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熱の消えた世界(作者 るちる
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「集まってくれてありがとう。さっそく予知の内容を伝えるわ」
 緋薙・冬香(針入り水晶・f05538)が猟兵たちに話し出すのは、新しく見つかった『カクリヨファンタズム』のことだ。冬香が狐なのもそれに合わせてのことである。
「もう、カクリヨファンタズムについては知っているかしら?」
 簡単に言うと、妖怪たちが住む、地球と骸の海の狭間にある世界。ただ、世界というには不安定というか、忙しないというか。オブリビオンが周辺を迷宮化するため、今も全容が変わり続けているし、何よりとにかく騒動が起こる。
「私が見た予知も、その騒動のひとつなんだけど……」
 そこまで話して、ひと呼吸置く冬香はちょっと困り顔であった。
「実はね。カクリヨファンタズムから『熱』が無くなっちゃったの」


 熱、と聞いて思い浮かべるのは、熱いとか冷たいとかの温度のことだろうか。
「今の幽世は、『火に焼かれても熱くない』『氷に触っても冷たくない』、そんな世界になっているわ」
 熱が無いんだから当然といえば当然なんだけど。そのため、何に触れても、ただ触れている感触だけが伝わってくるのみ。

「もうひとつ、ね。熱が無くなった余波を受けてるものがあって」
 こっちの方が大変だ、と冬香は困り顔である。
「ほら、時折、『熱をあげる』とか言うじゃない?」
 他にも『情熱』とか。それは感情の揺れ幅を熱量に例えて表現していると言える。熱の概念が無くなったことで、この表現も無くなってしまったのだ。
「もちろん、嬉しいとか悲しいとかの感情はあるのよ? ただ、それが全然見えないの」
 感情も体温も。その熱量を測るのはいつだって自分以外の誰かか何かだ。
 そして、熱量が測れない、ということは、自分の状態も相手の感情も伝える術が失われたことを示す。
「結果的に、情とか絆とかが破綻しちゃって大混乱。そこを骸魂に狙われたのね」
 そしてカクリヨファンタズムには今、すごい数のオブリビオンが出現している。
「ぶっちゃけ真剣にヤバいわ。世界の終わり(カタストロフ)といってもいいくらいに」
 このまま放置するわけにはいかない、ということで、冬香は猟兵たちに集まってもらったのである。


 カクリヨファンタズムに転送されたら、まずオブリビオンの歓迎を受ける。視界いっぱいに広がるオブリビオンの名前は。
「『『剣客』雪だるま』。とりあえず今言うべきはひとつよ……可愛いわ」
 違うそうじゃない。いや、可愛いのは事実なのだが、そうじゃなくて。
 熱の奪われた世界に雪だるまとか何の因果かわからないが、これが猟兵に向かって襲い掛かってくる。数が多いけれども、複雑な行動は取ってこないシンプル思考。ちなみに攻撃手段は、どう持つのか謎な刀と雪玉である。
「これを倒し切ると、今度は事件の元凶が現れるわ」
 『『絆の試練』アナスタシア』。元は西洋系の神性存在らしい。司るのはおそらく『恋慕や愛情といった感情』。おおよそ『熱』と関係する感情である。
「彼女がこの世界の熱を奪った犯人よ。熱を奪って何をしたいのかまではわからないけれども」
 きっと。熱で謳われるそれらの感情を、その熱量をすべて支配したいと考えたのかもしれない。


「アナスタシアを倒せば、熱が幽世に戻ってくるわ」
 そうなると、火に焼かれると熱いし、氷に触れると冷たい、と思える世界に戻る。絆が、情が相手に伝わる世界に戻るのだ。
「事件解決したら、ちょっとゆっくりしてきてもらって大丈夫よ。こっちで温泉も手配しておくわ」
 熱いとか冷たいとかの感覚を戻すのにもちょうどいいだろうし。ちなみに、妖怪たちに噂になっているらしい、曰く、『幽世の秘湯』である。楽しみにしていただきたい。
「そんなわけで。雪だるま退治からのアナスタシア討伐。そして温泉湯治というのが今回のお仕事の流れになるわ」
 よろしくね、と冬香は微笑んで。グリモアによって猟兵たちをカクリヨファンタズムへと転送するのであった。





第2章 ボス戦 『『絆の試練』アナスタシア』

POW ●疑心の罪
【滔々と語られる愛の説法】を披露した指定の全対象に【己に向けられている愛情に対する、疑いの】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
SPD ●煌々たる失翼
【慈愛と歓喜の感情】を籠めた【飛ばした羽根の乱舞】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【持つ、大切な者との様々な関わりの記憶】のみを攻撃する。
WIZ ●真偽不明の愛
自身が【愛する者同士の深く強い絆】を感じると、レベル×1体の【両者の、極めて精巧なニセモノ】が召喚される。両者の、極めて精巧なニセモノは愛する者同士の深く強い絆を与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は御形・菘です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵たちの活躍で『『剣客』雪だるま』が溶けて、消えていく。ひとまずの脅威は払えたようだ。
 しかしまだ、カクリヨファンタズムから『熱』を奪った元凶が残っているのだ。

 その元凶、『『絆の試練』アナスタシア』は空からゆっくりと猟兵たちの前に現れた。その様子は舞い降りたとも言えるし、『堕ちてきた』とも言える。

「ふふ、何をそんなに熱くなっているのかしら?」

 そういうアナスタシアにも『熱』を感じ取ることはできない。ただ、猟兵たちの行動を見て勝手に決めつけただけだ。

 アナスタシアは元々、恋慕や愛情といった感情を守護する天使であったという。だが、骸魂に飲みこまれた際に反転・暴走した彼女は恋慕や愛情に対して試練を与える存在と化してしまった。

 『熱』を奪ったのは彼女の試練。相手の熱を、恋慕や愛情を感じ取れない状態で、彼女は囁く。その想いが、熱が伝わらないのなら。

 ――その愛は本物かしら?
 ――大切な記憶を奪われても、貴方はその人を愛せる?
 ――このニセモノと貴方の想い人に何の違いがあるの?

 それは恋慕や愛情を試すためではなく……破たんを嘲笑うために。
「ああ、残念ね。貴方たちの愛と恋もきっとニセモノだわ。だって、熱を感じないもの」
 熱を奪った彼女は世界を壊す。想いが伝わらず、誰も信じられなくなる世界を作った後に、破滅へ導くのだ。

 世界の崩壊を止めるために。
 その運命は猟兵たちへ託された。


※うまく骸魂のみを他の下場合、核となっているアナスタシアを救うことができます。
恋慕や愛情の対象に関して、特定の方が指定される場合は、プレイングにそれとなくでもなんとなくでもいいのでお書きください。