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アルダワ魔王戦争6-A〜魔女は終焉の未来を視る

#アルダワ魔法学園 #戦争 #アルダワ魔王戦争 #大魔王 #ラクリマ・セクスアリス #オブリビオン・フォーミュラ

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 迷宮に深く潜り、中層も終わりかけの位置に、奇怪な食肉植物が群生した甘ったるい匂いに満ちたエリアがあった。
「この姿を晒す事になるとは……女共の胎から『正解』を探す時間さえあればこのような状況に追い込まれる事も無いというのに……忌々しい猟兵め!」
 黒い液体を人型に無理矢理形作ったような巨体に、幾人もの女を取り込んで同化した大魔王『ラクリマ・セクスアリス』が悪態を吐く。
「まあよい、この世界の生物の胎は既に確保済み。故に猟兵以外には、もはやこの世界に我が敵は無し!」
 大魔王から嬉々とした感情が漏れ、刺激を受けた魔女達から苦悶の声と共に濃密な魔力が放たれた。
「『世界の終わり』だ。我がこの迷宮より出さえすればそれで世界は終焉を迎える! さあ女共……いや、『魔女』共よ! 『永劫回帰力』を寄越せ! 我はそれを喰らいさらなる災魔を産み出そう! 我を大魔王などと蔑称で呼ぶこの愚かな世界を滅ぼす為に!」
 魔女から力を奪った大魔王に圧倒的な力が満ち、その身体から数え切れぬ災魔の軍勢が産み出されようとしていた。
 それはまさに世界の終焉を呼ぶに相応しい大魔王の姿だった。


「諸君等の活躍でファーストダンジョン攻略は中層にまで達した。そしてそこで大魔王第四形態『ラクリマ・セクスアリス』を発見することが出来た。その討伐を諸君等に頼みたい」
 バルモア・グレンブレア(人間の戦場傭兵・f02136)が不気味な食肉植物だらけの迷宮を映すグリモアベースで、猟兵達に大魔王討伐の任務を告げる。
「ラクリマ・セクスアリスの居場所は6-Aエリアだ。食肉植物の甘い香りが漂うエリアだ。多少視界が悪い程度で、戦闘に支障が出るようなものではないようだ」
 指差す地図は半分以上がダークゾーンを解除され詳細が明らかにされていた。
「ラクリマ・セクスアリスは堂々と諸君等を待ち構え、正面から撃破するつもりでいる。それだけ己の力に自信があるということだろう。ならばこちらはそれを上回ればいいだけだ」
 強大な魔力を持つ大魔王であろうとも、猟兵は己を、そして仲間を信じて怯む事無く戦いを挑む。そうして今までも強敵を撃ち破ってきた。
「気をつけねばならんのは、敵の先制攻撃だ。取り込んだ魔女達の魔力を使い、予知能力だったり、災魔の軍勢を産み出したり、魔女の魔力を直接叩きつけたりと、多様な能力を持っているようだ。それらに対抗する手段を考えておかなくては討伐は難しいだろう」
 先制攻撃をいかに凌ぎ、反撃の余力を残しておくかが重要となる。

「取り込まれた魔女は完全に同化していて助けるような事はできない。どのような経緯で取り込まれたのかは分からないが、ただ兵器のように使われているのは憐れだ」
 魔女への憐れみと、非道な大魔王への義憤にバルモアは険しい顔をしながら、グリモアで戦場へのゲートを繋げた。
「世界の終わりを望む大魔王ラクリマ・セクスアリスを倒し、彼女達の魂を解放してやってくれ」


天木一
 こんにちは天木一です。アルダワ魔王戦争は順調に進み、今回は魔女の力を取り込んだ大魔王第四形態『ラクリマ・セクスアリス』討伐作戦です!

 このシナリオは、1章だけで完結する戦争シナリオとなります。
 大魔王は必ず先制攻撃を行ってきます。皆様のユーベルコードよりも先に発動します。それに対する対処法を編み出すと、プレイングボーナスを得て有利になれます。
 使ってくるユーベルコードは皆様が設定しているユーベルコードの種類(POW・SPD・WIZ)と同じものです。

 プレイングの締め切り日などは決まり次第マスターページにて。
 それでは強敵である魔女の力を操る大魔王を討ち取ってください!
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第1章 ボス戦 『大魔王第四形態『ラクリマ・セクスアリス』』

POW   :    未来は涙の中に
【『魔女』の子守歌】【『魔女』の予知能力】【『魔女』の運命操作能力】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD   :    祝福されぬ子供達
【『魔女』から生まれる豹獣人の軍勢】【『魔女』から生まれるイカ獣人の軍勢】【『魔女』から生まれるバッタ獣人の軍勢】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    魔女狩りの一撃
【『魔女』を封じた巨腕による叩きつけ攻撃】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を、敵の動きを封じる魔の毒沼に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:和狸56

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

水貝・雁之助
アレンジ連携歓迎

本当に・・・こんな風に女性を扱うとか怒りが湧きすぎて冷静になる
位に禄でもない外道だね

お前が終焉を呼ぶというなら僕等猟兵が其の終焉を破壊する者(エンド
ブレイカー)になる!
覚悟しろ下種野郎!

敵の攻撃は『拠点防御』の心得を活かしつつ『地形の利用』をし食肉植物と
いう『敵を盾にする』様にしながら毒沼が後の移動の邪魔にならないラインを
見極めつつ移動し続け凌ぐ
食肉植物の甘い香りや動き難いだろう足場は『地形耐性』で適応

UC発動可能になったら食肉植物の森という『地形の利用』をし毒沼に攻撃を誘導
僅かにでも生じるだろう隙をつきUC発動
悉平太郎を敵の巨椀の上に召喚し腕を足場に駆けあがり牙をぶちかます


エル・クーゴー
●WIZ



躯体番号L-95、目的地6-Aに現着

撃破目標_大魔王第四形態を目視で確認しました
これより、敵性の完全沈黙まで――ワイルドハントを開始します


●対先制
・魔王周辺を駆け移動
・巨腕の叩き付けが来次第、背面へ【空中戦】用バーニアを即座に展開(クイックドロウ)、徒歩と比較し急激な緩急を叩き出す瞬間ブースト(吹き飛ばし)で敵攻撃範囲からの離脱を図る


●反撃
・【嵐の王・多用途空戦】発動
・飛行で毒沼に接さぬよう機動

・敵の巨腕を掻い潜るよう空中機動ざま、貫通力よりも着弾時威力に比重を置いた弾体を成型(武器改造)、アームドフォートからの【一斉発射】で畳み掛ける
・毒沼上に立つ魔王を随時「その場から退かせる」狙い



●大魔王の力
 胸焼けしそうな甘い食肉植物の香りが漂うエリアに、人型をした黒い液体のような怪物が鎮座している。その身体には何人もの魔女が閉じ込められ、苦悶の声を漏らしている。
 そんな女達の苦しみなぞ気にもせず、この場の主らしく逃げも隠れもせずに堂々と侵入者を待ち構えていた。
「本当に……こんな風に女性を扱うとか怒りが湧きすぎて冷静になる位に禄でもない外道だね」
 水貝・雁之助(おにぎり大将放浪記・f06042)は大魔王の魔女を取り込んだおぞましい姿に怒りを覚え、心は熱く頭は冷たく冷静に必ず倒してみせると食肉植物を盾にするように近づく。
「やはり現れたか猟兵め、だが貴様らを始末すれば我の邪魔をする者は居なくなる。ここで滅びろ、世界の終焉と共に!」
 大魔王ラクリマ・セクスアリスが強大な魔力を放ち、浴びたものに破滅を感じさせる。そこに居るだけで人々を威圧する大魔王の力がエリアの気温を下げたように悪寒を感じさせた。
「お前が終焉を呼ぶというなら僕等猟兵が其の終焉を破壊する者(エンドブレイカー)になる! 覚悟しろ下種野郎!」
 そして啖呵を切って雁之助は敵の間合いに大きく足を踏み入れた。
「魔女よ力を寄越せ! 愚者に鉄槌を!」
 ラクリマ・セクスアリスが巨大な魔女を封じた右腕を振り上げ、それが伸びるように射程を伸ばして叩きつけられる。雁之助が盾にする食肉植物を粉砕し、腕が飛び退く雁之助を掠め、地面を抉って大きなクレーターを作った。その穴が禍々しい毒沼へと変わっていく。
「掠めただけでこの威力とはねえ、直撃を受けないようにしないと危険だね」
 掠っただけだというのに雁之助は吹き飛ばされ、食肉植物にぶつかって押し潰し甘い汁を浴びていた。
「避けたか、だが次は無い」
 ラクリマ・セクスアリスは毒沼に立って沼と繋がるように己を強化すると、もう一度右腕を振り上げた。

「躯体番号L-95、目的地6-Aに現着」
 食肉植物の隙間を駆けて抜け、エル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)がその戦場に到着する。
「撃破目標_大魔王第四形態を目視で確認しました。これより、敵性の完全沈黙まで――ワイルドハントを開始します」
 そしてその速度を維持して大魔王に向かって突っ込む。
「猟兵の援軍か、なら貴様から叩き潰してくれる!」
 ラクリマ・セクスアリスは標的を変えてエルに右腕を振り下ろす。当たればミンチのように潰される一撃を、エルは即座に背面のバーニアを展開して加速し、躱して攻撃範囲外へと飛び出す。
「このまま敵攻撃範囲から離脱します」
「逃げられると思ったか!」
 それを追いかけるように腕が横に振り抜かれ、背後に迫る腕を避ける為にバーニアを吹かす。しかし指先が背中を掠め、エルはコントロールを失って食肉植物に突っ込んで停止してしまう。
「潰れて死ね!」
 ラクリマ・セクスアリスが大きく広げた右手を伸ばしてエルを握り潰そうとする。

「悪逆を為せし非道の猿神を討ち滅ぼせし悉平太郎! これ以上女性に涙を流させないためにその力を貸して欲しいんだなー」
 そこへ雁之助はユーベルコードを発動し、猿神殺しの柴犬の霊が召喚され、敵の右腕の上を駆け上がり、敵の顔に鋭い牙を突き立てた。
「犬畜生が我に歯向かうか!」
 ラクリマ・セクスアリスは左手の口で柴犬に噛みつき、引き剥がすと放り投げて地面に叩きつけた。そしてエルの方へ意識を戻す。伸ばした右手はエルではなく、その背後にあった食肉植物を掴んで握り潰していた。
「空戦モードに移行」
 その横で飛び退いて躱していたエルが空戦モードへと換装する。
「空戦モードに移行――反撃に移ります」
 エルは敵に向かって飛び、L95式アームドフォートから貫通力よりも威力重視の重い弾丸を発砲する。轟音と共に放たれた弾丸は敵の顔に届く前に右腕に防がれた。だがその右腕が大きく抉れ、黒い液体が飛びった。
 ――ぎゃぁぁああっ!
 攻撃で腕に封じられた魔女の足も千切れて悲鳴が響き渡る。
「蚊蜻蛉がちょこまかと!」
 ラクリマ・セクスアリスは右腕の幅を広げてエルを叩き落とそうと振り回す。それを何とか飛び回り回避に専念してエルは腕を掻い潜る。
「どこを見ている! こっちだ下種野郎!」
 自分に注意を引くように雁之助が龍笛を吹き鳴らす。
「五月蠅い虫共め!」
 苛立つようにラクリマ・セクスアリスが雁之助に右腕を打ち込む。慌てて雁之助は地面を転がるように身を投げて回避した。だがその周囲が毒沼となってうつ伏せになったまま体が沈んでいく。
「捕まえたぞ、全身を破裂させて死ね!」
 ラクリマ・セクスアリスが隙を見せた雁之助を一撃で叩き潰そうと大きく右腕を振り上げる。
「敵性の隙を確認――フルバースト」
 しかし先に隙を突いたエルが空中からアームドフォートと追随武装の銃口を向け、全ての武装を一斉に発射した。
「ぬぅ……」
 弾丸の嵐がラクリマ・セクスアリスを穴だらけにしていき、怯ませて毒沼から後退させた。
「今がチャンスなんだな! 行け悉平太郎!」
 毒沼を何とかでようとする雁之助が柴犬をもう一度走らせ、また右腕を駆け上がると頭に飛び掛かり、右の角に噛みついて中ほどで砕いた。
「貴様ら! 許さんぞ!」
 怒気を放つラクリマ・セクスアリスが右の拳で雁之助を叩き潰そうとする。
「一時撤退します」
 だがその前にエルが雁之助を抱えて飛んで離脱した。右腕の拳は地面を大きく抉り、深い毒沼を生み出した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ユウキ・スズキ
作戦は了解した。
女どもへのせめてもの慈悲だ。
迅速に片を付ける。
……いや、ふざけてる訳じゃないぞ?
至って大真面目だ。

「甘ったるい匂いだ。反吐が出る…さぁ、ご退場願いに来たぞ? さっさと消えろ下郎」
敵の先制攻撃を利用する。
敵の攻撃を見切り、地形を利用しつつ制圧射撃で敵の目を眩ませる。
奴がそこいら中に沼を作ってくれれば御の字だ。
再び制圧射撃で眩ませ、こちらが視界から外れた隙に自分のUCで沼に潜り込む。
後は、奴が俺を探して近付いてくるまで待つだけだ。
沼に引き釣りこんで逆に動けなくしてやる。
少なくとも、背を向けたら弾丸の雨を背後からプレゼントしてやろう。
……しかし、このUCを戦闘で使う日が来るとは……


雷田・水果
SPD
「見えなければ当たりませんよね?」
予め【アリスランス】を【光学迷彩のガン・シールド】に、想像力で進化させる

目立たないように行動し、ユーベルコードを発動
アリスランスをレベル×1個複製し、制圧射撃を試みる
自分はスナイパーとしてラクリマ・セクスアリスの狙撃を試みる



●毒沼と泥沼
「作戦は了解した。女どもへのせめてもの慈悲だ。迅速に片を付ける」
 大魔王の前に姿を現したユウキ・スズキ((元米国陸軍)少尉 不審者さん・f07020)が、攻撃を誘うように堂々と巨大な右腕の射程に入る。
「猟兵は蛆虫のようにすぐに湧いてくる。世界を滅ぼし根本的な駆除が必要だ」
 大魔王ラクリマ・セクスアリスは、矮小な虫を潰すように無造作に腕を振り下ろす。
 その大振りな動きを見切ってユウキはその場から飛び退くと、右腕が地面を叩き地響きが起きる。そして地面があっという間に毒々しい色の毒沼へと変化した。
「虫は逃げるのだけは得意だな」
「ハッ、じゃあ虫すら潰せないお前は虫以下ってことか?」
 こちらを虫扱いする敵に、ユウキが鼻で笑って言い返す。
「一匹の蛆虫が我に歯向かうつもりか!」
 ラクリマ・セクスアリスが右腕をまた叩き込むと、予想していたユウキは地面を転がるように躱した。そして追撃を防ぐ為にハンドガン『Musterwerk96【Skuld】』の銃口を敵の顔に向けて弾丸を撃ち込んだ。しかしそれは左手で防がれ、大魔王は右腕を薙ぎ払い、地面を抉って毒沼に変えながらユウキの身体を捉えて吹き飛ばした。
「がはっ――」
 脇腹を強く打つ衝撃に口から空気が漏れ、ユウキは食肉植物にぶつかり幾つも潰してようやく地面に落ちた。
「どうした? やはり虫は口だけだったか」
 そこへ悠々とラクリマ・セクスアリスが近づき止めを刺そうとする。

「見えなければ当たりませんよね?」
 その隙を突こうと雷田・水果(人派ドラゴニアンの姫騎士・f19347)が白銀の槍を見て今役立つものを想像し、光学迷彩効果を持つガン・シールドへと進化させた。その光学迷彩機能で透明になったように周囲の風景に溶け込み、大魔王へと近づく。
「うぅぅ、ああああ……」
「臭うぞ、この甘い香りの中に紛れた異分子の異臭が……」
 ラクリマ・セクスアリスは取り込んだ魔女の呻く感覚から猟兵が近づいているのに勘づく。
「姿を消しているのか、ならばこれで蹂躙してくれる!」
 魔女たちから豹獣人・イカ獣人・バッタ獣人の軍勢が生み出され、周囲を蹂躙するように攻撃を開始した。豹獣人が群れて周囲を駆け回り、イカ獣人は触手を鞭のように叩きつけ、バッタ獣人は跳躍して食肉植物の物陰へ急降下を繰り返して猟兵を探す。
「これは避けて通るのが難しそうですね……あ!?」
 そっと近づいていた水果の足にイカ獣人の触手が巻き付いた。
 ――いたぞ! あそこだ!
 獣人の軍勢が一斉に襲い掛かる。
「気付かれてしまいました!」
 慌てて水果は触手に銃口を向けて撃ち抜き、自由を取り戻して囲まれないように駆け出しながら銃弾を叩き込んで迎撃する。だが何体倒れようとも構わず軍勢が迫ってきていた。

「甘ったるい匂いだ。反吐が出る……さぁ、ご退場願いに来たぞ? さっさと消えろ下郎」
 甘い花の蜜を全身に浴びたユウキが倒れたままユーベルコードを発動する。すると地面が沼に変わり、体がずぶずぶと沼の中へと沈んで潜り込んだ。
「ん? もう一体いた蛆虫はどこに消えた?」
 水果へと意識を向けていたラクリマ・セクスアリスが、倒れていたユウキの姿が消えた事に気付く。
「どこぞに隠れたか、ふん、虫らしい姑息な手段だ」
 ならば隠れた場所ごと潰すと、ラクリマ・セクスアリスは右腕で近くの大きな食肉植物を叩き潰して接近してくる。
(「やれやれ……大真面目にかくれんぼをする羽目になるとはな」)
 沼の中でユウキはじっと敵が近づくのを待つ。そして敵の起こす破壊音がすぐ近くに迫った瞬間、沼を広げて敵の足を呑み込んだ。
(「捉えたぞ、沼に引き摺りこんで逆に動けなくしてやる……しかし、このUCを戦闘で使う日が来るとは……」)
 ラクリマ・セクスアリスが足を沼に取られて姿勢を崩す。だがそのまま右腕を振り上げた。
「そんなところに隠れていたか、蛆虫にはお似合いだな!」
 沼に向かって右腕が振り下ろされ、ユウキの沼が毒沼へと変質していく。
「これは拙いな」
「毒沼で溺れ死ぬがいい……」
 ユウキは沼の中を泳ぐように逃げるが、どんどんと侵食されて逃げ場が無くなっていく。
「軍勢の動きが鈍りましたね。今がチャンスです!」
 逃げ回っていた水果が、敵の注意が逸れた為に軍勢が統制を失い始めた隙を突いて反撃に移る。
「アリスダンス――」
 水果はガン・シールドを50以上も複製し宙に浮かべる。
「制圧射撃で軍勢を粉砕し、大魔王を撃ち抜きます!」
 一斉に放たれる弾幕が軍勢を撃ち砕き、さらに大魔王の体中に穴を穿っていく。黒い液体が溢れ地面を染めていく。
「余計な真似を……魔女よ新たな軍勢であれを八つ裂きにしろ」
 ラクリマ・セクスアリスが新たに軍勢を産み出そうとする。だがその前に背後で銃声が鳴り響き背中に穴が開く。
「弾丸の雨を背中にプレゼントしてやろう」
 そこには沼から脱出したユウキがカスタムした大口径自動小銃『Sturm Gewehr G3 Ku 【Schwertleite】』を構えて発砲を続けていた。背中から生える骨が砕け、背中にも穴が開いていく。
「小賢しい蛆虫共め!」
 右腕が横に薙ぎ払われると、ユウキは銃で受け止める。そして衝撃を出来るだけ逃すように自ら跳んで大きく吹き飛ばされた。
「軍勢がいなければ撃ち放題です。今のうちに破壊します」
 水果は少しでも多く敵にダメージを与えようと、浮かべたガン・シールドを撃ちまくる。だがその前に壁になるように軍勢が新たに作られた。
「押し潰せ」
 津波のように一斉に向かって来る獣人の軍勢を前に、水果は迎撃するが押し流され、大魔王を射程に入れられぬ場所まで追いやられて軍勢の相手をすることになった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ユエ・ウニ
醜い。…あんな奴に取り込まれ利用された魔女が哀れ過ぎる。
…だが。
…救いが無いと言うのはこういう事を言うんだな…。

【武器改造】で主人の様に人形を偽装、これで多少の【フェイント】になれば良いが。
人形に攻撃を【かばわせ】、それが厳しくとも【激痛耐性】で耐えれば影鬼の悪魔を放つ事が出来るだろう。
僕が動けなくとも、奴なら好きに動けるしこういうのは得意だからな。
どうせ飢えているし、元々【破壊工作】や【暗殺】が得意な奴だ。
【生命力吸収】や【2回攻撃】でもして勝手に愉しんでこい。
【傷口をえぐる】ついでに魔女の身体だけでも取り戻せれば良いが。

大魔王と、豪語しているようだが見くびり過ぎじゃないのか?
目障りだ。


エリス・ガーデナー
魔王!強そう!アタシが倒すにふさわしい称号だわ!
「魔王は正義の美少女に倒されました!ふふん、最良のエンディングでしょ?」
まずはピラーを棒高跳びのように操り跳んで、初撃を切り抜けて
『ブーステッド・ドールワーク!』を発動、速攻を仕掛けるわ!
「アタシのとっておき、味わいなさい」
毒沼に落ちなければ事足りるってワケね!空中戦は得意!
壁や天井、植物だけでなく、念動力で浮かせたピラーを足場にと
フェイントも入れて翔び、魔王の周囲を駆け巡って突撃よ!
助けられずとも、身体から魔女ってのを全部削ぎ落として、
最後は捨て身で沼地から蹴り上げて吹っ飛ばし、身体に大穴開けてあげる!
「惨めに一人でオブリビオンに還りなさい!」


クリナム・ウィスラー
大魔王って呼ばれたくないの?
今のあなた、見るからに大魔王って感じなのだけれど
しかも最低最悪の部類の奴ね
見苦しいからさっさと消えてちょうだいな

まずは相手の攻撃にしっかり対応しましょう
見た目は派手だけど、やる事はシンプルな叩きつけのようね
それなら相手の動きをしっかり観察して【見切り】するわ
毒沼に巻き込まれないように距離も取りましょう

そうしたら今度はこちらの番
杖を使って【全力魔法】のUCを
海辺の花、毒沼も魔王も……取り込まれた魔女達も、全部沈めて
【範囲攻撃】として使い、巨体をしっかりと攻撃していくわね
的が大きいのはありがたいわね

……魔女達を巻き込むのは不本意だけど
その分早く終わらせられるよう、全力よ



●魔女の悲鳴
「醜い……あんな奴に取り込まれ利用された魔女が哀れ過ぎる」
 ユエ・ウニ(繕結い・f04391)は大魔王に囚われ利用される魔女たちを見て憐れみを覚える。
「……だが」
 ユエの声に哀愁が混じる。救う手段も存在せず、彼女たちを解放するのは死しかないのだ。
「……救いが無いと言うのはこういう事を言うんだな……」
 それでも戦わなくては永遠の牢獄に囚われ続けることになる。ここでそれを終わらせようと、ユエは匣の中から人形を取り出し、自分に似せて偽装した。
「次々と湧き出るものだな。猟兵というものは!」
 ラクリマ・セクスアリスがずるりずるりと、軟体生物のように下半身が地面を這って近づいてくる。
「影鬼の悪魔を放つまで攻撃を凌ぐ……」
 自分の隣に人形を立たせ少しでも敵の攻撃を迷わせ、攻撃を避ける確率を上げようとする。
「二体か、どちらから死にたい? 右か、左か……こちらからにしよう」
 ラクリマ・セクスアリスが振り上げた巨大な右腕を、ユエに振り下ろすと見せかけて、軌道を変え人形に叩きつけた。人形はそれを防ごうと腕を上げるが、へし折られてそのまま地面に埋め込まれるように押し付けられた。
「人形か……これで助かったと思ったか?」
 その体勢からラクリマ・セクスアリスは右腕を横に薙ぎ、後退しようとするユエの身体を捉え、バックハンドの一撃がユエを吹き飛ばした。

「魔王! 強そう! アタシが倒すにふさわしい称号だわ!」
 敵に休む間を与えぬように、意気込んだエリス・ガーデナー(不器用なニンギョウ・f01337)が白銀の槍をぐるりと回して切っ先を大魔王に向けた。
「魔王は正義の美少女に倒されました! ふふん、最良のエンディングでしょ?」
 そして一直線に矢のように駆け出す。
「愚かな……我を大魔王などと蔑称で呼ぶ貴様たちには、世界と共に滅ぶエンディングしか存在しない!」
 ラクリマ・セクスアリスはそんなエリスの正面を塞ぐように真っ直ぐ右手を伸ばした。
「こんなもの跳び越えてあげるわ!」
 エリスは槍を前方の地面に突き刺し、棒高跳びの要領で身体を浮かせ高々と跳躍する。跡んだ後に支柱の槍を敵の腕が吹き飛ばす。
「次はアタシの番よ!」
 空中で敵を見下ろしながら体内に流れる疑似生体電流を一気に増やし、身体能力を爆発的に高めた。
「アタシのとっておき、味わいなさい」
 そして持ち替えた銀色のランスを敵の顔に突き入れる。だがそれは左手に阻まれ、手を貫き黒い液体が傷口からぶちまけられた。
「虫けらが、我に傷をつけるか!」
 穴の空いた左手でラクリマ・セクスアリスはエリスを締め上げるように強く握り、思い切り地面に投げ捨てた。エリスの身体が食肉植物を潰しながら地面を転がっていく。それを追いかけて止めを刺そうと大魔王が動き出す。

「大魔王って呼ばれたくないの? 今のあなた、見るからに大魔王って感じなのだけれど、しかも最低最悪の部類の奴ね」
 そんな敵の気を引こうと、クリナム・ウィスラー(さかなの魔女・f16893)がどう見ても邪悪な魔物の王にしか見えぬ敵に問いかける。
「貴様も我を大魔王と呼ぶか……滅びろ。猟兵はこの世界に必要ない。世界と共に滅びよ!」
 ラクリマ・セクスアリスは狙いをクリナムに変えて間近まで迫った。
「見苦しいからさっさと消えてちょうだいな」
 言い捨てたクリナムは、敵の動きをしっかりと観察し、振り上げた右腕の攻撃に合わせてその場を飛び退く。
「見た目は派手だけど、やる事はシンプルな叩きつけのようね」
 すると手は地面を陥没させ、紫色の毒沼へと地面を変質させた。
「想定よりも範囲が広いわね」
 毒沼に巻き込まれないようにとクリナムは距離を取ろうとするが、足が毒沼に捕らわれ動きが鈍くなってしまう。
「もう貴様は逃れられん。今度こそ頭から叩き割ってやろう!」
 そこへゆっくりとラクリマ・セクスアリスが迫り、もう一度右腕を叩き込もうとする。

「直撃を受けてしまったか……だが僕が動けなくとも、奴なら好きに動けるしこういうのは得意だからな」
 倒れたままユエは自分の状態を確認し、身体が痺れるほどの打撃を受けていると判断する。だが意識があるなら問題ないと大魔王の敵意に反応してユーベルコードを発動した。すると40体を越える影の悪魔たちが召喚された。
「相手は世界を滅ぼそうとする大魔王だ。好き勝手に愉しんでこい」
 ユエが大魔王を一瞥すると、悪魔たちは嬉々として影に溶け込むように消えてしまう。悪魔は突如として大魔王の近くに現れ、不意を突いてその鋭い鉤爪を切りつける。
「何だ? 我にこのような小悪魔共を嗾けて倒すつもりとはな……舐められたものだ!」
 ラクリマ・セクスアリスが影の悪魔を掴み握り潰して消し飛ばしてしまう。影の悪魔は影に潜って逃げようとするが、少しでも腕の粘液に触れると張り付いて逃げられなくなっていた。
「大魔王と、豪語しているようだが見くびり過ぎじゃないのか?」
 影の悪魔たちは何体やられようとも気にもせず、愉しげに攻撃を繰り返す。そうして相手の嫌がる箇所を探し、僅かに顔を背けて赤い宝石のような箇所への攻撃を避けた。
「その悪魔たちは相手が嫌がることが得意なんだ。……ついでに魔女の身体だけでも取り戻せれば良いが……」
 悪魔たちは執拗に顔を狙い、それを嫌がるようにラクリマ・セクスアリスは右腕で振り払った。

「何とか逃れられたようね、では反撃といくわ」
 影の悪魔が戦っている内に毒沼を逃れたクリナムは魔力を宿す杖を手にユーベルコードを発動する。
「海辺の花、毒沼も魔王も……取り込まれた魔女達も、全部沈めて」
 輝くほどの魔力を発した杖がハマユウの花びらへと変わり、敵の大きな体を覆うようにひらひらと舞い、触れた身体をズダズダに切り裂いて黒い液体を撒き散らす。
 ――きゃああああぁっ!
 刃は取り込んでいる魔女も切りつけて、その肌を赤く染めていった。 
「……魔女達を巻き込むのは不本意だけど、その分早く終わらせられるよう、全力よ」
 その魔女の悲鳴にぴくりと顔を強張らせたクリナムは、一刻も早く終わらせようと花びらをさらに多く操った。
「貴様! 叩き潰してくれる!」
 影の悪魔を薙ぎ払い、ラクリマ・セクスアリスはクリナムへと直進してくる。
「さっきはよくもやってくれたね! お返ししてあげる!」
 だがそこへ念動力で浮かせた槍を足場にしたエリスが空中から大魔王に迫る。
「まだ生きていたか羽虫め」
 ラクリマ・セクスアリスはエリスを捕まえようと右腕を振り回す。だがエリスは槍を足場に次々と跳んで手を躱した。
「羽虫じゃないわ! 空を駆ける正義の美少女よ!」
 腕をすり抜けてエリスはランスを突き入れ、顔の右側を吹き飛ばした。
「羽虫が!」
 その背中にラクリマ・セクスアリスが右腕を伸ばした。
「何回も捕まえられると思わないでよ!」
 その右手にエリスはランスを突き刺し近づかせない。
「的が大きいと敵だけに当てやすいわね」
 その間にクリナムが敵の背後に回って花びらを舞わせ、全身から黒い体液を噴き出させる。
「毒沼に呑まれろ!」
 ラクリマ・セクスアリスが地面を殴り、毒沼に変えてゆく。それが広がりクリナムの足元に迫った。
「呑まれるのはそちらの方よ、花びらにだけれどね」
 後退しながらクリナムはさらに花びらを増し、敵の視界を塞ぐように散らした。
「邪魔だ!」
 ラクリマ・セクスアリスは腕を振り回し花びらを吹き飛ばす。
「そんなに隙を見せると悪魔が喜んで忍びよることになる……」
 ユエが言う通り、残った影の悪魔がその爪を次々と全身に刺していく。
「魔女よもっと力を寄越せ!」
 ラクリマ・セクスアリスが右腕に魔女の魔力を集め、一振りで影の悪魔たちを消し飛ばした。
「身体から魔女ってのを全部削ぎ落としてあげる! 惨めに一人でオブリビオンに還りなさい!」
 暴風のような腕を避ける為に地上に降りたエリスは、下から敵の右腕にランスを突き立て、そのまま吹き飛ばした。衝撃で囚われていた魔女の一人が投げ出され、地面に落ちた。
「あぁ……」
 仰ぐように天井を見て、魔女は溶けるように消え去っていった。
「おのれ!」
 怒声と共に魔力を放ったラクリマ・セクスアリスが、その衝撃波で猟兵達を薙ぎ払った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

雨咲・ケイ
う~む、大魔王はどんどん醜悪な姿に
なっている気がするのは気のせいでしょうか?
ともかく、早急に滅ぼす事が
彼女達の救済になると判断しました。

【WIZ】で行動します。

敵の叩きつけ攻撃は【第六感】で捉え
【グラップル】による受け流しで回避を試み、
毒沼はスノーホワイトの薔薇の香気で凌ぎましょう。
回避が難しければ【盾受け】と【オーラ防御】を
併用して守りを固めます。

敵の攻撃を凌いだら【聖霊天葬陣】を使用。
更に【スナイパー】で銀霊縛鎖を【投擲】して隙を作り、
接近して【シールドバッシュ】からの【2回攻撃】で
攻めていきましょう。

アドリブ・共闘歓迎です。


ノイジー・ハムズ
大魔王!
とってもいい言葉に思えますが、蔑称なんですね。なんと呼べばいいでしょう!
そしてそして、大魔王の名! 私に下さい!

◯対策
叩きつけ攻撃は【空中戦】による安定した空中移動と、【見切り】で回避を行います!
すごい力ですが、その分軌道は単純で、予測は容易でしょう⭐︎

毒の沼!
私は空中なので捕まりはしませんが、これ以上強く速くなられると反撃できません!

それでは沼のみ、私の夢の世界へご招待しましょう⭐︎
夢境へと至る穿孔よ、開け!

そして反撃タイム⭐︎

振り落とされた腕を再び回避!
剣に炎の【属性攻撃】、そして疾風の【全力魔法】を込めて剣を巨大な剣に見立てます⭐︎
叩きつけの勢いを利用して、下から切り落とします!



●醜悪な魔王
「う~む、大魔王はどんどん醜悪な姿になっている気がするのは気のせいでしょうか?」
 雨咲・ケイ(人間の學徒兵・f00882)はどんどんとおぞましい姿へと変貌する魔王を視界に捉える。
「ともかく、早急に滅ぼす事が彼女達の救済になると判断しました」
 何であれ、人と世界に仇名す存在を放ってはおけないと大魔王討伐に動き出す。
「どれだけ湧けば気が済むこの蛆虫共め!」
 次々と現れる猟兵に怒りを露わにラクリマ・セクスアリスは肘辺りから千切れた右腕を、他の部位から体液を集めて復元する。
「この場に来た虫は一匹も逃さん。甘い蜜に集る虫のように死に絶えよ!」
 その右腕を大きく振り上げ、向かって来るケイに向かって振り下ろす。
「それだけ大きいと動きも読みやすいです」
 敵の動きをしっかり見ていたケイは、迫る腕を輝く小型の盾で受け止める。そして角度をつけて押し出し、攻撃を受け流した。勢いよく振り下ろされた腕は地面に叩きつけられ、地震のように地を揺らして腐臭漂う毒沼へと変化させた。
「腕よりも毒沼が厄介ですね」
 ケイは足元に広がる毒沼に足を取られ、思うように動けなくなる。
「毒沼に溺れて死ね!」
 毒沼に押し込もうと、ラクリマ・セクスアリスが右手を広げて頭上から覆うように下ろす。

「大魔王! とってもいい言葉に思えますが、蔑称なんですね。なんと呼べばいいでしょう! そしてそして、大魔王の名! 私に下さい!」
 そこへ場違いに明るい様子で、飛んで近づいたノイジー・ハムズ(夢の続きは羽虫に乗せて・f14307)が現れ大魔王と繰り返す。本人に挑発のつもりはないが、その言葉を嫌うラクリマ・セクスアリスを怒らせるには十分だった。
「貴様、能天気な妖精如きが我が前に立つ資格があると思うか!」
 一喝しながらラクリマ・セクスアリスがノイジーをまさに虫のように潰さんと右腕を振り抜く。
「すごい力です! 風圧だけで飛ばされてしまいそうです!」
 ブゥンと凄まじい勢いで腕が通り過ぎると、それだけでノイジーはよろよろと空中を漂う。そこへ捕まえようと腕が伸びる。
「危ないです!」
 咄嗟にノイジーは翅を動かして飛び上がって躱す。
「羽虫め……だが本物の羽虫の相手は面倒なものだ。ならば逃げ場がないほど広げてやろう」
 ラクリマ・セクスアリスは右腕で地面を叩いて毒沼を広げ、自らの下半身を繋げるようにして毒沼を吸い上げる。すると右腕が大きくなり、ノイジーを捕える為に薄く広がって覆いかぶさる。

「わわっ!?」
「邪妖天葬ッ!」
 慌てて空中をちょろちょろするノイジーが捕まる前に、薔薇の香気を纏って毒沼を抜けたケイが放った破邪の氣弾が敵の右腕を撃ち抜いた。手が止まった瞬間にノイジーは飛んで間合いを離した。
「我の腕を! これ以上魔女の力を失う訳にはいかん!」
 ラクリマ・セクスアリスはケイに向けてまた腕を叩き込む。ケイは盾で受け流そうとするが、今度は腕の範囲が広すぎて流せずに受け止める。すると足元に毒沼が広がってまたケイを捕えようとする。
「毒の沼! 私は空中なので捕まりはしませんが、これ以上強く速くなられると反撃できません!」
 今でも躱すのが精一杯なのに、これ以上強化されては堪らないとノイジーは対抗手段を使う。
「それでは沼のみ、私の夢の世界へご招待しましょう⭐︎ 夢境へと至る穿孔よ、開け!」
 ノイジーは魔力で漆黒の球体を作り出し、落下して地面に広がる毒沼に触れる。すると周辺の毒沼が吸い込まれるように消えていった。
「消されただと? だが消されたならばまた作ればいいだけのことだ!」
 ラクリマ・セクスアリスはまた右腕を振るって毒沼を産み出そうとする。だがその右腕に白銀の鎖が巻き付いた。
「これ以上そちらの好きにはさせません」
 ケイは全体重を乗せるように鎖を引っ張って敵の攻撃を邪魔する。
「力比べか? 虫の分際で我に勝てるつもりか!」
 ラクリマ・セクスアリスが大きく鎖を引くと、ケイは逆に鎖を手放す。反発があると思っていたラクリマ・セクスアリスは勢い余って体勢を崩した。
「ここからは反撃タイム⭐︎」
 そこに突っ込みながらノイジーが魔法剣に炎を宿し、疾風の魔法で炎の刀身を創り巨大な剣に見立てた。
「必殺の炎の大剣なのです!」
 飛び上がったノイジーが急降下しながら剣を振り下ろし、防ごうとした左腕に深く刃が入り、燃え上がる炎が黒い体液を沸騰させていく。
「羽虫めぇ!」
 ノイジーを叩き潰そうと右手が振り下ろされる。
「敵はペースを乱しています。こちらから攻めていきましょう」
 その一撃を割り込んだケイが盾で受け流し、隙を突いて間合を詰め盾を腹付近に体当たりするように叩き込んだ。水風船が破裂するように大量の黒い体液が飛び散った。
「攻める? 我を貴様ら下賤な存在が攻めるというのか! 猟兵如きが!」
「あああああぁぁっ」
「ぎゃあああぃ!」
 魔女たちの悲鳴と共にラクリマ・セクスアリスの魔力が高まり、近くにいたノイジーとケイは突風が当たったように弾き飛ばされた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マレーク・グランシャール
マリアドール(f03102)と
アドリブ歓迎

娘が裸にされ取り込まれているのをマリアに見せたくはないな
彼女もまた狙われるかもしれないと思えば余計に
だが彼女は覚悟を決めるだろう……そういう女だ
俺も覚悟を決めてかかる

巨腕の攻撃はダッシュしてマリアを庇いに入る
打撃逃れられればそれでいい、毒沼によるダメージは想定内
すかさず攻撃に転じ【大地晩鐘】の地中(毒沼)内から無数の槍を生やして串刺し
マリアがユーベルコードで地上から攻撃を加えるのと合わせ、挟み撃ちだ

だがそれは敵の注意を惹き付けるためのブラフ
残像と迷彩を発揮して敵の目を誤魔化し、碧血竜槍を額の赤石めがけて槍投げ
魔王の印たるその赤石、砕かせて貰うぞ


マリアドール・シュシュ
マレーク◆f09171
アドリブ歓迎

惨状に星芒の眸曇らせ
けれど
目は背けず

なんて惨いの
酷い光景
彼女達の命(はな)を私利私欲の為に…
これ以上の犠牲は出させないのだわ(覚悟決め

敵のUCは小柄な体躯活かし、
腕の挙動など読み切り回避に重きを置く(情報収集
極力マレークの負担減る様に

毒沼に嵌ろうとも
マリアの音色はどこまでも轟くわ

マレークの支援
【透白色の奏】使用
麻痺の糸絡めた重低音の旋律で動き鈍らせ竪琴で演奏攻撃
地上から音の誘導弾で敵を挟撃
攻撃手休めず

あなたの力は所詮紛い物よ
予知も
光が潰える事は
決してないわ

祈りと真逆の逆さ歌詞で滅の詩(うた)を敵へ歌唱
マレークの狙いが悟られぬ様に派手に音でおびき寄せ・制圧射撃



●紛い物
「猟兵よ、そして世界に生けるものどもよ、全てに等しく終焉を与えてやろう!」
「あぁ……アアガヒッ!」
「ひぃっぎゃっ!」
 魔女の悲鳴が高鳴るほど、傷つき弱り始めていたラクリマ・セクスアリスの力も荒々しく高まり、その液体のような身体が膨張する。
「娘が裸にされ取り込まれているのをマリアに見せたくはないな。彼女もまた狙われるかもしれないと思えば余計に」
 その無残な魔女たちの姿に、マレーク・グランシャール(黒曜飢竜・f09171)は隣のマリアドールに心配そうな視線を向ける。
「だが彼女は覚悟を決めるだろう……そういう女だ。なら俺も覚悟を決めてかかろう」
 か弱い少女の姿の内には、決して何者にも曲げられぬ信念がある事をマレークは知っていた。
「なんて惨いの……酷い光景……」
 力を利用する為に取り込まれた魔女たちを前に、マリアドール・シュシュ(蜜華の晶・f03102)は美しい星芒の眸を曇らせる。けれど目を背けずにじっとその光景を見つめた。
「彼女達の命(はな)を私利私欲の為に……これ以上の犠牲は出させないのだわ」
 強い意志を眸に宿し、覚悟を決めたマリアドールはマレークと一瞬視線を交わして、共に前に踏み出す。
 するとラクリマ・セクスアリスが二人に気付いて動き出した。
「現れたな、花に群がる蛆虫共。根絶やしにしてくれる!」
 ラクリマ・セクスアリスがどんどん形を変えていく右腕を掲げ、二人を纏めて薙ぎ払おうと、勢いをつけて大きく腕を横に振るった。
「横から来るのだわ!」
「上に避ける」
 マレークはマリアドールを抱き上げて高く跳躍する。その下を太い腕が通り抜け、削られた地面は禍々しい毒沼へと変貌していた。
「また来るの! 今度は下からなのよ!」
 ずっと敵の動きを見ていたマリアドールの言う通り、大魔王は振り抜いた腕を下から打ち込もうと引き寄せ力を溜めていた。
「マリアは先に降りていろ」
 マレークはマリアドールをそっと地上に向かって押し出し、こちらに向かって掬い上げるように放たれる拳に対して碧玉の嵌った槍を構えて受け止める。ミシッと腕に凄まじい重圧が掛かり、マレークの身体は天井まで吹き飛ばされた。
「仕留め損ねたか、次で粉々に潰してやろう」
 ラクリマ・セクスアリスはマレークが落ちて来るのを狙おうと、もう一度右腕を引き戻して待ち構える。

「マレークを狙わせないわ」
 毒沼に立ちながらも毅然とマリアドールは敵に瞳を向け、星芒を輝かせて黄昏色に眩くハープを奏でる。重低音の腹に響くような旋律に乗せて糸が敵に絡み付き触れた箇所を痺れさせる。
「耳障りだ。毒沼に溺れ死ねば静かになろう」
 ラクリマ・セクスアリスは拳を地面に打ち込み、毒沼を広げて深くする。足首ほどまでだった毒沼にどんどんとマリアドールの身体が沈んでいく。
「毒沼に嵌ろうとも、マリアの音色はどこまでも轟くわ」
 だがそんな状況でも一切マリアドールの演奏は乱れず、情感たっぷりに聞き入るような音色が戦場に響く。
「死を前にしても怯えぬか、小賢しい……ならば直接潰してくれる!」
 ラクリマ・セクスアリスは演奏を止めぬマリアドールを狙い右腕を振り上げる。
「マリアは俺が護る。その薄汚れた手で指一本触れさせん」
 天井を蹴って急降下するマレークが毒沼に槍を突き立てる。
「闘志を槍に変えて大地に屹立せよ。地に立つ悪を地下へと招いて閉じ込めよ。あまねく大地を統べる地竜の王の力を今ここに――」
 すると大地が隆起し、死したる地竜の王の霊を召喚した。地竜の王は毒沼であろうと平然とし、毒沼に潜り込むと地中から無数の土の槍が生み出され下から大魔王を串刺しにした。
「この程度の傷、すぐに穴埋めすれば済む事、だが我が身体を傷つけた愚行の報いを受けよ!」
 ラクリマ・セクスアリスが右腕でマレークを狙い、それをマレークは槍で受け止める。串刺しにされ姿勢が悪く、麻痺もしていて力を発揮できず、マレークは毒沼に深く足を取られながらも耐えきった。
「どうした、大魔王の力とはその程度か」
「侮るか! 我が力を猟兵ごときが!」
 マレークの挑発の言葉にラクリマ・セクスアリスが怒りを露わに土の槍をへし折りながら右腕を振るう。
「あなたの力は所詮紛い物よ。予知も、あなたの力ではなくただの借り物」
 そこへマリアドールが竪琴を奏で続け、音を弾として撃ち出し敵の身体にぶつけた。
「そんな紛い物に世界は滅ぼさせない――光が潰える事は決してないわ」
 旋律に乗せてマリアドールの歌声が響く。紡ぐのは祈りと真逆。逆さ歌詞の滅の詩(うた)。恐怖心を植え付ける歌声と共に音の弾が無数に降り注ぎ、大魔王の身体に触れると炸裂して黒い体液が撒き散らされる。それに合わせるように地中からは槍が突き出し、地中と空中からの挟撃に大魔王は被弾して傷を負っていく。
「我が力が紛い物だと? 我が得たものは我のものだ! この女共も、世界も、全て我が手に入れ、好きに使い、壊し、滅ぼす!」
 ラクリマ・セクスアリスは鬱陶しそうに音の弾を腕で薙ぎ払う。だがそこで足元から地竜の王の顎が現れ喰らいついた。そして大魔王の身体を地中へと引き摺り込もうとする。
「地竜如きが我を喰らうと? 思い上がるな!」
 ラクリマ・セクスアリスは地竜の王に拳を叩き込んで粉砕する。そうして大魔王が気を取られている隙に、マレークは残像を残して後方へ跳躍した。
「魔王の印たるその赤石、砕かせて貰うぞ」
 槍を握る手に力を込めると碧玉が輝く、マレークは助走をつけて全身をバネのように使って槍を投擲した。しなって飛ぶ槍が真っ直ぐに敵の顔面を貫く。
「ガァッ!?」
 注意を他に向けていた魔王の顔にある赤い石に、飛翔した槍が見事に突き刺さった。穿たれた穴から石にひびが入る。
「許さん! 許さんぞ猟兵共!」
 青白い炎が口から吹き出し、怒り狂うラクリマ・セクスアリスは見境なく周囲を薙ぎ払う。
「仕留めそこなったか、一旦引こう」
「そうした方がよさそうなのだわ」
 マレークは泥沼に嵌ったマリアドールを引き揚げ、地を隆起させる勢いを利用して跳び、暴れ回る大魔王から距離を取った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒玻璃・ミコ
※スライム形態

◆行動
んー魔女を竜種と言う言葉に置き換えれば
私がやってる事と大差ないので魔女である私ですが非難しません
しませんが……かつての貴方達が求めた事は本当にそれだったのですか?

此度の戦場は食肉植物の森
体内で生成した植物をも魅了するフェロモンを身に纏って擬態し
耐性を持つ毒の沼に沈んででも徹底的に存在を気取られないように
決して逸る事無く着実に距離を詰めて暗殺の機会を伺いましょう

そう、【黒竜の闇帳】が命中せずとも充分なのです
その身を構成する魔女は五感を遮る暗黒を見通すことが出来ますか?
貴方の毒沼は耐性を持ち
動けずとも念動力を操れる私にとって障害となりませんよ

※他猟兵との連携、アドリブ歓迎


ユリウス・リウィウス
ふん、まさに魔王に相応しい非道な風体よな。捕らわれた女達ごと永遠の眠りをくれてやる。

予知能力か。確か宇宙にそういう力を持った“白騎士”がいたな。

自己強化から攻撃に移る隙を突き、「恐怖を与える」死霊の霧で周囲を満たす。俺自身は「視力」で魔王の位置を確認しつつ、亡霊騎士団を喚起。
死霊の霧が生み出す幻影の人影と合わせて、例え魔王が軍勢を繰り出してきても互角に戦える体制を敷く。
個体戦闘力で劣るようなら、亡霊騎士団の亡者達を合体させて強化。それでも足りなければ荒ぶる亡者として巨大化させて、魔王に格闘戦を挑ませよう。

濃霧が満ちる中、俺は背後に回って「生命力吸収」「精神攻撃」「2回攻撃」の双剣撃を叩き込む。



●不確定な未来
「んー魔女を竜種と言う言葉に置き換えれば、私がやってる事と大差ないので魔女である私ですが非難しません。しませんが……かつての貴方達が求めた事は本当にそれだったのですか?」
 そんな疑問を思い浮かべながら、黒玻璃・ミコ(屠竜の魔女・f00148)は黒く丸々しいスライム形態となり、体内で植物をも魅了するフェロモンを生成して身に纏い、周りの食肉植物に紛れ込むように擬態した。
「後は着実に距離を詰めて暗殺の機会を伺いましょう」
 ミコは足元に広がる毒沼も構わず進み、毒耐性で耐え凌ぎながら慎重に気取られぬように大魔王へと近づく。

「ふん、まさに魔王に相応しい非道な風体よな。捕らわれた女達ごと永遠の眠りをくれてやる」
 魔女を物のように扱い利用する大魔王を見て、ユリウス・リウィウス(剣の墓標・f00045)は反吐が出る気分で顔をしかめ、荒々しく敵に向かって足を踏み出した。
「視ろ、未来を覗け、貴様ら魔女の力で猟兵を殺せ!」
 ユリウスの接近に気付いたラクリマ・セクスアリスが囚われている魔女を向ける。その涙を流す瞳がユリウスを捉えた。
「視えたぞ、貴様が死ぬ未来がな!」
 ラクリマ・セクスアリスはその魔女の視た未来を感知し、右腕を振り上げた。
「予知能力か。確か宇宙にそういう力を持った“白騎士”がいたな」
 だがそんな能力を持っている敵も猟兵は打ち破ってきた。今もまたそうだとユリウスは二刀の呪われた剣を左右に構え一気に懐に飛び込む。
「死ねぃ!」
 振り下ろす腕をユリウスは前転するように掻い潜り、双剣を腹に突き立てる。刃を引き抜くと傷口からどろりと黒い体液が零れ落ちた。
「避けただと!? 魔女よ、歌え! 運命を書き換えろ!」
 ラクリマ・セクスアリスが蛇のような下半身を振るい、ユリウスを薙ぎ払う。それをユリウスは双剣を十字にして受け、後方へと弾かれるままに跳んで間合いを開けた。
「あぁああああ――」
 魔女たちが悲鳴のような歌声を響かせ、大魔王はその身体に魔力を漲らせて悠々と迫って来る。
「傲慢だな、その顔を恐怖で歪めてやる」
 ユリウスは死霊の霧で周囲を満たし視界を塞いだ。その深い霧の中に恐ろしい怨念をはらんだ死霊達が浮かび上がる。そしてゾンビやスケルトンで構成された亡霊騎士団を呼び出した。
「数で我を討とうと? 愚か者め……ならば数で蹂躙してくれる!」
 ラクリマ・セクスアリスは対抗するように魔女から豹獣人・イカ獣人・バッタ獣人の軍勢を産み出した。
「滅ぼせ、我が道を阻む者は全て滅びよ!」
 一斉に軍勢が動き出し、イカ獣人がゾンビの動き止め、豹獣人がゾンビの腐った肉を喰らい、バッタ獣人が跳び掛かってスケルトンを砕く。だがそんな獣人に死霊達が取り付いて命を奪い獲っていく。軍勢同士の戦いに戦場は混沌とした消耗戦となっていく。押しているのは大魔王配下の獣人の軍勢。徐々に亡霊騎士団の陣形が崩れ始める。

(「これは絶好の好機です――」)
 そんな乱戦を利用して、擬態していたミコが動き出した。毒沼を潜るように大魔王の足元へと至る。そしてそこから屠竜の魔女の力を解放し、暗黒の魔力がかたどる巨大な黒竜の顎が大魔王に襲い掛かる。
「ぬぅ!?」
 突然の奇襲に驚きながらも、ラクリマ・セクスアリスは右腕を振るって、黒竜を地面に叩きつけた。
「残念だったな。千載一遇の機を逃してはもはや貴様に勝機は無い」
 毒沼に隠れるミコに向け、ラクリマ・セクスアリスが右腕を振り上げた。
「外れましたか、ですがそう、【黒竜の闇帳】が命中せずとも充分なのです」
 黒竜は地面にぶつかり、まるで奈落の穴でも開いたようにその周辺を暗闇に染め、その影響は地上にも及んで辺りが星の輝きすら届かぬような暗闇に包まれた。それは視覚だけでなく、音も匂いも感覚すらも遮断してしまう孤独の世界だった。大魔王は腕を振り下ろすが、すでにミコは毒沼を飛び出していた。
「おのれ! どこへ消えた!」
 真っ暗な世界でラクリマ・セクスアリスは腕を振り回してミコを探す。
「その身を構成する魔女は五感を遮る暗黒を見通すことが出来ますか?」
 ミコは聞こえぬ敵に向けて問いかけながら、その身を念動力で浮かして移動する。
「念動力を操れる私にとって障害となりませんよ」
 そして敵の背後に回り込むと、人型となって蛇腹剣型黒剣を振るい敵の首に巻き付けた。そして敵の背を蹴って引き抜き、首をぐるりと刃が回って切断した。
「そこ……か!」
 切断された首から体液が噴き出し、背後を向いた顔がまた胴体と繋がる。そしてミコが居るだろう暗闇に向けて右腕を叩き込んだ。ミコは蛇腹剣を盾に変形させてその攻撃を受け止める。
「首を刎ねられても死なないようですね。私と同じような体質でしょうか」
 ならば核となる部分を叩こうとミコは空中で回転して着地する。それと同時に辺りを覆っていた暗闇が消し飛んだ。
「見つけたぞ虫けらめ!」
 ぐるっと顔が元の位置に戻った大魔王の足元を見れば、大きく陥没して毒沼になっていた。屠竜の魔女の魔力の影響を受けた大地を抉って自らの魔力で上書きしたのだ。
「俺から意識を逸らしたな――」
 その大魔王の背後に濃霧から飛び出したユリウスが双剣を斬りつける。背中から生える骨が切断され、深々と十字に傷が走り体液が飛び散った。
「大人しくしていればもう少し長生きできたものを……」
 ラクリマ・セクスアリスが右腕を鉄槌の如く振り上げる。
「ああ、魔王を倒して長生きするとしよう」
 その魔王の眼前に死霊が現れて一瞬視界を塞いだ。
「我の邪魔をするな! 未来は我が手にあるのだ!」
 魔力を放つだけで死霊は消し飛ぶ。だがその隙に目の前には跳躍したミコの姿があった。
「邪魔なのは貴方の方です」
 ミコが戦鎚を頭部に叩き込む。それがひびの入った赤い石に衝撃を与え、ひびが広がって石が欠け落ちた。
「グアアアッ! よくもっ、この糞虫共がぁ!」
 叫んだラクリマ・セクスアリスは左手で顔を庇いながら右腕を薙ぎ払う。それをスライムに戻ったミコが受けてぼよよんと吹き飛ばされた。
「効いてるようだな」
 その腕を屈んで躱したユリウスが跳躍しながら左腕の付け根に斬りつけ、囚われていた魔女ごと切除する。そして顔に刃と立てようとしたところで右手に捕まり、全力で投げ飛ばされた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ハルア・ガーラント
き、気持ち悪いです……。

【WIZ行動】
嫌悪感を飲み込み先制攻撃に備えます。巨腕を振り上げる瞬間を[第六感]を以て感知、腕の付け根と拳の丁度中央辺りに飛び込みます。翼と鎖を大きく広げ隅々まで[オーラ防御]の力を行き渡らせ、盾のようにし攻撃を防ぎます。
ふんぬっ!ま、負けません……!

その後は滑るように抜け出て飛翔、すれ違いざま見た女の人達を憐れむ心が表情に出てしまうかも。
ごめんね、あなた達を救う手段は、これしか――。
悲しみを滲ませつつUC発動。

その後は[銀曜銃]に目一杯[力溜め]、[誘導弾]を魔王目掛けて撃ちます。倒れないなら何度だって!
その女の人達が苦しんだだけ、あなたも沢山痛い思いをしなさーい!


朝霞・蓮
●キャラ
人間の竜騎士 × 探索者 17歳 男
口調:(僕、呼び捨て、だ、だね、だろう、だよね?)

●戦い方
至近:アイテム『百膳』を使用して切り結んだり、竜言語で身体強化して格闘したり
近中:槍投げしたり銃で射撃。その時に機動力を求められるなら竜に騎乗
遠:攻撃手段がないので接近

●その他できること
錬金術でいろいろ

●長所
探索者として狂気に免疫があるので逆境に強く、恐怖と威圧に動じない

●短所
詰めが甘く、天然

ユーベルコードは指定した物をどれでも使用
多少の怪我は厭わず積極的に行動
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


フェルト・ユメノアール
人は、命は、キミの道具じゃない!
これ以上、何も奪わせるもんか!

長期戦は不利、魔王に狙いを絞って短期決戦で勝負を付けるよ!
こちらに向かってくる獣人たちに『トリックスターを投擲』して迎撃
さらに『ワンダースモーク』を投擲物に混ぜ、周囲を煙で包んで視界を奪う

そして、そのまま煙に紛れて魔王に接近、不意を突いて攻撃する……と見せかけて
そう、ボクはすでに【SPミラーマジシャン】の効果を発動していた!
煙は鏡に映した虚像を本物だと誤認させる為の罠でもあったのさ
敵が鏡に映ったボクを攻撃する隙を突いて、魔王の死角から『カウンター』を決めるよ!
大魔王!キミが踏みにじり、利用した人たちの怒りを思い知れ!


霧島・絶奈
◆心情
所詮は借り物の力…
本物であったのならば勝ち目は薄かったでしょうね

◆行動
先制攻撃対策として【オーラ防御】を展開
更に【罠使い】として持ち込んだ「発煙弾とサーメート」複数を【衝撃波】に乗せ散布
視界不良と攻撃による目晦ましを活かし【目立たない】様にその場を飛び退きます
…「外しても地形効果を得られる」
其れは脅威であると同時に心の隙…
其の驕りが攻撃を鈍らせます

続く地形効果は【空中浮遊】と【毒耐性】【呪詛耐性】で逃れ、『涅槃寂静』にて「死」属性の「溶岩流」を行使
…残念でしたね
其処は私では無く、貴方にとっての泥沼です

私自身も【範囲攻撃】する【マヒ攻撃】の【衝撃波】で【二回攻撃】

負傷は【生命力吸収】で回復



●救い
「所詮は借り物の力……本物であったのならば勝ち目は薄かったでしょうね」
 魔王の力の供給源となっている魔女。その姿を見て霧島・絶奈(暗き獣・f20096)は魔女がその真価を発揮すれば魔王よりも恐ろしい相手だと感じ取っていた。
「さて、紛い物の力であれ強力なのは確かです。ここで確実に仕留めておかねばなりません」
 魔女から魔王に意識を切り替え、絶奈は蒼白いオーラを纏って魔王の前に出る。
「グゥゥッ、糞虫めぇ!」
 絶奈が視界に入った瞬間に荒ぶるラクリマ・セクスアリスは右腕を叩き込む。それをオーラの障壁で受け止め、破られる僅かな間に飛び退いて腕の落下地点を離れた。
「……『外しても地形効果を得られる』其れは脅威であると同時に心の隙……其の驕りが攻撃を鈍らせます」
 絶奈は足元に広がる毒沼から逃れるように下がり、衝撃波を放ちそれに乗せて発煙筒と焼夷弾を幾つも飛ばし、敵の周囲で爆発させて、煙と火炎で視界を遮り身体を焼き付かせる。
「こんなもので我を倒せるか!」
 ラクリマ・セクスアリスが大きく腕を振るうと煙幕が晴れる。だがそこには既に絶奈の姿は無かった。

「き、気持ち悪いです……」
 魔女を取り込んだおぞましい大魔王の姿に、ハルア・ガーラント(オラトリオのバロックメイカー・f23517)は顔色を悪くして呟く。
「でも、あの女の人達を解放する為にも、引く訳にはいきません……!」
 心を奮い立たせて嫌悪感を飲み込み、ハルアは敵の攻撃に備えて目を離さない。
「そこにもいたか虫けらめ!」
 ラクリマ・セクスアリスがハルアに向かって巨大な右腕を振り上げる。
「今です……!」
 そのタイミングでハルアは腕の付け根と拳の中央辺り目掛けて飛び込み、翼を広げ、巻き付いた鎖も編むように広がってオーラを漲らせる。鎖の盾が振り下ろす途中のまだ速度の出ていない腕に当たる。それでも凄まじい圧力に押し切られそうになるのをハルアは耐える。
「ふんぬっ! ま、負けません……!」
 気合を入れてオーラを高め、大魔王の右腕が振り切られる前に勢いを失った。
「や、やりました!」
 素早くハルアは滑るように間合いから抜け出し、追撃を避ける。
「ちぃっ、魔力が弱まっているのか……おい女共! もっと我に力を送れ!」
「ひぃぃっいぎゃっ!」
「きゃあああっ!」
 取り込まれた魔女たちが悲鳴を上げ、そこから魔力が大魔王へと流れ込む。

「女性に悲鳴を上げさせるなんて許せないね」
 朝霞・蓮(運命に敗れた竜・f18369)がそんな敵を睨みつけ、白銀の魔動機銃の銃口を向けた。
「視えたぞ!」
 撃ち出される弾丸の軌道を知っていたようにラクリマ・セクスアリスは身体を変形させて躱し、右腕を伸ばして蓮を掴もうとする。
「こっちの動きを読んでる? いや予知しているのか」
 ならばと蓮は刀を抜いて手を迎撃する。後方へ飛び退きながら指を斬り落とし、捕まらないように幾重にも刃を振るう。だが指は再生して新たに伸び、それどころか大きく広がって包み込もうとしていた。
「液体のような身体をしてるのか、厄介だね」
 蓮は刀を一閃して隙間を作り、そこに身を投げるように飛び込んで手をすり抜けた。
「これで抜け――まだか!」
 腕が変形し、粘着性の液体が伸びて蓮の背中にくっつこうとする。それを切り払い蓮は飛び退くと、その場に手が叩きつけられ地面を覆った。

「人は、命は、キミの道具じゃない! これ以上、何も奪わせるもんか!」
 跳躍して毒沼を跳び越えたフェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)が、大魔王の前に着地してビシッと敵を指さして啖呵を切った。
「人も、命も、この世界の全てが虫けらのようなものだ! 我の役に立つ事を光栄に思え! 邪魔をするなら虫けららしく死んでいろ!」
 人など虫けらも同然と、ラクリマ・セクスアリスは魔女の魔力を膨れ上がらせ、豹獣人・イカ獣人・バッタ獣人の軍勢を産み出して突撃させた。
「人は虫けらなんかじゃない!」
 フェルトが投擲用のダガー『トリックスター』を空中に放り投げる。すると何本にも分裂したように現れ、それをジャグリングしながら獣人に向かって次々と投げつけた。
「その程度で我が軍勢が止まるか!」
 大魔王の魔力が放たれ、何人倒れようとも獣人たちは足を止めずに近づいてくる。
「そんな単純な突進じゃ、道化師は捕まえられないよ!」
 フェルトは投げるダガーの中に派手なボールを混ぜる。それが当たって破裂するともくもくとカラフルな煙幕が広がった。突然視界を奪われ目標が見えなくなった軍勢が足を止めた。その混乱に乗じてフェルトは大魔王に忍び寄る。
「行くよ!」
 声と共に大魔王の背後にフェルトの姿が浮かぶ。
「そこか!」
 ラクリマ・セクスアリスは右腕を振り抜き、そのフェルトを打ち抜いた。ガシャーンッとフェルトの姿が消え、そこにあった鏡が砕け散る。
「罠に引っ掛かったね!」
 それは鏡に映し出された虚像。その大振りの隙を突き、フェルトは正面から飛び掛かって顔の赤い石にダガーを突き立てた。
「大魔王! キミが踏みにじり、利用した人たちの怒りを思い知れ!」
 ひび割れ欠けていた石が割れ、半分が落下して砕け散る。
「グゥギアアアッ!」
 ラクリマ・セクスアリスが苦しむ声を漏らす。その身体が維持できなくなっているのか、人型ではなく液体の塊のように崩れ始めていた。
「おのれぇえええ! 猟兵が我が前に立ち塞がるか! もう少しで世界を滅ぼせるというのに!」
 骨の脚を動かし、ずりずりとラクリマ・セクスアリスは蛇のような下半身を引き摺るように動く。

「借り物の力で世界は滅ぼせません。何より我々猟兵が居る限り其のような愚かな真似は許しません」
 宙に浮かんだ絶奈が森羅万象を操作し、毒沼を変質させ敵と同じように黒い液体を産み出す。だがそれは沸騰し、周囲の土を溶かすほどの高温を放つ。それは死の属性を宿す溶岩流だった。それが敵の下半身を呑み込み、黒い体液と骨の脚を溶かしていく。
「何だこれは! 溶岩だと!?」
 驚いたラクリマ・セクスアリスはその場を逃れようとするが、踏み入れた骨の脚も溶けだして上手く進めない。
「……残念でしたね。其処は私では無く、貴方にとっての泥沼です」
 黒い溶岩に呑まれ、ラクリマ・セクスアリスの身体が溶けていく。
「こんなものでぇ! 魔女共! 力を寄越せぇ!」
「ああああっうぎぃっ」
「ひぃぃいいいああああっ!」
 ラクリマ・セクスアリスの怒声に魔女が悲鳴を上げ、その魔力が流れ出し強引に溶岩の中から跳躍して脱出した。だがその体はもう随分と溶けて形が変質していた。
「ごめんね、あなた達を救う手段は、これしか――」
 苦しむ魔女たちの姿に、ハルアは憐れみを覚えて表情が曇る。悲しみを滲ませ、そんな境遇を産み出した魔王へと怒りを籠めて天使の如き歌を紡ぐ。高らかに響く気高き歌は、仲間達の心に響きその内から輝くような力を湧き上がらせた。
「タフなようだけど、そろそろ形を保てなくなってきてるようだね。ならバラバラに切り刻めばただの泥水になるはずだ」
 力強く飛び出した蓮が刀で敵の胴を斬りつけ、蛇のように伸びる下半身を切断した。だが垂れ流される体液が伸びて下半身とくっつこうとする。
「そうはさせないよ」
 そこへ蓮は刀を魔動機銃に持ち替えて銃口を向ける。引き金を引くと竜言語と魔火薬を込めた竜星弾が放たれ、切断された下半身に当たると爆発を起こして大量の黒い液体が撒き散らされた。
「貴様ァ!」
 身体の大部分を失ったラクリマ・セクスアリスは怒りに赤い石を輝かせ、蓮に腕を叩きつける。それを蓮は地面を転がるように躱し、新たな弾丸を胸に撃ち込んだ。
「滅びろ滅びろ滅びろ……」
 ラクリマ・セクスアリスは呪詛のように辺りを毒沼に変え、全てを破壊せんとする。まさに大魔王として暴力の化身として周囲を腕で破壊した。その腕がハルアに向けられる。だがその顔にボールが投げつけられ、煙が巻き起こって狙いを外した。
「さあ、このまま一気に終わらせよう!」
 煙幕を張ったフェルトがダガーを投げつけ身体に突き立てた。
「グゥッ……こうなれば貴様らも取り込んで力を取り戻す。悲鳴を上げて喜べ!」
「うぅああぅ……」
「ひぃ、あああああっ」
 魔女たちの苦しむ声が響き、煙を払ってラクリマ・セクスアリスが接近する。
「悲鳴を上げるのは私でも魔女でもありません。貴方です」
 その前に絶奈が割り込み、胸に槍を突き入れた。
「まずは貴様からだ!」
 右腕が上から振り下ろされる。それに対して絶奈は下から剣を斬り上げ、腕を斬り飛ばした。ドシャッと囚われていた魔女が地面に落ちた。
「グアアアッ、糞、また力が減ったぞ!」
「やはり悲鳴を上げたのは其方でしたね」
 さらに絶奈が斬り掛かり、脚を何本も斬り落として動きを止めた。
「絶対にあなたを許しません!」
 ハルアは白い小型銃を向け、限界まで光を溜めて引き金を引く。放たれた光弾は真っ直ぐに飛んで魔王の顔を撃ち抜いた。よろめきその視線がハルアに向けられる。
「倒れないなら何度だって! その女の人達が苦しんだだけ、あなたも沢山痛い思いをしなさーい!」
 続けてハルアは光弾を連射し、魔王の身体に穴を空けていった。
「その通りだね。今まで苦しめた人の分まで痛みを味わうべきだ」
 そこへ蓮も加勢して弾丸を撃ち込む。すると右肩が吹き飛び大きな風穴が開いて、まともに動かせなくなった。
「道化師は人を笑わせる存在なんだ、だから人を悲しませるキミをやっつけて人々に笑顔を取り戻すよ!」
 仲間が作り出し隙にフェルトがダガーを投げつけ、顔にある欠けた石の中央に当てた。ひびの深くなった赤い石はバラバラに砕け散り、大魔王の身体がドロドロに溶け出した。
「ありえん……我がこのような虫けらに負けるなど……魔女よ、もっと力を……」
 溶けた体から魔女たちが解放され、地面に横たわる。その顔はもう苦悶に歪んでおらず、安らかに眠っているようだった。


 魔王も魔女もその死骸が全て消え去り、毒沼も元に戻ると後には甘ったるい匂いだけが残る。
「終わったか……安らかに眠れ……」
 敵が消え去るのを見届けた蓮が銃と刀を納め、魔女たちの事を想い黙祷した。
「これであの女の人達は少しは救われたでしょうか?」
 悲しそうにハルアは顔を俯かせ、このくらいしか出来ない自分の無力さを嘆く。
「ええ……此れでしか彼女達は救えませんでした。死ぬ事も許されずに利用され続ける……そんな地獄から解放されたのです。その魂はきっと救いを感じているでしょう」
 絶奈は励ますように声をかけ、深き迷宮の底から空を見上げる。そこには天井しか見えないが、魂は遥か遠くへと昇っていったのだろうと見送った。
「そうですね……きっとそうですよね!」
 少し元気を取り戻したハルアが歌い出す。美しい歌声は魂を天に導くように響いた――。
「まだ大魔王は他にもいるんだよね。全部倒してこの世界に平和を取り戻そう!」
 歌が終わるとフェルトがぴょんと跳ねて元気に腕を突き上げ、猟兵たちも同じように腕を上げて、まだまだ続くダンジョン攻略へ向けて気合を入れ直した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年02月14日


挿絵イラスト