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熱の消えた世界

#カクリヨファンタズム

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#カクリヨファンタズム


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「集まってくれてありがとう。さっそく予知の内容を伝えるわ」
 緋薙・冬香(針入り水晶・f05538)が猟兵たちに話し出すのは、新しく見つかった『カクリヨファンタズム』のことだ。冬香が狐なのもそれに合わせてのことである。
「もう、カクリヨファンタズムについては知っているかしら?」
 簡単に言うと、妖怪たちが住む、地球と骸の海の狭間にある世界。ただ、世界というには不安定というか、忙しないというか。オブリビオンが周辺を迷宮化するため、今も全容が変わり続けているし、何よりとにかく騒動が起こる。
「私が見た予知も、その騒動のひとつなんだけど……」
 そこまで話して、ひと呼吸置く冬香はちょっと困り顔であった。
「実はね。カクリヨファンタズムから『熱』が無くなっちゃったの」


 熱、と聞いて思い浮かべるのは、熱いとか冷たいとかの温度のことだろうか。
「今の幽世は、『火に焼かれても熱くない』『氷に触っても冷たくない』、そんな世界になっているわ」
 熱が無いんだから当然といえば当然なんだけど。そのため、何に触れても、ただ触れている感触だけが伝わってくるのみ。

「もうひとつ、ね。熱が無くなった余波を受けてるものがあって」
 こっちの方が大変だ、と冬香は困り顔である。
「ほら、時折、『熱をあげる』とか言うじゃない?」
 他にも『情熱』とか。それは感情の揺れ幅を熱量に例えて表現していると言える。熱の概念が無くなったことで、この表現も無くなってしまったのだ。
「もちろん、嬉しいとか悲しいとかの感情はあるのよ? ただ、それが全然見えないの」
 感情も体温も。その熱量を測るのはいつだって自分以外の誰かか何かだ。
 そして、熱量が測れない、ということは、自分の状態も相手の感情も伝える術が失われたことを示す。
「結果的に、情とか絆とかが破綻しちゃって大混乱。そこを骸魂に狙われたのね」
 そしてカクリヨファンタズムには今、すごい数のオブリビオンが出現している。
「ぶっちゃけ真剣にヤバいわ。世界の終わり(カタストロフ)といってもいいくらいに」
 このまま放置するわけにはいかない、ということで、冬香は猟兵たちに集まってもらったのである。


 カクリヨファンタズムに転送されたら、まずオブリビオンの歓迎を受ける。視界いっぱいに広がるオブリビオンの名前は。
「『『剣客』雪だるま』。とりあえず今言うべきはひとつよ……可愛いわ」
 違うそうじゃない。いや、可愛いのは事実なのだが、そうじゃなくて。
 熱の奪われた世界に雪だるまとか何の因果かわからないが、これが猟兵に向かって襲い掛かってくる。数が多いけれども、複雑な行動は取ってこないシンプル思考。ちなみに攻撃手段は、どう持つのか謎な刀と雪玉である。
「これを倒し切ると、今度は事件の元凶が現れるわ」
 『『絆の試練』アナスタシア』。元は西洋系の神性存在らしい。司るのはおそらく『恋慕や愛情といった感情』。おおよそ『熱』と関係する感情である。
「彼女がこの世界の熱を奪った犯人よ。熱を奪って何をしたいのかまではわからないけれども」
 きっと。熱で謳われるそれらの感情を、その熱量をすべて支配したいと考えたのかもしれない。


「アナスタシアを倒せば、熱が幽世に戻ってくるわ」
 そうなると、火に焼かれると熱いし、氷に触れると冷たい、と思える世界に戻る。絆が、情が相手に伝わる世界に戻るのだ。
「事件解決したら、ちょっとゆっくりしてきてもらって大丈夫よ。こっちで温泉も手配しておくわ」
 熱いとか冷たいとかの感覚を戻すのにもちょうどいいだろうし。ちなみに、妖怪たちに噂になっているらしい、曰く、『幽世の秘湯』である。楽しみにしていただきたい。
「そんなわけで。雪だるま退治からのアナスタシア討伐。そして温泉湯治というのが今回のお仕事の流れになるわ」
 よろしくね、と冬香は微笑んで。グリモアによって猟兵たちをカクリヨファンタズムへと転送するのであった。


るちる
 こんにちはとかこんばんは、るちるです。以前、雪の温かさ、みたいなSS書こうとして結局書かなかったなーという。余談でした。
 そんなわけでカクリヨファンタズムのシナリオのお届けです。このシナリオは、コミカルからシリアスまで幅広くプレイングを採用していく予定です。気楽にご参加くださいな。

 シナリオの補足です。
 当シナリオは、集団戦、ボス戦、日常の3章構成。1章、2章については戦闘となります。3章がご褒美の温泉です。

 1章も2章もシンプルに戦闘です。2章のボスはともかく、1章は巻き込まれた妖怪たちがオブリビオン化しているだけなので、さくっと戦闘で問題ありません。
 ちなみに熱はありませんが、炎も氷もちゃんと存在します。その手のユーベルコードは『熱くないけど燃やせる』『冷たくないけど凍らせる』という効果を発揮します。
 なお、この世界のオブリビオンは、骸魂が妖怪を飲み込んで変身したものになります。骸魂だけ倒すことができれば、取り込まれた妖怪を助けることができます。

 3章は秘湯なので、温泉地リゾートのようにはいきませんが、まったり過ごしていただくには十分かと思います。この章のみかつお呼び立ていただいた場合のみ、冬香がお伺いします。

 2章以降はシチュエーションなどを追記していく予定です。

 それではご参加お待ちしておりますー。
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第1章 集団戦 『『剣客』雪だるま』

POW   :    雪だるま式に増える
自身が戦闘で瀕死になると【仲間】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    抜けば玉散る氷の刃
【その手でどうやって持つんだかわかんない刀】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    雪合戦
レベル×5本の【氷】属性の【雪玉】を放つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

御狐・稲見之守
……。
こいつ剣客というより仕業人とかじゃないのか。
ま、さておいて。

[SPD]
壱かけ弐かけ参かけて、仕掛けて、化かして、夜が明けて
予知で飛ばされやって来て
遥か幽世眺むれば、この世は滅ぶことばかり
片手にポン刀、霊符持ち、狐や狐や、何処へ行く
ワタクシはぐれ猟兵純情派、御狐稲見之守と申しやす――

熱い冷たいもないというに、随分と冷えた野郎じゃァないか、
その刀で何人斬ってきたんだい?
それも徒党を組んで袋叩き、お寒いったらありゃしない。

秘技、木霊返し――変わり身に霊符を彼奴に斬らせたらば
その剣筋をそっくりお返し、その腕を切り落としてやろう。

取り込まれた奴まで斬るわけにはいかなくてな、
『だるま』で勘弁だ。




 熱を奪われ、崩壊しかけているカクリヨファンタズム。その世界を闊歩する『『剣客』雪だるま』。
 本能か、あるいは獲物を探してか。絶え間なく歩き続ける雪だるまの群れが、不意に乱れる。
 それは一筋の剣閃にて。

「壱かけ弐かけ参かけて、仕掛けて、化かして、夜が明けて」
 音も無く、上段からの一閃で腕を斬り落とされる雪だるま。声の主に雪だるまが抗議するかのごとく、その手(枝)を伸ばす。
「予知で飛ばされやって来て、遥か幽世眺むれば、この世は滅ぶことばかり」
 返す刀でその手を跳ねあげ、さらなる一閃が腕をたたっ斬る。
「片手にポン刀、霊符持ち、狐や狐や、何処へ行く」
 ゆっくりと立ち上がり、『霊刀小狐丸』の切先が雪だるまたちへ向けられ。
「ワタクシはぐれ猟兵純情派、御狐稲見之守と申しやす――」
 御狐・稲見之守(モノノ怪神・f00307)の口上に、雪だるまたちが一斉に刀を抜いた。

 刀を構えて稲見之守を取り囲む雪だるまたち。
(……)
 その様子を見て、小狐丸の切先を突きつけながら、稲見之守はこっそり眉をひそめた。
(こいつら、剣客というより仕業人とかじゃないのか)
 笠に襟巻、まとう冷気(なお今は温度が無い)。『闇討ちも辞さない』って雰囲気が特に。ま、それはさておいて。

「熱い冷たいもないというに、随分と冷えた野郎じゃァないか、その刀で何人斬ってきたんだい?」
 稲見之守の問いかけを挑発と受け取ったのか、雪だるまが刀(とても器用に持っている)を振りかぶって斬りかかる。その1体を皮切りに、文字通り雪崩れのごとく押し寄せる雪だるまたち。
 次々と襲い来る刀をかわし、そして小狐丸で弾き返しながら、稲見之守は目を細める。
「それも徒党を組んで袋叩き、お寒いったらありゃしない」
 ひらりとかわして距離を取り。刀を構えて、ゆらりと刀を傾けて。
 誘うように作った、剣客ならば逃さぬであろう隙。釣られるように雪だるまたちの刀が稲見之守の体を斬り裂く。
 否、それは稲見之守の変わり身。彼女の霊符。

「秘技、木霊返し」

 いつの間にか、離れた位置から、ひとこと告げたは必殺の名にして彼女の業。雪だるまたちの剣筋をそっくりそのままお返し、その刀持つ腕を斬り落としていく。
「取り込まれた奴まで斬るわけにはいかなくてな、こいつで勘弁だ」
 そう言って雪だるまに向かって駆ける稲見之守。彼女の斬撃が残った腕を正確にたたっ斬っていく。

 そのダメージに骸魂が霧散していき。
 取り込まれた妖怪たちが無事この幽世に戻ってきたことを確認して、稲見之守は剣を収めて踵を返すのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

春霞・遙
今のUDCアースの日本を思うと熱中症がなくなって救急外来で大分楽ができそうですけどね。ああ、でもそうすると風邪をひいても熱が出ないから診察が難しくなるな。
やっぱり熱を奪われたら困ります。

そんなわけで、杖術と【葬送花】でアナスタシアとやらへの道を拓きましょう。
雪だるまの群れを「なぎ払い」、氷の刃は「武器受け」で躱して、雪玉には「吹き飛ばし」。野球したことはないので当たらないかもしれませんけどね。
大量に飛ばしてくるなら避けつつ花吹雪で相殺します。
冷たくない雪玉は少し気になるので一発くらいは食らってみたいけれど、遊んでいる場合ではないので真面目に戦いますね。




 『『剣客』雪だるま』の大群。その後方に静かに降り立ったのは春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)であった。

(今のUDCアースの日本を思うと熱中症がなくなって救急外来で大分楽ができそうですけどね)
 UDC組織所属の猟兵で医師でもある遙。ここカクリヨファンタズムは彼女が拠点とするUDCアースと隣接する世界。この世界の熱が無くなったなら、あるいは……。
(ああ、でもそうすると風邪をひいても熱が出ないから診察が難しくなるな)
 一長一短とはまさにこのことである。熱中症だけが命に関わる病気ってわけではないですからね。
「やっぱり、熱を奪われたら困ります」
 木の杖を手に遙は一直線に雪だるまたちへと駆けるのであった。

 遙が披露するのは杖術。木の杖とあなどるなかれ、その杖さばきは剣術にも劣らない。
 雪だるまの群れに素早く接近、一閃して雪だるまたちをなぎ払う。反撃と振るわれた刀はその刃を避けて刀を腹を打ち払い。
 たんっ、とステップを踏んで距離を取った遙へ、雪だるまが雪合戦のごとく雪玉を放つも、それらを杖を振るって吹き飛ばす遙。
「うーん、内野ゴロ」
 残念ながら飛距離は出なかった。野球をしたことない遙さんなら上出来の結果ではないだろうか。
 そんな様子の遙が気に入らなかったのか、次々と雪玉を放って来る雪だるま。
 対して遙も杖を振るって、吹き飛ばし、叩き落とし、しかしその内、一発が遙の顔に直撃する。ダメージはたいしたことない。
「……なるほど?」
 『冷たくない雪玉はどんなものでしょう?』とか少し気になっていたのだが、雪の感触そのままに温度だけ無い。砂? あるいは土? これで雪合戦は精神衛生上かなり良くないかもしれない。
(遊んでいる場合ではないので真面目に戦いますね)
 気になっていたことも解決したし。

 雪合戦の合間を縫って、杖を構え直す遙。
「風に舞う薄紅の嬰児よ惑う命の導きと成れ」
 それは【葬送花】。杖から溢れる光が雪だるまたちに向けられ、数多の薄桃色の花吹雪が舞い散る。まずは遙に襲い来る大量の雪玉を相殺して。
 さらにそのまま花吹雪が雪だるまの大群を飲みこんでいく。
「子供は雪だるまと遊べた方が楽しいものかしら?」
 ふとそんなことを思いながら。
 目の前の雪だるまたちを一掃した遙は、ふぅとひと息つくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

樫倉・巽
それに触れればわかるもの
熱情とはそう言うもの
相手の覚悟、殺気、信念
向かい合えばわかるもの

そうでないなら寂しいものだ
何と斬り合えば良いのか
刀が示す己の実感を
得られないなら

目を隠されたようなものだろう
手応えがなければ戦いは空しくもなるだろう

ならば
それを取り戻すために
斬ろう
自らを試すためには丁度良い

相手からの気配が分からぬなら
自分を信じる強さが試されるというもの
呼吸を落ち着け
間合いを計り
自ら信ずる覚悟を持って
刀を振ろう

心の強さを
研ぎ澄ますべく
我が剣を信じることによって
相手を斬ろう

己との戦い
負けぬよう心を静め
心を無にして剣を振ろう

覚悟とは思わぬこと
そこに在ること
ただの一振りの刀であること




 『『剣客』雪だるま』の群れ。その前に立ち塞がるべく、樫倉・巽(雪下の志・f04347)はカクリヨファンタズムの世界に降り立つ。
 まだ、雪だるまとの接触には時間がある。油断なく構えながら、目をわずかに細める巽。脳裏を思考が巡る。

 ――今、この世界からは『熱』が奪われている。そして熱で表わされる情も。

(それは触れればわかるもの)
 熱情とはそう言うものだ、と巽は捉えている。相手の覚悟、殺気、信念とは、向かい合えばわかるものなのだ、と。
 されど、この世界では今、何をどうしてもそれを成し得ることができない。
(そうでないなら寂しいものだ)
 腰に佩いている『砂塵渡り』を一瞥して、巽は思う。

 ――刀が示す己の実感を得られないなら。

 いったい、何と斬り合えというのか。刀が何かを斬ることが強さでは無く、その相対した感情や信念を上回ることこそが、刀を合わせあう本質だと言うのに。
 そうではなく、ただ物を斬り捨てるような行為は言うなれば。
(目を隠されたようなものだろう)
 あるいはただの木の棒を斬るかのような。手応えがなければ戦いは空しくもなるだろう。そんなモノを求めて刀を振るっているわけではないのだ、と巽は自身を思い返す。
(ならば)
 それはごく自然な流れ。それを取り戻すために、巽は刀を握る。抜き放たれる砂塵渡り。
「斬ろう」
 その言葉は誰に向けたものでもなく、ただ単に行動を指し示すだけの単語。
 抜身の砂塵渡りを手に、巽は雪だるまの群れの前に立ち塞がる。
(自らを試すためには丁度良い)
 そう考えるとしよう。
 
 猟兵ひとりが群れの前に立ったのなら、必然的に一対多の戦いになる。乱戦においては自分と敵との位置関係、気配。これをいかに感じ取るかが肝要だが、今はそれが感じ取れない。
(相手からの気配が分からぬなら……自分を信じる強さが試されるというもの)
 慌てず、取り乱さず。呼吸を落ち着け整えて。
 幾度も振るった砂塵渡りの間合いは完全に体が覚えている。ならば、残った五感、例えば視界を頼りに間合いを計ることも容易い。

 後は……自ら信ずる覚悟を持って、刀を振るうのみ。

 巽が一気に間合いを詰める。
(己との戦い、負けぬよう心を静め……心を無にして剣を振ろう)
 上段から振り下ろされた一撃が雪だるまを一刀両断する。返す刀で横薙ぎに別の雪だるまを斬りつける巽。
 モノが動けば、大気が、空気が動く。その僅かな振動を感じとって身を翻す巽。

 心の強さを研ぎ澄ますべく。

(我が剣を信じることによって、相手を斬ろう)
 確かな信念のもと、かわしざまに砂塵渡りを一閃して叩き伏せる。

 攻防は一進一退。されど、巽の刀が雪だるまを捉えて次々と斬り伏せていく。多勢に無勢とて各個撃破していけば問題ない。勝負の趨勢は巽に傾きつつある。
 それを打開すべく、雪だるまたちが一斉攻撃の準備を整え始める。

 なればこそ、油断せずに。

 距離を取り、砂塵渡りを鞘に納める巽。
(覚悟とは……思わぬこと。そこに在ること)
 そして、ただの一振りの刀であること。己が自身が刃となりて、敵を裂く。
 ち、と刀身を鞘走りさせると同時に、巽が駆ける。

 【無風刃】。

 それは納刀した状態より放たれる、風が吹く間もなく斬り捨てる神速の刃。それで以て、巽が雪だるまの群れを駆け抜ける。そして、砂塵渡りを再び鞘に納める巽。

 直後、巽の背後で次々と倒れていく雪だるまたち。
 振り向いた巽が見たものは、視界いっぱいに倒れ伏している雪だるまたち。立っている者はもちろんおらず。
 この場は巽の勝利で幕引きとなったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リヴィアン・フォンテーヌ
『熱』を奪う、ですか
堪ったものはないですね
それでは私の持つ聖剣を託せる英雄も現れません。まぁそもそも現れるかは不明ですが可能性ごと排除されるのは違うでしょう

雪だるま、湖の乙女……湖の精霊である私の前に雪だるまですか、しかも剣客と来ましたか
水と氷、聖剣を抱える乙女と刀を振るう者……似通っているようでまるで違いますね
普段であればあまり相性はよくないですが『熱』を奪われている今なら凍らされることはないでしょう
そちらが氷属性の雪玉を放つなら、此方は水の槍です。ただし、普通の水だと思ったら大間違いです
【ハイウォータースピア】で雪玉を迎撃して、雪だるま達も射貫いてみせます。数はともかく威力なら負けません




 カクリヨファンタズムに転送されてきたリヴィアン・フォンテーヌ(湖の乙女・f28102)は静かに着地する。
(『熱』を奪う、ですか)
 今、この世界に起こっている現象を思い起こし、周囲を見渡す。大きな混乱は起きていない……というより、起こった直後を骸魂に襲われているのだから、今は一難去った後と見るべきだろう。
(堪ったものはないですね)
 嘆息ひとつ。ふぅと息を吐いて項垂れるリヴィアン。
(それでは私の持つ聖剣を託せる英雄も現れません)
 そう思いながら自分の手を見つめる。そこに出現するのはひと振りの聖剣。いずれ英雄の手に渡るべき運命を持つ……。
(……まぁそもそも現れるかは不明ですが)
 かもしれない聖剣であった。
 これはリヴィアンがその出自ゆえに保有しているモノだ。それは彼女の精霊としての『在り方』かもしれない。湖の、というより泉の精霊と言う方が正確かもしれないが。
 この聖剣は、普通にいけば人の英雄の手に渡るもの。
 だがそうだとしても。
(可能性ごと排除されるのは違うでしょう)
 仮に英雄という存在が、常人と熱量の違う存在だとするのなら。熱の奪われた世界で英雄たるかを測る術が無いということになるのだから。

 ゆえにこの世界をそのままにしておくことはできない。

 改めてそう思い直し、リヴィアンの視線が前を向く……その瞬間。上空から大量の『『剣客』雪だるま』が降ってきた。リヴィアンを取り囲むようにして陣取る雪だるまたち。
「……」
「……」
 相対する雪だるまと湖の乙女はお互い無言で。牽制したりとか間合いを計っているとかではなく、真剣に無言である。
(湖の精霊である私の前に雪だるまですか)
 聖剣を握ったまま、雪だるまを見据えるリヴィアン。そうしていると雪だるまたちもまた本能のままに戦闘態勢を整える。具体的にはどう持つんだソレっていう枝の手で刀を鞘から引き抜いた。
(しかも剣客と来ましたか)
 向かい合うのはリヴィアンと雪だるまだけではなく。
 聖剣と氷の刃。水と氷。そして、聖剣を抱える乙女と刀を振るう者。
(……似通っているようでまるで違いますね)
 油断なく泉の杖も取り出して構えながら、じりじりと間合いを計るリヴィアン。
(普段であればあまり相性はよくないですが)
 水が凍ると氷になる。泉の精霊であるリヴィアンにとって冷気とはある意味天敵のような存在だ。
 だが、しかしである。
(『熱』を奪われている今なら凍らされることはないでしょう)
 ならば条件は同じ。

 先手必勝とばかりに雪合戦の雪玉を放って来る雪だるまたち。その第一陣を横っ飛びでかわしながら態勢を整えるリヴィアン。まだ雪だるまたちが迫ってくる。
「そちらが氷属性の雪玉を放つなら、此方は水の槍です」
 リヴィアンが泉の杖を掲げながら、紡ぎ出すのは【ハイウォータースピア】の詠唱。

「水よ、槍と為りて穿て」

 リヴィアンの言葉で以て、精霊の加護を受けた水が遺失魔術によって水の槍と化す。
「ただし、普通の水だと思ったら痛い目を見ますよ」
 いまだ迫りくる雪玉の弾幕に叩き付けるように、水の槍を繰り出していくリヴィアン。
「数はともかく威力なら負けません」
 その言葉通り、水の槍が数個の雪玉を突きぬけていく。リヴィアンの眼前に隙間なく並べた水の槍を次々と射出するだけで雪玉が細かい欠片となって迎撃されていく。そして水の槍の勢いが衰えることのなく、弾幕の裏にいた雪だるまをも貫いていく。
「これで、決まりです!」
 再度展開した【ハイウォータースピア】の水の槍を、余すことなく雪だるまたちに叩き付け。
 この場における水vs氷は、水の勝利となったのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『絆の試練』アナスタシア』

POW   :    疑心の罪
【滔々と語られる愛の説法】を披露した指定の全対象に【己に向けられている愛情に対する、疑いの】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
SPD   :    煌々たる失翼
【慈愛と歓喜の感情】を籠めた【飛ばした羽根の乱舞】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【持つ、大切な者との様々な関わりの記憶】のみを攻撃する。
WIZ   :    真偽不明の愛
自身が【愛する者同士の深く強い絆】を感じると、レベル×1体の【両者の、極めて精巧なニセモノ】が召喚される。両者の、極めて精巧なニセモノは愛する者同士の深く強い絆を与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠御形・菘です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵たちの活躍で『『剣客』雪だるま』が溶けて、消えていく。ひとまずの脅威は払えたようだ。
 しかしまだ、カクリヨファンタズムから『熱』を奪った元凶が残っているのだ。

 その元凶、『『絆の試練』アナスタシア』は空からゆっくりと猟兵たちの前に現れた。その様子は舞い降りたとも言えるし、『堕ちてきた』とも言える。

「ふふ、何をそんなに熱くなっているのかしら?」

 そういうアナスタシアにも『熱』を感じ取ることはできない。ただ、猟兵たちの行動を見て勝手に決めつけただけだ。

 アナスタシアは元々、恋慕や愛情といった感情を守護する天使であったという。だが、骸魂に飲みこまれた際に反転・暴走した彼女は恋慕や愛情に対して試練を与える存在と化してしまった。

 『熱』を奪ったのは彼女の試練。相手の熱を、恋慕や愛情を感じ取れない状態で、彼女は囁く。その想いが、熱が伝わらないのなら。

 ――その愛は本物かしら?
 ――大切な記憶を奪われても、貴方はその人を愛せる?
 ――このニセモノと貴方の想い人に何の違いがあるの?

 それは恋慕や愛情を試すためではなく……破たんを嘲笑うために。
「ああ、残念ね。貴方たちの愛と恋もきっとニセモノだわ。だって、熱を感じないもの」
 熱を奪った彼女は世界を壊す。想いが伝わらず、誰も信じられなくなる世界を作った後に、破滅へ導くのだ。

 世界の崩壊を止めるために。
 その運命は猟兵たちへ託された。


※うまく骸魂のみを他の下場合、核となっているアナスタシアを救うことができます。
恋慕や愛情の対象に関して、特定の方が指定される場合は、プレイングにそれとなくでもなんとなくでもいいのでお書きください。
御狐・稲見之守
愛を試したがるとは感心しないな。
そいつは目に見えないがゆえに値打ちがあるってもんだ。見えないがゆえの不安に負け、そして詩人の神も国生みの神も愛する者を失った……なんて、な。

お前のつまらん遊びで大事な思い出を玩具にされるつもりはない。

[UC妖狐の檻][呪詛][催眠術][生命力吸収]――熱いも寒いもなく、愛を説くことも語ることもない孤独の闇が広がる虚無の夢へと招待してやろう。そうして彼奴の骸魂のみを喰らうこととす。骸魂憑きでなければ、身魂欠片残らず滅ぼしてやっているところだ。

……ヒトとヒトならざる者の恋路なんざ昔から結ばれぬものと決まっている。唯一、約定が結ばれたのみよ。


春霞・遙
本当に愛し合う二人なら、試練を乗り越えてより結びつきを深めることもあるのでしょうね。でもそれはあなたが判断するものではないでしょう。

さて、重みのある戦闘手段は銃撃しか持ち合わせていないので「援護射撃」や【生まれながらの光】による回復での補助を行おうと思います。
翼を射止め羽根を撃ち落とし、距離を詰められたら「零距離射撃」も。

愛には本物も偽物もある。それでいい。空っぽの身でも与えることができるならそれでいい。子供たちが泣かずに済むのなら。見返りはなくてもいい。
【無償の愛】は死にゆく子供たちのためのものですが、あなたがそれを疑うのなら「慰め」に「手をつな」いであげましょうか。

共闘アドリブお任せします




 『『絆の試練』アナスタシア』を前に、御狐・稲見之守(モノノ怪神・f00307)と春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)が歩み出る。
「愛を試したがるとは感心しないな」
 アナスタシアをにらみつける稲見之守。
 その半歩後ろで遙が告げる。
「本当に愛し合う二人なら、試練を乗り越えてより結びつきを深めることもあるのでしょうね」
 その言葉はアナスタシアを肯定しているようで。
「でもそれはあなたが判断するものではないでしょう」
 しかし、彼女の存在を許す言葉ではない。
「誰だって、愛が深まれば嬉しいでしょう? だから、試すの。おかしい?」
 笑みを崩さずにアナスタシアが謳う。
 その言葉に稲見之守が首を横に振る。
「そいつは目に見えないがゆえに値打ちがあるってもんだ」
 だからこそ、皆が憧れ、敬い、時には見えないがゆえの不安に負け……。
(そして詩人の神も国生みの神も愛する者を失った……なんて、な)
 それゆえの悲劇が無い、とは言えない。それでも。
「ま、お前が決めることじゃない」
 稲見之守もアナスタシアを切って捨てる。
「わかったわ。では貴方たちも試練に飲まれなさい!」
 己の存在を認めない二人に、アナスタシアは翼を広げる。


 稲見之守の前に、輪郭が結ばれていく。それはとても朧げで、しかし徐々にはっきりとその形を成す。アナスタシアのユーベルコード【真偽不明の愛】。それは稲見之守の過去から引きずり出された、いつかどこかで在った光景。男女の仲だけが愛ではないのだから。何人たりともアナスタシアの能力から逃れることはできない。
「ふふ、ふふふ、さあ、貴方はどうするのかしら?」
 ご馳走を前に我慢できない子供のような笑みを浮かべてアナスタシアは稲見之守を見つめる。しかし。
「お前のつまらん遊びで大事な思い出を玩具にされるつもりはない」
 稲見之守は躊躇わず、すぐさまユーベルコードを展開する。思い出の中の人物が大切でないわけが無い。その人物が目の前にいれば、微笑み、迎えるであろう。しかし、これはニセモノだ。精巧であっても稲見之守の愛した誰かではない。
 ならば、彼女に灯るのは怒りのほうが強かろう。
 稲見之守のかざした手から放たれる【妖狐の檻】。それがニセモノたちを喰らって、彼女の中へと吸収する。否、それは大切なものを宝箱に仕舞うのと同じ仕草。彼女の思いでは在るべき場所へと戻る。
「お気に召さなかったようね。残念だわ」
 そう言ってアナスタシアは稲見之守から興味を無くす。

「次は、貴方」
 慈しむように、そして歓喜を隠さず。アナスタシアが翼を振るう。そこから放たれる羽根の乱舞。それは遙を包み込むようにして、彼女の『大切な者との様々な関わりの記憶』を狙う!
「そんなこと、させると思う?」
 稲見之守が十二分に時間を稼いでくれたおかげで準備はばっちり。手に構えた拳銃が制圧射撃のごとく、羽を撃ち落としていく。
「……!」
 その様子を見て、さらに羽根の乱舞を繰り出すアナスタシア。遙はそれを横っ飛びでかわして……『設置してあった』スナイパーライフルを構える。
「重みのある戦闘手段は銃撃しか持ち合わせていないの」
 言葉と共に、銃弾がアナスタシアの肩を撃ち抜く。

「ぐっ……」
 銃撃の衝撃で、不時着するアナスタシア。
 距離を取ったまま、遙が告げる。
「愛には本物も偽物もある。それでいい。空っぽの身でも与えることができるならそれでいい。子供たちが泣かずに済むのなら。見返りはなくてもいい」
「そんなもの……! 愛はそんな綺麗事では!!」
 痛みのせいか、声を荒げるアナスタシア。
「……」
 遙が拳銃を構える。そこから放たれるのは銃弾では無く、ユーベルコード【未来へ捧ぐ無償の愛】。アナスタシアの肩の傷が癒される。
「【無償の愛】は死にゆく子供たちのためのものですが」
 今、傷を癒したのは遙の意思。その想いを、行為を、それでもアナスタシアが疑うというのなら。
「慰めに手を繋いであげましょうか」
 武器を捨て、近付きながら手を差し出す遙。
「そんな、愛は……そんなものではないの!」
 それを拒絶するように、再度羽根の乱舞を繰り出そうとするアナスタシア。

「これ以上は、無駄だな」
 その一瞬を、稲見之守の【妖狐の檻】が捉える。
「くっ」
 呪縛にて身動きが取れなくなったアナスタシアに稲見之守が迫る。
「熱いも寒いもなく、愛を解くことも語ることもない孤独の闇が広がる虚無の夢へと招待してやろう」
 そうして檻の中へアナスタシアを取り込む。彼女の、骸魂のみを喰らうために。
(骸魂憑きでなければ、身魂欠片残らず滅ぼしてやっているところだ)
 檻の中で、骸魂だけがダメージを受けていく。
(……ヒトとヒトならざる者の恋路なんざ昔から結ばれぬものと決まっている。唯一、約定が結ばれたのみよ)
 悲しげな稲見之守と何とも言えない表情の遙の瞳が、檻の中のアナスタシアを見つめていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

樫倉・巽
熱とは己の存在そのもの
熱を感じるのは己の熱に他ならない
お前がそれを感じないというなら
お前からそれが失われていると言うこと

お前が信じていないから
信じることを失っているからだ

ならば、その冷たさだけを斬ろう

俺は自分の道を信じている
剣の道を志すままに生き
そして死ぬだろう

お前は何を信じているのか
愛がないというならそれは見るものに愛が足りないからだ
信じると言うことは断罪することではない
それを願い、それを大切に生きることだ

俺はお前を生かすために斬ろう

相手の生き方を受け止めながら
攻撃を受けるのにも構わずに覚悟を持って前に進む
裂帛の気合いを持って上段から剣を振り下ろす
これが俺の道
熱を持ってそれを伝えるため




 その一撃は強烈ながら、『『絆の試練』アナスタシア』の消滅まで至らず。どうにか猟兵の攻撃から脱出したアナスタシアが空へ飛来しようとした瞬間、樫倉・巽(雪下の志・f04347)が斬りかかる。
「くぅっ……!」
 その一撃をかわし、しかし態勢を崩して落下するアナスタシア。

 抜き身の『砂塵渡り』を手に、巽がゆっくりとアナスタシアに歩み寄る。
「熱とは己の存在そのもの。熱を感じるのは己の熱に他ならない」
 一足の間合いを保ちながら、構えず、されど油断なく。巽が言葉を突きつける。
「お前がそれを感じないというなら……お前からそれが失われていると言うこと」
 他人の熱を感じられない世界であろうと、己だけは感じ取れるはずだ。そうでないのなら、それはアナスタシア自身が信じていないからだ。信じることを失っているからだ。
 そして、それがアナスタシアのオブリビオンとしても根源ならば。
「ならば、その冷たさだけを斬ろう」
「そんな身勝手、いらないわ!」
 巽が刀を構える前に、アナスタシアが動く。
「愛とは、感じるものではないの。在るものなの。あなたにそれが理解できて?」
 その口から滔々と語られる愛の説法。それは巽が感じている彼に対する愛情に、熱に疑いの感情を抱かせる。

 だが。

 疑念の心が浮かび上がろうとも、巽の芯にあるのは、剣の道に殉ずる気概。
(俺は自分の道を信じている……剣の道を志すままに生き、そして死ぬだろう)
 どのような過程を辿るかはまだわからずとも。

 ならば、何を迷うことがあろうか。

「くっ……!」
 動じない巽を見て、再び距離を取ろうとするアナスタシア。
 それに追いすがるようにして、巽が一気に距離を詰める。
「お前は何を信じているのか」
 振るわれる刃。浅い、しかし、確実にアナスタシアを裂く。
「愛がないというならそれは見るものに愛が足りないからだ」
「黙れ!」
 再度振るわれる巽の砂塵渡りを、体を回転させながらかわし、そのまま翼を叩き付けるアナスタシア。
「信じると言うことは断罪することではない。それを願い、それを大切に生きることだ」
 その翼の一撃を刀で受け止める。それはさながらアナスタシアの存在を受け止めるかのごとく。そのまま刀の軸をずらし、アナスタシアをいなし。
 巽は流れるように巽は構える。

 ――俺はお前を生かすために斬ろう。

 上段の構えから裂帛の気合いを以て放たれるそれは【鉄別ち】。鉄をも断ち切る研ぎ澄まされた一撃にして。
「これが俺の道」
 振るわれた一撃が巽の『熱』を抱いて、アナスタシアを斬り裂く。それは彼の熱を、信念を伝える、覚悟を決め相手の魂ごと斬る必殺の一撃であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リヴィアン・フォンテーヌ
骸魂に飲まれたとはいえ、やっていいことと悪いことがあります
まぁオブリビオンになっている今の貴女になにを言っても無駄でしょうね
だから、骸魂から解放されたら、きちんと反省してください

私に向けられる愛を奪いますか。いえ、そもそもそのような相手はいないのですが?
なにせ私はまだ聖剣を託すべき英雄を見出していませんし、異性同性問わず誰かと交際したこともないです。同族たる湖の乙女達とも、もうずっと会っていませんし

貴女を歪ませるその骸魂、私が聖剣で断ち切りましょう
双聖剣を抜き放ち、真名を解放します!【泉に眠る無辜の双剣(イリジスタード・イリティルド)】ぉぉぉぉぉ!!
ビームの代わりに水を圧出した刃を放ちます!




「うあぁぁぁぁっ!!」
 獣のように叫びをあげて、猟兵の攻撃から逃れる『『絆の試練』アナスタシア』。その身を喰われ、斬り裂かれ。決してダメージは小さくない。自慢の翼も血に汚れて、しかし、まだその目は死んでいない。
「まだ、試練、は……私が、続け、る……!」
「骸魂に飲まれたとはいえ、やっていいことと悪いことがあります」
「……っ」
 この場を逃げ去ろうとするアナスタシア。彼女に降る声はリヴィアン・フォンテーヌ(湖の乙女・f28102)のもの。
「まぁ、オブリビオンになっている今の貴女になにを言っても無駄でしょうね」
 アナスタシアの前に立ち塞がったリヴィアンは油断なく構え、告げる。
「だから、骸魂から解放されたら、きちんと反省してください」
 語りかける言葉はこれまで、と、リヴィアンは『双聖剣イリジスタード・イリティルド』を抜き放つのであった!

「ちっ……!」
 あからさまな舌打ち。もはや天使の様相などなく、ただ愛に試練を与える(堕落させる)存在と化したアナスタシアは、リヴィアンに愛を騙る。
「ふっ。それは貴女が信じる愛の形なのかしら? 今の姿を愛する者に見せても戸惑わないと?」
 それはアナスタシアの試練にして、リヴィアンに向けられている愛を奪う術……なのだが。
「いえ、そもそもそのような相手はいないのですが?」
「ええいっ面倒なっ!」
 リヴィアンの言葉に、完全に余裕をなくしたアナスタシアが叫ぶ。
 なにせ、リヴィアン。泉の精霊としてまだ聖剣を託すべき英雄を見出していない。さらにはプライベートでは異性同性問わず誰かと交際したこともないという。ついでに言うと同族たる湖の乙女たちとももうずっと会っていない。まあ、強いて言うなら猟兵として滞在している旅団というか旅館というか、その辺りの交友だろうけど、それもこの場で効力を発揮するほどでは無さげである。
 そんなわけでびっくりするくらい、効力が薄いアナスタシアの攻撃。それをゆるりと振り払うようにして、湖の乙女は未だ一度も人の手に渡ったことない双剣の聖剣を構える。
「くっ……!」
 リヴィアンの様子にたじろぐアナスタシア。もはやここは逃げの一手しかない。恥も外聞も捨てて、背を向けて飛び立とうするアナスタシア。
 対して、リヴィアンがその背に叩き付けるは、真名を解放した聖剣の真なる力!
「貴女を歪ませるその骸魂、私が聖剣で断ち切りましょう!
【泉に眠る無辜の双剣(イリジスタード・イリティルド)】ぉぉぉぉぉ!!」
 振るわれた双剣から水を圧縮した刃が放たれる。ビームの代わりに。そう、由緒正しい聖剣はビームが出る。いやそんなこたあない……よね?

 とにかく。双聖剣の水撃による強烈な一撃がアナスタシアに直撃、そのまま大地を破壊する勢いでぶっ飛ばすのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

化野・那由他
よく分からないのですよね……熱とか愛とか。
何しろ思い出せませんから……。

ああ、でも最近、思い出せたこともあるのです。
この書(わたし)には、剣の奥義も記されていたようで。

念動力で、浮遊させた奇書の頁を触れずに捲り、
[呪詛]を放つ妖刀『化骸』を抜刀。

『化野無常流、弐ノ式――舞頚』

妖刀を複製。
第六感で動きを察知し、[念動力]と[武器受け]にて羽根を払います。
複数の刀を操り[範囲攻撃]を。
アナスタシアにも妖刀を飛ばして斬り裂きましょう。

もし攻撃を受けたら朧気な記憶が浮かぶかも知れません。
怪火舞う夜の蓮台野で誰かの屍を抱いている、というような。
……思い出したいような、怖いような。

※アドリブ大歓迎です。




「はぁっ、はぁっ、まだ……まだ!」
 満身創痍になりながらも『『絆の試練』アナスタシア』が叫ぶ。まだ愛の果ては、試練は終わらない、と。血と泥に塗れた翼を広げ、飛び上がろうとする。アナスタシアが空を見上げる、その視線を断ち切るかのように一筋の風の刃が空を斬り裂く。
「よく分からないのですよね……熱とか愛とか」
 ブーツが乾いた大地を踏み締める音がして。アナスタシアが振り返る先には化野・那由他(書物のヤドリガミ・f01201)がいた。
「何しろ思い出せませんから……」
 儚げな雰囲気を纏う美女。記憶の代わりに、と手に携えるのは那由他の本体たる奇書。記憶喪失、その証拠に彼女の奇書(ほん)はいまだ空白の頁が絶えない。
「ふ、ふふふ、あははははっ!」
 その様子を見て、壊れたように笑い出すアナスタシア。これまでに相対した猟兵のように、愛を、熱を知らないと言うのなら。
「では私が教えてあげましょう! 愛とは! 熱とは! どういうものかを!」
 嬉々として。慈愛と歓喜の感情を込めて翼を開く。そこより放たれるのは愛ならずとも
大切な者との様々な関わりの記憶を切り裂く羽根。

 だけど。

「ああ、でも」
 それは那由他に触れることなく、悉くが斬って捨てられる。
「!?」
「最近、思い出せたこともあるのです」
 驚愕するアナスタシアをよそに、那由他は語り続ける。それは物語を読み上げるかのように。
「この書(わたし)には、剣の奥義も記されていたようで」

 もう一度、と。

 那由他の念動力で奇書がふわりと浮かび上がる。その拍子に、風がそよいでいるかのように頁が捲られていき。示すのはとある頁。那由他が自由になった両手で抜き放つのは、
かつて数多の妖物を斬り、いまや呪詛を放つ妖刀と化した『化骸』の銘を持つ刀。
「化野無常流、弐ノ式――舞頚」
 【化野無常流 弐ノ式 舞頚】。それは那由他の記憶(ちから)。那由他の声に応じて出現するのは50を超える化骸の複製。
「ち、ぃっ!」
 その様子にアナスタシアが舌打ちをして、翼を広げる。再び、羽根の攻撃を乱舞させ、妖刀が動き出すより早く叩き落とそうと試みる。
「……」
 しかし、その動きを冷静に見定める那由他。複雑な動きをする羽根の動きすらも第六感で捉え、的確に化骸を飛ばして斬り払い、それでもかいくぐってきた羽根を念動力で弾き返す。
「愛の、邪魔をするなぁぁぁぁ!!」
 アナスタシアに残る力の全てを翼に籠めて。最後の一撃と放たれる羽根の弾幕。それらは決してアナスタシアを優勢に導くほどの力が残っていたわけではないが……羽根のひとつが那由他の頬をかすめる。
「っ!?」
 ちりちり、と。那由他の頬がひりつく。那由他の脳裏に朧げな何かが浮かぶ。

 これは……なに? 怪火舞う夜の蓮台野で誰かの屍を抱いている?

 思い出したいような、怖いような。不思議な感覚に捕われる……前に。そんな想いごとを頭を振って振り払う那由他。
「終わりにしましょう」
 那由他が手に持つ化骸を振りかざす。
 空中に浮かぶだけであった化骸たちもまたその動きに応じて切先をアナスタシアに向ける。
「……ひっ」
 つ、と。化骸を振り下ろす那由他。それに応じて化骸の複製がアナスタシアを取り囲むように、四方八方から降り注ぐ。念動力で、微妙に軌道を変えつつ、回避不可の攻撃を。
 天使がいかに羽根が壁を作ろうと、刃を阻むことなどできず。
「あ、あ、あぁぁぁあああ!!」
 妖刀の刃がアナスタシアをずたずたに斬り裂いていく。
「これにて、終幕で」
 きん、と鯉口が音を立てて。化骸を鞘に納める。それはアナスタシアに憑りついた骸魂を完全に葬り去った瞬間であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『幽世の秘湯』

POW   :    のんびりゆったり温泉に浸かる

SPD   :    温泉に浸かりながらちょいと一杯

WIZ   :    湯船が広いから泳げるかも?

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 こぉぉぉぉん……。

 ししおどしの音が静かにどこまでも響いていく。
 冬香が手配したのは、秘湯と噂高い温泉である……あれ? 隣にめっちゃ立派な旅館立ってますけど?
「……あれ?」
 あまりにも立派な感じに、当の冬香も目を丸くする次第。まぁ荷物置いたり、まったり部屋でごろごろしたり、美味しいご飯が食べられるとするなら、それも悪くはない。
 旅館はあるものの、騒がしい雰囲気はなく、むしろ静寂。この雰囲気こそが秘湯の所以、だったり?

 お目当ての温泉は露天風呂。というか、不思議なことに空から温泉が小さな滝のように降り注いでいる。湯船はさながら滝壺のごとく。これなら泳いだり潜ったりもできそうだ。

 ま、何をするにしても。この温泉行は依頼関係なくのんびりまったりする憩いの時間。
「恋とか愛とかもいいけど、やっぱり温かくなくっちゃね」
 そう言って冬香はあなたたちを旅館へ案内するのであった。

※めちゃくちゃ秘湯っぽい、温泉旅館です。お客は猟兵以外いないようです。スタッフは皆妖怪さんたちです。
※温泉旅館で出来ることは基本的にOKです(宴会とか卓球とか)(公序良俗は守ってください)
※温泉は、男湯、女湯の2つ。真ん中には衝立(あらゆる力、効果を衝立の位置で遮断、弾き返す)があります。
混浴ありません。心の性別で選んでください。
※温泉内は基本的に裸の付き合いとなります。まぁ大事なところは湯気とかで隠れてますし、そもそも肢体の詳細は描写しません。もちろんR18な描写もありません。
※裸であるため、同時採用は同行者、またはグループのみとさせていただきます。その関係性の中でしたら、覗きやトラブルは発生し得ます。
※誰も相手いないけど覗きに憧れる方、または覗こうとしてぶっ飛ばされたい方は冬香をご指名ください。もれなく蹴り飛ばします。一応、胸の谷間くらいはサービスします。
御狐・稲見之守
あらゆる力を跳ね除ける衝立か。ふふ、面白い(素っ裸で仁王立ちしながら)

手始めに狐火をぶつけてみるが……まあ効かんよな。お次は刀で切りつけてみるが(何処から取り出したかは考えるな)やはり斬れぬ。
[UC呪力解放]、それでは渾身の狐火をお見舞いしてやろう。神さま舐めるなよ――なん、だと……?(全く無傷の衝立)

こうなれば温泉ごとふっ飛ばしてでもあの衝立をあっこら離せなにをするきさまー!(冬香に咎人封じされる)



●プロローグ・衝立
 こぉぉぉぉん……。

 ししおどしの音が湯船に響いていく。空から降り注ぐ温泉が2条。音を立てながら真下にある滝壺に流れ込むお湯が湯気を周辺に漂わせて。その湯気を遮るかのごとく、男湯、女湯の2つの滝壺の間には衝立が存在していた。
 見た目、とっても普通なのだが、色んな意味で防護柵の意味を果たしているこの衝立はあらゆる力、効果をその位置で遮断、弾き返すという。

 今、その衝立に挑まんと、ひとりの猟兵が立ちあがった!

 待って、なんでそっちへ行ったの?!

●激戦・衝立
「あらゆる力を跳ね除ける衝立か。ふふ、面白い」
 そんなわけで、御狐・稲見之守(モノノ怪神・f00307)さんは若干の狐パワーを解放しつつ、素っ裸で仁王立ちしておりました。その艶めかしい肢体はばっちり湯気が隠しています。水着コンのイラストで我慢しような。

 ともあれ、稲見之守さんやる気満々である。
「ふ……」
 まずは手始めに、と片手を振る。その動きに合わせて現れる狐火。振り下ろした手に応じて、狐火がどどどどっと衝立に激突する。
「……まあ効かんよな」
 無傷の衝立。
 動じることも無く、稲見之守がすらりと抜き放つのは妖刀『魂喰刀』(何処から取り出したのかは、ヒ・ミ・ツ)。目にもとまらぬ速さで斬りつけるが。
「やはり斬れぬ、か……」
 これもまた。斬った感触が確かに手に伝わってきたのに、衝立はのほほんとそこに立ったままである。
「それでは……渾身の狐火をお見舞いしてやろう」
 ユーベルコード【呪力解放】全力発動! 稲見之守の超強化による狐火が轟音を立てて、衝立に降り注ぐ。それはまるで狐火の豪雨のごとく。狐火が衝突して弾け、そこに生み出された火の海と煙が衝立を包み込む!
「神さま舐めるなよ――なん、だと……?」
 火と煙が晴れた後、愕然とする稲見之守。そこには全くの無傷のまま、衝立が在ったのだ……!

 ぷるぷる震える稲見之守。神さま、もはやこれは看過できない事態である。
「ええい、こうなれば温泉ごとふっ飛ばしてでもあの衝立を」
「はいはーい。そこまでにして温泉に入りましょうねー」
「あっこら離せなにをするきさまー!」
 両手をあげて、ごごごご、という効果音と共に、全力全開をぶつけようとした稲見之守さん。それを制止したのは冬香の【咎力封じ】であった。狐モードでしゅたっと背後を取った冬香の不意打ちに、なす術も無くユーベルコードを封じられた稲見之守さんはそのまま湯船に連行されたのでした、まる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

樫倉・巽
そこにあるものを食べ
そこにあるものを飲む
訪れた先の有り方を認める
己が世の全てではない
そこに立つとはそう言うこと

斬り合いが終わったのならこの世界を楽しむことにしよう
静かな場所は心が落ち着く
騒がしいのは少々苦手だからな

静かに湯に浸かりながら酒を呑む
月明かりの下
静かにあたりを眺めながら

熱とは命と遺志の力
俺はそう思っている
焼かれるような熱情のまま
剣の道を進みここまで来たが
世の中は広い
驚くような世界ばかりだ
退屈している暇はなさそうだな
この道のどこかで倒れるまでは
楽しくやれそうだ

宿の主に礼を言って
宿を去ることにしよう
良い湯だった




 こぉぉぉぉん……。

 ししおどしの音が響く温泉の湯船に浸かっているのは樫倉・巽(雪下の志・f04347)であった。現状、男湯を占有状態である。
(斬り合いが終わったのならこの世界を楽しむことにしよう)
 そう考えながらここに訪れたのである。
 静かな場所は心が落ち着く。騒がしいのは少々苦手だ。この場はゆったり過ごすには最適だろう。

 空から落ちてくる湯を何気なく見上げて、そのまま目を閉じる巽。

 ――そこにあるものを食べ
 ――そこにあるものを飲む
 ――訪れた先の有り方を認める

 己が世の全てではない。ゆえに、そこに、世界に立つとはそう言うこと、だと。世にも不思議な空から湯が降り注ぐ温泉を認めながら、巽は『在り方』を今一度心に結ぶ。

 さて。湯に浸かるばかりが温泉の楽しみ方では無かろう。
 巽のすぐ側、湯の上に浮いているお盆には、酒の徳利とお猪口がありまして。
「……」
 無言。否、言葉など要らず。静かに湯に浸かりながら酒を呑む巽。
 月明かりの下。静寂を友として、辺りを眺めながら。

 アナスタシアに憑いていた骸魂を倒したことで世界には熱が戻ってきた。温泉の温度も、酒の冷たさも、生きる糧の証と言えよう。

(熱とは命と遺志の力)
 巽はそう思っている。
 焼かれるような熱情のまま、剣の道を進み。ここまで来たがなお世の中は広い。
(驚くような世界ばかりだ)
 驚嘆から来るのは諦めでは無く、希望。あるいは期待。
(退屈している暇はなさそうだな)
 まだ、道は先に続いているらしい。

 ――この道のどこかで倒れるまでは……楽しくやれそうだ。

 温泉から宿へ戻り、部屋の荷物を手に巽は旅館の待合へ。
「おお、お客さん。もう発たれるんで?」
「ああ、良い湯だった」
 旅館の主に礼を言って、巽は宿を後にする。
 この先に続くのも剣の道。何と出会うのかは、未来のみが知っている。

大成功 🔵​🔵​🔵​

春霞・遙
はぁ、病院の仕事が大変なのはいつものことだけれど、最近猟兵業でも色々心にクるものがあったから久々に一息つけるというのはとてもありがたい。
幻であっても、大切な光を、自分の指示で、目の前で無残に引き裂かれる様は、いくらそれに対する感情を喰われても、その事実を思い出すたびに苦しさが溢れてくる。

……幽世の温泉はどんなところでしょうね。
秘境の秘湯と同じような感じかな。それとも老舗旅館の外風呂のようなところかな。
いや、空から滝のようにお湯が降ってくるのは日本にはないか。

泳いでもいいというならぼんやりお湯に浮いて空を見ながら水の中の音でも聞いています。
嫌なことを思い出してもお湯の気持ちよさで忘れられるかな。




 こぉぉぉぉん……。

 ししおどしの音が温泉の湯船に響く。
 今、女湯に入っているのは春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)のみ。ただいま独り占め中というわけだ。
「はぁ、久々に一息つけるというのはとてもありがたい」
 思わず声が出るほどに。
 病院の仕事が大変なのはいつものことだけれど。
(最近猟兵業でも色々心にクるものがあったから)
 ちりちりと、心を焦がす……何か。

 大切な光を、自分の指示で、目の前で無残に引き裂かれる様。
 それは、幻であっても、いくらそれに対する感情を喰われても。
 その事実を思い出すたびに苦しさが溢れてくる。
 まるでじわりと毒が蝕むように。

 振り払うように、あるいはそこから逃れるように。この温泉の様子を見渡す遙。
(……幽世の温泉はどんなところでしょうね)
 そんなことを思いながら訪れた遙であるが、いざ来てみたここはなかなかにどう表現していいやら。
 人気の無さや静けさは秘境の秘湯と同じような感覚で。しかし、温泉の外というか周辺には旅館がある。かといって老舗旅館の外風呂のような感じかと言えば、ちょっと離れているので、絶妙に幽世感がある。
(……いや)
 そこまで考えて、遙は空を見上げた。
「空から滝のようにお湯が降ってくるのは日本にはないか」
 そこはとっても幽世感でした。

 こぉぉぉぉん……。

 ししおどしの音が響く。
「……」
 そういえば、泳いでもいいと言われていたことを思い出す遙。ぼんやりとお湯の浮力に任せて、ぷかーっと浮いてみる。
 視界には空とそこから流れ落ちるお湯の滝。そして耳に聞こえてくるのは水飛沫の音と……溢れるお湯がいずこかへ流れ落ちる音。
(……お湯の気持ちよさで忘れられるかな)
 嫌なことを思い出しても……溢れるお湯のように。想いも『沸き出てくる』というのなら、きっと『流れていく』に違いない。
 滞って毒となるのなら、流れていくのはきっと悪いことではない。それがたぶん癒しというものだろうから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リヴィアン・フォンテーヌ
アドリブ等歓迎です

SISIODOSI、ONSEN。これがジャパニーズリョカーンですか
では、折角ですので露天風呂をいただきましょう
……あれ?泉の精霊が露天風呂?
水かお湯かぐらいの差しかないような?いや、流石に私の泉はこんな小さくはないですが!
いやいや、そもそも湖の乙女が温泉に入るというのはどうなのでしょうか?
秘境の湖、私の場合は泉ですが……に浸かっていてこそでしょう?
それを温泉……所属としての属性的に大丈夫なのでしょうか?
などとぐるぐる考えていたらのぼせて倒れて、様子を見に来たスタッフの皆さんに慌てて救助されてしました、不覚です
団扇で仰がれたりして涼んだ後は、お食事で気分転換しましょう




 こぉぉぉぉん……。

 ししおどしの音が温泉の湯船に響く。

「SISIODOSI、ONSEN。なるほど、これがジャパニーズリョカーンですか」
 リヴィアン・フォンテーヌ(湖の乙女・f28102)はいたく感嘆した様子で頷く。
「では、折角ですので露天風呂をいただきましょう」
 これも良い経験と、服を脱ぎ、温泉となっている滝壺へ足を入れようとして、ふと気づく。
「……あれ? 泉の精霊が露天風呂?」
 その事実に。仮に第三者が今のリヴィアンを見ていた(イヤラシイ意図じゃなくて!)としよう。湯気が無かったら、泉の精霊が滝壺っていう泉の精霊がいそうな場所に裸で入ろうとしている光景になる。
 つまり!
「水かお湯かぐらいの差しかないような? いや、流石に私の泉はこんな小さくはないですが!」
 さりげなく泉自慢するのはやめていただきたい。西洋と日本の広さの違いを舐めてはいけない。

(いやいや、そもそも湖の乙女が温泉に入るというのはどうなのでしょうか?)
 しかし、気付いてはいけない深淵(?)に気付いてしまった以上、リヴィアンはそこから逃れられない!
 まあ確かに? 慰労というよりは帰省に近い感じになるかもしれない。リラックスはできそうだが。
(秘境の湖、私の場合は泉ですが……に浸かっていてこそでしょう?)
 温泉に浸かることが自身の存在意義を揺らがせる事態に発展するリヴィアンさん。
(それを温泉……所属としての属性的に大丈夫なのでしょうか?)
 もはや、泉の乙女としては、今の状況がセーフなのかアウトなのか、そこから判定しないといけない! というかこの温泉の精霊的所有者は誰なのか、そこから!

 そんなわけで足湯の状態でぐるぐるぐる考えていたら、ぱたっと倒れました。

 診断:のぼせと知恵熱です。

「ふ、不覚です……」
 旅館の部屋で目を覚ましたリヴィアンは、救助してくれたスタッフさんに団扇で仰がれながらそう呻いたという。
(涼んだ後は、お食事で気分転換しましょう)
 気を取り直して、そう思うことにするリヴィアンでした。





●キャラクター
リヴィアン・フォンテーヌ(湖の乙女・f28102)

●プレイング
アドリブ等歓迎です

SISIODOSI、ONSEN。これがジャパニーズリョカーンですか
では、折角ですので露天風呂をいただきましょう
……あれ?泉の精霊が露天風呂?
水かお湯かぐらいの差しかないような?いや、流石に私の泉はこんな小さくはないですが!
いやいや、そもそも湖の乙女が温泉に入るというのはどうなのでしょうか?
秘境の湖、私の場合は泉ですが……に浸かっていてこそでしょう?
それを温泉……所属としての属性的に大丈夫なのでしょうか?
などとぐるぐる考えていたらのぼせて倒れて、様子を見に来たスタッフの皆さんに慌てて救助されてしました、不覚です
団扇で仰がれたりして涼んだ後は、お食事で気分転換しましょう

大成功 🔵​🔵​🔵​

化野・那由他
世界が元に戻ったようで何よりです。
どうしてか、この世界には親近感が湧くのですよね……。

温泉を味わってほっこりした様子で館内を歩き、卓球台を見つけます。
面白そうですね……ちょっと遊んでみましょうか。
どなたか、よろしければお相手になって下さいませんか?
(ペンホルダーのラケットを構えて)

最初はラケットにも当たらず盛大に空振りしたり、
あさっての方向に跳んだ球が妖怪の方々に命中するでしょうけど……
「こ、これはとんだ失礼を……」
あるいは自分の眉間に当たって、のけぞるかも知れません。
「そーれっ!」
スマッーシュ!
ちょっとテンションが高いのは、温泉に入りながら飲んだお酒のせいですね、きっと。

アドリブ大歓迎です!




 こぉぉぉぉん……。

 ししおどしの音が旅館に響く。

 温泉を堪能して、湯上りに髪を結いあげた浴衣姿で旅館の廊下を歩く化野・那由他(書物のヤドリガミ・f01201)。旅館の内庭がとても美しい。
(世界が元に戻ったようで何よりです)
 程良く流れてくる風にすら音頭を感じる。この世界は無事熱を取り戻したようだ。
(どうしてか、この世界には親近感が湧くのですよね……)
 ヤドリガミ……というよりは、彼女の本体たる奇書の世界に近しいのだろうか。そんなことを考えながら、ほっこりした様子で館内を歩いていると、卓球台を見つける那由他。
「面白そうですね……ちょっと遊んでみましょうか」
「あら、那由他さん」
 卓球台に近づいたところへ、タイミングよく通りがかった冬香。その声に振り向いた那由他は冬香に声をかける。
「お相手になって下さいませんか?」
「いいわよ。下手だけど怒らないでね」
 ペンホルダーのラケットを構える那由他に、シェイクハンドのラケットを構える冬香なのでした。

 那由他サーブで開始。
「いきます!」
 ボールを放り投げ、ラケットを振る那由他。

 ぶぅんっ。こんこんこん(地面にボールが転がる音)

「……」
「……」
 両者動かず。
「見なかったことにしましょう」
「ありがとう、ございます……」
 そっと構えを解く冬香に、ボールを拾い上げる那由他。

 改めて、ゲーム開始である!
「とおっ!」

 かこん。どがっ(たまたま見ていた妖怪に直撃する音)

 今度はすごい勢いのライナー性ホームラン級が旅館内を駆け抜けていった。
「ごはぁっ?!」
「こ、これはとんだ失礼を……」
 あわあわしながらぴくぴくしている妖怪に駆け寄る那由他。きっとボールが壁に埋まっていたりしたら魂が抜けかけるんじゃなかろうか。
「えーと……そうね。『面白そう』としか言ってなかったわね!」
 色々察した冬香さんはより気合を入れて構える。これは、自分も含めて色んな意味で気が抜けないバトルになってきたぜ!

 そんなこんながありながら、なんとかラリーできるようになってきた那由他と冬香。そうなってくると油断するのが常である。
 冬香の打ったボールがすごい勢いをつけつつ、浮き上がる。というか那由他に向かう。
「はうっ?!」
 自分の眉間にボールが直撃してのけぞる那由他。
「ふ、私は下手って宣言したわよごめんなさいほんとうにごめんなさい」
 それを見て、土下座する冬香。
「い、いえ。私ももう既に何回か冬香にぶつけてますし」
 そう、何故か相手のラケットに当たらなかった時は、高確率で誰かに直撃していたのだ。これなんてデス卓球ゲーム? 温泉卓球とは。

 それでも楽しいものは楽しくて。
「そーれっ!」
 程良く浮き上がった冬香の返しを、那由他が華麗にスマッーシュ!!
「あんっ!」
 台の上を跳ね、完璧に抜かれた冬香が悲鳴を上げる。
「やったー!」
 ぴょんぴょんと飛び上がる那由他を見て、ちょっと意外そうに首を傾げる冬香。
「ちょっとテンションが高いのは、温泉に入りながら飲んだお酒のせいですね、きっと」
「え、そんなに動いて大丈夫なの!?」
 那由他の天然さんに、冬香が大慌てするのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月24日


挿絵イラスト