帝竜戦役①〜霧制竜、霧散
●霧深き
その名は「姿なき竜」、「死の竜霧」の名で語られる竜。
霧深き渓谷に住まいし竜は、帝竜ヴァルギリオスから召し上げられるのを待っていた。
そして、鬨の声が響き渡る。
長きにわたる雌伏すること、幾星霜。
此の時はどれだけ待ちわびたかわからない。
任されたるは、魂喰らいの森の一角。その森人にして、深き霧に森を沈め、進撃を初めた猟兵たちを迎撃せんと待ち受ける。
「―――ッ!!!!!」
その人の声ならざる竜声は、魂喰らいの森の守り人として、ありとあらゆる生きとし生けるものの魂を啜る。
魂喰らいの森の一角に深き霧が満ちる。
もはや後戻りはできず、それでもなお進むというのであれば、来るが良い、猟兵!
―――守り人の名は、霧中の暴君『グラドラゴ』。
かつて「姿なき竜」、「死の竜霧」と恐れられし帝竜ヴァルギリオスの先駆けである―――!
●帝竜戦役
グリモアベースに集まる猟兵達を見回して、ナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)は頭を下げる。
アックス&ウィザーズにて始まった帝竜戦役の一報は、すでに多くの猟兵たちに伝わり、その戦果を次々と上げていることに彼女は一先ずの安堵を覚えていた。
「お集まり頂きありがとうございます。もうご存知のことかと思われますが、アックス&ウィザーズにて帝竜戦役が勃発しました」
そう、帝竜ヴァルギリオス―――オブリビオン・フォーミュラたる、かの竜が出現し、群竜大陸へと猟兵が進行したのをうけて計画の前倒しを行ったのだ。
ヴァルギリオスは、アックス&ウィザーズ世界を滅ぼさんとしている。しかし、それを事前に察知できたことが猟兵たちにとっての不幸中の幸いであった。
今ならば、迎撃の準備が整っていない帝竜たちを一気呵成に責め立てることができるのだ。
「はい、まずは魂喰らいの森を突破していただかねばなりません。私が予知したのは、霧中の暴君『グラドラゴ』。霧を操る能力を持ち、霧で満たした森の中からの強襲攻撃を得意とするオブリビオンです」
霧中の暴君『グラドラゴ』、それは霧を媒介としたユーベルコードを使用してくる。撹乱や幻惑、毒など、進撃する猟兵の足を止めるためには最適な守り人である。
そしてさらに、この魂喰らいの森に存在するオブリビオンは、ユーベルコード全てにある効果を持つようになる。
「戦場となる魂喰らいの森の特性です。この森を護るグラドラゴは、本来のユーベルコードの力に加えて、魂を啜るという効果を付随してくるのです」
消耗戦に引きずり込み、さらにはこちらの魂を一方的に削ることができるということだ。
だが、その魂喰らいの森への打開策もまたあるのだ。
「はい。この魂を啜る効果に対抗する術があるのです。それは、皆さんの心にある楽しい思い出……それを込めたユーベルコードでもって打倒してください」
楽しい思い出。
それは各々の猟兵たちが胸に抱く暖かいものであるかもしれない。楽しい思い出は、そのまま猟兵の力となり、魂を啜る敵のユーベルコードへのカウンターとなるのだ。
説明を簡潔にして、ナイアルテは猟兵たちを笑顔で見送る。
未だその笑顔はぎこちない微笑みであったかもしれない。けれど、送り出す猟兵たちは、その心に暖かなものを宿していると信じている。
故に、彼らの戦いにこれからも忘れられない楽しい思い出が生き続けることを祈りながら、送り出すのだった―――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『帝竜戦役』の戦争シナリオとなります。
魂喰らいの森へと進撃し、森を守るヴァルギリオスの尖兵たる霧中の暴君『グラドラゴ』を打倒しましょう。
※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。
プレイングボーナス……楽しい思い出を強く心に念じ、魂すすりに対抗する。
※この戦場で手に入れられる財宝について。
財宝「魂喰らいの森の核」……最高級の牛肉の味とサボテンの果肉のような食感を持つ球形の核。半径25cm程度で金貨500枚(500万円)の価値。
アイテムとして発行するものではありません。ロールプレイのエッセンスとして扱ってください。
それでは、帝竜戦役を戦い抜く皆さんのキャラクターの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『霧中の暴君『グラドラゴ』』
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POW : 死の竜霧
自身に【触れるだけで出血毒と麻痺毒に犯される霧】をまとい、高速移動と【毒霧と身体が裂けるような咆哮】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD : ミストリフレクト
【相手の姿をしている霧製】の霊を召喚する。これは【霧の中で強化され、真似た相手の武器】や【同じユーベルコード】で攻撃する能力を持つ。
WIZ : 霧中に潜むもの
戦闘用の、自身と同じ強さの【霧で作られた自身と同じ姿の無数の竜】と【霧に隠れた本体を守る巨竜】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
イラスト:あなQ
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ナイツ・ディン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
魂喰らいの森。
その一角に満ちる霧は、自然ではない操作された霧であると、その場へと乗り込んだ猟兵であれば、誰もが気がついたかも知れない。
そして、ごう、ごう、とその霧の中を何かが飛翔している。
「―――っ!!!!!」
その咆哮は霧中の暴君『グラドラゴ』のもの。
魂喰らいの森にて、猟兵の進撃を阻む者として、守り人を任された竜である。
魂を啜ろうとする、そのユーベルコードを打ち破ることが出来るのは、猟兵の心に宿った楽しい思い出。
その思い出が、かけがえのない魂を護る鎧となるのだ。
御狐・稲見之守
常に霧はワシと共にあった。化かすが生業の狐なれば、霧は夢幻への入り口に他ならない。ふふ、今まで色んなモンを化かして来たさ、今思い出しても笑みが溢れる。さ、今度は竜を化かしてやろうじゃないか。
[UC眩惑の術][催眠術][呪詛][精神攻撃] 霧の中で出血毒に麻痺毒に侵されながら無数の竜に追われ、そしてついにその牙爪に伏してしまう……という幻覚はご満足いただければ良いが、なァ暴君殿?
彼奴を幻覚で封じている内にその体に触れて[生命力吸収]で精気を啜ってやる。
霧中に竜の咆哮が響き渡る。
その咆哮は長きにわたる雌伏の時を代弁するかのような咆哮であった。魂喰らいの森の中に置いて、その霧は容易に方向感覚を狂わせ、進む道を見失わせる。
自身がどちらからきて、どこへ向かおうとしていたのかすら判別がつかなくなる。さらに加えて、魂喰らいの森たる所以である魂を啜る動植物たちの存在が、その霧中のおぞましさを底上げしているようであった。
だが、たったこれしきのことで猟兵が臆することはない。彼らの心のなかにある思い出は、どれもこれもが魂を啜る力を弱めていくのだから。
周囲を包む霧の中で霧中の暴君『グラドラゴ』の生み出した霧が形を作ったグラドラゴと同じ姿をした龍が飛び交う。
それは撹乱の意味もあったが、自身を護るための保身的な行動であった。
それを見透かしてか知らずか、くすくすと笑い声が漏れ出るのは、御狐・稲見之守(モノノ怪神・f00307)であった。
幼く見えても彼女の齢はすでに100を超える。それはどれだけ長きに渡り生きてきたのか想像もつかぬほどの記憶が彼女の心のなかに在るということだ。
「常に霧はワシと共にあった。化かすが生業の狐なれば、霧は夢幻への入り口に他ならない」
そう、彼女にとって霧とは恐れるものではない。
夢うつつの幻と共に彼女は人を化かし、時には都を脅かしていた。それは遠い過去のことではあるが、紛れもない事実である。
ごう、ごう、と彼女の周りを飛ぶ霧の竜の影。
小さき得物を狩らんとする包囲網は確実に稲見之守へと迫り、包囲を狭めてきていた。
それでもなお彼女は慌てない。
「ふふ……今まで色んなモンを化かして来たさ、今思い出しても笑みが溢れる。さ、今度は竜を化かしてやろうじゃないか」
彼女の笑みは、彼女の思い出の中にある愉快な気持ちをより一層ユーベルコードに込めていく。
彼女の金と銀の瞳が輝く。それはユーベルコード、眩惑の術(ゲンワクノジュツ)の輝き。放たれる光は、霧中にありし、竜の瞳を捉える。
「―――ハッ、ハァっ!ハァッ!」
霧中を駆けずり回る小さな体。それを追いすがるようにして追い立てるは、霧の竜たち。翼を持たぬ者は、この竜より逃れる術はない。
出血と麻痺を齎す霧に侵され、逃げ惑う小さき者。いつだって、己より弱き者をいたぶるのは楽しい。アリを潰すように、己のさじ加減一つで生きながらえるも、苦しみ悶えて四肢をちぎられるのも自由自在。
楽しい。
楽しい、と霧中に咆哮が響き渡る。たったそれだけで、体を引き裂くような衝撃でもって、小さきものは吹き飛ばされる。
愉快、痛快。雌伏の時をじっと待っていた甲斐があったというものだ!
「……ご満足いただければ良いが、なァ暴君殿?」
その声は思った以上に至近で響いた。
混乱する。頭が。何を見ていた?何を見せられていた?混濁する意識の中で、暴君と呼ばれたグラドラゴは瞳だけを、せわしなく動かす。
それしかできない。
何故だ。何故だ!
「いやァ、それもう見事な見世物であったよ。化かしあいはワシの勝ちじゃなァ?」
動かぬ自身の体に触れているのは、先程まで追い回していた憐れなる小さきもの。
混乱に拍車がかかる。確かに自身の牙は、霧は彼女を負いたて回していたはずだというのに―――!
「甘いのぉ……ワシの瞳に捉えられた時点で主の負けよ。まだ序盤故な。体力は温存すべきであるので、主の生命、もらってゆくぞ?」
そう、今まで見せられていたのは、稲見之守のユーベルコードにて放たれた幻覚。
暴君ごときが、斯くあれかしと願われるがゆえのカミたる彼女に勝てる見込みなど、相対した時点であるはずもないのだ。
絶叫じみた暴君グラドラゴの咆哮が霧中たる魂喰らいの森に響き渡る。
果たして、魂喰らわれたのは、どちらであったのか。人喰い魂呑みの外道であった者に、この魂喰らいの森は生ぬるい。
そう思わせるほどの、圧倒的な力の差が、そこにはあったのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
シリン・カービン
【SPD】
私と同じ武器、同じ技を使えたとしても、
思考までは真似できないでしょう。
狩りは、頭でするもの。
脳裏をよぎるのは、初めて難しい狩りを成功させた日のこと。
姿を隠すのが上手い獣をようやく仕留めた私に、
寡黙な師匠が頭に手を置き、よくやったと一言。
すごく、嬉しかった…
霧の私の攻撃は見切りで躱し、竜を優先している様に見せます。
霧の私→私→竜と直線状に並ぶ様に誘導後UC発動。
複製猟銃を合体させ精霊砲で竜を狙います。
同じく霧の私が精霊砲を召喚、私に発射したら、
その瞬間残像を残して回避し竜に直撃させます。
同時にUC再発動。精霊砲で竜に止めの砲撃を。
帝竜にはある意味感謝ですね。
久方振りに思い出しました。
霧の道たる魂喰らいの森は、その濃霧をさらに濃くしていく。
魂啜る動植物たちの動向はさらに不可視。この霧中の森の一角に座すは霧中の暴君『グラドラゴ』である。
霧を制する者としても伝承に残る帝竜ヴァルギリオスの先駆けたる竜は、この森において猟兵たちを待ち構えていた。
そして、魂喰らいの森を進撃する猟兵達は、霧中に飛ぶ竜の影を捉えた。
シリン・カービン(緑の狩り人・f04146)の脳裏をよぎったのは、初めて難しい狩りを成功させた日のこと。
在りし日の記憶である。それはまだ彼女が銃ではなく、弓を得物としていた頃の記憶。かけがえのない、取り戻しのしようのない、記憶であった。
あれは姿を隠すのが上手な獣をようやく仕留めた時のことだった。
いつもは寡黙で口数の少ない師匠がシリンの頭に手を置き、よくやったと一言告げてくれた思い出。
たった一言であったが、それが何よりもシリンの心の中を暖かくしていく。薄れようのない大切な思い出。
思い出せば、あの時と同じ暖かな気持ちが胸に広がっていくのを感じた。
「すごく、嬉しかった……」
ぽつりと、シリンの声が霧中に吸い込まれていく。魂啜る敵のユーベルコードも、今の彼女には届かない。
なぜなら、彼女の胸に抱く思い出が、魂喰らいの森の持つ力を阻んでいるからだ。
静かに霧の中で動く影がある。グラドラゴのユーベルコードによって生み出されたシリンそっくりの霧で出来た霊。それは彼女の能力やユーベルコードを強化された存在であるが、シリンは何も慌てることはなかった。
「私と同じ武器、同じ技を使えたとしても、思考までは真似できないでしょう」
そう、シリンの中に師匠から託された教えが今もしっかりと根づいている。
―――狩りは、頭でするもの。師匠の言葉は今も鮮明に彼女の心の内に残っている。
霧の中から銃声が響く。其の初撃はシリンにとって他愛のない攻撃であった。自身と同じ武器、挙動。ならば、見切ることなど容易である。
彼女は自己を知り尽くしている。ならば、危ういことなど何一つ無い。
こちらからの攻撃はしない。敵には翻弄されているようにみせなくてはならない。自身が優位に立っていると思い込ませること。それが慢心を呼び、慢心は決定的な油断を呼ぶ。
銃声が再び響き渡る。シリンは霧中を駆ける。彼女の狙いは霧で出来た自身の姿を再現した霊と自身、竜の位置を一直線に並べること。
師匠の教えは今も頭の中に復唱されている。
「狩りは、頭でするもの……ふふ」
思わず笑みが溢れる。こんな時でも、彼女の魂は何一つ啜ることはできないのだ。
「羽根妖精よ、私に集え」
一直線に位置取った瞬間、彼女のユーベルコード、ピクシー・シューター・ギガントが発動する。召喚されし、精霊猟銃が一斉に中に浮かぶ。
霧中にあって、己の位置を悟られていないと慢心したグラドラゴは破れかぶれの攻撃と思ったことだろう。
だが、それは間違いである。
複製されし精霊猟銃が合体し、聖霊砲として顕現する。その銃口は霧中に在りて、必中一射。狙われているのは、グラドラゴ本体そのもの。
「強化された能力……ならば、それで私を狙うのも当然」
そう、霧で再現された霊もまた同じ用にシリンを狙う。わかっていた。単純に強化されただけの者が、その力をどう使うのかなんて。
精霊砲の一撃が霧の霊より放たれる。瞬間、シリンは残像を残して、一条の一撃を回避せしめる。その射線上にあるのはグラドラゴ。
霧中よりグラドラゴの絶叫が響き渡る。さらなる追撃が襲い来るのに時間はかからない。
はじめから計算していた。
シリンの精霊砲が、再び追撃となってグラドラゴを捉える。霧中に如何に姿を隠そうと、シリンには見えている。
何もかも、彼女の師匠の教えである。故に、彼女は霧に惑わされることはない。
其の一撃は、グラドラゴの体を貫き、さらなる絶叫が霧中に響き渡るのだった。
「……帝竜にはある意味感謝ですね。久方ぶりに思い出しました……」
シリンは僅かな時間ではあるが、思いを馳せる。
大切な思い出は、もはや彼方に遠く。けれど、彼女の胸の内に今でも暖かい温もりを灯しているのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
ジャム・ジアム
アドリブ歓迎
霧って晴れた時、何が見えるかワクワクするわ
ずいぶんといるのね、数には数よ
『鼓腹』で狸たちを召喚
大きな扇と、それを振るう力持ちに化けてもらう
彼らを『護り現』で包み保護して
風を起こしてもらい、霧の竜をゆがませて実体を探る
『謎のレモン』の蔦をふるって攻撃しながら【情報収集】【見切り】
歪まず、庇われる竜がいればきっと本体
狸たちといると、初仕事で乗った鉄甲船を思い出す
荒れ狂う氷の海。
夜の甲板で水夫さんと一緒に頂いた美味しい鍋
ああ、お腹がすく
なんて楽しくて刺激的な日々
本体を見つけたら『しっぽの針』で範囲攻撃
守護者が庇うなら、針に気をとらせた隙に蔦で本体を傷つけ解除を狙う
そのまま蔦で締め上げるわ
アックス&ウィザーズにて勃発した帝竜戦役。オブリビオン・フォーミュラである帝竜ヴァルギリオスにとっては計画の前倒しとなった計算違い。
だが、猟兵たちにとっては世界を滅ぼそうとするヴァルギリオスの計画を察知できたことによる進撃だ。
この進撃によって敵である帝竜たちの迎撃準備が整わぬ内に先制できるという利点を最大限に得るために猟兵たちは魂喰らいの森へと進む。
濃霧立ち込めたる森の一角。
そこに座すは霧中の暴君『グラドラゴ』。帝竜ヴァルギリオスの先駆けにして、この森の一角の守り人である。
霧に包まれたそこはグラドラゴの利する場所であり、猟兵にとっては振りな戦場であったが、それでもなお進まねば、アックス&ウィザーズ世界は滅んでしまう。
その険しき道をゆく、ジャム・ジアム(はりの子・f26053)は、濃霧の中で胸を高鳴らせていた。
「霧って晴れた時、何が見えるのかワクワクするわ」
そう言って、霧の中を進む。
ごう、ごう、と霧の中を何かが飛ぶ音がする。これがグリモア猟兵の言っていたオブリビオンであるグラドラゴのユーベルコードなのだろう。
随分な数が飛んでいるとわかる。霧で出来た竜であるということはわかっていたが……。
「ずいぶんといるのね、数には数よ」
ジャムは慌てない。慌てた所で状況が変わるとは思っていないからだ。といっても、彼女にとって今の状況はそう脅威であるとは思えなかったからだ。
数で圧する敵であるというのなら、こちらも数で対抗する。彼女のユーベルコード、鼓腹(ヘイワエノ・タヌキバヤシ)によって、枯れた木の葉たちが一斉に狸へとドロンと变化するのだ。
彼女の周りに盛大な数の狸たちが召喚され、わちゃわちゃとジャムの周りにじゃれ付くように動き回るのだ。
「お願い。あの霧を操る敵と一緒に戦ってね、あなたたち!」
彼女の号令によって、狸たちは次々と大きな扇と、それを振るう力持ちに变化する。足りない部分は複数の狸が重なり合って合体变化である。
そんな彼らをジャムは念を込めたオーラによって包み込み保護する。
合点承知!变化した狸は力いっぱい扇を振り、風を起こしていく。強風となったそれは、魂喰らいの森に蔓延る霧を一斉に吹き飛ばしていくのだ。
そうすれば、霧で出来た竜たちはたちまちに象を保てなくなってしまうだろう。
「私はその隙に!」
ジャムは駆け出す。手にした謎のレモンから生える蔦を奮って、歪んだ霧の竜たちを霧散してく。
その竜たちの防御の多い場所……つまりは、そこに動けぬグラドラゴが存在しているのだ。
魂啜りのユーベルコードの効果も、今のジャムには効果がない。
彼女の心のなかにある楽しい思い出。それは鉄甲船での一幕。
「狸たちがいると初仕事のことを思い出すわ」
微笑みが漏れてしまう。確かに厳しいものもあった。荒れ狂う氷の海。けれど、夜の鉄甲船の甲板で水夫と共に食べた鍋。
あれはとても美味しかった、と想いだしては微笑むのだ。
「ああ、お腹が空く……」
あの楽しい思い出は、決して己の魂を啜る力が及ばぬほどに大切で暖かなものであるのだ。
霧が晴れる。狸たちが精一杯扇で仰いでくれたおかげだ。そして、そこに見えるのは本体であるグラドラゴ!
「見つけた!」
しかし、未だ守護する巨竜の存在は健在だった。しっぽの針が放たれ、グラドラゴを守護する竜がかばい立てる。
ならば、とジャムの謎のレモンから放たれた蔦がギリギリとグラドラゴ本体を締め付けるのだ。
それはただの蔦と言うにはあまりにも強靭で、グラドラゴの集中を断ち切るには十分な威力だったのだ。
巨竜が消えていく。これでもはやグラドラゴを護る竜はいない。後は後続の猟兵に任せてもいいだろう。
ああ、それにしても、とジャムは思うのだ。
たくさんの思い出が彼女の体を形作っている。それが彼女の心を温め、楽しいと思わせるのだ。
どんな場所にだって、彼女が楽しいと微笑む理由がある。だからこそ、彼女は声を大にして言うのだ。
「―――なんて楽しくて刺激的な日々!」
大成功
🔵🔵🔵
ユーイ・コスモナッツ
UC【流星の運動方程式】起動!
愛用の空飛ぶ大盾「反重力シールド」に飛び乗って、
空中機動戦を挑みますっ
武器やUCをコピーするのは構いませんが、
宙に浮かぶ不安定な盾を高速で乗り回すのは、
UCではなく私が培ってきた「技術」ですよ?
どこまで着いてこられますかね~
それっ、まずは錐揉み回転しつつのとんぼ返り!
急加速して垂直降下、からのー、反転急上昇っ!
……あ、楽しい思い出、でしたっけ?
数え切れないほどありますが、そうですね、例えば今!
風を切って飛びまわるこの感覚がたまりません
ほら、まだまだ……って、あらら、もうダメですか?
私の姿恰好で情けないですねえ
それでは遠慮なく、グラドラゴ本体を攻撃しちゃいましょうか
霧覆う魂喰らいの森の一角。
そこは霧中の暴君『グラドラゴ』が守り人として猟兵たちを迎え撃つ、濃霧の森。
魂喰らいの森には魂啜る動植物がはびこっており、この一角を守護するグラドラゴもまたユーベルコードに同じ効果を持つ。
その効果は通常のユーベルコードに付随して効果が現れるため、なんの対策もなしに挑めば、ジリジリと魂を削られ、苦戦を強いられたことだろう。
だが、猟兵たちは事前に帝竜ヴァルギリオスの計画を察知し、前倒しにさせた上に迎撃の準備を与えずに一気呵成に攻め込む。
それは彼らに時間を与えぬという最大の攻撃。さらに、この魂喰らいの森の付随効果である魂啜りに対しても対策を講じているのだ。
そんな魂喰らいの森に飛翔するのは、ユーイ・コスモナッツ(宇宙騎士・f06690)である。
「ブースト・オン!さあ、一気に行きますよ!」
彼女のユーベルコード、流星の運動方程式(フルアクセルシューティングスター)によって彼女の持つ反重力シールドを変形させ、サーフボードのように飛び乗っては、内蔵された反重力装置と加速装置が起動させるのだ。
彼女の空中機動は、まさに空という波に乗る以上に変幻自在である。
しかし、そんな彼女の目の前に現れたのは霧で構成された彼女自身を模した霊。それはグラドラゴのユーベルコードにて召喚されし敵である。
「むむ……!武器やユーベルコードをコピー……それは構いませんがっ!」
反重力と加速の力によって空を掛けるユーイと彼女をもした霧。それが空にて互いを追跡し合うドッグファイトが行われる。
しかし、それは大きな間違いであったことだろう。
何故なら、宙を舞う盾を高速で乗りこなすのは、彼女のユーベルコードではない。彼女が連綿と培ってきた「技術」である。
「どこまで着いてこられますかね~……それっ!」
ユーイが盾と共に錐揉み回転しつつのとんぼ返りで、霧で模した彼女の霊の背後を一瞬で奪い取る。奪い返すようにターンしてユーイの背中を再び取るが、それはあまりにも技術の差がありすぎることを如実に物語っていた。
「……あ、楽しい思い出を念じるでしたっけ……」
どんな楽しい思い出があったことだろう。思い出す。といっても、彼女の記憶の中にある楽しい思い出といえば、上げたらキリがないのだ。
あれもこれも、みんな楽しいと思ってしまう。だからこそ、取り立てて楽しい、とい言われると困ってしまうのだ。
「あ!今、すごく楽しいですよね!風を切って飛び回るこの感覚、たまりません!」
さらに急加速して垂直降下してからの反転急上昇!
それは彼女を追い回すことだけに腐心していた霧の霊にとって、容易なものではなく、急加速で垂直降下したものの、急上昇はできずに地面へと突き刺さる。
ユーイは悠々と空を飛ぶ盾から、その様子を見下ろす。
「ほら、まだまだ……って、あらら、もうだめですか?」
自身の姿をしている者が、地に堕ちているというのは、正直ちょっと情けないという気持ちになってしまう。
しかし、グラドラゴを護る者はいなくなった。
「それでは、遠慮なく。攻撃しちゃいましょうかっ!」
ユーイの空を掛ける時間は終わりを告げる。
こんな序盤で時間を食っている場合ではないのだから。
それでも、先程の自身の能力をコピーした霧の霊とのドッグファイトは、楽しいと思えたひとときであった。それが例え、オブリビオンが作り出した幻影だとしても、誰かと競い合い、風を感じられたこと、それが正に彼女の心を暖かくも護る楽しい思い出となったのだった。
故に、守護を喪ったグラドラゴへとくわえる攻撃は、一切の容赦もなく、その巨躯を強かに討ち果たすのであった―――!
大成功
🔵🔵🔵
愛久山・清綱
俺の思い出は……幼い頃に『初めて空を飛んだ時』。
大空から俯瞰した故郷の街は、とても美しかったのだ……
眠ることなく輝き続ける、キマイラフューチャーの街。
■決
あの頃に還って翼を羽ばたかせ、【空中戦】を挑むぞ。
また戦闘に入る前に【オーラ防御】を纏っておこう。
■闘
放たれる毒霧を【毒耐性】、咆哮を【激痛耐性】で我慢しつつ、
高速で動く敵まで空中【ダッシュ】で接近する。
姿を見失わないよう、常時敵を目視し続ける。
接近できたら敵の頭部目掛けて【怪力】を込めた【真爪・剛】を
放ち、脳天を打ち砕くのだ。
頭の真ん中に刺せれば、致命的な個所に当たるだろうか
……今度時間ができたら、久しぶりに帰省しよう。
※アドリブ・連携歓迎
空を飛ぶ者にとって、初めて大空を駆けた記憶というのは特別なものであったことだろう―――。
魂喰らいの森。
その一角に座すは霧中の暴君『グラドラゴ』である。帝竜ヴァルギリオスの先駆けであるグラドラゴは、魂喰らいの森の一角を濃霧で包み込んだ。
これこそが、グラドラゴの有する能力であり、ユーベルコードであった。しかも、この魂喰らいの森の守り人として、グラドラゴのユーベルコードには、魂を啜るという効果まで付随されているのだ。
何の対策もなしに戦えば、魂は削られ、猟兵は大いに苦戦させられたかもしれない。
だが、どんな能力、効果であっても対策は打てるのだ。それが、楽しい思い出。
猟兵達の記憶に宿る楽しい思い出を念じてユーベルコードに乗せることによって、その暖かな記憶は猟兵の魂を護るのだ。
「大空から俯瞰した故郷の街は、とても美しかった……」
愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)が思い描くは、故郷の街。その故郷たるキマイラフューチャーの眠りなき街の輝きは、彼の心に楽しい思い出と共に去来する。
幼き頃に初めて空を飛んだ記憶。
それは色褪せることなく清綱の心に宿る。絢爛豪華に光り輝くキマイラフューチャーの街並みは、其の一つ一つの光の中にキマイラフューチャーに住まう人々の平和とおもしろおかしく生きる人生そのものであった。
それを美しいと思う気持ちは、彼の魂を護るのだ。
故に、彼はあの頃の初心へと還って猛禽たる大鷲の翼を羽撃かせる。彼の体を覆うオーラと共に胸に溢れる暖かな記憶。
それが彼に力を与え、霧中の森へと突っ込むのだ。
そんな彼を出迎えるは、麻痺毒を含む霧の噴出。しかし、それを受けてもなお、清綱は止まらない。
毒など、彼の有する耐性の前では霧散するものと同じである。清綱と空中戦を繰り広げるグラドラゴから放たれる咆哮は清綱の体を強かに打ち付けるが、その激痛も彼は無視する。
「なんの、これしき―――!」
痛みに、毒に、その体を苛まれようとも、清綱の瞳はグラドラゴから離されることはない。しっかりと、その討つべき敵を見据えているのだ。
互いに翼持つ者であり、高速移動で空を駆けるを捉えるは互いに必死である。
だが、清綱の心にある、あの頃の記憶は彼を一段と強くする。
それは連戦によって消耗したグラドラゴにとっては一瞬の隙。だが、致命的な隙であった。
「……もらったり」
裂帛の気合と共に放たれるは、彼のユーベルコード、真爪・剛(シンソウ)。手にした太刀の一閃が、グラドラゴの脳天へと閃く。
ぐらりと空中で身を捩ってかわそうとしたのが、運の尽きである。
初心を思い返し、あの頃の空を思い出した清綱。そして、慢心し初心すら忘れた過去の化身たるグラドラゴ。
勝負は一瞬であり、どちらが勝利を得たかは最早、自明であった。
暴君と呼ばれたグラドラゴの脳天へと清綱の愛刀が貫く。其の一撃は脳天を打ち砕き、即座にグラドラゴを絶命せしめる!
空中で絶命したグラドラゴの体が、ぐらつき、そのまま眼下の森へと堕ちていく。それは途中で霧散し、骸の海へと還っていく。
その様子を見下ろしながら、清綱は一人、独白する。
「……今度時間ができたら、久しぶりに帰省しよう」
それは思い出した初めて空をとんだ記憶が引き出した言葉であったのかもしれない。
この帝竜戦役が収束した暁には、きっと清綱は故郷である眩しい輝き放つ、故郷の空を舞い飛ぶのだろう―――。
大成功
🔵🔵🔵