か)
 音から見えぬ敵を推測し、景正は刀『濤景一文字』を抜刀して正眼に構えた。するとこちらに向かって来る足音が途絶える。
「上か!」
 途絶える直前に地を強く蹴った音を察知し、すぐさま景正は刀を上方に斬り上げる。すると刃にカキンッと金属のようなものが当たった音がして、見えぬ小さな怪物は背後に着地した。
「やはり小さい、ならばここだ!」
 身長30cmほどを想定して、景正は振り向きながら低く刀を薙いだ。するとまた金属がぶつかる甲高い音と共に何かが吹き飛んで木にぶつかった。そこへ景正は徳利の酒を浴びせかける。すると水分が宙に浮かび、背の曲がった小柄な人型をした怪物の姿が浮かび上がった。
「そこか、このまま斬り――」
 景正が踏み込もうとしたところで、風切り音に気付いて身を引いた。すると先ほどまで立っていた場所を透明な何かが通り抜け、木に突き刺さって穴を穿った。
「他にも不可視の怪物がいたか。この傷痕は……矢か」
 弓を扱う景正は木に出来た痕跡と羽音からすぐさま見えない矢による攻撃だと気づいた。そこへまた新たな矢が飛来する。
「見えずとも矢だと分かれば避けるのは容易い」
 黒焦げた木を盾にして矢を防ぎ、景正はもう一方の小さな敵へと意識を向ける。だがその姿は酒の臭いと共に消えているのに気付き、すぐさま駆け出した。


「気配を感じない……向こうへ行ったか!」
 見えない敵の気配がなくなったのが罠かと警戒していた刀也は、反対側が騒がしくなったのに気付いて罠ではなく手薄なのだと悟った。
「この機を逃しはしない!」
 脚の負傷など気にせず、血を流しながら駆け出す。そしてサー・ジャバウォックへと接近した。
「近くに居ないのを気付かれましたか、ならば貴方の相手は私がしましょう」
 サー・ジャバウォックが右手の青白き剣『ヴォーパル・ソード』をすっと構えた。
「近付く迄は苦労したが、ここは、俺の距離だ!」
 刀也は上段に構えた刀を振り下す。守りなど念頭にはなく、ただ必殺の一太刀を浴びせる。それをサー・ジャバウォックは剣で受け止めようとするが、刀也が全身の力を乗せて押し切り、刃は左肩に深く食い込んだ。そのまま心臓にまで達そうとしたところで、ぷんと強い酒の匂いが漂った。
「そんな酔っ払いのように酒の匂いをさせてたらバレバレだぞ」
 刀也が片手を柄から離し、手に霊剣を生み出して一閃する。その刃はしっかりと手応えを返し、酒に濡れた小さな不可視の怪物を両断していた。
「私にこれだけの負傷を与え、さらにスナークまで屠りましたか、見事です」
 力が弱まったところでサー・ジャバウォックは刀を押し戻す。そして称賛の言葉を送った。そうして意識を自分に引き寄せていると、風を切り裂く羽音が響く。飛翔した矢は、刀也の横の何もない宙に突き刺さった。

「放たれた矢の刺さり方を見れば、射手がどこに居るのか辿るのは難しくない」
 剛弓を射た景正は刀に持ち替え、駆けて間合いを詰めると見えぬ敵を両断した。弓の腕をした細身の人型の怪物が霧散する。
「ふむ、私を攻撃して油断したところを仕留めるつもりでしたが、失敗ですか」
 サー・ジャバウォックは剣を振るって霊剣で受け止める刀也を吹き飛ばす。そして景正へと返す剣で斬り掛かった。
「見えぬ敵よりも恐ろしく感じるな――」
 目の前に居るのは老紳士。だがそこから放たれる殺気は不可視の怪物に勝るものだった。それでも引かずに景正は前に踏み出す。放たれる袈裟懸けの斬撃を刀で受け流し、すれ違いながら胴を薙ぐ。
「だが剣が通じる相手なら、斬るだけだ」
 そして景正が反転すると、今度は背中に切りつけた。そのあらゆるものを断ち切る鋭い剣閃は、割り込んだ竜の尾に阻まれる。硬い鱗を砕き、そのまま肉に達して骨を断つ。渾身の一刀は尻尾を中ほどから切断して地面に落とした。
「なんと、私の尾を断つとは……最早格下と侮る訳にはいきません」
 今まで攻撃を受けながらも穏やかだった老紳士の目元が鋭さを帯び、サー・ジャバウォックは振り向きながら剣を薙ぎ払った。
「手負いにしてしまったか」
 景正は剣の間合いを計りその外に出る。だが剣から放たれる衝撃波が飛ぶ斬撃のように浴びせられ、景正の身体を弾き飛ばした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アレクサンドル・バジル
【Ahnenerbe】で連携

実験動物ねぇ……いいぜ。存分に試すがいいさ。
サーが望んでいる結果が得られるかは保証できねーけどな。

先制対策POW
スナークが何であれ、今この場で俺を襲うという事実は揺るがない。
なら、どうとでもなるさ。
感覚を研ぎ澄ましスナークの悪意、殺意、また空気の動きを第六感で見切り、魔力を込めた拳のカウンターの一撃で破壊します。

破壊と同時に『戦闘モードⅠ』を発動。高速飛翔で間合いを詰め、ステゴロによる怒涛の攻めを行います。
決め技は灼熱の炎を纏った拳による突き。
(属性攻撃:炎×貫通攻撃×怪力)

サー、楽しめたかい? 俺は楽しめたぜ。


御狐・稲見之守
【Ahnenerbe】連携
ふふ、面白い書ではないか。
ヒトの想いは虚より実を産み落とす――ゆえに祈り願われるカミ、想いを喰らふモノノ怪在り。虚と実、夢と現つの境界なぞ儚いものよ。

[第六感]神通力の天眼を持つ狐が五感を奪われた程度ではナ。[結界術]を以て剣を防ぎ、彼奴が我に剣を穿つならその黒き悪意――[呪詛]を[捕食]し、[生命力吸収]で精気を啜ろう。

[UC夢と現つの水面]――『スナークは、実在しない』
夢と現つを分かつ水面に立つ者としてこれを定めむ。ふふっそんな本捨てて、殴り合いをする方が楽しかろうに。

――そして、想いの力は疑念から化物を生み出すことも、夢から虹を掴むこともできるのさ。


霧島・絶奈
【Ahnenerbe】で連携

◆心情
当人の想像こそが最恐を創造するのだとか…
故に疑心暗鬼は厄介と言えます

◆行動
敵先制攻撃対策として【各種耐性】を高めた【オーラ防御】を球状に展開
強化された剣戟ならいざ知らず、触れるだけの黒翼で我が護りを貫けると自惚れられては困ります
そして触れられなければ無意味です

加えて【罠使い】の技を活かし「浮遊機雷」を【衝撃波】に乗せて周囲に散布
罠の領域で接近自体を牽制

先制攻撃対処後は【範囲攻撃】する『DIABOLOS LANCER=Replica』で【二回攻撃】
一撃目は自身や味方の足元に打ち込み強化
続く二撃目に【マヒ攻撃】を追加
本命の攻撃手段とします

負傷は【生命力吸収】で回復



●猟兵の力
「数体倒れたところで問題はありません。まだまだ秘密結社スナークは存在します。いえ、これからも人の疑念によって増え続けるのです」
 魔力を集めて傷の止血をしたサー・ジャバウォックが、手にする書からまた不可視の怪物が出現させた。
「さあ、虚構の怪物スナークの実験動物となって誰が犠牲になってくれるのかな」
 虚構より生まれた怪物が潜む焼けた森は、濃厚な死の香りに包まれる。

「実験動物ねぇ……いいぜ。存分に試すがいいさ。サーが望んでいる結果が得られるかは保証できねーけどな」
 口の端を上げてアレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)は不敵な笑みを浮かべる。その金の瞳は油断なく深手を負って血を流しても冷静さを失わない老紳士を見ていた。
「ふふ、面白い書ではないか」
 怪物を生み出す書を見て、御狐・稲見之守(モノノ怪神・f00307)は愉快そうに微笑む。
「ヒトの想いは虚より実を産み落とす――ゆえに祈り願われるカミ、想いを喰らふモノノ怪在り。虚と実、夢と現つの境界なぞ儚いものよ」
 それはまさに自分達のような妖怪にも通じる概念だと考え、大きな括りで見ればスナークもまた妖の一種ではと思う。
「当人の想像こそが最恐を創造するのだとか……故に疑心暗鬼は厄介と言えます」
 霧島・絶奈(暗き獣・f20096)は人の心が惑い易いものであることをよく知っていた。
「巷に放っては収拾がつかなくなる可能性があります。ここで阻止しましょう」
 絶奈は各種耐性を帯びたオーラを球状に展開し守りを固めた。
 準備を整え【Ahnenerbe】の3人が協力して強敵である猟書家最強の一角へと戦いを挑む。

「まずは……貴方にしましょうか」
 サー・ジャバウォックの視線がアレクサンドルに向けられた。それと同時に不穏な気配が近づき、アレクサンドルの肌に刺すような殺気を感じた。
「スナークが何であれ、今この場で俺を襲うという事実は揺るがない。なら、どうとでもなるさ」
 そんな殺気を吹き飛ばすようにアレクサンドルは笑ってみせ、拳を固めて待ち構える。
 大きい――そう感じられる重々しい一撃がアレクサンドルの頭上に迫っていた。
「これは……やばそうだ」
 咄嗟にアレクサンドルが横に跳び退くと、ズズンッと地響きと共に地面に大きな跡が刻まれる。それは2mを超える不可視の棍棒で叩いたような跡だった。
「図体はデカイが、スピードは大したことがないとみたぜ」
 その攻撃の規模や速度から敵の巨体を推測し、軽やかなフットワークを使ってアレクサンドルは右に左にと動き、次の攻撃を誘発する。今度は上半身を吹き飛ばすように、ブンッと横薙ぎに不可視の攻撃が迫った。それをアレクサンドルは屈んで躱しながら、魔力を込めた左アッパーを放って武器を打ち上げ、無防備となったと思われる敵の巨体に向かって踏み込み、真っ直ぐに右ストレートを放って、敵の腹らしき場所を打ち抜いた。確かな手応えを感じ、アレクサンドルは続けて拳を放つ。
「これは一対一の戦いではありません。意識を逸らすのは悪手ですよ」
 しかしそこへサー・ジャバウォックが側面から近づき、青白い剣『ヴォーパル・ソード』で斬り掛かっていた。
「その通りです。数ではこちらが上回っているのを忘れられては困ります」
 割り込んだ絶奈がその一撃をオーラで受け止める。バリバリと音と立ててオーラが削られるが、防御に集中して絶奈は耐え凌いだ。
「成程、確かにその通りです。では此方も本気で行きましょう」
 黒き悪意を纏ったサー・ジャバウォックの身体が鱗に覆われ、竜人となって黒翼を広げて猟兵達を撫でるように触れて五感を奪う。そして飛翔して隙をつき稲見之守に斬撃を放った。
「神通力の天眼を持つ狐が五感を奪われた程度ではナ」
 稲見之守は結界を張って剣を防ぐ。一瞬剣が止まり、斬撃は勢いを弱めたが結界を切り裂いた。
「その黒き悪意――呪詛を捕食してやろうゾ」
 その刃を身を護ろうと翳した妖刀『魂喰刀』で受け、それでも押さえ切れなかった刃が肩に食い込む。だが稲見之守は敵が纏う黒き悪意を啜り生命力を奪って自らの傷を癒した。
「ほう、本気の斬撃でしたが防がれましたか、ですが一度見れば二度は通じません」
 サー・ジャバウォックはもう一度稲見之守に向けて斬撃を放とうとする。
「それはこちらの台詞です」
 絶奈が浮遊機雷を衝撃波で飛ばし、敵の上空で爆発させた。
「む、黒翼で触れたはずですが……」
「強化された剣戟ならいざ知らず、触れるだけの黒翼で我が護りを貫けると自惚れられては困ります」
 強固なオーラの守りによって五感を保っていた絶奈は、さらに機雷を撒いて敵の行動範囲を狭めた。
「この程度の武器で私を倒せるとでも?」
 サー・ジャバウォックが青く輝く剣を一閃すると、斬撃が飛んで機雷が一斉に大爆発を起こした。

「貴方の力を侮ってはいません。ですが気を引くくらいは出来たようです」
 絶奈に敵の意識が向いている間に、スナークを撃破したアレクサンドルが戦闘モードⅠを発動する。
「魔力開放――」
 アレクサンドルから黄金色の魔力が噴き出し、その身を覆い戦闘能力を高めた。
「行くぜ」
 そして黄金の矢のように飛び出すと、空を飛ぶ敵に向かって真っすぐに飛び込み、腹に食い込むような拳を叩き込んだ。
「ぐっ、何という威力ですか」
 鱗が砕け、血を吐いたサー・ジャバウォックが反撃に剣を上から一閃した。アレクサンドルはそれを黄金の輝きを強くした腕で受け止めるが、勢いに負けて地面に叩きつけられた。
「危険な相手です、こちらの数を増やしましょう」
 サー・ジャバウォックが書から新たなスナークを呼び出そうとする。

 ――スナークは、実在しない

 稲見之守が幻術で生み出した霧が辺りを包み込み、戦場をまるで夢の中のように侵食する。
「どうしたことです? スナークが現れません」
 眉間に深い皺を刻んでサー・ジャバウォックが原因を探る。
「夢と現つを分かつ水面に立つ者としてこれを定める。ふふっそんな本捨てて、殴り合いをする方が楽しかろうに」
 相手を惑わすように稲見之守の声が辺りに反響する。
「――そして、想いの力は疑念から化物を生み出すことも、夢から虹を掴むこともできるのさ」
 夢の中のように塗り替えられた場所では、スナークが存在できなくなっていた。
「この霧が問題のようです。ならば原因を取り除きましょう」
 サー・ジャバウォックがすぐに原因に辿り着き、跳躍するとそれを維持する稲見之守へと急降下して襲い掛かる。
 だがそれよりも早く空から光のような輝く槍が落下し地面に突き立つ。すると銀の雨が降り出し黒焦げの地面を濡らした。
「まずは皆さんの強化を」
 絶奈が降らす銀の雨を浴びた仲間達の内から力が湧き上がり強化される。
「これなら正面からでもやり合えるはずだぜ」
 アレクサンドルは上から襲い来るサー・ジャバウォックの剣に、力を漲らせた自分の拳をぶつける。互いが金属のようにぶつかり合い、悲鳴のような金属音を響かせた。

「楽しそうよな、我も仲間に入れてもらおうか」
 そこへ稲見之守が妖刀で背後から斬り掛かった。
「ならばその身で堪能させてあげましょう――私の剣技を」
 サー・ジャバウォックは背に回した剣で斬撃を受け止め、反撃で薙ぎ払う。
「堪能するのは貴方だけです」
 空よりまた槍が落下し、敵の身体を貫いた。
「ごほっ、これほどの傷を……猟兵とはどれほどの力を秘めているのです」
 サー・ジャバウォックがふらりとよろけて木に寄りかかる。
「決めてやる」
 そこへアレクサンドルが突っ込み、灼熱の炎を纏わせた拳で敵を殴りつけた。木は叩きつけられた衝撃で折れ、ぐらりとバランスを崩したサー・ジャバウォックが膝をつく。
「スナークともども、この世界から儚き夢へと旅立つがよかろう」
 稲見之守が妖刀を振り下ろして右目を抉った。
「くっ、竜人化したこの私が追い込まれるとは……想定外の事態です」
 右目を押さえながらサー・ジャバウォックは残った左目で猟兵達を睨みつける。
「猟兵は簡単に限界を超えていくものだぜ!」
 アレクサンドルが妖刀を振り抜くが、身を護るように覆った黒翼に阻まれる。
「翼が邪魔ですね、貫いてしまいましょう」
 絶奈が再び光の槍を放ち、右の黒翼に大きな風穴を開けた。
「ふふっ、それで隠れておるつもりかナ、丸見えではないか」
 その隙間から稲見之守が妖刀と突き入れ、敵の首を裂いた。しかし咄嗟にサー・ジャバウォックが仰け反って致命傷を免れていた。
「私の翼に大穴が……ここまで追い詰められるとは、信じられません」
 落下したサー・ジャバウォックにアレクサンドルが殴り掛かる。
「ここで仕留める!」
 燃える拳でアレクサンドルは何度も敵を殴る。ふらつくサー・ジャバウォックが片膝をついた。そこへ止めだと一層燃え上がらせた拳を胸に食い込ませた。
「サー、楽しめたかい? 俺は楽しめたぜ」
「ええ、楽しいですとも。何せ私をここまで傷つけ追い込んだ猛者を相手に勝利で終わるのですから」
 命尽きるまで負けるつもりはないとサー・ジャバウォックが剣を地面に突き立て、放たれる青白き衝撃波が地面にクレーターを作り、土煙の暴風が猟兵達を呑み込んで押し流した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

河原崎・修羅雪姫
【全世界サイボーグ連盟】で参加。アドリブ歓迎

クネウスさんの戦車の上に乗って、派手に突撃。
名付けて『馬鹿たちが戦車でやって来る』作戦!

「昔から、『嘘を信じさせるためには、たくさんの真実の中に一つだけ嘘を混ぜること』というわぁ」
「つまり、完全なる虚構の創作物のスナークには、私たち猟兵に存在を誤認させるほどの『説得力』が足りないのよ」
「サー・ジャバウォック、破れたり!」
と、論破して先制攻撃を防ぐ。

 猟書家『サー・ジャバウォック』の「侵略蔵書「秘密結社スナーク」(POW)」に対し、UC「ヴァリアブル・ウェポン」を使うことで、火炎放射器付きギターに、サイボーグとしてのエネルギーを回し、【焼却】する。
 
 


草野・千秋
【全世界サイボーグ連盟】
アドリブ等◎

みなさんが頑張って救ったヒーローズアースに手出しなんてさせはしませんよ!?
僕ら鋼の絆を舐めてもらっては困りますね
いきますよ皆さん!

戦闘知識、サイバーアイの視力でドロレスさんのフォグレットの位置、敵の位置を確認、敵と最大限の距離を取る
後方で待機し、索敵範囲内に入れば攻勢に転ずる
引き続き敵と距離を取りつつ、スナイパー、一斉発射、2回攻撃、武器改造でアサルトウエポンの銃弾に炎を込めて命中率重視のヴァリアブルウエポンで敵を掃射
敵攻撃は可能であれば怪力でカウンターをした上で盾受け、激痛耐性で受けて耐え抜く


伊高・鷹介
【全世界サイボーグ連盟】

・猟書家の一人、ジャバウォック(以降、甲と表記)か。相手にとって不足はねぇな。思い切りやらせてもらうぜ。

・先制攻撃対策:クネウスの戦車の上に乗せてもらい、念動力のバリヤーを全方位(戦車の底も)に張り巡らせて防御及びセンサーとする。バリヤーに反応があればそこにスナークがいる証なので攻性障壁よろしく刃状にする等して反撃とする。

・先制攻撃を防いだらバリヤーはそのままに、【超パワー】で甲を攻撃。カマキリ以外の武器カテゴリの装備品も飛ばして仲間の死角を補う。

・機を見てカマキリを展開。超パワーの障壁を俺自身とカマキリに纏わせ一気に甲へ肉薄し、ドロレスがつけた傷を狙って斬り捨てる。


リズ・ルシーズ
【全世界サイボーグ連盟】アドリブ歓迎

【SPD】

「ジャバウォックが、ヴォーパルソードを使うんだ?」

光学【迷彩】で姿を隠し距離を取る

「距離さえ取れば、あの剣怖くないよね」

ドロレスの索敵範囲後方に待機し、距離と迷彩により敵UCが空を切るの待ち構える

「ドロレス、索敵範囲に敵影!」

【指定UC】を用い、詩においてジャバウォックの首を刎ねた【ヴォーパルソード】を複製
「【リミッター解除】、ボクも突撃だよ!」

対竜【属性攻撃】の首刎ね剣を手に【空中戦】で、先に突撃した戦車を追い空に躍り出る。そして300kgを超える自重を乗せた【重量攻撃】で詩と同じく竜の首を狙い斬りかかる

「詩の結末は同じ、首はボク達が貰うよ!」


サブナ・ダディ
【全世界サイボーグ連盟】で参加。アドリブ歓迎 //【WIZ】// 「人の想像が創造した相手ねぇ」// ドロレスが散布した霧に注視し、ジャバウォックが攻撃してくる相手に対し式神で【かばう】式神が接触したら式神で【時間稼ぎ】を行う//「その歪で禍々しい翼が邪魔だよなぁ!」//UC【禁呪・弐佰漆拾弐地獄】による継続ダメージでジャバウォックの飛翔能力による機動力を削いでいく //「想像による創造はお前さんだけの専売特許じゃぁないんだぜ」


ドロレス・コスタクルタ
【全世界サイボーグ連盟】で参加。

「見えないだけなら、打つ手はあります」
フォグレットを文字通り霧状に薄く広く散布。鷹介さんのバリヤーと連動して球形索敵フィールドを作る。
敵が接近すれば霧が乱れるので、仲間と分担して監視。
発見次第ショットガンで【乱れ打ち、範囲攻撃、クイックドロウ】で素早く弾倉交換しつつ弾幕を張り迎撃。
「はい! その方向ですねルシーズ様!」

先制攻撃を凌いだあとは愛用の二丁拳銃で攻撃。【2回攻撃、誘導弾、見切り】で通常弾による正確な銃撃を行う。
UCは膨張して内部破壊する性質上、胴体の最も太い部分を狙って命中させて広い範囲を破壊する。
「拳銃弾一発と侮りましたね? 後悔しなさい!」


クネウス・ウィギンシティ
【全世界サイボーグ連盟】で参加
「此処は強引にでも突破しますか」

【POW】

◯戦車行軍
 事前に、上空に『サーチドローン』を放ち地形【情報収集】。ドロレスさんのフォグレット散布後、行動開始。

「GEAR:WOLFPACK。仕事の時間です」

(To:鷹介(f23926)さん)
「守りは任せました」
UCで戦車を直接【操縦】する戦車を強化し、増強した行軍速度でもって突撃。フォグレットやバリアでスナークの位置が分かれば戦車の機関銃で迎撃しつつ突破を狙います。

「精々派手な花火を打ち上げますか」  敵の元まで辿り着いたら戦車を突っ込ませ脱出。戦車に仕込んだ爆弾と中に積んだ弾薬ごと爆破します(【メカニック&武器改造】)


紅葉・智華
※アドリブ・連携歓迎
【全世界サイボーグ連盟】で参加

「――私の役割は単純明快。ただ穿つのみでありますよ」
戦闘領域端で待機。敵と最大限距離をとる。強力な攻撃だろうと、最大射程と有効射程という考えでいけば、最大射程の外なら掠りもしないし、有効射程の外なら回避や防御は容易だし威力も落ちる。あるいは、友軍による防御をアテにする。(→「助かったでありますよ!」)
距離を維持しつつ、友軍の派手な攻撃に隠れるように(目立たない)、【選択UC】及び狙撃用ライフル『唯射』による狙撃(スナイパー)を実施。少しでも多くの隙を作り出して、これを【援護射撃】とする。
「一度当てれば、もう外さないでありますよ……!」



●覚悟
「まさかこの私がここまで窮地に追い込まれるとは……ならばこの命を一つ燃やし尽くしてでも敵の戦力を削がねばなりません」
 もはや消耗など気にせず、竜人形態のままサー・ジャバウォックは決死の覚悟で猟兵を迎え撃たんと、書から呼べるだけの不可視の怪物『秘密結社スナーク』を呼び出す。そしてモノクル越しの左目で新たな猟兵を観察するように見やった。

「あれが今回の目標ねぇ。苦み走った紳士じゃない、滾ってくるわぁ」
 目を凝らした河原崎・修羅雪姫(プリンセス・スノーブラッド・f00298)が、竜人となって圧倒的な存在感を放つ老紳士の姿を見て、これからの激戦を思い描いて高揚していた。

「此処は強引にでも突破しますか」
 不可視の敵を警戒して進むより、一気に突撃した方が被害が少ないとみて、クネウス・ウィギンシティ(鋼鉄の機構士・f02209)はホバー戦車『ヴォルフ』で戦場に乗り込んでいた。
「索敵も行っておきましょう」
 少しでも情報は多い方がいいと、自動哨戒型飛行ドローン『D6ID』を宙に飛ばし、俯瞰した映像を電脳ゴーグルに映し出した。

「みなさんが頑張って救ったヒーローズアースに手出しなんてさせはしませんよ!?」
 戦争が終わり復興する世界を巻き込ませはしないと、草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)は気合を入れて戦いの望む。

「ジャバウォックが、ヴォーパルソードを使うんだ?」
 敵の名前からリズ・ルシーズ(Re-Z・f11009)は童話の登場人物を想像し、不思議そうな表情を浮かべた。

「猟書家の一人、ジャバウォックか。相手にとって不足はねぇな。思い切りやらせてもらうぜ」
 戦車の上に乗った伊高・鷹介(ディフェクティブ・f23926)は、口元を歪めて不敵な笑みを浮かべた。

「まずは見えない敵が相手でしたね」
 同じく戦車に乗ったドロレス・コスタクルタ(ルビーレッド・f12180)が、敵の放つ不可視の怪物スナークについて対処を考える。
「見えないだけなら、打つ手はあります」
 ナノマシン群体『フォグレット』を霧状に薄く広く散布し、戦車を包むように球形索敵フィールドを形成した。
「これで敵が接近すれば霧が乱れて気付けるはずです!」
 霧を見ていれば不可視の敵にも対処できると胸を張った。

「人の想像が創造した相手ねぇ」
 何とも胡乱な話しだと、戦車の上でサブナ・ダディ(サイボーグの破戒僧・f21228)は昔聞いた子供を躾ける為の妖怪の類の小話を思い出した。

「あれが目標でありますね、射線の確保はよしでありますよ」
 紅葉・智華(紅眼の射手/自称・全サ連風紀委員・f07893)が仲間から離れた位置で、超長射程アサルトウェポン改『唯射』を構えて、照準を覗いて戦車からサー・ジャバウォックの位置まで動かして、射線を遮るものがない事を確認した。
「――私の役割は単純明快。ただ穿つのみでありますよ」
 いつでも攻撃開始できるように、じっとスナイパーライフルを構えてその時を待つ。


●戦車発進
「名付けて『馬鹿たちが戦車でやって来る』作戦! 開始よぉ!」
 全員の準備が終わると、戦車の上に乗った修羅雪姫が全世界サイボーグ連盟の戦旗を派手に振るって号令を掛ける。
「では戦車発進します。GEAR:WOLFPACK。仕事の時間です」
 準備が整うと、クネウスは戦車を前進させながらユーベルコードによって戦車を『WOLFPACK』へと強化して速度を上げた。
「守りは任せました」
 クネウスの言葉に任せろと鷹介が軽い口調で応え、戦車を中心に球体で包むように全方位へ念動力のバリヤーを張った。ドロレスのフォグレットと合わさり、二重の備えとなる。

「意気揚々のようですな、ですが見えぬ恐怖に抗えますかな。秘密結社スナークの恐ろしさを知るといいでしょう」
 サー・ジャバウォックの視線が動くと、それに従うように不可視の怪物達も動き出す。
「昔から、『嘘を信じさせるためには、たくさんの真実の中に一つだけ嘘を混ぜること』というわぁ」
 近づく気配に向かって修羅雪姫が言葉を投げかけた。
「つまり、完全なる虚構の創作物のスナークには、私たち猟兵に存在を誤認させるほどの『説得力』が足りないのよ」
 真っ向から虚構の存在を否定し、虚構ゆえに増え続ける怪物を、虚構ゆえに打ち消そうとする。
「ほう、言の葉で虚構を退けるつもりですか、面白い!」
 サー・ジャバウォックは面白がるようにその言葉を聞き入れた。するとスナークの気配が減っていった。
「サー・ジャバウォック、破れたり!」
 修羅雪姫が相手を論破することで、虚構より生まれる怪物の数を減らすことに成功する。
 その隙に戦車は敵との距離を縮めていった。
「ふむ、面白い意見で思わず手を止めてしまいました。ですが、その論を研究するのはまた今度の機会としましょう」
 顔を引き締めたサー・ジャバウォックが戦車を見ると、霧を揺らして大小さまざまな不可視の怪物達が近づいてくる。
「来た来た、感じるぜ。見えなくてもどこにいるのか手に取るように分かる」
 鷹介がバリヤーに触れた不可視の近づく存在を一早く感じ取っていた。
「スナーク狩りの始まりだぜ」
 敵の触れるバリヤー外面を刃状に変化させて構成障壁として反撃する。すると見えぬ念動力の壁に気付いたスナークが、ハンマーのようなものを叩きつけて強引にバリヤーの中へと突入して戦車に近づく。そして飛びつき斬撃や打撃を浴びせ、さらに銃弾のようなものが撃ち込まれた。
「チッ、バリヤーを抜けやがった!」
 舌打ちして鷹介は念動力で巨大な鋸型の武装『ノコギリザメ』を飛ばして、感知する敵へと切りつける。
「さあ、見えぬ恐怖に怯え、そのまま鉄の棺桶の中で震えなさい」
 サー・ジャバウォックがさらにスナークによる攻勢を強める。

「僕ら鋼の絆を舐めてもらっては困りますね、いきますよ皆さん!」
 仲間が視界に映るように後方から皆に声を掛けて、千秋は透明の敵から攻撃を受ける戦車をサイバーアイで確認しながら、アサルトウェポン『ordinis tabes』を構えた。そしてノコギリザメが攻撃する場所で霧が動くのを見て、敵が居ると判断し引き金を引いた。連射される弾丸は空中にぶつかったように止まり、ノコギリザメに切断されゆっくりと地面に落ちた。どさりと何かが倒れた音がする。
「霧の動いた場所に敵がいるはずです!」
 そこへすぐに攻撃すれば見えぬ敵を攻撃できると、千秋は武器改造で弾丸に炎の属性を込め弾を放つ。それが当たると、空中に炎が浮かび目印となる。そこへ皆から一斉に攻撃が飛び、見えない怪物を撃破した。

「距離さえ取れば、あの剣怖くないよね」
 リズはサー・ジャバウォックを警戒し、光学迷彩で姿を隠して距離を取る。そして後方から霧の動きを見て探知していた。
「ドロレス、索敵範囲に敵影! 9時方向!」
 霧の動く場所を見つけたリズが大きな声で知らせる。
「はい! その方向ですねルシーズ様!」
 すぐにドロレスはショットガンの銃口を向け引き金を引いた。放たれる散弾が見えない敵を穴だらけにした。
「命中だよ! 次、7時方向!」
 リズが敵の場所を伝え、弾倉を交換したドロレスがぶっ放して戦車に近づく前に撃退していく。
「こちらからも来たか」
 反対側を警戒していたサブナが霧の揺れに気付き、式神の『犬神』を召喚して放つ。犬神は見えない敵に飛び掛かり、噛みついて引き倒したようだった。

 だが敵は諦めず、地面に待ち構えていたものが穴を開けてボコッと飛び出してきた。
「下からくるぞ!」
 接近を感じた鷹介が警告するが、一足早く見えない怪物が戦車に飛び掛かった。
「わざわざ殴られに来たのか、ご期待に添えるとするかねぇ」
 サブナが霧の動きを見て、戦車に飛びつく敵を無造作に殴りつけて吹き飛ばした。
「援護します……」
 遠距離から霧の動きを観測していた智華がライフルの引き金を引き、銃弾を放つ。狙い澄ました銃弾は透明の怪物を撃ち抜いて戦車から転げ落とさせた。
「次を狙うでありますよ……!」
 智華はすぐさま銃口を微調整し、弾丸を発射してまた取り付こうとしていた透明な怪物を狙撃した。
「取り付かれたわぁ、引き剥がすわよぉ」
 修羅雪姫もユーベルコードを発動し、火炎放射器付きギターにサイボーグのボディからエネルギーを回し、かき鳴らすと炎が噴き出して見えぬ敵を燃やした。
「数を減らしても、透明で元がどれだけいるのか分からないのが問題だわぁ」
 炎を撒き散らして、広範囲を薙ぎ払って近づかれないようにし続ける。

 戦車に近づけぬスナークの一部が、離れた場所に居る千秋へと向かってきた。
「こちらにも来ましたか!」
 千秋は自分を狙う不可視の敵に向けて弾幕を張り、炎が燃え移ったところへ集中的に攻撃して迎撃した。
「見えずとも倒し方が分かれば恐れる必要はありません!」
 そのまま銃撃を続けて、敵が隠れられないように辺りを燃やして炙り出した。
「手伝うよ!」
 敵と同じく姿を消しているリズが、燃えて人型の姿を浮かび上がらせたスナークに砲門を向けレーザーを撃ち込んで消し飛ばし、さらに智華も狙撃で援護に加わり近づいていた気配を全て消滅させた。
「これで大丈夫でありますね!」
 智華はすぐに狙いを戦車とサー・ジャバウォックの方へと戻す。

「発見しました。機関銃で迎撃します」
 前方の霧の動きから敵を発見したクネウスは、透明な敵の居る場所に向けて戦車上部の機関銃を向け発砲した。弾がばら撒かれ被弾した怪物の足を止める。
「強行突破します」
 そしてクネウスは戦車を全速前進させ、強引に敵の防衛ラインを突破した。
「バリヤー全開だ、撥ね飛ばしてやるぜ!」
 鷹介も念動力を強め、バリヤーに当たった敵を吹き飛ばしながら戦車は前に進んだ。
「スナークの群れを抜けましたか、では私自ら相手をしましょう」
 サー・ジャバウォックが青白き剣を振り上げた。その剣が巨大化していく。
「精々派手な花火を打ち上げますか。退避準備を!」
 もう少しで敵に辿り着くと、クネウスが戦車に仕込んだ爆弾と積んだ弾薬に起爆装置をセットして退避勧告を行う。すぐに修羅雪姫・鷹介・ドロレス・サブナが飛び降り、それに続いてクネウスも脱出した。
「戦車での特攻ですか、その程度のものが私に効くとでも思われたのなら心外です」
 サー・ジャバウォックが無造作に大剣を振り下ろす。その一刀が戦車を両断した。
「その強者の自信が仇となります」
 クネウスがスイッチを押す。すると爆弾と弾薬が大爆発を起こし、辺りを纏めて吹き飛ばす。それに巻き込まれたサー・ジャバウォックの身体も宙へと打ち上げられていた。
「自爆とは、これは一本取られましたか」
 吹き飛ばされるサー・ジャバウォックが右側に穴の開いた翼を広げて空中で姿勢制御を行う。


●竜殺し
「このまま倒してしまうわぁ、一斉攻撃よぉ!」
 修羅雪姫がアンチマテリアルライフル『ドラグーン』を構えて狙撃し、左翼にも風穴を開けた。すると翼の動きが鈍くなり敵が高度を落とす。
「その歪で禍々しい翼が邪魔だよなぁ!」
 そこへ勢いをつけたサブナが高々と跳躍し、翼を鍛鉄製の金棒で殴りつけた。
「八大地獄の中に十六の小地獄、其れら合わさり百三十六地獄、八熱、八寒二つ合わさり二百七十二地獄、永久とも取れる苦痛を味わうと良い」
 ユーベルコード『禁呪・弐佰漆拾弐地獄』によって黒翼にこの世の全ての地獄が与えられ、地獄の亡者の群れが地面から現れて、塔のように亡者が亡者の身体に登ると、空に浮かぶ敵に組み付いた。そして引きずりおろすように群れに呑み込み、左の翼を引き千切った。
「私の翼を、亡者如きに破られるとは!」
 苦痛に顔を歪めたサー・ジャバウォックが剣を振り回し、亡者を薙ぎ払う。
「想像による創造はお前さんだけの専売特許じゃぁないんだぜ」
 だが次々と亡者は現れ、絶え間なく攻撃を続けた。
「これで思うようには飛べねぇだろう」
 そうしてサブナは攻撃のチャンスを作り出した。

「見えない怪物を操るんだよな、なら俺の見えない超パワーとどちらが上か試してやるぜ!」
 鷹介が睨みつけて念動力を放つと、空間が捻じ曲がり敵をも捻じ切ろうとする。
「これは凄まじい力です。ですが私を捻じ切るには力不足ですね」
 押さえつけられる力場の中、ゆっくりとサー・ジャバウォックが踏み出し、鷹介へと切っ先を向ける。するとその刃が長く伸び胸へと届く。
「これ以上見えない怪物を増やさないためにも、ここで倒させてもらいます!」
 そこへドロレスが愛用の二丁拳銃『WWWA-999マキシカスタム』に持ち替えて発砲する。その弾丸が剣に当たり軌道を逸らした。
「ボクも突撃だよ!」
 続けてリミッターを解除したリズが詩においてジャバウォックの首を刎ねた【ヴォーパルソード】を複製した。飛翔して対竜属性を持つ、敵の剣に似た青白い細身の首刎ね剣を振るう。
「その剣から因果を感じます……危険な武器のようですね」
 その300kgを超える重さのある一撃をサー・ジャバウォックが剣を戻して受け止め、苦も無く振り抜いて押し戻す。
「詩の結末は同じ、首はボク達が貰うよ!」
 すぐにリズは旋回して回り込みながら斬り掛かり、何度も刃をぶつけて火花を散らした。

「隙を作るであります……」
 敵の動きを予測し、智華はライフルから銃弾を発射する。長い距離を飛んだ弾が敵の右肩に着弾した。
「どこからの攻撃ですか……」
 ちらりとサー・ジャバウォックが視線を智華に向ける。
「強敵は相手のペースにさせないのが大事よぉ」
 このまま押し切ろうと修羅雪姫も巨大なリボルバー拳銃『フリークスハンター』に持ち替えて連続で弾丸を撃ち込む。
「この距離なら一方的に攻撃できるであります……!」
 智華がまた狙撃して、今度は左脚に命中した。
「一度当てれば、もう外さないでありますよ……!」
 ユーベルコードによって敵の動きの癖を覚え、智華は着実に弾丸を当てていった。
「やれやれ、ここで足止めされてしまうとは、私には他でやる事があるのですがね」
 サー・ジャバウォックが避けられないならと剣を一閃して弾丸を切り払う。
「ヒーローズアースには行かせません!」
 千秋は狙い澄まして銃弾を撃ち込み、モノクルを砕き残っている左目も撃ち抜いた。

「視界を潰されましたか、ならば傷が癒えるまで近接戦は不利ですね」
 跳躍してその場を離れたサー・ジャバウォックは穴の開いた片翼で飛ぼうとする。
「空には逃がしません」
 クネウスがガトリングガン『Sir Buster』で弾幕を張り、翼を穴だらけにして飛行力を奪った。どんどんと高度が落ちていく。
「そっちの翼も引き千切ってやるぜ!」
 またサブナが跳躍し金棒を叩きつける。だがその一撃は翼に届く前に剣によって受け止められた。
「止められちまったか、ならこれでどうだ!」
 棍棒を手放したサブナの翼を掴み、敵の身体を蹴って引き千切った。それと同時に黒翼に触れた為に五感を失って落下する。だが地面に衝突する前に、ふわりと念動力によって受け止められて着地した。

「遠距離からの効果が薄いなら、近づいてやるぜ」
 念動力を使って助けた鷹介は、両肩甲骨に内蔵された左右二対の蟷螂の腕状の副腕を展開し、超パワーの障壁を己に纏わせると一気に落下する敵に肉薄する。着地しながらの斬撃を障壁で防ぎ、鱗の破れた傷口に向けてカマキリを振り抜いた。ざっくりと肉を裂いて血が噴き出し、鷹介の障壁が赤く濡れていく。
「面白い攻撃です。しかし私を仕留めるには少々足りませんね」
 血の涙が流れる目を閉じたまま、それでも状況が分かっているようにサー・ジャバウォックが反撃に剣を薙ぐと、鷹介がカマキリで受け止めるが後方へと吹き飛ばされた。
「ならこれはどうですか!」
 剣を振り切った隙に、新しい弾丸を装填したドロレスが銃弾を胴に向けて放つ。
「その程度の弾など――なに?!」
 腹に撃ち込まれたユーベルコードによって生成された弾丸が膨張し、炸裂して内部から破壊する。
「拳銃弾一発と侮りましたね? 後悔しなさい!」
 さらに銃弾を形成していたナノマシンがトレブルフック状に変形して食い込んだ。
「ぐぅっがはっ、こんなことで……」
 大量の血を吐いたサー・ジャバウォックがよろめく。そこへもう一度撃ち込もうと二丁拳銃を構える。
「危ない!」
 千秋が何もない空間に銃弾をばら撒く。すると誰も居ない場所で弾が着弾し炎を上げた。

「ふぅ、騙し討ちも通じませんか」
 サー・ジャバウォックがやられながらも新しいスナークを呼び出していたのだ。
「最後まで油断はしません」
 千秋が銃弾を撃ち込み見えない怪物を消した。
「このヴォーパルソードコピーで竜の首を刎ねて、ハッピーエンドを迎えるよ!」
 飛び込んだリズが剣を一閃し、サー・ジャバウォックの首を狙う。
「私が偽物に負けるとでも?」
 対してサー・ジャバウォックもリズの首を狙って剣を振るう。だがその剣筋が逸れた。
「命中であります……!」
 反撃を予測していた智華の放った弾丸が敵の剣に当たり、僅かに軌道を逸らしていた。だが戦場ではそのほんの僅かな差が生死を別ける。サー・ジャバウォックの剣は空を切り、リズの剣は首を刎ね飛ばした――。
「私を倒すとは……見事です。私が狙うべき強敵は、貴方達だったのかもしれません――」
 落ちた首が転がり、サー・ジャバウォックの身体が崩れ落ちると、黒焦げた大地に呑み込まれるように世界から存在が消え去った。


●勝ち鬨
「猟書家『サー・ジャバウォック』を討ち取ったわよぉ!」
 修羅雪姫が戦旗を掲げ勝利を宣言する。すると仲間達がおおっと大きな勝ち鬨を上げた。
「これでヒーローズアースの平和も守られましたね!」
「はい! 大きな損害もありませんし、作戦勝ちですね!」
 嬉しそうに千秋とドロレスが笑顔を浮かべ仲間と共に勝利を喜ぶ。
「そうでありますね、やはり仲間との息の合った連携が勝利の鍵でありますよ!」
 智華も大きく頷き、敵の攻撃を完封出来たとほっと息を吐いて微笑んだ。
「今回はよく働いたぜ。お蔭でくたくただ」
 疲れたと鷹介はいつもよりくたびれた様子で脱力していた。
「やっぱりジャバウォックを倒すのはヴォーパルソードだったね!」
 元気に跳ねたリズが高々とヴォーパルソードコピーを掲げる。
「想像から創造する力は、人間の方が上だってことだねぇ」
 サブナは力で劣る人こそが最も想像力豊かな存在であると、竜殺しの剣を作ったリズを見て思った。
「では帰還しましょう。まだ戦争は続いています。次の戦いの準備もしなくてはいけません」
 まだまだ戦場は残っているとクネウスが呼びかけると、猟兵達は次の戦いに備え束の間の休息へと向かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月19日


挿絵イラスト