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思い出、はじめました。(作者 七凪臣
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●問答無用の迷子道
 赤提灯をぶら下げた小ぢんまりとした店が、ガード下に軒を連ねている。
 入りの程度はそれぞれだ。ただ確実なのは、いかつい外匣のわりに、画面はまるみを帯びたテレビを飾っているところが賑わっているということ。まぁ、その客寄せテレビのモノクロ画像も、電車ががたごとと通るたびにザァと乱れ、「いま、いいとこだったのに!」なんて文句が上がったりするわけだが。
 それ以外、法則性らしきもののない街だ。店の並びも、なんなら線路の行方も。あっちに行ったかとおもえば、こっちに行って。そこに出るかと思えば、どことも知れぬ場所へ放り出される。
 ――ナぁ、昨日の店はどこいったんだい?
 少しばかり寂しくなり始めた頭をかきながら、中年の男が途方にくれていた。
 ――あの思い出からこさえた飯。母ァの味そっくりだったから、今日はせがれに食わせてやろうと思ったのによぉ。
 余程、諦めがたいのだろう。通りすがる数人に声をかけた男は、やがて盛大な溜め息とともに黄朽葉色の尻尾を項垂れさせて――はァ、とため息を吐く。
「しまった。帰り道がわかんなくなっちまった」

 帰り道、と男は便宜的に言いはしたが、そもそも『此処』には道がない。
 行き交うヒトは皆、迷子。

●迷路と夢と思い出と
「道が失われた幽世だよ」
 さらりと事の核心を語った連・希夜(いつかみたゆめ・f10190)は、鳥籠の中で揺らぐ瑠碧紺を眺めていた視線を、猟兵たちへ移す。
「諸悪の根源は、夢を操る妖怪みたい。でもその前に、迷子の回収もお願いしようかな、と」
 迷子といっても狐のおじさんじゃないよ、と希夜は笑う。
 どうやら童姿の妖怪が幾人か、既に骸魂に憑かれてしまったらしい。そして事の元凶たるオブリビオンの使い走りをさせられている。
「迷路の街で子どもと鬼ごっこ。上手に捕まえられるかな?」
 面白そうだけど俺は送り出すだけだから残念だ、との弁の本気度はいかほどか。いずれにせよ、お気に入りの鳥籠を傍らに置いた希夜は、いそいそと転送仕度を開始する。
 何せ多くの骸魂が飛び交う世界。放っておいたらあっという間に、そこら中の妖怪が取り込まれてしまう。
「使い勝手のいい下っ端っていう手駒がいなくなれば、御大自らご出陣あそばされるに違いない。ってわけでボス探索に関しては心配しなくていいよ。そうして無事に万事解決したら、当然ご褒美タイムが待ってるから期待していて」
 赤提灯街と言えば、美味い酒に美味い料理。しかも此処は幽世。ただの美味であるはずがない。
「なんでも思い出とか、追憶とか。そういうのを料理にしてくれる店があるんだってよ――?」





第2章 ボス戦 『『眩惑』の夢魔』

POW ●ドレインタッチ
【対象の背後に瞬間移動すること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【生命力吸収】で攻撃する。
SPD ●夢幻泡影
小さな【胡蝶】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【生命力を吸収する、その対象の望む夢】で、いつでも外に出られる。
WIZ ●夢世界の主
【霧】を降らせる事で、戦場全体が【夢の世界】と同じ環境に変化する。[夢の世界]に適応した者の行動成功率が上昇する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は御狐・稲見之守です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●夢みし暮明
「だぁれ、私の邪魔をするヒトは」
 甘い声がしたのは、迷子の童鬼を救ってほどなくして。
 赤提灯の町並に似合いのようで、全くそぐわぬ響きに首を巡らすと、景色が一変した。
 ぽかりと深淵へと伸びる穴が、線路の先に口を開けている。
 下へ下へ下っていく穴は、まるで黄泉路へ続くトンネルのよう。踏み込めば、醒めぬ夢に囚われてしまうかもしれない。
「いいのよ? 見ないフリをして帰っても。それなら、見逃してあげるわ」
 心に過る惑いを見透かす声は、変わらず甘い。毒々しい甘さだ。いや、毒そのもの。
 この声の主が、この町から道を奪った張本人だということを、猟兵は『猟兵』としての本能で悟る。
 ――征って、討たねば。
 腹は決まった。
 そして猟兵たちは、暮明に夢を視る。


【事務連絡】
 第二章も『再送』が前提となりますが、確認の『★』はプレイング欄ではなく、『前回の感想』欄でも構いません(記号以外の文言はなくて大丈夫です)。
 また今作以降も、私が運営するシナリオに参加する際、『常に再送で大丈夫』という場合は『★F』とご記入下さい。『★F』申告のあった方は此方で管理しますので、以後『★』の記入は不要です。

 プレイング受付期間:この記述公開時点~7/6(月)PM0時(正午)まで
浮世・綾華
ヴァーリャちゃん(f01757)と

ダメって、言うわけないでしょ
でもその頼もしい掌に少しだけ力を込め

温もりが消える
本当少し苦手な狭くて暗い場所
混乱しそうになって…落ち着けと足を止めた
大丈夫、だ――

気づけばいつもの…今、住む家にいた
けれど在るはずのないもの
白い羽が舞い優しい声が響く
その女性と話す空色の髪の片割れが
太陽の眸を此方に向け笑む

綾華も一緒に行こう
とびきり綺麗な景色を見つけたんだ、と手を

…大丈夫
違うって分かるよ
サヤカ。出てくんなよ、お前
いや、俺が悪いんだケドさぁ

今は手を繋いでくれる人がいるから
お前とは行けないよ

声に笑み髪を撫で名を紡ぐ
咎力封じを展開し
彼女の攻撃が届くよう、守るように鍵刀を構え


ヴァーリャ・スネシュコヴァ
綾華(f01194)と

綾華、あの穴に入るとき
手を繋いでもいいだろうか?
綾華の手は安心するから
あの中に入ってもきっと大丈夫

穴の中を進んでいけば
手の温もりがふと消える
代わりに冷たい雪景色が広がって
目の前には大きな雪色の狼が

襲いかかる狼の牙を武器で防ぐけれど
あまりの力に押し返されそうになる
顎を蹴り上げれば隙ができるが
そこで何故か攻撃を躊躇ってしまい、そのまま肩を噛みつかれる

ここで…ここで死ねるか!
綾華の顔を思い浮かべれば、自然と手が動いて
噛み付いたままの狼を突き刺してやる

夢が晴れた瞬間
綾華の元へ駆け寄って
綾華っ!
髪を撫でられれば力強く頷き
動きを封じた相手に、綾華が託してくれた『白炎舞』をぶつけてやる


 さっきみたいに、恐怖が込み上げてきているわけではない。
 それでもヴァーリャ・スネシュコヴァ(一片氷心・f01757)は、並んで歩く浮世・綾華(千日紅・f01194)を見上げて言った。
「綾華、あの穴に入るとき。手を繋いでもいいだろうか?」
 線路を呑み込むみたいにポカリと空いた穴は真っ暗で、中の様子を窺い知ることは出来ない。まるで未踏の地下へと続くアルダワの階段のようだ。今のアルダワでは、そこに潜む根本の不穏は取り除かれているけれど。
「綾華の手は安心するんだ」
 凍らぬ菫の瞳に、怯えは滲まず。むしろ見る者を鼓舞してくれるよう。
「だからあの中に入ってもきっと――」
「ダメって、言うわけないでしょ」
 なおも言い募ろうとする少女の先を、自分のそれより小さな手を右手で掬い上げることで制した綾華は、ゆっくりと口元を和らげる。
 分かつ熱は、氷の娘を溶かすことなく温めるだろう。
 ――けれど。
「綾華」
「ん、だいじょーぶ」
 求めたのはヴァーリャの方なのに、頼もしさを与えられているのは自分な気がして、綾華は握る掌にぐっと力を込めた。

●白と空と、混迷の赤
 確かにヴァーリャと手を繋いでいたはずだ。
 感触だけは残る掌へ綾華は赤い視線を落とし、背筋を伝う何かにごくりと喉を鳴らす。
 踏み入った穴の中は、とにかく暗い。そこにあるはずの己の手さえ、輪郭があやふやだ。
 ふっ、と綾華は短く息を吐いて、跳ねそうな鼓動を意思で留め――おかしなものだと思った。
 綾華は鍵だ。金古美の鍵。つまりは、無機。だというのに“現在”の綾華は、人と同じに心臓を弾ませ、熱を感じて、心を震わせる。
 実のところ、綾華は狭くて暗い場所は少し苦手だ。踏み出す一歩も心許なく、思考も整わない。
(「……落ち着け」)
 空っぽの手を握って、開く。単純な動作を繰り返しても、やはり掌は何も感じることなく、綾華はなおも乱れそうになる呼吸を落ち着けるべく足を止めた。
「大丈夫、だ――」
 口にして唱え、瞼を落とす。そうすれば世界は内側からの闇に浸される。眠るのと変わらぬ闇。生命維持のサイクル。これならば大丈夫。そう綾華が納得しようとした刹那、こめかみに光が鎖す。
 外界の光だ。
 心を突いた安堵に綾華は、つい眼を開き。そしてゆっくりと瞬いた。
「……、」
 何時の間に戻ったのだろう? 違和感なくそう思える場所は、綾華が今、住む場所だ。だが、そこに在るはずのないものがあった。
 白い羽が、舞っている。優しい声も、響いている。女性のものだ。その女性と誰かが話している。
 それは片割れ。
『綾華』
 空色の髪を羽風に躍らせ、片割れが振り返る。笑みの形で向けられるのは、太陽の眸。
『綾華も一緒に行こう』
 温かな彩が笑みを象り、手を差し伸べてくる。とびきり綺麗な景色を見つけたんだ、と綾華を誘う。
「……大丈夫」
 ちがう、ちがう、ちがう、ちがう。
 違うと、分かる。
 分かるから綾華は、光へ背を向けた。
「サヤカ。出てくんなよ、お前」
 正面にはまた闇が広がっている。が、構いやしない。
「いや、俺が悪いんだケドさぁ」
 止めていた足を再び踏み出すのに、少なからず勇気は要った。それでも綾華は分かっている。
 分かっているから、伸べられた手を振り切れる。
「今は手を繋いでくれる人がいるから、お前とは行けないよ」
 ――ね、ヴァーリャちゃん。

●果敢
「綾華?」
 呼ばれた気がしてヴァーリャは辺りの様子を窺うが、広がる白い景色には人影ひとつありはしない。
 綾華と繋いでいたはずの手に冷たさを覚えたのは、穴に入ってすぐのこと。驚きに振り返ったら、一面は冷たい銀世界に成り果てていた。
 ヘアバンド代わりにもなるゴーグルを下ろし視界を確保したヴァーリャは、レガリアスシューズの底に魔力でブレードを生成する。こうすれば、雪上もヴァーリャにとっては氷上と同じ。
 移動の足は確保した。次はどちらへ向かうかだが、ぐるり巡らせた視界の端に捕らえた白い影に、ヴァーリャはとっさに二尺二寸の打刀を抜く。
 直後、深雪をものともせずに雪色の獣が地を蹴った。
「――っ」
 飛び掛かってきた狼の牙を、ヴァーリャは何とか打刀で凌ぐ。しかし飢えているのだろうか、狼の力は強い。剥き出しの牙の間からだらりと涎を垂らし、荒い息と共にヴァーリャへ迫る。
「押し負けて、っ」
 握る右手に左手を添え、刃を水平に保つと、ヴァーリャは跳ねた。
「たまるか!」
 逆上がりの要領で、狼の顎に蹴りを見舞う。思わぬ位置からの反撃に、狼がたじろいだ。
 反転着地から体勢を整えるのはヴァーリャの方が早い。全力を見舞い、仕留める好機だ。だのに何故か、ヴァーリャは躊躇した。
 振り抜けなかった打刀へ狼の鼻先が伸びる。得物を取り落とし、肩に深々と牙を突き立てられるまでは一瞬だった。
「――っ!」
 強烈な痛みに、ヴァーリャは反射で目を閉じる。その目蓋に、手を繋いでいたはずの男の貌が浮かんだ。
「綾華っ」
 声に出せば、力が湧いた。そうだ、自分は此処で終われない。こんなところで――。
「死んでたまるか!」
 先ほど躊躇ったのが嘘みたいに、ヴァーリャの手は自然と動いた。腰に佩いた雪舞う剣を逆手に持つ。あとは手首を返すだけ。
 零距離の狼に、突きを躱す術はない。

●二人の花
「綾華!」
 ――夢から、解き放たれた。
 猟兵の本能でそう理解したヴァーリャは、ほんの数歩先の距離に居た綾華目掛けて駆けた。
「ヴァーリャちゃん」
 文字通り飛びついてきたヴァーリャを綾華はしっかりと受け止め、冷えた白い髪を幾度か梳く。
 とはいえ、浸る暇は今はない。
「あら、イヤな子たちね?」
 頬に手を遣り首を傾げた女の、甘い視線が綾華とヴァーリャに絡みつく。それが誰かは考えるまでもない。
 綾華を見上げるヴァーリャが無言で頷く。頷き返した綾華は、ヴァーリャを背に守って鍵刀を構えた。
「イヤなのは、そっち」
 フンと鼻を鳴らして挑発し、綾華は三つの拘束具を宙へ放つ。当たれば女の攻撃を封じることができる其れらだ。けれど躱そうと注力させるだけで十分。
 ――君を守る、矛とも盾ともなるように。
 綾華から託された白い炎がヴァーリャを守り、ヴァーリャの意思で閃く鋭い花弁と化す。
 綾華とヴァーリャ、二人で咲かせた花は枯れることも萎れることも知らず。可憐に、鮮やかに、力強くオブリビオンを圧倒する。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

オズ・ケストナー
見ないふりなんてしないよ
わたしはそのためにここにきたんだもの

道をかえして
道がなかったらみんなおうちに帰れないし
すきなところにだっていけないよ

夢は先刻の景色の続き
わたしは動けないけれど
おとうさんは笑っている
たのしそうにはなしかけてくれる
やさしいおとうさん

わたしは
だいすきだよ
って思う
声にならないけど、ずっとずっと

おとうさんのことはなんども夢に見たよ
だからね、もうわかってるんだ
夢はさめるものだよ
わたしは起きて、おとうさんのいない世界にもどるんだ

それはかなしいことじゃないよ
いきていきて、それがおわったら
きっといつかおとうさんにあえる

それまでわたしはがんばるって決めてるんだ
外へ出て
召喚した茨で生命力吸収


●いきて、いきて
 オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)の胸に、ぽっと橙色の炎が灯った。
 温かい色だ。それでいて、赤ほど苛烈ではないけれど、立ち向かう勇気を兆す色。
「見ないふりなんてしないよ」
 甘く誘う暮明へ踏み出すオズの足に迷いはない。だってオズは、そのために『此処』に来たのだ。
「道をかえして」
 足元から這い上がり、暮明が全身にまとわりついてくる。
 けれどオズは怯まず――シュネーだけは背中に隠し――、さらに前へ前へと進む。
 まずは自分の爪先が見えなくなった。やがて前後に大きく振っていた手も見えなくなり、――
「道がなかったらみんなおうちに帰れないし、すきなところにだっていけないよ」
 ――オズはとぷりと濃密な闇に沈む。
 とろとろのスープと一緒に煮込まれているみたいな気分になった。進んでも進んでも、進んでいるのかさえ分からない。
 しかし不意にオズは仔猫色の眸を大きく見開く。
「ふしぎ」
 先ほど漏らしたのとおんなじ感想がまろび出たのは、迷路の町で見た景色の続きが眼前に広がったから。
 ――これは、ゆめ。
 前へ前へと動かしていた足が、動かなくなっていた。どれだけ振ろうと頑張っても、腕どころか指さえも動かない。
 ――これが、ゆめ。
 瞬きさえしないオズへ、誰かが楽しそうに笑いかけている。
(「おとうさん」)
 優しい笑顔に、オズの胸に灯った炎がチリリと爆ぜた。
 ――おぼえてる。
 優しいおとうさん。
『わたしは、だいすきだよ』
 声にすることはできなかったけど、ずっとずっとそう思っていたおとうさん。
(「おとうさんのことは、なんどだって夢に見たよ」)
 おとうさんが、笑っている。
(「だからね、もうわかってるんだ」)
 おとうさんが、オズへ語り掛けている。
 オズもうれしくて、しあわせで、笑いたくて、けどうごけなくて――ちがう。
 違う。オズは動ける。もうオズはただの人形じゃない。たくさんの友達がいる。美味しいものもたくさん食べられるし、自分の足でどこまでだって歩いて行ける。
「――夢はさめるものだよ」
 オズの唇が動いた。
 途端、『おとうさん』の輪郭が揺らぎ、陽だまりのような景色の存在感が急速に薄らいでゆく。
 夢から、醒めるのだ。
「わたしは起きて、おとうさんのいない世界にもどるんだ」
「悲しいことを言うお人形さんね?」
 力強いオズの宣言を待っていたのは、妖艶な女の甘い断罪だった。
「ずっと夢を視ていればいいじゃない。その方が幸せでしょう」
 悲し気に目を細めて女――夢魔が唆す。だがオズは太陽みたいに笑顔を輝かせる。
「ちっともかなしいことじゃないよ。いきて、いきて、いきて。そうしていきることがおわったら。その時、わたしはおとうさんにあえるのだから」
「――なっ」
 泥濘じみた仮初めの幸福へ真っ向勝負を挑むオズの眼差しに、夢魔の目に怒りが燃えた。
「そんな夢みたいなこと、いつまで言っていられるかしら!」
「夢、じゃない。ほんとうに、なるんだ。ね、シュネー」
 人を夢へと誘う胡蝶を招くために夢魔が指を翻す。しかしその指先にシュネーが飛びつき、動きを阻害する。
「だからわたしはそれまでがんばるって決めてるんだ」
 ――ガジェットショータイム。
 跳ねるようにではなく、囁くように。眠る幼子をゆっくり起こす声音でオズは唱えて、邪な命を吸い上げる茨を暮明へ顕現させた。

 眠ってみる夢は、何れ醒めて終わるもの。
 でも起きてみる夢は、いつまでだって続くもの。
 故にオズは、命という炎を胸に灯し、起きて未来(あした)を夢に視る。
大成功 🔵🔵🔵