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星空のカケラ

#アックス&ウィザーズ #戦後

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#アックス&ウィザーズ
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#戦後


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 きら、きら、と。
 満天の星を映して、海が輝いている。
 いや……。それは空の光だけではない。
 ぼう、と。
 水の中にも火がともる。
 海の中はまるで星のように輝いて、夜だというのに周囲を明るく照らしていた。

 ……と、そこに。
 ふわり。ふわりと海の上を飛んでいくものがある。
 やたらファンシーな虹色の毛皮を持った羊は、ふわりふわりと輝きに導かれるように、いずこかへと向かっていった……。



「汝の宝を示せ」
 リュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)はふっと、何かを読み上げるようにそう言った。
「この宝が、汝にとっても価値あるものであることを願う。……って、いう言葉が、この海のすぐそばにある港町に、今も残っているんだ」
 そういって、リュカは若干楽しそうに口の端を上げる。それから、まるで本でも読むかのように話をつづけた。
「帝竜が倒されたからといって、アックス&ウィザーズに元から住んでいるモンスターがいなくなったわけでもなければ、オブビリオンが消え去るわけでもない。今回出現が確認されてるのは、やたらとファンシーなオブビリオンだよ。敵個体はそこまで強くないから、さっくり倒してくれればいい」
 ぱらりと手帳を一枚捲る。それから、
「ただ、オブビリオンの詳細な位置がわからない。現地に行って、探してもらうしかないみたい。……大まかな場所はわかるんだけれどもね」
 そういって、リュカは少し考えこむように間を置いた。さて。何から話そうか、とでもいうような間の後で、
「昔、この町一帯を治めていた大富豪がいた。彼はトレジャーハンターで、この大陸のあちこちを探索し、様々なお宝を持ち帰った。その財宝の力で、彼はここに街を作ったんだ」
 彼は町をよく治めたらしい。その財宝の力もあり、また、海を使った交易も盛んに行い、町は発展し、そして今でも発展している。彼は今でも、町の人に愛されているのだ。……そして、また、
「……それから数十年。年老いた彼は港町から少し離れたところに巨大な自分の墓を作った。そして、様々な彼が集めた財宝とともに最後にはそこで眠りについた。……さっき言った、その言葉を残して」
 彼は、財宝を取りに来るならば好きに取りにくればいいといった。
 きっとそれが、トレジャーハンターの最後の楽しみだったのだろう。
「様々な人間が、財宝を目当てに遺跡を目指したから。めぼしいものがどれだけ残ってるかは、もうわからないけれども……。まあ、浪漫のひとつだよね。今でも、隠された財宝を求めて宝探しをしに来る人が絶えない。……そんな場所に、オブビリオンが現れるんだ」
 そこまで強くなくとも、そういう人たちには充分脅威になるだろう、とリュカは言った。
「だから、しっかり言って、しっかり倒してきて。あとは一晩、のんびりしてくれればいいから。……それと」
 濡れてもいい格好で来て、と、リュカは言った。それから、ああ、と、思い出したような顔で、
「その遺跡、海の中にあるから」
 と、割と結構大事なことを告げるのであった。


ふじもりみきや
いつもお世話になり、ありがとうございます。
ふじもりみきやです。

●今回のお話
一章:冒険
二章:集団戦
三章:日常

です。三章のみ、お声かけ頂ければリュカもご一緒させていただきます。
また、各章開始時に導入部を追加します。
同時にプレイング募集スケジュールも記載いたしますので、ご確認くださいませ。

※今回、私の都合により再送が発生する可能性があります。ご了承ください。
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第1章 冒険 『夜空の下で探索を』

POW   :    夜目が利くので、己のポテンシャルを生かして探索

SPD   :    効率重視。思いついた策を試してみる。

WIZ   :    地形や痕跡などから、対象を探す

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 海の中には遺跡が広がっている。
 どうやって建てたのかなんて、もう誰にも分らない。
 そして、その海の中に眠る遺跡へとたどり着く方法はたった一つ……、

 と、いうほどでも、ないのだが。

 港町の船着き場には、沢山のイルカたちが集まっていた。
 そう! イルカである。イルカはつぶらな瞳で猟兵たちを見ている!
 君たちがその体につかまれば、イルカたちは即座に遺跡へと向かって泳ぎ出すだろう。
 お駄賃は、港町で売っている美味しい魚を一匹、それだけでいい。
 思いのほか動きが早いので、手を離さないように注意しなければいけない。
 なお、時刻は夜である。この辺のイルカが夜行性であることもあるし、それに……、

 ぽう、と。
 遺跡があるあたりに行くにつれ、明るい光が見えてくる。
 ふわふわふわ、と、空の光に負けぬほど美しく輝いているのは、無数のクラゲであった。
 クラゲは海の中、昼間吸い込んだ太陽の光を一斉に放出し、暗い暗い海の底を昼間以上に美しく照らし出している。
 海に潜ればクラゲたちの光に照らされて、どこまでも続いていく、ピラミッドのような巨大な建造物を見ることができるだろう。

 君たちが何も言わないのであれば、ざぶん、と、イルカは君たちを抱えたまま海の中に潜るだろう。
 そうして、周囲に漂うクラゲたちをぱっくりと口に入れては、また息継ぎのために水面へと顔を出す。
 このイルカは、クラゲの天敵なのだ。
 なので、このイルカにつかまっている限り、クラゲは必要以上に猟兵たちにはあんまり近寄ってこないし、近寄ってきてもいるかに食べられてしまう。
 クラゲは微細な麻痺毒を持っていて、触れたものを暫く麻痺させてしまうので、遺跡を潜るのは夜、そしてイルカたちとともに行く、というのが、どうやら最近のこの遺跡のトレンドであった。
 イルカたちは賢く人懐っこいので、猟兵たちがこちらに行きたい、などと指をさせば、喜んでそちらの方へと潜ってくれるだろう。
 そして肝心の、オブビリオンの行方の探し方なのだが……、
 羊たち……オブビリオンの向かう方向に、真っ青な光の筋が見えていたのだと情報があった。
 クラゲの光ではないその輝きは、遺跡の中にいくつも隠されたとある財宝のものであろう。
 青い石のはめ込まれた宝箱で、持ち上げ、月と星の光にかざすと、その光を受けて一筋の道を示すらしい。
 沢山の宝石箱が同じ場所を示すらしいので、特別な宝が眠っているのではないか、ともいわれてもいる。
 その光が示す先に……羊たちはいるはずだ。


**************
まとめ:
イルカたちと一緒にクラゲに気をつけながら(あんまり寄ってこない、なので、多少は寄ってくるので対処してください)ピラミッド風遺跡を探索して青い石のはまった宝箱を探しその方向に海を進む(どこにつくかはわからない)。

ここまでが第一章です。
ここまでのつもりでプレイングをかけてくださいな。
ピラミッド風とか、割とふんわりしているだけなので、お好きなように遊んでいただけたら幸いです。
イルカの力を借りないという選択肢もありますが、その際はクラゲいっぱい寄ってきますし、
別に、ダメとは言いませんが、折角なのでイルカと遊んでほしいかな、とは思います。
探索は、何が遺跡の中にあるかとかはお好きに決めてくださってかまいませんし、途中で何か別のお宝っぽいものを拾っていっても大丈夫です。
また、水温は割と高めなので、夜でも泳ぐには快適です。

以上。わからないことは割とあとはざっくりお好きなように。

プレイング募集期間は、
6月11日8:30~14日20:00まで。
また、無理ない範囲で書かせていただきますので、再送になる可能性があります。
その際は、プレイングが返ってきたその日の23時までにプレイングを再送いただければ幸いです。
(それ以降でも、あいていたら投げてくださってかまいませんが、すべてを書き終わっている場合は、その時間をめどに返却を始めますので間に合わない可能性があります。ご了承ください)
2回の再送はせずに済むよう、頑張りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
※おまけ
水中での探索になりますが、呼吸や水圧など、OPで記載されている以外の心配事は、
途中こまめに息継ぎするとか、
酸素ボンベを持っていくとか、
UCで何とかするとか、
そもそも猟兵なので呼吸しなくても大丈夫と主張するとか、
むしろこれを機会に素潜りの練習をするとか、
息が続かなくて海面をさまようとか、
そもそも「細かいことはいいんだよ!!」ということでなかったことにして全く触れないとか、
まあ何でも、どのようにしてくださっても構いませんので、
皆さんがプレイングをかきやすい方向で、お好きにどうぞ。
どれでも何でも全部オッケーです。楽しいようにしてください
オリオ・イェラキ
夜に冒険、なんて心躍る響き
さぁ行きましょう
イルカとご一緒に

わたくしをかの方が眠る地へ連れて行って下さる?
新鮮で大きな魚を選んできましたの
そう言えば海の中…息が続くかしら
クラゲの対応も必要ですし、なら
海中でも活動できるドレスを纏いましょう
ついでにクラゲ避けの輝きを翼に
ふふ、似合うかしら?
では参りましょう、イルカにそっと寄り添って
あらこれはこれで素敵な体験ね

夜の海は空をそのまま映したかのよう
クラゲの光は星ですわね
素敵、夜空を泳いでいるみたい
羽根でそっとクラゲを他所へ払いながら観光気分で遺跡を進み
途中綺麗な貝とか素敵なものを見つけたら寄り道もして
青い光を発見次第イルカに向かって欲しいとお願いしますわ



 きゅう、とイルカは愛らしく鳴いた。
 まあ、とオリオ・イェラキ(緋鷹の星夜・f00428)はおっとりと微笑んだ。
「夜に冒険だなんて……、なんて心躍る響きなのでしょう」
 そういいながらも、ひょい、とオリオは夜色のドレスの裾をつまみ上げる。
 別にそうする必要はなかったのであるが、そうすると何となく、夜、自分の部屋を抜け出した時の記憶が鮮やかによみがえるような気がした。
「ふふ。道案内は、あなた様にお願いしますわね」
 ざぶん、と探索用の飛び込み台から海の中へ。水の中に潜り、手を伸ばせばその手に懐くように寄ってくるイルカに話しかける。
「さぁ行きましょう。わたくしをかの方が眠る地へ連れて行って下さる?」
 頭を撫でると、つぶらな瞳がなんだか嬉しそうである。それから何かを期待するように見つめてくるので、あら、とオリオは思い出したように、
「はい、どうぞ。新鮮で大きな魚を選んできましたの」
 差し出された魚を、イルカは嬉しそうに声を上げてぱくりと口に入れて、
 少し高めの、音のようなものを出して泣き。そうして泳ぎ出した。
「まあ、お待ちになって」
 穏やかな口調とは裏腹に、即座にオリオはイルカの背びれを掴む。どんどんイルカの泳ぐ速度は上がっていき、ドレスが水の中で黒いほうき星のように流れて行く。
(そう言えば海の中……息が続くかしら)
 徐々に海の中へと潜っていくイルカに、オリオは瞬きするほどの合間に考える。折角だから、頻繁に息継ぎで浮上するよりはしっかり探索したい。それに……、
「クラゲの対応も必要ですし……」
 でしたら。と、オリオが言葉を告げた瞬間、たぷん。と、水の中にイルカとともに彼女の身体も沈みこんだ。
「海中でも活動できるドレスを纏いましょう。……ふふ、これで大丈夫」
 それでも、オリオの唇からは言葉がこぼれる。すでに彼女は、星空の鎧。あらゆる環境から身を纏うドレスをすでに纏っているのであった。
 視界も良好。ついでにその背に輝きを灯す。翼に纏った星屑は、敵の攻撃からその身を防ぐ役割を発しているのだ。
「ふふ、似合うかしら?」
 問いかけると、キョロっといるかはオリオの顔を見て。そして笑ったようであった。何か言うように口を動かしたので、
「まあ、お上手ですこと。……では参りましょう」
 そっと、寄り添うようにオリオがその体にしがみつくと、イルカはご機嫌でスピードを上げる。
 これはこれで素敵な体験ね、と。
 瞬く間に通り過ぎていく海の底を見ながら、オリオは目を輝かせるのであった。
 そして……、

「……まあ!」
 徐々に周囲が明るくなってきた。オリオの纏う輝きに負けぬ光が、海の中に漂っている。
 そうして輝きに目が慣れれば……、
 足元に広がるのは巨大なピラミッド。周囲には、まるで人が住んでいたかのように立ち並ぶ建造物もある。
 ピラミッドは一部が崩れていて、そこからも侵入できるようになっているし、入り口も何か所かあって入りやすそうだ。
「……どうしましょう。どこから行くか、迷ってしまいますわ」
 オリオが迷っている間にも、イルカはどんどん沈んでいく。足元にも、頭上にも、無数に広がる輝きは、
「空をそのまま映したかのよう……。素敵、まるで夜空を泳いでいるみたい」
 この夜の海の中。クラゲの光は星ですわね。なんて微笑んでいるうちに。オリオはどんどん降りていく。まるで空から降ってくるようだと錯覚する。なんてロマンチックな場所で、と、オリオが感嘆していた……ところで、
「あら、まあ、イルカ様、イルカ様」
 ふらふらと立ち寄ってくるクラゲを、そっと攻撃を防ぐ羽の輝きで殺さず押すようにして流しながらオリオは指をさした。
「あちらへ。寄り道をいたしませんか。ほら」
 綺麗な貝殻。と、はしゃいだ声を上げるオリオ。クラゲの灯りに照らされて、虹色のねじねじ巻貝を見つけて手を伸ばし、
「……まあ」
 ひょっこり。貝の中から何かが顔を出した。どうやらヤドカリ類の住処だったようだ。
「……まあ、まあ。あなた。もしかして、これを食べたいとお思いですの? どうしましょう」
 イルカがふんふんと顔を寄せるので、オリオが首を傾げている間に、はみ出してきたヤドカリをイルカがぱくり。
「……おいしいのでございましょうか」
 はっと周囲を見回せば、同じような貝殻がいくつも落ちている。
「たまには、魚介類をお出しするのも、良いかもしれませんわね……」
 自分の宿の朝食に、出す分があるだろうか。なんて真剣に悩み始めるオリオであった。

 その後もお土産によさそうな石を見つけたり、
 海藻に足を取られたり。
 急ぐ旅でもないのでゆっくりと。ピラミッドの中に潜っては、謎の巨大像に彫られた落書きを眺めたりしていた……その時。

「あれは……?」
 ふと、青い輝きを見つけてオリオはイルカを見る。イルカは心得たとばかりにそちらへと向かっていく。
 それは、手のひらに乗るほどの小さな宝箱であった。
「こちらが、探し物の青い輝きでございますわね。……では、ひとまず本物の月と星の元へ参りましょう」
 すぅ、とイルカが浮上を始める。それにつかまってオリオも星空を通り抜け、上へ、上へと。まるでさかしまのほうき星のように泳いで海の上、顔を出した。
「……!」
 宝箱を天へと掲げると、青い光が宝箱にはめられた宝石からあふれ出す。それは確かに……、どこか別の場所を指し示しているように、見えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

嘉神・雪
海の中の、遺跡
きっと綺麗な場所なのでしょうね

着物ではなく水着を身に纏い
想像して心が自然と躍る

つぶらな瞳で此方を見つめる彼らを見つけて
自然と頬が緩む
なんて可愛らしいんでしょう

イルカさん、私を乗せて遺跡までお願い出来ますか?
……ええ。勿論。お駄賃はありますよ
美味しい魚を一尾、彼らへ

乗る事を許してくれたなら
夜の海へ一緒に
……息継ぎも忘れずに依頼して

きらり、光る海月がまるで星の様で目を奪われつつ
此方へ寄ってくるものにはUCで対応

ピラミッド風の遺跡へつけば
イルカさんとゆるり探索を

彫刻に祭壇に……神秘的ね

遺跡を楽しみ乍ら目的も忘れずに

青い石がはまった宝箱
探していれば、辿り着くかしら

◇アドリブ歓迎


テティス・カスタリア
どうやってこの体作ったか覚えてなくて
水に入るとただのソーダ水になって戻れなくなるかもって思うから怖い
でも、慣れた方がいい筈
「…頑張る」
強張った気持ちは、見ないふりで
下半身を魚に変えて水に滑り込む

まずイルカに挨拶
「よろしく」
海洋生物は好き
長く深海に居たから憧れみたいな、仲間意識も一方的だけど
「じゃあ、行こう」
イルカと意思疎通しながらなるべく遺跡に早く近づく
「あっち行って」
そう、クラゲ追い払う為の技の効果範囲に、無機物が要るから
イルカを撫でたり戯れる様に泳ぎながら進む
訓練?冒険?曲芸?
もうどれでもいい
気持ち、ふわふわ
楽しい

(途中見つける物:星空の様な石で出来たヒメシャコガイ、中に海模様の珠がある)



「海の中の、遺跡……。きっと綺麗な場所なのでしょうね」
 嘉神・雪(白に咲く・f27648)は美しい黒髪をさらりと流して己が浸かる海の下へと目を向けた。
 きれいな港町には探索用の波止場のようなものがあって、そこから見ずにはいれば足元はもうおぼつかない。
 いつもの着物ではなく水着を身に纏い、ちょっと慣れぬ様子でレンガ造りの波止場で身を支えながらくるりと雪は海に目を向けた。その時、
「あら……。大丈夫ですか?」
 ふと隣で、同じように浸かっているテティス・カスタリア(想いの受容体・f26417)へと雪は声をかけた。水に浸かって、テティスは何やら顔色が悪そうに、見える。
「……大丈夫」
 テティスはこくりと頷いた。相変わらず表情は暗かったが、海が怖いのではない。……もともとテティスはセイレーンだから、海は本当は得意なはずだ。今は足だって見事な尾へと姿を変えている。……ただ、
(どうやってこの体作ったか覚えてなくて、水に入るとただのソーダ水になって戻れなくなるかもって思うから怖い……)
 むしろ逆である。このまま海に慣れてしまったら、二度と陸に、ひとの仲間に、戻れなくなってしまうような気がしてテティスは怖いのだ。とはいえ、それを口に出せるわけもなく。黙り込むテティスに、では、と雪は微笑んだ。
「私も、イルカさんは初めてなのです。だから、一緒に行きませんか?」
 警戒心が人一倍強い雪ではあるが、放っておくこともできなかった。それに、自分も水の中で何かあったときに、一人より二人のほうが取れる選択肢も広くなるだろう。そう提案する雪に、テティスも小さく頷いた。
「そうする」
「はい」
 端的なテティスの言葉に雪も頷く。テティスもまた、誰かと話しているほうが形がとりやすいかもしれない、なんて考えていた……ところで、
「きゃ」
「わ」
 ぱしゃん、と水が鳴って、二人は思わず顔を見合わせた。
 きらきらした目のイルカたちが、今か今かと何かを待ちわびているのである。
「……」
 思わず息を詰めた後で、それから自然とその頬を緩める雪。
「ああ……。なんて可愛らしいんでしょう。けれど、待たせてしまいましたね。ごめんなさい。……ええ。勿論。お駄賃はありますよ」
 おいしい魚をそっと雪が差し出すと、ぱくんとご機嫌でそれを口に入れるイルカ。
「……うん、ちゃんと、持ってる。……よろしく」
 テティスもまた、硬い表情でそっと魚を手渡すと、テティスの前にいたイルカは嬉しそうにそれを飲んで、そして気遣うようにテティスの体に体を寄せるので、
「……頑張る」
 硬い表情ながらも、テティスはこくり、と頷いた。
「では、行きましょうか」
「うん」
 互いに言葉は少なく。それでは、と雪が頷いて、
「イルカさん、私を乗せて遺跡までお願い出来ますか?」
 声をかけると、待ってましたとでもいうかのように、イルカたちがすぅっと泳ぎ出した。
 きゅい、と、何やらイルカが声を上げる。「なんて言っているのでしょうか?」と雪が水しぶきに合間に声を上げると、
「スピード、出していいかって聞いてる。……いいよ。じゃあ、行こう」
 テティスが応えた瞬間、ぐん、とスピードが上がった。
「言葉がお分かりになるのですか?」
「ほんの少し」
 テティスにとって海洋生物は、あこがれのようなものがあるから。長い間深海にいたからだろうか。仲間であると同時に、海で変わらず今も暮らしているということには寄せる思いがある。……向こうがどう思ってくれているかは、今ひとつわからないけれど……。
「それは、良……」
 よいですね、と言いかけて。どんどんどんどん海面が近づいてくるので雪は思わず口を閉じた。テティスもイルカの背びれをしっかりと捕まえる。そのまま二人して、どぷん、と海の中へと落ちて行った。

 海の中を降りていく。それこそテティスがいた深海ほどではないが、降りていくその感触は何となく落ちていく、に近い気がする。
 それは眼下に広がる遺跡があまりに、はっきりと形を成して残っているからだろうか。
(ああ……)
 きらりと輝くクラゲに目をやって。その水の流れに応じるように顔をあげれば、頭上には満天の星のようにも見える輝きが詰まっていた。
(なんて……綺麗)
 思わず雪は目を奪われる。ほう、とため息のような息が漏れる。クラゲたちはイルカを見ると、さあっと道を開けるように左右に割れていく。その姿もまた幻想的ではあるが……、
 ふわり、と逃げ損ねたクラゲが雪のもとにクラゲが近寄ってくる。
 ペタン。と雪は己の護符をクラゲに張り透けてそれを受け流す。
 ふわふわ。反対側から近寄ってくるクラゲさんには、
(あっち行って)
 イルカを撫でながら、少し先を沈んていたテティスがそう念じてさ、とその指を軽く振った。
 戯れのようなそのしぐさとともに、ぺいん、と星型のごく小さなエネルギーが飛び出して、クラゲにぴこんと命中する。
 おはじきのようにはじけて、離れた群れに混ざるクラゲをテティスも雪も目で追いかけた。
 
 沈んでいけば、目の前に広がっているのは遺跡で。
 テティスはするりと中に入り込んだり、出て行ったり。イルカと一緒にくるくると回りながら様子をうかがう。
 雪はというと、怪しげな柱に彫られた獣を興味深げに見やったり、ピラミッドの中に潜れば何の用途があるのかわからない謎の玉を拾い上げたりと忙しい。
(彫刻に祭壇に……神秘的ね)
(訓練? 冒険? 曲芸? なんて言えば、いいんだろう。気持ち、ふわふわ。……楽しい)
 時折すれ違えば、顔を見合わせて身振り手振り。
 お互いきっと、互いの言いたいことが通じちゃいないことなんてわかってる。
 けれどもそれでいい。それもまたそんなものだ……なんて。
 イルカと一緒にあおむけに泳いでいたテティスがそう思ったか思っていないかぐらいの時。
「……」
 美しい貝を見つけて、テティスは手を伸ばした。星空の様な石で出来たヒメシャコガイは、開けてみれば中に海模様の珠があって。それを手に取ったときのことであった。
「……?」
(あら……?)
 それはちょうど雪が、珊瑚で出来た杖のようなものを拾い上げたところで。頭上のテティスが何やらもの言いたげに浮かんでいるのに気づいて雪はテティスのそばへとイルカとともに泳いでいく。
 あそこ、とテティスが示して、雪も一度目を見張ってから、小さく頷いた。
 一度息継ぎに浮上してから、二人して向かう先には、海よりなお青い光を放つ宝箱が、あった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

篝・倫太郎
こんな事もあろうかと!
つー訳で水着で来た自分を褒めたい

んで?港町で売ってる魚を一匹……え?一匹?

でも、それじゃ申し訳ないから
仕事終わったらもう一匹やろっと

そんな話をしてみる
無論『動物と話す』技能は持ってないから
意思疎通が正確に出来てるかは判んねぇし知らねぇケド

イルカの身体につかまったら、遺跡へごー!
素潜り使ってイルカといっしょに探索

イルカがぱっくんする以外の
俺に寄って来るクラゲは拘束術で吹き飛ばし
ついでだからイルカの前方に飛ばしとこ

どわわわ!
クラゲ飛ばしたお礼なんだろか?
ぐるぐるぐるーと回転しながら進んでくれるンだけど
びっくりすっから!

あれかな?
蒼い一筋の光……
光の射す方を指差して一緒に向かう


ベイメリア・ミハイロフ
青い光を目指して参ります
水に濡れても良いよう、白い水着姿で
水中機動・水中戦も活用しながら

イルカさんにおさかなをさしあげて
ふふ、イルカさん、おかわいらしい…!
よろしくお願いいたしますね、頼りにさせていただきますよ
(ぺたぺたとお撫でしながら)
息が続かなくなったら、水上へ上がって頂くようお願いを

クラゲさん対策には
多少はイルカさんを頼りつつ
赤薔薇の花びらを纏って、左右や後ろに
近づかれないようにして参ります
うまくいかないようであれば、気は進みませんが
Red typhoonを使用しようかと

毒を持っているとはいえ、その光はとてもきれいで
思わず見入ってしまいますね
遺跡までの光る道案内さんも堪能して参りますよ



「ふ……っ」
 篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は何やら得意げであった。
「こんな事もあろうかと!!」
 ばばん! と効果音が付いたわけではないが、今日の倫太郎は水着姿である。海に潜るのであるから当然の準備であろう。自分で自分をほめてあげたい……。というか褒める。さすがの対応力。なんて得意げにポーズをとって水面を見ているその隣で、
「ふふ……。今日はなんだか気持ちのいい海日和ですね」
 たまたま近くにいたベイメリア・ミハイロフ(紅い羊・f01781)も白い水着姿でくすくすと微笑んでいた。天気も良く、星空も良好でさほど寒くもない。泳ぐにはうってつけだろうと笑うベイメリアに、
「……見てたか?」
 倫太郎は思わずポーズをとったまま固まった。
「え? ええ」
 微笑ましいです。て笑うベイメリアに他意はない。倫太郎は一瞬、黙り込んでかっこいいポーズを解除。
「………………んじゃ、潜ろうぜ。そっちは魚、持ってきたか?」
「はい、参りましょう!」
 もちろんです。と、ギュッと己の手を握りしめるベイメリアに、
 よっしゃ。と素知らぬ顔で倫太郎も頷いて、
 二人は水の中にどぼん、と、飛び込んだ。
 飛び込むと同時に、きゅきゅきゅ、とご機嫌な声を上げてイルカたちが二人の周囲にやってくる。
 手慣れたものである。目的は何か。もちろんわかっている。それは……、
「んで? 港町で売ってる魚を一匹……え? 一匹?」
 あれ。って顔する倫太郎に、ベイメリアもそういえば、と瞬きをする。
「イルカさんたちは、ずいぶん小食なのですね……。あっ」
 はよくれ。とばかりに魚をつつくイルカに、ベイメリアは半ば奪われるように手にしていたお魚を手放す。
「ふふ、イルカさん、おかわいらしい……!」
 ふふん、とご機嫌に尾を振るイルカさんに、思わずベイメリアも目を輝かせて笑った。イルカさんは、とても、満足げだ!
「おお。いいのか。いーのかこれで……」
 倫太郎のほうも、半ばせかされるように魚をイルカさんに手渡す。何やらご機嫌で悪い笑みを浮かべるイルカさんに、倫太郎もちょっと悪い笑みを浮かべた。
「だよなっ。それじゃ申し訳ないから、仕事終わったらもう一匹やるよ。だからよろしく頼むぜぇ?」
 へっへっへ。お主も割るよのう。みたいなやり取りを勝手に展開している間、ベイメリアはぺたぺたとイルカさんを撫でて、
「よろしくお願いいたしますね、頼りにさせていただきますよ」
「きゅ!」
 そんな正統派(?)の会話をしてみるのであった。
 ちなみに倫太郎は動物と話す技能が全くないので、通じていたかいないかは今ひとつわからない。というか、全く通じていなかった気がしないでもないがそれはそれ、これはこれなのであった。

「んじゃ、ごーごー!」
「はいっ。イルカさん、失礼いたします……!」
 食べるもの食べたらイルカさんもまた現金なもので、ざざざざざ、と波をかき分けて即座に走り出す。それを各自別々のイルカにつかまって、波をかき分けかき分け進んでいく。
「楽しみだなー。遺跡!!」
 倫太郎のはしゃぐようなその言葉の最後のほうは、水の中へと潜っていくことで消えて行った。
 頭の先まで水が来れば、がばっと空気の泡が出来上がって二人と二匹の代わりに浮上していく。
 即座にイルカたちが突っ込んだのは、まばゆいばかりに輝くクラゲたちの群れであった。
(まあ……)
 言葉は出ないが、その光景にベイメリアは目を見開く。
 真っ暗な海を、まばゆいばかりの星のような輝きが照らし出していて、
 それが、二人が……正確に言えば、二人を乗せたイルカが……近寄るたびに、さ、と道を開けるように左右に分かれていくのだ。
 星をかき分けるようにして、彼らは進んでいく。
(なんて……綺麗なのでしょうか。毒を持っているとはいえ……)
 思わず見入ってしまう。と、見惚れるようにほう、吐息をつくベイメリアに、
(っていうか、こいつらめっちゃ食べるな。すごい食べるな……)
 一方倫太郎は前を行くイルカたちの食べっぷりに驚嘆しているのであった。
 こんなにかわいいもの同士が見つめあったのちにばくんと丸呑みしたりされたりするのだから、なかなかに現実は厳しい。
(旨いのか……? あれ)
(もしかしましたら、あの痺れが程よく美味しいのかもしれませんね……)
 なんとなく、海の中なので人間同士も言葉は通じないが、言いたいことは何となくわかる。むしゃむしゃ丸呑みする幾らに思わず二人はそんなことを考えていると、
 ふらふらー。ふらふらー。と、
 よせばいいのに何匹か、二人のほうに近づいてくるクラゲがいる。どちらかというと海の流れによって、ふわふわとこちらのほうに漂ってくる、というのが正解なのだろうけれども、
(なるべくは……傷はつけたくないのですが)
 特に意思など持たなさそうなクラゲさんに、ベイメリアはちょいちょい、と指先でくすぐるような仕草をする。そうするとふわりと赤薔薇の花びらが現れて、それで体を守るように、近付かれないように追い払っていった。
(こっちは……っと)
 倫太郎のほうにきたクラゲは、倫太郎の持つ見えない鎖で追い払われる。ついでに何匹かイルカの前へとクラゲを寄せると、ばくん、と容赦なくイルカはそれを食べて、
「どわ……っ!!!!」
 がぼがぼがぼ。
 物凄い勢いで回転しながらスピードを上げるイルカに、思わず倫太郎は大量に空気を吐き出しそうになるのをかろうじてとどめる。
(お礼のつもりか? びっくりすっから!)
 まるでミサイルのような勢いに、必死でしがみつく倫太郎。
(まあ……、大変!)
 まっすぐに遺跡のほうへと飛んでいくその姿に、ベイメリアはイルカさんの背中をそっと撫でて、慌てて追いかけた。

 イルカミサイルは遺跡にぶち当たりそうになるのをぎりぎりでぎゅん! と曲がり、
 そしてピラミッドに突入したころには、勢いも弱まっていた。
(おお……。てかここ、どこだよ……)
(あそこの崩れた壁から、入ってきたのでございますよ)
(まじか……)
 よくよく見るとかなり上のほうに崩れた場所がある。頑張ったなーって褒めるべきか、頑張りすぎッていうべきか。若干倫太郎が悩んでいた……ところで、
(……あれかな?)
 ふと、視界の端の方で蒼い光が輝いた。ベイメリアもそちらに視線をやると、
(まあ。きっとあれが、目指すべき青い光でしょう。だってあのような輝きは、ほかにはありませんから)
 人工物っぽい輝きは、この海の底では異質であった。二人して顔を見合わせて、ベイメリアがそれを拾い上げる。
 今は輝きは小さいけれども、確かにどこかに向かって光を発している気がする。月と星の光がもっと強い海上ならば、もっとはっきりわかるだろう。
(そろそろ息も続かなくなってまいりましたし……ひとまず上がりましょうか)
 ベイメリアの提案に、倫太郎は頷く。
 手に入れた宝は、さらに新たな宝の道を指し示す。
(不思議ですわね……。きっと)
 まだまだ、これからなのだと。その輝きが何かを語っているような、そんな気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

桜・結都
【桜風】

夜の海はどこか暗く冷たい印象があって、
すこしだけ怖れる気持ちもありました
でも、綺麗ですね。遠くからでも、海の中が宝石を鏤めたみたいです

美味しいお魚を買ってきましたから、これでイルカさんにお願いしましょう
通訳はグィーさんにおまかせして
……グィーさんもお魚が好物だったりするんでしょうか
今度一緒にどこかお魚料理を食べに行きましょうね

ふわふわ漂うクラゲは綺麗で、思わず手を伸ばしたくなってしまいますね
触れないよう気を付けながら破魔の符で退けます

すごいですね、グィーさん
海中の遺跡の光景だけでも宝物のように感じます
もう暫く探索していたいくらい
ふふ、勝負しましょう
どちらが勝ってもきっと楽しいです


グィー・フォーサイス
【桜風】

僕は元々イルカくんたちと仲良しだからね
けど游ぐなら軽装で(昨年の水着姿
イルカくんへの通訳は僕がしよう
僕は動物たちと仲良しだからね
よろしく頼むよ、イルカくんたち

お魚、好きだよ
結都も好きそうだよね。お肉よりお魚って感じがするよ
食事はもちろん賛成さ
今日の仕事が終わってからだっていいしね

風を練り練りして、空気を頭に纏うんだ
結都も僕も、コレで大丈夫
クラゲは…好きじゃないかな
遠くから見るのは好きだけど
結都、触りたくなるの?
やめといたほうが良いよ
クラゲ避けは結都に任せよう

すごいね、結都
建造物が沈んでいるのって何だか不思議だ
宝箱を探すのはワクワクする
あ、あれかな
どっちがたくさん見つけるか勝負しようよ!



 結都は水の中から天を見上げた。
 まばゆいクラゲの光が星のように瞬いているのが、見える。
 ぽん、と肩をたたかれて結都は振り返る。グィーがにっこり笑うので、結都も笑い返した。
(夜の海はどこか暗く冷たい印象があって、すこしだけ怖れる気持ちもありました。でも……)
 綺麗ですね。と、結都は息をついて顔を上げる。ほら、とさした指先に、クラゲがふわふわと漂っていた。
(遠まで、海の中が宝石を鏤めたみたいです)
 ふわふわ漂うクラゲに、グィーはどんな顔をしているだろう。なんて、結都は思いながら。先ほど潜る前の会話を思い出していた。

「美味しいお魚を買ってきましたから、これでイルカさんにお願いしましょ」
「ふふ、そうしよう」
「でも、私たちの言うこと、きちんと通じるでしょうか……」
「僕は元々イルカくんたちと仲良しだからね。大丈夫、イルカくんへの通訳は僕がしよう」
 水着を着たグィーが胸を張る。すごいすごい、と、結都も感心したように目を輝かせていた。
 海の中につかると、即座に軽快な水音を立ててイルカがちょうど二人、やってきた。慣れているのであろう。グィーたちの周囲を楽しげにぐるぐる回っている。
 はい、と、グィーが魚を渡すのを結都は見守っている。それでふと。
「……グィーさんもお魚が好物だったりするんでしょうか」
 疑問が頭をもたげて。結都は首をかしげたのであった。
 今日のお魚はとっておき……らしい。結都にはわからないのだが、きっとおいしいのだろう。そんな真剣な疑問に、グィーはちらりと結都に視線を向けて、
「お魚、好きだよ。でも、お魚料理のほうが好きかなあ」
「あっ。そ、そうですね」
 聞こえていたらしい。ちらりと笑うグィーに、結都ははにかむように微笑む。
「結都も好きそうだよね。お肉よりお魚って感じがするよ」
「そうですね。確かにお肉というよりは……」
 魚だろうかと。結都は首をかしげて。それからぽん、と、手を打った。
「それでしたら、今度一緒にどこかお魚料理を食べに行きましょうね」
「食事はもちろん賛成さ。今日の仕事が終わってからだっていいしね。でも、いいのかい? 僕はたくさん食べる、かもしれないよ」
「それはもちろん。きっとたくさん冒険したら、おなかがすいて……ひゃっ」
 ぱしゃん、と、イルカの尾びれが跳ねる。グィーが笑った。そういえば魚を渡している途中であった。
「ああ、お待たせ。大丈夫、忘れてないよ」
「すみません。すっかり話に夢中になって……。怒っていませんか?」
「怒ってないよ。遊んでいるだけさ。僕は動物たちと仲良しだからね。よろしく頼むよ、イルカくんたち」
 結都が言うと、グィーが笑う。それにこたえるようにイルカはご機嫌な声を上げるのであった。
「さて、風を練り練りして……。結都も僕も、コレで息だって大丈夫! さあ、いこう!」
「はい!!」

 その後イルカの体につかまり、二人は水の中へと入っていったのである。
 海にいるのは、クラゲとイルカと井関だけではない。さまざまな魚がいて、大体のものは寝ているけれども不思議と動いている魚もいる。
「すごいですね、グィーさん。海中の遺跡の光景だけでも宝物のように感じます」
 遺跡の中も、不思議と荘厳な感じもするし、かとか思えば謎の建造物にタコがはり付いているのも見える。焼いたらおいしいでしょうか。なんて結都が言うと、焼きダコよりもたこ焼きがいいなあ。なんて冗談めかしてグィーも返した。
 ふわりと、そんな二人の目の前を鮮やかな光が通過する。
 逃げ遅れたクラゲがふわり、ふわり。二人の前にもいくつか漂っている。
「ああ……」
 ぱくん。と。イルカさんに食べられたクラゲに、思わず結都は声を上げた。わかっていたことだけれども、ちょっと切ない。そんな声を上げる結都をちらりとグィーは見て、
「クラゲは……好きじゃないかな。遠くから見るのは好きだけど」
 すすす。と、ふわふわ漂うクラゲから身を離してグィーはつぶやいた。
「そうですか? 僕はなんだか、綺麗で、思わず手を伸ばしたくなってしまいますね」
「結都……。触りたくなるの? やめといたほうが良いよ」
 ほんのちょっぴりの好奇心をにじませる結都に、グィーは若干引いている。そんなグィーを追いかけるように漂うクラゲに、結都は笑って破魔の符をはり付け遠ざけるのであった
「クラゲ避けは結都に任せよう。さあ、行こう、イルカくん」
「あ、まってください」
「待たないよ。……ほら、すごいね、結都」
 建造物が沈んでいるのって何だか不思議だ。と、指さしたのはびっしり苔むした建物。そこを通って、ピラミッドの中へも入っていけるようだ。
「あの辺は人の手が入っていない気がするよ。ねえ、宝箱、どっちがたくさん見つけるか勝負しようよ!」
「いいですね……ふふ、勝負しましょう」
 グィーの提案に、結都は笑った。探索は楽しくて。もうずっと潜っていたいくらいで、
「どちらが勝ってもきっと楽しいです」
「そう? 僕は、やるからには勝ちたいかなあ」
 なんて言葉もそこそこに。イルカさんとともに二人は遺跡の中を目指す。きっと結都の言うとおり、何があっても楽しいだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

瀬名・カデル
【花雪】
景雪と一緒に依頼を受けるよ!

イルカさんと一緒に海の中を潜るのとっても楽しそうだね~!
?どうしたの?
そうなんだ、景雪はお水が苦手なんだね…!
ボクもね、海のことが最初は怖かったんだよ。

でもね、一緒に泳いでくれる人とか、海の中でとっても綺麗なものを見たりで大好きになったんだよ!(上手く泳げるとは言っていない)
イルカさん以外にもきっとキラキラと綺麗なお魚さんとか、サンゴとかもきっと見れると思うし、クラゲも危ないけど泳いでる姿はとっても綺麗なんだよ!
だから、景雪もお水のことを好きになれるよ!
ボクも一緒についていくから、怖くないよ
ね、行ってみよう!(手をぎゅっと握りしめて)

遺跡を目指してゴーだよ!


叶・景雪
【花雪】
アドリブ歓迎
難しい漢字は平仮名使用。名前以外カタカナはNG

元の主さまが水軍(=海賊)だったから
お宝さがしは得意だよ!まかせて(ふんす!
あ、でも…(海を見つめ肩落とし
え、おねえさんも苦手だったの?
一緒に水れんしてくれる人がいれば…そっかぁ、
いるかさんもおねえさんもいるし、
きらきらがいっぱいなら、ぼくも好きになれそう!
(差し出された手をぎゅっと握り返し)
水れん、がんばるよー!

昔から暗いとろこによくいたからか夜目がきくから
上手にはおよげないけど、何かみつけたら、あっちって
おねえさんに目配せするね!
きらきらお魚さんに見とれつつ、万が一くらげさんが
近づいてきたら、おねえさんを守るよ!(ふすふす!



 叶・景雪(氷刃の・f03754)は、最初はとても得意であった。
 それというのも、景雪の元の主が水軍……景雪が知っているのかいないのかはわからないが、海賊まがいの……仕事をしていたので、
「お宝さがしは得意だよ! まかせて!」
 と、張り切っていたのだ。しかし……、
「あ、でも……」
 いざ波止場までたどり着くと、景雪の方は自然と落ちて行った。潮風が頬を撫でる。
「? どうしたの?」
 そんな彼と共にイルカさんと一緒に海の中を潜るのとっても楽しそうだね~! と目を輝かせていた瀬名・カデル(無垢なる聖者・f14401)は、なんだか急に、しおしおしお~っと元気がなくなっていく景雪に首をかしげる。
「……」
 景雪はうぅ~。とうなるように体を右へゆらり、左へゆらり、してから、
「あのね……」
 そっと身を乗り出す。カデルがちょっと屈むと、その耳元にこしょこしょとささやいた。
「そうなんだ、景雪はお水が苦手なんだね……!」
 思わず、カデルが大きく声を上げる。それからはっと、自分で我に返って口元に手をやった。
「ごめんね、おおきなこえで」
「ううん」
 景雪が首を横に振ると、カデルはほっと息をつく。そうしてそっと、合わせるように小さな声で、
「ボクもね、海のことが最初は怖かったんだよ」
 そう、内緒ごとを告白するように言うので。景雪はえ、と、顔を上げた。
「おねえさんも苦手だったの?」
「そうだよう。でもね、一緒に泳いでくれる人とか、海の中でとっても綺麗なものを見たりで大好きになったんだよ!」
 えへん。と、カデルは景雪の視線に胸を張る。上手く泳げるとは言っていないが、本人が楽しいので、それでいいと思ってるのだ。だから、じっとカデルを見る景雪にカデルは眼を輝かせる。
「イルカさん以外にもきっとキラキラと綺麗なお魚さんとか、サンゴとかもきっと見れると思うし、クラゲも危ないけど泳いでる姿はとっても綺麗なんだよ! そんな世界が目の前に広がってるの、とっても素敵だと思わない?」
 両手を広げて、海は、広いんだよ! と。全力で主張するカデル。聞いている景雪は、カデルの言葉が進むたびに段々と表情が明るくなっていった。
「だから、景雪もお水のことを好きになれるよ! それに、ボクも一緒についていくから、怖くないよ。……ね、一緒に行こう?」
 広がる素晴らしい世界! と、ポーズをとるカデルに、景雪もふん、ふん、と、うなずいていた。カデルの話し方が何とも本当に楽しそうで、聞いているだけで、こちらも楽しくなってくるような、気がして、
「一緒に水れんしてくれる人がいれば……か。……そっかぁ、いるかさんもおねえさんもいるし、ぼくはひとりじゃないからね!!」
「うん! ね、行ってみよう!」
 やる気を出してがばちょ、と拳を固めて決意を新たにする景雪に、カデルは手を差し出した。
「ふふ……。きらきらがいっぱいなら、ぼくも好きになれそう!」
「うん、なれるよ!」
 差し出された手をぎゅっと握り返し景雪が言うと、明るい返答が即座に返ってくる。
 応援してくれている。それが嬉しい。景雪は大いに頷いた。
「水れん、がんばるよー!」
「やったー! がんばろうー!」
 やる気を出した景雪に、大げさに喜ぶカデル。
「じゃ、じゃあ、行くよ……?」
「うん。せーので行こう」
「うん、せーの……!」
 どぼん、と、二人して。
 波止場から海の中へと飛び込んだ。
「わわ、いるかさん」
「うん、イルカさんも手伝ってくれるって!」
 即座にすいーっと、二人の間を取り巻くように回っていくイルカさんたち。それにお魚を上げて、
「さあ、遺跡を目指してゴーだよ!」
「うん!」
 あの星向かって一直線だ! そう。声を上げるカデルに、景雪も嬉しそうにイルカにしがみつくのであった……。

 そして。
「どう? 見える?」
「ん……」
 一生懸命の練習の末に、二人は何とか遺跡へと潜っている。
 カデルの言葉に、慎重に景雪は周囲を見回した。
 実際は喋っているのではなく、アイコンタクトなのだが、言いたいことはだいたい、わかる。
 昔から暗いとろこによくいたからか、夜目は聞く。クラゲの輝きの隙間に落ちた闇を追いかけるように、右へ、左へ。景雪は視線を向ける。
(上手におよげないぶん、何か見つけるんだ……!)
 景雪はやる気である。そんな景雪をカデルが微笑ましそうに見ていた。そんなの、気を使わなくてもいいのに。と、声に出せたなら言っただろう。
(あ!)
 そんなカデルの視線に気付かずに、景雪は海底に沈む青い輝きを見つけて、思わず指をさした。
 カデルのほうに視線をやると、カデルは小さく頷く。
(あっち、いってみよう)
(うん。どーんって、言っちゃおう!)
 イルカに頼んで、水をかき分けかき分け二人は一緒に沈んでいく。
 途中で通り過ぎるクラゲたちはまるで星のようで、彼らの傍らを通り過ぎて行った。
(あ……)
 一匹、ふらふらとクラゲが近づいてくる。それに、
(だいじょうぶ、おねえさんはぼくが守るよ!!)
 ふんす、と、やる気の景雪が庇うようにカデルの前へと立ち塞がるのであった……。
 きっと、ものすごいえいえいえい! で、追い払ったに違いない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ディアナ・ロドクルーン
🌸🐺

…海
そろそろ克服しないとと考えていたから丁度いい

志桜ちゃん、私頑張って海に入るから是非ともご指南を

え?貴女も泳げない…?(しばし沈黙の後)
大丈夫、優しいイルカさんがいるから泳げなくても遺跡に向かえるわ
一緒に頑張りましょうね(震え声

海に潜るのだから…シュノーケルと水中眼鏡を用意しておくわ
これで潜っても大丈夫…な、はず
頑張ります!(自棄

クラゲは手で水流を作って遠ざけ

暗い海は怖いけど…クラゲの光がとっても綺麗…凄い遺跡
あっちの方に宝箱っぽいものが見えたわ
志桜ちゃんと目で合図をしてイルカさんにお願いを

宝箱を志桜ちゃんと一緒に持ち上げて月と星の光に翳すわ
特別な宝の道、どこを示してくれるのかしら


荻原・志桜
🌸🐺
濡れても良いように一足早い水着の上からTシャツとショートパンツを着て
潜るときに必要な道具を用意すればOK!

わたし泳いだことないんだけど
ディアナちゃんは泳げ――あ、はい
イルカさん…、本当によろしくお願いします
ちょっと良いお魚を用意して海の中へ!

暗い海中はクラゲの光が蛍のようにふわふわ漂う幻想的な世界が広がる
落とされないようしがみ付き乍らディアナに目配せしてキレイだねと笑う

あれが遺跡かな?
海の中に聳え立つ遺跡は神秘的
イルカさんあっちにお願い!と指差して

宝箱を光に翳して導となる光の先には何があるのかな?
にひひ、楽しみだね!行ってみよう!

クラゲは傷つけないぐらい弱い水流を魔法で作り反対側へ流す



 濡れても良いように一足早い水着の上からTシャツとショートパンツを着て。
 もちろん潜れる準備も万端で。いつだってどこだってどんとこいの準備をして。
 さあ、あとは泳ぐだけ、という様子の荻原・志桜(桜の魔女見習い・f01141)は海の中イルカさんを撫でながら肩越しに振り返った、
「わたし、泳いだことないんだけど。ディアナちゃんは泳げ――」
「……海。そろそろ克服しないとと考えていたから丁度いい」
 振り返った先はレンガ造りの波止場の上。まるで海をにらむような格好で仁王立ちしているディアナ・ロドクルーン(天満月の訃言師・f01023)の言葉は非常に鋭く、カッコよく。クールであったが、その内容に志桜は思わず瞬きをするのであった。シュノーケルに水中眼鏡もカッコよく決まっている。
「志桜ちゃん、私頑張って海に入るから是非ともご指南を」
「あ、はい」
 真面目な顔をして言い放つディアナに、志桜も思わずこくり、と頷く。
 きゅい、と、戸惑ったような声をイルカが上げたような、気がした。
「……」
「……」
「…………」
「………………」
 目と目で語り合うこと、数秒。
「え? 貴女も泳げない……?」
 居た堪れないような沈黙ののち、ぽつんと発したディアナの言葉に、志桜も大いに頷いた。
「わたしも、泳いだことなくて」
 さっきと同じセリフを、ほんの少し感情を変えて志桜は言う。ディアナはこくり、と頷いた。
「大丈夫、優しいイルカさんがいるから泳げなくても遺跡に向かえるわ。一緒に頑張りましょうね」
「う、うん……」
「じゃあ、まずは水の中に入らなきゃいけないわね」
 すでに水に入っている志桜を見つめ、ディアナは沈痛な面持ちでそういうので、
「だ、大丈夫だよ。お水、あったかいから」
「そうね……」
 波止場の上から、ディアナは水中眼鏡をしっかり装着。シュノーケルの調子を確認。
「これで潜っても大丈夫………な、はず。いざ! ……いざ!! ディアナ、頑張ります!」
 ざばーん!
 水中眼鏡をつけてなお、ぎゅっと目を閉じて海の中に飛び込むディアナに、
 志桜はそっと、そばにいるイルカの背を撫でるのであった。
「イルカさん……、本当によろしくお願いします」
 わたしたちの未来は、イルカさんにかかっている!
 ちょっといいお魚をイルカさんにプレゼントしながら、遠い目をして言う志桜。イルカが一声、ないて。任せろ、とでも言っているかのように、聞こえた……。

 ふわわわわ。と二人から吐き出された空気の泡が浮上していく。
 視線を上げると、それを照らすかのようにクラゲたちが美しく輝いていた。
 暗いはずの暗い海中はクラゲの光が蛍のようにふわふわ漂い。
 深い深い海の底までを照らし出し、幻想的な世界を照らし出していた。
「……!」
 すごい、と、思わず両手を手放しそうになって、志桜は慌てているかにしがみつく。
 しがみつきながら、ディアナのほうに目配せをした。キレイだね、と。声に出さなくても通じるだろうその笑顔に、
「……」
 ディアナもすっごいイルカにしがみつきながら、こくこくと頷いた。間違っても手を離さないぞ、という強固な意志を感じる。そんなディアナの様子を微笑ましく思うぐらいには、志桜には余裕があった。
(……あれが遺跡かな?)
 だから。海の中にできた街のような景色に、志桜は興味深そうに身を乗り出すようにして覗き込む。
 ところどころ崩れて入り込めるようになっている巨大ピラミッド。怪しく立ち並ぶ12の石像。なんの用途かわからない塔。
 神秘的で不思議な遺跡だと、志桜はピラミッドの崩れた壁を指さしてみる。
(イルカさんあっちにお願い!)
 入ってみよう。と、指をさすと、志桜のイルカさんが泳ぎ出す。ディアナが緊張した面持ちでその後に続くようイルカさんに頼んだ……。

(……)
 ぎゅっと抱きしめる感覚が何とも頼もしい。
(暗い海は怖いけど……クラゲの光がとっても綺麗……凄い遺跡)
 ディアナは志桜の後を追いかけながらも、ようやく周囲を見回す余裕を持てたのはちょうどピラミッドの中に入ってからであった。
 石造りの通路を泳ぎながら通過する。そろりと地を這うように歩いているのは人間でもミイラでもなく、奇妙な形をした夜行性の巨大虫だ。
(不思議……)
 水の中にいるのも忘れて、ディアナは思わず手のひらサイズのダンゴムシに手を伸ばす。そしてそれが水の中であることに気付いて、はっ。と、手を引っ込めるのであった。
 ちらりと志桜のほうに視線をやると、志桜が何やら楽しそうに笑っている。言いたいことはわかるので、ディアナは素知らぬ顔をして、
(あっちの方に宝箱っぽいものが見えたわ)
 なんて目で合図。志桜もそちらの方に視線を向けると、ぐッ。とこぶしを握り締めて大いに頷いた。
(イルカさんイルカさん)
(あちらのほうに、お願いできるかしら)
 示したのは二人ほぼ同時。合わせるようにいるかも泳ぎ出す。空気が攪拌されて水の中に流れができる。
 ふわーっとその流れに応じるようにクラゲたちがやってくるので、ちょちょい、と志桜とディアナは同時に指先で魔法を操る。弱い水流を作り出すと、渦巻きをまくようにしてその中にうまいことクラゲを入れて押し流していく。
 光は遠くに。くるくる回るさまもかわいらしいわ、なんて見送る余裕ができたディアナは、宝箱の前まで来る。躊躇うことなく志桜はそれに手を伸ばして持ち上げ、顔を見合わせ小さく頷いた。

「見て、本当に光ってるみたいだよ」
 そして。浮上して一息つく間もなく。志桜が持っていた箱を掲げる。そうするとスゥっと一筋の光が、宝箱の宝石から放たれているのを二人は見た。
「特別な宝の道……、どこを示してくれているのかしら」
「うーん……。果たして、導となる光の先には何があるのかな?」
 ちょっとナレーション風味に志桜は言ってみて、そして、笑った。
「……にひひ、楽しみだね! 行ってみよう!」
「ええ……勿論」
 もう、海だってへっちゃらだ。
 そうして二人は再びイルカさんの背を撫でる。
 まっすぐに伸びる光はきれいで明るくて。見失うことは、ないだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

三咲・織愛
ヨハンくん(f05367)と

わーっ!かわいい!イルカですよー!
ヨハンくん、見てください。かわいいでしょー!

海の中の遺跡、楽しみですね
連れていってもらうためにも、それー!
たくさん買ってきたお魚を投擲しますっ!
これで連れていってくれますよね?

(がっしとヨハンくんの腕を掴みつつ)
それでは、れっつごー!
だってこうしないと一緒に来てくれないじゃないですか
あ、私はがんばって息を止められますけど、ヨハンくんも出来ます?
出来なかったら気絶させて……
わぁ、すごい!息を止めなくても行けますね!

クラゲの光が幻想的で綺麗
暫くそのまま見惚れながら進んで

ねぇ、ヨハンくん。これって財宝でしょうか?
光の先に進んでみましょ


ヨハン・グレイン
織愛さん/f01585 と

はぁ……そうですね、可愛いですね
…………おとなしくしていれば

まるで熟練の漁師の投網のような……、
いくらなんでも魚を買い過ぎじゃないですか?

痛っ
いやだからどうして大体のことが力付くなんですかね
どうせ無理やり行かされることになるんだから引っ張らなくても行きますよ
引っ張られた分だけ損した気分だ
というか、水中でどれだけ息を止めるつもりなんですか
肺活量の鬼か
人を気絶させようとするな
魔術で薄い膜を張ってなんとかします
既にだいぶ疲れているんだが??

おとなしくしてくれてる間は息もつけるな……
とはいえクラゲが近付き過ぎないよう魔術で弾いて

どうやらそのようですね
先に進みましょう



「わーっ! かわいい! イルカですよー!」
 三咲・織愛(綾綴・f01585)は思わず歓声を上げた。ヨハン・グレイン(闇揺・f05367)は素知らぬ顔を、している!
「ヨハンくん、見てください。かわいいでしょー!」
 ぐき。
 強制的に首を曲げられて、ヨハンは大きく息を吸い、そして止める。そうすると視界にはしっかりイルカさんのつぶらな瞳が入ってくるのであった。
「はぁ……そうですね、可愛いですね。…………おとなしくしていれば」
 知ってる。こいつら意外と強引だし乱暴なんだぜ。
 と。そこまでは口にしてはいないけれどもおおよそそういう目で見ていたと思う。

 そういうわけで、二人は波止場に佇んでいるのであった。あと一歩、ぴょんと飛び込めば水の中、海の中である。ついでにイルカさんたちも寄ってきていて、
 織愛はうっきうきで用意していた網を掲げる。
「海の中の遺跡、楽しみですね」
「楽しみですか。気楽で……え」
 いいですね。という言葉の前に、ものっそ素の呟きがヨハンから漏れた。
 何なのだろう。そのでっかい投擲網は。
 その中にいっぱい詰まっているものは。
 いや、目で見たら理解できるのはできるのであるが、理解することを脳が拒否した、というかなんというか。
 そんなヨハンの表情を見て察したのか、織愛が胸を張った。
「すごいでしょう!!」
「いや」
 すごいって。
 ……すごいって。
「連れていってもらうためにも、それー! たくさん買ってきたお魚を投擲しますっ!」
 何かヨハンが突っ込む前に、織愛が動く。ばさーっとその網を海の中に投げ入れると、一気に解放される魚たち。
 ざざざざざ! とものすごい勢いで食いしん坊イルカたちが近寄ってきて、おいしそうに食事をしているのを振り振り振り。と織愛は網を振って魚を解放した後、それを引き上げながら満足げに見ていた。
「まるで熟練の漁師の投網のような……、いくらなんでも魚を買い過ぎじゃないですか?」
 そして唖然と見ていた方のヨハンは、思わずそう所感を述べる。すると織愛は別に褒めてもいないのに大いに胸を張って、
「いっぱいあったほうが、いいにきまってますから!」
 いわゆる大は小を兼ねる、という奴だろうか。ちょっと違うと、思うけれど。
「これで連れていってくれますよね?」
「……まあ、やる気は満々のようですね……」
 ね、と、ご機嫌で水面を覗き込む織愛に、うんざりしたようにヨハンは返す。だったら、と、キラキラした目で織愛はがしり、とヨハンの腕をつかんだ。
「よかったよかったです! それでは、れっつごー!」
「!?」
 だぼん!
 そうして織愛はヨハンの腕をつかむなり、海の中に飛び込んだ。
「は!? いや……」
 ざっばーーーーーん。と、上がる水しぶき。
 水面が大きく揺れて、はしゃぐようにいる形がぐるりと回る。
「痛……。いやだからどうして大体のことが力付くなんですかね」
 ぺい、と水の中その腕を振り払って、ヨハンは半眼で織愛をにらみつける。対する織愛はきょとんとしたもので、
「だってこうしないと一緒に来てくれないじゃないですか」
「どうせ無理やり行かされることになるんだから引っ張らなくても行きますよ」
 だってもはやもう、あきらめているのだ。
 あきらめているというのに、理不尽この上ない仕打ちだ。
「ええ、そうだったんですか? それなら先に、言っておいてくださいよ~」
「なんでそんなこと先にいわなきゃいけないんですか。……まったく。引っ張られた分だけ損した気分だ」
 態々前もって言うのもおかしな話である。と。真顔で織愛をにらみつけるヨハンに、てへへ。と織愛は片目を瞑って笑ってごまかす。
 その程度でごまかされるヨハンではなかったが、何を言っても無駄であることも知っていた。ため息交じりにイルカにつかまると、
「あ、私はがんばって息を止められますけど、ヨハンくんも出来ます?」
 なんて衝撃的な発言を、織愛はした。
「……というか、水中でどれだけ息を止めるつもりなんですか」
 もはや探索をそれですませるつもりだったのか。肺活量の鬼か。と。織愛を見る目がさらに厳しくなる……が。彼女のほうはこれまた素知らぬ顔で、
「大丈夫ですよ。出来なかったら気絶させて……」
「人を気絶させようとするな。そもそも気絶しても呼吸はしています」
 何を勘違いしたのか、素振りをする織愛にヨハンは思わず突っ込んだ。突っ込んだら疲れるとわかっていて突っ込まざるを得なかった。
 ため息をついて、ヨハンは薄い膜を魔術で作り出す。
「ほら、これで空気が手に入りました」
 それで二人の頭を追おうと、ぱちりと織愛は瞬きをして、ざぶん、と海の中に頭の上まで突っ込んだ。
「わぁ、すごい! 息を止めなくても行けますね! これだと格段に探索が楽になりますし、疲れずに済みそうです!!」
「既にだいぶ疲れているんだが??」
 ヨハンの突込みも、織愛は聞いちゃいねえ。それじゃあ早速。と、織愛はイルカさんの背を撫でた。
「出発しましょう! 爆速で突入しますよー!」
「通常の速度でお願いします」
 ざぁぁぁぁ、と走り出すイルカに二人、掴まって。
 そうして、楽しい楽しい(?)遺跡探索が始まった。

「ふわ……」
 ゆらゆら。ふわふわ。ただようイルカたちの間を二人は抜けていく。
 まばゆい光は昼間のようで。そして昼間ではない不思議で美しい世界である。
 揺らめく輝きは像を不規則に照らし出し、それがまた幻想的で美しく。
 ぽかんと口を開けて進む織愛に、
「おとなしくしてくれてる間は息もつけるな……」
 クラゲを魔術ではじきながらも、ヨハンは肩をすくめるのであった。
「あ」
 そんな時、織愛が声を上げる。ヨハンが視線を向けると、
「ねぇ、ヨハンくん。これって財宝でしょうか?」
 青く何かが輝いているのが見えた。
 どこか人工的なその光に、
「どうやらそのようですね。先に進みましょう」
 ヨハンが手ぶりでイルカに示すと、イルカが方向転換する。
「はいっ。光の先に、いざ。進んでみましょ!」
 その様子に嬉しそうに織愛も声を上げて、即座に後に続いた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
とびきり美味しい魚を運賃に
イルカに掴まって
水底に眠る遺跡へ

時折
水先案内を労って撫で乍ら
海中の景色を存分に楽しもう
壁面に絵などもあれば
永い歴史や物語を読み解けるかしらと瞳を輝かせる

瞬く海月のひかりは星屑めいて
宇宙を遊泳する気分
海月を飲み込んだイルカも
発光して見えるのだろうか

近寄って来た海月は
扇状に広げた符をそよがせ
水流を変えて方向転換

其れでも
遊んで欲しそうな悪戯っ子の海月が居れば
イルカさんとのスピード勝負!
びゅびゅんと高速で振り切って貰いましょうか

爽快さにふくふく肩を揺らしたところで
青く澄んだ石のひかりを
遺跡の石組の隙間、蔓延る水草の間に発見

まるで植物の種を採取したよう
手の中の宝箱を大切に一撫で



 遺跡の床は埃の代わりにうっすらと苔のようなものが敷き詰められていて、
 その上を手のひらサイズのダンゴムシや真っ赤なとげとげの付いたカニなどが移動している。
 時刻は夜だが、クラゲの光で変わらず明るいので、夜中でも活発な生き物が多そうで、
(……これは、これは)
 イルカにつかまったまま、都槻・綾(糸遊・f01786)はほう、と、感心したように一つ頷くのであった。空気があったら、感嘆の声を漏らしていたことは間違いない。
 とびきり美味しい魚を運賃に、道案内を買って出たイルカさんはといえば、「どう? すごいでしょう?」とでも言いたげに得意げに綾のほうを見ている。いったい何に対してすごいでしょう? と言っているのかは今ひとつわからないが、どや顔しているイルカというのもなかなか珍しい。
(ええ。もちろんすごいですよ。それにこれは……)
 ピラミッド内部。ぐるぐると回るようにある階段。その壁面にはいろいろな色が塗られていたり、絵が描かれたりしていた。
 ほんの少し階層や位置が違うだけで、がらりとその表情を変える絵は、どうしてこんなに統一感がないのだろう。と綾は首を傾げていたのだけれども、
(様々な遺跡の壁を……持ってきた……? あるいは書き写しているのですか……)
 個々の主はトレジャーハンターだったらしいから、各地で潜った遺跡の壁画などを参考にこの壁を作った可能性は高い。
 そう思うと、綾の目はさらに輝くのである。
(……ああ。あなた。そこのところをゆっくり。もう少しゆっくりで)
 それぞれが永い歴史や物語を背負っている壁面。その一つ一つを読み解けるかしらと、綾は瞳を輝かせる。普通、資料であるならば古い順番、もしくは地方順などに並んでいたりもするのだろうが、この壁面の絵画はかなり東西南北、時代背景もごちゃ混ぜに描かれている。
(解けるものなら解いてみろ、と、言われているような気がしますね……)
 おもしろい。と。
 ひそかに心に火を灯す綾に、最初は得意げだったイルカも、「いつまでここ見てるのかなー……」って気配を徐々に醸し出し始めるので、あった。

(ああ。失礼。すっかり当初の目的を忘れるところでした)
 そうして綾が顔を上げたのは、結構な時間がたってからであった。ずいぶん動かなかったから、安全だと思われたのか。ふわふわ、ふわふわと。クラゲたちが綾の周囲にも漂い始めている。
(ええ。行きましょう。お好きなだけ、食事をなさってください)
 イルカの背を撫でると、イルカは待ってましたとばかりに動き出す。
 突然動き出したイルカに、ふわっとクラゲたちが周囲に散る。そしてそれを逃さずばくり、と数匹まとめてクラゲを口に入れるイルカに、綾はその背を優しく撫でた。
(あの、星屑のような海月を飲み込んだなら、あなたも発光して見えるのだろうか、と、思ったのだけれども)
 どや顔のイルカはピカピカしない。灰色というか鈍色というか鼠色というか。そんなお腹が光ったら可愛かったのに。なんて、綾の心の声を感じたのであろうか。イルカはどういうわけか綾のほうをちらりと顧みて、ふふん。と笑ったようであった。
(おや……)
 その表情を、綾は不思議そうな面持ちで見返す。同時にふわふわと漂って近寄ってきたクラゲたちを、扇状に広げた符でそより、と流して追い払った綾であった……が、
 ぐんっ。とその動きに合わせるようにイルカが急発進。
 綾が追い払ったクラゲを瞬く間にばくり、と口の中へ飲み込んだ。
(……)
 そうして振り返って綾を見る。このどや顔。
(イルカさんとのスピード勝負! ……と、いうわけですね)
 成程、と綾は再び符を展開させる。イルカたちから逃れようと、ふらふらふら~っと泳ぎ出すクラゲたちの背中を押すようにして、その動きを加速させた。
 案の定、追いかけるようにイルカの動きも加速する。合わせて綾もクラゲたちを加速させる。
 水を切る感触が心地よく。声をあげたいけれども上げられないのが楽しくももどかしい。
 爽快さにふくふく肩を揺らしたところで。綾はふと海底に目を落として……、
(……!)
 止まってください、という前にクラゲを急停車。
 ばくん、とそのまま丸のみにするイルカであったが、若干不満そうに綾を見ている。
(いえ、すみません。本来の目的を忘れるところでした)
 遺跡の石組の隙間、蔓延る水草の間に青く澄んだ石のひかりを見つけ。綾が指先で示すとしぶしぶ……とでもいうように、イルカはそちらへ向かって泳ぎ出す。
 水草の間に忘れ去られたような小さな箱には、青い石がはまっていて、
 まるで植物の種を採取するかのように、綾はそれを持ち上げた。手の中の宝箱を大切に一撫でする。
(いえ、これは……)
 間違いなく、種だろう。
 次の冒険の、種なのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベル・ルヴェール
これが海!
これがイルカ!

見ているか兄弟
僕は今、海にいる!

海の中では呼吸が出来ないって話だったな。
報酬を買うついでに酸素ボンベを借りてきた。

おおっと、待て待て今すぐに捕まる。
でさ、これで呼吸も出来――…。
すげー……これが海。

この光る奴らはイルカの仲間か?
砂の上には柔らかい奴等が居ないからさ、海の中の柔らかい奴らに驚くな。
砂漠の上を飛ぶ感覚とは全然違う。
でも海の中を泳ぐ感覚は空を飛んでいるような

イルカ!もっと速く!
ドラゴンよりも速く、駱駝よりも心地よく!
光る奴等をかいくぐれ!

遺跡まであっという間に辿り着けそうだ。


ジャック・スペード
以前は沈むのが怖くて、海は苦手だったが
いまは少し平気に成った
沈んでも壊れる訳じゃ無いからな、多分

イルカが連れて行ってくれるなら頼もしい
宜しくと魚を一匹差し出して
……俺は重いが、大丈夫だろうか
水中でジェットモードを展開して
少しはイルカの負担を減らせたらと

寄って来る海月は
ブレイドを振り回して追い払いつつ
遺跡のなかを探検してみよう

呼吸の必要ない機械の身だ
水中で確り目を凝らして
青い光を追ったり、宝箱を探したい

この遺跡には一体
どんな財宝が眠っているのだろうか
指輪とかペンダントとか
そういうのが出て来ると良い

しかしイルカは本当に賢いな
この仕事が終わったら、礼にまた魚を奢ろう
海月で腹がいっぱいかも知れないがな



「これが……海!! これがイルカ!」
 ベル・ルヴェール(灼熱の衣・f18504)が両手を天に掲げて、大きく声を上げた。
 砂漠に暮らす彼にとって、果てのない水の塊というのは兎角神秘的だし、美しいし、実際本音として全部持って帰りたいし、そんな、喜びに満ちたものであった。ゆえにベルは大きく声を上げて、叫ぶ。
「見ているか兄弟。僕は今、海にいる!!」
 きゅい? と。
 海に向かって声を上げるベルを、なんだか楽しそうなことをしている! と、わくわくした目でイルカさんが見つめていた。
「……」
 そしャック・スペード(J♠️・f16475)はその傍らで黙々と、潜水の準備を始めていた。
「あ、ごめん。うるさかったか?」
「いや」
 屈託なく笑顔を向けるベルの隣で、ジャックは言葉少なく己のマシンの調整をしている。この体に海水は耐えられるのか。水中の圧力は……などと考えているところで、
「なあ、それちょっと触っていいか?」
「ああ」
 全身機械の体も、やっぱり砂漠ではそうお目にはかかれない。砂漠に行けば目玉焼きでも焼けそうだなあ。なんて冗談めかして言うベルに、
「実は、焼ける」
「!」
 そんな冗談か本当かわからない会話を二人はしながらも、準備をしているのであった。
「海の中では呼吸が出来ないって話だったな。ってわけで僕はこれを借りてきた」
「つける方向が反対だ。直すからそのまま……」
「え。どこが? これを……こうか!」
「いや、そのまま、動くな」
 そんなそそっかしい一幕もあったりして。
 そしてついに……、

「勿論酸素ボンベはおまけだって。ちゃんと報酬も買ってきたからさ」
「ああ。勿論こちらにも用意している。宜しく。……俺は重いが、大丈夫だろうか」
 はよはよ、とせっつくイルカたち。波止場から海へと飛び込んで、肩のあたりまで水につかれば、即座にイルカたちも寄ってくる。
 手にしている魚が見えるのか。ぐいぐいと頭を押し付けてくるイルカにベルは笑う。
「ほらほら、そんなに焦らなくても、大丈夫だって――って、そっち、そっちこそ大丈夫なのか?」
「問題ない。以前は沈むのが怖くて、海は苦手だったが、いまは少し平気に成った。沈んでも壊れる訳じゃ無いからな、多分」
 ずもももも、と、重量があるのでイルカに魚をあげながら自分自身は海の中に沈んでいくジャック。
 そ、そうかー。なんて、ベルが頷こうとした……ところで、
「! おおっと、待て待て……!」
 ベルの魚を美味しくいただいたイルカが、すでに走り出そうとしていた。慌ててベルがその背びれを掴む。
「でさ、これで呼吸も出来――……」
 ぶくぶくぶくぶくぶく。
 そのままものすごい勢いで沈んでいくイルカ跳べる。
 ジャックの魚を貰ったイルカが、ちら、とジャックを見る。追いかけますか、と聞いているようで、ジャックも頷いた。
「ああ。水の中は不案内だ。連れて行ってくれるなら頼もしい」
 ジェットモードを展開して重量の負担を減らしながらジャックが言うと、イルカも頷いて走りだした。

 一方、海に沈んでいったベルが目を開けてみた景色は……、
「すげー……これが海」
 眼下に広がるピラミッド遺跡は、海と言われれば少々違和感があるかもしれない。むしろ砂漠の民のベルにとっては、建造物の模様や魔除け代わりに置かれている石像は、見覚えのあるものかもしれなかった。
 けれども景色はそこからまるで変ってくる。建物の表面についた緑のコケ。クラゲの輝きを受けてきらきら輝くサンゴたち。
 そこのほうには、怪しげな蟹のような生き物がうろついていて、ちょうどサソリのような生き物と戦っているところであった。
 まばゆい灯りに照らされて繰り広げられるその世界は、彼が今まで見たこともないような景色だったのであろう。
「この光る奴らはイルカの仲間か?」
 ふよふよ漂うクラゲの姿に、ベルはそっと指先を伸ばす。伸ばした……ところで、
 ばくん。
「……! 食った!」
 イルカにひと飲みされた。
「仲間じゃないのか……? でも」
 きらきらして可愛いけど。と、恐る恐る。別のクラゲに手を伸ばしたところで、
「気をつけろ。痺れさせてくるぞ」
 ジャックが金色の柄よりブレイドを抜き放ち、一閃させてそれを真っ二つにする。イルカに案内されてようやく追いついたのだ。
「痺れる? サソリの毒みたいなやつなのか?」
「いや、どうやら毒ではないらしい」
 切り口から、そうジャックは判断する。多分電気ショック的な何かだ。呼吸の必要がない機械の目で、確かめるようにそう言った。
「へえ……。砂の上には柔らかい奴等が居ないからさ、海の中の柔らかい奴らに驚くな。それに、毒じゃないのにしびれるっていうのも……」
 すごいな。と、いうよりも早く。
 ひゅん、とベルの身体が移動した。ふたたびクラゲを求めているかが走り出したのだ。
「……っ」
 その勢い。水の抵抗。空気がぶわっ。と浮上していく。そのイメージ。砂漠の上を飛ぶ感覚とは全然違う。けれども海の中を泳ぐ感覚は空を飛んでいるようなその景色。
 ピラミッドの上を自在に行く流れ星だ。
 流れる髪の毛の感触が、空とは違ってまた楽しい。
「イルカ! もっと速く! ドラゴンよりも速く、駱駝よりも心地よく! 光る奴等をかいくぐれ!」
 思わずはしゃいだ言葉が出る。ヤドリガミである彼に、きっと呼吸なんて必要ない。早く、もっと早く。深く、もっと深く。海底遺跡のピラミッドの中まで。見知らぬ世界の見慣れた景色まで。
 あっという間にたどり着くと、ジャックが落ち着き払ってふ、と周囲を見回した。
「この遺跡には一体、どんな財宝が眠っているのだろうか……」
「財宝か……。何となく宝物が置いてそうな場所なら……」
 位置的にもっと奥。なんて。ここからはさすがに突っ走らずにベルもイルカとともに進む。
「しかし、イルカは本当に賢いな……」
 この仕事が終わったら、礼にまた魚を奢ろう。それとも海月で腹がいっぱいだろうか……。と、ジャックが考えながら二人と二匹で通路を泳ぐと、
「……おや」
 隠し扉の向こう側に、ちらりと光る青い輝きが目に入った。
「あれが……?」
 そうだろうか、と近寄ると。確かに青い宝箱。はめられた宝石がきらりと輝いている。
「これが例の、次への鍵か……」
「ああ。それに……お宝だな」
 ベルがにやりと笑って宝箱の下を指さした。
 その下に隠されるように、もう一つ箱がある。中を開けてみると様々な宝石がはめられたブローチ、ネックレス、金貨など……。俗にいう「箱いっぱいの宝石箱」が隠されていたのだ。
 ジャックは七色の花びらを持つ花のネックレスをつまみ上げると、ベルはクラゲの形をした人形のようなものを拾い上げる。ほかにもいろいろあるけれども、それはそれで山分けするとして、
「かすかだが……光っているな」
「ああ……。もちろん、行くだろう?」
 ここからは月の光も星の光も遠すぎる。だが、かろうじてそれをかき集めて、青い石は道を指し示していた。会場に出ればもっと鮮やかにわかるだろうが、これでも不自由はしないだろう。
「いこう、イルカ! この先へ、もっともっと早く!」
「ああ。もうしばらく、頼んだぞ」
 そうして二人も、先を目指す。なにがあるかわからない、宝の道を……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

コノハ・ライゼ
【三空】
短パン水着にラッシュガードとラフな格好

あらぁ、二人とも(違う意味で)可愛らしいコト
プリンセスにお供の狸……とか思いつ
やる気満々のイルカちゃんらや反対に眉間に皺寄せるたぬちゃんに笑い

遺跡で宝箱を探したいンだけど心当たりないカシラねぇ、ナンて言いつつ
割とイルカちゃんにお任せで気分は水中遊泳
海の生き物に案内されて……ナンてホントお伽噺のよう

クラゲの夜空には思わず感嘆の声
ケドそんなクラゲも美味しそうに食べちゃうイルカちゃんにはなんだか親近感よねぇ
ミンナが張り切ってるしオレする事ない気もするケド……
もしクラゲが来たらさくっと柘榴で一刺し、イルカちゃんにあげるわネ
あ、今アッチに青いの見えなかった?


火狸・さつま
【三空】

濡れても良い恰好と聞いて
着替え不要な狐姿
狐鳴きのみ人語無理

きゅ!
ジュジュ、可愛い!と尻尾振りたくり
メボちゃんにもおててふりふりっ
コノ、綺麗!おみみぴこぴこっ

きゅっヤ!
よろしく!とイルカさんへご挨拶
動物と話すのはお手の物!
意気揚々とイルカさんにしっかり抱き付き浸水
漂う毛並ゆぅらゆら…水から上がれば?
ぎゅ…(眉間に皺)
ぺっしょり
勢いよくぶるんぶるん!
濡れても大丈夫く無かた…!
気取り直し、コノの後ろ続いて!れっつらご!

とても幻想的な水中探索
クラゲさんも綺麗可愛い、けど…
麻痺させられちゃ、困る、から
きゅ!!
近くに来たら雷属性纏わせた【しっぽあたっく】でぺちんぺちん!

きゅー!(宝箱ー?わぁい!)


ジュジュ・ブランロジエ
【三空】
コノさん、さつまさんと
アドリブ歓迎
『』は裏声でメボンゴ(絡繰り人形)の台詞

ひらひらスカート付きの白い水着
透明の防水リュックにメボンゴを入れ、鞘入りナイフを腿に括りつけ準備万端!
メボンゴ操れないのは残念だけど

海中遺跡の冒険なんてわくわくしちゃうね!
イルカさん、可愛い~!
『イルカに乗ったたぬちゃも可愛い~』
うんうん、ぺしょっとしてるのも可愛いね

進行方向はコノさんに合わせる
やっぱリーダーは店長のコノさんだよね!
『ゴーゴー!コノちゃ~!』

光るくらげ綺麗だね
海の中に星空があるみたい
でも刺されと困るから、ごめんね
風属性付与した白薔薇舞刃で刻む

えっ、宝箱見つけた?
『流石コノちゃ~!』
行ってみよう!



「ふ……。ついにこの時が、来ちゃったんだね」
 ジュジュ・ブランロジエ(白薔薇の人形遣い・f01079)が何やら怪しげなポーズをとっていた。
 いつものことなので、コノハ・ライゼ(空々・f03130)は特にあわてず騒がずそうなの? なんて言って首を傾げて話に乗ると、ふっふっふ。とジュジュは更にご機嫌そうに、
「そうなの!! 夏解禁! ついに私たちも、メボンゴも、水中水着デビュー!! なんだから!!!」
 ほれほれ。と、ジュジュはご機嫌でひらひらスカート付きの白い水着を示す。さらには透明の防水リュックにメボンゴを入れ、鞘入りナイフを腿に括りつけ準備万端! である。これだとメボンゴを操ることはできないが、いつものごとく副音声だってちゃんと使用する予定だ。
「きゅ!!」
 テンション高いジュジュに合わせるようにポーズをとったのは火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)だ。物凄くやる気でジュジュに合わせてポーズをとっているが、実のところ彼は人型ではなく狐姿である。濡れてもいい格好と聞いて即座に狐になったさつまであった。
「きゅ!」
「あ。わかる~?」
 ジュジュ、可愛い! と尻尾を振るさつま。それに照れたように笑うジュジュ。なんと、会話が成立している。
 そのままさつまはメボンゴに手を振ったり、コノハを見て耳を寄せたりするので、なんとなく言いたいことがわかって、も微笑んで頷いた。ちなみにコノハは短パン水着にラッシュガードとラフな格好である。
「ほんと、二人とも可愛らしいコト」
 やり取りが微笑ましい。コノハがそう声をかけると、二人が同時にコノハのほうを振り返ってブイサインをするので、コノハは思わず吹き出すのであった。プリンセスにお供の狸……とか、思いつつもかろうじてとどまったのは秘密である。
「それじゃ、いざ、海の世界へ、突入!」
『ごーごー!』
 きっちりメボンゴの台詞とともに、ジュジュは水の中に飛び込んだ。
「きゅ!」
 同時にさつまも水の中へと突入する。
 そりゃもう派手に飛び込んだものだから、ざばーん! と水しぶき。
 それを見送って、コノハはそっと水の中に入るのであった。何だか微笑ましい彼らを見守る役目がすっかり板についてしまっている。
 そして、その水面の揺れを察知したのか、即座にイルカたちもジュジュたちのところへと泳いでくるのであった。
「イルカさん、可愛い~!」
 ジュジュが思わず歓声を上げる。そのまま、
「きゅっヤ!」
 まずはさつまがよろしく! とイルカさんへご挨拶。
 動物と話すことは得意なので、何かとそのまま会話を続ける。
 合間にコノハがさっと魚をイルカたちに手渡していく。……と、思ったら、
「きゅっヤ!?」
 ざばん。と、波が揺れてイルカに抱き着いていたさつまのてっぺんからつま先まで、きっちり海水が降り注いだ。
「ぎゅ……」
 波が収まると、なんだか全身に毛並みが張り付いて気持ち悪い。
「きゅ、きゅ……」
 眉間に皺を寄せながら、さつまは勢いよくプルプルと体を振るって水滴を落とす。濡れても大丈夫く無かた……! とでも言いたげな薩摩の様子に、
「ふふ、ぺしょっとしてるさつまさん、可愛いね」
『イルカに乗ったたぬちゃも可愛い~』
 ジュジュとメボンゴが微笑ましげにうん、うん、なんて、頷いている。
「さあ、二人とも、行きましょ。イルカちゃんもやる気満々よ?」
「はーい! 海中遺跡の冒険なんてわくわくしちゃうね!」
「きゅ!」
 ほらほら、と軽く促すようにコノハが声を上げると、元気の良い返事が続く。が、
「やっぱリーダーは店長のコノさんだよね!」
『ゴーゴー!コノちゃ~!』
「きゅきゅ!」
 れっつらご! と言いたげなさつまの声と同時に、イルカたちは勢いよく泳ぎ出すのであった。
「え。そうだったの??」
 いつの間にそんなことに。なんて言葉は波の音に溶けていく。そうなの! と、何やら楽しげに主張するジュジュとコノハに、
「……遺跡で宝箱を探したいンだけど心当たりないカシラねぇ」
 なんて、コノハは自分がしがみついたイルカさんに、そっと語り掛けるのであった。
 イルカは任せろ、と笑った気がした。
 任せろと笑ったんだと、コノハは思うことにして、
「じゃ、二人ともついておいでおいで~!」
 行く先はイルカたちに任せよう。なんて。呑気な顔してコノハは笑うのであった。

 水中の世界には不思議な生き物も。不思議な景色も。当たり前のように転がっていて。
「海の生き物に案内されて……ナンてホントお伽噺のよう」
 コノハは感嘆の声を上げる。イルカたちは慣れたもので、水中に沈むピラミッドのほうへとどんどんどんどん深度を下げていく。
 灯りには周囲に無数に漂うクラゲたち。発行するそれはふわふわと独特な動作と軌道で、意味もなくさまよっているように見えた。
「綺麗だね。海の中に星空があるみたい」
 ふわ、と、ジュジュが思わず、とでもいう風に素の声を上げる。それから、
『数えきれない!』
 きっちりメボンゴがそう喋ったりもして。コノハは頷いて周囲を見回した。
 イルカが通ると、さすがに天敵を察知してか、さ……。とクラゲたちは道を開けるように周囲に分かれる。
 しかしそれでも逃げ遅れたクラゲたちは、イルカにばくり、とだいたいが丸のみにされている。
「星空みたいだけど星空じゃない……。こんなに綺麗なクラゲも美味しそうに食べちゃうイルカちゃんにはなんだか親近感よねぇ」
 生き物なのだ、と、なんだかわかる気がして。
 どれだけ可愛くても、綺麗でも、そういう生態系の中にいるということが、なんだか妙に感慨深い。
「うん。私だって、どんなにかわいくてもおいしいなら食べちゃうかも……」
『シビシビが案外いい感じかも!』
「え」
「きゅ」
 あんまりおいしそうに食べるから。思わずそう言ったジュジュに、コノハとさつまが同時に突っ込みの視線を投げかける。
「あ、し、しないよ!? 刺されちゃうと困るから、しないけど!!」
 ほ、ほら、と。
 慌てた様子で近寄ってきたクラゲを、ジュジュは風属性を付与した白薔薇の花びらで刻んでいく。
 ごめんね、と言いながらも容赦はしない。もちろん、こんなところで痺れたら危険なのはわかっているからだ。
「きゅ!!」
 さつまも近寄ってきたクラゲたちに、プルプルと首を横に振る。水中にずっといるから、毛並みがきれいに泳ぐのに若干安心して、
「(クラゲさんも綺麗可愛い、けど……。麻痺させられちゃ、困る、から)きゅ、きゅ、きゅ!」
 そのまま尻尾に雷属性纏わせぴょん、と空中を飛ぶように泳いださつまは全力尻尾でぺちぺちとクラゲを叩いて倒していく。
 すぅ、と。落ちていくクラゲたち。あれもイルカに食べられるのかなあ。なんてコノハが見送っていると、
「……」
「……」
『てんてんてん』
 なんか沈黙を表す表現で三人がコノハを見ていた。
 コノハのほうにふわふわと近づいてくる、一匹のクラゲ。
「ミンナが張り切ってるしオレする事ない気もするケド……」
 なんか期待されている気がする。
「いいケド。いくら見ても何にも出ないわヨ」
 さっくり。愛用のナイフ柘榴で突き刺して、そのままイルカちゃんの進行方向へと流すと。ばくりとイルカはそれも丸のみにするのであった。

「あ、今アッチに青いの見えなかった?」
 そして。
 海底を探索すること柴氏。怪しげな像の絵の書かれた遺跡の隅に置かれた箱にコノハが指をさす。
「えっ、宝箱見つけた?」
「きゅー!(宝箱ー?わぁい!)」
『流石コノちゃ~!』
「もう。三人とも、さっきから、褒めても何にも出ないわヨ」
 はしゃぐ二人にコノハが苦笑する。苦笑しながらも、イルカの背を軽くたたいてそちらに行くようにお願いした。
「行ってみよう!」
「きゅきゅー!」
 ジュジュとさつまもやる気満々でそちらへと向かっていく。
 青い輝きは……もうすぐ、そこだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

榎木・葵桜
エリシャさん(f03249)と

わ、イルカさんだよ、エリシャさん!(目を輝かせ)
抱えてもらって一緒に潜るとか、もうなんかすごく楽しそうだよね?

イルカさん用のお魚は港町の人たちのおすすめ選ぶよ
水濡れてもいい服も調達
私はワンピースドレスみたいな軽そうなのヤツにしよっかな♪

大丈夫、怖いと思うのは最初だけだからっ
イルカさんも居るしだいじょーぶ!

さすがエリシャさん…!
(UCにおお、と歓声)

クラゲの光、夜の海だと宝石みたいにキラキラしてるね
空の青も綺麗だけど夜の海の深い青もすごくいい
やっぱり私、この世界の自然、大好きだな
うん、冒険って感じ!
(エリシャさんに笑み返せば指さし)
あの光の先へ、お願い、イルカさん!


エリシャ・パルティエル
葵桜ちゃん(f06218)と

まあ、イルカさん…つぶらな瞳がとっても可愛いわね
ええ、ぜひ遺跡までエスコートしてもらいましょう

イルカさんが気に入るお魚はどれかしらね
海の中に潜るなら服も調達しないとね
あたしは肌の露出が少ないラッシュガード風のがいいかな

海に潜るのは初めてなの…!
う、うん頑張る
きっとなんとかなるわよね
近づいてくるクラゲにはUC使用

海の中なのに星空の中にいるみたい…不思議だけど素敵ね

イルカさんに案内してもらって遺跡を探索
宝箱を見つけたら葵桜ちゃんに合図
月と星の光を受けて指し示される道筋に感動
夜の海底遺跡 宝物に不思議な光…これぞ冒険よね!
葵桜ちゃんに微笑みかけながら光の先を目指すわ



「わ、イルカさんだよ、エリシャさん!」
 目を輝かせて波止場の端の端から身を乗り出して覗き込む榎木・葵桜(桜舞・f06218)に、エリシャ・パルティエル(暁の星・f03249)は微笑ましそうに笑う。
「まあ、イルカさん……つぶらな瞳がとっても可愛いわね」
 覗き込むときゅい、となく。何か言ってる。なんて、さらに葵桜が身を乗り出すので、
「そんなに身を乗り出したら、落ちちゃうわよ」
 とはいえこれから飛び込むのだから、落ちてもいいのだろうか?
 そんな感じで首を傾げていたエリシャであった。しかしながらそれを聞いているのかいないのか、がばちょ、と葵桜が顔を上げて、
「抱えてもらって一緒に潜るとか、もうなんかすごく楽しそうだよね?」
 ね!! ときらっきらした目で言ってくるので、エリシャもその笑顔のままで頷いた。
「ええ、ぜひ遺跡までエスコートしてもらいましょう」
「うん!!」
 そうして葵桜は身を起こす。ふふふんふんとばかりに用意していた魚を取り出した。
「イルカさん用のお魚は港町の人たちのおすすめだよ。間違いないね」
「あら。イルカさんが気に入るお魚はどんなお魚?」
「んーっとね。どっちかっていうと……」
 ふときいたエリシャに、葵桜が一生懸命解説している。……その、次の瞬間、
「きゃっ」
「わわっ!」
 ばしゃん!
 イルカが水面を叩いて、ぴゅーっと水が二人の体に降り注ぐ。
 どうやら魚をおねだりされているようだ。二人は顔を見合わせる。
「あはは♪ ごめんね~」
「ふふ、待ってくれてるみたいね。急ぎましょう」
 濡れたけれども、二人は特に気にしてはいない。というのも、
『海の中に潜るなら服も調達しないとね』
 ということで、エリシャはすでに肌の露出が少ないラッシュガード風の衣装を。
『私はワンピースドレスみたいな軽そうなのヤツにしよっかな♪』
 葵桜はかわいらしい水着を。きちんと用意していたからである。
「はーい。お待たせお待たせ。今行くよー♪」
 はよせえ。と、言ってるかどうかはともかくとして。水面からじーっとこちらを見つめてくるイルカさんに笑いながらも、葵桜は躊躇いなく海の中に飛び込む。レンガ造りの波止場の下は、そこそこ深い海になっているので飛び込んでも大丈夫だ。
「はーい。お魚だよ。私とエリシャさんからの……」
 プレゼント! と。葵桜が言いかけて。あれ、と首を傾げる。ふと顔をあげると、
「海に潜るのは初めてなの……!」
 思わず。波止場の上から微妙な顔をしているエリシャと目が合った。エリシャの言葉に、なるほど、と葵桜は頷いて、
「大丈夫、怖いと思うのは最初だけだからっ。イルカさんも居るしだいじょーぶ!」
 はい、と、手を伸ばす。
 任せろ、とばかりに、イルカさんもきゅ、とないた。そのつぶらな瞳が頼もしい……ような、気が、しないでも、ない。
「う、うん頑張る……。きっとなんとかなるわよね」
 とはいえ。潜らなければどうにもならないのもまた、事実である。
 エリシャだってどれはわかっている。だから若干不安そうな顔をしながらも、葵桜の言葉にこくりと頷いて、
 せいや! と水の中に飛び込んだ。
「エリシャさん、ほら、掴まって」
「そうね。……宜しくね?」
 きゅ! と頼もしい返答にうなずいてエリシャがしっかりその背びれを掴んだのを確認すると、
「じゃ、出発ー♪」
 葵桜の一声とともに、イルカたちはすぅ、と、走り出すのであった。

 イルカが進む。進む。進んだと思ったらざばん、と水の中に潜り込んでいく。躊躇いなく下へ、下へと進んでいくイルカに無意識のうちにエリシャは背びれを掴む手に力を込めたが、隣の葵桜が大丈夫! とばかりに親指を立てるので、ちょっと笑った。
 それから、葵桜は下のほうに向かって指をさす。エリシャはイルカからしがみついていた身体を離して、そっと下を覗き込むと……、
「クラゲの光、夜の海だと宝石みたいにキラキラしてるね」
 葵桜の言葉。眼下には巨大な遺跡群が広がっていて、あちらこちらに無数のクラゲが光を発して漂っていた。
「海の中なのに星空の中にいるみたい……。不思議だけど素敵ね」
 まるで星が漂っているようだ。もしかしたら、ひとの姿まで見えるのではないかと思えるほどにその光景は幻想的で。暗い暗い海の底向かって降りてきているはずなのに、まるで星をかき分けて天から舞い降りるかのような錯覚に陥る。
「空の青も綺麗だけど……、夜の海の深い青もすごくいい。やっぱり私、この世界の自然、大好きだな」
 しみじみと。感極まったように言う葵桜に、エリシャも微笑む。
「不思議な雄大さが、あるよね。……あっ」
 ふ、と。
 風もないのに何か風にでも吹かれたかのように、ふらふらとクラゲたちが二人の元へも漂ってくる。
 ぱくりぱくりとイルカが適宜丸のみにしているが、彼らは当たってきそうだったので、エリシャは右掌を翳した。その手にある星型の聖痕から聖なる光を放つと、それにあたったクラゲたちはふわん、と勢いを失って落ちていく。どうやらそのまま眠ってしまったのであろう。
「おお。さすがエリシャさん……!」
 葵桜がすごいすごい、と歓声を上げる。そんな葵桜にエリシャは何事か応えようとして、
「……あら」
 ふと。エリシャは首を傾げた。
「うん? なになに?」
 エリシャの動きに、イルカもエリシャの視線の方向をグイ、と向く。それでエリシャは左手でイルカに抱き着いたまま、
「あそこ、何か光ったような……。ほら」
「あ、ほんとだ……!」
 何だろう。細身の猫のような像がある。人の身長ほどある猫は賢そうに座っていて、その足元にちょこんと箱が一つ、置かれていた。箱のふたのあたりに、青い宝石がはまっている。
「これをもって、月と星の光にかざせばいいのね」
「うん、やってみよう……!」
 じ、と二人がいるかを見つめると、イルカも心得た、とばかりに浮上を開始する。今度はクラゲたちをかき分けて。
「まるで、宇宙船みたいだね!」
「言われてみれば……」
 月を目指して飛んでいく。海面まで浮上すれば、すかさず葵桜は持っていた箱を天にかざした。
「わ……!」
 はめられた青い石から美しい光がこぼれ出る。
 それはどういう原理か、まっすぐに伸びて何処かを指し示しているようであった。
「この調子だと……。また潜ることになるかもしれないわね」
「そうだね。でも……」
 感動したように光を眺めながらのエリシャの言葉に、ちらりと葵桜がエリシャを見る。エリシャは笑った。
「ええ。もう、水の底も平気よ」
 その言葉に、葵桜も顔を輝かせた。
「うん、良かった……!」
 そうして二人、再び光の先に目をやる。
「うん、冒険って感じ!」
 エリシャの言葉に葵桜も頷いて、光の先を指さした。
「あの光の先へ、お願い、イルカさん!」
 了解! とばかりに泳ぎ出すイルカたち。
 冒険はまだ、始まったばかりだ……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
イルカに乗って海底の遺跡巡り?
楽しそうじゃないか
潜水用具を二人分用意するよ

お駄賃の魚はソヨゴに選んでもらって
イルカ二頭に魚をあげて遺跡に向かおう

星空を見上げて
そうだネ
僕らの世界にはこんな星空はないもの
いやあるはずか
僕が夜に見たのは都会の光だったから

クラゲがソヨゴに触ろうとしたら触手で追い払うよ

まずは遺跡に向かい宝箱を探そう

真珠の装飾品を見つける
ソヨゴが身につけたら似合うんじゃないかしら?
珊瑚もあるかも
もう少し探してみようか

宝箱が二つ見つかったら海面に持っていき
ソヨゴと少し離れた位置で月と星の光にかざす
光が指し示す角度を電脳ゴーグルで計算すれば距離も割り出せるだろう

行先は決まった


城島・冬青
【橙翠】

魚の手土産を用意しイルカさんに話しかけます(動物と話す&コミュ力)
すみません
遺跡までお願いしまーす!

夜空は綺麗だしイルカは可愛いしとても素敵です
…この世界を守ることができて本当によかった
そうですね
私の家からも空の星はあまり見えません
でも地上の星も好きですよ
人の営みの証です
あ、クラゲは寄ってこないと思いますが万が一寄って来たら
UCのカラスくんで遠くへぽーい!

宝箱にはなにがありますかね?
あっ真珠だ!綺麗ですね
私に似合いますかね?えへへ…
アヤネさんには珊瑚が似合いそうです
珊瑚とかないかな、珊瑚!

アヤネさんが角度を計算している間はイルカくんとのんびり遊んで待ちます
次はどこが目的地でしょうね?



「イルカに乗って海底の遺跡巡り? 楽しそうじゃないか」
 ふ、と、潜水用具を二人分用意しながら、アヤネ・ラグランジェ(十二の結び目を解き放つ者・f00432)が海底探索に思いをはせる。何ともファンタジーで不思議な感じがする旅になりそうだなあ。と思っていたら……、
「すみません、遺跡までお願いしまーす!」
「……(なんかタクシー捕まえるみたいだ)」
 隣で城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)が魚を抱えて手を振っていたので、なんだかそんなことを思うのであった。因みに冬青は魚の選別からイルカへの交渉担当である。
「はい。……あ、いえ、特急でなくても大丈夫です! こちら先払いの魚です」
「(タクシーじゃなくて宅配便だったか……)ソヨゴ、ソヨゴ。こっちも準備できたよ」
「はい、こちらも準備、万端です!」
 きらっきらした目でイルカと会話をしていた冬青は、アヤネの言葉に振り返る。その表情に思わずアヤネも笑って。
「それじゃ、海の旅を始めようか」
 イルカ二頭に魚をあげて、二人、海の中へと飛び込んだ。

 潜る、潜る。潜っていく。
「綺麗ですね……」
「そうだネ」
 イルカに進路を預け、さらにしばし二人、背中を預けると、
 仰向けで。まるで眠るように海の中に落ちていく。そんな感触が二人を包む。
 星空に囲まれて、まるで眠っていくような……、
「夜空は綺麗だしイルカは可愛いしとても素敵です。……この世界を守ることができて本当によかった」
 けれども眠るのももったいないような、その景色。冬青がぽつんとそういうので、アヤネも小さく頷いた。
「そうだね。僕らの世界にはこんな星空はないもの……。守ることができてよかった」
 そこまで言って、ほんの少し。アヤネは考え込む。ちらりと視線を空から下へと戻すと、
「いやあるはずか……。僕が夜に見たのは都会の光だったから」
 眼下に広がるのは古い街並み。王の墓を模したピラミッドに、おそらくは新刊の詰所のようなもの、住居のようなもの。そこに無数のクラゲが入り込み、ピカピカと輝いている。
 まるで人が住んでいそうなその景色は、アヤネの見た都会の光と酷似していたかもしれない。
 何とも言えない表情をするアヤネに、ふふ。と、冬青は笑った。
「そうですね。私の家からも空の星はあまり見えません。でも……地上の星も好きですよ」
 人の営みの証です。と。冬青は笑う。
「なるほど。……どうして、ここの遺跡を作った人は、こんな風に人の営みを模したのかな。この技術があれば、なんだって作れただろうに」
 なんでわざわざ。なんて真面目に考えこむアヤネの横顔に、冬青は笑った。冬青には何となくわかる気がした。
「きっと、好きだったんでしょう。人の営みが」
「そんなものかなぁ……」
 若干釈然としないような顔をしているアヤネに、そんなものですよ。と、冬青はまた楽しそうに笑うのであった。

 ときおりふらついてくるクラゲさんたちを追い払いつつ、二人は遺跡の中へと潜る。
「ソヨゴ、ソヨゴ。これ、ソヨゴが身につけたら似合うんじゃないかしら?」
「あっ真珠だ! 綺麗ですね……って、アヤネさん。それ明らかにとっちゃだめっぽくないですか?」
 女神像の首にかかっている真珠のネックレスをアヤネが回収する。冬青は、警戒した!
「いや、遺跡のものは自由に持って帰っていいって町の人が言ってたよ?」
「そうじゃなくて明らかにそれ罠っぽ……ギャー! 目が、目が、動きましたよ、アヤネさん!!」
「いいじゃない。目ぐらい動けば。珊瑚もあるかも。もう少し探してみようか」
 そんな会話があったり。

「この髪飾りも、ソヨゴに似合うんじゃないかなあ」
「猫ですね。私に似合いますかね? えへへ……」
 翡翠の宝石がはまった猫の髪飾りを見つけたり。
「あ、でも私、アヤネさんに似合う珊瑚を探さないと! 珊瑚とかないかな、珊瑚!」
「ええ。ところでソヨゴ。この仮面ちょっと被ってみない……?」
「それ、明らか怪しいですよね!!」
 勿論冗談。なんて笑うアヤネを、本気なんじゃ……と冬青はちょっと呆れたり。
「あ……! 見てください。あの杖、珊瑚を丸々使った杖ですよ……!?」
「うーん。でも僕は杖は持たないからなあ」
「加工して、何か武器にするとか……」
「何かって何サ。……あ。でも、ほら。この杖の一番上、外れそうだよ」
「うわ……。加工したらアクセサリーになりますね。私、作れるかなあ」
「ソヨゴが作ってくれるなら、どんなものでもうれしいよ」
 なんて、ものすごく大きな珊瑚の塊を回収したり。
 そんな宝探しを満喫する二人であったが……、
「あ」
「はい? ……あ!」
 もちろん忘れていたわけでは、ないけれど。
 二人怪しげな建物の隅に転がっていた宝箱を見つけたとき、思わず変な声が出てしまったのも事実。
「危ない危ない。もう一個、急いで探しましょう!!」
 夜が明けてしまいます。なんて笑う冬青に、了解、とアヤネも頷いて。
 そんな二人に、「やっと思い出した」みたいな顔で、イルカたちも笑っていた。

「ぷはー」
「ふぅ……」
「やっぱり、なんていうか、圧が違いますね」
「そうだネ」
 そうして二人。海面へと上昇する。
「何かでまかり間違って、酸素が切れちゃったらどうしようかと思いましたよ」
「その時は僕が責任をもって、ソヨゴに酸素を送るよ」
「……そ、その言い方は若干の誤解を招きますが、もしもの時はよろしくお願いします」
 何か妙な想像をしたのだろう。若干顔の赤い冬青にアヤネは笑う。そして、
「じゃ、ソヨゴ。その前にひとまず、離れて」
「はーい」
 そうして二人、少し離れて宝箱を天に掲げる。
 指し示す光をアヤネはじっと見る。その角度を割り出せば、だいたいどこに行くか、計算できるはずだ。それで万が一、箱をなくしてしまってもたどり着くことができる……なんて。
「イルカくんイルカくん。次はどこが目的地でしょうね? アヤネさんが探してくれてるんですよ。すごーい」
「きゅ!」
 計算をしている間も、なんだか冬青は楽しそうである。
「きゃー。さっすがイルカくん! やりましょう。そこを、ジャンプです!」
 ざばーん。と何やら遊びだす冬青。
「……ソヨゴ。僕も混ぜて」
「あ。アヤネさん!!」
 こらえきれずにアヤネが声をかけると、楽しそうな冬青の笑顔。
 なので、それ以上も言えなくて、アヤネは笑って冬青の頬を軽くつまんだ。
「行先は決まった。いくよ」
「ひゃ、ひゃーい」
 これくらいは、許されるだろう。もがもがしながら冬青も頷く。
 目的地はもう少し先。
 もしかしたらやっぱり、海の中かもしれないけれども……、
「何か仕掛けがあるのかな。楽しみだ」
「ふぁい」
 アヤネさんはなしてくださーい。なんて。冬青が声を上げるまで、そのフニフニは続いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鵜飼・章
図鑑から出した子じゃない…
本物のイルカだ、可愛いね

どの子に案内を頼もうかな
僕がしっかりしていないから
しっかりしていそうな子がいいな
すこし高めの魚をさしだしてご縁を待ってみる

UC【パブロフの犬】で探索に夢中になれば
呼吸をするのも忘れてしまうね
千葉の海で鍛えた水泳と遠泳と素潜りが唸るよ
【動物と話す】でイルカさんとお喋りしながら探索しよう

そのクラゲ痺れるらしいけどおいしい?
どんな味がするの?
僕も食べてみようかな…駄目かな…

そうだ
僕いま探しているものがあるんだ
帝竜ダイウルゴスの模型なんだけど
落ちてるの見なかった?
ないかなあ…
あれ違うかな…

僕がしっかりしなくても
イルカさんが何とかしてくれるさ
気の向く儘に



「……」
 波止場では、右を向いても、
「……」
 左を向いても、
「図鑑から出した子じゃない……本物のイルカだ」
 イルカたちが、ご飯くれるの? とばかりに集っていた。
「……可愛いね」
 思わずしみじみと、鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)が呟く。つぶらな目をしたイルカさんを見ながらも、波止場の端っこの方に章はしゃがみ込む。
「……えーっと」
 どの子に案内を頼もうかな。
 僕がしっかりしていないから、しっかりしていそうな子がいいな……。なんて。
 少し高めの魚を差し出して、ふるふる振ってみれば、
「あっ」
 ばくっ。
 見事なジャンプを見せて、魚に食らいついたイルカがいた。
 そのままあっさり水中に戻って何事もなかったかのようにしようとするので、
「待って、料金先払いなだけだから」
 あげるわけじゃないからちゃんと働いて、などと主張する章に、しぶしぶ水面から顔をのぞかせたのは、若干大きめのイルカであった。
「ぎゅ!」
 乗るならはよ乗れ。とばかりに水中でぐるりと回るイルカ。
「なんでだろう。なんだかちょっとかわいくない……」
 ほかのイルカたちはこんなにかわいいのに。と、思わなくもなかったが。結局まあいいか、と章はひとまずは納得して。そのまま水の中に永夜、と飛び込んだ。
「さて。千葉の海で鍛えた水泳と遠泳と素潜りが唸るよ。行こう、イルカさん」
 章の言葉に、まあ。任せな。なんて目をイルカはして。そうして泳ぎ出す。
 力強い泳ぎでスピードをあげれば、だんだんと一人と一匹で水の中へ沈んでいくのであった……。

 水中に入ると、章は即座にパブロフの犬を使用する。探索に夢中になっている間は、呼吸をするのを忘れても何だかよくわからない感じで生きていけるので章にとっては海の中はさほど難しい場所ではなかった。
 クラゲたちが周囲に散っている。星のようで星ではないのは、その動きの所為だろう。
 ふわふわと規則的な動きで、不規則な場所に移動するクラゲたち。
 目の前にいたクラゲを丸のみにしながら、イルカは下へ、下へと降りていく。
「そのクラゲ痺れるらしいけどおいしい?」
 背びれにしっかり掴まりながら、章はそれを問いかける。一応動物とおしゃべりできるので、会話なら任せてほしい。
 イルカはちらりと章のほうに目をやっていると、
「僕も食べてみようかな……駄目かな……」
 本気で悩んでいる。章が丸呑みするにはちょっと大きいんじゃなかろうか。イルカは呆れたように、人間が生で食べたら腹を下す旨を伝える。
「毒耐性なら一応、あるんだけど……」
 でも毒じゃないんだな、これが。潜りに来たトレジャーハンターや猟兵たちが言ってたぜ。なんて本当かどうかわからない返答に、
「え。まさかの電気系統? さりげなく怖いんだけれど」
 実はクラゲは雷様の系統だった。なんてしょうもないことを聞いて、ますます触りたくなる章であった。
「ちなみにどんな味がするの?」
 腹の刺激にいい感じ、らしい。
 イルカの味覚なんてそんなものだろう。捕まえやすく、数が多く、イルカにとっては害がない。というのは大事なのだそうだ。
「つまり、イルカくんの胃袋はゴム製……と」
 失礼な、とばかりに、泳ぐ速度がほんの少し、早くなった。

 一人と一匹が進むと同時に、クラゲたちが左右に分かれて散っていく。
 巨大なピラミッドに、猫の形をした像。トーテムポールに似た柱。
 雰囲気はエジプトに近い。しかしクラゲやイルカの描かれた壁画を飾る神殿っぽい建物もある。
 この辺はたぶん、遺跡を作った人の好みだろう。
 別にここの作成主は、自分の知る文化を残すとか、偉業を誇示するとか、そういう意味合いは全くなく、ただ面白そうなものを詰め込んだだけ、というでたらめさだった。
「あ。イルカくん、ちょっと待って。ほらほら」
 そこに海の生物が住み着いて、かなり混とんとした遺跡になっている。
 態々イルカを止めて手のひらサイズのダンゴムシを丸めて転がす章。綺麗に丸くなったね、と思ったら、大きめのサソリがやってきてそのダンゴムシの背中にさっくり針(多分毒針)をさして転がしていった。申し訳ないことをしたかもしれない。
「……もしかして、カブトムシみたいな子もいるのかな?」
 と、思うだけ思ってみたがさっさと次の興味へと視線が映る。そんな章を若干呆れたように運んでいくイルカ。
「そうだ。僕いま探しているものがあるんだ。帝竜ダイウルゴスの模型なんだけど……落ちてるの見なかった?」
 そもそも帝竜って何。と、イルカ的にはそういう反応で首を傾げると、
「わからない? ええと……」
 不意にそんなことを言い出して、章が指先をくるくると回す。どうやら帝竜の指先で描こうとするが、何やらさっぱりわからない。
「ないかなあ……。あ、あれ違うかな……? イルカさん、そっち行ってみてよ」
 竜っぽい置物を見ればあっちへと進み。
「あ、やっぱりちょっと違うね。じゃあ次は……」
 別方向を示されれば、そっちへと進み。
「結局、僕がしっかりしなくても、イルカさんが何とかしてくれるさ」
 自分で言うな。とばかりにイルカににらまれながらも、章は自由に気の向くままに水中を探索する。
 彼が青い箱を見つけるのには、もうしばらくかかるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソウジ・ブレィブス
イルカちゃーん、僕と遊びましょーう?
船着き場で、終の鳴の名がついた首飾りで鼻面こしょこしょ
……ふふふ~意外とお口、こわぁーい
この子とドボン、するね
よろしくね、キミぃ

寄ってくるふよふよさんは足の蒼を奏でる狼でジャッ、ってするよ
水中も空も、あまり変わらないんだって信じてるからね
UCでお空の様子を思い描きながら探索に乗り出すよ
呼吸のことはまあ、此処が僕の好きなお空(仮定)だったら大丈夫なのでは?
空想は僕の力になるのだー!……たぶん

イルカちゃん、あっちにいこー?
冒険心が向こうに行きたいってさけんでるのさぁ!
……ん?イルカちゃんは逆方向がいい?
ふふふ、いいよぉ、キミ可愛いもん
ぼくをそこまでつれてってー



「イルカちゃーん、僕と遊びましょーう?」
 ソウジ・ブレィブス(天鳴空啼狐・f00212)が身を乗り出して、獣の骨と極彩色な羽で作られた、終の鳴の名がついた首飾りでイルカの鼻面をくすぐる。
「……ふふふ~意外とお口、こわぁーい」
 くぁ、と空いたイルカの口に、ソウジはにっこり笑って。
「この子とドボン、するね。よろしくね、キミぃ」
 そのまま、水の中に音を立てて飛び込んだ。
 イルカの背びれを掴むと、イルカはすぅ。と泳ぎ出す。徐々にスピードを上げて、そのまま水の中へと潜っていく。
「良いよね、本物のソラは」
 空を眺めていたソウジだったが、いつの間にか体は水の中へと。そうすれば空の様子を想像するので、問題はない。
「水中も空も、あまり変わらないんだって信じてるからね。空想は僕の力になるのだー! ……たぶん」
 そんなことを言いながらも、星空のようなクラゲたちを眺めながらソウジは海の中の空を下へ下へと降りていく。
 探索が目的なので、ソウジはきょろきょろと周囲を見回していた。そうすると目に入ってくるのは、圧倒的な大きさの建造物。怪しげな像に、散らばる財宝たち。
 ふらふらと近寄ってくるクラゲには、仕込み靴で対応する。蒼い塗料で染まった鉤爪が爪先に飛び出せば、柔らかいクラゲをあっという間に両断した。
「うわー。すっごいなあ……」
 底まで行くと、まるで空から町へ降りてきたような錯覚に陥る。ソウジは空の想像をしながらも、そこが海の中である証拠に、イルカへと声をかけた。
「イルカちゃん、あっちにいこー?」
 あの辺、ってさした方角は適当である。イルカは特に逆らうこともなくソウジの指をさした方向へと進む。
「冒険心が向こうに行きたいってさけんでるのさぁ!」
 ソウジの主張に了解、とばかりに動くイルカであったが……、
「……ん? イルカちゃんは逆方向がいい? ふふふ、いいよぉ、キミ可愛いもん」
 ふと、クラゲにつられたのか顔を上げるイルカに気まぐれに指をさすソウジ。
「ぼくをそこまでつれてってー」
 やっぱり了解。とばかりに泳ぎ出すイルカであった。あっちへ行き、こっちは行き。気まぐれな海の旅の末、いつかそろりと猫の像の頭の上なんてところに置かれた一つの箱をソウジもまた、見つけるだろう……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクトル・サリヴァン
海中遺跡と聞いて!
大きな脅威が倒れたなら冒険だよねー。
本命退治は忘れずに、まずは夜の海を楽しもうじゃないか。

服装は後を考え普段着のまま。
お魚はお駄賃用、あとおやつ用に何匹か。
イルカくん達もよろしくねー、はいお魚どーぞ。
海へダイブし体に捕まって一緒に遺跡へ向かおう。
夜目は利くし視界は何とかなるかな。
クラゲ寄ってきたら無酸素詠唱で水の魔法行使、水流少し操り刺されない程度にクラゲ避け。
恨みは買いたくないしー、餌場荒らしとかダメだよね?
さてさて、宝箱はどこかなと目を凝らしながら探す。
イルカにも動物会話で宝箱知らないか話を聞いてみる。
ゆっくりのんびりと夜の海を楽しみながら探索探索!

※アドリブ絡み等お任せ



「大きな脅威が倒れたなら冒険だよねー」
 海中遺跡と聞いて! と。
 ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)はやる気であった。
「本命退治は忘れずに、まずは夜の海を楽しもうじゃないか……」
 普段着姿のシャチのまま、徐にヴィクトルはそういうと、プレゼント用のお魚をイルカに手渡していく。
「イルカくん達もよろしくねー、はいお魚どーぞ。……あ、ダメだよ、こっちはおやつ用だから」
 まだもってそう。とつつきに来るイルカに軽く手を振ってそう答えて。
 ちぇ、とばかりに走り出そうとするイルカの背中に、ヴィクトルはつかまった。
 イルカは徐々にスピードを上げていく。
 ヴィクトルは夜目が効くし、シャチなので空中での呼吸も問題はないだろう。
 と、思っていたらイルカが潜水を始める。瞬く間に体はすべて水の中だ。
 水の世界に足を踏み入れると、一面に発行するクラゲで照らされた、不思議な遺跡の世界が広がっている。
(わあ……)
 これは広い。と。思わずヴィクトルが呟いたところで、
 イルカはクラゲたちの群れの中に突入した。
 道中クラゲをばくりばくりと丸のみにしながら進んでいくイルカ。
 それに気付いたようにクラゲたちも逃げ出すが、逃げ切れないゆっくりとしたクラゲがヴィクトルのほうへと近づいてくる。
(えー……っと)
 ちょいちょい。と、ヴィクトルは無酸素詠唱で水の魔法を作り、水流を少し操った。
(刺されたら困るからね、うん)
 オブビリオンでもないので殺すつもりもないし。
(恨みは買いたくないしー、餌場荒らしとかダメだよね?)
 イルカの貴重な食糧でもあることなので、ヴィクトルはクラゲを押し流すにとどめる。
 そうしてクラゲの光に照らされた、どうにも異世界情緒漂う遺跡をヴィクトルは慎重に進む。ピラミッドに潜ったり、近くの階層が連なる陸をのぞいてみたり。さてさて、宝箱はどこかなと目を凝らしながら、熱心に探していく。
(そういえば、キミは宝箱とか、どこにあるか知らないー?)
 動物会話で宝箱の場所を聞いてみたりもした。
 イルカはこてんと首を傾げる。遺跡……というか、もともと宝探しを楽しんでもらうという意図をもって作られた場所なので、沢山宝箱はあるという。
(うーん。でも総当たりはスマートじゃないなぁ……。でも半分ぐらい観光に来たものだし)
 いいのかなあ? と。海を楽しみながら進むヴィクトルであったが……、
(ん……?)
 あれかな? って。
 魚の描かれた壁画の前、壁画に同化するようにおかれていた宝箱にヴィクトルは目を留める。
(あったあった。でもまだ次があるんだよねー……)
 けれども、これが最初の試練であることは間違いない。この石がきっと先を示してくれるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夏目・晴夜
夜でも海中でも明るいとはありがたい
濡れてもいい格好の準備はありませんが、
ハレルヤの威光は濡れても変わらないので問題ないですね

イルカとはお近付きになっておきます。可愛いので
どうぞ、お駄賃の魚です
今噛んでるそれは私の手です

よし、目当ての宝箱を探して先を目指しますか
しっかり掴まっていますので、遺跡探索を楽しめる絶妙な速度で泳いで下さい!

やっぱり一旦浮上して下さい!

このハレルヤでも酸素が無くなると死ぬんですね
遺跡の手前に綺麗な花畑が見えましたよ…
クラゲを咄嗟に蹴り飛ばすので更に息切れしますし

こうなったら遺跡も宝探しも堪能できる特別な秘密道具を使います
この、店で買った酸素ボンベを!
では改めて行きましょう



「ふ……っ。夜でも海中でも明るいとはありがたい」
 夏目・晴夜(不夜狼・f00145)は何やらかっこをつけていた。水の中で。体半分ほど水に浸かって立ち泳ぎしながら。
 なぜそんなことになっているかというと……、
「どうぞ、お駄賃の魚です。今噛んでるそれは私の手です。やめてください。ハレルヤは丸のみにできませんよ! ちょ、離して。ほら、魚はこっちです。こっち!!」
 がじがじがじがじがじがじがじ。
 じゃれているのか本気なのか。
 丸々その手を齧って丸のみにされそうな勢いに、晴夜は慌てて齧られてない方の手で魚を差し出すのであった。
「ほら、ペッ。てしてください。ペッ。て。このハレルヤ、イルカとはお近付きになっておきたいのです。可愛いので! イルカを従える美少年とか、絵になるどころの騒ぎではないでしょう!」
 限りなく不純。だが、ちゃんと魚を見せるとパッとイルカは晴夜の手を離す。美味しそうに魚を丸呑みするイルカ。結構厳しい音でかみ砕いたような音がしたので、やっぱりさっきのは甘噛みだったのだろう。そう信じることにする。
「はあ……。なんだか遺跡に行く前から疲れてしまいましたね。……ですが」
 金銀財宝が待っている。ふん、と、晴夜は呼吸を整えカッコをつけなおして、
「兎に角、行ってみましょう。濡れてもいい格好の準備はありませんが……ハレルヤの威光は濡れても変わらないので問題ないですね」
 うんうん。と何やら得意げで、その泳ぎにくそうな服装のまま晴夜はイルカにしがみつく。そういう問題だっただろうかと突っ込む人も残念ながらいなくて、イルカはちら、と、晴夜を見るだけだった。どうやらくれるものくれるなら特にコメントはさしはさまないスタイルのようだ。
「よし、目当ての宝箱を探して先を目指しますか……。しっかり掴まっていますので、遺跡探索を楽しめる絶妙な速度で泳いで下さい!」
 と、いうわけで晴夜はご機嫌のままで、海のほうを指さす。はいはい、とばかりにイルカは泳ぎ出した。
 徐々にスピードが上がってくるイルカ。最初は海面を撥ねるように泳いでいたが、海の下に光るクラゲたちの存在を見つけると、それを追い求めるかのように水の中へと潜っていく。
 深い深い海の底。真っ暗な世界を彩る美しいクラゲたち。
 遠くまで照らされた巨大遺跡へと、まるで星をかき分けるように降下していく。
 道中ふらりと立ち寄ったクラゲを晴夜は蹴り飛ばし。そしてイルカもご飯にして。
 まるで音の消えた美しい星の中を通り、そして眼下に広がる花畑へと……、
 ……花畑?
「ふが! ふがごごごふ……っ!!!(やっぱり一旦浮上して下さい! おねがいします! 今すぐに!)」
 物凄い勢いでイルカの背中をたたく晴夜。察したイルカの行動は迅速であった。まるで弾丸のような勢いで、急浮上を行う。星の中を突っ切って、まるで月に向かうロケットのように一直線に。海面へと浮上した。
「ごほっ。は……げほげほげほ。は……」
 海から顔を出した晴夜は何度か呼吸をして暫く苦しんだ後に、
「……このハレルヤでも酸素が無くなると死ぬんですね……」
 なんだか無茶苦茶当たり前のことを、今知ったとでもいうように、呟いた。
「遺跡の手前に綺麗な花畑が見えましたよ……。クラゲを咄嗟に蹴り飛ばすので更に息切れしますし……。どういうことでしょうね……」
 多分、イルカが喋れたら、それはこっちの台詞だ。といったかもしれなかった。
 だが、今日は残念ながら突っ込みは不在である。しばらく呼吸をして復活したのち、晴夜はふふん。と、なぜかそこで得意げな顔をした。
「こうなったら遺跡も宝探しも堪能できる特別な秘密道具を使います。さっきの波止場に戻ってください!」
 まあ、貰うもの貰ってるので、イルカさんは仕事はする。仕事はするが……、
「これです!! この、店で買った酸素ボンベを!」
 さすがにこの時は、「なんで最初からそれ使わなかった」って目をイルカさんもしてた。
「……では、改めて行きましょう」
 そんな視線を受け止めて、晴夜はどや顔で親指を立てる。あれ絶対わかってない。
「ふふふんふん。さあ、世紀のお宝を見つけて、皆さんにもてはやされますよ~」
 もうすっかり死にかけたことも忘れて歌いだす晴夜に、この子、何とかしてあげないと……と、イルカは思ったとか、思わなかったとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オズ・ケストナー
わーっ、イルカさんっ
よろしくね
おさかなもばっちり用意してきたよっ

ふふ、はやいはやいっ
すごいねっ
イルカにぎゅっとつかまってきょろきょろ
水がきもちいい
星もきれいっ
あっという間に星が後ろに流れて
それでも目の前にずっと星はあって
なんだかふしぎ

真っ暗な海に光が見えてきたら
わあ、たからものがしずんでるみたい

ざぷん、と海の中
光の正体がわかったらガジェットショータイム
大きなアイススプーンで
オールのように
ゼリーを掬うように
寄ってきたくらげを生命力吸収しながら後ろに追いやって

後に光が集まっていくのも
とってもとってもきれい
あかりをつれているみたい

(みつけた、イルカさんっ)
青い光を見つけたら指さし
ふふ、たんけんだーっ



「わーっ……!」
 海! である。
 波止場周辺はイルカと人の待合所のようになっていて、イルカたちは人間がご飯をくれるまでは楽し気に泳いだり遊んでいたりもしているので、それもまたかわいらしい。その中の一匹が、オズの姿を見つけてすすすーっと彼の前まで泳いできた。
「イルカさんっ。よろしくね」
 遺跡、行きますか? みたいな目をして問うてくるイルカに、オズもまた笑顔で返す。ふんふん。と、頷くようにするイルカに、
「うん、おさかなもばっちり用意してきたよっ」
 ほら、とお魚を示すと、待ってましたとばかりにイルカはグーッと口を開けるのであった。
「おくちにいれればいいんだね? えいっ」
 せいや、と。イルカの口の中に魚を投げ込むオズ。
 イルカはそれを丸呑みすると、ご機嫌でぐるりと一回転。さあ、乗りなよとでもいうように尾を揺らした。
「うん、ありがとう」
 頼もしいその背中に、えーい。とオズは水の中に飛び込んで、そしてしがみつく。持ちやすいようにイルカもちょっと体を沈めてから、ひゅーん。と、泳ぎ出した。

「ふふ、はやいはやいっ。すごいねっ」
 海の中を行く。水をかき分けて、星空の下夜の中を走る。海面を跳ねるように泳げば、風の感触も、水温もちょうどよくて、
「なんだかきもちいいー」
 なんてオズがご機嫌の声を上げると、得意げにイルカのスピードも上がった気がした。
「星もきれいっ。きょうは星とお月様が……」
 素敵だね。と言おうとした時、オズの身体が傾いた。
「わ」
 軽く跳ねたのだ。視界いっぱいに広がる星と月からオズは視線を変える。
「あ……」
 足元だ。足元にも光が輝いている。光の道をイルカは躊躇うことなく泳いでいく。
(あっという間に星が後ろに流れていなくなって……。それでも目の前にずっと星はあって……。なんだかふしぎ)
 潜水にいい場所を探しているのだろうか。さっきまで真っ暗であった海に輝く、無数の光。海面からだと、何が起こっているのか今ひとつわからないところがあって、それがまた、美しい。
(わあ、たからものがしずんでるみたい)
 ぴかぴかの輝きは、何とも神秘的で、特別なように感じて。手を伸ばせば触れるだろうか。なんて、難しいとわかっていても、思わずオズが手を伸ばしかけた。その時、
 ざぶん。と。
 オズとイルカは海の世界へと突入した。
 一瞬にして体が水に包まれる。
 オズはイルカにギュッとつかまる。任せろ、とばかりにイルカはあまり体を揺らさずに、どんどんどんどん下のほうへと降りていく。
 空の星と月が消えたと思ったら、周囲にまばゆい光が満ちてくる。
 クラゲだ。クラゲ群れの中を今、オズとイルカは通過していた。
 イルカの突入に、道を開けるようにさっと左右に散っていくクラゲたち。
 時々群れからはぐれたクラゲが、ふらふらとオズのほうにも迷い込んでくるので、
 今度は、手を伸ばしたら届きそうだ。
(えー……っと)
 けれども、オズも知っている。これは触ったら危ない奴らだ。
(こんなにきれいなのに……ふしぎ)
 わかっているので、オズはさっとガジェットショータイムでアイススプーンを作り出す。片手でイルカさんを掴んだまま、ゼリーを掬うようにそっと、クラゲたちを後ろのほうに追いやった。
(えいえいえい)
 生命力を吸収しながら、後ろの方へと流していく。
 流しきれない子は、イルカがきれいに丸のみをしてくれていた。
 なので、安心して流しながら、オズは己の北方向を振り返る。
 イルカがいなくなった場所に、クラゲがまだ戻ってきていて。
(わあ……。とってもとってもきれい)
 無数の灯りが、オズを照らしているようで。
 オズはしばし、その光景を見つめていた。

 暗い暗いはずの海の底は、まばゆい光に照らされて。
 巨大なピラミッドを。あちらこちらにそびえたつ奇妙な形の像を、照らし出している。
(ふふ、たんけんだー)
 どこにでも行ける。どこから手を付けようか。
 そう思った矢先に、オズは花のように咲くイソギンチャクの群れの中、ちょこんと覗く青い光を見つけた。オズは指をさす。
(みつけた、イルカさんっ)
 心得た、とばかりにイルカさんもそちらに向かう。イソギンチャクは毒があるかもしれないので、先ほどのスプーンで丁寧に救った。
 古びた宝箱は、青い宝石がはまっていて。それがかすかに光を発している。海上で月と星の光にかざせば、もっとはっきり光るらしい。
(……いこっか)
 オズが目でイルカに聞く。イルカもちょっと笑った気がして、そして浮上を開始した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

波瀬・深尋
海の中に遺跡か
すごいところに建てたな

お前らが連れて行ってくれるのか?
褒美の餌なら任せろ
ちゃんと準備したからな

だから、行こうか、遺跡へ

イルカに掴まるのも意外に大変だな
落とされないように気を付けるが
まずは青い光を見つけないとな

途中のクラゲたちは厄介だが
お前に任せてればどうにかなるか?
まあ、俺が追い払っても良いが
囲まれそうなときは
無理せず海面まで逃げようか

青い石のはまった宝箱はこれか?
月と星の光に当てると──

そうか、
この先に進めば良いのか

首から提げた
この星のネックレスは
俺にとって唯一の物だから
どうせなら、
これに似た宝物を見つけるとするか

──少しでも、
お前のことを見つけ出す
手掛かりが掴めると良いんだが



 波瀬・深尋(Lost・f27306)はイルカを覗き込んだ。
「お前らが連れて行ってくれるのか?」
 深尋の言葉に、きゅい、とイルカは頷いた。任せろ。貰えるもの貰えるならどこにだって! なんてちゃっかりした顔をしているので、
「ああ。褒美の餌なら任せろ。ちゃんと準備したからな」
 そういって、そっと深尋は魚を手渡した。
 丸のみにされる魚を、深尋は見送り、
「さあ、頼んだぞ。行こうか、遺跡へ」
 そういって、その体を掴むと。任せろ、とばかりにイルカはすいいいいーっと泳ぎ出した。
 最初は海面すれすれを泳いでいたイルカであったが、海が光り輝き始めると、徐々に深度を下げてくる。
「……海の中に遺跡か。すごいところに建てたな」
 とうとう完全に頭の先まで海水につかり、そうしてさらに下へ、下へと向かう。
 まばゆい光のクラゲたち。そして足元に広がるピラミッド遺跡。
 ピラミッドだけではない。周囲には様々な建物がある。神殿に、像にと。一人の墓にしてはずいぶんと賑やかな都市の姿を示していた。
(……っ、と。イルカに掴まるのも意外に大変だな)
 滑らないようにしっかりしがみついて、落とされないように気をつけながら深尋は周囲を見回す。やがて魚は崩れたピラミッドの天井から、ピラミッドの中へと入っていった。ちょうど石で作られた小部屋があって、通路に向かって扉が開いている。
(まずは……青い光を見つけないとな)
 要件は先に済ませる方だ。イルカの身体を撫でると、心得たというようにいるかも泳ぎ出す。
 遺跡の内部にもクラゲたちは入り込んでいて、灯りの心配はないのだが、代わりにその麻痺が厄介なのであった。……が、
(お前に任せてればどうにかなるか?)
 当然、と返事があるのは頼もしい。
(まあ、俺が追い払っても良いが……。囲まれそうなときは、無理せず海面まで逃げようか)
 ばくり、ばくりと。ご機嫌でクラゲを食べていくイルカに、まあ大丈夫かな、と、深尋も判断する。戦って倒せないわけではもちろんないけれども、無意味に殺しても意味なんてないだろう。
(こいつも、なんだか嬉しそうにしてるし……)
 イルカ的には、沢山食べられて割と満足、のようだ。

 そんな風に通路を進みながら、深尋は探し物を続ける。
(青い石のはまった宝箱……これか?)
 いくつかの扉を開け、たまに浮上して別の遺跡に潜り。時折クラゲから逃げるために海面に上がり。そんなことを繰り返しながら、深尋は岩と岩の間に隠すように置かれていた宝箱を発見する。
(後は、月の光にあてるだけだな。……)
 それで。深尋はちょっと進路を変更した。
 金銀財宝の眠る部屋で宝物を眺め、
 武器庫らしいところを一瞥し。
 様々な宝を探り。けれども手は付けない。
 見つけたかったものは、自分の星のネックレスに似た宝物であったからだ。
(この星のネックレスは、俺にとって唯一の物だから……。どうせなら、これに似た宝物を見つけたいんだが)
 何でもあるが、特定の何かを見つけるのは難しい。……なんて、思っていたところで、
(あ……)
 見つけたのは、星のブローチだった。柔らかい色味の真珠や宝石に銀の細工が輝いている。
 ブローチだけど、マントに止めたり鞄につけたり。もしくは別のアクセサリーにも作り直せるだろう。
(……)
 祭壇のようなところに無造作に置かれてあったそれを、深尋は拾い上げる。
(──少しでも、お前のことを見つけ出す手掛かりが掴めると良いんだが……)
 そう。深尋はそれを握りこみながらも心の内で呟いて、浮上を開始した。

 そうして海上で月と星の光に当てると、宝箱にはめられた宝石が輝きだす。
「そうか、この先に進めば良いのか……」
 進路は、決まった。
 あとはまた、進むだけだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニヒト・デニーロ
鳴宮(f01612)と

……海の中は私の居場所、とても楽しみ。
私はその気になれば呼吸は必要ないけれど、鳴宮は大丈夫?
それと、私の格好に、なにか感想はある? おニューの水着。
…………なさそうね、うん、わかってた。

イルカは好きよ、できればクラゲとも仲良くしてほしいけど、弱肉強食、ごめんなさい。

それでも寄ってくるクラゲは……殺すのも忍びないから、UFOを呼んで回収するわ。
後で、海に放してあげましょう。

UFOの明かりで遺跡を照らしながら宝箱探し。
それと……ねえ、少しだけ寄り道していい?
この辺りの珊瑚、とてもきれいなの
もう役目を終えた子達だから、少しだけ、もらっていかない?


鳴宮・匡
◆ニヒト(f13061)と


イルカの手を借りて遺跡に向かう
ずっと潜ってたらさすがに大丈夫じゃないけど
ちゃんと息継ぎしてくれるし平気だと思うよ
感想? もう少し布地が多い方が戦う時に不都合がないと思うけど……
……そういうことじゃないよな うん、わかってる

水の中じゃ銃器はあまり役に立たないし
近付いてくるクラゲは誕生日にニヒトにもらったUFOに対処してもらうよ
……殺さないってニヒトも言ってるし
適当なところまで運んで放してもらおう

遺跡内は一応罠の所在に留意しながら進む
万が一でも怪我をさせるわけにはいかないしな
……ん、寄り道? 構わないよ
急ぐ道中でもないし、ゆっくり行こう
これも、ちょっとした宝探しみたいだな



「……海の中は私の居場所、とても楽しみ」
 ニヒト・デニーロ(海に一つの禍津星・f13061)は水に浸かり、イルカを撫でながら小さく呟いた。心地よさそうに泳ぐイルカたちを見ていると、自然と声が優しくなる。そして、
「私はその気になれば呼吸は必要ないけれど、鳴宮は大丈夫?」
 問いかけた先には、鳴宮・匡(凪の海・f01612)がいた。匡はに人の言葉に、イルカの調子を確認するかのようにその動きを観察しながら、頷く。
「ああ。ずっと潜ってたらさすがに大丈夫じゃないけど、ちゃんと息継ぎしてくれるし平気だと思うよ」
 イルカだって息継ぎをしたくて浮上するだろう。忘れられることはおそらくはないはずだ。なんて、冷静に分析する匡に、そう。と、ニヒトは頷いた。
「それは、良かったわ」
「ああ」
「……」
「……」
 一瞬。沈黙が周囲を支配する。それからニヒトは徐に、
「それと、私の格好に、なにか感想はある? ……おニューの水着」
 何にも言わない匡についにしびれを切らしたかのようにニヒトがそう尋ねた。匡は首を傾げて、
「感想? もう少し布地が多い方が戦う時に不都合がないと思うけど……」
「…………なさそうね、うん、わかってた」
「……そういうことじゃないよな。うん、わかってる」
 言っている途中から諦められた。ぷい、と横を向くニヒトに、匡もうん、と、頷く、頷くが……じゃあどういえばいいのかというと、全くわかってない顔をしていた。
 そんな匡にニヒトは咳払いをする。
「兎に角。そろそろ行かないとね。……出発準備」
「ああ。今回はさすがに銃器類は留守番だな……頼りにしてる」
「……ん」
 匡の言葉に、ニヒトは短く頷いて。
 そうしてニヒトがイルカの背を撫でると、イルカたちは出発した。

 水の中を滑るようにして降りていく。
 周囲には無数の灯りが輝いていて、これがすべてクラゲなのかと匡は若干感嘆した。
(意志をもって襲ってこられたら、どうしようもないな……)
 実際はふらふら漂うだけのクラゲだが、どうしてもそんなことを考えてしまう。
 そんな難しい顔をしている匡の内心に、気づいているのかいないのか。ふよふよと近寄ってくるクラゲたち。
(イルカは好きよ、できればクラゲとも仲良くしてほしいけど……。弱肉強食、ごめんなさい)
 ちらり、とニヒトがそちらに目をやって祈りをささげる。とたんに謎の巨大UFOがニヒトの背後に出現した。
(殺さないんだな?)
(ええ……殺さない)
 視線を交わして意思疎通を図る。
 匡もまた、ニヒトにもらった手のひらサイズのヒトデ型UFO軍団を大量に召喚する。そうして巨大なUFOと小型のUFO軍団で、周囲のクラゲを回収していった。
(……殺さないってニヒトも言ってるし、適当なところまで運んで放してもらおう。よく考えたら、別に悪いことはしてないしな)
(そう。彼らもまたこの世界に住まう生き物の一つ……。さすがに、殺すのも忍びないから)
 人間には有害だが、世界にとっては有害ではないのだろう。
 後で、海に放してあげましょう。とニヒトがそう言いながらどんどんクラゲを回収していくと、若干周囲が暗くなるのだが、それも大丈夫だ。UFOの灯りがあるからである。
(じゃあ、もうちょっと深いところまで……)
 息継ぎを繰り返しながら、徐々に遺跡の中へと侵入していく。ピラミッドの内側は複雑な通路が入り組む迷路のようになっているが、時々天井に穴が開いていて脱出できるようになっていた。
(ニヒトは俺の後ろだ。万が一でも怪我をさせるわけにはいかないしな)
(それは……いいのだけれど)
 目くばせにニヒトも頷きで返す。大丈夫だとはわかっているが、罠を注意して調べながら今日は進んだ。これは殆ど性格のようなものであるが……、
(何か……大きな仕掛けが動いてるな)
 そういう懸念材料も、あるにはあるのだ。
 そうやってUFOの明かりを頼りに、イルカと共に二人は進む。
(この辺りは崩れそうだ。今度はあちらに行ってみよう)
 調子を見ながら、匡が進路をとる。基本その辺のことは匡に任せているので、ニヒトは小さく頷き、
(それと……ねえ、少しだけ寄り道していい?)
 そう、ささやかながらも一つ、提案をした。
 そんなことをいうのは、ちょっと意外だったのか。匡は首を傾げる。
「……ん、寄り道? 構わないよ」
 けれどもなんだろう。と、といたげな雰囲気を感じて、ニヒトはうむ、と、ほんの少し得意げに笑う。
「あの辺りの珊瑚、とてもきれいなの。もう役目を終えた子達だから、少しだけ、もらっていかない?」
 あっちらへん、と指をさすニヒト。さっき上から見たときに、綺麗だと思っていたのだ。了解、と、匡もあっさりと頷く。
「急ぐ道中でもないし、ゆっくり行こう。これも、ちょっとした宝探しみたいだな」
「宝探し……。見つける、お宝」
 ふんす、とやる気を出すニヒト。勢い良くイルカとともにUFOを引き連れて、早速あっちへ、と進んでいく。その様子を微笑ましく匡は見て、そして周囲を警戒しながらも、そっと後を追いかけた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

藍崎・ネネ
たからもの、どんな物なのかしら
興味があるの
海を見るのも初めてなのよ
今日はとっても楽しみなの

わぁ、イルカってとっても人懐こいの
海の中に連れて行って欲しいのよ
お魚をあげてみるの。おいしい?
おそるおそる背に乗って、連れて行ってもらうのよ

なんだか綺麗な光があるの
あれはなんて言うの?
わ、わ、食べちゃったの。おいしいのかしら?
綺麗だったからちょっぴり勿体無いの

海の中に建物があるのね
人が住んでいたのかしら
イルカさんと一緒に探検するのよ
綺麗なものや可愛いものがあったら手に取ってみたいの

! 何かを見付けたみたいなの
綺麗な光ね。イルカさんにぎゅってして、連れて行ってもらうの



「わ、あ……」
 藍崎・ネネ(音々・f01321)は自由に泳ぐイルカたちに思わず目を見張った。
 海の中、好き勝手移動するイルカたちは寧々にとって何とも不思議な生き物で、
 ざぶんと水の中に飛び込むと、すい、と一匹がネネの前へと近寄ってくる。
 なつくように体を寄せてくるので、ネネは両手でその頭を優しく撫でた。
「知らなかったの。イルカってとっても人懐こいの」
 撫でられると、嬉しそうな声を上げるイルカ。だからネネもそっと、そのイルカの前に魚を差し出した。
「海の中に連れて行って欲しいのよ。お魚も持ってきたの。……おいしい?」
 ぱくりと魚を丸呑みするイルカの顔を、ドキドキとネネは覗き込む。
 何か言いたげにイルカさんは鳴いた気がするので、
「いいの……? いいのね……?」
 恐る恐るその背中に乗るようにして捕まる。ぴゅん! と魚は滑るように泳ぎ出すので、
「きゃ……!」
 早い。思わずネネがイルカの背にしがみついたころには、彼女はすでに、水の中へと沈んでいた。

(うう……)
 水の抵抗を突っ切って、イルカはまるで空を飛ぶように海の中を沈んでいく。
 本物の月と星が照らす光が徐々に消え。代わりに海底に輝く光が現れていった。
(すごいすごい……! なんだか綺麗な光があるの)
 あれは何。と、ネネが問う前にイルカは光の方向へと進んでいく。
 海の中に漂う無数の光はまるで星のようで、そして星よりも明るくて。
 そうしてふわふわと漂っていた。
(スカートを広げて……えい。って、泳いでるみたい)
 クラゲの動きをそんな風にネネは観察する。泳ぐ方向は不規則だけれども、その動きは一定で、面白い。
(ねえ、イルカさん。あれはなんて言うの?)
 もうちょっと、近寄って見せてくれないかしらとネネが指さすと、心得たとでもいうようについとイルカはクラゲに近づき……、
 ばくん!
(わ、わ、食べちゃったの。おいしいのかしら? ……おいしい?)
 一瞬であった。丸呑みであった。至近距離でネネの顔を照らしたクラゲさん。不思議な形に若干残念そうに寧々は遠くに入るクラゲを見送った。
(綺麗だったから、ちょっぴり勿体無いの……)
 もっと近くで見てみたいけれど、また食べられてしまってはかわいそう。
 なのでネネは、それ以上はクラゲを遠目に眺めるだけにする。ふわりふわりと漂うクラゲは、見ているだけで和んでくる。
(そうよ。そう、気を取り直して……)
 そういうわけで、ネネは今度は眼下に視線を落とした。
 クラゲの灯りに照らされた海底は、不思議な光景が広がっていた。
(海の中に建物があるのね……。人が住んでいたのかしら)
 海の中にある巨大ピラミッド。そしてその周囲に作られた都市のような建物たち。
 ここは、港町の富豪が自分の死後墓にするために作られたという経緯を持つ。街が沈んだのではなく、海の底にわざわざ街を作ったのだ。
 なので、ひとが住んでいるはずはなく、このような街を作る必要もない。……なのにここは、はるか遠い昔から。人が住んでいたかのようなたたずまいが広がっていた。
(それともこのお墓を作った人は……寂しがり屋だったのかしら)
 なんとなく、そんな気がネネにはした。だから宝物をいっぱい置いたのかしら。と、海底へと降りたところで、海の砂に埋もれてしまった何かを引っ張り出しながら寧々は考えた。
(そしてたからもの、どんな物なのかしら……?)
 宝石のいっぱいについたティアラ。
(私にはちょっと重たいかもしれないの……)
 箱いっぱいの宝石箱。永遠に枯れない花で編まれた花冠。なんに使うかもわからない、豪華な瓶に入った液体。『呪いの首飾り』なんてタグが付いた、真っ青で大きな宝石がはまった首飾り……。
 思いついて拾ったバケツのような形をした帽子をイルカさんに乗せたとき、イルカさんの姿が消えたことにはとてもびっくりした(つかまっていたので何とかなったが)。
 きゅい、とお礼のように駆けて貰った、枯れない花で編まれた花冠は寧々の頭には少し大きく。首飾りみたいにぶら下げながらも一人と一匹で海底を進んだ。
(海を見るのも初めてなのよ。どこの海も、こんな風に宝物が眠っているのかしら……)
 それもまた、浪漫である。
 ふふ、と。ピラミッドの通路を行きながら、ネネが微笑んだ……ところで、
「!」
 イルカが、何やら首を大きく振った。
 ネネも、視界の隅で、今までになかった青い光を見た。
(綺麗な光ね。イルカさん……)
 ぎゅっとすると、イルカも心得た、というようにそちらへと泳ぎ出す。
 見つけた蓋があかない宝箱は、蓋に青い宝石をきらめかせ、静かに海の底へと沈んでいた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

青和・イチ
えっ、海の中の遺跡…?
謎と危険な冒険の果て、辿り付ける財宝…
浪漫の塊だね(目を輝かせ、やる気満タン

イルカには、とびきり美味しい魚で挨拶
相棒犬のくろ丸も一緒だし、魚は二匹お納め下さい
(つぶらな瞳と目が合う
かわいい…

『騎乗』の技能で上手く掴まりつつ、『暗視』でよく見て進む
僕もくろ丸も水泳得意
きっと大丈夫…とは言え、くろ丸は掴まれないか
僕とロープで繋いどこ(えっ…って顔のくろ丸
頑張って付いて来て

クラゲはイルカに食べて貰いつつ、余計な分は【流星】で減らす

青い宝石の、宝箱…どこだろ
秘密の部屋があるとか?何かの像が持ってるとか…
『第六感』や『宝探し』で探索
『動物と話す』でもイルカや海の生き物に聞いてみたり



「海の中の……遺跡……?」
 青和・イチ(藍色夜灯・f05526)がその話を聞いたとき、変化に乏しい表情の中、その目をイチはほんの少しだけ、輝かせた。
「謎と危険な冒険の果て、辿り付ける財宝……。謎解き、そして骸骨兵との戦い。最後は崩れ落ちる遺跡からの脱出……」
 今回は骸骨兵はいないけれども、おおむねそんな感じ。隣にいた相棒犬のくろ丸の顔をじっと見る。相変わらず顔が怖いくろ丸であったが、心持何だか彼女もやる気満々のようだ。
「浪漫の塊だね」
 ふんす、と返答するくろ丸に、うん。とイチも頷く。
 そうしている間にも、水の中に突入した位置とくろ丸に「ご用はありますか~?」とばかりにきゅきゅいとイルカがやってくる。トレジャーハンター相手の仕事に慣れているのだろう。そのプロフェッショナル名棚付き方にはある意味で感心を覚える。
「……こちら、とびきり美味しい魚す。相棒犬のくろ丸も一緒だし、魚は二匹お納め下さい」
 なぜか敬語になって、ははー。とイチはイルカに魚二匹を差し出す。そんなノリに、任せろ、とばかりにイルカは一の目を見て笑った気がした。
 つぶらな瞳と目が合う。
「かわいい……」
 そして魚は二匹いっぺにばりばりと丸呑みされる。
「強そう……」
 意外に鋭い歯をしていた。はっ。と、イチは我に返る。
「僕もくろ丸も水泳は得意だから、きっと大丈夫……だとは思うけど。くろ丸、いける?」
 ちぇい。
 イチの言葉に応じて、くろ丸はイルカボディに肉球タッチを試みた。
 割とつるつる滑る。
「くろ丸は掴まれないか……」
 泳ぐというより、今回は潜るので、イルカにつかまる必要があった。
 じゃあ、だっこかな? とでも言いたげなくろ丸の顔。その顔に、
「やっぱり、そうだよね」
 イチもまた、承知したというようにうなずいた。
「僕とロープで繋いどこ」
 頑張って付いて来て。って、至極真面目な顔をして言うイチ。
 え。抱っこは……? という前にくろ丸は胴体をロープでぐるぐる巻きにされる。
 自分の胴体にもロープを撒いて、イチはイルカの背中をたたいた。
「待たせたね。……行こう」
 了解! とばかりに動き出すイルカ。
 戸惑うばかりのくろ丸も、すぐにロープに引っ張られて海の中へと消えて行った……。

 海の底の都をイチは眺める。うまいことイルカにつかまって、端々を眺めながら進んでいく。
 あちらこちらに輝くクラゲがある。イルカがだいたいは食べてくれるが、時々フラーっとくろ丸のほうに進路を変えるクラゲには、
(えい)
 眼鏡ビームでひと睨み。青い輝きがクラゲを貫いて散らした。
(それで、青い宝石の、宝箱……どこだろ)
 視線を戻しつつも、イチは慎重に苔の茂る通路を進む。
(秘密の部屋があるとか?)
 隠し部屋を開ければ、大漁のサソリに遭遇し。
(何かの像が持ってるとか……)
 巨大な猫の像の額に持つ、掌よりも大きな真っ赤な宝石を引っぺがし。
(もしくはこの謎を解いた先に……)
 ごご、と、仕組みを解けば開く石の扉の向こうに眠る、なんだか怪しげでどす黒いオーラを纏う魔剣に語り掛けられたり。
(……君は、何か知らない?)
 イルカくんにも、ちょうど石の影で眠っていた色とりどりの魚さんにも、地を這う巨大ダンゴムシにも語り掛ける。
 どうやら、宝はいっぱいあるみたいで、生き物には人間のものの差異などあまり気にしないらしい。みんなそれっぽいものは知っていても、ピンポイントでイチの探す宝を知っているかどうかはわからないので、イチは慎重に、結局すべてを順番に回ることにした。
 そうしてくろ丸に戦果のお姫様のようなティアラが頭に飾られたころ。
 ちょい、と、イルカが体を揺らして位置に何かを示した気がした。
(あ……)
 ふと見ると、イルカの像のようなものが、何かを持っている。青い石のはまった宝石箱であった。
(これだ……)
 宝石箱を持ち上げる。淡く輝く光は、海面に持っていけばもっとはっきりと輝くことであろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『虹色雲の獏羊』

POW   :    夢たっぷりでふわふわな毛
戦闘中に食べた【夢と生命力】の量と質に応じて【毛皮が光り輝き、攻撃速度が上昇することで】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    眠りに誘う七色の光
【相手を眠らせ、夢と生命力を吸収する光】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    ふわふわ浮かぶ夢見る雲
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 そうして……。
 おのおのが見つけた宝箱を、海上で月と星の光の下へ翳す。
 そうするとはっきりと、宝箱から青い光が発せられてひとつの場所を示した。
 また、海の中でも、本当に微かではあるが光は発せられている。それを慎重に手繰りながら、進むことも可能だろう。
 そうやってたどり着いた先には、一つの入口があった。
 驚いたことに海上に入り口がある階段で、それが長く長く伸び、ピラミッドまで続いている。普通なら海底探索時に分かりそうなものだが、上手いこと隠していたのだろう。
 そして、ピラミッドを探索していたものなら、それがどの辺の位置にあるのか、大まかな場所はわかるはずだ。恐らくはピラミッドの最下層。一番広いフロアにつながっている……。
 一方。海底を行く人々は、海底にいくつかの入り口を見つける。
 ピラミッドの中にあるが、通常探索していたのならば見つけることができない幻の壁で封印された入り口をくぐって先にすすめるようになっていた。
 進めば、プールのような場所に出るだろう。巨大な船着き場のような空間のその先には、空気のある遺跡が広がっていた。

 君たちが階段を下ったか、海底から侵入したのかはともかく。どのみちひとまずイルカたちはここでお別れだ。
 とはいえ、イルカがいないと無事に帰れるかわからないため、海底から進んだものはプールのような場所で、海上から進んだものは階段付近の海でイルカが待ってくれている手はずになっているので心配はいらない。
 イルカに待機を頼み、君たちは遺跡を進むことになる。
 途中、釣り天井の罠を抜け、鍵のかかった扉をこじ開け、狭い狭い通気口の先にある隠し部屋をのぞいて……、
 そうして君たちは、一つ。祭壇のような場所にたどり着いた。
 君たちが持っていた、青い石の付いた蓋のあかない宝箱は、確かにその祭壇を指し示していた。
 祭壇には、子供ほどの大きさの、機械の鳥が収められていた。胸に宝箱と同じ宝石がはまっている。そこに向かって宝箱の光も伸びていた。
『汝』
 そうして君たちがその祭壇の前に立った時、鳥が口を開いた。
『汝の宝を示せ』
 祭壇が輝きを発する。それと同時に……、
 ふわふわ。ふわふわと。
 やたらファンシーな、虹色の羊たちが舞い降りた。
 羊たちはキミたちを見て襲い掛かってくる。これはおそらく、遺跡の防衛機能などではない。
『汝の宝を示せ』
 その証拠に、機械の鳥たちはキミたちの言葉を待つように、もう一度同じセリフを繰り返した。



******
まとめ。
遺跡(水なし空気あり)に侵入し、オブビリオンを倒し、あなたにとっての宝を答えてください。
口に出すのが恥ずかしい場合は、念じるだけで結構です。
あ。尚、この遺跡は戦闘終了後数分で自動的に崩壊します。お約束ですね!

祭壇に念じると宝箱が開くので、その中に入っているものはお持ち帰りいただいて大丈夫です。
(アイテムの発行は致しません)
中身は指定してくれるとそれになります。お任せの場合は、ちょっとそれを受け取ったときのPCさんの反応が難しいので、どういう方向性のものを貰って、喜ぶかとか、ちぇってするかとかは指定しておいてくれるとありがたいです。
でも別に重要なものでもないので、それよりも探索メインで! とか戦闘にプレイングをさきたい! とか、イルカとの別れをずっと惜しんでいたい! とかいうときはスルーしてくださって結構です。
その後いろいろあって、遺跡が崩壊を始めるので、脱出するぞ! って、ところで第二章は終了です。
だいたい好きなように遊んでくれると私も楽しいですが、壁だけは破壊すると爆破前に遺跡が水没するので壁破壊だけは禁止です。

●その他補足
・敵について
だいたい一人につき1~2体ぐらい開いてのイメージで。そんなに強くはありません。
フラグメントの『夢』は、あなた方の『宝』に関すること……みたいなざっくりとしたイメージで行きます。

・箱の数について
今回、二人で参加して一つ箱を得たと描写された方。
また、一人参加だけど誰かと一緒になって、一つの箱を見つけた方。
各自、道中もう一つ、二つ、箱を拾った、ということにしていただいて構いません。
勿論、『私たちは仲良しだから二人でひとつでもオッケー』っていうのも、大丈夫です。
特に一人参加の方は、次も同じ人と一緒になるかはわかりませんので、各自自分の箱はちゃんと持ってるってことで始めてくださって大丈夫です。
2章より参加の皆様も同様です。どこでどうやって拾ったかとかは記載しなくてもオッケーです。いつの間にかあなた方の手にある……。

●プレイング募集期間について
6月18日(木)8:30~21日(日)20:00まで。
また、無理ない範囲で書かせていただきますので、再送になる可能性があります。
その際は、プレイングが返ってきたその日の23時までにプレイングを再送いただければ幸いです。
(それ以降でも、あいていたら投げてくださってかまいませんが、すべてを書き終わっている場合は、その時間をめどに返却を始めますので間に合わない可能性があります。ご了承ください)
多分、この感じだと帰り道に怪獣に踏まれるとかそういう事故がない限りは大丈夫だと思います。


それでは、良いトレジャーハントを。
ベイメリア・ミハイロフ
まあ、虹色でふわもこの羊さん…?
とてもおかわいらしいですけれど
眠らされて生命力を奪われては、困ってしまいますね
眠気と戦いながらのお相手となりそうでございます

お相手の攻撃は第六感にて見切り回避またはオーラ防御にて防ぎたく
可能であれば先制攻撃を利用
範囲攻撃にてなるべく多くの対象を巻き込むよう攻撃を
高速詠唱からの2回攻撃も狙いながら数を減らすよう努めます
お相手が高くまで飛んでいかれた際には
ジャンプ、空中浮遊、空中戦にて対応を

わたくしの宝…それは
多くの方々との出会い、そして、その方々の笑顔でございます


※お仲間さまと共闘できます際には連携を意識
負傷?されたお仲間さまには医術又は生まれながらの光にて治療を


嘉神・雪
不思議な場所ですね
海の底にあるのに、水が無いなんて

不思議そうに中の様子を見ながら、
祭壇へ近づけば、あの言葉

私の宝……何でしょうね
戦い乍ら、考える事にしましょうか

随分可愛らしい敵ですね
可哀想だけれど、襲い来るならば
【彩散】で一掃を

倒した後は、再び祭壇へ向かい

私の宝は、護る力
私自身を、そして、人々を護る力が、今の私にとっての、お宝

口に出すのは恥ずかしく、瞳を閉じて念じれば

まあ……これは、武器、でしょうか
綺麗な装飾ですね
(武器の内容はお任せします)
ふふっ、大切に使います

さあ、此処が壊れてしまう前に
脱出しましょうか

◇アドリブ歓迎



 歩くと足音が響く。
 それすらも……、
「……不思議な場所ですね。海の底にあるのに、水が無いなんて」
 雪の言葉に、ベイメリアも小さく頷いた。
「この天井の上にも水があるのですから……何だか緊張いたしますわね」
 崩れるときは一瞬だろう。そんな雰囲気に、雪も一つ、小さく頷く。やっぱり不思議な感じがすると、天井のあたりを眺めながら、重い石の扉を押すと、
「……これは」
「何でございましょう……」
「わかりません。異国の神を奉った祭壇……でしょうか?」
 言いながらも、雪は部屋の中へと踏み込んだ。踏み込みながら、考える。
 その部屋は、さほど広くはなかった。奥のほうに光り輝く祭壇のようなものが置かれ、そこに、機械の鳥のようなものが置かれている。ベイメリアたちが見たのは、手のひらに乗るぐらいの大きさの鳥だ。だが、鋼で出来たその羽はとても緻密で今にも動き出しそうで、その額には宝箱と同じ青い宝石がはめられていた。
「けれどもここまで、なんていうか……かなり適当でしたから、祭壇を模した別のものかもしれませんね」
 割と、面白いもの一杯詰め込んだ感があって。世界観はエジプトのピラミッドだけど、もうちょっとごちゃっとしているのだ。
 ……と、そこまで考えたのだけれども、雪は最後まで口には出さなかった。もとより口数が少ないのだ。けれどもベイメリアも慣れた様子で、言葉の続きを察して頷く。
「確かに……」
 うまくは言えないが、信仰心のようなものが足りないと、ベイメリアも思った。あるのは遊び心だ。
 だからこそ、何があるのか気になる。好奇心赴くままに、二人は鳥へと近づく。宝箱から発せられた光が、鳥の額へとまっすぐに伸びて。その光を吸収するかのように、鳥の宝石は輝きを増していた。箱の宝石の光は徐々に弱まっていく。
『汝の宝を示せ』
 その時、周囲に言葉が満ちた。
 どこからともなく聞こえてきた言葉に、雪は瞬きをする。
「まあ……」
 ベイメリアも首を傾げて、声の主を探すようにくるりと周囲を見回すけれども、それらしきものはない。
 代わりに……、
「どうやら、お客様のようでございますね」
 いつの間にか、やたらファンシーな色をした羊が二人を取り囲んでいた。
「ああ、虹色でふわもこの羊さん……」
 控えめに言って、めっちゃ可愛かった。もこもこした羊たちに、ベイメリアが思わず、歓声に似た声を上げる。
「随分可愛らしい敵ですね」
「ええ。むしろこれは、敵ではないのでは……? だって、とてもおかわいらしい……」
「ももももももももももももも!!」
「はうっ」
 ぽかぽかぽかぽかぽかっ!!
 近寄ろうとしたらめっちゃ蹄で蹴られた。全然痛くないけど。代わりになんだかふわっとした眠気がベイメリアを襲った。
 ちらりと雪は額に足跡の付いたベイメリアに目をやる。
「可哀想だけれど、襲い来るならば戦うしかありませんね」
「う、うう……。そうでございますね。このまま眠らされて生命力を奪われては、困ってしまいますね」
 足跡をハンカチで吹きながら、ベイメリアは「眠気と戦いながらのお相手となりそうでございます」、なんて残念そうな顔で言っている。そんな彼女を横目で見ながらも雪は油断なく霊符を手にした。
「私の宝……何でしょうね」
 ふ、と自問自答をする。
 これ、と即座に答えが出てこなかった。今までの己の道のりを思い出し。目を眇める。
「……戦い乍ら、考える事にしましょうか」
 きっと、見えてくるだろうと。雪はさっと霊符を芍薬の花びらに変えていく。
「心苦しいですが……行きますよ、羊さん!」
 隣でついにベイメリアもやる気になったのか、ベイメリアは羊たちに指先を向ける。点から光が降り注いで、羊たちを撃っていった。
「痛くはありません。……美しい最期を」
 それを追いかけるように、芍薬の花びらが羊たちに降り注ぐ。
「ももももも」
「ももも……」
「も……」
 二人の攻撃を受けて、羊たちの声は徐々に小さくなっていき……。そして、その姿とともに消えて行った。
「羊さん……」
 ベイメリアが小さく祈る。それを雪は何となくほんの少し暖かい気持ちで見つめていた。
『汝の宝を示せ』
 その時、再びあの声が聞こえる。自然と思い浮かんだ言葉を、雪は紡いだ。
(……私の宝は、護る力。私自身を、そして、傍にいる色んな人々を護る力が、今の私にとっての、お宝……)
 口に出すのは恥ずかしい。だから雪はそっと目を閉じて念じる。
 ただのお姫様では持てない戦うための力。それがあるだけで、自分はきっと、幸せだ。
「わたくしの宝……それは、多くの方々との出会い、そして、その方々の笑顔でございます」
 祈りを終えてベイメリアがはっきりと告げる声が聞こえる。
 二人の声に応えるように、宝箱の宝石が一度、強く瞬き。そしてその光を失っていった。
 カチリ、と、箱のふたが開く音がする。
「まあ……」
 なんだか不思議な気がして、雪がそれを覗き込む。
「これは、武器、でしょうか。綺麗な装飾ですね」
「そうでございますね。短剣……でしょうか?」
 恐ろしく緻密な文様が刀身にまで描かれた短剣だ。もしかしたら何か、魔法の込められたものかもしれないが詳細はよくわからない。……ただ、持っていると何だかほんのりあたたかい気持ちになった。
 もしかしたら傷を治したり、ひとを励ましたり、そういう、温かい意味合いの力が宿っているのかもしれない。今のところは、傷もしてないし落ち込んでもないから、わからないけれど。
「ふふっ、大切に使います。……あなたの宝箱の中身は?」
「はっ! そうでございました」
 雪の言葉に、ベイメリアは急いで自分の宝箱を確認しようとした……その時。
 地面が揺れた。
 自身のようで、地震ではない。天井からぱらぱらと、何やら怪しげな壁のカケラなどがふってくる。
「こ、これはもしや……!」
 ベイメリアはぎゅ、と手を握りしめて、
「噂の! この遺跡は自動的に消滅する、というものでございますね!」
 なんだかとても楽しそうに言うので、思わずきょとん、としてから。
「……さあ、此処が壊れてしまう前に、脱出しましょうか」
 短剣を抱えてそういうと、
「はいっ」
 やたら楽しそうなベイメリアとともに、走り出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

篝・倫太郎
忍び足、第六感、聞き耳辺りを駆使して罠は回避して進む
どこぞの考古学者の追体験した気分だ……

なんだろなぁ、お宝に惹かれたんだろかね
さっさと倒して、サクっと宝箱開けますか

天地繋鎖使用
最寄りの敵を指先を走らせて指定し先制攻撃
詠唱と同時にダッシュで接近して
衝撃波と破魔を乗せた華焔刀でなぎ払いからの2回攻撃

宝は家族だよ
最愛の花簪と子供達――
俺の宝で命つか、生きる意味だ

開いた宝箱の中には
竜胆石の緻密な細工の装飾品
戦争の時に知ったけど
石そのものの価値はそこまで高くない
でも、こいつはすげぇ
色の濃淡が異なる竜胆石を何個も使って作られて……

お約束が過ぎんだろ!
帰りもどこぞの考古学者の真似事かよ!
ダッシュで撤退!



 倫太郎はむむーっ。と、眉根を寄せた。
 足元に嫌な感触がある気がする。
 そういう勘は、割と当たるので。そぉっと倫太郎は踏みかけた床を回避して、ちょっと先へとジャンプ。即座に壁に張り付いてほかの罠を調べながら、じっくり、じっくり、先を進んでいく。
「なんだろう。どこぞの考古学者の追体験した気分だ……。っとぉ!?」
 がちっ。
 壁についた手が何か触った。ゴゴゴゴゴ。と遠くから、地響きのような音が聞こえてくる。
「ちょ、ま……っ。お約束過ぎんだろ!!」
 ごろんごろんごろんごろん遠くから何かが転がってくるような音がしている。
 倫太郎は慌てて走り出した。

「ていうか、だいたい、なんでまた、こんなところに……」
 ぜいぜいぜい。
 普段結構鍛えて、相当な戦闘でも耐えうるはずの倫太郎が何ということでしょう。
 それだけしょうもない罠が多かったからともいえる。
 転がる大岩なんて本当は吹き飛ばせばいいのだろうけれども、ついつい逃げてしまったのもこれも考古学学者の呪いか何かだろうか。
「……ていうか、ここだな!? ここだよな。もうダミー扉には騙されねぇぞ。今度こそ……」
 オープンセサミ!
 ついついノリでそう唱えながらも、倫太郎は重そうな石の扉をゴゴゴ……。と、押し開けた。

 扉の先には薄暗い部屋。さほど広くもないが、ぼうっと一番奥が輝いている。
 そこには機械仕掛けの鳥がいて、鳥の頭には宝石箱と同じ、青い宝石が輝いていた。そして……、
「なんだろ、逆に当たりってことだからほっとするよな」
 ぽわぽわと鳥の前に立ち塞がるように浮く、虹色の羊。
「なんだろなぁ、お宝に惹かれたんだろかね。なぁんか、逆にこれが正解の証拠って気がしてほっとするんだけど」
 なんてぼやきつつも、さっと倫太郎は視線をやる。視線と同時に指先を羊に向けて、
「其処に天地を繋ぐ鎖を穿て」
 詠唱。それと同時に天と地から不可視の鎖が発生し、目の前の羊を貫いた。
「も!」
 その後ろにいた羊が驚いたように鳴くので、
「遅い!」
 一瞬で距離を詰め。愛用の薙刀、華焔刀で薙ぎ払う。
「も!」
「も!」
 ちょうどいたのは二匹。じたばたしながらもなんとか一撃粉砕は免れていた羊たちであったが、
「こいつで……仕上げだ!」
 とどめの二回攻撃で綺麗に半分にされたのであった……。

 霧散していく羊たちを一瞥して、完全に消えたのを確認してから倫太郎は祭壇のほうへと進む。
『汝の宝を示せ』
 祭壇の前まで行くと、機械の鳥がそう尋ねた。無機質なその声音に、倫太郎は一つ頷いて宝箱を鳥の前に差し出し、答える。
「宝は家族だよ。最愛の花簪と子供達――」
 そこまで言って、一息ついて、
「俺の宝で命つか、生きる意味だ」
 照れずに言い切った自分に、なんとなく感動した。
 昔だったら、もしかしたらこんなことを口に出すのは恥ずかしいと思ったかもしれない。
 でも、今倫太郎は、本当に疑うことなく、迷うことなく、その当たり前の真実を、当たり前のように告げたのであった。
 コォ、と鳥がかすかに何かを言った気がした。
 宝箱から発せられた光は、吸い込まれるように鳥の宝石の中へと消えていく。
 そしてその光は徐々に鳥の中に納まるように細くなり、箱の宝石は光を失った。かわりに鳥の宝石の輝きが、強くなった気がした。
 同時に、カチリ、と、箱から音がして、蓋が自然と開いていった。
「……」
 自然と開いた箱の中を、倫太郎は覗き込む。
 そこには、一つの装飾品が入っていた。
「おお……」
 倫太郎はそれをつまみ上げて天にかざす。
 どうやらそれは、髪留めのようであった。といっても、土台を切り外せば簡単に他のものにも作り変えられそうな雰囲気ではあったが。
「あー。バレッタってやつかな? 簪とは違うんだっけか……」
 世界が違うと装飾品もいろいろ違うのだが、いかんせん女性のアクセサリー類には倫太郎はさほど詳しくはない。詳しくはないのだが……、
「それにしても……」
 良し悪しはわかる、と、倫太郎はくるりとそれを回して見せた。上から、横から。反対側から。つぶさに観察する。
 細工に主に使われているのは竜胆石だ。
(戦争の時に知ったけど、石そのものの価値はそこまで高くないんだよな……。でも)
 くるくると回しながら倫太郎はつぶやく。
「でも、こいつはすげぇ」
 でも、それをふんだんに使っているとなれば話は別だ。
 それは色の濃淡が異なる竜胆石を何個も使って作られていて、美しいグラデーションはまるで波のようだ。沢山の花が集まって咲いているから、紫陽花のようにも見えるけれども、この暗さなのでそうではないかもしれない。幾重にも重なったその装飾は緻密で、触れているだけで作り手の繊細さや、細部へのこだわりが感じられる。それに……、
「何だろう。魔法の品だからか?」
 魔法の品らしく、そっと耳を近付けてみると、ものすごく遠くから、波の音のようなものが聞こえてきている……気がした。
「ここの海じゃねえよな。こりゃ……」
 どこだろう。と、言いかけたその時。
 波の音よりもはっきりとした、地響きのようなものが聞こえてきていた。
「……」
 ついでに足元も揺れ始めた。
「………………」
 ぱらぱらぱら、と、天井から埃とともに小石が落ちてくる。天井の破片だろう。
「………………お約束が過ぎんだろ!」
 もう間違いない。この遺跡は数分後には自動的に消滅する!
「ちっくしょ、帰りもどこぞの考古学者の真似事かよ!」
 宝物の検証はそこそこに、倫太郎は髪留めをしまって全力で走り出した。
「そういや、ここ海の中だったな!!」
 廊下からはすでに一部の壁に穴が開き、水が流れ始めている。
「くっそ、撤退!!」
 それで倫太郎は走り出した。崩れる遺跡を駆け抜けて、大事な宝の元へと帰るために……!
 待て、次巻!

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリオ・イェラキ
こんな所に道がありましたのね
素敵な鳥…の前に、あら綺麗な色の羊が
可愛らしいですけれども彼らは獲物なのね

触っても大丈夫かしら
ちょっと止まっていて下さる?
大丈夫影薔薇の蔓で優しく拘束しますわ
そっと手を伸ばして…ふわふわなのかしら
でもお楽しみがありますから長くは遊んでられないの
おやすみなさいと一息に薙ぎ払う

お待たせしましたわ
わたくしの宝ですわね
そうそれは…『夫の心』かしら
気高き緋鷹の意思、頼もしい志
全てに今でも恋焦がれておりますの
ですから箱の中身は夫へのお土産が良いですわ
差し上げて喜ぶ顔が見たいもの
それがわたくしの、幸せ

ふふ。とてもとても楽しい冒険でしたわ
さぁイルカさまが待ってますもの
脱出しましょう



 足音が石の通路に響いていく。どれくらい降りて、そしてどれくらい進んだだろうか……。
「こんな所に……道がありましたのね。あら。まあ、こんなところにも、扉が」
 特に当てもなかったので、あてどなくさまよう……というには足取り軽やかに思い切りよく進んでいたオリオは、扉を見つけてえいや。とそれを押す。そこそこ重かったがまったく気にしない様子で、両手でバン、と扉を開ければ、
「ここでございますか……」
 宝箱の青い宝石が、扉の奥を指し示していた。
 オリオはほんの少し、考えて。慎重に中に入る。オブビリオンの気配がしたからだ。いつ戦闘が始まってもいいように、慎重に目を眇めて中へと突入すれば……、
「素敵な鳥……の前に、あら……綺麗な色の羊」
 祭壇には輝く機械の鳥が置かれている。いや、光を放っているのは祭壇なのだが、その光もあって何だか神々しい空気を持っている鳥の姿があった。鳥の額には青い宝石がはめられており、宝箱から放たれた光は真っすぐ、その宝石の中へと吸い込まれて行っている。
 その様子が気になるところではあるが、この部屋にいるのはそればかりではない。
 やたらとファンシーな虹色の羊が、オリオの気配を感じて「も」「も!」と動き出したのだ。
 丁度二匹いる。鳴き声まで何だかファンシーだ。
「なんて……素敵」
 思わず、オリオは片手を頬にあげてほう、とつぶやく。若干そこに、ため息が混ざった。
「可愛らしいですけれども彼らは獲物なのね……」
 獲物、容赦、しない。
 それくらいはオリオにとって当たり前のことだったが、それにしても……、
「も!」
「ももももも!」
 もふもふジャンプが可愛すぎる。さっきからめっちゃ蹴られてるけれども全然痛くない。蹄は固い感じがするが、そこまで力がないのだ。……だから、
「……触っても大丈夫かしら」
 ふと。そんな思いが頭をかすめた。
「ちょっと止まっていて下さる? ほら。夜薔薇を飾るあなたは、とても綺麗」
 思いついたら即実行。真夜中を彩る薔薇の蔓が、羊の周囲から唐突に出現する。それはするすると羊に伸びて、羊をぐるぐる巻きにしていった。勿論、傷つけないようにやさしく、である。
「では……お邪魔します」
 動けなくなってじたばたしている羊さんに一礼して、オリオはそっと羊毛に触れる。
「ももももももももももも!!」
「ああ……。なんというふわふわ……」
 めっちゃ柔らかかった。
「あなたたち、わたくしたちの枕になりません? 夫もきっと、喜びますわ」
 思わずそう悪の交渉をするも、羊のほうはやる気満々である。とはいえ鶴から抜け出せずじたばたしているので、
「……そう、残念ですわね。ならばもっと、この手触りを堪能していたいけれど……お楽しみがありますから長くは遊んでられないの」
 振られてしまった。残念である。
 オリオはそういうと同時に、星空を切り取ったかのような大剣を一閃させた。
 一息で羊たちは切り裂かれて、霧散していく。
 剣を収めて、オリオは一つ頷いた。やっぱりほんの少し残念だったから、軽く祈って祭壇に向き直る。
「さあ……お待たせしましたわ」
 そうして優雅に一礼して微笑むと、祭壇に祭られていた機械の鳥も徐に口を開いた。
 曰く。『汝の宝を示せ』、と……。
「宝……ですか」
 オリオの言葉に、機械は同じ言葉を繰り返す。決められた言葉意外には喋れないようだったので、
「そう……。わたくしの宝ですわね」
 彼女はしばし、思案したのちに、
「それは…『夫の心』かしら」
 そう、鳥に語り掛けるように、声をかけた。
「気高き緋鷹の意思、頼もしい志……。それから……」
 オリオは語り始める。長々と、彼女の夫の心の強さを、素晴らしさを、いとしさを。鳥は黙って、それをすべて聞いていた。
「……ですから、わたくしは、全てに今でも恋焦がれておりますの」
 そう、オリオが語り終わった。その時、
 すぅ、と、箱から発せられていた光がすべて、鳥の宝石へ吸い込まれるようにして消えて行った。
 同時に、宝箱のふたが開く音がした。
「……あら」
 オリオは宝箱中身を覗き込む。
 最初は、何が入っているかわからなかった。枯れた葉に、根っこのクズのようなもの。乾燥した真っ黒な粉のようなもの。しかししばらく考えて……、
「まあ、素敵。夫へのお土産にちょうどいいですわ」
 これは香辛料だ。それに気付いて、オリオはふっと息をついた。
 珍しくないものもあれば、見たことがないものもある。これで料理を作ったなら、どんな味になるだろう?
(よかった。差し上げて喜ぶ顔が見たいもの……。それがわたくしの、幸せ)
 きっと、喜んでくれるに違いない。もしかしたら、この香辛料が取れる場所を探しに行きたくなるかもしれない……なんて。オリオが思いをはせていた、時。
 ごごごごごごごごごごご。
 と、遠くから地響きのような音が聞こえてきていた。
 地面が揺れている。……崩れるのだ。
「……ふふ。とてもとても楽しい冒険でしたわ」
 それでもオリオは優雅に、祭壇に向かって一礼する。
「さぁイルカさまが待ってますもの。脱出しましょう」
 そうして、彼女もまたその場所から立ち去ったのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オズ・ケストナー
ふかふかだ
あっ、虹色ならわたしもなれるよっ
シャボン玉の光彩に包まれ

わあ、シュネーの服ひっぱっちゃだめだよ
おとうさんがつくってくれた服なんだからっ
シュネーを操り回し蹴り

わ、ひつじさんがひかった
まけないよーっ
おいかけっこのように素早く移動
魔鍵でぽこんと生命力吸収
おやすみ

わたしのたから?

たくさんある
みんなからもらったもの
いっしょに育てたひまわり
かわいいきんぎょさん
それから、と腕の中を見る
シュネー

ずっとずっととなりにいてくれた
ともだちも、たからものでいいよね?
だって、とってもとってもたいせつなんだもの

宝箱の中身は
わあ、かわいいっ
シュネー、イルカさんだよ
海の色したイルカのブローチ

イルカさんにもみせようっ



 おもわずぽすん。と、
 オズは羊のふわ毛の中に手を入れた。そこに羊は、二匹いた。
「も!」
 めっちゃふかふかだった。
「ももももも!」
 羊さんたちが何か言いたげに跳ねているので、うん。うん。と、オズは頷く。
「でも、わたしたちもここにようじがあるんだ。わかる?」
「も!」
 多分わかってないだろうと思われる。うーん。とオズは首を傾げた。なるべく穏便な方向で行きたかったが……、
「あっ、それならね、虹色ならわたしもなれるよっ。ほら、空だって飛べちゃうからっ」
 じゃーん! とばかりにオズは羊ともどもシャボン玉の光彩に包まれる。大きなシャボン玉はふわり、と揺らめいていたが……、
「もも!」
「わあ、シュネーの服ひっぱっちゃだめだよ」
 やっぱりその心の通じない羊さんが、オズの大切なシュネーの服にかじりついて引っ張ろうとしたところでそれをかわすようにシュネーの身体がひらりと舞った。
「おとうさんがつくってくれた服なんだからっ。いたずらしちゃだめだって」
 いうや否や、羊たちの体に奇麗に回し蹴りが入る。も! と声を上げて、羊たちはシャボン玉の膜にびよん、と当たる。
「もも……」
 そっちがその気ならこっちだってやる気になるんだぜ、と、最初からやる気だった羊さんたちそんな雰囲気でふわりと浮き上がる。
「しゃ!」
「わ、ひつじさんがひかったっ」
 びかー!
 羊毛が若干ゴージャスに光輝き、素早い動作でシュネー向かって跳びかかる羊さん。
「まけないよーっ」
 対するオズも負けてはいない。シュネーと共につかまらないように移動しながら、魔鍵をえいえいえい、と、振るった。
「も……」
 威勢はよくとも羊は羊である。結果、生命力を奪われて、消えていく羊たちをオズは見送る。
「おやすみ」
 ね。と、オズもそれを見送る。ぱすんと羊たちが消滅したのを確認してから、オズは祭壇へと向き直った。
 改めて周囲を見回す。意思の扉で閉ざされたその部屋は、さほど広くはなく。奥のほうに祭壇が置かれていた。
 祭壇自体がぼんやりと輝いていて、それに照らされて周囲もそれなりに明るい。そして、祭壇の中央には鳥を模した機械が置かれていた。この鳥のために、祭壇はあるのだろう。
 宝箱の宝石から放たれた光は、鳥の頭にはめられた宝石へとつながっている。オズがその鳥を覗き込んだ時、鳥が言葉を発した。
『汝の宝を示せ』
「……わたしのたから?」
『汝の宝を示せ』
 鳥はオズの問いかけには応じずに、同じ言葉を繰り返す。それしか言葉を知らないかのように。宝を示せと繰り返す。まるでおもちゃみたいだとオズは思いながらも、
 うん、と、オズは一度頷いて。それから胸をはってこたえた。
「たからもの……、たくさんあるよ。みんなからもらったもの」
 ひとつ指を折る。
「いっしょに育てたひまわりとか」
 もうひとつ指を折る。
「かわいいきんぎょさんとか」
 もうひとつ。ふたつ。どんどん告げていく。思い出せばきりがない。多分両手では足りないだろう。
 語っている間、それを鳥は静かに聞いている。ひときわ強く、宝箱の宝石が光を発し、そしてその光が筋になって鳥の宝石へと吸い込まれていった。
「それから……」
 そうして最後に、オズは己の腕の中を見る。とっておきだ、とでもいうように。
「シュネー!」
 笑顔で、そう答えた。
「ずっとずっととなりにいてくれたともだちも、たからものでいいよね? だって、とってもとってもたいせつなんだもの」
 ね、と最後には熱心に、鳥に語り掛けるオズ。
 その時、すうっと宝箱の光が消えて行った。オズのその気持ちが鳥に移ったように、青い鳥の宝石が、ひときわ強く輝いているような、気がした。
 コォ、と、鳥が言葉にならない声を発した。
「? なあに?」
 オズが、よく聞こうと耳を傾けたとき、鍵のようなものが開く音がして、オズが持ち歩いていた宝箱のふたが、開いた。
「あれ?」
 宝箱の中身を覗き込む。すると……、
「わあ、かわいいっ。シュネー、イルカさんだよっ」
 海の色したイルカのブローチを翳して、オズは歓声を上げる。きらきらと光るブローチは、見るものが見ればその素材に驚くようなものであったが、そんなものはオズにとっては興味がなくて、
「イルカさんにもみせようっ」
 ねっ。と、シュネーに語り掛けるオズ。そんなことを言った矢先……、
 ぐらぁ。と、地響きとともに足元が揺れた。
「わっ……。早くイルカさんのところに帰らないとっ」
 段々揺れがひどくなってくる。イルカさんが心配だというオズの言葉に、シュネーもすちゃ、とオズの方に乗って、
「急ごうっ」
 揺れる遺跡の中を、オズは走り出すのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

瀬名・カデル
【花雪】
アドリブ歓迎

イルカさんと一緒にこれ以上進めないのは残念だね…でも、またあとでねってギュっとするんだよ!

遺跡の探索はドキドキするね…こっちかな?
あ…!みてみて景雪、祭壇があったんだよ!

敵も出てきて対応して…

鳥さんからの問い、宝物なんてそんなの決まってるよ、ね、アーシェ。
この子はね、ボクの親友が作ってくれたんだよ、とってもかわいいでしょ!
ボクに遺してくれた、大事な大事な宝物なんだよ。

景雪の宝物、とっても素敵だね。
(細雪をみて)そっか、キミは弟君なんだ…お兄ちゃんのように立派なヤドリガミになってね!

宝箱の中の巻貝を入ってるね。
ええと、こうやって耳に当てたらいいの?(景雪を見て
…わ!素敵だね!


叶・景雪
【花雪】
アドリブ歓迎
難しい漢字は平仮名使用。名前以外カタカナはNG

ここでいるかさんとお別れなんて…
「さみしいね…」

何となくお宝のにおいがする方向におねえさんと進むよ!

ぼくの宝?昔なら、姫さまだだったけど…
今はね、同じ刀派のぼくの兄弟たちかなぁ?
中でも一番かわいいのは、すえっこのこの子!(じゃーんと細雪をかかげ)
おねえさんの宝物はそのこなんだねっ!
物は大切にすれば、心が宿るから……このこも、きっと、
おねえさんに宝物って言われて喜んでるよ!(ふすふす!)

宝箱の中は…わわっ、きれいなまき貝が入ってるよ!?
あ、ぼく、これしってるよ!
こうやってね…(巻き貝をおねえさんの耳にあてて)
海の音、きこえる…?



「ここでいるかさんとお別れなんて……」
 景雪は、とても悲しそうな顔でイルカの頭をそっと撫でた。
「さみしいね……」
 その表情に、きゅぅ、とイルカも悲しそうな顔をしている。そんな姿を見ていると……、
「イルカさんと一緒にこれ以上進めないのは残念だね……。でも、こういう時は、またあとでねってそういうんだよ!」
 ボクがしっかりしなくちゃ! とまではいかないけれども。カデルがギュッとイルカさんを抱きしめて元気づけるようにそう言った。
「う、うん。そうだね。またあとでね。おむかえにくるからね」
 カデルの励ましに、景雪もうん、うん、と、頷く。
「おねえさんも、ぼくが守るんだからねっ」
「うん、頼りにしてるよ!」
 しっかりしなきゃ! と、立ち上がる景雪に、カデルも笑顔で頷く。
「それじゃあ、行こうよ! イルカさん、またね!」
「うん、またね!」
 二人してばいばい、って手を振って。そうして遺跡探索を開始する。
 先ほどまでとは……ちょっと違う。
 罠がある遺跡だから、慎重に進まなければならない。
「遺跡の探索はドキドキするね……こっちかな?」
「うーん。こっちからなんとなくお宝のにおいがするよ! きゅうかくは大事にするといいんだって」
「景雪、お宝の匂いわかるんだ」
「うん、なんとなくだけど……。あっちだよ!」
 景雪が先導しながらも、二人は先に進む。そして……、
「あ…! みてみて景雪、祭壇があったんだよ!」
 ついに、見つけた。
 石の扉の先にある、光り輝く祭壇と。そして大きな鳥を模した機械。
「あれが……?」
「うん、あれが目的地!」
「ももももも!」
 そして応えるように出てきた羊たちはさっくり二人で蹴散らした。

「ももー……」
 消えていく羊たちを見送ってから、カデルと景雪は祭壇へと向き直った。
 宝箱から出た光が、鳥の頭にある青い宝石へと流れ込んでいる。
「この不思議な力を、鳥に渡してるんだね!」
「え、そうなの?」
「うん、そんな気がする!」
 全く根拠はなかったがカデルがそう主張した。多分、間違ってないと思う。
『汝……』
「あ、しゃべった!」
 鳥が口を開いたので、ひゃあ、と景雪は鳥を覗き込む。口が動いていないので、口から発声しているわけではないようだ。なんて、まじめに観察したりしていて、
『……汝の、宝を示せ』
「たからもの???」
 問われた言葉は意外なものだった。景雪とカデルは顔を見合わせて、首を傾げる。
 なぜ今、そのようなことを聞くのかがわからなかったのだ。とはいえ、顔を見合わせてもわかるわけではないので、
「ふっふっふ。知りたいのなら、教えてあげるよ」
 まずはカデルから、なぜかそこで胸を張って。ほら、とアーシェ……黒髪に青い目の戦闘用人形……を鳥に示した。
「宝物なんてそんなの決まってるよ、ね、アーシェ。……そう。この子が、アーシェ」
 見える? と、鳥にも見えやすいようにカデルがアーシェを示す。
「この子はね、ボクの親友が作ってくれたんだよ、とってもかわいいでしょ! ……ボクに遺してくれた、大事な大事な宝物なんだよ」
 ほんの少し。昔を懐かしむように目を細めて。カデルはそう言った。それからちらりと、景雪のほうに目を向ける。
 視線を受けて、景雪も小さく頷く。
「ぼくのばんだね。ぼくの宝……。昔なら、姫さまだだったけど……」
 話しながらも、景雪もまた、昔を懐かしむように目を細めた。そういえば、そんなときもあったんだな。なんて、改めて思うと変な感じがする。
「でも、今は、そうじゃないんだ。……今はね、同じ刀派のぼくの兄弟たちかなぁ?」
 たくさんいたはずだ。景雪は兄弟たちの顔を思い出しながらうん、うん、と、頷く。それから、
「でもね、でも。中でも一番かわいいのは、すえっこのこの子!」
 ほらほらじゃーん。と、景雪もまた見える? と、身を乗り出すようにして真っ白な拵えに納められた霊刀を掲げた。
「ほら、すごくきれいでしょう? とってもびじんさんなんだよ!」
 ほらほら、と、左右に踊るようにして刀を示す景雪に、カデルは思わず噴き出した。踊る姿が何とも言えずに、可愛い。
「景雪の宝物、とっても素敵だね」
「うんっ」
 へへ。と、照れたように笑う景雪。その表情にますますカデルの目元も和らいで、
「そっか、キミは弟君なんだ……お兄ちゃんのように立派なヤドリガミになってね!」
 そっと、細雪に語り掛けるようにカデルは言った。細雪は応えない。けれどもわずかに鞘が揺れた、ような気がした。
「おねえさんの宝物はそのこなんだねっ!」
「……うん、そうだよ」
 無邪気な言葉に、カデルは頷いてアーシェを景雪の前へ。こんにちは、と景雪はぺこりとお辞儀をして、
「物は大切にすれば、心が宿るから……このこも、きっと……」
 アーシェを見て真剣な顔をする景雪に、カデルは首を傾げる。
「そうかな。そんなこと……あるかな?」
 アーシェが全く個別の、人格を持つ……。
 それは、嬉しいのだろうか。それとも……。カデルにはとっさには判断つかなかったけれども、
「うん、きっと、大切にし続ければ……きっと!」
 景雪にそう言われると、なんとなくそれも楽しみかもしれない、と思えてくるのが不思議だ。
「それにね、この子。おねえさんに宝物って言われて喜んでるよ!」
「そっか……。なんだかそういわれると、すごくうれしいよ!! ありがとう、景雪」
 ふふ、と顔を見合わせて笑いあう。
 そうこうしている間にも、宝箱の宝石は徐々に光を失っていった。まるで二人の思いと一緒になって、鳥の宝石へ吸い込まれるようにして消えていく。鳥の宝石の光が増したように思えた。
「……触っちゃ、ダメかな?」
 それを見て、アーシェがぽつんと言った。
「だめだよ。お祭りされてるものは、さわっちゃいけないんだよ」
 景雪はそう言いながらも、好奇心を隠せない表情をしている。
「ちょっとだけなら大丈夫じゃない?」
「そうかな。ちょっとだけなら……」
 そろり。と二人して。
 宝箱のほうに手を伸ばした……瞬間。
 カチリッ。
「あ!! 宝箱あいたよ! 中は……わわっ、きれいなまき貝が入ってるよ!?」
 二人が所持していた宝箱のふたが、音を立てて開いた。景雪が中を覗き込んで声を上げる。
「巻貝かな? 大きいね」
 カデルがそれを持ち上げて首を傾げる。貝の模様が何だかかわいらしい。見て飾るものかなあ。なんてひっくり返していると、
「あ、ぼく、これしってるよ! こうやってね……」
「え?? ええと、こうやって耳に当てたらいいの?」
 巻貝を耳に当てる景雪。カデルが頷いて貝殻を耳に当てると、
「海の音、きこえる……?」
 言われてカデルは耳を澄ます。どこか遠くから、どこからともなく響くのは、優しい波の音だ。
「……わ! 素敵だね!」
「でしょう!?」
 思わず言ったカデルに、景雪が胸を張る。
 すごいすごい。とはしゃぐカデルに、ますますそれで嬉しく成る景雪。そんな二人を、鳥は優しく見つめていた。
 ……まあ、この後建物が崩壊しだして、慌てて逃げることになったのはまた別の、話。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

グィー・フォーサイス
【桜風】

冒険冒険、楽しいな
幾つか見つけた宝箱は背負っていくよ

結都って可愛いものに弱いのかい?
あれが僕よりふわふわに見えてるのなら妬けてしまうかな

よぉし
僕の方がふわふわでかっこいいって事を結都に見せつけるぞ
ジェイドを呼んで風魔法や切手で攻撃さ
手加減はしないよ!

僕の思う宝は手紙かな
誰かの気持ちが籠もった
想いが詰め込まれた手紙
でも僕宛じゃないなら、他の誰かの宝物
宛名があるなら届けておこうかな
後はピンバッチとか宝石とか
キラキラしたものは純粋に嬉しいよ
勿論思い出だって宝物さ
今日の思い出に結都とお揃いのブローチとか出ないかな
宝箱を何個かパカパカ開けちゃえ!

冒険!って感じで楽しかったね
崩れる前に急いで脱出さ


桜・結都
【桜風】

あたかも宝が隠されているといった感じの道中でしたね
罠の解除や隠し部屋などわくわくしました

ですが……宝の前にどうやら倒さねばならないようです
ふわふわと可愛らしい姿をしていますが……こほん
気を引き締めていきましょう、グィーさん

錫杖を手に破魔と雷の全力魔法で羊達を撃退します
グィーさんと連携し標的を合わせ早く数を減らします

そういえば宝を示せと言っていましたよね
宝……手に入れて嬉しいと思うものでしょうか?
難しいです
宝のように思うものでしたら、思い出でしょうか
今日ここにグィーさんと来れたのも、宝物のように大切な思い出ですから
ふふ、お揃いのブローチに出来たら素敵ですね

イルカさん達の元に戻りましょうか



「冒険冒険、楽しいな~」
 両手を振って、なんだか歌うようにグィーは歩く。いくつか見つけた宝箱を背中にくくって背負ったグィーの姿は、なんだか遠足みたいで可愛い。
「あたかも宝が隠されている……といった感じの道中でしたね。本当に驚きました。それ以上にわくわくしたのも確かですが……あの」
「なあに。僕のひげがネジネジしちゃったときの話はもう聞かないからね」
「そ、それはその……」
 思わず笑いかけた結都に、グィーはつーん、とした顔のふりをする。
「結都がうっかり回転扉にもたれかかっちゃって、転んだ話ならしてもいいけれどね!」
「う……っ。あ、あれは見なかったことにしてくださいよ……!」
 あれやこれや話していくのは楽しくて。あっという間に宝の間にたどり着く。
 薄暗い室内の奥のほうに、ぼうっと祭壇が輝いていた。本来ならばこれでおしまいなのだろうけれど……、
「宝は目前。ですが……宝の前にどうやら倒さねばならないようです」
 今は違う。ふわふわ羊さんが二匹、二人の目の前を阻むように漂っていた。
「も!」
「もも!」
 あれが羊の鳴き声だろうか。……何とも、
「ふわふわと可愛らしい姿をしていますが……こほん。精一杯頑張りましょう」
 思わず咳払いをする結都を、ちらりとグィーがもの言いたげに見上げる。
「結都って可愛いものに弱いのかい? あれが僕よりふわふわに見えてるのなら妬けてしまうかな。ボクだってほら。ふわふわじゃないか。……ほら」
「もう。気を引き締めていきましょう、グィーさん」
 ほらほら、と帽子を脱いでまで毛並みを主張するグィーの頭を軽く撫でて結都は羊たちに向き直る。グィーもさっと帽子をかぶって、
「よぉし。僕の方がふわふわでかっこいいって事を結都に見せつけるぞ!!」
 ふふふん。と風の精霊、ジェイドを呼び出した。翡翠色の羽根を持ち鳥の姿をしたジェイドは、ふわりと己のオリジナル切手を操る。
「ほら、まずは切手を貼らないと、ね。手加減はしないよ!」
 切手が羊に張り付く。それと同時に風の刃が羊へと襲い掛かった。
「続きます。力を合わせて、早く数を減らしましょう」
 結都が錫杖を振るう。淡い桜色の花の精が変化したその差苦情が振られるたびに、破魔と雷の魔法が追撃のように羊たちを打ち据えた。
「ももももも……」
 もとよりさほど強くはない羊。しゅわわわわ。と、二人の攻撃に遺跡の中へと溶けていく。
「ふふ。やっぱりモフ度は僕の方が上だね」
 何やら得意げなグィーの表情に、思わず結都も笑って頷くのであった。
 そうして二人は一息ついてから、祭壇へを向き直る。
 二人が戦う様子を、鳥は静かに見つめていた。落ち着いたころに、ついと何やら、音が聞こえる。
『汝の宝を示せ』
 どこからともなく聞こえる声に、結都は首を傾げた。
「そういえば、ここに足を踏み入れた時から宝を示せと言っていましたよね……」
 そうして、宝箱が光っている。もうグィーの背中はびかびか光っている。
 宝箱から出た光が、まっすぐに鳥の額にはめられた宝石向かって伸びているのだ。光を移し替えているかのように、宝箱の光は徐々に小さくなり、鳥の宝石は輝きを増している。
「宝……手に入れて嬉しいと思うものでしょうか?」
 そんな不思議な光景を見て、つい結都は真剣に考えた。まずはその宝の定義から始めなければいけないと。「難しいです』と、思わず口を突いて出ると、
「もっと、単純に考えてもいいと思うんだ」
「単純……ですか?」
「うん」
 グィーが隣でそう言って、鳥のほうに向きなおる。
「僕の思う宝は手紙かな。……誰かの気持ちが籠もった、想いが詰め込まれた手紙」
 グィーは運び屋なので、それが何より大事だとは思うのだ。
「でも僕宛じゃないなら……、他の誰かの宝物だし。つまりそれもやっぱり、宝だよね。宛名があるなら届けておこうかなと、思ってるよ」
 つまり僕の仕事は宝物を運ぶ仕事なんだね。と、グィーがちょっと得意げに言う。それからはっ、として、
「後はピンバッチとか宝石とか、キラキラしたものは純粋に嬉しいよっ。いっぱい集めると楽しそう!」
「ふふ」
 いっぱい宝箱を背負って意気込んでグィーが言うので、思わず結都はふきだした。
「……なるほど。宝のように思うものでしたら、思い出でしょうか」
 グィーの言葉を聞き、結都もそう答える。
「今日ここにグィーさんと来れたのも、宝物のように大切な思い出ですから……」
「そうだね。勿論思い出だって宝物さ」
 ウィンクするグィーに、その顔もまた宝物になるのかな。なんてのんびりと結都は思いながら、小さく頷く。
 そうしている間にも宝箱の光は完全に消え、鳥の額にのみ輝きが残された。
 そしてそれと同時に……、カチリ、と、箱のふたが開く音がした。
「おおっ!」
 グィーは目を輝かせる。背中背中、と、結都のほうに背中を向ける。
「結都、開けて開けて。今日の思い出に結都とお揃いのブローチとか出ないかなー」
「ああ……。ふふ、お揃いのブローチに出来たら素敵ですね」
 ぱかぱかといくつも箱を開けながらグィーが言うので、結都も意識してそれを探す。
 いくつかの中から出てきたのはイルカ型のブローチ。ピンクと水色で色違いのお揃いだ。
 そのほかにも、キラキラした宝石やピカピカの金貨。光るものがいっぱい箱の中からあふれ出した。
「おお~。 お宝ざっくざくだね」
 ふふん。とグィーが得意げにひげをそよがせた……、その時。
 地面が揺れた。自信のようで地震でないそれは、どんどん音が大きくなっていく。
 同時に、あちこちが崩れる音がしてきていて、結都がさっと、顔を上げた。
「イルカさん達の元に戻りましょうか」
「うん! 冒険! って感じで楽しかったね」
 崩れ始める遺跡に、二人は顔を見合わせて……、走り出すのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

テティス・カスタリア
「宝…」
首を傾げた
ああ、でも
「人の、意思。心」
深海水だった時はぼんやり受容していたもの
集めたのは漂流物の方だったけど
多分本当は物に残る思念の方が大事だった
何か、揺すぶられた気がして
気が付いたら駆り立てられるみたいに自分もただの水で居るのをやめてた

「過去へお還り」
遺跡の中の物をちょっとだけ使って攻撃する
大丈夫、終わったら元に…
「…折角戻したのに崩壊?」
努力は時に水の泡
仕方ない
早くイルカと逃げよう
落下物が危なかったらそれも星に変えて動かす
そういえば開いた箱の中身、見ずに掴んで持ってきたけど
「さっきと同じ…じゃない?」
形はやっぱり二枚貝だけど石が違うし中は空っぽ
…でもいいの
「貰ってく」
気分、いいから



 宝を示せと、像が求めたとき。
 テティスは一瞬、押し黙った。
「宝……」
 それほど狭くはない部屋だった。奥のほうに祭壇があり、眠るように機械の鳥が祭られていた。それなりに大きなそれが自由に空をはばたいたなら、どんなにか素敵だろうかと思った時。口もないのに鳥のほうから、静かな問いが放たれたのであった。
 テティスが持つ宝箱から、青い光が鳥へと運ばれている。箱の光が徐々に失われ、鳥の光が力強くなってくる。その様子を漠然と見ながら、テティスは小さく、首を傾げた。
「……」
 宝。……宝なんて、自分には。
 ……ああ、でも……。
「人の、意思。心」
 言葉に出してみると、ひときわ鳥へと送られる輝きが、強くなったような気がした。
「深海水だった時はぼんやり受容していたもの……。あの時集めたのは漂流物の方だったけど……」
 あの時のことを思い出す。ある日、何か、揺すぶられた気がして、テティスは……、
「気が付いたら駆り立てられるみたいに自分もただの水で居るのをやめてた。漂流物がそうしたように見えたけれども、本当は……、多分本当は、物に残る思念の方が大事だった。それがこの身を変えた」
 だから、テティスはそれを大切にする。
 その宝を追い続ければ、自分もきっと、ずっと、人間でいられるだろう……、
「も!」
 ふ、と思いに沈んだテティスの耳に、何やらやけにかわいらしい声が届いた。
「……おや。こんなところに、迷子?」
「ももも!!」
 やたらとかわいらしい虹色の羊が、テティスのほうに迫ってきていたのだ。
「そんなこと言っても、見逃してあげないよ」
 やたらとかわいらしい羊たちに、テティスは手を翳す。遺跡の一部を拝借することにして、
「望む未来、描く星……。過去へお還り」
 星型のエネルギーに変えて、ぺ陳、と羊たちに撃ち込んだ。
「もももー……」
 しゅるしゅるしゅ~。と小さくなって消えていく羊たちをテティスは肩をすくめて見送る。
 そうしてエネルギーにしてしまった扉を、ちょいちょいちょい、として、元の扉に戻そうと……、
「大丈夫、終わったら元に……」
 戻そうと、して……。
 ゴゴゴゴゴ、と、何やら不穏な音が周囲に響き、足元が揺れ始めた。
「……折角戻したのに崩壊?」
 遺跡が崩れ出している。見れば宝箱の光は完全に消え失せて、蓋が開いていた。どうやら用事はこれで終わったらしい。
「努力は時に水の泡。……仕方ない」
 終わったならこれ以上の要はない。早くイルカと逃げようと、テティスは走り出す。落ちてくる瓦礫や道をふさぐ岩を星に代えて、一目散にイルカの元へと走っていく。
「そういえば開いた箱の中身、見ずに掴んで持ってきたけど……」
 走りながら、ふとテティスは握りしめたままの宝箱に目をやった。
 せっかくだ。開けて行こう。と、それを開けば。
「さっきと同じ……じゃない?」
 見えたのはやっぱり二枚貝で。だけど石が違うし中は空っぽの、そんな貝だった。
 テティスはそれを、じっと見つめる。
「……でもいいの……。貰ってく」
 気分、いいから
 そこまでは口に出さずに、テティスは再び走り出した。
 遺跡の中だというのに、なぜか爽やかな風を感じた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

三咲・織愛
【星綴り】
遺跡探索、楽しかったですねー!
罠や仕掛けをくぐり抜けてきたからこそ、
宝物を手に入れた時の感動も一入ですよねっ
探索だけでもたっぷり楽しんじゃいましたけど

さてさて、お宝はどこでしょう?
宝を示せって、この宝箱のことでしょうか

ともあれ、えいやーっ!!
なんだかよくわかりませんけど襲ってくる羊さん達にはストレートパーンチ!

あ、宝箱が開きましたよ!
どこかの鍵、でしょうか?
どこで使えるのかしら。ふふ、なんだかこれもロマンですね
いつかどこかで使えるかもしれないから、持っておきましょう。ね

さあヨハンくん!
ぼーっとしてたら遺跡が崩れてしまいそうです
脱出しましょ!
手を取ってイルカさんのところまで戻りまーす!


ヨハン・グレイン
【星綴り】

そう……ですか。楽しかったですか……
大体織愛さんが腕力で解決していくのを隣で見ていただけですが
壁を殴ろうとしたのを止めたのは褒められるべきだと思う

敵を殴るのは止めない
哀れな羊達が風を切るようにきりきりと舞っていく姿も
なかなか趣がありますね

宝箱は二人で一つだったのでそれを
祭壇に掲げてみましょうか

鍵、か
一体なんの鍵なんでしょうね
使う場所も知れないとなるとただのガラクタのようですが……、
まぁ、いいんじゃないですか。持っているくらい
……使える場所でも探してみましょうか
使えるのがいつになるかわかりませんけど

さて、崩落に巻き込まれても敵わない
手を取られるまま、おとなしく脱出しよう



「遺跡探索、楽しかったですねー!」
「そう……ですか。楽しかったですか……」
 るんるんの織愛とは裏腹に、ヨハンはぐったりとしていた。
「え!? 楽しくなかったですか!?」
「俺はもうちょっと楽なほうがよかったです」
「なんと! 罠や仕掛けをくぐり抜けてきたからこそ、宝物を手に入れた時の感動も一入になるんですよっ。探索だけでもたっぷり楽しんじゃいましたけど!」
 ふんす、と胸を張る織愛に、ヨハンは遠い目をしている。罠や仕掛けを潜り抜けというが、それをほぼ腕力で解決してきたのは、果たして潜り抜けた、というのだろうか。
「ぶち壊して、の間違いじゃないですか……?」
 さすがに壁を殴ろうとしたのは止めた。それは褒めてもらいたい。というか自分で自分をほめてあげたい。止めたときに「なんで?」と言われたので、「なんでわからないんだ?」と逆に聞きたくなったけれども聞かなかったのも自分で自分をほめたい。
「え。ほら、昔から言うじゃない。罠ははまって踏み倒すって。正攻法ですよ」
「…………まあ、いいですけどね」
 結局すべての罠をぶち壊して進むのを、ヨハンは隣で見てついて言っていただけなのに、なんでこんなに疲れているんだろう。みたいな目をしながらも、ヨハンは一つため息をついた。それ以上は何も言わなかった。無駄だし。
「ふふ。ヨハン君も分かってくれたことだし、さてさて、お宝はどこでしょう?」
 よいせ。と。重苦しい石でできた扉をぶち破る勢いで開けて、織愛はその部屋の中へと踏み込んだ。
 薄暗い、さほど広くない部屋だ。奥の方でぼうっと輝いているのが祭壇だろう。そこに子供ほどの大きさの、機械の体で出来た鳥が置かれていた。
 翼の感じからして、あれ、ちゃんと動いたら飛べそうだな。なんてのんびりヨハンが見つめていたところで、
「も!」
「ももも!」
 どこからともなくぽわわわわん。と。
 虹色の毛をした羊たちが顔を出した。
「わ、羊さんですね」
「オブビリオンですよ」
「わ、わかってますよ! どうしてこんなところにいるのか、なんだかよくわかりませんけど……。ともあれ、えいやーっ!!」
 ばーん!
 のんびりした言い方でものすごい勢いのストレートパンチがうなる! 羊さんの体に沈みこんで炸裂する!
「とりゃあ!!!」
「ももー」
「……」
 出てくるなりキリキリまいして飛んでいく羊さんに、ヨハンはもはや無我の境地でそれを見送るのであった。
「……哀れな羊達が風を切るようにきりきりと舞っていく姿も、なかなか趣がありますね」
 コメント、それだけ。
「えへへ、そうかなぁ~。それほどでもありませんよ~」
 なぜか照れる織愛。褒めてない。
 極力ヨハンは考えないようにして、祭壇のほうに向きなおる。覗き込めば、機械の鳥がおかれていた。額に青い宝石がはめられていて、宝箱から発せられる光はその宝石の中へと吸い込まれて行っている。
『汝の宝を示せ』
 不意に、どこからともなく声が聞こえた。機械めいた声であった。
「宝を示せって、この宝箱のことでしょうか。これが欲しいんでしょうか?」
「ちょ、乱暴するのはやめましょう」
 えいえいえい。と宝石と宝石を引っ付けてぐりぐりする織愛を、慌ててヨハンは引っぺがす。
「こういうのは、軽く掲げればいいんですよ。……ほら」
「ええ~」
 なぜそんなにも不満そうなのか。取りあえず突っ込むの早めにして、ヨハンはしばし待つ。宝石から放たれた光はゆっくりと鳥の宝石へと吸い込まれていく。その証拠に、宝石箱の輝きは徐々に失われて、鳥の宝石は色鮮やかに変わっていく。
 そうやってすべての光が鳥の宝石に吸い込まれた時、カチリ、と、箱のふたが開く音がした。
「あ、宝箱が開きましたよ!」
「みたいですね。ほら、だいたいの物事は、暴力に訴えなくとも解決できるんですよ」
「うーん。どこかの鍵、でしょうか?」
 聞いてなかった。織愛は鍵を持ち上げてじぃ、と見つめる。
「家の鍵にしては、装飾が凝ってますね」
「鍵、か……。確かに、一体なんの鍵なんでしょうね」
 横からヨハンもそれを見つめた。装飾が凝っている、なんて言っても、
「使う場所も知れないとなるとただのガラクタのようですが……」
 道具が道具として役割を果たせないなら意味がない。そんな物凄く夢のない発言に、うーん。と織愛は首を傾げる。
「そんなことないですよ。きっと世界のどこかに、使える場所があるはずですから。……どこで使えるのかしら。ふふ、なんだかこれもロマンですね」
 それはきっと、飛び切り素敵な魔法の扉だ。
 楽しそうに笑う織愛は、そっと宝箱のふたを閉めてそれをしまい込む。
「いつかどこかで使えるかもしれないから、持っておきましょう。ね」
「……まぁ、いいんじゃないですか。持っているくらい」
 そういわれると、なんとなく価値がある気がしてきて、ヨハンも軽く頭を掻いた。
「……使える場所でも探してみましょうか。使えるのがいつになるか、わかりませんけど」
「本当? やった。きっとまた、大冒険が待ってますよ!」
「今度はもう少し、腕力以外の力も使って解決していきましょうね」
 ふん、と、拳を握りしめて何やら強さを主張する織愛に、呆れたようにヨハンは肩をすくめた……時。
 地面が揺れた。
 織愛ははっと顔を上げる。
「いけない。……さあヨハンくん! ぼーっとしてたら遺跡が崩れてしまいそうです。脱出しましょ!」
「そうですね。崩落に巻き込まれても敵わない。急ぎましょう」
「イルカさんのところまで急ぎまーす!」
「待っててくれてたらいいんですけど」
「!? 意地悪言わないでください。きっと待っていてくれてますよ!」
 やり取りはいつも通りに。織愛はヨハンの手を取って。そうして全速力で走り出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジュジュ・ブランロジエ
【三空】
アドリブ歓迎

メボンゴをリュックから出す
どんな罠もどんとこ~い!

壁に手をついたらクルッと中に
ここは壁の裏側?
回転扉みたいに壁が回った!
壁を押して戻ったらさつまさんがいない
はっ、今度はさつまさんが中に!?
さつまさん、今助けるよ!
再度壁をクルッとして中に
あれ?いない?

UCで攻撃しつつ二人の連携に拍手
見事な投狸技!
『フライングたぬちゃ~!』

私の宝はお友達!
コノさんもさつまさんも大好き!
『メボンゴもたぬちゃとコノちゃ好き好き~!』

宝箱は一つ
中身は素敵な器
コノさんの料理を盛ったらもっと素敵になるよ!(訳:コノさんのお料理食べたい!)
『コノちゃスペシャル~海の冒険の思い出を添えて~、みたいな感じで』


火狸・さつま
【三空】
狐姿
人語ムリ


きゅー!
イルカさんに行ってきますして
どんとこーい!のポーズ決め

きゅヤー?!
き、消え…?!ジュジュ、メボちゃぁあん!
慌てて壁へぴょんっとジャンプタックル
壁がクルッ
きゅー?
こっち、居ない、ね?と、確認
再び壁押し戻る
きゅヤ???
あれ?こっちにも、居ない?戻って来て、ない?とコノへ首傾げ
きゅ!
コノ、ナイス!と拍手!
ジュジュとメボちゃんの元へ駆け寄り再会喜ぶ


きゅ!
掴まれた瞬間、戦闘態勢!
一気に詰まる距離!迷い無く繰り出す【しっぽあたっく】
華麗なる着地決め
コンビネーション技!と得意気!


きゅ。
今までの縁
これからの縁
仲間と過ごす日々
きゅヤこヤ狐鳴きで示す


器見れば
きゅヤ!
名案!と賛成の挙手!


コノハ・ライゼ
【三空】

いやどんと来られても……ってツッコミ不在!?

探索してたら急にジュジュちゃんが消えて
出てきたと思ったらたぬちゃんが……あああ
回る壁を片手でちょいと止めて溜息
先が思いやられるわネ……

辿り着いた祭壇では
浮かぶ羊見て当然の様にたぬちゃんの首根っこ掴んで全力投狸
怯む敵へ*2回攻撃で【虹渡】を贈りマショ

問いには首傾げ
宝といえば調理道具とか……ナンて巫山戯ながらも
想うのはきっと二人と大差なく
この縁がオレを生かしているのだから、それは宝と言ってもイイわよネ
絶対言わないケド
宝を投げた……?気のせいよ気のせい

宝箱の中身と二人の反応に呆れるやら笑えるやら
しょうがないわねぇ、器を活かすのも料理人の仕事だもの



「ふっふっふ。空気があるなら……」
 がさがさがさ、ごそごそごそ。
「メボンゴ、復活!」
『どんな罠もどんとこ~い!』
 じゃ、じゃ、じゃーん。と。メボンゴを取り出しポーズをとらせるジュジュ。
「きゅー!」
 いっしょにさつまもどんとこーい! のポーズ決めて、
「いや罠はないほうがいいんだから。どんと来られても……ってツッコミ不在!?」
 コノハが頭を抱えていた。
 たぶん今回も始終こんな感じだろう。
 そんなささやかな予感を抱えつつも、三人はイルカさんに行ってきますして祭壇を目指すのであった……。

「例えばこんな、壁の中に!!」
 ぐりん!
「って、ひゃ、ひゃああああっ」
「じゅ、ジュジュちゃん!!」
『や~ら~れ~た~』
「あ、元気そうネ……」
「きゅヤー?!」
 扉が回転してぐりんと回る。ぺいん、と隠し部屋に吐き出されたジュジュは、いたたたた、とメボンゴと顔を上げた。
「はっ。コノさん、さつまさん! ここ、隠し扉ですよ!」
 ぐりん!
 扉を再び押して半回転。元の通路に戻るジュジュ。
「あれ? さつまさん、さつまさん!?」
「きゅきゅきゅきゅいきゅいきゅいきゅい」
 しかし通路にいたのはコノハだけである。コノハは何とも言えない心配そうな顔をしているので、
「たいへん! 今度はさつまさんが中に!? さつまさん、今助けるよ!」
 ぐりん!
 壁をぐるりと回して、ジュジュは瞬きをした。
「……あれ? いない?」

 つまり、数分前。
「きゅヤー?!」
 元気そうとの呟きも聞こえないほどに、さつまは混乱していた!
「きゅきゅきゅきゅきゅきゃ!!!(き、消え……?! ジュジュ、メボちゃぁあん!)」
「落ち着いて、これは……」
「きゅー!!(待って、今助けるから!)」
 コノハの言葉もなんのその。さつまは慌てて壁へと飛び込むようにタックルをかけた。その瞬間、
 ぐりん!
 反対側からも押されたのであろう。扉がぐるっ。と回って、
「きゅきゅきゅきゅいきゅいきゅいきゅい」
 助けに来たぞー。とさつまが声をあげようとした、ところで、
「……きゅー?(あれ? こっち、居ない、ね?)」
 ぐりん。と、さつまは再び壁にタックルをして、元の通路に戻るのであった。
「きゅヤ??? (あれ? こっちにも、居ない? 戻って来て、ない?)」
 意味が分からない、とでもいうような顔でコノハを見上げるさつま。
「……あああ」
 がっくり。と。
 コノハはもううなだれてしまった。
 もう一度体当たりをしたジュジュの動きに合わせて、コノハは回る壁を途中で止める。
「あ……っ!!! さつまさん!! よかった、さつまさん!」
「きゅ! (すごい! コノ、ナイス!)」
 それでようやく再会を果たした二人は、駆け寄り手を取り合ってキラキラした目でコノハに拍手を送るのであった。
「……先が思いやられるわネ……」
 コノハはあんまり、嬉しくなさそうであった。

 その後もありとあらゆる罠を愛と勇気とコノハの知恵で潜り抜け。
 たどり着いた祭壇の部屋で、コノハは若干ぐったりしているようであった。
 さほど広くはない部屋の、奥の方が輝いている。
 祭壇のようなものが輝いているのだ……が、
「ももももももももも」
「きゅきゅきゅきゅいきゅいー!」
 そう簡単にはいかないようだ。立ち塞がるのは虹色の羊たち。威嚇する羊に応えるように威嚇するさつま。
「はいはい慌てないの」
 そんなさつまの首根っこをコノハはつかんだ。
「きゅ!」
 戦闘態勢になるさつま。そして、
「そぉ……れ!!」
 掛け声を一つ。かけて。コノハは全力でさつまを羊たちへとぶん投げた。
「!!!」
「見事な投狸技!」
『フライングたぬちゃ~!』
 ジュジュとメボンゴの解説とともに、さつまは宙を舞う。そのまま狐姿にて跳躍宙返り。
「うーん。いいとびっぷり。――じゃあネ」
「きゅきゅー!」
 からの尻尾攻撃!
 同時にコノハが放った淡く広がる虹の帯が羊を貫いた。 
「ももももも~……」
 ふらふらふら~。と、消えていく羊である。
「すごいすごい!!」
『かっこいい~!』
 華麗なる着地を決めて、コンビネーション技! と得意気にかっこいいポーズをとるさつまに、ジュジュとメボンゴは拍手をした。
「私たちも、まけていられないね、メボンゴ!」
『メボンゴもかっこいいポーズする~!』
 残った羊を白薔薇の花びらが包み込む。しゅぅぅぅぅ。と。しぼむように消えていく羊さん。そして、
「じゃーん!」
『メボンゴでしたー! イリューーーーーージョン!!』
 羊と入れ替わるように現れてポーズをとるメボンゴであった。
「きゅい!!」
 さつまが今度は拍手を送る。コノハもうんうん、て頷きながら拍手を送ったその時であった。
『汝……』
「あれ。コノさんなんかいった?」
「え? 言ってないヨ」
『汝の……』
「じゃあ、メボンゴ?」
『そう、実はメボンゴ!』
「きゅ!?」
『汝の宝を示せ……』
「ああ。ほらほら祭壇からヨ。あっちから声が聞こえてるカラ、行ってみまショ」
 はいはい。と笑いながらコノハは祭壇のほうを示す。
 祭壇には機械の鳥が一つ置かれていた。
 宝箱から発せられた光が、鳥の額へと吸い込まれていく……。
『汝の宝を示せ』
 鳥は決められた言葉を繰り返す。はいはい、とまずジュジュが手を上げた。
「私の宝はお友達! コノさんもさつまさんも大好き!」
『メボンゴもたぬちゃとコノちゃ好き好き~!』
「きゅ……」
 それを受けて、さつまも考えこむ。
「きゅ……きゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅヤこヤ(今までの縁。これからの縁……それから、仲間と過ごす日々)」
 身振り手振りで語るさつまを、うんうん、と、ジュジュが頷いて聞いている。
『たぬちゃわかってる~』
「きゅヤ!」
 メボンゴの声にも、さつまは嬉しそうだった。そして、
「宝物……ね」
 自然と三人の視線はコノハのほうへ……。コノハはちょっと、首を傾げて、
「宝といえば調理道具とか……?」
「!」
「わ……。素敵!」
『職人魂~!』
「待って待って、冗談ヨ」
 何やら盛り上がる三人に苦笑する。
 そんなことを言いながらも、実のところコノハだって、思うことはジュジュやさつまたちと大差ない。
「(この縁がオレを生かしているのだから、それは宝と言ってもイイわよネ。絶対言わないケド)……あ。二人とも、宝箱が」
 ほら、と二人の視線をかわすように、コノハは宝箱を示す。宝を投げた……なんて、気のせいよ気のせい。と肩を竦めている間にも、宝箱から放たれた光は今、完全に鳥の宝石へと吸い込まれていた。そして……、
 カチリ。と。箱が空くことがした。
「……あら?」
『あける。あける。たぬちゃ一緒にあける~』
「きゅ!」
 メボンゴとさつまがせええので蓋を開けて、
『ぱんぱかぱーん!!』
「きゅっきゅきゅきゅー」
 現れたのは……。

「……器……?」
 かなりの大皿だ。陶器製で白地。ふちには何かエジプトっぽい模様が描かれているが、真ん中は白い。沙羅は料理を盛るものだから、それでいいのだろう。
「わ……。すごいすごい。コノさんの料理を盛ったらもっと素敵になるよ! コノさんのお料理食べたい!}
『コノちゃスペシャル~海の冒険の思い出を添えて~、みたいな感じで』
 後半本音が駄々洩れたジュジュに、うっとり~。という仕草をするメボンゴ。
「きゅヤ!」
 名案! と即座にさつまが賛成の挙手をして、
「……え?」
 ただ一人、コノハが付いていけてなかった。
「……」
 宝箱の中身と二人の反応に呆れるやら笑えるやら。ちなみに皿は三枚ほどあるので、かなり大量の料理が盛れそうだ。あとめっちゃ丈夫そうである。
「……しょうがないわねぇ、器を活かすのも料理人の仕事だもの」
「やったー!!」
「きゅきゅい!」
 二人の歓声が響く。やれやれ、と肩を竦めてそれを見つめるコノハも、どこか嬉しそうであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エンジ・カラカ
賢い君、賢い君、遺跡ダ。
お宝があるカナー?
君と一緒に遺跡を探検してー
走って、笑ってーそれからそれから……。
アァ……その前に羊ダ……。
アイツを倒さないといけない?いけない?
虹色の変な羊だなァ……。


賢い君のアカイイトでさくっと倒そうそうしよう。
コレも賢い君もお宝が欲しいンだ。
アレが祭壇カ。
どうしようカナー?

お宝を念じる。
コレの欲しいモノ。

アァ……ジャーキー。それか、賢い君の服。
それからー、賢い君にシロツメクサをあげたいあげたい。
この宝箱の中身がシロツメクサだったらイイなァ……。

せーので開けよう。
行くヨー、せーの!

……これがお宝?
賢い君、賢い君、コレがお宝だって。
ビックリダヨー。



 足音たてずにエンジ・カラカ(六月・f06959)は遺跡の中を駆けていく。
「賢い君、賢い君、遺跡ダ。遺跡。あれハ罠?」
 くん、と鼻を鳴らすとエンジは目を眇めた。あそこの床、何かある気がするなあ。と思ったらその瞬間、
「そーれ!」
 たん、とエンジは手前の地面を蹴った。そのまま勢いよく跳躍して、罠を飛び越していくのか……と思いきや、
 ぽち。
 物凄くきれいに罠の上に着地して、そして同時にまた走り出す。
 しゅん! と天井から風を切る音がして、数えきれないほどの槍がエンジに向かって落ちてきた。もちろん、鋭いは先はエンジのほうを向いている。
「罠だ。罠だな。賢い君、これは面白いなァ」
 自分に向かって迫りくるそれを、走りながら紙一重でかわして先へ進む。賢い君に笑いかけ、避けきれない部分は払いのけ。そうしてさらに別の罠をわざわざ踏みに行き。
「お宝があるカナー? 賢い君。探索探検楽しいなァ……」
 なんて笑いながら顔を上げた。ところで。
 一つ目の前に、大きな扉があることにエンジは気づく。
「あァ。なんだか見るからに宝物の匂いがするなァ……」
 エンジは賢い君に笑いかける。そうして一つ頷いて、慎重に扉を開けた。

 扉の向こうはさして広くない部屋だった。
 奥のほうに祭壇のようなものがあって、ひとの大きさほどもある巨大な機械の鳥が像のように立ったまま、収められていた。
 額に青い宝石がはまっている。エンジの持つ宝箱と同じ宝石だ……と思ったら、宝箱の光は真っすぐに鳥へと伸びているようであった。その中へ力を注ぐかのように、エンジの宝箱の宝石は徐々に輝きが小さくなり、鳥の宝石は光が強くなっていく。
「何ダ……? 鳥さんお食事中かなァ……」
 もっとよく見たい。と、エンジが一歩。踏みだした……ところで、
「ももももももも……」
 どこからか、響くような声がしてエンジはゆっくりと周囲を見回した。
「も!」
「……、虹色の変な羊だなァ……」
 現れたのは、虹色の毛並みを持つ羊であった。シャキーン、とやる気満々に廿九日を鳴らしているが、あんまり怖そうではない。それが三匹、エンジの前をぐるぐる回っている。
「も!」
「も」
「もも!」
「……アァ……。そういえばその前に羊ダッタ……。……アイツを倒さないといけない? いけない?」
 なんかあまりに害がなさそうな顔をしているが、立派なオブビリオンである。そして、
「もももー!」
 まったく痛くもかゆくもなさそうだが。三匹とも物凄くやる気でエンジにも襲い掛かってくるので、
「賢い君、賢い君。なんだかもふもふだけど……できるよなァ……」
 賢い君の赤い糸が、さっくりと三匹に襲い掛かるのであった。
「もも……」
「あれ……もう終わりカ?」
 そして出てきたときと同じようにさっくりとあっさりと、消えていく羊たち。
「…………」
 あまりに手ごたえのなさすぎる羊さんに、
「……アレが祭壇カ。どうしようカナー?」
 とりあえずあんまり気にしないことにして(あんまり気にしないのはいつものことかもしれないけれど)、エンジは部屋の奥へと足を進めるのであった。

『汝の宝を示せ』
 そして。
 祭壇の前にエンジは立つ。
 おかれた鳥の宝石を軽くつついてみる。特に何が起きるわけではないが、エンジの宝箱の宝石からはどんどん光が鳥の宝石に吸い込まれて行っている。
『汝の宝を示せ』
 そして何度も繰り返すその言葉に、エンジは首を傾げた。
(コレの欲しいモノ。……欲しいもの)
 心の中で念じる。
(アァ……ジャーキー。それか、賢い君の服。綺麗な綺麗な服がいいなァ。それからー、賢い君にシロツメクサをあげたいあげたい。この宝箱の中身がシロツメクサだったらイイなァ……)
 最初は自分の要望から入ったが、考えれば考えるほどになんだか心の中で要望が混沌と化してきている。
「……せーので開けよう。行くヨー、せーの!」
 結局、そんなことをいろいろ考えながら。エンジはがばっ。と扉を開けた。
「……これがお宝?」
 目に飛び込んできたのは、シロツメグサ……の柄の布。
 宝箱の大きさに反して、引っ張ればどんどんどんどん出てくる。かなり大きな布だった。
 そしてポロンと飛び出るのは裁縫箱。
「賢い君、賢い君、コレがお宝だって。ビックリダヨー」
 つまり、自分で作ろう、ということだろうか。
「君へのドレス、かァ……」
 布を見つめながら、エンジは想像する。
 綺麗な草原色の布地にシロツメグサの花がたくさん揺れていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソウジ・ブレィブス
僕にとっては、冒険が宝だねぇ
考えるだけでワクワクさんだぁ
僕の感では箱の中身はキラキラしてるとみたぁ!(野生の勘)

君たちはどう?キラキラ好き?
親しく話しかけちゃお
とても好きな声には聞こえないねぇ……残念
君たちちょっと運動をしたほうが良いかなー

え?ぴかぴか眩しくなるつもりなの?
好感度狙い?違う?
じゃあ、目を瞑って投擲しーちゃおっかなー
避けないと、やっかいかもよ
おもしろ愉快な姿になりたいなら、喜んで回収してくれてもいいけどねぇ!

(宝箱の中身を見て)
これは所謂、ぼとるしっぷ、さん……
精巧な作り……くぅう、造った人の拘りが
ところで、酒瓶の中に精巧なゴンドラを……?
うーん捻くれてるねぇ
でも風流だよね、アレ



 さほど広くはない部屋の奥に、祭壇のようなものがあった。
 ソウジはゆっくりとそこに近づく。どうやら安置されているのは機械で出来た鳥のようであった。
『汝の宝を示せ』
 祭壇に近づけば、どこか作られたような声がする。
 少し考えて、ソウジはこたえた。
「僕にとっては、冒険が宝だねぇ」
 手に持つ宝箱の、青い宝石から光が放たれる。
 それはゆっくりと、機械で出来た鳥の額にある、青い宝石へと吸い込まれていく。
「考えるだけでワクワクさんだぁ」
 ソウジがそういった時、宝箱の宝石は明滅するように輝いて。そしてゆっくりとその光を失っていった。
 代わりにその光を吸い取ったかのように、青い宝石が明るく瞬いている。
「おや?」
 かちり、と。
 音を立てて、ソウジの持っていた宝箱の鍵が開いた。
「お。お。開いちゃうかな? 僕の勘では箱の中身はキラキラしてるとみたぁ!」
 やった、とばかりにソウジがその宝箱を覗き込んだ……時、
「も」
「も」
「ももももも」
 ソウジの周囲に滲み出るように姿を現したものがいる。
 やたらファンシーな毛色をした羊たちであった。
「君たちはどう? キラキラ好き?」
 慌てることなく、親し気にソウジは羊へと語りかける。しかし……、
「も!」
「とても好きな声には聞こえないねぇ……残念」
 応じることなく羊たちがやる気満々な声を上げるので、
「うーん。君たちちょっと運動をしたほうが良いかなー」
 そういって、ソウジは手を掲げる。戦闘用のバス停ストラップを召喚すると、
「本来武器じゃなくても、武器のようなものさ……僕からしたらね!」
 羊たちも気合を入れて、ソウジへと襲い掛かった。

 羊の身体が、七色の光に包まれる。
「え? ぴかぴか眩しくなるつもりなの? 好感度狙い? 違う?」
 眠りを誘うその光線を受けながら、
「じゃあ、目を瞑っちゃおっかなー。ついでに投げちゃおうかなー」
 と言って目を閉じて、バス停ストラップをぶん投げた。停留所名に数字が刻印されている、すでにいくつか合体させたものだ。
「避けないと、やっかいかもよ。おもしろ愉快な姿になりたいなら、喜んで回収してくれてもいいけどねぇ!」
 ご機嫌でそんなことを言いながら、ソウジは目を閉じたままストラップを投げ続ける。
「も」
「もももー……」
 目を閉じているのではっきりとはわからないが、羊の声と気配が次第に解けて消えていくのを感じてソウジは目を開けた。
「……さーて。お次はお宝お宝……」
 あとはただ、静かな遺跡があるのみである。
 そういうわけで、改めてソウジが宝箱を開けると……、
「これは所謂、ぼとるしっぷ、さん……」
 箱の中に鎮座していたのは、一つのボトルシップだった。
「精巧な作り……くぅう、造った人の拘りが」
 瓶の中には、どうやって入れたのかわからないがゴンドラが入っていた。船体も丁寧に模様が彫られていて、細かなところまで手が入れられている。
「酒瓶の中に精巧なゴンドラを……? うーん捻くれてるねぇ」
 揺らしてみると、中のゴンドラも、揺れる。
「でも風流だよね、アレ」
 まじまじと見つめると、何だか見るたびに細かい発見がある気がして。飽きることなくソウジはそれを見続けるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクトル・サリヴァン
海底から侵入して一呼吸。毒の空気じゃなくてよかった。
暗い所で悪いんだけど戻ってくるまで待っててねー。
ヤバくなったら逃げていいけど、とイルカにおやつのお魚をあげつつ奥へ。
罠をノリと勢いで躱しつつ、それっぽい祭壇へ。
宝を示す?うーん、その前に羊を倒そっか。
向かってくる羊に対し水の魔法で壁を作り減速させて、緩んだ瞬間に銛を投擲。
当ったらUC発動、水シャチに一飲みにして貰おう。

俺の宝は故郷のお店、かなあ。
帰る場所は宝物だよ?旅人にはね。
さて、箱の中身は…円盤?
ああ、この地方の星図かな。
色んな世界、場所があるからあると便利だよねー。
…何か野性の勘がヤバいと言ってるし早めに帰ろっか。

※アドリブ絡み等お任せ



 ヴィクトルもまた、水面から顔を上げた。
 どうやらプールのような空間に出たようだ。
「ふー。毒の空気じゃなくてよかった」
 プールから上がって、軽く体の水滴を振るい落とす。こんな場所にこんな建物があるなんて、あまりに不思議ではあるが……まあ、そういうこともあるのだろう。考えていても仕方がない。
「暗い所で悪いんだけど戻ってくるまで待っててねー。ヤバくなったら逃げていいけど」
 はい、と、ここまでともに泳いできたイルカにおやつをあげる。任せろ、と頼もしく返事をするイルカを残して、ヴィクトルは歩き始めた。尚、その任せろはどこにかかっているのかを問うのは割と忘れていた。
 遺跡は結構な広さがあった。海の底にあるのに水は全く漏れていないのが不思議であるが、つくりからして崩れ始めたら早そうであった。なんとなく野生の感が嫌な感じを醸し出しているが、まだしばらくは大丈夫だろうとか、そんなことを思いながらヴィクトルは先へと進む。
 遺跡の終点は、重い石の扉で閉ざされていた。
 えいこらしょ、と、扉を押し開ければ、さほど広くはない石造りの空間が現れる。
 奥のほうに祭壇があり、それが光り輝いていた。
 そこには機械で出来た鳥が安置されていて、宝箱の光はその鳥の額の、同じような青い宝石へとまっすぐに伸びているようであった。
『汝の宝を示せ』
 どこからともなく、機械の声がする。
「宝を示す?」
 うーん。と、ヴィクトルは首を傾げると、声は同じセリフを繰り返した。
 どうやら、こちらの言葉を詳細に拾っているわけではなさそうだった。
 ふむ……と、ヴィクトルは考えながらも、
「ま。その前に羊を倒そっか」
 と、くるりと振り返った。
「も!」
「もも!?」
 いつの間にか、やたらかわいらしい毛並みの羊がヴィクトルに迫ってきていた。
「ももー!」
「させないよ」
 襲い掛かってくる羊たちを、水の魔法で壁を作り留める。
「それっ」
 そのまま間髪おかずに、動きの鈍った羊たち向かって銛をぶんっ。と、投げつけた。
「さあ、追いかけて、齧り付いて――喰い千切れ」
 それと同時に召喚されたシャチが、羊へと食らいつく。
「もももー」
 ふにゃふにゃふにゃ~。っと、丸のみにされた羊が消えていくのを確認してから、ヴィクトルは再び祭壇へと向き直った。
「で、宝物の話だったよね」
 それで改めて、ヴィクトルは考え込む。しばらくしてから、
「……俺の宝は故郷のお店、かなあ」
 口をついて出たのは、そんな言葉だった。
「帰る場所は宝物だよ? 旅人にはね」
 まぎれもなく本心でそういうと、スゥ、と一度、宝箱の宝石が強めの光を発して、そうしてそれも吸い込まれるように、鳥の額にある宝石へと消えて行った。
 宝箱の光が消えていく。それと同時に、カチリ、と、宝箱のふたが開く音がした。
「さて、開いたね。箱の中身は……円盤?」
 うん? と、ヴィクトルは箱の中を覗き込む。何か丸いものが入っているなあ、と思いながら取り出すと……、
「ああ、この地方の星図かな。色んな世界、場所があるからあると便利だよねー」
 どうやら手作りの星図のようであった。UDCなどで出回っているものとは違う、独特の趣がある。これはいいものいいもの、とヴィクトルは仕舞いながら……、
「……何か野性の勘がヤバいと言ってるし早めに帰ろっか」
 なんだか足元が揺れている気がする。ので、さっさと退散するのが無難だろう。揺れが徐々に大きくなってくるのは、もうしばらくしてからである。

※アドリブ絡み等お任せ

大成功 🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
種であり鳥の卵でもあったのかしらね

宝箱と機械鳥を交互に見遣り
笑みを浮かべたところで
降り来る虹色

ひょいと避けて躱せば
毛玉のひとつが床でぽてんと弾む

めぇめぇ抗議している様子へ
屈んで宥め撫でたなら
馨遙の甘い香りで
安らぎの眠りへ誘いましょ

夢の国の住人のような姿を膝に乗せ
柔らかに毛並みを梳く

あぁ
宝のことでしたねぇ
私にとっての宝は
「可能性」でしょうか

子守歌を紡ぐみたいなのんびりした口振りで
機械鳥へ宝箱を掲げて見せよう

胸の弾むことが好き
新しい発見と驚きが好き
未知に出会う喜び
先の見えない未来だからこそ
様々な可能性に満ちている

零れ落ちて来たのは
見たことの無い真白の種
目を瞬いて嬉し気に破願

さぁ
どんな花が咲くだろう



 さほど広くはない部屋の奥に、祭壇が一つあった。
 まつられているのは機械で作られた鳥である。その額には青い宝石が輝いていて、その宝石に向かって、綾の持つ宝箱が光を放っていた。青い宝石の光が増すたびに、宝箱の宝石は輝きを失っていくので、まるで親鳥がひなに栄養を与えているようだ、なんて、綾は思った。
『汝の宝を示せ』
 とりはいう。機械として、同じ言葉を繰り返している。聞いてどうするのか。なにがあるのか、そんな疑問も、答えぬままにただ、同じ言葉で尋ねるのみであった。
「……種であり鳥の卵でもあったのかしらね」
 宝箱と機械鳥を交互に見遣り、なんとなく呟く。特に根拠はなかったが、それは何故か、的を射ている気がした。綾がそっと笑みを浮かべた
「ももももー!」
 暗い室内に、やたら明るい虹色の輝きが走った。
 素早く走る虹は、一直線に綾へと飛び込んできて、
「……おや」
 ひょいっ。
「も、ももも~……」
 べちょん。
 さっくり避けた綾。勢いを殺しきれずに羊は壁に激突して、情けない声をあげながらぽてんと床に落ちるのであった。
「ももももー」
「ももー! ももももももももも」
 いつの間にか綾の周囲に現れた羊たちが、なんか言っている。その勢いから、抗議していることぐらいはわかる。
「も!」
 床に転がった羊も、噴飯やるかたない、みたいな顔をして綾に向き直るので、
「おや、失礼いたしました。お怪我はありませんか?」
 綾は微笑んで、その羊の背中を撫でる。
 物凄く心地の良い手触りとともに、やはり「ももももも」と怒りをあらわにする羊に、
「神の世、現し臣、涯てなる海も、夢路に遥か花薫れ……」
 そっと、綾は言葉を紡いだ。
 紡ぐと同時に四季謳う吉兆紋の刺繍入り帛紗が綾の周囲へと現れる。眠りを誘う羊よりも早く、眠りを誘う花の香りがふんわりと周囲に満ちて、
「安らぎの眠りへ誘いましょ」
「も……」
 くてん……と眠りに落ちていく羊を膝にのせる。
 撫でるその毛並みはやっぱりとても心地よくて、それを梳きながら綾は小さく頷く。
『汝の宝を示せ』
「あぁ……。宝のことでしたねぇ」
 変わらず。塔鳥に、綾は思い出したかのように。
「私にとっての宝は……「可能性」でしょうか」
 子守歌を紡ぐみたいなのんびりした口振りで。まるで子供に語り掛けるように。綾は空いた手で宝箱を鳥のほうに掲げて、軽く振って見せた。
「私は、胸の弾むことが好き。新しい発見と驚きが好き。……そして」
 綾は一つ、言葉を切ると。
「未知に出会う喜びを愛します。……先の見えない未来だからこそ、世界は、様々な可能性に満ちているのだから」
 胸を張ってはっきりと。そう言い切る綾の宝箱の宝石が一度、強く瞬いた……と思うと、その光が消えて行った。
 光が消えると同時に、カチリ、と音がする。宝箱のふたが開いたのだ。
「……おや、これは……」
 躊躇うことなく綾は箱を開ける。
 その中に入っていたのは小さな袋。
 その中には、真っ白い種がいくつか、入っていた。
「植物の種……であることは、確かですね」
 ただ、綾には見たことのない形をしていた。綾は思わず瞬きを一つ、して、
「……さぁ、どんな花が咲くだろう……」
 思わず。好奇心にあふれた笑みをこぼすのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

藍崎・ネネ
わぁ……すごいの、こんな遺跡があったのね
なんだか広くてひとりだと心細いの
イルカさんとはここでお別れなのね

あのね、また戻ってくるからね、ここで待っていて欲しいの
お願いなのよ

静かな遺跡の中はちょっぴり怖いの……きゃっ
重たい岩が落ちてきたの、どきどきしちゃうの
罠なのかしら
やっぱりこの奥にたからものがあるのね
ふんっと気合を入れて進んで行くのよ

わぁ、きわきわふわふわの羊さんなの
い、痛いの、邪魔をしてくるつもりなの?
ユグルを使って範囲攻撃で追い払うの
叩いてくる子には容赦しないんだから

たからもの、宝箱の中身なの?
あ、開いたの
小さな瓶が出てきたのよ。きらきらしててとても綺麗

ふふ。早くイルカさんのところに戻るの



 てく、てく、てく、と。
 ネネはきょろきょろ、周囲を見回してほう、と一息ついた。
「わぁ……すごいの、こんな遺跡があったのね」
 遺跡は石で作られているように、見える。海の底にあるというのに空気があり、驚くほど広かった。
 歩けば埃が舞う。たてる足音がいつもよりも大きく響いた気がして、ネネは身を竦めた。
「……」
 そ、と、少し戻ってイルカさんが待っているところまで。
「……なんだか広くてひとりだと心細いの」
 うん? おかえり? と、出迎えるイルカさんに、ネネはふるふると首を横に振ってその頭を撫でる。
「でも……、でも。イルカさんとはここでお別れなのね」
 しんけん。な表情で。ネネはイルカさんをじっと見つめる。
 その視線に、じっとイルカさんもネネを見返す。
「あのね、また戻ってくるからね、ここで待っていて欲しいの。お願いなのよ」
 約束。と。真面目な顔をして言うネネに、きゅ! とイルカは面白そうにない。尻尾を軽く揺らしたのは、きっと了解のしるしだ。
「じゃあ、行ってくるね……! 行ってきますなの……!」
 今度こそ。ネネは手を振って歩きだす。
 振り返り。振り返り。
 イルカさんの姿を視界に収めていたネネだったが、その姿も徐々に遠くなり……消えて行った。
 ネネは、一人になった。

 静かな遺跡の中を、ネネはドキドキしながら歩く。
「うう。やっぱり、ちょっぴり怖いの……きゃっ」
 どん!
 天井から落ちてくる岩に慌ててネネは飛びのいて身を竦めた。
 間一髪でネネの隣に落ちた岩は、それなりの大きさがあってちらり。とそれをネネは見る。
「……どきどきしちゃうの。罠なのかしら」
 間違いなく。当たっていたらぺしゃんこだったので、罠に違いない。
「道……塞がっちゃったの」
 だって落ちてきた石は、それほどの大きさがあったのだから。
 途方に暮れたように、ネネは石を見上げる。……そして、
「あ……っ!」
 完全に進んでいた道は塞がれてしまったが、石が落ちてきたその天井。その先へは石をよじ登ったら進める気がした。
「やっぱりこの奥にたからものがあるのね……」
 そしてどうやらその先もまた通路が広がっている気がする。ならば……、
「進めないなら、登っちゃえばいいのよねっ」
 ふんっと気合を入れてネネは岩へと手をかけた。
「どんどん進んで行くのよ……っ」
 任せなさい。とでもいうように。
 えいえいえい。とネネは岩を登り、さらにその先に広がる道に足を踏み出すのであった……。

 そして……。
「うんしょ……っと」
 物凄く重たい扉を、ネネは頑張って押し開ける。
 その先はさほど広くはない部屋であった。全体的に薄暗いが、奥の方で祭壇が輝いている。
「何だかピカピカしてるの……」
 不思議そうにそこを覗き込めば、中には機械の小鳥が安置されていた。ネネが両手でつかめるくらいで、額に青い宝石がはまっている。ネネの宝箱にある、青い宝石から出た光が、その鳥の額の宝石へと吸い込まれて行っていた。
「……?」
 明らかに宝箱の宝石は輝きが減り、鳥の宝石の輝きが増して言っている。不思議ね、と、さらにネネは宝石に手を伸ばそうとした……時、
「も!」
「きゃあ!」
 何かがぽーん、とネネの背中をたたいた。
 いや、叩いたといっても、本人は蹴った、くらいのつもりだったのだが、あんまりにも力が弱すぎるので軽い肩たたきにあったくらいの感触しかなかった。
「え。ええ??」
 びっくりしてネネは振り返る。やたらファンシーな七色の毛皮を持つ羊が、ネネへと迫ってきていた。
「わぁ、きわきわふわふわの羊さんなの。かわい……」
 げしっ。
「い、痛いの、邪魔をしてくるつもりなの?」
 遠慮なくげしげししてくる羊さんに、ネネは撫でようと伸ばしていた手を引っ込める。
「うう。叩いてくる子には容赦しないんだから……!」
 黒いダイヤの連なる鎖をえいえいえい、とネネは払ったりして、黒い羊を蹴散らしていく。
「もも」
「ももー」
「可愛い振りをしてもダメなのよっ」
 羊さんたちが消えていくのに、そう時間はかからなかった……。
 そうして羊さんがすべていなくなったころには、宝箱の宝石からは完全に光が消えていた。
 かわりに、今まで開かなかった蓋の鍵が外れている。
「あ、開いたの。たからもの、宝箱の中身なの?」
 宝箱のふたを大きく開け、ネネが中を覗き込むと……、
「わあ、きらきらしててとても綺麗」
 出てきたのは、小さな瓶であった。見る角度によって、色が変わる。美しいつくりの瓶だ。
「素敵なの。なにを入れようかしらなの……」
 瓶を天へとかざして、じぃ、とネネはそれを覗き込む。……と、同時に、
「ふふ。早くイルカさんのところに戻るの」
 待っているはずのイルカさんを思い出し、ネネは自然と、笑みをこぼすのであった。
「この宝ものを、イルカさんにも見て貰わなきゃいけないのなの」
 きっと一緒に喜んでくれるに違いない。
 想像するだけで楽しくて、ネネはくるりと踵を返し。足早にイルカさんのところへ向かうのであった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夏目・晴夜
私の宝は勿論このハレルヤ自身ですよ
これまで私が積み重ねてきた記憶も経験も、紡がせて頂いたご縁も
全てが今のハレルヤを成す、何よりも大切な至宝です

それとカッコ良く戦えるこの身体も立派な宝ですよね!
服がずぶ濡れで重すぎる事実を微塵も感じさせない機敏さ、
あとこうして喋っている間も羊を捌ける手腕は我ながら素晴らしい
身長だって180センチありますしね!四捨五入したら

しかしこの羊の毛、なかなか悪くないですね
このウールも私の宝のひとつに加えて差し上げますから、褒めてくださってもいいですよ!

宝箱の中身は、皆さんにもてはやされそうなものなら何でも喜びます
変なものは出ないと信じておりますよ。決してフリではないですよ



「私の宝は勿論このハレルヤ自身ですよ。これまで私が積み重ねてきた記憶も経験も、紡がせて頂いたご縁も……。全てが今のハレルヤを成す、何よりも大切な至宝です」
 祭壇の前、晴夜はそう言って胸を張った。
 いいこと言った、みたいな顔をしていた。
 もちろんいいこと言ったのではあるが、その顔には大きく羊さんの蹄の跡がついていた。

 晴夜が最後にたどり着いたのは、さほど狭くはない部屋であった。
 奥のほうに光り輝く祭壇が設置されている。
 その光あふれる祭壇の向こう側に、鳥が恭しく安置されていた。
 晴夜の手に持つ宝箱から、青い光が発せられている。それはどうやら、鳥の中へと吸い込まれていくようであった。
 宝石が光が輝くたびに、吸い込まれるように取りの宝石は青く輝き、宝箱の宝石は色を失っていくので、
『このハレルヤよりも光り輝くだなんて、とんでもないことですねえ。かくなるうえはこの祭壇の上にハレルヤも上がらなくては!』
 とか何とかのたもうていたのもつかの間であった。
 祭壇から、『汝の宝を示せ』という言葉があったその次の瞬間、
 どこからともなく舞い降りた羊さんたちが、一斉に晴夜に襲い掛かったのだ。

「ええい。人がかっこをつけているところにしつこいですよ! ああそれとカッコ良く戦えるこの身体も立派な宝ですよね!」
「も!」
「ももももも!」
 服がずぶ濡れで重すぎる事実を微塵も感じさせない機敏さで、晴夜は愛用している妖刀を振るう。
 対する羊たちも負けてなるものかと全身を七色に光らせて、威嚇の声を上げるのであった。
「ももー!」
「うるさいですよ。あとハレルヤよりかわいらしい存在は許しません。あとこのハレルヤ、こうして喋っている間も羊を捌ける手腕は我ながら素晴らしい。身長だって180センチありますしね! 四捨五入したら! ……あれ、何の話をしていましたっけ。とにかくもっとハレルヤをほめるといいですよ!」
「もももももー!!!!!」
 げしっ。
 なんか蹴られた。
 いやまあ、さほど痛くはないのだが……、
「このハレルヤを足蹴にするとは……。このウールも私の宝のひとつに加えて差し上げますから、褒めてくださってもいいですよ!」
 しかしこの羊の毛、なかなか悪くないですね。と。どさくさにまぐれて触った心地は本当に夢見るような毛並みであったという。

 ……数分後。
 死闘なのかなんだったのかわからない間に、羊たちは消滅した。
 ちなみに羊たちは文字通り倒れると消滅したので、毛皮は剥げなかった。
「せっかくこのハレルヤが虹色のコートを作って差し上げましょうかと思ったのに……」
 ちなみに誰かへ作ってあげるような口ぶりだが、たぶん作っても着るのは自分自身だろう。とはいえそんなことを言いながらも、晴夜は祭壇に向き直る。
「さて、どこまでハレルヤの素晴らしさを語りましたっけ。まだまだ続きがありますよ。これから……」
 かちっ。
 いつまでも続きそうだった晴夜の言葉を遮るように、宝箱のふたが開いた。
 気付けば宝箱の宝石の光は完全に消え失せ、鳥の宝石が美しく光り輝いているだけであった。
「……おお、明けましたか。このハレルヤ、うるさいことは言いませんよ。皆さんにもてはやされそうなものなら何でも喜びます。そうですね、例えば……世界の半分とか!!」
 なんて言いながらも、ご機嫌で宝箱を開ける晴夜。
「変なものは出ないと信じておりますよ。決してフリではないですよ。……それっ」
 宝箱の中には、
「……」
 『はずれ』と書かれた紙が入っていた。
「だからそれは振りではないといったでしょうに……!」
 お約束な晴夜の声が、遺跡にこだましたという……。

 なお、底が二重底になっていて、そこから一本、ブラッシングにちょうどよさそうな櫛が入っていたことに晴夜が気付くのは、まだもう少し先の話である。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ディアナ・ロドクルーン
🌸🐺
こんな階段ホント何処に隠していたのかしらね、吃驚しちゃうわ
こう言う所は罠がたくさんあるって
あ、ほら(志桜ちゃんの服を後ろから軽く引っ張って罠を回避)

もう一つの宝箱ね。え…鳥が…?それに虹色の羊まで。これは…

―私の宝?

宝というような「物」はない
―けれども大切な人は思い出なら…これも宝になるというのかしら

だったら師父との過ごした日々。今でも私の大切な思い出。今の私があるのは全てあの人のおかげ。
後は…(横目で桜色の少女を見遣る。師父と同じように大事に思える私の大切な可愛いお友達。この子のおかげで私は更に頑張れる事が出来る

―ふふ、無駄口はここまでにしておきましょう
さあ、志桜ちゃん手早く倒すわよ


荻原・志桜
🌸🐺
遺跡の中ってあんな感じなんだね
壁に手をついただけで落とし穴があるなんて…
うう、ディアナちゃんがいなかったら危なかったよ
だけどもうひとつ宝箱見つけられてラッキー!
にひひ。これでひとり一個!なにが入ってるんだろ

宝石の光はあの鳥に向かってるみたい――わあ、喋った?!
汝の宝? ひゃっ、え、ヒツジさん…?
示せって、わたしの宝物は、

浮かぶ数々のもの
人であり、思い出であり、物でもある
どれもかけがえのないものだけど――

わたしの宝は、桜かな
恩師から引き継いだもの
大切な人との思い出の花。わたしの力の源となる彩

見せてあげる、桜色の魔法を!
ディアナちゃんいこう、
わたしたちだったらどんな相手でも大丈夫だもん!



「こんな階段ホント何処に隠していたのかしらね、吃驚しちゃうわ」
「ううん。遺跡の中ってこんな感じなんだね……」
 階段を下りた先。意思で作られた遺跡を歩きながらディアナがぼやくと、志桜は己の腕をさすりながら、ちょっと悲し気に息をついた。
「壁に手をついただけで落とし穴があるなんて……。うう、ディアナちゃんがいなかったら危なかったよ」
「志桜ちゃん、真っ逆さまに落ちそうだったからね……」
 幸いなところ、間一髪でディアナに助けられて事なきを得たのだが、したたか腕と脇をぶつけてしまった志桜であった。別に毛皮ない。しょんぼりするだけだ……が、
「だけどもうひとつ宝箱見つけられてラッキー! だよね! にひひ。これでひとり一個! なにが入ってるんだろ」
 立ち直りも早い。もう一個見つけた宝箱を天に掲げて、くるりと回ってみせる志桜。慌ててディアナが手を伸ばした。
「もう一つの宝箱ね……。あ。ほら。こう言う所は罠がたくさんあるって言ったわよね。うかつに走り回らないの」
「ええ。だってわたし、嬉しいのをたくさん表現したいんだよ」
「もう。危ないから……」
「それに……ふふ、ディアナちゃんがしっかりしてるもの、大丈夫だよ」
 面と向かって微笑む志桜に、ディアナは一瞬、押し黙る。
「え。いや……。そういうことは……まあ、任せておいてほしいけど」
「うんっ」
 嬉しそうな志桜に、ディアナは小さく頷いた。それで志桜はほら、と指をさす。
「あの扉! 開けてみようよ」
 どうやら宝箱から発せられた光は、その扉を示しているようだ。ディアナは頷く。
「気を付けてね……」
「はーい。宝石の光はあの鳥に向かってるみたい」
 ディアナの言葉に、そっと志桜も中へと入る。さほど広くはない部屋で、奥のほうに祭壇があった。そこに、機械の鳥が安置されている。
 志桜の言葉通り、宝箱から出た光はまっすぐに鳥のほうへと向かっていた。大きな鳥だ。子供の身長ほどある。骨のようなもので出来た機会の鳥。何となく顔に愛嬌があって、額に青い宝石が光っていた。
「宝箱の光……あの宝石に向かってるわね」
「うん。……あ、こっちの宝石、ちょっと色が暗くなってきたよ」
 どうやら宝箱の宝石から出た光が吸収されて行っているらしく。鳥の宝石は光を吸い取りより一層輝きを増して言っているように見えた。そして……、
『汝の宝を示せ』
「――わあ、喋った?!」
 どこからともなく、機械的な声が聞こえて志桜が思わず身をすくませた。
「え……鳥が……?」
 ディアナが鳥から志桜を守るように立ち塞がる。しかし鳥はかまわずに、
『汝の宝を示せ』
 同じ言葉を繰り返した。
「これは……こたえるまで帰してくれなさそうね?」
「そ、そうかな。汝の宝? 示せって、わたしの宝物は……」
 ディアナの言葉に、志桜は小さく頷く。それなら、と、口を開こうとしたその時、
「ももー!!」
「ひゃっ!!」
 周囲に、謎の声が響いた。
「え、ヒツジさん……?」
「虹色の羊まで現れるなんて。これは……」
「ももも、ももももも、ももももも!!!」
 すぅ、と。
 どこからともなく虹色の羊が舞い降りてきている。
 何匹かいるそれは、驚く志桜と警戒するディアナ。二人を取り囲むようにふわふわと移動している。
「……」
 ディアナが目で志桜に合図する。
「……」
 志桜も小さく頷いた。
『汝の宝を示せ』
 こんな時だというのに、祭壇からは相変わらず声がしている。状況などは判別できないのだろうか。
 先ほどディアナが言ったとおり、答えるまで、この声がやむことはなさそうだ。
「――私の……宝?」
 それで。示せ。ということは何だろう。と。ディアナは少し、考えて。
(私には、宝というような「物」はない――けれども大切な人は思い出なら……これも宝になるというのかしら……)
 なんとなく、ディアナは深呼吸する。それを声に出して言うには、少し気恥ずかしいような。そうでもないような気持で、
「それなら……師父との過ごした日々。今でも私の大切な思い出。今の私があるのは全てあの人のおかげ」
 はっきりと胸を張って、ディアナはそう声を上げる。
「あとは……」
 それから、ちらりとディアナは視線を志桜に向けた。
(あとは……そう。師父と同じように大事に思える私の大切な可愛いお友達。この子のおかげで私は更に頑張れる事が出来る……。この出会い、この子の存在こそが、私の宝……)
 さすがにそこまでは、口に出さなくて。
 そうしてディアナの視線を受けて、志桜は頷く。
 その思いが通じたのか通じていないのかはわからない。けれども次は志桜の番だ。志桜は宝、と言われて、様々なものを思い浮かべた。
(いっぱいあるよね。人であり、思い出であり、物でもある。……どれもかけがえのないものだけど――)
 浮かんでは消えていく姿。どれもこれもが大事なものである。けれども一つだけ、挙げるのだとすれば。
「……わたしの宝は、桜かな」
 そっと。志桜はつぶやいた。
「恩師から引き継いだもの。大切な人との思い出の花。わたしの力の源となる彩……」
 すう、と、一呼吸する。そして、
「ももも……」
 近寄る羊たちを、志桜は見据えた。
「だから、見せてあげる、桜色の魔法を! 桜の魔女の戯れ。どうぞご覧あれ」
 桜の花びらを志桜は作り出す。そしてディアナの顔をしっかりと見つめる。
「ディアナちゃんいこう、わたしたちだったらどんな相手でも大丈夫だもん!」
 その、あまりに力強い言葉に。
 ディアナもそっと微笑んだ。
「――ふふ、ええ、そうね。無駄口はここまでにしておきましょう。……さあ、志桜ちゃん手早く倒すわよ」
 ディアナもまた、その血を代償に黒い狼を陰から呼び出した。
 対する羊たちもやる気なようで、「ももももも」と威勢のいい声をあげながら、二人に向かって襲い掛かる。
「ディアナちゃんと一緒なら、何が来たって絶対負けないよ!」
「志桜ちゃん、それはちょっと言いすぎだって。……まあ、負ける気は、ないけどね」
 自信満々な志桜の言葉に、ディアナは微笑む。
 その羊たちを殲滅するのに、そう時間はかからなかった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

青和・イチ
海上から遺跡に進むよ

…って、ほんと、トレジャーハントの夢を集めたような、遺跡…
(数々の罠や障害を超え、水着もパーカーもボロボロ
(くろ丸もボサボサ
でも楽しい

…ん?鳥が喋っ……え、羊?
わぁ…もふもふがこっちに…ご褒美かな

じゃなくて襲ってきた

仕方ない…もうひと頑張り
くろ丸と連携しつつ、高命中の【流星】で攻撃
高所に逃げられたら『空中浮遊』で追おう

鳥は無事かな

宝…
迷わず目を向けたのは、共に死線を潜る傍らのふわふわ(現在ボサボサ
それから、信頼する仲間、友達、大切な人…
その人達と紡いだ思い出…かな(嬉しげに目を細め
あとこの眼鏡

箱の中身は、謎の虹色もふもふ(極上品)
モフを見てモフらざるは、モフ好きの名折れです



「ああ……」
 イチは息をついた。それがため息だったのか、感嘆だったのかは、本人にもわからない。
「ほんと、トレジャーハントの夢を集めたような、遺跡……」
 ばたっ。
 そんな遺言を残して、イチは怪しげな祭壇の上に突っ伏すのであった……。
「ていうか、あれは反則じゃないかな? 罠解除レバーが折れるとか。折れるとか……」
 なぜか持ってきていた。黄金の招き猫の手みたいなのを、パタパタとイチはふった。ばっきり折れてしまっているので、もう孫の手に使うぐらいしか使用用途がなさそうだ。
 隣で相棒のくろ丸が、ふーっ。っと息をついていた。
「はは。くろ丸、自慢の毛がぼさぼさだね」
 くろ丸も頑張った。微かな狭い隙間を通り抜けて扉の鍵を探したり、ボタンを押したりと兎角大冒険であったのだ。
 そっちもね。みたいな表情に、イチは己の姿を顧みる。
「……あはは」
 数々の罠や障害を超え、イチだってくろ丸のことは言えないくらい、水着もパーカーもボロボロであった。
「……でも楽しい」
 まるで内緒ごとのように言うイチに、くろ丸がこくりと頷いた。その時……、
『汝の宝を示せ』
「!?」
 どこからともなく……いや、イチが突っ伏している祭壇から、声が聞こえた。
 ちなみにその祭壇の下には、イチが抱えるぐらいの大きさの、機械の鳥が収められていた。
「……ん? 鳥が喋っ……」
「も!」
「……え、羊? ……羊??」
 何かある、とは思っていたが、唐突な喋りに位置が反応するその前に、また別の声が聞こえてくる。
 天から舞い降りてきたのは、虹色の毛皮を持った羊であった。
「わぁ……もふもふがこっちに……ご褒美かな。くろ丸、僕もう休んでもいいよね……?」
 めっちゃその毛がつやつやしている気がする。ていうかつやつやしている。触れるとふわぁっ。と、柔らかい感触とともに、一瞬で眠りに落ちることができそうな……、
「も!!」
 げし!!!
「ぶっ」
 夢を見たのも一瞬。
 顔面を羊に蹴られて、イチは我に返った。
 蹴られたのに全然痛くなかったが、さすがに、
「危ないな、メガネが壊れたらどうするつもりだったんだよ」
 そんな位置を蹴飛ばされれば我に返らざるを得ない。とはいえ、イチはくいっ。とずれた眼鏡を押し上げる。
「まあ、壊れないけどね。僕のメガネは、優秀なので」
 眼鏡は顔の一部ですし。
 と、いった瞬間、目から……というか、眼鏡からビームが出て、羊たちを粉砕していく。
「もも!?」
「ももも!!」
 色めき立つ羊たちを、くろ丸がふんす、と追いかける。追い立てて一か所に集めるつもりらしい。
「仕方ない……もうひと頑張り」
 くろ丸の動きに、イチもまた連携して視線を向けていく。
 青い光線が羊たちを蹴散らすのに、そうかからなかった……。

「さて……。鳥は無事かな」
『汝の宝を示せ』
「うん。大丈夫そうだね」
 覗き込むと同時にいわれたので、何かせかされたような気にならないでもない。
 よく見れば、イチの宝箱から発せられた光が鳥の額にある、同じような宝石に吸収されて行っている。何の仕掛けがあるのだろうかと、想像するだけでわくわくするが……、
「宝……」
 それにはまず、この問いに応えなければいけない。
「勿論、僕の大事な相棒と」
 それで迷わず目を向けたのは、共に死線を潜る傍らのふわふわ……否。今は若干こう、あれな姿になっているが、帰ってお風呂に入ればふわふわになるくろ丸である。
「それから、信頼する仲間、友達、大切な人……。その人達と紡いだ思い出……かな」
 ふふ、と、ほんの少しうれしげにイチは目を細める。それから、
「あとこの眼鏡」
 きらっ。と。
 最後にとっておきとでもいうように、イチは眼鏡を示すのだった。尚、水の中だってへっちゃらです。
 そんな彼の眼鏡愛が通じたのか。宝箱の宝石がひときわ光り輝き、そしてその光が消えていく。それと同時に、カチリ、と。蓋が開く音がした。
「……ふっ」
 見るまでもなく、イチはその中身がわかっていたが、一応見る。中身は謎の虹色もふもふ(極上品)である。
「モフを見てモフらざるは、モフ好きの名折れです……」
 なぜかかっこよく言い切るイチであった。手触り、むっちゃよかった。これだけあれば、毛布の一枚は作れるかもしれない。……いや、虹色なのだけれど!
「……」
 そんな毛皮よりこっちを撫でて、と、今はもふもふではなくぼふぼふになったくろ丸が、じっとイチを見ていたのもまた、別の話。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エリシャ・パルティエル
葵桜ちゃん(f06218)と

海底遺跡に祭壇…何かを祀っていたのかしら

可愛い羊さんね
でも他のトレジャーハンターを襲うといけないから対処しないとね

田中さんに羊たちを一か所に集めてもらったら
UCで眠ってもらうわね
せっかくだしちょっともふもふして…

宝物…ふふ、葵桜ちゃんらしいわ
あたしも出会った人たちはみんな大切
葵桜ちゃんも田中さんも大好きよ
その中でも『家族』が特別なの

宝箱が開いたわ!
あら、イルカさん…硝子細工みたい
可愛いわね
家族にプレゼントしようかな
葵桜ちゃんのもとっても綺麗

宝物は大切なもの…
大切なものはたくさんあるわ
(海に潜るから今日はつけてない
大切な人と同じ石を分けて作ったイヤリングを思いながら)


榎木・葵桜
エリシャさん(f03249)と

おおお、羊さん!

見て見て、エリシャさん
ジャンプしてるー!ぬいぐるみみたいでかわいい!

倒すことは躊躇しないけど、
折角だし、遊びつつモフりつつ倒しちゃおうかな

【サモニング・ガイスト】で田中さん(霊)召喚
田中さん、あのジャンプしてる子たち追い込むの手伝って!

私の宝物はね、私と関わってくれる人達みーんな、だよ!
家族も親友も、エリシャさんも!あ、霊だけど、田中さんもね!
皆が居なかったら今の私じゃないもん

箱の中身は…小瓶だね。えっと虹色をした飴…ビー玉、かな?
ふふ、色んな色してて、さっき言った宝物みたいだね

イルカさんもかわいい!
プレゼントいいと思うな、きっと喜んでくれるよー♪



「海底遺跡に祭壇……。何かを祀っていたのかしら」
 エリシャが一歩踏み出すと、乾いた石を踏む音がする。
 海の底を感じさせないその遺跡の終点は、さほど広くはない小さな部屋だった。
「うううーん。どうだろうー」
 部屋の奥には祭壇のようなもの。そこに置かれているのは機械で出来た鳥だ。葵桜がひょいとエリシャの隣から、その鳥を覗き込む。二人の手にした宝箱の宝石。そこから真っ青な光が伸びて、鳥の額にある宝石に吸い込まれて行っていた。
「あら。葵桜ちゃんは違う見解なの?」
「うーん……。遺跡を作った人の趣味かもしれないなーって」
 えへへ。と照れたように葵桜は言う。なんだか適当いってるよね。という葵桜の言葉に、いや、とエリシャは考える。
「一理あるかもしれないよ」
 真相はわからない。けれども今までに見た遺跡の雰囲気や宝物のばらまき具合を考えると、あながち間違っているとも思えない。
「だよね!? だって……」
 エリシャの肯定に、葵桜も頷く。ああでもないこうでもないと考察しても答え合わせはできないけれど、
 けれど、そんな風に考えるのは、ちょっと楽しかった。

「ももも!」
 そんな二人の邪魔をするように、どこからともなくあらわれる姿がある。
「おおお、羊さん! 見て見て、エリシャさん」
 その姿を一目見て、葵桜が嬉しそうな声を上げた。両手を組んで、キラキラした目で、
「ジャンプしてるー! ぬいぐるみみたいでかわいい! 触ってもいいかな!?」
「そうね……可愛い羊さんね」
 やたらとファンシーな姿をした、七色の毛をもつ羊であった。
「でも他のトレジャーハンターを襲うといけないから対処しないとね」
「う、うん。わかってる。わかってるけど……!」
 ちら、と葵桜はエリシャのほうを見て、
「もちろんちゃんと倒すけど……、折角だし、遊びつつモフりつつ倒しちゃっていいかな?」
 ね? って、尋ねる葵桜の目に、エリシャも笑った。
「そうね。せっかくだしちょっともふもふして……」
「もももー!!」
 させぬ! とばかりに羊たちは息まいて戦闘態勢に入る。しかし、
「田中さん、あのジャンプしてる子たち追い込むの手伝って!」
 葵桜が田中さんの霊を召喚。
 模写もしゃもしゃー。っと、槍を使って落ち葉でも集めるみたいにざざざ、と羊たちを集めていく。
「さあ、今ひとときの安らぎを……まどろみの淵へと誘ってあげる」
 羊たちが集まったころ合いを見計らって、エリシャの右掌の星型の聖痕から聖なる光が放たれた。それを受けてぷしゅ~っと眠りに落ちていく羊たち。
「うわ、すっごいやわらかい毛……」
「ええ。枕にしたら気持ちよさそう……」
 そして二人は、思う存分モフモフを堪能したという。

『汝の宝を示せ』
 それでようやく気が済んだ二人が祭壇に再び向き直ると、
 どこからともなく声が聞こえた。
「ふふー。私の宝物はね、私と関わってくれる人達みーんな、だよ!」
 思い切りモフモフしてご機嫌の葵桜が両手を広げる。
「家族も親友も、エリシャさんも! あ、霊だけど、田中さんもね! 皆が居なかったら今の私じゃないもん」
 でしょ!? と、楽しげに言う葵桜に、エリシャは小さく頷く。
「宝物……ふふ、葵桜ちゃんらしいわ」
 それから祭壇のほうへと向き直った。一呼吸ついて、
「あたしも出会った人たちはみんな大切……。葵桜ちゃんも田中さんも大好きよ。その中でも『家族』が特別なの」
 胸を張って前を見て。エリシャがはっきりと語った……。その瞬間、
 ひときわ宝箱の宝石が強く瞬いて、そしてその光が消えて行った。
 代わりに美しく鳥の宝石が輝いている。
 それと同時に、カチリ、と、小さな音が周囲に開いた。それは……、
「宝箱が開いたわ!」
 エリシャが箱を見て声を上げる。
「え、ほんと!?」
 葵桜も、その声に驚いたように視線を落とす。
「箱の中身は……。あっ。小瓶だ」
 葵桜は早速はこの中に入っていたものを引っ張り出す。天に掲げると、かわいらしい小瓶の中にはキラキラ輝く何かが入っていて、
「えっと虹色をした飴……ビー玉、かな? ふふ、色んな色してて、さっき言った宝物みたいだね」
「あら……」
 葵桜の言葉に、エリシャが首を傾げる。エリシャの中身と違ったからだ。それを感じ取ったのか、葵桜がエリシャを覗き込む。
「エリシャさんの箱には何が入ってたの?」
「ええ……。イルカさんの……硝子細工みたい」
 ほら、とエリシャは宝箱の中身を示す。ガラスでできたイルカがかわいらしい顔でエリシャと葵桜を見ていた。
「可愛いわね……。家族にプレゼントしようかな」
「うんっ。イルカさんもかわいい! プレゼントいいと思うな、きっと喜んでくれるよー♪」
「ありがとう。葵桜ちゃんのもとっても綺麗」
「私としては、この中身が食べられる飴なのかビー玉なのか気になるところなんだよね」
 真面目な顔をして言う葵桜に、ふふ、とエリシャはふきだすのであった。
 それで葵桜の笑顔を見て、エリシャは心の中で小さく頷く。
(宝物は大切なもの……。大切なものはたくさんあるわ……)
 今日は海に潜るからつけていないけれども、大切な人と同じ石を分けて作ったイヤリングを心の中で思いながらエリシャは祭壇のほうへもう一度視線を向ける。
 きらきら輝く青い宝石は何処か、二人の大切な思いも閉じ込めたかのように綺麗に輝いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャック・スペード
宝を示せ、か
先ほど見付けたあの宝飾品のこと
……では無いらしいな

テーラーで仕立てて貰ったスーツに
腕時計、黒塗りのヒーローカー
価値の在りそうなものは思いつくが
「宝」かと云われると少し違うような気もする

俺にとって、最も棄てられないものは
機械仕掛けの躰でも得ることが出来た「こころ」だな
ヒトから貰った大切な宝物だと云える
……これで答えになると良いが

柔らかなフォルムの羊は愛らしい
葬送の花を降らせて穏やかな眠りへ導こう
お前たちもいい夢が観れると良いな

宝箱の中には何が入っているだろうか
折角なので、ラペルピンが欲しいところだ
星のように煌めく碧い石が嵌っていると良い
無事に入手出来たら、襟元に飾って持って帰ろう



『汝の宝を示せ』
 祭壇でそう、声が呟いた。
「宝を示せ、か……。先ほど見付けたあの宝飾品のこと……では無いらしいな」
『汝の宝を示せ』
 さほど広くもない小部屋。奥の方で祭壇が輝いている。安置されていたのは機械の鳥だ。子供ほどの大きさがあり、額には青い宝石がはまっていた。宝箱から出た光は、吸い込まれるようにその額の宝石へと向かっている。なるほど、エネルギーを吸収しているのかと、ジャックは思った。
『汝の宝を示せ』
 機械、仕掛けと言っても、ジャックの世界とは違う。歯車と魔法で彩られたその機械は、どういう仕掛けかはわからない。それにどういう感知・解釈をしているのかもわからないが、同じ言葉を繰り返す。曰く、宝を示せと。
「……」
 だから、ジャックは腕を組んで考えこむ。
 テーラーで仕立てて貰ったスーツに、腕時計。黒塗りのヒーローカー。
 価値の在りそうなものは思いつく。どれも安価では手に入らないものだ。
 けれども……、「宝」かと云われると少し違うような気もする。
 例えば戦いで修復不能なほどに破損されたとしたら、また似たような、新しいものが手に入るだろう。
 もちろん、安くはないだろうが。
 ……そういう意味ではないのだと。ジャックは理解する。……理解することが、できる。
「……俺にとって、最も棄てられないものは、機械仕掛けの躰でも得ることが出来た「こころ」だな」
 じっと、祭壇の中で眠る鳥に目をやって。ジャックはしっかりと頷いた。
「ヒトから貰った大切な宝物だと云える。……これで答えになると良いが、どうだろうか。その眠りを覚ますだけの価値はあるか」
 語り掛ける鳥は、今にも飛び立ちそうな顔をしていた。宝箱の宝石がひときわ明るく瞬き、そして徐々に光を失っていく。代わりに鳥の宝石の光は、どんどん強くなっていった。
「やはり、力が充填……」
 されているのかと。ジャックが言いかけたところで、
「も!」
 どこか明るい声が、遺跡の中に響いた。
「も」
「ももも、も」
「もももー」
 やたら愛らしい。柔らかなフォルムの羊たちがいつの間にかジャックを取り囲んでいる。
「も、も、も」
 何やらやる気満々で威嚇する羊に、ジャックは手を伸ばした。
「悪いが、この宝をくれてやるわけにはいかない」
 可愛らしくとも全力で戦闘態勢の羊を容赦することはできない。ジャックは一瞬で己のリボルバーを彩に溢れた色待宵草の花びらへと変化させる。
「葬送の花を降らせ、穏やかな眠りへ導こう。それが好みの役割。……お前たちもいい夢が観れると良いな」
 敵にそんな言葉をかけるのも、本来ならば不要なこと。
 だからきっと、これも彼の宝なのだ……。

 戦いが終わるころには、宝箱の宝石は完全に光を失っていた。
 代わりに蓋が開いているので、ジャックは中を覗き込む。
 折角なので、ラペルピンが欲しいところだ……。なんて思っていたら。
「これは……」
 出てきたのは、イルカのラベルピンであった。銀色のイルカの目には、星のように煌めく碧い石が嵌っている。
「……いい土産ができたな」
 それを襟元に飾って。ジャックは身をひるがえした。
 イルカの瞳がどこか楽しそうに、きらりと光った気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鵜飼・章
大変だったね
まさか通りすがりのサメに青い箱を横取りされるなんて…
イルカさん本当に待っててくれる?
そういえば皆イルカだから名前をあげよう
今日からきみは『ルカさん』ね
…誰かに似てるんだよなあ

羊さんもこんにち…うっ眠い
夢…僕の夢ってなんだ
人間…いやカブトムシ…?
はっ…ダイウルゴスの彫像を探しにきたんだ
【無神論】で黒い羊あたっく

祭壇の鳥さんには勿論ダイウルゴス像をお願いする
でもここって遺跡なんだよね
彫像が出現しだしたのは戦争後の筈だ
この宝箱に入っているのは…おかしい…

僕意外とそういう矛盾が気になるんだ
ああ雑念が混ざってしまった
ダイウルゴス的だけど絶妙にダイウルゴスじゃない竜が出たよ…
うーん…まあいいか



「大変だったね。まさか通りすがりのサメに青い箱を横取りされるなんて……」
 ふっ。と、アンニュイなポーズをとる章。
 そんな章を、イルカにしてはなんだか冷たい目で、イルカさんは見つめていた。
「……悪かったよ。ちょっと鮫の歯を詳しく見てみたいなんて言った僕が悪かったよ。でもあの鮫カッコよくなかった? ほら、縞々だったし。サメ肌だったし」
 ばしゃんっ!
 はよいけ、とばかりに水をかけられる章である。
「わかったよ。行くよ。だからここで待っててよね。……イルカさん本当に待っててくれる? 帰ってきたらいないとかそんなひどいことしないよね?」
 もちろんイルカさんは喋らない。
「……。何だろう。このめんどくさそうな人を見る目……」
 まあ明らかにめんどくさい人なんだけど、と、自分で言いながらも、はいはい、って章は遺跡探索をする準備をする。
「そういえば皆イルカだから名前をあげよう。そう……」
 まだ何かあるのか。という顔にもめげずに、最後にふと章は振り返る。
「今日からきみは『ルカさん』ね。……誰かに似てるんだよなあ」
 いいからはよ行きなさい、と、もう一回水をかけてくるところまで似ている気がして。わかったわかったわかりました。なんて言いながら章は歩き出すのであった。

「でもここ、昆虫とか全然いないね……」
 つまんないな。とか言いながら遺跡の一番奥にある扉を章は手にかける。
 結構重いその扉を押し開けると、奥に祭壇がある部屋であった。そしてそれと同時に……、
「も!!」
「もももー!!」
 なんかいた。
「羊さんもこんにち……うっ眠い」
 げしげしげしっ。
 出会い頭に眠気を誘う攻撃をされた上にさらに踏まれた。
 思わずめまいを覚える章。
「夢……僕の夢ってなんだ。人間……いやカブトムシ……? つまり宇宙と一体化する? はっ……。違う!!」
 何だか怪しい精神攻撃に、章の頭が揺れる。思いを揺らしながら、章が最後に掴み取った夢は……、
「ダイウルゴスの彫像を探しにきたんだ!!」
 でりゃっ。と。
 章は虚無のオカリナを吹き荒らし、我に返るのであった。いいのか、最後に叫ぶ夢がそれで。
 しかしオカリナの音色は絶大である。音楽の神様に嫌われたとしか思えないその音色が羊たちの動きを止めている間に、章も黒い羊を召喚し虹色羊をぼっこぼこにしていくのであった……。

「……さて」
 そうして何事もなかったかのように祭壇に向き直る章。
『汝の宝を示せ』
 祭壇からは機械的な音声が流れる。章の持つ宝箱から青い光が発せられ、それが祭壇に安置されている機械の鳥へと吸い込まれていた。機械の鳥の額にも、同じような青い宝石がはまっていて、そこに力を蓄えているようだ。
「鳥さん鳥さん。どうかダイウルゴス像を僕にください」
 ぽんぽん。と、ついお賽銭を撒いて両手を合わせる章。
 いつの間にか宝箱の宝石の光が消え、鳥の宝石が強い輝きを発していた。
(……でも、待てよ……。ここって遺跡なんだよね……。大昔の富豪が作った自分の墓。…………。彫像が出現しだしたのは戦争後の筈だ……。この宝箱に入っているのは……おかしい……)
 なんか熱心にお参りの体裁をとりながらも考えている章。
(僕意外とそういう矛盾が気になるんだよね……。つまりこれは偽物……夜店で売ってる的な……)
 かちりっ。と。
 宝箱のふたが開く音がした。
(ああ雑念が混ざってしまった……)
 そうして宝箱から出てきたのは……、
「ダイウルゴス的だけど絶妙にダイウルゴスじゃない竜が出たよ……」
 なんか違う。絶対違う。と言いたげな表情を章はしていた。何気に木彫りであった。修学旅行のお土産かな? と思っていると、もうひとつ。彫刻刀が出てきた。つまり、気に入らないならあとは自分で彫れと。
「うーん……まあいいか」
 なんだか納得いかないけれども、納得することにする。
 そうとでも言いたげな表情で、章は一つ頷く。
「じゃ、返ろうか。ルカさんが待ってるし。……待っててくれるといいなあ……」
 さて。ちゃんと待っててくれるかどうかは、また別の話。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
宝を示せと問われれば
僕の宝はソヨゴだけだネ
他にはない
迷わず即答するよ

恥ずかしそうなソヨゴを見てふふと笑い
僕は正直者なだけさ
と胸をはる

ソヨゴがその答えを口にするなら
じゃあ僕も
ソヨゴが大切にする全てが宝だネ
と言い直す
ソヨゴとソヨゴが大切にする世界を僕は守ろう

コレが敵?
僕知ってる
たしかゲーミング羊って言うんでしょ?
綺麗でかわいいけど軽くライフルで撃って倒していこう
空中を跳ね回られるのは案外狙いづらいネ

宝箱の中身はどうなんだろ?
まさかもう一人ソヨゴが入ってたりして

おや中身は空かい?
まあそんな予感はしていた
僕はさっき言った通り

ソヨゴとの楽しい時間が最高の宝だから

崩れる前に脱出しようか


城島・冬青
【橙翠】

私にとっての宝ですか?!
えーと、えーと…急に言われても
?!あ、アヤネさんは大胆だなぁ…
日本人はこういうのは内に秘めるんです

私にとっての宝は
勿論アヤネさんで
でも家族も大切な宝に入ってて
そこには仲のいい友達もいて
…大好きな人たちが誰一人欠けることがない何気ない日常一つ一つが大切で宝なんです
…欲張りな回答かな

獏羊くんは可愛くて倒すのが惜しいですね
カラスくんにお願いして向こうへぽーん

さてついに宝と対面!
宝箱は二人で一つ
中身は山分けしましょうね
ではオープン!

ありゃ?
何も入ってない…
これはただのハズレか
それとも宝は心の中に…!というやつでしょうか?
まぁ楽しかったからいいんで
すが

はい!脱出しましょう



「宝を示せと問われれば、僕の宝はソヨゴだけだネ」
 きらっ☆
 もしくはどやっ。だったかもしれないが。
 胸を張って平然と言い放つアヤネに、うぇ!? と冬青は思わず首をすくめた。
「?! あ、アヤネさんは大胆だなぁ……」
「だって、他にはないだろう? こんなの、迷わず即答するに決まってるよ。僕は正直者なだけさ」
 そんな冬青をふふふ、と見やって迷うことなく胸を張るアヤネに、冬青は何とコメントしていいのやら。カリカリと頭を掻く。

 二人が大冒険の末にたどり着いたのは、さほど広くはない部屋であった。
 奥の方には光り輝く祭壇があり、そこに機械で出来た鳥が安置されている。
 二人の宝箱から出た光は、どうやら鳥の額にはめられていた宝石へと吸い込まれて言っているようであった。まるで吸収されるように光の量が落ちていく宝箱と、輝きを増す鳥の額に、冬青が思わず手を伸ばしかけたとき、
『汝の宝を示せ』
「うっひゃぁあぁあ!?」
 どこかかともなく声が発せられて、思わず冬青は悲鳴を上げて敬礼のポーズをとったのであった。
「私にとっての宝ですか?! えーと、えーと……急に言われても。日本人はこういうのは内に秘めるんです。だから……その……」
 ビシッと即座にポーズをとった割には煮え切らない回答だった。

 ……で、そこからのアヤネの迷いない回答である。
 あんまりにも迷いがなさ過ぎて冬青の視線はさまよいっぱなしであったが、暫く指定を決したように深呼吸。それから一つ、咳払いをした。
「……私にとっての宝は、勿論アヤネさんで。でも、家族も大切な宝に入ってて……」
 思いをはせるように、うん、うん。と。冬青は頷く。
「そこには仲のいい友達もいて……、大好きな人たちが誰一人欠けることがない何気ない日常一つ一つが大切で宝なんです」
 だから、どれか一つなんて、言えない。と。冬青は自分で言って。言いながら、なんだか欲張りな回答かな。なんて、はにかむように微笑む。
 そんな微笑みに、むぅ、と、アヤネが若干頬を膨らませた。
「ソヨゴずるい」
「はい!? ずるいって、なんでですか」
 げせぬ。という顔をする冬青に、ずるいものはずるい。なんてアヤネも主張して、
「ソヨゴがその答えを口にするなら、僕だって考えがあるヨ」
「は、はい……?」
 何を考えているんだろう。と思っていたら、
「ソヨゴが大切にする全てが宝だネ。ソヨゴとソヨゴが大切にする世界を僕は守ろう」
 キラッ☆
 もしくはどやっ。だったかもしれないが。
 やり直しするかのごとく同じポーズをするアヤネに、冬青は頭を抱える。そして、
「も」
 てしっ。
「ありがとうございます。大丈夫ですちょっと目の前が……って、え!?」
「もっもっもっ!」
 てしてしてし。
 なんかぺしぺし肩を叩かれている。全く痛くない。
 振り返れば……、
「獏羊くん!!!」
「も!」
 ふっかふかの虹色の毛並みを持った、やたら御かわいらしい羊たちがなんだかもふもふしていた。
「うっわ。……うっわ!!」
 一気にテンション上がる冬青。
「かわいい!!」
 ひゃあ。と声を上げる冬青。そんな冬青のほうが可愛いのにな。なんてアヤネは思いながらも、
「コレが敵? 僕知ってる。たしかゲーミング羊って言うんでしょ?」
「うふふ。なんだかもっこもこそうな毛並みしてますし。ああ。一人枕としておうちに……」
「えいっ」
 パァン。
 なんだか楽しそうな冬青の言葉。しかし羊に、容赦ないアヤネのライフル射撃が襲い掛かる!
「空中を跳ね回られるのは案外狙いづらいネ」
「……っ、そうですよね。惜しいですけど……惜しいですけど……カラスくん……」
「羊が必要なら、僕の羊さんがソヨゴを眠らせてあげるヨ」
 ウィンクするアヤネに、そういう問題じゃない、と思いながらも冬青も見えないコルヴォで戦うのであった……。

 そして。
「宝箱の中身はどうなんだろ?」
 さほど時間をかけずに羊たちを殲滅した後、アヤネがそんなことを言った。
 そのころには、宝箱の宝石から光は完全に消え失せ、鳥の宝石へとすべて移っていた。代わりに先ほどまで開かなかった、宝箱の蓋の鍵が開いている。
「まさかもう一人ソヨゴが入ってたりして」
「うーん。ミニアヤネさんは、ちょっとほしいかもしれないですね」
 肩に乗せてみたいです。と、冗談めかして冬青が言いながら、
「ではオープン!」
 てりゃ! と冬青ががばちょっ。と勢いよく箱を開けた。
 その時ふわりと、風が吹いた。
 こんな場所なのに爽やかな、まるで高原吹く新しい夏の風を思わせるようなにおいがした。
「おや、中身は空かい?」
 けれども、その中には何も入っていなくて。
 はっと冬青が顔を上げると、訳知り顔でアヤネが腕を組んでうん、うん、と、頷いた。
「ありゃ? たしかに、何も入ってない……。これはただのハズレか」
 中を覗き込んだ冬青も瞬きをする。釈然としない表情で、首を傾げながら、
「それとも宝は心の中に……! というやつでしょうか? まぁ楽しかったからいいんですが」
「ふっふっふ。まあそんな予感はしていたさ。僕はさっき言った通り……ソヨゴとの楽しい時間が最高の宝だから!!」
「そのポーズはもう、いいですから」
 アヤネがポーズをとろうとする前に冬青は言った。……と、同時に。
 ゴゴゴゴゴ。と、地面が揺れた。
 遺跡が崩れるのだと、お互い口にするまでもなく理解して、
「おっと……。崩れる前に脱出しようか」
「はい! 脱出しましょう」
 二人して、走り出す。きっとこれからも、楽しい時間を過ごすのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡
◆ニヒト(f13061)と


宝物と呼べるものをひとつ、答えるとしたら
「皆と過ごしてきた日々、かな」
……それだけ、言葉にはするだろう

ずっと戦場で独り、死と隣り合わせに生きてきた俺には
誰かと言葉を交わして同じ時間を過ごす
有り触れた平穏な日々が、奇跡みたいに思えて仕方ない
――そこまでは、さすがに言葉に出さないけど

……そう、だから
オブリビオンに食わせられるものじゃない

銃は持ち込めないけど、困りやしない
淡い光が作る影から手に慣れた銃を生み出して
……さあ、勝ちにいこう

宝物、は、
……折角だからニヒト、持って帰ったら?
俺? 俺はいいよ――はダメだよな、知ってる
じゃあ、小さいほうを
今日の日の記念、ってやつかな


ニヒト・デニーロ
鳴宮(f01612)と

宝物。私にとっては、家族?
それに、得られた感情、生きてる今。
何をしようかと迷う今日。
明日はどうしようかと考える今。
楽しかったと振り返る昨日。
そういうものが、私の宝物。

……だから、貴方達に食べさせてあげられるものはないわ。
衛星★マイマスター。
隣にあなたがいるから、今の私はフルスペック。
目から…………ビームッ!

……宝箱の中身、は……
……サファイア? それも、二つ。
……うん、一緒に持って帰ろう
石よりも、これを見つけるまでの過程と、思い出に、きっと意味があるはずだから。



『汝の宝を示せ』
 と、誰かの声が聞こえた。
 遺跡の果て、少し暗い部屋の奥、輝く祭壇には機械を模した鳥が置かれている。
 その鳥が声を発しているのか、遺跡が声を発しているのかはわからない。
 そんなものを収集して、なんになるのかもわからない。
 ただ、宝箱の宝石からこぼれた光は真っすぐに鳥の額へと吸い込まれて行っている。額には同じような宝石がはめられていて、二人が近づくたびにその輝きが増していた。
「……」
 匡は一つ、深呼吸する。この機械がどこまで匡の言葉を聞き、理解しているのかはわからないけれども、
 宝物と呼べるものをひとつ、答えるとしたら……、
「皆と過ごしてきた日々、かな」
 そこに、嘘偽りをいうこともせず、匡はそれだけを静かに声に出した。
 ちらりと匡はニヒトに視線をやる。ニヒトもほんの少し、首を傾げて、
「宝物……。私にとっては、家族?」
 かな? って顔をして、匡を見る。匡が小さく頷いたので、ニヒトも頷いて、
「それに、得られた感情、生きてる今」
 言葉をつづける。確認するように。
「何をしようかと迷う今日。明日はどうしようかと考える今。楽しかったと振り返る昨日。……そういうものが、私の宝物」
 胸を張って、ニヒトは言った。たくさんある。というように、ニヒトは両手を広げた。
「……」
 黙って、匡も祭壇を見上げる。
(ずっと戦場で独り、死と隣り合わせに生きてきた俺には……、誰かと言葉を交わして同じ時間を過ごす。有り触れた平穏な日々が、奇跡みたいに思えて仕方ない)
 これは、さすがに言葉に出さないけど。
 ……こんな、ひとを殺すこともなく、殺される危機もなく。ただ面白おかしい遺跡探検を、報酬があるのかないのかすらよくわからない冒険を、誰かと一緒にしようなんて。自分がそんなことを思う日が、来るとは思わなかった。
 一呼吸。ついて。匡は目を細める。
「……そう、だから……。これは、オブリビオンに食わせられるものじゃない」
「ええ。……だから、貴方達に食べさせてあげられるものはないわ」
 二人が言ったのは、同時であった。まばゆい祭壇に影が差して、即座に二人は振り返る。
「も!」
「ももももも!」
 やたらファンシーな羊は、全くと言っていいほど脅威を感じなかった。そんな戦闘もまた、珍しいだろう。といっても、オブビリオンはオブビリオン。遠慮会釈なく倒すのは当然で、
「……さあ、勝ちに行こう」
「了解。私が守ると決めた時……アナタの厄星の光は失せる」
くるりと振り返ると同時に、匡は淡い光が作る影から手に慣れた銃を生み出した。ここは海の底。本来ならば銃は持ち込めないけど、困りやしない。作り出された銃声が響くと同時に、ニヒトも匡を守ると。その心を向けて、
「えいっ」
 その左目から発せられた破壊光線が、迷うことなく羊たちを貫いた。
「隣にあなたがいるから、今の私はフルスペック。だから最強・衛星★マイマスター。……目から…………ビームッ!」
 何だかかわいらしいことを言っているが、割とえげつない破壊光線が一瞬で羊を蒸発させる。
 そして、残った羊を匡が的確に処理して沈黙させるのであった。

 戦いが終わるころ、宝箱の宝石は完全に光を失っていた。鳥の宝石にすべて吸い込まれてしまったのだろうか。
 詳しいことは、わからない。代わりに宝箱のふたの鍵が開いていた。
「……開けた」
 カパッ。と箱を開けてニヒトは中を覗き込む。
「……宝箱の中身、は……」
 出てきたのは、宝石であった。ニヒトはそのうちのひとつをつまみ上げる。
「……サファイア? それも、二つ」
「……折角だからニヒト、持って帰ったら?」
 ニヒトの言葉に匡がそういうと、ニヒトはもの言いたげに匡を見た。二つ出たのに。という顔をしているので、匡はひらひらと手を振る。
「俺? 俺はいいよ――はダメだよな、知ってる」
 最後の言葉は冗談めかしていて。ニヒトはこくり、と頷いた。
「いらないっていうなら、口に詰める……寝てる間に」
「うん、やめような?」
 勿論冗談だってわかってる。ふふん。となぜかそこでニヒトは得意げに、
「……うん、一緒に持って帰ろう。石よりも、これを見つけるまでの過程と、思い出に、きっと意味があるはずだから」
「ああ。じゃあ、小さいほうを。今日の日の記念、ってやつかな」
「アクセサリーにするのもいい。……帰ったら」
「そうだな。何かの飾りに……」
 使い道を考えてもいい。ただしまっておくのもいい。
 そうやって相談をするのも、なんだかとても、楽しかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『星の雫の降る夜に』

POW   :    星を見上げる

SPD   :    零れる星を追う

WIZ   :    掌に掬う

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……。
 最初は地面が揺れ、そしてその揺れは全体に伝播する。
 壁が崩れ、天井が落ちていく。徐々に地面が沈んでいき、巨大ピラミッドはすさまじい爆音と衝撃によって倒壊ていった。
 そして、最後の一人がイルカに乗って脱出したころ……、

 ドォン。と。
 
 地の底から響くような音がして、何かが爆発した。
 激しく水柱が上がる。それは高く高く、天まで届くかのような渦を巻いた水柱だ。
 水の竜巻のようなそれは、様々なものを天へと巻き上げていく。そして……、
 ばっ。と、遥か高くまで飛び上がった柱のてっぺんから、飛び立ったものがある。
 それは、機械で出来た鳥であった。
 機械で出来た鳥は、大小さまざま大きさ、形で、空へと吹き上げられた瞬間に翼を広げる。
 額に青い輝きを灯し、翼を広げて跳ぶ姿は、様々な人の思いをのせて遠くへ運んでいく。まさにそんな思いを見るものに残して……、四方八方に、飛び立っていった。
 何を思ってこの墓を作った人間が、このような仕掛けをしたのかはわからないけれども……、
 きっと、あの宝石を燃料に、鳥はまたどこか遠くまで旅に出るのだろう。
 遺跡に遭った様々な宝物をひっかけて、途中で落としたりしながら……。
 それは、きっとまたトレジャーハンターなんてわけのわからないことをしている冒険野郎たちの道しるべになるに違いない。

 そして、鳥が飛び立つと同時にふってくるものがいる。
 クラゲだ。星のようにまばゆく輝くクラゲが、水の竜巻に巻き込まれて空へと打ち上げられ、そしてふわふわと空から落ちてくる。
 不思議なことに、空気に触れたクラゲは、もう人を痺れさせる力を持ってはいなかった。

 今日は快晴。鳥が夜飛ぶ。空には美しい月と星。ところによって星のカケラが降るでしょう。
 ……なんていうのが、冒険の終わりである。
 後はしばらくの間空を見つめてのんびりしてもいいし、なんだったら沈んでしまった海底がどうなっているのかを、もう一度のぞきに行ってもいい。
 イルカさんたちとともにひと泳ぎするのもいいし、
 疲れたなら、海の上に浮かんでいる、崩れた壁画を探せば上に上がって一息つくこともできるだろう。それくらいの大きさの何かは、簡単に見つけることができるはずだ。
 もしもまだ遊ぶ元気があるのなら、機械の鳥やクラゲと共にあの水の竜巻に突入して、空を飛んでみるのもいいかもしれない。例え天高く吹き上げられても下は海。うまいこと着水できれば空の旅も楽しめるだろう。
 今はただ、次の冒険へと向かうために。
 ほんの少しの時間を、楽しく過ごせばそれでいいのだ。


******
まとめ。
細かいこと気にせず好きに遊べ

●プレイング募集期間について
6月25日(木)8:30~28日(日)20:00まで。
また、無理ない範囲で書かせていただきますので、再送になる可能性があります。
その際は、プレイングが返ってきたその日の23時までにプレイングを再送いただければ幸いです。
(それ以降でも、あいていたら投げてくださってかまいませんが、すべてを書き終わっている場合は、その時間をめどに返却を始めますので間に合わない可能性があります。ご了承ください)
都槻・綾
降り来る海月がふよふよと
月影に煌いて虹色の光を返す

其れが
あんまり美しいものだから
胸が弾んで

リュカさん
一緒に遊びましょ

満面の笑みで指差すのは水の竜巻
空に飛び立てば
きっととても爽快に違いなく

そうして解き放たれた遥か上空
宝石みたいな水飛沫
共に打ち上げられた海月達が
風を孕んでふわりふわりと頬を擽る

ころころ笑いながら落ちていくのも
自身が星の欠片になったよう

海に叩きつけられる前に
イルカさんが跳んで
優しく掴まえてくれますよね
なんて期待通りに…期待以上に、其のまま連れ去られるから
何事かしらと眸を瞬く
到着したのは壁画の浮き島

壁画に夢中になっていたことを
覚えていてくれたのですね
ありがとう

嬉し気にイルカの背を撫でる



 空からふわりふわりと踊るように降りてくる。
 まばゆい輝きは月とも星ともつかぬもの。
 ふよふよとふってくるクラゲに、綾は思わず手を伸ばした。
 月の光を弾く体は、触れても痺れることはなく。ふよ、とした感触が手に残った。
「……」
 ほう、と、思わず感心したような声が漏れる。
 つるんと滑って海の中に落ちたら、また泳ぎ出すクラゲたち。
 綾はもう一度顔を上げる。満天の星が零れ落ちてくるようで……、
「……リュカさん」
 あんまりにその景色がきれいで。
 あげた声が弾んでいるのを綾は隠さぬまま、
「一緒に遊びましょ」
 なんて満面の笑みをして言うので、リュカは無表情のまま迷うこと数秒、
「……お兄さん」
 何だか嫌な予感がする。と恐る恐るリュカが声をかけると……、
「勿論、あれですよ」
 綾は非常に清々しい笑顔で水の竜巻を指さすのであった。
「……」
「空に飛び立てば、きっととても爽快に違いなく」
「……そんな気は、してた」
 知ってた。みたいな顔をリュカはするので、
 なぜか得意げな顔を綾はしたのだと、いう。
「お嫌いですか?」
「そういうわけじゃあ、ないけれど」
「私はとても、好きですよ」
「知ってた」
 そんなことを言いながらも、せいやと二人、水の竜巻に飛び込めば、
「ほら、町があんなところに」
「ていうかお兄さん、よく目が回らないね!?」
 ぐるぐるんと回るのも一瞬。ぺっと夜空に吐き出されば、まばゆいばかりのクラゲと一緒に空を飛ぶことになる。
「ほら。宝石みたいな水飛沫ですよ」
 宙を舞いながら、呑気に声を上げる綾。共に打ち上げられたクラゲが、ふわりと頬をかすめた。どこか先ほど触れた時とは感触が違っていて、ああ。風を孕んでいるからか。なんて綾は微笑む。
「ほら、見てくださいリュカさん。海月達と空気が……」
「お兄さん、今その話してる場合じゃないよね!?」
 絶賛落下中なのですよ。
 綺麗な落下の仕方を思案するリュカに、綾はころころと笑う。
「まあまあ、落ちていくのも自身が星の欠片になったようではありませんか」
 ついでにいうと、綾は信じていたのだ。そして、信じていた通り、
「きゅ!」
 海に激突する瞬間、イルカがぴょーんと飛びあがった。二人の首根っこを掴むようにして勢いを殺して、ふわりと水面に落とす。
「ありがとう。優しく捕まえてくれましたね。なんて期待通りに……、……あれ?」
 そしてそのまま綾の首根っこを掴んで、フルフルとイルカは泳いでいく。
「……お兄さんが拉致されてる」
 まったく助ける気がないリュカの言葉に、綾も何事かと瞬きをしていると、
「きゅ!」
 その間に一つ、海に浮かぶ瓦礫のようなもののところまで運ばれて行った。
「これは……」
 掴まる。そうしてよくよく見ると、それは崩れた壁画の一部であった。
「ああ……。壁画に夢中になっていたことを、覚えていてくれたのですね」
 壁画を見て、綾は驚いたように呟いてから、そして微笑む。
「……ありがとう」
 嬉し気にイルカの背を撫でると、もっと撫でろとでもいうように、イルカが体をこすりつけてきたので、
 いつまでそうしてるの。って、そのうちリュカが迎えに来るまで、綾はずっとイルカを撫でて今度は間近に壁画を観察したりしているのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

篝・倫太郎
【華禱】
海に浮かぶ壁画の上で休憩してると
ひらひら舞う紫の花弁

心配性だな?夜彦
そう笑うと手を差し伸べて
しっかり腕の中に抱き込み、ほっと安堵の息を吐く

今のあんたに似合うなぁ、これ

戦利品の竜胆石の髪飾りを夜彦に手渡す……と
随分と可愛いおねだりをしてくるものだから
笑って綺麗で柔らかな髪に飾ってやる

本体の簪と喧嘩しないで調和が取れてるのは凄いな
竜胆の花と竜胆の石だからだろか?
すげぇ綺麗

そんな話をしながら
降ってくるクラゲをジャンプしてぱくん!と食べるイルカを眺める

あ、そだ……
港町に戻ったらイルカに成功報酬の魚やらなきゃ

隣の夜彦の様子に
どこぞの考古学者の真似事もした甲斐があったな
なんて思いながら笑って過ごす


月舘・夜彦
【華禱】
夜風を受けながら帰りを待つ
彼は大丈夫と言ったが、遠くから響いた大きな音に
考えるよりも体が先に動く
迎え花にて、彼の元へ

閉じた瞼を開けば、目の前には土埃で少し汚れた彼の姿
――えぇ、やはり待っては居られませんでした
言い終える前に抱き込まれれば微笑んで抱き返す

これは髪飾りですか?……嬉しいです
渡された物はとても綺麗で
自分の為に取って来てくれたのだと思うと更に嬉しくて
それだけで十分なのに、もう少しだけ贅沢を言ってしまう
あの……飾って、欲しいです

自分では見えなくとも、彼ならきっと一番良い位置に
少し照れながらも飾って貰う

イルカに報酬ですか?貴方らしいですね
向かいながら教えてください
貴方の今日の冒険を



 倫太郎は一息ついていた。
 忙しなかった冒険も、ようやく終わり。
 海に浮かぶ壁画の上で一息ついていると……、
「……心配性だな? 夜彦」
 竜胆の花弁がひらひら舞って、倫太郎は声を上げた。
 倫太郎の少し後ろ、先ほどまで人のいなかった場所に月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)の姿があったのだ。
「――えぇ、やはり待っては居られませんでした」
 テレポートしてきた夜彦がほんの少し微笑むと、倫太郎も笑って手を伸ばす。夜彦がその手を取ると同時に、倫太郎は夜彦をしっかりと腕の中に抱き込んだ。
「何か大きな音がしましたが、大丈夫でしたか?」
 抱き返しながらも、夜彦が微笑んで尋ねる。それが心配で、待っているといっていたのに飛んできたのだ、とまでは言えないけれど。お見通しとでもいうように、倫太郎はうん、うん、と、頷いた。
「大丈夫だ。ご覧の通り怪我はねーよ。……あー。やっぱり落ち着くなー……」
 安堵の息をついて笑う倫太郎に、夜彦も、それはならば安心です、と、嬉しそうに微笑む。そうやってひとしきりじゃれた後には、
「……そうだ。今のあんたに似合うなぁ、これ」
 遺跡の奥で手に入れた戦利品。戦利品の竜胆石の髪飾りを夜空にかざした。
「これは……髪飾りですか?」
 見たい、という夜彦に、倫太郎はそれをほら、と手渡す。
「見るってか、やるっていうか。俺が持ってても、しょーがねーから」
 なんとなく照れるので、ちょっと横を向いて投げやりに言う倫太郎に、夜彦は髪飾りを受け取って、
「……嬉しいです」
「へへっ。気に入ったか?」
「はい。とても綺麗で……自分の為に取って来てくれたのだと思うと更に嬉しく思います」
 本当にうれしそうに言う夜彦に、そっか、と。倫太郎も照れたまま鼻の頭を掻く。それならばあの大冒険をした、買いがあったというものだ。
「ですが……」
「ん?」
「……あの……飾って、欲しいです。それだけで十分なのに、もう少しだけ贅沢を言ってしまうのはよくないでしょうか」
 躊躇いがちに言われた言葉に、倫太郎は瞬きをして、
「……勿論」
 その可愛いおねだりに笑って、倫太郎は夜彦の神に手を伸ばすのであった。

「……っし、できた」
「ありがとうございます」
 倫太郎の言葉に夜彦は顔を上げた。
 見なくても分かる。きっと一番良い位置に飾ってもらえただろう。
 照れるけれども、嬉しい。なんて思っていると、
「本体の簪と喧嘩しないで調和が取れてるのは凄いな。……竜胆の花と竜胆の石だからだろか? すげぇ綺麗」
「そんなに真面目に言われても……なんというか、困ります」
 嬉しいけれども、どう反応していいのかわからない。なんて。
 照れたように言う夜彦に、倫太郎もまた、楽しげに笑うのであった。

 水の竜巻はまだ上がっている。
 そこから鳥が飛んでいき、クラゲが落ちてきている。
 夜にしては明るい水面が跳ねた。
 イルカがジャンプをして、空中にいるクラゲに食らいついたのだ。
「おー。あれ、結構高いところまで跳んでるよな?」
「ええ。なかなかの高さでした」
 思いがけないイルカショーをのんびり眺めて。感嘆の声を漏らす倫太郎。
「やはり、生き物の食べたい、という力にはかないませんね」
 食欲強い。なんて。イルカとクラゲを見ながらのんびり呟いた夜彦の言葉に、はっ、と、倫太郎は顔を上げた。
「あ、そだ……。港町に戻ったらイルカに成功報酬の魚やらなきゃ」
「イルカに報酬ですか? 貴方らしいですね」
「ああ。俺らしいかな? なにせ、約束したからな」
 さすがになかったことにするのは忍びない。するつもりもないけれど。なんて言っている倫太郎に、夜彦は小さく頷く。 
「では、イルカのところに向かいながらで結構ですので、教えてください。貴方の今日の冒険を」
 聞きたい。と。強請る夜彦に倫太郎はちょっと頭を掻く。
「どこぞの考古学者の真似事もした甲斐があったな」
「はい?」
「いーや、なんでも。そうだなあ。何から話すかなあ……」
「勿論、全部です」
「じゃ、手伝ってくれたイルカの紹介からだな……」
 長い夜になりそうだと、倫太郎はまた、笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エンジ・カラカ
ハロゥ、ハロゥ、リュカ元気ー?
コレはとーっても元気ダヨー。

水は苦手なンだ。
コレはここで空をみてる。
アァ……きれーな空だなァ……。
コレの目みたいな月、それから星はなんだろうねェ。
みてみて、ほらコレと同じ。
オオカミだケド今は月を見てもオオカミにはならないンだ
賢いからなァ。うんうん。

冬にリュカと見た空もいいケド
冬じゃない空もキレイだ
コレは星のコトは相変わらずわからない
わからないケドキレイなのは分かる。うんうん。

リュカはどの星が好きー?
それともコレみたいな月?

賢い君は月も星も最高だって言ってる言ってる。
また、別の季節の星もみたいなァ。
見たら、リュカにも感想を言う言う。
キレイだったヨーって。



 エンジは、壁画の上に座っていた。
 座って星を眺めていた……と、思ったら、
「ハロゥ、ハロゥ、リュカ元気ー?」
 すいーっとイルカにつかまって泳いできていたリュカのことも目に入っていたらしい。声をかけると、リュカもまたエンジのほうに。
「それなりかな。お兄さんのほうこそ、お疲れさま」
「コレ? コレはとーっても元気ダヨー」
 自分を指してにっこり笑うエンジ。
 そうなの? と、リュカは首を傾げている。何か言いたそうな視線に思い当たったように、
「水は苦手なンだ」
 プイ、と、エンジは横を向いてみた。多分リュカのイメージだと、エンジは楽しんで泳ぎ回るイメージだったのだろう。
「あ、そうなんだ」
「そうそう。濡れたらわしゃわしゃするするー。だから、コレはここで空をみてる」
 ほら。と、天を指さすエンジに、リュカもつられるように空を見る。
「ああ……。今日は、星を見るにはいい天気だからね」
「アァ……きれーな空だなァ……」
 エンジはため息のような息を吐いた。リュカもそれにつられるように小さく頷いて、なんとなく空を見上げる。
 雲一つ、遮るものひとつない。完全な……。そう、満天の星空。
 思わず二人は黙り込んで静かに空を見る。そこに言葉は必要がないような気がして。
 そうやって星空を一度堪能した後、ぽつん、と、エンジが言った。
「コレの目みたいな月、それから星はなんだろうねェ」
「お兄さんの?」
「ソウ。みてみて、ほらコレと同じ」
 ほらっ。と、エンジが自分の目を示すので、リュカも身を乗り出してその眼を覗き込む。
「キレイだロ? オオカミだケド今は月を見てもオオカミにはならないンだ。賢いからなァ。うんうん」
「えーっと、そうだね。ちょっと待って……」
 冗談か本気なのか、リュカには判別つかないながらもそう遮って。リュカは真剣にエンジの目を見てから、
「……あれとか?」
「え、ドレドレ? あれ?」
「違う。もうちょっと右の……」
「お兄さん、ちゃんと見てる? 俺が言ってるのはあっちの……」
 空を指さしてああでもない、こうでもない。お互いが同じ星を見ているかどうかもわからないので、
「ああ。空に定規当てたい」
「ソウカソウカ。ぶーんって、空に線を引くのもいいなァ……」
 赤い色で引こう。なんてエンジは笑う。
 赤い糸は見辛くない? 割とまじめな顔したリュカの返事に、エンジはまた笑った。
「アァ……。冬にリュカと見た空もいいケド、冬じゃない空もキレイだ」
 ぼんやりと空を見る。それからついと指をさして、
「リュカはどの星が好きー? それともコレみたいな月?」
 星と、月と。指をさしながら言うエンジに、しばしリュカは考える。
「あそこにあの星があるでしょ。ちょっと光が強いの」
「うんうん」
「あれでだいたいの時刻と方角がわかるから、あれが見えてるとありがたいなあ」
「おぉ……」
 そうなんだ。と、エンジはリュカの指先を見る。しばし考えこんで、
「コレは星のコトは相変わらずわからない。わからないケドキレイなのは分かる。うんうん」
「絶対それ、わかってないでしょ。……まあ俺も、あんまり人のこと言えないけど」
 それしか知れないのでリュカもそれを言ってみただけだったりする。綺麗だと思いながら見てはいるんだけどねえ。なんてリュカが言うので、
「それでイイ。賢い君は月も星も最高だって言ってる言ってる。みんな最高だからそれでいいか」
「うん、まあ、何かそれでいいよ」
 そうして二人、のんびり星を見るのであった。
「……また、別の季節の星もみたいなァ」
「そうだね……」
「見たら、リュカにも感想を言う言う。キレイだったヨーって」
「え。じゃあ俺は……今度何が好きって聞かれたら、答えられるようにしておこうかな」
 宿題だなあ。というリュカに、ガンバリたまえー。なんてエンジが笑いながら。
 星の夜はゆっくりと、過ぎて行った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリオ・イェラキ
鳥達が鳥籠から出て往くのね
何だか親近感が湧いて、わたくしも翼広げて夜空へ

素敵な月夜に、不思議な鳥達
想像を超える光景が観られるから冒険は楽しいの
あら、なんて素敵
星がふわふわ落ちてきますわ
もう触っても平気ですのね?
でしたら数匹腕に抱えてふにふに堪能
新感覚の感触、面白いですわ

リュカさま、リュカさま
ゆっくり舞い降りてクラゲが綺麗なのと見せたり
海にクラゲを還しながら今宵の冒険をお話したいの
空にも海にも星がありますわ、なんて笑って
リュカさま、いつか一緒にあの鳥を探しに行くのは如何かしら
きっと楽しい冒険になりますわ

静かな夜も楽しい夜も、大好きですわ
後はイルカさまにもご挨拶を
今夜はありがとうと優しく撫でたいの



 機械の鳥が飛んでいく、
 それをほう、と見送って。
 オリオは小さくため息をついた。
「鳥達が鳥籠から出て往くのね……」
 なんとなく漏れた感想に、オリオは自分自身でそっと目を細めた。
 彼らはどこへ行くのだろうかと。そっとオリオは翼を広げた。
 高く、高く。月へ向かうように高くオリオは飛ぶ。そうして飛び立つ鳥たちと同じ場所にまで高度を上げた。
「……」
 どうして。そんなところまで来たのかはわからない。
 多分、何だか親近感が湧いたのであろう。
 暗い夜の中鳥が飛んでいく。……なんて、
「素敵な月夜に、不思議な鳥達……」
 鳥たちを見送りながら、オリオはぽつんとつぶやいた。
 飛んでいる鳥たちが、どこに行くのかはわからない。ただ、行く当ても、目的もないように。四方八方に飛び散って、ランダムに飛んでいく。
 まるで人の旅のようだと、オリオは思った。
「想像を超える光景が観られるから、冒険は楽しいの」
 ふっ。と、オリオは微笑んで鳥たちを見送る。……その時、
「あら……?」
 ふわりふわりと、舞い降りてくるものがあった。
「なんて……素敵。星がふわふわ落ちてきますわ」
 それは、打ち上げられたクラゲたちであった。クラゲたちは特にあわても騒ぎもせずに、ぼふっと体に空気を入れてゆっくりゆっくり落ちていく。
 ふと、風に吹かれてクラゲの一匹がオリオに触れた。
「もう触っても平気ですのね?」
 それで、オリオはそのクラゲたちが触れても痺れないことに気が付いた。
 ただ柔らかいだけの彼らは、つつくと釜わ……。と、その勢いで軌道を変えたりしながらふらふらと降りていく。
「……新感覚の感触、面白いですわ」
 思わず。オリオは数匹抱き込んでいた。大きなクラゲがいたら、冷たく冷やして枕にしたいぐらいだったという。

 そして……、
「リュカさま、リュカさま」
 空から降ってくるオリオに、リュカは一瞬目を陽張った。驚いたようにも、お姉さんならやると思った、とでも言いたそうな目でもある。
 クラゲと同じ速度でふわふわと。クラゲを抱いて落下してきたオリオはほら、とクラゲを示す。
「見てくださいませ、クラゲが綺麗なの」
「うん、綺麗だね。燃料に使えたり食料に使えたりすればいいのに」
「まあ、リュカさまったら」
 夢もみもふたもないことをいうリュカに、オリオはくすくすと笑うと、すとん、と、壁画の島の上に降り立った。
「リュカさま、空にも海にも星がありますわ」
 抱いていたクラゲを海に返しながら、オリオが言う。んー、と壁画に捕まりながらリュカもそれを見送る。
 足元が輝いていた。クラゲの輝きはやっぱり星のように見える。
「明るくて、潜りやすかった?」
「ええ。……今宵の冒険をお話したいの。よろしいですか?」
「勿論。そう、気の利いたことは言えないけれどもね」
 そんな言葉に、ふふ、とオリオは笑う。それで結構です、と言いながら話し始めるのは、今日の大冒険の話だ。
 最後に、祭壇の間で香辛料を手にしたときの話を終えたら。
「……リュカさま、いつか一緒にあの鳥を探しに行くのは如何かしら。きっと楽しい冒険になりますわ」
 オリオはいまだ海底から放たれ飛んでいく鳥を見ながらぽつんと、呟いた。
「どこへ行ったかわからないよ。いっそ火山の裏側とか、氷山の奥地かも」
「まあ、すてき。それはぜひ訪ねて行かないと」
 冗談めかして言ったリュカの言葉に、オリオは目を輝かせる。
「お姉さんなら、どんなところに行ったと思う? というか、行きたいと思う?」
「わたくしですか。わたくしなら……」
 リュカの言葉にオリオも考え、考え、そんな返答を、したりして。
 どこに行ったかは、いずれどこに遊びに行きたいか、になって。
 天も地も星に包まれながら、そんなたわいのない会話をした。
「……静かな夜も楽しい夜も、大好きですわ」
 会話の合間にポツリとオリオが言うので、リュカも小さく頷く。……と、
 きゅ、という声が聞こえた気がして、オリオはそちらに視線をやった。
「……あら。探しに来てくださったのですね」
 いつの間にか、オリオのそばにはオリオを手助けしたイルカがいて。きらきらした目でオリオを見ているのであった。
「ふふ。今夜はありがとうございますわ。お礼が遅くなってすみません」
 そっと。オリオが優しくイルカを撫でると。
 イルカはもう一度嬉しそうに鳴いて笑った気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

嘉神・雪
……何から何まで、不思議な場所でしたね

羽搏き、新しい場所へと旅立つ機械の彼らと
星の様に煌き落つ、海月を見ながら思う

遺跡がなくなった跡は、一体どうなっているのでしょう

何となく気になって、イルカさんに同行をお願いして
再び海底へと

どんな光景が広がっているのでしょうか

イルカさんと海底探索をした後は
一緒にひと泳ぎ

今日はお世話になりました
また、逢えます様に

◇アドリブ歓迎



 崩れ去る遺跡を後ろに感じながら、雪はそっと目を眇めた。
「……何から何まで、不思議な場所でしたね……」
 建物が崩れていく気配がする。雪はイルカに捕まって、どんどん遠ざかっていく。
 そうして海面にぷは、と、顔をを出して天を見上げた。
 そして、海水で滲む目元をぬぐい、何度か瞬きを繰り返して、雪は不思議そうにその空を目をよく凝らしてみた。
 天には竜巻のような水しぶきが上がっていて、そこから鳥が羽ばたいている。
 空にあった満天の星空の中に混じる輝きがある。
 羽搏き、新しい場所へと旅立つ機械の彼らと、
 星の様に煌き落つ、海月。
 にわかに信じがたい光景だったが、どうやら現実らしい。
 ぽかん、と。不覚にも一瞬黙り込んでいた雪であったが、
「……じゃあ」
 思わず、呟いた。海面から足元に目を落とす。
「遺跡がなくなった跡は……、一体どうなっているのでしょう」
 町のような景色に、苔の生えた神殿。巨大な猫の石像に、珊瑚の群れ。
 なんとなく気になって、雪はイルカに視線を向ける。
「あの……」
 一緒に潜ってくれませんか、と。
 雪が同行を頼む前に、きゅい、とイルカは泣いた。まるで任せろというようだったので、雪はイルカの背に捕まると、
 とぷん、と再び、水の中に突入した。
(……どんな光景が広がっているのでしょうか……)
 何だかドキドキする。そのドキドキを抑えきれずに、雪はどんどん沈んでいく。
 クラゲが打ち上げられているからか、海底は最初潜ったときよりも、ずいぶん暗かった。
 とはいえ、探索に支障があるほどではない。
(あ……)
 だから目を凝らすと、すぐにその景色が見えてきた。
 ピラミッドは見事なまでに倒壊して、ぺしゃんこになっていた。
 濛々と煙が立って、それがまだ収まっていないので、あまり近付かないほうがいいだろう。
 衝撃でいくつか、ほかの建物や像も壊れている。大量に海面に壁画が浮いていることもあり、ピラミッド周辺の建物は一緒に倒壊したようだ。
(……)
 あんなに、素晴らしい街でも、建造物でも、滅びるのか、と。
 何とも言えない気持ちで雪はそれを見つめた。
 けれども、難を逃れた海底の生き物たちはすぐに動き出している。
 クラゲは輝いているし、巨大なダンゴムシは転がりながらもピラミッドから遠ざかっている。
 逆に倒壊現場に向かうカニもいる。
 国は滅びても、人が生きれば、きっと何らかの形で続いていく。
(……けれど、カニは人ではなかったわね)
 なんとなく、自分で自分に突っ込んで。しばらく探索した後で、雪はまた浮上した。
「……案外、ひとよりカニのほうが強いのかもしれません。そう思いませんか?」
 浮上してからぽつりとつぶやいた雪に、イルカはきゅ? と、聞いているのかいないのか、面白そうに笑っていた。
「いいです。まだ少し時間がありますからね。泳ぎましょう。もちろん、海月をとってもいいですよ」
「きゅ!」
 それからあとは、雪はイルカと泳いで過ごした。
「今日はお世話になりました。また、逢えます様に」
 別れ際にそう言うと、なんだか去りがたくて頭を雪にこすりつけに来たのだけれども、一緒に行くわけにはいかないので。
 たくさん撫でてくれた雪を、イルカはいつまでも見送っていた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソウジ・ブレィブス
イルカちゃんと一緒に暫くちゃぷちゃぷとぼんやり空を見上げる
うーん……イルカちゃん、僕を一度跳ね上げてくれる?
上から、ちょっと見てくるよ
なんだかキラキラに、手が届いちゃう気がしてきたからね!
水の竜巻に突入するよ
こんな体験、そう出来ることじゃあないからねぇ!

ふふふ、あそこに居るのはリュカさん、かなぁ?
空も海もキラキラだぁ!夢みたい!
手を伸ばしても掴めないのは残念だなぁ……
近くてもやっぱり遠いねぇ

あ、イルカちゃーん、リュカさぁん見ててぇー!
手とか振っちゃおう
(スカイステッパーを利用して顔面着水だけは避ける)
海の中は泳いだからねぇ?
空も泳がなきゃあ、損でしょう?
両方見ながら飛び回るのも楽しいねぇ!



 ソウジはぼんやりと空を見上げていた。
 イルカと一緒に海面に上がり、ちゃぷちゃぷと海を漂うように浮いている。
 ぼんやり顔を上げていると、そこにふってくるのはまばゆいばかりのクラゲたちだ。
 クラゲではない機械の鳥は、どこか遠くへと飛び去っていく。
「うーん……」
 そんな光景に、ソウジは少し、考え込んで、
「イルカちゃん、僕を一度跳ね上げてくれる? 上から、ちょっと見てくるよ」
 おねがいおねがい、と両手を合わせると、きゅう、とイルカは頷くように鳴いた。
「ありがと! じゃあ、行こうかぁ。なんだかキラキラに、手が届いちゃう気がしてきたからね!」
 イルカに後押しされて、ソウジは泳ぎ出す。
 そのまま勢いをつけて、せいや、と水の竜巻の中へと突入した。
「あわわわわわわ」
 ぐるぐる、ぐるぐる。掃除の身体が回りながらも天へと向かって登っていく。
「こんな体験、そう出来ることじゃあないねぇ!」
 竜巻に流されながらも、ソウジは歓声を上げた。そして……、
 ざぶん!
 波を打つような音とともに、ソウジの身体は空中へと投げ出された。
「やっほー!」
 声を上げてみる。海面が遠くに見えるし、鳥やクラゲが近くに見える。
「ふふふ、あそこに居るのはリュカさん、かなぁ? 空も海もキラキラだぁ! 夢みたい!」
 天を行けば、足元の景色がよく見えた。空に広がるクラゲたちと、そして海底にいるクラゲたちとも相まって、無数の輝きが海の世界を照らしている。
 ソウジは顔を上げる。そして天にもまた満天の星空がある。思わずソウジは手を伸ばして、
「手を伸ばしても掴めないのは残念だなぁ……。近くてもやっぱり遠いねぇ」
 つかめないのが不思議だなあ。なんて言いながらも、手を引っ込めた。
 そうなれば後はただ落下するだけである。重力に従ってゆるりと体が傾く。それでソウジが思い出して、
「あ、イルカちゃーん、リュカさぁん見ててぇー!」
 イルカとリュカの姿を見つけて、空中から手を振る。
「海の中は泳いだからねぇ? 空も泳がなきゃあ、損でしょう?」
 ソウジに気付いて、リュカも軽く手を振り返した。ソウジはそのまま空を幾度か蹴ってジャンプして、
「両方見ながら飛び回るのも楽しいねぇ!」
 海面に激突しないように注意しながら駆け下りていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夏目・晴夜
おっと。見つけましたよ、リュカさん
今日は特別にこれを差し上げましょう
なに、遠慮はご無用ですが褒めてくださってもいいですよ!
はいどうぞ、『はずれ』の紙が入った宝箱

いやですね、今日は褒められる為に頑張ったんですけどね
手に入れた宝が、ご覧の通りでして
なのでリュカさんにあげればいいかな、的な
ほら、リュカさんとの縁もハレルヤの宝のひとつですから……
今めっちゃ良いこと言いましたよね、私。だから撃たないでください

え、二重底? とは、一体!?
それで何が入って……すごい、マジのお宝が!
流石はリュカさん、冒険にまつわるアレコレはハレルヤ以上ですね
お礼に今度ブラッシングしてあげましょうか
もしくは何かご馳走する感じで



「おっと。見つけましたよ、リュカさん」
 晴夜は、得意げであった。壁画の上に座り込んで何やら主張しているので、リュカは一瞬だけ見ないふりをするかどうか、悩んだ。
「待ってください今不穏なことを考えましたね。いいですかみつけたものは見つけたんだから見なかった振りとかするのはなしですよ。このハレルヤの繊細なハートが粉々に砕けますからね。三日三晩リュカさんの枕元に立って恨み言をつぶやきますからね」
「……」
 このまま通り過ぎて遠目で様子を観察するのも楽しそうだったけれども、それはあんまりだという心の声もしたので、リュカはぶんぶんと手を振っている晴夜のほうへとすいーっと、向かっていく。壁画の上にあがって隣に腰を降ろせば、
「晴夜お兄さん。今晩は。海の旅はどうだった?」
「そりゃあもう最高でしたとも! このハレルヤの知恵と勇気で超高難易度の謎ですら、簡単に溶けてしまいましたからね!!」
「そ、そう……なんだ?」
 胸を張る晴夜に、リュカは瞬きをする。
 実際見ていないので、そんなはずがないとも言えない。そうですよ、と力強く言う晴夜に、
「じゃあ……そうかも」
「そう、なん、です!!」
 首を傾げるリュカに、ものすごく力強く晴夜は言い切った。それから、
「……それでですね。……それでですね。今日は特別にこれを差し上げましょう」
 なんだかちょっと、そわそわしている。リュカは無表情のまま、
「きゃー。すてきー」
「でしょう、でしょう!!」
 めっちゃ棒読みだったけれども気にすることなく、晴夜ははい、と宝箱を差し出した。
「なに、遠慮はご無用ですが褒めてくださってもいいですよ! はいどうぞ!!」
 それは……そう。中に『はずれ』の紙が入った宝箱であったのだ。
 リュカは箱を開ける。中身を確認する。
「いやですね、今日は褒められる為に頑張ったんですけどね。手に入れた宝が、ご覧の通りでして。なのでリュカさんにあげればいいかな、的な。ほら、リュカさんとの縁もハレルヤの宝のひとつですから……」
 リュカは箱をひっくり返す。ひらりと紙が落ちる。その間も晴夜は長々としゃべり続けていた。
「決して、決してね。中身がなかったのが悔しかったとかそういうのではなくてですね。この中にリュカさんとハレルヤの大事な思い出を詰めて行けばいいんですねとか。今めっちゃ良いこと言いましたよね、私。今考えただけにしてはすっごいいい感じの言いわけじゃないですか!?」
 晴夜は長々としゃべっている。リュカは何やら宝箱を抱え込んでカチャカチャやり始めた。
「こんなに賢いこと言うハレルヤは褒められるべきだと思うんですよ! ……あ。いや。だから撃たないでください……って」
 はた。と、晴夜は気づく。
「聞いてくださいよ!!」
「あ。開いた。やっぱり二重底だ。……それで、お兄さん、何?」
 思わず叫んだ晴夜に、全く聞いてなかったリュカが瞬きする。
「え、二重底? とは、一体!?」
「知らないでくれたの? ほら、そこのここを押したら、そこがこうスライドして……」
「あ! さらに空間が出てきましたね!?」
「そう。大事なものとか、隠しておきたいものをしまうからくりだよ。お兄さんの恥ずかしい写真もここに仕舞っておくといい」
「さらっとハレルヤが恥ずかしい写真を持っているの前提で語るのやめてくれませんか。それで何が入って……」
 がば、と、晴夜がのぞき込む。
「すごい、マジのお宝が! 流石はリュカさん、冒険にまつわるアレコレはハレルヤ以上ですね!!」
 出てきたのはブラシだった。つくりが頑丈で、装飾が凝っていて。ブラシといえども侮れない。高級品だ。
「お礼に今度ブラッシングしてあげましょうか。もしくは何かご馳走する感じで」
 ふふふん。とご機嫌な晴夜にリュカは首を傾げる。
「俺のブラッシングというより……」
 何か言いたげに視線を向けるリュカ。
「……くっ。この美しいハレルヤの尻尾をブラッシングしたいというのですね!!」
「いや、自分でしたら……」
「いいでしょう。受けて立ちましょう! もっふもふにしてくださいね!!」
 なんだかいろいろ賑やかな問答が、もう少し続いたという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジュジュ・ブランロジエ
【三空】
アドリブ歓迎

浮いてる壁画の上で星を見る
いきなり遺跡が崩れてびっくりした!
走りながらメボンゴを防水リュックに入れたけどここなら出せるね
『再登場!』

わ~、星が降ってるみたいでロマンチック!
『くらげのお星様キラキラ~』
タオル受け取り
お母さんありがとう!
『コノちゃママ!』
うん、間違いなくお母さん!
ふふ、さつまさんとは兄妹だね
仲良し家族!
水滴から守ってもらって喜ぶメボンゴ
『たぬちゃお兄ちゃ!』

コノさんを真似てキャッチしたくらげをむにむに
ちょっと美味しそう
……食べないよ?
もちもちヒンヤリしたスイーツ、お店で出さない?
私、メニュー開発に全面協力するよ!試食係になる!
ほら、さつまさんも協力するって!


火狸・さつま
【三空】
狐姿
人語ムリ

きゅー!
メボちゃん!無事で良かったジュジュ流石!!
ハイタッチしたい、けど
ぺっそり濡れ毛並みだから我慢
きゅヤ~ん!!
タオル受け取り
ありがと!おかーさん!!!の眼差し
ツッコミ?何で?コノはおかーさん、だよ!ね!ジュジュ!メボちゃん!
皆を見て尻尾振り振り
てことは!淑女達とは兄妹!

きゅヤー!
鳥さんにおてて振り振り見送って
降ってきたきらきらくらげを抱えむーにむに
ひんやり、気持ち良い
ぷわぷわ空中浮遊く~るくる
きゅ!!
落ちてくる水滴見切り
メボちゃんにかからぬようしっぽでガード!
きゅぅ?!
二人して、食べよと、して、る?!

きゅヤ♪
たべるたべる!!美味しの作て!
お皿3枚其々に違う味を山盛りで!


コノハ・ライゼ
【三空】
アドリブ歓迎

あら、あらあら、ナンて綺麗!
満天の星空、飛び立つ翼、降るクラゲ……クラゲ?
若干首傾げるも、まあいいわとゆっくり見れる場所求め浮く壁の上へ
何処からともなく圧縮タオル取り出して、一旦拭いときなさいな、と二人に渡すわネ
母は子の為色々持ち歩いてンのよ
……って誰かツッコミ入れてヨ

それにしてもホント綺麗ねぇ
クラゲも害が無いと分かれば興味津々捕まえてみてふにふにもにもに
思わずあーん、と……え?食べ……てナイわよ、まだ……
つい目を逸らすも、スイーツの提案にはイイわねと頷いて
この海と星空をモチーフにしたら夏にぴったりなのが出来そう
素敵な提案だから、開発全面協力には突っ込まないであげるわ



 ばしゃばしゃばしゃ!!
 ……ざばっ。
「ぷはー!!!」
 壁画を掴んで、ぐっと体を持ち上げる。視界には満天の星空と、舞い落ちる輝くクラゲたち。
「うー。いきなり遺跡が崩れてびっくりした! でも何とか助かってよかったね~」
 ぐふぅ。と一息つきながら壁画の上に這い上がるジュジュ。その隣でコノハも顔を出した。
「あら、あらあら、ナンて綺麗! 満天の星空、飛び立つ翼、降るクラゲ……クラゲ?」
 なぜ、って顔をしていたのも一瞬だ。深く考えても仕方がないとサクッと割り切って、コノハも上に上がると、
「きゅ!」
 さつまもコノハの頭から滑り落ち、壁画の上に降り立った。
「脱出、楽しかったね!!」
「きゅ!!」
 物凄くいい笑顔のジュジュは、防水リュックからメボンゴを取り出しながらの台詞である。さつまもご機嫌にうなずいている。
『メボンゴ、再登場! 次回! メボンゴの華麗なる脱出にご期待ください!』
「きゅー!(メボちゃん! 無事で良かったジュジュ流石!!)」
「そう? あんまりもう一度体験はしたくないけれど……」
 メボンゴまでめっちゃやる気だ。コノハはそんな二人に苦笑して、肩をすくめた。……そして、
「きゅ、きゅきゅ……」
 そのままのノリでさつまはメボンゴにハイタッチしようとして、
 はっ。と何かに気付いたように手を伸ばしてくるくる回った。
 ぺっそり濡れ毛並みだから我慢したのであろう。それに気付いて、コノハはどこからともなく圧縮タオルを取り出す。
「はい、これ。一旦拭いときなさいな」
 ずぶ濡れの二人に手渡すと、
「きゅヤ~ん!!」
 その心遣いに、さつまが思わずキラキラした目をコノハに向ける。
「母は子の為色々持ち歩いてンのよ」
 その視線に、コノハは片目を瞑って冗談めかして言った。言ったが……、
「きゅきゅきゅ!!」
 その眼は何処か、ありがと! おかーさん!!! と言っているようで……、
「お母さんありがとう!」
『コノちゃママ!』
 ジュジュも己の顔を吹きながらも、ものすごく自然のいい笑顔でお礼を言うので、
「……って誰かツッコミ入れてヨ」
 思わずコノハは真顔になったという。
「きゅ? (ツッコミ? 何で? コノはおかーさん、だよ! ね! ジュジュ! メボちゃん!)」
 しかしながらコノハの割とまともな願いはものすごく不思議そうなさつまの視線によって砕かれる。ジュジュまでもがうん。うん。と、頷きながら、
「うん、間違いなくお母さん! コノさんは私のお母さんだった気がする!!」
 なんてのってくるので、さつまも尻尾を振り振り振った。
「きゅきゅきゅん!(てことは! 淑女達とは兄妹!)」
「ふふ、さつまさんとは兄妹だね。仲良し家族! ねー!」
『たぬちゃお兄ちゃ! ねー!!』
「もういいわ。三人が幸せそうなら、それで……」
 くるくる踊るメボンゴとさつまに、コノハは苦笑するのであった。

 そうして一通りはしゃぎながらも取りあえず身体を拭いて壁画の上に三人腰を下ろすと、
「わ~、星が降ってるみたいでロマンチック!」
『くらげのお星様キラキラ~』
 あとは星空を見上げるだけだ。
「それにしてもホント綺麗ねぇ……」
 降ってくるクラゲを捕まえながら、コノハものんびり、天を仰ぐ。
「きゅヤー!」
 さつまもちょっと空中へ飛びあがって、くるくるクラゲと踊りながらも飛んでいく鳥たちを、手を振りながら見送った。
「きゅ!!」
『たぬちゃお兄ちゃ! ありがと~!!』
 時々落ちてくる水滴を、メボンゴにかからないようにガードするさつまに、メボンゴが嬉しそうな声をあげたりして、
 そんな彼らを見守りながら、コノハは捕まえたクラゲを興味津々にふにふにもにもにするのであった。
 手触りはなかなかいい。
 なめらかでひんやりしていて心地いい。掴めば沈む感じで夏の枕に最適ではないか。
「……」
 ゼリーみたい、と思いながら爪を立てたら、軽くクラゲの身体が削れた。
「…………」
「う~ん。このくらげきもちいい~。ちょっと美味しそう~」
 隣でジュジュも、コノハをまねてキャッチしたクラゲをムニムニしていた。
 ムニムニしながら、はっ。と隣に目をやる。
「……食べないよ?」
 って、思わず言ったジュジュだったが、
「……え? 食べ……てナイわよ、まだ……」
 なんか突っ込まれると思ったら、思わずあーん、とコノハも同じことをしようとしているのを発見され固まっていたようであった。
「きゅぅ?!(二人して、食べよと、して、る?!)」
 クラゲを抱えてひんやり、気持ち良い、と、降りてきたさつまが、驚愕の声を発していたので、二人はそっと気まずげに、視線を逸らすのであった。
「……もちもちヒンヤリしたスイーツ、お店で出さない?」
「あら、イイわね」
 何事もなかったかのように提案するジュジュに、何事もなかったかのようにコノハも頷く。
「そして私、メニュー開発に全面協力するよ! 試食係になる!」
『きゃー。ジュジュちゃんあ・くだいかーん!』
 あ・くだいかーんってなんだ。とコノハは真面目に考えて、ああ、悪代官か。と気付いたのは数秒後であった。
「ふっふっふ。お主も悪よねえ」
「きゅっきゅっきゅヤ」
 乗るコノハに、怪しげな声発するさつま。コホン、とコノハは一つ咳払いをして、
「この海と星空をモチーフにしたら夏にぴったりなのが出来そう。……まあ、素敵な提案だから、開発全面協力には突っ込まないであげるわ」
「ええ!? 突っ込まないってことは、試食係になれるの? なれないの!?」
「なんでそんなこの世の終わりみたいな顔してるのヨ」
「えーっと、なれるってことだよね!?」
「きゅヤ♪(たべるたべる!! 美味しの作て! お皿3枚其々に違う味を山盛りで!)」
『やったー!!』
「ほら、さつまさんも協力するって!」
 なんだかものすごくやる気なジュジュとさつまに、コノハは思わず笑った。口元に手を当てて、
「……そうネ。じゃあ手始めに、このクラゲ、味見してみましょっか」
 はい。と、新たなクラゲを捕獲して二人の前に差し出すコノハ。流行新たな食材は料理人の血が騒ぐらしい。
「わ、大賛成! 焼いてみようか。それとも齧ってみようか」
『ひゃー。動いてる動いてる~』
「きゅ!」
 みんなも思いのほか乗り気のようだ。壁画の上で火でも起こそうかしら。なんてコノハも言いながら、
 賑やかな夜が更けていくのであった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鵜飼・章
僕の想いを乗せた鳥さんはダイウルゴス文明になるのかな…
心配だ

見てリュカさん、木彫りのダイウルゴス
…何か違う?やっぱり?
あ、友達を紹介するよ
これは人間のリュカさん
これはイルカのルカさん
似てると思うのは僕だけだろうか

僕らは世界の果てをめざして旅をするけど
ルカさんはずっとここで運び屋するの?
今日はもう少し付き合ってよ
高いお魚あげたでしょ

行き先は…あの空まで、なんて竜巻を指して
リュカさんも行くよね?
あんな楽しそうなものやるしかないよ
ルカさんに掴まって突入

夜と月と星の欠片に囲まれて
宇宙と一体化したらこんな感じかな
流れ星の落ちる場所
空と海が交わる場所
ここもひとつの世界の果て
ああ、僕の宝ってこれだったかもね



 章はぼんやりと、飛んでいく鳥たちを見送った。
「僕の想いを乗せた鳥さんはダイウルゴス文明になるのかな……心配だ」
 さして心配してなさそうな口ぶりだが、ある日突然この世界を旅していて、ダイウルゴス文明の姿を見つけてしまった時はどう反応すればいいのか、今から考えておいたほうがいいかもしれない。
 なんて、割としょうもないことを章は考えていると……。
「あ、見てリュカさん。ほら、これ。木彫りのダイウルゴス」
 丁度リュカが通りかかったので、これ幸いとばかりに声をかける。
「……」
「……何か違う? やっぱり?」
「いや……」
 わくわくした顔で見せる章に、リュカが首を傾げる。申し訳なさそうに、
「ごめん、あんまり興味がないから、よくわからない」
 殺しの対象など殺せばすべて終わりよ。とでも言いたげなリュカに、
「え。そうなの? ほら、よく見てよ。このフォルムとか。何より目とか」
「そうなんだ?」
 熱心に説明する章に、リュカがなるほど? と聞き返したのが運の尽き。
「しょうがないから、僕が彫り足そうと思うんだけれどもね。ここが……」
 ダイウルゴスについて長々と聞かされる羽目になるリュカであった……。

 そして、ようやくその長話が終わったころ。
「あ、友達を紹介するよ」
 章がふいに言った。友達? とリュカが怪訝そうに瞬きをすると、章は章の傍でクラゲを食べながら泳いでいたイルカを呼び寄せた。
「ほら。これは人間のリュカさん。これはイルカのルカさん」
 どや顔で紹介する章。
「……」
 イルカとリュカは顔を見合わせる。
「似てると思うのは僕だけだろうか? いや、そうではない(反語)」
 相変わらず得意げにする章。顔を見合わせたままだったリュカとイルカは、どちらともなく肩をすくめたのであった。
「……なに、その。お互い苦労するね、みたいな顔」
「何も言ってないよ。なにも」
「でも、そんな顔してたって」
「……」
 リュカもイルカも、否定はしなかった。
 やっぱり、お互い苦労するね、みたいな顔をしているな、と、章は思ったので、
「僕らは世界の果てをめざして旅をするけど……、ルカさんはずっとここで運び屋するの?」
 若干不貞腐れたようなふりをしながら、章は尋ねた。イルカはふーん。という感じで彼らの周囲をふらふら泳ぎながら、ぱしゃん、と尾びれで海水を叩いて潜っていった。
 そして戻ってきたときには、クラゲを捕まえていた。
「こいつが食べられるうちはここでいるっで?」
「お兄さん。きっと、これが食べられたら仲間に入れてあげるって言われてるんだよ」
 二人とも適当なことを言った。本当のことはわからないが、イルカはふらりの目の前で、やらん、とでもいうようにばくりとクラゲを丸呑みした。
「もう。ルカさんは食欲旺盛だなあ。今日はもう少し付き合ってよ。高いお魚あげたでしょ」
 呆れたように章はそういう。それから指をさすのは……そう。
「行き先は………あの空まで。なんて、ね」
 そう、勿論竜巻だ。
「リュカさんも行くよね?」
 当然のごとく話を振られ、リュカは首を傾げる。
「いいけど。お兄さんもああいうのするんだ?」
「当然。あんな楽しそうなものやるしかないよ。ほらほら、行こうか」
 イルカとリュカを引っ張って……といっても、章はイルカに捕まるのだから引っ張って、という表現は変なのだが、兎に角そうして二人は泳ぎ出す。
 あっという間に竜巻に到着し、ためらうことなく突入すれば、大きな洗濯機にでも投げ入れられているような感覚に陥って。
 そして、呼吸を突く間もなく空へ放り投げられた。
 真っ暗な、夜と海との境目が希薄なその景色。
 満天の星空と、そのカケラのような生き物たち。
「ああ……」
 章は一つ、息をついて。
「夜と月と星の欠片に囲まれて、宇宙と一体化したらこんな感じかな」
 流れ星の落ちる場所。
 空と海が交わる場所。
 ここも……ひとつの世界の果てなのだろうか。
「ああ、僕の宝ってこれだったかもね」
 感極まっていう章に、リュカがうん。と、首を傾げる。
「……まあ、あとは落ちるだけなんだけどね」
「勘のいい子は嫌いだよ」
 まったく。浪漫もへったくれもなかった。
 旅の果てに待つのは墜落だが、勿論何とかなるだろう。
 もちろん、章の言葉が冗談であることは、リュカも知っていたけれど。

大成功 🔵​🔵​🔵​

瀬名・カデル
【花雪】
アドリブ歓迎

イルカさんとまた会えたね!無事に海の中から顔を出したら…何をしようか、景雪。

せっかくだからイルカさんとも一緒に遊びたいよね。
どっちのイルカさんが早いか競争してみようか?
ええと…あのちょっと遠めのところにある壁画のところまでだよ、
イルカさん行くよーよーいどん!

今日楽しかったね!
(差し出されたクラゲに触れて)もう、びりびりしないんだね。
感触とっても気持ちいいんだよ~(頬をのせてみたり)

景雪はお水、慣れてきたかな?
海の中に珊瑚を探しに行こうか!
ちょっとでも好きになってくれたなら、ボクとっても嬉しいな。
世界が違うと海の色が違ったするみたい。
だから、今度は違うところも行ってみようね!


叶・景雪
【花雪】
アドリブ歓迎
難しい漢字は平仮名使用
名前以外カタカナはNG

わっ、いるかさんだ!また会えたね(すりすりぎゅ
いるかさんといっしょにきょうそう?
おねえさんは好きだけど、きょうそうは負けないよ(ふんす!

おねえさん、とっても早いしきょうそうも楽しかったね
あ、みてみて、くらげさんがふってきたよ!
つんってしてみていいかなぁ(そわわ
おねえさん大変!ふにゅふにゅしてるよ(そっと海月差し出し

くらげさんと別れたら今度は海の中へ…
まだ、ちょっとだけこわいけど
おねえさんもいるかさんもいっしょだから
今度こそきらきらさんごさんを探すよ!
「おねえさんのおかげで、ちょっと好きになったよ!」
いつか、もっと好きになれるかな?



 時刻は少しばかりさかのぼる……。
「わっ、いるかさんだ! また会えたね」
 ゴゴゴゴゴ、と、揺れる遺跡を走ったのちに、イルカと再会した景雪は思わずイルカに抱き着いた。そのまま頭を撫でると、
「イルカさんとまた会えたね! さあ……脱出しようか!」
「うん!」
 カデルの言葉にうなずいた。心得たとばかりにいるかも泳ぎ出し、二人はそれに捕まる。
 そして数分後には、無事に海面より顔を出すのであった……。

「ぷはー」
 カデルが海面から顔を出して、ふーっと息を吐く。
「ぷはー」
 なんだか真似するように景雪が言って、顔を見合わせて二人、笑った。
「……ふふ」
 なんだか妙に楽しくて、カデルはクラゲの降ってくる空を見上げる。
 まだ少し変えるまでには時間があったから……、
「……何をしようか、景雪。せっかくだからイルカさんとも一緒に遊びたいよね」
「あっ。そうだね。たのしくあそぶ!」
 こうして波間をふわふわしているだけでもいつもと違う感じがする景雪だったが、カデルの言葉に表情を輝かせる。
 元気のいい返事に嬉しそうな顔をしながらも、うーん。と周囲を見回すカデル。
 ……と、目についたのは、あちこちに散乱した壁画であった。
 たぶん、こうなることを見越して、軽い素材で作られているのであろう。あれなら万が一当たっても痛くなさそうだ。
「……どっちのイルカさんが早いか競争してみようか?」
 ふっと、思い至ったことをカデルが口に出すと、
「いるかさんといっしょにきょうそう?」
 ぱあああああっ。と、目に見えて景雪の表情が輝くので、うん、と頷いてカデルは指をさした。
「ええと……あのちょっと遠めのところにある壁画のところまでだよ」
 それならあちらこちらにある壁画がいいコースを作ってくれそうだ。
「おねえさんは好きだけど、きょうそうは負けないよ!」
 景雪はそのコースを確認する。それからこくりと頷いた。めちゃくちゃやる気で、分須、と元気良く両手を握りしめる。
「ふふ。もちろんボクだって、負けたりなんかしないからね」
 その様子に、カデルも笑っているかを撫でるのであった。

「イルカさん行くよー。……よーいどん!」
 カデルの合図とともにイルカは歩き出した。即座にスピードを上げて、壁画のコースをぐりんと曲がる。
「きゃー!」
「ひゃー!」
 舞う水しぶき。振り落とされないようにしがみついて。
「次は右だよっ」
「うーん……。じゃあぼくは左!」
 お互いが瞬時にコースを判断する。そして……、
「かったー!」
 最初に到着したのは、タッチの差で景雪であった。両手を上げる景雪に、
「負けちゃった。もう一回行こうよ。今度はあの壁画まで!!」
 カデルが笑いながらも、次のコースを指し示す。
「いいよ。こんどだって、まけないんだからっ」
 ふふん。と景雪はやる気なので、カデルもちょっと意地悪っぽい笑顔を作ってみた。
「ボクだって、今度こそ負けないよっ」

 そして……。
「へへー。今度はボクの勝ちー!」
「むむぅ……。もういっかい! あといっかい! だよ」
 散々はしゃぎまわった、アロで。
「今日楽しかったね!」
「ふふー。おねえさん、とっても早いしきょうそうも楽しかったね」
 何度目かわからない、ゴールの壁画に二人でタッチしながらも、顔を見合わせて笑いあう。
「あ、みてみて、くらげさんがふってきたよ!」
 不意に、景雪が顔をあげれば、天から星が降ってきた。輝くクラゲに、あれあれ、と、指をさしながら、
「つんってしてみていいかなぁ」
 なんて、わくわくしながら言うので、
「痺れない?」
「ちょっとくらいなら……」
 心配そうなカデルの声も気にせず、そ、と、景雪は何度か、空中から捕まえたクラゲをつつき……、
「おねえさん大変! ふにゅふにゅしてるよ!」
 やわらかいゼリーみたいな感触に、思わず景雪はそれを掴んでカデルのほうに差し出した。
「わあ」
 思わず景雪も差し出されたクラゲに触れる。
「もう、びりびりしないんだね」
「ね! ね! すごい!」
「うんうん。感触とっても気持ちいいんだよ~」
 思わず二人してクラゲをとって、のんびりその良さを堪能するのであった……。
「景雪はお水、慣れてきたかな?」
 クラゲを頬に乗せながら、まったりとカデルは問う。
「おねえさんのおかげで、ちょっと好きになったよ!」
「よかった! じゃあ、海の中に珊瑚を探しに行こうか!」
 そういって今度は二人、クラゲさんと別れて海の中へと飛び込んだ。

「まだ、ちょっとだけこわいけど……、おねえさんもいるかさんもいっしょだから」
 今度こそきらきらさんごさんを探すよ! とやる気の景雪に、カデルは笑う。
「ちょっとでも好きになってくれたなら、ボクとっても嬉しいな」
「うん。いつか、もっと好きになれるかな?」
 そんなことを話しながらも、二人してどんどん潜っていく。
「世界が違うと海の色が違ったするみたい。……だから、今度は違うところも行ってみようね!」
「うんっ!」
 笑顔で言うカデルの言葉に、景雪も満面の笑みで頷いた。
 二人でいると楽しくて、どんどん奥へ。どんどん潜って……。
 きっと崩れたピラミッドの席にも、冒険の世界が広がっているだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オズ・ケストナー
イルカに乗ってリュカリュカーと手を振り

リュカ、おみやげっ
海色イルカのブローチを渡す
おたからだよ、おたからっ
たからばこのなかに入ってたんだ

リュカもいっしょにいこっ
イルカにのって海を泳いで
クラゲや竜巻見上げて
たのしそうっ

リュカ、とぼう
わくわくしながら
着地はなんとかなるなるっ

ばーんと打ち上げられたら遠くまで見渡せて
ブローチの色にそっくりだって思う
クジラのあたまからもこういうの出るよねっ
ぴゅーって
言いながらぴゅーと落ちていく
滝下りした時を思い出して笑って
リュカの手を取って、着水前にシャボン玉に身を包む

落ちてくるクラゲを掬うみたいに
手を伸ばして
海の中でもぴかぴかしてきれいだったんだよ

イルカさんただいまっ



 ひゅーっ。と、海上に出て水面を滑るように泳ぐ。オズをのせたイルカは心地よく風を切って走るので、オズもふふ、と笑っているかの背を撫でた。
 夜の風はちょうどよく心地いいし、空は満天の星空だし、ついでにクラゲも降ってくるしで楽しくて。オズはご機嫌でくるり、と周囲を見回すと、
「あっ。リュカリュカーっ」
 リュカの姿を見つけて、ぶんぶんと手を振った。リュカのほうもそれに気付いて顔を上げる。
「オズお兄さん。お疲れさま」
「うんっ。リュカ、おみやげっ」
 ぽーんと投げられた海色イルカのブローチを、リュカは落とすことなくキャッチする。
「お土産?」
「おたからだよ、おたからっ。たからばこのなかに入ってたんだ」
 はて。と、首を傾げるリュカに、オズがふふふ、と、ほんの少し得意げに笑った。それでリュカも、なるほど、と、頷く。
「楽しかった?」
「うんっ。イルカさんが、どーんって潜っていって、海のなかがきらきらしてて、それからいせきをたんさくして、さいごに爆発したんだよっ」
「なるほど? つまり、大冒険だったんだね」
「そうっ」
 それなりに長い付き合いなので、だいたい分かった。
 頷くリュカに、それからそれから、と、オズは指をさす。
「リュカもいっしょにいこっ」
 あそこっ。と示したのは、勿論、天へと届こうとするかのような竜巻であった。
「たのしそうっ」
「……」
 きりきりと舞い上がって落ちてくるクラゲたちに、わくわくした顔をしているオズ。あれの仲間入りするんだな、と、リュカはしばし考えて、
「だいじょうぶだよ。着地はなんとかなるなるっ。リュカ、とぼう」
 わたしがなんとかするから任せて、と、そこで自信満々に胸を張るオズに、リュカはちょっと笑った。
「じゃあ、頼りにしてていい?」
「もちろんっ」
「それだったら、安心できるな。……行こう」
 リュカが頷いたので、ふふ、とオズは嬉しそうに笑って、
「イルカさん、あそこまでお願いねっ」
 と、イルカに声をかけて泳ぎ出した。

 竜巻に突入すると、ぐるぐるぐるぐるぐる~。っと目が回るのも一瞬で。
 次の瞬間には、空まで打ち上げられていて、
「クジラのあたまからもこういうの出るよねっ」
 打ち上げられた瞬間、歓声のようにオズが言う。
「そういえばそうかも」
「遺跡の下、おっきなクジラがいるのかも」
「!?」
 それは会いたいな。ってリュカは真面目に思案していた。……が、ないない。と、我に返って周囲を見回せば、
「わ……。とおくまでみえるっ」
「本当だ。……お兄さん、あそこ」
 リュカが指さしたのは港町。あんな遠くまで見られるのかと驚いた様子に、おおーっ。なんて、思わず額のあたりに手を翳してその様子を見つめる。そして反対側に目をやれば、
「うみっ。遠くまで続いてるね……」
 ブローチの色にそっくりだなあ。って、思いながらも指をさした。
「海と空、どっちがどっちかわからなくなってるね」
「本当?」
 どれどれ……。と、リュカがそちらに目をやった……その時。
 ぴゅーっと。身体が落下を始めた。
「ぴゅーっ」
「えええ、なにそれ」
「おちるときの音!」
 効果音を上げるオズ。怪訝そうに聞いたリュカに、至極わかりきった答えを帰して笑う。
「ね、ね、滝下りした時みたい」
「そういえば、そんなこともやったねっ。お兄さんもしかしてこういうの好き?」
「うんっ!」
 言いながら、オズは手を差し出した。リュカもその手を取ると、
「それっ!」
 同時に、ふわん。と二人の身体をシャボン玉のようなものが包み込んだ。
 ぴょん、と、空をも散歩できるシャボン玉は、水面を軽くバウンドして浮き上がる。その隙にオズは空から落ちてくるクラゲを掬うように手を伸ばした。
「この子、海の中でもぴかぴかしてきれいだったんだよ」
「へえ。水入れて鞄の中で飼ったら、便利な灯りにならないかなあ」
 相変わらず身もふたもないことをリュカが言うが、そこでうーん、と真面目にオズも考える。
「ふつうの水じゃなくて海の水だからむずかしいかも?」
「そっか……」
 そんな殺伐としているのだかしていないのだかわからない会話の間に、バウンドしたシャボン玉も着水して。同時にシャボン玉は解除された。二人して水の中に飛び込めば、
「イルカさんただいまっ」
 オズは明るく、彼らを待つイルカに声をかけた……。 

大成功 🔵​🔵​🔵​

グィー・フォーサイス
【桜風】
びっくりだったね
でも冒険の終わりって感じがしてたかな
ああいう場所は侵入者を生き埋めにするために
最後に崩れるんだってね
ちらりと後ろを見て
遺跡の最後の姿を覚えておくよ

乗ろう乗ろう
鳥に乗るのだって慣れたものさ
そうだね、一人より二人の方が楽しいものさ
結都は鳥に乗るのは初めてかい?
うん、いいよ
ちゃんと君の側に居るさ

ぐんっといってからの浮遊感
少し浮いてしまうかも知れない
まあそこも慣れたものさ
ちゃんと座りよく収まるよ
心地良い風をヒゲに感じて
綺麗な空に心が踊る
ねえ結都
今日の宝物、もうひとつ増えたね

ばしゃんってするのも気持ちいい
ふふ、楽しい。
いいよ、結都
そのかわり…後から毛を絞るのを手伝ってくれるかい?


桜・結都
【桜風】

すごい……遺跡が沈んでしまいましたね

鳥達の飛んでいく空の光景は綺麗で、
星ばかりではない様々な煌きに目が奪われてしまう
海水に暫し身を預けるように、空を眺めて

ねぇ、グィーさん
あの竜巻の元に行ってみませんか
私達も鳥みたいに飛べるかもしれませんよ

一人なら挑戦しなかったかもしれないけれど
きっと二人なら楽しいと思うから
あ、離れ離れにならないように手を繋いでもいいでしょうか

水の竜巻に乗って、浮遊感に心臓は高鳴って
ぱっと目を開けば、星空の中に浮かぶような心地があって
綺麗だな、と思うも束の間、そのまま水中まで落ちていく

ふふ、落ちる感覚は少し怖かったですね
でも楽しかった
もう一度やってみましょうか



「すごい……遺跡が沈んでしまいましたね」
 結都が思わず息をついて空を仰いだ。
 鳥達の飛んでいく空の光景は綺麗で、星ばかりではない様々な煌きに目が奪われてしまう。
「びっくりだったね。でも冒険の終わりって感じがしてたかな」
「そう……なのですか?」
「うん。ああいう場所は侵入者を生き埋めにするために、最後に崩れるんだってね」
「なんのために生き埋めにするんでしょう……」
 わからない。という顔をする結都に、グィーは一度、瞬きをする。
「さあ……。それがロマンなんじゃない?」
 わかるような、わからないようなことを言って、グィーが首を傾げるので、なるほど……。と、まじめに結都も返事をするのであった。
 ちらりと足元を見る。
 海面からでは、遺跡の姿はもう確認できない。
 最後に見た姿をグィーは思い出した。
 きれいにぺしゃんこになっていくピラミッドは、鳥たちが持って出たとはいえたくさんのお宝をもって沈んでしまっている。
 きっとこれからも、また新たな探索の舞台となっていくのだろう。
 その最後の姿を、覚えておこう、と、グィーは思ったのであった。
 それもまた、浪漫なのかもしれない。
「ねぇ、グィーさん。あの竜巻の元に行ってみませんか」
 そんな時、海水に暫し身を預けるように、空を眺めていた結都が声をかけた。竜巻? と、グィーが首を傾げると、結都はほんの少し、いたずらっ子のするような眼で笑って、
「私達も鳥みたいに飛べるかもしれませんよ」
 と、竜巻のほうを指さす。吹き上げられて空に飛んでいくクラゲたちのように、自分たちも飛べるかもしれないと。わくわくしたように言う結都に、グィーは頷いた。
「乗ろう乗ろう。鳥に乗るのだって慣れたものさ」
 きっと楽しいに違いない。と、ご機嫌でひげをそよがせる。その返答に結都も嬉しそうの微笑んで。……微笑んで、それから、
「一人なら挑戦しなかったかもしれないけれど、きっと二人なら楽しいと思うから……」
「そうだね、一人より二人の方が楽しいものさ」
 その言葉に、ますますグィーは嬉しくなる。結都は鳥に乗るのは初めてかい? なんて尋ねながらも、グィーは上機嫌で、あっちだね、と、竜巻のほうに泳ぎ始める。
「あっ」
「うん? どうしたんだい?」
「……離れ離れにならないように手を繋いでもいいでしょうか」
 子供っぽいでしょうか。と、照れたように結都は微笑んだまま手を差し出した。
 その微笑みに、グィーは一つ、瞬きをして、
「うん、勿論、いいよ。ちゃんと君の側に居るさ」
 差し出された手を、ぎゅっと握った。

 竜巻に突入すると、ものすごい勢いで体が轢かれる。渦の中に引っ張られたのだ。
「!」
「結都!」
 強く手を握りしめる。握りしめたまま身体が持っていかれていく。
「グィーさん、すごい! 回ってます!!」
「うん!」
 水音で消えそうになるので、大きめの声を出して結都はその浮遊感に歓声のような声を上げた。
 グィーは慣れたもので、結都と二人、変に竜巻からはみ出さないように体を整えながら返事をする。返事をした、その時、
 ぶわっ、と、視界が開けた。
 回っているのは一瞬で、目を開けた二人の視界にいっぱいの海と星空が広がっていた。
「ああ……」
 星空に浮かぶような心地に、結都は思わず声を上げる。
「ふふ……」
 その声に、気持ちのいい風に、ひげを揺らしてグィーが微笑んだ。美しい空に心が躍った。
 ……と、思った、次の瞬間。
「わ……っ!」
 胃が置いていかれるような感覚とともに、結都の身体が落ちていく。真っ逆さまに、水面向かって跳びこんでいく。
「結都。大丈夫だよ、結都」
「はいっ」
 ぎゅっとお互いに手を握りしめて。そして二人は海面の中にまっすぐ落ちた。
 ごぼごぼごぼと、勢いでかなり深くまで沈んで。
 それから浮上する。海面に顔を出すと、
「ふふ、落ちる感覚は少し怖かったですね。……でも楽しかった」
「うんうん。ばしゃんってするのも気持ちいい。……ふふ、楽しい」
 ぷはー。と、一息ついた。結都がわくわくしたままの心地で行って、グィーも嬉しそうにうなずきながら、
「ねえ結都。今日の宝物、もうひとつ増えたね」
 なんて、その眼を覗き込むので、はいっ。と、結都は嬉しそうに答える。
 答えて、そして……、
「もう一度やってみましょうか」
 ね? いいでしょう? とばかりに、かわいらしく首を傾げる結都に、グィーは思わずふきだした。
「いいよ、結都。そのかわり……」
「そのかわり?」
 はて? と首を傾げる結都に、グィーもいたずらっ子がするような眼で、笑った。
「後から毛を絞るのを手伝ってくれるかい?」
 それも、きっと素敵な宝物になるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

三咲・織愛
【星綴り】
わぁー……綺麗ですね!
ふふふ、脱出が間に合ってよかったです
あの鳥達の飛ぶ先で、また誰かの新しい冒険があるのかもしれませんね

水柱の先、楽しそうっ! ……なんですけど、
たくさん付き合わせちゃいましたから、
今度は私がヨハンくんに付き合いますよ

休むのでしたら……ほら、あそこの壁画の上にあがりましょ
寝転んだら視界が月と星ばかりになりますね
波の音が心地よくて、うとうとしちゃいそう
静かにしているのもたまにはいいかも

隣が気になってちらっと見たら、目が合って
えへへ 星、綺麗ですね
あっ、今笑いました? 笑いましたよね!?
もうー! いつもそうしてくれてたらいいのに!


ヨハン・グレイン
【星綴り】

はぁ……海中の遺跡もこれで消えた訳ですか
何がしたかったのか理解に苦しみますけど、
これでもう終わりと思えば……漸く一息つけそうだ

まぁ、空を飛びたそうな顔はしますよね、わかりますよそれくらい
別に行ってきていいんですよ
俺は少し休みます

行ってきてくれた方が休みやすいというのもあるんだが……
まぁ仕方ない
壁画の上に乗って、そのまま横になりましょう
……ゆっくり星を眺めるのもいつぶりかな
妙に隣が静かなのも落ち着かないものがあるが

様子を窺えば、目が合い
思えばいつも笑っているな、この人は
……偶にはこういうのも悪くはない、か

そう思った直後に騒ぐのもいかがなものか
ああ、うるさいうるさい
まったくいつも通りだな



「わぁー……綺麗ですね!」
 海面から顔を出すと、視界いっぱいに光る輝きが広がっていた。
 満天の星空。輝く月。そして落ちてくるクラゲたち。
「ああ……」
 死ぬかと思った。その果ての景色がこれか。と、ヨハンが思うと、なんだかそれも感慨深いような……、そうでもないような。そんな気がするような。気がした。多分。
「ふふふ、脱出が間に合ってよかったです」
 微妙な顔をしているヨハンとは裏腹に、織愛はご機嫌だ。うっきうきで、ばんざーい。なんてしている横で、ヨハンが目を眇めている。
「はぁ……海中の遺跡もこれで消えた訳ですか」
 足元からの振動はもう伝わってこない。
 完全に崩れ去ったのだ。ということが、なんとなくそこから感じられた。
「何がしたかったのか理解に苦しみますけど……、これでもう終わりと思えば……漸く一息つけそうだ」
 独り言ちて、近くにあった壁画に手を伸ばす。手ごろなのを探して、ビート版のように抱き込めば、あとは時間が過ぎるのを待つだけだろう。
「理解に苦しみますか?」
「ああ」
 意味が分からないことをしている。そんな顔をするヨハンに、織愛は微笑んだ。
「うーん……。あの鳥達の飛ぶ先で、また誰かの新しい冒険があるのかもしれませんね」
 きっと。そういうことなのだと織愛は思う。そういうと、ヨハンはちらりと織愛を見て、そうですか。なんて、興味なさそうに鼻を鳴らすので思わず織愛は笑ってしまうのであった。

 視界の先には巨大な水の 竜巻がまきまきしている。
 それを織愛がじぃぃ、と見つめていて、ヨハンもちらりとそれを横目で見ていた。
「空を飛びたそうな顔はしますよね、わかりますよそれくらい」
「えっ。そんなに顔に出てたかな!?」
 あっさり言われて、思わず自分の頬を抓む織愛。ヨハンは気にせず、
「別に行ってきていいんですよ。俺は少し休みます」
 いけいけ。と。心の中で念じつつ言うと、織愛は瞬きをして、
「水柱の先、楽しそうっ! ……なんですけど」
 ふふ。と、ちょっと得意げなような、いつもと違うことをしているので恥ずかしいような。そんな照れたように軽く頭を掻いて、
「たくさん付き合わせちゃいましたから、今度は私がヨハンくんに付き合いますよ」
 そういった。
「……」
 多分、織愛なりに、気を使ったのであろう。
(行ってきてくれた方が休みやすいというのもあるんだが……)
 ヨハンといえば、内心はそんな身もふたもないことを思っていた。だって、休むんだし。休むなら、一人のほうが気楽に決まっているし。
(……まぁ仕方ない)
 だが、さすがにそれを出すほどヨハンはひどくはなかった。
「休むのでしたら……ほら、あそこの壁画の上にあがりましょ」
 そんなヨハンの内心を知ってか知らずか、織愛はいそいそと周囲を探す。そうして少し大きめの壁画を見つけると指さした。
「いいですね。行きましょう」
 ヨハンも頷く。そして二人は泳ぎ出した。
 ちなみに、怪しげな猫の女神が躍っている壁画だった。

 危なげなく壁画までたどり着いて、寝転がれば。
「……寝転んだら視界が月と星ばかりになりますね」
「そうですね。……ゆっくり星を眺めるのもいつぶりかな」
 お互いの姿は見えなくなる。そうすると視界はもう、星ばかりになってくる。
(波の音が心地よくて、うとうとしちゃいそう……)
 程よく感じる揺れもいい。と、織愛はゆっくりと目を細める。
 そのままうつらうつらと薄く目を閉じたり、開いたりしているので、
(妙に隣が静かなのも落ち着かないな……)
 ヨハンのほうはといえば、そんな織愛の様子が見られないので、なんだか段々不安になってくるのであった。
 なぜだ。多分、日ごろの行いだ。
 と、なんとなくそんなことを思いながらも、ヨハンは隣の様子をうかがう。
 そうすると、なんとなくうとうとしながら織愛もヨハンの様子が気になっていて。丁度横目でヨハンのことを見た瞬間と、かち合うのであった。
「……」
「……」
「……えへへ 星、綺麗ですね」
 一瞬の無言であったが、織愛はその時も笑顔でいて、その後も嬉しそうにそうヨハンに声をかけた。
(……思えばいつも笑っているな、この人は)
 そんな織愛に、ヨハンはぼんやりとそんなことを考える。
(……偶にはこういうのも悪くはない、か)
 喋んないし。こういう時間も、悪くは……、
「あっ、今笑いました? 笑いましたよね!?」
 と、思ったのは一瞬のことであった。
 次にはもう口を開いている織愛に、ヨハンは眉根を寄せる。
「そう思った直後に騒ぐのもいかがなものか」
「そう思った、って、どう思ったんですか!?」
「ちょっとはましになったかな、と思ったんですよ、その口が」
「ええっ。そういう意味ですかー!」
 返事をしたが最後。相変わらず明るくしゃべり続ける織愛に、ヨハンはげんなりとした顔をする。
「もうー! またそんな顔をして! いつもああしてくれてたらいいのに!」
「ああ、うるさいうるさい。まったくいつも通りだな」
 どこか疲れたような。けれども不快そうではないヨハンの声と、
 いつも通りの明るい織愛の声が、いつまでも星空の中で続いていた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ベイメリア・ミハイロフ
リュカさまもご一緒していただけましたら嬉しゅうございます

飛び立つ機械鳥さん、きらきらふわふわ降っていらっしゃるくらげさん
そしてお月さまの上がる夜空
とても幻想的な光景でございますね

リュカさま、わたくし
先の鳥さんたちのように
お空を飛び上がってみたく存じます
うまく着水できますでしょうか
どうしてもとんでもない所に落ちてしまいそうな場合は
空中浮遊を利用してみます

リュカさまは行かれますか?行かれませんか?
わたくしは、色々考えたのちに
勇気を出して、ええーいっ、と水の竜巻へ走りこみます
一瞬のうちにぐるぐるぶわーっと持ち上げられ
夜空へ打ち出されたならば
お月さまに近づいた気がして、気分は最高潮に…

※アドリブ歓迎



 ベイメリアは、目を輝かせていた!
「リュカさま」
 感動したような表情で、空を見上げるベイメリア。
「飛び立つ機械鳥さん、きらきらふわふわ降っていらっしゃるくらげさん、そしてお月さまの上がる夜空……。とても幻想的な光景でございますねっ!!」
 きらっきらしていらっしゃいます!! と。きらっきらした表情で両手を天に掲げるベイメリアに、
「あ、うん。幻想的……かな?」
 そうか。そんなものか……みたいな顔をして、リュカは小さく頷いた。
「リュカさまはそうはお思いになられませんの?」
「いや、お姉さんがものすごくはしゃいでるなあ、って、思います」
「まあ」
 リュカの言葉に、ベイメリアはぱちり、と瞬きをする。
「それでは、わたくしのはしゃぎように、もう少し付き合ってくださいませ」
 ふふふ。と。何やらご機嫌に微笑むベイメリア。いいけど……? と、リュカが首を傾げると、
「リュカさま、わたくし……、先の鳥さんたちのように、お空を飛び上がってみたく存じます」
 と。徐に。決意も新たにベイメリアは言い切るのであった。
「う、うん……」
 その物凄く決意に満ちた目に、気圧されたようにリュカも頷く。
「うまく着水できますでしょうか」
「飛び込み台の要領で飛び込めば大丈夫だと思うよ」
 真面目に上げる懸念事項に、リュカも言われて真面目に考える。
「そういえば、UDCアースにはそのような遊びがございましたね」
「うん、俺も映像で見ただけだけれども」
 ベイメリアも思い出して、うん、と、頷く。
 それなら、ベイメリアでもできそうだ。
「では、どうしてもとんでもない所に落ちてしまいそうな場合は……」
「例えば?」
「イルカさんの上とか」
「それは、イルカさんが逃げてくれると思います」
「……まあ」
 それもそうか。みたいな顔で瞬きをするベイメリア。
「けれども、もしものときは、空中浮遊を利用してみます」
「……それを使えるなら、着水の時もそれで衝撃をやわらげられたんじゃ?」
 うん、うん、と、頷くベイメリアに思わずリュカが言って、
「というか、竜巻を使わなくても……」
「リュカさま」
 いいんじゃあ。と、言いかけたリュカの声を、真剣なベイメリアの言葉が遮った。
「それがロマンにございます」
「……はい」
 あまりにも真面目な顔をしていたので、リュカは思わず大人しく頷くのであった。
「リュカさまは行かれますか? 行かれませんか?」
「ええと……何だかお姉さんが心配だから、竜巻の前まで一緒に行くよ。で、下で待ってる。危なくなったら助けるから」
 あとはそんな会話をしながら、二人で竜巻まで近寄る。
 近寄る。近寄ると……、
「ああ。ですが。万が一着水がうまくいきませんでしたら。ああっ。それに、竜巻の中でおぼれてしまったとしたら。そして……」
 何やら、いざ目の前に来ると色々心配になるベイメリアに、リュカが心配そうな視線を向ける。それに気付いているかいないか、
「ええいー! すべては度胸でございます!!」
 突然。ベイメリアは声を上げて。
 水の竜巻の中に体を突っ込んだ。
「っ、ひゃああああああああああああああ!!!」
 ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる!!
 竜巻の中をベイメリアはぐるぐる回る。そして、
 ばしゃん! と。空中へ打ち上げられた。
「ああ。ああ……!」
 視界いっぱいに空が広がる。月が目の前にあった。ベイメリアは感極まる。月が、すぐそこまでに来ているような気がして……、
「ごきげんよう!!!」
 何を言うのか。迷う暇もなく。
 ベイメリアは月に向かって、そう声を上げるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクトル・サリヴァン
凄い景色だねー。これだけでも来た価値あるくらい。
折角見つけた星図もあるし、星見と洒落こもうか。

お魚あげてイルカ達と泳ぎつつ星見を楽しむ。
リュカ君(f02586)見つけたら挨拶しつつ星見ない?とお誘い。
あんまり近くよりも離れた方が綺麗な事もあるしね。
竜巻に飛び込むのは気持ちよさそうだけど…今は我慢。
世界違っても星はどこも綺麗でいいね。クラゲもだけど。
…痺れなくなったのどういう原理なんだろうね?
これで一つのロマンは終わり、そして人々は次を探すんだろうね。
うーん…やりたい事、ロマン…こういうのは今だけ、か。
一緒に突撃してみる?来なくても一人で行って来るけど(空シャチ召喚しつつ)

※アドリブ絡み等お任せ



 満天の星空に、飛んでいく鳥たち。そして、舞い落ちてくるまばゆいクラゲたち。
「凄い景色だねー。これだけでも来た価値あるくらい」
 海底から脱出し、天を仰いでヴィクトルは息をつくと、すぐにその景色にしみじみと息をついた。
「それじゃあ、折角見つけた星図もあるし、星見と洒落こもうか」
 思わずつぶやいて、それから空を仰ぎながらヴィクトルは一度、頷く。
「ちょっと、別の星があるから、気を付けないといけないけれどね」
 輝くクラゲたちに楽し気に目を細めて。ヴィクトルは泳ぎ出すのであった。

 イルカに魚をあげながら、のんびりとヴィクトルは海を泳ぎ、星を見る。
「ああ。リュカ君」
 壁画の上で休憩しているリュカを見つければ、声をかけたりなんかもして。
「星見ない?」
 ひょい、と片手をあげて挨拶した後、そういうヴィクトルにいいよー。と、ゆっくりリュカも手を振り返す。
「実はね、これ。星図を見つけたんだ……」
「本当? じゃあ、あの星は……」
 水の竜巻から離れたところで二人、何でもない会話をする。
 ヴィクトルは星図を広げてのんびりとそれを見て。時々リュカはそれについて質問したりしていた。
「そういえば、お兄さんはあれ、行かないの?」
「うん。竜巻に飛び込むのは気持ちよさそうだけど……今は我慢。あんまり近くよりも離れた方が綺麗な事もあるしね」
 竜巻を示すリュカに、ヴィクトルは頷く。
「世界違っても星はどこも綺麗でいいね。クラゲもだけど」
「クラゲはきれい……かなあ」
「世界によっては、癒しの生き物みたいに言われてるところもあるよー」
 付与付与降りてくるクラゲを見つめながら、ヴィクトルは言う。それからふと、
「……痺れなくなったのどういう原理なんだろうね?」
「……うーん」
 その言葉に、リュカは少し首を傾げて、
「捕まえて、調べてみたら?」
「やっぱりそれしかないかなあ」
 結局のところ、そうしないとわからないか。と、ヴィクトルも結論付けて、一つ頷いた。
「これで一つのロマンは終わり、そして人々は次を探すんだろうね」
「それが冒険家ってものだからね」
 言われて、そうか。と、ヴィクトルは頷く。
「うーん……やりたい事、ロマン……こういうのは今だけ、か」
 それから悩むように、竜巻のほうを何度か見つめた。
「……一緒に突撃してみる? 来なくても一人で行って来るけど」
「だったら、俺はここでもう少し星を見てるよ」
「はーい」
 結局、せっかくだから自分は突入することにして、ヴィクトルもまた、泳ぎ出す。
 あのふらふら舞い落ちてくるクラゲと一緒に、自分もふらふら落ちてくるのだと思うと、なんだか不思議な気持ちがして。ほんの少し彼は泳ぐスピードを上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニヒト・デニーロ
鳴宮(f01612)と

「特等席で、クラゲを見に行きましょう」
ヒトデ型UFOを呼び出して、夜空へ。
クラゲたちが降ってくる姿を、一番近くで眺めるの。

……いつか約束したこととは少し違うけれど、
これも、綺麗ね。

……ねえ鳴宮、誘ってくれて、ありがとう
とても楽しかった、あなたはいつも、私を海に連れて行ってくれる。

(――今は隣に居られるだけでいい。同じ星を見ていられるだけで、十分)
(いつかその日が来て、隣りにいるのが私でなくても)
(この思い出だけは、たしかに私のもの)
(……口には、絶対出さないけれど)


鳴宮・匡
◆ニヒト(f13061)と


ニヒトと並んで夜空を見る
海底に漂うのを眺めるのとは、また少し違った色に見えて
それが少し、不思議な感じがする

約束……、ああ。夜の冒険、だっけ?
そうだな、少し違うけど
こういうのも悪くないんじゃないかな

……礼を言われることじゃないよ
そうやって笑っていてくれるのが、一番だ

(――そう、思うのに、)
(どうしてもこの気持ちは、彼女のそれと同じにはならなくて)
(笑っていてほしいなんて、偽善じゃないだろうか)
(いつか、傷つけてしまうのは自分なのに)

……難しいな
いや、こっちの話だよ

なんにせよ、ニヒトが楽しいと思ってくれるなら十分
……写真に残せないのは残念だけど
その分、しっかり見ていこうか



「特等席で、クラゲを見に行きましょう」
 ニヒトがそう言って呼び出したのは、でっかいUFOであった。
 なぜかヒトデ型をしている。
 どうやらビームまで搭載されているようだが、今回は使わない。敵はすべて倒し、星空観光に使用するのだから。
「ああ。それじゃあお邪魔するな」
 匡は頷いて、ニヒトのUFOに乗り込んだ。
 二人でそうして、空を飛ぶ。
「クラゲたちが降ってくる姿を、一番近くで眺めるの」
 そんなに人の希望をもとに、ちょうど高度は竜巻のてっぺんすれすれであった。
 頂上ではクラゲがペイぺいぺい、と吐き出され、一緒に吐き出された機械の鳥は翼を広げて跳んでいくというのに、クラゲは飛ぶ力もないので傘を広げて、ふわふわと落ちていく。
 月光に当たったクラゲは、ひとを痺れさせる力を持たないらしい。
「……」
「何?」
 何を考えているのか、という意味合いで、ニヒトが匡に問うた。匡が熱心にそのクラゲを見ていたからだ。
「海底に漂うのを眺めるのとは、また少し違った色に見えて、それが少し、不思議な感じがする」
 実際、水中と空中では、やはり見える色や姿は違うだろう。
 それもそうではあるが、それとは別に、
 月の光に照らされたクラゲは、なんだか不思議な感慨があった。
「……いつか約束したこととは少し違うけれど……、これも、綺麗ね」
 言われて、ニヒトもクラゲを見つめていた。見つめながら、ぽつん、と、呟いた。
「約束……」
 ニヒトの言葉に、今日は思いを巡らせる。
「ああ。夜の冒険、だっけ?」
「忘れてた?」
「忘れるわけがないけれども、すぐに結びつかなかった。……そうだな、少し違うけど、こういうのも悪くないんじゃないかな」
 うん、と。匡は小さく頷く。
 空を飛ぶクラゲたちが、二人の会話を知ってか知らずか。風を受けてくるくると舞い上がり、そして二人のUFOの上も落ちてその期待を滑り降下していく。
 可愛いような。そうでもないような。その光景を眺めながら、
「……ねえ鳴宮、誘ってくれて、ありがとう。……とても楽しかった、あなたはいつも、私を海に連れて行ってくれる」
 ふふ、と嬉しそうに笑うので、匡も微笑む。
「……礼を言われることじゃないよ。そうやって笑っていてくれるのが、一番だ」
 そう? というニヒトの言葉に、そうだ、と匡も頷いて、再びクラゲたちに視線を戻した。
 それから黙って二人で、輝くクラゲや、瞬く星と月を眺めていた。
(――今は隣に居られるだけでいい。同じ星を見ていられるだけで、十分)
(――そう、思うのに、どうしてもこの気持ちは、彼女のそれと同じにはならなくて)
 互いに、無言で。そんなことを言いながら、別々のことを考えている。
(いつかその日が来て、隣りにいるのが私でなくても……、この思い出だけは、たしかに私のもの)
(笑っていてほしいなんて、偽善じゃないだろうか。いつか、傷つけてしまうのは自分なのに)
(……口には、絶対出さないけれど)
(まあ、口に出して言うことでもないな)
「……難しいな」
 ポツン、と匡が呟いたので、尋ねるようにニヒトが視線を匡に向ける。
「いや、こっちの話だよ。なんにせよ、ニヒトが楽しいと思ってくれるなら十分」
 ひらひらと匡は手を振った。そう? と、といいたげなニヒトの視線に、そう。と、匡は頷く。
「……写真に残せないのは残念だけど、その分、しっかり見ていこうか」
 けれども続けた匡の言葉に、ニヒトは何も言わなかった。
 ただ、小さく頷いて。
 いつまでも二人、空を見つめていた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

波瀬・深尋
無事に脱出出来たか
最後まで付き合ってくれてありがとな
ほら、礼の魚だ、食っちまえよ

結局、あの後も
宝は見つからなかったが
このブローチが見付かっただけ
俺にしては上出来な方だな
まだ何にするかは決めてないけど
考える時間は、これからたっぷりある

──見上げた先の空は
とても澄んでいて、綺麗だ

星っていうのは、
なんで、こんな輝いてるんだろうな
俺が迷ってるのも、悩んでるのも
全部、馬鹿らしくなってくる

眩い輝きに届きはしないけど
すこしだけ、手を伸ばして
星のブローチを翳そうか

今度こそ、お前を見つけてみせるよ



 深尋は水面から顔を出した。
 足元から振動のようなものが伝わってくる気がするが、ここまでくればもう、大丈夫だろう。
「……無事に脱出出来たか」
 ほっと、一息つく。
 遺跡の崩壊に巻き込まれて済んで、僥倖であった。
「最後まで付き合ってくれてありがとな。ほら、礼の魚だ、食っちまえよ」
 きゅ、と、同じように顔を出したイルカに、深尋は語り掛ける。残った魚を手渡すと、イルカは嬉しそうに鳴くので、深尋も頷いた。
「助かったよ。結局、あの後も、宝は見つからなかったが……」
 イルカの頭を撫でながら、深尋はつぶやく。そして手の中のブローチを、イルカに見せるように示して、もう一度それを握りこんだ。
「このブローチが見付かっただけだった。……でも、俺にしては上出来な方だな」
 きゅ……。と、なんだか心配そうに深尋の顔を見るイルカに、大丈夫だ、と、深尋も小さく頷く。
「まだ何にするかは決めてないけど、考える時間は、これからたっぷりある。だから、ゆっくりしっかり、考えるさ」
 頭を撫でると、もっと撫でろと主張するので。何度か深尋はイルカの頭を撫でながら、顔を見上げた。
 ──見上げた先の空は、とても澄んでいて、綺麗だった。
 まるで、深尋の思いを見透かすように……。
「星っていうのは……、なんで、こんな輝いてるんだろうな」
 視界いっぱいに広がる星と月。
 手を伸ばしても届かない場所で、でも、確かにその存在を深尋に示すように瞬いている。
 海にもその光が映りこんで、
 そんな中にいる自分が、なんだかすごく小さくなってしまったようで。
「……俺が迷ってるのも、悩んでるのも、全部、馬鹿らしくなってくる」
 この、大きな輝きの中での些細なことのように思われて。深尋はそっと、息を吐く。
 それでも……だからこそ。
 そこで、終わってしまうわけにはいかないと、思った。
「……」
 目を細めて、手を伸ばす。
 その手は、眩い輝きには届きはしないけど。
 深尋は握りこんでいた星のブローチをそっと翳した。
 それは本物の星空ではない、行ってしまえばまがい物だけれども、
 けれども、つかめない星ではない。深尋の手の中に確かに、掴むことのできる星だった。
「……今度こそ、お前を見つけてみせるよ」
 そしてそっと、深尋はそれを握りこむ。
 この星のように。今度こそ、掴んで握りしめるのだと、心に決めて……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

城島・冬青
【橙翠】

クラゲが空から降ってくるなんて面白いですね
中華の胡瓜と海月の和え物は美味しいけど
材料が無いので今日はお預けです
写真撮ろーっと(鞄から密封袋に仕舞ったスマホを取り出し)
ん?アヤネさんどうしました?
え…トマト??(トマトジュースに偽装したアイテムの吸血パックを見られ)
ダメです!
これはあげられません!
…ごめんなさい
独り占めしたいわけじゃないんです
ソレ見た目はトマト飲料ですけど
中身は血が入ってるんです
吸血衝動が出そうな時に飲む
常備薬みたいなものですよ
今は大丈夫ですけど
激しい戦闘後には…少し喉が乾くもので…

血の味は薬みたいな味で正直あまり好きじゃないです
は?!アヤネさんは飲んじゃダメですよぉ!


アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
空から落ちてくる海月を見上げながら
日本人は海月を食べると聞いたけど
あれは中国人だったっけ

まあソヨゴが料理しないなら僕は食べないけどネ

休むのにちょうど良い場所を探して
二人でのんびり景色を眺めよう

おや?
それはトマトジュース?
見慣れないデザインだネ

ふうん?
じゃあ僕にもひと口分けてよ

ははあなるほど理解した
それはそれとして味見してみようかな?

冗談半分でわざとソヨゴを困らせてみる
かわいいので笑いを堪えきれない



 ぽいぽいぽい、と、空からクラゲが舞い落ちてきている。
「クラゲが空から降ってくるなんて面白いですね」
 壁画の上で、寝転がって。
 何をするでもなく空を見ていた二人であったが、ぽつんと冬青がつぶやいた言葉にアヤネも頷いた。
「日本人は海月を食べると聞いたけど、あれは中国人だったっけ」
「またそうやってすぐ食べ物の話を振る」
 アヤネの何気ない言葉に、冬青は冗談めかして笑う。
「アヤネさん、私のことを食いしん坊だと思ってるでしょ」
「え? 違わないよね?」
 そんな、じゃれあいのような会話もなんだか楽しい。むぅ、と、冬青はちょっと頬を膨らませるような仕草をして。
「中華の胡瓜と海月の和え物は美味しいけど、材料が無いので今日はお預けです」
「まあソヨゴが料理しないなら僕は食べないけどネ」
「ふーん。じゃあ私が作ったものだったら、クラゲの刺身でも食べるんですか?」
「当り前じゃないか」
 即座にわかりきったことを、とでも言いたげな返答が来て、その清々しさにちょっと冬青は視線を逸らす。それから、
「写真撮ろーっと」
 ふーん。と、聞かなかったことにして鞄から密封袋に仕舞ったスマホを取り出して冬青は満天の星空といっぱいいるクラゲという、なんだかよくわからない景色を撮影するのであった。
「おや?」
「ん? アヤネさんどうしました?」
 そんな冬青を何とはなしに見ていたアヤネが、声を上げたので冬青は首を傾げる。
「それはトマトジュース? 見慣れないデザインだネ」
「え……トマト?? ……あ!!」
 密封袋に一緒に入っていた、トマトジュースに偽装した吸血パックがちょこんと顔を出していて、冬青は思わず焦ったような声を上げた。
「ダメです! これはあげられません!」
「え??」
 ざっ。と、袋の中にパックを押し込んだ冬青の勢いに、アヤネは驚いたように瞬きをする。その瞬きで、気まずそうに冬青は言葉をつづけた。
「……ごめんなさい。独り占めしたいわけじゃないんです」
 ちょっと視線を逸らす。
「……ソレ見た目はトマト飲料ですけど、中身は血が入ってるんです。その……吸血衝動が出そうな時に飲む、常備薬みたいなものですよ」
 それは、普通の女子学生として生きている冬青にとっては、あまり表には出したくないものであった。ぼそぼそと小さい声で、
「今は大丈夫ですけど、激しい戦闘後には……、その少し喉が乾くもので……」
「ふうん?」
 そんな冬青の様子を、アヤネは不思議そうに聞いていて、
「じゃあ僕にもひと口分けてよ」
「は?!」
 と、何でもないことのように口にした。冬青は驚愕したようにアヤネを見る。
「美味しくないです。とっても美味しくないですよ!? そんな。タピオカ飲むみたいに言わないでください!! 血の味は薬みたいな味で正直あまり好きじゃないです!!」
「ははあなるほど理解した。それはそれとして味見してみようかな?」
「アヤネさんは飲んじゃダメですよぉ!」
 必死になって止める冬青を、のんびりそんなこと言いながら、あれこれとからかうアヤネ。
「も~。アヤネさん、ちゃんと聞いてください!!」
「ああ。聞いてる聞いてる。いつも可愛いソヨゴの声だよ」
 冗談半分で冬青を困らせるアヤネ。揶揄われているのに気付いて冬青もまたそんな声を上げる。
 アヤネはそんな冬青が可愛くて笑いをこらえきれない。
「もうっ。アヤネさんは、本当に……!」
 そんな声を上げる冬青も、なんだかまんざらではなさそうで、
 トマトジュースのことなんて、きっともう、すぐに遠くに行ってしまうだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

榎木・葵桜
エリシャさん(f03249)と

私、寝転がって星を見たいな!

初めてこの世界に来た時、
リュカちゃんがね、草原で寝転がって星見るのを提案してくれててね、
実際やってみたらもうすっごい綺麗で素敵で感動しちゃったんだー
だから、今日はエリシャさんと寝っ転がって星見タイムしたいなぁ♪

それじゃ、イルカさんの背中の上でごろんって転がって海の上で星見しよう!
だいじょぶ、きっとイルカさんもフォローしてくれるもん!

(寝転がり星見上げ)
えへへ、空が近い!
やっぱり綺麗!

やっぱり、この世界の空が、私は一番好きだなぁ
エリシャさんの故郷でもあるしね!

この世界、ちゃんと守れてよかったね
でね、またこんな風に冒険して、星を見に来よう!


エリシャ・パルティエル
葵桜ちゃん(f06218)と

お宝も手に入って素敵な冒険だったわね
葵桜ちゃんはこの世界の星がほんとに好きなのね
ふふ、あたしもよ
寝転がって見るのは安全なところでしかできないものね

あたしはイルカさんが気に入っちゃったから
イルカさんと一緒に見たいな
上手く背中でごろんってできるかしら

葵桜ちゃん見て!
星が降ってくるみたい
あれはクラゲ?
今日の月も星もとっても綺麗
きっとあたしたちを見守ってくれているの
こんな風に平和に空を見上げられるのも
みんなが守ってくれたおかげね

誰かの故郷ってそれだけで特別なものになるから
UDCアースの夜景もお気に入りよ

故郷と言ってもまだまだ知らない場所がいっぱいなの
また一緒に来ましょうね



 そうして、エリシャと葵桜も崩れ行く遺跡から脱出した。
「お宝も手に入って素敵な冒険だったわね」
「うんっ」
 イルカに捕まりながらふわふわと海面を漂えば、さて、とエリシャは一息つく。これから何して遊ぼうか……と、いおうとした、その時、
「私、寝転がって星を見たいな!」
 葵桜がそういって手を上げたので、エリシャが軽く首を傾げた。
「いいわよ。いいけど……」
 葵桜であれば、竜巻に飛び込んで空を飛びたい、というと思ったからだ。
 ほんの少し不思議そうなエリシャに、葵桜はえへへ、と照れたように笑う。
「初めてこの世界に来た時のことなんだけどね」
「うん」
 そっと、ひみつを言うように葵桜は言う。
「リュカちゃんがね、草原で寝転がって星見るのを提案してくれててね、実際やってみたらもうすっごい綺麗で素敵で感動しちゃったんだー。……だから、今日はエリシャさんと寝っ転がって星見タイムしたいなぁ♪ って」
 素敵だったから、素敵なことを、エリシャとしたい。
 そういわれると、エリシャもなんだか嬉しくて。自然と笑みがこぼれていく。
「……葵桜ちゃんはこの世界の星がほんとに好きなのね。……ふふ、あたしもよ」
 そうして、小さくエリシャは頷いた。
「寝転がって見るのは安全なところでしかできないものね。折角だもの、やっちゃいましょう」
「うん。じゃあ、壁画の上に行っちゃう?」
「うーん。あたしはイルカさんが気に入っちゃったから、イルカさんと一緒に見たいな」
 ちらり、と自分が抱きしめるイルカにエリシャは目を落とす。
 イルカはエリシャの言葉がわかるのか、嬉しそうに軽く尾ひれを振って笑っているようであった。
 ふふ、と葵桜もイルカの頭を撫でながらうなずく。
「それじゃ、イルカさんの背中の上でごろんって転がって海の上で星見しよう!」
「あら、素敵だけど……上手く背中でごろんってできるかしら」
「だいじょぶ、きっとイルカさんもフォローしてくれるもん!」
 重くないかしら。なんてちょっと心配するエリシャに、葵桜が自信満々で胸を叩く。任せろ、というように二匹のイルカが一声、鳴いた。

 イルカの背中に寝転がる。
 海の水もまた、彼女らの身体を支えてくれているので、イルカたちも重苦しくはなさそうであった。
「葵桜ちゃん、見て! 星が降ってくるみたい」
 仰向けになって寝転がれば、視界に広がるのは満天の星だ。ところにより振ってくるまばゆい輝きに、エリシャが指をさす。
「あれはクラゲ?」
「うん、海にいた光るクラゲだね!」
 竜巻に持ち上げられて、ばらばらになって、本当の星のように散っていく。
 そして彼らはまた海に戻って、海の星となるのだろう。
 その傍らでは、鳥が飛んでいく。きっと二人が見たこともない場所に、二人の思いも載せていくのだろう。
「海に戻ったら、また痺れるクラゲになるのかしら?」
「うーん……。どうだろうね?」
 エリシャの何気ない問いかけに、葵桜がうんうん頭を悩ませたりもして。
 ひとしきりいろいろ喋った後で、
「えへへ、空が近い! ……やっぱり綺麗!」
 ね。と、嬉しそうに葵桜が天に向かって手を伸ばす。
「ええ。……今日の月も星もとっても綺麗」
 その、空を掴むような仕草を、エリシャも真似してみた。
「きっとあたしたちを見守ってくれているの。……こんな風に平和に空を見上げられるのも、みんなが守ってくれたおかげね」
 星は掴めはしない……と、思ったら、ふにゃん。と手の中にクラゲが収まった。ゼリーのようで手触りがよかった。わあ、貸してー。とばかりに葵桜が手を振るので、エリシャは寝転んだままクラゲを渡す。
「……やっぱり、この世界の空が、私は一番好きだなぁ。エリシャさんの故郷でもあるしね!」
 クラゲをフニフニしながら、葵桜も言う。その様子がなんだかおもしろくて、エリシャはふふ、と笑いながら、
「誰かの故郷ってそれだけで特別なものになるから、UDCアースの夜景もお気に入りよ」
「ええ、そうかな!?」
「勿論。もちろん、私の故郷も特別だけれどもね。……故郷と言ってもまだまだ知らない場所がいっぱいなの。きっと、いろんな不思議なことがこの世界にはまだ残っているのでしょうね」
 しみじみといったエリシャに、ふふー。と葵桜は笑う。それ、とクラゲを海の中に葵桜は返しながら、
「この世界、ちゃんと守れてよかったね。……でね、またこんな風に冒険して、星を見に来よう!」
「そうね。また一緒に来ましょうね」
 きっとそれも、すごく楽しくなるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

荻原・志桜
🌸🐺
間一髪だったね
わたしは平気。イルカさんもいてくれたし

え、あれって、……あれするの?
絶叫系大好きだし魔法で空飛ぶこともあるから浮遊感には慣れてる
すごく楽しそうだけど、大丈夫?

よし、ディアナちゃんがやる気なら背に腹は変えられない
わたしも心を鬼にして、いざ参らん!
ごーごーっ!あ、3~4回はやりたいな
彼女の腕に自身の腕も絡めて逃がさない
イルカさんのおかげで海もだいぶ慣れたし、なんとかなる!

あはは、楽しかった!あのふわっとする感じ好きなの
クラゲも透き通って星に負けないぐらいキレイだったね

海も怖くない、泳ぎだって上達した気がする
ディアナちゃんといっぱい楽しんだからかな?
ありがとう、……おねえちゃん


ディアナ・ロドクルーン
🌸🐺
はー…、巻き込まれてしまうかと思った
大丈夫だった?

後はどうしよ、せっかくここまで来たし海克服するの頑張りたい…
ねえ、「あれ」やってみない?(指さすのは水の竜巻
空を飛べる感覚を楽しめそうなのと…ね、一種の修行(海に落ちる)として
一回で良いから、一回で…!!志桜ちゃん見かけによらずスパルタ…!!(震えた

鳥とクラゲと空中遊泳を楽しんで。疲れたら海の上の壁画で綺麗な空を見上げ乍ら一休み

最初はどうなるかと思ったけれども何とかなるものね
それに、とても楽しかった。一緒に来れて良かったわ、ありがとう、「志桜」
(大切な友達、妹の様な可愛い子。お姉ちゃん、その言葉が心に沁み入って泣きそうになったのは秘密だ



 足元から何かが崩れるような振動が伝わってくる。
 それはディアナと志桜が海の中を上昇していくにつれ、徐々に弱くなっていき……、そして最後には、消えた。
「はー…、巻き込まれてしまうかと思ったよ」
 海面に顔を出して、ディアナが大きく深呼吸をするように息を吐く。同じように海面から顔を出した志桜も、ふう。と息をついた。
「うん、間一髪だったね」
「大丈夫だった?」
 志桜も一息つくと同時に、ディアナが心配そうに聞いてくれるので、ふふ、と志桜は微笑む。
「わたしは平気。イルカさんもいてくれたし。ディアナちゃんは?」
「私? 私は……大丈夫」
 そう答えながら、ディアナは思い出した。最初は、海が怖かったことに。
 今でも、あまり得意ではないけれども……。こうして海に戻って、無事に帰ってきた、という事実に、何と話にディアナは少し、感動した。
「それで、後はどうしよってことなんだけど、せっかくここまで来たし海克服するの頑張りたい……」
 なのでその時、ディアナは何となく…………そう。悪く言ってしまえば、調子に乗っていたのかもしれない。
 だから、あとから考えて、あんなことが言えたのだ。それすなわち……、
「ねえ、「あれ」やってみない?」
 と、言いながら、水の竜巻を指さしたのである。
「え、あれって、……あれするの?」
 ぱちくり、と、志桜は瞬きをする。
 泳ぐのは初めてといっていたけれども、恐ろしく思っている、というわけではなさそうだったので、こくり、と、ディアナは頷いた。
「空を飛べる感覚を楽しめそうなのと……ね、一種の修行として、どうかな、って」
「うーん……」
 言いながら、志桜は考え込んだ。
「こういうのは苦手?」
「ううん。絶叫系大好きだし魔法で空飛ぶこともあるから浮遊感には慣れてるから……」
 だから。と、志桜は考え込んで、
「すごく楽しそうだけど、大丈夫?」
 なんて、奇妙な質問をするのであった。
 その時、大丈夫、と答えたことを、ディアナは後でほんの少し後悔をした。

「よし、ディアナちゃんがやる気なら背に腹は変えられない」
「いいのね。よかった……!」
「わたしも心を鬼にして、いざ参らん! ごーごーっ! ……あ、3~4回はやりたいな」
「!?」
 あれ、何か聞き間違えただろうか、というような顔をディアナはした。
「さ……さん?」
「え?? もっとやる?」
 さらりと笑顔で問い返す志桜に、ディアナは青くなる。
「一回で良いから、一回で……!!」
「修行なんだよね。一回だけなんて、修行にならないよ」
 腰が引けているディアナであったが、すでにその腕に自分の腕を絡めて志桜も逃がさない体勢だ。
「イルカさんのおかげで海もだいぶ慣れたし、なんとかなる!」
「志桜ちゃん見かけによらずスパルタ……!!」
「ふふふ、楽しみ!」
「もしかしてこれ、志桜ちゃんの趣味なだけなんじゃ……!!?」
 いろいろ言っていたが、抵抗する間もなく引きずられて行くディアナであった。
 その後、ディアナの悲鳴と志桜の歓声が竜巻から何度も聞こえてきたという……。

 そして……、
「はあ、はあ、はあ……」
 何度目かの遊びの後、壁画になんとかたどり着き、這い上がってディアナは休憩をしていた。
 鳥とクラゲと空中遊泳を楽しんで……まあ楽しめたはずだ……疲れた体を休める隣で、
「あはは、楽しかった! あのふわっとする感じ好きなの。おうちに持って帰れたらいいのに」
 志桜は元気いっぱいできらきらした目であった。
「……クラゲを?」
 ちらり。と伺うようにディアナは問うと、
「勿論、竜巻をだよ」
 と、当たり前のように志桜は応えたが、
「クラゲも透き通って星に負けないぐらいキレイだったね」
 その後、冗談を言う子供のように、ふふ、と楽しげに笑うのであった。
 その笑顔に、風、とディアナは一息ついて壁画の上に寝転がる。
「……最初はどうなるかと思ったけれども何とかなるものね」
 飛び込んでしまえば、何ということもなかった。過ぎ去ってしまえば、今はあの竜巻だって楽しかったといえる気がする。
 そんなディアナの台詞に、志桜も微笑んだまま、小さく頷く。
「海も怖くない、泳ぎだって上達した気がする。……ディアナちゃんといっぱい楽しんだからかな?」
「あら。私と?」
 問うようなディアナの視線に、志桜は小さく頷いた。
「ありがとう、…………」
 それから、志桜は何か言おうとして。
「…………」
 ちょっと、言葉に詰まって、
「おねえちゃん」
 物凄く照れたように、微笑みながらそう、言った。
 ディアナは思わずその顔を見上げる。
 お姉ちゃん、という言葉を反芻して、なんだか泣きそうになってくる。
(大切な友達、妹の様な可愛い子。お姉ちゃん、……お姉ちゃん。私が?)
 こみあげてくるものはあるけれども、涙は見せられなくて。一呼吸おいて、
「私も。とても楽しかった。一緒に来れて良かったわ、ありがとう、……「志桜」」
 本当にうれしそうな、笑みを浮かべた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャック・スペード
機械仕掛けの鳥たちは
景気良く飛び立って行ったな
宝物も幾つか手に入れられたし
あとは……少し遊んで行こうか

あの水の竜巻が気になっている
高所が平気なら、リュカも是非一緒に
鳥やクラゲと一緒に舞い上がって
空から海を眺めるのも、きっとタノシイ

竜巻へ思い切り突入して、空へ
……綺麗だな
星と月がこんなにも近い
手を伸ばしたらうっかり届いてしまいそうだ
煌めくクラゲが落ちていく様も幻想的で
飛び込んでみて良かったと思う

暫し夜空の旅を堪能しつつ
落下が始まれば機翼を展開して飛ぼう
勢い良く着水すると、俺の場合は海底に沈むからな

そうだ、リュカがもう少し空の旅を望むなら
あんたを連れて、此の翼で空を旋回してみるが
如何だろうか?



「……機械仕掛けの鳥たちは、随分と景気良く飛び立って行ったな」
 天を見上げてジャックは静かに呟いた。
 竜巻で巻き上げられ、吐き出されると同時に翼を広げた機会鳥は、めいめいに違う方向へと飛び立っていく。
「……」
 不思議なものだと、ジャックは思った。
 あの鳥が、きっとどこかで、誰かの冒険の種になる。……機械が浪漫を生み出すなんて。
 なんとなく灌漑で息をついて、ジャックはぐるりと周囲を見回す。
「宝物も幾つか手に入れられたし。あとは……少し遊んで行こうか。そうだろう、リュカ」
「うん?」
 丁度通りがかったリュカに声をかけると、リュカも頷いた。
「遊ぶって……なにして?」
「勿論、あれだ」
 ふっ。とジャックが指をさしたのは巨大な竜巻である。
「あの水の竜巻が気になっている。高所が平気なら、リュカも是非一緒に」
「いいケド、お兄さんがああいう遊び好きだっていうのは、ちょっと意外」
「何を言う。俺はこれで……」
「これで?」
 なんとなく適切な言葉が思いつかずに、ジャックが考える。リュカが首を傾げていると、
「遊び人だ」
 多分この言葉遣いが一番適切だろう、と思ったのでジャックがそういうと、リュカは若干、驚いたような顔をして、
「……なるほど?」
 納得したようなしていないような顔であったが、ジャックは何処か得意げであった。遊び人という響きが案外気に入ったので、
「鳥やクラゲと一緒に舞い上がって、空から海を眺めるのも、きっとタノシイ」
「それもそうだよね。じゃあ、行こう」
 それ以上は言うことなく、二人で竜巻のほうへと突入していった。

 ぐりんぐりん回る竜巻は、ジャックの重い身体もお構いなしに上空へと運んでいく。
 自分の意志とは関係なく浮かぶというのもこれはこれで楽しい……と、思っていた瞬間に、ぺいっ。と空へと投げ出された。
「……綺麗だな……」
 目の前に広がる光景に、思わずジャックの声が漏れる。
 満天の星空に、いつもよりも月が大きく見えた。
「手を伸ばしたらうっかり届いてしまいそうだ」
「届いたら、そのまま持って帰らないように気を付けてね」
 思わず感心したような声を上げるジャックに、リュカが冗談めかして言う。いいながらも、いい景色だ、と。感心したようにリュカは一つ頷いていて。
「ああ……。持ち帰るなら、こちらの星だろうな」
 と、ジャックは冗談めかして一緒に空を舞うクラゲたちを指さすのであった。
 煌めくクラゲが落ちていく様も幻想的で美しい。そしてもちろん、言ってみただけでそんなことはしない。それはお互いわかっていての会話ではある。
「……飛び込んでみて良かったな」
 そんな、不思議な景色を前に思わず、という風にジャックが呟くと、リュカはほんの少し笑ったようであった。

 そして、とんだあとは落ちるだけである。
 普通の人間ならば普通に着飛び込めば大丈夫だろうが、ジャックの期待では飛び込んだ勢いのまま海底に沈んでそのまま海の中に刺さりかねない。
 では、失礼。と、ジャックは声をかけてジャックは徐に機械仕掛けの翼を広げた。飛行可能なジェットモードへと変身すると、緩やかに海面すれすれへと降下する。
「……ああ。なんだかかっこいいね」
 無事に降り立ったリュカが、面白そうに首を傾げる。それで、ふっ。とジャックも笑った。
「リュカがもう少し空の旅を望むなら、あんたを連れて、此の翼で空を旋回してみるが……如何だろうか?」
 乗るかい? みたいなノリで聞くジャックに、いいの? と、リュカが尋ねる。
「勿論だ。きっとまた、先ほどとは違った飛行になるだろう」
 それは楽しそうだ、なんて笑うリュカに、任せろ、とジャックも素顔の見えない機械の顔で笑うのであった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リリア・オルトラン
小夜殿(f14249)と

あーーー!
すごいぞ小夜殿!なんとも綺麗な景色だ!
あの様子だと海中遺跡は沈んでしまったようだな!
鳥がたくさん飛んでいるし星は綺麗だし水の竜巻が出来ているし、
あーーーー!!!
トレジャーハントに間に合わなんだーーー!!!(ごろんごろんのたうち回る)

く、悔しいぞ!
せっかく猫好き同士のインドア小夜殿を無理やり連れだしてきたというのに(説明口調)
よもや遺跡探索が終わっているとは!

しかし悔いても始まらんな!
せっかく来たのだし全力で楽しもうではないか!

見ろ、小夜殿
竜巻に乗って飛んでいる者がいる!
私達も行くぞー!

わはー!すごいぞ、楽しいぞ!(バッシャーン)
はははは!さあ小夜殿もう一回だ!


星簇・小夜
リリアさん(f01253)と

うん、夜空が綺麗だね
機械の鳥は不思議。…竜巻は、怖い、かな

オレは探索が終わっていてほっとしているよ
海の中の遺跡を探索するなんて怖い。すごく怖い。溺れたらと思うとものすごく怖い
この光景は見てるだけなら綺麗だね
地に根を張る勢いで踏ん張って、到着を遅らせて正解だったかもしれない

見てるだけなら
えっ、オレも行くの
竜巻に近づくのは怖…え、いやオレはいい…て言ってるのに~ぃぃ~~~…!!(ずるずると引かれていく)

(高い…)
クラゲがふよふよしていてかわいいね
星を間近で見れるとしたらこんな感じなのかな(現実逃避)
ヒッ(落下)

予想よりも怖くない…?
待って。ちょっとだけ、休んでから…!



「あーーー!」
 がばぁっ。と、リリア・オルトラン(金月・f01253)は大ぶりな仕草で空を指さした。
「すごいぞ小夜殿! なんとも綺麗な景色だ! なあ、小夜殿!!」
 ほらっ! ほらっ! ほらっ! と、リリアが何度も空へと指をさすので、星簇・小夜(月屑の零れ星・f14249)はそちらに視線をやる。
「うん、夜空が綺麗だね。……機械の鳥は不思議」
 リリアが指さしたのは、ここから少し離れた地点の空であった。巨大な水の竜巻が巻き起こり、星空に光るクラゲたちがばらまかれている。一方で、機械の鳥が空へと飛び立っていく……、という、何とも荒唐無稽なその光景。
(……竜巻は、怖い、かな)
 最後の一言は心の中にとどめた小夜であったが、どうやらリリアは気付かなかったようで。イルカにしがみついて海の中を進みながら、何やら声を上げている。
「あの様子だと海中遺跡は沈んでしまったようだな!」
「ええ。まあ……たぶんそういうことだよね」
「鳥がたくさん飛んでいるし星は綺麗だし水の竜巻が出来ているし、あれはもうなんていうか打ち上げ花火的な奴であろうな。そうであろうな。さっきすっごい音がしたから、遺跡はなくなったんだろうな……」
 ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ。と、リリアはイルカにしがみついたまま、
「あーーーー!!! トレジャーハントに間に合わなんだーーー!!!」
 そのまま器用にじたばたじたばたイルカさんに捕まって駄々っ子のように転がり始めた。
「……」
 イルカのスピードがちょっと緩んだ。そのまま海に転がり落ちてしまわないように気を使ったらしい。
「く、悔しいぞ! せっかく猫好き同士のインドア小夜殿を無理やり連れだしてきたというのに! のに!!」
 あああああ。と、そんな気遣いがわかっているのかいないのか。さらにじたばたしながらリリアは大きく息をつく。
「よもや遺跡探索が終わっているとは!」
「……」
 小夜は遠い目をした。
 どこか隅っこのほうに行きたかった。この大海原で。
「……オレは探索が終わっていてほっとしているよ。海の中の遺跡を探索するなんて怖い。すごく怖い。溺れたらと思うとものすごく怖い」
 そりゃ、溺れずに立ち回ることもできたかもしれないけれども。
 リリアのテンションを見るに、どう考えても一波乱ある旅になることに間違いはなさそうだったし。
 溺れるだけならまだしも(?)溺れてさらに瓦礫にはさまれるとか、想像するだけで身震いがしてくるし。
 それに比べれば、今はイルカさんは優しいし、あちこちに浮いた壁画に捕まれば安全この上ないだろうし、時々見える猫の女神の壁画は何だか可愛いし。
「地に根を張る勢いで踏ん張って、到着を遅らせて正解だったかもしれない。この光景は、見てるだけなら綺麗だからね」
「しかし悔いても始まらんな! せっかく来たのだし全力で楽しもうではないか!」
 しみじみ。と、今生きている喜びをかみしめる小夜の言葉を、リリアは全く聞いていないのだろうか。
「……リリアさん?」
「わかるか? 小夜殿」
 何がだろうか。
 物凄くきらっきらしたリリアの目に、小夜はたじろいだ。……いやな予感がする。
「見ろ、小夜殿。竜巻に乗って飛んでいる者がいる!」
「え? ああうん。確かに……」
「私達も行くぞー!」
「!?」
「では、急ごうイルカ殿! 首尾よく事が進んだ暁には、魚をもう一匹進ぜようではないか! もちろん、私のイルカ殿もだが、小夜殿のイルカ殿にもだ!!」
 どん、と胸を叩くリリア。
 きらり、とイルカの目が輝いたような気がして、
「えっ、オレも行くの? 見てるだけなら……」
「何を言っている。遊ぶときは一緒に遊ばねば!!」
 小夜の目が若干遠くなったかもしれなかった。
 イルカたちはやる気だ。買収されてしまった。イルカを抑えられては小夜に逃げるすべはない。
「いやでも、危ないかもしれないよ」
「大丈夫だ!!」
「それ、何か根拠……竜巻に近づくのは怖……え、いやオレはいい……て言ってるのに~ぃぃ~~~……!!」
「わはー! すごいぞ、楽しいぞ! それどぉぉぉぉぉぉん!!」
 抵抗むなしく、小夜はリリアとともに竜巻の中に突入した。

 ぐるぐるぐるぐるぐる……ぺいっ
 まさにそんな感じだった。
 洗濯機で絞られたような気分の後で、空へと投げ出される二人。
(高い…)
 投げ出された時、視界いっぱいに星空と海が広がっていた。クラゲたちが上空に無数に散っていて、
(クラゲがふよふよしていてかわいいね……)
 クラゲの中の一匹に、小夜は手を伸ばす。ふわん、としていてゼリーみたいで。手触りもよくてピカピカしていて。
(星を間近で見れるとしたらこんな感じなのかな……)
 そう。ほんの少し。ほんの少しくらいならいいだろう。見たくない現実が、小夜にはあるのだ。なにかというと……、
「ひゃー。どしゃー!!」
「ヒッ!!」
 リリアの完成と同時に身近い小夜の悲鳴が響く。
 胃が置いていかれるような浮遊感。背筋がひゅんと冷たくなるようなその感触。
 そう……。飛んだなら、あとは落ちるだけなのだ。
「予想よりも怖くない……?」
 何だかこの世の終わりみたいな小夜の声で、静かに、静かに、そうつぶやく。ああ、これなら思っていたよりも楽かもしれない。この世の終わりではないかもしれない。などと思っていたのだが……、

 バッシャーン!
 水しぶきが上がる。二人は海面に着水する。勢いで深めに水面に沈み、そして浮上する。そして、
「はははは! さあ小夜殿もう一回だ!」
 と、笑ってリリアが小夜の腕をとったからだ。
「え!?」
「ふふ。楽しいな、小夜殿!」
 嬉しそうな、満面の笑顔に小夜も思わず、頷いた。それに、ますますリリアは嬉しそうな顔になる。
「では、参ろうか!!」
「待って。ちょっとだけ、休んでから……!」
 この世の終わりはこれから始まるのだ。なんて、抵抗する暇もなく。
 ざっざっざ。と、小夜はリリアに手を引かれて、水面を進んでいくのであった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

青和・イチ
ああ…全部崩れちゃった、ね…
遺跡はこうでないと
でもちょっと残念

取り敢えず…ちょっと休みたいなあ
イルカとくろ丸と一緒に、大きめの板や壁を探し、横になってひと休み
…あ、星が、最高に綺麗……
波に揺られて見る星も、いいなあ…
そう言えば…星のカケラって、何だろ…
(虹モフ&くろ丸をモフモフ、イルカをつるつる撫で(癒し)



…はっ。寝てた

寝たら体力回復
水の竜巻…まだあるかな?飛び込んでみたい
空に巻き上げられて…から、海に飛び込める、感じ?
絶対楽しい

リュカくんが居たら、「こんばんは」と話し掛け、楽しい冒険のお礼を
折角だから…竜巻ダイブ、ご一緒したいなあ
高い所、平気かな
何ならくろ丸をお守…じゃなくて、護衛につけるよ



「ああ……全部崩れちゃった、ね……」
 足元の振動が、徐々に、徐々に、収まっていく。
 きっと、この下のピラミッドでは大崩壊が起きていて。でも、もう、徐々に収まっていくのだろう、というのがわかって。
「遺跡はこうでないと……って、思うけど。でもちょっと残念だね」
 イチはそっと、くろ丸に語り掛ける。
 くろ丸は、そうなの? とでもいうように、じっとイチを見返していた。
「そうだよ。それが、浪漫なんだ」
 イチが主張すると、くろ丸はそんなものかなあ、みたいな顔をしているので、なんだかちょっと、笑ってしまった。
「取り敢えず……ちょっと休みたいなあ」
 それにしてもさすがに疲れてしまったので、イチは大きめの壁画を探すことにする。
「ごめん、ちょっとそこで待っててくれる?」
 いい感じの壁画を見つけると、イチは上に乗った。くろ丸も一緒にやってくる。
「あ、でも、イルカさんは……」
 待ってて。といったけれど。ふと思いいたってイチがイルカを見ると、
 イルカも、お許しを受けたくろ丸のようにばしゃん、と、壁画の上に滑るようにして乗り込んだ。
「おお……」
 そのままだらりと寝そべるイルカ。まるで陸あげされたマグロと同じ形をしている、とは、思っていても一は口に出さなかった。その間にくろ丸は、プルプル身体を振って水滴を弾き飛ばしていたので、
「よかった。じゃあ、三人で一休み……」
 イチとイルカと間にくろ丸。
 川の字のような格好になって寝そべると、
「……あ、星が、最高に綺麗……」
 満天の星空が目の中に飛び込んできた。
「波に揺られて見る星も、いいなあ……」
 言いながら、イチは徐に宝箱から虹色もふもふの毛を取り出す。
 それをモフモフと撫でながら、時々くろ丸をモフモフしたり、イルカさんを撫でたりしていて、
「そう言えば……星のカケラって、何だろ……」
 とか思ってたら、いつの間にか空から光るクラゲが降ってきていた。
 これが、欠片……とか、思ったか、思ってないか。
 してるうちに、ゆっくりと意識は遠ざかって……、

「お兄さん。……お兄さんっ」
 遠くから声が聞こえる。
「……はっ」
 はっ。と、イチは目を開けた。
「よかった」
「あ……ああ」
 いつの間にかイルカとくろ丸とリュカがイチを覗き込んでいた。
「寝てた」
「そうみたいだね。……遠目から見たら三人して転がってるから、びっくりしたよ」
 たしかに。
 三人して川の字で転がっている姿を想像して、イチは気まずげに鼻の頭を掻く。
「近づいたら、死んでないのは分かったけど、気分が悪いのかと」
「いや、ちょっと、体力回復を図ってただけだよ。……ええと、ありがとうございます」
 今日のことも含めて、イチはお礼を言う。それから思い出したように、
「あ、こんばんは」
 なんていうので、
「……ん、こんばんは」
 リュカは一瞬、面白そうな顔をして。頷くのであった。
「どれくらい寝てたんだろう……。水の竜巻……まだあるかな? 飛び込んでみたいんだけど」
「大丈夫、まだあるよ」
 体を起こしながらイチは問うと、てしてし、とくろ丸がイチの膝を叩いている。自分も行きたい、という意思表示だろう。
「じゃあ行こう」
 空に巻き上げられてから、海に飛び込んでいく感じだろう。
 想像するだに絶対楽しい。
 イルカも乗り気でぱしゃんと水の中に入る。さあ、行こう、みたいにくるりと回るので、
「あ、リュカくんも、折角だから……竜巻ダイブ、ご一緒しない? 高い所、平気かな」
 せっかくだから、と、声をかけた。
「何ならくろ丸をお守……じゃなくて、護衛につけるよ」
 真面目な顔をして、イチははい、とくろ丸を抱き上げて示す。
「護衛?」
「そう。強いよ」
「竜巻に強さは関係あるの?」
「ない……かも」
 イチの言葉に、リュカは笑ってくろ丸を受け取った。くろ丸は、なんてことを言うんだ、みたいな顔でイチを見ているので、どうやら竜巻の中でも立派に護衛を果たすつもりらしい。
「じゃあ、頼りにしてるよ、くろ丸さん」
 冗談めかして言うリュカに、くろ丸も大いに頷いたので、
「……イルカさん、いざというときは、イルカさんは僕の味方になってくれるよね」
 むぅ、とイチがイルカに視線を向けると、イルカは頼もしく笑った……ような、気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

テティス・カスタリア
何だかすごく派手…こういうの、船長ならロマンとか言う?
分からないこと

そうだ
「ケガは…?」
結構無心で出てきた
気は遣ったつもりだけどイルカ、気になる
見つけた物は仕舞って(腿のガーターリングは人魚時尾びれに繋がるくびれ部分にある)尋ねた
「…何、する?今なら付き合える」
グリモアがもう1度輝くまでを考えると胸の奥がさわさわする
これは…焦り?残り時間を惜しむ気持ちは…
「さみしい、かも」
そう、もっと色々、話してみたいとかあるけど
限られてるからこそ
イルカの望み通りにしたい
遊ぶでも何でも
話すのは大抵の事と並行できるし
遺跡…もう無い
イルカのお仕事も、多分もう
多分この海からは出ないだろうけど…
ええと…心配、みたいな



 テティスはぼんやりと……というか、半ば呆然と、水の竜巻を見つめていた。
「何だかすごく派手……。こういうの、船長ならロマンとか言う?」
 分からないこと。
 そう、全くわからないことだ。
 ほとんど無意味と思える建造物も。
 この世の贅をかき集めたような財宝を惜しげもなく他人に渡すことも。
 そして、ためらいなく爆破させることも。
 どれもこれもが非合理的で、全く持って、意味が分からない。
 ……きっとそれが、人間という生き物なのだろう。と、
 テティスは気づけたか、気づけなかったかは、わからない。
 だって、浪漫というものだって、テティスにとっては理解できない、全くわからないことなのだから。

「……そうだ」
 けれども、テティスにだってわかることがある。
 テティスは思わず、視線を海の中に下げた。
「ケガは……?」
 結構無心で出てきた。
(気は遣ったつもりだけどイルカ、気になる)
 脱出の時は一緒だったが、思っていたより崩壊速度が速かったので、何かに体をひっかけたり、何かに当たったりして怪我はしていないかとテティスは心配になったのだ。
「きゅ!」
 しかし、そんなテティスの言葉に応じて、イルカが明るく声を上げた。
「ケガない」
 確認するようなテティスの声に、イルカは頷く。どうやら無事に脱出できたようで、テティスはほっと息をついた。
「……」
 それでひとまずは安心した。見つけたものを、仕舞いながら、テティスは少し考える。ガーターリングをはめた尾びれを揺らしてから、
「……何、する? 今なら付き合える」
 何、しようか。わずかな時間だけれども。と。
 言いかけて、テティスは言葉を飲み込んだ。
「……」
 なんだかわからないけれども、胸の奥がさわさわする。わずかな時間だ、と、思ったからだと気付いたのは、数秒後であった。
(これは……焦り? 残り時間を惜しむ気持ちは……。でも、焦るようなもの、何もない)
 敵は倒した。崩壊の危機からは脱した。急ぐようなことは何もないと、自問自答して、それから。
「……さみしい、かも」
 改めて、テティスは胸に手を当てて自分のことに気付いた。
「そう、もっと色々、話してみたいとかあるけど……、限られてるからこそ、イルカ、君の望み通りにしたい」
 何をしたい? と、テティスはイルカの目を見て呟いた。たいていのことは、おしゃべりをしながらできるだろう。
(遺跡……もう無い。イルカのお仕事も、多分もう……)
 この子は、どうなってしまうのか。
(多分この海からは出ないだろうけど……)
「きゅ?」
「ええと……心配、みたいな」
 黙り込んだテティスに、不思議そうにイルカが訪ねる。
 それで、テティスも恐る恐る。己の懸念を伝えた。
「きゅ……」
 イルカは少し、考え込んでいるようで。それから己の背中を示す。
「?」
 掴まれ、ということらしい。テティスがおとなしくそれに捕まると、イルカは潜航を開始した。

 クラゲの光に包まれた海底の世界は、もうもうと砂が舞い上がっていた。
 ピラミッドが、きっと崩壊した部分であろう。
 ぐい、と、視線を向けると、崩壊に巻き込まれたのか、周囲の遺跡群もいくらか倒れてしまっている。……だが、
 たくましいことに、もう海の生き物たちは行動を開始していた。倒れた遺跡の下に潜り込んで寝ている小魚がいれば、砂ぼこりに突入していくかに立ちもいる。
 倒れた石柱の下をイルカとテティスはくぐる。崩れ落ちた壁画から、新たに何か怪しい部屋が見えていた。
「……もしかして、大丈夫って、こと?」
 そこから零れ落ちた王冠のようなものを、イルカはひっかけてテティスの頭にかぶせる。
「きゅ!」
 イルカはどうだ、と、得意げに笑った気がした。
 宝はすべて持ち去られたわけではなかったのだ。
 きっとまだしばらくは、トレジャーハンターの新たな冒険の舞台になっていくことだろう。
「よかった……」
 ギュッとイルカを抱きしめると、イルカはまた遊びに来てよ、と笑ったような気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

藍崎・ネネ
わあぁ、お水がお空にたくさんあがっているの
すっごく綺麗なの
鳥さんたちはどこかに行っちゃったのね

イルカさんと一緒に少しお散歩したいのよ
きらきらのお星さまも、お星さまを映した海面も、とっても綺麗なの
きらきらの中をお散歩しましょうなの

イルカさんの背に乗って水面を進んでいくの
水の波紋がきらきらをいっぱい見せてくれて、どんどん綺麗が増していくのよ
水面のお散歩だけでも楽しいけれど
ねぇイルカさん。海の中にもう一度潜れる?
沈んじゃった遺跡をもう一回見てみたいの

来た時とは形がいっぱい変わっちゃっているの
何か残っていたりしないかしら?
さっきは一緒に探索出来なかったから、イルカさんと探索なのよ
何もなくても全然いいの



「わあぁ……」
 ネネが思わず、歓声とともに息を止めたのは。顔を上げた瞬間、視界いっぱいに広がる星の光を見たからだ。
「お水がお空にたくさんあがっているの。……すっごく綺麗なのっ」
 ネネが浮上したのは、比較的竜巻に近い場所だった。部わっと舞い上がった水滴たちが、輝くクラゲと一緒に落ちてくる様子は、まるで空から星が降ってくるかのようでとにかく美しい。
「鳥さんたちはどこかに行っちゃったのね……」
 そうして、その水滴を飛び越えるように、鳥が飛んでいくのもまた、ネネにとっては新鮮なものであった。あの鳥のどれかがきっと、彼女の思いの力を込めた鳥なのだろうかと思うと、不思議な気持ちがして。ネネはそっと手を上げて、軽く振ってその鳥たちを見送った。
「ここは危ないのよ。少し離れるの。私、イルカさんと一緒に少しお散歩したいのよ」
 そうしてから、ネネはそっと、イルカに呼び掛ける。
 じわりじわりと竜巻のほうに流されているので、このままでは一緒に空を飛ぶことになるだろう。その前にと、ネネはイルカの背中を撫でた。
「きらきらのお星さまも、お星さまを映した海面も、とっても綺麗なの。きらきらの中をお散歩しましょうなの」
 その願いに、任せろ、とばかりに。
 イルカもまた、泳ぎ出した。

 ネネはイルカの背に乗って、星の中を進む。
 満天の星空も、水の中の星の姿も。
 水の波紋がきらきらと反射して、溶け込んで。さらに輝いて。
 どんどんと光を増していく。
 その美しさに息をのみながらも、ネネはそっと、イルカに声をかけた。
「ねぇイルカさん。水面のお散歩だけでも楽しいけれど……海の中にもう一度潜れる? 沈んじゃった遺跡をもう一回見てみたいの」
 さっきは一緒に探索出来なかったから、イルカさんと探索なのよ。と、真剣な顔をして言うネネに、イルカも頷いた。
 たぷん、とイルカが、来た時と同じように水の中に潜っていく。
 ネネは落とされないように、しっかりとその背に捕まった。

 巨大な都市のような遺跡の中で、まず、崩壊したのはピラミッドだけのようであった。
 ピラミッドのあった場所は、砂煙……と言ったら変だろうが、崩壊に合わせて大量の空気と砂が舞い上がっていて、とても近付けそうになかった。
 そして、衝撃を受けてピラミッドの周辺の建物も崩れている。巨大な猫の上は倒れていたし、壁画は砕けて神殿のような建物もぺちゃんこになっていた。
(来た時とは形がいっぱい変わっちゃっているの……)
 ぎゅっと、ネネはイルカの背中を抱きしめる手に力を込める。
(何か残っていたりしないかしら? 何もなくても全然いいの)
 この場所の冒険は、本当に終わってしまったのだろうか。
 そう思うと、なんだかとても残念な気がして。ネネはもっと、もっと深く、と、沈んでいく。
(……あ)
 こんなところにもクラゲたちがいて、海を明るく照らし出していて。
 そして、海の中を行きかう魚や生き物たちがいた。
 忙しなく行きかうウナギのような生き物は、瓦礫を縫って進んでいるし、
 ダンゴムシは凹凸の増えた場所も気にすることなく転がっていく。
 衝撃で目覚めた小魚たちが、一斉に泳ぎ出した。
 ……そして、
(宝物……)
 砕けた崖の裏側に。
 いまだ無事に残った像の手の中に。
 鳥たちが運びきれなかった宝物が、引っかかっているのが、下まで来るとよく見えていた。
 倒壊した建物も、上手いこと障害物になっていて。通れるようになっていた。
 ちょっとだけネネものぞいてみると、砂ぼこりで今は見えにくいけれども、ピラミッドのあたりにも何かがあるのがわかる。きっと誰かがいつか、それをくぐって、ピラミッドの跡地を掘りに行くのが容易に想像できた。
(……)
 大丈夫、とイルカがネネの目を見て、少し笑った気がした。
 きっとこれからも、沢山のトレジャーハンターがここを訪れるだろうし、
 宝が尽きるころには、きっとここは素晴らしいのダイビングスポットとなっているだろう。
 だって、この海に広がる星のような輝きと、気のいいイルカがいるだけで、
(そうなのね。イルカさんとクラゲさんがいるから……ここは大丈夫なのね)
 なんとなく、ネネは。
 誰かの心に、触れた気がした。

『この宝が、汝にとっても価値あるものであることを願う』

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年06月30日


挿絵イラスト