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帝竜戦役㉒~アブゼロ・クッキング

#アックス&ウィザーズ #戦争 #帝竜戦役 #群竜大陸

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●うるせえ
 冷たく乾いた風が吹く。
 いや――冷たい、などと言う生易しいものではない。
 分子レベルで生命が生存を許されない世界。
 絶対零度の氷原。
 そんな極寒の世界で――。

『ヒャッハーッ!』
『この不凍熊の毛皮があれば何も怖くないぜ!』
『猟兵だか何だか知らねえが、かかって来いやぁ!』

 何かもこもこの熊の毛皮をすっぽり着込んだ山賊御一行が、いい気になっていた。

●氷の中に幻の
 帝竜戦役。
 群竜大陸にて始まった帝竜ヴァルギリオスとの戦いも、趨勢はほぼ決しつつある。
 猟兵の勝利は目前。
 なのだが――。
「まあだからと言って、群竜大陸に残ってる他のオブリビオン共が、ヴァルギリオス倒したら大人しく骸の海に帰ってくれる訳がない」
 困ったものだよね、とルシル・フューラー(ノーザンエルフ・f03676)は集まった猟兵達を見回し軽い調子で告げる。
 戦いが終わった後の群竜大陸は、猟兵に割譲される予定だ。
 その為にも、残党処理は結構大事なお仕事なのである。
「というわけで、絶対零度地帯で残党の山賊どもを倒して来て貰いたい」
 ルシルが口にした行き先を聞いた瞬間、一部の猟兵が表情を変える。
 何せそこは、寒いとかそういうレベルではない。
 自然界の常識の範囲では存在不可能なレベルの超低温の氷原。あらゆるものが凍り付いて冷凍保存される冷凍庫要らずの大地。
「そんなところでも、不凍熊と言う生物が、唯一生存していたんだけど――」
 その毛皮はあらゆる寒さに耐性を持つ。それ故に、既に全て乱獲されて、その毛皮はオブリビオンのものになってしまっているのだ。

「ところで不凍熊って、何を食べていたんだと思う?」

 唐突に変わった話題に、空気が?と変わる。
「熊と言うくらいだから――まさか氷だけ食べていた、とかではないと思うんだ」
 今となっては、もう証明のしようがない。
 だが、このエルフにそんな想像をさせたものが、氷の中に残っているのだ。
「その名も鉄火ツナサーモン」
 なんだそれ。
 サーモンなの? マグロなの?
「マグロみたいに巨大で身が真っ赤な古代のサーモン。あの世界の一部の古い文献に載っている幻の古代魚だよ。まさか群竜大陸の氷の中に残っていたなんて……!」
 周りの困惑を他所に、ルシルは何か熱弁している。
「文献によれば、鉄火ツナサーモンはイクラを外敵から守るためか、極地の氷の海に生まれて氷の海に産卵に戻って来たらしい」
 あ、そこがサーモンなんだ。
「だからその身はただ赤いだけじゃなく、普通のマグロにもサーモンにもない氷の海に耐えられる熱量があってね。ハイカロリーな上にすぐに吸収されて、代謝を促す。まあ要するに、食べると身体がポカポカしてくると言うわけだ。予知によると、氷の中に冷凍保存されている鉄火サーモンも、その機能は失われていないと出た」
 つまり何か。
 くっそ寒いなんてレベルじゃない氷の大地で、氷の中からサーモンだかマグロだか判らない魚発掘して、何とかして食えと?
「生で齧っても効果あるよ。余裕で釘打てるくらい硬く凍ってるけど」
 食えるか。
 だが何とかして食べないと、不凍熊の毛皮持ってる山賊相手には優位に立てない。
「あ、誰か、鉄火ツナサーモンの食レポお願い出来るかな?」
 どうしろと、という空気を他所に、この魚好きエルフはすごく羨ましそうに転移の準備を始めているのだった。


泰月
 泰月(たいげつ)です。
 目を通して頂き、ありがとうございます。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結するシナリオとなります。

 帝竜戦役㉒、絶対零度地帯です。

 以上、真面目な説明、終わり!

 OPで大体おわかりかと思いますが、ネタシナリオの予定です。
 『冷凍保存されている何かを利用して、凍結を克服する』と言うのが今回のプレイングボーナスでして、そして何かとは、鉄火ツナサーモンです。謎の古代魚です。

『くっそ寒いなんてレベルじゃない氷の大地で、氷の中からサーモンだかマグロだか判らない魚発掘して、何とかして食えと?』

 つまりそう言う事だ。
 鉄火ツナサーモンの食べ方はご自由にどうぞ。
 猟兵だったら、絶対零度の大地でも何か料理できるでしょう。
 味とか食感とかも適当に言って大丈夫です。
 プレイング次第ではありますが、山賊戦は後半に超さくっと終わる可能性ありです。
 発掘と料理と食べる所くらいしかないプレイングでも、OKです。何か攻撃に使えるユベコ選んどいてもらえれば。

 そんな感じです。
 戦争も終盤も終盤ではありますが、領主狙いとか、頑張ったからお魚食べたいとか、「不凍熊の毛皮」(毛皮一枚に付き金貨116枚(116万円)相当の切れ端)狙いとか、どうぞ。

 プレイングはOP公開後からOKです。
 5/27(水)から執筆予定です。

 ではでは、よろしければご参加下さい。
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第1章 集団戦 『山賊』

POW   :    山賊斬り
【装備している刃物】が命中した対象を切断する。
SPD   :    つぶて投げ
レベル分の1秒で【石つぶて】を発射できる。
WIZ   :    下賤の雄叫び
【下卑た叫び】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。

イラスト:カツハシ

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

檻神・百々女
ふふん、多少寒くたってトドメちゃんの力があればカンケーないわっ!
神様、力を貸してちょーだいっ!

火の力を高めて熱を確保!緋想天のパワーで掘り起こして焼いちゃうわよー!結界で包んでホイル焼きならぬ結界焼き!エキスもぜーんぶぎゅっとして食べちゃいましょ!たっぷりの脂の力でなかなか冷めなさそうよねー。
あとは元気に退治しちゃいましょ!ひゃっはー!汚物は消毒よー!



●加具土命の神域
 多少寒くたって大丈夫!
 なんて思っていた檻神・百々女(最新の退魔少女・f26051)の自信は、絶対零度地帯に入って秒で、凍りすぎた氷の様にガラガラと崩れそうになっていた。
「ふ、ふふん! お、思ったよりは寒かったけど、こ、このくらいなら、トドメちゃんの力があればカンケーないわっ!」
 だが崩れかけた意思を、百々女は震える声で立て直す。
「神様、力を貸してちょーだいっ!」
 百々女は寒さで震える腕で、スマートフォンの様な装置を掲げた。
「SCRIPT ON! 」
 百々女が指で押した装置――『ヨリガミデバイス』のモニターには、『気質発現:火』の文字が浮かんでいた。
 百々女は才能の無い者でも努力も要らずに使える術式を求め、そしてそれを術の電脳化と言う形で実現した。その行使装置である『ヨリガミデバイス』から、どこか暖かな桜色の光が空へ伸びていく。

 ひらり、ひらり。

 氷の世界に桜の花弁が降り出した。
 花を咲かせる木々など、どこにも見当たらないのに。
 氷の上に降り積もった花弁が、ポウッと灯となって燃え上がる。
 サモン・カグツチ。
 加具土命――その名が残る神話に於いて、母神に死を齎すほどの熱を持って生まれたとされる火神。燃える桜の花弁によって、その神域たる領域を作り出す術。
「熱も確保できたことだし――緋想天!」
 百々女の手から、光の刃が伸びる。
 気質を属性を持ったエネルギーとして出力する『緋想天』が、加具土命の神域たるこの場で出力した光の持つ属性は――当然、火である。
「これなら分厚い氷だって!」
 口にしたその言葉通り、百々女が振り下ろした光は氷をあっさりと溶かして、その中に封じられていた古代魚が露わになる。
「あとはこれを、結界で包んで――」
 百々女は発掘した鉄火ツナサーモンを、結界で包み込んだ。火の気質も一緒に。
 数分後には、結界の中でジュゥと小さく鳴った脂の焼ける音が、百々女の耳朶に届いていた。結界で包むことで、火の気質が中の魚をじわじわ焼いていくと言う寸法だ。
 ホイル焼きならぬ結界焼きである。
「そろそろ良さそうね」
 百々女は結界を開くと、緋想天の光刃で焼けた魚を切り分け、その身を一口。
「うわ……たっぷりの脂なのにしつこくない」
 未体験の味に瞳を輝かせた百々女が、ふと顔を上げる。
『見つけたぞ、猟兵だ!』
『やっちまえ!』
『ヒャッハー!』
 空間の変化か魚の焼ける匂いにか。気づいた山賊数人が、斧を振り上げ百々女に向かって駆けてきて――。
『なんだ? 暖かい……?』
『って言うか、毛皮が暑い。あれ、溶けてる?』
『なに!?』
 環境の変化に戸惑い、山賊達が足を止める。
「ひゃっはー! 汚物は消毒よー!」
 そこに元気を取り戻した百々女の振るった緋想天の光が、山賊たちを薙ぎ払った。

 百々女は気づいていただろうか。
 自身の展開した術が――加具土命の神域が持つ炎の力が、他の猟兵達が火を熾す助けにもなると言う事に。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルロット・クリスティア
サバイバルの知識があるとはいえ、この極寒の環境は流石に厳しいですね……
外套だけじゃ冷気遮断は限界がありますし……これは時間との戦いとなりそうです。

ひとまずはトラッピングツールの楔とハンマーで氷を割って……なんて地道な作業では流石に時間がかかりますね。
ある程度亀裂を入れたら、爆薬で一気に衝撃を入れて発破しちゃいましょう。
対象を見つけたら、流石に砕いちゃうといけないのでそこは慎重にですが。

後は布とロープあたりで風よけを作っておいて、ナイフで内臓を抜いて焼くのが一番ですかね。
……流石に寒冷地の魚だけあって、脂がのってますね。焼いてると滴ってますよ。
身も引き締まって、図体以上に食べごたえが(以下食レポ



●サバイバル&トラップガール
 カーン! カーンッ!
 何か硬いものが、氷を叩く音が響く。
 シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)が、とラッピングツールの中の楔とハンマーで、カンコンと氷を割ろうとしている音だった。
「……ダメですね、こんな地道な作業では」
 ほぅとシャルロットが付いた溜息が、すぐに凍って白い呼気となる。
「この極寒の環境は、流石に厳しいですね……」
 シャルロットはかなり高いサバイバル知識と技術を持っているのだが、何と言うか、サバイバルと言うレベルの環境ではない。
 アルダワ支給のコートの上からほぼ全身を覆う外套を被っているとはいえ、それで遮断できる冷気は限界がある。
 まして氷を砕こうとすれば、道具を持つ手はどうしても外套の外に出る。
 すっかり冷え切った指を外套の中で温めながら、シャルロットは手持ちの道具を頭の中で思い浮かべて――。
「うん。爆破ですね」
 それしかないと、一つ頷いた。
「中のお魚まで爆破で砕いてしまわないように、量を調整して――と」
 楔とハンマーで氷に刻んだヒビ。その小さな隙間に、シャルロットは同じトラッピングツールの爆薬を少しずつ詰め込んでいく。
「……点火!」
 ボンッ、と爆ぜる音がして、もうもうと湯気が立ち込める。湯気に混じった火薬の匂いがシャルロットの鼻腔をくすぐった。
「これで――!」
 ゴンッ!
 まだ残っていた氷にシャルロットがハンマーを叩き下ろせば、ガラガラと氷が崩れて中からマグロの様な大きな魚が転がり落ちてきた。

 幻の古代魚、鉄火ツナサーモン。
 氷の中からそれを取り出した後のシャルロットの行動は、手慣れたものだった。
 ロープと撥水布で簡単な風除けを作り、残りの爆薬と火種を合わせて火を熾す。
 少し前に他の猟兵が広げた火の神の領域のお陰もあって、この氷の上でもメラメラと炎が燃え上がった。
 ナイフで腹を裂いて腸を取り出した鉄火ツナサーモンを、楔でこしらえた支えに矢を串替わりにして、炎の上でぐるぐる回して焼いていく。
 逸る気持ちを抑えて回していくと、皮がパリッとしてきて、避けた皮から溢れ出て火に落ちた脂がジュゥッと焼ける音が響き出す。
「そろそろ焼けたかな?」
 火から上げた鉄火ツナサーモンの身に、ナイフをそっと突き入れる。
 根元まで刺したナイフの刃を唇に当ててみれば、刃は仄かに暖かくなっていた。
「それでは――実食です」
 背びれと胸鰭を落とすと、シャルロットは楔の両端を持って、はぐりと、鉄火ツナサーモンの身に齧りついた。
「……流石に寒冷地の魚だけあって、身が引き締まって……それでいて決して固すぎると言う事はなく……焼きながらあれだけ流れても、まだ脂が乗っていて……」
 そう言えば食レポなんて頼まれたっけ、とシャルロットは感想を口出してみる。
 語っている内に、パンゲア大空洞で仲間にした魚好きの翼竜の顔が浮かんできた。
(「レンも連れてきてあげれば良かったかな……でも寒いの苦手そうだし」)
「――!」
 胸中で呟いていたシャルロットを、コツンッと微かに響いた音が現実に引き戻す。
 その音の意味に気づいたシャルロッテは静かに動き出した。

 そして、数分後――。
 ちゅどんっ!
『うわーっ!? 地雷だと』
『こっちには矢の罠っ!?』

 不確かなる罠地帯――ダウトフル・トラップフィールド。
 身体の熱が戻ったシャルロットが素早く設置した仕掛け罠にかかりまくった山賊達の野太い悲鳴が、あちこちで響いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティエル・ティエリエル
戦争で頑張ってくれた【ライオンライド】のライオンくんを労うためお魚を食べにきたよ!
お魚が焼けるまで焚火に当たって温まってるね♪

鉄火ツナサーモンはアイスピックを持ってきてカンカンカンと掘り起こしたよ!
掘り起こした鉄火ツナサーモンで作ってるのはホイル焼き!ボクでも簡単に作れそうな料理だ!
適当に輪切りしたサーモンを適当な調味料と一緒にホイルに包んで焚火にぽいぽいっと♪

冷気のせいで焚火が消えちゃったくらいで完成かな?それじゃあ、いっただきまーす♪
うーん、バターのいい匂いにホクホクの身!ライオンくんも飛びつく美味しさだよ♪

山賊さんはライオンくんと一緒にとりゃーってやっつけて帰るね♪

※アドリブや連携も歓迎



●労いの、筈だった
「ふぬーっ!」
 カンカンカンカカカカカカカカカカカカカカッ!
 何かが凄い勢いで氷の周りを飛び回り、アイスピックの類を突き立てて、凄まじい勢いで氷を削っていく。
 その正体は、ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)であった。。
 フェアリーのサイズもあって、まるでハチドリのようだ。
「ライオンくん、もうちょっとだよ!」
 ティエルの声に、ガリガリと氷を爪で削っていた黄金の子ライオンが『ミャウ』と一鳴き返す。
 労う為にティエルが連れてきたライオンライドのライオンくんも何故一緒になって氷を削っているのかと言えば――ひとえに寒いからだ。
 動いてでもいないと、凍ってしまいそうで。
「ふぬーっ!」
『ミャーウ!』
 小さな小さな1人と1匹は、必死に氷に挑み続けた。

「はふぅ……」
『ミュー』
 パチパチと爆ぜる音を鳴らし揺らめく焚き火の前で、ティエルとライオンくんの口から気の抜けた声が漏れる。
 木であれ紙であれ、物には発火温度と言うものがある。
 この極低温の空間では、その温度を得るのも容易ではない。
 一度は付けた瞬間に焚き火が消えて、ティエルは軽く絶望感を味わったりもしたが、他の猟兵が行った環境に火の気を満たす術の恩恵もあって、無事に火を熾せていた。
「焚き火、暖かいねぇ」
『ミャ』
 それもあってか、この気の抜けっぷりである。
 とは言え、ティエルもただ温まっているだけではない。焚き火の中を良く見れば、何か銀色の物体が転がっていた。
「そろそろ良いかな?」
 ティエルは勢いの弱まった焚火の中に風鳴りのレイピアを突っ込んで、銀色の物体を掻き出す。
 カサリと音を立てて銀色――ホイルを開けば、バターの香りが立ち昇った。
「それじゃあ、いっただきまーす♪」
 その香りに誘われ、ティエルは鉄火ツナサーモンの切り身を茸と春キャベツと共に口に運ぶ。
「うーん、バターのいい匂いにホクホクの身!」
 口の中でほろりと身が崩れて、旨味が広がる。サーモンとマグロの合わさったような濃厚な旨味に、ティエルの相好が知らず煮崩れる。
 ぶつ切りにした鉄火ツナサーモンと茸に春キャベツに塩胡椒を振って、固形バターと一緒に包んで火の中に放置しただけのシンプルなホイル焼きは、大成功であった。
「切って包んで焼くだけなら、ボクでも簡単に作れたよ」
『ミャフ』
 ティエルの隣で、ライオンくんも鉄火ツナサーモンに齧りついている。
 ライオンくん用には、頭付きの半身を丸ごと使って塩のみでバターも控えめにした。じっくりと焼いたからか、骨までバリバリ食べてくれている。
 だが、そんな穏やかな時を邪魔するものが、まだここにはいるのだ。

『見つけたぜ、猟兵だ!』
『何か食ってやがる!』
『やっちまえー!』

 毛皮をもこもこ着込んだ、山賊どもが。
「食後の運動、いけるかな?」
『ミャッ!』
 鉄火ツナサーモンの力ですっかり身体が温まったティエルとライオンくんは顔を見合わせ頷き合い――。
「とりゃーっ!」
『ガウーッ!』
『『グワーッ!?』』
 山賊たちを、勢いそのままに蹴散らした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アンネリーゼ・ディンドルフ
WIZ
今日も美味しいオブリビオン料理を求め依頼を受ける。
「鉄火ツナサーモンですか。是非ともいただきたいです」
寒さ対策にしゃけを着たエルフは【ハンディエアコン】で暖を取る。
「では氷の中から発掘しましょう」
義手の左手に【たけのこドリル】を嵌め、氷を【破壊工作】する。

冷凍保存された鉄火ツナサーモンを【ハンディエアコン】で温め、解凍する。そしてどこからか醤油を取り出し、垂らして食す。
「ふむ(もぐもぐ)完全に解凍されていませんけどこれはこれで美味しいですね。そして体がポカポカ熱くなってきました」
熱いのでしゃけを脱ぎ、食べる。
「これは養殖なので安心安全です」

山賊はユーベルコードで交渉して何とかします。



●しゃけが来たりて、たけのこ回す
「これが鉄火ツナサーモンですか」
 氷の中に保存された古代魚を見上げるアンネリーゼ・ディンドルフ(オブリビオン料理研究所の団長・f15093)の姿は――『しゃけ』だった。
 しゃけ、としか言いようがない。
 着ぐるみ――なのだろうか?
 それにしては、表面の皮の張りと色艶が、実に精巧である。
「オブリビオンではないようですが、是非ともいただきたいですね」
 その『しゃけ』の中は余程温かいのか、アンネリーゼは極寒の世界の寒さに慌てた風もなく、氷の中に見つけた魚をどう取り出そうかと思案する。
 ぐー。
 だが、アンネリーゼのお腹の虫が、早よ食わせろと急かして来た。
「速やかに氷の中から発掘しましょう」
 これ以上お腹の虫が騒ぐ前に氷の中から魚を掘り出すために。
 アンネリーゼはしゃけの中から取り出した『たけのこ』を、左の義手にはめ込んだ。

 たけのこを! 腕に! 装着したのである!

 ギュィィィィィンンッ!
 モーター音を響かせて、グルグル回るたけのこが氷をガリガリ削り出す。
 勿論そんな事が出来るたけのこがある筈がない。たけのこに見えるそれは、たけのこ型のドリルであった。
 たけのこ型である必要性はさっぱりわからないが、たけのこドリルは硬い氷を平然と砕いて、アンネリーゼの足元に氷の欠片を積もらせていく。
 ほどなく鉄火ツナサーモンが露わになった。
「まあ当然ですが、カチコチですね」
 アンネローゼはたけのこドリルを左手から外すと、氷の中から取り出した丸く大きな魚体を氷の上に置いて。
「ハンディエアコーン!」
 しゃけの中でもぞもぞ動いて、アンネリーゼは超小型空調機器を取り出した。
 そんなものを中に潜ませていたから、しゃけの中は温風ぬくぬくで、アンネリーゼがこの寒さの中で平然としていられたと言うわけだ。
「最大出力で溶かしましょう」
 そのぬくぬくが無くなるリスクを冒す理由はただ一つ。
 鉄火ツナサーモンをハンディエアコンの温風で解凍する為である。

 ぐーっ。
 アンネリーゼのお腹の虫が、また鳴いた。
「完全解凍には時間がかかりましたね」
 大分溶けて柔らかくなった鉄火ツナサーモンに、アンネリーゼはしゃけの中から醤油を取り出すと、さっと回しかける。
 そして、そのままガブリと食らいついた。
「ふむ……これはこれで美味しいですね」
 しゃけ着たエルフがマグロみたいなサーモンを食らうと言う見た目のアレっぷりを気にした風もなく、アンネリーゼは鉄火ツナサーモンを生でどんどん齧っていく。
「大分体がぽかぽかと……ん?」
 もうハンディエアコンを戻さなくとも、しゃけの中のアンネリーゼの身体がぽかぽかしてきた頃。
『いたぞ! 猟兵だ!』
『魚なんか食ってやがる! 隙だらけだ!』
 ついに山賊に発見されてしまった。
「……あなた達、オブリビオンですね」
 だがアンネリーゼは慌てず騒がず、山賊たちを見回し告げる。
『あぁん? だったら何だって言――』
「私はアンネリーゼ。『オブリビオン料理研究所』の代表です」
 山賊の言葉を遮って、アンネリーゼはしれっと告げる。
「美味しいオブリビオンを食べる為に私が設立した組織です。あなた達は美味しくなさそうですが……」
 そこで言葉を切って、アンネリーゼは『しゃけ』をずるりと脱ぎ捨てた。
 そして拾い上げたしゃけを拾い上げ、がぶりと食いつ――え、食べられるのそれ!?
「とっとと立ち去らないと、食べちゃいますよ。こんな風に」
 それはアンネリーゼの交渉術――Absolute Negotiation。
『こいつは……やめとくか』
『……そ、そうだな……』
 脱いだしゃけを食べると言う行為のショッキングさも相まって、アンネリーゼの交渉に応じずにはいられなくなった山賊達は、回れ右して去っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アウグスト・アルトナー
【神の奇跡】で氷を溶かします
魚が多少焼けてしまっても、問題はないでしょう

それで、どう食べるかですが
魚を料理したことはないんですよね……
串に刺して炙ればいいのでは?

とりあえず竹串(というより竹槍)を用意してきたので
尖った部分を魚の口に入れ
持ち上げ飛行し急降下
落下の勢いで串を貫通させます

あとは全体に粗塩をまぶして、地面に立てて
【神の奇跡】で念入りに炙って完成です

さて、いただきます。お味は……
なるほど、美味しいです
ぼくは魚介類自体食べた経験が少ないんですが
魚独特の臭みもなく
脂が乗っていて、それでいてしつこくないですね

あとは山賊を【神の奇跡】で燃やして
毛皮の切れ端をお持ち帰りしましょう

ご馳走様でした



●槍は串を兼ねる
「……流石に寒いです……」
 いつもと全く変わらない表情で、さっぱり寒くなさそうな口調で、それでもアウグスト・アルトナー(永久凍土・f23918)の身体は寒そうにブルりと震えていた。
「ですがこの寒さも、この魚を食べれば和らぐと……」
 アウグストも、氷の中に封じられている古代魚、鉄火ツナサーモンを見つけている。
 なるべく急いで、それを口にしなければならない。
「……どうせ後で焼くんですから、多少焼けてしまっても問題ないですよね」
 誰に言うでもなく独り言ちると、アウグストは冷え切って冷たくなった十字架を首から外して、鉄火ツナサーモンが眠る氷に向ける。
「神よ、救いを」
 アウグストが告げると、氷の根元から突如炎が噴き上がる。
 神の奇跡たる炎は、その名の通りに奇跡的に氷を溶かし、中の鉄火ツナサーモンもほど良く解凍された状態にしていた。

 氷の中から出せば、あとは如何食べるか、と言うだけである。
「魚を料理したことはないんですけどね……」
 初めての魚料理が幻の古代魚。
 そしてどうしたものかと思案している間にも、アウグストの身体は冷えていく。のんびりと考えている時間はない。
 ならばシンプルにいくのがベスト。
「取り敢えず、この竹串に刺して――」
 串と言いながらアウグストが取り出したのは、竹を斜めに切ったもの。落とし穴の底にありそうなイメージのやつである。
 串と言うよりは竹槍と言った方が近いそれを、アウグストは鉄火ツナサーモンの口に突っ込むと、バサッと翼を広げて飛び上がった。
「このくらい高さがあれば充分でしょうか」
 ざっと10mくらいの高さで止まると、アウグストは鉄火ツナサーモンを竹槍刺したままの口を下に向けて、ぐんっと急降下。
 ガンッと竹槍の石突を氷に叩きつければ、鉄火ツナサーモンを貫通した竹槍の尖った穂先が、が尻尾の方から飛び出していた。
 あとは塩を刷り込めば、準備良し。
「神よ、救いを」
 神の奇跡、再び。
 轟と燃え上がった灼熱の炎が、ものの数秒で鉄火ツナサーモンを良い感じにこんがりと焼き上げた。
「……ちょっと焼きすぎましたかね?」
 完全に炭化して焼け落ちた背鰭と尾鰭に、アウグストが表情を変えず首だけ傾げる。
 とは言え、全体が炭化しているわけではない。皮も少し焦げてはいるが、このくらいならば許容範囲な気はする。
 あと、料理の基本は火力と言う言葉もあった気がする。
 火を通した事自体は、何も問題ない筈だ。
「さて、いただきましょう」
 焦げた皮を軽く払って、アウグストは鉄火ツナサーモンの炙り焼きに齧りついた。
(「なるほど、美味しいです」)
 口いっぱいに鉄火ツナサーモンを頬張りながら、アウグストは胸中で呟く。
 氷の中で保存されていたからか、炎で炙ったからか。魚にありがちな臭みはなく、身の歯応えは魚と言うよりは肉の様でもあり、かといって脂はしつこくない。
 そして確かに――食べるごとに、身体に熱が戻って来ていた。
 冷え切っていた身体が温まるにつれて、食べる勢いも増していく。食べる勢いが増すにつれて、より身体が温まっていく。
『ゲハハハ! 美味そうなもん食ってるじゃねえか』
『俺達によこしやが――』
(「神よ、救いを」)
 アウグストは鉄火ツナサーモンを手放さず、下卑た声が聞こえた方に十字架だけ向けて胸中で神に救いを求める。
 氷を突き破って噴き出した炎が、山賊達を飲み込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フェドーシヤ・ロゼストベンスカヤ
つなさーもん。
うん。美味しそうなのだわ?
「くるみ」で適当に氷爆破して確保したら「自由なる祖国」号のキッチンに運ぶのだわ。
外がどれだけ寒くても、流石に船の内部でボイラーの熱全部回せば料理するくらいの熱は出せるはずなのだわ。

まずは前菜。解凍したツナサーモンを柵にして、塩コショウ。
オリーブオイルを引いたフライパンで表面をさっと炙る。
刺身みたいに切れば「アリアータ」。バルサミコ酢で食べるのだわ。

主菜。柵にするときに出た余りの部分を集めてニンニク、塩コショウ、バジル、唐辛子、マッシュルームを入れたオリーブオイルで煮る。
「アヒージョ」。バジルソースで。

デザートは流石に魚じゃ無理なのだわ。
……外。うるさい。



●其は埒外の白光
 氷の平原。
 その上に、何処から現れたのか巨大な戦艦が鎮座していた。
 戦艦の名は、自由なる祖国号。普段はキーホルダーになっている、フェドーシヤ・ロゼストベンスカヤ(光の娘・f19067)の船である。
 その周囲で、ドカンッ、ボカンッと短い爆発音が響いている。
 まるで砲撃の様な光景だが、音を響かせているのは甲板に立って何かを氷に投げつけているフェドーシヤだ。
 フェドーシヤが『くるみ』と呼ぶ胡桃の様なそれは、投げたりして強い衝撃を与えると何故か爆発する。割っても爆発するらしい。
 そしてそんな事をしている理由は、ただ一つ。
「つなさーもん。うん。美味しそうなのだわ?」
 フェドーシヤは氷の塊がガラガラと崩れ落ちるのを見ると船から降りて、氷の中から引っ張り出した鉄火ツナサーモンを、『自由なる祖国号』の中に運び入れた。

 そして――。

「ざっとこんなもん、なのだわ」
 『自由なる祖国号』のキッチンに立つフェドーシヤの前には、調理された鉄火ツナサーモンが乗った2つの皿が並んでいた。
 ひとつは前菜のアリアータ。
 柵に切り分けた鉄火ツナサーモンの身に塩胡椒を振って、オリーブオイルを引いたフライパンで両面をさっとソテーにしたものだ。
 アルミホイルに包んでしばらく休ませてから、薄切りにしてバルサミコ酢で味付けをすれば完成。
 焼いた身と半生の身の両方の食感が楽しめ、しっかりとした脂ながらも後味はさっぱりとしているツナサーモンの身は、バルサミコ酢の酸味が良く合う。

 もうひとつは主菜のアヒージョ。
 アリアータに使ったフライパンにそのままオリーブオイルを足して、刻んだニンニクと唐辛子を炒めていく。
 ニンニクとバジルの香が出てきたら、ニンニクの塊とマッシュルームを入れて、更に炒める。マッシュルームに火が通ってきたら、捌く過程で出た鉄火ツナサーモンの身の切れ端を入れて、中火のまま煮込んでいく。
 最後に、塩胡椒とたっぷりのバジルで味を整えれば、完成である。
 ニンニクと唐辛子で煮込んでバジルを効かせてピリ辛に煮込んだツナサーモンは、酸味を効かせたアリアータとはまるで違う味わいだ。

 フェドーシヤはこの2品を、1人で作り上げていた。
「デザートも作れたら完璧だったけど、流石に魚でデザートは無理なのだわ」
 フルコースとは行かないが、此処まで本格的な料理を作る為に、フェドーシヤは『自由なる祖国号』のボイラーの熱を、全てキッチンに回していた。
 排水量二万四千トンの弩級戦艦のボイラーである。その熱を回せば、外気がどれだけ冷たかろうが、調理の熱には充分であった。
 まあその代償に、『自由なる祖国号』は氷の上にただ鎮座しているだけであり――。

 ガンッ! ゴンッ!

 外から何かが船体を叩く音が響いてくる。
『おらおら! 出てきやがれ!』
『くそ、硬いなこの船!』
 いつの間にか山賊達が『自由なる祖国号』が取り付いて、暴れていた。
「……外。うるさい」
 フェドーシヤは苛立たし気にキッチンを飛び出し、艦内を走って甲板に飛び出す。外は相変わらずの寒さだが、ツナサーモンの効力であまり寒く感じなくなっていた。
「……いた」
 フェドーシヤは甲板を見回し山賊を見つけると、指から冷たく白い光を放つ。
 光が当たった瞬間、山賊があっさりと凍り付いた。
『な、何で!?』
『この毛皮を着てるのに……!』
「世界が白く冷える時、其処には生物は存在しないのだわ」
 此処には何もいない――オドニュキー・ミル。
 フェドーシヤが放つ光の温度は、マイナス720度に及ぶ。絶対零度ですら自然に発生することがないと言われるものの、3倍以上。
 物理学の埒外の低温で、フェドーシヤは戸惑う山賊を次々と凍らせていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

パルピ・ペルポル
捕まえたの保存しとく習性でもあったのかしら。

風糸に炎の魔力を纏わせて、氷を溶かしつつ切り出して魚を掘り出すわ。
あとは凍ったまま糸で解体ね。あ、これ卵抱えた雌だわ。
身は薄造りにしてほかほかご飯にのせて鉄火ツナサーモン丼で頂くわ。
味は油のってて濃厚なのにすっと消えて変な後味とか残らないからいくらでも食べられちゃうわこれ…!
食べ過ぎたら動けなくなるからほどほどに。残りの身と卵は氷の中にしまってあとで回収しましょ。
多分お土産待ってるでしょうし。

戦闘はいつも通り念動力で雨紡ぎの風糸を自らの周囲に張り巡らせておいて、敵の行動を阻害兼盾として使用しつつ、火事場のなんとやらを使って毛皮を切り裂いて回収するわ。



●怪力790は伊達じゃない
 ビュォォォゥッ!
 容赦なく吹き付ける絶対零度地帯の寒風が、パルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)の小さな身体を冷やしていく。
 そんな風にさらされても、パルピは動けない理由があった。
 その手からは透明な『雨紡ぎの風糸』が伸びていて、風糸は氷塊に巻き付いている。中に鉄火ツナサーモンを封じた氷に。
 パルピが氷に巻き付けた『雨紡ぎの風糸』には、炎の魔力が宿してあった。
 風糸を伝っていく炎の力が、シュゥゥゥゥと少しずつ氷を溶かしていく。
 だが――。
 ビュォォォゥッ!
「のんびり溶かしてられないのだわ!」
 何度目かの風を浴びて身震いしたパルピは、少々強引に行くことにした。
 と言うか行かないと、自分が凍りかねない。
 意を決して、ある程度は溶けだしていた氷に、パルピは突っ込んで行く。
 そして――。
「ふんぬっ!」
 火事場のなんとやらで発揮した怪力で氷をへし折り、持ち上げ、叩きつける。
 ガシャーンッと砕け散る氷の塊。
「あ、これ卵抱えた雌だわ」
 砕けた氷の中から発掘した鉄火ツナサーモンのお腹は、パンパンに膨れていた。

 発掘したばかりの鉄火ツナサーモンは、まだ凍っている。
 だが、パルピは解凍よりも凍ったまま調理を解し下。
 柔軟性と強度を兼ね備えた風糸に炎の魔力を合わせれば、それは下手な包丁よりも鋭い刃となり得る。
 凝った調理であれば難しかっただろうが、一部を切り分け、薄造りにするくらいならば凍ったままの身を捌く事も不可能ではなかった。
 むしろ大変だったのは、ほかほかご飯の方だ。
 当然の様に、一度凍った。丼ごと。
 丼に炎の魔力を纏わせ、めっちゃ頑張って何とか解凍したのだ。他の猟兵が環境に火の気を満たす術を使っていなければ、難しかっただろう。
 ともあれ薄造りにした身をご飯の上に並べて、筋子を少し盛れば完成。
 鉄火ツナサーモンの親子丼である。
 醤油も凍るであろうから、代わりに筋子を潰して味を付けながら、切り身とご飯を一緒に頬張る。
 もぎゅっとした、肉の様な歯応え。
 噛み締めれば濃厚な脂が染み出し、かといって後味はさっぱりとしている。
 口の中で溶けると言う表現もあるが、比喩でなく、ツナサーモンの身は口の中で溶けて消えていた。
(「いくらでも食べられちゃうわ、これ……!」)
 しかも食べるごとに身体がポカポカして活力も湧いてくるのだ。
(「身と卵をお土産用に分けておいて良かったわ」)
 食べ過ぎたら動けなくなる。そうないよう程々に――とは思いつつも、鉄火ツナサーモン丼を食べるパルピの手が止まらない。
(「いっそ襲撃でもあれば、止められるのに……!」)
 パルピが胸中で呟いた直後だった。
『ヒャッハー!』
『見つけたぜぇ、猟兵!』
 ある意味空気を読んで、山賊数名が襲撃をかけて来たのは。
(「ナイスタイミング!」)
 心の中で山賊に喝采しながら、パルピは丼を手放し、再び『雨紡ぎの風糸』を手に取って、前方に放り投げる。
『ぬぉぉっ!?』
『う、動けねぇ……』
「さて。その毛皮、貰うわよ」
 念動力で空中に張り巡らされた透明な風糸に気づかずに突っ込んできた山賊達を絡め取ったパルピは、火事場の何とやらでなぎ倒していく。
「熊っていうくらいだし、捕まえたの保存しとく習性でもあったのかしら?」
 強引に奪い取った毛皮に、パルピはふとそんな事を思って首を傾げるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

城島・侑士
魚を発掘して食って山賊をボコるだけなんて簡単だな
この戦い…勝った!
まぁ料理とか妻と娘に任せきりで殆どやったことないんだが

鉄火ナントカは第六感で探す
…これか?鰹節みたいだ
生で齧ったら入れ歯になりそうだし焼いてみるか
携帯ロースターにセットする


…時間がかかる
まだ焼けないのか?
男の料理は大胆に!よし強火にしよう
いい感じじゃないか
今度台所に立って料理を振る舞ってみようか
でもなぜか俺が台所に立つとみんな止めるんだよな…ん?焦げ臭い
げぇ
焦げてる?!
あちちっ
表面がかなり焦げたが
ま、まぁ食えるだろ
見た目はタタキだし(醤油つけてぱく)
ぐぇ!中はまだ冷たくて硬い…
噛めなくはないので腹に入れる

妻と娘よ
いつもありがとう



●お父さんの奮闘と苦悩
「オラァッ!」
 堂に入った罵声と、ガンッと硬いものが氷を叩く音が響く。
 響かせているのは城島・侑士(怪談文士・f18993)――UDCアースで小説家としての顔を持つ男であった。
 本日は、ペンの代わりにスレッジハンマー『ブラッドマネー』を振るっている。侑士が若い頃から使っている、処刑用のハンマーである。
 まあ最近は重さが響くようになったので、あまり使っていなかったのだが。
「氷を砕くなら、これ以上適したものもないから、な!」
 43歳になった身体に喝を入れ、侑士は氷をガンガン叩いて砕いていく。
「発掘さえ出来れば、あとは魚を食って山賊をボコるだけだろ? ――勝ったな」
 侑士は、ここが今回の一番の山場だと思っていたのだ。
 氷の中の魚をあっさりと見つけた第六感も、この後の方が大変だとは告げてくれなかったのである。

「まだ焼けないのか?」
 小窓からロースターの中の様子を伺い、侑士が訝し気に眉根を寄せる。
 侑士はなんと、凍ったままの鉄火ツナサーモンを持参した携帯ロースターで焼いているのだ。背鰭や胸鰭はおろか、腸も取らずにである。
 と言うか、まず丸ごとは大きすぎる。
「せめて切るべきだったか? この鉄火ナントカ、デカいからな」
 その事実に気づいた侑士だが――ここで特に何もせずに火が通るのを待っていれば、まだ平和な未来が待っていただろう。
「まあ、良い。素材が大きくて時間がかかるのなら、強火にすればいいだろう。男の料理は大胆に!」
 カチッ!
 侑士は迷わず、ロースターの火力スイッチを『強火』に――入れてしまった。
「お。いい感じじゃないか。これならすぐに焼けるだろう」
 次第に魚が焼ける匂いがしてきて、侑士は満足気に頷いた。

(「――なんだ、やっぱり俺もやれば出来るじゃないか。今度、台所に立って料理を振る舞ってみようか。でもなぜか俺が台所に立つと、みんな止めるんだよな……」)
 根拠のない自信で料理の成功を確信し、そこからお願いだからやめて、と台所の前で懇願する娘の顔を思い浮かべる。
 ――その間、侑士の意識はロースターから完全に逸れていた。

「……ん?」
 侑士が気づいた焦げたような匂いは、手遅れを告げる香り。
「何か、焦げ臭――げぇ!?」
 匂いに釣られて視線を向けた侑士がみたものは、ロースターから上がる黒煙。
「焦げてる?! 中はどうなって――あちちっ!」
 慌てて素手でロースターを開けようとしたりしながら、侑士は何とか鉄火ツナサーモンを取り出した。鉄火ツナサーモンだった、真っ黒なものを。
「ま、まさか中まで焦げてたりは……」
 恐る恐る妖刀で斬ってみれば、中にはまだ真っ赤な身がちゃんと残っていた。
「なんだ。表面が焦げただけか。まぁ食えるだろ。見た目はタタキだし」
 言い聞かせるように声に出して良いながら、凍ってシャリシャリの醤油を乗せて、意を決して口に入れる。
「ぐぇ……」
 焦げ臭さ、生臭さ、冷たさ。相容れぬ三つの食感が、侑士の口の中に混ざりあった。
「中はまだ冷たくて硬い……」
 噛めなくはないので噛んでいると、後から鉄火ツナサーモン本来の旨味がジワリと出て来るのが、せめてもの救いである。
「魚焼くだけだと思ってたが……大変なんだな」
 しみじみと呟いて、侑士は黒い外套の内ポケットから写真を取り出した。
(「妻と娘よ……いつも美味しいご飯をありがとう」)
 まだ幼い頃の娘と愛する妻を撮った大切な一枚に視線を落とす侑士の胸中に、家族への感謝が溢れて――。

 ゴンッ。

 その一時を無粋にも破ったのは、山賊が石の代わりに投げてきた氷の礫。
「妻と娘に対する感謝の一時を邪魔しやがって……死ね! 百回ほど死んで来い!」
 ブチ切れた侑士は、宝石花の連弩『ユービック』から天眼石の矢の雨を降らせ、慌てる山賊達へ処刑用ハンマー片手に駆けて行く。
 温まった身体は、とても軽かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エドゥアルト・ルーデル
Goddamn Cold!(めっさ寒い!)

珍しい食べ物があるって聞いてホイホイつられて来ちまった拙者だ
早速鉄火ツナサーモンを採掘して…のんびり採掘なんかしてられるか!
魚がありそうな位置に【ミサイル】をシュゥゥゥゥ!

こうして出てきた魚を生で…採れたてカチカチすぎる…調理すっか!拙者の料理技能(Lv0)が火を吹くぜー!
ミサイルを地面に固定しロケットエンジンから放たれる炎でじっくり温めれば炙り鉄火ツナサーモンの完成でござる

食べた感想は…固体燃料風味の癖のある味でござるな(美味いとは言ってない)
しかし身体は温まってこれは…うおォン 拙者はまるで人間火力発電所だ…!

山賊にはミサイルを適当に投げつけておく



●人間ミサイル基地、爆誕
「Goddamn Cold!」
 エドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)の口を吐いて出た言葉を訳すと「めっさ寒い!」と言ったところだろうか。
 珍しい魚が食べられる。
 そう聞いてホイホイと来てしまった事を、エドゥアルトは早くも後悔しつつあった。
 とは言え、ならばこそ、珍しい魚を食べずには帰れない。
「何とかして、鉄火ツナサーモンを採掘して……」
 ヒュゥゥゥッと冷たいなんてもんじゃない風が、エドゥアルトの声を途絶えさせ、その体をブルっと震わせる。
「のんびり採掘なんかしてられるか!」
 極限の寒さが、エドゥアルトから冷静さと言ったものを奪い去る。
 最初からなかったとか言わない。
「情け無用フォイアー!」
 第六感が『魚ここにありそうだよ』と囁く場所に誘導装置ぶん投げて、ホルニッセ個人携行ミサイルのスイッチをぽちっと押した。
 シュゥゥゥゥ!
 打ち上がったミサイルが、すぐに向きを変えて急降下する。
 はっきり言ってミサイル使う程でもない距離を飛行して、ミサイルが氷の上にチュドーンッと着弾した。
 どうも一緒に魚まで砕けちゃったらどうするの?と言う辺りの懸念はエドゥアルトの頭の中からすっぽ抜けていたっぽいが、幸いそんな事になる事もなく、砕けた氷原の中に大きな魚――鉄火ツナサーモンが転がっている。
「よしよし。あとはこれを食べるだけでござ――って冷たっ!?」
 鉄火ツナサーモンの尾を掴んだエドゥアルトだが、払いのけた氷と変わらない冷たさに思わず取り落としかける。
「採れたてカチカチすぎる……」
 持ち直したエドゥアルトだが、これは生食無理だと悟っていた。
「調理すっか! 拙者の料理技能が火を吹くぜー!」
 じわじわ冷えていく身体を鼓舞するように声を上げて、エドゥアルトは――何故かミサイルを抱えて、走り出した。
 氷の上を、ミサイル抱えてぐるぐる走る。
「そぉい!」
 ぐるぐる走って助走を付けたエドゥアルトは、やおら跳躍し――構えたミサイルの弾頭を、氷に向かって振り下ろした。
 ゴシャッと氷を砕いて、めり込むミサイル。ガンガンと踏みつけて、更に深く埋めて見せれば、氷の上にミサイルのロケットエンジンだけが露出していると言う、不思議な光景が作り上げられた。
「ぽちっとな」
 再びエドゥアルトが、ミサイルのスイッチを入れる。
 ゴォォォッと、ロケットエンジンから上がる炎。その上に、エドゥアルトは無人機UAVに吊るした鉄火ツナサーモンを持っていく。
「この炎でじっくり温めれば、ミサイル炙り鉄火ツナサーモンの完成でござる!」

 滅茶苦茶な使い方だったが、ミサイルのエンジンだって火だ。
 鉄火ツナサーモンは、ちゃんと焼けていた――様に見えた。
「では実食!」
 エドゥアルトは(見た目は)焦んがり焼けた鉄火ツナサーモンに齧りつき――。
「……固体燃料風味の癖のある味でござるな」
 その表情が、何とも言えない微妙なものになった。
「とはいえ食えなくはないし……」
 固形燃料臭さ以外にも、火の通りにムラがありまくったりするのだが、その辺全部、文字通り目を瞑って、エドゥアルトはもぐもぐ食っていく。
「しかし何だか寒さが和らいで……そうか、拙者の身体が温まっているのか!」
 カッと、エドゥアルトが目を見開く。
 うおォン!とか叫びたくなる衝動が、身体の中から湧き上がる。
「拙者はまるで人間火力発電所……いや、人間ミサイル基地だ!」
 内から燃える衝動に突き動かされるままに、エドゥアルトは誘導装置を適当にばら撒いて、ミサイルのスイッチを連打する。
『ば、バカな、何で隠れているのがバレて――』
『うわーっ!?』
 寒さが平気だからと近くに潜んでいた山賊達の上に、ミサイルが情け容赦なく降り注いでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雷陣・通
ここが料理の舞台
そして、グリモアの導きにより、俺、推参!

まずは『手刀』にてネタの切り分け
おそらくはユーベルコードが一番の包丁
まさに†手料理†

ここからが本番だ
藁に火を着け、タイミングを見て――炙る
表面が焼ける程度にして中が凍ったサクサク感
カツオのたたきと鮭のルイベのハイブリッド、それこそが

「鮪鮭鰹炙(鉄火ツナサーモンの炙りルイベ)!」
これは生姜と醤油が合うはずだ

そして二品目!

鮪のように巨大な古代のサーモンという事は本来の肉質はサーモン!
この脂分を存分に使っていく!
【電気攻撃属性】にて解凍のタイミングを【見切り】
塩昆布と和えて30分
そう
「海漬鮭飯(漬けサーモン丼)だ!」
これだけあれば無敵だ敵は死ぬ



●雷の子
「ここが料理の舞台か……」
 いつもの袖の無い道着姿で、絶対零度地帯に降り立った雷陣・通(ライトニングボーイ・f03680)は、その寒さに怯まず鉄火ツナサーモンを探して歩き出した。
「お、あれか」
 程なく通が見つけたのは、小さな氷山の様に盛り上がった氷。その中に、見た目はマグロに近い魚が封じられていた。
「成程。氷の中から取り出すのも料理の内か――よし!」
 硬く凍り付いた氷を前に、しかし通は不敵な笑みを浮かべて、五指を揃えた右腕を掲げた構えを取った。
「俺の手刀に、斬れぬものなどない!」
 叫んで、通は五指を揃えた右腕を振り下ろす。
 手刀一閃。
 ユーベルコードによって刃以上の鋭さを誇る通の手刀が、硬い氷を斬り砕く。中に封じられていた鉄火ツナサーモンの魚体が宙に舞った。
「このまま、ネタも切り分ける!」
 五指を揃えたまま、通は右腕を振り上げ、振り下ろし、また振り上げる。
 手刀乱舞。
 まだ硬く凍っている鉄火ツナサーモンの頭が、尾が、腹が斬られていく。
「ユーベルコードが一番の包丁。これぞまさに『手料理』だ」
 三枚に下ろした鉄火ツナサーモンを前に、通は満足そうな顔で構えを解いた。

 料理には火が必要だ。
「しっ!」
 通は並べた藁の上で、左右の拳をごつんと打ち合わる。バチンッと小さく爆ぜる音が響いて、通の拳から文字通り火花が飛び散った。
 幼い日に落雷を浴びた事に起因する発電体質――それが通の能力の基礎である。この極寒の世界で袖なしでいられるのも、それによるのかもしれない。
「ふーっ、ふーっ」
 火花で藁に灯った小さな火に息を送って、通は火を強く大きくしていく。
 やがて炎と呼べるほどになった所で、通はまだ凍ったままの鉄火ツナサーモンの身の一部を、雷神丸に突きさして焚き火の上に掲げた。
 中が凍ったサクサク感を残しつつ、表面だけをささっと炙る。
「これこそ、カツオのたたきと鮭のルイベのハイブリッド! 鮪鮭鰹炙!」
 噛み砕いて言うと、鉄火ツナサーモンの炙りルイベである。
「これは生姜醤油で――って、醤油も凍る!」
 みるみる間に凍り出す生姜醤油に慌てて切り身をつけて、一口。表面の焼いた側が、僅かな苦みと共にほろりと崩れて、真ん中の凍った身がジワリと口の中で溶けだす。
「うまい……」
 その味を噛み締めながら、通りはまだもう一品作れそうな残りの鉄火ツナサーモンの半身に視線を落としていた。
 氷の中にいた時はマグロに近いのかと思ったが、身はむしろサーモンに近い。
「サーモンに近い肉質。その脂分を活かすには――解凍だな」
 通は目の前の鉄火ツナサーモンの半身に、左右の指をそっと添えた。
 バヂヂッ!
 通の左右の腕から、弱めの電流が流れだす。
「焼くまでは要らない。あくまで、解凍するだけ――」
 雷属性攻撃の応用し、微弱に制御した雷撃を放つ。
 行ってみれば、通自身が電子レンジの代わりになったようなものだ。
「今だ!」
 焼き過ぎにならないタイミングを見切り、通は左右の指を離す。
 あとは薄くスライスした鉄火ツナサーモンの身を塩昆布と敢えて、ラップに包んでしばし馴染ませる。
「これをご飯に乗せれば、海漬鮭飯――漬けサーモン丼だ!」
 タタキとルイベのハイブリッドで、焼けた身と半生の身。そして漬けにする事で刺身に近い生の味わい。
 通は2品で三つの味わいを楽しめるものを作り上げようとしていた。
「この二つがあれば――今日の俺は無敵だ! 勝った!」
 だが、通は一つ忘れていた。
 この極寒の世界では、丼のご飯も凍るのだと。
 全て完成と思った通が再び電子レンジの代わりをすることになるのは、この数分後の事であり――そこを隙ありと攻めてきた山賊が、八つ当たり気味に叩きのめされる事になるのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セゲル・スヴェアボルグ
まぁ、調理するのも面倒だしな。
解凍ついでに焼いてちまうとしよう。
火加減は……まぁなんとかなるな。消し炭にならなきゃ問題ない。
だが、向こうさんのナイフとなれば話は別だがな。
とりあえず焼いたツナを口に突っ込んで、戦闘モードにいくとしよう。
刃物ならまぁ、距離を取れば当たらんな。
こっちは飛ぶこともできるので避ける事自体は容易いだろう。
まぁ、山賊なんざ煮ても焼いても食えんだろうが、余ったツナも食いたいからな。
とっとと焼いて終わらせるとしよう。
どこかに酒もあるといいんだかな。



●鮭っぽいのはあっても酒は無し
「鉄火ツナサーモンってのは、あれか」
 マグロの様な魚が中に封じ込められている氷塊を見つけて、セゲル・スヴェアボルグ(豪放磊落・f00533)が目を細める。
 件の古代魚と思しきものを見つけるのは、難しくなかった。
 だが――。
(「俺達以外の気配もいるな」)
 セゲルが目を細める。すぐそこ、という程でもないが、他の猟兵と明らかに違う気配が氷の向こうから感じられた。
 それが山賊のものならば、どうも悠長な料理をしている暇がなさそうだ。
「まあ好都合だ」
 だが、セゲルは竜頭の口の端をニィっと釣り上げた。
「調理するのも面倒だと思っていたしな。解凍ついでに、身まで焼いちまうとしよう」
 呟くと、セゲルは鉄火ツナサーモンが封じられた氷塊に向き直る。
(「火加減は――まぁなんとかなるな。消し炭にならなきゃ問題ない」)
 何て大雑把に胸中で呟いて、セゲルは大きく息を吸い込み――。

 轟!

 セゲルの竜頭の口から、真朱の炎が放たれる。
 朱竜回禄――ブランド・カタストロフ。
 竜人――ドラゴニアンの持つ竜の力をこれ以上なく発揮した、灼熱の息吹。
 轟々と猛る炎に、氷がどんどん溶けていく。
「っと。もういいか」
 炎の中で、支えを失った魚影がポトッと落下するのを見て、セゲルは息吹を放ち続けていた口を閉じた。
「……焼き過ぎたか?」
 表面はすっかり焦げた鉄火ツナサーモンを拾い上げ、がぶりと一口。
「まだ芯は凍ってるか……意外と簡単に溶けないもんだな」
 まだ多少焼き加減が不安定ではあったが、セゲルはそれでも鉄火ツナサーモンの身を幾らか喰らうと、再び大きく息を吸い込んだ。
 瞬間、視界の端で何かが煌めき、ヒュッと小さな音も響く。
 物陰に潜んでいた山賊数名が投げつけたナイフだ。
 だが――。
「しゃらくせえ!」
 すっかり戦闘モードになったセゲルの竜たる灼熱の息吹が、ナイフ程度に負ける筈もない。完全に焼き尽くされ、ナイフが地に落ちていく。
「山賊なんざ煮ても焼いても食えんだろうから、とっとと焼いて終わらせてやるよ!」
 さっき氷を溶かした以上の勢いで放たれた真朱の炎が、山賊達を飲み込んでいく。
『くそっ!』
『ナイフがダメなら斧だ、斧持って――ぎゃぁぁぁっ』
 手にした武器を投げる暇もなく、山賊達が焼かれて倒れていく。
 仮に投げられたところで、竜の翼で空を飛べるセゲルに当てるのは、山賊達には難しい事だっただろう。
「さて。余りをもっかい焼き直すか……どこかに酒もあるといいんだかな」
 セゲルは黒焦げになって消えゆく山賊には目もくれず、残る鉄火ツナサーモンを酒の肴にするにはどう食べるべきかと、思案していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

司・千尋
連携、アドリブ可

このくっそ寒い絶対零度地帯で魚だと…?
しかも釘打てるくらい硬く凍ってるとかどうやって食えば良いんだよ!?
……とりあえず発掘してみるか


鉄火ツナサーモンが埋まってそうな場所を適当に『翠色冷光』を使って発掘に挑戦だ
鉄火ツナサーモンを壊さないように慎重に光弾を操作する
無事に掘り出せたら『翠色冷光』で炙ってみよう
一応醤油は持参してきたけど凍っちゃって駄目だな
醤油も一緒に炙っておこう

少し柔らかくなったら醤油つけて齧ってみる
あー、うん
意外と…?


身体がポカポカしてきた今なら
山賊なんて一捻りだぜ
範囲内に山賊がいたら鉄火ツナサーモンを齧りつつ『翠色冷光』で攻撃

土産に不凍熊の毛皮でも
貰って帰るかな



●食べ慣れて来てますか?
「このくっそ寒い絶対零度地帯で、本当に魚が見つかるなんてな」
 氷の中に幻の古代魚がいる。しかも食べられる。
 そんな話に、司・千尋(ヤドリガミの人形遣い・f01891)は思わず耳を疑った。
 だが実際に絶対零度地帯を訪れてみれば、大して探し回るでもなく、中にマグロの様な魚を封じた氷の塊と言う現実が、千尋の前に聳えていた。
「……とりあえず発掘してみるか」
 目を逸らしたくなるのを堪えて、千尋は氷に掌を向ける。
「消えろ」
 どこか投げやりに告げた千尋の掌から、青い光が放たれる。

 翠色冷光。

 周囲の影響を受けない光は、こんな極寒の絶対零度地帯でも凍る事なく、ふよふよと氷の塊に飛んで行く。
「ま、しばらくは適当に動かしても大丈夫だな」
 千尋は自由に操作できる光弾をまずは大雑把に動かし、氷をゴリゴリ砕いていく。音もなく氷が削れ、砕けていき、鉄火ツナサーモンの姿が次第にくっきりと見えてくる。
「……そろそろ慎重に行くか。鉄火ツナサーモンを壊して、また探し直しってのは避けたいしな」
 スッと千尋が瞳を細め、揃えた二本の指を青光に向ける。
 千尋が指を動かせば、糸で繋がっているように青光も動く。
「……っ」
 ズクリと、千尋の頭の片隅に痛みが走る。
 翠色冷光の光弾は千尋の意のままに操れるが、細かく動かせば頭痛が走る。次第に強くなる痛みを堪えて、千尋は何とか氷の中から、魚を掘り出した。

(「まさか、帝竜戦以上の頭痛を、高々魚一匹に感じる日が来るとは……」)
 頭痛のせいと言うよりは気疲れの様な疲労感で、千尋が思わず氷の上に膝を着く。冷たさが服を突き抜けるが、すぐに立ち上がる気にはなれなかった。
 千尋に頭痛を与えた青光は、無事に掘り出した鉄火ツナサーモンの真上、触れるか触れないかぎりぎりの高さを、ふよふよとただ漂っている。
 鉄火ツナサーモンに立てかける様にして、霜に覆われた醤油の瓶も置かれていた。
 何をしているのかと言えば、解凍だ。
「あとは炙るだけだから、楽でいい」
 光がじんわり、じんわりと、凍った鉄火ツナサーモンを溶かしていく。時折触って感触と冷たさを確かめる。
「よし、醤油も溶けたな」
 鉄火ツナサーモンの身体から、釘を打てそうな硬さがなくなった頃には、一緒に置いていた醤油の瓶も、すっかり霜が獲れている。
 千尋が瓶を振れば、チャプっと醤油の揺れる音が微かに響いた。
 千尋は鉄火ツナサーモンの身に軽く醤油をかけて、そのまま豪快に齧り付く。
「あー、うん」
 千尋は不思議そうな顔になりながら、もう一口。
「意外と……?」
 首を傾げながら、更に一口。
「悪くない……いや、美味い。それに確かに身体がポカポカしてくる」
 未知の味覚だが、千尋はそれを美味いと認めた。
 何故なら、食べ続けるのが止まらないから。
『いたぜ、猟兵だ!』
『手が塞がってるぞ――チャンスだ!』
 そこに聞こえて来る、山賊の声と足音。
(「来たか。不凍熊の毛皮は、土産にさせて貰うぜ」)
 胸中で呟いて、千尋は片手で鉄火ツナサーモンを齧りながら、翠色冷光を放つ。そのまま片手で光を操り、向かってくる山賊達を端から打ち据えていく。
 鉄火ツナサーモンのお陰だろうか。
 さっき氷を砕く時にはあれほど感じた頭痛は、殆ど感じなくなっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

早乙女・龍破
・鉄火ツナサーモンについて
真っ赤な身のシャケとは
まぁシャケは元々白身で餌によって色が付いているそうなのでこの地域のものは赤くなる餌を食べていたと思えば不思議はないですか
ハイカロリーであるのも頷けます
私はシャケはやはりルイベが好みなので凍っているのはむしろ好都合
薄く切れば歯応えもあって口で溶けるので良いものです
濃い口の醤油と山葵…山葵は直前に擂るのが一番です
まぁあまりゆっくり味わう時間はないかも知れませんが…
もしもの為に冷凍用包丁は用意しておきましょう

・戦闘について
油断は流石に致しませんが怪我するのも馬鹿らしい
ヤッパや投石に気をつけしっかり熊の皮を剥して退場して頂きましょう

●その他
アレンジ歓迎



●氷削の太刀
「……あの魚は、何であんなところにいるんでしょうね?」
 ちょっとした氷山を見上げて、早乙女・龍破(流れること川の如き・f00182)がぽつりと呟く。
 氷山と言っても精々3mあるかと言った程度のものではあるが――目的の魚はその中心に冷凍保存されていた。
「多少地形を変えてしまっても、構いませんよね?」
 答えがある筈もない問いを独り言ち、龍破は柄に手をかけて長尺刀『奥州貞宗』をスラリと鞘から抜き放った。

「空を裂き、竜巻の如く――」

 寒さで縮こまりそうな身体で、半身を引いて切っ先を下げて構える。
 呼吸を整え、四尺もの刃に気を満たしていく。
 その刃は空を泳ぐ大鯨を斬るために打たれたと言う――故に『奥州貞宗』はもう一つの銘を持つ。『鯨切貞宗』と言う銘を。

「暴飈の如く荒れ狂う冽い気魂の刃……受けてみなさい!」

 引いていた足を踏み込み、龍破は大きく身体を回しながら気を満たした刃を切っ先で氷を削りながら斬り上げた。
 冽破裂空烈斬。
 放たれた気魂刃が渦を巻き、氷山を飲み込む気刃の竜巻と化す。
 気刃の竜巻の中から、氷の粒が飛び散っていく。やがて渦が収まると、小さな氷山は鉄火ツナサーモンの部分だけを残した氷の柱となっていて。その周りには、粉微塵に削られた氷の粒が積もっていた。

「本当に真っ赤な身なんですね」
 氷の中から取り出した鉄火ツナサーモンを捌きながら、龍破が呟く。
 三枚に下ろした身は、確かにマグロの様に赤かった。
「確かシャケは元々白身で、餌によって色が付いているそうですね。この鉄火ツナサーモンとやらは、赤くなる餌を食べていたと思えば不思議はないですか」
 龍破の推測が正しいか否かは、今となっては確かめようがない。
「そう思えば、ハイカロリーであるのも頷けますね」
 故に龍破はそういうものなのだろうと己の中で結論つけて、鉄火ツナサーモンの真っ赤な身を捌き続けた。
 氷の中から取り出した身は、まだ硬く凍ったままだが、龍破は鋸のような刃を持つ冷凍用包丁で、そのままゴリゴリ切っていった。
 というのも、龍破はシャケを食べるのならルイベが好みなのだ。
 ルイベと言うには少し凍りすぎている気もするが、敢えて解凍するほどでもない。
 三枚に下ろした身を更に柵にして、それを薄く切っていく。
「薄く斬れば口の中で溶けるでしょうし。あとは山葵を擂って――」
 やはり山葵は直前に擂るのが、風味が良い。
 合わせるのは濃い口醤油――なのだが、これも凍ってしまったので、ゴリゴリ削って醤油のかき氷状にする。
 あとは削った醤油と擂った山葵を切り身に乗せて、一口に。
「ほう……これは」
 長い前髪の中で、龍破は目を丸くした。
 やはり少々凍りすぎているようで、口に入れた瞬間は冷たさが勝る。
 だがジワリと溶けだすと、魚とは思えない脂の旨味に溶けだした醤油と山葵の風味が口の中で混然一体と混ざり合う。かといって、その脂はしつこくない。
 まさに文字通り――溶ける味。
「成程。本当に身体も温まる……」
 食べるごとにポカポカと身体が熱を帯びていくのを、龍破は感じていた。
 寒さに縮こまりかけていた身体が、蘇る感覚。
 身体に力が戻れば、精神の力も戻る。いつの間にやら、周囲に山賊が潜んでいるのに気づいて、龍破は片手で刃を構えた。
 先ほど氷を削った時よりも早く、刃に気が満ちていく。
「斬り合っても負ける気はしませんが、怪我するのも馬鹿らしい。熊の皮を残して退場して頂きましょう!」
 龍破が刃を振り上げれば、今度は幾つもの三日月状の気魂刃が放たれる。
 それもまた、冽破裂空烈斬。
『な、何で見つかっ――』
『うぎゃーっ』
 龍破の放った気の刃が、山賊達を斬り裂いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
【恋華荘】

生はさすがにあれだから、わたしは煮てみようかな。

白菜としいたけとお豆腐とじゃがいも。
そしてこれが肝心のお味噌とバター!
【Nimrud lens】使えば、火加減とか調整できるよね。

「はーい、今日は絶対零度地帯にきてまーす。
今日のお料理は、こんな寒いときにぴったりのお鍋です!」

食レポするよ!

「今日のメインは、鉄火ツナサーモンの石狩鍋!
マグロなんだか鮭なんだかわからないところがいいですね!
この熱、このコク、やっぱり味噌とバターとの相性が抜群ですね!
アシュリンさん、美弥子さん、そちらの焼き鮭はいかがですかー?」

って、山賊、静かに! 収録中!
【Nimrud lens】で山賊焼きにしちゃおう。


高原・美弥子
【恋華荘】

あーもう、鉄火ツナサーモンとか食べたこともないものをその場で調理とか
しかも冷凍されてたとはいえ何時の物かも分からない古代魚!少なくとも火を通さないと怖いよっ
斬馬刀・白陽と妖刀・黒陽で発掘と解体するよ、これ包丁なのにっ
切り身にしたら持参した串に差して【ブレイズフレイム】で焼くよ!
あたしの血は燃えるからね、この環境でも焼けるよ!不衛生云々はこの場合は我慢してねっ
焼き鳥屋だから串焼きにしたけど、流石にこれは焼き加減の見極めが難しい……これでいいでしょ!
さぁ実食タイムだね、うん、焼き加減はいい感じだったね

って、山賊が来た!そっちも【ブレイズフレイム】で焼くよ、毛皮燃えて冷凍されればいいんだ!


織笠・アシュリン
【恋華荘】

生は無理っていうかかじれないよね!
というわけで熱を通そう!
【ウィザード・ミサイル】!
炎属性だから熱源になるよね!(適当)

理緒の食レポに乗っかる!
「はーい、こちらアシュリン!只今豪快に美弥子が古代魚を斬っております!すごいですねー、この脂の乗った断面!一瞬で凍結!」
無駄に【コミュ力】使ってテキパキと実況
「そして、このよく分からない鉄火ツナサーモンが見事に信州風山賊焼きと串焼きに!そしてあたしはホイル焼きを用意しました!」
醤油風味のホイル焼きを提供!
「火力はありますが、念には念を入れて、こちらも火の魔法で追いファイアしたいと思います!えーいっ!」
流れ弾が山賊に……あ、そう言えばいたっけ!



●恋華荘――食レポとそれぞれの料理
「魚だねー……」
「そうね。見た事ない魚だね……」
「凍ってるわねー……」
 氷の上で身を寄せ合って、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)と高原・美弥子(ファイアフォックスのファイアブラッド・f10469)と織笠・アシュリン(魔女系ネットラジオパーソナリティ・f14609)は、何かを見下ろしていた。
 3人の視線の前にあるのは、見た事ない魚。
 パッとみホンマグロっぽい巨大な魚だが、口の形とかどことなくサーモンっぽい。あと霜を拭ってみると、お腹が赤くなっている。マグロにこんな色はなかった筈だ。
 これが鉄火ツナサーモンで間違いないのだろう。
「生でもいいって話だったけれど……生はちょっと……」
「生は無理っていうか、こんなに硬いんじゃ齧れないよね!」
 カッチカチに凍りついたままの鉄火ツナサーモンに、理緒とアシュリンが顔を見合わせる。まあ、さっきまで氷の小山と言ったくらいの氷塊の中に冷凍保存されていたのだ。そう簡単に溶けなくとも仕方がない。
 ちなみに、氷の中から出すのは美弥子が頑張ってくれました。
 これ包丁なのにっ――なんて言いながら白い炎を纏わせた斬馬刀・白陽と、黒い炎を纏わせた妖刀・黒陽で、ガリガリと。
「冷凍されてたとはいえ何時の物かも分からない古代魚なんでしょ? お腹の中に何が残ってるか判ったもんじゃないし、少なくとも火を通さないと怖いわよっ」
 その美弥子も、生食は反対である。
 確かに鉄火ツナサーモンとて、何かを食べていた筈なのだ。
「お腹の中……謎の古代の虫とか?」
「絶対ない、と言えないのが怖いわよね」
 ふとそんなものを連想したアシュリンの言葉に、美弥子がこくりと頷く。
「……。……。……帰って良いかな? いいよね?」
「いいわけ」
「ないでしょ!」
 苦手な虫がいるかもしれないと言う可能性に笑顔で逃走を図ろうとした理緒の肩を、美弥子とアシュリンがガシッと掴む。
 実に、麗しい友情である。

 数分後。
「はーい、今日は絶対零度地帯にきてまーす!」
 食レポ番組風のノリを始める理緒の姿があった。
「アシュリンさん、美弥子さん、そちらの様子はいかがですかー?」
「はーい、こちらアシュリン! 只今豪快に美弥子が古代魚を斬っております!」
 カメラ(?)が(作った)笑顔の理緒から、数m離れた所のアシュリンへ移動して、そのまま隣で妖刀・黒陽を包丁代わりに鉄火ツナサーモン解体中の美弥子を映す。
「すごいですねー、この脂の乗った断面!」
 アングルはアシュリンの手元のカメラに移り替わり、解体中の鉄火ツナサーモンの真っ赤な身の断面を映し――。
「一瞬で凍結!」
 その赤が真っ白な霜に覆われていく様を、アシュリンはばっちりカメラに収める。なんだか実況役がすっかり板についている。
「あー、もう! 斬る傍から凍ってやりにくいったらないわ!」
 実際、美弥子が刃に炎を纏わせる力を持っていなければ、こんなにスムーズに解体作業は進まなかっただろう。
「って言うか、理緒。もう腸も取ったし虫もいなかったから、大丈夫よ?」
「あ、そうなんだ」
 食レポ風と言う建前で、もしかしたらいるかもしれない虫を警戒していた理緒が、美弥子の言葉にトテトテ小走りに近づいていく。
 その頃には、鉄火ツナサーモンは三枚に下ろされていた。
「で、これからどうする? 私は串焼きにするつもりだけど」
 下ろした半身を更に細かく切り分けながら、美弥子が二人に訊ねる。
「わたしはお鍋で煮てみようかなって」
「あたしはホイル焼きで!」
 理緒とアシュリンから、別々の答えが返ってきた。
「「「……」」」
 調理方法まで打ち合わせてなかったとは言え、見事に三者三様であった。

「今日は、鉄火ツナサーモンの石狩鍋を作りたいと思います! こんな寒いときにぴったりのお鍋です!」
 大き目の土鍋を手に、ちょっと頑張ってテンション上げてる理緒が、まだ食レポ風のノリのまま、調理に取り掛かっていた。
「材料は白菜としいたけとお豆腐とじゃがいも。これが肝心のお味噌とバター! そして鉄火ツナサーモン、マグロなんだか鮭なんだかわからないところがいいですね!」
 どれもこれも凍っているのだが、理緒は構わず土鍋の中に敷き詰めていく。
「そしてあたしはホイル焼きを用意してます!」
 一方、アシュリンもやっぱり食レポ風のノリのまま、鉄火ツナサーモンの切り身をせっせとアルミホイルに包んでいた。
「2人とも、あのノリ、気に入ったのかな……」
 比べれば静かに、美弥子は真っ赤な切り身に串を刺している。
 実家の焼き鳥屋では看板娘であった美弥子だが、実は人見知りな部分もあり、ああ言う風のノリにはなれずにいた。
「まあ、あたしはあたしよ。これから、大事なとこだし」
 2人は2人と気を取り直し、美弥子は自身の腕に刃を滑らせる。流れ落ちた血は、凍りつくよりも早く燃え上がった。
 その炎の上に、美弥子は串に刺した鉄火ツナサーモンの切り身を翳す。
 色々あって今は離れているが、実家の焼き鳥屋で串焼き自体は慣れている。それでも未知の食材を焼くのは、気を遣う作業だ。
「流石にこれはじっと見てないと、焼き加減の見極めが難しい……」
 むむ、と眉間を寄せて、美弥子は炙る切り身を注視する。

 ゴォォォォォォッ!
 その背後で、何か火柱が上がった。
 何事かと美弥子が振り向くと、理緒がお鍋ごと炎に包んでいた。
「具材が凍ってるので、こうやって高火力でまずは解凍します! 溶けてきたら火力を落としましょう」
 炎の中の状態を確かめ、理緒は炎を熾す光を弱めていく。
 Nimrud lens――ニムルド・レンズ。
 大気を操り太陽光を屈折させるレンズとする事で、太陽光を熱線レベルにまで収束させる術である。
 極寒の氷の世界であっても、空が閉ざされているわけではないのだ。
「……」
 思わず絶句する美弥子だが、理緒はまだマシだった。

 ズドドドドドッ!
 今度は爆発音が響く。
「ウィザード・ミサイル!」
 音の正体は、アシュリンが放っている炎の矢だった。
「氷の上で火をどうするか。炎属性だから熱源になるよね!」
 適当に言いながらアシュリンが炎の矢を放っている対象は、鉄火ツナサーモンを包んで氷の上に並べたアルミホイルである。
「んー……火力はありますが、ここは絶対零度地帯です! 念には念を入れて、こちらも火の魔法で追いファイアしたいと思います! えーいっ!」
 着弾して広がった炎が端から消えそうになっているのを見て、アシュリンは、炎の矢の二射目を放とうと魔力を練り始める。
 大丈夫? アルミホイル溶けない?
「……自分の燃える血を使ってるあたしもあたしだけど……」
 不衛生とか細かい事あんまり気にしてなさそうな2人の豪快な調理に何とも言えないものを感じながら、美弥子は串に刺した鉄火ツナサーモンをひっくり返した。
 そして――。

「うん、焼き加減はいい感じね」
「ホイル焼きも、焦げた醤油風味が良い香り出してるよー」
「この熱、このコク、やっぱり味噌とバターとの相性が抜群ですね!」
 美弥子の串焼きも、アシュリンのホイル焼きも、理緒の石狩鍋も、あれで何故?と言う部分もあったかもしれないが、最終的にはとても美味しく出来上がっていた。
 なんだか良く判らない古代魚だが、まあ美味しくできたのだから良しとしよう。
 身体もポカポカ温まって来たし。
「でも、何か忘れているような……?」
「そう言えば……」
 美弥子と理緒が、顔を見合わせ首を傾げる。
『へっへっへ、ネーチャンたち、美味そうなもん食ってんじゃねえか』
 そこに、野太い声が割り込んできた。
『鍋食って温まろうってか。残念だったなぁ!』
『この毛皮で寒くない俺達山賊が、その料理は頂くぜ!』
 いつの間にか、毛皮を着込んだ山賊がずらっと3人を囲んでいる。
「あ、そう言えばいたっけ」
 すっかり存在忘れてた山賊の登場に、アシュリンが手をぽんと叩く。
「でも何で今頃?」
 さっきまであれだけ派手に料理してたのに。
『料理が出来た所とか、そういうタイミングで奪いに来るのが山賊ってもんだ』
『山賊のアイディンティティみたいなもんだよぉ!』
 口々に言いながら向かってくる山賊達。
 または、様式美とも言います。
「山賊焼きにしちゃおう」
「毛皮が燃えて冷凍されればいいんだ!」
「山賊にも追いファイア!」
 理緒の熱線と美弥子の炎血とアシュリンの炎矢が、山賊を炎の海に包み込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユキ・パンザマスト
★警咆
えっなんすかそのキメラ魚、
おいしい事しかわからないすね???
っていうかおいしいですよね!!
(宇宙猫の隣でじゅるり!)

ええ、行きまっしょい!
狩るからには大物狙いですね、ロクさん!!

ここが我らの狩場~~~♪
(【オーラ防御】椿ホロで魚影を見出した場所を囲み、山賊がきたらぺちっと排除!)
氷ごとド派手にグリルをキメた!!
ロクさんたら、焼きのプロ……!!

ひゃっほーう大物~~焼き魚のいい匂い~~!
ツナでサーモンだし……焼いてあるなら醤油マヨが合いそう!
試してみますかロクさん?
(調味料でタレ作りも立派な【料理】!)
ふふー、生で食べても美味しいですね!
大賛成っ、いーっぱい狩って
皆にもご馳走しましょ!


ロク・ザイオン
★警咆

鉄火トロツナサーモン。
(そんなものは森にはいない
宇宙猫顔で話を聞いてはいたものの
…きっと海にはいるんだろう。だってとっても広いから)

…おいしいのは、わかった。
つまり。
狩りだ、ユキ。

(【野生の勘】で魚影を見定め
「轟赫」を操り氷を溶かしてほじくり出す)
……!
(鮪×鮭が小さいはずもなく
でかい獲物にテンションアップ)
ユキ。ユキ。
…どうやって食べるといい?
しょゆまよ…!(気に入った)

(捌いて焼いて解凍してとやりたい放題)
(もはや山賊対処は片手間
完全に狩猟採集モード)
たくさんとれたら。
…ちょっと、おみやげにしよう。な。



●警咆――椿と守り人の狩り
 どこまでも続いていそうな、氷原。
 ユキ・パンザマスト(夕映の咲・f02035)とロク・ザイオン(蒼天、一条・f01377)も他の猟兵達同様に、その氷の中に幻の古代魚を探して歩いて――。
 ついに見つけた。
 大きな氷の塊の中に封じられている、見た事もない魚を。
「あれが……鉄火トロツナサーモン……」
 初めて見る古代魚に対する驚きでか、何か背景に宇宙を背負ってそうな感じで目を丸くしているロクの呟いた言葉の中には、何処からかトロが混ざっていた。何処から混ざったんだろう。宇宙かな。
「本当にいたんっすねぇ……鉄火ツナサーモンなんてキメラ魚」
 しかし隣で食欲と驚嘆が混ざってじゅるりと口元を拭っているユキは、混ざったトロに気づかない。
「ユキは――アレを知っているのか?」
 自分とは違う反応に、ロクはユキに視線を向けた。
「あんなものは森にはいない」
 ロクは森の守り手だ。
 故にその価値観の頂点には、常に『ロクの知っている森』が存在している。
 ましてや、マグロもサーモンも、海水魚だ。基本的には。元々、どちらも森を流れる川に住まう魚ではない。
「でも……きっと海にはいるんだろう。だってとっても広いから」
 尤も最近は、そう思えるくらいには、ロクも森以外の環境を知ってきている。
「あ、いやいや。ユキもアレは初めて見る魚です」
 とは言え、ユキも聞かれたって判る筈がない。
 誰も知らないから、幻の古代魚なのだ。
 唯一、判る事と言えば――。
「絶対、おいしいですよね!! おいしい事しかわからないすね???」
 だってマグロとサーモンだ。美味しくない筈がない。
「そうか。……おいしいのか」
 想像だけでじゅるりと口元を拭うユキの姿に、ロクも小さく頷く。
「わかった。つまり――狩りだな、ユキ」
「ええ。しかも大物です。行きまっしょい!」
 すぅっと目を細め、守護者から狩人へと意識を切り替えるロクに、ユキも頭の狼尾と腰の骨尾をゆらりと揺らす。

「ここが我らの狩場~~~♪」

 歌うようにユキが声を上げると、掌や下腹部――他にも見えない口の中などに刻まれた赤い椿の紋様が、輝きを放つ。
 直後、氷塊を囲むようにその周囲に白い椿を咲かせた木々が現れた。
 ――よく見ればそれは、本物の樹木ではない。仮想の椿が実体化したホログラム。
「これで邪魔は入らないっす! ロクさん!」
「心得た」
 ユキの声に頷き返すロクの髪がゆらゆらと揺らめいた。
 陽炎の様な色の髪が――炎の様に。

「のこさず、灼けろ」

 轟々と、炎が猛る。
 揺らめくロクの髪から放たれたのは帯状の炎――轟赫。
 70を超える轟赫の炎を、ロクは束ねていく。1つとなった巨大な炎は轟々と、絶対零度の空間にあって、太陽か星かと見紛うほどに輝きを放ち燃え上がる。
「そこだ」
 ロクは己の野生の勘に従い、一撃で氷塊ごと魚を炎で撃ち抜いた。
「氷ごとド派手にグリルをキメた!!」
 派手さの中に精密さも合わせたロクの炎の術に感心しながら、ユキは駆けだし、急速に溶けて砕ける氷塊の中から炙られた鉄火ツナサーモンを取り上げる。
「焼き魚のいい匂い~~! ロクさんたら、焼きのプロ……!!」
「……!」
 ユキが抱えて来た鉄火ツナサーモンを目の当たりにして、ロクも目を輝かせる。
 氷の中では光が屈折する事もあり、その大きさは正確とは言えない。
 実際に掘り出した鉄火ツナサーモンは、縦にすればユキの肩ほどまでありそうだ。そんな巨大な魚を前に、ロクのテンションも上がる。
「ユキ。ユキ。……どうやって食べるといい?」
 早く食べたい。
 訊ねられたユキは、ロクの顔にそう書いてある気がした。
「ツナでサーモンだし……焼いてあるし……醤油マヨが合いそう!」
「しょゆまよ!」
「試してみますかロクさん?」
 パッと反応したロクに、ユキが持参していた醤油とマヨネーズ(どちらも凍っていたがさっきのロクの炎の熱でついでに溶けた)を見せれば、ロクがコクコク首を縦に振る。
「んじゃ、ロクさんは適当に捌いといて欲しいっす」
「わかった」
 柄頭に『烙』と印された山刀を抜いたロクに切り分けるのを任せて、ユキはマヨネーズと醤油を混ぜ合わせていく。
 調味料を混ぜてタレを作るのも、立派な料理だ。
 それだけ――と思いがちだが、混ぜる割合によっては上手く混ざらないと言う事もあるのだから。
「出来たぞ」
「こっちも出来たっす!」
 ロクが二人分切り分けた身に、ユキが醤油マヨネーズをトロリとかける。
 2人同時に口に運び――口の中に広がった旨味に、2人揃って足をじたばたさせた。魚の身とは思えない肉の様な厚みに、噛み締めると広がる旨味。
 濃厚ながらもしつこくない脂は、醤油マヨネーズの濃い目の味が良く合っている。
「しょゆまよ、美味い」
「正解でしたね!」
『醤油マヨだとぉ~?』
 ロクとユキが顔を見合わせたそこに、別の野太い声が響いた。
 山賊である。
『醤油マヨと聞いては、黙ってられねえなぁ』
『俺達は、山賊の中でも――マヨネーズに目がねぇんだぁ!』
「山賊にもマヨラーいるんすか……」
 少しの驚きと多くの呆れを込めて、ユキが視線を向ける。慌てる事などなかった。
『くそ、この椿、邪魔だ』
『どうなってやがる!?』
 椿のホログラムが、山賊達を阻む壁となっているのだから。
「ユキ。もう少し探して……ちょっと、おみやげにしよう。な」
「大賛成っ」
 もがく山賊達を後目に、ロクがユキに提案する。
「少しと言わず、いーっぱい狩って皆にもご馳走しましょ! きっと生で食べても美味しいですよ!」
「生か……それもいいな」
 ユキの言葉に刺身で食べた時を想像したか、ロクの目がまた狩人のそれに戻る。
 だが、狩りを続けるには山賊が邪魔だ。
「のこさず、灼けろ」
 轟赫の炎が容赦なく、椿のホログラムを越えられずにいる山賊達を飲み込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

生浦・栴
突っ込み処が多過ぎるが気にせずに行くか
鉄の杭と串と調味料は持参する

友人のいつぞやの手法を真似、空気に炎を交ぜ周辺に纏わせて防寒
次に氷の表層を炎で溶かす
膨張した氷が爆ぜると危険なので注意
魚影を見つければ杭を魔法で溶けない程度に熱して氷に叩きこむ
以上全て魔法で行動、力仕事は向かぬでな
魚まで届かなければ熱を加え直して繰り返し

回収したら半分に切り片方は魔法で瞬間冷凍しUCで保存
フューラーのへ土産としよう
残りは串に刺して火で炙り塩を振る
蟹と違って楽で良いな

暖房に余力を使わぬのであればあとは楽だな
山賊共には高速詠唱で衝撃波を範囲攻撃を複数回叩きこみ
残れば呪詛をスナイプして片付けていこう

共闘アドリブ等歓迎



●様々な火加減
「成程。絶対零度地帯と言うだけある。いつぞやの砂漠の比ではないな」
 見渡す限りの氷原の上で、生浦・栴(calling・f00276)は震えそうな身体を抑えて独り言ちる。とは言え、呟きと共に漏れた呼気は、すぐに白くなっていた。
 まずは、何か寒さを和らげるものが必要だ。
「借りるぞ――赤狐の」
 栴は表装の四隅を金具で補強された古そうな魔導書を広げる。
「燃えろ。吹け。交ざれ」
 栴が呟くと、開かれた魔導書の左右の頁から、それぞれ違う色の輝きを放たれた。
 魔導書から昇る輝きの上に炎が生まれ、緩やかに渦巻く風が炎を空気に混ぜ込んで、栴の周囲を暖めていく。
 嘗て凍り付いた砂漠で知己が見せた術。
 栴が魔法だけで再現してみせたものは、知己のそれに範囲こそ及ばぬが、自身をこの地の寒さから守るには充分なものであった。

「で、次はあれか」
 凍えない為には充分な暖を確保した栴は、視線を正面に向けた。
 そこに聳えているのは、壁の様な氷の塊。その中には見た事ない魚――鉄火ツナサーモンが封じられている。
 他の猟兵達も氷の中に同じものを見つけた様で、何処か離れた所から、ガンガンッと氷を砕かんとしていると思しき音が聞こえていた。
(「それも手だが、力仕事は俺には向かぬでな」)
 胸中で呟いて、栴は『Kano』を鞘から引き抜き氷壁に切っ先を向ける。
「来い!」
 栴が短く告げると、『Kano』の刀身が輝き炎が喚び出された。
 『Kano』の刀身から溢れる炎は、暖を取る為に生み出した炎とはまるで違う。炎はどんどん広がり、周囲を明るく照らして氷を溶かしていく。
 半端な炎では、膨張した氷が爆ぜかねない。
 だから栴は魔導書の炎だけではなく、炎を喚ぶ剣を使っていた。
 氷壁を作る分厚い氷がじわじわと溶けていき、次第に冷凍保存されている鉄火ツナサーモンの魚影もくっきりと見えてきて――。
「そろそろか」
 だが、あと数センチと言うところで、栴は炎を喚び続ける剣を引いた。
 剣の炎はそのままに、少し下がって氷に突き立てる。炎の熱で鉄の杭を暖めると、栴はそれを氷壁に向けて投げ放った。
 ビシッ!
 突き刺さった杭から、氷壁に全体に亀裂が広がっていく。
 そして栴の目の前で、氷壁はガラガラと崩れていった。

「ふむ。こんな所か」
 呟く栴の前には、半分に切り分けられた鉄火ツナサーモンが転がっていた。
 切り分けたもう半分は、既にここにない。
 栴の持つ小さな魔鍵【prison cell】。その中にあるユーベルコード製の保冷庫【Saved area】の中に、再冷凍した吸い込んであった。
「フューラーのへ土産はこれで良いだろう」
 どこぞのエルフの土産を確保しておいて、栴は自分の為に鉄火ツナサーモンの半身を更に細かく切り分け始めた。
 串に刺しやすいサイズにまで切り分けたら、あとは『Kano』の炎で炙りながら塩を振っていくだけだ。
「蟹と違って楽で良いな」
 いつかの騒ぎを思い出して口の端に小さな笑みを浮かべながら、僅かに焦げ目が付くまで焼いた鉄火ツナサーモンの身を、口に入れる。
「悪くないな」
 魚と言うよりは肉を食べているような、脂の乗った旨味。だが後味のさっぱりとした感じは、肉ではなく確かに魚を食べているのだと思わせる。
 そして三切れも食べる頃には、栴の身体は中からポカポカと暖かくなっていた。
「これなら、もういいか」
 パタンッと栴が開きっぱなしだった魔導書を閉じる。
『見つけたぞぉ!』
『おいおい、何か高そうな本持ってるじゃねえか!』
『そっちの魚もついでに頂くぜ』
 奪うものがある所に、山賊あり。
「失せろ」
 闇く紅いオーブ『Ancient deep sea』の表面に水面の様に波紋が広がる。
 暖を取るための術を使う必要がなくなった栴は、わらわらと出てきた山賊達に呪詛を乗せた衝撃波を浴びせて、吹っ飛ばしていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

満月・双葉
食と金!
冷凍魚?ふん、そんなものは……
(ぽくぽくぽくちーん)
僕の大根爆発するんですよ
そして、ツナ大根サラダって美味ですよね☆
(ヤケクソ気味)
どーせ僕に爆発はお似合いでしょうとも
こんがり焼ければ食あたりの心配も無かろうて

おい、食べるのを邪魔するなら爆発さすぞテメーら!
僕は此処に美味しいものを食べに来たんだよぉ!
(敵の攻撃は【野生の勘】で見切りつつ、見切れないものは【オーラ防御】で防ぎ、接近してきたものは合気道で投げ飛ばしてから爆発の【属性攻撃】付き大根をポイポイする)
下品に叫んでンじゃねー爆発しろ
あとカエルのマスコットさんに食われろ
カエルのマスコットさんいっぱい食べて良いよー!



●大根と言う名の凶器はサラダになるのだろうか
「冷凍魚……って、凍りすぎじゃないですかね?」
 見るからに硬そうな氷の中に、見た事もない古代魚。
「ま、問題ないですけどね。そんなものは……」
 だが、そんな自然の神秘と言えよう光景を、満月・双葉(時に紡がれた星の欠片・f01681)はしれっと一蹴した。
 氷を何とかしなければ、魚には届かない?
 それがどうしたと言うのだ。
 だって――双葉には、大根があるのだから。
「僕の大根、爆発するんですよ」
 何かとてもおかしなことを平然と口にして、双葉は滅茶苦茶凶悪そうな闇色のオーラっぽいものを纏う大根を構えた。
「どーせ僕に爆発はお似合いでしょうとも!」
 過去に何かあったのだろうか。
 やけくそ気味にそんな事を言いながら、双葉は大根をぶん投げ――ドスッと大根が氷に突き刺さる。
「ツナ大根サラダって美味ですよねー☆」
 更にやけくそ気味に叫ぶ双葉の目の前で、氷に刺さった大根から凶悪そうな何かがズドンッと爆ぜて、氷の中にひびが入っていく。
「ん? もう一発か」
 一撃では壊れない氷壁に少し驚きながら、双葉は大根を引き抜くと、距離を取って再び大根を構えて――やっぱり投げた。
「氷が壊れるまで大根投げてやる。こんがり焼ければ食中りの心配も無かろうて」
 ドスッ!
 ズドンッ!
 ドスッ!
 ズドンッ!
 大根にあるまじき物騒な音は、双葉の前の氷の壁が砕けるまで続いた。

「うまっ!」
 大根で捌いた鉄火ツナサーモンの切り身を口にした瞬間、双葉は眼鏡の奥の目を丸くしていた。
 うっかり調味料を忘れていたが、そんな事が気にならない。
 冷凍保存されていたからか、生臭さはなく、かと言って脂はしっかりと乗っている。それも口の中にいつまでも残らないさっぱりとした脂だ。
「こんな所まで食べに来た甲斐はありましたね」
 いつの間にか、双葉の身体はポカポカとした熱が全身を駆け回っていた。
『ヒャッハー!』
 そこに、山賊の声が響いてき――。
「下品に叫んでンじゃねー! 爆発しろ!」
 双葉が碌に顔も見もしないでぶん投げた大根が、山賊に当たった瞬間、やっぱりドカンッと凶悪な何かを爆ぜさせた。
「おい、食べるのを邪魔するなら、こんな風に爆発さすぞテメーら!」
 爆発の直撃を浴びてバタッと昏倒した山賊を指さし、双葉が告げる。
 だが――。
『何だ、ありゃ……大根か』
『ゲヘヘヘッ! そのすげえ大根、置いてって貰おうかぁ!』
『勿論、そこで焼いてる魚もだぜ』
 だが他の山賊達は怯むどころか、大根に興味を示していた。
「僕は此処に美味しいものを食べに来たんだよぉ!」
 大根よこせと迫って来た山賊を、双葉は大根で殴り倒す。
 とは言え、独りずつ倒していては埒が明かない。手が足りないのだ。
『うるせえ!』
『山賊は奪ってなんぼだろうが』
「お前ら、カエルのマスコットさんに食われろ!」
 双葉がそう声を上げた瞬間、双葉の長い髪の中から、カエルのマスコットがひょこっと顔を出した。ひょこひょこと、カエルのマスコットは双葉の頭を移動して――。
『ケロロ。ケロッ!』
「っ!」
 そして双葉の額を足場代わりに蹴って、カエルのマスコットは跳んだ。
 跳んだ勢いそのままに、山賊に飛び掛かり――。
『はっ、そんなカエルの蹴りなんざ――』
『ゲコッ!』
 山賊の言葉を遮って、カエルのマスコットが跳び蹴りを叩き込む。
 悲鳴も上げる力もなく、山賊はぐらりと倒れ込んだ。
『『――は?』』
「カエルのマスコットさんいっぱい食べて良いよー! あと毛皮かっぱいどいて」
 驚き目を丸くする山賊達に、双葉の声を受けてカエルのマスコットが襲い掛かる。エナジードレイン付きのカエルの飛び蹴りによって、山賊が次々と氷の上に倒れていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ポーラリア・ベル
おさかなおさかな。
おさかなの冬だー♪

スノーマンロッドの雪だるま精霊と一緒に【アート】で作った氷ピッケルで【怪力】のままに発掘。
【属性攻撃・地】の超振動で、氷を崩しながらカツオ叩きの様に、身を柔らかくする!
ルーンソードで刺身みたいに斬ったら、【アート】で氷のかまくら作って、
中で【属性攻撃・炎】でちょっとあっためた醤油とご飯につけて、いただきまーすー!
しゃりしゃりルイベな食感に、ちょっとお醤油効かせて、【氷結耐性】でそれなりに素敵な絶対零度の中食べる鉄火ツナサーモン丼…
おーいーしーいー♪

敵さん?折角だから【氷手】で毛皮剥いで、握って、鉄火ツナサーモンのポーズ取らせて氷漬けにするね?



●冬ではなくとも冬を告げる
「おさかなおさかな♪ おさかなの冬だー♪」
 何やらご機嫌な歌声を響かせながら、ポーラリア・ベル(冬告精・f06947)が絶対零度地帯の中で、寒さに凍えるでもなく飛んでいた。

 カンカンカンカンッ!

 楽し気な歌声とは裏腹に、ポーラリアの手は忙しく動いている。
 氷を尖らせて作った氷のアイスピックのようなもので、中に鉄火ツナサーモンが封じられている氷塊を、砕こうとしているのだ。
 傍らにいる雪だるまの精霊も、氷柱で手伝ってくれていた。
 だが――。
 氷のアートの応用で作ったために強度が不足していたか。或いはポーラリアの怪力に耐えきれなくなったか、削る氷の硬さに負けたか。
 いずれにせよ、氷のアイスピックの方が、先にポキっと折れてしまった。
「じゃあこっち!」
 しかしポーラリアはめげる事無く、ルーンソードを抜いた。
 纏わせる魔力の属性は、地。地震の、振動の力。
 ヴヴヴヴヴッと細かく震え出したルーンソードを駆使して、ポーラリアは氷をゴリゴリ削っていく。その勢いは、氷の中から鉄火ツナサーモンを掘り出しても止まらず――。

「お刺身、ルイベー♪」
 氷塊を削って作り上げたかまくら――と言ってもフェアリーのポーラリアだから入れるサイズではあるが――の中で、ポーラリアは鉄火ツナサーモンを切り分けていた。
 特に、解凍と言う事はしていない。
 まだシャリシャリと音を立てる凍ったままの身を、ルイベに薄く切っていく。
「あとはこの炎で、醤油を溶かして……」
 地から炎に属性を変えたルーンソードの熱で凍った醤油を溶かすと、ポーラリアはご飯の上に並べたルイベの上に、醤油を軽くかけて――。
「いただきまーすー!」
 大きく口を開けて食べ始めた。
 絶対零度地帯の氷のかまくらの中で食べる、冷やご飯とルイベの鉄火ツナサーモン丼。
「おーいーしーいー♪」
 そのルイベのシャリシャリな食感と冷たさは、ポーラリアにとっては御馳走だった。
 だが、楽しい時とは長く続かないものだ。
 ガシャーンッと、氷のかまくらが外から壊される。
『へっ……氷の中に隠れるとは考えたじゃねえか』
『お、フェアリーだ。捕まえて売っぱらうか』
 氷の破片を浴びて何事かとポーラリアが見上げれば、数人の山賊達。かまくらの中にいて気づくのが遅れたが、すっかり囲まれている。
 だが――。
「捕まえて、ぎゅってしてー」
『うぉぉぉっ!?』
『な、なんだ……!』
 ポーラリアが歌うように告げると、山賊達が浮かび上がる。彼らの意思に反して、まるで何かに掴まれたかのように。
 実際、掴まれていたのだ。
 霜雪巨人の氷手――フローズンワンダーハンド。
 ポーラリアの作った、巨大で透明な氷の手に。
「鉄火ツナサーモンのポーズでかちーん! だよ!」
 ポーラリアによって謎のポーズを取らされたまま、山賊達は氷の手が放つ冷気によってじわじわ凍り付いていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

榎・うさみっち
【ニコ(f00324)と!】
いやぁニコと一緒に釣りをした時のことを思い出すな!
正直今も耳がちぎれそうなくらい寒いけどやってやるぜー!

ニコと!うさみの!何分かクッキング~!
と言っても今回はシンプルな鍋!味付けは味噌キムチ!
魚類の臭みも消えるし食べれば食べるほど
体がポカポカしてくる一品です!

火はまほみっちの炎の属性攻撃で起こす
ツナサーモンの他にもネギ、にんじん、ゴボウなど
体を温める野菜類も入れる
ニコ!このツナサーモンを食べやすいサイズに
切る仕事がまだ残ってんぞ!

んーっうめぇうめぇ!
〆にご飯を入れて雑炊にしたいくらいだぜ!
おう、今なら山賊だろうが何だろうが恐くないな!
大人しく倒されて毛皮をよこせー!


ニコ・ベルクシュタイン
【うさみ(f01902)と】
お揃いのモコモコ防寒着を着込んで馳せ参じたが…其れでも寒い!
うさみよ、大丈夫か?料理が出来るのはお前だけだ、よろしく頼む
其の分、鉄火ツナサーモンの発掘は任せて欲しい

其れはもう全身全霊の「全力魔法」で炎の「属性攻撃」を乗せた
【精霊狂想曲】を発動、地中のマグマの力を借りた
「炎の間欠泉」を火柱のように立ち上らせて氷を溶かしてみせよう
いい塩梅に解凍された魚類はうさみにパスだ、後は頼むぞ
…何?俺もアシスタントをしろ?クッ…

脂が乗っているな…!口の中で蕩けるようだ
其れに予知の通り、身体が温まってくる
よし、うさみよ!今の俺達は――無敵!
食事の邪魔をする輩は雑にぶっ飛ばしてやろう



●時計卿の精霊制御
「おーい! ニコ、こっちだこっち! あったぞー!」
 氷の平原に、榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)の元気な声が響き渡る。その無警戒っぷりに、ニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)は思わず両手で顔を覆っていた。
「ん? どうしたニコ」
「うさみよ……あまり大きな声を出すな。どこかにいる山賊にも聞こえるぞ」
 きょとんとしていたうさみっちは、ニコの注意に、おっとと口を噤む。
「わりーわりー。耳がちぎれそうに寒いから、ついな」
 声を落として、うさみっちが背後の氷の塊を指さす。
 その中には、マグロの様で口はサーモンの様な魚が2匹も保存されていた。
「確かに、此れほど着込んでいても寒いからな。早速掘り出すとしよう」
「おう。ささっと頼むぜ、ニコ! お前ならワンパンで行ける!」
 黒いもこもこダウンジャケットを着込んだニコの肩を、色とサイズ違いのお揃いの青いダウンジャケットを着込んだうさみっちがぺしぺし叩く。
「いや、流石にワンパンと言うわけには」
 ヤシの実とは違うのだぞ、とニコがうさみっちに視線を向ける。
「この氷ってそんな硬くないだろ? さっき大根ぶっ刺してた人いたじゃねーか」
 うさみっちの一言に、ニコの表情が珍しく固まる。
「うさみよ……あの大根は何と言うか、例外なのだ」
 ニコの脳裏には、いつかの枕元にぶっ刺さった大根が蘇っていた。

「荒れ狂え精霊よ、汝らは今こそ解き放たれん!」
 精霊狂想曲――エレメンタル・カプリッチオ。
 精霊を喚び、その力で属性と自然現象を合わせた超常現象を起こす業。
 ニコの前に現れたのは、地と火の精霊。
(「此処の隣はガイオウガのいた地域――氷の奥底の地中にはマグマがある筈だ」)
 そう考えて、ニコは2体の精霊を喚んだのだが――何だか精霊の様子がおかしかった。特に火の精霊が、なんだかソワソワしている感じだ。
 精霊とは自然の影響を強く受ける存在だと言う。
 この氷の大地は、特に火の精霊にとっては対極の場と言えよう。
 ――ここ、肌に合わないから帰っていいですか?
 そんな感じで、火の精霊の姿が薄れていき――。
「待て」
 帰すわけがなかろうと、ニコの両手が精霊の両肩をがしっと掴んだ。喚んでる方だって寒いのだ。見守ってるうさみっちの為にも、急ぐのだ。
『……』
「あ れ く る え」
 ニコの眼力と握力に、何もされてない地の精霊までこくこく頷き色濃くなる。
 そして――。
 炎とマグマの力が合わさり噴き上がった『炎の間欠泉』が、氷塊を飲み込むほどの炎の柱となって燃え上がった。
 炎が収まり精霊達が消えた氷の上には、良い塩梅に解凍された2匹の鉄火ツナサーモンが転がっていた。

●むしろ今回は3分で収まったんじゃなかろうか
「ニコと!」
「うさみの!」
「「何分かクッキング~!」」
 寒いからか他に人の気配もないからか、ニコは照れもせずにうさみっちと声を合わせられていた。
「しかし、うさみよ。今回は3分ではないのだな」
「何か毎回、誰かに突っ込まれてる気がするからな!」
 若干変わった部分に首を傾げるニコに、うさみっちが土鍋を持ちながら返す。
「と言っても今回はシンプルな鍋!」
 うさみっちは土鍋を置くと、その横に材料を並べていく。
「今回は体を温める野菜を使った味噌キムチ鍋! 魚類の臭みも消えるし、食べれば食べるほど体がポカポカしてくる一品です!」
「では先生。あとはお願いします」
 鍋ならば自分の出る幕はないだろうと、ニコはうさみっちに全てを任せ――。
「ニコ! このツナサーモンを食べやすいサイズに切る仕事がまだ残ってんぞ!」
「クッ……!」
 ニコが精霊に容赦なかったように、うさみ先生はアシスタントに容赦がなかった。

「鍋か。前にも蟹とアンコウで作ったな」
 大きな中骨から外した鉄火ツナサーモンの身を食べ易いサイズに切り分けながら、ニコは前にもこうして魚の身を扱った時の事を思い出していた。
 あの時は、もっと悪魔的に喧しかったけれど。
「いやぁニコと一緒に釣りをした時のことを思い出すな!」
「今回はデビみっちもいないから、2人でたっぷり食べられるな」
「こんな寒いところにあいつら召喚したら、絶対うるさい」
 どこか所帯じみた話をしながら調理している内に、鍋の準備が整っていた。
 うさみっちはとんがり帽子と杖を装備したまほみっちゆたんぽを取り出すと、その杖を鍋の底に差し込む。
「ニコの精霊はお疲れだろうから、まほみっちファイヤー!」
 シュボッと杖の先から火が放たれ、鍋の中の氷が溶けていく。
 うさみっちはそこに、にんじん、ねぎ、鉄火ツナサーモンの順に具を入れて、味噌とキムチで味を整えていく。
「――味噌キムチ鍋! 完成! ニコ、食うぞ!」
 こんな寒い中でぐつぐつの鍋が完成して、すぐに食べずにいられる筈もない。何分かクッキングの締めも忘れて、うさみっちのニコは鉄火ツナサーモンの味噌キムチ鍋に取り掛かった。
「どれ……」
 辛そうな赤いスープとほぐした鉄火ツナサーモンの身とねぎを纏めて掬い、ニコは一口で口に入れる。
 キムチの辛さと味噌のコクがまず口の中に広がり、後からネギの仄かな甘みと鉄火ツナサーモンの脂の旨味が追従する。
「脂が乗っているな……! 口の中で蕩けるようだ」
「んーっうめぇうめぇ!」
 口の中に広がった鉄火ツナサーモンの旨味を評するニコの向かいで、うさみっちも目を輝かせてパクパク食べている。
 周りが寒い分、ふぅふぅと冷まさないでも食べられるのだ。
「〆にご飯を入れて雑炊にしたいくらいだぜ!」
「ああ、〆の雑炊もさぞ美味かろうな」
 あっという間に、ニコとうさみっちの間にある鍋の中は具材が半分になっていた。
『おうおう! 良い匂いじゃねえか!』
『美味そうなもん食ってんなぁ……』
 匂いに釣られたか、そこに出てくる山賊御一行。
 御馳走ある所に、山賊あり。
 だが――。
「丁度、身体も温まってきたところだ。行くぞうさみよ! 今の俺達は――無敵!」
「おう、今なら山賊だろうが何だろうが恐くないな!」
 キムチの辛みも加えた鉄火ツナサーモンの効果で身体がポカポカして何だか自信まで湧いていたからか、ニコのみならず、うさみっちも瞳に炎を燃やして山賊に向き直る。
「食事の邪魔をする輩は、雑にぶっ飛ばしてやろう」
 何か武器を出すのも面倒だと、ニコは両の拳を固めて、踏み込み、振り上げた拳で山賊達を纏めて宙に打ち上げる。
「大人しく倒されろ! ふん! ふんっ!」
 そこにぶーんと飛んでったうさみっちが、頭を左右に振る。すると、ピンクの垂れ耳もぶんぶんと振り回される。
 こんしんのうさみっちビンタ――耳ビンタが、山賊達を叩き落した。
「っしゃー! 毛皮をよこせー!」
 氷の上で伸びた山賊達から、うさみっちは容赦なく毛皮かっぱいで回るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

越喜来・湊偲
理嘉さん(f03365)と
鉄火ツナサーモン……!
全く聞いたことのない名前のサーモンです
というか、マグロなのかサーモンなのか……
でもこれはどんな味なのか気になりますね
理嘉さん、若干名前間違えてますけど同じっすよね

氷はハンマーの力溜めからの怪力で砕きます
TTSも砕けないか心配ですけど、調理すれば同じなんで……

調理は事前に少し調べてみたんですけど
サーモンならルイベという凍った状態のものをスライスして
そのまま食べるというものがあるようですよ!
醤油をかければ少し溶けて食べ頃に……あー、ご飯が欲しい
マグロとかも冷凍なら良いですし、凍ったままお持ち帰りっすね

敵はO・Oを呼び出してささっと倒しちゃいましょ!


百合根・理嘉
湊偲(f01703)と
……トロ鉄火ツナサーモン?
あ、トロは付かない?

一先ず、そのツナ鉄火サーモンをGETして喰えばいいんだな?
え?鉄火ツナサーモンだって?
こまけぇこたぁイインダヨ!

一先ず、氷漬けのTEKKA・TUNA・SALMON略してTTSを発掘!
Black Diamondで氷を砕く!砕く!砕く!

調理は、どーすっかな?
凍ってねぇ状態なら何でも良くね?
最悪凍ってても良いけど……
最初の一口がジゴクなだけだろ?
ぽっかぽかになるんならさ

TTS、お持ち帰り無理だろか?
ルシルに土産代わりに持ってくのもありじゃね?

あ、毛皮でヒャッハーしてるのは
うん。にーさんらよろしく!
バトルキャラクターズ使用でサクっとな



●TTSバーガーとかどうでしょう
「やーっと見つけたぜ。トロ鉄火ツナサーモン!」
「理嘉さん。トロは付かないですよ」
 大きな氷塊の中に封じされた魚を指さした百合根・理嘉(風伯の仔・f03365)の口にした名前に、越喜来・湊偲(綿津見の鱗・f01703)がツッコむ。
「あ、そうだっけ?」
「そうっす。鉄火ツナサーモン。トロっていうのはそもそも部位ですし」
 首を傾げる理嘉に、湊偲が鰭の耳をピタピタ動かしながら告げる。
「というか、マグロなのかサーモンなのか……全く聞いたことのない名前ですし」
 海洋生物系のキマイラである湊偲としては、そこは気になるのだろうか。
「一先ず、あのツナ鉄火サーモンをGETして喰えばいいんだな?」
「そうですけど、理嘉さん。また若干名前間違えてますよ」
 ぐっと拳を握り締め、氷塊に視線を向ける理嘉が口走った名前に、湊偲がやっぱりツッコミを入れていた。
「……もうさ、TTSで良くねぇ? TEKKA・TUNA・SALMON、を略してTTS」
「なるほど、それなら鉄火とツナ入れ替わっても同じですね!」
 殴ろうとしていた拳を一度解いた理嘉が提案した略称に、湊偲がぽんっと両手を打って同意を示す。
 ローマ字と英語が混ざってる――仮にそんなツッコミを入れるものが此処にいたとしても、提唱者である理嘉は、こう言って一蹴しただろう。
 こまけぇこたぁイインダヨ!――と。

「じゃあ先ず――砕くか!」
 改めて硬く握った理嘉の拳を、漆黒の輝きが覆っていく。
 Black Diamond――強さを求めた理嘉が手に入れた闇色の力は、その名の通り、金剛石の様な硬さを持っている。
「っらぁ!」
 ガンッと音を立てて叩きつけられた理嘉の拳が、ガリッと氷を削って、衝撃が氷塊の中を突き抜けていく。
「氷の癖に硬いじゃねえか。だったら、砕けるまで砕く!」
 何度も氷塊を殴る理嘉の後ろで、湊偲が長柄のハンマーを肩に担ぐ様に構えていた。
 そのハンマーヘッドには、何故か遊泳禁止の赤文字と赤い射線が描かれている。
(「理嘉さんがアレだけ叩いて壊れないなんて、相当硬い氷っすね」)
 胸中で独り言ちながら、湊偲はハンマーに力を溜める。
 連撃で壊せないなら、力強い一撃を入れるまで。だが、そこに力を籠めすぎると、中の鉄火ツナサーモンまで砕いてしまいかねない。
「湊偲!」
 どこまで力を溜めるかと迷う湊偲を、まだ氷を叩きながら理嘉が呼ぶ。
「細けぇことあんまり考えんな! 砕けたら砕けただ!」
 氷塊に色んな方向から拳を叩き込みながら、理嘉は湊偲が何を心配しているのかを見抜いて、とにかく叩けと湊偲を促す。
「そうっすね。砕けても、調理すれば同じですし!」
 その言葉に背中を押され、湊偲は力を溜めた遊泳禁止ハンマーを、遊泳禁止、の面で全力で氷の塊に叩きつける。
 ズガンッと重たい音が響いたあと、ビシビシッと氷全体にヒビが走る。
 やがて――ガラガラと崩れた氷の中から、一匹丸ごとの鉄火ツナサーモンと、バラバラに砕けた鉄火ツナサーモンの身が掘り出された。

「取り敢えずコッチのTTSから食うとして、調理はどーすっかな?」
 氷と一緒に砕けた鉄火ツナサーモンの身を前に、理嘉が腕を組み眉間を寄せる。
「凍ってねぇ状態なら何でも良くね? 最悪凍ってても良いけど……」
「凍ってても良いなら、サーモンにはルイベっていう、凍ったままの身を薄く切って食べる方法があるみたいっすよ」
 まだ凍ったままバラバラになった身のひとつを取りながら、湊偲は理嘉にそう返す。
「へぇ。じゃあ、手早くそれで食うか」
「そう言うと思って、醤油を持ってきて――」
 理嘉が頷くのを見て、湊偲は持参した醤油を取り出す。
 だが絶対零度地帯の寒さの前に、醤油も凍り付いてしまっていた。
「こ、凍ってる……」
「じゃあ仕方ねえ。食えばぽっかぽかになるんなら、このまま食おうぜ」
 肩を落とす湊偲の背を叩いて、理嘉は何とか一口に出来そうな鉄火ツナサーモンの身を手で掴んだ。
「最初の一口が噛めない冷たいで、ジゴクなだけだろ?」
「まあ……そうですね」
 理嘉の言葉に気を取り直し、湊偲も小さな鉄火ツナサーモンの身を掴むと、二人は同時に一口で放り込んだ。
 まず歯と舌にきーんっとした冷たさが伝わり、身が舌に張り付く。口の中にドライアイスでも入れたかという冷たさが充満するが――2人はそこを堪えた。
 そこさえ堪えれば、徐々に鉄火ツナサーモンの身が口の中で溶けてくる。舌が自由に動くようになる頃には、身から脂の旨味が溶けだしていた。
「凍ったままでも、いけるじゃん」
「……意外と食えるっすね」
 優に1分以上をかけて口の中で溶けていった鉄火ツナサーモンを飲み込み、理嘉と湊偲は思わず顔を見合わせる。その頃には、身体もポカポカ温まっていた。
「でも……あー、ご飯が欲しい」
「ご飯も良いけど、TTS、フィッシュバーガーにも良いんじゃねえか?」
 それでも物足りなさそうな湊偲に、理嘉はジャンクフードの思い付きを伝える。
「厚めに切ってさ。照り焼きとか、フライにしてタルタルソースとか」
「フィッシュバーガー! そう言う事なら、凍ったままお持ち帰りっすね」
 理嘉が並べる鉄火ツナサーモンの食べ方に、湊偲が青い前髪の奥で目を輝かせた。湊偲だって、バーガーは好きなのだ。
 だが――。
『あーん? 何を持ち帰るって?』
『何か良いもんが出たんだろ?』
『山賊ってのは、そういうのに鼻が利くんだよぉ!』
 今頃になってのこのこ出てきた山賊達が、2人の邪魔をせんと阻む。
 まず毛皮でいい気になってる山賊をどうにかするのが先決だ。
「にーさんらよろしく!」
 理嘉が呼びかけると、何処からともなく現れた透明度の高い細身剣を持ったどこかのゲームの剣士キャラ64人が山賊をぐるりと取り囲み。
「シャチのショーの始まりっす!」
 O・O――オルキヌスオルカで湊偲が召喚した巨大なシャチが、剣士の輪を跳び越えて山賊達に頭上から食らいつく。
『氷の剣技だと? だがこの毛皮があれば――』
『ちょ、ま、数多い……』
『ぎゃー! 食われ……』
「あ、理嘉さん。そっちの身も結構大きいっすよ」
「持てるだけ持ってくか。ルシルに土産代わりに持ってくのもありじゃね?」
 剣士とシャチに蹂躙される山賊を軽く無視して、湊偲と理嘉はお持ち帰りの鉄火ツナサーモンをせっせと荷物に詰めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

冴島・類
鏑木さん(f22508)と

謎味覚味わいに来たら
いやぁ、こりゃ髪も凍るんじゃ

鏑木さん、大丈夫……じゃないか!
ないな!
毛皮剥ぐ前に寝ちゃまずいですよっ
川渡る前でせーふ…

凍る前に慌ててツナサーモンがある位置を
薙ぎ払いで削り出し、凍ってる塊は火糸で溶かして、外側炙ってタタキにでも

食べたらぽかぽかとのことだけど
先に熱戻るのをどきどき見守ってから
僕もいただきます
お、これは、脂がのってる
米も良いけど酒の進む味では?
サクで持ち帰れないかな(毛皮<食い気

元気が出たら、狩りですね
煙で足が止まったら、踏み込み糸で絡め転がし
切れ端でも引っ剥がして後ろにぽい
きゃっちは任せましたー!(ぶんぶん)

ふふ、楽しそうだし良かった


鏑木・寥
冴島サン(f13398)と

家にあるだけ着てきたが、
これだけ着てもまだ寒い。滅茶苦茶寒い

………
はっ。今一瞬意識が。桜の花が冬眠体制に
いや大丈夫
ちょっと春の川らしき物が見えただけだ

この氷の大地に炎が……
生き返るような気持ち いや死んでないけど
じゃあこれはタタキをすると聞いたので持ってた調味料
醤油と生姜と葱(勝手に火を使って解凍)

いけるかな?そろそろ
恐る恐る口をつける
………あー。確かに。酒も持ってきたら良かった
持って帰ってみるか?鮮度とか大丈夫かな
いいつつ既に舌が刺身とポン酒

じゃ、あったまってきたところで一攫千金毛皮ツアー
煙で足止めどうぞ。良い夢見ろな
よーーしおかねだーー(毛皮キャッチ)



●桜は寒さに弱いので
「おお……これが謎味覚の魚か」
 硬い氷の向こうに見た事もない魚影2つを見つけ、目を瞬かせる。
「いやぁ、こりゃ髪も凍るんじゃと思うたが。何とか見つけられたな、鏑木さ――」
 霜が付いて白くなった睫のまま類は隣に視線を向けると、少し前までは着膨れて隣を歩いていた鏑木・寥(しあわせの売人・f22508)の姿が、そこにいなかった。
「……」
 数mほど後ろで、桜の枝と脚が生えてる布の塊状態の寥が立ち止まっている。
「鏑木さん、大丈夫……じゃないか!?」
「…………はっ」
 類がガクガクと全力で揺さぶると、寥がすぽっと頭を出してぱちりと目を開けた。
「今、一瞬意識が飛んでた? 桜の花が冬眠態勢に」
「うん、大丈夫じゃないな!」
 開いた距離からして、恐らく寥が意識飛んでたのは一瞬と言える程短くはない。
 おそらく一瞬以上に飛んでたであろう寥の様子に、類は慌てて見つけた魚の方へ引っ張っていく。
「いや大丈夫。ちょっと春の川らしき物が見えただけだ」
「川渡る前でせーふ……」
 何処も大丈夫じゃなさそうな寥の言葉を背中に聞きながら、類は此処で鉄火ツナサーモンを見つけられて良かったと、胸中で息を吐く。
 とは言え、まだまだ安堵してなどはいられない。

「燃えよ、祓え」

 類が指先を、鉄火ツナサーモンが封じられた氷に向ける。指先より伸びる赤い絡繰り糸から、ボゥッと炎が生じた。
 類が火糸を薙ぎ払って氷を削り、それで少ないと見れば火糸を氷塊に巻き付けじわじわと溶かしにかかる。
「この氷の大地に炎が……」
 ミノムシ状態の寥が、炎の熱を求めてもぞもぞと寄っていく。
「生き返るような気持ち。いや死んでないけど」
 いや、死にそうでしたけど――と寥につっこみたくなったが、類はその言葉を飲み込んで、代わりに糸を1本、寥の方へと垂らしたままにした。
 業滅糸。
 絡繰り糸より炎を放つこの力は、ヤドリガミである類が本体の鏡が祀られていた社をそこで見た沢山の縁と共に焼け落ちた後、人の形と共に得たものだ。
(「それが今、こうして凍える仲間を暖める熱となるとは。この力を得た当時には思いもしなかった気がしますね」)
「全く。毛皮剥ぐ前に寝ちゃまずいですよっ」
 そう胸中で呟きながら、類は溜息交じりに寥に笑みを向ける。
「いやすまない。家にあるだけ着てきたが、これでも滅茶苦茶寒くてね。この寒さだと、キセルも火が付かないし……」
 炎の熱で大分温まったのか、寥はようやく顔を完全に出していた。
 まあ、桜とは寒さに弱い植物だ。例えばソメイヨシノ種の場合、凡そ-24℃が限界の寒さだとされている。桜の精の寥にとっては、殊更きつい環境かもしれない。
「あ、そうそう」
 もぞもぞと着ぶくれた中から、何かが入った小瓶を3つ取り出した。
「醤油と生姜と葱。タタキをすると聞いたので持ってた」
 寥は特に凍ってしまっている醤油を炎に近づけ、溶かしにかかる。
「そろそろ?」
「じゃあ、仕上げちまいますか!」
 食欲はありそうな寥に笑って、類は仕上げにかかる。糸から放つ火の勢いを上げて一気に氷を溶かすと、逆に火勢を抑えた糸で1匹を絡め取って、氷の中から引っ張り出す。
 短刀『枯れ尾花』で腹を割いて腸と余分な鰭だけ落としたら、再び火勢を上げた火糸を鉄火ツナサーモンに巻き付け表面を炙っていく。。
 じゅぅっ――糸の隙間から脂が焼ける音と匂いが昇って来たところで糸を解けば、お頭付きのままで炙られた鉄火ツナサーモンのタタキが出来上がっていた。

 流石にミノムシ状態では食べにくかったようで、ちょっと着ぶくれているくらいになった寥が、恐る恐ると切り分けられた鉄火ツナサーモンに箸を伸ばす。
 それを見守る類も、思わずゴクリと唾を飲んでいた。
 もしも聞いていたような効果がなければ――寥は此処から帰れないかもしれない。
 だが、そんな杞憂は直ぐに消えた。
 ――どうせ死なないから。
 などと言って、普段は週に一度しか食事をとらない寥が、無言で二口、三口と食べ続けて出したのだ。
「冴島サン。これ行けるぞ」
「それは良かった。じゃあ、僕もいただきます」
 寥の言葉と様子にようやく本格的に安堵して、類も鉄火ツナサーモンに箸を伸ばす。
 一瞬、肉を食べたかと思う歯応え。だが肉ほどの硬さはなく歯がすっと入り、口の中に脂が広がっていく。
「お、これは、脂がのってる」
 かといって、これだけを食べてていても口の中がしつこくならない良質の脂。
「じゃがこれは白米が欲しくなる――……いや、米も良いけど酒の進む味では?」
「……あー。確かに。酒も持ってきたら良かった」
 もぐもぐと咀嚼しながら類が呟いた言葉に、寥も首を縦に振る。
(「タタキも良いが酒の肴にするなら刺身も。ポン酒と刺身。燗も行けるか?」)
 頷いてしまえば、酒があればと言う想像が膨らむ。舌が、それを求めてしまう。
「サクで持ち帰れないかな」
「持って帰ってみるか?」
 類と寥は、ほぼ同時に同じ事を口走っていた。
「鮮度とか大丈夫かな」
「多少は落ちるやもですが」
 寥の疑問に、類はやや不安げながら返す。
 まだ半ば氷から出しただけ鉄火ツナサーモンも1匹残っている。あれだけ凍っているのだから、持ち帰れない事もないだろう。
 類と寥は顔を見合わせ頷き――。
『見つけたぜぇ! 猟兵!』
『何だぁ、その魚。よこせやぁ!』
 そこに山賊数名が現れた。
「カモが毛皮背負ってやってきた。一攫千金毛皮ツアーで探す手間が省けたな」
 すっかり身体の熱が戻っていた寥は、山賊達に薄い笑みを向けて、火を付けたキセルを吹かせて紫煙を燻らせる。
『ああ、カモはそっち――』
「良い夢見ろな」
 言いかけた山賊の声が、紫煙に包まれた途端に途切れた。
 一場春夢――ハルノヨノユメ。
 寥が吹かせた紫煙は、煙に巻いたものに幸せな幻を見せるまじないの煙。
「それじゃ、狩りますか!」
 どんな幻を見ているのか。虚ろな笑みを浮かべて足を止めた山賊達に、類が踏み込み絡繰り糸を絡めていく。
「きゃっちは任せましたー!」
 類がぶんっと腕を振るえば、糸が山賊達の纏う毛皮をぽーいっと引っぺがして飛ばしていく。
「よーーし、おかねだーー」
 宙を舞う不凍熊の毛皮に、まさに目の色変えた寥が手を伸ばした。
 凍ったままの鉄火ツナサーモンもこの毛皮に包めば、身体を冷やさずに持ち帰ることが出来るだろう。それ以上に、帰りに凍える心配も無くなる。
 代わりに毛皮を失った山賊達は、幸せな夢を見たまま、自らが凍えている事にも気付かずに骸の海へ還っていくだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ガーネット・グレイローズ
先日のガイオウガ戦とは真逆だな。
極寒の中で山賊退治とは、ルシルも大変な仕事を頼んできたな。

例の如く宇宙仕様マシンウォーカーに乗り込んで出撃
氷の惑星でも活動できるようカスタムを施しているが、
どこまで耐えられるかな。

マシンに<氷結耐性>の改造装備を施し、
鉄火ツナサーモンを腕部ヒートクローで解体し始める。
出力を上げ過ぎると身をボロボロにしてしまうから、
まずは表面を熱であぶり、少しずつ氷が溶けて
柔らかくなるのを待ってから作業開始。
調理はあらゆる環境で燃える【パイロキネシス・α】の炎を使う。
これは<念動力>で自由に操れるので、
山賊との戦いにも役立つ筈。
その下卑た叫びを止めないと、消し炭にしてやるからな。



●性能が良過ぎたんだ
 ガシャン、ガシャンッと金属の足音を響かせて、二足歩行戦車が氷の大地を往く。
「極寒の中で山賊退治とは、ルシルも大変な仕事を頼んできたな」
 マシンウォーカーの中で、ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)は溜息交じりに独りごちていた。
 モニターに出た外気温は、ばっちり『-273.15』の表示が出ている。
「先日のガイオウガ戦とは真逆だな」
 つい最近見た高温との温度差に、思わず苦笑する。
 とは言え、今回はそんな極地の中でも、マシンウォーカーの中は静かなものだった。
 元々、マシンウォーカーは様々な未開惑星調査用に開発したものだ。その中には、氷の惑星と言う想定も入っている。
 太陽の様な熱エネルギー源がない宇宙は、絶対零度は珍しくない。
「どこまで耐えられるか、丁度いい運用テストだな」
 更にガーネットは今回、マシンウォーカーの機体内部と外部の気温的な遮断能力を特に低温方面に高めてる改造を施していた。
 先日の地獄の様な高温環境での戦いを活かした結果だったのだが――。

「あれか――」
 十数分は歩いたか。
 マシンウォーカーのレーダー反応した氷塊に、ガーネットは外部カメラを向けてズームする。モニターに、身体はマグロの様で口はサーモンの様な魚の姿が映し出された。
 鉄火ツナサーモンで間違いあるまい。
「氷の中から掘り出すなら、これだな」
 ゴォォォッと、マシンウォーカーの腕部から圧縮した細い炎が伸びる。
「氷を溶かすだけなら、もう少し出力を抑えるか」
 ヒートクローが氷をみるみる溶かすのを見て、ガーネットはその勢いを弱めた。
 鉄火ツナサーモンの身まで、高熱でボロボロにしては意味がない。少しずつ氷塊を溶かして、マシンウォーカーの腕が入る隙間を開ける。そこから、鉄火ツナサーモンの周りの氷を溶かして、氷塊から外に引っ張り出す。
「……」
 完全に氷の外に出したところで、ガーネットはマシンウォーカーの中で目を閉じた。
 機体の周囲に、パイロキネシス・αの炎が浮かび上がる。
 サイキックエナジーで生み出した炎は、ガーネットの精神に依存している。どんな環境でも燃える炎だ。
「さて、あとは炙って食べるだけ――あ」
 炎で鉄火ツナサーモンを炙り始めたそこに至って、ガーネットは気づいた。

 どうやって食べるのか――という問題に。

「……出るしか、ないのか。この外にっ!」
 パイロキネシスの炎でマシになったとは言え、マシンウォーカーの外はまだまだ猟兵でも生身はきつい超低温である。
 流石にガーネットも、そこに出るのは躊躇う。
 だが出なければ、鉄火ツナサーモンに手が届かない。
 マシンウォーカーの氷結耐性を高めたが故に、此処まで気づかなかった問題。
「むぅ……」
 ガーネットもすぐに結論を出せず、戦車の中でぐるぐると思案する。
『おお、なんだありゃ!』
『猟兵のもんか』
『それよこせやぁ!』
 そこに響く山賊の声。マシンウォーカー自体の珍しさに、ギラーンと賊っぽく目を輝かせて向かってくる。
「ええい、喧しい。私は今考え事をしているんだ。下卑た叫びを止めないと、消し炭にしてやる!」
 ガーネットの苛立ちが、パイロキネシス・αの炎に変わる。
『この炎、どこから……!』
『ひいぃ、熊の毛皮が燃えちまう!』
『熱い! いや寒い!』
 鉄火ツナサーモンを炙る以上の火力に焼かれて悶えて、毛皮を失いのたうち回る内に山賊達がどんどん凍って力尽きていく。
 その光景は、ガーネットに新たな事実を気づかせる。
「……ここで食べる必要、ないのでは?」
 ガーネットの鉄火ツナサーモンが、お土産に決定した瞬間だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月30日


挿絵イラスト