●
UDCアース世界は日本国、とある女子高の弓道場。
「鷹乃さん、そろそろ終わらないと」
「えっ、もう!?」
黙々と練習に打ち込んでいた少女は同じく道着姿の弓道部部長に声を掛けられて、驚いた様子で振り返った。壁の時計を見上げれば、もうすぐ下校時間である。
「……もうちょっと続けたいんだけどなぁ」
「まったく、本当に練習バカね」
「そりゃそうだよ、高校最後の大会なんだもん。引退する前に一度くらい、部長には勝っておきたいし」
「ふふ、最近の上達ぶりを見てると、アタシもうかうかしてられないわね。……それより、これ見てくれない?」
物足りなさそうな少女に部長は微笑を返して、それから手の中に持っていた物を差し出した。
目薬の容器である。彼女の常用している、アレルギー用の目薬だ。
「隅の方に落ちてたんだけど、鷹乃さんのじゃないかしら?」
「ホントだ、ありがとう! 失くしたとばっかり思ってたよ」
少女はラベルを確認して、さっそく蓋を開けると、真っ赤に充血した目にポトンと雫を落とし……――――
ジュワ!
焼ける音がして、少女は世が終わるような悲鳴を上げた。
●
草木も眠る丑三つ時。
真夜中の病院の中庭で、鷹乃・亜衣は独り立っていた。常夜灯の弱々しい光が、白い患者衣と右目に巻かれた包帯をぼんやり照らしている。
「…………」
足元の小石を拾って、投げる。
花壇のブロックを狙った小石は上に逸れて、カサリと叢に飲み込まれた。
やはり、左目だけではよく見えない。距離感をうまく掴めないので、狙いが定まらない。
……これでは大会どころか、弓道そのものを諦めねばならないのではないか。
「ん……くぅ…………」
たまらず、愛衣はしゃがみこんでしまった。
なんで自分がこんな目に、これからどうしたら、つらい、苦しい、痛い、痛い痛い熱い痛い痛い痛い熱い熱い熱い …………
ジリ
右目の包帯から、煙が上がった。清潔な白布が、侵蝕されるようにどす黒く焦げていく。
『――――とりカエさなきゃ』
愛衣の唇から零れたのは、彼女のものでないナニカの声だった。
●
「以上が、私の千里眼に映った光景よ」
田抜・ユウナ(狸っていうな・f05049)はグリモアと同化した瞳で集まった猟兵たちを見渡してから、机の上に資料を並べた。
「被害者は鷹乃・愛衣(たかの・あい)。いつも使ってた目薬を、塩酸とすり替えられてしまったのよ」
強酸性の劇薬を直に点眼すればどうなるかなど、想像に難くない。
すぐに救急搬送されたそうだが手の施しようもなく、右目の完全失明を言い渡されたという。
「深く絶望した愛衣は、化け物へと変身してしまうわ。……最近予知されるようになった、UDC-HUMANって奴ね。彼女の変身を止めることはできないけれど、今はまだ『なりたて』の状態。人の心が残ってるうちに倒せば、元の人間に戻せるはずよ」
まだ間に合うかもしれない! あまりにも悲痛な物語だったが、一条なりとも希望が示されたことはせめてもの救いであった。
「流れとしては、まず彼女を取り巻いてる雑魚を排除。しかる後に、変身した愛衣と戦うことになるわ。あとで敵の資料を渡すから確認しておいてね。……で、いつもなら終わるところなんだけど、今回はもう一つ、後始末を頼みたいの」
と、通例を破る形でブリーフィングを継続したユウナは、最後の資料を開いた。
鵜野・真奈子(うの・まなこ)、愛衣の同級生で弓道部部長。
彼女こそ、愛衣に毒の目薬を渡した張本人である。部内での成績は常にトップだった自分が、練習を続けていた愛衣に超えられようとしているのに気づいて、犯行に及んだのだ。
「これが結構な屑でね。クラスメイトの失明を知っても後悔するどころか、自分の犯罪がバレてないって鼻高々。あの調子じゃ、また悪さをしでかすでしょう」
新たなる被害者を生まないために……という建前を抜きにしても、愛衣の右目を奪っておいてお咎めなしなど、許されるわけがない。
”制裁”を加える必要がある。
「方法は一任するわ。犯した罪にふさわしい罰を与えてやって。ただし、相手はただの一般人。オブリビオンでない以上、命を奪うようなやり方はグリモア猟兵として推奨できないから、ほどほどにしてね」
伝えられる情報はこれだけと、今度こそ終了すると、ユウナは猟兵たちを現場へ送るためにグリモアを展開した。
黒姫小旅
どうも、黒姫小旅でございます。
救えるかもしれない少女と救いようのない少女、二人がどうなるかは、皆様の行動しだい。
●戦場
深夜の病院の中庭。
季節の草花が植えられた花壇、自販機、ベンチ等々が設けられた憩いの場です。
特に戦闘の支障となるような要素は予知されていません。
●一章
集団戦。
単眼の獣の群れが、愛衣を取り囲んでいます。
片目を奪われた怒りや恨みにかられて襲ってくる獣たちを蹴散らして、愛衣の元へとたどり着いてください。
●二章
ボス戦。
UDCへと変身したばかりの愛衣との戦闘です。
視力の半分を失った絶望や苦痛に囚われて暴走状態にありますが、事情を踏まえた説得を行う、必要以上に苦しめないよう戦う等々、彼女の心に触れることができれば弱体化させることができます。
●三章
日常。
愛衣を絶望させた犯人に、誅罰を。
ちょっと弓道が得意で性根が腐ってるだけの非力な一般人ですので、猟兵達の制裁にはどんなものでもひっくりかえって恐怖します。殺さない範囲で完膚なきまでに叩きのめしてください。
第1章 集団戦
『千里眼獣プレビジオニス』
|
POW : 未来すら視る単眼
【未来の一場面を視ることで】対象の攻撃を予想し、回避する。
SPD : 千里を見通す獣
【視力強化・視野拡大・透視・目眩まし耐性】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【見失うことなく追尾し、鋭い爪】で攻撃する。
WIZ : 幻の千里眼
【すべてを見通す超視力に集中する】時間に応じて、攻撃や推理を含めた「次の行動」の成功率を上昇させる。
イラスト:白狼印けい
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
猟兵たちはグリモアの転移門を抜けて、戦場へと踏み込んだ。
常夜灯に照らされた中庭の奥には、右目に包帯を巻いた少女が虚ろな顔でしゃがみこんでいる。
今すぐに駆け寄ってやりたいところだが、その行く手を阻むように無数の影が現れた。
『カエセ』『カエセ、カエセ』『目を、カエセ!』
一つ眼の霊獣たちは、闇夜の満月を思わせる丸い瞳に憎悪をたぎらせ、猟兵たちへと牙を剥いた。
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
……絶望が生み出したUDC、か。
縋る先を人ならざる力に求めるのは、
分からなくもないけどヨロシクないね。
その先にあるのは……ただの破滅さ。
……準の様に、ね。
だから。愛衣ちゃん。
アンタは、「そっち」に行っちゃいけねぇんだ……!
有象無象の眷属どもが、道を開けろ!
アタシはお前らに話す舌は持ち合わせてないんだ!
アタシの義憤が、怒りが。
【嵐裂く稲妻】となってアタシの周囲を巡っているのが
「視えている」だろう?
いくら目が良くてもお前らの攻撃は直接攻撃だけ。
この電撃の『属性攻撃』を織り交ぜた
『オーラ防御』のバリアを突破できるならやってみろや。
……返り討ちに遭ってもいいならな!
●
絶望によってUDCへと変じてしまう人間。
堕ちるところまで堕ちた末、人ならざる力に手を伸ばしてしまう気持ちは、数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)にもよく理解できた。
「だけど、だけどね。……その先にあるのは、ただの破滅さ」
多喜は憐れむように目を細めた。何匹もの霊獣に囲まれた少女の姿が、かつて失った友人のそれに重なる。
……アンタは、“そっち”に行っちゃいけないよ、と。
「お前らに言っても仕方ないんだ。有象無象の眷属どもが、道を開けろ!」
猛り吼える多喜に、獣たちの単眼が集中した。
『カエセ』『カエセ、カエセ!』
怨嗟を宿した瞳を輝かせ、辻風のごとく駆け巡る群獣は目で追うこともままならず、退路をふさがれた多喜はあっという間に押し潰され、黒山の下へと飲み込まれてしまった。下敷きにした猟兵を八つ裂きにしようと、獣たちは鋭い爪をザックザクと何度も突き立てる。
――爆ッ!
獣の小山が、真下から吹き飛ばされた。
「この程度で、アタシの【嵐裂く稲妻】を破れると思うな!」
立ち上がった多喜は、球形のサイキックバリアに包まれていた。理不尽に対する怒りがサイキックエナジーへと変換され、降りかかる脅威を打ち払う電撃の結界となって自身を取り巻いている。
「今度は、こっちから行くぞ!」
殴るとか蹴るとか、せせこましいことは言わない。一個の稲妻と化した多喜は地を蹴ると、バリアごと突進した。触れるを幸いに撥ね飛ばしながら直進して、頭上へ吹っ飛んだ獣へとジャンプして追撃を見舞い、反動を貰って後ろの敵へ背中からの体当たりをかます。
壁に叩き付け、地面へ撃ち落とし、ゴミ箱へとぶち込んで、荒ぶる雷神のごとく多喜はオブリビオンを蹂躙していった。
成功
🔵🔵🔴
カシム・ディーン
……なんでしょうね
僕は割と欲望に忠実で非情な盗賊ではあるんですが
…気に入らない
なんだかとっても気に入りません
だから欲望のままに戦うとしましょうか
……まずはお前らですか…残酷に冷酷に…わたぬきで……いや(首を振り
お前らの眼球に興味はありません
ただ静かに…朽ちろ
【情報収集・医術・視力】で肉体稼働から動きを把握
攻撃は【武器受け・敵を盾にする】で被弾を減らす
【属性攻撃】
風を全身に付与
高速機動を可能とさせる
眼がいいって地味に厄介ですよ
…果たしてお前らが見る未来は…「これ」だとどうなるのでしょうね
帝竜眼「女媧」起動
【二回攻撃・力溜め】で精度をあげて確実に打ち込み
苦痛なく葬る
妙に心がざわつきますね…
●
エピキュリアンでエゴイストな天才盗賊。それがカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)の自己評価であり、義憤など柄でないのだが……
「……なんでしょうね。とっても、気に入りません」
心ざわつかせるカシムに、プレビジオニスの群れが迫る。
前方から数匹。音もなく疾走する獣たちは、クワと単眼を見開いて急停止。翻したその身を、カシムの放った魔術光弾がかすめて通り過ぎた。
早い!
スピードもさることながら、タイミング。こちらが予備動作に入る前から、いつ、どんな弾道で攻撃するかすべて視えていたような理想的な回避行動である。
未来すら垣間見るという千里眼の見切りに、カシムは思わず口笛を吹く。
「さすがに良い眼をしてる。……ですが、僕の興味をひくほどではありません」
――ッ!
直後、霊獣たちの体を魔術光弾が撃ち抜いた。
初弾の残光が消えるより速く、矢継ぎ早に放たれた追撃は今度こそ獲物を捉えて、死の呪印を刻み込む。
「万物の根源よ……帝竜眼よ……!」
ユーベルコード【帝竜眼「女媧」】!
帝竜ワームの水晶巨大眼球より作り出したる竜神兵器《帝竜眼》に篭められた数多の帝竜の魔力のうち、金色の光が呼び起こされた。無限の大瀑布に巣くいし黄金飛翔竜が操ったとされる、命を否定する光線が薄暗い中庭を明るく照らし出すと、千里眼獣に刻まれた死印がおぞましく脈を打ち、知性ある命を破壊する。
「ただ静かに、朽ちろ」
ゆっくりと瞳を閉じて倒れゆく単眼獣たちを、カシムはもはや一瞥すらしない。
成功
🔵🔵🔴
隣・人
「目。眼。メ。め――は。あはは。うふ。ふふふ。うふふふふ――そんな『目』を奪われたなんて。赦せませんよねぇ? 廻る目玉以上に可愛らしいお宝、隣人ちゃんは知りませんからねぇ? テメェ等邪魔です。死ね」
目眩ましってのは『光』だけの話ですよねぇ?
見失わずに『爪』で攻撃するって?
じゃあ隣人ちゃんの腸あげますよ
激痛耐性でこらえ、そのまま回転椅子に縛りつけてやります
そうしてぶん回しながら頭部を撲ってやりましょう
コーヒーカップを叩き付けたり拳で潰したり
「嗚呼。脳味噌が揺れて。眩むでしょうよ。は、は、は!!!」
息の根絶えるまで眩暈に陥ってください
此れで眩む事ないなら、用なしですね
バールで抉り殺します
●
目。眼。メ。め――は。ははは。
「あはは。うふ。ふふふ。うふふふふ――そんな『目』を奪われたなんて。赦せませんよねぇ? 廻る目玉以上に可愛らしいお宝、隣人ちゃんは知りませんからねぇ? テメェ等邪魔です。死ね」
踊るような足取りで、隣・人(六六六番外・f13161)は登場した。口元には愉しげな三日月を張り付けて、立ち塞がる千里眼獣の群れを前に狂々と歩を進める。
『目を、カエセ!』
殺意を醸しながら碌に構えず、隙だらけにすら見える目隠しメイドに、獣たちが襲いかかった。宝石のような単眼は定めた獲物を決して逃さず、四方からの同時攻撃でもって無防備な胴体に喰らい付く。
「がふっ!?」
仰け反った拍子に、口から血塊が飛び出た。
ナイフのような爪牙がハラワタを抉る激痛と、せり上がってくる血液が食道管にこびりつく生臭い感覚に襲われて――ニィ、と口角が吊り上がる。
「はぁい、隣人ちゃんの腸、お気に召しましたかぁ?」
我が身を滅多刺しにされたまま、前後左右の単眼獣を一緒くたに持ち上げると、どこからともなく取り出した回転椅子に四匹纏めて縛り付け、全速力でぶん回す。
当社比3倍速、椅子が壊れそうな勢いで廻し廻し廻し廻し廻し廻し廻し廻し廻し!
右手にコーヒーカップ左手に拳骨を握り締めて殴り殴り殴り殴り殴り殴り殴り!
「嗚呼。脳味噌が揺れて。眩むでしょうよ。は、は、は!!!」
決して眩まぬ千里眼がグルグル廻る、まあなんと可愛らしい。息の根耐えて果てるまで、たっぷり愉しみましょう。
大成功
🔵🔵🔵
紅葉・智華
※アドリブ・連携歓迎
眼を失う、か。私だって、この眼はもうホンモノじゃあない。
だから、思う所はあるけれど――。
「今は取り巻きを片付けるのが先でありますね」(眼鏡を外しつつ)
まず初めに屠るべきは、眼の獣のようでありますが――獣であるのなら、狩りをするまででありますよ。右手に『刹那』、左手に『[K's]Sirius』(鎧無視攻撃)を構えて、【ダッシュ】しつつ狙いを定めて連射(スナイパー、2回攻撃)。当てるのは難しいだろうけど――
「当てなければ『【選択UC】』なんて二つ名が泣くでありますからね!」
直感(第六感、見切り)や【戦闘知識】もフル動員で確りと狩っていく。
●
「眼を失う、か」
紅葉・智華(紅眼の射手/自称・全サ連風紀委員・f07893)はポツリとこぼした。
彼女の二つ名の由来にもなっている赤い瞳は人工の義眼である。だからこそ、今回の事件に対しても思うところがあるのだが……
『カエセ、カエセ、カエセ!』
周囲から向けられる怨嗟の視線が、物思いにふけることを許さなかった。
闇に溶け込む単眼の黒獣たちが、縦横無尽に駆け回りながら襲いくるのを一瞥し、智華は小さく嘆息。
「……。今は取り巻きを片付けるのが先で“ありますね”」
口調が変わる。
眼鏡をはずし、代わりに冷静沈着な兵の仮面をかぶせて、
パァン!
まず一つ、獣の頭が爆ぜる。
智華の右手には、取ったはずの眼鏡の代わりに、刀剣のような銃身を持つ改造ライフル『刹那』が硝煙を上げていた。
動き出したら、止まることなく加速の一途。
地を蹴った智華は作り物の紅眼を炯々と光らせ、追走する金色の単眼を確認。数と配置、それぞれ動きに込められた意味を見極め、読み解き――――撃つ!
前触れなく、無数の弾丸が戦場を駆け抜けた。
移動、ターゲットを定め、立ち止まり、銃を構え、照準、引き金。本来ならば一射ごとに必要であろう幾多の工程をすっ飛ばした、ノーモーションの精密射撃。ユーベルコードの域にまで磨き上げられた超絶射撃技術は、幻の千里眼をして見切ることすら許さない。
響き渡るのは多重の銃声のみで、単眼獣たちは悲鳴すら上げずに即死した。
「獣狩り程度で当てそこなっていては、【紅眼の射手】の二つ名が泣くであります!」
得意げに鼻を鳴らし、智華は左手にレーザーライフル『[K's]Sirius』を取り出すと、二丁ライフルを構えて新たなる獲物を求めて駆けていく。
大成功
🔵🔵🔵
ガイ・レックウ
※アドリブ・連携可
【POW】で判定
『まったく、嫌な依頼だが…嬢ちゃんはそっちにいっちゃいけない…だから!まずは邪魔なこいつらをぶっ飛ばす』
【オーラ防御】を多重に重ね、【フェイント】を交えながら一気に突進。
【見切り】で相手の予想した回避行動を見極め、【怪力】での【なぎ払い】と【鎧砕き】の連続攻撃で確実に撃破するぜ!
『動きを予想するなら、こいつはどうだ?』
ユーベルコード【封魔解放『鳴神』】を発動、攻撃回数を重視した雷を広範囲に【範囲攻撃】でばらまくことで相手が予想してもよけきれない状況を作り出してやる!!
●
千里眼獣プレビジオニス。未来すら視る単眼でもってあらゆる攻撃を見切るという。尋常ならざる超視力と野性的な身のこなしによる回避術は、歴戦の猟兵すらも翻弄しうるレベルである。
「――だったら、こういうのはどうだ!」
言うなり、ガイ・レックウ(相克の剣士・f01997)は単身で千里眼獣の群れに飛び込んでいった。
飛んで火にいる夏の虫とばかりに迎え撃つ獣たちを、多重展開するオーラ防御で受け止めて、ひたすら前へと突き進む。
パリン、パリンと獣の爪に破られていくオーラの残数をカウントしながら我武者羅に走り続けて、ガイはついに群れの中心にまでたどり着いた。
「てめえら知ってるか。来るのが見えていてもよけきれない攻撃ってもんをよぉ!」
腰の白鞘より抜き放たれるは、相克・封魔雷神刀『ヴァジュラ』。白銀の刃に封じられた荒ぶる魔人の力が、この場この瞬間に呼び起こされる。
「さあ、荒れ狂え! 悉く粉砕せよ!――【封魔解放『鳴神』】!!」
轟音とともに、白き雷が顕現した。
かの魔人に従いし百鬼を思わせる雷球が周囲に浮かび上がり、蜘蛛の巣状に広がった電気がオブリビオンの群れを囲い込んで、絡めとる。
バリバリバリバリバリッッ!!!
千里眼獣のまといし闇色の毛皮が、感電によって白熱した。
眩い電光が消え去った後には、真っ白になった獣がバタバタと、煙を上げて倒れていく。
「ま、ざっとこんなもんだ」
妖刀を鞘に収めて背を向けるガイは、しかし言葉とは裏腹に、わずかばかりの達成感も味わうことができなかった。いや、もっと言えば、グリモア猟兵から依頼を受けた時から、やり切らない思いを抱えていたのだ。
「……まったく、嫌な依頼だぜ」
忌々しげに吐き捨てて、それでも起きてしまった悲劇の結末を少しでもマシなものにするために、剣士は前へと進むのだった。
大成功
🔵🔵🔵
トリシュ・リグヴェーダ
トリシュに感情はありません
ですがこの胸に湧き上がるモヤモヤはいったい…これが、哀れみ?
いえ、考えるのは後な。今はなすべき事を
◇戦闘
獣さん達についての知識は学習済み
「あなた達が目に頼った動きをする事も知っています、トリシュは賢いので。
故に光で目を眩ませてしまえば動きは大幅に制限される、実にロジカルな」
【戦闘知識】
遠距離からジャッジメント・クルセイドで攻撃
光による撹乱で視力集中を阻害し、一対多の状況でも有利に立ち回ります
もし接近されたら風のタンバリンの投擲で【吹き飛ばし】多数に囲まれないよう注意
トリシューラの【串刺し】と近距離からのUCで1匹ずつ確実に処理します
●
トリシュ・リグヴェーダ(知恵の刃・f18752)はヤドリガミ。その本質は冷たい器物であり、感情など持ち合わせていない。
……では、胸の奥から沸き上がってくるモヤモヤしたものは、いったい何なのだろう?
「いえ、考えるのは後な」
片目を失って絶望に溺れる哀れな少女から視線を剥がし、トリシュは今この場でなすべきことに集中する。
『眼を、カエセ!』
彼女の前に立つのは単眼の獣。先行する猟兵の活躍によって蹴散らされ、最後に残った一匹である。
「さて。見たところ優れた敏捷性の持ち主みたいですが、賢いトリシュは知っています。あなたは、その多くを目に頼っている」
ビシッ、と人差し指を突きつけるトリシュ。指摘された獣はしかし、だからどうしたと言わんばかりに踊りかかる。
鋭利な爪を鈍く光らせ、一気呵成に攻め崩さんと――いうところで【ジャッジメント・クルセイド】!
天から降りそそぐ光が、敵を撃った。聖なる裁きの光は幻の千里眼をも眩ませて、獣はたまらず悲鳴を上げる。
「ふふっ、実にクレバーな」
会心の手応えに、トリシュはふんぞり胸を張って、相手が視力を取り戻す前に風のタンバリンを一鳴らし。
轟! と生まれた突風で吹っ飛ばし、宙に浮いて無防備になったところを、模造神槍トリシューラで刺し貫いた。
胸から背中にかけて一突き。串刺しにされた千里眼獣はビクリと痙攣し、そしてゆっくりと瞳を閉じていく。
『……カ……エセ』
「…………」
最期まで憎しみをたたえたまま、金色の単眼から命の輝きが消えるのを見届けてから、トリシュは槍を引き抜いた。
成功
🔵🔵🔴
第2章 ボス戦
『灼けた女『カレイド』』
|
POW : 獄炎
【掌での鷲掴み】が命中した対象に対し、高威力高命中の【握りしめた掌より出でる地獄の炎】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : クトゥグアの閃光
【炎の瞳から放つ怪光線】が命中した対象を燃やす。放たれた【神経を搔き毟る狂気の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
WIZ : 地獄炉の乙女
【全身】から【まとわりつく炎】を放ち、【火傷による激痛】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:はるまき
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠枯井戸・マックス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
千里眼獣プレビジオニスの群れが駆逐されると、鷹乃・愛衣は重苦しそうに立ち上がった。
『……どうして、邪魔するの』
感情の抜け落ちた顔から、ブスブスと断続的に煙が上がる。右目に巻かれた包帯はすっかり炭化して真っ黒になっていた。
『取り返さなきゃいけないの。右目がなくなったせいで、ちゃんと見ることができなくなった。……わたしは今まで何のために頑張ってきたの? これから何を目指したらいいの? 私には、わからないよ。だからワタシ言ったの、わたしが私の目を取り返せばきっとワタシ……わ、わた…………あぐっ!?』
虚ろな左目に狂気をたたえて猟兵に詰め寄っていた愛衣が、突然うずくまった。
潰れた右目を抉らんばかりに力強く押さえる指の隙間から、今までになく激しい煙が立ち上る。
「あ、ううっ…………い、痛い。熱い! 痛い痛い熱い痛い熱い熱い熱いあついアツイアツイアツイアツアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!?」
絶叫とともに包帯がはじけ飛び、眼孔から紅蓮の炎が噴き出した。
天を焦がす業火は愛衣の体に纏わりついて、柔らかな肌を焼き焦がす。
――これは!?
猟兵たちは、理解することができる。あれは普通の火炎ではない。邪神が眷属を作り出すための呪詛。焼いて、苦しめ、あげくに魂を縛り付ける忌まわしき焔だ。
苦痛に屈して人の心を手放してしまったら最後、鷹乃・愛衣という人間はこの世から消滅し、奉仕種族『灼けた女『カレイド』』の一体と成り果ててしまうだろう。
心を絶望に落とされ、そして今、灼熱の責め苦によって半狂乱で暴れ回る愛衣を前にして、猟兵たちはどんな言葉をかけ、どんな風に戦うのか。
隣・人
「こりゃまずいですね。目玉がないと隣人ちゃんの力半減です。まあ脳髄無事なら眩暈起こすでしょう。ほら。来なさいな。アンタの熱量(おもい)は受け止めてやるから……」
殺意(めまい)に恋するように
地獄炉に自ら跳び込んで、いたい、くるしい
吐き気がするほどに、甘ったるい
「目玉は戻らないでしょうけど。私みたいに手遅れじゃないわね」
鈍器を持った殺人鬼を解き放つ
各々の思考を有する殺人鬼だ
当然、追って屠るのにも嗜好が偏る
今回、殺すべきは炎だ
「私にも人の心は在るって事。アンタは奪われて、奪い返す為に『此処』に在る。残念だけどね。アンタは自分で選択してなんかいないのよ。異物拒んで初めて『復讐』に成るのよ。おばか」
●
「こりゃまずいですね。目玉がないと隣人ちゃんの力半減です」
際限なく眼孔から溢れ出る邪炎に呑まれる愛衣を目の当たりにして、隣・人(六六六番外・f13161)は頬に手を当てて困ったように唸った。
どうしようかと悩み悩んで、
「まあ脳髄無事なら眩暈起こすでしょう」
ニィと笑って、それが恋人の腕であるかのように炎の渦へと飛び込んでいく。
「ああ、痛い!」
狂おしいほど苦しくてクラクラする。
吐き気がするほど甘ったるい。
黒のメイド服が紅蓮に染まり、全身に刻まれる火傷に神経を掻き毟られる感覚に、隣人は恍惚と酔いしれて、
――【百鬼殺恋・応吐追屠】
高ぶる感情が、76もの殺人鬼を召喚する。
殺人鬼たちは棍棒やバットにゴルフクラブ、角材石材パイプに鉄骨その他もろもろ、思い思いの鈍器を持って現れた彼らは、殺意(めまい)を覚えさせる元凶――邪神の炎へと殴りかかった。
赤々と照る光を殺せ。灼けつく熱を殺せ。紅蓮の狂気を殺せ。「火炎」という概念を破壊することに愉悦を覚える狂人たちは、形ある物には目もくれず燃え盛る炎だけを打ち払っていく。
『キャアッ!?』
振り下ろされたゴミ箱が、愛衣の額をかすめた。直撃こそしなかったが、頭部を覆っていた炎が吹き飛ばされる。
よろよろと後ずさった愛衣の、露わになった素顔に、ふと影がかかった。
『うぅ……え?』
何かと目を開ければ、鼻先が触れ合うほどすぐ近くに、陶磁のように白い肌の目隠しメイドが。
「ふん、私みたいに手遅れじゃないわね」
『え、え……だ、れ?』
雰囲気の豹変したメイドに愛衣は目を白黒させて、その反応自体が人間性を残している証左であると、隣人は頷いた。
「いい? アンタは奪われて、奪い返す為に『此処』に在る。残念だけどね。アンタは自分で選択してなんかいないのよ」
こんこんと紡がれる言葉は、水のように愛衣の胸へと入っていく。
混沌の中にあった思考が、UDC化に至った自覚を促されて、一本の軸を得る。
「『復讐』っていうのはね、異物拒んでこそ成るのよ。おばか」
『拒む……わたしの、復讐……』
「そ。あとは自分で選択なさい」
虚無が渦巻くばかりだった左目に一筋の光を見届けて、隣人はいったん後ろに跳んで地獄炉の業火から逃れる。
さあ、種は撒かれた。あとは水と肥やしをやって、花が咲くのを待つのみ。
成功
🔵🔵🔴
ガイ・レックウ
『例え、眼がなくても君が積み上げてきたものは心を強くしたはずだ!!だから、これからの未来を手放さないでくれ!!』
【戦闘知識】と【見切り】で相手の攻撃をかわし、【オーラ防御】で避け切れない分は防ぐぜ。
一気に突撃し、【先制攻撃】。【怪力】での【鎧砕き】と【なぎ払い】、ユーベルコード【二天一流『無双一閃』】を叩き込む!!
『君の未来は、これからなんだ!!こんなところで手放すな!!』
カシム・ディーン
はぁ…僕は天才魔術盗賊ですが
こういう相手にかける言葉なんぞ持てないですね
事前
弓道の練習を行
基本的な使い方と当て方と目の使い方の確認
特に片目での扱い方を把握
塩酸の入った目薬と彼女の使った弓と同じ物を入手
対峙
さて…僕は実はお前とちゃんと戦う気はありません
それで失敗や苦戦でも別に?
目の前で…件の目薬を手に取り…右目に…落とす
ぐ…がぁあ!!
痛い…痛すぎる…!お前はこんな目に合いましたか
だがどうした…僕は天才ですからね(UC発動
彼女と同じ弓の技術を疑似的再現
弓を構え
打つ…外れる
【情報収集・視力】で位置を補正
打つ…外れる
再度補正…何度でも
片目で…彼女に当てて見せる
痛くはないだろう
だが…当てる事に意味はある
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
愛衣ちゃん!?
クソッ、やっぱりその目が原因か!?
けれどもこうして物理的にちょっかい掛けてきたって事は……
まだ、心は完全に囚われてない筈!
アタシ達の声よ、思念よ、届け……っ!
見誤るんじゃないよ!
そりゃ弓を射るのには致命的だろうさ。
日常生活だって大変かもしれない。
目標もすぐには分からないだろうよ。
けどなぁ、絶望するには早すぎるんだよ!
愛衣ちゃん、アンタの頑張りは皆の目が見ていたんだ。
弓道の腕前だけじゃない、そのひたむきさ、
心の強さを認めてた筈さ!
人ならざる力に頼らず、自分の手で希望(あした)を掴め!
アンタならそれができる!
そう『鼓舞』しながら呪詛へ思念での痛撃を入れる!
●
戦いに臨むに当たって、カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)が用意したのは二つ。
『熱い痛い痛いぃぃいイイイアアアアア……あ?』
その片方、目薬の容器を振ってみせると、愛衣が明らかな反応を示した。熱い視線がこちらを向くのを確かめて、カシムはこれ見よがしに上を向くと、その右目に薬液を落とす。
「ぐっ……がぁあ!?」
ジュッと塩酸が水を弾く音。悲鳴を上げ、目を押さえてうずくまるカシム。その姿を見て、愛衣の喉笛がヒュウと鳴った。
『あ、アア。……嫌。ヤダ、ヤダ……イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』
心的外傷の再現。
トラウマを刺激された愛衣は絶叫し、眼光から特大の火柱が噴出した。狂気の炎が周りの花壇や木製のベンチを飲み込み、中庭を火の海に変える。
「でえい!」
「っらぁ!」
病院もろともすべてを焼き尽くさんとする邪炎を、花炎白雷の剣気が斬り裂き、サイキックエナジーを強化するナックルが殴り飛ばした。
炎と雷の力をそれぞれ宿した二刀を振りぬいたのはガイ・レックウ(相克の剣士・f01997)。次いで現れた数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)が、呆れたような視線をカシムに向ける。
「アンタ、酷なことをするねぇ」
「あいにく、こういう相手にかける言葉を持ち合わせてませんので」
カシムは肩を竦めて、紅蓮の中心で暴れ回る愛衣を、涙零れる左目で見つめた。塩酸の目薬をさした激痛は並々でなく、眼球が火の玉に変わったかのようだ。これほどの苦痛を、荒事に無縁な女子高生が受けたというのか……
「……だけど、こんなものがどうした!」
理解したうえで不敵に笑い飛ばすと、事前に用意していたもう一つ、和弓を取り出して矢をつがえる。
足を開き、腰を据え、背筋を伸ばして、教本の1ページ目に載せたくなるような、基礎を忠実に守った所作。それは、視たものの力を複写する【魔眼「帝竜眼」】が映した、練習バカの愛衣が愚直に積み上げた技術の結晶そのものであった。
ピシッ!
鋭い鳴弦とともに放たれた矢は、残念ながら命中することなく愛衣の頭上を通り過ぎる。
『う、うう……もう、ヤメテよぉ……』
炎に隠れた顔から、蚊の鳴くような声がこぼれる。
自分のそれとまったく同じフォームで、しかし隻眼となったために満足な射を行えない様を見せつけられるのは、生傷を抉られるようなものではないか。
愛衣の懇願に、カシムは耳を貸さずに次の矢をつがえる。
先ほどより少し下へと軌道修正、射撃――外れた。また修正して、射撃。
黙々と矢を射続けるカシム。命中するまで諦めることなく修正を繰り返す姿を見ているうち、いつの間にか愛衣は泣き止んでいた。
『……。――――ぅ。わ、たし……ずっと…………』
「はあ、なるほど」
「そういうことかい」
ガイと多喜は合点した様子で、同時に飛び出していった。
先陣を切るのはガイ。オーラ防御を展開し、襲いくる邪炎を片っ端から斬り捨てながら、愛衣の元へと駆ける。
「君は今までずっと、ああやって積み上げてきたんだろう! その頑張りは間違いなく、心を強くしたはずだ! だから、これからの未来を手放さないでくれ!!」
「それに愛衣ちゃん。アンタの頑張りが育ててきたのは自分自身だけじゃないだろ? 周りの皆が、アンタの姿を見てきたんだ。弓道の腕前だけじゃない、そのひたむきさ、心の強さを認めてたはずさ!」
二人のまっすぐな言葉は一本の素槍のごとく愛衣の胸を突く。過去を肯定し、現在をおもんばかり、未来を示す。ただひたすらに相手を思いやる言葉は、絶望した心に慈雨のごとく染み渡る。
それでも、一度折れてしまった愛衣は立ち上がれない。手を差し伸べられても、怯えたモグラのように暗闇へと逃げようとする
『わ、わたし、頑張ってきた。頑張って頑張って、でも、でもやっぱり、こんな目じゃ…………』
「見誤るんじゃないよ!」
逃げは許さぬと、多喜の叱咤が轟いた。
「そりゃ弓を射るのには致命的だろうさ。日常生活だって大変かもしれない。目標もすぐには分からないだろうよ。……けどなぁ、絶望するには早すぎるんだよ!」
「『でも』なんて言葉で手放そうとするな! 君の未来は、これからだってのに!!」
どこまでも追いかけて、光の下に引き戻そうとする。いっそ強引なまでに、伸ばし続ける救いの手に、返される答えとは、果たして……!
『う、ア、アアアアアア!!?』
箍が外れたような絶叫。
一層に燃え上がる邪神の炎が、愛衣と猟兵たちを分離しようとする。
「クッソ、またちょっかい掛けてきたね。……ってことは、アタシらの声は届いてるってことだ!」
「だったら、やることは簡単だぜ!」
前に出るのは、やはりガイ。
片手には呪詛と血を吸って紅炎を帯びたる百花妖炎刀。片や雷神の力を宿せし封魔雷神刀。ともに銘を『ヴァジュラ』と刻まれたメガリスを振りかざし、
「――【二天一流『無双一閃』】」
破邪の気魄を込めた斬撃が炎の壁を斬り払い、道を開いてまた一度、多喜が手を差し伸べる。
懸命に伸ばされた指先が、愛衣の右目に触れた。【過去に抗う腕】と名付けられたユーベルコードが、邪悪に囚われた少女の魂に触れて、再び立ち上がれるようにと思考回路を書き換える。
「人ならざる力に頼らず、自分の手で希望(あした)を掴め! アンタならそれができる!」
『できる? 本当に? ……こんな目でも、わたし……?』
「応とも、できるさ!」
双刃で邪炎を払いながら、ガイが力強く頷く。
そして――――バシュ!
風を貫いて飛来した矢が、愛衣の胸に突き立った。
「お前と同じ目、同じ弓、同じ技で命中できました。……つまり、そういうことですよ」
はるか後方で、カシムが弓を下ろして額の汗をぬぐう。
『は、はは……ほんと、だね」
嬉しそうな悔しそうな、様々な感情の入り乱れた複雑な笑みを浮かべて、愛衣はゆっくりと倒れた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
紅葉・智華
※アドリブ・連携歓迎
「――ごめん、まずはその炎を抑えるであります……!」
身体に大きな傷をつけたくないので、武器を捨てて主に体術(グラップル)での戦闘に移行。今のままだと、話をするどころではないので、無力化する必要があると判断。
直感(第六感、見切り)で攻撃を避けつつ、【選択UC】で相手の炎を抑え込む。場合によっては、相手の炎を受けて(火炎耐性)でも、抑え込む。
無力化して話ができる状態にあると判断してからは、義眼を作る事を提案(メカニック)。自分の義眼程の特殊機能はないにせよ、日常生活の必要最低限度のものなら、用意できる筈。
「――ないなら作ればいい。だから、一緒に作っていこう、ね?」(素の口調)
●
愛衣が倒れた。
これにて戦闘終了かと誰もが安堵した、その時。
『ぅ、ア……熱い、熱い。痛い痛い痛い痛い痛い痛いィィィィィ!!』
再び愛衣が苦しみだして、消えかけていた邪炎が勢いを取り戻した。
是が非でもこの肉体を手放してなるものかという、最後の悪あがきである。
「これでは、落ち着いて話せる状況ではないでありますな。ごめん、まずはその炎を抑えるであります。――【赤枝流武術・改【落葉】】!」
一瞬の驚きの後、事態を把握した紅葉・智華(紅眼の射手/自称・全サ連風紀委員・f07893)は拳を固めて、躊躇なく炎の渦へと飛び込んだ。
轟々と唸る炎のただなか、視覚も聴覚もまともに利かぬ地獄炉で、直感だけを頼りに突き進む。右拳の一閃で火の壁を斬り払い、僅かな裂け目が生じたその向こう側に、横たわる愛衣の姿を認めた。
「そこだ――――ァ!」
乾坤一擲、炎熱に耐えるための最低限を残した全ての力を、左手に握って打ち込んだ。
渾身を込めた鉄拳が、高圧の噴炎とぶつかって、押し返されそうになるのを耐性まかせに抑えつけ、押し込んで……届けェェェェェ!
「――――喝ッ!!」
裂帛の気合が邪炎を消し飛ばし、ついに解放された愛衣を智華はしかと抱きしめた。
●
「……あの、皆さん。ご迷惑をおかけしました」
「気にすることはないよ、君は何も悪くないんだから。助けることができて、本当に良かった」
智華が朗らかに笑って、他の猟兵たちも同様の意を示すと、愛衣はホッとしたように目尻を下げた。
UDC化が解けたことで、邪神の炎に焼かれた肌は綺麗さっぱり元通りになっていた。ただ、新しく巻き直された包帯の下、右の眼球は潰れたままだ。
「目のことは、まだアレだけど……前向きに考えてみようと思います」
「ああ、そのことなんだけどさ。一つ私から提案があるんだ」
気丈に振る舞おうとする愛衣に、智華が人差し指を立ててみせた。意識して作っていた軍人風のキャラとはまた別の、メカニックとしての顔が現れる。
「私に、君の義眼を作らせてもらえないかな? ある程度までなら、失った視力も取り戻せるはずだよ」
「えっ……!?」
左目を見開いたきり、愛衣は絶句した。
呼吸の仕方まで忘れたように口をパクパク開閉して、どうにか声を絞り出す。
「ま、また……見えるように、なるんですか…………!?」
「研究段階の技術だから、あまり期待させられないけどね。片目だけよりは大分マシなはずさ。自然な見た目になるから、よりオシャレを楽しめるしね」
猟兵が本気を出せば、智華の義眼《虚構の神脳》を最上級として、本物同然の外見と視力を有した義眼だっていくらでも用意できるかもしれない。しかし、社会の『常識』に収まらない治療は、逆に彼女を平穏から遠ざけることになりかねなかった。
だからあくまで、『表』の現代医療でも到達できるレベル。
智華からすれば全力と言い切れない支援だが、愛衣は感極まったように肩を震わせた。
「…………う、ひっ……ぅぐ…………わ、わだし……ぅうう」
「ん。失くした物、一緒に作っていこう」
かくして、鷹乃・愛衣を救うための戦いは幕を下ろした。少女の目からは、ただ清らかな涙が流れるばかり。
成功
🔵🔵🔴
第3章 日常
『人間の屑に制裁を』
|
POW : 殺さない範囲で、ボコボコに殴って、心を折る
SPD : 証拠を集めて警察に逮捕させるなど、社会的な制裁を受けさせる
WIZ : 事件の被害者と同じ苦痛を味合わせる事で、被害者の痛みを理解させ、再犯を防ぐ
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
病院中庭での戦いから一夜明けて、場所は某女子高の弓道場。
ピシッ!
弓の弦が震えて、一直線に放たれた矢は的の中心を射抜いた。
……今のは良い射だ。
鵜野・真奈子は満足げに頷いて、弓を下ろした。
小休止しようと水筒を取りに向かうと、一足先に帰り支度を始めていた部員たちが声をかける。
「部長、お先に失礼します」
「お疲れさま。たしか、鷹乃さんのお見舞いに行くんだったわね。アタシはもう少し練習を続けるつもりだけど、よろしく伝えてちょうだい」
「はーい」
「愛衣ちゃん、元気かな?」
「そういえば昨晩、病院でボヤがあったんだって。心配だね」
「何だっけ。人工視力、っていうの? 何かの先端医療が受けられるかもって聞いたよ」
にぎやかな部員たちが去っていくと、弓道場はシンと静まり返った。
耳が痛くなるような静寂の中で、真奈子は一口だけ水を飲んでから立ち上がる。
「……ボヤ、ねえ。あの娘が何かしでかしたんなら、ウケるんだけど。焼身自殺とか?」
ふふ、と冷酷な微笑が浮かんだ。
「才能のカケラもないくせに練習だけは熱心で、本当ウザい。あんな女にアタシの完璧な経歴を汚されるなんて、絶対に許されないのよ」
●
「鵜野・真奈子(うの・まなこ)。一見すると、ごく普通の弓道部部長ですね」
UDC組織の地元エージェントだという男が資料を片手に言った。
「鷹乃・愛衣さん傷害事件の容疑者と目されていますが、有力な物的証拠がないため捜査は進んでいません。邪神教団のたぐいとの関わりはないようなので、UDC組織として対処するつもりもありませんが、猟兵の皆様から要請があれば惜しみなく協力するようにと通達されています。お手伝いが必要であれば、何なりとお申し付けください」
あくまで事務的な口調で告げて、男は下がる。
此度の件に関して、向こうが積極的に何か行動することはないらしい。……裏を返せば、猟兵たちがどんな手法を用いたところで止めることもないだろう。
”死なない程度に”という但し書きはあるものの……さて、どのように料理してくれようか。
二度と悪事を犯す気が起きないように。制裁を加えるため、猟兵たちは動き出す。
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
なーるほど、な。
歪んだ完璧主義者だ。
自分がどんな状況にあるのかも気付いてないんだね。
んじゃ、気付いて苦しんでもらおうか。
部長までやってるんだ、弓道での推薦進学も目論んでるだろ。
年頃がちょうどいいし、「通りすがった志望大4年の弓道部員」
としてフレンドリーに呼びかけるよ。
まず練習の熱心さを褒め、先に見舞いに行った後輩たちに会ったのと、
昨夜の事件の噂も聞いたと話して。
「アンタ、人の心が無いね」
と、ポツリとひとつ呟いて。
振り返らずに去っていくよ。
別に愛衣さんへの罪を感じろという気はないさ。
他人を省みない、自らの行いで推薦進学の目が消えた。
その自分の未来への罪悪感で苦しみな。
●
ビシッ ビシッ
静かな弓道場に、弓の鳴る音だけが響く。
一人居残って練習を続ける真奈子を、数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は入り口の陰から伺っていた。
「なるほど、完璧主義者なんだろうけど……歪んでるねえ」
完璧を目指して練習に打ち込む姿は美しいが、その裏で行っていた所業を知る者の目には醜悪にしか映らない。
「んじゃそろそろ、自分の置かれた状況に気付いてもらおうか」
呟いて、もたれていた壁から離れる。
靴を脱いで道場に上がると、足音に気付いた真奈子が振り返った。
「やあ、熱心だね」
「……どちら様ですか?」
「ここのOGだよ。四年も前のことだから、知らなくて当然だけどね」
フレンドリーに手を振ると、初めは不審がっていた真奈子も次第に警戒を解いていく。あるいは、多喜の態度そのものよりも、某名門大学の学生と名乗ったのが効を奏したのだろうか。
「そういえば、さっき部員の子たちとすれ違ったよ。何だか、大変な事件があったんだってね」
「ええ、アタシの同級生なんですけど……」
前置きもそこそこに本題へと切り込むと、真奈子はいかにも心痛めている風に顔を曇らせた。
「アンタはお見舞いに行かなくていいのかい?」
「行きたいのは山々ですけど、大会に向けて練習しないといけませんから。出場できなくなった彼女のためにも、優勝のトロフィーを持って帰らなくちゃ」
「……そうかい」
よくわかった、と頷いて、多喜は友達思いの仮面をかぶった悪女の肩に手を置き、
「アンタ、人の心が無いね」
「…………ッ!?」
ヒュウ、と真奈子の瞳孔が縮んだ。
油断した背中にナイフを突き立てるような、鋭利な言葉を耳打ちして、多喜は踵を返した。
多くは語らない。それがお前の全てなのだと、ただの一言だけ残して去っていく背中に、真奈子は何も言い返せず、
「……ば、バカバカしい!」
吐き捨てた言葉の、なんと空々しいことか。
大成功
🔵🔵🔵
ガイ・レックウ
【SPD)で判定
【情報収集】と【追跡】のスキルで地道に情報と証拠を集めた後、関係各機関(学校、教育委員会など)と警察へと送付するぜ。
『おい、その完璧な経歴とやら…終わるぜ?』
関係各所や警察に証拠と情報を送付したことを告げるぜ。
あと【ハッキング】のスキルも使い裏付けもとる
『てめぇがうばったもん…償わないんなら、地獄に落ちな。てめぇみたいな奴は許されねぇんだよ』
【殺気】を込めながらにらみつけるぜ
『少しははんせいしな…それと次同じことやらかしたら…どうなるだろうな?』
本気の脅しをかけておく
※アドリブ可
シャルロット・シフファート
学校に直接出向いて対峙し、他に誰もいないことを良いことにべらべらと喋らせる。薄汚い精神を出来るだけ引き出した後、スマホから動画を見せる。
『セントカースNO3。鵜野・真奈子』
そこには自ら塩酸目薬を与えたという言質を晒け出す女の姿が映し出される。
「聖裁動画(セントカース)の三人目の罪人、破滅のプロモーションを味わわせて上げる」
隠し撮りしていた先程弓道場で呟いた台詞も含めた本性を示す様々な動画も交えPV編集した動画がネットだけでなく学校に貴女の関係者、進学先にも提出している。
因みに私自身は電脳魔術の力で動画からはいないよう加工されているわ。
「逃げても無駄よ、皆貴女の裁きを望んでいるわ」
紅葉・智華
※アドリブ・連携歓迎
さて。人の眼を奪った犯人にはきっちりと社会的な制裁を受けてもらいましょうか。
機械的な知識(メカニック)を活かして、鵜野が犯人という物的証拠を作り上げる。いや、見つかる(第六感、情報収集)のならそれが一番ではあるけれど。そして、警察へと流す――前に、本人に「バレているゾ」という事を伝えておこうかな。
【選択UC】で『コスプレ衣装コレクション(演技)(鵜野らの学校の制服)』に【変装】、同校の不良の【演技】をして鵜野に接触。
「アタシさあ、実は撮っちゃったんだよね……アンタが鷹乃の眼を潰した証拠……」
まあ、伝えた結果、向こうがどう出るかは兎も角。警察に情報を流す。後は、時の運かな。
●
ガイ・レックウ(相克の剣士・f01997)は、女子更衣室に忍びこんでいた。
……念のため申し上げておくが、決してやましい目的で入ったのではないのでご理解いただきたい。
「まあ、厳密にいやコレも犯罪だけどな」
几帳面に畳まれたセーラー服を脇にどけて、学生鞄の中を漁るガイ。さして労もなく目当ての品――真奈子のスマホを入手した。
「さて、と。完璧な経歴とやら、終わらせてやろうじゃねえか」
パキパキと指を鳴らして、調査開始だ。ハッキング技能を駆使してセキュリティを突破し、保存されているデータを調べていくと……見つけた。
塩酸と、愛衣が常用していた目薬の購入履歴だ。
凶器の入手経路が判明。これを軸に、補強材料を集めていけば告発には十分であろう。
「そっちは、私が何とかできるかも」
同じく犯罪の証拠固めを行っていた紅葉・智華(紅眼の射手/自称・全サ連風紀委員・f07893)が手を挙げた。
「調べ物は得意だしね。目星がついた以上は、絶対に見つけてみせる。……いや、見つからなくても作る。メカニックですから!」
……『作る』って言った。
しれっと証拠捏造を宣言しつつ、智華は立ち上がってこれからの行程をくみ上げていく。
「次は学校の監視カメラかな。事件当時の、鵜野の行動が映ってるかも」
あまり時間をかけるべきではないだろう。最低限で確実な証拠をそろえるべく、猟兵たちは奔走する。
●
それから、いくばくかの時間が過ぎて。
弓道部OGを名乗る女性から一撃もらった真奈子は練習に身が入らず、予定よりも早く切り上げて帰り支度をしていたところに、高校指定のセーラー服を着た少女が声をかけた。
「鵜野さぁ、ちょっといい?」
「だ、誰よ!」
神経質そうに声を張り上げる真奈子に、同校の生徒らしい少女――に扮した紅葉・智華は軽薄な笑みを浮かべて歩み寄った。
不良っぽく制服を着崩し、ウィッグとメイクも完璧に施した智華は、猟兵が持つ『どんな外見でも違和感を与えない』という異能を抜きにしても、不真面目な女子高生にしか見えない(実年齢22才9ヶ月)。
「実はあたしぃ、知ってんだよね……あんたが鷹乃の眼、潰したんでしょ?」
「なッ!?」
舐めるように下から見上げれば、真奈子は息をのんで片付ける途中だった弓矢を取り落とした。
床にばらける矢を爪先で小突いて、智華は役に成りきって嘲笑を浮かべる。
「アレでしょ? 鷹乃が使ってる目薬を、毒か何かと入れ替えたんだよね?」
「ば、馬鹿なことを! アタシがそんなこと、するはずないじゃない!」
「でもさぁ、ちょうど鷹乃が倒れた時間に、鵜野ってば一人でここに来てたじゃん。メッチャ怪しいよねぇ」
「弓道部の部長が弓道場に来て、何がおかしいのよ! 変な言いがかりはやめて!」
「ってか、事件の後にあんたが捨てた目薬、あたしが貰っちゃったんだよね。これ警察で調べてもらったら、どうなるかな~?」
「嘘つかないで! アレだったら間違いなく焼却炉に……あっ!?」
「はい、語るに落ちた~」
ケラケラと、智華は声に出して笑った。
「いやぁ、全然見つかんないと思ったら、燃やしちゃってたわけか。塩酸の入った目薬に、鷹乃が使った痕跡とアンタが触ったのとが残ってれば、確定だもんねぇ。頑張って作ったんだけど、自白しちゃったからもういらないかな?」
口惜しそうにポケットから目薬の容器を取り出して、指の間で転がしてみせる智華に、真奈子は血の気の引いた顔で唇を震わせる。
「あ、アンタ、何が目的なのよ」
「目的? んー、そだね。あえて言うならぁ……」
「――貴女が裁かれること、それに尽きるわね」
第三の声。
見事な金髪縦ロールを蓄えたシャルロット・シフファート(ツンデレの国のアリス・f23708)が、ツンと勝気な表情で会話に加わった。
前に智華、後ろにシャルロット。挟み撃ちにされて逃げ場を失くした真奈子は、砕けんばかりに奥歯を噛み締めて、クワと目を見開いた。
「ふ、ふふ……ふざけんじゃないわよ! アタシがやったとしたら何なわけ!? もとはと言えば、あの女が悪いんじゃない。才能もないくせにアタシを追い抜こうなんてするから、邪魔だから潰しただけよ。何処でも誰でも普通にやってることじゃない!」
外面を取り繕うこともやめて吐き散らす、これが真奈子の素顔なのだろう。
シャルロットは同意も反論もせず、黙って相手の言いたいようにさせておいて、頃合いを見計らって自分のスマホを取り出した。
何やら操作して、画面上に映し出したのは一つの動画だった。
――『セントカースNO3。鵜野・真奈子』
そう題名された動画はアップロードされたばかりのもので、現在進行形で視聴回数が上昇している。
『早く良くなるといいんだけど』『自殺でもしたらウケるんだけど』
『鷹乃さんのためにも、優勝しないと』『あの女さえいなければ、アタシが優勝できる』
「え……そんな、嘘……」
真奈子は、理解できないように後ずさった。
その動画はタイトル通り、彼女自身を映したものだ。いかにも心配している風な表の顔と、悪意に満ちた醜い裏の顔を対比させて、鵜野・真奈子という人間がいかに下劣であるかをあげつらうかのように、巧みに編集された動画である。
「聖裁動画(セントカース)の三人目の罪人、破滅のプロモーション。味わってもらえたかしら?」
「……あ、アンタら、嵌めたわね!?」
「気付いても遅いのよ。ほら、皆貴女の裁きを望んでいるわ」
逆上する真奈子に、シャルロットはスマホを鼻先に突き付けて、目で追えない速さで膨らんでいくコメント欄を見せつける。
紛糾する書き込みの数々。秘密が暴かれ、警察や学校、親元にまで通知されたことを知って、真奈子は絶望に顔を覆った。
「そんな、そんな……ッ!?」
よろよろと後退するその背中が、いつの間にか立っていたガイ・レックウの胸板にぶつかった。
「てめぇはそれほどのもんを奪っちまったってことだ。報いを受けて償うか、それが嫌なら今すぐ地獄に落ちな。てめぇみたいな奴は許されねぇんだよ」
「ヒッ!?」
獣を思わせる鋭い眼光が、真奈子を射抜く。
「少しは反省しな。……それと、次同じことやらかしたら、どうなるか分かってんな?」
「う、う……ううう…………」
容赦ない殺気でもって、一言一句を刻み込む。
歯の根が合わず、呼吸すらままならぬほど怯えきった少女は、やっとの思いで首を縦に動かして、
「……行けよ」
「う……ウワァァァアァァァァァ!?」
ガイの視線が外れるや、幼子のような鳴き声を上げて逃げ出した。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
隣・人
「異物に頼らず復讐しろって言ったのは私ですし。殺すのは『勿体ない』でしょうから。酷く息苦しいモンでしょうけど、ちょっとだけ私にも遊ばせてくれな……うるせぇテメェの殺意なんぞ知るか!!!」
出遭い頭に『デコピン』してやります
ちょっと痛いだけで済むでしょうが、これは『攻撃』した事になりますね。じゃあ追加攻撃に派生しますか。大丈夫。死にはしません
回してやりましょう
縦でも横でも斜めでも、不規則な回転で捕らえて魅せましょう
あとは吐け。中身なくても吐け。吐けや吐け吐き続けろ
「あーはっは!!! 隣人ちゃんの拷問術の味は如何ですか!!! 自分のモザイクで苦しむ気分は最高でしょうよ――薬は両目が最適ですね!!!」
●
「…………ありえないありえない。こんなの、嘘に決まってる!」
顔面蒼白で真奈子が弓道場を飛び出していくと、突然物陰から現れた目隠しメイドが立ちふさがった。
「ち、ちょっと危ないじゃない!」
怒鳴りつける真奈子に、隣・人(六六六番外・f13161)はニッコリ笑顔を張り付けたままーーバチンッ!
無言のデコピンを受けて、真奈子は仰け反った。
「痛ッ、いきなり何すん……って、何よこれェ!?」
抗議の声は、すぐそばの窓ガラスに映った自身の顔を見るなり悲鳴に変わった。
打たれた額に付着した『モザイク』。狼狽えて手で擦るが、当然その程度の程度で落とせるものでもなく、そうこうしているうちにマーキングを終えたユーベルコードが発動する。
ーー【六六六番外・隣人千闇流眩暈覇製・永久回転謳吐無間】
「ひっ……いやアアアアアアアア!!?」
見えざる力が真奈子を捕らえ、その体を猛スピードで回転させた。
縦に横に斜めに、回しに廻して巡り旋らせ転ばせる。
特定の軸も規則性もない破茶滅茶な乱回転が、脳髄を振り回す。五臓六腑がひっくり返り、内容物が逆流するのを止めることもままならない。
「ア゛、ア゛ア゛ア゛ア゛…………ヴゲェ!?」
「あーはっは!!! 隣人ちゃんの拷問術の味は如何ですか!!! 自分のモザイクで苦しむ気分は最高でしょうよ――薬は両目が最適ですね!!!」
回転につぐ回転の末、ゴミのように投げ捨てられた真奈子は、隣人の高笑いに反応もできずに横たわっていた。
己の口といわず鼻といわず目といわず、穴という穴から溢れ出たものにまみれた姿は、それこそモザイクなしでは見られたものでなかったという。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
前回の戦いでの記憶を基にした愛衣の練習と【医術】による治療に全霊を尽くす
うん…お礼はお胸にぎゅーでいいですよ?お前は純心そうなのでそれで見逃してやります
(ふかふか幸せそう)うん…満足
断罪
【情報収集】で可能な限り真奈子の犯行の証拠となりえる物を集
誘拐
僕は愛衣ちゃんのファンなんですよ
だからこそ愛衣ちゃんを傷つけたお前を滅茶苦茶にしてやります(押し倒し服をびりびりっ
……あー…ダメだ…やっぱ趣味じゃないですねぇ
せめて苦しみを共有させましょう
(見せつけるようにあの塩酸目薬を見せつけつつ押さえつけ
お前も愛衣ちゃんがどんな目にあったか思い知るといい(容赦なく左目に落とす
心から懺悔したら治してやるかもですよ?
●
その後、ほうほうの体で女子トイレに逃げ込んだ真奈子は、ベソをかきながら洗面台に向かっていた。
顔や髪を洗って多少はマシになったものの、道着の汚れまでは手が回らず、漂う異臭が弱った精神に追い討ちをかける。
「う、うう…………なんで、なんでよ。どうしてこんな……」
「――なんでって、本気で言ってやがりますか?」
洗面台の鏡に映る、真奈子の濡れそぼった顔の後ろに、ボウッと人影が現れた。
「こ、今度はだれ……ムグッ!?」
振り返った真奈子の口を、小さな手の平が塞いだ。人影――カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は、まだ幼さを残した少年とは思えない力で真奈子を引き寄せると、手近な個室へと連れ込んで、鍵をかける。
「僕は愛衣ちゃんのファンなんですよ。だからこそ愛衣ちゃんを傷つけたお前を滅茶苦茶にしてやります」
カシムは熱に浮かされた目で、乱暴に真奈子を便座に座らせる。道着の帯を解いて手首を縛り、動きを封じたら胸元をはだけさせて、きつく巻かれたサラシに……
「ひっ、やだぁ……。あ、謝るから、もう絶対にしないから……やめて、許して…………」
「……。……はあ、やっぱダメだ」
涙を流す真奈子を見下ろして、カシムは深々とため息をついて手を離した。
趣味でない、とかいう以前に色々とアレがナニでアウトなので、これ以上どうこうするのは土台無理な話だ。
ならば別の形で愛衣が受けた苦しみを共有させよう、とカシムが取り出したのは、例の目薬の容器。
「なっ……!? う、嘘でしょ? ねえってば!」
真奈子の表情が、恐怖と絶望に染まった。
拘束から逃れようとひたすらもがく少女の、必死に顔を背けるのを片手で捕まえて、カシムはあえてゆっくりと目薬を近づける。
「昔から、『目には目を』と言いますからね」
さあ右目にしようか左目にしようか。吟味するようなそぶりで散々にじらした末、愛衣が奪われたのとは逆の左目に、薬液を垂らす。
「や、やめてやめてやめアアアアアアアアアア!!?」
――――ジュッ
●
「アアアアア、イヤアアアアアアアア!! 目が、アタシの目があああああああああ!!!」
「これで、愛衣ちゃんがどんな目にあったか思い知りましたか」
目を押さえて七転八倒する真奈子を見下して、カシムはせせら笑いながら個室のカギを開けた。
トイレの外に意識を向けると、真奈子の絶叫を聞きつけたか何人もの足音が近づいてくる。後の始末は彼らがやってくれるはずだ。
「では、さようなら。……心から懺悔したら、治しに来てやるかもですよ?」
捨て台詞を残して、カシムは姿を消した。
果たして鵜野・真奈子は改心するのか、確かめることができるのはもう少し先のことになるが、少なくとも誰かを傷つけようとすることは二度とないだろう。
【END】
成功
🔵🔵🔴