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バーン・イット・トゥ・ジ・グラウンド(作者 唐揚げ
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●アポカリプスヘル
 ――がちゃん!!
 顔のすぐ横で酒瓶が割れ飛び、破片が少女の頬を浅く割いた。
 驚くほど白い肌に赤い線が走る……だが金髪の少女は、血を拭いもしない。
 彼女……ソーシャルディーヴァ・クークーが見つめるのは、酔いどれた一人の男。
「帰れ」
「帰らないよ」
 赤ら顔の男のぶっきらぼうな物言いに、クークーはきっぱりと言った。
 男は舌打ちし、酒瓶を探そうとして、自分がいまそれを投げたことを思い出す。
「アドルフおじさん。あなたじゃないと出来ない仕事だから」
「帰れ!!」
 髪をはためかせるほどの怒号に、しかしクークーは怯えすらしなかった。
「あの機械を使えるのは、この拠点だとあなただけ。だから、手伝って」
「……くだらねぇ。農場の再開だぁ?」
 赤ら顔の男……アドルフは、少女の毅然とした顔をじろりと睨みつけた。
 その体つきはいかめしく、日に焼けた肌は外の仕事に従事する人間だと知らせる。
 荒れ果てた部屋の壁で、年代物のポスターが色あせていた。
 その下に並ぶのは、芽吹かないままかち割られた植木鉢の残骸……。
「くだらなくない」
「くだらねぇ!」
「くだらなく、ない」
 クークーははっきりと言った。
「みんなが、この世界で生き抜こうと希望を見出してる。ワタシだってそう」
「…………」
「だから、力を貸して。みんながあなたの帰還を待ってる」
「……やなこった。もう無駄な努力なんざしたかねえんだよ!!」
 アドルフはもはやクークーに背中を向け、丸まった。
 少女はしばしその背中を見つめ、やがて部屋を出る。
「……待ってるから」
「…………」
 ドアが閉まり、暗闇が訪れる。
 アドルフは、しばしうずくまっていた。

 やがて、再び立ち上がるまでは。

●グリモアベース
「かくしてアポカリプスヘルの拠点で、大規模農場が始まった……の、だがな」
 グリモア猟兵、ムルヘルベル・アーキロギアはため息をついた。
「残念なことに、オブリビオンが農場を襲撃するという事態を予知した。
 このまま放っておけば、せっかく芽吹いた希望は何もかも灰燼に帰するだろう」
 ムルヘルベルの背後、グリモアが表示したのは二種類のオブリビオン。
 ゴリラじみた殺戮駆動機械『思索実験機ヘの228理81走デス四』の群れと、
 それを統率する獄炎のレイダー、『『大炎嬢』バーニング・ナンシー』である。
「人々が農業再開に至ったのは、他でもない、我らが今日まで戦い抜いたからこそ。
 ここでオブリビオンに焼き尽くさせるわけにはいかぬ。どうか力を貸してくれぬか」
 "焼き尽くす"という言い回し通り、敵はどちらも強力な熱を用いる。
 農場への侵入を許せばすべてがおしまいだ。ゆえに、防衛線での迎撃が不可欠だろう。
「幸い、転移は敵の襲撃にかろうじて間に合う……陣地の構築は難しいが。
 なんとしても彼奴らの侵入を防ぎ、構築中の大規模農場を防衛してくれ」
 現地には開墾作業中のアドルフや拠点の人々が存在しているが、心配はない。
 そもそも彼を決起させた少女……クークーは、猟兵に救われた経験がある。
 人々の避難については、彼女に任せておけば問題ないだろうとのことだ。
「オヌシらは、オブリビオンを倒すことにのみ注力してくれればそれでよい。
 あるいはその姿こそが、未来を目指す人々にとって一番の気付けとなろう」
 そう言って、ムルヘルベルは本を閉じた。
「ある歴史家に曰く、こんな言葉があるそうだ。
 "剣で得た国土は剣によって奪われる。だが、鍬によって得たものは永遠である"。
 ……この世界を再び生命あふれる大地にするためには、その一歩を忘れてはなるまい」
 その言葉が、転移の合図となった。





第3章 日常 『アポカリプスで農業を』

POW力仕事を担当する
SPD丁寧な仕事を心掛ける
WIZ技術指導などを行う
👑5

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ささやかなる宴
 この世界では、他の世界からあれこれ物品を持ち込むことも難しい。
 そして寂れた拠点では、呑めや歌えのどんちゃん騒ぎというわけにもいかぬ。
 ただそれでも、人々は出来る限りの余裕を振り絞って宴を行うことにした。
 無駄遣い、と揶揄するのは少々筋違いだろう。宴とは"そういうもの"だ。
 たとえ合理的でなくとも、みんなで時間を共有し騒ぐことで、活力を得る。
 ありふれた苦しみを紛らわせ、また明日も立ち上がれるように奮う。
 そんな営みこそが、人々の祝宴にはあるのだから。

「あんたがたは、大したもんだ!」
 赤ら顔のアドルフは、上機嫌な様子で言った。
 彼の手には、合成アルコール入りのジョッキが握られている。
 卓上に並んだ食事は、最高級のそれらに比べればはるかに見劣りはする。
 きっといずれは、彼らが育てた作物が、そこを彩ることだろう。
「何もかも助けられちまった。こりゃあ、逃げるわけにもいかねえや。ひっく」
「逃げるつもりなんて、もうないくせに」
 しゃっくり混じりに軽口を叩くアドルフの言葉に、クークーははにかんだ。
 ……農場は無事に守られ、オブリビオンの脅威は払われた。
 付近を締めていたバーニング・ナンシーの消滅は、この地の平和を意味する。
 拠点をあえて害そうというレイダーは、そうそう簡単には出てこないだろう。
「本当に、ありがとう。みんなのおかげで、この拠点の人たちも」
 クークーは、ちらりと、彼らが守り抜いた農場のほうを見やった。
「……あの大事な場所も、守り抜けた。宴が終わったら、さっそく仕事しなきゃ」
 彼女は旅人だが、身を寄せている間はその拠点の一員として振る舞う。
 細腕をまくりあげて意気込む少女に、薄汚れた子供たちはきゃっきゃとはしゃいだ。

 そんなささやかな宴に興じ、あるいは彼らをもてなしてもいいだろう。
 もちろん仕事は山盛りだ。戦いの後片付け、本格的な農業の手伝い、指南。
 壊れかけた機械のメンテナンスや交換、あるいは近隣からの代替パーツの調達。
 やることは多いが、人々は活力をみなぎらせ、そして希望に燃えていた。
 猟兵たちが力を貸せることは、いくらでもある。
 そしてそれは、彼らが明日を目指すための大事な礎となるはずだ。
 この世界には、そう簡単に物品を持ち込むようなことは出来ない。
 だが人が前に進む力は、何も物がなければダメというわけではない。
 誰かとともに、何かを成し遂げた記憶。
 言葉。誓い。行動。あるいは知恵、技術、信念。
 それもまた、艱難辛苦を乗り越えるための力となるのである。