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生命よ届け

#ヒーローズアース #戦後 #知られざる文明

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 燃える、燃える。
 支配された神々の国が、その息吹を取り戻さんと熱を巡らせる。
 不死たる怪物の命で栄える、その国々に侵略しようと蝕む呪詛を払いのけようと火の粉が舞う。
 ――噫、燃えよ、燃えよ。
 今 一 度 、 生 命 の 息 吹 を 教 え 給 え !


「さて、皆さん。お集まりいただきありがとうございます」
 物腰は丁寧に。
 猟兵たちが世界からの救援要請を求めてやって来るはグリモアベース、その片隅に彼らを集めて小さく円陣を作りながらヘンリエッタ・モリアーティ(円還竜・f07026)は資料を一人一人に配りつつ、此度予知した依頼についてを語っていく。
「ヒーローズアース2019――かの戦争に勝利したことで、四つの『知られざる文明』があの世界の仲間に加わりました。お願いしたいのは、つまり、文明の再興というところです」
 知られざる文明たち。
 それは、海の底に沈む高度な海洋文明もあれば、怪物を生み出してきた地下水道迷宮もあり、侵略者を許さぬ宇宙船群の文明もある。――今回、君たちが向かうのは『センターオブジアース』と呼ばれる地球の中心にて燃え上がる、絶え間なき焔と生命力に溢れ、包まれる場所だ。すべて、そこには神しかおらず、比較的古風な文明を好む傾向にあるらしい。ただ、この『神』が支配する場所とて元はと言えば『支配されていた』場所なのだ。
「ジェネシス・エイト――彼らに支配されたために、やはり復興が最優先かと。」
 戦争に勝利したとはいえ、オブリビオンの残党は在る。
 掃討することで、どうか文明の援助をしてやってほしいと黒が頼むのだ。
「残党の隠れ潜む拠点を予知しています。皆さんは、ぜひ神々が喜ぶくらい勇ましく、大暴れしていただければと。連携して技を見せても構わないでしょうし、スタイリッシュな活躍をしてもきっと喜んでくれるでしょうから」
 戦うことで、『魅せる』。
 神々には未来の守護者たる猟兵たちの強さ、その勇ましさ、したたかさ、強靭さを見せることで喜んでもらい、文明の復興へ繋げるのがよく効くらしい。
「残党を殲滅すれば、後にその頭目を斃していただくのですが。皆様にはここからも頑張っていただければと思っていまして。」
 ――そう、この依頼において最優先事項は「文明の復興を手伝う」ことである。
「『神前武闘会』といいます。ああ、どうかご安心を。――観客でも構いませんから」
 戦争で、神々は力を失ってしまった。
 その力をよみがえらせてやるための武闘会を行えという。それも、猟兵同士で派手な戦いを繰り広げるのがいっとう、この神々にはよく『効く』というのだ。
「詳しいルール説明は、きっと現地で。まあ、度が過ぎたようなものはご法度でしょうが。信頼できる仲間と一緒に思いのたけをぶつけ合ってもいいかもしれませんね」
 ――そういう少年漫画っぽいの、お好きじゃないですか?
 こて、と首をかしげてから、いつもの困り眉に変えてみせる。猟兵同士のコミュニケーションにおいても、様々だ。言葉で語り合うほうが得意なものもいれば、拳のほうがお互いの言葉よりも『こころ』をずっと掴みやすいパターンもあるだろう。
「熱い戦いで神々を元気にしよう、っという流れでもありますが、文明を知ってもらうための動きでもあります。この戦いの模様を動画にして、世界へ配信するのもいいかもしれません」
 もちろん、プライバシーは大事ですよ。と悪戯っぽく笑ったのなら、赤い輝きが猟兵たちの輪郭を照らすだろう。
 英雄たちの世界に新たな仲間を招くために、未来への一筋が作られていった。猟兵たちを歓迎するのは灼熱であった!
「誰にも知られなかった文明たちを、どうかその良さを――教えてあげてくださいね、猟兵(Jaeger)! 」

 ――今、激しい生命の律動と共に何よりも熱い『語り合い』が幕上がる!


さもえど

 さもえどと申します。暖かくなってまいりましたね。
 今回はヒーローズアースでの事件になります。

●構成
 一章:戦闘。
 知られざる文明に潜む、オブリビオン残党が隠れ潜む拠点に踏み込み、派手に戦闘しましょう!
 二章:戦闘。
 残党の頭目をしていたオブリビオンと戦って撃破します。派手に戦闘しましょう!
 三章:日常『神前武闘会』
 猟兵同士で戦っていただきます。やりすぎな描写は致しませんが、それぞれの想いや仲間同士での気持ちをぶつけていただいて問題ございません。勝敗など、希望が在れば描写いたしますがまた詳しくは該当の断章にてお知らせします。お一人でも楽しんでいただけるよう、努めますのでよろしくお願いいたします。

 プレイングの受け付けは断章の投稿後で各ページにてお知らせとなります。
 バトル、バトル、バトルな流れですが、皆様の素敵なキャラクター様同士や、生きていくうえでの想いや覚悟などを拳に乗せて叫んでいただくとよいかと存じます。
 それでは、素敵なプレイングの数々、楽しみにお待ちしております!
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第1章 集団戦 『呪法擬人化胡狼兵』

POW   :    カース・インベーダー
自身に【黒い霧のような呪いのオーラ】をまとい、高速移動と【生命力を奪う影の鎖】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    シャドウ・アームズ
対象の攻撃を軽減する【影武装形態(シャドウアームドモード)】に変身しつつ、【棒術と攻撃魔法のコンビネーション】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    アンチェイン・ビースト
【自身にかけられた人化の呪いを解除する】事で【巨大な魔獣】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:エル

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 地球――ヒーローズアースにおいてのものに在る『核』が、神々の住まう地なのだ。
 かつて、不死の怪物を底に放り込んだ。燃え盛る炎熱がその名残で、あふれ出る生命力が君たちを歓迎するだろう。
 ただ、呪詛に聡いものや己の感覚を得たものであればきっと、炎熱の中に薄暗い湿り気があるのを理解する。
 ひたり、ひたりと――褐色のそれらが緑の中を歩き、呪詛を纏い生命力を吸い上げては己の力に変えていくのを見たものもいただろうか。
 土を踏めばたちまち腐り、草木は枯れて命を奪われ、美しい黄金が腐り落ちていく。
 獣たちは悠々と歩きまるで己らのほうがこの場にふさわしいのだと傲慢な顔つきをしていた。拠点に現れた猟兵たちに道ずる様子もない。「猟兵だ」とどれかがひとつ、ため息のように声に出したなら、皆が見下したような視線を送る。
 ――ふさわしくない。
 神々のみに許されるこの文明に、過去のほうが相応しくないのだ。しかし、彼らは時を止めたまま己らを肯定する。冥府の神たるアヌビスにも似た長い耳を持ったけだものたちが唸り声をあげ、美しい顔をどんどん怪物の代物へと変えていくのだ。己らの体にかけられた人化の枷を解き始め、その姿は四つ足のものへと変えてみせる。漆黒の毛皮に含まれた膨大な呪詛で己らの神力がむしばまれようとも、躊躇すらなかった。襲い掛かるのならば、確実に猟兵たちを仕留めるためにそれぞれがゆるりと動き出す。足音すら立てないよう気を付けて、緑に潜み、――陽動するための部隊と、潜伏部隊に分かれ始めていた。
 生命力溢れるこの場所を、未来の死をもってすべてを塗り替えんとする。瘴気が、怨念が、――敗北した過去たちの感情を見たものもいるだろうか。

 アベンジ
 復 讐 だ。

 ひとつが遠吠えを起こせば、またひとつが吠え、十が重なり百となり獣たちが走る!! 生命に満ちたこの場所を今一度奪おうと、悪しきが英雄の世界に牙を剥いたのだ!!
 猟兵たちは戦いに身を投じながら、気配をどこからか察知できただろうか。――神々がいる。未来の使徒が一体どのようなものかを見極めんと、その雄姿を力にしようと、偉大なる存在達が見守っていた。
 さあ、猟兵たちよ。――明日を守る君たちこそ、世界の調停者であり英雄なのだと神々に轟き叫べ!!


 プレイング募集は2/27 8:31~ 2/29 22:00までとさせていただきます。
大神・るり
……ワタシは神っていう存在は好きじゃないんだよ
本当に力を持った神がいるのであれば今、ワタシ達猟兵はこんな事をしていない
猟兵になって頑張っている神もいるけれど、残念ながら殆どの神は力もないくせに力を持っていた時の幻想に囚われたプライドが高いだけの無能

まぁ、かなり偏見が入っていることは否定しないんだよ

そんな、自分が高尚な存在であると思い上がっている神様は果たして卑怯な手で闘う矮小なワタシを見たらどんな反応をするだろうかな

ワタシは勝つためならばどんな手段も使うよ
毒だろうが痺れ薬だろうが、ドーピング薬だろうが

………少年漫画のヒール役ってこんな感じなのかな?
なんか、選択を間違えた感がすごいんだけれど


ジュジュ・ブランロジエ
アドリブ&共闘歓迎

星の幻想劇で状態異常力重視の強化+呪詛耐性
呪詛なんて私の輝きで打ち消しちゃうよ!

第六感&聞き耳で気配を察知し奇襲に対処
飛びかかってきたらメボンゴで武器受け&カウンターでメボンゴパンチ
吹き飛ばし距離を取る

魅せるのは私の得意分野!
行くよ、メボンゴ!
呪詛にはやっぱり光かな?
光属性付与した衝撃波(メボンゴから出る)

生命力を奪う鎖は避けるの難しそうかな
あえて鎖を巻き付かせ高速移動を止め、敵の手に光属性付与したナイフを投擲
鎖が緩んだら脱出
これぞ華麗なる脱出ショー!……にしてはいまいちかな
もっときらびやかなのがいいよね
星の幻想劇で攻撃力強化
光属性衝撃波を二回攻撃
シャイニングメボンゴ波ー!




 神という存在は、好きでない。
 薬学を専門に日ごろ研究に励む大神・るり(薬学界随一を誇るマッドサイエンティスト(自称)・f02010)にしてみれば、「神」などは哲学上の存在にしかない。例えば、それは数量におけるゼロであり、「ない」と言う状態が困るから「ある」ものだとすら思えた。
 猟兵にるりが至ってからその存在を認知することはあれど、――その努力を理解することはできても、神などを好きにはなれない。
 化学ではけして証明できない異次元の存在であり、人間の妄想が生んだような政治の道具であり、実在したそれらのほとんどは己らが「神」という絶対であるから傲慢なのが気に食わなかった。
 事実、「力」というわかりやすいベクトルを持たない神すら、その数式を無視して「無限」を象徴することだってある。
 ――あまりに、不可解。あまりに、無駄。
 数式に当てはまらない、化学式で証明できない非現実的なオカルティズムなどはあまりにるりからしてみれば無能だった。
「まぁ、かなり偏見が入っていることは否定しないんだよ」
 ――事実。
 今、彼女がいる場には到底「並大抵」では造られないような不可思議で出来た「なにか」が生態系に影響を及ぼしているらしい。
 黄金に光る林檎は知恵の実であるのならば、まさか純金であれど金メッキであるはずがないから――これが、『この世界の』神々が成し遂げることだと思えば、己の凝り固まる先見にもため息がでる。しかし、「助けてくれ」というのならばともかく、「見ているだけ」とはやはり、人間として化学の最先端にいるるりだからこそ腹が立つのだ。
 日々、進歩する。
 るりたち化学者というのは、研究で文明を前に進めていたのだ。地道に、それも、もとよりディレッタントのきらいはあれど数々の天才たちが「天才でありながら」怠らぬ努力をしてきたのを見ている。
 アンニュイな視線をごまかすように、己の左側頭部を手で撫ぜて髪の毛をかき混ぜた。視界の端にちらついてしょうがないそれらを無視していたが、いよいよもって殺気が身近に迫りくる。――さて、化学で追いつかぬ存在たちを、今ここで明かさねばならぬ時が来たのだ。
「オオカミ、――ジャッカルか。まあ、どっちでもいいよ」
 無駄な計算はしない。
 面倒くさいことをただでさえ一人で処理しきったところで、この後に続く案件があると思えば省くべきだ。出来る限り、エネルギーの節約といきたいところである。己の白衣の袖に含まれた暗器たちの重さを確認して、髪をなでながらぼさぼさの前髪で視線を遮った。
「ワタシも必死なんでね。これでも」
 ――ただの、薬学界随一を誇るマッドサイエンティストゆえに。

「『星の魔法をここに。此度の演目を彩るは星の輝き!』」
 緊張があったのだ。
 るりが腕を振るか、それとも呪詛の獣たちがとびかかるかの均衡状態である。唸り声をあげる彼らの牙どうしがすき間を作るころに、少女の盛大な宣誓が上がった。
「利用できるものは、利用させてもらうよ。ワタシは勝つためなら、どんな手段も惜しまないんだよ」
 ――神は己をどう思うだろうか、とるりが少し自嘲的であれば。
 その背を真っ白な光が包んだのだ! 呪詛の獣たちの黒がより際立って、その影が細く小さく縮んでいく!
「呪詛なんて打ち消しちゃうよ、――私達の輝きでねっ! 」
 従えたるは、きらびやかなドレスに身を包んだうさぎが一羽と。その手綱を握る少女がささやかなフリルたちを躍らせながら白を基調とした生地で黒のストライプが描く放射を見せつけ着地!
 彼女こそ、笑顔の奇術師ジュジュ・ブランロジエ(白薔薇の人形遣い・f01079)である!
 いっとう輝いてくれ、と此度、たまたま同席したるりからのオーダーを快く引き受けた彼女なのだ。もとより、お互いに作戦案は練っておれどジュジュはこうして輝くことで本領を発揮できるので手段は変わらないし、逆にるりはこの多勢の中隠れ続けることが必要不可欠の身である。
 美しいバラが大きく一輪あれば、誰もその茎に生えた棘のまがまがしさなどに注目しまい――るりが、眩さに悲鳴めいた鳴き声を上げた獣たちにため息を吐いた。
「いい反応だ。そのまま、死んでおくれよ」
         アサシネイト
 【 突 然 の 不 意 打 ち 】!!
 びゅっ、と服の袖から飛んだ矢たちに塗られる神経毒が、呪われし御使いどもの首を貫く!
 ぎゃあ、と悲鳴を上げた四つ這いたちがあれど、まだ死に至らぬ。神経毒ゆえに――効き目は絶対だが遅効性だ。だから、ジュジュを連れてくる意味がある!
「行くよ、メボンゴ! 」
 宣言と共に!  スターライトファンタジア
 奇術披露、【 星 の 幻 想 劇 】 ! ! 
「――ギッ、イイイイイッッッ!!!」
 星々が呪詛の獣たちに降り注ぐ! るりにとびかかろうとした一体が質量に押しつぶされてわずか届かず地面に貼り付けられた!
「まだまだ終わらないよ! いっぱい楽しんでいって! 」
 いつだって、演目はジュジュにとって「いつでも最後だ」と思って行わねばならぬ。
 ジュジュはエンターテイナーだ。同種の数がそれこそ星の数ほど多いのを理解している。故に、彼女の人形劇を見に来てくれる人にはいつも真摯に「喜ばせること」を第一に考えて努力を怠らなかった。なにせ、出身がダークセイヴァーである。人々の笑顔は貴重で、こうしてジュジュに次も巡り合える顔ぶればかりではなかった。
 ゆえに、前を向く。勇猛な笑顔で前を向き、次の舞台があることを信じて「いつでもこのお客さんと会えるのは最後だ」と言う気持ちで全力のパフォーマンスをせねばならない!
 きらきらと輝く星々と花を見上げて、るりもこれにはひとつ「奇術」らしさを見た。これはユーベルコードで、「タネも仕掛けもある」奇跡だ。
「ほら、見てみるがいいよ。神々。神なんて、こうして『作れる』」
 ――呪詛の獣が張り付けられたのを、見下ろして。
 るりの呟きが落ちていく間に、ジュジュは光の衝撃波で獣たちの群れに穴を作り上げる!どう、どう、と呪詛が短期間の収縮を繰り返すのを見て光は間隔を作るには有効だと得た。ならば、――絶対に消し去る勢いを見せねばならない。
 なにせ、此度の「お客様」は神々なのだ。もっともっと大掛かりな奇術まで彼らを焦らして、感動を覚えてもらわねば!
「――あっ!? 」
 その時である。
 ばし、と細いジュジュの身体が――呪詛の鎖にからめとられた。空中に爆風で飛び上がったところを狙った一撃である。
 困ったキャストだ、とジュジュが眉をひそめたのはその特性であった。なにせ、「生命力を奪う」ものである。ジュジュの演目において「元気さ」「快活さ」というのは不可欠なのだ。出来るだけ早く離脱せねば、この後のクオリティが落ちる!
 鎖を握る獣がにやりと笑ったのを、三つの矢が頭、肩、喉を貫いて見せた。ぐら、と力の抜けた拍子に引き寄せられるものの、ジュジュを縛る力はたちまち薄れる。
「――ありがとう! 」
 華やかな顔で、渾身の感謝を叫んだ先には隈を顔に貼り付けたるりがいる。
「いいや。こちらこそだよ。さあ、続けてくれ」
 目立つジュジュが狙われる――いわゆる、ヘイトを稼ぐ役割なら、そのカバーをるりが的確に行うのだ。
 脱出ショーにしてはいまいちかな、なんて苦笑いをした彼女にも首を振る。ジュジュは充分に役割を果たしてくれているのだ。
 ととん、と軽く足音を立てて地面につま先をつけたのなら、留まることなくまるで旅でも楽しむかのようなステップを繰り出しジュジュは獣たちを翻弄する。そこを、また『姑息』なるりの矢が襲う。
「もっときらびやかなのがいいよね、そうでしょう? 」
 ――観客を煽れ。
 ジュジュが翠の瞳を細めて笑えば、獣たちは挑発されたと判断し、神々はぐっと息をのんだだろう。
 あたりのざわめきが木々のものだけではないことは、るりにも理解できた。存外、此処の神々は直情的で素直らしい。
 逃げ回っていただけではない。ずっとジュジュは己と相棒の間に力をためていた。獣たちを疲労させ、焦燥の海に突き落とし、緩急をつけることで演目に退屈をさせない。――夢 中 に さ せ た の だ !
 息を吸って、止める。
 ジュジュの動きが止まれば、獣たちもつられて止まった。るりもまた、同じようにその『演目』を待つ。

「シ ャ イ ニ ン グ メ ボ ン ゴ 波 ー ッ ッ ッ ッ ! ! ! ! ! !  」

 ――破魔光がはじけ飛ぶ!!
 両腕から突き出されたウサギの人形――メボンゴという――から、どうっと光が津波のように現れて星々と花が「過去」たちを飲み込み時計の魔術で「巻き戻して」いく!
 そこに呪詛など「存在しない」時間軸に巻き込まれながら、獣たちは悲鳴を上げる暇もなく――ぎゅぉおおおおお! と唸る洪水に巻き込まれ、渦を作れば点となり消えた。
 間もなく、ぱん、ぱん、ぱん、と心地のいい拍手が一つ、るりから送られる。
「ほら、もたもたしないよ。拍手をしないと。『人間』の世界じゃそうするのが普通なのだよ」
 ――続いて、世界が生命を歓び、その勝利に炎を吹き出して喝采を送った!!
 どどうとプロミネンスが沸き上がれば、熱気が恭しく相棒と共にカーテシーで幕引くジュジュを歓迎する!
 上品に笑った少女の顔の眩さに「神」では与えられぬものの証明を、るりは見た気がしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

劉・涼鈴
【FH】
ふふー、武侠映画みたいで楽しそーだ!

自分よりでっかい武器、覇王方天戟をぶんぶん振り回して大見得を切るよ!(パフォーマンス・存在感)
どっせーい! 劉家が奥義の継承者! 劉・涼鈴とは私のことだー!
覇王の武技、恐れぬならかかってこーい!

リアがサポートしてくれるから遠慮なく突っ込むよ!
【ダッシュ】で踏み込んで戟を叩きつける! どーん!
鎖も戟で絡め取って【鎧砕き】の【怪力】で引き千切る! うおりゃー!

リアに敵の高速移動を牽制してもらう!
そっちに敵が気を取られたところに、足払い(スライディング)ですっ転ばす!
体勢を崩したところに【劉家奥義・蚩尤激甚脚】を叩き込む! ぶっ潰れろぉぉ!


リア・ファル
【FH】
涼鈴ちゃん(f08865)と

神前武闘会か、闘るのも観るのも楽しみだね!

「でもその前に、ひと暴れと行こうか
今を生きる誰かの明日の為に!」

呪いのオーラや敵の動き、影の鎖を演算解析
(情報収集)

「涼鈴ちゃん、遠間の相手はボクが牽制する。前衛からぶっ飛ばしちゃって!」
『ライブラリデッキ』から(破魔)弾をセット
『セブンカラーズ』で牽制
(援護射撃、属性攻撃)

「命を喰らう鎖に、呪いのオーラか! なら!」
UC【召喚詠唱・白炎の不死鳥】の出番だ

白き炎が、敵の呪いを浄化し、
こちらを炎で包めば生命力を回復させる

不死鳥を涼鈴ちゃんへ纏わせ、敵の高速移動は銃撃で足止め
「溢れる生命力なら…この炎も負けちゃいないさ」




 神前武闘会、なるものはよい試みだと思うのだ。
 リア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)は運び屋である。非常にアクティブでありながら物腰は穏やかであり、多岐にわたる才能を生かしながら人々に色々なものを「届けて」いる彼女は、この作戦に素直に想いを馳せた。
「よし、――ひと暴れといこうか、涼鈴ちゃん! 」
 きぃ、きぃいいいいと甲高い音を立てた己の相棒、イルダーナの手綱を握る。リアからの感情に呼応したようなボルテージの上り様に、思わずリアも微笑んだ。
 猟兵同士の戦いを、闘るのも観るのも楽しみなのだ。
 猟兵と言えば、未来の守護者であり世界の調停者である。その在り方は猟兵の数ほどあるとはいえ、超常の存在だ。絶対的な力同士のぶつかり合いというのが――「未知数」に包まれていることは想像に容易い。「未知」とは、面白いもので在るのがセオリーだ。
 マイクに指先ひとつ触れたなら、此度同席する猟兵に声をかける。
「ふふー! 武侠映画みたいで楽しそーだ! 」
 ぐりんと捻じれた雄々しい牛の角に、ふさふさとした其れの耳。
 小さい身体から感じられる覇気には呪詛の獣たちも思わずたじろいでしまうだろう。キマイラの少女の赤い瞳は焔よりも煌々と燃え盛り、一歩踏み込めば美しい銀髪がまるで太陽光のような輝きを生命の焔から授かり、鬣のように広がる。斧――少女の身の丈よりもずっと大きな覇王方天戟を軽々しく振り回し、手で弄んだ。
「どっせーい!! 劉家が奥義の継承者!劉・涼鈴(豪拳猛蹴・f08865)とは――私のことだーッ! 」
 涼鈴は、「こういう」映画が好きだ。
 悪をばったばったとなぎ倒し、それがカンフーを遣えばなおのこと良い。なにせ、「真似するだけでも」オブリビオンを殺してしまえるほどの身体能力を持つ彼女なのだ。
 ヌンチャクを振り回すくらい軽々しく、己の斧を振り回し、踊りのようにステップを踏んで獣たちをけん制する。か、かっ! と、つま先で威嚇しながらびたり、静止したのち紅の瞳で唸るのだ。
「覇王の武技、――恐れぬならかかってこーい! 」

 これが、きっと映画ならSEに銅鑼の音が在ったのだろうとリアがほほえましく思いつつも、あたりの「ボルテージ」を観測する。
「うん、うん。盛り上がってる」
 涼鈴は無意識なものだったろうが、パフォーマンス、もしくは、「舞い」めいた動きというのは本来神々を呼び寄せるものとして最適だ。
 雄々しく、そして小さな身体から溢れる分かりやすい大きな力に『注目』が集まっている。イルダーナにまたがり、上空に留まるリアにすら期待が集まっているのが感じられた。
「――お届けしないとね」
 感動を。
 絶 対 無 比 の 、 生 命 の 歓 喜 を こ こ に 届 け ね ば な ら な い !
「涼鈴ちゃん、遠間の相手はボクが牽制する。前衛からぶっ飛ばしちゃって!」
「りょうかーい! 」
 運び屋たるリアの合図とともに、涼鈴が突進! 足元に波状の痕を残すほどの踏み込みをひとつ繰り出せば、跳んだ!
「せぇ、のッ」
 どぅん! とまず目くらましを兼ねた一撃が繰り出され、獣の頭をひとつ粉砕!吹きあがる砂塵に獣たちが連携を崩されれば、潜伏部隊が補助に回ろうと動いた。
「おおッと、させないよ――」
 鎖が伸びる。
 ――解析が始まると同時! イルダーナを絶えず動かしながら空中のドリフトと共にリアが『セブンカラーズ』.357マグナム・ワイルドキャットに破魔の銃弾での足止めを試みた!
 呪詛で出来た獣たちは破魔を極端に恐れる。きゃいん、と悲鳴が上がって後ろに後退した部隊からたちどころに、次は厄介と判断されたリアを引きずり下ろすための鎖が立ち上った!
「いいね、どんどん来ると良い! 」
 ――潜伏部隊をあぶりだした。白兵として最前線に涼鈴と殴り合う獣たちへの助けも遅れ、現状は大変動きとしては宜しい成果である。イルダーナに前かがみになりながら、しがみつくようにして空気抵抗を減らして加速!! 鎖たちが伸びてくるのを空中での回転、急カーブ、急停止にて翻弄を繰り返すリアだ!
「おッ――とぉ! 」
 びゃっと伸びた鎖に絡まれるのは、涼鈴のほうが早かった。リアが鎖を回避しながらその正体を探る。
「あいや」
「命を喰らう鎖に、呪いのオーラか! 大丈夫!? 」
 【カース・インベーダー】。
 黒霧があたりに立ち込め、金色の実たちはぼとぼとと腐って地面に吸われていく。神々からの視線にも緊張が混じり始めて、リアが涼鈴に叫んだ。
 なるほど、強固な鎖である。
 復讐心が生んだ代物はぎちりぎちりと少女の腕に絡みつき、少し引き寄せた程度では緩みもしない。赤い瞳を少しだけ細めて、息を肺いっぱい吸い込んで――涼鈴は破顔してみせた。
  モウ マン タイ
「 無 問 題 ! 」

 ――ばきゃり、ばきばき!
 あっけなく砕け散る鎖には、獣も驚く。少女にそうさせたその正体は、まぎれもなく「ただの怪力」の力だった! 覇王である。今の涼鈴を誰も止めることなど出来ぬどころか、このような薄暗い痛みでは到底歯も立たないのだ!
 獣たちが動揺する。この獣たちが持つのは呪詛でしかなかったのだ。破壊の力を前におそれ、ぎゃあぎゃあと喚きだした動きにイルダーナが新たなグラフをリアに差し出す。――数はこちらが不利、しかし、『質』は圧倒的有利!
「オーケー、なら」
 破魔に弱い。
 肯定的な想いにも弱いのだ。
 負ける可能性など考えない涼鈴の勢いに気圧されている精神状況を見るに、流石呪詛の獣であると言える。それが、――リアに最善のカードを切らせることとなった!
「溢れる生命力なら、この炎も負けちゃいないさ」
 恐ろしいから、喰らおうとするのだ。
 獣たちがリアに注視して、機器を察知し鎖を振りかざしてもあっという間に『蒸発』させられる。熱源となりはじめたリアとイルダーナには防熱プロテクトが薄く張り巡らされていった。
 ヒントは、この空間から得る。
「――『電子の門をくぐり』」
 Code:Attack Function_
「『幻想より来たれ』」
 System: ... … … … OK_
「『――白 き 再 生 の 不 死 鳥 よ ! 』」
       ファンクションコール・ホワイトフェニックス
 承認、――【召喚詠唱・白炎の不死鳥】!!
 ごあ、と太陽の如く白い光が現れ、雄々しい叫びと共に火の粉をまき散らし不死鳥が顕現した! 不死鳥こそ、再生の象徴でありこの獣たちの最も恐れるべきところの要素であろう。腐って堕ちた金色たちが形を取り戻し、重力に反してまた樹々に戻っていく光景を抗議するようにして吼える獣たちには、容赦なく涼鈴の一撃が襲った! 上あごと下あごが分離して吹っ飛ぶ仲間の姿に、獣たちはより混沌へと導かれる!
「さあ、――仕上げと往こうか! 」
「まっかせて! 」
 高速移動などさせぬ。
 リアの銃撃は的確だった。まるで審判の光ように獣たちを縫い留め、降り注ぐ弾幕がうまく涼鈴を隠す。呼び出した不死鳥が――涼鈴を纏った。
 躱すのも、読むのも、「ただ殴る」よりは劣る。
 獣たちの攻撃や流れ弾に直撃しても、直ぐに不死鳥が身体を取り戻させる。不死の加護を受けた身体のなんと勇猛なことか!
「さぁ――」
 足を払う。
 否、もはやそれは低く地を這った弾丸だった!
 地面を滑っていけば、彼女の進行方向に在った獣たちの脚は文字通り「飛ばされる」。不死鳥の神性により燃やされた脚たちが蒸発し、獣たちの身体は一瞬宙に浮いた。無防備な身体たちは、己らの死期をフレームで見たやもしれぬ。
 脚だ。
 斧を地面に叩きつけ、さらに獣たちの上に出た。
 涼鈴の動きはまさに本能のそれである。計算だとはリアも思っていない。だけれど、――だからこそ、「合わせやすい」。
「ぶ ッ 、――潰 れ ろ ぉ お お お お お お お お お っ っ っ ! ! ! 」
     リ ュ ウ ケ オ ウ ギ   シ ュ ウ ゲ キ ジ ン キ ャ ク
 ――【劉 家 奥 義 ・ 蚩 尤 激 甚 脚 】!!
 繰り出される一撃には、着飾りも何もなく、ただ絶大の蹴撃である!! 
 踵落としだ、と判断できたのはきっとフォームからだろうか。彼女が蹴りつぶしたのは「空気」であり、ほとんどの獣たちの身体を文字通り「圧し潰し」てみせた。たった、一撃で!
 漏らしがないようにリアが迎撃の弾幕を敷き詰めたのなら、もはやそこには獣たちの聲一つ残らぬ。ざあ、っと樹々が歓声を送り、二人を灼熱の息吹が歓迎したであろう。
「お届けにあがりました、――ってね」
「うまくいったね! 」
 リアが着陸して、涼鈴とハイタッチを力強くひとつ繰り出したのならまた、次の目的地へ向かった。
 ――次も熱いうちに、お客様には届けるべきであるから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

レイニィ・レッド
……、やれやれ
見られているのは何か居心地が悪ィですね

ま、やることが単純なのはイイ
いつも通り叩き斬らせて貰いましょ

息を殺し 気配を殺し
目立たなさを活かし物陰に潜伏
状況をよォく確認
獣どもの注意が他に逸れた瞬間を狙いましょ

頃合いを見計らって
『赤ずきんの裁ち鋏』を鳴らす
こちらに注意が向く前に
一気に接敵
急所に鋏を差し込んでやりましょ

狼は群れを作るモンですが
リーダーが居れば真っ先にソイツを潰しましょう

残りは攻撃を見切りつつ速さで振り切り
統率を乱すように鋏を振るいます

あァ
言い忘れてましたけど
自分、獣臭ェのは苦手でして

――特に狼の臭いは、ね
"雨の赤ずきん"ですから

さァ一匹残らず
ズタズタにしてやるよ


毒島・林檎
カミサマってのは、祈っても縋っても、一度たりともアタシを助けてくれなかった。
――憎んでるワケじゃねぇよ?
……ただ、過去のアタシとは『違う』ことを、はっきりと見せてやるだけだ。

陰鬱とした毒でも、アツい戦いができるんだってこと、教えてやる。

『影武装』? 影を纏おうが関係ねぇ。
アタシの毒は『非物質』にすら侵食する。
『感染』させちまえば、毒茸どもが吸い尽くしてくれる。テメェらの身体ごと苗床にしてやるよ。
そのきっかけは簡単だ。犬どもの棒術を、触腕で捩じ伏せる。痛くとも、歯ァ食いしばって真正面から受けてやる!
振るってきた得物に触れさえすれば、あとは勝手に『増殖』してくれるさ。
たっぷり味わいな。犬畜生めが。




「やれやれ」
 呆れというよりは、どうしようもないのだなと思う。
 レイニィ・レッド(Rainy red・f17810)はその名をヒーローズアースに知らしめたダークヒーローであり、雨の怪物だ。存在こそ「都市伝説」ゆえに守られ、彼の正体は――レイニィ・レッドが実在することは誰もが知れど、その顔まではすべて暴かれ切ったわけではない。しかし、神々はどこからも彼を品定めするように見るのが気配からもレイニィは理解できた。
「良い気がしません。居心地が悪ィですね。そういう躾けは、――あァ、神だからいらねェのか。」
 傲慢が大罪だったのは、いつの時代までだったのだろうか。
 レイニィは咎人である。彼もそれを隠しはしないし、未だってその筋だけはきっかり自分の世界に落とし込んでいて揺るがなかった。彼の、彼だけの世界に在る彼の法律で善と悪を裁く。その様は時に弱きを救い、強きを地獄に叩き落とす所業と言えた。
「ま、やることが単純なのはイイ」
 ――その存在こそ、罪である。
 救われると信じ切っていた若き己を下し、世界を甘く見るものはどれも等しく切り伏せ、己と言う恐怖で尊さを知らしめる。大義を掲げているわけではないが、これは彼の信条であり、生き方だ。いっそまっすぐ通しきる今までを神々が視ていたというのなら、この反英雄を感嘆と共に唸るだろう。ごうう、と低い風が巻き起こって、彼の背を押す。さらさらと絹のような銀髪が揺れて、「せかす」オーディエンスの聲には一瞥の朱だけで応えた。
「さァて。自分はいつも通り、ですが――アンタはどうします」
 ぷらり、手首を傾ければ裁ちばさみの先端がレイニィと同じ座標にて呪詛を睨む女へ向く。
 ――そこに在るのは、毒の魔女であった。
 蟲毒の女は、孤独であり、ゆえに何度も神にすがる日々があったのだ。どうして己ばかりが酷い目にあい、存在を否定され約束された幸せがないのかと床に額をこすりつけて謝り倒し、身を縮こまらせていた時だってあった。何に許されたらいいのかもわからないのに、毒島・林檎(蠱毒の魔女・f22258)はただただ世界に不幸で在れと嫌われる。
 ――神を、憎んでいるわけではない。
「アタシか」
 声は、震えなかった。
 見ず知らずのレイニィを相手に臆しもしない己が、きっと林檎も不思議であっただろう。しかし、これも昔とは「違う」己なのだと実感した。
 己の生命に怯えない。己の存在を認め、そうであっていいではないかと今なら叫んでやれるのだ。――できない、許されない、いけないことは「誰」が決めた? 己自身に宿した枷を外した今こそ、神々にそれを叩きつけて返してやれる。
「……名前は」
「レイニィ・レッドとでも。――アンタは」
「毒島。毒島、林檎っす」
「へェ――」
 赤ずきんと魔女とは、これまた『童話向き』ですね。だなんて、怪物が強者故の冗句で笑ったのなら、林檎は益々陰鬱の笑みを隠さなかった。
「きっと、レイニィさんと一緒っすよ。やること」
「違いねェ。そういう顔をしてますよ、アンタ」
 ――「物語たち」の道は同じだ。
 始まりがあり、終わりがある。辿る道筋が枝分かれしているだけで、どれもこれも同じように終わるのだ。等しく、どれも、規則正しく世界に則って終わるのを二人は知っている。赤ずきんをかぶる怪物だって、お姫様に嫉妬をして毒を喰らわせる魔女だって、――皆、同じように最期は。     ジョギリ・ジョギリ
 しゃきん、しゃきん、と【赤ずきんの裁ち鋏】。
「一匹残らず。――いいですね」 ブリオッシュ
 ごぼり、ごぼりと【深蝕茸毒【Death Cap】】。
「勿論――やってやる」
 『狼』たちに四方を囲まれてなお、二人は背を押し付け合って笑う。
 生命力にあふれたこの空間に呪詛を纏うことの愚かさを見て、レイニィはこの戦いの勝利をすでに確信していたといっていい。問題は、――その愚鈍を蹴散らすのにコストを如何にかけないか、というところだ。
 強化人間ゆえに、レイニィはその命を代償にして速度を音よりも早くできる。赤い水滴一つ落ちきる前にこの場にいる狼たちの首程度切り落とすのはたやすいのだ。しかし、それでは「この後」がもたないリスクがある。――ゆえに、林檎が輝くのだ。

「う、ぅ゛らぁ、ァ、あ あ あ ア ァアアア ア ア ―――ッッッッ!!!!」
 ぎゅおんと空気ごと巻き込んで――毒茸の菌糸が彼女の腕を蝕んだまま、怪物よろしく怪力の触腕に繋がる!踏み込みと共に大きく薙ぎ払えば、咄嗟の防御で影を纏った狼たちの横っ腹を打ち砕いた!
「がッ、ぎィ!!、?ッぉ」
「関係ねェ――ンだよッッッ!! 」
 この程度の呪詛。
 林檎の『毒』の前にはただの黒い霧に等しいのだ。この魔女こそ、呪詛たる『感情』の毒を扱う上において右に出る権能はいないとされる。ゆえに、永い永い神経毒めいた痛みを味わって生きてきた。泥水をすすりながら、地面に顔を押し付けられているような息苦しい世界を知っている。
「来い、来いよ――かかって来い゛ッッッ、犬畜生めがッッ゛ッ゛!!! 」
 ヒ ス テ リ ー と い う に は 苛 烈 す ぎ る !
 殴られた衝撃で地面にめり込んだ獣が、二度と起き上がることはない。ぴくりぴくりと身体を痙攣させる仲間の口から紫の泡があふれるのを見て、狼たちは隊列を組みなおしてまた林檎を襲う!
「そりゃァ――いけねェ」
 そこを、霞めとっていくのが!
「正しくねェな」
 真 っ 赤 な 雨 を 引 き 連 れ た 怪 物 で あ っ た ! !
 林檎に好きに暴れさせ、その暴虐の間をまるで、針で縫うように通るのがレイニィなのだ。狼の腹に石を詰めて封をするように、繊細な動きで接近をし――破片に紛れ、潜伏、そして獣の喉に鋭く鋏を突き立てる!!
「当たり――まァ、どっちでもいいンですが」
 喉に突き刺した鋏を、そのまま下に降ろせばぐぱりと腹が開きぼどぼどと内臓がこぼれ出た。真っ黒なそれと真っ赤な池が出来れば、獣臭さがあたりに充満する。他の獣よりも内容物の量からして見ても、多い――。
「狼にゃ群れがあると聞きます」
 血の気が引く呪詛の神々に、思わず不敵に笑んでしまうではないか。
 怪物の所業におそれをいだいてどうするのだ。と赤がその体から雨を作り出し、一気に戦場を『彼の領域』に至らせた。目立つレインコートを隠すほどの土砂降りに、彼のにおいまで掻き消えて獣たちが硬直から覆せない!
「さァ、てっぺんは落ちましたよ」
 止 ま っ た 獣 た ち を 、 ま た 触 腕 が 穿 つ !
「らァ、ああああ、ああああああッッッ!!!! 」
 一匹を捕まえたのなら、それを「金槌」のようにして振り回すのだ。
 頭蓋が砕けようと、その肉がちぎれようと使えなくなったのならべつの肉だと言わんばかりに前髪を滴る雨を躍らせながら、魔女もまた戦場を蹂躙する!
 ぎゃいん、ぎゃいん、と悲鳴が上がり――間もなく、それも許されぬほどの暴威が林檎によって巻き起こされていた。ミキサーよりも苛烈に振り回される腕にずたずたと『サイコロ』に帰られる群れを見て、引き返そうとする部隊の前――雨と共に、怪物が降りた。
「あァ。言い忘れてましたけど」
 獣は、誰一人とて彼の存在を察知できなかったのだ。
 あまりに早すぎる。そして、――先征く部隊がみな死んでいるのを知った。
「自分、獣臭ェのは苦手でして」
 足元に転がる獣の頭をボールのように脚の裏で蹴ったのなら、怪物は雨に表情を隠されたまま鋏を鳴らすのだ。
「――特に狼の臭いは、ね」
 
 "雨の赤ずきん"ですから。

「ズタズタにしてやるよ」
 真っ赤な、雨が降る日のこと。
 哀れな蟲毒の魔女が叫びながら毒を纏い、狼たちを腐らせて殺していった。
 赤ずきんをかぶった怪物は、魔女の好きなようにさせてやって、かわりに雨を振らせてやった。
 その表情を隠してやるために、己の存在をかき消すために、都市伝説であるために、そして、――「誰にも理解されない悪役の」ひとときを神々に見せてやるために。
 雨が上がれば、きっと虹が出来たのだ。
 それは、「悪」二人を歓迎するアーチのようだっただろうか。きっと、二人はそれを見上げてもどうでもよさそうにするのだろうけれど――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

上野・修介
※アドリブ、連携歓迎
「残党狩りも戦の習い、か」
ならば速やかに殲滅するまで。

「まあ、いつもとやることは変わらないか」

【覚悟】を決め、腹を据えて【勇気+激痛耐性】推して参る。

呼吸を整え、無駄な力を抜き、戦場を観【視力+第六感+情報収集】据える。
目付は広く、敵の総数と配置、周囲の地形、遮蔽物を把握。

得物は素手格闘【グラップル+戦闘知識】
UCは攻撃力重視。

先手必勝。

相手が迎撃体勢を整える前に速攻を掛け、攻め落とす。

敵のUCに対しては、懐に飛び込み間合いを殺す、狙いを付けられないよう常に動き回る、近くの敵、或いは周囲の遮蔽物を盾にするとしてダメージを減らす。【ダッシュ+フェイント+逃げ足+地形の利用】


雨宮・いつき
神々の御前で戦を魅せるとなると、さすがに緊張しそうです…
…いえ、御前だからこそ情けない戦いぶりを見せてはいけません
普段通りに…いざ、参ります

数が多いだけでなく図体も大きい、おまけに動きまで速いと来ましたか…
雷撃符で雷を放ち、【マヒ攻撃】で先ずは動きを鈍らせます
如何に反応が良くとも、雷の【範囲攻撃】であれば全てを避けきる事は困難なはず
…とはいえ、これでは決定打に欠けますね…ならば

出せるだけの狐火を出して敵へ放ちましょう
籠めた霊力と炎の揺らめき、軌跡を【催眠術】として機能させるのです
回避の為に炎を観察すれば術中に嵌るという寸法、
目測を誤らせて敵同士で突進させ、そこを合体させた狐火で焼き払います!




 「残党狩りも戦の習い、か」
 上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)は、まず己の肩の力を抜いた。
 彼は、ただの人間である。――否、人間ゆえに、己に決して下らない静かな努力家だ。
 猟兵として目覚めてからも、彼の前には多くの脅威があった。けして怠らず鍛錬を繰り返し、日々練磨を続けておりながら彼の「基礎」からはひとつも心がぶれない。
 獣たちに囲まれ、神々から「ただの人間」である彼に視線が注がれても、集中のために呼吸を繰り返し鼓動を落ち着かせることができた。
 ――まあ、いつもとやることは変わらないか。
 ゆえに、勝ち筋はひとつ。上野・修介の限界を常に超え続けることこそ、彼の勝利であった。
「神々の御前で戦を魅せるとなると、さすがに緊張しそうです……」
 対し、いつものペースをどうにか保とうとするのが雨宮・いつき(歌って踊れる御狐様・f04568)である。
 彼は、――修介とは違い、妖狐の少年だ。しかし、その情緒こそ「ただの」少年である。修介が守るように前に出るのは何も、彼の武器が肉弾であることだけが由来ではない。いつきに攻撃が至れば、小さな体が吹っ飛ばされてしまうだろうことはお互いに予想出来ていた。唸る獣たちに怯えるよりも先に、その特性故、「失態」を怯えるいつきの由来は修介には分からぬ。しかし、――無理強いして崩れるくらいなら、自前で持ち直させるのがよかろうと思っていた。
「無理をしないでください。俺がなんとかします。いざというときは」
「ああ、いえ! いいえ、――」
 他者に気を遣わせてしまった。
 事実、いつきは「後衛」として最適である。極度の「前衛」である修介とうまくかみ合えばこの舞台を派手に飾ることも容易いのだ。自分に言い聞かせるように、成功のイメージを脳に刻み込んで、瞼を閉じて意識を集中する。修介の呼吸法をまねるようにして、ひくりひくりと狐耳を呼応させた。
「御前だからこそ情けない戦いぶりを見せてはいけません」
 それから、ぱしっと両手で頬を叩いて、キッと蒼い瞳を狼たちに向ける。
 恐ろしいものは恐ろしい。――なにせ「本物の」神々がいつきを見定めようとしているのだ。だからと言って文字通り尻尾を撒いて逃げるわけにもいかねば、それは一族の恥になる。雨宮を代表する一人として、いつきは今、――また、前に進むための成功を重ねる必要があった。
「いざ、参ります」
「――応」
 普段通りに。
 二人に共通するのは、その呼吸であった。
 変に身構えては頭が余計な緊張で固定されてしまう。ゆえに――修介はその精神を強固にした。
「『――力は溜めず――息は止めず――意地は貫く』」
 まるで経のように唱えられた均一な音に、いつきも頭の中で繰り返す。
 低く腰を落として、獣たちのにらみ合いを打ち砕いたのは――修介だ!!
 先手必勝、相手に迎撃すら許さぬと【拳は手を以て放つに非ず】を繰り出す!
「わッ」
 その速さに。
 ――いつきの前髪がかきあげられて、ゆえに姿をしかと捕らえただろうか。
 獣の群れにとびかかる修介はすでに狙いを定めていたのだ。一匹の懐に飛び込めば、まず掌底にてそのみぞおちを穿ち腰の骨を折る。浮いた体に右足からの冗談回し蹴りを喰らわせ、後続を一旦押し込んだ。修介の死角から飛び出した獣には肘で応じ、その顎を打ち砕く。
 圧 倒 、 ま さ に 、 鬼 人 が 如 く !
 負けていられない。――動きが早く図体も大きいのなら、いつきもすぐさま修介の援護に出た!
 近接すぎるがゆえに、修介が後続の波にのまれるのは必死である。いつきが雷撃符を手から放ち、雷を呼び起こせば獣たちはたちまち感電! 縫い付けられるようにして地面にとどまったのなら、その隙を間髪いれず修介が突く!
「助かります」
「いえ! ――こちらこそ! 」
 そう、決定打に欠けた。
 雷撃は確かに、獣たちの身体を留めるには充分だ。しかし、その呪詛ごと払いきるには少し足らぬ。神々のざわめきが修介に持っていかれている時点で、いつきの中には焦燥と――次に己が繰り出す技への期待があったことであろう。
「これなら、どうでしょう! 」
 集 い 爆 ぜ る は 、 幽 幻 の 炎 ! ! 
  フォックス・ブレイズ
 【火行・狐妖蒼火】が呼び出され、たちまち炎が旋回を始めたのだ!
 ぎゅるんぎゅるんと獣たちを囲うようにして六拾六のそれらが暴れたのなら、獣も焼かれてならぬと動きを追っては回避を続ける。踏み外した獣の胸骨を打ち砕き、頭蓋を踵で砕いた修介もまた、視界に炎を入れたが――恐れない。
 任せられているのだ。いつきの手に、――人間たる修介の命が握られる。
「いきます、――よッッ! 」
 意図するところが。
 修介を襲うはずの獣たちが『流れ』を造っていたのを理解して、伝わった。修介が静かにうなずいたのならば、彼もまた炎と同じ流れで動き出す。逃げぬようにプレッシャーをしかけ、足踏みを繰り出し、フェイントを交えて攻撃の手を少しばかり緩めた。
 獣たちは炎と修介の動きに翻弄される。お互いの身体をぶつけ合い、ぎゃうんぎゃうんと転がるのもおれば己らの状況に絶句する者もいたのだ――すでに、周囲は炎熱の地獄である!!

「 焼 き 払 い ま す !」

 爆炎!!
 修介が転がり込んでいつきの足元まで退避したころには、すべて文字通り炎となって消えていった。二人を焼かぬ神々の火の粉が周囲に舞い、熱を伝えただろう。
「……歓迎されている、のでしょうか」
「ええ、これはきっと――お褒めになられているかと! 」
 魔術の心得も、陰陽もわからぬ。
 ゆえに、修介は――己の力が神々に認められたとて、「さっきまでの」自分を超えたことを確信して、掌に落ちた火の粉を握った。
 いつきの炎に火の粉が入り、強く燃え上がったのを見てきっと安堵することであろう。上手く舞えたのだと、神々が笑っていたにちがいなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マリーノフカ・キス
◎△
美羽(f00853)くんと
大事な友人で……そうだね、切磋琢磨する騎士志望仲間といったところかな
「おっと、ふふ。そう言われれば逃げられない。なに、仮に勝負でなくとも、きちんと護ってみせるよ」

――さて。怖いな、正直恐ろしいよ。何とも不気味な神々だ。何を考えているのかすら碌に分からない
けれど、口にするわけにも行くまいね。お転婆な騎士といえど、美しい乙女の前で胸を張れずに、何が騎士の誇りかというものさ

……それはそれとして、随分と喧嘩殺法……いや、良いのだけどね?

「引きたまえ。彼女の背中は、僕が守るよ」
引かぬというなら、切り伏せるまで
足りなければ、盾にでも、なんでも

問われれば、勿論、と片目を閉じて


綾峰・美羽

マリーさん(f01547)と
友達で、……負けたくない相手でしょうか

戦いでご一緒するのは初めてですよね
騎士仲間と共闘できて心強いです
せっかくですし、こないだ話したどちらが守られるべき相手か、試してみますか?
負けず嫌い同士、ね

神に奉じる戦い、なんて
聖騎士たるボクに相応しいと思いませんか?
残念ながら、戦い方はお行儀悪いですが、
手段を選べる相手じゃないでしょ

翳すのは大盾
攻撃を受け止めて、塞いだ視界の裏から光刃を放ちます
鎖を放たれたら盾を一度手放すのも視野に
見据えるのは前
後ろに攻撃を通さないように真正面から過去の怨念を断ち切っていきますよ
それは、背の騎士を守るためでもあり――
……守ってくれるんでしょ?




 大事な仲間だ。
 綾峰・美羽(陽翼ホーリーナイツ・f00853)とマリーノフカ・キス(竜星のコメットグリッター・f01547)の関係と言えば、目指すべき場所が同じである同士である。価値観が似ているゆえに、お互いに負けたくないという気持ちも強く、しかし、その実力を認め合う潔さがあった。
 ゆえに、二人は背を合わせない。横並ぶようにして狼たちを見定めて、――ひい、ふう、とその数を見ながら、互いに十を数え終えたところでやめた。
「マリーさん。戦いでご一緒するのは、初めてですよね」
 美羽の少々俗めいた色を持つ話し方は、騎士らしさとは少し離れる。それは、彼女の生まれと育ち故でもあるのだ。忌まわしき血を身体にまといながらも、己の宿命と向き合い、時に妹への――罪悪感を感じながら生きてきたことによりしみついた癖はマリーノフカとて、日ごろの会話でいくつも視てきている。しかし、それを戒めはしなかった。
「ふむ。言われてみれば、そうかもしれない」
 対して、頭のてっぺんから脚の先まで貴公子という文字がぴったり当てはまるのがマリーノフカなのだ。腰に下げた刀は居合で振るう、一瞬にて決着をつける彼である。目の前にいる獣の姿をした神々が呪詛を纏うのも、「何を考えているのかわからない」故に警戒心を抱くほど、純粋であった。
 ――しかし、それを口にはしない。
 恐ろしいもの、理解できないものが相手とはいえ隣に並ぶのはお転婆な騎士――であり、美しい乙女だ。警戒は隠さないが身をすくめたり丸めたりもしない。胸を張って、敵を見据えた。唸る獣たちが神だと思えば神だし、獣だと思えばただの獣に見えてくるものである。 
正直なところ、度胸と言うものはマリーノフカにあまりないのだ。しかし、今彼を作るのは騎士として好敵手に対する意地であり、紳士としての意識でもある。
「せっかくですし、こないだ話したどちらが守られるべき相手か、試してみますか? 」
「おっと、ふふ。そう言われれば逃げられない」
 ――もちろんボクが帰り道お守りするのも構いませんよ。これでも聖騎士ですからね。
 ――いやいや、そうもいかないとも。僕も騎士さ、頑丈さ。
 緊張が走るこの時ですらも、二人で過ごす思い出の日々は鮮明だ。
 美羽とマリーノフカの会話と言えば、いつも剣の稽古のようである。切りかかり、受け止めていなし、それでまた別の方向から切りかかるような掛け合いは時にお互いの心を揺さぶったり、距離をあいまいにすることもあったりして、腹の探り合いでありながらもスリリングだ。この状況など、――あの駆け引きに比べたら、まだ軽いと思われるのは両者ともだろう。
「試してみますか? 」
「――なに、仮に勝負でなくとも、きちんと護ってみせるよ」
「護られることになっても知りませんよぉ」
 美羽が悪戯っぽく笑ったのなら、まず彼女が前に突き出すのは大盾だ。
 掲げられたそれに熱気が注がれる。神々の注目が集まったと言っていいものだ。
 美羽の得意な戦法は剣だけで斬り合う騎士らしいものではない。故に、誰もに勝利で認めさせる必要があり、この場は絶好の機会で――神々に捧げるとしては少々荒っぽい戦いになりそうではあるが、その泥臭さこそ「喜ばれる」だろうと美羽は思う。
 神は、いつだって『過酷』に喘ぐいのちがすきだ。
「ボクに相応しい、そう思いませんか――? 」
 マリーノフカが応えるよりも早く!
                ク ル セ イ ド ス ラ ッ シ ュ
 展開される武術は――【 陽 騎 舞 踏 ・ 聖 断 】 ! !
 獣が一匹突撃を仕掛けてきたのなら、ごわぁんと強く鉄とぶつかり合った! 美羽の身体は盾に護られたまま突撃を繰り出したのである!
「戦闘開始の銅鑼にしては、派手だな――! 」
 マリーノフカが居合のために集中ついで、その感想を吐き出した。
 盾に身体を隠しながら、ニィと口角を釣り上げた美羽が取るのは『喧嘩殺法』である!
「せェ、のッ――! 」
 攻撃を受け止めたのなら、そのまま足を一歩踏み出して押し込み――光刃を聖剣アンサラーから繰り出す!じゅうっと呪詛にまみれた獣の瞳を焼いたのなら、脳髄まで届くのだ。間もなく正常な意識もあるやらわからぬ顔を抑えてぎゃあああと悲鳴を上げて転がる獣を蹴り飛ばした! 後続の獣たちが慄き、その隙を逃すものかと美羽が突っ込む!
 その様、まさしく荒くれ。『じゃじゃ馬』程度の言葉では収まらぬほどの暴虐は『騎士』とは遠くも、『勝利』に近いものであった!
「前に、出すぎだ……! 」
 マリーノフカの苦悶の聲は、美羽には届かない。
 美羽を仕留められぬのならまず、こちらからだと獣たちが彼にとびかかるのなら、容易く竜人の身体を鎖が巻いていったのだ。しかし、美羽が振り向かないのは――何度も交わす会話から得た信頼により、理解している。
「っ、ふ」
 思わず、笑ってしまえるくらいに。
「引きたまえ。彼女の背中は、僕が守るよ」
 敵にわざわざ忠告するのは、彼が騎士ゆえだ。つまり、『真っ向からねじ伏せるぞ』という宣告でもある。――腕を、腿を、足首を縛られた。生命力を奪われながらも、それを上回る超常がマリーノフカを彩っていく!!
 薄い唇が開かれた。長く、ゆっくりと息が吐きだされる。全身に満ちたエナジーに彩られる美しい輪郭が、彼の魔術の成立を物語っていた。
 剣を握る手に、血管が浮き出て――。

「 切 り 伏 せ る 」
      デュアル・エンハンス
 ――抜、【殲術抜刀法】!!
 その動きは居合いそのものだった。しかし、『絶対の動き』であるからこそ極めやすく、安定した攻撃力をさらに跳ね上げるに容易い! 縛る鎖を断ち切り、延長線上にいた獣たちも刀の振りだけで真空刃を生んだ衝撃のまま――切り果たした! 何が起きたか理解すら追いつかぬまま倒れる過去たちを蹴り飛ばすことはなく、マリーノフカの身体がそれを飛び越えて走る。前方を往く戦乙女の背が見えた。
 追いつかねば、とちりちり背中が焦げたような気がして――どちらも、負けず嫌いだ。
「ッの、」
 美羽は盾を手放すことになる。
 攻撃をするには隠れられる場所があっては困るのだと獣が鎖でそれを奪ったのだ。がいんと地面に叩きつけられる片割れを見送って、しかし前だけを見つめて美羽がまだ剣を振る。
「あっは、――盾だけが取柄じゃなくて、ごめんなさいね! 」
 護れぬならば全身を凶器にするまで。剣を獣に突き立てたのなら、その腹を蹴って血潮をまき散らす!ぱっと血しぶきが愛おしい顔を濡らし、しかし、それでも昂るのは――忌まわしき血のせいであろうか。
 勝つためならば礼儀作法など文字通り犬にでも喰らわせてやるのだ。美羽の戦いっぷりは苛烈で、そして全身から繰り出される。絶命した仲間の身体を受け止めて、怒りに満ちた残党が決死の形相で美羽に向かった!
 美羽は、その時にようやく息を長く吐いている。
 ――酷く暴れたものだ。
 それは、彼女のなりの優しさだったのだろうし、それでいて「友達」に華を持たせてやるつもりだったのかもしれない。振り乱した髪に真っ赤な血がべっとり張り付いて、後の処理を考えれば、やだなぁなんて乙女らしい顔で考える。己のこめかみ間近までやってきた獣の顎には視線すら送らなかった。

「守ってくれるんでしょ? 」
 
 ――遅れた仲間の時間を稼いでいた。
 縛られていた彼が追いついて、己を追い越すまでの道を作っているのを気付いただろうかと何処かしてやったりの声色がつぶやく。
「勿論」
 片目を閉じたいつもの、『意地悪な』騎士様が――獣たちの胴を切り伏せてみせた一撃に、また美羽も同じように片目を閉じる。
「どっちの勝ちだと思います? 」
「まだ始まったばかり、だと思うのだけど? 」
 三本勝負ってことにしませんか――いやいや。だなんて、騎士が二人言葉を交わしながら生命あふれる炎に包まれる。祝福するようにプロミネンスが空を舞い、二人の上で爆ぜて、消えていった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鎧坂・灯理
式島殿(f18713)と
ジャッカルの群れですね この手の獣は機動力が問題です
匡との交戦記録を閲覧させて頂きました そこで提案です
私の背に乗ってください 馳せます そして狙ってください
あなたならば外さないでしょう?

起動――【無貌の怪】
人一人乗せられるサイズの巨狼へ変身、背に式島殿を乗せて敵陣へ
戦意はあふれんばかりにある 索冥を拡張し式島殿ごと包み、呪いを防ぐ
駆け回り鎖を避け、つながれれば故意に「怒って」巨大化して千切る
そのまま敵もかみ砕く

落ちないでくださいね、式島殿 毛皮を掴んで構いませんので
三次元的な動きをします 念動力で支えますので立っても平気ですよ
あなたがぶら下がっても大丈夫です ご安心を


式島・コガラス
◎△
灯理さん(f14037)と

四つ足の獣……確かに、私が真っ向から速度で対抗するのは厳しい相手ですね。
しかしそれにしても、狼に乗るのは経験がないというか。こちらもバランスは取りますが、その……安全運転でお願いします。

一度灯理さんが走りだしたら射撃に集中します。撃ち出すのは我が【呪殺弾】。神の呪いを宿した力、その身に受けてもらいましょう。
既に呪われているとしても関係ありません。狂気の呪いはあなた方を塗り潰す。同士討ちしていただきます。

しかし、車に乗ったりヘリに乗って標的を狙ったことならありますが、流石に勝手が違いますね。
かなり怖いので結構強く掴んでますが……痛くはないですか?




「わ、わわ、わ――」
 ヘリに乗ったことならある。
 四つ足と言うのなら、戦場を派手に揺れながら動く車だってそうだ。
「式島殿、毛皮を掴んで構いません」
 ただ、獣にまたがった心得はない。
 式島・コガラス(明日を探す呪いの弾丸・f18713)は駆けていた。己のまたがる巨狼によって時間を稼ぎながら獣の群れを視ている。
 ――弾を充填するのは容易くとも、その弾道を決めるのには時間がかかるものだ。
 ゆえに、鎧坂・灯理(不死鳥・f14037)は【心術:無貌の怪】により彼女の時間を稼ぐ狼となった。ジャッカルと狼ではそもそも大きさも幅も違う! 駆ける四つ足の灯理に追いつけぬ群れを後ろに、鈍色の賢狼は己らを狙う鎖を最小限の動きで回避していた。コガラスが反射で動いてしまうのなら、その傾きに合わせて振り落とさない。思念の鎖で少女の身体を縛り――機会を待った。
 恐怖はある。
 二人とて、命ある生き物だ。少しでも油断をすれば、己らのどちらかか、悪ければ両方が死ぬ。しかし、その可能性を踏まえた上で「そうならない」ために最低限のコストを払わねばらないのだ。どどう、どどう、と地面を爪が蹴り上げてつぶてを放ち、追いかける黒の顔に喰らわせてやる。
「安全運転でしょう」
「え、ええ――これを、運転と呼んでいいのか、わかりませんが」
 しっかりと狼の毛皮を掴んで態勢を低くしたコガラスは空気抵抗をほぼ受けない。傾くことの少なくなった体ににじむのは慣れだ。
 そも、この獣相手にはコガラス一人だけでは荷が重いと言えた。すべて殺すまで殺せと言われればそのようにするのが彼女であるが、強化人間とはいえ超速で動き続ける獣を殺すのは些か相性が悪い。場数を踏んでいるとはいえ、コガラスとてまた、「人間」を殺すプロだ。獣は少々勝手が違う――狩りをするような気持ちで、狼の背から振り返り後ろを見る。
「統率が取れてる、かと」
「ほほう。群れで狩りをしていますからね、――ボス格がいるはずです」
 殺すときに、意味を考えてみようと思って。
 その命にどんな意味があって、どうしてそこにいるのかを考える。ボスに選ばれるほどの獣がいるとしたら、それはきっと獣同士でも「上」にあるものだ。ひときわ体が大きく黒い呪詛を纏いながら――手下といっていいだろう四つ足に囲まれるようにして走る狼を赤がとらえる。
「見つけました」
 呪われし神が宿る銃を握る。わあっと灯理の眼前を炎が包み、彼らを撫でるようにして消えていった。大層なことだ、と狼が鼻で笑う。
 ――アプスーは、ヒーローズアースで生まれた「かつての神」であるから、さぞかし出し物としては喜ばれた。
「撃ちます」
 灯理はその軌道を揺らがない!そのまま、駆けて、駆けて――ひときわ大きく真上に跳んだのなら、コガラスが迷いなく引き金を引いた。
        カースド・ストリングス・バレット
 撃鉄、――【 呪 殺 狂 化 弾 】!
 ばう!とひとつ大きく鉄が吼えたのならば、その呪いは見事「ボス」格の頭蓋を突いた!灯理がどどうとコガラスを乗せたまま着陸し、先ほどよりは緩く走る。
「うまくいきましたか」
「ええ、おそらくは、直ぐに」
 巨体が揺れた。どくんと脈打つ身体に合わせて小刻みに震えた体が、大きく遠吠えを始める。彼の支配にあった獣たちが足を止め、その異変に気付き呆然と見上げていた。
 死に至らぬ呪いは黒の身体をさらに赤く蝕んでいく。まるで――そこからあたらしい花でも芽吹くかのように、じわじわと赤い根が張って獣の思考を奪った!寄生木の代物と言っていい光景にはふはふと舌を出して灯理が笑う。
「お見事です、――まさに地獄だな」
 たちまち、獣同士の喰らいあいが始まったのだ。
 もとより、獣は呪詛で出来上がっている。染まりやすく造られた仕組みにコガラスの呪詛を打ち込んだのなら起動は容易い。それが「ボス」に当てはまるものであればなおのことよかったのは――罅割れた箇所に、とどめの金槌を振り上げるのと同じことである。
 間もなく、いとも簡単に群れは割れ、混沌が始まった!
 大きな獣が仲間をけたぐり、握りつぶし、抵抗するなら喉笛をかみちぎる。あっという間に獣の数は減っていき、コガラスの狙い通りたった一発の銃弾で崩壊させてみせた。
「おっと」
 ジャラッ――空気を裂くほど速く突き出された鎖に、灯理の右前足がからめとられる。生き残る狂気の獣が、唸り声を上げ灯理を睨んだのならば怒りも昂るというものだ。
「教えてやるよ」
 生ぬるいことをしやがって。
 獣の殺し合いというのは無駄が多くて理解に苦しむ。灯理の身体には戦意が溢れていた。この空間もそうだが「神」とて所詮獣や人間と変わらない思考をしているのだと思えば、「見学」されていることすら気に食わぬ。
 コガラスをたたえる息吹が二人の背を温めれば、たちまち灯理の身体は巨大な狼へと変容する。それは、生命にあふれる森から頭一つ出てしまうくらいの変容で――「わあ」とコガラスが毛皮の中に飲まれていく。燃え上がる鼓動と、その体温に包まれながら必死に毛束を握った。

「此処が、地獄の門だ」

 があ、と口を大きく開けた灯理が「ちゃちな」こころで縛られる前足をその場で足踏みさせれば、質量的に「軽い」ジャッカルの身体は高く浮いた。そのまま、喰らうことなくそれを顎に迎え入れてかみ砕く。ぱん!と高い音がして――獣の身体が口内で破裂した。
 霧散する黒を横目に、鈍色の狼が神々に吼える。須らく我らの勝利を視よ――と、勇ましくひとつ。休むことなく、また駆けだしたふたつにわああっと空間が沸いて大きな黄金の実が無数、木に宿る。
「あれ、食べれるものなのでしょうか」
「さあ。神々の作るものなど、得体がしれません」
 道しるべのように進行方向に灯るそれを見上げた。――生命の法則も無視して、あっという間に熟れる黄金をおそろしいものだと、二人は思うただろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と

ええ、そうですね
きみもあれと同じ……同じようなものになっていたかもしれません

ですが今は、そうではありません
はい、ザッフィーロ
きみとあれは違うのだと、証明しに行きましょう

戦闘時はザッフィーロのやや後方にて後衛の立ち位置で
「高速詠唱」しつつ「戦闘知識」「第六感」「野生の勘」で直感を受けた敵の密集地帯に
「範囲攻撃」「属性攻撃」「一斉発射」をのせた【天撃アストロフィジックス】を撃ち込みましょう

ザッフィーロ君と僕に降りかかる敵の攻撃は「オーラ防御」にて防ぎつつ
メイスにて攻撃する彼の援護として「衝撃波」で敵を「吹き飛ばし」ていきましょう
ふふ、どんどん楽しくなってきましたね?


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

…呪詛を纏い力に変え復讐する者、か
神の赦しを夢見つつ人々の穢れを赦し身に溜めて来た俺も、お前と出会わなければ同じような物になっていたのやもしれんが…
…今はお前が隣に居るからな
憐れな者達に赦しを与えに行ってやるとするか、宵

戦闘時は宵の前、前衛にて行動
メイスにて敵を『なぎ払い』ながら【狼達の饗宴】周囲に穢れが滲む炎の狼達を呼び出し至近の敵へ嗾けて行こう
周囲を狼達に囲まれては動きにくかろう?
その後は『盾受け』にて宵と己に向かう攻撃を受け流しつつ宵が詠唱に集中できるよう動いて行く
宵が吹き飛ばした敵へ狼達を追撃させつつも、楽しそうな宵を見れば思わず口元が緩んでしまう
俺も負けては居られんな




 『かくあれかし』と、誰かが呪うた。
 ヤドリガミである。百年と人に愛されて、信じられてきた器物が神となり、人間のために在るため人の器を手に入れる存在たちだ。
 中世にて、美しい指輪があった。それは、神を説くものの手に宿る蒼の宝石を宿していたのだ。宗教は、当時信仰でありながら戦争と政治の道具でもあった。故に、求められる力が絶大で在ればあるほど、指輪に愛は込められたのである。手にしたものが指輪をつけたまま、信ずるものに触れれば慈悲が与えられ、病や悩み、苦しみなどから救われてしまった。――それが、善い事だと思ってきた。
 しかし、その指輪は知っている。病や悩み、苦しみこそ人々を正しく導く「毒」なのだと理解してきた。様々な罪や穢れに触れて、助けてくれと乞う彼らを突き放すことのできない「呪い」は指輪を「誰の薬にもなれない」指輪たらしめて、今に至る。
「呪詛を纏い力に変え復讐する者、か――」
 ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)は、眼前の獣たちに己と似たものを感じていたのだ。
 神の赦しを夢見ながら、人々の穢れを赦し、戒めることなく内包してきた己の果てだったのやもしれぬ。呪詛とは、いつの時代も「ひと」から練り上げられて生み出されるものだ。
「ええ、そうですね」
 すぐ、本当は、直ぐ言いたかった。
「きみもあれと同じ……同じようなものになっていたかもしれません」
 逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)は一度、愛しい彼の言い分を受け止める。
 センチメンタルになって言ったのではないと理解している。ザッフィーロは、今、過去の己を振り返っているだけなのだ。その行いを否定するのではなく、明確な区別を宵は願う。
「ですが今は、そうではありません」
 宵とて、ヤドリガミだ。
 精巧な作りをした天図盤ゆえ、数々の人間に愛されてきたのは宵も同じである。最初の二代を除いては、そのあるじどもというのは「まとも」よりは少し離れていた。盗人に高値で売られたり、その争いに巻き込まれたり、蒐集家どもに眺められてはまた誰かの手に移る過酷な『名作』の道を歩むこととなる。己に刻まれた星のめぐりがそうなのだろうと――今なら、ザッフィーロの隣で在るからこそ、遠くに視れるのだ。
「そうでしょう」
「――今は、お前が隣にいるからな」
 低い声で笑う黄金の視線が、宵に向けられたから。どこか、すっと胸の淵に沸いた重しが落ちたような気がするのだ。
 ザッフィーロはこの時、――「己が」もし、宵と出会わなければ獣たちと同じになっていたやもしれぬと思ったが。それはまた、宵とて同じことである。退屈な星のめぐりにまかせて、人間たちの愚かさと汚さばかりに晒されて悪しきになっていたやもしれぬのだ。
「憐れな者たちに赦しを与えに行ってやるとするか、宵」
「はい、ザッフィーロ」
 ――証明せねばなるまい。
 許してやる、だなんて聖職者よりはやや傲慢にザッフィーロが「おしつけ」を提案したのなら、悪戯っぽく宵も肯いて笑う。
「証明しに行きましょう」
 ――ちょうどよく、神々が視ているというのなら。
 ぐらぐらと煮だった鍋のように、あたりには期待が満ちている。熱量を確かに感じながら、汗ひとつかかぬ二人が挑戦的に悠々と――武器を構えた。

「往くぞ」
 ずん、と。
 ザッフィーロの一歩が地面に叩きつけられ、その巨体を前に出す!メイスを握った鍛え上げられる褐色から、ぶおんと質量が薙いだ!
 獣たちの中にはそれを飛び越えて躱すものもおれば、やや反応が遅れて薙ぎ払われる物もいる。子犬めいた悲鳴で転がっていくのには視線もやらず、右前足の踏み込みから――つま先の方向を半時計周りに持ち込んだ。
 左のかかとを浮かせ、メイスを地面にあてることでザッフィーロの身体は宙に浮く。飛び上がって一撃から逃れた獣を仕留めんと黄金が見開かれた。
 メイスの柄が伸びる。中に仕込まれた鎖がじゃらりと唸り、重心のままザッフィーロの着地と共にしなった質量が獣たちの頭蓋を容赦なく砕いた! 神の鉄拳が如く、迷いなく!真っ黒の脳漿がぶちまけられたところで、術式を起動する。
 ――すべての獣たちから注意を惹いた。
「精々、暴れて来い」
 派手な動きは、宵のためである。
 ザッフィーロが前衛であるならば、宵は後衛だ。確実な一撃を生むためには宵の技術があったとて、詠唱の時間が必要である。背中を預けられるほど宵が強いと理解しているからこそ、ザッフィーロは戦いに集中できていた。
 【 狼 達 の 饗 宴 】 ! !
 ザッフィーロから呼び出された炎が狼の姿を得て、獣たちにとびかかる。その群れに混ざり、藍色を振り乱しながらメイスが繰り出された!
 喉笛を噛み、炎が揉まれ、より熱量の激しさを増す! 獣たちを宵に届かせぬと伸びた鎖をメイスで弾き落とし、ザッフィーロは汗ひとつ零さず余計な呼吸もしないままにただただ力を振るう!
 きいいい、と――高音が、獣たちの耳を貫くまでは。
 その音を心地よく思ったのは、きっとザッフィーロだけなのだ。ふ、と形のいい厚い唇が雄々しく笑む。
「お待たせしました。――さあ」
 掲げる愛おしき天図盤が、彼の星座を呼び起こす。
 光の矢だ。星を纏う360本の矢が、獣たちをすべての角度でとらえている。ちょうど世界を作るよう、炎の狼たちが焔をつくっていたのなら、いつのまにか獣は密集させられていたのだ。
 ぎゃあ、ぎゃあと混乱の悲鳴を聞きながら宵が笑う。

「 宵 の 口 と ま い り ま し ょ う 」
 流れるは、――【 天 撃 ア ス ト ロ フ ィ ジ ッ ク ス 】!!
 流星が降り注ぎ、獣たちを蜂の巣に変えていった!!! どどう、どどう、と衝撃波と生みながら注がれる星の流れに逃げまどうのを許さない。接近するザッフィーロを貫かぬ星の輝きが彼の身体を隠し獣の抵抗から護って見せた。
 宵は、こうして――彼を支えてやるのがうまいのだ。
 ザッフィーロはまっすぐな性分だ。攻撃の挙動からも見て取れるように、力が強いから「押し込んでいく」。そこを、宵は援護で「支える」。二人分の力で突き進む道は――きっと、いつか星の動きすら変えてしまえるのだと宵は信じているのだ。今も、この瞬間も、未来も!
「ふふ、どんどん楽しくなってきましたね? ザッフィーロ」
 星が舞い、神々が宵に拍手を送り、ザッフィーロの狼たちにも火種を注ぐ。
 煌々とザッフィーロの星を照らすのならば、サファイヤの色すら明るくさせてみせるのだ。ああ、やはり――星とは、いつも迷える旅人を導くもので。
「俺も負けては居られんな」
 二人で描く奇跡の流れさえ在れば、其処にはもはや呪詛の居場所もなく。
 散った黒の残骸を燃やしてやりながら、なお前に前にと歩んでいく彼らの在り方に――『かくあれかし』と神々が喝采を送ったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャガーノート・ジャック
★レグルス

(ザザッ)
標的の接近を感知。
準備はいいな、ロク?
よろしい。ではいつも通り行こう――ミッションを開始する。

(ザザッ)
"TORCHICA"起動、迷宮構築。
迷宮の中心に監視塔代わりの高い壁を築き、其処から敵の様子を確認。(情報収集×視力)
出現した壁面を操作しロクが通行・機動・利用しやすいように配置変更。
思う侭飛び交え。本機が支援する。(操縦)

本機も壁面で挟撃ちすることによる圧殺や、高所からの熱線照射で敵撃破を担う。

復讐と報復に燃えるか。結構。
然し昂った獣心は眼を曇らせるものだ。
そして獣に身を窶した以上――狩人に狩られるのは至極当然の結末と思え。
(ザザッ)


ロク・ザイオン
★レグルス

(熱といのちに満ちたここが、ととさまの森に似てとても好きだ)
(だから、あの獣たちはけっして許されないし)
(この視線が。「かみさま」が。おれは、嫌いだ)

(ジャックに、低く唸って頷く。
ここはジャックの狩場で、猟犬はおれだ)

(ジャックが作ってくれる狩場を【地形利用】
狭く折れ曲がる迷宮、巨大さも速さも枷となる
【大声】の咆哮で呼び寄せ、音を迷宮の壁に跳ね返らせて撹乱
「烙禍」で時には床や壁を打ち抜き奇襲、呪いにまみれた獣を【焼却】する
木々から、地から奪ったいのちを、森に返せ)

※咆哮、簡単な言葉以上の発声ができません




 さて、一角にて。
 獣たちを閉じ込めんと『迷宮』が組み替えられていた。
 神々はこの原理が理解できぬ。しかし、其処には――獅子座の一等星が煌めきを放つふたつが、並ぶ。
 『レグルス』は一等星の中で最も暗い星だ。
「標的の接近を感知。」
 ざ、ざり、ざり。
「準備はいいな、ロク? 」
 きゅい。ざり、ざざ、ざり。
 ジャガーノート・ジャック(AVATAR・f02381)が隣の相棒に告げる。ノイズ混じりの声はいつも通りの『ロールプレイ』を続けながら、かつ、冷静だ。
 対し、隣に在る星の片割れは低い唸り声を隠せないまま一度頷いて、ジャックを視ない。
 ロク・ザイオン(蒼天、一条・f01377)は。
 かつての、『アルダワ魔王大戦争』において今まで身に着けた言葉を焚べてしまった。故に、相棒に返す言葉は元より短いがさらに「無い」。ジャックは、その彼女が横顔だけで語る怒りを承認して飛び上がって――絶好の狩場を作り上げるのだ。
 【"TORCHICA"】。
 常に思い通りに可変する大迷宮の中に閉じ込められた獣たちは、壁を這い上がろうとしたり砕こうとしたり、繰り返す抵抗を見せるが次第にそれが無駄だと理解させられる。
 壊せばまた同じ場所に壁が即座に現れ、空を駆けようと考えるなら蓋をされた。徐々に、徐々に、パズルゲームの外枠が埋められていく光景に似ていると理解したのは、機械の背からごうごうと排熱を繰り返す飛翔ユニットのおかげで上空に在れるジャックだけだ。一直線の迷宮では「狩り」と言えぬ。潜む場所があり、隠れる物を与えることで狩りは成立するのだ。
「――復讐と報復に燃えるか。結構。」
 その想いは、鉄の豹とて否定しない。
 『中身』には経験がある。しかし、今それに思い浸ると『ロールプレイ』に支障が出るだろう、だから――止まらなかった。
「然し昂った獣心は眼を曇らせるものだ」
 呪われし神々が獣に為り下がるなど、もってのほかではかろうか。
 ジャックがざりざりとノイズ混じりの聲で宣告する。大層に両腕を広げて、さあ視ろと神々の視線を集めていった。正体不明の『反応』が赤いバイザー越しに見えて、その数値の『規格外』に原初を知る。湧き出るプロミネンスが期待の色で、高い温度をはらんでいた。
「そして、獣に身を窶した以上――狩人に狩られるのは至極当然の結末と思え。」
 以上だ。
 ざざ、と機械が音を消せば、その姿は見上げた呪詛の獣たちの視界から消える。ステルス機能を使っただけのことだが、『時代遅れ』の神々たちにその奇術はまるで奇跡のようだった。
 どこに行った――と探し出す獣たちもおれば、この場をどうにかして脱出しようとあたりを探り出す獣たちもいる。
 ロクは。
 熱といのちに満ちたこの空間が、とても懐かしくて好きだ。
 ――いつの日か、彼女の父にあたる生き物と生きた森を思い出す。故に、呪詛で命をいたずらに吸い上げる四つ足は許せないし、この好奇心に満ちて探るような視線すら邪魔だと思えた。
 ――「かみさま」が。おれは、嫌いだ。
 「ぐる、る゛、ぅう゛う、う」
 嘗て、『神の獣』とされた胸を撫でてから、喉元に手を当て、ロクが本能からの嫌悪を訴えて『最終通告』とする。
 狩場は相棒が作り上げたのなら、猟犬になるべきはロクだ。かあっ、と牙を剥いて【烙禍】を纏う。焼き印が彼女の手にする牙を赤く染め、白く発光させた。
 
 ぎゃあ、と悲鳴が上がる。
「始まったか」
 籠もる聲と共にジャックが音の方向を見た。
 赤いバイザーにサーモとズーム機能を載せて、戦場の状況を確認する。
 ロクがまず、呪詛の獣を一匹火だるまにしていた。首を的確にきりつけ、組み敷いて、放り投げる。転がる仲間が灰になるのを見て、獣たちは逃げ出した。
「抵抗は推奨しない、酷くなるだけだ」
 ロクの手が届きそうにないところまで反応が広がったのなら、壁同士を動かして『圧殺』する。ばぎゃん!と肉が目の前で破裂するのを見せつけられれば、獣たちは次に散会の手段を取った。ジャックが地形を変容させ、その行く手を作り変える。走るのなら、走らせればよい。――すべて、大掛かりに逃げさせてロクのもとに導くようにするだけだ。
「ぐる゛るァあ゛ッ!! 」
 ロクの怒りが爆ぜ、一体の獣を組み敷く。的確に顎を掴んで首を切り離したら、それを投げ捨てて威圧をかけた。また、物陰に潜もうと壁を越え、気配を消す。
 ぼてぼてと転がる首がたちまち灰に変わり、獣たちは混乱に至った。恐怖から呪詛が巻き起こったところで、それが鎖を作る前にジャックが焼き払う。鉄の掌から的確に熱光線を送れば「其処には何も残らない」。
 獣が怯えて忍び足で動いたところで、ロクがわざと壁を切りつけてから大声で咆哮を放つ。きゃん、と悲鳴が上がり臆病に走るそれを逃がしたら、それにつられて逃げ出す数匹をあぶりだした。
 ――狩りだ。
 森と生きた彼女ならではの戦い方は、獣の純粋さのまま行われる殺戮である。
 集結した数匹が息をひそめて互いに身を寄せ様子をうかがった。
 ――すんすん、と鼻を鳴らしても火焔のにおいはしない。
 体力回復のために一頭が腹を地に伏せたのならば、その時である。
「――ぎゃ、」
 どぅん、と地面から『腕』が突き出されたのだ。
 跳ね上がった体を仲間たちが呆然と見上げ、燃え盛るそれがすでに死体となったのを悟る。
 地中を進んだロクが、腕だけを表面に出したまま剣を逆手に持った。熱で真っ白に輝く牙が語る。

 ――樹々から、地から、奪ったいのちを『森』に還せ。

「ミッション完了。ロク、観客のボルテージは最高潮だ」
 ジャックが上空より降りてくるころには、迷宮が解かれる。展開した時よりも当たりの『生命反応』を示す数値が格段に上昇を続けていることは、数値を見ても光景を見ても明らかだった。腐り堕ちた金が新たに身をつけて、あたりからは新芽が顔を出し始めている。明るく世界を照らす炎の加護は暖かく、二人の勝利を確実に祝福し、歓迎していた。
「気に入らないか」
 ――ロクの顔は、照らされながらも険しい。
 ぐるぐると唸りながら腕の汚れすら気にしないロクが、前に行こうと足を勇ませた。そんな相棒に、ジャックも肯く。
「少し、眩しすぎるな」

 ――『レグルス』の輝きは、一等星の中でも一番暗いのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

玉ノ井・狐狛


おいおい、自然破壊はよくないぜ。
ケダモノならそれらしく、森と仲良くしたらどうだい。

しかも棒術とは、なんともケダモノらしくもねぇ。
ま、覚えがないワケでもないしな、付き合ってやらァ。

◈UCで相手の得物を表面上だけでも複製。
(ってのは割とどうでもよくて、目的は▻挑発なんだが)
►“胡”の魔力視を併用して▻見切り、回避と防御を重視、連中を焦らす。

ほら、コピー能力者ってのは、漫画の王道だろ?

逃げを考えられないくらいまで冷静さを奪えた頃合いで、►八卦を大量複製して爆破する。
▻早業、破壊工作、罠使い

おっと悪ィ悪ィ、さっきまでのは大体ウソだったぜ。
棒やら槍やらなんざ、最後に触ったのがいつだかも覚えてねぇなァ。


ティオレンシア・シーディア
◎△

…あー、そっか。あたしカミサマとか全然信じてないけど…この世界、ホントにカミサマがいるんだっけ。
猟兵にもいるけど、そんなにふつーのヒトと変わんないし。正直あんまり実感なかったわねぇ。

…で、ド派手に吹っ飛ばせばいいんだっけ?そういうのなら割と得意よぉ。
オーラと鎖はラグ(浄化)とエオロー(結界)で○呪詛耐性を強化した〇オーラ防御で防御。グレネードの〇投擲と●鏖殺の範囲攻撃で盛大に暴れるわよぉ。

まったく…ボスはもうとっくに倒れたんだからさっさと骸の海に還りなさいっての。
それとも犬語じゃないと理解できないかしらぁ?わんわん、なぁんて。
(技能:動物と話す未所持)
…これじゃあたしのほうが悪役っぽいか。




 気配は隠れもしないのに、その姿は見えない。
「あー、そっか」
 当たり前のように猟兵の世界には「神」たる彼らがいるのだ。その存在は未来のために戦う使徒でありながら、接していくうえであまり己ら人間と中身が変わらないものだから、どうも身近すぎてその在り方を忘れかけていた。
「神様とか全然信じてないけど、この世界じゃホントにいるんだっけ」
 ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)の意識の中では、神というのは金を集めるのにちょうどいい存在だ、というくらいである。
 神がいればその信徒は税金を払わなくてよいし、政治の道具に使うのもよろしい。いつだって宗教で争いは絶えぬし、その分だけ経済も回る。それがほんとうに「加護」だというのなら、神というのは皆が博愛主義なのだなと思うだけで――人の苦しみすら愛しているから、今この場も猟兵たちを見守るのであろうとも結論づけられるのだ。なにせ、ティオレンシアの世界は、『そういう』要素で回っていた。
「で、ド派手に吹っ飛ばせばいいんだっけ」
 ――あたしは得意だけど、あなたはどぉ?
 隣に並ぶ金色の少女に問うてみる。甘ったるい声色と相反する殺しになれた立ち振る舞いには、狐耳も興味深そうにぴくぴくと反応を返した。
「そォさな――ま、付き合ってやる気にゃァなったかね」
 玉ノ井・狐狛(代理賭博師・f20972)は、神に仕える巫狐でありながら――賭博に興じる狐だ。ティオレンシアも裏の社会を知るように、狐狛もまたその道で整形を立てる。現代に適した陰陽術で戦いながら、戦いとは賭博に似ていていつも駆け引きがあるものだから、彼女も『派手』に戦うのは得意だ。
 『派手』に『はったり』を与えることで、賭博と言うのは『イカサマ』が通ずる。点棒を投げ捨てるときに自分の牌をすり替えたり、大袈裟に頭を抱えたりして注意をそらさせたり、『勝つため』にはどんなことだってするのがこの狐狛だ。
          ・・・・・・・
「アンタはどうだい。のるか、そるかだ」
「ンー、まぁこの通り、ただの人間だからねぇ」
 ――あなたとやることは似てるわよぉ。
 人殺しの瞳と、詐欺師の瞳は互いに「視たらわかる」程度にしみついている。
 意地悪な笑みが穏やかに交錯して、ふたつは獣たちの群れへと向かった。

「おいおい、自然破壊はよくないぜ。ケダモノなんだろう、それらしく森と仲良くしたらどうだい」
 名乗り口上にしては、やや長く。それでいてわざと演技がましく大きな声で語り掛けてやる。
 まず――注意を惹いたのは狐狛だった。
 獣たちは棒を構え、鎖を呼び出す。二足で歩いてはいるがほぼライカンスロープと言って差支えがない。仲間たちを殺しに殺され、腹を余計に立てて呪詛があふれてしまっているのだ。
「ケダモノらしくもねぇ。まァ、覚えがないワケでもねェし」
 【大袈裟な狐細工】だ。同情を精一杯込めて首を左右に振ってから、小さな手に召喚されるのは獣たちと揃いの代物である。
「――付き合ってやるよ」
 ここからは、見よう見まねなのだ。
 実際――この一連の「おおげさ」はすべて、挑発が目的である。神をなぞらえただけの構えに憤慨した獣たちが、容赦なく狐狛を襲った!
「はい、だめぇ」
 そこを――ころり、石が転がった。
 狐狛と獣たちの間に現れたものが、グレネードだと判断できたのは――その場で、きっと「タネも仕掛けも」知っていた二人のみである!!
 ぼがぁああん、と強く爆炎が上がれば! 獣たちはたまらず足を止める。黒い煙が上がり、その場にいた狐狛の姿をかき消され焼けこげる匂いに鼻が利かないのだ! どこだ、どこだ、と狐狛の小さな身体を探す獣の横っ腹を「ここだよ」と少女がついてやる。
「見失ったかァ? めくらってわけでもねェだろ」
 しっかりしろよ、と嘲笑い、その体をまた煙の中に引っ込めていく。致死に至らぬ傷に益々怒りだけが沸いた獣の怒声に、仲間たちもあてられ――鎖をあらぬ方向へ投げた。
「残念賞。狙いはいいんだけどねぇ。」
 呪詛で出来たそれが、獲物に触れる前に『分解』される。
「人間だから、――後だしじゃんけんじゃないとあなた達とやってらんないのよぉ」
 ティオレンシアだ! グレネードが投げられたであろう位置、その樹々のすき間からぶら下がり笑う彼女がいる。手をぱっと放せば軽やかに地につま先がたどり着き、転がるようにして受け身とってから獣たちの前に石をふたつ手にして現れる。破魔の加護を得た今、薄く女の周りを結界が緻密に組まれているのだ。
「――まったく。ボスはもうとっくに倒れたんだから、さっさと骸の海に還りなさぁい。それとも、犬語じゃないと理解できないかしらぁ」
 ――わんわん、なぁんて。
 逃げの一手を考えられないほど、神々は冷静さを喪っていた。だから、ただただ目の前の不敬な生き物二匹をひねりつぶすためだけに高速移動を始める!
 どどう、どどうと地を蹴り、口から唾液をまき散らしながら神の怒りを振るわんと――まず、ティオレンシアに棒を振り上げたときである!
「おっと。悪ィ悪ィ」
 神々の視界が、スローになる。コマ送りのようにゆるやかな時間の経過があった。
「さっきまでのは、大体ウソだったぜ」
 八卦が、周囲を浮いていた。
 花火玉である。霊気ですっかり着火されたそれが中を浮いていて、――『規定量』を超えた火薬をはらんでいる。獣たちの視界がゆっくりとそちらを向いていく中、ティオレンシアも「あは」と彼らに手を振った。
「棒やら槍やら――、最後に触ったのがいつだかも覚えてねェなァ。」
 ぱん、と手合わせをひとつ。
 狐狛の合図とともに ――大 花 火 が 無 数 に 上 が っ た !
 どん、どん、どん!!地面を震わせる爆音を響かせながら極彩が獣たちの命と共に咲く!!
「ちょっと早すぎるけど、たーまやー、ねぇ」
「構うもんかよ。神様っつーのは、何処の国でもだいたい花火が好きだろ」
 ばん、ぱららら――軽やかに散る命の火種と共に、神々もまた、炎で同じく彼女らを祝福する。呪詛の散った場所に『大イカサマ』が花を咲かせたのならば、神々の唸りが歓迎としてふたりの空を無数の炎で包み込み、美しく爆ぜたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ゼイル・パックルード
武闘会か、猟兵相手に戦えるのなら、腕試しにはもってこいか
目の前の殺し合いより、生死を賭けない戦いを待ち望むとは……甘くなったかな

いや……違うか、殺し合いならそのほうがいいが、相手の問題ってヤツか
我ながら贅沢になったものだ

さて

高速移動やら中・遠距離から攻撃してきそうな相手だけれど、
今回は刀一本で戦う、これで勝てないなら猟兵相手に勝てるはずなんてないからね
殺し合いの最中でこんな拘りは愚かかもしれないがね
拘りを持つくらいは自分に不満で……人生を楽しんでるらしい

第六感を研ぎ澄ませて、鎖を避けると同時にダッシュで近づく。高速移動で逃げられるだろうが、動きを覚えて読み、どこかのタイミングで不意をついて斬る


雷陣・通

おっし!
難しい事は分かんねえけど、とりあえず派手にぶっ飛ばせばいいんだな、任せろ!

「遠からんものは音に聞け、近くば寄って目にも見よ。雷陣・通、これより治において乱を鎮める武を以って過去の残滓を打ち払わん」
叫び、敵に向かって構えれば
「そんじゃ……ライトニングに行くぜ!」

『紫電の空手』始動
まずは【先制攻撃】による飛び込んでの正拳から【二回攻撃】の蹴り
敵の動きは速い、此方がひっかきまわすよりは、円の中心に位置するように不動であることを心掛け【カウンター】からの二回攻撃で迎え撃とう
勿論、【視力】は広く浅く視野を広げ動くものを【見切る】形で攻撃に対応
【フェイント】や【残像】で困惑させ、確実に仕留めるぜ




 ダンスは習わずとも、武闘ならば彼の生きざまには必ずあったものだから。
 猟兵同士のそれができるというのは、腕試しに丁度良い。ゼイル・パックルード(火裂・f02162)が血の滴る刀を肩に乗せながら、神々を睨み見た。
「俺も甘くなったもんかね」
 ――足元に散らばり、臓腑をまき散らして死んだ獣を見下ろす。
 この程度を殺すのに無駄な能力も使っていられないし、これに手こずるようでは『猟兵』相手などつとまらぬと考えたからだ。案の定、苦戦のしようもない。
 獣がとびかかるのなら、分かりやすすぎる殺意と動きに直線を見出す。四方八方から切り込みを入れるようにして、最後に心臓をひと突き繰り出してやった。
 ――これぞ、【邪刃一閃】。
「いや、違うか」
 刀を抜けば、それに応じて出血がまとわりつく。どろりとした鉄のにおいは嗅ぎなれたもので、この死の感覚すら喰い飽きた味だ。
「殺し合いのほうがいい――相手の問題ってやつか。贅沢になったもんだ」
 獣程度で、殺し合いも満足できぬ。
 ゼイルは己の命を賭していずれ、「殺される」ことを待ち望む存在であり、殺されたいと思った相手と命の奪い合いを望む戦闘狂であった。
 魂の重さと金貨の重さは同列にならない。なるとすれば、それは「想い出」の数である。
「悪いね、――俺は、お前らと遊んでやれない」
 人生を楽しんでいるのだ。
 いろいろな猟兵と出会い、その強さを知り、何度も刃を交えて己に不満を抱きながら剣を打つように己を磨く。くずれおちた獣の身体を蹴り飛ばして、これ以上の交戦は無駄だと呪われし神々の屍を超えるのだ。
「退けよ」
 ――お前らじゃ満足できないんだよ。
 
「ッッッライトニングにィ、行くぜぇええええっ!!!! 」

 アンニュイな視線で、神々を見下すゼイルの目の前に雷が落ちた。
 光と言うのは速すぎるもので、のちに轟音が響き渡り少年の銀髪を舞いあげたのならば地面を揺らす。
「――ハハ、すげ」
 雷使いというのは、どいつもこいつも、派手だな。なんて言いかけて口を閉じた。其処にいたのは、ゼイルよりもずっと幼い少年の姿である。
 ――カラテ。
「くう~~~ッッ! 決まったぜ俺のスーパーマン着地ッ! 」
 立ち姿からうかがえる構えは格闘技のそれであり、熱量で弾け飛んだ袖から露出した腕は並大抵の子どもがもつようなものではない。引き締まった腕から繰り出されたとはいえ、あの雷の質量を生み出した拳は――雷陣・通(ライトニングキッド・f03680)から生み出されたものだ。
「あ! こんちは! 」
「……おう」
 ガッツポーズのち、ゼイルに元気よく挨拶をするさまを見て。
 ――いっそ眩しいほど純粋な少年の破顔に、『悪童』のほうがたじろいだほどである。足元の波状にできた窪みすら、少年は気にした様子もない。
「おっ、? 」
 通がゼイルの様子とその意味が理解できないまま快活に笑ったのならば、その腕を鎖が縛り上げる! ぎちりと両手を左右から引っ張られ、少年の身体は浮いた。
 ゼイルとて、先ほどの一撃を見ておいて助けには入らない。通の顔が少年らしいものよりもずっと、戦士らしくなる瞬間を金色の瞳におさめた。
 静かに、小さな息を吸う。
「遠からんものは音に聞け、近くば寄って目にも見よ」
 通の父もまた、空手家だった。厳しい父親に今の型を叩き込まれながら、彼が武者修行に出てもなお尊敬している。世界を渡ればいつか父と巡り会えるのではないかと思って、やみくもに探し続ける少年の身体にはその背中がいつも目標として思い描けていた。父親の教えとその一節を思い出し――発電する。ちゅい、ちゅい、と空気が鳴き始めて獣どもも縛り上げたは良いものの、どう手を出したいいものやらわからぬ。
 右手が、握られる。
「雷陣・通、これより治において乱を鎮める武を以って――」
 左手が、握られた。少年の腕を縛る鎖たちが弾け飛ぶ!!

「 過 去 の 残 滓 を 打 ち 払 わ ん ッ ッ ッ ! ! ! 」
 気合の咆哮と共に発動、【 紫 電 の 空 手 】――!!脳から伝わる電気信号を電流に変えた一撃が少年の身体を包み、その身体を豪速に変える!!
 攻撃力を底上げしたのだ、とゼイルが判断したのは彼が「いた」筈の場所がひどくくぼんだのを見たからだ。跳ねるようにして小さな体が飛び出せば、たちまち獣たちはド、ドンと鈍い音と共に跳ね上がる!
「うぉおお、おおおおおおおぉおおおおおッッッ!!!」
 まず、正拳突きを繰り出す一撃。受け止められたとしても、迅雷の蹴りでその体を浮かせてやった通である。これは、いわば百人組手の要領でカタをつけてやるのがいいと思ったのだ。
「へぇ、面白い。俺も混ぜてくれよ」
 少年が――輪の中心にいる。そこにゼイルも炎で頭上から着陸を果たしたのなら、背中を合わせるようにして嗤った。よいアイデアだと思うのだ、これならばわざわざ素早い相手にあわせて動く必要がない。向かってくる相手だけを切り果たせばいいというのなら、ゼイルも手間が省ける。
「もちろん、――来るぜッ!! 」
「上等だ」
 不動であった。
 二人は呪いの神々が食らいつく猛追を相手してなお、その中心から揺らぐことは無かったのである。獣が棒術で掴みかかるなら、それを手で受け止めた通が雷で砕き、拳で頭蓋を割った。鎖を飛ばすのならば、それをゼイルが断ち、逆手に持った刀で己らの死角――側面から飛び出す獣を左のわき腹から右の肩にかけて切り果たす。
 通が頭突きで獣の顎を砕き、左の正拳でどごんと大穴を開けてやったのなら、ゼイルは獣の脚を切り払い、喉に突きさす。的確な一撃一撃を目くるめく繰り出し、――残るは猛者が二人だけ。
「おっし――どうだ、神様! 」
 小さな体から繰り出されたその勇猛さ、しなやかな少年から繰り広げられる剣技はもはや勇ましい舞のよう!わあっと神々が沸いたのだろう ――煌めく火の粉があたりに散った。
「やれやれ。この世界は、日陰者にゃ住みにくそうだ」
 どこかこそばゆいような、素直な賞賛を受けてゼイルが肩をすくめる。抜き身の刀をひとまず鞘におさめて、伸びをひとつしたのならば「次行くぞー!」と盛り上がる通の後ろをついていく。
 さらなるつわものを求めて、武人が二人――生命あふれる神の世界を救うため、力を求めて歩き出していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
随分な呪いの質量だなァ
そいつを背負ってそこに立っているのは、同情しなくもないよ

ふはは!どうあれ復讐なぞ認めんがな!

満ちた呪詛ごと利用させてもらおう
起動術式、【灰燼色の呪い】
魔獣の姿であれば効率が良い、獣の方が恐怖には敏感だ
さァ見せてみろ、貴様らの考える「最悪」を
そいつが私の至上の餌よ
奴らの感情も余さず呪詛に変えて、その身の動きを鈍らせてしまおうか
行くぞ蛇竜、片っ端から串刺しだ!

なァに、少々苦しみが増えるだけだ
永きに渡る嘆きに比べたら大したことでもあるまい?
全く運がないなァ、蘇って来なければ、こんなことにはならなかったものを

……悪役が板について来たの、悲しんで良いのか分かんねえなあ……


鷲生・嵯泉
元より必要であるならば戦う事自体を避けはしないが
魅せる戦いなぞ心得たものでは無いのだがな……
しかし復興に繋がるとあらば仕方が無い、出来るだけの事をするとしよう

攻撃は戦闘知識での行動予測と第六感の先読みにて躱し
避けるのが間に合わねばカウンターの武器受けで叩き伏せてくれる
さて……遣るならば派手な術式の方が目は惹けよう
――来い、火烏。其の炎を以って、あの獣共を縛せ
如何な高機動を得ようとも、そもそも動く事が叶わねば意味は無い
お前達に赦されるのは、唯地を這い討たれる事のみ
怪力を乗せた斬撃にて一刀の元に素っ首を刎ね飛ばす

聴け、力奪われし神々
世界を――未来を護る力は健在と知れ
知らしめる――嘗てそうした様に




 その身は、呪いで出来ていた。
 生み出されし竜の子は今ここに屈強な体を得て明日のために戦う。その手段こそ、陰鬱としたものであるから――「誤解」されないよう、気を付けてきた。
 人には友好的であれと世間を学んで知る。耳元でささやき続け、人には見えぬ日常的な残滓は「そういうものだ」と受け入れて竜は今まで生きてきた。――地獄の体現といってもいい世界で、だからこそ、これが視えぬ人間たちは「うつくしい」のだと思う。
 かつて、そんな生き物になりたかったニルズヘッグ・ニヴルヘイム(竜吼・f01811)は呪詛の獣たちが苦しんでなお復讐に燃えるさまに同情を抱くのだ。
「随分――溜め込んだなァ」
 己の顎を左手で撫ぜて、獣たちを視る。
 呪いの量は膨大で、ニルズヘッグが視認できる限りでとてつもない。神々の抱いてきた「呪い」はその犠牲があってのものだ。たとえば、儀式の贄だとか、――彼らの装飾から見るに熱狂した信奉者のものもあれば、供物になった命もあったのだろう。
「ふはは! どうあれ復讐なぞは認めんがな! すまんすまん、余計な同情よなァ! 」
 呵呵と大笑したのち、色違いの瞳を緩く細めた。お前に何ぞの怨みが分かるのかと唸る獣たちの気持ちは痛いほど、――その身を以てよく理解できる。
「全く運がないなァ。蘇って来なければ――苦しみが増えることもなかろうに」
 低い声が唸り、右手を前に突き出す。
「さァ見せてみろ、貴様らの考える『最悪』を」
 呪われし半身がざわめき、左から溢れる炎が長躯を抱きしめるようにして渦巻いた。
 獣が相手でよかった、と内心思うのである。『人間』ほどいびつで複雑であればこの術式の行使が少々手間取ってしまうからだ。己らの呪詛がひとつに吸収されていくのを見て――獣たちが、化け物に吠えたてる。
「恐ろしいか? そうだろうなァ」
 ――私も、そう思うよ。
 呪詛の黒霧にもまれながら、神々の力を奪い『正気ではいられない』筈の空間にてニルズヘッグは笑うのだ。

 魅せる戦いなぞ、心得たものではない。
 そも、戦いなどは「勝てばいい」というのが戦の世では当然であった。鷲生・嵯泉(烈志・f05845)は神々の道楽がよくわからぬ。しかし、それが文明の再興に繋がるというのならばそのように動くのが彼である。
 そんな中に、見知った男の背を見たのだ。
「――来い、火鳥」
 赤い瞳を、それに向ける。喰らいつくされた生命のあと、その渦の中心ににてニルズヘッグが呪詛の竜巻に在るのを見た。
 躊躇わず、【侵逮畏刻】により呼び出した火鳥を放つ。ぴゅう、と矢のように空気を裂いた火のそれが、漆黒の塔に大穴を開けてみせた!
「っ、と――嵯泉!? ばか、こっちくんな!」
「馬鹿とはなんだ。お前は、其処で何をしている」
 ニルズヘッグが、悪戯を叱られたような子供の顔で申し訳なさそうに眉を下げる。呪詛の渦が巻いていた名残で、銀色の髪が巻き上げられて余計に表情が隠せていなかった。
 【灰燼色の呪い】にて精神を壊された獣たちがもんどりうち、お互いを時に殺し合っていた牙が――二人に向けられる。
「やべ」
 ニルズヘッグに掴みかかろうとした腕を察知して、相棒を槍に変異させるも遅い。が、それを嵯泉が丸太を切るかのように一太刀で切り伏せた。これ以上の追撃は許さぬと赤が睨めば、炎獄にどんどん獣たちはまきこまれていく。
「不浄を振り撒いてどうする」
 ――嵯泉の指摘は最もだった。
 ニルズヘッグがあやつるのは『呪詛』であり、その身は一度も神などには祝福されたことがない。神様の事なんてわかんねぇよ、と愚痴をこぼしそうになりながら――父に叱られる子のようにしょぼくれた。
「聴け、力奪われし神々」
 深くため息を吐いたのち、嵯泉が空に吼えた。
 びりりと空間を震わせる声量には、迷いひとつない。ニルズヘッグの『ケガレ』に恐れた神たちが息を潜めていたのが気配を取り戻し始めていた。
「――世界を、未来を護る力は健在だ」
 人間が、竜の綱を握る。
 ぴしゃりと言い切った嵯泉には、陰陽の心得がある。呼び出した火鳥が高く哭いて、空を飛んだ。己の主をたたえるように火の粉をちらし、ニルズヘッグの灰色の神すら白銀に照らす。
「知らしめるぞ」
「えっ」
 獣たちは動けない。ぎゃあぎゃあと吼えるのに神聖なる炎を前に飛び出すことすらできないのだ。いくら機動力を得るとしても、呪詛をほぼニルズヘッグに奪われた今はただのやかましい肉塊でしかない。
「――私とお前が神の味方だと教えてやれ」
 返答は待たない!
 どうっと駆けた嵯泉が剣を抜けば、たちまち獣の首が飛んだ。
「おい、嵯泉――ああ、もう。しゃーねぇ……」
 悪役が板についてきたなぁ、と思っていたのだ。元より、己の悪性を隠す必要がなくなったと言っていい。神などに救いを求めてはいないし、これからもそんなことはしないだろうが――盟友たる人間が果敢に『神』の味方であろうとするのならば、寄り添うのが竜たる己の使命だと判断した。相棒が手の中で槍になってなお、行くぞ行くぞと前に出たがるのもあって、昏い温度を孕んだ両目を薄めてから――いつも通りの明るい顔をした。
「よォし、行くぞ蛇竜! 片っ端から串刺しだ!」
 竜ひとりでは、神に祝福をされぬ故。
 ぶん、ぶんと槍を振り、炎を突っ切って一撃を繰り出すニルズヘッグが質量のままに前へ往く!
「うぉおおおおらッ――! 」
 三匹をまとめて串刺しにしてみせれば、撫でるようにその首を切り落とすのが嵯泉だ。続いて、蛇腹に変形した剣で鞭うつように獣たちに叩きつければざっぱりと無数の腹が裂け臓腑がこぼれ落ちる。ニルズヘッグが精いっぱい巨槍を投げれば、口から血をあふれさせる怪物の顎をすべて貫いていった。投げた槍が彼の肩に仔竜の姿で戻り、ぎゃあ、と嬉しそうに鳴く。よくやったと褒めるつもりが、逆に褒められたような気がして――ちょっとむず痒い。
 嵯泉を祝福する火の粉は舞えど、ケガレの権化といっていい竜を祝うそれはなかった。故に、隻眼が穏やかな声色で言ってやるのだ。
「よくやった」
「おまえなあ」
 『神』の味方であるとはいえ、――鷲生・嵯泉は己の味方でもあるので。
 神々がおそれる竜にも素直に賛辞を送り、肩を並べてまた前へ往く。呪いの味を口で転がしながら竜だけがきっと横目で神々に視線を一度、くれてやったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィリヤ・カヤラ
◎△
グウェンさん(f00712)と。

私は後ろからグウェンさんには怪我させないように頑張るよ!
何かあってもフォローは頑張るから
グウェンさんは思いっきりいってね!

まずは影の月輪を自分たちの周りの地面に展開しておいて、
戦闘中は『第六感』も使って敵の動きには注意しておくね。

フォローと攻撃出来るタイミングがあれば
【ジャッジメント・クルセイド】と
宵闇を蛇腹剣にして邪魔になりそうな敵を狙って。
うっかり近付いてきた敵は地面に仕掛けておいた
影の月輪から茨を伸ばして捕まえるね。
武器がこれだけと思ったらダメだよ?油断大敵ってね。


グウェンドリン・グレンジャー
◎△
ヴィリヤ(f02681)と

前衛は、まかせろー
ヴィリヤの、玉のお肌、傷付かないように、ガンバルゾー

第六感で、攻撃予測しつつ、避けて
当たっても、激痛耐性で、我慢

攻撃……空中戦で、飛行しつつ、すれ違いざまに、Mórríganで、斬りつけたり
Black Tail、伸ばして、敵に、敵を、叩きつけたり
後ろの、ヴィリヤに、当たりそうな攻撃、Imaginary Shadowの、念動力で、力場を形成、弾く

当たりそうだと、第六感で、判断したタイミング、で
巻きこめるだけ、Feather Rain
飛ばす羽根、には、生命力吸収と、捕食を、乗せる
いただきます

私も……死の女神を、内包している
死には、死を




 手筈通りに、事は進む。
 月の輪が地面を這った。腐った地面にしみ込む一筋の光輪が、魔術の成立を物語る。獣たちもそれに警戒を隠さず飛び越え、ふすふすと鼻を鳴らして仕掛けを解こうとしだしていた。血の匂いがするのに、肝心の主が視えぬ。
 打ち合わせは、穏やかな調子で行われた。
「それじゃあ、何があってもフォローは頑張るから! グウェンさんは思いっきりいってね! 」
「おー。ヴィリヤの、玉のお肌、傷つかないように、ガンバルゾー」
 当たり前のような命のやり取りである。
 さして呪われた神々程度、二人にとっては大きな脅威になり得ない。
 ヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)はダンピールであり、吸血鬼の父を敬愛するのだ。その運命に則って彼を討ち果たす因果を楽しみ、それを目的に未来を救う利己的な存在である。神がどう、とかそういうのは気にしないし、好かれることがあるかと言われると、まあ無理だろうと思うのだ。
 グウェンドリン・グレンジャー(Moon Gray・f00712)といえば、人間であるのにグールドライバーを内包する生態兵器である。彼女もまた、父に生命の脆弱さを哀れまれた結果、もはや怪物と鳴り果てた。普通の人間には、羽など生えぬものだから――神に祝福されるどころか、導かれてしまいそうな勢いである。
 大きな鴉がやってきた。
 ――獣たちがそれに向かって吼える。ぎゃんぎゃんと喚くのを、グウェンドリンが中心となって地平線すら覆うほどに伸びる羽が見ていた。
「すごい、ここ」
 生命力にあふれている。己の刻印が場に満ちたものすら吸い上げて熱を持ち、力を増やすのを感じながらグウェンドリンが真っ先に感動したのだった。
「――かみさま、ずるい」
 むす、と頬を膨らませるのに表情筋は動かない。
 息を一度ゆっくり吸い上げて、その力を堪能する。金色の実からも、腐らされた地面からも、余すことなく生命の息吹を感じて肺に満たしたのなら。

「いただきます」

 大鴉が、跳んだ――!!
「よし、はじまったね」
 低空飛行で黒い紙飛行機のように緩やかに飛ぶグウェンドリンの動きが、一筋の筆跡のようになったあたりでヴィリヤが敵の動きを悟る!
「ああ、駄目だよ。逃げないでね」
 穏やかな声色と共に指先を向ければ、グウェンドリンになぎ倒され、切りつけられ、その呪詛ごと命をすすられる獣たちが逃げまどうのを【ジャッジメント・クルセイド】が遮った!! ぎゃあ、と吼えた獣の腕を光線が消失させ、鴉の尾羽がその体に突き刺さる!
 刺せば血が出て、叩けば血が出て、どこもかしこも血まみれにしながら――死を振り撒いてグウェンドリンは『生きる』のだ。それが、彼女に与えられた捕食というさだめであり、そうでしか生きられない第二の人生の習慣であり、――業と言える。
「やめて」
 後方に位置したヴィリヤが邪魔だと高速で突撃する獣がいるのなら、それは念動力で阻止した。きっ、と強くにらんだ金の瞳はけして獲物を許さない!
「ヴィリヤに、さわるな」
「あは、――うんうん、気安くはじゃれてほしくないかなぁ」
 代わりに、これをあげるね。
 にこやかにヴィリヤが獣に微笑んだのならば、地面にしみ込んだ月輪からの茨が飛び出す!獣に巻き付き、全身から血を吹き出させる棘がその命をじゅくじゅくと吸い上げていくのだ。
「油断大敵ってね。悪いけど、獣よりは頭がいいよ」
 ――蛇腹で、その首を跳ねる。ごろんと大きな質量が舌を垂らして灰になったのを見送り、逃げ場も与えられぬまま蹂躙される悲鳴だけが響いた!
 まるでかの暗黒世界にて、人間たちが父親を相手に逃げまどうような光景と似ていて、――所詮神も、中身は対して変わらないのだとヴィリヤも理解を得るだろう。
「飽きてきちゃったな。どうしよっか」
 グウェンドリンがその音を拾って、ぱっと顔を上げた。
 ぞわりと羽が伸びて、一度、衝撃波を生みながら羽ばたく。蹂躙されていた獣たちが吹き飛ばされ、地面に這いつくばるさまを見下ろしながら――少女はささやいた。
「私も、――死の女神を、内包している」
 冥府からの使徒が彼らだというのなら、己はそれと同類である。
 神にも等しい、神を身に宿していると言って見せる人間の少女に、獣たちが牙を剥いて威嚇する。何たる不敬、何たる傲慢か!
 しかし、だからこそ――。

「死には、死を」
 ・・・・・・・・・・・・・
 完全に打ち消すことができる。
 ――発動、【Feather Rain】!!ぐわりと忌々しく雄々しく広がる羽から、無数の黒が飛び出したのだ!!
 獣の頭を穿つ。突き刺さる羽が合図となって――文字通り、蜂の巣へと変えられた。その一匹を見たもう一匹の横っ面にも黒で大穴が空き、さらに心臓を射抜く。太腿も、腕も、獣のあぎとも、握る杖も、振るわれることのなかった鎖も、なにもかもすべて――撃ち抜いて。
「うん、綺麗にみんな斃せたかな? 」
 場にそぐわぬ『当たり前のような』声色でヴィリヤが月輪にて当たりを探知させたのなら、命を吸った鴉が羽をしまうのだ。腰からふわりと浮き出る程度の捕食器官が、未だに血を愉しんでいる。
「終わり? 次、行く? 」
「うん、行こう行こう! もっともっと、盛り上げなくっちゃね! 」
 ――圧倒された神々が、やや遅れて彼女らのあしもとに祝福の緑を芽吹かせていく。
 思い出したように空を駆ける炎の軌跡を見上げ、テーマパークに訪れた女子二人のようなはしゃぎ方をしつつも血まみれの足跡を隠さない。
 どこまでも『己らしさ』を喪わぬばけものがふたつ、神々の領域を駆け抜けていったのだった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月待・楪
氷月(f16824)と

ああ、そうだな
神サマなんざどーでもいいケド
偉そうに見下されんのは気に食わねェなァ?

どっからでもかかってこいよ
ただし氷月の『目』と俺の【念動力】と【クイックドロウ】の【カウンター】を潜り抜けられるってなら、だけどな?

手数の多い攻撃?巨大化?
ハッ…んなもん関係ねーなァ
トバせCarminus!
神サマ程度が俺らにヴィランについて来れるわけねェってこと
思い知らせてやるよ

【EasterLily】ハンドガンに限界まで変換して【2回攻撃】
氷月の運転とナビに合わせて【乱れ撃ち・制圧射撃】

ダックハントだな
…つーか氷月の『目』って最高のスコープがあんのに【スナイパー】の照準が狂うワケないっての


氷月・望
楪(f16731)と
アドリブ等歓迎

カミサマ、ねぇ
どうでもいいケド、見下されんのは気に食わなくね?ゆーくん?

潜伏部隊の居場所、探ってみるかね
サイバーアイ『Invader』を使って
【情報収集】【地形の利用】【暗視】による周辺索敵
何処に潜んでいようが、俺の『目』は誤魔化せないってな?

敵影発見次第、ゆーくんを後ろに乗せた状態で
『Shadow.Rem』を全速力でブッ飛ばす……!
しっかり掴まってな、Twilight!

《Full Throttle》で遠慮なく轢いて
散り散りになった敵の位置はゆーくんに即座に通達
カミサマっつーなら、少しはマトモに抵抗してみせろよ
まっ、俺達ヴィランを相手にしたのが不運だったな?




「カミサマ、ねぇ」
 悪しきの道に、啓示などは無い。
 ヴィラン――いわゆる、ヒーローズアースで『悪人』である彼らの信念と言えば、いつも少数派の正義であるだけなのだ。悪の彼らは利己的であるだけで、ヒーローほど他人に優しくなければ、己の道は己で敷くゆえに法律をも踏み込える生き様を魅せる。
「どうでもいいな」
「どうでもいいケド、見下されんのは気に食わなくね? ゆーくん? 」
 若い男二人、肩を並ばせている。
 片や、派手な髪色である。垢抜けた印象を抱かせる髪色と、煌々と己の欲に燃える赤い瞳は彼の人格が破綻した証であろうか。――氷月・望(Villain Carminus・f16824)は己の相方に語り掛ける。
「――そうだな。どーでもいいケド、偉そうに見下しやがるのは」
 黒い前髪をかきあげたのが、月待・楪(Villan・Twilight・f16731)だ。けだるげな視線を一度、ゆっくりと瞼を閉じることで『切り替える』。
 手にした銃器の重みを感じ、その硝煙を思い出すのだ。――彼のスイッチが入るまでの間、わくわくとした顔で望はそれを待つ。
「気に食わねェなァ? 」
 ぎらりとした色に灰色が切り替わるのならば、眼鏡の奥で待っていた赤がさらに輝きを増したのだ。そうでなくっちゃ、と益々笑みを深めて、楪の表情を眺めた。

 光の中に憧れたこともある。
 戦火に飲まれた街にて、少年は英雄にあこがれた。
 守るものなんて一つもない旅人になって、何かを守れると信じていた時もある。『本当に救えない』生き物になってしまった時に理解した。――ヒーローに為る才能がない。あこがれと嫉妬がぬぐい切れた訳ではないが、今は共犯者の肩に手をついて夢幻に沈まずにいられるのだ。
「――ハッ」
 眼前の神々は、とうとう猟兵たちに削られすぎた。
 己らの戦局が危ういとようやく理解できたのか、次は『わかりやすい』変容を遂げる。巨大化していく獣の身体に、思わずヴィラン、トワイライトは嗤う。ただ、的が大きくなっただけだと――。
「トバせ、Carminus! 」
「オーケー、しっかり掴まってなTwilight! 」
 クラシック・アメリカンモデルの大型な二輪がぐわあああと鳴き声を上げた!
 マフラーが派手に息を噴けば二人を乗せた鉄の馬となる!ごうっと駆けるそのボディに、赤い稲妻が纏い始めていた。
 彼らが狙うは、潜伏部隊である。派手に暴れる獣たちは、『目立つのにちょうどいい』善良な猟兵たちが相手どっていた。ならば、己らが思う存分輝くのならば『裏方』のほうがよいとしたのだ。きゅいい、と望の両目が狭まり――その熱源をたどる。
「俺の『目』は誤魔化せねーぞ。さァ、――そこだな、子犬チャン」
 見つけた。
 巨大な体を地に伏せるようにして息を潜め、いつ迎撃に出るかを悩む獣たちを発見した望がハンドルを大きく持ち上げ、ウィリーで威嚇!突っ込んでいきながら、彼らが潜む緑の中を強襲した!
 ゴムの焼ききれる音と共に、どんどん速度が上がっていく!己の背に掴まる相棒の温度とその力に、そしてこの戦場に男は快感を見出して――ただただ、興奮するばかりだ。ぎちりときつくハンドルを握り、ぐいぐいと恐怖を速度で塗り替えて歪んだ人格に叩きこむ――アクセル、アクセル、アクセル!!!

「 全 速 力 で 、 ぶ っ 飛 ば す ッ ッ ッ ! ! ! 」

 ――【Full Throttle】!!
 望の高笑いと共に二輪が赤の閃光となり――神々を蹴散らした! 
 ぎゃるるるると肉を轢き、乗り上げ、時に衝突のまま肉体を粉砕!!雷が飛び散った肉片を燃やし空気に伝わり直ぐさま周囲を感電させる!
「ははは、はははは―――ッッッ!! サイッコーだぜ!! 」
 焦げ臭いにおいだ。
 肉が焦げているそれを知っている己を、妹――に似た誰かが視たらどう思うだろうか。知ったことかよと己の淵に沸いた感情を、まとめて呪詛ごと獣の巨体に乗り上げる!!真っ黒な焦げ目をつけてやりながら、大きな山を越えてやれば鉄の馬と己ら二人が宙に浮いた!
「神サマ程度がよォ――」
 乗り上げて空を駆ける己らに手を伸ばす獣がいる。
 望は振りむかない。背に乗せた悪人が、――必ずそれを射ち落とすと知っている。だって、互いに、その最期は――。
「俺ら――ヴィランに、ついて来れるわけねェーだろ」
 べえ、と舌を出して。真っ赤なそれを見せつけながら右に握った『カルタ』を向ける。
 つぶやくような楪の声色が嬉しくて、運転の視界を前に向けたままの望もまた地に落下するまでの間に笑みを深めていった。

「ダック・ハントだ。玩具みてェに死ね」
    トリガーハッピータイム
 【 E a s t e r L i l y 】 ! ! 
 派手にまき散らした石や砂埃すべてが――拳銃となり制圧!!ががががががッ、と乱射が行われれば、たちまち巨大な獣たちの身体から血が噴き出し、穴だらけにになった身体が灰へと消えた!
「次だ」
「イエス、ッ右から来るぜ! 」
 ほぼ地面すれすれの傾きを魅せながら火花を散らし、バイクは地面にたどり着いてドリフト、アクセルターン! 
「りょーかい」
 滑走する二つを追う獣には、ヴィラン・トワイライトによる発砲が繰り出される! それを合図に――無数の射撃がまた行われ、蹂躙、そして鎮圧!!
 悲鳴すら銃撃がかき消すさまはまさに地獄、まさに悪行!! 二つの悪によって焼かれた地面がちりちりと燃え上がりながら――その中に神の息吹が混ざって、二人を燃やさぬ炎獄が造られていた。
「カミサマっつーなら、もうちょっとマトモに抵抗してみせろよって」
 な? と望が相方を見れば。
「運がなかった、そンだけだろ。――憐れなもんだ」
 弱いものをいじめてやるなよ、と楪が鼻で神々を笑ってやる。
 それもそうかと望が素直に彼の言葉を聞き届けたのなら、また派手にバイクの息が吐かれるのだ。
「うっし。――もーちょっと暴れてく? 」
「ハ、いいね。『あったまって』いかねェとな」

 赤の稲妻が、世界を駆ける。
 黄昏色の反射を受けて、空間を彩る生命の結晶と、木の根を這う溶岩の色がまた彼らのようで――きっと互いに、楽しいドライブとなるのだろう。血腥い道を作りながら二つの悪が高らかに『悪』を謳歌していた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

音海・心結
【殺し愛】アドリブ歓迎

みゆらしさを魅せて戦うのですよーっ!
頑張るのです♪
……ふっ
勝負を挑むとはよい度胸ですねぇ
受けて立つのですっ!

UC『捕食の刃』使用
攻撃力あっぷあっぷなのですよーっ!
マイくんの応援もあって、頑張っちゃうのですっ!
「ま、マイくん?
なんで、ネロも応援してるのですかっ!?」

【見切り】【スナイパー】で肉弾戦☆
見た目はかわゆいキマイラでも、
暴れたら手のつけようがないのですよっ!
【空中戦】もお手の物♪

――ネロっ!
助けられるなんて、ガラじゃないのでっ!
【催眠術】【誘惑】で相手を惑わせ、視線をみゆに
次の彼の攻撃が当たりやすいようにサポートを
「みゆの魅力の虜になぁれ♪」


ネロ・バロック
【殺し愛】アドリブ歓迎

ヒーローってガラじゃねェけどよ
腕試しに丁度良さそうな仕事じゃねェか
いっちょ暴れてやるぜ
心結、どっちが残党共を多く倒せるか競争だ

羅刹旋風で魔剣を振り回して奴等を片っ端からぶった斬る
隙のある技だからよ
【残像】【フェイント】を使って見切られないようにする

心結が攻撃受けそうになったら【武器受け】でカットに入ってやるか
マイケルもサンキューな
つか「虜になぁれ♪」ってなんだよ…とジト目で見つつ
助けられたのには感謝だ!
なんだかんだ連携して上手く戦うかもな

多少のダメージは慣れてっから覚悟の上
肉を斬らせて骨を断つ勢いで敵の懐に入り込み攻撃を食らわせる

テメェ等に相応しいのは骸の海だけだぜ!




 派手に己を魅せて戦えば、神々も猟兵を歓迎するという。
「みゆらしさを魅せて、戦うのですよーっ!」
 頑張るのです、と無邪気に音海・心結(ゆるりふわふわ・f04636)が愛らしく振舞うのを、ネロ・バロック(餓狼・f02187)が見守っていた。
 ネロ自身、ヒーローと言う単語が己に似合わないのはよく理解している。なにせ生まれが牢獄で、生まれたときから罪人だ。神に好かれているとするなら、神はずいぶん悪趣味に違いないと思っていた――が、この世界もまた、あまりに眩しく美しい。
「なンだ、腕試しに丁度よさそうな仕事みてェだな」
 いっちょ暴れてやるぜ、とネロの心に火も灯る。野心はないし、そも、世界に何かを為せることばかりを考える知恵もないのだ。しかし、彼には――その拳がある。
「心結」
「ふえ? 」
「どっちが残党共を多く斃せるか、競争だ」
 ――このどう猛な笑顔で放った一言が、神々の地獄を作り上げるのだ。
 ネロの誘いに、心結がしばらくぱちぱちと瞬きを繰り返して、「むふふ」と口から笑みをこぼす。
「勝負を挑むとはよい度胸ですねぇ」
 心結からすれば、ネロは「下」だ。
 サーヴァント――手足として彼を見ている心結にとって、少年からの提案はよい興となりそうだとする。愛らしい顔を少しだけ小悪魔に変えてやりながら、ふふんと鼻を鳴らした。
「――受けて立つのですっ! 」
「そうこねェと」
 びし、と人差し指を立てて呑んだ勝負が、いかにも彼ららしい形なのだ。『競い合う』モノがなければ、神などに報いてやる気にもならぬのだ。
 なにせ――心結の半分は、悪そのもの故に。

「ぅ――ぉおおらッッッ!! 」
 ぶうん、と空気が薙がれて。
 ネロの身の丈ほどある魔剣が破壊を繰り出すのだ! 呪われし神の頭蓋を割り、真っ赤な花を咲かせてやったら間髪入れず、次の頭を狙う。片腕で肘を胸に叩き込んでやったら、よろついた身体に右からの旋回でちょうど顎を上下に分けてやった!ぼん、と勢いづいて驚愕の顔が吹っ飛んだのなら、にいぃと悪童が獣らしく笑う。
「獣っつうのはなァ、棒なんざじゃできねェんだ」
 覚えとけ、と唸りまた己を狙った鎖をわざと左腕に巻き付けさせ、力強く鎖を握り、引く。すると、――鎖をネロに放った神が少年に吸い寄せられて、待ち構えていた剣に刺さるのだ。そうあるべきだ、とでも言うように、おそろしくスムーズに。

 こ れ ぞ 、【 羅 刹 旋 風 】!

「殺し合いにプライドも何も必要あるかよ、こーいうのは脳みそ軽いほど得だぜ」
 重い音を立てて一度、大剣を肩に乗せて戦局を見る。
 ――すっかりネロ相手には神々も恐れおののいたようで、手を出すに出せぬ、という雰囲気がありありと伝わってきた。動きは大きいが当たればすなわち一騎当千の技を振るう少年相手に臆すさまを見て鼻を鳴らしてやるのだ。
「見た目はかわゆいキマイラですが――暴れたら手の付けようがないのですよっ! 」
 視界の延長線上には、心結の姿がある。『競争』とはいえ、彼女を守護することもまた念頭にあったネロだ。
 心結の姿は愛らしいものに拍車をかけていた。頭の上には大きな獣の耳、尻には愛らしい尾。小さくふりふりと感情を表すその姿――まさに異形である。
 勝手に動くクマのぬいぐるみが彼女を応援する術式、これが【 捕 食 の 刃 】の成立だ!
「ま、マイくん? なんで、ネロも応援してるのですかっ!? 」
「おー、マイケルもサンキューな! 」
 その成立までの間を、ネロが時間稼ぎに出ている。心結が己を応援するクマに言及しても、やわらかで愛くるしいそれは――こてり、首をかしげてしまうだけで。
「んん、んんん……! まあ、いいのです! 蹴散らしちゃいますよーっ! 」
 両手に握られるのは、注射器だ。
 投げナイフの要領で弾かれるようにそれらがまず飛び出る!剣のようなボディ、その先端は長く鋭く――どすりと獣たちが身体をかばう手にまず刺さった。瞬く間にその手が溶けだす!
「ッッ、!!??? 」
 たまらず、呪詛の四つ足がぎゃああと吼えて大混乱に陥ったのだ!堕ちたとはいえ神の領域に在る彼らが、膨大な呪詛を孕んでなお崩れぬ彼らが――溶かされている!!
「あは」
 少女の可憐な笑い声が漏れる。
 クマのぬいぐるみが踊り、ファンシィな空気を絶やさぬからこそ余計に――。

「 み ゆ の 虜 に な ぁ れ ♪ 」

 なんだよそれ、とジト目でネロが視つつ。その意味を知ることになるのは、神々だった。いっそ毒々しいまでの色をした注射器が頭に、胸に、肝臓の位置に、肺に刺さればたちまち中が溶けていく!間違いなく投擲した『中身』は神々の臓腑を喰らうのだ!
 これにはたまらず、潜伏した部隊が飛び出して――二人に高速で突っ込む!
「――ネロ! 」
 珍しく鋭い声を上げた心結からの合図は、やはり注射器だ。いち早く察知したのならノールックでそれを投げる。素直にネロがそれに向けて視線を追えば、確認も十分にないまま剣を握り――左肩から右わき腹へ、跳んできた肉を両断した!!
「助けられるなんて、ガラじゃないのでっ! 」
「ありがとよ! ――よっし、んじゃあもういっちょ暴れるか」
 少女がまた、愛らしい笑顔を浮かべたままに注射器を悠々と構え。
 少年はまた、大剣を握り獣の形相で嗤う。
「教えといてやる」
 神々からの祝福を感じるが、それなどどうでもいいのだ。
 誰かに守られてばかりではいられない、強さに憧れる少女がその熱を気にしないように、戦意に燃える少年もまた吼える!

「テメェ等に相応しいのは、骸の海だけだぜッッッ!! 」

 ――熱狂的に地面から噴火が起きて、彼らの戦いを称えるのだろう。呪われた獣たちが喰いつくされるまで、ずっと!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セフィリカ・ランブレイ
アルトリウス君(f01410)じゃん。折角だし、一緒に行く?
出来るだけ派手に、なんて話だけど、どうする?
キミの場合何しても結果的にハデなことなりそうだけどさ
人のことは言えないけどさ
【フォースマシン総突撃】
じゃ、動かせる子は全部ゴー……!
大小様々、2m級から8m級まで様々な鋼鉄の身体に魔力の心臓を持つ多数のゴーレム達
装備する武器も剣や大砲などバリエーション豊富
私は後ろでゴーレムに指示出し。
前線の細かいトコ、シェル姉…人化した相棒の魔剣にお任せ!
《ま、ずっと剣でいるのも肩凝るしね》

しかしアルトリウス君のほうは派手というか無慈悲というか!
援護は……いらなさそうだね
じゃ、同じくらい派手に行きますか!


アルトリウス・セレスタイト
セフィリカ(f00633)と協働

いつもなら出会う前に始末するところだが……
派手に、だったな
見た目が地味なのも無くはない



破界で掃討
対象は戦域のオブリビオン及びその全行動
高速詠唱を『刻真』で無限加速、『再帰』で無限循環
瞬く間もなく天を覆う数の魔弾を生成
その因果を『天冥』で歪め、「目標に着弾した状態で」「途切れること無く継続して」斉射する

届く攻撃は『刻真』で終わった後へ飛ばし回避
速くとも多くとも無意味だ
見える範囲を物量で圧殺する

セフィリカの動きも『天光』で随時確認し動く邪魔にならん程度に射線を誘導
相棒、と言っていた女性か
なんならライトアップでもして彩るか
対象外へは無害な光。遠慮も要るまい




「あれー? アルトリウス君? 」
「――セフィリカか」
 セフィリカ・ランブレイ(蒼剣姫・f00633)は、エルフである。
 とある国の姫であったが、明るさと元気に満ちた娘だ。遣りたいことに一直線で、お転婆で、笑うことが好きであるから――いつも仏頂面の彼に声をかけたのやもしれぬ。
 アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は、いつもならば『すでに』仕事を終えている予定であった。ただ、この依頼が『派手に戦う』ことで神々をもてなす、というのならば話は別だ。彼には、ホスピタリティというものがまだわからない。どうしたものかと考えているが――なにせ、事が起きるまでに終わらせてしまえるほどの絶大な力を持つ存在故に、迷っていた。
「折角だし、一緒に行く? だって、出来るだけ派手にって話でしょ」
「ああ」
「キミの場合、何しても結果的にハデなことになりそうだけどさ! 」
「ああ」
「いや、私も人のこと言えないんだけどさ」
「――なあ」
 セフィリカはよくしゃべるが、アルトリウスの口数は少ない。
「見た目が、地味というのもある」
 それは、セフィリカとアルトリウスの出自の違いだ。自由に育てられた元お姫様は、今も自由であり続けているがそのために「コミュニケーション能力が高くなければ」できないことを営んでいる。機械をいじりながらも、それを売るとなれば口が必要で、城の中ではいつも誰かが話をしていたことだろう。気安い気質もあるだろうが、アルトリウスの生来孤独で――力の分離したもので在るところと比べたら、明るいものだ。
 対し、アルトリウスは「ひとのこころ」を知らぬ。よって、神の心もわからないのだ。
「ははっ、なにそれ。気にしてるの? 」
「いいや。――ただ、派手に、というのはお前のほうが似合う」
 学ばせてくれないか、と冷たい瞳が問うのならば「真面目だなぁ! 」と呵々と笑った姫がいるのだ。

 ごごん、と地面が揺れる。
 ごご、ごごご、ごごごご――小さな揺れが響いて、獣たちは熱の通る地を見た。戦乱のそれでない地の底からの震えに身を伏せさせあたりの様子をうかがう姿に、影が乗る。
 見上げれば、逆光でその正体がわからなかった。
 ――ぎゅいいい、と二つの目が光を灯し、それが無数にあることを知って機械であることを知る!ぎゃあんと吼えた狼が逃げまどうのも無理はあるまい。
「条件クリア、――よーし。そんじゃあ、派手にいきますか! 」
 鋼鉄の身体に、魔力の心臓! 鉄のゴーレムたちの行進が始まり、それは大きく大地を揺らす!!
 ――い ざ 、 【 フ ォ ー ス マ シ ン 総 突 撃 】 ! !
 ずずん、ずずん、と走る巨体が一気に獣たちとの距離を詰めれば、剣を振り回す小型のものが襲い掛かる。大きなビルほどもあるゴーレムが獣を踏み砕き、地に座せば大砲を喰らわせてやった。ばごぉん!と大きな音ののち、地面がめくりあがり炎が吹き上がる!
「――よし。いいかんじかな」
 最前線を往くのは、魔剣シェルファである。セフィリカの持つ相棒が人の身体を得て、大きさとしては半ばのゴーレムの肩に乗って指示を繰り出していた。ずっと剣だと肩も凝るからと快く引き受けた頼れる存在は、必要以上に森を害さず、それでいて必要な破壊を指示している。
「さて、アルトリウスくんは」
 ――見上げる。
 空に浮いた黒白の男からの反応を待った。

 空気中を奔る歓びの色と、熱風に神々の興奮を知らされる。はためく黒コートの己にも、神々が大きな期待をしているのだと全身に訴えられるのだ。
「成程」
 これが、派手というものである。
 ゴーレムたちがときに土を掘り起こし、獣を組み敷いて殺す。さらに、広範囲を殲滅する砲撃を与え追い立てていた。騒がしく、無機質ゆえに作業的であるのに空から見れば――整列した行進のよう。
 セフィリカの言う『相棒』の姿も視認できたところで、アルトリウスは静かに――螺旋状の針金細工を手にする。ぼう、と浮かび上がった世界の仕組みが、煌めいた。
 ぱああああと強い青の光がゴーレムたちを照らし、空を照らし、金を輝かせ――刹那、無数の魔弾!!!
 どどう、どどう、と約束された崩壊を生み出し、無数に射出されるそれに黒が打ち消されていく!
「いやいやいや、派手というか無慈悲というか!! 」
 ――その様に悲鳴を上げたのはセフィリカだった。嘆く暇もなく死んでいく神々に代わって叫んだといってもいい。

 こ れ ぞ 、【 破 界 】。
 美しく蒼い光に包まれながら、アルトリウスが仲間を『ライトアップ』する。己を照らしたところでつまらないだろう、と派手な彼らを明るくして――その意図に気付いたセフィリカが「頼もしいなあ」と笑った。
「よーし、どんどんいくよ! こうなったら、とことん! 」
 繰り広げられる破壊は必要なだけ。掘り返したところがまずかったのなら、すべてアルトリウスが『なかったことに』するまでだ。
 ――神々が沸き上がる。神の力と、技術が生み出した文明の力が侵略者たちを瓦解させるまで時間はかからなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

イリーツァ・ウーツェ
技量を向上する為、練習中だ
糧と為って貰うぞ、オブリビオン

手足尾翼は使わない
純粋に武装と技で、戦闘を行う
柩杖を主武装、蛇腹剣を副武装
相手の杖は凹凸が多い
杖で引っ掛け、返す手で打つ
攻撃魔法はUCで打ち返す
間に合わなければ相殺する

五体以上で来た場合は蛇腹剣を使用
間近で優れた使い手を観た
後は実戦で覚えるだけだ
軽減するなら、少しは長く持つだろう

足捌き、力の込め方、流し方
貴様等の棒術も、能く視せて貰う
私は学ぶ 全て寄越せ
より役に立てる様に


花剣・耀子
◎△
んん。……この世界は、やっぱりちょっと落ち着かないわね。
手助けになるなら良いのだけれども。

ともあれ。
肯定されようと観客がいようと、おしごとはおしごとだもの。
やること自体は変わらないわ。
過去にはさっさとお還り願うとしましょう。

猟兵の姿が少ない辺りを受け持ちましょう。
数と地の利を抑えられると厄介だし、大暴れをお望みと聞いたもの。
根本的に、すべてを斬って回るのが早い。
これがWIN-WINというものなのよ。あたしはくわしい。

見え辛いと言ったって、あたしを殺しにくるならあたしに当たる必要があるでしょう?
最初に届いた攻撃を咄嗟に斬り払って【《花嵐》】
手応えが軽いなら、斬り伏せられるまで続けるだけよ。




 未来の使徒たる彼らの役に立てと、そう在るべきだとされた。かの古龍が守らねばならぬ約定四つのうちひとつである。
「糧と為って貰うぞ」
 イリーツァ・ウーツェ(虚儀の竜・f14324)は――今、学ぶために此処にいた。
 己の技量を向上するためであり、「考える」ということを得るために世界を駆けている。命ぜられるままに動く存在ではなく、どう感じて、何をどう思うかを求められた竜が目の前の神々に唸った。
 戦う手段は豊富にある。しかし、今はあえてそれを使わない。
「過去にはさっさとお還り願うとしましょう」
 その隣にて、回転鋸を使うのが花剣・耀子(Tempest・f12822)だ。イリーツァは彼女にまとわりつく何らかの「糸」が見えるが、それに苦しんでいる様子がないので今は触れない。

 さて、二人が同じ場所に来たのは――一番猟兵の姿が少ない地点である。
 生命力はどこもかしこも溢れている土地とはいえど、敵の数は膨大だ。なにせ、敗北者たちの呪詛である。無限に湧き出る怨みの数は理不尽なまでに多くてしかるべきであるといえよう。
 どうしても手薄になる場所に――ふたりが来た。片や、かくあれと約定があるために。片や、『大暴れ』するために。
「根本的に、すべて斬って回るのが速いの」
「ええ、――邪魔は、致しません」
「大暴れをお望みだから、派手に立ち回るわ。これがWIN-WINというものなのよ。あたしはくわしい」
「うぃんー……? 記憶します」
 暴れることを肯定される今こそ、苦手な頭は使わなくていい。
 耀子がそう判断を下しても、元より『頭を使う』習慣のなかったイリーツァは、出来る限り彼女の動きに合わせる事を考えた。
 主武装に銅杖、蛇腹剣を副武装に構えて――戦場に出る竜がいる。地を蹴って、まず相手の獲物を視覚に入れた。
 獣たちの持つ杖は凹凸が多い。直線的な杖とそれがまずかち合って、イリーツァが棒に滑らせる。装飾にかかったのならば、返し手を繰り出し上空に弾いてやった!くるくると回転する杖を鎖が奪おうとするのなら、間髪入れず蛇腹でその身体を裂く!
 ――此処まで、『思考』通り。
「やること自体は、変わらないわ」
 派手な攻撃を魅せたイリーツァの動きは緻密で、戦うことにおいて頭を使い続けている。耀子が一歩も動かずそれを見ていた。
 ――高速で迫る黒い靄が周囲を回る。イリーツァの赤い瞳がこちらを見たが、それには一瞥で返した。問題ないのだとする。
「あたしを殺しに来るなら、あたしに触れる必要があるでしょう? 」
 その呟きには、イリーツァが眼を見開いた。
 ――突撃を仕掛けなくてもいい。待ちの姿勢を取った耀子の姿は余裕があり、今後のことを考えて無駄を極限に省いた選択だった。
 獣たちに囲われながら、高速移動の旋回が始まって黒曜が巻き上がる。髪のセットを崩されて少し、煩わしそうな顔をしてもまだ待つ。まだ、もう少し――獣たちが耀子を追い詰めたと勘違いする距離まで、じりじりとうなじを衝動で焼きながら――。
 ぴし、とひとつ。
 小石が舞って、耀子の頬をかすめていった。
    ライトスピード
「――【《花嵐》】」

 吹 き 荒 れ る は 、 白 刃 ! ! 
 機械剣から繰り出された舞いのような剣技だけで――彼女の周りを走っていた黒もやがすべて弾けとんだ!その様を、イリーツァも刮目する!!
「なんと」
 記憶せよ、とくと視よ。
 ――その舞は、死神すら屠る美しい技! たたん、とつま先を軽いステップで運んだのなら、また大きく腰をひねって剣を振る。高速で移動し続けた故に止まれぬ獣を裂き、真っ赤な花を咲かせ、瞬く間に散らせた。
 イリーツァは記憶する。
 己の頭を狙った棒術を、かの剣豪と同じ動きで防いで見せた。砕け散る命と、鉄くずの破片を見送って――彼もまた、『すべて殺す』まで踊り続ける!
 足捌き、力の籠め方、流し方を神から、そして派手に立ち回りながらも起点を変えぬ耀子の動きを真似て彼もまた、『待ち』の狩りに出た。冷静の頭で、素直に学び、柔軟に処理を繰り出す。
「通さん」
 ――耀子を己の獲物が途中で狙うのならば、容赦なく【『野分返し』】にてその鎖を弾く。
「あら」
 それも込みで動いていたが――余計な手間が省けた耀子が、弾かれた鎖を目で追って。
「ありがと」
「いえ、――もっと、見せていただけませんか」
 どすりと獣の胸に杖を突き立てて、放り投げれば耀子の白刃が迎え撃つ。
「いいわよ」
 赤が舞う。花びらとなって、やがて黒霧になって消えていく。
 ――めちゃくちゃなステップで踊りましょう。と唇が僅かに笑んだのなら、桜吹雪よりも少し鉄臭い『やりたいことをやっただけ』の軌跡が続いたのだ。神々がそれを美しい舞として、竜の男が蛇腹をしならせ剣で彩るのも歓び、――あたりに火の粉が舞うころには、黒ひとつ残らぬ。
「ありがとうございました」
「おそまつさまでした」
 恭しく、礼をする二つだけが残る世界で、地面から生命の焔が吹き上がり始めていた。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シズル・ゴッズフォート
神。……神、ですか
神前で披露するには拙く、見苦しい技とは自覚しておりますが
戦いの時と場所は選べぬのが今の世。仕方無いと言うべきでしょう

「武器/盾受け」を駆使した、防戦を中心とした個人級白兵戦術
自身が功績を上げるよりも、犠牲者の出ない全体としての勝利を重視
騎士の技を、「獣の直感」で振るう者として。そしてそのどちらでもない、ニンゲンとして。ただ、前へ

魔法よりも棒術が主になるような接近戦になればしめたもの
大楯を遮蔽に、騎士剣の代わりに騎士刀を抜刀
"月光の祝福"を施し、それを月と見做してUCを起動
修羅の性が騒ぐのをまだその時ではないと宥めながら、「怪力」と持てる技術の全てで以て八つに裂くとしましょう


アカネ・リアーブル
連携アドリブ歓迎

魅せる戦い
ならば、アカネは舞を舞いましょう
古来より舞は神々に奉納されてきたもの
この地に住まう神々にも必ず伝わるはずです

舞薙刀を手にまずは一礼
敬意をしめしつついざ!
「ダンス」「歌唱」「2回攻撃」「衝撃波」で攻撃
敵の攻撃は踊りながら「見切り」「カウンター」で迎え撃ちます
巨大な獣のスピードに呼吸を合わせてステップを加速
獣の動きも舞に取り入れ、共演者として舞いましょう

潜伏部隊の奇襲は「第六感」で感知し「スライディング」で回避
すかさず「なぎ払い」
敵を一箇所に追い込み【茜花乱舞】
一息に叩きます

この地を再興するのはこの地に住まう神々
アカネにできるのはその露払いだけです
戦闘が終われば優雅に一礼




 神を前に戦えと言われれば。
「――神前に披露するには拙く、お見苦しい技とは自覚しておりますが」
 シズル・ゴッズフォート(Cirsium・f05505)は獣である。
 己の獣性を隠す習慣があったのは、ひとえに「騎士で在れ」という願いが首輪になっていたからだ。祝福を受けたときに牙を抜かれ、言い表せぬ物足りなさを抱きながら戦い続ける彼女は――ようやく、己の獣性を認めて向き合うまでに至ったばかりであった。
 二十年の確執は急にほどけるようなものではない。己の獣性が暴れたがるのを必死で抱きしめてやりながらも、今は表向き冷静に息をつく。
「魅せる戦い、ですか」
 アカネ・リアーブル(とびはねうさぎ・f05355)にはその心得があるというから、シズルは少女についてきたのだ。
「ならば、舞いましょう! 」
「ま、舞い? 」
 ――戦の場すら今は選べぬ時代である。
 人間同士で争っても、まさか世界が人知れず滅びに侵されているなど猟兵でない限り悟れまい。それだけ、シズルやアカネなどの猟兵の戦場というのは選んでいられないのだ。
「ええ! 古来より舞は神々に奉納されるものです! 」
 ――剣舞、というのがあるのは理解しているが。
 アカネが意気揚々と己の得物を取り出し、戦いながら舞う準備を済ませるのに対して、シズルといえばそこまで器用ではないのだ。
「かしこまりました。しかし、私はこの通り盾と剣のみで戦うことしか知りません。……お恥ずかしながら、エスコートをお願いしても? 」
 わからぬのなら、わかる先任に頼るのがよい。元より、己の功績をどうこうしたいのではなく、犠牲者の無い戦いが出来ればシズルの理想だ。頭を下げて願い出てみれば、あっけらかんと笑ったアカネが「はい! お任せを! 」と快くうなずく。
 ――神々の期待が、周囲に満ちていて。シズルの獣性はすこしばかり落ち着かないのだった。

 まず、舞のために手にした薙刀を手に一礼を繰り出すアカネがいた。
 呪われし神々とて、元は神である。獣に堕ちたとてこの場に満ちる神の権威とそれは大きく異ならない。ふるまうべきは等しく敬意であるとした。獣たちも、巫女たる彼女の振る舞いに呪詛を満ちさせながらも注視する。――この惹きつけるちからこそ、舞姫のものであるとシズルも理解した。
 ならば、とその視線を遮るように盾を置く。アカネが恭しく頭を下げた前に、どすんと質量が下りた。
「よろしいですか」
「ええ」
 ――さあ、いざ、尋常に!
 あかねいろを求めた獣たちが手を伸ばし、巫女の魂を求むるならば。まず、その数多の手を一歩目で薙ぎ払ったのがシズルだ!前へ進むことしか知らぬ足をかかとではなく、つま先から地面につけたのは「舞う」彼女からの教えである。軽やかにあれ、と――聴いたから、盾で押し込んで、受け流した杖がひしゃげたのを眼に入れた。大盾に隠れその刀身を視る。
 うつくしい月のような銀色に――己の獣を、赦した。
「うぅう、う、ぉ」
 覚醒、――【 神 塞 流 陸 殲 術   堅 刃 の 型 ・ 月 光 衝 】!!!
「ぉおおおおおおおお、おおおお―――ッッッ!!! 」
 叫ぶ己の魂を頭の奥で繋ぎとめる。まだ修羅になり切るには早すぎるのだ、と理性がつなぎとめて、己のいのちがじりじりと削れる。しかし、無様を乙女の前で晒すのならば命くらい少々削ってもいい。シズルが歯ぐきをむき出しにして吼えたのなら、素早く刀で獣の腕を両断した!
 悲鳴めいた鳴き声のあと、追撃のアカネである!
「はぁ、あああああッッッ!!! 」
 ステップの数の多さで、まずシズルの先をとった。シズルは彼女の足元と、その動きに注視する。「『あかねさす 日の暮れゆけば』」
 歌いながら、舞う姿だった。
 シズルに歌唱の心得は無くとも、そのリズムを聞き取る耳はある。
 大きな獣がアカネの胴体を狙っても、それにひたりと掌を当てて躱す姿があり、薙刀の柄で一度叩き落とせば衝撃波が生まれて獣が横転、さらにとどめと言わんばかりに勢いに乗ったアカネの身体が宙で二回転してその首を払い落した。
「『すべをなみ 千たび嘆きて』」
 遅れてはならぬ、とシズルがその唄に乗る。
 ――共演者が増えれば、アカネがこころなしか嬉しそうに歌うのだ。
 シズルがリズムと歌声に合わせて、獣の乱れた歩幅に殉じて足を切り落とす。崩れた体を盾で打ち上げれば、輪切りにしてみせるアカネがちょうど棒高跳びのようにして宙を舞った。そのまま、背に薙刀を通せばくるりくるりと回転を繰り返し、悪戯に切れ込みを果たす。無数に傷を作らされた獣たちが膝を吐けば、八つ裂きにする――にんげんが待っていた。
 途切れぬ、ああ、唄が終わらぬ限り続く饗宴に視える。
 シズルが夢中で共に踊るのを、アカネも嬉しく思う。さあ、と仕上げの一節に入れば、ひたりと足を止めた。
「――『恋ひつつぞ居る』」
 ふるべ、――ゆらゆらと、ふるべ。
 己らにできるのは露払いのみで、この地を再興するのは神々だ。どうか、彼らの糧になれと――アカネが恭しく礼をしたのなら咲き乱れるは、【茜 花 乱 舞 】!!
 茜色の花びらが世界を覆って、黒をすべて突き刺すさまを見送る。シズルもまた、茜と同じ位置で恭しく、それでいて人間性を保ったまま祈るように頭を下げた。
 優雅な一礼と共にふたりを茜色の花が隠す。神々が湧き上がり、歓声は地響きとなって地に満ちたのなら山からの噴火があった。燃え盛る生命の火の粉が舞えば黄金の実がまた増え、命の芽吹きがある。
 うまくいきましたね、と巫女が笑ったのを、――騎士もまた、「ええ」と短く返して息吹に浸るのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミツハ・カイナ

他猟兵との連携も歓迎
連携できる場合はサポート優先に動く

神前武闘会なんて面白そうなのが見れるならその前に一仕事済ませねぇとな
この場に彩りを添えてやるさ

【先制攻撃】でUC発動
【早業】で『雷火』を振るい変身する前に絡め取る
武器に仕込んだ【毒使い】での毒付与も合わせて行動阻害を第一に
大暴れされないうちに踊りは終わらせようぜ
そして、この地にやってくるのは新たな夜明けだよ
『七彩絵具』から夜明けの色を作り出して敵に向かって放つ
夜明けの空、そして太陽…炎の【属性攻撃】【アート】で攻撃を
燃え盛る炎の熱で燃やし尽くしてやろうじゃないか


ジャック・スペード
◎△

悉く神に愛されなかった当機だが
必要とされているのなら、此の身を存分に使い潰そう
それに、此処はもともと神聖な地だ
其れを穢す獣達には仕置きをしなければ

黒き機翼を展開し、勢いよく空を駆け
魔獣のスピードに喰らい付いてみせながら
炎纏う涙淵ですれ違いざま斬り掛かったり
刀を思い切り振い広範囲に炎の衝撃波を飛ばそう
囲まれた仲間が居ればリボルバーで援護射撃
マヒの弾丸を乱れ撃ちして牽制を

偉大なる存在、此の地に根を張る神々たちよ
此れが未来を紡ぐ者たちの雄姿だ
――さあ、存分に照覧するが良い

俺はヒトの手で造られた機械なので
神という存在を意識したことは無いが
彼らが此のヒーローショーの観客だというのなら、手は抜かないさ


桜雨・カイ

…正直、自分はあまり「魅せる」事は慣れていませんが、
それでもやれることをやりましょう

どこかに潜んでいるようですが、緑が枯れている所などを注意して探してみます。

この場所を死によって塗り替えようとするなら、
さらに光で上書きしましょう
相手の攻撃を【見切り】で躱しつつ【援の腕】発動
『この先の景色を見てみませんか?』

命はきれいですよ。
本来は神々達に見せるはずのものですが、
それでも、オブリビオン達もわずかでも見えてくれたら…
私の浄化の光も少しでもきれいだなと思ってくれれば良いのですが。

彼らの時を進められるように




 猟兵同士の戦いが繰り広げられる事が許される空間など、そうそう簡単にお目にかかれるものでない。なぜならば、未来を護る使徒は多いほうがいいのだ――殺人鬼であろうが、ヒーローであろうがこの役割においては何一つ価値が変わらない。
「さぁ、一仕事済ませねぇとな」
 ミツハ・カイナ(空憬・f19350)は己の羽をはためかせながら、戦局を見る。
 呪詛の数は瞬く間に減って、ミツハが視る限りは猟兵の勝利が約束されたような勢いだった。派手に周囲で火花が上がり、時にはプロミネンスが天に昇る龍が如く立ち上れば大地に活気が満ちていく。創作者としてもこの光景はよい要素だらけで、まさに芸術的と言えるものばかりだ。金色に輝く木の実が彼の美しい橙の瞳を照らす。
「しかし、そうだな――うん、もうちょっと色がほしいか」
 極彩ばかりが、眼についてしまうのだ。己の両手を突き出して、指でフレームを作る。
 色彩には陰影が必要だ。昏いところがあって、はじめて明るいところの重みが出る。これでは、まるで色遣いが幼稚なままだと――彼がきらびやかな世界に必要な色を探った。
「黒っつうのは、一番強い色だ。あまり使うのはおすすめしないぜ」
 獣たちが、その枠にすら入り込んでくる。
 黒いそれらが景色を塗りつぶしていく様に眉根を寄せて、芸術家は口角を持ち上げて笑うのだ。美しい世界に必要な色と、必要のない色を判別した青年はささやかな羽をゆっくり広げて『黒』に呼びかける。
「まあ、――いっとう、いい黒で染めなおしてやるよ」

 ことごとく、神と言うものには愛されなかった無機物である。
 ジャック・スペード(J♠・f16475)はダークヒーローだ。巷では、『スペードのジャック』と呼ばれる彼の因果はまるで誰にも祝福されない孤独なものである。
 神に愛されぬ代わりに、人に愛されてきた彼が得たのが心であった。その心を大事に胸へ、そしてシステムに刻みながら今動く彼が求められるというのならば、『助けてくれもしなかった』神に都合よく必要とされても真摯に答えるのがこの機械である。
「――仕置きをしなくてはな」
 ミツハの呼びかけに答えて、滑空!!茂みから飛び出して緑を散らす黒こそ、一級品!!塗り残しすらないモノクロの正義が現れれば、獣たちは気配のなかった機械に慄いた。無理もあるまい、生き物であるミツハのにおいは悟れども、ジャックのような『機械』のにおいも、生命も判別できないのが獣だ。
 低く宙を駆ければ、ミツハを置き去りに飛び出す。ぶわりと前髪をかきあげられてもなお、ミツハも眼を少し細めた程度でにやりと笑って見せた。
 逃げ出す魔獣の速度もダテでない。地面から弾くようにして飛び上がったそれに、鉄がぶつからないのならば――炎を纏った絢爛たる天竺葵が逃げることを許さぬ!すれ違いざまにその胴体を真っ二つに裂けば、速度に視線が追いつけぬ一体の喉に刀を突き立て、素早く抜いた!びしゃりとあたりに散った朱を気にもしない。黒の身体に付着したところで、また飛べば速度と共に場に流れ落ちるだけだ。
「さあ、存分に――照覧するがいい」
 刮 目 せ よ !
   チ ェ ロ ・ ス タ ー ロ
 【 天 翔 る 黒 き 機 翼 】はここに在る!!
 ごうごうと背中から噴き出る炎熱を纏い、光と同等に至るほどの速さで絢爛を振るえば、炎熱の衝撃波!!どうどうどう、と炎の海を作り出し、悪しき心まで燃やし尽くす。ミツハに向かっていく獣がいれば、それを容赦なく麻痺弾をリボルバーで喰らわせた!
 ――観客には、ちょうどよいスリルと絶頂が必要だ。
「いいね。新たな夜明けにはちょうどいい」
 ミツハがその色に喜んだ。燃える地面、溶けだす黒と、焼かれる青い空を見上げて続いての『道具』に指を鳴らす。
「頼んだぜ。大暴れされないうちに、踊りは終わらせたい」
「――承知」
 
 獣たちには、ミツハの気配しかわからないのだ。
 稼働音が聞こえても、それはミツハの持っている何かだと思う。間違いではない、彼が司令塔だ。しかし、――己ら陽動部隊の壊滅が繰り広げる中、思うのは潜伏部隊のありかだ。元よりこの地に忍ばせておいた同士は何処に行った? 獣たちが仲間を求めて吠えたてても其処には焔獄が広がるばかりで、応答はない。
 きり、きり、と糸が繰る。
 緑が枯れている場所を狙っていた。潜んでいたとて、その性質までは隠せまいと桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)が睨む。事実、その通り――獣たちの姿はそこに在った。
 命は美しいもので、尊い。それを踏みにじってしまうのならば『ここに居たい』と思うても消してやるのが未来のならいだ。
「白もよい色ですよ」
 ――この先の景色を、視てみませんか。
 人を守りたいと思った彼の仕組みは、ヤドリガミである。本来の姿である人形を繰りながら、それが地面に伏せていた獣たちに両手を差し出した。獣は、その音に気付いて顔を上げてしまう。
 この光を神々に見せてやるという決意のほうが大きかったし、「神」と呼ばれる超常の一部である己が守る『未来』を――『過去』である彼らにも、少しだけ美しいものだと思ってほしかったのだ。
 それは、情けで在り。
 ――カイによる【援の腕】はどこまでも求められる人形らしく、何人にも優しい。
 ぱあ、と光った浄化の光に、たちまち別の色が混じる。それは、白いカイの破魔にあてられてどんどんパステルカラーに満ちた火の粉たちだ。
 どこからそそがれたのか、と蒼の瞳を出所に向ければ、蛇腹剣で鎖を凌いだミツハが服の袖より『絵具』を飛ばした痕跡が見える――。
「これは」
「色っつうのは、不思議なもんだろ。光の当たり方で、薄くもなったり濃くもなったりする」
 七色が混じって、カイの光を淡い極彩が包んだ。
  ラストダンス
「【廻 拿】だ。――さあ、弾けろ! 」
 からっと笑った青年の笑みに合わせて、ジャックもまた大きく炎熱を振るう。
 ぶわりと真っ赤な情熱が空を覆ったのなら、――カイもまた、己の手に宿る光を爆ぜさせるのだ。
「あなたたちの時が、進みますように」

 黒を。
 淡い七色を孕んだ光が球体となって、飲み込んで――飛び散った。
 空気が収縮、刹那、爆風!どどうと巻き起こった暴風と共に世界が豊かに色づいていく!
「ヒーローショーには紙吹雪が不可欠だな」
「だろ。――うん、いー夜明け」
 煌々と空を照らす白熱が、オーロラめいた光を神々に見せつけている。
 カイがそれを見上げようとして、人間の身体には眩しすぎて目を細めた。神々の喜びは、ヤドリガミである彼が一番よく理解できる。
 ――美しい世界だ。
 自然と唇が美しい弧を描いたのが、きっと彼らが齎した勝利の成果であろう。ジャックが、己のサーモグラフでは検知できない存在の高まりをセンサー越しに知る。『お客様』の歓びを確かに観測したのなら、がしょりと肩のパーツを一度回してその場に留まった。
「偉大なる存在、此の地に根を張る神々たちよ」
             こえ
 ――未来を愛す、俺たちの生命が届いたか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鸙野・灰二
【絶刀】夕立/f14904

“派手に”、“魅せる” ッてのはよく分からんが――
要は神が滾る程、よくよく打ち合えば良いンだろう。
此迄の戦場と変わらんな。任された。

俺は前に出て攻撃に徹しよう。
《先制攻撃》先ずは一太刀
技を仕掛けて来る前に浴びせて倒す。
其処から先は仕掛けの上だ
攻撃を軽減するのなら地雷の上に誘い込み、苦無の床に切り倒す。
整えられた舞台、存分に使わせて貰おう
敵が閃光弾で目を眩ませた刹那が好機
《早業》【剣刃一閃】
纏う黒霧、影の鎖ごと《破魔》の刃で断ち切ッて遣る。

前哨戦のつもりだッたがこうも戦い易いと行き過ぎる。
影の見事な仕事ぶり、神々も眼を見張るだろうよ。


矢来・夕立
【絶刀】ヒバリさん/f15821

そう、“派手に”。
ですから主役はひとりに絞ります。
異郷の神が一柱…と言えばたいそう見栄えがよく、画面の収まりも上々です。
任せました。

こちらは影回しに徹します。
《闇に紛れ》込ませる形で罠を仕掛ける。
紙垂のワイヤー。紙風船の閃光弾。上向きに敷設した苦無。紙箱の地雷。
敵を追い込んだり、誘い込んだり、
増え過ぎたら《だまし討ち》で減らす。

札の数は多くとも、目的はひとつだけ。
ヒバリさんの戦いやすい配置、戦況を維持すること。
そうすれば現地のカミサマの目にも綺麗に映るんじゃないでしょうか。
役者が良いのは見りゃ分かるでしょう。
すると次は裏方の腕前で見栄えに差が出るんですよ。
ね。





「さァさァ、お立合い」
 美しい刀で在った。
 その刀は長く『大切に』されていた。
 刀は何かを切ればその油で痛み、刃こぼれを起こし『生まれたままの姿』を守れぬ。
 人は彼を身勝手に閉じ込めて、その美しさを眺め続けた結果、勝手に死んだのだ。故、主を持たぬ今は箱から飛び出しこうして刀を振るう。刀らしくある在り方を今はその身で貫き通し、戦場を渡り歩き続けるのだ。
 踏み込んだ。飛び出す棒を縦に叩き斬る。派手過ぎぬ動きをつとめたその後、直角に刀の軌跡を折るようにして太刀筋は変容する。ぞぶりと黒の腹に白銀の太刀が入り込んだなら、ざっぱりと上下を切り離した。腰の骨とその繋がりすら折り切ってなお刀身は欠け一つ見当たらぬ!
「さア此奴らと断ち合ッて呉れ、俺と死合ッて呉れ――」
 まさに、名刀。まさに、――殺しの為に在る其れ。
 灰色の髪を振り乱し、鋭く刃を突き立てる。肩に刺されば手首をひねり、その傷口を手ひどく壊した。悶える身体を鋭くけたぐり、宙に浮いた身体を真っ二つに切り開く!ぼどど、と重い質量が地に堕ちた。
 其の刀、銘は『鸙野・灰二(宿り我身・f15821)』!
 ただ刀として斬ることしか知らぬ男の【剣刃一閃】は何よりも純であり、美しいほど破壊的なひと時を生み出す!!
「前哨戦、のつもりだッたが」
 存外、盛り上がってしまうのだ。
 己の『影』が此度も優秀すぎる故に、灰二は己自身を存分に振るえる。鎖が飛び出すのなら刀で受けてみせ、くるりと絡めとって巨体で獣ごと投げた!刀で戦う己に飛び道具で挑むのは正解であろうと踏んでの予期した動きは本能的ながら「計画的」である。ためらいなく、その場所を視ることないまま地面に叩きつければ――ばうん!と地面が爆ぜるのだ!!
「ほォ。これが」
 派手に戦え、と言われて。
 魅せろ、と言われても、ちっとも灰二には響かぬ。
 この刀は神に使えるようなそれでもなければ、ただの刀である。斬らねば意味のない研ぎ澄まされた鉄は、成功条件とされるそれの理解が難しかった。どういうことか、考えるのも束の間――「神がたぎるほど」戦えばいいとする。
 ――よくよく打ち合えばいいンだろう。
 影に問うた。
 ――ええ。そう、『派手』に。だから、主役はひとりに絞ります。
 影は、形のよい薄い唇に黒い人差し指をたてる。己の存在を隠すように、その「ひとつ」が刀そのものをさすのを暗示させながら――赤い瞳で灰を見た。
 人に愛され人が生んだとて、今日まで折れぬ刀は『ヤドリガミ』。異郷の神がひとつ派手に大立ち回りを繰り出すさまは、さぞ画になると忍んで消えた。灰二には、その影が言い出す事がよくわからぬが、為ればその通りに遣るまでだとする。
 ――己が何か考えるよりも、かの忍は『工作』がうまいのだ。
 灰二の攻撃を避ければ、その足元に潜んだ上向きの苦無が針地獄宜しく転んだ獣をつらぬく。もがけば藻掻くほど傷の深くなる痛みに叫ぶ獣は、すぱんと首が前にふっとんで沈黙した。
 血と油でぬめる刀身を人指と親指でついと拭く。ぱたたと地に散った花びらに興味もなく、また灰二は『影』を連れて刀を振るった!
「せェ、イ――」
 息を吸いながら、その力を込めて――飛び出す鎖を切り払わんとするなら、合図のように眼前に閃光が瞬く。

「 や゛ ァ゛ ッ ッ ッ ! !  」

 獣たちの目を焼いた灯を突っ切るように飛び出た真空刃は、まさに 神 業 ! ! 
吼えた刀の神が放つ気迫と共に、カアッと空気が裂けて黒が散った。
 地面が太刀の形に割れ、砕かれ――影が敷いた『地雷』もろとも起爆、起爆、起爆!!大地震にも似た揺れをとどろかせてやったのなら、舞い散る砂埃が地面に落つ頃には、灰二とその傍らに、『影』の少年が居た。『掘り当てた』神々の熱量がごわりと地面から沸いて、どどう、どう、と生命の火を噴かせるのを見上げる。
「こうも戦い易いと、行き過ぎる。」
「善いじゃありませんか。役者が良かったのですから、当然の結果ですよ」
 きゅる、と余ったワイヤーを学生服の袖が吸う。素早く戻った己の手札を確かめるように片腕を抱く細身が気だるげに空を見た。
「ヒバリさんが綺麗に映って何よりです。『映え』って神様も好きなんですね」
 ちょっと俗っぽくて、――なんだか身近なものだ。
 この世界だけのものかもしれませんがと興味も半ばにこぼす影が、灰二が歩めばそれについていくように動く。まるで、そうあるべきだとされたように縮まらぬ差を弁えて歩き出すのだ。
「なアに、見事な仕事ぶりに神々が見張ったんだろうさ」
 そうに違いないだろう、――矢来・夕立(影・f14904)。
 名を呼ばれた少年が、一度赤で灰を追って直ぐ仕事の景色に戻る。【紙技・文捕】の在庫を頭の中で数えながら、抑揚の少ない声で返したのだ。
 灰二がこの夕立を認めるのは、一度成立したモノにこの忍がその性質故に忠義を尽くすと知っているのもあり、共に歩んできた戦場の数で得た言葉で説明のできない時間がある。そして、己が戦い易いように夕立が常にどこもかしこにも潜む獣を光と音で追い立てていたのを――気付いているから、彼に『裏』を任せているのだ。
 夕立もまた、彼の希望通りに動く。己で目立つことなど最初から勘定に入れない彼は、役者の為に『照明』も『音響』も『背景美術』も何もかもを持ち寄るすべてで最高級に演出して、その『カット』を観客に届けてみせた。映えだの派手だの、そんなものを灰二が理解できないなど悟れるからこそ、――あくまで画面を意識した働きをしただけのことである。神に褒められたとて、当然の結果でありすぎて歓びすら薄い。退屈そうに指先で苦無を弄んで、次の演出を考えていた。

「満足したなら、加護でもくれやしませんかね。宝くじ当たる、とか」
「バチが当たるぞ」
「上等ですよ」
                         ダ サ イ
 己らの上を飛び交う火の鳥のような紅炎には――『余計な演出だ』な、と呆れた赤が一瞥したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

霧島・ニュイ
クロトさん/f00472

セクシーなおねーさんかと思ったらおにーさんだったよー>△<
つまり派手にぶちまかせるって事だよねー!

速さじゃ負けないよ?
間合いに入られないように常に距離を遠くし
黒の鎖に捕まらないよう逃げる
近づかれた場合は傍らの人に教えて貰った通り、よく見て見切る
視線、腕の動きや脚の踏み込みなどを決め手に

おー、流石クロトさん
素早いやー先生と呼びたいや、なんて胸中

姿を隠され、クロトさんを巻き込まない時が外せないチャンス
UC
敵の注意の向きを読み、注意が行ってない場所から命中率に重きを置いた不意打ちの一発を
一斉発射と乱れ打ちと2回攻撃を使い乱射
スナイパー使い、命中率を上げ、何より命中に重きを置く


クロト・ラトキエ
ニュイ(f12029)と。

派手に、と…。
密やかたるが暗器使い。
…然れど。オーダーなれば熟しますとも。
可愛い友人も一緒ですしね♪

黒い霧は当然に。
視線、武器や腕の挙動に、重心、踏み込み…
攻撃、UCに繋がるあらゆるを視、
見切り得た情報全てを以て回避を図り。

UCにて纏うは、お好みらしき炎の魔力。
攻撃力に換え、敵が遠方なら鋼糸にて斬撃狙い。
但し。もし鎖が掛かってしまったなら
…僕、縛られるのって嫌いなんですよね。
力の限り引き寄せ、UC使用したまま体術で打倒を。

暗器が得手とて一傭兵。
徒手に通じぬ道理が何処に?

尚。立ち位置は彼の不意打ちに繋げるべく、極力ニュイを隠す様。
派手なの、お見舞いしちゃってくださいませ




 女性ならともかく、色気のある男子だというのならば。
「つまり派手にぶちかませるって事だよねー! 」
 明朗快活、かつ思考はシンプルに。己めがけて飛び出した獣の大きさは、その身の倍ほどはあろうか!どどうと鋭く飛んだ狼の動きをよく見て――少年もまた鋭く跳んだ。
「速さじゃ負けないよー? 」
 なにせ、この彼を作る半分は忌々しき吸血鬼の血が流れるのだ。霧島・ニュイ(霧雲・f12029)には自慢の脚がある。教えられたのだ、――『よく視るように』と。
 逃げ回るニュイと発展途上の身体をめがけて呪詛が四つ足で追い立てる。
 駆けて跳ねてを繰り返し、でこぼことした地形を攻略しながらその特性を知るのだ。脚の踏み込みはほとんどが右からで、故に突き出される棒は左から鋭く飛び出す。勢いを見るのではなくて、細かい動きが何を示すのかに注視すれば世界は思ったよりも『遅く』通り過ぎる。
 こざかしい、と黒の鎖が伸びるのなら、それには決して捕まらぬと鋭く地面に転がり止まらず起き上がって走った。樹々に絡まる鎖がそれを腐らせ、ニュイの征く手を阻まんと堕ちる!
「クロトさんっ、連れてきたよー! 」

 その男は、暗器使いである。
 なにせ、数々の戦場を渡り歩いてきた男だ。彼が味方をすれば必ず勝利が齎され、彼こそが勝利にこだわるから周りも導かれる。派手に暴れる故ではない、常に頭を使い、相手を見て、戦局を判断するやや器用すぎる脳が由来の特性がそうさせたのだ。
「やれやれ」
 クロト・ラトキエ(TTX・f00472)。彼こそ、――戦場のプロフェッショナルである。
 愛らしい振る舞いの中にしたたかさを孕んだ己の友が、己に対する期待の視線を送りながら影を連れてきていた。その翻弄ぶり、見事なものでこれにはクロトも戦場におりながら和やかになってしまうものだ。
 ニュイが己の「入れ知恵」通りに走り、相手の動きを見てどこも損失のないまま無邪気に走ってきたのを認めて緩く笑う。
「可愛い友人の協力もいただいたし、――オーダーなれば熟しましょうか」
 その期待には、応えねばなるまいて。
 ――暗器使いであれど、傭兵であれど、魔術の心得がないという道理はない。
 ちりりとあたりに神の炎以外の熱量が爆ぜ始めて、ニュイを追いかけて警戒度を高めた獣らがクロトに鎖を投げる。その動きも、獣心も、踏み込みもすべて見切ったうえで予測したように片腕をクロトが「くれてやった」!
 縛られた目標とするひとの身体を見送って、転がり込むように地面にたどり着くニュイが振り返る!
「クロトさ、――」
「大丈夫ですよ」
 その声に焦りも何もなければ、痛みひとつ感じていないようで。
 その揺るがなさ、そして冷静さから生み出される素早い『処理』にやはりニュイが感動してしまう。こうなりたいと思って、今日ここについてきたのだ。見逃すまいと眼鏡の向こうで緑が待つ。
「――僕」
 ほつり、と。
 口からクロトが言葉を零せば、それが火種となって彼の周囲から熱が沸く。

「縛られるのって、嫌いなんですよね」

 言葉の意味も分からぬ間に!
 ぐい、と強く獣を引き寄せればその背より爆炎!【トリニティ・エンハンス】で湧き踊るクロトの炎は獣たちを焼き焦がす!引き寄せられた獣は勢いづいてクロトにつかみかかろうとするものの、それを膝で蹴り飛ばして腰を折ってみせるのだ!鋼糸を左腕から飛び出させれば、しゅるりと腐りかけた樹に巻き付きあっという間に「まき」にする!
 勝つためなら命ある限り、手段は択ばない。
「お行儀が悪いですかね。結構」
 ――神にはそのような心得などないだろうと踏む。戦わずして戦に勝てるような彼らには、己らの『やりかた』は理解できまいとクロトが確信したのだ!
「派手にお見舞いしちゃいましょう。ニュイ」
 木が倒れれば炎が巻き上がり、あっという間に周囲を赤に染めた。
 獣たちは焦げる匂いでどこにクロトがいるのかも分からぬ。すっかり渦めいた地獄に閉じ込められて周囲をさまようばかりだった。狭い世界にて時に背中や棒をこすり合わせているさまを――スナイパーたる射手が視る。
 己の目標であるクロトが言ったのだ。
 炎の中にクロトはいない。ニュイの一撃を待って『くれて』いた。――静かに、はしゃがずに、確認するように獣を見る。
 利き足、重心の位置、動き、頭の位置、心臓の座標を今一度炎に身を潜めながら肌の産毛を焼きつつニュイが狙った。

「――全部、当たれぇっ!! 」

 【 弾 丸 乱 舞 】 ! ! ! 
 ばう、ばう、ばう、と跳んだ鉛玉がMirageから繰り出された! 間もなく命中――目標が逃げぬように狙った骨盤、太腿、腰に空洞! さらに追撃の連射である!
 どどどど、と全身をゆすられながら躊躇いなく銃撃! 銃撃! 銃撃!!
 湧き上がった炎すらも貫くような確かな狙いが炸裂し、――目標完全沈黙!!

「うん、お見事です! 」
 神々が喜ぶだろうと、そのゆかりである炎の魔術を使ったクロトが腕を持ち上げれば呼応して火の海もまた、竜巻のように天に昇る。
 ――お見事、なんて。
 こんなことをやってみせて、褒められるのも。とニュイが照れくさそうに頭を少しかいて「えへへ」と笑った。
「神様、喜んでくれたかな? 」
「大喜びでしょうとも。ほら――」
 ぼごり、と二人の足元で溶岩が動いたらそれは地表には漏れない。代わりに、木の中を通って金色の果実を二人の上にほとほと落としていった。
 それが食べられるのかどうかよりも、まるで恩恵があることを現わすような超常に「へー」とニュイが感嘆する。
「そっか、なら、よかったぁ」
 『先生』と呼びたくなる人に手伝ってもらって得た成果が、あまりにも輝かしくて。
 青年が嬉しそうに目を細めたのなら、きっと傭兵である男だって、――少しばかり、救われただろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

コノハ・ライゼ
つまり接待みたいなモン?おっけー、そゆーの得意ー

なんかこう、もっと美しく喰らえないモノかしらね?
腐ってゆくのを見ては溜息ひとつ
まあちょいと潜んでるのをあぶり出しトコか

地を這わせ【虹渡】を暗がりへ放つヨ
足元から塗り替え影を浮かばせたら『2回攻撃』で敵影に帯絡めてく

反撃は『第六感』併せ『見切り』、『残像』置き避けるわ
大きい分『だまし討ち』での『カウンター』も入れやすいってネ
負傷は気にしない、至近から穿つ虹の帯で『傷口をえぐって』『生命力吸収』するカラ

カミサマナンて隣歩いてるよなご時世、オレにとっちゃ割とどうでもイイけれど
魅せろと言うなら喜んでそうするヨ、だってお代はアチラサンからイタダキマシタから


ヴィクティム・ウィンターミュート


邪魔だ
一匹残らず、死んでもらうぜ
慈悲は与えない。まともな死すらも与えてやらない
何もかもを奪われつくして、死に絶えろ
お前らが相手にしてるのは誰か、教えてやるよ

Forbiddenストレージ開放──『Hyena』
どれだけ強かろうが関係ない…奪ってしまえば同じことだ
影武装も、磨かれた棒術も、魔法もだ
差し出せよ、この俺に

強化された防御力に加え、戦闘能力を奪いながら棒術や魔法を腕で受け止める
同時に、そこから技術や理論を根こそぎ奪い取る
奪い取った力は遠慮なく行使させてもらうよ
自前のナイフ、クロスボウ、ショットガンに加えて魔法や棒術、影武装
この多彩な攻め手、お前たちに全て見切れるか?
命で以て試してみろよ




「つまりこれってェ、接待みたいなモン? 」
 そういうのは、大得意だ。
 コノハ・ライゼ(空々・f03130)が日頃より準ずるのは接客業である。
 猟兵すらもご用達、見目の美しい彼が経営する其処には、どんな客もやってきた。偉そうな客もいれば、気品のある丁寧な上役だって訪れた日々もある。なにせ、普段より人をもてなして――化かして――いるからこそ、この神々に「そうする」のは心得があった。人間相手でなくとも、もはや『隠しきる』妖狐故に今この瞬間だって、どこにも本物のライゼが持つ姿は無い。
「それにしても、さァ」
 なかなかに興奮しきっている空気から抜けて、ライゼが潜む森はうっそうとした空気と冷たい呪詛で空気すら凍り付いて――張り詰められていた。息を吸えば肺から冷えるような感覚がして、自然と薄く、小さく、長く、息を吐く。体温を無駄に奪われてもなるまいと思って、獣は動くことだけはやめなかった。ぐにょりと腐った地面を踏み歩きながら、故に己の足音が消える。
「……もっと美しく喰らえないモノかしらね? 」
 この地を『食った』わりに、喰い方が雑だ。
 ――ライゼから、黒い獣たちへの評価は厳しいものである。なにせ、彼も『喰らう』と言うことには非常に執着があるのだ。
 生命を喰う喜びの良さを知っているからこそ、このような『食い散らかし』はどうもマナーを感じられない。獣は所詮、そういうところが獣なのだと形のいい瞳を細めて結論付けた。
「お手本、見せてあげよッか」
 男の割に細く、薄い手が宙にぬうっと浮かび上がる。
 ――七色が、光った。

「邪魔だ」
 冷えた空気は、少年の心を『冬』へと連れていく。
 この程度の『冬』など本物に比べればどうということはない――飛び出した獣の胴体を、ナイフが裂いた。
 どちゃ、と聴きがたい音が響いても、少年は凍てついた心のままに前を行く。きいいと義手の稼働音がするのなら、一度腕を叩いてそれを止めさせる。
 生命力の奪われた森を狙ったのは、それこそ、彼の領域であるからだ。
「一匹残らず、死に絶えろ」
 『奪いかた』がなってない。この地に入って彼が真っ先に許せなかったのは、先に歩んだ狐と同じである。
 ヴィクティム・ウィンターミュート(End of Winter・f01172)は何処までも昏い蒼の瞳を細めて、呪詛から『すべてを奪う』。神がこの光景をどう思うかなどは、考えてもいない。嫌うのなら嫌ってくれとすら思っていた。
 ――今の彼は、『強奪の反逆者』である。
 恐るべき脅威を目の前にした獣たちはすっかり隠れてしまっていた。ヴィクティムは己のリソースを『強奪』に裂いているため、サーモグラフでの検索はしない。せずとも、いずれあぶりだせる。丁寧に根こそぎ、この地に在るものも、獣の偉大なる呪詛をも己の糧にせんと少年は強欲に突き進んでいた。
 最初に飛び出した獣から、技術と理論を。次に飛び出した獣から、魔法を、棒術を、先ほどの獣からは、武装を。遠慮なく繰り出される『強奪』を前に――すっかり獣たちは臆していたのだ。
「ほら、どうした。もっと差し出せよ。好きだろ、『施す』のは」
 ――それで、『罰する』のは仕事だろ。
 少年が、七色を背に受けて逆光をその身に宿し、真っ黒な顔のままに憂うのだ。

「命で以て、試してみろよ」

 ▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲Forbidden Program『Hyena』▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

 駆動し続ける『奪うための』プログラムが、さらなる獲物を求めているときである!
 ラ イ ゼ の 【 虹 渡 】 が 、 獣 た ち を ―― 暴 い た ! !
「はーい、いっちょあがり。オオカミさんみーっけ! 」
 ヴィクティムの横を過ぎるときには、ウィンクをひとつだけ。彼の眼を見ればライゼだからこそ直ぐ悟れるのだ。『奪う側』のいのちだと――あっという間に理解してみせたのなら、直ぐに意識を緑の影に向ける。
 ぎゃん、と悲鳴めいた音ののち、潜んでいた獣たちを七色の帯が縛り上げる!派手な色にからめとられ、持ち上げられた肉塊が恐怖と共に絶叫すれば鎖が飛び出た。それを、残像を残しながら躱すライゼがおれば延長線上にいたヴィクティムが受け止めて、『奪う』。
「いい、な――じゃあ、お返しだ」
 彼の手にもまた、同じく『呪詛』でできた鎖があって。
 びゅうっと飛び出したそれにからめとられた獣が腐り果てるのだ!「あら、綺麗に食べた」とライゼが感嘆するように、ぐずぐずに溶けた肉は地面に落ちきる前でたちまち灰に変容を遂げる。
「おっと、出た出た」
 潜伏していた獣が飛び出すのなら、ライゼは巨体と頭に手を置いて背を転がり、虹で腹を突き刺してやる。
「あぶりだされてンの、わかんない? わかんないなら、しょうがないよネ」
 ――この世は、愚かなものから死んでいくのだ。
 ライゼがまた、くるりと虹の帯で縛り上げたのならばヴィクティムが作り上げた獣の杖で殴り殺す。血が飛び散って、少年の頬を少し赤が穢しても気にした様子はないのだ。凍てついた少年の所業は、あまりにも『徹底的』すぎて『丁寧な捕食』であった。ライゼも感嘆すら覚えただろう。
「ンフフ」
 小さく笑って、――せめてカミサマが彼をあまり見ないように派手な七色をまた光らせた。
 ライゼにとって、そんな存在はどうでもいいのだ。しかし、それがお客様であるというのなら「そう」もてなそう。
「さあさあ、皆様。ご覧あれ! 」
 七色が――黒を突き刺していった!
 ヴィクティムが歯を折ってやった一体の頭蓋を砕いた獣に光が刺されば、それはライゼに還元される。
 黒い霧を虹が吸い上げたのなら、飢えた狐の腹を満たすのだ。
「横取りしちゃった。ゴメンネ? 」
「――ハ、いいぜ。気にしてない」
 初めて交わされる戦場での会話は、『捕食者同士のもの』である。
「俺も、『奪う』だけだ」
 ライゼめがけてとびかかろうとした獣を、ヴィクティムが複製する黒霧と鎖が飲み込んで吸い上げた。それも己の胃袋で勘定に入れていたライゼが「ンま、」と驚きと感心と、――同じ捕食者への喜びに声を上げたのだ。
 捕食者同士の視線が交わされて、――火焔が火の粉となって舞う。
 神々はその獰猛さに沸いたのだ。あふれ出る生命力すら飲み込んでしまう飢えて渇いたいのちふたつに充分すぎるほどの「チップ」が撒かれていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

叢雲・源次
【義煉】◎

観戦する事により得られる高揚感…古来より人間もそのような戯れに興じてきたが…よもやその当事者になろうとはな

戦う事により得られるものなど精々戦闘経験ぐらいだろうが…まぁいい…これも仕事の内だ、行くぞクロウ

interceptor_active
Run_auto scan

広域走査を実行
敵陣形を把握…陽動と伏兵か…古臭くはあるが定石か
だがこちらの戦力を考慮しなかった事が貴様らの敗因だ

inferno_cylinder ignition

Engage.

神速の踏み込みから伏兵の潜む場へ超高速突撃
三十式刀身射出装置が唸りを上げ、電荷を纏った抜刀が敵陣を切り裂かんとする


杜鬼・クロウ
【義煉】◎△
防刃ベスト着用

過去の残滓めが
未来を往く俺達を拒むか

文明復興、大いに貢献してヤろうじゃねェの(指鳴らす
神々の皆サンとくと御覧あれってなァ

あァ
何時も通り俺達の力で圧倒してヤればイイ
戦いの中でしか得られないモノは他にもあンだぜ
お前もまだまだだな源次クンよ

二手に分かれた敵達を意に介さず
源次とは真逆に跳ぶ

親指を犬歯で噛み剣に紅をひく
代償払い【沸血の業火】使用
体中に紫電纏う
鎖をジグザグに掻い潜りジャンプ
玄夜叉に炎宿し敵の胴体斬り刻む
一定のリズム有
敵の鎖を掴み引寄せ敵同士衝突させ狩る

荒々しく
だが的確
今日まで研鑽積み尚進化する古強者の如く
紫と青の電光石火
総て喰らい尽くす

俺らがこの程度で止まるとでも




 ――過去の残滓ごときに止められるような義でない。
 未来までまっすぐ、時に臨機応変で曲がり、折れ、衝突し合いながらも前へ往く半機械と器物があった。
「文明復興、大いに貢献してヤろうじゃねェの」
 挑戦的な笑みを浮かべる男が、己の拳をべきべきと鳴らす。獣たちはすっかり――己らの呪詛が齎す絶望の濃さと、『数の少なさ』を悟ってあたりに潜むばかりになっていた。無駄な時間稼ぎであると杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)が断ずる。
「神々の皆サン、とくと御覧あれッてなァ」
 クロウはいつもの派手な衣装に、きっちりとした防刃ベストを装着している。その分、今回の戦化粧にもこまやかなあしらいが視れるのは、彼の美的センスとその習性特有のものであろうか――ヒーローズアースにはない『団体』のマークがブランドである証拠だ。
「……古来より、人間も『観戦する』という事により得られる高揚感を味わい興じたというが――まさか、よもやその当事者になろうとはな」
 派手なクロウの隣には、一筋の黒がある。いつでも何事もない限りはフォーマルスーツの姿で着飾ることがない彼は、己がこのような『立場』になったのを少し考えているようだった。
 叢雲・源次(DEAD SET・f14403)は、そういえば今年より行われる予定である人間の競技大会を思い出す。――ああいうものと同じ扱いだろうか、と機械的な思考を並行させる横顔は緊張すらなければ、周りの炎熱に充てられて汗ひとつかかないのだ。
「お前もまだまだだなァ源次クンよ! 」
 大袈裟に両腕を曲げて、空気を持ち上げるようにして呆れる動作を振り撒く相方を機械が視る。
「戦う事により得られるものなど、精々戦闘経験ぐらいだろうが」
「そういうとこ! そういうとこだぜ。知らねーって素直に言えよ」
「行くぞクロウ」
 戯れに付き合う意味が理解できぬ。
 すたすたと残党を探す源次の動きに、「へいへい」と相槌をうって――『神』である宝物たる彼もまた、己の狩りに集中せんと牙を剥いて笑った。
「戦いの中でしか、得られないモノ。他にもあンだぜ」
 ――己の相棒は、時折哲学的なことを言う。源次がそれには返事をせずに、『手筈通り』の位置まで歩き続けていた。

 いつも通り、圧倒する。
 それが彼らの今回導き出した作戦だ。日頃より確実に任務を果たし、その身を危険にさらしながらもけして折れぬ未来の光たる存在たちが――此度、二つ駆けた。
 動き方は、正反対である。
   ヘレシュト・オムニス
「 獄 脈 解 放 ――」
 祝詞は端的に、そして的確に。
 走りながら、親指を犬歯で噛む。血がにじんだのならばそれでいい。握る剣に神域のそれを捧げればまず、クロウの身体が紫電に包まれる!!
 ばびゅ、と雷光が地を低く跳べば、周りの樹々を破裂させながら獣の群れに激突!!どどん、と大きな音と神童に、源次もまた相棒の成功を知る。
 超高速の神具が顕現に地面が割れ、真っ赤な溶岩が吹き上がり――それすらも突き破って見せる男の姿があるのだ!
「うらァ、ァアアアアアアアッッッッ!!! 」
                    メギドフレイム・ブラッド
 獣たちが恐れるは、邪悪を滅する終焉、【 沸 血 の 業 火 】!!
 炎を纏った己の剣は、いたずらに振り回しているのではない!超高速に動き回るからこそ、直線的であれば先手を打たれることは理解していた。故に、まさに雷光!!屈折しながら空気すら裂いて見せる熱量は鎖ごときで絡めとれない!
 獣の巨体に穂先が辿り着けば、貫通――そして一閃! ばっさりと別つ上下が炎に包まれ消えていくのを見送ることもなく、次の獣を伸ばされた鎖を手にして引き寄せた。
 クロウは、熱い男である。
 ゆえに、常に前へ進む彼らしく非常に勤勉でもあった。
 戦いを重ねるたびに、毎日彼は己を磨く。環境に磨かせるままに成長するのではなくて、己の為に己の手で研磨を怠らなかった。人一倍正義感にあふれ、――人一倍、利己的であり、ゆえに「中途半端な己」を赦さない。その禁欲的な姿勢が生み出したのは、古の強者どもを今や超える純たる強さであった!!

 強く成った相棒に、遅れは取らない。
 ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ 
 Access..._
 Command_? interceptor_active._
… … … … _
Run_auto scan...Ready._
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ 

 冷えた男である。燃え盛る相棒に比べれば、源次というのは何処までも無機質で、真面目で不器用で在った。しかし、彼の心は「つめたい」わけではない。
 寡黙で、言葉が及ばぬこともあればだいたいのことに寛容で在れる。心がちゃんと動作している機械の男は、今もなお「消費するように」動いているのではない。
 ――戦況判断は的確だった。陽動と伏兵の定石に油断は無い。少々「古臭い」のは神々が由来故であろうと彼のサイバー・アイが解析を果たした。
 この怨みに満ちた神々が『負ける』原因は何であろうか。――考えて、たどり着く『解』はひとつだった。『未来』である彼らの戦力を、最初から考えていないのである。

 ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ 

inferno_cylinder ignition...Ready?
A>OK_
Set … … … COMPLETED_

 ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ 

 繰り出されるのは、神速の踏み込み――相棒との距離を埋める、たった一歩の跳躍だった!
 紫の雷が派手に暴れるおかげで、もう一つの蒼に獣たちは『速すぎて』認知すら追いつけぬ! 集中したシステムと脳、その回路が熱くなる中きっと、源次は見たのだ。
 口角を釣り上げて「待ってたぜ」と笑った、相棒の顔を。

 Engage.――DEAD SET
 【 電 磁 抜 刀 】 !
 三十式刀身射出装置から繰り出される蒼い稲妻と共に高速の居合がひとつ、振り下ろされる!
 合わせて紫の稲妻も、共に下った!――待ち構えていたように、ここだと言わんばかりの勢いでふたつ揃えば、すべての悪しきを喰らいつくす!!

 轟音、轟音、――静寂。
 
 ふたつの光で喰らいつくされた呪詛は、もはや欠片も存在を許されない。ふわ、と煙めいたそれが舞ったら、露でも払うように二人が刀を振って納めるのだ。
「この程度で、俺らが止まるかよ」
「――この程度で、満足か」
 相棒と、二人静止して。神々に吼え、獣を下したふたつを称える炎熱が花開く!どどん、どぅん、と山が噴火をはじめ新しい生命の漲りを彼らに伝えていた。死んだ火山がよみがえるほどの――彼らが正義、確かに大地へ響いたのである!
「言うねェ源次クン! 」
 ばしりと長躯の背中を叩いてやっても、ひとつも揺らぎはしない。「行くぞ」と端的に還して源次もまた、己を称えるそれには酔わないのだ。クロウも軽くうなずいて、更なる一歩を踏み出していく。
「ついて来いよ、神様。もーっといいもン見せてやっから」
 ――もはや概念程度にしか残らぬ彼らが、目に見えずともあたりに歓声を満たしたような気がしたのだ。
 あたたかな風が吹いて、世界は今一度未来に沸き上がる――!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『怒りに震えて引き籠る者・ニートヘッグ』

POW   :    ひきこもる
全身を【扉の内側へのひきこもりモード】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    激昂の蹂躙
【牙、爪、細長い巨体を用いた連続攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    収奪の舌
小さな【舌先】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【ニートヘッグの巣】で、いつでも外に出られる。

イラスト:小日向 マキナ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ファリシア・グレイスフェーンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ――沸き上がる生命と、その熱に呑まれぬ扉がひとつ空に「浮いている」のが見えるだろう。
 ぎい、きい、ぎい。
 恐ろしき呪われた氷の国からの雪粉が、周囲に吹き荒れては消えていくのだ。あかいまなこが、己を討たんとやってきた猟兵たちを見下ろす。
 怒りに震える体はほとんど扉で見えぬのだ。ずるり、ずるり、せわしなく動く尾らしき部位が持ち上がるのを見て生物に詳しいものならば見ぬいただろうか――放たれるは、絶叫であった!
 強大な体から噴き出たのは高音である。もはや鳴き声というよりは、空気を殺すためだけに吐かれたそれにはたちまち猟兵たちの鼓膜も痛むのだ。痛みに耐性が在るものは仲間を守り、また、警戒しただろう。いざ、巨体の蒼が飛び出す!
 高速で動き回る巨体は大きいゆえに動きも読みやすい。しかし、「規格外」な大きさは容赦なく神々の国を蹂躙していくのだ! 地面を這えば大地がえぐれ、呪いの冷気を纏うその邪竜は世界の生命を吸い上げ、――また速度を上げる! 
 その手数を躱す猟兵たちの代わりに死んでいく世界があり、樹々が倒され熱は消え、代わりに冷気が満ちた。それを見送ることもなく、蛇は高速のまま扉に引っ込むのだ。

 ぎい、きい、ぎい。
 蛇が、扉の中から見る。
 ――熱を探して、いのちをさがして赤い目を光らせていた。

 さあ、君たちの「いのち」を魅せろ。        
 完全無敵の扉に引き籠り、いたずらに気ままに世界を滅ぼす竜をその「いのち」で滅ぼせ、猟兵!
       オリジン
 ――君たちの正義は、何処に在る!

***

 プレイング募集は3/6 8:31~ 3/8 22:00まで とさせていただきます。
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
……凄く親近感を覚える……
暗くて呪われた氷の地獄、成程この力とよく似ている
このままでは邪竜大決戦みたいにならんか?
怪獣映画か何かのような……

まァ、それはそれとして仕事はするし貴様は滅ぼすがなァ!

幻想展開、【怒りに燃えて蹲る者】
最大全長で構うまい
出て来る気がないなら扉ごと破壊してやろうではないか
貴様も安寧の地を棺桶にしたくはあるまい?
出て来ないのなら有言実行、そのまま潰してしまおう
出て来たなら、この爪と牙で蹂躙してやろう!

……いや分かってるよ、言われたし
神様に見せる戦いだから、あんま悪い感じは良くないんだろ?
でも本当、神敵の体現みたいなもんだから
悪役は悪役として、出来ることをやってやるんだ


玉ノ井・狐狛


こもるならこもるで、出てこなけりゃイイのによぅ。
まァ落ち着きな、暴れたところで三文の得にもならないぜ。

歓迎ムードみてぇだし、訪問販売といこうかねぃ。

つーワケで吸い込まれてみるとしよう。
“鬼が出るか”――いや出るんじゃなくて入るほうだが。

中に手下なり罠なりがあれば、感知して対処する。山場はそのあとだ。
▻見切り▻視力▻暗視▻聞き耳▻環境耐性ほか

落ち着いたら手役をオープン――つまり、巣を病毒で塗りつぶす。
家主のナリを見るに、アレはこの巣と“関連付けられた”在り方だろうよ。神殿のたぐいだな。だからまずは、そこを壊す。
◈UC使用▻毒使い▻呪詛

鬼サマはご不在みてぇだからな、“蛇”を喚ばせてもらったぜ?


ゼイル・パックルード
◎△
最近はどうにも調子が悪い……いや実際は自分自身その程度ってことなのかもしれないが。どうにも猟兵相手に負け続けでね。

その扉の中にいればお前は自分に足り得るのか?こんな人間如きに隠れながら戦うことに何か思うのか?
ただ合理的だからそれをしているだけか?

……一応合理的な思考くらいはできるつもりだったんだがね、どうにも今の心ってヤツはそうも行かないらしい。

無敵の扉、この拳で砕いてやる。
お前が隠れようと何度も何度も、この拳の方が砕けようとぶち破る。
この心なんてものに、不合理でも納得のできる答えが欲しい。
無様な見世物になるだろうが、それでも今はかまわない
もし顔を出されたらそれは反射的に殴るだろうけどな。


アカネ・リアーブル

ここは神の住まう地
あなたもまた神の一柱なのですね…と思っておりましたのに

あなたはニーズヘッグではなくニートヘッグなのですね!

北欧の神だなんてかっこいいなどと考えてしまったではないですか!
このやり場のない怒りをぶつけて差し上げましょう!
覚悟をなさいませ!

などと言いつつ飛翔
空中戦を仕掛けます
舞薙刀を手に舞い上がり先制攻撃として衝撃波で2回攻撃
わざと隙を見せて敵UCをおびき寄せ
敵攻撃は見切りと第六感とダンスで回避
スライディングで懐に潜り込みランスチャージ
即座にUC発動
ランスチャージとダンスを併用しながら連続攻撃を仕掛けます

蝶のように舞い 蜂のように刺す
神ではないあなたには舞を奉納など百年早いのです


雷陣・通
扉を使ったヒット&アウェイだな、なんとなく分かるぞ
ってことは狙うは攻撃の起点ってところだな

あんまり、使うのは避けたいところだが強敵相手に出し惜しみは出来ねえ

行くぜ
三戦から猫足立ち
全ては柔らかく、そして正中は維持

狙うは一つ
敵UCに対しての【視力】にてタイミングを【見切り】、【カウンター】による【先制攻撃】の『奥義、紫電』

テクニックは要らねえ
威力は相手の超高速連続攻撃のスピードが乗せてくれる
後は――ただ、一撃を叩き込むのみ!

さすれば、相手より後に放った拳は先に当たるであろう
これぞ、死伝に至る一撃。奥義、紫電也!

回避?
知らん!
一発勝負だ!




 ――最初に抱いたのは親近感であった。
「暗くて呪われた氷の地獄、成程」
 低い声を震わせて、ニルズヘッグ・ニヴルヘイム(竜吼・f01811)は強大な竜をみあげてやる。扉にばたりと入っておきながら、その燃えるような怒りを隠せぬ視線だけは常に猟兵たちを見下ろしていた。ニルズヘッグもまた、似たような――いろを、持っている。
「この力とよく似ている」
 世界が多ければ「世界の竜」もまた多い。己の名がかの偉大なる樹かじりの邪竜が己にあてがわれた名前であるとニルズヘッグは知らないのだ。しかし、――その名の重みはわかる。
「わかるぞ。狭くて暗いところは、落ち着くよなァ」
 冷たいから、自分の暖かさはよくわかったのだ。
 暗くて洞窟のような地下でこの竜は目覚めた。早く死んでくれればと願われたのか、冷凍保存の一環だったのかはいまも「どう解釈していいか」知る由もない。ただ、そこに時折双子の片割れが哀れな己に愛を施しに来るだけで――つめたい牢獄の生活はある意味、あの時期には心地のいいものだったように思えた。
 哀れな竜を見上げ冷えた吐息を吐いた時のことである。
     ・・・・・・     ・・・・・・
「あなたはニーズヘッグではなく、ニートヘッグなのですね!!? 」

 てっきり、神々のすまう土地であるからこの竜もまた北欧の神なのだと思っていたのがアカネ・リアーブル(とびはねうさぎ・f05355)である。その声量に面食らったのはニルズヘッグで、思わず彼女の方を振り向いた。
                           ・・・・
 ――そうだ。邪竜に違いない。だけれど、かの偉大なる『怒れる者』には遠いのだ。
 何たる不敬か、と神に遣うアカネが怒りをあらわにしたなら、少しだけ救われた気がするニルズヘッグである。
「あー、あー、レディ。お嬢さん。どうか赦してやってくれないか。アレも望んでその名を得たのではあるまい」
「でしょうとも! ですから、アカネの信仰を、敬意を返していただかなくてはいけません! 」
「うーん……まァ、そうだな! そうそう! 返してもらう必要があるよなァ! 」
 やり場のない怒りであることは自覚もあるようで、アカネの『遣えるもの』として――巫女としてのプライドとポリシーの葛藤などは神に嫌われる身であるニルズヘッグからは到底悟りもできぬ。
 しかし、その『怒り』の質は共感できる。
「偉大なる神の名です。なぞらえるなど、欺きに近い。言語道断でございます」
「はは、――違いないなァ」
    ・・・・
 ――『ニアミス』ほど質の悪いものもないのだ。
 なぞらえるなら徹底的に在らねばならぬ。呪われた存在ならば永劫呪われねばならぬように。
 センチメンタルになる必要はない。ニルズヘッグが『何である』かを求められたことより『何であるか』のほうが重要だった。ゆるり――黒い紋様がうごめく。彼を呪う『怒り』が呼び起こされるのだ。肌にしみ込むようにして、彼の肌を黒く染め上げていった。
「この姿では邪竜大決戦のようになりそうだが。まァ、怪獣映画と言うのも悪くはあるまい? 」
「よろしいかと! 神々もきっと『出し物』は大いに喜んでくださいます! 」
「ふは、――そうか、そうかァ」
 神敵の体現だ。
 それは、アカネとて彼の近くで呼吸をしていればよくわかる。
 猟兵には『呪詛』との関りが在るものが多いのだ。呪われているものもいれば、呪いそのものであるものもいるし、時には神の敵であるものが存在していたりもする。しかし、皆がどれも『未来』に必要だから――アカネは神聖な存在であっても彼らに向き合うことはやめないのだ。
「お力添えを致します! アカネにお任せを! 」
「応とも! ふははは、大きいと『小回り』が利かんのでなァッッ!! 」
 轟く。
 邪竜の咆哮が響き渡れば、アカネのまわりにとぐろを巻くようにして大きな四つ足の『竜』が現れた。神の敵だ。しかし、今は――未来の味方である!
     マインド・オープン        ニ ー ズ ヘ ッ グ 
 ―― 幻 想 展 開 、 【 怒 り に 燃 え て 蹲 る 者 】 ! !

「いやはや、とんでもねェヤツばっかだな」
 まるで黒い山がもう一つ増えたような光景だったのだ。
 真っ向勝負からなど玉ノ井・狐狛(代理賭博師・f20972)は御免である。竜化したニルズヘッグとニートヘッグのにらみ合いと吼え合いから感じられるスケールは小さな狐狛の身体のみでは太刀打ちのしようがない光景だ。
「ま、無料で怪獣映画が見れると思ったらお得かねェ」
 ――暴れたところで三文の得にもならないどころか、摘まみだされてしまいそうだし。
 肩をすくめてから、さてさてと掌をこすり合わせる。どうしたものかを考えるのだ。『小さい』ならば『潜り込んで』何かができないだろうか。あたりを見回して、足場になりそうなものを探す。それは、岩場よりも出来れば『猟兵』であるほうが都合もよい。
「お、ッと。そこのアンタら」
「――ん」
「お? 」
 同じく、様子をうかがっていたのはゼイル・パックルード(火裂・f02162)と雷陣・通(ライトニングキッド・f03680)だ。
「この状況をどう見るよ」
 親指で粗雑に『怪獣映画』を示す狐狛がおれば、ゼイルは腕を組んで少し唸った。
 ――最近、どうにも調子が悪いのだ。
 ゼイルはここの所『猟兵相手』の戦いには負け続けである。それもあってか、己の力量をもう一度確かめるかここで『勝ち』を得て敗け癖の矯正に出たいのだ。
「俺のプランといえば――そうだな」
 かの蛇は、扉に閉じこもりながら時折竜とにらみ合って、また閉じこもるのを繰り返している。
 それが『合理的』だからそうしているのだろうか、それとも『扉の中にいる』からそうしているだけなのだろうか、獣の頭にそんな知恵があるのだろうか――それがなんとも、もどかしくて腹が立つのは自分自身への怒りであるとも分かっていた。
「扉を壊す」
「へェ。とんだ大博打だ。『砕けても』知らねェぜ。保険には入ってンのか」
 ――かの扉は、無敵である。
 何を以て無敵と言うのかは知らぬが、絶対にひっくり返らないものであるのをわざわざひっくり返そうとは狐狛でも思わない。そのほうが取り分が少ないわりにリスクが高いのだ。
「わかってるよ。でも、――今は不合理でもいい」
 心に決着をつけておきたい。
 ゼイルの戦士めいた発想は理解しがたいが、「それがいい」といって利かない覚悟があるのはすでに賭博で眼を肥やした彼女ならば理解している。時にこういう『大博打』は成功すれば『大儲け』である故に、一概に『やめろ』とも言えなかったのだ。
「そォかい。アンタは」
「俺か? 俺は、そうだな」
 見るからに子供らしい通にも声をかける。使える手札はよく知っておきたい狐狛と、その意図は知らずとも静かに武人らしく光景を見守っていた少年だ。
「――あれは、ヒット・アンド・アウェイだと思うんだ」
「つまるところ、扉が盾でってことか」じゃあ、砕いてよさそうだなとゼイルが肯く。
「なんとなく分かるってだけだけど。でも、俺には正直、難しいことはわかんねえ! その場になってみねェと、読みって外れるかもしれねーもん」
 空手は、そうだ。
 相手の動きを見て、フェイントなのか『どの型』でくるのかを読み合い、一瞬の駆け引きで取っ組み合って決着を決める。的確に身体に打ち込んで相手を崩れさせるまでの流れは極めれば極めるだけ鋭く、静かなものだ。故に――咄嗟の判断は通が秀でているとは保証できる。
「よし。じゃあ、アンタ」
「ゼイルだ」
「真っ先に扉にいってくんねェか。アタシが思うに、――ああ、陰陽もちっとかじってる。ありゃ神殿のたぐいだと思うんでね」
 手札のことは十分理解した。
 狐狛が『冷静』ならばこの二人を扱えるだろうし、ゼイルもまた彼女の『目』には肯いて応える。己が合理的に考えられない今は、『そういうことが得意』な誰かに預けるべきだと思ったのだ。
「俺はどうしたらいい!? 」
「難しいこと考えなくていいぜ。アンタは」
 通が手を上げて礼儀正しく問えば、頭をがしがしと掻いてから狐狛が応える。
 ――にぃ、と唇でかたちのいい三日月をえがいて。

「ただ、殴れ」
「よっしゃ、大得意だ! 」



 衝突。
 ――巨体同士がぶつかりあってはまたすっこんでいく蒼を黒が叫びながら追う。
「逃げては話にならんではないかァッ! 出てこいッ! 」
 扉に絡みつくようにニルズヘッグがその首を振り回せば、蒼の身体が一瞬飛び出て鱗に傷をつけていき、噛み合うことなく消える!
「猪口才なッ」
 がるる、と威嚇を含めて唸る。
 先ほどから蹂躙せんと飛び出すものの、超高速ではいずりまわる巨体に爪を立てれば長い痕はつけてやれた。しかし、致命には至らぬのだ。また直ぐ扉に引きもる蒼にしびれを切らして、いっそその扉に割り込んでやろうかと思うニルズヘッグである。しかし、――神に見せる手前あまり横暴な手段には出れないのだ。
 ならば、と考えたのは。『悪役として出来ること』である。
 がああと吼えてまた、土地を踏み荒らしながら扉に顎が襲い掛かる。中の竜がたちまち、ニルズヘッグに迎え撃とうと扉を開けた!
 ――この瞬間だ。
 何度もこの瞬間、そしてその習性を堪えながらニルズヘッグは『足場』となっている!
「馬鹿めが」
 彼の背を駆ける小さな影があった。
 大きな山のようであるそれを跳ぶなど【スカイステッパー】を起動したアカネには容易い!とん、とん、とリズムよく跳ねながらも今は奉納の為に捧ぐ踊りではない力強さで前へ往く!
 その気配を全身で感じながら――竜は、「ひと」と「未来」のための懸け橋に成った!
「扉ごと貴様を滅ぼしてやれば変わらんよなァ!! 」
「はぁ、ぁ、あああああッッッ!!!!! 」 
 吼えと共に!
 竜の姿になったニルズヘッグの鼻先から、びゃっと飛び出すアカネだ!
 手にした薙刀を振り下ろし、扉から飛び出た顎に衝撃波を喰らわせる!ど、どう、と飛び出た波紋に脳を揺らされ、不意打ちにぐらりと大きな首が揺れた。
 ――悲鳴めいた獣の声がやかましい。
 ガツッと首に食らいついたニルズヘッグが、その咆哮を止めてやろうとする!しかし、巨躯は肉を裂くことに特化をしない牙をすり抜けるのだ!
「チィ――」
 せめても、と身体で蒼にぶちあたる! すばやく動き回りあたりをはねるアカネを喰らわんと口を開けたそれが、届く前に動きが揺らいだ!
 蝶のように舞い、蜂のように刺す。
 ――これは奉納のためのものではない!アカネが容赦なく、その体を滑るようにして足を蒼に滑らせれば薙刀を立て鱗を引きはがしていった!
「魚も鱗をはがねば食べられませんので! 」
「く、喰うのかァ――? 」
 それはちょっと、と同じ竜種であるニルズヘッグが困ったような色を眼に宿し、なお蒼を掴まえんと身体で押さえつけるのだ。懐に潜り込んだアカネが飛び跳ねながらその腹を、背に攻撃を届かせるための『うろこ剥ぎ』を繰り出す!

 しぱぱぱ、ときらきらとした蒼が舞う光景はまるで散らばる宝石のようであり――。
「ありゃあ、一体いくらになるんだろうなァ」
 一枚くらい持って帰ってもバレやしねェか。と狐狛が戦場に無防備のまま現れた。
 蒼のあぎとが、直ぐそちらに向く。
「おいッ! 」
 思わず叫んだのがニルズヘッグで、それに薄い笑みで返したのが『詐欺師』だ。
「訪問販売、といこうかねェ」
 なァんてことねェよ。と笑ったのを最後に――がぱりと空いた口が、その舌が狐狛に触れて『飲み込んだ』。
 目の前で仲間が喪失した光景に、アカネも思わず絶句する。

「だ、ッ、出しなさいッ!! 」
 丸のみならばまだ間に合うのではないか、とアカネが薙刀を振るい、その首を狙うが――シュッと空気を切り裂く速さで蒼はまた『引き籠る』!
「貴様ァッ!!! 」
 ニルズヘッグもこれには怒りが燃えた。どうっと走る黒の背を『待っていた』と言わんばかりに新たな炎が乗る!

「邪魔するぜ」
「――ゼイルか! 」
 ひらり、火の粉のように。
 背に落ちた男の声は静かに燃えていた。やるべきことは、決まっている。
 策もなく戦地に飛び込んでいるような男ではない。ニルズヘッグもまた、既知の存在に『賭ける』ことにした――!
「頼んだぞッッ! 」
 竜が大きな首を振れば、弾丸のようにゼイルが飛び出る。目指すは『籠った』扉であった!
 びゅう、と炎を纏う銀髪の全身が在り、炎熱は――たちまち『拳』に収束する。

「 地 獄 を 味 わ い な 」 

 ――発 現 、【 烈 破 灼 光 撃 】 ! ! ! 
 鋭く肩から繰り出された『突き』が扉と衝突すればたちまち爆風が巻き起こる!この風にあおられて「きゃあ」とアカネが舞った。
 世界が上下に回転して、眼を回すことはないが『あたりがよく見える』。
 二つの藍色に、手を振る少年の姿が見えた。

 ゼイルの拳が血を吹き出す。
 『無敵』の扉を叩いたのだから、当然だと彼も思うのだ。いつもならこのような手は取らない。しかし、此度はこの『痛み』を己の糧にすることにした。
「おお、お――」
 振り払うように、次は反対側――裂けたことのある腕を握る。
 あまり負担はかけたくないのだ。しかし、「今はなりふり構っていられない」くらいどうしようもない。振りかぶる!

「お、お、おおおおッッッ!!!! 」

 己 が 己 を 超 え る た め に ! ! ! 
 二度目! がうんとまるで大砲でも叩きつけられたような音が広がりあたりの炎熱も樹々も爆ぜる!金色の扉は――ぎぃ、とそのすき間を開いた。
 びゅう!と飛び出す蒼がある!逃げるような動きにゼイルも身体を逸らして躱し、下で待ち構えたニルズヘッグの頭に落ちた。
「なんだ――?」
「いやはや、随分気に入ってくれたらしい」
 ひょこ、と。
 己の身に着いた氷の余韻を振り払いながら、金色の狐が『神殿』より現れる。
「鬼サマがご不在みたいだったんでね。――『蛇』を喚ばせてもらったぜ?」
      デモンアセンブラ・ヨナルデパズトーリ
 如何様、【収蔵天魔・夜鳴斜螣罹】――。
「悪いねェ行儀が悪くてよ。飼い主に似てンだ」
 かかか、と狐狛が笑えば、その手に握られた万年筆を愛すように腕にまとわりつく細長い獣が見える。管狐の仕業であった。
 扉の中に入ってやる、といのが最初からの狐狛が考えた計画である!
 決定的な打撃は与えられぬから、できることは「くすぐる」ことくらいだと弁えての動きであった。弄ぶように万年筆をくるくる回せば、仕事は終わりだと言いたげに懐へしまう。

「後は任せたぜ、ぼっちゃん」

 ――テクニックは要らない。
「此処でよろしいのですか? 」
「ああ、問題ねえよ」
 風に羽で乗って――アカネは通を見つけたのだ。
 脚で流れに追いつくのは不可能だと早々に判断した。彼が今から振るう技は消費が多く、出来るならば使いたくはない技である。しかし、この戦いで出し惜しみはしないと結論付けた。
 手を振った通に降り立って、彼の作戦に目を丸くしたアカネである。「無茶はいけません!」とそのすべてを見守ることにしたのだ。
 ――なにせ、その『型』は『雑念』を捨てる。
 息を深く吐いた。背を丸めて、地面を見る。ちょうど竜がたまらず狐の毒に困り、歪んだ扉を押しのけて逃げ出した瞬間のことであった。
 対角線上に竜を視る。
 ――一番、飛び出しやすい足場まで運んでもらった。
 安定した地面にはやわらかな緑が生えていて、踏み抜くのを少し申し訳なくは思う。しかし、それも『棄てる』。
「フー…………」
 回避など、考えていない。
 目立つところにいた『敵』に竜の目が向けられた。当然の『期待した』動きに通が眼を閉じる。

「派手に一発、ぶちかませ」

 ぱちん、と狐狛が指を鳴らせば少年の身体が『飛び出た』!!
「竜の御方! 」
「応とも――! 」
 予測されるのは衝突。勝敗は読めぬ!故に仲間を『助ける』為に黒が地を這った!背に乗るゼイルは、きっとその光景をよく視ていた。

 たそがれいろのせかいに、紫の筋が通る。
「一発―――」
 口を大きく開けて蹂躙せんとする竜と、紫の雷が――かち合った!!!

「 勝 負 だ ッ ッ ッ ! ! ! ! 」
 こ れ ぞ 、 奥 義 【 紫 電 】 也 ! ! !

 空を割るほどの閃光が放たれ、遅れて轟音が巻き起こる!!
 神罰めいたそれが苦手なニルズヘッグが困った顔をして、身体を少しこわばらせるも――蒼の牙が散ったのを見て落下する風雲児を頭で受け止めた。
「……お前、ホント、無茶苦茶だ」
「へへ。……だろ! 」
 ゼイルの両こぶしが血まみれになったように、通もまた全身汗を噴出してすすまみれの身体で寝転ぶ。勇気と無謀の紙一重に肝を冷やしたアカネもまた、狐狛の手を取って空を舞う。そして、二人でひらりとニルズヘッグの頭に乗った。
「このまま、安全なところ――ああもう、そんなものがあるかどうかもちょっとわかりかねますが! 」
「なぁに、もう勝ったようなもンだよ。『大当たり』だ。」

 ぽつ、ぽつ、と。
 雷と氷の炎熱で巻き上げられた空気が熱せられ一時的に雨が降る。
 ――戦場は、まるで命そのものが繰り返されるような超常を巻き起こす盛り上がりを見せていたのだ。
 うまくできただろうか、と少し安堵したのは――きっと、黒い竜だけなのだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

月待・楪
氷月(f16824)と

アレのもっと情けない奴なら戦争で見掛けたけどな
…確かにちょっとメンドくさいかも、なんてな?

地面をのたうち回るくらいしか能がねェ蛇モドキなんざ
本気で相手するまでもねーよ

…随分楽しそーだな、darling?
蛇で遊ぶのも程々にしとけよ…妬けるだろ?
遊ぶなら、俺とだ

【挑発】しつつ扉と隙間に【乱れ撃ち】でカルタとガランサスの弾丸を叩き込む
出てくれば氷月の攻撃の合間を【ダンス】するみたいに敵の攻撃ごと【見切り】かわして
【Villains party】発動
目を、鱗を、肉体を【部位破壊】する
消し炭になれ、クソ蛇

終わったら氷月の掌の傷と血を舐め取る
…どーせ傷つけんなら俺にしろよ、バァカ


氷月・望
楪(f16731)と
アドリブ等歓迎

流石にアレは煮ても焼いても食えないよなァ……
つか、出てきたり引っ込んだりって面倒臭ェ感じ
……ゆーくんの口癖が移ったかも、なんて?

さァて、好き放題暴れまくってる蛇如きがよ
ヴィランに勝てると思ってんなら、残念!
八つ裂きでも生温いっての

『Malice』のフックの先端で掌を裂いてから
【先制攻撃】【2回攻撃】併用のUC:紅嵐を発動
扉の中に引っ込んだままなら引き摺り出して、
外で動き回ってんなら雁字搦めに
テメェの時間は終わり、ココからは――Villains Party Timeってね

……ゆーくん?
ははっ、拗ねないでよー!
お楽しみは後に取っておきたかったんだって、ゴメンね?


逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と

ふふ、そうですね
巨大で強大な敵ですが恐れることはありません
僕たちはこうして数多の敵を倒し、そしてその上を乗り越えてきたのですから
ええ、まいりましょうザッフィーロ

ザッフィーロが敵を攻撃し抑えていてくれる間 僕は「高速詠唱」にて魔術を編み上げ
舌が向かってくるならば「オーラ防御」で「カウンター」「マヒ攻撃」を行い防ぎましょう

ザッフィーロの合図があれば「気絶攻撃」「属性攻撃」「全力魔法」を付加した
【天航アストロゲーション】で敵を撃ち抜きましょう
ザッフィーロに期待されては応えるしかありませんからね
強大な敵を乗り越えてこそ、愛は強くなるというものです


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

…大きい、な
だが…お前と己よりも大きな敵に挑み勝ってきたという自信が俺にはあるからな
お前が居るならば、恐れる物はなかろう
宵。では、いくか

空に浮かぶ扉には【狼達の饗宴】にて召喚した大きな炎の狼を嗾けよう
先では数を重視したが…巨大な敵には大きな物を、だろう?
舌が向かってきたならば触れる前にメイスにて叩き落とさんと試みる
…宵を置いて吸い込まれるわけにはいかんだろう?勿論抵抗をしよう
同じく舌を防ぐ宵を見れば、目配せと共に分散した炎ではなく73体分の狼の炎を練り上げた巨大な狼を放ち敵を扉から引きずりださんと試みよう
宵、お前の星ならば敵を撃ちぬけるだろう?
抑えている故、後は頼んだぞ?


ヴィリヤ・カヤラ
◎△
グウェンさん(f00712)と。

さっきは上手くいったね、今回も頑張ろう!

熱に反応してるみたいだけど、
あれって命の熱さとかそういうのに反応してるのかな?
普通の熱でも良いなら引き籠もったら熱くしてみようか。

引き籠もった時と攻撃には【四精儀】の炎の雷で敵と扉を狙ってみるね。
グウェンさんに攻撃が当たりそうになったら邪魔しないように
影の月輪で敵の攻撃のガードとチャンスがあれば
こっちからも攻撃していくね。

地面を這ってる時は地上にいたら危なそうだし、
グウェンさん引っ張ってもらえるなら一緒に上空に。
怪我が酷そうなら【輝光】で回復もしていくね。
サポートするって言ったからには
怪我を残したままにしておけないしね


グウェンドリン・グレンジャー
◎△
ヴィリヤ(f02681)と

よし、うまく、いった。この調子、この調子
今回も、ガンバルゾー

……んー、熱、かぁ
私、熱血さ……とか、ないし、なー
あ、フツーに、熱くすれば、いい、んだ

引き籠もった、時……Brigid of Kildareを、喚んで、炎で、誘きだす
出てきたら、UCの炎魔法と光魔法……属性攻撃と、念動力で、強化し、攻撃

敵が、地を、這っている……時、危なさそう、なら、ヴィリヤ、抱えて、空中戦……で、上方向に、待避
私、力……には、自身ある。まかせてー
(激痛耐性で被弾を我慢しつつ)

私や、ヴィリヤの……攻撃、した、とこ狙って、Black Tail、伸ばして、傷口をえぐって、追い討ち




 ――先の戦争にて、もっと「情けない」者は見たことある。
「流石にアレは煮ても焼いても食えないよなァ、ゆーくん」
「まァ、ちょっとメンドくさいかもな」
 ヴィランふたり、おもしろおかしく肩を並べてのたうつ蛇をみているのだ。
 引き籠ろうとしたらあぶりだされて飛び出した巨体が地面を這いまわり、樹々を斃し、生命の熱を凍らせていく。その様はまさに蹂躙と言って申し分のないものだ。
「――つか、出てきたり引っ込んだりって面倒臭ェ感じ」
 はあ、とやや鼻にかかった声になるのは呆れからだ。ざらりと喉が唸って、相棒を見る。
「ゆーくんの口癖が移ったかも、なんて? 」
「ご機嫌とりのつもりか? マイ・ディア」
「そんなつもりねェって! 」
 けらけら、からからと笑い合った。悪二つ、お互いに視線を絡め合い――息のかかる距離でささやくように秘密の会議を繰るのだ。
「ゆるしてよ、ゆーくん」
「駄目だ」
「八つ裂きでも? 」
「生ぬるいな」
 ――ヴィラン、トワイライト(月待・楪(Villan・Twilight・f16731)とその怪物であるカルミヌス(氷月・望(Villain Carminus・f16824)。彼らの中に正義の二文字というのは無い。彼らのための『正義』はあったとて、世界の為にくれてやるものはお互いひとつもないのだ。
 お互いにささげあうことはあったとしても。

「いやはや、――大きいな」
 暴れ狂う蛇がばたん!と扉にこもる。しかし、『無敵』だったそれが猟兵の手によって歪まされていた。黒いすき間が見え隠れして、その中にあるだろう氷獄を見つめる。
「ええ。ですが、恐れることはありません」
 ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)が己の周りに狼を連れている。【狼達の饗宴】にて呼び出した彼らは、まるで親の視る先を見つめるこどもたちのように炎をくゆらせながら共に蛇がいるであろう扉を見上げていた。
 どう狩るものか、と狼と共に唸るザッフィーロに、まるで助言してやる賢者らしく寄り添うのが逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)である。
「僕たちはこうして数多の敵を斃し、そしてそれを乗り越えてきました」
 そうでしょう、と宵がささやいてやるのだ。――任務中で在るから腕を絡めないが、ここが「ふたりきり」ならそうしていたやもしれぬ。ザッフィーロもまた、彼の声がするほうに銀の瞳を動かしてやるだけに終えていた。低く一度、「そうだな」と肯く。
「では、いくか」
「ええ」
 ――『星』があれば、まようこともあるまい。
 ザッフィーロを勝利へ導くのが宵であるのならば、宵にとってザッフィーロは世界だ。
 ここで己のいとおしい存在が尽きるはずもない。燃え尽きるなら、きっとお互いがぶつかってしまった時なのだろうと願っているのだ。
 狼たちが主人二人の足元をうろうろと歩き回り、迎撃に備えている。――世界に炎熱が戻り始めてきた。

「ねーねー、グウェンさん」
 さっきはうまくいった。次も頑張ろう、とはしゃぎあった少女らがふたり。
 似たような黒い羽根を寄り添わせながら、肩をくっつけて内緒話をするようにヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)がささやく。
 耳を寄せていたらこてりとその額に頭をのせてしまったのはグウェンドリン・グレンジャー(Moon Gray・f00712)だ。
 この調子、この調子、と己を鼓舞しつつヴィリヤと喜び合っていた少女が人形のような無機質な顔でそれを聞いている。
「どうし、たの」
「アレのことなんだけど」
 ――指さすヴィリヤのかたちのよい指先が示すままを、グウェンも視る。
 赤い瞳がふたつ、猟兵たちを見下ろしているが――まだ出てくる気配はない。痛みに悶えているのか、それとも一発手痛いパンチをくらってしまって怖気づいているのだろうか。それとも、その両方だろうかと思った。
「……熱に反応してるみたいなんだよね」
「蛇、だから? 」
 たぶん。とヴィリアが肯く。
「蛇ってそんなに眼がよくないって聞いた事あるんだ。多分、――命の熱さ、とかそういうのに反応してるのかも。体温? 」
「……、体温」
 お互いに寄り添っているから、お互いの温度は何となくわかる。
「……んー、熱、とか、ない、し……」
「あはは、確かに。熱血! ってかんじはないよね、私達」
「なー」
 激しく動き回るのならばお互いに血色はよくなるやもしれないが。
 彼女たちは通常、飄々といたずらに「血を飲む」生き物だ。お互いに一応ベースが人間とは言え、その熱反応は普通の人間に比べたらやや異なる。
 となれば、取れる手段は何があるのだろう。じっと見下ろしてくる赤い点ふたつを見上げて――ヴィリヤとグウェンが同時に「あ」と声を上げた。
「フツーに、熱くすれば、いいんだ」
「そう、それ! それだよ! 」
 ナイスアイデア!とお互いに手をあわせてぴょんぴょんと二つ跳ねる。ようし、と意気込んだヴィリヤがその場に大きな球を作り出していた。
「――【四精儀】」
 ごうごうと燃え盛るのは一見すれば小さな太陽に見えたかもしれぬ。幸い、ここには火種も多いのだ。手の中で燃え上がる炎の胎動がややあって――それをぽん、と高く上へ投げる。ばちばちと雷の律動を抱いたそれに、グウェンもあわせるのだ。
「雪解けの、春を」
 ――【Brigid  of  Kildare】 !
 精神の権限である女司教が悠然と姿を現した。ふたつの塔を従えるかの教皇の姿はグウェンに勝利をもたらすための采配を下す。高く跳ね上がったヴィリヤの球体に視線は集中した。
 ――ごう、とそれが輝いて!
 蛇が飛び出す。ちろちろと燃えた火球を追ってひしゃげた顔面を隠さぬそれが炎熱を追った!
「ヴィリヤ、こっちへ」
「うん! よろしくっ」
 派手に地面へバウンドする身体は高速で動きまわり世界の蹂躙を始めた!ごろごろと炎熱と雷の球体は転がっていき、正反対の方向へヴィリヤを抱きしめたグウェンが飛ぶ!黒い羽根がちらちらと舞ってもたちまち巨体に飲み込まれて消えていったのだ。
「うひゃあ」と笑い混じりに驚いたヴィリヤと、「あぶなかったー」とのんきな声色で行ってみるグウェンである。
「はいはい、どいてどいて――!」
 ぎゅおおおん!と鉄の馬にまたがった男らが二人、そんな二人の横を「駆けて」いった!
 ――愛機『Shadow.Rem』にまたがる悪徳が好き放題に暴れる蛇に「ヤキ」を入れに来る!
「ヴィラン相手に勝てると思ってんなら、残念! 」
 ぎゃうぎゃうと犬より喧しい旋回をタイヤが告げた!
 地面に降り立った際に生じる火花にも動じない!悪がふたつ、迷うことなく――その身体に「線」をひくのだ!はいずりまわる体を絡めとる、動けば動くほど「罠」はめぐる!
    キリング・セブル
「――【 紅 嵐 】完了」
 愛車に跨るのはその主であるヴィラン・カルミヌス! ちゃき、と眼鏡をかけなおして、己の技が巧妙に発動したのを確認した。がっしりと己の腰に絡みついた相棒の重みを感じながら、ドリフトと共にブレーキをかける。追ってくるかと身構えるが――しかし、蛇は変わらず生み出された炎熱を追いかけようとして地面に絡めとられていた。
「おいおい、脳無し? ちゃんと見といてよねぇ」
 ――こっからは、サービスショットなんだぜ?
 落胆ありありに興味を向けぬ龍に、困ったもんだと肩をすくめるヴィラン・カルミヌスである。
 紫電と蒼炎が舞う空間に、色気を感じない獣のなんと愚かで、浅はかなことか。己のレンズに映るそれに微笑んだ。
「きれーだなぁ」
 ――それを分けてやるというのに。
 かの蛇はそれに見向きもしない。死ぬのなら、きっとそれが原因なのだろうと思うし、「殺す」には一番いい理由だ。
「たのしそーだな、Darling? 」
 ――後ろから耳打ちされる声に、笑みを返す。姿は見えないのではなく、今は「焦らして」見ないのだ。
「けっこーね」
 ゆっくり、赤い瞳を閉じる。それがパーティの合図だ。
 どるるんと吼えた己の愛車を撫でてやって、ヴィラン・カルミヌスが視線を止めれば――眼前に現れるのは無数の紫電と蒼炎の弾丸!!
 手のジェスチャーだけで、ヴィラン・カルミヌスが銃を作る。己らを見向きもしない蛇の脳天を照準に入れれば、ぴたりと指先を止めた。
 その手の甲から――垂れる赤を、後ろでヴィラン・トワイライトが執着の絡んだ瞳で見る。
「どうせなら、俺にしとけよ。バァカ」
「ゴメンね! 拗ねないでよー」
 反省しているようで、してはいない。「やりたいようにやった」だけだ。
「ちゃっちゃと終わらせちゃお?ね。お楽しみは後にとっておきたかったんだって。」
 ――『悪い時間』にはまだ少し、早い。
 そういわれれば仕方ないか、とヴィラン・トワイライトが同意に笑えば『始まり』だ。
             アクギャク ノ ジカン
「さァ、――ココからは【Villains Party Time】ってね」
「消し炭になれ、糞蛇」

 ――BANG!
 打ち出すモーションを与えてやれば、怒涛の弾幕!!
 どどどどどど、と激しく炎熱が獣を襲う!地面を掘り起こし、炎熱が吹き上がり、呼び起こされる『生命』たちがその腹を焼き、蛇の片目が吹っ飛んだ!!!
 これにはたまらず獣もまた扉に戻ろうと高速で動く!蹂躙の為の動きはワイヤーに鱗を削られながら身体を血まみれにして、なんとかもがき苦しんだあと――飛び出した!
「おっとぉ、派手だね。させないよ」
「おー!むかえ、うつぞー」
 そこを!!
 ここぞとばかりに迎え撃つのがヴィリヤとグウェンである!
 蛇の眼前に飛び出たのならば、『月輪』でまずその衝撃を受け止めた!続いて、後押しするようにグウェンが羽で障壁を押す!
「――ッん゛ん、ん」
 力には自身がある。
 飛び出してきた獣がいくら大きかろうと、己とヴィリヤを守る「腕っぷし」だけは強いと自負がグウェンにはあった。押し込んでやろうと獣を『月輪』ごと真っ黒な翼で押すが――存外、付け根に響く。彼女の背部を根城とする刻印が熱く燃え上がるような痛みを与えてきていた。
「グウェンさん、無理はしないで」
「ッ、ん!!! 」
 こく、こくと肯いて。
 腕の中に居るヴィリヤを投げ出すまい。しかし、抱きしめすぎてつぶすわけにもいかないのだ。ぐうっと唇をかんだ表情の薄い彼女に、治癒を施すヴィリヤである。

「―ー勝てるよ」
「勝つ」

 声量は、いつも通りなのに。
 確かな強い声に、ヴィリヤの笑顔が思わず滲んでしまった。――刹那、怒涛の黒い羽たちが竜の身体を襲う!!傷つけられた箇所をさらにえぐるのだ!右目から血をあふれさせる獣を、容赦なく羽たちがさらに「えぐる」!
 たまらず進路を変えた龍である。逃げるように――実際逃げているのだが――扉に向かってはいずりまわるのを、迎え撃つ狼たちがいた!
 どど、どど、と地面を駆け、その体を作る炎がさらに激しくなるのを見て。

「――アンタもいたのかよ、クソ」

 思わず、――望が、手を己の愛する共犯者に舐められながら舌打ちをした。
 それに気づいた楪が顔を上げれば、狼たちと共に蛇を迎え撃つ「聖人」たちが在る。

「来ますよ」
「ああ」
 二人に必要な会話は、それだけで充分だ。
 これが今生の会話になるかもなど思ったこともない。二人が別たれる未来も視えなければ、きっと堕ちるときは一緒だ。
 二つを狙う顔を、正しくはその炎熱に狙いをつけた竜の顔を――ザッフィーロのメイスが殴る!!ばがん、と鈍い音がして巨体が宙に軽く浮いた。
「よし」
 ナイスショット、と――何処から聞こえたような気もしたが。
 そのような言葉をこのザッフィーロに言うのは一人二人程度のものである。ふ、と口元で笑ってやれば、後ろで詠唱を始めた宵がちょうど静かな声を窄めていった。
 儀式の始まりを邪魔させてはならぬ。宵の力は絶大故に詠唱が肝心だ。
 宵とて、無防備ではない。跳ね返る小石も巻き上げられる炎熱もすべて並行して防いでいく。ザッフィーロごと囲ってしまいたいが、それではこの彼をただの「でくのぼう」に変えてしまうと理解していた。
 戦えるのだ。――尊重しなくてはならぬ。
 それが、愛であるのだ。
 宵から出来る最大のフォローをザッフィーロに。そして、ザッフィーロは宵の恩恵を余すことなく好機に変えて未来へ齎す!!
「――宵」
 詠唱を繰り出す宵に目配せする。
 ザッフィーロの一撃で臆した獣を、狼たちが駆り立てる。追いかければそれは上空へ飛びあがり、いまにも扉の中に引き籠るのを繰り返そうとしていた。――また引きずりだすのは面倒だ。とは思うものの、「失敗」はあり得ないだろうなとも思う指輪である。

「後は頼んだぞ」
「――『星降る夜を、あなたに』」

 期待には、応えねばならない。――求められた強さを乗り越えてこそ、愛は!!
 頭 上 展 開 、【 天 航 ア ス ト ロ ゲ ー シ ョ ン 】 ! !

 彗星が降りそそぐ。
「わああ、綺麗だねえ」
「ながれ、ぼし?」
「――ほうき星かな」
 ヴィリヤとグウェンがその光景を瞳に映していた。
 宵の杖が向けられた蛇の身体に、その頭に――星が落ちる!!
 轟音、振動、破壊、破壊、破壊!!! 竜が一発目の衝撃に耐えられず地面に落ちたのならば、まるで釘でも打つように追撃の星が舞う!!逃げんとするのならばその残骸が、そして余波の炎熱がかの身体を焼いた!!
「――うん、充分な損壊かと」
「ああ。充分な働きだった」
 ふー、と長く息を吐いて星の導きをやめた宵がいれば、その肩にザッフィーロが手を乗せる。

「よくやった」
「ふふ」
 ――星が笑えば、願いは叶う。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

毒島・林檎
う、うるせぇーーーッ!
喚くな! 騒ぐな!
仮にも竜を冠するヤツなら、もっとお上品に振る舞いやがれってんだ!!
ぴーちくぱーちく喧しいのはアタシだけで十分。その大口、クソ豪華な扉と共に黙らせてやるッ!

超高速で連続攻撃をしてくるんなら、アタシも『その領域』に至ればいいだけの話。
うだらァッ! 『覚醒魔毒』だッ!
極限まで研ぎ澄まされた感覚で、全てを避けきってやるってんだ!
敵の攻撃が緩まった瞬間に、アタシの杖を『めった刺しフォーク』に変化させ――それを全力で突き出す!
『スパゲッティーニ』――要は、『突き刺したまま引き寄せて、巻きとるように引きずり出す』!
アタシの毒と共に、テメエを『壊してやる』!!


綾峰・美羽

マリーさん(f01547)と

硬さに自信はあるんですが
お互い防御しててもってとこですからねぇ
どうしたものか、なんて言っていれば肩にかかる手

今更気にしたりしませんけれど、なんて笑って、おせれば
目の前の騎士の翼と、肩にかかる感触に
……そういうのさらっとやるんですから、もう
小さく息を吐いて、視線は敵の方
どんな顔してても見えないのだろうけれど

よぉくご存知で、なんて軽口を叩いて
隙を見て突貫を
扉に戻る時とマリーさんに向かった時は、速度を生かして遮ります
あっは、これでようやく堅さ比べができますね?
貴方はぼくが守ります、なぁんて振り返ってお返しとばかりにウィンクを
背に守るものがあるなら、ぼくの守りは砕けません


マリーノフカ・キス
◎△
美羽(f00853)くんと

これは……硬い守りだね
二人で攻撃してはみるけど、なるほど厄介だ。このままでは良いようにやられるだけか

そっと美羽くんの肩に手をかけ、片目を閉じて
「なんとか崩してみよう。少しいかめしい姿になってしまうけれど、驚かないでね?」
普段は隠している赤銅な竜の角、そして翼を広げ――

「おっと、このままでは危ないかな。こちらへ、お姫様」
悪戯っぽく笑って不意打ち。そのまま触れた肩を抱き寄せ、翼で包み守るようにして――加護を打ち破る炎の吐息
扉を焼き払い、守りを破ることに全ての力を注ごう
少しでも隙を作れば、抜け目ない君は、見逃さないだろう?

……全く、ただでは勝たせてくれないな、と苦笑して


レイニィ・レッド
好き勝手荒らし回りやがって
単純に目障りです

イイでしょう
神サマの前ですし
テメェの為に特別に
――雨を降らせてやりますよ

息を殺し 気配を殺し
物陰に潜伏
奴が扉から身を乗り出した瞬間に仕掛けます

素早く接敵
奴の身体に鋏を刺し込み
『霧の都の赤ずきん』へ

テメェは雨を見たことがあるか?
土砂降りを見せてやりましょ
テメェの血潮でね

そのまま霧雨の中に紛れ
奴の攻撃を躱しながら
何度でもその肉に鋏の刃を埋めましょう
急所辺りを狙い派手な土砂降りを見せてやりましょう

どんなに高速で動いても
この雨の中にいる限り
テメェの動きは手に取るようにわかる

ほら
よォく見やがれ

今に雨が降る


イリーツァ・ウーツェ
? 何故、扉を閉める
出て来い、竜
強いのだろう
(※ニートの意味を知りません。)

渾身の力で扉を抉じ開ける
隙間が出来たら、爪先と杖を入れ
梃子の原理で押し開き、中へ滑り込む
服の影から『竜穿ちの矢』を取出し
竜に向かいUCを使用

神話再現――
絵画に描かれし竜滅の雨だ
滅びるがいい

折角だ、肉を持ち帰りたいな
竜の肉だ
蟲等に食わせたなら、強く為るかもしれない
私の肉では、魔素が濃すぎて中るのだ
食っても良い竜は、貴重だからな




「あぁああ、畜生、うるせェ――」
 喚くな、騒ぐな、と。くせ毛気味の頭を掻きむしってやりながら魔女が嘆くのだ。
 仮にも竜で在ろうに、あまりに卑屈な動きをする。
 毒島・林檎(蠱毒の魔女・f22258)からすれば、それは己との同族嫌悪でもあるのだ。痛みに苦しみ藻掻き、また扉に還る竜の動きを紫が追えば全身にかゆみが出る。
 もどかしい、はらただしい、むずがゆい――。
「仮にも竜を冠するってなら、もっとお上品に振舞えってんだ!! 」
 び、っと指を立てての警告だった。
 林檎は――竜たる生き物がどのような者どもであるかを知っている。故に、隣でその光景を見守る「竜」も彼女の言いたいことには同意した。
「? 何故、扉を閉める」
 出てこい、と。
 低く呼びかけるのはイリーツァ・ウーツェ(虚儀の竜・f14324)だ。
 この竜が『ニート』の名を冠している意味は正直、彼にとっては「どういう意味」なのかも度し難い。それよりも、偉大なる存在であるはずの己らが卑屈に引き籠るさまに理解が及ばなかった。
「強いのだろう、出てこい」
 何を恐れるというのだろう。
 確かに、イリーツァにも心得はある。人間と言うのはあまりにも「時折」、超確率で盤をひっくり返すことがあるのだ。イリーツァが約定に縛られているとはいえ、彼が「戦ってもいい」場所ですら人間に敗北させられたことはある。しかし、偉大なる、――怒れる者であるのならば好き勝って暴れればよいではないかと『いきもの』として不思議に思うのだ。
 腕を組んで、不思議そうに首を傾げる。こういうことも『思考する』内に入るのだろうか、とも。唸る男の横顔をちらりと林檎が見上げた。
「ちょっと、えーと」
「はい」
 端的な返事に気圧されたような心地になる林檎だ。イリーツァのガーネットがふたつ、見下ろす。
「え、ええと、その、その、……ど、どうする、とか、決めてンのか」
 戦場だ。
 ゆえに、『どもる』ようでは勝てぬ。己を鼓舞してやりながら、ぎゅうと手袋ごと手を握りしめた。外にはねた髪の毛を震えさせながら林檎が竜に問えば、岩のような竜は――また、不思議な金色を見上げている。
「はい。あれを、開けます。引きずりだせば、討伐は可能かと」
「――よし、わかった。オーケイだ。じゃあ、アタシは」
 できるかもしれない、と竜が思う。
 その声に一切の悩みも躊躇もないのだ。伸ばされた竜の尻尾をじいっと見ながら、彼もまた「竜」であることを林檎が認識する。
 ――悪徳の象徴、破壊の化身、魔王。竜は、どの世界でも共通の「モチーフ」だ。林檎が「魔女」と言われてきたのと同じくどこでも、「そうある」ものである。
「あいつを、ぶっ壊す」
 ――じわり、口から毒素が漏れるのを。
 きっと、その唇すら焼きかねぬ紫が立ち上ったのは、静かなイリーツァの瞳が視ていたのだ。

「いやぁ、硬さに自信はあるんですが、ああもヒッキーされちゃいますとねぇ」
「ううん、だよねぇ」

 一発。
 お互いに、扉を殴ってみたのである。先の猟兵たちが渾身の一撃で繰り出したものならば多少扉も歪曲した。「無敵」であるが「破損」はどうやら通ずるらしいので、せめてその手段で活路を見出そうかとしたのだが、先に地面に降りたのが質量が体に対してあるらしいマリーノフカ・キス(竜星のコメットグリッター・f01547)で、舞い落ちるようにして優雅に降り立ったのが綾峰・美羽(陽翼ホーリーナイツ・f00853)である。
「いやはや、どうしたものか。お互い防御しててもねぇ――といいますか」
 弱音も出てしまうというものだ。
 美羽自身、得意なのは攻め手よりも搦め手である。
 相手が全力で挑むのなら、それをひらりと受け流し、相手の力を使って下すほうがうまい。なにせ、盾を使って戦うという手法を取るのだ。がしょんと盾を一度、地面に着けて背を隠したら様子を影から見上げる。
 ひとつになってしまった赤の瞳が、美羽を警戒して集中していた。
 均衡状態には違いない。どう――攻めるかを考えていたら、その小さな肩にマリーの手が添えられる。
「なんとか崩してみよう」
 このままでは、いいようになぶり殺しにされる。
 そも、己らと竜の大きな違いは『おおきさ』だ。竜にとって鱗ひとつはがれる程度、己らが指を一本奪われるのとは釣り合わないのである。
 先にも竜が暴れ、活路を作っていたのを思い出し――なりふり構わず戦わねばならないか、とも思う。戻った先にイリーツァと林檎の姿が見えたのも大きい。偉大なる悪徳のすがたを惜しみなく広げたイリーツァの翼に、マリーもまた己の覚悟を固めた。
「――美羽くん」
「はい? 」
「すこし、いかめしい姿になってしまうけれど」
「今更、気にしたりしませんよ」
 ――もっと気にすることがあるでしょうよ。とは言わなかった。
 肩に与えられた感触も、愛想のある人間らしいウィンクなんて表情も、『女性』に向けるようなものではない。それは、美羽が『女性』であることよりも『戦友であり好敵手』であることがきっと優先されているからだ。
 ――そういうところが、マリーらしいのだと思う。
 ゆっくりと、竜たる姿を解いていった。普段は赤銅の角も翼も仕舞っているのがマリーである。
 竜は本来、女を攫い人を喰らい、国を亡ぼす存在だ。聖騎士なんてものよりは一番遠く、故に彼らの紋章には天敵である鷲がよく使われる。
 牙を少し口の隙間からのぞかせる繊細な顔つきが、竜を見上げていた。それでよかったと、美羽も思うのだ。今の己の表情も、お互いに悟り合いたくはない。
 胸にじんわりと滲んだのは、――どういう意味の、緊張だったろうか。

「はァ――あ」
 ぐしゃぐしゃだ。
 元より、自然というものは手が入らぬ限り整えられたものではない。
 しかし、ここは神々の国である。神々がそれなりに線引きをして組み立てた文明にはデザインがあった。建築美であろうと思われるようなものもあれば、合理的に「つかいやすそう」と言う点で整えられた施設なんかも見受けられるのである。それを、かの竜は見向きもせずに散らかしてしまった。
「単純に、目障りです」
 ――何もかもが、正しい形を喪ってしまうではないか。
 赤いフードをかぶったまま、裁定者である男が嘆きにも近い呆れを口からこぼす。
 世界を荒らすのは、切り取り線に沿ったものでなければならないのだ。断ち切りばさみでフェルトを切るときはチャコペンを使うし、もっと大掛かりなものを作るなら型紙だっている。なのに、この『切り取り線』のように土地をえぐり森を裂いた痕跡は何も意味のないもので、正直なところ――虫唾が走ってしまうのだ。
「はァ」
 『ヒーロー』としてではなく、『個人的な感想』としても解せない。
「まぁ、イイでしょう」
 降り始めた小雨がちょうどある。猟兵の力同士がぶつかりあって生まれた一時的な天候だ。
 この怪物の最も得意とする環境がそろっていたのは、竜にとっては『最悪』の事態だったかもしれない。
「特別に。――雨を降らせてやりますよ」
 しゃきん、――と。
  レイニィ・レッド(Rainy red・f17810) 
 【 霧 の 都 の 赤 ず き ん 】は鋏を哭かせていた。

 霧雨が満ちる。
「あ?」
 林檎が突然の環境変化に声を上げた。
「猟兵のものです。害はないかと」
 魔術の『糸』を読めるイリーツァがいて、「そっか」と警戒を解いた。
 巣から堕ちた雛のように震える林檎の姿を視界に収めていたが――それも次第にやめて、「参ります」とだけ言って一歩踏み出す。
 どん! と衝撃が走った。林檎も思わず「うぇ!? 」と言ってしまったが無理もない――イリーツァは「怪力」の持ち主である。それも、とびきり『規格外』!
 宙に舞ったイリーツァが扉にばしんと身体を打ち付けながら接触する! が、が、と二つの手が歪曲により生まれた狭間に割り込んだ。
「折角だ」
 ――竜の肉が欲しいな。
 ぎぎ、ぎぎぎ、ぎぎぎぎ――。文字通りこじ開けられるそれに、邪竜のほうが怯えていた。同じ捕食者であり、同じいきものであり、同じ竜種であるというのに何故、何故、何故――!

「 『 食 っ て も 良 い 竜 は 、 貴 重 だ 』 」

 なぜ、喰らうというのか!!
 その闘争はまさに本能であった。びゅうっとしなる鞭のように巨体は扉からたまらず飛び出す! こじあけようとした竜の身体を首で押しのけ身体を『無敵』の場所からはみ出させた!
「おっと、――このままでは危ないかな。こちらへ、お姫様」
「はいはい。ッ、お願いしますよッ! 」
 扉は開かれた。あとは、『其処に帰らない』ために時間を稼ぐのが必要だ。
 竜は『お姫様』を奪うものであるから、正直この姿をマリーはあまり晒したくはない。しかし、もし、この戦いを神々が視ているというのなら――証明になっただろうか。
 翼を広げる。めちゃくちゃに駆け回り暴れる竜の洪水めいた激しい動きが始まった!
 マリーがぎゅうっと肩に乗せた手に力を入れて、美羽を抱き寄せる。そこにロマンスはないのだ。しかし、――ただただ、守るだけの意志は強い。
 竜の鱗同士がぶつかり合って、マリーの身体を多少揺らす。しかし、赤銅は微動だにせず!
「――『吐息は、苦手なのだけどね』」
「こんな時でも、謙虚なんだか」
 ああ、刮目せよ。
 神よ、未来で――竜と騎士は、手を取り合って生きていけるのだと!

 大きすぎるのだ。
 竜は、己の視界に映るものが劇的に通り過ぎていく故にちいさいものには眼が届かない。
 熱を感知する器官はあるらしいのに、この未曾有の事態にそれを遣えていないところを見ると――『正しくない』と思った。
「雨が怖いか? 」
 だから、此度の問いはいつもの『常套句』ではない。
 レイニィが竜の鼻先に『落ちる』。それは一滴の雨粒のようなものだ。
「――土砂降りを見せてやるよ」
 ひらひらと背中から風を受けて赤いコートが舞う。竜は、思わず首を上げて怪物の身体を振り払った。空にぽおん、と軽く投げ出されたレイニィの身体はたちまち霧雨に飲まれて消える。
「よォく見やがれ」
 ――それは、もはや皮肉だった。溶け込んだ赫のいろを追えるほど眼も頭もよくはないらしい。しかし、ここで笑っては三流だ。一流の怪物と言うのは、『予告』をする。

「 今 に 、 雨 が 降 る 」

 つんざくような悲鳴が上がった!
 竜がのたうち、巨大すぎる体のどこもかしこからばしゅばしゅと血を吐き出してもだえ苦しみだす!大きな体をうねらせ、地面に打ち付け、暴れ、真っ赤な噴水をいたるところから始めていたのだ。
「あああッくそ、うるせェエエエエエエエッッッッ!!! 」
                  エ ス プ レ ッ ソ 
 その様に耐えられなくなったのが、【覚醒魔毒【Caffeine】】を服用した林檎である!
       ・・・・・・・・
「てめェは、『スパゲッティーニ』だ――この、蛇野郎ッッッ!! 」
 吼えるようにして飛び出した!
 極限まで磨き上げた感覚は今や毒に支配されたものであり、毒を制するものである! 杖をフォーク状に変化させてやるさまは、もはや魔女と言うより戦乙女に近い!
「――うぅううう、だらァアアアアアアッッッ!!!! 」
 吼える!
 鬱屈した痛みが、その怒りが、渦巻く想いが力になって蛇の身体を壊していった!
 鱗の剥がれだした身体に突き刺すのは容易だ。さらにレイニィによって傷ついている箇所はえぐりやすい。痛みに暴れ、林檎の要る場所をどこかに打ち付けようものならその体をすばやく駆けあがり、別の場所を串刺しては巻き取る!
「ふへ、ひ、ひひ――ッ、ぶっ壊す!! 」
 刺した箇所に毒が染みれば腐食も始まる。とろけだした肉に突き刺すフォークをねじれば、筋繊維をからめとった!引き抜けば、その束が抜ける!
「――いただけませんか」
「わっ!!? 」
 もはやその行為に快感を覚えだそうかとしていたころである。
 ずん、とひときわ強く落下したのがイリーツァだ。隕石のような質量を浴びて、竜も一度腹を地面に深く沈めてしまう!
「私の肉では、魔素が濃すぎて宜しく無い様で」
「――あ、アタシの毒みたいなもん、か? 」
 黙して、しばし意図を考えてから、肯定。
 竜が突然の質量に少しだけ動きを止めていたが、またびゅうっと駆けだす。思い出したような動きから――扉に変えることは予想できた。
「や、や、や、やる、あげるっすよ! だァら、あのッ、代わりに! 」
「――承知しました」
 『予測』した。
 相手が何を考えて、どう思うのかを考えるというのを最近覚えたばかりである。
 手を伸ばして、『依頼』には最善を尽くすのがこの竜であった。――約定だけでなく、彼は彼の脚で動き出している!

「 滅 び る が い い 」

 無機質な言葉が響いて。
 ――【 神 話 再 現 ・ 竜 穿 】 ! ! 
 竜を穿つためだけに造られた矢たちがあたりに舞う。イリーツァの血を吸った対竜兵器たちがびゅううんと飛び出せば、たちまち着弾!!
 爆風に煽られて林檎とイリーツァの身体が飛べば、大きな翼でまず彼女を守る。
「大事ございませんか」
 霧の中に話しかける顔に迷いはない。
「えェ、――派手ですね」
 傷つけて回っていたレイニィの声だけが返ってくる。無事であることを互いに確認すれば、それ以上はいらなかった。質量のまま地面に落ちていくイリーツァと林檎の離脱を確認して、美羽とマリーがここでバトンタッチを果たす!!

「 逃 が さ な い よ 」
       バニシング・フレア
 ――業火、【 炎 竜 咆 哮 】!!
 普段は美しい言葉しか吐かぬ口から、灼熱の衝動が吹き出す!!
 空にごうっと伸びたそれは蛇の『扉』を焼き焦がし、その金を溶けさせていた!たまらず、蛇が炎の主に向けて怒りの叫びをあげる。
「あっは、怒っちゃいました――? 」
 そういう相手のほうが、得意ですよ。
 美羽が盾を繰り出す。
 マリーからも耳打ちされていたのだ、「隙が出来たら、君は見逃さないだろう」と。
 よくわかっているな、と思うのである。流石何度も手合わせをしたり、会話をした間柄だ。
 『竜』であることを含めて『騎士』から通いマリーに比べて、美羽というのは『そもそもの気質』が『騎士』から遠い。
 愛らしい顔をしていながら正しい『型』なんて守らぬ型破りな戦い方でいつでも勝利を得てきた。全身凶器とはまさに彼女のことで、盾で通じないなら足を使うし頭も使うし爪も使う。
 『守るため』の勝利ならば――『守り』ならば、彼女の右に出るものは居ないのだ。
「ぼくが、守りますよ」
 飛び出す。
 とても少女の身体に在る力とは思えぬ速度で、マリーを氷獄の空間に放り投げてやろうとする蛇を迎え撃った!
 その際に見せたウインクに、「全く」とマリーも困ったように笑うのだ。

「本当に、ただでは勝たせてくれないな」 

 ――ず っ と 、 そ れ に 拘 っ て き た の だ か ら !
      ガーディアンズウィル
 発動、【陽騎舞踏・祈護】!!
 一筋の光となった美羽の身体が、『守りたい』赤銅の竜への願いによって輝きを増す!
「はァ、あ――」
 思い浮かべるのは。
 本人の軟派な仕草や、真面目なようで茶化してくるところや、キザっぽい仕草――肩に置かれた手の重さ、竜の姿、それを現わすときの少し張り詰めた痛みを含んだ顔。
 彼は、竜だ。
 今、美羽が接敵せんとするこの怪物と全く同じ要素である。しかし、――彼とてまた、美羽にとっては『守るべき』ものだ。
 ――失いたくない。
「あああああああああああああああああああああああッッッ!!!!」

 失 わ せ な い ! ! ! 

 蒼と光が、衝突する!!
 カッ、と光って――二度、空気が収縮して爆風!!どうっと巻き起こる超新星の誕生に似た勢いに神々の炎熱すら巻き上げられた。
 蛇竜が、その首を地面に跳ねさせる。へし折れたらしい牙ががらがらと地面を滑っていって、後に盾と地面を接触させてバウンドし、地面を転がった美羽もあった。
「美羽くん! 」
「あは、――堅さ比べ、ぼくの勝ちって、カンジ、で」
 全身から汗を吹き出しながら擦り傷まみれになって笑う騎士を、竜が抱き上げてやる。
 ――君の勝ちだよ、と口元が形を作って、その背を撫でてやった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

リア・ファル
【FH】
涼鈴ちゃん(f08865)と

SPD

やれやれ、とんだ内弁慶かな!

「…成程、じゃその作戦で行こう。ヨロシク、涼鈴ちゃん!」

『イルダーナ』による機動戦闘から!
ヤツの大立ち回りに付き合いつつ、被害を減らす
(空中戦、操縦、追跡、逃げ足)

『ライブラリデッキ』から麻痺弾毒弾をロード、
時を測るように撃ち込んでいく
(時間稼ぎ、毒使い、マヒ攻撃)

相手の連続攻撃を誘発、機動回避
毒麻痺で隙があるはず

「今だよ、涼鈴ちゃん!」
一気に攻勢へ

UC【五光の神速疾走(ブリューナク)】発動!

「ヌァザ! 多元干渉最大出力!」
そのまま顎下から尾まで、突撃し唐竹割りに斬り抜ける!

「真っ向! 斬り抜けろ!」


劉・涼鈴
【FH】
でっかいドラゴンだ! 負っけないぞー!

リアとごにょごにょ相談!
よーっし、作戦開始だー!

リアが先に突っ込むからその間に私は【気合い】を入れて【力を溜め】ておく!
はぁあああああ――!!

敵が超高速連撃を発動したら力を解放! 真紅のオーラの【神獣変化】!!
りょーかい! いっくぞおおおお!!

地面を踏み砕く勢いで【ジャンプ】して飛翔! 敵に向かって一直線!
扉の隙間に挟まって左右に手を伸ばして、【怪力】で閉じないようにつっかえ棒になってやる!
これで引きこもれらんないぞ!

閉めようとして襲い掛かってきても蹴っ飛ばしてやる!
それよりも――私に気を取られてていいのかな!!


上野・修介
◎△
流石に引き籠られたらあの扉を破るのは難しい。
「なら狙うは『後の先』か」

――恐れず、迷わず、侮らず
――熱はすべて四肢に込め、心を水鏡に

得物は素手格闘【グラップル+戦闘知識】

調息、脱力、先ず観【視力+第六感+情報収集】る。
敵の体格・得物・構え・視線・殺気等から攻撃の拍子と間合いを量【学習力+見切り】る。

ダメージを恐れず【勇気+激痛耐性】一撃受ける【覚悟】で相手の攻撃に合わせてUCによる【カウンター】を叩き込む。

自分に対しての攻撃だけでなく、他の猟兵への攻撃に対しても【ダッシュ】で割り込む。

……あと別に深い意味はないが、他の猟兵の戦い方も観察。
いや別に、神前武闘会での対策とか考えてないですよ?


鷲生・嵯泉
冷気を扱う竜とは又何処ぞで見た様な……
――しかし気に食わん
巣に籠るのは竜の習性なのやもしれんが、其の姑息さは癇に障る

其の図体での動きなぞ高速であれど解り易いというもの
戦闘知識と第六感にて攻撃方向を先読み見切り
致命と成るものは躱し、他は武器受けにて届かせない
僅かでも扉が開いたならば、衝撃波で牽制し引き籠る迄の時間を遅らせる
まあ出て来ずとも構わん
其れなら其の扉ごと砕いてくれるまでの事
――剣骸殺狩、加減は無い
逃げる事も躱す事も赦しはせん、叩き落してくれよう

如何な氷の呪いであろうとも、未来の熱を奪う事など出来はしない
否、させはしない
正しく邪竜としてすら在れなかった過去の残滓、疾く潰えるがいい




 霧が晴れ、雨も失せ。
 ――しかし、まだ竜は藻掻いている。
 ごるごると体内を律動させながら歪曲して溶けだし、破損の広がる扉にすごすごと引き籠っていく姿はなんともみじめだ。
 とんだ内弁慶だ、とリア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)は思う。
「よし、じゃあさっきの作戦通りで! ヨロシク、涼鈴ちゃん! 」
「よーっし! 作戦開始だーッ!! 」
 がんばるぞ! と劉・涼鈴(豪拳猛蹴・f08865)が元気に返事を返したのを聴いてからリアも空を駆ける。
 息をつく暇などは与えないのだ!どうっとリアが愛車のギアを上げる。
 コマンド画面が宙に浮遊し、イルダーナに命令を下すのだ。視線の動きだけでシステムは主の考えを読み取る。――稼働音が今から己らの織りなす『ルート』を導き出して計測、計測、承認、成功率、100%!!
「いッッくよぉ、――イ ル ダ ー ナ ァ ッ ! ! ! 」

 空気すらも置き去りに!                   ブ リ ュ ー ナ ク 
 ソニックウェーブを生み出すほどの速さで展開されるのは、【 五 光 の 神 速 疾 走 】だ!!
 >Attack Command..._Install_
 >Speed_Mode._
 初手、まずは速度を上げる。リアからしてもこの状況はあまりに被害が多い。相手が大きすぎて、猟兵たちが少し暴れるだけで文明は破壊されていた。――しかし、生命が尽きたわけではない。
 あたりの被害状況を収集して、一番ダメージの出た場所を計測し、浮き出るモニターにマッピングを果たす。世界の中心だ、やはり広大であるが――この宇宙の運び屋であるリアにかかれば踏破などたやすい!
「よし、よし、よし――オッケー。いいかんじ!」
 飛び出していったリアのそれを、涼鈴の研ぎ澄まされた耳が拾う。
 全身を脱力させた。鼻から精いっぱい息をすって、――口から鋭く深く吐く。
 ふうーっと吐き出されるたびに身体に力が巡っていった。ここ、地脈を感じ取り、大地との一体化を図るような動きを見ていた男がひとりいる。
「――あれは」
 己と同じだ。
 上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)もまた、武人である。
 引き籠ってしまわれては扉をこぶしで破るには難しい。故に、修介もまた奇しくも涼鈴と同じ戦法を取ることにしていたのである。対処できるのは、「後の先」だ。
 他の猟兵が作り出す戦いの場を見るのは貴重な機会である。彼もまた、人間の武を背負う男だ。故に、猟兵同士の戦いには興味がある。己に作り出せない「ちから」に対する策は更なる学びを生むに違いないのだ。
 ――涼鈴の身体に纏う覇気が、修介が見ている間だけでもみるみる異なる。
 快活そうな少女らしい姿だと思ったのだ。しかし、いまやその息遣いは正に獣のものといっていい。
「よォし」
 唸るような声に、ごくりと唾をのんだ。
 ――わくわくする己の胸を抑えるように、いつもの堅い顔でそれを見守る。

「いッ、く、ぞォオオ、おおぉおおおおおおおお―――――!!! 」

 その跳躍が出たのは、リアが高速で動き回るのを見ていて耐えられなくなった蛇が顔を出したころである。
 リアは常に機動力を上げて『今』は誘い出すことにしたのだ。いくら『無敵』の中に居るとはいえ、目の前で跳ばれれば爬虫類はとびかかりたくなってしまうものだろう。
 だいぶ弱らされているのもあるだろうから、はやく何かを取り込みたいのではないかと思って――ハンドルを素早く切り、アクセルとブレーキを繰り返していた。
 被害が深刻である場所から遠ざけるために素早い軌道を繰り出し、ようやく――ヒット!
「釣れたッ! 」
 確信をもって叫べる。
 狭い顔から繰り出した顎がリアを追いかける! この瞬間を待っていたのだとイルダーナにあらかじめ入力した離脱ルートを駆け巡った! ハンドルを押し込めば急降下、引き上げて急上昇、回転、右に体ごと倒して空中を急カーブ!
 もう少し、もう少しと赤い瞳が細められる。空気の流れを読みながら、一番抵抗の少ない狭間を駆けて尾の先まで出始めた体にリアが微笑んだ。
「『イルダーナ』、『ライブラリデッキ』――オープン! 」
 複製魔術――蓄積したデータから生み出す魔術ウィルスをハッチから生み出す! 麻痺と毒を作り出して逃げまわる機体を追いかける顎にまず放射!!
「そうだよね、かわしてくれるよねッ――!!」
 おいそれと竜はそれを呑まない。攻撃されたと認識した竜が身体の動きを変えだす。この瞬間を待っていた、とリアが笑った。
「 今 だ よ 、 涼 鈴 ち ゃ ん ッ ッ ッ ッ ッ ッ ! ! ! 」

 生み出されたのは波紋だった。
 地面を蹴った竜の少女を見上げる。――大砲よりもずうっと破壊力のある勢いを見送ったのは鷲生・嵯泉(烈志・f05845)だ。
 どこぞで、冷気を扱う竜のことは見たような気がするが。
「気に食わんな」
 少女二人に引きずりだされてようやく土俵に出るなど、姑息にもほどがありもののふである嵯泉としてもこの事態は易々見逃せぬ。竜としての習性であったとしても、戦い挑むいのちに敬意を払わぬ戦闘をふるまうというのはあまりに「芸」がない。
「案は在るか」
 目の前にて、獣の少女を見上げる修介に問う。
 修介は緩く首を振って、しかし、まっすぐに答えた。
「――扉に、入れないのだと」
   ギ ガ ン ト マ キ ア
 【 神 獣 変 化 】! !
「っしゃあああああ!!これで、もう、ひきこもれらんないぞ!!」

 がっしと扉に張り付くように、竜の逃げ出した扉に新たな怪物が在る!!
 主のいないその空間を閉ざすこともそれ以上開くこともないように、金色の大扉に番人たる神獣がやってきたのだ! 己の巣への侵入に怒りを満ちさせた竜が大暴れを繰り出す――蹂躙である!!
「止まれ止まれ、止まれ――」
 暴れ狂うさまは正に災害! しかし、これ以上の被害を出すわけにはいかぬ。
 どんどん被害状況を現わす数値が上がり焦りも滲むが、それでもリアは相棒からの弾幕をやめなかった!!
「止まれェエエエエエエエエエッッッッ!!!! 」
 暴れ散らす身体が扉に在る涼鈴を狙うなら、それを蹴り飛ばしてやる。
 痛みに怒りが増して、ぎゃああと振り払うように丸太のような身体でぶち当たろうとするのならば問答無用、身体部位で一番堅い「頭」で頭突きを繰り出した涼鈴だ!
 衝撃波を生むほどの威力で上半身の筋肉のみで仕上げるそれに、たまらず竜もぐらりと動きを鈍らせる。しゃああと威嚇する音波に耳を傷めながら「は、」と涼鈴も笑ってやったのだ!
「いいのかなァ――私に気をとられててさァッ!! 」
 暴れれば暴れるほど毒は巡る。口の端から紫の液体をブクブクとあふれさせてながらも血走った眼は怒りが収まらぬ!死なねば落ち着かぬいらだちを全身で体現してみせる姿を――切り刻む剣があった。

 男が息を整える。
 その間に、剣が舞うのだ。
「――、加 減 は せ ん ぞ 」
 低く唸った金色の修羅がゆらり、尾をなびかせる。
 それが背中に落ちぬ間に――修介と嵯泉の周りを這いまわり蹂躙する質量を切り刻んで見せた!!
 ぎゃああと悲鳴が上がり、しかし致命に至らぬ傷はより怒りを蓄積させる。高速で動き回るそれを武器で受け止めてみせながら、確実に鱗を這ぐ眼光があった。
        ケンガイザッシュ
 これぞ、――【剣骸刹狩】。
「叫ぶ事しか出来んのか、見苦しい」
 吐き捨てるように蛇腹の剣を振るえば、獣を調教するよりも手厳しい「罰」が竜に与えられる!
 これほど大きな体をしていれば、高速であれど動きは読みやすくわかりやすいのだ。冷静な隻眼で其れを見つめ、振り回し、確実に攻撃を叩き落とす!!
「往けるか」
 振り向くことは無い。
 青年の呼吸が深く吸って――止まったのを耳で聞いた。
「はい」
 短い返事に、「では、往け」と返す。しなる剣鞭で地面を砕き、それを合図とした。修介が駆ける――!!

 ――恐れず、迷わず、侮らず。
 ――熱はすべて四肢に込め、心を水鏡に。
 誰かを守るための拳だ。己を超えるための強さだ。未来を得るための力だ!
 嵯泉めがけて飛び込んできた龍が速さを落とし始めたのは、リアの毒が回りだしたあかしだ。それを見逃さず、手で大きな鱗の間に指を入れ――掴み上げて巨体を持ち上げた!!
「こっちだッッ!!! ――ヌァザ! 多元干渉最大出力!」
 リアが己の銀猫に叫ぶ。魔剣が展開され――『イルダーナ』の排熱が真っ赤に燃える!!
 逃げ出そうにも安寧の巣には獣がおり、己の身体はすでに修羅によって傷だらけだ。邪竜にも慣れぬ怒れる獣を、嵯泉が憐れなものを見る眼で見送った。
「如何な氷の呪いであろうとも、未来の熱を奪う事など出来はしない」
 圧倒的な光景である。その様に思わず涼鈴も楽しくなって足の裏どうしを合わせたりして飛び跳ねた。
 ――強い。その質は過去と未来で違う。
 ――強い想い同士のぶつかり合いだ!!
「いっけぇ、リアぁああああッッ!! 」
 リアの声がするほうに、修介が持ち上げる。軸足のつま先をそちらに向けたところで、嵯泉も息を止めてあたりを駆ける余韻が残った尾先を刀で切り払って「軽く」してやった。
 ぼどぼどと降りかかる冷たい血に染まりながら、ふうと息を吐く。
「疾く、潰えろ」
 持ち上げた感覚が軽くなって修介を助ける。たった一人の人間の力で――竜を持ち上げた!塔が如くそびえたつ蒼を、そのまま薙ぎ払うように地面へ――。
「真っ向――斬り、抜けろぉおおおおおおおおおおッッッ!!!!」
「ぉお、お、おおおおおおおおおおおッッッッ!!!!!!! 」
 【――崩 す 】! ! 
 リアがイルダーナで超低空飛行を繰り出せば!!
 丸太のような切れ込みから、ざぱぁッと一閃――振り落とされる獣の腹を切り裂く!!
 修二の投げ技と共に大地に打ち付けられた竜が、地面を破砕した。吹き上がる溶岩の煌めきは、まさに新しい勝利の証である!!
 巻き上がる土ぼこりと、飛び散った臓腑を上空から見届けて「いよっしゃあ! 」とガッツポーズをした獣が手を放せば重々しく、金色の扉は閉まった――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

叢雲・源次
【義煉】◎

熱を求め怒り狂う邪龍か……なるほど、確かにあの巨体は脅威ではある。騒々しい鳴き声も厄介な上に身を隠しては攻撃を繰り返す狡猾さも持ち合わせているようだ

だが、所詮それだけよ
攻めの『起こり』が分かるのならば、刈り取るのは容易い
行くぞクロウ…早急に終わらせる

心臓の炎獄機関が唸りを上げる
右目から蒼い炎が溢れ、次第に周囲に纏うように顕現する

>inferno_cylinder ignition
お前の求める熱は此処に居るぞ。

>set overclock
超速駆動、開始

奴が最大戦速に達する前に仕掛ける
その牙の根を、爪母を、そして胴を
七閃絶刀、二連
合計14連の連続斬撃にてその存在を斬り捨てんとする


杜鬼・クロウ
【義煉】◎△

閉じ籠られると面倒だなァ
熱…いのちを弄ぶのとまた少し違う…
欲しいモノを只欲す(ある種真っ直ぐすぎるヤツ
だが世界はテメェの玩具じゃねェ
”遊ぶ”なら俺達と遊んでくれや
イイもん魅せてヤっからよ!(剣に火宿し

(いつ見てもお前の蒼炎は綺麗だわ
邪竜の蒼よりも
文字通りいのちの灯故に)
やけに息巻いてるじゃねェか
熱く(オーバーヒート)なりすぎンなよ、源次(前へ出て

源次の一声に不敵の笑み
玄夜叉を握り直す
【聖獣の呼応】召喚し補助
抵抗し舌先を横薙ぎ
敵の赤目に態と自分の姿映す
源次に併せて胴や尾を二連撃

俺達の正義は生き様そのもの
魂が呼応する儘に
これからも

己が護りたいモノの為に力を揮う
己が志は最後まで貫き通す


鎧坂・灯理
式島殿(f18713)と
キレそう
ニーズヘッグという名称が伝統的な神話生物の一種でしかないことくらいは知ってるがどうしても兄の名前を連想してしまってキレそう
八割くらいキレてるが抑えてるから大丈夫だ

式島殿、こいつらをいい感じにぶち殺す案ってありませんか?
なるほど、乗ります
舌に触れて式島殿と巣へ、噛み付かれるならばUCで顎を掴んでおく
巣ということはお仲間がいるのだろ?
式島殿が隙を作ってくれるから、私が片っ端から頭を蹴り砕いていこう
今の私はかなり強いぞ

冷静ぶってるのは威圧する必要がないからだ
式島殿にターゲットが集中しかけたら怒鳴って注意を引こう
害虫は巣から駆除しなくてはな さっさと終えて帰りましょう


式島・コガラス
灯理さん(f14037)と

な、なんか苛立ってますね……大丈夫ですか?
ええと、そうですね……どうやらアレは触れたものを中に引き込む性質があるようですから。
その巣にあえて入り込む、というのも手でしょう。強靭な扉の防護がなければ、結局はただの巨大な蛇です。

巣の内部では奪光魔弾を使います。狙う部位は目――ではなく、蛇の鼻先にあるピット器官。
魔弾で熱源探知を物理的に破壊し、呪いで残った視界も閉ざす。これでもう何も見えないでしょう。
撃てる弾はあと四発ですが……構いません。四発とも撃ってしまいましょう。
奪光魔弾は決定打に欠ける力ではありますが……トドメというなら、彼女の炎よりも相応しいものはないですからね。


ロク・ザイオン
★レグルス

(熱を探す蛇なら、己の刀はさぞや眩く映るだろう
どいつもこいつも森を踏み躙る、赦し難い病ばかりだ)

(あの扉の向こうが『巣』なのだろうか
巣穴に引き込まれるなら、先ずはその巣穴から燻り出す
舌先に捕えられ扉の向こうに招かれたなら
「烙禍」で氷の国とやらを熾った炭に変えてやろう
戦場が燃えれば燃えるほど、己にとっては戦いやすい
厭うて扉から這い出したなら、あとは相棒の仕事だ)

※咆哮、簡単な言葉以上の発声ができません


ジャガーノート・ジャック
★レグルス

(ザザッ)
炙り出しは上手くいったらしいな。
――では、此処からは本機の仕事だ。ミッションを開始する。オーヴァ。

(ザザッ)
【経験予知/EXP-ectation】。
牙も爪も、その巨躯も。放つその冷気とて脅威と呼ぶに値するのだろう。
――だが、当たればの話。
竜種とも怒りを以て暴れらるモノとも多く戦ってきた。経験則を基に全て回避し急所と思しき箇所に射撃を叩き込む。(学習力×戦闘知識×見切り×スナイパー)

龍との対峙。
ともすれば心躍る戦いの場なのかもしれない――が、本機の心を昂らせるには些か至らない。
何故なら此は「狩り」なのだから。心を浮かす事なく、冷静に。粛々とお前を狩ろう。(ザザッ)




「キレそう」
「えっ」
 ――冷静沈着、氷のようで熱い鎧のような人だと思っていた。鎧坂・灯理(不死鳥・f14037)がそうつぶやいたものだから、思わず式島・コガラス(明日を探す呪いの弾丸・f18713)が間の抜けた声を出してしまったのも無理はない。
「だ、――大丈夫、ですか」
「ええ。八割くらいキレてるが抑えてます。大丈夫」
 大丈夫じゃないと思う。
 コガラスには灯理の叡智といっていい脳の誇る性能は数字で見たこともなければ手にしたこともないから理解が及ばないのだが、――灯理の得意とするところは並列思考だ。
 Aを考えている間にBを思案しCを同時に検証しながらDを実行できるなど容易い。歩くスーパーコンピュータそのものであるといっていいほどであった。――その頭を「怒り」で熱されているのはたいていよくあることだったのだが。
 兄の名と被るかの竜の無様を目の当たりにしてしまって怒りが満ちる。感情に「嘘」をついているから、眼が赤く染まりエマージェンシーを知らせているのだが灯理に鏡は無いから知る由もないのだ。
 コガラスは――とりあえず、と策を練る。
「どうやらアレは触れたものを引き込む性質があるようです」

 熱を探す、蛇である。
 なにせ蛇と言うのは普段、扉の中にはいないが土の中に居るものだ。己も何度か掘り当ててしまったことがあるし、驚かせて申しわけないと埋めたこともある。
 ――しかし、それから学んだのだ。
 ぼうっと光を燃やす己の刀を抜いてる。
 【烙禍】だ。ロク・ザイオン(蒼天、一条・f01377)はひどく怒り狂っていた。
 ここにいる神などに見せてやる享楽めいた仕事など彼女の中にはない。彼女からすれば今からの行為は『狩り』であった。ごうごうと燃えるのはなにも刀だけではなく、彼女の胸の中だってそうだ。
 ――赦し難い。
 うう、と低く呻くような唸り声を上げて森の中を歩いている。がさりと音をわざと立てて、蛇からの注目を集めていた。ちろちろと空気を燃やしながら火の粉を散らして、その時を待つ。
 ざらり、と扉から顔が出た。
 ひしゃげた顔面は痛々しいが、それでも大きさにそぐわぬしぶとさがあるらしい。
 冷気がごう、とその黒から這い出して、――ぱぐりと口を開けた。

「式島殿、こいつらをいい感じにぶち殺す案というのが」
「ええ。あえて、巣に入り込むこと、とか」
 先の猟兵たちによる戦いを見ていた。
 コガラスは集中してひとりひとりがどのように対処して削ったのかを知っている。だから、灯理に提案するのはもっとらしいことだったのだ。
 『巣』たる氷獄に招いて引きずり込まれるというのなら、いっそ『そうされてみて』はどうだろうと。
「とはいえ、入り込んだ時にどうなってしまうかはわかりません」
 がさり、と己らの後ろから気配がする。
 ――蒼の竜はどうやら身体を伸ばして地面を探っているらしいのだ。見上げた灯理が自分らの背面すら探知してみせる。其処にいたのは、ロクだ。
「おや、しかし。――なるほど。乗りましょう」
 怒りに満ちていたらしいロクの顔が少しほぐれた。思いもよらぬにおいに驚いたのかもしれぬ。目の前には、何度か顔を合わせたことのある二人がいたのだ。
 ここで何をしていたか、と聴いてみたかったがあいにく今は声が出ぬ。耳が並行に下がったのを見て、灯理はなんとなく察した。己らの獣もよく「そう」する。
「来ますよ」

 ――ぞるり、と三人を喰らうように牙の折られた口が開いて。

 ――ざざ、ざ。
「炙り出しは上手くいったらしいな」
 暴れ狂う蛇の姿を、赤い光がとらえている。
 三人の猟兵を呑んで、ずるんと扉の向こうに消えたかの生態が悲鳴を上げて飛び出したのだ!
 氷に冷やされた体がどこか焦げていて、ちりちりとした痛みのあとが生々しい。まだ火の粉を纏いながら地面にのたうつまでを見下ろしていた。
 ――ざざ、ざざ、ざ。
「――では、此処からは本機の仕事だ。ミッションを開始する。オーヴァ」
 ――ざ。

 ノイズの混ざる声で兵器が軽く敬礼を送れば、扉からはロクが出てきた。
 ずるりと身体を上空から放り投げて、くるりと地面に足をつける。ぱ、ぱ、と己の氷を振り払うようにして、あたたかな世界に目を細めた。

 結論から言うと、『巣』は破壊されたのだ。
「おお、うようよといたものだ」
 灯理が感心の声を上げる。事実、中には大勢の蛇がいた。どれもこれもがなかなかに巨大で、しゃああと鋭く息を吐く。不躾であるが戦う意気込みは過去ならではの執念を感じさせられていた。
 威圧する必要がない。肩を少しすくめて、灯理がひとつ両方をごきごきと回した。
「それでは、さっさと終えて帰りましょうか」
「ええ」
 撃てる弾は、あと四発。
 ――この後に控える猟兵同士の戦いを考えてもいたが、やはり出し惜しみをしてやる気にはならなかったコガラスだ。会話は通じているらしいロクに顔を向ける。
「始めます」
 ロクが静かに肯定した。待ちきれなかったのだと燃える刀を有象無象に向ける。
 体が冷え切ってしまう前に、コガラスは全力を打ち込んでおく必要があった――故に、ロケットスタートは彼女の合図から!
         アブレプシア・マジック・バレット
 刹那――発光、【 奪 光 魔 弾 】 ! !
 コガラスが放った魔弾はけして蛇たちを貫くものではない。その蛇たちが持つ鼻先のピット器官であった。
 そこで獲物の熱を判断して襲い掛かるというのなら、潰してやれば「襲い掛かられる」ことはあるまい。
 コガラスの判断と共に――蛇たちは方向感覚を失って持ち上げた首を垂らしたり、お互いにぶつけあうことになってしまう!
「ああ、なんだ。歯ごたえも手ごたえもない」
        オ ト
 ――其処に、【落陽】す。 
 灯理はこの生き物たちに怯えもない。彼女の脚が三角の頭に叩き込まれれば、あっけなく蛇たちは紅蓮に燃やされて彼女の生命に還った。静かに氷獄を燃やし尽くし上着が翻る。
「――話し合う必要もないな」
 威圧してやることもあるまい。ただただ、当然のように踵で砕き、蹴り上げる。その頭がずぱんと炎に断たれた――ロクだ!
 軽やかにとんだ猫の身体を見送って、ふ、と笑む。
「そうそう、静かにしてるほうが強い」
 自分の口元を掌で覆いながら、黒い「口封じ」を作って。
 コガラスの目の前を紅蓮が覆えば其処に切れ込みを入れていく聖の炎熱だ。ロクの橙を煽る炎が彼女の白い輪郭から影すら消した。
 ずうっと飛び出る獣がぐわりと、牙を開いて。

「――かァッ゛!!!!!」

 巣の中に在る獣へ斬りかかる!
 仕上げだと言わんばかりに炎熱であぶりだしてやれば、たちまち蛇竜はそとに放り投げられることになって――今に至る。
 心躍る対峙では在ろうと思ったのだ。なにせ相棒らがこうして「追い立てる」事に成功した。
 ジャックのセンサーにも見てわかる通り、ロクのあとから熱源反応がふたつ扉より降りていく。体力の温存に至る彼らが処分を待っているのならば、冷静に。
 ――ジャガーノート・ジャックはいつでも任務に忠実だ。
 これはそういうロールプレイで、画面に広がる光景は『現実』のジャックのものである。
 冷静に、着実に、粛々と。――ゲームではない。これは、リアルの問題だ。
「お前を狩ろう」
 ジャックが、宣言する。
 ぶわりと空に炎熱を放った黒豹が――駆ける!!!

「確かにあの巨体は、脅威ではあるな。生き物らしく頭を使って獲物を追うさまも観察できる」
「だなー。ある種生き物らしくてまっすぐなやろォだと思うね」
 ――しかし、所詮それだけだ。杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)が討つべき竜を見上げた。森を砕き土地を壊し、氷の痛みを纏いながら世界を蹂躙してみせる。もはや災害と言っていいレベルの暴れ方に――目を細めた。
 生きざまとしては確かに一貫しているが、何が『起こる』かが分からぬのが人生と言うものである。
 たった一つの事件ですべてをひっくり返された叢雲・源次(DEAD SET・f14403)はその波の恐ろしさを知っていた。ぎゃあぎゃあと暴れ狂いもんどりうつ生き物の愚かさを見上げて、そのやかましさに彼の視界がざりざりとノイズに震える。しかし、動じない。――一時的なものにいちいち対処していては遅れるだけだ。
「刈り取るのは容易い。行くぞ、クロウ」
「おうよ。――早急に終わらせる、だろ? 」
 獣に我がもの顔で世界を弄ばれてたまるものか。それこそ、この神具である己の使命にとって悪だ。
 歌舞いた衣装をひと撫でしてから、己の剣を構えるクロウである。蛇は大きな巨体を空から踊りださせて痛みと熱にたまらぬともんどりうってまた世界を縛り上げようと巨大な体を這いまわし始めていた!
「世界はテメェの玩具じゃねェ。”遊ぶ”なら俺達と遊んでくれや」
 ぐ、と服の袖を引っ張り、剣に炎を宿す。――【聖獣の呼応】が彼に力を貸すのだ。
 クロウの中に沸いた怒り、敵意、不快感を糧に変えて世界を守るための力を彼に植え付ける。朱色の鳥が応え、羽を伸ばし――ぐるぐると渦となって剣にまとわりついた。
 源次もまた、己の心臓に手を這わす。
 『炎獄機関』がうなりを上げた。――ごうっとその右目からいのちの熱さがあふれ出る。蛇がたちまち、源次の方を向いた!
 周囲に纏うようにひとつ、それこそ青龍がごとくまっすぐないのちをもった男を護るかのようにまとわりつく脈が顕現した。
 ――いつみても、お前の蒼炎は、そのいのちは。
  オーバーヒート
「熱くなりすぎンなよ、源次クン」
「善処する」
「ハッ」
 クロウの視線が源次から逸れた。彼を襲わんと狙いを定めた蛇に、――飛び出す!
「何処を見ている。当機の獲物よ」
 その横っ面を蹴り飛ばしてやるのがジャックだ! 空から滑空した黒に下あごを割られて、蛇が怒りを爆発させた! 高速の蹂躙が始まり、規則性の分からぬ無茶苦茶な動きをひょいひょいとすり抜けるように飛んで見せるジャックがいる!!

「――悪いが、もう読んでいる」

 計算しつくした。
 【EXP-ectation】は文字通り経験値を生かすユーベルコードだ。
 ありとあらゆる痛みに対抗して、常に戦地を歩んで、生きたジャガーノート・ジャックとその――『中身』の経験は常にリンクする!
 ありとあらゆるセーブデータを呼び起こして、赤色の液晶いっぱいに並べて計算と攻略ルートを導いたのだ! 樹々をなぎ倒す体を躱し、通り過ぎていく側面に射撃を繰り出す!レーザーファンネルから繰り出される熱光線に身体を貫かれながらも速度を堕とせぬ蛇が、熱量に狂わされて何を狙えばいいのか混乱しだして――己の身体を大きな崖へぶつけだし、爆炎が上がる!
 炎に少しクロウが眼を細めれば――その隙にと言わんばかりの速さで、蛇の頭が右わき腹にあった!
「ッはは、いい度胸だァ」

 ――燃やせ。

 ごうっと悪しきを燃やす破魔の鳥が狩る!!
 蛇の顔面を燃やした鳥がけたたましく鳴き声を上げたのを合図に、二つが足を前に出した。

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

>User_DEADSET
>READY?_
 ――己が護りたいもののために戦う。
I> … … … OK_
>ALL BLUE. SET COMMAND//:ACCESS_ID?
I> Order_inferno_cylinder ignition.
… … … OK_PASS?_
>  S E T  _  O V E R   C L O C K ! !
 ――己 が 志 は 最 期 ま で 貫 き 通 す! !

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

「勝負だ」
「負けてられっかよォ! 」
       ストラト・セイバー
 起動――【 七 閃 絶 刀 】!!!
 踏み込むタイミングは、ほぼ同時!二つの炎熱が前に出たのならば、繰り出されるのは連続の斬撃である!!
「いやはや、圧巻だな」
 蛇の行く先が気になって、それが崩した崖の隣――山のでっぱりからそれが終わるのを見守りながら灯理がぽつりと零す。コガラスもまた、己には出来ぬ『剣技』を観測していた。
「すごい――」
 炎熱が吹き上がる。
 刀を突きさせば邪竜の身体は燃え、強大な体を少しでも削ってやろうと男が二人叩き込んでいった!お互いにお互いの邪魔にならぬよう、時に足を交差させ、しかし己らの炎で身体を焼かない。
 突き刺し合うようにお互いの後ろを走る身体に炎を伝わせれば、其処がたちまち灰に変わる。
「当機にもいい経験だ」
 ――弾の節約にもなる。
 ぼろぼろと崩れ落ちる獣の胴体を「分割」するようにジャックの熱光線が放たれた!!ごあ、っと勢いよく地面¥ごとえぐり爪痕を刻みつける破壊の力が、獣の身体を丁度半分に砕く!!
 致命にはまだ遠い。しかし、世界を覆う半分の部位が――灰に還った!!
 ロクが満足げに鼻を鳴らす。
 どうだ、おれの相棒はすごいだろう――!と言いたげの顔を見て、灯理もまた肯く。コガラスには、その無言のやり取りが何を指すのかはわからなかったが黒い灰の中にたたずみ、刀を納めた男たちを見ていた。
 燃えつきる前に、己らの焔を鎮める。
「半分だ」
「半分程度で充分だ」
「正義にか? 」
「いンや――未来には、よ」
 ――魂 が 呼 応 す る ま ま に 正 義 は 執 行 さ れ た ! !
 獣の半分が黒霧に変わり空に消えていくのを見て、クロトは笑う。己らの後続を信頼して獣に追撃を仕掛けぬ彼の『合理的な利己的』さには――源次も倣う。
 あまり燃やしすぎるな、と相棒に釘を刺されたばかりだ。己の地獄を感じながら、両目を閉じれば――右目の焔が、ふつりと消えたのだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

コノハ・ライゼ
つまり、引きずり出してご馳走してあげればイイって訳ネ?
沢山頂いて機嫌がイイもの、存分にサービスしちゃおうか

【焔宴】で仕事道具召喚
焔を派手に舞わせ熱そのもので『誘惑』しましょ
敵の動向読み姿現す瞬間『見切り』
『スナイパー』で『マヒ攻撃』乗せた焔をぶつけてくわ
冷たさに満ちた呪詛、焔でしっかり『料理』したげる
こんなモノじゃ物足りない、メインディッシュはこれからってネ
怯ませた隙に『2回攻撃』で『傷口をえぐる』殴打狙い『生命力吸収』で弱らせるヨ
どうぞ召し上がれ……じゃなくてゴチソウサマかしら?

敵の攻撃は『オーラ防御』で弾き『激痛耐性』で凌ぎ
期を逃さず動くようにするねぇ

さあオレの「魅せ方」、お気に召して?


シズル・ゴッズフォート
◎△
なんと、巨大な。しかもあの扉、実に堅牢そうで
―――ですが。扉の内に籠ったままでは戦えぬでしょう?
狙うならば、ソコですか

このサイズ差、生半可な得物では鱗に阻まれますか。機甲鋏槍と……あと、バイクを使用します

痛みは耐性と戦場の酔気で以て考慮の外へ
速度で撹乱し、攻撃を誘発
狙うは竜の口の中。あるいは瞳
幾ら竜であろうと、そこは鍛えられぬでしょう!

……っと、いけません
どうにも、獣の逸りが騎士としての私を呑みたがる……配分が難しいですね
なので、ええ。此処と見た一瞬に、全力で以て掛かるといたしましょう
戦術としても、獣の滾りを満足させるのも、恐らくは都合が良いでしょうから

―――堅刃の型・瞬華傾世。槍術編整!


クロト・ラトキエ
◎△
ニュイ(f12029)と。

怒りに震えて…
震えて引き籠る…
少し…結構…可也?難解ですが。
出て来られても迷惑ということはよぉく判ります。
ならば。

応ずるより罠を。
進行方向、爪の掻く軌跡、口開き牙立てる真っ直ぐな動き…
先に鋼糸を張り、一つ動けば一つ傷付くと身に染みさせ。
ワイヤーフックで樹々を跳び、中空へ…
敵の軌道とUCを、空へと向かわせたく。
見切るは常の通り。
周囲を傷付ける内は躱すは最低限、致命傷さえ受けねば良い。
爪擁す腕、長い身…返す刀ならぬ糸を張り、
ニュイの備えも整ったなら。
一撃に空切らせ、弾丸の雨から身を翻し、放つUC
――拾式

時に、骸の海っていい引き篭もり場所があるんですけど、移住どうです?


霧島・ニュイ
◎△
クロトさん/f00472

ひきこもりの、竜…だと…!!?

無駄に周りを傷つけたくないなあ…
とはいえ、いつも以上に避けていないクロトさんに内心ハラハラ
ああもう痛いの好きだったよって兄さんに言いつけてやる!!
狙いが分かるので手出しは最低限だが、彼が深手を負いそうなら、此方から敵に制圧射撃

此方に攻撃が来たら
UC
敵の動きをよく見て
視線、爪の動き、尻尾の動き
銃で武器受けし威力を抑え、時に受け流し
敵のUCは見切って避けて

避けた時、この瞬間がこの上ない好機
止められない攻撃なら、態勢立て直す必要あるもんね?
スナイパーで命中率を上げ、Mirageで一斉射撃
何よりも命中に重みを置く
クロトさんでかいの一発宜しくねー


雨宮・いつき
あの扉、普通に狐火を撃ち込むだけではビクともしませんね
まったく、御隠れになるだなんて難儀な事です
…ならばここは、日ノ本古来からのやり方で挑むとしましょうか

炎の花吹雪を舞い散らせ、
奏でるは祭りの囃子の如き賑やかな笛の音
今にも踊りたくなるような【誘惑】に駆られる【楽器演奏】を披露致します
岩戸に御隠れになった神の御話のように、あの青い竜も扉の外へと誘き出してみせましょう
目にも美しい幻想の花弁、心弾む快活な拍子
踊る阿呆に見る阿呆、貴方も一曲踊りましょう

けれど、綺麗な花には刺があるもの
晒したその身体を炎の花吹雪で包んで焼き払います
怒りという闘志を滾らせるほどに燃え上がるこの炎、しかと味わってくださいな


ジャック・スペード
◎△

引きこもり無敵に成る、か
ならば本体を扉から引き摺り出すまで
リボルバーより扉へ誘導弾を放ちつつ
涙淵で鎧砕きの重い一撃をお見舞いしよう

物理的な反撃はシールドで受け止める
避けて世界が消えるのは本意ではないので
躱すのはやめておこう

仮に扉が壊れずとも、扉をドンドン叩かれるのは
引き籠りの邪魔となるし、煩わしいだろう
安寧を求めるなら其の術を解き、俺達を相手にするしかない
――それが、其の技の弱点だ

証明が完了したら鷲獅子を召喚
さあ――立派な鉤爪を披露してやれ、フェルナント
其の隙に本体へと捨身の一撃
零距離射撃で雷の弾丸を撃ち込もう

お前が好きに出来るいのちなど
此処にはひとつもない
正義の鉄槌、観念して喰らうが良い


ティオレンシア・シーディア
◎△

なぁにあれ、扉を防壁にしたヒット&アウェイ?うっわあめんどくさぁい…
ただでさえあたしデカブツ相手にするの苦手なんだけどなぁ…

扉に引きこもられたらあたしじゃどうしようもないし。突っ込んできたとこを叩くのが上策かしらねぇ。
〇挑発なりで意識をこっちに向けさせて、攻撃に合わせてスタングレネードの〇投擲で〇目潰し。連続攻撃の軌道を〇見切って、隙だらけのとこに○カウンターの●明殺を合わせるわぁ。
刻むルーンはアンサズ・ユル・ティール。
「神言」をもって「悪縁を断つ」「勝利の剣」…この「場」で披露するには、うってつけでしょぉ?
…折角だもの。ただ見てるだけじゃなくて声援の一つくらい寄越しなさいな、カミサマ達?


ミツハ・カイナ

他猟兵との連携も歓迎
連携できる場合はサポート優先に動く

おやまぁ、次は扉の奥に潜む竜ときたか
でかい図体のお陰で見切りやすいがそうやって動き回られるのは困るな
『織神・刺突雨』を空に飛ばしてUC発動
いたずらに摘み取られたいのちの嘆き代わりだ、喰らっておけ
【毒使い】【呪詛】の水花弁をニートヘッグに向けて放つ
水の花弁と合わせて【早業】で『雹双』を抜き【呪殺弾】を【乱れ撃ち】
的が大きいのは狙いやすくていいね
でかい分効きが良くないかもしれないから休みなく水の花弁と銃での攻撃を続けよう
ある程度の距離は取りながら牽制も兼ねて動き回るとしよう




 爆炎が上がり、竜の扉が揺れる。
「――普通に狐火を撃ち込むだけでは、ビクともしませんね」
 雨宮・いつき(歌って踊れる御狐様・f04568)が目を細めてぱしん、とひとつ己の蒼扇を仕舞う。空気を強く叩いたそれが火の粉を散らし、顕現させていた火ごと『閉じた』。
「引きこもり無敵に成る、か。面倒なものだ」
「うっわぁ……。ただでさえあたし、デカブツ相手にするの苦手なんだけどなぁ……」
 甘い声色も今や気だるさで精いっぱいのティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)と、いつきとティオレンシアを守るようにして身をかがめ、ふたりの影となってやるのがジャック・スペード(J♠・f16475)だ。ささやかなモーター音が、彼のモニターに映る扉を解析し始める。
 ――検証、硬度『予測不可能』。
 ――再現、『不可能』。
 ――破壊、『不可能』。
 ――破損。『可能』。
「焦らせることはできるやもしれん」
「……おびき出すってことぉ? 」
 ジャックが唸れば、ティオレンシアが活路を見出したような顔をする。
 確かに先の猟兵たちはそれに成功した。しかし、この蛇とて愚かではない。何度も痛みに晒され、傷ついた体は「罠」にはかかりにくかろうと推測できた。
 そこに、求められるのが『芸術家』の発想である。この景色に『必要なもの』と『不必要なもの』をかき分ける『才能』を持った男が一人、己の指でフレームを作りながら検証を始めていた。
「――ンー。駄目だな。『センス』っつうのがない」
 美しい空は生命で彩られて、華やかなものだ。黄昏色の世界が徐々に夜へ切り替わる瞬間であるというのに、不躾な金色は『よごれ』に等しい。
「厚塗りしねェとな」
 ――己は修繕の技巧はないが。
 ミツハ・カイナ(空憬・f19350)は空が好きだ。空に憧れる飛べない彼は、ゆっくりと小さな羽をはためかせながら仲間たちに目配せをする。
 ――『色』がそろっているのだ。
「いい色を作ってやるよ。おい、そこの――」
「オレ?」
 猟兵たちという『よい画材』が揃っている。ならば、それを使うカイナのセンスこそが煌めく瞬間だった。声をかけられたコノハ・ライゼ(空々・f03130)を狐と知ってか知らずか、いつきと交互に見る。
「そう、アンタだ。――名前は? 」
「ライゼちゃん、とでもドーゾ。うそうそ。ライゼでいーよ」
「ライゼ。オーケー、あっちとマッチングだ」
「よ、よろしく、おねがいしますっ」
 カイナが選定する。指さした先にライゼが蒼い瞳を向ければ、ぴゃあっと肩をこわばらせたいつきがいた。
 ――まさか狐であることを見破られたわけではあるまい。
「ハイハイ。よろしくネ。あー、肩のチカラ抜いて? 」
「は、はいっ」
 『色の合わせ』がよかったのだ。いつきが似た色相の色で視線を交わせば、ライゼも己の得物を手にして側に立つ。
「それ、は? 」
「アー、これ?フライパンとお酒」
 手で弄ぶかのようにくるくると回して見せながら笑うライゼに、いつきは『どうして彼が己と組まされた』かを理解したのだ。『火が無ければ料理はできない』。
「次は、――ソコ二人は決定だな」
「そぉね、私も守ってもらえそーな人と組んだほうが嬉しいかもぉ。飛んだりできないしぃ? 」
「了解(Copy.)。最善を尽くそう」
 ティオレンシアには、ジャックを導く。
 ジャックの一歩はティオレンシアにとっては三歩になるのだ。まず、歩幅も体の強度も違う。ジャックの金色のモニターにティオレンシアの強度が入力され、提示された。
 ――想定ダメージ、5倍の数値。
 ジャックとてスクラップ扱いのマシンである。しかし、圧倒的に耐久性が違うのだ。忘れぬように画面の片隅へ己とティオレンシアの耐久値を置く。
「ソコは、……元から一緒に動いてるか? 」
「僕等ですか。ええ、そうですね――」
「ひきこもりの、竜……だと……!!? 」
「じゃあ、ソコはソコで動くべきだな」
 カイナが次に声をかけたのは、クロト・ラトキエ(TTX・f00472)と霧島・ニュイ(霧雲・f12029)だ。
 怒りに震えて閉じこもる竜が――弱っているとはいえ、堅牢な扉に閉じこもられては彼らも手が出せない。まして、『必勝』の傭兵もターゲットが出てこない限りは殺しようもないし、それに倣う青年も手が届かないのだ。
「どういうプランを予定してんだ」
「罠を」
「――あんまり、無駄に周りを傷つけたくないっていうか……」
 ニュイがしぶしぶと声に出せば、クロトもまた肯く。
 二人が懸念するものを察したカイナも「なるほどな」と理解を示した。――天災レベルの被害が出始めている。
 ここが神の国であるから、「竜」が暴れても壊れていないが単純に「文明の崩壊」は防がねばならない。
「分かった。それも俺の――俺達の作品にゃ不可欠だな。よし、あとは」
 ニュイがちょっと顎を引いて、甘い判断だったろうかと心配そうにするからクロトが微笑んだままゆるりと首を振る。護るべきものが見定められているのだ、ニュイの考えは尊重されるべきである。
「アンタだ」
 ――『白』の髪色に声をかける。
「私、――はい」
 夕日のような眼をした仲間が『必要だ』と言うのならば。
 獣である事を隠す聖騎士がそれにしたたかな返事を返す。シズル・ゴッズフォート(Cirsium・f05505)は要請に従った。
「バイクか」
「はい。生半可な得物では逆に呑まれるかと。――機甲鋏槍を」
 がしゃり、と手にした得物を肩に乗せ、片腕でハンドルを握る女騎士は勇猛そのものである。
 少し腕を組んで、顎に手をやるカイナが顎を撫で、鼻を手で覆い、「は」と満足そうに笑った。
「イイ。イイな。よし、決まりだ」
 ――シズルの周りに皆が集まった。バイクにまたがる彼女を動かすよりも、そのほうが早い。
「奴さんは完全にビビってる。この間も攻撃してこねェからな」
「それが、弱点だ」
「ええ。狙うならば、その習性です」
 解析の終わったジャックが扉の耐久度を共有する。シズルもまた、それを『獣』の習性だと補足した。
「破壊は無理でも、破損はできる、ね――どんづまりかと思ったけど案外いけそうかしらぁ」
「引きずり出してご馳走してあげればイイって訳ネ?オーケー。任せといてヨ」
「――はい、精一杯舞いますっ」
 最高の『神話』を作ろう。
 いつきが肯けば、楽しそうにプランを練るライゼと、メンバーの心強さに素直に安心したティオレンシアだ。
「被害は最小限で、完全勝利ですね」
「よーし、よーし。頑張るぞっ、うんっ」
 意気込むニュイとその命綱を握っているクロトである。静かに思案する蒼は漆黒の前髪が垂れるが、輝きは失っていない。
 年甲斐もなく、楽しいと思ってしまうのだ。戦場であるのに、こうして猟兵たちと、そして、ニュイという可能性で織りなす『勝利』を作ることが――。
         レッツ・クリエイティブ
「じゃあ、――『 創 作 活 動 』といこうじゃねぇか!」
 【狂花涙・青】が咲き乱れる。これからの「制作の時間」には必要不可欠となる「色」は花びらとなって、仲間たちを決して傷つけない演出にくわえられた。
 空を愛する『芸術家』が『筆』を取れば、――『色』たちが肯き合って戦場を駆けた!!

「神様の前で『魅せる』なら、ごちそうは不可欠よねェ」
 ぼう、ぼう、ぼう。
 ライゼが両手に調理器具を構えるのならば、それがいつきの炎にあぶられてより力を増す。
 【火行・鬼焔蛮浄】が織りなす景色はあまりに幻想的だ。沈黙を裂いた笛の音が空間を支配する!
「イイBGM、食べるのにも邪魔にならなさそ」
 いつきが笛を口に添わせてやれば、リズムのよい八百万の神々が愛する音色が流れてくるのだ――軽快な音の飛び出しと共に、彼の狐火があふれ出す。ライゼのフライパンを真っ赤にさせ、楽し気に蒸留酒の栓を片手で開けてみせたライゼだ。
 じゅわぁあああ、とフランベが立ち上る!
 香りのよい熱が空間に漂い、――たまらず、舌先をちろりと扉から現わした。竜が反応している。
 日ノ本の国には、この蒼竜と似た女神がいた。それは、岩戸に隠れてしまい世界から太陽を消してしまう。故に、困り果てた人々は楽しく踊り、喰い、笑い合う『祭り』に勤しむことで神を再び『輪』に迎えることを為した。
 幻想の花弁が舞い、快活な拍子が響く。
 ――踊る阿呆に見る阿呆、とはよく言ったもので。
 蛇がゆるゆるとおびき出されて来た。顔をずるりと扉から出した血まみれが、ぼどぼどと冷たい血を地面に流す。
「来るヨ――」
 ライゼが嗤う。
 お客様はずいぶんと腹を空かしているらしい。
 そして、いつきの拍子に寄せられた『神』たちの眼もまた期待に満ちていた。
「ただ見てるだけじゃなくて声援の一つくらい寄越しなさいな、カミサマ達? 」
 ――おもてなしの心は、お客様だって必要だ。
 ティオレンシアがジャックの右腕パーツに乗せられながら上空にてルーン石を掲げれば、普段よりもずっと質の良い魔術が流れ込んでくる。
「わぁお。大盤振る舞い」
「――善いことだ」
 重火器を構える。ジャックがそのトリガーに手を駆けて――金色のモニターに映る仲間たちの姿を確認した。
 ニュイとクロトが所定の場所にいる。問題ないよ、と空に腕で丸を作る青年の愛らしい動き見届けたら、ティオレンシアに声をかけた。
「落ちるなよ」
「落とさないでよぉ」

 ――誘導弾、射出!!

 まず、ジャックの手にした重火器からの発砲だ! すっかり祭りに浸っていた竜は『台無し』にしてくる豆鉄砲に怒りをあらわにした!しゃあああ、と鋭く息を吐いて、注意をジャックへ向ける!
 躊躇うことは無い、そのまま――『涙淵』と名付けられた武装で殴りかかった!狙うは、その頭ではない。扉だ!
「破損させることはできる。――証明してみせよう」
「せェ、のッ」
 ジャック一人の力では難しい。
 そこに、ティオレンシアの――【明殺】が乗せられる!!
 掲げたルーンが意味するのは、アンサズ・ユル・ティール。三つを合わせれば「神言」をもって「悪縁を断つ」「勝利の剣」が造られるが、ティオレンシアは生憎「剣」を持ち合わせていない。
  ――故に。

「ぉおおお、おおおおおおおッッッ!!!!! 」

 ジ ャ ッ ク が 『 剣 』 に 代 わ る ! ! ! 
 神の息吹が乗せられた一撃は、扉に大きな切り傷をつけてみせた!! 散った金箔に怯えて、獣が蹂躙を伴う動きで逃げ出す!!
「はい、お待ちかね――フルコースでドーゾ! 」
「しかと味わってくださいな!」
   ゴチソウ
 【 焔 宴 】が振舞われる!!
 飛び出してきた獣の軌道を赦さぬ焔舞がいつきの笛音が止まる瞬間に花吹雪が如く繰り出された!! 二重の螺旋になる炎たちが、大きな蛇の身体にぶち当たる!!
 料理の手順は、――まず、鱗をはがれた蛇を充分に熱してやることから始まるのだ。それが、どてんと地面という皿に寝かされる。
「お待ちしておりました」
 ――たまらず、暴れるだろうと踏んでいた。
 地面を這えば脅威であるが、世界にとぐろを巻くような律動の往く先々にワイヤーが組まれている!走れば血が噴き出し、爪をひっかければ剥がれ落ちた。蛇が思わず、動きを止めてあたりを見る。巨体過ぎて――知れなかったのだ。
 いたるところに、罠、罠、罠―――!!
「うわーん! もう、本ント、無茶するなぁ! 」
 兄さんに言いつけてやる――なんて悲鳴を上げながら、ニュイが蛇の律動を躱す。
 いつも以上に『避けない』という選択肢を取った己の尊敬する相手は、致命傷に至らぬよう動いているとはいえ巨体の突進を『受け流して』いるのだ。その衣服が擦れ、じんわりと黒がさらに黒く滲む。勝利に拘らぬとはいえ、あまりに『動かない』。
 ――何を狙っているのかはわかる。
 クロトは『クロト自身が』罠なのだ。だから、ニュイも過度な手助けはできない。
 しかし、この巨大すぎる相手を前にして逃げ回る自分とは正反対で、クロトは――全く動じないのだ。
 死を拒んでいるからこそ、立ち向かう姿勢がある。
「ニュイ。案内を」
「――わかった! 」
 ヘイトを他の猟兵に『今は』譲るべきでない。未だ舞を止めないいつきが狙われる前に、ニュイが蛇の視界をその身体で覆った。
「へーびさん、こーちらッ! 」
 【観察回避】。
 これも、クロトから習ったことだ。
 敵の動きをよく見て、限界ぎりぎりまで引き寄せて躱す。鼻っ面を両手で抑えてぴょんと飛び越え、その背中を転がるようにして衝撃を殺す。素早く動く背中に接した部分が摩擦で真っ赤になったがそれでも止まらない!
 ニュイは翻弄に出たのだ。『止められない』動きはニュイの常に変わる動きに追いつけない!!
「だよね、そう動くと、思ってた――!! 」
 奇しくも。
 己がクロトと同じことを言えるようになるのが、少しうれしくて。
 Mirageを抱えて、その銃口を走り回る腹に向ければ一斉の弾幕!!地面すら震わせ、己の身体を浮かせながら木に背中をぶつけても、ニュイの射撃は止まらない!
 ――覚えていないことは多いし、被っている猫は分厚い。
 情けないような声を出し、お調子者のように動く事もある。今は、『どちら』らしいだろうか。ああ、――空は、夜が近い。
 黄昏が終わりそうなころ合いに、ニュイの弾も尽きる。――彼に蛇の顎が向かった。
 息を深くはいて、ニュイが左手で己の前髪を押し上げる。
「じゃあ、クロトさん。――一発、でかいの宜しくね」

 汗ばんだ柔らかな顔を、壊れた獣の顎が飲み込んでしまう前に。
「時に」
 宙に浮いた男は、まるで時計の針がごとく正確な体幹でまっすぐに空へ在った。
 返す刀ならぬ糸が宙をめぐり、張り詰められている。獣は、己の景色がどうなっているか見えていない。――この獣が竜であったのは、ある種救いだったやもしれぬ。見えていたら、絶望の色しかなかっただろう。
「骸の海って――いい引き籠り場所が在るんですけど、移住。どうです?」

 【 拾 式 】 が 炸 裂 ! ! ! 

 吹っ飛んでいく鱗と角と、たちまち絶叫した声量に鋼糸がぶちぶちと斬り、そして、切られる!
 跳ねまわるように地面へバウンドして、大きく世界を揺らしながら蛇竜がもんどりうった!
「お前が好きに出来るいのちなど、此処にはひとつもない」
 ――それを、そのままにしてはおかない。
 【傲慢に囚われし鷲獅子】が空から駆けて――落ちる!!雷を纏った正義の鉄拳が繰り出されるのだ!
  しかし、それだけではまだ「罰」には相応しくない。どるるとエンジンの音を響かせて、もう一匹獣が備えていた。
 
 その身は、獣である。
 牙のない獣だ。いくら獲物を捕まえたとて、仕留めきることのできない無能である。
 飾られ、愛され、束縛されるだけの――ただの権威の象徴にしかならぬ存在であるのが、いやで、いやで、今彼女は獣であることを受け入れて此処にいる。
 狙うは、残った「瞳」だ。
 口の中に突っ込んでしまえば氷獄に案内されてしまう。故に、そこを貫くことにした。
 獣のはやりがいくらでもバイクの速度を上げたがる。しかし、それは御するのだ。
 仲間たちとの作戦を立てるのは、「獣」の己ではできない。だが、「獣」の己は彼らの「牙」になることが出来る。いま、こうして――砂塵を巻き上げて大きな蛇に横から突っ込む勢いは、仲間たちに望まれたものだ!!「己」を保ったまま――全力でかかれ!!

「【堅 刃 の 型 ・ 瞬 華 傾 世 】。―――槍 術 編 整 ッ ッ ッ ッ ! ! ! ! !」

 一瞬の隙を、突く型だ。
 獣がすっかり雷に夢中である。顎をあげて、それを飲まんとした。口の中に居れてしまえば、それが地獄へと導かれるだけだからである。
 しかし、――それを許さなかったのだ!!
「正義の鉄槌、観念して喰らうが良い」

 鉄 槌 は 、 二 つ ! ! ! 
 横から飛び出す形となったシズルの槍が、竜の目を穿つ!!当然衝撃に横薙ぎとなった身体が――雷の銃弾を纏いながら鷲獅子に踏み抜かれた!!
 正に、正義の執行!世界の審判!!――新たな神話がここに生まれる!!
「――喜んでます、神々が! 」
 舞を終えたいつきが、全身に祝福を浴びて溜まらず歓喜の声を出す。
「ゴチソウサマ、ってやつ? 」
 ライゼが突如巻き起こった花びらを見つつ、振り返る。
 猟兵たちを祝福するようにちりばめた蒼の花弁――そのあるじであるミツハが、再び両手でフレームを作る。
「ずっと、毒? みたいなの、撒いてたでショ。んもー、教えてヨ」
「いいンだよ。そういうのは、じっくり見た客にだけ分かればいーんだ」
 『絵』は、遠くから眺めれば美しいし、近くで見つめれば発見が在るもので。
 ミツハが巻いた蒼の花弁は、水で出来ている。きっと、猟兵たちの中にも気付いたものはいたやもしれぬ――蛇の身体が、『しみ』のような痕で焼けただれているのを。たまらず扉にまた引き籠ろうとする蛇はすっかり弱り切っていて、もはや哀れといっていい。眼も視えぬ巨体が真っ赤な血を流すのすら『黒い』夜が塗りつぶす。

「ん。いい空だ」

 満天の星空が――生命の光を現わしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セフィリカ・ランブレイ
アルトリウス君(f01410)?あ?中から食い破る?マジで?
キミって呑み込んじゃいけない類の生物だよね。わかるよ…

外に飛び出た時用の高火力の砲台ゴーレムを幾つも用意
相手の攻撃を誘う様
【虚影の燐虫】を大量散布

周囲を飛び回る小型ドローンは少し呑まれても平気
寧ろ適度に潰させ、攻撃に気を取らせて直ぐには引きこもれない状態になれば理想かな

即座に防御体制が出来なくなった所を一斉砲撃!

「引きこもりのコツはいかに自分の世界に没頭するかよ。誘い出されるようでは甘い甘い」
《酷いとき1週間は部屋に籠るからねアンタ》
相棒の魔剣と軽口を叩く

「キミの場合彼を飲み込んだ時点で、帰る部屋の存在自体が危うい気がするけどね!」


アルトリウス・セレスタイト
引き続きセフィリカ(f00633)と
セフィリカが引きずり出すそうなので、俺は中から追い立てるか

敢えて引き込まれた上で、目標及び外界からの影響を『絶理』『無現』で否定
内部より攻撃開始

始源を展開
否定の原理を楔と撃ち込み、巣の内部にオブリビオンの存在を否定する領域を作成
『刻真』での無限加速と『再帰』での無限循環で容赦なく領域を広げ外へ向けて追い立てる
同時に自身への攻撃も遮断

呑まれれば消えるかもしれぞ。急ぐんだな
まあ出ても追い立てられるんだが

セフィリカが捕まえて引っ張り出したら直に撃ち込み削る
或いは攻撃に移る初動を潰すよう撃ち込み「龍退治」を演出

人に倒される龍もお約束の演目だ
盛り上げに一役買え、ニート


鸙野・灰二
【絶刀】夕立/f14904

喧しいな。耐性が有ッても響く。

あの雪は此処の焔も消すらしい。
お前の云う通りあれの巣を荒らして『中』に誘い込むのが良いだろう
誘導は俺が引き受ける。中での事は頼むぞ夕立。

思えば人の容じゃアない敵を斬るのは久方ぶりだ
なア大蛇、お前、俺と死合ッて呉れよ。
《先制攻撃》【刃我・相闘】
一番の目的は誘導だ
追い過ぎず退き過ぎず斬り合ッて挑発して遣る
一騎打ちに持ち込めたなら重畳、あれの舌を狙ッて斬り、触れる
外から中へ俺を追ッて来い。影に気を付けてな

ところで神は『中』が見えていると思うか?
……そうか。まア、問題なかろう。


矢来・夕立
【絶刀】ヒバリさん/f15821

まだ耳の中が痛い気がする。

歩く環境破壊もいいところですね。
…あれ、『敢えて舌に触れて巣に入り込む』のはどうでしょうか。
おうちを荒らされて黙っている生き物じゃなさそうですから。
そうすれば外の雪害は防げます。
戦いのさなかに巣に戻るほど馬鹿でないなら、改めて出ればいいだけですしね。

【紙技・化鎮】。
姿を消してヒバリさんに続きます。
外側であれ内側であれ、あっちに気を取られてるでしょうから
そこへ《だまし討ち》。
割って入るようで悪いとは思ってるんですよ。悪いとは。ええ。

巣の中?
神様になら見えるんじゃないでしょうか。
…マズかったですかね。


ヴィクティム・ウィンターミュート


…なんだこの竜?
今まで色んな竜種と対峙してきたが…テメェ、弱そうだな
あぁ、大きさだとか能力の違いを言ってるんじゃないんだぜ
分からないか?ま、どうでもいい話さ
お前の闘いは今から、虚無へと堕ちていくんだよ

そら、向かってこい
全サイバネ、【ハッキング】でオーバーロード
初撃を強化した反射神経で【見切り】、【早業】で転身、素早く回避する
そしてテメェの攻撃は、止まれない
俺を倒したいんだろ?ならお望みどおりにしてやるぜ

Void Link、スタート
力をくれてやる──『Void War』
全身に力が漲るだろう?さぁ、攻撃してみな
あぁ?オイオイ単調だな
どうした?俺はここだ…あぁ、もう聞こえてないか
そのまま朽ちてな


花剣・耀子
◎△
……、……蛇。竜? どちらかしら。
蛇には厭な思い出が多いものだから、気に食わなさが五割増しよ。
自制はしましょう。出来るかどうかは、別として。

おまえみたいに、いのちを喰らうだけ喰い散らかす蛇は嫌いなの。
もとより逃すつもりなんて無いけれども、やり過ごさせもしないわよ。

どれだけ堅固だろうと、どれだけ大きかろうと、其処にあるならすべて斬るわ。
あたしはそのために此処に居る。

一閃毎に重さを籠めて、呪詛を籠めて。
――この呪詛は、おまえが元ではないけれど。
近しいものは馴染みも良いでしょう。せいぜいいのちを喰い合いなさい。

顔を出すなら、その出端を狙うわ。
目を潰す。舌を斬る。その首を叩き墜とす。
逃がさない。


桜雨・カイ
扉からでてくると、この世界にダメージが……これ以上この世界の生命を吸い上げることはさせません!

【属性攻撃】で炎を上げ熱を探す竜をおびき寄せます。
接近してきたら【想撚糸】発動。
糸で編んだ結界で呪いを竜ごと包みこみ、この世界へ影響を与えないように呪いを結界内に封じ込めます!

絶叫は【オーラ防御】で和らげ、あとは【激痛耐性】でうけます。
大きさも力も速さも一人で止められるものでないでしょう
ここで手を緩めるわけにはいきません。
少しでも力が弱まれば、きっと倒しやすくなるはず
どんなに振り払われようとしても、この糸から手をはなしません!




 絶命の時が近い。
 最後の抵抗だと竜もきっと判断したのだ。扉の中においそれと戻されると思っていない故の咆哮はもはやこの先生きることを前提としたものではない――故に、最大出力と言ってよかった。
 それは、星すらも堕とそうかというほどの威力。
 最初の一音は辛うじて誰もが拾えただろうが、その音圧は――人間の耳ではもう聴こえないほどだ。張り裂ける大地から除く熱も、溢れる温度も、割れる果実もしかるべき「終わり」へ向かう。
「ん、ッッッぐ―――!!!! 」
 それを!!
 『赦さない』のが猟兵だ!桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)が軋む己を盾にして、オーラの防御で仲間たちを守る!!みしみしと地面が揺れ、彼の足場とて不安定だ。しかし、ここでカイが崩れるわけにはいかなかった。『己』を繰る糸は話さない。半身の狐面にぴしりと罅が入っても、怯えは無かった。
「――ッ、は」
 ここで手を緩めるわけにはいかない。障壁がゆるりと解けるころには、扉の向こうに音波が消えていった。
「喧しいな。耐性が有ッても響く」
「ええ。――歩く環境破壊もいいとこです」
 まだ耳の奥がきいんとして、三半規管が回復しない。
 夜闇に浮かび上がるのが刀たる鸙野・灰二(宿り我身・f15821)で、溶けるのがその影、矢来・夕立(影・f14904)だ。
 文明崩壊とまではいかないが、損害は大きい。今の状態を限りなく保ったままであれば、復興も容易いだろうか――このあとに控える『祭』をどう盛り上げるかにもよるだろう。冷静に、夕立が赤い瞳で状況を読む。
「まずは、あの雪からか」
「『敢えて舌に触れる』のはどうでしょうか」
「成程」
 びゅおお、と扉の向こうから漏れ出す冷気だけで火は死ぬ。
 なるほど生命を奪う権化の最期の足掻きであった。何事も手負いの獣というのがいっとう恐ろしい。灰二が静かに唸って確かに一つ、肯定する。ゆらりと――夕立もまた、彼の『影』となって気配を消した。

「なんだ、テメェ」
 『うばうもの』である彼は、色々な『竜』を見てきた。
 さまざまである。竜種は、どれもこれも気高く、強く、時に彼を力でねじ伏せることもあれば、その生きざまで奮い立たせられることもあった。
「弱そうだな」
 ――大きさだとか、能力の違いの話をしているわけではない。
 ヴィクティム・ウィンターミュート(End of Winter・f01172)からは、いつもの陽気な口調は出なかった。
 凍えるような冷たい視線と、凪いだ声色は彼の覚悟とその心を物語る。
 きっと、どんな冷気よりも今の彼が持つ『脳』が一番冷えていた。口の端から立ち上る白は、蒸気だろうか、それとも、『冬』のあかしであろうか。
「――どうでもいいか」
 視神経より、メインコンピューターへのアクセスをはかる。
 脳の裏で稼働音がして、きいいと甲高いファンの唸りが在った。サイバネがうごめき合い、彼のサイバーアイに張り巡らされた仮想網膜を刺激する。
 ――『Void Link』_Start.
 地形の観測から、限界値を超える速さでの解析だ。対象、『竜』。その数、『たかだか』一匹。超巨大とはいえ『最弱』の可能性まである。
「ハ」
 鼻で笑ってやるのだ。己は、龍殺しの英雄になどはならぬ。
 ――英雄に丁度いい相手を視界の端に見つけて、声などかけることはなくその灰色の後ろ手に回った。粗雑な足取りで、ズボンに両手を突っ込んで歩くさまは傲慢に見えないようにだけ背を丸める。
 『影』がいることは分かっている。だが、お互いに声もかけあわなかった。
 ――仕事中は、仕事に集中するもんだ。『裏方』ってぇのは。

「いやぁ、中からアレソレって言ってたけど、大丈夫かなぁ」
 困り顔でそうつぶやいたのが、セフィリカ・ランブレイ(蒼剣姫・f00633)である。いよいよ幕引きとなったにかかわらず、彼女の隣には組んだ相手がいない。代わりに、羅刹の少女が攻撃の機会をうかがっていた。
「中から? ……それは、丸のみとか、そういうこと? 」
「んー、丸呑みっていうか、ありゃもう『転移』みたいなもんだよね」
 花剣・耀子(Tempest・f12822)は、蛇にはいい思い出がない。少し想像して、ぞわりと鳥肌が立ったような気がしたのだ。気に食わない、どころで済めばいいのだけれど、なかなかに酷い思い出というのはぬぐえないものがある。まして、まだ若い彼女だ。「昔」の記憶は新しい。
「……それは、ちょっと、心配ね」
「心配っていうか、蛇がね、竜だっけ? かわいそーだなって……」
 耀子の隣を、ずしんと存在が揺らす。生き物のそれではない。セフィリカが生み出したゴーレムたちだ。
 迎撃用に、と用意したものらしいがどれもこれも武装がしっかりとしている。耀子の頭の中では、都会で見かけたロボットの模型がちょうど大きさには等しいだろうか。美術品のそれより武骨だが、『有能』であるのはわかる。
「――砲台? 」
「そ。まあ、でっかいし出し惜しみはしないつもり」
 【虚影の燐虫】がひらひらと耀子とセフィリカの周りを舞っていって――扉へと向かっていく。熱量を抱かせたマシンであるから、扉から蛇が顔をのぞかせるのも時間の問題であった。
「引きこもりのコツはいかに自分の世界に没頭するかよ。誘い出されるようでは甘い甘い」
 ――酷いとき一週間は部屋に籠るからね、アンタ。
 喋る魔剣らしいそれに、耀子が目を丸くした。「そういうもの」らしいから、受け入れておくが――もし己の『蛇』が話し始めたらどうしようと、少し嫌な想像をしてしまったのもある。顔をしかめて、きっ、と強く扉を見上げた。
 案の定、鼻先が少し出始める。
 その一瞬の動きでこの竜が「獣」程度の脳しかないことはセフィリカに理解できた。ちろちろと温度を探る舌が上下に揺れて、また仕舞われる。
「あとは、待ちよね」
 セフィリカがそう言うのなら、耀子もまた、「ええ」と短く返事をして剣を構える。
 ――喋る武器なんて夢あふれるが、やはり、この『オロチ』が喋るのは嫌だなとなんとなく考えながら。
 刀を構える少女が己の隣に立つというのなら、灰二とて『下がれ』と言えぬ。
 戦う意志のある武人に性別は関係がない。むしろ、――溢れんばかりの殺意があるだけ、都合がよいのだ。守ってやる必要もない。
「さア、大蛇よ」
 思えば。
 人の器をしない敵と斬り合うのは久しぶりだ。
 どうにもどう猛さを増したらしい竜の動きは荒々しい息吹が聴こえる。歪曲した扉の向こうで、今は『どう荒らされている』のかはわからなかった。しかし、『影』は――うまいもので。預かった折り紙を着物の懐に落とさぬよう入れてから、灰二は抜き身の己を扉へ掲げる。
「お前、俺と死合ッて呉れよ――」

「いや、チョロすぎますね」
 ――舌に触れればいいとは言ったが。
 まさか炎熱や動くものを追って舌を出すなど、この夕立からすれば「すきだらけ」だ。
 影もなく、音もなく。入り込んだのは【紙技・化鎮】が為せる技である。
 人間の首程度の太さだったら舌に触れてやる前に切り落とせただろうが、そこだけが唯一この愚かな獣の強みだったやもしれぬ。派手に暴れる気は無いが、そのほうが「話も早い」。しかし、――本当に、『チョロい』だけだろうか。様子のおかしな蛇の舌先に指が触れれば、あっという間に夕立は氷獄にいた。
 まず巣に入った時の感想は、寒すぎるというものである。
「先客――」
 声を出しては身体の中まで凍り付きそうだ。
 息を細く、そして浅くして夕立は観察をする。――目の前には、モノトーンの男が蒼白い光を携えていた。
 ちっとも雪すら乗らぬ体が羨ましいと思えば、夕立を悟れないらしいのに彼の蒼白が影を守る。
「誰かいるのか」
 見えぬ。
 吹雪と言っていい世界だ。骸の海というのに「どういうもの」があるのかは知らぬが、ここが巣だというのなら、そうなのだろう。
 観測者であり、世界のコトワリに近い――もしくは、その断片である文字通りの超能力者、アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は己と同じく巣に侵入した誰かが検知できない。
 それが、影たる夕立の力である。忍術であり、超常だ。なれば、理を操るアルトリウスも其れに深く干渉はしない。敵でないことを示すために夕立がまず一匹の死体を苦無で作って、アルトリウスに投げた。小竜が足元を滑っていったのを見送って、アルトリウスも警戒を解いたようである。
「俺は、中から追い立てる。問題ないか」
 ――会話が無い空間に、二匹の子竜と死体が滑っていく。
 アルトリウスの足元にたどり着いた時には絶命して間もないのに氷ついているそれを見下ろして、心臓にぐさりと刺さった暗器を見た。「はやくしろ」と言いたげな思い切りのいい爪痕に、アルトリウスも視えざる「誰か」に肯く。
 ――起動。
 両手でまるで指揮棒を振るかのように、青い光が舞った。
 【始源】。絶対否定の領域が広がり、獣の『巣』を壊しつくす術式が起動する――!!

「――封じ込めます!!」
 【 想 撚 糸 】 ! ! 
 操る糸をさらに強化する。その強度は、カイの抱いた使命感に準ずるものだ。
 籠目に張り巡らされたそれが、扉を含めた上空とゴーレムの隊が座する空間を『閉じ込める』。
「これ、で、――多分、いくら暴れても、大丈夫かと」
「オーライ。それじゃあ、容赦なく、だね」
 セフィリカがゴーレムたちに号令を出すよりも先に、頭だけを出した蛇が興奮しきった顔をしている。
 何かが起きているのだろうけれど――何が起きているのかは分からない。ただ、灰二に視線を向ける前から何かがおかしいのだ。
「死にかけ、だから。かしら。……興奮しきってる」
「なあに、ただのスパイスだ」
 気にするな、とヴィクティムが笑う。彼の周りを浮遊する空間モニターが演算を算出させながら、あたりの被害状況を解析し、復興までの時間をかきだしていくのだ。それを眺める彼は、もう『先』のことを考えていた。
 耀子は正直、小難しいことはわからない。この電脳魔術師らしい彼が何を仕掛けたのかはわからないが、――勝率を上げるためのものであるらしいのは察した。
「勝手に壊れるよ。あっという間にな」
「そりゃァ、ちィと困る」
 薄く口元が笑う灰二である。悪辣なる略奪者に「愉しみ」まで奪われるのは許さない刀だ。
「――殺し甲斐が無い」
「まァまァ、熱くなるなよ。流石の俺でもあの質量じゃ一瞬ってわけにもいかない」
 ――破壊のためのリソースに、己の『バッテリー』を使っている。
 常に身体を虚無に浸らせながら、細胞の破壊を加速させ、少年は今もなお静かな顔をして勝利を考えていた。灰二に向けられる顔は、悪童よりも悪らしく、冷たい表情である。
「来るぜ」   ・・・・
 ――何もかも、計算通りに。

 扉から『はじき出された』といっていい。
 蛇は、口を大きく開けて――血まみれの身体ごと空を駆けた!月光を受けて世界に影を落とす蛇の身体は、やや削られているとはいえ圧巻である。見上げたカイが己の握る「糸」を確かに指に絡めた。
 たとえ、指がもげても、これだけは放してならぬと思う。
 あまりに絶大だ。こんなものが『世界』を駆け巡るのはカイとて許せない。
「世界は、未来の為にあるのです」
 ゆえに、完膚なきまでに。
 猟兵たちが持てるすべてを使って「完全」に消し去ってやらねばならない!血の雨を降らせながら飛び出す巨体が、何かに追い立てられたらしい動揺を孕んだまま――灰二に向かう!!
「――蹂躙は、させません! 」
「応。頼ンだぞ」
 『ヤドリガミ』らしいと思うのだ。
 カイは、人に依存する存在である。
 人形なのだ。人が操らねば彼なる存在は誰もに愛されない。使い手があってはじめて成立するかたちは、灰二と少し異なる。なぜならば――灰二は「命を奪う」ためにあったはずだ。守ることにも、よりそうことにも向いていない。下手に身を寄せれば弱い人間を傷だらけにしてしまうやもしれぬから、彼は今、何も考えずに攻め手に出た。
「――余所見は無しだ」
 【刃我・相闘】。
 ずうっと蛇の注意を惹きつけている灰二が飛び出せば、大蛇もまたそのつるぎめがけて空より堕ちる!
 神話めいた光景を、耀子も視た。己の攻め手は灰二と同じだ。しかし、彼はすっかり蛇の注意を惹きつけていた。――蛇が苦手な耀子には、その瞼のない視線が向けられない。
「せいぜい、いのちを喰い合いなさい」
 どるるるる、と唸りだす己の呪いが歓喜に震える!
 ――回転鋸は耀子の戦意と呪いの数だけ殺意を増した!灰二がまず、向かってくる蛇の舌を叩き斬ったのならば口のつなぎ目に刃を這わせ、速度を落とさぬまま蛇を横に裂く!!
「逃がさない」
 すべて切り裂くために。
 もとより、耀子には「それしかない」のだ。
 他猟兵たちのように多彩な技が在るのではなく、ただ、「斬る」ということだけを特化し続ける彼女に赦されるのはそれだけである。ぎゃうううと吼える回転鋸で、下あごを叩き斬り落とした!!
 これぞ、剣技の原典にして頂点――【 剣 刃 一 閃 】 ! ! ! 
「撃ェえええッッッ!!!! 」
 弾幕! 弾幕! また、弾幕!!
 どうどうどう、とゴーレムたちからの放射が始まる!頭から迎え撃った灰二と耀子を巻き込まないように、セフィリカのゴーレムたちは結界ぎりぎりのところから『足』を狙っていく!!
 無敵の扉に帰すことは許さない。放射で二つの剣鬼に押し込みながら、砲撃が休むことなく繰り返された!!
 爆炎と共に雪粉を散らし、痛みに暴れる蒼の身体は容赦なく自壊を始めていく。あまりの「壊れ方」に――セフィリカが片眉を持ち上げた。
「あれ、思ったより――どうなってるの? 」
「ハハ、気付いたか」
 ゴーレムたちによる一斉放射の光を浴びながら、ヴィクティムがその質問にはまるで、悪戯が露見してったような心地で返す。頭の後ろに手を組んで、その光景を眺めていた。

「Suprise! 」

 ――Access_
ORDER> [ Void Link ]_Shoot!
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽【Forbidden Code『Void War』▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

 全身に力のたぎる竜は、仕掛けられた「破壊」の痛みに気づかない。
 それどころか、狂わされた神経と感覚がますます竜に己を過信させているのだ。「戦える」と――強すぎる「薬」が「毒」に至っているというのに、それを気付けない!!
「良く暴れてくれ、そのほうが好い」
 にやりと灰色の鬼が笑う。
 ぎらぎらとした殺意を隠しもしないで、灰二はその頭に容赦なく己となる刀を突き刺した!
 落下する速度と共に重さの加わる鋼が、竜の頭と顎を串刺しにしてみせる!!
「――逃がさない!! 」
 吼えるようにして、耀子もまた回転鋸の速度に合わせて宙を舞った!!飛び散る鱗も、爆炎も、壊れていく竜の身体ももう『どれもこれも』破壊しつくすためだけに今は駆ける!!
 忌々しい呪詛がいのちによろこんで蛇と喰らい合うのを感じながら、振り払うように首を狙った!
 ぎゃぎゃぎゃぎゃ、とその骨を断ちながら、全身に返り血を浴びる。耀子が舌からそっ首を刎ねてやろうと体幹を使って曲芸が如く、『つなわたり』を蛇に行うのならば――成程と灰二も楽し気に入る。
「首が落ちれば、生きちゃァいまいよ。なンでも、そうだ」
 狙うは、竜の首!!
 灰二が刀を抜いてやろうと両手で柄を掴んだ時である。――彼の『影』が刀を片手に、竜の頭を駆けだした。
「あ――? 」
「お楽しみのところ、すみません。ヒバリさん」
 いつのまに出てきたのやらわからぬ。煤まみれになった夕立が、竜の頭に刃を這わせていた。撫でるように振れば、たちまちずばりと皮膚が割れて筋肉がのぞく。溢れる血を浴びないよう気を付けて、己の刀をもう一度振った。――雷花をこの程度で痛めるのは惜しい。
「割って入るようで悪いとは思ってるんですよ。悪いとは」
「構いやしねェよ。――殺せば同じだ」
 一騎打ち、だと思い込まされているのは蛇竜だけである。
 『虚言嘘吐き暗殺奇襲、ダメ押し一手のだまし討ち』が己の影が得意とするところならば、刀はそれに準じて振るうだけのことだ。此れの尊厳というのは、『斬る』ことにしかない。
「ただ、まア。そうさな」
 暴れ狂う。
 己の上にて座す灰二に狂わされている蛇が身体をうねらせ、身もだえた。その動きに合わせて、夕立もステップを踏む。
「お手伝いで、手打ちにしますか」
「応」
 ――目配せだけでもよい。
 殺しに必要なのは、信頼関係だ。殺す、ということに注力する二つはお互いの動きなどいちいち組み立てる必要もないから、直ぐに竜の首にまた刀を刺す!!
「きゃ」
 暴れる竜の首から耀子が振り落とされそうになるのなら、それをカイの人形が受け止めた。
「大丈夫ですか! 」
「――ええ、まだやるわ。投げてくれる? 」
 一瞬、躊躇して。
 それでも、「投げてくれ」と耀子が言うのならば応えるのが人形であるカイだ!
「お願いしますッッッ!! 」
「任されたわ」
 人形が少女の身体をぽおん、と投げる。ひらひらとスカートを舞わせながら、またぞぶりと回転鋸を食い込ませて――首を駆け巡る三つの姿があった!
「落ちろ」
「落ちろ」
「堕ちろ――」
 みしり。
 一度、蛇の身体が胎動する。
 それは、まるで爆発を予期したもののようであった。上からも下からも「おかしい」ことになっているのを、蛇は気づかない。
「おーおー、こりゃあ、派手じゃねえか」
 ヴィクティムがそのさまを見上げれば、「でしょ」とセフィリカが肩をすくめる。
「『彼』を飲み込んだ時点で、こーなっちゃうのは、お決まりだったよね」

 その命は、まさに可能性が『無限』だ。
 神であるといわれればそうだろうし、その体は言わば外付けの部品でしかない。本来の根源はもっともっと『外』にあるもので、何の因果かいまは世界を守るために在った。
 破壊の力だ。
 すべての『原理』を砕き、竜の生存を赦さない。
「人に倒される龍もお約束の演目だ」
 仲間の砲撃を体内で感じながら、ゆったりと白黒は――青白い光を手にして、見極めていた。
 仲間らは頭で死闘を繰り広げているのなら、己のいる『腹』は己が殺しつくしてやろうとする。手にした二重螺旋は「いかさま」ではない。

「盛り上げに一役買え、ニート」
 これこそ、――破壊より創造する力である!!!
 竜の首が飛んだ。空を飛ぶ大きな岩のようなそれが、地面に『刺さる』と同じタイミングで身体には異常な反応が視られた。ぎゅううっと一点に肉が集中して、ミンチになりながら凝縮する。
「あ、やば」セフィリカが声を上げて、ゴーレムたちにそれを包ませた。
「えっ、えっ、え――」カイが驚いて、結界を『肉塊』に集中させる。

「ところで、神は『中』が見えていると思うか? 」
「巣の中? ――神様なら、見えてたんじゃないでしょうか」
「そうか」
「……マズかったですかね」

 ああいう御方がいるとは思わなかったもので。
 爆発。
 花火どころではない、もはや噴火に近いような轟音と振動が響いて耀子も耳をかばう。
 ぱらぱらと焦げ臭い肉が散って、灰二も影が何を言わんとしているかはなんとなく察しがついた。
「まァ、問題なかろう」
 ――『巣』もおそらく、こうなってしまったのだろう。
 何もかもが綺麗に拭き飛んだ結界の中で、アルトリウスがひとりで浮いていた。
「どうだ。――『派手』だったか? 」
 ゴーレムたちに万が一の為に包ませておいたセフィリカが己を見上げているものだから、先ほど学んだものを復習してみせただけなのだ。アルトリウスは、『やってみたかったこと』で爆発を作ってしまえる。
「あー、うん。だいぶ、スリリングで、よかったんじゃない? 」
「びびび、び、びっくりしましたぁ……」
 じいいん、と未だに手が震える。皮が裂けた真っ赤な手の力をようやく抜けて、カイはゆるりと空を見上げた――。
 月があって、皆を等しく照らす。
 感謝の光らしいそれに、『恩恵』が混じっていた。猟兵たちの傷を生命のあかりが照らすだろう。
 傷だらけの身体も、もしくは、己で傷つけた痛みも癒していくやもしれぬ。
 ――これも、次にある『祭り』のためであるとはわかっていても。
「もらえるものは、有難く頂戴しましょうか」
 血まみれになった服のしみ抜きを考えながら、耀子が己の漆黒を撫でたのだった。
 噫、世界に――歓喜が満ちた。君たちを『未来』として認めた神々が、更なる活力を見出して今、うつくしき黄金の文明を復活させる――!
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『神前武闘会』

POW   :    派手な戦いを魅せて武闘会を盛り上げる

SPD   :    堅実な戦いを魅せて武闘会を盛り上げる

WIZ   :    観客として武闘会を楽しむ。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 満天の星空があった。
 猟兵たちにより、邪竜による世界崩壊が防がれる。かの悪しき者どもがこの文明を欲しがったのも、猟兵ならば実感できただろうか。
 ――生命にみちている。
 パワースポットと言う言葉があった。「其処に訪れただけで」救われた気がしてしまうような、得も言われぬ説得力を人は、神域という。
 戦いで壊れた土地が金色の粒子を纏いながら復活を始めていた。もともと、不死の獣が燃やす命で作られたものである。壊れても灰になって甦るのが、ここのことわりだ。
 ――君たちが命を燃やすことで、この文明の「いのち」はよみがえり、めぐる。

 黄金の粒子が君たちを案内するだろう。
 ついていくか、それとも止めておくか――導かれるままに訪れたのなら、そこに在るのは歴史ある建造物が織りなす「闘技場」だ。
 戦いやすいようにか、気分を高揚させる赤で建物が塗られ、組まれている。諸所に黄金が目立つのを目利きのあるものが視ればわかるだろうか。純度の高い金は「あしらい」だ。
 床は互いの色がよく見えるように真っ白な岩が美しい四角を作り、タイルのように敷き詰められていた。観客席は戦闘の余波を受けないよう、どうやら防護の術があしらわれているらしい。一人がゆったりと座れるよう、これまた豪奢な玉座が並んでいただろう。――本来は、神々のみぞ座る場所だからだ。
 あたたかな風がびゅうっと拭いて、君たちに「見えない」観客からの歓声を届けるだろう――待っていたぞ、と言わんばかりのよろこびを全身に受けるかもしれない。
 神々は、君たちの『生命』を、そしてその美しさを見たいのだ。
 喪った力の分だけ君たちから力を呼び戻してもらう。圧倒的な強さをほこる奇跡の存在に託した催しは、豪華絢爛の闘技場によって行われた。
 ――さあ、力の失われし神々へ『生命』を届けろ、猟兵!

***
◆ご案内
 猟兵同士の戦いをお願いするにあたって、以下のケースのうち当てはまるものをプレイングのどこかに記載していただけますと幸いです。
 (例:①◎ ①● など)
 ①ペアで参加なさるかた
 →戦いたい方、想いをぶつけあいたいかたがいらっしゃる場合です。
 ●→敗北
 〇→勝利
 ◎→勝敗おまかせ
 特に記載なければ勝敗はふわっとした形でリプレイは終了します。
 ②ソロで参加なさるかた
 →マッチングか、こちらで用意したモブ神との戦闘になります
 ∞→マッチング希望
 ★→モブ神希望
 マッチングの場合は勝敗はふわっとした形でリプレイは終了します。
 ③観客希望
 →めちゃくちゃ野次を飛ばすのか、それとも世界に発信するのか、実況なさるのか……どれでもOKです!
 諸々指定させていただきましたが、皆様の自由なプレイングの方針、参考程度になればと存じますので宜しくお願いいたします。

 プレイングの募集は3/13 8:31~ 3/15 22:00を予定しております。
 また、再送のお願いなどございましたらMSページなどでもお知らせいたしますのでご協力よろしくお願いいたします。
 それでは、皆様の力強い『生命』を楽しみにお待ちしております!
叢雲・源次
【義煉】①◎

クロウ…正直に言うとだな
俺は今回の任務、乗り気ではなかった…見世物になるのは本懐ではない上に、先に言ったように戦闘で得られる物など精々戦闘経験ぐらいのものだろう…そう思っていた

だが
気が変わった

幾度となく背を預けたお前と覇を競う…存外悪くないものだと、思う
いや、高揚するといっても過言ではない

らしくもないが…是非もあるまい


互いの手の内は分かっている…「先の先」「対の先」「後の先」…読み合い、剣戟を振るい合った所で帰結するのは互いが持ち得る至高の一手

神速の踏み込み、零距離…右手、否、左手による逆手抜刀
相手の斬撃を縫うように蒼電を散らしながら一瞬にて斬り抜ける

「…少々、熱くなりすぎたか」


杜鬼・クロウ
【義煉】①◎
名呼捨て

待ち望んだぜ、この時を
前から本気のお前とヤり合いたかった
源次の実力を認めているからこそ

UC使用
攻撃力up
手数の多さ利用
剣技で魅せて押し除け
大技出す様に誘導

狙うならど真ん中
だろ?源次
全力で来いよ(挑発

剣で武器受け
凌いで攻撃途切れた瞬間畳み掛け

死線で誰よりも
親友(おまえ)の傍で見てきた蒼炎(いのち)
其の速さは本物
相棒(おまえ)の刃は常に俺をも救ってきた

終わって欲しくねェなァ
愉しい
愉しい

源次の心臓の炎ごと義の紅炎纏いし剣で薙ぐ
源次の首掴み覆い被さる
顔の横に剣突き立て

手の内は知り尽くしてる
ならば決め手は
不屈の心
執念
勝利に何処までも貪欲なヤツが勝つ

戦闘経験以外で得たモノ、あったろ?




「正直に言うと、だな」
 ――相棒は、理屈っぽい男である。
 熱い心を持ちながら、「有能」な計算機を頭に持つ叢雲・源次(DEAD SET・f14403)に、頭を使うなと言うほうが酷である。
 ざり、と砂埃を革靴で踏みながら機械の男はどこか、詫びるように言った。
「あァ? なんだ、いまさら」
 ――相棒は、こころで動く存在である。
 利己的でありながら、己の思ったことを第一に動き、己の正義を疑わずに駆け抜けていた。
 身勝手なようで、結果的にそれが世界の為につながってしまうのは――願われる存在だった由縁もあろう。
「俺ァ、待ち望んでたぜ」
 がしゃり、武器を肩に乗せて伸びをした。
 杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)は――彼の心に嘘偽り無い存在である。源次の言いたがる「理屈」は今やまだるっこしい。
 人間で言うのならば、女がしおらしく脱ぐのを待ちきれぬ男の獣性のようでもあろうし、獲物を目の前にして牙を剥き、茂みに潜む獣のような視線だった。
 色違いの二つの目を見ながら、源次はその心を悟らぬままに敢えて、続ける。
「俺は今回の任務、乗り気ではなかった」
「萎えるコト言うなよなァ、源次」
「見世物になるのは、本懐ではない」
 ぴしゃり、言い切る。
 ――こういう相手だからこそ、互いに「相棒」として認め合えたのだ。クロウもまた、彼の心を整理するための言葉を許す。
「まあ、癪だろうな。お前は」
 彼もまた、彼の中に在る正義を追い求めて戦う生き物だ。
 源次の身体は改造されている。それを施した悪性を否定したのが最初で、燃える心臓を持ちながら冷たい顔で覆いつくし隠すのがこの男だとクロウも知っていた。
 前に、前に、是非もなく。未来の為に、己が「猟兵」という使命だけを背負ってひたすらに戦場を駆け抜けるさまはあまりにも雄々しく、ゆえにクロウは彼の実力を認めている。
       マジ
 ――戦いに、『本気』なのだ。
 神どもの道楽に付き合わされては不快だと結論づいても仕方あるまいとはどこかで思いながら、ゆえにこの現場にはクロウが連れてきて、先導し続けているうちに源次がこぼした一言がある。
「――戦闘で得られる物など精々戦闘経験ぐらいのものだ」
 それを、良く思わない。
 理屈で動いているのも、計算を使って相手の手数を測っているのも、正確な動きができるのも源次が計算機であるからなのは知っているのだ。
 しかし、それを認められない。理解はしても、クロウの心はそれを「認める」まではいかなかった。故に、此度は観客席ではなくて――ふたり、試合の場へと立つ。
「だが、気が変わった」
 源次の一言を聞くまで、退屈そうにあたりを見ていたクロウの目が少し丸くなる。
 言葉を発した本人もまた、何を言っているのか整理がつききらぬようで――珍しく、妙に歯切れが悪い。しかし、正直な男だ。
「存外悪くないものだと、思う」
 ――メディカルチェック。
 心拍数、上昇。血圧、上昇。ストレスチェック、20%。体温、上昇。精神状態――。
「高揚するといっても、過言ではない」
「ハ、ハハッ、そォか」
 幾度となく背を預けた相棒と、覇を競う。
 それは何度も源次の頭がしめす通りの言葉で使えば「計測不能」の可能性だ。未来と未来がぶつかり合うなんて、那由他の数値でも重さが測れまい。
 本当なら、無駄なコストだ。戦っているふりをして場を盛り上げてやればそれでいいという選択肢もあり得る。しかし、――目の前のクロウは、とっくの前から「やる気」でそこにいるのだ。

 あてら
 影響された?
 ――いいや。
「らしくもないが――是非もあるまい」
「いいね」
 理屈を捨てた。
 捨てられるはずのない「計算機」の脳を置いてけぼりにして、心で動く相棒のしたたかさが何とも美しい。
 それこそ、生き様。それこそ、生命! クロウが満足したようにうなずいてやれば、もはや言葉は要るまいと剣を構える。
「来いよ、源次」
 ――死線を超えてみせろ。

「 ど 真 ん 中 、 ぶ ち 抜 い て 来 い ッ ッ ッ ッ ! ! ! ! ! ! ! 」 

 今、ふたつの命がぶつかりあった!!
 最初の一手は源次から放たれる!!ごうううと燃え上がった己の心臓が、彼の左目から青い炎を放ち――その速さと軌跡をまず神々に披露した。
 ワアッと歓声が上がるよりも早く、鋼同士がぶつかり合う!!
 受け止めたクロウと剣が押し込まれて、あわや場外に落ちるかと思いきやブーツの底をすり減らしながら踏みとどまり、太刀筋を変えさせる!ぎゃりりと刻印の刻まれた黒刀が源次の焔事押し上げて、その体を上空にまで跳ねさせた!
「ははァッ――来いよ、もっとだ!!」
 死線で、誰よりも。
 ――親友(おまえ)の蒼炎(いのち)を見てきた。
 速度を上げる。落下の速度と己の重さを計算式が現わせたのなら、源次の右目を覆った!
 ぼうぼうぼうぼう!! と火力を増した蒼炎が――一閃、その「からだごと」刀筋のように落ちる!!クロウに手札を切らせるには充分の速度だ。しかし、――出し切るにはまだ早すぎる!!
 精霊の力を得た玄夜叉で落下する隕石のようなからだを受け止める!!波状に地面が罅割れ、爆風が巻き起こり観客席の結界がビリリリと揺れた。しかし、二人は止まらない!
 右の振りには左からの浅い打ち合いで跳ね返し、踏み込んでくる左脚は右の足で蹴ってやる。がくんと体勢を崩した源次は、それすらも「計算済み」だ――狙われた胴体を断たれる前に、スリップのまま体を宙に浮かせてクロウの刀を弾く!!
 まっすぐな相棒が普段は見せぬ、「喧嘩」のような斬り合いに。
「はは、ハハハッ、愉しいな――」
 クロウは、心からそう思っていた。
 その速さが本物で在ることも、両目から常に解析される己の動きに対する対処が正確であることも知っている。
 そして、その刃は常に己も世界も、救える――頼もしいちからだ。
「終わってほしくねェ」
 思わず口からこぼれ出てしまうほどに。
 ――また踏み込む。さらに精霊の力を宿した。
 源次のサイバーアイから生み出されるモニターには、クロウの数値がすべて書き込まれている。常に変動する彼のパラメーターに――源次もまた、頭を使っていた。
                                 レゾナンス・イクシースピリット
 まだ、クロウは「すべて」を乗せてはいない。使用されている術式、検索、解析――【奏上・三位一体之祓剣】。
 鬼も隠れるほどの力だ。輝きを放ちだしたクロウの剣と源次の刀がまた交錯する。そのたびに、数値が上昇して質が変わるのだ。
 冷静であるべきである。
 ――なぜ、冷静に在れない?
 硬い表情筋をどこか震わせてしまうのが、風圧のせいだと思っている源次がある。
 互いの手の内は理解し合っているのだ。クロウが突きを繰り出せば、それに乗せられる炎の術式が源次を焼かんとする。なれば、それを振り払うようにして背広を翻して逆袈裟で切り払わんとした。
 それは、クロウも同じだ。後方に一歩下がれば刀は届かない! 丁寧に手入れをされた毛先を数本切られながら、にたりと笑う。――源次の鼻っ面に唐竹を繰り出せば、それに刀で太刀打ちして二つが止まった。
 拮抗だ。
 ――「上」を取ってしまっている分だけ、クロウが有利である。
 剣は「叩く」ことに有利な武器だ。刀は、「押し引き」の武器である。
「割っちまうぜェ――源次ィイイッッッ!!!!」
 かちかちかちかち、と刀が震えだして。
 それから、刹那。
 源次の姿は、『その場』から消えた。

 ――来た。
 思わず、クロウの口の端が吊り上がる。

 >CANCEL_
 D>N.CODE_ACCESS_
 >'DEAD SET 'undeclared (first use in this function)_error Command:14403_thermal runaway_
 D>Executable_
 >Error!!
D>Executable_
 >... ... ... OK_ SET.

 【 無 明 抜 刀 】 ! ! ! ! ! ! ! 
 神速の踏み込みだ。その技でしかこの停滞は打ち砕けまい!! 理解していた、そして、読んでいた。
 ――しかし、あまりに早い!クロウの想定では「右」でそれが繰り出されるはずだったが、一瞬足元に視線をやればそこには「源次」の「右足」がある。
 読まれると理解したのだ、だから――先、対の先、後の先を読まれると仮定しての一撃は「計算しつくしてある」感情のものである!!
「ぉお、おおお、ぉおおおおおおおおおおおッッッッ!!!!!」 
 吠える。
 蒼雷のいのちをまき散らしながら、逆手に握った刀を突き立てんと――い の ち が 吠 え る !!!!
「源、ッ、次ィイイイイイイイイイイイイイイイイッッッ!!!!!!!!!!!!」
 避けられない!!!
 超高速で繰り出される一撃はあまりに早いのだ!!飛び出す力に、そしてそのしたたかさにどこか「納得」があるものの、しかし!
 飛び込んでくる刀を無視して、――あ え て ク ロ ウ は 首 を 掴 ん で 見 せ た ! ! !
 燃え盛る炎など知ったことかとそのまま源次のしなやかな体を地面に叩きつける!! まさに、その姿戦神の如く!!異次元のぶつかり合いに空気が収縮して――はじけ飛んだ。
 爆風を巻き起こすほどの迫力ののち、砂塵が巻き起こる。最初の試合であるから、余興であろうと思って眺めていた神々も食い入るようにその結果を見ていた――。
 そこに、在るのは。

 源次を組み敷いたクロウに、深々と刀がわきばらから刺さっている。
「ッ、ぶ、かはは、ッ――はァ」
「すまん」
「謝ンな」
 ――クロウは、ヤドリガミだ。
 その体は「本体」が割れねばいくらでも修繕が聞く。故に、「戦闘不能」になっても「明日まで」は響かない。
 不屈の心で、そして勝ちにこだわる執念でクロウは源次の首を掴んだ。そのまま押し倒して覆いかぶさってしまったのが彼で――牙を突き立てることが出来なかった。ずうっと、刀を手放さなかった源次の白銀が迎え撃ったのである。
 ぼたぼたと口から血を吐きながら、首を緩く振る。
 これ以上の戦闘はできない、という合図に神々の賛辞が巻き起こり、会場は歓声に包まれた!
「わかったろ、源次」
 転がるようにして横たわった相棒から、剣を抜く。
 致命に至らぬどころかあっという間に傷はふさがる。治りが早すぎるのは――ここが「生命」に溢れすぎているかららしい。会場のボルテージが上がると同時、その力は濃くなったようでたちまち出血が止まり、源次の熱暴走もやんだ。
 ひざをついて、クロウに肩を貸してやる。いくら「治った」といえど痛みはそのまま残るのか、「いてて」と吐息と共にこぼれた声には「すまん」とやはり端的に詫びる。
「だから、謝んなって。わかった、って言えよ。――戦闘経験以外で、得たモノってやつを」
 得たもの。
 降り注ぐ賛辞の花びらを見上げる。
 客席から振り撒かれる花びらは、そういった「神」の奇跡だった。花びらを黒髪にのせながら二つが、戦場から降りる。階段をゆっくりとふたりで歩き、下り、観客席へつながる扉まで来たときにようやく――源次が、どこか「納得」してみせたのだ。

「少々、熱くなりすぎた」
「――熱く成れた、だろォが」

 ばかやろう、と呆れと疲れと、爽快感のあるらしい顔でクロウがその背を小突く。
 源次もまた、――新たな「経験値」が脳に刻まれたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と①◎

お前と手合わせするのは久方振りだな
負けが続きはしたが…今回は負けんぞ?

戦闘と同時に身の周囲に『オーラ防御』を張り巡らせつつ左手に光の盾を呼び出そう
どの様な手が来るかは解らんがお前の攻撃はどれも美しいが敵に回すと厄介だからな
そう宵へ注意深い視線を向けつつ己の周囲に【狼達の饗宴】にて74体の炎の狼を呼び出し行くも
『聞き耳』にて耳朶へ攻撃の音を捉えれば己の周囲を護る様狼を侍らせながら、己に迫る攻撃へ狼達を嗾けて行こう
狼達が逸らしきれぬ攻撃は『盾受け』にて受け流しつつ間合いを詰めれば、手にしたメイスを宵の胴へと振るわんと試みよう
…さあ、どちらが賭けに勝つか…勝負と行くとするか、宵?


逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と①◎

ええ、手合わせで勝負するのは久方ぶりですね
ふふ、かわいくて格好いいきみですが
勝敗がかかることは僕も手を抜くわけにはいきませんのでね

相手が盾を張り巡らせるならばそれを打ち破るのみ
ふふ、最初からフルスロットルでまいりましょうか
警戒するかれに笑みを向けて応えながら「高速詠唱」「一斉発射」「範囲攻撃」「全力攻撃」「属性攻撃」を付加した
【天撃アストロフィジックス】にて攻撃しましょう

間合いを詰められるならばバックステップで回避
間に合わないと判断したらば「オーラ防御」で防がんと試みましょう

ええ、負けたらひとつ相手の言うことを聞
――― 再びの賭けといこうじゃありませんか




 ひゅ、ひゅ、ひゅん。
 光の軌跡があった。――先ほどの戦闘で割れた地面は、どうやら「自分ら」で修復するらしい。
 なんとも「奇跡」としか言いようのない光景を特に気にした様子もなく、ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)の手には光が舞っている。
 ちかちかとしたそれがまとわりつくように褐色を駆けあがったのならば、その手に光の盾を呼んだ。ずっしりとした重みのあるそれを握り、ザッフィーロの意識は目の前の愛へ向く。
「お前と手合わせするのは久方振りだな」
 ――負けが続いた。
 惚れる弱みというべきか、それとも「守りたい」という己の雄がそうさせているのか。
「ええ、手合わせで勝負するのは久方ぶりですね」
 それは、またこの雄も質は違えど同じである。
 逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)は、かつて目の前の男と渡り合ったことがある。
 宵は特に、したたかで負けず嫌いな性分だ。あがめられるといえばザッフィーロと似た境遇ではあるが、なにせ「願いをかなえる」のではなく「存在を褒められる」のが彼である。
 誰よりも美しく、誰よりも「よくできた」天文の盤で在らねばならない――そういう、「もの」の気性もあってか、一度ザッフィーロはその「しぶとさ」に敗北した。降参をすすめても、宵がそれを認めなかった時のことである。事実上は引き分けで在れど、結果的には「負けた」ようなものだ。
 思い出しているのか、少し眉根の寄った真剣な顔に宵が思わず笑みをこぼす。ああ、わが愛しの伴侶はなんともいつでも雄々しく、愛おしい。
「ふふ、かわいくて格好いいきみですが」
 ひらり、宵の黒衣がいざなうように舞う。
 それは、蝶でいうなれば求愛のダンスで、闘牛士であるならば挑発だ。
「――勝敗がかかることは僕も手を抜くわけにはいきませんのでね」
「違いない。――今回は、負けんぞ」
 くすくすと笑って見せる宵が、ザッフィーロの頷きに「おや」と嬉しそうな声で返す。
「ならば、負けたらひとつ相手の言うことを聞くなど。いかがです?」
「面白い。受けて立とう」
 神々の前で戯れてやるというのなら、またその「楽しみ」も一興。さてさて、何を星に、そして指輪に願うかを互いに考えながら武器を構えた。
 お互いに、相手の能力は知り尽くしている。味方であれば非常に心強く、己らの運命事預けられる手腕であることは確かだ。しかし、敵に回ったと仮想できる今――どう、攻略してゆくべきか。
 常に思考をやめない。勝負の「めぐり」をみている。あたりに舞う空気と、お互いの神性が生み出す魔術の流れを悟りあい、互いの瞼を一度閉じれば、次に見開かれる瞳は敵意で満ちるのだ。
 
 神々も、彼らの「神格」と言うのは理解していた。
 ゆえに、どこか見守るようで――値踏みするような視線を感じたのだ。宵はその視線の意味をよく理解している。
 ザッフィーロは気にしている様子がないというか、「そういう」ものを赦せる度量があるのだ。不敬であると思ってしまうのは宵が「よいものとして愛された」経歴がある由縁であろう。
「ふふ、では――再びの賭けといこうじゃありませんか」
 ――気に入らぬ。
 ならば、「魅せて」さしあげよう。
「最初から、フルスロットルでまいりましょう!! 」
 起動される術式はいつもよりも展開が早い!あっという間に空間を覆いつくす速さには、ザッフィーロも瞬きすら許されないのだ。
 見上げる神々も、その光景に息をのむ。
 ――あまりに美しい、破滅の術式が空を支配していた。
 さて、事実。あまり、ザッフィーロは宵の手の内と言うのを知らない。
 純朴の男である。宵のことを愛しているからこそ、あまり踏み込み過ぎないのだ。彼が開示してもいいと思ったタイミングでザッフィーロに見せてくれればいいと思っているし、その情動を受け入れるのもまた「雄」たる彼の役目である。
 宵の「盾」になることが多い。無数に生んだ盾は、いつも本来――彼を守るものだ。
 注意深い視線を切ることは無い。ただ、目の前の「宵」を守ることは頭から捨てきれなかった。
「優しいひと」
「お前は、美しいな」
 ――愛 の 睦 言 に し て は 、 過 激 す ぎ る ! ! 
 降り注ぐのは【天撃アストロフィジックス】!!星の力を纏うのは、宵帝の杖から放たれる導きの星たちだ!どどうとあふれるように矢となった存在が――流星の如く降り注ぐ!!
 最初から全力を注ぐ、と宣言したものだから、「そうくるだろうな」とはザッフィーロも悟っていたといっていい。しかし、見るたびにその力は巨大になっていくのだ。
 まるで星が生まれることなど、ザッフィーロの知らぬ空では当たり前の事なのだと教えてくれるように――いつ見ても、確かに頼れる導きの群れが今、彼に容赦なく降り注ぐ!!
「ッ――お、ぉお、お」
 唸る。
 ザッフィーロが唸り上げれば、盾たちもまた彼を中心にしてぶわりと時計紋のように広がった。一枚だけを手にして、突撃を繰り出す!!
「ぉおお、ぉおおおおおおッオオオオッッ!!!!!!!!!!!」
 ま さ に 、 餓 狼 ! ! 
 青黒の狼が如く、ザッフィーロが体を撓めて接敵を測ったのなら――宵もまた、容赦なく己の杖を彼に向ける!
 突撃するさまは、宵の星が流れ星だというのならば、彼の姿は隕石といっていい。盾は隕石を削ることすら許さず、流れ星と共に砕け散る。きらきらと舞った破片がどちらのものか分からぬくらいに混ざり合って空へ消えた!
「――っふ、さすが、お強い!」
 しかし、また宵もそれに昂るばかりである。 
 雄として、彼の器物たるプライドとして――負けてやるわけにはいかない。事実、このまま長期戦で距離を保てるのならば圧倒的に宵のほうが有利だ。
 どどどど、と隕石を仕留めようとする矢が星屑をあたりにまき散らす。その光景に神々も息をのんだ――あまりにも、圧倒されるものがあった。罅割れる大地も、それを踏みしめる宵もまた体を揺らされるほどの星の弾幕を光の盾で受け止めては壊すザッフィーロである。
 一歩出れば、また星が十と振る。ならば、光の盾で受け止め、壊し、また造るまでのこと。
「狼よ――ッッ!!!」
 唸ったザッフィーロの一言に、目を見開く宵だ!!
「まさか、貴方」
 発 動 、 ――【 狼 達 の 饗 宴 】 ! ! 
 牙を剥きだす無数の群れが光の矢に向かう!!盾の砕け散ったザッフィーロが前へ、前へと突き進めば狼たちは己らの首領を通すための道となった。矢と共に身を砕く者もいれば、それを飲み込んで弾けて消えるものもいる。
 しかし、それでも、怯まぬ!!!
「――ッッ!!!」
 たまらず、宵もバックステップを繰り出す前に――大きな彗星を生み出した!このままではザッフィーロの間合いに入ってしまう。
「届かない、届けない!! 退いてもらいますよ、ザッフィーロ!!」

 狼たちは、ザッフィーロの指示で動き続ける。
 願いの指輪が拾った音を、狼たちが悟ればその身を犠牲にするのだ。
 群れは、「首領」がいなければ成り立たぬ。故に、駒である彼らは喜んで炎ごと星と混ざり合い消えていった。
「届く」
 狼たちが目の前で混ざり合う。
 ザッフィーロめがけて降り注いだ大きな星を前に、狼たちが一匹、また一匹と集まって――ぐるり、焔が渦を巻く!!

「 届 か せ る ぞ ――宵 ッ ッ ッ ッ ! ! ! ! ! ! 」 

 炎 獄 の 顎 が 牙 を 剥 く ! ! ! 
 巨大な狼の頭が出来上がれば、その星を「食らった」!派手な火の粉のみが二人を遮り、呆然とした宵の腹にザッフィーロのメイスが鋭く入った!!

「ア、ッ――が」
 派手に横に飛ぶ!!
 人の身体であるそれは細身だ。骨がひしゃげて、大きな質量を喰らい法則に則って吹っ飛んだら――見事、場外!結界にばしんと背中を張り付けられて、体が宙に投げられた。
「大事ないか」
「ッ、たぁ……あのねぇ、ザッフィーロ。大事無いように見えました?」
 その宵の身体を受け止めてやったのが、素早く動いたザッフィーロである。
 体をかなり星の炎熱に焼かれていたらしい彼が、傷口をうぞうぞとした虫たちでふさいでいるのを見た。 
「……きみのほうが酷そうですね」
「いいや。大したことは無い。さあ、治癒を」
「いいえ。問題ありませんよ――ほら、もうほとんど治ってますから」
 長期戦になるはずだったのだ。
 宵の質量で押し込んで、ザッフィーロの手が尽きるまで叩き込んでいくはずだったが――そういえば、この彼は痛みに慣れている。臆さないのだ。
 喪失することも、その身を削り、命の危機にさらされることもどこか受け入れてしまいそうな両腕があまりにも優しすぎて。そっと己の身を抱く広い胸筋を手で押しのけて地面に立てば、指先一振りで黄金の身体を修繕してやる。
「これで、よしと。で、ザッフィーロ」
「ああ、そうか――願いか」
 星に、願いを。
 降り注ぐ無数の流星に途方もなく願うよりも、ザッフィーロの目の前には宵がいる。願いをかなえてくれる星をどうやら一度、独り占めできるらしいのだ。
 はてさて、どうしたものかと考える姿に「考えておいてくださいね、勝負は勝負なので」と笑って腕を組んでやるしなやかな宵が寄り添えば――神々から賛辞がある。
 ああ、美しき神々よ。できれば、――あなたたちにも、この先幸が在りますよう。
 二人の「未来」を願って、神々の生命が高まれば。美しき星空がまた、いっそう輝いていたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
嵯泉/f05845と
①◎

行くぞ蛇竜!
折角悪役っぽく見えようにしてきたんだ
嵯泉が私を倒せば、あいつが世界の味方だって証明出来るって話
華々しく散るから派手にやってくれ、嵯泉!ヒーローショーっぽく!
何だよー、まあ勝つ気でいるなら良いけどさ
(おまえが相手なら散っても良いとか、言ったら呆れられるよなあ)

起動術式、【死者の毒泉】
防御力重視で行こう
派手な戦い方は知ってる――ヒーローショーの助っ人で
魔王役だけど!
良いんだよ
楽しいんだ、ひとが応援されてんの見るの
おまえなら聞こえるだろ、歓声!

こういうのは全力でやって初めて格好良いんだ
本気で行くから、本気でよろしく
少しはおまえにも食らいつけるようになったはずだよ!


鷲生・嵯泉
ニルズヘッグ(f01811)同道
①◎

神前奉納となれば手は抜けまいが……この馬鹿者
何も悪辣なる邪竜を倒すばかりが途ではない
制し、共に戦う者へと「生まれ変わらせる」事も又証明と為る
散らせはせん、悪竜調伏譚としてくれよう
――竜は共に歩むものと神々にも知らしめてくれる

――妖威現界、我が血に応えよ
防ぐのなら、其れを上回る威を以って削る
私は派手な戦い方なぞ知らん、お前の動きに合わせるだけだ
魔王役が馴染んでいるのはどうかと思うが……良いのか其れは
ああ、聞こえるとも――お前にも向けられた声が

勿論本気で行くぞ
戦場の経験、流石にそう簡単に越させはせん
良い気概だ。ならば護国の将の刃、其の身で学べ
確と付いて来るが良い




「ふははは、ははは――ッッ!! 」
 ばさりとコートを翻す。
 悪徳の象徴らしい――金色の刺繍の入ったそれを大きく振れば、あたりが驚きにざわつくのがうかがえた。
 それもそうであろう、何故ならばニルズヘッグ・ニヴルヘイム(竜吼・f01811)は本来、神域に立ち入るのを許されぬ存在である。
 彼こそ、呪詛の権化。呪詛を飼いながら腹のうちにして従え、「未来」と「世界」の為にと使うのがこの男だ。
 ――悪役っぽく成れているだろうか!
 きりっと彼なりに造った顔は、どうしても――強面というのもあって、ヒーローショーの悪役を演ずるに適している。
 事実、彼はたまたまUDCアースなどで立ち入った公園などで子供と打ち解けるのがうまく、何度か「ごっこ」をしたことがあるのだ。
 ならいとして、年長者は必ず「悪役」をしてやらねばならない。それは、体格差も考慮されてのことであると知っているからこそ――凶悪らしい「魔王」がごとくのあくどい顔を作って見せる。
「さァ御覧じろ神々よ! 貴様らの望む正義が、その未来が此処に至るぞ!」
 派手な黒い槍を振り回し、大暴れを予期させるように体すべてを使って大立ち回りの準備をする。
 尻尾の先は「たのしさ」で揺れていた。己にむけられる恐れよりも、これから起きることへの期待の視線も感じるのだ。ちらちらと白金色の焔が片目から吹き出しながらもの言いたげであるが、そこは「黙ってもらう」ことにした。
 ――竜とは、「人に倒される」もので在らねばならない。
 ゆえに、ニルズヘッグを「斃す」存在は、「人」で在らねばならなかった。
「この、馬鹿者」
 怒りに満ちた声に、魔王の肩が少し揺れる。迫力満点の勢いに、思わず表情もこわばったのだ。
 ――ずん、と。
 ニルズヘッグが舞台としている戦場にて、鷲生・嵯泉(烈志・f05845)は現れる。
 神の力を扱う身であるから、神前奉納である手前この戦いに手は抜けなかった。
 だからといって、目の前の盟友を討つなど――そして、それを悪とするなどは言語道断である。嵯泉も神道に通ずる故、理解があるが「龍」はあがめられ「竜」は討伐されるのが倣いだ。
 しかし、それを『繰り返して』ばかりではらちが明かぬ。歴史の中では、鬼を泣かせてやったり懲らしめたりして「改心させた」話と言うのもある。
 嵯泉の到来とともに、わあっと沸いた神々は彼へ祝福を向けたのだ。それは、ニルズヘッグに向けられる薄暗いものではなく眩いもので――竜は、目を細める。
「馬鹿者だと――? はは、笑わせてくれるなよォ、人間! 愚かなのは貴様だ!」
 ――そういう出し物だ。
 華々しく散る予定であると打ち合わせてきたのである。
 その時も、嵯泉は今と同じような温度で「馬鹿者」と言ったがその意図はニルズヘッグにとってよくわからぬ情動だった。ただ、怒らせたのはわかるから「なんだよ」とすねたような返事をしてしまうまでがさっきまでである。
 金修羅がぬらり、剣を抜く。
 嵯泉が怒りと呆れの混ざった顔をやめて――ひとつ瞬きをしたら、紅色の隻眼が『意志』に満ちた。
「悪竜調伏譚としてくれよう」
 散らせはしない。
 嵯泉が、その刃を「逆」にした。刃が下りるはずの場所に、「峰」があった。
 ――おまえが相手なら散っても良いとか、言ったら呆れられるよなあ。
 その優しさが、残酷で、それでいて人間らしいからまた、ニルズヘッグも受け入れるのだ。竜がどこか切なげな顔をして、まつげを震わせたのはきっとだれにも見られない所作だったろうか。

「教えてやろう、人間よ」

 ぞ、と。
 ニルズヘッグの影だけではない。染みるような広がりがありとあらゆるところから湧き出てあふれていった。
 神々の悲鳴が上がるが、それは彼らを害すことはない。――これは、『ショー』なのだ。だから、結界を乗り越えることは無いまま空気を伝うようにニルズヘッグの元へ集まっていく。
 呪詛である。おぞましき生き物たちの情念が彼らの痛みをまるで、ニルズヘッグを蜘蛛の糸だと信じ込んだ地獄の亡者共のように巨躯へ縋り付いた。それを、術式が手繰り寄せてやる。
 かの体をすべて黒く染め上げようとしたときに、大きく右腕を掲げた!
「調伏とは、こうするのだ――!!」
                フ ヴ ェ ル ゲ ル ミ ル 
 ――起 動 術 式 、 【  死   者   の   毒  泉  】 ! ! 
 あふれ出した呪詛を纏う!薄く伸びた漆黒の痛みが、怨嗟が、絶望がニルズヘッグを覆いつくし、その体を竜人のように作り上げた。
 今回は、防御重視だ。
 まさか最初から勝てるとも、勝とうとも思ってはいないのである。ニルズヘッグを凶悪で、それでいて狂暴な姿に変えていくのは神々への盛大なブラフだ。
 いかにも強そうな姿を想像する。呪詛で作る尖った鱗が腕を包み、彼の顔を中途半端に竜にした。ちょうどマスクでも目に貼り付けたようなかたちで、竜の瞳を隠して見せる。――目は知性を現わすから、「無ければ」印象もがらりとかわるだろう。
 尻尾をしならせ、より呪詛でコーティングをする。イメージは着ぐるみだ。しかし、纏うのはそれよりもずっとおぞましいものである。一回り体を呪詛で巨大にしてみせたニルズヘッグが、唸った。
「ゥウウ、ウ、ぉおおおお、お――」
「やりすぎだ。良いのかそれは」
「いいんだよ! こういうのは全力でやったほうが楽しいんだ」
 そこまで本気で演じるな、と半ばあきれつつ嵯泉が言う。演目を台無しにしないよう、こそこそとニルズヘッグが彼に続きを促した。
 嵯泉もまた、ニルズヘッグが「正気」であるのは握る槍の「ぶれなさ」に悟っていたから動揺は無いが――なるほど、と思う。神々が彼に向ける「おそれ」は畏怖だ。
 全力で行くからな! と打ち合わせの段階では彼も言っていたが、なるほど確かに凶悪な鱗に守られている。これは、「生まれ変わらせる」にはちょうど良い。
「我が血に応えよ」
 ――すべて、削いでやらねば。
 【 妖 威 現 界 】 ! ! 
 嵯泉の「口寄せ」である。己の掌を刀で撫でれば、浅い一文字が出来た。真っ赤があふれ出して――【天魔鬼神】を呼び起こす!
 此度依り代に使うのは、春暁だ。目の前の「竜」は災禍でない。故に多少間合いはいつもより短いが「目的」にはちょうどよいのだ。

「 行 く ぞ ――――ッ ッ ッ ! ! ! ! 」 
「うお」

 覇気という。
 たった一度のうなりだ。気圧されたニルズヘッグがいた。張り上げた戦いの気迫に、その剣から放たれる「闘気」に全身がびりびりと震え――胴体を衝撃が襲った!
「ッぐ、ォオオ、あ――!!?」
「護国の将の刃、其の身で学べ」
 半ば本気の悲鳴である!
 ニルズヘッグから漏れた嗚咽に動じた様子はない。さらに、追撃と嵯泉が「峰打ち」のまま春暁を押し当て、秋水を逆の手にしたならばその首を打たんと繰り出される!
「がァッ!!」
 そうそうやられてたまるか、と、竜の顎が秋水に食らいつく!
 妹ほど鋭い歯は持ち合わせていない、かみ砕くことができないが口の端を切らせながら滑ることで、嵯泉の意表を突いた。
 ――少しは、おまえにも食らいつけるようになったはずだよ!
 瞳の色は見えないが、生き生きとした動きが竜の機嫌を現わしている!首をとらえることのなかった秋水をかわしきり、ニルズヘッグは嵯泉の胴体に蹴りをいれて間合いを取る!
 間髪入れず、どうっと地を蹴った!構えた槍の穂先と刃が打ち合う!右、左、回れ右からの上段!!突き出される質量を跳ね返しながら、上からの一撃を嵯泉が跳ね上げると、それを好機としてニルズヘッグが体の重さで押し込む!!
「うらァアアアア゛ぁアッッッ!!!」
「――ッ」
 単純に、ニルズヘッグのほうが嵯泉よりも重い。
 みしみしと金夜叉の腕が悲鳴を上げながら、地面を割りかねぬ重さで「落ちる」重さのまま押し込むニルズヘッグと拮抗した!
 押し上げようにも重すぎる。押し込もうにも反発が強すぎる――故、両者弾き合った!地面に転がりながら態勢を立て直す嵯泉に、体を撓めるだけで済んだニルズヘッグが足を踏み込む!
 ――突撃か?
 嵯泉が片眉を持ち上げて、その違和感を悟った。
 ――否、投擲!!!
「ぉおおおおおお、ぉ、お、――ッッら゛ァッッッッ!!!!!」
 いつもよりずうっと今のニルズヘッグは防御の鎧で囲まれて重い。
 ぐうっと足先にまで重さがあって力が入る。腰のひねりと肩の動きに合わせて飛び出した槍は――いつもよりずっと早いのだ!!
 それを、嵯泉が刀身で撫でて弾いてみせる!!!

 ――まさに、神業。まさに、その美技、経験のもの。
 楽しい。沸き上がる歓声が、そして認められる彼への声援が、応援が、きもちいい。耳元でざわめく呪詛の音など聞きなれているが、新鮮な「音」にはニルズヘッグも敏感だ。
 何てあたたかなところだろう――そりゃあ、私からは一番遠いか。
 氷の地獄にて生きてきた。すべてを焦がす炎で光を知った。呪われている、どこまでも、きっとその終わりまで――呪われているのに。
「聴こえるか、嵯泉! お前は――」
 世界に愛されている。
 「殺されてもいい」と竜が認めた人間は、いつでもこの竜に道を届けてくれるのだ。今、こうして――ニルズヘッグの前に踏み込みがあった。
 あっという間に詰められた間合いをどうにかして開けようと苦し紛れに後方へ跳んだ顔面、その鱗をまず、短い剣で吹き飛ばす。ぱきゃんとあっけなく割れた悪の仮面の向こうで、あどけない男の顔を嵯泉は見ただろう。
「聞こえるとも」
 『秋水』が、その胸を柄で突く。
 とん、と優しく叩かれた胸から、鱗がすべて「崩壊」していくのだ――小さな衝撃で、たったそれだけでニルズヘッグの呪詛は解かれて、彼の前には「あたたかな世界」が広がる。
「お前にも、向けられた声が」
「わ、――」

 すげえ、と言いかけたところで――刀ふたつを以て、地面と衣服をつなぎ合わせ、人間は生きたまま竜を封じ込めた!
 ぴいぴいと心配そうにやってきた黒い小さな竜も、空間の賑わいに驚いて一度、跳ねる。
 拍手喝采、感激の唱和、――なぜか、ありがとう叫ぶ神々。地面に大の字で寝転ばされたニルズヘッグにも、その隣で空を見上げる嵯泉にも注がれる賛辞があった。
「竜は共に歩むもの、だ」
「はは、ははは――なんだよ」
 世界の味方の「味方」もまた、「味方」ゆえに。獲物を抜いてやって、がっちりと両手で腕を掴んで起こしてやる。胡坐をかいて、割れた石板の上に座るニルズヘッグがどこか照れくさそうに頭を掻いたのだった。
 此度もきっと、世界は愛と平和で満ちている――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ゼイル・パックルード
②°
風が吹くのなら、それを炎熱で風を起こして拒否を示すように吹き飛ばす
別に力を失った何の役に立たない神のために戦うわけでもない、自分のためさ
依頼と違うって後で何か言われそうだが、一人くらいヒールが必要だろ?とか適当に誤魔化すさ。そもそこらへん期待されてないだろ

戦闘は、まずは速攻で蹴りを当てることを狙い、相手の動きが読みやすくして、相手を様子を窺う。
お前はどう動き、どう戦う?何を狙ってくる?

…そしてお前は何を思って戦う?
あるいは生命ってヤツをみたいのは俺自身なのだろう

別にやる気がないわけでも加減しているわけでもない

相手の熱を感じたなら、たぶん燻ぶった気持ちに火がつく。そうしたら思い切りやるだけだ


雷陣・通
∞&◎&△
ここまで来たら、最後まで見せてやろうぜ!
「頼もう! 我が名は雷陣・通! 武芸は空手、名は紫電。いざ、武を奉納せん! さあ、我と拳をかわすのは誰ぞ!」
神事なので一応空気は読む(ここまで)

「さて、そんなわけだ、行こうぜ――ライトニングにさ!」
あとは通常運行
全力で行くぜ!

勿論、戦闘は頭を使うぜ
なにせ、小さいからな

左右に動き回って【フェイント】と【残像】を駆使して幻惑しつつ
上半身、特に左側を狙う、そして左を警戒しはじめたら【二回攻撃】で左右フック
今度は右側、ローキックも居れて胴体から下半身中心に叩き込む
最後は正中線目掛けての『正中線五段突き』
勝敗は関係ない、今出せる全力をここに見せる!




 ――ざあっと、風が吹いて。
 それは、食後の「お口直し」とでも本来は形容できるものだろう。
 神々がそれぞれのぶつかりあいと、その熱量に感動していた。余すことなく堪能して、そして未来を切望するたびに彼らの力はよみがえる。
 雄々しく吹いた風は歓迎のそれであり、新たな武人たちを歓迎するためのものだったのだ。
「頼もう! 頼もーう!」
 そこに、若い声が飛び出す。
 声は若いが、足取りは玄人のそれだ。もはや、彼はその道にて「達人」と呼んで差支えのない実力を手にしているのである。
「我が名は雷陣・通(ライトニングボーイ・f03680)! 武芸は空手、名は紫電。いざ、武を奉納せん!」
 吠え猛るのが少年のそれ等と、神すらも予期できぬものであったらしい。ざわつく観客席からは死線を感じられた。しかしそれは、決して悪いものではない。
 こんな小さな子供が、という驚きと――感心めいた素直な賞賛があった。通常ならば照れくさそうにわらってみせただろうが、今の通は戦場に立つ一人の武人だ。故に、決して気は抜かぬ。
 もはや勝負はこの土俵に立った時から始まっているのだと小さな背が語っていた。風をうけてもなお、体幹一つ揺らがない。
「さあ、我と拳をかわすのは誰ぞ!」
 雄々しく問う。
 雷の使いは、その身に確かな期待を感じていた。
 猟兵同士の戦いなど、高みを目指し続ける通など武の道を極めしものが皆歩む途方もない旅路に丁度いい刺激となる。
 故、神前であるというのもあるが、――ここまで来たから、最後まで見せてやりたいという気持ちも、もちろんあった。
「俺だ」
 勇猛さを称える風が、鋭い拒絶の風圧でぴたりと止む。
 炎熱を孕んだ風圧が、代わりに対戦相手である通の髪の毛をくちゃくちゃに乱した。前髪をかきあげられ、毛束が揺れる。しかし、通それでも視線は「相手」に向けたままだ。フィールドに昇ってくる影の姿をじいっと見て、頭の中ではすでに戦いを想定していた。
 ――力を失った役立たずの神どものために、戦うなどごめんだ。
「ゼイル・パックルード(火裂・f02162)。あんたの相手に名乗り出る」
「おっ、――よっしゃ。じゃあ、やろうぜ! とことん!」
 ゼイルもまた、武人である。
 その本質は通ほど無垢ではないが、「自分の為に戦う」と言う点は彼と一致しているのだ。・
 探すものがある通とは違う。ゼイルにも探すものはあるが、それはけして「人」ではない。彼の探すのは、「彼に相応しい終わり」という哲学的なものだ。
 だから、殺す。人を手にかけて、殺して、自分の強さと弱さを学ぶ。学び続けて、――今、ちょうど「スランプ」なのだ。この悪い流れを痛烈に攫ってくれるような拳はどこかにないかと考えて考えて、ようやく痛烈な麒麟児といっていい相手を見た。
 ゼイルは若い。しかし、通はそれよりも幼い。
 若さを指摘されて手を抜かれるより、己より幼い相手に全力を叩き込まれたほうが今はよい気がしたのだ。――ちょうど、火打石で火をつけるのと同じ原理で、己の能力にももう一度エンジンがかかるような感覚がある。
 彼の悪性を見抜いた神々は多い。故に、彼に善も信仰も期待していないが、それこそ正解だとゼイルも思う。
「おう」
 通の黒帯を見る。
 空手。日本によく通ずるマーシャル・アーツだ。その帯色は、色が濃ければ濃いほど「強い」証だという。
 ――通の帯は、漆黒だった。
「よろしく」
 刹那、ゼイルの姿は消える。
 通が開始の握手をしようとした時だった。――武に通ずる彼は、まず「公」の場で求められる礼節から払うべきだとする。しかし、ゼイルは悪辣な男なのだ。
「な」
 消えた男の行方を目で追うのは遅すぎる。焼けこげるような痛みを肌で感じて、炎熱の方向を悟った!!
「もう始めてるぜ」
           カ エ ン サ イ カ 
 ―― 蹴 撃 、 【 火 焔 災 禍 】!!!
 まず最初に放った「礼儀知らず」の一撃だ! 通がほぼ第六感でそれを腕にて受け止める。長期の接触をすれば肌が焼かれることは必至だ、だから、弾くようにして魔の焔を押しのけた!
「ッ、と」
 ばしゅ、と炎の勢いに任せてゼイルが押し込まれた体に遠心力を起こす。そのまま、二回目の回し蹴りを放った!
 通の小さな体を狙うとしたら、一番狙いやすいのは「頭」だ。足の長さも当然背の高いゼイルのほうが長く、リーチがある。
 しかし、それを臆さぬ通だ。
 ――小さいから、頭を使わないといけない。
「ッッし!!」
 口の端から息を漏らし、鋭く呼吸を繰り出す。
 その勢いを意識して――まず、ゼイルの回し蹴りはしゃがむようにして回避した!両足が地面に戻ったゼイルを、鋭い左のストレート・パンチが繰り出される。
 子供だからと馬鹿にできぬ、通の殴り方は「殴り方を知っている」それだ。肩から繰り出される豪速は、ゼイルの左をかすめる。
「――あ?」
「次!」
 痛みがほとんどない。
 興奮しきっている状態だからというのもある。しかし、あまりにも「浅い」一撃だった。
 ――ゼイルの大振り二連続に対して、通のそれはあまりにも軽い。
「ふざけ、――」
 ているわけではないのだ。
 緑の瞳に戦意がある。左右の軽いフットワークでゼイルを翻弄し、繰り出される火焔の一撃たちを躱していくばかりだ。
「ッぎ」
 途中、躱し続ける通の髪の毛を思い切り掴んだゼイルがそのまま地面に押し込もうとしてやる!蹴りは間合いが近すぎて届かないが、すばしっこい通の動きを止めるには至った!
 ぎぎぎ、ぎ、と膝を曲げさせるほど強く押し込んで、――しかし、その間も左わき腹ばかりにフックがねじ込まれる。痛みとしては軽いのに、たまらずゼイルは手を放した!
「ッち、なんだ――」
 ゼイルは、いわゆる喧嘩殺法なのだ。
 彼にだれも武芸を教えたことは無い。知っているのは「どこをどうしたら」人が死ぬかということで、彼には「武」に通ずる戦いのそれが無いのだ。
 通もまた、「型」にはまった戦い方をする。紫電流の男だ。ゼイルの「勝てばいい」とする戦い方とは根っから大きく異なる。故に、いつもよりも読みにくい相手に気持ちは高ぶっていた。
「まだまだァ!!」
 ――また左か?
 ゼイルが身構えて右に飛べば、そこをローキックが襲う!!
 素直に驚いた金色の瞳が、反射で体から炎を生み出してその威力を殺すが――鋭い音と共に地面へ吹っ飛ばされた!
 痛みに怯んでいる場合ではない、地面を転がりながら両腕をついて、素早く体を跳ねさせて起き上がる。ゼイルは、その時に「左」に違和感を覚えていた。
「――なるほどね」
 持続ダメージ、というものであるらしい。
 通の拳は常にゼイルの「中身」を狙っていたのだ!ぐらりとバランスを崩したゼイルを、飛び込んできた通の拳が狙う!!
 その拳を払いのけるようにして、焔を纏った足で弾く!派手に通がすっ転んでいって、ゼイルが己の左わき腹を抑えて見送った。
「いぃっ、てェ」
 思わず、通も同じく苦悶の表情を浮かべる。
 通の拳が「内臓」を狙ったものであるのなら、ゼイルの焔は分かりやすい外傷だ。徐々に徐々に水ぶくれが通の身体には増えていき、足の踏み込みや力の加減で皮膚が裂ける。
 ――狙いは同じ。
 ――やりかたも、邪道か王道か。
「なあ、お前」
 ゼイルが、少年に投げかける。
 体を真っ赤にさせながら、しかし臆しない!ど、どう、と踏み込んだ足の皮膚が裂けても、少年は涙一つ零さないのだ。
 繰り出される突き、そして回し蹴りを交錯させた!ぱしィンと鋭い音がして、また二人がお互いを弾き合う。フックの追撃は許さないゼイルの、ガードが緩んだ右を通が狙えば、その拳を炎熱が焼いた!
「――何を思って、戦う?」
「わかんねぇ!!ていうか、今、関係ねえ!!」
 ばちぃ、と鋭く――通の身体が雷を纏った。
 感情の発露、というわけではないらしい。ゼイルも、はっきりとした問答を聞いて猫のように目を丸くした。
 ――わからないのに、戦っている。通は、愚かであっても素直な性分だ。
 彼の拳があるところに敵が在れば、それを砕くのが彼の流儀である。 
「俺は!! ただッ!!!」
 ――ラ イ ト ニ ン グ に !
 全神経を集中させる。フェイントを繰り出しながらお互いにその間合いを許さなかった!
 ゼイルは通と戦ううちにその技術を盗み始めている。つま先だけでステップを踏みながら、お互いに蹴るふりをしたり、殴りかかるふりをしたりして、密着した状態を保つ。
 互いに避けるべきは、相手からの――大振りの一撃を喰らってからの一発KOだ。
「応えは――後で教えてくれよッッ!!!」
 ゼイルが鋭く地面をける。ステージとなった岩盤が割れ、二人の間に砂塵を起こした!ぎゅおおお、と風が拭いて通の素早さを奪う!
 ――止まった。
 今一度、疲れ切って痛みのとれぬ体に炎を纏い高速の襲撃を繰り出した!!

「――見えたッッッッ!!!!」

 それは、通もまた同じことである。
 飛び出すゼイルの姿を見た。宙を舞いながら風にのって、真っ先に通へ蹴りかかる姿を見て、にやりと少年は勝気に笑う!!
           ライトニング・ファイブポイント・ストライク
 そして、――接敵、【 正 中 線 五 段 突 き 】!!
 ばぎゃぎゃぎゃ、と地面が割れて、石板が割れる。ゼイルの巻き起こした風圧と焔熱、そして、通の雷によって神々の前にまた、一筋の「未来」が織りなす劇的な終わりが訪れた!!
 全力だ。
 お互いに、今出せる全力を繰り出すことに頭を使った。
 これぞ、未来の力。これぞ、愚かだと言われながらも止まれない生き物たちの戦いである。悪性も善性も関係ない。
 同じく前を向き続け、さらに先へ歩み続ける武人らの勢いに会場が盛大に沸き上がったことであろう――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鎧坂・灯理
①◎ コガラス殿(f18713)と
現実世界でやり合うのは……しっかり戦うのは初めてか?
あなたの真の姿を初めて見られるとは、実に光栄だよ
皮肉ではなく、ね

起動、【銀月】
半竜となり、水を拒絶。機動力を活かし、竜の鱗と爪を生やした腕で攻撃
ヒットアンドアウェイを基本とし、この身以外の武器は使わない

竜人対決だ
体の動かし方を学ぶなら「実践」が一番だからな
楽しもう、コガラス殿


式島・コガラス
①◎
灯理さん(f14037)と

弾丸はもうありませんね。いや、元々現実での試合で撃つ気はありませんでしたが……。
私の、恐らく真の姿というものをお見せします。……実を言うとこの力、まだ使いこなしているとは言い難いのですが。

右腕に水でできた竜爪を纏い、左肩に水の翼を持つ姿になる。
かつての水の神、女神ティアマトの力なんだとかなんとか。詳細は私も知らないですが……。

【地の底より】を発動し、周囲の黄金を水に変換。意志なきもの、飛び道具の類を全て吸収させる。
翼で機動力を補って接近し、右腕の爪で攻撃を行います。

初めてコレで戦う相手が灯理さんだったのは幸運です。ドラゴンの先輩ですからね。……胸をお借りします。




 ――仮想空間でたびたび、仲間たちと殺し合うことはある。
 死んでも現実に差支えがないから、と言う理由で行う本気の「殺し合いごっこ」遊びは、時折お互いの何かを暴き合い、そして、その距離を詰めさせるのに非常に有効だ。
 此度も環境は違うといえど、「殺してはならない」という「戦い」のごっこ遊びも本質は似たようなものである。
「実に光栄だよ」
 皮肉ではない。鎧坂・灯理(不死鳥・f14037)は、神々に見守られる戦場にて上着をはためかせながら眼前の敵に言った。
 ――彼女とは、まだ正式に、一度も力を図り合ったことは無い。
「実のところ、まだ――使いこなしているとは言い難いのですが」
 水を纏っている。
 否、式島・コガラス(明日を探す呪いの弾丸・f18713)の身体を包むようにして、一枚の布が彼女の「翼」となった。肩にまとわりついた上着を翻せば、徐々に体温を奪う水の力が宿る。
「竜種か」
「ティアマト、その力だと聞いています。詳細は、私も知らないですが」
 ざわめく。
 神々がざわついたのも無理はない、ここ、ヒーローズアースでの「ティアマト」の席に突如「後」が出来て、それが今目の前にいるというのだ。
 原初の創造における混沌が権化、そしてきらきらと輝く水の反射がコガラスを包む。
「しかし、私は――式島・コガラスであることを棄てはしない」
 女神になってやるつもりもない。
 ぎ、と睨んだのは神々に対してだ。盛り上がっていた空気が一気に緊張で冷えて、そのすべてがコガラスを見下ろす。不敬だと思うわけではない、ただ、あまりにも「乗り越えようとする」未来の力が恐ろしいのだ。
 灯理も、周囲のストレス数値は常に「視えて」いる。神すら恐れる、女神の力など――正直、灯理も喉から手が出るほど欲しい。
「素晴らしいな。――私も、そのほうが嬉しいよ」
 鎧坂・灯理を棄てそうになったことがある。
 灯理は前年の半ばまで、体の成長が遅かった。度重なるストレスもあるが、栄養をすべて脳に回しているから発育が遅れていたのも原因である。
 ようやく、己の力を掌握できるようになった今だからこそ落ち着き払っているが、当時は敵も味方もなにもかもあったものではなく、目につく「強さ」はすべて敵だと思って動いていたものだ。
 もとより不定形な赤子が超常を手にしてしまったがゆえに始まった人生である。失ったものを取り戻して、爆発的に成長を遂げたときに彼女は――解放されて、力に飲まれていた。
「楽しもう、コガラス殿」
 己を失ってはならない。
 己を、見失っては――その歩んできた道も、大切にしていたものも、生きるためのちからも、明日も、見えなくなってしまうのだ。
「はい」
 コガラスもまた、はっきりと頷く。
 灯理がこの場にいて、己の申し出を受けてくれたのはあまりにも好機であった。
             マジナ
 いっそこの運のめぐりもアプスーの呪 いだろうか。しかし、もしそうであるのならば――うまく使ってやる。
「胸を、お借りします」
 弾丸はもう無い。代わりに、今は右手に竜爪と、左肩に水の翼を得ている。
 信仰を取り戻せという啓示も蹴り飛ばして、コガラスは誰にもさだめられない「明日」を探すと決めたのだ!

 地面を踏み砕き、コガラスの周囲が「沈む」!!灯理もその衝撃には目を丸くした。足場にしていたタイル状に敷かれる石板たちがぐんにゃりと曲げられて、泥のようにこねられていく!
 たまらず、念動力でわずかに上空へ浮いた。あまり上がり過ぎると、攻撃の隙を与えるだけだと判断して――戦場を見る。
「な、ッはは、面白いな」
 「溶けだした」世界があった。
 すべての岩を、そして足場を、空間を「水」が駆け巡る。あたりをこね回し、ずるずると黄金は水に変えられた!
 泥の中心にはまだ未成熟の竜がいて、灯理を真っ赤な片目で見上げる――。
   パ イ プ ダ ウ ン 
 ――【 地 の 底 よ り 】!!
 灯理の威嚇射撃すら彼女には届かない。代わりに、どろりと鉛玉が溶けて灯理も舌打ちした。魔術を組み込んであるのに、それすらも「飲み込んで」しまうのだ。
「これだから、神ってやつは!」
 灯理は、神が嫌いだ。
 ――だから、コガラスを「そう」するわけにはいかない。
 コガラスも絶大な力を前に驚いていた。一気に可能性が増えたのである。
 今までは銃撃ばかりでこなしてきた。ただ、引き金に指をかけて力を込めて打つだけ。淡々とした仕事をこなすだけの日々が深海だとするのなら、この力は一筋の太陽光といっていい。
「すごい」
 ――力に、おぼれてしまいそうだ。
 灯理の銃弾も、周囲の景色も飲み込んでしまえるほどの暴威!!
 巻き起こる地の底からの悲鳴めいた濁流に、灯理は転移だけでの防御は間に合わないと判断した!!

「――コ ガ ラ ス ッ ッ ッ ! ! !」

 叫ぶ。
 圧倒的な力の発露に飲まれてしまわぬよう、その名を取り戻させるのだ。名を呼ばれたコガラスが赤の瞳に己を宿して、息をのむ。
 そ こ に は 、 【 銀 月 】 が い た ! ! 
 水を拒む半竜だ。
 己の両腕に翼を得た灯理が、人間の耳には聞こえぬほどの超・音波にて――水 の 流 れ を 割 る ! !
「ッく、あ」 
 あまりに高音すぎてコガラスの鼓膜に痛みが出る。思わず、両耳を手でふさがざるを得ないのだ。三半規管を壊されては、立っていることもままならない!!
 ぐらりとしたコガラスの身体めがけて――月が堕ちた!!!その胴体めがけて竜の爪を振り降ろす灯理である!
 本来ならば、その身以外の武器を使ってやってもよかったのだ。しかし、今それを使わないのはなぜか。灯理にとって、この状況こそ「対等な」仲間同士の条件だ!
 わざわざ有利なものを使って勝たねばならぬのが殺し合いならば、戦いとは対等な土俵で行うべきである!!
 鋭く飛び出た灯理の爪をコガラスの竜爪が受け止めた!水の力を使って背中より速度を上げる。
 肉弾戦の心得はさほどない。だから、ここからは「ぶっつけ本番」だ。――どんな力が使える?己の期待に、どれほど「力」は応えてくれるのか!使って、学ばなくてはならない。
 常に考えていた。瞳がわなわなと震えているのも灯理が視る。お互いの瞳に縦長の切れ目があって、お互いの興奮を物語っていた。これは、竜と竜のまぎれもない争いである!!
「 う ぁ あ 、――あ あ゛ あ ッ ッ ! ! ! 」
 灯理のほうが背も高く、コガラスより重い。
 だから、あえてコガラスはその腕を押し込んでから、弾いて懐へ入り込む!!まだ殴ることを知らぬ腕で思いっきり灯理の腹を打った!
「――ッ」
 悲鳴をかみ殺す灯理である。
 竜の鱗が無ければ内臓のひとつやふたつ、破裂させていたやもしれない。まだ「できたて」のコガラスの能力は常に「全開」の状態なのだ。 
 そのまま、ラッシュに出ようと次は人間の手が灯理の顎を打つ。首の筋を痛めた――しかし、灯理の意識を奪うには至らない!それを見越したコガラスが、己の翼を使う。
 背面より勢いを得て、全力の右を灯理に振り落とした!!!
 ――ばたた、と血があふれる。
 灯理のこめかみは興奮も相まって血流が良い。派手な出血を得て、灯理の頭から「血圧」が下がる。
「ちょうど、いい」
 ――考えすぎていたよ。
 灯理は、恐怖に敏感だ。それは、生き延びるための術である。
 ゆえに、コガラスと戦うこの瞬間だって何もかも「怖い」。しかし、その感情に支配されないために「熱を下げておく」必要があった。失血は、ちょうどよく彼女から熱を奪う。
「頭が冷えた」
 コガラスには、その言葉の真意がわからない――。
 だけれど、己の振り下ろした一撃が灯理に届いたことには達成感を得ていて。
「ッおお、お」
 だから、止まれなかった!
 がしっとコガラスの胴が灯理の両爪につかまれる。大きく持ち上げられて、コガラスは――自分の身体が今どの位置に、どの座標に在るのかがわからないのだ。強大な力を暴走させないように必死で、だから、処理が追い付かない!
 灯理は溶けだした地面から飛びあがって、コガラスを両手で持ち上げる。
「まっ、さか、――落」
「 ッッ、ぉ、 お お お 、 落 ち ろ――――ッ ッ ッ ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! 」

 破砕。
 歪んで蟻地獄のようになっていた地面が破片を散らしながら砕け散り、コガラスが叩き込まれる!!
 悲鳴すら上げられない。灯理ごと堕ちた「投げ」技が見事、決まってしまったのだ。
「――っは、は、ッは、ァ、は」
 顔面から汗を吹き出しながら、灯理がどうにか己の鱗を体の中へと締まっていく。
 頭を強く打ったものの、水の力で守られていたコガラスの頭蓋は無事らしい。代わりに、少し目が回っているのかぼんやりとした赤で灯理を見上げる形となった。
 瓦礫の中で馬乗りになっていた灯理がコガラスを起こす。力の抜けた体は水で冷えていて、――灯理が上着で包んでかついでやった。
「そ、――こまで、しなく、ても」
「いいや。ちょっと、ムキになってしまった、からな」
 互いに息も絶え絶えで、圧巻の戦いを披露してやった。早く回復城、と言いたげに灯理が空を見上げれば、ぱああと優しい月の光が降り注ぐ。
 二人の傷があっという間にふさがるが疲労というのはそう簡単に治るものでない――灯理が観客席にコガラスを運ぶ間、つぶやいた言葉がある。
「これだから、神様は『ご都合主義』で、嫌いなんだよ」
「――同感、です」
 
 それでも、どこか悪くない気がしたのだ。
 仲間の成長に。そして、己の成長を歓びながら人間たちは明日もまた、「試練」を超えていく。
 ――その歩みが未来を創るのだと、彼女らは二人の名を神々に知らしめてやった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レイニィ・レッド
②★

復興なんざ興味ないんですが
わざわざ舞台を用意して貰った手前
黙って帰るのも気が引けますからね

いいですよ
ずっと見てたンでしょ
見学料くらいは取らないと気が済みません

お相手して貰おうじゃありませんか

こんな舞台で隠れるのも無粋です
正々堂々と眼前に立ってやりましょ

どんな攻撃が自分を襲おうが
鋏で叩き伏せ
正面から突っ込み
血飛沫に紛れながら跳び回り
騙し討ちとフェイントを駆使して
ズタズタにしてやりましょう

負傷は問題ありません
雨が 血潮が濡らす限り
どんな傷を負おうが
自分は斃れない

――何故かって?

教えてあげましょ
自分は『雨の赤ずきん』
雨と共に現れ
正しくねェものを叩き切る怪物です

記憶によォく焼き付けることですね


アルトリウス・セレスタイト

セフィリカ(f00633)は出る様子
俺は観戦に回るか
多分、これも盛り上げに必要な要素だろう
加減して戦うのは難しいことだし

各試合は黙って観戦
猟兵として磨き上げた技の数々は大いに神々を沸かせるのだろう
実況者がいれば耳を傾けてみる
エンターテイナーの素質のある者はこんな事もできるのか。と少し感心したりなど

そろそろセフィリカの出番か
今度は剣を披露する様子
注目しておこうか

きちんと学んだだけあって堂に入った戦いぶり
技術も確かなようだ
そういえば周囲を見ると、こういう時は声援を送るのがお約束の様子
倣っておくとしよう

頑張れ、セフィリカ

他にも見知った顔があれば応援などしておこう


セフィリカ・ランブレイ
②★
アルトリウス君(f00633)は出ないんだ?
ラッキーかな。試合で当たればギブだなと思ってたし
試合じゃ勝てないもん

うん。絶命させなきゃ勝つビジョン見えない相手とこういう舞台では…ね?
ま、キミ以外にも当たったらギブりたくなる類のはちらほらいたし、世界の壁の厚さよね

ってことで、私は盛り上げてくるよ。応援よろしく!
秘伝のゴーレムの数々、見せよう、と言いたいトコだけど……
(提げた長剣の柄をそっと握って)

こっちのが強い以上、ね

(私が覚えた夕凪の剣は、受け流しと見切りに重点を置き、相手の力を利用して勝つことを主眼に置いた技術)

「じゃあ行こうか、シェル姉!」
相棒の魔剣に語り掛け、試合に挑む!


アカネ・リアーブル
②★

巫女として戦った今宵の戦い
最後は神と手合わせ願います
アカネは神に仕える戦巫女
異国の神の巫女の舞ではありますが
この地が末永く安らかであれと祈る気持ちは同じもの
どうぞよしなに

真の姿解放
淡く光ります
得物は鎖舞扇
水平の動きと足さばきを巧みに使い
相手神の動きも巧みに取り入れ
この場を舞い清めましょう

ダンス2回攻撃範囲攻撃を併用
神の攻撃は見切りで回避カウンターで反撃
残像も残しながら舞います

この美しい最高の舞台で
最高の舞を奉納させていただきましょう
黄金の種子が黄金の実りをもたらしますように
不死の獣がもたらす生命の輪環が永久に絶えぬよう
終えた生命は新しい生命となり再び生まれ直すように

祈りを込めて
祝福を込めて




「俺は観戦に回る」
 ――そう宣言した時に、友の顔が本当に心から安心したようだったのを覚えている。
 加減して戦うのは難しいのだ。どっかりと用意された神用の玉座に在るアルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は「神」などときわめて近い存在である。
 むしろ、彼のことは「ことわり」と呼んでいいのだ。世界を作る構築式で在り、何物の中にも通ずるものが彼である。
「加減して戦うのは、難しいことだし」
 一人ごちてそう言った。
 そう、圧倒的に「強すぎる」ゆえに彼ができるのは殲滅のみである。
 神らが座るはずで在ったらしい場所にアルトリウスがいても、何の違和感もなく溶け込んでしまっているのはその偉大さを神々も認めているからであろう。
 ――実況者もいるらしい。
 神も八百万というが、そんな騒ぎが好きな神もいたものだ。事実、アルトリウスが眺めているだけでも何度も息を呑むような猟兵同士の戦いというのはあった。
 完全無欠――には至らないアルトリウスの「欠け」が一つ、心である。それをぶつけ合って戦い合う猟兵たちの愛や友情、そして未来の交錯がまた芸術的な美しさを作り、盛り上げるのだ。
 そのたびにアルトリウスは原理を少しだけ使って派手な花火を打ち上げたり、風をおこしたり、炎熱を焚き上げてやったりしている。そして、今は壊れたフィールドの整備だ。時間を「巻き戻して」「止める」だけで最初の姿に戻る戦場を作り上げたのなら、満足げに息を吐いた。
 さて、そろそろ彼の見知る顔の出番である。
 ずうん、ずん、どどどど――。
 ドラムロールの割にはあまりにも深い地の音を聞きながら、アルトリウスは猟兵たちの姿を見ていた。

「じゃあ行こうか、シェル姉!」
 相棒の魔剣に語り掛ける。魔剣はどこか楽しそうに、それでいて姉のように頷いた声色を持ち主に返した。
 正直、アルトリウスが出なくてよかったと心から思っている。
 ――かの力は、いってしまえば「チート」に近いのだ。
 世界の理そのものを扱い、それを握り、自在に操って見せる力はあまりにも強大すぎる。試合せよと言われれば開始一秒後に如何に派手な白旗を振るかを考えていた。
 しかし、彼以外にも「あたったらやばそう」の部類は非常に多かったのもまた事実である。セフィリカ・ランブレイ(蒼剣姫・f00633)は己の肩をほぐすように上下に動かしながら、息を吐いた。
 ――この場に、彼女と同様に「猟兵とは戦わない」選択肢を選んだ者たちがいる。
「どうぞよしなに。最後まで巫女として戦います」
「ん、よろしくね。ええと、ゴメン。私、今、油くさいかも」
「いいえ! そんなこと。頑張られた証でしょう」
 華やかな笑顔を見せて、アカネ・リアーブル(とびはねうさぎ・f05355)はセフィリカの手を取る。きゅうっと握り合う片手同士があって、力強くお互いを認識した。
 アカネは、神に仕える存在だ。ならば最後まで巫女として戦い、弱りながらも神が猟兵たちと戦い、力を得たいというのならその気持ちには報いるべきだとする。
 異国、異世界の巫女で在れど、この国が、そして世界が、いつまでも末永く幸せで安らかであってほしいと祈る気持ちは変わるまい。故に、届けるための舞を此度彼女は踊ることにしたのだ。
「で、そっちは――」
「黙って帰るのも気が引けますからね。ああ、握手は結構です」
 ――雨の怪物。
「自分は今、血腥いンでね。――あんたらの服ににおいがついちゃ、いけねェ」
                       レイニィ・レッド
 真っ赤な血を頭からかぶったような、そんな姿をしている。【雨の赤ずきん(Rainy red・f17810)】は目こそ笑えないが、口元だけを凶悪に笑んでそう言ってやった。
 驚かせたいつもりはないが、レイニィから見てみてもアカネは善性の生き物で、セフィリカは中庸そうにうかがえるのだ。対して、根っからの悪辣として今や生きる怪物である。わざわざ「悪」に触れる必要もないだろう、という彼なりの気遣いでもあった。
 ――裁く対象が増えるだけだからだ。
「見学料くらいは取らないと気が済みません。タダ働きはゴメンですよ」
 金にうるさい「ともだち」のようではないけれど。
 ――このまま神にただコンテンツとして消費されては腹も立つというものだ。この怪物の戦いは「裁き」であれど「無料」で見せていいほど安いものではない。
 しゃき、しゃき、と鋏を鳴らしながら赤い瞳が前を向く。それに肯いて、一度セフィリカも息をのんだ。よりによって、今回はゴーレムを置いてきてしまったのである。剣の心得があるゆえに、――そして仲間があるのもあって、戦えると信じていた。
「軍神、ですね」
「いかにも」
 夜空に、雷雲が立ち込める。
 三人を相手するのは、軍神と呼ばれる存在であった。ある神話では彼のことを雷の権化だといい、かつては人を襲って喰らう恐るべき魔神だったという。正面の顔には目が五つもあり、それがまっすぐ猟兵たちを見ていた。
 巨躯である。しかし、先ほどの竜ほどではない。力を奪われたがために本来の大きさは無いが――それでも、伝わってくる覇気は充分であった。六本の腕がそれぞれ、武器を構える。
「貴様ら未来の相手を仕る。さあ、構えい。――喰らうてしまうぞ」
「ハ、でかい口を」
 しゃきん。
 ――いつもは、レイニィというのは隠れるものである。
 ごろごろと頭上で唸る黒い雲は絶好の「隠れ蓑」だ。しかし、それをあえて使わない。暴れるのにおあつらえの場所で、わざわざ隠れる道理などは無いのだ。
「焼き付けてやりますよ、明王サマ」
「好い。――善いのう、猟兵!!」
 雷は、神罰の象徴だ。
 今にもレイニィの頭上へ直撃しようとした一本のそれを、アカネが――かばった!!
「えっ、あっ、ちょ」
「大丈夫ですよ」
 己のそばからいつの間にかとんだ存在をセフィリカが目で追う。そこには、神罰を受けても「それを吸収」して淡い光を保った天使さながらの姿で顕現したアカネがいた。
 真の姿、解放――。
「最高の舞を奉納させていただきましょう、御仏よ、そして神よ――!」
 六つの腕が!!
 一対で空を浮くアカネにまず襲い掛かり、レイニィには無数の雷が落ちることとなる!!
 ずぎゃ、ずぎゃ、と空気を通じて走り回る電流から怪物が逃げる、逃げる、そして翻弄する!!ジグザクと動いてやれば直線で流れるよりもずっと電気は空気を伝うのが遅い。まっすぐの流れは電圧も高めるが、分裂させてやればその圧は落ちるのが常だ。
 態勢を低くして逃げ回るレイニィと、振り回される剣の先に足をのせ、トーンと高く上に舞い上がり扇を振るうアカネである!鎖のついたそれで明王からヴァジュラを奪い取った。金色の武器をひとつ奪われてもなお、激昂する様子はない。
「たわけ――!」
「ッ、きゃ」
 アカネの身体を、武器を奪われた手で握りこむ!!細い身体をぎちりと握って見せて、地面へ押し付けようとするのならその指を切り刻むレイニィだ!
「気ィつけてください、できれば、チョコマカ動いて」
「わっ、――かりました!テンポをあげて、いきますッ」
 レイニィは、何かを守りながら戦うのには向いていない。
 いつも彼の「狩り」はひとりで行うべきものだ。だから、いまさらこうして誰かを助けながら動くというのは難しい。しかし、――そうもいっていられない!
 思っていたよりも、軍神の力と言うのは強いのだ。
 アカネを助け出したレイニィの胴を、巨大な剣がかすめていく!たった一瞬の擦れであるのに、ざっぱりと赤い血がわき腹から降り注いだ。
「――ッッちィ、ッ!!」
 わざと。
 大袈裟に悔しがって見せて、一度地面に落ちる。レイニィがずるずると体を這わせて、腕の力ですぐに起き上がった。臓腑がこぼれ出ていないとはいえ、胴回りと言うのははさみで相手を「切りつける」彼にとってはアキレス腱に等しい。
 動きの遅くなったレイニィの足を掴んだ明王が、その体を持ち上げる。生命にあふれたこの場だからか――切り落とした指は復元を始めていた。
「ずる、く、ありゃあしません、か」
 ぼたぼたとわき腹からの出血で顔の半分を濡らしながら、レイニィが笑う。明王は怒りの顔でじいっと怪物を見た。
「罪の匂いがするな」
「ハ、そりゃあ――よかった。よォく覚えててくださいよ。いつか、アンタらが裁くかもしれねェ」
 裁かれてやる気は、一つもありはしませんが。
 
「うらぁあああああああああああああああああああっっっ!!!!!!」
 レイニィを掴む腕を、両断した!!
 ――セフィリカは、此度、ゴーレムを置いてきた。
 猟兵たちの攻撃から世界を守るための盾に使ってしまったというのもある。だが、理由はほかにもあった。
「おお」
 観客席から見ていたアルトリウスが、感心の声を上げる。
 剣を披露してくれると言っていた。そして、――そっちのほうが強いのだとも。
 だから、盛り上げれるはずだと意気込む彼女の緊張と期待の混じった瞳の色は記憶に新しい。応援よろしくね、と言われたからアルトリウスもおとなしくここに座っているのだ。
「ぬぅう、ううう!!!??」
 ぼた、と腕が堕ちて――たまらず、明王が引き下がる。動揺も仕方あるまい、到底先ほどの太刀筋は、セフィリカから生み出されたものだとは思えぬほど「優れて」いた!
 空を舞う美しい金髪が彼女のもので、戦意に満ちながら落下してく赤い瞳が、どこまでも、まっすぐで!
「大丈夫!!?」
「ええ、問題ありませんよ」
 夕凪の剣を、憶えたのだ。
 脅威と判断されたセフィリカに無数の落雷が堕ちる!金髪を振り乱しながら、足を左右に滑らせ最低限の力で動く。すると、追いかけてくる雷を己の剣を盾代わりに使うことで前へ進みながら弾いて見せた!躱す、弾く、また躱して、――相手の力を利用するのだ!
「いッ――けぇ、え、ェエエエ、ええええええええええええええええええッッッッ!!!」
「頑張れ、セフィリカ」
 ――皆が、そう思っていたから。
 だから、アルトリウスも珍しく場を「読んで」倣うことにしたのだ。
 友を想う。戦いに身を投じて、全力で魔剣を振るうかのいのちを想った。噫、――負けてほしくないとも。

            ユ ウ ナ ギ カ ン ナ ・ リ ュ ウ フ シ キ
 ――秘 伝 、 【 夕 凪 神 無 - 柳 布 式 】 ! ! 

 雷を吸った魔剣が、その威力を倍増させる!!鋭く繰り出された剣の力を前に、明王が慄く!!
「おお、おお、なんと――!!」 
 雷 の 完 全 無 効 ! ! ! ! 
 神罰を許さぬセフィリカの剣舞が炸裂する!!髪の毛を振り乱し、足のかかとを滑らせながら前へ進むのをやめない、やめない、――や め て た ま る か ! ! 
 軍神から振り下ろされる剣を魔剣で受け、吸い上げた雷の力を使って、巨大な軍神を打ち上げる!!!

「ッ、我が」

 浮いた。
 空に、神が浮いたのだ。
 雷を降らせる神が、巨大な体を立った一人のいのちで打ち上げられた。
「――『君がため』」
 刹那、ぱん、と扇が広がる。
「『惜しからざりし 命さへ 』」
 美しい舞はいつもよりも早い。しかし、それはアカネの鼓動の速さも同じであった。
 勝たねばならない。いいや、勝てるとも!この場にいる猟兵たちが織りなす最高の舞台で完璧な踊りをおさめてみせるのが彼女だ!
「『ながくもがなと ――思ひけるかな』!!」
 ぱん、ぱん!
 鋭く扇が広がれば、アカネを――『オマモリサマ』へと変える!!
「なんとも、美しいな。しかしこれ以上、させぬぞォオオオオ――ッッッ!!!!」
 軍神に「上」を譲ってやったのだ。それは、アルトリウスも視ていればわかる。にやりと笑って汗を流しながら、呼吸を整えるセフィリカの顔はひとつもあきらめていない。
 何らかの力を得てしまったアカネめがけて仏の手が振るわれる!!ぶうんと空気を薙ぎながら、ちょうど虫を手で殺すように二つの手がアカネの上下を覆う!
「黄金の種子が黄金の実りをもたらしますように」
 さて、顕現したのは姫巫女だ。神聖なる存在である。その加護を受けるものに触れることなど、たとえそれが神とて、仏とて、赦されない!!
「不死の獣がもたらす生命の輪環が永久に絶えぬよう――」

 成立、――神 縛 【 退 魔 封 縛 の 舞 】 ! ! 

「終えた生命は新しい生命となり再び生まれ直しますように――!!」
 畏み畏みも申す。
 ぎゅるり、舞の終わりと共に放たれるのは無数の鎖で在る!!それが六つの腕をすべて捕らえてみせれば、地面に神を引きずり落としてやるのだ!
「ぉおお、おッ、おおおお――――!!!?」
「情けねェ声をあげるもんじゃねェですよ」
 神は、地面に落ちる。その刹那に、――赤い獣を見た。
「貴様」
「驚きました?」
 轟音と共に、神が堕ちる!!
 たちまち起き上がって何かから逃げようとした神がいて、落雷が降り注いだ!!
「どうなって、いる――貴様、死ぬぞ!!?」
「死にゃァしませんよ」
 レイニィだ。神にプレッシャーをかけ続けるくれないの怪物が走る!!
 どどう、と己の血と雨水にまみれた狼に近い牙を剥きだしにして銀の鋏で大地を削り、神を追い詰め、駆り立てた!!
「教えてあげましょ」
 ――仲間の存在を忘れてはいない。鎖で遠くまでいけない神が場外に出ることも許されないのだ。ぎち、と大地を踏みしめて息を整えるアカネが告げる。
「最後まで、踊っていただきますよ。お付き合いのほど、どうぞよしなに!」
「なぁ、あああッ――」
「ほれ、びびってんじゃねェ」
 ど、ど、ど。
 神の身体を貫いては引き裂いていく恐怖の権化はあまりにも苛烈で恐ろしい!!
 生命の血を溢れさせながら、神が呻いた!逃げ場のないこの状況で、セフィリカも走ってくる!何とかせねばと雷を眼前に集めたとき――。
「 自 分 を 見 ろ 」 
 その鼻っ面に、赤い怪物が現れたのだ。
「自分は『雨の赤ずきん』。雨と共に現れ」
 頭上には、雷雲。
 赤いてるてる坊主が無くとも、雲に内包される水分から雨を降らせるなどレイニィからすれば容易いものだ。
 しゃきん、と鋭い音がまたひとつ、宣告のように響いて。
「正しくねェものを叩き切る怪物です」
 ――だから、アンタはもうちょっと肩の力抜いてもいいですよ。
 レイニィが、正面より軍神の額から顎までを。セフィリカが胸から腹までを深く、そして、鋭く斬り果たす!!
「ぉおお、おおおおおおお――――!!!」
 仏の身体がちょうど二つにばらけて、金色となって消えていった――。

 中からあふれるようにしてこぼれ出たころんとした何かを、アカネが拾う。
「あらら」
「え、なにそれ」
 アカネが拾ったのは、ぬいぐるみのような大きさになった明王だ。
 怒りに満ちた表情はかわらないものの、もう力が残っていないらしい。「負けだ、負けだ!」と喚く姿を撫でてやって、アカネが笑った。
「現界なさるときの依り代、というか。そういうものです。ほら、ご家庭にも置いたりするでしょう?」
「いやぁ、うちはちょっと宗教から遠いからなぁ」
 セフィリカが頭を掻きながら、苦笑いを浮かべて――レイニィは興味をなくしたらしく、深くため息を吐く。傷まみれの三名を包むようにして光が集えばたちまち、傷は癒されていくのだ。
 ぱち、ぱち、と拍手を送るアルトリウスがいる。
 セフィリカに向けられた視線でもあるが、ほかの二名のぶんも拍手をしようと思えば当然連打になるのだ。激しく手を震わせる彼に引っ張られるようにして、神々も次々未来たちに拍手を送りだした!
 照れたように頭を掻く魔剣使いと、恭しくお辞儀をする姫巫女と、「そういうのいいンで」と肩をすくめる赤ずきんがいて。
 ――ばぁん、と大きな花火を皆への褒美としてアルトリウスが夜空に咲かせたのだった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャガーノート・ジャック
★レグルス ①◎

(――詳かにするならば)
(観客たる神も、獣と龍を狩る事も最初からどうでも良かった。)

(ザザッ)
狩人の仕事も終わり――漸くの"本番"だ、ロク。

(君とは背中を合わせる事はあっても、真っ向から刃を交えた事は結局なかった。)
(そして有り体に言ってこの勝負を)

《――此は成し難きを知りつつも、尚心昂らせ挑む戦いである》
イエス
肯定。
《――Lv.4/Mode:Ace》

("僕"は、そう言うものだと思っている。)
(音を、観客を置き去りにしてしまおう。この戦いを心から愉しむのは、君と僕だけでいい。)
(君と重ねた数多の経験(学習力×戦闘知識)を総動員して君に立ち向かう。
勝つのが何方でも構いはしない。)


ロク・ザイオン
★レグルス
①◎

(終始苛立っていた)
(巡り、実りはととさまの御旨
「かみさま」のものでは決してない
と、森番は信仰するが故)
(それがこの地の理でも、不愉快だ)
…。
(要は子供じみた駄々
こういうときは思いっきり暴れるのが"楽しい")
…ジャック。
(だからキミに刀を向ける
さあ、八つ当たりに付き合え!)

――あああァァアアア!!!
(戦場に響き渡れ「惨喝」
地を生きるものの咆哮に、
高みで精々慄いていろ!)

(今まで何者も二人で討ち倒してきた
キミの強さを、一番側で見ていた
持てる力全て振り絞る
だってキミが、きっと一番の強敵だ)

(不思議と体が軽い
時が止まったように)

…たのしい、な!

※咆哮、簡単な言葉以上の発声ができません




 終始、苛立っていたのだ。
 巡りも、実りも、すべて彼の「ととさま」が行うもので、森への啓示である。
 それを「かみさま」が――たとえ、この地のならいだとしても、それを奪って己らのものだというのが不快だ。
「ロク?」
 尻尾が小刻みに揺れている。
 それは、相棒の不機嫌を物語るものだ――ジャガーノート・ジャック(AVATAR・f02381)は相棒であるロク・ザイオン(蒼天、一条・f01377)の名を呼んだ。
 ジャックはもとより、神々の存在をそこまで意識したことは無い。
 確かに今まで屠ってきた存在には堕ちた神もおれば、人間が作った「かみさま」もおり、そして、邪神――かのUDCアースにて恐怖を巻き起こす超常は、「彼」も含まれるが――倒してきた。
 とするならば、このロクとたいていの現場は共にしたのもあって流石に可能性がしみついている。二人で戦えば、「カミサマ」などはなんてことない存在だ。だから、彼らの考えも存在のありかたも気にしたことはなかったのである。
 しかし、相棒であるロクはそうもいかないらしい。
 龍を狩るのも、獣を狩るのも、見物に興じる誰かが言った、「使えぬ」神々などは本当に心の底から――ジャックにはどうでもいい。
 顔を見たらよくわかる、思わず「中身」は吹き出しそうになったやもしれない。わかりやすく、ロクはぶすくれていた。
 二人がいるのは、当に神々の前で在る。先の戦場で大破したのを、神々が地ならしを終えたと伝えに来たからわざわざ出てきてやったロクは、その不機嫌を隠せないらしい。
 少し――ジャックが「中」で息を吐く。
 ――わかるけどさ。
 ロクはロクの中に法があり、彼女の中に世界がある存在だ。それは、ジャックとて理解している。
「狩人の仕事も終わり――漸くの"本番"だ、ロク」
 ノイズ混じりの声は、一等星そろいのそれで。
 ロクが聞きなれた機械の音声を耳で拾って、ひくひくとさせる。
「!」
 刻々肯く相棒の顔がようやく明るくなって、ジャックも一安心で在った。
 そう、――ここからの戦いはジャックも楽しみにしていたのだ。かの相棒とは背中を合わせることはあっても、真っ向から刃を交えるという機会は結局今のところ無いまま過ごしてきている。
 そろそろ、ここいらで己らの力をはかりあってもいいのではないか。
 「戦う」と言う行為はスポーツであってもそうだが、「あたりどころが悪ければ」死に至る。そうでないとしても、ロクもジャックの「中身」もまだ若い。長生きしたいわけではないが、戦力外に至るにはまだ早すぎた。
 ゆえに、互いに本能から避けていたのもあっただろう――或いは、お互いのどちらかが相手を「よく見すぎていた」か「見下げていた」かだ。
「良いか」
 獣同士の争いは、「同じ強さ」でしか起こらないためである。
「――ジャック」
 ここまで、ロクが戦争中に失った言葉をかき集めて得た相棒の名前を呼ぶ。
「愚問だったか?」
 子供じみた駄々だとロクも理解しているが、先ほどから湧き出るこの不快感を早く「焔」に変えてしまいたくてしょうがない。
 ――頭の中を空っぽにして、すがすがしい気持ちで依頼は終えたいものだ。いつだって、本来ならば。
 こくこくと頷いたロクの顔が、一度目で瞼を閉じて、二度目で――目の前の「敵」を睨んだ。
「ぅうう、う、う――」
 >解析開始――。
 >対象:猟兵_ロク・ザイオン No_f01377.種族:キマイラ
 >聖者・咎人殺し_相性:優勢
 >炎熱反応確認。
 >ユーベルコードの起動を確認。周辺の魔術反応上昇、推測されるコードの数3ヒット。特定開始。発動まで、3.2.1――。
 うなりをあげるロクの状態を一瞬赤いモニターが読み取り始める。スキャンが終わるよりも早く――ロクは大きく口を開いていた。


「          ァ あ あ
  あ        ア     ア
      あ
あ      ァ    あ  あ あ゛あ    あ 
     ア゛  あ    あ
あ゛         
        ああ     ァ   あ゛ァああああああああああ――!!!」

         ザンカ
 弾け飛ぶ咆哮が、【惨喝】!!!!!
 もはや声ともいえぬ。耳に障る不安定なそれは神々すらも震え上がらせ、おそれさせた。――あんな音を発する獣が、未来だという!
 高みで精々慄いていろ、恐れていろとロクが狼煙を上げれば、刀を構えて相棒に斬りかかった!!
 ジャックのモニターにはすっかりエラー画面が出始めている。あの声量だけでこの音圧、ぴしぴしと浅くジャックの「鎧」に罅が入るほどであった!
「よろしい」
 それを得て、ジャックの赤いモニターが一瞬薄暗くなる。
 >――対象の敵性を警戒度:Xと判定。
 >コードを要求… … … 確認_パスコードを宣言してください。
 右手の人指し指を一本立てて、ゆっくりとそれをロクへ向けるのだ。普段は無礼だから行わないが、今の相棒は「敵」だ。
「『――此は成し難きを知りつつも、尚心昂らせ挑む戦いである』」
 >パスコードを承認しました。
 画面に浮き出るシステムからのメッセージに「中身」が笑う。互いに、前座は完了だ。

   イ エ ス ・ マ イ ・ バ デ ィ
「――『 肯 定 』 し よ う !」
 発動、【《――Lv.4/Mode:Ace》】!!
 起動した術式がジャックを包み、それから空間にまで隅々いきわたれば――きっと、観客として座っていた猟兵たちも、そして神々も二人の戦いを見上げて、「なんだ」と言ってしまっただろう。
 それは落胆ではない。
「意味が解らない」
 神々がこぼしたそれは、偉大なる力への慄きである!!


 音を、観客を、置き去りにする。
 獅子同士の食らい合いは超高速の中で行われた!!この速度についてこれないものなど振り落としてしまえばいいのだと、二人はお互いの牙を重ね合う!!
「らァあああッッ!!!」
 閃煌。
 びゅうんと鋭く空気を裂いて音を生む高速が鎧の関節に入り込む!
 >損傷。――データを確認してください。耐久地、90%。炎熱反応を確認。
 じゃあ、焼却しろよ!と言ってやりたいのを我慢する。今は、「ジャガーノート・ジャック」だ。ジャックが刀を突き立てる相棒のみつあみを掴んで引きはがそうとする!
「っぎぃ、ぎゃ――」
「ッ――!!」
 もみ合いになりながら、上空へ跳んで噛み合った二匹が地面へ一度墜落した!お互いに距離を取り合わず、はたまた"剣狼"と閃煌が噛み合う。
 弾き合った。彼らの間に会話は要らない。
 何者をも二人で乗り越え、倒し、そして一番側でその強さを見てきた。
「がァ、あ!」
「っ、――ぉお、お!」
 振るう!
 刀の切っ先同士が重なり合ってけん制。浅いステップでお互いに切り込まんとするフェイントをかけながら、相手の出方とその癖を思い出し続けている。
 持てる力をすべて振り絞るとも――なぜならば、きっと、『キミ』が一番の強敵だ!
 相手の刀を弾くが先か、それとも「計算」が完了するのが先か!お互いに冷静であることを棄てて、ただ戦うために剣を振るう!
 思わず「仮面」の向こうで笑ってしまっている中身だっているのだ。ああ、愉しい――生きている心地がしてたまらない!手に汗握るコントロールを感じながら、ロクのみぞおちにジャックが蹴りを叩き込んだ!
 ぎゅお、と高速ゆえの風圧が生じてロクの身体が吹っ飛んだ!しかし、場外には至らない!!
「ジャック――」
 がば、と口から血を吐いている。
 それでも、――なぜだか、相棒は笑っていた。

「来い――ロ ク ッ ッ ッ ! ! ! ! 」

 吹っ飛んだロクの身体が、炎熱を纏う。彼女が惨喝で手に入れたのは「攻撃力」だ。
 すべてをおそれさせるほどの力を手に入れた今なら、その鎧を砕けるだろうと読んでのことである!
 真っ赤な彗星となって――ジャックをめがけて、焔の獣が飛び出す!!!!

「がァアアアあああァああ、あ゛ァああああああああああああァアア――――――ッッッ!!!!!!」

 言葉も忘れた。
 己の得たものを喪った。
 だ け れ ど 、 キ ミ は ―― 失 わ な か っ た ! ! ! 
 炎熱を纏った相棒が飛び込んでくる。とっくに、演算システムはエラー値でいっぱいだ。
 ジャックのモニターはすでにアラームだらけで、真っ赤な画面が余計に赤い。それでも、いっとう赤い相棒がその中をかき分けてきた。
「ああ――」

 超新星の誕生のように。
 時間にして数分にもならない!ふたりの劇的な戦いは、神々の目に留まってやれるほどやさしいものではないが――それでも、其処には「爆誕」の文字があったのだ。
 空間が割れるのではないかと思わされるほどの炎熱が巻き起こる!!爆発など生ぬるい。結界が無ければ会場すべてが吹き飛んでいたやもしれぬ。
 ぎ、ぎぎ、が――。
 爆炎の後に、沈黙。そして流れるノイズの音が、戦いの終わりを告げていた。
 「ロールプレイ」だ。終われなかった。煤まみれになったロクの身体は気絶して脱力している。その腕を肩にかけてやって――持ち上げたのは、ジャガーノート・ジャック!!
 冷静さを失わなかった。そういう「ジャック」だ。わあああとあっという間に終わった白熱のそれに、賛辞がある。
 ロクが起きていなくてよかった、と思うのだ。また彼女のことならば神々を黙らせてやろうと吼え猛っていたやもしれぬ。そう考えて、ふと――気を失ったロクの顔を見た。

「ああ。――楽しかったよ」

 獣の顔が穏やかに、そしてどこか微笑んだまま眠っているのを確認して。
 ――鎧の獣は、ゆったりと戦場を降りてやったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

劉・涼鈴
【FH】①◎
よーっし! 待ってましたー!

【デモリッション・ギガレックス】!
足元からズゴゴゴって恐竜型マシンが登場だー!
全長10mちょいのリアルティラノサイズ!
背中に【騎乗】するぞ!(音声命令+AIの自己判断)
リアは超でっかい戦艦ロボ! 負っけないぞー!

全速力でとっつげきー! 
尻尾を叩きつけて、足で踏んづけ!
爪で斬り裂いて、牙で噛みつき攻撃(鎧砕き)だ!
思う存分暴れ回せ!!

頑張れギガレックス!!
勝負は大きさでも武器の多さでもないぞ!
【気合い】と! 根性だぁぁああ!!
フルパワーのジェノサイド荷電粒子砲をぶちかませっ!
まだだ! 踏ん張れ!!
ダイナソウル・エンジン、【限界突破】!! いっけええええ!!


リア・ファル
①◎
【FH】
涼鈴ちゃん(f08865)と

なんで涼鈴ちゃんを誘って参加したのか?って?

――生命の輝きを見たい

他に峻烈な知り合いは居るけれど

実戦とは異なる試合に於いても
全力で燃やし輝いてくれると思ったからさ!

いちいち斬り合ってたら持たない
『イルダーナ』で翻弄しつつ、『セブンカラーズ』の銃撃で隙を狙……
(時間稼ぎ、空中戦、制圧射撃)

って、Tレックス型機動兵器!? デカい!

コレは参った
理不尽相手じゃないと本気になれないボクが悪かった

「資金リソース投入、機動戦艦ティル・ナ・ノーグ……現実空間へマテリアライズ!」

全長596mの本艦でお相手しよう

UC【魔眼殺しの超電磁砲】!

勝ち負けよりも輝けるモノを貰ったよ




 実のところ。
「よぉおお――っし!待ってましたーっ!!!」
 この瞬間を何より「ご褒美」にしていたもので。
 ご、ごごごご!と強く地面が振動した。なんだなんだとざわつく神々が驚くのも無理はない。
 何故ならば、此度戦うのは猟兵同士でありつつも――超 常 、 メ カ 対 決 で あ る ! ! !
「【デモリッション・ギガレックス】――はっしーん!!!」
 ――先に言っておくと。
 劉・涼鈴(豪拳猛蹴・f08865)の手にするダイナソウル・エンジンが物語るように、この推定十メートル、リアルなティラノサウルスほどの大きさのメカはまぎれもなく、涼鈴の力で生み出されたものだ。
 なんと、ジェノサイド荷電粒子砲搭載!破壊の化身たる獣の姿をしたマシンがずぎゃずぎゃと地面を耕しながらのリングインを果たす!
 モデルになった恐竜は、暴君の名を授かった存在だ。近年では羽毛があったとか、なんだとか言われているが――それは今の涼鈴には関係がない。
 チャイナ服から引き締まった二の腕を伸ばし、己の手すりに当たる部分に手を滑らせれば生体認証のち、本人確認が手早く行われコクーン型のコックピットが彼女をギガレックスの「脳」とした!!
 実際、座したのは背中であるが――ここを壊されない限り、涼鈴の敗北はあり得ない!
「まー、けー、なー、いー、ぞー!」
 太古の象徴がぐわぐわと顎を動かしながら、己と相対する敵を威嚇した。マシンで作られた尻尾を鞭のようにしならせて、岩盤を砕く!

 さて。
 開幕超弩級のマシン爬虫類には神々も衝撃で在る。
 ――猟兵ってこんなこともできるのか。なんていうのは、愚問だ。できないことを可能にするのが「未来」の力ゆえである。
 ――どうして、涼鈴を誘ったのか?
 そう問われたら、きっと彼女は挑戦的な笑みを浮かべて微笑むのだ。
「生命の輝きを見たい」
 リア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)の知り合いにも、苛烈な相手は多いのだ。
 命を燃やし、時にはその寿命だって燃やしてしまう存在だってある。鮮烈な彼らの輝きを知っているからこそ――此度は、涼鈴を選んだのだ。
 正直、この状況ははっきり言って実戦的ではない。あくまで、仮想だ。「そのような敵がいる」可能性でしかこの「平気」は起動できない。
 あまりに規格外。あまりに暴威! しかし、それを涼鈴ならば乗り越えてくれると信じて――彼女は、イルダーナにまたがっていた。
「ッて、――Tレックス型起動兵器!!? き、きいてないッ」
「とりゃーーー!!」
 ばかん。
 軽快な音と主に繰り出される破壊は、ひゅんひゅんと飛び回るイルダーナに乗ったリアの顔が青ざめるほどの威力!!
 全速力の突撃を容赦なくフィールドで展開してくるのだ!
「じょ、場外! 場外になっちゃうから!」
「だいじょーぶだよ! せーふてぃもーどだから!」
    セーフティ
 ――自動操縦。
 そう、実のところ涼鈴はコントロールパネルに手を合わせているものの、まったくもって操縦はしていないのである!!
「ううう、うそ、嘘でしょ――――!!!??」
 ギガレックスの尻尾がリアを襲う!!急カーブ、急降下を繰り返して急上昇!あまりにも強大すぎる大縄跳びにリアがハンドルをめいいっぱい押し込んで、それからぐうっと胸に引き寄せる。
 ――ああ、明日これ、筋肉痛かも。
 空中での一回転を加えたイルダーナに間髪入れず、ギガレックスの爪が振り下ろされた!!
「うわッッ、イルダーナ!!!」
 思わず愛機に叫んで限界までアクセルを踏み込む!ぎゃうんと空気を噴かせて全速力で逃げ回るふたつを、ギガレックスが追った!
「いっけー! がんばれっ! そこだっ! 右ストレート! 左アッパー!」
 めちゃくちゃなオーダーに見えて、実は動きが的確である。
 コックピットでギガレックスに武道のなんたるかを叩き込んでいた。涼鈴の頭の中では、すでにファイティング・ポーズをとるギガレックスの動きが想像できている。
 そう、「自動操縦」と共に――「宣言」することでその挙動はさらに正確になるのだ!もはやギガレックスは涼鈴の手足も同然、まさに一心同体の振る舞いの大立ち回りを繰り出す!
「もう、めちゃくちゃだ! ――ッこれは、参ったなぁ!」
 理不尽相手ではないと、リアは本気になれない。
 ギガレックスは理不尽な存在ではないのだ。ちゃんと「脳」である涼鈴が指示を出して動かしている。
 理論は「脳」がつかさどり、爪がリアの弾幕をものともせずに吹き飛ばす。空中で爆炎が上がり、煙をかき分けて飲み込まんと顎が伸びれば猛ダッシュでイルダーナと共に逃げるばかりだ!
 まさか、このリアが防戦一方だなんて誰が想像できただろうか。最初から本気を出していないリアが悪いのだと、涼鈴は容赦なくダイナソウルが導くままにギガレックスを操縦する!モニターに浮かんだリアの座標めがけて猛追!
「うりゃ、うりゃ、うらー!」
「ああくそッ、こうなったら」
 まったくもってにっちもさっちも、事態が良くならないのだ!
 飛び回るイルダーナを叩き落とすのが先か、ギガレックスが何らかのマシントラブルを起こして沈黙するかが先である。
 やはり――長期の派手な争いというのは徐々に盛り上がりも下がってしまうものだ。頭の中で、リアはすでに「次の」展開を想定していた。
 好き放題暴れるギガレックスを見上げて、神々は今は楽しげであるが「感情」のメーターを見るに「一色」の大味にはそろそろ飽きが出始めているのも事実である。
 ビジネスマンとしては、こういうところが悪癖だなと思いつつ――しかし、リアと数字は切っても切り離せないのだ!
「資金リソース投入、機動戦艦ティル・ナ・ノーグ――」
「おう?」
 ギガレックスを止めて、涼鈴がイルダーナから溢れる粒子を見上げる。
 自動的にAIが解析した。難しい言葉は涼鈴には分からないが、「激ヤバ」なものが顕現することは彼女のモニターが真っ赤な警告で埋め尽くされたことで悟る!
「おお、おおおー!!?」
「 ボ ク を 本 気 に さ せ て く れ た お 礼 だ よ 、 涼 鈴 ち ゃ ん ! 」

 ――現実空間へマテリアライズ!
 現れたのは、全長596センチメートルの超・巨大戦艦――機動戦艦、その名もティル・ナ・ノーグ!!
 膨大な資金を使ってしまった。イルダーナに搭載しておいた資金管理アプリから大幅の喪失を見る。しかし、後悔はない。すがすがしい顔でリアは笑むのだ。
「勝ち負けよりも、お金よりも、数字よりも輝けるもの、――もらうよ!」
 その気風が、まさに彼女を最強のビジネス・キャリア・スペースウーマンに至らしめた由縁である!
 己の欲しいもののためには全力を尽くし、その身を粉にしてでも働いて得るのが彼女なのだ!
 ――かっこいい。
「あいやー……」
 思わず、その宣言には涼鈴も胸打たれるものがある。
 強いのだ。明らかに、戦艦ロボを引き連れたリアは強い。ギガレックスよりもはるかに大きな鉄の船を引き連れた姿は圧倒的だ。
 暴れまわる機械の爬虫類を見たときとは比べ物にならない驚きを神々からも感じる。それは、涼鈴もよく分かった。
 ――しかし。
「負けないぞ」
 涼鈴は、此処で笑えるから涼鈴なのだ!!
 己のコントロールパネルに今一度、しっかりと手を乗せる!戦闘モードを続行にして、けたたましく恐竜は吠えた!!
「頑張れ――ギガレックス!!! 」
「『主砲、魔錬徹甲弾に切替。……三界を巡り貫け!』」

 対 決 、 【 魔 眼 殺 し の 超 電 磁 砲 】 ・ 【 ジ ェ ノ サ イ ド 荷 電 粒 子 砲 】 ! ! 

 会場がどうなろうとお構いなしの質量が、――光線となってぶつかり合った!!!
 どうっと派手な爆風が巻き起こればあまりの圧力同士に空気の輪が出来上がる。ぶわ、ぶわ、とその数が増えて土が舞い上がり足場が割れて、ふたつは拮抗状態に至った!

「負ァ、け、る、なぁあああああああああああッッッッ!!!!!」
 龍が唸る!!
 己のモニターはすっかり罅割れて警告の文章でいっぱいだ。しかし、わからぬ!難しいことなど涼鈴には分からないのだ!!
「勝負は大きさでも武器の多さでもない――ッ」
 知っていることは、「勝つために必要なこと」だけ!勝率がマイナスになっても、計算が狂い始めても、そんなことはどうでもいい!思い切り足元のペダルを踏み込んで、己の心をギガレックスに注いだ――!!

「 気 合 と 、 根 性 だ ――ッッッダイナソウル・エンジンんんんんん゛ッッッッ!!!!!!!!!」

 圧倒的だった。
 この手札を切った瞬間、「しまった」とリアも思ったのだ。
 本気になってしまった――それが何より、何億円の損失よりも大誤算そのものである。
「きれいだ」
  ダ イ ナ ソ ウ ル が 、 唸 る ! ! 
 小さな恐竜から放たれる粒子の輝きが、戦艦を押し込んで――すべての「数字」をひっくり返した!!
「――ッうぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッらぁあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「勝ち負けよりも輝けるモノ、――貰ったよ」
 悔しくはない。
 そう、この未知なる可能性こそ、「究極のどんでん返し」に至る結果こそ、未来に相応しい!!
 轟音と共に、戦艦は消えた。電子の数字になって塵となり、仮想へ還っていく己の結晶に――リアが振り向くことはなく。
 すべてを使い切ったギガレックスが体を崩し、倒れ込むのを迎えに行った。割れたコックピットから放り投げられた涼鈴をイルダーナと共に拾う。

「ボクらの負けだよ、涼鈴ちゃん」
「へへ、へ、どーだ! 参ったか!」
「参った。参りました」

 きゃっきゃと笑う体は疲労でいっぱいだろうに。
 イルダーナに乗せてやりながら、派手な戦闘で大きな盛り上げを魅せたふたつの生命がまた観客席に戻る。
 ――勝敗よりも、金よりも、技よりも、武器よりもいっとう輝く存在たちに神々もまた、気づかされるのだ。己らが護るべき「聲」を――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

イリーツァ・ウーツェ
②∞
……此処は、現実だ
壊せば、壊れる
殺せば、死ぬだろう
手加減をしなくては

骨の大太刀を使う
剣の使い方は先程見た
彼方の方が短かったが
其処迄の差は無いだろう

蛇腹に伸ばさず、刀として振るう
構えも太刀筋も見様見真似だが
振るう内に解せるだろう
私の骨で出来ているから、
早々折れも欠けもしない

技術を学ぶには、良い機会だ
色々見て、学ばせて貰おう


花剣・耀子
②どちらでも

あの。きらきらしいわね……。
べつに戦闘が好きという訳でもないのだけれど、
興味がないと言ったら嘘になるもの。
相手が何方であれ、正しく一手お相手仕るわ。

気を抜くことも手を抜くこともしないわよ。
わざわざ此処まで来るひとに、遠慮なんて無粋なだけでしょう。
やるからには全力でゆくわ。
……――、ああ、でも。普段試せない事を試してみても良いかしら。

普段は他に誰かが居ることを前提にして行動をするのが常なの。
あたしが斃れても託せるように。
……其れは変わらない、けれど。
死を手数に数える段階は、もう少し後に回す方が良さそうに思うのよ。

普段は試せないこと。
ここで、きみを斃しきる。
そんなきもちでゆきましょう。




 求められるのは、自制である。
 イリーツァ・ウーツェ(虚儀の竜・f14324)は竜だ。
 その力は暴威で、在り方はまるで岩石のようである。約定によって縛られなければ、彼は自然のままに己の本能で物事を行って世界の脅威になっていたやもしれなかった。
 ――竜はいついかなる時代でも、また、宗教でも、たいていは悪徳の象徴である故に。
「此処は、現実だ」
 己に言い聞かせるようにイリーツァは言う。
 譫言で済ませてならないのだ。いくら猟兵相手とはいえ、本気を出して本能で戦ってしまえば、イリーツァか猟兵のどちらかが死ぬ。それは、あってはならないのだ。
 尻尾の先がわずかな緊張で地面から持ち上がり、男の身体をした肺から息を吐けば上下に胸筋も動く。
 壊せば、壊れる。殺せば、死ぬ。
「手加減をしなくては――」
 人間の身体を借りる今なら、その脆さがわかるのだ。己の胸に手を当てて、ひとのからだの柔らかさを思い出す。あっけなく、――体と言うのは破けるのだ。
 ずっしりと骨の大太刀を背負ったイリーツァの前に、臆せず「やわらかい」生き物は対峙している。かの恐怖の象徴をおそれない瞳だ。
「……あの。きらきらしいわね」
「……? 目が弱いのですか」
 花剣・耀子(Tempest・f12822)である。
 もとより、さほど表情筋を動かすような性分でもない。冷えた青の両目で困っているらしい今の表情だって、イリーツァであるから「糸」が読めるだけだ。
「べつに、そういうわけではないのだけど」
 こういう場所に慣れていない。
 きらきらと金箔が張り巡らされる場所があって、刺激色である赤で客席は組まれている。それが趣だというのならば、耀子も特にやめておけとは言わないが、神々は皆趣味がきっと耀子とは合わないなと思わされていた。
 彼女が戦うのは、いつも鬱屈した地域である。
 ――UDCアースに拠点を持つ、その組織に従事するあまりに、余計この神々の催しには馴染みがない。邪神のサバトとは違うのだ、豪華絢爛の場所で戦うなど、はじめてに等しい。
「まあ、何であれ。正しく一手お相手仕るわ」
 しかし、ここでやめておきますと下がらなかった。
 耀子は、気を抜くことも手を抜くこともしない。加減をせねばならないと思っていたイリーツァにも、初めてその「攻撃」の糸が読めただろうか。
「あなたは、――」
 言っていいものかどうか、「考える」。
 大蛇のような黒い靄は、イリーツァに見えない。しかし、耀子に絡みついてる糸は見えた。無数に張り巡らされているらしいそれは細い身体をがんじがらめに縛りあげている。
 それは「執着」の糸にも見えて、思う人がいるのならば――「呪い」だと、形容したかもしれない。
「何かしら」
「いえ」
 言わなかった。
 ――本人が痛みなど一番わかっているだろうと、イリーツァも思う。
 がしょりと今一度、骨の大太刀を背負いなおす。振るう時はどうしてもこの体制になるから、最初の一手は読まれやすいのだ。耀子も、対峙する彼がどういう動きで振るってくるかは大体理解できる。
 しかし、甘くは見ない。
「わざわざ遠慮なんて、無粋なだけよ」
 イリーツァの赤目が丸くなった。
「心が読めるのですか」
「いいえ。でも、わかるだけ」
 ――わからない。
 イリーツァには、耀子ほど「人を察する」ような能力は無い。耀子も周りと比べれば「ない」部類かもしれないが、戦う相手の心情には大変敏感だ。
 その一手が、足の動きが、必要な動作が。
 本当に必要かどうかを推理しながら斬り合うのが「戦い」というものである。それもまた、イリーツァからすれば「欲しい」能力で在った。
 武具は作れば手に入るが、「勘」という抽象的なものは彼には作れない。
 ざり、と互いに距離を少し詰める。神々も息をのんでいた、先ほどから猟兵たちが展開する攻撃の嵐と言えば、めちゃくちゃなものばかりで未来を象徴するものばかりである。
 可能性と、可能性がかけあわさって無限に至るのだ。――それを心から喜ぶ神もいれば、その力のおそろしさに緊張を覚える神もある。
「ご教授願います」
「ええ。あたしでよければ」

 唸る。
 ――耀子の握る回転鋸がうなりをあげる!!
 低く姿勢を撓めたイリーツァが軽快をあらわにする。尾先がぶるぶると震えるのは本能だ。蛇と竜の一騎打ちが始まる!
 最初に仕掛けたのは耀子だ!とっ、と軽快なステップで駆けだせば、小さな体はあっという間に宙へ浮く!そのまま、回転鋸のエンジンをかけたままにぶうんとイリーツァの上空を飛んでいけば――たどり着くのは彼の背面!
 しかし、此処で刃を振らない。どうっと広い背中を蹴り、一度体勢を崩させる狙いに出た!イリーツァの巨躯めがけて、エンジンの勢いを使い――豪速の蹴り!!
 岩を破壊するような音が響いて、土ぼこりが巻き起こる。これはイリーツァの背骨が折られたかと、神々もびしびしと震える結界にその勢いを見た。
 ――が!!
「硬いわね」
「恐縮です」
 び く と も し な い ! ! 
 岩よりも硬い。金剛石とはわけが違う――蹴りを突き入れた耀子の足にしびれが出るほどの、硬さがあった。
 ぬうっと背面に在る耀子を見る赤のおそろしさに、耀子も息をのむ。これが、竜である!
 があっとイリーツァがその場で吠えるだけで、音波の衝撃が起きた!!耀子が己の身を丸めて抵抗を削るが、小さな体は低く地面を跳ぶ!
「ッめちゃくちゃだわ」
 ――ゆっくりと首を曲げて、不思議そうに耀子の素早い動きを体で追うイリーツァである。
 立ち止まっていてはおそらく、あっという間に追いつかれてしまうと判断した。事実、耀子よりも背の分だけイリーツァの歩幅は広い。
 限界までを使わねば、おそらくこの竜には勝てないと判断する。――普段と勝手が全く違う!走り回る耀子の姿は、上空から見ればイリーツァの周囲をぐるぐると円を描いているように見えるだろう。円の中心で、イリーツァは骨の大太刀を握った。
 速さでは、到底耀子にかなわない。
 イリーツァは「攻撃」に特化した存在だ。向かってくる対象を容赦なく殺し、己の鱗を盾とする。だから、――「追う」ことがめったにないのである。
 彼は暴威で、非常に強力である自覚があった。だから、戦場を駆け巡る耀子を目で追っても捕まえに行くことは無い。充分に警戒をしているからこそ、余計な動きで隙を与えないのだ。
「はッ――!!」
 耀子が鋭く斬りかかる!
 回転鋸の勢いもあっての素早い一撃は、捨て身同然に思えた。あまりに大振り!しかし、勝つためには「これしかない」のである。
 耀子もまた、頭を使うのは得意ではない。だから、常に――周りを意識した戦いをしているのだ。己が斃れても、誰かに託せるように、実に破滅的でありながら誰かを「守る」ことを意識している。
 そこは、イリーツァと似ている。しかし、此度の耀子は「いつもと違った」。
 イリーツァの大太刀が耀子の回転鋸を真っ向から受け止める!!神の力が宿るそれと、竜の骨から編み出した剣がぶつかって火花が散った!
「折るわよ」
「――構いません。出来るものなら」
 食らいつけ――!!
 耀子が己の牙でイリーツァの大太刀を削らんとする。しかし、彼の大太刀は「彼の骨」で出来ているのだ!ばちばちばちばちと神と竜の火花が舞っているところに、体幹を生かして耀子がまた、イリーツァの腹から胸、そして顎をを蹴り上げてサマーソルトを繰り出す!
 がちん、と牙同士が噛み合ってもイリーツァは瞼を閉じないのだ。痛みを感じていないわけではない、しかし――あまりに、その竜は強い!
 恐怖の象徴である。まさに、岩の如く。鬼たる耀子の前に立ちふさがる巨大な壁だ。
「ここで、きみを――斃しきる」
 それでも、鬼はさがらない。
 こ れ は 「 生 き 残 る 」 た め の 戦 い だ ! 
「参ります」
 イリーツァが剣劇を繰り出した!己との間に距離を取った耀子めがけて、大太刀を振る!!しなりを伴った鞭のような一撃を右に飛んで躱せば、地形は割れた!
 頭を狙ったのは――【『玉穿ち』】。
 そして、その剣の動きは見よう見まねで在りながら本物!!地面を破砕する一撃を躱せた耀子が内心驚くが、「たのしさ」もまた増していく。
 戦うことが好きなのではない。しかし、興味はつきないのだ。――この壁を越えたら、何を得られるだろう?
「散ってもらうわ」
 蛇の鋸が、吠える!!
 つんざくような悲鳴を上げて、【《花剣》】は咲き誇るのだ!!
 無数の刃が舞う。花を散らし、草を薙ぎ、そして――すべてを平らげる痛みの刃が竜を襲った!
 魔素の流れを理解している。高速の連撃と、イリーツァは打ち合うこととした!蛇の牙はすべて耀子から生み出されたものである。それが竜巻を伴って――嵐を呼び起こして岩竜に噛みつかんと顎を開いた!!
 まず、一閃。上下に切り開いて牙を砕く!
 そのまま、重心を生かして刀身に左手を添え、狙いを定めて突きを繰り出し二波目を割る!
 突き出した刀身を横にして、己の背を舞うように薙ぎ払い、また袈裟に振れば三、四波目の嵐が殺された!!
 すべて視ている、すべて、得るために見ている――。
「食らい合いだ」
 どこか、上ずった声が漏れる。
 学んでいるのだ。知っているのだ。――そして、試している。己に命じられたことを、その約定が許される限りで竜は嵐の中を舞う!
 大きな武骨の灰色が舞うのを、耀子も視ていた。先ほど、耀子が見せた素早い動きと似ている。図体の大きいイリーツァは、その怪力をでたらめに使うのではなくて、つま先やかかと、そして腰のひねりに重点的に扱うようになっていた。
 テクニカルな動きを習得し始めている「可能性」の竜に耀子もまた、愉しみを見出す。
「戦いは、ひとを――竜を、つよくするのね」
 平和であるほうがいい。
 こんなことを猟兵たちが行う世界などないほうがいい。しかし、場所は違えど「戦い」から得れるものはいつだって「成長」だ!
イリーツァが、舞いながら美しく大立ち回りを続けている。白刃を避け、迎え撃ち、彼の舞台を華やかにする。散らばった白をかき分けて、赤い瞳が耀子を見ていた!!

「来い、猟兵――ッッ!!」

 竜 が 、 吼 え る  。 
 な ら ば 、 鬼 も ま た 向 か う ! !

「退治されるのは、どっちかしらね――!!」

 飛び出した黒鬼と、それを迎え撃つ竜の牙が交差して!!
 神はきっと、震えあがるほどの新たな「神話」を目にしてしまったのだ。嵐の中、鬼と竜が噛み合うその瞬間を――!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

グウェンドリン・グレンジャー
①◎
ヴィリヤ(f02681)と

うんうん、このために、来た……それじゃ、ガンバルゾー
(周囲にImaginary Shadow、虚数の影を展開して)
本気の私、見せちゃう、よ

空中戦……で、飛びつつ、第六感で攻撃、予測
Ebony Featherを、飛ばして、撃ち落とす
もしくは、激痛耐性……で、痛みを、我慢

Mórríganと、Black Tail、二対の、クランケヴァッフェを、前に、伸ばして……ヴィリヤ目掛けて、重力で加速し、突進
「ちぇすとー」
繰り出すのは、捨て身の一撃を、乗せた、Raven's Roar

勝敗、決したら……ヴィリヤに、手当て
私は、平気……力いっぱい、やったけど、大丈夫?


ヴィリヤ・カヤラ

勝敗◎
グウェンさん(f00712)と。

負けないように頑張らないとだけど、
それよりも楽しまないとね!

グウェンさんの攻撃は重いから直撃は出来るだけ避けたいかな
動きをよく見て避けられるように気を付けて。
月輪は影をいつでも使えるように準備して、
防御メインに使っていくよ。

攻撃は黒剣の宵闇を使って遠ければ蛇腹剣にするね。
【氷晶】も使いつつ追撃出来そうなら黒月も抜いて
『早業』で『2回攻撃』を入れていくよ。

グウェンさんと戦うのも楽しいし、
盛り上げる為にも手加減は出来ないよね。
勝っても負けても後悔しない戦いにするよ!




 翼をもった悪しきがふたつ、上空を支配する。
 豪華絢爛の己らが戦場を見て、二つとも金色の瞳に鮮やかな色彩を見ていたのだ。
 どれもこれもが神聖な輝きを放って、怪物の証である目を焼いている。しぱしぱと瞬きを繰り返して、言葉をこぼした。
「うわあ、すっごい、きらきらだねえ」
「うん、うん、きらきらして、まぶしい」
 目をこする鴉の少女に笑いかけるのが、美しい半魔である。神々は自然と二つの存在の偉大さを感じていた。
 ――「血統」が流れているのだ。
「ふふ、それじゃあ、――初めてもいいかな?」
 鴉が大きな黒い翼を広げる。夜闇を支配する獰猛の証は細い身体から感じられる華奢さを打ち消すほど強大な影を会場に落とすのだ。
 ヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)の顔を、影が染めた。ヴィリヤは羽を出さない。偉大なる父譲りのそれは、そう簡単に「神々」の前に出していいほど安いものではないのだ。
「うんうん、このために、来た」
 対する鴉がグウェンドリン・グレンジャー(Moon Gray・f00712)である。
 その命のありかたは神々が最も恐れるべきであり、拒絶するべきものだ。「死ぬはずのいのちが生きている」。
 ざわつく会場からはその力の偉大さもであろうが、ひび割れたなおいびつに組み合わされたグウェンの魂によって巻き起こっている。
「すごいねえ、グウェンさん。会場が皆虜だよ」
「んー、んー」
 グウェンが反応に困っているのか、あいまいな相槌を返す。
 今更、自分のいのちがあり得ないものだと思われることにも大して感傷はないのだ。
 グウェンが興味もなさげに神々を一瞥して、それから――ヴィリヤを見る。
「どーでも、いい、かな」
 助けてくれなかったではないか。
 神がいるとは概念として聞いても、もし、神がいたとするのならグウェンのいのちは生まれたときより、神々に見捨てられたものだ。
 ――捨てた命が今、こうして動いていることに驚くのならば神々も随分愚かである。周囲に起動する虚数の術式があって、会場を真っ黒な影で包んだ。もはや、月の光も届かない!あまりに緻密な、真っ黒な鳥かごを作る。
「本気の私、魅せちゃう、よ」
「っはは、それは楽しみだね! よろしく」
 勝ち負けが問題なのではなくて。
 ――ヴィリヤめがけて吹っ飛んでくる黒い鴉だ!!
 【Raven's Roar】を乗せた超高速の一撃は「わかりやすく」、そして単純に強い!!音だけで暗闇のどこから飛んでくるかを予測して、ヴィリヤが左からの一撃を避け切った!
「うわ、ッぶな」
 ヴィリヤも知っての通り、グウェンの攻撃は重すぎる。
 小難しいことを棄てた動きなのだ。絶対の一撃を避けたヴィリヤの身体を狙う黒い翼も、直線的に飛んでいる!
 それを、月輪の名を授かった影の化身により相殺させた! 今回は盾として使わねばならないそれも、はじけ飛んだとてまた影に変えるだけである。
 重い一撃をまず落としたグウェンドリンが、きゅっとつま先を回転させて胴体をねじり、鋭い回し蹴りを放つ! ヴィリヤはそれを影でかわして、蹴りの勢いを殺した!
「む」
「ふふ!」
 からめとられてしまう――!
 グウェンの身体を引っ張り、上空に投げ出した影があった!無防備に浮いたグウェンめがけて、ヴィリヤは剣を二つ抜く。
 手加減は無用だ、――「そうしたら」殺されるのはこちらで在る。グウェンの威力がどのようなものであるかは、ヴィリヤもよく見てきたのだ!
「――『 氷 よ 射 抜 け 』 ッ ッ ! ! 」
 無防備な鴉の身体に、【氷晶】が襲い掛かる!!
 その数、――ヴィリヤの生み出す限界値は350の氷の刃!!
「まーけない、ぞっ」
 しかし、飛び道具で在れば「宙に浮いているほうが」グウェンの本領だ。飛び出すヴィリヤの刃を打ち落とさんと、腰に生えた己の翼を広げる!!
 第六感で感じているのは、弾幕の密度だ。一瞬認識した程度では「何個」の氷が襲ってくるかはわからないが――その濃度は分かる。術者のヴィリヤが中心とするなら、左右はやはり密度が高い。彼女が剣を両手に握っているとというのもあって意識が集中しやすい。
 ならば、切り抜けるとしたら――上下のどちらか。ヴィリヤは飛べるか?いいや、飛べない。なら、取るべきは攻撃に転じやすい下だ!
「ッ、う」
 落としきれない氷のつぶてがグウェンを襲う!
 しかし、激痛は耐えきってみせた!――つぎはぎのいびつな魂を引き連れたままに、命を奪う捕食者たるヴィリヤめがけて怯まず急降下をする!!
 また大きな一撃が来る。一瞬で悟ったヴィリヤが剣を交差させたのを見た!!

「ちぇすとー」

 些か気合にしては抜けた声があって。
 鴉の一撃がヴィリヤを襲う!!!地面が二度目の破壊を喰らい、足場が盛り上がっていった。その先端をヴィリヤの身体が転がって――まだ平たい地面に転がっていく。
「げほっ、げっ、ッう」
 思わず口からこみ上げた吐き気に任せて、地面にばたたと血が堕ちる。
 真っ赤なそれを金色の目に収めながら、どこをやられたのかを確認した。肋骨が折れているらしい。内臓のどこかを損傷したから、血が口から出ているのだ。
 衝撃で額まで割れていた。もろに食らっていないにしても、あまりにかの鴉の怪物は力が強すぎる!
 剣は折れていないのが確認できた。くちゃくちゃになった青髪をかきあげる暇もなく、追撃の翼が降ろされる!!
「壊れ、ちゃった?」
「――まだ、かな!」
 破 壊 ! ! ! ! 
 地面を砕くグウェンの確かな一撃は寝ころんだまま両腕で体を押し上げて鋭く転がり回避する!ヒールを地面に差し込むようにして体を起こしたら、双剣を構えて斬りかかった!
「はぁああ、ああああああああッッッ!!!」
 ――そも、本気になるのは楽しい事である。
 ヴィリヤは生まれてから「絶対」の存在だった。
 彼女が唯一勝てないものと言えば、いつかその命を奪う父親程度のもので、人間なんて言うのは本気になればすぐ殺してしまう。
 だからこそ、こうして、今! 仲間と本気で渡り合うのが楽しくてしょうがない!
「ヴィリヤ、笑ってる」
 心の底から戦うのを悦んでいる友の顔に、グウェンはきっと感情を見た。
 表情筋が固まってしまっている鴉の少女には、その勢いがなかなか現れない。だけれど、今この瞬間だけは――「たのしい」というものをヴィリヤから感じ取った。
 鋭い連撃が繰り出される!アクセサリーを振り乱し、コートを置き去りに早業を繰り出したヴィリヤの一撃はほとんど直感でグウェンの羽が受け止めた!
 その体を、月影がからめとろうとするのならば翼が振りほどく。
「ぁあ、あ」
 みんなが――どうして、戦う時に声を出すのかが分かった気がするのだ。グウェンは「そんなことをしなくても」強い存在になってしまった。連撃を叩き込むヴィリヤの動きに付き合っていけるほど、虚弱なころとは大きな差が出来ている。
 動きが鈍く成ればヴィリヤの牙が襲い掛かる!けん制を込めた突きを避ければ、鋭い薙ぎ払いがグウェンの顔の皮膚を大きく横に裂いた!
 ばしゅっと血管からあふれた血で目くらましを受ける。目を細めてしまう間に、――胴体へ連撃の十文字が叩き込まれていった!
「ああああ、あァ!」
 しかし、真似をして小さくとも声を出せば力は入りやすい。呼吸が攻撃には肝心なのだ。
 肉薄するヴィリヤの呼吸を意識する。振りかぶるタイミングで止めて、突き出すタイミングで吐いているのを確認した。
 動きが――読める!!
 窮地に追い込まれた鴉が、急激にヴィリヤの動きに敏感になってその刃にこれ以上の猛追を赦さない!!素早く躱しだした少女の動きに、ヴィリヤの心から期待が沸いた!
「ッはは、動き、変えた!?」
「真似、して、みたの」
 戦いながら成長する。グウェンは常にヴィリヤを「食らっている」のだ!
 その動きも、攻撃も、足捌きもすべてすべて、吸収している――!!
「すごいや、グウェンさん!」
 そ れ が 楽 し く っ て し ょ う が な い ! 
 ずっと踊っていたくなるダンスのように、剣と翼の交錯は続いていた。火花が散り合い、悪しきの怪物たちがお互いを食らい合っている。
 肌が切り裂かれ、グウェンの顔から、胸から、腕から、足から血が噴き出しても。
 ヴィリヤの頭が割れて顔のほとんどが真っ赤になっても、足から血が止まらなくても!
 どちらかが完全に沈黙するまで――そ の 怪 物 た ち が 止 ま る こ と は 無 い ! ! ! 

 グウェンがヴィリヤの動きに夢中だったから――と言うのが大きな決定打になっただろうか。
「あ」
 それについてこさせようと近距離に持ち込んでいた、というのもある。
 なぜなら、ヴィリヤには――一応、「翼」はあったのだ。あえて使わずに鴉と地面で踊っていた。
「ごめんね。ちょっと、大人げないかも」
 もしくは「生きて」きた長さか。グウェンの翼を、背面から襲い掛かった氷のつぶてが「凍らせて」しまっていた。
 本当に徐々な変化だったのである。グウェンが翼で氷を受け止めていた時から、常に空気中に氷は舞っていた。砕くのではなく、燃やしていたなら勝敗は違ったかもしれない。
 凍らされた翼はもう動かない!!――そこに、ヴィリヤの一撃が入る!!

 切り払われて、地面に鴉が堕ちた。
 冷えた地面を滑って行って、真っ赤な軌跡を作っていく。――ヴィリヤもまた、少ししてから膝をついてへたりこんだのだ。
 もはや勝敗など関係がない。ただただ、圧倒的な捕食者たちの生命の証明にわああと会場が沸いた!!
「だ、い丈夫? ごめん、グウェンさん、たのしくって」
「――へいき」
 汗を吹き出しながらヴィリヤが転がっていった鴉に訊いてやれば、ねころんだままピースサインが返ってくる。
 生命に満ちたこの場である、吸収に優れたグウェンドリンの羽が、丁寧に少女の傷を瞬く間に修繕していった。
「ヴィリヤも、大丈夫?力いっぱい、やっちゃったけど」
 そして――吸収したそれを、ヴィリヤにあてがう。
 こつこつと軽い足取りでやってきたグウェンに癒しの光を与えられながら、ヴィリヤが困ったように笑った。
「うーん、ちょっと、貧血かも」

 吸血鬼が貧血なんて、笑えないけど――今は。
 きょとんとした鴉が、「じゃあ、お茶にする?」なんて尋ねたものだから。なんだか面白おかしくって、ヴィリヤも笑ってしまったのだった。
 素敵な戦いの後は――誰かの戦を見ながら、怪物たちでどうか、優雅なお茶会を!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

綾峰・美羽
①◎◎
マリーさん(f01547)と
さぁて、まさか直接手合わせする日がくるなんて
せっかくです、胸をお借りしましょうか
ふふ、優しくシてくださいねぇ、なんてウィンクを
あはは、食べさせてくれるんです?

じゃ、普段通り絡め手上等で――
と、見せかけて
父から継いだ剣閃、母から継いだ光
振るうのは聖騎士としての剣技
あっは、びっくりしましたぁ?

……型を破るには型を知ってないとってね
ふふ、もう罪悪感で喧嘩殺法するのはやめたの
それに騎士同士の戦いはこっちの方が華やかでしょ?

まぁ、あくまで“罪悪感で”使うのやめただけだから
さっきまでの戦いで使ってたし、負けそうになったら不意打ちくらいかけるけど
だって、負けず嫌いなんだもの


マリーノフカ・キス
①◎◎

さて、レディを傷つけるのは……なんて、言ってはいられないね
僕も、そう簡単に負けたくはない――彼女には、特に

「おや、心にもない。優しくしたら途端に食われてしまいそうだよ」
なんて、くすりと笑い返して
……意味深じゃないかい??


正直、長期戦で勝てる自信はない。ついでに、ダーティファイトでもね
だから賭けるのは最初の一刀
小細工をねじ伏せる疾さこそ、僕の武器なのだから

「さぁ、行くよ――!」
最初の戦いと同じ、魔力とサイキックエナジーを込めた殲術抜刀法
けど、それはきっと彼女も百も承知。盾で防ぐか逸らしに来るはず
そこで盾を狙ってフォースブレイク……無論、砕けはすまいさ。体勢さえ崩せれば、峰を返した一撃で




 前々から、手合わせをしてみたいとは思っていた。
 しかし、それにはお互いに大きな壁が「それぞれ」に在ったのである。
 かたや、己の中に敷いたルールの為に。かたや、いくら騎士とはいえ女性相手に力を振るえない性分故に。
「さぁて、さて。まさか、直接手合わせをする日がくるなんて!」
「ああ。本当に、今まで無かったのが不思議なくらいかな」
 ――負けたくない。
 騎士としても、そうでなくても、互いのことは互いが良く認めているがゆえに、負けてしまいたくはないのだ。
 マリーノフカ・キス(竜星のコメットグリッター・f01547)は特に、己の中に課した制約が大きい。
 女性を傷つけるなど騎士として以ての外である。同じ騎士で在るとはいえ、やはり男と女では一般的に見て筋肉のつくりからして大きく異なるのだ。
 まして、マリーは竜である。女性であるかの好敵手に本気になってしまえば、どちらも「ケガでは済まない」ことくらいは理解していた。
 そして、この度マリーの前に現れ相手をすることになった綾峰・美羽(陽翼ホーリーナイツ・f00853)もまた同様に己らの暗黙の規則は理解している。
 負けてやる気などはさらさらないが、戦う気のない相手を虐めるのは騎士の流儀に反するのだ。喧嘩と決闘は大きく意義が異なる。
 そも、喧嘩殺法で美羽が勝ちに行くのは――「罪悪感」の表れだ。
 彼女の中には夜の王たる血族のそれがある。しかし、母からはそれを祓うようにあふれる光を、父からは剣の才を預かったのは「美羽だけ」だ。
 妹には――一切、受け継がれなかった。
 欠けた痛みはわかりやすい。事実、美羽もそう思うのだ。何も持てなかった妹のほうがずうっと可哀想で、持ちすぎた己の痛みなどは誰にも理解されるべきではないと。
 だから、自分で自分を罰することにした。モテる才能をすべて潰して、あえての型破りと喧嘩殺法で乗り越えていくように、己の運命にも「負けず嫌い」を発動してどこか反抗的でいた。
 しかし。
「――美羽くん」
「あ、気づいちゃいました?」
 豪華絢爛の闘技場にて。
 竜騎士を相手取る盾の騎士が使う構えは、いつもと違う。
「流石。構えだけで気づいちゃうなんて。ふふ、――優しくシてくださいねぇ」
「おや、心にもない。優しくしたら途端に食われてしまいそうだよ」
「あはは、食べさせてくれるんです?」
 ――意味深だな。
 くすくすと笑い合いながらも、己らの構えを見ている。マリーは美羽の構えだけで理解をしていた。今日の彼女は、此度戦場でともに歩んできたものとは異なる戦術を使ってくる。
 ――予習していたつもりなのだけど。
 マリーが注意深く身を緊張に固めるのを、また、美羽も視ていた。
 深く重心を落そうとする彼との間に、沈黙がある。――それを、赦さない!!
「はあッ!!!」
「ッ、!?」
 真 っ 向 か ら 正 々 堂 々 の 勝 負 ! ! ! 
 踏み込みと共に突き出されたのは【陽騎舞踏・踊剣】によって呼び出された聖剣と盾だ!!
 見たこともない――ダーティ・ファイトを得意としていた彼女からは予想もつかない真っ向からの一騎打ちに思わず、マリーも目を見張る!
 西洋剣は、もとより「斬る」ことに秀でているのではない。広い剣幅は相手を鎧の上から「殴る」ためにあるものだ。
 恥ずかしげもなく己の才を使った美羽は、それを――思い出したように振り回す!!びゅうっとマリーの頭を狙った一撃を、反射神経だけで後退して避けようとして額の皮が斬れた!
「っう」
 慄く。
 ――あまりに、正確な踏み込みだ!
「あっは。びっくりしましたぁ?」
 完全に予想外だ。マリーが瞬きをする暇もないその一瞬で、また美羽は剣を構える。振り下ろした剣先を己のそばに戻すように、肘をぐうっと背中に向けて曲げる。ちょうど、弓で穿つかのような構えだ。
 態勢を低くして、重心を得る。呼吸は整えるために、口をきゅうっと結んで息を止めたら――また一閃!!
「がっ――!?」
 そ の 才 能 、 ま さ に 麒 麟 児 ! ! ! 
 振るわれた確かな質量だ!
 マリーが細い刀身、その鞘で剣の重さを殺すものの、やはり押し出される!宙に浮いた体は盾が叩き、ぐわぐわと竜の頭に脳震盪を起こさせた!
 型を破るには、型を知っていなくてはならない。美羽は、その重さをよくわかっているのだ。
 父に教えられた構えを思い出しながら、才能を嬉しく思った日々を思い出して、それを――恥じない!!
「まだまだ、いきますよぉッ!!」
 思いを叩き込むように、繰り出す!!
 剣は重い。肘で使っていては早々に疲れてしまうから、腰のひねりと共に上半身で振るえば下半身の踏み込みで力を増す!
 マリーと言えば防戦一方だ。――長期戦に向いていない。
「逆転、狙ってますね」
「バレてしまうか」
 さすがだね、とは言わない。
 ――己でも己の弱さはよくわかっている。
 搦め手に弱いのだ。今の「まっすぐ」な手を使ってくる美羽にならばまだ勝機はあるが、長期に持ち込まれてはきっと「一刀」の力も落ちてしまう。
 故に、重すぎる聖剣の動きを必死で躱していた!己の剣は抜かず、その一番堅い鞘で受け止めて、両手で押し込む!
「まだ、加減する気ですか? ――意気地なし、ですね!」
「優しくして、といっただろ!」 
 実際、臆していたわけではない。
 マリーにとって美羽と言うのはシンプルに相性が悪いのだ。故に、先ほどからの同行で彼女の動きに対する先入観がしみついてしまっている。
 美しすぎる太刀筋に、軟派な態度では文字通りに「太刀打ちできない」!弾かれ、体が浮いたのならその頭に勢いよく盾が振られる!
「ッぐぁ――!」
 地面に、めり込むほどの強さだ!
 体を二度三度跳ねさせて、マリーの身体があわや場外まで追い込まれる。美しい貴公子の顔から血があふれ出て、女神たちが痛ましさに悲鳴を上げた。
「優しいだけじゃ、だめですよぉ。ね、マリーさん」
 剣を、また構える。
 呼吸は恐ろしいほど整っていた。己の瞳孔が開ききっているのもわかる。周囲の輝きが嫌に眩しいが、構うものかと目は見開いたままだった。
 美羽は、今。すがすがしいほど、聖騎士だった。
「立ってください」
 ――地面に転がったマリーに追撃をかけない。
 それこそ、戦神たちは興奮したものである。強い女だ、強い騎士らしく、相手を尊重する!
「そこまで、言われたら、――ッ立つ、しか、ッないな」
 対するマリーも、己の額をごつんと地面に押し当てて上半身を起こす。鞘に収まる刀を地面に押し当て杖代わりにそれにすがって、ゆらりと立ち上がる。
 息を、整えている。
 一度、美羽も待つことにした。剣先にはマリーを捕らえているが、突撃する様子はない。
「いいのかい? 今、絶好のチャンスだと思うけど」
「ええ。急いでません」
 ――術式、発動。
 額を真っ赤に濡らした騎士の身体を、赤い光が纏う。超常の煌めきに、美羽も盾を構えた。
「待たせたね」
「本当に」
 一騎打ちだ。
 マリーがこの手段を取ったことを、心から嬉しく思う美羽である。それは、マリーも同じことだ。
 かの好敵手が己を追い詰めた。故に、己は「殻」をひとつまた破るのである。こんな正々堂々の戦いで、何をためらうことがあるだろうか――。

「 さ ぁ 、 行 く よ――! 」

 咆哮!!
 居合の構え、のち、鋭く一歩の跳躍にて接近!!!
 ――早すぎる!!美羽も己の盾に思わず細身を隠して、衝撃に備えた!!
「うぉおおおおおお、ぉおおお、ああ――――ッッッッ!!!!!!!」
 抜 刀 、 【 殲 術 抜 刀 法 ・ 返 】 が 炸 裂 す る ! ! ! 
 神速の居合は見事、美羽の盾に命中!!ばちばちばちと真紅の稲妻がそれにいきわたって、真っ向からの破壊に成功した!!
「っ、うそでしょ」
 たまらず、美羽もその威力に驚く。そして、この一手で終わるとも思っていない!!
 砕けないだろうと読んでいた盾の破片がマリーと美羽の間に在って、もはや二人を隔てるものは何もない。これを、この瞬間を、逃すな――!!
 峰を返した一撃だった。
 かち、と刀が空中で翻ったのを美羽も視る!!

 剣と刀が――ぶつかり合って、宙を舞ったのだ。

 浮き上がった鋼を目で追うことは無い。
 マリーが目を細めたのなら、その胴体を――美羽のかかとが押し込んで、竜を場外まで吹っ飛ばす!!!
 ばん!と背中が結界にぶちあたって、ずるずると入場口まで落ちていくマリーを、美羽は全身に巡らされたエナジーにより皮膚が裂けた体で、見送ってから――膝をついて倒れ込んだ。
「いっ、た、でしょ。負けず、嫌い、なんで、すってぇ」
 最初にいいましたよ。なんて。
 ――勝つためなら、やはり手段も択ばないのだ。罪悪感で振るうのをやめただけで、己の気持ちを貫くためならなんだって使って見せる。
「胸、かり、ましたよ」
 意識を失う中でそう微笑んだ彼女が、どこかすがすがしい顔をしていたものだから。
 地面にへたり込まされることになったマリーもまた、真っ赤な視界を最後に力なく笑って、今回は負けを認めることにしたのである。
 次は負けないよ、と。刀を握る手は、きっと神々らに生命を分け与えられ傷が癒えても、かたく握りしめたままだったのだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月待・楪
①◎

氷月(f16824)と
アドリブ等歓迎

言われてみりゃそうだな
OK、楽しいデートの仕上げだ、Carminus!

どーせこっちの手は読まれてんだろ
だったら…好きにやらせてもらう

カルタとガランサスで【クイックドロウ・制圧射撃】を意識し最初は規則的に
次第に【念動力】で軌道を捻じ曲げ
操って【2回攻撃・乱れ撃ち】状態へ
ッハハ!上等ォ!
んなに欲しいなら…Come on darling?
キス出来るくらい近くに来い!

まだ遠いぜ?
雷花を片手で【目立たない】ように抜きながら
氷月を抱きしめたら
銃口がこっち向くのに合わせて
アイツが俺以外見ないように背後から
【串刺し】のキスを

ああ、お前の身体も心も命も
魂でさえ、俺のモンだ


氷月・望
①◎

楪(f16731)と
アドリブ等歓迎

UC:緋戌、を使用
まァ、何度も戦ったコトはあるケドさ?
……俺がヴィランで在る、って腹決めてからはまだだよね
折角のデート!楽しもうか、Twilightォ!

銃撃乱舞が襲ってくるのは承知の上
多少のダメージ覚悟で『Invader』を使って
銃弾の軌道を【情報収集】しつつ、接近
可能なら、緋戌の雷針で確実に落とす

撃ち合いも悪くはないケド
間近で戦り合うのも、いいよなァ……!
ハッ!熱いお誘いしてくれんじゃねぇの、Honey!

至近距離に迫ったら【先制攻撃】【クイックドロウ】
『Dusk』の銃口を、楪の腹に突き付けて嗤う
此れから先、何処までも一緒に堕ちてやるよ
そんな言葉と共に発砲




 犯罪者とは、――大体、どんなものでもその生涯は孤独なものだ。
 様々な時代背景と、恵まれないものがある。ひとそれぞれの痛みの形があり、しあわせのかたちがあった。
 親に恵まれない子供が「愛をもらえない」と不幸に泣くこともあれば、親に恵まれた子が「愛なんていらない」と不幸に泣くこともある。
 傷の重さも罪の意識も、人によって全く異なる。
 怒られた、ということを傷に感じてしまう人もいれば、相手の過失だと責める人もあるのが世界だ。
 故に、個人の考えを尊重する――誰も、孤独でないように――平等に裁くのが法であり、取り締まるのが社会である。
 悪たちは、それに従えない。孤独な生き物たちは、己さえを信じることもできないまま傷を抱えたいのちがあった。
「まァ、何度も戦ったコトはあるケドさ?――俺がヴィランで在る、って腹決めてからはまだだよね」
 わがままで、独りよがりが二人分。
「言われてみりゃそうだな」
 『ヒーロー』を好きになれなかった。
 日の光の下で助けもしてくれない誰かを助けろなんて、二人にとっては義理もなければ進んでやりたいとも思えない。
 この場にいる神々が――もし、運命を組んでいるというのなら、お互いをめぐり合わせたものとして認識はできてもそこに感謝は無いのだ。
 氷月・望(Villain Carminus・f16824)の宿命も、そして、月待・楪(Villan・Twilight・f16731)の運命もまた、孤独の寄せ集めである。
「でも、ヒトマエって恥ずかしくなァい?」
「そうか?俺は見せつけてやるの――けっこう、イイけどな」
「ウワ、そーゆー趣味もあンの?俺も嫌いじゃないケドー」
 神様の存在なんて、関係ない。
 今は法に縛られずお互いをめいいっぱい楽しんでいい場所を与えられて、それに喜んでいるだけだ。
 例えるなら、二人は孤独な子供である。母親や学校や、家族や、そして「安全なはずの」世界から嫌われて、いじめられて――たまたま、二人きり貸し切りになった公園でずっと遊んでいられるような気持でいるのだ。
 誰にも理解されない、共感されない、苦しみを抱えたままでようやく「自分たちの手で」お互いをつかみ合った。
 面白半分で話しかけたときから、すでに「決まっている」といっていい。――これが、最適解なのだと。
「んじゃあ、折角のデート! 楽しもうか、Twilightォ!」
「ハ、――OK、楽しいデートの仕上げだ、Carminus!」
 ――発動、【黄昏】!!
 ――変装、【緋戌】!!
 お互いの「悪」色に染まった衣装を身にまとい、神々に見せてやる。
 どこまでも孤独で、寂しい、――悪の愛し合いを。そして、その存在証明を!!

 どうせ楪の手は読まれているのだ。
 二人でヴィランとして活動する前から、望との熾烈な「語り合い」は始まっている。
 ――今日の天気は最悪だ、と言っていた彼が、今は澄んだ月の下で悪の仮面をかぶっていた。
「よォ、今日の天気はどーだ」
「ンー、そうだなぁ」
 ちょうど、反対の位置。凡そ、距離にて100mもあるかないかである。
 目測しながら、望は仮面の向こうで愛しの凶弾に微笑みかけた。
「超、快晴――かなッ!!!」
 初 手 、 銃 撃 乱 舞 ! ! ! !
 開戦と同時に行われた弾幕は、望の想定内で在る!サイバーアイを起動させれば、その軌道がすでに読めていた。
 直線で飛ぶ鉛玉たちは楪の苛烈を現わしている!望を求めて、射止めようと必死のそれを受けてやりたい気持ちもやまやまだが――今は、そういうわけにはいかない。
「ハハ! いいねぇ、カッコイイ!」
「惚れなおしたか、――えェ!?」
 無数の鉛玉は的確に控えさせた雷針が落としていく!その狙いを少しでも狂わせようと、望が戦場を駆け巡れば続いて楪も走った!
「逃げンなよ、燃えるだろ!」
 それから、――火焔を纏った鉛玉が念動力で捻じ曲がる!
 飛び出した標的を襲おうとするのなら、容赦なく望の針が宿主に触れるのを赦さないのだ。
 不躾な鉛はばちばちと音を立てて炭に変わり、じゃじゃ馬の針は砕け散る!互いに「頭脳」が本来の武器である!お互いの動きを常に読み合いながら、相手の足、手、そして脳めがけて精いっぱいの攻撃に出ていた!!
「ッはは、いいね! 楽しい! マジで――っぶね」
「オラ、舌ぁ噛むぞ!」
 びゅうびゅうと速度を上げる蒼の念動力に、同じく赤の念動力で応ずる!
 鋭く火花が散り合って、相手の領域を侵し、そして肌を薄く裂いていくのだ。コスチュームに浅く裂傷が及べば黒いシミが出来上がる。二人で、そのあとに愉悦を感じて舌なめずりをした。
 ――破滅的な、未来を望んでいる。
 世界の在り方などは二人に関係がない。二人は、望まぬ人生を課せられてきたのだ。誰かの救いになりたいと思った時もあったのに、それは到底己らでは果たせぬことと思い知る。
 ふたりは、どこまでもわがままで独りよがりな性分から抜け出せない。――だから、せめて「最期」は己らで決めていた。
「間近で戦り合うのも、いいよなァ……!」
「あ――?」
 ぴた、と同時に二人の手が止まる。
 思考を止めたと同義だ。赤い瞳と灰色の瞳が静かに見つめあい、絡み合って――凶悪に笑んだ。
 愛しい「標的」からのオーダーだ、これに応えないのならば己は彼の最期に相応しくない!!
「ッハハ!上等ォ! んなに欲しいなら――Come on darling?」
 鉛玉の装填をやめる。代わりに、楪が背面で手にしたのはダガーだ!
「キス出来るくらい近くに来いッッッ!」
 雷花と名付けられたそれは、強化ワイヤー紐が施されている。見せつけた左のそれはブラフで、本命は「後ろ」の右である。

「ハッ!熱いお誘いしてくれんじゃねぇの、――Honey!」
 欲しがりサンだな、と思う。
 楪からすれば、生きる糧だ。いつか誰にも裁かれないように、己らが終わるときは己らの手で終わらせるのだと決めている。
 それは望も変わらない。その戦が地獄だと理解しているのだ。
 ――愛し合っていても、普通に愛し合うことなんて己らには、きっと、これからさき、ずっと、出来ない。
 誰かに愛されたことがないのだ。だから、――愛 し 方 な ん て 、 こ れ し か わ か ら な い ! ! 

 それは、瞬間移動とは違う。
 電子を使った磁場によるものだ。楪をNとしたのなら、Sであるのが望であるだけのこと。
 びゅうっと飛び出した望の動きは鋭く、激しく――そして、当然のように楪に接近する!!!

「まだ遠いぜ?」
 その質量を、確かに『抱きしめた』。
 己らのための戦いを繰り広げているのである。神々の目にどう映るかなど、関係がない。
 傷のなめ合いに見えるだろうか。望の質量に追突されて、ふわりと浮いた楪の身体があって――回した右の腕には、確かに刃が握られていた。
 ――支配だ。
 望の身体も心も命も、魂でさえ、すべて、楪のものであるべきだと彼は思う。
 そこに尊重なんてものはかけらもない。しかし、――それを、赦されたかったのだ。
 彼の世界に己の作り上げる黄昏の景色以外があってはならないと思っていて、身勝手な気持ちだと分かっていてもやめられない想いがここに在る。
「さみしそーな顔すんなよ、ゆーくん」
 振り上げたダガーの位置に迷った。
 ――ここで終わっていいのか?
 楪の仕上げは至って単純だ。ここで、刺しどころを決めるだけのことである。己だけを見ていろと串刺しのキスをして美しく幕が下りるはずだ。
 その考えを、遮ってしまったのは望の一言である。抱きしめられた形になって、ふたりで地面に追突するまでの間。するりと楪の耳たぶに手を這わせて彼は笑い声を聴かせた。
「心配しなくても、――此れから先」

 黄昏色の景色を思い出す。
 咲き乱れる緋色の花に祝福を受けながら、きっと美しすぎる夜空を書き換えていた。
 こんな色じゃあ、――最期に相応しくないだろうと、きっと楪に教えようと花開いたのだと悟れるだろう。腹に、硬い質量を感じる。

「 何 処 ま で も 一 緒 に 堕 ち て や る よ 」

 発砲。
 地面にふたりで追突して、真っ赤な花がそれぞれに咲いた。
 ――致命に至らぬ傷が背中に走った望が痛みに震え、そして悦んでいて。
 腹に大穴を開けられた楪が真っ赤な血の池を作り出している。ごぼごぼとむせる彼の身体に手を這わせて、嬉しそうにはやる心臓の音に望が耳を傾けるのだ。
 どうせ、神様が彼の傷を塞いでしまう。――その前に、聞いておきたかった「生命」の音がここに在る。

「あいしてる」
 寂しがりとさみしがりの、独りよがりがふたりよがりになって。
 終ノ銃雷が巻き起こした愛し合いは、静かで――まるで、地平線に夕日が堕ちるときのように、穏やかな幕引きとなったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

コノハ・ライゼ
②他お任せ

メインディッシュって訳ネ
それとも一仕事終えた後のデザートかしら

溢れる色彩、生命ーー最高の舞台じゃナイ
魅せろというなら、チップも弾んでねぇ

使うのは一番の得手、己が己である証の牙
肌裂き「柘榴」へ血を与える
牙は相手をよく喰らえる形状へと自在に
マヒ攻撃仕込み2回攻撃駆使しカウンター狙っていきマショ
相手の動きは見切り避け、不可視の術なら第六感で躱そうか
ただし致命傷避けるに留め、負傷は耐性も併せ気にせず行くヨ
見所は傷口抉っていくスタイルだけど
……そうね、猟兵相手なら生命を喰らうのは止しておくわ
情けでも手加減でもねぇの
「ヒトは喰わない」のがポリシーだからネ
(誓ったし、誓わされた。生きるために)


玉ノ井・狐狛
最初にやるのは、賭場の開帳だ。
猟兵向けの体じゃァあるが、意図は“観客”サマがたの興味を煽るところにある。
実際のカネのやりとりは必要はないさ。「勝敗を予想して展開に一喜一憂する」マインドセットを促すワケだ。
▻言いくるめ▻鼓舞

で、順番がきたらリングに出る。
胴元がバトルに参加する流れは、それだけで▻パフォーマンス性があるからな。

②∞

試合については◈UCで▻ドーピングさせてもらおう。
道中で見てきた限り、どいつもこいつもトンデモねぇ腕自慢。シラフで相手するなんざ、無茶を言いなさんなって話よ。

バトル漫画に、トランプを武器にするヤツがいるだろ?
アレの理由は単純で――みんな「そういうの」が好きだからなんだぜ。





「さァさ、どっちにかけてたンだい、アンタ」
 神も仏も「選ぶ」権利はあっていいはずだ。
「ああくそ、私はあの蒼が勝つと思っていたんだ!」
「そりゃァ大損だ、次は赤いのにしたらいいぜ」
 ――猟兵たちの間でも一喜一憂のようである。
 楽し気にだんらんをする彼らだって、今や牙すら振るわないが「やっていた」ことは獣よりもずっと苛烈で燃え上がるような感情のぶつけ合いだ。
 「ひと」の想いとストレスが絡んだ状況と言うのは、カネがなくとも心を動かすのに最適である。
「次の試合はなんだ! どれが出るのだ」
 選んだ猟兵が負けてしまったらしい神が興奮しながら、しかし楽し気に笑うさまを見て狐は満足そうに笑うのだ。
 ――人生、刺激が無ければ腐っているのと同じこと。
 それが神様にも通用するかはわからないが、神とて「救う人間と救わない人間は選ぶ」必要が在ろう。よみがえる彼らにそれをもう一度叩き込んでやるにはちょうどいい。
 狐は、根を回す。己の賭博場を作ってやるのだ。
「アタシだよ」
 ――賭けてみるかい? そんな度胸、神様に在るのかい?

「っはー、メインディッシュだと思ってたけど、どうやら一仕事終えた後のデザートってかんじネ」
 わかりやすく、会場は大層なものだ。
 金色のあしらい、組まれた赤の椅子。そこに座る神々らしき気配と、少し目を凝らせばだんだんその輪郭が見えてくる。
 コノハ・ライゼ(空々・f03130)は己の「牙」を指先でくるくるとまわしながら、相手を待っていた。
 その獲物は一番の得手である。「柘榴」と名付けられた彼の牙は、彼に合わせて光の角度で色を変える優れモノだ。
「チップも弾むように、言ってくれたァ?」
「おうよ。その辺はぬかりねェーよ」
 ライゼは、己が狐であることを知らしめたくはない。
 「あの人」の姿を借りているのだ。己が食らったいとしいひとの身体を借りて、「どこにもいない」ことになっている。誰にも暴かれたくない秘密がひとつふたつあるとするなら、「それ」がライゼだった。
「ソ。――最高の舞台だモンね」
 軟派な男がふわりと笑んでウィンクひとつ飛ばせば、それを受け入れてなお鼻で笑ってやるのが玉ノ井・狐狛(代理賭博師・f20972)だ。
「愛想がいいねェ、神様が好きかい?同胞」
「あらマ」
 ――バレている。
 狐狛は、その身を隠していない。妖狐でありながら、彼女は陰陽師でもある。「化けている」仲間のことなど、においからも気配からも悟れるというものだ。
「だめヨ。簡単にばらしちゃア、だめだめ」
「そォか。そういうもンね。わぁった」
 しぃ、と舌を震わせるライゼがいて、それが彼の美学だというのなら狐狛も突きまわさない。此処で必要なのは、――「その手札」ではないのだ。
 ちりり、と互いの間に敵意が揺らめく。熱のそれのせいでなく、二人の間に在るのはお互いへの警戒だった。
 まず、ライゼの構えている牙に狐狛が緊張を覚えている。ライゼのほうが背も高いから腕も長いのだ。どう攻めるか、どう戦うかをある程度、――この一瞬で賭けに出る必要があった。
 対し、ライゼの警戒はその「直感」だ。ありとあらゆる武器と戦略を用意したとて、いつも「どんでん返し」は計算外が巻き起こす。
「神様は、まァ――どうでもいいねぇ。オレの人生に関わってこなきゃ、食べるもンでもないでショ」
「ハハ、喰うことが好きとは! 狐らしいや。何人の人間を食ってきた? ン?」
「ヒトは喰わないヨ。ポリシーだからネ」
 嘘だ。
 ――食ったことは、在ったとも。
 その味を覚えている。つい最近も、思い出されてしまった。だけれど、その衝動を乗り越えてどうにか今は「悪食」で済ませている。
「なんだ、首輪付きかい」
 誓約を悟った狐狛が残念そうに肩をすくめて、ライゼを見ていた。
 彼女の周りには――徐々に、神力が集まり始めている。ライゼが見る限り、猟兵とはどれも「とんでもない」ものの集まりだった。
 なにせ、未来を背負う彼らである。生半可な実力でまさか数年を歩んできたわけではないと理解していたが、それでも「いつもどおり」じゃ太刀打ちできないと思った彼女の「いかさま」だ。
「イイ締まりヨ」
 己の首を片手で締めながら、べえっと舌を出してライゼが笑う。
「セクハラかよ」
「アラ、失礼」
「――アタシは御免だってだけさね。アンタを否定するわけじゃねぇ」
 げぇ、と舌を出しながら目をそらした狐狛には、「いかさま」が無ければ生きていけない。
 あまりに、己の「足らない」ことは分かっていた。足らない代わりに「いらない」ものまで背負い込んで、今に至っている。
         ジンセイ
 ――こんな不平等なゲームには、「いかさま」がなければ付き合ってられないのだ。
「バトル漫画に、トランプを武器にするヤツがいるだろ? ――見たことあるよな?」
「ンー、サブカル系には詳しくないケド。まー、そうネ。」
 駅前の広告とか、パチンコ店の液晶を思い出しながらライゼが肯く。
 この言葉が少女からの「警告」だとは何となく予感していた。彼女は、「勝負師」なのだろうとも。
 実のところ、ライゼが一番楽しくも面倒に思う手合いかもしれないのだ――狐の執念深さは己が一番わかっているゆえに。
「アレの理由は単純で――みんな「そういうの」が好きだからなんだぜ」
「ナルホド。だから、アタシ今――結構アウェイなのネ」
 会場は、わああと沸き立って狐狛を歓迎している。
 ライゼを応援している声が少ないのは、ひとえに「根回し」の違いだ。カジノで儲けるためには、真っ先にディーラーを買っておくのが一般であるように、狐狛はすっかり「神々に気に入られている」。
 どんどん降ってくる声援は【口約束の業務提携】だ。狐狛の体に神々が力を貸し始めていた。ゆらりと体に神性が宿り、その体の輝きを増していく。
「あっは。噛み応えがありそ」
 ――ライゼもまた、愉悦に笑んだ。
「さて」
「さて、さて」
 狐同士が、目を細くして笑い合い。      ・ ・ ・ ・
 いつまでたってもにらみ合っては始まらぬ。――丁か、半かだ。

「「ばかしあいといきましょう」」

 まず、ライゼが己の手を柘榴で切り裂く!
 自傷を代償に発動する技を見た――狐狛がその発動の前に細い足に蹴りを叩き込んだ!
 がくんと膝横を殴られて体勢を崩すが、ライゼの双剣に彼の血が行き届いて――【 紅 牙 】 ! !
「うぉっ、と」
 転ぶ姿勢のままに振るわれたまず一つ目の牙を、つま先に力を入れて体を後ろに倒すことで避ける!ぎちりとブーツに力を籠めたら、鋭く着物の裾から霊符のトランプを投げてやる。
 ばち、ばちと火花が舞うそれを真っ先にライゼが二つ目の牙で切り刻むのを見て、ヒュウッと口笛を送る狐狛だ!
「早いねぇ」
「お褒めいただき、ドーモ!」
 剣先が少女の細い胴を捕らえる前に!
 床に手をつくように背中を逸らしたら、そのままサマーソルト・キックを用いて後天!ライゼの刀を靴底で弾いて、連撃を赦さない!
 狐狛がまたトランプを投げる。――宿る神性が何を示すのかがわからないから、ライゼに求められる即決の選択肢は「破壊」か「避ける」かだ。
 何もかもを喰らう牙を持った今は、攻めどきであるが相手の手中が読めぬうちは様子を見るべきである。た、た、と細い足を二歩ほど右にずらしてカードを躱せば、爆炎が上がった!
「いい読みだ」
 単調に切りかかっていては今ごろライゼの身体は燃やされていただろう。
 これも、今まで彼が歩んできた戦場の数と、野生が告げる生存への本能が昂る証だ! 続いて飛び込むトランプは「いささか堅い」が――肌を切られながらもライゼは突っ込む!!
「いー斬れ味だコト!」
 そのまま、二本の牙で狐狛の頭を狙った!横薙ぎのそれを、硬くなったトランプ二枚で片手で受け止めて、逸らす!愛らしい狐耳に小さな切れ込みを入れられながら、引き締まったライゼの胴体に一文字の傷をつけてやった狐狛だ!
「あんたは良い身体してンなァ――」
 舞う血液に笑ったのはライゼだ。
 痛みを感じていない――興奮しきっているらしい表情がぎらぎらとしていて、勝負師の直感が「不利」を感じ取る。
 そのまま、ライゼが膝蹴りを放てばあっけなく狐狛の小さな体は宙へ跳んだ!空気が押し出されて噎せながら、地面で二回ほど跳ねて三回転がっていく。
「――ッぉい、マジか、ッて」
「ゴメンネ。男女平等主義で」
 マジか、は二つ意味がある。
 一つは、見目美しい少女に容赦なく蹴りを喰らわせたこと。もう一つは、――深い胸から腹にかけての切り傷に痛みすら感じていないところである。
 ライゼは、言ってしまえば「常人の振りがうまい狂人」だ。「かなしい」は彼に届かない。「痛い」もそれに等しいもので、彼はそれを「捨ててしまっている」。
 ――「あのひと」は「痛い」なんていわないから。
 それでも、やはり出血量は多い。貧血でくらくらと視界は安定しないが、そのそぶりは一切見せなかった。「どんでん返し」を警戒してのことである。
 対して、狐狛は己の身体にしびれを感じていた。指先に力が入らず、カードを握れない。「勝負師」としての唯一無二の武器を奪われたに等しいのだ。ライゼの牙に麻痺毒が塗ってあるのを、喪った耳の感覚から悟る。
 片や、見てわかる通りの重傷であるのに――もう片方は、小さな切り傷一つと打撲のあとだけで動きがずいぶん鈍ってしまっている。
 どういうことだ、とざわつく客席にライゼが一瞥をくれてやる。

「うるせェよ――黙って視とけ」

 これは、真剣な「化かし合い」だ。
 狐と狐の、戦いである。食らいあうのではなくて、お互いを「よく魅せる」ための戦いにライゼが余計な茶々を一切許さなかった。
「ハ、あんた、絶対。ソンするぜ」
「いいノ。――大損上等。生きてるだけで丸儲けなんでネ」
 生き抜く。
 狐たちの牙がまた交錯した。その「戦い」は泥沼で行われる喧嘩のようで、神々も声援よりも心配のほうが勝り始めていたが――けして、破滅的ではない。
 まるで、お互いを「隠さない」ような戦いぶりに、きっと初めて「正々堂々」を魅せられたのだ。
 息苦しい世界で、己を偽り、いかさまを繰り返して「勝ち抜く」狐たちに――どうか、このひと時だけでも「ありのまま」の時間があらんことを!

 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

上野・修介
②希望対戦相手:誰とでも

「戦いを奉じろ、といったところか」

元よりこの拳以外に取り柄のない男だ。

「上野・修介。流派は特に無い」

真正面から推して参る。

得物は素手格闘【グラップル+戦闘知識】

調息、脱力、先ずは観【視力+情報取集+第六感】る。
体格・得物・構え・視線等から呼吸と間合いを量【学習力+戦闘知識】る。

ダメージを恐れず【勇気+激痛耐性】、懐に【ダッシュ】で飛び込む。

両拳の連携を布石に、細かくローとブローを確実に当て体勢を崩す。
体幹と視線を読み、軌道を【見切】ってスウェー・ダッキング・パリングでダメージ軽減。
攻め手の中に一瞬僅かに隙を作り【フェイント】、相手の大振りを誘い【カウンター】を叩き込む。


毒島・林檎
②◎∞
ハハ! すげえッスなぁ! こんな豪華な場所はみたことないッスよ!
ってか……ここに立つだけで足の震えがとまんねぇ……。
怖いとかそういうのじゃなくて……武者震い的なやつ?
なんにせよ、アタシにとっては『眩しすぎる』舞台ッスけど……アタシなりに全力で『踊って』みせるッスよ!

――とはいえ、やっぱアタシは『毒』しか使えねぇわけで。
これが発現しちまえば、他のヒトを気遣う余裕が一切なくなる。
……でも、やっぱ『全力で魅せる』っていうのは何より重要ッスから。
アタシ自身の、『原点』――原初の魔毒で、舞台を映えさせてやるッス!

――フルスロットルだ。おら行くぜ!!
アタシの『アシのはやさ』に付いてこれるかァ!?


ミツハ・カイナ

試合は観客で
なかなかこうやって人様の戦いっぷりをじっくり見られるもんじゃねぇからな
いい機会だ、色々描かせてもらいたいとこだな
スケッチブックと鉛筆取り出して武闘会の参加者たちの姿を描いていく
神々に捧げる魅せる戦、どんな色を魅せてくれるのか楽しみでしょうがない
絶好の機会を逃すわけにはいかないから、ピンときた瞬間を【早業】【アート】で描いていこう
仕上げは帰ってからゆっくりというやつだな
こういう時カメラとかの方が記録には残しやすいんだろうけど……まぁ、こうやって描く方がやっぱり好きだな
猟兵たちの姿を描きつつ、先ほどまでの戦で見知った顔がいれば応援を飛ばしながら




 しゃ、しゃ、と鉛筆が走る。
 彼の仕事だ。――絵は、己の心象をかきだすのもいいが基礎の練習として「そこにあるもの」を正確に描くというところから技術は始まる。
 仲間たちの戦いを観客席で見ながら、ときおりカッターで芯を削って、その生命の輝きを見ていた。
 めったに、仲間たちの戦いをじっくりたっぷり見れることはない。そも、未来同士が戦い合うなんていうのは、一番効率も悪い事なのだ。
 だけれど、こうして――パフォーマンスとして己の感情や関係、そして気持ちや強さをぶつけ合うさまは派手で、いっそ華々しい。
「おし、次」
 本当は、普段使うような絵具で書いてもよかった。
 だけれど、これは「アイデア」として彼のスケッチブックに収まっていくのである。仲間たちの輝きがどんどんと白い紙にくりぬかれていくのが――ミツハ・カイナ(空憬・f19350)の心を満たしていた。
 人の「色」をよく理解できる彼である。この神々しい建築物もまた、先ほどスケッチブックの隅に簡単な遠景を書いておいたところだ。
 丁寧な仕上げは家に帰って行えばいいが、「記録」として残すにはカメラよりも己の目のほうが信頼できるミツハである。――カメラは、少しだけ魚眼がかかってしまうのもあった。
「やっぱ、こっちのが好きだな」
 それに、鉛筆で描くのは「瞬間」だ。
 猟兵たちは戦いの最中に止まってくれない。だから、ミツハも止まらないままに書き続けていた。
 ――生命の輝きを絶妙なタイミングでシャッターにおさめるよりも、彼にはもっと優秀な手がある。脳に焼き付けて、目をカメラにしてやれば、あとは現像するだけでいいのだ。
 一瞬一秒も逃さない。仲間たちの『最高』の瞬間を切り抜いていくのだ。
 ――あとで「かっこよかったぞ」と教えてやれるように。

「ハハ! すげえッスなぁ! こんな豪華な場所はみたことないッスよ!」
 ――足の震えは、止まらない。
 しかし、怯えからのそれではないことに毒島・林檎(蠱毒の魔女・f22258)自身が一番驚いていた。
 臆病な性分である。そうであらねばならないと、思っていたというのもある――が。
「マジで、すげぇ」
 彼女の人生は、いつも「貧乏くじ」だった。
 生まれたときから物語の悪役である。王女様を求めて王子様を見つけても、たとえその愛に口づけを受けたところで相手を「毒」してしまう悪そのものにはあたたかな光など充てられることは無かった。
 じめじめとしたところがお似合いの、誰にも救われぬ物語で嫌われ役の林檎の人生で初めてスポットライトがあたっている。
 ――彼女の人生で、これが初めてだった。
 祝福されるような月の光はどこか感傷的にさせる。うるりと滲んだ視界を振り払うように手袋で目をこすったのなら、少しラメがついてしまった。
 それでも、悪くない日だと思えるのだ。生きていることを神々に歓迎され、今、――『蟲毒の魔女』はその権能を求められ、魅せてみろと絶好の機会を与えられている。
 失敗を、したくない。
 ごくりと飲み込んだ唾がなかなかどうして息苦しくも心地よいのだ。
「アタシ、なりに。全力で、『踊ってみせる』」
 ――そこに、王子様が来なくとも。
 彼女の踊りを見て求婚をする運命がなくとも、それでいいと今は思えた。
 最初の一歩だと理解している。この「場」にて毒島・林檎を神々に愛させる最高の場を無駄にはしないと覚悟を決めて――己の対戦相手を見た。
「戦いを奉じろ、といったところか」
 ――その男は、拳しか持たない。
 いいや、それしか持てなかったのだ。あまりにそれを極めるあまり、上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)には「物語」が乏しい。
 劇的な悲劇は無い。大きなことと言えば、一番最初に「事件」に巻き込まれたことだ。――まだ、「物語」が始まったばかりの彼は、あくまで「普通」と大差のない今までを送ってきたのである。
 修介の目にも、光景は美しく派手なものだった。路地裏ではけして浴びることのなかった賛辞の光に、表情の乏しい顔を照らされている。
 きらきらと黒い瞳に反射する生命の光を彼の感覚が感じるのだ――あたたかい。ぎゅうと無意識に握った拳がいつもよりも軽いのは、神々からの恩恵で在るといえよう。
「上野・修介。流派は特に無い」
 ならば、「いつもどおり」で期待に応ずるのみ。
 じっと己を見る林檎と交わす言葉は無い。――不得手だ。
 少女の姿をした体を見てみれば、小刻みに震えている。弱きをいじめるのは己の領分ではないのだが、今の修介にはわかってしまう。
 目の前の猟兵は、おびえているのではない。闘志に昂り、己の可能性を信じて抗おうとする手負いの獣のように見えた。
 ――まぎれもなく、強敵であると認識する。
 固い拳を一本、右前に突き出し、左のそれは胸元で固定する。わかりやすい「抜き」の態勢は目の前の女を見くびったものではなかった。
 フェイントであり、プレッシャーでもある。林檎もまた、拳を突き付けられて目を見開いたのだ。
 ――当たったら、どうなってしまうだろう。
 整った呼吸を繰り返す修介の静かな漆黒が告げるのだ。「もう始まっている」状況に在る!
 「拳」しかない修介に対して、林檎もまた「毒」しか武器を持ち合わせていない。じんわりとにじみ出る己の「こころ」に寒気を感じながら――眉を怒らせた!

「――フルスロットルだ。ゥおら行くぜッッッ!!!!!」
「来い」
 先手、林檎!!
 手にするのは長物だ。不揃いのハイヒールを吠えさせながらめった刺しのフォークで突撃を繰り出す!!
 人智を超えた踏み込みと、その速さと共に――鋭く金色が突き出されるのを修介は鋭く横によけて躱す!!
「ッチぃ――!!」
 獰猛な漆黒が、林檎から逸らされない。
 ぞっとした。背中に走るのは、悪寒である。きっと、今の一撃は「直感」でよけられているのだ。林檎の動きを瞳で見て、瞬時に脳で考える前に体で修介は避けている。
 これが、喧嘩殺法――【 拳 は 手 を 以 て 放 つ に 非 ず 】 ! !
 力の入り切っている林檎の一撃とは対照的に、修介の動きはまるで流れる水のようだ。
 風と同一化しているかのように軽々しく林檎の覇を避けた彼の拳が、まず「邪魔」な長物を砕こうと――呼吸と共に繰り出される!!
「シッッ!!!」
 まるで、蛇の威嚇に近い音がして。
 ばきゃん!!と鋭く突き出たままの林檎のフォーク、その先端が折れ曲がった!!
「っうぇ、――ま、ッじか!!?」
 元は、このフォークは杖である。
 林檎の怒りがたっぷり熟した時にのみ現れるそれは、純金だ。その堅さは時に彼女に呼応して敵の肉を裂き、時に運命すら切り分けるほどの力を振るうそれを――拳の一撃だけで折り曲げられる!
 衝撃を受けて左のかかとが浮いた林檎の腹を、次は左の拳から放つブローが穿った!!!
「ァ゛ッ」
 短い悲鳴を上げる。林檎の身体が地面に鋭く叩きつけられて、痛みに悶えながらも転がっていくのを修介は深追いをしない。
 ――興奮すら許さぬ。己に油断は大敵だ。油断は、己が生むものである。
 ゆっくり呼吸を繰り返す修介が、拳をまた構える。軽いフットワークはつま先が生み続けているのだ。げえげえと嗚咽を漏らす林檎に手を貸すことはなく、存在を認めているからこそ干渉はしなかった。

 みじめなものだ。
 ――何かが出来ると思っていたのに。
「ぅう、う」
 何もできていない。
 汗を垂らして、口からはよだれまで出て、涙がぼろぼろ顔面を伝って化粧を落としていく。
 ざわつく神々の姿が見える。そう、『蟲毒の魔女』はとても、とても――みすぼらしい魔女なのだ。
「うぅあ、あああ――」
 悔しくてたまらない。ぎゅうっと折り曲げられたフォークを握りしめて、呻く姿が「神々に認められる」なんて思えなかった。

 痛ましい光景に、ミツハも目を細める。
 あまりに一方的だ。――一方的すぎて、違和感も覚える。
「ン、んー?」
 ミツハの観察眼は優れているのだ。おそらく、「公的な試合」の場であっても修介はきっと、勝敗が決まっていたら手を差し伸べる男に見えるのだ。
 しかし、その彼がファイティングポーズを解かない。常に警戒した黒色を林檎に向けて、呼吸を絶やさないために常、つま先を軽く跳ねさせていた。
「ははぁ、なるほど」
 対して、うずくまり嗚咽を殺しながら涙をこぼす林檎は――。
「ふふへ、へ、へへ」
 笑い始めているのを、ぎょっとする神々がいた。「わかってねぇなあ」とミツハが彼らに聞こえなくてもよい声量で笑う。
 指でフレームを作って、背中を丸めたまま地面に額をこすりつける林檎をおさめた。そして、次に修介をおさめる。どんどん汗ばんでいきながらも呼吸を整える彼を、その鋭い呼吸を聞いて、鉛筆を握った。
「ここからが、本番だよな。――くーっ、かっこいいぜ! アンタら!」

 修介の呼吸はどんどん早まっていく。
 整えようとはしているのだ。息を一定の感覚で吸おうとして――呼吸が十分にできない。
「くるしー、っしょ、なァ」
 汗がにじんで、目に染みる。目の前に映る紫の林檎の姿がもはや丸い何かに見えていた。
「アンタ、ずうっと、呼吸を――きにしてた」
 ゆっくりと起き上がる林檎は、折れ曲がったフォークを杖代わりにして立ち上がる。
 修介はここまで声すら放たなかった。声を出しては一定の呼吸がリズムを喪う。しかし、今はもはや呼吸すらまともにできていない状態であり――問わねばならないと思った。
「何を、した?」 
 噎せる。
 げほ、げほ、と空咳を繰り返す修介だ。――ありえない。
 ありえないことが、起こされている理由があるはずだ!! 瞼ひとつしない黒い瞳が滲む視界で魔女を責める。
「アタシ、には。これしかねェ――」
  ア ッ プ ル パ イ
 原初魔毒【Rotten Apple】。
 ――腐敗毒の瘴気が、見えぬそれが常に修介の肺を侵していたのだ。
 動き回り呼吸を繰り返す修介は、動く分だけ、そして呼吸の数だけ毒の廻りがいい。肺を侵されながらも死に至らぬのはこの場に在る生命力の恩恵でもあった。
「これで、イーブンだぜ。――そォだろ!!」
 鼻水と涙と汗で、ぐちゃぐちゃの顔でフォークを構える魔女を誰が醜いと思っただろうか。
 修介もこころなしか、「己の強み」を弱みに変えてみせた魔女に口元だけで笑む。ぼたぼたと垂れる汗を服の袖で拭いて――さらに呼吸のペースを上げた!!
「ここからは、止まらない――ッッッ!!!!!」
「上等ォ――アタシの『アシのはやさ』に付いてこれるかァ!?」
 

 拳と金が交錯する!!
 観客席からそれを見ていたミツハが、生き生きとした目で二人を描いていくのだ。スケッチブックに埋まる彼らの姿は、ぱらぱらとまくれば今にも動き出してしまいそうなほど「どれもかっこよくて」――。
「ウン、やっぱ、最高だっ!」
 『生命』に震えるものがまた一人。
 意地の拳と意地の毒素が、また――混ざり合って、夜空を沸かせたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

桜雨・カイ
②∞
ひとの命を奪う為の戦いではなく
復活の力になれるのなら、やらない訳はないでしょう。
喜んで粒子の導きについて行きます。

それぞれ戦い方はあるでしょうが、
神々が見るというのなら、自分は清々堂々と戦いたい。
【錬成カミヤドリ】発動

まずは錬成できる全ての数を錬成。
錬成体を攻撃と防御(盾)にわけ攻撃
破壊されても何度でも何度でも繰り返し錬成する
相手も猟兵、簡単に勝てる相手ではないですけど

倒されても何度だって蘇る、諦めない。
この気持ちは負けたくない
痛みは【激痛耐性】で受け、自分の気力がつきるまで突き進みます。


ティオレンシア・シーディア
②◎△∞

はー…すっ…ごいわねぇ。
こーゆーの経験したんならカミサマ信じちゃうのも理解はできるかも。

さぁて、どう戦ったもんかしらねぇ?
普段一対一で戦うんなら目潰し足止めからの射程外から釣瓶打ち、が鉄板なんだけど。…この状況でそんなことしたら塩試合なんてレベルじゃないものねぇ…
「魅せ」も考えるとなると、〇グラップルも活用した中・近距離CQC/CQBが妥当かしらぁ?普段は雑魚散らしに使うんだけど、実用性の他に結構見栄えするのよねぇ。
…あとは隠し技に●禁殺を。これで疑似的な○空中戦もできるわねぇ。
…相手の読みをスカしたり、空中で加速したり。色々小技効くから結構便利なのよねぇ、コレ。




 ひとのいのちを奪うのではなくて、此度は、神々の復活のためである。
「――よし」
 粒子の導き通りに戦場へと踏み入れたのは、桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)だ。
 彼にとって、人間とはかけがえのない存在である。
 カイは人形だ。その体を作るのも、そして、愛してくれるのも「人間」しかいない。
「はー、よかったわぁ。なんだか、やさしそーな人が相手で」
 そして――此度、彼の相手として抽選されたのがティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)であった。
 悪の道にいたティオレンシアだからこそ、見ただけでわかると言っていい。カイは、どうみても「いいひと」だった。
「そんな。私で充分にお相手できるのなら――いえ」
 心底安心しているらしいティオレンシアに目線をやって、その安心の出所を彼女の随所から感じる。
 ティオレンシアも自覚がある通り、彼女は「人間」だ。魔導に関する才能がないゆえに、使用するルーンはあらかじめ依頼しておいて用意させたものを使っている。
 手にしている拳銃がなによりの象徴だ。「道具」を使うのは、人間以外にあり得ない。
「お相手できるよう、尽くします」
 カイが恭しく頭を下げるものだから、ティオレンシアもこれには面食らったようで少し――閉じた瞳から赤をのぞかせて、また笑顔で返した。
「そんなお堅くならなくってもいいわよぉ! だってこれ、魅せる戦いなんでしょぉ?」
 実のところ。
 ――そこの理解が、カイにはわからないのだ。
 真面目な人形である。求められれば「そう」あるけれど、楽しませるというのは「人形劇」程度のものしか思いつかない。
 人間であるティオレンシアとの戦いで、神々が何を見るのだろうか、と考えていたのだ。
「ええ、ですが――私は、正々堂々と戦いたい」
 それしか知らぬ。
 己が身は人形で在り、人の愛で生きる神だ。
 カイの「操られるもの」のぎこちなさを悟って、ティオレンシアも――彼の「真面目過ぎる」ところには納得がいく。
 穏やかな振る舞いは、今から己と殴り合うことを想定しているとしてもなかなかに無防備に思えるのだ。それはたとえば、神に「人間に壊されろ」なんていわれたら喜んで従いそうなくらいの脆さに見える。
「……繊細な作品って壊れやすいっていうもんねぇ」
「はい?――すいません、集中をしていて」
「いいのいいの、こっちの話だから」
 糸の調子をみてやり、己の「本体」に触れて整えるカイは、それでも戦おうと下準備をしているのだ。
 賢明な横顔を見ていると、確かに「遊び心」なんていうのは少し――欠けているようにも思えた。ティオレンシアが「遊び」を知り過ぎているというものある。
 とはいえ、この女もなかなかのスラムドッグであり、普段の一対一なんていうのはカイが望む「正々堂々」からはかけ離れている。
「あたしが合わせたほうがよさそうね」
 ――ぽつ、と独り言をこぼして、集中しているらしいカイからは距離を取った。
 こつこつと歩きながら、己の間合いに至る。カイもまた、動き出したティオレンシアの背を「ひとがた」と共に見ながら戦闘の幕開けに望む。
 人間のほうが「ごくり」といったら、ひとがたのほうが「かたり」と震えたのだ。
 実際、――ティオレンシアの「普段」は盛り上げるに欠ける。それもそうなのだ、実際「早々に決着をつけてしまう」タイプであった。
 一体一で戦うとしたら、目つぶしからの足止め、そして射程外からつるべ撃ち。全く抵抗の赦さない必殺の連撃をお見舞いするのが一番「はやい」のだけれど、それはそれは、「面白くない」ものである。
「おっけぇ。んじゃあ、はじめようかしらぁ」
 ゆっくりと、両肩を伸ばして背面で腕を組む。関節を温めている動きの意図がわからないまま、「はい!」としっかりカイが返事をした。
 ――ホルスターにて、愛銃は「お留守番」になっている。

 展 開 、 【 錬 成 カ ミ ヤ ド リ 】 。
「参ります――ッッ!!!」
 七十一の人形が複製され、それは「視えない」糸でカイに操られる!
 がしゃがしゃと人間よりは軽い質量で飛び出したそれが、夜空を覆った!ティオレンシアの視界のほとんどが――極彩でもなんでもなく、人形の赤に埋まる!
「わお」
 思わず、声が出た。
 あまりに圧倒的な質量を一瞬で繰り出される!しかし、撤退してはさらに人形がばらけて襲い掛かるだけだと判断したティオレンシアは、己の戦闘スタイルを定める。
 ぎゅうっと拳を握って、低く姿勢を撓めればフックを兼ねた右肘でまずとびかかる人形の顎を砕く!!
「なっ!?」
 複製品だ。
 本物のクオリティよりは劣るが、それを――的確に人間の肉体が砕いたのである!
「いけないっ、左に」
「おそいわぁ――逃げちゃ嫌よ、なーんて!」
 初手の顎が砕け、動作が浮いたのならその首を掴む。質量になっただけの人形で、新たな人形を殴った!同じ重さ同士のそれは砕け散り合い、破片が増える!!
 攻撃陣として排出した二つが破壊されるのは一瞬だった!――カイが己を守る陣として確保した人形たちの背に囲われながら、その動きを見ていた。
「なんと――」
 肘、膝、時に額。
 どこもかしこも「人体では一番堅いところ」だ。
 ティオレンシアは人間の身体でありながら、人間の「どこ」が武器になるかを知っている!
「やぁっ!」
 鋭く、膝で人形を割る!跳び膝蹴りを繰り出せば人形が押し出され、その質量を含んだままほかの人形にぶつかり、砕けた!
 ――密集をさせてはいけない!カイが悟って己の複製品たちを操り、散会させる!
「あっと、それはちょっと困るわね」
 手間が増えるじゃない。
 くす、と笑った女の唇を見逃さなかった!カイが次の一手に備えて、己の「補充」を始めていく!
 何が飛び出るのかがわからない、というのは――己がよく、人間たちに教えたものである。
 狐面をはめた人形であるほうの己が、どう動くのか。その美しさを、その「未知」を、作品として人々にそして主に愛されるために繰り広げられてきたのが彼であった。
 己が人間たちを前に舞うのならば、彼らもこのような気持ちだったのだろうか、と「あってはならない」ような胸のぬくもりに手を這わす。
 ティオレンシアが足先の動きだけで、派手に踵を使って人形を蹴り上げる。呼吸を鋭く吐きながら、けして動きは止めない。掴み上げた人形をさらに別の人形に叩きつけて壊し、彼女の「組み手」は終わらなかった。
 神々も震える。その「生命」の雄々しさと、――力強さに。今、まだティオレンシアはコードを使っていないのだ。ただ、己の経験から「どう戦えばいちばんいいか」を知っている人間なのである。
「カミサマ、みてる?」
 ――人間って、案外強いでしょ。
 それが、カイにも響いてしまうのだ。
 人間に愛されたい。人形である彼は、だから人間を守るという気持ちでいっぱいである。それは、「よいことをしたら褒められる」と信じている無垢な子供のような心でもあった。
 なのに、どこか人間は――時に、「人形」を守ってくれるような強さを見せてくれるから。
「二陣、続いて!」
 数が少なくなったら、また「自分」をふやしてティオレンシアへ向かわせる。どれもこれも、彼らしく正々堂々な殴り込みをするものだから、ティオレンシアは耐久戦へと持ち込まれていた――。
「ちょ、ちょっと、――大盤振る舞いねぇ、もう!」
 いよいよ、「ふつう」のままでは太刀打ちが難しくなってくるのだ。
 襲い来る人形には疲れがないが、「人間」であるティオレンシアには肉体疲労が付きまとう。ならば、――せめて、コストを下げるのが安牌だ。

「とん、だ」
 ――それが、人間の可能性。
 カイはずっと、人間を守ることを考えていた。己を愛してくれる彼らがいなければ、人形は人形である意味がないゆえに。
 しかし、――今、彼の目の前にいるのは、「可能性」である。

「ふふ、気分いいわねぇ、コレ」
   ビシージ
 【 禁 殺 】 !!
 空中にぽーんと浮いたティオレンシアの身体を、人形たちがみんな見上げた。何が起きたのやら殿であるカイ自身が理解が追いつかないが――間もなく、ティオレンシアも空中で加速を繰り返す!!
「わ」
 ・・・・・・
 飛んでくる。
 翼もないのに、糸もないのに、――ティオレンシアが、カイめがけて飛んでくる!!
 しかし、此処で下がらない!!己の防御に使っていた人形たちを前に出して――積み重ねるようにして坂を作れば、攻撃用の一体が背を駆けあがり、迎撃に出る!!
 こんなことを、愉しいと思ってはならないのだ。
 誰かを楽しませる存在である人形が、人形自身が、愉しいと思ってしまうなどいけない。己のせいで、何もかもを喪ったのに――。
「ねえ、アンタ」
 ティオレンシアの声色が変わった。
 ――カイの表情を見ていた赤い瞳が、うっすらとその「生命」を認めたのである!

「たのしそぉ、ね?」
「――はい!!」

 負けられない戦いが始まったばかりだ!
 カイの想いがほどけて「正しい」位置に編まれていくのを感じながら、ティオレンシアも宙を舞い、曲芸を披露しながら人形を掃討する。
 ――神々も、カイも嬉しそうで。どこかむずがゆい。

「あーもう、恥ずかしいのアタシだけじゃないの!」
 そんなサービスやってないんだけど――なんて言いながら。
 また、人形と人間が織りなす「舞」を神々に見せつけてやるのだ。人間は強く、また、人間に使われる道具も「強い」と言うことを証明して未来を預かる。
 派手な演出に拍手が巻き起こり、此度何度目かの狐の面が空を舞ったのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

霧島・ニュイ
クロトさん/f00472


クロトさんは目標
届きたくて届かない
心を全部理解したくて、でも分からない
いつもは保護者のように見守ってくれたり友人として戯れたりする大好きな人

稽古をつけてもらうぞ

素手
開始の合図と共に動く
回り込んだ後、回し蹴りを仕掛ける
速さと身軽さを活かした攻撃
相手をよく見ながら行動
視線、腕や足の動き、狙いを読まなきゃ
動きを読まれにくくするため腕の振りは少なく、腰の回転で打つ

死角から近づきクロトさんに後ろから飛びつくようにし、外套のマントを掴み、ぐいっと引いて
顔に掛けるようにして視界を防ぎそのまま腕を回し首絞めを狙う

!!
地面に背中から落ちる
ちぇー、不意つける手だと思ったのになー


クロト・ラトキエ
①〇

ニュイ(f12029)と。

この身には。
勝ち、成し、生きる為の術。
…即ち。欺き、つけ入り、利用して、
壊して殺す為のもの。

なればこそ。
知らぬなら知らぬ侭でいい…いるべき、技術。
何故か自分を慕ってくる、無邪気で強かで、けれど素直が過ぎる、
親子程の差の年若い子なら尚更…ね。

せめて。
彼の身を守る術で止まるように。

此方から攻めては出ず、
あくまで応じる姿勢で。
軸や動作等、主として全体を見、
やや大ぶり乍らも回避…が主。

死角を狙うなら…その時こそ後の先を。
外套は『こんな事もあろうかと』一気に脱げる様作ってある。
外した瞬間腕へと絡め捕らえて、地面へ。

自分の技、自分の道具にやられてちゃ、話にならないですからねー




 届きたくて、届かない。
 そんな「目標」があるから、若い彼はまだ歩き続けることもできた。
 背にしがみついて、振り向かせたい。――心を理解したいと思ったのは、孤独な背を何度も視ているうちに芽生えたものだ。
 孤独であることが目標たる彼の罰であることは、若いこころには分からぬ。
 それでも、その痛みを、何を考えているのかを、友人のようにほほえみかけて、それから、一緒に遊んだり、戯れたり――時に、保護者のように危なっかしい己の険しい旅路を共に歩んでくれる彼の事は、大好きだ。
 霧島・ニュイ(霧雲・f12029)は、眼前にていつも通りの飄々とした態度のクロト・ラトキエ(TTX・f00472)を見た。
 此度は、ニュイの手には何も握られていない。素手での戦いに応じたクロトは、彼に何を教え込んでやるかを考えていた。
 神々が見ている前で、それにふさわしい戦いをしてやろうとは思わない。
 ――クロトは、勝ちに拘る性分だったのだ。
 今、未熟であるとわかっているニュイの前に立つこの瞬間だって「勝つ」ことだけを考えている。
 死は敗北であるから、彼はどんな手を使ってでも「生きる」ことを「勝つ」ことにすり替えてきた。故に、――彼は必ず生き残り、勝つ存在になる。
 傭兵として生きていたころから、その性分だけは職業病であり、呪いのようにしみ込んでいるのだ。なぜか己を慕い、ともに歩こうとするニュイには早々、語れぬ歴史がある。
 歴史が人を作るのなら、クロトの構造は複雑どころか、「詐欺」ばかりだった。
 美しい顔をしていながら、やることは卑劣そのものである。勝つためには手段を択ばない毎日を過ごすものだから、彼は――とても、ひとの手本になれるようなことは学んでいない。
 すなわち、ニュイにも教えてやれないのだ。
 稽古をつけてほしいと言って、観客席に早々座ろうとしたクロトを引き留めたその賢明さに観念して舞台に上がったものの、無邪気で素直すぎる彼には「叩き込む」ことしかできない。
 ――壊して、殺すための手段を教えるわけにいかない。
 知らなくていい事が人生にはいっぱいある。クロトを知りたいと思うように、ニュイに「それはいらない」と教えてやることも大事だと思うのだ。
 優しい人間の顔をしながら、実のところ腹のうちは「けだもの」であることなんて、知らないままでいてくれればいい――のに。

 大銅鑼が鳴り響けば、先手はニュイからだった!
「ッし」
 ――クロトは眼前で動かない。
 ニュイの素早さはニュイ自身も認めるものだ!
 一歩の踏み込みは神速、――そして、瞬く間に接近! クロトに瞬きひとつ許さぬ距離の詰め方で、その右横を通り過ぎたのなら踵を回転軸にして左の回し蹴り!!
「っ、た」
 小さな悲鳴を上げたのは、ニュイだった。
 確実にとらえたと思った大ぶりの回転蹴りは、クロトの小さな動きだけで躱されてしまう。それは、まるで猛牛と闘牛士のようなやりとりに神々は見えたのだ。おおっと歓声が上がって、余計にニュイが焦る!
 つま先がしたたかに地面に叩きつけられて、しかし、仕掛けたところで止まれない!
「はぁああッ!!」
 続いて、右足での上方踵落とし!!
 床をきゅうっと磨いてから鋭く、そして残像を残しながら繰り出されるそれも――クロトの髪の毛ひとつにかすることなく、また地面に落ちる。
 クロトは、攻めてやる気が無かった。
 ニュイが焦っているのなら、クロトは彼が気づくまで余裕であるべきである。己を教科書にしているニュイの前では「よいお手本」をまず見せねばならないのだ。
 速さと身軽さを生かしたニュイの攻撃は、その速度を生む足がメインである。常に己の足先を見ているらしいクロトの視線に気づいて、「追われている」のを知ったニュイだ。
 ――読まなきゃ。
 クロトの静かな眼に、彼もまた冷静を知る。
 形のいい上唇を丁寧に舌で舐め上げて、型唾をのんだ。ニュイがクロトの動きに集中して――つま先で軽く蹴るように彼の膝を狙う。
 クロトが回避に出るのなら、軽い振りは途中でやめた!右がすぐにニュイの足場に戻れば、左で鋭く腿を狙う!!
 かかとから突き出されたそれをまともに食らっていれば、大きなあざはできたやもしれないがそこも、クロトは接触を赦さない。
「ああっ、もう!」 
 ――どんどん、読みの精度は高くなる。
「そうそう。戦いながら、相手の癖を読んで」
 ひとごろしの、術だ――。
 ニュイには「知らなくていい」術である。踊るように彼と武闘を続けながら、クロトはその全体を見る。
 己にもこれほど小さなころは在った。生きることに懸命だった日々を思い出し、今も賢明ではあるが、生きるために捨てたものが多すぎる。
 後悔はない。――傷を傷として認めているから、振り返ることができるのだ。
 ニュイの懸命な目が「愉しい」と伝えてくるのを、夜空のようなクロトの瞳がとらえている。追いつきたい、とこの瞬間にも成長する『若さ』は強さで在り、弱さなのも理解していた。
 早々に決着をつけてやってもよかったのに、一度も手を出さないままにニュイの攻撃を読んで、躱し続けている。息が上がっていきながらも高速の連撃、足技を披露しているニュイに向けられる賞賛がまぶしくて――少し、目を細めていた。
 動きを読まれないようにと意識したニュイの動きは、とても「慎重」になってきていた。
 相手が読むことに長けているのはわかるし、ニュイの「経験」だけではクロトに勝てないのも理解している。だから、今すぐこの「経験」を積まねばならなかった。
 高速で跳ねるようにして、フットワークを軽くしたのなら――跳ねまわる高速の物体にニュイは転じる!!
「おや」
 早すぎる。
 これは、クロトも「肉眼」では追えない。
 目で追うのを早々にあきらめたクロトは、さほど己の立ち位置が変わらぬ舞台で立ちつくす。
 神々はじれったい様な気持ちになりながら、彼を見ているらしい。「目」で補いきれない視界は「耳」が。そして、「鼻」が、――皮膚も、すべてで感じていた。
 ニュイの動きもその要領で悟っている。【拾弐式】は静かに展開されていた。
 コードを使わないニュイ相手に、卑怯な手だとは己でも思う。しかし、これも「勝つため」の「遠慮のない」なのだ。
 手加減は――ニュイも嫌だろうと思ったのもある。びゅうっと飛び出して拳を振り上げる彼が、横っ面にとびかかってきたのを感じながら――鋭く回れ右をして、クロトはそれを躱しきった!
「あでッ、!?」
 すっころんで前回りを二回。鼻を挫いたらしいニュイの愛らしい鼻腔から血がぽたぽた垂れて、手がそれをぬぐっていた。
「――っくッそお……!」
 その姿が、痛ましくもどこか好ましくて。
 勝つことに飢える生き物は良い。殺すことに諦めを感じて腐ってしまう兵士をたくさん、クロトは見てきた。 
 ニュイがまた高速の世界に入り、あえて動きがよめないようにフェイントの接近へと持ち込んでくる。小さな動きと、左右のフックと時折ブロー!そして、ステップの交錯を交えた「速さ」にクロトは――初めて、己の立っていた場所を大きく後退させることになる!
「おや、おや」
 追いつかれはしない。
 だけれど、確実にニュイはこの瞬間に「育った」のだ!
 何かを企んでいるらしい緑の瞳は、彼らしく正直だ。まだ勝利を確信していない瞳の「ひらき」を悟ってクロトもまた、いつも通りに笑う。
「すごいですね、ニュイ――本当に」
「そりゃ、どう――もッッ!!!」
 照れくささを孕んだ声を置き去りに!!
 ニュイは、クロトの背面を取った。
 ――どんな動物も一度で「360度」は視界に収められないという。草食動物だって、横に目がついているから「ほとんど見えている」だけで、ほんのすこしだけ見えていないところがあるのだ。
 いつか見た雑学に賭けたのではない。クロトは、その「視えない」視界も補う力がある――し か し 、 そ れ よ り も ず っ と 早 く 穿 て ば ! ! ! !

「――らぁああッッッ!!!! 」

 死角だ。
 ちょうど、クロトが右から振り向くなら右の後頭部がわが彼からは完全に見えなくなる!
 それを読んで、意識して、頭に「作戦」として叩き込んだニュイが――彼の首めがけて、両腕を伸ばした。

「――後の先を、考えないと」

 ほんの少し、喜悦が混じった音を聞いた気がした。
 ニュイがあっけにとられたのも無理はない。本当ならば、そこには鍛えられたクロトの首が両手で挟まれているべきだったのだ。
 しかし、――ニュイが掴んだのは、彼の「外套」のみである。
「あれ」
「こんなこともあろうかと、ですよ」
 ――届きそうで、届かない。いつでも。
 ニュイがその空虚の感覚に思い知らされながら、鋭くその布が腕に巻き付いたのなら、クロトの腕が引くと同時、ニュイは空中で反転してばちんと背中から地面に叩きつけられる!!
「あッッ――た!」
「勝負あり、ですね」
 神々は、しばし沈黙していた。
 あっという間に勝敗は見事決したが、あまりに果敢に攻めるニュイを応援していた神々までも静かになって――やがて、大きく湧き出す!
 人間の戦いにほれぼれとしている神々もいて、それから、祝福の生命力を分け与える彼らもいたのだ。徐々に破砕された町並みと、そしてその文明が姿を取り戻すのを眼鏡に映したのならば、クロトはニュイにしゃがみこんでやる。
「ちぇ――、不意つけるって、思ったんだけど、なぁ」
 急に止まったから、息も落ち着かない。
 荒い息を吐きながら悔し気に、でもどこかすがすがしそうに疲れた顔に汗をにじませたニュイに向かって、クロトもゆったりとした笑みを返した。
「自分の技、自分の道具にやられてちゃ、話にならないですから」
「――それ、って」
「ええ。上手でしたよ、ニュイ」
 目標への道は遠くあってほしい。
 できれば、同じ高さにいるのに正反対の座標で――クロトは、ニュイと向かい合っていたいのだった。
 きっといつか、ニュイがクロトを「理解」した時にどうか、彼へ罰を赦してくれるようにを願っていた。神々に祝福されるのが、ニュイだけであってほしいと思っている。
 花に降られながら二人で笑い合うこの日々が、「近い思い出」であってほしいと――ニュイは、その瞳に読めぬ心を見ていたのだった。
「よかった」
 でも、いつか。
 その心もつかめたら、と願っている。地面に寝転がった体を引き上げてもらいながら、頼もしいクロトの腕の強さに、己の「強さ」を知ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
∞◎

──直接戦闘は苦手だ
元々俺は後方支援。体格が良い訳でも無いし、戦士としての訓練は積んでこなかった
だが、これから先の戦いではそれを言い訳にはできない
何でも出来なきゃいけない、何にも勝たなきゃいけない

まずは知覚をかっ飛ばす
五感を研ぎすまし、一挙一動を見逃すな
フェイクを混ぜろ、正道と邪道を使い分けるんだ
使っていいのは仕込みクロスボウにショットガン、ナイフだけだ

俺の戦闘能力は高くない
だが積み上げた経験値は人一倍だという自負がある
死地は何度潜り抜けた?どんなオブリビオンをどれだけ殺した?
全てから得た学びを、盗んだ業を、使いこなせ
地獄から這い上がれたのは、意志と──学習能力のおかげなのだから


ジャック・スペード


武闘会か、思えば同胞と戦ったことは無い
当機の現在の性能を試すいい機会だ
腕試しに参加させて貰うとしよう
だが俺は壊れやすいので、ドウゾお手柔らかに

基本的にはリボルバーと刀で戦闘を
序盤はマヒの弾丸をばら撒き足止めを
動きを封じた隙に肉薄し、刀で一閃したい所だな

攻撃は鋼鐵の腕で受け止めるか
刀で武器受けして防御するとしよう
上手く受け止められたら、UCで口部パーツをライフルに変換
不意を突く形でカウンター攻撃を飛ばせたら良い

ああ、戦いとはいえ神の前だ
フェアプレーの精神をもとにした振舞を心掛けつつ
相手に大怪我させないよう気を付けておこう

しかし、神の存在を感じられる日が来るとは
今回の任務は良い経験に成ったと想う




 その悪の心は、凍てついていた。
 ――ここは、少年には熱すぎる。
 ヴィクティム・ウィンターミュート(End of Winter・f01172)は吹き荒れる生命の息吹を全身に浴びて、素直に舌打ちをこぼした。
 冬を終わらせる彼は、凍えているのだ。凍り付いた性根を確かめるようにして、何度も思い出を、そして「過去」を反芻している。
 そんな己は、惨めなものだ。
 ――直接戦闘は苦手である。
 もともと、ヴィクティムは後方支援の存在だ。
 「超一流の端役」として、仲間たちが得た勝利に群がるハイエナのように生きている。彼が率先して前に出たときは、たった一度、「革命」に失敗してしまった時だけだ。
 しかし、今彼が戦いの舞台に上がってしまっているのはまぎれもなく「そのままでは冬を終わらせられない」からという理由があった。
 殺せるようにならねばならない。殺されるくらい、手ごたえのあるもので在らねばいけない――だから、男の割には周りに比べて背が低い体格も、訓練不足も言い訳にしていられないのだ。
「やろうぜ、さっさと終わらせる」
 少年が、孤独を背負いこんで立っている。
 ジャック・スペード(J♠️・f16475)は反対に、熱い心を抱いた男だ。
 ――熱い心を持てるから、彼はジャンク品だったのかもしれない。金色のモニターに映るヴィクティムのバイタルは健康で在りながら、どこか「危うい」数値を叩きだしていった。
 それを、少し首をかしげてジャックは問う。
「どこか悪いのか?」
「さァね。――どこもかしこも、絶好調だ。しいて言うなら、人生の調子が悪いな」
 嘘ではないらしい。
 ジャックの解析に寄れば、ヴィクティムの思惑を探ることはどうにか「ブロック」されてしまうようで読み解くことはできないが、嘘を吐くとき特有の目の動きも脳の反応も視られなかった。
 ひとのこころは、計測できるものではないとジャックも理解がある。そして、猟兵たちにはそれぞれの痛みがあるのだと――知っていた。
「そうか、ならば、自分の人生を恨むんだな」
「――なんだって?」
 ヴィクティムが片眉を上げる。
 恨まれるべきは、己だけだと思っていた。寿命を削って、体に余計なものを入れて、すべてを置き去りにする覚悟をして、孤独を噛みしめて心まで凍えさせた今になって――何を恨めと、この目の前の機械は言うのだと、サイバーアイがにらむ。
「ただの、――ヒーローの戯言だ。」
 刀を抜く。
 鋭い黒が、牙を構えて少年へと照準を定めた。思えば、猟兵という「未知」とは戦ったことがない。
 性能を試すにはちょうどいい機会だと思っていたが、――やはり「職業病」は抜けきらない己を赦せよと、鋼鉄のつるぎは笑った!

「アンタを、助ける」
「――ハ、そりゃあ、死刑宣告か?」

 コード展開、【Skiacode『Reaper's Sight』】――。
 発動と同時に、ヴィクティムの身体は真っ黒な影で飲まれた!
 異常な数値を叩きだす己のモニターに、警告の文字がいっぱいになる。
 両手に宿ったサイバーデッキががりがりと嫌な音を立てながら、「ただの」少年に武器を握らせるさまを見た。
 ――呪われているな、と思うのだ。
 その影は「虚無」だった。何度ジャックがスキャンをかけても、「ゼロ」の数値しか出してこない。目に見えているのに、「そこにはなにもない」ものが少年の身体を侵食して、クロスボウとナイフを握らせた。
「来いよ、――実は、結構弱いンだぜ」
「俺も、壊れやすい」
 ヴィクティムがトレースするのは、戦ってきた友人たちの姿だ。
 ナイフを握って、影の少年を思い出す。豪速で接近して、刀を振り下ろしたジャックの――その太刀筋は、真新しいが「近い」のは何度も視てきた!
 脳のメモリから高速でデータを呼び起こして、まず鋼をナイフで受けとめて滑り、大股の下をくぐりぬけて「だましうち」。滑りながら構えたクロスボウで背中を狙えば、自動的に「追尾」するジャックの腕がリボルバーを構えていて矢と相殺!!
「ッチ」
 ぱらぱらと砕けた矢の本数をカウントしながら、しかし相手の挙動を学ぶ。
 ――ロボットらしい動きであるが、どこか「読み切れない」ところがあるのだ。
 まだ発砲音が鋭く響いて少年を駆り立てる!ヴィクティムが鉛玉から逃れようと身をかがめたら、そこをジャックの足が狙った!ボールをけるように伸ばされた黒を、ナイフで受け止めて少年は転がる!!
 勢いは殺したが、その力までは殺しきれなかった。砂埃をかぶりながら口に入ったその味に唾を吐いて振り払う。
 ――戦いは、ノイズがつきものだ。
「がッッ――」
「遅い」
 手加減されている。
 本当なら、ジャックはこの大悪党の首を刎ねてもよかったのにそれをしなかった。
 顎を蹴り上げて、未熟な喉をさらさせる。頭から強く地面に落ちて、ヴィクティムの視界が明滅した。
 ――皆、こんな痛みを味わっている。
 神々の前でもあるし、相手が猟兵である。ジャックは静かに次の動きを待っていた。ヴィクティムが地面を右に転がってジャックから距離を取り、それから両腕で体を起こして煤だらけで傷だらけの顔を向ける。
「神を、感じられる日が来るとは。良い経験だな」
「――そう、かよ」
 神は、嫌いだ。
 解析できないし、ヴィクティムでも「そんな存在はあり得ない」と笑えない。かといえ、彼が生きてきたUDCアースには「いる」とも言い難い。「冬」を神が取り上げたのだと思えたのなら、どれくらいよかっただろうと思って――首を振った。
「神を信じてはいない。俺は」
「そこは、共通だ。仲良くなれるかもな」
「だが、正義は信じている」
 悪なのだ。
 ジャックも、数多の人間を命令のままに殺し、思考も放棄して戦を歩んできた「役立たず」である。
 滅亡した銀河の帝国にて量産された彼を救ったのは、たまたまスペース・デブリになっていたところでたどり着いたヒーローズアースの生命たちだ。
 神に救われたとは、思っていない。ジャックもまた、己の手で「運命」は変わったし、その間に「だれかしら」を挟んだことはよくわかっていた。
「あきらめていいのか」
 少年に問う。
 ヴィクティムの頭の中では、すでにジャックの行動解析は終わっていた。
 とびかかる少年の動きが応えである。まるで、鋭く突き放すようにナイフを掲げた!
 ジャックが一歩も引かずに、そ鋼鐵の腕で受けとめる!!鉄の継ぎ目に食い込んだナイフが、少年の身体以上の力を滲ませて――鉄を裂いていくのだ。火花を散らさせながらジャックの腕を裂く細い腕に、「こころ」を見る。
「――諦めなきゃ、いけねぇンだ」
 それが、彼にとっては正義だという。力んで震えた声で、少年はイメージした動きをまた繰り返す。
 破滅的だ。ジャックも理解しているが、この少年はとうに「病んでいる」。
 それでも、――生きる意味をそれだけに集中させた地獄を自分で作って、全うする信念は邪道か?

「通さなきゃならねぇもンが、あるんだよ」

 い い や 、 王 道 ! ! 
「世界が、狭すぎる」
 【我が身総てが引鉄也】。
 鋼鉄の身体から錬成される「銃口」はその口部から現れる!ヴィクティムの演算がいっぱい詰まった脳めがけて繰り出されたそれを見上げる蒼の双眸はどこまでも、どこまで、昏くて冷えていた。怯えではなくて、どこか「見据えた」もので。
 宇宙を見て、今を知ったジャックだからこそ、少年の「頭の輪」が見えたような気がしたのだ。ショットガンを鋼鉄の腹に押し当てて、ヴィクティムは己の唇をかんだ。血があふれて、それでも、そうしないと引き金が引けない体は――どこまでも、弱い。
「うるせェや――」
 破砕音!
 ジャックのボディにダメージソースが現れる。損失率は――20%、修復システムを起動――燃料が足らない。
 震える心を見た。黒の心に抱くのとは別の、小さな、今にも凍り付いて砕け散りそうなそれを知ってしまったのなら、もうジャックはけして腹を壊されても少年のナイフが己の首コードに突き立てられても、びくともしなかった。
 地獄から這い出たのなら、また新たな地獄を歩む。
 小さな体に詰まった業は、けして此度の戦いだけではわかりきれぬのだ。ヴィクティムが己の「経験値」を跳ね上げさせるために「いつものやりかた」を取らないように、ジャックもまた――ヒーローとして、己の身に張り付いた少年を片手で掴み上げて、投げた。
 存外重いが、だからこそ足から地面に着地できたボロボロの身体でヴィクティムは、ジャックを見る。
「オレには、まだ――知らないジャンルだ。お前の、こころは」
「ハ、いい刺激だ。そうだろ?」
「ああ」
 構えを変える。
 ジャックとよく似た立ち姿になって、ヴィクティムは「英雄」の戦い方を盗んだ。
「助けてみろよ、ヒーロー」
 ――大悪党だ。
 にやりと笑った悪徳の少年は、息をかみ殺しながら目を見開き、犬歯を魅せる笑顔で笑う。
「――そのためには、助けてくれと言わせないとな」
 ジャックもまた、彼に「ヒーロー」として向かい合う。
 がちん、と口部を噛み合わせて銃口を仕舞えば、「筋の通った」正義として――地獄にて凍える悪党との斬り合いを再び始めた!!




 生命は尊い。
 祭りも終わり、すべての猟兵たちが叫んだ『生命』を聞き届けた神々は、それを思い出すのだ。
 一度は浸食された彼らも、そして壊された文明も徐々に輝きを取り戻していく。
 猟兵たちの叫びを聴いた。猟兵たちの想い視た、そのさきに「道」がないと歩いていけないのも理解できた。
 故に、また神々の世界は歯車が回る。くるくるとさび付いたそれらが黄金の輝きを得て、生命の息吹を取り戻していくだろう。
 どんな傷はすぐに治らない。猟兵たちの想いが、痛みをともなうものであるように。
 ――いつか、きっと。
 君たちの「生命」が届いたこの世界を、また訪れたのなら。
 そこには、傷すらも誇る、気高くも美しい未来が待っているだろうか――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年03月18日


挿絵イラスト