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バーン・イット・トゥ・ジ・グラウンド

#アポカリプスヘル #クークー・レディオ

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#アポカリプスヘル
#クークー・レディオ


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●アポカリプスヘル
 ――がちゃん!!
 顔のすぐ横で酒瓶が割れ飛び、破片が少女の頬を浅く割いた。
 驚くほど白い肌に赤い線が走る……だが金髪の少女は、血を拭いもしない。
 彼女……ソーシャルディーヴァ・クークーが見つめるのは、酔いどれた一人の男。
「帰れ」
「帰らないよ」
 赤ら顔の男のぶっきらぼうな物言いに、クークーはきっぱりと言った。
 男は舌打ちし、酒瓶を探そうとして、自分がいまそれを投げたことを思い出す。
「アドルフおじさん。あなたじゃないと出来ない仕事だから」
「帰れ!!」
 髪をはためかせるほどの怒号に、しかしクークーは怯えすらしなかった。
「あの機械を使えるのは、この拠点だとあなただけ。だから、手伝って」
「……くだらねぇ。農場の再開だぁ?」
 赤ら顔の男……アドルフは、少女の毅然とした顔をじろりと睨みつけた。
 その体つきはいかめしく、日に焼けた肌は外の仕事に従事する人間だと知らせる。
 荒れ果てた部屋の壁で、年代物のポスターが色あせていた。
 その下に並ぶのは、芽吹かないままかち割られた植木鉢の残骸……。
「くだらなくない」
「くだらねぇ!」
「くだらなく、ない」
 クークーははっきりと言った。
「みんなが、この世界で生き抜こうと希望を見出してる。ワタシだってそう」
「…………」
「だから、力を貸して。みんながあなたの帰還を待ってる」
「……やなこった。もう無駄な努力なんざしたかねえんだよ!!」
 アドルフはもはやクークーに背中を向け、丸まった。
 少女はしばしその背中を見つめ、やがて部屋を出る。
「……待ってるから」
「…………」
 ドアが閉まり、暗闇が訪れる。
 アドルフは、しばしうずくまっていた。

 やがて、再び立ち上がるまでは。

●グリモアベース
「かくしてアポカリプスヘルの拠点で、大規模農場が始まった……の、だがな」
 グリモア猟兵、ムルヘルベル・アーキロギアはため息をついた。
「残念なことに、オブリビオンが農場を襲撃するという事態を予知した。
 このまま放っておけば、せっかく芽吹いた希望は何もかも灰燼に帰するだろう」
 ムルヘルベルの背後、グリモアが表示したのは二種類のオブリビオン。
 ゴリラじみた殺戮駆動機械『思索実験機ヘの228理81走デス四』の群れと、
 それを統率する獄炎のレイダー、『『大炎嬢』バーニング・ナンシー』である。
「人々が農業再開に至ったのは、他でもない、我らが今日まで戦い抜いたからこそ。
 ここでオブリビオンに焼き尽くさせるわけにはいかぬ。どうか力を貸してくれぬか」
 "焼き尽くす"という言い回し通り、敵はどちらも強力な熱を用いる。
 農場への侵入を許せばすべてがおしまいだ。ゆえに、防衛線での迎撃が不可欠だろう。
「幸い、転移は敵の襲撃にかろうじて間に合う……陣地の構築は難しいが。
 なんとしても彼奴らの侵入を防ぎ、構築中の大規模農場を防衛してくれ」
 現地には開墾作業中のアドルフや拠点の人々が存在しているが、心配はない。
 そもそも彼を決起させた少女……クークーは、猟兵に救われた経験がある。
 人々の避難については、彼女に任せておけば問題ないだろうとのことだ。
「オヌシらは、オブリビオンを倒すことにのみ注力してくれればそれでよい。
 あるいはその姿こそが、未来を目指す人々にとって一番の気付けとなろう」
 そう言って、ムルヘルベルは本を閉じた。
「ある歴史家に曰く、こんな言葉があるそうだ。
 "剣で得た国土は剣によって奪われる。だが、鍬によって得たものは永遠である"。
 ……この世界を再び生命あふれる大地にするためには、その一歩を忘れてはなるまい」
 その言葉が、転移の合図となった。


唐揚げ
 米びつです。そんなわけでアポカリプスヘルのお話となります。
 以下はNPCの簡易プロフです。たいして重要ではないですが!

『クークー』
 ソーシャルディーヴァの少女。アルビノめいた白い肌と金髪が特徴。
 あちこちの拠点を旅し、猟兵たちの活躍を伝えながら人々を団結させている。
(登場過去シナリオ:『クークー・レディオ』、『バイ・ザ・ダスト』)
『アドルフ』
 とある拠点で暮らす中年の男性。機械技師であり、農耕技術にも詳しい。
 かつては農地開墾に挑戦していたが、度重なる破壊により意気消沈した。
 OPでの説得を受け、今度こそ農場を開梱するために立ち上がったが……。

●プレイング受付期間
 今回は特に期間を設けず、書けそうなタイミングで書いていきます。
 頂いた量によってはさくさく進むかもしれません。お気軽に、お早めに!
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第1章 集団戦 『思索実験機ヘの228理81走デス四』

POW   :    天才式赤熱飛翔拳・有線型
【赤熱した腕部装甲を展開し飛ばす攻撃 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【拘束と、腕のコードを巻き戻しながらの追撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    搭乗者を省みない突進
【両腕装甲を展開、点火し加速した 】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【陣を組んだ仲間】の協力があれば威力が倍増する。
WIZ   :    蘇る脳細胞
自身が操縦する【ゾンビ 】の【無意味だが知力】と【反応速度】を増強する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●アポカリプスヘル・大規模農場
 ドルン、ドル……ドルルン……。
「「「やったあ!!」」」
 あちこちを泥まみれにした子供たちが、鈍いエンジン音に歓声を上げた。
 農地に用水を引くための機械が、悪戦苦闘の末にようやく起動したのだ。
「ったく……こいつは年代物だぞ。いつ止まったっておかしくねえ」
「だったら、メンテナンスしないとね」
 ぼやくアドルフに対し、クークーはうっすらと微笑んで言った。
「部品も調達しなきゃ。忙しくなるね」
「……へっ」
 まんざらでもなさそうな表情で、男は視線をそらす。
 かくして再生への第一歩は踏み出された。そして人々は力強く明日を目指すのだ。

 ……とは、残念ながら終わらない。
 むしろ物語はここから始まる――悲劇という名の物語が。
「あん? なんだありゃ……?」
「……!」
 あちこちの拠点を旅するクークーは、遠くから近づくフォルムを見て理解した。
「オブリビオン……!」
「あぁ!? マジかよ、こんなタイミングでか!?」
 アドルフは泡を食って立ち上がり、舌打ちした。
 作業を終えたばかりで、人々は沸き立っている。
 そんな状況で、狙いすましたようにこの畑を台無しにしに来たのか。
 いつもそうだ……奴らはそうやって、希望の芽を摘み取るのだ!
「くそったれ、どうしようもねえのかよ!」
「――ううん」
 クークーは首を振った。そして、自らの配った"ラジオ"へ通信を送る。
『みんな、オブリビオンが来たから避難して。念の為、迎撃戦の用意も』
「お、おい。念の為って、そんな悠長なこと言ってる場合じゃ」
『大丈夫』
 アドルフの言葉に、クークーは笑った。
『とっても強い人たちが、ここへ来てくれるから』
 彼女は知っている。
 希望を摘み取る者がいるならば、それを討つ者たちがいることを。
 そして彼女の言葉を証明するように――グリモアの輝きが、残骸どもの前に立ちはだかった!
ジュリア・レネゲード
全く……面倒な奴が残っていたものね
こちらジュリア、お久しぶり
話は聞いたわ。これより援護する

ユニバースを盾に即席簡易陣地を構築
端末を展開し敵を追い込む
知性は無いけど反応は一級品
だったら兎を追わせてやればいい
適当にグリュプスのコピーをばらまいて
敵を一ヶ所へ集結させたらパーティーの時間よ

デバッガーにバイポッドと増加弾倉をつけて
ユニバースの上から援護射撃
時間稼ぎでこちらの陣容を整えつつ
相手が突出しようならブラックハットの範囲攻撃で押し返すわ

とは言え……あまり持たないかもね
皆、安全な場所へ
最悪ユニバースで一気に退避させるから
グリュプス、撤退ルートだけはマークしといてね
『……逃げる気なんて無いでしょうに』



●反撃の狼煙
 ガン! ガン!! ガン!!!
 ゴリラじみた異形の機械どもが、ドラミングじみて装甲を殴りつける。
 そこに理性や論理的な思考の煌めきはない。機械でありながら本能的なのだ。
 実に不気味でアンバランスな光景――だがこれぞアポカリプスヘルの尋常。
 オブリビオンストームは、機械ですら狂わせてしまうがゆえに。
 コクピットに鎮座するのは、干からびたミイラのようなゾンビである。
 あれは、異形機械を操縦『させられている』ものどもだ。

 クークーの『ラジオ』が広がっても、しかし人々は不安に慄いた。
 この拠点に、あんな大軍を相手に戦うような装備はない。
 ましてや、できたてのこの農場に、ろくな防衛設備などないのである。
 そんな彼らをかばうように、決然たる面持ちでクークーが前に出た。
 ――だが、彼女の期待どおり、グリモアの光の中から声が応えた。
《こちらジュリア。おひさしぶり、ディスクジョッキーさん》
「――! ええ!」
 緊張にこわばっていたクークーの表情が、花開くように明るくなった。
 快活に応えたその音声に、ジュリア・レネゲードはくすりと笑う。
「話は聞いたわ。――これより、援護する!」
 ガン! ガン!! ガン!!!
 異形機械どもは再び装甲を打ち鳴らし、地面を叩きながら突撃した。
 土煙を起こし迫る、無数の暴走機械。その速度はブルドーザー並だ!
「グリュプス、散開しなさい! 連中を追い込むのよ!」
《――顔の前に吊るすニンジン役なら、もっと適役がいるかと思いますが》
「うだうだ言わない! さっさと働く!!」
 ソーシャル・ドローンは機械知性らしからぬ疲れたため息をつくと、
 複製召喚された自身の分身=機械兵器群とともに、一斉に散開した。
 ジュリア自身は大型装甲トラック『ユニバース』が盾となる。
 彼女はさらにスモークグレネードを放出、自らの位置をわかりづらくし、
 敵の注意が突出したグリュプス群へ向かうように誘った。

 知性を持たない異形機械どもは、あっさりとその戦術にひっかかる。
 近づいてきたグリュプス複製体を叩き潰し、捻り潰し、焼却する。
 数の利と、一体ごとの戦力差。それが、この集団戦の勝敗を分けた。
 だが、それでいい。解き放った群れは、馬の前に吊るされたニンジンなのだ。
 敵はまんまと、牧羊犬に追われた家畜の群れめいて一箇所に集中している!
「Fire!!」
 BRRRRRTTTTTTTTT!!
 側面に回り込んだユニバース機上から、無数の12.7×99mm弾がばらまかれた。
 特殊成形された弾頭は、異形機械の分厚い装甲を豆腐めいてたやすく貫く。
 KBAM!! 動力部を撃ち抜かれた異形機械が、ぐらりと倒れ爆発四散!
 BRRRRRRTTTTTTT……衝撃波で土煙が巻き上がり、すさまじい地獄を形成した。
 まさしく地上を焼き尽くさんばかりの、破滅の弾雨である。
《――第二波接近中。一時撤退を推奨します》
「まだ持ち堪えられるわ。私よりも、拠点の皆が撤退できるルートのマーキングを」
《――……そう言うと思いましたよ。逃げる気なんてはじめからないんですね》
 オリジナル・グリュプスは、呆れたように言った。
 ジュリアは無視した。銃声のせいで、聞こえなかったことにしたのである。

成功 🔵​🔵​🔴​

リオン・ゲーベンアイン
アドリブ、連携ok。
「さて、新しく得たユーベルコードを使おうかな--オブリビオン、ワタシが相手をする」
『透明』のペルソナになり、転移直後に詠唱開始と同時にユーベルコードを起動。
ティアマトの有する地母神としての権能、地質操作によりオブリビオンたちがいる地形の大地を槍襖のように変形させて奇襲する。
そこに11の怪物の由来から発現した新世代の権能、自律機動兵器創造能力により地形変換槍襖攻撃から逃れた残党を刈らせる。
「それにしても、荒廃した土地だね--ええ、だからこそ勝たなければならない」
『純白』と『透明』と交互に会話しながら遠距離から弓で狙撃していく。



●大いなる権能に撚りて
 グリモアの輝きが荒野を照らし、新たな猟兵が降り立った。
 リオン・ゲーベンアインは藍色の瞳を瞬かせ、戦場を見渡す。
 一面広がるひび割れた荒野――そして地平線の彼方には、渦巻く破滅の嵐。
 すなわち、オブリビオンストーム。
 この世界を引き裂く虚無の嵐であり、過去の残骸を生み出す大元。
 リオンはそれに目を細め、そして新たな異形機械の軍勢を見据えた。
「さて、新しく得たユーベルコードを使おうかな」
 "透明"のペルソナとなったリオンは、寡黙な声音で言った。
「大洋から十一の人界を孕みし大霊母よ」
 口訣に呼応して、リオンの周囲の大地がめきめきと隆起する。
「我は人の生きる真のために、汝の御業――地母の慈愛と創造の万物をこの手に掴もう」
 めき、メキメキ……バキバキバキバキ!!
 たちまち大地は槍の壁じみて鋭く隆起し、異形機械の群れを貫いた。
 さながら串刺し公ブラドツェペシュが生み出した晒し首のようだ。
 コクピットを貫かれた異形機械は、生物じみて不気味に痙攣し爆散。
 実に気味の悪い光景だ。機械でありながら、生物のように振る舞う。
 その身に乗せたものすらも、もはや思考することがない死骸だというのに。
 だが大地の槍による奇襲攻撃をも逃れた少数が、リオンをめがけ進む!
「"ワタシ"の攻撃を逃れるとは、ならば――"わたし"が相手をしてあげるよ」
 瞬きをした瞬間、リオンの声音と表情が明らかに別人になった。
 まるで多重人格者めいたペルソナの切り替え。それもリオンの持つ特性だ。
 "純白"のペルソナとなったリオンは天真爛漫に笑い、新たなしもべを召喚する。
 無から生成される自動機動兵器たちが、振り下ろされた指先に従い殺到する。
 異形機械の群れを撃ち、貫き、そして滅ぼすために。
 "純白"は再び大地を見渡し、つぶやいた。
「それにしても、荒廃した土地だね……この大地で、新たな命を芽吹かせようとする。
 ――そんな営みを、邪魔はさせない。オブリビオン、"ワタシ"が相手をしよう」
 きりきりと弓を引き、そして矢を放つ。
 空気を切り裂いて放たれた鏃が、分厚い鋼鉄の装甲を貫き、爆散せしめた。

成功 🔵​🔵​🔴​

高砂・オリフィス
農場の防衛だねっ、任せて任せてー!
いよいよ開墾だなんて、何もなかった頃から比べると考えられない! というかね! ぼくもテンションあがっちゃうよ! 否応なしに!

とと、敵さんはっけーん! 腕っ節の勝負だね、負けないよっあははっ!
掴みかかられるのならそれは仕方ない! どんとこーい!
引き寄せられたらユーベルコードを使って、反撃しちゃう!
ぼくの滾ったテンションは、そんな爛れた熱よりよっぽど高まって昂って、止めらんないから!

何体でも来ていいよ! 何度でも何度でもぶっつかって、ぶっこわーす!



●ヒート・ヴァーサス・フィスト
 ガン! ガン!! ガン!!!
 次から次へと現れる異形機械の群れは、ゴリラじみた巨躯だ。
 コクピットに収められた死体はなんらかのチューブで繋がれており、
 もはや思考能力のないゾンビと化している……いわば生体ユニットだろう。
 異形機械はドラミングじみて己の分厚い装甲を殴りつけ、敵対意志を表明する。
 その鈍い音が響き渡るたびに、農場の人々は恐怖に喉をひきつらせた。
 だがまたひとり――高砂・オリフィスが、彼らの前に立つ。
「せっかくこの世界の人たちが、やっと生きるために立ち上がったのに!
 それを邪魔しようなんて許さないよ! 敵さんはみーんな叩き潰してあげる!」
 ぱきぽきと拳の骨を鳴らしながら、オリフィスは胸を張った。
 アポカリプスヘル。破滅に瀕し、文明が喪われた荒野と嵐の世界。
 猟兵たちがはじめてこの世界にたどり着いた時、ここはもっとひどい状態だった。
 けれども彼らの戦いが、ついに人々に勇気を与えたのだ。
 否応なくテンションが上がるというもの。ここで奮い立たずして何が猟兵か!
「腕っぷしの勝負なら、ぼくだって負けないんだから!!」
 拳で大地を砕き、三体の異形機械がオリフィスへと突撃する。
 オリフィスは対抗するように拳を打ち鳴らし、全身の筋肉を緊張させた!
 敵の攻撃は拳をワイヤーで射出し、殴りながら敵をキャッチするというもの。
 仮に攻撃を避けたとしても、他の個体が回避直後の隙を襲うだろう。
 ゆえにオリフィスは、自らこの赤熱した拳にしがみついてみせた。
 熱が肌を灼く。だが見よ、オリフィスの体は不思議と無事なままだ!
「そんな爛れた熱なんて、ぼくのこの滾ったテンションには敵わないよ!
 ぼくの体を灼き尽くしたいなら、もっともっと熱い炎を持ってこなきゃ!」
 気力と体力で鉄をも溶かす熱をねじ伏せ、オリフィスはワイヤー上を走る。
 異形機械がワイヤーを引き戻すよりも早く、間合いを詰めたオリフィスの一撃!
 真上に飛び上がり、全体重を乗せたエルボーが槍じみて装甲を貫いた!
 真っ二つに割れた異形機械は、側面で待機していた個体を巻き込み爆散!!
「さあ、何体でもおいで! 何度でも何度でもぶつかって、ぶっこわーす!!」
 がつん! と拳を撃ち合わせ、オリフィスは叫んだ。
 爆散した残骸の炎が陽炎を生み出し、オリフィスの後ろ姿を揺らめかせる。
 人々はそこに、世界を支える巨人のごとき力強い背中を見た。
 彼女の姿こそが、彼らにとっての希望となっていたのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

六波・サリカ
ヨハン(f05367)と

無理やり依頼に呼びつけたヨハンに話かけます

随分と久々ですね、ヨハン
元気でしたか
(流れるラジオの声に意識を向けて)
どうやら私たちは「とっても強い人たち」だそうですよ
しかし、私は任務に就くのも久々ですから指示は任せます

戦闘開始
両目の式神を起動し【情報収集】、ヨハンに呼びかけます
ヨハン、「ムンクの叫び」のような部位が弱点のように見えます!

【残像】を残すほどの素早い接近で敵への【先制攻撃】を行います
斬滅式による雷を帯びた斬撃
【見切】によるヒット&アウェイ

敵の注意をこちらに引いてからの、【正当防衛】
ミゼル・アベンジ!急急如律令!

あとはヨハンの指示に従えば上手く行くでしょう


ヨハン・グレイン
サリカさん/f01259 と

呼びつけておいて元気だったかも何もないだろう
見ればわかることをいちいち問わないでもらえますか
……しかもそっちから呼び付けておいて指示しろとはどういう事だ

適当に好きに動いてくださいよ
足りない部分をフォローする方が俺も気が楽ですから

いまいち気乗りはしないが……、
わざわざ開墾した地を襲う輩も気に食わないので
気晴らし程度には痛みつけてやろう

『蠢闇黒』から闇を喚び<呪詛>と<全力魔法>で強化
地を這わせるように伸ばし<範囲攻撃>で<串刺し>、
サリカさんの動きに合わせて足止めしましょう
敵の攻撃軌道を逸らすなど支援に徹します

特に指示することもないので、再度好きに動けと言っておこう



●再びの荒野
『みんな、心配しないで。でも、戦うことを恐れないで』
 ソーシャルディーヴァ・クークーは、何度も"ラジオ"に語りかける。
 彼女が配る端末は、喪われた旧時代のアンティーク・ラジオめいたもの。
 クークーは古く郷愁的なカントリーミュージックを愛した。
 かつての人類が愛したラジオという文明を、こよなく愛していた。
 わざわざノイジーに加工された電子音声が、オールディーズナンバーを流す。
 この緊急事態にはそぐわない、しかし大切な『日常』がそこにある。
『ワタシたちは、とっても強くて頼れる味方がいる。だから、大丈夫。
 ……けれども、自分で戦うことを恐れないで。それは必要なことだから』
 ラジオを通じ、何度も何度もクークーは呼びかける。
 それが、人々に希望と耐える心、そして戦いを諦めない強さを与えていた。

 大規模農場から離れた、戦闘の最前線。
「どうやら私たちは、"とっても強い人たち"のようですよ」
 六波・サリカは、無表情のままそう言って、ヨハン・グレインに目を向けた。
 サリカの手には"ラジオ"の受信機。ヨハンは仏頂面のままだ。
「……いきなり呼びつけてきたと思ったら、なんですかこの状況は?」
「グリモア猟兵の話は聞いていたでしょう。防衛任務です」
「そういうことではないんですが……」
 ヨハンは物言いたげだ。なにせ彼は、サリカに急に呼びつけられたのである。
 しかもその用件すら不明のまま……おかげでこの不機嫌な顔をしていた。
 それでもやってくるあたり、呼ばれたこと自体はあまり気にしてないらしい。
 腹を立てているというよりも、その意図が読めず訝しんでいるといったところか。
「そういえば随分と久々ですね、ヨハン。元気でしたか?」
「……いまさらなことを。呼びつけたのはあなたですし、見れば分かるでしょう」
 ぶっきらぼうな物言い。サリカは、懐かしむように目を細めた。
 その言葉が、ヨハンなりの近況報告だということを、彼女は察したのだ。
 これまでどおり――彼がそう云うのならば、それでいいだろう。
 いまは、戦いの時。あれこれと根掘り葉掘り聞いているような時間はない。
「私も任務は久々です。指示は任せたいのですが」
「いよいよ勝手も極まれりですね。呼びつけておいて指示しろ、とは」
 ため息をつきつつ、ヨハンは闇を喚び出し周囲にはべらせた。
「せいぜい好きに動いてくださいよ。あれこれ指示するよりはそちらのほうがいい」
 足りない部分をフォローし、スタンドアローンな動きで連携を取る。
 ヨハンらしい物言いに、サリカは目元をわずかにほころばせ、頷いた。
「いいでしょう。たしかにそのほうが私たちらしいです」
 サリカは双眸に宿した式神を起こし、迫りくる異形機械の群れを見据える――!

 ――聞きたいことは、いくつもあった。
「ヨハン、あの"ムンクの叫び"のような部位が弱点のように見えます!」
「わかりやすいけどわかりづらい表現はやめてもらえませんかね」
 何があったのか。
「近づかれる前に叩きます。援護を!」
「足止めはしますよ。あとはあなた次第です」
 今まで何をしていたのか。
「装甲が分厚い……」
「――攻撃が来ますよ。ぼけっとしていないでください」
 これから、どうするのか。
「ナイスアシストです、ヨハン!」
「長くは保ちません。さっさと仕留めてください」
 ……けれども実際に顔を会わせたら、そんなものは無粋に思えた。
 聞いたところで彼のことだ、正直に答えてくれるとも思えない。
 ならば今はこれでいい。
「斬滅式、起動……」
「"動くな"」
 守るべき人々がいる。
「さあ、相手はこちらです。かかってきなさい」
「…………」
 倒すべき敵がいる。
「葬り去れ――ミゼル・アベンジ! 急急如律令!」
「……相変わらず派手な攻撃ですね。後ろにいるほうはヒヤヒヤするんですが」
 ともに戦う仲間が、そこにいる。
 ならば今は、それでいい。

 黒き雷が残骸を焼き尽くす。
 サリカはふと呆けたように立ち尽くし、思い出したように後ろを振り返った。
「……? なんですか、まだ敵は来ますよ」
「いえ、なんでも。強いて言うなら、指示をもらえませんか」
 ヨハンは訝しむように眉根を寄せたが、嘆息すると言った。
「好きに動いてください。サポートはしますよ」
「……いいでしょう」
 サリカは無表情のままうなずき、再び敵を見据える。
 けれども彼女の髪は、はしゃぐ童女のように勢いよく弾んでいた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

御狐・稲見之守(サポート)
 100歳超(実年齢秘密) 妖狐の陰陽師 
 口調「ワシ、~殿、ゾ、~んじゃ、じゃ、じゃナ、かナ?」

 荒ぶる力を揮うカミにして、魂を啜る獣、そして幻を繰る妖狐、御狐稲見之守じゃ。
 カミを求め助けを願う声を聞き届けるが我が務め。ヒトの道理で叶わぬならばカミの道理を通してみせよう…なんてナ。事情あり気なオブリビオンも一応声は聞いてやるゾ。

 天変地異を起こす[荒魂顕現]に、[眩惑の術]で幻覚を見せて動きを封じたり、[山彦符][万象変幻]で敵のUCに対抗したりするんじゃ。無論、[狐火]は妖狐の嗜みじゃナ。
 他にも[式神符]で対象を追跡したり〈催眠術〉で情報収集したりと色々出来るゆえ何卒よしなに。



●妖神、人の里を守るのこと
「ふむ」
 見渡す限りの荒野、地平線に渦巻く恐るべき嵐。
 アポカリプスヘルの荒廃を見渡し、御狐・稲見之守は目を細めた。
「なるほど。斯様に土地が痩せ細っては、種を蒔こうと芽吹くはずもなし。
 それを一から作り直し、作物を育てようというのは、見上げた心意気よな」
 困難さも、立ち上がるに至るまでの艱難辛苦も、想像に難くない。
 それを叩き潰さんとするオブリビオンの群れ、これも「よくある話」だ。
 ならば、見過ごすか。それも自然の営みと高みの見物を決めて。
「――それはいかにも、つまらんものよナ」
 稲見之守はカミである。だが、あいにく俗世を嫌うほど達観してもいない。
 気まぐれに人の営みに関わり、俗世の五欲に身を浴す。
 魂啜りの獣ならばこそ、喰らうべき魂なくしてカミたり得ない。
 つまり。稲見之守は、人のいじましき営みをこよなく愛し守ろうとしていた。
「物も考えぬ屍人風情がそれを叩き潰そうなど、思い上がりも甚だしいゾ。
 食い扶持がないのはさもしいが、ま――よかろ。ひとつカミの力を見せたろか」
 ふわり、と乾いた大地に降り立ち、敵を指差しついっと指を上向けた。
 するとメキメキと音を立てて大地が隆起し、岩盤ごとちゃぶ台返しを起こす!
 これこそ荒魂顕現。あらゆる天地を揺るがし操るカミの業。
 生気を失い死した大地であろうと――否、だからこそ操るには容易い。
 地形ごとひっくり返された異形機械は、さかしまに大地に落下しひしゃげた。
 KBAM!! ……爆発した残骸を乗り越え、ゴリラじみた異形がさらに迫る!
 ガン! ガン!! ガン!!!
 ドラミングめいて鋼の装甲を殴りつけ、立ちはだかる稲見之守を殴り砕こうと……!

 振り下ろされた拳は、しかし霊符の壁によって遮られた。
「おお、おっかないおっかない。ワシは見てのとおりか弱い乙女じゃゾ?」
 からかうような声音。くすりと笑い、稲見之守は扇のように広げた符を払う。
 局所的な竜巻が天から降り、小癪な鋼どもを横合いに薙ぎ払った。
 土埃がその姿を覆い隠す。煙幕のような煙の中、獣の双眸が浮かび上がる。
『本当の獣がどのようなものか、我が教えてやろうか!!』
 煙を切り裂き何かが跳梁跋扈する。爆音、衝撃、そしてまた爆音。
 人々がそれを見ることはない。いや、人がそれを見てはならない。
 カミの姿は、只人が見ればその眼を灼き尽くしてしまうのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

マーロン・サンダーバード
農業ってのはつまり、太陽の力なわけよ
そいつをめちゃくちゃにしようってんだ、太陽の使者のお仕置きは覚悟してもらわなくっちゃな
俺は太陽の使者サンダーバード、キャベツは芯の部分が好きな男だ!

わかりやすーく腕が要って感じのゴリラじゃないの
動きも【見切り】やすそう…か?
ヨシこうしてみようか、まず操縦席のゾンビに向けて愛銃ライジングサンで狙撃だ
リボルバーで狙撃はないだろって?出来ちゃうんだなあ俺【スナイパー】だから
見事ゾンビを討ち取っても良し、ガードなりするならガードした腕を狙って「轟音の黄金銃」で【部位破壊】だ!
片腕壊せたらまともに歩くのも難しいだろ、あとは煮るなり撃つなりってな



●荒野を照らす太陽、奴の名は――
 BLAMBLAMBLAM!!
 リボルバー弾が吸い込まれるように、操縦席のガラスを突き破った。
 痙攣する土気色のゾンビの頭部が、スイカのように盛大に爆ぜる。
 ワンショット、ワンキル。リボルバーとは思えないほどの狙撃精度だ。
 マーロン・サンダーバードは西部劇のガンマンめいて愛銃をガンスピンさせ、
 硝煙を吹き散らすような仕草をする。乾いた風に、ばさばさとコートがはためいた。
「ようゴリラ野郎! この俺の弾丸を浴びても立ち上がれるならかかってきな!
 俺は太陽の使者サンダーバード――キャベツは芯の部分が好きな男! さ!!」
 じゃきん! 腕をクロスさせて銃を構え、そしてトリガを引く。
 BLAMBLAMBLAM!!
 一見すれば盲撃ちのようにしか見えない。だが弾丸は操縦席にしかと届く。
 またひとつ異形機械が爆発し、むっとする荒野に新たな炎を生み出した。
 ぎらぎらと照りつける太陽が、黄金色の仮面に反射して眩しい。
 嫌気が差すほどの青空――それが、マーロンにはこの上なくいとおしかった。
「農業ってのはつまり、太陽の力だ。そいつをむちゃくちゃにしようなんざ、
 この太陽の使者の前じゃ通らん理屈だぜ。お仕置きをしなくっちゃあなあ!」
 BLAMBLAMBLAM!!
 飛来した拳を横っ飛びで躱しながら、コクピットに弾丸を叩き込む。
 ビシリ! と強化ガラスを貫通し、リボルバー弾がゾンビを滅殺する。
 太陽の黄金銃――GOLDEN GUNの持つ生命の力は、死者にとっては劇毒だ。
 なんたる鷹の目。そして、なんと威勢よく気持ちのいい快男児ぶりだろうか!
「てめぇらは誰一人殺せないし、何一つ壊せやしない。
 なぜなら、そう――この俺、サンダーバードがここにいるんだからな!」
 BLAMBLAMBLAM!!
 鳴り響く銃声は、まるで晴レの日を祝う号砲のように爽やかだった。
 人々は見た。
 この世界では邪魔にすら感じられる太陽の輝きを浴び、気高く輝く黄金の使徒を。
 黒い外套をはためかせ、人々と希望のために戦うヒーローの姿を!
「サンダー……バード」
 風が届けたその名を、誰かが口にした。
「サンダーバード!」
「かっこいい!」
「それがあの人の名前なんだ!」
 顔中どろんこだらけの子供たちが目を輝かせ、拳を握りしめる。
「「「頑張れ、サンダーバード―!!」」」
 遠くから聞こえる声援に、マーロンはガンスピンして応えてみせた。
「なあ、聞こえるかいオブリビオン。あの声が、俺を呼ぶ人々の声が!
 ――あんたらに、勝ち目はねぇ。骸の海の底で、そいつを噛み締めな!」
 BLAMBLAMBLAM!!
 勇ましき銃声が鳴り響く。
 すべての残骸を滅ぼし、人々に笑顔の明日を届けるために!

成功 🔵​🔵​🔴​

マリー・ハロット
うゆ? ノージョー……農場?作るの? 農場作ったら野菜とかが出来るの?
……えへへっ。何だかそーゆーのってワクワクするよね!
マリー、アポヘルはつまんないからあんまり好きじゃないけど、そーゆーのが増えて、楽しいのが増えたら嬉しいな!
……だから、邪魔する奴らはキライ! マリーがやっつけちゃうんだから!!

最初から、【念動力】最大でいっくよー!
UC:さいきっく・はんず!
ゾンビの反射神経が良くなっても、375本の見えない手にはちゃんと反応できないでしょ!
パンチしたり、こっそり足を引っ掛けたり、投げ飛ばして別のやつにぶつけたりしてやっつけちゃうんだから! チギッテハナゲってやつだよ!



●サイキック・アナイアレイター
 "ノージョー"とかいうモノがあれば、野菜とかご飯が出来るらしい。
 よくわからないが、なんだか無性にワクワクする。
 人間が食べるような"らしい"食物なんて、滅多に口にしたことないのに。

「邪魔邪魔邪魔ー! キライキライキラーイ!!」
 空を舞いながら、手回しサイレンめいてマリー・ハロットの高音が響く。
 見えざる手がミサイルのようにランダムな軌道で降り注ぎ、鋼をひねり潰す。
 規格外の握力と腕力の前では、分厚い装甲など何の意味もなさない。
 ボールのように軽々と巨体を持ち上げ、"同士討ち"を起こさせる超常の手。
 念動力で空を舞うマリーの表情は、とてもとても楽しそうだった。
「"ノージョー"を焼いちゃおうなんて、そんな悪いヤツはこーだもんねー!」
 ぶんっ、とゴリラじみた巨体が宙を舞い、地面に激突。
 KRAAAAAASH……内部に居たゾンビもろとも、異形機械は爆散した。
 まさに鏖殺。敵は、空を舞うマリーに攻撃を届かせる手段がない。
 どれだけ反射速度を上げたところで、見えない攻撃を避けられるわけがないのだ。
 有線式マニピュレータを射出しても、簡単に回避されてしまう。
 そして『手』の群れが巨体に掴みかかり、バラバラに引き裂く。
「マリーの『手』からは逃げられないよ! だーれも、通さないんだからっ!」
 爆炎がひとつ、またひとつ。
 足をひっかけ、投げ飛ばし、装甲を引き裂き、ガラスごと搭乗者を粉砕する。
 ここは遊び場だ。マリーが、敵というおもちゃを好き勝手する遊び場。
 マリーは、人々の営みを守ることは出来る。
 だが、それだけだ。彼女には壊し、殺すことしか出来ない。
「みんなの大事なノージョーは、マリーが守ってあげるからねー!」
 彼女には生み出し、育てることが出来ない。
 それでも今は、それでよかった。
 そのぐらいの暴力がなければ、この世界では生きていけないのだ。
「いつかこの世界も、もっとたのしー世界になればいいなー!」
 アポカリプスヘルとは、そういう場所なのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

アルトリウス・セレスタイト
生き抜こうとする者たちだ
歩みを止められるのはいただけない

受ける攻撃は『絶理』『刻真』で自身を異なる時間へ置き影響を回避
此方の行動は目標が存在する時間へ向け実行
必要魔力は『超克』で“世界の外”から汲み上げる

天楼で捕獲
対象は戦域のオブリビオン
原理を編み「迷宮に囚われた」概念で縛る論理の牢獄に閉じ込める
高速詠唱を『刻真』で無限加速し即時展開
且つ、展開する瞬間を『再帰』で無限循環し迷宮を無数に重ね強度と自壊速度を最大化

内から外へは何もできず、逆は自由な理不尽の檻だ。存分に憤れ
無論迷宮は迷うもの
真っ直ぐは進めず道は長い。精々惑うが良い

出口は自身に設定
仮に辿り着くなら『討滅』の破壊の原理を乗せ打撃で始末



●たとえ小さな一歩だとしても
 農場の建設。
 それはこの荒廃した世界においては、あまりにも小さな一歩だ。
 仮に農場を無事に建設出来たところで、維持できるかどうかは別の話。
 オブリビオンストームが来てしまえば、すべては水泡に帰するだろう。
 現にいま、オブリビオンという脅威がこの地に襲いかかっているのだ。
 ビル街の片隅に花開いた薄汚い花のような、あまりにもか弱く小さな希望の灯火。

 しかし、それでも一歩は一歩だ。
 人々は希望の明日を信じ、「今日」を生きるのではなく「明日」を目指している。
 同じ一日を続けるのではなく、よりよき未来を手に入れるために。
 その小さくもたしかな一歩を、アルトリウス・セレスタイトは守りたいと思った。
 理屈ではない。なくしたはずの彼の魂が、その残滓が騒いでいたのだ。

「お前たちに"何故"と問うたところで、まともな答えは返って来まい」
 見えざる迷宮。出口なき破滅の原理に囚われた機械の群れを、男が見下ろす。
「お前たちオブリビオンは、"そうである"がゆえに人間を殺し世界を滅ぼす。
 そこに"何故"はない。ただ"そうする"という結果だけがある――ならば」
 アルトリウスは片手を広げる。掌の中に青い燐光が生まれた。
「残骸(おれ)もまた同じように、理由ではなく必然によってお前たちを滅ぼす」
 そして、握りしめる。
 無限循環した自壊原理は加速の果て無限に至り、すべてを破滅に導いた。
 恐るべきスピードで機械の群れは錆びつき、崩れ、そして風化していく。
 その塵すらも原子レベルで分解され、熱力学第二法則を無視して消え去る。
 完全な無。骸の海ですらない、残骸が帰る場所などどこにもない。

 ……あるいはそれは、己にとってもそうなのだろう。
 どれだけ人のために戦おうが、
 人々の営みを守ろうが、
 誰かとの触れ合いに喜びを見出そうが。
 この身は、人として機能するにはあまりにも多くが足りなさすぎる。
 そう、出口を求めてあがき惑う眼下の残骸どもと同じように。
 ならば――。

「……たとえそうだとしても。俺は、お前たちを見過ごしはしない」
 アルトリウスはひとりごちた。
 双眸に宿る蒼き輝きは、人の意志に満ちた力強いものだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

青葉・まどか
そこに未来への希望がある。
その希望を奪おうとする連中がいる。
なら、希望を守るために戦うまでだよ。

防衛線を越えられないよう手早く倒していくよ。
敵の動きを【見切り】、回避しながら【情報収集】。

なるほどね。
ゾンビに操縦させることで操縦者への負担を考えない運用をしてるんだね。
合理的、なのかな?
逆に言えば、どんなにとんでもない性能の機体でも操縦者がいなければただのガラクタだよね。

ゾンビを出し入れするのには便利だろうけど、操縦席を露出させるのはいただけないよ。
『破魔焔』発動
操縦席に目掛けて破魔焔を突入させて、操縦しているゾンビを【焼却・部位破壊】するよ。



●終わりの見えぬ戦い
 オブリビオンは過去そのもの、つまり尽きることのない無限の顕現だ。
 我々人類……いやさ、生きとし生けるものはみな、何かを消費して生きる。
 骸の海とは消費された「時間」の堆積物であり、消えることはない。
 ならばそこから現れるオブリビオンとの戦いに、終わりはあるのか?
 ……おそらくは、ないのだろう。だからこの世界は、疲弊し傷ついたのだ。

 遠くに竜巻が見える。
 オブリビオンストーム。世界を引き裂く亀裂にして爪痕そのもの。
 消えることなき破滅の牙を前にして、ここに明日を目指そうとする人々がいる。
 その力強さに、青葉・まどかは心の底から敬意を覚えた。
 己には力がある、だから戦える。しかし彼らに、猟兵としての力はない。
 力なきものが一歩を踏み出そうとするには、多くの葛藤と苦悩があったろう。
「――此処から先は通さない。誰一人、塵ひとつだってね」
 防衛線を背に、意志なき屍人機械を前にしてまどかは言った。
 次の瞬間その姿はかき消え、一瞬にして敵の前へ!
 逆手に握りしめたダガーが煌めき、最前線の敵を両断せしめる……!

 音なき斬撃によって火蓋は落とされた。
 後続の殺戮機械はドラミングめいて鋼を殴り鳴らし、大地を砕く。
 異常強化された反射速度。それは、人間では神経が耐えられないレベルだ。
 操縦者にあてがわれたゾンビどもの脳みそが腐り落ちていたのは何よりの僥倖。
 知性がないゆえに、獣じみて本能的な攻撃はあまりにもたやすく読める。
 振り下ろされる拳を先読みし、まどかはその拳を足場に巨体を蹴立てた。
「ゾンビに機械を操縦させるなんてね、ぞっとするぐらい合理的……なのかな」
 言いつつまどかは肩を蹴り、くるくると機械の頭上で回転した。
 鞠のように丸まって回転することで、落下速度を乗算し一撃の威力を高める。
「――けど、だからこそ"操縦者を叩いてしまえばいい"!」
 そして落下しながらの逆手ダガー! ガラスを突き抜けゾンビを串刺しに!
 ばきばきばき! と落下しながら巨体を真っ二つにする。赤熱する刃。
 摩擦熱はじわりと陽炎をどよもし、それは破魔の炎となって機体を燃やした。
「全部まとめて灼滅してあげる。行け、"破魔焔(ほむら)"!」
 まるで意志を持つかのように、破魔の炎は空中を滑り飛翔した。
 後続の機体を飲み込み、トーチじみて燃え上がる。そして熱は新たな炎を産む。
 死すべきさだめの残骸を薪に、魔を祓う灼滅の焔が産声を上げるのだ。
「……どうせ高みの見物をしてるんだろうね、この件の黒幕は」
 姿見えぬ敵の首謀者を睨み、まどかはつぶやいた。
「いますぐ姿を見せればいいのに。全身あますところなく灼き尽くしてあげるから!」
 その声は、間違いなく首謀者へ届いただろう。
 尽きぬ炎に燃やされ続ける、怒れる女のもとへと――。

成功 🔵​🔵​🔴​

八岐・真巳
農場の復興、ね。この明日をも知れない過酷な世界の、小さな、でも、大きな希望、と言うやつね。
そう言うのを踏みにじるのって、悪いことよ? (私は超怒られたし)(注:怒られた、と言うレベルではない)
という訳で、悪い子にはお仕置きしなくちゃ……まずは、この雑兵達から、片付けましょう。

さて、その飛翔拳、うかつね? そんなに手を切ってほしいなら、お望み通りに。(【見切り】で相手の攻撃タイミングを読みつつ、【鎧無視攻撃】の技能を乗せたUCでパンチを両断。そのまま踏み込んで、思索実験機何某をゾンビごと同じように両断)
ふう、またこの機構剣A-MURAKUMOでつまらぬものを……って、電源オフのままだったわ。



●"おいた"には然るべきお仕置きを

 ――しゃこん!

 正確に採寸された木材が完全に噛み合うような、爽やかな音が響いた。
 それは、八岐・真巳の機構剣が敵を真っ二つにした斬撃音である。
「これで三体目。まったく、意志はないくせに人間は殺したがるのね?
 それもこんな数を集めて……よほど、あの農場を潰したいのかしら」
 グリモア猟兵が予知した頭目は、まだこの場に姿を表していない。
 だが真巳は、どこかからすさまじい殺意が向けられているのを感じている。
 薄く微笑む。そこまで猟兵が憎たらしいなら、さっさと出てくればいいものを。
 こちらの手の内を見るつもりなのか、雑魚で事足りると考えているのか。
 どちらかわからないが、ずいぶんと低く見積もられたものだ。
「悪者って姑息よねえ! せっかく歩き出した人々の邪魔をしようだなんて。
 そういう"おいた"をしてると、いずれものすっごい怒られることになるんだから」
 他ならぬ自分がそうだ、と真巳は豪語する。
 ……その"怒られた"というのは、常人から考えればありえないレベル。
 超常の生命力を持つ彼女だからこそ、こんな軽口で済んでいるのだが……。
「ま、いいわ。出てこないならせいぜい、このガラクタを片付けるとしましょうか」
 真巳は地平線を睨む。さらに五機、彼女のいる方角へ近づいてきた。
 ……速い。操縦者の耐久力を考慮しなくていいのだから、最初から全速力か。
 命すらも顧みない、敵を殺せればいいという猪突猛進。愚かである。
 だが、愚かだからこそ手強い。完膚なきなまでに叩き潰さねばならないのだ。
「さあ、来なさい。こっちよ。あなたたちの憎らしい敵は、私はここ」
 真巳は機構剣を手に、大きく両腕を広げて叫んだ。
 まるで初めて歩き出した赤子を導く、母親のような慈愛を込めて。
 真巳は生命を愛する。生命が生み出す愚かさと輝きを等しく愛する。
 屍人をあつらえ、意志なき機械が駆動する。それは実に醜い光景だ。
 あんな"もの"どもが人々の営みを踏みにじるなど――到底看過できるはずもなし!
 間合いに入った殺戮機械どもが、同時に有線式マニピュレータを射出する!
 赤熱する拳が迫る。真巳はぴくりとも動かず――次の瞬間、その姿が消えた。
 被っていた帽子だけがその場に浮かび上がる。拳が、何もない場所を通り過ぎた。

「うかつね、あなたたち」
 声は背後から聞こえた。
 機械どもは反射的に振り返ろうとしたが、出来ぬ。
 射出した拳もろとも、機体ごとゾンビの体まで両断されていたからだ。
「本当に他愛のない連中。歯応えがないわ」
 真巳はやれやれといった様子で呟くと、再び姿を消した。
 真っ二つにずれ始めていた機械どもが、さらに逆袈裟に両断される。
 五体の機械が二十の残骸に変わり、そして爆発四散。
 元の立ち位置に戻った真巳は、ふわりと落ちてきた帽子をキャッチし被り直す。
「……あ」
 そして機構剣を確かめて、なにやら声を漏らした。
「電源オフのままだったわ、これ」
 KRA-TOOOOOM……爆音が黒髪をはためかせる。真巳は肩をすくめ、次の敵へと踊りかかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

無間・わだち
邪魔しないでくれますか
彼らが生きようとしているのを
明日を見ようとしているのを

まっすぐに
ジグザグに
敵の群れを誘き寄せながら
囮にも近い形で敵前へと走る

充分に敵数を集めて彼らのど真ん中まで向かう
猟兵が周囲に居ないことを確認

ほら、こっちですよ
俺を突き飛ばしたいでしょ

チェーンソー状の大剣に変形させた偽神兵器を三度振るう
捨て身の一撃で蹂躙します
淡々と、シンプルに
鋼で固めた躰を全部たたっ斬る
馬鹿みたいにでかい手足をもげば
ただの鉄屑と変わりない

痛みは耐えられる
畑はなるべく守りたいですけど
そうも言ってられないか

操縦するゾンビの顔を視る
ああ、あなたも
生きたかったでしょうね
彼らのように

それは、叶わないから
さよならだ



●こちら側と、あちら側
 ありとあらゆる法律、規則、制約を取り去った時、自然界に残るものはなんだろう。
 弱肉強力の掟? 否。
 適者生存の法則? 否。
 ――生き物はいつか死ぬ。そして、死ねば終わり。たったそれだけだ。
 どんな生き物でも、死は逃れられない。
 人も、獣も、魚も植物も、ともすれば神ですら。
 永遠不変のものなど世界にはあり得ない――あり得てはならない。
 そして「死」とは厳粛な儀式であり、唯一の永遠不変への道筋である。
 だから死ねばそこで"終わり"だ。その先はない。……あってはならない。

 けれども、自分たちはここにいる。

 死すらも拒絶した己が、生者のために出来ることはなんだろう?
 無間・わだちは、考える。
 稲妻のようにジグザグに敵陣を駆け抜けながら、他人事のように思考する。
 けれども本当は、考えずとも答えはわかりきっていた。

 そんなものは、この世の何処にもありはしないのだ。

 自分は生きている。……生きている? この"ありさま"が?
 自分は、あの鋼鉄の棺桶に詰め込まれた屍人と何が変わらないというのだ?
 一目見て分かる異形。無理矢理に縫い合わされた肉と骨のパッチワーク。
 生きている? 違う、これは"存在している"というのが正しい。
 だって自分は一度、たしかに「死んだ」のだから。

「ほら、こっちですよ」
 あちこちを灼かれ、じゅうじゅうと肉の焼ける嫌な音と臭いをさせながら、
 わだちは言った。殺戮機械どもが、その声に自動的に振り返る。
「俺が、相手ですよ。俺だけでいい。壊したいなら俺を壊せばいい」
 ぎゅるん、と鋸刃が音を鳴らし、鋼鉄の牙が貪るように装甲を切り裂く。
 ぎゃり、ぎ、ぎぎ、ぎぎぎぎぎ……。
 散る火花は鮮血のようで、振動で蠢く敵の姿は死の寸前の痙攣めいていた。
「――ああ」
 鋼が切り裂かれ、無数のコードで繋がれた屍人と目があった。
 比喩だ。もうそいつに、目はない。腐り落ちたか、はたまたくり抜かれたか。
「あなたも、生きたかったのでしょうね」
 彼らのように。
 あの暖かな、厳しくともたくましい"生きる人々"のように。
 未来を夢見たかっただろうに。
 明日を求めたかったのだろうに。
 だがそれは、屍人には出来ない。
 してはならない。
 ――己にとっても、それは同じことだ。
「でもそれはもう、叶わないんですよ」
 その言葉は、物言わぬ屍人に対してのものか。あるいは、己への。
「さよなら」
 ぎぎ、ぎ……ぶち、ぶちぶちぶちばきばきべきべきべき、ぼきん。
 腐った肉と骨を巻き込み、鋼鉄の牙が獲物を食いちぎる。
 真っ二つにされた殺戮機械は奇妙によろめき、そして爆散した。
 オイルが脳漿めいて飛び散る。己の顔に降りかかるそれを鬱陶しげに拭う。
「……次だ」
 わだちは言い聞かせるようにつぶやいて、偽神兵器に再び活力を与える。
「俺に出来ることを、やらなきゃ。――そうだろ、わるつ」
 答える声はない。
 ここに生きるものは、誰も居ないのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

ラパ・フラギリス
・基本的に戦車から出てこない臆病兎
農場…ってことは、この世界でも美味しい人参が食べれるようになるんです…?
頑張らないとです…!

ひい…敵ゴツくて強そうです…。かっこいい…。
でも私のノワールだって負けません…っ。
ミサイル撃ちまくって殲滅…は被害が広がっちゃいますかね…。

銃を撃ちまくってゾンビを倒して、近づかれる前に機能停止させたいですね
【制圧射撃】
狙い撃ちってよりは近寄らせないために弾幕を張る感じで動きます
近づかれたり腕が飛んできたらこっちもパンチで対抗します
暑いのは苦手なので…捕まらないように拳は弾いていきたいですが…
もし捕まったら周りに助けを求めながら銃やミサイルを【一斉発射】
怖いのは嫌です…



●小心者にも出来ること
 ウサギは、野生動物のなかでも特に臆病でストレスに弱いのだという。
 その因子を持つラパ・フラギリスは、特にその気性が顕著だった。
「うう、怖い……で、でも、あの敵ゴツくてかっこいい……」
 人型というにはかなりずんぐりむっくりした、独特のフォルムの戦車。
 そんな巨大戦車"ノワール"のコクピットで、ラパは呟いた。
 他の猟兵のように、外に飛び出して戦うなど彼女にはとても出来ない。
 この戦車が彼の家であり、住処であり、そして鎧であり武器なのだ。
 モニター越しに見る敵は想像以上に恐ろしく……しかし、興味を惹かれる。
 臆病なくせに、同じぐらい(ともすればそれ以上に)好奇心旺盛。
 それがラパの特徴で、少々困った彼の性格でもあった。

 ラパはぶつぶつと独り言を言って自分を勇気づけながら、ノワールを操作する。
 大丈夫、やれる。だって自分にも、この頼れるノワールが居るのだ。
 性能ならば負けていない。それを、あの人々にも証明してあげよう。
「ミ、ミサイル……は、日が日が広がるからダメっ。き、機関銃!」
 BLATATATATATATATATAT! BRRRRRRRTTTTTTTT!!
 砲声ががなりたて、分厚い装甲をたやすく貫く大口径弾丸がばらまかれる。
 吸い込まれるように襲いかかってきた敵三体が、スイスチーズめいて穴だらけ。
 ぎぎぎ……と不気味に痙攣した鋼鉄の獣どもは、そのまま爆散した。
「こ、ここから先は、通ったらダメです、ダメですよっ!」
 BRRRRRRTTTTT!! 弾幕は厚い……だがやんぬるかな、敵は止まらない。
 ぐんぐんと相対距離が近づく。そして……赤熱する拳が有線射出された!
「ひいっ!?」
 ラパの臆病さと、ウサギらしい野性的な反射神経が彼女を救った。
 咄嗟に行った回避行動が功を奏し、彼女が拳の直撃をなんとか避けられたのだ。
 もしもあれに掴まっていたら……想像しただけで震えが起きる。
 けれども。
「……お、美味しいニンジン、食べたいですし……それに……」
 モニター越しに見た、あの人々の怯える顔。
 けれどもこちらの背中に向けていた、頼もしげな視線。
「……こ、怖いけど、私だって猟兵なん、です……っ!」
 臆病者の勇気を振り絞り、ラパは一気に操縦桿を押し込んだ。
 ノワールは逆に間合いを詰め、拳が引き戻される前に銃弾を叩きつける!
 BRATATATATATAT……KA-BOOOOM!!
 爆発する鋼鉄の獣。ラパは緊張と恐怖に跳ね上がった心拍数を必死に抑える。
「こ、ここ、怖かったぁああ……」
 しかしあいにく、敵は彼女を休ませてはくれない。
 新たにやってきた敵の足音に、ラパは悲鳴をあげながら対処するのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

フェルト・フィルファーデン
ふふっ、変わらず元気そうな声で何よりだわ!……ええ、大丈夫よ。皆の新たな一歩の邪魔はさせないから。

畑を踏み荒らされるわけにはいかないわ。さっさとUターンしてお帰り願いましょうか。
UCで敵の先行してきた一団を眠らせ掌握。後続の一団に突撃させて押し返す。
戦線を押し返し街から充分距離を取ったら操っている敵を【リミッター解除して、操られていない敵諸共そのままオーバーヒートからの自爆で消し飛ばすわ。

ええ、アナタ達も元はこの地に暮らす人々だったのでしょう。
でもね、今この地で逞しく生きようと逆境に抗おうとする者達がここにはいるの。その今を生きる人々の邪魔をするというのなら、容赦はしないわ。



●かつての先駆者たちへ敬意を
 鋼鉄の獣――あれは、押し込められた死者たちにとっては動く棺桶か。
 しかし棺桶は大いなる眠りなど赦してはくれない。
 6フィートの穴から這い出した亡者どもは、その遺志に依らず蹂躙を強制される。
 フェルト・フィルファーデンは、誰よりもゾンビたちを哀れんだ。
 正しく言えば、ゾンビにさせられた人々の、かつての魂に憐憫を抱いたのだ。
「アナタたちも、もとはこの地に生きる人々だったのでしょうね」
 もしかすると、この共同体で生まれ育った人々だったのかもしれない。
 それはもはや、確かめる術のないこと……関係がないことでもある。
 どこかの誰かであれ、かつての誰かであれ、いまは倒さねばならぬ敵だ。
 死者――過去が、未来を目指す人々を阻み、蹂躙しようとする。
 それこそ、フェルトが何よりも憎み、そして許せないことなのだから。

 ガン! ガン!! ガン!!!
 ゴリラじみた鋼鉄の獣どもは、自らの装甲をドラミングよろしく叩きつける。
 そこに知性の煌めきはない。乗せられているゾンビどもにないのだから当然だ。
 猛然たる勢いで迫る群れを押し留めたのは、妖精騎士の人形たちだった。
 盾を構え横列をなす騎士人形たちが、すさまじい突進を真正面から受け止める。
 轟音が荒野を揺るがし、ざりざりと踏みしめられた土が煙を起こした。
 止められはした。だが、押し返すにはあまりにもパワーに差がありすぎる。
 所詮時間稼ぎに過ぎぬか。しかしフェルトには、その一秒があればよかった。
「さあ、眠りに堕ちて。今度こそ、大いなる眠りに――」
 楽器を爪弾くようなフェルトの指先が、虚空を撫でた。
 見えざる電脳ウィルスが、機械ではなく知性なきゾンビを侵蝕し掌握する。
 びくびくと痙攣していたゾンビどもは、途端に動きを止めて眠りにつく。
「……過去には過去を、死者には死者を。さあ、行きなさい」
 フェルトは極力感情を押し殺し、新たな命令を下した。
 反転、そして突撃……敵同士による相殺。迫りくる新手への自爆特攻。
 眠りについた死者たちはそれに応え、180度踵を返すと同士討ちを始めた。
 爆音。オーバーヒートした機体が、同機体を巻き込んで爆ぜたのだ。
「わたしは容赦しない。たとえアナタたちが、かつての生者だったとしても」
 フェルトは毅然とした表情でいい、しかしつかの間目を閉じた。
 己が冒涜した死者たちへ、残骸によって冒涜させられた死者たちへ。
 それでもどうか、最期には安らかな眠りがあるようにと。
 少女の黙祷はあまりにも短く、そして無意味だ。
 ただフェルト自身の意志を奮い立たせるのには、それで十分だった。
 彼女はこれまでもこれからも、未来を守るために戦うのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

朱酉・逢真
その装甲、無機物だよなぁ? 来い、坊主(*サールウァ)! やつらを大嵐に変えて吹っとばせ。陣組むってんならちょうどいい。集まってるってこったろ? 巻き上げてそのまんまベッコベコに砕き散らしちまいな。

命のサイクルを邪魔すんじゃねえよぅ。てめぇら《過去》が暴れるせいで、生きがいをなくしちまった命が何体いるんかってハナシさ。
人間だけのハナシじゃねえぜ。農業ってなぁ無数の命の源だ。育てられる植物・獣も命だし、そこに住む虫・鳥も命。収穫されりゃあ、もォっと大量の命を育むんだぜ。
邪魔されっと困んだよ。わかったら死んでくれ。



●いのちの輪廻が乱れたこの地で
「困るンだよなァ」
 うんざりした様子で、朱酉・逢真はため息をつき、頭をかいた。
「ホント、困ンだよ……いくら叩いても潰してもきりがねぇ。てめぇら病毒か?
 いや、それよかひどくてしつけェな、ひひ。俺だってそこまでねちっこくない」
 逢真は嘘を言わない。嘘を言うような必要が彼にはないからだ。
 偽証は人間がやること。実に愚かな習性だが、それもまたいとおしい。
 神である彼にそれは必要ない。強がる必要も何かを隠す必要もないのだから。
 ただあるがままに権能を振りまき、あるべき輪廻を調える機構者には。
 だから、彼の言葉はまったくの真実。逢真は心の底から辟易していた。
「命の輪廻(サイクル)を邪魔すんじゃねえよぅ。なあ、聞こえてるかい?
 過去(てめぇら)が暴れるせいで、生きがいを亡くした命がどれだけ在ったか」
 しかしやんぬるかな、鋼鉄の獣どもはそんな神の愚痴に取り合わない。
 ガン、ガンと威圧的に鋼鉄の胸部を鳴らしながら、猛然と突き進んでくる。
 説いて止まらぬことなど百も承知。そのための知性があれらにはない。
 そして命も、ない。命なき機械、命を終えた屍。実に鬱陶しい、ノイズだ。
「ああ、ああ。そうかよ。仕方ねぇ――坊主! やんちゃしてやりなぁ!」
 空に、地に、逢真の声は遠く深く染み込んだ。すると嵐があった。
 渦巻くは不浄の塊。この世の汚濁と邪悪を煮詰めたような理不尽の顕現。
 オオオオン……と、神話に伝わる恐るべき巨人じみた咆哮が轟く。
 それは風だ。意志があるかどうかはわからない。人間の尺度では測れぬ。
 本来"それ"――つまり悪魔サールウァは、そういう次元の存在だ。
 悪魔などというカテゴライズ自体が、"それ"を縛る枷のようなものである。
 言葉には尽くせぬもの。
 絵筆にも記せぬもの。
 しかし"それ"は意志を持ち、台風の化身としてこの場に顕現した。
 ごうう、とすさまじい局所的酸性雨が降り注ぎ、鋼を一瞬で蝕んだ。
 人間が触れれば肉はおろか、骨すらも一瞬で溶解されるだろう超・強酸。
 脆くなった鋼鉄を、巨人の張り手じみた突風が塵めいて吹き飛ばす。
 めきめきとひしゃげた鋼鉄の残骸は、粘つくつむじに持ち上げられ飛んだ。
 それは見方を変えれば、無邪気な子供が玩具で遊んでいるように見える。
「ひっひひ! 集まってるからそうなンだよなあ」
 大嵐の一部に分解されていく残骸どもを見つめ、逢真は言った。
「なあ、覚えとけよてめぇら。命ってのは何も人間だけのハナシじゃねえんだ。
 育てられる植物、獣も、そこに住む虫も鳥も、土も何もかもいのちなンだよ」
 逢真は死を運ぶ。それは新たな死を生み出すためである。
 虫は草を食むが、やがて死ねば大地を肥やすいい滋養となる。
 糞害を撒き散らす鳥も、人間にとって有毒な虫を喰う益鳥の側面を持つ。
 育った植物は言わずもがな人間の食物、あるいは獣の餌となるだろう。
 世界はそうやって出来ている。だが、オブリビオンはそれを引き裂く。
 ようやく輪廻が糺されようとしているのに、それを台無しにされるのは困る。
 だから逢真は、いつになく饒舌な様子で言い続けた。
「無数のいのちの源を、踏みにじるんじゃねえよ。わかったら死んでくれ」
 呼応するように、不浄の申し子の咆哮が嵐めいて轟いた。
 その雨もまた、荒野を潤し新たな命を生み出す苗床となるのだ――。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーオ・ヘクスマキナ
ホンット、間が悪い!
ようやく荒野に緑が芽生えようとしてるってのにッ
それはきっと、キレイな光景になる。……邪魔はさせないよ!

UCを起動し、"ブリキの木樵"と化した赤頭巾さんと共に敵集団へ突撃
向こうがジェットでダイナミックこんにちわするってんなら、こっちも実力で「お出迎え」しようか

木樵モードの赤頭巾さんに敵機の動きを牽制してもらいつつ、背部ウェポンラックを足場に操縦者? のゾンビをザ・デスペラードの榴弾で吹き飛ばす手出しが難しいようなら、他の猟兵に任せて俺自身も敵の動きを牽制しつつライフルで少しづつ削っていく

「いらっしゃいませー! でもお帰りは真後ろ180度でぇすッ!!」



●銃声のララバイ
 BRATATATATATAT! BRATATATATATATAT!!
「ああ、ああ、ホンットにもう、間が悪いったらありゃしない!!」
 帽子を抑え、もう片方の手で機関砲を薙ぎ払うようにばらまきながら、
 リーオ・ヘクスマキナは毒づいた。その背中を、"赤ずきん"が守る。
 彼らは孤立無援。敵のど真ん中に自ら飛び込み、全方位を囲まれている。
 そのおかげで、敵の群れの注意は農場からリーオたちに切り替わっていた。
 まずはそれでいい。何よりも重視すべきは、あの農場の防衛だ。
 リーオの苛立ちは、敵に囲まれたことではなく奴らの間の悪さから来ていた。
「どうしてそう、やる気になった人たちを苦しませようとするのかなあッ!
 ようやくこの荒野に! 緑が、人々の営みが芽生えようとしてるってのに!!」
 BRATATATATATATATAT!! BRAKKA!!
 機関砲を榴弾モードに切り替え、コクピットごとゾンビを吹き飛ばす。
 あるじを失った鋼鉄の獣はびくびくと不気味に痙攣し、膝を突いて爆散した。
 そして空いた間隙を、恐るべき杭打機を携えた"赤ずきん"が切り開くのだ。
「俺、別にこの世界の住人じゃないけどさあ。……ウンザリなんだよね、ホント」
 どこまでも広がる荒野。風が運ぶのは爽快ではなく滅びの残滓と予兆。
 遮るもののない青い空は、見上げれば見上げるほど嫌気をもたらす。
 そんな世界で人々は、半ば自暴自棄めいて「今日」を守り続けてきた。
 生き延びている。……言葉にしてみれば前向きではある。
 だが現状はそうもいかぬ。あの営みのどこに希望があろうか?
 日々の食事にすら事欠き、穢れていない水を集めるのにすら苦労する。
 リーオはそんな景色が大嫌いだった。どこまでも続く青と茶を心底嫌った。
 この地には、もっと「緑」がなければいけない。
 瑞々しく、人々に「明日」を感じさせる。そんな希望の色がなければ。
「邪魔は、させないよ。赤頭巾さん、牽制よろしくッ!」
 赤ずきんはその言葉に応じ、爆発的速度で踏み込み武器を振るった。
 敵の包囲が徐々にこじ開けられる。がら空きのコクピットに照準をセット。
「また新手? いらっしゃいませ!! お帰りは真後ろ180度でぇすッ!!」
 パシュウ……KA-BOOOOOOOOM!!
 ジャックポット! ド命中した榴弾が大爆発を起こし連鎖破壊!
 マナーの悪い"お客様"への"お出迎え"としては、これ以上ない派手さだ。
「さあて、まだまだお客様はお待ちだ。竜巻みたいに派手に行こうかァ!」
 弾丸と爆炎が渦巻き、鋼鉄の獣を飲み込んで炎の華が咲く。
 リーオは、この世界の何処までも続く青と茶を嫌っていた。
 だがこの無骨で荒っぽい赤は、彼にとって特にお気に入りの色だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

フォルク・リア
振り返って人々の様子を確認し
「此処さえ抑えれば向こうは大丈夫の様だね。」
さて、人々の前に現れたんだ。
一体たりと逃す積りはない。
尤も逃げるという発想があるか分らないけど。

敵の注意を引き付けるために
敢えて敵の集団の中へ。
【残像】を発生させたり、
乱戦の中で敵の反応速度の速さを逆に利用し
敵の身体を盾にする等で攻撃を躱しつつ
レッドシューターで発生させた炎を目くらましにすると共に
炎で敵の気を引く。
周囲の敵の動きは良く観察して【見切り】
此方を攻撃する事を重視しすぎて守りの疎かに
なった個体の操縦者を狙って蒼霊焔視を発動。
一体づつ仕留める。
「死者はそのまま消えゆく運命。
生者が明日に希望を持っているなら尚更だ。」


アリシア・アートレイト
【WIZ】共闘、アレンジ歓迎

この畑らは彼らの明日への糧であり希望であります。
それを踏みにじると言うのであれば、是非もありません。
神の敵として、討滅いたしましょう。
…いや、屍を操っている時点で十二分に神敵なのですが!


とにかく畑に近づけない事を最優先に。敵の侵攻を阻みましょう。
先制でUC「イグニート・ブレイヴァー」を放ち、可能な限り多くの敵を狙いましょう。
【高速詠唱】【属性攻撃】で聖なる光の魔法弾を速射し牽制、畑に近づけさせないよう努めます。
畑へ抜けそうな個体が居たら周囲に呼びかけて注意喚起を。

戦闘後にクークーさんやアドルフさんが怪我をしたら手当を。
畑が痛んでしまったら修繕を手伝いましょう。


レムリア・ザラタン
人々にとっての気付け、か
もはや破滅の一途を辿るばかりの世界にしか見えんが、そんな世界にも希望を生み出せる力が猟兵にはあるというのか…興味深い
ならば彼らが一条の希望となる様、彼らの傍で見届けさせてもらおう

さて、状況は差し迫っている
十全な迎撃態勢は望むべくもないが、それなら戦いの中で整えるまでのこと
ミサイルで農場への突入を牽制し、迎撃のために周辺の情報、及び敵部隊の行動の情報収集を終えるまで時間稼ぎを行う
こちらを狙う攻撃は、アンカーの重力操作を利用した武器受けやバリアを用いた盾受けで凌ごう

敵機、全捕捉し反撃開始だ
射撃管制をヘッジホッグに
対空レーザー全基で弾幕を張る
農場には被害を出すなよ…放て!


ウーナ・グノーメ
アドリブ・連携◎

「焼畑農業も確かにあるのですが、ここはあなた方を肥料にした方が良さそうなのです」

妖精はそう告げると、迫り来る殺戮機械群を睥睨した。
操縦者の状態は【読心術】によって理解する。
機械に強引に脳を活性化させられた死体。

「道具に振り回される哀れな骸。今、解放してあげるのです」

操縦席のゾンビに対し、妖精は超能力の中でもテレパスと呼ばれる力を応用し、その虚ろな【精神を攻撃】し、掌握を試みる。
成功すれば、操縦の誤作動や同士討ちを誘発を狙う算段だ。

「牙を剥け」

同時にUCが発動し、空中に無数の鋭利な砂岩が現れる。
数百にも及ぶ岩の矢が、【念動力】による【吹き飛ばし】で加速され、嵐のように降り注いだ。



●その安寧を守るために
「ち、畜生……これだから、これだから嫌になるんだよ」
 古びた散弾銃を手に、アドルフはうわ言めいて何度も同じことを呟いた。
 毛むくじゃらの熊のようにたくましい男だが、その手はかすかに震えている。
 機関銃を携えたクークーは、それに気づいたが指摘はせずにしておいた。
 彼はこの拠点でも古株で、今の状況では人々のまとめ役のようなものだ。
 そんなアドルフが、恐怖を抑え込もうとしている理由。
 それがわからないほど、クークーは愚かでも機微に疎くもない。
「何かをやろうとすると、奴らは来やがる。そして何もかもバラバラにするんだ。
 今回もこれかよ、くそっ。今回こそ……今回こそ、うまくいくと思ったのによ」
「大丈夫」
 クークーは言った。言い聞かせるのでも、なだめるのでもなく。
 強い確信を込めて、胸を張るように自信をたたえた声音で言ったのだ。
「あの人たちは、絶対に負けない。でも、それにたよりきりじゃいけないの」
 クークーは回想する。己が猟兵たちに救われたときのことを。
 ゾンビの大群に襲われんとしていた拠点で、ただひとり彼女が襲来を察知した。
 もしも到達すれば、拠点は壊滅する。だから彼女は拠点を発つことを選んだ。
 逃げるためではない……自ら身を挺して、ゾンビの群れを止めようとしたのだ。
 そんな自棄的な行いを諌め、ともに戦ってくれたのが猟兵たち。
 それから彼女は、猟兵という存在を知らしめるため、旅を続けてきた。
 旧時代のラジオめいた自らの端末を配り、吟遊詩人のように語り聞かせるのだ。
「明日のために戦おうとするなら、あの人たちは力を貸してくれる」
 猟兵。奪還者とよく似た、しかし異なる人々。
 物ではなく、場所でもなく、奪われた「明日」を取り戻すために戦うものたち。
「――だからワタシたちも、諦めたらダメ。アドルフおじさん」
 少女の瞳には、強い意思の煌めきがあった。
 アドルフはそれ以上何も言わず、唾を飲み、頷いた。
 そしてまたひとつ――彼方の防衛線に、新たな炎が生まれた。

 降り注いだのは、大量の炎の剣とミサイルの雨であった。
 数は五百をゆうに超える。これだけで、並にオブリビオンは即殺だろう。
 炎の剣を生み出したアリシア・アートレイトは、ふと背後を仰いだ。
 遠く、農場には人々が見える。最悪の場合に備えて戦おうとする人々。
 もしも自分たちがここから少しでも下がれば、戦禍は彼らを飲み込むだろう。
(……それだけは避けなければ)
 アリシアは最悪の可能性を振り払い、改めて前を見た。
 地面に突き立った聖なる炎の剣は、いわば馬防柵、あるいは有刺鉄線だ。
 この先へは決して通さじ。アリシアの決然たる意志を表明する燃える杭。
 総攻撃によって立ち上った噴煙が少しずつ晴れていく……。
「……やはり、時間稼ぎにしかならんか。来るぞ!」
 先んじて言ったのは、周囲にAR映像を展開した少女であった。
 荒野の煤けた風になびくウェーブヘアは、頭上の空のように青々としている。
 けれどもその可憐な双眸には、油断ならぬ戦士の緊張と警戒が見て取れた。
 ヤドリガミであるレムリア・ザラタンは、ただの少女などではない。
 横顔は若々しく、しかし歴戦の兵士のように不思議な陰をたたえていた。
 そんな彼女の警戒の一声は、ほどなくして現実のものとなる。
 薄れゆく土煙の向こうから来るもの――あちこちを負傷しながらも無事な敵の群れ!!

「道具に振り回される哀れな骸。眠ることも許されぬとは」
 そんな鋼鉄の獣どもを……正しくは棺桶じみた獣どもに押し込められた、
 もはや物言うことも考えることも不可能なゾンビどもを睥睨し、
 ウーナ・グノーメは嘆息した。その声音には少なからぬ憐憫が感じられた。
 フェアリーの小さな体躯でありながら、放たれる威圧感は並のものではない。
 彼女はこの戦況を俯瞰し、敵の配置、移動速度、兵力をつぶさに分析している。
 いまの飽和攻撃が与えたダメージは、敵戦力の半分も削れてはいまい。
 そもそも、あの鋼鉄の獣どもは尋常の兵力で測れるようなモノではないのだ。
 負傷を厭わず、自分自身が爆砕しようと攻撃をやめようとはしない獰猛さ。
 獣にすら劣る。獣は、傷つき不利を悟れば生存を躊躇なく選ぶからだ。
 盲信に取り憑かれた人間ですら、斯様に無謀な突撃を敢行はすまい。
 戦士としては取るに足らぬ猪武者。だが、今の状況にはあまりにも相性が悪い。
 いや、"良すぎる"というべきか……焦土作戦にこれ以上の適材はあるまい。
「焼畑農業もたしかにあるのですが、ここはあなたがたを肥料にするのです」
 ウーナはそうひとりごちると、意識をゾンビどもへと集中させる。
 精神波はちりちりと火花のように伝い、コードに繋がれた死者どもに繋がる。
 もはやそれらに知性はない。知性の泉となるべき脳髄がないのだから。
 それでもこびりついた精神の残滓は、あるひとつのメッセージを伝えていた。
「――いま、解放してあげるのです」
 死者たちはみな、鋼鉄の棺桶の束縛から解き放たれることを望んでいたのだ。
 ウーナはさらに意識を集中させ、ゾンビを通じ鋼鉄の獣を掌握しようとする。
 しかし無骨な装甲の下に隠された自衛プログラムが彼女を阻む。
 精神波をはねのけ、逆にウーナのニューロンを破壊しにかかったのだ……!
「ふむ。なるほど、統率の取れた動きの理由は、共通したシステムのおかげか」
 そんな敵の只中に、まるで最初からそこにいたかのように男がひとり。
 フードを目深に被っているため、相貌で伺い知れるのは口元ぐらいのもの。
 しかし背格好と体つきから見て、どうやら男であることに間違いはない。
 術士でありながら、先の飽和攻撃に乗じて敵の只中に侵入していたその男は、
 しかして一瞬にして姿を消し、また別の場所に出現してみせる。
「どうした? 目の前に敵が居るんだ。叩き潰すべきではないかな」
 フォルク・リアは至極真面目くさった口調で言うと、肩をすくめてみせた。
「来ないならば――俺が、君たちを破壊してしまうよ」
 言葉に応じたのは無数の拳。赤熱したマニピュレータを有線射出!
 さらに反射速度を増した鋼鉄の獣どもが、フォルクを圧殺しようとする。
 だが、疾い。術士であるはずのフォルクの体捌きは達人のそれであった。
 残像すら生じさせるほどの速度で敵を翻弄し、視線を通じて蒼の炎を送り込む。
 死体を起点に燃え上がる蒼炎は、魂を灼く破邪の蒼藍。
 いわば存在そのものを灼き尽くす、抗うことの出来ない熱であった。
「死者はそのまま消えゆく運命。生者が明日に希望を持つならばなおさらだ!」
 敵の注意がフォルクに注がれる。それが、ウーナにとっての隙となる。
 少女は再び意識を集中させ――今度こそ、ゾンビを通じそのシステムを掌握した!

「! ……オブリビオンが、同士討ちを……?」
「誰かは知らんがうまくやったな。好機だ」
 驚くアリシアに対し、レムリアは即座に状況判断した。
 防御に回していたバリアの出力を、自らの射撃管制システムに注ぐ。
「さきほどの範囲攻撃をもう一度だ。いけるか?」
「……神の敵を滅ぼすためならば、わたしは何度でも炎を生みましょう」
 アリシアの言葉にうなずき、レムリアはユーベルコードを発動した。
 華奢な体躯を取り囲むのは、ハリネズミめいた無数の対空レーザー砲!
「敵機、全捕捉。さあ反撃開始だ――Hedgehog,Ready to Fire!!」
 閃光――そして光芒! 歪曲したレーザーが雨あられと降り注ぐ!
 システム掌握によって同士討ちを始めた敵の群れは、これを回避出来ない!
 分厚い装甲すら溶解貫通する超高熱のレーザーがすべてを薙ぎ払うのだ!
「あの畑は、彼らにとっての明日であり、希望。それを踏みにじるならば――」
 アリシアはありったけの聖なる魔力を汲み上げ、かたちとした。
 女の周囲に無数の魔法陣が生まれ、そこから神なる炎の剣が放たれる。
「死者の眠りを妨げし者どもよ、我が祈りと誓いに呑まれ討たれなさいっ!!」
 太陽のごとき炎を纏いし戦乙女の剣は、慈悲深き死を骸にもたらす。
 再びの飽和攻撃。その量は先の倍以上。敵戦力は今度こそ瓦解する!
「なんとも派手なものだ――さて」
 その絨毯爆撃じみた攻撃をかろうじて避けたフォルクは、農場を見やった。
 驚嘆すべき光景を前にして、しかし人々は怯えも震えてもいない。
 もしも己らの出番が来たとしても、猟兵らと同じく戦えるようにと。
 武器を携え、目をそらすことなくこの戦いを見守っている。
「――向こうは大丈夫のようだ。では、もうしばらく働くとしよう」
 呟いた男の口元には、薄い笑みが浮かんでいた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

茜崎・トヲル
うーん、空気よまねーやつら。あっ、ゾンビだからよめねーのかな。
まいっか……おじさんも子供さんもがんばってる、ラジオのひともがんばってる。
ふふは。しあわせになろうとしてるんだ。邪魔させないぜー。

ツバメってめっちゃはやいんだぜ。知ってる? 敵から逃げるときはもっとはやいんだ。知ってた? 車よりはえーの。
だから飛んできた装甲なんてかんたんに避けられるよ。あたってもいいんだけどさ。痛くないし。治るし。でも時間取られるじゃん? それは困るンだよだって一秒でひとは死ぬもの。

避けてー、上を取ってー、ウォーハンマーで乗ってるヤツをぐしゃっとつぶしてあげよう。わざわざ運転させてるんだもんね? 大事なんでしょ?



●間が悪いものども
「空気よまねーやつらだなー。……あっ、ゾンビだからよめねーのかな?」
 ウォーハンマーを肩に担ぎ、茜崎・トヲルは呑気な調子で言った。
 気が抜けているわけではない。ただ彼は色々と"特殊"なだけなのだ。
 向こうに回すは大量の鋼鉄の獣。その数は、まだまだ増え続けている。
 この襲撃を計画した頭目の、人類への憎悪と殺意のすさまじさたるや。
 もっともトヲルに言わせれば、「よくもまあ丁寧に」といったところか。
 まあ、いい。いちいち敵の事情や感情を察するのも面倒だし、無意味だ。
 トヲルは頭の中でそう考え、こきこきと首の骨を鳴らした。
「ふふは」
 そして向こうからやってくる敵の数を見て、気の抜けたような笑い声。
 多い。そして、疾い。まさに猪突猛進と言うべき突進速度。
 彼奴らに個は存在せず、そして生存無事を求めるつもりもない。
 搭乗者ですら、替えの利く意志を失った屍の群れなのだ。
 己を爆弾代わりに特攻し、人類の拠点を叩き潰せればよし。
 ダメで元々、自分がダメでも後続が目的を達成すればいい……。
 実に、醜い。だがトヲルは、へらへらとふざけたような笑みを浮かべていた。
「おっせえなあ、あいつら」
 彼の笑みの理由は、他の誰にも理解できないものだった。

 トヲルの脳裏に蘇ったのは、空を舞うツバメの姿だ。
 鳥は自由の象徴だ、などとたわけたことを抜かしたのは誰が最初か。
 鳥ほど必死に生きている者はいまい、とトヲルは思う。
 自由に見える飛翔はしかし、懸命な羽ばたきによって生まれている。
 風を読み、かそけき巣を隠し通し、毎日を懸命に生きている。
 この世界の人々と同じだ。それを、あんな"もの"どもが叩き潰す。
「おっせーよ、あんたら。ツバメみたいにもっと疾く動けばいいのにな」
 飛来した拳をふらりと避けて、間合いを詰めて勢いを乗せた戦槌の一撃。
 衝撃がトヲルをふわりと宙に浮かばせる。突き刺した槌を支点にした回転だ。
 テコの原理で頭上を取ると、トヲルは勢いそのまま槌を引き抜く。
 ぐるりと空中で一回転――全体重と膂力を乗せた一撃が、羽によって加速する。
 ツバメをイメージする。それに彼の肉体が応え、しなやかな翼が生えたのだ。
「今回は、当たってやるわけにはいかねーんだよなあ」
 ぐしゃんッ!!
 衝撃音は、彼の呟きをかき消すほどに盛大で耳に障るものだった。
 文字通りに"凹んだ"機体を足蹴にして、トヲルは次の敵へと降り落ちる。
「おじさんも子供さんも、ラジオのひとも、殺させらんねーんだわ。ふふは」
 しあわせになろうとしている人たちが、この背中の先にいる。
 どうせ死にもしない、そもそも生のなんたるかに疎んだ己とは違う。
 短い生を、それでも彼らなりに必死に生きようとしているツバメたちが。
「おれとあそぼーよ。同じ死にぞこない同士さ」
 返り血めいたオイルを顔に浴びて、トヲルが浮かべた笑みは凄烈だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

スイカ・パッフェルベル
この世を動かす力は希望である。

敵を前に帽子を被り、タイを緩めて

やがて成長して果実が得られるという希望がなければ、
農夫は畑に種を撒かない。
農耕文化が永遠に失われるのは大いなる損失。手を貸そう

手始めに即席魔杖I1をすいと向け、複数敵に全力魔法ぶっぱ
…範囲拡大と最大出力ではやはりこうなるか
魔力が切れたI1を投げ捨てM1を抜き、
腰溜めに構え、ばこんばこんと全力魔法ぶっぱ
ユベコが来るまではそれで良かろう

ユベコで能力を上げたら?
よかったな…で…それが何の役に立つ!
肉挽き機。農場以外の地形と捨てたI1・M1魔杖、
敵の残骸を巻き込み大量生産の時間だ
M1が8、I1を2の比率で生産し全魔杖を魔力切れまで撃たせる!



●大魔道、かく語りき
「"この世を動かす力は希望である(Everything that is done in the world is done by hope.)」
 いささか大仰にも思える魔女帽を被り、タイを緩める。
 スイカ・パッフェルベルは、物言わず思考もしない鋼の獣どもを見渡した。
 それはまるで、愚闇な教え子に世の道理を釈かんとする教師めいてもいる。
「知らんか? 有名な言葉だ。ちなみに、そのあとにはこう続く」
 敵は動かない。スイカの動きを窺っているのか、警戒か。
 まさか、本当に彼女の言葉を拝聴しているとでもいうのか?
 猪武者めいて農場を目指すはずの獣どもは、微動だにしなかった。
「"やがて成長して果実を得られるという希望がなければ(No husbandman would sow one grain of corn,)"」
 ……鋼鉄の獣どもは動かない。己の損壊を厭わぬ獣どもが、微動だもしない。
 拝聴? まさか。警戒? そんな知性は奴らには存在しない。
 動かないのではない。"動けないのだ。
 目の前に立つひとりの女、ただの女が持つ魔力があまりにも膨大すぎるゆえに。
 知性なく、理性なくとも、鋼鉄の獣どもは理解していた。
 否、もはや自動的な反応だ。壁にぶち当たれば虫でも立ち止まるように。
 彼我には、それほどの差が存在していたのである。
「――"農夫は、畑に種を蒔かない(if he hoped not it would grow up and become seed.)"」
めきめきと音を立てて、荒野の地面を割って若木が芽生えた。
 否、それはスイカの魔力が編み上げた"即席魔杖"だ。
 死したこの大地そのものを依代として、いま作り上げたできたての杖である。
 スイカはねじくれたそれを引き抜くと、無造作に敵の群れに向けた。
「消えろ。貴様らの居場所は骸の海だ」
 まるで人間がアリを踏み潰すかのように。
 莫大に過ぎる魔力の片鱗が、杖を通じて膨れ上がり、そして炸裂した。

 敵が、消えた。
 圧倒的破壊は閃光を生み、そしてガラスめいたクレーターのみを残す。
 だがスイカには、その惨劇じみた様相ですら不足に感じるらしい。
「……いかんな。これだと農場まで巻き込みかねん」
 言いつつ魔杖を放り捨て、新たに生み出したもうひとつの魔杖を掴み取る。
「どうした。駄犬のように立ち尽くして吹き飛ばされるのが貴様らの仕事か?」
 炸裂。今度はより威力を抑えた、銃のように"撃ち出す"やり方だ。
 純粋魔力は火球じみて凝縮され、複数の敵を飲み込んで破裂した。
 敵はようやく金縛りから解き放たれたように動き、そして散開する。
 しかし、遅い。この大魔道を前にしてはあまりにも愚かで稚拙である。
 もっとも、彼女にとっては有象無象の残骸がみなそのようなものなのだが。
「そうだ、もっともっと広がってみせろ。そのほうが"当てやすい"!」
 スイカは役目を失ったもうひとつの魔杖をも投げ捨てた。
 そして両手を大きく広げ、より広範囲の大地に、そして残骸に干渉する。
「農耕文化を永遠に喪失させようとする愚か者どもめ。消えて去れ!!」
 魔力が、大地の底から渦を巻いて起き上がり、そして空へと吹き飛んだ。
 投げ捨てた魔杖と、見える限りの大地を依代とした一大魔術!
 "敵を吹き飛ばす"というあまりにもシンプルで暴力的な魔力の奔流が、
 散開などという賢しらな悪あがきをあざ笑うようにすべてを吹き飛ばす!
「貴様らでは、叩いて潰して畑に蒔く役にも立つまいな」
 どこまでも傲岸。そして不遜。
 しかしそれを驕慢とは言い難いだろう。
 彼女には、それだけの力と才覚が備わっているのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

鳴宮・匡
トラブルには事欠かないな、この世界も
まあいい、早々に片付けるか

知覚機能と並列演算能力を調整して、戦場全体を把握
防衛線を回り込んでくる敵や手薄な方面を突破しようとするやつを相手取る
他にも人手があるなら、協力して事に当たろうかな

脚部装甲の継ぎ目を狙って、進軍の速度をまずは鈍らせる
バランスを崩したやつから、動力部を撃ち抜いていくよ
もしくは他のやつと交戦している敵を狙えるなら
積極的にそちらを狙って墜としていく
とにかく、まずは効率的に数を減らすことからだ

この営みを、昔なら無意味だと思ったんだろう
でも、今は違うんだ
それを無意味にさせないために、自分がいるんだと

……自己欺瞞かも知れないけど
今は、そう信じたい


リア・ファル
SPD
アドリブ共闘歓迎

「Dag's@Cauldron」、お呼びとあれば、即参上!

UC【神出鬼没の緊急配送】で戦線へエントリー!

「戦線の維持構築なら、ボクがやるよ!」

味方の猟兵へ、アイテムを補給しつつ、
持ち込むのは、対機械型オブビリオン用の凍結ナノマシン群だ!

これを『イルダーナ』から空中散布!
(空中戦、範囲攻撃)
制御系は文字通り凍結(フリーズ)してもらおうか!
(ハッキング)

停止し残骸になる位置は、ボクが演算して
ナノマシンに連携、即席の防壁に利用させてもらおう
(早業、拠点防御、集団戦術)

防衛戦が機能すれば、上空から『セブンカラーズ』で
援護射撃だ

「今を生きる誰かの明日の実りの為に
 迎撃開始だ!」


シャルロット・クリスティア
この荒廃した世界でも、少しずつ人々は歩みを進めている……。
止めさせるわけにはいきません。
防衛ラインを構築します!
さすがに罠を張っている時間はない、重火器の射程を活かすしかないですね。
近付かれる前に、片っ端から叩く!

装甲はそれなりに分厚そうですが、関節部に隙間があればコクピットも露出している。
狙える場所は多い。
迅雷弾での狙撃で脆い箇所を撃ち抜きます。
この弾丸の長所は長射程と高貫通力ですが……帯電している弾丸です、内部構造をショートさせることが出来れば、より効率的に無力化もできましょう。

多少の打ち漏らしはこっちで落とす。
他の猟兵さんたちには、狙いやすいところからどんどん仕留めてもらいたいですね。


ネグル・ギュネス
応。
其の言葉、其の信頼、応える為に来たぞ
久しいな、ラジオの。

此処から先は、任せ──いや、見て覚えてくれ、どうしたらあの類を破壊できるかを

行くぞ、【強襲具現:深き海の瞳】起動
点火タイミング、装甲展開の稼働を見切り、素早く関節部に射撃
僅かな異物でも入り込んだら、機械は不具合を起こしやすい

そして陣形を組もうとしても、もう遅いよ
「覚えた」から、動き、稼働の瞬間も

脚部分、関節、接合箇所
故に、弾丸の雨を降らせ、削り倒して行こう

覚えたか?なら射撃出来る奴は射撃だ、投石でも良い
キッチリぶっ叩いてやれ
俺たちは無力じゃないし、てめぇらにくれてやるもんは何も無いと

そうだ、結局は自分たちでいつから何とかしなきゃだから



●滅びが群れなして来るならば
「わああん、わああん!」
「怖いよぉ……!」
「やだやだやだ、やだぁ!」
 農場には、幼い子どもたちが多くやってきていた。
 そもそもこの農地建設に、すべての拠点住民が賛同していたわけではないのだ。
 アドルフのような年配者は、とくに頑迷な反応を示す者が多かった。
 そのほとんどはクークーや、彼女に同調した若者たちの説得、
 あるいは他ならぬアドルフが再起した姿を見て納得したが、すべてではない。
 現時点でも、すべては無駄だと吐き捨てて拠点でふてくされている輩もいる。
 それゆえ、開墾作業に名乗りを上げたのはほとんどが若者ばかり。
 その中の何割かが、真新しさに惹かれてやってきた幼子たちだったというわけだ。
 そもそも彼らのほとんどは、農業というものをすら知らない。
 子どもたちにとって、この日は楽しく新たな遊びの日でもあったのだろう。
 しかし――はじめて触れたみずみずしい土の感触も、種の物珍しさも。
 誰かと一緒に田畑を切り拓く大変さと喜びも、すべて吹き飛ぼうとしていた。
 恐怖と絶望が、すぐ目の前まで迫っていたがゆえに。
「だいじょうぶ、だいじょうぶだからね」
 そんな子どもたちを、クークーはあやすように撫でてやった。
 泣きじゃくる男の子の背中をぽんぽんと叩いてやり、銃を背負って微笑む。
「大きな音、こわいよね。あの光も、なんだかおそろしいよね」
「うん……」
「でも、心配しないで。あれはね、ワタシたちを守ってくれてる光なんだよ」
 閃光、爆炎、そして衝撃音と炸裂音。
 戦場じみたそれらは、子どもたちにとってはひどくストレスフルだ。
「だからどうか、恐れて目を閉じないで。あの人たちの戦いを、見てあげて。
 ――それが、あの人たちよりもずっと弱いワタシたちにも、出来ることだから」
 慈悲をたたえた少女の言葉に、涙を浮かべつつも男児はこくんと頷いた。
 アドルフはそんなクークーたちを眩しそうに見つめ、すぐに目を防衛線へ移す。
「……くそっ。昨日まではなんにもしたくなかったってのによ」
 手が震えている。恐怖に? それもある。だが……。
「いざ鉄火場に放り込まれてみりゃ、こんなにも何かをしたくなるなんてな。
 我ながら現金なもんだぜ。役に立ちたくて仕方ねえ、くそっ!」
 吐き捨てて、しかしアドルフは言った。
「負けるな」
 そして叫んだ。
「負けるな!! どこの誰かも知らねえ、だが強え連中よ! 負けるな!!」
 その声はやがて、子どもたちにも伝搬し、誰もが叫んだ。
 猟兵たちを願う、祈りが彼らを団結させていた。

「…………」
「まだ、振り返って声援に応えるなんてのは無理な話か? 相棒」
 隣に立つ鳴宮・匡を一瞥し、ネグル・ギュネスはにやりと笑った。
「きっと勇気づけられるだろうな。あの子どもたちも、クークーも」
「……そういうのはお前のほうが向いてるだろ。俺のガラじゃないよ」
 ネグルの軽口に応える匡の声に、呆れや鬱陶しさはない。
 真面目くさったその物言いも、匡にとっては相棒と交わす軽口なのだ。
「それに、"そういうの"が向いてるのは他にもいる。俺がやってもな」
 匡がちらりと空を仰ぐ。うんざりするほどの青空に黒い点がひとつ。
 それはあっという間に近づいてくる――リア・ファルが乗るイルダーナだ。
「"Dag's@Cauldron"、お呼びとあれば、即参上! ……って、あれ」
 颯爽と駆けつけたリアは、きょとんとした表情でふたりの顔を覗き込んだ。
「え、何? ボク割と遅れた系? どうしたのふたり揃って」
「ネグルがくだらないことを言ってただけだよ」
「くだらないことかなあ? 悪くないと思うんだけどな、そういう相棒も」
 とぼけたような会話に、リアはくすりと吹き出した。
「ふたりとも、いつもどおりだね。うん、ならボクもいつもどおりにいこうか!」
「……あ、あのう」
 と、そんな三人の後ろで、若干伺うような声。
 振り返ればそこには、シャルロット・クリスティアが立っていた。
「シャルロットじゃんか。手伝ってくれるのか?」
「ええ。私も、人々の歩みを止めさせるわけにはいきませんから」
 面識のある匡は、シャルロットの言葉にしばしその目を見つめた。
 ……思えばかつては、こうして誰かの目を見つめることも避けていたか。
 必要ない、とうそぶくのはもうやめた。恐れることも、もうやめた。
 少女の真摯な眼差しは、ひとでなしにとっては眩しいぐらいに輝いて見える。
 一方でシャルロットもまた、その深い海のような瞳をまじまじ見つめた。
 いつかに肩を並べたときよりも、いっそう穏やかになったように見える。
 ……などと偉そうに語れるほど、己は彼を知っているわけではない。
 だが、どう表現すべきか……もしも彼が"意外な言葉"を言ったとして、
 自分は前ほどには驚かない。そういう漠然とした確信があった。納得とも言うか。
「リアさんが戦線を維持するならば、サポートは私が」
「オーケー。シャルロットが手を貸してくれるなら頼もしいよ」
 言いつつ匡は、ちらりとネグルを一瞥した。ネグルは言葉なく頷く。
 あれこれ作戦会議する必要はない。ふたりの間ではなおさらに。
「弾丸の雨を降らせてやろう。ただどうせなら、もう少し手が欲しいな」
 そしてネグルは振り仰ぐ――他ならぬ、農場を守る人々を。

 敵の数は多い。そのうえ、彼奴らの装甲は分厚く堅牢だ。
 たとえ万の雨を降らせたとて、その歩みを完全に止めることは出来まい。
 まさしく大地すべてを焼き尽くさねば、あれらは止まらないだろう。
 ならばどうするか。射手たちが出した答えは、シンプルなものだ。
「見えるならば、届きます。届くならば――止められる」
 シャルロットの放った迅雷の弾丸が、狙い通りに敵関節部を撃ち抜いた。
 脚部が爆砕し、猛進していた敵はつんのめってごろごろと地面を転がる。
 無様な同個体を足蹴にして跳躍する後続敵二体。疾い!
「そんな程度で、俺らを飛び越えられると思ったのか?」
「嘗めてくれるな。この"瞳(め)"が、見逃すものかよ!」
 匡、そしてネグルは未来予知していたかのようにこれに対応する。
 頭上を飛び越えようとした敵二体を、それぞれが弾丸で迎撃。
 針の穴を通すような精密射撃で動力部を撃ち抜かれた敵は空中で爆散した!
 ぱらぱらと降り注ぐ残骸を、空を飛ぶリアが"掃除"していく。
 それは、彼女が演算し生み出したナノマシン群による分解だ。
「第三波、来るよ! 数は不明! シャルロットさん、割り出せそう?」
「……ざっと50、いえ60体ですね。そこから500メートル後方に第四波。
 ここからは私たち三人では限界があります。そろそろ"援護"が必要かと」
「同感だ。そろそろ、お手本も十分だろ」
 シャルロットの言葉に匡は頷き、ちらりと背後を見やった。
 ……銃を構えたまま、緊張した面持ちで構える農場の若者たちを。
「ほ、本当に俺たちにも出来るのか? あんたらみたいな芸当が」
「そっくりそのまま真似されたら商売上がったりだけどな」
 匡はそっけなく言い、ネグルを見やった。
 拠点の人々に支援を行わせる、というアイデアは、ネグルの発案だ。
 とはいっても、いきなり「やれ」と言って出来るはずもない。
 第一、第二波の迎撃は、猟兵たちの手本でもあったのである。
「……出来るよ。ううん、やらなきゃいけない」
 若者の言葉に応えたのは、匡だけではない。クークーも声をあげた。
「ここは、ワタシたちの拠点だから。頼りきりじゃ、明日には進めない」
 そうだよね、と問いかけるように、クークーはネグルを見つめる。
「それがわかってるなら、私がいまさら説く必要もないな」
 猟兵は"余所者(ストレンジャー)"だ。その手は無限に伸びたりはしない。
 世界の未来を掴み切り拓くべきは、あくまでそこに住まう人々。
 この農地が、彼ら自身の選び歩みだした一歩であるように。
「大丈夫だ、いまは私たちがついてる。なんなら石を投げてもいい」
 ネグルは人々を見渡す。
「見せてやるんだ。"俺たちは無力じゃないし、てめぇらにくれてやるもんはなにもない"と。あのふざけた連中に」
「……第三波、接近中! そろそろ射程内だよ!」
 リアの警戒の声に、会話は打ち切られた。
「撃ち漏らしはこちらで落とします。皆さんは狙うことだけに集中してください」
「弾丸ならボクが配るよ。対機械型オブリビオン用の凍結ナノマシン弾さ1
 これなら、当てさえすれば十分効果が出る。だからみんな、一緒に戦おう!」
 今を生きる誰かの明日の実りのために。
 明日を手に入れようとする人々のために。
「――……早々に片付けよう」
 匡はただそう呟き、ネグルの号令に応じて関節部狙いの狙撃弾丸を放つ。
 心のなかで思うのは、この無意味かもしれない行いへの懊悩だった。
 ……己ならぬ己が言う。これは無意味だと、かつてと同じように。
 ならば己は、相棒が言うように世界ではなく己自身に言い続けよう。
 無意味ではない。無意味などさせない。
 そのために自分はいる。彼らと肩を並べて戦うのだと。
「みんな、頑張って。ワタシたちにも、出来ることをやろう!」
 クークーの声が、集中した匡の耳に遠くの雷めいて流れ込む。
 銃声。銃声。銃声。弾丸の雨が敵を打ち抜き、転ばせ、爆砕せしめる。
 合理的ではない。だが意味はある。己にとっても、彼らにとっても。
 シャルロットの弾丸が敵の脚部を、腕を、飛来する拳を撃ち抜く。
 リアのばらまいたナノマシン群が、そして弾丸が敵をせき止める。
 ネグルの弾丸がコクピットを撃ち抜く。匡は鏡合わせめいてそれに同調する。
(……自己欺瞞かもしれない。それでも、俺は)
 そう思った時、隣に立つ相棒と目があった。彼は何も言わずに笑った。
 それでいいと、眼差しが伝えているかのようだった。
「荒廃した世界で、明日を信じる人々の邪魔は……決して、させません!」
 シャルロットの声が聞こえる。匡は頷いた。
 己もまた信じよう。この"こころ"を、そしてこの行為の意味を。
 いつかそれが、花開くのだと信じて。ただ、トリガーを引き続ける。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『大炎嬢』バーニング・ナンシー』

POW   :    心頭焼却
レベル×1tまでの対象の【首・腕・足を狙い、燃える右手で何れか 】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD   :    斬捨御炎
【業火を纏った剣による灼熱の斬撃 】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    木端炎陣
【全方位に放った灼熱の炎 】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【が広範囲で炎上し続け】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はピオネルスカヤ・リャザノフです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●この世のすべてを灼き尽くすまで
「ああ。熱い、熱い、熱い……!!」
 灼熱の炎に内側から燃やされ、女は悶え苦しむ。
 痛みが怒りを呼び、怒りが苦しみを増幅させ、そしてまた怒りを産む。
 尽きることのない炎。それは武器であり女にとっての永劫の苦しみだ。
「せっかく何もかも灼き尽くして憂さ晴らしをしようと思っていたのに……。
 猟兵、猟兵、猟兵! よくもアタシの邪魔をしてくれたな……ッ!!」
 文字通り燃え上がる瞳で、危険なレイダーは猟兵たちを睨みつけた。
 荒野に散らばる残骸すらも炭化し、大地をも焦がすほどの強烈な熱気。
「お前らに、アタシを苦しめるこの熱を、炎を冷ますことが出来るか?
 ……出来るわけがない。ならば死ね。全員燃え尽きて、炭に変わってしまえ」
 何故そうまでして、人の営みを潰そうとするのか。
 問われたとして、女はろくな答えを返すまい。
 オブリビオンとは"そうである"もの。
 存在の根本から世界と、生命と敵対する過去ゆえに。
「ふ、ふざけるんじゃねえぞ!!」
 猟兵たちの後ろ、散弾銃を構えたアドルフは叫んだ。
「ようやく、ようやく新しく始めようとしてんだ。おれらを、邪魔するんじゃねえ!!」
「……そうだよ。ワタシたちは、生きてるんだ」
 クークーもまた、憎悪にまみれたその目を睨み返した。
「焼き尽くさせたりしない。絶対に……! だから、ワタシたちに力を貸して!」
 猟兵たちに呼びかけるその声も、女には苛立たしかった。
「……だったら全員殺してやる」
 女の炎が燃え上がる!
  Burn it to the Ground
「――何もかもを灼き尽くすまで、アタシは止まるものかよ……!!」
 苛烈なる憎悪と殺意を滅ぼし、永久の眠りをもたらすときだ。
 芽生えかけた希望を、灰燼に変えさせないために……!
六波・サリカ
ヨハンと

敵を指差しヨハンに話しかけます。
「見てください、ヨハン。
もの凄く燃えている女がいます。
しかも、怒っている理由が意味不明です。悪です。
断罪しましょう。」

悪は叩き潰さねばならない
「侵攻式、ウェイク・アップ!」
巨大な鉤爪状に変形した機械の右腕をぶん回して敵を殴りつけます。

残像と見切で敵の攻撃を避けつつヨハンに注意喚起
「分かっていると思いますが、私に当てないでくださいね。」

素早い動きで急速接近、右手を元に戻しつつ武装召喚!
極至近距離からの電磁加速砲をブチかまします
「ヴァイス・イレイザー、急急如律令!」


ヨハン・グレイン
サリカさん/f01259 と

人の話を聞かない電気女も厄介だが、
この炎女もろくでもないな
……どうも話を聞かないやつが多すぎる
はいはい、燃えてますね、意味不明ですね、悪ですね
俺はあんたみたいに正義感は掲げちゃいないが、
叩き潰すってのには同意しておこう

暑苦しいのは苦手なんですよ
『凍鳴蒼』から昏い水を喚び、呪詛と全力魔法で強化を
地を凍らせながら敵に向け氷刃を伸ばしていく
炎は範囲攻撃で相殺し、サリカさんの援護をしましょう
攻撃は彼女に託します
当てるつもりはないが……、もたもたしていたら当てますよ

至近に接敵させるため、隙を作る
【蠢く混沌】で足を狙い地に縫い付ける
後はさっさとブチかましてもらおうか



●断罪の昏光
「見てください、ヨハン」
 怒りに燃えるバーニング・ナンシーを指差し、六波・サリカは言った。
「ものすごく燃えている女がいます……しかも、怒っている理由が意味不明です」
「……わざわざそれを、相手の目の前で言う必要はありますか?」
 ヨハン・グレインは呆れた顔だが、特にサリカを否定してはいない。
「無論、必要です。なぜならあれば悪です。断罪しなければならない」
「……あァ?」
 当然、こんな宣戦布告をされて、黙っている女レイダーではない。
「挑発のつもりか? 悪? 断罪? 偉そうなことを言いやがって!」
「ほら、見てのとおりだ。しかし少し意外ですね、言葉を解する知能があるとは」
「……こいつ……!!」
 ヨハンの持って回った皮肉に、バーニング・ナンシーの放つ熱気が強まった。
 敵をわざわざ怒らせる……搦手を使うならばともかく、大抵は悪手だ。
 しかも敵は、その熱を利用して戦うのである。ではなぜ彼らはそうしたか?
 サリカはその信念がため。悪を叩き潰す、それが彼女のスタイルだ。
 ヨハンは……ほとんど巻き込まれた形だが、ある一点に於いては同意していた。
 すなわち。
「俺はあんたのように正義感を掲げちゃいませんが」
 闇がどろりと彼の足元をたゆたった。
「意味不明な輩を叩き潰すってのには、同意しておきましょう」
「それでこそヨハンです。さあ、やりますよ」
 バーニング・ナンシーは、もはや言語化不可能な雄叫びをあげた。
 それが、戦いの始まりを告げる合図となった。

 雄叫びは灼熱の炎と変わり、さながら多頭の竜めいて大地を抉った。
 そのさまは、先ごろの戦争における帝竜ヴァルギリオスを思わせる激しさだ。
 ふたりはすばやくバックステップして、この放射攻撃を回避する。
 避けるのは容易い。問題は、その熱がなおも荒野を焦がし続けていること。
 あれが農地に届いてしまえばどうなるか……想像するのも、また容易い。
「暑苦しいのは苦手なんですよ、しかもこの季節に……」
「ヨハン、軽口を叩いている場合ではないですよ」
「最初にふざけたことを抜かして敵を挑発したのはあんたでしょう」
 サリカの言葉にうんざりと応えつつ、ヨハンは昏い水状の闇を解き放った。
 地を這う蛇めいて迫る熱を水の魔力で相殺し、熱波を和らげる。
 遠隔攻撃では足りないと見たバーニング・ナンシーは、炎を剣に凝縮させた。
「木っ端どもが、真っ二つに燃えて消えろォ!!」
 だんッ!! と足元を炭化させ、足の裏から炎を噴射することで超加速。
 一瞬にして間合いを詰める――ヨハンめがけた射線状にサリカが割り込んだ。
「侵攻式、起動(ウェイク・アップ)!!」
 鉤爪状に変形した右腕と、燃え盛る逆手の剣ががぎんとぶつかりあった。
 火花がサリカの髪を一筋焦がす。鋼は赤熱し、灼炎に抗う。
「邪魔だ、小娘がッ!!」
「これでも19なのですが」
 大きく飛び退った両者、バーニング・ナンシーは再度地を蹴って挑む。
 サリカはその場で踏みとどまり攻撃を受け流すが、出力はあちらが上か。
 全身の血流を燃やすレイダー相手では、白兵戦は分が悪いようだ。
(ろくでもない女同士だが、前衛を務めてくれるのはありがたい)
 ヨハンはこころの中でそうひとりごち、じっとバーニング・ナンシーを睨む。
 攻撃はサリカに任せ、自分はそのための一瞬を作り出すのに集中すべきだ。
 あれほどの高速の切り結びに介入出来るほど、肉弾戦に覚えはない。
「もたもたしていたら当てますよ、サリカさん!」
「当てないように努力しなさい、ヨハン」
 ふたりの応酬に、バーニング・ナンシーは嫌な気配を感じた。
 だが後退しようとしても、攻め込みすぎたせいでワンテンポ遅れてしまう。
 その瞬間だ。ヨハンがあちこちに散らしていた水の闇が、一斉に凝縮された!
「これはッ!?」
「俺がただ盲滅法に、水撒きでもしているかと思いましたか?」
 ヨハンの瞳がぎらりと輝いた。先の炎の相殺はこのための"呼び水"である。
 乾いた荒野の亀裂に水分を染み込ませ、潜ませていたのだ。
 陰から生まれた黒闇と水が混じり合い、ゲル状の拘束具となった!
「こいつ……くそっ、離せ!!」
「ええ、離してあげますよ――あなたをぶちのめしてから、ですが」
「!!」
 両足を拘束されたバーニング・ナンシーの前に、サリカが立つ。
 その右腕は、すでに鉤爪状形態から元の生身に戻っていた。
 バチバチと大気が帯電しスパークを散らす。……レールガン!!
「撃ち堕とせ、電磁加速砲(ヴァイス・イレイザー)――急急如律令!!」
 超接近距離から放たれたレールガンの弾丸が、バーニング・ナンシーを貫いた!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

茜崎・トヲル
居合わせたかみさまと/f16930
わー、かみさまちょうどいいところに! なあなあ協力してくれよ。
かみさまって暗くて冷たいところが得意だろ。あの火、消してやれねーかな。
やったー。ありがとう!

ふふ、あはは。じゃあおれもできることを全力でしよう。
かみさまの準備がととのうまで、おれはオブリビオンの人にしがみついて拘束するよ。
いくら切られても焼かれても離さないし、瞬間的に再生させ続ける。
何度だって殺される。こうやって血肉を削ればそれだけ作戦が成功するんだって。そういう奇跡の方程式なんだ。
ずっと痛くて苦しくて、でも死ねない。おれもそうだったけど、わかるなんていわない。
ただ少しでも楽になってくれたらいいな。


朱酉・逢真
なんかいた白いの/f18631
うわ出た。相変ァらずだな白いの。無茶いいやがるが神は請われっと弱ぇんだ。いいぜ、全力尽くしてやるさ。お前さんもガンバんなよぅ。

懐かしきは我が異面。マハーカーラと呼ばれた“俺”を俺に降ろす。あァあ、朱酉逢真って《宿》は脆弱だからクソキツイなァ…! 毒はなんとかなっても呪縛で動けねえし穴っつう穴から血が出て前もろくに見えねえ。けど、ああクソ、行けよ眷属ども。白いのを援護しな。俺は権能《空》で、あの姉さんの《炎》を消し滅ぼしてやる。
意識飛びそうだがイテエから飛ばねえ…。っひ、ひ、願い叶える神じゃねえっつってんのによぅ。ほんっと、ハナシ聞かねえ野郎だなァ…。



●いたみ、ねがい、くるしみ
「……あ、が……ッッ」
 胴体の半分近くを削り取られたような傷を負い、バーニング・ナンシーはのたうつ。
 傷口からあふれるのは、その身を焼き焦がすほどに高熱化した血である。
 いっそ体外に排出できればまだいい。だが血は傷口を即座に焼灼する。
 そして文字通り「燃えるような」熱血は、女レイダーの新陳代謝を超加速させた。
 異常なまでの代謝速度、つまり超再生。焼灼された傷口がじわじわと塞がる。
 その再生も、当然のように痛みを伴う。バーニング・ナンシーは歯ぎしりした。
「畜生、畜生、畜生……!! アタシに、アタシに傷をつけやがってぇ……!!」
「……だってさ、かみさま。あの火、消してやれねーかなあ」
 そのさまを見ていた茜崎・トヲルは、かたわらの朱酉・逢真に言った。
 絶好の攻撃チャンスだというのに、呑気に会話をする理由は余裕の現れか。
 そうではないことを、逢真はよく知っている。
「無茶言いやがるぜこの白いのは。俺はねがいを叶える神じゃねえんだぜ?」
「でも、"かみさま"は、暗くて冷たいところが得意だろ?」
「話を聞いてるようで聞いてねぇな、ったく……ま、仕方ない」
 逢真は嘆息しつつ、重い腰を上げた。
「神(おれ)は請われっと弱ぇんだ。とりま、全力は尽くしてやるさ」
「やったー、ありがとう! おれも全力出すよ、うん」
 ふたりは世間話めいて語り合い、そしていまだ苦しむ女レイダーを見た。
 バーニング・ナンシーは、超然と見下ろす――ように見える――ふたりを、
 地獄の悪鬼じみた眼で見上げる。怒りが湧き、怒りが再生を速める。
 嗤っているのか。嗤っているのだろう? この無様な己を。
 バーニング・ナンシーは視線でそう語りかけた。トヲルは何も答えない。
 そのまなざしは、敵を見ているようでどこか遠くを見ていた。
 ただ少なくとも、嘲弄や侮蔑のような悪感情は感じられなかった。
 それがまた女レイダーを苛立たせることを、トヲルもわかっていたようだが。
「あああああ……猟兵ァアアア!!」
 爆発的な熱量が再生を終わらせ、バーニング・ナンシーは目から炎を吹き出す。
「じゃあ、任したよ。かみさま」
「おう。時間稼げよ、白いの」
 トヲルははにかむように笑って、燃え盛る剣に自らその首を晒した。
 まるでそれは、処刑台に続く階段を上る殉教者めいていた。

 頸を斬ってやった。
 肩口を落とし、腰を絶ち、脚を削ぎ、目を潰して顎から上を吹き飛ばした。
 都合十度。いくら猟兵であろうと、死んでいるのが自然の負傷。
 だのに、こいつは生きている。瞬時に再生させて、また己に向かってくる。
「――ッッ! なんだ、お前は!! アタシを嘗めてるのかッ!!」
 超絶の再生能力。それはバーニング・ナンシーの代謝速度をも越えている。
 わけても彼女を不快にさせたのは、トヲルが浮かべる笑みだった。
 頸を落とそうが両腕を刎ねようが腰を断とうが脚を寸刻みにしてやろうが、
 トヲルは笑っている。嗤うのではなく、嘲笑うのでもなく、笑っているのだ。
「まさか。おれはほら、"こういうこと"ぐらいしか出来ないんだよ」
「死ねッ!!」
「死ねないなあ。――死ねないんだ。本当に」
 袈裟懸けの斬撃。トヲルの体は真っ二つにされて、どさりと地面に倒れた。
 しかし焼灼された傷口は一瞬で縫合され、彼はまた立ち上がる。
「死ねないんだよ」
 開いた銀色の瞳はどこまでも透き通っていた。透明に思えるほどに。
 ガラス玉を思わせる瞳には、嘲笑も、侮蔑も、何の感情も見えていない。

 そんなトヲルの奮戦の裏で、逢真は目・鼻・口・耳から血を吹き出していた。
「あァあ……クソ、キツイ、なァ……!!」
 そんな声音も、喉からせりあがる熱血でごぼごぼと不明瞭である。
 本来この力は、仮にも人の器に押し込められた逢真が扱っていいものではない。
 だからこうして"無理"が出る。血管は再生しながらちぎれ、脳が沸騰する。
 血は止まらぬ。流れ出た血は病毒に変わりじゅうじゅうと酸化する。
 しかし見よ。めきめきと音を立てて割れた額に見える裂け目――あれは、眼か?
 零れ落ちる血は渦を巻いて足元にたゆたい、やがて化身の形を得た。
 禿鷹。
 野犴(ジャッカル)。
 眷属はいと旧き神を慰撫するように吠えて鳴く。命令を待つように。
「行け。行けよ眷属ども。白いのを援護してやれ」
 ごぼごぼと耳障りな詔(ことば)が下れば、それらはそのようにした。
 あふれる血は青黒に染まり、痛みに顰められた相は憤怒のそれを思わせた。
 大黒天(マハーカーラ)の名を冠せし異面の力。人が背負うには強すぎる権能。
「死ねェ――ッ!?」
 バーニング・ナンシーは、己が振るおうとした剣から炎が消えたことに気づいた。
 それどころではない。全身を苛む灼熱の痛みが、ごっそりと"抜け落ちて"いる。
 あまりにも当たり前だった痛みが消えたことに、女は当惑し戦いを忘れた。
「痛くないだろ」
 トヲルは子供のように無邪気に笑った。女は何かを言おうとした。
 その身に禿鷹のくちばしが突き刺さり、ジャッカルの牙と爪が身を抉る。
 だが。あの燃えるような苦しみに比べれば、鳥の羽のごとく涼しいものだ。
「なんだ、お前」
「どうせあんたは滅ぼさないとダメなんだけどさ」
 再生したばかりの腕を槍のように突き出す。トヲルは笑っていた。
「少しでも、楽になってほしかったんだよ」
 女にはその言葉の意味も、男の笑みも何もかも理解できていなかった。
 だが神には分かっていた。かれの業、苦しみ、それらを身を以て知るゆえに。
「っひ、ひ……俺は願い叶える神じゃねえっつってんのによぅ」
 流れ出した血を拭いながら、凶星は仕方ないと口元を笑みに歪めた。
「ハナシも聞かねえ。慈悲の与え方も知らねぇ。仕方ねえ野郎だよ、まったく」
 死を与える神は、死なぬものをどう見、どう思うか。
 それは、只人が問うたところで得られる答えであろう――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

御狐・稲見之守
やれやれ、こんな痩せた地で焼畑なんてされちゃ困る。

[UC火喰らし][火炎耐性]――彼奴の炎を喰らうてしまおう。鉄すらも炭化し、大地をも焦がす、か……ぬるい。ぬるいなァ。ガイオウガやウルカヌスの炎に比べればこの程度。

さて、彼奴を[結界術]で封じてその内側にかつて喰らうた鋼神ウルカヌスの原初の神炎を顕現させてやろう。神炎の炉、とでも呼ぼうか。オリジナルであれば灰すら残らんであろうが。

……おや、戦場の熱気で入道雲、そして雨が。ふふ、ちょうどよい。痩せた地での農作は骨が折れるであろうが、これは良い出足ではないかな。



●魂を喰らうもの、炎を喰らうもの
 この身を焦がす炎は、女にとって枷であり怒りであり苦しみであった。
 しかしその炎が忽然と消えてしまうと、いよいよ女は困惑し迷った。
 あれほど消したいと願っていた炎を、不思議と求めていたのである。
 矛盾だ。本来であれば、もっとその解放を喜ぶべきなのに。
 そう出来なかった理由はただひとつ――彼女が、オブリビオンだから。
 人柄や業、理由、そんなものよりももっと根本的な話。
 オブリビオンは、その存在がゆえに破壊と滅亡を求めてしまうのである。

「――燃えろォ!!!!」
 バーニング・ナンシーはすがるように叫び、身のうちから炎を熾した。
 せっかく失せていた熱が全身を駆け巡り、爪と牙と嘴で抉られた傷を癒やす。
 いや、燃やして無理矢理に塞ぐ、というのが正しいだろうか。
 どてっぱらに開けられた穴も塞がっていく……代償は筆舌に尽くしがたい痛み。
 たちまち呪われた体と魂を、穢された炎が覆い、そして獲物を求めた。
「やれやれ。こんな痩せた地で、焼き畑なんてされちゃ困るんじゃがナ」
 御狐・稲見之守はふう、とこれみよがしに嘆息し、符の扇で熱気を追い返した。
 一度は退けられた炎は、しかしさらなる勢いを以て荒野を燃やし、迫る。
「死ね、死ね、死ねェ!! アタシの邪魔を、するなァ!!」
「ふん。恨みがあるわけでもなし、そうまでしてなにゆえに営みを壊そうとする?」
「理由なんてない――アタシには関係ない!! 全部、全部死ね!!」
「性分ゆえにそうする、と申すか。――つまらん、つまらんのう。薄っぺらじゃ」
 稲見之守は炎を避けない。蛇めいて地を這う熱がついにその身を捉えた。
 足元からとぐろを巻くように炎に呑まれる。だが稲見之守は涼しい顔だ。
「ワシは多くの炎を食らった。大地の精髄を凝(こご)らせたような竜の炎を。
 あるいは、原初の炎を権能として操り、世界を破滅させようとした神の炎を」
「!! ……こ、こいつ……アタシの炎を、喰らうだと……!?」
「然りよ。ぬるいぬるい。神にも竜にも及ばぬ炎、この程度かえ?」
「――だ」
 女の全身が裂けた。内なる炎が身を裂いて吹き出したのだ。
「だ、ま、れェエエエエエエエッッ!!」
「ほう」
 ボッッッ!! と溢れた炎の噴流は、もはや津波のようであった。
 稲見之守をして、その熱波は感心を浮かべさせるほどに激しく、そして烈しい。
 肌は灼け骨の芯まで熱が届く。狐の形をした神はにたりと笑った。
「呵呵――そうこなくては面白くない。しからば、"返礼"といこうか」
 そして結界が、原初の神炎の獄に女を閉じ込めた。
 憎悪の炎と、神炎の炉。互いを焼き尽くさんとする、女同士の我慢比べだ。
「アアアアアアァアアアッ!!」
 苦悶。憎悪。烈破。溶解し焼滅しながらも女は炎を生み出す。
 狐もまた燃え上がる。炎を喰らい、また燃やされながら炎を送ってやる。
 あまりの熱波に、周囲の土すらも炭化し熱が立ち込め、雲を呼んだ。
 異常蒸発した水蒸気は、不思議なことに頭上にわだかまり、雨を降らす。
 熱し、水で冷まし、また熱し、また冷ます。
 玉鋼の刀を鍛つ過程のような、無限地獄じみた炎の争いがそこにあった。
「はっは、ははは! ワシを灼くには足らぬ。足らぬなあ!」
「……ァアアアアア……ッ!!」
 どしゃぶりの雨の中、それでもふたつの炎が消えることはない。
 人々はわけもなく、その女どもの姿を畏れ、そして恐れた。

成功 🔵​🔵​🔴​

リオン・ゲーベンアイン
【黒代朝希】深耶との掛け合い重視。絡みアドリブOK
深耶とは仲の良い友達同士。深耶は年齢的に先輩として接するがリオンが友達として接するのを拒まない。

「熱、ね…なら、全ての太陽神の業火で焼かれると良い…とわたしは思うよ」
と、深耶が援護斬撃をしてくれている中でユーベルコードを起動。
とにかく熱量を集束させた一撃を矢に付与。それを深耶の時空間斬撃と共に織り交ぜて放っていく。
「みんな、この世界からもう一度温かい何かを芽吹かせようと頑張っているんだよ」
「それを阻むなら――ワタシとわたしが絶対に許さない」
「「例え資格があるからってゆるされない」」
そう言って斬撃と業火の矢を放って行く。


東雲・深耶
【黒代朝希】リオンとの掛け合い重視。絡みアドリブok。
リオンとは仲の良い後輩。

「憂さ晴らしで世界に芽吹く希望を焼かれる訳にはいかないな。炭に変わるのは貴様だと知るが良い」
と、ユーベルコードを起動。
空間距離や座標を無視する斬擊をユーベルコードの射程外から放つ。
捕まれて投合された先程の残骸等も斬り砕きリオンと相互に援護する。
「世界は今ある生者か、過去に決着をつけるために泡沫の時間を許された死者にのみ選択を許されている」
「貴様ごときの業火などに燃やせるはずがあるものか!!--骸の海へ帰れ、言い訳など許されない」
そう言って更に溜めた居合いで深手を負わせていく。



●断戟の神矢
 束の間降り注いだスコールが、内側から膨れ上がった熱で蒸発する。
 凄絶な憎悪に双眸を歪ませ、バーニング・ナンシーが大地を蹴った。
「来るぞ、リオン。私が前に出る!」
「ええ、お願い」
 リオン・ゲーベンアインは一方後ろに下がり、東雲・深耶は言葉通り前へ。
 バーニング・ナンシーが逆手に振るった灼熱の剣と、鋼の刀がぶつかりあった。
 がぎん――!! と澄み渡った音が、熱の晴れた荒野に深々と響き渡る。
「猟兵ァアアア……!! アタシの邪魔をするな。邪魔するなら死ね!」
「憂さ晴らしで世界に芽吹く希望を焼こうとする輩め、貴様の指図など受けるか。
 炭に変わるのは貴様だと知るがいい。そのために、私たちはここにいるッ!」
 がん、が、がぎぃんっ!!
 神速の剣閃が交錯するたび、衝撃波が土煙を起こし火花が散った。
 剣速は互角……いや、技量の面で見れば深耶のほうが一枚上手である。
 バーニング・ナンシーが食らいついているのは、その身を燃やす熱血によって、
 身体能力をブーストし前のめりな剣法で挑んでいるからだ。
 それゆえに、リオンが放つ矢を避けることが出来ない。元よりそのつもりもない。
 ふたりを一秒でも疾く滅殺し、この場にいる全ての人間を殺し、焼き、滅ぼす。
 もはやそのこと以外、女レイダーは何も考えてはいないのだ。
「アタシの身を灼くこの熱の苦しみ! 痛み! 貴様らにわかるものか!!」
「熱、ね――なら、すべての太陽神の業火で灼かれるといい……と、わたしは思うよ」
 熱量を収束させた神弓の矢が、まっすぐと空気を切り裂き放たれた。
 バーニング・ナンシーは燃え盛る右手を犠牲にこれを受け止めようとする。
 だがその一瞬。攻撃が緩んだ瞬間に深耶は距離を取り、絶無の斬撃を放っていた。
 第一魔剣。時空間をも無視する斬撃が、矢を防ごうとした右手を真っ二つに裂く。
「あァあ!?」
「世界はいまある生者か、過去に決着をつけんとする死者にのみ選択を許されている。
 貴様ごときの業火に燃やせるはずがあるものか――リオン! 今だ、やれ!!」
 神弓の一撃がバーニング・ナンシーの体を貫き、爆ぜた!
 たたらを踏む女レイダーに対し、リオンは二の矢をつがえている。
「この世界にもう一度温かい何かを芽吹かせようとするその営みを阻むなら、
 ワタシとわたしが絶対に許さない。たとえ資格があったとしても、ね」
 再びの矢は焼滅する。だがそこに隙が生まれ、時空間剣技が身を断つ。
 間断なきコンビネーションは、ふたりの連携があらばこそ出来る技だ。
「まだ耐えるのね……深耶、ダメージは大丈夫?」
「仔細ない。この程度の相手に深手を負うほどやわな鍛錬は積んでないさ」
 友人の言葉に、リオンは朗らかに微笑んだ。
「ならよかった。敵を倒すのも大事だけど、あなたの無事も心配だから」
「それを言うなら私のほうもだ。しかし、そんな台詞は終わったあとにしよう」
 ふたりは頷きあい、剣と弓とを互いに構えた。
 傷口から炎を吹き出す怒りの乙女が、少女たちを憎々しげに睨みつける。
 しかし彼女らはけして退かない。人々の営みを守るために、ここへ来たのだから!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

マリウス・ストランツィーニ
なんて熱だ……視界が霞む……
くそっ…震えるな私の脚!奴を倒して人々を守らなければ……!

すぅーはぁー、よし。大丈夫、やるぞ!

ナンシーの攻撃手段は剣と右手か……?如何にも熱そうだが、見たところ脚は発火していないようだ。
狙うなら足元と見た!

とにかく先手必勝だ!突撃!
「切り込み」して、敵の目前で「スライディング」!
そのまま脚を狙って斬撃を放つ!

我が一族の誇りに懸けてせめて一太刀でも喰らわせてやる!


アリシア・アートレイト
【WIZ】アレンジ、共闘歓迎

これは神敵を討つだけの戦いではありません。
困難に立ち向かおうとする人々の希望を守る戦い。
絶対に退くわけにはいきません!いざ!

【多重詠唱】【高速詠唱】でUC【コールレインファランクス】を使用。
召喚した多くの聖水で出来た槍を敵に降らせます。
半数の槍は炎が広がろうとする大地にを落とし
地面に当たった時点で砕き、水に戻して炎を【浄化】し消火します。
なるべく人々と農場を炎から守る様に動き、攻撃の手が足りているのなら消火と敵の炎の弱体に努めます。
民や共闘する猟兵に炎弾が飛ぶなら小手から光り輝く盾を生成し【盾受け】で【かばう】よう動きます。


シャルロット・クリスティア
何に対してどう思おうかは個人の勝手ですが。
……そちらにはそちらの都合があるように、こちらにも都合があります。
折り合いをつけられない以上は、抵抗させて頂く。

炎を纏えど、相手の基本は接近戦。
だとすれば対処は単純です。近寄らせなければいい。
オリジナルを含めた全84挺の集中砲火……着弾より先に燃え尽きるほど貧弱な弾速はしていません。
銃火の吹雪の中を突き進めるとは思わないことです。

塵も残さず焼き尽くされればその怒りも収まるでしょうよ。
風と共に消え失せなさい……希望の芽吹いた地に、憎悪の火は相応しくないですよ。



●降れよ弾雨、穿て剣槍
 視界が霞み、脚が震える。
 この熱のせい……だけではない。情けないが、認めざるを得ない。
(くそ……くそっ! 震えるな私の脚! 戦わねばならないのだぞ!)
 マリウス・ストランツィーニは、わななく己の四肢に活を入れた。
 しかし悲しいかな、こういうところに戦士としての経験量の差が出るものだ。
 マリウスはけして弱者ではない。むしろ気高く勇ましい女だ。
 だがやんぬるかな、猟兵としては戦闘経験がまだまだ足りていない。
 つまりは、未熟。ゆえに、斯様な強敵を前にして恐れが表出してしまう。
「すぅー、はぁー……」
 マリウスは肺を焦がすような熱を、あえて胸いっぱいに取り込んだ。
 喉が灼けそうなほどに熱い。顔をしかめながら、何度も深呼吸する。
「……人々を守らなければ。希望の芽を、潰えさせてはならない……!」
 震える手を押して剣の柄を握りしめる。眦を決する。
 そしてマリウスは、意を決して戦いの只中へと飛び込んだ。
 聖なる槍と弾雨とが乱舞する、災厄じみた戦いの中心へ。

 獣じみて四足立ちの構えを取ったバーニング・ナンシーが、跳躍する。
 狙いは農地、そして銃を手に戦いを見守る人々。それが奴の標的だ。
 猟兵どもは、あくまでその「憂さ晴らし」を邪魔する連中でしかない。
「させません!!」
 しかしてそこに割り込んだのは、光り輝く盾を掲げたアリシア・アートレイト。
 燃え盛る剣と盾とが打ち合う。アリシアはすさまじい衝撃に奥歯を噛んだ。
 ざりざりざりざり! と両足で地面を削りながら大きく後退。……剣戟が重い。
「邪魔を、するな!!」
「いいえ、阻ませてもらいます。我が祈り、我が誓い。深き蒼穹より来たれ!」
 口訣が大いなる水の乙女に届き、祈りの涙は聖なる雨となりて降り注ぐ。
 聖水によって形成された槍が、およそ300本。点ではなく面制圧を狙った範囲攻撃だ。
 バーニング・ナンシーはこれをたやすく避けるが、アリシアの狙いは別にある。
 彼奴の撒き散らす炎を消火し、延焼による被害を抑えようとしたのだ。
「チィ……! 小癪な真似を!!」
「それはこちらの台詞です。どうあっても人々の営みを穢そうというのですね」
「当然だ――苛つくんだよ、人類(おまえら)の悪あがきはァ!!」
 聖水による癒やしをさらに焼滅させようと、女レイダーは呪われた炎を解き放った。
 まるで獣だ。無限じみて熱血を撒き散らす、呪われた大型獣のよう。
 ならば、これを討つには槍では足りぬ。そう示すように銃声が火を吹いた。
 BRATATATATATATATATAT!! 熱気を吹き飛ばすような爽快なマズルフラッシュ!
「弾幕だと……!?」
 バーニング・ナンシーは、降り注ぐ銃弾を熱で焼き払おうとした。
 だが魔力によって加速された魔術弾頭は、そのような小細工を許さない。
 少なからぬ被弾を受けたバーニング・ナンシーは、獣じみて唸り後退する。
 八十と三挺。生成した機関銃を従え、シャルロット・クリスティアが大地に立つ。
「どうしました? そこまで憎らしく思うならどうぞかかってきてください。
 もっとも、そんなやわな炎で焼滅できるほど、私の弾丸は貧弱ではないですが」
 シャルロットはオリジナルのマギテック・マシンガンを片手に構え、言った。
 もう片手には、最悪の場合に備え魔術式散弾銃を握りしめている。
 近づかれる前に飽和射撃で圧殺する。それが、シャルロットの選んだ戦術だ。
 事実それはうまくいっている――だが絶対の戦術には成りえないと少女は悟った。
 バーニング・ナンシーの憎悪は、それほどまでに深く、強い。
「……何に対してどう思おうか、そんなものはオブリビオンであれ個人の勝手です。
 ですがそちらにはそちらの都合があるように、こちらにも都合があります」
「だからアタシを邪魔するってか? 小賢しいねェ……忌々しいくらいにさァ!!」
「なんとでもおっしゃってください。あなたの憎悪は、この世界に不要です。
 ましてや、希望の芽吹いたこの地に、あなたは存在していてはならない」
 決然たる言葉。それは、猟兵とオブリビオンという天敵同士の断絶である。
 相互理解など不可能。少なくともこの女レイダーに対しては間違いなくそうだ。
 人々の営みを理由もなく踏みにじる敵に歩み寄ってやるほど、シャルロットは優しくない。
 大地を焦がす蛇めいた炎は、聖水を忌みちろちろとうねっていた。
 しかしふたりが一瞬でも気を抜けば、女レイダーはその防衛線を超えるだろう。
 身をいとわず、傷をいとわず、ただ滅ぼすために駆け抜けるだろう。
 緊張が張り詰める。ふたりのユーベルコードはそう連発できるものではない。
 うかつに発動を見誤れば、一瞬のタイムラグを突いてあの女は突っ込んでくる。
「……ここは、通しません。何があろうとも」
「折り合いをつけられない以上は、抵抗させて頂きます」
「……ゥ、ウ、ウ……アアアアアッ!!」
 バーニング・ナンシーが大地を蹴った。……疾い!
 張り詰めた末の爆発は、ヤツ自身の脚を粉砕するほどの威力を伴う。
 大地を爆ぜさせながら、女の形をした獣が弾丸と槍の雨をくぐり抜けようとする――!

 しかし、だ。
「――もらった!!」
「!?」
 狙いすましたような怒声。そして、射線上に割って入るひとつの影。
 マリウスである。彼女はにらみ合いの間、気配を殺しタイミングを窺っていた。
 身を這うほどに低く沈め、狙うは飛び込んだ女レイダーの両足!!
「こい、つ――!!」
「バーニング・ナンシー! その憎悪、ここで断ち切ってみせる!!」
 熱血によって再生したばかりの下半身を、マリウスは見事に両断した。
 やつが一瞬の突撃に全神経を研ぎ澄ませていたならば、彼女もまた同様。
 先の先を得るために張り詰めさせていた斬撃が、円弧を描いて身体を断つ。
 袈裟の斬撃が入った。すれ違う両者、地を転がり倒れたのは敵のほうだ!
「い……今だッ!!」
 マリウスはどもりながらも叫び、流れ弾を避けるためにごろごろと横っ飛びに転がる。
 直後、シャルロットの弾丸とアリシアの聖槍が雨となりて降り注いだ!
「塵も残さず焼き尽くされればその怒りも収まるでしょう――さあ!」
「神敵よ、希望の前に斃れなさい。あなたには何も焼き尽くさせない!」
「アアアアア……猟兵ァアアアアアッ!!」
 女の怒号は苦悶の絶叫に変わり、それも雨と降り注ぐ暴威に呑まれる。
 土まみれになりながら、マリウスは大きく息を吐いた。
「……はは、なんだ。私も、やれば出来るじゃないか……」
 未熟な少女剣士は、しかし、その手応えに莞爾と笑った。
 敵を斬り伏せた手応えは、いまだに震えるその掌に確かに残っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

青葉・まどか
愉快痛快!
憂さ晴らしで未来の希望を焼き払おうとした阿呆が苦悶の表情を浮かべている。
おまけに今現在、自身が存在していることが苦痛らしい。
お前の希望を叶えてあげるのは業腹だけど、その存在を終わらせてあげる。

さて、散々と威勢のいい事を言ってみたけど実際は簡単じゃない。
まあ、私ひとりが戦うわけじゃないし、出来るだけ頑張りますか!

『神速軽妙』発動
真っ二つにされるなんて御免だよ。
敵の攻撃を【視力】でよく見て【見切り】、【残像】を残しながら回避を狙うよ。
剣だけじゃなく炎にも要注意!
【フェイント】を交えながらの【早業】による【傷口をえぐる・2回攻撃】で切り刻む!

苦痛の伴う存在に終焉を


ラパ・フラギリス
も、もっと熱そうな人が…!絶対近づきたくないです…!
攻めるのは他の強い人がやってくれそうですし、私は防衛を重視します…。

やることは変わらず銃器で【制圧射撃 弾幕】
相手が一人なら止めやすいはずです…射程ギリギリから一方的にチキンプレイしたいです
ユベコで闇兎を呼んでリロードや整備を手伝ってもらって、弾幕を絶やさずに削っていきます

ひい…!炎は無理です!一旦逃げです。
距離をとってれば直撃はしないはずです…
少し燃えたくらいなら闇兎が消火してくれるはずです。
近くや農場が燃えてるならそっちも消火
消しきれない、消えない炎なら少し建物壊して止めるしかないですかね…
あ、あとで直すので…っ。


ウーナ・グノーメ
連携・アドリブ◎

【心情】
「気に入ろうが気に入らなかろうが、あなたのやることに変わりはない」

身を焦がす痛苦を周囲に撒き散らさずには居られない。
燃え盛る女の有り様に、真の姿を顕にした妖精は嘆息を吐く。

「そして、わたし達のやることも」

妖精は厳かに宙を舞い、大地に霜が降りていく。

「大地と厳冬の抱擁で、あなたの怒りを鎮めてみせる」

【行動】
UCによって「氷属性」と「地殻隆起」の現象を組み合わせ、鋭い氷の柱やクレバスを伴う永久凍土を作り出す。
それによって冷気と刺突による攻撃はもちろん、大地の延焼を食い止め、敵に有利な地形を狭めることを狙う。
敵の攻撃は【第六感】で感知、避けきれない攻撃は【オーラ防御】で防ぐ。



●凍れる大地の上で
 BRATATATATATATATATAT!!
「……ひっ!!」
 敵の射程外からひたすらに弾丸をばらまいていたラパ・フラギリス。
 そんな彼女は、バーニング・ナンシーの突き刺すような視線に凍りついた。
 見ている。こちらを憎々しげに睨んでいる。その視線のなんと恐ろしきことか。
 もう何もかも投げ出して逃げてしまいたい。だがそうもいくまい。
 一度戦いに乗った以上、それを放棄することは逃げるよりも苦しい。
 ラパは、見てしまったからだ。聞いてしまったからだ。
 絶望的な状況でも生き足掻こうとする、人々の声を……。
(で、でも怖いものは怖いぃ~!! こっちに来ないでこっちに来ないで……!!)
 祈りながら攻撃はする。しかし現実は、そんなラパに残酷に微笑んだ。
 バーニング・ナンシーは、この目障りな兎を殺すため目標を変えたのだ!
「そこのデカブツゥ、お前から殺してやるッ!!」
「……ッッ!!」
 恐るべき業炎を放ちながら、バーニング・ナンシーが大地を疾駆した。
 弾丸に身を貫かれようが、一切躊躇せずに、なんたる捨て身の憎悪か。
 その理屈抜きの暴威は、だからこそ時として予測不可能で恐ろしい!
 ラパは戦車の中で完全に硬直し、もはや逃げることも忘れてしまった。
 そして灼熱の剣が、ラパの乗る戦車ごと彼女を断ち切ると見えた……その時!

 ――がぎんっ!!

 と、逆手に振るわれたダガーが燃える剣を押し留め、そして弾いた。
 ふわり、と衝撃をいなして降り立ったのは、青葉・まどかである。
「あっははは! 愉快痛快ってのはこのことだね」
「あァ!?」
「憂さ晴らしで未来の希望を焼こうとしたお前が、そうやって悶え苦しんでる。
 ほんと阿呆みたいだわ。どう? その願いが叶わず悪あがきする苦しみは」
 まどかはことさらに露悪的に表情を歪め、女レイダーをあざ笑った。
 ごう、ごうとバーニング・ナンシーの傷口から炎が吹き出し、怒りを表現する。
『あ、あ、あありがとうございますぅうううっ!!』
「……さてと」
 まどかにかばわれた形のラパは、戦車を急いで操縦しその場を離れる。
 これでひとまずはよし。問題は、目の前に身を晒すことになった己のほうだ。
 いまの一撃は、半ば不意打ちめいて攻撃を遮ったから防げた。
 しかしその一合で痛感した。次は防げない。膂力に差がありすぎるからだ。
(こんなに睨まれちゃ避けるのも難しい、か。さて、どうしたものかな――と?)
 攻撃と回避を思案していたまどかは、先んじて「異変」に気づいた。
 ゆえに、突然足元が凍りついた瞬間、彼女が先に動くことが出来たのだ。
 バーニング・ナンシーは、その憎悪ゆえに反応が遅れてしまった。

 突如としてふたりの立つ大地が凍りつき、そして隆起した。
 牙じみて斜めに隆起した氷の柱は、バーニング・ナンシーの脚を貫く。
「な、あ……ッ!? なんだ、これは……!?」
「気に入ろうが気に入らなかろうが、あなたのやることに変わりはない」
 困惑する女レイダーを見下ろすのは、真の姿を開放した大地の妖精。
 ウーナ・グノーメの双眸には、憐憫めいた輝きがたたえられていた。
「――そして、わたしたちのやることも」
 ぱきぱきと音を立てて、冷気が炎を包み込み女レイダーを凍結させようとする。
 バーニング・ナンシーは熱血を噴射させ、その氷の抱擁を拒絶した。
「アタシを、閉じ込めるつもりか!? そうは……させるか!!」
 そして灼熱で氷を融かそうとする――だが、出来ぬ。
「大地と厳冬の抱擁で、あなたの怒りを鎮めてみせる。眠りなさい」
「断るッ!! アタシはァ――」
「スキありっ!!」
「!!」
 そこに割り込むまどかのダガー! 間隙を縫うような剣閃が逆袈裟に身を裂く!
 バーニング・ナンシーは咄嗟に灼熱の剣を振るうが、神速の乙女を捉えることは不可能!
 そしてまどかのほうに意識をそらせば、凍れる大地の攻撃がナンシーを襲うのだ!
「あなたの炎は何も燃やすことはない。大地も、人々も、その希望も」
「ふ、ざ、けるなぁああああっ!!」
 窮鼠猫を噛むとばかりに、喉元を狙って振るわれた炎の刃。
 ウーナは冷気の壁でこれを退け、大事をとって大きく飛翔した。
 入れ変わりに飛んできたのは――体勢を立て直したラパの弾雨である!
 BRATATATATATATATATAT!!
「だ、大丈夫、大丈夫……み、みんな、お仕事の時間ですよ!」
 小さな戦車の中では、無数の闇うさぎたちがせっせと働いていた。
 弾丸を装填し、戦車を応急処理し、炎が延焼しないよう農地を防衛する。
 あの敵は怖い。近づかれるのはゴメンだ。だが戦うのをやめはしない。
「あ、ああああなたの居場所なんて、ここにはないんですからぁ!!」
 弾丸がバーニング・ナンシーの余裕を奪う。そして氷がその身を蝕む。
 神速の太刀は身を削り、怒りと憎悪は徐々に焦燥に変わっていった。
「その狂猛、すべて氷のなかへ鎮めてあげましょう」
 妖精の言葉は、吹きすさぶ冷気の先触れ。
 いかなる炎にも融かされぬ永久凍土が、焦がれし地面を覆い凍らせていく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

アルトリウス・セレスタイト
暑そうだな
消え失せれば涼しくなろう

受ける攻撃は『絶理』『刻真』で自身を異なる時間へ置き影響を回避
此方の行動は目標が存在する時間へ向け実行
必要魔力は『超克』で“世界の外”から汲み上げる

破界で掃討
対象はオブリビオン及びその炎
それ以外は「障害」故に無視され影響皆無

高速詠唱を『刻真』で無限加速
多重詠唱を『再帰』で無限循環
「瞬く間もなく」天を覆う数の魔弾を生成、全てに『解放』を通じ全力で魔力を注ぎ干渉力を最大化
爆ぜる魔弾の嵐で蹂躙する面制圧飽和攻撃

射出の瞬間を『再帰』で無限循環した間断ない斉射で回避の余地を与えず
攻撃の速度密度で反撃の機を与えず
物量で全て圧殺する

※アドリブ歓迎


高砂・オリフィス
なんだか骨のありそうな子が出てきたねっ、あははっ!
握手しようか? しない? そっかー、それじゃ勝負! いってみよー!

使用するユーベルコードは《やがて来たる過去》!
声の衝撃波で音を吹き消しつつ、アクロバティックな蹴り技で攻め立てるっ! ひとところで立ち止まってたら、さすがに焦げそうだし! 跳んで跳ねて、煙にまくよ!

というか、憂さ晴らしってようは八つ当たりじゃん! うー! なんかそういうカンジ、ヤだな!
ぼくが空の彼方まで蹴飛ばしてやる!


八岐・真巳
今回の敵首魁のお出ましかしら?
……貴方の身を焼く炎のもたらす痛みが如何なるものかはわからないけれど、それで憂さ晴らし? どうにもさもしいものね……その痛みを受け入れれば新しい『甘美な世界』が見えるかもしれないのに。

この世を楽しむ気がない迷惑な癇癪持ちには、早々にご退場願わなくてはね。

どうにも首やら腕やら足やら狙ってくるみたいだけど、相手の炎は龍鱗の【火炎耐性】で、叩きつけは【覇気】と【見切り】による体のいなしで耐えて、そして、反撃の本命は……この竜尾。
我がドラゴニック柳生の秘剣が一、クサナギ。研ぎ澄ましたる龍気纏いし我が龍尾に、断てぬモノなし。貴様のその炎、斬り捨ててくれる。


フォルク・リア
アドルフやクークーの言葉に
「生きようとする意志を持つ者が
ただ死を振りまく者に滅ぼされて良い訳がない。」
と前を見たまま頷き。

「確かにその炎冷ましてやれるかは分からないが。
その暴れるだけしか能がない魂の火だけは
消してやると約束しよう。」
と言うと
真羅天掌を発動。
凍結属性の吹雪を発生させ。
その雪で竜巻の様に敵を包み込み、全方位に放たれる炎に対抗。
特に炎が放たれる起点を【見切り】そこに雪や冷気を
集中して凍結。
炎を封じると共に、その雪を次々に
足元に積もらせて移動を制限。
そこから逃れる事も許さず熱を奪い続け
雪と氷の中に閉ざす。
「そこから一歩たりとも進む事、
許しはしない。
お前自身もその狂った炎もな。」


夜霞・刃櫻
【アドリブ・連係歓迎】
ごめんなさぁぁぁぁぁい!
命だけは助けてくださぁぁぁぁぁい!!
(三下特有の土下座謝罪)

出会いがしらにUC【夜霞の下座】で謝罪・命乞い・土下座をする
ここまで潔い謝罪と命乞いを聞いて土下座を見たら、いくらオブリビオンでも僅かな慈悲の心からUCを使う事を躊躇う(封印される)に違いない
成功したら他の人がきっちり攻撃してくれるだろう
いなかったら自分で「だまし討ち」の「暗殺」で「部位破壊」を狙うしかない!

失敗したら防御力の高そうな人を「盾にしたり」、『ヘイズ・グレネード』で「目潰し」をして「逃げ足」で逃げます
三下だからごめんなさい


リーオ・ヘクスマキナ
自分の身勝手な欲望だけで力を振るって、理不尽を他者に押し付ける
……そんなのを見過ごす気はないんだ

周囲に被害を出さないように、と考えれば。出来れば短期決着が良いよねぇ

前衛は赤頭巾さんが
一定の距離を保ちつつ敢えて敵の右目側に回り込み続けて貰って、敵の注意を引いてもらう
敵の右手は厄介そうだけど……多分あの右目、炎のせいで視界は劣悪だと思うんだよね

で、その間に俺は後方からライフルで援護射撃しつつ魔力を充填
充填完了次第、心臓めがけてビーコン弾を。次いでUC弾頭を叩き込む!

傍迷惑に燃え続ける炎を冷ます術は持たないけど、その炎諸共に消し飛ばせばいい話だよ
さぁ、お前の『零時の鐘』は、今この時だッ!!



●その滅びを滅ぼせ
「ごめんなさぁああああああい!!!!!」
「…………は?」
 突然目の前に出てくるなり華麗な土下座をキメた夜霞・刃櫻の勢いに、
 さすがのバーニング・ナンシーも毒気を抜かれ、ぽかんとしてしまった。
「どうか、どうかこのとおりですから! 命だけは助けてくださぁああい!!」
「…………いや、そもそもなんだお前は。何のつもりだ……?」
 戦って敗けた末に命乞いをするというのなら、まだわかる。
 だが刃櫻は、身構えるバーニング・ナンシーの目の前に飛び出し、そしてこれだ。
 猟兵と人々への怒り、そして憎悪に突き動かされていたバーニング・ナンシーにとって、
 これはあまりにも予想外。なので、怪訝な顔で意図を問わざるを得ない。
「な、何って、あっしはセンセには絶対敵わないんで! ですからこうして……!」
 刃櫻はひんひん泣きながら土下座を繰り返す。見事なまでの三下魂だ。
 しかし、バーニング・ナンシーは万が一にも、この三下相手に気を抜くべきではなかった。
 何の狙いもなしにいきなり土下座などするか? ……否、ここは戦場!
「……こいつ、まさか!」
「その隙、もらったぁ!!」
 バーニング・ナンシーが意図に気づくよりも先に、リーオ・ヘクスマキナが動いた!
 彼の召喚した"赤頭巾さん"が、敵右手側に回り込み剣鉈の一撃を繰り出したのだ!
 バーニング・ナンシーは、咄嗟にこの攻撃を燃える右手で受け止めた。
 しかしそれも布石。リーオ自身は後方からライフルで隙を狙っていたのだ。
 BLAMN――放たれた援護射撃が、吸い込まれるように敵左脇腹を貫通!
「ぐ、ッ」
「ひいいい!! どうかどうかご勘弁を! あっしは三下なんでぇ~~~!!」
 刃櫻は半泣きになりながら、土下座しつつ器用に後退する。無駄にアクロバティックだ。
 バーニング・ナンシーは憎々しげに彼女を睨むが、追撃はできそうにない。
 生み出された間隙を逃さぬとばかりに、猟兵のさらなる追撃が襲いかかるからだ!
「握手しようか? しない? そりゃそうだよ、ねっ!!」
 リーオの"赤頭巾さん"と入れ替わる形で接近したのは、高砂・オリフィス。
 オリフィスは身を沈み込ませて両手で地面を突くと、逆立ち姿勢から回し蹴りを放つ。
 独特なリズムから放たれるこのアクロバティックな攻撃は……カポエイラか!
「よっ! ほっ! ほらほら、ぼくの動きについてこれるっ!?」
「ぐ、うおお……ッ!!」
 オリフィスの動きはカポエイラだが、そこには我流の動きが大きく入っている。
 ゆえにリズムは掴みづらく、そして足技は触手のように変幻自在であった。
 関節がまるごとごっそり抜け落ちたかのように、オリフィスの体は柔軟なのだ。
 燃える右手で足首をつかもうとすればぐるりとスピンしてそれを躱し。
 ならばと灼熱の剣を逆手に振るえば、その出掛かりを鋭い蹴りが弾き、潰す。
 そしてよろめいたところへ、起立姿勢に戻ったオリフィスの連撃が炸裂した!
「がはっ!!」
「憂さ晴らしってようは八つ当たりでしょ? そういうカンジ、ぼくはヤだな!
 それであの人たちの大事な農場を燃やさせるなんて、絶対に認めないよっ!」
 ひとつ、ふたつ、みっつ。よどみなき流水のような三連回し蹴りがクリーンヒット!
 バーニング・ナンシーは吹き飛ばされ、ガリガリと地面を削りながら減速。
 獣じみた四足姿勢を取り、すぐさまオリフィスに飛びかかろうとする……が!

 バーニング・ナンシーが手足をついた地面は、ぱきぱきと凍りついていた。
 大気をも焦がすほどの熱を拒絶し、赤茶けた地面に張る霜。そして、吹雪。
 然り、吹雪である。陽炎を消化せしめるのは、凍てつくほどの冷気だ!
 誰がこれを起こした? バーニング・ナンシーは愕然として顔を上げた。
 ごうごうと唸る竜巻じみた吹雪のなか、フードの男が口元に笑みを浮かべる。
「生きようとする意思を持つ者が、ただ死を振り向くままに滅ぼされていいわけがない」
「……この小賢しい吹雪は、お前の仕業かッ!!」
「いかにも。俺のこんな"そよ風"では、その炎は冷ましてやれまい」
 だが、とフォルク・リアは言葉を区切り、そして続けた。
「その暴れるだけしか能のない魂の火だけは、消してやると約束しよう」
「貴様ァアアアアッ!!」
 バーニング・ナンシーの怒気が爆ぜた。冷気を吹き飛ばすほどの狂熱!
 大地をひび割れさせ、蛇めいてとぐろを巻く炎……しかし!
「そこから一歩たりとも進むこと、赦しはしない。
 お前自身も――その狂った炎も、何もかもな。希望の前に、退けッ!!」
 フォルクは両掌を掲げ、あらん限りの魔力でその熱波に対抗した。
 冷気と炎とがぶつかり合い、強烈な衝撃波が両者の間に吹きすさぶ。
「……!!」
 フォルクはフードの下で眉根を寄せた。冷気と炎の激突は、ほぼ互角。
 いや、己の身を厭わないぶん、わずかにバーニング・ナンシーに分がある。
 しかし退かぬと決めた。己の意思で戦うと決めた彼らに報いるために。
 その覚悟と決意の力が魔力を呼応し、徐々に炎は凍てついていく……!
「バカな!? アタシの、アタシの炎が……!!」
「――いい加減に暑苦しいぞ。消え失せろ」
「!!」
 その時である。愕然としたバーニング・ナンシーに降り注ぐ蒼き魔弾!
 僅かな間に頭上を取っていたアルトリウス・セレスタイトによる援護攻撃!
 無限の再帰循環によって汲み上げられた尽きぬことなき魔力が生み出す魔弾は、
 一切の途切れなく戦場を覆う。それはまるで、空を輝かす蒼き天蓋だ。
「お前はさぞかし強大なオブリビオンなのだろう。思うがままに奪い、殺し、
 その熱血がもたらす苦しみを誤魔化そうとしてきたのだろう。"今までは"」
「何が、言いたい……ッ!?」
「わからないか。――それも、"これまで"だということだ」
 アルトリウスの双眸は、降り注ぐその魔弾と同じ青い燐光に輝いていた。
 残骸たる男の眼光はどこまでも怜悧で、そして酷薄である。
「お前はここで滅ぶ。完膚なきなまでに、どうしようもなく。
 ――お前はもはや何も燃やせない。何も踏みにじることは出来ない」
 魔弾が炎をかき消し、そしてその間隙をフォルクの冷気が覆い、閉ざしていく。
 バーニング・ナンシーは愕然とした。もはや、前に進むことが出来ぬ!
 それでもなお燃え盛る右手を振り回し、魔弾と冷気を否定しようとする女レイダー。
 なおも足掻く彼奴に対し、韋駄天めいて踏み込む女がひとりいた。
「あなたの身を焼く炎のもたらす痛み、それがいかなるものかはわからないわ。
 ――けれど、それで憂さ晴らし? そんなさもしい企みは……ッ!」
「新手かッ!!」
 がぎんっ!! と、振るわれた剣と灼熱の刃がぶつかりあった。
 八岐・真巳は小気味いい手応えに目を細め、くすりと超然と微笑む。
「私が此処に居る限り、認められないわねッ!」
「黙れ!! アタシは殺す! 壊す!! 何もかも、邪魔だ!!」
「その痛みを受け入れれば、新しい世界も見えるかもしれないのに……。
 ま、この世を楽しむ気がない癇癪持ちは、早々にご退場もらうとしま、しょうっ!」
 がん、がん、がぎぃんっ!!
 数合の撃ち合いを経て、真巳は身を低くして敵の懐へ飛び込んだ。
 しかし、バーニング・ナンシーはこれを読んでいた。右腕がぎらりときらめく。
 頸部狙いの手刀が燃え上がる。真巳はくるくるとステップを踏み、手刀を回避!
「!?」
「ドラゴニック柳生の秘剣が一――これぞ、クサナギッ!!」
 勢いを殺さぬままに放たれたのは斬撃である。ただし……それは、尾!
 竜たる真巳の尾は、龍気を纏うことによって名刀にも勝る切れ味を持つ。
 研ぎ澄ませた不意の一撃は、バーニング・ナンシーを袈裟懸けに裂いた!
「がは……ッ!?」
「ナーイス、真巳さん! さあ、それじゃあ時刻を告げるとしよう」
 そしてこの隙を逃さず、リーオはとっておきの弾頭を放っていた。
 ビーコン弾が敵の左胸に突き刺さり、収束した重魔術弾頭がライフリングを走る。
「お前の『零時の鐘』は、いまこのときだッ!!」
 時空間をも吹き飛ばす魔力が、敵の心臓を穿つ。そして、絶叫!
 それこそは、熱血による苦痛をも超える滅びの一撃に、敵があげた悲鳴。
 すなわち断末魔へと続く、いわば破滅の呼び水であった――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マリー・ハロット
あの燃えてるおねーちゃんが敵のボス? あんなに燃えててあっつくないのかな?
やっぱり痛いの? だったら、そんなふーに八つ当たりするんじゃなくて、ちゃんと助けてって言わなきゃダメなんだよ? そんなことばっかりしてたら、誰からも嫌われちゃうんだから……
それでも燃やしたいなら、マリーが倒しちゃうんだから! ヨーシャシナイよ!
UCの力で飛び回りながら(【空中浮遊】、【空中戦】)相手のしこーをてれぱすで(【読心術】)で読んで、相手の攻撃を回避するよ!
広がる炎はヴォーちゃん(偽神兵器)で【捕食】しながら切り裂いて、最後は【限界突破】した【念動力】を乗せた一撃を叩き込む!



●瞬撃の彼方
「…………――ァ」
 心臓部を抉られたバーニング・ナンシーが、びくりと痙攣した。
 空間をも削り取る魔術弾頭による一撃。並のオブリビオンならばこれで滅ぶ。
 だが、マリー・ハロットは違うと皮膚感覚で理解し、即座に空を舞っていた。
 そして彼女の予測を肯定するかのように――胸部の穴から炎が吹き出す!
「ァ、ア、アアアアアアアアアアアアッ!!」
「やっぱり生きてた! マリーが倒しちゃうんだからー!」
 熱血によって傷を塞ぎ、失った活力を憎悪と殺意で補填する。
 バーニング・ナンシーの双眸から炉の如く炎が吹き出し、マリーを睨む。
 少女は空を飛ぶ。偽神の心臓が鼓動を刻むたび、マリーに力を与えてくれる。
 バーニング・ナンシーを中心に放射状に炎が吹き出し、そして女は飛翔した。
 両足を爆発させるほどに熱血を収束させ、ロケットめいて跳んだのである。
 一瞬にして両者の視界は同じ高度に至り、そして高速のドッグファイトが始まった!
「アタシを! 見下すな!! ただのガキがァ……!!」
「マリー、ただのガキじゃないもん! ヨーシャシナイんだからっ!」
 ガ、ガ、ガガガガガガガガッ!!
 灼熱の剣と蛇腹剣が幾度となくぶつかり合い、火花を散らす。
 遮るもののない青い空を、ふたつの影が高速で飛翔するさまは、まるで流れ星だ。
 人々はその超常の戦いを、唖然と見上げて見守るほかになかった。
(燃えてるおねーちゃんの攻撃、とってもハヤイけど……読めた、よ!)
 マリーは読心術によってバーニング・ナンシーの思考パルスに触れ、攻撃を読む。
 それとともに彼女の思考に流れ込んできたのは、強烈な負のイメージ。
 殺す。
 壊す。
 苦しい。
 痛い。
 苦しい!
「そんなにくるしいながら、ちゃんと助けて言わなきゃダメなんだよっ!!」
 マリーは敵の虚を突き、偽神兵器を螺旋状に展開して突き出した。
 渦を巻く魔剣はバーニング・ナンシーの身を切り裂き、さらなる苦痛をもたらす!
「ぐ、おお……何が、助けだ、アタシは……アタシはぁああああっ!!」
 言葉は絶叫に変わり、そして刃はその熱をも食らって叩き落とした。
 地面に堕ちていく女の姿を見下ろし、マリーはまぶたを伏せた。
「……そんなことばっかりしてたら、誰からも嫌われちゃうんだから」
 その瞳に浮かんだ憐憫は、おそらく少女自身にも分かるまい。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スイカ・パッフェルベル
まあ待て、と農場の面々を手で制し
ヤツは先の雑魚共とは違う。私が応戦しよう
…そう心配するな。私は魔法使い、炎は良く識っている
観戦ついでに身体を休めておけ

さて。炎は元素属性最大の威力を誇る
ヤツが来るまでに水魔法を用意できれば良かったのだが
それが無い以上、手持ちで対処するしかあるまい

使う魔杖はそのまま。全力魔法もだ。加減はせんぞ
守りはI1魔杖を用い幻覚に陥れ、地形も利用し避ける
攻めはM1魔杖。ぶち抜く
炎上地形も適時消し飛ばすとしよう。今の魔力なら問題あるまい

レイダーは力こそ全て。だったな?
ならば我が力、心行くまで貴様の脳髄に啓蒙せしめよう
肉挽き機。生成比率はM1を10割
炎上地形も巻き込み。全てを挽く



●啓蒙のひとさし
 もうもうと土煙がたちこめる。
 空を舞っていたバーニング・ナンシーが、地面に高速で叩きつけられたのだ。
 人々は息を呑み、今度やつが立ち上がることがあればこの手で、と意気込んだ。
 ……だが彼らを制するように、さっ、と手を広げるものが居た。
 スイカ・パッフェルベルである。
「な、なんでえ」
「……まあ待て、というやつだ。戦いはまだ終わっていない」
 スイカは、訝しげな様子のアドルフをちらりとみやり、言った。
 その言葉に、勇み足を踏みかけたクークーは唾を飲み、うなずく。
「……あいつは、まだ、死んでないのね?」
「ああ。あれは先の雑魚どもとは違う。そう心配するな、我らに任せておけ」
 スイカは少女の顔を見やり、不敵に微笑んでみせた。
 実に強気な――しかし、不思議と安堵をもたらす笑みである。
「私は魔法使い。炎はよく識っている。観戦のつもりで見ているがいい」
 その言葉の直後、土煙を吹き飛ばすようにして炎が吹き荒れた。

 バーニング・ナンシーの体を燃やす熱血は、いわば燃えるガソリンだ。
 生命としてはあり得ない代謝速度をもたらし、半壊からその身を再生させる。
 代償は、痛み。バーニング・ナンシーの雄叫びは獣の如くであった。
「どォオオオオオオけェエエエエエエッッッ!!」
 大地を揺るがすような咆哮。スイカは涼し気な表情で言った。
「断る」
 応えたのは唸り声である。そして彼奴はすべてを燃やす炎を解き放った。
 それは、たった一体でありながら、先の殺戮機械の範囲攻撃を超える勢いだ。
 放っておけば、スイカはおろか農場も人々も五秒と経たず灼き尽くすだろう。

 だがスイカはふっ、と鼻で笑い、両手にふたつの魔杖を握りしめた。
「レイダーは力こそすべて。それが貴様らの掟だったな!!」
 ぐおん、と魔力が……大気が、スイカを中心として渦を巻いた。
 空気そのものを魔杖の触媒として変生させ、純粋な衝撃波として解き放つ。
 一方で守りの魔杖は、バーニング・ナンシーの認識を幻覚によって制御。
 彼奴が操る炎の行き先を"ずらし"、その間隙を攻めの魔杖がぶち抜く。
 火災現場では、炎の勢いを殺すために爆薬が使われることもあるという。
 その応用だ。純粋な破壊力が――炎を、荒野ごと吹き飛ばした!
「すご――きゃあっ!!」
 ドォン!! と大気を震わせたその衝撃波に、クークーも悲鳴をあげた。
 だがスイカは薄い笑みを浮かべたまま、なおも破壊力を増大させ続ける。
「力の使い方を教えてやる。これが、私の"魔法"だ」
 一見すれば、あまりにも乱暴で無茶苦茶すぎる飽和攻撃である。
 だが。その暴力を制御し、一点に集中させるのは立派な技術だろう。
 複製変異させられた魔杖は、膨大な魔力を循環させるためのアンテナと化し、
 炎をも吹き飛ばす純粋魔力が、空から叩きつけられる槌のように振るわれた!
「――あ?」
 KRAAAAAAAAAAAAAAASH!!
 まさしく"肉挽き機"。
 見えざる力のハンマーが、大地ごとバーニング・ナンシーを叩きのめしたのだ……!

大成功 🔵​🔵​🔵​

マーロン・サンダーバード
熱い人は好きなほうだがこりゃ熱すぎだな、しかも自分の熱さで苦しんでるときた
よぉし、俺のやり方で苦しみから解き放ってやるよ
俺は太陽の使者サンダーバード、アンタよりも熱く燃える男だ!

と、【挑発】したはいいが燃やされたらたまらないしまずは距離を取る
多少防具に【火炎耐性】もあるが防ぎきれるもんじゃないだろ
銃の間合いで勝負させてもらうぜ

そして「対決の黄金銃」の太陽【属性攻撃】で勝負だ!
でかすぎる火災はニトロで派手に吹っ飛ばすってな
つまり、より熱くてでかい…太陽の黄金銃でぶっ飛ばすのさ!
挑発の意味も込めて彼女の燃えているところに撃ち込むとするか
農場には近づけさせないぜ!



●GOLDEN GUN SHOWDOWN
 ……まるで、隕石が堕ちたような有様が広がっていた。
 超・純粋魔力の炸裂によって、農地前の大地は円く"押し潰されて"いた。
 それほどの暴威を浴びてなお――否、だからこそ彼奴は苦しむのか――バーニング・ナンシーは、まだかろうじて人の姿を保っている。
 あるいは形を。……そしてそれを、呪われた火は再生していくのだ。
 その存在の根幹を薪とし、痛みという代償をもたらすことで。
「……死ねない。死ねない死ねない死ねない!! アタシは、死ねない!!」
 狂ったように叫び、バーニング・ナンシーはぼうぼうと炎を燃やした。
 苦しげである。人々の中にすら、そのさまを憐れむものが出た。
 だがマーロン・サンダーバードは、そうした憐憫を仮面の下にしまい込む。
 ここにいるのは、あくまでひょうきんでクールなヒーローなのだから。
「熱い人は好きなほうだが、こりゃ熱すぎだな。しかも自分の熱さで苦しむたぁ、
 ヒーローとしちゃひとつ救ってやらなきゃいけなくなっちまうじゃねえか」
 マーロンは……否、ヒーロー"サンダーバード"は、あくまでも剽げてみせる。
 くるくると黄金銃をガンスピンさせ、気取った仕草で構えた。
「かかってこいよファイアーガール、俺は太陽の使者サンダーバード!
 アンタよりも熱く燃える男であり――アンタを、苦しみから解き放つ男さ」
「……カい放、だと?」
 獣の唸りは徐々に女の声となる――侮蔑と、嘲笑を含んだ声に。
「出来るもんか。お前ごときに」
「出来るさ。俺は、ヒーローだからな!」
 伊達男は笑った。マスクでその表情は見えないが、声音はたしかに笑っていた。
 女はぐるぐると喉から唸り声をあげ、右腕を恐るべき炎で包む。
 西部劇の決斗めいた静寂――空気が張り詰め、恐ろしいほどの緊張が訪れた。

(さて。そうは言ったけど……あれは、防ぎきれるようなものではない、な)
 仮面の下で、"ダニエル・ホリデイ"は淡々と考えた。
 いっそ思考は冷えていて、正面衝突は絶対なる死を招くのだと知らせている。
 ならば、どうする。己の嘘をさらけ出して、頭でも下げてみせるか。
 ――否。そんなことは、ヒーローのすることじゃあない。
 方法はひとつ。あくまでも銃の間合い……つまりは"先手必勝"だ。
 敵の動きに全神経を集中させる。東洋で言う"後の先"を得なければならない。
 もしも1ミリセコンドですらも遅れれば――自分は、消し炭に変わるだろう。
「来いよファイアーガール。どちらが強いのか、次の瞬間にわかるぜッ!」
「――死ね」
 挑発に乗り、バーニング・ナンシーは大地を蹴った。
 あまりの脚力に大地は抉れ、爆裂。それほどの速度の踏み込みである。
 極限の集中はしかし、その"起こり"を教えていた。
 触れればすべてを灰燼に帰する右腕が、獣の顎めいて迫る! ――だが!
「GOLDEN GUN!!」
 BLAMNッ!!
 わずか1ミリセコンド。接触に先んじた銃弾が、その炎ごと右腕を吹き飛ばした。
 どれだけ燃え盛る炎も、太陽の名を冠した黄金銃には劣る。
 衝撃で体の制御を失ったバーニング・ナンシーは、ごろごろと地面を転がる。
 ちょうど、立ち尽くすサンダーバードをわずかにそれる形で!
「――が、ァアアアアアアッ!!」
「言ったろ? ファイアーガール」
 大地を転がり呻く女レイダーを振り返り、サンダーバードは言った。
「太陽の黄金銃は、見た目よりも熱くてでかいのさ」
 ヒーローの言葉に、人々は歓声をあげて彼をたたえた。
 その強がり、その緊張、その安堵を人々が知ることは――決して、ない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フェルト・フィルファーデン
そうはさせないわよ、絶対にね。
この大地も、この地に生きる人々にも、一切手出しさせない。
さあ、終わりにしましょう。その炎も、怒りも全て!!

まずはこの場から敵を引き離しましょう。出来るだけ遠く、開けた場所がいいわ。騎士人形の弓矢で牽制しつつ【挑発しましょう。
「大した事ないわね。アナタの怒りはその程度のものなの?」ってね。
後は刃を交えつつ誘導出来たら辺りに誰もいないのを確認して、UC発動。
アナタの願い、叶えてあげるわ。出力の【リミッターを解除。冷気の糸を全力で放ち灼熱の炎諸共凍らせる!!

……この程度でその怒りが消えるとは思わないけれど、せめてもの手向けよ。
この地に生きる人々のため、消えなさい……!



●終わりを告げる一糸
 フェルト・フィルファーデンは、なんとしても敵を引き離そうとした。
 農地の目の前で防衛しながら戦う……それはとても難しく危険だったためだ。
 しかし数多の攻撃を浴びて完全に狂乱したバーニング・ナンシーは、
 もはや何があろうとその憎悪を棄てない。揺らがせることもない。
 彼奴は人々に因縁があるわけでもない。
 恨みもない。
 そもそも合理的な理由もない。
 ただ必然的に、その苦痛と憎悪を以てすべてを灼こうとする。
 理屈ではない、筆舌に尽くしがたいまでの破滅への欲求。
 それは、獲物を離すまいと食らいつくけだもののようでもあった。

「……たいしたことないわね。アナタの怒りは、その程度のものなの!?」
 フェルトの挑発と、彼女の騎士人形が放った弓矢に対し、女は凝視で応えた。
 血走った目を伝って熱波が駆け抜け、空気が爆ぜて矢を吹き飛ばす。
「なら、アンタに教えてやる夫。アタシのこの、痛みをなァ!!」
 バーニング・ナンシーは挑発には乗るが、フェルトの罠にはひっかからない。
 けして戦場を移すことなく、灼熱の剣で騎士人形たちを吹き飛ばしていた。
 フェルトは余裕を演じつつも、内心でわずかに焦りを感じていた。
(あくまで農地が目当てなのね。本当なら、誘導できたらよかったけれど……)
 出来ないというのならば、仕方ない。限界ギリギリの計算は出来ている。
 人々がおとなしく手出しせずにいてくれるならば、巻き込むことはない。
 フェルトは半ば祈るような面持ちで、クークーのほうを見やった。
 ……ソーシャルディーヴァの少女は、目をそらすことなくその戦いを見ている。
 拳を握り、食い入るように。目をそらすことなく、しかし手も出すことなく。
 彼女はかつてと違い、己の分となすべきことを理解していたのだ。
(強くなったわね、クークー様)
 その気高い姿に微笑み、フェルトは覚悟を決めた。
 守ると決めたものを、己の力に巻き込ませはすまい。
 討つべきはこの女ひとり。――その熱を、電子の糸で縛り上げてみせると!
「死ね、死ね、死ねッ!! お前も、何もかも消えろォ!!」
「いいえ。アナタにはもう何にも手出しさせない。わたしにも、人々にも。
 この大地も何もかも――その炎と怒りには、決して何もさせないわ!」
「ッ!?」
 バーニング・ナンシーは、己を縛り上げようとする見えない糸に気づいた。
 なるほど、この場に縫い止めていかにしてか攻撃する腹積もりか。
 片腹痛い。己を苦しめる熱が、この程度を焼き尽くせないとでも!?
 怒りに熱血を燃え上がらせ、灼熱の剣を振るう!

 ――だが。
「何……」
「アナタの願い、叶えてあげるわ」
 剣は電子の糸を一本たりとも断ち切ることは出来なかった。
 電子の糸はぎしり、とバーニング・ナンシーを縛り上げる。そして妖精は言った。
「この地に生きる人々のため――その怒り、その炎、消し去ってあげる!!」
 ぱきぱきと電子の糸が冷気を放ち、凍りつき、バーニング・ナンシーを包み込む。
 そして極低温の冷気は――マイナスの熱量によって、爆ぜた!
 白き爆風が膨れ上がり、女ひとりを滅ぼすために凝縮されていく。
 熱よりもなお恐ろしき"死"の冷気に、女レイダーは恐怖の雄叫びをあげた――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジュリア・レネゲード
……ええ、でしょうね
私の出番はまだ続くのですね。はぁ

『溜息ついてないで、絶賛炎上中のあの放火魔をどうにかしなさい!』
承知しました。全端末セットアップ
52機の複製の内
20機に消化装備を施して鎮圧へ向かわせましょう
もう20機には地形破壊による延焼阻止を目的とした爆撃装備を
残る12機には他の40機を援護する耐火防護装備を施し
敵のユーベルコードの封じ込めを狙いましょう
そうすれば対象の戦闘力は向上しません
私は戦闘能力はありませんからね
ユニバースに接続し安全圏から状況把握しつつ適宜指示を飛ばします

『で……丸見えになったアンタに鉛弾が降り注ぐって訳よ』
デバッガーでスナイピング――照準を定めて斉射してやるわ!


レムリア・ザラタン
何もかもを灰燼に帰す者よりも、新しく何かを始め、次代へ何かを残す者の方が尊い
…希望の一条、その目に焼き付けたようだな
良い啖呵だったぞ、そこの男
後は我々に任せておけ

敵は白兵戦に優れているようだな
ならば一旦距離を取り対空レーザーで牽制だ
放たれる炎はバリアで盾受けをする…が、直撃は避けても熱は如何ともし難いな
炎上する地形も厄介だ
ならば…

…この辺りまで農場を拡張する予定はあるか?
先に謝っておこう。余計な仕事を増やすぞ

接近戦を挑む猟兵に一旦距離を取らせるため、援護射撃で時間稼ぎを行う
離脱を確認し、即座に敵の周囲に電脳魔法陣を包囲展開
そこから爆導索を一斉射出・起爆し炎上する地形ごと吹き飛ばして消火といこう


ネグル・ギュネス
良くぞ言った
望まれ、願われたのならば、其の刃となり、盾となろう
さて──なんと言ったか、…ああ、八つ当たり女で良かったか
お前の願いは叶わない

環境耐性・熱を稼働
襲いくる炎は、刀から振るう衝撃波でカット
それでも炎が止まないならば、皆を襲うならば、勇気と覚悟をもって突っ込む
俺は、皆を守る人であり、機械である!

本当の炎を見せてやる
人々の災厄になるでなく、愛し、守護する優しいかみさまの炎をな

力を、貸してくれ、かみさま
そして皆、願ってくれ、勝てと!

【陽炎神楽・鳳仙花】

限界を超えた稼働で突貫し、炎を纏った飛び蹴りを放つ!

炎は害するもんじゃねぇ
暖かくて優しい、人々を守るもんなのさ…お呼びじゃねぇよ、厄災


鳴宮・匡
ひとついいことを教えてやろうか
死ねば何も感じなくなるぜ
痛いとも、熱いとも、苦しいとも思わない

こちらへ――というよりは農地と、ここにいる人員へ、かな
放たれる炎を、“影”で相殺していくよ
出来るだけ着弾する前の段階で相殺して
一瞬でも火の手による被害を発生させないよう心掛けていく

焦れて動いてくるならそれはそれで好都合だ
炎を撒き散らされないように留意しながら
農地から離すように追い込んでいくよ

……もう、この自分の想いを、疑いはしない
空っぽだと思っていた胸の内にあった自分を見つけてくれた人に
これが正しく、“自分”だと、言えるようになりたいんだ

だから、守る、と決めたのなら
絶対にそれをやり遂げてみせる


リア・ファル
POW
アドリブ共闘歓迎

ヒトの歩みを阻もうとするのなら、ボクは戦う

「火炎組成および天候状況解析。……弾丸組成!」
『ライブラリデッキ』から『セブンカラーズ』用の氷弾を生成して
拠点を守るように射撃
(情報収集、空中戦、拠点防御、属性攻撃)

その身を怒りで焦がすのに、自らを火にくべる……
悲しい炎だ

ならばボクは、ヒトの歩みに寄り添い
多くのモノを創り出した炎を喚ぶ
UC【召喚詠唱・白炎の不死鳥】!

ボクが身に纏った白炎が、相手に掴まれても
再生の力をもたらす
ボクも相手を掴み返そう
(捕縛)

さあ、掴んだその手に燃え移った白炎の熱が分かるかい?
それこそヒトの文明を切り拓いた炎
創生と情熱の炎さ



●守るために、必要なもの
 女にとって、その身を灼く炎は呪いのようなものだった。
 実験の失敗によって押された烙印。
 力であり、しかし終わらぬ苦痛を与える永遠に外れることのない枷。
 だからこそ苦しんできた。
 その苦しみゆえにすべてを奪い、殺し、滅ぼしてきた。
 すべてはこの熱がいけないのだ。
 この炎が、アタシに――私に、人でなしじみた行いをさせる。
 だからこの炎がなければ、アタシは。
 ……そんな思考は、しょせん言い訳でしかなかったのだ。
 生前のバーニング・ナンシーであれば、あるいは本当にそうだったかもしれない。
 炎による永劫の苦しみを否定するために、命を絶ったのやもしれぬ。
 だとすれば、オブリビオンとなって蘇ったことは間違いなく皮肉なことだろう。
 そしていま――バーニング・ナンシーは、その炎を求めていた。
 熱血がもたらす熱を。苦しみを、心の底から求めていたのである。
 それを消しされるならば、いっそ死んでもいいと思っていたはずなのに。
 あの憎むべき人類と猟兵どもを消し飛ばすために、炎を求めていた。
 その矛盾こそが、オブリビオンたる証。
 熱の苦しみだの、炎の痛みなど、それを紛らわせることなど、所詮はお為ごかし。
 彼奴は"そうである"がゆえに滅びを求め、殺し、破壊する。
 それを自覚した瞬間、バーニング・ナンシーは完全に痴れ狂った。

「――あァあああァァアアアアッ!!」
 獣じみた咆哮とともに、白き冷気の衣を吹き払い、炎が荒れ狂った。
 青い空を衝くばかりの炎の竜巻は、さながら大地から突き立つ熱の槍のようだ。
 その中心に居るのは、己の体を自壊させ熱量で再生する女の形をした悪魔。
 自己矛盾の果てに、オブリビオンとしての本能的欲求に屈した女レイダーである。
「……そうだろうな」
 しかしそのさまを見て、鳴宮・匡は淡々と言った。
 生き物は、生きるために生きる。死を心から願うのは人間だけの業だ。
 機構的な自殺衝動(アポトーシス)と、自死を願うこころはわけが違う。
 しかしそんな例外をさておけば、自ら死を希うような生物など存在しないはずだ。
 自分が、そうだ。人でなしである己は、救済のような死を拒絶した。
 あれほど自罰を求め、己は生きるべきでないと理解してはずなのに。
 合理的な終焉を意地汚くも否定し、人々を踏みにじった生に縋ったのである。
 だから不思議と、バーニング・ナンシーの選択と懊悩は肌で感じ取れた。
 違う点があるとすれば、その果てに選んだ答えだろう。
 バーニング・ナンシーは、己がオブリビオンであることを受け入れた。
 屈した、というべきだろう。破壊しか出来ない存在なのだと屈服したのだ。
 では、匡はどうか――そのさまは似ているようで、しかし対極にある。
 彼は殺すことしか出来ない。そうすることで生き続けてきたのだから。
 そのさまは、破壊し滅ぼすために存在するオブリビオンととても似ている。
 とても、よく、似ている……だが。
(俺はお前と違って、"そうであるから仕方ない"なんて開き直ることはやめたんだ)
 そうやって開き直ったところで、苦しみが消え去るわけではない。
 悩みが失せるわけでも、身を裂くような矛盾が解消されるわけでもない。
 だからこそ彼は。殺すことしか出来ないその手で、銃を握りしめる。
 "俺はお前たちと違う"と、終わることなき残骸どもに証明するために。

「来るぜ」
 そんな匡の瞳は、炎の竜巻が爆ぜる瞬間を一瞬疾く捉えていた。
 そして彼の言葉通り、炎の竜巻は内側からの圧力で左右に割れ、砕ける。
「猟兵ァアアアアアアアアッッッ!!」
 そして天地を揺るがす雄叫びとともに大地を疾駆する、女の形をした炎!
 向かう先は一直線。農地――いや、それを守ろうとする猟兵たちのもとだ!
 音をも超えるほどの女レイダーの疾駆よりも、生み出された炎はなお疾い。
 ひび割れた荒野をのたうつ蛇めいて焦がしながら、炎の触手が人々へと迫る!
「――させん」
 巌のごとき静かな声。次いで、嵐じみた剣風がその炎を吹き飛ばした。
 ごひょうっ!! とつむじ風が荒れ狂い、見えざる壁めいて人々を守る。
 長い髪を抑えながら、しかしクークーは土煙の向こうにその背中を見た。
 ネグル・ギュネス。剣を振るいて、その一刀で先触れたる炎を吹き飛ばした男。
「よくぞ言った」
 彼は肩越しに人々を振り返り、言った。
「望まれ、願われたならば、その刃となり、盾となろう」
 口元には薄い笑み――そして敵を睨みつけ、刃の如き眼光を輝かせる。
「此処から先は、火のひとさしとて通すまい。俺たちが居る限り!!」
 どうっ!! と、ネグルは女レイダーに対抗するように大地を蹴った。
 黒き一条の矢となりて、炎を吹き払いながら猛然とその暴威に挑む!
「邪魔をォ、するなァアアッ!!」
「人々の邪魔をしているのは貴様の方だ、八つ当たり女ッ!!」
 が、ぎぃんっ!!
 刃と刃がぶつかりあい、猛烈な衝撃波が大地を大きく揺るがせた。
 青空にたちこめる白い空は、見えないほどの高速斬撃の余波で切り刻まれる。
 ネグルは言葉通り、女の刃も、その炎も決して通さなかった。
 信念のもとに戦うことを決めた男の剣は、女のそれよりも疾く、そして鋭い!
 だが、おお……しかして女の形をしたその体から漏れ出る熱波は、
 大気そのものを焼き焦がし、天地を、そして人々をなおも灰燼に帰そうとする!
「……ええ、でしょうね。ただ本体の進撃を止めただけでは終わらない。
 私の出番はまだ続くのですね。……はぁ。これだから出撃は嫌なのですが」
 ネグルひとりでは抑えきれぬ熱の伝搬を、先んじて抑える者がいた。
 ジュリア・レネゲード――が操るソーシャルドローン、"グリュプス"だ。
 ユーベルコード"妖精乱舞"によって複製・生成された戦闘端末部隊。
 それらはあらかじめ戦場に展開し、炎の延焼とそれによる農地への被害を防ぐため、
 ありとあらゆる消火および爆撃装備を整えて備えていたのである。
 炎が燃やすのは、この荒野だけとは限らない。なにせあれは超常の炎だ。
 大気すらも伝い、なんとしてでも人々を脅かそうとするのは読めていた。
 ゆえにグリュプスは、自己の分身たちを展開し、その熱を冷気で押し返す。
 人々に危険が及ばないよう防護し、ネグルや匡の援護に入る。
 では、ジュリア本人は? 彼女は遠く後方から、援護射撃を行っていた。
 戦闘を避けているわけではない。確実な指揮と情報収集を行うためだ。
 敵はネグルや匡に夢中で、ジュリアやグリュプスの存在に気づいていない。
 だからこそ撃てる一手があることを、彼女たちは知っているのである。
『グリュプス、作戦変更よ! ほかの猟兵と協力して前線を援護!』
「言われずともそのとおりにしますよ。あんな放火魔と正面衝突はごめんです」
 ネグルと女レイダーの白兵戦はいよいよ加熱し、剣の嵐と化していた。
 悪あがきじみて飛び散る炎の飛沫は、状況を俯瞰する匡の"影"が相殺する。
 ただ一縷とて人々の営みへは届かせない。その確固たる決意を示すかのように。

「どけ、どけどけどけどけどけどけェエエッ!!」
「退くのはそちらだ。分をわきまえろ!」
 キュパ――パパパパパパパッ!!
 まるで舞台を照らすライムライトめいて、無数のレーザーが降り注いだ。
 それは、上空アドバンテージを得たレムリア・ザラタンの対空レーザーだ。
 回避余地など存在しないレーザーの雨。しかしこれを敵は一刀のもとに切り払う。
 燃え盛る右手と灼熱の刃を振るい、光条をも歪ませる熱で飲み込んでしまうのだ。
 しかし、これは織り込み済み。レムリアの目的はあくまで牽制と挑発である。
 マグマじみて吹き出した炎を空中機動で回避し、敵の意識をかき乱す。
「なぜアタシの邪魔をする。お前たちに何の理由がある!?
 お前たちはあの人間どもの守り人か何かか? 縁者か? どちらでもないだろう!!」
「理由もなく人々の営みを灼こうとする君が、我々に意義を問うのか?
 ――答えはひとつだ、レイダー。希望は、絶望になど敗けないということさ」
 さらなるレーザーを生み出しながら、レムリアは不遜な面持ちで言った。
「何もかもを灰燼に帰する者よりも、新しく何かを始める者のほうが尊い。
 すべてを滅ぼす者よりも、次代へ何かを残そうとする人の営みのほうが素晴らしいものだ」
 ……ああ、そうとも。レムリアは心のなかでつぶやき、薄く笑った。
 あの男……アドルフと言ったか。あの啖呵は、なかなかのものだった。
 そこに未来を見据え、あくまでも「明日」を求める人々がいるならば。
 そのための盾となり、矛となることに、いささかの疑問も後悔もなし。
 己は朽ちし戦士たちの無念が織り上げた者。未来を拓くため斃れた者の集合体。
 多くの世界で、多くの戦士たちが、見えない明日を掴むために死んだ。
 自分はけしてたどり着けないその未来に、未来に進むであろう誰かに、
 命を賭けるに足る想いを乗せて、その礎となって斃れていったのだ。
 ならばどうして、己がそれに倣わずにいられようか?
 ――もうこれ以上、そんな悲しい「必要な捨て石」を増やさぬために。
 戦士も、無力な人々も、みなが笑顔でともに並んで明日を目指せるように。
「私は退かんよ。特に貴様らに対してはな、オブリビオン!!」
 吹きすさぶ竜巻じみた炎をすら恐れることなく、少女はその光芒を放つ!
 そして見よ――人々の未来を拓こうとするヤドリガミは彼女だけではない。
 リア・ファル。人の歩みを阻むものを討ち倒し、誰かの明日を切り拓くもの。
 明日を目指す者の背中を押そうとするもの。希望を謳い未来を目指すもの。
 その魔弾はぱきぱきと大気を凍りつかせ、そして熱をも閉じ込め氷結させた。
「火炎組成および天候状況解析、完了――その悲しい炎、もう見切った!
 キミはもう、何も焼けはしないよ。バーニング・ナンシー!!」
 魔銃セブンカラーズから氷結弾頭をばらまきながら、リアは言った。
 彼女の放った氷弾は、空気をも焼き焦がすほどの熱波を相殺し無効化する。
 匡の弾丸とリアの魔弾、そしてそれを支援するジュリアとレムリアの飽和射撃。
 それらが、人々の営みを灰燼に帰そうとする女レイダーの野望を叩き潰す!
「邪魔を、するな。……邪魔をするなら、死ね。死ね、死ねェエエエエッ!!」
「……生きるためでも、意志を貫くためでもなく、ただ殺すためにその身を燃やす。
 本当に、悲しいね。それが、キミの過去としての"あり方"なんだね……」
 己を薪となし燃え上がるバーニング・ナンシーの姿に、リアはつかの間憐憫を抱いた。
 だが、戦場においてそれは不要だ。そして命取りとなる感情である。
 しかしなおも、人の形をした悪魔が己を燃やし続けるというのならば……。
 冷気ではなく、同じ炎によってそれを否定し、屈させなければならない。
 炎とは、けして悪しきものではない。それは再生と創造を意味するもの。
 何もかもを滅ぼしはするが、何かを生み出す苗床にもなるのだから。
「……!? なんだ、これは……!?」
 バーニング・ナンシーは、己を包む暖かな白い炎に目を剥いた。
 苦しみが、痛みが、己の憎悪の原動力が、"癒やされ"て消えていく。
 それは暖かく安らかで――だからこそ、オブリビオンにとっては忌まわしい。
 リアは優しげな、しかし双眸に決然たる光を浮かべた笑みで相対する。
「わかるかい? これこそがヒトの文明を切り開いた炎。プロメテウスがもたらしたもの」
「ふざ、けるな!! こんな――こんな救いを、いまさら……ッ!!」
 残骸に堕ちた身に与えられて、どうしろというのだ。
 理不尽な怒りが燃え上がる。白き炎のもたらす再生と救いを否定する。
「アタシは! アタシは、すべてを滅ぼすもの! 灼き尽くし壊すものだ!!
 再生なんて必要ない!! アタシを――アタシを否定する炎などォッ!!」
「――それでもボクは、キミを離さない!」
「!!」
 白き炎をまとったリアの手が、がっしりとバーニング・ナンシーを掴んだ。
 忌まわしいほどに暖かな炎。……攻め込めない。逃げることも――!
 やめろ。やめろやめろやめろ。アタシを憐れむな。見下すな。慈しむな!!
 そんなものに意味はない。この身はとっくに、終わっているのだ……!!
「――もうわかってるんだろ」
 声は、その身を貫く影の一撃のあとに来た。
「死ねば何も感じなくなる。痛みも、熱さも、苦しみも、何も」
 匡である。その目はどこまでも澄んでいて、まるで水面のようだった。
 バーニング・ナンシーはその瞳を畏れた。己を見透かしたような瞳を。
 だのに放たれた弾丸は、どこまでも何もかもを吸い込むような"黒"だったのだ。
 女がその身を薪として生み出そうとした炎は、影に飲まれて否定された。
「それでも死ぬのが厭だっていうなら、死神(おれ)が引導を渡してやるよ」
 守ると決めたのだから。
 空っぽな己の胸にも、ねがいは確かにあったのだから。
 女はそれに目を背けた。残骸であるがゆえにそうするしかなかった。
 自分は、違う。残骸などではない。過去でもない。
 人々と同じように、未来を求め、そして願ういのちなのだ。ゆえに。
「――守ると決めたんだ。俺は」
「いいや。俺たちは、だッ!!」
 ごおうっ!! と、もうひとつの熱き風が大気を斬り裂いた。
 ネグル! 破魔と破滅の炎を纏いて、男はふたたび一陣の矢となる。
 その鋼の躯体の限界を越え、何もかもを滅ぼし祓う蹴撃を刃の如くに!
 クークーは、アドルフは、そして人々は戦いを見守った。
 たとえ戦うことは出来なくとも、それを見守り見届けることは出来る。
 それこそが彼らの役目であり、"戦い"であると知ったから。
 その祈りは男を突き動かす雷となり、そして悪を滅ぼす炎となる。
「お呼びじゃねえよ、厄災――ここに、ねがいの炎がある限りはッ!!」
 "陽炎神楽・鳳仙花(アウローラ・バルサム)"。
 いかなる残骸にも防ぎ得ぬ蹴撃が、女を貫く――そして!
「道を開けてもらうぞ、オブリビオン」
「これが仕上げよ――さあ、撃ち貫かれなさい!」
 レムリアの生み出した爆炎と、ジュリアの放った致命の弾丸。
 それがまったく同時に、炎を、炎の形をした悪魔を、女レイダーを!
 その身を貫き、逃れ得ぬ滅びのクラックをもたらす――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セツナ・フィアネーヴ
「お前自身も抑えきれぬ炎、か。あるいは……お前の姿は、私のあり得た姿なのかもな」
「セツナ……」
「……大丈夫だ、アリシア。私には師が、お前が、いてくれた。……ああはならない」


封竜槍を構え近接戦を
敵の斬撃へは第六感での回避とお供の精霊アリシアの雷魔法で妨害しつつ
他を巻き込まぬよう距離を離すように動く

距離を取ったなら
「お前の熱を冷ませるか、と聞いたな?なら、試してやる」
発言と同時にアリシアを腕輪に戻し、至近からUC【凍える世界】を全力で放つ

これは肉体、精神、感情全てに作用する災いの氷嵐
その熱、その苦しみ、その怒り
体も心も感情さえも
冷却し鎮静し凍結して“零”へと変えてやる
凍えて眠れ

※アドリブ他歓迎です



●コールド・ワールド
「お前自身も抑えきれぬ炎、か。あるいは――」
 セツナ・フィアネーヴは、その凄惨なありさまを見て呟いた。
 バーニング・ナンシー。オブリビオンの体はもはや消滅寸前である。
 何度も消滅レベルのダメージを受けておきながら存在を維持している時点で脅威だが、
 それにも限界がある。傷はもはや癒やしきれず、血の炎がぼたぼた垂れていた。
「……お前の姿は、私のありえた結末なのかもしれない」
「アタシが、お前の成れの果てだったかもしれないって……? ハッ」
 バーニング・ナンシーは、セツナの無表情をあざ笑った。
「だったら、なんだ。アタシを哀れんで道を開いてくれるのかい?」
「……そんなわけがない。私は、お前を討つために此処に来たのだから」
 セツナはゆっくりと封竜槍を構え、バーニング・ナンシーに殺意を放射する。
 そんな彼女に、友である精霊アリシアの心配そうな念話が流れ込んだ。
『セツナ……』
「……大丈夫だ、アリシア。私には、師が、そしてお前がいてくれた」
 だから、私は"あんなふう"になることはない。
 なってしまうことも、ない。
 それを否定するために――そんな終わりを拒絶するためにも。
 ここで退くことは出来ない。この槍に懸けて、その身を討つべし。
「来い、我が可能性の一端よ。私の槍のなんたるかを、教えてやる」
「ほざくなよ――小娘がァッ!!」
 バーニング・ナンシーが仕掛けた。地面を爆ぜさせる速度の踏み込み!
 残された力を刃に注ぎ込み、炎纏いし剣を逆手に振るう。狙いは頸!
 セツナは槍を斜めに構えて、刃の根本を叩くことで威力を相殺した。
 しかしバーニング・ナンシーはこれを読んでいる。衝突の瞬間ぐるりと反転。
 勢いを殺さぬまま逆袈裟の斬撃を仕掛けるが、セツナは身を滑らせて回避する。
 薙いだ間隙を狙い腹部へ刺突――わずかに遅い。ナンシーは脚で勢いを殺す。
「邪魔なんだよッ!!」
「……!」
 敵は獰猛かつ練達のオブリビオン。技量に関しては分があるか。
 速度で上回るその剣は、徐々にセツナの防御を越えつつあった。
 アリシアの雷撃が致命的斬撃を弾くが、それも長くは続くまい。
『セツナ!』
「わかっている――」
 しかしセツナは致命的斬撃をかろうじていなしながら、機を伺っていた。
 敵の隙ではない。この力に誰も巻き込まないための一瞬を。
 両者は最前線を徐々に後退する……そしてセツナは、大きく目を見開いた。
「お前の熱を冷ませるか、と言ったな」
「あ?」
「――なら、試してやる」
 ばちん! と雷撃を放ったアリシアが腕輪に変じ、同時にセツナが仕掛けた。
 ぐるりと一回転させた封竜槍の風が、ふたりを包む氷の嵐へと変わる!
「これは!?」
「これが"凍らせる"のが、体だけと思うな」
 バーニング・ナンシーは、その氷嵐の恐ろしさを一瞬で感じ取った。
 肉体のみならず精神、はては感情すらも凍結させる災禍の風。
 超自然的冷気は足元からバーニング・ナンシーを絡め取り、"凍てつかせる"。
「凍えて眠れ、"零"の果てで……!」
「こい、つ……ッ!!」
 バーニング・ナンシーは飛び退ろうとする。だが脚が動かない!
 そしてその隙を狙い、セツナの全力の刺突が繰り出された!
「――私は、お前とは違う」
 その言葉は決別であり、終わってしまった過去への手向けであり。
 そして、どこか憐憫めいた色を秘めた、必殺の一撃であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

無間・わだち
その程度で、熱いんですか
燃え盛る焔の女を見据える

全部炭にしたとして
火炎が鎮まる訳でもないのに

言ったでしょう
いのちを紡ごうとする人の営みを
邪魔しないでください

駆けた先、燃え上がる右手で縊られようと
爛れる痛みと酷い火の海には耐えられる

限界などいくらでも超えてやる
それが出来るだけの
いのちを与えられたのだから

己の右腕で、彼女の四肢を掴む
捨て身の一撃はうんと熱く
燃えるよりも
いっそ壊れてしまうほど極熱で、焔を奪え

ああ、確かにこれは
熱いですね

あなたの吐息も
絶命の一言さえも
聴こえなくなりそうだ

もう、止まっていいんですよ
あなたの焔は、誰も愛せやしないけど
あなたの痛みは
俺が覚えていますから

これが
優しさであるものか



●誰も、その心を理解できない
 人のかたちをした炎が、よたよたと荒野をさまよう。
 ……度重なるダメージを受けた、バーニング・ナンシーの成れの果てだ。
「あああああ……!!」
 それでもまだ、女のかたちをした残骸は苦しみと痛みを表現していた。
 狂うことも出来ぬ。
 炎そのものに成ることも、出来ぬ。
 人のかたちをして、人の思考をし、その痛みと苦しみを永劫に背負わねばならぬ。
 たしかにあの炎は、女レイダーにとって力ではあるのだろう。
 だが、自らを灼きながら悶え苦しむさまは、まるで無限地獄を思わせる。
 ……それは祝福などではなく、呪いというべきなのだろう。
 無間・わだちは、そんな炎をただじっと見つめ続けていた。
 大きさの違うふたつの瞳は、ガラス玉のように淡々と、炎に照らされている。
「……その程度で、熱いんですか」
 そして口から出たのは、憐憫とも侮蔑とも違う言葉だった。
「わかってるんでしょう。何もかもを炭にしたとして、火炎(それ)は消えない。
 あなたの痛みが、苦しみが、鎮まるわけじゃない……そんな当たり前のことは」
「…………だ、ま、れ」
 ぎろりと、炎のなかから悪鬼じみた形相が見返した。
 わだちは恐れない。ただ呆れのような、そんな乾いた瞳を向けるだけ。
「そんな子供じみたやつあたりに、何も生み出さない壊すだけのあなたに、
 いのちを紡ごうとする人の営みを邪魔させない。邪魔、しないでください」
「……あたしの、痛み、苦しみ、など。お前らには……わかるか」
「わかりませんよ」
 わだちは構えた。
「わかるつもりもないですから」
 ひとのかたちをした炎が大地を蹴った。
 咆哮は、獣のそれよりもなお醜悪だった。

 燃え盛る鉤爪じみた右腕が、何度も何度もわだちの体に触れ、その身を焦がす。
 縊り殺そうと、引き裂こうと、限界を超えた筋力でわだちを削った。
 爛れる痛み。筆舌に尽くしがたい苦しみ。炎はわだちをも飲み込もうとする。
 この痛みを。
 この苦しみを。
 お前も味わってみろ。
 そして死ね。
 死んで我が身を鎮める糧となれ。
 悪意が、そう言葉なくして叫んでいるようだった。

 だが、わだちは死なない。
 ――死ねない。死ぬことなど許されていない。
 それを棄却し、拒絶し、乗り越えたその身には。
 その身に与えられたいのちには、そんな終焉は許されない。
 わだちの浅黒い腕が、燃え盛る女の手首をがっちりと掴んでいた。万力めいて。
 炎が燃え移る。つぎはぎの傷から熱が染み込み、皮ではなく骨を灼いた。
「は、はは、ははははは!」
 ノイズめいてひび割れた声で、バーニング・ナンシーは笑った。
「アタシに、触れたな。味わえ、味わえ! この痛み、この――」
「……もう」
「あ?」
 バーニング・ナンシーの笑いが途切れる。
「もう、止まっていいんですよ」
 炎に苛まれながら、わだちの声は濁ることない清水めいて澄んでいた。
 その瞳はバーニング・ナンシーを見ているようで、見ていない。
 炎を映しているようで、もっと遠くの、自分だけが知る過去を見ていた。
「あなたの焔は、何も生み出せやしない。誰も愛せやしない。けれど」
 みしり、と力がこもる。炭化した女の腕はあっけなく砕けた。
 何が、起きた? 女は瞠目する。倒れ込むその脚を、男の腕が掴んだ。
 そして、砕く。断面から吹き出した焔がその身を飲み込む。だが止まらない。
「あなたの苦しみも、俺には理解できない。誰にもわからない。けれど」
 焔が。奪われている。
 焔によって生み出された痛みも、怪物の口めいた腕に喰らわれていた。
 バーニング・ナンシーは、それを求めていたはずだった。
 解放の瞬間。この痛みと苦しみが鎮まる"いつか"を。
 だが女の口を衝いて出たのは、全く別の言葉だった。
「やめろ」
 焔(アタシ)を、奪うな。
「やめろ!」
 苦痛(アタシ)を、奪うな!

 だが、わだちの指先は無慈悲で、それが却って慈悲深かった。
 腕と脚を握りつぶせば、その手は心臓を引き裂こうと胴体を抉る。
 どこまでも薙いだ男の瞳と、驚愕に見開かれた女の双眸が交錯した。
 その吐息も、断末魔も、わだちには聞こえていないようだった。
 彼は最初から、もっとずっと過去の風景を眺めていたのだから。
「――あなたの痛みは、俺が覚えていますから」
 それが手向けであり、別れであり、そして最後通牒。
 焔をも焦がす極熱の一撃は、女の核ともいえる心臓をバラバラに砕いた。

 ……残滓の焔は、長い間わだちの全身を包み、そして苛んだ。
 まるで彼を、新たな永劫の地獄へと連れて行こうとするかのように。
 しかしわだちがじっとしていれば、やがて焔は力尽きて消えていく。
「や、やったのか……?」
 散弾銃を握りしめたまま、アドルフは呆然とした様子で言った。
 誰もが見ていた。炎に包まれた青年が、やがて元の姿に戻るのを。
「うん。――でも」
 ただひとり、クークーだけが、憂うようにまぶたを伏せた。
 彼のことはよく知らない。だけどもその姿を見ていると、どうしてか。
 ……どうしてか、己の胸がちりちりと焦がされるように痛む気がした。
 炎に抗うことなく、ただ立ち尽くす姿がそうさせたのか。
 黙祷にも似た沈黙が、彼の悲しみを伝搬させたのか。
 ……わからない。わだちという男の考えていることは、少女にはなにひとつ。
 理解できない? それもある。だがもっと、なんというか……。
「終わったよ、わるつ。……ありがとう」
 悲しみだとか、痛みだとか、そういう話ではない気がしたのだ。
 己の罪を贖わんとする殉教者を見ているような、そんな心持ちだった。
 ……男は握りしめていた拳を、やがて開き、じっと見下ろした。
 そして一言、誰にも聞こえない声で呟く。
「…………これが、優しさであるものか」
 青年の苦しみ、青年の痛みは、誰にもわからない。
 ただその悼みだけは、人々の心に何かを残した。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『アポカリプスで農業を』

POW   :    力仕事を担当する

SPD   :    丁寧な仕事を心掛ける

WIZ   :    技術指導などを行う

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ささやかなる宴
 この世界では、他の世界からあれこれ物品を持ち込むことも難しい。
 そして寂れた拠点では、呑めや歌えのどんちゃん騒ぎというわけにもいかぬ。
 ただそれでも、人々は出来る限りの余裕を振り絞って宴を行うことにした。
 無駄遣い、と揶揄するのは少々筋違いだろう。宴とは"そういうもの"だ。
 たとえ合理的でなくとも、みんなで時間を共有し騒ぐことで、活力を得る。
 ありふれた苦しみを紛らわせ、また明日も立ち上がれるように奮う。
 そんな営みこそが、人々の祝宴にはあるのだから。

「あんたがたは、大したもんだ!」
 赤ら顔のアドルフは、上機嫌な様子で言った。
 彼の手には、合成アルコール入りのジョッキが握られている。
 卓上に並んだ食事は、最高級のそれらに比べればはるかに見劣りはする。
 きっといずれは、彼らが育てた作物が、そこを彩ることだろう。
「何もかも助けられちまった。こりゃあ、逃げるわけにもいかねえや。ひっく」
「逃げるつもりなんて、もうないくせに」
 しゃっくり混じりに軽口を叩くアドルフの言葉に、クークーははにかんだ。
 ……農場は無事に守られ、オブリビオンの脅威は払われた。
 付近を締めていたバーニング・ナンシーの消滅は、この地の平和を意味する。
 拠点をあえて害そうというレイダーは、そうそう簡単には出てこないだろう。
「本当に、ありがとう。みんなのおかげで、この拠点の人たちも」
 クークーは、ちらりと、彼らが守り抜いた農場のほうを見やった。
「……あの大事な場所も、守り抜けた。宴が終わったら、さっそく仕事しなきゃ」
 彼女は旅人だが、身を寄せている間はその拠点の一員として振る舞う。
 細腕をまくりあげて意気込む少女に、薄汚れた子供たちはきゃっきゃとはしゃいだ。

 そんなささやかな宴に興じ、あるいは彼らをもてなしてもいいだろう。
 もちろん仕事は山盛りだ。戦いの後片付け、本格的な農業の手伝い、指南。
 壊れかけた機械のメンテナンスや交換、あるいは近隣からの代替パーツの調達。
 やることは多いが、人々は活力をみなぎらせ、そして希望に燃えていた。
 猟兵たちが力を貸せることは、いくらでもある。
 そしてそれは、彼らが明日を目指すための大事な礎となるはずだ。
 この世界には、そう簡単に物品を持ち込むようなことは出来ない。
 だが人が前に進む力は、何も物がなければダメというわけではない。
 誰かとともに、何かを成し遂げた記憶。
 言葉。誓い。行動。あるいは知恵、技術、信念。
 それもまた、艱難辛苦を乗り越えるための力となるのである。
マーロン・サンダーバード
POW

技術指導も農業指導もできないってなると、力仕事だよなあ
とはいえ汗水たらして土を耕すのはマスクマンには似合わない
ホラ、あたくし銃より重いもの持ったことありませんの。オホホ。

ということで近隣なりちょっと遠いところに必要な物資や、パーツ取りに使えそうな機械があるなら俺が取ってきてやろうじゃないの
この世界ちょっと安全圏から外出ただけでも大変だが
その点俺なら安心だ、強くて太陽の味方だし荒野が似合うハンサムだからな
「太陽の使者」を発動してスっ飛んでお届けしてやるぜ
大人の事情が許せば「逆光の勝利」で帰ってこれれば楽なもんだしな
「用があるならどんどん言ってくれよな。今だけの太陽超特急だぜ」



●明日のために出来ること
「――GOLDEN GAN!!」
 BLAMBLAMBLAM!! BRATATATATATATATATAT!!
 がなりたてるような銃声の交響曲が、遺棄された廃工場に鳴り響く。
 そこを根城としていたレイダーどもは、悲鳴を上げて逃げ惑った。
 しかし、オブリビオン相手に慈悲は無用だ。
 マーロン・サンダーバードはマントをはためかせ、逃げ惑うレイダーの眼前に着地!
「おいおい、出し物はまだ終わっちゃないぜ? ――ここからが本番さ!」
 BLAMBLAMBLAM!! BRATATATATATATATATAT!!
 太陽のようなマズルフラッシュが煌めくたび、また死体が増えていく……。

「まったく、あんたはどこまでもタフだな」
 部品を検分するために同行していたアドルフは、感服した様子で言った。
 マーロンはくるくるとガンスピンをすると、肩をすくめておどけてみせる。
「なあに、力仕事だの汗水たらして槌を耕すだの、地味な仕事は似合わなくてね。
 それにホラ、あたくし銃より重いもの持ったことありませんの。オホホホ!」
「よく言うぜ、こんだけのレイダーをひとりでのしちまうんだからよ」
 お役御免になった散弾銃を肩に担ぎつつ、アドルフは苦笑した。
「ガキどもはすっかりお前さんに夢中だぜ。正義のヒーロー、サンダーバード! ってな」
「……そいつは光栄だ。だが、もしホンモノのヒーローってのがいるとすりゃ」
 マーロンはわざとらしく間を開けて、キメ顔角度で言葉を続けた。
「それはあんたのことさ、アドルフ」
「よせやい、キザったらしくてケツが痒くならあ!」
 男たちはハハハと呵々大笑し、やがてマーロンが言った。
「だが、マジな話、あんたは大したものだと思ってるぜ? 話は聞いてるんだ。
 そもそもの農場の機械を動かしたのは、あんたの知恵があらばこそなんだろ?」
「まあな……けどあんなもん、知ってりゃ誰でも動かせるんだぜ」
「だが今まであんたらは、その機械を動かす考えすら実行に至らなかったわけだ」
「…………」
 マーロンはぴしっとアドルフを指差す。
「それはつまり、あんたらが本気でこの世界で生き延びようと決めたって証拠さ。
 たしかに俺はサンダーバード、太陽のように輝くイカしたヒーローさ。だが……」
 ――どんな世界でも、本当に勇気ある者は未来へ歩みだす人々なのだ。
 その言葉は、"サンダーバード"のものでもあり、マスクの下の男のものでもある。
「俺が出来るのはせいぜい、銃(こいつ)で邪魔なモノを吹き飛ばすくらいなんだぜ」
「……それこそ大したもんだと思うがな。まあ、ありがたく受け取っとくよ」
 照れくさそうに鼻の下をこするアドルフを見て、マーロンは頷いた。
「ああ、それでいい。あんたらが元気でいてくれるからこそ、俺も戦える。
 っと、こいつはちとクサすぎたかもしれないな……他の奴らには内緒だぜ?」
「どうだかな」
「おいおい! もしもチクるようなら……荒野のハンサムがすっ飛んでくるぜ?」
 冗談めかすマーロン。彼は最後の荷物をトラックに積み込むと、
 運転席に乗り込むアドルフと対照的に、太陽めいて輝きふわりと浮かび上がった。
「俺はもう戻るが……あんたはまだ見回りかい? 助かるよ」
「この世界は、ちっと安全圏から外に出ただけでも大変だからなあ。
 あんたも無茶はするなよ、アドルフ。本当ならひとりでやるつもりだったんだ」
 マーロンが請け負ったのは、機械のメンテナンスに必要なパーツの調達。
 そんな彼にアドルフが頼み込むことで、こうしてついてきたのである。
 道中の危険は排除したため、戻るのはアドルフひとりでも大丈夫だろう。
 しかしマーロンは、空からそのパトロールを行いつつ、ほかの拠点を調べるつもりのようだ。
「用があるならどんどん言ってくれよな。今だけの太陽超特急だぜ」
「ああ、また仕事が出来たら頼むよ。それじゃあまたあとでな!」
 走り出したトラックを見送り、マーロンは空へと浮かび上がる。
 どこまでも続く荒野……その中にぽつんと生まれた緑が、点のようだがたしかに見えた。
 それはもしかするといずれ、この荒野を覆うまで広がるかもしれない。
「どうせ太陽が照らすなら、乾いた土より瑞々しい緑が一番、ってな」
 マスクヒーローはそう呟くと、黄金色の流星となって空を駆ける。
 遠くに煌めく太陽よりも強い輝きを見上げ、子どもたちが手を振った――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリシア・アートレイト
【WIZ】アレンジ、共闘歓迎。

機械の方や農作業の方は判りませんが、出来ることを出来るだけ。
教会があるのならそこで、無いなら適当な場所で負傷者の手当てをしたり、託児所みたいなことをしましょう
子供の世話を引き受けることでお仕事に専念出来れば良いと思います

先の戦いの負傷者や作業での怪我の対応は
基本応急手当で、重傷者は治療の奇跡「シルヴェニティ・ティア」で対応

子供の相手は生家の孤児院だった教会で慣れています
【歌唱】で教会で歌う聖歌を歌ってあやしましょう
歌いやすい、覚えやすいものが良いですね
わたしが小さいときに歌ってたものを教えてみんなで歌いましょう
子供の歌声は皆さんの癒しになるといいのですが


御狐・稲見之守
侍帝の田畑とこのような地での農作とでは勝手が違うかもしらんが、農作を始めるならまあ土地をどうにかせんとなあ。

[UC荒魂顕現]雨が降った後であるし丁度良い。濡れ灰の積もる一帯にススキの種子を撒いたらば急成長させてしまおう。その一帯を手入れしていけばいずれ農作向きの肥えた土になるであろうし、ススキ自体も刈り取って飼料や堆肥に使える。雑草としては生命力高過ぎてクッソ面倒なのが難点であるが。

ま、知識や技術はこの世界の者の方があるじゃろうし、まともな土地さえあれば神頼みをせずともやっていけるのではないかナ。


ウーナ・グノーメ
連携・アドリブ◎

「沃野と呼ぶにはあまりに痩せた土地なのです。だと言うのに」

人々の創意工夫には驚かされる。
大地を耕し、開拓し、田畑を作る。
所謂『魔物退治』の御伽噺は、大自然の脅威に立ち向かう人間を表した寓意である、そんな話を思い出す光景であった。

「大地のフェアリーとして、負けてはいられないのです」

彼女は砂漠と荒野の妖精だが、逆に言えば『土地を枯らしてしまう方法』に熟知している。

「精霊よ、目覚めて」

UCで呼び出した下級精霊と共に、人々に農業のアドバイスをしていく。
連作障害、土壌汚染、害虫。
戦うべき相手は数多い。
けれど、いつかはきっと、人々の願いも実る時が来るだろう。
妖精はそう信じていた。



●ノーレイン、ノーレインボウ
 かつては教会だったのであろう、朽ち果てた建物。
 そこには片手で数えられる歳の子供たちが集められていた。
 無事にオブリビオンの脅威が払われたとは言え、あの経験はショックが大きい。
 まだ怯えたままの子供や、逆に興奮しきった少年もいた。
 そんな彼らをあやしなだめるのが、アリシア・アートレイトの仕事である。
「だいじょうぶ、もう悪者はいなくなったからね。はい、これでよし」
 すんすんと泣きじゃくる少年の膝小僧に包帯を巻いてやり、アリシアは微笑む。
 いまだ残る恐怖に震えていた子供も、その笑顔にほだされ泣き止んだ。
 農場そのものは無事だったとはいえ、拠点の人々には怪我人も少なくない。
 そんな彼らを癒やすのも、彼女が自ら志願したことである。
「……それにしても、こんなタイミングで雨だなんて」
 一息ついたアリシアは、そう呟くと割れた窓の外を見やった。
 さきほどからあたり一帯に通り雨が起き、多くの人が雨宿りしていた。
 しかしどうやら、これは偶然が引き起こしたもの、というわけでもないらしい。
「こーんな小さな子がな、言ってたんだよ。「まあしばらく見ておれ」ってさ。
 なんでも、雨が上がったら驚くような景色が見られるってえ話だが……」
「……ではこれは、ユーベルコードによるもの……?」
 アリシアは呟いて、空を見上げる……するとどうだ。
 まるでタイミングを測っていたかのように、雨雲が晴れていく。
 雲の分け目から差し込む太陽の光は、心なしかいつもよりも明るく見えた。

 雨宿りをしていた人々……そしてアリシアは、導かれるように廃墟の外へ。
 するとそこに広がっていたのは……まさしく、驚くべき光景だったのだ。
「これは……ススキ、でしょうか?」
 然り。アリシアたちが見たのは、あたり一面に繁茂した黄金のススキ。
 それは雨露を浴びてきらきらと輝き、どことなく宝石を思わせた。
 拠点の人々は、風にそよぐススキを見てぽかんとしている。
 当然だろう。なにせそこは、ついさっきまでなにもない荒野だったのだから。
「おお、突然雨を降らしてすまんの。ちと範囲が足りなかったものでナ」
 ススキをかき分けて現れたのは、妖狐の童女……御狐・稲見之守。
 どうやらさきほどの雨雲を招来したのは、彼女のユーベルコードによるらしい。
「しかしおかげで、十分なぐらいのススキが成長してくれた。
 これだけあれば、飼料や堆肥に使うにはむしろ多すぎるぐらいじゃろ」
「雨で灰を濡らして、そこに種子を蒔いたのですね。それにしても見事な……」
 アリシアは改めて一面のススキの野を見渡し、その輝きに目を奪われた。
 稲見之守はなんでもないことのように肩をすくめ、冗談を言う。
「言うてススキは雑草としては生命力が高すぎてナ、色々クッソ面倒なんじゃが。
 ま、それでも手入れをしていれば、一から耕すよりは肥えた土になるじゃろ」
「ああ、まったくだ! こりゃあ良質な堆肥が仕込めるぞ……!」
 農業知識を持つらしい若者は、ススキの野を見渡して快哉を挙げた。
 ……そんな沸き立つ人々を、どこか醒めたような目で見つめる妖精がいる。
 だがその妖精……ウーナ・グノーメの表情を注意深く観察していたならば、
 けしてこの状況に醒めているわけでも、冷笑しているわけでもないとわかるだろう。
「野草を確保できたとしても、この地域は沃野と呼ぶにはあまりに痩せた土地なのです。
 ……だというのに、もう創意工夫を凝らすことを考えているのですね、人々は」
 ウーナが抱いたのは、この世界の人類のしぶとさに対する敬意と、憧れ。
 大地を耕し、開拓し、田畑を作る……。
 そこを猟兵のユーベルコードが助けたとて、最後は世界の住民が動かなければ始まらない。
 これまでの長い間、人類は「今日」を生き延びられても「明日」は考えられなかった。
 だがいまこのとき、彼らはたしかに「明日」の可能性に目を輝かせている……。
「大昔の人々は、大自然の脅威を『恐ろしい魔物』や『怒れる神々』に置き換えて考えたと言うのです」
「んむ。魔物退治や神々を調伏する寓話というのは、そういう歩みをわかりやすくしたもの。
 どれだけ困難な脅威であろうと、人間というものは踏み越えてみせるものよ」
 ウーナの言葉に同調する稲見之守の瞳には、複雑な光がたたえられていた。
 それは憧憬のようでもあり、羨望のようでもあり、慈しむようでもある。
 時の重みとでもいうべきその表情に、アリシアはどう言葉をかけるか迷った。
「……ま、ワシに出来るのはここまで。専門的知識は門外漢じゃしナ」
「それなら、わたしが力を貸すのです。大地のフェアリーとして……」
 ウーナの平坦な声音には、どこか対抗心のようなものが感じられた。
 そして彼女が念じると、風が運んできた砂が渦を巻いて精霊の形を取る。
「精霊よ、目覚めて。この世界で緑をなすための知恵を、貸してほしいのです」
「蛇の道は蛇。土壌のことは大地そのものに聞く。ふうむ、なるほど」
 感心した様子でうなずく稲見之守……だが。
「ねーちゃんすげー! ねえねえ、こんなのどうやったの!?」
「わたしたちと同い年にしかみえないのに! かっこいい!」
「ってうぉい、なんじゃこの童どもは! ええい、じゃれつくのはやめんか!
 ワシいま長命ものとしてかっこよく……ああもう! あちこち引っ張るな!!」
 きゃあきゃあと駆け込んできた子供たちに囲まれ、たじたじとなっていた。
 この不思議な奇跡を起こした(見た目は)同じくらいの"子供"に興味津々らしい。
「……! ああ、もう。みんな、ためだよ。お姉さんが困ってるでしょ?」
 見かねたアリシアは、子どもたちの間に割って入ってそうなだめすかす。
 だが退屈していた子供たちは、アリシアの言葉にも不満げな様子だ。
「困りましたね……あの、何か子供たちの興味を惹ける術とかは」
「ないことはないが、それでまた群がられても困るゾ。ほれ、ワシ繊細じゃから」
「は、はあ」
 本当に繊細なやつはそんなことを自分で言うか? というのはさておき。
 アリシアはしばし考えたのち、何かを思いつくと手をぽん、と叩いた。
「ああ、そうだ! じゃあみんなでお歌を歌いましょう、ね?」
「「「おうたー?」」」
「そう。わたしが小さいときに歌っていた、かみさまに祈るお歌ですよ」
 アリシアは微笑んで言うと、こほん、と咳払いして聖歌を口ずさむ。
 その歌声はあくまで尋常の域に留まるものだ……だが、清らかで美しい。
 心から人々の安寧と平和を祈る聖騎士だからこそ口ずさめる旋律。
 不思議な安らぎを覚えさせるその歌声に、子どもたちはきょとんと聞き惚れた。
「……と、こんな感じです。みんなで歌うのはどうですか?」
「「「みんなでー? ……それ、たのしそう!」」」
 子供たちはあっという間に歌に興味を惹かれ、さっそくアリシアの周りに群がる。
 そんな様子を、稲見之守はしっぽの毛並みを整えつつ見やり、呟いた。
「この世界でも、人々は祈る心を忘れてはおらぬ……か」
 しかしそれは、追い詰められた人間特有の神頼みなどではない。
 なすべきことを為した人々が、食卓や夜闇に捧げる誓いのような祈り。
 縋るのではなく、「今日」を終わらせ「明日」を迎えるための儀式めいた祈りだ。
 そしてもう一方を見やれば、ウーナと精霊たちの薫陶を受けて、
 さっそく人々がこれからの土壌対策を話し合い、行動を始めている。
「戦うべき相手は数多いけれど……、いつかきっと、願いは実るはずなのです」
 ウーナのその言葉は、彼女なりの真摯な祈りであり、ねがいだった。
 稲見之守は彼らの語らいを遠巻きに見て、淡く微笑んだ。
「これなら心配は……おや」
 空を仰げばそこには、通り雨のあとにかかった淡い虹が一筋。
 少し湿った風を浴びて、黄金のススキはそよそよと涼しげになびく。
 そこにはもう、あの滅びを求めた女レイダーの残滓はどこにもない。
「何もかも灼き尽くしたとしても、その灰の下から新たないのちを熾す。
 たとえ「過去」が相手でも……それが、ヒトの強さだったということじゃナ」
 清らかな歌声に紛れたその呟きは、救われぬ過去の残骸への祈りの言葉か。
 風が一陣吹き抜け――そしてススキの野に溶け込もうようにして、妖狐は姿を消した。
 虹だけが、ただその姿を見下ろしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

茜崎・トヲル
かみさまと/f16930
うわっかみさまやべー。やべーじゃん。肩かそうか?
あっ(腕触った手が腐って取れた!痛いとかはないけどすげー。一瞬だったよ)うひゃー。やべーなかみさま。(生やしてもっかい触る。腐った。すげー)
腕生やしてー。うーん、とりあえず、こっから離れる?
はーい!

(となり歩きながら話しかけるよ)みんな笑顔になってよかったねえ。いい人は笑顔で居てほしいんだ。
えー? うーん。なんでかな。なんでだっけ。わかんない忘れた。
でも、おれはひとの役に立つために生きてるんだ。だってそうじゃないと……
……へへ。さあね? 忘れちゃったよ。


朱酉・逢真
白いの/f18631
イッテエ…。だぁクソ、全身血まみれだ。地面が腐る前に毒を回収。せっかくの農地が不毛になっちまわぁ。おいバカ触んな。ああ、ほら、言わんこっちゃねえ。
いやなんで2回触った? うん、聞いてねえなこりゃ。はいはいそうだな、離れるぞ。《獣》から馬を喚んで背に乗っかる。俺が貨物だ。イテェからゆっくり歩いてくンな。

そォかい、良かったな。『いいヒト』ってなァ俺にゃわからんが…。つか白いのよ、なんでお前さんそんな『いいヒト』にこだわる?
そうじゃないと、なんだい。



 ……戦いが終わってすぐのことである。

●しあわせ
 ぼとり。
 ……間を空けて、もひとつぼとり。
「うわっかみさまやべー。触ったら手ぇ落ちた。あはは、すげー」
「いやなんで二回触った???」
 けらけら笑う茜崎・トヲル、真顔でよっこいせと立ち上がる朱酉・逢真。
 だが血まみれの逢真はよろけ、そこをトヲルの新しい腕が受け止めた。
 ……そしてまた腐り落ちる。地面に落ちた三本の腕はぶすぶすと液状に変わる。
「うわっまただ。かみさまだいじょぶ?」
「お前さんも大概だろ……なんつゥ必要はねぇな。とにかくさっさと離れるぞ」
 よろける逢真を受け止めたのは、トヲルではなく"馬"であった。
 その身は焼けただれたように剥がれかけていたが、フォルムはたしかに馬だ。
 骸骨じみて青ざめた相貌……だが逢真には逡巡に頭を垂れて背に乗せる。
「あーそっか、離れないとなぁ。おれはいいけど他の人はやべーもんな」
「それもあるが……まァいいや。おう、イテェからゆっくり歩いてくンな」
 背筋を叩かれれば、馬は一声啼いて緩やかに歩き始める。
 新たに生えた腕の具合を確かめていたトヲルは、それを追って歩き始めた。
 灼けた灰の残滓が砂に混ざって風に運ばれていく。
 荒野の中をふたり、当て所もなく歩き続ける。誰も気づくことは、なかった。

「それにしてもさあ。みんな笑顔になってよかったねえ」
「あ? あァ、そォだな」
「子どももたくさんいたもんなぁ。火、怖くなったらやだもんなあ」
「……そりゃまたどォしてだい」
「だってさあ、人が死んだら燃やさないとじゃん。埋めたら、ほら、あれ」
「ああ、そうさな……この世界じゃア、歩く屍になっちまうな。ひひ」
「だからさあ、きっと誰かが死んでも、あの子たちは落ち着いて送れると思うんだ。
 それって、いいことじゃん? だからおれは嬉しいんだ。そのほうがいいもんなあ」
「妙なトコを気にするモンだね、相変わらず……」
 会話というよりは、トヲルが一方的に話しかけているような状況だ。
 逢真はまだ消耗が戻っていないと見え、うわごとめいて答えている。
「みんないいひとだもんなあ。いいひとは、笑顔でいるのが一番だよ」
 けれどもそんなトヲルのつぶやきを聞くと、逢真はうっそりと彼を見やる。
 いかにも阿呆のような満面の笑みを浮かべたトヲルは、こてんと首を傾げた。
「なあに? どうしたんさ、かみさま」
「……いやよ、俺にゃあ"いいヒト"ってのがよくわかンねぇモンでな」
「そっかあ。まあおれもよくわかってねーけど」
「なんだそりゃ……いやそもそもだ。だったらどうしてお前さんは……」
 言いかけて逢真は、トヲルの表情が変わっていることに気づいた。
 あの阿呆のような満面の笑みは、笑みとも真顔ともつかないものに変わっている。
 アルカイックスマイル、というやつだ。
 ……一瞬だけ間を挟んだのち、逢真は気にしてない様子で続けた。
「白いのよ、お前さんはなんでそんな"いいヒト"にこだわる?」
「えー? うーん。なんでかなあ」
 トヲルは空を仰いで、記憶をたしかめるように視線を巡らせる。
 だがそんなことをしても無駄であることは、トヲル自身が一番よく知っている。
 過去の記憶など思い出そうとしたところで思い出せない。
 靄がかっている、というレベルではない。そもそも"抜け落ちて"いるのだ。
「なんでだっけ。わかんないや、忘れた」
「…………そォかい」
「でもさあ」
 トヲルはアルカイックスマイルのまま続けた。
「おれは、ひとの役に立つために生きてるんだ」
「……」
「だって、そうじゃないと」
「…………」
「…………」
「……そうじゃないと? なんだい」
 沈黙。ふたりは見つめ合い……トヲルは、またへらりと阿呆の笑みを浮かべた。
「へへ。さあね? 忘れちゃったよ」
「…………」
 逢真はその阿呆の顔を、じっと見つめていた。
 トヲルは相変わらず満面の笑みだ。そこに知性は見当たらない。
 人の業も、明日に待つ苦しみも、何もかも忘れ去った呆け者の笑み。
 逢真はそこから何かを探ろうとする。だが、やめた。
「そォかい」
「お? いいのかみさま。気にしてそうな顔してたけど」
「お前さんのことなんざどうでもイイってんだよ、第一今もしんどいんでな」
 それに、と言葉を区切る逢真。
「"そォいう"のは、俺の仕事じゃねえのさ」
「だよなー。かみさまってのはもっと違うもんだもんなー」
 話はそれきり。もう、トヲルの戦う理由を逢真が問うことはなかった。
 トヲルが思い出そうとすることもない。彼はへらへらと笑っているだけ。
 ただ、なぜだろう。気にすることも、必要も、するつもりもないはずなのに。
 まるで魚の小骨のように、心に突き刺さって抜けないこの違和感は――。
「いやあ、ほんと、よかったなあ。みんなしあわせでさあ」
 トヲルの言葉に、逢真が答えることはなかった。
 阿呆はいつまでもそうして、へらへらと笑い続けていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ラパ・フラギリス
やっと安全になりましたね…。安心です。
…楽しそう。美味しそうです。(宴の雰囲気に釣られておどおどと戦車からでて)

頑張ったし美味しいもの食べたいです…。
ちょっとだけ料理分けて貰ってノワールの中で食べ…ひゃあ!(酔っぱらいに捕まってパニクる兎)
た、食べないでください…!私は美味しくないですよ…!
……こ、怖くない人です?…安心です。

(流されるまま宴を楽しんで)
怖い目にあったばかりなのに楽しそうで…皆さん強いです…。
この人達なら本当に農業も成功させちゃいそうですね…。
この世界で美味しい人参が食べれる日が来るかもです。
私に手伝えることがあればなんでも言ってください…っ。
…怖いこと以外でお願いします。



戦いが終わってしばらくあと、宴の席でのこと。

●ヒトの強さ
 ラパ・フラギリスは、パニクっていた。
「ひゃあああ!! た、食べないでくださいぃ~、私は美味しくないですよ~!」
 思えば、いくら戦いが終わったからといって、戦車から出たのがまずかった。
 あの安心できる鉄の箱の中にいれば、きっとこんなことにはならなかったのだ。
 怯える犬めいて尻尾を股の間に挟み震えながら、ラパは己の行いを後悔した。
 帰りたい。そうだ、いますぐにでもあの戦車へ帰ろう! すぐに!
「食べるだぁ? ガハハハ、そんなことするわけねえだろお嬢ちゃん!」
「そうだそうだ。俺らを救ってくれた立役者を食べるだなんて、なあ?」
「……ふぇ?」
 しかしラパの被害妄想とは真逆に(当然である)酔漢たちは大笑いしていた。
 というかそもそも、彼らは猟兵を宴に誘いたかっただけなのだ。
 もちろん、ラパを捕まえてあれこれしようなどというつもりはこれっぽっちもない。
「……こ、怖くない人です? 私のこと、煮込んだりとか、しません……?」
「いやいや、俺らは食人族かなんかかっつーの!」
 逆に、ジョッキを持ったアドルフが突っ込む始末。
 なおも怯えるラパに、微笑むクークーがコップを差し出した。
「だいじょうぶだよ。だから、よければ一緒に楽しんで?」
「……は、はい。怖くない人なら、安心です!」
 ラパは目をきらきらさせてコップを受け取ると、中のジュースをくぴくぴ飲む。
 旧時代から保管されていた合成飲料だ。けして上等な飲み物ではない。
 だがそのケミカルな味わいが、不思議とその精神を高揚させた。
「なんだか楽しくなってきました……わ、私も美味しいもの、食べたいです!」
「おうおう、食え食え! ま、たいしたものはねえけどな!」
 そんなこんなで、ラパも宴に参加することとなったのである。

 怖がりのラパとはいえ、拠点を救った英雄のひとりであることはかわりなし。
 その戦いぶりを見ていた人々は、口々に彼女をたたえ、そして感謝した。
 最初はおどおどと気後れしていたラパだが、やがて笑顔を浮かべて彼らに応じ、
 そしていまは、クークーと並んで歌い踊る人々を眺めていた。
「……怖い目にあったばかりなのに、皆さん楽しそうですね」
「うん。あなたたちが、ワタシたちのことを助けてくれたからね」
「助けた、だなんて……私はただ、美味しい人参が食べ……あっ」
 口を滑らせたことに気づいて、ラパはかあ、と頬を赤らめる。
 そんな少女の姿を見て、やや年上のクークーはくすくすと笑った。
「秘密にしておいてあげる。あと、ニンジンが出来たら、ちゃんと用意しておくよ」
「ほ、本当ですか!? ……な、なら、そのときはぜひ」
「うん。いつになるかは、わからないけど」
 クークーはそう言って、遠い目をした。
 ……拠点は守られた。だが、農業が成功すると確定したわけではない。
 むしろ彼らの戦いは、ここからが本番と言えるだろう。
 微笑みの中に隠されたかすかな不安……それを感じ取ったラパは、こう言った。
「だいじょうぶですよ」
「え?」
「……あ、えっと。い、言い切れるわけじゃないんですけどぅ」
 きょとんとしたクークーの視線に物怖じしつつ、ラパは言った。
「……こんな風に、どんな怖いことからも、また立ち上がれる人たちなら。
 本当に、農業を成功させられる。なんとなく、そんな気がするんです」
「……うん、そっか。そうだよね。ワタシたちが、頑張らなきゃ」
「あ! も、もちろん! 何か手伝えることがあれば私もがんばりますからっ」
 ラパの言葉に、クークーは嬉しそうに微笑んだ。
「うん。ワタシも、いつまでも此処に居るわけじゃないけど、その時はぜひ」
「そうなんですか? あ、でも怖いことは、ちょっと……」
「ふふっ。だいじょうぶ、約束だから」
 指切りを交わす代わりに、ふたりはこつんとグラスをぶつけて乾杯した。
「また、会えたらいいね。この世界のどこかで」
「……はい。できれば次は、もっと平和になってるといいなって……思います」
 ラパは空を見上げる。
 どこまでも広い青空。忌々しいほどに晴れ渡った空。
 けれどもその太陽の輝きも、今日ばかりは暖かく思えた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スイカ・パッフェルベル
うむ、片付いたか
先ずは拠点の者達を労うとしよう
良く耐えた、頑張ったな、お前は男だ。などとな
立ち向かう意思に力の強弱など関係あるまい

食事を控えめに摘みながら本題に入ろう
くくく、私の力が気になるか?
魔法面のパワーはすばらしいぞ(こぶしを握るポーズ)
私は技術を寄贈する。そう、自著の手引書(アポヘル産)だ
魔法を使いたいと思った事は?ならコレを読み給え
この書は如何にして初成功まで漕ぎ着けるか?
という部分が充実していてな。初歩の魔法の反復練習や
詠唱補助を目的とした魔力の容れ物造り等様々だ
土・水魔法を習得すれば引く手数多だろう
身体の弱い者でも役立てる。私はそんな技術を設けたいのだよ
…因みに電子書籍版もあるぞ



 同じ頃、宴の席の一方では。

●選ばれし者、だったのに……?
「魔法面のパワーは素晴らしいぞ!!」
 ぐっ、と握りこぶしを作りながら、スイカ・パッフェルベルは高らかに言った。
 心なしか、マスクも着けてないのにコーホー聴こえるが気のせいだろう。
 そんな彼女の話を拝聴するのは、拠点住民の中でも特に若い少年少女たちだ。
「ま、魔法面……」
「そうだ、魔法だ。私が起こした、あのいくつもの奇跡を見ていただろう?」
 戦いのさなか、スイカが起こした奇跡――いや、大破壊。
 それらに畏敬を感じた少年少女たちは、こくこくとせわしなくうなずく。
 羨望の眼差しを受け、スイカはふふん、とネクタイを締め直した。
「あいにく私は、農業に関しては門外漢だ。しかし、魔法に関しては話が別だ。
 この世界では、魔法の技術体系は廃れて久しい。だから私はこれを著した!」
 どんっ!! と、ジャケットから取り出されたるはスイカの自著。
 魔法使いになるための簡単(当社比)な手引を記したものである。
「そこのキミ。キミは、魔法を使いたいと思ったことは?」
「えっ」
 びしぃ、と指さされた少女は、きょろきょろと周りを見渡してから答える。
「……い、いちおうそれぐらいある、けど……」
「ならコレを読みたまえ。いまならば無料で渡そう」
 スイカは手引書をひょいと無造作に放り投げる。慌てて受け止める少女。
「安心しろ、魔法と言うと仰々しく敷居が高いように感じられる者もいるはずだ。
 しかし私のこの著書は、いかにして初成功まで漕ぎ着けるか? を充実させた。
 初歩の魔法の反復練習や、詠唱補助を目的とした魔力容器の作成法、エトセトラ!」
 ちんぷんかんぷんな少年少女たち。
 だが、スイカの自信満々な様子に煽られ、おおーと感嘆を漏らした。
「特に土・水属性の魔法を習得すれば、農作業にも役立つことだろう。
 すべては諸君の努力次第だ。だが本気でやる気ならば、これは大いに役立つぞ」
「あ、あのー……」
「ん? なんだ、電子書籍版もあるぞ。もしデバイスで読みたいなら」
「いえ、そうじゃなくて!」
 最初に本を受け取った少女は、おずおずと問いかけた。
「……どうしてそんなに、魔法を広めようとしているんですか?」
 スイカはその質問にきょとんとしたあと、ふっと笑い、遠くを見た。
 そこには、もはや敵も何もない荒野が広がっている。
「体の弱いものでも役立てる……魔法は、そんな技術だ」
「……」
「だから私は、魔法を広めたい。そう、あの敵に立ち向かおうとしたお前たちのようにな」
「わたしたちのように?」
「お前たちは、無論私たちに比べれば戦闘者としては技術や膂力の面で劣る。
 しかし、理不尽に抗い立ち向かおうとする意志に、力の強弱など関係ないのだ」
 スイカはまっすぐな瞳で言い切った。
「ならば、そんな強弱を覆す技術があれば、より戦うことが出来るだろう?
 このふざけた世界でも、もう理不尽に誰も涙を流すことなど、きっとなくなる」
 そう。
 人々が「明日」を求めて、農業に再び手を出したように。
「私はただ――平和な世界が、見てみたいだけなのさ」
 スイカは地平線の彼方を見つめて言った。
 そこには、あの忌々しいオブリビオンストームが遠く渦巻いている。
 世界を引き裂く災厄の中心。災禍のカタチ。
 それが消えゆく日を思い、スイカはぬるくなったジュースを呷った。
 その口元には、不敵な笑みが浮かび続けていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レムリア・ザラタン
これから先にも、幾度もの苦難が待ち構えているだろうが…
今の彼らにはそれをものともしないであろう活気が溢れている
強いものだな、人間というものは

さて、事のついでだ
感心しているばかりではなく私も仕事を手伝うとしよう
…私にとって農業と言えば、培養や水耕栽培によるものだ
こうした自然の土の上で作物を育てるというのは…うむ、実のところかなり興味がある
是非とも経験をしておきたい

なに、足手纏いになるほどの無知ではないとも
まずは畑を耕せばいいのだろう、鍬で
…耕す為の機械があるのか?
いかんな、やはり知識があるだけでは実態との乖離が大きい
拠点の人々に習いながら作業を進めよう
大丈夫だ、教わった事はきちんとこなせるとも


夜霞・刃櫻
【アドリブ・連係歓迎】WIZ
ヒャッハー!種籾でやんす!
三下、チンピラ、ヤンキーと農業は切っても切れない関係っすよ!
(関係ない)

UC【夜霞の爆窃】で幽霊蒸気機関車と約315体の重火器で武装した爆窃団の幽霊を召喚
ただし、今回は「武器改造」でこれらを改造します
幽霊蒸気機関車には貨物車両を取り付けて農作物の種や肥料、農薬、道具のパーツを搭載
爆窃団の幽霊達の重火器を放水機や噴霧器、農具に改造しておきます
幽霊達や人々と一緒に農業します

一人だけじゃ無理そうなので、他の誰かと協力したいところ
失敗したらごめんなさい、三下のやる事だから許して


高砂・オリフィス
あははっ! 終わりよければ全てよしっ、んんっでもまだこれからが大切なことだよねっ! ラストスパートがんばるぞっ! おおーっ!

早速ユーベルコード《落ちる過去は未来》を使うよっ
これで歌や踊りで巻き込んだ周囲の皆々様ごと、ちょっと無茶しても無問題なタフネスをゲットって寸法さ! ついでに、こーいうお仕事も楽しまなくちゃソンソンってね!

ぼくはいろいろな世界を旅してるけど、やっぱりこの世界が一番好き!
土いじりしてるだけでテンション上がってきちゃう? あなたたちもそーでしょ?!
歌って踊って盛り上がって、どんどん作業するよっ。明るい未来のために!



●土いじりの時間
 なにやらどことなくラテンの息吹を感じさせるリズムが鳴り響く。
 そして拠点の人々は、熱に浮かされるようにひたすら踊っていた。
「……もしや、あれも農作業に関係のある儀式か何かなのか?」
「どう考えてもそんなわけないでやんすが!?」
 レムリア・ザラタンの言葉に、夜霞・刃櫻は思わずツッコミを入れた。
 しかしレムリアは、自然環境で行う農業に詳しくないらしい。
「むう、そうなのか……ではあれは一体……」
「あっははは! 気にしないで、ちょっと汗を流してるだけだからさっ!」
 と快活に応えたのは、人々を歌と踊りに誘った高砂・オリフィスである。
 どうやら人々が踊っているのは、オリフィスのユーベルコードに関係しているらしい。
 "落ちる過去は未来"。
 オリフィス自身がその場でひらめいた斬新な歌や踊りをみんなで舞うことで、
 巻き込まれた人々も含め、あらゆる攻撃や影響をシャットアウトするというもの。
 つまりこの場合、農作業にどれだけ励んでも疲れない、というわけである。
 もちろん永遠に続くわけではない効果だが、それでも作業開始には大きく効果を持つだろう。
「ひえー、あんな踊ってるのに疲れないなんて、羨ましいでやんすねえ……」
「……私の知っている農業というと、どうも培養や水耕栽培ばかりでな。
 そのせいで、土の上で作物を育てる時はああして踊る必要があるのかと」
「それどんな部族の儀式っ!? よっし、じゃあこんなもんだね!」
 レムリアの頓珍漢な物言いに、オリフィスも思わずツッコミを入れた。
 そんな感じで一汗かいた人々は、みな体の快調さに驚いている様子だ。
「あっ! あっしも混ざっておけば……くっ、タイミングを見失ったでやんす!」
「……そんな数の幽霊や車両を召喚しているならば、不要ではないか?」
 レムリアが示したのは、刃櫻がユーベルコードで喚び出した仲間たちのことだ。
 その数、約315体。しかも驚くべきは、「幽霊蒸気機関車」というべき巨大な車両だろう。
 重火器で武装した幽霊たちも、よく見ればそれらは農具に改造されており、
 さっそく放水や噴霧を始め、体調を整えた人々と協力してことにあたっている。
「ふっ、もちろんあっしも農業には参加させてもらうでやんすからね!
 なにせ農業と言えば、三下・チンピラ・ヤンキーとは切っても切れない関係!!」
「……そ、そうなのか?」
「ううん、ぼくは全然聞いたことないな、それ」
 刃櫻のあまりの自信満々な言い切りっぷりにまた勘違いしかけたレムリアだが、
 オリフィスが真顔で首を振ったので、今回は勘違いをしないで済んだ。
「こほん。まあ、ともあれ……私も、土の上での農耕作業には興味がある。
 ぜひとも経験をしておきたい。邪魔でなければ、私も混ぜてもらおうか」
「うんうん、みんなで土いじり、いいねいいねテンション上がるよー!」
「よーし、幽霊のみんなもファイトっすよ! レッツファーミングでやんす!!」
 と、意気揚々と作業に混じった三人だが……。

 ……数十分後。
「も、もう無理でやんす、ぐへぇ……!」
 最初に音を上げたのは、テンションの高い刃櫻であった。
 いきなりフルスロットルだったせいで、最初にガス欠を起こしたらしい。
 その隣で苗を植えていたレムリアは、汗を拭うと呆れた様子で刃櫻を見やる。
「まだ一時間も経ってないぞ……いやしかし、力作業なのはたしかだな」
「それに機械のことになると、ぼくも全然わかんないしな~」
 オリフィスはそう言って、ぐおんぐおんと駆動する農業機械を見やった。
 どうやらこの世界の大地は、ただ耕しても農業には使えないらしい。
 その汚染を除去し、お膳立てを整えるのが、件の機械の仕事だ。
「うむ。だが、教えられたことは忘れまい。さあ、まだまだ作業を続けよう」
「うん、そうだね! ……ねえあなた、だいじょうぶ?」
「だ、大丈夫でやんす! 三下としてここで斃れてるわけにはいかねえ……!」
 刃櫻は再び立ち上がり、作業を続けた。
 人々もみなひたいに汗を流して作業を続ける。
 きっとこの農場はもっとお大きくなる。レムリアは沿う感じた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
人々と協力、話をしながら
グラビティテンペストの重力を使い
瓦礫撤去や整地等戦場の後片付けを行う。
「作業は大変だけど
こうしていると、やっと戦いが終わったと実感できるよ。
ああ、此処には何を植えるんだい?」

元々素の体力はなく戦いの後での慣れない作業
と言う事もあり途中で休憩。
「片付けだけでこれだけ掛るとはね。
農業の大変さが少し分かった気がするよ。」

農業用の機械を興味深そうに見て
(専門である魔術とは違うので
そちら方面の知識はからっきし。
ただ興味はある。)
「こう言う技術のある世界に来ると
いつも驚かされるよ。
魔力も精霊力も感じないのに
どうやって動いているのかってね。」
アドルフやクークー達に使い方等の話を聞き。



●知の力、生きる力
 めきめきめき……と音を立てて、巨大な瓦礫が宙に浮かび上がった。
 そしてバリケード用の資材置き場に放り込まれ、ずしんと大地が鳴動する。
「おお、すげえなあ! こんなことが出来る奪還者は見たことがねえや」
「そう言ってもらえると誇らしいな。ほかに撤去するものはあるかい?」
 フォルク・リアは、アドルフの感心した声にくすりと笑った。
 彼のユーベルコード"グラビティテンペスト"は、無機物を微粒子に変換するもの。
 だがこのユーベルコードだけでは、無機物を消滅させることは出来ない。
 グラビティテンペストを解除した瞬間、微粒子は無機物に戻るからだ。
 ゆえにこうして、斥力を操作して瓦礫を撤去する必要が出てくる。
 本来であれば、重力嵐によって大量の敵をバラバラに引き裂く滅びの風である。
 こういう人道的な使い方は、フォルクとしてもあまり慣れていなかった。
 しかしそれでもフォルクは、この力を人々のために役立てるつもりでいた。
 戦いが終わったとは言え、難題が片付いたわけではないからだ。
 ……いやむしろ、大局的に言うならば、ここからが本番と言えるだろう。
 猟兵たちの戦いは、あくまでゼロがマイナスになるのを防いだだけなのだから。

 そうして力仕事を続けていると、実際に体を動かさなくても精神が疲労する。
 慣れない作業だったこともあって、フォルクは普段より早めに休憩をとった。
 もちろん、まだまだ瓦礫は多い。たとえば、戦闘で生まれたものもそのひとつ。
 あの殺戮機械の群れの残骸が、荒野に散らばったままなのだ。
 あれを放っておけば、オブリビオンストームを引き起こしかねないだろう。
「……片付けだけで、これだけかかるとはね」
 そう呟いたフォルクは、ふと背後に気配を感じた。
 肩越しに見やると、そこには冷たい水入りのボトルを持ったクークーの姿。
「はい、どうぞ」
「これはこれは、助かるよ」
 フォルクはボトルを受け取り、濾過された飲料水を一気に呷った。
 冷たい水のきりりとした清涼感が、喉を駆け抜けて体を冷やしてくれる。
 ……と、そこで、フォルクははたと我に返り、気づいた。
「ありがとう……と、待った。もしかしてこの世界でのきれいな水というのは」
「だいじょうぶ。無理して捻出したわけじゃないから。みんなの感謝の印」
「……そうか。では、これ以上野暮は言うまい」
 このアポカリプスヘルで、安心して飲める水を手に入れるのがどれほど難しいか。
 けして水源も無限ではあるまい。だのに彼らはこれをよこしてくれたのだ。
 その信頼の意味を、フォルクは冷たい水の味とともにしっかり嚥下した。

 ボトルが空っぽになった頃、隣に腰掛けたクークーにフォルクは言った。
「農業の大変さが少し分かった気がするよ……私はあまり体力があるわけではないのでね。
 こういう地道な仕事は、どうにも慣れていない。だが、悪くない気分だな」
「うん。大変だけど、きっといつか実になる大事な仕事だもんね」
 そうしてふたりは、ゴウンゴウンと駆動する農業機械を見やった。
「こういう技術のある世界に来るといつも驚かされる……特にあの機械だ。
 魔力も精霊力もないのに、いったいどうやって動いているのだろうか?」
「アドルフおじさんに聞いてみる? 役に立つかもしれないし」
「仕事の邪魔にならないだろうか?」
「その仕事なら、あなたに片付けてもらったばっかりだよ」
 クークーはくすりと笑って、先に立ち上がった。
 彼女はこの拠点の住人ではない。ある意味では猟兵と同じ旅人だ。
 しかし人々を見つめるクークーの瞳に、よそ者特有の寂しげな気配はなかった。
 フォルクはそれを好ましく思う。人が寄り添うのは生きるため。
 つまり彼女の瞳には、それだけ生きる力が宿っていたのだから。
「……この世界の人々は、強いな」
 男はそう呟いて、立ち上がり、やがてアドルフのほうへと歩き出した。
 沈みつつある陽が、その影法師を長く長く伸ばしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フェルト・フィルファーデン
ふふっ、みんな楽しそうで何よりね!それじゃあ今のうちにもうひと働きといきましょうか!

本格的に農業を始めるのなら必要な物を揃えないと。
土を耕すための道具、機械。水に肥料も必要かしら。貯水用のタンクもあるといいわね。
後は頑丈な柵の材料。オブリビオン相手じゃ分が悪いけれど、無いよりはね。
自動迎撃システム付きの兵器でもあれば……さすがにやりすぎかしらね?
後は肝心要の育てる植物!やっぱり食物系が良いわよね。痩せた荒地でも育つものがあればベストかしら……

そしてこれらを探して集め、電脳空間に収納して持ち帰りましょう。
起動力を活かして主に住人の探索が難しい遠い場所をね。

いつか、素敵な農場が見られるといいわね!



●希い、望むならば
 遠くから、拠点で開かれたささやかな宴の歓声が聞こえてくる。
 風に乗って届くその声を背に、フェルト・フィルファーデンは空を舞う。
 彼女はいま、拠点から離れた廃墟にやってきていた。
 偶然にも生きていた防衛システムを、騎士人形で排除したところだ。
「この施設は……うん、やっぱり。植物再生用のプラントだったのね」
 そんな場所に戦闘能力を持った防衛システムがあった理由。
 おそらくそれは、この施設が世界荒廃の初期に建造されたからだろう。
 心無いレイダーの襲撃によって、プラントが破壊されないようにするためだ。
 あいにく、この施設を農業施設として再利用することは不可能に近い。
 フェルトの腕前をもってしても、システムは破損しハードウェアも壊れている。
 だが、サンプルとして保存された植物の種子は話が別である。
 調べてみたところ、冷凍保存室は電源が生きていたのだ。
「これを持ち帰れば、栽培する種子がたくさん増えるわ……持ち帰らなきゃ」
 フェルトは電脳空間の中に、冷凍保存された種子を収納していく。
 しかしまだ終わりではない。農業にはもっとたくさんの道具が必要だろう。
 水や肥料もそうだ。貯水用のタンクや、防衛用の柵、あるいはバリケードの材料。
 オブリビオンストームが来てしまったならば、それも紙くず同然だろうが……。
「それでも、ないよりはマシよね」
 フェルトは呟いて、プラントのシステムにハッキングを仕掛ける。
 幸い、周辺にある関連施設の座標データは、システム上に残されていた。
「ここと、ここと、あとここ。さあ、頑張るわよわたしっ!」
 座標データを記憶し、フェルトはプラントをあとにする。
 彼女はいつになく張り切っていた。だが、それも当然のことだろう。
 ……彼女はいつだって、希望を守るために戦ってきたのだから。

 はじめてこの世界を見たとき、胸に去来したのは途方も無い脱力感だった。
 もはや、滅びていると言っていいレベルの荒廃。
 とめどなく襲いくるオブリビオンストーム。断絶された人々のコミュニティ。
 文明はもはや枯れ果て、人々の心には虚無と執念だけが残っている。
 こんな世界で何が出来る? 延命処置にしかならないのではないか?
 ……弱い自分が、そう心で呟いた。けれども。

「あ!」
「……あら」
 長い探索を経て戻ってきたフェルトに最初に気づいたのは、クークーだった。
 彼女は嬉しそうにはにかんで、たたっと駆け寄ると、こてんと首をかしげる。
「探してたんだよ。どこに行っていたの?」
「色々と資材を集めてきたのよ。あとは、使えそうな種子のサンプルだとか」
「……本当? こんな短時間で? すごい」
 感嘆したクークーの声に、フェルトはくすぐったそうに微笑んだ。
「クークー様や、これから頑張ろうとしている住人の皆様ほどではないわ?
 わたしが出来るのは、あくまでそのお手伝い。だからそのぶん頑張っただけよ」
「やさしいね、フェルトは。また助けられちゃった。ありがと」
 はにかむクークー。彼女が救われたのは、これがはじめてではない。
 あれから半年の月日が流れて、ふたりそれぞれにいろいろなことを経験したのだ。
 だから少女たちは、くすくすと笑いあって、どちらともなく言った。
「あなたがどんな旅をしてきたのか、聞いてみたい」
 と。
「それじゃあ、資材の振り分けと片付けが済んだら、お話を聞かせてくださる?」
「うん。あなたが旅した場所も聞いてみたい。きっとみんなもそうだよ」
「ふふっ、なんだか気恥ずかしいわ。でも、そういうことなら……」
 フェルトは、あくせくと働く人々を見やった。
 どこまでも力強く、諦めるということを知らない人々。
 その眩しさは、フェルト自身が戦う力にもなる。
「……たくさんお話をしましょう。いつかここに、素敵な農場が出来たとき。
 わたしたちの語り合った思い出が、その輝きに彩りを添えられるぐらいに、たくさん!」
「うん。みんなで守り抜いた場所、だからね」
 そうして少女は歩き出した。
 それは、輝ける未来に向かった、小さくとも確かな一歩の歩みなのだ――。 

大成功 🔵​🔵​🔵​

セツナ・フィアネーヴ
む、正直、こういう場は、その、苦手なんだが……
「そうやって苦手のままだと後で困りますよー?それに、最近“力”を使うことが多かったですし……」
……そうか、力に頼らず、抑えたまま作業をする……これも修行になるか。やっぱり、アリシアはすごいな
「(あれ?そういうことじゃなかったんですけど……)」

【POW】
正直戦闘以外はてんで未経験で素人だから、純粋に力作業を手伝うぞ
異能……災いの力に頼りきりでは良くないからな

ただ、こういうことは私もアリシアも不慣れで自己判断も難しいから経験者や知識がある相手の指示に素直に従う
……失敗したときは、その、なんだ、……素直に謝る。

※アドリブ連携歓迎です。よろしくお願いします


リア・ファル
SPD
アドリブ歓迎

色々持ち込むことは難しいけれど、
今日、この場限りでボクの力として振るうのならば……

つまり、ボクが料理をしたり、
カクテル(ノンアル含む)を提供する分にはナントかなるさ

レイヤーをいつぞやのバーテンダー衣装へ変更(早着替え)して、
UC【我は満たす、ダグザの大釜】で、皆(の空腹など)を相手取って腕を振るうよ

お代? それはもう充分に貰ったよ
今後ともご贔屓に! なんてね


力に満ちた明日を目指す眼差し
ボクらの間を巡るもの

これこそボクにとっての一番の報酬だから、ね!


八岐・真巳
ふう。これで、一先ずは一件落着、と言う事で……宴ね!
おねーさんからも、ちょっとばかり、『いいお酒』を振る舞わせてもらおうかしら。
……ふふ。わかっているわ。彼らにとっては、
これからがむしろ本番だということは。
でも、だからこそ、今このひとときだけは、
勝利の美酒に酔いしれてもいいのではなくて?
この枯れた大地で、一から作物を育てるのは並大抵の努力ですむことではないわ。
彼らには、多くの苦難が待ち受けているでしょう。
でも、今日と言う日の勝利の、
そして、それに続く、宴の楽しい思い出は、
きっと彼らに『あの日をもう一度』と思わせる
活力の元になってくれるはずだから。
だから、今は子の一杯を楽しみましょう?


ジュリア・レネゲード
もう無粋な真似をしてくる輩はいないでしょうけど
グリュプス、本日最後の仕事よ!
『私にオイルを要求する権利はあるのでしょうか?』
帰ってきたら上げるわ。高級品をたっぷりとね

複製したグリュプスに工作装備を持たせ展開しつつ
ユニバースの上で被害状況を確認するため周囲を哨戒させる
場合によっては故障してる機械の修理を手伝わせたり
散らばってるゴミを片付けようかしらね
そのままパーツの調達や進入ルートの共有をしっかり行って
一早くこの農場をフル稼働出来る様に努めるわ

クークーの歌声を聴きながら、宴で貰った食料をそっと口に入れる
こんなに荒れ果てているけど、未だ絶望しきっちゃいない
未来を手に入れる為に皆、戦っているんだから



 戦いが終わってすぐ、宴が催されているときのこと。

●今はただこの歌声を
「グリュプス、そっちはどう?」
『不審な機影は発見できません。周囲5キロ圏内にオブリビオンの存在認められず』
「なら10キロまで拡張よ。オブリビオンストームの発生予兆もチェックして」
『……あの、私にオイルを要求する権利はあるのでしょうか?』
「帰ってきたらあげるわ。高級品をたっぷりとね」
 ……と、そんな会話をソーシャルドローンと交わしながら、
 ジュリア・レネゲードは拠点周囲をトラックで哨戒し、敵残党に備えていた。
 しかし索敵システムは、すでに周辺の完全な安全を保証していた。
 そこで安心してはならないのが、奪還者の鉄則なのだが。
「さすがに残骸もあちこちに転がってるわね……あとで撤去が必要だわ」
 殺戮機械の爆発した残骸をはじめ、周辺には未撤去の残骸が大量に存在する。
 小規模なものはユニバースで片付けることも出来るが、限界もある。
 そういった大規模な瓦礫片は電子マップ上にチェックを入れ、後回しに。
 さらにジュリアは、いち早く探索に向かった猟兵たちとも連絡を取り、
 今後パーツを捜索する上で役立つ廃墟についても、マッピングをしていた。
 いまごろ、拠点ではささやかな宴が催されていることだろう。
 しかし、オブリビオンが来ない今のうちでなければ出来ないこともある。
 この世界で生き抜いてきたジュリアだからこそ、そう考えて一足先に動いていたのだ。
「グリュプス、そっちの索敵はどう? ……グリュプス?」
『我々あてに通信ですよ、ジュリア。拠点からです』
「何かあったの? まさかオブリビオンストームが発生したとか……」
『いえ』
 ソーシャルドローン・グリュプスは、言葉を切ってから続けた。
『そういう仕事はひとまず置いといて、ぜひパーティに参加してほしいと』
「私たちは間に合ってるって伝えておいて。今やっておいたほうがいいことが山ほど」
『送信者はクークーからです』
「……………………」
 ジュリアはトラックを停め、はあ、とため息をついた。
 うんざりしているようなため息だが、その口元は困ったように笑っている。
 なるほど、彼女は何もかもお見通しだったようだ。
「……仕方ないわね。十分で戻るって送っておいて」
『了解』
 ほどなくして、トラックとドローンは拠点に帰還した。

 戦闘用装備を解除して戻ってきたジュリアが見たのは、宴もたけなわの大騒ぎ。
 拠点の男たちは肩を組んでがなりたてるように歌い、女たちは手拍子する。
 即席のパーティ会場の中央では、ドラム缶で火が焚かれていた。
 実にワイルドでアウトドアな、そしてこの世界ではなかなか貴重な宴の光景だ。
 どうやらジュリアが居ない間に、そうとう盛り上がっていたらしい。
「なんだか酔っ払いが多いわね。アルコールなんて早々ないでしょうに……」
「ええ、でしょうね。だから私がとっておきのを振る舞ってあげたの」
 ジュリアのつぶやきに得意げに胸を張ったのは、八岐・真巳である。
 その背後には、明らかに尋常ならざる神々しさを放つ酒壺が鎮座していた。
「……なにこれ」
「ふっふっふ、これこそ無限に先が湧き出る神器がひとつ。『酒神の酒壺』よ!
 無限にお酒が出てきて便利なのよ~。二日酔い知らずの"勝利の美酒"ね!」
 いる? とコップを差し出されるが、ジュリアは胡乱げな顔で辞退した。
 呑めないわけではない。年齢的には十分だし、正直かなりそそられる匂いだ。
 ……が、生真面目な彼女のこと、酩酊するのを避けたいらしい。
「私は遠慮しておくわ。まだ車を運転しないとだし……」
「あらそう? 気持ちよく酔えて最高なのに~」
 とか言いつつ、真巳はぐっびぐっびとお神酒をラッパ飲みしていた。
 完全に酔いどれた男衆と違って、どれだけ飲もうがけろっとした様子である。
「うっ……この酒の匂いの原因は、それか……」
 一方で、未成年であるセツナ・フィアネーヴはきつい匂いに辟易していた。
 そもそもセツナは、この騒がしい雰囲気自体がどうにも慣れないらしい。
「やはりこういう宴の場は、その、私にはそぐわないな……どうも苦手だ」
 そんなセツナに反応してか、装着した腕輪から超常の声が響いた。
『そうやって苦手のままだと後で困りますよー?』
「アリシア……そうは言うがな。私は酒も呑めないし……」
『いえ、お酒のことはともかく、こういうハレの場には慣れておかなきゃ。
 それに、最近"力"を使うことが多かったですし……骨休めも必要ですよ?』
 相棒である精霊アリシアの言葉に、セツナはむむ、と唸った。
「そうか……力を抑えたまま作業をする……これもまた修行、というわけか」
 うんうん、となにやら間違った方向に納得と感心しているセツナ。
「どう考えても違う気がするんだけど~、まあ騒ぐのに理由は不要よね!
 これからが本番だってことは、私たちよりも皆が分かっているもの」
 真巳はそう言って、歌い騒ぐ人々を見やった。
「だからこそ、この一時だけは勝利と達成感に酔いしれてもいいのではなくて?
 この枯れた大地で、一から作物を育てるのは並大抵の努力ですむことではないわ」
「……そんな日々に、この日の楽しい思い出は心に残る、ってとこかしら?」
 ジュリアの言葉に、真巳はこくりと頷いた。
「あの日をもう一度、っていう気持ちは、人々にとって活力になるはずだもの」
「……なるほど。そういうことであれば、無粋なことは言うまい」
『そうそう、皆さんの言うとおりです! あとで働くためにも楽しまなきゃ!』
 というアリシアのフォローもあって、セツナはおとなしく場の雰囲気に乗ることにしたようだ。
 しかし、だからといってあのお神酒を飲むわけにもいくまい……。
「と、ここで登場するのがDag's@Cauldron――つまりは、ボクさ!」
 まるでタイミングを見計らったように、リア・ファルが颯爽と名乗りを上げた。
 その姿はいかにも「らしい」バーテンダー衣装になっている。
 そしてリアは、きょとんとするセツナをはじめとした面々に、
 ユーベルコードによって異空間から取り出した食料をふるまう。
 世界間の大規模な資材移動は行えないアポカリプスヘルだが、
 今はあくまでパーティでつまむ程度の食材。ゆえに、リアも慣れたものだ。
 オブリビオンストームが発生しないよう、細心の注意を払った上で、
 拠点に残されていた食料もふんだんに使い、料理を用意しているらしい。
「って言っても、ずいぶん豪華な料理もあるわね。どこから調達したの?」
「キミがさっき整理してくれた輸送ルート、あれを使わせてもらったよ!」
 リアの言葉に、ジュリアはえ、と驚きの声を漏らした。
「……こんな短時間で? なかなかの機動力じゃない」
「スピードと安全性がDag's@Cauldronのウリだからね。得意分野だよ!」
 リアはウィンクして言ってみせる。実際、彼女の武器はその機動力にこそある。
 テレポートと愛機『イルダーナ』の高い機動性を最大限に駆使すれば、
 この短時間で食料を回収し、しかも即席の料理をふるまうのは難しくない。
「あら、気が利くわね! こっち、おつまみもらえるかしら?」
「はいはーい! 他にお腹をすかせてる人はいないかなー?」
 そんな具合に、リアは人々の間をせわしなく駆け回るのだった。

 と、そこへ、グラスを持ったクークーがやってくる。
「みんなも、参加してくれてたんだね。よかった。
 ……あれ、でもそんなに料理を用意してもらって……いいのかな?」
 ちょうど戻ってきたリアの姿を見て、クークーは言った。
「なあに、お代ならもう十分もらったからね。気にしないで。
 今後ともDag's@Cauldronをご贔屓にしてくれれば、それでおっけーさ!」
「……そっか。うん、ありがと。いまは、言うだけ野暮だよね」
 少女の言葉に、リアはうんうんと嬉しそうにうなずく。
 人々の活気と力に溢れた、明日を目指す眼差し、そして歩み。
 それこそが、リアにとっては一番の報酬なのだ。
「クークー、わざわざメッセージを送ってくるなんてびっくりしたのよ」
「あ、ジュリア! ……迷惑だった?」
 顔なじみのジュリアの言葉に、クークーは少し不安そうな面持ちになった。
 ジュリアは困ったように眉をハの字にしつつ、ううん、と首を横に振る。
「いいえ、むしろ私のほうこそ気を使わせてしまってごめんなさいね。
 ……ただ、働けるうちに働いておこうと思って。そういうの、大事でしょ?」
「うん。本当なら、いつオブリビオンが来てもおかしくないもんね」
 この世界を旅するソーシャルディーヴァにとって、それは当然のことだった。
 それでも――いや、だからこそ彼女は、猟兵たちにもこの宴を楽しんでほしかったのだ。
「一休みしたら、みんなで仕事もしないとね。よければ、手伝ってくれる?」
「ああ、もちろんだ。私も」
『わたしも、お手伝いしますよ! もしかしたらご迷惑をかけるかもしれませんが……』
 胸を張って答えるセツナとアリシアだが、アリシアの声はやや不安げだった。
 セツナが力を抑えて作業できるかどうか、すこし気遣わしいらしい。
 のちほど、セツナは見事に失敗してちょっとしたトラブルを起こすのだが、
 それはまた別の話。クークーは、そんな彼女たちにありがとう、と頭を下げた。
「……そうだ。感謝の印になるかわからないけれど、これ」
「……なにかしら、これ?」
 クークーが手渡した『端末』を受け取り、真巳は首をかしげた。
「ワタシの放送が聞ける端末なの。ある程度距離が近づいてないとだけど……」
 クークーはそう言って、自らが内蔵したソーシャルサーバーを調律した。
 すると一同に配られた端末から、古びたラジオめいた音声が流れ始める。
「へえ……BGMってとこかしら? いいわね、これ!」
「壊してしまわないだろうか……」
『大切に扱わないとダメですよ~?』
「……なんだか懐かしいわね。半年ぶりぐらいかしら?」
 ジュリアは端末を眺めながら、クークーと出会ったときのことを思い出した。
 その時からずっと、この端末を彼女は持ち続けていたのだ。
「《ガガ、クークー。ガガ、クークー。
 ……ハロー、ワールド。クークー・レディオの時間です》」
 端末と、目の前のクークーから、二重に声が聞こえてきた。
「《今日はパーティのお供に、ワタシの好きな音楽を。どうか楽しんでね》」
 そして端末から、オールディーズ・ナンバーが流れ出す。
 この世界ではとうに喪われて久しい文明の残り香、古めかしい歌声。
 人々も皆、そのノスタルジックな旋律に、耳を傾けている。
「……よし。グリュプス、一休みしたらもうひと仕事行くわよ」
『そう言うだろうと思いました。準備は済んでいますよ』
 ドローンの言葉に、ジュリアは力強く笑った。
 この世界は荒廃して久しい。だが人々は、まだ生きることを諦めていない。
 この歌声は、その証拠であり――彼女が守り抜いた、たしかな証なのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

六波・サリカ
ヨハン(f05367)と

悪は滅びましたが、まだまだやることは残っていますね。
これでも私はUDCメカニックなサイボーグなので
機械のメンテナンスで力になれることがあるかもしれません。
いきますよ、ヨハン。
あなたにも手伝ってもらいますからね。(強引に引っ張りながら)

電力が必要ならば私の神格式に蓄電されているのを分けましょう。
戦いで消耗していますが動ける程度に残っていれば問題ありません。

その他いろいろと協力してひと段落した後、
ヨハンにあれを言っておきましょう。

ああ、そう言えばヨハン。
言い忘れていた事があるのです。

相変わらず、不機嫌そうな顔ですね。


ヨハン・グレイン
サリカさん/f01259 と

はぁ……俺はもう十分に手伝ったと思いますよ
他にも手助けする猟兵はいるでしょうし、
機械関係は門外漢だ
俺は帰るのであとは好きにしてください

…………と言った筈なのに何故まだ一緒にいるのか……くそ……
電力供給しているところを見てます
……見ているだけなのに俺は必要なのか?
いや、力を貸せと言われても面倒なので見ているだけでいいのだが

しかし下手に何もしないでいるより、
さっさと手伝った方が早く帰れそうな気もしてきた
癪だが、非常に癪だが、早く帰るためにも手伝おう

不機嫌にしているのはお前なんだが??
あんたがいなけりゃもうちょっとマシな顔してますよ
いいからさっさと帰るぞ



●これまで通りに、これからも
 ゴウンゴウンゴウン……ゴ、ウン……ゴウン……ウンンン……。
 断末魔めいた唸りののち、農業機械は沈黙してしまった。
「げっ。まさかもうガタが来やがったのか? 早すぎるぜ……」
 技師のアドルフは、予想以上の事態にかなり参っている様子だ。
 あれだけの襲撃を辛くもくぐり抜け、ようやく本格的に作業が始まったのに、
 その矢先にマシンが停止したとあっては、拠点の人々も落胆するだろう。
「……機械のメンテナンスであれば、力になれるかもしれません」
「あん? なんだ、手伝ってくれんのかい?」
 困り果てたアドルフを見かね、六波・サリカが声をかけた。
 サリカは無表情のまま頷き、アドルフと並んで機械の点検を始める。
 技術体系も何もかも異なる機械だが、根本的な原理は彼女の知るものと同じ。
 いくつか専門知識を要する部分はありそうだが、アドルフの手助けがあれば……。
「……あの、すみません。さっそく作業に入っているところに悪いんですが」
 と、そこでサリカに声をかけたのは、ヨハン・グレインだった。
 いかにも疲れた様子でため息をつき、そしてメガネを掛け直しながらこう言う。
「俺は機械関係は門外漢です。手助けもできなさそうなので、先に帰りますよ」
「何を言っているんですか、ヨハン。あなたも残りなさい」
「……俺はもう十分に手伝ったと言っているんですが」
 サリカの言葉に、ヨハンは不満げに眉根を寄せた。
 実際、今回の仕事はあくまで拠点に迫る脅威を払いのけること。
 農業の手伝いは、いわば猟兵たちの厚意や義心でやっているところが大きい。
 ヨハンの言葉通り、ここで撤収しても誰も揶揄はすまい。
 だがサリカは、相変わらずいつもどおりの無表情で彼を睨んでいる。
「悪は滅んでも、まだまだやることは残っています。これもその一つです。
 たとえあなたが門外漢だとしても、あなたに出来ることはあるはずですよ」
「いや、だから俺は疲れたと言ってるんですが」
「いいからこっちへ来てください。手が必要です」
 サリカはもはやヨハンの言葉を聞かず、ぐいぐいと強引に引っ張っていく。
 ここへ連れてこられたこと自体、ヨハンとしては不承不承だったのだ。
 なおも強引に押し切られるとあっては、彼も大変不満げそうではあるのだが……。
「ああ、もう。離してください。服が伸び……いやちぎれる、やめろ。やめろ!」
 などと有無を言わさず、サリカに巻き込まれてしまうのであった。
「なんだあんたら、仲いいなあ!」
「それほどでもないですよ」
「どこがそう見えるんですか」
 アドルフのからかいにも、両者両極端な反応を見せる始末であった。

 農業機械のパーツは他の猟兵たちによって調達されたものがあるとはいえ、
 メンテナンスとなると、この場で一番詳しいアドルフの知識が必須となる。
 ふたりは彼の指示のもと、機械の各部の点検とテストを繰り返した。
 パーツがあったとしても、どこが壊れているのかわからなければ交換出来ない。
 そしてエラーチェックというものは、えてして地味な総当りになりがちだ。
「…………何故俺はまだ、こんなところで手伝っているのでしょうか」
「遠い目をして不満をこぼしても逃しませんよ。そっちのパーツを取ってください」
「ほんと容赦も慈悲もないですね、あんたは」
 ヨハンはため息をつきつつ、予備のパーツをサリカに手渡した。
 工具を手にしたサリカは、それを器用に機械に組み込み、修復を終える。
「お、そっちは終わったかい? なら、あとはモーターを起動しねえとだな」
「動力に異常は見られないようですが?」
「ああ……だがコイルを入れ替えちまったから、今の発電機じゃ電圧が足らねえ」
「であれば、私の神格式に蓄電されている電力を分けましょう」
 そう言って、サリカは機械の動力部分に触れた。
 ぱりぱりとその体がスパークを纏い、ほのかに光り輝く。
 風もないのに髪がふわりとなびいて、その光が機械に伝わっていくのだ。
「……もう、俺が出来ることはなさそうなんですがね」
 そんな彼女の給電風景を見ながら、ヨハンはひとりごちた。
 さすがに、魔力を純粋な電力に変換できるほど彼は器用ではない。
 ぶっつけ本番で挑んだとしても、電圧の調整がうまくいかない可能性がある。
 規格と異なる電圧を流すと機械がどうなるかは、言うまでもない。
 そこは、精妙なコントロールが出来るサリカに任せるのが上策だ。
「あんたもお人好しだよな。ありがとうよ、ここまで手を貸してくれて」
「…………礼ならあちらに。俺は付き合っただけですから」
 アドルフの言葉にも、ヨハンはつっけんどんな様子で答えた。
 だがアドルフは、この少年のひねくれた優しさを確かに感じ取っている。
 好々爺めいてはにかむ男の顔は、ヨハンにとっては少し眩しかった。

 ……ほどなくして、無事、農業機械がエンジンスタートした。
「よおし! これなら問題ないぞ。本当に助かったぜ、ありがとな!」
 アドルフは快哉をあげ、油まみれなのも気にせず次の作業に移る。
 すっかり精力的なさまを見て、サリカは安堵したようにため息を漏らした。
「……もう満足ですか? さっさと帰りますよ」
「ああ、すみません。ヨハンがいたのを忘れていました」
「あんたどこまでも勝手だな。そこまで俺を挑発したいのか……?」
 訝しむヨハンに対し、サリカは思い出したように手のひらを叩いた。
「ああ、そうだ。あなたに言い忘れていたことが」
「…………なんですか」
 ヨハンは苦虫を噛み潰したような顔で言った。サリカは無表情で続けた。
「相変わらず、不機嫌そうな顔ですね」
「不機嫌にしているのはお前だよ」
 若者たちの「いつも通り」のやりとりに呆れたように、夕焼け空でカラスが鳴いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡
子供たちと一緒に農業をするよ
あんまりこういうのは慣れてないから
大人に教えてもらいながら一緒に学ぶ、ってことになるかな

あんまり一つの場所に留まってた記憶がないんだ
だから、こうやって土に触れるのだって初めてで
子供の相手だって慣れないし、戸惑うけど

誰かの為に、何かしたいんだって
ひとが紡ぐ未来を信じて守りたいって
そう思うのは、嘘じゃないんだって
まずは、そこから信じてみようと思うよ

きっと、自分のこころだってこの営みと同じなんだ
いつか芽吹くって、無駄ではないんだって
そう信じ続けて、育てていくものなんだと思う
ここにあるものを、それを信じてくれた人の言葉を、
信じたいと思った自分の気持ちを、無意味にしないために



●すべて灼けたあとに残るもの
 思えば、己の人生はまさしく何もかもを灼き尽くしたようなものだった。
 青春も、友情も、愛情も、人間らしいものを何もかも灼き尽くす戦乱の日々。
 淀みなき海に思えた心は、灰すら遺らぬこの荒野に似ていたのかもしれない。
「ねーねーおにいちゃん、どうしたのー?」
 明後日のほうを見ていた匡の意識を、あどけない子供の声が引き戻した。
 視線を戻せば、頬に泥をつけた子供がきょとんと顔を覗き込んでいる。
「……いや、なんでもないよ。どうかした?」
「あのねあのね、見てこれ! 土の中から見つけたんだー!」
 そう言って子供が差し出したのは、親指の先ほどの大きさのガラス玉だ。
 匡は、それが、超高熱で溶解した何らかの物質の成れの果てだと推察した。
 おそらくこの地ではるか昔に起きた戦闘の、残骸なのだろう。
「それね、きれーだからおにいちゃんにあげる!」
「……そっか。ありがとうな」
 匡はぎこちなく言って、ガラス玉を指の間で転がしてみた。
 匡から見れば、それは凄惨な戦い――彼にとっては慣れたことの残骸である。
 だが何も知らぬ子供にとっては、ピカピカ輝く宝石なのだろう。
 土汚れは洗い流され、水滴がきらきらとガラス玉を輝かせていた。
 無論、特に値打ちがあるわけでも、秘術の触媒になるわけでもない。
 戦いが生んだ取るに足らない残滓、誰にとっても必要のないものだ。
「……それ、どうしたの?」
「ん」
 続けて彼に声をかけてきたのは、髪を結い上げたクークーだった。
 彼女も匡や子供たちとともに、土いじりがてら作業に従事していたのだ。
 この農地には、まだまだこのガラス玉のような埋没物が大量にある。
 それをできるだけ除去し、汚染があればそれも取り除き、ようやく第一歩。
「あそこの子供たちがさ、俺にってよこしてきてさ。……どうしたもんかな」
「棄てちゃうなら、ワタシがこっそり処分しておこっか?」
 クークーは言うが、匡はやや考えた上で頭を振った。
「……いや、もらってすぐそうするのも悪いしな。多分」
 匡はそう言ってガラス玉を懐にしまい、作業を再開した。
 クークーはそれ以上何も言わず、彼とともに土いじりを手伝う。
「あ、クークーおねえちゃんだー!」
「おにいさんとなんのお話してたのー?」
 そこに子供たちがやってきて、またあやすことになるのだが。

 作業の半分ぐらいは、子どもたちの相手をするのに時間を割かれた。
 アドルフをはじめ知識のある大人たちが作業について指導してくれるが、
 事実上レクリエーションのようなものだ。なにせやることは多いのだから。
 今日一日ですべてが終わるわけではない。大人たちも腰を据えているらしい。
「ねえ。三回目だね、助けに来てくれたの」
 休憩中、クークーは隣に座るとそう言った。
「そうだな。最後に会ったのは、半年ぐらい前だったっけ?」
 刑務所の廃墟を再利用した拠点での、オブリビオンとの攻防戦。
 そこに居合わせたのが、クークーとの最後の記憶だった。
 匡の言葉に少女は頷き、嬉しそうにはにかみつつ子どもたちを見た。
 疲れ知らずの子どもたちは、相変わらずはしゃぎまわっている。
「前に、言ってたよね。ここが、"懐かしい"んだって」
「……ああ」
 過去の記憶を探り当て、匡は曖昧に答えた。
 どう説明したものか、と思案する匡だが、クークーはそれ以上深入りしなかった。
 彼にただならぬ事情があることを、なんとなく察していたのだろう。
 代わりに少女は、自らの話をした。
「ワタシね、ずっと旅をしてきたから、"懐かしい"っていう記憶があんまりないんだ。
 でも、懐かしさを感じさせてくれるものが好き。ラジオで流す音楽もそう」
 端末からゆるやかに流れる、旧世紀のオールディーズ・ナンバー。
 クークーはそれが流れていた頃を知らない。だがノスタルジィは感じる。
 だから、彼女はそれを好み、音源を集めて回っているのだという。
「……俺もそうかな。あんまり一つの場所にとどまってた記憶がないんだ」
 ぽつりと、匡は言った。クークーはその横顔を見つめる。
「こんな土いじりだって初めてだし、正直子供の相手も慣れてないよ」
「そう? みんな、あなたが優しいお兄さんだってなついてるみたいだよ」
「そういうもの、なのかな」
 あるいは親友であれば、もっと器用に友好的に立ち回るのだろうか。
 何かと年長者として振る舞うことの多い匡だが、ああいう無邪気な子供たちは、
 少し成長した思春期の弟分たちとは違って、どうにも対処に困る。
「俺は、子供に好かれるようなタイプじゃないんだけどな……」
「それは、ワタシにはなんとも言い切れないけど。でもね」
 クークーは言った。
「多分子どもたちは、あなたの心を感じ取ってるんじゃないかな」
「……こころ?」
 今度は、匡がクークーを見返す番だった。
「そう。あなたが、ワタシやみんなを守りたいと思ってくれる、そのこころ。
 その思いは、あなたがどういう人間かっていうのとは別に存在してる」
 少女はまぶたを伏せて続ける。
「だってあなたは、きょうもこうしてワタシたちを助けてくれたんだから」
「…………」
 そんなふうに心優しく思われるほど、自分は大した「人間」ではない。
 慈悲も優しさもその本質は理解できず、ぎこちなく真似しているのに近い。
 ……言わなくてもいい言葉は海の奥底にしまいこんで、匡はしばし考えた。
 どう言うべきなのか。学び知ったサンプルケースから類推するのではなく、
 彼女の言う「こころ」に問いかけて、長い長い時間をかけて、思考する。
「……ありがとう」
 やがて出た言葉に、クークーはくすりと笑った。
「なんか、おかしかった?」
「ううん。感謝するべきはワタシたちのほうなのに、不思議だなって」
「いや、不思議じゃないよ」
 匡はそう言って、はしゃぐ子どもたちの方を見た。
 地平線の彼方、夕日は沈みつつあり、空を橙色に染め上げている。
 影法師が長く伸びる。影は己であり、友であり、そして拭えない罪業だ。
 けれども。影があるならば、その向こう側には光がある。
「……俺も、信じたいものがあるから」
 もしもすべてが焼き尽くされたとして、あとには何が残るだろう?
 何も残るまい。この世界の、無限に続くような荒野をと同じように。
 だが、そこに生きる人々は、今こうして新たな芽を育てようとしている。
 自分の「こころ」が、この無限の荒野にも似ているのだとすれば。
 自分もまた、信じ貫き歩むことで、何かを育てているかもしれない。
 ……いいや。そうありたいと、匡は思った。だから、ここにいるのだ。
「無事でよかったよ。俺がしたことが、無駄じゃないってわかったからさ」
 血塗られたその魂と指先が守り抜いたものが、今日も笑い続けている。
 その事実こそが、彼のその気持ちを無意味にさせない証明となっている。
 だから匡は、クークーと彼女が寄り添う人々に、感謝を述べた。
「そっか……。なら、ワタシはお祈りをしようかな」
「お祈り?」
 クークーははにかんだ。
「あなたのこころにも、どうか安らぎがありますように、って」
 色あせた懐かしい旋律に混ざって、はしゃぐ子供たちの歓声が響く。
 匡は、そんな己に不釣り合いな「いま」を、悪くないと思った。
 そう思えた自分の「こころ」に、穏やかな気持ちを憶えた。
 懐から取り出したガラス玉は、夕日を受けてきらきらと輝いている――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月17日


挿絵イラスト