●夜の島
青白い星明りに照らされて、花弁がはらはらと舞った。
幻朧桜が咲き誇る山道に、赤い鳥居が立ち並んでいる。
此処には誰もいない。
――此処には誰もいないはずなのに。
「おーい、おーい」
誰かが呼んでいる。
「おーい、おーい」
誰かが近づいて来ている。
「おーい、おーい」
その姿は見えない。
「おい」
何かが、いる。
●グリモアベース
「はぁい、はい。センセ、今日も暑いっスねェ!」
グリモアベースには気温も季節もへったくれも無いのだが、それはそれ。
多くの世界は今、暖かい時期なのだ。
小日向・いすゞ(妖狐の陰陽師・f09058)は、小さく首を傾いで狐のように笑み。
「そういう訳で毎日暑いっスし、ヒヤっとする体験をしてみないっスか?」
人差し指を一本立てて見せた。
――グリードオーシャンの、とある島。
幻朧桜の咲き誇る鳥居の道の先に、神社がぽつんと一つだけある小さな無人島。
以前、猟兵達がコンキスタドールより守った『櫻幽島』。
この島は無人島では在るが、陽気な海賊幽霊達がひしめき。
彼らは日がな一日歌い踊り、呑むこともできぬ酒盛りに明け暮れている。
しかし。
愉快に暮らす幽霊の彼らにも、不満はあるそうで。
「如何せん何も無い島っスから。人が訪れなくて暇だそうっス」
そこで以前面白い活躍を見せてくれた猟兵達を招いて肝試しを行おう、と言う事になったそうだ。
「とびっきりの怖い体験を用意してくれているらしいっスから。センセもひとつ、肝の太い所を海賊幽霊のセンセ達に見せて来てやって欲しいっスよ!」
いすゞは、先程とは逆の方向に首を傾いで。
くくく、と喉を鳴らして笑った。
絲上ゆいこ
こんにちは、絲上ゆいこ(しじょう・-)です。
今年も水着の季節ですね!
締め切り等はお知らせスレッドの確認をお願い致します。
●櫻幽島
夜。
砂浜や海岸沿いにも幻朧桜の咲き誇る、小さな無人島。
小高い丘へと続く道には鳥居が立ち並び、その先には神社が一つあります。
●できること
・海賊幽霊達主催の肝試し。
海賊幽霊達は、あらゆる所からあらゆる方法で驚かせてきます。
島を散策しながらまたは夜の海で遊びながら、自由に肝試しをどうぞ!
色んな怖がり方をしてみてくださいね。
全く霊感の無い方には、幽霊は見えないかもしれません。
また海賊幽霊達に酒盛りなど楽しい事を提案すると、その場の幽霊達は驚かせる事よりそちらを優先します。
そういう幽霊達です。
●迷子防止のおまじない
・冒頭に「お相手のキャラクター名(または愛称)とID」または「共通のグループ名」の明記をお願いします。
・グループ名等は文字数が苦しい場合、無理に括弧で囲わなくても大丈夫ですよ!
●その他
・プレイングがほぼ白紙、迷惑行為、指定が一方通行、同行者のID(共通のグループ名)が書かれていない場合は描写できない場合があります。
・絲上の所有キャラクター、いすゞやケビはお声掛けがあればでてくるかもしれません。
それでは、楽しい夏を!
よろしくお願い致します。
第1章 日常
『猟兵達の夏休み』
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POW : 海で思いっきり遊ぶ
SPD : 釣りや素潜りを楽しむ
WIZ : 砂浜でセンスを発揮する
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
千々岩・弥七
【岩戸】
ふそーさんの前に立って歩くです
男には女を守んなきゃいけない時があるってととさまがいってたのですよ
だいじょぶですよ、ふそー(扶桑)さん
正義の味方の僕がいれば、お化けだってこわくないのです!
だいたい、お化けなんてうそってお歌で言ってたですよ
そう、お化けなびゃー!?
ふ、ふそーさん!今誰かぼくの足を触ったです
(扶桑さんにしがみ付いてブルブル。バイブレーション搭載狸と化す)
あわわ、ふそーさん、なんかいっぱい寄ってきたですよ!?
ゴツイおじさんがあちこちから…はばふぅ(気絶)
…はっ!何か変な夢を見たような…?
あえ?ふそーさん、おんぶしてくれるですか?
わぁ、うれしいのです!
でも行くってどこ…
びえー!!
黒羽・扶桑
【岩戸】
弥七のやつ、張り切っているが大丈夫だろうか
まあ、好きにさせるか
そうかそうか、我を守ってくれよ?
いや、お前も我もお化けの類では…って
(しがみつく狸を一瞥)
うむ、知っていた。まあ、やはりこうなるよな
しかし、足を触った?
海賊幽霊とやらが何か仕掛けたか?
折角遊びに来たんだ、彼奴らの顔を拝んでいくかな
UC用の酒を取り出して
おい、そこな海賊よ。肝試しも乙なものだが
もっと賑やかに楽しまんか?
手土産(酒)もあるぞ?
おお、なかなか気が合いそうな奴らだ
いざ、酒盛りを…何だ、体が重いな?
(狸の存在を忘れてる。鳥頭)
おお、すまんな弥七。忘れていた
ほれ、おぶってやるからお前も行こう
美味いものがあるかもしれんぞ?
●ヨーホー
海のにおいがする風に、白い幻朧桜の花弁がはらはらと舞った。
星灯りに照らされた並木道を、千々岩・弥七(ちびたぬき・f28115)は獣の耳をぴんと立て。
黒羽・扶桑(あまづたふ・f28118)をその背で守るように、幼い彼は薄暗い道の先陣を切って歩み行く。
――男には女を守んなきゃいけない時があるのです!
ととさまの言葉を胸に、弥七は両拳をきゅっと握りしめて。
「だ、だ、だいじょぶですよ、ふそーさん。このさきはみちがあります! お化けも見えませんよ!」
「ああ、そうだな」
ぷわぷわに狸耳と尾を膨らせながら、エスコートする彼の背。
扶桑はその背を見やりながら、随分と張り切っているようだが大丈夫だろうか、なんて。
短く応じながらも、胸裏を過る懸念に瞳を細め。
「正義の味方のぼくがいれば、お、お化けだってこわくないのです! 怖がらなくてよいですよ、ふそーさん!」
扶桑の心配等も知る由も無く、ただただ懸命に。
大丈夫じゃなさそうな雰囲気を言葉の端々から醸し出しつつも、弥七はずんずんと先へ先へ。
そんな彼の様子に、扶桑は小さくかぶりを振って。
――彼のやりたいように、好きにさせておく事に決めた。
「そうかそうか、お化けがでたら我を守ってくれよ?」
そうして、頼りにしているぞ、と扶桑が声をかけると。
「もちろん、ぼくにおまかせですよ! だいたい、お化けなんてうそってお歌で言ってたですし!」
彼女の言葉に、こくこくと何度も頷いた弥七は胸を張り。
「……いや、言ってみたら、お前も我もお化けの類だろう」
思わず指摘した扶桑に――。
「そう、お化けなんてうそなんですから!」
よく見るとぷるぷるしている弥七が、なんとも噛み合わない答えを口にした。
ああ。……やっぱり大丈夫じゃないかもしれない。
なんて、扶桑が瞬きを重ねたその瞬間。
「ぴゃっ!?」
スーパーボールみたいに大きく身体を跳ねた弥七が、スムーズな動きで扶桑の腰へとしがみついた。
「い、いいいいいいいま、いま誰か僕の足に何を触っ、触ったですよ!? えっ!? ふそーさん!? 触ったですか!?」
ぷるぷるからブルルルルくらいに振動機能の強化された弥七の、涙ながらの訴えに、左右に小さく首を振る扶桑。
「我は触ってはいないな」
「びゃああああ!!!」
うむ、知っていた。まあ、やはりこうなるよな。
しかし、だ。
弥七のやつが足を触られたと言うのならば。恐らくは海賊幽霊とやらが、何かを仕掛けて来たのであろう。
然もありなんと肩を竦めた扶桑は、弥七をくっつけたまま気配を探るように周りを見渡した。
ゆら、ゆら。
風に揺れる幻朧桜の枝、白い花弁がはらりはらりと風に舞う。
その風に混じって、か細い声が聞こえた。
おおい、おおい。
「あ、あわわわ、ふそーさん、聞こえました!?」
「うむ、聞こえたな」
おおい、おおい。
呼び声へと向かって、一歩足を踏み出す扶桑。
「な、なななななんで声のほうにいくです!?!?!?」
「いや、何、元より向かっていた方向だ。それに折角遊びに来たんだ、彼奴らの顔を拝んでいこうかと、な」
おおい、おおい。
幻朧桜の影に白い影が見えた。
「ま、まっ、あのっ、わっ」
もはや言葉が言葉にならない弥七。
桜の影より現れた白い影が、こちらに寄ってきている。増えてきている。
「な、なななななんか、いっぱい寄ってきてないですか!?!」
恐怖の許容範囲を大幅にオーバーしてしまった弥七のかぶりを振る速度と、振動が強くなる。
あっ。
もうだめです。
「は、ば、……ふぅっ」
そして、扶桑にしっかりとしがみついたまま意識を失う弥七。
彼をくっつけたまま扶桑は、持ち歩いている酒を取り出すとちゃぽりと揺らし。
「おい、そこな海賊よ。肝試しも乙なものだが、――もっと賑やかに楽しまんか?」
幽霊達へと、酒盛りのご提案をした。
わい、わい、がや、がや。
身体がゆらゆらと揺れている。
人がたくさんいる気配を感じる。
笑い声、楽しげな歌声、お酒の匂い。
「……はっ!」
ぎゅっと固めた拳を緩めた弥七は、ぷるぷるとかぶりを振り。
「何か、変な夢を見ていたような……」
ぼうとする頭を上げると、扶桑と視線があった。
「あえっ、ふそーさん……。あれ……?」
「おお、……そういえば身体が重いと思った。すまんな弥七。忘れていた」
扶桑は烏なので、三歩歩くと様々なことを忘れがちだ。ましてや酒が入れば、なおさら。
弥七をくっつけたままだった事を思い出した扶桑は、くっと酒を呷ってから。
「起きたならお前もごちそうになるか? 海賊達が果実の生っている場所に案内してくれてな」
「わぁ、ごちそう? うれしいで、……え?」
扶桑の言葉にぱっと表情を輝かせた弥七は、言葉を中途半端に紡いだまま目を丸くする。
……海賊?
そういえば……。
瞬間。
意識を失う前の記憶が、走馬灯のように脳裏に流れ出す弥七。
すべてを思い出した弥七が、壊れかけた玩具みたいな動きで周りを見渡すと――。
扶桑以外の皆、楽しげな喧騒の主達。
そう。
酒を零しながら騒いでいるゴツイおじさん達の姿が、全員透けていた。
「び、びえーーーーーーーーーっ!」
お化けーーーーーーーーーーーーーーッ!
弥七は言葉にならない叫び声を上げると、そのまま再び意識を失い――。
「なかなかこの海賊達が気のいい奴らでなあ、この果実もなかなか酒に合うんだ」
そんな彼の様子を知ってか知らずか、扶桑は上機嫌で酒をもう一口呷る。
「おいおい、ねえちゃん褒めても何もでないぜ」
「エクトプラズムくらいならでるかもな」
「ワハハハハハ!」
なんて。
弥七の悲痛な叫び声は、海賊たちの笑い声にかき消えてしまうのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と
……肝試し、ですか
この職にありますので人ならざる者はそこそこ視えはしますが……
傍らの愛しい伴侶をちらり見て
……僕よりも霊感強そうですよね、きみ
なんとなく挙動不審なかれの手を握って、島を散策に向かいましょう
木陰から物陰から、突然出てきたりありえないものの動きが見えるのはそれなりに驚きますが
いちばん怖いのは、かれが僕には見えない何かに会釈したり挨拶していること
……何が見えているんでしょう……
ひとまわりぐるりと島を回り終える矢先
とつぜん現れた猫に今日いちばん身を震わせて驚くかれ
みゃあおと鳴いて通り過ぎる猫を見送ってから
……僕ももっと霊感をつけるべきか、真剣に悩みますね
ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と
…肝試し…だと…?
倒せぬ者と遭遇するやもしれんのか…
…否…大丈夫だ。お前の事は俺が護って見せる故にと青白い顔で握られた手を握り返し散策へ向かう…が、意外と島民が居るではないか
急いで居るのか飛び出てくる故転ばぬか心配にはなるが
接触しかけたらすまないと頭を下げつつこの島の美しい景色が見える場所等を聞けたら聞いてみよう
…様々な景色を共に見ようと、約束しただろう?ならば島民に聞くのが一番だろう
肝試しと言われた故構えてしまったが…のどかで良い島ではない…か…っ!?
そう声を投げるも闇から出て来た猫を見れば身を跳ねさせてしまうかもしれん
…べ、別になんだ。驚いて等おらんぞ?…宵、聞いて居るか?
●にゃーお
はらはら、零れ舞う花弁。
かの世界よりこぼれ落ちてしまったとしても、変わること無く。
その花を絶やす事無く、咲き乱れる幻朧桜。
星灯りを浴びて青白く揺れる花道を、逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)とザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)は手を繋いで歩み行く。
そこに。
「ああ、すまない。大丈夫だろうか。……余り慌てて転ばぬようにな」
突然足を止めたザッフィーロが、軽く会釈を重ねて。
宵はその様子に、言葉を飲み込んだ。
――肝試し、と聞いて。
少しばかり動揺しながらも、『たとえ倒せぬ者と遭遇したとしても、お前の事は俺が護って見せる』と宵の掌を強く握り返したザッフィーロ。
愛しき伴侶の自らを思って言葉は、何にせよ嬉しく心が揺れるものだ。
……いいや。
しかし。
しかし、だ。
「ふむ。無人島と聞いていたが、意外に島民が居るものだな」
なんとなくザッフィーロの方が霊感が強そうだと、宵が感じていなかったかと言えば嘘になる。
しかし。
しかし、だ。
――ここまでとは。
「……そうですか?」
ザッフィーロの言葉に宵は首を傾いで、小さくかぶりを振った。
――『海賊幽霊』達は、確かに張り切って二人を驚かせようとしているのであろう。
横切る白い影や、地面に生えたたくさんの腕だって、そりゃあ驚きはした。
しかし、それはまだマシである。
なんたって見えているのだから、対処のしようがある。
しかし。
しかし、だ。
ザッフィーロが宵の見えない何かに挨拶をしたり会釈をしたりしている事は、対処のしようがない分もっともっと怖かった。
宵だってそこそこ視えている筈だと言うのに。
その宵の視えぬモノを見て、普通に話しているザッフィーロ。
なんたって宵は、彼の言う『島民』とこの島に来てから一度もすれ違ってはいない。
そりゃあ、幽霊はお腹が一杯になる程見たけれども――。
幽霊でなく、『島民』を見ていると言うザッフィーロ。
……一体、何が見えているというのだろうか。
宵は背をぶるると震わせ。
「ああ、そうだ、宵」
「はい?」
考え込んでいる宵に重ねた掌をきゅっと引いたザッフィーロは、その宝石のような銀色の視線を、紫の視線と重ね。
「先程の島民がな。向こうの丘から見下ろす幻朧桜が、海と星空に映えてとても美しいと教えてくれたのだ」
「そうなのです、か……」
朽ちる迄共に在ると。
終わりの日まで共に生きると。
美しい景色、綺麗な景色、見たことのない景色。
――それまで、様々な景色を共に見ようと約束したのだ。
だからこそ。
「島民が一番、その島に詳しいだろう? 行ってみよう」
故に美しい場所も島民に聞くのが一番であろう、と言うザッフィーロに。
「……良いですね、行きましょうか」
この島に来てから一度たりとも離れず、ザッフィーロと共に居たけれど。
その島民を一度も見ていない宵は、歯切れの悪い返事でもう頷く事しかできない。
「しかし、何だ。……肝試しと言われた故構えてしまったが……、のどかで良い島では無……ッ!?」
瞬間。
がざり、と草むらが揺れて。
のんびりと話していたザッフィーロが、今日一番驚いた様子で目を見開いて肩を跳ねた。
がさ、がさ。
みゃああぁお。
「……おや」
気配を感じるために集中していた宵は、気づいていたのであろう。
草むらを見やって瞳をぱちくり。
そうして草むらから現れた親子らしき二匹の猫が、会釈のように頭を下げてから向こうへと去って行くと――。
「いや、何、……べ、別になんだ。驚いて等おらんぞ?」
きゅっと強張ってしまった身体を緩める息を吐いたザッフィーロは、取り繕うように言葉を重ねた。
「……」
しかし。
猫の気配は解れどザッフィーロの言う所の気配は、全く察知ができない事実を再確認してしまった宵は眉根をきゅっと寄せたまま。
「……宵?」
そんな彼の胸裏等知ることもないザッフィーロが首を傾ぐが。
――僕ももっと霊感をつけるべきでしょうか、なんて宵は真剣に考えこんでいる。
「宵、聞いて居るか?」
そんな彼の気がつくまで、ザッフィーロは一生懸命訴えかけるのであった。
驚いて等おらんから、な?
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
月舘・夜彦
【華禱】
倫太郎殿がお酒を供えると仰っておりましたので私も用意して参りました
エンパイアで人気のある銘酒を数本
では楽しみましょうか
お酒の席は久しぶりです
倫太郎殿が傍に居るとは言え、飲み過ぎないようにしなくては
しかし注がれるお酒を断る訳にもいきませんね
悩ましいですが……頂きます
お酒の席はやはり楽しいですね、りんたろどの
少し飲み過ぎてしまったようです
りんたろどのと共に散策しましょう
彼と手を繋いでいる間に遠くから聞こえる声
悲鳴だけでなく、それに混ざって楽し気な声も聞こえる
きっと肝試しに向かった人達の声なのでしょう
何も言わず彼と顔を合わせて笑い合う
篝・倫太郎
【華禱】
前回、酒を供える約束したし……
島を夜彦にも見せたかったから……いい機会かな
日本酒、焼酎、麦酒……だけじゃなく
バーボンとかテキーラとか好きそうだし
色々持ってく
酒盛りしようぜ?
だって約束しただろ?
酒供えるってさ
肝試しは一時中断して酒盛り
酒に弱い夜彦には弱めなの渡しと……
オソカッタ……
『う』迷子になってんですけど、この人
約束果せてよかったよ
酒盛りしてるのを傍目に夜彦と二人抜け出して
酔いを醒ますのに散策
なんて、言い訳だけど
あの日、手持ち無沙汰だった空いた手
今日は満員御礼で……
それはやっぱり当たり前だけど特別
そして、些細な贅沢
何処かで悲鳴が聞こえる
肝試し組のその声に夜彦と顔を見合わせて小さく笑う
●約束の酒盛り
あの気の良い海賊幽霊達は、情報提供の礼に酒を供えてくれ、と言った。
「よう、約束を果たしに来たぜ」
前回は居なかった月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)と共に、たっぷりと酒を手にして再び幽霊達の前に姿を篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)はにんまりと笑って。
「おっ、待ちすぎて成仏するかと思ったぜ」
「わははは、したほうがいいんじゃねえの?」
「ちげえねえなあ!」
「ガハハハ! なんだなんだ、見たコトのねえボトルだな」
「今日は肝試……、いや、肝は肝でも肝臓だな」
「ガハハハハ!!」
「俺達のめねえけどな!」
「いいんだ、いいんだ、酒は気分がいい!」
「なんとも、賑やかな方々ですね」
「そうだろ?」
肝試しに集まっていた幽霊達が、わっと群がってきた様子に夜彦は眦を緩めて微笑み。
なんとなく誇らしげに倫太郎は、笑って応じるのであった。
肝試しは肝試しでも、肝臓試し。
星灯りが、しらじらと絶えぬ事無き桜の花弁を照らしている。
日本酒、焼酎、麦酒に、バーボン・テキーラ。
エンパイアで人気のある銘酒だって用意した。
美しい夜桜の下で、呑む酒。
これで楽しめないほうが嘘であろう。
おぼろげな手先が酒瓶を掴むと、夜彦の持つグラスへと酒が注がれる。
「わはは、のみなにいちゃん!」
「久々の酒だ! 酒だ! 大盤振る舞いだ!」
「ヨーホー! ヨーホ! 呑め呑め!」
「はい、ありがとうございます」
彼らはどうやら呑めぬよう。
それなのに注いで貰った酒を断るのも悪いであろう。
夜彦はグラスをぐっと傾けて――。
「……あっ、遅かった、か」
「ふふ、ふふふ。このお酒は甘くて美味しいですね、……ねえ、りんたろどの」
「あー、あー。『う』が迷子になってんですけど、この人」
倫太郎としては酒の弱い夜彦には、酒精弱めの酒を勧めようと思っていたのだが。
海賊たちに先を越されてしまったからには仕方がない。
手酌で酒の倫太郎も傾けると、肩を竦めて夜彦の横に腰掛ける。
「いいけどさぁ。あんた弱いんだから、あんまり飲みすぎないようにな」
「ええ、心得ておりますよう。ふふ。久々のお酒の席は、楽しいですねえ」
「……そうだな、本当に約束が果せてよかったよ」
そんな二人を囲んで、海賊たちはとぽとぽ酒を撒き散らしながら、わいわいと盛り上がっている。
「おうおうおう、なんだなんだ、呑め呑め、もっと呑めよう!」
「歌うか!」
「おっ、俺は踊るか!」
「俺はなあ、海にでてかあちゃんに楽をさせたかったんだよなあ」
「今は身体もなくして、頭も身体も楽になっちまったけどな!」
「ガハハ! それも海に出たならしかたねえよなあ」
「海の悪魔には気をつけろよ! あんちゃんたちもな!」
「ああ、気をつけるさ」
倫太郎が肩を竦めて頷くと、夜彦はグラスを掌の中に包み込んだままちびちびと酒を舐めるように。
語られる自虐とも自慢ともとれぬ、英雄譚、冒険譚。
歌に踊りに。
酒と伴に、更け行く夜。
「……夜彦、大丈夫か?」
「大丈夫ですよ、りんたろどの。……でも、すこし飲みすぎてしまったかも知れません」
ふやふやになってしまった夜彦に首を傾いだ倫太郎は、肩を竦めて。
「ちょっとこの人の酔いを醒ましてくるよ。酒が自由に飲んでてくれよ」
「おー。おー。仲良くしてこいよなあ」
「がははは!」
海賊たちが送り出す中。
夜彦の手をとると、潮の匂いがする海岸へと歩みだした。
そう。
酔い醒ましなんて、言い訳だけど。
あの日は、手持ち無沙汰だった掌が。
今日は、ちょっとばかり人が多すぎて機会が得られなかったけれど。
いまはこんなに暖かい掌と繋がれている。
いまはこんなに心が暖かい。
海の音が、波の音が、近い。
遠く響く、楽しげな声音。
遠く響く、誰かの悲鳴。
二人は顔をあわせて、島の音にくすくすと笑い合った。
「りんたろどの、……ありがとうございます」
「ああ」
それはやっぱり当たり前だけど、特別なこと。
そして、些細な贅沢で。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
終夜・嵐吾
せーちゃん(f00502)、と…
えっ…肝試し…えっ…ほ、ほんも、の…?
つ、つくりものじゃ、ないん、か…
まって…せぇちゃ…ちょ…わし…むり…いきてかえれん…
やじゃ…えっ…いや、えっ…
いや、いやなんもおらんけど、なんか、おる、じゃろ…
わしのしっぽがびんびんにいやなあれをあれしとる…
えっ…むり…(なみだめ)
おぶりびおんはそれとわかっとるからええ!
妖怪もええよ!わし狐じゃし!
じゃが、じゃが姿見えん幽霊は――となり!?
うつろも面白がって助けてくれん…!
た、たよれるのは友…いやせぇちゃも頼りならんな!?
いいい、いまなんかに撫でられッ
た、たのしい、じゃと?!この、箱…!
ぶじに…かえれますように…(おいのり)
筧・清史郎
らんらん(f05366)と
さぁらんらん、いざ肝試しに出発だ
ああ、本物の幽霊さんらしいぞ
ふふ、らんらんなら大丈夫だ、行こうか(言いくるめ
そうか、何かいるのか
どのようなお化けさんに出会えるか楽しみだ(超微笑み強引に友の手を引く
いつもオブリビオンを退治しているだろう?
妖怪さんも平気ではないか
ふふ、確かにらんらんも狐さんだな
姿が見えないのか
ではもう隣に居るかもしれないぞ?(くすりと
虚は眠っているのか
ではらんらんだけで頑張らねばだな(微笑み
俺は幽霊さんとお話したい(にこにこ
びびる友が可笑しく
安心させてやろうとそっと肩を撫でてみる
ああ、余計に怖がらせてしまったか(わざと
ふふ、肝試しとは楽しいものだな(笑顔
●せーちゃん
筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)は終夜・嵐吾(灰青・f05366)の手を引いて、常の笑顔。
「ふふ、らんらん。楽しみだな」
「えっ、待って、ちょ、あの、これ、ほ、ほんも、ほんものじゃよね?? つ、つくりものじゃ、ないんよ、ね?」
「ああ、本物だそうだ」
「まって、せぇちゃ、……ちょっ、わし、……そ、そういうの、まっ、まって、わしむり……むりむり、むり! せーちゃん!?」
「ふふ、らんらんなら大丈夫だ」
「いきてかえれん……いきてかえれん……、や、やじゃ、えっ、いや、まっ」
人工の灯りの無い、星灯りだけに照らされた島。
潮鳴りと虫の鳴く声。
昼間に比べれば随分と涼やかな風が、もみ合う二人の頬を撫でた。
決して絶えること無き花弁に、青白い星灯りを浴びた幻朧桜。
その桜が立ち並ぶ参道は、その身を草に半ば覆われながらも唯一の建造物の神社への道行きを教えてくれている。
――ここは櫻幽島。
サクラミラージュからこぼれ落ちた無人島。
そう。
この島には人が住んでいない。
――しかし。
人で『あった』者ならば、沢山沢山住んでいる。
「本物の幽霊さんに出会えるなんて、楽しみだな」
ぷるぷると首を左右に振る嵐吾の手を、無闇に力強く引く清史郎の声音は物腰柔らか。
道行きを見据える彼の瞳と歩みには、一点の迷いだってありゃあしない。
「いや、いやいやいやいや、まって、わし、ほんと、むり……なんもおらんけど、そっちになんか、おる、……じゃろ? わしのしっぽがさっきから、びんびんにいやなあれを、ほれ……あれを……あれしとるから……」
「おお、そうか。それはどのようなお化けさんなのだろうな、楽しみだ」
「えっ、えっ、せぇちゃ……まって、むり、本気??」
そんな清史郎とは裏腹。
灰青色の狐尾をこれ以上無い程膨らせた嵐吾は、耳をぺったり倒したまま琥珀色の瞳に涙を浮かべて。
尾がびんびんに嫌なアレをアレするほどに迷いに満ちた歩みには、足の形の轍が付き纏う。
いや、これ引きずられてるな~。
「ああ、本気だが……。しかし、らんらんはいつもオブリビオンを退治しているだろう?」
そこまで怖いものだろうか、と首を傾ぐ清史郎。
「お、おおおぶりびおんは、それとわかっとるじゃろ!?」
食い下がって吠える嵐吾。
「妖怪さんも、平気ではないか」
「妖怪もええよ! わし狐じゃし! 妖狐じゃし!」
「ふふ、確かにらんらんも狐さんだな」
嵐吾の魂の訴えに今日は一段と尻尾がもふもふだな、と微笑む清史郎。
清史郎を突き動かす衝動は、純粋すぎる好奇心。
ちょっとこう、すこーし、人の心がわからないだけ。
あと言いくるめもまあまあ得意だし、平気平気。
「おぶりびおんも、妖怪も姿が見えるじゃろ!? じゃが……じゃが、姿が見えん幽霊は……」
「ふむ、らんらんは幽霊さんの姿が見えないのか?」
「えっ、いや、」
「ふふ、ではもう隣に居るかもしれないな」
「と、とととととととなり!?!?!?!?!?!?!」
その言葉に驚いた猫のように毛を逆立てた嵐吾は、ぴゃっと大きく跳ねた。
彼の右眼の洞に住む虚の主からは、嵐吾の置かれた状況を面白がっている気配を感じる。
つまり、助ける気は無いと言う事だ。
ならば、頼れるもの。
信頼のおける友人――。
「えっ!? いや、せーちゃんも頼りにならんな!??!」
最後に頼れる者は自分だけだったようだ。
思わず心の声が口からだだ漏れた嵐吾が、ぷるぷると首を振り。
「……ん、今日は虚は眠っているのか。では、らんらんだけで頑張らねばだな」
ふむ、と掌を口元に寄せた清史郎は瞬きを一つ。眦を和らげてとてもとても優しい笑みを嵐吾に向けた。
「今日は沢山幽霊さんとお話できると良いな」
「や……、やじゃ、いや、や、やじゃーーーっ!」
ぷるぷると再び顔を振る嵐吾。
「ふむ……、らんらん……」
そんな友を面白――否。
心からの気遣いで安心させてやろうと、清史郎は彼の背をそっと撫でてやる。
「いっ!?!?!?! い、いいいいいい、いまなんか背っ!? なんっ!?」
再び毛を逆立てた嵐吾が、ぴゃっと大きく跳ねた。
「ああ、すまない。余計に怖がらせてしまったか?」
恐ろしすぎて後を振り向く事すら出来なくなってしまった嵐吾の姿に、清史郎は喉を鳴らしてくっくっと笑った。
「せ、せーちゃんじゃったのか!?」
嵐吾が噛みつかんばかりの勢いで訴えようが、清史郎はいつもの雅スマイル。
いやあ、心配しての事だったのだが、みたいな涼しい顔をしている。
「ふふ、肝試しとは楽しいものだな」
「たっ!? たのしい……たのしいじゃと!? こっ、この……箱……!」
混乱しきった頭からなんとか絞り出てきた精一杯の罵倒を嵐吾は口に。
もうこれからの先行きを、祈る事しか出来ない。――無事に、無事に帰れますように。
一方、幻朧桜の下。
「あいつらまだこっちまで来ないな……」
二人で盛り上がってしまって牛歩の二人を、驚かせようと潜む海賊幽霊はだいぶ待ちぼうけていた。
――しかし、まだこの幽霊は知らない。
この後まあまあ長い時間、あの二人の片割れから質問攻めに合う事を。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
朧・ユェー
【苺月】
怯えている彼女の前でゆっくりと歩む
その姿にくすりと微笑むも少し悪戯心で
おや?彼方に白い影が?
想像以上の慌てぶりに愉しむもちょっとした罪悪感
僕の上着の中では動きづらくないですか?
ほらこっちの方が良いですよ
彼女をそっと自分の横に自分の腕を掴ませて
僕がお化け?
どうやら何か考えごとをしつつ突然のお化け達に驚いた様子
苺ちゃん落ち着いてという僕の言葉も聴こえておらずパニックな彼女
腕を回すのですか?
そっと彼女の首に手を回すとドラゴン化する彼女の背に
おやおや?いけない子ですねぇ
でも月を近くで君と観るのも良いですね
次の時は逃げてはダメですよ?
ふふっ、大丈夫
その時は護ってあげますから君が怖く無いようにね
歌獣・苺
苺月
ひゃああ!?
ユェーくん!
私で遊ばないで!
…もー怒った!私この依頼終わるまでユェくんの上着の中から出ない!責任もって先導して!
(…おっきい背中。なんか安心する…
…?この気持ち…なんだっけ…
…あ。そうそう!これ、恋!
………恋!!?)
あ、あ…ユ、ェくん…どうしよう。
私、ユェくんのこと……!
ヒッ!お化け!
ち、違う!ユェくんじゃなくて
後ろ!!!こっちに逃げ…ってこっちも!?どうしよう挟まれた…
…!ユェくん!
後ろから私の首に腕回して!
あぁ~もう!いいから早く!
『これは、皆を希望に導く謳』!
そう言うと、ドラゴンになり月が
近く感じるほど高く大空へ飛び立つ
月を2人で鑑賞する頃には
忘れていた
恋してたことなんて
●星を見上げて
「わ……、やっぱり暗いね……!」
海のにおい。
か細い星灯りに照らされた島は、汐鳴りを遠く響かせて。
この世界へとこぼれ落ちた時より、人の手が入らなくなってしまった参道。
踏石を覆うほどに雑草の伸びた道行きは、まるで人が通る事を拒否しているようで。
歌獣・苺(苺一会・f16654)の瞳には、それがひどくおどろおどろしく映る。
いいや。
幽霊が肝試しに誘ってきていると言うのだから、おどろおどろしいのはある意味当たり前なのかも知れないけれど。
猫の鍵尻尾が不安げに揺れ、かぶりを振った苺は少しだけ縋るような視線。
「……ねぇ、ユェくん」
散歩でもするようなのんびりとした足取りで先を行く朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)は、呼びかけに足を止めて振り返り。
睫毛を揺らして瞬きを二度。
「おや、苺ちゃん」
何だい、とまではユェーは言葉を紡がなかった。
苺の表情から全てを察した様子で、唇に悪戯げな弧を宿した彼は彼女の横に歩み寄り。
そのまま人差し指を立てて、木陰を指差した。
「……向こうに白い影が見えないかい?」
「えっ、ひゃあ、ぅ、っ!?!?!?」
全身の毛並みを膨らせて跳ね上がった苺は、ぴゃっとしゃがみ込むとユェーの上着へと潜り込み。
ぷるぷるしながら、外部情報をシャットアウト。
「……ごめんね、冗談だよ。そんなに驚くとは思わなかったよ、驚かせてごめんねぇ」
想像以上の反応にくすくすと笑ったユェーは、じんわりと混じる罪悪感に謝罪を紡ぎ。
「う~~っ、ユェくん! 私で遊ばないでよ! もー、もー、怒ったからね!」
ぷりぷりと唇を尖らせる苺は、上着の下からお気持ち表明。
「もう、この肝試しが終わるまでユェくんの上着の中から出ないから! 責任もって先導してよね!」
「おやおや、僕の上着の中では動きづらくないですか?」
「ユェくんが私で遊ぶからでしょーっ!」
ユェーの上着の大きく開いた裾。
脇のあたりから顔を出した苺は、もう、なんて言いながら。
――どうしてかな。
こうやって、背中にくっついているとなんか安心する。
昔、この気持ちの名前を知っていた。
なんだっけ。
……ああ、そうだ。これ、これって。
恋だ。
……え?
えっ、恋??!
「あっ、えっ、……えっ?」
「どうしたんだい、苺ちゃん」
「あ……っ、あ、ユ、ェくん……どうしよう。私、ユェくんのこと……」
「……僕のこと?」
瞬間。
苺の視界に飛び込んできたのは、半透明の白い腕であった。
「ヒッ!!?!?! お化け!!?!?!?!」
「……僕がお化け?」
「あ、ああああっ、ちが、っ違う、ユェくんじゃなくて!! わっ、えっ、腕、腕が増えてる!?」
ひらひら、揺れる腕の数が増えてる。
思わず苺が上着から飛び出して、反対側へと走り出そうと振り向くと。
おいで、おいで。
そちらにも誘うように透明な腕が――。
「苺ちゃん、少し落ち着いて」
「お化け、お化けが来てるよ! うう、挟まれた……ッ!? ゆ、ユェくん! 後ろから私の首に腕回して!」
「腕を回すのですか?」
「あぁ~もう! いいから早く~~!」
お化けがたくさん見えた事で完全に混乱してしまっている苺の首へと、ユェーはそっと腕を回し。
その感触に、苺は大きく翼を広げた。
――これは、皆を希望に導く謳!
はらはらとガーベラの花弁が舞いあがり。
思い切り地を蹴り上げた苺の姿が一気に膨れ上がって、ドラゴンへと変化する。
そのまま広げた翼でぐんぐん風を呑み込んで。
空へ、空へ、高く、高く。
ドラゴンと化した彼女の背の上で、ユェーは肩を小さく竦めて笑った。
怖がりすぎて、空まで逃げてしまうなんて。
「おやおや……、いけない子ですねぇ」
「だ、だって……」
「――でも、月を近くで君と観るのも良いですね」
「つき?」
ユェーの言葉に空を見上げた苺は、思わず息を零した。
暗い空に煌めく、無数の光。
高い空に飛び上がったことで、ひときわ大きくなった星灯りが二人を照らしていたものだから。
「……わあ、本当。……綺麗だねぇ……」
彼女の名前と同じ苺色の瞳に、ぴかぴかの星灯りを宿して。
空を見上げたまま。
その頃にはもう、苺は忘れてしまっていた。
――恋をしていたことなんて。
「ねえ、苺ちゃん。次は逃げてはダメですよ。……大丈夫、護ってあげますから」
次は怖く無いように、ね、と。
ユェーは付け足して、笑った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
灰神楽・綾
【梓(f25851)と】
肝試しは楽しそうだけど、ちょっと自信ないなぁ…
何がって? 上手に驚くことが出来るかどうか
幽霊達は驚かせる気満々で来るだろうから
「すごーい」って素直に褒めたら
逆にしょんぼりさせてしまわないかなって
なるほど
焔と零ならいいリアクションしてくれるだろうし
幽霊達も満足するだろうし
その様子を眺める俺達も楽しいし、一石二鳥だね
笑顔でさらりと腹黒いことを言う
闇夜に咲く幻朧桜、綺麗だね
幻想的な景色に浸っていたら…
あれ?誰か居る
それが幽霊達だと気付いた焔と零が
鳴きながら飛んで逃げるんだけど
その先にも幽霊が待ち構えてて
いやー面白かったねー
最後は浜辺でお疲れ会
ん?幽霊達も釣られて集まってきた?
乱獅子・梓
【綾(f02235)と】
俺達の故郷は常に夜みたいなものだし
亡霊とかも普通に出てくるからな…
今更幽霊やお化けに対する恐怖心は無いが
かといって、下手くそな演技で
驚いたフリだけしてもそれはそれで失礼だろう
…ああ。ちょうど良い驚き要員が居た
ドラゴンの焔と零を呼び出す
事の詳細は言わず、島の探索をするぞとだけ伝える
…何も知らないではしゃぐ姿に罪悪感を覚えるが…
見事な幻朧桜に見惚れていたら
桜の木の下に青白い幽霊が
しかも少しずつ増えていく
その度に、予想通り素っ頓狂な
鳴き声をあげてビビる焔と零
悪いとは思うが、見ていて面白かった
最後は浜辺へ行き
予め持ってきておいた酒やら食料を出し
げっそりしている二匹のご機嫌をとる
●かわいそうなりゅう
星灯りを浴びた幻朧桜はしらじらと、青白く輝いているようにも見えて。
汐鳴りが遠く響く獣道と化した参道の前に立つ灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)と乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は、二人並んで考え込んだ様子。
「……ちょっと自信ないよねぇ」
「確かにな」
常夜の世界。
ダークセイヴァー出身の二人からすれば、夜道なんて今更怖がるようなモノでは無い。
幽霊やお化けに対する恐怖心なんて、とっくの昔に失ってしまっている。
――それでも海賊幽霊達はとびっきりの怖い体験を用意して、猟兵達を驚かせようと現れるのだから。
下手くそな演技で驚いた振りをしたりしたら海賊幽霊達もがっかりするだろうし、何より失礼では無いだろうかと二人は頭を悩ませているのであった。
「んー、工夫すれば上手に驚けるかな?」
綾がううんと唸っていると、梓は思いついた顔。
「ああ、いや。丁度良い驚き要員が居た」
「あ、なるほど」
得心した様子で綾が顔を上げて。
いつもの笑みで首を小さく傾いだ。
「焔と零ならいいリアクションしてくれるだろうし……。きっと幽霊達も満足、その様子を眺める俺達も楽しい、なんて。一石二鳥だね」
「おう、そういう訳だ」
わるーい笑みで頷いた梓は、早速二匹のドラゴンを呼び出し肩へと乗せると。
「さぁて焔、零。島の探索に行くぞ」
きゅー。
がう。
無邪気に肩へと乗る焔と、こっくりと頷いた零には何をしに来たかも知らせずに。
梓と綾は草の長く伸びた参道へと、足を踏み出した。
道なりに植えられた幻朧桜は、元の世界からこの世界へとこぼれ落ちてからもその花を絶やすこと無く。
この島唯一の建造物である神社への道標のように、咲き誇っている。
「綺麗だね」
はらはらと降り注ぐ夜桜の花弁を一枚掌に収めた綾は、指先で白片を弄び。
「ああ、見事なもんだ」
梓の相槌に合わせてきゅ、と焔がこっくり頷く。
しかし、零は返事をしない。
その先の気配をじっと睨めつけている。
「……あれ、誰かいるみたいだね」
いつもの調子で綾が言葉を紡いで。
誰か――、桜の木の下に立つぼんやりとした白い影が顔を上げた。
その恨めしげな視線に零と焔が瞳を見開いた、瞬間。
白い影――幽霊が、二人と二匹の前へと音もなく現れていた。
きゅーーっ!?
がうーーっ!?
慌てたのはドラゴン二匹だ。
身体の透けた幽霊が伸ばす腕から逃れようと、わたわたと泡を食って飛び立つ二匹のドラゴン達。
綾と梓は一度視線を交わし合って、唇に笑みを悪戯げな笑みをにんまり宿し。
ドラゴンが逃げた先を見やると。
きゅーーっ!?!!?!?!??!
がうーーっ!?!?!?!?!?!
二匹のドラゴンの逃げ道を塞ぐように大量の腕が生え伸びてて上がった悲鳴に、梓は思わず吹き出してしまった。
「いやあ、うん。……悪いとは思っているぞ」
梓が視線を反らして横に立つ幽霊に話しかけると、幽霊はうそだあって顔。
いつも通りの笑みを湛えたままの綾は、一つ頷いて。
「いやー面白いね」
「ああ、面白いな」
ぴぎゃー、みたいな悲鳴が響く中。
梓はとても素直に同意に頷いた。
……ねえねえ、本当に悪いと思っていらっしゃいます
その後。
二匹のドラゴンを労うために食料やら酒を広げた途端、酒盛りの空気を感じた幽霊達が陽気に集まってきて更に二匹は悲鳴を上げたとか、あげなかったとか。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リル・ルリ
🐟櫻沫
ここが櫻が前に遊びに来た島?
ぅぅぅ僕、お化けは苦手なのに……雰囲気にもうビクついて、そうと櫻宵に身を寄せる
今なんか声がした……
こ、怖くない!肝試し怖くない!
ちょっと、びっくりしただけなんだから!
ひん!?つつかないでっ
櫻宵にぎゅうと掴まってゆっくり進む
ヤダヤダお化けとってよ!
見てない、僕の事見てないんだから!
ヒェ、なんかいた!僕は目を瞑るから導いてよね!
え?櫻じゃないの?
半泣きで縋り付く
面白がってるな?なんて思う余裕が無い
大丈夫かというように衣をひく、誘を反射的に抱っこする
撫でてくれた
ピィィ!!
目の前に飛び出してきたのは懐中電灯でお顔を照らしたヨル!
飛び上がって、そのまま全速力で泳いでく
誘名・櫻宵
🌸櫻沫
来たわ!櫻幽島!!
またこの島に来れて嬉しいわぁ
しかも今度はリルと一緒!
リル?
何震えてるのよ
まさか
お化けが怖いのかしら?
尾鰭つついちゃえ!
縋られるのも悪くない
頼られるのも嬉しくて
自然足取りも軽くなる
夜の社へ向けて一緒に肝試し
私は陰陽師よ
見えるからリルに教えてあげなきゃ
あらリル
幽霊乗せてどこに行くの?
おーいとあなたを呼んでるわ
それは私の手じゃないわよ
いちいち反応が可愛いからついつい揶揄いたくなる
あっ、誘!
どさくさに紛れてリルに抱っこされてっ
撫でるな、私の人魚よ!ずるいわ!
きゃ!びっくりしたわ、ヨル…
やめたげなさいよ
リル?!何処に游いでくのよー!
驚いて特急で泳ぎ出した人魚を追って、夜を駆ける
●ターボ人魚
「ここ、が、……櫻が前に遊びに来た島?」
前に見せてもらった島の写真には、なぜか王子様が写っていたけれど。
船から島を見下ろすリル・ルリ(『櫻沫の匣舟』・f10762)の声に、潮鳴りの音が重なり。
「そうよ。ふふ、またこの島に来れて嬉しいわ」
それに今日は、リルも一緒だもの、と。
慣れた様子で船を降りる誘名・櫻宵(貪婪屠櫻・f02768)が、唇に艷やかな弧を宿して微笑み。
少し青い顔をしたリルは、ペンギンのヨルをぎゅっと抱き寄せたまま櫻宵の横へと身を寄せた。
リルは決して口には出さないけれど、リルの顔色が良く無いのは決して船酔いなんかでは無く――。
……ううう、お化けは苦手なんだ。
なんで肝試しなんかしたがるんだろう……。
お化けにわざわざ会いに行かなくたって、良いだろう!
――、ぃ。
「……?」
あれ、……今、今なんか声がした?
声……声が、したよね?
一瞬で粟立つリルの肌。
怖いけれど、何かわからないのはもっと怖い。
思わずきょときょと周りを見渡すが、何も見つけられはしない。
「……リル? 何震えてるの?」
櫻宵に寄り添えば、自分の様子が伝わってしまう事は当然の事だ。
首を傾いだ櫻宵は、リルを見やって――。
「もしかして、リル。あなたまさか……お化けが怖いのかしら?」
力いっぱいリルの図星を付いた。
「えっ、ま、まさか! こわ、怖くない! ぼ、僕がお化けや肝試しなんか怖がる訳ないだろう!?」
図星を突かれたリルの肩は、びくんと跳ね。
思わず手放したヨルが、そのままてててと砂浜を駆けだした。
「そう? なら良いのだけれど……」
なんて言いながら、尾鰭を突付く櫻宵。
その唇に宿った笑みが崩れていないあたり、きっと櫻宵も本当の事は気づいているのであろう。
「ひんっ!? つ、つつかないでっ!?」
その気づかれている事実に、気づいているのか居ないのか。
強がるリルはぷるぷると首を左右に振って、櫻宵の手の鰭で叩いた。
星灯りに照らされた、満開の幻朧桜はほの白く。
神社へと続く道行きを、大きく枝を広げて道標のように示している。
桜わらしの人形――誘が、先導するように前を歩み。
草に覆われた飛び石の上を歩む櫻宵は、まるで散歩でもするようなのんびりとした軽い足取り。
その腕にぎゅっとリルがしがみついてくるものだから、櫻宵の足はもっともっと軽くなる。
――リルに縋られるのも、悪くない。リルに頼られるのも、嬉しい。
なんたって、櫻宵は陰陽師。
お化けだって幽霊だって、怖くはない。
でも、でも。
悪戯心にはすこうし、勝てそうにはない。
「あら、リル。……肩に幽霊を乗せて、どこに行くの?」
「えっ!? え、えっ!? 肩にお化け!?」
「ええ、おーいとあなたを呼んでるわ」
「や、ヤダヤダヤダ!! お化けとってよ! 見てない、聞こえない! お化けは僕の事を見たりしてないんだから!」
隠していた筈なのに、全く隠れていないリルのお化けへの恐れ。
一瞬で涙目になってしまったリルは、櫻宵の腕にぎゅっと捕まって。
前を向いた瞬間木々のさざめきの間に、何かを見たような気になった。
「あ、あああああああっ!? な、ななななんか、なんかいた! さ、櫻! ぼ、僕は目を瞑るから!! もう見ない! 何も見ないから導いてよね!!?」
リルが風のさざめきにすら怯える程余裕を失って、自らに縋る姿が可愛くて。愛しくて。
「あら、リル。誰の腕に抱きついているの? それは……私の腕じゃないわよ」
本当に反応が可愛いものだから、ついつい揶揄いたくなってしまうのも仕方が無い事。
櫻宵はくすくすと笑って、首を傾ぎ。
「ぴぇえええっ!?」
慌てて櫻宵の腕から飛び退いて、戦慄いたリルの衣の先が、優しく引かれる。
その先に居るのは、誘の姿。
大丈夫だよ、と言われているような気がして、リルは誘を抱き寄せて。
「う、うううー、誘……」
震える身体を労るように撫でてくれる誘に、リルは尾鰭をぴるぴるさせながら縋り寄る。
「あっ、誘ッ! どさくさに紛れてダメよ、何してるの! 私の人魚よ! ずるいわ!」
まさに今自業自得という言葉を体現する櫻宵が、わあわあと誘に苦情を言うが――。
だめですよ。
それは完全に自業自得ですよ。
刹那。
わちゃわちゃと騒ぐ一行に向かって、ぴかりと光が瞬いた。
そうしてぬっと光に照らし出されたのは――可愛らしいペンギン。
懐中電灯を抱きしめて、自分の顔を照らすヨルの姿だ!
「きゃっ!? よ、ヨル!?」
「ぴぃいいぃいいいいいいっ!?!?!?!?!」
しかしもはや、森羅万象、天地万物。
この世の全てが恐怖に置き換えられてしまったリルは、絹を裂くような甲高い悲鳴を一つ。
思いっきり飛び上がると誘を抱いたまま、幻朧桜の隙間を縫って素晴らしい速度で宙を蹴って泳ぎ出した。
「り、リルーーっ?! 何処に游いでくのよーーっ!?」
混乱してすごい勢いで去っていったリルを追って。
ヨルを抱えた櫻宵も慌てて駆け出して。
――櫻咲く夜の鬼ごっこは、始まったばかり。
その日以来。
櫻幽島の幽霊達の間で、人を驚かせようとする幽霊を逆に驚かせるターボ人魚と、ターボ人魚を追いかけるペンギン花魁の噂が広まったそうだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
琴平・琴子
確認してもよろしいですかエドガーさん(f21503)
本当の本当に肝試しの驚かされる方ですか?
それって、出ますよねアレが
…いえ平気です怖くないですけど
エドガーさんのマントを掴んでもいいですか?
ただの迷子防止ですので、ええ
本当に見えなくて聞こえませんか?
遠くで骸骨が大騒ぎしてお酒飲んでるんですけど体が透けてるので全部駄々漏れとか
ああ分からないなら良いです、言わないでくださいませ
あら、今何か言いました?
いやだって今何か聞こ、
うらめしやって裏飯屋の事でしょうかっ
あっごめんなさい今何か足に引っ掛かって…
…あらお手々だけの幽霊さん、御機嫌よう
実害を加える驚かし、流石に怒りますよ?
エドガー・ブライトマン
助かったよ、コトコ君(f27172)
肝試しというもの、やってみたかったんだ!驚かされる方
出るって?勿論、だって幽霊島と言われているもの
コトコ君が幽霊が見えるし平気なタイプで助かった
私は幽霊が見えないからさ
マント?勿論構わないさ。近くにいるといい
コトコ君にどんな幽霊がいるか教えてもらう約束だからね
いやあ、楽しみだなあ!ハハハ!
島の散策をしつつ、ワクワクと驚かされるのを待つよ
おや、早速なにかいるのかい?私には何も聞こえないけれど…
裏飯屋?
(どうしたんだろう。腹でも減ったのかな)
コトコ君はさっきからずっとソワソワしているね
フフ、盛り上がりすぎて転びかけてる
いやあ楽しそうだ。私はいつ驚かされるのかな…
●まちぼうけ
エメラルド色の大きな瞳に映り込む、星明かり。
海の匂いがする風に、綺麗に切りそろえられた黒髪がさらさらと揺れる。
「もう一度確認してもよろしいですか、エドガーさん」
船から降り立った琴平・琴子(まえむきのあし・f27172)はエドガー・ブライトマン(“運命”・f21503)の白いマントをぎゅっと掴んだまま。
本日、何度目かの確認を口にしていた。
「本当の本当に、肝試しの驚かされる方ですか?」
「そうだよ、コトコ君」
エドガーの金糸の髪は夜の中にあって尚、きらきらと輝くよう。
朗らかに笑む彼は全身で言葉を伝える様に腕を広げてから、ぎゅっとその拳を握り締め。
「肝試しというものを是非一度やってみたかったんだよね。もちろん、驚かされる方だよ!」
「……ええ。はい、まあ。でもそれって、出ますよね?」
「うん? 出る?」
「ええと……アレが」
「アレ……、ああ勿論! なんたって櫻『幽』島だからね。幽霊島かあ、楽しみだなあ」
エドガーは確認するように手記を捲ってから、その手記を丁寧にしまいこみ。
自らが一度は訪れた事のあるらしい、この島唯一の観光スポットとも言える神社へ続く道行きへと足を踏み出した。
道標のように立ち並ぶ幻朧桜は、神社まで途切れる事は無い。
連なる鳥居をくぐり抜けながら、二人は夜を征く。
「でもね、私はどうやら幽霊が見えないようだから。コトコ君が一緒に来てくれて本当に助かったよ」
キミは幽霊が見えるし、平気なタイプでしょう、とエドガーは視線だけで彼女の顔を見て。
その青瞳と視線を交わした琴子は、彼のマントをきゅっと掴んだまま頷いた。
「ええ、そうですね、平気です。……怖くないですし」
「良かった! どんな幽霊と出会えるかな、教えてくれるのが楽しみだなあ」
朗らかに笑ったエドガーは首を傾ぐ。
「それはそうとコトコ君、私のマントに何かついているのかい?」
「いえ、……ただの迷子防止です。初めて歩く夜の島ではぐれては大変ですから」
「確かにその通りだね、ふふふ。しっかり掴んで近くにいるといい」
彼女の言葉に得心した様子で頷くエドガー。
そう、琴子は立派な王子様で、パラディンなのだから。
こんなおどろおどろしく感じる風だって。
星灯に青白く輝く桜並木だって。
ぼうぼうの草に覆われた踏石だって。
あとあの木の幹からぴょっこりと伸びて、こちらをチラチラみている首だって。
決して、きっと、怖がったりしていないのだろう。
対するエドガーは、本当に何も感じていないようで、暗い夜道をずんずんと歩んで行く。
周りを見渡した琴子は眉を寄せて。
そう。
星灯りに照らされているせいか、彼女の顔色は少しだけ悪く見える。
「……あの、エドガーさん。本当に何も見えていないし、聞こえていないのですか?」
「え、なにかいるのかい?」
「そうですね……。いえ、驚かせに来ている訳では無さそうなので、分からないなら良いです、大丈夫ですから」
本当に、本当に、彼には見えていないのだろう。
見下ろした先の海岸で、骸骨やら半分だけ肉のある海賊らしき人たちが大騒ぎをしながら酒を酌み交わしているのだが、全て駄々漏れているけれど。
勿論琴子だって怖くないのだから、伝える程の事ではないだろう。
そう、怖くないですし。
――ゃ。
「……? あの、エドガーさん、……今、何か言いました?」
「え? 私は何も言っていないけれど……」
「いやだって、今、何か……」
うらめしや。
次こそはしっかりと、琴子の鼓膜を震わせた不気味な声。
背筋に氷柱を挿し込まれるようなその声に、小さく肩を跳ねた琴子が周りを見渡すと。
真横に立つ木の幹から、先程も見た首が生えていた。
「――うらめしやって、裏の飯屋の事でしょうかっ!?」
目を見開いた彼女が思わずよく通る声で聞き返すと、エドガーは瞬きを一つ、二つ。
「うん? 裏飯屋?」
コトコ君は突然どうしたんだろう。
腹でも減ったのかな……?
オヤツを持ってこれば良かったな。
なんて。
エドガーが不思議そうに琴子を見ると。はっと首を左右に振った琴子は、視線を前に戻し。
「ああ、いえ。何でもありません」
そうして歩みだそうとした途端。
「あっ、ごめんなさいっ」
おそらくエドガーの足だろうか。
引っ掛けてつんのめって転びそうになった琴子は、謝罪を口に。
それから足元を見ると、白い手首だけの何かが琴子の足首を掴んでいた。
「……あら、お手々だけの幽霊さん、御機嫌よう」
とても丁寧にご挨拶した琴子は、蜘蛛みたいに指先をわしゃわしゃしている手首をつまみ上げると強引に引き剥がして、顔の前まで持ち上げ。
「――実害を加えるような驚かし方は、流石に怒りますよ?」
琴子に凄まれた手首が、慌てた様子でわしゃしゃっと暴れて、手より逃れると茂みへとその姿を消し。
その手が見えていないエドガーからすれば、彼女の動きはパントマイムのよう。
――うんうん。コトコ君も肝試しはとても楽しんで貰えているようだね。
ずっとソワソワして、盛り上がってくれているみたいだ。
誘った手前、相手が楽しんでいると嬉しいもので。エドガーは眦を緩めて、微笑みながら言葉を零した。
「いやあ、私も驚かされるのが楽しみだなあ」
――琴子はまた彼に伝えられずにいる。
さっきからエドガーを驚かせようとして無視され続けた海賊幽霊達が、最早エドガーの方には近付いて行こうともしなくなっている事を。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジェイクス・ライアー
●ダンドと
私達も参加しよう
…なんだ?その顔は
遊びにくらい行くとも。たまの息抜きだ
それにしても、あっちでもこっちでもギャーギャーとうるさい事だ。
来ておいてなんだが、予め出るとわかっていて怖いものかね?
なぁ、ダン……
――ッッッッ!!!!!
(ダンドの鳩尾に拳がめり込む!!!)
あ゛!??
いや悪い、一瞬お前の顔が……
……お゛ん゛ッッッッ!!!???
(ドゴス!!)
いや違う、(ボコォ!!)
今のはわざとじゃあ(バキィ!!)
ないッッッッ(SMASAAAASH!!)
…
……
まあ、慣れないことをするものではないな。
●補足
ホラー耐性は中の中
不意打ちと大きな音系が苦手
びっくりして反射的に手が出る
ダンド・スフィダンテ
●ジェイクスと
……へ?
……ああ!それならしっかり遊ばないとな!
わー、思ったよりもおどろおどろしい……
ん?なんかモヤが……ごめんジェイクス殿、ここよく見えな……
ごふっ!!!!??!!
(突然の拳!!クリティカルヒット!!!)
じぇ、ジェイクス殿???
へ?顔がッッ!!!?
(腹に!!膝がっ!!!!)
ジェイクス殿!??!!
ねぇ!!!!
ちょっ!!!!!
まっ!!!
ミューズ!ミューズ・いすゞ!!たすけて!!!ちょっと幽霊殿止めて!?!!
死因が!DVなのは!!やだ!!!!
(この間定期的に飛ぶびっくり拳。お茶目ですね)
ジェイクス殿、何か、俺様に言うことは……?
……
……うん。そうだね……今度は普通に海に行こうね……
●100コンボだドン
遠く響く潮鳴り。
重なる甲高い音は、きっとだれかの悲鳴なのであろう。
他の世界より零れ落ちて、この世界で島と成った場所。
他の世界に在った時にはこの場所を照らしていたであろう電灯は、ひょろりとしたその姿だけを残してすっかり役割を忘れてしまっているよう。
しかし地上に明かりが無ければ、冴え冴えと空を彩る星々の輝きがより美しく見えるもの。
季節が幾つ巡ろうとも、散る事無く咲き誇り続ける幻朧桜の並木道。
満開の花々の隙間より差し込む星明かりを浴びながら、ジェイクス・ライアー(驟雨・f00584)とダンド・スフィダンテ(挑む七面鳥・f14230)は神社へと続く道途を、並んで歩んでいた。
「それにしても、あっちでもこっちでもギャーギャーとうるさい事だ」
やれやれと肩を竦めたジェイクスは、伸びきった草ごと飛び石を踏み。
「でも確かに、思っていたよりもおどろおどろしい場所だな」
その横で遠くを見渡すように瞳の上に手を当てたダンドが、きょろきょろと周りを見渡した。
狭い島ではあるが、周りには猟兵の姿は無く。
時折。猟兵のものなのかそれとも幽霊達のものなのかは判断が付かないが、遠くから悲鳴じみた声が響いている。
「病も気からと言うだろう。来ておいてなんだが、出ると思っているからそう感じるだけでは無いかね?」
「……むぅ、そういうものか?」
ジェイクスの言葉に、首を傾ぐダンド。
言われてみれば。
手入れのされていない参道、幽霊が出ると聞いている島。
突然ふかふかと立ちこめだした靄も含めて。
これがただ無人島の神社へ行くだけならば、そこまでおどろおどろしさを感じただろうか?
肝試しをするというシチュエーションによって、そういう雰囲気を感じているようにも確かに思えた。
「って、あれ、何? ん? なんか靄が……、あれジェイクス殿、大丈夫か?」
いや、いや。
よくよく考えてみると、突然現れる靄は普通におどろおどろしい。
ダンドが少し慌ててジェイクスへと視線を向けると、ジェイクスは芝居がかった動きで目を瞑って大きく溜息を吐いている途中だ。
「予め出ると解っていると、怖がれるものも怖がれないだろう。なぁ、ダン――」
そうして。
たっぷりの余韻を残しながら、鼻から思い切り息を吐いたジェイクスがダンドの方へと振り返ると、――ダンドの立っていた場所は濃い白靄に覆われていた。
「……ダンド?」
通常とは何かが違う違和感。
刹那。
ジェイクスは瞳を見開き――。
「……ッ!!!!」
「ごふっ!?!?!?!?!?!?」
叩き込んでから遅れて爆ぜる音。ジェイクスが咄嗟に放った拳は音を越える。
「まっ、げほっ、何? じぇ、ジェイクス殿……っ!?」
しかしそんな拳を叩き込まれた方は、たまったものではない。
鳩尾に的確に捻り込まれた拳に、何とかダンドは咄嗟に踵を踏みしめて。
蹈鞴を踏みながらも倒れる事だけは回避した彼は、込み上げる吐き気と痛みを唾ごと飲み込みながら。
涙目でジェイクスに訊ねる。
「あぁ!? いや、……お前の顔が一瞬……、ッッッッ!!!!」
「へ? 顔、っ……ぐ、ゥッ!!」
ジェイクスは答えようとしたのであろう。
しかし。
ダンドをすり抜けて、ぐずぐずの肉の断面を曝した男が飛び出してきたものだから。
思わず振り上げてしまった足先が、ダンドの脇腹を抉った。
そのままダンドは、受け身を取る事に失敗して膝から崩れ落ち――。
「いや、ち、違う! お前から幽霊が現…………オッ!??!!?!?!!! オオッ!?」
ジェイクスが弁明しようとすると、ダンドよりひょろりとした白い腕が伸び。
絡みつく腕を、振り払うように肘を叩き込むジェイクス。
そう、ここまで来たら皆気付いているかもしれないが。
彼は驚くと、反射的に手が出てしまうタイプの全身凶器男なのだ!
「じぇ、いくす殿っ!」
「違う、今のはわざとじゃあ……!」
振り払われた白い腕が千切れて、まるで巨大な蜘蛛のように蠢いて。
ジェイクスが反射的に差し出した爪先が、ダンドの体を掬い跳ねさせる。
「ねっ、ちょまっ……ジェイクス殿、落ち着いッ」
「わざとじゃあ……っ、あっ?!」
無数の掌が、指を広げて飛びかかってくる。
本当に反射的に動いてしまうジェイクスの体が、ダンドの跳ねた体を膝で更に空中へと跳ね上げて。
浮いた体へと叩き込まれる右拳、左拳。
「ひゃぷっ、まっ、たすけ……っ、ミューズ! ミューズ・いすゞ! 助けて!!!!」
「ッ!!!」
幽霊側もだんだん楽しくなってきたのか、まあまあ雑な動きでダンドの脇腹から上半身を出してみたり。
慌てて助けを求めようとも、無情にも空中で重ねられるコンボ。
残念ながら、周りには猟兵の姿も見当たらない。
「幽霊殿、幽霊殿、止めてっ、俺様っ!」
「決して、わざとじゃあッッッッッッ!!!!」
ジェイクスに背後から腰を抱き留められるような形でクラッチされるダンド。
そうして無心のジェイクスが放つとどめの一撃は――。
「死因がっ! DVなのはっ! ヤダーーーーーーーーーーーーッッ!!」
「無いッッッッ!」
ジャーマンスープレックスだッ!
見事な反り投げと共に、ダンドの脳天が地へと叩き込まれ――。
彼の脳裏に過ぎるは、朝の光景。
『私達も肝試しに参加しようか』
『……へ?』
『なんだ、その顔は。……遊びにくらい行くとも。たまの息抜きだ』
『あ、ああ……! それならしっかりと遊ばないとな!』
『ふ、……そうだな』
これが走馬灯という奴だろうか。
ああ、あの頃は良かったな……。
……。
頬に当てられた掌。
空に星がぴかぴかと瞬いている。
「……ダンド、ダンド。大丈夫か?」
一瞬、意識を失っていたのであろう。
草むらに倒れ込んだダンドは、覗き込んでいるジェイクスの顔を見上げて――。
「……なあ、ジェイクス殿。何か、俺様に言うことは……?」
真っ直ぐに視線を向けて、訊ねた。
「あ、ああ。……」
逸れるジェイクスの視線。
「……」
「…………」
そうして二人の間に訪れた、しばしの間の沈黙。
視線を逸らしたままのジェイクスは――。
「まあ、慣れないことをするものではないな」
「……うん、そうだね…」
彼が悪いと思っているであろう事は、彼の態度から既にダンドは理解をしている。
肩を下げたダンドはゆるゆると首を振って。
「……今度は普通に海に行こうね……」
痛む身体。
しかし、随分と肝以外の部分も試されてしまった。
ああ、体が丈夫で良かったなあ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
これって肝試しなのかな?
相手が幽霊ってことは本物のお化け屋敷じゃない?
うっかり呪われたりしないか心配だネ
僕は呪いには耐性があるけど
ソヨゴはその様子なら平気かな
前回みたいにダメ出しはしないでネ
海辺にレジャーシートを敷いて荷物を置く
鳥居をくぐり抜けて神社に向かおう
なんかここ雰囲気ありすぎじゃない?
あっ!あそこの鳥居で白い影が動いた気が!
うわー!なんか上からぶら下がってきた!
きゃーとか言ってソヨゴに抱き着こう
演技じゃないってば(演技だけど)
肝試しを堪能して海辺に戻ってきたら
砂浜から首が!
そろそろ勘弁して
用意しておいたジュースとお菓子でパーティってことでどうだろう?
海辺で幽霊と大騒ぎするネ
城島・冬青
【橙翠】
リアルお化け屋敷?
面白そう!
私は恐怖演出には厳しいですよ?
え?ダメ出しは禁止?
うぅー仕方ないなぁ…
父の影響でこういうのってつい批評したくなっちゃうんですよね
お!いい雰囲気じゃないですか
悪くないですよ
っていけないいけない
つい批評してしまう
この怖さを楽しまなくちゃ…
あっ!不気味な影が…と叫ぶ前にアヤネさんに抱きつかれる
むむっアヤネさん
どさくさに紛れていちゃつこうとしてません?
…いや、本当に怖がってるみたいですね
大丈夫ですよ?あれは怖いお化けじゃないですから
抱きしめ返して背中を優しく撫でる
足元に気をつけて進みましょうね
パーティーは大歓迎!是非しましょう
楽しく過ごせば怖さも吹き飛びますよ
乾杯!
●
季節が何度巡ろうとも、その花を絶やす事無き幻朧桜。
それは元の世界から零れ落ちた後も変わらず、桜は見事な花を咲き誇り続けている。
幻朧桜の立ち並ぶ道の真ん中に、規則正しく並べられた鳥居を見上げた城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)は、おー、なんて声を上げて。
「明かりが無いから、星空が綺麗ですねー」
「うん、綺麗だネ」
こっくりと頷いたアヤネ・ラグランジェ(十二の結び目を解き放つ者・f00432)は、それ以上に星空を見上げるソヨゴがかわいい、なんて思うけれど。口にはしない。
その姿を心のアルバムに焼き付けながら、アヤネは出発前から感じていた疑問に首を傾ぎ。
「そういえば、これって肝試しなのかな? ――相手が本物の幽霊って事は、本物のお化け屋敷じゃない?」
「あっ、言われてみればそうですねー」
冬青は楽しげに瞳を輝かせると、海辺に敷いたレジャーシートの上に荷物を纏めながらわくわくとした様子だ。
「うふふ、そう考えると断然面白くなってきました!」
「あ、でも、前回みたいにダメ出しはしないでネ」
「えっ? ダメ出し禁止?」
恐怖演出にちょっとばかり厳しい冬青に、先手を打って釘を刺しておくアヤネ。
なんたって。
「うっかり呪われたりしたくないものネ」
「えっ、たしかに呪われたくは無いですけど……」
冬青としては何とも人の選ぶお話を書く作家である父の影響で、こういうのはついつい批評したくなってしまうのだが。
うん、たしかに批評をして呪われたくはない。
「うぅー……、仕方ないなぁ……」
ふるふると首を振って、気持ちをリセット。
それにリアルお化け屋敷なんて面白そうなもの、なかなか体験できる事では無い。
ならば全力で楽しまねば、と。
「よーし、行きましょうアヤネさん!」
「うん、行こうか」
そうして二人は並んで、この島唯一の建造物。
――幽霊の集まっていそうな小高い丘の上の神社へと向かって、リアルお化け屋敷を楽しむべく歩み出すのであった。
道しるべのような幻朧桜を潜り抜け。
草に覆われた飛び石を飛んで。
幾つも立ち並んだ鳥居を通り――。
「おー! なかなかいい雰囲気じゃないですか。悪くないですよ、ポイント高めですね」
ついつい批評めいた感想が零れた冬青は思わず口を押さえる。
いけない、いけない。この怖さを楽しまなくちゃいけないのだった。
「良い雰囲気……と、いうより、雰囲気ありすぎじゃない?」
冬青の横でアヤネはすこし青い顔に見える。
そうして瞳を細めると、その視界の端にゆらゆら何かが揺れているように見えた。
「あっ! あそこの鳥居の上に……!?」
ソレに気がついた瞬間。
きゃあなんて言いながら、冬青に抱きついたアヤネ。
抱きつかれたアヤネは鳥居の上の白い影を見上げながら、瞬きを一つ、二つ。
うーん、これってもしかして。
「……アヤネさん。あの、もしかして、どさくさに紛れていちゃつこうとしてません?」
「そんな……演技じゃないってば、ソヨゴ。僕を信じてよ」
アヤネはふるふる震えながら、冬青に頭をぎゅっと押しつける。
怖いなあ、怖いなあ、を全身で表していく構えだ。
「――わあっ、なんか上からふってきた!」
刹那。
続いてこちらへと投げ込まれた手首から先だけの掌に、びくりと肩を跳ねたアヤネは更に怯えてみせ。
その様子に冬青はアヤネをぎゅうっと抱きしめ返して、背中を優しくなでてやる。
――本当に、本当に怖がってるみたいですから。
「アヤネさん。あれは怖いお化けじゃないですから。遊んでいるだけなので、怖がらなくて大丈夫ですよ」
そうは言えど。
かさかさと大きな蜘蛛のように掌が茂みに帰って行く様は、苦手な者が見るには些かショッキングであろう。
冬青は幽霊達の姿が引くまで、ぎゅっとアヤネを抱きしめたままその背中をゆっくりと撫でて――。
「……さあ、足元に気をつけて進みましょうね」
「うん……ありがとう、ソヨゴ」
勿論。
アヤネの怯えた姿は縁起なのだけれども。
冬青に優しくして貰えるからはっぴーなのだ。役得と言う奴だ。
そうして。
二人が寄り添いながら、荷物を置いた海岸まで戻ってくると――。
荷物の横に自然な形で生首が置かれていた。
「……いや、……うん。流石にそろそろ勘弁してほしいネ……」
嫌そうな顔をするアヤネは、演技だけれど、演技じゃない。
荷物からジュースとお菓子を取り出して生首に供え。
「……そろそろこれでパーティをして、手打ちというのは……どうだろう?」
その提案に、一番に反応したのは冬青であった。
両手を合わせて、彼女は花咲くようにぱっと笑い。
「わー、良いですね! 楽しく過ごせば、怖さなんて吹き飛びますよ!」
冬青が喜んでくれる事が、何より嬉しい。
眦を和らげたアヤネは、ジュースを彼女に手渡して。
「うん、じゃあ乾杯と行こうか」
「はい、かんぱーいっ!」
「おお! かんぱーい!」
二人が楽しげに乾杯を重ねれば、幽霊達も楽しげな雰囲気に勝手に乾杯に混ざって来ていた。
そうしてパーティが始まってしまえば、陽気な海賊幽霊達は、歌い、踊りだす。
海賊達の様子に、二人は顔を見合わせて小さく笑って。
――海辺での大騒ぎは、まだまだこれから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ネオン・スクアーロ
【GOATia】の皆さんと
ひい…雰囲気ありますね…。
誰か頼れそうな人にしがみついてたいですが…それも恥ずかしいからなるべく我慢です。(おどおどびびり鮫)
ほ、ホラーゲームはたまにやってるし怖いのには慣れてます…慣れて…ひゃあ!何かいます!何か触られたきがしますー…!!
(ビビるたびに大きな尾びれを揺らす迷惑鮫)
や、やっぱり実物は無理です…!撃退アイテムとかないんですか…!
し、死んじゃいます…余裕そうなリダンさんに縋り付きに
ぎやあぁ!人喰ザメですか…!?(一緒にびびり)……あれ?何もいません。安心です。
な、なんで残念そうなんですか…っ。
が、合体してとり憑かれたりしませんか…?大丈夫ですか…?(見守り
チル・スケイル
【GOATia】の皆様と共に、肝試しとやらに挑戦します。 咄嗟に魔法弾を撃ってしまわないように、杖を持たずに参加しましょう
普段通りクールに振る舞います 普通に幽霊は見えますし隠れていても探知できますが、今日は探知はやめておきます
驚かされたら表情が若干険しくなり、咄嗟に杖に手を伸ばし、持ってない事を思い出します
杖を置いてきてよかった…本当によかった…
…サメ!?(冷気を練る)
…ああ、ネオンさんでしたか…ふう…(安心して冷気をひっこめる)
幽霊さん、尻尾や翼に触れるのはいいのですが…マズルに乗るのはやめて頂けませんか。前が見えないので
リプス・ファーム
【GOATia】
皆で肝試しにきたヨ!
アタシはシャーマンでもあるから結構くっきり見えちゃうんだよネー!
夜だけど(幽霊一杯で)賑やかな砂浜って感じダネ!
ホラ、皆今圧し掛かられてるヨ?
尻尾とか手とか人じゃない部分にも興味持ってるみたイー(虚空を見ながらフムフムと頷き)
アっ……(サメがネオンさんだと安心してる人達の背後を見ながら意味深に)
触ったり通り抜けたり自由自在ダネー
貫通したまま写真撮ったらスゴイのが撮れそウ!
それとも映らないのカナ?
後でリダンさんに撮ったの見せて貰オー
ジョー・グラム
【GOATia】で参加。 夜の海ってのも中々雰囲気あるじゃないか。/肝試しを楽しみつつ、引っ掻き回すタイプ/「へぇ、そうすると怖いのは割と平気な方か?」イベントが起きたらそれを利用してちょっと脅かす側にも回ってみようか。足を掴む手とかが出た後で「それで、その透明な手はいつまで肩に乗っけてるんだい?」/サメ……あぁ確かにサメだ。こんな可愛らしいサメなら肝試しより水族館気分だな。/幽霊が全身を見せたら近づいてガタピシっと挨拶したり観察したり「おいリダン、面白いぞこいつ透けてやがる」スカスカと手を貫通させたりして。
ショコラ・リング
【GOATia】の皆様と肝試しでございますね
ぼ、ボクは男の子ですからね、幽霊なんて全然怖くないですし、全然平気でぇぇぁっ!?(薄目で前の人の裾をちょこんと握り、耳をピクピクさせながら着いて行くも、誰かの悲鳴に尻尾の毛を逆立てて驚き飛びのき)
ま、待ってください、今身体が重いのって疲れてるからとかそういうのではなくですか!?
大丈夫、大丈夫です、鮫はネオンさん……あっ? あってなんでございますか!?(自分に言い聞かせるようにしながらも、背後を見てるリプスさんに戦々恐々としながら)
ほ、本当に大丈夫なのでございますか!?(ジョーさんが手を貫通させたりしてる所を引け腰で誰かの後ろから覗くように見て
リダン・ムグルエギ
【GOATia】の友達と童心に帰り肝試し
場所は夜の砂浜
アドリブ大歓迎
驚きポイントを予測して覚悟したら大丈夫だけど
唐突な登場には驚き叫ぶタイプ
こう、砂浜の中から急に手とかが出てきそうな雰囲気よねー
ほら、掴んできたわ!
ふふ、わかってたら怖くないわあげぎゃぁー?!
い、今耳に息吹きかけてきたの誰?!
ファームちゃんもジョーさんも怖い事言わないで
これは体重。マイ体重。あとしょこりんの手!(セルフ暗示
皆、ちゃんとついてきてる?(振り返り)…って、サメぇ?!
あ、ネオンちゃんか…(がっくり
ジョーさんもチルちゃんも鋼の心臓よね
あ、面白い(冷静になって一緒に手を貫通させ
記念撮影はいいわね
…映ってる手、超多すぎない?
●浜辺
高い空に星々がぴかぴかと瞬き、はらはらと幻朧桜の花弁が舞う。
潮騒の音と、木々が潮風に揺れる音、虫の鳴き声。
自然の生み出す微かな音に満たされた砂浜に混じるは、華やかな人々の話し声だ。
砂浜を歩む音は、さくさくと心地良い。
リダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)は、星明かりに照らされる皆を見やって。
「無人島だから街灯とかは無いけれど……、星明かりを頼りに歩くっていうのもなかなか乙なものねぇ」
「ああ、夜の海ってのも中々雰囲気あるじゃないか」
口角を笑みに持ち上げたジョー・グラム(サイボーグのブラスターガンナー・f02723)が、家の近くを散歩するような軽い足取りで歩む中。
「うううう……。た、確かに雰囲気がありますね……、今にも何かでてきそうっていうか……っ」
対照的にめちゃくちゃ重たげな足取りのネオン・スクアーロ(芋スナザメ🦈・f12521)は、せわしなく周りを見渡しながら。
何かに縋りたいけれど縋る事も恥ずかしいと、自らの手をぎゅっと握るばかり。
ほ、ホラーゲームはたまにやってるし、怖いのには慣れている筈です。
なれ、な……、慣れて……、慣れている筈ですからっ。
「あ、確かにね。こう、砂浜の中から急に手とかが出てきそうな雰囲気よねー」
リダンが冗談めかして、くすくすと笑いながら肩を竦めると。
「ひいっ!?」「……ひっ」
その光景を想像してしまったのであろう。
ネオンと、ショコラ・リング(キマイラのアーチャー・f00670)が大きく肩を跳ねた。
大きな尾鰭をびたびた揺らすネオンの横で、ショコラは慌てて大きく膨れ上がってしまった尾を誤魔化すように背を真っ直ぐに伸ばし。
「で、でも、手が出た所で、そう、手でございますし、こ、怖くはないですよね」
ショコラは男の子だ。
だから幽霊なんて全然怖くないし、全然平気だし、全然今だって怖がってないし、全然全然平気。
菫色の瞳は半目だし、耳はぺったり倒れて小さく揺れてしまっているけれど。
あとジョーの上着の裾も、ちょっとばかり握っているけれど。
全然平気だし、全然今だって怖がってないし、全然全然全然全然平気でございますから。
「あ」「……!」
そこに。
リプス・ファーム(神々の武器・f21906)がふと声を上げて砂浜の向こうを見やれば、チル・スケイル(氷鱗・f27327)がその青い瞳を細めた。
「えっ、何、何ですかっ?」
リプスの上げた声に怯えた様子で、ネオンが尾をびたんびたんと振り。
「ンーン、何でもないヨー。ちょっと向こうで仕込み中の幽霊達が見えただけダヨ。アタシはシャーマンでもあるから結構くっきり見えちゃうんだよネー!」
花の色めいた髪を跳ねさせて、リプスは左右に首を振って笑って、驚かせてごめんネー、なんて。
「そうですね。少し舞台裏を見てしまったのは、少し申し訳ないですけれど……」
白い竜の尾を歩みにゆらゆらと揺らすチルも、幽霊はしっかりと見えるタイプだ。
何だったら幽霊の探知だって出来るけれど。
今日は幽霊達が驚かせる為に張り切っていると聞いて居るので、彼らの為にも探知をするつもりは無い。
後は驚きすぎて咄嗟に攻撃をしない為に、普段ならば持ち歩いている重火器によく似た魔法の杖だって置いてきている。
「へぇ、そうすると怖いのは割と平気な方か?」
「そうだネー、今日は皆で夜の砂浜をお散歩って感じでたのしいヨ!」
ポケットに手をつっこんだままリプスを見下ろしたジョーが首を傾ぐと、本当に楽しげに笑いながらリプスはこっくり頷き。
「えっ、それって向こう側で何か仕込んでるってことですよねっ!?」
「……!」
言葉の意味をしばらく咀嚼していたネオンが目を丸くすると、ショコラは息をきゅっと呑み込んでジョーの上着を更にぎゅっと握りしめた。
「ふふ、なかなか盛り上がってきたわね。……あっ」
予想通り、と言った感じのにんまりドヤ顔をした宇宙山羊は、見て見て、と足元を示して。
「ほらほら、足を手が掴んできたわ!」
「手ェっ!?」「ひゃぇっ!?」
面白いくらい簡単に驚いて。
毛をぶわっと逆立て、飛び退いたネオンとショコラ。
幽霊に驚いたというよりは、上がった声に驚いたのであろう。
一瞬表情を険しくしたチルは、咄嗟に手を杖に伸ばし――。
あ、今日は置いてきていましたね。
……でも置いてきていて本当に良かったです。
ええ、本当に……。
肝試しが幽霊退治になってしまう所でしたものね。
チルがほっと胸をなでおろしている間にも、ネオンとショコラが飛び退いた先から次々に浜辺から生え伸びてくる、白い透明な腕達。
「ひゃあぁあああっ、何か、腕、えっ、ひゃあああっ!?」
「ぇえあああっ、待ってくださいっ!?」
びたびたと尾鰭を振るって走り回るネオンと、涙目のショコラ。
「なかなか賑やかになってきたなあ」
「上手に腕を避けているネー」
二人の怯える様子にジョーがにまにま笑うと、リプスは楽しそウ、なんて。
自分から腕の方へと駆けよって、ぴょんぴょん跳ね飛び込んで行く。
「ふふ、来るとわかっていると怖くないわねえ」
自らの足を握る手が消えた事を確認すると、余裕ありげにリダンはくすくすと笑って――。
「ぎゃぁあああぁっ!?」
びくーんと尾と耳をぴょーいと跳ねて、慌てるリダン。
「い、今耳に息吹きかけてきたの誰、何?!」
予想出来ない事にはちょっと対応しきれない。
一行は腕ゾーンを飛んだり跳ねたり、駆け抜けて。
本当に楽しそうに跳ねたリプスが、大きく腕を広げて笑う。
「ウーン、夜だけど賑やかな砂浜って感じダネ!」
「そうですね、……幽霊達で、ですけれど」
チルがこっくり頷くと、ソーソー、とリプスも重ねて頷き頷き。
「……え?」
また聞こえてしまった嫌な言葉に、ショコラの耳がぴぴぴと揺れる。
「ホラ、皆今、圧し掛かられてるもんネー?」
フムフムと、ショコラの頭の上あたりの虚空を見上げだしたリプスは首を傾いで。
「まっ、まって、待って下さい! 今身体が重いのって疲れてるからとか、そういうのではないのですか!?」
慌ててショコラが目をぐるぐるしながら尋ねると――。
「……」
「!!!?!?!?」
答えないで目をそらすチル。
涙目になるショコラ。
「や、やっぱり実物は無理です……! 撃退アイテムとかないんですか……! どこかにアイテムボックスは!?」
恐ろしすぎる空間。
びびびびびと尾鰭を振り回すネオンは、顔を左右に振って忙しなく周りを見渡して。
どこかにあってほしい、安全地帯か幽霊撲滅アイテムを探す。
「ああ。そう言えば、……その透明な手はいつまで肩に乗っけてるんだい?」
そんなネオンにジョーが飄々と言い放てば、ネオンはもう溜まったものじゃない。
ちょっとお見せできない表情でその場で固まってしまう。
「もう! ファームちゃんもジョーさんもチルちゃんも怖い事言わないで。この重たさは体重、マイ体重。あとしょこりんの重み!」
例え身体が重たくても、かわいいコの重みだと思えば平気。
自分に言い聞かせるようにリダンはかぶりを振り。
「ひい……し、死んじゃいます……」
フリーズの解けたネオンが今にも死んでしまいそうな顔で、少しでも縋れそうなリダンに駆け寄った。
その足音に振り向いたリダンは、目を大きく見開いて――。
「って、ひゃああああっ!? さ、サメッ!?!?!」
島のしじまを切り裂き、高く響くリダンの叫び声。
「ぎゃああああ、えっ!? サメ!? えっ、人喰いザメですか!?!?!」
彼女に縋り寄ろうとしていたネオンもぴゃっと肩を跳ねて、リダンの倍くらいの声量で叫び。
びたんとふりあげた尾が、幽霊をなぎ倒すのをリプスは見た。
「人喰いサメ!?!?!?」
「さ、サメ!?」
二人の声に驚いたショコラが、咄嗟に暗い海を睨めつけて。
皆を守るべくチルが空気を巻き上げ、冷気の魔力を練り上げて海へと視線を移すと――。
「……あれ、何もいないじゃないですか」
そこは潮鳴りが響くばかりの、静かな海だ。
ネオンがきょとん、と首を傾げて瞬きを一つ、二つ重ね。
「サメ……あぁ確かにサメだ」
ジョーが口元を隠して、肩を震わせている。
「ああ……、なるほど」
ひゅるりと冷気を空気に溶かして収めたチルは、何が起こったのか全て理解した。
ジョーはきっと、笑っているのであろう。
「こんな可愛らしいサメなら肝試しより水族館気分だな」
そうしてネオンを真っ直ぐに見据えて眦を和らげたジョーは、一度肩を上げて。
「そうですね、確かにかわいいサメさんです」
チルは同意にこっくりと頷いた。
そう。
自らに寄ってきたネオンの姿を、恐怖に麻痺したリダンの脳が見間違えただけなのだ。
おばけなんてない。
「ああ、……ネオンちゃんか……」
頬に手を当てたリダンは、肩を下げて溜息一つ。
「……成程。大丈夫、大丈夫です……、サメはネオンさん」
怖くない、怖くない、と自分に言い聞かせるように胸をなでおろしながらショコラが呟くと。
「な、なんで皆さん残念そうなんですか……!?」
少なくとも危険がない事が理解できたネオンが、肩を下げてふるふると顔を振った。
「……ア」
「……あっ?」
そこに響いた、リプスの小さな声。
その声に気づいたショコラが、彼女がじっと虚空を見つめていた事に気づくとぞっと肌を粟立つ様。
「ちょ、ちょっと待って下さい、リプスさん! あって、あって、なんでございますか!?」
「……ンーン、なんでもないヨー」
絶対何かありそうな顔をするリプス。
ぜ、絶対なにかございますよね!?!?!?
目を見開いていると、チルが目前の虚空を掌で扇いでいる姿が視界の端に止まった。
「あのー……幽霊さん、尻尾や翼に触れるのはいいのですが……、マズルに乗るのはやめて頂けませんか? 前が見えないので……」
あっ。
ぜ、絶対何か、何かございますね!?!?!?!?!?
今度はショコラがフリーズする番。
尾と耳の毛がぶあっと膨らんだまま、彼が動きを止めていると――。
足音も無く、沢山の白い影が海岸の向こう側からこちらへ向かってくる姿が見えた。
「お、ちゃんと姿を見せてくれる気になったのか?」
ジョーがゆるーく旧知の仲の様に声をかけた白い影――、海賊の幽霊。
「わははは、あんまり驚かせすぎてもあんたらが早く帰っちまうだけだからなァ。どうせなら最後にサービスタイムってな」
「おお、なかなか楽しい催しだったな」
「分かってくれるか、あんちゃんよォ!」
明るく笑う海賊幽霊は、ジョーに陽気にハイタッチを求めて。
「おい、面白いな。透けてやがる」
合わせる先から手がすり抜けるものだから、面白がったジョーは海賊幽霊と拳を拳をあわせて、ピシ、ガシ、グッ、グッ。
「……チルちゃんも、ジョーさんも鋼の心臓よねー……」
なんて言いながらも試しに海賊幽霊の肩に触れようとするリダンだって、まあまあ鋼の心臓なのだけれども。
「あ、本当。……面白いわね」
「おいおい、俺の身体であそぶなよ」
言いながらも海賊幽霊は満更ではない様子。
幽霊しか居ない島は、よっぽど暇だったのだろう。
「が、合体してとり憑かれたりしませんか……!?」
「あ、あのっ、本当に、本当に大丈夫なのでございますか!?」
どれだけ海賊幽霊達が着やすく話しかけてこようとも。
ネオンも、彼女の背に隠れたショコラも警戒した様子で、怯えた声。
「害意は内容ですし、大丈夫ですよ」
恐らく、とチルが声をかけると、幽霊達の間をびゅーんとすり抜けて行くリプス。
「触ったり通り抜けたり自由自在ダネー、貫通したまま写真撮ったらスゴイのが撮れそウ!」
それとも映らなイ? と彼女が尋ねると、海賊幽霊はふうむと。
「ううん、試した事はねえなあ」
「ああ、記念撮影はいいわね。海賊さん達も入ってくれるのよね?」
「おお、おもしろそうだからなァ、良いぞ!」
生きてる者も、死んでる者も、一緒に。
肝試しの終わりを飾るは、記念撮影。
そうして――。
「……映ってる手、超多すぎない?」
「おっ、俺たちも心当たりがねぇ腕が入ってるな」
スマホに写った写真を覗き込んだリダンに、海賊幽霊は朗らかに返事をするのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
呉羽・伊織
【怪賊】
よしぴよこ、オレがついてるから安心し…わぁ無邪気な寝顔☆
くっ…あのお嬢サンが寂しがってる(?)と聞いて飛んで来たのに、何が悲しくて野郎二人でこんな…
まって亀ドコ行く気?
ソッチは色々危ない悪寒がするヨ
オレはしってるコレは狐の悪霊が出る流…
(現実から目を背け
―たら突如いつぞのむきむさ笑顔が真横に!)
…
うわぁ!!(違う意味で悲鳴)
うわぁ…野郎だらけの肝試し大会…花がナイヨ…
えっマジで!
じゃあオレはアッチで楽しんでくるからお前らもごゆっく…
ッッッやっぱ出たもーやだ帰るまたこの展開か騙し討ちとか卑劣な何ココ狐トライアングルとか魔の海域!?
肝の試され方が!恐怖の方向性が!斜め下!
(違う意味で涙目)
千家・菊里
【怪賊】
ああ、ぴよこさんなら俺の懐で寝てますよ?
それはそうと噂以上の佳き風情で――ふふ、鬼が出るか蛇が出るか楽しみですねぇ?
(暢気で図太い笑顔でちゃっかり酒と肴を楽しみつつ、至ってマイペースに)
何を言うんです伊織?
可愛い子もとい亀さんがこんなにもしきりに君を誘ってくれているのに
これは“独り現実逃避するより私と愛の逃避に旅立ちましょう”といっていますねたぶん
いやだなぁ、悪霊って何です?
――君の隣に何か憑いてるのは見えますが
なんだ景近と愉快な皆様方ですか
成程、その節は身内が大変お世話に
(海賊達にお酒渡してのんびり挨拶)
おや見事な悲鳴を頂きましたね?
(今年何度目かなぁと見守りつつのほほんと酒盛始め)
百鬼・景近
【怪賊】
一人静かにいつかの海賊達の元へ
――これもきっと何かの縁
暇潰しの差入れぐらいは届けよう
生憎色々と希薄な身で、彼らが待ちわびるような反応は持ち合わせないけれど――その分、酒だけはたんまりと
…そう思って、来たんだけど
(海賊達の酒盛に捕まって暫し――突然すっと立った一人を追ってみれば、これまた賑やかな連中と出会し)
…何見つめあって固まってるの、伊織?
そんなに感動の再会だった?
(凄く良い笑顔のむきむき海賊と、何か今にも泣きそうなへなへな伊織を生温かく眺め)
…うん、屈強一味と俺だけで何か御免ね?
あ、花の彼女なら向こうにいたけど…伊織、其方は
(“実は用心深い”って本当かな…?と思いつつ傍観決め込み)
佳月・清宵
【怪賊】
酒が進みそうな佳景と、面白ぇ飲んだくれ連中がいると聞きいてふらりと訪ねてみりゃ――こりゃ聞きしに優る舞台なこって
絶好の暇潰しと相成りそうだな、小町?
そうこうして小町と二人、適当に海賊も招いて宴と洒落込んでりゃ――傑作な余興まで飛び込んでくる始末
おう、期待にゃ応えてやるしかねぇよなぁ?
(小町と離れ騒々しい気配の方へ
暗がりの奥から遠巻きに“感動の再会”を見物しつつ、悠々と待ち構えて)
よう、奇遇だな――飛んで火に入る夏の虫
情けねぇ声あげながら人聞きの悪ぃ事を言うなよ
俺は此処で静かに風に当たってただけだぜ?
てめぇがのこのこと突っ込んできたんだろうが
愉しい夜はこれからだろ
次は酒の方で肝を試すか?
花川・小町
【怪賊】
(亀と雛と色んな意味で肝が丈夫な狐1を連れ、今日も🚩乱立させ彷徨う受難ほいほい
巻添えでシリアスが行方不明になってしまう狐2
相変わらず嬉々として何でも酒の肴や余興にしちゃう狐3
忘れられない一夏の恐怖体験が、今――
そんな愉しい気配や予感に今宵もお酒が進む私でした)
ええ、きっと最高の夜になるわね
清宵ちゃんと女海賊ちゃんを誘って気楽に酒宴
――に耽っていたら、あらあら噂話が聞こえるわね?
私は邪魔しちゃ悪いし彼女と此処でゆっくりしてるわ、ふふ
(更に悲鳴をスルーし女海賊ちゃんと酒を――これはそう、誰かが冷たくあしらわれて心までひんやり凍えないようにする為の心遣いよ)
収拾がつかないって怖いわよねぇ?
●いつものやつ
いつかの海賊達が暇を持て余していると聞きつけた百鬼・景近(化野・f10122)は、沢山の酒を持って彼らの前へと訪れていた。
そう。
――これもきっと何かの縁だ。
生を終えた後も終えられぬ彼らに、暇潰しの差入れぐらいは届けよう。
自らだって、同じ様な存在なのだから。
しかし景近にはとてもでは無いが、彼らが待ちわびているよう反応を持ち合わせてはいない。
――その分、酒だけはたんまりと用意して。
彼らの酒盛りに捕まる事だって、少しも想像していなかった訳では無い。
一人の海賊が何かに気づいた様子で席を立ったから、興味本位で付いて行った。
それだけだ。
後は少しだけ酒を酌み交わし、帰ろうと。
……そう思って、居たのだけれども。
星明りを浴びた幻朧桜の下。
島へと降り立った呉羽・伊織(翳・f03578)は、懐へと視線を落として。
「よーしぴよこ、今日は肝試しだ。でも大丈夫。オレがついてるから安心……」
「ああ、ぴよこさんなら俺の懐で寝てますよ?」
「……わぁ無邪気な寝顔~~☆」
いつの間にか、幻朧桜の幹越しに立っていた千家・菊里(隠逸花・f02716)に声を掛けられ、一瞬で眦を悲しみに下げた。
菊里はいつもの調子で、尾をゆらゆら。
不敵な笑みで持参したのであろう、串に刺した肉を齧りながら酒を啜っている。
「それはそうと、噂以上の佳き風情の島じゃないですか、――ふふ。鬼が出るか蛇が出るか楽しみですねぇ?」
「くっ……、あの海賊のお嬢サンが寂しがっていると聞いて飛んできたのに、どうして……」
「こんなに面白そうな趣向、俺が逃す訳ないでしょう?」
「何が悲しくて野郎二人で……こんな……」
一瞬でめちゃくちゃテンションの下がった伊織がうなだれていると、その視線の先で助けた亀がてこてこと歩きだしていた。
「って、ちょっと、ちょっと、待って待って。亀、ドコに行く気?」
ソッチはなんだか、こう、伊織的に色々危ない悪寒がする方向。
慌ててそちらへと伊織が引き止めに行くと、菊里はへらへら笑って。
「何を言うんですか、伊織? 可愛い子――……もとい、亀さんがこんなにもしきりに君を誘ってくれているのに」
「いや、俺をドコに連れて行こうとしてるって言うの???」
「そりゃあ、これは『独りで現実逃避するよりも、私と愛の逃避に旅立ちましょう』といっていますね、たぶん」
「絶対イヤだし、ナニかそこはかとなくオレを絶妙に抉ってくるワードやめてくれナイ!?」
「うーん……、伊織に亀さんはぴったりだと思いますけれど」
飄々と言葉を紡ぐ菊里から顔を背けた伊織は、亀を拾い上げて。
わたわた足を動かす亀を手に、この『悪寒』の正体に気がついてしまった。
「くっ……この絶妙に嫌な空気感……オレは何度も経験したから解るケド、――コレは、狐の悪霊が出る流れ……!」
「いやだなぁ、悪霊って何です? ――……君の隣に何か憑いてるのは見えますが」
菊里が串の肉を食べ終えてしまって、視線だけで伊織を見やると。
ぽつりと言葉を付け足して。
顔を上げた伊織は、目を見開いて一歩後ずさった。
「……う、うわぁっ!?」
「おや、いつぞやの坊主じゃねェか」
伊織の視線の先に立っていたのは、むきむきの海賊幽霊。
「おやおや、見事な悲鳴を頂けましたね」
一体今年に入って何度目かなぁ、なんて。
くすくす笑った菊里が、伊織の様子を肴に酒を傾け。
「……何、海賊と見つめあって固まってるの、伊織?」
「うわっ!?!?!」
その海賊の後ろから景近が現れたものだから、伊織は更に後ずってやや涙目だ。
「どうしたの、そんなに感動の再会だった?」
「そんなに喜ばれると流石に照れちまうなぁ、ガハハ」
ムキムキ海賊幽霊と景近の出現に、嫌な予感が膨れ上がってゆく伊織はふるふると首を振って。
「……タスケテお嬢サン……、野郎だらけの肝試し大会なんて……あまりに、アンマリに……花がナイヨ……」
「……うん、屈強一味と俺だけで、……何か御免ね?」
ぷるぷるしている伊織を景近は少しだけ不憫そうに見やって。
彼がぷるぷるしていようがスルーできる菊里は、一歩踏み出してぺこりと頭を下げた。
「なんだ景近と愉快な皆様方ですか」
「ああ、向こうで宴会になってしまってな」
景近が相鎚を打てば、海賊がおうおう、と頷いて。
「こいつが酒を持ってきてくれたもんでな!」
「成程。その節は身内が大変お世話になりました」
菊里も海賊さんにお酒を贈与。
社会人の立ち振舞いだ。
ぷるぷるからいじいじになりだした伊織に、そういえばと景近が顔を上げて向こう側の海岸を指差して。
「あ、伊織の言うお嬢さんなら向こうにいたけど……」
「えっ、マジで! じゃあオレはアッチで楽しんでくるからお前らもごゆっくり!」
でも、そちらの宴会は、と。
言葉を紡ぎ終える前に駆け出した伊織の背を見送った景近は、瞬きを一度、二度。
……――たぶん、『実は用心深い』って嘘じゃないかなあ。
踊る、歌う。
大好きな酒は呑むことも出来ず地にこぼれ落ちてしまうけれど。
そんな細かい事は気になりやしない。
咲き誇る幻朧桜、美しき星空に、暗い海がさざめかせる潮鳴りも、良き肴。
女海賊達が舞い踊る中。
「なかなか酒が進みそうな佳景と、面白ぇ飲んだくれ連中じゃないか、小町?」
佳月・清宵(霞・f14015)は黒い尾を揺らして。
口角に笑みを宿したまま杯を傾けながら、花川・小町(花遊・f03026)へ声を掛け。
――ああ、なんだかとっても。
そう、例えるのならば。
フラグを乱立させながら彷徨う受難ほいほいが、色んな狐を引き連れて忘れられない一夏の恐怖体験をしていそうな気配がして。
なんだかとても愉しい事が起こる予感に、お酒が進んで仕方がない。
艶っぽく微笑んだ小町は、はらはらとこぼれ落ちた幻朧桜の花弁ごと酒へと口づけると、小さく頷いた。
「ええ、きっと最高の夜になるわ。……それはそうと、ふふ。清宵ちゃん、聞こえているのでしょう?」
「……ああ、どうやら傑作な余興まで飛び込んで来たようだ」
くっと笑った清宵に小町は肩を竦めて。
「私は邪魔しちゃ悪いし彼女と此処でゆっくりしてるわ、ふふ」
「そうだなぁ。期待にゃ応えてやるしかねぇよなぁ?」
「はいはい、いってらっしゃい」
なんて、小町はひらひらと手を振って。
女の園とも言える宴会より、清宵は立ち上がるのであった。
星明かりを浴びた幻朧桜は、その白が眩いほど。
潮鳴りと虫の声だけが、世界を支配している。
時々遠くから聞こえるのは猟兵達の声だろうか。
「……ホントにこっちで合ってる?」
海岸沿いをほたほたと歩く伊織がぽつりと呟いた瞬間。
「よう、奇遇だな――飛んで火に入る夏の虫」
清宵に声を掛けられた伊織が、ぴゃっと跳ねた。
「ッッッ!!! やっぱ出たな、わるい狐の悪霊!!」
伊織だってもはや、この悪い狐コンコントライアングルの予感はすでにしていた。
ただただ嫌な予感が的中してしまうと、やっぱりちょっぴり切ない。
「もーやだ、帰る~~! またこの展開ナノ? ナニ、ココは魔の海域!?」
「情けねぇ声あげながら人聞きの悪ぃ事を言うなよ、俺は此処で静かに風に当たってただけだぜ?」
喉を鳴らして笑った清宵は、てめぇがのこのこと突っ込んできたんだろうが、なんて伊織の背をぽん、と叩く。
「それより、愉しい夜はこれからだろ。次は酒の方で肝を試すか?」
「待って! 肝の試され方が! 恐怖の方向性が! 斜め下! オレはこんな肝試しがしたかったわけじゃナイケド!?!?!?」
わあっと伊織が顔を振ると、清宵はひどく楽しげに笑う。
「なんなら頼んで、てめぇのしたかった肝試しもしてやろうか?」
「驚かされながら酒を呑むってナニ!?!?!?!?!?!」
色んな意味で涙目になって、色んな意味でひと味違う叫びを伊織は上げるのであった。
響いた珍妙な悲鳴。
おいしいお酒。
女海賊達が首を傾ぐが、小町は彼女たちに酒を勧めて。
すぐに気にならなく成ったのであろう。
女海賊達はまた華やかに言葉を交わしながら、酒を酌み交わしだす。
これはそう。
誰かが冷たくあしらわれて、心までひんやり凍えないようにする為の小町なりの心遣いなのだ。
「それに――収拾がつかないって怖いわよねぇ?」
なんて、肩を竦めた小町は杯を傾けた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
花仰木・寧
【おもひで】
皆様と夜の海へ
脱いだサンダル手に波打ち際へ
暗い海はいかにも恐ろしげで
……入るのはやめておきましょう
だって、絶対どなたかいらっしゃるでしょう
霊感はなくとも、想像がつきますわ
幽霊はともかく
その、驚かされたり、恐ろしげな雰囲気は苦手で
笑わないでくださいましね
十雉さんは私を何だと思ってらっしゃるの
慣れているからと涼しげな顔が恨めしい
大丈夫よ、メリルさん
そこの紳士方が屹度守ってくださるわ
――そうでしょう?
ああ、ご覧になって
星がとても綺麗だわ
ふふ、クリスさんたらお茶目な方
けれどメリルさんの仰るとおり
それは少し、心躍ってしまうかも
クリス・ホワイト
【おもひで】
夜の海というのも、中々どうして風情があるものだね
今にも呑み込まれそうな、引きずり込まれそうな
……なるほど
肝を冷やすにはもってこい、という訳だ
僕は砂浜を歩こうかな
寧くんが海に入るなら、なるべく近くに
ああ、メリルくんも転ばないように気を付けるんだよ
足を取られてしまっては、大変だからね
それに……波か幽霊か、どちらかも分からないからね?
ふふ。言われているよ、十雉くん
──もちろんだとも、と言いたいけれど
僕に幽霊が見えるかは分からないなあ
ひとまず今は見えるものを見よう、星が綺麗だからね
もし違うものが見えたときには
そうだね、皆で仲良くお茶にでも誘おうかな
宵雛花・十雉
【おもひで】
幽霊と肝試しだって?
はっはっは、ここは霊感持ちで幽霊慣れしてるオレの出番じゃねぇか
任せとけって、大船に乗ったつもりでいなよ
夜の海か、こいつぁ定番だなぁ
何のかは言わねぇけど
オレも砂浜を歩く
はは、メリルはいつも楽しそうだなぁ
その顔見てっとこっちまで元気になるよ
お、紳士だねぇクリス
オレも男として見習わねぇとな
もしも波の間に何か見えても黙っとこ
え、なんだよ寧
お前怖いもん苦手なの?
意外と可愛いとこあんじゃん
おー、ほんとだ
こりゃあいい星空だなぁ
幽霊も綺麗な星を見に出て来たりして
ほんとに出て来ても責任は取らねぇよ
けど茶に誘うのは良いアイディアだな
その時はとびきり上等な茶と菓子で歓迎してやろっか
メリル・チェコット
【おもひで】
わーい、夜の海って初めて!
すべてを呑んでしまいそうな藍色
けれど怖さより何より、今は楽しさが勝っている
寧ちゃんを追いかける形で、砂浜をざくざくと駆けて
ふふ、十雉くんももっとこっちおいでよ!
わっ……こっちの方は結構足を取られるね
気をつけるね、ありがとうクリスくん
え、う、海の中にだれかいるの……?
じ、冗談だよね?
怖さを紛らわすべく、彼女にそうっと身を寄せ
ほんと? ふたりが守ってくれる?
メリルたち、食べられちゃったりしない?
促されるまま星空を見上げる
わあ、ほんとだ……!
星空のやわい光に目を細めて
ふふ、クリスくんったら
幽霊までお茶に誘ってしまうの?
それなら幽霊に会うのも悪くないかも、なんて
●砂浜
咲き誇る幾つもの幻朧桜の花が、しらじらと輝いているようにすら見える。
星明かりの他に光源の無い無人島の海は、全てを呑んでしまいそうな藍色。
脱いだサンダルを手にした花仰木・寧(不凋花・f22642)が、砂浜を踏みしめるとさくさくと音がした。
波打ち際まで歩を進めると、足を踏み入れた瞬間に何かに掴まれて呑み込まれてしまいそうな程昏い色をしている。
――いいや。
実際に何かいるに違い無い。
なんたって、ここは櫻『幽』島。
幽霊達の住まう島なのだから。
「わーい、夜の海って初めて!」
そこに響いたのは夜を照らすような、華やかな声。
甘い色の髪の毛をなびかせて。
メリル・チェコット(ひだまりメリー・f14836)が、寧を追ってさくさくと砂浜に足跡を残して駆ける。
「夜の海というのも、中々どうして風情があるものだねえ」
ふかふかとした尾を揺らしながら二人の後を追う、二足歩行の小さな猫――ケットシーのクリス・ホワイト(妖精の運び手・f01880)は、昏い昏い空と海の境界線を見上げる。
「夜の海か、こいつぁ定番だなぁ」
「そうだね、……肝を冷やすにはもってこい、という訳だ」
何の定番か、だなんて言わないけれど。
宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)が肩を竦めて飄々と笑めば、クリスも振り向く事無くゆるゆるとかぶりを振って頷いて。
――十雉は霊感体質である。
幽霊に慣れている故に、『定番』なのであろう。
「ふふ、十雉くんももっとこっちおいでよ!」
「はは、メリルはいつも楽しそうだなぁ」
そんな、立ち尽くして海を見やる十雉に、メリルが振り返って大きく手を振り。
その顔見てっとこっちまで元気になるよ、と十雉が手を振り返した。
「わっ!」
――瞬間。
砂に足を引っ掛けて姿勢を崩したメリル。
彼女に向かって、地を蹴って一気に距離を詰めるとクリスは彼女の足を支えて。
寧が手を伸ばしてメリルの腕を支える。
「こ、こっちの方は結構足を取られるね……! ありがとう、クリスくん、寧ちゃん」
びっくりしたあと目を丸くしながら姿勢を立て直したメリルに。
「そうだね、もう転ばないように気を付けないと。足を取られてしまっては、大変だからね」
クリスは波か幽霊か、どちらかも分からないからね? なんて付け足して。
「ええ、この海は特にそうですわね……」
「え、う、海の中にだれかいるの……? じ、冗談だよね?」
寧が同意を重ねると、目を丸くしながら彼女にそっと身を寄せるメリル。
「大丈夫よ」
縋られた寧は眦を少し和らげて、こちらへと向かってきた十雉とクリスへと順番に目線を向けて。
「そこの紳士方が屹度守ってくださるわ、――そうでしょう?」
「ほんと? ふたりが守ってくれる? ……メリルたち、食べられちゃったりしない?」
ね、と首を傾いだ寧はくすくすと笑って、不安げに揺れるひだまり色の瞳をメリルは二人へと向けた。
「――もちろんだとも」
クリスはこっくりと頷いて応じる、けれども。
「と、言いたいけれど。僕に幽霊が見えるかは分からないなあ」
なんて付け足すものだから、十雉も肩を竦めて。
「お、紳士だねぇクリス、と思ったけれど自信なさげだな」
でもまあ、と悪戯げに瞳を眇めた十雉が、メリルと軽く目線をあわせるようにしゃがんで言葉を紡いだ。
「オレも男としてクリスを見習って……もしも波の間に何か見えても黙っとく」
「え、ええーーっ! そ、それはそれで怖いかも……!?」
「……そちらが幽霊でいらっしゃるかどうかはともかくとして。その……恐ろしげな雰囲気で突然脅かされたりしなければ、良いのですけれど……」
少しだけ眉を寄せた寧まで、十雉の言葉に困った様に頬へと掌を当てて。
「え、なんだよ寧。お前怖いもん苦手なの?」
「……十雉さんは私を何だと思ってらっしゃるの?」
意外に可愛いとこあんじゃん、なんて。
軽口を叩く彼に、寧は少しばかり恨めしげな視線を向ける。
全く。ご自分は馴染みがあるからと、涼しい顔をなさって。
「ね、寧ちゃんが怖いときは、わたしが一緒にいるからね……!」
きゅっと拳を握りしめたメリルが、自分の恐怖心ごと飲み込むように意気込んだ。
潮鳴りの音、虫の声。
はらはらと潮風に流されてこぼれ落ちてきた幻朧桜の花弁につられてふ、と寧は空を見上げ――。
「ああ、……星がとても綺麗ね」
彼女の思わず零した言葉に皆も習って空を見上げると。
人工の明りの無い島の空の上には、数え切れない程の宝石を零したかのような美しい星々が燦めいていた。
「わあ、ほんとだ……!」
「おー、こりゃあいい星空だなぁ」
メリルが瞳を細めて歓声を上げれば、十雉も感心したように吐息を零して。
「……幽霊も綺麗な星を見に出て来たりしてな」
なあんて、また悪い笑顔を浮かべるものだから。
クリスは肩を上げて、下げて。
「ひとまず今は見えるものを見よう、星が綺麗だからね」
それから一度息を呑んでから、悪戯を提案する時のようにクリスは笑った。
「でも、もし違うものが見えたときには――そうだね、皆で仲良くお茶にでも誘おうかな」
「ふふ、クリスくんったら幽霊までお茶に誘ってしまうの?」
「お茶目な方ね、……けれどそれは少し、心躍ってしまう提案ですわね」
「そうだね、それなら幽霊に会うのも悪くないかも!」
彼の提案に寧とメリルは顔を見合わせて、くすくすと。
「なら、その時はとびきり上等な茶と菓子で歓迎してやろっか」
十雉も空から昏い海に視線を下ろし、目を反らしながらこっくり頷いた。
空には星。
さざめく満開の幻朧桜。
昏い海には、――。
――まあ。
オレも男として、クリスを見習っておこう。
ウン。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
隠・イド
【土蜘蛛】
確かに、この程度で恐れるようでは仕事も務まりませんからね
驚く、というよりは警戒心の方が先に来るものです
何の面白みもなく普通に恐れず、怖がらず
お化けの脅かしにも大した反応は見せず平然と突っ立っている
もし連れ立ったふたりが幽霊を怖がる様子を見せれば、まさかUDCのエージェントが幽霊を怖がっているとは思いもせずに、体調などを気に掛ける
ふふ、そうでございましょう
この程度の幽霊たちの戦闘能力では、我々の脅威にはなり得ません
そも、幽霊や怪奇現象の類を恐れる方々は、どういった経験からそれらを恐れるようになるのでしょう?
人の心がわからない
“三人”で仲睦まじく手を繋ぐ少女らの背中をにこやかに見守る
星鏡・べりる
【土蜘蛛】
よ、余裕ですけど?
幽霊とか余裕なんですけど?
でも私的には、肝試しなんて幼稚な遊びはしたくないっていうか……
えーっと、帰ってもいい?
マジで行くの、肝試し?
もうダメ、何もかも怖く見える、無理。
でも余裕なんて言った手前、堂々と歩かなきゃ。
大体、陽気な幽霊って何?さっさと成仏してよ……
よーこの「ひっ」にびっくりして飛び跳ねたりするけど
これは驚く声に驚いただけですけど?
そう、それだよイドくん。ちょっと今日は体調がな~悪いな~!
……いいアイデアだね。手を繋ごう。
咄嗟に発砲してしまったらたいへんだからね。
あーあ、まったく怖くないな~!
花剣・耀子
【土蜘蛛】
怖くないわよ。
幽霊だろうと斬れば斬れるもの。
斬れるものを怖がる道理なんてない。
……急に来られるとびっくりするだけで。怖くはないわ。
神社まで行って帰るのが肝試しの王道かしら。
よゆうだもの。行くわよ。
何かが出てくるかもと疑っていると、
鳥居の影や通りかかる花の下が妙に目に付いてしまう。
ススッとべりるちゃんとイドくんの間に入りましょう。
べつに怖くはないのだけれど警戒する方向を絞った方が効率が良、ひっ、ゃ、いま背中がぬめって
誰が驚いたのよ怖いわけではないものちがうわよばか!
そうよちょっと咳き込んだだけだもの
……手をつないでゆきましょう。
咄嗟に抜刀してしまったらたいへんだからよ。
怖くありません。
●こわくないってば
星明かりに照らされた幻朧桜の並木道。
草の生い茂る石畳は長く人の手が入る事も無く、手入れがされていないのであろう。
世界からこぼれ落ちて、他の世界に置いて行かれた小さな島。
この島には今、人は住んでいない。
その代わりに――人であったもの達は、ひしめいているのだけれど。
「怖くないわ」
「そうだね、全然余裕だよ」
花剣・耀子(Tempest・f12822)と星鏡・べりる(Astrograph・f12817)が同時に声を上げ。
隠・イド(Hermit・f14583)がこっくりと頷いた。
「――確かに。この程度で恐れるようでは仕事も務まりませんからね」
「そうよ、幽霊だろうと斬れば斬れるもの。……急に来られるとびっくりするだけで。怖くはないわ」
そう、耀子は幽霊なんて全然怖くない。
斬れるものは斬れるのだから、怖い訳がないでしょう。
腕を組んだべりるはこくこくと頷いて。
「……でも、ほら、幽霊とか全然余裕ですけど? 余裕なんですけど? でも、ほら、肝試しなんて幼稚な遊びはしたくないっていうか……、今更肝を試す必要なんてある? みたいな?」
えーっと、だから、その。
帰りたいなあ~~~~~~。
早く家に帰って、インターネットとか眺めて、お風呂はいって寝たい。
何?
肝試しに行くとか言い出したの誰だっけ?
大体、陽気な幽霊って何??
さっさと成仏してよ……、この世に未練なんて抱いたって良いことないよ、ホント。
本気でいくの……?
帰ってポテトチップスとか食べたいな~~~。
べりるのエメラルド色の瞳は、向こうを見たりこっちを見たり忙しなく揺れる。
「ええ。勿論べりる様と耀子様が、この程度の事で驚く事は無いとは思いますが……」
彼女達ならば、驚くというよりは警戒心が先に来る筈であろう。
常に冷静沈着な対応を選択する事が出来る事こそが、UDCエージェントをエージェントたらしめる資格であるのだから。
イドはヤドリガミだ。
イドはモノだ。
だからこそ、イドは自身の所有者足り得る彼女たちの事を絶対的に信じている。
一片たりとも彼女達がこの状況に恐怖をしている可能性等ないと、知っているのだ。
かぶりを振った耀子が、獣道めいた参道へと一歩足を踏み出した。
「……あの神社まで行って帰ってくるだけでしょう? 行きましょう」
よゆうだわ、怖くないもの。
「ええ、お供致します」
「あ、ああ、そうだね。行こう」
こっくり頷いたイドが耀子に付き添って歩みだせば、一人で置いていかれたくないべりるも歩きだすしか無い。
立ち並ぶ鳥居をすり抜けて、夜の道を三人は進む。
「……」
歩きながらべりるとイドの間に入り込んだ耀子は、冴えた青をじっと神社に向けている。
いえ、違うのよ。
隊列を変えたのは、別に鳥居の影や通りかかる花の下が妙に目に付いて、その、怖いとかじゃないのよ。
怖い訳ないじゃないの。
怖くないわ。
ただ、こう、警戒する方向を絞った方が効率が……。
耀子がそんな事を考えた、瞬間。
「ひっ、ゃ……っ!」
何か、何か、なにか、せなかをぬめって、なにかが……。
背中をなにかが撫でる感覚に、耀子はびくりと肩を跳ねあげて身を捩って。
「えっ、えっ!?」
その声に驚いたべりるも素早く飛び跳ねて目を丸くし――。
「……どうかなさいましたか?」
自らの背も撫でられたのだが、何の反応もしなかったイドが本当に不思議そうに少女達に首を傾げた。
「えっ、いや、あの、これは驚く声に驚いただけですけど??」
思わず驚いた事を告白したべりるに、耀子が一瞬言葉を紡ぐことができなくなって口を開いて、閉じて。
「ち、違うわ。誰が驚いたのよ、怖いわけではないもの。何も怖くなんかないわよ、怖く……ちがうわよばか!」
そのまま、何もまとまっていない語彙力を完全に失った罵倒を口からまろびだした。
「……?」
イドの赤い瞳は何も疑う事を知らぬ、純粋な色。
よもやUDCのエージェントが幽霊に怯えたり驚いたりする訳が無いのだから。
そうだ。
早口で言葉を交わす彼女たちの頬が赤みがかっているように見える。
呼気が荒く、頬が赤い。
――これは。
「もしや、体調が……」
「そう、それだよイドくん。ちょっと今日は体調がな~悪いな~!」
「そうよ、ちょっと咳き込んだだけよ。心配をかけてごめんね、イドくん」
「……やはりそうでございましたか。ふふ、そうでございましょうね。この程度の幽霊たちの戦闘能力では、我々の脅威にはなり得ません」
先程投げつけられたであろう。
木にへばりついている蜘蛛のようにわちゃわしゃと指先を動かして暴れている手首を、ゴミを拾い上げるように摘んだイドはじっとその手首を見やって。
友好的な幽霊だから、これを倒す許可は得られていないのでそのままイドは投げ捨てる。
わしゃわしゃと手首が去ってゆく様に、べりると耀子はヒいた様子で一歩下がり。
「そも、幽霊や怪奇現象の類を恐れる方々は、どういった経験からそれらを恐れるようになるのでしょう? 恐れとは強者に抱く感情でしょう。この様に脅威に成りえぬものに恐れを抱き、その事によって冷静な判断が出来なくなってしまう事はどうかんがえても非効率でしょう」
やれやれと肩を竦めたイドが、神社へと向かう道へと向き直ると――。
「そうね、幽霊達は弱いもの。……べりるちゃん、手をつないでゆきましょう」
「それはいいアイデアだね、よーこ。……もし咄嗟に発泡してしまったらたいへんだものね」
「ええ、咄嗟に抜刀してしまったらたいへんだからよ」
頷きあって、ギュッと固く手をつないだ耀子とべりる。
友好的な幽霊を倒す事は許されていないものだから、手をつなぐ事は効率上必要なことだ。
別に何もかも怖く見えてる訳じゃないし、無理とかそういう訳じゃないけど。
「まあ全く、よゆうだし怖くはないけれど」
「そうだね。あーあ、まったく怖くないな~!」
「そうでございましょうね」
その効率的かつ、仲の睦まじい様子にイドは柔らかく微笑んで。
――“三人”で手を繋いで、神社へと向かう彼女達を見守るのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ベル・ルヴェール
【灼熱】
怖くない怖くない。
ああ、僕は幽霊が見える。幽霊がいたら教えようか?
例えば、あの木の影に隠れて僕らを驚かせようとしている奴がいたり
他にはあっちの方で……アキラ、大丈夫か?
幽海賊の幽霊は楽しい事が好きなのかもしれない。
酒盛りは賛成だ。とても美味しい酒を用意する代わりに
僕らを驚かさないと約束して欲しい。
ススギは酒の代わりにジュースを飲むか?
その海賊はアヤカを気に入ったのかもしれないね。
もっと仲良くなれば酒以外の、宝の地図とかくれるかも。
飲み比べは止めておく。
ここは海だ。彼らにかなう訳がないだろ?
目一杯楽しんで、騒いだら僕の踊りも披露しようかな。
砂の国の踊りだ。海賊の踊りも披露してくれるか?
嘉神・雪
【灼熱】
肝試しは雰囲気がおどろおどろしいですものね
ベルさんはそんなにもはっきり視えるのですか
怯える亮さんが安心する様に優しく背をさすり乍ら
ベルさんの解説に感嘆する
綾華さんはお化け、平気ですか?
いつも飄々とされてるから平気そう、なんて
幽霊との酒盛りなんて楽しそうですね
亮さんと一緒に、綾華さんの提案に肯いて
未成年で、皆様と嗜めないのが残念ですが
ベルさんのご提案の様にさせて頂ければ
雰囲気だけでも、堪能します
亮さん、大丈夫?
背に隠れ震える彼女の姿が
まるで幼い子の様で
慣れるまで、背に隠して
酒盛りが始まれば陽気な幽霊達
楽しい方々で良かった
歌に踊りに賑やかで
楽しいですね
浮世・綾華
【灼熱】
びくびくな亮ちゃんが愛らしくてくすり
ベル、本気で言ってんのか驚かせようとしてんのか分かんねえ
雪ちゃんが背をさする様子をみれば任せようと
うん?お化けはへーき
でもこう――おわっ(突然飛び出る何か)
…いきなり出てこられんのは、誰でも吃驚しない?
ね、酒盛りなんてどう?
おお、ベル準備いーじゃん?その酒って砂の国の?
飲みてぇ、俺にもちょーだい
亮ちゃんとベルも飲もう飲もう
雪ちゃんも。二十歳すぎたら一緒に飲もうぜ
ええ、そっかなぁ
でも宝探しとかは浪漫!
なあなあ、地図とかってねーの?
亮ちゃん慣れた?
ほら、ベルと楽しそーに踊ってるよ
いいぞいいぞー!ほら、愉快な奴らじゃん?
俺らも踊っちゃう?
ん、舞いは得意なの
天音・亮
【灼熱】
怖くない怖くない…
呟き自分に言い聞かせながらも風の音にびくり、踏んだ小枝の折れる音にびくり
ベルの声にすら驚いちゃって
へぁ!?あっ、こっ怖くないよ!?平気平気〜!
声が裏返ったり笑顔が引き攣っていたり
さ、酒盛り?いいいね、さ、賛成〜
綾華さんの提案に強がる笑顔
興味はあるのだ
だって幽霊と一緒に酒盛りだなんてそうそう出来る体験じゃない
けれどそれとこれとは話が別
驚かされれば
っきゃああーーー!!やっぱり無理いぃーーー!!!
やっぱり怖いものは怖い
雪ちゃんの背に隠れ震える姿で半ベソ状態
でも
酒盛りが始まれば陽気な海賊幽霊達に怖さも次第に解れていって
なんだかんだ楽しめちゃうから不思議
ゾンビは平気なのになぁ…
●こわくないけど
「怖くない怖くない……、怖くない怖くない……」
金糸のような髪に星明かりを浴びて。
紡ぐ言葉は自らに言い聞かせるように。
幻朧桜の立ち並ぶ夜道をゆっくりゆっくりと歩む天音・亮(手をのばそう・f26138)は、ひいらりこぼれ落ちた花弁に肩を跳ね、自らが踏んだ小枝の折れる音に目を見開いている。
「亮さん、大丈夫?」
「へ、へぁっ!? こっ怖くないよ!? 大丈夫、大丈夫、平気平気~!」
肝試しと言うだけあって、おどろおどろしい雰囲気が漂っている事は確かだ。
自らを鼓舞する亮に、嘉神・雪(白に咲く・f27648)は首を小さく傾いで。
足を止めて、思いっきり裏返った声で返事する亮。
あんまり大丈夫ではなさそう、と雪は瞬きを一つ、二つ。
「そう。怖くない怖くない」
そんな亮の自らを鼓舞する言葉を復唱するように。
どこか甘やかな声でベル・ルヴェール(灼熱の衣・f18504)は言葉を紡いだ。
「ああ、そうだ。アキラが心配なら、僕は幽霊が見える。幽霊がいたら教えようか?」
「まあ、……ベルさんはそんなにもはっきり視えるのですか?」
こっくりと頷いたベルは、人差し指で木々の向こう側を指差して。
「例えば……あの木の影に隠れて僕らを驚かせようとしている奴がいたり、向こうには……投げつけようとしているのかな、腕を持ってる奴がいる。他には……」
そこまで説明した所でベルは、亮の顔色が赤くなったり青くなっている事に気づいた様子。
瞬きを一つ、二つ。
「……アキラ、大丈夫か?」
「や、やっぱ無理いぃ……っ!」
「まあ、本当に良くみえているのですね」
亮はぴゃっと頭を覆って。
ベルの解説に感嘆の声を漏らしている雪の背へと隠れて、ぷるぷると震えた。
「ベルは、本気で言ってんのか驚かせようとしてんのか分かんねえよ」
そんな彼女が可愛らしくて、思わず笑ってしまった浮世・綾華(千日紅・f01194)は笑みを隠すように手の甲で口元を覆って言う。
亮の背を安心できるようにと優しく撫でながら雪は、綾華をちらりと見て。
「そういう綾華さんは、お化けは平気なのすか?」
普段から飄々としている彼が、幽霊に怯える様なんて想像もつかないけれど。
「うん? お化けはへーき、でもこう――」
綾華が言葉を紡ごうとした瞬間。
「おわっ!?」
先程ベルが言っていた通り、綾華に向かって投擲された腕が飛び込んできた。
「きゃああああああっ!?」
その声に雪の後ろでぴゃっと跳ねて叫んだ亮。
「……こんな風にいきなり出てこられんのは、誰でも吃驚しない?」
驚かせて亮ちゃんゴメンネ、と綾華は掌を拾い上げながら。
そうだ、と赤い瞳を悪戯げに揺らして。
「ね、酒盛りなんてどう?」
掌と皆に尋ねるのであった。
海賊たちは普段日がな一日歌い踊り、呑むこともできぬ酒盛りに明け暮れていると聞いている。
驚かせられるよりは、楽しいほうがずっと良いだろう。
「さ、酒盛り? い、い、いいね~! さ、賛成〜」
「幽霊との酒盛りなんて楽しそうですね」
雪の背中の後ろから明らかに引きつった笑顔で賛成する亮に、雪も薄墨の瞳を細めて頷き。
いいや、亮だって幽霊達との酒盛りに興味が無い訳では無い。
――幽霊と一緒に酒盛りだなんてそうそう出来る体験じゃないもの。
それでも、それでも。
恐怖心はどうしたって御しきれないのだけれど。
「ああ、良いね。とても美味しい酒を用意する代わりに、僕らを驚かさないと約束して貰おう」
ベルも重ねて綾華の提案に頷くと、綾華はぱっと花みたいに笑って。
「おお、ベル準備いーじゃん? その酒って砂の国の?」
「そうだ」
「おおー、いいね。飲みてぇ、俺にもちょーだい。亮ちゃんとベルも一緒に飲もう飲もう」
「……う、うんっ!」
具体性が出てくれば、少しだけ楽しくなってきたのであろう。
亮の硬い笑顔が少しだけ和らぎ、逆に雪は少し瞳を細めてしまう。
なんたって彼女はまだ未成年なのだから。
「ススギは……、酒の代わりにジュースを飲むか?」
そんな彼女の様子を知ってか知らずか、ベルが尋ね。
「雪ちゃんは、来年一緒に飲もーね」
「はい。それでは今日はジュースで、雰囲気を堪能しますね」
綾華の声掛けに、雪も眦を和らげるのであった。
腕の幽霊に呼びかけて、酒盛りをすると伝えた途端にぞろぞろと集まってくる海賊の幽霊たち。
「~~~……っっっ!!!!」
幽霊たちが集まってくればやっぱり怖い。
亮が息を呑む様子に、雪が心配そうに再び寄り添い。
「……亮さん、本当に大丈夫ですか?」
「だ、だいじょ、う、ぶ……」
ゾンビは平気なのになぁ……。
亮は引きつった笑顔でちょっとぷるぷるしていたけれど、驚かされているわけでもないのだからと何とか涙目になるのだけは我慢した。
がんばったもんね。
――乾杯の音頭と共に酒盛りが始まれば、弾ける海賊達の笑い声。
幽霊たちは酒の雰囲気が好きなだけで、決して飲めるわけでは無い。
彼らが傾けたグラスからは酒が零れ落ちるし、地に酒が撒かれるだけだ。
しかし、酒を供えられたという事実が彼らを酔わせるらしい。
腕の幽霊だって、綾華の横でくるくると回っている。
「なんか離れなくなっちゃったな、……お前も呑む?」
とぽとぽと綾華が腕に酒を零してやると、ぴょんぴょん跳ねて。
「その海賊はアヤカを気に入ったのかもしれないね、もっと仲良くなれば、宝の地図とかくれるかも」
なんて、ベルは杯を片手に酒を揺らして。
「ええ、そっかなぁ……。でも宝探しとかは浪漫! なあなあ、地図とかってねーの?」
ベルの言葉に綾華は腕をつついてみるが、別段持ち合わせは無い様子。やっぱり腕はくるくる回るばっかり。
「ガハハ、そんなモン船と一緒に沈んじまっただろうなァ!」
「お宝といえば、オレ達はお宝を持っていたんだぞ」
そんな綾華に絡んできたのは、ムキムキの幽霊達であった。
彼らが語るは冒険譚、自慢話に、過去の海。
この島で起こった、メガリスのお話。
そんな御伽噺のような話に耳を傾けながら、ジュースを手にした雪は亮を見やって。
「本当に楽しい方々で良かったですね」
「うん、あんなに怖かったのに……なんだかもう、あんまり怖くないや」
亮もお酒を呑みながら、幽霊たちと踊るベルをぼんやりと眺める。
砂の国の踊りだと言っていたその足取りは、軽やかで。
海賊が板を叩いて出すリズムに合わせて、即興なのだろうか、それとも彼らの故郷の歌なのだろうか。
高らかに歌う海賊達。
合わせて踊る海賊達の動きもめちゃくちゃだけれど。
どちらからも感じる感情はひとつで、楽しいと言う感覚だけ伝わってくる。
「いいぞ、いいぞー、本当に愉快な奴らだね」
綾華が合わせて酒瓶を叩いてリズムを取ると、雪が頷いて。
「はい、不思議な踊りと歌ですけれど、賑やかで――、楽しいですね」
「うん、本当に楽しい響き!」
すっかり元気になった亮は、花が綻ぶように笑った。
「よーし、俺らも踊っちゃう?」
その様子に立ち上がった綾華は、二人を誘うように腕を差し出して。
――響く楽しげな歌声。
舞う足取りは、軽やかな者、歪なステップ。
様々だけれど、楽しげな雰囲気だけは共通している。
呑んで、歌って、踊って。
さあさあ、海賊の宴はまだまだ続く。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
都槻・綾
f09129/ユルグさん
風に舞う花弁は
夜の海を背景に
淡く煌く星のよう
遠くから聞こえくる悲鳴も
楽しそうな燥ぎ声も
潮騒と調和して
協奏曲みたい
映像も音楽も舞台装置は完璧に整って
輝く瞳
常より心持ち弾んだ声
たぷりと揺らす酒精の瓢箪
波に擽られる足首も
時折砂に足を取られることさえも
嬉しい
さぁさ
後は驚かされるだけ!
どうせなら麗しの女海賊さんと
酒杯を交わしたいですねぇ
後ろを歩くユルグさんを振り向けば
彼の傍らに
景色の透ける幽霊が――
明らかに驚かすのを忘れて
「酒」へ歓喜一杯の様子
きょとんと瞳を瞬くも
直ぐに破願
砂浜に座して宴会開始
一緒に乾杯
余興に笛でも踊りでも
ねぇ
霊となった今も捨てきれぬ煩悩の
なんと愉快で愛おしいこと
ユルグ・オルド
f01786/綾と
白い花が泡ならここは海の底
潮騒と風の声を聞き違えてさ
鳥居潜ればその先は
肝試しじゃアなくって
向こう岸だったらどうする
なンてんなこと怖がる男じゃアないか
鳴らす杯の支度は完璧
酩酊で飛び込むにはまだ早い
口の端持ち上げて笑うには
俺は美味い酒が飲めりゃ贅沢は言わないケド
つって振り返った視線も通り過ぎ、なに?
――ははァ
準備万端すぎたな
お化けの先手取れたんなら幸先イイじゃん?
乾杯といこうか夜が明ける前に
出逢いを祝して躍ってよ
合わせて鳴らす手拍子に
音ひとつだって焼きつけて
調子外れた歌も今夜ばっかり大目に見てサ
そりゃア勿論、たった一度生きるだけで
乾せるなんて思わねェもの
リュカ・エンキアンサス
晴夜お兄さんf00145と
肝試しだって、お兄さん
お兄さんは、怖いのは得意?
俺は…
…あれ、幽霊って何が怖いの?
死者と話ができるって、むしろよくない?
ともあれ慎重に進む
殺気がないからむしろやり難くて
気を付けるけど、急に驚かされたら銃に手が伸びる
お兄さんに全力で阻止されて事なきを得るけれど
…とかしてたらお兄さんが囲まれて踊られてた
落ち着いて、お兄さん落ち着いて
えーっと、こういう時は供養のお酒を持ってくるっていいって聞いた
ほら、これでお兄さんを開放してください
大丈夫?いい幽霊でよかったね
確かに怖い雰囲気はこれで…あっ
(徐にお兄さんの顔を見て
…何でもない、行こう
少し離れて歩こう
(とか、時々揶揄いつつ
夏目・晴夜
リュカさんf02586と
私は怖いのは割と得意ですが、リュカさんは平気ですか?
…リュカさん、あなたは気付いてはいけない事に気付いてしまったようですね
仰る通り、幽霊とは実は怖くありません
本当に怖いのは幽霊が現れる場所
そう、暗い所です
暗いのがクソなのですよ
しかしこうも暗いと何処から、うわビックリした撃っちゃダメですよ
いきなり来られるとやはり、うわっ!撃たないように
驚くしリュカさんの構えが超早いしでやる事が多い…!
あれ、私囲まれてません?
これは一体どうすれば…いや酒の効果凄いですね!
一気にドンチャンし始めて怖い空気が消えましたよ
じゃあ更に先へ…、何ですか?
いやいや離れる事ないでしょう、暗いのに
ちょっと
●おばけなんてこわくないけれど
見下ろす星々はあんなに眩く、星明かりを受けた幻朧桜の木だって、青白く輝いているようにすら見えるのに。
もとの世界に在った頃には役立っていたであろう電灯は、こちらの世界に落ちてからはひょろりと頼りなさげに立ち尽くすオブジェと化して。
色あせた鳥居が立ち並び、草に飲み込まれた飛び石が並ぶ参道は、あまりに昏い。
夏目・晴夜(不夜狼・f00145)の腰に下げられたランタンだけが、鮮やかな光で世界を照らしだしている。
「……ねえ。お兄さんは、怖いのは得意?」
鳥居と桜並木の奥に見える神社を見上げながら、リュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)は晴夜の方を見る事もなく尋ね。
「私は怖いのは割と得意ですけれど、……リュカさんは平気ですか?」
「俺は……」
尋ねられてから、リュカは『怖い』事について考えてみる。
「…………あれ? 幽霊って何が怖いの? 死者と話ができるって、むしろよくない?」
よくよく考えてもみれば、死者と会話ができるのはとても便利では無いか。
死んだ要因を調べなければ行けない場合、死んだ本人に聞くのが一番手っ取り早いだろう。
食事も睡眠も必要が無いとすれば、いつだって話相手にだってなってくれるかもしれない。
空色の瞳に睫毛の影を落としてリュカがぽつりと零した声に、晴夜は力強く頷いた。
「……リュカさん、あなたは気付いてはいけない事に気付いてしまったようですね」
参道を歩みだした晴夜は、深い深い溜息を零した。
「仰る通り、幽霊とは実は怖くありません。本当に怖いのは幽霊が現れる場所――そう、暗い所です」
眠るときですら照明を欠かせぬ程、晴夜は暗闇が苦手だ。
別に幽霊もホラーも何も怖くは無い。
「暗い事こそがクソなのですよ、毎日夜が来る事に私は肝を試され続けていますし」
「そうなの? でも、夜が来ないで星が見れないのは、……少しだけ寂しいかも」
めちゃくちゃ個人的な意見を言い切った晴夜に、リュカは相槌を。
――星空はいつだってそこにあるものだから、夜が来ることはあたりまえの事で。
そこに肝が試されると言う事は、リュカには想像すらしたことの無い事であった。
「しかし、こう暗いと何処から何が……」
話しながらも二人は参道を進んでいる。
ランタンを高く掲げてた晴夜は、瞳を眇めて。
とたんに、ぼたぼたと落ちてきた首と腕。
「……あ」
瞬間、反射的にアサルトライフルを抜くリュカ。
ヘッドショットを一発で決めるべく――。
「って、うわ、待って、待って下さい。ダメですよ、構えないで、下ろして」
「……うーん。殺意がないから、急にこられると逆にやり難いな」
マフラーに触れながら、リュカは少しだけ眉を寄せる。
襲いかかってくるのに殺意が無いからこそ、反射的に構えてしまう。撃とうとしてしまう。
それはリュカの勘が良いからこそ行ってしまう防衛本能のようなものなのだろう。
「とにかく、幽霊を撃っちゃダメですよ。いまの所無害な存在なんですから」
「……うん、気をつけるね」
と言った傍から、木の向こう側からすり抜けてきた上半身に向かってライフルを抜くリュカ。
「待っーーーーた! うわっ、構えるの超早いじゃないですかビックリした! 撃っちゃダメですよ!?」
「ごめんね、つい」
晴夜の超絶阻止テクニックでリュカの発砲は未然に塞がれ続けているが、晴夜の負担は増え続けている。
道を照らさなければ行けないし、襲いかかってくる幽霊を守らなければならないし、発砲を阻止しなければならない。
やることが……やることが多い……!
そうやってリュカの発砲を食い止めつつ二人が先に進んでいると――。
「……あれ?」
晴夜に付いて回っていると発砲されない事を学習した海賊達は、ぞろぞろと晴夜を囲んでいた。
「あれ、もしかして、これ、私囲まれてません?」
歩みを止めた晴夜が首を傾ぐと、にっこり笑った海賊達が意味もなく踊りだす」
「うわっ、何、これは、これは一体どうすれば……?」
「落ち着いて、お兄さん落ち着いて、えーっと……こういうときは確か……」
発砲以外の解決方法を示すべく、鞄を漁るリュカ。
取り出したるは、酒瓶一つ。
「ほら、これでお兄さんを開放してくだ……わ」
「酒だ!」
「おお! 酒だな!」
「貰って良いのか!?」
驚かせる役割に徹する事も忘れた海賊達は、その場でわいわいと酒盛りを始めてしまう。
酒を開けて回し呑みを始めると、ぱしゃぱしゃと酒が地に零れ落ちる。
わははは、なんて上がりだした笑い声に、その輪の真ん中から慌てて出てくる晴夜
「大丈夫? お兄さん、いい幽霊達でよかったね」
「……いや酒の効果凄いですね!?」
無闇な踊りに狼狽していた晴夜は、一瞬で怖い雰囲気を吹き飛ばした酒の効能に驚きの声を漏らしてから。
「リュカさんありがとうございます、助かりました。それでは更に先へ……」
そのまま真っ直ぐにリュカと視線を合わせると、小さく会釈をした。
「……あっ」
しかし、晴夜の顔を見た瞬間、リュカは不穏な声を漏らして視線を反らして。
きゅっと握りしめるマフラー。
「……何ですか?」
「なんでも無いよ、……でも少し離れて歩こう」
なんて。
リュカが目線を合わせること無く、晴夜の顔を見ないように歩みだすと――。
慌てて晴夜が彼の背を追った。
「いやいやいや、離れる事ないでしょう、暗いのに。ちょっと、えっ、何ですか? 待ってくださいよ」
握りしめて口元に寄せたマフラーの下では、笑みを隠して。
じゃれあい、揶揄いあい。
少年は二人並んで、昏い夜道を歩み行く。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●彼方此方
星明かりに照らされた幻朧桜は、しらじらと白く輝き。
はらはらと零れ落ちる花弁は、昏い海を背負った淡く煌く星のように見えた。
立ち並ぶ桜並木。
振り向けば連なる鳥居の奥には、お宝の眠っていた神社が見える。
遠くから響く悲鳴も。
はしゃぐ声も。
笑い声も。
色んな声が全部潮鳴りと混ざってしまえば。
さくりさくり、砂を踏みしめる音だって、足に纏わりつく波だって。
都槻・綾(糸遊・f01786)にとって、それはまるで協奏曲のように響くもの。
幻朧桜の横に腰掛けて、波打ち際に立つ綾を見つめていたユルグ・オルド(シャシュカ・f09129)は、ひらひら舞い落ちた花弁を一枚掴んで。
「んふふ、この花片が泡ならここは海の底だネ」
潮騒と風の声を聞き違えて色あせた鳥居に潜り込んだら、その先は肝試しでは無い。
『彼の岸』だったら?
「なンて、……怖がる男じゃアないか」
ふくふく笑った綾の瞳は、其れこそ星のように瞬いて。
映像も音楽も、舞台装置は完璧に整ったと。
「さぁさ、後は驚かされるだけ!」
――どうせなら麗しの女海賊さんと酒杯を交わしたいですねぇ、なんて。
常より少しだけ筈んだ声を零すと、綾は酒の入った瓢箪をたぷりと揺らして。
「まァ、俺は美味い酒が飲めりゃ贅沢は言わないケドさ」
合わせてユルグも杯を掲げれば、もはや支度は万全だ。
さあ、肝試しを始めよう。
早速歩みだそうとユルグが砂浜より足を踏み出した瞬間。
ふとユルグへと振り返った綾が、瞬きを一つ。
「……おや」
ユルグの横に現れた『彼』を見やって、綾はふくふくと笑った。
半透明の姿。
向こう側の見える身体。
きっと彼に課された役割だって忘れてしまって。
もう身体も無いというのにその瞳をぴかぴかと瞬かせて見つめているのは、酒の入った瓢箪だ。
「――ははァ、準備万端すぎたな」
一度肩を竦めたユルグは、綾に片目を瞑って見せて。
「でも、まァ。お化けの先手取れたんなら幸先イイじゃん?」
「えぇ、予定よりは少しだけ早いですけれど」
――肝試しを始めようとした足取りを砂浜に戻して。
砂に座した二人の周りには宴会の気配を感じた海賊たちが既に集まってきている。
さあさ。
夜が明けてしまう前に、夜の帳が上がらぬように、乾杯と行きましょう。
「がはは、兄ちゃん達良い酒を選んだなァ」
「お? 味がわかるのか?」
「わかんねぇよ、ぜーんぶ零れてっからなぁ! ガハハハ!」
気分良さげに調子外れの歌を紡ぐ彼らに合わせて、綾は横笛で音を合わせて。
音に合わせてユルグの手拍子のリズムに合わせて、海賊達は踊りだす。
出会いを祝して踊ろう。
今日という日が在ったことを忘れないように。
楽しい酒を讃えて踊ろう。
明日この身が有るという保証はないのだから。
今日を楽しく、今を楽しく!
綾は眦を和らげて、肩を竦める。
――ねぇ、霊となった今も捨てきれぬ煩悩のなんと愉快で愛おしいことか。
ユルグは杯を傾けて、甘い甘い酒で口を潤す。
足りるわけはない。
――そりゃあ勿論。
たった一度生きるだけで、この煩悩が乾せるなんて思わねェもの。
桜田・鳥獣戯画
ワンダレイの団長・アルフレッド(f03702)に誘われて出かける途中なのだが!
桜の美しい島を発見、寄っていかんかと提案する
立ち寄ると何やら不穏な気配が……何? ここを進めばよいのか?
オァーーーッ!!!
何だ今の!何あれ!何!!私の豊かな語彙が失われていく!!
ここここれでは完全に肝試しではないか!何、本物なの!?人がやってるの!?
…そういえばアルフレッド、昨年夏の旅団合同肝試し大会(というのをやりました)は、我々は主催側で参加できなかったのだったな
…ここはひとつ、楽しんでいくか!!
(以下楽しそうに雄々しい悲鳴を上げたりバタバタ逃げ回ったり)
(…ほう、手を引くか。男気があるな)
(アドリブ連携歓迎!)
アルフレッド・モトロ
戯画の姉御(f09037)を飯に誘った道中
姉御が面白そうな島を見つけたってんで
寄ってみることに
おっ?イベント中なのか!
一緒に遊んでいこうぜ!姉御っ!
オァーーーッ!!!
ありゃイエーガーオオクワガタじゃないか!
姉御!あの半分透けた海賊のおっちゃんが
珍しいムシを見つけてくれたぞ!
えっ幽霊…!?
なるほど肝試しか!
姉御とは去年一緒に肝試しを企画したな!
今度は参加する側ってわけだ
よーし姉御!行こう!
おっと足元気をつけな!
暗いな…俺の尻尾の炎で照らそうか
(以下、珍しく悲鳴を上げたりバタバタしている姉御の手を引いて(手をつなぐ)、海賊幽霊に挨拶しながら、夜の潮風と肝試しを楽しみます)
(アドリブ連携歓迎!)
●イエーガーオオクワガタ
夜の潮風が肌に心地良い。
美しく咲き誇る幻朧桜に導かれ、島へと降り立った桜田・鳥獣戯画(デスメンタル・f09037)は、周りをぐうるりと見渡して。
「ほう、無人島かと思ったら、そこかしこで人の声がするな!」
「おっ、何かイベント中みたいだな?」
そこかしこより聞こえてくる楽しげな悲鳴のような声に、アルフレッド・モトロ(蒼炎のスティング・レイ・f03702)が周りを見渡し――目を見開いた。
「おっ、丁度良いところに来たなアンタら、こいつを見てみろよ」
「オァーーーッ!!!?」
突然声を掛けてきた、半透明のおじさんが指差す先には――。
「こりゃ……イエーガーオオクワガタじゃないか! 姉御、姉御!!」
アルフレッドは綺麗なフォームで駆け寄ると、速やかなムーブでクワガタの背を掴んで。
ツヤも大きさも申し分ないサイズの珍しいクワガタに空色の瞳をぴかぴか瞬かせてたアルフレッドは、鳥獣戯画の前へと差し出して。
「オァーーーッ!!!?」
対する鳥獣戯画は、あまりに強い眼力で目を見開いて吠えた。
「えっ、何だ、姉御!? ムシは苦手だったか!?」
「いや、いや、いやいやいやいやいや、アルフレッド! 貴様! まて、まてまて。何だ今の! 何あれ! 何!! 何!? 何で普通に話してムシ捕らせて貰っておるのだ!?」
腹から出るタイプの素晴らしい発音で鳥獣戯画はかぶりを振る。
「エ!!! 困るぞ!! 私の豊かな語彙が失われているのだが!? どうする!? 私が単語だけでしゃべるタイプになったら!? いや、そうじゃない! 何!? 今のは何だ?! 本物? 本物なの!? 中に人がいたの!? 透けていたが!?!?!?!」
彼女の言葉にそこで初めて気がついた様子で、はっとするアルフレッド。
「えっ……!? おお!? そう言えばあの海賊のおっちゃん、何やら半分透けていたな!」
「うむ、そうだぞ! え!? 何!? 幽霊!?」
「えっ、幽霊!?」
「そうだが」
すっと入り込んできた半分透けた海賊のおっちゃん――海賊の幽霊がこっくり頷いて。
「オァーーーッ!!?!?」
「オァーーーッ!?!!?」
アルフレッドと鳥獣戯画は、同時に無闇に良い声で肩を跳ねて吠えた。
ついでにアルフレッドの手からクワガタが滑り落ちて、あわてて飛んでゆくクワガタ。
「アンタら良い反応してくれるなァ、ガハハ。今日はお前たちみたいなのを招いて、オレたちが持て成してンだよ」
海賊の幽霊は楽しげに笑って、木の幹に半分埋まりこみ――。
「まあ、オレの持ち場にイエーガーオオクワガタが居たもんでな、珍しいムシだから誰かに見てもらいたかったんだよなア」
木の幹から腕だけ出してピロピロとする海賊の幽霊。
「折角だし、アンタらも遊んでいってくれよ」
「こ、こ、ここ、これでは完全に肝試しではないか!?」
「なるほど肝試しだな、これは!」
「そうだが」
叫ぶ鳥獣戯画に、得心した様子のアルフレッド。持ち場で木から腕を出してピロピロする係に従事するおじさん。
細く息を吐いてから、少し落ち着いた様子の鳥獣戯画は瞳を眇め。
「……そういえばアルフレッド。昨年の旅団合同肝試し大会は、我々は主催側で参加できなかったのだったな」
「そうだな、……成程、今度は参加する側ってわけだ」
にんまりと笑ったアルフレッドは、尾に青い焔を宿す。
暗い夜道もこれで安心。
「よーし姉御! 行こうか!」
「おお、……ここはひとつ、楽しんでいくか!!」
「それじゃおっちゃんありがとう、行ってくる!」
「おー」
鳥獣戯画の手を引いたアルフレッドは、美しく咲き誇る幻朧桜に囲まれた獣道を歩みだした。
「オァーーーッ!?!?!?!?!」
その後。
山に響き渡る、やたらと雄々しい豊かな語彙が失われ切った悲鳴。
――しかしその悲鳴は、悲鳴だと言うのにどこか楽しげに山に響いて。
大成功
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ヴォルフガング・ディーツェ
千鶴(f00683)と
海賊幽霊…霊なら宝探しし放題じゃ…いや、酒が理由か
怖くないし祟られ慣れているなあ…(後のフラグ)
宵に紛れて社の辺りを散策
ふと眼を離した隙に君の姿を見失えど、獣の耳は砂音を捉えて離さない…が、敢えて乗ってみようか
慌てる振りで悪戯を待ち侘びれば、背中を伝う感覚に思わず背が伸びて
してやられた分、可愛い事をしてくれるじゃないかと微笑って頭をくしゃくしゃ
幽霊が沸いたらむしろお約束!とからから笑う勢いだけど、空気を読んで唇を三日月にするにに留めよう
裾を掴む君の指を外して、そうと指を絡めて恋人繋ぎ
どうだい、これでも怖いかいとにんまり
悪戯の仕返しか否かは心にそうと締まって
勿論と握り返そう
宵鍔・千鶴
ヴォルフ(f09192)と
肝試し……前に幽霊屋敷を探検したけれど
海賊の幽霊ならなんか大丈夫そう。酒が賄賂で解決。(後のフラグを立てる)
ヴォルフは…、平気?
神社付近の砂浜を宵闇に紛れ散歩しながら
悪戯心にそうと離れて岩陰に隠れてみる
自身より優れた五感を持つヴォルフをすっかり忘れて気配を絶つ
慌てる様子に
頃合い見て後ろから冷えた指先で背中をつついて
吃驚、した?
幼稚な驚かせ方しか知らない俺に、笑って撫でてくれるきみが優しい
海賊幽霊と遭遇すれば
怖くないと見栄を張りつつ
ヴォルフの上着の裾を確り掴んで離さずに
絡めた指先から彼の熱が伝わって擽ったい
……ううん、安心する
もう少し、このままでいい?
握り返して微笑んで
●やさしいきみ
「海賊達の幽霊なら、幽霊達の宝探しをし放題じゃない?」
「うん、……確かに海賊の幽霊ならなんか大丈夫そう。宝を持ち出しても、酒を賄賂に贈れば有耶無耶にできそう」
ヴォルフガング・ディーツェ(花葬ラメント・f09192)の言葉に、宵鍔・千鶴(nyx・f00683)は冗談めかして相槌を。
でも、まあ、ヴォルフガングとしては幽霊海賊達と和解も解決もしなくても、怖くないし祟られ慣れているからそれほど困りはしないのだけれども。
星明かりを青白く照り返して、幻朧桜が咲き誇る。
二人並んで歩む砂浜には、光源は星明かりだけ。
海と空を溶かした闇が、ぴかぴかと宝石を零したように光を瞬かせている。
さざめく潮鳴りと虫の声、砂浜を歩む足音だけが世界の音を支配する砂浜に。
ちいさな、小さな声がこぼれ落ちた。
「ねえ、ヴォルフ。……ヴォルフは平気?」
空を見上げていたヴォルフガングは、千鶴の零した小さな小さな言葉に振り向くと、彼の姿はもうそこには無い。
ぴ、と立った獣耳、ふさふさとした尾を揺らしたヴォルフガングは内心肩を上げて、下げて。
千鶴が向こうの岩陰に隠れている事なんて、砂音で気づいちゃァいるけれど。
彼は健気にも気配まで殺しているようだから。
――敢えて乗ってみようか。
「千鶴? どこに……?」
焦ったようにヴォルフガングは言葉を紡ぐ。
まるで千鶴を探す様に、きょろきょろと周りを見渡して。
場所は分かっているのだから、そちらには向かわぬよう。
有る種の寸劇、茶番。
それでも、それでも。
「――ね。吃驚、した?」
ヴォルフガングの背後へと回り込んだ千鶴が、冷えた指先で彼の背を突いて笑うものだから。
冷たさにきゅっと背を伸ばしたヴォルフガングは、千鶴の頭を両掌で覆って。
「……全く、可愛い事をしてくれるじゃないか!」
してやられた、とくしゃくしゃと撫でてヴォルフガングは微笑う。
そこにぱしゃり、ぱしゃり。
水面を叩くような音が響いて。
二人がそちらへと視線を向ければ、青白い透明な腕が海面よりすうと伸びていた。
幽霊たちが驚かせようと頑張っている事はヴォルフガングも知っている。
だからこそ。
彼はきゅっと口角に笑みを宿すに留めて腕を見上げてから、ヴォルフガングの服の裾をぎゅうっと握りしめる千鶴へと視線を戻した。
「千鶴、大丈夫? 怖くない?」
「うん、怖くない」
きっとそれは強がりで。
眦を和らげたヴォルフガングは服を握りしめる指を柔らかく解くと、彼の指先を自らの指先と貝のように結んで手を繋いで、にんまりと笑った。
「どうだい、――これでも怖いかい?」
ああ。
全部読まれている。
全部解られている。
胸の奥がきゅっと跳ねて、頬がちょっとだけ暖かくなるけれど。
それでも、それでも。
結んだ指先からヴォルフガングの暖かさが伝わってきて、指先が、胸が、心が、くすぐったいから。
「……ううん、安心する」
だから、もう少しだけ――このままでいい?
千鶴の言葉にヴォルフガングは悪戯げな笑みを、ほんとうに柔らかな笑みへと変えて。
「勿論」
これが悪戯の仕返しか否かはの答えは――ヴォルフガングの胸裡にだけ。
柔らかく応じたヴォルフガングは、千鶴の掌をぎゅうと握り返した。
大成功
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