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奸悪跋扈

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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●岡野町の火
 誰もが眠りに就く丑の刻の事であった。
「ふ、ぐぅうう!」
 平手橋を渡って堀川の土手道沿いに南に向かって曲がった先、立ち並ぶ町屋の中でも一際大きな店構えした浅野屋ではくぐもった断末魔が響き続けていた。
 黒い頭巾を被って顔を隠した賊達は、奉公人達を縛り上げ、口を布や手で塞いで斬り伏せていく。この家の内儀が隙を見て幼い我が子を抱えて賊から逃れ走ろうとするも、背中を斬り付けられ、倒れた所を幾度も刺し貫かれて事切れる。
 母が子供を庇う姿で死んだ親子の姿も、血塗れた店内の惨劇の光景も一顧だにせず、賊は店の者を皆殺しにすると蔵に置かれていた金を全て盗み出して火を放つ。
 天を焦がすように真っ赤に燃える炎と鐘の音を背に、賊共は闇夜の中、いずこかへと姿を消して行くのであった。

●グリモワベースにて
「皆さん、集まっていただき有難うございます」
 まるで自分の中にマニュアルがあるかのように、いつもの挨拶を口にした陸刀・秋水(スペースノイドの陰陽師・f03122)がファイルを開く。

「今回の事件について説明いたします。
 発生地は世界名『サムライエンパイア』
 世界の詳細については割愛させていただきます、もう皆さんもよくご存知でしょうから」
 最近、特に人気急上昇の上様がいる世界だ。
「その世界に岡野町という町があるのですが、その町では最近押し込み強盗が続いています。手口は悪辣で、夜間に何らかの手段で店に侵入、店に住んでいる方を全員殺害の後に放火しています」
 人も財産も残らず奪うというのだ。これを悪辣と言わずして何と言えよう。秋水も軽く眉根を顰めていた。
「私の予知によりますと翌日、浅野屋という薬種問屋――つまり、薬屋さんですね、そこが押し込み強盗の被害に遭いますので、皆さまにはそれまでに店を守る手段を整えていただきたい」
 話を聞くに、まだ押し込み強盗たちが来るまで一日の猶予があるらしい。
 それまでに用心棒に雇われてみるだの、店を守る為に様々な手段が採れると考えてみて良い。
「この連続事件について私でも調べて見たのですが……どうも、捜査の動きが鈍い。背後には捜査を妨害出来る程の権力を持ったオブリビオンがいると見て間違いありません。浅野屋襲撃を阻止した後は何らかの動きがあると思いますので、皆さん、そのつもりでいてください」
 何が待ち構えているか解らないからこそ、秋水は頭を下げた。そして目を細めて、猟兵達の顔を頼もしげに眺めてからファイルを閉じる。

「転移の準備を開始しますので、皆さんは装備の確認や準備をどうぞ。ああ、ポケットティッシュくらいでしたら、こちらで支給が可能ですからご希望者は挙手ください」
 自分で挙手の例をしながら皆を見渡したりとの一場面を挟みつつ、猟兵達の準備が終わった頃を見計らって頷いた。
「信頼出来る仲間を送り届ける為、そして必ず帰還してもらう為。確りサポートに務めさせていただきますので――皆さんは十全に戦って来て下さい」


山崎おさむ
 数あるシナリオの中から当シナリオをご覧くださり、誠に有難うございます。
 今回は勧善懲悪の娯楽時代劇ノリです、お好きな方は是非どうぞ。

 第一章、第二章は冒険、第三章は糸を引いていた敵との対決という構成になっております。
 もう一度申しますが、勧善懲悪の娯楽時代劇ノリです。上様が旗本の三男坊を偽っていたり、先の副将軍が全国を旅をしていたり、三匹が斬ったりする、深く考えないで視聴できるアレです。

 ですので、皆さまもどうぞお気軽にご参加ください。
 どの章からでも構いません、ご参加を心よりお待ち申し上げております。
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第1章 冒険 『火付盗賊から店を守れ』

POW   :    用心棒として雇われる

SPD   :    罠や仕掛けを作る

WIZ   :    盗賊の襲撃手口を推理

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

浅杜守・虚露
【POW判定】事前に薬種問屋の主に面通し、調査の意図を伝えるも急に用心棒がつけば怪しまれよう、と問屋近くの通りでおでん屋台に扮して営業しつつ、襲撃に備えておく。(あと自分の栄養補給という名の牛スジ、もつ煮ドカ食いでUC発動)
初動は仲間に任せつつ、騒ぎがおき次第家屋へ突入。襲撃犯の捕り物劇に参加していくぞ。

「盗み殺しなんざ太ぇ野郎じゃ!取っ捕まえてやるから神妙にせぇやぁ!」


アーデルハイド・ルナアーラ
用心棒として雇われて盗賊達を迎撃しましょう。もしすんなり信用してもらえないようなら、ユーベルコードを使って実力を示すこともやむなしかな。
襲撃に何か裏があるみたいだし、最低一人、できればリーダー格は気絶させて捕まえたいわね。
鬼畜外道の輩、一人も逃がさないんだから!
お店はできる限り壊さないように努力します....


ミアズマ・フォルテ
SPD重視で行動

罠か……ふむ、ぱっと思いつくのは鳴子とか床にトリモチとかかな
蔵に偽のお宝を用意してうかつに触れたら警報が鳴るとか。
意図的に警備の穴を作ってそこに罠を仕掛けるとか。
敵も店の見取り図くらいは手に入れているだろうし
手口を推理する人と協力して
自分ならこう侵入すると賊になった仮定で罠を配置していこう
もちろん他の猟兵にも仕掛けた罠の存在は知らせておく


メルノ・ネッケル
今はこんなナリしとるけど、これでもココの世界の出。これ以上の狼藉は許しちゃおけんで!
民に仇なすふざけた輩は上様に代わって天誅や!

《POW》
まずは浅野屋さんに雇ってもらわなあかんな。ここは手っ取り早く天下自在符を見せる!
「巷を騒がせとるあいつら、唯の盗人やない。だからうちらが動いとる。損はさせへん、雇ってくれるな?」

OKが出たら準備と待機。
探りを入れられる可能性もある、注意は早めにしとくに越したことはないな。
店の裏口で銃を抜き、待たせてもらおか。
敵が来たら、その気配を【見切り】……「曲者っ!」【クイックドロウ】、速攻でリボルバーを叩き込む!
本隊が乗り込んで来るなら【2回攻撃】、そのまま応戦や!


ヘルメス・トリスメギストス
「ふむ、お屋敷に押し入る強盗ですか。
これは執事としては見過ごせない事件ですね」

お店の御主人様、奥方様たちに危害が及ぶのは
執事の誇りにかけて阻止してみせましょう。

そのために、まずは浅野屋さんに雇われるとしましょう。

「私はヘルメスという執事……
この世界風に言うと、番頭でしょうか。
少々、事情がありまして、雇い口を探しているのですが」

算術から礼儀作法、家事全般から主のお世話と何でもできることを売り込みましょう。

雇われることに成功したら、
御主人様や奥方様のお側に仕え
護衛をおこないましょう。

賊が現れたら【執事格闘術】で御主人様、奥方様をお守りいたします。

「執事である私がいる限り、主に危害は加えさせません」


ライヴァルト・ナトゥア
POW、殺気、2回攻撃、第六感を使います

(着流しに下駄、世界観に沿った衣装で護衛を受けに行く)
なに、心配しなさんな。あっしがいりゃあもう安泰ですわ
(軽薄な口調だが、立ち振る舞いは歴戦を想起させる)
さて、どの程度の輩なのかな?
(腰に下げた妖刀をカチリと鳴らしてニヤリと笑う)
(有事の際に敵を発見したならば千剣白夜から何本か引き抜いて投擲する)
おや、お揃いのようで
手癖の悪い坊主どもにゃ、灸を据えてやる必要がありそうですな
(凛と音が鳴るたび、首が飛んでゆく)
子羊が狼から逃げられると思ってるほど幸せな頭はしてないだろう?
最後まで、退屈させないでくれよ?
(倒したら、何か黒幕の手がかりになるようなもの探す)


仇死原・アンナ
浅野屋の人達を盗賊共の手から守ってやらないとね…
賊共に容赦するつもりは微塵もないよ

他の同行者と協力する

POW用心棒として雇われる
浅野屋の人にお願いして用心棒として雇ってくれるようにお願いする
[怪力]で自慢の鉄塊剣をく振るって腕自慢しよう

普段は[目立たない]ように過ごして浅野屋に居候しながら店内や店外を見張る

[情報収集]を使用して岡野町を荒らす盗賊共の情報を少しでも
多く手に入れて他の同行者と情報共用するつもり

「賊共め…お前達を血祭りにあげてやる…」
心の中でそう思いつつ、襲撃への準備を整える


ヒビキ・イーンヴァル
すげぇ物騒な話だな、おい
出来ることはやっておこう
これ以上被害を出さない為にも、な

とりあえず、狙われる予定の浅野屋の周りをうろうろしてみる
周辺に住んでる人からも話を聞いておきたい
『情報収集』、試してみるか
強盗の噂でも何でもいい、情報が多いに越したことはない

あとは正面、裏口、他に侵入できそうな箇所はないかチェック
強盗がどうやって入ってくるかもわからねぇしな
守りが薄そうな箇所は、店主さんに話して補強させて貰おうか
……力仕事は管轄外なんだが
ま、出来るだけやってみよう

ついでに店の中の間取りも確認しておきたいところだが
どこを重点的に警備するかの参考にしたい
あー……考えること大量だな……


四季乃・瑠璃
【ダブル】で分身。
二人で罠作り。

鳴子は基本として…鳴子をちょうど避けたところに艶消ししたワイヤーを張って連動式ジェノサイドボム(以下ボム)を設置。
避けたところを爆破するよ。
後、庭には感知式ボムを大量に地面に埋めて地雷源に。
戸口の前の床を踏み板にして上からデスソース(瑠璃の私物)がたっぷり入った水風船がばしゃり。
廊下にも艶消しワイヤーを張り巡らせて、丸太が飛んできたり矢が飛んできたり水が降ってきたり電気で痺れたり。

ゴールに辿り着いた賊は接触式ボムと銃弾をプレゼントします。
「最近、ちょうどトラップダンジョンに潜ったところで、私もやってみたかったんだ」
「瑠璃、エグいねぇ♪でも、片付け大変そう」



●備えの日
 その日、薬種問屋の浅野屋は普段と違う賑わいを見せていた。
「巷を騒がせとるあいつら、唯の盗人やない。だからうちらが動いとる。損はさせへん、雇ってくれるな?」
 メルノ・ネッケル(火器狐・f09332)が取り出した天下自在符――徳川の紋所に平伏した浅野屋は、逆らう事無く店の守りを猟兵達の手に委ねていた。

「お心が曇られているようですね、ご主人様」
 落ち着いた声を聞き、店内を不安げに眺めていた店の主人、清兵衛は、常に傍らに控えるヘルメス・トリスメギストス(執事・f09488)へと目を遣った。
 ヘルメスも猟兵であるが、その立場は他の者達とは違って少々特殊である。

 ――私はヘルメスという執事……。この世界風に言うと、番頭でしょうか。
 ――少々、事情がありまして、雇い口を探しているのですが。

 算術から礼儀作法、家事全般から主の世話まで多能であると売り込んで、用心棒ではなく店の一奉公人として雇われている。とはいえこの折である。察した清兵衛から、先ずは数日のみで互いに様子を見ましょうと丁寧に告げられていた。
 今も、奉公人というよりは客人を取り扱うかのように小さく頭を下げられる。
「ええ、火付盗賊の噂を聞いてはおりましたが、いざ手前の店が狙われていると聞くと恐ろしくてなりません」
「どうぞ、御安心ください御主人様。この方達がぬかりなく手配してくださいます」
 へえ、と清兵衛は頷くが、まだその表情は難しげである。
 錆色の乙女との名の鉄塊が如き剣を易々と振るう仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)の姿だけでも猟兵達の力は疑うべくもないと解ってはいるが、奉公人達の命を預かる立場であり、幼子を持つ父親でもあるのだから、そうなるのも仕方無いとヘルメスは思い遣りを込めて微笑んでみせる。その笑みに励まされたのか、清兵衛も緊張しながらも背筋を伸ばす。
 そして、清兵衛が奉公人を呼ぶ為に手を打った。
「六郎、六郎はいるかね。ちょっと知り合いのおでん屋台に野菜を届けに行ってくれないか」
 呼ばれた手代が二人の元へとやって来る。きちんと着物を着付けてはいるが、どこか崩れた雰囲気のある手代だ。
 六郎はヘルメスへと、ちらりと窺う目を向けたが、頭を下げる事でそれを隠した。
「お由が棒手振りを呼び止めて買っておいてくれたのが台所にある筈だ。それを通りの屋台まで持って行っておくれ」
 本来ならば丁稚にやらせる使いではあるが、このような状況で子供をうろつかせては危なかろうと、清兵衛に言い付けられた六郎は、へい、と頷き、使いに出て行く。
「御主人様、今の方は?」
「ああ、六郎と申しまして、ふた月ほど前に働いていた店が火事に巻き込まれたとかで、うちで雇い入れた者です」
「そうでしたか……」
 六郎の視線に嫌なものを感じたヘルメスであったが、清兵衛の妻から呼ばれたならばそちらへ向かわねばならなかった。

 賊の襲撃に備えて裏口のある中庭に待機していたメルノが、さっとリボルバーを引き抜いた。
 今の態はかけ離れていようとも、メルノはこの世界の出。これ以上の狼藉は許さぬつもりで早撃ちの動きを馴染ませる習練に、丁度台所から出てきた手代が、手に野菜籠を抱えたままでびくりと体を震わせた。
「あっ、びっくりさせてごめんな。なんや、今からおでかけするんか?」
「へ、へい。おでん屋台まで野菜を届けに……それじゃあ、私はこれで」
 腫れ物に触れるかのように、手代はそそくさと足早に立ち去ろうとする。
「ちょい、待ち」
 そこをメルノが呼び止めた。そろりと振り返る手代にメルノが歩み寄る。
「葱落ちたで。食べもん粗末にしたらあかん、もったいないお化けが来るから気ぃ付けな!」
「こ、これはどうも……」
 拾った葱を差し出し、メルノが親しげに笑う。そんな彼女にたじろぎつつも、手代は頭を下げて葱を受け取ると、裏木戸から外へ出て行った。
 そこに店内での情報収集を終わらせたアンナがやって来た。
「……今、誰か出て行った?」
「手代の人があの屋台まで野菜持って出ていったで。ちょーっと様子がおかしかったけどなあ」
 メルノが手代の様子を思い返すように裏木戸を見遣った。徳川の後ろ盾がある者を相手にしているとはいえ、腫れ物に触れるようなあの態度は引っ掛かる。
「そう……。外に出るつもりだったし、ちょっと見てくるね」
「了解。なら、うちはこのまま待機ついでに妙な出入りが無いかも見張っとくわ」
「よろしく」
 手を振るメルノに見送られ、アンナが裏木戸を潜る。手代は既に道を曲がって行ったらしく見当たらないが、目的地は解っている。ひっそりと目立たぬようにアンナは歩き出した。

 岡野町に突然、おでん屋台が一件増えた。
 浅野屋の周りで噂を聞き拾っていたヒビキ・イーンヴァル(蒼焔の紡ぎ手・f02482)が、近くの通りに出ている件のおでん屋台にひょいと顔を出す。
「よう、やってるか?」
 ヒビキの問いに、屋台見世に狭苦しそうに収まっていた店主から威勢の良いいらえが返った。
「おう、やっておるぞ! なんだ、客かと思えばお前さんか!」
 ヒビキを見た店主がそう言ったのも当然の事。この屋台の店主は同じ猟兵である浅杜守・虚露(浅間雲山居士・f06081)だ。
 虚露の前に置かれた牛スジやもつ煮を見て、ヒビキが少し呆れた顔をする。
「何つか……山盛りにして食ってるけど、それ商品じゃないのか?」
 虎の手で器用に箸を持ち、半ば掻っ込むようにして食べる虚露にヒビキが言うも、言われた虚露は悪びれずに大きく頷く。
「腹が減っては戦は出来んからのう、戦いの前に腹ごしらえをするのがわしの常じゃ。それに肉を喰らえば力も増す。だからわしはこうして肉を喰っておるとの寸法よ!」
 そういう能力を使っているのだと、虚露は大口を開けて哄笑した。元の性質が研究や読書と内に向くヒビキが、普段触れ合わぬ類の相手だと気圧されたのも仕方無い事であっただろう。
 軽く小腹の空く時間でもあり、客の振りついでとヒビキももつ煮をつついていると、アンナがやって来た。足早だった彼女は屋台に着くなり、虚露に尋ねる。
「ねぇ、浅野屋さんの手代は来た?」
「いいや、来ておらぬ。何かあったかのう」
 アンナが追い掛けてここに来たまでを手短に説明すると、二人が首を捻った。
「そういや、こっちも嫌な話を拾ってきたな」
 町で聞いた噂によると、とヒビキが前置く。岡野町では代官が町人に金貸しを行っているらしい。それ自体は特段珍しい事では無いのだが、この頃その利子が高いものへと改められたそうだ。その為、金を借りていた町人達は、伝手を頼って別の所から安い利子で金を借り、その金で代官からの借財を返すとの遣り方をし始めていた。そして、今までに火付盗賊に襲われた店は、全て金を貸す側であった。
 三人がそれぞれ考え込むようにしていた所に、浅野屋の手代が現れた。
「失礼致します、浅野屋からの遣いでございます、が……何か立て込み中でしたか」
「いいえ、大丈夫よ」
 アンナが真っ先に首を振る。視線を移すとヒビキと目が合い、手代が虚露相手に遣り取りをしてる間に頷き合う。
「ご馳走さん。俺もそろそろ店に戻るかな」
「私もそうするわ。手代さんも帰るんでしょう? 送って行くわ」
「えっ? わ、私はそんな」
 左右に立った二人に、畏まりながらも固辞する手代に虚露は笑ってみせる。
「用向きもこれで仕舞いなら遠慮する事はない。賊が何処におるから解らんからのう」
 口から覗く肉食獣のような牙に、手代が顔を伏せた。

 三人が店に戻ると、ミアズマ・フォルテ(求める者・f00215)と四季乃・瑠璃(瑠璃色の殺人姫・f09675)の二人が協力して張った罠も完成している頃だった。
「二人とも、おかえりなさい」
「おかえりー♪」
 二人の瑠璃が並んで出迎えるが、片方は瑠璃ではなくオルタナティブ・ダブルで出現させた彼女の別人格、緋瑪だ。最初に大人しげに迎えたのが瑠璃、弾むように明るい声をあげたのが緋瑪との差がある。
 ヒビキが作業の調子を問うと、二人は同時に頷いた。
「鳴子を基本として、それを避けた所に艶消しワイヤーを張っておいたよ」
「引っ掛かると連動式でジェノサイドボムが爆発しちゃうんだよ!」
「あとあと、裏庭には感知式のジェノサイドボムをいーっぱい埋めて地雷原にしておいたんだよね☆」
 他には、戸板の前には重量感知でデスソースが降って来る水風船を仕掛けただの、廊下に張り巡らせた艶消しワイヤーには丸太や矢、水の落下や電気ショックなど、様々な仕掛けを置いといたらしい。
「最近、ちょうどトラップダンジョンに潜ったところで、私もやってみたかったんだ」
「瑠璃、エグいねぇ♪ でも、片付け大変そう」
 楽しげな少女達との微笑ましさとは裏腹に、語られる罠には些か容赦が無いが、トラップダンジョンを模倣するならそんなものかと、アルダワ魔法学園の若き研究者であるヒビキは腑に落ちたようだ。
「ああ、帰ったのか。丁度良かった」
 土蔵に偽の宝と警報の設置を終えて戻って来たミアズマが、各所に印の入った見取り図を出す。
「罠の位置を書き込んでおいた。チェックしたがっていた侵入箇所にも罠を張ってある」「守りの薄い場所は補強したかったんだが、その辺りは?」
「意図的に残してある。警備の穴として突いてくるのを想定して鳴子とトリモチを置いといた」
「協力してくれるって言ったが、ここまでやってくれると助かるな」
 事前の打ち合わせを踏まえ、自分ならばどう侵入するかを想定して整えた準備は万全の筈だと、ミアズマが力強く請け負った。
「これを全員に見せてくる。皆が引っ掛かると大変な事になるだろうからな」
 ミアズマは冗談めかして笑いながら、ひらりと見取り図を振った。

 徹底的に罠のある店内を不用意に動き回るのは危なかろうと、店主夫婦や奉公人達は既にそれぞれ部屋に入ったが、例の六郎という名の手代だけは猟兵達が控える部屋へと連れ込まれていた。
 妙な様子を見せる理由が知りたいと、着流し姿のライヴァルト・ナトゥア(巫女の護人・f00051)は、着流し姿で端坐しながら六郎を眺める。
「ですから、屋台に着く前に知り合いの方にお会いしたから、ご挨拶していただけで」
「その知り合いってのは?」
「知り合いは知り合いですよ。話す必要がありますか」
「あるから聞いてんだ」
 渋面を浮かべる六郎を、ライヴァルトは静かに見詰めながら言う。
「賊の一味と会っていた。違うか?」
 ただの勘だった。だが、六郎が解りやすく目を剥いた為に、やっぱりな、とライヴァルトが小さく呟く。
 落ち着き無く目を動かし始めた六郎に、逃亡の予兆を感じたアーデルハイド・ルナアーラ(人間のウィザード・f12623)はさっと立ち上ると、畳に引き倒して取り押さえる。
「くそっ、このアマ!」
 六郎も藻掻くが、アーデルハイドの怪力に捕まっては無駄な足掻きでしかなかった。
「鬼畜外道の輩の仲間なら、逃がしておけないんだから! 一人は捕まえておきたかったから丁度良いわね」
 詳しく話して貰おうと腕を締め上げると、痛みに悲鳴をあげた六郎が解ったと叫ぶ。
 自分は賊の一味である事、引き込み役として店に潜入していた事を洗いざらいぶちまけるが、肝心要は他にもあるとアーデルハイドが更に力を込める。
「それだけじゃないでしょう? この襲撃の裏に一体なにがあるの」
「知らねぇ、知らねぇよ! 俺はただ言われた事をやってるだけで、知ってるとしたら頭目だけだ!」
「だったら、やっぱり頭目を捕まえないといけませんね。協力して貰いますよ」
 ここまで来れば流石に嘘は吐くまいと、アーデルハイドが腕を離す。解き放たれた六郎に、ライヴァルトが片膝を立てて、ずいと寄る
「それで、さっき賊と会って何を話した?」
「み、店に徳川の紋所を持った奴らが来ていると。だが、構わず皆殺しにすると言ってた」
 ほう、とライヴァルトが妖刀を手に取った。カチリと音が鳴る。
「さて、どの程度の輩なのかな?」
 にやりと笑う姿は歴戦の兵を思わせ、所詮は小物である六郎が身震いした。

●浅野屋騒動
 常ならば、誰もが眠っている筈の丑の刻。
 大戸越しに口笛が聞こえたのを合図に六郎が潜り戸の落としを外すと、するりするりと黒い布で顔を覆った賊達が浅野屋へと入りこんで来た。
「裏口も開けてあるか」
「へ、へい」
 頭目らしき男は手下の何人かを裏へと回すと、残った者達は中へ行くよう顎で合図した。他の賊達が沈黙であったのも暫しの事、すぐに悲鳴が響く有様となる。
「ぎゃああ!」
 ばしゃんと弾ける音がした。掛かった、と瑠璃が口元に笑みを浮かべた。鳴子の音に爆発音や衝突音も混じり始める。派手な転倒音は自分が仕掛けたトリモチだろうと、ミアズマも満足げに目を細めた。
 裏口へと回って行った賊達もまた、無事で済む筈も無かった。
「曲者っ!」
「ぐうっ!?」
 先頭の賊が木戸を開けた刹那、その身に衝撃を受けて崩れ落ちた。リボルバーを構えた射手のメルノは驚く隙を与えず、後続のもう一人へと同じ銃撃を叩き込む。
「相手は一人だ、殺せ! 行け!」
 数人の賊がメルノに刀を向け、他は裏庭を踏み越え店に踏み込もうとするも、それは悪手であった。賊達の足元で、ばん、と地雷が炸裂していく。
「たーまやー、なんてなあ。瑠璃ちゃんも景気良ぉ仕掛けてくれたし、うちもそれに負けんと派手に良く行くでぇ!」

 迎撃の気配を察して、ヒビキが顔をあげた。
「始まったな」
「そのようですね」
 そう返したヘルメスの傍には清兵衛の姿がある。まんじりともせぬ様子にヘルメスが極力柔らかく話し掛ける。
「いざとなれば、私がいます。執事である私がいる限り、主に危害は加えさせません」
 賊が来れば執事格闘術のひとつやふたつは披露出来る。しかし、その機会もなかろうとヘルメスは考えていた。何せ元より手伝いに来た猟兵達は多く、襖を開けた隣室は用心棒として控えていた者達の為の部屋だったが、今はもぬけの殻となっている。清兵衛もその事には気付いており、己の緊張を笑うように苦笑した。
「まこと、主人冥利に尽きるお言葉ですね。ここまで皆さまがお働き下さっているのですから、私はここで大きく構えて待っておりましょう」
「ええ、その調子です。――ああ、援軍も来たようです」
 話している内に表口が一層賑やかになったと、二人して顔をあげて耳を澄ませる。ここまで届く大音声に、ヒビキが苦笑し、清兵衛は微笑を浮かべて瞑目した。

 各所で賊の悲鳴が聞こえる頃、賊の頭目は六郎の胸倉を掴んで締め上げていた。
「てめぇ、六郎! 裏切ったな!」
「ち、違う! 違うんだ、頭目!」
「何も違やあしねぇだろう!」
 土間に放り投げて刀を抜いた瞬間、大木戸が、どん、と揺れた。そして、豪快に上へと跳ね上げられる。
「盗み殺しなんざ太ぇ野郎じゃ! 取っ捕まえてやるから神妙にせぇやぁ!」
 大男がそこにいたと見えた直後、店内の空気をびりびりと震わせる猛々しい大音声が響いた。騒ぎを聞き付けて駆け付けた虚露は、差し込む月光を背にしながら、纏う法衣を大きく払って諸肌脱ぎになる。それから、ぎろりと睥睨すると頭目の周囲に残っていた賊目掛けて突進していく。
「賊はお前さんらかぁ! うぉおおおおおお!!」
 広げた両腕を同時に二人の賊の首に叩き付けた。弾け飛ぶように倒れた二人の襟首を両手で掴むと、暴れるのも構わず、軽々と頭上まで持ち上げてから土間へと叩き付けていく。
 俄かに始まった乱闘に舌打ちを溢した頭目が身を翻した瞬間、その眼前を冴えた音が通り過ぎた。タン、と音を立てて柱に小さな剣が突き刺さる。
 何処からと急いで飛来した方向を見れば、帳場に黒い影が立っていた。手にはだらりと血刀を下げている。
「おや、お揃いのようで」
 芝居がかって、ライヴァルトが言う。少し遅れて、アーデルハイドとアンナもやって来た。
「店を壊さないようにって思ったけど……罠の時点で自由でしたね」
「でも、鳴子のお陰で場所が解りやすかったから、片付け易かったね」
 アンナが自分の剣からぽとりと落ちる血を見る。
 逃げ場を失った頭目が手下を見るも、それらは六郎含めて虚露に畳まれた後だった。積み上げられた賊達の横、虚露は簡単な仕事だったとばかりに手を叩いている。
「てめぇらか、徳川の狗って奴ぁ。……ちょいと甘く見過ぎたようだな」
 唸るように言う頭目に、ライヴァルトが、は、と呼気を揺らしてから殺気を放つ。
「俺等は狗じゃなくて狼だ。差し詰めお前は狩られる子羊って所だな。子羊が狼から逃げられると思ってるほど、幸せな頭はしてないだろう?」
 月光を返す抜き身の妖刀に、頭目も死を覚悟した顔付きで刀を向けた。
「最後まで退屈させないでくれよ?」
「言わせておけば、舐め腐りやがって……!」
 侮る言葉に逆上した頭目がライヴァルトへと斬りかかって行く。それをライヴァルトは、すっ、と横に動く事で躱した。そして、鈍いが響く。
 どさり、と倒れた頭目の横には、月光の杖を手にしたアーデルハイドの姿があった。
「引き付けてくれて有難うね」
 ライヴァルトが頷き返す。裏で糸を引いている者の情報を聞く為にも頭目を殺してはならないようだと、六郎を問い詰めている時から解っていた。
「それじゃあ、まだ息のある人達も纏めて縛った後に、ゆっくり話を聞くとしましょうか」
 ゆっくりに言外の意味を込めながら、猟兵達は気絶した頭目を見下ろすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『開け!開かずの門』

POW   :    開けばいいのさ開けば!あえて真正面から門を破る。

SPD   :    急がば回れってね。迂回路を探したり忍び込んだり。

WIZ   :    頭を使ったらいいのさ。陽動?偽装?搦め手ですり抜る。

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●陰謀潜む役宅
 ――裏で手を引いているのは、この町のお代官様だよ。
 理由だ? そんなのてめぇらも調べた通りよ。
 あの御方はな、金貸しで儲けたいんだよ。だから、殆ど利子も無ぇような、仲良しこよしで金を貸すような奴らが目障りなんだ。
 それに貸せるような金がある店ってのはそれなりの元手があるもんだろ。他人様にお優しい気持ちで融通出来る金なら、お代官様が貰い受けたって文句ァあるめぇ。
 それで俺らもちょいと手間賃を頂戴してと、へへっ、良い仕組みじゃあねぇか。
 ふざけるな? 俺ァふざけちゃいねぇよ、ふざけてんのはこの世の中さ。
 いつの世もなぁ、人は金に踊らされてんだ。俺もその一人ってだけよ。
 文句があるなら金に言えってんだ。お代官様の屋敷に唸ってるぜ、ハハハハ!

 頭目の嫌な高笑いが耳にこびり付くような夜も終わった早朝、猟兵達は代官の住む屋敷へと来た。
 だが、その異様に驚く事になる。
 屋敷は他者を拒むような高い塀に囲われ、それより頭一つは高い頑健そうな大門は固く閉じられている。
 幾ら呼び掛けようとも応ずる様子は無い。門の裏側に人の気配がする事から門番がいるのは解る。だが、例えその門番をどうにか呼び付けて天下自在符を見せたとしても、屋敷の主が悪代官であるならばを門前払いが関の山となるに違いない。
 代官を倒すには屋敷に入らねばならないのだが――。
 さて、と猟兵達は方策を練り始めるのだった。
アーデルハイド・ルナアーラ
「悪行の数々、見逃すわけには行かないわ!この魔術師アーデルハイドが月に代わって成敗致す!」

私はあえて正面から殴り込みをかけて囮になるわ。門をぶっ飛ばして、堂々と名乗りを上げて乗り込んでやります!
侵入できたら門番を締め上げて、金庫の場所を聞き出してそっちに向かいます。そんなにお金が好きなら、襲撃があったら悪代官はまず金庫を守ろうとするんじゃないかしら?
他の場所の捜索は他のみんなに任せるとしましょう。絶対に逃がさないんだから!


ヒビキ・イーンヴァル
……何だこのでかい門と塀は
この中で悪いことやってますよーって言ってるようなもんじゃねぇか

とりあえず燃やすか
『蒼き焔よ躍れ、嵐の如く』で、門から少し離れた塀を盛大に燃やす
これで門番は勿論、中にいる人間も誘き出せたらいいなっと
あ、燃やしすぎには注意な
屋敷を火事にさせたい訳じゃないが、屋敷に飛び火しそうかもという演出はしつつ、適当に火を消しながら調節していこう

同じく陽動を試みている猟兵がいたら、タイミング合わせたりとか効果が良く出るように協力して行動

どうでもいいが、悪代官の屋敷……門と塀だが
そういうのを焼くのは存外楽しいな



「……何だこのでかい門と塀は。この中で悪いことやってますよーって言ってるようなもんじゃねぇか」
 仲間と共に門を見ていたヒビキが、たちのぼらせる白い息に呆れを混ぜた。
 いくら役宅とはいえどもここまで守りを堅固にする必要など無く、謀反を疑われても仕方無いだろうあかさらまな屋敷のさまに、代官は一体何を考えているのかと頭の程度を疑いたくもなる。
 だが、傍にいたアーデルハイドは、苦笑しながらも別の意見があるようだ。
「ここに悪人がいますよーって解りやすいんじゃないかしら?」
「確かにその通りだな」
「でしょう? それじゃ、私は敢えて正面から殴り込みを掛けてくるから」
 つまり、囮になってくれるという事だろう。そんな彼女の背を見送ってから、ヒビキも自分のやるべき事をやる為に門から離れて行くのだった。

 大門を前に堂々と立ったアーデルハイドは、すう、と大きく吸った息を、早朝に高らかに伸びる名乗り上げとして吐き出して行く。
「悪行の数々、見逃すわけには行かないわ! この魔術師アーデルハイドが月に代わって成敗致す!」
 言い終えるが早いか、月光の杖を振り被った。
「きついの……いっくよー!」
 単純な動きで振り抜かれる杖は、単純だからこそ重い一撃と化す。どん、と大門周辺に微震が起き、アーデルハイドの周囲には砂埃が立ち込める。
「かっ、たぁい……!」
 硬いものを殴った衝撃で手が痺れたと、アーデルハイドは眉を顰めて大門を見た。すると、破砕された分厚い木材の隙間から鉄の色が覗いているのが見え、アーデルハイドは流石に呆れかえった顔をせざるを得なかった。
「がっちり守り過ぎじゃないかしら? こうなったら破れるまで行くからね」
 その挑戦、受けて立ったとばかりに、逆に闘志が増して来る。ゴスロリワンピースに付いた土埃を丁寧に払ったアーデルハイドが再び杖を構えた。狙うのは、へこみの生まれた鉄部分だ。
「どんなに堅く守っても――絶対に逃がさないんだから!」
 門を潜った先にいる存在へ告げるように、全力を込めて杖を振る。

 どぉん、と大門を殴る音が空気を震わせるように伝わってくる。
「派手にやってるな」
 門から少し離れた場所にいたヒビキは、ちらりと視線を動かして門を破壊しようと派手に挑むアーデルハイドの雄姿を視界に入れた。あれならば止めなければと人も動こう。囮として完璧だ。
 門はあちらに任せるとして、塀に向かったヒビキがその高さを見上げる。
「とりあえず燃やすか」
 その言に躊躇いは無い。火攻めは攻城の常なれば、だ。それで慌てて門番が出てくるならば、それもまた良しとなる。
「ただ、燃やすのにはちょっと難儀しそうだな」
 こんこん、とヒビキが塀を指で叩く。見た所、漆喰塗の築地塀のようだ。世界について多少は詳しいと自負出来るヒビキが思い出すに、確か防火性が高いのではなかったか。
「とにかく火力上げていくか、っと――」
 ふと、ヒビキが視線を移すと、もう少し門から離れて歩いた先に天水桶が見えた。
「ああ、あれにするか」
 上に積まれた桶ならば全て木製だ、さぞ燃えやすかろうと近付いたヒビキは、朗々と詠唱と紡ぎ上げていく。
「――其は荒れ狂う蒼き焔、我が意により燃え尽くせ」
 ぼっ、と数多の蒼い炎が灯った。そして複合させた塊はひとつの恒星が如き炎塊となり、桶を盛大に燃え上がらせていく。
 あとは燃やし過ぎ注意だなと火勢を眺めながら、屋敷により近付くようにと火の向きを変えていく。塀も焦げ始め、ばらばらと漆喰の落ちる音もし始めた。柱もゆっくりと燃え始めている。
「お、騒いでる騒いでる」
 アーデルハイドの襲撃とヒビキの起こした火で、漸く中が騒がしくなってきた。これで二か所に気が向くのだから、良い陽動になっている筈だ。
 そう満足しながらも、徐々に増す炎を見詰めるヒビキが、薄く唇を開いた。
「どうでもいいが、悪代官の屋敷……門と塀だが、そういうのを焼くのは存外楽しいな」
 誰も聞いていないのを良い事にヒビキは、ぽつり、物騒な事を呟いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

メルノ・ネッケル
陽動してくれとることやし、裏口からお邪魔するとしよか。浅野屋さん時の意趣返しやな!

警備が正面に流れるタイミングを【戦闘知識】で考えながら【見切り】、侵入。
完全に掃けとるならそれも良し、そのまま悪代官サマの居場所の捜索と行こか。

警備が残っとるなら、一人だけ残して『クイックドロウ』で排除!
残った奴に銃口を突き付けながら尋問といこか。
「お代官様のおわす所、教えてくれへん?言うこと聞いたら悪いようにはせえへんし……むしろ『ええ思い』させたるで?」
女狐の【誘惑】、耐えられるかいな?

ま、口割っても割らんでも銃のグリップで後頭部に一撃、なんやけど。「飛び道具で殴られる貴重な経験や。ええ思い、できたやろ?」


ミアズマ・フォルテ
SPD重視で行動

門に火をかけて消化しようと人が出てきたところを押し入る
冗談だ、これでは私たちが火付け盗賊になってしまう
……って、本当に火をつけてるーっ!?
いやいや落ち着けあれは陽動で本気で焼き払うつもりじゃない、はずだ

こういう悪いことをしている連中はいざという時のために脱出路を用意しているものだ
怪しいでっぱりを押し込むと石垣が動いたりとか
井戸が空になっていて地下洞窟につながってるとか、な
事前に町の職人に代官の屋敷でそういった妙な仕事を命じられなかったか
情報収集をしておいて、ぐるっと回りを確認するぞ
発見できればよし、無理なら陽動に紛れて
見つかりにくいところから鍵縄を投げて堀を乗り越えて忍び込もう



 仲間のそんな呟きを知らぬ分だけ、ミアズマは幸福であり、善良であったろう。
 屋敷の周辺を歩いていたミアズマは、門に火をかけて消火する者が出てきた所を押し入るかと、自らの着想に微かな苦笑を溢していた。
「それでは私達が火付盗賊になってしまう」
 そもそも冗談なのだから端から本気な訳が無いと、顔を上げて屋敷の方角へ視線を送ったミアズマは、見えた光景に目を丸くした。

「……って、本当に火を点けてるーっ!?」

 ぼうぼうと火が立っている。思わず大声をあげていた。
 塀を舐める火にうろたえながら、まさかそこまで過激では無いだろうと信じるミアズマは、きっと大丈夫だと自分を納得させ、そっと炎に背を向けた。
 彼女の目的は隠し通路の捜索だ。
 もし、そのようなものを作るにしても、代官本人がせっせと穴を掘るような事は無いだろうと、つい先程まで周辺の大工や左官に妙な仕事を頼まれた者がいないか聞き込みをしていたが、そんな覚えがある者には行き当たらなかった。行方知れずの者達がいるとの事なので、或いは仕掛けに携わったのはその者達なのかもしれないが、何れにせよ確証を持つには至っていない。
 故に、一応周辺を探ってはみるものの、仲間の放った火勢を見遣れば、あれを陽動として塀を越える方が侵入という点では早かろう。
 即断したミアズマは早速と走り、屋敷を囲む塀の前に立つと見付かり難そうな場所から鍵縄を投げた。目立ちにくさを活かして上り切り、得意の忍び足で庭へと降りる。安全を確かめる為に周囲を見回すと、離れた場所で誰かが戦っているのが見えた。
「ん? あれは――」

 陽動で俄かに浮き立った気配を察し、異常事態の発生から、伝達。そこから移動を――と、戦闘知識を元に目算を立てたメルノは、そもそろ好機かと裏口へと回った。閂の掛かっているのを幾度かの銃撃で破ると、扉を潜る。
「浅野屋さん時の意趣返しやな!」
 あの時に守っていた『裏口』を、今度は自分が破る。それを面白がるメルノだったが、矢張りというべきか、警備は完全に正面へと流れ切りはしなかったようだ。少し歩いた所で水桶を手にした男達とばったり出会ってしまう。
「なっ!?」
「はいはい、ちょっと寝ててな!」
 闖入者に驚く間がある分だけ、遭遇戦の初動は男達の方が遅い。メルノは引金に指をかけたままだった熱線銃を上げると、刹那の銃撃で二人を倒す。そして、残った一人にも銃口を向けた。
「大きい声出したら、あんたのお腹も大分涼しい事になるで?」
 叫ぼうとした男が慄いて口を閉じる。じりじりと後ずさる男を壁際まで追い詰めたメルノは、そのまま自分の体を密着させた。刀を抜かせない距離で男の顔を見上げながら、甘く響かせる声で顎先を擽っていく。
「お代官様のおわす所、教えてくれへん?」
「き、貴様っ、何を――」
「言うこと聞いたら悪いようにはせえへんし……むしろ『ええ思い』させたるで?」
 メルノが指先で男の腕を、つ、と撫で上げた。なぁ、と吐息混じりの声に、ぞくりと男の背筋が震えたようだ。メルノの胸元を見ながら幾度も頷く。
「う、うむ。お、お前を取り調べた後に代官様の所へお連れせなばならんだろうしな。代官様は奥座敷におられる」
 それで、と目に期待の色を浮かべて背中へ腕を回そうとしてきた男に、メルノはにっこりと笑みを浮かべると、いきなり腕を引いてたたらを踏ませて、無防備な後頭部に銃のグリップを叩き込んだ。短く呻いた男が、その場に崩れ落ちていく。
「飛び道具で殴られる貴重な経験や。ええ思い、できたやろ?」
 媚態を拭い去ってメルノが笑う。すると、新たな足音が近付いて来た。はっとメルノが銃を構えかけるが、すぐに仲間だと気付いて警戒を解いた。

「なんや、ミアズマちゃんやん。そっちも首尾良う入れたみたいで良かったなあ」
「あ、ああ。もしかして助けが必要だろうかと思って来たんだが……」
 ミアズマが困惑気味なのは誘惑の場面を見てしまったからだろう。
「心配してくれて有難うな! でも余裕やったで! 悪代官サマは奥座敷やて、一緒に行こうや」
 そう言って、男は用済みだとばかりに捨て置いてメルノが歩き出す。ミアズマは面食らった顔で昏倒して転がっている男とあっさりとした態度のメルノを見比べてから、彼女を背を見て、はぁ、と複雑そうな溜息を吐いた。
「すごい手腕だな。……これだから男は」
 最後に男へ冷たい視線を向けてから、急いでメルノの後を追って行った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

四季乃・瑠璃
緋瑪「屋敷ごと全部爆破して更地にしちゃえば早いんじゃないかな?」
瑠璃「流石にそれは面倒かなぁ」

【ダブル】で分身。
瑠璃「確かこの時代の火消しって、火の点いた建物を壊して火を止めるんだっけ」
緋瑪「それじゃ、わたし達が手伝ってあげよう♪」

という事で、二人で【範囲攻撃】【鎧無効】【鎧砕き】接触式ジェノサイドボムを只管生成して燃えてる塀に投げつけて爆破。燃えて強度が低下した塀を爆砕して強引に突破するよ♪
塀の内側の人?知らないよ。運が良ければ生きてるんじゃないかな?
侵入したら、悪代官の屋敷を探索するついでに、悪代官の逃亡経路や隠し通路、隠し部屋等が無いか調べつつ、潰す為に各所で爆破するよ。

※アドリブ歓迎



 二人の少女が並んでいた。浅野屋でダンジョントラップを模倣して罠を仕掛けた二人組だ。並ぶ姿は微笑ましくとも、交わされる会話は矢張り物騒だった。
「屋敷ごと全部爆破して更地にしちゃえば早いんじゃないかな?」
 緋瑪の素直な問い掛けに瑠璃が首を横に振る。
「流石にそれは面倒かなぁ」
 普段から緋瑪の制止役に回る瑠璃であるのだから、ここでも緋瑪を止めるが、その理由に些かのずれがあった。その理由は彼女自身の気質にある。殺人を厭わぬとの気質を抱えるが故に常人とは違う常識を持つ瑠璃は、今だ赤々と燃える炎を見ると緋瑪へと声をかけた。
「ねぇ、緋瑪」
「なぁに?」
「確かこの時代の火消しって、火の点いた建物を壊して火を止めるんだっけ」
 たったそれだけで、瑠璃の言いたい事を察した緋瑪が笑顔を浮かべた。機嫌良く取り出したのはジェノサイドボムだ。彼女らの意志で無限に生成出来るそれは、既に緋瑪の手の中で二つ、三つと増えていく。
「それじゃ、わたし達が手伝ってあげよう♪」
 瑠璃と緋瑪が無邪気に笑い合う姿は、傍目から見れば酷く不穏な空気の漂うものであっただろう。

 どーん、と重い炸裂音が聞くものの耳朶を震わせる。
「あははっ♪」
 高く澄んだ笑い声を響かせながら、二人の少女は接触式の爆弾を生成した端から塀へと投げ付けていく。立て続けに巻き起こる爆破に、爆砕された様々な破片が炎と共に巻き上がる。濛々と立ち込める土煙が瑠璃と緋瑪の服を汚して行くが、偶に咳き込むくらいで気にした様子も無い。ただ只管に投げ付ける途中、内部から叫ぶ声が聞こえて緋瑪が瑠璃へと顔を向けた。
「近くに人がいるみたいだね?」
「運が良ければ生きてるんじゃないかな?」
 つまりは、人がいようとも関係無い。瑠璃の答えに、矢張り人の有無に無関心な緋瑪は軽く首肯してから塀へ向き直り、もう一つ追加とジェノサイドボムを放り投げる。
 突き固められた塀であろうとも爆破の威力には堪え切れず、やがてぽっかりと大穴が開く。土煙も薄らと漂うだけに落ち着いた頃に、それを確認した二人は誰にも邪魔される事無く塀を潜った。
「悪代官に逃げられないようにもしないとね」
「うん!」
 まだ爆破すべき箇所は多い。この二人の手によって、暫く炸裂音が止む事は無さそうだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヘルメス・トリスメギストス
「なるほど、悪代官の元に向かうには、まずこの門を突破する必要があるのですね。
ずいぶんと堅固な様子ですが、一つ、欠点を指摘しましょう。
それは、代官の護衛に執事を雇わなかったことです」

悪代官を相手に小手先の細工は不要です。
ここは執事らしく、礼儀正しく正面からお邪魔いたしましょう。(POW)

「まず、扉へのノックは三回」

【執事格闘術】で鉄の扉に、掌底、肘打ち、回し蹴りを撃ち込みます。

「そして、入る前に丁寧にお辞儀」

鉄の門に頭突きを入れましょう。

え?血が出ている?
執事にとって、その程度は些細なことです。

扉が破れれば、見張りも格闘術で攻撃です。

「執事とは主の使いとあらば、どこへでも向かうものなのです」



 その頃、正面では大門に視線を注ぐヘルメスの姿があった。
「なるほど、悪代官の元に向かうには、まずこの門を突破する必要があるのですね」
 なんとも解りやすい話ではあると、ヘルメスが大門の様子を確認する。仲間の攻撃で既に扉は歪み、繰り返された打撃によって内側へとへこんだ為に、薄らと隙間が出来ている。だが、それでもなお開門には至っていない。
「ずいぶんと堅固な様子ですが、一つ、欠点を指摘しましょう。それは、代官の護衛に執事を雇わなかったことです」
 その差が敗北を生むのだと、表情に自信を現すヘルメスが口唇で笑みを作った。疲労した仲間に休憩を勧めてから、代わりに門の前に立つ姿は執事として模範的な姿勢だ。
「悪代官相手に小細工は不要ですが……」
 礼を失するのは執事らしからぬ。ならば、開門を願うのにやるべきはこうだ。

「まず、扉へのノックは三回」
 胸元に添えていた手を上げたヘルメスが、扉へ向かって流れるように執事格闘術の連打を撃ちこんで行く。入れた打撃は三回。掌底、肘打ち、回し蹴りによって、どん、どん、どん、と腹の底から響くような音を伴い扉が更に内側へとめり込んで行く。
 体幹もぶらさず最後の回し蹴りから足を引き戻すと、すっと綺麗な立ち姿に戻った。
「そして、入る前に丁寧にお辞儀」
 ヘルメスが物凄い速度で頭を下げる。ごぉん、と重低音が轟き、鐘を打った後のような残響が続く。
「これが入室の際のマナーですね」
 ヘルメスの言葉と共に、扉が軋みをあげてゆっくりと内側へと倒れて行く。危ないと騒ぐ声の主達は扉が完全に落ちた後、六尺棒を持った門番として現れていた。顔を引き攣らせる男達にヘルメスは余裕を持って笑ってみせる。
「お邪魔いたします――と、ああ、これは失礼いたしました」
 頭から伝う温かい感触に、血を流しているのだと気付いたヘルメスは、当然常備しているきっちりとアイロンの当てられたハンカチを取り出して額を拭く。この程度は些細な事ではあるが、身支度は正しく整えられているべきなのだ。
「では、改めまして――」
 処置も終えたヘルメスが戦々恐々とこちらを見ていた門番達に走り寄った。そして、先程門を破るのに見せた華麗と言える技で昏倒させていく。

「執事とは主の使いとあらば、どこへでも向かうものなのです」
 ふわりと肩掛けのコートを靡かせたヘルメスは、倒れた門番達に背を向けて元凶の住まう屋敷へ向かって歩き出した。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『悪代官』

POW   :    ええい、出会え出会えー!
レベル×1体の、【額】に1と刻印された戦闘用【部下の侍オブリビオン】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
SPD   :    斬り捨ててくれる!
【乱心状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    どちらが本物かわかるまい!
【悪代官そっくりの影武者】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠犬憑・転助です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●奸悪誅伐
 屋敷を囲う守りは破られていた。騒然とする屋敷内を猟兵達は進んでいく。
「ぐあああ!」
「ぎゃああ!」
 白刃を向ける代官の配下を容易く往なしながら、それぞれ得意な戦法で薙ぎ倒して行く彼らは、敵の囲いを追って行く内に一つの場所へと集まって行くように動いていた。
 広い庭から、或いは屋内から。奥座敷と呼ばれる場所へと集まって行く。

 猟兵に吹き飛ばされた配下が襖を巻き込んで奥座敷の中に倒れた。
 すると、派手な身なりをした男が、飛び込んで来た配下と襖に驚いて身を引く姿が見えた。俗っぽいのを越えて、いやらしいと感じさせる顔付きをした男は、派手ではあるが仕立ての良い着物を着ている辺りから、代官なのだろうと察せられる。
 その代官は腰の刀に手をかけながら、現れた猟兵達を睥睨した。
「己、貴様ら……! ここを岡野町代官の屋敷だと知っての狼藉か!」
 浅野屋に賊を放っておきながら、未だ猟兵達の正体を知らぬ代官は、優位は己にあると思い込んで大喝する。その後、ちらりと床の間へと視線を流したのは、緊張したこの場で隠し通路の入口を確認して安堵を得る為だろう。――隠し通路は既に爆破されているのだが。
「儂を切ればお上が黙っておらぬぞ! 貴様ら、お上に盾突く気か!」
 権力を笠に着てこれでもかと胸を張る代官の姿は、既に滑稽と見えたかもしれない。
 何れにせよ倒すべき相手であると、猟兵達は代官と相対するのだった。
ミアズマ・フォルテ
SPD重視で行動

ほう、お上。お上ねぇ。ならこちらも伝家の宝刀を抜こうか。
「静まれ静まれ静まれぃ!この紋所が目に入らぬか!」(天下自在符をどーん)
「その方、町を治める代官の身でありながら盗賊達と手を組み
民を虐げ富を貪るその所業、不届き千万!」
「いかに人々の目を誤魔化そうとも我等猟兵からは逃れられぬと知れ!」
いやあ、ジダイゲキの本読んでから一度やってみたかったのよねこれ。

戦闘は千里眼撃ちで後方から援護射撃に徹する。
何?影武者?なら両方倒してしまえば問題ない。
逃げ道は塞いでいるとはいえ追い詰められると何をするかわからないから
逃げに入る前に足を撃ち抜くなりして機動力を落としておきたいな。


浅杜守・虚露
「やかましい!高利貸で利益を得るのは百歩譲るとして、自らの利益の為に同業の金貸の店潰すんはやり過ぎじゃ。それにのう…」
諸肌脱ぎで上半身をさらけ出し、手に持った天下自在符を突き出して代官をギロリと開眼した目で睨み付ける。
「奉行所が黙っていてもわしら猟兵が黙っとらんぞ?狸爺ぃよ」

とまぁ、啖呵を切って代官と距離を積めるように歩いていきつつ出会え出会えとやってくる侍を掴んで投げて叩きつけていく。ちょっとした時代劇の殺陣の気分じゃの。投げつけるものでもあればそれも掴んで投げつけてやるかのう。

※アドリブ歓迎!



 お上の威光は我が後ろにありとばかりと代官に、ほう、とミアズマが呟いた。ならば、その勘違いを正してやらねばならぬ。
 
「静まれ静まれ静まれぃ!」
 ミアズマがよく通る声で注目を引く。
「この紋所が目に入らぬか!」
 そう言いながらミアズマが掲げた天下自在符に、代官がぎょっと目を剥いた。サムライエンパイアに住む者ならば、お上その人以外は逆らえぬ伝家の宝刀だ。
 正義は我らにありと示すそれを、ミアズマは確りと見せ付ける。ジダイゲキの本で読んでから一度やってみたかったのだ。
「その方、町を治める代官の身でありながら盗賊達と手を組み、民を虐げ富を貪るその所業、不届き千万! いかに人々の目を誤魔化そうとも我等猟兵からは逃れられぬと知れ!」
「ぐっ、うぬぬ……! な、何か勘違いをされて――」
 朗々としたミアズマの言葉に代官が唸り、苦し紛れに何か言い訳をしようしたのを、虚露の一喝が遮る。
「やかましい! 高利貸で利益を得るのは百歩譲るとして、自らの利益の為に同業の金貸の店潰すんはやり過ぎじゃ。それにのう……」
 懐手にした虚露が襟から手を出し、ばっと音を立てて諸肌を脱ぐ。鍛えられた厚い体躯を露わにしながら天下自在符を突き出すと、普段は閉じている目を開いて、ぎろりと代官を睨んだ。
「奉行所が黙っていてもわしら猟兵が黙っとらんぞ? 狸爺ぃよ」
 言いながら歩を詰める虚露に気圧されて、代官が、じり、と後ろに下がる。このままでは狩られるだけと気付いた代官が、唇をわななかせながら天下自在符を指差した。

「あ、あんな物は偽物に決まっておる! 徳川の御威光を騙る不届き者らめ! ええい、者共出会え、出会えい! あやつらを斬り捨てるのだ!」
 目を血走らせて叫ぶと、ばん、ばん、と襖が開いて額に数字の刻印がなされた配下の侍達が大勢現れた。
 途端、向けられる数多の白刃に虚露が愉快げな空気を漂わせる。
「ちょっとした殺陣気分じゃのう」
 気を抜けば斬られるとの違いが擬闘である殺陣とは違うものの、暴れられるという点では同じ事。広げた指を、ごきり、と鳴らしながら曲げると、獰猛な獣の如き笑みを浮かべながら配下の一人へ歩み寄る。牽制のように刀を振られるも、ただ無意味。虚露は素早い動きで腕を着物を掴んで高く持ち上げていく。
「立ちはだかる悪鬼羅刹は掴んで、崩す。そんだけじゃぁ!」
 そう咆えると凄まじい威力で地面へと叩き付ける。呻く間も無く、一瞬にして意識を刈り取った直後、横から刀が振り下ろされてきた。それを寸でで躱すと、相手の軽く横っ面を殴り付けて頭を揺らし、襟元を持ち上げるように掴んでまた投げ飛ばしていく。
「これだけおれば、投げるものには困らんのう!」
 牙を見せながら呵々と笑うが如き言葉通りに、虚露が誰かを掴む度に空に舞う。人は空を飛べるのか。思わずそんな念を過ぎらせたくなる程の暴れっぷりだ。

 そんな雄々しい虚露の立ち回りに誰も彼もが目を引き付けられている中、静かに意識を研ぎ澄ませる者がいる。
 攻撃するに集中の時間を要するミアズマだ。虚露のお陰で時間は充分に取れ、後は放つだけとなっている。
 茫洋とした目付きをしているミアズマだが、その実、代官の壁となっている配下全ての動きを視界に入れている。ぎりり、と弓を引き絞った格好のままで機を待つ彼女は、刹那僅かに開いた隙間を見逃さなかった。まるで鷹が一瞬で獲物を見付けて狩るように矢を放つ。
「ぬあっ!?」
 矢が代官の脛を貫いた。声を上げて一瞬うずくまった代官は、自分を見据えるミアズマの視線に気付くと顔を歪めた。
「この小娘が……斬り捨ててくれる!」
 憤怒に思考を染めた代官が理性をかなぐり捨てた様子で刀を抜き払う。
「御乱心というやつだな」
 あれも本で読んで知っていると、あくまでもペースを乱さずミアズマは呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神楽・鈴音
私腹を肥やす悪代官……そんなお金があるなら、少しは私の神社に寄進しなさいよね!

賽銭箱が本体のヤドリガミ娘(極貧)

敵が配下の侍を呼び出した場合は錬成カミヤドリで多数の賽銭箱召喚
侍達の上から降らせたり、突撃させたりして押し潰す
「天罰覿面!金……じゃなかった、神の力を思い知るがいいわ!

悪代官は賽銭箱ハンマーで頭を叩いて卒倒させる
力任せに振り回し、その辺の屏風や高そうな壺など壊すかもしれないが気にしない
「うりゃぁぁぁ!お賽銭、よこせぇぇぇっ!

戦闘後、悪代官の懐から財布をこっそり抜き取る
「にひひ……御寄進、ありがとうございま~す♪

仲間に咎められたら、しぶしぶ返却
「むぅ……仕方ないわね。あぁ……お賽銭……



 凶器を抜き放つ男達を前にして、一人の少女が堂々と胸を張る。
 手に持つのは、小柄な体には少々見合わぬような大きさの武器だ。よく見れば鋼鉄で出来た賽銭箱を棒に突き刺したハンマーであり、少女の正体を示すものでもあった。
「私腹を肥やす悪代官……。そんなお金があるなら――」
 賽銭箱のヤドリガミ、巫女服姿の神楽・鈴音(歩く賽銭箱ハンマー・f11259)が、己のみに富を集めようとする悪代官に怒りを燃やしながら腕を突き上げる。
「――少しは私の神社に寄進しなさいよね!」
 ごん、ごん、とぶつかる音を立てながらヤドリガミの練成の技によって、幾つも賽銭箱が浮かび上がった。鈴音の頭上を遥か越えて浮遊するそれらは、振り下ろされた鈴音の腕に動きに従うように配下の頭上から降り注がれていく。
 その時点で轟音と悲鳴が上がるも鈴音の攻撃はまだ終わっていない。
「天罰覿面! 金……じゃなかった、神の力を思い知るがいいわ!」
 つい先程までは、神社に寄進を求める辺りはさすが巫女服を纏うだけあるとの清廉さを感じさせるような台詞を紡いでいたが、途中で、金、と口走った辺りで些か趣きの違いを察せられた。
 実を言えば鈴音の生活は極貧と呼べるものだ。百年もの間で参拝客が数える程との有様は、鈴音の性格を金目の物に目が無いものへと変えるのに充分だった。故に、彼女の興味はまず金に向く。ちゃりんと音がすれば振り向くようなものだ。
 鈴音が腕を横へと振ると、賽銭箱も同様に重量を伴った疾風と化して配下達を薙ぎ払う。意匠を凝らした襖やら、床の間に置かれていた壺も巻き込んでいるが、鈴音は気にせず乱心した様子の代官へと飛び掛かって行く。
「うりゃぁぁぁ! お賽銭、よこせぇぇぇっ!」
 あわよくば財布の中身も寄こせとばかりに振り下ろすハンマーだったが、理性を手放す代わりに獣性を得た代官が、無造作に刀を振り払った事で弾かれる。
「貴様なんぞに儂の金を渡してたまるかぁ!」
「きゃあっ!」
 畳の上を転がされた鈴音は、すぐさま起き上がると痛みの走った場所を見た。ざくりと袖は切り落とされ、身からは一筋、血を溢す傷が刻まれている。
「このっ……! 償い金上乗せで寄進させてやる!」
 転んでもただでは起きないとの言葉通りを体現するかのように、鈴音は立ち上がると再び代官へとハンマーを向けるのだった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

四季乃・瑠璃
緋瑪「寧ろ、お上の命で動いてるのはこっちなんだよねー」(馬鹿にしつつ自在符ひらひら)
瑠璃「貴方の悪事は全部解ってるし、賊も白状してる。言い逃れはできないよ」
緋瑪「まぁ、ここまで来たらもう問答無用だけどね♪」
瑠璃「後は貴方を殺して全て解決…あ、逃げ道は全て爆破したので悪しからず」
緋瑪「バイバイ、お代官様♪」

【ダブル】継続

二人で【範囲攻撃】【2回攻撃】接触式ジェノサイドボム(以下ボム)で手下や影武者は本物とまとめて爆砕。感知式ボムを地雷代わりに床にばら撒いて接近を封じつつ、二人で【クイックドロウ】【2回攻撃】K100 で銃撃。斬り捨ては接触式ボムを投げて斬らせて爆破し吹き飛ばす。

※アドリブ歓迎


ライヴァルト・ナトゥア
これくらい清々しいほどの悪人だと、躊躇せずに斬れていいな
(物騒なことを呟きつつ、ユーベルコードで青い狼の幻霊を纏う)
覚悟はいいか?俺の刀も、今宵は腹が減ったそうだ。たらふく食われてやってくれ
(二回攻撃で手数を増し、フェイントを織り交ぜて攻撃していく。不意の攻撃には第六感で対応する)
さぁさぁ、どこまで受け切れるかな?
乱心状態になったら緩急をつけ、相手から食らう攻撃をコントロールしながら、防御を重視して立ち回る。他の猟兵への隙を作れればなおよし)
っ、見た目からは考え難い膂力だな。油断はできないか
タネがわかって仕舞えば手品の類のようなものだな
さて、お前さんにはしばらく俺の相手をしていてもらうぞ?


仇死原・アンナ
地獄の沙汰も金次第と言うらしいが…
悪逆の限りを尽くしたお前如きにかけるような情けも言葉もない
その首を刈り取ってやる…!

鞘からスラリと妖刀を抜いて構える

「地獄の鬼共がお前が来るのを今か今かと待ちわびているぞ…」
新しく手に入れた妖刀を振るい、[2回攻撃][傷口をえぐる][鎧無視攻撃]で敵を攻撃して[恐怖を与え]てあげようか

敵からの攻撃は[見切り][残像]で回避、隙あれば[カウンター]を狙う

「面倒だ、まとめて地獄の業火で燃やしてやる…!」
影武者や部下を召喚してきたら【ブレイズフレイム】を使用
影武者も部下も丸ごと燃やし尽くしてやろう

アドリブ・絡みOKです


メルノ・ネッケル
・心情
いやー、あんたええ護衛雇っとるんやなあ。ちょっち色仕掛けしただけで居場所教えてくれたで?
……そろそろ年貢の納め時やな、お代官サマ。
「我ら猟兵在る限り、江戸の治世に悪は栄えぬ。岡野町代官、上様に代わり成敗致す!」……ってな!

・行動
合体する部下を呼び出してくるんなら、合体前に叩けばええ!
悪代官の「出会え出会え」の声を聞いたら、バッテリーを繋いだR&Bで【2回攻撃】、牽制射撃しながら前方へ駆け出す!
そして、接近出来たらそのまま跳躍!数字が増えんうちに叩かせてもらうで……地上の侍集団に向けて『狐の嫁入り』!
「これより降るは弾林弾雨、天が誅する天気雨。悪に仕えし偽侍ども、纏めて黄泉に帰りぃや!」


ヒビキ・イーンヴァル
これが悪代官という奴か
いやー、聞いてた通りというか聞きしに勝るというか
確かこういう時は「年貢の納め時だ」って言うんだよな
よし、倒そう

『蒼き焔よ躍れ、嵐の如く』で攻撃
『高速詠唱』からの『2回攻撃』で攻めていくか
色々な角度から炎をぶつける
これで代官の注意を引き付けれられればいいんだが
……二人に増えた?影武者か
なら、『範囲攻撃』で諸共だな。問題ない

接近されたら剣で対処
侍の刀は良く斬れるって聞くから、攻撃は受けないように『武器受け』と『見切り』で頑張って回避しよう

逃げられないように屋敷に火を放つ……のは流石にやめておく
それにしても、わかりやすい悪役だったな
まあ、「悪代官」が見られたから良しとするか



 仲間の攻撃で足を貫かれた為に代官の動きは鈍っている。それを好機と見て、ライヴァルトが走り出す。
「これくらい清々しい悪人だと、躊躇せずに切れて良いな」
 物騒な言葉の後に紡ぐのは詠唱だ。乱心した代官に相対するには己もまた強化されていなければならぬとライヴァルトが身の内に潜む力を引き出して行く。
「封印限定解除、此処に来るは大いなりし蒼き狼。地を駆け、空駆け、獲物を屠れ。疾くあれかし――《限定解放・天狼疾駆せし戦場幻景》」
 ライヴァルトが言い終えるが早いか、蒼狼の幻霊がその身に纏われる。右手には一体化した鎌、左手には狼の爪。よりキマイラらしい姿へと変貌を遂げたライヴァルトは、そのまま代官へと肉薄すると刀を振るう。
「覚悟はいいか?俺の刀も、今宵は腹が減ったそうだ。たらふく食われてやってくれ」
 早く動く物に無差別攻撃を仕掛ける状態である代官は、当然ライヴァルトの動きに反応した。キィン、と刃がぶつかり合う硬質な音が響くも、一度のみ。次に聞こえたのは、ざくりと肉を斬る音だ。代官よりも速く動くライヴァルトの攻撃は一度で済まない。
「さぁさぁ、どこまで受け切れるかな?」

 そうしてライヴァルトが代官に相対する最中、既に見慣れた炸裂が配下の侍を吹き飛ばしていた。それを引き起こしているのは勿論、瑠璃と緋瑪の二人組だ。
「寧ろ、お上の命で動いてるのはこっちなんだよねー」
 代官に視線を送り、小馬鹿にしたように言う緋瑪に瑠璃も同調して頷いた。
「悪事は全部解ってるし、賊も白状してる。言い逃れはできないよ」
「まぁ、ここまで来たらもう問答無用だけどね♪」
「あとはあの悪代官を殺して全て解決――」
 楽しげに二人が話しているならば隙の一つもある筈と一人が忍び寄った次の瞬間、どぉん、と派手な爆発が巻き起こった。
「あ、地雷代わりのボムがばら撒いてあるので悪しからず」
 ぱらぱらと破片が落ちてくる中で瑠璃は、自動拳銃のUDC-K100カスタムを構えて首を傾ける。常ならば、その愛らしい仕草に見惚れる者の一人や二人出てもおかしくはなかろうが、敵として対する侍達にとってはそれどころでは無い。一歩踏み出せば吹き飛ぶかもしれないのだから、おいそれと動けはしないと、足を止める羽目になっている。そうなってしまえば、銃撃を行う瑠璃にとっては丁度良い的でしかない。
 配下達が蹴散らされているのに気付いた代官が、口から唾を飛ばしながら怒声を放つ。「何をしておる! 殺せ、殺せい!」
 その声で屋敷の陰や屋敷の奥から再びばらばらと額に数字の書かれた配下達が現れた。一か所に集まろうとしているのは、頭数ばかりでは容易く蹴散らされるならば一つに合わさってしまおうとの腹積もりなのだろう。
 そうはさせじと駆け出したのはメルノだ。
「額の数字が増えんうちに叩かせてもらうで!」
 熱線銃用の補助バッテリーを繋いだR&Bを、集まりかけていた配下達へと向けて発射した彼女は、その牽制の銃撃で怯ませている間に接近して高く跳躍した。
「これより降るは弾林弾雨、天が誅する天気雨。悪に仕えし偽侍ども、纏めて黄泉に帰りぃや!」
 早朝の晴れた空の元、配下の半数を巻き込んで狐の嫁入りのように光が降る。
 光に穿たれた者達は、ぎゃあと叫び声を上げると、その姿を保てず掻き消えて行く。そのお陰でぽっかりと開いた空間の中心に無事着出来たメルノが小さく肩を揺らして笑った。
「いやー、ええ護衛雇っとるんやなぁ。ここに来るまでも、ちょっち色仕掛けしただけで居場所教えてくれたのもおったしな?」
 侵入時に出会った者から、今倒した者達まで。代官に下に付くのは誰も彼も与し易かった。この調子ならば代官を倒すのもそう遠い事でないだろう。そろそろ年貢の納め時やなと、メリルが代官へ視線を流すと、びしりとR&Bを向けた。
「我ら猟兵在る限り、江戸の治世に悪は栄えぬ。岡野町代官、上様に代わり成敗致す!」「何が上様じゃ! ふざけおって! 最早、上様の命に従う必要は無い!」
 そこから続くのは、最早死ねと殺すのみで構成された面罵だった。人は追い詰められて本性を出すとはよく言ったものだと痛感させられるようなそれに呆れたのは、メルノだけでは無いようだ。

「これが悪代官という奴か。いやー、聞いてた通りというか聞きしに勝るというか」
 そう感想を述べたのはヒビキだ。知識にしかないものを実際に目に出来た感動はあるが、見て嬉しいものでなければ、好感を持てる相手でもない。
 アンナに至っては好感以前の問題のようで、表情こそ大きく変わらないものの嫌悪感を抱いているのがありありと伝わってくる。
「地獄の沙汰も金次第と言うらしいが……悪逆の限りを尽くしたお前如きにかけるような情けも言葉もない。その首を刈り取ってやる……!」
 言い放ったアンナが鞘から妖刀をすらりと抜き放つ。首斬り処刑人の名を冠した刀の銘は、この世界ならば『浅右衛門』とでも鏨で刻まれるか。
 それを構えたアンナは、先程の罵声で再び召喚された配下達に邪魔だと言わんばかりの冷たい瞳を向けた。代官の元に行くにも道を塞ぐ障害となろう。
「よし、倒そう」
 オブリビオンに容赦無し。ヒビキが軽く言い、蒼世の魔書を開いて詠唱を始めていく。
「其は荒れ狂う蒼き焔――」
 高速詠唱にて即座に放たれる生み出された炎が様々な方向から代官へと向かった。足の負傷の所為でまともに回避の取れぬ代官は避け切れずに直撃を受けるが、ならば的を増やして己への攻撃を減らそうとでも思ったのだろう。姿がぶれたと思えば、代官が増えていた。
「……二人に増えた? 影武者か。なら、範囲攻撃で諸共だな。問題ない」
 ヒビキが断じる。二度目の攻撃となる嵐が如き蒼い炎が舞う下、アンナは影を踊らせながら走り出して行く。だが、アンナはすぐさま代官の元へと駆け付ける訳では無かった。速度や軌道を変え、時には己の放つ気配すら操りながら、配下達が自分を追い易いようにして導いていくと、頃合いを見て体ごと振り返った。
「まとめて地獄の業火で燃やしてやる……!」
 アンナの体を切り裂きながら噴出した地獄の炎が、ヒビキが連続して放った炎と交錯しながら織り上げられて互いの火力を強めて行く。その威力に配下達や影武者は成す術なく焼かれて声無きままに消えるしかなかった。
 その状況に最も安堵したのはライヴァルトだっただろう。攻撃に虚実、緩急を織り交ぜながら、獣染みた動きをする代官の攻撃に手綱を付け、防戦に回っていたのだ。だが、小物との見た目からは想像し難い難い膂力が相手では一時の油断も出来ず、それだけでも手いっぱいになりつつあったのだから、攻め手に影武者が加わっては一度距離を取る事を考えたかもしれない。が、影武者は仲間の攻撃で容易く倒れる存在と解ってしまえば手妻の類との扱いか。
「手伝うわ」
 更に、アンナも切り結ぶ所へやって来れば、代官が影武者を増やそうとも対応の手を二手を分けられる。
 幾度かになるか配下が呼ばれる。だが――。
「おっと」
「バイバイ♪」
 ヒビキが額に『弐』と書かれた配下の刀を見切って剣で受けた。直後、瑠璃の銃撃と緋瑪のダガーによる攻撃がヒビキを襲った配下を倒す。
「じゃんじゃんおかわり来ぃや!」
 少し離れた場所では雨が如き銃撃の後、メルノの明るい声も頼もしく響くのだから、配下風情など紙一枚破るような扱いだ。

「な、何故、儂が死なねばならんのだ! 何故だ!」
 恐怖に震える代官に、処刑執行人を前にして何をとアンナが薄らと眉根を寄せた。
「そ、そうだ! お前らにも金をやろう! 幾ら欲しい、言ってみろ!」
 見苦しい。最早聞く価値も無しとアンナは代官へと底冷えする声を這わすと妖刀を振り上げた。
「地獄の鬼共がお前が来るのを今か今かと待ちわびているぞ……」
「い、嫌だ! 止め――うぐぅうう!!」
 袈裟懸に断罪の刃が振り下ろされる。よろめき、柱に背を預けると、口から血を溢れさせながらもまだ睨みつけてくる代官の腹を刀で貫き、とどめとする。崩れ落ちる代官を見ながら血ぶりをくれてた。
 ――成敗と呟いた声は誰のものであったのだろうか。

 この世から、また一つ悪が消えた。
 暴虐非道の悪代官の野望も潰え、平和が戻った岡野町の晴れ渡った青空に、明るい未来を見るようだと心から安堵する猟兵達であった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月02日


挿絵イラスト