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帝竜戦役⑰〜停滞乗り越えし者にこそ

#アックス&ウィザーズ #戦争 #帝竜戦役 #群竜大陸

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●憂懼
 己の力の停滞を感じる。
 それは恐怖である。どれだけの研鑽を重ねたとしても、時間は己の味方ではない。自身の能力の限界を知った時、それは頂点ではなく停滞であるということを自覚した。
 背後より迫りくるは、己を滅せんとする『勇者』たち。
 ―――奴らの限界はどこだ?己を越えていくのか?

 恐ろしい。どうしようもないほどに定められた己の限界を『勇者』たちは尽く越えていく。
 考えたこともなかった。
 己の力の限界が訪れるということを。それを停滞ということも。これ以上最早、どこにも行けることもできないのだということも。

「否。我は限界の先を行く!これより先へ! この停滞を打破して進む! 我はここでは終わらぬ! ここで終われぬ! 我を追うな! 我を乗り越えるな! 我を―――!!」
 氷皇竜メルゼギオスは約束の地と呼ばれる美しき平原を凍りつかせ、その中心にて咆哮する。
 それはかのオブリビオンが、その草原にて咲く草花より放たれる『恐怖』に負けたという証であった。
 竜の体が規制されていく。『力ある苗床』として、凶悪なる力を発露する。
 それは奇しくも、メルゼギオスが求めて止まなかった『停滞』を打破する限界を超えた力の発現であった―――。

●帝竜戦役
 ナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)がグリモアベースにて集まってきた猟兵たちを出迎える。
 一礼をして彼らを出迎えるのも、これで何度目だろうか。
 帝竜戦役が勃発してからというものの、猟兵たちは忙殺されるように戦いの場へと赴いている。
「お集まり頂きありがとうございます。今回は、約束の地と呼ばれる郡竜大陸の一角に置いて、氷皇竜メルゼギオスという竜のオブリビオンを討伐していただきます」
 約束の地。
 美しい草原であるが、群竜大陸で最も危険な場所の一つである。
 全ての草花が強烈な『恐怖』を放ち、それに負けたもの、自らの心にそれがあることを認めないものに寄生し、「力ある苗床」とするのだ。
 オブリビオンである氷皇竜メルゼギオスは、すでに『苗床化』しており、通常のオブリビオン時よりも凶悪な戦闘力を得ているのだ。

「もともと、かつて勇者一行に討たれた竜です。氷を司る力を持つ竜であり、物体を凍結させる力、氷の棘を追尾弾のように放つ力……負傷した傷を癒やし、負傷の度合いに応じて強力な氷の鎧を纏い戦闘力を上げる力……そのどれもが氷皇竜と呼ばれるに相応しい力を持っています」
 元より、相当強力なオブリビオンであることは間違いない。
 さらに『苗床化』することによって、凶悪な戦闘力まで引き上げられているというのだから、これに対応していかねばならない。

「さらに、この地に咲く草花は『恐怖』の感情を放ちます。それは『停滞』する恐怖……後にも先にも行けない……それが己の能力であったり、自身の停滞により置いていかれるという恐怖……そういったものであるのかもしれません」
 立ち止まってしまうことは人生において、一度や二度経験することであろう。
 何をやっても上手く行かない。その打破の方法がわからない。
 自身だけが置いてけぼりを食ってしまう……そんな焦燥感とも取れる恐怖。

 それこそが、今回の約束の地に咲く草花が放つ『停滞による恐怖』である。
「みなさんには、この草花が放つ『恐怖』の感情を認め、克服してオブリビオンと戦って頂きたいのです。敵はオブリビオン、そして、己の心にある恐怖……この二つとの戦いとなるでしょう」
 克己する力。
 それこそが今回の戦いにおいて必要とされるものであるのだ。
 いくら敵の能力がわかっていたとしても、こればかりは戦いに赴く猟兵自身が乗り越えなければならない戦いである。
 ナイアルテは今一度集まった猟兵に頭を下げる。

「厳しい戦いであるとわかっています。ですが、それでも皆さんであれば……私はそう思わずにはいられないのです」
 これまで何度も猟兵の皆を戦いへと送り出してきた。
 だから今回も。そう思ってナイアルテは猟兵の皆の背中を送り出すのだった―――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『帝竜戦役』の戦争シナリオとなります。

 約束の地へ進撃し、集団戦にて氷皇竜メルゼギオスを打倒しましょう。

 ※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。

 プレイングボーナス……「恐怖」を認め、それを克服する。

 ※この戦場で手に入れられる財宝について。
 宝物「約束の花」……触れた者の「思い」を吸収し、増幅した上で次に触れた者に感染する、おそるべき「感情汚染植物」です。告白に使えば相手を奴隷化しかねない危険な代物ですが、一房金貨1200枚(1200万円)で売れます。

 アイテムとして発行するものではありません。ロールプレイのエッセンスとして扱ってください。

 それでは、帝竜戦役を戦い抜く皆さんのキャラクターの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『氷皇竜メルゼギオス』

POW   :    アブソリュート・ゼロ
【物体を一瞬で分子レベルまで氷結させる冷気】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    アイシクル・ミサイル
レベル×5本の【標的を高速追尾する氷結】属性の【鋭く尖った氷の棘】を放つ。
WIZ   :    アイス・リバイブ
全身を【無限に再生する氷の鎧】で覆い、自身が敵から受けた【負傷を瞬時に回復し更に負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。

イラスト:ハギワラ キョウヘイ

👑8
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はノエル・スカーレットです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ゴロウザエモン・サンモト
停滞の恐怖…そんなものはただの日常でございました。故に、それの恐怖はとうに知っております。
だが!我は漸く自由を得た!
そしてこの自由をこれからも我に保証してくれるのが汝ら悪逆のオブリビオンである!汝も我が自由への通行手形となれ!

絵筆で【早業】により長大な木綿の布に手足を生やした【アート】を描きUC発動。来やれ『一反木綿』。そして空手形により一反木綿に『敵頭部に巻きつき窒息させろ』という決まり事を強制。
絵筆を手斧に換装し加重の【呪詛】により停滞した敵頭部に一反木綿を巻きつかせ、そのまま我も手斧で頭部を【部位破壊】。
そしてそのまま再生し氷の鎧で頭が覆われると、どうなると思う?

自動窒息君の完成である。



 約束の地。
 その大地の名が何を持って、そのように名付けられたかはわからない。
 けれど、その大地に咲く草花が放つ感情……恐怖は、群竜大陸において最も危険な大地であることを知らしめる。
 この地においてオブリビオンも猟兵も、その『恐怖』から逃れることはできない。それを認めぬ者、受け入れられぬ者、克服できぬもの。
 それらは全てこの地に咲く草花に寄生され、苗床とされる。例外なく、だ。
 氷皇竜メルゼギオスもまた、己の身に宿る『停滞』の恐怖に打ち勝つことができず、それから逃れようとして……逃れられぬままに『力ある苗床』として、草花に寄生されたのだ。
「我は停滞などしておらぬ! 我は! 我は! 力の終着点まで到達する者ぞ! 我が力の頂点はここではない! ここではないのだ!」
 その絶叫を聞くものは、その荒れ狂う力の奔流にさらされることだろう。

「停滞の恐怖……そんなものは、唯の日常でございました」
 ゴロウザエモン・サンモト(『魔王』山本五郎左衛門・f27245)のつぶやきが、約束の地に響く。
 彼女にとって、『停滞』はこれまでの囚われの時間である。長く、苦しい、何も起こらない。何も発生しない。何も。何も。何も。
 その苦痛、恐怖。それは彼女の心のうちにこそ存在し、それを彼女は等に乗り越えてきているのだ。

「故に、その恐怖はとうに知っております。だが! 我は漸く自由を得た!」
 彼女の『停滞』……囚われの日々は終焉を迎えた。彼女に掛けられた疑いも、何もかもが『停滞』の象徴であったのだとすれば、それはもはや彼女を縛るものではない。
 一度は心折れた。
 だが、彼女の心に強く刻まれた『二度と囚われないために正しく生きる』という柱はもう二度と折られることはない。

「そして、この自由をこれからも我に保証してくれるのが汝ら悪逆のオブリビオンである! 汝も我が自由への通行手形となれ!」
 ゴロウザエモンの声が、言葉が、彼女の『名』を現す。すでに『停滞』を超越せし者。
「我の力の頂点はここではない! 我に追いすがるな―――!」
 氷皇竜メルゼギオスの咆哮が響き、その巨躯を羽撃かせる。
 見上げ、ゴロウザエモンの超技術により一瞬で宙に描かれる絵。それは早業というには、あまりの超スピードと技術。
 描かれたのは、一反木綿。長大な木綿の布に手足を生やしたアート。それを見たものは、大体が不可思議な顔をするだろう。ある世界の者にとっては、ああ、と頷くものであったかもしれない。
 その長き布の如き生物を描いたのはゴロウザエモンのユーベルコードのトリガー。
 悪魔召喚「魔王の一筆」(マオウノイッピツ)。絵に描写された内容の術を操る悪魔……その名を彼女が決定することによって、全ての準備が整うのだ。

「来やれ『一反木綿』……!」
 ゴロウザエモンが描いた長大なる一反木綿の姿をした悪魔は、ふわりと彼女の前に浮かぶ。
「我が求めるは、『彼奴の頭部に巻き付き窒息させろ』の約定である!」
 彼女の言葉に一反木綿はふわりと宙に弧を描いて、氷皇竜メルゼギオスへと向かう。
「我も参ろう!いざ―――!」
 ゴロウザエモンの手にした魔王の絵筆が、万物を砕くと言われる不壊なる戦鎚へと変ずる。さらに槌頭が乾燥され、大戦斧へと姿を変ずる。
 加重の呪詛により、その戦斧の槌頭が重量を増し、大地へと落ちると圧倒的重量の前に大地が割れる。

 構える。自由とは、己が追い求めたもの。彼女が囚われ、何度願い、何度手折られたかわからぬ希望。これを掴んだ己の手は、オブリビオンを討つ度に掴み続ける。
 此度もそうだ。オブリビオンを倒す。そのために彼女はこうして戦っている。草花が放つ恐怖など、彼女はとうに克服し、乗り越えているのだ。
「それを克己できぬものに、我が負ける道理なし!」

 一反木綿の体がメルゼギオスの頭へと巻き付く。藻搔くメルゼギオスの姿を滑稽だとは思うまい。
 跳躍し、巨躯のメルゼギオスの頭部へと手にした魔王の手斧たる大戦斧を振り下ろす。その一撃は一反木綿を避けて、その頭蓋を砕かんばかりの勢いで傷つけ、絶叫じみた咆哮を響かせるのだ。
「グ、アァァァッ―――!」
 その絶叫を受け、メルゼギオスの体が氷に鎧われていく。
 だが、傷つけられた頭部を再生しようとした時、氷で覆われたのは巻き付いた一反木綿毎である。
 そうなれば、どうなるか。

「自動窒息君の完成である」
 窒息を回避するためには、ユーベルコードを解除する他無い。だが、そうなれば、次なる猟兵たちの攻撃に傷ついたまま挑まねばならない。
 その選択は、もはやゴロウザエモンの掌の上で踊るしか無いメルゼギオスにとって、停滞以上の恐怖となって襲うのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

宮落・ライア
上手くいかない。限界。怖いね。わかるよ。
けれど!そうであったとしても!
諦められないんだろ!
私は英雄に!ヒーローになるんだ!
諦めて、止まってなんていられるか。

【自己証明】で自己強化
呪縛を引けば【止まる事なかれ】で置換

ボクが目指しているのは果てなんだ。そう簡単に届きはしない事なんてわかってるんだ。幾つもの壁がある事もわかってる。
だから、諦める事だけはしない。
ボクより先に行ったのがいるのなら、ボクに行けない道理なんて無い。

覚悟を込めた、気合いと怪力による森羅万象断。
氷の棘は捨て身で受ける。激痛耐性、継戦、限界突破で痛みを超える。



 真に恐怖すべきは、停滞であったのかもしれない。
 閉塞感とも言うのかも知れない。自身の立ち位置ですら、危うくわからなくなってしまいそうなほどの不安。
 それを常に抱えていられるほど、只人の心は強くはない。
 約束の大地において、草花は様々な恐怖を放つ。それは草花の数だけ種類があり、この地において放たれる恐怖は『停滞』である。
 氷皇竜メルゼギオスは咆哮する。
「我が! 置いていかれるだと!? 我は未だ頂点にあらず! 停滞にあらず! 我は、勇者の壁ではない! 我はその先をゆく者であるはずだ―――!」
 その咆哮は、かつて勇者一行に滅された時と同じく放たれた咆哮である。己の抱えた停滞を認めず、受け入れず、克服できぬ者が辿るのが『力ある苗床』となる末路。
 メルゼギオスは、咆哮と共に鋭く尖った棘の如き、アイシクルミサイルを解き放つ。

「上手く行かない。限界。怖いね。わかるよ」
 宮落・ライア(ノゾム者・f05053)は、真っ向から恐怖と、メルゼギオスに対峙する。
 鋭く尖った棘であるアイシクルミサイルが空を埋め尽くさんばかりに広がり、ライアを狙っていたとしても、彼女は竦まない。
「けれど!そうであったとしても!諦めきれないんだろ!」
 彼女にとっての停滞とは、諦めて止まることである。
 それは彼女の願いを全て無に帰すことであると、彼女自身は知っている。だからこそ、彼女はどれだけの脅威、どれだけ強大なる力の前であっても、立ちすくもことはしない。
 なぜなら―――。

「私は英雄に!ヒーローになるんだ!諦めて、止まってなんていられるか」
 彼女の言葉は、自己の証明である。彼女の体はすでに違えられぬ期待と心の内に響き続ける祈り……そして狂気にも似た決意が宿されている。
 それは彼女の身体能力を引き上げる。呪縛の如き恐怖など、彼女の心の内より響く祈り―――止まること無かれと叫ぶ祈りが、彼女を縛ることなど出来ぬ者へと変じさせる。

 それは克己せし者の姿である。
 一歩を踏み出す。その一歩無き者は、踏み出すこと能わず。それさえも出来ぬ者は『停滞』に飲み込まれ後ににも先にも進めなくなる。
 恐怖はない。
 アイシクルミサイルが乱舞するようにライアへと降り注ぐ。駆け抜ける。痛みなんて知らない。
 どれだけの氷の棘が彼女の体を貫こうが、ライアは歩みを止めない。何故なら、最初の一歩をもう彼女は踏み出しているから。
「ボクが目指しているのは果てなんだ。そう簡単に届きはしない事なんて、わかってるんだ。いくつもの壁があることもわかってる」
 氷の棘が、ライアの体を穿つ。それでも止まらない。
 メルゼギオスの咆哮が約束の大地に響き渡る。けれど、それで身を萎縮させる必要なんてない。
 彼女はすでに、縛ることなど出来ぬ者であるが故に。

「だから、諦める事だけはしない」
 ユーベルコード、森羅万象断(シンラバンショウダチ)の輝きがライアの刀へと収束する。構える。
 これより先は、どれだけの激痛が彼女を襲うかわからない。10秒。その間に彼女に打ち込まれる氷の棘は彼女の体をずたずたにするだろう。
 だが、それでも彼女の言葉は止まらない。
「ボクより先に行ったのがいるなら、ボクに行けない道理なんて無い」

 氷の棘が降り注ぐ。
 だが、彼女のユーベルコードはすでに完成している。
 いつか見た記憶。まだ届かぬと知っている。けれど、それでも『まだ』だ。その想いは、『いつか』へと変わる。
 放たれるは裂帛の気と共に斬撃となって、メルゼギオスへと放たれる。
 限界を超えた一撃は、降り注ぐアイシクルミサイルすべてを薙ぎ払っても尚、メルゼギオスの龍鱗を砕き、引き裂き、その体へと深く癒えぬ傷を刻み込む。

「鋼も、山も、海も、空も、空間も…断ち切ったあの記憶にはまだ届かない。それでも『まだ』だ!ボクは『停滞(と)』まらない―――!」
 それは、彼女の決意。
 英雄に、ヒーローになると決意したものが一歩を踏み出せぬわけがないのだ。それを恐怖などで縛られる道理、何一つない―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジーク・エヴァン
…俺の停滞は、ずっと弱いままでいること、だと思う
俺だけが生き残ってしまったあの日のように、弱いままの俺には何も出来ないんじゃないか?
そんな不安ばかりだ

でも、猟兵になって、先輩の猟兵達の姿を見て知った
皆、何度も負けて失敗して、勝って成功して、皆で少しずつ乗り換えてる
誰かの戦う姿を見て、新しい戦い方や技のヒントを得ることもある

俺はまだ弱い
でも同じように弱さに抗う人達がいる!
俺は1人だけで弱さに立ち向かうんじゃないんだ!

氷の刺はシールドバッシュで弾き盾受けで受け流し、傷は激痛耐性で耐える
氷の鎧は怪力に物を言わせて鱗砕きと角砕きで鎧砕き、傷口をえぐる

そして冷気には【巨竜退ける砦盾】を結集して受け止める



 何を持って己の停滞とするか。
 この約束の地と呼ばれる平原に咲く草花は、その『停滞』の恐怖を以て寄生しようとする。
 氷皇竜メルゼギオスもまた、この草花の餌食となった者である。『力ある苗床』となったメルゼギオスの力は凶悪そのものである。
 天に広がるアイシクル・ミサイルの数は、それこそ空を覆うほどに展開されている。
「我は頂点を駆け抜ける最中である! 我は停滞などしておらぬ! 我を追い越すこと叶わず! 我の先をゆくものは何人たりとて許されるものではない!」
 その咆哮は、狂乱に満ちていた。
 認められない。その恐怖を己が抱いているなどと、認められない。オブリビオンである身となった今でも尚、その恐怖から逃れることができない。
 それすらも認められないのだ。

「……俺の停滞は、ずっと弱いままで居ること、だと思う」
 ジーク・エヴァン(竜に故郷を滅ぼされた少年・f27128)の脳裏に浮かぶのは、運命のあの日。竜のオブリビオンの軍勢によって壊滅した隠れ里。
 ただ一人生き残ってしまった。
 瞳に映るは業火。耳に残るは悲鳴。
「俺だけが生き残ってしまったあの日のように、弱いままの俺には何も出来ないんじゃないか?そんな不安ばかりだ」
 その独白は草花の放つ停滞の恐怖から引きずり出されたものであったのかも知れない。
 だが、それは真実だ。ジークが心の中に抱き続けていたものだ。だからこそ、その想いは真なるものであった。

 天を覆うはメルゼギオスの放った無数の氷の棘。圧倒的な力。凶悪な力だ。
「でも、リョウへになって、先輩の猟兵たちの姿を見て知った。皆、何度も負けて失敗して、勝って成功して、皆で少しずつ乗り越えてる。誰かの戦う姿を見て、新しい戦い方や技のヒントを得ることもある」
 それでも、ジークは己の弱さを知っている。知ったのだ。目をそらさなかったのだ。
 その真摯なる瞳は、いつだって前を向いていた。打ちのめされただろう。悲嘆に暮れただろう。
 けれど、彼の瞳は前を向く。己の弱さと真っ向から対峙する勇気がある。

「俺はまだ弱い。でも同じ様に弱さに抗う人達がいる!」
 ジークはヒーターシールドを構える。これでも足りない。氷の棘がジーク目掛けて一斉に飛来する。
 金属の盾が凄まじい音と衝撃とで傾ぐ。支える手と足の筋肉が軋む。倒れるな。倒れてしまえば、それまでだ。
 心のなかで己が叫ぶ。
 停滞は弱いままでいること。己はどうだ。停滞しているか。弱いままか。あの日、あの時、ただ一人生き残ってしまった日のままか!

「来たれ!竜の一撃を受け止めし鉄壁の軍勢よ!我と共に、集いて竜の進撃を弾き返せ!」
 いいや、違う。
 ジークのユーベルコードが輝く。
 それは、巨竜退ける砦盾(フォートレス・アイアス)。召喚されし、数多の巨大な盾たち。それは彼の力量に応じて数を増す。
 まだ自身は未熟かも知れない。弱いままであるのかも知れない。

 けれど、それでも、とジークは己を超える。足りないというのなら、今超えてみせる。
 氷の棘を盾で弾く。受け流す。自分ひとりでは盾を扱う術すらも磨けなかったことだろう。
 棘がこの身を貫いたとしても、構わない。心が折れぬ限り、己の盾は消えない。
「俺は一人だけで弱さに立ち向かうんじゃないんだ!」
 召喚した盾が一斉に一つに重なる。
 それは、その名の通り、巨竜を退ける巨大なる砦である。
「俺の心を鎧う盾じゃない!」

 進む。前へ進む。この盾は自身を守るためではなく。

「俺じゃない誰かを護るために―――!」
 合体せし巨大な盾は、それだけで圧倒的な質量を伴って、メルゼギオスの巨躯へとぶつかる。
 氷の棘を押しのけ、叩きつけられるジークの一撃。
 それは巨躯を傾がせ、彼の弱さを受け入れた強さを示すように、渾身の一撃をメルゼギオスへと叩き込むのだった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

高柳・零
POW
恐怖…ですか。今まで出来るだけ認識しないように戦って来ましたが…。

「自分は人を守る聖騎士です。だからこそ、その技を磨いて来ました」
盾を構えオーラ で全身を覆います

「それでも守れない時は沢山あります。間に合わない、力が足りない…前に出る事自体もいつだって怖いです。他の猟兵さんを見ていると、実は自分の守りは不要なのではと思う事もあります」
それでも前衛に出て味方を庇えるようにします

「ですが…皆さんは言ってくれます『一緒に居ると安心して戦える』と」
敵のUCが来たら、オーラ全開にして盾を前に出し無敵城塞を使います

「だから…自分は皆さんの盾で、聖騎士であり続けます!」
メイスの鎧砕きで敵を打ちます!



 草花が放つ恐怖は、『停滞』による恐怖である。
 その恐怖は、否応なしにこの地において引きずり出され、その恐怖を受け入れぬ者、克服できぬ者へと草花は寄生し、『力ある苗床』と化してしまう。
 それは猟兵であろうと、オブリビオンであろうと変わらない。
 氷皇竜メルゼギオスの咆哮は止まらない。それはメルゼギオス自身が、『停滞』の恐怖を認められず、克服することすらできなかったという敗北の証である。
「我は違う! 我の頂点はここではない! 我はこの先へ、もっと先へ! さらなる高みへと向かわねばならない! それこそが、竜たる務め!」
 だが、己の弱さを受け入れられぬ者に何かが得られることなどない。

 だからこそ、猟兵たちは、己の心のうちにある恐怖と向き合うのだ。
「恐怖……ですか。今までできるだけ認識しないように戦ってきましたが……」
 高柳・零(テレビウムのパラディン・f03921)はテレビウムの小さな体でありながらも、巨躯であるメルゼギオスの前に立ち塞がる。
 できるだけ意識しないようにしていた。己の小さな体で何が守れるのだろうと。

「自分は人を護る聖騎士です。だからこそ、その技を磨いてきました」
 円形の天霧の盾を構える。オーラが彼の体を包み込み、その襲い来る草花からの恐怖に打ち勝とうと構えるのだ。
 聖騎士に憧れ、目指し……そして、努力で才能を開花させたのだ。才能が努力を呼び込んだのではない。彼の努力こそが、聖騎士たる力を芽吹かせたのだ。
 だが、憧れと努力だけではどうにもならぬこともある。

「それでも守れない時は沢山あります。間に合わない、力が足りない……前に出る事自体もいつだって怖いです」
 そういつだって怖い。彼は恐れを抱く。けれど、それは己の、己だけの恐怖だ。他の誰にでも存在する恐怖ではあるけれど、それを誰かに預けたりはしない。
 そんなことは聖騎士のやることではない。
 しかし、心の中に疑念は湧く。
「他の猟兵さんを見ていると、実は自分の護りは不要なのではと思うこともあります」

 そう、必要ないのではないだろうか。それでも、と己の心が言う。
 それでも零は前に出る。その小さな体から勇気を振り絞って一歩を踏み出すのだ。それこそが、彼の聖騎士たる資質である。
 変えようのない、たった一つの資質。

「ですが……皆さんは行ってくれます『一緒に居ると安心して戦える』と」
 メルゼギオスの咆哮が響き渡り、物体を一瞬で分子レベルまで氷結させる冷気が放たれる。
 それはこの平原全てを飲み込まんとする冷気の波であった。
 恐れるな、と零は前に踏み出す。ここで己が踏みとどまらなければ、他の猟兵達を護ることなどできない。
 彼らが言ってくれた言葉は、絶対零度の冷気など物ともしない暖かさを彼の心に灯した。

「―――だから……自分は皆さんの盾で、聖騎士であり続けます!」
 彼のユーベルコードが輝く。
 無敵城塞によって、構えた盾がオーラを纏い広がっていく。それは彼の後方に控える猟兵達も何もかも護る無敵の盾。
 冷気はすべて盾の外側に押しやらられ、阻まれる。このユーベルコードの前に攻撃が貫き通されることはない。
 絶対の護りの盾を構え、零は動けなくなる。それは恐怖に足が止まったわけでもなければ、メルゼギオスの放ったユーベルコードに依るものではない。
 彼の勇気が、ユーベルコードが、絶対無敵の防御の代償に動けなくしているだけなのだ。

「だから、これからも―――自分は、聖騎士であることを誇るのです!」
 冷気が完全に防がれた瞬間、零はユーベルコードを解除する。
 駆け出す。絶対零度によって凍結された草原の大地を踏み抜き、手にしたメイスを振るう。
 その一撃は、聖騎士の誇りと共にメルゼギオスを強く打ち砕くのだ―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

弦月・宵
時々思うんだ。もし、故郷が無事で、オレが猟兵になっていなかったらどんなかなぁって
もしかしたら、何にも考えないで周りに甘えて…甘えてることにも気づかなかったかも、って。
そう思ったらちょっと怖かった。

悲しくないわけじゃないけど、少しだけあの頃よりできることが増えた
躓くのはいつもの事!
多すぎて、立ち止まってなんていられないよ!

【UC:ブレイズフレイム】を身に纏って冷気を緩和するよ
そのまま氷皇竜も巻き込む!
炎は羅刹紋から出すイメージ。
勢いが足りないなら、剣にも纏わせて接近して斬りかかるよ
冷気ごと剣で切り裂くくらいのつもりで行くからね!
「君も、突っ立ってないで向かってきてみろよ!」なんて…ただの挑発だよ



 その恐怖は、過去のあり得たかもしれない可能性を想起させるのかも知れない。
 過去とは立ち止まって振り返るからこそ、過去である。
 走るということは前を向くということである。消して、走りながら後ろを向くものはいない。
 だからこそ、『停滞』の恐怖は人の歩みを止める。

 氷皇竜メルゼギオスもまた、己の力の限界を頂点と間違えたものである。それが限界故の頂点ではなく、停滞であったことに気がつけなかった。
 己が停滞しているなど、一欠片も思うことなどなかったのだ。
 何故なら、己は常に強者であったからだ。己の背中を追い、迫り、超えていく勇者一行の存在など、その剣の切っ先が背中に迫るその時まで自覚すらなかった。
「我を追い越すな! 我は強者なるぞ! 我の背中を取ろうと、いかに追いすがろうと! 我はまだ先へ! 先が! あるのだ!」
 だが、それを受け入れられぬからこそ、草花の放つ恐怖に負け、『力ある苗床』と化して、猟兵たちの前に立ち塞がるのだ。

「時々思うんだ」
 それは小さな独白であったのかもしれない。彼女、弦月・宵(マヨイゴ・f05409)の言葉は、小さく生じた、たらればであったのかもしれない。
「もし、故郷が無事で、オレがりょう猟兵になっていなかったらどんなかなぁって」
 ありえぬことであるとわかっていたとしても、振り返ってしまう。
 狂おしいほどに懐かしい過去。未だ心が平穏に包まれていたあの頃。
「もしかしたら、何も考えないで周りに甘えて……甘えてることにも気が付かなかったかも、って」
 それは十代の幼き者が考えるものではなかった。
 そんな、たらればでさえも甘えたことと自覚してしまう子供が居て良いはずがない。けれど、現実には宵はそうなのだ。
 甘えていたかもしれないと、自覚している。己がどれだけ恵まれた環境に居たか。そして、それを一瞬にして喪ってしまったことも。
 涙が枯れ果てるまで泣き果たして尚、彼女は立ち上がる。
 立ち上がった彼女でさえ―――。

「そう思ったら、ちょっと怖かった」
 恐怖を覚えるのだ。
 だが、彼女は恐怖を否定しない。拒絶しない。
「悲しくないわけじゃないけど、少しだけあの頃よりできることが増えた。躓くのはいつもの事!」
 受け入れる。その恐怖は、彼女の足を止めぬ原動力である。何も出来なかった自分を変える。何かができるようになる。それはつまづきから立ち上がることである。
 何度躓いてもいい。彼女の前には、彼女の先駆者たちがいる。

 そして、いつか己もまた、己の背中を追う誰かの為に。

 メルゼギオスの物体を一瞬で分子レベルまで氷結させる冷気が再び放たれる。
 それは拒絶のユーベルコードであった。恐怖を認めない。己にあるとは認めない。その拒絶は全て自分に帰ってくるというのに。
「多すぎて、立ち止まってなんていられないよ!」
 彼女のユーベルコード、ブレイズフレイムが地獄の炎を吹き上がらせる。それは彼女の羅刹紋より吹き出し、その身に纏う。
 走り出す。絶対零度の冷気がなんだというのだ。負けるわけがない。何度だって躓いてきたんだ。
 やり方はいつだって、試行錯誤であり、失敗もあるかもしれない。
「それでも―――!」
 弦月之呪から吹き出す地獄の炎が冷気を緩和させるも、それでも押し込められ肌を凍りつかせていく絶対零度の冷気。
 だが、彼女は進む。
 どれだけ傷つこうとも、痛みは糧となって新たなる地獄の炎を吹き上がらせるのだ。
 手にした幻鵺と銘討たれた剣へと地獄の炎が纏う。駆ける。一歩を踏み出す度に冷気を切り裂く地獄の炎。
 負けない。
「君も、突っ立ってないで向かってきてみろよ!」
 挑発だった。冷気の中心にあるメルゼギオスを一歩でもこちらに近づけさせようとした。けれど、そんな挑発なんていらなかった。
 自分が立ち向かえばいい。
 そのための一歩はすでに―――。

「その恐怖ごと―――! 切り裂く!」
 紅蓮の炎が剣より放たれ、メルゼギオスの放った絶対零度の冷気毎切り裂き、龍鱗を砕く。
 その一撃は、確かに宵の歩みを止められぬと証明したのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

迎・青
(アドリブ歓迎)
――全部、コワいに決まってる
うまくいかないのも、なにもできないのも
痛いのも、危ないのも、おっきなドラゴンも
…ボクが弱虫なのは、ボクがいちばんよく知ってる
ボクにとって、コワいのはふつうのことなんだ

だけど、コワいからって、あきらめない
帰らなきゃいけないとこも、行かなきゃいけないとこも
好きな場所も、会いたい人も、あきらめない
ボクは弱虫だけど、止まらない、よぅ!

「…あうあう、コワいけど、コワくない!」
己を【鼓舞】し、【B.B.B.】使用
飛んで相手の攻撃を回避し、風の【属性魔法】【全力魔法】で
相手の冷気を押し返しながら自分の攻撃を叩き込む



 その咆哮は、あまりにも強大なる力の奔流であったのかもしれない。
 約束の地に咲き乱れる草花の放つ恐怖は、放たれた『停滞』の恐怖を受け入れぬ者、認めぬ者を『力ある苗床』へと変ずる。
 それが如何なる理屈であるのかはわからない。けれど、事実として己の力の『停滞』を認められず、受け入れなかった氷皇竜メルゼギオスは、寄生され、苗床へと堕ちた。
「何故だ! 何故我を追い越していく! 我とあれらに何の違いがあるというのだ。あれらは脆弱なる人であるはずだ。我は選ばれし竜種。遅れをとる理由などないはずだ! だというのに! 何故!我は滅せられたのだ―――!」
 ビリビリと大気を震わせる絶叫。
 認められぬ『停滞』。認められぬものは、全てが足を止める。一歩も動けなくなる。前にも、後ろにも。進めなくなった者は、緩やかなる劣化という名の終わりがはじまるのだ。

「―――全部、コワいに決まってる」
 草花より放たれる恐怖は、その小さき身を震わせた。
 迎・青(アオイトリ・f01507)は、何も否定しなかった。怖いと思うことを認めることは、みっともないことであると思いながらも、強がることをしなかった。
「うまくいかないのも、なにもできないのも、痛いのも、危ないのも、おっきなドラゴンも」
 なにもかもが怖い。恐ろしい。
 その感情に揺さぶられる幼き心は、それでも涙を見せることはなかった。
 自分のことは自分が一番わかっている。それは草花の放つ恐怖が、彼の言葉を引き出していたのかも知れない。
 けれど、彼はそれを否定しない。じわりと、涙がでそうになる。口を一文字に引き絞って、メルゼギオスの巨躯と対峙する。
 見上げることも難しいほどの巨躯。その威容は恐怖を煽る。

「……ボクが弱虫なのは、ボクがいちばんよく知ってる。ボクにとって、コワいのはふつうのことなんだ」
 だからこそ、彼は恐怖を受け入れる。否定をしない。強がらない。恐怖は恐怖。それ以上でもなければ、それ以下でもない。
 受け入れた先にあるのは、踏破すべき恐怖への道。
「だけど、コワいからって、あきらめない」
 そう、その道への歩みを止めるのは絶望ではなく諦観。青は彼が欲する何もかもを諦めない。
「帰らなきゃいけないとこも、行かなきゃいけないとこも。好きな場所も、会いたい人も、あきらめない。ボクは弱虫だけど、止まらい、よぅ!」

 彼の瞳が涙に濡れていたが、こぼれはしなかった。
 それは彼が何もかもを諦めずに前を向いた証であった。その涙すらも凍りつかせんと、メルゼギオスから放たれるは物体を一瞬で分子レベルまで氷結させる冷気―――アブソリュート・ゼロ!
 メルゼギオスの無差別攻撃のユーベルコードである。
 草原を一瞬で冷気で包み、その冷気で持って猟兵である青を凍りつかせんと迫るのだ。
「あうあう、コワくない……コワくない!」
 彼の振り絞った勇気は、ユーベルコードの輝きである。
 発動したB.B.B.(ブルー・ブレイブ・バレット)は、青の体を美しく輝く空の色の如き風と共に覆う。
 空に舞い上がり、絶対零度の冷気を躱し、一直線にメルゼギオスへと向かう。まとった風は絶対零度の冷気を押し返すように放たれた風の魔法が彼の体と共にメルゼギオスへと突っ込む。

「コワくない……! 絶対に全部! 諦めない! ……諦めない!」
 押し返す冷気と共にメルゼギオスの巨躯へとぶつかる青く輝く風。開かれた掌に風が集まり、小さな青の体から溢れて止まぬ勇気と共に一気に爆発的な暴風となって放たれる。
 それは青が振り絞った勇気そのものの大きさだった。
 恐怖を乗り越えた者にこそ、得られる力。それは勇気というかけがえのない、たった一つの力が、己よりも強く大きな者を弾き返すには十分すぎる力であると、青は証明してみせたのだった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
『停滞』…私にとってある意味、避け得ない恐怖です
『成長』の手段が限られている鋼の身、何時かこの電子頭脳が扱えぬ領域に人の技術は至るでしょう

……望むところです
私の騎士道とは『めでたしめでたし』を、未来を護るモノ
私の存在意義の喪失こそが望む未来
その未来に至る為、礎となることに迷いは無く

その為に目前の『過去』を打ち倒し『今』を護ることは最低条件
討ち取らせてもらいます!

センサーでの●情報収集で温度変化を分析
冷気の発動を●見切り稼働エネルギーを全て防御に回したUCで防御

自己●ハッキングで●限界突破した●怪力で凍結障壁を破り●だまし討ち
接近し大盾の殴打で鱗や甲殻ごと粉砕

感情汚染花は騎士として忌避し破壊



 避けられぬ恐怖。それはどうしようもないものであるのかもしれない。
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)にとって、約束の地に咲き乱れる草花が放つ『停滞』という恐怖は、ある意味避け得ない恐怖であった。
 氷皇竜メルゼギオスもまた、その避け得ない恐怖の虜となった者であった。すでに『力ある苗床』として凶悪なる戦闘力を発揮していたが、そのどれもが克己せし猟兵たちに及ぶものではなかった。

「我は超越してみせる! 停滞などあるはずもない! 我が乗り越えられぬというのなら、それはそもそもが間違っているのだ」
 メルゼギオスの咆哮は益々持って、その身に寄生せし恐怖を成長させるばかりである。己を知らないのだ。
 故に克己することもまた、わからない。何と戦い、何に勝つのか。それさえもわからぬものに『停滞』の恐怖を乗り越えることなどありえないのだから。

 トリテレイアは、停滞たる恐怖を前にして奮い立つ。
 それは彼がウォーマシンたる機械の体であるからではない。
「『成長』の手段が限られている鋼の身、何時かこの電子頭脳が扱えぬ領域に人の技術は至るでしょう」
 それは来たるべき確実なる未来である。
 彼の体は今は人の技術と、トリテレイアの類まれなる電子頭脳と回路とが支え合う状態。だからこそ、彼は戦える。
 そして、ウォーマシン、機械の体であるからこそ、トリテレイアは―――。

「……望むところです。私の騎士道とは『めでたしめでたし」を、未来を護るモノ。私の存在意義の喪失こそが望む未来」
 その限界である、結末を望む。
 護られる生命のない未来。それはどの生命も脅かされることがない未来である。そんな未来において、戦う機体である己の存在意義などありようはずもない。
 それこそが彼が望む未来であるというのなら、それは停滞ではない。結末である。『めでたしめでたし』で締めくくられ、笑顔で閉じられる騎士道物語である!

「その未来に至る為、礎となることに迷いは無く」
 メルゼギオスの放った絶対零度の冷気は、一斉に吹き荒ぶようにトリテレイアへと迫る。
 だが、彼のアイセンサーは、周囲の温度変化をつぶさに捉えていた。絶対零度であるが故に、急激なる温度変化は察知しやすい。
 どれだけ冷気が視認しにくいものであり、攻撃が不可避のものであったとして、彼のアイセンサーの前では無意味である。
 構えた盾に、トリテレイアの稼働エネルギー全てが回される。ユーベルコードの輝きが、盾へと集まり、トリテレイアの体を無敵城塞たる、超防御モードへと移行させる。

 絶対零度の冷気は、無敵城塞たるユーベルコードにて、彼の体を冷気すら寄せ付けぬ絶対無敵の体へと変じていた。
 冷気が彼の体を通り抜け、波が引いた瞬間、その巨躯が駆ける。
 ユーベルコードを解除したのだ。しかし、これで絶対無敵たる力は最早彼を護らない。
「私は鎹であり、楔。そして礎であることを望む!その為に目前の『過去』を打倒し『今』を護ることは最低条件!」
 全てのかどうエネルギーを冷気を防ぐことに使用したトリテレイアのジェネレーターは炎熱し、燃え盛る。
 限界。
 その文字が頭脳たる演算装置に鳴り響く。

 だが、トリテレイアは騎士である。誰かを護るために己の限界など常にこじ開けてきた。
 それが彼の騎士道である。これだけは、己の体が溶け落ちようとも曲げられぬ理―――。
「故に! 討ち取らせてもらいます!」
 鋼鉄の騎士が凍結した雪原を駆ける。
 一気に駆け抜けたままに、構えた大盾をメルゼギオスの巨躯へと打ち付ける。龍鱗や外殻ごと粉砕し、メルゼギオスを失墜させる。
 凍結した草原に咲き誇る約束の花。それらはメルゼギオスとトリテレイアの感情を吸い上げ、大輪の花を咲かせたいた。
 しかし、そんなものには興味がないと言わんばかりに、失墜したメルゼギオスの巨躯ごと、トリテレイアは花を全て散らせる。

「騎士として忌避すべきもの……その見極めはすでについています! 我が騎士道にかような花は必要ないのです―――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノネ・ェメ
連携、アレンジ歓迎


 わたしは戦わず、戦わせない事を信条としていて。わかってた事だけど、こんなわたし一人が全ての戦いを無くす、なんて途方もなく。
 戦っては失い、それでも戦うような――人の停滞、いつまでも終らない連鎖を断ちたいだけ。けど、何が出来るでもないままのわたしこそ、停滞かもしれなくて。こんな戦争の真っ只中まで来ても、思い知る方が多くて。

 でも。他に変わりようがある? 変えたい世界が変わらないのは、変えたい事にも変わりないし。むしろこのままであり続ける事、なんじゃ……? 歯がゆさをかみしめ直して、かみしめ続ける的な。苦しいけど、それ以上に嫌、だから。

 迷っても進んでも皆を守る一助になればと。



 己の停滞を認められぬ者に前進の一歩は踏み出せない。
 それは氷皇竜メルゼギオスが生まれながらに強大な力をもつ者であったとしても変わりはない。
 常に自身が先をゆくものであり、後ろから誰かが追いすがってきているなどと想像もしない。それ故に傲慢であり、己の停滞を認めぬもの。
 群竜大陸の一角、約束の地において咲き乱れる草花は恐怖を放つ。それは『停滞』の恐怖である。
 成長も見込めず、前にも後ろにも進めなくなる恐怖。それを認めぬもの、受け入れぬ者、克服せぬ者。それらを『力ある苗床』へと変化させる。
 恐怖の花が芽吹く時、メルゼギオスは『苗床』と化して、皮肉にも求めた戦闘力を手に入れたのだった。
「我は。我こそが、真なる竜! 我に頂点は未だ見えず、停滞もなく! 故に我は今までも、これからも、何一つ停滞することなどないのだ!」
 その咆哮は、放たれた恐怖より逃れたが故ではなく、その恐怖に取り込まれたが故。
 その心を覆うのは、氷の鎧。これまで数々の猟兵たちによって刻まれた傷を嫌そうとしているのだ。

「わたしは戦わず、戦わせない事を信条としていて」
 その声は歌うような声だった。戦場には場違いな声であったと言うこともできたであろう。だが、その声は戦場にあってこそ良く通る声であったのかもしれない。
 ノネ・ェメ(ο・f15208)の不思議なゆらぎめいた声が響き渡る。
 この場、戦場において戦う意志はなく。
 だからこそ、メルゼギオスの体を鎧おうとしていた氷が止まる。

「わかってた事だけど、こんなわたし一人が全ての戦いをなくす、なんて途方もなく」
 声がメロディに鳴る。メロディが声に鳴る。その身は音楽で出来ている。
 彼女のユーベルコードは静かに、戦場に響き渡る。〝音奏〟(アンサンブル・ミキシング)……具現化された楽器やハーモニー、エフェクトが空を舞う。
 そのユーベルコードは戦うためのものではない。
「戦っては失い、それでも戦うような―――人の停滞、いつまでも終わらない連鎖を断ちたいだけ。けど、何ができるでもないままのわたしこそ、停滞かもしれなくて」
 思い知るだろう。
 世界には戦いが満ちている。どうしようもないほどに、失い、慟哭する者は後を断たない。
 どれだけ己が信条を掲げようと、どれだけ戦いをなくそうとも、それでもなお無限のように溢れ出る戦いの惨禍。

「こんな戦争の真っ只中まで来ても、思い知るほうが多くて」
 何もかもが変わらないと思ってしまう。それは停滞であって、自身がどうしようもないほどの恐怖するものである。
 変わらないと変えられないは別物である。だからこそ、彼女の心は―――折れることはない。彼女自身が音楽であるというのなら、彼女自身もまた世界の一部であり、世界には音楽が満ちていると歌い続けるのだ。

「でも、他に変わりようがある?変えたい世界が変わらないのは。それを変えたいことに、わたしの心は変わらないし。むしろ、このままであり続ける事、なんじゃ……?」
 それは確信へと変わる。
 変わらない世界。変えるべき世界。その中庸たる場に断ち続ける。歌を歌い続ける。こんなにも世界にはいくつもの音があって、満ち溢れているのだと知らし続けなければならない。

「歯がゆさを噛み締め治して、噛み締め続ける……苦しいけど、それ以上に嫌、だから」
 彼女の言葉は歌となり、ユーベルコードは無限に彼女の声を力強く具現化していく。それはメルゼギオスの鎧う氷を止める。
 オブリビオンと猟兵という滅ぼし合う関係に代わりはない。けれど、彼女の歌声は、その傷を癒やすはずの氷を止める。
 具現化されたハーモニーはメルゼギオスの恐怖を、共振させる。

「迷っても、進んでも、皆を護る一助に成れば」
 彼女は歌う。
 その声は彼女自身の心。『停滞』の恐怖は未だ心のなかにある。けれど、それを否定はしない。それもまた自身の中にある一つの感情であるから。
 受け入れ、前に進むしか無いのだ。

 戦場にあって、その歌声は場違いなほどに―――。

 ―――美しく、誰しも戦う手を止めるほどに響き渡っていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

プリンセラ・プリンセス
連携・アドリブ可

停滞というのであれば猟兵になってから今までがある意味停滞であったと言える。
たった一人から国の再興と竜帝打倒を近い、兄姉の人格に様々な事を教えてもらい、猟兵として戦って実戦を経て。
そしてとうとう仇であるヴァルギリオスにたどり着いたのだ。
ヴァルギリオスを倒すことが先に進む為の新たな一歩になる。
「ここで、立ち止まるわけには参りません!!」

鏡像召喚で呼び出すのは竜帝ガルシェン。
その巨体に生半可な攻撃は通用しない。
巨体を影に【目立たない】ように【空中浮遊】で接近。
鏡像の【踏みつけ】による攻撃を合わせて聖剣による【鎧無視攻撃】で攻撃する。



 隆盛の後にあるのは衰退である。
 そこに『停滞』はない。あるのは、滅びた国と滅ぼした帝竜という存在だけである。
 それは変えようのない事実であり、また彼女―――プリンセラ・プリンセス(Fly Baby Fly・f01272)にとっての『停滞』そのものであったのかもしれない。
 氷皇竜メルゼギオスの咆哮が聞こえる。
 足が竦むかもしれない。国を滅ぼした帝竜の配下。

 かつて勇者一行に滅ぼされたメルゼギオス。あれほどの強大な力を持つ者であってもなお、『停滞』という恐怖には打ち勝てなかった。まして、受け入れることもできなかったのだろう。
 故に、この約束の地において咲き乱れる草花が放つ恐怖によって『力ある苗床』と化してしまった。それは『停滞』を受け入れられぬメルゼギオスにとって、皮肉なことにさらなる凶悪なる戦闘力を手に入れるきっかけとなった。
「我は、この力を持って前へと進む! 我は『停滞』などに屈しぬ! 我は先へ! 我はもっと先へ! ここより停滞は我の歩みを止めるに値せず!」
 だが、その言葉こそが己が恐怖に屈したという証である。

 そんなふうにプリンセラは、メルゼギオスを見上げていた。
 草花から放たれる『停滞』の恐怖は、オブリビオンだけではなく、猟兵である彼女にも襲いかかる。
 停滞というのであれば、猟兵になってから今までがある意味停滞であったと言えるのかもしれない。
 たった一人から、帝竜に滅ぼされた故国を復興し、打倒すると誓ったのだ。
 末姫たる己には、戦うことすら不得手としていた。どうしようもなく打ちひしがれることもあっただろう。
 けれど、彼女の傍には愛すべき兄姉たちが傍にいた。死して尚、彼女の傍に。
 成さねばならぬと決めた。
 けれど、それは到底一人では無理だった。無力が諦観を呼ぶのだとしたら、停滞は彼女の心を蝕むだろう。
「けれど、兄様、姉様が私にはいてくれる。私は一人ではない」
 顔を上げる。彼女の青い瞳には、メルゼギオスの姿はもはやない。彼女の瞳が捉えているのは、群竜大陸の奥に控える帝竜ヴァルギリオスのみ。
 停滞という混濁した中にあってなお、彼女の足は進むことを選んだ。どれだけ苦しく険しい道を選択してしまったのかは言うまでもない。

「けれど、いつだってそうなのです。いつだって正しい道は、厳しく険しい道なのです。だから―――」
 彼女は己の停滞を受け入れる。認める。否定しない。これまでの長きにわたる停滞があったからこそ、踏み出せる一歩がある。
「ここで立ち止まるわけには参りません!!」
 『ただの姫』は、今ここに起つ。

 王笏は振り上げられた。それは空を覆うほどに展開されたアイシクル・ミサイルへと向けられていた。膨大な数。あれらを全て受けて自身が無事でいられるわけがない。
 恐ろしき氷の棘が彼女の瞳に映る。
 けれど、彼女は恐怖しない。何故なら、たった今、これまでの『停滞』という恐怖を受け入れ、克己したのだから。最早そこには『ただの姫』ではない、プリンセラ・プリンセスという一人の猟兵が起つ。
「己の敵は常に自分である――」
 その言葉はユーベルコードの輝きである。
 鏡像召喚(ミラーリングユアセルフ)、そのユーベルコードによって呼び出されたのは、帝竜ガルシェン。かつて創生巨獣と言われた数十kmにも及ぶ巨躯を誇る帝竜が一柱。
 それは満天を覆う氷の棘が放たれても、何一つ微動だにしない。
 あまりにも強大。巨大。それらは対するものに恐怖すら与えるものであったかもしれない。
 プリンセラは飛ぶ。その巨獣の影を越えて、手にした人格変貌対応剣ヒュポスタシスを変貌させる。

「これは―――わたしの剣!」
 その一撃は鏡像に映った巨獣の一撃の如く重き一撃となってメルゼギオスの龍鱗を叩き切る。
 如何なる氷の鎧に覆われていようとも、彼女の一撃を阻むものはない。
 彼女の一歩は、彼女自身の未来を切り開くために振るわれる一撃と共に―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トール・テスカコアトル
「……あぁ」
ヒーロー合同訓練で
学園教室で
……明るい筈の、家の居間で
たまに思うよね……時間無駄にしてるって
それで頑張ってみるけどトールは不器用で……上には上がいて……それで疲れちゃったら……もう
「置いてかないで……」
連れてって

連れてって?
「おバカ……トール」
そんなだから、置いてかれちゃうんだよ
忘れないでよ……あの時だって、あの時だって、あの時だってそうだ
「結局、人は人を助けられない。最後には自分で頑張らなくちゃ、だ」
頑張ってるの恥ずかしいとか今更だし怖がるな
みっともなくびーびー泣くのがトールのスタイル
「……変身」
這ってでも進むんだ……そうすることが、変わっていくことだって知ってる

炎で氷を溶かして



 いつだってそうだ。
「……あぁ」
 ヒーロー合同訓練。学園の教室。明るいはずの家の居間。
 たくさんの人がいて、近しい人がいて、彼女の周りに人がいればいるほどに、己は孤独を感じてしまうものだから。
 大勢の中で孤独を感じてしまうのが、悪いことなのかと問われたら、そうなのかもしれないと応えることだろう。
 本当はそんなこと間違っていると心は叫んでいるのに、己の心は嘘を付く。

 氷皇竜メルゼギオスは咆哮する。
 己の心に去来し続ける『停滞』の恐怖。それはメルゼギオスの体を覆う氷の鎧が傷を癒やし、体を鎧うことはできても、その弱き心までは鎧うことはできないのだ。
 だからこそ、『停滞』を受け入れられない。認められない。克服できない。
 約束の地に咲き乱れる草花が放つ強烈なる恐怖。その『停滞』たる恐怖を乗り越えられぬ者には、『力ある苗床』となる以外の道はない。
 メルゼギオスの放つ咆哮と共に、絶対零度の冷気が放たれ、草原を凍結させてていく。
 対峙する猟兵、トール・テスカコアトル(ブレイブトール・f13707)に絶対零度の冷気が襲う。
 冷気が迫る。空気が冷えていく。その冷気を懐かしいと思ってしまうほどに、彼女の心は『停滞』の恐怖に一度は飲み込まれていた。
「たまに思うよね……時間無駄にしてるって。それで頑張ってみるけど、トールは不器用で……上には上がいて……それで疲れちゃったら……もう」
 立ち止まるしか無い。それこそ『停滞』である。
「置いてかないで……」
 取り残される。一人は嫌だけれど、大勢の中で遭っても孤独を感じてしまうのであれば、それは何よりも耐え難い。
 だからこそ、彼女はその言葉を紡ごうとして、止めた。
 連れてって。
 その言葉は飲み込んだ。喉を通り抜ける、その言葉はトールの体のうちで燃え盛る一つの石であった。
 体が熱い。燃える。燃える。

 今、この身を突き動かすものはなんであるか。
「おバカ……トール」
 そんなだから、置いてかれちゃうんだよ。忘れないでよ……あのときだって、あのときだって、あのときだってそうだった。
 彼女の心に去来するのは、彼女自身の記憶。いつだってそうだ。彼女の記憶にあるのは、彼女が須らく立ち上がってきた記憶そのものである。
 草花が放つ恐怖など、今までだって乗り越えてきた。これからだって乗り越えていく。
 だから―――。

「結局、人は人を助けられない。最後には自分で頑張らなくちゃ、だ」
 その言葉は彼女の体を震え上がらせる。
 頑張ってるのを恥ずかしいとか今更だし怖がるな。みっともなくびーびー泣くのがトールのスタイルだ。
 それは今更変えられない。変えようがない。彼女は彼女自身であるからこそ、泣いても、泣いても、泣いても。
 それでも尚、最後には振り絞った……

「……変身」
 トールのユーベルコードが輝きを見せる。それは勇気の戦士(ブレイブトール)。
 振り絞った勇気の力こそが、彼女を覚醒せしめる。
 体に秘めた炎熱が、燃え盛る限り彼女に限界はない。這ってでも進む。そうすることが変わっていくことだと、この身は知っている。
 迫る絶対零度の冷気がなんだというのだ。

 この程度のもので―――。
「トールが凍りつくわけなんて―――ないんだから!」
 勇気の戦士たるブレイブトールは覚醒する。『停滞』の恐怖など、すでに飲み込んだ。それは勇気へと変換されて、彼女の体から湧き出る炎は氷を溶かし尽くす。
 その余波は、メルゼギオスの鎧った氷すらも昇華し、気化させる。
 負けない。負けるわけがない。

 ブレイブトールは、勇気の赴くままに天に咆哮する。
 その勇気は、絶対零度にさらされし大地全てを溶かし、ありとあらやる困難を勇気で持って解決できるのだと知らしめるのだ―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

セツナ・フィアネーヴ
消えた師を探す事、師と同じ高みへ至ること、
この体に宿る災いに打ち勝つこと
確かに困難は多い、だが諦めたりはしない

何より停滞を理由に諦め「自ら道を閉ざす」など、
行く道の先で待っているであろう師を、この道を共に歩んでくれる友を、
私から裏切る真似などできるはずがない!

槍を構え〈ランスチャージ〉で突撃、敵UCは〈第六感〉で躱す
移動しつつすれ違う以上、追尾してもすぐの方向転換は無理だろう
それに……懐に飛び込めれば、それでいい
巻き込まぬよう精霊を腕輪へと戻し

【凍える世界】

吹き荒れるは私の中に在る万象凍らせる氷嵐
体も心も、感情さえも冷却し沈静し永劫に“停止させる”冷たき災い

恐れるのなら……全力で抗って見せろ!



 歩みを止めぬこと。
 それは彼女の命題である。彼女―――セツナ・フィアネーヴ(災禍貫く竜槍・f26235)は、その身に宿る制御できぬ竜の力を古き封印で物質化した槍を携え、歩みを止めない。育ての親たる師……マスターは彼女の傍に居ない。共に居てくれるのは光と雷の精霊であり、友と呼ぶものである。
 奇しくも氷皇竜メルゼギオスと彼女は似通った部分があった。
 それは力、能力……そういったものであったけれど、同じく氷を使うこと。竜の力を振るうこと。けれど、決定的に違うものが有る。

 消えた師を探す事、師と同じ高みに至ること、この体に宿る災いに打ち勝つこと。
「確かに困難は多い、だが諦めたりはしない」
 彼女は言葉を紡ぐ。

 メルゼギオスの咆哮が轟く。
 それは恐らくこの戦いにおいて、最後の力を振り絞るのと同じことであったことだろう。
 群竜大陸、その一角たる約束の地に咲き乱れる草花が放つ恐怖は『停滞』である。
 メルゼギオスはすでに、その恐怖へと取り込まれ『苗床』と化した。
「我は停滞などしない。我は常に進んでいる。我は未だ頂点を目指している。我は、我は、我は―――!」
 その咆哮は既に恐怖が理性を凌駕しているからこそ。空を覆わんばかりの数の氷の棘……アイシクル・ミサイルが展開される。
 圧倒的な力の奔流。それは『停滞』という恐怖に取り込まれたからこそ強化された力である。
 皮肉でしか無い。『停滞』を受け入れられなかったからこそ、『停滞』していた力を増幅させたのだから。

 その草花が放つ恐怖は、オブリビオンだけに影響するものではない。猟兵もまた同じである。
 セツナにも恐怖は襲う。『停滞』……己の目指すものへと至る道が尽く閉ざされていく恐怖。後ろにも、前にも。進めない。進むことも出来ずに、ただただ時間だけが流れていく残酷。
 その恐怖に彼女は縛られない。飲み込まれたメルゼギオスと彼女の決定的な違いは、一人ではないということだ。
 彼女の傍には友と呼ぶ光と雷の精霊がいる。だからこそ。
「何より停滞を理由に諦め、『自ら道を閉ざす』など、征く道の先で待っているであろう師を、この道を共に歩んでくれる友を、私は裏切る真似などできるはずがない!」

 そう、彼女には師があった。けれど今はいない。この道の先にいることだけはわかる。
 彼女には友がある。今此処に在るのは、友がいてくれるからこそ。手にした己の竜の力を封じた槍を構える。
 満天を覆うようなアイシクル・ミサイルの氷の棘の切っ先が彼女へと向いている。それを恐ろしいとは思わなかった。
 どれだけの氷の棘が彼女を襲おうとも、『停滞』の恐怖が彼女の足を、体を雁字搦めにしようとも、彼女は歩みを止めない。
 恐れはある。けれど、それが彼女の歩みを止める理由にはなっていない。

 構えた槍のままに駆け出す。
 氷の棘が襲い来るが、それを第六感とも言うべき超感覚のままに躱し、進む。追尾してくる氷の棘。構わない。
 なぜなら、彼女の目的はメルゼギオスの懐へと飛び込むことであるのだから。友である光と雷の精霊は腕輪へと戻る。
 それは巻き添えを食わせないため。

「『凍らせる』のが、体だけだと思うな……ッ!!」
 彼女のユーベルコード、凍える世界(エアオーベルング・フェアツィヒト)が輝く。それは彼女のユーベルコードによって放たれる災禍の氷嵐。
 ただ凍結させるだけは肉体にとどまらない。
 吹き荒れる、災禍の氷嵐はセツナの中に在りし万象凍らせる竜の力の根源たるもの。
 それは体も心も、感情さえも冷却し鎮静し、永劫に“停止させる”冷たき災いである。その意味をメルゼギオスが理解することはなかった。
 一度放たれた以上、類似した力を持っていたとしても、この災禍の氷嵐の前には絶対零度ですら無意味である。

「恐れるのなら……全力で抗ってみせろ!」
 しかし、その言葉は届かない。何故なら、『停滞』を上回る恐怖、災禍の氷嵐の前には感情さえも凍結する。
 それはもう何処にも行けないということ以上に、オブリビオンたるメルゼギオスの存在の停止であった。
 故に、その抵抗は無意味である。
 感情も、肉体も、意識も……ありとあらゆるものがセツナの前には凍結される。
 それは文字通りの死である。

 砕け散ったメルゼギオスの体が骸の海へと還っていく。
 草花の放つ恐怖でさえも、災禍の氷嵐の前には存在すらも凍結されて消えゆく。セツナは進む。
 己以外の全てが凍結し、消えていったとしても、彼女が前に進む理由さえ見失うことがなければ、彼女は停滞乗り越えし者にこそ宿る力をいつまでも胸に抱き続けながら歩むのだ―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月14日


挿絵イラスト