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その一発は輝かしい煌めきと共に

#アルダワ魔法学園 #戦後

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#アルダワ魔法学園
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#戦後


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●アルダワ魔法学園でも花火の時期です
「魔法花火コンテストの時期だぞ、先輩たち」
 イミ・ラーティカイネン(夢知らせのユーモレスク・f20847)はそう言いつつ、いつもの彼には似つかわしくないにこやかな笑みを浮かべていた。
 いつもの彼の予知スタイルとは異なるやり方。首を傾げる猟兵たちに、イミはひらりと片手を動かした。
「アルダワ魔法学園で毎年、魔法で作り出した花火の出来栄えと美しさを競う、コンテストが開かれているのは知っているか? 今回はそれに関連して、在校生指導のお仕事だ」
 平和になったアルダワ魔法学園、しかし猟兵という勇者の知識や経験から学びたい、という生徒は数多い。その為、猟兵たちの元に「在校生指導をしてほしい」という依頼が度々舞い込むのだ。
「今回は、ちょうど魔法花火コンテストの時期ということもあってな。エーミール先輩がずいぶん張り切って企画のプランニングをしたらしい。コンテストを楽しみつつ、在校生にいいところを見せつける。どうだ、簡単だろう?」
 右手に嵌めたミズラブの爪先から、ぽんと一発小さな花火を上げてみせるイミ。今でこそ小さな一発だが、コンテストともあれば絢爛豪華な、趣向を凝らしたたくさんの花火が見られることだろう。
 特に今年は大魔王が撃破されてから、初めての開催。エントリー数も既に相当なものになっているという。
「転校生には特別に審査員席も用意されているが、そこに座りたくなければ一般観客席に座ってもいいし、なんならコンテストに飛び入り参加してもいい。どう楽しむかは転校生の皆に任せる、ということだ」
 そう話して、イミは右手の指先をくるくる回した。
 猟兵ならば、どんな評論をしても満足されるだろうし、飛び込みで花火を上げても喜ばれること間違いなし。転校生と直に話をしたい、という生徒だって多いはずだ。
 とはいえ、コンテストを満喫したら在校生指導のお仕事が待っている。しっかり迷宮に潜って、在校生にいいところを見せなくてはならないのだ。
「今回の講習の場となる第15迷宮の地下二階は、迷宮が大量の壁ででたらめな構造になっていてな。普通に通路を進んでも、すぐに行き止まりにぶつかってしまう。そこで、これだ」
 そう言いながら、イミは再び右手の指を立てた。その指からぽんと飛び出した花火が、ぱちんと炸裂する。
「花火でも、爆弾でも、マジックミサイルでも、なんなら音波でも構わん。壁を壊して前へと進むんだ。壊せる壁を正確に見極められれば、在校生の学習の助けにもなるだろう」
 イミ曰く、壊せる壁と壊せない壁があるようで。素材か、老朽化か、何がキーになるかは分からないが、壊せる壁をどんどん壊して先に進むのが正解、というわけだ。
 その先の部屋には災魔が巣くっている事が分かっている。この災魔を相手にどうにかするのが、今回の講習の最終目的だ。
 そこまで話して、イミはようやくグリモア入りのガジェットを取り出した。それをくるりと手元で回せば、空が藍色に染まり始めたアルダワ魔法学園が見えてくる。
「準備はいいか、先輩たち? しっかりきっちり楽しんで、ちゃんと講習も終えて帰って来るんだぞ」


屋守保英
 こんにちは、屋守保英です。
 夏の日に花火を一発。迷宮の中でもマジックミサイルをどかんと。
 派手に盛り上げてまいりましょう。

●目標
 ・魔法花火コンテストを楽しむ。
 ・ヴィクトリア×6体の撃破または退却。

●戦場・場面
(第1章)
 アルダワ魔法学園の大グラウンドです。
 魔法学園の年に一度の恒例イベント「魔法花火コンテスト」が開かれており、生徒たちの力作が次々に発射されています。
 魔法の花火の競演を楽しみながら、生徒との交流を楽しみましょう。

(第2章)
 アルダワ魔法学園の地下迷宮、第15迷宮の地下2階です。
 このフロアは多数の壁で構成されており、通路はほとんど繋がっていません。
 魔法花火やマジックミサイル、爆弾などを使って、壁を破壊して進みましょう。
 在校生は主にマジックミサイルを使って壁を破壊しようとしますが、猟兵ほどの威力は出せないため、すぐには壊せません。

(第3章)
 アルダワ魔法学園の地下迷宮、第15迷宮の地下2階にある大部屋です。
 ヴィクトリアが大部屋の中で大騒ぎしています。
 彼女たちも、地上では魔法花火コンテストが行われていることは知っており、参加できる生徒やミレナリィドールを羨ましがっています。
 在校生の四名は戦闘には参加せず、猟兵たちの退路確保に徹します。

●在校生
 下記の四名が参加します。
 エーミール・バッハ(ケットシー・男・ビーストマスター・12年生)
 ゲアハルト・バッハ(ケットシー・男・ビーストマスター・2年生)
 セリオ・エスクデーロ(ドラゴニアン・男・シンフォニア・10年生)
 マイレ・パルニラ(ミレナリィドール・女・シンフォニア・2年生)
 なお、エーミールは昨年の魔法花火コンテストに入賞した実績があります。

 それでは、皆さんの楽しいプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『魔法花火コンテスト!』

POW   :    飛び入り参加!一緒に花火を打ち上げる!

SPD   :    コンテストの審査員を務め、花火を特等席から観覧する。

WIZ   :    生徒たちと交流しながら、一般観客席で花火を楽しむ。

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●アルダワで一番アツいイベントの始まりです
 アルダワ魔法学園の中央グラウンドは、生徒数の多さに比例して広い。
 その広さは学園の生徒を全員収容してなお空いたスペースがあるほどで、ちょっとした自然公園のようにもなっている。
 その中央グラウンドが、魔法花火コンテストの会場だ。
 既にコンテストは始まっており、エントリーした生徒や教員が色鮮やかな花火を打ち上げては、審査員席に座る面々が点数を付けていく。
 そんな光景をバックに見ながら、ビーストマスター学科12年生、バルテレミー班の中心にいる一人であるエーミール・バッハは、大きく小さな両腕を広げた。
「やあみんな、アルダワ魔法学園で最もアツいイベント、魔法花火コンテストにようこそ! このイベントが、今回の講習のレクリエーションを兼ねている。存分に楽しんでいってくれると幸いだよ」
 今回の講習の企画者である彼は、華麗な魔法花火を打ち上げる実力者でもある。このイベントを歓談の場に選べたことに、喜びも大きいのだろう。
 ちなみに先程、エーミールは今年のために用意した花火を派手に打ち上げ、高得点を記録している。まだコンテストの行く末は分からないが、暫定首位は彼だ。
 そんなエーミールの隣で、二つ年下の弟、ビーストマスター学科2年のゲアハルト・バッハが尻尾をぶんぶん振ってみせる。
「今年のコンテストは、大魔王が倒されてから初めて開催されるコンテストなので、いつもより賑やかなんですっ!」
 ゲアハルトの言葉に、シンフォニア学科10年、今回参加する在校生の中で唯一二十代のセリオ・エスクデーロがうなずいた。
「ああ。転校生諸君は俺たちのヒーローだ。このコンテストの最中も、中心にいられることは間違いない」
 竜派ドラゴニアンの表情が掴みにくい顔立ちながら、確かに口角を持ち上げて笑う彼の隣で、同じくシンフォニア学科、2年生のマイレ・パルニラが胸の前で手を組んだ。
「はい。大魔王を見事討ち滅ぼしてみせた皆さんの技術や経験を、私たちも学びたいと思っております。何卒、ご指導のほどをよろしくお願いしますね」
 嬉しさを顔いっぱいに表現して笑うマイレの様子に、ゲアハルトもセリオも微笑ましく笑っていて。
 各々がそれぞれ、転校生たちへの思いを述べたところで、中心に立つエーミールがとんと胸を叩いた。
「……ということで、今回の講習は僕とゲアハルト、セリオさん、マイレの四人が参加するよ。飛び入り参加や審査でコンテストを楽しみつつ、僕たちとの親交も深めてくれたら嬉しいな」
 そう話す彼が、にこやかに笑いながら視線を上に向ける。
 また一発、絢爛豪華な花火が、アルダワ魔法学園の夜空に咲いた。

●特記事項
 ・魔法花火コンテストは花火を打ち上げる都合上、時折大きな音が鳴り響きます。
  また、エーミール、ゲアハルト、セリオ、マイレ以外にも多数の生徒、教員が集まっています。
 ・案内役のイミは登場しません。ご了承ください。
草野・千秋
WIZ

アルダワ魔法学園も相変わらずのようですね
前に教師役とか頑張ったり、ちょっと倒すには躊躇ってしまう、悪っぽくないオブリビオンに会ったりしたものですが、生徒さんも変わらず自己研鑽に励んでおられる様子、頼もしいです(にこにこと笑み)
いずれまたこの学園から英雄が出るんでしょうね
おお、魔法花火ですか
なかなか見応えがありそうです
楽しませて貰いましょうか

僕が生まれ育ち住むUDCアースでは夏といえば花火なんですよ
かき氷とか屋台の食べ物食べながらだったり
……小さい頃は父に肩車してもらったり
ここアルダワでもそうなんでしょうか?
魔法花火、綺麗ですね
これも学園の皆さんが戦争の時より腕を上げたからですよ



●エーミール「モフィンクスも眠りネズミも大魔王が倒される前より、大人しくなった気がする」
 色とりどりの火の花が、大音量と共にパッと咲いては散っていく。
 UDCアースでは考えられないような色に瞬いた光が、四方八方に散っては、集って、また散って。
 魔法らしい複雑な動きをする光を見上げながら、草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)は眼鏡の奥の目を細めた。
「アルダワ魔法学園も相変わらずのようですね、生徒さんも変わらず自己研鑽に励んでおられる様子、頼もしいです」
 夜空から視線を地上に戻して、ふと右方向に視線を向ければ、そちらからエーミールとゲアハルトがが手を振りつつ駆け寄ってくるのが見えた。ここで待ち合わせをしていたのだ。
「千秋さん、お疲れさま!」
「来てくれてありがとうございます!」
「エーミールさん、ゲアハルトさん、お疲れ様です。講習の企画、ありがとうございます」
 ケットシーの少年たちに微笑みかけると、千秋はふと屈みこんだ。自分の膝丈くらいのエーミールに、そっと耳打ちする、
「……やっぱりまだ、ちょっと倒すには躊躇ってしまうような、悪っぽくない災魔、いるんです?」
「いるいる、いっぱいいる。めぇめぇレスキューの皆なんて、平気な顔して地上近くの上層階まで上がってくるよ」
「低学年のちっちゃい子は、眠りネズミと一緒にお昼寝したりしてます」
 対して二人も、にやりと笑いながらうなずいて。どうやらこの世界、平和的な災魔は大魔王が倒された現在も元気らしい。
 二人と歓談していれば、再び上がる花火が大きな音を立てる。パッと明るくなる左方の視界に目を向ければ、ダリアのような幾重にも重なった真紅の光が、夜空に大輪の花を咲かせていた。
「魔法花火、なかなか見応えがありますね」
「でしょ? 毎年すごいんだ、このコンテスト。僕もうかうかしてられないなー」
「皆のレベルも上がってきているし、兄さんも油断してたら入賞できないよ」
 学園生徒の上げる花火に、花火魔法の使い手としては先達のエーミールが、感心したように息を吐いた。実際、どの花火も見事なものである。
 そこから、花火魔法の興りだとか、市中での花火大会とか、そういう方向に話が向かって行って。どうやらアルダワ世界にも、花火を上げて鑑賞する文化はあるらしい。
「僕が生まれ育ち住むUDCアースでは夏といえば花火なんですよ」
「へーっ、そうなんだ。アルダワも、花火魔法が一番盛り上がるのはこの時期だよ」
「おんなじですね!」
 千秋の話に、バッハ兄弟が早速食いついた。異世界との共通点、見つけられると嬉しいのはやはりあるようで。
 かつて子供だった頃に見に行った花火を思い返しながら、千秋が言葉を続ける。
「かき氷とか、屋台の食べ物食べながら花火を見たり……小さい頃は父に肩車してもらったり」
「あっ、やるやるそういう屋台、こっちの世界でも」
「肩車は……お金持ちは蒸気で浮かび上がるモービルに乗って空から見るんですけど、普通の人はそこまではしないみたいです。人間の人たちは肩車したりするみたいですね」
 エーミールとゲアハルトも、発言に同調しながら耳をぴこぴこ、尻尾をパタパタ。曰く、複数人が乗れて、蒸気の力で台座を上に持ち上げる機械があるそうで。
 その「普通」という言葉にふと思うところがあり、千秋が二人を見下ろした。
「普通……エーミールさんたちは?」
「僕たちの父さんも、ビーストマスターでね。父さんの駆るライオンさんに乗せてもらって、毎年の花火を見てたんだ」
「へえ……」
 問いかけに答えるのはエーミールだ。
 聞けば、彼らの父も、父方の祖父も、ビーストマスターなのだそう。家柄なのだろう。
 そんな話を聞きながら、再び千秋が空を見上げる。三人一緒になって見上げる空には、またも大輪の花が咲き誇って。
「……綺麗ですね」
「そうでしょ。僕たちも頑張ってるんだよ」
「ですよ!」
 感動したように零す千秋。それに自信満々に答えながら、在校生二人は胸を張った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加(他猟兵との交流可)

アルダワの戦争が終わって大分経つが、アタシ達家族にとってアルダワが大切な場所には変わりはない。アルダワの技術を使った打ち上げ花火。興味があるねえ。お邪魔していいかい?

打ち上げ花火で楽しむのは子供達に任せて、アタシは観客席で子供達がはしゃいでいるのを見て目を細める。話が出来るならば、セリオとパイレと話してみたい。アタシもシンフォニアだから実質的な後輩だ。同じ歌を愛するものとして交流したいね。出来れば、歌に関する思いも聞いてみたい。綺麗な花火を見ながらゆっくり話そうか。


真宮・奏
【真宮家】で参加(他猟兵との交流可)

戦争も終わってアルダワも静かになりましたが、相変わらず楽しいイベントは開催されるんですね。魔法花火大会、楽しみに決まってるじゃないですか。ノリノリで参加しますよ。

まず開催者のエーミールさんにご挨拶してから暫定チャンピオンのエーミールさんに対抗すべく一度に多くの花火を打ち上げます!!(打ち上げた勢いでふらついて瞬に支えられる)えへへ、ちょっと張り切り過ぎました。でも花火が星や花のように綺麗でしょう?これこそ夏の風物詩ですよね。うん、楽しいです。


神城・瞬
【真宮家】で参加(他猟兵との交流可)

戦争が終わっても、僕達家族3人にとってアルダワは沢山の楽しい思い出をくれた大事な所です。アルダワでまた思い出が作れること、嬉しく思います。

打ち上げ花火を抱えてエーミールさんに挑戦する奏に苦笑しつつ、綺麗な色の打ち上げ花火を一個だけもって、ゲアハルトさんに話しかけます。いや、輪の中心で騒ぐタイプのお兄さんを持って苦労はしないかと。僕の義妹はご覧の通り、ですし。(ふらついた奏を支えつつ)僕ももちろん花火を打ち上げますよ。ゲアハルトさんも一緒に、いかがですか?



●エーミール「大魔王が倒されて平和になっても、アルダワ魔法学園が賑やかなのは変わってない、むしろより賑やかになってる」
 中央グラウンドに次々と花火が上がり、ランキングが変動する中。
 真宮・響(赫灼の炎・f00434)、真宮・奏(絢爛の星・f03210)、神城・瞬(清光の月・f06558)の家族三人は、賑やかなコンテストの会場で互いに顔を見合わせていた。
「アルダワの戦争が終わって大分経つが、アタシ達家族にとってアルダワが大切な場所には変わりはない」
「戦争も終わってアルダワも静かになりましたが、相変わらず楽しいイベントは開催されるんですね」
「アルダワでまた思い出が作れること、嬉しく思います」
 響も、奏も、瞬も、この学園とこの世界には思い入れが強い。だからこそ、平和になった後のこの世界で、まだ楽しい催しが開かれることが、嬉しい。
 特に奏は一番楽しみにしていたようで、せわしなく辺りを見回しては、打ち上げられる花火に目を輝かせていた。
 と。
「あっ、そこにいるのは講習開催者兼暫定チャンピオンのエーミールさん! ちょっといいですかー!?」
「えっ、なんっ……奏さん!? なにそれ!?」
 エーミールとゲアハルトを見つけた奏が、喜びの声を上げて駆けだす。その腕の中に抱えられているのは、大量の、そう大量の手持ち式打ち上げ花火だ。花火魔法の実力者であるエーミールに対抗心を燃やした奏が、大量に持ち込んだ代物である。
 ただ、ここで誤算が一つあった。エーミールが今いるここは、一般観客席。他の観客もいっぱいいる。そんなところで花火を打ち上げたらどうなるか、という話だ。
 瞬が深くため息を吐き出す。
「……ああ、もう」
「仕方がないね、瞬、行っておやり」
「はい、母さん」
 響の声に頷いて、瞬が即座に走り出す。追いかけられる当の奏は、逃げ惑うエーミールに人のいない方、つまり花火の打ち上がるグラウンド中央方向にそれとなく誘導されていることに、気付いているのかいないのか。
 ともあれ、既に花火の導火線はオールファイアである。
「今回の講習、企画してくださりありがとうございます! 景気づけに一発、行きましょう!」
「いや待って待ってそれ火薬使う花火だよね!? そんなたくさん一度に火を点けたらあぶな――」
「兄さんもう遅い!! みんな退避、退避ー!!」
 ゲアハルトが声を張り上げると同時に、二人の周囲からざっと人が引いた。と同時に一斉に発射される打ち上げ花火。バシュンという盛大な音がグラウンドに響いた直後、轟音が弾けた。
 呆気に取られるエーミールとゲアハルト。その前で奏が、花火の打ち上がる勢いに押されて身をよろけさせる。
「わわっ」
「奏さん!」
 と、人の輪を割って飛び込んできた瞬が、倒れそうになる奏の身体を掴んで支えた。その額には冷や汗が浮かんでいる。心配だったことは想像に難くない。
「無茶なことを……大丈夫ですか」
「えへへ……ちょっと張り切りすぎました」
 瞬に間近で顔を見つめられて、ようやく自分のしでかしたことの大きさに気が付いたらしい。苦笑をしながらも、奏は楽しそうだ。
「でも花火が星や花のように綺麗でしょう? これこそ夏の風物詩ですよね。うん、楽しいです」
「言わんとすることは分かるけどさ……」
「あー、びっくりしたー……」
 バッハ兄弟は揃って、その場にへなへなと崩れ落ちた。腰が抜けたらしい。
 完全に巻き込まれた形のゲアハルトに、瞬は神妙に頭を下げた。
「すみません、僕の義妹が」
「あっ、いえいえ。大丈夫……とはちょっと言えなかったですけど」
 そう返しながらゆっくり立ち上がるも、足元がふらついているゲアハルトだ。まだ、先程の衝撃から立ち直れてはいない様子。
 既に自分の手を離れ、エーミールに駆け寄っていく奏を見ながら、瞬はそっと目を細めた。
「輪の中心で騒ぐタイプのお兄さんを持って、苦労はしてないですか? 今みたいなことになったりとか」
「大丈夫です! 兄さん、これでもだいぶ落ち着いたんですよ。十一年学園に通った賜物ですね」
 瞬の心配そうな問いかけに、ゲアハルトは明るく返す。年こそ二つ違いだが、魔法学園の在籍年数は実に十年の開きがあるのだ。それだけ、幼い頃からいろんなことを経験してきたのだろう、彼の兄は。
 ふっと笑みをこぼしながら、瞬が身を屈める。拾い上げるのは奏が打ち上げた大量の手持ち式打ち上げ花火、その一本だ。どうやら何本か、火が点かずに燃え残ったらしい。
「僕ももちろん花火を……と言っても、これででけど。ゲアハルトさんも一緒に、いかがですか?」
「了解です! 兄さん直伝の花火魔法をお見せしますよ!」
 笑みを向ける瞬に、ゲアハルトもようやく立ち直って。
 シュッと細い光が二筋、夜空に上っていった。

●マイレ「ゲアハルトさんや私も2年生になって、先輩らしく振る舞うことが出てきました」
 今しがたのちょっとした騒動は、当然のように響の目にも映っていたわけで。
「……やれやれ」
 ため息をつく中、セリオとマイレの二人が、困った顔をしながら響の元へやってきた。
「……ご息女方は、大丈夫ですか、響先輩」
「なんだか、ものすごい音がしていましたけれど……」
 心配するような呆れるような、なんとも言い難い表情を向けてくるセリオとマイレ。その二人に、響はこれまた困った表情で二人に視線を返した。
「二人は……えーと確か、今回の講習に参加する、セリオと、パイレ、だっけ」
「マイレ、です、真宮先輩」
「エーミール主導の講習に、俺たちも参加することは合っています。よろしくお願いします」
 名前を間違えられたマイレが苦笑すると、セリオも改めて頭を下げる。
 響はシンフォニアのジョブも有している。同じジョブにつくものとして、二人とは全く無関係な間柄ではない。
「二人とも、シンフォニア学科だっけ? じゃあ、実質的にアタシの後輩ってわけだ」
「はい、そうなります。先輩方のご活躍は、かねがね」
「皆様、一人一人が一騎当千の猛者だと伺っておりますわ。素晴らしいことです」
 偉大な先輩を前に嬉しそうな二人だ。響も褒められて、悪い気はしない。
 とはいえ、だ。
「ありがとう。ただね、そこまで他人行儀な物言いはやめとくれよ。同じ歌を愛する者同士、だろう?」
 くすぐったそうな響の言葉。
 それに、セリオもマイレも互いに顔を見合わせると、ふっと笑った。
「……ふふ、確かに」
「先輩がそう言うなら、そこまで格式張らなくても、いいか」
 マイレは元々こうした丁寧語口調だが、セリオはそうではなかったようで。幾分砕けた物言いになったところで、響がセリオへと視線を向けた。
「セリオは特に、シンフォニアやって長いんだろう……歌は、どんなものだと思っている?」
 シンフォニアというジョブの根幹を成す、歌への思い。
 響はその問いを通じて、この後輩二人と語らい、気持ちを通わせようとしていた。
 やがて、しばらく考え込んでいたセリオが、ふっと言葉を発する。
「そうだな……誰かを支える柱。そうありたいし、そうあるものだと、思っている」
「なるほどね。マイレはどうだい?」
 その答えを受け取った響は、すぐにマイレにも水を向けた。こちらはセリオが問われている間にいくらか考えをまとめていたようで、すぐに口を開いた。
「私は、そうですね……誰にでも、想いを届け、伝えることが出来るものだと、思っています。種族も、時も越えて」
 二人の答えに、響は笑顔を見せた。
 誰かを支えるものでありたい。
 誰かに届けるものでありたい。
 どちらも、歌にとって大事なことだ。
「いいじゃないか、その意気だ」
 そう言って笑いながら、響はセリオとマイレの肩を抱く。
 彼ら三人の後方で、今日一番に大きな花火が、ドーンと爆音を響かせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『破壊者の迷宮』

POW   :    力で破壊する。

SPD   :    技術で破壊する。

WIZ   :    魔法で破壊する。

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●セリオ「魔法花火はアルダワ魔法学園の魔法の基礎だから、どの学科に所属する者でも必ず使える」
 魔法花火コンテストが一段落した後、第15迷宮。
 その地下一階を、猟兵たちを先導して進みながら、エーミールが口を開いた。
「ここからは、転校生の皆に指導してもらう講習の時間だ。舞台になるのはこの第15迷宮の、この下の階。イミさんから軽く説明は受けているかな」
 そう話しながら、エーミールは迷宮の中をすいすい進んでいく。既に地下一階におけるある程度の災魔は片付け、トラップは無効化してあるらしく、進むにあたっての障害はほぼなかった。
 そんな迷宮の壁に手を当てながら、エーミールがふと足を止めた。
「第15迷宮の地下二階は、たっくさんの壁で仕切られている。それこそ、通路なんてほとんどないくらいにね。壁は物理的なあれこれでも魔法的なあれこれでも壊せるけど、壁の壊しやすさはそれぞれ違う」
 彼が手をつく壁は、ほかの迷宮と同様に真鍮色のそれだ。この壁はきっと、壊せないか、壊すのに非常に難儀するタイプ、となるのだろう。
 再び歩み出し、猟兵たちに振り返りながら、にっこりと笑うエーミールである。
「僕が転校生の皆に何を期待しているかっていうと、『いかに効率よく、消耗せずに進めるルートを見極めるか』ってことなんだ」
 その言葉に、なるほどと納得する猟兵たちだ。
 迷宮探索において、消耗を最小限に抑えるのは必須事項だ。災魔との戦闘やトラップの解除だとかで、体力気力魔力はどうしても消耗するもの。進行そのものでそれらを削られ、いざという時にエネルギー切れ、では話にならないのだ。
「闇雲に壁を壊そうとして消耗し、強力な災魔と出くわしたら一巻の終わりだからな」
「僕たちも魔法花火は使えるけれど、破壊力を持たせて打つと、ちょっと疲れちゃうんです」
 セリオとゲアハルトも、うんうんと頷きながら猟兵たちの後をついてくる。
 そんなこんなでさっさと地下二階に続く階段を見つけ、何でもないように降りていくと。
 猟兵たちの目の前に、いきなりボロ板のような壁が姿を現した。
 こんな具合に、不規則に、大量の壁が出現している、ということか。
「と、いうわけ。皆の知恵と力で、迷宮を楽々ぶちぬける道を探してみてね!」
 目の前のボロ板を拳でこんこんと叩きながら、エーミールが猟兵たちに笑って見せた。

●特記事項
 ・地下二階には不規則に、大量の壁が立ち並んでいます。材質も木製、石製、金属製と様々です。同じ材質でも種類によって硬さが違ったり、劣化具合が違ったりします。
 ・魔法が使えないタイプの人の場合は、物理的に壁を破壊するのでも全然オッケーです。
真宮・響
【真宮家】で参加

いやあ、名前間違えたり、娘が騒動起こしたり、迷惑かけたね。その分しっかりと結果を出してみるさ。

とはいえ、私と奏が頭使うの苦手でねえ。力押しのやり方しか出来ない。まあ、壁の壊し方は工夫してみるよ。木の壁とかは【怪力】【グラップル】で破壊。石製とか真鍮製は老朽化してれば【衝撃波】で、硬いままだったら光焔の槍を撃ちこんでぶっ壊す。飛び散る破片は【オーラ防御】で被害を軽減。壁を壊していけばルートは拓けていくさ。あんまり参考にならなくてすまないね。まあ、これがアタシのやり方だ。


真宮・奏
【真宮家】で参加

すみません、張り切り過ぎました。騒動起こしてごめんなさい。その代わり迷宮対策はちゃんとやります。・・・とはいえ、私殴って解決するタイプなので、頭使って進むの苦手なんですよね・・・出来るだけやってみます。

木製のは【怪力】【グラップル】で壊せますかね。老朽化した真鍮製や石は【属性攻撃】で風属性を付与した【衝撃波】で破壊!!硬いのは流星の剣で破壊!!まだまだ全力を出してませんよ~!!さあ、先に進みましょう!!


神城・瞬
【真宮家】で参加

だから力押しの突破は無駄に力を消費するだけですって・・・全く母さんと奏のフォローをする僕の苦労も考えてください。


出来るだけ母さんと奏が拳で壊せる木の壁は任せ、老朽化した石や真鍮の壁は【衝撃波】で破壊を補助。硬い壁は僕が氷晶の槍で破壊を主に担当しましょうか。魔法を使うのは僕がやりますので、母さんと奏は物理的な破壊を主にやってください。広い迷宮ですから、突破は役割分担です。さあ、行きましょうか。


草野・千秋
花火楽しかったですね
ここからは現実
やることやっておきませんとね!
また在校生さんにしっかりいい所を見せなくては
僕、某いしのなかにいる系ダンジョン3DRPGやったりもしますが、あれには壁を壊して進むなんて遊び方はありませんでした
いや、これからやろうとしてる事は遊びではないんですけど

僕はサイボーグ、魔法とは縁の遠い生き物です
でも物理パワーなら誇れる!
ええと、壁相手に攻撃力がアップするかわかりませんが
UC【Judgement you only】で攻撃力を上げておきますね
サイバーアイの視力で壁を観察
劣化してる所を狙ってそして怪力で殴る!

在校生さん達は魔法で、ですか
頑張って下さいー、と鼓舞



●破壊、破壊、破壊
 第15迷宮の地下二階に降り立つ手前の辺りで、響が小さく頭を掻く。
「いやあ、名前間違えたり、娘が騒動起こしたり、迷惑かけたね。その分しっかりと結果を出してみるさ」
「すみません、張り切り過ぎました。騒動起こしてごめんなさい」
「まあ、あのくらいはよくあることさ。いいよ、気にしないで」
 一緒になって、地上での先の騒動を謝る奏だったが、エーミールの答えは随分あっけらかんとしたものだった。
 その物言いに、瞬と千秋が小さく首をかしげる。
「よくあること?」
 その問いかけに、エーミールは振り向きながらにこりと笑った。まるで奏の気持ちが分かっているかのようで。
「ああいう騒ぎって、そんなにあることなんですか?」
 千秋が不思議そうに目を見開けば、エーミールは笑みを見せたままでこくりと頷いた。
「年に数回の派手なお祭りだからね、はしゃぐやつらは毎年出てくるんだ。奏さんがしたみたいに、観客席から花火を打ち上げる生徒は、毎年いる」
「火薬を使った花火を打ち上げた生徒は、今まで記憶になかったけど、な。そう言いたいんだろう、エーミール?」
「うっ」
 とはいえ、セリオに突っ込まれて言葉に詰まるエーミールである。騒ぎを起こすにしても、奏の起こした騒ぎはさすがに例年以上だったらしい。さもありなん。
 ともあれ、四人は地下二階に到着して、エーミールが先程示した木の壁を見るわけである。
「ま、何はともあれ、この壁だね」
「母さん、奏も、さっき説明されたから分かっていると思いますが」
 瞬が言葉を発するより早く、響が一発、右手を木の壁に撃ち込んだ。その一撃であっけなく壁は破壊され、その先の通路が顔を覗かせる。
「うわ……」
 その思い切った行動に、サイボーグで膂力に自信のあるはずの千秋が声を漏らした。
 この拳の一撃で、木の壁が見るも無残に砕かれている。並の人間でここまでのことは、そうそう出来ないだろう。猟兵を並の人間に数えるべきかは置いておくとして。
 粉々になった壁に背を向けて、それを呆気なく破壊した響がいっそにこやかなほどの笑みを見せた。
「とはいえ、ね、瞬。知っているだろう? 私と奏が、頭使うの苦手で、力押しのやり方しか出来ないってことは」
「私殴って解決するタイプなので、頭使って進むの苦手なんですよね……出来るだけやってみますけれど」
「……はぁ」
 それに同調して拳を握るのは奏だ。そう、この二人、分かりやすいほどに肉体派であるがゆえに。
 講習の趣旨とは相反する、までとはいかないものの、その意に沿うつもりなどはなからない母と義妹に対し、唯一魔法に縁のある瞬はため息をついた。
 ため息をついて、前に立つ二人と、隣に立つ一人を見やる。
「全く、母さんと奏のフォローをする僕の苦労も考えてください。硬い壁は、僕が担当しますから、二人は物理的な破壊を主にやってください。千秋さんも、膂力には自信のある方でしたね?」
「悪いね、任せるよ」
「よろしくお願いします」
「は、はい。でも僕はちゃんと観察して劣化している壁を壊す方向でいきますよ!」
 瞬の言葉に頷きながらも、サイボーグらしく眼鏡をくいっと持ち上げる千秋である。
 そうして行われる破壊、破壊、破壊。
 木製の壁は響と奏が片っ端から拳を撃ち込んで壊し、石製の壁や金属製の壁でも老朽化しているとみるものは衝撃波をぶちかまし、千秋も一緒になって劣化している壁を見極めては拳を撃ち込んで壊し、それでも壊せないものは瞬が氷の槍を撃ち込んで。
 ものの見事に、目につく壁を片っ端から破壊してかかる四人に、エーミールが後ろで深くため息をついた。
「うーん、僕の説明、あれ効果あったかな?」
「まぁ、その、エーミール先輩、役割分担も大事な作戦ですから……」
「兄さん、ドンマイだよ」
 そんな彼を、マイレとゲアハルトの2年生組が慰める。
 まあ、マイレの言うことも間違いではない。役割分担して消耗を減らすのも、立派な作戦だ。
「よし、奏、そっちの木の壁は任せた!」
「はい、いきますっ!」
「母さん、その壁は待って! その左手の石の壁が……ああ。まぁいいでしょう、僕がやります! 千秋さん、先んじて一発お願いします!」
「はい、いきますよ! 僕を信じてくれた人の為に!」
 在校生の四人が何とも言えない表情で見る中、四人は次々と壁を破壊して突き進んでいくのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 集団戦 『ヴィクトリア』

POW   :    ただいま清掃中です
単純で重い【強酸性の水を吸ったモップ】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    急にお客様が来ましたよ
【使用者のレベル×7体の調理係】の霊を召喚する。これは【よく研がれだ牛刀】や【高温の油】で攻撃する能力を持つ。
WIZ   :    本職
【午後3時のお茶】を給仕している間、戦場にいる午後3時のお茶を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●お茶くみ人形は花火を乞う
 壁を壊して、壊して、壊して。
 そうして猟兵たちと在校生たちは、第15迷宮地下二階の中央部に位置する、広い部屋までやってきた。
「うふふ」
「うふふ」
 部屋の中で楽しそうに笑う、同じ姿をした、同じドレスに身を包んだ少女たち。その区別のつかなさは、迷宮に数多蔓延る災魔と同様のものだ。
 彼女たちの姿を認めたエーミールが、猟兵たちに向き直る。
「あそこにいるミレナリィドールみたいな人形が、今回の講習で相手取る予定の災魔、ヴィクトリアだ。なんでも昔に作られたお茶くみ人形らしい」
 そう話しながら、彼はゆっくり大部屋の中に足を踏み入れた。少しずつ接近すると、途端にヴィクトリアたちが猟兵たちの方を向く。
「まあ、急にお客様が来ましたよ」
「まあ大変、まだお掃除も済んでいないのに」
 口々にそう言いながら、彼女たちは手に手にモップやら牛刀やら、各々の武器を握った。その手つきは剣呑で、平和的解決など望めない、ように見える。
「現状は見ての通りってやつ。しっかり災魔になっちゃってるから、何とかしなくちゃならない……んだけど」
「だけど? なに、兄さん」
 油断のない目つきで人形たちを見ながらも、どこか歯切れの悪い言葉で話すエーミールに、ゲアハルトが首をひねる。
 と、ヴィクトリアたちは唐突に、天井の方へと視線を向けた。
「地上ではドンドンパチパチ、楽しそうだわ」
「そうね、今の時期は花火で皆が忙しい、羨ましいわ」
 羨ましい、楽しそう、そう口々に言いながら、ヴィクトリアたちは大部屋の中をくるくる回る。
 それを見てから、エーミールは改めて猟兵たちに目を向けた。
「あの災魔たち、地上で魔法花火コンテストが行われていることを知っている様子なんだ……案外、災魔になっても楽しみにしてるんじゃないかな。あのコンテストは伝統があるし」
 曰く、ヴィクトリアはかつて開発されながらも実用に足らぬと廃棄されたお茶くみ人形。元々は魔法花火コンテストなど、イベントの時に使用される想定だったらしい。
 学園のイベントを楽しみたかったが、楽しめずに廃棄された、そんな悲しみもあるのかもしれない。
 猟兵たちの後ろに回りながら、エーミールは小さく笑った。
「まあ、退路は僕たちが確保するからさ。どうするかは皆に任せるよ。いいかな?」

●特記事項
 ・ヴィクトリアは普通に戦闘して撃破することを推奨していますが、何とか言い含めたりやりこめたりして撃破せずにお帰りいただくのもオッケーです。
 ・ヴィクトリアたちは地上の学園で魔法花火コンテストが行われていることを知っているようです。今の時期が昔から、コンテストの時期だったからかもしれません。
真宮・響
【真宮家】で参加

まあ、アタシ達はこういう力押ししか出来ないからねえ。驚かせて済まない。ええと、ここにいるお嬢さん達は倒さなくてもいいんだね?穏やかに解決出来るならそれでいい。

まずヴィクトリアのお嬢さんの入れてくれる紅茶は有難く頂く。紅茶のお茶請けにいつも持ち歩いているチーズクッキーを差し出す。

そうだね、お祭りを楽しみたいならリサイタルはどうだい?音楽一家のアタシたちにとって盛り上げるのはお手のものだ。赫灼のグロリアを歌う。ヴィクトリアのお嬢さん達も一緒にどうだい?災魔といえど、お祭りにおいてかれるのは可哀想だからねえ。存分に楽しんだら、大人しく帰ってくれるかい?


真宮・奏
【真宮家】で参加

すみません、こういう力任せの事しか出来ない物で・・・呆然するのも仕方ないですね。さて、次の部屋は・・・この部屋のメイドの皆さんはちゃんと話せば、帰ってくれるんですね?お祭り仲間外れにされたのも可哀想ですし、一緒に楽しみたいなあ。

あ、ヴィクトリアさんの紅茶は美味しく頂きます!!何か入っていても【毒耐性】ありますので!!あ、ハニークッキー食べますか?私達は音楽一家なので、楽しませるには自信ありますよ!!絢爛のクレドでヴィクトリアさんと手を繋いで踊ります。お祭りみたいに楽しいでしょう?もう過去の存在になってしまったヴィクトリアさんに今の楽しみを!!満足して頂けましたか?


神城・瞬
【真宮家】で参加

いや、力押ししか出来ない家族でごめんなさい(平伏)正直殴ってから考える方針でここまで来たので・・・そこにいるお嬢さん達は倒さなくてもいいんですね?まあ、話し合ってみますか。

ヴィクトリアさんの紅茶は喜んでいただきます。あ、チョコチップクッキーいかがですか?いつでも補充出来ますので遠慮なく。

魔法花火のように華やかとはいきませんが、盛り上げることは出来ますよ。清光のベネディクトゥスを精霊のフルートで奏で、精霊を呼び出して、ヴィクトリアさん達と遊ばせます。過去は普通の魔法人形だったかもですね。寂しさが解消して穏やかにお帰り願いたいですね。


草野・千秋
お茶くみ人形……
UDCアース日本でもそんなからくり人形はいました
ですがアルダワで今日会ったようなからくり人形はどうにも剣呑な雰囲気のようですね?
しかしどうと呼ばれようとも僕は戦わなくてもいい相手さんとは、戦わずして解決出来るならそうしたい
特にここが例年通り花火大会の時期ならなおのこと

伝統のあるお人形さんだからこそ
伝統ある花火大会がお好きなんですよね?
さすが目の付け所が違う!と
歌唱、楽器演奏、UC【Aubade】で邪心を取り除き相手を鎮めようとする
僕の歌で力になれたなら

誰もが楽しみにする花火大会
楽しみにする気持ちは災魔も人間も同じはずですよ
一緒に見られたらいいですね



●楽しい時間、楽しい対話
 部屋の中でくるくると踊るヴィクトリア。
 彼女たちを見ながら、響と奏は後ろのエーミールを振り返った。
「ええと、ここにいるお嬢さん達は倒さなくてもいいんだね? 穏やかに解決出来るならそれでいい」
「この部屋のメイドの皆さんはちゃんと話せば、帰ってくれるんですね? お祭り仲間外れにされたのも可哀想ですし、一緒に楽しみたいなあ」
 彼女たちの言葉に、エーミールはこくりと頷く。
 実際、講習の申請を行った際にも期待していたことだ。このヴィクトリアたちを倒さないで終わらせて、双方気持ちよく帰ってもらうということは。
 今はちょうど魔法花火コンテストの時期。理由付けもしやすいわけで。
 しかして、倒さなくてもいい、ということを理解した瞬と千秋も頷いた。
「まあ、話し合ってみますか。倒さなくてもいいのなら、それに越したことはないですし」
「そうですね、どうと呼ばれようとも僕は戦わなくてもいい相手さんとは、戦わずして解決出来るならそうしたいです」
 UDCアースにもからくり人形として存在するお茶汲み人形。しかしこの世界の人形は自律的に行動し、意思を持って会話をする。
 現実、瞬と千秋の言葉を聞いたヴィクトリアたちが、ぴたりとその動きを止めた。手に持ったモップやら牛刀やら、武器をドレスの中にしまう。
「話し合い? 話し合い?」
「話し合いをするにはお茶が要るわ、いけないいけない、準備しなくちゃ」
 そこから六人のヴィクトリアたちがしゃかりき動き出す。茶器の準備にお湯の用意、蒸気で温めたティーポットに茶葉を入れてお湯を注げば、湯気がもうもうと。
 そして程なくして準備された八人分の紅茶に、真宮家の三人は目を輝かせた。鞄からクッキーの袋を取り出しながら着席する。
「やあ、これは随分美味そうだ」
「お茶うけにクッキーはいかがですか?」
「チーズクッキー、ハニークッキー、チョコレートクッキー、いくらでも出せますよ」
「すごいですね皆さん、準備がいい……」
 取り出されたクッキーに、千秋は小さく目を見開いた。まさか、お茶菓子まで用意してきているとは思わなかった。こんなことなら自分も何か持ってくるんだったか。
 皿の上にクッキーが開けられるのに、ヴィクトリアたちも目を輝かせる。
「すごいわすごいわ、お茶にお菓子が勢揃い!」
「楽しみましょう、楽しみましょう!」
 そこから始まる楽しいお茶会。お茶を楽しんでいれば身体の動きが遅くなることもなくて。安全なら、とエーミールたち在校生も呼び寄せて同席させた。
 猟兵たちは楽しそうに話すヴィクトリアたちの話を聞きながら、気になることをいくつか質問していた。
 廃棄されたのはいつ頃か。その頃の魔法花火コンテストはどうだったのか。地上の学園生徒のことはどう思っているのか。
 聞けば、廃棄されたことは確かに恨みに思っているが、それはもう過ぎたこと。入学してきた生徒のことはそこまで嫌っているわけではないらしい。地上の学園にも行ってみたいが、騒ぎになるからと自重しているようだ。
 そんな話を聞き、千秋はお茶をくいと飲みながら眼鏡の奥の目を細めた。
「誰もが楽しみにする花火大会、楽しみにする気持ちは災魔も人間も同じはずですよ」
 その言葉に瞬も頷く。災魔であろうと、イベントを楽しみたい気持ちは一緒のはずだ。
「伝統のあるお人形さんだからこそ、伝統ある花火大会がお好きなんですよね?」
「そうだわ、そうだわ」
「アルダワの魔法花火コンテストは伝統のあるコンテスト、そのコンテストで給仕をするのは、お茶汲み人形の憧れだもの」
 瞬の言葉に口々に、ヴィクトリアたちが同意を返す。あれだけのイベントだ、その場所でお茶汲み人形として働くのは晴れ舞台なのだろう。
「そうですよね、伝統のあるコンテストなら、そこで働くのは名誉というものです」
「アルダワでも、そこの辺りは一緒なんだねぇ」
 奏と響もそれに頷きながら言葉を漏らした。異世界でも、大きなイベントで裏方として働くことを誉とすることは多い。そのあたりはアルダワ魔法学園でも同様のようだ。
 お茶を楽しみ、歓談が進む中で、ふと響が立ち上がった。
「そうだね、お祭りを楽しみたいならリサイタルはどうだい? 音楽一家のアタシたちにとって、盛り上げるのはお手のものだ」
「精霊も呼び出して舞い踊れば、花火のようにきらめくでしょうか」
「そうですね! 一緒にダンスも踊りましょう!」
「歌だったら僕も得意ですよ! 歌い手なので!」
 その言葉に、奏も、瞬も、千秋も立ち上がる。瞬はフルートを、千秋はギターをそれぞれ手に持って、演奏の準備もばっちりだ。
 音楽に縁の深い四人を見て、セリオとマイレも己の楽器を取り出した。
「なるほど、それなら演奏で花を添えようか」
「私とエスクデーロ先輩はシンフォニアですしね」
 盛大な演奏会が始まる様子に、ヴィクトリアたちも楽しそうに笑顔を零す。そのドレスを広げながらくるくると回った。
「歌に踊りに演奏!」
「楽しいわ、きっととっても楽しいわ!」
「決まりだね。それじゃお前たち、準備をするよ」
 響が頷いて、そこから六人は動き出した。瞬とセリオとマイレはお茶会で使ったシートの上に座り、響と千秋は歌うべくマイクを手にして立つ。奏とヴィクトリアたちは、彼らに囲まれるようにしながらダンスの姿勢だ。
 それぞれの立ち位置についたことを確認して、瞬が声を上げた。
「準備はいいですか?」
「オッケーです! 行きますよ、ワン、ツー、スリー、フォー」
 応える千秋がギターをとん、とんと叩いて拍子を取ると。そこから、迷宮の部屋いっぱいに音楽が響き始めた。
 瞬のフルートの音色に乗って精霊たちが姿を現し、ヴィクトリアたちの手を取りくるりと回る。奏も一緒にくるくると。リズムに乗って、華麗なダンスが始まった。
 セリオのリードベースとマイレのハープの音色も好調だ。その音色に乗せて、響と千秋が歌声を響かせる。
「夜が明けて、別れが来るのなら一日のはじまりの朝なんていらない」
「しかしそれでも朝は来る、先へ進む者達に栄光あれ!」
 切ない千秋の歌と、勢いのある響の歌。方向性は少し異なるが、うまく調和して歌詞が広がっていく。
 それに乗せて動きながら、奏がヴィクトリアに笑いかけた。
「どうですか、ヴィクトリアさん、楽しいですか?」
「精霊たちと踊るのも、楽しんでいただけていますでしょうか」
「「楽しいわ!」」
 瞬の言葉にも、ヴィクトリアは嬉々として声を上げた。
 そのなんとも楽し気な様子に、ふとエーミールが立ち上がる。
「いい感じに平和的で、いい感じに盛り上がってきているね。それじゃ、花を添えようか。セリオさん、ゲアハルト、マイレ、準備はいいかい?」
「勿論だよ、兄さん!」
「いつでも打てるぞ」
「はい、準備してきましたからね!」
 ゲアハルトも、セリオも、マイレも立ち上がった。その手には各々の杖。魔法花火を打ち上げるのに使うものだ。
 少しばかり演奏の手を止めたセリオとマイレも呼吸を整えて、四人は天井を見上げる。
「それじゃ行くよーっ」
「「せーのっ!!」」
 そして打ち上がる魔法弾が、彼らの頭上でパッと花開く。美しい魔法花火が、部屋の中で咲き誇った。
「「うわぁ……!」」
 その美しさに、ヴィクトリアたちがダンスを止めて見入る。瞳はきらきらと輝き、溢れんばかりの笑顔で散りゆく花火を見つめていた。
 ヴィクトリアの手を握っていた奏が、にっこり笑いながら彼女たちに声をかける。
「満足していただけましたか?」
「災魔といえど、お祭りにおいてかれるのは可哀想だからねえ。存分に楽しんだら、大人しく帰ってくれるかい?」
「地上に出て、本物の魔法花火コンテストを見せるわけにはいかないですけれど……いつか、一緒に見られたらいいですね」
 響も千秋も、にこやかに声をかけると。ヴィクトリアの六人はもう一度、くるりと回ってドレスの裾を広げて見せた。
「お兄さん、お姉さん、ありがとう!」
「とっても楽しかったわ!」
 そう告げて、彼女たちはぺこりと頭を下げ。そうして迷宮の下層部へと、ぱたぱたと駆けて行った。
 ヴィクトリアたちの姿が見えなくなったことを確認してから、瞬がエーミールを見下ろす。
「これで、講習は無事終了、ですかね? エーミールさん」
「うん、まぁ、そうだね。当初の予定からはだいぶ違ったけど、いいでしょ」
 苦笑を返しながら、エーミールが瞬の顔を見上げた。確かに、予想以上に楽しい、賑やかな時間になったことは間違いない。
「それじゃ皆、お疲れ様! 無事に地上に帰るまでが講習だからね!」
 そう言ってエーミールが、手をパンと打ち鳴らす。
 こうして楽しい時間を共に過ごした猟兵たちは、日常の待つ地上へと戻るために、歩み始めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月08日


挿絵イラスト