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夏の夜シャインワークス・ダイビング

#グリードオーシャン #お祭り2020 #夏休み

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 満天の夜が、煌めく星々がとても遠い。
 手を伸ばしたって、暑さ運ぶ潮風を指先に感じるくらい。
 もっと、もっと。
 この身を空へ、高く高く。
 そうしたら夏の大三角を掴めるのかな。

 突然、視界で光が爆ぜた。
 星の輝きだけだった黒いキャンバスに、数多の彩が飛び散る。
 ひとときの衝撃。観えたのは、光の花。
 ――嗚呼夏の音だ。

 高く遠い、星夜と輝花の楽園へ。
 もっと近付く事ができたのなら、どれだけ素敵なんだろう。
 もっと、もっと。

●全方位で弾ける光の彩り
「猟兵の皆さまご機嫌よう、夏は楽しまれているかしら」
 真夜中色の薔薇を撫で、オリオ・イェラキ(緋鷹の星夜・f00428)が話しかける。
 猟兵達へ向けた視線は楽しげに揺れていた。
「今日はわたくしからグリードオーシャンでの楽しいひと時をご案内致しますわ」
 柔らかな笑顔のまま、夜色のオラトリオがそっと掌を差し出す。
 浮かび上がるグリモアは、オリオン座の輝きを秘めていた。
「ある島の住民達は、毎年この時期になると周辺の島や海から客を招いて一大イベントを行いますの」
 何かと問われた声に、グリモア猟兵が小首を傾げる。
「例えるならば、UDCアースの花火というお祭りかしら。ただし、扱うのは光ですわ」
 光の花火。それは、島に来た人達の目を楽しませる夜空の輝き。
 雲ひとつない快晴の夜、澄み渡る空は数多の星が煌めいている。
 そんな贅沢にも思えるキャンバスへ、更に色を加え一夜の芸術を描いていく。
 光花祭と呼ばれる宴を島に来る沢山の種族達が楽しみにしていた。
 しかし最近はコンキスタドールのせいで周辺地域が騒がしく、一時は中止かと危ぶまれていたが猟兵達の活躍で今年も問題なく開催できる事となり。
 島の住民達は喜び猟兵達に感謝をしているそう。
「お礼も兼ねて猟兵の皆様には特等席を用意したいとの申し出がありましたので、でしたらとわたくしが提案しましたの。上からを」
 上? と誰かが訪ねた。変わらぬ笑顔が、優雅に頷く。
「ええ。わたくしが光花打ち上がる上空へ転送いたしますわ」
 つまりこうだ。
 遥か上空より落ちながら打ち上げ花火(光属性)を観るどころか、触れ合えるらしい。
 島民が作る光は花や輪の形に始まり、大量の流れ星やらでかいクマ等割と色々な形を彩るそうな。
 しかも一瞬ではなく十数秒輝いた後に消えるので花火より長く楽しめる。
 次から次へと出現する光のアート。そこへ、飛び込んでみようというのだ。
「熱くないのでしたらその方が楽しそうだと思いましたの。飛べる方は空中散歩もできますわ」
 また打ち上げは島近くの海上で行うため、下は硬い地面ではない。
「着地は……海に落ちますので水着など濡れても構わない服が良いと思いますの」
 勿論見物客達がいる島へと降り立っても構わないそう。
 そこら辺は猟兵達の判断で好きにして良いと先方も了解していると伝えた後、オリオは一つ何かを思い出す仕草を取る。
「そう、わたくし達が使うユーベルコードを住民の皆さまが興味を示されまして」
 時に激しく、格好良く。戦いの時に華も添えるユーベルコード。
 猟兵の活躍を見たり聞いたりした島の住民達からも一つ提案があったそうな。
「光花に負けない輝きを持つ力を、一つ夜空で魅せて頂けないかと言われましたわ」
 華やかな技を放ち、空に輝かせる事ができるのなら。
 島民達も見学に来た客の皆も喜ぶだろう。しかしと話は続く。
「勿論誰かや何かに向けて放つのはいけませんわ。虚空に向けてお願いしますの」
 注意点はそれくらいかしら……と呟いた後、グリモアを手の上に女は微笑む。
「では参りましょう、星と光瞬く夜空へ」
 周辺が星流れる軌跡を描き、風景をいくつもの光が輝く夜の空へと変えていく。

 さぁ行こう。
 星空の中、極彩色の海へ。


あきか
 あきかと申します。
 夏の思い出作りに貢献したいです。

●はじめに
 このシナリオは既に猟兵達によってオブリビオンから解放された島となります。
 このシナリオは【日常】の章のみでオブリビオンとの戦闘が発生しないため、獲得EXP・WPが少なめとなります。

●執筆について
 プレイング受付開始のご案内はマスターページにて行っています。
 お手数ですが確認をお願いします。

●シナリオについて
 要は上空から海へ落下しながら星空と花火(光属性)を堪能できます。
 光でできた花火なので熱くないです安心安全。
 音とかめっちゃ眩しいとかは気にしない方向でお願いします。
 描写は転送完了後の空中からスタートです。

 ・星空のスカイダイビングを楽しむ。
 自由落下するもよし、飛んで空中散歩するもよし。
 着地は海中どぼんや格好良く陸地に降り立ちたい人だけ書いて下さい。
 書かなくても皆無事に着水か着地します。

 ・空中に花開く光の花火で遊んで観る。
 下からどんどん打ち上がる熱くない花火で遊びましょう。
 花火輪っかくぐりやら、光の滝に飛び込んでみたり。
 色々出来ると思います。こんな花火あったらいいなぁも是非。

 ・UCを派手にぶっ放して夜空に新しい彩りを添える。
 他の人や物にぶつからないを前提で描写します。
 誰かと連携する為にあえて相手に当てますとか書かない限りは当てませんので安心して放って下さい。

 等など、したい事をお書き下さい。
 また、オリオもそこらを気儘に空中散歩しております。
 お声があれば会話や一緒に遊んだりします。

 気楽にいきましょう、れっつえんじょい。
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第1章 日常 『猟兵達の夏休み』

POW   :    海で思いっきり遊ぶ

SPD   :    釣りや素潜りを楽しむ

WIZ   :    砂浜でセンスを発揮する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 転送が完了した瞬間、身体が浮遊感を感じ取った。
 頭上全てを支配するのはキラキラ輝く数多の星達。
 視線を上げて息を吐く……間もなく、躰が落下を開始する。

 潮風を纏い夜の海へ。
 もうすぐ、楽しい破裂音と共に光の花がいくつも咲き誇るのだろう。
 上も下も見所満載だとしたら、さて何処から楽しもうか。

 一方。
「いやぁ本当、今年も光花祭を迎えられて良かったですな」
 祭の観客席では沢山の種族が仲良く座っていた。
「ええ、彼らのおかげですよ。今年はどんな光花が見られますかね」
 和やかに会話する様子に不安は存在しない。だって猟兵達が取り除いてくれたのだから。
「もうすぐ始まりますよ、楽しみですねぇ」
 開始の声を聞けば穏やかな話し声はひと時静まり、夜に響く波の音だけになる。

 少し先の海上で、最初の光が空へと打ち上げられた。
ルーチェ・ムート
苺蝶

苺と手を繋いで空の散歩に
ふふ、楽しいね
元気いっぱいな笑顔にボクもつられちゃう

すかいだいびんぐ!
ボクたちの色にもっと彩っちゃおう!

ひとつ頷いて
高らかに軽やかに
歌声は重なって、どこまでも遠く
花火の周りに白百合とガーベラが踊って

わーっ!綺麗!
肉球が心地良くて
苺が可愛くて
頰を撫でる風が―――あまりに涼しい

苺ー!ボクたち落ちる準備何もしてな…っ!
2人して濡れ鼠
えへへ、楽しくて忘れてたね

私服じゃなくて水着でも良かったかも?
かわいらしいくしゃみがひとつ聞こえたなら
おかしくて愛らしくて、ああ、ボクもくしゃみをひとつ

顔を見合わせて咲いた大輪の笑顔に弾けた笑い声
なんて素敵な夏なんだろう
さあ、手を繋いで帰ろうか


歌獣・苺
苺蝶

(隣の桃蝶と手を繋ぎ
叫びながら落ちる)
れっつえんじょーーい♪♪

ルーチェちゃん!
私たちが今夜の花火を
いちばん綺麗に飾っちゃお~♪

『これは、皆を希望に導く謳』!
ドラゴンになって打ち上がる花火より高く飛び上がり大きく翼を広げ、無数のガーベラを花火に飾ると、元の姿に戻り、落ちる

さぁ!
次はルーチェちゃんの番だよ!

再び桃蝶と手を握り
花火に見とれる

わぁ…とっても綺麗…
叶うのならばこのままずっと、
ずっと………

…あれ、ルーチェちゃん
私たち
何か忘れてなーーーどぼん!!!

飛ぶ術があった為私服で来ていたが、美しい景色に飛ぶことを忘れ、見事に背中から着水

浮かび上がるとくしゃみをひとつ
2人で顔を見合わせて大笑いした。



●Strawberry beat×Butterfly song
 繋いだ手は優しくて。とても、柔らかかった。
「れっつえんじょーーい♪♪」
 苺色の虹彩が、星空の下で楽しく弾ける。
 歌獣・苺(苺一会・f16654)の声をスタートに、仲良く夜へ飛び込んだ。
 純粋な彼女の陽気と幼さ伺える声色は、何だか微笑ましくなる。
「すかいだいびんぐ! ……ふふ、楽しいね」
 桃色淡く身を染めた、ルーチェ・ムート(蒼穹に紅ラフォリア・f10134)もつられて笑った。
 元気いっぱいの笑顔がふたつ、甘やかな装いを夜風にひらひら靡かせて。
 晴れ渡る夜空を背景に、今夜二人は寄り添い落ちる苺蝶。

 最初の光は、大きな大きな白い花一つ。
 奇しくもその彩りは、歓迎するかのような淡い桃色を潜ませていた。
 おんなじ赤の瞳を輝かせ、繋ぐ手ぎゅっと期待代わりに握り込む。
 迷わず中心へ落ちていった瞬間、花がふたりを中心に弾け跳んだ。
「わーっ! 綺麗!」
 舞い上がる光達が花弁のように散らばり広がる。
 気分は花畑に飛び込んだ後の可愛い有様。
 ふわふわ揺れる白い髪と、楽しく跳ねる黒い髪へも纏わりついて。
 十数秒間消えて無くなる迄、お揃いの耀く花冠が飾られた。
「ルーチェちゃん! 私たちが今夜の花火をいちばん綺麗に飾っちゃお~♪」
 楽しさ湛えるあかいろで今度はお互いを映し出す。
 星の夜に、誘う言葉はより愉しくなる為の優しい企み。
「ボクたちの色にもっと彩っちゃおう!」
 光花祭に、淡く紅い色彩を。二人が居る証を輝かせよう。
 その為いっとき重なる手へさよならを。大丈夫、ほんのひとときだから。
 名残惜しくも繋がり解いて、さぁ最初の輝き放つのは苺一会を謡うシンフォニア。
 友から離れた彼女の周りに花車の花弁がぶわりと現れ吹き荒れる。
 更には丁度良く打ち上がった光花が束となり、苺の姿が光と花に隠されて。
 次の瞬間、光る花弁を『思いやり』の花嵐が凌駕して何かが上空へと飛び出した。
「『これは、皆を希望に導く謳』!」
 ガーベラと煌きの飾りを身に纏い、天上高く姿を表す藍苺。
 今宵感じた心の儘に。生まれたドラゴンは夜空いっぱい見事な翼を広げて魅せた。
 称えるように、数多の光花が周囲を彩る。もっともっとと、瞬き続ける。
 それならばと幻想の竜が苺色の花を引き連れ光の渦を旋回し始めた。
 大迫力の煌めく洪水が夜空に花と光の流星群を描き出す。
 ――ねえお母さん、綺麗なドラゴンだ! キラキラしてるよ!
 ――本当、なんて素敵な光。
 竜が苺色の娘に戻っても、観客席からの歓声は静まらない。
 この熱狂を更に。次のシンフォニアへと、バトンを託す。
 急降下で落ちていく。目指すは、手を伸ばして待ち構える友達へ。
「さぁ! 次はルーチェちゃんの番だよ!」
 白い手へむにむにの肉球をぽむっとタッチさせたら選手交代だ。
 桃色の蝶が鮮やかに、微笑みひとつ確り頷いて。
 淡い人魚が夜の海へと泳いでいく。友が描いた輝く花の舞台へと。
 あらゆる光が彼女へのスポットライト。篭無き世界で、ルーチェが歌う。
「リリーの色はリアルな彩さ」
 片手は躍る胸にそっと添え、もう一つは高らかに天へと向けた。
 彼方へ、誰かへ。ダンピールは軽やかに甘い声を響かせる。
「踊り明かすフロアで、止まんないフロウを」
 蕩ける音の波が奇跡を創り出す。それは白い百合の花弁へと姿を変えた。
「一緒に……どうだい?」
 生命の詩が、神秘の歌声に重なってどこまでもどこまでも遠くまで届いていく。
 舞い踊るリリーの花嵐に光が宿った。続いて咲くのは、いくつもの小さな光花達。
 僅かの時間だけ開園した特別な花の庭で、蝶々が鮮やかに飛んでいる。
 ――聴こえた? 素敵な歌声が。
 ――聴こえた、あの輝きの中からよ。夢みたい。
 いつの間にか観客は落ち着いていた。でもそれは、あの歌声に聴き入っていたから。
 歌い終える頃に再びの喝采が、彼女達へ届けとばかりに拍手が巻き起こった。

 おかえりなさいともう一度、二人は確り手を繋ぐ。
 ちょっと離れただけなのに、もう恋しかった肉球の心地良さを感じてルーチェが笑う。
 頬を撫で僅かに残っていた花弁と光を掠う風の涼しさも好いけれど。
 目の前で燥ぐ大人の彼女に、可愛いなぁなんて思ってしまう。
「わぁ……とっても綺麗……」
 気付かず苺はまだまだ花咲く燿きを見上げて溜息零す。
(叶うのならばこのまま、ずっと)
 無意識に、視線は光花から手を繋いで共に落ち行く相手に向かっていた。
 交わる近い虹彩。白百合が楽しげに笑っている。
 きっと自分も、鏡写しなのだろう。
「ずっと………」
 星夜と花咲く光の下で。
 この心達が幸せな思いのままだったら、どんなに。
 ……光の下?
「あれ、ルーチェちゃん」
 気付いた時には、もう光花が大分上の方で咲いている。
 それは何を指し示しているのか。
「苺ー!」
 相手の意図を理解して、漸く二人が現状を理解する。
 だが既に、潮の香りは濃厚だった。
「私たち、何か忘れてなーー!!」
「ボクたち落ちる準備何もしてな……っ!」

 どぼん。

 同時に落ちたので、綺麗に着水音と水柱は一つぶん。
 飛ぶ術あったからと私服で来ていた二人は、すっかりその事忘れて海へ真っ逆さまでした。
 咲き続ける光花を光源にそれなり明るい海中で、未だ現状を把握しきれていないまんまるの目がお互いを映し出す。
 数秒後慌てて海面へと泳ぎ、これまた同時に顔を出して息を吐く。
「っは……私服じゃなくて水着でも良かったかも?」
 後の祭ではあったのだが、胸の内にあるのは後悔ではなく達成感と暖かさ。
 そして相手の返事は言葉ではなく、かわいいかわいいくしゃみが一つ。
 もう一度まあるい眼をして顔を見合わせる。
「……っ!」
 おかしくておかしくて。どっちだろう、どちらも一緒に吹き出して。
 愛らしい二人の笑い声に、もう一回くしゃみの音が混じったら。
 今度こそ揃って愉快に大笑い。
 夏の夜、海上で。最高の笑顔が花咲いた。

 一緒に帰ろう。
 二人でもう一度、手を繋ぎ直した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オズ・ケストナー
f01786/綾

わあっ
花火を上から見るなんてはじめて
アヤのまねっこして両手をひろげたら
風がたくさんとびこんできてたのしい

指す方見て
星だっ

わたって?ときょとり
手を引かれたら、ふしぎはわくわくに変わる
軽やかな大ジャンプに目を輝かせ
わあ、わあっ
アヤ、すごいっ
今、さっきの星の中にいるんだねっ

ねころんでみたいと聞けば
まかせてっ
手をつないだままシャボン玉で体を包み
ここならねころんでもいいよ

いっしょにぴょんと座り込んで一面の光を見渡して
そのままころん

ふと隣を見たらアヤの笑顔
うれしくて

おっけー、いこうっ
たのしい気持ちはフル充電
だから、流れ星にだって負けないくらいはやくとべる
つぎはあの星のところまで
れっつごーっ


都槻・綾
f01136/オズさん

眼下の花火目掛け
両腕を広げて降下すれば
まるで大きな花束を抱えるみたいな華やいだ心地

やぁ
ご覧くださいな

指し示すのは別の方角
星型の花火がきらきら眩い

あの中を航って落ちたなら
流星のひとつになれるかしら

片目を瞑って悪戯な笑み
手を伸ばし、繋いで引き寄せ
軽やかに空中をジャンプ
ぴょんぴょん跳ねて星燈の中へ

足元で水飛沫の如く弾ける光の
実に綺麗なこと

此の星海に浮き具を置いて
寝転んでみたいですねぇ

なんて暢気な提案を叶えてくれたのは
オズさんのしゃぼん玉
ぷかぷか揺れる小舟の旅に
いつしか眠くなって来るけれど
夢にしてしまうのは惜しいから

ね、もっともっと速く翔けましょうか

跳ねて翔けて
存分に星天を游ごう



●星翔シャボンシップ
 下から身体に伝わる心地よい破裂音を耳に、ゆっくりと目を開ける。
 都槻・綾(糸遊・f01786)の精緻な青磁色が、眼下で咲き誇る光を視た。
「――」
 言葉無き感嘆ひとつ。身体を傾け、下を向く。
 それは降下の為か其れ共花に惹かれたか、糸遊がゆうるり両手を広げ輝く華達を抱きしめた。
 結ぶ腕、ともすれば。観えるのかしら花束に。
「わあっ」
 すぐ近くで、今度は声有る感嘆が明るく響く。
 キトンブルーの双眼に星と光花をめいっぱい映して、オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)は無邪気に表情緩ませた。
「花火を上から見るなんてはじめて」
 まるで御伽噺の1ページ。早く捲って先を知りたい、そんな気持ちで胸がときめく。
「オズさん」
 穏やかに、でも通る声が確り相手へ届いて振り向かせる。
 華やぐ心地で花束抱く彼を見て、金髪のドールがより一層顔を輝かせた。
「わたしもやりたい、アヤのまねっこっ」
 ふわふわ緩く、作られた腕を広げてみせる。
 たちまち飛び込んできた光花の欠片と潮風に、笑顔が益々深くなって。
「すごいね、たのしい」
 燥ぐ姿が、花の光に照らされる。
 花束が夢と消えても嗚呼愉しい。

「やぁ、ご覧くださいな」
 御次の夢は何でしょう、中庸者の指が示す方角へこどもの心が揺れ動く。
「星だっ」
 見つけたのは好奇心を存分に刺激する現実だ。
 遠い天より大きな五芒星、きらきら燿き花開いて。
 一つ消えてもまた光る。人工の星が遊ぼう遊ぼうと数を増やしていった。
「あの中を航って落ちたなら」
 砕けず在り続ける男の指が、砕けても尚瞬く星の心を先ず指して。
 次に視線を話し相手に戻しがてら、指でゆっくり軌跡を描く。
「――流星のひとつになれるかしら」
 提案は、誘いの音色を含めて問いと成る。
 数多の星が照らすのでよく見える、相手はきょとんと不思議そうな顔をしていた。
「わたって?」
 最後に綾の指先はぴんと立つ。
 悪戯な笑みと、閉じる片目に添える仕草として。
 そうして開かれた手は優しくオズのを取ってみせる。
 されるがままに身を引かれ、そこで漸く不思議そうな顔が変化する。
 遊びの内容を理解した子供が、期待に心躍らせて。
 待ちきれないとほわふわな心を軽快に揺り動かした。
 ならば行きましょうとヤドリガミが、ミレナリィドールを連れて瞬く星を目指し天翔る。
 軽やかに跳ねて、鮮やかに空中大ジャンプ。
「わあ、わあっ」
 飛び上がる度に青い瞳がうれしいたのしいと煌いて。
 仲良く向かえば目の前に、ジャストサイズのペンタグラムが現れた。
 迷わず飛び込み潜り抜けた瞬間、弾けた光が二人と一緒に落ちていく。
 それからどんどん星が咲き、一斉に流れだして彼等の後を追っていった。
「アヤ、すごいっ」
 流星群が二人を包む。
 上や周囲だけじゃない。足元だって、星が生まれ夜空を照らす。
 丁度良く脚が一つの星に触れると水飛沫の如く光が飛び散り、足先を煌きで飾り付ける。
「実に綺麗なこと」
 中性的な貌が、そっと緩んでいった。

「今、さっきの星の中にいるんだねっ」
 打ち上げ音が止む事無ければ、二人が翔び泳ぐ流星の海も在り続ける。
 天上の本物は届かないけれども。今は目前へ手を伸ばすだけで、光が指を通り抜けた。
 そんな幻想空間を、少しだけ勿体無いと思う心が緑の瞳に宿り出す。
「此の星海に浮き具を置いて……寝転んでみたいですねぇ」
 もっと長く、更なる楽しさを求めたくなって声が出た。
 ちょいと無茶に思える暢気な提案も、夢幻で終わらないのが奇跡の力を持つ自分たち。
「まかせてっ」
 繋いだ手はそのままに、もう一つで誇らしげにオズは自分の胸を叩く。
 今度はわたしの番と言わんばかりに、得意な感情全面に押し出し得意な技を披露する。
 創り出したのは、君と空を歩く為の素敵で綺麗なシャボン玉。
 たちまち二人を包み込んで、自由落下に終わりを告げた。
 できたよできたよ、透明な船の中でドールは笑う。
 そんな様子も微笑ましく、願いを叶えてくれた感謝は綾から柔らかく伝えられた。
「ここならねころんでもいいよ」
 一人は幼子のように、ひとつ跳ねて座り込む。
 すぐにころんと横になる様子を横目に、隣人も静かに腰を下ろした。
 ぷかぷか揺れる小舟は二人を乗せて気儘に進む。
 此の海は何処迄広がる、星の形だけだと思ったら。違う光も彼らに会いに来た。
 星屑の飛沫を散らして浮かび上がるイルカの光花。消える時は潜るように星海へ紛れていく。
 見上げても、横を向いても。何ならうつ伏せになったって絶佳は広がる。
 おふたりさまの星空旅行はどうにも快適で、いつしか眠くなって来るけれど。
(夢にしてしまうのは惜しいから)
 視界を閉ざす事だけはしたくなかった。
 そう思う気持ちが、隣で寝転がる彼へと顔を向けさせる。
 かち合う視線は、少しだけ驚いた後……嬉しそうに花開く顔を見届けて。
「アヤのえがおだっ」
 教えられ、始めて自分が笑ってることに気がついた。

「ね、もっともっと速く翔けましょうか」
 ゆるゆる眠くなる低速飛行も良いけれど。
 加速する想い出だってきっと素敵に残るだろうから、もう一度楽しい提案を。
 答えは言葉を聞く前に、相手が勢いよく起き上がったので思わず追加の笑みが零れた。
「おっけー、いこうっ」
 この躰は楽しい気持ちがエネルギーと言ったって過言じゃない。
 わくわくこみ上げる想いが身体中を駆け巡る。充電フル完了で綾に笑いかける。
 まだまだ祭りは終わらない。光の花は、シャボンの船を揺らす勢いで咲き続けているのなら。
 負けてなんていられない。流れ星より早く速く、私達なら跳ねて翔けていける。
「つぎはあの星のところまで」
 今度はオズが指で先を示す。星海の冒険は始まったばかりだ。
 二人で技合わせ、愉快爽快に渡って行こう。
「存分に星天を游ごう」
「れっつごーっ」
 次に待つ光を目指して。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

スキアファール・イリャルギ
(服はいつもの恰好。どうせ包帯は巻いた儘なので)

自由落下に身を任せて光を楽しもう
行こうか、コローロ
……あー、うん
大丈夫、射出されてないから、厭世モードじゃないから……
(なんか色々思い出しちゃって遠い目)

あぁ、眩しいな……
影人間には眩しすぎる世界だ
ひどくきれいな世界に思わず手を伸ばして――

……彼女が生み出した色に、包まれる感覚がした
あぁ、ごめん……気を遣わせたかな
いいんだよ、きみのように色を求めるのは、当の昔に諦めてしまった……
でも、ありがとう

ね、折角だからきみの創った色を空に添えよう
眩しすぎる世界でも、きみの色があれば怖くないから

……コローロ
『    』。
(そっとひかりに顔を近づけて、囁いた)



●きみといろどる
 黒い世界に、黒い人型が紛れ込む。
 身体中巻き付けた包帯と、落下速度に逆らわぬ髪が同化して。
 スキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)が夜にひっそり降下していった。
 誰にも、何にも識られ無いまま。
 彼の存在を示すのは、今は未だ星の瞬きだけ。

 照らされた数少ない黒ではない部分、色白の顔がぼんやり夜空を見上げている。
「行こうか、コローロ」
 ハイライト皆無の瞳に、天からの瞬きを取り込んで。
 男の声が不意に誰かの名を呼んだ。周囲は、月星の光しか無い筈なのに。
 しかし返答はいつの間にか長身の彼に寄り添う確かな輝きとして存在していた。
 現れたのは祭が打ち上げた花ではない光。姿なき、彼の隣人。
 声で交わさなくとも想いが通じる彼女を視界の端に捕まえて。
 真っ黒な影人間は先程と変わらず落ちていく。
「……?」
 ふと、協力者の挙動が少しだけ気になった。
 常よりもっと、傍に居る気がする。
「あー、うん」
 答えは何となく理解した。
 ゆっくり顔を向け、今度は黒い瞳に星を消して傍らの火花だけを映し返す。
「大丈夫、射出されてないから、厭世モードじゃないから……」
 安心させる言葉を吐いたものの、影に染まる脳が色々諸々関連記憶を再生させる。
 思わず想い出に視界が引っ張られそうになるが、彼女の光を見つけて現実へと思考を戻した。
 モードを切り替えず、今はこの光景を共に楽しもう。
 その為にきみを呼んで此処に来たのだから。

 どん、と。低い音が今は二つの耳に届く。
 間も無く稼働中の二つ目へ、花開く祭りの光が映り込む。
「あぁ」
 後から後から、まるで沢山の眼で観てと言わんばかりに周囲で咲く音が鳴り続ける。
 一言零しただけの短い時間で舞台が華やかな光りに包まれた。
「眩しいな……影人間には眩しすぎる世界だ」
 人間(ひかり)だった頃は、もうどれくらい前の話だったのだろう。
 影が自分の総てと成ってもこうして光を観に来る位には、諦めきれない何かが在った。
 無意識に、手を伸ばす。影を黒で覆い尽くした指先を、美しく弾けて彩る花へ向けていく。
 ひどくきれいな世界へ、届くのなら――そんな彼の心の揺れを感じ取ったのは、彼女だった。
 ぱちりと瞬く光がスキアファール、若しくは左右の視覚に飛び込み精一杯輝いてみせる。
 捧げる色は、自分は此処だと影潜む脳へ伝える二人だけの彩り。
 色無き君を沈んだ思い出から連れ戻す為に。
「あぁ、ごめん……気を遣わせたかな」
 果たして望む声を聞き届け、彼の光がくるりと周囲を一回転した。
(いいんだよ、きみのように色を求めるのは、当の昔に諦めてしまった……でも)
 ありがとう。伝える事は、自分だってできるから。

「ね、折角だからきみの創った色を空に添えよう」
 もう意識も身体も何処かへ行かないように、両手で優しく彼女を包む。
「眩しすぎる世界でも、きみの色があれば怖くないから……コローロ」
 君と共に居られるのなら。そっと、光に顔を寄せ目を閉じた。
『――――』
 囁く声は、密やかに。
 星空の片隅で二人、気儘に夜を彩り描いていく。

 ――見てあそこ、ほら! あの色、きれいね。
 観客席で誰かが彼方の空を指差した。
 発せられた言葉は、未だ彼の元へは届かない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

テオ・イェラキ
可能であればオリオを誘い、共に花火を楽しみたいところだな
グリモア猟兵の仕事を労いながらも、空の旅へと誘いをかけよう

帰りまでの一時、貴方のお時間を頂けますか?お姫様
スカイステッパーでオリオの元へと駆け寄るが、その後の花火を楽しむほどの滞空能力は残念ながら俺には無い
誘いの了承を貰えたならば、残念ながら今日はエスコートされる側だ

そっとオリオを抱き寄せながら……抱き寄せられながらになるのか?この場合は
共にゆっくりと色とりどりの花火を楽しむこととしよう

綺麗だ……
人並の台詞だが、やはりこういう時には言わねばならんのだろう
いや、花火に照らされた、オリオの顔が綺麗だよ



●緋鷹と光夜
 ――また、すぐに逢いましょう。
 あまいことばを星煌めく黒い花弁に混ぜて、彼を送る。
 雄々しき鷹は厚い唇に弧を描き、夜空へ其の身を預けていった。

 テオ・イェラキ(雄々しき蛮族・f00426)が眼を開けると祭りはもう始まっていた。
 眼下で色とりどりの光花が咲き誇り、様々な形を描いて夜を照らしている。
 身の丈に合う重力を感じ落下していく。男が、今度は上を見上げていた。
 極彩色に広がる光の花より、彼が飛ぶのは満天の輝き。
 あの夜空をこよなく愛する姿を探す為、自由落下に任せていた身体に力を込める。
 赤い髪を夜空に散らし、ぐっと身を丸めた瞬間足に確かな硬さを感じた。
 目指すはただ一人のみ。
 空を蹴り、緋色の鷹は飛翔する。

 大輪の光花を超え、星の輪を潜り抜け。
 迷い無く鷹は跳んで行く。まるで待ち合わせ場所に向かうかのように。
 程なくして、フラワースプレーのような白く小さな光の園で。
 共に花火を楽しみたいと願う姿を見つけて文字通り、駆け寄った。
「オリオ」
 花の光に照らされて、翼と腕を広げた夜の娘が幸せそうに微笑んでいる。
 蛮族の大男は鋭い眼差しを柔らかく緩ませ同じように腕を伸ばす。
「テオ」
 そうして妻を抱きしめると同時に、丁度花咲いた光へ一緒に飛び込んだ。
 二人分の衝撃が生まれた光を弾き飛ばせば周囲に星が舞い散るようで。
 夫婦は顔を見合わせて、おんなじ顔して笑い合う。
「グリモア猟兵の仕事、よく頑張っているな。お疲れ様」
「ありがとうございますわ。わたくし、皆さまをちゃんとご案内できましたの」
 自由落下でスターマインへ直撃しても、光の渦の中でふたりの会話は乱れる事無く。
「帰りまでの一時、貴方のお時間を頂けますか? お姫様」
「勿論ですわ、テオ。わたくしの緋鷹、わたくしの頼もしき方」
 無事にデートの約束を取り付けたものの、さて一つだけ問題が発生する。
 夜空を駆け抜けてきた力は有限で、これ以上自力での空中散歩が厳しいところ。
 誠に残念ながら、男のエスコートは此処までになってしまう。
 だがそんな考えはとうに通じているもので。
 優雅に微笑む女が、細腕で彼を支えて夜色に染まり征く翼を大きく動かしてみせた。
 急激に感じる重力への抵抗感。花の光を撒き散らしながら、上空へと戻っていく。
 羽ばたく羽根にも、煌きを纏わせながら。
 そうして無事に天上へ。二人寄り添い、今度はゆっくり間近での光を鑑賞できるようになった。
 こんな日があったって良いのだと胸の内を暖かくしながら。

 夫婦仲良く、眼前で咲く光を眺める。
 妻が好きな花が咲いたと無邪気に笑った。
「綺麗だ……」
 無意識の内にでた言葉に、夜薔薇を咲かせた髪を揺らしてオリオが振り向く。
 そうでしょう。やはりあの花は綺麗ね。
 そう、告げたそうな顔にテオは緩く首を振る。
「いや、花火に照らされた、オリオの顔が綺麗だよ」

 大きく見開かれた星空色の瞳に、光花の輝きが何度も映り込む。
 すぐに緋鷹の星夜はにかむ笑顔を見せてきて。
 今度こそと鍛え抜いた腕がいとしき人を抱き寄せた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
🐟櫻沫

空の星がこんなに近くに見えるよう
空から花火が観れるなんて、すごいね、櫻!
……もしかして、怖いとか?
ふふ!冗談だよ
わくわくがとまらない

極彩の花魁水着をはためかせ、だいすきな櫻宵にきゅうとつかまって
あ、ヨルもしっかり掴まってるんだよ?
ヨルを抱っこしてくれるの?誘、ありがとう!

そのまま穹に身を躍らせる
あはは!綺麗だね!
弾ける光につつまれて、纏うように舞うように
ひいらり落ちていく
さぁ、光の海を泳ごうか!
歌う、「うつせみの歌」
泡となり、桜となった櫻宵と一緒に光を彩って
満開の桜を咲かせよう

嗚呼なんて心地いい

桜花弁と水泡とが一緒に戯れて、水面に花筏を作ったなら僕の出番だね
ちゃんと陸まで連れてったげる


誘名・櫻宵
🌸櫻沫

こんなに高くに来たのは初めてだわ
すごいわねぇ…
こ、怖くなんてないったら!
武者震いよっ

夜闇にはためく白無垢水着、風吹く度に桜舞う
誘はヨルを抱っこしてて頂戴と傍の桜わらしにお願いするわ
私はリルをしっかりつかまえておくわ!

そのまま、光の花の中飛び込んで
不思議なの心地
ああなんて綺麗!万華鏡の中に飛び込んだみたいだわ!
うふふ!光の中だってあえやかに、美しく――私という桜を、咲かせてみせるわ!
「花華」
その身を桜と変えて、リルの泡沫と沿うように
きらりはらりと、光の花火に宵櫻を咲かせるように
彩りながら落ち

水に触れれば姿を取り戻し―リルっ
私泳げないのよ!なんて人魚にしがみつく

さっきと逆ね
ふふ、悪くないわ



●演目『櫻沫響舞彩画』
 夏の夜に、戀色の季節が華咲いた。
 嗚呼此の彩り夢幻じゃあないかしら。
「空の星がこんなに近くに見えるよう」
 玲瓏な音色は麗らかに、極彩の纏は鮮やかに。
 星空の海へリル・ルリ(『櫻沫の匣舟』・f10762)ゆらり、尾を引いて。
「こんなに高くに来たのは初めてだわ」
 寄り添う薄紅は華やかに、着飾る佳き白艶やかに。
 誘名・櫻宵(貪婪屠櫻・f02768)さらさらと、桜鼠の垂髪潮風撫でて。
 双人(ふたり)一緒に、落ちていく。
「空から花火が観れるなんて、すごいね、櫻!」
 無邪気な聲に晴るを織り交ぜ、春の瞳に己を映す。
 こいした花は爪紅映える指先伸ばし、白い手お手々を絡ませた。
「すごいわねぇ……」
 ぎゅっと手繰り寄せる細い指。力加減に、人魚が淡く微笑んで。
「……もしかして、怖いとか?」
 引き合うふたり、春空描く眼の中で。一点柔く瞬く彩りと、同じ花を覗き込む。
 映る視界は恥じらうかんばせ。ねぇ、それだって。
「こ、怖くなんてないったら! 武者震いよっ」
 ひらひら、ひらひら。私の花弁が風に乗り。
 言葉向こうの想いが僕に、伝わった。
「ふふ! ……冗談だよ」
 大丈夫、一緒に居るから心配ないさ。
 これから先は怖さを消し飛ばす光のショーが待っている。
 わくわくがとまらない。躍る胸中衝動の儘に、だいすきな龍をぎゅうと抱きしめた。
 受け入れ桜も包むように。夜のそらなか、一等目を引く彩りが生まれる。
 月光ヴェールを忍ばせた花魁と、宵闇すら攫えやしない白無垢が仲睦まじく在るのなら。
 一体誰が此の絢爛を引き裂けると云うのだろうか?
 しゃなり、しゃらり。
 聴こえてきたのは見事に整えた横兵庫に飾る簪揺れる音。
 秘色の髪をそっとかき分けて、小さな頭がひょこり顔を出す。
「あ、ヨル」
 呼ばれた雛がもふんと相棒にひっついた。
 式神さんでもペンギンでも、ちょっぴりこの自由落下は気をつけているようで。
「しっかり掴まってるんだよ?」
 うんうん頷く幼い子。その様を、紅引く眼差しが眺めて和らぐ。
「誘、ヨルを抱っこしてて頂戴」
 舞い散る桜の一角から、喚ばれた人型桜わらしが姿を見せる。
 快諾ひとつ、器用に身体動かして。人形とペンギンが互いに手を伸ばす。
「ヨルを抱っこしてくれるの? 誘、ありがとう!」
 小さな繋がりそっと寄せ、抱き込む姿は愛らしく。
「私はリルをしっかりつかまえておくわ!」
 こうやって、実践すると式神達も其れに習う。
 お揃い二つ、一塊に。そのまま穹へと身を躍らせる。
 飛び込む先で、光の花が大きく開花した。

「ああなんて綺麗! 万華鏡の中に飛び込んだみたいだわ!」
 弾け飛ぶ、光の花弁。私の櫻と一緒に広がる。
 不思議な心地、大樹も届かぬ遥か宙で春の花が瞬くなんて。
 降る振る輝き絶える事無く、夜が光の海へと様変わり。
「あはは! 綺麗だね!」
 何処へ行っても輝きが踊る。纏うように、舞うように。光花が咲き爛漫を魅せる。
 皆でひいらり落ちていく、仲良く星と光の花畑を遊泳するんだ。
 嗚呼、でも。
 僕達ならば、もっともっと世界を鮮やかにできる筈!
「さぁ、光の海を泳ごうか!」
 躍る心が座長の君へと变化する。上げた言葉で、開演を呼びかける。
 それはなんて素敵な提案だろう。瑠璃抱く桜霞の貌が華やいだ。
「うふふ! 光の中だってあえやかに、美しく――私という桜を、咲かせてみせるわ!」
 舞台は今こそ最高潮。其処へ我等が来た意味知るが良い。
 諸君幕が上がるぞ刮目せよ、刮目せよ!
「ぷくり、こぽり、弾ける泡沫――こぽり、ぷくり、歌う漣。零れる愛は水のよう」
「さくら、さくら 花ざかり。我が身はさくら、桜は私」
 響き描く黄金旋律、歌声は硝子の細やかさ。
 歌姫と謡う桜龍、二重唱に奇跡が泡花と成って舞い上がる。
 鮮烈な姿が美しい涙に、桜花色の鱗華と化す。
「見つけておくれ、捕らえておくれ。戀をとかした、空風を」
「誘う宵は――桜華絢爛」
 謳い上げれば光の花嵐を凌駕する、美しき水泡と花弁が夜空に放たれた。
 重なる旋律鮮明な色とりどりは咲き続ける光花を巻き込み渦を巻く。
 圧巻の奔流が龍の如く天を目指して飛んでいき。
 やがて人魚の魔法が解けるように、煌き弾けて夜空を一面彩った。

 ――ワアアアア!!!
 観客席から、天空に届きそうな歓声が響く。
 さあ皆で喝采を、一心不乱の大喝采を!
 満開の泡櫻がさらりはらり、光花と共に舞い落ちる。
 小さな式神達も光の海に手を伸ばし、星屑飛ばしてお手伝い。
(嗚呼なんて心地いい)
 称賛は櫻沫が海に融け往っても続いていた。

 水飛沫は数秒前。細やかな雨に花と虹色が沿うように降り注ぐ。
 海面揺れる、泡が転がる。
 広がる花筏は極上の模様を描いていた。
 閉幕した空のステージ。舞台裏は、二人だけの海中遊戯。
 魔法が終わりを告げて人の形へ舞い戻る。
(――リルっ)
 波に揺られて繊細な白の装いが鮮やかに広がる。
 桜の枝角生やした頭が周囲を見回し白い手を前へ、誰かへと伸ばす。
 求める人よ、請いする一夜。戀願う、あなたは何処。
 すぐに其の手を、愛しい水泡が包み込む。
「今度は僕の出番だね」
 春蕩け人魚が手を引けば、腕の中へ春咲く龍を抱き込んだ。
 空は私が、海は僕が。
 どこでも互いは支え合える。櫻戀贄は共に在る。
 私泳げないのよ! なんて視線で見つめたって可愛いものだから。
 しがみつく佳日の君を抱き連れて、光花照らす水面を目指して尾鰭を揺らす。
 その肩に、ぺっそりくっつくペンギンと寄り添う桜わらしもご一緒に。
 やがて顔出す花筏の境界線。消え行く光の花弁が、刹那二人の髪に飾りとなった。
「さっきと逆ね。ふふ、悪くないわ」
 水も滴る双人とふたり、仲良く皆で笑い合う。
「ちゃんと陸まで連れてったげる」
 帰路も彼らの頭上では、光の花が咲き続けていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蘭・七結
ベティさん/f05323

光のなかへと飛び込めるだなんて
嗚呼、とてもステキね
至近で眺む花火はうつくしいでしょうね

ふふ、実はね。これで二度目なの
一度目の空も心が踊るようだったけれど
今回はベティさんが一緒なのだもの
あの時よりもずうとたのしいわ
ええ、もちろん
指さきと指さきをきゅうと結いで
いきましょう、共に

落下してゆく感覚は慣れないけれど
気がつけば笑みばかりが溢れてゆく
眼前に咲き誇るのは淡い一輪
みて、ベティさん
あなたと出逢った御庭に咲くお花のよう
手を伸ばしても触れられないけれど
いっそう魅せられるよう

昇りゆく光を見送り海のなかへ
指さきを結いだまま浮上したなら
あなたと貌をあわせ
めいっぱい笑みを浮かべましょう


ベスティア・クローヴェル
※七結(f00421)と参加
いつも見上げて眺めるだけだった花火
それを間近で見られるなんて、きっととても綺麗だろうね

七結はスカイダイビングってやったことある?
私は垂直落下した時の浮遊感が少し苦手でね…
少し言い辛いのだれど、手を握っていてもいいかな?

最初こそ繋いだ手をぎゅっと握っていたけれど
次々と目の前で弾ける光に心奪われ、気が付けば落下の恐怖心は消え去った
こんな近くで咲いているのに手が届かないなんて、少し残念だね
なんて微笑みかける

そして湧き出すのはちょっとした対抗心
呼び出した炎槍を束ね、大きな1本の槍として夜空に向かって投げつける
空へと昇る一筋の光を眺めながら、満足そうに海へと落ちていく



●蒼の槍、くれなゐのこゝろ
 大地が、遠い。
 重力を四肢に感じ、銀髪が浮遊感の儘黒い海へ散らばっていく。
 頭上に輝く星達が在るも、周囲は全方位夜で塗り潰され少々心細い気持ちになる。
 唯落ち征くベスティア・クローヴェル(没した太陽・f05323)は身を固くして。
 ぎゅっと、心做しか縋るように。
 共に過ごす蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)の手を強く握った。
「ベティさん」
 呼びかける、淡い聲色。結ぶ言の葉懇ろに。
 見つめる常夜に在った紫の瞳は黒より鮮烈で、でも。
 見守る眼差しは、星の光より暖かかった。
 好意の先へ、安心を届ける為に。そっと、両手でかの手を包み込む。
 祈るように閉じた視界に、少しだけ過ぎ去った時の映像が浮かび上がる。

『いつも見上げて眺めるだけだった』
 転送前、人狼が夜空を見上げて呟いた。
 凛と立つ立派な耳が、潮風に吹かれ力無く髪と流れる。
『それを間近で見られるなんて、きっととても綺麗だろうね』
 呟くように、でも決して独り言にしたくはなくて。
 確かに楽しみではあった、だけど漠然とした不安が胸を燻っている。
 吐き出すだけでは、消えそうにないから。
『ええ、とてもステキね。光のなかへと飛び込めるだなんて』
 それは丁度隣に、自分と同じ向きで。言葉を返してくれる人がいた。
 落ち着いた音色は牡丹飾る灰髪のように柔らかく。
 例えるなら仄暗い想いに糸を掬んで、ゆっくり引き抜いてくれるような。
『至近で眺む花火はうつくしいでしょうね』
 好い事だけを、そっと差し入れていく。
 掬い上げられた気持ちは、漸くふたつ違いの少女へ向き直る。
『七結はスカイダイビングってやったことある?』
 その声色に昏い色は然程伺えない。
 殆ど同じ背丈で向き合う。七結はにこりと、微笑んだ。
『ふふ、実はね。これで二度目なの』
 一度目の空も心が踊るようだったけれど、けれども。
 今宵はほら、貴女が隣り。
『ベティさんが一緒なのだもの、あの時よりもずうとたのしいわ』
 たのしく愉しく、こころは踊れそう?
 そんな問いかけが聞こえた気がして、ベスティアの赤い眼が僅かに揺らぐ。
 空気がすこうしずつ、素直になって。
『私は……垂直落下した時の浮遊感が少し苦手でね』
 没した太陽が弱さを零してしまっても、まなくれなゐは甘やかに。
 次の言葉を穏やかに、緩やかに。待ち続ける。
『……少し言い辛いのだれど、手を握っていてもいいかな?』
 応えは優しく、花開く。
『ええ、もちろん』
 先に差し出された手は色白の、指に一筋傷跡刻み。
 戦い続ける狼の手を、絹扱うように取り包む。
『指さきと指さきをきゅうと結いで、いきましょう』
 共に。それが、星空の旅を願う合図だった。

 そして――夏の音が二人を現実に引き戻す。

「――!」
 繋ぐ手から伝わったのか、瞼を開けたは同時の事。
 星達だけのささやかな舞台照明に、鮮明な彩りが躍り出た。
 気持ち吹っ切れはしたけれども、何でもないように相手を勇気付けたけれども。
 やはり実践は卓上と違う。落下していく感覚はすぐに慣れるものではないのに。
 眼前の、光が。煌きの花が、些細な影を消し飛ばした。
 音が響く、花が開く。後から後から、色を違え形を変えて。
 大輪の花が開花したのなら、すぐ上から流星のシャワーが降り注いだ。
 滝のような光を割いて、更に飛び出して魅せるのは獣のかたち。
 耳が立ってて尻尾が有って。何となく、あの光に気持ちが和らいだ。
「こんな近くで咲いているのに手が届かないなんて、少し残念だね」
 気がつけば互いの顔にも緩く笑顔が咲いている。
 溢れる心の温度は、きっと今同じ位にあたたかい。
「みて、ベティさん」
 七結の視線を追いかけて、すぐに辿り着く距離に淡い一輪を認めた。
「あなたと出逢った御庭に咲くお花のよう」
 忘れはしない、二人繋いだ縁の花を。
 手を伸ばしても触れられないけれど、いっそう魅せられるのは。
 今でも明確に思い出す、ふたりだけの記憶があるから。
 音が響く、花が開く。
 後から後から咲き誇る光が周囲を飾っても。
 落ち行く二人は一輪の花が消える迄眺め続けた。

 すっかり取り戻した胸の内から、ちょっとした対抗心が湧き出してくる。
「七結」
 名だけの意味を、呼ばれた少女は直ぐに理解して。
 見届ける視線を高く空へ。未だ咲き続ける花畑を上に観る。
 これからあの天上へ、彼女の色が入るのだからと見逃さぬように。
 返事の代わりと繋いだ手に僅かな力を込めた。
 同じく夜空を仰いだ人狼が、空く手左のそれを真っ直ぐ上に伸ばしていく。
 ひび入り割れたブレイズキャリバーの腕から吹き出す地獄は蒼い炎。
 呼び出し招く数多の炎槍が主の意思に従って、群れ成し束と化して燃え上がる。
 やがて存在を示した巨大な一本槍が、彼方へ向けて投げつけられた。
 空へと昇る一筋の光。光花の輪を潜り抜け、星型貫き星屑纏わせて一層耀く。
 ――お父さん、あおい流れ星が上に飛んでいったよ!
 ――うん、素敵な光だったね。
 島で見ていた子供が指差す。その顔は、とても幸せそうだった。

 満足げな人狼と、見送ったダンピールは仲良く飛沫を上げて海の中へ。
 着水の衝撃にだって結んだ指先解ける事は無く。
 海の流れに艶やかな髪を遊ばせて、水中の牡丹一華が空く手人指を先へと向ける。
 狼さん、こちら。手は鳴らないなら連れて征くから。
 そうして共に水面を目指す。辿り着いた酸素の世界に顔だけ出して、見合わせて。
 最後の緊張がゆうるり解けた瞬間、二人の笑顔がふうわり輝く。
 めいっぱいの笑み浮かべた彼女達の頭上で、淡い花弁がきらりひらりと舞い落ちた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夏目・晴夜
リュカさんf02586と

すごい、なんと煌びやかな…!
しかもこの花火、触っても熱くないですよ
いや本当は熱いです。すみません嘘です、マジで熱くないです
うわっ見て下さい!この花火、犬の形です
知的で凛々しい顔つきがハレルヤにそっくりですよね

あれ、あの花火はリュカさんに似てません?(カモノハシのを指差し
超似てますよ。静かであどけなくもコミカルな感じが
これは間違いなく肉!帰りに本物を奢って下さってもいいんですよ

折角の機会です
最後にユーベルコードを披露して民の称賛を得たいとは思いませんか
ほらリュカさん、派手なのを一発かまして下さい!
私は派手な技は生憎持ってなくてですねえ…
そうだ、これならいいかも知れな(着水


リュカ・エンキアンサス
晴夜お兄さんf00145と

(無表情に落下しながら
ほんとに熱くない?大丈夫?
…って、お兄さん勇気があるな…
えーっと、ああうん、面白いね
お兄さんの顔に似てる気がする
(えい、と自分もつつこうとしてその前に消える
…さすがお兄さんは一筋縄ではいかないな

え、似てるってどれ
…カモノハシって。…似てるかなあ…(悩
とか悩みながらも、花火を満喫することにするよ
触れるのは不思議だから、熱くないとわかれば遠慮なく手を伸ばす
ほらお兄さん、お兄さんの好きなお肉だよー

え。俺はそういう派手なのには向かないし
褒められたいなら、お兄さんが…、あ(落ちた
えーっと、銃をぶっ放すぐらいなら、できます
見た目は兎も角多分音は、派手だと思う



●表情筋の活動予定はありますか?
「すごい、なんと煌びやかな……!」
 降下を開始し数秒後、既に視界は最高潮。
 一気にテンション上がる夏目・晴夜(不夜狼・f00145)の感動台詞も絶好調だ。
 但し重要なのは、その顔表情が通常運転で動いていない。
 然し強烈な矛盾等この絶景の前では些末なこと。
 そう、相方リュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)だって無表情で落ちている。

 あっちこっちで音がして、光花乱舞が咲き誇る。
 結構近くで光が生まれ、むしろ今直撃したんじゃない?
「リュカさん今私は結構貴重な体験しませんでした?」
「……まあ、そうじゃない?」
 それ以前に確認しなければならない事柄が多い気がしたが、総てスルーされた。
 疑問に疑問を返して会話が強行される。
 光景もノンストップなら落下も待ってくれはしない。
 止まっているのは二人の顔色一点のみ。
「しかもこの花火、触っても熱くないですよ」
 身に受けたばかりの新鮮な光を手で払う。
 指先で叩く度粉雪のように舞う煌きを、近くまで寄ったリュカが覗き込む。
「ほんとに熱くない? ……って、大丈夫?」
 戦場(?)で状況確認は大事。傭兵ならば、基本の動きだ。
 問われた晴夜が指先残る輝きを紫の瞳に映す事、数秒。
「いや本当は熱いです」
 熱を訴えてる割に、致命的な程上げた顔は説得力が無かった。
「お兄さん勇気があるな……」
 まさかの信じた。
「すみません嘘です、マジで熱くないです」
 あまりの直球勝負ストレート勝ちに思わず自分がコールド負けを宣言する。
 くどいようだが、ここ迄のやりとり全て無表情だ。

 星夜の花壇に、光の花が咲き続ける。
 鮮やかな光景は徐々に姿を変えて、やがて花畑以外の芸術も魅せ初めた。
「うわっ見て下さい!」
 落下の衝撃を物ともしない帽子から飛び出る白い耳が、潮風に抵抗して直立する。
 それは眼下の破裂音で現れた、同じような耳を持つ光と目が合ったから。
「この花火、犬の形です」
 大きな大きな、獣の輝き。夜のキャンバスに立派な尻尾も描かれた。
 まるで誇らしげな姿をしていると、双眼いっぱいにあの煌めく姿を閉じ込める。
 表情は無くても、青年の貌は好奇心に彩られた。
「えーっと、ああうん、面白いね」
 興奮しているのか斬新な空中犬かき、否人狼かきを披露する彼を青い眼が追う。
 白い光の大型犬に近寄る姿は何となく親に駆け寄る姿を想像する、が。
「知的で凛々しい顔つきがハレルヤにそっくりですよね」
 どうでしょうと振り向いた顔に同じテンションの顔が思わず一人と一つの作品を見つめ直した。
 成程そうきたか。
「お兄さんの顔に……似てる気がする」
 最終的に近付き過ぎて、犬の光に頭上から飛び込んで拡散させてるやや年上を見届けた。
 ちょっと残ったそっくりさん(本人談)の一部が近くに飛んできたのでリュカがそっと手を伸ばす。
 表情無くても、彼の心にだって好奇心の光は灯っている。
 えいと。少年の指が触れようとして、僅差で晴夜の光は星夜に消えていった。
「……さすがお兄さんは一筋縄ではいかないな」
 それは姿を隠した輝きにか、掴み処がないようなそんな意味でか。
 何にせよ雰囲気はとっても満足気に落ちていく彼にまぁ良いかと思い直す。
 気付くと辺りは庭園ではなく動物園になっていた。
「あれ、あの花火はリュカさんに似てません?」
 様々な動物が顔を出す中、不夜狼が白い指先で先を指す。
「え、似てるってどれ」
 スリングが肩からずれそうになったのを直していたので反応が遅れた。
 が、早かろうが蒼炎の少年は隣人の言う『あれ』を見つけ出すのに時間をかけただろう。
 示していたのは、何だかとってもクチバシが長い。
「……カモノハシって」
 そしてデカイ。周囲の光花動物園が豪快過ぎて紛れていたがあの存在も割と大きい。
 重力に引かれ距離を縮める程、そのスケールに驚かされる。
 気持ち無表情で、四肢を星が照らす夜いっぱいに投げ出して。されるがままに漂うその姿。
「似てるかなあ……」
「超似てますよ。静かであどけなくもコミカルな感じが」
 不動(顔)の説得へ納得しかけているうちに、少年達は巨大カモノハシにも身を落とす。
 衝撃と風圧であどけなくもコミカルな形はぽんと弾け、二人の至近距離で十数秒の星が瞬いた。
 今度こそと、戦い慣れた指が伸ばした先の光に触れる。
 熱くないと解れば遠慮もいらない。不思議な煌きは、リュカの手を飾りゆっくりと消えていく。
 その後も光は沢山咲いて、彼らを笑顔にさせようと変化球も投げてきた。
「ほらお兄さん、お兄さんの好きなお肉だよー」
「これは間違いなく肉! 帰りに本物を奢って下さってもいいんですよ」
 飼育員さんごはんの時間です。

 散々満喫して、あっという間に空より海が近くなる。
 終に表情変化は無かったけれど、心は沢山跳ね回ったから。
「折角の機会です、最後にユーベルコードを披露して民の称賛を得たいとは思いませんか」
 ついでにと提案したのは着水数十秒前の事である。
「ほらリュカさん、派手なのを一発かまして下さい!」
「え。俺はそういう派手なのには向かないし」
 潮の匂いが濃くなるも、二人は一切焦らず会話を続けていく。
「褒められたいなら、お兄さんが……」
 ふと人の言葉が途切れたが、それより人狼の思慮が勝る。
「私は派手な技は生憎持ってなくてですねえ……そうだ、これならいいかも知れな」
「あ」
 見事な水柱により、打ち合わせは強制終了された。

 その後、観客席の人々がこんな話をしていたという。
 ――大きな銃声が聴こえたと思ったら、一筋の輝く光が天へ昇っていったんだ。
 ――ああ聞いたぜ。しかも直後に海へ還るような落雷もあったんだろう?

「うん、ぶっ放すはできたね」
「この私に近寄る不届きな蛸が居たんですよ。来るなと言ってやりましたね!」
 島民の感動得られた事を、二人は知る由もない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【梓(f25851)と】
上空に転送するだなんて
なかなかワイルドな提案だねぇ

落下に身を任せながら空を眺める
転送直後は目の前に光花があって
大きすぎて「これ何かな?」と思っていたものが
落ちていくにつれて少しずつ
全貌が明らかになっていくのが楽しい
これはまさに特等席だね

あー素敵だった、と海へダイブする気でいたら
梓と共に焔の背にダイブ

じゃあ俺も
UC発動し、火と雷の属性のナイフを生成
それらを一斉に空へと放つ
1本だけでは心許ないけど
400本を超えれば立派な光になるよね
ナイフを念動力で動かしながら空を彩る
サイリウムのように高速でクルクルと
動かしながら模様っぽく描いてみたり
まるでここは巨大なキャンバスみたいだね


乱獅子・梓
【綾(f02235)と】
グリモア猟兵だからこそ出来る芸当だよな
少し羨ましい、などと雑談しつつ光花鑑賞

花火と違って色だけでなく形も様々なのが面白い
お、あのドラゴンの形のはクオリティ高いな
光花コンテストなんてのもありかもしれない

このまま海へ真っ逆さまも悪くないが…焔!
ドラゴンの焔を成竜へと変身させ
俺達の下に先回りさせる
綾の手を掴み、一緒に焔の背へ着地

ここからは焔で空を飛びつつ
島民のお願いを聞いてやるとするか
焔!お前の思うままに花火を描け!
UC発動、派手にブレスを吐きながら
高速で自由に空を舞い踊らせる
焔の動きに合わせてブレスは光の帯となる
そこから火の粉が落ちていく様は
まるでナイアガラ花火のようだろう



●Dragon drive&Draw the night
 今宵の月は赤くない。
 満天の星を従える大きな輝きに、自分達の世界ではない事を理解する。
「上空に転送するだなんて、なかなかワイルドな提案だねぇ」
 灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)が落下のはずみでずれた赤いサングラスをかけなおす。
 視界に少しだけ故郷の彩を添えながら、穏やかな声色で隣に言葉を投げかけた。
「グリモア猟兵だからこそ出来る芸当だよな、少し羨ましい」
 返す返事の持ち主も、視界を夜更けに沈ませて。
 乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)が息吐きついでに思考も吐露した。
 二人共遥か上空からの自由落下中でも落ち着き払い、器用に見物体制まで取っている。
 束の間の静かな月夜鑑賞もスタイリッシュに。ふと、寛ぐ白髪の男の肩に赤い鉤爪が優しく当たった。
 視線を合わさなくても誰か解る。黒手袋の指先で、相棒を同じ力で撫で返す。
「焔も一緒だね」
 代わりに横目で黒髪の男がやりとりを眺めた。
 欠ける事無く、揃って望める夜の光宴。やがて世界は一変する。
 最初の衝撃が二人の薄いレンズ越しに輝いた。

 先ずは満月。そう解釈できそうな大きな円に花が開く。
 真っ白い光は今頭上を一等強く照らすものと同じ色を着飾って。
 目の前で鮮やかに、まるで二人を歓迎するかのように煌めいた。
 これで終わりな筈も無く、周囲360度次々に巨大な光が生まれていく。
 気付けば丁度彼らを中心に、光花が連なり夜を飾っている。
「梓、これ何かな?」
 色とりどりの輝き達は唯の丸い形のようなそうでないような。
 近過ぎて全貌が解らず初めは不思議に思うも、徐々に降下し距離を取れば風景が変わる。
 高度が下がり見上げる姿勢と成って、最初に認識できた見事な三日月を皮切りに。
 月の満ち欠け一周分、夜空に描かれ魅せていた。
「花火と違って色だけでなく形も様々なのが面白いな」
 結果が解ってやあ楽しいと、感情を素直に笑顔で表現しているダンピールに微笑ましくなる。
「これはまさに特等席だね」
 緩やかに笑い合い、来て良かったと思っているとぽんぽん小さい手が梓の肩を叩く。
 視線を変える先は何だか目を輝かせて一点を示すミニドラゴンがいて。
 今度は示された方向に顔を向け、口を開いた。
「お、あのドラゴンの形のはクオリティ高いな」
 早速綾にも声をかけ、月夜に浮かぶ見事な竜を鑑賞する。
 赤い輝きは、誰かさんに少し似ている気がした。
「光花コンテストなんてのもありかもしれない」
 むしろ次から次へとクオリティの高いアートが花咲き己を主張している。
 今正にコンテストをしているのかもしれない、が。
 審査員ではないので彼等は暫し、変幻自在の光を仲良く眺めていた。

 潮の香りが鼻につく頃、光花も一旦落ち着いたようだった。
「あー素敵だった」
 存分に堪能出来て、満足気な黒い揚羽は身体を仰向けに変え夜空に寝転ぶ。
 後はもう海に落ちるのみ……と思いきや。
 白き焔の隣人は少々思案していた。
「このまま海へ真っ逆さまも悪くないが……焔!」
 今宵素敵なこの時を、まだまだ終わらせたくなくて。
 叫ぶ名に全てを理解した相棒は、応えるように夜空へ咆えると翼を広げた。
 飛び上がるシルエットが可愛らしい姿から勇ましい成竜へと変化する。
 炎のドラゴンは上空を勢いよく旋回した後、二人の所へと急降下。
「綾」
 後はマリンダイブする気満々だった色白の手を取り確り足元に用意された背へ降りるだけ。
 一部始終を嬉しそうに見ていた綾は、喜んで梓の手を握り返し一緒に着地した。
 二人分の重みを感じた赤き竜がまた一つ鳴いて星夜飛行を開始する。
 自由落下とはまた違う景色が目を楽しませる、けれども。
 折角花咲く舞台に観客も大勢居るのなら。やろうと感じた想いはすぐに口を開かせた。
「島民のお願いを聞いてやるとするか」
「いいね、じゃあ俺も」
 高速でエンジン全開のドライブを決め込むような、高揚感が湧き上がる。
 下で油断している観客達を、俺達で驚かせてやろう。
「焔! お前の思うままに花火を描け!」
 初めは竜騎士が奇跡を使い、力を与えられたドラゴンの眼が鋭く光る。
 巻き起こる赤の奔流、やがて火の渦と化して竜に宿り世界を照らした。
 さあ全てを紅く染め上げろと大きな翼を持つ者が自由に空を飛び回る。
 高速移動に炎を吐き散らして黒い空に焔の線を描き出した。
「まるでここは巨大なキャンバスみたいだね」
 落ちないように、離れないように。手を繋いだまま糸目の男が笑っている。
 空いている手ではいつの間にか魔法のナイフを作成していた。
 一本ではない。火を灯らせ雷を走らせるマスカレード・ブレードは絶え間なく彼の手から創られ続ける。
「400本を超えれば立派な光になるよね」
 ひとつの光が心許ないなら、数多の輝きを発すれば良い。
 縦横無尽に夜を泳ぐ炎竜の背から、オーラを纏ったナイフが一斉に放たれた。
 唯星空を突き抜けるだけではない。一本一本が意思を持ちバラバラに動く。
 サイリウムのように光る短剣がクルクル素早く動くだけで、光花に負けない発光物となった。
 魔法のように、否。
 悪戯に指先動かしてキャンバスに思う儘の絵を描き続けるその姿は。
「魔法使いの真似事みたいなものだよ」
 紅い蝶が、夜空で大きく羽ばたいた。

 赤い竜が火を吐いて、寄り添うように無数の輝きが空を彩る。
 彼等が描いた跡は舞い落ちていく火の粉で巨大な滝を生み出していた。
 キラキラ止まらぬ、絶佳の光景。
 見惚れる観客達がため息をつく程美しかった。
 ――あのね。一瞬だけ、お月さまが紅く観えたの。
 誰かがそう告げ、皆が遥か先の空を見上げる。
 照らす月は、変わらず白く輝いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ハルア・ガーラント
相馬(f23529)と
水着で参加

空から花火を見るなんて、素敵です!

転送後反射的に翼で羽ばたきますが、モモちゃんが大きくなったらその背にお邪魔します
モモちゃん、よろしくね

相馬の後ろに乗り、肩や腰に掴まり花火を空中から楽しみますね
あのわっか花火の中通ってみましょう!
大きな花火、触ってみたい!
呆れた溜息にハッとして黙りますが、高揚して常に翼が半開き

急降下に悲鳴をあげ咄嗟に相馬の背中にしがみつきます
自分の翼で飛ぶのと感じが違うんだもの!
笑う相馬の横顔に見惚れながら反論を

地上に近くなったら散り際の花火に合わせるようにUC発動
地上で見る皆さんに光の羽根を降らせます

相馬、モモちゃん。来年も一緒に花火見ようね


鬼桐・相馬
ハルア(f23517)と
水着で参加

空中から花火を見るのか、珍しいな

転送後、肩にはりつくヘキサドラゴンのモモを成竜に戻す
モモ、この花火は熱くないから大丈夫だ
ハルアを回収した後は上空からの花火を楽しむよ

暗闇に浮かび消えゆく鮮烈な光に、両親・施設の皆の事を考える
あの日、初めから存在していなかったかのように忽然と姿を消した施設の皆
手がかりを捜すが何も掴めていない
思考に嵌りそうな中、背後が煩い
わざと大袈裟に溜息をつくが本当は救われた

モモが興奮して突然の急降下、怯えてしがみついてくるハルア
お前飛べるのになんで怖いんだ
必死に言い訳する彼女につい笑ってしまう

ハルアの言葉に頷き、返事で鳴くモモの身体を軽く叩こう



●ナイチンゲールに包まれて
 鬼桐・相馬(一角鬼・f23529)が転送直後に見たものは、黒ではなく白い光景だった。
「空から花火を見るなんて、素敵です!」
 すぐ原因に気付く。広がっていたのは、一番見知った鳥の翼。
 大きな羽根の束がひらめく度に星夜がチラチラ入り込んで来るものの。
 やがて振り向いたハルア・ガーラント(歌う宵啼鳥・f23517)に視線が占領される。
 白羽の合間から、寒色グラデーションのリボンが流れて。
 太陽に向く花柄が、星空の下でも眩しかった。
「……空中から花火を見るのか、珍しいな」
 何でもないように、向き合ったまま独言る。
 不思議そうな顔は始まりを告げる夏の音に奪われて、赤角の男もそれに倣った。
 間も無く光色の花が二人を優しく照らし出す。

 それはまるで天空に出現した光の道だった。
 次々打ち上がる平べったい光花が連なり、何処までも続く帯と成って夜空を飾る。
 かと思えば大小様々な光の輪が連続して並び発光トンネルが創られた。
 飛び出すには最高のシチュエーションが完成しつつあるけれども、問題が一つ。
 今現在自由落下の羅刹と飛行するオラトリオではあまりに速度が違い過ぎた。
 急激に広がる互いの距離に気付いた彼女が慌てて彼の後を追いかける。
 忙しく動く翼、舞い散る白を視界に入れて一角鬼はひっそりと息をつく。
 変わらぬ表情が徐に首を動かして、肩に張り付く一匹へと視線を移した。
 バディの名を呼べば、小さな存在が大きく空へと動き出す。
 果たして主よりも巨大になったのは、黒い鱗に覆われた雄々しいドラゴンだった。
「モモ、この花火は熱くないから大丈夫だ」
 信頼する相棒の言葉に違いはないと、竜は光咲く空間へ思いっきり翼を広げてみせた。
 首を伸ばし天へ存在を示す咆哮ひとつ、喉の六芒星が光花に照らされて。
 姿勢を直したモモの、見事な曲線を描く背に降り立って振り向く頭を撫でてやる。
 足場を得た相馬は顔を上げ、上空で羽ばたく姿にアイコンタクトを送った。
「モモちゃん」
 OKサインを受け取って、宵啼鳥もそっと足をおろして羽を休める。
 よろしくねと今度は硬い鱗をたおやかな手が撫でていった。
 最後にハルアも顔を上げ、視線を向けるは鍛え抜かれた男の背中。
 地獄の炎すら彼の筋肉を惹き立たせるようで。ほんの少しだけ、見つめてから。
 何事も無く後ろに座って確り引き締まる腰に掴まった。
 準備は万端。後は、光花と空中散歩を楽しむのみ。

 消えては新しい光が生まれ瞬く楽園へ、ヘキサドラゴンが飛び込んだ。
 脚が光花の道に触れるだけで花弁が散るように光の飛沫が跳ねていく。
 そのまま突き進めば、輝く波を掻き分けてまるで光の海を泳いでいくようだった。
「凄い、凄いです!」
 たちまち自分達の周りが舞い散る光に囲まれる。
 鮮やかな発光色を反射させる新緑の瞳は喜びに満ち溢れていた。
 一方、同じ煌きを瞳に映している筈の金目はこの絶景に微動だにせず。
 暗闇に浮かぶ鮮烈な光景に、旧い記憶を重ねたのか。
 独り思考の海へと堕ちていく。
 思い出が、降り注ぐ光の粒を極寒の地で吹き荒れた雪へと変えていき。
 時折感じる浮遊感が不安定な心の昏い部分を呼び覚ます。
「あのわっか花火の中通ってみましょう!」
 あの日、初めから存在していなかったかのように忽然と姿を消した施設の皆。
 おしどり夫婦だった両親は、確かに自分を愛し大切に育ててくれた筈なのに。
(手がかりを捜すが、何も掴めていない)
 何故自分だけが残ったのか。どうして、こんな力が己に在るのか。
 全てを理解するには何もかもが足りなくて――。
「大きな花火、触ってみたい!」
 背後から燥ぐ声に、現実へと引き戻された。
 雪から光に、光景が戻っている。意識は確かに、此処に在る。
 後ろで己にしがみつく、暖かな隣人と共に。
 ついた溜息は、わざとらしい程大袈裟だった。
「あ……!」
 我に返る様子が、振り向かなくてもよく分かる。
 黙っても未だ高揚しているのか大きな翼が半開きで動くのも気配で解る。
 ころころ表情が変わったり、すぐにビビる程の怖がりで。
 そんな彼女に、救われた。

 気を取り直して伝えぬ礼の代わりと、相棒に指示出し願いを叶える。
 合点承知と言わんばかりに勢い増したドラゴンが超高速で光の輪へ突っ込んでいく。
 虹色のリングを通過するのはさぞかし素敵だろうと思われるが、早い。速すぎる。
 更に興奮したモモが、眼下にも光花の円を見つけて直下急カーブを決め込んだ。
「ひ、ひぃやぁあっ~~!」
 急降下する身体に怯えた天使の悲鳴だけが上空に取り残されていく。
 ハルアの全力は今、相馬の背中にしがみつく事だけに集中していた。
「お前飛べるのになんで怖いんだ」
 聞こえる程度の音量で正論をぶつける獄卒に、かろうじて月下美人咲く頭を上げたオラトリオ。
「自分の翼で飛ぶのと感じが違うんだもの!」
 どこまでも必死に主張する女を見て、とうとう男の無表情は崩壊する。
 そう見ない彼の笑う横顔は、彼女の恐怖心を一時的に消し飛ばし胸の奥を高鳴らせ。
 最終的に二人のやりとりは竜が落ち着くまで続いていた。

 言い争いの結果は、光が指し示す。
 ――あれは、羽根?
 ――夢を観ているのかしら。きれいね……!
 光花の道が散り行き、淡い粉雪の煌きになって落ちる頃。
 合わせるように天上から耀く祝福が、降り注いだ。

 喜ぶ観客達から少し離れた空の上で、黒いドラゴンが旋回する。
「相馬、モモちゃん。来年も一緒に花火見ようね」
 ようやく落ち着いたのか、風に流されていく花の残光を指先で遊ばせて天使が微笑む。
 潮風に靡く薄い灰桜色の髪を抑えながら一人と一匹へ視線を向けると。
 頷く鬼が、合わせて鳴く相棒の身を軽く叩いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マリアドール・シュシュ
永一◆f01542
アドリブ◎
ゆび絵師の水着

転送後すぐスカイダイビングへ
絶景に笑顔
緩やかな風に身を委ね

マリア、近くで星空を見てみたかったのよ!
凄いわ…!想像以上なの
空を飛んでるのよ!
永一も楽しい?

一回転したり散歩して遊ぶ
すると突風が
思わず永一にしがみつく

ひゃっ…
ありがとう永一
助かったのだわ

最後に露店でイカ焼きを買って空眺め
ショール靡かせ興奮気味に手招き

ふふっ今年もお揃いね、イカ焼き美味しいわ
あーんはしちゃダメ?したら食べてくれるかしら
まぁ!もう…ずるいわ
先に盗られちゃったのよ(くす

ここからでも光の花火が見えるのだわ
あれはうさぎさんかしら

綺羅星に手を伸ばす

願い事…
来年もまた永一と海が見れますように


霑国・永一
マリア(f03102)
アドリブ◎

マリアにせがまれて星空ダイビングを快諾した俺。そんな俺は今……
――突然の自由落下。
分かってても転送直後いきなりは猟兵じゃなきゃパニックになるよねぇ。
っと、空から女の子が…いやまぁ茶番はいいか。マリアは楽しんでいるようで何よりだねぇ。俺?無論楽しんでいるさぁ。オブリビオン関係なしだから気楽だしねぇ…おっと、大丈夫かなマリア(抱き止めてバランス取る。相変わらず華奢な少女だ)

終わったら露店巡り。去年も一緒にイカ焼き食べたなぁ。
…やれやれ(あーんされる前にマリアのイカ焼き少し齧る)
悪いねぇ、俺は泥棒。確かに盗ませて貰ったよ(ニヤ

全く、俺には花火も今日という日も眩しすぎる



●輝花の雨、夜空の華。眩しいのは、
『マリア、近くで星空を見てみたかったのよ!』
 いつも以上に可憐な鈴音の声だった。
 マリアドール・シュシュ(蜜華の晶・f03102)の無邪気な願いを快諾したのは転送前のこと。
 そして彼、霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)は現在――自由落下の最中だ。
 星空ダイビングなのだから直後からこうなる事は理解していても、浮遊感と重力に挟まれた身体で天を仰ぐ。
(いきなりは猟兵じゃなきゃパニックになるよねぇ)
 レンズ越しの世界いっぱいに、満天の星が映っている。
 いやぁ、今夜もいい天気だ。けれど盗めるものは在るだろうか。
 何の驚異もない空間で緩やかな風が身を撫でる。
 ふと穏やかな視界に、月星より輝く笑顔が飛び込んできた。
「凄いわ……! 想像以上なの」
 星が照らす空の海に、茉莉花の花弁を散らした少女が泳いでいる。
 纏う装いは澄み渡るマリンブルーに波紋広がるような天弓の彩りを飾らせて。
 夜に劣らぬ星と、宝石の煌き編み込んだ髪を夜風と一緒に遊ばせながら笑うシンフォニア。
「空から女の子が……いやまぁ茶番はいいか」
 呟く声が届いたのか、真夜中に解けそうな男へ見て観てと言わんばかりに両手を翼と広げている。
 ゆるいウェーブがかった銀糸が軽やかに散らばって、彼の視線を奪っていった。
「空を飛んでるのよ!」
 跳ねる声で彼女の天真爛漫さがよく分かる。あの様子はもう、存分に。
「マリアは楽しんでいるようで何よりだねぇ」
 無意識にずれた眼鏡を器用な指先ひとつで直し、うっすら笑いかける。
 夜空からダイブしたいとせがまれた側ではあるのだが。成程これはこれで。
「永一も楽しい?」
「俺? 無論楽しんでいるさぁ」
 小首傾げ問いかける金のいろ。同じ彩りの眼で、問題ないと気持ちを告げる。
 常は狂いかけの思考かもしれないが、今見上げて述べた想いに違いはない。
「オブリビオン関係なしだから気楽だしねぇ……」
 内なるもう一人の自分が何か騒いでいるようだが、それは聞こえない事にした。

 言いたい事が伝わったのか、満足気にマリアドールは星夜の空中遊泳を再開する。
 すると丁度良く、光花が弾ける音が近くで聞こえた。
 振り向く迄もない。それは何処からでも観られる位大きな白い五弁花の輝きだったのだから。
「綺麗なのよ!」
 喜色に染まる鮮やかなハニーゴールドの瞳に、純白が映り込む。
 早速と可能な限り近くへ寄り、光の中で一回転をしてみたり思いっきり燥いでみる。
 そんなクリスタリアン越しに、永一も花の輝きに目線を合わせて。
 瞬間、再度響く破裂音。僅かな眩しさに狭めた視界の端っこで、白の中心に赤色が重なった気がした。
「……マリアみたいな花火だねぇ」
 今度の呟きは聞こえなかったようで、何か言ったのと舞い散る白い光の欠片を身に纏った彼女が振り返る。
 同時に、予期せぬ強い突風が少女の自由を奪っていった。
「ひゃっ……」
 共に攫われた光花が乱れ飛び花嵐と化して周囲を埋め尽くす。
 華水晶がひととき、耀く花弁達に隠されてしまった。でも。
「おっと、」
 日々目的のモノを正確に狙うシーフが見逃す事など無い。
 無駄のない距離を泳ぎ、確定した位置で光の渦を見上げる。
 間も無く花の輝きは消え、盗みの名手が落ち行く蜜華の晶を抱き留めた。
「大丈夫かなマリア」
 多少なりとも驚いているのだろう、しがみつく身体を落ち着かせがてらバランスをとる。
 相変わらず華奢だなと過ぎった思考は、音にならなかった。
「ありがとう永一、助かったのだわ」
 感謝を伝える顔は、やっぱり笑っていて。
 まだまだ花咲く光の中、地に降り立つ迄二人の楽しみは続いていった。

 潮風に、浜焼きの匂いが紛れ込む。
 未だ終わらない光花祭の見物会場ではおいしそうな露店が軒を並べていて。
 その一角、香ばしい串を手にダイビングを終えた彼等が居た。
「イカ焼き美味しいわ、味がよぉく染み込んでるのよ」
 湯気立つ大ぶりの烏賊へ、小さな唇でかぷりと遠慮無く噛み付いて。
 歯に柔らかで噛み応え抜群の弾力を感じ、やがて口いっぱい磯と醤油ダレの味が広がった。
 蒼く透けるショールを甘やかに靡かせながらも、食べっぷりは元気いっぱい。
「去年も一緒にイカ焼き食べたなぁ」
 興奮気味に手招きするので仕方ないなぁと近くに寄った長身の男が、感じた既視感をまるごと口に出す。
 今年も舞台は違えども、また一つ夏の思い出を二人で作れた。
「買ったのかな? それ」
「当たり前なのよ!」
 盗まずにお金で買ったの、偉いのよ! なんてぷんすこ怒ったかと思いきや。
「……あーんはしちゃダメ?」
 ほぼ30センチの身長差を見上げて問いかけられる顔は、純粋だった。
 何だかとても、力が抜ける。
「やれやれ……」
 口に持っていったら食べてくれるかしらと悩む隙を狙い、盗人が烏賊に齧り付く。
 食欲そそる焼き目から漂う、香ばしさごと掠め盗って。
 噛み締める度に焼きイカの豊かな味わいが舌を楽しませた。
「悪いねぇ、俺は泥棒。確かに盗ませて貰ったよ」
 口端を指で拭い、永一が愉快そうに笑ってみせる。
「まぁ! もう……ずるいわ。先に盗られちゃったのよ」
 言葉とは裏腹に、マリアドールも楽しそうに笑っていた。

 これからもっと盛り上がる祭りの空を、二人一緒に並び観る。
「ここからでも光の花火が見えるのだわ」
 あれはうさぎさんかしら。きらきら光る、高く遠い空の果て。
 不意に見つけた綺羅星へ、そっと白い手を伸ばしてみる。
 指先が視界の先で重なろうとした瞬間、星は流れ消えていった。
「願い事……」
 流星が落ちてくる、他の光花の残光も引き連れて。
 指折り目を閉じ祈り捧げる姿を、見下ろしたのは間近の金色。
(来年もまた永一と海が見れますように)
(全く、俺には花火も今日という日も眩しすぎる)
 淡く光る雨が、二人に降り注いだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

松本・るり遥
【冬星】
いや、俺下で待ってる、怖え
興味はある、あるけど無理だって、ーーと拒否できたのなど最初の十分程度

上空で手を繋ぐ、頼れるものがこれしかない不安定にぞわっぞわ
目を固く閉じて手を繋ぐ。目ぇあけてったって!口では軽く言うけどなあ!落ちてんだぞそんな周りを楽しむ余裕ーー

舌を噛みそうな弱音の最中
目を閉じてたって白く爆ぜた
光に飲まれて目を開く
あ、すげ
未夜、ジンガ、いる?いる。
浮遊感と光、星空、笑い声と繋いだ手だけ。
ばちばち、きらきら
あ はは 最高
走馬灯の内容決まったんじゃねこれ

思わず笑って
柄にも無く握り返した
普段は手繋ぐのも苦手なんだけどさ
ああーーーたぁ のし かった
もっかい、くらい、やっても、いい!


ジンガ・ジンガ
【冬星】

まァ、俺様ちゃんも正直なトコロ、めちゃくちゃ怖ェんだけどさ
……でも、まァ
3人なら、たぶん、だいじょぶじゃない?
根拠のないソレに、自分で笑う

夏の大三角ってどれだろ
それっぽいやつを探して視線が彷徨う
冬ならば――愛しのシリウスとプロキオンなら、繋いだ手の先に居るんだけど

あ、
るり遥、目ェ開けて
きれい
いるよ
未夜もじんがも、ここにいる

ひ、ひひ、
そういう未夜も、きらきらじゃん?
2人につられて笑い

目も眩むような光に包まれて
きっと今、ほんとに星になってる
誰ひとり欠けても成立しない大三角

ぎゅう、と胸が締め付けられるような感覚
この日々があまりにも愛おしくて
海に着いても離れぬようにと
そっと繋いだ手の力を強めた


三岐・未夜
【冬星】

星空ダイビングだって!面白そうー
……え、るり遥行かないの?
るり遥も行こー!ね?
折角3人で遊べるんだから、とるり遥の袖を引いてお強請り
うん、折れてくれるって知ってた

スカイダイビング的なの初めてだなぁ
濡れても良い格好になったら、行こ!とジンガとるり遥の手を取って、2人も手を繋いだのを見れば満足
スキンシップ大好きだから、こういう触れ合いはちょっと貴重で嬉しい

わぷっ!?び、びっくりした!
光が弾けた中に突っ込んで、まるで光の中を落ちて行くみたい
ふ、あははっ!ジンガもるり遥もきらっきらじゃん!
何だか笑いが止まらなくて、馬鹿みたいにはしゃいで笑う
暗い海に向けて落ちても、繋いだ手と弾ける光が安心材料



●ノーシーズン・アステリズム
 松本・るり遥(乾青・f00727)の脳裏には、少し前の出来事が走馬灯のように蘇っていた。
『いや、俺下で待ってる、怖え』
 親しい友達と見つけた夏のイベントは、内容が内容だったから。
 最初確かに自分は拒否した。それはもう、全力で。
『星空ダイビングだって! 面白そうー』
 無邪気に燥ぐ三岐・未夜(迷い仔・f00134)の声に若干重なった気がするが、伝えられた筈だ。
 現に彼はぴたりと動きを止め、こどもの瞳をくるりときょとりとこちらに向けて。
『……え、るり遥行かないの?』
 その返答は想定外です、が顔に書いてあるのが幻覚……ではない気がした。
 とてつもなく見られている。妖狐の耳が、犬のように思えるのも気のせいだろうか。
『るり遥も行こー! ね?』
 尻尾も説得に加わってくれば、いよいよ己の背に崖を感じる。
 逃げ場を求め、視線をもうひとりへと向けてみた。
 信頼する彼ならば、この状況を(自分の良いように)変えてくれるのではないかと淡い期待を込めて。
『まァ……俺様ちゃんも正直なトコロ、めちゃくちゃ怖ェんだけどさ』
 応えたジンガ・ジンガ(尋歌・f06126)の言葉に、若干勝機が見えた……のは一瞬のこと。
『でも、まァ』
 一気に雲行きが怪しくなる。勇気の欠けたこころが警告している。
 駄目だその先は言わないで、むしろ戻ってきて、お願い。
『3人なら、たぶん、だいじょぶじゃない?』
 清々しく笑う軽薄な顔に、根拠は微塵も感じられない。
 あっ駄目だこれ。多分何度いいえを押しても終わらない奴だ。
『興味はある、あるけど無理だって』
 強制イベントの壁を打ち破る、誰かが目指した夢が在るかもしれないが。
 最後の抵抗は青い袖を遠慮がちに挟んだ人差し指と親指に破られる。
『折角3人で遊べるんだから』
 1.3cmしか変わらないのに、外見年齢ならいっそ相手の方が今日は上なのに。
 何故だろう。この所謂ひとつのダンボールから拾って下さい感覚がしてしまうのは。
 正統派お強請り攻撃に逃げ場がすとんと失せていく。
 今更メモ帳で顔を隠そうにも、勝手知ったる彼等に通用する筈もなかった。
『スカイダイビング的なの初めてだなぁ……濡れても良い格好になったら、行こ!』
 嬉しそうな未夜と、楽し気なジンガを前に敗北と言う名のリザルト画面が己の目元周辺を覆い尽くす白昼夢を観て。
 時間にして十分程度。るり遥のダイビング決行ルートが確定した。

「夏の大三角ってどれだろ」
 尋歌の羅刹が呟くと、落下開始してからずっと固まっていた乾青の青年が動き出す。
 どうやら何かの状態から我に返ったようだ。急ピッチで現状を把握したらしく、物凄く慌てている。
「ジンガ、るり遥」
 二人の名を呼ぶと、一方はいつもの団地で会うような気楽さで。
 もう一人はいっぱいいっぱいなのが手にとるように分かって、迷い仔は思わず笑い出す。
「手をつなごう」
 誰が最初に言ったのだろう。少なくとも彼等の手を最初に取ったのは、自分だった。
 大事に、大切に包み込んで。不安になってる一人は強く握り込んで。
 つられて彼等も残った手を繋いだのを見届けたのなら、大満足。
 スキンシップ大好きだから、こういう触れ合いはちょっと貴重で。
「嬉しい」
 ここは今三人ぼっち。己を見る奇異の目は一対もない。
 人見知りも対人恐怖も発動しない、切り取られたような世界の中を落ちていく。
 この時間は、きらいじゃなかった。
 そうやって手の温もりを感じていたオレンジの瞳が、夜空を見上げて彷徨う銀色ふたつに気がついて。
「何か探してるの?」
 問いは、当たったらしい。空から戻ってきた緩い視線とかちあう。
「そーなの。さっき言ったヤツ」
 表情と言葉こそ軽い調子だけれども、彼が探すというのなら、喜んで。
 夏の大三角デネブ、ベガ、アルタイル。さて何処だろうと空を仰ぐ。
 二人でそれっぽいのを探して目線うろうろ、あっちへこっちへ。
 時折またフリーズしだしたるり遥の手をぎゅぎゅっと握って意思疎通を試みたりして。
 けれど満天の星の中からだなんて難易度高くて見つからない。
「冬ならば――」
 星群探しに気を取られ、ちょっとだけジンガが何かを呟いたのに気付くのが遅れて。
 かくりと未夜が小首を傾げてみせると、気付いたその顔はやっぱりゆるゆるに笑っていた。

(――愛しのシリウスとプロキオンなら、繋いだ手の先に居るんだけど)
 ベテルギウスが胸の内でも穏やかに笑う。
 確りと繋がる先は大好きで大切な一等星達。指先に力を込めたら確かな反応が返ってきた。
 それにしても片方は未だ強く目を閉じたままだ。不安定な自由落下にぞわぞわしてるのも見て取れる。
 何かフォローを投げようか。そう思って口を開、け。
「あ、」
 光花の種が、三人の遥か下より打ち上がる音がした。
 もうすぐやってくる、夢の時間。花咲く時がもうすぐ、ほらすぐに。
「るり遥、目ェ開けて」
「目ぇあけてったって! 口では軽く言うけどなあ! 落ちてんだぞそんな周りを楽しむ余裕――」
 舌を噛みそうになってる彼の弱々しい抗議は最後迄続かなかった。
 音の無い夜だけの空間に。星空よりも近く、月よりも傍で煌めく光が――爆ぜた。

 世界が一気に、輝きの花々を描き出す。

「わぷっ!? び、びっくりした!」
 ずっと顔を上げ星を探していた妖狐が不意打ちの光に尾と尻尾を逆立てて驚く。
 もうひとりは、白く染まる視界の中ようやく藍色の眼を開けていた。
「あ、すげ」
 呆然と眼下の光景を眺めて、時折眩しそうに瞼を下げる。
 突然視界をオープンにしたものだから、目がまだ慣れていないようだった。
「未夜、ジンガ、いる?」
「いるよ。未夜もじんがも、ここにいる」
「いる」
 恐怖も忘れて表情も上空に置いてきたらしい顔は光花を向きながら、うわ言のように確認を呟く。
 何だかそれが、可笑しくて。
 彼等らしいリアクションの中、次々と花の光が咲いていく。
 パレードのように四方八方から放たれる輝きへ、皆一緒に突っ込んでいく。
 飛び込んだ光花はポップコーンみたいに弾けてもっと、煌めいて。
 気付けば二人の黒い髪にも光の欠片が飾られていた。
「――きれい」
 己の薄紅色もそうなっているんだろうか。
 過ぎった考えは、大きな耳を揺らす片方の黒頭がぶるりと震える光景に中断される。
「ふ、あははっ! ジンガもるり遥もきらっきらじゃん!」
 止まらなくなったらしい未夜の笑い方で、どうやら頭だけじゃない事に気付かされた。
 どうあがいても全員仲良く光まみれ。
 ああ、あぁ。おかしい。たのしい。
 つられて皆笑い出す。一緒になって、大笑い。
「ひ、ひひ、そういう未夜も、きらきらじゃん?」
 ばちばち、きらきら鮮やかに。
「あ、はは。最高」
 あまりに鮮明で、鮮烈な輝きが脳裏に焼き付いて離れない。
 今ここに在るのは浮遊感と光、星空、笑い声と繋いだ手だけ。
 走馬灯の内容更新されたなこれなんて、独り言ちたるり遥が歯を見せて笑う。
 絶えず目も眩むような光に包まれて。きっと今、ほんとに星になってる。
「るり遥、未夜」
 呼べば心から楽しそうな顔が二つ、ちゃんと応えてくれた。
 誰ひとり欠けても成立しない大三角。例え光の花が咲かない世界でだって。
 季節なんか関係ない。春夏秋冬どこででも、三人一緒ならこの輝きは存在できる。
 馬鹿みたいに笑い合って、当たり前のように手を繋いで。
 そんな日々が、こんな今が――あまりにも愛おしい。
 ジンガは胸がぎゅう、と締め付けられるような感覚を覚えていた。

「ああーー……たぁ、のし、かった!」
 もうすぐ落ちる、終着点へ。
 散々堪能して楽しんだ光は遥か上で、まだまだ咲き続けていた。
 再び輝きの花は高い空の存在となって、手が届かなくなってしまったけれども。
 繋いで描き続けた三角は、今も此処に。
「うん、たぁのしかったー」
 燥ぐ心のまま、おんなじ口調で仔も笑う。
 真下は暗い暗い海が広がってたって、彼に不安はなかった。
 明かりは十二分に上空から照らしてくれてるし、何より。
 落ちきっても離す気のない縁が、怖さをすっかり追い出してくれた。
 この感覚は、きっと忘れない。忘れたくない。
 着水間際、笑顔のジンガと未夜がるり遥を見た。
 もういっかいやる? そんな文字を顔に貼り付けてるような……雰囲気出しながら。
「――~~! もっかい、くらい、やっても、いい!」
 あらん限りの声で叫び、笑う中で。
 三人はそっと、繋ぐ手の力を強めた。

 やがて光の花咲く空の下、綺麗な水柱がみっつ同時に立ち上がる。
 海面に顔出すのも三人同時で、それも可笑しくて声を上げて笑い合った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と

手を繋いで転送ののち浮遊感を得れば
視界一面に広がる満天の星に感嘆の吐息を

ええ、とても美しいですね……!
空中で見る星は、地上から眺めるよりもさらに美しく
このように瞬いているのですね
凛とした綺羅星を背負うかれに笑んでみせ
音とともに夜空に光の花が咲けば 逞しい腕の中に抱き寄せられかれのその背に手を添えて
同じ高さの目線で見る花火は、実に大きく輝かしく素晴らしいものですね……!

そして波しぶきをあげて海へ着水すれば
向けられたかれの笑みに思わず相好を崩して
ええ、これでまたひとつ、きみとともに美しい景色を見れました
けれどもまだまだ、きみと見たい景色がたくさんありますと笑いましょう


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

宵と手を繋ぎ転送を待つも
浮遊感と共に視界一杯に煌く星々が現れれば瞳を見開き離れぬ様宵の手を確りと握り直そう
宵、星が常よりも近い位置にあるな…!
そう天を仰ぎ感嘆の声を漏らすも、周囲に光の花が咲き始めれば繋いだ手を引き宵と身を寄せながら光の花々とその間から覗く星々を眺めようと思う
花火を横から見るとは…肉を得る前も得た後も考えた事が無かったが本当に…
星と花火を見上げながら海に沈めばそれすらも楽しく海面から顔を出しつつ思わず宵へ楽し気な笑みを
本当に、まだまだ見た事がない景色がある物だな…宵…!
そう声を投げるも宵の笑みには照れ臭げに瞳を細めよう
ああ。本当に…お前と共に見る景色は美しい、な



●好い逢う貴石
 転送前に確りと手を繋ぐ。
 そうしたら、夜の闇に飛び込んだって大丈夫だから。

 鼓星の導きで遥かな空へ。すぐさま身を包んだ浮遊感が降下の始まりを告げた。
「宵、星が常よりも近い位置にあるな……!」
 ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)の声が弾む。
 開けて見上げた視界いっぱいに、満天の星が二人を出迎えていた。
 ひとつひとつ違う輝き、光の強さを見せつけて。一際大きく月が真上に君臨する。
 傍には彼方へと流れ行くミルキーウェイ。星屑のレースが夜の絵画を絢爛に飾り付けた。
 圧巻の光景。自然と繋いだ手に力が入り、共に同じ感動を伝え合う。
「ええ、とても美しいですね……!」
 逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)も喜びを隠さず声に出していく。
 嗚呼此処なら、もっと鮮明に観測ができそうだ。
 空中で見る星達は、地から眺めるより美しい。
 けれど先ずは、繋ぐ絆をより強固に。離れぬ様にと握り直す。
 そうしてひととき、彼等は言葉無く夜空を仰いだ。
「……このように瞬いているのですね」
 特等席で観る絶景に感嘆の声を零す。
 もう既に心が感激で満ちていたが、今宵の宴はこれからだ。
 高揚する胸の内を抑えきれず、隣人へと顔を向ける。
 地に足を付けている時なら少しだけ見上げねばならないが、今は目線が同じ位置。
 何だかそれが嬉しくて、つい色黒の彼を見つめてしまう。
 風と遊ぶ、藍色の髪。夜の中でも鮮やかで。
 凛とした綺羅星を背にしてより一層、格好良く見えた。
 静かに笑ったつもりだったが、相手は気付いたらしい。すぐに銀と紫の視線が重なり合う。
「何か見つけたのか?」
「そうですね……しいて言えば、きみの男前がまた上がったようだと思いました」
 楽しそうな宵の返答に、面食らうザッフィーロ。
 言葉を理解して返事をしようと口を開くも、第一声は下から打ち上げられた破裂音にかき消された。
 彼等の真下で、光の花が開花する。
 心に響くような重低音が続き、間を置かず眼下は色とりどりの煌きで埋め尽くされた。
 とっさに指輪のカミが色白の手を引き、その先ごと腕の中へと収め残る手を腰に回す。
 鍛え上げられた腕で天図盤のカミを抱きしめるとすぐに相手も背に手を添えてきた。
 くっついて、存在を確かめるように。一緒に目を閉じ寄り添って。
 宿り生まれた者同士、確かな温もりを感じ僅かな時間は周囲を忘れてただ想い人だけに心を重ねた。
 名残惜しげに顔を上げ、見合うタイミングも寸分違わず。
 かち合う視線に小さな笑みを贈りあってから顔を夜空へ戻した。

 徐々に光花との距離が近付くにつれ、少しずつ光のアートはその姿を変えていく。
 先程まで大輪の輝きが多かったのだが、今は小さい光が周囲に散らばり瞬いている。
 なんだかこれは、まるで。
「星空のようですね」
 眼下に生まれた、光の星空。まるで鏡写しのように二人を挟んで広がっていた。
 星屑の川も、大きな月も再現された世界がきらきら輝いて。
 もう少ししたらあの幻想的な空間に飛び込める、そう思えば更に胸は高鳴った。
 でも、少しだけ。ただ飛び込んで行くのが勿体無い気がして。
 真下の星空に身体を向け、ザッフィーロは包み込む恋しいヒトへ視線を移す。
「宵、俺に星を教えてくれぬか」
 彼はアストロラーベ。星を観測し、示すモノ。
 喜んでと、宵が笑う。
 サファイアの魂に抱かれながら、足元広がる満天の光へ指を指す。
 大きな光が月だとして、近くの光はこの時期ならアンタレス、それともスピカ?
 流れ落ちた光は彗星かもしれない。楽しそうに、観測を続ける。
 本物ではないから戯れだけれども。二人でそうして、愉快に過ごす。
 やがて光は目の前に、弾む心のまま仲良く一緒に飛び込んで。
 ふたりぶんの衝撃を受けた光の星達が、水飛沫のように弾け飛んだ。
 舞い散る輝きは真横から見る流れ星。未だ光は絶えず、咲き続けている。
「同じ高さの目線で見る花火は、実に大きく輝かしく素晴らしいものですね……!」
 上からの次は、横から。むしろ此処は咲き誇る光花の中かもしれない。
 鮮烈な光景に囲まれる。降りかかる耀きに身は塗れ、流星の合間に見えるは本物の星空。
「花火を横からも見られるとは……肉を得る前も得た後も考えた事が無かったが本当に……」
 絶佳を二人占めし、想像を超える世界の彩りを二人で堪能する。
 後何回、否。これからも二人で、沢山記憶に残していこうか。
 想いは声に出さずとも。もう一度笑い合って、光の渦から抜け出した。

 あっという間に光花の位置が頭上に変わる。
 また形を変え光り暉やく芸術と、背景の星空を合わせて見上げるのだって悪くはない。
「ザッフィーロ、あの光花は猫の形をしていませんか?」
 何気なしに告げた言葉に、瞬発力の高い反応が返ってくる。
「……あれは……毛玉感が、光の細かい粒で表現されていて、」

 どばしゃん。

 それは見事な波飛沫を伴う水柱が上がった。
 暫く落ちた海面では大量の泡が浮いては消えるを繰り返し。
 やがて沈んだ二人が同時に顔を出すと、堪えきれずに笑みを深めた。
「本当に、まだまだ見た事がない景色がある物だな……宵……!」
 海水に張り付く髪をかきあげ、ザッフィーロが愉快と歯を見せて。
「ええ、これでまたひとつ、きみとともに美しい景色を見れました」
 指先で同じく前髪を退けながら、宵もつられて声を弾ませた。
 濡れた夜色の髪が、天上で花咲く光のヴェールを受けて艷やかに。
 心からの笑顔に伺える深宵の瞳で瞬く星は、今ここで輝く何より綺麗だった。
「けれどもまだまだ、きみと見たい景色がたくさんあります」
 照れ臭くて、狭めた視界でも彼の笑みは鮮明で。
「ああ。本当に……お前と共に見る景色は美しい、な」
 思わず手を伸ばした両腕に、飛び込んでくれた身を強く強く抱きしめた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティア・メル
華乃音/f03169

視界に広がる星空
そらを掴んで
緩やかに髪が靡く

華乃音は空中散歩出来る?
んふふ、良かった
翅があったらどこかへ飛んでいっちゃいそうだから

夜を背負う彼と弾ける光と
宵闇の花とが全部綺麗なものだから
薄紅の笑みが咲く

きらきらとひかる白い頰が
見惚れちゃいそうなくらい美しくて

一等星はやっぱり、

光瞬く夜に君の微笑
美し過ぎる世界は夢のよう
湖面の双眸が紫彩へ移ろい、彼をとらえる

―――かのちゃん、

手を伸ばすにいられなかった

百花繚乱の夜に、おちているのかういているのか
繋がりだけが現だと教えてくれる

極彩色の海へ落ちる頃
重なったつめたいゆびさきは、
どんな星よりも優しい
君の温度に染まっているに違いない


緋翠・華乃音
ティア・メル(f26360)と共に


星空が近くて。
手を伸ばせば届きそうで。

この瞳は少しだけ特別。
数多の星々、その輝きの差すら見分けられる。
名こそ知らないけれど。

甘い鈴が転がるような彼女の問い掛け。
空を歩くための翅なんて持っていないと答えた。

瑠璃の瞳に、星の光と光の花を閉じ込めて。
遠ざかる星空に背を。そして彼女に向き直る。

知らず、指先が触れていた。
長い夢を見て、目覚めた後みたいだ。

傍で弾ける光の花が、いっそう現実を遠ざけて。
自分はその時、微かに笑みを浮かべていたのだろうと思う。

百夜絢美。星花繚乱。

輝かしい此の夜から君を連れ出そう。
繋がりが欲しいのなら、光を抜け出すまでは手を取って。



●フラワー・ナイトへおちていく
 飛び込んだのは、まるで深い深い海のよう。
 吐く息に泡沫は浮かばずとも、この身を夜風が通り抜けていく。
 本物を背に、仰向けで浮遊感を感じながら。
 黒と細やかな光の世界を、緋翠・華乃音(終ノ蝶・f03169)は静かに沈んでいった。
 常よりほんの少しだけ近くなった星空は手を伸ばせば届きそうで。
 識らず己の指先が重力に逆らいかけた時、星夜一色の世界に華奢な白が入ってきた。
 しなやかな腕が、細い指先が。悪戯に動いて届く筈の無い空を掴む仕草をしてみせる。
 ゆっくりと青年が手の持ち主へと顔を傾け、意識を移す。
 濃桃の鮮やかな髪が、風に揺られ柔らかく靡いていた。
 合間から、藤色が楽しげに緩んで。いつのまにか、終ノ蝶を見ている。
 ティア・メル(きゃんでぃぞるぶ・f26360)の笑顔が瞬く世界に華咲いていた。
 嗚呼、今彼女と共に落ちている。

「華乃音は空中散歩出来る?」
 甘く響く、鈴が鳴る。無邪気に転がる、マイペースな問い掛け。
 水の精霊が纏う装いは、ひらひらと夜風に漂って海中で舞う人魚のようだった。
 その顔色も甘やかに彩られたのを見届けてから視線を空へと戻していく。
「空を歩くための翅なんて持っていない」
 例えばこの身に寄り添う蒼の如く、飛べる四枚の羽が在ったのなら。
 何の束縛も無い夜の海を自由に泳げたのだろうか。
 でも。
「んふふ、良かった」
 傍で聞こえる、淡桜に染まったセイレーンの密やかな笑い声。
 微かに感じる潮の匂いに、沙羅の香りを交らせて。
「翅があったらどこかへ飛んでいっちゃいそうだから」
 純度の高い、喜楽の感情がそう言って笑うものだから。
 瑠璃色のダンピールが今度は答えず少しだけ目を細めた。
 デザイナーチャイルドが空を仰ぐ。その瞳は少しだけ特別で。
 絶えず輝き続ける数多の星々、その光の差すら鮮明に見分けられる。
 あの一際強い光が一等級だろう。名こそ知らないけれど。
 こうして夜を過ごすのは、嫌いじゃなかった。
 少しずつ、少しずつ。意識も夜へと穏やかに沈んでいく。

 星の海に身を任せ、夏の音を待ち望む。
 やがて感じた打ち上げの衝撃に、幼子の心が期待に跳ねる。
 直後の破裂音。彼との世界に、光が咲く。
 初めは一輪、白い花。続くように、淡い色がそこかしこで奇跡を起こす。
 黒い夜のキャンバスに、パステルの輝きが描かれた。
 絢爛な明かり達が一気に舞台を照らし出す。
 一つ一つ、ゆっくりと花弁を広げていく軌跡が美しかったから。嬉しい感情で胸が満たされていく。
 次々花開く輝きと振動が、ソーダ水の身に優しく響いて心地良い。
 こんなに素敵な出来事を二人で独占できるなんて、海の飴玉みたいに甘美な味を飲み込む気分。
 喜ぶ心のまま、お隣さんに顔を向ける。
 遠ざかる星空を背に、弾ける光を身に受けるその彩りは蝶の翅を思わせた。
 星と花の煌きをラピスラズリの瞳に全部閉じ込めて。
 夜空を背に向き合う姿。宵闇の花が咲き乱れて。
(一等星はやっぱり、)
 全部、綺麗だと思った。
 暖かくなるこころを薄紅色の微笑みに溶かして応える。
 きらきらひかる白い頬に見惚れて――一瞬ティアも気付かなかった。
 華乃音の指先が触れていた事に。彼の目が、僅かに見開かれていた事に。
 幻想的な空間と時間に微睡んでいた意識が春色の現実に目覚めていく。
 再びの光が周囲に花嵐を降らせ新しい夢幻を描いても、現実離れした光の庭園が広がろうとも。
 紫彩へ移ろう湖面の双眸が映す世界にとらえた蝶は、鮮明だった。
 微かに、笑っている。きっと気付いたのはこの星空の中で自分だけ。

「―――かのちゃん」
 手を伸ばすにいられなかった。
 彼の傍を青蝶が舞う。華夢の花弁が寄り添い、夜空で遊ぶ。
 光が咲く、花と乱れる。
 ひとつの暉やきが縦に伸びて、天辺で大きく破裂した。
 広がる様は枝葉を伸ばすようで、見事な大樹が夜空に生まれていく。
 やがて華やかな形は幻と崩れ去り、無数の数多の煌きとして降り注いだ。
 百夜絢美。星花繚乱。
 天上に月、散りばめられた空の宝石達はシャンデリアのように。
 溢れ零れる甘やかな耀きはとめどなく、永遠に思えた。
 百花繚乱の夜に、おちているのかういているのかあやふやになってくる。
 今度は自分が夢にのまれてしまいそうで。
 炭酸水の腕がヒトの形を保てている内に――。
 確かに絆は、繋がった。
 嗚呼今は、確かに現実だ。だってこの暖かさが教えてくれる。
 何度も呼びたい気持ちを堪えて、遠慮がちにひとつふたつ。
 それでもちゃんと、応えてくれる。触れた掌から、感情が伝わる気がした。
 降り続ける赫く花弁。打ち上がり咲く大輪の光。中心に、自分達がいる。
 夜を隠すほどの燦然世界に取り残された。上下左右、絶景しか無くて。
 黒が白の海へ変わっても、触れ合う心が沈む事はなかった。
 暫し光の欠片達に包まれて交わした言葉は、二人だけのもの。

 潮風の匂いを強く感じる頃が、夢の終わり。
 輝かしい此の夜から君を連れ出そう。そっと青年が、囁いた。
 繋がりが欲しいのなら、光を抜け出すまでは手を取って。
 煌きの花嵐から、蒼い世界へ。
 光の花弁が少しずつ二人から離れていく。絢爛の時間は空へ置いていこう。
 華を観て、花を散らして、花々映す水面へおちていく。
 重なるゆびさき、想いを込めて。
 つめたい海に広がる花のような波紋は、ひとっつだけ。
 吐く息に泡沫が逃げていく。追いかけて、共に果てを目指して泳ぐ。
 やがて辿り着く海面の煌きは月星か、光花か。
 光景は曖昧に揺らいでくけれども、繋いだ手を離さないでいるのなら。
 どんな星よりも優しい温度に、互いが染まっていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

六道銭・千里
【千夏花/3】
打ち上げ花火上から見るか、下から見るか
こう下からじゃなく上から見る花火ってのも良いもんやな


式神・一反木綿に乗り『空中浮遊』、水着は普通の海パンにアロハでも着て
夏輝はあー…初対面やな、澪から色々噂はかねがね。大丈夫か?
と風で保護されてる様子に一言

おーホンマや、手を伸ばせば掴めそうやな。か~ぎや~ってな…
澪がやるんやったら俺もやらせてもらおうか
六道銭家の奥義、御縁を呼ぶ五円玉の(俺の財布に)出血大サービスのパフォーマンス

解除され下に落ちた夏輝を見て、おーこっちは打ち下げ花火…
仲の良いことでなによりやな…っと二人にやり取りに微笑ましそうに


小林・夏輝
【千夏花】

花火を空から見れるって
確かにめったに無い経験だよなぁ

俺飛べないから落ちるんですけどねー!?
あ、でもスカイダイビングしながらの花火もマジ綺麗だわ
カメラ持ってくりゃよかった

なんて、未来から目を背ける意味も兼ねて花火見てたら
突然現れた風のクッションに保護され
驚いて一瞬んぎゃ、なんて変な声が漏れた
せめて声かけてほしかったにゃー!
だ、大丈夫大丈夫
サンキュな千里…さん(敬語苦手

おぉーすっげ、こんな間近で見れるもんなんだな
へへっ、たーまやー!

二人のパフォーマンスを楽しみつつ
いいねー風流だねぇなんて楽しんでいたら
突然クッションを解除され

ん゛に゛ゃああぁぁぁ!!?(ばっしゃーん
…は、腹打った…(震え


栗花落・澪
【千夏花】

遠目から見るのも綺麗だけど
光が弾ける瞬間を間近で見たい

風魔法を宿した★Venti Araの【空中浮遊】と空中歩行で楽しむね!

もー夏輝君はしょうがないなぁ

出来れば風魔法の【属性攻撃+オーラ防御】のクッションで
夏輝君を保護
六道銭さんも遊ぼ!

わーすごいすごい!見て見て!
こうやって手伸ばしたら光掴めそうだよ!
たーまやー!(真似してはしゃぐ

折角綺麗なもの見せてもらったし
お返ししないとね!
【指定UC】で光と共に弾ける花吹雪を演出
攻撃ではなく【パフォーマンス】として使用し
観客の皆様のところまで甘い香りと共に柔らかく降り注ぐように

あ、終わったらクッションは解除しまーす
魔力保つのも疲れるし
ごめんね☆



●つまり霊符と花嵐が降り注ぎ、にゃーと鳴く
「花火を空から見れるって。確かにめったに無い経験だよなぁ」
 小林・夏輝(お調子者の珍獣男子・f12219)の余裕は、数秒持たずに落ちていった。
 本人ごと。
「俺飛べないから落ちるんですけどねー!?」
 嗚呼無常。彼は術を持たない人間だった。
 同じ人間の筈の六道銭・千里(冥府への水先案内人・f05038)はきっちり布の式神を呼び寄せ乗り込んでいる。
 仲良しの栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は背中どころか風魔力を込めた靴にも翼を生やして楽々空中浮遊だ。
 そんな二人に見送られ一人現在落下なう。
 イベントは間もなく開始します。

 どんどんと、三人の眼下で輝きの光景が広がっていく。
 光花が打ち上げられいくつもいくつも咲いてはきらきら瞬く花畑を作り出す。
「打ち上げ花火上から見るか、下から見るか。こう下からじゃなく上から見る花火ってのも良いもんやな」
 一反木綿の背に乗って、悠々光花見学と洒落込む陰陽師が感慨深げに呟いた。
 空の対策もばっちりなら、海パンアロハの王道スタイルで万一の着水準備も万端だ。
 心做しか式神も楽しそうな気がする。ほら靡く布の先とか。風のせい? 気の所為きのせい。
 まあそんな感じでのんびりする……予定だが。
 どうにも眼下で激しい状態(約一名)が気になるので、とりあえず寄ってみる。
 ついでにもっと近くで光花を見ようそうしよう。
 そう、地上や遠目から見るのも綺麗だけれども。光が弾ける瞬間は間近で見たい。
 夜風に羽を遊ばせて歩くオラトリオも足元で広がる光の海に見とれていた。
 軽やかな靴で空を歩き、煌きの花道に辿り着けば光の上を歩いているみたい。
「あ、でもスカイダイビングしながらの花火もマジ綺麗だわ」
 近くで誰かさんが一瞬我に返った声がしてるが、もうちょっと空中散歩を楽しみたい気もするので様子見。
「カメラ持ってくりゃよかった」
 珍獣男子は現状からどうにか光花を良く見ようと身を捻り、結果自由どころか錐揉み落下になってしまっている。
 未来から目を背ける意味も兼ねての挑戦だったが、いよいよどうにもならなくなってきた。
 このままでは多分きっと彼は鑑賞とかそんな優雅な事できそうにない。
「もー夏輝君はしょうがないなぁ」
 割と凄い光景だと思われるのだが、やれやれ的な感想一つで片付ける男の娘。
 その手でバトンに似た短い杖を包み込み、魔力を開放して聖なる姿へ変化させた。
 招いた力は風の奇跡。繰り出す一撃(加減しました)に泡沫の花が齎すオーラを気持ちおすそ分け。
「んぎゃ、」
 驚き過ぎて逆にエクスクラメーションマークが出てこなかった。
 突然現れた風のクッションに激突、否捕獲、もとい保護される。
 錐揉みで突っ込んだ為か変な声が漏れ、更に文字で表現し難い体勢で固定された。
「せめて声かけてほしかったにゃー!」
 近寄ってきた千里が面食らい、近寄って手を貸しなんとか良いバランスを取らせる。
「大丈夫か?」
 処置を終え、改めて声をかけた。
 一反木綿も興味深そうに魔力で創られた風の塊を眺めている。
「だ、大丈夫大丈夫……サンキュな千里……さん」
「あー……まぁ、初対面やな」
 はじめまして云々、澪から色々噂はかねがね等々。
 慣れない敬語を駆使して、光花咲くスカイダイビング中という中々ロマンチックなファーストコンタクトを交わしていく。
 その様子を和やかに眺めていた澪が傍までやってきて、満面の笑顔を浮かべてみせた。
「夏輝君を保護できたし、六道銭さんも遊ぼ!」
 では改めて、特等席を楽しもう。

 散々花々咲き連ねた世界が、今度はなんともファンシーな光景に様変わりする。
 破裂音の度にあっちでくったりネコやらこっちでまるっこいサメ等、正統カワイイが夜空に描かれた。
「わーすごいすごい! 見て見て!」
 丁度高度が光花の真上から真横に差し掛かる頃、三人の目の前で一際大きな光が爆発する。
 出現したのは兎に角でかい……ぴかぴか光るうさぎさんだった。
 桜色の光で創られた柔らかそうなフォルムは何となく見知った白兎に似ている気がして。
 たまらず琥珀の髪と金蓮花を靡かせながら天使が駆け寄っていく。
「おぉーすっげ」
 器用に風の塊へとしがみつく元傭兵も間近で観る光のアートを楽しんでいるようだ。
 なんとか自分も近付こうと、脚をバタバタさせてみる。心做しか進んだ気がした。
「こんな間近で見れるもんなんだな」
 地上だと一点集中で全てを視界に収められる耀きが、こう間近ではどう観ても肉眼からはみ出てしまう。
 それでも、それこそ楽しいと思った。巨大兎を見上げながら笑みが増す。
「こうやって手伸ばしたら光掴めそうだよ!」
 燥ぐ声は兎の手辺りからした。期待に胸高鳴らせ、デフォルメされた光の手へシンフォニアが手を伸ばす。
 そっと、煌きに指が重なる。緩い衝撃で花弁みたいに一部の光が舞い散って。
 綿毛のように、残光がふわふわと腕に纏わりつき落ちていった。
 一気に胸が高鳴って、二人へ目一杯キラキラの手をぶんぶん振って嬉しさをアピールする。
「おーホンマや、手を伸ばせば掴めそうやな」
 長布お化けに背を預け、冥府への水先案内人がすっかり寛ぎモードで夜空を漂う。
 でも少しだけ気になったので、丁度良く垂れてきた兎の耳に触れてみた。
 はらはらと緩やかに解けていく光が、青年通して式神にも降りかかる。
 結果、ちょっとデコられた一反木綿が完成した。
「へへっ、たーまやー!」
 より楽しくなって、夏輝が光咲く度に夜空へ元気な声を投げつけた。
 つられて二人も笑い出す。
「たーまやー!」
「か~ぎや~ってな……」
 夏の音が、声が。色とりどりに弾んで弾け、星空の下何処までも暉やいていた。

「折角綺麗なもの見せてもらったし、お返ししないとね!」
 すっかり三人揃って光塗れ。どれほど遊び尽くしたか、だからと言ってこれで終わりは勿体無い。
 少々高度を下げて、今度は自分達が魅せる番と最初に夜の舞台へ躍り出たのは澪だった。
 手を広げ、指をさす。奇跡の力を込めた先を示すのは――頭上の光花。
「Orage de fleurs!」
 高らかに告げたユーベルコードがオラトリオの周囲に舞い散る花と化す。
 それは極彩色の、ヘリクリサム。鮮やかな花嵐が術者の心が儘縦横無尽に夜空を泳ぐ。
 最後は人差し指向けた光花へ一斉に飛んでいき、思いっきり輝き散らして衝突した。
 光が、本物の花吹雪と同化して大地へ降り注ぐ。
 ――あら、何だかいい香りね。
 観客の誰かが呟いた。仄明るいイモーテルがひらひらと、独特の甘い香りを運んでくる。
 柔らかく舞い降りた永遠の思い出は、きっといつまでも続く喜びになれる筈。
「澪がやるんやったら俺もやらせてもらおうか」
 入れ替わり、花の舞台へ今度は千里が進み出る。
 これから何が始まるのか、既に理解している式神の背に立ち下を見る。
 思わぬ光花繚乱に沸き立つ客席に我が一族、六道銭家の奥義を御魅せしよう。
 取り出したのは御縁を呼ぶ五円玉。少々どころかかなり懐へ大打撃だが、出血大サービスでお披露目だ。
「霊符の大盤振る舞いや! 釣りはいらへん!」
 俺の財布が泣いてるが、今夜は祭りだ無礼講。霊符大放出・大判屠舞。
 手にしたあんたに御縁が有りますようにと術士は願う。
 飛び散る金の硬貨はさながら小さな流星群。星が来たぞと見物席の空気が歓喜に湧いた。
 ――おや、これは?
 誰かが金星を拾い上げ、穴開き硬貨をまじまじ観ている。
 何処かで見た気がするなぁ。そう呟く島民の顔は晴れやかだった。

 花と銭と光が乱舞する絢爛の舞台、その最前席で。
 少年は風に乗って二人のパフォーマンスを最後まで楽しんでいた。
「いいねー風流だねぇ」
 にこにこ笑顔で、技を終えた二人を労ろうと口を開け。
「あ、終わったらクッションは解除しまーす」
 先にかけられた澪の宣言通り、第一声を出そうとした顔は再び自由落下していった。
「ん゛に゛ゃああぁぁぁ!!?」

 ばっしゃーん。

 ――なぁ今、猫の声しなかったか?
 ――あぁ聞こえた、あの色々降ってきた所から……猫がやったのか??
 客席の一部に妙な誤解が付与された。
「おーこっちは打ち下げ花火……」
 それは見事な波紋の中心へ、二人も後を追い降りてくる。
 光花を映して煌く海面の輪が言葉通り、海へと放たれた花火に見えた。
 やがてぷかりと浮き上がった鳴き声の主はちょっぴりお腹を抑えて震えている。
「……は、腹打った……」
「魔力保つのも疲れるし……ごめんね☆」
 可愛らしい謝罪は天使の笑顔全開でおくられていた。
 持ち直して笑い返す夏輝の手を取り海岸まで連れて行く様子を、千里が微笑ましそうに眺める。
「仲の良いことでなによりやな……っと」
 空では未だ、万華鏡の如き光が咲き続けて。
 三人が島へ往く道を優しく照らしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セロ・アルコイリス
花世(f11024)と!

あんたと空をまっさかさまは、二度目ですね!
今度はそのまま、花火のきらきらん中に

花世、花世、
あんとき見たスターマイン!
花畑の中に居るみたいです!
両の手取ったなら姉の如く慕う彼女をより鮮やかな光の中に引き込んで

――ねえ花世
あんたが生まれて来て良かったって思ったことなくても
おれはあんたと逢えて良かったって思ってますんで
それだけは憶えててくださいね?

いいじゃねーですか間違いだって
おれの存在は失敗だ
それでも今が楽しめりゃいい
魔法で風を起こしてもっと長く長く

煌めく氷片の小花散る空にゃ素直に見惚れて
楽しいって、
うれしい、って笑う
星空に咲いて残る気もない大輪は
あんたも込みで一幅の絵だ


境・花世
セロ(f06061)と

まばゆい夜空へ真っ逆さま
翼なんて持たないちっぽけな躰で、
二人で落ちよう、何にもこわくない

空がこんなに広くて自由だって、
セロと飛び出して知ったんだよ

暗闇に咲く灯は百花繚乱、
きみはまるで花束を背負ったみたい
丸ごと受け取るみたいに両手絡めて
ひとつの曇りもなしに、笑う

生まれたことに意味がなくとも
この世に在ることが間違いでも
わたし、今、楽しいよ
セロと一緒にもっともっと飛んでたい!

しゃらしゃらと散らすのは、
雲を氷らすダイヤモンドダスト
花火を映して、世界をもっと光らせて
とびきりの花束の返礼を
きみがそんなふうに笑うから
ほら、こんなに耀く、夏の一瞬



●虹の境界
 晴れ渡る空は、漆黒を塗り拡げて――鏤められた瞬間の目映さで満ちていた。
 夜と月星の世界でわたしと君は落ちていく。
「あんたと空をまっさかさまは、二度目ですね!」
 七色を淡く染み込ませた、白い髪が星空に跳ねる。
 セロ・アルコイリス(花盗人・f06061)の双眼が、あまりに嬉しそうだったから。
 笑みを返して肯定する。楽しいと想う気持ちが、重力と一緒に加速していく。
 ヒトとドール、翼を持たない者同士。ちっぽけだって構わない。
 二人でなら何にもこわくないから。

「空がこんなに広くて自由だって、セロと飛び出して知ったんだよ」
 自分を見ていたひとつの瞳が、するりと空を仰いでいく。
 境・花世(はなひとや・f11024)のもう一輪が、瞬く光に照らされて淡く揺らいだ。
 花より深い紅髪が、今は仄明るいだけのまっくら世界に映えるだけで。
 これからあのきらきらん中に飛び込めたら、どんな彩りを魅せるのだろう。
 小さな楽しい企みが、ココロに宿る。
 もうすぐ、もうすぐ。
 聞こえてくる――夏の音が。

 心地良い衝撃が、二人の胸を貫いた。
 視界に光を齎し、暗闇の幕を吹き飛ばす。

 黒のキャンバスに、光の絵具が足されていく。
 初めは無数の白だった。全方位を明るく照らし、祭りの開始を高らかに告げる。
 次に連続した破裂音が次々と、輝きの広場に色を咲かせた。
 先ずは赤を描き、間髪入れず橙を広げ黄色の輝きも混ぜ込んで。
 それはそれは見事な花を咲かせ二人の足元で暉やいた。
「花世、花世、」
 緑の花を指差して、もう視線は次に咲いた青を観る。
 止まらない煌きの連鎖、あぁこれは。
「あんとき見たスターマイン!」
 藍色の光爆音に負けない声で、喜び叫ぶ。
 観てみてと身体を少しだけ上空に居た顔所に向けた瞬間、背後で紫が赫いてみせた。
 暗闇に咲く花の灯、丁度ななつ。
 どの光花も鮮明で。それを背景に笑うきみはまるで、
「……花束を背負ったみたい」
 はなひとやの呟きに、花盗人の瞳が丸く開く。
 すぐにゆっくり……和らいで。擽ったそうに、もう一度笑ってみせた。
 そっと、機械人形が姉の如く慕う彼女へ両手を伸ばす。
 意味に気づいて微笑んだ儘、申し出を両手絡めて丸ごと受け取った。
 大輪の笑みに、曇りはない。手を引き二人揃って眼下に挑む。
 在り続ける七色の光が、帯と成り空と大地を鮮やかに隔てていく。
 プリズムを超えた彩りの境界へ、二人揃って飛び込んだ。

「花畑の中に居るみたいです!」
 感動を最初に聲と出したのは、セロの方。つられて花世も、笑みを深める。
 二人は絆を確り握って、光花の海に沈んでいく。
 夢のような、光景だった。幻のように、現実が変わる感覚に囚われる。
 アルコイリスの光に包まれて、ひととき二人は世界から切り離された。
「――ねえ花世」
 絡ませる指先に、ドールが少しだけ力を込める。
 合わせた視線の先は柔らかな、表情で。
「あんたが生まれて来て良かったって思ったことなくても」
 突然の言の葉、その意味を誰よりも本人がよく解っている。
 彼が、まだ感情が未完成の君が。
「おれはあんたと逢えて良かったって思ってますんで」
 今持てる想いの全てで、云ってくれているのもちゃんと分かっているから。
「それだけは憶えててくださいね?」
 華やぐ貌と、心を寄せて握る指先。答えはとうに、色付いて。
「生まれたことに意味がなくとも。この世に在ることが、間違いでも」
 折る指足らぬ、世界を渡った。その全てが拒んだとしても。
 光に塗れた現在に、咲き跳ねる自分の気持ちを告げても良いのなら。
「わたし、今、楽しいよ」
 柔らかな聲で素直な言葉を、識りたがりの青年に教えて魅せた。
「いいじゃねーですか間違いだって。おれの存在は失敗だ」
 光花から剥がれた欠片が青年の左頬をきらりと照らす。
 ココロを描く顔は、暖かくあっけらとしていた。
「それでも今が楽しめりゃいい」
 動く身体と感情が有るのだから。解らなければ、今はそれで良いんだと。
 慰めなんてとんでもない。今したい事を、叫ぶだけ!
「セロと一緒にもっともっと飛んでたい!」
 女の主張に、同意の声が風を喚んだ。ウィザードが放つ魔法に周囲の光が巻き込まれていく。
 夜風を操り重力に逆らう。今ひとときは、虹の海を泳いでいきたいから。
 豪華絢爛に数多の煌きを巻き込んで、燦めいて。
 夜空に浮かぶ光花の道を突き進む。もっと、もっと先へ。
 地平線を目指して長く長く。
 突き動かすのは、今此処に存在している確かな衝動。
 やがて君ともう一度、飛び出したくなった。
「やめないで」
 衒いなく言葉が出る。温度が無い筈の光の海に、優しい冷気が漂い始める。
「やまないで」
 渦巻く感情は不確かで、言葉で形決めてしまうにはあまりに複雑で。
 でもそれでいい。力の開放を感じた相手が強く手を握って後押ししてくれるから。
 しゃらしゃらと、周囲に雲の結晶が生まれていく。
 発生した現象は宝石のように燦めく氷達。飛び散っていく、感情のカケラ。
 七色に乱反射して、跳ね返って、また暉やいて、光が何処までも跳弾する。
 そんな光景に、ロマン主義者は素直に見惚れた。煌めく氷片の小花散る空が、あまりに美しかったから。
 楽しくて、うれしくて。風を纏い反射する煌きを巻き込んで。
 最後は愉快に七彩の境界線を突き抜けた。

 光花繚乱を越え、おかえりなさいと夜が広がる。
 降り注ぐダイヤモンドダストが頭上の花を映して、光らせて。
 とびきりの花束の返礼を、彼に、そして世界に贈ろうか。
 やがて花世が降らせた輝きも、光花の虹も消えていくだろう。
 今だけの奇跡、星空に咲いて残る気もない大輪は。
(あんたも込みで一幅の絵だ)
 記憶に焼き付けた大パノラマは、きっと、きっと忘れない。
 そうしてセロのうれしいが、夏の夜に鮮明な一瞬を描き出す。
(きみがそんなふうに笑うから)
 笑顔に咲く八重牡丹からはらりはらり、薄紅の雨が零れ落ちた。
 ほら、こんなに耀いてる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夜奏・光花
アドリブok

(ずっと上を見ながら)お星様も花火もとっても綺麗ですー!

(どぼん)わっ?!(直ぐに泳いで海中から顔を出して)けほけほ…う、落ちる時ぜんぜん下見てませんでした‥。

やっぱり綺麗ですねー。
あ、あの花火形が凄く可愛いです。
それにしても光花祭ですか…ふふ、わたしと文字が同じですね!

(操り糸を手に巻いて抱えていたジェイドを外し)
せっかくなので、わたしも他の方々のように上げましょう。
【いきますよ、Invitation from the doll!】

みなさんには綺麗に見えたでしょうか?


アイナ・ラティエル
あはは、星空から海に落ちるのも新鮮だね。

(UCを発動し)さてとっ、ボクはせっかくだしワンダー☆スターで空中散歩しようかな!
あ、2人乗りできるから誰か乗りたい人はいるかい?(聞いて居なかったら直ぐに一人で飛んでく)

普通なら花火に触れ合うなんて熱くて出来ない体験だよ。
色んな形の花火があっておもしろーい!

連携ok/アドリブok



●相乗りの光と星のアリス
 覗き込んで落ちた穴の中は、星が瞬く夜でいっぱいだった。
「あはは、星空から海に落ちるのも新鮮だね」
 飲み干す瓶も見当たらない。EATMEは星夜に飲まれた自分の方?
 そんな事を考える位、アイナ・ラティエル(星の国のアリス・f19388)は今とっても斬新な体験中だ。
 星夜の国へ迷い込み、これから不思議が次々飛び出すと言うのならば。
 全力で楽しまなければ勿体無い。と言う訳で。
「さてとっ、ボクはせっかくだしワンダー☆スターで空中散歩しようかな!」
 元気に一声、夜を飛び回る術を喚ぶ。馳せ参じたのは二人分サイズのお星さま。
 ジャストフィットで乗り込んで、よし行こう空中飛こ……。
「あ、2人乗りできるから誰か乗りたい人はいるかい?」
 折角の相乗り仕様なのでと思い直し、夜空を仰いでみるも星が無数に瞬くのみ。
 じゃあ仕方ない一人で飛ぼうと前を向いたら。
「あのっ、わたしもご一緒して良いですか?!」
 アイナの視線とすれ違いで可憐な声が上から降ってきた。

 そのまま丁度良く後部座席(推定)にすとんと着席したようで。
 振り返ると年の近い、可愛らしい黒猫を抱いた少女と目が合った。
 夜奏・光花(闇に咲く光・f13758)が続けて何か言おうと口を開ける前に、アリスはきらきら笑いかける。
「勿論なんだよ!」
 片目を閉じて歓迎サイン。快諾貰えて、黒髪の聖者はほっと息をついた。
 よろしくお願いしますと礼儀正しく。それから思いかげず乗り込んだ星をまじまじ見つめて。
 とりあえず目の前の先端部分を黒猫と一緒に掴んで安全確保準備完了。
 改めて、運転手は前を向き夜の彼方を指差した。
「じゃあいこう、出発だよ!」
 自由な流星が星屑散らしながら動き出す。
 今夜一番大地に近いシューティングスターが少女二人を乗せて旅立った。
「お星様はとっても速いんだよ。何処だろうとひとっ飛び!」
 陽気に上げた言葉通り、アリスの星は縦横無尽に飛び回る。
 望む花はどこだろう。探そうとしたら一発の打ち上げ音がした。
「あっちです!」
 光花が示した先でそれは破裂し大輪の光を生み、夜を彩る。
 それが星空ワンダーランドの始まり告げる合図だった。

 巨大な光の近くで、連続する小さい光がどんどんどんどん打ち上がる。
 よく見ればカラフルに描かれたトランプのスート達だった。
 緑のハートに赤い四葉、青空ダイヤにスペードは七色で。
 ちぐはぐ面白い光が飛び交い賑やかに浮かんで消えていく。
「お星様も花火もとっても綺麗ですー!」
 人形遣いのお嬢様が大感激でむぎゅりとジェイドを抱きしめる。
 色味の違う金眼を大きく開いて、感動の舞台を目一杯記憶に閉じ込めた。
 お次は二人の周囲に小さなネズミが顔を出す。かと思えば、アヒルを描く光も在った。
 オウムや鷲の子その他諸々、奇妙な動物達が不思議な世界を愉快に囃し立てた。
 終いにドードーが目の前で首を傾けるように現れたので、コーカス・レースでもするんじゃないかしら。
 そんなこんなできらり煌く星の下、真夜中色した絵本の中で極彩色の物語が燥ぎまわる。
「色んな形の花火があっておもしろーい!」
 迷い込んだ甲斐はあったかい? そう訪ねそうな不思議で愉快な人工星光が燦めいて。
 姫君アリスのオレンジ色を更なる好奇心で塗りたくった。
 瞬きする度に、景色が変わる。ページが捲られお話が進んでいく。
 最終的にトランプ兵っぽい光のスターマインが近付いてきたので慌ててUターンし逃げ出して。
 我に返った後、二人は一緒に笑い声をあげていた。

「やっぱり綺麗ですねー」
 煩い程のシャインパレードから遠ざかるも、煌きまだあちらこちらで咲いている。
 ふと近くで小さな光を見つけた。よく見るとあれは、猫の足跡のような。
「あ、あの花火形が凄く可愛いです」
 ぽん、ぽんとまるで見えない猫が歩くように宙を描く。少しずつ、二人が乗る星へ近付いてくる。
 目と鼻の先迄来た時に、迷わず一緒に手を伸ばした。
 熱を持たない花火の足跡は、指先触れた瞬間ふわふわと綿毛のように舞い辺りへきらきら落ちていく。
「普通なら花火に触れ合うなんて熱くて出来ない体験だよね」
 アイナが指先に残る光の欠片を眺めながら感心した声を出す。
 同じく残光で遊ぶ光花が、感慨深げな顔をして。
「それにしても光花祭ですか……ふふ、わたしと文字が同じですね!」
「文字がどうかしたのかい?」
「わたし光の花って書いてみつかって言うんです!」
 心から嬉しそうに名を告げてから、そう言えばご挨拶がまだなのに気がついた。
「素敵な偶然だね! ボクはアイナ・ラティエル、愛称はアティ。どうぞよろしくね」
 星と光が降る夜に出会えて、じゃあこの後もご一緒に……なんて思ったら。
 腕の中の黒猫が勝手に動いて主の腕から抜け出した。
「わっ?! 待って――」
 思わず両手を伸ばして身を乗り出す。何とか掴むも、眼下に広がる大海原。
 アリスが止める間もなく、真っ逆さまに落ちていった。

「けほけほ……う、落ちる時ぜんぜん下見てませんでした……」
 どぼんのすぐ後海中から顔だして、後悔一つ口に出す。
 母から貰った大事な人形は捕まえたが、お陰で自分と同じ名の光はもう遥か高い場所だ。
 濡れた漆黒耳に流して、仕方ないと気持ちを切り替える。
「せっかくなので、わたしも他の方々のように上げましょう」
 手に巻きつける操り糸。抱えた黒猫外して放つ、本日限定愉快な悪夢。
「いきますよ、Invitation from the doll!」
 可愛いお手々に魔力を込めて、纏い描く魔法陣から光炎宿した猫を打ち上げる。
 凍る闇は光の花に照らされて色とりどりに耀きながら天へと昇っていった。

「みなさんには綺麗に見えたでしょうか?」
 テレポートで来てくれたアイナを視界に入れながら、ジェイドを抱きしめ光花が呟く。
 答えは再びの相乗り後、島へ戻った時の冷めやらぬ歓声で理解した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浮世・綾華
嵐吾さん(f05366)と

高いところは苦手でもないが
濡れるのは少し嫌だと思うものの

好奇心には勝てない
敬愛する人と共に意を決して

嵐吾さん、心の準備は…!
よし…じゃあお願いしま――

うわっ

あーーやば…でもきれい
ひゅーと落ちていく感覚にぞくぞくしながらも
落下速度と取り巻くひかりに語彙力が消える

って、あっという間に海…!?
そこで発動するUC、咄嗟に鍵刀を浮かべ片手で掴み
はーー危なかった
嵐吾さんも――と彼の傍にも浮かべたけれど

!!
ら、嵐吾さーん!

大丈夫ですかと近寄り
後でちゃんと乾かしましょ

ね、俺らの炎で、こう…!
皆を楽しませちゃいません?
えっと、それじゃあ…きつねとねこ!
人がいない方に鬼火をえいと浮かべ


終夜・嵐吾
あや君(f01194)と

きっと絶景じゃね! 楽しみ、と尻尾揺らして。
高いとこはなんともない
しかし、海に入れば尻尾がしょんぼりじゃな、とそれは気になりつつあや君に笑いかけ
では参ろうか! 転送お願いしよ!
そう言うたのはしばし前のこと

おあっ!はは、いきなり空に放り出されるんはこういう事か!
おお、綺麗じゃね
光の中を落ちるなんてなかなかあることではなく楽しんでいたら海面も近くなり
あやくっ、アー!!
掴めずドボン
落ちんようにしてくれたが反応できんかったわ
海面に顔だしふるふると水弾く
うむ、あとで乾かすのを手伝ってもらお

お、わしらも?
どーんと派手なのがええよね
ええよ、何かこかと笑って相談を
決めたら一緒に炎を空へ



●浮き立つ夜に華嵐
 そう言うたのは、しばし前のこと。
『きっと絶景じゃね!』
 楽しみ、楽しそう。青みがかった灰の毛並みが夜風に揺れて心地よさそう。
 同色彩る髪も夏の温風に遊ばせて、終夜・嵐吾(灰青・f05366)は柔和に笑う。
 転送前のひとときにどこまでも柔らかな妖狐に対して、隣人はちょっとだけ複雑な心境だった。
(高いところは苦手でもないが)
 浮世・綾華(千日紅・f01194)の胸中は鍵穴の奥より難解そう。
 天上からの自由落下は特に問題ない。ただ下が海で――濡れるのは少し嫌だと思う、ものの。
『好奇心には勝てない……なぁ』
 こちらも楽しみの気持ちが喉からぽろり。小さな音色は、立派な耳が拾い上げてぱたたと動かせた。
『高いとこはなんともない。しかし、海に入れば尻尾がしょんぼりじゃなあや君』
 おおらかな声と、左目の柔らかな視線。
 敬愛する人は心の片隅に積もった埃を、ふっと優しく取り除いてくれるような声色で。
 気付けば夜風がするりと、躰を気楽にすり抜けていった。
 軽くなった心に、決意を新たに乗っけて改め向き直る。
『嵐吾さん、心の準備は……!』
 応えはへらりと、でも頼もしい笑みで返ってくる。
 もう何も躊躇う事等無かった。
『では参ろうか! 転送お願いしよ!』
『よし……じゃあお願いしま――』
 グリモアの煌めきに包まれたのが、最後の記憶。

 夜喚ぶ扉の鍵開けて、無限の星空が飛び出した。

「うわっ」
 地上とは比べ物にならない風が、綾華の全身に吹き付ける。
 一瞬の驚きは、しかし次の衝撃にかき消された。
 視覚を支配する満天の星と、身を染め上げるような月の光が輝いて。
 飛び込んだばかりの彼等に目映いほどの絶景を魅せつけた。
「――」
 自由落下の浮遊感もお構いなしに、準備完了した筈の心から暫し言葉を奪い去る。
 嗚呼真逆。此処が浮世だと謂うのだろうか。
「おあっ!はは、」
 一方投げ出され体勢そのままで、嵐吾は愉快愉快と声を上げる。
「いきなり空に放り出されるんはこういう事か!」
 それは突然の地面無し。四方八方真っ黒で、上だけ星々綺羅々鏤められてる。
 例えるならば蓋の閉じた宝石箱に放り込まれたようなものだろうか。
 そんな非現実的にも思える世界で真っ逆さまに落ちていく。
 下は何も見えない井戸の底に思えたが、感動中の二人に不安のバッドステータスは付与されない。
 むしろ此処からが本番だ。地の果てから湧き上がってくるのは好奇心か、期待のワクワク感かそれとも。
 瞬間。
 千日紅の視界に、打ち上げ音の衝撃で毛並みがびりりっとした灰青がいたそうな。

 それは正しく熱くない花火だった。
 眼下で破裂した最初の光は大型割物。金の菊花が花開き、一片ひとひらが流れ落ちる星のよう。
 次の音も負けず劣らず大輪で、銀に暉やく心の周りに薄青が飛び散り共に耀いた。
「おお、綺麗じゃね」
 琥珀の瞳にも光花が映り咲いた。もう片方でかくれんぼしてる、刻印のように。
 眼中の華が様変わりする度、感嘆の声を夜空へ何度も置いていった。
 今度の大花は鮮やかな紅だった。中心から金の星も生まれ四方八方へ次々飛んでいく。
「あーーやば……でもきれい」
 あまりの感動に、彼は語彙力を空に置いてきたようだ。
 落ち行く感覚にぞくぞくを覚える程少し現状に慣れてきたものの。絶景に華やぐ気持ちは止められない。
 そのまま身を任せ、揃って輝きの中へ飛び込んだ。
 光の花弁を散らして互いに似た色の燦めきに塗れながら、もっともっとと次の燿きを待ち望む。
 咲き連ねる光花乱舞の中を、ノンストップで落ちていく。
 最早光る花嵐と化した空間を突き進む、中々無い経験はとてもとても楽しかった。
 やがて離れていく光花達を上空に、残光を纏いながら漸くしみじみ感動を噛み締め――?
「って、あっという間に海……!?」
 視界の端で同じく驚く妖狐の毛並みが再びびびっとなった気がするが、それを確認する時間が惜しい。
 濃厚になる潮の香りに慌てて指先手繰る真似事ひとつ、黒い鍵刀招いてみせる。
 絡繰った術は宙に浮き、掴んだその手を夜空に留めた。
「はーー危なかった……嵐吾さんも――!!」
 改めて相手を見た時点で、着水数秒前でした。
「あやくっ、アー!!」

 ドボン。

「ら、嵐吾さーん!」
 とても綺麗な水柱と、所在無げに浮いてる複製鍵刀という構図が完成する。
 慌てて波紋広がる海面に近寄ると、徐々に浮き上がる青灰の海月……もとい。波に広がる綺麗な毛並みが浮上してきた。
「大丈夫ですか?」
 ざぱんと顔出し豊かな髪が張り付きまくってる様を見て、心配そうに無事だった方が声をかける。
 無事に無事では無かった方はふるふる首振って最低限の水を弾いていた。
「反応できんかったわ……」
 迂闊だったと髪をかきあげ息を吐く。
「後でちゃんと乾かしましょ」
「うむ、あとで手伝ってもらお」
 気遣う申し出に、気持ちもすぐに浮上した。

 降下は終わっても、祭りは未だまだ楽しめそう。ならば。
「ね、俺らの炎で、こう……! 皆を楽しませちゃいません?」
「お、わしらも?」
 隅から隅まで遊び尽くしたい、その提案は即座に承認された。
「ええよ、どーんと派手なのがええよね」
 何かこか。嬉し顔の相談に、小さな精霊が二人やってくる。
 メラメラ燃える子達を見つめ、うーんと悩んで口開く。
「えっと、それじゃあ……きつねとねこ!」
 ええよええよと楽しげに笑う顔がみっつ。
 一緒にえいと浮かべた鬼火が海から空を目指して飛んでいく。

 ――おじいちゃん、あれ仕掛け光花かな。可愛いね!
 ――見事じゃのう。
 海岸沿いに居た観客だけが、特別な光の始まりに運良く気付けた。
 橙と緋色の猫が、橙と金の狐が仲良く燃え上がり天空へと駆け抜ける。
 二匹は光花に飛び込んで、煌き散らし夜空に浮かぶ大きな画を描き出す。
 万雷の拍手が沸き起こるのを遠くに、今度こそ綾華は嵐吾の救助に取り掛かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ディアナ・ロドクルーン
【蒼銀】
空から花火が見られるなんて、滅多にない体験が出来そうですね鬼灯原さん

私は空中から落下しながら楽しみたいと思います
その時に鬼灯原さんから霊刀・凍檻をお借りして刀に腰を掛け乍ら
ひらりひらりと宙を飛んで花火を楽しみ
光の花火、手で触れられるかしら?この一瞬一瞬を脳裏に刻んで

空中で鬼灯原さんとすれ違うようならハイタッチでも
楽しんでいらっしゃいますね、ふふ

途中、UC【死の舞踏】を使い薔薇の花びらを宙に散らせましょう
周りに花火の色が反射してキラキラと輝くと思うの

着地は陸に。海は溺れそうだから絶 対、陸で(強調
華麗に降り立って見せましょう

あら鬼灯原さんはどこかしら?やっぱり海の方?


鬼灯原・孤檻
【蒼銀】
ディアナさん(f01023)と一緒。

花火を空中で見るのは初めてだ。
貴重な体験、楽しませてもらおう。

俺は【霊刀・凍檻】と【霊魔刀・宵断ち】とUCを利用して、浮遊しながら楽しむ。
飛翔能力を分けた与えた刀をディアナさんに渡す。
自分も刀の鞘の上に腰かけて空を揺蕩う。
空に弾ける光と音に、感嘆の声を上げよう。
ディアナさんが散らせた薔薇が目の前に漂えば、それを片手で掴み。
花びらを手放した後、すれ違ったディアナさんにお礼とハイタッチを。

ふと興味が湧き。
海の方に降りて、水中から花火が見れるか試してみよう。
…流石にこれははしゃぎすぎたかな。
水面に落ちた一枚の薔薇の花びらを見て、それでもいいかと笑う。



●天満ちる燈灯
 その二人は、実に優雅な空中落下を実践していた。
「空から花火が見られるなんて、滅多にない体験が出来そうですね鬼灯原さん」
 夜の空気に溶け込むような、でも鮮やかな紫色を風にゆるゆる靡かせて。
 ディアナ・ロドクルーン(天満月の訃言師・f01023)は穏やかな声で同行者に話しかける。
 振り向く姿すら、星夜に映える。女は艶やかで、鮮やかだった。
「確かに……花火を空中で見るのは初めてだ」
 同意を返す鬼灯原・孤檻(刀振るう神・f18243)も然程自由落下を気にする事はなく。
 ただ言葉さえ彼女に投げかけていたものの、視線は夜空ではなく手元を見ていた。
 数多の業物を扱ってきたのだろう戦の手が、一振りの刃を撫でている。
 刀振るう神が静かに加護を与えていた。美しい拵えに、奇跡の力を宿していく。
 鞘に刀身を収め漸く顔を上げた。探すのは、空高くの月ではなく近くの人狼。
 空中で差し出された神の愛刀を、マニキュア飾る美しい手が受け取って。
 そのまま刀掛けレクチャー少々。完了を見届けてから男の落下速度が和らいでいく。
「貴重な体験、楽しませてもらおう」
 夜空を横目に、今度は視線を下に。文字通りの高みの見物と洒落込んだ。

 世界は島近くの海より打ち上がる音を皮切りに一変する。
 大きな花が眼下いっぱいに咲いたかと思えば、破裂音が再び鼓膜を叩いた。
 今度は連続音の後にチカチカ耀く柔らかな白いフラッシュが空間を埋め尽くして乱れ咲く。
 小さな蕾を思わせる見事な速射光花が二人の瞳にも満天の星を描き出した。
「綺麗……」
 生み出されたのは、白光の草原。夜風に吹かれ、本物のように揺らいでいる。
 呟きはディアナ本人も気付かない程自然と零れ落ちていた。
「む、確かに凄いな」
 霊魔刀の鞘に腰かけて、揺蕩う孤檻も感嘆の声をあげている。
 その間にも光花は放たれ、一面真っ白だった輝きに色が灯り足されていく。
 一つは光の大海原を飛ぶ鳥と成った。躍動感溢れる姿に、一瞬動き出しそうな錯覚すら魅せつける。
 次に見たことのないような幻想の花々が、草原の至る所で乱れ咲いた。
 どんどん賑やかに、絢爛と化す白のキャンバス。まるで空中に新しい大地を創造するかのよう。
 神ではなく、島の人々が創り上げた楽園が広がっていく。
 それが楽しくて、ときめいて。弾む気持ちのまま、紫色の人狼が其処へ向かって跳んでいく。
「光の花火、手で触れられるかしら?」
 ふと、自分と同じ彩りの花が一つ咲いているのに気が付いた。
 更にその上辺りで興味深そうに光景を覗き込んでいる神の姿にも気が付いて。
 何だかそれも楽しくて、華やぐ笑顔浮かばせてから手を伸ばす。
 煌く花弁の一枚に触れてみる。その部分だけ、蒲公英の綿毛みたいにふわり小さく舞い散った。
 上の方から驚く声を聞きながら、触った手に視線落とすと淡い瞬きに塗れた色白の手。
「鬼灯原さん」
 見てと言わんばかりに手を挙げる。紫の光花、その欠片に飾れた腕を独特な仮面を付ける顔がまじまじと見つめて。
 やがて遠慮がちな手が別の花に触れ、片腕全体を彼の目と同じ銀色でデコレーションさせていた。
 心做しか嬉しそうな神様を見守ってから、天満月の訃言師は光の草原に足を降ろす。
 地に足つける感覚は勿論ないので、気持ちだけ。
 そうして彼女は足元煌く空中散歩にいそしんだ。

 もっとこの光景を、この一瞬一瞬を鮮明に脳裏に刻みたくて。
 よりこの夜を輝かせたいと考えたディアナは、想いをすぐに実行へと移す為に動き出す。
「全てを壊し 全てを刻め」
 取り出したのは、星空の中でも一際目立つ彼女の剣。
 クリスタルオパールの白き刀身へ詠唱かけると、徐々に月見草の彩が剥がれ硝子の薔薇へと姿を変える。
「その身を赫く染め上げろ」
 本来ならば鋭利な硝子達は敵へ向かって飛んでいくが、今夜は祭りだ敵意は無い。
 一気に、総ての花弁を夜空に放つ。それは周りの光花の輝きも巻き込んで、最高のキラキラを齎し舞い降りていく。
 その一枚が孤檻の掌に降りてきた。薔薇の花弁を片手で掴み、硝子越しに光花を覗き込んでみる。
 プリズムの先を見た気がして、とても綺麗だと思った。
「ディアナさん」
 思わず彼女の名を呼んだ。硝子の花弁を手放して、ゆっくり片手を挙げてみる。
 人狼は意図に気付いたようだ。輝きの欠片達を傍らに、彼の元へと落ちていく。
 すれ違いざまのハイタッチは、笑顔とお礼も交わされた。

 やがて光花の芸術達は夜風に流され消えていき、すっかり楽しんだ女は星空を泳いで島を目指す。
 海は溺れそうだから、着地は陸地その一点のみ。
 潮風に乗って、最後はすとんと華麗に地面へ着地した。
「あら?」
 立ち上がり辺りを見回すと、光の楽園が消える少し前まで見ていた姿が見当たらない。
「鬼灯原さんはどこかしら?」
 探しながら、腰に差した刀に触れる。何となく、大丈夫だよと言われてる気がした。
 視線が自然に本来の着地、否着水場所へと向いていく。
「……やっぱり海の方?」
 独り言ちてから、ふっと緩く笑い出す。
 後で返さなきゃなんて、鞘を撫でてから……ディアナは自身が降らせた奇跡に沸く祭り会場へと歩き出した。
「先に行ってるわね、鬼灯原さん」

 未だ激しく揺れる海面を、刀の神は中から見上げ気泡を吐く。
 確かに途中迄は彼女と降りていた。が、ふと興味が湧いてしまい結果今の状態になっている。
 空の光花も綺麗だったから、海中からの輝きはどうだろうと。
 そうして観る曖昧な境界に映る光も、それはそれで綺麗だった。でも。
(……流石にこれははしゃぎすぎたかな)
 内心苦笑しながら水面に顔を出す。最初に見たのは、水面に浮かぶひとひらの硝子。
 拾い上げ、掌で転がすと上空でまだ咲き続ける光花の耀きを鮮やかに反射していた。
(それでもいいか)
 笑みが、舞い散る輝きに照らされた。

 そうして、星空いっぱいに咲いた祭は大盛況で幕を下ろす。
 今年は光花の見事な輝きと、観客の予想を越えて感動を与え続けてくれた猟兵達の奇跡も合わさって。
 島民誰もが認める過去最高の夜となりました。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月06日


挿絵イラスト