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紫陽花の通い路

#サクラミラージュ

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#サクラミラージュ


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 仄かに灯ったラムプと雨露で彩られた、艶やかに煌めき咲く秘密の夜の花小径。
 それはこの季節だけ花咲く通い路――紫陽花トンネル。
 そして、ラムプでライトアップされた良い香り漂う秘密の夜の隧道を抜けて。
 幻朧桜と紫陽花で飾られたあじさい坂を、ゆるり上り切ったそこに佇むのは。
 紫陽花ラムプの優しい光が数多満ちた、レトロ感抜群の古民家カフェー。
 雰囲気の良い紫陽花色の光が灯るレトロカフェーの窓の外へと目を遣れば。
 夜の闇に広がるのは、水色の花手毬が作り出す青空の様な紫陽花の景色。
 そして――雨の日だけの、特別大サアビス。
 まんまる紫陽花を思わせる小振りな3色アイスクリンが、幾つでも付け放題。
 ただのパンケーキや焼きトースト、パフェーや餡蜜やクリームソーダ等も。
 あっという間に、紫陽花メニューに早変わり。
 この時期は、雨の日こそお出掛け日和。
 さぁ、雨上がりの紫陽花路で――夜の花散歩と洒落込もうか。

 けれど……気を付けて。
 うっかり、様々な境が曖昧な四季の花の庭園に迷い込んでしまったら。
 彼岸と此岸の光景に惑っている間に。
 隠れている花盗人に――心の花を、摘み取られてしまうかもしれないから。

●宵彩紫陽花
「普段ならば外出も億劫な雨の日だが、この時期は雨の日こそ出かけたい。そしてツル性の紫陽花もあるとは知らなかったな」
 筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)は集まった皆に、そう雅な微笑みを向けた後。見えた予知を語り始める。
「紫陽花が美しく咲き誇る庭園の奥に、影朧を匿っている民間人がいることが分かった。影朧は不安定なオブリビオンの為、ただちに危害を与えるとは限らない。だが間違いなくその存在はオブリビオン、その行動は放置すれば、いずれ世界の崩壊に繋がる。故に、影朧の居場所を見つけ出し、還るべき場所へと送って欲しい」
 今回、予知が視えた場所は、サクラミラージュにある紫陽花庭園と古民家カフェー。
 つる性の紫陽花と両脇に咲き誇る紫陽花が美しい、紫陽花トンネルを抜けて。
 色とりどりの紫陽花が咲き誇る、あじさい坂のを上り切った先に、雰囲気の良い古民家カフェーがあるというが。
 そのカフェーのオーナーがどうやら、影朧を匿っているらしい。
 けれど、詳しい居場所などは分かっていないというので。
「皆にはまず、紫陽花を楽しむ客として、夜の紫陽花庭園やカフェーへと赴いて欲しい」
 丁度この時期の庭園は、紫陽花が満開の見頃を迎える。
 その為、昼は人手も人の目も多く、オーナーも接客で忙しい為に情報収集どころではなさそうなので。
 今回は、夜の庭園やカフェーに赴くことになる。
 しとしとと降っていた小雨も日中のうちに上がり、灯されたラムプでライトアップされた夜の紫陽花の風景は、この世界特有の幻朧桜と相まって美しく幻想的で。依頼として赴くものの、存分にこの季節だけしか楽しめないひとときを過ごせるだろう。

「まず、この庭園の見所は、珍しい『紫陽花トンネル』だという。トンネルには良い香りがするというツル性の紫陽花が花を付け、その両脇には青や紅や紫や白……様々な色合いの紫陽花が咲き誇っているという。降っていた小雨も赴いた頃には止み、普通に歩いていれば濡れる心配はないようだが、庭園で番傘を貸してくれるというので。ラムプ灯る紫陽花の隧道を、傘の花咲かせながら歩くのも風情あって良いかもしれない」
 何処を見回しても紫陽花に飾られた秘密の紫陽花小径。
 傘を差して二人程度横に並んで歩ける程度の広さのトンネルは、今の時期、ラムプの光でライトアップされているという。
 雨粒に濡れた艶やかな夜の紫陽花を、仄かであたたかなラムプの光が数多照らすその様は、この時期ならではのもの。
「そしてトンネルを抜けた先は、カフェーまでゆるく長い坂となっているようだが。その両脇には、様々な彩の紫陽花が満開だという」
 カフェーへと導く路以外、見渡すその風景を埋め尽くすのは、満開に咲く花々の彩。
 密かに話題になっているのは、見つければ幸せが訪れるという、ハート型の紫陽花。
 紫陽花だけでなく、サクラミラージュならではな幻朧桜も勿論咲き誇っているので。
 見上げれば桜、地に咲くは紫陽花……そんなレアな風景を楽しみ歩くのも良いだろう。
「そして坂を上り切った丘の上に、レトロな古民家カフェーがあるが。その店の店主が今回、影朧を匿っている人物なのだという。店主は、春江という名の、夫や息子に先立たれた50代の女性だ。どうやら息子に似た影朧を、カフェーの近くの何処かに匿っているという。けれど詳細な場所は分からなかったため、カフェーの客として彼女と接触して情報を掴んで欲しい」
 まるで紫陽花のような、まんまる手毬ラムプが沢山灯されたレトロな古民家カフェー。
 その窓の外から見えるラムプ照る景色は、空色の紫陽花が一面咲き誇る絶景だという。
 そしてカフェーのメニューは、パンケーキや焼きサンドやナポリタン等の軽食から、パフェーや餡蜜やクリームソーダやケーキセットのデザート等、一般的なものが取り揃えられているようだが。
 この時期限定で、雨の降った日だけの、とびきりのサアビスがあるようだ。
 それは――紫陽花を思わせるまんまる3色アイスクリン。
 ピンク色のイチゴに、紫色のグレープ、青いアイスクリンはソーダ味。
 そんな小振りでまんまるな紫陽花のようなアイスクリンを、好きな味を好きなだけ、付けてくれるのだという。
 カフェーで何か一品でもオーダーすれば受けられるサアビスだというので、試しに頼んでみるのも良いだろう。
 ただし、欲張りすぎて残すのは勿論厳禁。
 おなかと相談しつつ、カフェーのメニューを紫陽花仕様にして楽しんで欲しい。
 成人しているのならば、カクテルやビールなどの各種酒類も多少置いてあるようだ。アイスクリンもさっぱり爽やかな味わい故に、甘い物が苦手でも大丈夫。
 また、ハンドメイドが好きな店主にお願いすれば、ネックレスやチャームに出来るステンドグラスの紫陽花も作れるのだという。
 あまり目立つ行動を取ると逆に春江に怪しまれてしまうかもしれないので。
 レトロカフェーのひとときを楽しみながら様子を探って欲しい。

「そして掴んだ影朧へと至る道は、影朧が作り出した幻想の庭園の風景が広がっているようだ」
 詳細は分からないが……その幻影の庭園は、様々な境が曖昧で、四季の花が入り乱れ咲いていて。その風景の中――異様な光景や常ならぬものを見たり、過去を追体験するなど、侵入者を惑わせる迷宮となっているらしい。
 そんな幻影の花々咲く庭園を抜ければ、そこには影朧の姿が在るだろう。

「匿われている影朧の討伐は勿論だが。紫陽花や桜を眺めながら、レトロカフェーで過ごす時間を楽しんで欲しい」
 清史郎は改めて、よろしく頼むと、皆に頭を下げてから。
 雨上がりの夜の世界に猟兵達を送るべく、その掌に満開桜のグリモアを咲かせる。


志稲愛海
 志稲愛海です。
 よろしくお願いします!

 ※ご連絡※ 第1章のプレイングは、6/26(金)朝8:31より受付開始します。
 それ以前に送信のものは流れる可能性があります。

 今回は、志羽MSの依頼『紫陽花の気まぐれ』とのふんわり合わせシナリオですが。
 場所も時間も異なる為、両方の依頼にご参加いただいて問題ありません。

 今回の依頼内容は以下です。時間は遅くない夜です。
 第1章:雨上がりの紫陽花路(日常)
 第2章:彼岸と此岸を分かつもの(冒険)
 第3章:花盗人(ボス戦)

 第1章では、夜の紫陽花を眺めたり、レトロカフェーで過ごしたりできます。
 紫陽花トンネルやあじさい坂を花を散歩したり。
 カフェーで、3色アイスクリンのサアビスを受けたり、メニューを楽しんだり。
 色が選べる小振りなステンドグラス紫陽花を店主に教えて貰い作ってみたり等。
 花のひとときを、ご自由にと。
 カフェーには酒類もありますが、未成年の飲酒は厳禁です。
 頼む食物飲物は、一般的なカフェーにあるお好きなものをどうぞ!
 情報はこの場を訪れるだけで自然と入ってきますので。
 情報収集のプレイングはなくても大丈夫です。
 紫陽花のひとときをご自由に楽しんでいただければ。

 第2章は、様々な境が曖昧な、四季の花咲き乱れる幻影の庭園を抜けて頂きます。
 その庭園では、彼岸の存在と交わったり、異様な光景に常ならぬものを見たり。
 また、己のあるいは誰かの過去を追体験する事もあるような。
 そんな異変が生じている空間となっているようです。

 第3章は、匿われている影朧との戦闘となります。

 公序良俗に反する事、他の人への迷惑行為、未成年の飲酒は厳禁です。
 第2章第3章の詳細は、前章の結果を受け、追加OPを記載します。
 締切等はMS個別ページやTwitterでお知らせします。

●お願い
 同行者がいる場合は【相手の名前(呼称可)と、fからはじまるID】又は【グループ名】のご記入お願いします。
 ご記入ない場合、相手と離れてしまうかもしれませんのでお忘れなく。

 グループ参加の人数制限はありません、お一人様~何人ででもどうぞ!
 ですが複数人の場合は失効日の関係上、同行者と送信タイミングが離れすぎていたり、ご指定の同行者が参加していない場合は返金となる可能性もあります。

 可能な限り皆様書かせていただきたく思っています。
 どうぞお気軽にご参加ください!
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第1章 日常 『雨上がりの紫陽花路』

POW   :    全てを満喫して楽しむ

SPD   :    おいしいとこどりで楽しむ

WIZ   :    ゆるりと穏やかに楽しむ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※第1章断章はありません。OPやマスターコメントをご確認ください。
 第1章のプレイングは、6/26(金)朝8:31より受付開始です。
満月・双葉
【ミカエルf21199】
カフェーでコーヒーにドバドバと砂糖を投入していた時に相席するぞと現れたのを一瞥し、子供なところを見られたと視線は紫陽花に
師匠も紫陽花見に来ていたんですか
無表情ながらも声は拗ねて、アホ毛はしょんぼりしていまう

僕はもう大人ですから…
と言いつつも此方に押しやられたミックスジュースとアイスをチラチラし、結局は食べてしまう
美味しい…から良いか、等と呟きながら

そうだ、僕一人なら無理と思って諦めたんだった…けど
師匠、ステンドグラスを作れるそうです
作ってみたいんですが、炎は爆発させたらいけないので手伝ってくれませんか…
いや、あげたい相手とかは別に居ないですけど

そうして二人で店を去る


ミカエル・アレクセイ
【双葉f01681】
紫陽花が綺麗だと聞いて気まぐれに来てみたら、カフェーの窓際でコーヒーに砂糖を大量投入しているのを見つけ、あれと相席すると店員につげてミックスジュースを注文してから双葉のところへ
いや、気にせずお前が飲みたいように飲めば良いじゃねぇかと言うも、拗ねたような声で矢張背伸びしたのかと内心で苦笑する
出されたミックスジュースとサービスのアイスは双葉の方へ押しやり
無理に大人になる必要なんざねぇよと呟いた

ステンドグラスを手伝うのはいいが、なんだあげたい相手(彼氏)でも出来たのかとからかってみる
何故かムスッとされた気がするのは何故だろう
愛弟子の頼みとあらば聞かんことないと、双葉と共に店を去る



 此処を訪れたのは、単なる気まぐれであった。
 聞いていた通り、ラムプに照らされた雨露煌めく紫陽花は綺麗で。
 その花々に導かれるまま、古民家カフェーへとやって来たミカエル・アレクセイ(山猿・f21199)であったが。
 ふとカフェーの窓際へと向けた青の瞳が捉えたのは……よく見知った、彼女の姿。
 そして、席へと案内しようとした店員にミカエルは告げる。あれと相席する、と。
 それから注文を済ませると、見つけた彼女――満月・双葉(時に紡がれた星の欠片・f01681)の元へと足を向けた。
 そんな双葉の前には、良い香りを漂わせている深い褐色の珈琲が。
 お洒落なシュガーポットを開け、双葉はカップの中へと、コーヒーシュガーをひとさじ、ふたさじ……といわず、ドバドバと投入!?
 そんなたっぷりの砂糖を珈琲へと入れていれば……耳に聞こえたのは、相席するぞ、という声。
 そして顔をふと上げ、同席した人物を見れば、見た目では分からない程度にぱっと表情を変えた双葉であったけれど。
「師匠も紫陽花見に来ていたんですか」
 すぐに視線を紫陽花へ向けながらも紡ぐ。
 見た目は無表情ながらも、その声は何処か拗ねていて。アホ毛もしょんぼりとしてしまっている。
 ……子供なところを見られた、と。
「いや、気にせずお前が飲みたいように飲めば良いじゃねぇか」
 ミカエルは双葉にそう言うも、拗ねたような彼女の声に内心で苦笑する。矢張背伸びしたのか、と。
 そんな師匠を、双葉はちらりと見上げて続ける。
「僕はもう大人ですから……」
「無理に大人になる必要なんざねぇよ」
 ミカエルはそう呟きながらも、運ばれてきたミックスジュースと紫陽花色のアイスクリンを双葉の方へと押しやって。
 大人だと言ったものの、双葉は目の前のジュースとアイスへと視線をチラチラ。
 そして結局は、ジュースを口に運び、アイスクリンもはむりと食べてしまうけれど。
 口の中に広がる甘さに、言の葉が零れ落ちる。
 ――美味しい……から良いか、って。
 それから、ミックスジュースやアイスクリンを堪能しつつも、ふと眼鏡の奥の瞳に映ったものに目を遣って。
「そうだ、僕一人なら無理と思って諦めたんだった……けど。師匠、ステンドグラスを作れるそうです」
 ――作ってみたいんですが、炎は爆発させたらいけないので手伝ってくれませんか……。
 そうお願いしてみれば。
「手伝うのはいいが、なんだあげたい相手でも出来たのか」
「いや、あげたい相手とかは別に居ないですけど」
 返ってきた師匠の言葉に、心なしかむうっとしつつも口にする。
 そんな何故かムスッとした彼女の様子に、ミカエルは何故だろうと心に思い、首を微かに傾けるも。
「愛弟子の頼みとあらば聞かんことない」
 双葉のお願いに頷いて、彼女を手伝いながらも、ステンドグラスの紫陽花作りを。
 そして、手伝い手伝われながらも、ふたつの小さなステンドグラスの紫陽花が花開いて。
 双葉とミカエルは出来上がたそれを手に、カフェーを後にする。
 訪れた時の様にひとりではなく……今度は、一緒にふたりで。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リカルド・アヴリール
ライナス(f10398)と
アドリブ歓迎

……以前、薔薇に箱詰めにされていた時
ライナスの表情は普段通りを装いながらも
どこか苦しげで、花が苦手ではないのかと不安になる
だからこそ、窓から眺めるだけでいい
カフェに行こうと言ってみたが……
あ、ああ、俺も同じものを頼めればと思う

花見?まあ、それなりには……
俺なんかの事よりも、お前は大丈夫なのか?
その、花の香りが苦手だったりしないのかと……
……大事な事は、早く言ってくれ
深々と吐き出した息は呆れではなく安堵によるもの

緑色ならば、お前の瞳の方が合うと思うが
俺も嫌いではない、寧ろ……いや、何でもない
お前が嫌じゃなければ
いつか落ち着いて、お前と花見をしたい……とは思う


ライナス・ブレイスフォード
リカルドf15138と

赤紫と緑の紫陽花を模したカクテルを頼み窓越しに紫陽花のトンネルを眺め楽しむ
リカルド、あんた花見とか好きなんだろ。外は良いのかと
以前渡した薔薇の花の世話をする様子を思い出し声を投げる…も
次いだ声には虚を突かれ相手を見遣んぜ
…薔薇は吸血鬼の弱点だからな
ま、他の花は何ともねえけど?

酒が来たらリカルドを見遣りつつ口に
この赤紫も緑も焦ったあんたやその髪に似てんしな。嫌いじゃないぜと笑み交じりの言の葉を

だから嫌じゃねえっつってんだろ
…つうかプロポーズには薔薇の花が付き物だっつうそれに応えてやる位にはあんたに付き合ってやるつもりなんだけどなとは、口にはしねえけど
…ま、梅雨が明けたら、な



 紫陽花が咲いた夜のトンネルを潜り、花々に導かれるように進んだ緩やかな坂道の先。
 カフェに行こうと言ってみたのは、リカルド・アヴリール(遂行機構・f15138)の方であった。
 ライナス・ブレイスフォード(ダンピールのグールドライバー・f10398)は訪れたカフェーでカクテルを注文しながらも、窓越しに視線を遣って。
 紫陽花トンネルを眺め楽しみながらも、ふと自分を見ているリカルドへと瞳を映す。
「リカルド、あんたは?」
「あ、ああ、俺も同じものを」
 そう答えたリカルドの瞳に宿るのは、不安の色。
 そして思い返しているのは……薔薇と共に箱詰めにされていた時の、ライナスの姿。
 花が苦手ではないのかと――そう思ってしまうほど、あの時の彼はどこか苦しげであったから。
 だからこそリカルドは思うのだった。窓から眺めるだけでいい、と。
 けれど、ライナスから次に問われたのはこんな言葉。
「リカルド、あんた花見とか好きなんだろ。外は良いのか」
 以前渡した薔薇の花の世話をするリカルドの様子を思い出し、ライナスはそう声を投げたのだけれど。
「花見? まあ、それなりには……。俺なんかの事よりも、お前は大丈夫なのか?」
 ――その、花の香りが苦手だったりしないのかと……。
 そう返ってきた声に虚を突かれ、数度瞬きつつもリカルドを見遣るライナスであったが。
 彼が何故そんなことを言うのか、思い当たる。
「……薔薇は吸血鬼の弱点だからな」
 UDCアースでは死人の棺に薔薇を入れるという習わしがある。吸血鬼にならないように。
 だからぎっしりと薔薇と共に箱詰めにされたあの時は流石に、拒否反応に悪態をつきたかったけれど。
 でもそんな状況下でさえも、リカルドの姿を見れば笑みも零れたし。
「ま、他の花は何ともねえけど?」
 そう続けて紡げば。
「……大事な事は、早く言ってくれ」
 不安そうであった眼前の瞳の色が、ふっと変化する。
 深々とリカルドが吐き出した息は呆れではなく、安堵によるもの。
 そして運ばれてきたのは、オーダーしたカクテル。
 ライナスはリカルドを見遣りつつ、その酒を――赤紫と緑の紫陽花を模したカクテルを口にして。
「この赤紫も緑も、焦ったあんたやその髪に似てんしな」
 笑み交じりの言の葉でこう続ける。
 ――嫌いじゃないぜ、と。
 そんな声に、今度はリカルドが瞳を瞬かせてから。
「緑色ならば、お前の瞳の方が合うと思うが」
 ちらりと自分を映す緑を見つめ返しながらも、続けて紡ぐ。
 ――俺も嫌いではない、寧ろ……。
 けれど……いや、何でもない、とリカルドは言葉を切ってから。
 窺う様にもう一度そっと口を開く。
「お前が嫌じゃなければ。いつか落ち着いて、お前と花見をしたい……とは思う」
「だから嫌じゃねえっつってんだろ」
 そんなリカルドに、ライナスはそう返しながらも。
 眼前の彼を見つめつつ思う……つうかあんたに付き合ってやるつもりなんだけどな、と。
 口にはしないけれど――プロポーズには薔薇の花が付き物だっていうそれに応えてやる位には、って。
 そして再び、リカルドに似た色が揺れるグラスに唇を寄せてから。
 ライナスは彼と共に夜に咲く紫陽花を眺めながら、これだけ、続けるのだった。
 ……ま、梅雨が明けたら、な、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

暁・アルト
ロザリア(f23279)ちゃんと

ここが紫陽花で有名なトコか!
めっちゃ綺麗じゃん!

って、あれ
こんなところで……
意識がない?
(彼女を紫陽花トンネルの近くのベンチへ運んで)

(最近、夢に見るあの子と被ったのかもしれない)
……あ

(起きた彼女と目が合う)
おはよ?
オレは暁・アルト!
倒れてたキミが放っておけなくて、ここまで運んできたんだぜ!
キミの名前は?

(一人にさせるのが不安で)
一緒にトンネル歩こ!
見に来たんでしょ?
ほら、ほら!

(少し強引に彼女を連れ出す)
瞳に移るは彼女の横顔
懐かしさを感じて、ドキっとした
オレとどこかで会ったことない?
その言葉を飲み込んで
紫陽花に目を移す
綺麗だね、でも
彼女の方がもっと綺麗


ロザリア・メレミュール
アルトくん(f25626)と

此処へは猟兵として
その筈が仕事漬けでふらふら

でも情報収集くらい、なら
…あ、だめ

男の子の肩から慌てて離れる
あなたが助けてくれたの?
アルト、くん
知らない子なのに馴染む名前に胸が痛い
私はロザリア・メレミュール

助けに来たのに助けられるなんて…
情けなくて縮こまって

えっ、う…うん!
強引なのに、安心するのはなんでかな?
わぁ、綺麗だね
その頃には体も楽に

彼の横顔をみつめる
朧気にも残らない、抜け落ちた記憶
それでも茨の様に心がちくりと痛む
ねぇ、私たちどこかで会ったことある?
言いかけた言葉はのみこんだ
ううん、助けてくれてありがとう

――ぽっかり空いた記憶の穴、そこにあなたはいるのかな?



 夜の闇に浮かび上がるように咲き誇る、雨露に飾られた手毬花。
「ここが紫陽花で有名なトコか! めっちゃ綺麗じゃん!」
 暁・アルト(あほの子・f25626)はそう、ぐるり巡らせる紫の瞳にも、紫陽花をいっぱいに咲かせながら。
 紫陽花のトンネルへと、足を向けようとしたけれど。
 ふと……飛び込んできた光景に瞳を瞬かせる。
 同じ時、彼と同じようにこの場へと赴いていたのは、ロザリア・メレミュール(花束・f23279)。
 ロザリアの目的は、猟兵としての依頼を成すため。
 けれどその筈が……仕事漬けで、ふらふら。
「でも情報収集くらい、なら」
 そう何とか己を奮い立たせ、前へと進まんとするけれど。
 ……あ、だめ。
 刹那、ぐるりと廻る紫陽花の風景。
「って、あれ、こんなところで……意識がない?」
 そんな倒れてしまったロザリアを見つけたアルトは、彼女の元へと駆け寄って。
 そっとその身を、紫陽花トンネルの近くのベンチへと運ぶ。
 それから頬に掛かった月光を束ねた髪を優しく払ってあげながらも、改めて彼女の顔を見つめてみれば。
 何故か心に生じる思い。
 ――最近、夢に見るあの子と被ったのかもしれない、って。
 そんなこと思っていたら……薄っすらと開かれる薔薇色の瞳。
 そして、ぱちりと目が合えば。
「……あ」
「あなたが助けてくれたの?」
 ロザリアはいつの間にか借りていた彼の肩から慌てて離れつつも訊ねて。
 もう一度、隣のアルトを見れば、再び合う視線。
 それから、おはよ? って。そう目覚めた彼女に笑んでから、アルトは自分の名を告げる。
「オレは暁・アルト! 倒れてたキミが放っておけなくて、ここまで運んできたんだぜ!」
「アルト、くん」
 見上げたその顔は、知らない子のもの……の、はずなのに。
 何故だか、響くその名前はしっくりと馴染んで――胸が痛い。
 そして今度は、名乗る番。
「キミの名前は?」
「私はロザリア・メレミュール」
 けれどふと、ロザリアは俯いて。
(「助けに来たのに助けられるなんて……」)
 しゅんと、情けなくて縮こまってしまうけれど。
「一緒にトンネル歩こ! 見に来たんでしょ?」
 ……ほら、ほら!
 そう明るい声に導かれるように、再び視線を上げて。
「えっ、う……うん!」
 薔薇委の色の瞳をぱちくりさせながらも、思わずこくりと頷くロザリア。
 倒れてしまっていたそんな彼女を、アルトは一人にさせるのが不安だったから。
 少し強引に彼女を連れ出し、ふたりで紫陽花トンネルへ。
(「強引なのに、安心するのはなんでかな?」)
 ロザリアはそう不思議と感じながらも、彼と一緒にトンネルを歩いて。
「わぁ、綺麗だね」
 紫陽花を眺めながらゆっくりと進めば、随分体も楽に。
 そんな紫陽花を見つめるロザリアの横顔を、紫の瞳にそっと映してみれば。
 アルトは思わずドキッとしてしまう――懐かしさを感じて。
 そしてロザリアも、巡らせていた薔薇色の視線を、彼の横顔で止めて。
 じっと見つめてみれば……覚えるのは不思議な感覚。
 朧気にも残らない、抜け落ちた記憶。
 それでも、まるで茨の様に……ちくりと痛む心。
 そして互いに、思わず紡がんとするのは、こんな言の葉。
 ――オレとどこかで会ったことない?
 ――ねぇ、私たちどこかで会ったことある?
 けれど、それは口にせず心だけに留めて、飲み込んで。
「ううん、助けてくれてありがとう」
 微かに一度だけ首をふるりと横に振った後、改めて礼を口にするロザリア。
 アルトはそんな彼女に笑んで返してから、綺麗だね、って。
 そう紫陽花に目を移しながらも、心に思うのだった。
 ――でも、彼女の方がもっと綺麗、と。
 そしてロザリアも、静かに咲き誇る夜の紫陽花に囲まれたトンネルを彼と進みながらも、そっとその心に咲かせる。
 ――ぽっかり空いた記憶の穴、そこにあなたはいるのかな? って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メルステラ・セレスティアラ
夜の紫陽花を間近で眺めるのは初めてだったかしら
桜咲く世界に咲き誇る多彩の紫陽花
夜に鮮やかな色を齎す
『世界』はこんなにも美しいのね

カフェーへの道のりをゆるりと歩く
移ろう色の紫陽花を楽しみながら、時折舞う桜の花弁を見てふと友人を思い出す
違う世界で出逢ったばかりの友人
人懐こい笑顔が過っては頬が緩んで
桜と紫陽花の組み合わせは不思議と良く合うのね
知らなかったことを知れて笑みが深まって

カフェーではひとり静かに過ごします
オーダーは店員さんのおすすめをお願いして
素敵なメニューにまた笑顔が咲いて
今日一日だけで何度顔が綻んだのでしょう
素敵な世界で素敵なひとときを過ごせる幸せに心の中でそっと感謝を



 梅雨の時期になれば、この花が咲いているのを見るのも珍しいことではないけれど。
「夜の紫陽花を間近で眺めるのは初めてだったかしら」
 ふと静かな夜にふわり響くのは、メルステラ・セレスティアラ(夢結星・f28228)の声。
 それに、咲き誇っているのは手毬花だけではない。
 この世界を年中彩る、幻朧桜の花。
 そんな桜咲く世界に咲き誇る多彩の紫陽花は、夜に鮮やかな色を齎して。
 メルステラは幻想的ないろを映した、淡く柔らかなピンク色の瞳をそっと細める。
 ――『世界』はこんなにも美しいのね、って。
 そして咲く花々に導かれるように、カフェーへの道のりをゆるりと歩いて。
 青、紫、白にピンク……移ろう色の紫陽花を楽しみながらも。
 時折舞う桜の花弁を見てふと思い出すのは――違う世界で出逢ったばかりの友人。
 メルステラの頬を自然と緩ませるのは、過ぎる人懐こい笑顔。
 それから、よりその笑みが深まる。
「桜と紫陽花の組み合わせは不思議と良く合うのね」
 知らなかったことを、知れたから。
 そしてまるで紫陽花のような、手毬ラムプの優しい光に迎えられて。
 メルステラが訪れたのは、あじさい坂の上の古民家カフェー。
 ひとり静かな時を楽しむべく、紫陽花が見える窓際に座って。
「いらっしゃいませ、ご注文は?」
 声を掛けて来た店員にオーダーしたのは、おすすめメニュー。
 そして運ばれてきた、キラキラ光る紫陽花ゼリーと、自分の瞳の色のような淡いピンクの苺アイスクリンを見れば。
 また咲き誇り零れる、笑顔の花。
 ……今日一日だけで何度顔が綻んだのでしょう。
 メルステラは煌めく紫陽花色をひと掬いしながら、心の中でそっと感謝を。
 素敵な世界で素敵なひとときを過ごせる幸せに。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リヴェンティア・モーヴェマーレ
葎さん(f01013)と一緒デス
紫陽花のトンネルでゆっくりとした時間を過ごしながら、お互いにあったことなんかお話したりしてみまショ!
「そうだったのですネ!葎さんが憧れていたコトに私を誘ってくれてありがとうな気持ち!」
葎さんの嬉しそうな表情を見て、私も嬉しくて顔が綻んでしまいマス。えへへ♪
「葎さん、葎さん最近何か変化とかあったりしますカ?」
そう言えば最近忙しくてなかなかお話する機会もなかったノデ…
「バイクさん、過保護になったのデス?葎さんに怪我して欲しくないのでしょうカ…?お父さんみたいデスね?」
「私はハカセに新しいパーツのお願いしたりとかしてましタ!」
やっぱりお友達とお話するのは楽しい気持ち!


硲・葎
【P】リヴェちゃん(f00299)と! 紫陽花のトンネルでまったりお散歩したいな。 「こういう所でカップルやお友達同士で歩くのって凄く憧れてたんだ!一緒に来てくれてありがとうね?」 嬉しそうに目を見てお礼!日々のことを喋ってみようかなあ? 「最近?そう、だなあ。ちょっとバイクさんが過保護になった気がするなあ。新しい世界に行きたいって言ったからかもしれない。心配されるのは嬉しいんだけど、1人でも大丈夫なのになー……リヴェちゃんは何かあったりした?」 まったり散歩の後はアイスコーヒーを飲みながらおしゃべりしてみよっか。聞き耳を立てて重要な情報を逃さないように! 「あ、今度どんなパーツか教えてね!」



 ラムプに照らされ浮かび上がるのは、トンネルを飾るように咲く紫陽花たち。
 けれど、硲・葎(流星の旋律・f01013)の、ツリ目だけど人懐っこい印象を宿す瞳が映すのは、そんな雨露煌めく花だけではなくて。
 一緒に並んで歩く、リヴェンティア・モーヴェマーレ(ポン子2 Ver.4・f00299)の姿も。
「こういう所でカップルやお友達同士で歩くのって凄く憧れてたんだ! 一緒に来てくれてありがとうね?」
 葎は嬉しそうに、そんなリヴェンティアの目を見てお礼を告げてから。
 夜の紫陽花トンネルをふたり一緒に、まったりお散歩。
「そうだったのですネ! 葎さんが憧れていたコトに私を誘ってくれてありがとうな気持ち!」
 リヴェンティアも、ぱっと咲いた葎の笑顔を見れば、やっぱり嬉しくて。
 えへへ♪ と一緒に顔を綻ませてしまう。
 そしてふたりが交わし合うのは、お互いにあったことなどの日々の話。
「葎さん、葎さん最近何か変化とかあったりしますカ?」
 そう言えば最近忙しくてなかなかお話する機会もなかったノデ……と。
 リヴェンティアがふと訊ねてみれば。
「最近? そう、だなあ。ちょっとバイクさんが過保護になった気がするなあ。新しい世界に行きたいって言ったからかもしれない」
 ……心配されるのは嬉しいんだけど、1人でも大丈夫なのになー……。
 そう小さく首を傾けつつも言った葎に、リヴェンティアも同じ様にこてんと首を傾げて。
「バイクさん、過保護になったのデス? 葎さんに怪我して欲しくないのでしょうカ……? お父さんみたいデスね?」
 ふたりぱちりと視線が重なれば、顔を見合せ、楽しそうに漏れる笑顔。
 そして楽しくふたりでお喋りしていれば、いつの間にか紫陽花のトンネルを抜けて。
 紫陽花咲き誇る緩い坂を進んだその先に見えてきたのは、雰囲気の良い古民家カフェー。
 店内に入れば、まるで今まで見て来た満開の紫陽花のように。
 柔らかく温かな光を放つ、まんまる手毬型のラムプがふたりを迎えてくれて。
 席に案内され、ぱらりメニューを開いてみれば、魅惑的なスイーツや飲み物が。
 そしてまったり夜の花散歩で少し乾いた喉を潤すのは、注文したアイスコーヒー。
 それからやはりまた交わすのは、どれだけ話しても尽きる事のなさそうな楽しいお喋り。
「リヴェちゃんは何かあったりした?」
 カチャリとグラスを小さく鳴らしながら訊いた葎に、リヴェンティアはすかさずこう返す。
「私はハカセに新しいパーツのお願いしたりとかしてましタ!」
 そうぐっと嬉し気に言ったリヴェンティアに、葎も勿論興味津々。
「あ、今度どんなパーツか教えてね!」
 いえ、ふたりでお喋りも十分に堪能しながら、猟兵の仕事のことも忘れていません!
 重要な情報を逃さないようにと、そっと周囲に聞き耳を立ててみれば。
「……あの子も昔から花が好きだったから。戻ってきてくれた今も、それは変わらなくて嬉しいの」
 聞こえてきたのは、店の常連客とそう嬉し気に話している、店主である春江の声。
 そして、咲き誇る紫陽花をより煌めかせるかのように。
 窓の外に再びぱらりと、小雨がそっと降り出し始めるだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
紫陽花の道を越えてカフェへ
美しく整えられた路は
花への慈しみに溢れていて
雨の名残の露さえも優しく感じたから

素敵な庭園ですね
お一人で管理されているのですか

店主へ告げる賛辞は
偽りも飾り気も無く、素直に

玻璃の器から爽やかに香り立つマロウブルーティー
檸檬の一滴は彩りを変える魔法

ブルーベリーのレアチーズケーキは
お茶との相性抜群で
舌に残る甘みをさらりと流してくれる

サービスのアイスへ
稚い子供のように喜色満面で両手を打てば
読みかけの本をうっかり取り落としそうになって
眉尻を下げつつ

栞を持ってくるべきでした

小さく呟いたなら
ステンドグラスチャームの栞を
店主殿が教えてくださるだろうか
似合いの色を選んで頂くのも乙かしらね



 雨露に煌めく花々が飾る隧道を抜け、万色溢れる緩い坂を歩いて行けば。
 紫陽花の道を越えたその先に見えるのは、ラムプの光に満ちた古民家カフェー。
 まるで訪れた者を迎え入れ導くように美しく整えられた路は、花への慈しみに溢れていて。
 都槻・綾(糸遊・f01786)は艶やかなその煌めきを見つめる緑色の瞳をそっと細める。
 普段ならば鬱陶しく思ってしまう雨の名残の露さえも、優しく感じたから。
「素敵な庭園ですね。お一人で管理されているのですか」
 ええ、そうよ。ありがとうー―告げた賛辞に、店主である春江は少し照れたようにはにかむけれど。
 その言の葉は、偽りも飾り気も無く、素直に紡がれたもの。
 そして玻璃の器から爽やかに香り立つは、マロウブルーティー。
 それに雨粒のような檸檬の一滴をそっと落とせば。
 まるで魔法がかけられたかの如く、青空の彩りが、この世界の空のような桜色に。
 それから、ブルーベリーのレアチーズケーキを口に運んでみれば。
 お茶との相性も抜群、舌に残る甘みをさらりと流してくれて。
 さらに、器に咲いた小振りの花は、サアビスのまんまるアイスクリン。
 思わず稚い子供のように喜色満面で両手を打てば、うっかり滑り落ちそうになる読みかけの本。
 それは間一髪、掌ですくいあげる事ができたけれども。
 綾は眉尻を下げつつも、小さな呟きを零す。
「……栞を持ってくるべきでした」
 そんな声に、店主はくすりと笑みながらも提案する。
 ……では、作ってみますか? と。
 店主が教えてくれると言うそれは、ステンドグラスチャームの紫陽花の栞。
 そして似合いの色をと選んで貰えば――眼前に並んだのは、先程見た魔法のいろ。
 味わったマロウブルーティーのような、青とピンクのグラデーション。

大成功 🔵​🔵​🔵​

日東寺・有頂
十雉さん(f23050)と
大事な友達

…おう凄か。オイ、こがん見事に咲くこん花見た事無か。
折角やけん雨は上がっとーが、
番傘でも借りてゆったり歩くか。

紫陽花に囲まれんのも初めてやし
友達と傘さしてな、こがん並んでさるく(歩く)んも初めてかもしれん。
照らされてオイん好きな紫が煌々としよる。
白いこもおるとね。
十雉さんみてえに繊細で華奢な風情だ。
へへ。その上子供みてえなアンタの、つま先で跳ねる水飛沫を眺める。

ハート型ん紫陽花?
桜に惑わされそうなりながら
小さい幸せ、見つけられるとやろうか。
そがんこつしとー間にあれ、十雉さん?
アンタ何してんだよ。
だめだ。行くな、何処にも。


宵雛花・十雉
ニット(f22060)と
大事な友達

傘の下に入れば、外界と遮断されたような心地になって
飾らない素のままの自分になれる
気弱で根暗で子供っぽい自分に

オレ、紫陽花って好きなんだよね
特に理由なんてなくって、ただなんとなくだけどさ
雨降りを楽しむように、水溜りを見つけたら控えめにつま先で蹴って

でもこうやって友達と一緒に見るのはオレも初めて
夜の紫陽花も、昼とはまた違った魅力がある
ほんとだ、紫に白…
きっと色んな色が集まって咲いてるからこんなに綺麗なんだね

ニットがハート探しに夢中になってる間に
こっそり遠くへ行く悪戯
ほらこっちだよ、追いついてごらん
紫陽花はね「移り気」なんだから
ちゃんと捕まえてなきゃ駄目だよ



 紫陽花自体は、毎年梅雨の時期になるたびに、咲いているのを見かけるけれど。
「……おう凄か。オイ、こがん見事に咲くこん花見た事無か」
 日東寺・有頂(手放し・f22060)はぐるりとそう、視線を巡らせて。
「折角やけん雨は上がっとーが、番傘でも借りてゆったり歩くか」
 パッと夜空に、番傘の華を咲かせる。
 そんな咲かせた華の下に入ればそこは、自分ひとりだけの空間。
 だから、虚勢なんて張る必要のない――飾らない素のままの自分になれる。
 宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)はそう、外界と遮断されたような心地になりながらも思う。
 ……気弱で根暗で子供っぽい自分に、と。
 そんな彼の耳に聞こえるのは、大事な友達の声。
「紫陽花に囲まれんのも初めてやし、友達と傘さしてな、こがん並んでさるくんも初めてかもしれん」
 有頂の言葉に、十雉もこくりと頷いて。
「でもこうやって友達と一緒に見るのはオレも初めて」
 ……夜の紫陽花も、昼とはまた違った魅力がある、って。
 改めて、ラムプの光に浮かび上がる幻想的なそのいろを見つめてみれば。
「照らされてオイん好きな紫が煌々としよる。白いこもおるとね」
「ほんとだ、紫に白……きっと色んな色が集まって咲いてるからこんなに綺麗なんだね」
 十雉さんみてえに繊細で華奢な風情だ、そう紡がれた言葉に微かに笑んで返す。
「オレ、紫陽花って好きなんだよね。特に理由なんてなくって、ただなんとなくだけどさ」
 そして、ぱしゃりと。
 まるで雨降りを楽しむ子供のように、見つけた水溜まりを控えめにつま先で蹴ってみれば。
 紫陽花のいろが映った煌めきが、夜に跳ねる。
「へへ。十雉さんらしかね」
 そんな飛沫を眺めつつ、有頂はそう笑んだ後。
 はらりひらりと翻弄するように舞う、この世界特有の幻朧桜に惑わされそうなりながらも。
「ハート型ん紫陽花?」
 ――小さい幸せ、見つけられるとやろうか。
 紫に白、青にピンク……色とりどりの花へと視線を巡らせれば。
 十雉にふと、むくりと湧くのは、悪戯心。
 彼がハート探しに夢中になっている間に、夜の闇に紛れ、こっそりと遠くへ。
 ……そして。
「あれ、十雉さん?」
 ……何処行ったと? おらんくなった、と。
 きょろり周囲を探す有頂に、十雉は楽し気に声を掛ける。
「ほらこっちだよ、追いついてごらん」
「アンタ何してんだよ」
 有頂はようやく見つけた彼へと、瞳を移して。
 そんな友へ、くすりと十雉は笑む。
「紫陽花はね「移り気」なんだから、ちゃんと捕まえてなきゃ駄目だよ」
 そう……自分みたいだと、さっき彼が言っていた眼前の花のように。
 けれど彼は、ハート型の紫陽花よりも、もっと自分にとって大事な花だから。
 有頂は、紫陽花と桜が舞い遊ぶ宙に、ふとその手を伸ばす。
 ――だめだ。行くな、何処にも、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雨宿・華恋
やはー!
夜に咲く紫陽花も綺麗だねっ
ジョウチョテキって言うのかなあ
紫陽花トンネルも最高!!
長い長い道を辿っていると、異空間に行ってるみたいだね

あたしは雨が大好きだけど、雨上がりも大好きだよっ♪
いっぱい堪能しちゃお!

カフェとかめっちゃアガるよねー♪
しかも大人っぽい雰囲気でドキドキだよ!
あたしはアイスクリン……アイスのことかな?を食べてみたーい!
店主さん、あたしにあんみつくださーい!

やはー可愛い♡
思わずスマホでパシャリ
小さく咲いた紫陽花もあんみつも
もぐもぐ美味しく味わうよー
可愛い上に美味しいとか幸せになっちゃう♪

──にしても影朧ねぇ
なんだか穏やかじゃないカンジー
店主さんを見てても、ヒントはないかなあ



 日中降っていた梅雨の小雨ももう止んで、雨宿りをする必要はないけれど。
 残る雨の匂いや雨雫煌めく風景も、心躍るし。
「やはー! 夜に咲く紫陽花も綺麗だねっ」
 ラムプに照らされて、キラキラ輝く雨粒に飾られた夜の手毬花は、より綺麗だ。
 ……ジョウチョテキって言うのかなあ、って。
 ぐるり青空色の瞳を巡らせた雨宿・華恋(バーチャルキャラクターのバトルゲーマー・f18687)が潜るのは、花咲く隧道。
 ――紫陽花トンネルも最高!!
 そう小さく躍らせる髪とお揃いのピンクの紫陽花に、可愛いっ♪ と笑んでから。
 華恋は足取り軽く、花で飾られた道を奥へと進んで行く。
 ……長い長い道を辿っていると、異空間に行ってるみたいだね、って。
 雫に濡れ艶やかさを増した雨彩の花たちが導くままに。
 そんな華恋は雨が大好き。そして勿論、雨上がりも大好きだから。
 ……いっぱい堪能しちゃお!
 雨の日のお出掛けを、勿論存分に楽しむつもり。
 そして足を運ぶのは、あじさい坂をのぼった先にある古民家カフェー。
(「カフェとかめっちゃアガるよねー♪ しかも大人っぽい雰囲気でドキドキだよ!」)
 雰囲気抜群の手毬ラムプの光が満ちる、静かで大人っぽいけれど、でも敷居の高さは感じないあたたかな空間。
 それからメニューを開いてみれば、また一層わくわくと踊る心。
 紫陽花色をした小振りなアイスクリンは、華恋が大好きな雨の日だけの特別サアビス。
「店主さん、あたしにあんみつくださーい! あと、アイスクリン……アイスのことかな? それも食べてみたーい!」
 そして程なくして運ばれてきたのは、美味しそうなだけでなくバッチリ写真映えもしそうな、雨の日特製の紫陽花あんみつ。
 3色アイスクリンも乗せておきましたよ、って。
 微笑まし気に言った店主の春江に、ありがとう! と笑んでから。
「やはー可愛い♡」
 思わずスマホでパシャリ。
 そして小さく咲いた紫陽花アイスクリンとあんみつも一緒に、贅沢にひと掬い。
 それを、もぐもぐ美味しく味わいながらも。
「可愛い上に美味しいとか幸せになっちゃう♪」
 やっぱり零れ落ちるのは、幸福感いっぱいに咲いた満面の笑み。
 そんな紫陽花あんみつを味わい、雨上がりの紫陽花の庭を眺めながら。
 華恋はそっと、店主の春江へと視線を向けてみる。
(「――にしても影朧ねぇ。なんだか穏やかじゃないカンジー」)
 そして、首からさげている紫陽花模様のロケットペンダントを大事そうに握る彼女の様子を見つめながら。
 またひとくち、掬ったアイスクリンをぱくり、口に運んだのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
「紫陽花は綺麗で良いわね…」
青や紫は素敵な色よね。

未成年の飲酒は厳禁なのよね、分かっているわよ、ええ。
仕方ないので餡蜜とか甘味たっぷり食べちゃうわよ(自棄食い気味)

甘味を堪能しきったら
ステンドグラス紫陽花も作ってみたいわね。
自分の瞳の青と紫のガラスで作るわ。
チャームにしたいわね、ネックレスも悪くないけど胸に本体がぶら下がっているからそれは自重よ。

完成品を光に透かして
「綺麗ね・・・」

これで影朧が絡んでなければ最高なのだけど。



 夜の闇に浮かぶ季節の花に、どこか親近感を覚えるのは。
 きっとそのいろが、自分が宿す彩りとてもよく似ているから。
「紫陽花は綺麗で良いわね……」
 ――青や紫は素敵な色よね。
 ヴィオレッタ・エーデルシュタイン(幸福証明・f03706)はそう呟きを落としながら、紫陽花咲くトンネルや坂を歩いて。
 青や紫の花が導くまま、坂の上に佇む古民家カフェーへ。
 そして席に着いて、紫陽花の表紙のメニューをパラパラと捲ってみれば、沢山の心擽られるメニュー。
 けれど、色々と目移りしつつ頁を進めていたヴィオレッタの手が、ふいに止まって。
 ちょっぴり、つい浮かべてしまうのは苦笑。
 ……いえ、もう十分に分かっています。
「未成年の飲酒は厳禁なのよね、分かっているわよ、ええ」
 厳密に言えば全くもって未成年ではないのだけれど、見た目はどこからどう見ても未成年。
 これもヤドリガミの宿命……かは、さておき。
 どう言っても、説得力もないし信じて貰えそうにないので、お酒は今回も渋々諦めて。
 仕方ないので、こうなったら。
「餡蜜とか甘味たっぷり食べちゃうわよ」
 あれもこれもと、自棄食い気味!?
 勿論、青と紫のアイスクリンもサアビスして貰います!
 そしてこれでもかと甘味を堪能しきって、気持ちも幸せに満たされれば。
 ふと目に入ったのは、店主が作っているステンドグラス紫陽花。
 そんな視線に気が付いた店主に勧められて、ヴィオレッタも作ってみることに。
 何色がいいですかと訊ねられれば――選んだのは勿論、自分の瞳と同じ、青と紫。
「チャームにしたいわね」
 ネックレスも悪くないけれど、胸に本体がぶら下がっているからそれは自重。
 そして教えて貰った手順通りに作業を進めていけば……出来上がったのは、キラキラ小さなまんまる手毬花。
 ……これで影朧が絡んでなければ最高なのだけど、なんてヴィオレッタは思いながらも。
 完成したそれを、そっと紫陽花のようなラムプの光に透かしてみれば。
「綺麗ね……」
 見つめる藍と紫のその瞳に、同じ色の煌めきが咲いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
【pow】
アドリブ・絡み歓迎

すんすん、すんすん……いい匂い
雨の匂いと、花の匂い…
こうして花に囲まれているとニュンペーたちの花園みたいだね
あの姦しい定命の彼女たちもしばらく見ない間に少しは顔ぶれが入れ替わったころだろうか?
まあボクは色気よりも食い気だけども!

ん~おいしい💕
おかわり!
やっぱりアイスクリームや生クリームにはプレーンなパンケーキだよね!
幾らでも食べられちゃう
とすっかりお気に入りにした甘味を心行くまで楽しもう

雨は好き
雨は嫌い
そんな風にときどきに分かれるのはきっと同じ雨が一つも無いからかな
だからきっと今日の雨はボクの好きな、いい雨だったんだろうね



 夜空をふと見上げれば、もう雨はすっかりあがっているけれど。
 すんすん、すんすん……と。
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)の鼻を擽るのは、沢山のいい匂い。
「雨の匂いと、花の匂い……」
 そんな梅雨の季節らしい、雨と花の匂い。
 それはロニにとって、何だか少し懐かしいものでもあって。
「こうして花に囲まれているとニュンペーたちの花園みたいだね」
 ……あの姦しい定命の彼女たちもしばらく見ない間に少しは顔ぶれが入れ替わったころだろうか?
 そう、きっと賑やかだろう乙女たちの姿を思い返しながらも。
 ――まあボクは色気よりも食い気だけども! って。
 扉を開き、ちりんと耳触りの良い音色が鳴る中、ロニが足を踏み入れたのはあじさい坂の上の古民家カフェー。
 そして案内された紫陽花の庭が見える席に着いて。早速注文し、口に運んだのは。
「ん~おいしい💕」
 ……やっぱりアイスクリームや生クリームにはプレーンなパンケーキだよね!
 そう――焼きたてパンケーキに生クリームとサアビスのアイスクリンを乗せた、ロニ特製・紫陽花パンケーキ!
 それから程なく、優しくて絶妙の甘さな美味しいそれをぺろりと平らげれば。
「おかわり!」
 幾らでも食べられちゃう。
 そう、すっかりお気に入りにした甘味を心行くまで楽しみながらも。
 ロニが金の瞳に映すのは、さっきまで降っていた雨に濡れた紫陽花の庭の風景。
 ――雨は好き。
 ――雨は嫌い。
 雨は好きかと単にそう訊ねられれば、きっと困ってしまうだろう。
 だって、雨って言っても……好きだったり、でも嫌いだったりもするし。
 そして……それはきっと。
(「そんな風にときどきに分かれるのはきっと同じ雨が一つも無いからかな」)
 ロニはまたひとくち、紫陽花咲くパンケーキをはむりと食べてから。
 ご満悦な様子で微笑みを咲かせ、雨の気配が残る夜を満喫しつつも思うのだった。
 ――だからきっと今日の雨はボクの好きな、いい雨だったんだろうね、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

篝・倫太郎
【華禱】
のんびり散策したら
カフェーでひと休み

わくわくした気配でメニューを眺めてる夜彦の様子は
ハッキリ言って、可愛い
数多ある世界で一番可愛い
本人に告げればどんな反応が返ってくるのやら
そんな事を思いながら
パンケーキに紫色のアイスクリンを添えて貰おう
飲み物は珈琲で、そう決めて

夜彦、どれにするか決まった?

そう尋ねれば眉が寄って益々可愛いんだけど
当人は至極真剣だもんだから

三色とも添えて貰えないかお願いしてみたら良くね?

そう提案してみる

ぅん……
だから、そんな可愛い顔するのどうなの

おーぉ、んっと、幸せですって顔しちまって
俺が選ばなかった二色も余程美味かったのか
お裾分けしてくれる姿もやっぱり可愛くて笑って返す


月舘・夜彦
【華禱】
幻朧桜と紫陽花の坂は美しいものでしたね
倫太郎殿と会話をしながらカフェへと向かう

紫陽花のような色とりどりのアイスクリン
このアイスクリンがあれば普段のお菓子も豪華になりますね
眺めていると倫太郎殿の視線に気付いて
す、すみません、珍しいものでしたのでつい……夢中に

私は餡蜜にアイスクリンは何色にしましょうか
なるほど、3色ともという手がありました
随分贅沢な餡蜜になりそうですが、今の時期だけですからね
飲み物はカフェオレで甘さは控えめに

どの味も美味しいです
倫太郎殿には選ばなかった2色をお裾分けします
寒天やあずきも一緒に……はい、口を開けてください
季節も感じられる食べ物は良いですね



 雨露に煌めくまんまる手毬花を、仄かであたたかなラムプが優しく照らして。
 艶やかな花が咲き誇り飾るトンネルを一緒に歩いた後。
 ゆるりと続くあじさい坂を彩るのは、この世界ならではな幻朧桜と季節花の紫陽花。
 そして、いつも通り会話を交わしながらのんびり行くその花の道の先――見えてきたのは、一軒の古民家カフェー。
「幻朧桜と紫陽花の坂は美しいものでしたね」
 案内された紫陽花の庭が良く見える席に着き、月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)はそう、自分達が歩いてきた窓の外へと目を遣るけれど。
 ふと翡翠の瞳がメニューに落とされれば、宿るのは、わくわくした気配。
 さらに、サアビスである3色アイスクリンまで付いていると聞けば、心躍るのも当然であるのだけれど。
「このアイスクリンがあれば普段のお菓子も豪華になりますね」
 ――ハッキリ言って、可愛い。
 ――数多ある世界で一番可愛い。
 篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は、紫陽花のような色とりどりのアイスクリンをそわりと眺める夜彦を見つめながら、琥珀の瞳を細めて。
(「本人に告げればどんな反応が返ってくるのやら」)
 そんな事を思っていれば……視線を感じ顔を上げた彼と、ぱちりと目が合って。
「す、すみません、珍しいものでしたのでつい……夢中に」
 そんなことを言ってちょっと恥ずかし気な夜彦の様子は、やはり可愛い。
 そう心の中でそっと思う倫太郎であったが。
「夜彦、どれにするか決まった?」
「私は餡蜜に、アイスクリンは何色にしましょうか」
 そう尋ねれば眉が寄って益々可愛いのだけれど……当人は至極真剣。
 だから、何色にするか決めかねて悩んでいる夜彦に、倫太郎はこう提案してみる。
「三色とも添えて貰えないかお願いしてみたら良くね?」
「なるほど、3色ともという手がありました」
 ……随分贅沢な餡蜜になりそうですが、今の時期だけですからね、なんて。
 瞳輝かせ、ぱっと咲いたのは、嬉しそうないろを湛える微笑み。
(「ぅん……だから、そんな可愛い顔するのどうなの」)
 そんな夜彦はやはり、可愛いがすぎる。
 そして無事に注文を済ませ、手毬花の様なラムプ灯る中、まったり会話を楽しんでいれば。
 運ばれてきたのは、紫色のアイスクリンが添えられたパンケーキと、3色贅沢なアイスクリンが乗せられた餡蜜。
 それに並べられた珈琲とカフェオレも香り高く、紫陽花の描かれたカップにも店主の拘りが感じられる。
 夜彦は、いただきます、と手を合わせてから、スプーンでアイスクリンをそっとひと掬い。
 口に運べば、さっぱりとした甘さがふわりと広がって。まずは3色ひとつずつ食べ比べ。
 ……そして。
「どの味も美味しいです」
(「おーぉ、んっと、幸せですって顔しちまって」)
 その様子を見れば、余程美味しかったのか、どの味にも満足して幸せを感じているのは一目瞭然で。
「倫太郎殿、紫以外の2色も食べてみませんか」
 ――寒天やあずきも一緒に……はい、口を開けてください、って。
 お裾分けしてくれるという夜彦が差し出したそれを、倫太郎ははむりと口にして。
 どうでしょうかと言わんばかりにじっと自分を見つめる彼に……ん、美味い、と頷いてみせれば。
「季節も感じられる食べ物は良いですね」
 そう言った夜彦に、倫太郎は笑って返すのだった。
 嬉し気なそんな姿も、やっぱり可愛いと。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

甘渼・アメ
【幽楽】

なんてオシャレなカフェなんだべ!
おら、こういうとこさずっと憧れて……はっ!!

な、なんでもないわよ。かくり、アン!
レトロカフェー、アメだって馴染みがあるんだから(ないのでとてもキョロキョロした、完全なお上りさん)

運ばれてきたのはこれまたオシャレなケーキセット!ケーキさん、キミは何味なの?!これから食べちゃうけどいいよね!
……話しかけても返事がない
きょとんとして2人の方を見る
アン…そうなの?
この世界のケーキはお喋りしないし動かないの?
え、かくり……アメちょっとついてけないくらいびっくりしてる

でも容赦なく三等分して2人にわける
んー!おいし!
こういうの、アメは好きよ!
心のなかに、虹が咲いたよう


揺・かくり
【幽楽】

四肢に貼りつけた御札
常は儘ならないこの身が自由に動く
今日だけは地に足をつけて歩もう
ほら、この通りさ

此方の世界へと渡るのは初めてなのだが
ああ、洒落た場所だね
とても気に入ったよ
私は三色のアイスクリンをいただこうか

やあ、君は眠っているのかい
運ばれた甘味たちに話し掛けよう
………返事はないようだね

アメ、この現状を受け入れられるかい?
アンの言っていた事は本当のようだよ
私は……そうだね
多少の時間が必要そうだよ
喋らず動かずな甘味は不思議で仕方がない
これが幽世の外世界なのだね
アイスを掬い取り、君たちの前へ

腕を使った食事は久方ぶりだ
常は念力でどうとでもなるからね
うん、悪くない
偶にはこうして出掛けてみようか


庵野・紫
【幽楽】

レトロカフェーってオシャンだよねぇ。
アンはパンケーキ!
みんなで少しずつシェアしよー。
アメってば口調が変わってるー!

ほら見て!喋んない、動かない、悪戯もしない!
こいつらホントにうんともすんとも言わないの。
かくりもアメも話しかけてみなよー
ホントに返事が無いからさ。

食べる時に悲鳴が無いのはつまんないよねー。
味は美味しいんだけど。
ハイ、三等分にしたよー。

UDCのふかふかパンケーキとは違うパンケーキなんだー。
何これー!
アイスクリンもケーキセットも最高!
こっちの世界も最高っしょ?



 雨上がりの空に架かった虹の様に、ぱあっと鮮やかに。
「なんてオシャレなカフェなんだべ!」
 手毬花の様なラムプが灯る古民家カフェをぐるり見回す甘渼・アメ(にじいろ・f28092)の瞳はキラキラ。
 そして興奮して、つい。
「おら、こういうとこさずっと憧れて……はっ!!」
「アメってば口調が変わってるー!」
 庵野・紫(鋼の脚・f27974)の言う通り、ちょっぴりだけ油断しちゃったけれど。
「な、なんでもないわよ。かくり、アン!」
 ……レトロカフェー、アメだって馴染みがあるんだから、って。
 気を取り直し、そう紡ぐアメ。
 けれど、とてもキョロキョロしたその視線は、どう見てもそうには思えない完全なるお上りさん。
 四肢に貼りつけた御札。アメと紫と共にカフェーにやって来た揺・かくり(うつり・f28103)は、いつもならば儘ならないその身であるが。
 ――今日だけは地に足をつけて歩もう。
 そうふたりと並んで、雨上がりの紫陽花の小径を歩いてきたのだ。
 ……ほら、この通りさ、って。
「レトロカフェーってオシャンだよねぇ」
 いつもUDCアースに繰り出しては楽しんでいる紫は、手慣れた様にぱらりとカフェーのメニューを開いて。
 物珍しそうに周囲を見回しながらも、かくりも満更でもなさそうにこくり頷く。
「此方の世界へと渡るのは初めてなのだが。ああ、洒落た場所だね」
 ――とても気に入ったよ、と。
 そして色々と目移りしながらも、店員にオーダーを。
「アメはケーキセット!」
「私は三色のアイスクリンをいただこうか」
「アンはパンケーキ! みんなで少しずつシェアしよー」
 それからきゃっきゃ楽しくお喋りしていれば、テーブルにずらり運ばれてくる美味しそうなスイーツ。
 ……なのだけれど。
「ほら見て! 喋んない、動かない、悪戯もしない! こいつらホントにうんともすんとも言わないの。かくりもアメも話しかけてみなよー」
 ――ホントに返事が無いからさ、って。
 そう紫が口にすれば。言われた通り、眼運ばれてきたオシャレなケーキさんと三色アイスクリンさんに、話しかけてみるふたり。
「ケーキさん、キミは何味なの!? これから食べちゃうけどいいよね!」
「やあ、君は眠っているのかい」
 だが、話しかけてみたスイーツさんたちは。
「……話しかけても返事がない」
「…………返事はないようだね」
 一向に、返事をしてくれません??
「この世界のケーキはお喋りしないし動かないの?」
 ――アン……そうなの?
 そうきょとんとしているアメの驚きの声に、紫はこくこく頷いて。
 まさかの状況に、かくりはまじまじと紫陽花色をしたアイスクリンを見遣りながら、呟きを零す。
「アメ、この現状を受け入れられるかい?」
 ……アンの言っていた事は本当のようだよ、と。
「え、かくり……アメちょっとついてけないくらいびっくりしてる」
「私は……そうだね。多少の時間が必要そうだよ」
 そう――まさにこれこそ、カルチャーショック。
 喋らず動かずな甘味が不思議で仕方がない様子ながらも、かくりはそっとアイスクリンをひと掬い。
「これが幽世の外世界なのだね」
 それを、ふたりの前へと差し出せば。
「食べる時に悲鳴が無いのはつまんないよねー」
 ヒイッとかキャアアッとか聞き慣れた悲鳴がしないのは、何だかちょっぴり物足りない気もするけれど。
 ……味は美味しいんだけど、と紫はさくさくとパンケーキにナイフを入れて。
「ハイ、三等分にしたよー」
 仲良くみんなで、分け合いっこ。
 アメも驚きはしたけれど、でも容赦なくオサレケーキを同じ様に三等分。
「腕を使った食事は久方ぶりだ」
 ……常は念力でどうとでもなるからね、と言いつつも。
 今日はかくりも、その手にスプーンやフォークを持って。
 みんなで少しずつシェアして、食べ比べしてみれば。
「UDCのふかふかパンケーキとは違うパンケーキなんだー。何これー! アイスクリンもケーキセットも最高!」
「んー! おいし!」
 思わず幸せそうに声を上げる、紫とアメ。
 かくりも、ぱくりとパンケーキやケーキを口に運べば。
 ――うん、悪くない。
 そう、ほわりと金の瞳を細めて。
「こっちの世界も最高っしょ?」
「こういうの、アメは好きよ!」
「偶にはこうして出掛けてみようか」
 みんなでそう、笑み合った後。
「ケーキさん、キミとっても甘いね!」
「君も冷たくて美味しい」
「ほら、こいつらいくら話しかけても、ホントにうんともすんとも言わないの!」
 思わず癖で、話しかけちゃうけれど……みんなで改めて顔を見合わせ呟く。
 あ、そういえば喋ったり動いたり悪戯したり、悲鳴上げたりしないんだった――って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

尭海・有珠
嵐吾(f05366)と

綺麗だったよな、あれなら雨の中歩くのも悪くない
ステンドグラスもちらっと見たがどれも可愛くて。
手毬ラムプが空色の紫陽花に見えるのも納得
いいね、似たようなのをチャームにして作ってもらわないか?
いつでも手元で紫陽花を眺めていられるものな

ふむ、あれもこれも気になるものばかりで私も悩んでしまう
がっつり食べたい気持ちはあれど…がっつくのも品がないかと思い
ちらりと見やって、程々にしようと決める
む…そんなこと言うと調子に乗って奢ってもらってしまうぞ
じゃあ遠慮なく。今度は私にご馳走させてほしい

私はパンケーキに、均等にのせた三色アイスクリンだな
紫陽花の気分をがっつり味わっていこうと思うんだ


終夜・嵐吾
有珠の嬢ちゃん(f06286)と

紫陽花の道、すごかったの~、あんな紫陽花のトンネルなんて初めてじゃ
古民家カフェーもええ雰囲気じゃね
あとで時間あったらステンドグラスもお願いしよ
手毬ラムプもかわええな。あれと似たよなのを作ってほしいくらいじゃ
チャームか、なるほど。お願いしてみよか

と、言いつつ目は既に御品書き
これは…どれにしよか迷うの…やはり三色アイスクリンははずせんよな…
のせるならパンケーキ…しかし焼きサンドを選んでデザート的に…ぐぬぬ…迷うの…
嬢ちゃんは何にするかの?
何でも好きなの選んでええよ、奢ったげよ
遠慮なくの!

嬢ちゃんがパンケーキなら、焼きサンドをお願いしよ
三色アイスクリンも楽しみじゃ



 雨の日のお出掛けは、いつもならば億劫に感じるものだけれど。
 この季節だけは別。むしろ、楽しいことが盛り沢山。
 日中振っていた雨も、もう今は止んでいるけれど。
 ラムプに照らされて煌めく雨露が紫陽花をより艶めかせ、微かにまだ雨の匂いが残っている。
「紫陽花の道、すごかったの~、あんな紫陽花のトンネルなんて初めてじゃ」
 そう楽し気にゆらり、灰青の尻尾を揺らめかせながら。
 へらりと笑む終夜・嵐吾(灰青・f05366)に、尭海・有珠(殲蒼・f06286)もこくりと頷いて。
「綺麗だったよな、あれなら雨の中歩くのも悪くない」
 自分たちが歩いてきた紫陽花の小径を、今度はカフェーから眺める。
 そんな有珠に笑んでから、嵐吾はぐるりとレトロ感漂う店内へと琥珀の視線を巡らせて。
「古民家カフェーもええ雰囲気じゃね」
「ステンドグラスもちらっと見たがどれも可愛くて。手毬ラムプが空色の紫陽花に見えるのも納得」
 優しい光と彩が灯る空間は、とてもあたたかく居心地の良い雰囲気。
 店主が趣味で作っているステンドグラスも、キラキラとレトロな空気に彩りを添えていて。
 ……あとで時間あったらステンドグラスもお願いしよ、と。
 嵐吾は言ってから、仄かな光放つ紫陽花の様なまんまるのラムプへと目を移して続ける。
「手毬ラムプもかわええな。あれと似たよなのを作ってほしいくらいじゃ」
 そんな彼の言葉に、有珠はふと顔を上げて。
 口にするのは、こんな名案。
「いいね、似たようなのをチャームにして作ってもらわないか? いつでも手元で紫陽花を眺めていられるものな」
「チャームか、なるほど。お願いしてみよか」
 ラムプはさすがにちょっと持って帰れないけれど。
 小さなチャームであれば、思い出に持ち帰る土産には最適。
 しかもいつまでも枯れる事なく色褪せず咲き続けるから。
 けれど――そんな紫陽花やステンドグラスも、勿論気になるのだけれど。
 嵐吾の視線はいつの間にか、ぱらりと捲っている御品書きへ。
「これは……どれにしよか迷うの……やはり三色アイスクリンははずせんよな……」
 雨の日だけのサアビスである、紫陽花の様なアイスクリンは是非お願いしたいところであるが。
「のせるならパンケーキ……しかし焼きサンドを選んでデザート的に……ぐぬぬ……迷うの……」
 もふもふ尻尾も迷っているかように、左右にゆらゆら。
 メニューとお見合いしつつも迷ったまま、嵐吾はちらりと有珠へと目を向けて訊ねてみる。
「嬢ちゃんは何にするかの?」
「ふむ、あれもこれも気になるものばかりで私も悩んでしまう」
 がっつり食べたい気持ちはあれど……がっつくのも品がないかと、そう思うから。
 ちらりと見やって、程々にしようと、そう決めた矢先。
「何でも好きなの選んでええよ、奢ったげよ」
 ――遠慮なくの!
 そう先手を取られれば、すぐに先程の決意も、いとも容易く揺らいで。
「む……そんなこと言うと調子に乗って奢ってもらってしまうぞ」
 じゃあ遠慮なく、と再びメニューへと真剣な眼差しを向けつつも、有珠は続ける。
 今度は私にご馳走させてほしい、と……また次の美味しいひとときの約束を。
 そして漸く、それぞれ心に決めたのは。
「私はパンケーキに、均等にのせた三色アイスクリンだな。紫陽花の気分をがっつり味わっていこうと思うんだ」
「嬢ちゃんがパンケーキなら、焼きサンドをお願いしよ。三色アイスクリンも楽しみじゃ」
 甘くて冷たい紫陽花が咲いた、雨の日だけの特製メニュー。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

デリック・アディントン
アイシャ(f19187)と

ゆっくりとトンネルを歩いて
私もツル性のものは初めて見たな
ランプの暖かな光が良く似合う風景だ
こちらこそ誘ってくれてありがとう
一時、忙しい日々は忘れてのんびりしよう

確かにこの世界ならではの景色だね
少し贅沢な気分だ
おや、アイシャは見つけるのが上手いな
ありがとう、私もアイシャの幸せを祈るよ
親愛なる友人に降り注ぐ幸あれ

お任せか、そうだな…ではパンケーキにしよう
勿論3色アイスクリンも乗せて
そういえばアイシャサイズの什器はあるかな
無ければ一口サイズにして差し出そう

一面に広がる空色紫陽花は見事、の一言に尽きるね
この前は黄色、今日は空色…
次は何処へ何色の花を見に行こうか


アイシャ・ラブラドライト
f09225リックと
口調→華やぐ風

リックと一緒にトンネルの紫陽花を眺める
ツル性の紫陽花って初めて見るよ…いい香り
ランプに照らされて幻想的ね
リック、一緒に来てくれてありがとう
心が安らぐよ

桜と紫陽花が同時に見られるなんて不思議な気持ち
あっ、あそこ…ハート型の紫陽花見つけたよ
リックの幸せをお祈りしておくね
もう幸せかもしれないけど…幸せはたくさんあったほうがいいでしょう?

カフェメニューはリックにお任せ
私はすぐお腹いっぱいになっちゃうから、少し分けてもらうことにするよ
アイスクリンも食べたいなぁ
食べつつ窓の外の景色も楽しむ
同じ色味の紫陽花がこんなに並んでいるのって珍しいよね
でも私、この色の紫陽花が一番好き



 ふたり並んで歩くのは、この季節だけ花開く特別なトンネル。
「ツル性の紫陽花って初めて見るよ……いい香り。ランプに照らされて幻想的ね」
 ふわり鼻を擽る優しい紫陽花の香と、その花の彩を浮かび上がらせ煌めかせる灯火に、アイシャ・ラブラドライト(煌めく風・f19187)が微笑めば。
「私もツル性のものは初めて見たな。ランプの暖かな光が良く似合う風景だ」
 彼女の速度に合わせ歩く、隣のデリック・アディントン(静寂の調律師・f09225)も小さく頷く。
 そしてそんな彼に、改めてアイシャは紡ぐ。
「リック、一緒に来てくれてありがとう」
 ――心が安らぐよ、って。
 紫陽花の咲く風景も勿論だけど……余計にそう感じるのは、彼が一緒だから。
 そしていつもは穏やかな風の様な声も、どこか今日は華やかさを纏っている。
 そんな彼女に、笑みと共にこう言の葉を返すデリック。
「こちらこそ誘ってくれてありがとう」
 ……一時、忙しい日々は忘れてのんびりしよう、って。
 それからトンネルを抜け、色とりどりの紫陽花咲くゆるい坂を歩けば。
 ひらり、舞い降ってきたのは、本来なら梅雨の時期には散っているはずの桜の花弁。
 けれど此処は、年中幻朧桜が咲き誇る、サクラミラージュの世界だから。
「桜と紫陽花が同時に見られるなんて不思議な気持ち」
「確かにこの世界ならではの景色だね。少し贅沢な気分だ」
 ふたりの眼前に広がるいろは、此処でしか見られない、不思議で贅沢な風景。
 そんな景色をゆっくりと眺めながら、坂道を上っていたアイシャだけれど。
 緑色の瞳に飛び込んできた一輪の手毬花に、ふと声を上げる。
「あっ、あそこ……ハート型の紫陽花見つけたよ」
 そしてデリックが、差されたその指先を琥珀色の視線で追いかければ。
「おや、アイシャは見つけるのが上手いな」
 確かにそこには、見つければ幸せになるという噂がある、ハート型をした紫陽花が。
 そんな幸せの花に、アイシャはそっと祈りを馳せる。
「リックの幸せをお祈りしておくね」
 ――もう幸せかもしれないけど……幸せはたくさんあったほうがいいでしょう? って。
 そしてデリックも。
「ありがとう、私もアイシャの幸せを祈るよ」
 ――親愛なる友人に降り注ぐ幸あれ。
 そうハートの紫陽花に祈って、お返しを。
 それから坂を上り切れば、佇むのは雰囲気の良い古民家カフェー。
 小柄なアイシャは、すぐにお腹いっぱいになっちゃうから。
 カフェメニューは彼にお任せ、少し分けてもらうことにして。
「お任せか、そうだな……ではパンケーキにしよう」
 デリックが選んだのは、見た目も甘さもふんわりなパンケーキ。
 そして、アイスクリンも食べたいなぁ、って呟いたアイシャのご要望通りに。
 勿論それに、紫陽花のような3色アイスクリンも添えて貰う。
「そういえばアイシャサイズの什器はあるかな」
 フェアリーサイズのものがあるかは、定かではないけれど。
 デリックはパンケーキを一口サイズに切ってから、彼女に差し出す。アイスクリンも一緒に。
 そんな美味しいひとときを堪能しながらも、アイシャがふと視線を向けるのは窓の外。
「同じ色味の紫陽花がこんなに並んでいるのって珍しいよね」
 ――でも私、この色の紫陽花が一番好き。
 そう呟きを落としたアイシャの眼前に広がるのは、優しい風にそっと揺れる、青空の様な紫陽花畑。
「一面に広がる空色紫陽花は見事、の一言に尽きるね」
 そして、デリックは琥珀色の瞳に彼女の姿を映し、続ける。
「この前は黄色、今日は空色……」
 ――次は何処へ何色の花を見に行こうか、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

春代・吉乃
※アレンジ、改変歓迎

【露草・蛍、f22703と同行をお願いします】

まさか蛍が調査に付き合ってくれるとは思わなかったわ
こいつまた何か企んでるんじゃないでしょうね


紫陽花のトンネル!
すごいすごい、とーっても綺麗ね!
こんなの見たの初めて!
あんまりはしゃいでいるとまた蛍にバカにされるかしら
――案外、紫陽花が気に入ったみたい?


わたしはパフェとパンケーキをお願いしようかな
アイスクリンはいくつでも付けてくれるの?
どの味もおいしそうで迷っちゃう。
よーし、各2つずつでお願いします!
おいしー!しあわせー!


露草・蛍
※アレンジ、改変歓迎

【春代・吉乃、f22704と同行お願いします】

暇つぶしにと吉乃に付いて来てみたが、雨に紫陽花ってのはやっぱり風情があっていいもんだな。
へぇ、ラムプ照らし出されてるってのも粋じゃねーか。
吉乃が騒ぐのも頷けるぜ。少々うるさいが。

……おい、吉乃。
お前、どんだけ頼むつもりだよ。
ほんっと色気より食い気だな。
はぁ。オレは餡蜜ひとつ。


吉乃は食べるのに夢中だし、一応怪しい動きがないか気を張っておいてやるか。
ま、後はこの季節にしか見られない紫陽花を満喫してみるのもいいかもな。



 夜の闇に浮かび上がる様に咲く雨上がりの紫陽花も、勿論気になるけれど。
(「まさか蛍が調査に付き合ってくれるとは思わなかったわ」)
 ……こいつまた何か企んでるんじゃないでしょうね、なんて。
 春代・吉乃(春告げの桜花・f22704)がちらりと藍色の瞳で見上げるのは、いつもの眠た気な表情。
 最初こそそう、意外にも自分の誘いに頷いた露草・蛍(爽夏烈風の學徒兵・f22703)に何か意図などないか、探る様に見ていた吉乃だけれど。
「紫陽花のトンネル! すごいすごい、とーっても綺麗ね!」
 この季節にしか見られない、良い香り漂う花のトンネルに、思わず声を上げて。
 ハッと我に返り、再び蛍へと視線を。
 ……あんまりはしゃいでいるとまた蛍にバカにされるかしら、って。
 けれども、その予想と反して。
「暇つぶしにと付いて来てみたが、雨に紫陽花ってのはやっぱり風情があっていいもんだな」
 ……へぇ、ラムプ照らし出されてるってのも粋じゃねーか。
 そう紫陽花を眺め歩く彼の姿を見て、吉乃は瞳をぱちくり。
 ――案外、紫陽花が気に入ったみたい?
 なんて、思っていたら。
「吉乃が騒ぐのも頷けるぜ。少々うるさいが」
 続いたのはやはり、揶揄うようないつもの調子の言の葉。
 そして紫陽花咲く中、軽い足取りでついはしゃいじゃう吉乃とそれに付いて歩く蛍がやって来たのは、坂の上にある古民家カフェー。
 美味しそうなメニューの数々に目移りしながらも、注文を取りに来た店主にすかさずこう訊ねてみる吉乃。
「わたしはパフェとパンケーキをお願いしようかな。アイスクリンはいくつでも付けてくれるの? どの味もおいしそうで迷っちゃう」
「食べきれるだけ、いくつでも大丈夫ですよ」
 雨が降った日だけの特別サアビスです、と。微笑む店主のお言葉に甘えて。
「よーし、各2つずつでお願いします!」
 ぐっと気合い十分、そうオーダーを。
 そんな吉乃の声に、蛍はちらりと視線を向けながら。
「……おい、吉乃。お前、どんだけ頼むつもりだよ」
 ――ほんっと色気より食い気だな。
 そう言って、オレは餡蜜ひとつ、と溜息交じりに続ける。
 そして、アイスクリンもりもりの特製紫陽花スイーツたちが運ばれてきて。
 ぱくりと口に運べば。
「おいしー! しあわせー!」
 吉乃の顔にも、笑みが満開。
 蛍は、食べる事にすっかり夢中な吉乃の様子を見ながら、一応怪しい動きがないか気を張っておいてやるか、と。
 猟兵の仕事も忘れずに、そっと周囲を窺いつつも。
 手毬ラムプ灯る中、幸せそうな吉乃と窓の外に広がる空色の紫陽花庭園を眺めながらも思う。
 ――ま、後はこの季節にしか見られない紫陽花を満喫してみるのもいいかもな、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月居・蒼汰
ラナさん(f06644)とカフェーに

紫陽花トンネルも坂道も、凄く綺麗でしたね
まるで別の世界に迷い込んだんじゃないかって思ったくらいです
桜と紫陽花が一緒に楽しめるのもこの世界ならではですし

ハムとチーズの焼きサンドと餡蜜と一緒にアイスクリンも3色注文
店主さんには笑顔でお礼を
華やかな食後のデザートに耳もそわそわ跳ねる
あんみつですか?程よい甘さでとっても美味しいですよ
ふふ、良ければ一口どうですか?(器をラナさんの方に寄せて)
ラナさんが美味しそうに食べる様子をさり気なく見てたら
続く申し出に瞬いて
…はい、俺もいただきます
フォークで少し切って口に

こんな他愛ない時間が幸せなのは
やっぱりラナさんと一緒だからかな


ラナ・スピラエア
蒼汰さん(f16730)と

紫陽花と桜が一緒の景色
幻想的でとっても綺麗でした
蒼汰さんと一緒だから、尚綺麗に映るのかも
と感じるのは心に秘めて
雨の中の景色も見てみたいです

私はシンプルなパンケーキを
折角だからアイスを3色乗せて下さい
あ、少し小さめでお願いします

蒼汰さんが食べるあんみつをじっと見て
あんみつって、どんな味ですか?
食べたことの無いスイーツに、興味を隠し切れず
差し出されれば、はしたなかったかと少し慌てて
えっと、じゃあ少しだけ
あ、でも私フォークとナイフしかなくて
新しいスプーンを頂きましょう

優しい甘さで、美味しいです
…えっと、よろしければ私のも一口どうですか?
解けたアイスの甘さが美味しいですよね



 雨の季節だからこそ、鮮やかに彩られる花の小径。
「紫陽花トンネルも坂道も、凄く綺麗でしたね」
 ……まるで別の世界に迷い込んだんじゃないかって思ったくらいです、って。
 月居・蒼汰(泡沫メランコリー・f16730)が感嘆の溜息と共に紡げば。
「紫陽花と桜が一緒の景色、幻想的でとっても綺麗でした」
 円らな苺色の瞳の瞳を細め、ラナ・スピラエア(苺色の魔法・f06644)もそうふわりと笑んで返す。
 良い香り漂う紫陽花の隧道を並んで抜けて、色とりどりの手毬花が咲く坂道を一緒にゆっくりと歩けば。
 本来ならば、今の時期には見る事ができないはずの桜の花弁がひらり、艶やかな紫陽花に彩りを添える。
 そんな一緒に見る景色は、何だか不思議で。
「桜と紫陽花が一緒に楽しめるのもこの世界ならではですし」
 この時期のサクラミラージュでしか見られない、とっておきの風景。
 そしてラナはふと、すぐ隣を歩く彼を見上げてから。
 ――蒼汰さんと一緒だから、尚綺麗に映るのかも。
 感じるそんな気持ちは、そっと心にだけ秘めて。
「雨の中の景色も見てみたいです」
 ラムプの光に煌めく雫纏う手毬花へと視線を戻し紡ぐ。
 それからふたり足を運んだのは、あじさい坂の上に佇む古民家カフェー。
 そして暫くメニューと睨めっこした後、それぞれ店主へオーダーを告げる。
「ハムとチーズの焼きサンドと餡蜜と、一緒に3色アイスクリンも」
「私はシンプルなパンケーキを。折角だから私も、アイスを3色乗せて下さい」
 あ、少し小さめでお願いします、とラナは付け加えてから。
 注文の品が運ばれてくれば、ぱっと笑顔も咲いて。ひとくち食べれば、優しく広がる幸せの甘さ。
 蒼汰はデザートを運んでくれた店主の春江に、笑顔でお礼を伝えた後。
 眼前の華やかな食後のデザートに、そわそわと跳ねる耳。
 そしてひと掬い、餡蜜を食べてみれば。今度は嬉しそうに、耳もぴこり。
 そんな、美味しそうに餡蜜を食べる彼をじっと見つめて。
「あんみつって、どんな味ですか?」
 食べたことの無いスイーツに思わず興味を隠し切れず、ラナが訊ねてみれば。
「あんみつですか? 程よい甘さでとっても美味しいですよ」
 ――ふふ、良ければ一口どうですか?
 そうスッと、興味深々ないろを讃える瞳で見つめる彼女の前に、器を寄せる蒼汰。
 ラナは彼の言葉に、一瞬苺色の瞳をぱちくりとさせて。
 はしたなかったかと少し慌てるけれど。
「えっと、じゃあ少しだけ」
 フォークとナイフしかない自分の手元に気付き、新しいスプーンを貰ってから。
 そうっとひとくち、初めて食べるスイーツを口にしてみれば。
「優しい甘さで、美味しいです」
 ラナが咲かせるのは、餡蜜の甘さのような柔らかな笑顔。
 そんな、美味しそうに食べる様子をさり気なく見ていたら。
「……えっと、よろしければ私のも一口どうですか?」
 続いた思わぬ申し出に、蒼汰は思わず、彼女を映した金の瞳を瞬かせるけれど。
「……はい、俺もいただきます」
 お言葉に甘えて、フォークでパンケーキの端を少し切って口へ。
 そしてじっと見つめる彼女へと、美味しいです、って微笑めば。
「解けたアイスの甘さが美味しいですよね」
 こくりと嬉しそうに頷きながらも再び咲く、ラナの微笑み。
 確かに、餡蜜もパンケーキも紫陽花アイスクリンも、どれも美味しくて幸せだけれど。
 でも、やっぱり……蒼汰も、目の前に咲いた笑顔を見つめながら心に思う。
 ――こんな他愛ない時間が幸せなのは、やっぱりラナさんと一緒だからかな、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

橙樹・千織
櫻宵さん/f02768

ふふ、不思議で素敵な場所ですねぇ
あらあら、お腹壊さないように気をつけて?
私ですか?私は餡蜜にピンクと紫のを小さく咲かせてもらいました
あぁ、そうだ温かい飲み物も一緒にお願いしておきましょうかねぇ

綺麗なステンドグラスですねぇ
ふむ、体験もできるみたいですよ?
簪に…ええ、ええ
とても良いものになると思います
ふふふ、ぜひご一緒させてくださいな

作るのだけでなく、教えるのもお上手なのですねぇ
とてもわかりやすいし、楽しいです

あぁ、そういえば…
ハート型の紫陽花が咲いていると聞いたのですが、それが何処かオーナーさんはご存じですか?
なんとなしに問いかけてみましょう

…?
櫻宵さん、大丈夫ですか?


誘名・櫻宵
🌸 千織/f02428

桜と紫陽花、春と梅雨が咲く美しい場所ね
まさに女子会に相応しいわ
きゃー!綺麗で可愛いスイーツだこと!
みてみて千織!
三色紫陽花のアイスクリンよ!
どの色も1つずつ、咲かせてもらったの
可愛いくて気に入ったわ
冷たくてすうととけていって美味しいの
あなたは何にしたの?

すっかりお腹が満ちれば興味が移るのは、ステンドグラスの紫陽花
これ、私にも作れるのかしら?
光に透けて揺れる紫陽花を、簪に咲かせたら素敵だと思ってね
千織、よかったら一緒に作らない?

オーナーさんは流石手馴れてるわね
思い入れあるお気に入りの作品はあるのかしら
何気なく尋ねてみるわ
…息子に似た影朧を
なんて…何だか少し

ううん、大丈夫よ



 紫陽花が美しい場所は他にもあるし、紫陽花自体この時期には良く見かける花であるけれど。
「桜と紫陽花、春と梅雨が咲く美しい場所ね。まさに女子会に相応しいわ」
 乙女心擽るピンク色の桜花弁が艶やかな紫陽花を飾る光景は、この世界だからこそのもの。
 そんな誘名・櫻宵(貪婪屠櫻・f02768)の言葉に、いつもの様に穏やかに笑みながら。
「ふふ、不思議で素敵な場所ですねぇ」
 本来ならば同時に見る事は叶わない花の景色に、そう瞳細める橙樹・千織(藍櫻を舞唄う面影草・f02428)。
 それに、雰囲気の良い古民家カフェーは、綺麗や可愛いがいっぱい。
「きゃー! 綺麗で可愛いスイーツだこと! みてみて千織! 三色紫陽花のアイスクリンよ!」
 ……どの色も1つずつ、咲かせてもらったの、って。
 櫻宵の春宵に咲く桜霞の瞳にも、運ばれてきた小さくて甘いアイスクリンの紫陽花が嬉々と咲いて。
 鮮やかな葉を思わせる緑の器にちょこんと咲いた三色の紫陽花は、美しくも可愛く、そして美味しそう。
 早速櫻宵は、手に取った薄花桜の石が飾られたスプーンでひと掬い。
 まずは桜の様なピンクの苺アイスクリンを口に運べば。
「可愛いくて気に入ったわ。冷たくてすうととけていって美味しいの」
 爽やかな甘さが優しい、乙女好みの味……?
 そんな女子感溢れるスイーツにキャッキャ心躍らせる櫻宵を、千織は微笑まし気に見つめて。
「あらあら、お腹壊さないように気をつけて?」
「あなたは何にしたの?」
 訊かれれば、ほわりと笑んで視線を落とす。
「私ですか? 私は餡蜜にピンクと紫のを小さく咲かせてもらいました」
 小振りのアイスクリン乗せて貰えば、たちまちそれは、雨の日特製の特別な紫陽花餡蜜に。
 それをはむりと口に運んで、ひやりとした甘さが広がるのを感じながら。
「あぁ、そうだ温かい飲み物も一緒にお願いしておきましょうかねぇ」
 冷たい物だけでなく温かい物もと、抜かりなくお願いする。
 そして可愛く美味しく楽しく、すっかりお腹が満ちれば。
「これ、私にも作れるのかしら?」
「綺麗なステンドグラスですねぇ。ふむ、体験もできるみたいですよ?」
 ふたりの興味が移るのは、ステンドグラスの紫陽花。
「光に透けて揺れる紫陽花を、簪に咲かせたら素敵だと思ってね」
「簪に……ええ、ええ。とても良いものになると思います」
 まんまる小さな煌めきの色纏う紫陽花がゆうらり揺れる簪は、きっと綺麗に決まっているから。
「千織、よかったら一緒に作らない?」
「ふふふ、ぜひご一緒させてくださいな」
 店主にお願いして、いざ作ってみることに!
「作るのだけでなく、教えるのもお上手なのですねぇ。とてもわかりやすいし、楽しいです」
「オーナーさんは流石手馴れてるわね。思い入れあるお気に入りの作品はあるのかしら」
 千織の言葉に照れたように笑み返し、何気なく訊ねた櫻宵の問いに。
 店主は、首から下げている紫陽花模様のステンドグラスのロケットペンダントを握りしめ、答える。
「やっぱり、この紫陽花のペンダントね。とっても思い入れも深いの……」
 ぱかりとあければ、その中には誰かの写真が入っているのだろう。
 それは、予知通りならきっと……。
「あぁ、そういえば……ハート型の紫陽花が咲いていると聞いたのですが、それが何処かオーナーさんはご存じですか?」
「あじさい坂に咲いていますよ。見つけた人は幸せになれるとか言われていますけどね」
 なんとなしにそう店主へと問いかけ、彼女と会話を交わす千織だが。
(「……息子に似た影朧を、なんて……何だか少し」)
 櫻宵の心に、密かに生じるのは――。
「……? 櫻宵さん、大丈夫ですか?」
 印象を変えた桜霞の瞳を見て、そう首を傾ける千織に。
 ふるりと花灯の桜鼠を揺らしながら、櫻宵は柔く笑んでみせる。
 ――ううん、大丈夫よ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

宵鍔・千鶴
よすが(f24152)と

雨露を滲ませた光彩を放つ紫陽花
桜色と相俟った窓辺の景色に
吐息だけを零すは心底から

カフェーのアイスクリンを見るや否や
やはり其方に心を奪われる
メニューと暫し睨めっこして
ね、よすがは何にする?
甘いもの結構好きなんだもんな。餡子だっけ
ぐ、たい焼きには抗えない(とても頷く)
俺はお腹空いてるからパンケエキで
勿論、紫陽花サアビス付き

冷たい鮮やかなあいすに温かいパンケエキが絶妙で
笑みも知らず溶け出して
よすがのも美味しそうだなあ。えい。
ひとくち、と餡子白玉ぱくり
此方も甘さが口一杯に広がり
俺のもあげる。とよすがの口元へ

空色の花が揺れれば
何処か名残惜しくて
また、今度一緒にとおねだりは忘れずに


夜霞・よすが
千鶴(f00683)と

雨とラムプできらきらした紫陽花と桜の景色
もともと花は好きだけどこれは格別綺麗だな

いろいろあって迷っちゃうよな
一緒にメニューをにらめっこ
でもやっぱここは餡蜜で!
やっぱり好物は外せない
甘いの全般いけるけど、餡子かな
おはぎにおしるこ、あとたい焼き
みっつめのは千鶴に同意を求めてみた

みかんや白玉に餡子を添えてたら
あ、千鶴がとってった
こっちも美味しいだろ?
実は俺も気になってた
パンケエキも遠慮なくぱくり
口の中に優しい味ひろがって
ひとくちひとくちが幸せだ
アイスクリンのサアビスも忘れず
もちろん残さずいただきます

楽しい時間はあっという間だ
おすすめの店とか見つけたら
教え合いっこしようぜ、約束な



 夜の闇に浮かび咲く満開の紫陽花は、ただでさえ綺麗な彩をしているというのに。
 宵鍔・千鶴(nyx・f00683)は感嘆の吐息だけを心底から零す。
 窓辺の景色を染めるのは、一面に煌めく艶やかな空いろ。
 それは雨露を滲ませた光彩を放ち、更には、はらり彩りを加える桜色と相俟って。
 本来ならば叶わないはずのふたつの季節が織り重なる、不思議で特別な景色。
「もともと花は好きだけどこれは格別綺麗だな」
 夜霞・よすが(目眩・f24152)も夜の如き深い赤の瞳に、雨とラムプでキラキラ輝く紫陽花と桜のいろを映し出す。
 けれども、そんな季節の花も勿論だけれど。
「ね、よすがは何にする?」
「いろいろあって迷っちゃうよな」
 やはり心奪われてしまった紫陽花は、小さくて冷たくて美味しいアイスクリン。
 ふたりで一緒に、メニューと暫し睨めっこ。
 そしてゆらりと大きく尻尾を揺らして、よすがは心に決める。
「でもやっぱここは餡蜜で!」
 ――やっぱり好物は外せない、って。
「甘いもの結構好きなんだもんな。餡子だっけ」
「甘いの全般いけるけど、餡子かな」
 ……おはぎにおしるこ――あとたい焼き。
 そうぴこりと耳を揺らしながら、ね? と言わんばかりに覗き込むように。
 みっつめのは千鶴に同意を求めてみれば。
「ぐ、たい焼きには抗えない」
 やっぱり、好物には抗えません……!
 そして、とても深くこくりと頷いてから。
「俺はお腹空いてるからパンケエキで」
 勿論、サアビスも抜かりなく。雨の日特製の紫陽花パンケエキを。
 程なくして運ばれてくれば、冷たい鮮やかなあいすに温かいパンケエキが絶妙で。
 紫陽花アイスクリンだけでなく、知らず零れる笑みもとろり蕩けて。
 千鶴がふと伸ばした、スプーンの先。
「よすがのも美味しそうだなあ」
 ――えい。
 ひとくち、と紡ぐと同時に掬った餡子白玉をぱくり。
「あ、千鶴がとってった」
 みかんや白玉に餡子をせっせと添えていたら、いつの間にか攫われた餡子。
 けれども勿論、口一杯に広がった甘さのお返しを。
 ――俺のもあげる。
 そう千鶴はよすがの口へと、パンケエキのお裾分け。
 実は俺も気になってた、って。遠慮なくよすがも、それをぱくり。
 刹那、口の中に優しい味ひろがって。
 ――ひとくちひとくちが幸せだ。
 自分の好物も勿論だけど、お互いの好物の交換こもまた、擽ったくて嬉しい。
 そしてよすがも抜かりなく、紫陽花アイスクリンを餡蜜にも咲かせて貰う。
 当然、残さずいただきます……!
 それから沢山甘い幸せの花を堪能して、ふと窓の外を見遣れば。
 ゆらりと揺れる空色の花。
 楽しい時間は、あっという間。
 また、今度一緒に――何処か名残惜しくて、そう千鶴が忘れずにおねだりすれば。
 よすがも、すぐにこくりと頷く。
「おすすめの店とか見つけたら、教え合いっこしようぜ」
 優しい光と桜、艶やかな紫陽花のいろを、もう暫く。
 見つめる瞳に咲かせながら――約束な、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

霧島・ニュイ
【華座敷】

番傘を借りて紫陽花トンネルを歩く
傘をくるくる
綺麗な紫陽花園を、兄さんとクロトさんと歩けて嬉しいなー(ほくほく

ラムプで照らされたそれは闇夜に咲く魔法のようで
僕こういうの大好きー♪
幻想的な魔法にほくほく
機嫌は最高潮
懐かしさを感じるのはどうして?
思い出せない。紫陽花に縁はないはずだけど……
白から青、青から紫へ移ろう花を至近距離で見つめて笑顔
かわいー、きれー。
やっぱり惹かれるのは青い花
優しく花を撫でて愛でて
兄さんに頭を撫でられてぱぁっと顔を輝かせて猫のように目を細める

さー、先に進もっかー
傘を畳んで振り返る
右に兄さん、左にクロトさん
二人の腕を引こう
ちょっとすりすりして甘えてもいいかな(すりすり


クロト・ラトキエ
【華座敷】

紫陽花…か。

花愛でる二人を邪魔せぬ様に、
少し離れ、その背を眺めついてゆく。
傘は差さぬので、雨上がりなのは助かりました。

視野は広く。
蔓に咲く紫陽花とは、僕も初めて知りましたが。
夜の中。
本来の色に、光に彩られた、
地の萼と、舞い落ちる花弁。
この世界特有の稀有な光景
…とはいえ流石は紫陽花庭園、皆さん其方に夢中の様で。

紫陽花…
――無情、無常、心変わり。
白に紅…青(セイ)に、紫(シ)、
雨を思わすこの花は、少し――


こんな凄い景色か。それとも季節の所為?
ごめん。ぼーっとしてました。
顔を向けられれば笑み返して。
花言葉は色によって違うそうですよ、って。
甘えて来る頭へぽんぽん手をやって。
後は、引かれる侭に


佐那・千之助
【華座敷】
故郷において花は稀少で、愛すべき聖
世界を巡り始めてからも花への畏敬の念は変わらず…
花満ちる夜の彩には、唯々心奪われるばかり

紫の陽の花と言うのに
雨に濡れた姿が美しいな
瑞々しいいのちに惹かれるまま眺め入り

(花の色は土によって変わると聞いた
思い起こすのは家族の瞳
母の藍、父の紅、己に宿すあわいの二藍…
花色との近しさに、記憶を重ねて)
傍に在るものでも、育つ環境が異なると違ういろ…

降る花弁に、我に返り
彼らは何を想うのか
手を伸ばし、ニュイが花を撫でるのと同じ優しさを、彼の頭へ
花咲く笑顔に目を細め
クロトは花言葉にも詳しそう
集まって咲くから、仲良し?などと想像

手を引かれ、熱を分け
ああ。ゆっくりな



 夜の闇に映えるように、くるくると。紫陽花トンネルに咲いたのは番傘。
 ほくほくとそれを差し歩むのは、霧島・ニュイ(霧雲・f12029)。
「綺麗な紫陽花園を、兄さんとクロトさんと歩けて嬉しいなー」
 いや、ニュイだけでなく、佐那・千之助(火輪・f00454)とクロト・ラトキエ(TTX・f00472)も一緒。
「紫の陽の花と言うのに、雨に濡れた姿が美しいな」
 千之助が惹かれるまま眺め入るのは、瑞々しいいのち。
 彼の故郷においては、花という存在自体が稀少で、愛すべき聖なのだ。
 だから世界を巡り始めてからも、花への畏敬の念は変わらずに。
 千之助は唯々心奪われるばかりである。その花満ちる夜の彩に。
「紫陽花……か」
 クロトが眺めるのは、花愛でる二人の背。
 そして邪魔せぬ様にと少し離れ歩きながらも、ふと紫陽花咲く空を見上げ思う。
 ――傘は差さぬので、雨上がりなのは助かりました、と。
「僕こういうの大好きー♪」
 ラムプで仄か照らされ浮かび上がるそれはまるで、闇夜に咲く魔法のようで。
 幻想的な魔法にほくほく、機嫌は最高潮のニュイ。
 けれど、眺めるその彩は不思議で。
(「懐かしさを感じるのはどうして?」)
 ニュイはそうふと小さく首を傾ける。
 けれど――思い出せない。
(「紫陽花に縁はないはずだけど……」)
 そんなニュイと共に紫陽花を眺め歩く千之助は、ふと知っている彩を眼前の花に重ねる。
(「花の色は土によって変わると聞いた」)
 ひとことに紫陽花と言っても、そのいろは様々で。
 ――母の藍、父の紅、己に宿すあわいの二藍……記憶と同じ、花色との近しさを。
 千之助が思い起こすのはそう、彼の家族の瞳に咲くいろ。
「蔓に咲く紫陽花とは、僕も初めて知りましたが」
 ぐるり、青の視線巡らす視野は広く。
 クロトが眺めるは、夜の中、本来の色に加え、光に彩られたその花だけでなく。
 地の萼と、舞い落ちる花弁――この世界特有の稀有な光景。
 けれど、数歩前をゆく彼らの視線を追えば。
(「……とはいえ流石は紫陽花庭園、皆さん其方に夢中の様で」)
 やはり、紫陽花に釘付けのようだ。
 だからクロトも同じ様に、その花を暫し見つめてみる。
(「紫陽花……無情、無常、心変わり。白に紅……青に、紫……セイに、シ」)
 ……雨を思わすこの花は、少し――。
(「こんな凄い景色か。それとも季節の所為?」)
 クロトは良い香り漂わせる雨の花を前に、そう微かに首を傾ける。
 そして……そんなことを思っていたら。
 おもむろに、目の前に咲いていた番傘の花が閉じて。
「さー、先に進もっかー」
 くるり振り返ったニュイと、ぱちり目が合えば。
「ごめん。ぼーっとしてました」
 そう笑み返し、千之助と共に腕を引かれて。
 ……ちょっとすりすりして甘えてもいいかな、なんて。
 すりすりしてくるその頭へと手をやって、ぽんぽん。
「かわいー、きれー」
 ニュイは二人の腕を引きながらも……白から青、青から紫へ移ろう花を至近距離で見つめて笑顔を咲かせつつも。
 ――やっぱり惹かれるのは青い花、って。
 そう優しく花を撫でて愛でれば。
 ひらり眼前に踊り降る花弁に、千之助はふと我に返って。
 ――彼らは何を想うのか。
 伸ばすその手の行く先は、花を撫でてあげるニュイの頭。
 与えてあげているのと同じ優しさを、彼へ。
 そんな頭を撫でる千之助の掌の感触に、ぱぁっと顔を輝かせて。目を細めるニュイの様は猫のよう。
 そして花咲く笑顔に目を細めながらも、千之助はふと紫陽花見つめるクロトへと視線を移す。
 ……クロトは花言葉にも詳しそう、と。
「花言葉は色によって違うそうですよ」
 そんな彼の言葉に、千之助はもう一度手毬の様な紫陽花へと目を遣って想像してみる。
 ――集まって咲くから、仲良し? などと。
 そして後は甘えるようにニュイに引かれる侭に、クロトは紫陽花と桜咲く景色をふたりと並んで歩いて。
 千之助も己の熱を分けながら、引かれるその手に。
 眼前の花に似た二藍の双眸を細める――ああ。ゆっくりな、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

星野・祐一
【花澤・まゆちゃん(f17856)と一緒に】

まゆちゃんに誘われて紫陽花を見に来たぜ
この世界に来るのは初めてだけど
何処でも桜が舞ってるんだなぁ…紫陽花も綺麗だ

あーたしかに雨は俺も大の苦手だけど
雨に濡れた紫陽花を見てると
不思議と悪くない気分になるんだよね
だから紫陽花は俺が一番好きな花なんだ

まゆちゃんは天使のような翼
青空を思わせるような瞳
そして空が飛べるのに自転車が好きな女の子
それが何だか不思議で楽しくて
もっと一緒にいたいと思わせる女の子
それが「友達」としてか「異性」としてかはわからないけれど
…ま、今はこれでいいんじゃないかな

よし、じゃあアイスクリン食べに行くか!
俺は青いソーダ味な!

アドリブ等歓迎


花澤・まゆ
【星野・祐一さん(f17856)とご一緒に】

祐一さんと紫陽花が見たくて来てみたよ
あとね、幻朧桜も見てほしかったの!
紫陽花のトンネルを抜けると、ほら
雨の向こうには桜の花、手元には紫陽花の花
綺麗でしょ?

この紫陽花の坂道、綺麗だね
紫陽花には雨がよく似合うと思うんだ
あたしは雨が降ると元気なくしちゃうんだけど…
でもね、紫陽花の季節だけは別
紫陽花を見ると、雨もいいなあって思うの!

まるで手鞠のような紫陽花を眺めて
ちょっとだけ祐一さんのことを考える
とても頼りになる「友達」って言うと
最近は胸がちくりとするの
どうしてかな

まあ、いいか!
祐一さん、あそこのカフェーでアイスクリン食べよう!

アドリブなど歓迎です



 本来ならば、決して同じ風景に咲くはずのない、ふたつの花。
 けれどもそれが、此処――サクラミラージュでは見る事が叶うのだ。
「紫陽花のトンネルを抜けると、ほら。雨の向こうには桜の花、手元には紫陽花の花」
 ……綺麗でしょ?
 花澤・まゆ(千紫万紅・f27638)は、そう隣の彼を見上げて。
「この世界に来るのは初めてだけど、何処でも桜が舞ってるんだなぁ」
 ……紫陽花も綺麗だ、と。
 梅雨に咲く花々の風景に、銀の視線巡らせる星野・祐一(スペースノイドのブラスターガンナー・f17856)。
 そんな彼と紫陽花が見たくて……あと、幻朧桜も見て欲しくて。
 まゆは彼を誘い、そして共に、ゆるく伸びるあじさい坂を並んで歩く。
「この紫陽花の坂道、綺麗だね」
 自分達を導くかの様に咲く紫陽花は、様々ないろを湛えていて。
 今は上がっている雨の雫を纏い、その艶やかさを増している。
 そんな花々を見つめ、紫陽花には雨がよく似合うと思うんだ、って、そう口にした後。
「あたしは雨が降ると元気なくしちゃうんだけど……でもね、紫陽花の季節だけは別。紫陽花を見ると、雨もいいなあって思うの!」
 雨の日こそ、お出掛け日和。
 まゆがそう紡げば、同意するように祐一もこくりと頷く。
「あーたしかに雨は俺も大の苦手だけど、雨に濡れた紫陽花を見てると不思議と悪くない気分になるんだよね」
 ――だから紫陽花は俺が一番好きな花なんだ、って。
 まゆはそんな声を耳にしながらも、まるで手鞠のような紫陽花を眺めつつも。
 ちょっとだけ考えてみるのは――隣を歩く、祐一のこと。
 ……とても頼りになる「友達」。
 けれどもそう思えば、何故だろうか――。
(「最近は胸がちくりとするの。どうしてかな」)
 そして祐一も、共に歩くまゆのことをふと見つめ、思う。
(「まゆちゃんは天使のような翼、青空を思わせるような瞳。そして空が飛べるのに自転車が好きな女の子」)
 それが何だか不思議で楽しくて。
 ――もっと一緒にいたいと思わせる女の子。
 そう思わせる彼女に対して抱くこの気持ちは、「友達」としてか「異性」としてかはわからないけれど。
(「……ま、今はこれでいいんじゃないかな」)
(「まあ、いいか!」)
 同時にそう思えば、不意にぱちりと視線が合って。
 何だかおかしくて、少しだけ何故か照れ臭くて、共に笑み合った後。 
「祐一さん、あそこのカフェーでアイスクリン食べよう!」
「よし、じゃあアイスクリン食べに行くか! 俺は青いソーダ味な!」
 次は冷たくて甘い、雨の日だけ咲かせてくれるサアビスの紫陽花を楽しむべく。
 色とりどりの紫陽花に導かれるまま、ふたり坂の上に佇む古民家カフェーへ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふわぁ、アヒルさん、紫陽花のトンネル綺麗ですね。
・・・、あの、アヒルさん、この格好、もうやめにしませんか?
さっきからずっと目立っていて恥ずかしいんですけど。
・・・、ダメですか。
ふぇぇ、紫陽花の赤や青の中ですと、この黄色のレインコートは目立つんですよ。
アヒルさんはまだ可愛らしいヒヨコさんに見えるから・・・。
ごめんなさい、さっきもそれでこのペアルックにさせられたんですよね。
・・・、ふぇぇ、雨、全然止みそうにないですね。



 日中降っていた雨も、暫くは止んでいたけれど。
 またぱらりと、通り雨のように降り始める。
 そんな中、満開に花咲く香りの良い隧道を歩くのは、フリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)。
「ふわぁ、アヒルさん、紫陽花のトンネル綺麗ですね」
 勿論その傍らには、いつもの様に、アヒルさんの姿もあるけれど。
 ちらりとそんなアヒルさんに視線を向け、フリルはそっと言ってみる。
「……、あの、アヒルさん、この格好、もうやめにしませんか?」
 ――さっきからずっと目立っていて恥ずかしいんですけど、って。
 けれどそんなフリルの申し出も空しく。
「……、ダメですか。ふぇぇ、紫陽花の赤や青の中ですと、この黄色のレインコートは目立つんですよ」
 夜の紫陽花の風景の中だとめちゃめちゃ目立つ黄色のレインコートを脱ぐのは、却下なようです。
「アヒルさんはまだ可愛らしいヒヨコさんに見えるから……」
 フリルはそう、ヒヨコさんに見えるアヒルさんを見遣るけれど。
 ……ごめんなさい、さっきもそれでこのペアルックにさせられたんですよね、って続けてから。
 ふと、梅雨の空へと、おどおどした赤い瞳を向ける。
 確かに派手でちょっぴり恥ずかしいとはいえ。
 これを着ていれば雨は凌げるから、一応今脱ぐのは諦めたフリルだけれど。
 雨が止めば……なんて期待しつつ、そっと空を見上げれば。
「……、ふぇぇ、雨、全然止みそうにないですね」
 まだまだ当分、黄色のレインコートは脱ぐことはできなさそうです。

大成功 🔵​🔵​🔵​

東雲・円月
【比翼月】

紫陽花トンネル……草花のトンネルは結構メジャーなんでしょうか。
紅葉トンネル、藤棚のトンネル、色々ありますよね。
折角だし傘を借りようかな。咲夜、一緒に入ろう?

ハート型の紫陽花か。流石に探して見つかるものではなさそう。
こういうのは、ぱっと見つかったら、ってね。運ですよね。

そう言えば母さんの好きな花だったっけ。
元気にしてるかな?

雨は面倒臭いけど、雨の音は好きなんですよね。ぱたぱた。ぽたぽた。
流石に土砂降りだと……いや、でも家の中なら嫌じゃないかも。

疲れたらカフェーに行こう。それまでゆっくり歩こうか。
俺はいつも食べてばかりだから、たまにはこういうのも。
……あとで何か食べようとは思うけど。


東雲・咲夜
【比翼月】
陽の許も雨下も、親しみある風景やけど
夜のお花見に紫陽花を見るんは初めて
淡い色彩に仄かな灯りが美しいこと
桜までもが寄り添うて…嗚呼、浪漫ちっく

紫陽花は母さまの好きな花のひとつ
薔薇のように艶やかで
紫陽花のように淑やかな母さま
せやからうちも、紫陽花が大好き

くるりくるり…鼻唄と回る櫻の傘華
天より下る泪を弾く
其の音色が心地良い
うちよりずぅっと背の高いえっくん
向かい合えば自然と交錯する視線
隣におると…ちょっぴり照れくさいのはなんでやろ

ハート型…見つけられたらラッキーくらいやね
…と云いつつも
瑞眸は彼方此方、いったりきたり
はっ、つい…!
限定ものに弱いんは日本人の性なん…ええ、きっと



 紫陽花が飾る雨上がりのトンネルを進んで行くたびに。
 ふわり鼻を擽るのは、紫陽花の良い香りとまだ残る雨の匂い。
(「紫陽花トンネル……草花のトンネルは結構メジャーなんでしょうか」)
 ……紅葉トンネル、藤棚のトンネル、色々ありますよね、と。
 そう花の隧道に視線を巡らせ思う、東雲・円月(桜花銀月・f00841)のすぐ傍で。
「陽の許も雨下も、親しみある風景やけど。夜のお花見に紫陽花を見るんは初めて」
 ……淡い色彩に仄かな灯りが美しいこと。
 そして闇に浮かび咲く紫陽花だけでなく、はらりひらりと。
 雨粒のかわりに天より舞い降るは、夜風に踊る桜銀絲の美髪と似た色の花弁たち。
 そんな風景を歩く東雲・咲夜(桜妃*水守姫・f00865)が艶やかな唇から漏らすのは、感嘆の彩を乗せた溜息。
 ――桜までもが寄り添うて……嗚呼、浪漫ちっく、って。
 けれど、寄り添い合うのは、何も咲き誇る花たちだけではない。
 円月はふと、トンネル内に置かれている傘立てを見つけて。
「折角だし傘を借りようかな。咲夜、一緒に入ろう?」
 番傘を手に取り、パッとふたりの頭上に咲かせれば……自然と寄り添う比翼月。
 そして瑞々しい藍眸に映る花に、咲夜は母さまの姿を重ねる。
 薔薇のように艶やかで、紫陽花のように淑やかな母さま。
「紫陽花は母さまの好きな花のひとつ。せやからうちも、紫陽花が大好き」
「そう言えば母さんの好きな花だったっけ」
 ……元気にしてるかな?
 円月も母を思わせる花を咲夜と共に眺めつつ、ふと呟きを落とす。
 それから、くるりくるり……鼻唄と回る櫻の傘華が、天より下る泪を弾いて。
 響くその音色が耳に心地良い。
「雨は面倒臭いけど、雨の音は好きなんですよね」
 ――ぱたぱた。ぽたぽた。
 そう傘に落ち音色奏でる雫たちの旋律を聴きながらも、円月は思う。
(「流石に土砂降りだと……いや、でも家の中なら嫌じゃないかも」)
 静寂の中で聴くその音も、悪くはないと。
 それからトンネルを抜ければ、ゆるり続くあじさい坂。
 まるで導くように咲き誇る紫陽花は数多で。
 咲き誇るその中で、もしも見つけられたら幸福が訪れると……そう噂されている紫陽花は、幸せのカタチ。
「ハート型……見つけられたらラッキーくらいやね」
「ハート型の紫陽花か。流石に探して見つかるものではなさそう。こういうのは、ぱっと見つかったら、ってね」
 運ですよね、なんて言う彼の隣で。
 ラッキーくらいだと言いつつも……つい咲夜の瑞眸は彼方此方、いったりきたり。
 思いのほか真剣に、じっと紫陽花たちに目を凝らしていたけれど。
 ――はっ、つい……!
 ふと我に返り、ぱちくりと瞳を瞬かせて。
 ちょっぴり恥ずかし気に、そうっと紡ぐ。
「限定ものに弱いんは日本人の性なん……ええ、きっと」
 けれど――ハート形の紫陽花はなかなか見つからなくても。
 ……ほら、咲夜、肩が濡れてる。
 そう耳を擽る声と共に、そっと大きな手で引き寄せられる華奢な肩。
 幸せの紫陽花に頼らなくても……刹那の幸せが、此処には確かにあるから。
 そんな咲夜を雨粒から護る様に、円月は引き寄せた彼女の方へとより傘の花を傾けつつも。
「疲れたらカフェーに行こう。それまでゆっくり歩こうか」
 導かれる様に続く坂道の上、見えて来た古民家カフェーへと目を遣りつつ。
(「俺はいつも食べてばかりだから、たまにはこういうのも」)
 円月は、まだもう少しこうやって、咲夜と共に紫陽花の景色を眺め楽しもうと思うけれども。
 でもやはりこうも、呟きを落とす。
 ……あとで何か食べようとは思うけど、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アレクシス・ミラ
【星雨】
アドリブ◎
白の将校服姿

影朧の事も忘れず…でも、今はこの景色を楽しもうかと
親愛なるレディであり、薬草や紅茶の師でもある彼女に
散歩のお誘いを
どうぞ、レディ。よければ、僕の肩にお座りください
手を差し出し、肩へと導こう
番傘をさして紫陽花の庭園へ
…ふふ、本当だ
先生から教わったお茶の色に似ている

カフェーを示されれば、そちらへ
僕は温かいお茶と…折角だから3色アイスを一つの器に
窓の外…空色の紫陽花はレディの色に似ているね
綺麗な色だと微笑んで

…勿論だとも
守るべき、尊い花達だ。奪われ、荒らされぬように…未来まで咲き続けられるように、守ってみせると君に…貴女に誓いましょう。我が師よ
…なんて、少し堅かったかな


氷雫森・レイン
【星雨】
騎士様のお誘いならと深く聞かず来たの
「見事ね」
以前見に来たのとはまた少し違う場所
桜も一緒なんて贅沢
「ええ、行きましょう」
信頼と親愛を寄せられる人
今は薬効のある植物や紅茶について少し教えている弟子でもあるけれど
「先日のマロウティーを思い出す色合いね?」
あまり私を乗せて歩き回らせるのも申し訳ないしそれとなくカフェーを示して
雨の中は少し肌寒いからアイスはともかくパンケーキと温かいお茶は頂くわ
店から見えるのもまた絶景
「…人に咲く笑顔もまた花。ねぇ騎士様、貴方と私が守り続けるのは花と花が咲ける場所の両方よ」
温順で無邪気な、我ら妖精種が守るべき人の子そのものの彼
なれど私の弟子なら覚えておいて頂戴ね



 やっぱり思った通り、この世界によく映える白の将校服纏う傍らの彼は、信頼を裏切らない。
 ……騎士様のお誘いならと深く聞かず来たの、と。
 アレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)と共に、雨上がりの夜を歩きながら。
 氷雫森・レイン(雨垂れ雫の氷王冠・f10073)はこう呟きを零す。
「見事ね」
 眼前に咲き誇り夜の闇に浮かぶは、満開の紫陽花。
 以前見に来たのとはまた少し違う場所。
 それに今回は、本来ならば共に見る事が叶わない彩りも此処にはある。
 ――桜も一緒なんて贅沢、って。
 アレクシスも、赴いた目的である影朧の事も勿論忘れずに。
(「……でも、今はこの景色を楽しもうかと」)
 散歩にお誘いした、親愛なるレディであり、薬草や紅茶の師でもある彼女と一緒に。
 そしてスッと差し出されるのは、大きな掌。
「どうぞ、レディ。よければ、僕の肩にお座りください」
 その手が、レディを肩へと導けば。
「ええ、行きましょう」
 直ぐにそう、その身を彼の肩にレインが預けられるのは、信頼と親愛を寄せられる人だから。
 そんな彼女を、時折気紛れに落ちて来る雨露から護るかのように。
 ぱっとアレクシスが梅雨空に咲かせたのは、くるり回る番傘。
 レインは、乗った肩の上から紫陽花の庭園を眺めつつも。
 今は薬効のある植物や紅茶について少し教えている弟子でもある彼へと、こう紡ぐ。
「先日のマロウティーを思い出す色合いね?」
 青に雨の如き雫を垂らせば、紫からピンクへと変化する色。
 青や紫の紫陽花にはらり、桜色の花弁が彩りを添えて。
「……ふふ、本当だ。先生から教わったお茶の色に似ている」
 アレクシスもそう、すぐに頷くような……そんな眼前のいろたちは、まさにレインの言う通り、マロウティーとお揃いの色。
 そして暫し、紫陽花と桜咲く夜の景色を楽しんでいたレインだけど。
 あまり乗せて貰ったまま歩き回らせるのも申し訳ないし、と。
 彼へと示したのは、ゆるい坂の上に佇む、ラムプ灯る古民家カフェー。
 静かだけれど落ち着く雰囲気の店内で、紫陽花の庭見える窓際の席にふたり座れば。
「僕は温かいお茶と……折角だから3色アイスを一つの器に」
「雨の中は少し肌寒いからアイスはともかくパンケーキと温かいお茶は頂くわ」
 オーダーを済ませた後、ふと見遣る窓の外を染める彩は、空色。
「窓の外……空色の紫陽花はレディの色に似ているね」
 そう、綺麗な色だと微笑むアレクシスに。
 レインは絶景を映す紫の瞳をそっと細めた後、こう言の葉を紡ぐ。
「……人に咲く笑顔もまた花。ねぇ騎士様、貴方と私が守り続けるのは花と花が咲ける場所の両方よ」
 温順で無邪気な、我ら妖精種が守るべき人の子そのものの彼。
 なれど――私の弟子なら覚えておいて頂戴ね、って。
「……勿論だとも。守るべき、尊い花達だ」
 そしてアレクシスも、眼前の彼女の如き空色の紫陽花を前に誓う。
 ――奪われ、荒らされぬように……未来まで咲き続けられるように、守ってみせると君に……貴女に誓いましょう。我が師よ、と。
 そう口にした後、ふっと柔く笑んでみせる。
 ……なんて、少し堅かったかな、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

百鬼・景近
【花守】
(小径をゆるりと歩みつつ)
――奇しくも、今年はよく見るね
しかし今宵はまた一段と場違いな所へ呼んでくれたものだな
(優しく温かい光景にはどうにも馴染まない、と思いつつも――そっと花を見渡して)
まぁ、仕事序ででもなければ、こうして目にする事もなかった貴重な光景だし、ね――折角だし楽しめるものは楽しむとするよ

ところで…ねぇ、もしかしなくても、本当は俺じゃない相手を誘いたかったんじゃないの?(視線の先を辿って)
ああ、うん…何か、御免ね?
まぁ、ついてきたからには最後まで付き合うから、安心して

…でも自棄食いに付き合うのは、どうしようかなぁ
はいはい、じゃあそういう事にしておこう
花の幸運があると良いね?


呉羽・伊織
【花守】
(付かず離れずふらりと進み)
そーいやまた紫陽花か――ウン、お前とは妙に巡ってるな
…確かに野郎二人で来るにゃ、またアレな雰囲気かもしんないケド!
(ちょっと虚しくなった己の気分やら、何か物憂げな連れの空気を紛らわすよーに、あえて明るく笑って花へと目を向け!)
たまには良いモンだろ?…ってこの台詞も何気に何度も繰り返してるケド!
場違いでも何でも、こーいう時は楽しんだモン勝ちな!

あ、貴重といや、ほら丁度そこの影!
噂のハート花が…
…違うって最初からかげちー誘う気しかなかったからネ?

くっ、そんなんじゃないからホント!
コレはシゴトと、次また誰か誘う時の情報収集も兼ねたアレだから!
そんな目で見ないの!



 付かず離れずふらり、ゆるりと。
 歩む花の小径をそっと見回しつつ、百鬼・景近(化野・f10122)は口を開く。
 ――奇しくも、今年はよく見るね、と。
 その声に、呉羽・伊織(翳・f03578)も小さく頷きながら。
「そーいやまた紫陽花か――ウン、お前とは妙に巡ってるな」
「しかし今宵はまた一段と場違いな所へ呼んでくれたものだな」
 ……優しく温かい光景にはどうにも馴染まない、と。
 そう思いつつも花へと向ける連れの視線を追うように同じく目を向け、あえて明るく笑ってみせる伊織。
「……確かに野郎二人で来るにゃ、またアレな雰囲気かもしんないケド!」
 ちょっと虚しくなった己の気分やら、何か物憂げな連れの空気を紛らわすように。
「たまには良いモンだろ? ……ってこの台詞も何気に何度も繰り返してるケド!」
 ――場違いでも何でも、こーいう時は楽しんだモン勝ちな! って。
 楽しかったり美しかったり美味しかったり、それはたまにとは言わずに。 
「まぁ、仕事序ででもなければ、こうして目にする事もなかった貴重な光景だし、ね――折角だし楽しめるものは楽しむとするよ」
 何度だって、多分きっと楽しいから。
 ということで、全力で堪能します!
 紫陽花の隧道を抜け、さしかかったあじさい坂で、見事に咲く色とりどりの花々を見ていた伊織だが。
「あ、貴重といや、ほら丁度そこの影! 噂のハート花が……」
 滅多に見つけられないと噂の、幸せのハート型紫陽花を発見!
 そんな視線の先を景近は辿って。
「ところで……ねぇ、もしかしなくても、本当は俺じゃない相手を誘いたかったんじゃないの?」
 ――ああ、うん……何か、御免ね?
 思わずそう伊織へと告げるけれど。
「……違うって最初からかげちー誘う気しかなかったからネ?」
「まぁ、ついてきたからには最後まで付き合うから、安心して」
 ……でも自棄食いに付き合うのは、どうしようかなぁ、なんて。
 続いた言葉に、伊織は首を大きく横に振りつつも声を上げる。
「くっ、そんなんじゃないからホント! コレはシゴトと、次また誰か誘う時の情報収集も兼ねたアレだから!」
 ……もしかしたらまた次も一緒に、紫陽花を巡る事になるかもしれないけれど。
「はいはい、じゃあそういう事にしておこう」
 景近はそう適当にあしらうように言った後。
 ちらりと何処か哀れそうに伊織を見遣り、紡ぐ――花の幸運があると良いね? って。
 そしてハートの紫陽花が見守るように咲く中、伊織はそんな連れの視線にこう返すのだった。
 ――そんな目で見ないの! って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
【豹兎】

僕は朱の、鉄馬君は黒地に黄柄の入った番傘を手に
紫陽花トンネルを並んで歩く

ほんとに一面紫陽花だね
こんなに色んな色を同時に見るのなんて初めてじゃない?
綺麗だなぁ…

さり気なく僕の歩幅に合わせてくれる鉄馬君の優しさに
クスリと笑みを溢しつつ

んぇ?あいつ、って……あぁ、えと…なんで?
突然聞かれた問いにきょとんと表情を瞬かせるも
続いた言葉にぽんっと頬を染め

でっ…い、いいじゃん別に
今日は鉄馬君と歩きたい気分だったの(ぷい
だってさ、鉄馬君覚えてる?
去年も…一緒に紫陽花見たじゃん

問題です
紫陽花の花言葉はなんだったでしょー
ふふ、正解
あれから1年…今日は2度目のありがとうの日
これからも…よろしくね?


不知火・鉄馬
【豹兎】

身長差の関係でどうしても大きくなる歩幅を
ごく自然に澪に合わせてやりながら
澪にいつ何があっても支えられるよう
ぶつからねぇ程度に隣に寄り添う

が、無邪気に綻ぶ澪の表情に
脳裏に浮かぶのは幼馴染みの男の姿

お前さ、あいつじゃなくて良かったのかよ
こういうとここそデート向けだろ
折角恋人になったのに勿体ねぇ

明らかにデートの単語に反応したにも関わらず
顔を背ける様子に、素直じゃねぇなとポツリと溢し

去年?
……あぁ、見たな
花言葉は移り気
そして、一家団欒
家族の結びつき…
お前に教わった言葉だ

それ伝えるためだけにわざわざ呼んだのか?
くくっ…まぁお前らしいけど
こっちこそありがとな
色々与えられた分、責任持って護ってやるよ



 紫陽花のトンネルにぱっと並んで咲いているのは、番傘の花。
 ひとつは朱、そしてそれよりも高い位置にもうひとつ咲くのは黒地に黄柄。
 そんな朱色の番傘の華の下から、ひょこりと顔を出して。
「ほんとに一面紫陽花だね。こんなに色んな色を同時に見るのなんて初めてじゃない?」
 ――綺麗だなぁ……。
 そう感嘆の言の葉と同時に溜息を漏らすのは、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)。
 そしてふと並んで歩く不知火・鉄馬(戒めの正義・f12794)を見上げて、クスリと笑み溢す。
 澪は、ちゃんと知っているから。
 ぶつからない程度に隣に寄り添いながらも。身長差の関係でどうしてもずれてしまう歩幅を、さり気なくごく自然に合わせてくれる彼の優しさに。
 そして、そんな無邪気に綻ぶ澪の表情に鉄馬が目を遣れば。
 脳裏に浮かぶのは、幼馴染みの男の姿。
「お前さ、あいつじゃなくて良かったのかよ」
「んぇ? あいつ、って……あぁ、えと……なんで?」
 突然紡がれた鉄馬の問いに、澪はきょとんと表情を瞬かせるも。
「こういうとここそデート向けだろ。折角恋人になったのに勿体ねぇ」
 そう続いた言葉に、ぽんっと染まる頬。
 それから大きく瞳を見開きながらも、思わずぷいっ。
「でっ……い、いいじゃん別に。今日は鉄馬君と歩きたい気分だったの」
 鉄馬は、明らかにデートの単語に反応したにも関わらず顔を背けるその様子を見つめつつも。ポツリと溢す――素直じゃねぇな、って。
 そんな鉄馬へと、澪はちらり、再び視線を向けて。
「だってさ、鉄馬君覚えてる? 去年も…一緒に紫陽花見たじゃん」
「去年? ……あぁ、見たな」
 返る言葉に笑みを宿しながら、続ける。
「問題です。紫陽花の花言葉はなんだったでしょー」
 そんな問いかけに、鉄馬は迷うことなく答える。
「花言葉は移り気。そして、一家団欒」
 ――家族の結びつき……お前に教わった言葉だ、って。
 誰でもない、澪から聞いたものだから。
 そんな紡がれた解答に、ふふ、正解、ってさらに笑み咲かせてから。
 改めて、澪は彼へと告げる。
「あれから1年……今日は2度目のありがとうの日。これからも……よろしくね?」
「それ伝えるためだけにわざわざ呼んだのか?」
 ……まぁお前らしいけど、と。
 くくっと鉄馬は笑ってから、今年も共に見ている紫陽花が咲く中、こう返すのだった。
「こっちこそありがとな」
 ――色々与えられた分、責任持って護ってやるよ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『彼岸と此岸を分かつもの』

POW   :    彼岸の存在と交わる

SPD   :    異様な光景に常ならぬものを見出す

WIZ   :    己の、あるいは誰かの過去を追体験する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※お知らせ※
 第2章プレイング送信の受付は、【7/5(日)朝8:31】より開始いたします。
 それ以前に送信された分は流れてしまう可能性が高いのでご注意ください。
 追加情報を記載したOPを受付開始前日迄に掲載いたします。
 送信締切等のお知らせは、MS個別ページ等でご確認ください。


●幻影の庭園
 古民家カフェーの店主・春江が、一人分の食事を手にそっと外へと出ていく姿を。
 彼女の動向を密かに探っていた猟兵達が見逃すわけはなく……気取られぬよう、その後を追えば。
 足を踏み入れたそこは、カフェーの裏手にある紫陽花園。
 けれどそこに咲く紫陽花は、これまで見て来たトンネルや坂に咲いていた、見せる為のものではなく。
 逆に――何かを隠すかのように、乱れ咲いている。
 そして彼女の後を尾行し、紫陽花園の奥へと進まんとした……その時だった。
「……!」
 猟兵達は、一気に様相が変わった周囲に視線を巡らせ、大きく目を瞠る。
 梅雨の季節を彩っていた紫陽花庭園が、一変。
 そこに咲く花々は、春も夏も秋も冬も……四季という概念をまるで無視していて。
 様々な境界が曖昧な、非現実的な庭園。
 そう――これは、影朧がみせる幻影の風景。
 そして、さわりと揺れる花々は、侵入者達にそれぞれの景色をみせる。
 或る者は、彼岸の存在……故人との交わりを得たり。
 また或る者は、決して現実では有り得ない異様な光景に、常ならぬものを見出すかもしれない。
 花々が咲き乱れる中、己の、あるいは誰かの過去を追体験する者もいるようだ。

 そして庭園の奥……幻影を生み出す『彼』は。
 ――貴方の心に咲くのはどんな花?
 それを摘み取らせて、って。
 一番美しいと、手中にしたいもの……人の心を、花の形で盗み蒐集せんと。
 今宵も、幻影の庭園に四季の花々を咲かせる。

●マスターより
 第2章は、幻影の庭園を抜けて貰いますが。
 その際に、その方それぞれの幻影が現れます。

 POW:彼岸の存在と交わる(亡くなった誰かが現れます)
 SPD:異様な光景に常ならぬものを見出す(何が視えるかは任意です、ご指定下さい)
 WIZ:己の、あるいは誰かの過去を追体験する(誰の、どの様な過去を視るか)

 どの選択をするにせよ、どのような人や物や景色をみるのか。
 また、それを目にして、どのようなことを思い、どう前に進むのか。
 その情景や心情をプレイングに記載いただければと。
 どのような花がみえるか等も、もしこだわりがあれば書き添えていただければと。
 複数人の場合は、WIZに限らず、同じものを視ても構いませんし。
 ひとりずつ別の物を視て後に合流、でも構いません。
 その他に関しましては、OPやOP公開時のマスターコメントをご確認ください。
満月・双葉
【ミカエルf21199】
紫陽花と言う花を教えてくれたのは師匠ですよ、覚えてますか?
ふとそう言った時に異変に遭う

幼い自分と外見の変化のない師匠
何時か追い越すのだろうかとふと物悲しくなる
そうだ、この人は何人の恋人を見送って来たのだろう
この人は決して軽いわけではなく、数多に責任を背負うだけ
悪癖だと死んだ姉は呆れていた
だけど…

紫陽花とカタツムリを眺める過去の二人をぼんやりと眺めていたが、そこでいやな予感がする
そう、この時僕はこの人に何と言ったか…
『ししょう、だれともけっこんできなかったらぼくをししょうのおよ…』
皆まで聞かせぬと大声を上げて妨害する

あ!師匠!過去は過去ですから未来(さき)に行きましょう!


ミカエル・アレクセイ
【双葉f01681】
双葉の言葉に首をかしげ
そうだったかなと思いつつ二人の共通の過去が来るかと失笑

何を見せられるかと思えば…
そうだ、このガキは昔から変なところでませていて
変なところで気を遣う
どんな相手でも関係を持ったときには覚悟を決めるから見送ったとて『何時ものこと』だ

というか良いのか
これは確かこいつが記憶から抹消しているやつでは…?
わざと自然にやったように他所を向いて、案の定の双葉の大声に振り返り顔をしかめてみせる

うるせぇ餓鬼だな…昔のことなんざ覚えてねぇよ面倒くせぇ
そう言いつつ内心で懐かしいものを見たと微笑み
俺が納得する彼氏ないしは彼女を作るこったな、とぼそり



 整えられた紫陽花トンネルやカフェーの庭も、見応えがあり美しかったけれど。
 カフェーの裏手に好きに乱れ咲いている眼前の手毬花も、また艶やかで幻想的な気がする。
 そう……まるでこの先に在る何かを、隠すかの様に。
 そんな紫陽花たちを眺めていた満月・双葉(時に紡がれた星の欠片・f01681)は、並んで歩く彼を見上げて。
 何処か懐かし気な響きを宿す声で、こう紡ぐ。
「紫陽花と言う花を教えてくれたのは師匠ですよ、覚えてますか?」
 雨の季節に咲く、まんまるい花。
 この花を彼女に教えたのは誰でもない、今隣に在る師匠……ミカエル・アレクセイ(山猿・f21199)であった。
 ミカエルはそんな彼女の言葉に柔く金の髪を揺らし、首を傾げて。
 そうだったかなと思いつつも――刹那、失笑する。
 過去の事を双葉が口にした瞬間、眼前に明らかに起きた異変。
 今目の前に咲くその花は、確かに紫陽花であるのだけれど。
 先程見ていたものとはまた、違った色。
 そしてそれが何時のものであるか分かったミカエルは思う――二人の共通の過去が来るかと。
 双葉が見つめる先にいるのは、幼い女の子と金の髪を無造作に揺らす青年。
 そう――それは、幼い自分と外見に変化のない師匠。
(「……何時か追い越すのだろうか」)
 この頃よりも成長した今の自分と、昔と……いやこれからもきっと変化のない彼。
 そしていつの日かの事を思えば、ふと物悲しくなるけれど。
 でも、そんな彼だからこそ。
(「そうだ、この人は何人の恋人を見送って来たのだろう」)
 女っ気が一見なさそうに見えるが、彼の周囲には何人もの女性の存在があるけれど。
 ……この人は決して軽いわけではなく、数多に責任を背負うだけ。
 女たらしというよりは、実は面倒見が良い師匠の性分なのだ。
 そしてそれを、悪癖だと死んだ姉は呆れていた。
(「だけど……」)
 双葉は過去の自分たちを見つめているその横顔を、そっと見上げる。
 そんな彼女の視線に気が付いていながらも。
 ――何を見せられるかと思えば……。
(「そうだ、このガキは昔から変なところでませていて。変なところで気を遣う」)
 ミカエルは、ふっと微かに息を吐く。
 それは……『何時ものこと』。
 見送ったとて、どんな相手でも覚悟を決めて関係を持つのだから。
 そう思いながらも、紫陽花とカタツムリを眺める過去の自分達へと再び視線を戻した双葉を見て、ミカエルは思う。
(「というか良いのか」)
 ――これは確かこいつが記憶から抹消しているやつでは……? って。
 そしてぼんやりと眼前の光景を眺めていた双葉も。
 半ば意図的に忘れているこの時のことが、ふと脳裏に蘇れば――。
(「そう、この時僕はこの人に何と言ったか……」)
 瞬間、いやな予感がして。
 同時に、幼い自分が記憶通り――こう、あの頃の彼へと告げる。
『ししょう、だれともけっこんできなかったらぼくをししょうのおよ……』
「あ! 師匠! 過去は過去ですから、さきに行きましょう!」
 過去ではなく、さきに……未来にと。
 いや、そう思っているのは嘘ではないのだけれど。
 皆まで聞かせぬと、幼い自分の所謂『失言』を、大声を上げ慌てて妨害する。
 そして、わざと自然にやったように他所を向いていたミカエルは、案の定の彼女の大声に振り返って。
「うるせぇ餓鬼だな……昔のことなんざ覚えてねぇよ面倒くせぇ」
 そそくさとこの場を去らんとする双葉に顔をしかめてみせるけれど。
 その顔にふっと宿るのは、微笑み。
 実は可愛いと思っている弟子との過去に……懐かしいものを見たと。
 それから、さり気に彼女の見張り役でもあるカエルのマスコットさんへと何気に目を遣りつつも。
 それが任せられないろくでもない相手だったら、その時はあれだけど。
 ミカエルは、さきへと進まんとする双葉へと、ぼそりと呟く。
 ――俺が納得する彼氏ないしは彼女を作るこったな、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
WIZで、自分の過去を追体験ね。

勝手に希望をして、そして勝手に裏切られたと喚いて、勝手に私を恨んで死んでいった持ち主たちの叫びが、表情が、また目の前に現れるのね。
と言っても、忘れたことはないけど。

浮かぶ花はPurple Hyacinth(紫のヒヤシンス)。
紫は私が好む色ではあるけど、その花ことばは悲哀、悲しみ。

叫ぶ人たちを見たら、じっと目を閉じて集中。
ユーベルコード【千里眼射ち】でその幻を撃ち抜くわ。

幻が消えたら歩き出しましょう。
「・・・矢が私の心ごと消し去ってくれたらよかったのにね」
自嘲気味に呟くわ。

紫のヒヤシンス。
他にもある花言葉の一つは、
「私を許して」



 ――また目の前に現れるのね。
 何かを隠すかのように咲き乱れていた紫陽花が、一瞬のうちに消え失せて。
 かわりに眼前で揺れている、今の時期に咲くはずのないその花たちを見ながら。
 ヴィオレッタ・エーデルシュタイン(幸福証明・f03706)には、分かっていた。
 目の前に現れる人や光景、それは自分の過去の追体験。
(「勝手に希望をして、そして勝手に裏切られたと喚いて、勝手に私を恨んで死んでいった」)
 そんな持ち主たちの叫びが、表情が……再び藍と紫のふたつの色をした瞳に映る。
 Purple Hyacinth――紫陽花とはまた違った紫色をした、ヒヤシンスの花たちが咲く中で。
 それは過去の追体験といえど、けれども、忘れたことはなくて。
 幸せをあげたかった、でも勝手に不幸になっただけで……自分がしたわけではないと。
 あの時だって、そう言いたかったけれど。
 ふとヴィオレッタは、眼前に咲き誇るその彩を見遣る。
(「紫は私が好む色ではあるけど」)
 その花ことばは――悲哀、悲しみ。
 そして顔を上げ、なじり叫ぶ人達をもう一度見た後。
 じっと目を閉じて集中して。
 次にその瞳が開かれた瞬間……放たれた矢に的確に撃ち抜かれ、消えてゆく幻たち。
 もう、希望の宝珠と言われた彼女に叫ぶ者達は、目の前からはいなくなったけれど。
「……矢が私の心ごと消し去ってくれたらよかったのにね」
 もしもヤドリガミになっていなければ、きっと知ること感じることのなかった思い。
 けれどあの時は、ただなじられ恨まれることしかできなかったから。
 ヴィオレッタは自嘲気味に呟いた後、甘い香り漂わせる花たちに見送られながら再び歩き出す。
 紫のヒヤシンス……その花言葉は、悲哀、悲しみ。
 そして、もうひとつ――「私を許して」。

大成功 🔵​🔵​🔵​

星野・祐一
【花澤・まゆちゃん(f27638)と一緒に】【WIZ】

…紫陽花に似たような形の花の下で
白い翼の女の子が倒れてるのが見えた

髪には上の花と似た形の花が生えていて
まゆちゃんにも同様の花が付いていたような…

そう思い出すとふと手の感触に気づくと
横で酷く震えているまゆちゃんの姿を見て
これがまゆちゃんの過去なのだと漠然と理解する

安心させるように手を握り返し空いた手でそっと肩を抱くと
倒れてる女の子の方をもう一度だけ見やる
その光景を記憶に留めて、先導するように前に進む

…心配すんな、俺がいる
両手から伝わる震えを感じながら、俺はそう声を掛ける
俺だけでも彼女の傍に居続けようと心の中で誓いながら

アドリブ歓迎です


花澤・まゆ
【星野・祐一さん(f17856)とご一緒に】【WIZ】

…沈丁花の強い匂いがする
覚えてるよ
あの沈丁花の花の下、倒れてるのは、昔のあたしだ

この花と羽が気味が悪いって言われて
あたしは…たぶん実の母親に沈丁花の下に突き飛ばされて
そのまま捨てられた
あの、胸を裂かれるような苦しさは今でも覚えてる

手が震える 足が震える
思わず祐一さんの手を握りしめて

もう、誰にも捨てられたくないよ

泣きそうな思いを必死に隠して
震える足を隠して
過去のあたしを見ないようにして

あたしは、前に進む

アドリブ歓迎です



 いつの間にか眼前に香るのは、紫陽花と同じ様に小さな花が固まりになって咲いている花。
 そして共に足を踏み入れたのは、紫陽花園のはずなのに。
 その花は、紫陽花とは似て非なるもの。
 星野・祐一(スペースノイドのブラスターガンナー・f17856)は甘く爽やかな香り漂う中、ふと瞳を凝らして。
(「……紫陽花に似たような形の花の下で、白い翼の女の子が倒れてる」)
 その子の髪に咲いている花を見て、気付く。
 すぐ隣に居る彼女にも……同じ花が咲いているということを。
 そして花澤・まゆ(千紫万紅・f27638)はこの花を、この強い香りを、覚えている。
(「……沈丁花の強い匂いがする」)
 紫陽花と取って代わり、今ふたりの目の前に咲いているのは――沈丁花。
 まゆも、今の時期香るはずのない春の花から、視線をずらして。
 倒れている女の子へと目を遣り、そっと青の瞳を伏せる。
 ――あの沈丁花の花の下、倒れてるのは、昔のあたしだ、って。
 生まれた世界では、花と羽があるこの姿は奇妙に思われて、気味が悪いって言われた。
 ……だから。
(「あたしは……たぶん実の母親に沈丁花の下に突き飛ばされてそのまま捨てられた」)
 無意識的に、まゆはぎゅっと己の胸を握りしめる。
 今でも覚えているから……あの、胸を裂かれるような苦しさは。
 そして手が、足が、震えてしまって。
 思わず縋る様に伸ばされたその手の行き先は――隣の彼の手。
 そんな握られた手の感触に気付き、瞬かせた瞳で彼女を見た祐一は漠然と理解する。
 これは、横で酷く震えている彼女の……まゆの過去なのだと。
 それから一人生きてきて。確かに過酷だったけれど毎日楽しくて、自由だとそう笑うけれど。
 でも、前向きで天真爛漫ないつもの彼女の姿はそこにはなくて。
 ――もう、誰にも捨てられたくないよ。
 ぎゅっと、さらに握る手に力がこもってしまう。
 そんな今にも泣きそうなまゆを安心させるように、その小さな手を握り返して。
 祐一は空いた手でそっと肩を抱きながら、倒れている女の子……過去の彼女の方を、もう一度だけ見遣る。
 そして、咲き香る花と少女の光景を瞳に焼き付けるように記憶に留めつつも。
「……心配すんな、俺がいる」
 両手から伝わる震えを感じながらもそう紡ぎ、先導するように前に進む。
 ――俺だけでも彼女の傍に居続けよう。
 隣に在るまゆだけを見つめ、そう心の中で誓いながら。
 そしてそんな彼のすぐ隣で、まゆは必死に隠す。
 泣きそうな思いを、震える足を……過去の自分を、見ないようにして。
 それから再びゆっくりと、沈丁花咲き香る光景の中を歩き出す。
 ぎゅっと握ってくれている、祐一のあたたかくて大きな手に導かれながら。
 ――あたしは、前に進む、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

暁・アルト
ロザリアちゃん(f23279)と

綺麗で
どこか狂気的に見える薔薇園
何かを思い出せそうで
自分の事でいっぱいになって

……あれ
ロザリアちゃん、ドコ?

幼い二人の記憶
親と離れてひどく不安だったとき
迷い込んだんだ、彼女の庭に

……うん
僕が言いつけを守らなかったから

泣きそうなオレを
励ますように触れ
温もりを与えてくれた
とても気持ちよかったんだよ?

あの時、思っちゃったんだよね
少しでも迷路が長く続けばいいのにって

また、見つけてくれたんだね
先程までとは違う愛しい笑みを君へ

……そだね
久しぶり、ロザリアさん
(初恋の君を忘れててごめん
もう忘れない 君はオレの大切な人)

君の華奢で柔い手をしっかりと握る
もう、離したりはしないよ


ロザリア・メレミュール
アルトくん(f25626)と

狂い咲く薔薇に躊躇う
実家の薔薇園にそっくり
でもここの薔薇は何かを匿うように咲いている

アルトくん、気をつけて
…あれ、はぐれちゃった

子供の私とアルトくんの記憶
はじめまして、はぐれちゃったの?
この薔薇園は迷路だから仕方ないよ
安心してほしくて優しく頭を撫でた

迷路を抜けたらばいばいだから
寂しくて、遠回りをしてしまう
(ちゃんと帰してあげるから…もう少しだけ)

いつものアルトくんを見つけた
良かった、もう大丈夫
…出口は私が一番知ってるから
今度はすぐに帰すよ

私たち、小さい頃に会ってたんだね
ふふ…思い出せてよかった
久しぶりだね、アルトくん

優しく笑って手を繋ぐ
迷路の案内は任せて



 偶然出会い一緒に見ていたその花は、雨の季節に咲く紫陽花であったはずなのに。
 暁・アルト(あほの子・f25626)の紫の瞳に今映る光景は……綺麗で、でもどこか狂気的に見える薔薇園のもの。
 そしてそれは、記憶の奥にある何かを思い出せそうで。
 自分の事でいっぱいになっていたら。
「……あれ。ロザリアちゃん、ドコ?」
 共にいたはずの、ロザリア・メレミュール(花束・f23279)と逸れたことに気付く。
 そう……まるで、あの時のように。
 そして、そんな突然狂い咲いた薔薇に躊躇いながらも。
 ロザリアはこの風景に見覚えがあった。
 ……実家の薔薇園にそっくり、と。
(「でもここの薔薇は何かを匿うように咲いている」)
 けれどそう、見慣れているはずのそれとは何処か違っていて。
 ぐるり、薔薇の迷路へと視線を巡らせてから。
「アルトくん、気をつけて」
 隣の彼へと、声を掛けてみるけれど。
 眼前に咲き誇る薔薇の色に似た瞳を、ロザリアはぱちくりと瞬かせる。
 ……あれ、はぐれちゃった、って。
 そして互いに逸れ、迷子になりながらも、ふたりは気付くのだった。
 これは――幼い頃のふたりの記憶だと。
(「親と離れてひどく不安だったとき、迷い込んだんだ、彼女の庭に」)
 それから、アルトの耳に聞こえてくるのは、あの時彼女からかけられた声。
 ――はじめまして、はぐれちゃったの? と。
 そんな声にホッとしつつも、思わずしゅんと俯いて。
 ……うん、僕が言いつけを守らなかったから。
 そう返せば――この薔薇園は迷路だから仕方ないよ、って。
(「泣きそうなオレを励ますように触れ、温もりを与えてくれた」)
 アルトはそっと記憶を辿る。
 ――とても気持ちよかったんだよ? って。
 ふわりと頭の上で感じた、優しい感触とぬくもりを思い返しながら。
 そしてロザリアも彼と同じ様に、その時のことを思い出していた。
 安心してほしくて、その顔を上げて欲しくて……優しく頭を撫でたことを。
 それからふたりは蘇らせる。あの時、こう思ったことを。
 ――迷路を抜けたらばいばいだから……少しでも迷路が長く続けばいいのに、って。
 実際にあの時、ロザリアは寂しくて、少しだけ遠回りをしてしまったのだ。
 ――ちゃんと帰してあげるから……もう少しだけ、って。
 そして記憶の糸を手繰り寄せ、互いに思い出した刹那。
「良かった、もう大丈夫」
 ロザリアが見つけたのは、いつものアルト。
 それから彼にこう微笑む――出口は私が一番知ってるから、今度はすぐに帰すよ、って。
 そんな彼女にアルトも返す。
「また、見つけてくれたんだね」
 先程までとは違う――愛しい笑みを君へ、と。
「私たち、小さい頃に会ってたんだね。ふふ……思い出せてよかった」
 ……久しぶりだね、アルトくん。
 紫陽花のトンネルで会ったその前に、薔薇の花園で出逢っていた彼へとそう紡いで。
 ロザリアが嬉しそうに笑み咲かせれば。
「……そだね」
 ……久しぶり、ロザリアさん。
 そう返しながらも、アルトは心の中で紡ぐ。
(「初恋の君を忘れててごめん。もう忘れない」)
 ――君はオレの大切な人、って。
 だからもう、逸れないように。
「迷路の案内は任せて」
 ロザリアは優しく笑って手を繋ぐ。
 もうあの時みたいに遠回りしなくても、彼は傍にいるから。
 だから今度は、すぐに出口へと向かい手を引いて。
 華奢で柔い彼女のその手を、アルトもしっかりと握り締める。
 ――もう、離したりはしないよ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

霧島・ニュイ
咲き乱れる紫陽花の間を抜ける
此処に来るまでに夢見た

また、本物の愛おしい彼女に逢いたい
一目でもいい
嘘、沢山話して抱きしめて…そして、怖いけれど本音を聞きたい

僕の事どう思っているの…?
ねえ、僕の事恨んでる?
これからも一緒にいたいって思ってくれる?

紫陽花の花の香りに紛れて、椿の香り

!!

リサちゃん、いるのっ?
声を上げて探す
どこだ、どこだ
黒髪が見えた気がする
長い赤の着物が見えた気がする
追いかけても追いかけても姿が見えない

……逢いたく、ないの…?
嫌われちゃった……?

力なく崩れ落ちる僕の髪を、椿の香りが優しく撫でた
まるで慰めるように
好きだと言ってくれるように
それなら…逢いたいよ…

(花:勿忘草
僕を忘れないで)



 足を踏み入れた裏の庭園にもやはり咲き乱れているのは、紫陽花の花。
 けれど、トンネルやカフェーの庭のものとは違い、此処に咲く花は何かを隠しているようで。
 霧島・ニュイ(霧雲・f12029)はその間を抜け歩みながら――夢を見る。
「僕の事どう思っているの……? ねえ、僕の事恨んでる? これからも一緒にいたいって思ってくれる?」
 連ねられ、止めどなく零れ落ちる問い。
 それは、一目でもいいから……また逢いたいと思う、本物の愛おしい彼女へのもの。
 ……いや、それは嘘。
(「沢山話して抱きしめて……そして、怖いけれど本音を聞きたい」)
 そう心に溢れる気持ちが、抑えらえれないから。
 刹那、ニュイは緑色の瞳を大きく見開く。
「!!」
 彼は気付いたから。紫陽花の花の香りに紛れた、椿の香りに。
「リサちゃん、いるのっ?」
 声を上げて探すのは、椿の花を咲かせた可憐な少女。
 ――どこだ、どこだ。
 紫陽花をかきわけるように、ニュイは椿の気配を辿る。
 ……流れるように揺れる黒髪が見えた気がする。
 ……長い赤の着物がひらりと見えた気がする。
 けれど――追いかけても追いかけても、その姿は見えなくて。
「……逢いたく、ないの……? 嫌われちゃった……?」
 いくら探してもその気配を追っても、一向に彼女に辿り着けずに。
 力なく地に崩れ落ちるニュイ。
 でもその時……跳ねた茶色の髪をふわり優しく撫でたのは、椿の香り。
 まるで、項垂れてしまった自分を慰めるかように。
 そして……好きだと、そう言ってくれるように。
 そんな椿の香りに、愛し気に瞳細めながら。
 ニュイはふと瞳に映った眼前の花を見つめ、まるで椿の花が散る時の様にぽろり、呟きを零す。
「それなら……逢いたいよ……」
 ――僕を忘れないで。
 いつの間にか紫陽花に変わり揺れている勿忘草の花を、ただ見つめながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
倫太郎殿と紫陽花園を歩いている内に次第に変わる景色
……思い返せば、去年もだった
紫陽花を見た後に二人の御姿
想いは、以前のように焦がす程ではないのは
倫太郎殿のおかげなのでしょう

そして今度現れたのは彼……暁彦様のみ
今の私の姿は彼を模した姿

私は彼が羨ましく憎くもあった
主である小夜子様の想い人であり
いつまで経っても戻らぬ貴方を

それは事情を知らぬ者の感情
戻らぬのは身分違いの恋から引き離され
せめてと彼女から戦火を遠ざける為に戦った末、亡くなった

真実を知って私は後悔した
そして独り善がりの己の感情に酷く嫌悪した

声は聞こえない
ただ真っ直ぐ見つめる彼に納刀した刀を見せる
もう暫し、貴方の姿を御借り致します、と


篝・倫太郎
【華禱】POW
季節を無視した狂い咲き
綺麗ではあるけれど、どこか恐ろしさもある気がして
隣にいる夜彦の手を無意識に探して握って……
大丈夫というように握り返されて
安堵するのも束の間

出逢うのはこの人が姿を模した、彼――
主の想い人、再会の約束を果たせなかった男

去年は遠巻きに見掛けただけだったけど
本当に夜彦と瓜二つ
鏡合わせのよう
鏡じゃないって判るのは、夜彦の隣には俺
彼の隣には、誰も居ない

彼が何か言ってる
言ってるけど聞こえない
聞こえないのは……聞きたくないと願うからか
知りたくないと思うからか

……聞きたくないのは、知りたくないのは、誰?
俺?それとも、夜彦?

結局、言葉を交わせないままで
それでも、俺達は前へと進む



 春夏秋冬、これまで巡る四季を共に眺めてきて。
 先程までだって、雨の季節に咲く思い出深い花をふたりで眺めていたはずなのに。
 いつの間にか眼前の花たちは……季節を無視した狂い咲き。
 その光景は綺麗ではあるのだけれど、でもどこか恐ろしさもある気がして。
 篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は無意識に探して握る。隣にいる彼の手を。
 そして、月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)は思い出す。
(「……思い返せば、去年もだった」)
 去年、紫陽花を眺めた後に二人の御姿を見たことを。
 けれど明らかに、去年とは違う。
(「想いは、以前のように焦がす程ではないのは、倫太郎殿のおかげなのでしょう」)
 それからふいに握られた倫太郎のその手を、夜彦はそっと握り返す。
 大丈夫だというように。
 そんないつも通りの手の感触に倫太郎が、安堵するのも束の間。
 倫太郎は眼前に現れたその人を映した琥珀の瞳を、一瞬だけ見開く。
 その姿はよく知っているようで、でも違って。以前にも視た人のもの。
(「この人が姿を模した、彼――」)
 それは――夜彦の主の想い人、再会の約束を果たせなかった男の姿。
 けれど以前と違い、今度現れたのは彼のみ。
(「今の私の姿は暁彦様を模した姿」)
 そう……夜彦にとっては、自分によく似た、自分が模した人。
 倫太郎はそんな夜彦と現れた彼へと、そっと交互に視線を向け、改めて思う。
(「去年は遠巻きに見掛けただけだったけど、本当に夜彦と瓜二つ」)
 ――鏡合わせのよう、と。
 けれど、倫太郎にはよく判っている。
(「鏡じゃないって判るのは、夜彦の隣には俺」)
 でも――彼の隣には、誰も居ない。
 そして夜彦は、己と似た眼前の彼を見ながら、その心に思いを紡ぐ。
(「私は彼が羨ましく憎くもあった。主である小夜子様の想い人であり、いつまで経っても戻らぬ貴方を」)
 けれど夜彦は気付いたのだ。それは事情を知らぬ者の感情だと。
 真実を、知らなかったから。
(「戻らぬのは身分違いの恋から引き離され、せめてと彼女から戦火を遠ざける為に戦った末、亡くなった」)
 彼は戻りたくても、戻れなかったのだということを。
 そんな真実を知って夜彦は後悔して。
 独り善がりの己の感情に、酷く嫌悪したのだ。
 ――その時だった。
(「彼が何か言ってる」)
 倫太郎は、眼前の彼が何か言っているその声に気付き、その姿をもう一度見遣るけれど。
 ……何か言っているけど、聞こえない。
(「聞こえないのは……聞きたくないと願うからか。知りたくないと思うからか」)
 それから隣の夜彦の横顔を見つめ、ふと思うのだった。
 ……聞きたくないのは、知りたくないのは、誰?
 ――俺? それとも、夜彦? って。
 そして夜彦にも、彼の声は聞こえない。
 以前主と共に在ったその姿を視た時は、ろくに目を向けることもできなかったけれど。
 聞こえぬ何かを紡ぎ、真っ直ぐと見つめる彼へと、夜彦は納刀した刀を見せる。
 ――もう暫し、貴方の姿を御借り致します、と。
 そんな隣の彼を見守りながらも、結局、言葉を交わせないままで。
 倫太郎は夜彦と共に、二藍に色づいた風景の中、再び並んで歩き出す。
 ……それでも、俺達は前へと進む、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リヴェンティア・モーヴェマーレ
引き続き葎さん(f01013)と一緒

【WIZ】
葎さんの過去を視る

ここにも紫陽花が…――ありますが…なんでショ…ここの紫陽花は生きているような感じがします……ネ…(変化する景色に少し困惑しながら)

ここハ…

小さい葎さん、知らない場所、知らない人達…

これハ、葎さんの記憶?

あっ…あ…――危ない、危ないデス!!

私の声、聞こえてないデス?

葎さん、葎さん!!
大ジョブです、葎さんは生きてますヨ…ちゃんと生きてます…(葎さんを出来るだけ安心させるようにの手をギューッと握ぎった後、それでも不安そうならギュッと抱き締め)

元々ドールな私と違う『人』が感じる死の恐怖
それはとてもツラい記憶
それが少しでも癒されますように


硲・葎
【WIZ】リヴェ(f00299)ちゃんと!わ、不思議な紫陽花……なんだか、頭が……。
……あれ、私?まだ、人間だった頃。そうだ、みんなでドライブに行って、初めて助手席に乗せてもらったんだ。パパとママ、お兄ちゃんと一緒に。大好きなくまさんも乗せて。反対車線からやけにフラフラした車が赤信号を無視して猛スピードで突っ込んできて。「葎!!」
最後に聞いたのはパパの声。アスファルトのザラザラした感触とガソリンの匂い。身体中が痛い。ああ、私死ぬのかな。動けないよ。声も出ない。パパ、ママ!お兄ちゃん!痛いよ。助けて……リヴェちゃん……リヴェちゃん……?私、今……!?私、生きてる?

ありがとう、でも、まだ怖いな……



 一緒に通って来たトンネルや坂はとても綺麗で。
 雨に咲く夜の紫陽花を見ながら沢山お喋りして、楽しく過ごしたひととき。
 そんな満開に咲いた紫陽花は、先程までは心躍るいろをしていたはずなのに。
「ここにも紫陽花が……――ありますが……なんでショ……ここの紫陽花は生きているような感じがします……ネ……」
 カフェーの店主である春江を追って足を踏み入れた、裏の庭園。
 そこにも、さっきと同じはずの紫陽花が乱れ咲いているのだけれど。
 そのいろは不安定に変化し、ゆらりと世界が歪む。
 そんな変化する景色に少し困惑しながら、紫の視線を巡らせるリヴェンティアの隣で。
「わ、不思議な紫陽花……なんだか、頭が……」
 急にくらりと眩んだ、硲・葎(流星の旋律・f01013)の視界。
 そしてふと、その顔を上げれば。
「……あれ、私?」
 思わず、大きく瞳を瞬かせてしまう。
 そんな葎の目に今映っているのは……パパとママ、お兄ちゃん、そして大好きなくまさん。
 これは――葎がまだ、人間だった頃の光景。
「ここハ……小さい葎さん、知らない場所、知らない人達……」
 そして葎と同じ風景を見ているリヴェンティアは察する。
 ――これハ、葎さんの記憶? と。
 葎はそんな家族の姿を見回し、記憶を呼び起こす。
(「そうだ、みんなでドライブに行って、初めて助手席に乗せてもらったんだ」)
 ……そして。
「あっ……あ……――危ない、危ないデス!!」
 リヴェンティアは咄嗟にそう叫ぶけれど。
 何の反応も示さない葎の様子から、気付く。
「私の声、聞こえてないデス?」
 でも見ているものはふたり、同じ光景――反対車線からやけにフラフラした車が赤信号を無視し、猛スピードで突っ込んできた瞬間を。
 けれど、葎の耳に聞こえているのは、リヴェンティアのものではなくて。
 ――葎!!
 最後に聞いた、そんなパパの声。
 刹那、耳を劈くような音と衝撃と共に、視界が大きく揺れて。
 気が付けば、アスファルトのザラザラした感触とガソリンの匂い。
 そして……身体中に駆け巡る痛み。
(「ああ、私死ぬのかな。動けないよ。声も出ない」)
「パパ、ママ! お兄ちゃん! 痛いよ。助けて……」
「葎さん、葎さん!!」
 何処か遠くを見て叫ぶ葎に、リヴェンティアはそう呼びかけて。
 耳に届いたその声に、ハッと顔を上げる葎。
「……リヴェちゃん……リヴェちゃん……? 私、今……!? 私、生きてる?」
「大ジョブです、葎さんは生きてますヨ……ちゃんと生きてます……」
 リヴェンティアは出来るだけ彼女を安心させるように、伸ばしたその手で、彼女の手をギューッと握って。
 その感触に、ホッと葎は表情を少し緩めるけれど。
「ありがとう、でも、まだ怖いな……」
 落ちる呟きは、まだ恐怖のいろを残していて。
 そんな不安そうな葎を、リヴェンティアはギュッと抱き締めてあげる。
 葎の手を微かに震わせているのは、元々ドールな自分と違う――『人』が感じる死の恐怖。
 リヴェンティアはそれを直接は知らないけれど、でも分かっているから。
 それはとてもツラい記憶であるということが。
 だから……まだ不安そうならば。
 ――それが少しでも癒されますように。
 その手を、身体を……ぎゅっといくらでも握って抱きしめてあげたいと、そう思うから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
【spd】
アドリブ・絡みも歓迎

●世界の終り、全ての破滅を思い出す
―――両の瞳は知っていた
全ては当たり前のように理不尽に滅ぶ予定にあると
最初からそれは決まっていて、自身もそれを覆す気も無い―――無かった
ただほんの少し、ほんの少しだけそれを寂しく思った

だから無かったことにすることにした
そのためにはその未来を観測し、確定させる観測者はいなくならなければならない
そっと左瞳に手を伸ばし――――

千の万のユズリハの葉に包んで世界をあげよう
定まらぬ未来を

●UC発動
そして時間は戻され・もう幻影は見えない
……あれ?
ボクは何をしてたんだっけ……そうだ!彼女をおっかけないと

ユズリハの花の小花がそこかしこに咲いていた



 咲き乱れていた紫陽花の群れは、今はもう。
 只ひとつ開いているロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)の右の瞳には、映ってはいない。
 かわりに見ているのは……思い出した、あの時の光景。
 ――神のその両の瞳は知っていた。
 たとえそれが理不尽であろうとも、全ては当たり前のように滅ぶ予定にあると。
 それはごく当たり前な、自然の理。
 最初からそれは決まっていて。
 だから、その事を知っているロニはそれを覆す気なんて無い。
 いや――無かった、のだけれど。
 ただあの時、ほんの少し……ほんの少しだけ。
(「それを寂しく思った」)
 だから、無かったことにすることにしたのだ。
 そしてその方法を、神は――ロニは知っていたから。
 ――そのためにはその未来を観測し、確定させる観測者はいなくならなければならない、って。
 そんな存在をロニはいなくならせた。
 そっと左瞳に手を伸ばして――。

 ――千の万のユズリハの葉に包んで世界をあげよう。定まらぬ未来を。

 新しい葉が育まれれば、古い葉がはらりと落ちる。
 けれど、数多の譲り葉でこうやって覆ってあげれば。
 もう、手を伸ばした観測者の瞳は、未来を捉え確定させることはできないから。

 刹那――ふいに巻き戻る時間。
 全知全能の力が、全てを無かった事にする。
 さっきまで視えていた幻影を、全て。
「……あれ? ボクは何をしてたんだっけ……」
 ロニはそうふと顔を上げ、右の瞳をぱちくりとさせるけれど。
 ぽんっと手を叩いて、現状を思い出す。
「……そうだ! 彼女をおっかけないと」
 そしてきょろりと視線を巡らせ、カフェーの店長である春江の気配を追うように。
 ロニは再び、花々が咲き誇る庭園を歩き出す。
 そこかしこにユズリハの小花が咲き、さわり風に揺れている――そんな景色の中を。

大成功 🔵​🔵​🔵​

不知火・鉄馬
【豹兎】
気づけば澪に覚えの無いものが見えて眉を潜め
影から逃げながら脳内で状況を整理して

……お前の過去か

端的な問い
澪が俺らの元に来たあの日
片鱗に過ぎないが話だけは聞いていた

…なるほどな
家族に拘るのはこういう事か
納得と同時に思い出すのは澪と幼馴染の親しげな姿
無意識だろうが、澪は俺らにはまだ壁がある
本当の意味で甘えを見せるのはあいつにだけ

なら、壊すか

脈絡のない小さな呟き
足を止めた澪にニッと口角を上げてみせ
腕を引きおんぶの形に

しっかり掴まってろよ!
【指定UC】で変化し飛び回る

過去に気を使う事もなく
今の澪を受け入れ守る
基準はそんなとこか
幼馴染で負けるのはなんとなく気にくわねぇし
家族に遠慮は似合わねぇだろ


栗花落・澪
【豹兎】
※僕の過去を一緒に

手足に嵌められたままの鎖だけがちぎれた枷と
首元で光る銀の首輪
追いかけてくる誰かの影

この過去に向き合うのは初めてじゃない
だから前を向いて走るくらいはできるようになった
蝕む恐怖は抜けないけれど

ん、そう
あはは、鉄馬君にまで見られちゃったかぁ
あんまり気分のいいものじゃないよね
でも…僕の感謝の理由だけでも
伝わってくれたら嬉しい

感謝は本物のつもりだったけど
鉄馬君の呟きに思わずキョトンと足を止めた瞬間腕を引かれ
気づけば大きな背中の上

幻影相手に本気出し過ぎ、なんて野暮なことは言わない
鉄馬君の行動から伝わる想いが嬉しいから
あははっ、はやーい!
行け行けぇー!!(緊張が解けた無邪気な笑顔



 何かを覆い隠すかの様に、庭を覆い尽さんと咲き乱れる紫陽花。
 そして、そんなカフェーの裏庭を一通りぐるりと見回した不知火・鉄馬(戒めの正義・f12794)は、ふと隣に目を遣った刹那。
 それの存在に気づいて、眉を潜める。
 ――手足に嵌められたままの、鎖だけがちぎれた枷。
 ――首元で光る銀の首輪。
 栗花落・澪(泡沫の花・f03165)に付けられているのは、そんな覚えの無いもの。
 それから顔を上げれば、いつの間にか眼前の様相はがらりと変わっていて。
 気配を感じて振り返った視線の先で蠢くのは、追いかけてくる誰かの影。
 そしてその影から逃げるべく鉄馬と駆け出しながらも、澪は思う。
(「この過去に向き合うのは初めてじゃない。だから前を向いて走るくらいはできるようになった」)
 現に今、前を向き駆けだしたその一歩は躊躇なく踏み出せた。
 でも……それでも、やはり。 
(「……蝕む恐怖は抜けないけれど」)
 完全に平気になったわけでもない。
 そして、追ってくる影から逃げながら脳内で状況を整理した鉄馬は、そんな隣の澪をちらりと見て。
「……お前の過去か」
 向けるのは、端的な問い。
 それから思い返す。澪が自分達の元に来たあの日を。
 片鱗に過ぎないが、話だけは聞いていたことを。
 そんな鉄馬の声に、澪は彼を見上げ、視線を返した後。
 ……ん、そう、と小さくひとつ頷いて。
「あはは、鉄馬君にまで見られちゃったかぁ」
 あんまり気分のいいものじゃないよね、と続ける。
 けれど……こうも思うから。
(「でも……僕の感謝の理由だけでも、伝わってくれたら嬉しい」)
(「……なるほどな。家族に拘るのはこういう事か」)
 そう納得すると同時に鉄馬が思い出すのは、澪と幼馴染の親しげな姿。
(「無意識だろうが、澪は俺らにはまだ壁がある」)
 ……本当の意味で甘えを見せるのはあいつにだけ、と。
 そして――ふいに落としたのは。
「なら、壊すか」
 脈絡のない小さな呟き。
 感謝は本物のつもりだったけど。聞こえたその声に、思わずキョトンと足を止める澪。
 そんな様子に、鉄馬がニッと口角を上げてみせた瞬間。
「しっかり掴まってろよ!」
「……!?」
 ぐいっと腕を引かれ、おんぶの形になったかと思えば。
 ――空の王者の力、見せてやるよ。
 解呪の印を指先で組んだ鉄馬の姿が刹那、大きな翼を携える黒紫の龍へと変化して。
 気づけば澪は、そんな大きな背中の上に。
 そして影を翻弄するように空を翔け、大きな翼をバサリ羽ばたかせながらも鉄馬は思う。
(「過去に気を使う事もなく、今の澪を受け入れ守る」)
 ……基準はそんなとこか、と。
 幼馴染で負けるのはなんとなく気にくわないし。
 それに何よりも――家族に遠慮は似合わねぇだろ、って。
 そして琥珀から橙に彩を変える髪を空に躍らせながら、澪は円らなその瞳を細める。
 ……幻影相手に本気出し過ぎ、なんて野暮なことは言わない。
 だって、自分を乗せた大きな背中からちゃんと今、沢山感じている。
(「鉄馬君の行動から伝わる想いが嬉しいから」)
 そして……ふっとその顔に宿るのは、緊張が解けた無邪気な笑顔。
「あははっ、はやーい!」
 蝕んでいた恐怖も追いかけてくる影も、全部。
 もうきっと――風に乗って翔ける自分達には、追い付けないから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リカルド・アヴリール
ライナス(f10398)と
POW、アドリブ歓迎

黒百合の花が一面に咲き誇っている
急な変化に戸惑う間もなく
中心に立つ、二人の幼馴染の顔から目が離せない

シリルとレティ
黒髪の男性、淡紫の女性
あの時と変わらない笑顔を浮かべて、声を掛けてくる
この街を守ろう、とシリルが意気込めば
頑張りましょうね、とレティが優しく同意を示して
俺は――ああ、二人も街も護れなかった

今度こそ守らなければ
喪ったものはもう、取り戻せないから
今、生きているライナスを喪いたくないと思うから
だから……すまない、二人共

ライナス……
なんて顔と言うが、どんな顔だ?
(今にも涙を溢しそうになるのを堪えながら
それもりも……あの女の子は、いいのか?


ライナス・ブレイスフォード
リカルドf15138と

足を進めると共に瞳に映るは柵の様に咲き誇る赤薔薇とその奥に佇む見覚えのある少女の姿
かつて己が喰らった金の髪の幼馴染の後ろ姿に薔薇を拒絶する本能を捩じ伏せ行く手を阻む薔薇を掴み引き倒し少女の元に向かわんと試みる…も
リカルドの様子に気付けば動きを止める
ったく…んて顔してんだよ…
金の髪を持つ少女と泣く寸前の様に見えるリカルドを交互に見遣り逡巡するも、血の滲む手が伸びたのは己と変わらぬ背の男の腕で

…あんたの居場所は此処だろうが
迷ってんじゃねえよと声を投げれば己の方へ引き寄せんと試みんぜ
あ?あんた置いてけねえだろ
それに…あいつはこれ見て笑ってんだろうからな
俺は必要ねえよ。きっと、な



 紫陽花咲き誇る裏庭であったはずの風景を染めるのは、赤。
 だが、ライナス・ブレイスフォード(ダンピールのグールドライバー・f10398)の瞳が今捉えているのは、それとは別の彩。
 まるで柵の様に咲き誇る赤薔薇の、その奥――見覚えのある少女が揺らす金色の髪。
 そしてライナスはその後ろ姿を知っている。かつて己が喰らった幼馴染のものであると。
 吸血鬼故に……いや、だからこそ、彼女の前には赤い薔薇が咲き誇っているのだろう。
 けれども拒絶する本能を捩じ伏せ、行く手を阻む薔薇を、鋭利なその棘にも構わず掴み引き倒して。
 ライナスは、少女の……幼馴染の元へと向かわんと試みる。
 そんなライナスの緑色の瞳を侵食する彩が赤であるならば。
 リカルド・アヴリール(遂行機構・f15138)の眼前に咲き誇っているのは……黒き百合の花。
 ライナスと並んでみていたはずの紫陽花はいつの間にか消え失せて。
 さわり黒百合が咲いて揺れる風景に急に変化したことに、リカルドは戸惑う間もなく。
 その景色の中、目が離せないのは……黒き百合の花園の中心に立つ、二人の人物の姿。
 ――シリルとレティ。
 リカルドが落とすのは、眼前の黒髪の男性と淡紫の女性……二人の幼馴染の名。
 その顔に浮かぶのは、あの時の変わらない笑顔。
 それから次に二人が何と声を掛けてくるか……リカルドには、痛い程分かっている。
『この街を守ろう』
 そう意気込むシリルに、優しく同意を示すレティ。
『頑張りましょうね』
 そしてリカルドは……おもむろに黒百合咲く中、天を仰ぐ。
 ――ああ、二人も街も護れなかった、と。
 けれども、だからこそ、リカルドは強く思うのだ。
「今度こそ守らなければ」
 リカルドはもう一度、呪いの言の葉を秘める花々の只中に在るふたりへと視線を向ける。
 シリルとレティ。喪ったものはもう、取り戻せないから。
 それに、何よりも。
(「今、生きているライナスを喪いたくないと思うから」)
 黒百合が秘める、もうひとつの言の葉、それは――。
 そしてリカルドは、幼馴染たちへと、こう告げるのだった。
「だから……すまない、二人共」
 同時に、まるで薔薇のいろに侵されたかのような掌で、その花たちを引き倒し踏み込まんとしていたライナスは気付く。
 そんな、リカルドの様子に。
 金の髪を持つ少女と、泣く寸前の様に見えるリカルド。
 ライナスはふたりの姿を交互に見遣り、逡巡するけれど。
 進まんとしていたその動きを止め、いつの間にか再び傍に在る彼へとその声を向ける。
「ったく……んて顔してんだよ……」
 己と変わらぬ背の男の腕に、血の滲むその手を伸ばして。
 ……あんたの居場所は此処だろうが、って。
 そして掴まえたその腕を引き、己の方へと彼をぐっと引き寄せながら、声を投げる。
「迷ってんじゃねえよ」
「ライナス……なんて顔と言うが、どんな顔だ?」
 今にも涙を溢しそうになるのを堪えつつ、リカルドはライナスへとそう返すけれども。
 彼が視ている風景――赤い薔薇のその向こうにいる金髪の少女へと視線を映し、そして問う。
「それよりも……あの女の子は、いいのか?」
 けれども、彼が伸ばし掴んだ掌が、既にその答え。
「あ? あんた置いてけねえだろ」
 それからライナスはもう一度だけ、揺れる金の髪を見つめてから。
「それに……あいつはこれ見て笑ってんだろうからな」
 咲き乱れる赤い薔薇からも、少女からも、ふと視線を外して。
 己の居場所を改めて確かめるように、続けるのだった。
 ――俺は必要ねえよ。きっと、な、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

日東寺・有頂
十雉さん(f23050)と
WIZ

こいは… なんだ
瞬く目を射抜いた彼岸花と真白い雪
ここは雪山か 一体どうしてこがん光景
おい十雉さん 
ああアンタの顔色、雪よりなお白いじゃねえか

これから起こること
何も知らん筈なのに
厭だ 厭な気配がする
この人が損なわれるその時がやってくる
そんな気がする

予感を引きずり花ん中ば歩いてたら 
影朧がこんひとを、 いや
ああ十雉さんによう似とう
あの人を 嗚呼

俺の目玉は見開かれたまま
頭は無能に凍りついたまま
こんなものは赦せねえ
二度と損なわせんと 誓ったんだ
だから

神様や無うて 俺が
なぜあんたが遺されたのか
それを俺が教えてやる


宵雛花・十雉
ニット(f22060)と
WIZ

周囲の景色が一変した
雪山に咲き乱れる彼岸花に出迎えられれば
嫌な汗が浮かぶ

雪を見ると思い出すんだ
あの日のこと

二人で花咲く道を進めば、それは十一歳のあの時とまるで同じ光景
鬼のような影朧が現れて、襲いかかって来た

…でも、オレはよく知ってるんだ
お父さんがオレのこと、助けに来てくれるって
お父さんがオレの代わりに死んじゃうって

まるであの日の再現のようにそれは起こって
オレたちの足元には二つの骸
影朧と、それから…

あの日から毎晩見る夢と同じ
雪を染める血はまるで花みたいで
花も血のように真っ赤に咲いてる

神様、なんでオレを死なせてくれなかったの

ニット…
そうだ、生きるって…約束したんだから



 足を踏み入れたのは、梅雨の景色に咲く紫陽花の庭園だったはずなのに。
「こいは……なんだ」
 真白に咲き誇る赤。
 瞬く目を射抜いた彼岸花と真白い雪のいろに、日東寺・有頂(ぷてぃんぐ(心結様寄贈)・f22060)は視線を巡らせて。
「ここは雪山か。一体どうしてこがん光景……」
 見覚えのない景色に、そう呟くも。
 すぐ隣に在る宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)の横顔を見つめ、声を掛ける。
「おい十雉さん」
 ……ああアンタの顔色、雪よりなお白いじゃねえか、って。
 雪山に咲き乱れる彼岸花に出迎えられ、嫌な汗が浮かんでいる彼に気付いて。
 そんな有頂を、ちらりとだけ見てから。
「……雪を見ると思い出すんだ。あの日のこと」
 十雉は、真白な雪からも彼岸花からも、そして自分を見ている彼からも逃げるかのようにさり気なく視線を逸らし、それだけを紡ぐ。
 恐ろしいほどに雪のいろに映える、彼岸花の鮮烈な赤。
 そんな花咲く雪道を、ざくりとふたりで歩み進みながらも。
(「これから起こること、何も知らん筈なのに」)
 ――厭だ、厭な気配がする。
 有頂は、眼前の雪よりも白く血の気のない十雉のその顔をそうっと見つめつつ、花咲く中を歩いていく。
(「この人が損なわれるその時がやってくる」)
 ……そんな気がする、と。
 心に生じた予感を、引き摺りながら。
 そして、そんな有頂とは逆に――十雉には、この光景に見覚えがある。
 いや……忘れたくても忘れられない、十一歳のあの時と、まるで同じ光景。
 それからやはり、あの時と同じ様に。
「……!」
 突如現れ、襲い掛かってきたのは、鬼のような影朧。
 ……けれども。
 影朧が襲い掛かったのは、十一歳の自分。
(「……でも、オレはよく知ってるんだ」)
 十雉は眼前の光景をただ、黄昏の如き橙のいろに映すことしかできない。
 そして、彼は知っている。
 ――お父さんがオレのこと、助けに来てくれるって。
 瞬間、真白な雪に飛び散り裂く赤の華。
 そう……十雉は知っているから。
 ――お父さんがオレの代わりに死んじゃうって。
(「影朧がこんひとを、いや……ああ十雉さんによう似とう、あの人を」)
 有頂の口からただ漏れるのは、嗚呼、という声。
 それはまるで、十雉の過去を……あの日の再現のように起こって。
 ふたりの足元には二つの骸――影朧と、それから……。
 それは、見覚えがあるとか、忘れられないというようなものではない。
(「あの日から毎晩見る夢と同じ」)
 じわりと真白の雪に滲んでゆく赤。
 そんな飛び散った血のいろは、まるで眼前に咲いている花みたいで。
 冷たく腥い匂いのする風に揺れる花も、いつも視るように、血の如く真っ赤に咲いていて。
 そして毎晩のように抱く想いが、十雉の口から零れ落ちる。
 ――神様、なんでオレを死なせてくれなかったの、って。
 有頂はそんな鮮烈な光景を目にして。
 その瞳は見日開かれたまま、頭は無能に凍りついたまま、だけれど。
「こんなものは赦せねえ」
 そして続ける……二度と損なわせんと、誓ったんだ、と。
 ――だから。
「神様や無うて、俺が。なぜあんたが遺されたのか、それを俺が教えてやる」
 有頂は十雉へと、その手を伸ばし紡ぐ。
 ……何処にも行くな、何処にも行かせん、と。
 ちゃんと捕まえてなきゃ駄目だよ、って――そう自分に言ったのは、彼だから。
 そんな、与えられた手の感触や言葉に、ニット……と彼の名を口にして。
 十雉は顔を上げ、自分を見つめる有頂へと、視線を返し紡ぐ。
 ――そうだ、生きるって……約束したんだから、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

誘名・櫻宵
🌸千織/f02428

桜咲く屋敷―館じゃない

知らない
なのに懐かしい
心臓が早鐘を打つ
知っている―否
『憶えている』

―イザナ!遊ぼう
黒い鳥が舞い降りて3つ目の男の姿をとる
無邪気に笑いかけてくる―黒いかみさま
隣町に美味しそうな甘味の店を見つけただとか
綺麗な花畑を見つけただとかたわい無い話

じゃあ行こうかと櫻龍が笑み
手を差し伸べ神を招く

これは
かれの記憶

桜が散って
一瞬、去りゆく影と記憶が重なる

覗いた千織の顔に安堵する
ちゃんと私は私だとあなたの存在が教えてくれる
顔色が悪いわ、千織
大丈夫
あなたを独りにはしない

瞼を閉じれば浮かぶ情景
―優しく笑う神がいる
過ぎた過去など取り戻せないのよ、誘
見上げる桜わらしを、そう諭す


橙樹・千織
櫻宵さん/f02768

森でも館でもない
桜のお屋敷

櫻宵さんの傍に降りた鳥が人型となる
人なつこく笑う3つ目の男
あの男に近い気配は一度…感じたことがある気がする
じぃと見ていれば男に笑む櫻龍
あれは…彼ではない。そう直感で感じる
これは櫻宵さんの、前世の記憶だろうか

桜が眼前を覆い開ければ
いつかの光景
前世の記憶のことを打明けたが故にひとりになった…その時の
ぶれる、ゆらぐ
離れてゆく過去の影に今の友人達が重なる
やめて…また、……っ

風が吹雪いて桜が散って―
気付けば櫻宵さんの隣
震える手を隠し、いつものように微笑んで
大丈夫、櫻宵さんは櫻宵さんです
私が大切に想うのは貴方ですからね?

再び過ぎる光景は糸桜の奥へ追いやるの



 桜が、咲き誇っている。
 けれども、いつもの様に咲くその花が飾るその場所は。
(「森でも館でもない、桜のお屋敷」)
 橙樹・千織(藍櫻を舞唄う面影草・f02428)にとっては、見覚えのない場所。
 千織が、皆が帰る場所……館ではない、お屋敷であった。
 誘名・櫻宵(貪婪屠櫻・f02768)も、帰ってきて良いと思える場所とはまた違う桜咲く屋敷の光景を、巡らせる花霞に映しながらも。
 ――知らない。
(「なのに懐かしい」)
 瞬間、早鐘を打つ心臓。
 ……知らない? いや、知っている――いいえ、否。
 そう――『憶えている』。
 そんな桜の風景に、ばさりと舞い降りる黒い鳥。
 そして、3つ目の男の姿をとり、櫻宵の傍へと降り立った彼は、人懐っこく笑いかけてくる。
 ――イザナ! 遊ぼう、って。
 それから彼……黒いかみさまは、無邪気に話し始める。
 隣町に美味しそうな甘味の店を見つけただとか、綺麗な花畑を見つけただとか、そんな他愛無い話題を。
(「あの男に近い気配は一度……感じたことがある気がする」)
 千織がそう、じぃとその様子を見ていれば……男に笑む櫻龍。
 そしてその手を差し伸べて、櫻龍は神を招く。
 けれど、千織は直感で感じる。
 あれは……彼ではない、と。
 それからふと、こう思い至る。
(「これは櫻宵さんの、前世の記憶だろうか」)
 そう――これは、かれの記憶。
 刹那、ぶわっと風が逆巻き、桜が散って。
 一瞬重なるのは、去りゆく影と記憶。
 そんな眼前を覆った桜嵐が過ぎ去り、開けた千織の視線の先。
 いつの間にか広がるのは――いつかの光景。
 前世の記憶。心にそれを思えば、いつもふわふわ笑み宿るその表情に、何処か落ちる影。
(「前世の記憶のことを打明けたが故にひとりになった……その時の」)
 ……ぶれる、ゆらぐ。
 離れてゆく過去の影。今の友人達が、それに重なって。
 ――やめて……また、……っ。
 声にならない声が、動揺が、千織の心を大きく揺さぶるけれど。
 風が吹雪いて桜が散って……ふと気付けば、元いた櫻宵の隣に。
 櫻宵も、覗いた千織の顔に安堵する。
 だって……ちゃんと私は私だとあなたの存在が教えてくれるって、そう思えるから。
「大丈夫、櫻宵さんは櫻宵さんです」
 ――私が大切に想うのは貴方ですからね? って。
 千織はそう震える手を隠しつつも、いつものように櫻宵へと微笑むけれど。
「顔色が悪いわ、千織」
 そんな心の機微を、櫻宵が気付かないはずはないから。
 そっとその手を伸ばし、桜の微笑みを咲かせ向ける。
 ――大丈夫、あなたを独りにはしない、って。
 それからふっと春咲く桜霞を閉じれば浮かぶ情景……そして、優しく笑う神がいる。
 櫻宵はふと視線を落とし、見上げる桜わらしへと紡ぎ諭す。
「過ぎた過去など取り戻せないのよ、誘」
 一緒に帰るべき場所は、もうあの桜のお屋敷ではない。
 皆がいて、皆が帰ってくる――桜の咲くあの場所なのだから。
 千織も桜わらしの中に在る魂をそっと感じながらも、ふわり笑んで頷いてから。
 再び過ぎる光景を――枝垂れ咲く糸桜の奥へと、そうっと追いやる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

氷雫森・レイン
【星雨】
温順で無邪気な、私の愛弟子
…傲慢、否、能天気な考えだった

戦場の供をした日もあった
武技が優れるには鍛錬が
鍛錬にもまた理由がある
武器は敵以外も傷つける
それでも心優しい人間に力を握らせた
この世で最も簡単な理由は…
「…っ」
唇を噛む
同情、憐憫…論外よ
平素の彼の穏和さを赤の他人如きが『強がり』にする事は想像でも許されない
私達の師弟関係は無名だった関係に今更名を付ける程の力もない謂わばおまけ
だとしても
「ごめんなさいね、人の過去の覗き見なんて淑女のする事ではないわ」
彼に、私を連れて来た事を悔やませる訳にはいかない
貴方が心安く頼れる師匠(レディ)で居なければ
「こんなものはまやかし。行くわよ、“アレク”」


アレクシス・ミラ
【星雨】
アドリブ◎

白い雪の花が見えた瞬間
景色がダークセイヴァーの…僕の故郷の街に変わり
吸血鬼に友を目の前で攫われた過去の僕が見えた
…悪趣味な幻影を見せるね
場面は変わっていく
僕は吸血鬼に無謀にも立ち向かって、返り討ちにされて
母さんは僕を庇って命を…
悔いるように目を伏せる
その後も街で戦い続ける事を選んだ
今度こそ守りたくて、救いたくて
取り戻したかった…けど
…街は滅んでしまったし
辿り着いた鳥籠は空だった

今も悔いてはいる。でも、過去から目は逸らさない
だけど…彼女には話していなかったから
…いいんだ、レディ
僕も…君を巻き込んでしまってすまない
それでも、アレクと呼ぶ彼女の瞳が強く見えた
―ああ
行こう、レインさん



 何かを隠すかのように咲き乱れていたのは、梅雨に咲く紫陽花であったはずなのに。
 アレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)の朝空の瞳に刹那、白い雪の花が咲いた瞬間。
 常に桜が咲く世界から一変。
 眼前の景色はダークセイヴァーの……彼の故郷の街のものへと変化していた。
 そして見えるのは、過去の彼。
 吸血鬼に友を目の前で攫われた――あの時のもの。
「……悪趣味な幻影を見せるね」
 それだけぽつりと落とした隣のアレクシスの横顔を、氷雫森・レイン(雨垂れ雫の氷王冠・f10073)は見上げる。
 ――温順で無邪気な、私の愛弟子。
 けれどもそれは。
(「……傲慢、否、能天気な考えだった」)
 戦場の供をした日もあった。
 ……武技が優れるには鍛錬が、鍛錬にもまた理由がある。
 そして武器は敵以外も傷つけるということは、よく知っていたけれど。
(「それでも心優しい人間に力を握らせた」)
 武器は敵を倒すべく握るものでもあって。
 時として、人を、そして自分をも傷つけるものでもある。
 それでも、それを持つ、持たせる――この世で最も簡単な理由は……。
「……っ」
 刹那、ぐっと唇を噛むレイン。
 紫陽花の花言葉である移ろい、まさにその通りに。
 ふたりのことにお構いなしで、変わってゆく場面。
 勿論、忘れるわけがない。
(「僕は吸血鬼に無謀にも立ち向かって、返り討ちにされて。母さんは僕を庇って命を……」)
 悔いるように、思わず青の瞳を伏せるアレクシス。
 そして容赦なく白い雪の花咲く幻影は、彼へとあの時の光景を見せ続ける。
 その後も、15歳の時から10年、街で戦い続ける事を選んだ自分の姿。
 今度こそ守りたくて、救いたくて――取り戻したかったから。
 けれども……街は滅んでしまったし。
 辿り着いた鳥籠は――空だった。
 レインはそんな愛弟子の姿に唇を噛み締めたまま、ふるりと微かに首を横に振る。
(「同情、憐憫……論外よ」)
 温順で無邪気で、物腰も柔らかで。情に厚く、真面目な彼。
 けれども、レインは想像でも許されないと、そう強く思う。
(「平素の彼の穏和さを赤の他人如きが『強がり』にする事は」)
 アレクシスの表情に宿る、後悔のいろ。
 忘れられるわけないし、今も悔いてはいる。
 けれども、鳥籠は空でも。
(「でも、過去から目は逸らさない」)
 美しく囀る愛しき鳥を映す朝空の瞳は、その決意の光を失ってなどいない。
 運命と戦い続ける彼の戦いは終わらない。守るべき者達の為に。
 だけど……ひとつだけ、気がかりであるのは。
(「……彼女には話していなかったから」)
 ふと視線を向けた、隣に在る彼女のこと。
(「私達の師弟関係は無名だった関係に今更名を付ける程の力もない謂わばおまけ」)
 アレクシスとの関係を、そうは思っているレインだけれど。
 ――でも、だとしても。
「ごめんなさいね、人の過去の覗き見なんて淑女のする事ではないわ」
 ……彼に、私を連れて来た事を悔やませる訳にはいかない。
 そう彼の視線に気付き、レインは紡ぎ思うけれど。
「……いいんだ、レディ。僕も……君を巻き込んでしまってすまない」
 返るは、悔いのいろを微かいまだ宿しながらも、そんな彼らしい優しくて柔らかな声。 
 そんな愛弟子だからこそ、レインは思うのだ。
 ――貴方が心安く頼れる師匠……レディで居なければ、と。
 そして先に進むべく、導くような一歩を踏み出す。
「こんなものはまやかし。行くわよ、“アレク”」
 アレクシスは、それでも、自分をアレクと呼ぶ彼女の瞳が強く見えて。
 その声に顔を上げ、頷いてから。
 運命を切り開くために……彼女と並び、再び歩き出す。
 ――ああ。行こう、レインさん、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふええ!?こ、これはいったいどういうことですか?
なんで、紫陽花が黄色になっているんですか?
アヒルさん、何かしましたか?
これはまるでさっきの私の文句の仕返しじゃないですか。
たしかに、黄色の紫陽花の中なら目立たないかもしれませんが、恥ずかしいものは恥ずかしいんですよ。



 確かに、木の葉を隠すなら森の中、とは言うけれど。
「ふええ!? こ、これはいったいどういうことですか?」
 いつものように、おどおどビクビクしながらも。
 フリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)は、赤い瞳をぱちくり瞬かせ、思わず叫んでしまう。
 梅雨の夜に映える青や紫の紫陽花が、そのいろを一斉にガラリと変えたから。
 それは、現実では有り得ない色。
「なんで、紫陽花が黄色になっているんですか?」
 そう――フリルが着ているレインコートと同じ、鮮やかな黄色になっています!?
 そしてちらりと見遣る視線の先には、ペアルックを着ているアヒルさん。
「アヒルさん、何かしましたか?」
 黄色のレインコートはすごく目立っていて、確かに恥ずかしかったけれど。
 フリルは黄色だらけの異様な光景の中、ふるりと首を横に振る。
 ――これはまるでさっきの私の文句の仕返しじゃないですか、って。
 いや、いくら周囲が黄色になれば、色的には周囲と同化はするだろうけれど。
「たしかに、黄色の紫陽花の中なら目立たないかもしれませんが、恥ずかしいものは恥ずかしいんですよ」
 やっぱり、それでも。
 ペアルックの黄色のレインコートは恥ずかしいのです……!

大成功 🔵​🔵​🔵​

終夜・嵐吾
彼岸の存在じゃって
わしと虚だけなら、現れるのは一人しかおらん
汝の最初の主、わしを拾いあげていろーんな事教えてくれた女じゃ
ああ、まったく記憶の中と同じじゃね

どこぞの学園でみた偽物は気に入らんかったけど、これはええんか?
まぁ虚も気分屋じゃもんな

――、と彼女の名を呼んでみると
痛、ちょ、なんじゃ、眼帯押しのけて
零れてくる黒い泥のような花を掌の上に
うん? ああ、なるほど
汝の事は本当の名を呼ばんから拗ねとるのか?
かっわいいの! あ、痛、今度は照れておるな!

あのよな幻――何を言おうと
此処に置いていくだけじゃよ
今わしと一緒におるのは、『  』だけじゃからね
小声で紡ぐならよかろ、誰にも聞こえてはおらんはず



 眼前に咲き乱れていた紫陽花が、さわりと静かに揺れて。
 刹那、琥珀の視線が捉えたその姿に、終夜・嵐吾(灰青・f05366)は一瞬だけゆらりと灰青の尻尾を揺らすけれど。
「彼岸の存在じゃって」
 特に動じるわけでもなく、ゆるりと紡ぐ。
 ……わしと虚だけなら、現れるのは一人しかおらん、って。
 そして、記憶の中のその姿と照らし合わせてみれば。
「ああ、まったく同じじゃね」
 そう言った後、右目の洞に在る虚の主に、ふと首を傾ける。
「どこぞの学園でみた偽物は気に入らんかったけど、これはええんか?」
 眼前に在るその姿は、彼女の最初の主。
 けれど、嵐吾は知っているから。彼女が気分屋さんであることを。
 でも……「――」って。
 嵐吾が、眼前の女の名を呼べば。
「痛、ちょ、なんじゃ、眼帯押しのけて」
 ぼとり、ぼとりと零れては咲く、黒い泥のような艶やかな花。
 そんな黒い荊棘を持つ薔薇な愛しきその花を、掌の上へと招きじゃれつかせながら。
「うん? ああ、なるほど。汝の事は本当の名を呼ばんから拗ねとるのか?」
 ……かっわいいの!
 そうへらりと、破顔すれば。
「あ、痛、今度は照れておるな!」
 ちょっぴり痛いけれど……やはりそんな様も、可愛くて愛しい。
 そんな虚とじゃれ合いながらも。
『――らんご、』
 そう女の姿をしたそれに、名を呼ばれ何かを紡がれれば。
 嵐吾は顔を上げ、首を傾ける。
「あのよな幻――何を言おうと、此処に置いていくだけじゃよ」
 そして掌に咲く彼女へと視線を戻し、瞳を細め続ける。
 ……今わしと一緒におるのは、『  』だけじゃからね、って。
 それから、移ろわぬその言の葉を最後に。
 紫陽花の景色と溶けるかの如く、女の形をしたそれが消えてゆくのも最早構わずに。
 嵐吾は掌の彼女にそっと笑んで、柔く囁く。
 ――小声で紡ぐならよかろ、誰にも聞こえてはおらんはず、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

呉羽・伊織
【花守】
(現れるのは、あの人しかいない
何があっても変わらぬ笑顔で、おいでと手を差し伸べる恩人
その姿で以てまた道を塞ごうとは、つくづく皮肉な――でも今はその手は取れない
まだ彼岸には行けない
本当のあの人は、俺を呼んではいない筈だから)

――さっきの話だがな
お前に声掛けた理由はコレだよ
こーなる予感がしてた以上、下手に女子は誘えないだろ
…いやホントさらっとそーいう事言わないの!

心配も遠慮も気遣いも要らない
深く突っ込む事も、まして余計な茶々入れる事もない
平然とアレを受け流して進める同類が、この場にゃ丁度良い

(幻影を越えた道行には名も知れぬ雑草や野花――ああ、そうだ、あの人はこれすらも愛し慈しむ人だったな)


百鬼・景近
【花守】
(二人でまたふらりと進めば幻影が二つ
片方は、恋しく懐かしい我が君
嘗ての儘に、優しい微笑を向けてくれている――けれど)
――最近は本当によく逢うな
嬉しくて、哀しくて、複雑で
未だにこの心は君以外の事を深く考える余裕もないのだけど
御免ね
やっぱりこれは俺の独り善がりで――得も知れぬ幻に浸っていては、本来の彼の娘に顔向け出来ない

(囚われる事なくふらりと踏み出して)
やっぱりそうかい――本当に君は物好きな上に、人が悪いなぁ?
――いや、まぁ、この予感に関わらず、きっと結果は(女の子に声を掛けたとしてもフラれて)一緒だったね?

まぁ丁度良かったなら、それで――ああ何も言わないさ

(後には、手向けの様に彼岸花)



 ふらり、夜の闇に浮かぶ紫陽花の中を進んでいたはずだけれど。
 眼前に揺れるのは、幻影が二つ。
 その影のうちのひとつは、よく見知ったもの。
(「現れるのは、あの人しかいない」)
 呉羽・伊織(翳・f03578)は知っている。
 それは、何があっても変わらぬ笑顔で、おいでと手を差し伸べる恩人のものだということを。
(「恋しく懐かしい我が君」)
 そしてもうひとつの影が誰のものであるか、百鬼・景近(化野・f10122)も知っている。
 その記憶の儘、嘗ての儘に……優しい微笑を向けてくれている、恋しき我が君。
 ……けれど。
「――最近は本当によく逢うな」
「その姿で以てまた道を塞ごうとは、つくづく皮肉な」
 ふたりは、よく知っている。
 それは幻影であって。今は、その手は取れないことを。
 それに、まだ彼岸には行けないし。
(「本当のあの人は、俺を呼んではいない筈だから」)
 伊織は分かっている。あの人はまだ自分を彼岸へと手招いたりはしないと。
 そして、その姿を見ればやはり……嬉しくて、哀しくて、複雑で。
(「未だにこの心は君以外の事を深く考える余裕もないのだけど」)
「――御免ね」
 景近が紡いだのは、そんな一声。
 眼前に我が君の幻影を視る。やはりこれは、自分の独り善がりで。
 恋しき君……いや、彼女の姿をした幻影を見遣り、ふるりと景近は首を微かに横に振る。
 ――得も知れぬ幻に浸っていては、本来の彼の娘に顔向け出来ない、って。
 そんな決して囚われる事のない連れへとちらり、赤の視線を向けて。
「――さっきの話だがな。お前に声掛けた理由はコレだよ」
 伊織はふっとその瞳を細め、続ける。
「こーなる予感がしてた以上、下手に女子は誘えないだろ」
「やっぱりそうかい――本当に君は物好きな上に、人が悪いなぁ?」
 そして景近は、再びふらりと踏み出しつつも伊織へと返す。
「いや、まぁ、この予感に関わらず、きっと結果は一緒だったね?」
 ……女の子に声を掛けたとしてもフラれる結果は、って。
「……いやホントさらっとそーいう事言わないの!」
 伊織は飄々とそう何気に言う連れに、毎度の如くツッコミながらも。
 やはり、己の選択は正しかったと密かに思う。
 心配も遠慮も気遣いも要らない。
 深く突っ込む事も、まして余計な茶々入れる事もない。
(「平然とアレを受け流して進める同類が、この場にゃ丁度良い」)
 隣を歩く連れがそんな同類だと、知っているから。
 そして……いつの間にか眼前で揺れている、名も知れぬ雑草や野花を目にしつつも、思うのだった。
 ――ああ、そうだ、あの人はこれすらも愛し慈しむ人だったな、って。
 そんな彼と並び、隣の伊織をちらりと見てから。
(「まぁ丁度良かったなら、それで」)
 手向けの様に咲いた彼岸花の景色の中、歩みを止めることもなく。
 幻の影の脇を通り抜けつつ、景近は連れの姿を映す赤の瞳を細める。
 ――ああ何も言わないさ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

揺・かくり
【幽楽】

寄せては引いてを繰り返す波
ざあざあと、耳を打ち続けている
この景色を見せるのは、誰だい
アン?それともアメ?

常より可動する首で周囲を見渡す
辺りにふたりの姿は見えない
ならば、これは。私の、

青ではない、不思議な色をした海だった
この身は勝手に歩を進めてゆく
つま先を、身を浸して
奥底へと歩み、おちてゆく
誰かに見送られていた気がした

この海は何処に繋がっているの
わたしは、何処に還るというの

言葉に代わりあぶくが昇ってゆく
身体が水へととけて、消えてゆく
最期に見えた指の環は
黒よりもずうと、鮮やかな彩をしていた

こんな光景はしらない いらない
“私”を揺すらないでくれよ

……ああ、此処に居たのだね
はやく先へと往こうか


庵野・紫
【幽楽】

えー、なにこれー
アンの知ってる光景なんですけど?

ちいさき生き物のくせに
わたくしの祠を囲んでわたくしの依り代を壊そうとする。
愚か者!神を無下に扱うなど罰あたりめ!
お前達の世を救ったのは誰だ!わたくしたち竜の神ぞ!

懐かしい光景じゃん。
アンさー、ホントに許せなかったんだよねー
でもでもそろそろ来るんじゃないかなー?
ほら、来た!泥団子の小僧!
人間がアンたち竜神を信仰しなくなったから泣いて泣いて滅ぼそうと思ったんだー
祠の周りだけ雨になったってやつ?
でもでも泥団子小僧がアンの祠にお供え物してくれたから
愚か者ばかりじゃないって思ったんだー

やっほー!二人ともこんな所に居たんだ?
さっさと行こう!


甘渼・アメ
【幽楽】

滲む空色が朧気に浮かぶ

ぽつりぽつり、雨が降る
ざあざあ雨が降っているよう
アメのところからは見えないけれど
アメからは空の色も、何も見えないの
分厚い天井に注連縄に、真っ赤な鳥居がみえるだけ
しゃんと鈴がなって
幕が開く
アメがするのはひとつだけ
祈る、祈る、祈る、いのる
無事を平穏を、疫病の退散を、怪我の治癒を
七つ光を照らして、祈る
祓う、浄化する
汗がこぼれて目眩がしても、それがアメの役割だから
ただただ
救いの願いを掬ってアメは光を咲かせるの

雨上がりの空に虹がかかるのが大好きで、よく手をのばしていたっけ
虹は、何色だったかな?

はっ?!
また社の中に戻ったとおもった!!
アンーー!かくりーー!ひとりにしないでーー



 静かにいろが揺らめいているけれど、それは紫陽花ではなく。
 ざあざあと耳を打ち続けているけれど、雨ではない。
 それは――不思議な色をした海と、寄せては返す波の音。
「この景色を見せるのは、誰だい。アン? それともアメ?」
 いや……常より可動する首で周囲を見渡しても、辺りにふたりの姿は見えない。
 だから、揺・かくり(うつり・f28103)には分かったのだ。
 何時の前にか変わったこの風景が、誰のものか。
「ならば、これは」
 ――私の、
 その金の瞳に映るのは、青ではない不思議な色をした海。
 そのいろに抗わずに、ゆらりと勝手に歩を進めてゆく身体。
 つま先が寄せる波にふれれば、ひやりと冷たくて。
 身を浸して、奥底へと歩めば……ずぶり、おちてゆく。
 そして誰かに、見送られていた気がした。
 ……この海は何処に繋がっているの。
 ……わたしは、何処に還るというの。
 けれどその言の葉は、ただ、あぶくに代わるばかりで。
 昏い底へとおちるその身とは逆に、揺らめいては静かに光る水面へとキラキラと昇って。
 おちてゆく身体は次第に、水へととけて……消えてゆく。
 ――左様なら。
 そして最期に金の瞳に映った指の環はてっきり、色褪せたかと思っていたけれど。
 黒よりも、ずうと鮮やかな彩をしていた。
 しらない、いらない……しっている?
 いや――こんな光景はしらない、いらない。
 自分のだってこと、分かっていても。
「“私”を揺すらないでくれよ」

「えー、なにこれー」
 そう、きょろり巡らせた緑色の瞳で見遣るその光景は。
「アンの知ってる光景なんですけど?」
 庵野・紫(鋼の脚・f27974)にとって知っていて、そして懐かしいもので。
 祠を囲んでは、依り代を壊そうとする、罰あたりなちいさき生き物たち。
 別に恩着せがましくは思ってはいないし、生き物は好きなのだけれど……でも、両足を賭して守ったというのに。
 ――愚か者! 神を無下に扱うなど罰あたりめ!
 ――お前達の世を救ったのは誰だ! わたくしたち竜の神ぞ!
 怒りに触れた無礼な生き物たちには、轟き降り注ぐ雷雨で怪奇現象の天罰を。
 そんな光景を前に、懐かしい光景じゃん、と呟いた後。
「アンさー、ホントに許せなかったんだよねー」
 そうこの時の事を思い出し、言ったけれど。
 でも、紫は知っている。
 ……でもでもそろそろ来るんじゃないかなー?
 そう思った、その時。
「ほら、来た! 泥団子の小僧!」
 そろりと泥団子をお供えする、小僧の姿。
「人間がアンたち竜神を信仰しなくなったから泣いて泣いて滅ぼそうと思ったんだー。祠の周りだけ雨になったってやつ?」
 けれど、そうはしなかった。
 こっそりと供えられた、不揃いでちょっぴり歪な、泥団子のお供え物。
 きっと懸命に小僧が、その小さな手で作ったのだろうもの。
 それを見て――人間も可愛いとこあるじゃん、って。
 そう思ったから、泣き止んだのだ。
 怪奇現象になるほど涙流していたその瞳に、怒りではなく慈愛のいろを宿して。
 愚かで、そして愛しきちいさき生き物たち……人間に。
 この時、神様は……紫は、思ったのだ。
 ――愚か者ばかりじゃない、って。

 ゆらり、夜の闇に浮かんでいる紫陽花のいろが歪んで。
 浮かんだのは、朧気に滲む空の色。
 ぽつりぽつり。ざあざあ。雨が、降っているけれど。
(「アメからは空の色も、何も見えないの」)
 甘渼・アメ(にじいろ・f28092)のいるところから、それは見えない。
 見えるのは……分厚い天井に注連縄に、真っ赤な鳥居だけ。
 しゃんと清廉なる鈴の音がなって幕が開くのは、空を見るためじゃない。
(「アメがするのはひとつだけ」)
 ――祈る、祈る、祈る、いのる。
 無事を平穏を、疫病の退散を、怪我の治癒を。七つ光を照らして。
 掛けられる願いに、紡がれる祝詞に、向けられる祈念に。
 ――祈る。祓う、浄化する。
 汗がこぼれて目眩がしても、それでもずっとずっと。
 虹人魚は、あえかな幸彩をと祈り続ける。
(「ただただ、救いの願いを掬ってアメは光を咲かせるの」)
 それが、アメの役割だから……って。
 幸視て厄看て、光をみせる。届かぬ穹を、ゆめに観ながら。
 そしてひたすらに、しあわせを祈りながらも。
 よく、その手を伸ばしていた。
 ――虹は、何色だったかな?
 大好きな虹がかかる、雨上がりの空に。

 けれど――でも、今は。
 ……はっ!?
 刹那、アメはぴょこんとその顔を上げ、気付く。
 此処に居るのは、あの時とは違って……ひとりではないことに。
「また社の中に戻ったとおもった!!」
 ……アンーー! かくりーー! ひとりにしないでーー!
 そう駆け寄るアメを見つけ、紫とかくりも一瞬、ぱちりと瞳を瞬かせてから。
「やっほー! 二人ともこんな所に居たんだ? さっさと行こう!」
「……ああ、此処に居たのだね。はやく先へと往こうか」
 合流した3人は再び、並んで歩きだす。
 それぞれの景色が、いろが、曖昧に綯い混じる不思議な庭園を――皆で一緒に、通り抜けるべく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『花盗人』

POW   :    これは、どんな感情だったかな
自身の【今までに盗んできた花】を代償に、【元になった人の負の情念】を籠めた一撃を放つ。自分にとって今までに盗んできた花を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    君の心はどんな花かな?
【独自に編み出した人の心を花にする魔術】を籠めた【手を相手に突き刺すように触れること】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【心を花として摘み盗る事で全ての意思や感情】のみを攻撃する。
WIZ   :    嗚呼、勿体無い
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【今まで盗んできた花】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は佐東・彦治です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※お知らせ※
 第3章プレイング送信の受付は、【7/15(水)朝8:31】より開始いたします。
 それ以前に送信された分は流れてしまう可能性が高いのでご注意ください。
 追加情報を記載したOPを受付開始前日迄に掲載いたします。
 送信締切等のお知らせは、MS個別ページ等でご確認ください。
●心の花を摘み盗るモノ
 カフェーの裏庭の、そのまた奥に。
 まるで咲き乱れる紫陽花たちに隠れるか様に佇む、一軒の建物があった。
 カフェーの店主・春江は、一人分のホットサンドを手にその建物の中へと入って。
 中にいる『彼』へと、声を掛ける。
「博、ごはん持って来たわ」
 ドアを開ければ、そこは――ほとんど物がない、ラムプ灯るだだっ広い部屋。
 だが、一見何もないように思えないのは……部屋中に、数えきれないほど様々な花がいっぱいに飾ってあるからだろう。
 博と呼ばれた青年は掛けられた声に、くるりと振り返って。
「有難う、母さん」
 そう、春江に微笑む。
 そんな彼に笑み返した後、春江はふと隅に置かれてあるテーブルに視線を遣って。
 心配気な表情を宿す。
「博、夕食を持って来たけれど……昼食も食べてないのかい?」
「大丈夫、少し食欲がないだけだよ」
「……そう。夕食、博の好きなホットサンドを作ったから……置いておくわね」
 それから春江はふと、彼が持っている花を見つめる。
「可愛い彩をした花ね、鮮やかな橙色で。あ、部屋のお掃除ちょっとしておくわね」
 持ってきたホットサンドを、昼食に用意していたナポリタンと取り換えてから。
 軽く部屋の片づけをし始める春江。
 そんな彼女から、手元の花へと視線を映して。
「ふふ、この心の花を咲かせたのは、若くて元気な子だったからね」
 そう、満足そうに彼は笑んで。
 せっせと世話を焼く春江をちらりと見て、ぽつりと呟きを落とすのだった。
「……貴女の花は、淑やかで悲しい色をした、まるで紫陽花の花のようだろうな。いずれ、その花も……」
 彼女が望むから――博と呼ばせてあげて、母さんと呼んであげている。
 人の心を集めるのに、この紫陽花庭園はお誂え向きだから。
 彼は、春江の息子の博などではない……影朧だ。
 花盗人――人の心が一番美しいと、花の形で摘み盗り集める蒐集家。
 心の花を戻さなければ、盗られた者がいずれ衰弱死してしまうなんてことなど、気にも留めないで。ただ、心の花を集め続ける影朧。
 そして彼はいずれ、摘んで盗んでしまうだろう。
 死んだ息子を自分に投影している、春江の心も。
ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
【SPD】

「私の心には簡単には触れさせないわよ」

逃げ足を駆使して触られないように走りまわる。
見切りあるいは短剣【揺らぎ逸らす刃】で武器受ける。
逃げきれないならオーラ防御と破魔で食い止め、そして最後は手にした銃で受け止める。
ユーベルコード【因果応報の鏡】で逆に意思を叩き潰してあげるわ。

「貴方が触れようとしたのは綺麗なだけの花じゃない。無数の負の念がこもった毒花よ?」



 紫陽花の裏庭のそのまた奥に佇む、秘密の小屋。
 そこには様々な花が飾られ、尚も『彼』は花を集め続けている。
 『彼』――いや影朧は、人の心を勝手に花にし咲かせ、摘み取るのだ。
 そして亡くした息子を自分に投影し、息子の名で自分を呼ぶ、春江の心も何れ。
 花盗人は摘んでしまうだろう。母さん、って……その心が望む様に、彼女を呼んであげながら。
 部屋の掃除をしていた春江は、突然生じた物音にふと顔を上げてから。
「……? えっ、貴方達は!?」
 室内に踏み入ってきた猟兵達の姿に、大きく瞳を見開くけれど。
 逆に花盗人は、その顔にそっと笑みを咲かせる。
「今日は彼岸と此岸を分かつ四季の庭園に、随分と色々な花が咲いたね。君たちの心の花が」
 幻影の庭園で猟兵達が咲かせた心の花。それを、花盗人は見ていたのだ。
 沢山の花がまた摘めると、心躍らせながら。
 そして影朧は、真っ先にこの場に駆け付けたヴィオレッタ・エーデルシュタイン(幸福証明・f03706)へと、ヒュッと風を切るかのようにその手を伸ばす。
 独自に編み出した魔術で、彼女の心をも花にして。それを摘んで、コレクションのひとつに加えるために。
 けれど、そう易々と影朧の思い通りにはさせやしない。
「私の心には簡単には触れさせないわよ」
 心の花を摘まんと突き刺すように放たれたその一撃を、ヴィオレッタは逃げ足を駆使し戦場を駆け回って躱して。
 それでも迫る盗人の手を受け流すのは、刃が波打っている短剣――揺らぎ逸らす刃。
「綺麗に咲かせてみせてくれよ、その心を」
 花盗人はそうくすりと笑んで、再びその手を繰り出すけれど。
 影朧が刹那触れたのは、ヴィオレッタの心ではなく。
 彼女が素早く手にした、長い銃身を持つ黒色艶消しの回転式拳銃。
 そしてヴィオレッタは展開する。まるで鏡に映したかの様にそっくりそのまま、影朧の魔術を跳ね返すべく。
『……!』
「貴方が触れようとしたのは綺麗なだけの花じゃない。無数の負の念がこもった毒花よ?」
 因果応報――逆に花盗人の罪を、その意思を叩き潰さんと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

満月・双葉
【ミカエルf21199】
人の弱みを利用するとは許せませんねぇ
まぁ、他人事ですけど
代償にするものがなければ成功しませんか?爆発する【武器改造】された大根の【属性攻撃】で燃やしておきましょう

師匠が援護し僕が主戦力であるように動き敵を欺く
感情の見えない僕の心を覗いてみたいと思いませんか
光弓の首飾りで無差別射撃を放ち
桜姫で切り込み
大根と渾天儀による殴打という名の【咄嗟の一撃】を放つ
こんなもので攻撃すると思いませんでした?
僕自身もそう思います
ぁぁそうだ、目は最も感情を表すところですよ、見てみます?
と煽って視線を合わせさせ、眼鏡を外してユーベルコードを放ちます
君の恐怖を僕に見せてくださいよ


ミカエル・アレクセイ
【双葉f01681】
あの母親が何処まで理解してるのかってところかねぇ
まぁ、お前の言う通り他人事だな
母親が先頭の邪魔になるようなら手刀で気絶させて危険の及ばないところにやっておく

『主戦力ではない男』とその時まで思わせておく
自分の方に飛んできた攻撃は、昔もらったオカメインコに施された加護によって発生する【盗み攻撃】効果で相手にそっくりそのまま自分の攻撃として打ち返す
援護というよりは双葉に指示を出したり動きが止まらないように【鼓舞】したりする方が主

ここぞという隙が出来たところでユーベルコードを発動させ、猫の亡霊に機関銃をぶっ放させ、刀で手足のけんを斬らせようとしてみる
ほんとこの猫意味わかんねぇ



 紫陽花庭園が隠していた小屋に足を踏み入れれば。
 鮮やかなものから落ち着いた色味のもの、何処か物悲しいもの等……部屋いっぱいに飾られた花々が。
 それは、花は花でも……魔術で変化させた人の心なのだという。
 いや、人の心を花にして摘み、蒐集するだけではない。
「ひ、博……」
『大丈夫だよ、危なくないところにいて。母さん』
 突如踏み込んできた猟兵達に驚きつつも、影朧へと心配気な視線を向ける春江。
 勿論、本物の息子なんかではないけれど……花盗人は彼女を唆す。
 呼んで欲しい欲しい呼び方と共に、甘い言葉を紡いで。
「人の弱みを利用するとは許せませんねぇ」
 満月・双葉(時に紡がれた星の欠片・f01681)は、春江の心を掴む様に、息子の博を演じる影朧へと口にしながらも。
 ……まぁ、他人事ですけど、と。
 得物を握り、改めて花盗人へと視線を向けて。
『……嗚呼、勿体無い』
 今まで盗んできた花を糧に、己の行動に対する成功率を高めんとする敵へと紡ぐ。
 ――代償にするものがなければ成功しませんか? って。
 刹那大きく爆ぜるのは、衝撃音響かせる衝撃。
 武器改造されたとても凶悪な大根が、その花を燃やして。
 ミカエル・アレクセイ(山猿・f21199)は、青の瞳を春江へと向けつつも思う。
(「あの母親が何処まで理解してるのかってところかねぇ」)
 驚いて立ちすくんで動けない、といった様子か。
 今のところ、彼女が危険顧みず何かをしようとするような様子は幸い見られない。
 けれどミカエルは、春江が戦闘の邪魔になるような行動を取った時に対処できるよう注視しておきながらも。
 双葉へと、微かに頷き紡ぐ。
「まぁ、お前の言う通り他人事だな」
 所詮は他人事。自分たちは、やるべき事をただ成すのみ。
『君たちの咲かせる花は、どんな花なのかな?』
 ふふ、と笑みながらも、楽しそうに言う花盗人。
 彼の興味は専ら、心の花を集める事しかないから。
 そんな影朧へと。
「感情の見えない僕の心を覗いてみたいと思いませんか」
 双葉が番えるは、首飾りに擬態していた光の弓矢。巨大化したそれをぐっと引き、無差別射撃を戦場へと放てば。
 その間隙を縫い、手に握るは変幻自在な赤黒い刃。
『……!』
 さらに、斬り込んで衝撃を放った後も攻撃の手を決して緩めずに。
 クルクル回ったり光ったりする渾天儀ととても凶悪な大根で追い討ちを掛けるかのように、咄嗟に一撃を繰り出す。
 そして堪らず大きく跳躍し一旦距離を置いた影朧へと、声を投げる。
「こんなもので攻撃すると思いませんでした? 僕自身もそう思います」
 ……自分は『主戦力ではない男』。
 双葉が派手に攻勢に立ち回る一方、ミカエルはそう思わせるべく振舞いながら。
 影朧の花弁を舞わせるような衝撃波が放たれれば、愛弟子が名を付けたオカメインコ・フロフティの加護による効果で、それをそっくりそのまま花盗人へと打ち返ししつつも。
「次は右からくるぞ。お前ならまぁ躱せるだろ」
 さり気に双葉に指示を出したり、物言いこそぶっきらぼうだが、彼女の動きが止まらないように鼓舞したりするミカエル。
 そんな師匠の援護や言葉を受けながら。
 引き続き、主戦力であるかのように動き、盗人を欺き動く双葉はこう影朧の興味を惹く様に紡ぎ煽る。
「ぁぁそうだ、目は最も感情を表すところですよ、見てみます?」
 そして、ふっとその視線が自分へと向けられた瞬間。
『……!?』
「君の恐怖を僕に見せてくださいよ」
 視線を合わせさせ、眼鏡を外して双葉が放つは――死ぬより酷い恐怖を呼び起こす『冥界の女王の怒り』。
 ――死んだ方がまし?
 そう向けられた彼女の視線に、思わず数歩後退りする影朧。
 そしてそんな隙をみせた敵へと、すかさず攻勢に転じるミカエル。
 ――ほんとこの猫意味わかんねぇ。
 戦場に喚んだのは、刀と機関魔銃で武装した、紅目の黒猫の幽霊を乗せた大型バイク。
 それから、しゃきんと猫たちがそれぞれの得物で、影朧へと狙いを定めれば。
『……っ!』
 猫たちの機関魔銃がぶっ放たれ、敵の手足の腱を断ち切らんと刀が振われる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リカルド・アヴリール
ライナス(f10398)と
アドリブ歓迎

……皆が皆、同じでは無いと思うが
我が子を愛おしく、大事だと思う親も居るだろうな
戦闘前に春江へと言葉を掛けるライナスの姿に
思わず目を見開き、驚きを露わに
嗚呼、ライナスらしいな

だが、この男の言う通りだ
貴女の傍に居る男は、本当に貴女の息子か?
同じ顔か、同じ声なのか、ちゃんと目を向けてくれ
……忘れないでくれ、本当の息子を

ライナスのユーベルコードで封じられた敵には
【怪力】【重量攻撃】込みのUC:虐を

背中は任せるが、お前自身の身も守ってくれ
いざとなれば【かばう】つもりだが……
後でお前に怒られそうだからな
深手を負わない様【オーラ防御】を使う


ライナス・ブレイスフォード
リカルドf15138と

…息子を投影なあ
世の親ってもんはそういうもんなのかね?ま、俺には解らねえけどよ
微かに眉を上げつつ部屋を見遣るも、未だ春江が居たなら頭を掻きつつ声を
ソレ。あんたの息子じゃねえんだけど。その姿さ、ほんとの息子が見せられんわけ?

説得っつう柄でもねえし女がどうなろうと構わねえけど…
あんたは気にすんだろと隣のリカルドに声を投げながらも常に敵には注意深く視線を向けとくぜ

仕掛けて来たならリカルドに攻撃が行かねえ様【愛しき百足】にて敵の動きを止めんと試みつつ手にしたリボルバーにて『クイックドロウ』
…他人がどうなろうが構わねえけど、あんたはどうでも良くねえからな
ま、背中は任せとけって、な?



 様々な花が飾られた部屋に、ぽつりと落とされる声。
「ああ……博」
 それは猟兵達の介入に驚いて、何かが起こっているのか現状を把握できない戸惑いもあるが。
 何よりも、息子の身を心配するような響き。
 そんな春江へと、ちらりと緑色の瞳を向けて。
「……息子を投影なあ。世の親ってもんはそういうもんなのかね?」
 ――ま、俺には解らねえけどよ、と。
 微かに眉を上げつつ部屋を見遣り言った、ライナス・ブレイスフォード(ダンピールのグールドライバー・f10398)のすぐ隣で。
「……皆が皆、同じでは無いと思うが。我が子を愛おしく、大事だと思う親も居るだろうな」
 そう紡ぐのは、リカルド・アヴリール(遂行機構・f15138)。
 そんなリカルドの言葉を耳にしながら、ライナスは頭を掻きつつも。
 部屋の隅にいる春江に声を掛ける。
「ソレ。あんたの息子じゃねえんだけど。その姿さ、ほんとの息子が見せられんわけ?」
 そして彼女へとはっきり告げた彼の姿に思わず目を見開き、驚きを露わにするリカルドだけれど。
 すぐに微かに瞳を細め、呟きを落とす。
 ――嗚呼、ライナスらしいな、って。
 そんな自分を見つめる彼の瞳に気付いて。
「説得っつう柄でもねえし女がどうなろうと構わねえけど……」
 ライナスは視線と共に返す――あんたは気にすんだろ、と。
「博は……私の息子、よ」
 けれど現実から逃げるかのように。そうふるふると首を横に振る春江。
 リカルドもそんな彼女へと声を投げる。
「だが、この男の言う通りだ。貴女の傍に居る男は、本当に貴女の息子か? 同じ顔か、同じ声なのか、ちゃんと目を向けてくれ」
 ……忘れないでくれ、本当の息子を、って。そう願うように。
 だが、息子を演じる影朧は、これ以上余計なことは言わせないと、そう言わんばかりに。
『これは、どんな感情だったかな』
 飾ってあった一つの花を手にし、その心の花の持ち主の負の情念を籠めた一撃を放たんとするけれど。
 ――俺さあ、虫好きなんだよな。……んで。あんたはどうよ?
 リカルドに攻撃がいかぬよう、足元から無数の百足を模した影を放ち、敵の動きを疎外せんと試みつつも。
 手にしたリボルバーを向け、素早くその引き金をひく。
 そしてライナスがその動きを封じ、隙が生じた敵へと、リカルドは一気に踏み込んで。
 ――砕けて、墜ちろ。
 自身の全機能を一時制限解除し、怪力を駆使して。
『……っ、!』
 眼前の敵を破砕するべく、強烈な衝撃を叩き込む。
 そんな敵の動きを引き続き注視しながらも、ライナスは前に立つ彼の大きな背を見つめ瞳を細める。
「……他人がどうなろうが構わねえけど、あんたはどうでも良くねえからな」
 ――ま、背中は任せとけって、な? って。
 リカルドはそう向けられた声に、一瞬だけちらりと視線を返して。
「背中は任せるが、お前自身の身も守ってくれ」
 そうライナスへと、心配の色を微かに滲ませた声で言ってから、その身に守りの気を纏う。
 いざとなれば、身を挺してでも彼の事は庇うつもりだけれど。
 自分は一向に構わなくても、深手を追えば……きっと後で、怒られそうだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふえぇ、この方が人の心を花の形で盗み取る影朧さんですね。
もしかして、さっきの黄色の紫陽花は私の心の花ってことですか?
決まった道から外れ、アリスとして世界を彷徨う私にお似合いということですか。
たとえ、黄色の紫陽花なんてありえない花でも盗ませるわけにはいきません。

あの方のユーベルコードによって代償とされた心の花はどうなってしまうのでしょうか?
持ち主の元に戻ればいいですけど、そのまま消えてしまったら大変ですね。
私の黄色の紫陽花を囮にして他のユーベルコードを使わせないようにしないといけませんね。
お菓子の魔法で時間を遅くしている隙にアヒルさんの攻撃です。



 沢山の花が飾られた部屋を、そうっと見回した後。
「ふえぇ、この方が人の心を花の形で盗み取る影朧さんですね」
 フリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)は、手にした花を愛でている影朧へとちらり目を向けてから。
 花咲く戦場で、ふと銀の髪を揺らしつつ首を傾ける。
「もしかして、さっきの黄色の紫陽花は私の心の花ってことですか?」
 先程、幻影の庭で見た花。
 それは変わった彩をした――黄色の紫陽花。
 けれどどこかそんな珍しい花を自分が見たことも、フリル自身納得するところもあって。
「決まった道から外れ、アリスとして世界を彷徨う私にお似合いということですか」
 でも……だからといって。
「たとえ、黄色の紫陽花なんてありえない花でも盗ませるわけにはいきません」
 どんな花であっても、心の花を盗ませるわけにはいかない。
 それから、ふと彼が愛でる花を見つめ、フリルは思う。 
(「あの方のユーベルコードによって代償とされた心の花はどうなってしまうのでしょうか?」)
 ――持ち主の元に戻ればいいですけど、そのまま消えてしまったら大変ですね、って。
 だからフリルは、花盗人に他のユーベルコードを使わせないようにしないといけないと、そう考える。
 自分が咲かせる、珍しい黄色の紫陽花を囮にして。
『君の心はどんな花かな?』
 刹那、フリルの心を花の形にかえて盗み取らんと。
 花盗人がその動きをみせようとしたけれど。
 ――あ、あの、お菓子を作ってきたんです。よかったら、おひとつどうぞ。
 そうすかさずフリルが彼に給仕するのは、趣味で作ったお菓子。
 けれど花盗人は、心の花にしか興味がないだろうから。
 フリルのお菓子の魔法で時間を遅くされた影朧の前へと、果敢に飛び出すはアヒルさん。
『……!』
 そしてこれ以上、人の心を花にはかえさせないと。
 アヒルさんの攻撃が、くわっと影朧に炸裂です!

大成功 🔵​🔵​🔵​

星野・祐一
【花澤・まゆちゃん(f27638)と一緒に】

やあやあ春江さん
さっきは美味しいアイスをどうもね
そこの影朧に用があるんだけれど
ふむ…俺はその博って人の事を
知ってる訳じゃないけどさ
貴女の料理に全く手を付けない人だったかい?
辛い現実から目を逸らすのは必ずしも悪い事じゃないけど
何時かは前を向かないと、本当に大切な物まで無くしちまうぜ?

花盗人はまゆちゃんの返答を聞くまで様子見
それでも【第六感、読心術】で対応できるように
転生を受け入れるならそれでよし、危害を加えるつもりなら
その前に【先制攻撃】で四肢を撃って【体勢を崩し】UCの一撃を与える
まゆちゃんに苦しい思いをさせたあんたに容赦なんてしない

アドリブ歓迎です


花澤・まゆ
【星野・祐一さん(f17856)とご一緒に】
春江さん
よく見て、それは本当に愛しい息子さんなの?
息子さんはそんなふうに花で遊ぶ人だった?
しっかりと見据えて
自分をごまかさないで
あなたの心の強さだけが、この事件を救えるの
あなたのお店を、紫陽花を愛する人を思い出して
その人たちを皆不幸にしても
あなたはこの世界に閉じこもるの?

花盗人
転生を望むなら、誰かが叶えてくれると思う
でも、貴方はそれを望む?
花になった人たちに申し訳ないと思える?
正直に聞かせて
貴方は春江さんを騙し、人を花に変える
あたしは…貴方が春江さんに真実を伝えないことが許せないの
答え次第では、斬ります

アドリブ歓迎です



 色とりどりの花が沢山飾られた部屋。
 そこに在るのは、影朧と。
「やあやあ春江さん。さっきは美味しいアイスをどうもね」
 星野・祐一(スペースノイドのブラスターガンナー・f17856)が声を向けた、カフェーの店主である春江。
 祐一は、まだ状況がよく把握できていない様子の彼女へとこう続ける。
「そこの影朧に用があるんだけれど」
 その声に、ふるふると首を横に振る春江。
「……この子は、私の息子の博よ」
「ふむ……俺はその博って人の事を知ってる訳じゃないけどさ」
 祐一はちらりと、部屋の隅にあるテーブルを一度見てから。
 改めて春江を見て、彼女に問う。
「貴女の料理に全く手を付けない人だったかい?」
「……! そ、それは……」
 祐一の問いに思わず口籠ってしまった春江へと、花澤・まゆ(千紫万紅・f27638)も声を投げる。
「春江さん。よく見て、それは本当に愛しい息子さんなの? 息子さんはそんなふうに花で遊ぶ人だった?」
 息子は花が好きな子だと、そうカフェーで話していた春江。
 確かに眼前の影朧は、手に握る花を愛おしそうに眺めているけれど。
 その様子は、花を大切に扱っているとは、到底思えない。
 そして思わず影朧から視線を逸らした彼女を見つめ、まゆは続ける。
「しっかりと見据えて、自分をごまかさないで。あなたの心の強さだけが、この事件を救えるの」
 ……あなたのお店を、紫陽花を愛する人を思い出して、と。
 息子に先立たれ、ひとりで店を守ることは、確かに寂しくて大変かもしれないけれど。
 でも、よく手入れされた紫陽花はとても綺麗だったし、カフェーだって居心地が良かった。
 だからこそ、まゆと祐一は、春江に言葉を向けるのだ。
「その人たちを皆不幸にしても、あなたはこの世界に閉じこもるの?」
「辛い現実から目を逸らすのは必ずしも悪い事じゃないけど、何時かは前を向かないと、本当に大切な物まで無くしちまうぜ?」
「…………」
 ふたりの言葉に、何も言えなくなって俯く春江。
 彼女だって、きっと疾うに気付いているはずだ。
 ……眼前の男が息子ではないということを。もう生きている存在ではないということを。
 まゆはそう考えこむ春江から、今度は眼前でひたすら花を愛でている影朧へと紡ぐ。
「花盗人。転生を望むなら、誰かが叶えてくれると思う。でも、貴方はそれを望む? 花になった人たちに申し訳ないと思える?」
 ――正直に聞かせて、と。
 そして首をそっと横に振り、まゆは続ける。
「貴方は春江さんを騙し、人を花に変える。あたしは……貴方が春江さんに真実を伝えないことが許せないの」
 それから、はっきりとこう告げる。
「答え次第では、斬ります」
 急に訪れた客が言った言葉と、息子だと匿う彼が向ける言葉。
 そのどちらが素直に彼女の心に届くのか、それは明確だから。
 息子だと春江が言う彼の声で、事実を伝えてあげて欲しいのだけれど。
『僕は、集めたいんだ。沢山の花をね』
 影朧の興味は、部屋に飾られた花たちだけ。
 しかもそれは、人の心を花に変え、摘み盗んだもの。
 祐一は、まゆへの花盗人の返答を聞くまで様子見していたけれど。
 受け入れるどころか、今までに盗んできた花を代償に一撃を放たんとする様子を見せた敵よりも早く。
 ――そこっ! 撃たせて貰うぜ!
 先制のリボルバー型熱線銃の銃撃で四肢を撃ってから。
『……!』
 体勢を崩した影朧へと、すかさず強烈なブレイクショットをお見舞いする。
 そして続き、一気に前へと出て。高い小鳥の囀るが如き音を奏でながら、敵の邪心のみを斬らんと退魔の霊刀を振るう彼女の姿を見て。
 祐一は再び熱線銃を構え、狙いを定めながら、改めてその心に思う。
 ――まゆちゃんに苦しい思いをさせたあんたに容赦なんてしない、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リヴェンティア・モーヴェマーレ
葎さん(f01013)と一緒

「葎さん、お身体の加減はいかがですカ?
どこも調子悪いトカありませんカ?」

前回過去を見た葎さんを気にかけながらも前へ

この方が今回私達が倒すべき相手ですカ…
なんだか儚げな印象を受けますネ

でも…葎さんが前へ進む為、その道をふさいでいるアナタを倒させていただきマス!

葎さんが攻撃を受けたら、私がUCで葎さんの傷を癒します
その間もオーラ防御などを使って最大限に葎さんを援護

葎さん、存分に戦ってくだサイ!

トドメは葎さんのくまさんにお願いしマス
小さい頃から葎さんが大事にしているくまさん
葎さんをずっと守っているくまさん

私もくまさんみたいに誰かをずっと守れる存在(ドール)になれタラいいナ


硲・葎
【S】リヴェちゃん(f00299)と!
心を抉られても。
きっと、くまさんと私の身体が覚えてるから。バイクさんとリヴェちゃんもいるから。
もう泣いてるだけじゃないから!
「行くよバイクさん!くまさん!」
相手からの攻撃は視力と見切りで手に気をつけながら回避しつつUCで擬人化バイクさんに守ってもらいつつ、ダッシュしながら相手に近づくよ。「私とくまさんの辛い過去は、みんなで断ち切る!これ以上傷つけるなら、アナタにも痛い目見てもらうから」くまさんを使って爪で攻撃しながら傷口をえぐろう。騙し討ちによる不意打ちが使いたいな。リヴェちゃんが危なくなったら必ずかばおう。大事な子だから傷つけさせないよ。



 辿り着いた部屋には、様々な色をした花が飾ってあるけれども。
 リヴェンティア・モーヴェマーレ(ポン子2 Ver.4・f00299)が見つめるのは、そんな花々ではなく……隣に居る、硲・葎(流星の旋律・f01013)の姿。
 幻影の庭園で共に追体験した、彼女の過去。
 ひとであった時の壮絶な過去、そしてドールの知らない死の恐怖……それらはとても辛いということが、リヴェンティアには分かるから。
「葎さん、お身体の加減はいかがですカ? どこも調子悪いトカありませんカ?」
 過去を視た葎を気にかけながらも前へと出る。
 そして、葎も。
 掛けてくれたリヴェンティアの声を耳にし、改めてその顔を上げる。
(「心を抉られても。きっと、くまさんと私の身体が覚えてるから。バイクさんとリヴェちゃんもいるから」)
 過去の出来事は辛く悲しいことで。思い出す度にやはり、心は痛むけれど。
 でも……自分はひとりではない、だから。
「行くよバイクさん! くまさん!」
 ――もう泣いてるだけじゃないから!
 葎もしっかりと前を向いて、眼前の敵へと視線を投げる。
 人の心を弄び、花にして盗む影朧に。
『君の心はどんな花かな?』
 新しい花が手に入ると、そう嬉々と自分達へと目を向ける花盗人。
 リヴェンティアはそんな彼の動向を注意深く見ながら。
(「この方が今回私達が倒すべき相手ですカ……なんだか儚げな印象を受けますネ」)
 花を愛でるその姿に、そう感じるけれど。
「でも……葎さんが前へ進む為、その道をふさいでいるアナタを倒させていただきマス!」
 リヴェンティアは、己がやるべき事を決して違えない。
 葎と一緒に、過去も今も乗り越えて。前へと進むために。
 刹那、戦場に舞うのは、鮮やかな花々の花弁。
 けれど巻き起こるそれが纏うのは、明らかな敵意。
 その花弁は、戦場を駆け敵に近づかんとする葎に浅い傷を生じさせるけれど。
 葎が気を付けるべく見切るのは、心を花にする魔術を籠めた影朧の手の動き。
 突き出されるようなその手をひらり身を翻し回避して。
「葎さん、存分に戦ってくだサイ!」
 ――元気になれーなれー!
 生じた傷を癒してくれるのは、耳に届く、リヴェンティアと動物達の一生懸命な声援。
 その間も守りの気などを使い、最大限に自分を援護してくれる彼女に背中を任せて。
 手を貸そう――そう銀髪スーツな長身グラサンなお兄さんと化したバイクさんに守って貰いつつも、葎は花盗人へと距離を詰める。
「私とくまさんの辛い過去は、みんなで断ち切る! これ以上傷つけるなら、アナタにも痛い目見てもらうから」
『……!』
 眼前まで迫った影朧へと振るわれるのは、目を光らせ凶器化したくまさんの爪。
 そして巧みに騙し討ちをし、不意をついた一撃を与えれば、すかさずその傷を抉って。
 リヴェンティアは応援を続け支えながらも、葎とくまさんを見つめ思う。
 ――小さい頃から葎さんが大事にしているくまさん。葎さんをずっと守っているくまさん。
 その絆は、見ていてもしっかりと伝わるから。
(「私もくまさんみたいに誰かをずっと守れる存在……そんなドールになれタラいいナ」)
 リヴェンティアはそう、ふたりの関係を羨ましくも思うし。
 だからこそ今は、葎のことを癒し支えたいと思う。
 そしてそれは、葎だって同じ。
 リヴェンティアがもしも危なくなったら、必ず庇おうと決めている。
 だって……自分にとって、とても大事な守りたい存在だから。
 ――大事な子だから傷つけさせないよ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

篝・倫太郎
【華禱】
人の心が、花を形作るんだとしたら
俺の、夜彦の、その心はどんな花になるんだろう
そんな事をふと思う
でも、今は目の前の敵に集中しなきゃな

店主がいる状況なら彼女を戦闘に巻き込まないよう
立ち位置に気を付けて行動
既に彼女の保護に動いてる仲間が居る場合も
出来るだけ背にして対処

篝火を防御力強化に使用
ダッシュで接近して鎧砕きを乗せた華焔刀で先制攻撃
刃先返して2回攻撃
以降はフェイントも交ぜつつ対応

敵の攻撃は見切りと残像で回避
回避不能時はオーラ防御で防いで凌ぐ
夜彦に攻撃が向かう場合はオーラ防御を纏って確実にかばう

以降はダメージ次第で生命力吸収も乗せて攻撃

花は綺麗だけど
でも、人の心は花じゃねぇ
返して貰うぜ……


月舘・夜彦
【華禱】
心の花ですか
性格や感情で形や色が決まるのなら、人の数程種類があるのでしょうね
しかし、花と同じく心を摘み盗らせる訳にはいきません

戦闘時に店主がいるか確認
いるならば巻き込まれないように離れるよう指示

接近戦を維持
倫太郎殿の動きに合わせて駆け出し、早業による剣撃の2回攻撃
視力にて花を出す仕草を少しでも感じ取れば火華咲鬼剣舞
負の情念ならば破魔と浄化の力を纏う炎に重ね、なぎ払う
人の負は消えずとも、貴方がそうして所有していることは
あまり良いものではありませんね
他人の物だというのに、己の物のように持っているからでしょうか

敵からの攻撃は見切りで動きを確認し、刀から繰り出した衝撃波で相殺



 足を踏み入れた部屋一面に飾られている、様々な花々。
 それは、ただの花ではなく――人の心を花にかえたものであるという。
「心の花ですか。性格や感情で形や色が決まるのなら、人の数程種類があるのでしょうね」
 月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)は、そう周囲に飾られた花々を見回しつつ口を開くけれど。
「しかし、花と同じく心を摘み盗らせる訳にはいきません」
 人の心を花にして盗み、蒐集する……その行為は決して見逃せない。
 そんな夜彦の言葉を耳に、篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)はふと思う。
(「人の心が、花を形作るんだとしたら」)
 ……俺の、夜彦の、その心はどんな花になるんだろう、って。
 それは愛しい竜胆か、はたまたふたりで眺めた二藍の紫陽花か、全く別の花か。
 ほんの少しだけ、知りたい気もするけれど。
(「でも、今は目の前の敵に集中しなきゃな」)
 倫太郎は戦場を見回し、春江の姿を確認して。
「この場所に居れば貴女にも危険が及びます、避難を」
 夜彦も店主へとそう指示を出すけれど。
 猟兵達の襲撃に驚き動けない状態のようでありながらも、彼女は首を横に振る。
 母親として、自分だけ逃げるわけにはいかないというように。
 ……眼前の彼は、本当の彼女の息子ではないのだけれど。
 そんな店主を強引に連れ出そうとすれば、逆に暴れられるかもしれないし。
 春江がいるのは部屋の隅、影朧も彼女に攻撃をする気はないようなので。
 倫太郎は彼女を戦闘に巻き込まないよう、立ち位置に気を付け、出来るだけ背にして対処する事にする。
 そして刹那、展開するのは。
 ――祓い、喰らい、砕く、カミの力。
 篝火を降ろし、カミの力を以って守りを固めて。
 大きく地を蹴り、夜彦と同時に戦場を駆け、影朧の前へと躍り出れば。
『……!』
 ふたり同時に放つは、刃の衝撃。
 倫太郎のふるう華焔刀が先制の一撃を見舞った瞬間、すぐに刃先返し連撃を放って。
 彼に合わせ連なる剣撃を繰り出した夜彦は、影朧の動向を見逃さない。
『これは、どんな感情だったかな』
 そう、今までに盗んできた花を手にせんとした、花盗人よりも速く。
 ――舞いて咲くは、炎の華。
 負の情念ならばと……破魔と浄化の力を、纏う炎に重ねて。
 藍の髪を躍らせ、握る刀身に瑠璃の色を宿した剣舞が、炎の花を咲かせ敵を薙ぎ払う。
『……くっ!』
 その刃に揺らぎながらも、夜彦へと負の情念籠った一撃を繰り出す花盗人。
 けれども、その衝撃は彼には届かない。守りの気を纏いしその身で庇わんと、倫太郎が咄嗟に間に割って入って。
 フェイントも交ぜつつ生命力吸収も乗せた攻撃の手を、決して緩めない。
 そんな彼と絶妙な連携で攻撃を重ねながら。
「人の負は消えずとも、貴方がそうして所有していることは、あまり良いものではありませんね」
 ……他人の物だというのに、己の物のように持っているからでしょうか、と。
 倫太郎へと放たれた敵の攻撃も纏めて、刀から繰り出した衝撃波で相殺する夜彦。
 そして倫太郎は影朧に生じた隙をつくように、焔踊る美しい刃紋映える薙刀を振るう。
「花は綺麗だけど。でも、人の心は花じゃねぇ」
 飾られた美しい花々は、決して花盗人のものなんかではないから。
 ――返して貰うぜ……って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

氷雫森・レイン
【星雨】
よくも淑女にあるまじき事をさせてくれたわね
さぞデリカシーの無い奴なんでしょう
「ふん、これだから男は」
いいのよ、騎士様は別に
私が弟子と認めたのだから堂々となさい
「さぁお解りね?騎士様。笑顔の咲く場所を脅かす者…骸の海に還すわよ」
心とは持ち主の胸の裡にあってこそ美しいのに馬鹿な事を
魔手を見切って宙を飛び、ブレスレットから展開した光の弓の牽制射撃で騎士様のフォローをしつつ自分もUCによる明確な一撃を狙う

A&Wの戦争
呼びつけた時彼は快く応じてくれた
戦火から故郷を守らんと必死だった私がどう見えていたのかを問う気は無い
でも
「…ねぇ、もしあの闇に閉ざされた世界で戦争が起きたら」
今度は私を呼んで頂戴ね


アレクシス・ミラ
【星雨】
アドリブ◎

レディ、僕も男なのだが…
ご立腹のレディに困ったように笑う
堂々と、だね。心得ました、先生
…さて…これ以上、無粋な盗人の好きにはさせられないね
勿論だ、レディ
花を、花が咲ける場所を守るという誓いを貴女の前に示そう

彼女の盾となるべく、剣を手に前に出よう
敵がレインさんに手を伸ばそうものなら
かばうように割り込み
風属性でレインさんの回避を補助するように追い風を
彼女に触れないでもらおう
僕へと向けられる手は【絶望の福音】で躱し
カウンターで一閃を

…A&Wの戦争の時
故郷を守る為に、と戦う彼女の力になりたかった
彼女の言葉には少し驚いたけど
同時に…嬉しく感じた
…ああ
その時は必ず、君を呼ぶよ
…ありがとう



 幻影の庭園で強制的に見せられた光景。
 それは、覗こうとして視たものではないのだけれど。
 花々が飾られた部屋へと踏み込んだ氷雫森・レイン(雨垂れ雫の氷王冠・f10073)は、花を愛でる眼前の輩に視線を投げて。
(「よくも淑女にあるまじき事をさせてくれたわね。さぞデリカシーの無い奴なんでしょう」)
『君の心はどんな花かな?』
 思った通り、デリカシーのかけらもなく。
 さらには、心の花をも摘んでしまおうとする影朧へと言い放つ。
「ふん、これだから男は」
 そんなすっかりご立腹な彼女に。
「レディ、僕も男なのだが……」
 困った様に笑うのは、アレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)。
 けれども、そんな彼へとちらり視線を向けて。
「いいのよ、騎士様は別に」
 ――私が弟子と認めたのだから堂々となさい。
 レインが師匠として紡げば。
「堂々と、だね。心得ました、先生」
 そう朝空の瞳を細め、頷いた後。
 ……さて……これ以上、無粋な盗人の好きにはさせられないね、と。
 スラリと抜きアレクシスが手にするは、十字を纏い白銀の刀身を持つ騎士の剣。
 そんな愛弟子――いや、頼もしい騎士の姿を、レインは紫の瞳の瞳に移して。
「さぁお解りね? 騎士様。笑顔の咲く場所を脅かす者……骸の海に還すわよ」
「勿論だ、レディ」
 アレクシスは、彼女の前に示し暁色に咲かせる――花を、花が咲ける場所を守るという誓いを。
 そして盾となるべく、赤星をその手に前へと躍り出て。
『君の心を、見せてよ』
 刹那レインへと、その心を花にする魔術籠めた手を突き刺すように繰り出す影朧。
 けれど咄嗟にデリカシーのない敵から庇うように、アレクシスが割って入って。
「彼女に触れないでもらおう」
 騎士が巻き起こす追い風に乗って宙を飛ぶ彼女の身は、決して盗人の魔手には囚われない。
「心とは持ち主の胸の裡にあってこそ美しいのに馬鹿な事を」
 逆にロザリオ煌めく祈雨から、光の弓の牽制射撃をすかさず展開して。
 ――弓でも有能な所、見せてあげる。
 騎士様のフォローをしつつも、光の弓の弦をぐっと引き絞り目を眇め、魔法の矢を戦場に解き放つレイン。
 そして今度は眼前の騎士へと、今までに盗んできた花を手に、負の情念を籠めた一撃を放ってくる花盗人だけれど。
 まるで未来をみてきたかのような彼がそれを躱すのは、容易い事。
 そしてそれを見切り割け、一気に踏み込んで。
『……!』
 騎士が盗人に返すは、暁色に閃く反撃の剣撃。
 そんな頼もしい騎士と共に、攻撃を見舞いながらも。
 レインが思い返すのは、先のA&Wでの戦争の時のこと。
(「呼びつけた時彼は快く応じてくれた」)
 戦火から故郷を守らんと、必死だったあの時。
 彼の朝空の瞳に自分がどう見えていたのかを、レインは問う気は無いけれど。
 己の前に立ち、陽光の金髪を揺らし剣を振るい続ける騎士へと、ふいに紡ぐ。
「……ねぇ、もしあの闇に閉ざされた世界で戦争が起きたら」
 ――今度は私を呼んで頂戴ね、と。
 そんな耳に届いた言の葉に、アレクシスは一瞬驚いた表情を宿すけれど。
 でも、あの時――故郷を守る為にと戦う彼女の力に、なりたかったから。
 驚いたと同時に……それ以上に、嬉しく感じて。
「……ああ。その時は必ず、君を呼ぶよ」
 アレクシスは微笑みと共に、彼女に返す。
 ……ありがとう、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
【豹兎】

人の心の弱みに漬け込むなんて、許せないね
なにか同情できる要素の一つでもあればと思ったんだけど…
心を集め始めた理由とか、さ

花…花か
今まで集めた花の見た目まで、この人は全部覚えているのかな
もしもそこまで関心も無いのなら、試してみようか

【指定UC】を発動
【破魔】を宿す★花園を周囲に広げ
浄化の力で影朧を弱らせながら
部屋に飾られた花をも花園で浸食
彼の技に必要なのは”盗んだ花”
なら、この状態でも区別はつく?
もし区別出来たとして、破魔を超えて触れられる?

同時に奏でるのは【催眠】を乗せた【歌唱】
動きを鈍らせるためだけど、もしも春江さんがまだいるのなら
眠らせてあげるつもりで

罪の重さは、知っておくべきだよ


不知火・鉄馬
【豹兎】

俺にはまだ、正しい正義がなんなのか
胸張って言い切れる程自信は無ェ
一度は間違えた身だからな…

だが、そうだな
少なくとも…そのやり方がムカつくっつー澪の意見には同意だな
扱うものがいくら綺麗な花だとしても
やり方が汚ぇ

澪の前に陣取り
小竜である★シエンにも協力させながら
澪に向かう攻撃は【庇う】
俺が接敵中は、シエンが常に澪の傍にいて
いざというときは雷のブレスで威嚇するよう指示

テメェも好きに仕掛けてみろや
雷が怖くねぇならな

自身は雷の【属性攻撃】を纏わせた拳で直接攻撃
喧嘩なら誰にも負けねぇ
元ヤン嘗めんなよ

触れた瞬間人体を【貫通し、マヒさせる攻撃】で隙を作り
【指定UC】で蹴り飛ばしてやる



 花々に彩られた部屋に在ったのは、ふたりの人物の姿。
 手にした花を愛でる影朧と、彼を息子だと言って愛するカフェーの店長の春江。
 そんなふたりを見遣りながらも、不知火・鉄馬(戒めの正義・f12794)は思う。
(「俺にはまだ、正しい正義がなんなのか。胸張って言い切れる程自信は無ェ」)
 ――一度は間違えた身だからな……、と。
 ……でも。
「人の心の弱みに漬け込むなんて、許せないね」
 耳に聞こえた栗花落・澪(泡沫の花・f03165)の声に。
 だが、そうだな、とこくり頷く。
「少なくとも……そのやり方がムカつくっつー澪の意見には同意だな」
 ――扱うものがいくら綺麗な花だとしても、やり方が汚ぇ、って。
 澪も眼前の花盗人を見つめ、思う。
(「なにか同情できる要素の一つでもあればと思ったんだけど……心を集め始めた理由とか、さ」)
 けれどそれは、影朧へと堕ちた彼の言動からでは分からないし。
 何かあったからと言って、心を花にして摘む行為を見逃すわけには決していかない。
 そんな澪の前に、鉄馬はすかさず躍り出ながらも。
 金眼の紫龍――シエンを喚び、澪の傍へと差し向けて。
「いざというときは雷のブレスをぶっ放せ、シエン」
 敵の手が及べば、威嚇するように指示を。
 そして鉄馬の小竜を傍らに、澪は影朧が咲かせ盗んできた心の花を見つめる。
(「花……花か。今まで集めた花の見た目まで、この人は全部覚えているのかな」)
 けれどその花自体よりも『集める』ことに執心している様子の影朧に、澪は視線を映して。
 ――もしもそこまで関心も無いのなら、試してみようか。
 刹那展開し降らせるのは、この世のものとは思えぬ美しい花や破魔の光。
 悪を浄化する天上世界と同じ環境と化した戦場に、さらに魔力を込めた聖痕をかざし、仇なすものを払う花園を生み出して。
(「彼の技に必要なのは”盗んだ花”。なら、この状態でも区別はつく?」)
 浄化の力で影朧を抑えんとしながら、同時に、部屋に飾られた花をも花園で浸食せんと咲き誇らせる。
『……く、僕の花を……!』
「それはテメェのじゃねェだろ」
 その間に、鉄馬は一気に敵へと距離を詰めて。
「テメェも好きに仕掛けてみろや」
 ――雷が怖くねぇならな。
 そう花盗人目掛け唸りを上げ、叩きつけ捻じ込むのは、雷纏わせた拳。
『……ぐ、っ!』
「喧嘩なら誰にも負けねぇ。元ヤン嘗めんなよ」
「博……!」
 鉄馬の拳を受け、さらに貫通し痺れる様な衝撃を与えられ揺らぐ影朧に、たまらず春江は声を上げるけれど。
 すぐに彼女は、眠りへと誘われる。
 奏でる歌唱は、影朧の動きを鈍らせるためでもあるけれど……澪は催眠を乗せた歌を、彼女にも届ける。
「……ちょっとだけ、眠っていてね」
 おやすみなさい……そう優しく、眠らせてあげるつもりで。
 そして鉄馬は拳を叩きつけたその勢いのまま、流れるように。
 ――跪け。
 軸足を踏みしめ大きな隙が生じた影朧へと、雷纏う重い一撃『雷撃~蹴~』を叩き込んで。
 鉄馬に蹴り飛ばされ、花園に転がる影朧へと澪は紡ぐ。
 人の心を花にして盗み蒐集する、その行為に。
 ――罪の重さは、知っておくべきだよ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
【pow】
アドリブ・連携・絡みも歓迎!

んもー
千々に乱れ揺れ動く心を見て愛でるのは楽しいものだけれどコレクションしちゃうのはどうかなー
色んな姿かたちに変わってみせてくれるから楽しいんじゃないか
もったいない

攻撃は餓鬼球くんあたりに受け止めてもらおう
ふわっと負の念の匂いを嗅いで
確かに、色とりどりの心をこうやって反芻できるのは少しは面白いかもしれないけれど
でもやっぱりもののあはれが足りないね!
だからこうしてしまおう
もう戻せないならしょうがない
ぱーっと、ね?
UCを使って花を吹き散らしてしまおう
アハハッ!キレイキレイ
色は匂へど 散りぬるを……だったかな?

でも心の花かー
ボクの花はどんな色なんだろうね?



 踏み込んだ部屋に飾られた花々を、ぐるりと見回して。
「んもー。千々に乱れ揺れ動く心を見て愛でるのは楽しいものだけれどコレクションしちゃうのはどうかなー」
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は大きく首を傾けて、はあっとひとつ溜息をつく。
 だって、もったいないから。
「色んな姿かたちに変わってみせてくれるから楽しいんじゃないか」
 それが、人の心の面白いところなのに。
『これは、どんな感情だったかな』
 今までに盗んできた花を愛でるどころか代償にして、人の負の情念を籠めた一撃を放ってくる影朧。
 けれども、それは餓鬼球くんが確りと受け止めて。
 ふわっと漂う負の念の匂いをくんっと嗅いでみれば。
「でもやっぱりもののあはれが足りないね!」
 ――だからこうしてしまおう。
 刹那、戦場に巻き起こるのは、有形無形を粉砕する神砂嵐。
 ……ビューっと吹いてバーッと過ぎ去るものってなーんだ、って。そう笑いながら。
「アハハッ! キレイキレイ」
 ――もう戻せないならしょうがない、ぱーっと、ね? って。
 彼のコレクションの花ごと、吹き散らしてしまおうと愉快に猛るロニ。
「色は匂へど 散りぬるを……だったかな?」
 なんて、笑みながら。
 けれども、ロニもちょっぴりだけ興味もあるのだ。
「でも心の花かー」
 巻き散る色とりどりの花弁を眺めながら。
 ――ボクの花はどんな色なんだろうね? って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

霧島・ニュイ
クロトさん(f00472)
ただいまー!!
甘えるように飛び込む
彼女と出会えたようで出会えなかった寂しさを胸に

教えてもらった通りに
UC使い、ギリギリまで相手をよく見て攻撃を回避する
視線や腕の動きなど見て見切る
大分慣れてきた気がする

間合いを取り
クロトさんの張り巡らせた糸を千切らないようにしながら銃撃
スナイパーで命中率を上げて、2回攻撃で手数を増やす
狙うべきは頭や胸などの急所と
動きを鈍らせるために腕と足
クイックドロウで早撃ち

仕上げよろしくねクロトさん

終わったらクロトさんの髪に紫陽花飾って、兄さんのところに帰す作業があるんだからさ♪
こんなところで心奪われもしないし
蒐集家ごときにくれてやる心はないよ


クロト・ラトキエ
ニュイ(f12029)へ「おかえりなさいませ」なんて、
幻想になど出会わなかったが如き涼しい笑顔で。
奪う者は奪われる――と。盗人へは教えませんとね。

向きに視線、体幹に膝の伸縮。手の動き、踏み込み、速度…
攻撃に伴う凡ゆるを視、経験に照らし、見切り、
指先が来ようものなら、鋼糸をくるり巻き絞り引き断つ2回攻撃。

触れる?摘み取る?…心を?
――不遜。
俺の心は俺のもの。明かすも秘すも除けるも渡すも俺が決める。
弁えろ。お前が触れるを許すものなど、一片とて無い。

…君に見せるご用意なんて、骸の海の姿のみ。
ニュイの銃撃は妨げず、
対処と回避の間にも戦場に糸を巡らせ、放つ
――拾式

人の心、なんて。君には不相応が過ぎますよ



 幻影の庭園を抜けて、また一緒に。
「クロトさん、ただいまー!!」
 甘えるように飛び込んできた霧島・ニュイ(霧雲・f12029)へと、いつも通りの涼しい笑顔を向けて。
「おかえりなさいませ」
 ……なんて。クロト・ラトキエ(TTX・f00472)は彼を迎える。
 幻想になど出会わなかったが如く……そしてニュイの胸に密かに宿る、彼女と出会えたようで出会えなかった寂しさに気付いても、触れずに。
「奪う者は奪われる――と。盗人へは教えませんとね」
 共に並び目を向けるのは、眼前の盗人。
 そんな影朧……花盗人は、ニュイのそんな心の機微を感じ取ってか。
『君の心はどんな花かな?』
 風を切るように、人の心を花にする魔術を籠めた手を、突き刺すように鋭く繰り出してくるけれど。
 ニュイは一撃が迫る中、速度勝負が敵うギリギリまで緑色の瞳を凝らして。
「残念、惜しかったねー」
 相手の視線や腕の動き……教えてもらった通りに、それらをよく見てから。
(「大分慣れてきた気がする」)
 敵の攻撃を見切り、ひらり身を躱し回避する。
 その手は勿論、クロトの事も捉えることなど出来やしない。
(「向きに視線、体幹に膝の伸縮。手の動き、踏み込み、速度……」)
 攻撃に伴う凡ゆるを視て。それに照らすは己の経験。そして研ぎ澄ました感覚で、見切る。
 いや、それだけではない。
「触れる? 摘み取る? ……心を?」
 ――不遜。
『……く、!』
 刹那、繰り出された指先を鋼糸で絡め取って。幾つも咲き飛沫くのは、赤き血の華。
 くるり鋭利な糸で巻き絞り、連続で引き断つ。
 人の心を強引に花に変え、盗むという影朧。
 けれど、そんな勝手は決してさせやしない。
「俺の心は俺のもの。明かすも秘すも除けるも渡すも俺が決める」
 ――弁えろ。お前が触れるを許すものなど、一片とて無い、と。
 そして戦場に張り巡らされた糸の間隙を巧みに縫って。
『……!』
 盗人の頭や胸などの急所、さらには動きを鈍らせるために腕と足。
 確りと狙い定め、間髪入れず引き金を引くニュイ。
 その素早く手数の多い連撃を貰い、思わず体勢を崩す影朧。
 こんなところで心奪われもしないし。そんな盗人の蒐集家ごときに、ニュイだってくれてやる心はない。
「終わったらクロトさんの髪に紫陽花飾って、兄さんのところに帰す作業があるんだからさ♪」
 だからニュイは、彼に託す。
「仕上げよろしくねクロトさん」
 確りと敵を仕留めてくれることを、よく知っているから。
「……君に見せるご用意なんて、骸の海の姿のみ」
 ニュイの銃撃は妨げず、性懲りもなく飛んでくる手刀に対処と回避をしながら。
 クロトはその間にも、戦場に糸を巡らせて。
 放つは、精緻に制御された多方向からの斬撃――拾式。
『……ぐ、うっ!』
 その容赦のない断截の鋭撃に、堪らずその手を引く花盗人。
 そしてニュイの銃撃と張り巡らせる糸、その何処にも盗人の逃げ道など作らずに。
 クロトは再び、悪癖なその手を引き断つべく斬撃を生み出す。
 ――人の心、なんて。君には不相応が過ぎますよ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

尭海・有珠
嵐吾(f05366)と

人の心が一番美しいというには同意できるがなぁ
それを摘み盗られ衰弱するならば見過ごせない
…そうだな、花にしてしまってはもうそれは人ではない
盗るより、大事に育てて美しく咲かせて欲しいものだが
花なぁと、ちらりと何とはなしに視線は嵐吾の右目を向くが、すぐに敵へと転じよう

「彼女の心も分からないお前には、過ぎた花では?」と煽り、大きく杖を振るのは注意を惹く為
緑の蔓巻く太い茎を模した≪憂戚の楔≫で狙いを定め
多重詠唱にて複数先んじて放つ
嵐吾の動きから察するに、狙いはやや片側に寄せておこう

飾られている沢山の花も盗られたものならば
無闇に散らすわけにはいかない
これも返さねばならんものだろうから


終夜・嵐吾
有珠の嬢ちゃん(f06286)と

わしも、人の心が美しいというのはわかる
けれどそれは人が抱えておるからで…花にして奪ってしまうんは、ちと違うじゃろ
嬢ちゃんの言う通り、咲かせるもんじゃろ
命を糧にして咲かせた花は美しいんかもしれんが…わしはそれは愛でれんな
摘むしかできぬものは還るとええよ
……世話をしてくれておった彼女からは、何も得るものはなかったんかの

この部屋の花は散らさぬほうがええか、なら虚の爪を借りてその懐へと踏み込もう
嬢ちゃんが攻撃かけた、その逆から距離詰めて逃がさぬように
爪で狙うのは花盗人のみ

彼女の優しさわからんなら、行く先は汝も枯れるだけじゃろ
いつか何かわかればええけど、今は無理そじゃね



 踏み込んだ部屋を飾る、様々な色や形の花。
 けれどその花たちは、盗むべく影朧が咲かせた人の心であるという。
「人の心が一番美しいというには同意できるがなぁ」 
 尭海・有珠(殲蒼・f06286)はそう呟きを落としながらも、海色の視線を巡らせて。
 飾られた花々を見遣ってから、ゆるり波うつ黒髪を揺らし首を横に振る。
 ……それを摘み盗られ衰弱するならば見過ごせない、と。
「わしも、人の心が美しいというのはわかる」
 でも、終夜・嵐吾(灰青・f05366)も思う。この部屋を飾る花はそれとは違うと。
 いくら美しいいろの花を咲かせていても。
「けれどそれは人が抱えておるからで……花にして奪ってしまうんは、ちと違うじゃろ」
 感情を咲かせた人と離れてしまえば、意味を成さない色。
 ましてやそれを奪って飾るなど、決して頷けない。
 有珠はそう紡がれた彼の言葉に、こくりと小さく頷いてから。
「……そうだな、花にしてしまってはもうそれは人ではない。盗るより、大事に育てて美しく咲かせて欲しいものだが」
 ――花なぁ、と。
 ちらりと何とはなしに視線を向けるのは、虚の主が微睡む嵐吾の右目。
 けれどすぐに、敵へと視線を転じさせて。
「嬢ちゃんの言う通り、咲かせるもんじゃろ。命を糧にして咲かせた花は美しいんかもしれんが……わしはそれは愛でれんな」
 ……摘むしかできぬものは還るとええよ。
 刹那、しゅるりと右目から零れ落ちる黒き茨を己の腕へと這わせ、借りる嵐吾。
 ――戯れに、喰らえよ。
 影朧を逆に刈り取って摘む、鋭き虚の爪を。
 それからふと、琥珀の視線を巡らせた先。
「……世話をしてくれておった彼女からは、何も得るものはなかったんかの」
 自分の死んだ息子に投影していたとはいえ、甲斐甲斐しく影朧の身の回りの世話を焼いていた春江。
 けれども花盗人の興味は、人の心が咲かせる花にしかなく。
『これは、どんな感情だったかな』
 今までに盗んできた花を手に、元になった人の負の情念を籠めた一撃を放たんとするけれど。
「彼女の心も分からないお前には、過ぎた花では?」
 煽りの言葉と同時に有珠が大きく杖を振るのは、敵の注意を惹く為。
 そして、盗人が一撃を放つそれに先んじて。
 ……来たれ、世界の滴。凝れよ、奔れ――『憂戚の楔』
 狙いを定め、多重詠唱にて複数撃ち出される魔法の杭。
「この部屋の花は散らさぬほうがええか」
 嵐吾も虚の爪を携え地を蹴り、ぐっと敵の懐に踏み込んで。
 ――爪で狙うのは花盗人のみ。
『……ぐ、っ!』
 刹那、逆方向から同時に見舞われる、魔法の杭と爪の鋭撃。
 けれど摘み取るのはやはり、影朧だけ。
(「飾られている沢山の花も盗られたものならば、無闇に散らすわけにはいかない」)
 ……これも返さねばならんものだろうから、と。
 そう立ち回る有珠と、敵の身に衝撃を重ねていきながらも。
「彼女の優しさわからんなら、行く先は汝も枯れるだけじゃろ」
 嵐吾は灰青の髪を躍らせ、愛しき茨の爪を躊躇なく振るっては引き裂く。
 ――いつか何かわかればええけど、今は無理そじゃね、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

庵野・紫
【幽楽】

おしゃんな奴じゃん。
人間はイイヤツだよ。アンは知ってるもん。
アイツらの心は複雑だけど
花みたいにキレイなのはアンも思うもん。

でもさー、アンタ趣味悪いよね?
盗むってサイテー。
アンってば人間が好きなんだよねー。
そいつらを守るために、いっちょやりますか!

アンの靴は痛いよー。
花盗人の懐目掛けて突っ走る!
二人が隙を作ってくれてたらその隙にアイツの足を
アンの蹴りで薙ぎ払っちゃうよー。
転がしたいんだよね。

歩けなくしてやりたい。
人間は心を失ったらどうなるか知っててやってんの?
私利私欲の為に集めるなんてさー
絶対にそんな事、させないから。
アンの大切な子たちを奪わせないから。


揺・かくり
【幽楽】

心の花。まるで芸術品の類だね
君にとっては芸術そのものだろうか
嘗ては人間であったもの
影朧とは未練に塗れた奴らばかりなのかい

蒐集したいと欲する程のもの
それ程のものをひそめた器
人間に宿る心とは、よく分からないな
趣味が悪いにもダサいにも同意しよう
好きか嫌いか、ならば
君のやり方は好ましくないね

常は儘ならない身が自在に動く
触れられない手。毒を潜めた爪先
私からの贈り物だよ
君にあげよう

ほら、左の手をご覧よ
私と同じ指輪さ。君と結ばれるのは癪だがね
同じ呪詛を分け与えよう
途切れない苦痛を味わうといいさ
足止めには丁度良いだろう?
眩いのは苦手だが
君の光は心地が良いね、アメ

後は任せるよ、アン
執念ごと沈めておくれよ


甘渼・アメ
【幽楽】

ひとの心の花
キミはそれがほしいの?
アメは、人の心に触れたことがあまりないけど
でも、アンやかくりが言うならば、それは雨上がりの虹のようなものなんだろうね

そうよ!
盗むなんて、ダサいんだから!
アメはひとがすきよ
だからね、盗ませなんてしないよの!
戦うのは苦手、けれど今は!
頼もしい、2人がいるから
おらだって……やってやる!

影朧へ慰めをこめて、光の全力魔法を放つ
目潰しになってくれたらいいんだけど…
そして2人に向けて思い切り鼓舞をする
アンの蹴りを食らうといいわ
かくりの呪詛が行き渡るように祈りを捧げ
虹色のオーラで2人を守るの
2人が怪我したならすぐに「生まれながらの光」で治癒するわ!

アン、やっちゃえー!



 それぞれ視た景色の中、前へと進んで。
 幻影の庭園を抜けてまた皆で一緒に、辿り着いた場所。
 踏み込んだ部屋に飾られているのは、様々な色や形をした花々であった。
 けれどそれは、野に咲いていたものではない。
「心の花。まるで芸術品の類だね」
 揺・かくり(うつり・f28103)の言う様に、美しいそれらは、人の心が咲かせた花。
 それは確かに千差万別、美しく咲いてはいるのだけれど。
 かくりは、愛し気にそれを愛でる蒐集家を見遣り、微かにぎこちなくふるりと首を横に振る。
「君にとっては芸術そのものだろうか、嘗ては人間であったもの」
 ――影朧とは未練に塗れた奴らばかりなのかい、と。
 庵野・紫(鋼の脚・f27974)もその隣で、おしゃんな奴じゃん、と緑色の瞳を細めながらも。
「人間はイイヤツだよ。アンは知ってるもん」
 幻影で視た過去の様に、たまに怒らせるようなことをしたりはするけれど。
 それ以上に、可愛くて憎めないところがあるのが人間だと、紫はよく知っているから。
「アイツらの心は複雑だけど、花みたいにキレイなのはアンも思うもん」
 やはり、ひとつとして同じ色や形のない心の花たちを見て、そう改めて思う。
 甘渼・アメ(にじいろ・f28092)はそんな人の心に触れたことが、まだあまりないけれど。
「ひとの心の花、キミはそれがほしいの?」
 それを蒐集し愛でる影朧へとそう問いかけつつも、ちらりと共に在るふたりを交互に見つめて。
(「でも、アンやかくりが言うならば、それは雨上がりの虹のようなものなんだろうね」)
 虹の様にいろいろな彩をした花々をぐるりと見回し思う。
 それはきっと、自分も好きな、キラキラ幸せないろなのだろうと。
 けれどそれを花として咲くことを望んだのは、心の持ち主たちではない。
『美しいだろう? 美しい心を花にかえて、集めているんだ』
 そう……花盗人が、強引に花のカタチにしたもの。
 そんな彼と、彼が集めた花々を見遣り、かくりは小さく首を傾ける。
(「蒐集したいと欲する程のもの。それ程のものをひそめた器……人間に宿る心とは、よく分からないな」)
 紫が言っていたように、人間に宿る心は複雑で。やはり、よくは分からないけれども。
「でもさー、アンタ趣味悪いよね? 盗むってサイテー」
「そうよ! 盗むなんて、ダサいんだから!」
 紫とアメが言い放った、趣味が悪いにもダサいにも、かくりは同意する。
「好きか嫌いか、ならば。君のやり方は好ましくないね」
「アンってば人間が好きなんだよねー。そいつらを守るために、いっちょやりますか!」
「アメはひとがすきよ。だからね、盗ませなんてしないのよ!」
 紫にこくこく頷き、アメはぐっと気合を入れて影朧へと視線を投げる。
(「戦うのは苦手、けれど今は!」)
 すぐ傍には、紫とかくり――頼もしい、2人がいるから。
(「おらだって……やってやる!」)
 刹那、影朧へ慰めをこめて放つは、光の全力魔法。
『……!』
 その輝きは、思わず目を覆う程に眩くて。
 目潰しになってくれたらいいんだけど……そう思いながらも、アメはふたりへ向けて思い切り鼓舞をする。
 ――いけ、いけ、やっちゃえー! って。
 そしてかくりの呪詛が行き渡るように祈りを捧げながら。
 まるで雨上がりの空の様に、ふたりを守る虹のオーラを戦場に架けるアメ。
 かくりは、そんな彼女の祈りを受け、感じつつも。
(「常は儘ならない身が自在に動く」)
 ……触れられない手。毒を潜めた爪先。
「私からの贈り物だよ」
 ――君にあげよう。
 刹那、花盗人の手癖の悪い、誓いの指に絡みつくのは。
「ほら、左の手をご覧よ。私と同じ指輪さ。君と結ばれるのは癪だがね」
 ……同じ呪詛を分け与えよう、って。
 嵌められ繋げられた、呪詛与える黒い指輪。
「途切れない苦痛を味わうといいさ。足止めには丁度良いだろう?」
 それからかくりはふと、アメへと視線を映して。
「眩いのは苦手だが、君の光は心地が良いね、アメ」
 己を包み込む様な、優しくてあたたかい光に、そっと金の瞳を細める。
 そして刹那、盗んできた花をした影朧が。
『これは、どんな感情だったかな』
 その花を糧に、元になった人の負の情念を籠めた一撃を放たんとするけれど。
「後は任せるよ、アン」
「アンの蹴りを食らうといいわ」
 ――執念ごと沈めておくれよ。
 ――アン、やっちゃえー!
 ふたりの支援や声を背に、紫は花盗人の懐目掛け突っ走って。
「アンの靴は痛いよー」
 ――踏み潰すよ?
『!』
 距離を一気に縮めた刹那……転がしたいんだよね、って。
 思い切り薙ぎ払うように繰り出すのは、慈悲無き片足の踵。
 歩けなくしてやりたい……その思惑通り、盗人がもう逃げられないように足元を掬って。
『……っ!』
「人間は心を失ったらどうなるか知っててやってんの?」
 無様に地に転げ落ちた盗人を見下ろし、私利私欲の為に集めるなんてさーって。
 硬い鋼の靴を纏う足を再び紫は振り上げながらも、はっきりと紡ぐ。
「絶対にそんな事、させないから」
 ――アンの大切な子たちを奪わせないから、って。
 強烈な踵をもう一度、振り下ろすのと同時に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

宵雛花・十雉
ニット(f22060)と

愛してる、から?
オレのこと愛してるなら、ずっと一緒にいて欲しかったよ…お父さん
でもきっと…夢ばっかり見ていられない
お父さんはもうこの世にいない、それがオレの現実
死んでしまいたくて堪らないけど、生きなきゃ
ニットとそう約束したから

二度と見たくなんて無かったのに…よくもあんなものを
花盗人、ああ恨めしい…恨んでやる

ニットが敵の攻撃を引き付けてくれている間に、後ろで反撃の準備を
【破魔】の力を込めたUCで敵の身体を貫き縫い止める
一度だけじゃ足りない、何度も…何度も

アンタが盗んだ心の花、全部返してもらうよ


日東寺・有頂
十雉さん(f23050)と

十雉
父ちゃんがあんたを守ったんは
当然 愛してるから
己よりもあなたを 願ったからだ
己が喪われようと、何が失われようと
何ものよりもたった一つ 
愛する息子が此処に在れと、願ったから

春江さんがこん影朧を留めてるんもそう
ただひたすら在ってほしいから
その結末は、哀しいが

オーラ防御を展開し十雉さんば護るよう立ちはだかる
その手が伸びるより早くUC
呼ぶ迄もねえか?だが敢えて
博。と一声。
暗闇で聞けや
お前は今だその名をもって、人の心を貪るのか?
どがんに心を寄せ集めても、虚ろに花は咲きゃあしねえ
お前にこん人は触れさせん
もう誰の心も、摘み取らせん



 雪山に咲き乱れる彼岸花。それは幻影の庭園が視せた、過去の光景。
 宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)にとっては毎晩見る夢と同じ、静かな恐怖を孕む色。
 けれどそれを共に視て、並んで歩んだ日東寺・有頂(ぷてぃんぐ(心結様寄贈)・f22060)は紡ぐ。
「十雉、父ちゃんがあんたを守ったんは、当然、愛してるから。己よりもあなたを、願ったからだ」
 ……己が喪われようと、何が失われようと。何ものよりもたった一つ。
 それが何かを、有頂ははっきりと口にする。
「愛する息子が此処に在れと、願ったから」
「愛してる、から?」
 有頂の言の葉に、十雉は一瞬そう顔を上げるけれど。
 そっと首を横に振り、橙の瞳を閉じてその心に紡ぐ。
(「オレのこと愛してるなら、ずっと一緒にいて欲しかったよ……お父さん」)
 そんな十雉を見つめていた瞳を、有頂は今度は部屋の隅で動けずにいる、けれども去る気も毛頭ない彼女へと向ける。
 親にとって子とは、きっとそういうもの。
(「春江さんがこん影朧を留めてるんもそう。ただひたすら在ってほしいから」)
 けれども、十雉の過去にしても、春江がこれから迎える結末にしても――それは、哀しいもの。
 だけど十雉は、春江と違って、分かってもいるのだ。
(「でもきっと……夢ばっかり見ていられない。お父さんはもうこの世にいない、それがオレの現実」)
 己が置かれている現実を。
 そして再び顔を上げ、隣に在る友の姿を瞳に映す。
(「死んでしまいたくて堪らないけど、生きなきゃ」)
 だって、そう有頂と約束したから。
 そう生きなきゃと思えば、刹那、ふつふつと湧き出でる感情。
『君の心はどんな花かな?』
「二度と見たくなんて無かったのに……よくもあんなものを」
 性懲りもなく人の心へと土足で踏み込んでくる花盗人に、十雉は視線を投げる。
 ――花盗人、ああ恨めしい……恨んでやる、って。
 彼の父が幼い十雉を護ったように。
 有頂は守りの気を纏いながら、すかさず前へと立ちはだかって。
 ――ちょいとこっち向いてくれんね!
 人の心を花にする魔術を籠めた手が伸びるよりも早く、己の存在を視認させた標的の知覚を一時的に奪わんと声を上げて。
 十雉は後ろから、手にした千代紙の紙飛行機に破魔の力を込めながら。
 ――射抜いてやろ。
 敵に隙が生じた一瞬を逃さず反撃へと転じて。
『……ッ!』
 瞬間、変化し撃ち出された破魔矢が、花盗人の身体を貫き縫い止める。
(「一度だけじゃ足りない」)
 何度も……何度も、何度でも。破魔と恨みを乗せて――突き刺し、貫き、縫い止める。
 そして有頂は、揺らぐ影朧へと。
(「呼ぶ迄もねえか?」)
 だが敢えて一声呼んでみる――博、と。
 ――けれども。
『君の心の花、見せておくれよ』
 やはり彼は、何の反応も示さない。
 それは彼の名ではなく、ただそれを都合良く利用していただけだから。
「お前は今だその名をもって、人の心を貪るのか? どがんに心を寄せ集めても、虚ろに花は咲きゃあしねえ」
 そして有頂は、再び前へと立ちはだかる。
「お前にこん人は触れさせん。もう誰の心も、摘み取らせん」
 十雉はそんな彼の背に、ふっと一瞬瞳を細めてから。
 盗人を決して逃がさぬよう、もう無粋な盗みなど働けぬよう、戦場にその身を縫い付け続ける。
 ――アンタが盗んだ心の花、全部返してもらうよ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

百鬼・景近
【花守】
さて、早速だけど摘み取らせてもらおうか
還せるものは還さないとね――彼も、花も、在るべき処へ

UCの速度と残像活かし攻撃避けつつ、麻痺の呪詛込め衝撃波
早業や2回攻撃駆使し伊織と畳掛け、余計な隙を与えぬよう連携

俺の心は今も昔も唯一人に捧げた儘――生憎と、他の誰かの手に負えるような代物じゃないよ
余人の手出しなど受付はしない

…春江さん
貴女がその心を真に向ける相手も、彼ではない筈
手向け花を捧ぐなら、本当の息子さんへ――このまま散っては博君も浮かばれない
目を覚まして

それに、まぁ、連れもね
丁度伸び盛りの花盛り、摘み盗られては寝覚めが悪い
――これからきっと益々面白く実りゆく花々を、此処で終わらせはしない


呉羽・伊織
【花守】
おう、心の花でなく災いの芽をな
心も命も、手折られ朽ち果てる前に

UC使い先制
毒仕込んだ風切投げ、敵の手元や目潰し狙い牽制
更に残像やフェイント混ぜ撹乱しつつ、所作見切り回避
早業や2回攻撃で不規則に上記重ね、連携し手を払い除ける

俺の心根なんざ、迂闊に触れりゃどんな棘や毒が潜むか、な?
俺は誰にも、全てを明かしはしない
まして交わす気もなく一方的に盗ろうなんて無粋な輩に、触れさせやしない

さて、春江サン
息子サンはこんな、徒に心を摘む様な盗人じゃない筈
本当の彼は、貴女に再び明るい花が咲く日を願ってる筈

…まぁ兎も角だ!
ぽっと出の野郎に心奪われるとか冗談でも御免!
そんでも花を望むなら―手向けに一つ、花明を



 人の心を花にして摘み取る蒐集家。
 けれども、今この場で摘み取られるのは花ではない。
「さて、早速だけど摘み取らせてもらおうか。還せるものは還さないとね」
 ――彼も、花も、在るべき処へ。
 そんな百鬼・景近(化野・f10122)の声に、呉羽・伊織(翳・f03578)も頷く。
 摘み取るべきであるのは、眼前の存在。
「おう、心の花でなく災いの芽をな」
 ……心も命も、手折られ朽ち果てる前に、と。
 そして静かに、けれど何よりも素早く戦場を吹き抜けるは陣風。
 刹那、伊織の手から離れた風切が仕込まれた毒で侵さんと、盗人の目や手癖の悪い手元を目掛け飛び交って。
 妖刀の怨念纏いし景近も、地を蹴り一気に戦場を駆けて。
 伊織と共に、速度と残像活かし盗人を翻弄し、心を花と化さんと繰り出されるその手の軌道を見切り躱して。
『……くっ!』
 麻痺の呪詛を込めた衝撃波と早業から連なる斬撃が影朧へと見舞われる。
 そんな余計な隙を与えぬよう連携をはかるふたりの猛攻に、花盗人は一瞬大きく揺らぐけれど。
『君の心はどんな花か、見せておくれよ』
 再び鋭く突き出すような、魔術帯びた手を繰り出してくる影朧。
 けれども易々と、見せられるものではない。
「俺の心は今も昔も唯一人に捧げた儘――生憎と、他の誰かの手に負えるような代物じゃないよ」
 ……余人の手出しなど受付はしない。
 そう紡ぎ躱す景近に、伊織も盗人へと続ける。
「俺の心根なんざ、迂闊に触れりゃどんな棘や毒が潜むか、な?」
 ……俺は誰にも、全てを明かしはしない。
(「まして交わす気もなく一方的に盗ろうなんて無粋な輩に、触れさせやしない」)
 それからふと視線を映すのは、部屋の隅に在る彼女の姿。
「さて、春江サン。息子サンはこんな、徒に心を摘む様な盗人じゃない筈」
 ……本当の彼は、貴女に再び明るい花が咲く日を願ってる筈、と。
 そんな伊織と共に、景近も春江へと声を。
「……春江さん。貴女がその心を真に向ける相手も、彼ではない筈。手向け花を捧ぐなら、本当の息子さんへ――このまま散っては博君も浮かばれない」
 ――目を覚まして、って。
 春江は猟兵達と影朧を交互に見遣って。
「……博」
 そう、息子の名を呼ぶけれど。
 猟兵達の心の花を盗むことで頭がいっぱいな彼は、何の反応も示さない。
 そして何かを考えこむ彼女の様子を見遣った後。
「それに、まぁ、連れもね。丁度伸び盛りの花盛り、摘み盗られては寝覚めが悪い」
 景近は連れじぇとちらり瞳を向けた後、改めて、花盗人へと視線を戻す。
 ――これからきっと益々面白く実りゆく花々を、此処で終わらせはしない、と。
「……まぁ兎も角だ! ぽっと出の野郎に心奪われるとか冗談でも御免!」
 それこそ美しい華ならまだしも、野郎に心を奪われるなどそれこそ御免。
 けれど……それでも、花を望むのならと。
 伊織がその手に握るは、懐から取り出した桜の誓いを宿す匕首。
『……ッ!』
 ――手向けに一つ、花明の閃きを。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

誘名・櫻宵
🌸千織/f02428

嫌だわ
ひとの心に咲いた、かけがえのない花を摘み取るだなんて
それこそ、摘まれるべき罪よ
その花は触れてはならないもの
いのちと等しきもの
あなたがそれを欲するならば
摘み取るその前に、あなたのいのちを摘み取りましょう
私は欲しいわ
花求むあなたの心
あえかな桜として
私の桜として

咲かせてあげる

千織の言葉に笑みかえし、引き抜く刀に破魔宿す
花散らす花嵐の属性と共になぎ払い、衝撃波で蹂躙を
桜咲く鼓舞の歌声が心地よいわ!
駆けて切り裂き咲かせる「朱華」
ねえほらもっと、
咲いて見せて頂戴よ

千織の様子に少し笑む
踏み出す時は怖くとも、その時は
その手をとれればよいと思うているの

あなたは私を、拒絶しなかったから


橙樹・千織
櫻宵さん/f02768

心の花を摘み盗る…
その人にとってその花がどんなものかも知らずに?
心の中を土足で踏み入り乱す輩に容赦はしない
敵に冷えきった色の瞳を向ける

そうね…櫻宵さんの手で咲かせてもらうと良いわ
糸桜のオーラで守護を為し、互いを鼓舞する歌を歌いましょう
櫻宵さんに寄り添うように立ち回りましょうか

退きなさい、彼に近付くことは許さない
隙を突いてくるならば武器受けで受け流し、カウンターの衝撃波で突き放す

花は美しいだけではないと…わかったでしょう?

櫻宵さんに怪我が無いか確認し、向けられた笑みにきょとり

糸桜の奥に隠した虞美人草と未だ見えぬもう一輪
拒絶への恐怖を誤魔化して、望むそれが見えるのは何時の日か



 ……ああ、人の心は美しい。
 猟兵達の猛攻を受け続けても尚、影朧の興味は、己が強引に咲かせ蒐集した心の花だけ。
「心の花を摘み盗る……その人にとってその花がどんなものかも知らずに?」
 そう、ぽつりと呟きを零すのは、橙樹・千織(藍櫻を舞唄う面影草・f02428)。
 それは、心の中を土足で踏み入り乱す行為。
 そしてそのようなことをする輩に――容赦はしない。
 刹那、花盗人へと千織が向けるのは、冷えきった色の瞳。
「嫌だわ。ひとの心に咲いた、かけがえのない花を摘み取るだなんて」
 ……それこそ、摘まれるべき罪よ。
 誘名・櫻宵(貪婪屠櫻・f02768)も、ふるふると花灯の桜鼠を揺らし首を横に振って。
 ――その花は触れてはならないもの。いのちと等しきもの。
 ……だから。
「あなたがそれを欲するならば。摘み取るその前に、あなたのいのちを摘み取りましょう」
 朱の彩りを孕む桜霞を細め、桜龍は嫋やかにわらう。
「私は欲しいわ、花求むあなたの心。あえかな桜として、私の桜として」
 ――咲かせてあげる、って。
「そうね……櫻宵さんの手で咲かせてもらうと良いわ」
 その言の葉に、千織もこくりと頷いて。
 笑み返す櫻宵が引き抜くは、破魔宿す血桜の太刀。
『君の心はどんな花なんだい?』
 それでも尚、人の心の花を盗むことしか頭にない盗人。
 そんな愚かな花を散らさんと、花嵐宿す刃で薙ぎ払い、巻き起こる桜乱舞で蹂躙する櫻宵。
 そしてさらに戦場に咲くは、糸桜の護りのいろ。
 千織は守護を為しながらも、互いを鼓舞する歌を響かせる。敵前で舞う様に朱を散らせてゆく櫻宵に、寄り添うように。
 盗人がその悪い手癖で、心を突いて花を盗まんとしてくれば。
「退きなさい、彼に近付くことは許さない」
 すかさず千織が反撃の衝撃波を繰り出し、そうはさせないと突き放す。
 そんな彼女の援護や響く歌声に、ひらり流れるように桜鼠を躍らせ、満開の枝垂れ桜を咲き誇らせながら。
「桜咲く鼓舞の歌声が心地よいわ!」
 ……咲かせて、散らせて、奪って、喰らって――あなたは美味かしら。
 そう軽やかに駆け、桜獄大蛇が切り裂き咲かせるは――『朱華』。
『! が、は……ッ』
「ねえほらもっと、咲いて見せて頂戴よ」
 生命力を喰らい、空間ごと存在を断ち斬る血桜の刃が、無粋な盗人を鮮やかに咲き散らせる。
 そして崩れゆき消えてゆく影朧に、千織は紡ぐ。
「花は美しいだけではないと……わかったでしょう?」
 それから怪我が無いかと、櫻宵へと確認すれば。
 微かに向けられた笑みに、千織はきょとり。
 そして、ふと櫻宵を映していた橙の瞳を、一瞬だけ伏せる。
 ――糸桜の奥に隠した虞美人草と未だ見えぬもう一輪。
(「拒絶への恐怖を誤魔化して、望むそれが見えるのは何時の日か」)
 けれども櫻宵は、その手をとればよいと。
 踏み出す時は怖くとも……その時がくれば、迷わない。
 迷わずに、手を伸ばして掴まえるつもりだから。
 そして華の如き笑みを湛え、ゆるり流れるその髪を飾る桜のひとひらに、そうっと触れる。
 だって――あなたは私を、拒絶しなかったから、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月23日


挿絵イラスト