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迷宮災厄戦⑤〜ダーク・スチームド・リング

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦

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「うむむむむ……アリスラビリンスには無いはずのもの。これも猟書家の力なのかなー……」

 シーカー・ワンダーは頭を抱え、うんうんと難しく唸る。

 アリスラビリンス、遠き日の憧憬の花園。セピア色に褪せた花が咲き乱れる不思議の国であり、猟書家『サー・ジャバウォック』、『レディ・ハンプティ』、『キング・ブレイン』の三者へ続く道である。
 あるのだが。

「ここはですねえ……魔導蒸気機関を装備したオウガが瘴気の蒸気を撒き散らしてるみたいなんですよー……」

 アルダワ魔法学園特有の技術、魔導蒸気機関。恐らくはアルダワ魔法学園を狙う猟書家『レディ・ハンプティ』によって持ち込まれたものが、そのままオウガたちや不思議の国に反映されていると思われる。
 そしてこの戦場における最大の問題が、魔導蒸気機関によってまき散らされる瘴気の蒸気だ。

「瘴気の蒸気はですねえ、オウガ以外にとっては猛毒なんですよー。猟兵でも長く吸い続けてたら危なくなるようなタイプの。で、これを使うオウガがまた酷いもので」

 ここに出現するオウガは『ボクサーバニー』。時計ウサギの姿をしたオウガで、戦場のあちこちに同族専用のウサギ穴を使った、神出鬼没な戦闘を得意とする。
 しかしその性格はスポーツマンシップからかけ離れたもので、一方的な暴力を好み、レベルは高くないが卑怯な手段や数に任せたリンチを喜んで行う外道である。当然、瘴気の蒸気を使うことにも抵抗はなく、毒で動けなくなった猟兵をなぶり殺しにするつもりだ。

「ボクサーバニーは両肘に仕込んだ魔導蒸気機関でパンチ力を上げています。性格も性格なので、とにかくこっちを苦しめようとしてくるはずですよー。でも、瘴気の蒸気さえなんとかできれば勝機は見えると思います。負けないでくださいねー!」


鹿崎シーカー
 ドーモ、鹿崎シーカーです。毒でじわじわ苦しめる戦法は俺も得意とするところ。

●概要
 セピア色に褪せた、不思議な花園の国です。ここに登場するオウガは「魔導蒸気機関」が埋め込まれており、周囲を「瘴気の蒸気」で汚染しながら、パワーアップした肉体で攻撃してきます。

●集団戦『ボクサーバニー』
 時計ウサギの姿をしたオウガ。戦場のあちこちに同族専用のウサギ穴(中は異空間で繋がっている)を開き、自在に出入りしながら戦う。一方的な暴力を好み、レベルは高くないが卑怯な手段や数に任せたリンチが得意。
 両腕に魔導蒸気機関を仕込み、パンチ力を底上げしています。性格上、瘴気の蒸気を喜んで使い猟兵をじわじわなぶり殺しにしようとしてきます。

 アドリブ・連携を私の裁量に任せるという方は、『一人称・二人称・三人称・名前の呼び方(例:苗字にさん付けする)』等を明記しておいてもらえると助かります。ただし、これは強制ではなく、これの有る無しで判定に補正かけるとかそういうことはありません。
 プレイングボーナスは『「瘴気の蒸気」への対抗手段を考える』こと。

(ユーベルコードの高まりを感じる……!)
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第1章 集団戦 『ボクサーバニー』

POW   :    サンドバッグコンボ
攻撃が命中した対象に【ウサギ型の痣】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【次々と現れる仲間達のパンチ】による追加攻撃を与え続ける。
SPD   :    ダーティサプライズブロー
レベルm半径内の、自分に気づいていない敵を【異空間からの奇襲によるパンチ】で攻撃する際、ほぼ必ず狙った部位に命中する。
WIZ   :    ハニートラップカウンター
【挑発】を披露した指定の全対象に【無防備にこちらへ近づきたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。

イラスト:すねいる

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

高砂・オリフィス
真の姿に身を包んで、颯爽! ぼく、登場ーっ! あははっ! さあ勝負しよ!
使用するユーベルコードは《因果は回る現在》、推進力で加速して、スピード勝負に持ち込みたいな!

なあんか思惑外されそうな予感がヒシヒシと! 笑顔、笑顔はいいことなんだけど、なんだかなー!
い……いっだあ! ちょっと真剣勝負する気あるーっ!?
いくらぼくでも少し怒るぞう!

瘴気の蒸気、こいつが厄介だったけど、いいこと思いついた! ぴかーん!
ぼくの熱気でまとめてぶっ飛ばす! そしてそのまま蹴り技でトドメ!

頭に血がのぼってたから、出血大サービスでクールダウン、なぁんてねっ♪ あははっ



 セピア色の花畑に、一陣の突風が吹き荒ぶ。
 黒いスーツの上に白い機械プロテクターを身に着けた高砂・オリフィス(南の園のなんのその・f24667)は、進行方向の空間に開いた黒い穴めいたゲートを見て不敵に笑った。
「真っ向勝負? オッケー乗ったぁっ!」
 加速! 超低空飛行で一気に黒い穴へ突っ込んだオリフィスが右足を後方へ振り上げた直後、彼女の真下に開いた黒い穴から鉄拳が飛び出し腹を打つ!
「ぐえっ!?」
「ばぁーかっ!」
 穴から頭を出したボクサーバニーが嘲笑い、逆の拳でオリフィスを殴り上げる! 垂直に吹き飛んだオリフィスの直上に開いた穴からボクサーバニーが垂直落下ストンプ! SQUASH!
「っだあっ!」
「はーい下へ参りまーす!」
 ボクサーバニーはオリフィスごと一直線に落下し、途中で彼女の背中を蹴り飛ばして前方回転! 体操選手めいて着地する彼女の背後で、オリフィスが地面に激突した! CRAAAAAAASH!
「いーったぁ―――……」
 浅くすり鉢状に凹んだ地面から身を起こし、オリフィスは顔をしかめる。しかしすぐに柳眉を逆立て、華麗なバク宙から体勢復帰してボクサーバニーに身構えた。余裕のステップを踏むバニーガールに抗議!
「い……いっだあ! ちょっと真剣勝負する気あるーっ!? いくらぼくでも少し怒るぞう!」
「はっ、真剣勝負? ばっかじゃないの?」
 SWISH! ボクサーバニーの姿が掻き消え、オリフィスのすぐ真後ろに! 後頭部めがけて拳を構える!
「する気ないわよ! 勝てばいいんだから、ねッ!」
「!」
 ラビットパンチを後ろ回し蹴りで弾くオリフィス! 飛び退いたボクサーバニーを追って飛び膝蹴りを繰り出すと、ボクサーバニーは鋼の両腕でクロスガード! 押し下げられる彼女の踵が咲き誇る花を蹴散らしていく!
「んもう、今度は後ろからとか! 本当に卑怯だぞ!」
「褒め言葉よ! 卑怯ついでに……」
 ボクサーバニーはクロスガードを跳ね上げ、オリフィスを宙返りさせる。そのまま両肘をオリフィスに向け、両足を踏みしめた! 肘部分の排気口が陽炎を吐き出す!
「毒霧とか食らってきなさいッ!」
 BFOOOOOOOOOOOOOOM! 漆黒の噴煙がオリフィスを呑み込む! 大きく飛び退いて煙を脱したオリフィスは片目をつぶってせき込んだ!
「げほっ、げほ! 目が……っ!」
 鋭い痛みを走らせながらオリフィスの目が充血していく。直後、煙をぶち抜いたボクサーバニーが全力の右ストレートをオリフィスの顔面に叩き込んだ!
「ぶぐっ……!」
「ぶっ飛んじゃいなさいッ!」
 SMAAAAAAASH! 殴り飛ばされたオリフィスは放物線を描き、花畑を水切り石めいて連続バウンド! 色褪せた花弁をまき散らしながら跳ねる彼女の真後ろに黒い穴を開いて出て来たボクサーバニーがほくそ笑む!
「猟兵も大したことないわね。このままフルボッコにしてあげるッ!」
 腰のひねりをくわえたボディーブローが上下反転したオリフィスの背中に突き刺さる! 僅かに浮いた状態でのけ反ったオリフィスが潰れたような声を上げると同時、ボクサーバニーは足元の頭に肘を打ち下ろす!
「ぐあッ!」
「もう一回さっきのプレゼントしてあげる! 瘴気の蒸気、思う存分味わって!」
 BFOOOOOOOOOOOOOOOOM! オリフィスの後頭部付近から黒い煙が吐き出され、放射状に広がっていく! オウガ以外には猛毒となる瘴気が離れたところで宙に昇り黒いクレーターの形を作った。
「あははははははははは! 真剣勝負とか正々堂々とか、ナメたこと言ってるからこんな目に遭うのよ! 瘴気の中で苦しんで死になさい!」
 哄笑するボクサーバニー。刹那、上を向いたままだったオリフィスの足がボクサーバニーの横面を打ち据える!
「づっ……!?」
 SMASH! 蹴り飛ばされ錐揉み回転するボクサーバニー! オリフィスは蹴り飛ばした勢いでブレイクダンスめいて高速回転! 彼女の周囲を虹色の五線譜じみた光が旋回し、旋風めいて一気に拡張! 瘴気を吹き消す!
「どおおおおおりゃああああああああああああっ!」
 BLOWWWWWWWWWWWWW! 光の竜巻が瘴気を拡散させていく。跳ね起きたボクサーバニーは殴られた頬をグローブの甲でぬぐい取った。竜巻が天に巻き上がり消える中、オリフィスは宙返りして立ち上がる。
「好き放題やってくれたなぁー……!」
 赤くなった目を擦るオリフィス。ボクサーバニーは顔をしかめ、両肘をオリフィスに向けてBFOOOOOOOOOOOOOOM! 再三放たれる魔障の蒸気! だがオリフィスはにやりと笑った!
「瘴気の蒸気、こいつが厄介だったけど、いいこと思いついた! ぴかーん!」
 目を輝かせたオリフィスはその場で高速ブレイクダンスを踊り出す! 両手が地を離れ、両足から伸びた五線譜状の虹が押し寄せる蒸気を弾き飛ばした! だがオリフィスの地を向いた頭の下に穴が空く!
「蒸気を防いだから何よ! 隙だらけじゃないッ!」
 穴から飛び出す脳天狙いのアッパーカットをオリフィスは両手でガード! そのままグローブをつかみ、空中ブリッジから真上へ投げ出す! 上空に放られたボクサーバニーとは逆に地に足つけたオリフィスは跳躍!
「ぼくを舐めるな―――っ!」
「ちぃっ!」
 ロケットジャンプしてくるオリフィスに、空中で身をひねって体勢を立て直したボクサーバニーは両腕を腰だめに引き絞る! 両肘から黒煙吹き出し、斜めに急降下しながらオリフィスを迎撃にかかった!
「まぐれガード出来たぐらいで勝ったつもり!? もっかい地面に叩き伏せてあげるわ!」
「やってみろぉぉぉぉぉっ!」
 ボクサーバニーは両膝を折り曲げた前傾姿勢で加速してくるオリフィスをめがける! だが彼女の赤い瞳には、彼女にしか見えない黒い超自然の兎穴が見えていた。ワープホールだ!
(真っ向勝負するわけないって言ってでしょうが単細胞! 今度こそそのスッカスカのド頭ぶち抜いて二度と踊れないようにしてあげるッ!)
 ボクサーバニーの両目がギラリと光り、超自然のウサギ穴が拡張・具現化! そこへ下卑た笑みを浮かべて突っ込んでいくボクサーバニー。その真後ろにオリフィスが出現! ボクサーバニーは目を見開いて振り返った!
「な……!」
「そんなこったろーと、思ったよッ!」
 前方回転からのかかと落としがボクサーバニーの脳天を打つ! そのままバニーガールを垂直に叩き落としたオリフィスはボクサーバニーを追って垂直にダイブ! すぐさま追い付き腹にキック乱打を叩き込む!
「どりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!」
「ぐうううううううあああああああああああああッ!」
 ボクサーバニーは血を吐きながらもフィニッシュのドロップキックを片腕でガード! 鋼鉄のナックルダスターがひしゃげ曲がる! 排気口からブスブスとくすぶる瘴気! オリフィスは両足で兎の頭を挟んで宙返り!
「そりゃあああああああああああッ!」
 ボクサーバニーの脳天を下に降り落とした! ボクサーバニーは歯噛みし、残った片腕を振りかぶって花畑へ右ストレート! SMAAAAAAASH! 地面をクレーター状に凹ませ、衝撃を相殺する!
「腕をッ……このッ!」
 怨嗟の声を吐き出すボクサーバニーの腹側にオリフィスが素早く降下し、サイドキックの構えを取る! すぐさま反応したボクサーバニーは上下逆転したまま残った腕を振りかぶった!
「うおおおあああああああああああああああッ!」
 BOOOOOOOM! 機械の肘から火と蒸気を噴き、パンチを繰り出さんとした直後! オリフィスの神速キックがボクサーバニーの鼻面にめり込んだ! ボクサーバニーの主観時間が一瞬にして鈍化する!
(そんな……こんな、やつにッ……!)
「ていっ、はぁ―――ッ!」
 PAAAAAAAAANK! ボクサーバニーの肩から上が爆散し、四方八方に血が迸る! 蹴りを振り切ったオリフィスは会心の笑みを浮かべた。
「頭に血がのぼってたから、出血大サービスでクールダウン! ……なぁんてねっ、あははっ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

戒道・蔵乃祐
卑怯と言えど、これもまた兵法なのでしょう
しかし何時の世も、賢しい小細工は圧倒的暴の力によって屈するが必定

目にものを見せてあげましょう!


酔八仙ドランクマスタリーを使用
花園の国にアルコール度数の高い、抱える程の酒甕を持ち込み頭から全身に浴びるようにして一気に飲み干す

酒精を念動力+焼却のパイロキネシスで着火
オーラ防御と火炎+激痛耐性でやけどダメージを堪え意識を保ち
燃える男と化す事で蒸気を寄せ付けず。瘴気汚染の弱体化も防ぎます

心頭滅却すれば火もまた涼し!
この名言を閃いた人は普通に焼け死にましたがその前に勝てば良かろうなのだ!!
ボクサーバニーのコンボは怪力+限界突破の拳で殴り返す

侵掠すること火の如く!



 花々を蹴散らしたボクサーバニーが機械化した左腕を振りかぶる! 肘から魔障の煙を噴出しながら肉迫してくる彼女に、戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)は振り上げた右足を地に叩きつけ腰だめに両腕を引き絞った!
「ぬんッ!」
「死ねぇッ!」
 BANB! 肘の炸裂を乗せたボディブローが蔵乃祐の腹筋を直撃! 衝撃が波紋めいて広がった刹那、蔵乃祐の真後ろに空いた黒穴から飛び出した二匹目が彼の後頭部をSMASH! 頭を震わせても蔵乃祐は揺るがぬ!
「効きませんね!」
 蔵乃祐は右エルボードロップで真ん前のボクサーバニーを叩き伏せ、左裏拳を不意打ちバニーの横っ面に叩き込む! 豪快に一回転して不意打ちバニーを吹き飛ばした!
「ふぎゃあっ!」
 吹き飛ばされたボクサーバニーはバク宙めいて連続バウンド! 直後、腕を振り切った蔵乃祐の下顎にボディブローを決めたボクサーバニーのアッパーが突き刺さる!
「ぬうッ!」
「だらァッ!」
 BAFM! 肘を炸裂させ殴り上げるボクサーバニーA! 顔を跳ね上げ後ろに数歩よろめいた蔵乃祐は手の甲で口元をぬぐう。だがその左ふくらはぎが後ろから跳ね上げられてバランスを崩した!
「ぬおおおおッ!」
「足元がお留守なのよッ!」
 地を舐めるような姿勢で三匹目のボクサーバニーが蔵乃祐の真下を抜けて前に出る! 跳躍からのドロップキックが蔵乃祐の頬に命中! 無理矢理真横を向かされた蔵乃祐が仰向けに倒れかかるが、そこにもうひとつの兎穴!
「隙見っけッ!」
 穴から顔を出した二匹目のボクサーバニーがダブルジャンプパンチを打ち込んだ! 蔵乃祐の後頭部とうなじを殴り、曲がった背中へ抉るような追撃! さらに逆回し蹴りが蔵乃祐の側頭部を強打する!
「さっきのお返しよ! あんたがぶっ飛べッ!」
「ぐぬおおおッ!」
 SMAAAAAASH! 真横に吹き飛ばされた蔵乃祐は空中で身をひねり、片手で花畑を抉りながらブレーキをかけた。そのまま肘のバネを使って跳ねると両足で着地。側頭部に手を触れ、指先についた血を眺めて言った。
「ボクサーバニー……拳闘と言いつつ足を使い、不意打ちを弄し、瘴気を散らし、さらに複数人で向かってくるとは……」
 親指の腹で指先の血を擦る蔵乃祐。彼を遠巻きにするように三つ、トライアングル状に開いた兎穴からボクサーバニー三体が姿を現す。機械化した両肘の機構を鳴らし、黒煙を吐き出しながら一体目が嘲った。
「何? 今更あたしたちに挑んだこと後悔してるの?」
「それとも、三対一が卑怯だから一人ずつ来いとでも言うつもり?」
 シャドーボクシングをしながら二匹目が挑発的に言った。三匹目はリズミカルなステップを踏みつつ余裕の笑みを浮かべる。
「悪いけど、スポーツマンシップがどうとかほざかないでよね。殺し合いの場に正々堂々とか、バッカみたいだから!」
「言いませんよ」
 蔵乃祐は首を左右に曲げてゴキゴキ鳴らすと、右の肩を軽く回した。
「あなたたちのそれは、確かに卑怯と呼ばれるものです。しかしここは仁義なき戦いの舞台。卑怯と言えど、これもまた兵法なのでしょう」
「あら! 随分聞き分けがいいじゃない!」
「だからと言って、手加減はしてあげないけどね……。あたしの顔ぶん殴ったこと、死ぬまで後悔させてやるんだから……!」
 ボクサーバニーBが蔵乃祐の裏拳を食らって腫れた頬をぬぐう。しかし蔵乃祐は意に介さず、左腰に括りつけた大きな甕を片手で握った。縛り紐を引き千切り、平たい木板の封を右手指二本で叩き割る。
「はん? ……なによ、それ」
 怪訝そうに眉根を寄せるボクサーバニーC。蔵乃祐は透明な液体に濡れた右手指を振ると、甕を口元に寄せた。
「しかし何時の世も、賢しい小細工は圧倒的暴の力によって屈するが必定。あなたがたの策は所詮、拳ひとつで打ち砕けるものであるとここに示してあげましょう」
 そう言って、蔵乃祐は一気に中身を呷り始める。三匹のボクサーバニーは訝しげな表情で互いに目配せをしていたが、やがて柳眉を逆立てると一斉に蔵乃祐へ殴りかかった! BFOOOOOM! 瘴気噴出!
「なんだかわからないけど止めるッ!」
「戦闘中に水分補給とか良い度胸じゃない! ゲロと一緒に吐かせてやるわッ!」
 三匹が同時に蔵乃祐のワン・インチ距離に踏み込み、同時に拳を引き絞り、腹と両の腎臓部分めがけてパンチを繰り出す! ゆっくりゆっくりと進む時間の中、空になった甕から口を離した蔵乃祐は息を吐いた。
「は―――ッ……」
 一度閉じられ、開いた目蓋の下で焦げ茶の瞳が赤く変色! 次の瞬間、紅蓮の爆発が起きた!
「オオオオオオオオオオオオオッ!」
 BOOOOOOOOOM! 火柱が吹き上がり、爆風に吹き飛ばされた三匹のボクサーバニーがもんどりうってセピア色の花畑を転がる! ネックスプリングで跳ね起き、同時に身構えた彼女たちは目を見開いた!
「ちょっ……なによ、これ……」
 ボクサーバニーAが慄いた表情で半歩後ずさった。突如として現れた火柱の中、巌の如き全身の筋肉を赤橙色に光らせた蔵乃祐は腰を落とし、両拳を打ちつける!
「心頭滅却すれば火もまた涼し! この名言を閃いた人は普通に焼け死にましたが、その前に勝てば良いだけのことッ! 侵掠すること、火の如く! ハァァァァァァッ!」
 身を反らし天に吠えた蔵乃祐から放射状に熱風が吹き荒んだ! 拳を構える彼に、一瞬臆しながらもボクサーバニーAがいち早くダッシュ! 一気に距離を詰め、肘から蒸気を噴きつつ右ストレートを繰り出した!
「こけおどししてんじゃないわよ! この筋肉達磨ぁぁぁぁぁぁッ!」
 渾身の鉄拳を、蔵乃祐は左腕一本でガード! 歯噛みしたボクサーバニーAの左ジャブを右腕でしのぎ、下顎狙いの右アッパーを右手で払う。大きく身を沈めたボクサーバニーAは股間にパンチ!
「ぶっ潰れなさいッ!」
 しかし蔵乃祐は素早く半身になり片膝で拳を受け止める! 蔵乃祐がそのまま下げた方の腕を振りかぶった瞬間、ボクサーバニーAは跳び下がりながら両肘の排気口を蔵乃祐の顔面に向けた!
「だんまり決め込んでんじゃ……ないわ、よッ!」
 BFOOOOOOOOOOOOOM! 漆黒の瘴気が蔵乃祐の顔に襲いかかった! しかし黒煙は彼に触れる寸前で炎に弾かれ左右に流れる! 構わず振りかぶった蔵乃祐の拳に高熱を溜まりオレンジ色に発光!
「ふんッ、ハアアアアアアアアアアアッ!」
 太陽めいた拳が瘴気を吹き飛ばしてボクサーバニーAの顔面に直撃! ボクサーバニーAは内側から高熱により激しく発光し、爆発四散! CABOOOOOOOOM!
「まずは……一人ッ!」
 その時である! 残ったBが拳を振り切った蔵乃祐の頬に大振りのフックを叩き込み、Cが脇腹を抉り込むように殴る! しかし蔵乃祐を足をにじらせその場で回転! 素早く二匹を吹き飛ばした! Bが舌打ちをする!
「チッ……このゴリラッ!」
 バク宙を決めた彼女が後方に生まれた黒い兎穴に吸い込まれると共に、蔵乃祐の周囲を黒い穴が複数ぐるりと取り囲む! 全ての穴から飛び出すボクサーバニー! 蔵乃祐の目はすぐさまそれら全てが残像であると見抜く!
「速度勝負と言うわけですか!」
『勝負? そんなわけないでしょ! ワンサイドゲームなのよッ!』
 残像のボクサーバニーBが叫び、全方位から嵐めいたラッシュを仕掛ける! 仁王立ち姿勢を取った蔵乃祐の全身に浴びせかけられる乱打! しかしボクシンググローブの拳は蔵乃祐がまとう炎にしのがれてしまう!
『このおおおおおおおおおおッ!』
 ZBABABABABABABABABABA! ボクサーバニーBはなおも攻撃を仕掛ける! だが炎が混ざったオーラの前に触れることすら能わず! 蔵乃祐はギラリと目を光らせた!
「ふんッ!」
 BOOOOOOOM! 蔵乃祐の全身から放たれた烈風が集る残像全てを消し飛ばし、本物のボクサーバニーBを現出させる! 蔵乃祐の真後ろ! 蔵乃祐は振り返りながら身をひねり、限界まで拳を引き絞った!
「ひっ……!」
「これで、二人目ですッ!」
「いいえ、こっちよ!」
 蔵乃祐の目が左側を向く! そちらに立つボクサーバニーCが挑発的に蔵乃祐を手招きした。
「あんたの相手はこの私! さあかかって来なさいッ!」
「いいでしょう。いざ参るッ!」
 クワッと括目した蔵乃祐がボクサーバニーCへダッシュパンチを仕掛けにかかる! BOOOOOOOOOOM! 全身に爆炎をまとった突進! ボクサーバニーCは静かに両拳を掲げ、一歩踏み込む! 蔵乃祐の炎拳!
「はあああああああああッ!」
 BOOOOOOOOM! 業火をまとった一撃が空を切り、拳から放たれた竜巻熱風がセピア色の花畑を一直線に引き裂いていく! 蔵乃祐は両目を真下に向けた。懐に踏み込み、前傾姿勢で両腕を引き絞るバニー!
「でりゃああああああああああああああッ!」
 両肘からジェット噴射めいて黒煙を吹き出しながらのダブルパンチが蔵乃祐の腹にクリーンヒット! 炎のオーラを貫いた拳に身体を折った蔵乃祐は、そのままボクサーバニーCを抱き締め捕らえ、締め上げる!
「捕らえましたッ!」
「ぐえええええええッ! ちょ、ちょっと……離ッ……!」
 体を弓なりに反らしたボクサーバニーCの身体を復活した炎が包む! 一瞬にして炎の中の黒い影と化したボクサーバニーCは悲鳴を上げた!
「うぎゃああああああああああああッ!」
「炎に近づき過ぎましたね。炎は人に叡智を与える存在ですが!」
 蔵乃祐を包む炎が一気に膨れ上がり、巨大な火柱を吹き上げた! CABOOOOOOOOOOOOM!
「同時に、全てを奪い尽くすものでもありますッ!」
「ぎゃあああああああああああああああああッ!」
 たちまちボクサーバニーCの身体が炭となり、天突く炎の奔流に流されて崩れ砕けて消えていく! 腕の中のオウガが完全に消失したのを確認して腕を開いた蔵乃祐は、己の身体を見下ろした。焼けただれていく肌を!
「少々時間をかけ過ぎましたか……自戒せねば」
 独り呟き、振り返る。そこには腰を抜かして尻餅を突いたボクサーバニーB! 彼女はびくりと肩を震わせた。
「ひっ……!」
「残るはあなたただ一人! ここで決めさせてもらいますッ!」
「ま、待って……!」
 両手を突き出して制止する声を余所に、蔵乃祐を包む焔が突き上げられた拳の先に凝集していく! 太陽じみた炎の球と化した拳を、蔵乃祐は地面にむかって振り下ろす!
「はああああああああああああああああああああああああッ!」
 CRASH! 拳に穿たれた場所から地を割りながら爆炎が噴き出す! 炎は特急列車めいた速度でセピア色の花畑を破壊しながらボクサーバニーへ一気に迫り、恐怖に涙する少女を一息に飲み込んだ!
「ああああああああああああッ!」
 仰向けに浮き上がったボクサーバニーが真っ黒い人型の炭となった次の瞬間、彼女の身体は派手に爆発四散する! 全身から白い煙を上げた蔵乃祐は深い息を吐きながら、沈黙した花畑で残心を決めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミア・ウィスタリア
うーわ陰湿ー。
女子トイレの便器に気に入らない女の頭突っ込むタイプねアレ。

うーん、と言ってもアタシそんなに反射神経高くないし、これしかないか。

事前に自前の塗料を頭から被っておく。
全身何処を殴られても良い様にくまなく。(罠使い+だまし討ち)
瘴気は毒耐性で何とかするしかないわね。(毒使い+毒耐性)

作戦上殴られないと始まらない訳だけど、なるべくダメージを受けない様防御はしてみる。

この超絶美少女に手を上げた代償は安くないわよ。
ルール発動【仲間は全員殺さなければならない】(精神攻撃+誘惑+恐怖を与える)

ほら、サンドバッグならそこにあるでしょ?
アンタの隣に.....沢山



 BFOOOOOOOOOOOOM! セピア色の花畑に吹き上がった黒い霧が覆い被さる。もうもうと濃く広がっていく瘴気から、小柄な真っ白い人影が脱出! 白い塗料を頭からかぶり石膏像めいた姿になったミア・ウィスタリア(天上天下唯画独尊・f05179)は咳き込みながら背後を振り返った。
「ごほっ、ごほっ! あーもう、くっさいし目に来るわ! 酷いわねこれ!」
「あら、それはよかったわねえ」
 突如、空間に開いた二つの穴からボクサーバニーが二匹飛び出しミアと並走! 腕を胸の前で構えた前傾姿勢で駆ける二匹は、下卑た笑みを浮かべて駆ける!
「その胸みたいにでっかい目から先に潰してあげようと思ってたのよ! 手間省けるわ!」
「もちろん、目のあとはその生意気な胸に瘴気入れてしぼませてあげる! 脂肪吸引より効果的よ!?」
「うーわ陰湿ー。女子トイレの便器に気に入らない女の頭突っ込むタイプね、あんたたち」
 侮蔑的な笑みを浮かべるミアに、ボクサーバニー二匹は口角を吊り上げて弾丸めいたジャブで挟撃! ミアはとっさに立てた両前腕部でガードするとその場で回転! 飛び離れた二匹はジグザグダッシュで距離を詰める!
「そんなわけないでしょ!? 便器なんて言わずに直接肥溜めに叩き込んであげる!」
「ちゃんとなじめるようにグッチャグチャにしてあげるから安心してしになさい!」
 片方が一足早く加速しミアのすぐ目の前へ! ミアは両腕を掲げて繰り出されるラッシュを防ぐが、もう片方が背中にブロウを叩き込む! のけ反ったミアの横面を、正面の一体が肘のスイングで打ち据えた!
「いだっ!」
「オマケよ!」
 ミアの顔面を向いた肘先の排気口が瘴気の蒸気を噴き出した! 真っ黒い煙がミアの首から上を覆い隠した瞬間、彼女の左右に新たな兎穴が二つ開く! 飛び出すように出現する二匹のボクサーバニー!
「あらあら、隙だらけじゃなーい!」
「猟兵はこの煙毒なんだもんねえ! でも頑張んなきゃあ……」
 二匹の兎が同時に拳を振りかぶり、息の合った挟撃パンチでミアのあばらを殴りつける! ミアの口から呼気が絞り出された!
「かはっ……あぐっ!」
 反動で吸い込んだ瘴気がミアの喉を焼きにかかった! 挟撃ボクサーバニーズは意地悪く笑むと回転しながらミアの後頭部に裏拳を打ち込み、そのまま地面に叩き伏せる! SMAAASH! 頭から花畑に突っ込むミア!
「あはははははは! 便器じゃなくて残念だったかしら!?」
「そうね、肥溜めに頭突っ込まれたい子だったもんねえあなた! ほら起きなさいッ!」
 ミアの正面に居たボクサーバニーがミアの頭をサッカーボールめいて蹴り上げ無理矢理起き上がらせる! そのまま掬い上げるような一撃がミアの腹に抉り込まれた!
「がはぁっ……!」
「そおーら、お空に旅行の時間よっ!」
 BFOOOOOOOM! 肘から噴煙を撒き散らし、ボクサーバニーはミアを天高く殴り上げた! 腹をおさえて体をくの字に折ったミアは顔を歪めながら吐き捨てる!
「ぐっ……調子に乗って、くれちゃって……!」
「そりゃあ調子にも乗るわよねえ!」
 素早く背後を振り返るミア! そこには開いた穴から上半身だけを出した五体目のボクサーバニー! 彼女は凶暴な笑顔を顔に張りつけ、ミアの背中にハンマーパンチを打ち下ろした!
「があふっ……!」
「口も体も生意気なクセによわっちょろい幼女が来たんだもの! 調子に乗って、みんなで囲んでボコボコにしたくなっちゃう!」
 SMAAAAAASH! 殴り下ろされたミアは垂直落下! その背中に刻印されたデフォルメうさぎヘッドのマークが光り輝くと共に、ミアの下方に複数の兎穴が開く! 五体目のバニーは両手を叩いた!
「みんなでしっかり教育しましょ! 二度と生意気言えないようにねえッ!」
「ホンット……イイ性格ッ!」
 歯噛みしながら呟いたミアは体を丸めて防御態勢を取る! 兎穴からボクサーバニーたちがミサイルじみて跳び出し、ミアへ殺到! 一匹目とすれ違いミアは真横に回転! すれ違いざまに殴られたのだ!
「ぐっ……!」
「まだまだいるわよ! 無事にお花畑に着けるのかしら!?」
 二匹目がかすめ、三匹目と入れ違ったところでミアのガードが開かれた! くるくると横回転する彼女の背中に四匹目のロケットパンチが命中! 四匹目は逆の手でミアの後頭部を殴り、両手で首を締め上げる!
「ぐううううっ!」
「もうへばったの? でもお相手はまだいるわよッ!」
 四匹目はフロントスープレックスめいてミアを投げおろす! 頭を下にして落ちるミアの正面に空いた兎穴から膝蹴りボクサーバニーが飛び出し、鳩尾を抉り込んだ!
「ぐふっ!」
「ブルズアイ! その胸で防げなくて残念だったわねっ!」
 ボクサーバニーは膝を引っ込めてミアにサイドキックを繰り出した! とっさのクロスガードで防ぐも吹き飛ばされるミア! その軌道上に飛び出した新手がミアを後ろから抱きしめ、錐揉み回転しながら落下!
「ちょっと……! あんたらボクサーでしょ!? これプロレス技ッ……!」
「ごちゃごちゃうるさいわね。これから死ぬ奴に関係あると思ってんの!?」
 高速回転しながら落下速度が加速! 二人はドリルめいた勢いで地面へと突っ込み、CRAAAAAAAAAASH! 地面を砕いて派手な土煙を吹き上げた! セピア色の煙幕からボクサーバニーが華麗に飛び出す!
「ふっ。決まったわね」
 グローブの甲で横髪を払うボクサーバニー。直後、空中にいた同族たちが粉塵を囲むように次々と降り立ち、地上に居た面々がモデルウォークしながら包囲に加わる。徐々に薄れる土埃の中、影が震えながら立ち上がった。
「驚きね。まだ生きてるわ?」
「胸にばっかり栄養行ってるのかと思ったけど、そういうわけでもないのかしらね?」
 喉を鳴らして笑うボクサーバニーたちの輪の中心で、額から夥しい血を流したミアは曲がった膝に両手を当てて肩で荒い息を吐く。真っ白い塗料で塗り潰された体にはひび割れめいて血の筋が複数。今にも倒れそうだ。
「ふっ……ふふふふふふふふ……」
 だが満身創痍のミアは不気味な含み笑いをする。途中からクツクツ笑いに代わり、肩と背中を震わせる彼女を、ボクサーバニーたちは怪訝そうな眼差しで見た。そのうち一匹が声を投げる。
「……何がおかしいわけ?」
「おかしいわ。何がって? ……あんたたちがもう、勝った気になってることよ……!」
 面を上げたミアの表情には、凄絶で酷薄な笑み! ボクサーバニーたちは花畑が薄暗くなるような錯覚と、背筋を駆け上がる悪寒を覚えて身震いをした。ミアは額の汗をこれ見よがしにぬぐいとる。
「アタシがなんで、こんな真っ白白になって入って来たと思ってんの? アンタたちの体にべったりつけてやるためよ。そうとも知らずに殴りかかってきて……怖いくらい、作戦通りッ!」
 ハッと目を見開いた数匹のボクサーバニーが、グローブの拳や膝、胴体にべったりとついた白い塗料に目を落とす! それらはミアを攻撃した際に付着したもの! 急いで擦り落とそうと手を挙げた瞬間、ミアが叫んだ!
「もう遅いわ! この超絶美少女に手を上げた代償は安くないわよ!」
 ミアが右人差し指を高く掲げる! 彼女の全身を塗り潰していた塗料が一瞬にして弾け飛び、元のカラーリングを露わにした。同時に人差し指の先から虹色の輪を伴う白い閃光が周囲を照らす!
「ルール発動! 仲間は全員、殺さなければならないッ!」
 人差し指から放射状に虹色の光が放たれる! 全方位に広がったそれはボクサーバニーたちの身体をすり抜け、白いペンキをカラフルに塗り替えていく。ミアの瞳が怪しい赤色に瞬いた。
「さあ、思う存分殴ってちょうだい! ほら、サンドバッグならそこにあるでしょ? アンタたちの隣に……沢山」
 ボクサーバニーたちの全身が虹色の光に包まれ、ガクガクと錆びたロボットめいた動きで拳を構えた。彼女たちは自分の仲間に向き直り―――肘から蒸気を噴出して互いに殴り合い始める!
「がッ!」
「ぐえッ!」
「げふうっ!」
「やめっ……っぐああ!」
 ミアの周囲で凄まじい速度の打擲が響き渡る。骨肉を叩くビートは徐々にスピードアップし、血の吹き出す音や水気を帯びた粘土を殴るような音が混ざり始めた。胸の下で腕を組んだミアは悪女めいた笑顔で笑い出す!
「ふふふふふふ……あはははははははははは! はい、ミラクル達成ー!」
 空を見上げて両手を広げるミア! ボクサーバニーたちは互いに頭部を殴り潰し合うと、全員血染めの花畑にバタバタと倒れ伏した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木霊・ウタ

あんた
あいつ
名前呼び捨て

心情
人喰い鬼を海へ還すぜ

瘴気
獄炎を全身に纏う

火炎が生む気流で蒸気を吹き飛ばし
獄炎が瘴気を燃やし浄化する

戦闘
獄炎纏う焔摩天で薙ぎ払う

剣風が蒸気を払い死角を失くし
獄炎が蒸気機関を過熱して砕く

ウサギ穴を見つけたら
剣を突っ込んで穴中へ獄炎を放射
燻し出してやる

もし痣を喰らっても
却って好都合だ
団体さんいらっしゃいってな

体ごと回転し剣を振るい
炎渦で纏めて焼き払う

バニー
焔摩様のお迎えだ
さっさと骸の海へ還りやがれ!

事後
清々しい空気の元
セピア色の花園で
バニーと
過去の犠牲者アリスらへの鎮魂曲を爪弾く

安らかに



 色濃く渦巻く黒い瘴気の中心から火柱が吹き上げる! 激しく回転する炎の渦を縦一直線に両断した木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は全身に地獄めいた炎を宿し、大剣を肩に担ぎ上げた!
「ふう! 随分なお出迎えだぜ。毒ガスぶちまけるだけぶちまけといて姿も見せねえとは!」
 セピア色の花畑に踏み出したウタが周囲を見回すも、無音。色褪せた写真じみた世界にただ一人たたずむウタは油断なく片足を開き―――前触れなく前後反転斬撃!
「きゃっ!?」
 CRAAAAAASH! 燃える肉厚の刃が何かにぶつかり激しい火花と金属音を吹き上げる! 立てた両前腕部で大剣をガードしたボクサーバニーは足を踏ん張りながら抗議した。
「ちょっと、いきなりなにすんのよ!」
「こっちの台詞だァッ!」
 力いっぱい大剣を振り切りバニーをふっ飛ばすウタ! 花畑に着地したボクサーバニーは両腕をぶらぶらと振って身構えた。正面から爆炎を引いてウタが斬りかかってくる!
「うおらあああああああッ!」
「シッ!」
 小さな裏拳の一撃で刃を反らし、ボクサーバニーは踏み込みショートフックでウタの胸を打つ! 軽く跳び下がったウタの後方左右から新手のボクサーバニーがハイジャンプ! 両肘の排気口をウタに向ける!
「いい薪が置いてあるじゃない!」
「燻製にはちょうどいいわね!」
 BFOOOOOOOOOOOOOOM! 二匹のボクサーバニーが漆黒の瘴気を放出! 黒い霧はたちまちウタを呑み込み視界を奪うが、ウタは左足を引いて大剣の刃を真上に変えた。
「もう効かねえよ! 不浄よ燃え散れッ!」
 業火の斬り上げが炎の竜巻を突き上げる! BOOOOOOOOOM! 紅蓮の嵐に巻き上げられた瘴気がたちまち剥がれていく中、ウタの両足近くに空いた兎穴からさらに二匹のバニーが出現! 拳を腰だめに引き絞る!
「瘴気が効かなくっても……」
「パンチだったら効くで、しょッ!」
 がら空きの脇腹めがけたボディブロウ! ウタは腹筋に力を込めて胴体に獄炎を集中! 炎でこれを挟撃をガードした瞬間、彼のすぐ顎下に一匹目のボクサーバニーが飛び込んだ!
「はいそこーッ!」
 肘から蒸気を噴射しながらのショートアッパーがウタの下顎を跳ね飛ばす! ウタの正面につけたボクサーバニーは防御の緩んだウタの腹に前蹴りをぶち込んで吹き飛ばす! 背中から花畑に倒れて滑ったウタがすぐ復帰!
「クソッ、やってくれるぜ……!」
「感心するのはまだ早いわね」
 足を交叉するように踏み出したボクサーバニーがグローブの手を唇に当てて口笛を吹いた。大剣を構えて地を蹴るウタの左右に現れた二つの兎穴から二匹のボクサーバニーが飛び出し彼の膝を強打する!
「うおっ!?」
 前につんのめったウタの鳩尾と腹に二匹の膝蹴りが叩き込まれた! さらに片方がウタの首根っこをつかんで上体を引き起こし、もう一方が鼻面を殴る! ウタは半歩下がるも持ちこたえた!
「ってえッ!」
「さすが猟兵、丈夫じゃない」
「でも何発持ちこたえられるかしらね!」
 陰湿な笑みを浮かべた二匹はウタに素早くラッシュを仕掛ける! ウタは大剣の腹を掲げてこれを防御! 刀身を包む焔が火花を散らす中、ウタの背後に別のボクサーバニーが回り込む!
「あはははははッ! 血染めの歓迎会へようこそ!」
「へへっ!」
 全力で振りかぶられる拳を肩越しに見たウタは好戦的に笑い飛ばした。大剣に叩き込まれ続ける二人の拳を刀身を跳ね上げて逸らし、回転斬撃を繰り出す! BOOOOOOOM! 円環状の爆炎が三匹を跳ね飛ばした!
「これで全員か?」
 尻餅を突く三匹と自身を遠巻きに取り囲むボクサーバニーたちを睥睨しながらウタが呟く。大剣の切っ先を前方に向けたまま、柄を右肩に近づけるような構え!
「まだ隠れてんなら全員出て来い。まとめて焼き払ってやる!」
 BOOOOOOOOM! ウタの周囲に炎の衝撃波が広がる。ボクサーバニーたちは顔を不愉快そうに歪めると、一斉に拳を構えてウタへ特攻をかけた!
「ハーレムが御所望なんて生意気な坊やねえッ!」
「お仕置きしてあげるわッ!」
 急速に狭まる包囲網! ウタはニヤリと口角を上げると大剣を大きくぶん回す! BOOOOOOOOOOOOM! 螺旋状の炎が一気に広がりボクサーバニーたちを強襲! 彼女たちは両腕を掲げてこれをガード!
「どうした人喰い鬼ども! ウォームアップが足りないんならもっと熱くしてやるぜッ!」
 ウタは頭上で大剣を回転させると切っ先を地に叩き込む! セピア色の花畑のそこかしこに蜘蛛の巣状のひび割れが走り、火山噴火めいていくつもの火柱が吹き上がった! 炎波を受けきった一匹が正面からウタに突撃!
「うああああああああああッ!」
 腕の蒸気機械を全開にし、弾丸めいた鉄拳! しかしウタは素早く屈んでこれを交わすと伸びきった腕を斬り上げた! さらに背中に殴りかかる一匹の拳に前後反転の勢いを乗せた柄をぶつけ、頭突きを見舞う!
「ふぎゃっ!」
「だから全員で来いって! 団体さんいらっしゃいってな!」
 ウタの回転斬撃が前後の二匹をぶっ飛ばした! 直後、ウタは大剣を真上に突き上げ、頭上に開いた兎穴に大剣を突き込む! 刃を伝って黒い穴に流し込まれる地獄の炎! 穴の中からくぐもった悲鳴が複数響いた!
『アアアアアアアアアアアアアアアッ!』
「出てこねえなら全員燻し出してやる! そん中にいるなら早く出て来い!」
 次の瞬間、ウタを360度取り囲む形で小型の兎穴が出現! 中から飛び出した炎の拳が全方位からウタをむやみやたらに殴打する! 全身を殴りつけられ激しく揺らぐウタ! その真後ろに二体の兎が走り迫る!
「一気に転ばすわよ!」
「オッケー! 寝かせて袋叩きコースね!?」
 片足を大きく踏み込んで背中を弓なりに反らし、地を這うような下段パンチでウタの両ふくらはぎを強襲! SMAAAAAASH! 衝撃音が響き、大きく後ろにぐらついたウタの顔面を焼けた鉄拳が撃ち抜いた!
「ぐふっ!」
『今ぁぁぁぁぁぁぁぁッ!』
 ふくらはぎを握った二匹が大きくさけんだ瞬間、ウタを取り囲んでいた兎穴が一気に拡張し全身を火傷したボクサーバニーたちが飛び出した! さらに遠巻きにしていたバニーたちも急接近! ウタは花畑に膝を突く!
「ジ・エンドよ炎の坊や!」
「このまま全員でいたぶり抜いてじっくりゆっくり殺してあげる!」
「全員でかかって来いなんて言った傲慢、死んで後悔するといいわ!」
 口々にウタを罵りながら質量で押し潰しにかかるボクサーバニーズ! だが彼女たちは吹き上がった火柱によって開花めいて吹き飛ばされた! 火柱の先端、大きく跳躍したウタは地面と水平の体勢で横に回転!
「ようし、ようやく全員そろったな! 焔摩様のお迎えだ、さっさと骸の海へ還りやがれ!」
 空中で回転速度を速めるウタの刃が火力を増して燃え盛る! すんでのところで転倒を逃れたボクサーバニーたちは両膝を地面に向けて腕の蒸気機関を震わせた。煙幕を張っての仕切り直し狙い! だが蒸気機関が爆発した!
「っ!?」
「きゃっ!」
「なぁっ!?」
 BOMBOMBOMBOMBOMBOMBOMBOMBOMB! ボクサーバニーの両腕ごと爆発四散する蒸気機関! 回転を止めて限界まで身をひねったウタは大剣を振りかぶりながら言い放つ!
「おおっと、熱暴走しちまったか!? 悪いな、俺の炎が熱すぎるもんで!」
「なっ、アンタ……!」
 ボクサーバニーの一人が絶句! 度重なる炎の攻撃と花畑の各所から噴火した火柱により蒸気機関に熱がこもり暴発したのだ! ウタは歯を剥いて笑うと、全身のバネを使って力いっぱい大剣を振り下ろす!
「燃えろおおおおおおおおおおおおッ!」
 CABOOOOOOOOOOOOOOOM! 大瀑布じみて叩き落とされた爆炎が四方八方に広がりボクサーバニーを全員まとめて飲み込んだ! 鉄砲水の如き勢いの炎に呑まれたバニーたちは一瞬で焼き払われ消滅!
 大剣を肩に担いだウタは、炎が拡散しきってむき出しになった黒い大地にドスンと着地。周囲の全てが白い煙を上げ、炭と化したのを確認すると、彼は大剣を傍らに刺してエアギターを構えた。
「さて、一曲弾いてやるか。ボクサーバニーと、奴らに殺されたアリスたちのために」
 ウタの両手の平に灯った炎が左右に伸びて合体。渦巻く炎が吹き散らされたそこに出現した一本のギターをつかむと、ウタは静かに演奏を始めた。息を吸い、大きく吐く。
「ふーっ……やっぱ、瘴気の無い空気はすがすがしいぜ」
 セピア色の空に、鎮魂の音色が沁みわたる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木常野・都月
一人称:俺
二人称:貴方
三人称:先輩や尊敬してるヒトはさん付け、それ以外は呼び捨て
名前:苗字さん


相手が兎か。
しかも俺が苦手な毒を使う……なんて卑劣な兎だ。

毒対策は、風の精霊様に頼んで、新鮮な空気を集めて貰いたい。

本来なら穴に潜ってガブーッてやるが…今回は穴から出た瞬間を狙いたい。

[野生の勘、第六感]を全て敵の動きに集中したい。
風の精霊様の助力で俺の動きを加速させたい。

相手のパンチは[高速詠唱]を火の精霊様の[オーラ防御、カウンター]で防ぎたい。

穴から出てくる瞬間を狙ってUC【精霊の瞬き】を火の精霊様の助力で焼き兎にしたい。

敵の挑発と感情は、月の精霊チィに頼んで[呪詛耐性]辺りを強化して貰いたい。



 木製の杖を片手に、木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)はセピア色の花畑を低姿勢ダッシュで駆け抜ける! その右サイドにピタリとついたボクサーバニーが直角カーブからの鉄拳を繰り出して来た!
「よっ」
 前転してこれを掻い潜った都月の背後から瘴気の排煙が迫る! 都月はすぐさまジャンプしてこれを置き去りにするが、着地点に開いた黒い穴からハイジャンプしたボクサーバニーが対空パンチで撃ち落としにくる!
「あぶなっ!」
 とっさに杖をかざしてガード! ボクサーバニーは放物線を描いて落下し、都月は彼女に背中を向ける形で花畑に着地した。その頭上から殴りかかるボクサーバニーC! 都月は横っ跳びで回避! SMASH!
「くっ……!」
「逃げてばっかりじゃ勝てないわよぉ、お狐さん?」
 ゆらりと立ち上がったボクサーバニーCが突如として急接近! 同じく起立した都月は杖を一回転させて突きつけ、迫る剛拳を反らして杖を反転、石突で突く! グローブの甲でこれを防いだバニーは都月の脇腹を蹴った!
「ぐうっ!」
「それっ!」
 蹴り飛ばされた都月はバウンドめいて後転を繰り返して両足から着地し後ろへ滑る! 直後、彼の周囲をどこからか湧いた黒い瘴気が取り囲んだ! 都月はハッと左腕を口元に押し当てる。煙の奥からバニーたちの声!
「ふふふふふふ! 狐狩りも大詰めかしら!」
「ここまで逃げられたことは褒めてあげる。でもこの人数差相手に逃げ切れるって本気で思った?」
「死体はどうしようかしら! このまま燻して燻製肉にでもしちゃう?」
「干し肉にしてアリスたちに食べさせるのもいいわねえ! ミイラみたいにつるされたこの子を見たら、どんな顔をするのやら!」
 甲高い嘲笑が瘴気の蒸気に紛れて響く。都月は油断なく片手で杖を構えながら、不愉快そうに眉根を寄せた。
「複数人で……ごほっ! 俺が苦手な毒を使う……なんて卑劣な兎だ。けど……」
 都月は狐耳をぴくぴく動かし、ボクサーバニーたちの不動を確認。杖を両手で強く握ると、先端に埋め込まれた緑の宝珠が光を放つ!
「このまま食われてやるもんか! 精霊様!」
 SMACK! 光が一際強く膨らむと同時、都月の周囲に翡翠色の旋風が吹き始める! 澄んだ緑色の風は猛毒の瘴気を防ぎ、都月の爪先から足を伝って胴体へ、そして頭の先まで包み込む。都月は大きく膝を折り曲げた!
「今度は、こっちが狩る番だ……!」
 肉食獣めいて目をギラつかせた都月はロケットめいてジャンプ! 黒いドーム状の瘴気に風穴を開け空に飛び出した! その外周、両肘から瘴気を放出していたバニーの一体が空中の都月に振り向く!
「なっ……! みんな、狐が逃げたわよっ! 向こうの空! 叩き落としてッ!」
 ボクサーグローブの拳で都月を指し示す個体の左右で、二体のボクサーバニーが地面に空いた兎穴へと飛び込んだ! 空中で身をひねり、地上のバニーたちを見下ろす都月の目の前に兎穴が開く! 都月の両目が瞬いた!
「そこっ!」
 都月が右の穴に杖を差し入れた瞬間、穴の中に居たボクサーバニーの目と鼻の先で杖先の宝珠が赤く変色! 直後杖は炎をまとい、BOOOOOOOOOOM! 兎穴から炎が漏れ出す中、都月の背後に二つ目の兎穴!
「お見事! 窮鼠猫を噛むってところかしら!」
「!」
 背後を振り返った都月の顔面に右ストレート! 都月は炎めいたオーラをまとう杖で拳を受け止め、兎穴から上半身だけ出したボクサーバニーと向かい合う!
「窮鼠猫? 俺は狐だ」
「そうだったわねッ!」
 凄絶な笑みを浮かべたボクサーバニーは両手で高速のラッシュを放つ! 都月は杖を回転させて拳の数々を防御し、一瞬の隙を突いてボクサーバニーの下顎を杖先で殴り上げた!
「ぶっ!」
「焼き兎だ!」
 都月は杖を引き絞ってボクサーバニーの鳩尾に刺突を叩き込む! 上体を兎穴の中に叩き戻し、杖先からBOOOOOOOOOOM! 爆炎を放った反動で後方に吹き飛んだ! 華麗にバク宙して斜めに花畑に降り立つ!
「かごめかごめーっ!」
 すぐさま都月の周りを生き残ったボクサーバニーたちが包囲し、両肘から黒煙を吹き出し始めた! 都月は杖を真横に振って翡翠色の竜巻を引き起こし、魔障の蒸気を吹き散らす。そのまま杖を掲げて橙色の光球を召喚!
「集まってくれたなら都合がいい。精霊様っ!」
 橙色の光球がウニじみてトゲまみれになり、炸裂して四方八方に炎の矢を撒き散らす! ボクサーバニーたちは素早いジグザグバックステップから後方に空いた兎穴にダイブして回避! 都月の周りにいくつもの兎穴が顕現!
「!」
「もぐら叩きの始まりよ! 叩かれるのはあなただけどねッ!」
 次の瞬間、兎穴からボクサーバニーたちが飛び出すボクサーバニーたちの残像が都月に全方位パンチを打ち込み始めた! 都月は杖を高速回転させながら素早く振り回して鉄棍演舞じみて鉄拳をガードしていく!
「さあほら、こっちよ!」
 乱打の残像が全て消え、都月の左側に無謀なボクサーバニーが一匹両腕を広げた状態で出現! 都月が反射的にそちらへ向いた瞬間、彼の襟首から飛び出した白銀の子狐が全身の毛を逆立てて威嚇! 毛並みから眩い銀光!
「チィ―――っ!」
「はっ……!」
 目を見開いた都月は垂直にジャンプ! 杖を左手手中で回してから頭上に掲げ、小型太陽めいた炎の塊を召喚! 両手で杖を握ると同時に炎の球体は上下にねじれ伸びて巨大な槍の形状を取った! 都月が杖を振り下ろす!
「燃えろっ!」
 CABOOOOOOOOOOOM! 炎の槍が垂直落下! 両腰に手を当てたボクサーバニーが不満げな顔をして穴に引っ込むと共に全ての兎穴が閉じ、一拍遅れて炎の大槍が地面に直撃! KRA-TOOOOOOOOM!
「危ない危ない……挑発に乗るところだった。ありがとう、チィ」
「チィっ!」
 首筋にすり寄るチィの顎を人差し指の背で撫でてやる都月。刹那、彼を包囲する形で兎穴が開いた! 都月はすぐさま真右の兎穴に杖を突っ込んで業火を発射! BOOOOOOOOOOM! だが他の穴から兎が顔出す!
「残念! ボクサーバニーは一匹じゃないのよっ!」
 炎を突っ込まれた穴以外の全てから上体を出したボクサーバニーズが都月にマシンガン如き連打を挑む! だが都月は素早く垂直落下し、身をひねって空中で仰向けになった!
「わかってる。だから……」
 杖の先が拳を空振らせてつんのめるボクサーバニーたちを狙う。都月の輪郭を翡翠色に輝かせる風が彼を加速させ、杖先に赤緑色の風を集中させて火炎弾を作り出す!
「全員まとめてこんがり焼く。チィ!」
「チィ!」
 チィが強く発光し、都月の身体を銀色に包み込んだ! 銀の光は都月の腕から杖に流れ込み、杖を遡って炎球に吸い込まれていく! 炎の塊が一気に拡大した! 都月は杖を一回転させ炎球に引き絞る!
「炎の精霊様、風の精霊様!」
 杖を槍めいて繰り出して炎球に突き刺した瞬間、炎の塊から無数の矢がボクサーバニーたちに放たれる! 空振りの硬直を脱したバニーズは兎穴に引っ込むが、穴が閉じるより速く炎の矢群が全ての穴に分かれて滑り込む!
「もう逃げられない……起爆だ!」
 都月が杖を掲げた刹那、兎穴が全て内側から大爆発! 密集した打ち上げ花火じみて火の粉が飛び散るのを余所に、都月はセピア色の花畑へと落ちた。着地の際に起こした旋風で勢いを殺し、足から地に着く。
 都月は杖を軽く薙いで払うと、手中で回しながら背中に収めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
『あたし・あなた・あいつ・○○クンorちゃんorさん』

別の世界からアリスを引っ張ってくるだけあって、いろんな技術とかごちゃ混ぜにしてるのかしらぁ…?
まあ、あたしたちが言えることじゃないけれど。

蒸気はまだいいとしても、瘴気は流石にほっとけないわねぇ…
それじゃ、祓っちゃいましょうか。●酖殺で辺り一帯を聖域に塗りつぶしちゃいましょ。「浄化の聖域」に瘴気なんて、存在できるわけないわよねぇ?

…で、挑発かぁ。…うん、あえて乗っちゃいましょうか。そのまま無防備に近づいて…カウンターに〇クイックドロウからのクロス〇カウンター一閃でブチ貫いちゃいましょ。
これでもあたし、早撃ちにはそこそこ自信あるのよぉ?



 ボクサーバニーが鋭いジグザグステップで踏み込み連続で左右のパンチを仕掛ける! ダガーとリボルバーを握ったティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は体術でそれらを素早くいなすとダガーで頸動脈めがけた刺突! ボクサーバニーは両肘をティオレンシアに向けると黒い蒸気を噴出しながら飛び下がった!
「ごっほごほごほ!」
 ティオレンシアはせき込みながら空中に素早くダガーを走らせて青白く輝く文字を書き出し、輝くルーン文字から放たれる風で蒸気の瘴気を吹き散らす。口元をパタパタと手で扇ぎながら、ティオレンシアは兎に銃を向ける。
「さっきから殴りかかっては煙を吐いてバックして。ヒットアンドアウェイねぇ……。けど、それじゃあたしを倒せないわよぉ……?」
「ふん、どうかしらね。さっきからちょっとずつ、咳が大きくなってきてるみたいだけど?」
 数メートル離れた場所で軽やかなステップを踏みながら、ボクサーバニーは錆色の機械で覆われた両腕を振る。肩から突き出した煙突や肘からあふれ出す黒煙を見据え、ティオレンシアは内心で呟いた。
(アルダワ魔法学院の、魔導蒸気機関ねぇ……)
(別の世界からアリスを引っ張ってくるだけあって、いろんな技術とかごちゃ混ぜにしてるのかしらぁ……? まあ、あたしたちが言えることじゃないけれど)
 刹那、ボクサーバニーの姿が一瞬にして掻き消える! ティオレンシアはすぐさま前後反転斬撃を繰り出し追加で銃撃! ティオレンシアの背後に回っていたボクサーバニーは連続ジャブで弾丸を叩き落とし右の一撃!
「だァッ!」
「せいっ!」
 ティオレンシアは兎の右ストレートを跳ね上げ片足を彼女の股下に滑り込ませる! その勢いで銃口でバニーの鳩尾を殴りつけるもバニーは寸前でバク宙! BLAM! 銃撃が虚しく空を切る中バニーは逆さまで回転!
「ぜえええええええやッ!」
 黒煙の竜巻と化したバニーがラッシュで急襲! ティオレンシアは交叉した両腕でこれをしのぎ、華麗な回転サイドキックでボクサーバニーを蹴り飛ばす! 残り香めいて漂う蒸気を手で払う中ウサギは身をひねって着地!
「はいそこよぉ」
 クラウチングスタートめいた姿勢のボクサーバニーにティオレンシアは連続銃撃! ボクサーバニーは真横に駆け出し、ティオレンシアから離れた場所で弧を描く! BLAMBLAMBLAM! 軌跡を銃弾がなぞる!
「当たらないわよっ! ついでにこれで完成っと!」
「んんー……?」
 ティオレンシアが細い目を僅かに開く。彼女の周囲を一周したボクサーバニーが跳躍するとそこには黒い蒸気の円環! 瘴気の蒸気がティオレンシアを包囲していた!
「あら……」
「かーらーのーっ!」
 ジャンプしたボクサーバニーが両肘をティオレンシアに向け、BFOOOOOOOOOOOOOOM! 濃い蒸気を吹きかけ巨大ドーナツ状になった瘴気の空洞を埋め尽くす! 一瞬にして視界を閉ざす猛毒の瘴気!
「ごほごほ! 本当にこれ好きねぇ……」
 瘴気の蒸気に呑まれたティオレンシアはダガーを胸掛けベルトの鞘に納めて腰裏のポーチの中身を漁る。引っ張り出したるは鈍色のジュース缶じみた三つのグレネード! ピンを一気に全て指一本で抜き、足元に打ちつける!
「それっ!」
 BOOOOOOOOOOOM! 蒼白い爆風が内から蒸気を消し飛ばす! 一瞬で黒い瘴気を脱したティオレンシアのうなじにボクサーバニーが急角度の拳を繰り出した! ティオレンシアは振り向きながら引き金を引く!
「速いわねぇ」
「でやァッ!」
 BLAM! 銃声が響きボクサーバニーの拳打を差し込まれた腕が防ぐ! リボルバーを撃った反動で肘を差し込んだティオレンシアは逆の手でボクサーバニーの腹に掌打を叩き込んだ! SMASH!
「ぐうっ……!」
 低く呻いたボクサーバニーは両肘を跳ね上げ瘴気を噴いて跳び下がった! しかし尾を引いた蒸気はいつの間にか降り出した雨と霰に打たれて白化! ただの蒸気として薄れ消えた! ボクサーバニーは目を見開く!
「私の瘴気が!? なによこれッ!」
 ボクサーバニーが絶句した顔で空を見上げる。セピア色の空には灰色の雲が立ち込め、冷たい雨と霰を薄く花畑全体に撒いていた。同時にセピア色の花畑がぼんやりと青白い光を放つ! 兎はティオレンシアを見た!
「あんた……何をしたの!? これって一体……!」
「単純なことよぉ」
 顔にかかる白い霧を手団扇で軽く払ったティオレンシアは泰然とした所作で一歩、二歩進み出た。空いた手の平を雨受け皿にし、冷たい雫に叩かれた肌にぼんやりと浮かぶルーン文字を見下ろす。
「なんてことはないルーンの魔術よぉ。これでこの辺りは丸ごと、魔を祓う浄化の聖域になったわぁ。浄化の聖域に瘴気なんて、存在できるわけないわよねぇ?」
 細長いティオレンシアの両目がボクサーバニーを射抜く! 両肩と肘からもくもく上がる黒い瘴気が出たそばから白くなるのを横目に、ボクサーバニーは歯噛みした。
「なるほどね……猪口才な真似してくれるじゃない」
「うふふふふ、それはお互いさまよぉ。それじゃあ、やってみる?」
 ティオレンシアは弾倉開いたリボルバーをスピンさせて排莢し、腰のベルトに並ぶ小型ポーチのひとつから新たな銃弾を抜き出し装填。銃口をボクサーバニーへ突きつける!
「小細工無しの真剣勝負」
「ええ……いいアイデアね」
 苛立ちに引きつった口角を笑みの形にし、ボクサーバニーは両腕をだらんと垂らす。雨と霰が静かに降る空の下、張り詰めた沈黙の中で二人は真っ直ぐにらみ合い―――ティオレンシアが撃った! BLAM!
「ふっ!」
 素早く顔を反らしたボクサーバニーの側頭部を銃弾がかすめる! 素早く距離を詰めたティオレンシアが兎の顔面にショートフックを繰り出すも兎はこれを片手でつかみ止めガード! ティオレンシアは即座に銃撃!
 BLAMBLAMBLAMBLAM! 連続銃撃を兎はサイドステップで全弾回避! 反撃の右フックをティオレンシアは身を反らして回避し跳ね起き様に追加銃撃! ボクサーバニーはクロスガード!
「その程度かしら? 効かないわよッ!」
 DRRRRRRNG! 両肩と肘のエンジンをいななかせボクサーバニーはダブルパンチ! ティオレンシアはこれをジャンプで回避しガンスピンリロードを決めると脳天へと狙いを定める! 刹那ウサギは俊足後退!
「あら」
 BLAM! 空を切った銃弾がセピア色の花を一輪撃ち抜く! 着地したティオレンシアはバックしたボクサーバニーのワン・インチ距離に素早く踏み込んだ! ボクサーバニーの目がギラリと輝く!
「ここぉッ!」
 ティオレンシアの腹を抉るショートフック! さらに兎の頭突きがティオレンシアの鼻面を叩き、ノックバックしたところで兎は一回転して腕を引き絞る! 遠心力を乗せたストレートだ!
「これで……終わりよッ!」
 BFOOOOOOOOOM! 放たれる高速パンチ! 僅かに顔を上げたティオレンシアは大きく半歩下がった足を踏みしめ、リボルバーを握った手をムチめいてしならせる! 兎とティオレンシアの腕が十字に交叉!
「惜しかったわねぇ」
 BLAM! 銃声が響き、ティオレンシアの目前で兎の拳が停止する。交叉したティオレンシアの腕の先でリボルバーが銃口から硝煙をくゆらせ、側頭部を貫かれたボクサーバニーが血涙を流した。
「がっ、かっ…………」
 ボクサーバニーの瞳がグルンと上を向き、体が仰向けに花畑に倒れた。ティオレンシアは指先でリボルバーをくるくると回転させながら口元に引き寄せると、銃口に軽く息を吹きかけた。
「隙をさらしたからって油断したわねぇ? これでもあたし、早撃ちにはそこそこ自信あるのよぉ? ……もう聞こえてないか」
 ボクサーバニーの両側頭部に空いた穴が血を流し、セピア色の花を染めていく。ティオレンシアはボクサーバニーに背中を向けると、銃をホルスターに収めて指を鳴らした。彼女の頭上で雨雲が波紋を広げるように消失。
 セピア色に晴れた空を背に、ティオレンシアは花畑から立ち去った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メルティア・サーゲイト
【私・お前・名前呼び捨て】
「ドーモ、サチュレイターです」
 私にとって生体ユニットは必須じゃない。宇宙服なんか無くても宇宙に出られる仕様だ。だが足りないだろうな。普段は空冷だが、空冷ってのは外気に触れる。これが恐らくマズい。
「なら簡単だ。他の冷却手段を使えばいい」
 と、言う訳で全身に液体窒素循環冷却ラインを追加して水冷式を採用だ。これなら外気に触れる必要は無い。後、排気窒素がスチパンっぽくてかっこいい。
「来いよ、どっからだろうが鏖殺してやるぜ」
 二挺ガトリングショットガン。しかも着火用酸素を火薬に内蔵した宇宙仕様だ。私のガトリングカラテを見せてやるぜ。



 セピア色の花畑に吹く風が、無数の花々をざわめかせる。
 花畑に立ったメルティア・サーゲイト(人形と鉄巨人のトリガーハッピー・f03470)は、ひしゃげた大型機械バックパックから断続的に冷気を散らしながらも両手を合わせた。顔には無骨なゴーグルと左右にケーブルが伸びたマスク・メンポ。
「ハァーッ……ドーモ、サチュレイターです。泣き所ついてアンブッシュかよ。やるじゃねえか」
 ゴーグル越しに鋭い眼差しを向ける先、メルティアからタタミ5枚分離れた位置に立ったボクサーバニーは余裕の笑みを浮かべて両拳を合わせ、アイサツを返した。
「ドーモ、サチュレイター=サン。ボクサーバニーです。そりゃあそんだけでっかいものしょって、しかも口から伸びたストローが繋がってるんだもの。『ここ大事です!』って言ってるようなものじゃない?」
「ストローじゃなくてせめてチューブって言おうぜ」
 言い返しながらも、隠されたメルティアの表情は険しい。背後から聞こえるブシュブシュという音が背筋を薄ら寒くする。
(ったく……空冷式じゃマズいってんで水冷式にしたはいいがよ。まさかアンブッシュでこっち狙ってくるたァ。……ただのバニーガールと思ってナメない方がいいってわけか)
 メルティアは一人胸の奥で呟きながら、両手十指を蠢かせた。ボクサーバニーの両肩から伸びた煙突が振動し、肘の排気口と合わせて黒い瘴気を撒き散らす。西部劇のガンマンめいて一触即発の状況! 下手に動くべからず!
「ま、それでも完全にぶっ壊さなかったのがお前の敗因って奴だ。やンならちゃんと潰しておかねえとな」
「スクラップがお望みかしら? 安心しなさい。すぐにぐっちゃぐちゃにしてあげるから」
「へえ、意外だな! こんなメルヘンチックな世界にもスクラップがあンのか!」
「あるわよ。一分先のあなたとかね」
「ヘッ、抜かせ」
 メルティアがボクサーバニーの軽口を鼻で笑う。一方、小刻みなステップを踏み、威嚇的にシャドーボクシングをするボクサーバニー。それきり沈黙が花畑を包み―――風が吹いた瞬間、二人は動いた!
「イヤーッ!」
 神速ダッシュで距離を詰めるボクサーバニー! メルティアは背中とバックパックに挟んだ二丁の鉄塊じみた銃を引き抜いて引き金を引く!
「イヤーッ!」
 BRRRRRRRRRRRRRAKKKKKA! 花火じみたマズルフラッシュが閃きセピア色の花弁が爆散していく! 残像引くサイドステップを決めたボクサーバニーは姿を掻き消しワープめいてメルティアの背後へ!
「イヤーッ!」
「イヤーッ!」
 バックパックへのパンチを振り返りながら鉄塊銃で受けるメルティア! 反動で飛び下がるバニーにもう片方のガトリングショットガンを乱射する! BRRRRRRRRRRRRRAKKKKKA! 兎は跳躍回避した!
「クソッ!」
 メルティアはすぐさま銃口を上向けて弾丸をばら撒く! しかしムーンサルトしたボクサーバニーは銃弾を置き去りにしてメルティアの背後に着地! メルティアは発砲肘打ちを繰り出した! ボクサーバニーは紙一重で回避!
「ワオ!」
「何度も同じ手が通じるかよッ!」
 BRAKKA! 発砲の反動でメルティアが回し蹴り! ボクサーバニーは立てた片腕でこれを受け止めるも銃口が顔面を狙う! 素早く屈んだ直後にBRRRAKK! バニーは頭上を銃弾を無視して零距離へ!
「イヤーッ!」
 低空ジャンプパンチがメルティアの鳩尾に命中! 体をくの字に折ったメルティアは砲弾めいて吹き飛んだ!
「グワーッ!」
「イヤーッ!」
 着地から低姿勢ダッシュで追いすがるボクサーバニー! メルティアは吹き飛びながら銃を乱射するが素早いジグザグダッシュのせいで当たらぬ! 舌打ちし、後方に銃口を向けてBRAKKA! 反動跳び蹴りを放つ!
「イヤーッ!」
「イヤーッ!」
 重ねたグローブの甲で飛び蹴りを受けたボクサーバニーは後ろにのけ反る! メルティアは二丁銃を下方に向けて再発砲! ボクサーバニーの頭上を取りガトリングめいた地団太キックを乱打! 兎はラッシュで迎え撃つ!
『イィィィィィヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤッ!』
 拮抗! メルティアはドリルめいて回転するとキックを撃った! ボクサーバニーはこれを両手でつかみ振り上げる!
「シマッタ!」
「イヤーッ!」
 振り下ろされ背中から叩きつけられるメルティア! 僅かに潰れたバックパックの四方から窒素が噴き出す! メルティアは体を思い切りひねってクラッチを解除! 二丁銃をぶっ放した! BRAKKA!
「ンアーッ!」
 とっさにクロスガードするも後ろに弾かれるボクサーバニー! 体勢復帰して片膝立ち着地したメルティアはそのままボクサーバニーに銃弾を乱射する! BRRRRRRRRRRRRRAKKKKKKKKKKKA!
「死ね! ボクサーバニー=サン! 死ね!」
 メルティアは引き金を引き続けて掃射継続! ボクサーバニーは高速ステップに回転を加えて銃弾を弾いていくが、太ももやあばら、鎖骨を鉛弾が次々と抉り取る! ボクサーバニーは顔を歪めて跳躍脱出!
「イヤーッ!」
「同じ手は二度も通用しねえって……」
 メルティアは花畑の地面にガトリングショットガンを押しつけてトリガーを引く!
「言ってんだろ! イヤーッ!」
 BRAKKA! 反動ハイジャンプからのロケット頭突きがボクサーバニーの鼻面を強打する! 頭を真後ろに反らしたボクサーバニーは鼻血を流しながらもほくそ笑んだ! グローブの手がメルティアの顔を捕らえる!
「っ!?」
「なら……こういう手はどうかしら! イヤーッ!」
 兎の頭突きがメルティアのゴーグルを打ち砕く! ひび割れて飛び散るレンズの破片。ボクサーバニーは二度目の頭突きでマスクを粉砕!
「グワーッ!」
「これで邪魔なマスクは無くなったわね。そしたら!」
 ボクサーバニーは素顔をさらしたメルティアの首を回して強制反転させ、バックパックごと羽交い絞めにして大きく後転からの上下逆転! ドリルめいて錐揉み回転しながら垂直落下し始めた!
「クソッ! 離しやがれッ!」
「ヒサツ・ワザ! イィィィヤアアアアアアアアアアア―――ッ!」
 必死でもがくメルティアを捕まえたまま地面をめがけるボクサーバニー! ナムアミダブツ! これは暗黒カラテ奥義、アラバマ落としだ! 二人は高速で地面に激突! CRAAAAAAAASH!
「グワァァァァァ―――ッ!」
 吹き上がる瘴気混じりの土煙からメルティアの悲鳴が響く! 煙が吹き飛んだそこには、仰向けに倒れたメルティアをマウントポジションで高速するボクサーバニーの姿! 彼女は両肘のエンジンを鳴らす!
「オーテ・ツミね。ハイクを詠みなさい!」
「誰がッ……!」
「イヤーッ!」
 メルティアの顔面に右鉄拳! 地面に叩きつけられた後頭部がバウンドした所に左パンチ! おお、ナムサン! 一方的な暴行が幕を開いた! 交互に左右の拳を打ち下ろすボクサーバニー!
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
 なんたる拮抗勝負からワンサイドゲームへのシーソーじみた転換か! のしかかられたメルティアは抵抗できぬまま殴られ続け、さらにボクサーバニーの腕からあふれ出した瘴気が周囲を薄暗く塗り替えていく!
(クソッ……別にこのボディが壊れたって構わねえけどよ……)
(こいつにこのままボコられんのは……ムカつく!)
 歯噛みをするメルティアだが、必死で身をよじってもボクサーバニーのマウントは剥がれぬ! 加えて立ち込め始めた瘴気の焦げ臭い匂いが鼻を突き、視界が黒く絞られ始めたではないか! そして暴行の手は止まらぬ!
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
 ナムアミダブツ! このままメルティアは何も出来ないままボクサーバニーにボディを砕かれ、外界に置いてきた本体に屈辱の記憶を刻まれるのか? だが彼女は柳眉を逆立てた!
「イヤーッ!」
「グワーッ! いい加減に……しろッ!」
 メルティアは手首のスナップで握ったままの銃口を背中と地面に挟まれたバックパックに向け、発砲! 大穴を開けられた液体窒素水冷式バックパックが爆ぜ飛んだ! BOOOOOOOOOOM!
「グワーッ!」
「ンアーッ!」
 中空に弾き飛ばされる二者! マウントポジションから解放されたメルティアは目を見開くボクサーバニーの腹と胸にガトリングショットガンの銃口を押し付けた! ボクサーバニーは歯噛みをする!
「なッ……なんて、無茶をッ……!」
「無茶でもなんでも勝ちゃあいいんだよ。泥棒がバレたら家に火を点けろってなァッ! イヤーッ!」
 BRRRRRRRKKKKKKA! 零距離で放たれたガトリングショットガンがボクサーバニーを穴だらけのクズ肉へと変貌させる! ドスンと地面に着地したメルティアの数メートル先に兎は落下し、橙色に輝いた!
「サヨナラ!」
 ボクサーバニーは爆発四散した。メルティアは壊れたバックパックを肩から降ろして地面に落とし、ガトリングショットガンを交叉する形で背負った。
「これがイクサって奴だぜ、ボクサーバニー=サン。マウントとったからって、殺しきらなきゃ勝ちじゃねえんだよ」
 首を鳴らしながら告げるメルティア。彼女の言葉は実際正しい。猟兵とオブリビオンの間で行われるイクサはジュドーの試合ではなく、仁義なき殺し合いであるからだ。
 注意は一秒、後遺症は死ぬまで。平安時代の剣聖にして詩人、ミヤモト・マサシがこの場にいればそのようにハイクを詠んだだろう。ショッギョ・ムッジョ!
「ま、せいぜいアノヨで教訓にしな。オタッシャデー」
 メルティアはボクサーバニーの死体に背を向け、肩越しに手を振りながら歩き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マグダレナ・クールー
オウガ以外には、猛毒。……ならば、わたくしに憑り付くリィー・アルは兵器なのでしょうか。どうです、リィー
《クサクサ!!! ハナニツクニ!!》
平気みたいですね。では、わたくしが囮になりますから、あのオウガに卑劣な手段を喰らわせますよ

挑発には乗ってやります。ええ、近づきましょう! なぶり殺せるならばやってみなさい!!
油断したところを喰らってあげますから、爪を研ぎ続けます
反撃の兆しが見えたら、蹂躙を。暴力を。暴力には、暴力を
一方的に殴られる恐怖を与えます



 BFAM! 黒い煙の中を巨大な毛蟹が慌ただしサイドダッシュで突破せんとす! 甲殻の隙間からはみ出た贅肉を揺さぶり、両目を忙しなく動かす蟹の背にしがみついたマグダレナ・クールー(マジカルメンタルルサンチマン・f21320)は神妙につぶやいた。
「完全に視界を奪われてしまいましたね。……げほっ。この蒸気はオウガ以外には、猛毒。……どうです、リィー」
 マグダレナに問われ、毛蟹は走りながらハサミで口元をゴシゴシと擦る。
『クサクサ! ハナニツクニ!』
「平気みたいですね。では、わたくしが囮になりますから、あのオウガに卑劣な手段を喰らわせますよ」
『マグノミミモラタオボエナイニ!』
 毛蟹の抗議をスルーし、マグダレナは黒い霧の中に視線を巡らせる。ボクサーバニーの影は見えず、また声も聞こえない。マグダレナは毛蟹の背から身をもぎ放すと、巨体の上から飛び降りた!
『マグ!』
「リィー、隠れていてください。卑劣な兎をいぶり出します」
 マグダレナは背負っていたハルバードを引き抜いて振り上げ、頭上でプロペラめいて回転させた。遠心力と勢いを乗せて跳躍し、地面に刃を振り下ろす!
「はッ!」
 CRAAAAAAAASH! ハルバードが大地を砕き黒い煙を放射状に吹き飛ばす! 瘴気の蒸気の中に毛蟹の姿が溶け消え、マグダレナの周囲が晴れ渡った。その時、彼女の真後ろに開いた穴からボクサーバニーが出現!
「シッ!」
「せいあッ!」
 振り向きざまに振るわれたハルバードが拳を迎撃! 機械化した腕を横から打ち据え火花を散らした。マグダレナはボクサーバニーのパンチを弾き飛ばし、さらに首狩り斬撃を繰り出す! ボクサーバニーは裏拳で防いだ!
「ようこそあたしの食材! ちょっとは燻製らしくなったのかしら!?」
「大きく出たものですね……」
 ハルバードを握る腕に力を込め、ボクサーバニーの裏拳と押し合うマグダレナ! 彼女は突如逆回転しよろめく兎の側頭部をぶん殴った! 真横にすっ飛んだボクサーバニーは空中側転を決めて体勢復帰!
「残念ですが食べられるのはあなたの方です。ジビエ料理にしてあげましょう」
 マグダレナはハルバードを片手で回し空を薙ぐ。ボクサーバニーは側頭部から流れる血を手の甲でぬぐうと、ファイティングポーズを取って両肩両肘から噴煙を吐く。そのまま手招きをして挑発して見せる!
「やれるものならやってみなさい。どっちが上か教えてあげるッ!」
「望むところですッ!」
 マグダレナがハルバードを担いで突進! ボクサーバニーは半歩下がって両拳を口元まで引くと、肉迫したマグダレナが放つ連続斬撃を高速拳打でいなしはじめた! ZGAGAGAGAGAGAGAGA! 響く金属音!
「はっ!」
 マグダレナの回転斬撃を踏み込みで避けハルバードの柄を脇でホールド! 鋭いパンチがマグダレナの鼻面を弾いた! さらに腕一本で喉腹腹に三連パンチ! 下げた頭を跳ね上げ変則的な頭突きを見舞う!
「ぐうッ!」
 ノックバックしたマグダレナはしかし鋭いローキックで兎の大腿部を蹴る! 僅かに顔を歪めるボクサーバニーをハルバードごと振り上げスープレックス! CRASH! 地面を砕いたバニーは前転!
「まだまだですッ!」
 片膝立ちになったバニーの背中に刃を振り下ろすマグダレナ! ボクサーバニーは両腕を後ろ頭で交叉させて受け止めると馬じみたバックキックを繰り出した! 身を折るマグダレナに前後反転裏拳を放つ!
「とうッ!」
「づッ!」
 横面を殴られマグダレナは大きく傾く! ボクサーバニーは両肘を腰だめに引き絞った前傾姿勢から噴煙をジェット噴射しながらダブルパンチ! SMAAAAAAASH! 吹き飛んだマグダレナが花畑に倒れ込んだ!
「うぐうッ!」
 セピア色の花弁を散らしながらマグダレナが跳ね起きる。ボクサーバニーは軽く跳ねて右肩を回し、首の骨をゴキゴキ鳴らした。
「まだ続ける気?」
「当然です……!」
 ハルバードを構え直すマグダレナ。ボクサーバニーは鼻を鳴らして笑うと、片足を引いて半身になった。油断なく両腕の蒸気機関を唸らせながら嘲るようにして言い放つ。
「降伏した方がいいと思うけど? あの蟹と一緒に頭を下げれば苦しまないようにさばいてあげるわ。そのナマクラじゃ、あたしの腕は斬り落とせないみたいだし」
「それで、従わなければなぶり殺しですか?」
 爪先をジリジリと動かしながら間合いとタイミングを測りつつ、マグダレナが切り返す。
「甘く見られては困ります。あなたを蹂躙するのはわたし。すぐにハンバーグにして差し上げます。今夜は特大サイズですね」
「ふっ。蟹の餌にでもするつもりかしら?」
「それがお望みとあらば」
 DRRRNG、DRRRNG! 舌鋒を交わす最中にもボクサーバニーの魔導蒸気機械はいななき、黒い煙を充満させんと吐き出していく。周囲は曇り空に覆われたように薄暗くなり始めていた。兎は再度手招きをする!
「だったらさっさとかかって来なさい。こうやってにらみ合ってても埒が明かないでしょう?」
「安い挑発ですね」
 マグダレナは言い、ハルバードを振りかぶって地を蹴った!
「ですがええ、近づきましょう! なぶり殺せるならばやってみなさい!」
「よーく叩いてやわらかい肉にしてあげるッ!」
 ワンテンポ置いて迎撃に突っ込むボクサーバニー! 高速ステップで残像分身を作ってマグダレナのハルバード連撃を軽々とスカし、踏み込みながらのショートアッパーで腹と鳩尾の間を抉る!
「うぐぅっ……!」
「いい音! さて下ごしらえを終わらせましょうか!」
 ボクサーバニーが凄絶な笑みを浮かべた次の瞬間、マグダレナの真後ろで地面が吹き飛ぶ! 土埃を吹き上げて現れた大蟹が左右のハサミで兎を挟撃! ボクサーバニーはとっさのバックダッシュで避けた!
『ツメトギ! バラバラニキザム。ニッ!』
「リィー、サービスタイムは終了です」
 殴られた衝撃で浮き上がった足を地につけ踏みしめながらマグダレナは身構え直す。
「蹂躙を。暴力を。暴力には暴力を!」
『ニニニニニ……カ、カ!』
 毛蟹めいたオウガのリィーは両のハサミを振り上げて威嚇し、高速のラッシュを仕掛ける! ボクサーバニーは再び残像を残す長距離サイドステップでこれを翻弄! 外れたハサミが花畑を斬り刻む!
「カニが一匹加わったぐらいで勝ったつもり? あなたの方こそあたしを侮り過ぎなのよッ!」
『ニニニニニニニ!』
 大蟹のハサミを掻い潜ってマグダレナに急接近するボクサーバニー! マグダレナの大振り斬撃を対空パンチで跳ね返しての右ストレートを、マグダレナは地に突き立てたハルバードの柄で防御!
「その蟹、使い魔か何かでしょ? ならまず本体から叩く!」
「そうはなりません」
 マグダレナは刃をボクサーバニーに向けて斬り上げる! 跳び下がった兎の胴を蟹の巨大なハサミが捕らえた!
「あ、まず……っ!」
「言ったはずです。ここから一方的に蹂躙すると!」
『ナゲル! キザム! ニッ!』
 リィーはボクサーバニーを軽く放ると、二本のハサミで高速斬撃を浴びせかける! 小柄な体躯に走る巨大な剣閃。リィーは最後に兎の胴を両側から二閃! 直後、ハイジャンプしたマグダレナがハルバードを振り上げた!
「兎ひき肉の……完成ですッ!」
 SLAAAAASH! トドメの斬撃がボクサーバニーをバラバラに裂き、細切れなった肉が大量の血と共にセピア色の花畑に落下し赤い塗料じみて花弁を塗り潰す! 着地したマグダレナはハルバードを背中に収めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

玉ノ井・狐狛
※アドリブ/連携などお任せ
一人称:アタシ
呼称(他猟兵):[名前や外見特徴]の[嬢ちゃん/兄サン]
呼称(敵):アンタ、ウサギちゃん


デキたヤツなら、悪趣味と呼ばわるところなんだろうが
相手を弄ぶってのは、たしかに面白いよなァ

▻挑発して攻撃を誘う
敵の初手の命中から、続く攻撃までの間隙を縫って、UC発動
▻見切って目押しするのは慣れてらァ
UC効果で「ウサギ型の痣」をキャンセル、コンボ成立条件を破綻させる

おっと、繋がってねぇみたいだな
トレモ(トレーニングモード)で練習してきな

打ち消したダメージをベースに相手に▻継続ダメージ
蒸気ブースト分も乗って得だな
アンタらの趣味に合わせて、削れていくのを干渉させてもらおう



 セピア色の空に肉を叩く音が鳴る。色褪せた写真めいた世界の地上、瘴気の蒸気に覆われた花畑に玉ノ井・狐狛(代理賭博師・f20972)の小柄な体が転がった。
「ぐうっ!」
 うつ伏せになった狐狛は咳をしながら四つん這いになって立ち上がらんとす。その背中をボクサーバニーの足が踏み付け狐狛を地に縫い留めた。
「ぐはっ!」
「ふふふふふふ! 無様ねえ、お狐さま! もうおねむの時間かしら?」
 靴裏が狐狛を舐める踏みにじっていく。なおも両腕を地面に押し付け、立ち上がろうとする狐狛の頭を踏みつける別の足。さらにまた別の足が左のふくらはぎに叩きつけられる!
「つっ!」
「あ、意外。いい加減足の一本でも折れてるかと思ったら。見た目の割りに頑丈なのね?」
「でも、取り柄はそれだけってことかしら。こうやって地べたに這いずってるんだから。ね? そうは思わない?」
 狐狛の頭を踏みつけたボクサーバニーが、重しを追加するように腕を膝の上に置く。狐狛はその状態のまま、喉を鳴らして笑った。
「くくっ、くくくくくくくくく……」
 ボクサーバニーたちが片眉を吊り上げて狐狛を見下ろした。狐狛は僅かに顔を上げると、小さく呟く。
「デキたヤツなら、悪趣味と呼ばわるところなんだろうが……相手を弄ぶってのは、たしかに面白いよなァ」
「ん……?」
 狐狛の背中を踏んだボクサーバニーが眉根を寄せて首をひねった。彼女が足を上げると、他の二匹も狐狛を踏みつけていた足を上げる。直後、背中を踏みつけていた個体が狐狛を蹴って仰向けにする!
「がっ!」
 がら空きになった腹にストンピング! 衝撃に跳ねた狐狛は内蔵を押し出されるような感覚にうめきながら、己を潰さんとする足を両手でつかんだ。絞り出された空気の代わりに黒い蒸気が喉を焼く。
「かはっ……!」
「よくわかってるじゃない。もしかしてあなた、こうやって弄ばれるのが好きな人?」
「へっ、冗談だろ……」
 無数の針を刺されたかのようにズキズキと痛む目を強いて開き続けながら、狐狛は引きつった笑みを浮かべる。彼女の両手に力が込められ、腹を押さえていた足が少しずつ持ち上げられ始めた。
「アタシも弄ぶ側だぜ、ウサギちゃん……! 気づいてねえと思うがな、こうやって好き放題ボコさせてやってんのも、アンタらを弄ぶための下準備なんだよなァ……!」
「ふうん……」
 ボクサーバニーは不愉快そうな顔をすると、狐狛の手を蹴り払って足を引いた。直後、彼女の腹に鉄拳が殴り下ろされる! SQUAAAAAAASH! 狐狛の身体がV字に跳ね、額と足を傍観していた二匹が踏みつける!
「っぐああああああああああっ!」
「随分と斬新な命乞いをするのね? 自分の状況がわかってないのかしら?」
 打ち下ろした拳を執拗にぐりぐりと抉り込みながら、パンチを繰り出したボクサーバニーが言う。狐狛は腹に拳を入れる手首を両手でつかみ、激しく身をよじらせるが脱出できぬ! 機械腕が激しく拍動音を響かせた。
「ぐっ、があっ! うがぁぁぁっ!」
「こんなボロッボロにされて、転がされて。あとは瘴気にやられるか私たちがトドメを刺してあげるかって状況なのよ? そんなこともわからない悪い子の身体にはこうすれば効果的かしら……っ!?」
 ドドドドドドドドド! ボクサーバニーの肩に生えた煙突と肘に開設された排気口から蒸気が吹き出し、拳の圧力を強めていく! 狐狛は内蔵を徐々に押し潰されていきながらも、血を垂らす口の端を歪めて笑う。
「おいおい……そんな押し込んでいいのか……? 破裂しちまうぜ……?」
「はあ?」
 ボクサーバニーが狐狛の顔を見た、次の瞬間。狐狛の腹と拳の間に五枚花弁の花模様ふたつに五芒星、太極印を重ねた魔法陣が現れる! 一瞬で金色の光を放った魔法陣はボクサーバニーの肩から先を爆散させた!
「な……」
 消し飛んだ腕を唖然と見つめるボクサーバニー。他の二匹も面食らった隙を突いた狐狛は真横に転がって拘束を脱出! 一気に転がって距離を取り、素早く立ち上がった! すぐさま反応した一匹が殴りかかる!
「ふんッ!」
 弾丸じみて撃ち出された拳を狐狛は両手で受け止める! 両足を踏んじ張って立った彼女はボクサーバニーに不敵な笑みを向けて言った。
「遊びは終わりだぜ、ウサギちゃんたち。気合い入れてかかって来いよ!」
「このッ……!」
 ボクサーバニーは柳眉を逆立て、逆の拳で無防備な狐狛の腹を打った! 狐狛の両足が地面を離れて浮き上がる! ボクサーバニーは最初に繰り出した腕を再度振りかぶった!
「調子に乗ってんじゃ……ないわよッ!」
 SMAAAAASH! 狐狛の顔面にストレートが突き刺さり、小柄な体が大きく真後ろにのけ反った! 着物の腹に浮かんだ兎の紋様を見てボクサーバニーはニヤリと笑う。狐狛の真後ろに拓く漆黒の穴!
「玩具は変わらず、あなたの方ッ!」
 穴から飛び出した新手のボクサーバニーが狐狛の背中にワンツーパンチ! 前によろめいた彼女の横面を待ち構えていた一体のフックが遅い、追撃の回し蹴りが脇腹に命中! 真横に吹き飛ぶ狐狛の行く手に新たな黒穴が開く!
「ハーァーイ!」
 穴から顔を出した次のバニーが拳を殴り下ろして狐狛を地に叩き伏せる! ボールめいたバウンドした狐狛は、地面に空いた兎穴から上半身を出したボクサーバニーのダブルパンチを食らって花畑を転がった!
「ぐっ! ぐふっ!」
「来た来た」
 転がる狐狛を待ち構えていたボクサーバニーがサッカーボールキック! 再びうつ伏せに地を舐めさせられた狐狛の上空に開いた兎穴から蒸気を吹きながら最後のボクサーバニーが垂直落下! 動かない狐狛を見下ろす!
「これで遊びはお終いかしら? さようなら、可愛い狐さんっ!」
 凄まじい速度で迫るボクサーバニー! だが直後、狐狛は自ら仰向けになって挑発的な笑顔をさらした。ボクサーバニーがハッと目を見開くと同時に跳ね起きた狐狛はその場を退避! ボクサーバニーが地面に突っ込む!
 CRAAAAAAASH! 粉砕される大地! 魔障の蒸気に混ざる土煙からダッシュで飛び出したボクサーバニーは真っ直ぐ狐狛に殴りかかる! 一方の狐狛は腹に浮かんだ紋様を手の平でぬぐい取った。拳が急襲!
「でいッ!」
 風切り音を鳴らしたパンチを狐狛は手の平ひとつで受け止めた! 片腕の力だけでダッシュストレートを押し返す彼女の服や顔から、ダメージの痕跡が蒸発するように消滅。ボクサーバニーが目を見開く!
「なッ……」
「おっと、繋がってねぇみたいだな。倒れた奴を起き攻めでハメるのは基本だぜ。トレモで練習してきな」
 狐狛はボクサーバニーの拳を押し返す。刹那、彼女の周囲を囲んだボクサーバニーが全員で狐狛に殴りかかった! 後頭部、うなじ、首筋、あばら、鳩尾、腹、背中。急所めがけて撃ち出された拳が中途で止まる!
「だからよ、言ったろ。アタシは弄ぶ側で……」
 狐狛が右手を腰に当て、左肩を竦めた。彼女のすぐ傍で拳の全ては停止したまま。殴りかかったボクサーバニーたちは―――地面から伸びた黒い茨に幾重にも縛られ、彫像めいて不動の状態にさせられていた!
「アンタらを弄ぶための下準備として、ボコられてやってたんだよ」
 茨がボクサーバニーたちの腕を上げさせ、狐狛の身を自由にする。口元を茨でぐるぐる巻きにされ、声を封じられたボクサーバニーたちがもがこうとするもイバラのトゲは柔肌に刺さったまま抜けず、標本じみて動けぬ!
「無駄だぜ。そいつらはさっきまでアタシが受けたダメージそのものを呪詛にしたもんでね。絶対抜けねーようになってんだ。さて……」
 狐狛は優雅にボクサーバニーたちの包囲を抜ける。前方、のけ反った姿勢のまま茨に縛られて固定された兎の一匹の額を指でつつくと、兎は茨によって無理矢理空気椅子の体勢に変えられた。狐狛は兎の足に腰を下ろす。
「アンタらの趣味に合わせて、削れていくのを観賞させてもらおうかね。これまでのお礼だ。じっくり味わってくれよ?」
 狐狛は茨によって肘掛代わりとされたボクサーバニーの腕に肘を乗せ、酷薄な表情で指を鳴らした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
【spd】
アドリブ・連携・絡みも歓迎!
ボク・キミ・あの子(たち)・呼び捨て

う~ん、どうするかな~
とりあえず攻撃は勘に任せて避けて~
でも反撃するにはこのガスをどうにかしないと~
耐性だけじゃおっつかない~あ゛あ゛~~~
(ふらふら~)
あ~気が遠くなってきた~世界が回ってる!あははははっ!

●UC発動。完全毒ガス耐性を獲得

フ…ボクにガスなんて効くとでも思った?そんな訳ないじゃん!(一週目と同様に攻撃を避けながら)
それにキミたちの攻撃なんてまるで一度見たみたいに完璧に読めるよ!(実際に一度見たので)

じゃ、あとお願い
餓鬼球くんをいくつか取り出して穴が開いて飛び出してくる瞬間をぱくっとかじっていってもらおっと



 瘴気の混ざった蒸気が立ち込める中、敵愾心に満ちた表情のボクサーバニーがマシンガンじみたジャブを浴びせかける! ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は風に吹かれる葦めいてひょいひょい拳をかわすと、千鳥足でたたらを踏み、くるりと回ってグラグラ揺れた。
「あー毒ガスきついなー……耐性だけじゃおっつかないーあ゛あ゛―――」
 ボクサーバニーは苛立ったように眉根を寄せると素早く距離を詰めてコンボを仕掛ける! しかしロニはよろめくような動きで後退して拳を紙一重で次々回避! 首筋狙いのフックを大きく後ろに傾いて空振らせる!
「あー気が遠くなってきたー……。世界が回ってる! あははははっ!」
 両手を上げたロニは酔っ払いめいてケラケラ笑う。腹を穿つ軌道の下段パンチを三日月型になって避け、踵からふくらはぎに接地し後転。彼の背中を蹴り上げがかすめる! うつ伏せになったロニは真横に転がり始めた!
「あはははははは! ぐーるぐーるだぁーっ!」
 追撃の連続ストンプを転がって避けるロニ! ボクサーバニーは眦を痙攣させると、両肩と両肘から排気ガスを噴き出した! 両膝を折り曲げ、前傾姿勢を取りながら脳の血管を引っ張られるような感覚を味わう!
(なんッ……なのよこのイカレポンチは!)
 DRRRRRRNG! バイクエンジンじみたサウンドと共に飛び出し、一気にロニへ近づいて蹴りを繰り出す! しかしロニは真上に引っ張られた。彼の上空に浮かぶ黒い球体が牙の生えた口を開けて吸い上げたのだ!
「浮いてるー! ふわふわだぁー!」
 ロニは虚空でぱたぱたと手足を動かし出来上がった歓声を上げた。ボクサーバニーは上昇していく彼を見上げ、グローブの指を口に当てて口笛を吹きならす! ロニの足先に空いた黒い穴から機械化した腕が飛び出す!
「およー?」
 兎穴から顔を出した新たなバニーがロニの足をがっちりホールド! 嗜虐的な笑みを浮かべたバニーは穴から飛び出しロニを引き連れ前方回転! 彼を地面を投げおろす!
「うわ―――お」
「そこよ! ぶん殴っちゃって!」
 空中のボクサーバニーが叫ぶとロニの落下点からややズレた場所に新たな兎穴が開いた。そこから歩み出た三体目のボクサーバニーが右肩をグルグル回してロニを見上げる。落下する少年の背中を狙い引き絞られる拳!
「蒸気全開!」
 DRRRRRRRRRNG! 機械化した腕が激しく震え、肩と肘から蒸気を放つ! 斜めに落下してくるロニの背中めがけ、ボクサーバニーは大きく右足を引いて対空パンチを打ち出した!
「はああああああッ!」
 黒い蒸気を噴きながら跳ね上がる拳! 投げられるまま自由落下していたロニは拳が当たる寸前で半回転してこれをかわす! 目を見開くボクサーバニーの顔面をわしづかみにした彼の瞳で、虹彩が赤い光を放つ!
「つーかまーえたっ」
「……!」
 ロニの手の平から金色の光が迸る! 一瞬で輝きが消えたそこにボクサーバニーの姿無し。軽やかに着地したロニを、離れた位置のバニーたちが呆然とした表情で見つめた。最初に殴りかかっていた一匹が顔を歪める。
「やっぱり……さっきの目が回るだとか言ってたのは茶番だったのね……!」
「んー……?」
 ロニは右手をうなじに当てると、首を巡らせボクサーバニーズの方を見る。邪気の無い表情をした彼は、パーカーの余った袖を左右に揺らした。
「フ……ボクにガスなんて効くとでも思った? そんな訳ないじゃん! ボク、神様だよ? それにキミたちの攻撃なんてまるで一度見たみたいに完璧に読める!」
 片腕でボクサーバニーたちを指し示し、断言するロニ!
「つまりキミたちはもうボクには勝てない。この状況はそう、『無駄な抵抗はやめなさい!』ってやつさ!」
「大口叩いてくれるじゃない……淫乱な顔した坊や!」
 直後、ロニの背後で複数の兎穴が緩くカーブを描いた壁状に並び立つ! 同時にボクサーバニーの群れが地を蹴り弾丸じみた速度でロニへと迫った。ロニは肩をすくめて首を振る。
「淫乱な顔なんてひどいなぁ。神様に向かって不敬だぞー! そーれ、天罰てきめーんっ!」
 ロニがバッと両腕を広げた刹那、前方から迫るボクサーバニーたちの真後ろに巨大な黒球が現れ牙の生えた大口を開く! 振り返るボクサーバニーたちを覆う影。さらにロニはポケットから取り出した黒球を後ろに投げた。
「じゃ、あとお願い。ぱくっといっちゃえ」
 放られた黒球もまた一瞬でバスケットボール大に肥大化し、穴から顔を出したボクサーバニーたちに牙を剥いた! 瞬間、球体のアギトが閉じられボクサーバニーたちの上半身が消え失せる!
 慣性に従ってすっ飛ぶ胸から下を薄ら笑いで見下ろすロニは、鼻歌混じりに歩き出す。取り残された黒い球は、ロニを背後から殴ろうとする生き残りたちを貪欲に貪っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月12日


挿絵イラスト