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限りある命、限りなき夢、解纜彩る耀き

#グリードオーシャン

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#グリードオーシャン


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●猟兵のお仕事
「潮干狩りだ」
 阿夜訶志・サイカ(ひとでなし・f25924)が唐突に言う。
 唐突すぎて、誰も何も言わぬ――ただの沈黙が暫し、場を支配した。
「俺様は潮干狩りに行く。だが、その前に人助けをしてこい。ダーリン達がな」
 ――なにいってんだこいつ。
 まぁ、まぁ、話を聴いてみれば、以下のようになる。
 グリードオーシャンに存在する海賊達は、世界中に眠る呪いの秘宝「メガリス」を手に入れたならば、それを身につける事で、力か呪いを得る。
 成功したなら、ユーベルコードに覚醒し。
 失敗したなら、死んでコンキスタドールとなる。
 これはこの世界における一般的な儀式であり、コンキスタドール蔓延る海で生き残るためには必要な試練なのである。
 ――然し、その試練はつまり、失敗することがあるのだ。
「死んじまった部下を、自分達で殺して弔うのが『海賊の掟』――だが、ここ最近は、コンキスタドールは強大になってやがる。ま、海賊団の方が返り討ちにされちまうってわけだ」
 そこで、ダーリン達の出番だ、とサイカは言う。
「ぱっといって、サクっとやって、恩を売れ。以上だ」
 とても曖昧である。得も言われぬ眼差しを受け止めた彼は、仕方が無いというように深い溜息を零した。
「その海賊団は、驚く程美しい『真珠の浜』を縄張にしてやがる。その名前は比喩じゃなくてな。砕かれた宝石とか――大体は真珠だ――がばらまかれて、キラキラ輝いてる。死んだ部下を弔う時に、自分らの手持ちの宝石を放り出し、砕いて派手に送り出す」
 ほう、なんとも海賊らしい剛毅なエピソードではないか。
 しかしそんな浜辺で潮干狩りとは一体――。
「島には住民がいてな。そいつらに、葬送の後、潮干狩りを許すんだ――まあ、宝石を持って帰るだろ。そういう無礼講ってことだ。ま、ダーリン達も美味しい思いが出来るってワケだ」
 一番、タチが悪いのは彼の言い様である気がするが――彼岸花の輝きの向こう、ああ、そうだとサイカがひとつ付け足す。
「助けにいく海賊どもな。なかなかコセイテキだが、シッカリとやれよ?」


黒塚婁
どうも、黒塚です。
楽しい海のイベントですよ!

●1章:集団戦『呪われた船首像』
 まずは海賊団の皆さんを助けるために彼女達を撃破します。
 捕らえた海賊を中央に包囲しています(数は参加者数次第)
 全員倒す事で、海賊達を解放できます。

●2章:ボス戦
 コンキスタドールと化した海賊の一員と戦闘になります。
 海賊達も支援してくれますが、猟兵達だけで倒せるでしょう。
 海賊達は自分の身は守れるので戦闘に集中できるという雰囲気です。

●3章:日常
 潮干狩り。詳細は3章導入にて説明いたします。
 お誘いいただけば、サイカも顔を出します。

●プレイングに関して
 各章、導入を公開後の受付となります。
 今回は2章までは開始の告知はしますが締め切りは特に設定しません。
 章進行可能となったら進んでいく予定です。
 また、プレイング内容を問わず、全員採用のお約束はいたしません。
 ご了承の上、ご参加ください。

それでは、皆様の活躍を楽しみにしております!
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第1章 集団戦 『呪われた船首像』

POW   :    まとわりつく触腕
【下半身の触腕】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    掻き毟る爪
【水かきのついた指先の爪】による素早い一撃を放つ。また、【自らの肉を削ぎ落す】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    呪われた舟唄
【恨みのこもった悲し気な歌声】を聞いて共感した対象全てを治療する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●美しき悠久海賊団
 エルフとは。
 神秘の象徴。繊細なる美を約束されながら、森の守り人――誇り高き戦士でもある。
 彼らは産まれながらに美しい。そして、如何に歳を重ねようと、青年の儘美しく、縄張に治めてきた島々では賛美の的であった。
「きゃああ!」
 絹を裂いたような悲鳴が響き渡る――四肢を拘束された海賊団の面々は、目の前で残酷に笑う曾ての仲間であったものを凝視する。
 その躰はエラブウミヘビと化して、するすると海賊達の合間を通り抜けていく。わざと、毒の牙を剥いて、皆に幾度となく悲鳴をあげさせる。
「く、カトレア――莫迦な真似はよしなさい!」
 船長が気丈に叫ぶが、それは無視を決め込んだ。
 逃げろ、と言おうにも冷ややかな眼差しで『呪われた船首像』 が海賊団を見張っていた。ユーベルコードを扱えようが、彼女達の力は絶大であった。なすすべもなく、自然の牢屋ともいえるこの岩場に追い詰められ、縛り上げられていた。
「コンキスタドールに堕ちたとて、誇り高き、美しき海賊が――悪戯に捕虜を嬲るなんて、恥を知りなさい!」
「ふふ、曾ての仲間のよしみだからじゃないの。恐怖を確り刻みつけて、死んでいって頂戴な」
 コンキスタドールはゆっくりと人型を取り直すと、長い爪に唇を寄せて、薄く笑んだ。残酷かつ艶然と。そして、鋭く無造作に振るう。
 船長の白い膚に、ひとすじの朱線が刻まれた。毒を孕んだそれは、傷口の周りを焼けただれたように荒らす。
「せ、船長ォォ――!」
 イヤァァァ、と悲鳴が上がる――貌は乙女の命なのに、と。
「ナァニが乙女よ。もう五十近いじゃないのよ、クソババァ」
 顔をしかめたコンキスタドールは、隠しきれぬ喉仏を下げて、高らかに笑った。
「くそォ、ブッ殺してやる――」
「あら、素が出ていてよ。誇り高きダフニー!!」
 口々に曾て仲間であったコンキスタドールを罵る、ドスの聴いた低い声――嗚呼、彼女たちは。
 ――皆、エルフの、美しき……性の超越者であったのである(!!)
ハイネ・アーラス
海賊の掟を掲げるのであれば、向かうべきでしょう。
我ら海賊、死を以て弔いし
死者の為にこの身をかけるもの

……帰っても?
いえ、もう乙女かどうか俺の範疇外でしょう。
どちらかといえば首は綺麗に落とす方は好みですし

潮干狩り前とかそういう前に
暗殺仕事をする俺としては、この派手な仕事は……いえ、えぇ
そうですね、海賊の流儀でしたとも

——よし、殺しましょう
全て首を落としましょう

エーギルの攻撃力回数を上げて、敵の首を落とします
えぇ、スムーズな仕事こそ全て
海賊の皆様を守りつつ、傷の代償は己の身に

それでも心配されるようでしたら

大丈夫です。お嬢さん方
きっとイケメンがそのうち現れて颯爽と助けるはずなので

と言っておきましょう



●暗殺者のさいわい
 潮騒を背に、戦場へと姿を現したのは、深海の底に存在せし神秘。
 海の深い部分の色を宿した髪の奥、ハイネ・アーラス(海華の契約・f26238)は、両眼を閉ざし、白い目蓋を緩く震わせた。
「海賊の掟を掲げるのであれば、向かうべきでしょう。我ら海賊、死を以て弔いし、死者の為にこの身をかけるもの――」
 薄い唇でかく述べて、紅の双眼を薄く開き――。
 半眼で、状況を睨んだ。
「……帰っても?」
 地の底から何かを呪うような声が出た。
「いやァァ、後生だから、私達――いいえ、船長を助けて、何処の誰だか解らないけど綺麗な子!」
 比較的近いところにいたエルフの海賊が悲鳴をあげた。
 線は細い。色つやもよい。顔も整ってる。だが、何処からどう見ても男だ。ファッションは、少し露出が多いが、海賊だからそれなりの武装はしている。
 いや、個人の趣味や、センシティブな問題には触れるまい――ハイネはこめかみを押さえながら、ぶつぶつと零す。
「いえ、もう乙女かどうか俺の範疇外でしょう。どちらかといえば首は綺麗に落とす方は好みですし」
 なんとなくその怨みは別の方向へのものであるような気がする。
「潮干狩り前とかそういう前に……暗殺仕事をする俺としては、この派手な仕事は……いえ、えぇ――そうですね、海賊の流儀でしたとも」
 この子大丈夫ゥ、なる声が聞こえる。大丈夫、大丈夫ですとも。何の問題もありません。
 応えるように、ハイネはふっと穏やかに微笑んだ。然し目は据わっている。
「――よし、殺しましょう。全て首を落としましょう」
 呪われた船首像は、殺意に応えると、美しい貌で威嚇するように牙を剥いた。
 異形の半身をくねらせ、身を伸ばし、ハイネを捕らえようと跳び掛かる。それを冷静に見極め、彼は前へと軽やかに駆った。
 その瞳が、きらりと耀きて。
 いつしか手にしていた白銀の刃も、花を描くように閃いた。
「えぇ、スムーズな仕事こそ全て」
 すぱん、と軽妙な音がして、船首像の喉元が割れる。青白い肌に生々しき赤が刻まれ、彼女は天を仰いだ。
 シャー、と一体が怒りの声をあげて、爪を振るってくる。ハイネがナイフで応えるのを、触手のようにくねる半身の肉で庇う。肉が削げた分だけ、それは素早く切り替えしてくる。
 ふっ、とハイネは微笑んだ。無我の中に、安堵を得るように。
 上半身を寝かすように低くして、力強く岩場を蹴る。空を、否、髪の一部を船首像の爪が掻き裂いていく。
 ――しかし、ハイネのナイフは既に、細い頸に深々埋まり。
 無情に腕を薙げば、儚き美貌はころりと岩場に転がった。
「キャー!!」
 悲鳴は悲鳴でも、黄色いのがあがった。
 はは、とハイネは最早マットウに受け止めるのをやめて、営業スマイルなどを浮かべて見せた。
「大丈夫です。お嬢さん方――きっとイケメンがそのうち現れて颯爽と助けるはずなので」
 その笑顔は、乙女心をくすぐる、大変うつくしいものであった――。

 一方、何処かで、誰かが、くしゃみをしていたとか、なんとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

筧・清史郎
らんらん(f05366)と

麗しく逞しい乙女の危機か、それは助けにいかねばな
…ん?らんらん、どうした?
…超越者?この乙女達がどうかしたか?(よく分かってない箱
ああ、確かに俺は箱で、らんらんは狐で、海賊団の皆は乙女だな(雅スマイル

そうだな、早々に片付けようか
ふふ、いつもの様にと、きっと友は思っているだろうが
ここはひとつ、友の前では披露した事がない技で臨もうか
桜花弁伴う嵐の如き刀の連撃と衝撃波で、敵の群れを斬り伏せ一掃しよう
敵の下半身の触腕も、その動きを確りと見切り、刀で斬り落としてやろう

勿論、逞しい乙女達も確りと守らねばだな
攻撃が乙女達に向く事あれば庇い、安心させるべく
大丈夫だ、と微笑みを向けよう


終夜・嵐吾
せーちゃん(f00502)と

わしは幻でもみとるんじゃろか…やけにアクの強い光景
…んっ?あっ、性を超越しとるんか…(二度見)なるほど超越…
せーちゃんは気付いておるのか、おらんのか…
ううむ、世の中にはいろーんな人おるもんな…
せーちゃんも箱じゃしね、わしも狐じゃし

ひとまず、助けねばならんな
あの呪われた船首像らを倒してしまおう
いつも通り、別に何するか聞かんでもせーちゃんの手はわかる
んではお先に、と駆け虚の爪を借りよう

しかし、虚ちょっとざわついとる
あ、にょろにょろ腕がいやなんか?
裂き甲斐のあるじゃろ、あれも

って、せーちゃんのそれ、わし知らんよ?
あっ、まーたそんな雅スマイルで
海賊に目ぇつけられても知らんよ



●桜花絢爛、烱眼荊棘
「……わしは幻でもみとるんじゃろか……やけにアクの強い光景」
 左目をごしごしと擦るふりをして、終夜・嵐吾(灰青・f05366)は訝しむように灰青を細めた。ゆらーっと海を眺めるように揺れる尾も、心なしか萎んでいる。
 エルフの皆様は、線が細く、しなを作れば優美である。が、間違いなく男性だ。そして海賊としての装備はしている。それらが身を寄せ合って怯えている。
「……んっ? あっ、性を超越しとるんか……」
 なるほど超越……小さく零す。なんというか、急にこれを突きつけられると、混乱する。
 ――というのに、隣り合う男は涼しい顔で、悠然と扇を開いて笑う。
「麗しく逞しい乙女の危機か、それは助けにいかねばな」
 視線に気付いた筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)が首を傾げて、嵐吾を見つめた。
「ん? らんらん、どうした? ……超越者? この乙女達がどうかしたか?」
「せーちゃんは気付いておるのか、おらんのか……」
 小声で零すが、拾い上げられる距離だ。はて、不思議そうに清史郎は囚われの海賊と己たちを交互に見やる。
「ああ、確かに俺は箱で、らんらんは狐で、海賊団の皆は乙女だな」
 何という、個の尊重。邪気も熱気も払うように、雅やかに笑う。
 ああ、せーちゃんがまぶしい。
「……ううむ、世の中にはいろーんな人おるもんな……せーちゃんも箱じゃしね、わしも狐じゃし」
 怯んだ自分が狭量なのか、友が変わっているのか、世界は広いな、と思う事でスルーすることにした。
「きゃッ……!」
 そんな二人の耳に悲鳴が届く。そうだ、嵐吾はパチリと瞬きひとつ、敵を一瞥すると、笑みを浮かべる。
「ひとまず、助けねばならんな。あの呪われた船首像らを倒してしまおう」
「そうだな、早々に片付けようか」
 手首を返して扇を閉ざし、清史郎も同意する。いなや、春風駘蕩と微笑む友へ、悪戯っぽい眼差しを向けながら嵐吾は駆け出す。
「んではお先に」
 その背に向かって清史郎がふふ、と更に小さく笑い零したのを、彼は知らず――長い灰青を靡かせ、岩場を軽妙に蹴っていく。
「戯れに、喰らえよ」
 封じた右目よりするりと黒い茨が伸びて、右腕に絡みつく。黒き爪となって、愛らしい顔を険しく歪め睨んでくる船首像と対峙する。その下半身が、波打つ。攻撃の機を練っているようだ。
(「しかし、虚ちょっとざわついとる」)
 冷静に見極めつつ、愛しいそれの感覚を、穏やかな声音で宥める。
「あ、にょろにょろ腕がいやなんか? 裂き甲斐のあるじゃろ、あれも」
 とん、と最後の距離を詰める。下半身の触腕が、彼を呑もうと前に伸びる。その端から、爪で裂いて落としていく。
 すかさず振り上げるような一掻きで、触腕一本どころか、その根本までを抉り取る。
 キャーキャーと、海賊達の黄色い声が響く。
「イヤァッ、お兄さん、危ない!」
 それは気合いの一声かと脳裡に過ぎったが、嵐吾はその警告を正しく窮地だと受け取ったし――それでいて、案じていなかった。
 桜花が、舞う。
「巻き起これ、桜嵐」
 耳朶を打つは、悠々とのびる声。刹那、風切り、触腕を伸ばしていた船首像が斜めに崩れた。桜花を刃に纏い、剣閃に纏い、青き髪を靡かせて、清史郎は猛々しく躍った。
 無駄のない研ぎ澄まされた剣舞に、合わせて爪を振るい、背を合わせながら嵐吾は問う。
「って、せーちゃんのそれ、わし知らんよ?」
「驚いたか、らんらん」
 しれっという。くるりと入れ替わって、迫り来る船首像を斬り刻んでいく。息も乱さず、友は「偶には変わった事も試した方が面白いだろう?」などと笑う。
 下半身を衝撃波で断たれた船首像の頸へすかさず爪を振り下ろし、刈りとりながら、嵐吾はまじまじと彼を見つめた。
「あっ、まーたそんな雅スマイルで。海賊に目ぇつけられても知らんよ」
 その言葉に打たれたように、清史郎は貌をあげた。その視界の先には、猟兵達を憎らしそうに睨む船首像ばかりでなく、腕を縛られた海賊達がいた。
「勿論、逞しい乙女達も確りと守らねばだな」
 海賊達と触腕の進路を遮るように疾駆すると、勢いの儘、剣戟を放つ。身を以て彼らを庇い乍ら、清史郎は切り伏せる。
「キャアァア――剣士様ッ」
 その悲鳴は最早、囚われの姫かなんか気分になっているのではないか。
「大丈夫だ」
 彼は半身振り返って、余裕のある微笑を見せた。そして、その背では、はらはらと桜花が降っている。
 キャー、と沸いた黄色い声へ、応えるように片手を上げると、ますます悲鳴が大きく響いた。
 ばさり、迫る一体をあっさりを掻き裂き乍ら、嵐吾は溜息を吐いた。
「活き活きしとる……せーちゃん、本当に知らんよ」
 乙女の本気っていうのは、まあまあおっかないんじゃが。然れど、同意を求めるような嵐吾の声に、虚はウンともスンとも言わなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

呉羽・伊織
【花守】
ねぇ、姐サン――やっぱオレ帰ってもイイ??
だってあの方々、俺よかよっぽど逞しそーじゃん!?
なんなら姐サン一人でも、下手に俺が手ェ出すよか豪快に暴…いやー勇姿が眩しいな~!!
(今俺ごと叩きのめしかけたのは気のせいだよネッ)

黙れよ邪魔狐ソコまで飢えてねーわそーいうアンタが男見せてくりゃ良いだろ!
ただでさえ何かアレな絵面なのにその腹立つ面でチラチラ視界に入ってくんな!

色々喚きつつも手は動かし、UC使い先制の早業
残像やフェイントで撹乱しつつ
烏羽で爪のみを削ぎ落とし部位破壊
加えて腕や足元に風切投げ牽制の2回攻撃
何れにも呪詛や毒込め動き鈍らせ、仕留める隙を作る

嗚呼…どーか早く色んな意味で鎮まって!


花川・小町
【花守】
もう、窮地の乙女を見捨てて帰るなんて男が廃るわよ?
まぁ戦士でもあるならちょっぴり勇壮な面も然もありなん――それはそうとして、玉肌を傷付けるなんて蛮行は見過ごしちゃ駄目でしょ
あら伊織ちゃん危な~い(彼越しに敵を凪払い)

全く、貴方達何しに来たの?
はいはい、御託は良いから二人仲良く男を上げてらっしゃい
戯れ合うなら後で彼女達も入れて楽しくね?

終始口以上に手を動かし攻勢
大きく薙刀振り極力広範囲の敵へ破魔の衝撃波
爪や喉狙い武器落とし
此等もまた女の武器――とはいえ、斯様な使い方は宜しくないわ
守りはUCとオーラで高め、近付く敵は武器受けで押し返す

あら、真珠の様に煌めき鮫の様に牙剥くなんて最高じゃない?


佳月・清宵
【花守】
流石ヘタレ野郎は言う事が違うなぁ?
その様子なら今年も一人虚しく浜辺で黄昏んのが関の山だな
二人して口だの手だの滑らせ回ってねぇでしっかりやれよ

つーか飢えたてめぇ(伊織)にゃ打ってつけの舞台だろうがよ
どうせなら野太い声よか黄色い悲鳴の一つや二つでも引き出してこい
俺は淡々と仕事序でに物見遊山に来たに決まってんだろ、アレと一緒にしてくれるな

興に乗る儘、先制で狐火踊らせ敵の爪先や喉焼き潰す
おまけに火や連れの影から早業で毒の手裏剣も放ち、目潰しや麻痺攻撃も重ね阻害
不意にフェイントや残像加え目眩ましも行う傍ら、敵の動きは確と探り見切る

そりゃ誉め言葉――か
おい小町、てめぇも日輪以上に素がぎらついてんぞ



●その意、明瞭ならば
 軽やかに躱した爪の先が、艶やかな黒髪の先を絶つ。ぎりぎりの駆け引きに赤い瞳を輝かせて、黒き刀を手に、踏み込むのだが。
「ねぇ、姐サン――やっぱオレ帰ってもイイ??」
 呉羽・伊織(翳・f03578)の顔色は冴えない。何なら溜息すら吐きそうだ。
 薙刀を豪快に振り下ろした花川・小町(花遊・f03026)が、艶やかな着物の裾を翻して、素早く跳躍しつつ、そんな伊織を叱咤した。
「もう、窮地の乙女を見捨てて帰るなんて男が廃るわよ?」
 まったくだ――同意の声は心底惘れたように響いた。だが、その本心は、ツラを拝めば解る。
「流石ヘタレ野郎は言う事が違うなぁ? その様子なら今年も一人虚しく浜辺で黄昏んのが関の山だな」
 にやにやと人の悪い笑みを浮かべた佳月・清宵(霞・f14015)が、伊織を詰る。
 ――ひとつ言えば、二倍で攻められる。
 解っちゃいるが、腑に落ちない。オレはそう非難される事を言っただろうか。
「だってあの方々、俺よかよっぽど逞しそーじゃん!?」
「キャーひどーい!」
 シッカリ聞こえているようだ。猟兵達が次々駆けつけて、余裕が出てきたのか、海賊達は割と『誰が好みか』とか実は囁き合っている。
 わかってないわねぇ、と小町が頭を振る。
「まぁ戦士でもあるならちょっぴり勇壮な面も然もありなん――それはそうとして、玉肌を傷付けるなんて蛮行は見過ごしちゃ駄目でしょ」
 ほら、女の私だって、こうして戦っているわけだし。言いながら、迫り来る呪われた船首像を一度、薙刀の柄で突き放す。
 彼女の言葉に、へーへー、と伊織は適当に頷く。
「なんなら姐サン一人でも、下手に俺が手ェ出すよか豪快に暴……」
「あら伊織ちゃん危な~い」
 ひゅっ、と返した刃が伊織の頭を掠めて、船首像に向かう。慌てて身を屈めなければ、たぶんばっさりやられていた。
「いやー勇姿が眩しいな~!!」
 喉から出掛かった言葉を呑み込み、伊織は小町を褒め称える。
(「今俺ごと叩きのめしかけたのは気のせいだよネッ」)
 いやはや、うっかり手が滑って殺しはすまいが、ざっくりと斬新なカットくらいは施しそうだ。しかも、良かったわね男が上がったじゃないとか言う。絶対言う。
「二人して口だの手だの滑らせ回ってねぇでしっかりやれよ」
 今度は清宵が憮然としている。腕を組み、戦場から離れたところで突っ立っている――ように見えて、ちゃんと狐火を操っている。
 的確に直接斬り結ぶ小町と伊織を援護しながら、金の眼光鋭く、睨めつける。
「つーか飢えたてめぇにゃ打ってつけの舞台だろうがよ、どうせなら野太い声よか黄色い悲鳴の一つや二つでも引き出してこい」
 いやいやいや、伊織は全力で迫り来る爪を斬り落としながら、叫んだ。
「黙れよ邪魔狐ソコまで飢えてねーわそーいうアンタが男見せてくりゃ良いだろ! ただでさえ何かアレな絵面なのにその腹立つ面でチラチラ視界に入ってくんな!」
 ほう、と顎を撫でて、清宵が笑う。
「俺は淡々と仕事序でに物見遊山に来たに決まってんだろ、アレと一緒にしてくれるな」
 結局、収拾が付かない。
 薙刀が薙ぐ――刃は船首像の肉を裂くが、放たれた衝撃波は、口論する二人の間を駆け抜けていった。
 ぎこちなく振り返った伊織と、忌々しそうに舌打ちした清宵の視線を受けて、小町は嫋やかに微笑んだ。
「全く、貴方達何しに来たの? ――はいはい、御託は良いから二人仲良く男を上げてらっしゃい。戯れ合うなら後で彼女達も入れて楽しくね?」
 ――倒すべき敵がいて、助けを待つものがいる、その事実はいつもと同じなのだ。
 きらきらとした眼差しを送ってくる海賊達は――伊織の価値観からすると全くの対象外であるが――儚い被害者なのだ。
「アッ、危ないッ!!」
 その内のひとりが、警告を発した。振り返る事も無く身を屈め、伊織は爪を伸ばして跳び掛かってきた船首像を躱し、片腕を素早く斬り落とす。
 捕らえようと蠢く触腕を後ろへ退いて躱しながら、無手を振るった。放たれたは闇色の暗器、影の内を奔れば、元より機敏に動くわけでもない船首像は回避出来ぬ。
 一体、一体仲間が失われていく――嘆くような、悲鳴のような歌声を、一体の船首像が奏で始めた。すると、同調するように皆が歌い出す。
 猟兵にとっては、耳障り。だが船首像たちにとっては心地好いもの――深々抉られた傷が、断たれた爪が、再生していく。
 そうねぇ、小町は嘆きに同調するかのように、金の双眸を薄くする。
「此等もまた女の武器――とはいえ、斯様な使い方は宜しくないわ」
 弧を描いて振り上げた薙刀を、大薙ぎ、空を一閃する。すかさず刀を返し、幾重にも斬撃を放つ。
 衝撃波は、多段と、船首像の喉を掻き裂いていく。
 歪な歌声はぷつりと途切れる。しかし、その範囲外からの歌声で、反り返り赤い傷口がうぞうぞと盛り上がり、再生しようとする。
「ハッ、そうはいかねぇよ」
 清宵が細かく配した狐火が、歌を紡ぐ喉を灼く。腕組み高みの見物であった彼が、いつしか小町の影、伊織の影を渡りながら、毒を孕んだ手裏剣を打つ。足を縫い止め、腕を止め、二人に迫る敵を事前に払った。
 伊織はその中央で、躍る。鮮やかな剣戟で船首像を絡め、躱し、撃ち落とす。弱った船首像を集めるように、わざと大きく立ち回る。
「ヒューヒュー! お兄さん格好良いッ」
「そこよ、そこ! 首を斬ってしまって! 一息に!」
 素晴らしい殺陣を賞賛する歓声が響く。時々割と的確な指示が飛んでくるのは、やっぱり海賊なんだなあ、と思ってしまう。
 すかさず炎を手元に戻し集め、煌煌と燃える紅球を清宵が解き放つ。
 眩さと、熱に、次々と船首像が呑まれていく――。
「あら、綺麗。地獄の炎のよう」
 更に、小町の豪快な一刀が集まった船首像どもを撫で斬った。
「そりゃ誉め言葉――か。おい小町、てめぇも日輪以上に素がぎらついてんぞ」
「あら、真珠の様に煌めき鮫の様に牙剥くなんて最高じゃない?」
 ふふふ、くくく、と笑い合う二人の傍で――船首像の死骸の下から這いだしてきた伊織が、投げやりに叫んだ。戦闘における疵は無であるが、既に妙に疲労感で躰が重い。
「嗚呼……どーか早く色んな意味で鎮まって!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャック・ジャック
潮干狩り等、別段心惹かれもしないのだが
折角の夏だもの
想い出のひとつを増やしましょうと謳われては、断れまい

囲われていたが故世間に疎い彼女の青石英は
相も変わらず爛々輝いて

――嗚呼、お望みの侭に

先ずは彼女達の助力と成ろう
衣嚢少なき夏衣なれど
羽織る黒衣に抜かりは無い

馴染む短刀を四方に放れば
ほうら、隙が生まれたぞ

倣う彼女達の仕来りに則り
最期の一打は其の舶刀に託そうか

お前達の手で、終わらせると佳い

別に構いやしないさ
元より表舞台での演舞は好まない
椽の下で踊る事こそ
欠けた此の身には十分すぎる演目だろうて

さぁ、前を向け
面倒な醜女は、未だ其処に在るのだから



●陰と躍る
(「潮干狩り等、別段心惹かれもしないのだが――」)
『折角の夏だもの。想い出のひとつを増やしましょう』
 そう言われては、ジャック・ジャック(×××・f19642)には断る理由もない。
 澄んだふたつの青石英は、きらきらと無邪気に輝いていた。深窓の貴婦人。無垢なるそれにじぃっと覗き込まれ、もっと様々なものを見せてと、言葉もなくねだられたならば。
 逆らえようか。逆らえまい――逆らう気も、無い。
「――嗚呼、お望みの侭に」
 じりと前に進む。海辺の装いなれば、肌をいつもより晒している。こんな姿で刃を交わすかと嗤う心も過ぎるが――袖を通した薄手の黒衣があれば、充分だ。
 何の気負いも無く戦場へと進み出て、彼は己の存在を報せるように手を広げて見せた。
 そう、良き夏の想い出を紡ぐために、なさねばならぬことがある。
「先ずは彼女達の助力と成ろう」
 ジャックを認め、呪われた船首像どもは大きな眼で力一杯睨めつけてくる。その程度の恨み辛みでは、己を竦ませる事などできぬと裡で笑う。
 細く息を吐く。極自然な行動の最中、ジャックは両手を閃かせた。
 隠した暗器を手に取り、四方に放つ――その所作は、誰にも捉えられぬであろう。
 実際、威嚇を続ける船首像に、悠然と歩むジャックを忘我と眺める海賊達、どちらも、その近くに得物が奔っていることに、気付かなかった。
 触腕を捕らえるように、刺さる。痛みに驚いた時には、もう遅い。
「ほうら、隙が生まれたぞ」
 楽しそうに囁けば、彼の耳元で、くすくすと同調する笑い声がある。
 ――ああ、見て。あんなに必死。
 応じて、灰眼が周囲を一瞥する――くわりと目と牙を剥き、縫い止められた手脚を削いで、船首像が伸び上がる。
 迫るものへ、直に握った暗器をねじ込み、軽く跳び退く。戯れのように。
 再び暗器を放つ。次は、頭を。胸を、容赦なく貫いて肉の屑へと変えていく。
 いとも容易く、敵を翻弄する最中。
「――縄は断った」
 不意に、ジャックは告げる。
 どういう意味かと目を瞬かせる海賊達へ、彼は続ける。
「お前達の手で、終わらせると佳い」
 彼の言わんとすることは、直ぐに解った。海賊達が軽く身体を動かせば、腕も脚も自由だった。
「ワッ、いつの間に」
 ――無論、最初に暗器を放った間に、である。さっと立ち上がって武器を手にした海賊達であるが、こわごわと敵を見る。
 なにせ、自分達だけでは太刀打ちできなかった相手だ。
「そりゃ、怨みはらさでおくべきか――だけど、でも好いの?」
 美味しいとこ取りだけど、という問いに、ジャックは喉で笑う。
「別に構いやしないさ――元より表舞台での演舞は好まない。椽の下で踊る事こそ……欠けた此の身には十分すぎる演目だろうて」
 浅く刻んだ笑みは、自虐に似ている。その本心は、恐らく彼にしか解らず、問うたところで野暮な質問に答えはすまい。
 誰かの声に頷くようにして、彼は振り向く。その一挙一動に隙がないのも、海賊達には伝わる。
「(うん、背筋がひやりするような、危険なニオイ漂わせる好い男だけど――)」
「(――うーん、何処からどう見ても、お一人様なんだけれど、何となく誰も寄せ付けない『二人の世界』を持っている気がするわっ)」
 海賊達はこそこそと、囁き合う。
 さて、そんな言葉が耳に入ったか否かは解りかねるが。ジャックは演技がかった動作で、軽く振り返った。
「さぁ、前を向け――面倒な醜女は、未だ其処に在るのだから」

大成功 🔵​🔵​🔵​

蓮条・凪紗
ファルシェ(f21045)と

真珠の浜とかめっさ興味しかあらへんわ
けど、宝石の数だけ悲劇があって、今もまた…ってこっちゃな

で、エルフの海賊はん達か
個性なぁ――ははっ、個性的なエルフは知り合いにおるけどアレ以上は…
(見る。二度見)
いや…その、前言撤回や
まだ別嬪やし見れんことないけど
その地声…!
これ個性で済ましてエエ話なん!?

否定はせぇへんけど
うっわ、惚れさせに行く?
コイツ心広いわー、すごいわー
(棒読
まぁエエ、仕事はきっちりやるさかい
術に使ぉた宝石代は後で海賊さん達に請求しよか

符の代わりに放つトルマリンが電気を帯びながら楔となって敵を捕らえる
その下手くそな歌は終いや
オレはポップな曲の方が好みやからな


ファルシェ・ユヴェール
凪紗さん(f12887)と

善き想いを託されれば、石はより輝きを増すもの
真珠の浜の美しさは、まさに仲間を弔うこころなのでしょう
では、弔う側が亡されてしまう前に参りましょうか

……なるほど
いえ凪紗さん、少々個性的かもしれませんが
『彼女』達は救出対象であり後の味方
こういう場合に於いては否定せず流れに乗るのが得策かと

すっと息を整え
捕われの海賊達に声を届かせる
――助太刀に参りました、誇り高きレディ

敵の意識共々此方に向けば
懐より出した真珠を触媒に
真珠色に輝く『騎士』を創り出す
守備をお願いします、と手短に命じ
自身も『騎士』と共に前へと

凪紗さんの術を通し易いよう
触腕を仕込み杖で受け、斬り払いつつ隙を作りましょう



●玲瓏たる騎士、炯炯なる雷
 辺りに満ちる潮の香りに、転送の完了を知る――ひとりの青年が、ふう、と息を零す。
「真珠の浜とかめっさ興味しかあらへんわ――けど、宝石の数だけ悲劇があって、今もまた……ってこっちゃな」
 蓮条・凪紗(魂喰の翡翠・f12887)の神妙な言葉に、ファルシェ・ユヴェール(宝石商・f21045)は静かに頷いた。
 未だ見ぬ、真珠の浜。それは単なる名称ではなく、真の宝石を孕んだものだという。
 宝石に縁深い二人なれば、興味は尽きぬ。
「善き想いを託されれば、石はより輝きを増すもの。真珠の浜の美しさは、まさに仲間を弔うこころなのでしょう」
 ファルシェの声音から滲む石への思いに、実に宝石商らしいと凪紗は笑う。
「では、弔う側が亡されてしまう前に参りましょうか」
 誘うように首を傾げば、金紗の髪がさらりと揺れる。
 せやね、と軽やかに凪紗が現場を見やった。
「で、エルフの海賊はん達か。個性なぁ――ははっ、個性的なエルフは知り合いにおるけどアレ以上は……」
 彼の焦げ茶の瞳と、エルフの宝玉が如き碧眼がばちっと合う。
 白い貌、長い耳、潤んだ瞳――、一次元であれば、然程の違和感はない。
「きゃあ、今度はオリエンタルなお兄さんよ!」
「向こうの彼は正統派の美形! もうキャパオーバーよっ」
「気を確りしなさい、アザレア。船長のピンチは続いてるのよ――」
 きゃあきゃあと、駆けつけた猟兵たちに喜んでいる。ちょっと自分達の立場を忘れるくらいに、暢気だ。まあ、既に縄は解かれて、猟兵に守られ、ぴんぴんしているのだから実際元気だ。
 その声が、まあまあ、きんきんと響く。女性的では無く、確りと野太いけど。
「いや……その、前言撤回や。まだ別嬪やし見れんことないけど、その地声……! これ個性で済ましてエエ話なん!?」
 同意を求めるように振り返ってきた凪紗を、ファルシェは深く思案するような姿勢で見つめた。
「……なるほど。いえ凪紗さん、少々個性的かもしれませんが、『彼女』達は救出対象であり後の味方――こういう場合に於いては否定せず流れに乗るのが得策かと」
「否定はせぇへんけど」
 まあ、一理ある。だがそのまま呑み込んで良いものか。
 そんな凪紗の横を通り抜け、前へと進んだファルシェは、すっと息を整える。
「――助太刀に参りました、誇り高きレディ」
 朗々と宣言するや、懐から真珠を取り出し――それを触媒に、真珠色に輝く『騎士』を創造する。壮麗なる騎士は、ファルシェが無敵と念じる限り、無敵の存在。
「守備をお願いします」
 然し彼も仕込み杖を手に、光を帯びて乳白に輝く騎士に並び前へと進んだ。
 ――後に、海賊のひとりが振り返って言うところによると、『あの瞬間、彼から後光がみえた。イケメン尊い』――らしい。
 そして、その空気は、同行していた男にもしみじみ伝わっている。
「うっわ、惚れさせに行く? コイツ心広いわー、すごいわー」
 感情は全て死んだ――ような表情と声音で、凪紗が嘯く。
 最後に深い溜息をひとつ。それで切り替える。友ほど寛容でなくとも、そればかりに固執して本質を見失うようなことはない。
「まぁエエ、仕事はきっちりやるさかい。術に使ぉた宝石代は後で海賊さん達に請求しよか」
 深い笑みを口元に刻んで、霊符代わりに手にするはトルマリン――。
 魔力の高まりをそれに見たか、呪われた船首像どもは牙を剥き、二人へと跳び掛かってきた。
 遮るように、ファルシェが騎士と共に駆る。
 闇色の下半身が蠢いたかと思えば、触腕がひょうと風をきって唸る。湾曲した軌道は間合いを掴みにくかったが、騎士が全身で受け止める。
 ファルシェは軽やかに地を蹴って、仕込み杖を解き放つ。触腕を斬り裂く様は舞うように。艶やかな一閃は、迫り来る数数の腕を落とし、ファルシェにそれが届かぬよう騎士は船首像を押しのける。
 一方的な攻勢。彼が、生み出した騎士の能力に疑問を憶えるはずもなく。なれば真珠の騎士は呪われし爪に掻かれようが、無傷の儘だ。
 無惨と負傷した同胞を、憐れむ歌が聞こえる――。
 歪な嘆きは、旋律そのものが不快。然しそれでよいのだ。共感するのは、仲間だけで良い――その傷口が修復していき、斬り落とされたはずの触腕が元の形に戻っていく。
 ちらりと、紫の瞳が凪紗を見た。任せとき――詞では無く表情で応え、彼は宝石を掲げた。
「建御雷命よ、其の神鳴の御業を此処に」
 奉ずれば、落ちるは雷霆。
 トルマリンが凪紗の手の内で砕ける代わり、光の楔が次々と船首像たちを貫いていく。
 途端、その喉は歌を失う。
「その下手くそな歌は終いや。オレはポップな曲の方が好みやからな」
 途切れた旋律に、どうしたことかと目を瞬かせる船首像達を襲うは、鋭く前へと繰り出されたファルシェの刃――凪紗もまた翡翠の爪を備えて、加勢せんと脚を撓ませたところで。
「あの彼の技、渋いわァ――わたしは好みねぇ」
 そういうの、士気が下がるから、もっとひっそり囁いてくれはる――務め、無表情に徹した凪紗は振り払うかのように敵へ疾駆し、爪を立てたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

スカーレット・ロックハート
潮干狩り、ねえ
むしろ俺らが狩るのはバケモン共か
ま、俺にはそっちの方が性に合ってるけどな
今すぐ倒してやるから、かかってきなよ

生前がどれだけ美人だろうと、今じゃ魂までもが醜い異形の怪物だ
ウミヘビだったらそれらしく、三枚に下ろして捌いてやるぜ
まずは薬を打ってドーピングして、力を増幅させて戦うぜ
そっちは毒を使うようだが、毒には毒を、ってな
悪いが俺には効きやしねぇ
そして相手の速度を上回る、高速移動で攪乱しながら
なまくら刀で斬り刻んでやる

自慢の美貌を傷付けられて、どんな気分だ?
尤も、そんなナリじゃあ元の姿もとっくに台無しなんだが
そんなてめぇらには、綺麗な海より地獄の方がお似合いだ
悪いがこれで終わらせてやる



●紅の閃烈
「潮干狩り、ねえ――むしろ俺らが狩るのはバケモン共か」
 煙草を手に、細く息を吐く。紫煙を適当に吹きつけて、煽るは己を取り囲む呪われた船首像。寄りにも寄って、何故こんなど真ん中に、なんて言葉を彼女は口にはするまい。
 実際、スカーレット・ロックハート(叛逆の緋・f24479)はニヤリと笑った。
「ま、俺にはそっちの方が性に合ってるけどな。今すぐ倒してやるから、かかってきなよ」
 船首像達へと告げるやいなや、自身に特別製の薬を打つ。
 毒には毒を。精神が昂り、一時的に超常的な力を引き出す劇薬であるが――彼女は臆すこと無く其れを使う。尤も、それが劇薬となり得たのは、遙か昔、通り過ぎた日の事だ。
 そして、赤き鞘より曇り無き刀を抜き払った――ゆるりと、スカーレットがそういう行動を取ったと視認できたのは、そこまでだ。
 烈風が戦陣を乱す。
 突如と吹き荒れる飆が、船首像の身体を膾斬りにした――空に、地に、朱が、鮮烈に刻まれる。
 真紅の髪を躍らせ、スカーレットは不敵と唇に弧を描く。
「生前がどれだけ美人だろうと、今じゃ魂までもが醜い異形の怪物だ――ウミヘビだったらそれらしく、三枚に下ろして捌いてやるぜ」
 言葉通り、彼女はただ距離を詰め、斬っただけだ。ドーピングによって限界まで戦闘速度をあげ、まさに閃光の如く動いただけ。
 死した身を滅ぼすは、衝動が枯れた時のみ。肉体を傷つけるほどの速度を得ても、彼女は嬉々と刀を振るう。
 さりとてそれは怪物たちも同じ事。仮にそれを嘆けども、死を恐れず、爪を突きたて敵を引き裂こうと腕を伸ばす。
 四方八方掴まれる前に、スカーレットは跳躍する。船首像そのものの腕を、背を、頭を蹴って距離を取り直すと、一列に並んだ瞬間に疾駆する。
 薙いで、振って。
 彼女が駆け抜けた後には朱色の花が咲く。振り上げた鋒から溢れる赤き珠すら、美しく輝いた。無情なる虐殺を続けながら、その貌は楽しそうに笑っている――然れど、そんなスカーレットを、怖れるものは此処にはいなかった。
 次々と立ち塞がり、無謀とも思わず、跳び掛かってくる。負傷したモノはむしろ身軽に、息絶えるまで立ち塞がり続けた。
 そうすればいくつかの爪はスカーレットの肌を引っ掻き、傷つける。だが、そんなもので彼女が止まろうか。
「自慢の美貌を傷付けられて、どんな気分だ? 尤も、そんなナリじゃあ元の姿もとっくに台無しなんだが」
 詰る言葉は、遠くに放る。殺して、殺して、漸く首魁が見えて来た。
 全く、どれほどの戦力で、ただの海賊を追い詰めたのだと、嘲弄する。
 金切り声を上げながら彼女達は骸と化して――それもいずれ消えていってしまうコンキスタドールどもの胎へ、滑らかに刃を埋めて、引いた。
「そんなてめぇらには、綺麗な海より地獄の方がお似合いだ――悪いがこれで終わらせてやる」
 血の霧けぶる中で、凄絶な笑みで――彼女はそれを捉えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャハル・アルムリフ
師父(f00123)と
悲劇の割には楽しげよな、あの者ら

厳つい女海賊と
隣の師を何となく見比べ
大丈夫だ
幼少より唯一傍に居たのが師父故
今更見掛けなど驚くに足らぬ
堂々言い切る

しかし背に残る妙な感覚
いや、ええと――長い物には長い物
【怨鎖】で蛸足絡ませ動きを鈍らせ
師の魔法から逃げられぬよう
貴様、抜けようとするな

美しき蝶へと上がる甲高い悲鳴に
思わず尾羽が逆立つ
これだ――この微妙に太く
地獄から響く怪鳥の声が如き
一体どこから出ているのか
ぎくしゃくと師の陰に隠れ、きれない
…師父よ、俺は少し気分が

船長とやら、それから元船員
――我が師の齢は船長と変わらぬぞ
俺が知る中で最も美しき輝き
悔しかったら骸の海より遣り直すがいい


アルバ・アルフライラ
ジジ(f00995)と
個性的とは聞いておったが…そう来たか
ふふん、超越した美ならば私も負けておらぬでな
…ジジ、何が大丈夫なのだ?
彼奴の言葉に首を捻りつつも敵に対する警戒は怠らず
黄色い声に、熱気を帯びた眼差し
全てを向けられる従者に笑いを堪えて

石突で地を叩き、魔方陣を描く
召喚するは【女王の臣僕】
芯まで凍てつくが如き永劫の氷棺
征服者と成り果てた海賊共の
最期に相応しい美しき死を贈ろうぞ
治療の猶予なぞ与えられるものと知れ
良くやったジジ、褒めて遣わす

一挙手一投足、ジジの様子を観察すれば
事ある毎に此奴の反応に噴出しそうになる
はっはっは、そう気にするな
お前も何れ慣れる

…って待ておい
何故此処で私の齢を口にした?



●渾沌たるは、新しき学び――であるか否か。
「個性的とは聞いておったが……そう来たか」
 ほーう、とアルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)は腕組み、佇んでいた。
 さらさらと靡く髪は、スターサファイアであれば潮風にも負けぬ。いっそ明るい蒼穹の下、輝きは増そうというもの。
「ふふん、超越した美ならば私も負けておらぬでな」
 そんな自分の外見を、ちゃんと自覚しているアルバは悠然と微笑んでいる。
 彼を師父とする従者にとって、そういう言動には慣れたもので、いちいち驚いたりしない。ただ、代わりに周囲を注意深く窺う。
 アルバもそういう事には目敏い質ではあるが、うっかりすることはあると思っている。
 ――さて、十数人ほどの海賊たちは既に拘束から解放され、今はほぼ安全を自分達で確保できている。そして、猟兵たちの戦いにはしゃいでいる。
 海賊たるもの、派手な戦いっぷりに興奮するということは不思議なことではない。
 だが、『彼女』達の瞳は本当にきらきらと夢見るように輝いていた。
「悲劇の割には楽しげよな、あの者ら」
 ぽつり、従者たるジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)はいう。未だに敵は残り、船長とやらは危機にあるようだが、たぶん忘れている。あれは忘れてる。
 ふと、ジャハルはじっと海賊達を、じっと眺めた。
 エルフの美なるものを誇る外見は、一般的には整っていて美しい。線は細いが、確り筋肉をつけているものが殆ど――曰く、ついちゃうのよ、とのこと――身に纏うものも、海賊業に差し障りの無い程度に華やかに飾っている。
 そして、隣の師と見比べる。
「――大丈夫だ」
 今更見掛けなど驚くに足らぬ、と堂々と言い放って見せた。
 聞き咎めたアルバが、軽く眉を上げて視線を送る。
「……ジジ、何が大丈夫なのだ?」
 悟ったようでも無く、真の疑念から尋ねるが、ジャハルは何とも答えなかった。言えようか。言ってはならぬ。何となく、そういう本能が働いた。
 まあ、良い。アルバも然程拘っていたわけでもない。気を取り直し、仕込み杖の石突きで岩場を小突けば、浮き上がる魔方陣。
「控えよ、女王の御前であるぞ」
 厳かに告げれば、無数の青き蝶が羽ばたき、視界を埋めた。ゆらりゆらりと揺蕩う蝶たちから溢れる鱗粉が青く煌めき岩場を染める。
 その光景は絶佳の一言であるが、呪われた船首像どもを、冱て、痺れで容赦なく苛む力の顕現。
 きゃあきゃあと青い蝶へはしゃぐ海賊たちを尻目に、自由を奪われた船首像は怒りに牙を剥く。
 仲間を救おうと、触腕を撓ませアルバへ迫ろうとする船首像へ、ジャハルは進路を塞いで立つ。逃しはせぬ。師に害を為そうとするならば、更に赦しはせぬ。敵を見据える鋭い眼差しには、その意志が固く宿っていた、けれど。
「いや、ええと――長い物には長い物」
 奇妙と落ち着かないのは、何か少し遠くから、野太い歓声が聞こえるからだろうか。背筋と尾が、連動して戦慄く。
 ぎりりと拳を握って、爪に血の雫を纏わせると、奔る。
 腕を振り抜けば、雫が弾け、双方の間で爆ぜた――黒く染まりゆく血で編まれた鎖で、脚を搦め捕る。
「貴様、抜けようとするな」
 女王の下より、逃れぬよう。
 膂力で以て纏めて締め上げる。それで縊り殺してしまったとしても、なんの問題もないのだ。
 だがそれらは、自分をその場に留める原因となる肉を引き千切ってでも、前に出ようとしていた――それを助けるは、恨み辛みを籠めた怪物の歌だ。
 耳障りな歌に、ジャハルは軽く眉を顰めた。だが、それ以上に、肌を泡立てるものがある。
「おまえたち、さっきから煩いわよ! こんなに数を集めておいて、全員逃してどうするの!」
 遠くより、叱責の声が響く。その声は船首像どもにとっては、畏怖すべきものであり――。
「色男がいるからって、きゃーきゃー色気づいてるんじゃないわよ、このクソアマもどき!」
 取り敢えず、恫喝に迫力がある。海賊だからか。
 ジャハルの尾羽が、思わず逆立つ。
(「これだ――この微妙に太く、地獄から響く怪鳥の声が如き……一体どこから出ているのか」)
 何を思ったか、ジャハルはぎくしゃくとアルバの元に戻ると、彼と比べて小さなその背に隠れた。
「……師父よ、俺は少し気分が」
「はっはっは、そう気にするな――お前も何れ慣れる」
 何れ慣れるとは――。
 一体どういう境地なのだろうか。
 じとりとジャハルは背中越しにアルバを見つめ――恐らく説明できぬ戸惑いに、行き場の無いものを眼差しで表すしかないのだろう。
 彼がそんな風に自分を見るのも、なかなか久しぶりで、図体は大きくなったが、未だ未だ可愛いものだなどとアルバは暫し悦に浸る。
 ひらひらと、蝶の鱗粉は舞い続け、船首像を見事な氷の彫刻へと変えていく――ほら、怖れるものなど何もなかろう。アルバの表情がそう語る。
 歌声も氷の内側に消えた。然るに、残るは猟兵たちに向けた歓声と嬌声、そして惨めにも配下を失った曾て仲間への罵声のみであった。
 キィィ、と憎らしげに表情を歪めたコンキスタドールと、驚きに目を瞠った船長を見やり――意を決したらしき従者が、前に立ち、武器を手に最後に聴くが良いと声を張った。
「元船員とやら。我が師の齢は船長と変わらぬぞ」
 その瞬間、場が凍り付いた。
 何だったら、アルバも凍り付いた。
「俺が知る中で最も美しき輝き――悔しかったら骸の海より遣り直すがいい」
 至って真摯な表情で、ジャハルは得物を手に斯く告げた――。
 須臾の沈黙を、じわりと破ったのは、堪え切れぬ海賊たちのざわめき――嘘、信じられない、なんですって。どんな秘法を――。
 美しく微笑んだ儘凍っていたアルバは、我を取り戻すなり、従者の主張に苦情を入れる。
「……って待ておい。何故此処で私の齢を口にした?」
 言ってやったのだという雰囲気で、真面目にジャハルは肯いて見せた。何処か自慢げすらある。
 うむ、何れ、彼も人の欲やら何やら、平然と受け流せるようになるだろうと思っていたが。
 ――少し、育て方を間違えたやもしれぬ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『殺戮航海士ヴェノム・サーペント』

POW   :    あらあら、隙だらけよ。
肉体の一部もしくは全部を【エラブウミヘビ 】に変異させ、エラブウミヘビ の持つ特性と、狭い隙間に入り込む能力を得る。
SPD   :    そんじゃ……かますわよっ!
【毒爪や毒投げナイフ 】による素早い一撃を放つ。また、【襟高の海賊服を脱ぐ】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    真実が美しいとは限らない。そうでしょう?
【誘惑と挑発 】を籠めた【手厳しい正論口撃】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【戦意と自尊心】のみを攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠枯井戸・マックスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●曾てカトレアと呼ばれたもの
「カトレアァァァ!!」
 解放された海賊達は、邪魔な船首像どもが全て斃された事で、漸く勇猛さを思い出した。一団に固まって、コンキスタドールと化した曾ての仲間へとぶつかっていく。
 猟兵の後詰めがあると思えばこそ、できた突貫だ。
 然し、そんなことになろうと思っていなかったカトレアは驚き、僅かに距離を取った。
「船長! 無事ですか!」
「ええ、大丈夫――」
 その隙に、既に痛めつけられていた船長を抱えて一斉に退く。元より、自分達では、あのコンキスタドールを倒せないと、既に身に染みて解っているからだ。
 後、ウミヘビとか毒とか嫌だ。
 深い溜息を吐いて、カトレアと呼ばれた海賊は、彼……彼女達を憎らしげに見つめた。
「それが、アナタの結論なの、カトレア」
 船長が問う。力に呑まれ、力を振るい、人々を虐げる。それが楽しいという、彼女の主張を――。
「ええ、感謝してるのよ。この試練。この結果――海賊を団ごと一掃出来る力を得て、とても嬉しいわ」
「……そう」
 もう、アナタはワタシ達の仲間ではないのね。
 そう船長は哀しげに囁くと、一転、表情を新たに、舶刀掲げ堂々と宣する。
「これより、海賊の掟に従い、カトレア――否、メガリスに触れて歪みしコンキスタドールの処刑を行う!」
 尤も、ワタシ達には殆ど手に負えないでしょうけれど――と自嘲して、彼女は猟兵たちに依頼する。
「掟を為すため――どうか、その力を我らにお貸しくださいませ」
ジャック・ジャック
醜女とは云ったものの
あの女……果たしてあれは女、か?
……まぁ、いい
あれは毒を遣うんだろう
出来れば此方としてもその類は避けたいんだがな
致し方無い
彼女の聲か、其処のの手捌きか
より優れているのはどちらの方か、決着を付けよう

常人なれば見逃す些細な変化をも
彼女の青石英は確と捉え得る
彼女の指示に耳傾け
一歩、また一歩と距離を詰めよう

試合うに不慣れな履物と足場なれど
他方に気を遣らずに済むのであれば、由無し事
先程見せた不意打ちは恐らく効かぬだろうから
確実にその首を捕れる距離まで近づいてから
一閃、振り抜こう

なぁに、衣嚢は羽織だけとは限らんて
猟兵たるもの、武器は全身に隠してこそ、だろう?



●ラストダンス
 はてさて、海賊達の歓声が猟兵たちの背を押す。他力本願とはいうまい。目の前で長い爪を尖らせる存在は、今まで彼らが滅してきたコンキスタドールとは違って手強いらしい。
 もっとも、彼はそんな事情を説明されても、得られる反応は、そうか、と頷く程度であろう――ジャック・ジャックは岩場を平然と歩んで、ふと零す。
「醜女とは云ったものの――あの女……果たしてあれは女、か? ……まぁ、いい」
 海賊達の中では、何の違和感も無さそうなので、良しとしておこう。
 斃すべきコンキスタドール――即ちオブリビオンに代わりは無いのだ。
 対峙した男に、曾てカトレアであり、今や 『殺戮航海士ヴェノム・サーペント』 であるものが残忍な感情を隠さない。
「あら、斬り裂き甲斐がありそう」
 そんな言葉に、ジャックは、肩を竦めて何も言わぬ。
 灰の双眸で気取った海賊の姿を一瞥し、「毒遣いか」と小さく零す。
「出来れば此方としてもその類は避けたいんだがな……致し方無い」
 互いの間合いの外で脚を止めて、ジャックは軽く目を瞑る。彼にだけ見える愛しい人の気配。その華奢な両腕が、ふわりと己の首元に掛かるような気がした。
「彼女の聲か、其処のの手捌きか――より優れているのはどちらの方か、決着を付けよう」
 ええ、と耳元で声が聞こえる。
 あなたを斬り刻もうなどといえる、傲慢不遜な敵を、斬り刻まねば。
『わたしの、あなた』
 鈴を転がしたような笑い声と共に、“彼女”の青石英は敵を捉える。
 ――嫌な気配を察したように、ヴェノムは赤い瞳を険しく細め、地を蹴った。
 あちらから来るか、とジャックは動かぬ。踵の尖った靴で、よく駆けると感心したように、構えている。それを油断とみたか、含みとみたかは解らぬが、ヴェノムは真っ直ぐに仕掛けると決め、
「そんじゃ……かますわよっ!」
 爪を交差させるように眼前に構え、跳んだ。
 ゆらり、と陰が揺れた。ジャックが無造作に一歩踏み込んだ。
 繰り出された爪は空を掻く。だが、そのまま無様を晒すほど、敵も弱くは無い。
 片足を軸に、くるりと転回したヴェノムはジャックに追いすがる。半身を捻ったような姿勢の彼からは、見えるかどうか。
 ――来るわ。
 然れど、確りと捉えるは彼の眼にあらず。どうするの、と揶揄うような声に、不意に微笑み、ジャックは軽く腰を落とした。
(「試合うに不慣れな履物と足場なれど、他方に気を遣らずに済むのであれば、由無し事――」)
 彼女の囁きを頼りに、身体捌きで、爪を凌ぐ。ひらひらと、羽織る黒衣がヴェノムを翻弄し、掴めそうで掴めぬ駆け引きを繰り返す。
 一度、距離を取り直すべく、互いに引く。
「まったく、目の毒だこと」
 嘯くはヴェノム――ああ、ジャックの『得物』が解らず、攻めあぐねているのか。
「いい加減、決めるわ」
 告げて、敵は爆ぜるように駆った。決める、といった通り、今までで一番速い。
 今度はジャック自身も緩やかに腕を振るった。半ば、素肌の無手だ。徒手で如何に合わせようというのか、侮りに顔を赤らめたヴェノムは声も無くナイフを投げた。
 片や、ジャックが笑みを深くしたのは、彼女の囁きに同意を示すため。身を傾け躱した彼の懐へ潜り込むように身体を落とした敵の行動は、全て『見て』いる。
 腰から肩へと振り上げられた爪の軌道を、後ろに倒れるように躱して、すかさず閃かせた手には、輝く鋏。
「なぁに、衣嚢は羽織だけとは限らんて」
 嘲るというよりは、諭すように。
「猟兵たるもの、武器は全身に隠してこそ、だろう?」
 歌うように告げ、ジャックはヴェノムの首筋に刃を滑らせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ハイネ・アーラス
海賊の掟。
我が船には生者など最早いなくとも——力を貸しましょう。

えぇ、真実が美しいとは限らず
されど、嘘が美しいとも真実が醜いばかりとも限らないでしょう?

貴方の美的センスを否定するわけじゃありませんが
というか俺の範疇外なので。
可愛いであればうちのペンギンさんの方がスーパー上ですので

幻惑の雨を此処に。飲み干すほどにこの身に馴染んだ毒
ですがほら、貴方を沈めるには十分

俺の毒で、俺の海で溺れてください
ふふ、反論できますか?

俺も幻海に沈み、斬りつけましょう
先に、上がってこられればナイフを投げて

戦意と自尊心が無くても、えぇ
今の俺には
あの人達にイケメンを押しつけ…、紹介する約束があるので

貴方はどうぞ海賊の掟へ



●海の底へ
 海賊の掟――その言葉に、ハイネ・アーラスは小さな吐息を零す。それを持ち出されては、その思いを軽んじるわけにはいかぬ。
 赤の双眸を軽く伏せて、頷く。
「我が船には生者など最早いなくとも――力を貸しましょう」
 そして軽い瞬きの後、涼やかな微笑を湛え、ハイネは敵を見つめる。値踏みするような眼差しが己に注がれているのを、挑むように見つめ返した。
「ふうん、気取っちゃって」
 カトレアこと殺戮航海士ヴェノム・サーペントは、わざと嘲るような笑みを湛えた。首筋を染める鮮血を掌で押さえて止めていた。常人であればそんな程度でどうにかなるはずもないが――それが掌を外した時、もう流れる血はなかった。
 露骨な挑発にも乗らず、ハイネはただ白銀のナイフを手に地を蹴る。深海の髪を靡かせ詰め寄り、真っ直ぐに刃を振り下ろせば、毒の爪で弾かれる。
 幾度か、試し合うように繰り返し、離れた――。
「なるほど、口だけでは無いようですね」
「アナタも――見かけほど脆弱じゃないのね」
 ヴェノムからの評価に、ハイネは苦笑した――背後では海賊達の声援が響いている。可愛いからって舐めるなよ、とかなんとか。ますます困った気分になるが、顔には出さぬ。
「ええ、そうね。綺麗な子。そして勇敢。海賊だというなら是非、部下に欲しいわね」
「ご冗談を」
 俺を傅かせようなんて――と言いかけ、色々と嫌な事を思い出し、閉口する。具体的には、長らくの夢が潰えたあの日の事とか――。
 なんだか、ひどく回りくどく傷付いた気がする。これが敵の口撃か。そうなのか。
「一体どれほどの宝石を詰んでくれるのでしょう? 俺は高いですよ」
 揶揄には、揶揄を。
 ヴェノムへ、ハイネは薄く笑みを返す。
「第一、センスが合いません。貴方の美的センスを否定するわけじゃありませんが……というか俺の範疇外なので。可愛いであればうちのペンギンさんの方がスーパー上ですので」
 ペンギン――それは知人曰く、ペンギンに理性を失う彼の、絶対的な真理である。
 戦場に連れて来られないのが残念ですが、と憂いて見せるのだから本物だ。そう、ペンギンさんのために、戦意を奮い立たせるのだ。
「深く、昏き海の底へとご案内しましょう」
 内側に渦巻く渾沌を一切表にせず、彼は誘い招くように手を広げた。
 忽然と、水が虚空で渦を巻き始める――何処からか集められた深い海の藍色には、毒々しいモノが混ざり――それをハイネが天に放てば、幻覚を齎す毒の雨が降り出す。
 肌を穿つように鋭い雨粒を、ヴェノムは平然と受けている。
「あはは、毒も、海も――アタシの故郷よ?」
 雨は何れ、海になる。けれど、このコンキスタドールの身体は、深海人の特徴を備えている。溺れることなどないと嗤う。
「毒と一口に言っても、様々でしょう?」
 商品を紹介するような語り口で、ハイネはゆっくりと頭を振る。
「俺の毒で、俺の海で溺れてください――ふふ、反論できますか?」
 とっぷりと海に沈み、毒を含んで――確かに耐性があるだけ、抵抗できるであろうが――この海は、容易に逃がしはせぬ。
 何より、既に傷付いている首筋に、毒が染みこんでいく。
 ヴェノムが憎らしげに表情を歪めた。苦痛よりも、如何に一矢報いるか、考えているようであった。その表情が、驚愕に変わる――幻覚が見えて来たのであろう。
 そう、毒は直接身を蝕むばかりではない。
 確りと効き目を確かめたハイネは、自分の紡いだ海へ、追いかけて、跳び込む。この海は標的のみを沈める――彼自身は、自在に浮かび、翻弄出来る。
 ナイフを手に、魚のように泳いで斬り裂く。
 もがき、浮上しようとするならば、それを阻止するように。
「アタシがっ……海で!」
 歯を食いしばり、爪で掻き裂き上がる。ハイネを捉えれば、機会があると踏んだらしい。
 ふふとハイネは微笑んで、弄ぶ。やはり、海は落ち着く。けれど、一緒に沈んでやるわけにはゆかぬ。
「今の俺には――あの人達にイケメンを押しつけ……、紹介する約束があるので」
 冷徹にあしらい、告げる――貴方はどうぞ海賊の掟へ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

筧・清史郎
らんらん(f05366)と

麗しく逞しい乙女達の頼みだ、断るわけがあるまい(雅スマイル
いまやオブリビオンとはいえ、乙女達にとっては嘗ての仲間
俺達に任せて、乙女達は己の身を守る事に専念してくれ

敵の動きに注視し、見切ってその動きや狙いを読む
残像等で翻弄しつつ機を待ち、隙あらば命中率重視UC
らんらんが全力で爪を揮える隙を作ろうか
俺は隙などみせはしない
ウミヘビも、刀の連撃と衝撃波で全て叩き斬ってやろう

向けられる声には、可能な限り微笑みで応えよう(らんらんにも

あの乙女達と過ごす日々も愉快そうではあるが、力を欲し堕ちたのか
せめてこの桜花弁が、来世への航海の道標となる様に
友と連携し、攻撃力重視のUCを見舞おう


終夜・嵐吾
せーちゃん(f00502)と

こう、なんというかこう…言葉に出来ぬ何かがある…
乙女…の頼み……はたして乙女でええんじゃろか(小声)
オブリビオン相手ならわしらの出番じゃもんな

ウミヘビじゃったら虚、かまわんのか?
乙女心はわからんの~
何はともあれ、向けられたならば借り受けた爪で
せーちゃんと息合わせて攻撃を

そいえば先程のせーちゃんへの声援すごかったの
……
キャアアアせーちゃん様~!(ちょっと高い声
いやあそんどったごめん
わしに雅スマイルしても何も出んよ!

遊びもほどほどにオブリビオンになってしもた海賊を倒そう
次は真っ当な海賊に…海賊に真っ当とかあるんじゃろか
まぁええか
オブリビオンにならず生を謳歌できたらええね



●麗かなる遊戯
 這々の体で、カトレアこと殺戮航海士ヴェノム・サーペントは幻惑の海より転がり出た。
 無様なコンキスタドールの姿に、海賊団の面々は好き好きに罵声を浴びせる。
「海賊が溺れるとか笑い話にもなりゃしない!」
「ざまーみろ!」
 うむ、聴くに堪えないものである。けれど、それは海賊なりの送り出し方なのだろう。あの神妙な願いもまた真実。
 何より、喧嘩というのはそういうものだ、と彼はなんとも巧い纏め方をした。
「麗しく逞しい乙女達の頼みだ、断るわけがあるまい」
 愛刀の柄に手をかけて、筧・清史郎は微笑む。
 不意にふいた風が、彼の袖を、髪を揺らし、典雅なる風情を解き放って見せる。
「いまやオブリビオンとはいえ、乙女達にとっては嘗ての仲間――俺達に任せて、乙女達は己の身を守る事に専念してくれ」
 視線は当然、傍らの海賊達に向けている。
 キャーという定番の悲鳴から、せー様ーとか聞こえる。待て、いつの間に名前を知った。
 ――友のノリの良いこと良いこと、反面、むず痒い感覚に耳を二度三度動かし、終夜・嵐吾は視線を虚空へ彷徨わせた。
「こう、なんというかこう……言葉に出来ぬ何かがある……乙女……の頼み……――はたして乙女でええんじゃろか」
 呟きは、清史郎にも届かぬほど小さく。聞こえたところで、何を言っているんだ、乙女ではないか――と輝く笑顔を向けられるだけなのは解っているのだが。
 最早ツッコミも無粋な気はするが、そわそわと尾が落ち着かぬ。
 取り敢えず、現実と向き合うために、敵を見る。コンキスタドール、即ちオブリビオン。
「オブリビオン相手ならわしらの出番じゃもんな」
 すっと息を吐けば、慣れた心は落ち着きを取り戻し、敵と清史郎と己の三者――そして、忘れてはおらぬ愛しき眠り姫。
 彼が呼び掛ければ、その右目より首筋を辿った黒茨は、絡みついた腕の先、爪となる。
 肩を並べる清史郎もすらりと蒼き刀を解き放ち、隙なく構えていた。
「く、なんていう顔面偏差値――けど、もう二つの壁は乗り切ったのよっ!」
 うーむ、気を取り直したのに、肝心な敵がなんか言っておる。
「はは、褒められたぞ、らんらん」
 せーちゃんも絶好調じゃね、と本心を零しつつ、もう表情は笑みで固定されてしまって崩れない。
 ふん、隙だらけよ、と何とも勝手な台詞を投げつけながら、ヴェノムは両腕をエラブウミヘビへと変じる――縞柄で、そのものが人間の身の丈ほどあるウミヘビだ。それが両腕で鞭となり、猟兵ふたりの間を奔る。
 清史郎は真っ直ぐに斬り込んでいく。無造作ながら、交差するウミヘビを潜り抜けて、鋭い斬撃で翻弄する。然れど敵も闇雲ではなく、斬り下ろす刃を這うようにして、軸をずらして逃れる。
 伸び上がったウミヘビは、想像よりも早く距離を詰めてくる。毒のある牙を弾いて、清史郎は跳び退く。追撃をさせじと振り下ろされるのは、黒き爪。
 触れれば易く引き裂く一撃を、ウミヘビは海水に従い泳ぐように、ぬるりと避ける。
 自在にぐねぐねと身体をくねらせる様は、先程戦った船首像の下半身と種類は似ているが――。
「ウミヘビじゃったら虚、かまわんのか? 乙女心はわからんの~」
 嵐吾はつと零す。触腕には色々とざわついていた虚だが、今は平気なようだ。心強い事である。
 果たして、ヴェノムもなかなか頑張る。
「この半端なやりかたは――美しくないから、嫌だけれど!」
 時に半身もウミヘビに変えて、奇妙な姿勢で苛烈な斬撃の嵐を潜り抜ける。確かに無様ではあるが、脈絡もなくやられると、二人といえど追い切れぬ。
「キャアア! 頑張ってぇ!!」
「後ろ、後ろよ!」
 海賊達の歓声が、援護してくれる度に、清史郎は微笑みを向けてサービスしている。余裕を見せているのではなく、あくまで誠意を尽くしているのである――。
 実際、その瞬間でさえ、彼の剣が鈍る事は無い。器用なことである。
 ともすると、むずむずと、嵐吾の悪戯心が湧く。
 えいっと爪を振り上げてウミヘビをあぶり出しながら、
「キャアアアせーちゃん様~!」
 ちょっと高い声を出して混じってみる。
 軽く振り返った清史郎の口元は弧を描き、目許には悪戯を湛えた色を載せ――片目をパチッと瞑ってきた。
 その瞬間、ウミヘビが彼の頭上を飛ぶ――剣士は振り返らずに身を屈めて剣で迎えた。そんな状況でも艶美に微笑む友に、嵐吾は乾いた笑みを零す。正直スマンというやつだ。
「いやあそんどったごめん。わしに雅スマイルしても何も出んよ!」
「ははは、俺は楽しいぞ、こんな趣向も偶には好い」
 しれっと返ってきた言葉であるが――偶にか、偶にか。むしろ反芻してしまう。疑問系で。
 ほぼウミヘビ状態だったヴェノムが、両腕を残して人型に戻る。荒い息を吐き、薄く走らせた朱線が今までの応酬が戯れではないことを証明していた。
「くそっ、ふざけやがって」
 素で、罵る。
 憎しみに染まった顔を、冷静に二人は見つめた。その形相は性別どころか、蛇めいた、怪物に近いものがあった。
「あの乙女達と過ごす日々も愉快そうではあるが――」
 もう、戻る事は出来ぬ。メガリスの試練はカトレアなる海賊の命を奪い、コンキスタドールに変えてしまった。
 力を得たと哮るものは、実際は力及ばぬもの――なれば、深く膝を曲げ、清史郎が手首を返した。
 察した嵐吾が、ヴェノムを自由にさせぬよう、詰める。
 肩を振り抜く一撃が、朱を散らす。痛みより、追い込まれた事実に、敵は苦々しい表情を見せた。肉を掻きながら、深く捻り込む。
「次は真っ当な海賊に……海賊に真っ当とかあるんじゃろか――まぁええか」
 囁きかけた声音は、のんびりとしていた。憐憫を寄せたところで、もう戻してやることはできない。凪いだ灰青はそのままに、せめてただ願うことは。
「オブリビオンにならず生を謳歌できたらええね」
 薙ぎながら、横へと跳び退く。入れ替わりに、蒼き刀の斬閃が迫る――。
「せめてこの桜花弁が、来世への航海の道標となる様に――閃き散れ、黄泉桜」
 紅の双眸は真摯にヴェノムを見つめ――突進しながら放った清史郎の一閃は、鮮やかに、敵を斬り伏すのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ファルシェ・ユヴェール
凪紗さん(f12887)と

ええ、蘭の女王とも言われる花の名ですね
本人がその名で送られたいのならば、それでよいのではないかと

しかしながら毒物の類いは宜しくありません
私としても、あまりよい思い出がありませんので
……少々、邪魔させて頂く事に致します

先程とは逆、前に出る凪紗さんの少し後ろに位置取り
しかし先程と変わらず補佐を主にする心算で

UCで結ぶ宝石結晶は、葬いの石ジェットを模して
相手の爪の先、その毒に塗れた凶器を覆うようにと
嵩を増しては動きを阻害し
その鋭さを覆い隠し
いずれその場に縫い止めるよう

投げナイフの刃も結晶で弾けば
攻勢は凪紗さん任せに

私は商人ですから
荒事は程々にしておきますとも
などと涼しい顔で


蓮条・凪紗
ファルシェ(f21045)と

カトレアってそんな花あったなぁ…
花言葉は魅力とか魔力とかそんなやった思うけど
女王……まぁ、うん
――本名ちゃうよね?(疑問のベクトルずれだした)

蛇に化けはるん?
じゃあその皮引っぺがして琉球風の蛇味線に加工したろやないの
きっと良い音色奏でてくれるやろ
いや、その前にあんた自身が悲鳴を上げる番や
イイ声聞かし?

援護頼むわファルシェ
爪には爪を。翡翠の爪を伸ばして接近攻撃
相手の爪と鎬削り。顔を狙うと見せかけ、庇いに来た腕を裂くのが本命
血を得た所で衝動発動し、更に捨て身にて爪で鱗を抉り取る様に
受けた傷の分は生命力頂いて帳消し

はは、よぉ言うわ――さっきまで仕込み杖振り回しとったクセに



●葬礼彩る、黒玉と翡翠
「カトレアってそんな花あったなぁ……花言葉は魅力とか魔力とかそんなやった思うけど」
「ええ、蘭の女王とも言われる花の名ですね」
 蓮条・凪紗の疑問に、ファルシェ・ユヴェールが首肯する。華美なる花として、比較的よく名前の出るものだ。
「女王……まぁ、うん――本名ちゃうよね?」
 彼らの疑問に、後ろから海賊のひとりがお答えしようとばかりに顔を出す。
「アタシたちの魂の名前よっ!」
「元々可憐な名前だったら良かったんだけどねェ」
 しみじみと頷くものもいる。エルフだから、それなりに華やかな本名のものもいるらしいが、諸々配慮した結果、この海賊団では習慣的に花の名前をつけて呼び合うらしい。
「へ、へえ」
 然し距離が近い。
 凪紗が危ないから退いてな、と追い払う仕草をする傍ら、そう、魂の名――とファルシェは神妙な表情で敵を見つめた。
「本人がその名で送られたいのならば、それでよいのではないかと」
「そやなぁ」
 軽く目を瞑り穏やかに告げるその横顔に、凪紗はふと力を抜いて、同意する。
 ――奪わねばならぬものは同じ。海賊達は曰くユニークであるが、願っていることは明快で、理解も易い。
 焦茶の瞳が、改めて、斃すべきヴェノム・サーペントを見つめた時。口元は笑みを湛えていたが、双眸には真剣な光が宿っていた。
 ゆえに、ヴェノムも直ぐに身構えると、まずは片腕をエラブウミヘビへ変化させる。
「蛇に化けはるん? じゃあその皮引っぺがして琉球風の蛇味線に加工したろやないの――きっと良い音色奏でてくれるやろ」
 挑発を向けながら、前に出る。ファルシェの策は、さて巧く行くだろうか。
「いや、その前にあんた自身が悲鳴を上げる番や――イイ声聞かし?」
 両手の爪に埋め込んだ魔術翡翠が反応し、長く伸びる。
 キャアア、と彼方で悲鳴が上がる。いや、あんたらやのうて。
 今更ツッコミに追われるのも虚しいので、凪紗は無視を決め込んで、跳び掛かってきたウミヘビに応じる。爪で凌げば、巻き付くように絡まり距離を詰めながら、黒い爪が迫る。
「ふん、生意気ね。悲鳴をあげるのはアンタよ――」
 嗜虐的な笑みを顕わに斬り込んできたヴェノムが囁く。
 はっ、と吐き捨てるように声を零しながらも、毒の滴るような黒爪と翡翠の爪を噛み合わせた凪紗は、耐える。
 随分と負傷しているが、やはりそれを感じさせぬ力強さだ。
 競り合いを読んで、腰を落とし、ヴェノムの腹を軽く蹴り上げて離れる。腕に残る小さな疵は、ウミヘビの牙の跡だ。
「今の気持ちは何色ですか?」
 しかしその瞬間、ファルシェの涼やかな声音が、問う――たちまち、ヴェノムの爪を黒玉が覆い隠していく。
 葬いの石ジェット――ファルシェの紡ぎ出した、まさにフェイクではあるが、真よりも頑強に、ヴェノムの腕を捕らえる。
「しかしながら毒物の類いは宜しくありません――私としても、あまりよい思い出がありませんので……少々、邪魔させて頂く事に致します」
 軽く首を傾ぎ、品良く微笑めば、後ろで海賊達がきゃーきゃー言っている。
 彼の作り出す黒玉は、ただ爪を覆うだけではない。大きく成長し、その重みで均衡を崩し、或いは地に縫い止めるように成長する。
 宝石商の作るフェイクは――ファルシェが『葬送の心』を抱く限り、実に精巧であった。
「……クッ、けれど――」
 歯噛みしたヴェノムが、ウミヘビの口を使って、投げナイフを放った。
「ファルシェ――」
「ご心配なく」
 咄嗟にその名を呼んだ凪紗へ、彼は艶然と微笑む。仕込み杖の先、黒玉の結晶を広げて、ナイフを弾く。
「援護はお任せください、凪紗さん――私は商人ですから、荒事は程々にしておきますとも」
「はは、よぉ言うわ――さっきまで仕込み杖振り回しとったクセに」
 しれっと宣う男に惘れ半分、頼もしさを滲ませ、任せた、と声を掛けると、黒玉の引き剥がしに苦戦しているヴェノムへと爪を伸ばす。
 咄嗟と牙を剥いたウミヘビの鱗を削ぐように滑り、身の内側に隠した片腕で、ヴェノムの顔を狙う。
 庇うように、儘ならぬ重い腕を上げれば、その袖口を浅く掻き裂いて、凪紗は笑った。
「その魂、喰らう…!」
 その血を得た翡翠の爪は、より鋭く凶悪に――美しく輝いた。
 生命力を求めて貪欲に命を求める翡翠が、もっとそれを寄越せと伸びる。ウミヘビの横っ腹を貫いて、力任せに引き落とし――五指を纏め、無防備となった肩を深々と貫いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

スカーレット・ロックハート
力に呑まれて、同胞を裏切り、曾ての仲間を手に掛ける
そういう絵に書いたような悪党っぷりは嫌いじゃねぇぜ
その方が、こっちも遠慮なく力を振るえるからな
俺らを相手にする以上、ここがてめぇの死に場所だ

バケモン退治をするならコイツ(バルバロッサ)の出番だ
一度暴れ出したら、捌く程度じゃ終わらねぇ
バラしてミンチにしちまうかもな
だからせいぜい……覚悟しな

理性を捨てて、餓えた獣の如くに斬りかかる
相手が距離を取ったら火炎放射器で焼き炙り
殺戮衝動に駆られるが儘、ひたすら敵を斬り刻む

この身がどれだけ傷を負っても構わねぇ
捨て身の覚悟で敵を殺す事だけ考えながら武器を振るう
跡形残らず貪り尽くし、全て朽ち果て、息絶えるまで――



●朱の獣
 新たな煙草に火をつけながら――スカーレット・ロックハートは鋭く双眸を細めて、ヴェノム・サーペントを見つめた。
「力に呑まれて、同胞を裏切り、曾ての仲間を手に掛ける――そういう絵に書いたような悪党っぷりは嫌いじゃねぇぜ」
 最初の一服を深々吸い込んで、微笑を刻む。
「その方が、こっちも遠慮なく力を振るえるからな。俺らを相手にする以上、ここがてめぇの死に場所だ」
 戦場は殺伐としているほど、心地好いと唱い、スカーレットは真っ赤な巨大チェーンソーを担いだ。火炎放射器も搭載された、凶悪なフォルム。
「バケモン退治をするならコイツの出番だ」
「誰がバケモノよ!」
 くわっと牙を剥いて、ヴェノムは哮る。その姿がまさにと言い放って、彼女はゆっくりと刃を敵へと向ける。
 まあ、ヒトの事はいえねぇが、とひとりごち、重量を感じさせるそれを、片手で軽々扱い、羽を広げるように構えた。
「一度暴れ出したら、捌く程度じゃ終わらねぇ。バラしてミンチにしちまうかもな――だからせいぜい……覚悟しな」
 地を蹴り、最後の警告を向ける。チェーンソーが甲高い声を上げて刃が回転し始める。
「――こっから先は、どうなっても知らねぇぜ」
 その瞬間、スカーレットの理性は消え失せた。
 目を瞠ったヴェノムが、刹那に身体をエラブウミヘビに変異させて、岩場に潜り込む――その上を火花が散って、岩場を抉れば、焦臭さが漂う。
 彼女が腕を振るえば、大小の礫が降り注ぐ。力任せに、斬りとばしたらしい――なんという膂力であろうか。
 スカーレットがバルバロッサと呼ぶチェーンソーは刃毀れを知らぬように回転を続けている。右へ、左へ、片手で振りまわしたかと思うと、正面に抱えて、トリガーを引く。
 岩場を舐めるように炎が噴きつける。跳びだして来たウミヘビへ、転びそうな程、低い姿勢で距離を詰める。
 咄嗟に首元に巻き付いて、反撃を試みる――然し、驚く事に彼女は自分に向けて、チェーンソーを振り翳した。
 間一髪、跳び退いたヴェノムは恐慌し、戦く。
「捨て身ですって――!」
 まともないらえはない。今の彼女は獣。破壊衝動に支配され、荒ぶる全ての力を刃に載せている。
 荒れ狂う破壊の嵐の前に、敵がまともな反撃を出来ずにいる前で――どちらかといえば、己の振るう武器の重量と破壊力に、スカーレットの四肢は痛めつけられているようでもあった。
 それでも平然としているのは、彼女の身体が、生きたものではないからだろう。衝動ある限り動き続ける――図らずも、ヴェノムは其れを知らぬ。
 乱暴な火炎放射で、脚が焦げ付こうが。無茶な姿勢からの振り下ろしで、腕を傷つけようが、スカーレットは止まらぬ。岩場ごと斬り刻む勢いで、垂直にチェーンソーを振り下ろす。
 耳障りな音を立てながら、石を散らし、尾の一部を刻まれたヴェノムは逃げ惑う。
 反撃できぬ、といったが、正しくはない。ヴェノムは先刻、確かに反撃したのだ。懐に潜ってしまえば無防備ともいえる彼女の手脚に、毒の牙を立てていた。
「毒で俺が止められるかよ!」
 嘲笑は何処までも遠くに響く。躍動する朱は周囲に炎と血潮を撒き散らし、ただ敵を屠ることだけを一念に、振るう。
(「跡形残らず貪り尽くし、全て朽ち果て、息絶えるまで――」)
 悲痛な悲鳴すら、飲み乾して――喰らう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佳月・清宵
【花守】(連れ不在なら単独で)
さて、馬鹿も程々にしといてやろう
流石の俺も今ばかりは空気を読む――そして仕事は無論、きっちりこなす

UCの速度と残像活かしフェイント掛けつつ、敵所作探り見切りを図る
攻撃は早業で不規則に斬り込む・衝撃波見舞う等し読まれぬよう化かし、目元や手元狙い目潰しや武器落とし
多少掠れど此方も毒にゃ慣れ親しんだ身、耐性で何食わぬ顔
返礼にゃ毒仕込んだ暗器で麻痺を
近くに連れがいりゃ盾代わり――もといその背や影も存分に利用し立ち回る

最期の詰めは、望むならば海賊達へ
俺は本来、裏方のが性に合うんでな――代わって駄目推しの助太刀ぐらいはしてやろう

――一足先に、彼岸の海で頭冷やして待ってるが良い


呉羽・伊織
【花守】
今に限らず其の儘ずっと黙ってろよ減らず口!
そしたらコッチも清々して捗るわ

…いや無視も無視で腹立つな!
とは、ぐっと飲み―代わって毒づく標的を静めに

UC駆使し先制で加速阻止
アンタに脱がれても全く嬉しくないからな!
早業で風切や烏羽振るい、動作鈍らせる毒や呪詛込め2回攻撃
特に手足狙い武器落としや牽制
フェイントや残像も交え撹乱しつつ、情報収集も抜からず癖や隙を見切る
仮に毒を食らえど、易々効かぬ身で悪いな
…外道狐はハナから信じちゃいなかった!
が、効率的に仕事を成す為なら合わせてやる

ケジメは極力、悔い無き形に
望むなら海賊助けつつ共に一撃入れに
…姐サンちょっとー!

―いつかまた、海の果てで逢えると良いな


花川・小町
【花守】
気丈な乙女達の覚悟や頼みには、真摯に応えなくちゃね?
もう、貴方達も仲間内で毒を吐かないの
ちゃんと仲良く仕事に励むのよ

身はUCや耐性で強め、意思や心は――御免遊ばせ
毒を以て毒を制す、或いは蛇の道は蛇、と言うべきか――誘惑も挑発も何処吹く風
何と言われようが構わないし、私は真実が醜くとも其は其で楽しめちゃうの

二人に合わせフェイント交ぜ攻撃
爪やナイフは早業で応じて凪ぎ払い、叩き落として掟果たす機を作る

あら伊織ちゃん、遂に念願の乙女と初めての共同作業?
じゃあ私も力一杯応援するわね
(重い空気にせぬよう、敢えての軽口――かは不明だが、口振りと裏腹に真剣に援護へ)

そうね――何れは誰もが渡る海で、きっと



●弔いの剣
「アタシは力を得て……得たっていうのに!」
 全身を朱に染めて――しかし諦めの悪さこそ、海賊の矜持とばかり、ヴェノム・サーペントは猟兵を睨む。
 対峙する猟兵はそれぞれに距離を測りながらも、包囲したような形である。
「気丈な乙女達の覚悟や頼みには、真摯に応えなくちゃね?」
 ふふ、と小さく笑い、花川・小町が薙刀を構え直す。
「さて、馬鹿も程々にしといてやろう」
 佳月・清宵は冷笑を引っ込めて、表情を改める。然れど、口元に帯びる笑みの気配までは消さぬ。不敵な、自信に満ちたものを湛え、敵を見据えた。
「流石の俺も今ばかりは空気を読む――そして仕事は無論、きっちりこなす」
 その心意気には同意なのだが、散々いじりたおされた呉羽・伊織は何となく面白くない。
「今に限らず其の儘ずっと黙ってろよ減らず口! そしたらコッチも清々して捗るわ」
 捻くれた挑発をしてみるが、清宵はつんと澄まして――いるように伊織には見えた――まるっと無視している。
(「……いや無視も無視で腹立つな!」)
 ――という言葉を呑み込んで、渋々、反応を得るのを諦めて構え直す。
「もう、貴方達も仲間内で毒を吐かないの。ちゃんと仲良く仕事に励むのよ」
 絡んでくるのは伊織だと言わんばかりの眼差しを投げて、清宵は駆る。
 剣を抜くなり、妖刀の怨念を纏って敵へと迫る――ヴェノムは、荒い息をひとつ吐いて、整えると長い爪を閃かせて迎え撃つ。その両腕は繋がっているのがやっとといった状態だが、オブリビオンの性といおうか、まだ戦えるらしい。
 珍しく正面から合わせようとした清宵であるが、やはり、それは謀りの一挙である。
 いち早く振り抜いて斬撃を叩き込むと、潜るように内側から追撃を仕掛けようという姿勢を見せたが。
「おっと」
 何かに気付いたように軽く身を傾いだ。剣風が彼の脇を抜けてヴェノムを捉える。
 後詰め宜しく離れたところで、薙刀を振り上げた小町がいた。彼らが斬り込む隙を作るため、衝撃波を打ち込んだのだ。
「この、生意気な――」
 煩わしそうに、外套の襟に手をかけたヴェノムだが、その手元を、暗器が掠めていく。
 すかさず下から斬り上げる黒刀に爪を合わせる――伊織が、息を吐きながら鋭く柄を返す。捻りを籠めて、打ち上げれば、敵は態勢を崩した。
「アンタに脱がれても全く嬉しくないからな!」
 それには同意だと清宵は軽く頷き、背から斬りつける。多少の疵は諦めたか、ヴェノムはそれを横に退きながら躱す。然し浅い――図らずも外套が破れて落ち、身軽になったようだ。
 だが、赤き滴りはヴェノムの足跡のように岩場を汚す――痛みに勢いを殺すことなく、全力で跳び退きながら、ヴェノムは投げナイフを二人へ放って距離をあける。
 そのまま、駆け出す。
 何を狙うのかと思えば、背後の小町。隙なく薙刀を構える彼女へ、ヴェノムが差し向けた口撃と言えば。
「弱みは深窓のお姫様、かしら?」
 ――は?
 その時、伊織と清宵、二人の心の声は綺麗に揃った。何なら顔にも浮かんでいた。
「あら、失礼ね」
 ゆえに、小町のいらえがどちらに向けられたものか、解らない。
 そもそも小町に向けた口撃が何故男二人に効くのか。
「あなたも戦場に立つ乙女なら、無粋な言葉じゃない?」
 諫めるように小町は薙刀を掲げた。ヴェノムは嘲るように笑う。
「心はそうね。同意するわ。けれど、脆弱な身体に間違いはない」
 ――ハァ?
 またしても男二人が怪訝な顔を隠さなかったが、涼しい顔で小町は受け流す。
「何と言われようが構わないし、私は真実が醜くとも其は其で楽しめちゃうの」
 それだけなら、全く、心を揺るがすことなんてない。
 証明するように、小町も軽やかに岩場を蹴る。艶やかな着物を翻し、嫋やかな所作で――、然れど剣戟は苛烈に空を裂きながら、ヴェノムに向かう。
 強烈な一刀を、爪で受けて、顔をしかめた。
 脆弱ではないことを示すように――。
「それにしても、か弱い乙女扱い――あの二人より、よっぽど乙女心を理解してくれているとも感じるわ」
 これ見よがしな溜息を吐きつつも――尤も、そんな枠に収まっているつもりもないのだけれど、と朱に彩られた唇を不敵な笑みに染めてみせた。
 果たして、ヴェノムに追いついた清宵と伊織であるが、三人には無勢とみて、ナイフを投げて来る――刀構えて待ち受けた伊織であるが、先まで見えていた清宵の黒い尾が、ふと消えていた。
 多段と迫る短刀を、一気に切り伏せ難を逃れるが、途端に背後から飛び出し、暗器を放つ男の姿に、鼻白む。
「……外道狐はハナから信じちゃいなかった!」
「怒るなよ。連携だ、連携。仲良く仕事――てな」
 陰から陰を渡るように、走り抜けていく清宵の背を睨みながらも――腕に楔と刺さったならば、一瞬の隙が出来ていた。そこへ、伊織は剛胆に剣を払い、毒を孕んだ爪の殆どを、腕ごと断ち切った。
「船長――仲間をアンタが送りたいっていうんなら」
 尚も油断せぬよう、彼は戦場を見守る海賊達へ、声を張る。
「俺達が抑えててやる。最期の一撃、任せる」
 ――ケジメは極力、悔い無き形に。伊織の願いだ。
 へぇ、と清宵が金の双眸を鋭く細めた。盗み見た船長は、驚きに目を瞠っていた。思いがけない言葉であったのだろう。
「――乗る気なら、その剣の間合いまで送るぜ」
 盾に使ったりはしないと軽口混じりに、清宵は声かけた。
「俺は本来、裏方のが性に合うんでな――代わって駄目推しの助太刀ぐらいはしてやろう」
「……」
 海賊達の視線を受けて、船長は舶刀を手に、地を蹴り出った。
 流石はエルフ、それなりに身軽らしい――毒のナイフに意識を向けて、伊織と清宵が守るように立ち回る。
「あら伊織ちゃん、遂に念願の乙女と初めての共同作業? じゃあ私も力一杯応援するわね」
「……姐サンちょっとー!」
 小町は花のように笑う。極力重い空気にしないための、心遣いであるような――それで茶化された方は、彼女の纏う空気が真摯で、どうにも、困る。
「弱き者は弱き者として、大人しくしていればいいものを――」
 醜いわ、ヴェノムは忌々しげに吐き捨てると、せめて仇敵を討ち果たそうと使えぬ両手の代わり、ナイフを咥えて跳び込んできた。
 その足元を掬うように、対の斬撃が走る。
 冷徹な一閃が、その肩を縫い止めるように貫く。
「――一足先に、彼岸の海で頭冷やして待ってるが良い」
 妖刀の妖気に満ちた一刀と共に、清宵が笑う。
「そうね――何れは誰もが渡る海で、きっと」
 その背後から、容赦ない斬撃を降らせたのは小町だ。慈しむような眼差しで、崩れ落ちるヴェノムの向こうで、黒刀を振り下ろす伊織が、頷く。
「――いつかまた、海の果てで逢えると良いな」
 口から落ちたナイフが岩場にぶつかって、甲高い悲鳴を立てる。
「……カトレア――安らかに」
 斯くして、祈りと共に閃いた舶刀は、既に息絶えたヴェノムの額を割ったのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『浜辺で潮干狩り!』

POW   :    一箇所に絞って掘って掘って掘りまくる!

SPD   :    迅速に、広範囲を掘っていく!

WIZ   :    貝が多く取れそうな場所を調査し掘っていく!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


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【プレイング受付】
8月5日(水)8:31~8日(土)中まで
三章からの参加も受け付けております。

潮干狩りといっても貝は出ませんが、真珠が拾えます。
別の宝石を探してみるもよし、砕けた宝石が混ざった砂を持ち帰るもよし。
はたまた宴席で食事をするもよし。
海賊サンが接待してくれるかもしれません……。

お声かけいただければ、サイカが顔を出す予定ですが、
内容によっては採用出来ない場合がございますのでご了承ください。
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●真珠の浜辺
 元々は真珠が打ち寄せてくる、不思議な浜辺であったらしい。
 穢れを知らぬ真っ白な浜辺が何処までも広がり、果てには紺碧の海が混ざる。きらきらと日射しを浴びて耀くのは、宝石が混ざっているからだという。
「勇士カトレアを忍び、このアメシストを贈る――」
 海賊団の船長ニンファーが朗々と語る。その掌には大振りのラッパ銃――けれど、それは宝石を撃ち出す銃である。猟兵にとっては珍しくも無い機構の銃だが、彼……彼女たちは、この日だけ使う秘宝の類らしい。
 高らかな砲撃の音がして、砕かれた紫色の破片が空に舞い、煌めいていく。
「もったいねぇ」
 厚顔にも宴席に混ざっているサイカが小さく零す。だが彼が顔色を変えるのは、次の瞬間である――海賊達が、船長の号令に従って、小さな宝石をそのまま浜辺にばらまいたのだ。
 色とりどりの宝石は、きめ細やかな白い浜辺に吸い込まれて、姿を隠した。
 ――まあ、その行方に目を凝らす姿は、厚顔に代わりは無い。
「よォ、ご苦労」
 漸く猟兵たちに気付いて、彼はしれっという。そして、自分が用意したわけでもない宴席へと自慢げに招く。
 海賊達が用意した一席には、酒、焼いた肉に、魚に、色とりどりのフルーツと、海賊らしいワイルドな料理が用意されていた。
 それよりも気になるのは浜辺であろう。白い浜辺には先程投げ込まれた宝石から、天然の真珠が混ざり合っているらしい。掌でゆっくりと掻き分ければ、出会えるかもしれぬ。
 砂を瓶に入れて持ち帰るのも島民には人気だとか。先程のように、上物の宝石を砕いて撒かれた砂は、適当に掬い上げても唯一の輝きを見せる。

「そういえばこの島の名前ってなんていうんだ」
 誰とも為しに問うてみれば、船長はウインク混じりに、かく告げた。
「乙女の涙島よ。ワタシ達が勝手にそう呼んでるのだけど。なんなら、新しい名前をつけてくれてもいいわよ?」
 何はともあれ、彼女は楽しそうに、少し哀しげに海を見つめる。
「英雄の皆々様と、臆病なロクでなしの乙女共! ――無礼講よ、好きに楽しんで頂戴!」
ハイネ・アーラス
海賊の弔いは、賑やかに見送るものでしょう
カトレアという海賊がいた証として

サイカを見つけましょうか

潮干狩りをお楽しみのようで? ダーリン
何ですか。コセイテキって話で済ませて良いあれじゃないでしょう?

どうせ適当に返されるんでしょうが
—砂浜に埋めて…いえ、今此処宝石だらけでしたか

まぁ、かれ…
彼女達が海賊の矜持を果たせたのは良かったですとも
死者を弔うのは俺には—…、いえ

真珠の一つでもあれば拾っておきましょう
そういえば、宝石拾いがお好きで?

あぁ、そうだ。彼女たちにイケメンを紹介するって言ってあったんです
えぇ、ダーリン。逃がすと思いますか?

海賊さん達に紹介しておきましょう
乙女の危機に、現れたイケメンだと



●送り、送られ
 爽やかな潮風が髪を攫う。旅立つには良い日だ、そっと彼は囁いて海を見る。
「海賊の弔いは、賑やかに見送るものでしょう」
 晴れやかな微笑みを海へと向けて、ハイネ・アーラスはそっと囁く。
 ――カトレアという海賊がいた証として。
 その海賊と刃を交えたものとして。暫し、漣の音に耳を傾ける。
 ひとたび、感傷が過ぎれば――思い出すのは、此処に至る経緯だ。ざ、ざ――波の音を背に、砂浜に蹲って足元を睨んでいる男を目敏く見つけると、
「潮干狩りをお楽しみのようで? ダーリン」
 音も無く背後に近づいて、怨念を込めて呼び掛けた。
 対して、男――サイカは「おう」としか答えない。こっちも見ない。なんて奴だ。
「何ですか。コセイテキって話で済ませて良いあれじゃないでしょう?」
「人間誰しも個性ってもんを持ってるもんだろ――ヒトかペンギンかレベルよか可愛い差だ」
 折角にっこりと微笑んでいるのに、こめかみが引き攣るのを隠せない。
「訳のわからない比較のために、ペンギンさんを引き合いに出さないでください」
(「――砂浜に埋めて……いえ、今此処宝石だらけでしたか」)
 笑顔で反論しつつ、どーんと穴を掘って、べーんと埋めてやろうかとか考える。物騒な気配を察したサイカは釘を刺す。
「此処は神聖なセレモニー会場だぜ。変な気を起こすなよ」
「なんです、その言い方――まぁ、かれ……彼女達が海賊の矜持を果たせたのは良かったですとも。死者を弔うのは俺には――……、いえ」
 ふと目を細める。眩しい白と青の水平線は、見慣れたものだ。海賊ならば、海の向こうへ、流れ流されていくのが理想の死に様か。
 そんなハイネの感傷を不躾に眺める神は、揶揄を隠さぬから、忌々しい。
 足元に触れる小さな何かに気付いて、拾い上げる。
 小指の先程しかない、小さな真珠だ。綺麗な球体で、ほう、と商人でもあるハイネは小さく感心した。
「そういえば、宝石拾いがお好きで?」
「おう。もっと宝石を拾え。真珠でも、大粒の掘り出しものでもいい」
 たぶんコイツ金を作る気しかないな――惘れて溜息をついた瞬間、背後で酒宴の盛り上がり、きゃらきゃらとした野太い歓声が聞こえた。
「――あぁ、そうだ。彼女たちにイケメンを紹介するって言ってあったんです」
 がしっと、その肩を掴む。体格では劣るとして、力が負けるわけではない。
「とうとう人身売買に手をつけたか」
 サイカは口をへの字にして睨むが、涼しい顔でハイネは笑う。
「えぇ、ダーリン。逃がすと思いますか? 紹介しますよ――乙女の危機に、現れたイケメンだと」

 まあ、そんな風にハイネが紹介した縁が何を結んだか、結局、サイカは目を輝かせる海賊と酒を交わすことになる――が、それはまた別の話である。

大成功 🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【梓(f25851)と】
盛大に出遅れてお邪魔させてもらったわけだけど…
へぇ、女性の海賊団かぁ
グリードオーシャンは何度も来たことがあるけど
女性の船長は初めて見たかも
幾多の試練を乗り越えた海賊ともなると
女性でも逞しさがあるね
(現場に居なかったが故の感想

梓と一緒に浜辺に向かえば
海の青さ以上に、白い砂浜の輝きが目に飛び込んできて
太陽の光が反射してすごく綺麗
お言葉に甘えて、その砂を掬い上げ小瓶に入れていく
砂入りの小瓶を軽く振れば
きらきらと色んな表情を見せてくれる

そういえば、ここって天然の真珠もあるそうだね?
ねぇ、探してみようよ
見つけたら何となく良いことありそう
ちょっとした宝探しのような時間を満喫


乱獅子・梓
【綾(f02235)と】
あ、ああ、そうだ、な…?
この海賊団とは紛れもない初対面だが
綾の「逞しい女船長」という感想に
どうにも違和感を拭えないのは何故なのか
あまり深く考えないようにしよう、そうしよう

せっかくだから宝石の潮干狩り体験と行くか
真珠とかアメシストとか
海賊にとっては結構なお宝だろうに
それをバラまいて島民にプレゼントとは太っ腹だな
俺は綾よりも大きめの瓶を用意して
砂を入れたあとに更に貝殻やスターフィッシュなども投入
どうだ、インテリアになかなか良さそうだろう?
綾の小瓶の隣に並べてみる

天然の真珠探しか、それもいいな
よし、焔!零!お前らも一緒に探すんだぞ
誰が一番多く見つけられるか勝負だ!



●瓶詰めの思い出
「盛大に出遅れてお邪魔させてもらったわけだけど……へぇ、女性の海賊団かぁ」
 灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は主催である海賊の面々を眺めて、物珍しそうに感嘆の声をあげる。
「グリードオーシャンは何度も来たことがあるけど、女性の船長は初めて見たかも。幾多の試練を乗り越えた海賊ともなると女性でも逞しさがあるね」
「あ、ああ、そうだ、な……?」
 乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は首を捻りつつ、決定的な否定の根拠もなくて、結果、首肯しておくことにした。
 ――『逞しい女船長』という感想に、どうにも違和感を拭えないのは何故なのか。
 或いは、敢えて言っているのか。指摘してはならぬのか。
(「あまり深く考えないようにしよう、そうしよう」)
 余計な事を深く考えないのは得意なのだ。肩口で、相棒がキューと鳴いた。逃げるなと言いたいのか。はは、きっと幻聴だろう。
 そんな内心はさておき、黒髪と白髪の連れ合いは肩を並べて砂浜を眺めた。
「……」
 無意識に、ほう、と吐息が零れた。綾は暫し言葉も無く眺め続けた。常に笑んでいるような表情の彼ではあるが、口元には、僅かな驚きが滲んでいた。
 遠くに眺める群青より、一面と広がる砂浜の輝き。
 白い砂浜は、自ら光を放つようだ。実際、石を含んでいるから、光の反射は通常の砂浜とは異なるだろう。
(「太陽の光が反射してすごく綺麗」)
 眩い浜辺に顔を寄せれば、きらきらと輝く砂に、様々なものが混ざっているのが見えた。色のついたもの、透明なもの……すべてとはいわないが、明らかに宝石が解るほどに混ざっているのだから、驚く。
 触れれば、太陽の力で熱い。
「真珠とかアメシストとか――海賊にとっては結構なお宝だろうに。それをバラまいて島民にプレゼントとは太っ腹だな」
 梓は思わず舌を巻く。
 弔いで送るところまでは解るが、第三者に与えてしまうのだ。
「気持ちはわかるけどね」
 小瓶に軽く砂を落としながら、綾はいう。
 こんなに美しいのだ。
 占有するなど勿体ない――それが魂の在処であるかどうかを別にして。
 宝石を砕いて撒いてしまったのだ。元には戻らぬ。
 ならば創り上げた自慢の浜辺が、誰かの宝物になればいい。
「熱で宝石も劣化してしまうし」
「そういうものか」
「たぶん」
 なんだ適当か――と梓はからから笑いながら、よし、と呟くと、海の方へと歩いて行く。唐突な行動ではあるが、わざわざ尋ねるほどでもない。
 梓にも何か考えがあるのだろうと、それを視線だけで追いかけつつ、綾は自分が詰めた小瓶を、光に翳して、振ってみる。
 少し余裕をもって詰めた砂は、ゆっくりと表面に顕れる色を変えた。赤や、青、紫――本当に粒子となったものがオーロラのように薄く色をつけていた。
 きらきらと色んな表情を見せてくれる――出来映えに満足していると、梓が戻ってきた。
 その手には綾のものより少し大きな瓶。砂を詰め、その上に貝殻やスターフィッシュがちょこんと乗って、小さな浜辺のようだ。
 わざわざ海の傍まで行って探してきたらしい。
「どうだ、インテリアになかなか良さそうだろう?」
「そうだね――俺のも負けてないけど」
 どれどれ、と梓が綾の小瓶の横に並べてみせる。実際に、競うつもりなど欠片も無い。
 どっちもいいね、と二人の瓶を並べて楽しそうに笑った綾が、浜辺の輝きへと再び視線を送って――ふと思い出す。
「そういえば、ここって天然の真珠もあるそうだね? ねぇ、探してみようよ。見つけたら何となく良いことありそう」
 彼の提案に頷いた梓は、にやりと笑う。
「天然の真珠探しか、それもいいな――よし、焔! 零! お前らも一緒に探すんだぞ。誰が一番多く見つけられるか勝負だ!」
 炎と水の仔ドラゴンが、キュー、ガウ、と鳴いて飛び出す。
 きらきらと眩い夏の想い出に、またひとつ。輝きを添えるために。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャック・ジャック
さぁ、待ちに待った“お愉しみ”の時間だぞ
どうする? と傍らの彼女へ問いかけ
狙いの一品が在るならば
其を手に為迄砂を掻き分けようかと思ったが
移り気な彼女の眸は既に、別のものへと向いていて

――嗚呼。別に、構わんさ
君がそうしたいのならば、その通りに

しかし

折角なのだから、少しは良いかと問いかけ
片手で収まる小瓶に、貴石混じりの白砂を掬おう

想い出の品は、多いに越したことが無いだろう?
“モノ”として置いておけるものは、そう多くは無いのだから

誘う賑わいには片手を挙げて応え
祝宴の一杯を与ろう
賑やかな宴席に混じるのも悪くは無い



●遺る“モノ”
 見渡す限りの、輝きが眩しい。耳に響く漣の音に、踏みしめる砂の音。潮の香りは相変わらずだが、それでも先程の岩場に比べて、随分と快適な風が吹いている。
 羽織る黒衣を靡かせて、男は薄く微笑む――。
「さぁ、待ちに待った“お愉しみ”の時間だぞ。どうする?」
 ジャック・ジャックは傍らの“彼女”へ、そう問いかけた。今日も今日とて、彼女の願いに従って、此処にやってきたのだから。
 ――決まってるわ……いいえ、やっぱり……。
 気まぐれに、くるりくるりと彼女の気分は変わる――目的は、変わっていない。ただ『おねだり』の内容は、先程とは異なるらしい。
(「狙いの一品が在るならば、其を手に為迄砂を掻き分けようかと思ったが」)
 ジャックの頚元に細い腕を絡めて、麗しき青石英の双眸は、せわしく周囲を見つめている。
「――嗚呼。別に、構わんさ。君がそうしたいのならば、その通りに」
 声に出し、告げる。
 彼女の意が定まるまで、ジャックは適当に砂浜を歩く。宝石を砕いた輝きは、砂と波に浚われて、海に近づくにつれてますます細かくなるようだ。
 ――まるで、求め、引き摺り込まれるかのように。
 その良し悪しを、彼は判断できぬ。死して尚、海に還りたいと思うものが海賊というものならば、是が最良の墓標なのだろう。
 暫し足を止め、茫洋と砂浜を眺めていたジャックは、まだ思案する彼女へ、一声かけた。
「折角なのだから、少しは良いか」
 きょとんと頚を傾げたひとに、微笑みを向けて。
 取り出した掌に収まる程度の小瓶に、白砂を籠める。貴石混じりの輝きを封じ込めて、目の高さで軽く振る。
「想い出の品は、多いに越したことが無いだろう? “モノ”として置いておけるものは、そう多くは無いのだから」
 目配せすると、楽しげに彼女は笑う。くすくす、と。どうやら、お気に召したらしい。
「ああ、あちらも愉しそうだ――君が嫌でなければ、少しどうだろう――祝宴の一杯を与るというのは」
 尋ねてみると、どうしましょう、と揶揄するような声音が響く。だが、長い付き合いだ。その声音が、どちらに傾いていたものなのか、既に悟っている。
 けれどジャックは敢えて口を挟まない。全ては彼女の望むが儘に。
 ――そうね、まだ決まらないんだもの……。
 お許しがいただけたので、小瓶を仕舞いながら、ジャックは踵を返す。
 そして、その姿を認めたらしい宴席より――彼の名を呼ぶ声に、片手を上げて答えて見せたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スカーレット・ロックハート
穢れを知らない白い浜辺に澄んだ海
荒れた大地と瓦礫の山で育った俺には、全てが眩しい世界だな
どっちにしても宝石探しなんてガラじゃねぇ
俺にとっては宴の方がお宝さ
サイカも折角だから祝杯でもどうだ?
ま、俺と一緒じゃムードの欠片もねぇけどな

ひと仕事終わった後の酒っつーのは格別だよな
にしてもこの海は、一体どこまで広がってるんだろう
遥かな水平線のその先に、見果てぬ世界があるから旅をする
そんな自由な生き方も、案外悪くはなさそうだ
……なんて感傷的な気分になるのは、酔いが回ったせいかもな

そういやサイカの故郷ってどんなところだ?
や、今まで教えてもらったことなかったんで
ふと気になって、何となく聞いてみたいと思っただけさ



●娯楽
「穢れを知らない白い浜辺に澄んだ海――荒れた大地と瓦礫の山で育った俺には、全てが眩しい世界だな」
 きらきらと眩い景色を、額に手を翳して眺めて、スカーレット・ロックハートはむしろ溜息を零した。
 厳しい日射しは荒野でも、熱気に関しては燃えさかる戦場でも慣れていて耐えられる。美しいとは思うが――あの砂浜の中央に立ってみようという気にはなれなかった。
「どっちにしても宝石探しなんてガラじゃねぇ」
 肩を竦めて、祝宴の席を見る。
 色とりどりの果物や、豪快な魚料理。それよりも、彼女の目を引いたのは酒だ。
 海賊の振るまいとして、エール一種というようなこともない。ワインから蒸留酒、様々な用意があるようだ。
 へえ、と思わず目を細める。
「あら、お嬢さん、行けるクチ?」
「お嬢さんって呼ばれるとむず痒いな――ああ、馳走になっても?」
 むず痒いというか、違和感しかない。が、まあこの海賊たちはそういう言動しかしないだろうと解っているので、スカーレットは適当に受け流す。
 一番に薦められた酒は薫り高く、花の香りがつけられていたので、一瞬閉口したが――珍しい酒は、それなりに興味が湧く。
 遠慮なく片っ端から試してみようと腰を据えたところで、サイカが海賊たちに囲まれてやってくる。ただ酒が飲めるなら誰が振る舞おうが構わないという男は、馴れ馴れしい海賊達の中でもけろりとしていた。
「よォ、マスター」
 スカーレットと目が合ったサイカは、口の端を曲げて片手を上げた。
「サイカも折角だから祝杯でもどうだ? ま、俺と一緒じゃムードの欠片もねぇけどな」
「この状況見て、よく言うぜ」
 しれっと、言うと、ひどーいと海賊が笑う。
 まあ彼女は元から知り合いだからと海賊達に断りを入れると、サイカは席に着く。すぐに酒をグラスに注いで、乾杯、と合わせた。
 唇を潤す酒は灼けるようにクリアだった。オススメ度は下から五番目だと海賊は言っていたが、スカーレットはそれが気に入った。
「ひと仕事終わった後の酒っつーのは格別だよな」
「おー。肉体労働お疲れさん」
 スカーレットの言葉に深々頷き、同意しているが、この男は何もしていない。が、彼女は磊落と笑う。宴席からは、輝く浜辺と、紺碧の海が広がり続けていた。
 こういう景色を絶景と呼ぶんだろうな、と素直に思う。
「にしてもこの海は、一体どこまで広がってるんだろう。遥かな水平線のその先に、見果てぬ世界があるから旅をする――そんな自由な生き方も、案外悪くはなさそうだ」
 遠くを見つめた儘、スカーレットは呟き――自嘲するように笑って、頭を振る。
「……なんて感傷的な気分になるのは、酔いが回ったせいかもな」
 煙草を咥えて火をつけながら、話題を変えるように彼女は傍らの男に尋ねる。
「そういやサイカの故郷ってどんなところだ?」
「あ?」
 唐突な問いかけに、彼は摘んでいた果物を手に、スカーレットを見た。
「や、今まで教えてもらったことなかったんで、ふと気になって、何となく聞いてみたいと思っただけさ」
「そうだな――いいとこだったぜ」
 全ては過ぎ去ったものであるような。眇められたオレンジの双眸に、スカーレットは何となく自分に似た何かがあるような気もしたが――。
 考えても意味はない。仕事が恙なく終わり、酒が美味くて、更に煙草が美味ければ。
 生は万事、事も無しだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

花川・小町
【花守】
私達も私達なりの流儀で、弔いと結びを
という訳で、綺麗に笑んで伊織ちゃんの腕をがっちりと――良ければ海賊ちゃん達に掴んで貰って

無礼講なんて最高の響きね
ちょっと伊織ちゃん、また何を言うの?夢にまで見た乙女の宴よ?
ほーら、男らしく遠慮せずに貴重なアバンチュールを謳歌なさい
私はそんな貴方の勇姿を肴に愉しませてもらうから大丈夫よ(果実や酒を手に悠々と)

もう、本当に肝心な所でダメな子ね?
此処はそっとスマートに(?)、内心止まらぬであろう乙女の涙を拭って――乙女の笑顔が輝くように寄り添ってあげるところよ、多分

最後は宝石に負けず劣らずの笑顔達と、今日の全てを忘れぬように――一掬い、私も砂を頂きましょう


佳月・清宵
【花守】
(何であれ、仕舞は軽やかに――要は何事も笑って酒で締め括るってのが暗黙の――今日も其に倣うのみ)

おう、惚けんのも喚くのも大概にしろよ
一暴れ後に飲んで打ち上げるまでが仕事に決まってんだろ
さて、海賊連中よ
コイツ(伊織)は基本的にゃ色物だがな、肴として楽しむ分にゃ上物だぜ
――思う存分囲んで可愛がってやってくれりゃあ、皆揃って色んな意味で最高の一時を味わえるだろうよ(さらりと全部伊織に押し付けて小町と飲み始め)

ったくまた情けねぇ声あげんなよ
いっそ此処に残って乙女心ってもんの何たるかを叩き込んでもらったら如何だ?

(空いた小さな酒瓶に砂を掬いつつ、この砂浜の如く飽きのこぬ面白味を見せる連中に笑い)


呉羽・伊織
【花守】
(何があろうと最後は笑い笑わせ終わらせる――ソレが不文律のお決まりみたいになっちゃいる
が!)

姐サンやっぱオレ帰っても?
いや寧ろ邪魔狐が帰れよ、仕事は済んだろ!一緒にされたくないんだろ!
待って姐サンちがうそうじゃない
コレはオレがしってる(そして渇望してる)乙女の宴じゃない
い~や~!いっそ独り浜辺で黄昏てるのがマシじゃんかコレ!
料理山盛で肴にゃ事欠かないってのに何言ってんのこの人達

イヤだオレは帰る!ホントもう帰る!
宝石よろしくオレの心まで粉々に玉砕させよーとしないで姐サン…(冷汗とも涙ともつかぬものが一瞬きらりとしたのは気のせい)

嗚呼…乙女の笑顔が…眩しいネ(結局逃避気味に砂掬いつつ黄昏)



●かれらの道楽
 亡骸も得られぬ葬儀――成る程、海に魂を送るという儀式は、理に適っている。
 それが彼らの流儀であるならば、しめやかに参列するのではなく――。
「私達も私達なりの流儀で、弔いと結びを」
 花を綻ばせたような微笑み。特に意識せずとも婉艶とした風情を見せる花川・小町であるが、今はがっしり、力強く、呉羽・伊織の腕に絡ませていた。
 然し艶っぽさゼロである。有無を言わさぬ拘束。動かせば激痛が走りかねないキメ方で、右側は抑えられている。左側と、背後には海賊の乙女達。小町の要請によるもので、伊織ちゃんは照れ屋さんだから、とか言いくるめられて信じている。
「姐サンやっぱオレ帰っても?」
 力なく、伊織が尋ねる――叫く力は、もう残されていなかった。
(「何があろうと最後は笑い笑わせ終わらせる――ソレが不文律のお決まりみたいになっちゃいる――が!」)
 何故、こんな強制参加。パワハラである。セクハラの気配もする。だが、一紳士として、そんなことを口にすることはできぬ。喩え、思っていても、乙女だという心の否定は出来ないのだ。恋人とかは無理だけど。
 そして精神的に、小町にも敵わない。だから、伊織が何とか爆発出来る先は、ひとつしかない。
「いや寧ろ邪魔狐が帰れよ、仕事は済んだろ! 一緒にされたくないんだろ!」
「おう、惚けんのも喚くのも大概にしろよ。一暴れ後に飲んで打ち上げるまでが仕事に決まってんだろ」
 本気で惘れたように佳月・清宵が言う。冷ややかな瞳には侮蔑が滲んでいる――ように見せてくるが、内心は笑ってることを、伊織はよくよく知っている。
 伊織に関しては、そうなのだが。彼にも一応、ひとりの海賊の末路を見届けたものとして、思うところがある。
(「何であれ、仕舞は軽やかに――要は何事も笑って酒で締め括るってのが暗黙の――今日も其に倣うのみ」)
 まあ、狐であるから、本心など一切表に出なくても当然であろう。
「ちょっと伊織ちゃん、また何を言うの? 夢にまで見た乙女の宴よ?」
「待って姐サンちがうそうじゃない。コレはオレがしってる乙女の宴じゃない」
 密かに乙女との甘酸っぱい逢瀬を渇望している――とはいっても、求める乙女はこれじゃない。
 気力を取り戻したのか、再び、ぴーぴーと噛みつき始めた伊織を綺麗に無視して、清宵は海賊たちを一瞥すると、意地の悪い笑みを口元に浮かべた。
「さて、海賊連中よ、コイツは基本的にゃ色物だがな、肴として楽しむ分にゃ上物だぜ――思う存分囲んで可愛がってやってくれりゃあ、皆揃って色んな意味で最高の一時を味わえるだろうよ」
 きゃー、やったー、と海賊たちは彼の言葉に乗って、伊織を連行していく――何時しか、小町がするりと腕をぬいて、他の海賊にその場所を譲っていた。
「い~や~! いっそ独り浜辺で黄昏てるのがマシじゃんかコレ! 料理山盛で肴にゃ事欠かないってのに何言ってんのこの人達」
「あら、両手に花にしておいて、言うじゃない」
 追い立てるように、小町が言う。
「ほーら、男らしく遠慮せずに貴重なアバンチュールを謳歌なさい。私はそんな貴方の勇姿を肴に愉しませてもらうから大丈夫よ」
 姐さん、本音、本音が出てる。邪魔狐はニヤついてやがる――因みに、ちゃっかりと伊織と対面に座って、既に酒やら食べ物を適当に用意している。素早い。
「ちゃーんとお酌してあげるわよ」
 にこにこと機嫌のいい海賊に挟まれて、伊織も席に着く。
 斯くして宴会は始まると、右から左へ海賊たちが挨拶に来て、お酌をしてくれる。オススメの料理なんかも携えて、代わる代わるあーんと差し出してくる。
 そんな全く至れり尽くせりの中、小町の助言と、清宵の悪戯に乗って、海賊たちが濃厚に密接してくる。海賊たちも恩人にあまり無礼なことをするつもりはないようだが、悪ノリの加減は心得ていて、割と絶妙に伊織には切実であった。
 満面の笑みで歓待を受ける二人と、血の気の引いた顔色の伊織。このシチュエーションを楽しんでいるのは二人だけで或る。
「イヤだオレは帰る! ホントもう帰る!」
「ったくまた情けねぇ声あげんなよ。いっそ此処に残って乙女心ってもんの何たるかを叩き込んでもらったら如何だ?」
 そうよそうよ、と小町が加勢する。
「もう、本当に肝心な所でダメな子ね? 此処はそっとスマートに、内心止まらぬであろう乙女の涙を拭って――乙女の笑顔が輝くように寄り添ってあげるところよ、多分」
 彼女たちはみんな傷付いているの――と袖で目許を押さえる演技まで加えて嘯く。
「宝石よろしくオレの心まで粉々に玉砕させよーとしないで姐サン……」
 とほほと肩を落とす。それでも、口に運ばれた魚は、本当に美味しかった。
 酒は胃の腑に染み渡り、傷心を癒やしてくれる。そして傍らの乙女達は――。
「貴方も苦労してるのねえ。安心して、私たち、綺麗なものを愛でるのは好きだけど、縛り上げて飾っておこうとは思わないわ」
「それに、恩人だものねえ」
 気付けば、逆に慰められてしまった。

 さて、日が傾きかけた頃。
 良い酒だったと満足そうな清宵と、本当にねぇ、と仄かに頬を火照らせた小町が笑う。海賊たちは南国フルーツのお持たせまでくれた。
「――で、奴はどうした」
「さあ? 何処行っちゃったのかしら。……でも子供じゃ無いし、帰ってこれるでしょう」
 あっけらかんと小町は言う。薄情なものである。
 のちに伝え聞いた海賊の証言によると、海水が寄せる浜辺で、砂浜にのの字を描く暫く男の姿が、日が暮れるまで座り込んでいたことが確認されたという。
「嗚呼……乙女の笑顔が……眩しいネ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

終夜・嵐吾
せーちゃん(f00502)と

わしは…ふつーの潮干狩りしたかったんじゃけど…(砂地をひっかく)
きらきらしかないの…きらきらばかりじゃな…
真珠探しも楽しいんじゃろうがあさりはまぐりを見つけてじゅーっと焼いて食べるのを期待しとったからな(しょんぼり)
そじゃね、今度潮干狩りにいってどちらが多く採れるか勝負じゃ!
今日は宴会を楽しも!

サイカく~ん、飲んどるか~!
美人さんぞろいじゃ~(できあがったよっぱらい)
こんな美人らに囲まれて宴会なんて、わしらは幸せもんじゃね~
もちろんもらおう!
せーちゃんもサイカくんもわしの酒をのむんじゃ~(注ぎ返し

せーちゃん、甘味ならあーんしたらええよ!
乙女が一等甘い果物くれる!


筧・清史郎
らんらん(f05366)と

美味な貝を肴に酒盛りというのも、確かにとても良いが
まぁお言葉に甘え、今回は乙女達の用意してくれた御馳走のご相伴にあずかろうか
ふふ、貝の潮干狩りにはまた今度行こう、らんらん

サイカもご苦労様だ
酒はいける口か?よかったらお酌しよう
らんらんももう一杯どうだ?(微笑み
ああ、美しくも逞しい乙女との宴会もとても楽しいな(至れり尽くせりされつつ律儀に微笑み返しつつ
乙女の涙島、か
その名に相応しい風景だな
おお、甘味か、喜んでいただこう(次々乙女達から差し出される甘味全てにあーんする超甘党
…ん、とても美味だ(雅すまいる
煌めく海の景色を肴に、友や乙女達と愉快なひと夏の時間を過ごそう(微笑み



●愉楽
 突然だが、終夜・嵐吾はしょんぼりしていた。灰青の耳も、尾も、しょげている。
「わしは……ふつーの潮干狩りしたかったんじゃけど……きらきらしかないの……きらきらばかりじゃな」
 潮干狩りといっておったではないか。
 あさりか。はまぐりか。或いは島独特の珍味とか。
 海賊を捕まえて訪ねてみたが「食用は…………潜れば、あるわ。真珠も取れるし……」と言っていた。吝かでは無いが、それは潮干狩りではない。猟だ。
 真珠貝も、巧く育てると美味いらしいが――。
「真珠探しも楽しいんじゃろうがあさりはまぐりを見つけてじゅーっと焼いて食べるのを期待しとったからな」
 すっかり尾を萎ませている相棒を慰めるように、筧・清史郎は優しく声をかける。
「ふふ、貝の潮干狩りにはまた今度行こう、らんらん」
「そじゃね、今度潮干狩りにいってどちらが多く採れるか勝負じゃ! 今日は宴会を楽しも!」
 切り替えが早いのも、友の良いところだ。
 ああ、と清史郎も相好を崩して、応じる。
「美味な貝を肴に酒盛りというのも、確かにとても良いが――まぁお言葉に甘え、今回は乙女達の用意してくれた御馳走のご相伴にあずかろうか」
 かくして宴席に向かった二人は、「せーさま、らんちゃん、いらっしゃいー!」と海賊たちはアイドルがやってきたかの如く歓迎してくれた。実際、割とアイドルみたいなことはしていた気はする。しかし、いつの間にか、嵐吾の名前まで確り抑えているあたり、隙がない。
 たぶん、リークした男は――今は一人でちびちびと魚を摘んでいた。
「サイカく~ん、飲んどるか~!」
 両手にボトルを握った嵐吾が、ご機嫌でやってきた。
 ご馳走に次から次へと酒を運んでくれる海賊さんを引き連れて、清史郎と共に謎のハーレムを形成していた。
 瞬間、蹌踉ける――が、支えてくれる体幹が確りした乙女に、嵐吾はにこにこと礼を告げる。
「美人さんぞろいじゃ~」
「……こりゃ、もうかなり酔ってるな?」
 ゆるーくなってる嵐吾に、サイカは怪訝そうな視線を送る。清史郎は何の問題もないといった微笑みで席につくと、自然に酒瓶を手に、問う。
「サイカもご苦労様だ。酒はいける口か? よかったらお酌しよう」
 確りとした酒精の匂いはしているので、彼も呑んでいるに違いない。だが、不思議とまったく変化が無い。
「おう、気が利くな」
 そして、そんなことに一ミリの遠慮もないサイカである。グラスを差しだして、当然のように返杯はしない。既に清史郎は手酌で同じ酒を注いでいた、というのもある。
 何より、食べ物も酒も、次から次へと差し出される。お酌させてーという海賊たちが、順番に巡ってくる。何なら、ひときわ大きい団扇で、扇いで風まで送ってくれている。お大尽だ。
「こんな美人らに囲まれて宴会なんて、わしらは幸せもんじゃね~」
「ああ、美しくも逞しい乙女との宴会もとても楽しいな」
 酔ってふわふわしている嵐吾は、風に髪を躍らせ、本当に心地よさそうであった。
「乙女の涙島、か――その名に相応しい風景だな」
 幸福そうな友と、酒の味に、自然と清史郎が桜吹雪を招くような微笑みを浮かべ――海賊たちが崩れ落ちた。たぶん、酔っていないのでタチが悪い。
「らんらんももう一杯どうだ?」
 そんな彼に、清史郎は気にせず酒を勧める。多分、常人ならやめておけ、というのだろうが、此処にストップをかけるものはいない。
「もちろんもらおう! せーちゃんもサイカくんもわしの酒をのむんじゃ~」
「おー、ダーリンどもも呑め呑め。潰れるまで呑め」
 当然、サイカも止めない。吐くまで呑む。それが酒宴の常識だと思っているからだ。
 清史郎になみなみと注いで貰ったグラスを、嵐吾はくいっと一気に煽る。海賊たちがきゃーっと囃し立てる。
「よ、男前。よし、次もってこい!」
 などと調子に乗って酒を要求し、サイカもげらげらと笑っている。
「色々いただいたが、そろそろ甘味も欲しいところだな」
「ほー、甘党か。どっかに菓子やら水菓子あったが――おい、海賊……」
 何となくこぼした清史郎の要望に、もう給仕を呼ぶ感覚でサイカが海賊に声をかけた時、耳をぴんと立てた嵐吾が片手をあげる。
「せーちゃん、甘味ならあーんしたらええよ! 乙女が一等甘い果物くれる!」
 そうか――満更でもなく、清史郎が彼の言葉に頷いていると、銀のお盆に盛られたフルーツが運ばれてきた。同時に、カットされた瑞々しいマンゴーらしきものを、うっとりとした表情で海賊が差し出してくる。
「はい、せーさま、これ、とっておきのフルーツ」
 語尾には間違いなくハートマークついている。
「おお、甘味か、喜んでいただこう」
 友の助言に従って、口を開いて、待つものだから、海賊は震えながら、あーんを達成する。
「……ん、とても美味だ」
 口内に広がった蕩けるような甘みに、嘘偽りの無い微笑みを浮かべる――その、何という麗らかなこと。
 はあ、と崩れ落ちる海賊どころか、新たな列が形成される。あーん待ちの行列だ。何せ、彼は差し出されるものが甘味なら、際限なく食べられる。
 傍目にも変わらぬが、ご機嫌なのは清史郎も同じ。海賊に囲まれながら酒を飲んで、朗らかに笑う嵐吾が、陽気に歌っている。
 煌めく海の景色を肴に、友や乙女達と愉快なひと夏の時間――、心ゆくまで楽しもうと、人知れず微笑みを深めたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ファルシェ・ユヴェール
凪紗さん(f12887)と

……乙女の涙島
なるほど彼女達は確かに、命を預け合えるよき仲間であったと
そう思える、よき名付けかと
私は好きですよ

私としてはやはり浜辺に降りて散策したいところです
凪紗さんは宴会に残っていても構わないのですよ?
きっと大人気ですから

欠片をひとつ拾い上げて透かし見ては、そっと浜に戻し
凪紗さん
術に用いるには……少々、彼女達の愛が強すぎるようですね?
冗談めかして微笑み

『潮干狩り』を許しても
浜が美しさを保つのは
おそらくはそういうことなのでしょう
積み重ねたこころの創り出した色
島民の方に倣って小瓶に頂こうかとも思いましたが
折角です、真珠の浜の思い出に
天然の真珠を探してみる事に致しましょう


蓮条・凪紗
ファルシェ(f21045)と

なんやろ…この潮騒の音ってどっか泣き声にも聞こえへん?
この浜辺で砕かれた宝石の数だけ散った命があったってことやろ
――切ないわ、としか言えんけど

いやいや、オレも行くて
あの「お嬢はん達」よりもそもそも宝石に興味あるんやし

手で掬って持ち上げれば、サラサラと指の隙間を零れ落ちる砂
ああ、成る程…確かにこれは涙やわ
喪服に真珠が許されとるんは、あれは涙の象徴やからって聞いた事あるけど
確かに涙島の名に相応しいわ

ファルシェに倣って欠片石を手に取り、戻して
こんな想い強い石は変な術になりかねんやろ?
天然の真珠かぁ…きっと綺麗なんやろな
よっしゃ、探そ探そ
お守りにするならエエかもしれんしな



●涙のあとさき
「なんやろ……この潮騒の音ってどっか泣き声にも聞こえへん?」
 色の違う前髪を風に軽く躍らせ、蓮条・凪紗は問いかけた。
 連れの答えは特に待たず――彼は小さな吐息と共に、囁く。
「この浜辺で砕かれた宝石の数だけ散った命があったってことやろ――切ないわ」
 焦げ茶の眼差しに倣って、ファルシェ・ユヴェールは薄く頷いた。
 波打ち際は遠く、一面に広がるは白い砂浜。煌めく景色に、負けぬ金の髪を抑えて、眩しそうに目を細めた。
「……乙女の涙島」
 ふと脳裡を過ぎったのは、海賊達は、この島をそう呼んでいる、という言葉――。
 彼――彼女達は、そんな感傷を目立って見せないが、そこには様々な思いが籠められているのだろう。
「なるほど彼女達は確かに、命を預け合えるよき仲間であったと――そう思える、よき名付けかと。私は好きですよ」
 柔らかな微笑を見せたファルシェに、凪紗は軽く頬を掻いた。後ろで、わいわいと楽しげな歓声が聞こえてくる。
 死人を送る時に楽しく騒ぐというのは、どこの世界も共通なのだろうか。
 楽しそうですね、とファルシェは軽く振り返りつつ、面白がるように凪紗を見た。
「私としてはやはり浜辺に降りて散策したいところです――凪紗さんは宴会に残っていても構わないのですよ? きっと大人気ですから」
「いやいや、オレも行くて。あの『お嬢はん達』よりもそもそも宝石に興味あるんやし」
 食い気味に、凪紗は答える。
 くすくすと上品に笑うファルシェに、えげつないわーと、小さく毒づく。
 とはいえ、気分を害したわけではない――二人、白い砂の上に立つと、それぞれに感心の声をあげた。
 遠くから眺めていても、妙に透明感の或る反射光が目立ったが、近づいてみると本当に宝石が透けて見える。無論、大方は砕けて小さな破片ばかりだ。
 膝を着いて、凪紗はひとつかみ砂を掬って見る――軽く開くと、指の隙間をさらさらと砂が落ちていく。白くて、熱くて、滑らかに零れていく砂を見つめ、凪紗は口元を綻ばせた。
「ああ、成る程……確かにこれは涙やわ。喪服に真珠が許されとるんは、あれは涙の象徴やからって聞いた事あるけど――確かに涙島の名に相応しいわ」
 共に屈んで、白砂の煌めきを見つめていたファルシェは、その足元にある小さな欠片を見つけた。緑柱石の欠片だ。澄んでいて、淡い緑色が美しい。
 蒼穹に透かし見ながら、これを砕いたのかと、宝石商としては少々驚きを覚える。けれど、海賊たちは、価値を知らず砕いたわけではあるまい――。
 微笑みを湛えたまま、ファルシェは欠片を浜に戻す。
「凪紗さん――術に用いるには……少々、彼女達の愛が強すぎるようですね?」
 藍玉の欠片を同じく透かし見ていた凪紗も、同じく浜に戻して、そやなぁ、と悪戯っぽくファルシェに笑みを向けた。
「こんな想い強い石は変な術になりかねんやろ?」
 喩え、このまま、日光と海水に晒され朽ちていくとしても――この一欠片には、誰かの想いと、魂が籠もっている。
 宝石に縁深い彼らにとっては、この小さな破片でさえ、雄弁に語っているように感じられた。
「『潮干狩り』を許しても、浜が美しさを保つのは、おそらくはそういうことなのでしょう。積み重ねたこころの創り出した色――島民の方に倣って小瓶に頂こうかとも思いましたが」
 ゆっくりと立ち上がったファルシェは目を伏せて、暫し、その波の音を聴く。
「折角です、真珠の浜の思い出に、天然の真珠を探してみる事に致しましょう」
 彼の提案に、凪紗は深く頷いた。
「天然の真珠かぁ……きっと綺麗なんやろな。よっしゃ、探そ探そ――お守りにするならエエかもしれんしな」
 いらえに、仰いだ紫の瞳が静かに細められる。それが意味する感情など、言葉にせずとも解り合えた。
 意気込む凪紗の傍で、ファルシェはそっと握った貴石より魔法仕掛けの小鳥を呼び出した。
 紫石の身体を持つ小鳥は、音も無く羽ばたいて――きっと、とても美しい真珠を、見つけてくれるだろう。

 沢山の涙を、集めた美しい浜辺。
 此処で海賊たちが、次なる宴を繰り広げる時は、再びひとつの悲しみを乗り越えた後になるけれど。
 それが、この世界の――海賊の掟であるのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月12日


挿絵イラスト