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ピグマリオンの毛布(作者 八月一日正午
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●終わらない物語
 扉に辿り着いたとき、お友達はみんな祝福してくれた。
「おめでとう! ここまでいっぱい頑張ったもんね、リナちゃん! 本当に嬉しい……」
 ウサちゃんはとっても良い子だ。いつも笑顔で私のことを励まして、けれどすごく辛いときには、そっと寄り添って一緒に泣いてくれたりもして。くじけずに冒険できたのは、あなたのおかげだよ。
「ま、人食い連中に捕まらなかったのは御の字だな。リナは運が良かったんだろ」
 クマちゃんはこうやって憎まれ口ばかり叩くけど、心配してくれてるからこそだってちゃんとわかってる。ちょっと照れ屋さんなだけなんだ。見えないところで、ずっと私を守ってくれていたことも知ってるよ。
「すごーい! 生きててえらーい!」
 パンダちゃんは、……難しい言葉は喋れないみたいだけど、かわいい。

「うんっ、ありがとう! みんな、大好き、大好きだよ」
 まとめて、ぎゅむぎゅむ抱きしめる。
 きゃっきゃとはしゃぐ二人に挟まれて、ふてくされた顔のクマちゃんが特別愛らしい。……ここは今まで見た中でいちばん素敵な不思議の国だし、ぬいぐるみの友達もいっぱい居るみたい。私が元の世界に帰っても、みんな幸せに暮らせるといいな。
 物語は、続くんだ。
「これで、お別れだね」
「なんだ、その、達者でな」
「えらい!」
 大きく頷いて、扉に手をかけたその瞬間――。

『――あの人形なら、全部捨てたよ』

 ゆめが、さめる。

●価値観は人それぞれ
「その『お友達』の正体は、アリスが元の世界で大事にしていたぬいぐるみ――をモデルにした、幻みたいなものだった。たぶん、自分自身のユーベルコードで無意識に作り出してたんじゃないかな」
 ページをめくる。
「本物の彼らは、家族の手によって処分されてしまっている。そのことを思い出したら、……彼女は絶望のあまり現実世界を拒絶して、オウガへと変貌してしまったんだ」
 それでおしまい、と言うように、アルバム型のグリモアを閉じる。
 短い沈黙があった。何か一言付け加えようとして、溜息になりかけた呼吸を呑んで、臥待・夏報(終われない夏休み・f15753)は笑顔を作った。
「……コメントは控えておこう。何がどのくらい大事かなんて、人それぞれだもんね。――不思議の国がひとつ、『オウガのゆりかご』と化した。それだけは確かな事実だよ」

 アリスラビリンスにおいて、『自分の扉』に辿り着いたアリスは、元居た世界へと無事に帰ることができる。
 しかし、その帰還を拒む者も存在する。蘇った記憶が、本人にとって受け入れがたいものである場合は、特に。
 現実への絶望はアリスを蝕み、ついにはオウガへと変えてしまう。そうなれば扉の存在した『不思議の国』も、新たなオウガを次々と生み出す『絶望の国』へと姿を変える。……通称、『オウガのゆりかご』だ。
 この段階まで来てしまっては手遅れである。かつてアリスであったオウガを殺し、世界ごと破壊する以外の手立ては最早残されていない。

「ありきたりな表現だけど。ぬいぐるみが、唯一の心の拠り所……みたいなものだったんだとは思う。だけど、『どうしてそうなったのか』までは、予知から読み取れなかった」
 オウガを生み出す源は、アリス自身の絶望だ。
 その絶望を和らげることができれば、オウガの個体数を減らし、周辺の不思議の国に被害が及ぶのを防ぐことができる――筈なのだが。現状は、手札不足と言わざるを得ないだろう。
「元住人のぬいぐるみたちも、今はオウガの影響下にあるんだ。アリスを守ろうとして襲い掛かってくるみたいなんだけど、……つまりは、アリスについて何か知ってるんじゃないかな」
 猟兵の力をもってすれば排除するのは簡単だ。しかし接し方によっては、有用な情報が得られるかもしれない。
「気を付けて」
 転移の光がきみたちを包む。
「――他人の心を覗くのは、相応の覚悟が要るものだから」





第3章 集団戦 『虹色雲の獏執事』

POW ●「邪魔が入るようですね。番兵さん、出番です」
自身が【自身や眠っているアリスに対する敵意や害意】を感じると、レベル×1体の【虹色雲の番兵羊】が召喚される。虹色雲の番兵羊は自身や眠っているアリスに対する敵意や害意を与えた対象を追跡し、攻撃する。
SPD ●「お疲れでしょう。紅茶とお菓子はいかがですか?」
【リラックス効果と眠気を誘う紅茶やお菓子】を給仕している間、戦場にいるリラックス効果と眠気を誘う紅茶やお菓子を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ ●「外は危険です。こちらにお逃げください」
戦場全体に、【強い眠気と幻覚を引き起こす虹色雲の城】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●あまいゆめ
 そして、ひとつの世界が崩れていく。

 もはや部屋というかたちを成さなくなった空間に、最初に満ちたのは光だった。薄闇が一瞬で真っ白に染まり、春の朝を思わせるような暖かい風が君たちを包む。
 床であったもの、壁であったもの、ベッドや家具であったもの――ぬいぐるみたちであったものは、あざやかな虹色の雲へと変わっていく。ぷかりぷかりと浮かぶ足場に、時折、オウガの支配から解放された『愉快な仲間』たちが眠っているのが見える。
 ……それは、『絶望の国』という言葉にまるでそぐわない、夢のような光景だった。
『こんばんは』
 眠くなるような声が聴こえる。
『おやすみ前の紅茶はいかがですか?』

 ――『虹色雲の獏執事』。
 アリスに対する害意を持たない、物静かな類のオウガである。苦しんでいる者を見れば寄り添い、美味しい紅茶とお菓子でもてなして、安心できる寝床を提供する。彼らの思考は、純然たる善意だ。
 もう何もしなくていい。
 もう何も考えなくていい。
 もう大丈夫。

 無論、猟兵であれば抵抗できる程度のものではあるが――鬼ごっこによって疲弊したアリスたちは、その誘いを拒むことは難しいだろう。多くの場合、敵であるとすら考えない。親切な仲間に出逢えてよかった、と思いながら、二度と目覚めることのない眠りを受け入れることになる。
 彼らが見せるのは、ゆるやかな死という甘い夢。
 君たちが終わらせるべき夢だ。
 ……『リナ』の絶望が生んだオウガが、他の世界に溢れる前に。