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迷宮災厄戦②〜リチュアル・ブレイク

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦

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「みなさーん! 戦争がはじまりましたよーっ!」

 シーカー・ワンダーは椅子の上でぴょんぴょん飛び跳ね、猟兵たちを大声で呼んだ。

 アリスラビリンスに封印されていたオブリビオン・フォーミュラ『オウガ・オリジン』が復活を遂げた。
 『猟書家』と名乗るオブリビオン軍団に力の殆どを奪われていたオウガ・オリジン。彼女は元の力を取り戻すため、大量にアリスを呼び寄せて捕食しようと企んでいるというのだ。

「猟書家の方も気になりますけど、まずはこっちを止めましょう! 戦争してる世界にアリスが呼びこまれたら大変なことになっちゃいます!」

 アリスはユーベルコードが使えるとはいえ、所詮は一般人に過ぎない。召喚された時点でオウガたちの餌になってしまうし、猟兵との戦いに巻き込まれればただでは済まない。よって、アリス召喚の儀式自体を台無しにしてこれを伏せごうというのが今回の任務だ。

「儀式はオウガ・オリジンが封印されてた迷宮のような図書館の国で行われてます。ここにはオウガの大軍団が居て、他の世界からアリスを大量に召喚しようとしてるみたいです」

 不思議の世界に一歩入った先で待ち受けるのは、オウガたちからの集中攻撃。アリス召喚の儀式を止めるためには、怒涛めいて押し寄せるオウガたちを蹴散らして儀式の首謀者を叩かねばならない。

 首謀者の名は『希望を摘み取る者』。召喚したアリス達の希望を摘み取り嬲りながら食すことを好むオウガで、楽しみのために必要なら他のオウガを使役することもあるサディスティックな性質を持つ。

「この希望を摘み取る者のユーベルコードのせいで、みんなは常に敵陣のど真ん中で戦わなきゃいけなくなっちゃいます。なんとかしてこれを潜り抜けて希望を摘み取る者をやっつけてください!」


鹿崎シーカー
 アリスラビリンスが! と滅茶苦茶嘆いている鹿崎シーカーです。
 戦争は頑張ります!

 執筆開始は8月3日月曜日の9:00からを予定しています。

●概略
 今回の「戦争サバイバル」の舞台です。オウガ・オリジンが捕まっていた「迷宮のような図書館」の国です。現在ここでは、「オウガの大軍団」が、他の世界から「アリス」を大量に召喚する儀式を行っています。サバイバルの乱戦を潜り抜け、アリス召喚儀式の首謀者を暗殺してください。

●ボス戦『希望を摘み取る者』
 召喚したアリス達の希望を摘み取り嬲りながら食すことを好むオウガ。楽しみのために必要なら他のオウガを使役することもある。希望という言葉を嫌っており、それを消す事を最優先する。
 『バッドエンド・イマジネイション』によって猟兵は常に強力なオウガたちに包囲された状態で戦うこととなります。プレイングボーナスは『オウガの群れを潜り抜け、司令官に素早く接近する』ことです。

 アドリブ・連携を私の裁量に任せるという方は、『一人称・二人称・三人称・名前の呼び方(例:苗字にさん付けする)』等を明記しておいてもらえると助かります。ただし、これは強制ではなく、これの有る無しで判定に補正かけるとかそういうことはありません。

(ユーベルコードの高まりを感じる……!)
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第1章 ボス戦 『希望を摘み取る者』

POW   :    絶望の光槍
全身を【輝く槍から放たれる光】で覆い、自身の【受けた傷を癒やし、猟兵が習得した🔵の数】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    否定されたご都合主義
対象のユーベルコードに対し【輝く槍の一撃】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
WIZ   :    バッドエンド・イマジネイション
無敵の【自分が有利になる状況】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はユナ・アンダーソンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

木常野・都月
今までの戦争と違って、今回大規模だよな。
アリスは元より、世界の為にも、負けられない。

まずは包囲網から脱出して、司令官のオウガに接敵したい。

大地の精霊様に頼んで、足元に電磁場を発生させ、電磁浮遊したい。
空から包囲網を脱出し、接敵したい。

UC【精霊の矢】を闇の精霊様の助力で使用したい。
加えて、闇の精霊様の[属性攻撃]で追撃したい。

敵の攻撃は[野生の勘、第六感]で敵の動きに注意を払いつつ、[高速詠唱]を乗せた、闇の精霊様の[属性攻撃(2回攻撃)]の[カウンター]で対処したい。
敵の想像から生まれた状況は、闇の精霊様で塗り潰したい。

接近戦になるので、必要があればダガーとエレメンタルダガーに持ち替えたい。


フォルター・ユングフラウ
【古城】

【WIZ】

オウガ・オリジンだの猟書家だのと知った事では無いな
我は単に、気晴らしが出来ればそれで良い
…という訳でだ、トリテレイアよ
以前行ったあの『作戦』、もう一度用いるぞ
壊さぬ様加減するのでな、汝も好きに暴れると良い

早速UCを発動し、邪魔な塵共を押し潰し、噛み砕き、毒で溶け崩れさせながら突き進む
上空に敵がいれば、騎士を咥えて敵目掛けて投げ飛ばそう
あの巨大な穂先、どんな敵でも貫けよう
上は、任せたぞ

首謀者は加虐趣味と聞いたが…面白い、どちらが玩具か思い知らせてやる
この圧倒的巨体と、頭上の死角を補う騎士との連携
さあ、有利となる状況を導いてみろ
さもなくば、訪れるのは貴様の無惨な死よ

※アドリブ歓迎


フィーナ・ステラガーデン
【PW】
(囲まれている様子を眺め)
ふふん!この人数で何とか出来ると思ったのかしら?後悔させてやるわ!

というわけで作戦は私とライラで囮役として派手に立ち回るとするわ!
ライラが防いだオウガには【属性攻撃】による火球をお見舞いして
隙が出来れば【高速詠唱、範囲攻撃】によるUCを放ち一面火の海にしてやるわ!
その炎によってアリシア潜入のめくらましとするわね!

オウガの相手ばかりであんた(希望を摘み取る者)に手が届かない?
ハッ!気付いてないのかしら?
私達の刃(アリシア)はもうあんたの首元よ?

(アレンジアドリブ大歓迎!)


アリシア・マクリントック
【PW】
個々の戦力で勝っているとはいえ、こうも数で押されると厳しいですね……こういう時に最も有効な戦術はやはり頭を刈り取ること。というわけで変身!マリシテンアーマー!
ライラさん、フィーナさん、すみませんが敵の注意を引き付けてもらえますか?護衛にマリアも残します。私はカミカクシ・クロスで姿を隠して指揮を執っている本体に忍び寄って暗殺します。
マリアをマリアクロス・ナイトモードに変身させて……任せましたよ!ハヤテ・ワイヤーガンも使って隠密性重視で移動します。もし見つかったらホウロク・グレネードで煙幕を撒いて離脱、再び身を隠しましょう。
敵本体に十分近づいたら首に一撃……確実に仕留めたいですね。


ライラ・ファルクス
【PW】
フィーナ様との囮、承りました。敵のリーダーはアリシア様にお任せします。

とりあえず【オーラ防御】と【盾受け】で耐えつつ、可能であればパリィしてスピアでの【カウンター】を狙います。
フィーナ様に暴れれば暴れるほどオーガ達も無視できなくなるでしょうから、フィーナ様が攻撃に集中できるようしっかりと【かばう】ようにしましょう。

とにかくやれる事を堅実に、確実に。アリシア様が接敵するまで護衛と囮に専念しましょう。
護衛メイドとして、簡単には抜かせませんよ。お二人が健在であれば私の勝利です。

(アレンジ、アドリブ可)


中村・裕美
副人格・シルヴァーナ
口調 (わたくし、~さん、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)

「あらあら、今度はアリスラビリンスで戦争ですのね。しっかりオウガさん達を刈り取りませんと」
敵陣の中であろうと関係ありませんわ。淑女はいついかなる時も優雅に、ですわ。
相手にユーベルコードを打ち消されてしまうのなら、発動を感づかれないように【暗殺】ですわ。
雑魚の陰に隠れる、【残像】を残して移動するなど、希望を摘み取る者の視線が外れる瞬間を狙って、取り巻きのオウガの命を刈り取ってゆく。そうしながら徐々に近づいてゆき、隙を見て希望を摘み取る者にUCの斬撃
「それでは、絶望を摘み取らせていただきますわ」


逢月・故
んー……まあ、オレの世界だしねぇ
女王陛下からも言われてるから、ちょっと頑張んないと

希望、希望、良い言葉だよねぇ
でもさ、それが嫌いだからそれを潰そうとするって、結局君にとっては絶望が希望みたいなもんだよね?
あは、裏表裏表、相反して表裏一体
結局、オレたちを絶望させることが希望、みたいなもんでしょ、君
やだなー、怖い怖い

オレは赤薔薇の女王陛下の可愛い可愛い黒兎、忠実な兎さんは願いを叶えなきゃあ、ね

さぁさ、我らが女王陛下に栄光あれ!
真っ赤なペンキを撒き散らして、踊って笑おう!
観客も演者も山ほど居るからね!脇役には事欠かないよ、君も君も、ほら君も!
真っ赤に塗り潰してあげる!
ふは、地面も君たちも真っ赤っか!


玉ノ井・狐狛
※アドリブ/連携などお任せ
一人称:アタシ
二人称(友好):お前さん、~の嬢ちゃん/兄サン
二人称(敵対):アンタ

こいつァ壮観だ。
数で圧し潰そうって魂胆かい?
ま、たしかに合理的な戦法だぜ。駒の数が平等な盤遊びってワケでもねぇし。

――けどよ、それは手駒がちゃァんと言うコトを聞くならの話だ。

UCで周囲のオウガの一部を暴走させる。
想像の産物っつう話らしいが、アタシが使うのも、そもそも幻術でな。
幻が幻に干渉できない道理はない。

さて、ご自慢の取り巻きどもは反抗期みたいだぜ。
帰って教育をやり直したらどうだ?
(状況が相手に不利をもたらすのではないか、という疑念を与える)


夢咲・向日葵
●心情
・アリスたちがピンチならば、魔法王女シャイニーソレイユの出番なの。
・大地の魔法王女の力はひまちゃんが強く信じ続ければ無敵。どんなに数が多くても、決してシャイニーソレイユは負けないのよ!
・ってことで、多少の被弾は構わず突撃でGOGOなの!

●オウガ対策
・魔法王女の力を信じてまっすぐダッシュ

●戦闘
・飛んでる相手か。取りあえず、飛行ルートを制限するためにソレイユシールドを想像して創造。空中に大量設置して盾受け。合わせて盾と盾の間にプリンセスチェイン射出魔法陣を設置。重力属性の鎖で地面に叩き落とすの。
・地面に堕ちたら自慢の格闘戦。魔力溜した地属性の鎧砕きパンチ。通称ソレイユスマッシュで攻撃するよ


トリテレイア・ゼロナイン
【古城】
世界の存亡は私にとって一大事
フォルター様には関係なくとも真面目に戦って頂かねば困ります
…あれをすると?
そのお姿で時間を掛ける訳にも参りません
致し方ありませんね

脚部スラスターでの滑走●スライディング移動で大蛇に随伴
格納銃器の●なぎ払い掃射や●怪力の剣盾で蛇の死角に迫る敵排除
センサーで●情報収集し目標発見

目標の飛行を確認しました、あの方向です
…加減はもう期待しませんのでお好きにどうぞ!

背負ったUCを抜き放ちカタパルトで飛ぶ石宜しく敵へ飛翔
加速にUCの加速を加え突撃し串刺し
ワイヤーアンカーを射出し●ロープワークで拘束し落下
後は彼女に任せましょう

私の事も玩具扱いしないで頂けると有難いのですが!


ナイ・デス
アリスさん達を、死なせるわけには、いかない
儀式、全力で止めます!

敵陣ど真ん中、無傷は難しい。それは
『リジェネレイター』
私にとって、好都合
負傷し再生を繰り返す程に、私は真の姿に、聖者の輝き強く、光へと近づいて
光に触れる敵から【生命力吸収】疲労も回復し、ただただ強くなって
光のように速く、軍勢消滅させながら希望を摘み取る者へと迫る

もし、輝く槍に相殺されても
【覚悟、激痛耐性、継戦能力】私が再生するのは、死なないのは、ユーベルコードとは関係がない
【念動力】で身体も動かせる

私の希望は、あなたに摘み取れは、しない
希望を摘み取る者
今日はあなたが、喰われる番、です!

【零距離鎧無視】喰らう光が、飲み込み消滅させる


ヴォルフガング・ディーツェ
アドリブ歓迎

は、大層良いご趣味をお持ちのお嬢さんのようだ!
しかし戦えぬ者が増えるのは心優しい者達には辛いだろう、老兵として憂いを断とう

【指定UC】から高速移動を獲得
戦場を縦横無尽に駆け回り、武装変形させた闇の「属性攻撃」を纏わせた魔爪で配下オウガ達を潰しながら首領の隙を伺う
嗚呼、ついでに凄惨に頭や内臓を潰した仲間の死骸を見せつつ語り掛ける事で配下と首領の戦意も削いでおこうか
「精神攻撃」はお手の物さ

夢を見るのは構わない
けれど、俺は確実に君をこの様な死体に変える…敵に情けを掛けんよ
逃げるな、愚かな童よ
貴様の重ねた穢れ、その報いを受ける時だ

間隙を突き、温存した鞭の一撃を見舞う
腐毒の一撃、とくと味わえ



 天高くに夜空を被り、高層ビル群めいた書棚が乱立する書架の国!
 ポストアポカリプスの街並みじみて砕け、傾いた書庫の塔の影から異形の巨人が姿を現す。頭部はキリン。着こんだビジネススーツの前をはだけた下には、ギャアギャアと喚き散らす腐った無数の動物頭部を封じたシャツだ!
「MOOOUUUUUUUUUAAAAAAAAAAAAAAARGH!」
 キリンの頭部が咆哮し、肘を突き上げる形で拳を振りかぶった! 巨大隕石めいて鉄拳を繰り出した先には書棚の隙間を全力疾走する夢咲・向日葵(魔法王女・シャイニーソレイユ・f20016)!
「BAAAAAAAAAAAAARGH!」
「出たわね、おっきいのっ!」
 向日葵は迫りくる巨拳に臆せず両手を祈るように組んだ。手の平の隙間からあふれ出した黄金色の光が無数の帯となって彼女を包む! 向日葵はキリンの拳めがけて跳躍!
「変・身っ!」
 速度がまとわりついた光を剥がし、ふわりと広がる黄色のフレアドレスを外気にさらした。魔法少女姿となった向日葵はガントレットをまとった拳を振りかぶる!
「でやあああああああああああっ!」
 向日葵のジャンプストレートがキリンの剛拳と正面からSMAAAAAAAASH! 一瞬の輝いたのち凄まじい衝撃波を全方位にまき散らす! 各所を砕かれた書棚がぐらつき、蔵書が木っ端じみて飛んでいった!
 向日葵はキリンの巨大な拳と押し合い、互いに弾き飛ばされる! 連続バク宙を決めて後ろに滑りながら着地した向日葵の左右から豚獣人のグールが飛び出す! 向日葵がとっさに体勢復帰して構えた、その時!
「花のような娘に腐った豚をけしかけるとは。は、大層良いご趣味をお持ちのお嬢さんのようだ!」
 BLOWWWWWWWW! 向日葵の周囲を漆黒の嵐が吹き荒れ豚のグールを吹き飛ばす! 弾丸じみた速度で飛翔したグールは空中で細切れになって爆散! 向日葵の傍らに立ったヴォルフガング・ディーツェ(花葬ラメント・f09192)は左手に装備した黒い爪を振って血を払った。
「大事ないかい、向日葵」
「ヴォルフおじいちゃん、ありがとなの!」
 素早く視線をかわす二人の頭上を、いくつもの大型火球が飛び越える! 轟とうなりながら緩い弧を描いたそれらの行く先にはぞろぞろと現れた無数の獣人ゾンビたち。紅蓮の炎が着弾! 着弾! 着弾!
 BOOOM! BOOOM! BOOOOOOM! 爆炎がグールたちを次々と消し飛ばして灰にする。だが立ち込める黒い煙の奥から進み出てくる無数の人影。床を焼く火種を踏みにじって次なるグールたちが現れる!
「あらあら! 燃やされ足りないようね!」
 勝気な台詞と共にヴォルフガングと向日葵の頭上をプロミネンスじみた炎が通過した。炎の先、うつ伏せになって飛行するフィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)が華麗な宙返りを決めて滞空。ロッドをグールたちへ突きつけた!
「ふふん! この人数で何とか出来ると思ったのかしら? 後悔させてやるわ!」
 フィーナはロッドを手中で回しながら高々と掲げる! トンガリ帽子の真上に生まれた火球が膨張を段階的に繰り返した、その時! 胴に鶏人間を組み付かせた大鴉がフィーナめがけて急降下! クチバシで射抜きにかかる!
「フィーナ様っ!」
 フィーナと大鴉の間にハイジャンプしたライラ・ファルクス(ぼんやり盾メイド・f17707)がインターラプト! 構えた銀のタワーシールドが前面に蒼いオーラバリアを張ってクチバシを受け止めた! 甲高い金属音!
「っっっっっ……ふっ!」
 ライラは大盾を振り上げて大鴉のクチバシを跳ね上げる! がら空きになった黒い羽毛の胴体を盾裏に隠していた銀の槍で一突き! 組み付いていた鶏人間の胸ごと貫いて垂直落下し着地した。振り向いてフィーナを呼ぶ!
「今ですフィーナ様!」
「ありがとライラ! さあ、燃えてしまいなさいっ!」
 フィーナはロッドの先を軽く回し、歩いてくるグールたちを指し示した。彼女の頭上で巨大化しきった火球が一際輝き、CABOOOOOOOOM! 爆発し四方八方に火炎弾をばら撒いた!
 グールの群れや書架に次々と命中し爆発する火球! 一瞬にして火の海と化した地上を見下ろしてしたりと微笑むフィーナの左で、そびえたつ書架が巨大な手により押しのけられた! 猛牛の二つ首を持つ巨大グールだ!
「げえっ……」
「BAMOOOOOOOOOOOOOOOORGH!」
 引き気味に顔を引きつらせるフィーナに猛牛の双頭が咆哮してダブルパンチを突き出した! そちらを見上げて屈んだライラは背中にカエルグールのロケット頭突きを食らって転倒! フィーナが防御態勢を取った次の瞬間!
「やらせま、せんっ!」
 猛牛の両前腕部を一筋の光が射抜き、SLASH! 柱じみた腕が斬り飛ばされた! 重々しい両腕の落下音を背後にナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)は前方回転! 再三集結するグールの群れにダイブする!
「押し通り、ますっ!」
 群れのど真ん中に着地するなり横一回転! ナイの周囲に居たグールたちが上半身を斬り飛ばされ残った下半身が次々と倒れる。放物線を描いて襲い来る人狼グールの胸を手首から伸びた刃で貫いたナイは身をひねる!
「はいっ!」
 真横に投げ飛ばされた人狼グールはタコ頭のグールに衝突! さらにナイは足元を滑るように這い進んでくるトカゲ人グールの頭を踏み潰し、右手の刃を振って爪を振り上げる猫人グールの首を断って駆け出した!
「PAoooooOOOOOOOOOOOOO!」
「!」
 天からラッパめいた異音が注ぎ、丸い影がナイを中心に覆い被さる。巨大なマンモスの獣人グールはナイにストンピングを繰り出した! SQUAAAAAAAASH! 吹き上がる木クズの粉塵!
 書架の隙間に蠢く巨大グールたちの影を遠目に、一際巨大な書架の上に立つ女は口角を吊り上げた。ボディラインを浮き彫りにする鋼じみた質感のスーツをまとった白髪の女、『希望を摘み取る者』は嗜虐的に笑む。
「頑張るな、猟兵。だが気づいているか?」
 希望を摘み取る者は肩にかついだ槍の穂先を足元に向けて突き立てる。彼女の背後には真紅に輝く巨大な魔法陣が輝いていた。
「既にチェックメイトだ。お前たちは、私の包囲から抜け出せん。武功も誇りも無い屍どもに押し潰されて屈辱と共に死に絶えるがいい!」
 歪んだ笑顔を張りつけたまま、希望を摘み取る者は広げた足の間に左掌をかざす。刹那、遠く猟兵たちのいる位置でフローリングが大爆発した! 床を突き破って出現したのは鼻がミミズになった巨大モグラのグール!
「MUOOOOOOOOOOONNNNNNGGGGGGGG!」
 モグラが頭上を仰ぐと同時、鼻から伸びるミミズがしなり先端を地面へ突き刺しに行く! その直下にはトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)! 彼は左腕の装備した大盾でミミズの横面を打ち据える!
「せいッ!」
 SMASH! わずかに軌道を逸らされたミミズヘッドがトリテレイアの真横を砕く! トリテレイアはすぐさまバックジャンプしてモグラの爪刺突を回避! 古式リボルバーを撃つフォルター・ユングフラウ(嗜虐の女帝・f07891)の隣に並び立った。
「やれやれ。道中に邪魔が多いな? トリテレイアよ」
「……そう言う割りに、オウガの群れがあまり倒れていないようですが」
 苦言を呈するトリテレイアに、フォルターは鼻を鳴らしながらトリガーを引く。BLAM! 銃弾がロップイヤー獣人グールの右膝を撃ち抜き地に伏せさせた。グールはそれでもなお這いずってくる。
「けちけちするな、減るものでもない」
「いえ、減らしてもらわねば困るのですが……。っと!」
 トリテレイアは機械の槍を振りかぶると真上に投擲! 槍はムチめいて振り下ろされたミミズの真下を射抜いて跳ね返した! フォルターは欠伸を噛み殺しながらリボルバーの弾倉を開けて空薬莢を足元にばらまく。
「第一、オウガ・オリジンだの猟書家だのと知った事では無い。我は単に、気晴らしが出来ればそれで良いのだからな」
「世界の存亡は私にとって一大事。フォルター様には関係なくとも真面目に戦って頂かねば困ります」
「やれやれ……」
 フォルターは嘆息し、太ももに巻いたホルスターに銃をしまった。四方八方からは這いずり、あるいは歩いて包囲を狭めてくるグールオウガの軍勢。背後には巨大モグラが陣取り退路は無い。フォルターは左足を軽く上げた。
「しかし、こうして撃っても腐った血以外出そうもない。トリテレイアよ。以前行ったあの『作戦』、もう一度用いるぞ」
「……致し方ありませんね」
 げんなりと呟くトリテレイアを余所に、フォルターは踵を打ち鳴らした。彼女の足元から漆黒の瘴気が渦を巻いて吹き上がり、邪悪な暴風を引き起こす! グールたちの足が一瞬止まった。
「では征くとするか。光栄に思え腐肉ども。この威容を汝らの腐敗した眼に焼きつけて逝け!」
 FOOOOOOOOOOOSH! 漆黒の瘴気がフォルターの姿を覆い隠し、爆発的に膨張! 書架の街並みを放射状になぎ倒しながら拡大した瘴気の中から、黒い鱗を持つ大蛇の首が九つ飛び出した!
『SHHHHHHHHHHH…………!』
 ルビーじみて赤い目を光らせた大蛇は競うように特攻開始! 特急列車じみた速度で瘴気から体を引き抜いた黒いヒュドラは蛇行しながら書架を押しのけ、グールたちを次々踏み潰しながら突き進む!
『SHAAAAAAAAAARRRRRRRGGGGGGHHHHHH!』
 九つの頭部が覇を競うように瘴気を撒き散らし、行く手に詰まったグールの軍勢を潰し蹴散らし、毒の瘴気で融解させながら無理矢理に道を押し開ける。だがその進行方向に割り込みをかける巨大なイノシシのグール!
「GRRRRAAAAAAARRRRRRRRRRRRRRGH!」
『目障りだ。退けい!』
 つかみかかってくるイノシシの巨体に九つの首が喰らいつく! フォルターは尾で地面を引っぱたいて胴を持ち上げ、イノシシグールを押し倒した! THOOOOOOOOOM! 仰向けになった腐肉を食いちぎる!
『他愛もない』
『散るが良い』
 大蛇の首は口にくわえたイノシシグールの破片を吹き矢めいて放った! 瘴気に蝕まれた溶けかけの巨大肉は放物線を描いてグールの群れを叩き潰す! すぐそばにいた玉ノ井・狐狛(代理賭博師・f20972)は連続バク宙で飛び退った。
「うおおおおおおおう!? 生きた屍の次は八岐大蛇か! 随分と大盤振る舞いなこって!」
 身をひるがえした狐狛は全力ダッシュで迫りくるヒュドラから距離を取る。その先には連鎖爆発と真っ赤なペンキ、血と臓物が乱れ飛ぶ猟兵たちの最前線!
「兄サン方にお嬢さん方ァ、道は開けそうかい! 後ろからやべえの来てるぜ!?」
 狐狛の呼びかけに、ボウガン型スナイパーライフルをぶっ放すアリシア・マクリントック(旅するお嬢様・f01607)が振り返った。駆け寄ってくる狐狛と、黒いヒュドラを見て表情を強張らせる。
「いよいよ包囲も狭まってきましたか……。個々の戦力で勝っているとはいえ、こうも数で押されると厳しいですね……こういう時に最も有効な戦術は……」
「素早く頭を刈り取ること、ですわね」
 両足を滑らせながらアリシアの隣まで下がって来た中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)が、赤い瞳でアリシアに目配せをする。アリシアは頷くと、戦線へ向けて声を張った。
「ライラさん、フィーナさん! すみませんが敵の注意を引き付けてもらえますか? 護衛にマリアも残します。私は希望を摘み取る者を直接叩きに行きます!」
「はいっ! アリシア様、お気をつけて!」
「目くらましなら任せて! 派手な花火を見せてあげる!」
 ライラとフィーナが一瞬肩越しにアリシアへ声をかける。ライラは突進してくるサイ獣人を大盾のスイングで殴り倒し、ダチョウ獣人の急降下キックをガード! そのまま蹴りを連打するダチョウが燃え上がり爆散!
「マリア!」
 フィーナが杖を打ち振り、グールの軍勢に複数の火柱を吹き上げさせるのを見ながらアリシアは指笛を吹いた。すぐに戦場から駆け寄ってきたウルフドッグの首輪に小さな鍵を差し込むと、その姿が光に包まれる!
「マリアクロス・ナイトフォーム! 援護をよろしく頼みましたよ!」
 SMACK! 一際強く輝いた光が晴れたそこには、白地に赤いライン模様の鎧を装備し口にナイフをくわえた狼犬の姿! アリシアはお座りした相棒の顎を軽くなでて立ち上がると、白いマントで身を包んで姿を消した。
 残された狼犬はすぐさま弾丸じみた速度で戦線へ取って返す! その先では逢月・故(ひとりぼっちのワンダーランド・f19541)がバケツを下段に振りかぶる!
「そぉーれっ!」
 SPLAAAAASH! 真っ赤なペンキがぶちまけられ、両手を掲げて迫りくるグールたちの頭にかぶさった。赤く染められたグールの身体は内側からボコボコと膨らみ破裂! 床に散った赤い塗料を上から塗り潰す腐った血に、故は溜め息を吐いた。
「はー……千客万来千客万来っと。ここまでたくさん人が来るのは、女王様のお誕生日くらいじゃないかな。いい加減おもてなしも疲れて来たよ」
 首をひねってコキコキ鳴らし、バケツの持ち手に人差し指をひっかけて回す。その背後に巨大質量が地を叩く!
「ん?」
 故が振り返ると、そこには六本腕を持つ巨大なヘラジカのグール! 空っぽの眼窩が故を見下ろし、他腕のアームハンマーを振り下ろした! CRAAAAAAAASH! 吹き上がる粉塵から故が飛び出す!
「まったくもう、欲しがりさんが多くていけない。オレは赤薔薇の女王陛下の可愛い可愛い黒兎、忠実な兎さんは願いを叶えなきゃあ……ね」
「BAMOOOOOOOOOOOOORGH!」
 頭を上げたヘラジカのグールが三本の右腕をまとめて故にパンチを繰り出した! 故はバケツを左の書架へと振るってペンキぶちまける! べったりとへばりついた赤い塗料から槍ぶすまのように伸びた茨に着地!
「よっと!」
 茨を足場に跳躍してヘラジカの拳を華麗に回避! 空中で上下反転した故は身をひねってヘラジカのアッパーをかわし、その顔面めがけてペンキを投げる! 赤い鉄砲水が屍の顔面を染め上げた! 故はその鼻先に降り立つ!
「さぁさ、我らが女王陛下に栄光あれ! みんな女王様に捧げられる薔薇の花束みたいにしてあげよう! それ!」
 故が指を鳴らすと同時、ヘラジカの頭がボコボコと膨れ上がってPAAAAAANK! 頭部の破裂に乗って飛翔した故は両手に出現したバケツを放り上げた! クルクルと回りながら天高く跳んだバケツが口を下向ける!
「君も君も、ほら君も! 全員真っ赤に塗り潰してあげる! 女王様の大好きな色さ! 受け取って!」
 故が大仰に腕を広げると、空中に固定された二つのバケツが滝めいて大量のペンキを真下にぶちまけた! ZGGGGGGTOOOOOOOOOM! 鮮血じみた濁流が地を叩いて広がり、周囲ごとグールたちを赤くしていく!
「んふふふふふふふ! 地面もオウガも真っ赤っか!」
 前方一回転を決めた故はバケツに着地。遠くに見える希望を摘み取る者を、手でひさしを作って見通した。
「みーつけた。君だね、希望を摘み取る者さん!」
 希望を摘み取る者の片眉がピクリと動く。故は手振りを交えて語りかける。
「希望、希望、良い言葉だよねぇ。でもさ、それが嫌いだからそれを潰そうとするって、結局君にとっては絶望が希望みたいなもんだよね?」
「何……?」
 希望を摘み取る者が傍に突き立てた槍を手にした。故は構わず手を鳴らす。
「あはっ! 裏表裏表、相反して表裏一体! 結局、オレたちを絶望させることが希望、みたいなもんでしょ、君。やだなー、怖い怖い! そんな怖い顔をしないでよ! 希望があるんだ、笑っていこう!」
 希望を摘み取る者は瞳に静かな殺意を燃やし、傍に突き立てた槍を引き抜く。その時、彼女は目を見開き振り向きながら槍の柄を突き出した! CRAAAAASH! 槍の柄が二本の刃をガードする!
「暗殺か。姑息な真似をしてくれる」
「あらあら、ばれてしまいましたわ」
 ナイフを握ったシルヴァーナが微笑む。短剣を逆手で握ったアリシアは肩越しに背後の魔法陣を一瞬見やり、刃を押し込む手に力を込めた!
「傍観はお終いです。その首級を頂きます!」
 アリシアとシルヴァーナが同時にナイフを振り切り、希望を摘み取る者を押し飛ばした。希望を摘み取る者が無表情のまま光輝く槍を構えた瞬間、彼女の後方に跳び込んで来る影!
 蒼白い光をまとって飛翔してきた木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)が木製の杖を高々と掲げる! 杖先に埋め込まれた宝石が翡翠色からアメジストの紫へ!
「闇の精霊様! どうか力を!」
 杖先から濃紫色の光が波紋を広げ、振り向いた希望を摘み取る者めがけて無数の黒い矢を放つ! 希望を摘み取る者は槍を突き出し、高速回転させてこれをガード! 彼女の上下左右をすり抜けた矢は魔法陣へ振りかかる!
 次々と闇の矢を突き立てられた魔法陣は苦しむように赤く明滅、そしてCABOOOOOOOOOOOOOM! 大爆轟を引き起こした! 都月は杖を掲げながら呟く。
「よし……これでアリスはもう呼べない……!」
「甘い」
 希望を摘み取る者は光輝く槍を一閃! FLAAAAAASH! 凄まじい光に目を焼かれた都月が両腕を交叉して顔を庇う。直後、投げられた槍の穂先が彼の腹を貫いた!
「がっ……!」
 血を吐き、体をくの字に折った都月の零距離にワープじみて飛び込んだ希望を摘み取る者は槍の柄をつかんで囁くように告げる。
「魔法陣などいくらでも作れる。貴様らがいくらグールを潰そうが、魔法陣を潰そうが。全ては無駄だ!」
 希望を摘み取る者は槍ごと都月を振り回し、彼を地上のグール軍勢へと叩き落とす! 背後から飛来するボウガンの矢を槍のひと振りで破壊! アリシアはさらに狙撃! 眉間のやや下へ来た矢は指でつまみ止められた。
「この程度の矢、所詮は児戯……」
「それでは私の刃は如何でしょう!」
 希望を摘み取る者の斜め上、書架を蹴ったシルヴァーナが斬りかかる! 希望を摘み取る者はこれをやすやすと槍でガードし、蝿でも叩くかのようにシルヴァーナを地上のグール軍勢へ叩き落とした!
「腐肉の群れに貪り食われろ。生きたまま臓腑をむしられ、骨を砕かれながら死ね。貴様らには似合いの最後だ」
「おーおー! 随分な言い草じゃねェかよお槍のお嬢ちゃん!」
 希望を摘み取る者が肩越しに背後の地上を見下ろした。そこにはグールの頭部を足場に水切り石めいて跳躍を繰り返す狐狛!
「いやはや壮観! こんだけ葬式に来た日にゃ手前ェの人徳に感動しちまうって奴だよなァ! だが残念無念!」
 馬頭のグールに踏み潰すように着地し、狐狛は再跳躍! 自由落下中のシルヴァーナと都月、空高くに浮いた希望を摘み取る者を見上げ、懐からカードを取り出した。
「数で圧し潰そうってのァ、ま、たしかに合理的な戦法だぜ。駒の数が平等な盤遊びってワケでもねぇし。……けどよ、それは手駒がちゃァんと言うコトを聞くならの話だ!」
 狐狛がトランプを宙にばらまくと、そのカードの一枚一枚が極彩色の光を放ちグールの群れを照らし出す! 狐狛は虚空で大見得を切る!
「御覧じろ! 喧嘩するほど仲が好いとは言うけども、殺しってちゃ世話ァ無い! ガキんちょみてぇに怒り狂って暴れてくんな!」
 直後、光に照らされたグールの群れが動き出し、互いに噛みつき、引っかき、引き裂き始めた! 地獄めいた共食いの光景が希望を摘み取る者の真下に顕現! 摘み取る者は思わず目を剥く!
「これは……」
 絶句して地上の地獄を見下ろす希望を摘み取る者。グールたちは相争いながら喰らい合い、自分たちのど真ん中に降り立った狐狛には見向きもしない。狐狛は両腰に手を当て、希望を摘み取る者を見上げた。
「おやおやこいつァ酸鼻に過ぎる。さて、ご自慢の取り巻きどもは反抗期みたいだぜ。帰って教育をやり直したらどうだ?」
「……貴様。幻術使いか」
「ご明察」
 苦々しく表情を歪める希望を摘み取る者に、狐狛は悪戯っぽくウィンクをした。
「けど、知っての通りアタシらも一枚岩ってわけじゃアなくてな。中にはあんなこと出来るやつもいるわけよ。さあさ第二幕だぜ!」
 狐狛が芝居がかって叫んだ瞬間、CRAAAAAAASH! 立ち並ぶ書棚を吹き飛ばして黒いヒュドラが希望を摘み取る者を捕捉! その首のひとつが、脚部スラスターから火を吹かせながら傍らをスライディング滑走するトリテレイアを口にくわえた。トリテレイアは持ち上げられながら希望を摘み取る者を指差す!
「目標の飛行を確認しました、あの方向です」
「言われんでも見ればわかる。上は、任せたぞ」
「了解しました。……加減はもう期待しませんのでそちらもお好きにどうぞ!」
「そうさせてもらう!」
 ヒュドラ化したフォルターは首をスナップさせトリテレイアを投げた! トリテレイアは構えた巨大な機械槍から傘状のバリアを展開! 柄尻からジェット噴射して加速し、一気に希望を摘み取る者まで距離を詰めていく!
「討ち取らせて頂きます。覚悟ッ!」
「ち……」
 鬱陶しげに舌打ちをした希望を摘み取る者は光輝く槍を真横に斬り払い、その身に黄金色の光をまとう! トリテレイアはカラの手を伸ばし、手の甲と前腕部の付け根部分からワイヤーフックを射出した! だが希望を摘み取る者は姿を消してこれを回避! トリテレイアの視界センサーが『CAUTION』を告げる!
「アサシン二人、狐が二匹に、ブリキの玩具、多頭の大蛇か」
 声はトリテレイアの真後ろ! 身をひねって振り返った彼の胸を光輝く槍が刺し貫いた!
「私に石を投げたことは褒めてやる。だが、そこまでだ」
「ぐ、おっ……!」
 トリテレイアの胸に空いた大穴からバチバチと火花が飛び散る。希望を摘み取る者は前後反転の勢いを乗せてトリテレイアをフォルターに投擲! 九つの頭で噛みつきにかかったフォルターは頭のひとつでトリテレイアをキャッチ!
「まだやれるな、騎士よ!」
「ええ……まだ、平気です……!」
 トリテレイアは言いながら片腕を持ち上げた。そこから伸びる細い一筋のワイヤーが、希望を摘み取る者の左手首と繋がっている! トリテレイアは腕を突き出してワイヤーを素早く巻き取り希望を摘み取る者を引き寄せた!
「捕らえました! フォルター様っ!」
「言われずともわかっておるわ! どちらが玩具か思い知らせてやる!」
『SHAAAAAAAAAARRRRRRRGGGGGGHHHHHH!』
 猛毒の瘴気をまとった八つの首が引き寄せられた希望を摘み取る者へ一斉に噛みかかる! 希望を摘み取る者は腕のワイヤーを槍の一閃で断ち、閃光と共に姿を消して噛みつきを回避! 蛇の頭の付け根へ瞬間移動!
「首数多あれど、体はひとつ。所詮はこけおどしに過ぎない」
 頭上で槍をクルクルと回して突き下ろす! 硬い鱗を撃ち抜いた槍から光があふれ、ヒュドラの目鼻口からサーチライトじみた光が吹き出した!
『ぐっ……ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?』
 SMAAAAAACK! 光が一気に光量を増して大蛇の身体を爆散せしめる! 後方へ弾き飛ばされたフォルターは地面をゴロゴロと転がるも片膝立ちの姿勢で体勢復帰! その鼻先に輝く槍の穂先が迫る!
「玩具は貴様だ、怪物もどき。格の違いを思い知れ」
「おの……れ……っ!」
 泥じみて緩慢な動きで迫る希望を摘み取る者の槍! 死ぬ間際に見る加速時間を、真横から割り込んだ黒い風が吹き飛ばした! 跳ね上げられる輝く穂先! 割って入ったヴォルフガングは黒い爪を嵐めいて振り回す!
「はァァァァァッ!」
「!」
 FLASH! 光の速さで飛び退いて爪撃をかわした希望を摘み取る者に高速接近するヴォルフガング! 呪詛じみた黒い霧をまとった爪と光輝く槍の穂先が凄まじい速度で撃ち合い始めた! ギャルルルルルルルルルル!
「チッ。猟兵という連中は、つくづく人の邪魔をするのが好きなようだな」
「お互いさまだよ、絶望好きのお嬢ちゃん!」
 首を掻っ切る爪撃をスウェー回避した希望を摘み取る者はヴォルフガングの左肩に斬り下ろす! ステップでこれを避けたヴォルフガングは右手に握ったはらわたを希望を摘み取る者に投げつけた! 屈み回避!
「目くらましか、くだらん」
「いいや、死刑宣告だ」
 下段から突き上げられる槍を爪でガードするヴォルフガング! 二人は互いに競り合いながらにらみ合う!
「夢を見るのは構わない。けれど、俺は確実に君をこの様な死体に変える……敵に情けは掛けんよ」
「ほざくがいい」
 カッと目を見開いた希望を摘み取る者は足払いをかけヴォルフガングの腹に前蹴りを叩き込む! 吹き飛ばされながらも両足で制動をかけた彼に跳びかかり、輝く槍で首を狩りに行く! その脇腹に人間大の光弾が命中!
「ぐおッ……!」
 跳ね飛ばされた希望を摘み取る者の前方に着地したのは聖なる光をまとったナイ! 同時に希望を摘み取る者の頭上に複数のヒマワリを象った魔法陣が展開された!
「つかまえたのっ!」
 魔法陣のいくつかから鎖が撃ち下ろされ、小さな鳥かごじみて希望を摘み取る者を閉じ込めた! ナイの隣に着地した向日葵はどす黒い血にまみれたガントレットの拳を構え、ナイと一緒にダッシュで突撃!
「もう逃げられないのよ! 覚悟するのっ!」
「私の希望は、あなたに摘み取れは、しない。希望を摘み取る者……今日はあなたが、喰われる番、です!」
 向かってくる二人を睨み、憎々しげに顔を歪める希望を摘み取る者。そのオッドアイがカッと光った! 向日葵とナイの前方で床が爆発! 木材の破片をまき散らしながら現れたグールたちが二人を迎え撃ちにかかる!
『GRRRASSHAAAAAAAAAAAARGH!』
「いくら来ても、止まりま、せんっ!」
「シャイニーソレイユは無敵なのよーっ!」
 身にまとう光を強めるナイと拳を振りかぶる向日葵! しかし二人が接敵する寸前、足元の床げ吹き飛んだ! ナイと向日葵を真上に跳ね上げたのは地面から生えた巨大なミミズ! モグラのグールが顔を出す!
「GLOOOOOOOOOOP!」
 ミミズが空中で複雑軌道を描き、空中に投げ出されたナイと向日葵に噛みつきにかかる! 次の瞬間、身構える二人の間を火球がすり抜け、ミミズの口内に飛び込み頭を内側から爆発させた! フィーナ!
「その化け物で時間稼ぎするつもりかしら? 甘いわよっ!」
 力強く杖を突き出したフィーナの周囲に無数の火球が現れ、次々に飛翔! 巨大モグラの胴体や頭部に連続で着弾して爆発せしめ、その奥に居たグールたちをも消し飛ばす! BOOOM! フィーナはライラに呼びかけた!
「ライラ! 逃げるわよっ!」
「はいっ!」
 大盾を構えたライラが猛然と駆け、向日葵の魔法陣を槍で引き裂いた希望を摘み取る者へと迫る! 寄る辺を失くし解けて散った光の鎖を薙ぎ払い、希望を摘み取る者は槍から流入した光をまとう!
「やれやれ。物量に物を言わせていたのは私の方であったはずなのだがな」
「このまま圧倒させて頂きます! あなたの隙にはさせませんっ!」
「抜かせ」
 盾を前面に構えて加速するライラ! 希望を摘み取る者は半身で槍を構えて前に出かけるも足が動かぬ! はっとして足元を見下ろせば、黒と濃紫色の影が希望を摘み取る者の足を張りつけていた! 影が繋がる先には都月!
「闇は……重力……!」
 血だまりとグール死骸の中に倒れ伏した都月は、地面に突き立てたダガーに力を込める! 影縫いめいて縛られた希望を摘み取る者に、ライラは低空ジャンプからのロケットシールドバッシュ! SMAAAAASH!
「ぐぁっ!」
 大きくのけ反る希望を摘み取る者! だが両脚は床にへばりついて離れない! 希望を摘み取る者は歯を食いしばる!
(先の鎖を触媒にした重力魔術……小癪な!)
「絶望かい? 摘み取る者さん!」
「!」
 頭上から振ってきた声に顔を上げれば、イルカのようにジャンプした故! バケツを両手に持って身をひねり回転! まき散らされたペンキが希望を摘み取る者の周囲にぶちまけられた! 赤い染みから赤い茨が伸びた!
「女王様の裁判にかけられる悪い人はねぇ……」
 希望を摘み取る者の真後ろに背中合わせに立った故の背後で、四方八方から伸びた茨が希望を摘み取る者を縛る!
「茨でぐるぐる巻きにされるんだ。どんな気分かな。斬首される一秒前って感じかい?」
「貴様……ッ!」
 希望を摘み取る者は両腕に光を集中させ、力尽くで茨を引き裂く! 目を丸くする故の顔面に後ろ回し蹴りを叩き込んだ彼女の首筋を、ヴォルフガングが振るった漆黒のムチが打ち据えた!
「がはッ!」
「逃げるな、愚かな童よ。貴様の重ねた穢れ、その報いを受ける時だ!」
 ヴォルフガングがムチをしならせ、希望を摘み取る者の胴に巻きつける! その首を左右から二条の剣閃が斬り裂いた! アリシアとシルヴァーナが刃を振り切る!
「チェックメイト、ですわね」
「首、落としましたッ!」
 決然たる宣言! 二重に斬られた希望を摘み取る者の首がズルリとずれ―――落ちぬ! 希望を摘み取る者の全身から駆け上がった光が首に集中し、斬首を阻んだ! 目を剥いたシルヴァーナとアリシアに振り向いた!
「希望を……繋いだと、思ったかッ……!」
「繋いだのッ!」
 希望を摘み取る者のゼロ・インチ距離に向日葵とナイが踏み込んだ! 大きく拳を振りかぶる向日葵、交叉したナイの両手首に光輝く刃!
「ソレイユ―――……」
「全生命力、一点集中!」
 向日葵のガントレットが日輪の如き魔力光を放出し、ナイの刃に光が収束! 希望を摘み取る者は歯を食いしばり、全身の輝きを何倍にも強める! 拳と刃が放たれる!
「スマぁぁぁぁぁぁぁぁッシュッ!」
「リジェネレイター、全開、ですっ!」
 二本の刃が心臓を穿ち、腹に鉄拳が打ち込まれる! 希望を摘み取る者の背中から光を帯びた衝撃波がBOOOOOOOOOM! 放射状に吹き荒れた! 響く歯軋りの音! ナイと向日葵は全力を注ぐも倒れぬ!
「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」
 希望を摘み取る者は奥歯を砕けるほどに噛みしめ、眦が裂けんばかりに目を見開く。希望を摘み取る者の光は血を吐くようにして叫んだ!
「消えるものか! 絶望が……なくなるものかぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
 SMAAAAAAAACK! 書架の国の夜空を昼の如き光が照らす! 希望を摘み取る者の傷が恐るべき速度で癒え、決して倒れぬ! 向日葵とナイの表情が悔しげに歪んだ。攻め切れない!
『ほう、ここまで袋叩きにしてなお立つか』
 幾重にも重なった声と共に漆黒の瘴気が吹き荒ぶ! ZGOOOOOOOOOOOM! 光を黒が取り囲んで覆い隠し、希望を摘み取る者を上から18の目が睨み下ろした。再度ヒュドラに変じたフォルター!
『ならば食い殺してくれよう。希望を摘み取る者の絶望は、どのような味がするのかだろうかなあ!』
 希望を摘み取る者に噛みかかるヒュドラ! ナイと向日葵はとっさに跳び下がり、ヴォルフガングは強く踏ん張りムチを引く! 直後、希望を摘み取る者の背後地面を突き破って数百の生物を頭に持つ巨大グールが現れた!
「絶望するのは……貴様らだッ!」
 希望を摘み取る者が吠え、巨大グールがヒュドラに殴りかかった! そこへ跳躍したトリテレイアが巨大グールの上を取り、両前腕部から出現させた銃を一斉放火! 巨大グールの多頭を片っ端から薙ぎ払う!
「フォルター様―――ッ!」
『SHAAAAAAAAAARRRRRRRGGGGGGHHHHHH!』
 ヒュドラの首四つがグールの両肩を噛んで左右に引き裂き、さらに四つの首が両腕と両脇腹を食い破る! 腐った血を怒涛の如く流すグールを驚愕の面持ちで振り返った希望を摘み取る者に、最後の首がかぶりつく!
 CRAAAAAAAASH! 大蛇が頭から床に突っ込み、茶色の粉塵を巻き上げる。それを遠くに見ていた狐狛は、ふと周囲を見回した。同士討ちしてそこら中で倒れ伏していたグールたちが、紫煙となって蒸発していく。
「おっ、グールどもが消えていきやがらァ。創造主ならぬ想像主が死んだから……ってことか? くくくくくく!」
 一人呟き含み笑いをする狐狛を余所に、黒いヒュドラが鎌首をもたげた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月06日


挿絵イラスト