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笑顔のためにひた走る

#アポカリプスヘル

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#アポカリプスヘル


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●道化と傀儡と奴隷が踊る
 荒れ果てた公園に設置された大型テント。その前に。鎖で繋がれ一列に並ばされた人間たちの姿がある。これから何が始まるのか……一様に不安そうな表情を浮かべた彼らの耳朶を、ハウリングするマイクの甲高い絶叫が貫いた。
『さぁさ皆さんお待ちかね! 今日もやってきましたァ――奴隷解放レースっ!』
 続く陽気な声音とともに、テントの屋根上から飛び降り眩い黄色の蝶ネクタイをピッと伸ばし、派手な衣装の道化が笑う。
『ルールは簡単、ウカツにも私たちオブリビオンに囚われてしまったマヌケな奴隷の皆さんはァ、全力で逃げる! 街の外まで逃げ延びられたらオーメーデートーゥ! 晴れて自由の身!!』
 ケタケタと笑う道化師は、跳ねるような動きで奴隷たち――元奪還者や、近隣の集落から拉致されてきた人間の枷を外していく。
『勿論これはゲームでありますからしてェ、ただ皆さんのマラソンを眺めて楽しいねってェわけには参りません。艱難辛苦を乗り越えてこそ自由ってのは有り難い! でしょう!!』
 全員分の枷を外したところで、演台に登りマイクをスタンドに設置した道化師は指を鳴らす。その音を聞きつけて、テントの中から緑色の機械人形達が現れた。下半身に比べて大型の、いびつな上半身は人を殺すという目的のために最適化された姿であることを、この荒廃した世界に生きるものはよく知っている。
『皆さんをこのウォーキングタンク君たちに追いかけて貰います! ええ、ええ。勿論捕捉されればBANG! 大砲の弾と仲良く合挽きミンチですからそのつもりで!』
 ふざけるなと、命を何だと思っているんだと。奴隷たちは胸中で憤ることが出来る程度には心を折られては居ない。絶対に逃げ延び、あわよくば一発食らわせてやるという気概に満ちている。だってそうだろう、折れて諦めきった木偶ではゲームが盛り上がらない。
 向けられる憎悪、敵意、殺意の熱視線を心地よく受け止めて、道化師はマイクを引っ掴む。
『まずは十分! 十分間自由に逃げて貰いましょう! その後でウォーキングタンク君たちが皆さんを追いかけますよォー! それから耳寄り情報を一つ! 街の至るところに私が集めた銃砲刀剣その他諸々が隠してありますからしてェ、それでウォーキングタンク君を破壊して逃げるのもルール的にはオールオッケーでございます! 智慧と勇気を駆使して無事逃げ延びて頂きたァい!!』
 マイクを放り投げれば、空中で号令用のピストルに変わったそれを道化師はキャッチ。
『よォーい、どォォん!!』
 空砲の乾いた破裂音とともに、奴隷たちは三々五々に駆け出した。

●殺人ゲームを食い止めろ
「道化師 【どうけ-し】。こっけいな芸を演じる人。また、それを職業とする人。ピエロ。クラウン。……これはそういう面白い相手じゃないみたい」
 電子辞書から視線を上げたヴィクトリカは、集まった猟兵達に事件のあらましを説明する。
 とある廃墟の都市。その中央公園に設置されたサーカスのテントに潜むオブリビオンが、捕らえた人間を使って残虐なゲームに興じている。
 殺されずに街から逃げ延びれば勝利、敗北は即ち死。だが追っ手は到底生身の人間では逃げ切れない殺戮機械人形とくれば、もともと勝たせるつもりなどない、ゲームとしても成立していない催しだ。道化がフェアプレーを謳って申し訳程度に市内に隠した武器も厚い装甲を持つ機械人形を撃破するにはあまりにも非力である。
 人の命が失われていくことを娯楽と楽しみ、観客なき無人の街で自分のためだけの演目を自分自身で演出する気狂いピエロ。それが今回の敵。
「本当に悪趣味だよね。それにこの道化、追っ手はウォーキングタンクだけ、みたいなことを言ってたけど……うん、たしかに追いかけていくのはそれだけなんだけど、町中のあちこちに別の機械人形を潜ませて逃走を妨害させてるの」
 こちらはあくまで人間より多少腕力が強い程度のロボットだが、武器を手に入れる前の奴隷たちでは到底敵わない相手だ。その上このロボットを相手取れるような武器の隠し場所付近には必ず配置されているというのだから、どこまでも勝たせるつもりはないらしい。
「こんなゲームは今回でお終いにしないとね。皆なら捕まった人達を無事に救出できるって信じてる。それじゃあ、行ってらっしゃい」


紅星ざーりゃ
 こんにちは、紅星ざーりゃです。
 今回もアポカリプスヘルにて、道化オブリビオンが主催する死のゲームを阻止するシナリオとなります。

 第一章では逃げる奴隷を街のあちこちに潜む機械人形から守ってください。
 機械人形は自分たちに与えられたテリトリーの外までは追ってきませんので逃がすだけならば簡単ですが、その縄張りには奴隷たちの為の武器や、この先逃げていくための食料や水などの物資が隠されています。人形を排除することで、ゲームを生き延びた後の生存確率を高めることが出来るでしょう。
 第二章では奴隷の追撃を開始した戦闘用機械人形、ウォーキングタンクとの戦闘となります。
 奴隷を守りながら、人間大で屋内や不整地でも機敏に動く小型戦車を相手に戦闘です。小型といえど火力は戦車並なので侮られませんよう。
 そして第三章にてこのフザけたゲームの主催にして唯一の観客であるオブリビオンとの決着となります。
 第一章で武器を手にし、第二章を生き延びた奴隷たちが居たならば、この道化との戦いに協力してくれることでしょう。
 皆さんの素敵なプレイングを楽しみにお待ちしております。
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第1章 冒険 『本日の娯楽は人間狩り』

POW   :    大胆に飛び出し全力で奴隷を守る

SPD   :    俊敏な動きで敵の行動を妨害する

WIZ   :    叡智を閃かせ華麗に奴隷を逃がす

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

チトセ・シロガネ
このゲーム考えたやつロクな頭してないネ。
あ、ロクなやつじゃなかったヨ。
(ピエロの姿を思い出す)

物資を見つけたらUC【光輝体系】を発動して奴隷の皆さんよりも先に前に飛び出して華麗に着地。
このビリビリした感じ、さっきの機械人形と同じ型の周波数カナ?

第六感で潜んでいる奴らを探し当てて、早業と怪力でグラップル!
奴らの電力を捕食しながらテキトーに振り回しておくネ。
皆さんは危ないから下がってるヨ!

とりあえず、一通り叩き潰したら皆さんと協力して水と食料をいくつか拝借。

ボクはそこら辺の人形の電気で賄えそうだから大丈夫そうネ。
あ、でも、ボクは悪い機械人形じゃないヨ!
とジョークを交えつつその場を離脱ネ。


フローラ・ソイレント
※アドリブ歓迎、共闘可

POW判定

・行動
手に持った『大型電磁針』をダウジングロッド風に構え
電磁波の乱れを感知して機械人形の場所を探す

テリトリーを見つけたら突入してUCで敵を無力化
物資を回収しながら奴隷参加者たちをケアする

・セリフ
(武器や食料を手渡しながら)
どうか諦めずに走り抜けてください

皆さんが逃げ切ってくれれば私たちがこの悪趣味なゲームを
ゲーム盤ごとひっくり返してみせます
(ぐっと手を握り)
一緒にあのにやけ面の道化師を吠え面に変えてやりましょう


・スキル
救助活動、医術、優しさ、コミュ力など




「む……むむ……」
 不安そうな表情の奴隷を背に、長大な針を両手に構えてその先端を凝視しながら歩くデッドマンの女がいる。
 フローラだ。電磁力に精通した磁極流活殺拳の使い手である彼女に掛かれば、その電磁針を用いたダウジングで機械人形が発する微弱な電磁波を捉え、その配置を知ることは――ひいてはそれらが守る物資の場所を見つけ出すことは容易い。
 容易い、のだが。
「弱い反応が複数に、ものすごく強い反応がひとつ……戦車人形の出力だとしても桁が一つ違いますし……うーん、気になりますね」
 何はともあれ、弱い反応は市内至るところに潜んでいるという機械人形のそれだろう。大きな反応はいまのところアテもなく市内をさまよっているようなので、どちらかが狙って移動しなければ鉢合わせることもあるまいと、フローラは奴隷たちを先導して機械人形が潜む商業ビルの方へと歩みを進めてゆく。
 荒れ果て、アスファルトを突き破った雑草が膝下までを覆い隠すような道路。
 街路樹は朽ち果て斃れ、誰も通ることのなくなった歩道を塞いでいる。
 崩落したビルの欠片が苔生し、得体のしれない虫がその上を這い回っている。
 典型的な死に絶えた都市の姿だ。レジスタンスとして多くの支配者との戦いに身を投じてきたフローラは、力及ばず――彼女が辿り着く前に――こうなってしまった都市もいくらか知っている。
 その上に胡座をかいてこんな殺人ゲームに興じる道化師を許してはおけない。そのヴォルテックエンジンの原動力たる反抗の衝動にその身を流れる電流の出力を高めながら、フローラ達は放棄された商業ビルの足下にたどり着いた。
 一階は衣料品フロア。二階は低価格の総合雑貨店。三階は書店で、四階はレストラン街。かつて世界にヒトの営みが満ちていた頃ならば何処にでもあったようなその建物は、今気狂い道化の玩具達によって制圧されている。
「この中に居ますね……私が突入して、物資を奪って出てきます。皆さんは隠れて待っていてください。良いですね、くれぐれも素手で加勢しようなんて考えないで」
 でも、と。助けに来てくれた若いデッドマンを一人で危険地帯に送り出すなんて、と勇気を出した奴隷の一人を、元奪還者だった別の奴隷が諌める。
「お嬢さんの言うとおりさ。素手の俺たちが束で加勢したって、あのクソピエロを大喜びさせるだけだ。――お嬢さんが武器を取ってきてくれれば、俺たち奪還者は戦える。だから今だけ、頼むな」
「ええ。皆さんが無事逃げ切ってさえくれれば、この悪趣味なゲームは私たちが盤ごとひっくり返してみせます。一緒にあのにやけ面を吠え面に変えてやりましょう」
「おうよ。今からその面拝むのが楽しみだぜ。なぁ、皆!」
 やつれた髭面の、しかし鋭い視線で初対面の自分に信頼を寄せる奪還者の男に頷いて、しっかと握った拳をぶつけ合ったフローラは商業ビル一階の元衣料品店へと踏み込んだ。
 街が棄てられたときのどさくさで奪われたのか、単純に風化によるものか――店内には丸裸のマネキンが打ち捨てられ、残された衣類もズタズタに引き裂かれたボロ布と化している。そんな店内のレジカウンター上に、これ見よがしに置かれたケース。フローラが蓋を開ければ、二丁の拳銃とその予備弾倉、そして数日分の保存食が詰め込まれている。
 目的のモノを見つけ、ルールには正直に、嘘偽り無くそれを置いていた道化師の律儀さになんとも言えない気持ちになりながら、フローラはその蓋を閉じて振り返る。
「――マネキンのフリでオレの目を騙せたとでも思ったのか? アンタらのビリビリした殺気、見落とす方が難しいぜ?」
 振り向きざまの拳一撃、両の五指を広げてフローラの頚を折るべく忍び寄っていたマネキン――機械人形が打たれて痙攣し、がしゃりと音を立ててひっくり返る。
「磁極流、情報破壊――お生憎、機械相手は得意なのさ」
 来いよ、と次を挑発するフローラの元へと次々殺到するマネキンの集団。それを片端から物言わぬ文字通りのマネキン人形に変えて、フローラは一人奮闘する。
 その時だ。ビルの外、奴隷たちが隠れた方向から悲鳴が聞こえた。
「なっ……手前ェ、仲間を呼ぶ機能とか付いてんのかよ!」
 聞いてないぞ、と焦るフローラ。彼女をビルから出すまいと、残りのマネキンどもがその進路に立ちふさがる。

「このゲーム考えたやつロクな頭してないネ。あ、ロクな奴じゃなかったヨ」
 グリモア猟兵が見せた開会式の中継映像。ケタケタと笑い、このイカれた殺人ゲームの開催を宣言したピエロの白塗り顔を思い出し、チトセはげんなりとため息ひとつ。
 全身を電気に変えて、廃ビルの屋上に生き残っている避雷針やアンテナを経由して上空を駆けるチトセ――フローラが感知した巨大な反応とは、チトセであった。
「うーん、さっきからなんかビリビリするヨ。この感じ、あっちこっちに居る機械人形とはちょっと違うみたいネ?」
 そしてチトセもまた、フローラが発する微量な探知用の電流を感じ取り、興味本位でそちらへと進路を変える。その先に居るのが戦車人形であれ何であれ、何かしらの“イイモノ”を見つけられる気がしたのだ。
 その途中で、電流と化した彼女の非実態の肉体を銃弾が貫いた。ダメージを与えること無く煤けた灰色の空へ吸い込まれていった弾丸は、ビルの屋上に潜む機械人形が放ったものだ。ボルトアクション狙撃銃を排莢し、次弾を込めてのっぺらぼうのマネキン顔を一丁前にスコープに押し当て狙撃姿勢を取ったその人形の頭上に落雷の如く着地したチトセ。光速の電光を悠長に狙撃できる暇などあろうはずもないのだ。
 実体化したヒールから伸びる刃でスコープを覗くツルツル頭を貫き、傷口から漏れる電流を吸い上げ消耗したパワーをそれなりに回復。ついでに狙撃銃を失敬して、チトセは再びビルの屋上を駆け抜ける。
「ンート、さっきの機械人形と同じ型の周波数がいっぱいに……さっきのビリビリが……戦ってるみたいネ?」
 びりりと感じる反応は、違和感を感じるそれが機械人形と交戦中であることを示している。
 機械人形とその反応が重なるたびに、機械人形の気配が消える。どうやらそれなりの使い手らしい。だが、
「うげェ、あのピエロ嫌がらせに本気出しすぎヨ」
 戦場となったビルの上階はおろか、近くのビルからもゾロゾロと姿を現す機械人形の反応。流石に他のビルに配置されていたものは外に出こそすれ、別のビルに突入してまで戦闘に介入できるほど個々のテリトリーは広くないようだが、それでもあのビルから命からがら脱出した途端にマネキン人形の群れとこんにちは、というのは中々に心折られる光景だろう。
「しょーがないネ、ボクも加勢するとしようかナ!」
 そうと決まれば光輝一閃、一直線に戦場へ飛ぶチトセ。
 見下ろせば商業ビルを囲むように立ち並び凝視するマネキンの群れ。出来の悪いパニックホラー映画のようだが、それに囲まれ追い立てられる襤褸布を纏った人間の一団も見える。
「ふーン、なるほどネ。あのビリビリはあのヒト達を助けてたノ」
 得心のいったチトセは落雷のように戦場の只中に落ち、適当に近場の人形の頭を鷲掴み。
「顔も無いし掴みやすいネ!」
 捉えた人形から電力を吸い上げ、動力を失い力を失った人形を他の人形に叩きつける。
「あ、アンタは……!?」
 突然現れた派手な女が次々人形をなぎ倒す姿に、奴隷たちを守ろうとしていた髭面が思わず声を掛けた。
「ボク? ボクは悪い機械人形じゃないヨ! 皆さんはとりあえず危ないから下がってるヨ!」
 お、おう。一騎当千、むしろ傍若無人。やりたい放題に電力を貪り人形を叩き壊すチトセの暴れぶりは、無秩序なようでいて踊るがごとく華麗。
 ビルの中で戦うフローラが最低限の所作で最大限の効果を叩き出す達人の拳法であるならば、外で戦うチトセはその優れた肉体スペックを駆使して最大限の威力を導き出す舞踏だ。
 ぞろぞろと集まった人形のうち、奴隷たちを脅かす――退路を塞ぐもの、近くまで迫れるものをなぎ倒して、チトセはそれまで拝借してきた武器や弾薬、水や食料をどさりと下ろす。
「ジャ、そういうことでボクは行くヨ! 皆無事に逃げ切ってネ!」
 現れたときと同じく唐突に突然に、落雷のごとく白い女は奴隷たちの前から姿を消した。

「皆さん、無事でしたか!?」
 唖然と空を見上げる奴隷たちは、商業ビル内の機械人形を制圧して物資を回収してきたフローラの声ではたと我に返る。
「あ、ああ。今……白い女が降ってきてな、この人形共をなぎ倒していって」
 あんたの仲間か? と問われれば、微妙な顔で多分そうだと応えるしか無い。
 少なくとも敵ではないのだろう。ということは猟兵の誰かだ。なぜ合流せず去っていったのかは分からないが、物資を置いていってくれたようでもある。
「何はともあれ、武器と食料を回収してきました。これであのマネキンもどきくらいなら相手に出来るはずです。でもなるべく戦いは避けて、隠れながら逃げてください。もし見つかっても、どうか諦めずに走り抜けて」
 物資を渡して街の中心部に向かうフローラを髭面男が呼び止める。
「アンタはどうするつもりなんだ、磁極流の使い手のお嬢さん……」
「私ですか? 追手を止めて、ついでにあの道化の横っ面に一発入れてきます!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サフィリア・ラズワルド
POWを選択

奴隷の誰かが……奴隷って言い方はなんか嫌だから、なんて呼ぼう?反逆者さん?
とりあえず誰かがいたら一緒に武器の所へ、隠してありそうな所をしらみ潰しに回ります。
機械人形はペンダントを【竜騎士の槍】に変えて【なぎ払い】ます!

武器を見つけたら『機械人形からは私達が守るからその武器はまだ使わないでください』と言います。
一緒に逃げるんじゃないかと問われたら

『えっと、ごめんなさい、あなた達をこのゲームの勝者にするつもりはありません、もちろん敗者にするつもりもありません。主催者に一発叩き込みたいと思いませんか?一緒にこのゲームをぶち壊しましょう!』とやる気満々で槍を掲げます。

アドリブ協力歓迎です。


アヴァロマリア・イーシュヴァリエ
たくさんの機械人形には、たくさんのウォーマシンさん達で対抗するね。

ヘルパーさん達にお願いして、レースの参加者が自力で対抗出来るようにお手伝いしてもらうの。
時間稼ぎで武器を確保するまで人形を抑えて、破壊工作で戦いやすい環境にして貰って、情報収集で集めた人形の弱点とかを助言して貰いましょう。

この世界の人達は頑張り屋さんも多いみたいだし、全部助けてあげるよりこういう形の方が勇気も元気も出て来ると思うの。

大変な世界だけど、それに負けないくらい強い心で生きてる人がいっぱいだもの。みんなで頑張ればきっと、素敵な世界に出来るはず、ね!




「奴隷の……」
 みんな、と言いかけて、サフィリアは眉根を寄せて口を噤んだ。
 その様子に怪訝な表情を浮かべる奴隷たちに、彼女は困った表情のまま問いかける。
「ええと、奴隷って言い方はなんか嫌だから、なんて呼んだらいい?」
 そう言われても、と奴隷たちも困惑顔だ。数分後にはあの戦車人形が追跡を開始する以上、ひとりひとり自己紹介する余裕はない。かといって集団をひとまとめに表現するのが困難な程度には、奴隷たちの素性はバラバラだ。
 男がいる。女がいる。老人が居る。青年がいる。子供がいる。農民がいる。行商人がいる。奪還者がいる。
 なんて呼んだらいいと言われても、である。
「じゃあ、反逆者さんでいいんじゃないかな」
 困惑する奴隷、あらため反逆者たちに助け舟を出したのは、キラキラ輝く宝石髪の少女、アヴァロマリアだ。幼い彼女はスペースシップワールド出身。数多ある世界の中で、反逆を成し遂げ解放を掴み取った数少ない世界であり、いわば反逆の総本家から来た彼女がそう言うのだから、あの気狂いピエロに抗う意志を捨てていない奴隷たちは紛れもなく反逆者と呼んでいいだろう。
「えと、じゃあ反逆者の皆、聞いてください」
 もう間もなく、戦車人形による追撃が開始される。その焦燥感に包まれる彼らを前に、サフィリアは敢えて足を止め、振り返る。
「ごめんなさい。私はあなた達をこのゲームの勝者にするつもりはありません」
 どういうことだ。助けに来てくれたんじゃないのか。突然見捨てるような言葉を投げかけられ、困惑からサフィリアを非難する人々。それをアヴァロマリアの呼び出したヘルパー、非戦闘型の小さなウォーマシンたちが身振り手振りでちょこまかと宥めて回る。それでも、一度芽生えたサフィリアへの不信は燻ったまま。
「あ、違います。勿論皆さんを敗者にするつもりもありません。ねぇ皆さん――」
 あの道化の敷いたルールの中で勝ち負けを演じるのって、なんだか癪じゃないですか。
 サフィリアの言葉は、勝って逃げ延びるという彼らの堅い意志に一滴の水のように染み込み、その闘志を柔らかくほぐして、それでいて鋭利な戦意へと作り変えていく。
「主催者に一発叩き込みたいと思いませんか?」
 ――当たり前だ。あのクソ野郎に思い知らせてやる。
 ――俺たちの屈辱に償いを。
 ――悪に報いが無いなんて許せない。
「それなら……それなら、私たちと一緒にこのゲームをぶち壊しましょう!」
 おお、と拳を握りしめ武器を手にしてサフィリアの言葉に頷く彼らは、今この時を以て真の反逆者となる。
「すごいね。皆のやる気がどんどん上がっていくみたい」
 竜の少女の鼓舞によって、その足取りは力強く、隠してあるという武器や物資を探す為に危険を承知で廃墟の建物に踏み込んでいく彼らの背中を見て、アヴァロマリアはヘルパー達に言葉をかける。
「この世界の人達は頑張り屋さんも多いみたいだし、全部やってあげるんじゃなくて手助けしてあげて?」
 こくこくと頷き、人間一人に数体ずつ付いていくヘルパー。あれでそれなりに優秀なセンサーを積んでおり、力もある機体たちだ。反逆者たちの助けとなることは間違いないだろう。その分レンタル料も高かったが。
「……クーポンがあってよかったね」
 クーポンで半額に出来たのでアヴァロマリアのお財布でもなんとかセーフ、だったらしい。

「あったぞ! 武器だ!」
 本当か! その叫び声に、次々と人々が駆け寄り歓声を上げる。
「こっちにもだ! すげぇ、こんな銃奪還者稼業してたときにも見たこと無いぜ」
 凄いな! グレネードランチャーを取り付けた最新式――世界が滅ぶ前の基準でだが――のアサルトライフルを掲げて喜ぶ元奪還者の男。
 かつて市内を周回する環状モノレールが使用していた駅。その駅舎構内で、そこかしこに放置されたケースから立派な武器が次々に現れる。
 ともすれば戦車人形にすら通用するかも知れない、対物ライフルのような武器もある。あくまでゲーム、これは切り札だぞと言わんばかりに弾薬は一発、装填されたもののみだったりもするが、それでも強力な武器には変わりない。
 勝機を見出し喜ぶ反逆者達。だが、その歓声も一瞬で戦慄のどよめきに変わる。
 モノレール用の高架を駆けて迫るのは、下半身を車輪型に改造され、両手にピストルを握りしめた機械人形の車列だ。
 つるりとした顔のない頭が停車駅で呑気に武器を集めていた人間どもを見つめて銃の狙いを定める。
「ビビるな、俺たちだって今は銃を持ってる! 撃ち落としてやれ!」
 誰かの鼓舞に銃口を上げ、迫る人形に狙い定める反逆者達。たとえ農民でも、生きるために銃の扱いは必須だ。若い女でさえサブマシンガンを構えて、それを確実に射落とせる距離まで息を殺して待ち受ける。
 だが、高速で移動しながらも正確な狙いを付けられる人形のほうが射程は長い。アサルトライフルですら当たるかどうか、という距離で既に引鉄に指を掛けている人形たち。
 このまま奴らが発砲すれば、抵抗する人間たちひとりひとりの額に向こう側が見渡せる穴が開くことになる。
 だから。手助けしてやれと言われたヘルパー達は、アヴァロマリアの願いを叶えるために立ち上がった。
 小さな身体でレールの上に立ちふさがり、迫る人形共の車輪を押し止める。一機では非力でも、力を合わせれば。先頭を行く人形の車輪が火花を散らして強制停止させられ、後続が次々とその背中に衝突する衝撃で振り落とされたヘルパーたちが地上に落ちてゆく。
 その貴重な数秒の減速、停止。その間に残ったヘルパーたちがレールを捻じ曲げ破壊して、これ以上の接近を止めた。
「ロボット達が……あの子達の献身を無駄にしちゃダメだ!」
 反撃を。切り札を切るのは今だ。その判断は人間らしい情に満ちていて、そして戦術的には失格だ。
「ダメです。あれの相手は私達が。皆さんは私達が守りますから、その武器はまだ使わないでください!」
 捻じ曲げられたレールの上を駆け抜けるのはサフィリア。反撃にいきり立つ人々を諌め、その武器は強力な追手や道化師に使うべきだと諭して、ペンダントを槍に変貌させた彼女が機械人形達に躍りかかる。
 ヘルパーウォーマシンによって足止めされた先頭の一体を串刺しに。そいつを槍に引っ掛けたまま、後続を思い切り薙ぎ払ってレールから叩き落とす。
 落ちていきながら撃った反撃の銃弾が掠め、銀の髪を数本はらりと切り裂いて空へ消えていく――当たっていないならば気にすること無く、次々と狭いレールの上、最小限の動きで弾丸を躱して機械人形を突き落としていく銀の竜騎士。
「す、すげぇ…………」
 その美しくも苛烈な戦いぶりに、誰かが思わず感嘆の吐息を零す。
「みんなもサフィリアさんに負けないくらいすごいよ。こんな大変な世界で、それに負けないくらい強い心で生きてる。今だって悔しさに負けないで、勝つために頑張ってる。だから」
 皆で力を合わせてあのピエロをやっつけて、素敵な世界を取り戻そう。
 アヴァロマリアの言葉を受けて、人々の闘志はより一層燃えたぎる。それまでの無秩序な勢いだけの炎から、協力しあい一つの目標を達成するための強かで眩い炎へと。
 それはそれとして。
「ヘルパーさん壊れちゃった。修理代のクーポンはなかったよね……」
 頑張った結果、転落して全損とはいかずとも小破している地上のヘルパーウォーマシンを覗き込むように高架上の駅から見下ろして、マリアはちょっぴりため息気分なのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

仇死原・アンナ
アドリブ絡みOK

命を弄ぶような輩を生かしてはならない…
そして弄ばれようとしている命を護らねばなるまい…
私は狩人…処刑人だ!

縄張りに入り敵を[挑発しおびき寄せ]て逃走者達を[かばおう]

敵の攻撃を[見切り]で回避
鞭で縛る[マヒ攻撃]、妖刀による[串刺しと鎧無視攻撃]で敵を破壊しよう

【十二匹の怒れる悪魔】を召喚し敵だけを攻撃するように命令、八つ裂きにして鉄屑に返してやろう…

武器と物資を逃走者達に渡したら、別の縄張りに入り敵を破壊し武器と物資を確保してゆこう…

来い…狩られるのは貴様らのほうだ!!!


メイスン・ドットハック
【WIZ】
悪趣味なピエロがおるようじゃのー
それじゃ唯一の観戦者様が喜ぶ展開を提供してやるとしようかのー

奴隷を襲おうとする機械に人形をレーザー砲ユニットで攻撃して破壊
破壊した頭部を電脳【ハッキング・情報収集】を行い、ネットワーク経由か同タイプの機械人形の周波起動を特定して、機械人形達の位置を割り出す
それが成功したら、UC「月夜に跳梁跋扈せし銀郎」を発動して、人狼部隊を機械人形の攻撃進路予定地に派遣
【罠使い・地形の利用・破壊工作】を駆使し、電脳地雷・電磁グレネードなどで敵を破壊・無力化していく

やはりこういう機械相手じゃとやりやすいのー、僕は

アドリブ絡みOK




「う、うわぁぁぁっ!!」
 年若い少年が、見つけた銃を大事に抱えて路地を走る。
 もとが何だったのかわからないような風化しきったドロドロの黒い液体が溜まったバケツを蹴っ飛ばし、折れた配管を跳んで潜って必死に逃げる少年。
 それを追いかけるのは目鼻もない、つるりとした卵型の頭の機械じかけのマネキン人形だ。
 ヒトの形を真似ていながら、関節をゴキゴキとあらぬ方向に折り曲げヒトにあるまじき挙動で狭い路地を疾走する機械人形に、少年は恐怖の声を堪えきれない。
 叫べば他の人形を引き寄せてしまうかもしれない。戦車人形に気づかれてしまうかもしれない。
 それでも叫ばずには居られない。ピッタリと一定の距離を空けて、少年が疲れきり足を止めるのを今か今かとその無貌に喜色を浮かべるが如く首をカクカクと振り乱して追い立ててくるその人形は、あまりにも不気味であまりにも残酷だ。
「ひ、ひぃ……ひっ、やだ、来るな! 来るなよォ!!」
 たった五発。荒野に生まれ育った少年はその重みを知っている。リボルバーに込められた弾丸は、ここぞという時まで使ってはいけない――大人たちは銃を使うとき、少年に何度もそう語って聞かせていた。
 引き金が軽い人間は無用なトラブルを呼ぶばかりでなく、本当の危険に直面したときに無防備だ。
 本当の危険とはきっと、戦車人形のことを指すのだろう。殺すためだけに放たれた狩人、あれから身を守るためにこの弾丸は大切に使わなければ。――でも、じゃあこのマネキン人形は本当の危険じゃないのか?
 こいつに捕まったって殺されるに決まっている。少年は目に涙を浮かべ、死にたくないという一心で半狂乱になって立ち止まり、振り返る。真っ直ぐに向けられた銃口は、子供らしからぬ正確さで人形の頭部を捉え――否。
 銃口にこつりと額を当てて、顔のない人形が少年の両肩に手を置いた。
 捕まえた、とでも言うように激しく首を揺らす人形。
 少年が引き金を引くより早く、人形が少年の両腕を引きちぎるだろう。
「あ、ぁあ……」
 死は残酷なのではない、ただひたすら平等なだけだ。誰が言った言葉だったか。行商キャラバンの護衛の、どこか格好いい奪還者の男の言葉だった気がする。ベースの大人に頼まれて、子どもたちに銃の使い方を教えてくれた先生が確かそう言っていた。
 先生の嘘つき。死は残酷じゃないか。だってこんなにも、羽虫の羽をちぎって遊ぶような喜色を浮かべて、この人形は――飼い主である道化も――僕らを殺そうとしている。
 その時だ。
「悪趣味なピエロがおるようじゃのー」
 こんな場にはふさわしくない声音とともに、降り注ぐ光条がとっさ飛び退る人形と少年の間を薙ぎ払う。
「命を弄ぶような輩を生かしてはならない……」
 レーザーの掃射で赤熱するアスファルトへと、黒衣が降り立つ。
「そして弄ばれようとしている命を守らねばなるまい……」
 赤黒い刀身をしゃらりと抜いて、少年を守るように立つその姿は死神の如く。だが、その大鎌は少年ではなく人形の首筋にひたと添えられるだろう。
 昏く輝く妖刀を突きつけ、死神――処刑人アンナは人形を睨みつける。
「来い。狩られるのは貴様らの方だ!!!!」

「ふふ、飛び入り参加に唯一の観戦者様は大喜びみたいじゃのー」
 路地を見下ろすビルの屋上で、牽制を仕掛けた浮遊レーザー砲をついと押しのけ、道化師の「目」として少年と人形の追走劇を監視していた人形の首をころころと転がすメイスン。追跡者の視点だけでなく、俯瞰視点まで欲してあの趣味の悪いゲームを眺めていた道化は、各所での猟兵の参戦に大喜びで機械人形共のテリトリーを緩めたらしい。
 あくまで所定の地点に縛られるという大原則は変わらないが、その範囲がやや広くなったのだろう。
 胴体を木っ端微塵に撃ち抜いて、残った頭部経由でハッキングを仕掛け敵の動きを手にとるように理解しているメイスンは、脇目も振らずここへと集まってくる人形たちを感知している。
「暗号化もガバガバ、電子戦なんて想定外ってことかのー。ま、僕にはやりやすくてありがたい相手だけどのー」
 もともと機械相手の戦いであれば指折りのハッカーであるメイスンが、電子戦防御など考慮もされていない人形共を相手にすればその情報を盗み見ることなど朝飯前。
 流石に原始的すぎる制御システムは却って介入が難しかったが、動きを把握できるだけでもかなりの有利だ。
「それじゃ、あとは任せたけーのー」
 掴み上げた人形の首をぽいと放れば、見えざる人狼の工兵部隊が迫る人形の群れを殲滅するべく迅速に活動を開始する。
 路地に罠を仕掛けよ。あるいは道に面した建物に。なんとなれば建物を破壊することで罠へと導く新たなルートを形成し、メイスンの指揮下で瞬く間に人狼たちは決して通れぬ死の迷宮を築き上げた。
 その完成と同じくして、周囲一帯で起爆した電磁爆雷が人形の増援部隊を一掃する。
「さーて、さっきのあいつは他のとは少し違うようじゃけどのー」
 手足を複雑に折り曲げ、不気味に体節を蠢かせて少年を追い回していた人形と、黒衣の処刑人との戦い。その結末を見届けるべく、メイスンは屋上の縁から身を乗り出した。

 妖刀が風を斬り裂き、間一髪で仰け反る人形はそれを紙一重回避する。
 その姿勢のまま、生物には到底不可能であろう動作で放たれる人形の連続打撃。もはや手なのか足なのかすら定かならぬ金属とプラスチックの四肢による殴打を、アンナもギリギリを見切って躱し受け流す。
 一撃が重く、そして素早い人形の連打。受ければ吹き飛ばされるのは必定、されど大きく躱せば背に守る少年へとこの不気味に蠢く人形は一息で襲いかかるだろう。
 狭い路地、そもそも前後を除けば十分に回避を試みられるスペースすらあるかどうか怪しい。隙間に合わせて柔軟に身体を組み替える人形ならばまだしも、アンナは自由を制限された状態でよく持ちこたえていた。
 十数度目の斬撃を回避した人形が、道化の真似をするようにケタケタと首を震わせる。
 お前の斬撃など届かぬのだと嘲笑う。表情のない、感情を持ち合わせない人形でありながらその悪意はよくも表現できるものだ。
 アンナは不快さに微かに眉を顰め、そして――この瞬間、人形がアンナの斬撃を完全に見切り、優位を学習したその時まで温存していた二つ目の武器を解き放つ。
 フレイル、またはモーニングスター。棘付き鉄球の投擲は、剣とは異なる軌跡を描いて無貌の人形の顔面をしたたか打ち据えた。
 ついでアンナの握る柄と鉄球をつなぐ鎖が、複雑怪奇に入り組んだ人形の四肢に絡みつきじゃぎりと唸る。
「捕らえた……!」
 アンナの身体を、黒衣を切り裂いて炎が噴き出す。並の炎ではない。地獄を構成するような、尋常ならざる炎。そしてその炎から、十二の悪魔が這い出る。
 その牙を滴るは猛毒の唾液。その爪はあらゆるものを切り裂く鋼。そしてそれらを用いた拷問に精通する怒れる悪魔たち。そして彼らは罪人を苛む獄卒である。
「獄卒共、貴様らの力を寄越せ……!」
 アンナの怒りに悪魔たちも同調する。その道化への憤怒の強さを認め、悪魔たちはアンナではなく眼前の道化の使者たる人形へと飛びかかった。
 鎖を引きちぎろうと抵抗する四肢に齧りつき毒で腐らせ、関節に鉄の爪をねじ込み強引に分解してのける。
 蟻が死んだ蜘蛛に群がるが如く人形を解体してゆく悪魔達が、各々お気に入りの部品を奪って去りゆけば、残されたのは人形のコアたるトルソーと、無貌を恐怖に引きつらせるように顎を引いて揺れる頭部のみ。
 それを妖刀でとすんと貫き完全に人形を停止させ、鞭を引き寄せ刀を納めたアンナは振り返る。
「無事ね……それを持って他の仲間に合流しなさい」
「あ……ぁ、は、はいっ!」
 大事に銃を抱えて逃げてゆく少年を見送って、アンナは次なる人形の縄張りへと歩を進めてゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

緋月・透乃
ほへー、ゲーム形式で奴隷を殺したいとは趣味が悪いねぇ。
とはいえ、勝ち目があるのなら案外楽しそうな気もするね。
参戦して楽しんだ上で道化師の予想していなかった結果にしてやりたいね。

目標は運搬に苦労しない程度に物資を集めた上で、奴隷を逃がすこと!
とりあいず1人は奴隷を見つけて、護衛のように一緒に行動するよ。
私が先頭になって、曲がり角などの死角に気をつけつつ進んでいくよ。
人形を見つけたら一気に接近して菲刃滅墜衝での一撃必殺を狙っていくよ!
その間、奴隷には周囲の警戒をしておいてもらうといいかな。
武器を見つけても、奴隷にはできるだけ戦闘はさせないようにしておこう。生き延びるために今は我慢してもらうよ。


セラエ・プレイアデス
実はボク、こういうゲームは嫌いじゃないんだよねェ……
こんなふざけた事やっちゃうくらいに優位を信じて疑わない奴ら、喉元カッ捌いてやるとサイコーの表情するんだもん。

機械人形どもは同じ型なのかな?
んでそれが沢山居るならボクにとっちゃいい食事だよ。
まず一体、【忍び足】から【暗殺】の要領でUCで【捕食】。
出来れば搭載された回路とかからデータとか思考パターンとかを【学習力】で読み取るよ。
そうすればテリトリーの範囲とかから逆算してどのくらいの間隔で配備されてて、どの辺に物資があるかもとか分かるかも。
後はそれを逃げる奴隷達を見つけ次第教えたりしつつ機械人形どもを辻斬りならぬ辻食いしていくね。




「ほへー、ゲーム形式で奴隷を殺したいとは趣味が悪いねぇ」
 ぽややんと気楽な声音で道化の「ゲーム」を悪趣味だと断ずるのは、ヒリつく乾いた廃墟の風に大胆に肌を晒した若い女。
 彼女は巨大な重戦斧を肩に担ぎ、きょろきょろと助けるべき奴隷を探す彼女は透乃。
「そう? 実はボク、こういうゲームは嫌いじゃないんだよねェ……」
 趣味が悪いゲームを嫌いではないと笑うのは、中性的な美貌にニコニコとした笑顔を浮かべるセラエだ。
「こんなフザけた事やっちゃうくらい自分が優位だって信じて疑わない奴らってさ、喉元掻っ捌いてやるとサイコーの表情するんだもん」
 楽しいよね、と笑うセラエ。
「主催者はブッ飛ばしたいけど、そこまではちょっとね……」
 過激なセラエに愛想笑いを返して、しかし透乃も気合をひとつ。
「とはいえ、しっかり勝ちの目も用意してあるならゲームに乗るのも案外楽しいかもね」
「ふぅん? なんで?」
 手っ取り早く盤面を叩き割ってプレイヤーに直接攻撃すればいいじゃない、と肩を竦めたセラエへと、透乃は愛想笑いを笑顔に変えて、何でも楽しむ彼女の信条を乗せて伝える。
「参戦して楽しんだ上で、道化師の予想してなかったような結果にしてやりたいじゃない!」
 周到に用意したゲームが、ゲームとして機能したまま番狂わせに遭う。
 ゲーム自体が破壊されれば、あの手の愉快犯は一旦全てをリセットして再起を図る。外から無理矢理に壊されたんだ、次はうまくやろうと自分に言い訳を立てられる。
 だが、自分の定めたルールの中でゲームの勝敗を覆された時、負けを認めざるを得ない時ああいう連中は“終わる”のだ。
「そういうものかぁ。まあ、なんにしてもまずは――」
「人形共を食い尽くす!」「運べるだけの物資を集めて奴隷を逃がす!」
「「……あれ?」」
 何やら齟齬があったようだが、この二人はそれをそれ以上追求しない。
 兎にも角にも助けるべき奴隷を見つけなければ話が始まらないし、奴隷を見つければ必然的にそれを追い回す人形にも出会うだろう。
 頷きあった二人の猟兵が駆け回れば、程なくして道の端、廃墟の壁により掛かるようにして座り込む若い女を見つける。
「居たよセラエ! ねぇちょっと、あんた大丈夫なの?」
「どうしたんだい? こんなところで座り込んでたらすぐ殺られちゃうよ?」
 二人が身をかがめて女の肩を揺するが、女は虚ろな表情で二人を見ているのかいないのか、ゆさゆさとされるがままに身体を前後させるばかり。
「なにか見ちゃって心が折れちゃったのかも知れない。そうならボクらには手の施しようが――」
 残念だけど、と言いかけたところでぐぎゅるう、と盛大に誰かの腹の虫が鳴いた。

「なんだ、お腹が空いてただけだったのね!」
「本当に……なんてお礼を言ったらいいか……こんな甘いお野菜を食べたのは何年ぶりでしょう……」
 ハムスターかなにかのように頬を膨らませ、両手で握りしめた一本の大きな人参をこりこりと齧りながら歩く奴隷の女性。
 彼女にとっておきの人参を一本譲り渡した透乃は、美味しそうにそれを頬張る姿に笑みを浮かべて彼女を先導する。
 人参好きに悪い人間は居まい。だったら、彼女は何としても守ってあげよう。
「そうだね、新鮮な野菜なんてめったに手に入らないもんねえ」
 よほど大規模の農場であれば、商品として作物を流通させることもあるだろう。けれど大抵の農村や農場は、自分たちの食い扶持を保つので精一杯だ。多少の余裕が出来ても、レイダー達によって奪われたり保存食として蓄えたり、市場に出回ることはあまりない。
「ボクもそのうち農場に貰いにいこうかな」
 以前助けた農場は快く野菜をくれることだろう。それを楽しみに、女性を挟んで最後尾を歩くセラエ。
 三人が奇襲に備えるように一列で周辺を警戒しながら進むうち、透乃がふと立ち止まった。
 曲がり角にぴたりと背をつけ、そっと向こうを覗き込む彼女は、振り返って続く二人に首を振る。
 続けて指を立て、角の向こうに見えるだけで十を超える人形が待ち構えているとハンドサイン。
「っ……」
 咄嗟、懐に手を入れる女性。普段銃を持ち歩いていた奪還者や傭兵なのだろう。その動きに無駄はないようだと、それを見ていた二人は感じた。とはいえ今は素手だ。戦闘経験があっても戦力として数えることは出来ない。
「あんたはここで見張りをしててくれるかな。……今は、ね。武器を取ってきたらその時は手伝って貰うからね」
 自らの非力を自覚して、こくりと頷く女性にニッと明るい笑顔を向けて、重戦斧を提げて戦いに意識を切り替える透乃。機械人形は数ばかり居るようだが、戦って楽しそうな相手には見えない――本命は道化、もしかするとその前に戦車人形が楽しませてくれるかも――期待に胸膨らませ、まずは眼前の障害物を排除しよう――そんな透乃の横をすり抜け、一足先に戦場に突っ込んでいくのはセラエだ。
「どれもこれも同じ型、数ばっかりたくさん用意してくれてるね! ボクには丁度いいおやつだよ!」
 強襲、あるいは奇襲。疾走するセラエは群れから逸れた一体を早々に捕らえて喰らい、その搭載された電子頭脳から彼らの性能や思考ルーチンを学習する。
 仲間が喰われ、セラエという敵が現れたことに一拍遅れで気づいた人形たちが隊伍を組み、拳銃を抜いて曲撃ちめいた射撃姿勢を取ったところでタイミングをずらして突入した透乃の巨大な重戦斧が塵を巻き上げ竜巻のごとく、人形共の胸の高さでぐるりと一回転。セラエに気を取られ、密集して銃隊を組んだ人形は軒並み真っ二つに叩き切られて砕け散る。
「――ズバッと一発真っ二つ! 菲刃滅墜衝!! さあ次、かかってきなさい!」
「やるじゃん透乃! ボクの食べる分もちゃんと残しておいてよ!」
 斧が人形を砕き、牙が彼らを貪り喰らう。
 ほんの数十秒の戦闘で、人形たちは自ら装備していた銃と守っていた物資だけを残して消滅した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

イデアール・モラクス
【PPP】
なかなか趣味の悪いゲームを考えるオブリビオンがいるものだ、まるでダークセイヴァーの吸血鬼みたいじゃないか。
そういう調子こいた奴をぶっ潰すのは大好きだ!

・行動
魔導ビットを放ち周囲を索敵、物資と機械人形の位置を把握したら空中より街を睥睨してUC【鏖殺魔剣陣】を『全力魔法』で威力を増し、『範囲攻撃』で空を埋め尽くすほどの数に増やした上で『属性攻撃』で《電撃》を纏わせ、『高速詠唱』を用いて『一斉射撃』と『乱れ撃ち』による二種の『制圧射撃』を敢行し機械人形達を『蹂躙』
「脅威は私が全て掃除してやる、物資を手に取れ!反逆の時が来たぞ!」
その後は引き続きサーチアンドデストロイを継続。

※アドリブ歓迎


フィーナ・ステラガーデン
【PPP】
楽しそうなことしてるわね!次BANG!されるのはあんた達よ!
かまうこたあ無いわ!正面突破よ!
街中の機械人形見つけたら次々どかーんすればいいんじゃないかしら!どかーん!って!
なんかいい感じにうまい具合いくわよ!
逃げ惑ってる人はさほど興味ないわね!逃げたきゃ逃げればいいんじゃないかしら!
破壊してる最中に武器とか発見したらそのままにしておくわ!
使いたい奴は使えばいいわよ!
それにしても人形ばかりだと張り合いがないわね!
さっきうっとうしく盛り上がってた奴はどこかしら?
爆破しつつ道化師を探して進軍するわ!

(アレンジアドリブ大歓迎!)


アリシア・マクリントック
【PPP】
このような非道な行い、決して許すわけにはいきません!こんなゲーム、台無しにしてあげます!

私の剣は護る剣。奴隷のみなさんを護るのが最優先です。向かってくる機械人形の悉くを斬り捨てて見せます!マリアにはみなさんを勇気づけたり、フォローをお願いしましょう。

隠されている物資が重要ということですが……そこの守りは硬いはず。増えた機械人形のに囲まれそうになったら変身です!八艘翔びで一気に数を減らしてしまいましょう!
物資を見つけたらマリアに運搬を手伝ってもらいます。廃材などでソリが作れれば物資だけでなく、小さい子供くらいなら一緒に運べるかもしれません。材料にできるものがあるといいのですが。


アイ・リスパー
【PPP】
「人々をもてあそぶオブリビオン……
許せませんね!」

ここは奴隷の皆さんが武器や食料を手に入れられるように、邪魔な機械人形たちを排除しましょう。

街を一望できる高い建物の屋上に位置取り【チューリングの神託機械】を発動。
電脳空間に接続し情報処理能力を高めます。
そして、現実世界に実体化させた『小型宇宙戦艦ティターニア』と『機動戦車オベイロン』のセンサー情報を取得。
街中の機械人形たちの位置を把握します。

「位置さえ分かれば、ここから全て倒すのみ!」

【超伝導リニアカタパルト】を展開。
拾った空薬莢を質量弾体として発射。機械人形を撃ち抜いていきましょう。

「次のターゲットに行きます!
砲身強制冷却!」




 猟兵たちの多くが奴隷の保護を優先して街中を駆け回っている中、少しだけ趣を異にする集団があった。
 朽ち果て苔生し、巨大な石碑めいた屍を晒す高層ビルの屋上に立つ三人。PPP開発室所属のフィーナとイデアール、そしてお助け外人枠のアイだ。
「まるでダークセイヴァーの吸血鬼みたいじゃないか」
 捕らえた奴隷を使って殺人ゲームに興じる趣味の悪さは、吸血貴族どもに並ぶ下衆だ。
 不愉快極まる。奴隷は大切に愛し壊してこそだというのに、くだらない遊戯で消費するとは。
 イデアールが怒りに拳を震わせる。とはいえ正義の義憤というよりは、一回限りのゲームで使い潰すくらいならイキの良い奴隷を選んで横から掻っ攫ってやりたいといった欲望の比率が大きい。なんてもったいないことをする野郎なんだ。
「フン、まあいい……こういう調子こいた支配者気取りをぶっ潰すのは大好きだからな!」
「はい、そうですね……人々を弄ぶオブリビオン、絶対に許せません!」
 一方純粋無垢に怒りの炎を燃やすアイは、テキパキと神託機械に自らの頭脳を接続して情報処理能力を高めていく。
 同じく電子戦を得意とする猟兵達が展開していることを照会すれば、彼女たちのログにアクセスを申請――すぐさま承認。戦闘記録や彼女たちの得た情報をもとに、大まかな敵の配置をこの町の地図にマッピングしていく。
 そのうえで、アイはさらなる正確な情報を求め頭上に彼女のための妖精女王を召喚す。
 くすんだ灰色の空を切り裂いて現出する、電脳の宇宙を征く船影。彼女のための宇宙戦艦ティターニアが都市上空にその力の象徴たる優美な姿を見せれば、その複合レーダーシステムがアイのマッピングをもとに敵の潜むであろうエリアへと強力なレーダー照射を浴びせ、あるいは赤外線やX線など様々な手段を用いて一体一体の立ち位置を正確に地図上に反映させていく。
「おふたりとも、ティターニアが観測手を務めます。ここから人形を狙撃して、奴隷の皆さんに危険が及ぶ前に排除してしまいましょう!」
「なるほど楽しそうね!」
 嬉々として杖を振り回すフィーナは、アイの提案に獰猛な笑みを以て返答する。
「奴隷狩りなんて“楽しそうなこと”してる連中を一方的にBANG! してやるなんて最高ね!」
「うむ。ここからなら街のこちら側の人形はきれいに掃除できそうだな。クク……一方的に攻撃される恐怖を人形共に教え込んでやろうじゃないか」
 まるで狙撃手の如くその杖を銃身のように屋上の縁から突き出したフィーナと、堂々腕を組み、屋上でも一段高いエアコンの室外機の上で召喚した魔導ビットを次々と複製し空に放つイデアール。
「位置さえわかっていれば、ここから全て倒すのみです!」
 そして架空仮想の超電導物質のレールを顕現させ、リニアライフルを作り上げたアイが、ここに来るまでに拾い上げた薬莢――きっと以前に行われたこの遊戯の犠牲者たちの遺物だろう――をレールの狭間にすっと押し込める。
「皆さん、むやみな攻撃は崩落による二次災害を誘発しかねません。狙いは正確に、人形を排除しましょう!」
 トリガー。超高速に加速した薬莢は空中で溶解し、一塊の小さな礫となって廃ビルの薄壁を貫き屋内の人形を貫通破壊する。
「マクスウェル、砲身強制冷却! ティターニア、次目標の位置情報送信! 次のターゲット、捉えました! ……行きます!」
 無数の飛礫が人形共を貫いていく一方で、黒衣の妖艶なる魔女は召喚したビットを一斉に市内に降下させていた。
 薄雲の中で静電気に身を晒し、電力を蓄積したビット群は建物内部で待機する人形たちを発見するなり一斉に放電し、まさに雷の直撃の如き高電圧でその機構を焼き切ってゆく。
 制御困難な雷撃が隠された物資にまで伸びれば、放電済みのビットがそれに割り込み物資を守りつつ給電、次の人形に襲いかかる。見事な魔導制御が成す奇襲制圧攻撃に、人形たちは為す術もなく斃れてゆく。
「二人共やるじゃない! 私もなんかいい感じにうまい具合にいくわよ!」
 とはいえ、フィーナの魔導は二人ほど緻密な高精度狙撃などは難しい。できないわけではないが、二人ほどの速度で敵を殲滅するなら精度を多少犠牲にせねばならず、それでは人形に攻撃を気取られ逃げられ――最悪、その途中で人形に鉢合わせた奴隷が犠牲になるリスクは避け得ない。
「…………かまうこたあないわ! 正面突破よ面制圧よ!」
 吹っ飛べこんにゃろ。良くも悪くも自立している彼女は、眼下の町中で逃げ惑う人々への配慮というものが――ないではないが、他の猟兵たちほど手厚くはない。
 逃げたきゃ逃げるし巻き込まれたくなきゃ離れるでしょ。そんなドライな思惑とともに、構えた杖の先端に灯る巨大な火球が凝縮し、野球ボール大になってティターニアが示す敵の潜伏する大型の商業施設へと飛翔し――大爆発。
「それにしても人形ばかりぶっ飛ばしても張り合いないわね! さっきうっとうしく盛り上がってた奴はどこにいるのかしら! イデアール、アイ、適当に人形ボコり終わったら探しに行くわよ!!」

 人形の撃滅を最優先に掲げる猟兵がいる一方で、大多数の猟兵は奴隷の保護を優先して活動している。
 アリシアもそんな猟兵の一人だ。緑色の高層ビル、その屋上に突如出現した飛行戦艦の姿にざわめく奴隷たちに心配することはないと声をかけ、彼女は相棒のマリアとともに奴隷の逃避行を護衛する。
 廃材で組み上げたソリに幼い少女――本来なら親元で大切に庇護されるべき年頃の奴隷を載せ、それを引っ張り歩くマリア。道化の支配下で少女の母親代わりを努めていたらしい中年女性がその隣をゆく。
 ついてきてもらってよかった――アリシア一人ではもっと手間取っていただろう。賢い動物のように人語を繰るわけではないが、同じくらい賢く強いマリアの手助けにアリシアは感謝して、奴隷たちに大丈夫、と何度目かの鼓舞。
「あの船は私の仲間のものです。あそこから道化師の追手を食い止めてくれる手筈になっていますから」
 そうこう言っているうちに、リニアライフルのばしゅ、ばしゅんと独特な銃声が響き、天から形ある落雷が降り注ぐ。
 人形をのみ狙い撃つ支援攻撃は、アリシアたちがこれから駆け抜けようとする道の先、テリトリーに踏み込んだものから襲いかかろうと潜む人形を射抜いて撃ち倒した。
「今です皆さん、全力で走って!」
 今なら人形に襲われることはない。アリシアの声に弾かれたように奴隷たちが一斉に走り出し、安全な道へと抜けていく。
 先頭をアリシアが行き、狙撃を免れた人形がチラホラと路上にまで這い出してきたのを剣で貫き無力化しながら奴隷を導き、マリアは子供の乗った重たいソリを引きながら決して遅れることなくその後ろをついて行く。
 遠距離攻撃によって妨害を受けた殆どの人形たちは、彼女らが駆け抜けたあとにようやく道に飛び出すが、その頃にはアリシアたちはとうに彼らの縄張りの外だ。
 逃げ切れる。これなら全員助けられる。アリシアが勝利を確信し、それでも気を緩めることなく不意打ち気味に内側から窓を破って掴みかかってきた人形を斬り払ったところで、少女の絶叫がその耳を打った。
「おばさんっ!!」
 とっさ振り返れば、少女を励ましていた中年女性が何かにつまずいたのか、地面に蹲り赤い血の流れる膝を抱えている。
「ワンちゃん行きなさい! その子を連れて逃げて!!」
 ぞろぞろと人形が迫る中、女性は助けて、でも怖い、でもなくマリアに少女を連れて逃げるように頼み込む。
 一番近くに居たマリアならば、いま引き返せば女性も助けられるかもしれない。だが、女性までソリに乗せれば速度が落ちるのは必定。それで人形に追いつかれない保証もない。
 どうすればいいのか。困ったように女性と少女の間で視線をさまよわせるマリアに、アリシアは貴族――民を統べる者として凛と告ぐ。
「その人の言う通り、あなたは前を向いて走りなさい!」
 その声に、まっすぐ前を向き、涙を流して手をのばす少女を引っ張って駆け出したマリア。
 彼女とすれ違いアリシアはもと来た道を引き返す。
「私の脚では間に合わない……でも、絶対に諦めません! 変身!!」
 その想いに応えて、白亜の鎧がアリシアを包む。主の力を増強するアーマーに身を包み、風より速く駆けるアリシア。
「掴まってください、早く!」
 人形たちはもう手を伸ばせば触れられそうな距離まで迫っている。女性を抱き上げ、間髪入れずに跳躍。
 滑り込んできた人形の頭を蹴り潰し、大きく跳んで奴隷たちのもとへと舞い戻る。
 直後、人形たちの津波の如き追撃へと小さな火球が飛び込み――肌を焦がすような熱風とともに、膨れ上がった火焔がそれらを軒並み飲み込んだ。
 焦げ付く風を浴びながら生還を喜ぶ奴隷たち。少女もソリを飛び降り、女性とひしりと抱きしめあっている。
「こんな人達を戯れに殺す、こんな非道な行いを決して許すわけにはいきません。貴族として、民の上に立つものとして……このゲーム、必ず台無しにしてあげます!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

葛葉・アリス
【恋華荘】
まったく、悪趣味にもほどがあるわね
下衆の考えることはどの世界でも一緒かしら
ま、ゲームだというのなら、こちらが勝たせてもらうわよ?

私自身はジャバウォックに乗って移動するわ
※ジャバウォックは電脳悪魔、イメージは某チョコボ
…この幼い身体だと広い範囲を移動するにも疲れるのよ、仕方ないでしょ?
それにジャバウォックのもふもふの毛並みは癒されるし…ってそうじゃない
…これが気になるの、理緒?
2人くらいなら乗れるけど?

【エレクトロレギオン】で蝗型のレギオンを大量に飛ばし、理緒と合わせて周辺偵察
情報は逐一私の電脳を通して統合し、逃げる人たちに伝達
危険から遠ざけ、武器を入手させ、時には援護していきましょ


菫宮・理緒
【恋華荘】
アリスさんと初依頼がんばるね。
って、え? なんだかすごいの乗ってる!
さ、さすがかみさま……。

『奴隷』とかちょーっと好きになれないので、全力で助けるね。

と。いうことで、
【E.C.O.M.S】を使って逃走を援護。

上空から状況を把握して、
敵や武器のある場所を指示したり、
危ないときは、盾にしたりしていこう

レギオン2人分なら、数もなんとかなるはず。

逃げている人たちが武器を手に入れたら、
そのまま戦ってもらえるようにも呼びかけてみるよ。

ただ
「機械人形には複数で」
「タンクには絶対手を出さない」だけは、
守ってもらいたいな。。

ゲームは『勝敗』があるんだってこと、
ピエロたちに解らせてあげないとねっ。




「アリスさんと初めての任務……頑張らないと」
 同じ電脳魔術士として、みっともないところを見せるわけにはいかない。それに何より、「奴隷」なんてものを好きになれそうもない理緒は、その卓越した技量で制御される無数の八角錐を従えて、共に出撃したはずの仲間を待っていた。
「待たせたわね、理緒」
 幼い神にしては高い位置からの声に、ふと顔を上げた理緒は、そこで見知った女神ではなくダチョウめいた姿形にふわふわの毛並みを蓄えた謎の生物の顔を見て仰天する。
「えっ!? アリスさん?! いつからそんな姿に……」
「何を言っているのかしらね理緒は。私はここよ」
 その背中からひょいと顔を覗かせた小さき女神、アリス。その顔を見て理緒はほっと胸を撫で下ろす。生命体の埒外である猟兵、その中でも人智を越えた神族であるアリスだ。もしかして本当の姿はこの謎の生き物なのかもしれないと思ったり思わなかったりしたのを気取られぬようにうつむき隠して、さすがかみさまだとアリスを無難に讃えておく。
「この状況で“流石”ってどういう意味かしら」
「えっと……凄いのに乗ってる、って」
 謎生物――アリスの従える電脳の人造悪魔にして、魔導によって操られし生きた戦車、ジャバウォック。いろいろな意味で凄いそれも、アリスにしてみれば見慣れた従僕だ。
「……この幼い身体だとこんな広い街を彷徨くのは疲れるのよ。仕方ないでしょ?」
 だからアリスはその言葉を、わざわざ乗り物を用意したのかと問う言葉だと理解して少し拗ねたように言い返す。本調子ではない幼い身体で、まして神である自分が理緒の足を引っ張るわけにはいかないから、と。
「あっ、そういうわけじゃないですよ! それにしてももふもふですね! これ!」
 それに慌てて理緒がジャバウォックを褒めれば、従僕を評価されて主が嬉しくないはずもなく。アリスは見た目相応の少女の笑顔で、そうでしょうと頷いた。
「ジャバウォックのもふもふの毛並みは癒やされるわよ。……理緒も気になるのかしら?」
 だったら、とアリスはジャバウォックの背から手を差し伸べる。
「理緒も乗ってみる?」

 荒廃した都市、少女を二人背に乗せて往くジャバウォック。手綱を握るアリスと、その背中に掴まって普段より一段高い新鮮な視界を満喫する理緒。
「それにしても」
 ふとアリスが口を開く。手綱を片手で繰り、開いて空に向けたもう一方の掌に蝗型の小さな機械人形を作り出して放ちながら、後ろに座る理緒に振り返る。
「悪趣味にも程があるわね。下衆の考えることは何処の世界でも一緒なのかしら」
 腐りきった支配者が一方的な力を手に入れ、虐げられる人々をその手中に置いた時、往々にしてこういった不愉快な遊戯が始まる事がある。
 神として、この幼い身体で受肉する以前にはそういう邪なものを征伐したこともあったりなかったりするアリスにすれば、世界が違っても、文明が滅んでも、負の面は不変のヒト種への呆れも出ようというもの。
「でも、この世界の人達は戦おうとしてます。まだ諦めてないなら、かみさまの救いがあるんじゃないですか?」
 理緒の言葉に、僅かに目を丸くして――それからふん、と小さく鼻息一つ、アリスは当然よと胸を張る。
「あの道化師がこれをゲームだというのなら、こちらが勝たせてもらうわよ理緒」
「はい! ゲームには“勝敗”があるんだってこと、あのピエロに解らせてあげないとですね!」
 最後の蝗が飛び立った。同時に理緒も、無機質な八角錐の群れを街中に解き放つ。
 蝗と八角錐、両者合わせて五百にも達する神の御使いたちは、町中で今だ猟兵と合流できず、身を隠しながら進む奴隷たちに神託を下す。
 それは物資までの道であり、機械人形の潜む暗がりの場所であり、希望へ導き絶望を避ける為の言の葉である。
 それに導かれるままに、奴隷たちは自由を勝ち取るための武器を、飢えた身体に活力を取り戻す食料や水を手に入れてゆく。
 人形の妨害には惜しみなく御使いをぶつけて目を晦まし、奴隷たちがしっかりと戦う術を取り戻すまで戦闘に巻き込ませない。二人は言葉を交わさずとも、このことは互いに暗黙の了解として配下を繰っていた。
 そうして、二人が見つけた奴隷たちは各々に武器を手に入れ、そのために我が身を呈して自分たちを守ってくれた御使いたちに口々に感謝を伝えてくれる。
「……悪くない気分ね」
「ふふっ。そうですね、アリスさん」
 反撃開始だ。武器を持っていても、人形相手には絶対に複数で各個撃破を。
 戦車人形を見つけたときは、絶対に相手をせずに逃げに徹するように。
 これからあの気狂い道化に逆転勝利を見せつけに行くのだ。一人も欠けず、完全で完璧な圧勝を見せてやろうじゃないか。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

カイム・クローバー
この世界にはロクな主催者が居ないのな。奴隷狩りだ人間狩りだとつまらねぇモン、考案すんのは天才的なのによ。ま、その思惑を叩き潰すのはこっちとしても気分良いから、お互い様だが。

まずは宝探しか。UCを使って本体と分身に分ける。俺(本体)は機械人形を破壊し、時間の許す限り武器や水、食料を入手。分身には万一に備えて、奴隷を守る役割と…後は気楽なお喋りでもして貰うか。命の掛かった状況でそんな気分じゃないってのはあるだろう。けど、肩肘張ってガチガチになるよりは何人かで雑談でも楽しんだ方がいざと言う時に動けると思うぜ。
機械人形には二丁銃で【二回攻撃】、紫雷の【属性攻撃】。機械に故障は付き物さ。安心して眠りな。


レナ・ヴァレンタイン
悪趣味は下らんコメディに変えてやるのが私の趣味でね
救出ついでに馬鹿正直に隠された物資すべて、我々で持っていってやろうじゃないか諸君

とりあえず奴隷には私のナイフと拳銃を貸そう
無いよりはマシだが無駄な反撃は止せ、逃げることを優先しろ

ユーベルコードで鴉を呼び出し、広域展開
あらゆる建物や通り、ゴミ箱やらなんやら、くまなく調べさせつつどの位置に物資があるか、敵がいるかを偵察
隠し物資の位置と敵の位置を逐一モニターし、他の猟兵にも情報提供
可能な限り手早く回収と敵掃討を目指す
敵と遭遇した場合は鴉を体当たりさせると同時に物理反射でスッ転ばせ、あとはアームドフォートでトドメを刺す

さあ、面白おかしい逆転劇といこうか




「この世界にはロクな主催者が居ないのな」
 奴隷狩り、人間狩り。つまらないイベントをよくもまあ様々なバリエーションで思いつくものだとカイムは呆れ混じりに肩を竦める。
「ま、その思惑を叩き潰すのはこっちとしても気分いいからお互い様か」
「気が合うじゃないか、きみ。悪趣味は下らんコメディに変えてやるのが私の趣味でね」
 転送されて早々に保護した奴隷たちに、万が一の護身用にと手持ちのナイフと拳銃を貸し与え、その使い方のレクチャーを終えたレナが戻ってくるなり、カイムのつぶやきに笑みで応えた。
「どうだい。彼らの救出ついでに、馬鹿正直な道化が隠した物資、我々で全部根こそぎ一つも残さず持っていってやろうじゃないか」
 ただの負けじゃない、徹底的に屈辱的な大敗北をニヤけた顔面に叩きつけて悠々立ち去ってやろう。そんなレナの提案に、カイムも楽しげにほほえみ返す。
「いいねえ、乗ったぜ。だったら奴隷連中にもあんなピエロ知ったことかってくらいの気概で気持ちよく逃げてもらおうじゃねえか」
 ふと死角からもうひとりのカイムが現れる。影に潜むもの、ドッペルゲンガー。カイムの忠実な複製が奴隷たちの方へと歩み寄って、彼らの緊張を和らげるように本物さながらの軽妙なトークを披露する。
 またたく間に彼らと打ち解け、故郷の話、好きなものの話――生きて帰って、それから何をしたい。何を食べたい。誰に会いたい――そういう話題で、奴隷たちの連帯を強め、生還への意志を固めてゆくのを背に、カイムは廃墟の都市へと歩みを進める。
「なるほど、彼が護衛というわけか。道具だけ貸したのでは少し不安だったけれど、あれなら安心だ。きみくらいには強いんだろう?」
「もちろん。ちょっと煩いのが玉に瑕だがな……」
 そればっかりは性分だ、と戯けるカイム。それならしょうがあるまいと、レナも配下の鴉たちを呼び出した。
「私の眷属もかぁかぁとそれなりに煩いんだけどね。お互い様ということで勘弁してくれ」
 ばさ、と翼を広げて飛んでゆく鴉。彼らは空からあらゆる道を見張り、窓から建物の中を覗い、鴉らしくゴミ箱をひっくり返してでも有用な物資を探し集めることだろう。
 彼ら自身で持ち運べない、銃器のような荷物は――
「ほうら、なにか見つけたみたいだ。早速拾いに行こうか」
 静まり返った街に大きく響く鴉の声。レナとカイムはそれを頼りに効率よく物資を回収してゆく。

「思った以上に効率よく集まっていくもんだな、鴉さまさまだぜ」
「私の眷属は有能なんだよ。モノ集め以外にも――」
 先行する鴉がカァと鳴けば、その警告どおりに建物からマネキン人形が飛び出してきた。
 そこに鴉が体当たり、奇襲の出鼻を挫かれた人形がすっ転び、その身体に躓いて後続のマネキン人形たちもドタバタと引っくり返ってゆく。まさに喜劇、レナの望むとおりのコメディが繰り広げられてゆく。
「こういう戦闘のサポートだってお手の物なのさ」
 すいと構えた散弾砲が、鈍い砲声とともに礫をぶち撒け人形共に無数の穴を穿ち殺す。
 そのあまりの威力に残骸が吹き散らされ、足下の障害物が消えたことでようやく格好を保って二人の前に躍り出たマネキン人形には、カイムの二丁拳銃の出迎えだ。
 連続して放たれた弾丸が足下を穿ち、正確に回避行動を取る人形を愉快に踊らせる。
 そうして位置取りを修正し、追い込んだところへと紫雷を帯びた本命が放たれ、その駆動回路を膨大な電流で焼き切り沈黙させた。
「機械に故障は付き物さ。安心して眠りな」
「やるじゃないか。さあさあ、この調子で物資を集めてしまおう。彼らが首を長くして待っているだろうさ」
 もっと多く。そして迅速に。二人の猟兵は力を合わせ、道化の許には火薬一粒、ビスケット一欠片すら残してやらぬと根こそぎ物資を徴発していった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

山猫・ラン子
(ゴンちゃんと一緒)
くだらないゲームしてるわね。人間助けるの?
ゴンは優しすぎるわね。甘やかしてもいいことないわよ。まったく。

・ゴンちゃんバイクのサイドカーに乗る
・サイドカーに裁きの雷撃「ガトリングガン」を備え付け
・奴隷には興味ない。たまにイライラしたように急かす
・機械人形に邪魔されたり、別に邪魔されてなくても目に入ればガトリングガン発射
・運転は完全にゴンちゃん任せで「私は敵を滅する一匹の弾丸」とかしっくりする中二ワードをあーでもないこーでもないと考えてる
・考えつつも「野生の感」を張り巡らせ、危険察知を行う

(アレンジアドリブ大歓迎!)


レッグ・ワート
そんじゃ逃がしにかかろうか。

先ずは迷彩起こしたドローンを空へ。救助対象連中の流れや逃走経路の情報収集だ。ついでにあちらさんの通信網も探すかな。もしあったとして、壊すかあえて残して都合よく観せるかは形式や余裕によるよ。……GPS仕込まれてるような奴はいねえよな?とまれ助っ人不足か遠方の人流れがあれば、運転する宇宙バイクとばして合流。必要なら応急手当もしつつ、そのまま護衛といこう。人手十分&あえて街中に留める手をとらない場合は、退路まわりの敵潰して安全確保でもしとこうか。
交戦時は一般をかばうのも視野に、鉄骨ぶん殴りと武器受けが基本。腕脚相当のどっかに糸ひっかけて怪力で引く時間稼ぎや妨害も考えてる。


龍神家乃・ゴンちゃん
【WIZ】
(連携アドリブ大歓迎)

ラン子ちゃん(f24742)と皆を逃がすためにバイクで街中を駆け回るでし!

サイドカーをつけた【ゴンちゃんバイク】を駆り、逃げ惑う人間さん達の前に颯爽と登場。

「HEY!Guys!ゴンちゃんたちが道案内するでし!ついてきてくだし!」

自前の嗅覚・聴覚を使い、機械人形の鉄臭さや血のニオイを避け、極力接敵しないように努める。

接敵した場合は横に乗るランちゃんの銃器で応戦してくれるのでゴンちゃんは敵の攻撃を避けるのに専念するでしよ。

「死なばもろともでしー!!(突撃)」




「ぼちぼち逃げの向きも定まった頃合いかね」
 無秩序に散らばり逃げ回っていた奴隷たちも、猟兵の奮闘で幾つかのグループに纏まりつつある。装備が整い、人数が揃えば多少の妨害に屈することもないだろう。
 上空を飛ぶ迷彩ドローンが送る空撮映像を確認し、レグはこの後の方針を手早く纏めていく。
 逃げるうちにはぐれ、集団に合流しそこねて孤立している奴隷たちのピックアップを第一に。第二に、大多数を破壊されながらも未だに市内各所で動きを見せる機械人形の分析を。
「電脳魔術士連中がもう取っかかってるとは思うけどな。もしかしたら機械には機械の目で見て分かることもあるかもしれんし」
 誰にともなく呟いて、ドローンにより詳細な偵察を指示出ししてレグはバイクに跨った。
 宇宙バイク――とは言うものの、重力下では通常のバイクと何ら変わりない移動手段となるそれは、果たして主の要求に十全の力で応じて走り出す。
 並のバイクでは追いつけない速度で駆けるレグ――尤も、彼に並走しようなどと考えるライダーはこの街には居ないはずだ。道化師の手に落ち、奴隷と人形以外に動くもののないこの街には――
「おらおらーっ道を開けるでし!」
「ゴン! ゴン!? スピード出しすぎよゴン!?」
 ――なんか走ってった。レグの見間違いでなければ、今追い越していったあれは、
「サイドカー付きのバイク……猟兵の持ち込みか?」
 いやでも、それにしたって。
「乗ってたの犬猫に見えたが……」

 その犬猫こと、竜神さんちのゴンちゃんと山猫のラン子は、ちっちゃくて無骨なバイクに跨り、あるいはサイドカーに収まって荒れた道路を疾走していた。
 こらそこ、肉球お手々でどうやって運転してるとか言わない。ゴンちゃんは賢い動物の戦車乗りにしてスクラップビルダー、乗り物の扱いに関しては不可能など無いのだ。
「しかたないでし。少しだけスピード落とすでし」
 超特急で逃げる人間の下へ駆けつけたかったゴンちゃんだが、ラン子がそろそろ猫にあるまじき顔をしそうだったので速度を落とす。
「や、やっとマトモに乗ってられるわ……あ、ゴン。そこ左ね」
「うぇぇ、左は敵の匂いぷんぷんでしよぉ。ほんとに曲がるんでしか?」
 風圧で吹っ飛ばされないように必死でシートに爪を立てていたラン子が姿勢を直し、サイドカーに据え付けたガトリングガンに取り付いた。
「だって敵の多い方ならアナタの助けたい人間だって居る可能性が高いじゃない。いいから左に曲がる!」
 自慢の嗅覚で機械人形を嗅ぎ分け、敵の少ない方へハンドルを切ろうとしていたゴンちゃん。だがそれをラン子が無理矢理に敵の多い方へと進ませる。
 猫の動体視力を持ってすれば、移動中のバイクからでもかさこそと蠢く人形共の姿はよく見える。それを遠慮も容赦も情けも無用の掃射で粉々に粉砕して、ラン子は肉球を伝いヒゲの先まで揺らす重火器の心地よい震えにうっとりと目を細める。
「私は破壊を振りまく……なんか違うわね、私は……私は敵を滅する一匹の弾丸……これだわ」
「何言ってるんでし、ランちゃん?」
 ハンドルを握ってノリノリのゴンちゃんが落ち着けば、トリガーを握ってノリノリになるラン子。なんだかんだこの二匹は釣り合いが取れているのかもしれない。
「なんでも無いわよ。それより人間助けに行くの? ゴンは優しすぎるわ、あんな連中甘やかしてもいいことないわよ、まったく」
「そうかなあ。ほねっことかくれるかもしれないでしよ?」
 駆け抜ける銃座と化した二匹は、手当たりしだいに人形を壊しながら当てもなく彷徨う。

「いや何だあれ」
 何なんだろうね。ドローンの空撮映像に映るサイドカー付きバイク。それにライドオンした柴犬と黒猫。そして撒き散らされる機関砲の掃射。穴だらけになるビル。砕ける人形。レグは考えるのをやめた。
 何はともあれはぐれた奴隷の救出だ。先程から微動だにしていない、しかし生体反応を示す人影へとレグはハンドルを切った。すぐに見えてきた人影は、胸を押さえて蹲る老人。
「オイオイ、大丈夫かね。爺さん、爺さん聞こえるか。どうした?」
 バイクを停め駆け寄る。不用意に動かさないように慎重にその肩を叩きながら、カメラアイで老人の容態をスキャニング。異常な発汗、苦しそうな表情、心拍数の異常。
「医者じゃねえから治療って訳にもいかないが……爺さんあんた人間だよな? ちっと痛いが我慢してくれよ」
 バイクに積んであった救護パックから注射器をひとつつかみ取り、躊躇なく老人の胸へ薬剤を送り込む。
「効け、効け……よし」
 レグの想いが通じたか、老人の表情がすっと和らぐ。スペースシップワールドの進んだ医療が作り出した緊急用応急薬、そのうち血圧を正常化するナノマシンを含んだそれが、老人の命を救ったのだ。
「爺さん、わかるか? 今からお前さんを逃がすから、バイクに乗せるからな。しっかり捕まる元気はまだないだろうから、ちっと乱暴だが後ろに括り付けて――」
 そこまで言って、レグは落ちていた鉄骨を拾い上げる。
「その前に退路周りの敵潰してくるから息整えててくれ」
 わさわさと廃墟から這い出してきた人形へ、機械じかけの奪還支援機は長大な金属塊を振るって挑みかかる。

「HEY! Guys! ゴンちゃんたちが道案内するでし! ついてきてくだし!」
「Yeah!」
「なにこれ」
 なんだろうね。元レイダーです、と言わんばかりのモヒカン集団を引き連れ駆け抜けるゴンちゃんのバイク。サイドカーで呆れたように丸くなるラン子。
「なにこれじゃねえぜ子猫ちゃん! 俺たちゃ泣く子も黙るモヒー・カンプ運送の社員一同! どこぞのベースへの宅配中にあのピエロに拉致られたのさ!」
「全員まとめて?」
「ヒャッハー! いや、はい。お恥ずかしい限りで……でもトラックをあの戦車人形に壊されたんですよしょうが無いでしょ……しょうがないぜェーッ!!」
 今ちょっと素が出てたでしね。ゴンちゃんのツッコミが風にのって後方を走るモヒカン達に直撃する。
「ていうかバイクに脚力だけで付いてこれるならトラック要らないんじゃないのアナタ達」
 その発送はなかったって顔をするモヒカンども。そして前を指差し口パクパク。
「柴の兄貴ィ、子猫ちゃん! 前、前!」
「前がどうしたのよ? ってゴン! ブレーキ、ブレーキ!」
 前方にはがっちり鏃型の陣形を組んでゴンちゃんたち一行を待ち伏せる人形たち。ラン子のガトリング掃射でもこの距離まで近づいては掃討が間に合わない。故にブレーキで減速しろと言っているのにゴンちゃんはむしろやる気満々。
「ランちゃんはそのままぶっ放すでし! 死なばもろともでしー!!」
 減速一切なしのハイスピード突撃。流石に轢かれたら壊れるので人形も面食らって逃げる。ヤケクソになったラン子のガトリングがその背中を撃ち抜く。一瞬で大混乱に陥った人形たちを自慢の脚力で蹴飛ばして強行突破するモヒカン達。
「やっぱあいつらトラックとか要らないんじゃないの……」
 なにはともあれ。
「なんとか逃げ切ったでしね……とりあえず他の皆と合流するでし!!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『ウォーキングタンク』

POW   :    機銃掃射
【砲塔上部の重機関銃】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    対猟兵弾
【対猟兵用の砲弾を装填した主砲(連続砲撃)】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
WIZ   :    キャニスター弾
単純で重い【散弾】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。

イラスト:良之助

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 かしゅん、かしゅん。
 人形たちの潜む町を駆け抜け、物資を手にした奴隷たちの耳を打つ金属の擦れる音。
 かしゅん、かしゅん。
 一歩を踏み出すごとにサスペンションを撓ませて、上半身を僅かも揺らさず滑るように走行する緑のヒトガタ。
 否。それをヒトガタと呼ぶのはあまりにも歪。ほっそりとした、女性的とも思える手足。だがその滑らかなラインを描く四肢は無骨な鉄板によってシルエットを整えられた紛い物。その隙間からは、人工筋肉の灰色の繊維が覗き、手足が蠢く度にみしりみしりとゴムチューブめいたその束は擦れ合い軋んでいる。
 その手足が支えるのは胴体ではなく、まして頭でもなかった。
 箱型のボディは、胴体として評するならば哺乳類より昆虫の胸部に近い。
 その上面に付くのは脳と感覚器官からなる頭部にあらず、砲とセンサーからなる砲塔だ。
 旋回式のそれをくるくると回転させて周囲を見回し、逃げる奴隷を追う猟犬の名はウォーキング・タンク。戦闘車両が立ち入れぬような閉所で装甲と火力を歩兵に供給するため生み出された軍用の人形である。
 気狂い道化が何処で大量の軍用人形を入手したのかはさておき、人類とともに戦い人類を守るために生み出された自律兵器は今、狂人の掌中で人を狩る極めて凶悪なマンハンターと化してしまった。
 猟兵や奴隷たちが残していった戦闘の痕跡を辿り、刻一刻と迫る殺人機械の群れ。君たちは奴隷を守りながら、迫る無慈悲な鉄火の嵐を打ち破らねばならない。

『――いやいやいやいや! 猟兵の参戦、一時はどうなることかと思いましたがァ! こりゃ面白ォい! 一方的な残虐ショーもそれはそれで大変愉快な見世物ですけどねェ……』
 猟兵達の戦いを街中に潜む監視用人形の目を通して視ていた道化がテントの中に誂えたシアターで、諸手を叩いて歓喜する。
『こんなに白熱した接戦はやっぱり燃えちゃいまぁすねェ? だって私も男の子だもの! あっはっはっはっはっは! そいじゃ猟兵の皆さんの健闘を祈って! かんぱーイ!』
 湿気ったポップコーンをざらざらと大口に放り込み、それをぬるい缶ビールで流し込んで道化は自ら仕掛けたゲームの行く末を期待に満ちた眼差しで見守っている。
 否、笑顔の張り付いたその顔で、その目だけは笑ってはいない。
『…………ウギギギ、でもやっぱりくーやーしーいー! せっかく仕掛けた人形君たちが一方的にボコられるなんて! ウォーキングタンク君、カタキウチは頼んだよォ!!』
サフィリア・ラズワルド
WIZを選択

知っている方もいると思いますが機械だからこそ楽な倒し方があるんですよ!私達と機械の違いってなんでしょう?優秀なコンピューターを持っている?疲労や痛みを感じない?そうです!

『仲間を攻撃してしまうかもなんて考えていません、命令されているので引き際も考えていません、そこを利用するんです!』

敵の群れの中へ飛び込み大振りな動きで攻撃を避けまくります。敵の攻撃が敵に当たるように誘導するだけで攻撃はしません。敵のUCが発動されそうになったら【アイテムの宝石袋】で【竜の箱庭】へ逃げて攻撃が止んだら戻ってきます。

『ただ一つ残念なのは仕留めても食べられないことです。』

アドリブ協力歓迎です。


アヴァロマリア・イーシュヴァリエ
あの大きいのは、マリア達でやっつけないと危ない、ね。
でも大砲とかは強そうだけど、変な形……あれなら転ばせるのがいいかな?

サイコキネシスで瓦礫を動かして、膝裏にぶつけたり、踏み込む足の下に滑り込ませたりして、バランスを崩して倒しちゃおう。
上手く倒れたら、周りの砂や土を砲口に詰め込んでみるね。
爆発したら他の人形も吹き飛ばせるし、それで倒れたらまた同じようにしてどんどん爆弾代わりにしていこうね。

反逆者さん達は危ないから下がっててね?
マリアの後ろにいれば、オーラ防御で守れるから。

これが済んだらあとはあのピエロさんだけだから、待ってて!




「もしかしたらこの中には知っている方も居るかも知れませんが――」
 駅舎に潜み、武器を構えた反逆者たちにサフィリアは自動人形との戦い方を講義する。
 中には元奪還者で、それを知るものも居るだろう。だが、入植者や商人、農民……銃を扱ったことはあっても、本格的な戦いを知らないものも数多い。だからこその授業。戦いに勝つために必要な要素は怯まぬ勇気であり、強力な装備であり、何より敵を知り、己を知って立案する戦術だ。勇気はある。装備も整った。後は知識を身につけるだけ。
「敵は火力も装甲も強力な機械ですが、機械だからこそ楽な倒し方もあるんです」
 それは一体何なのか。
 人間と異なり、強固な装甲で鎧った身体は強靭そのもの。疲れを知らず、破壊されるか弾薬を使い切るか燃料が尽きるまで動き続ける。その上搭載した頭脳は人間の数倍以上の速さで物事を判断し、それを正確に迅速に機体に反映させる。
 反逆者たちが機械の如何に強力かを問えば、サフィリアはその全てにそのとおりと頷いた。
「じゃあ勝てないんじゃないの?」
 反逆者を代表してアヴァロマリアが問う。もちろん彼女は、自動機械に戦力の大部分を依存していた銀河帝国と戦ったこともある宇宙の民。その弱点も攻略法も熟知した上で、猟兵に異を唱えがたい人々の代わりに問うたのだ。
「いいえ、勝てます。彼らのコンピューターは確かに優秀で間違うことはないでしょう。だから仲間を攻撃してしまうかもなんて考えていません。彼らは疲れ知らずで戦います。だから命令を果たすその時まで引き際を考えずに戦います。そこを利用するんです!」
 その方法をお見せしますね、とサフィリアが胸を叩いた直後、駅舎を揺らす爆発音。対人散弾を装填した戦車人形が地上に集結し、人間の隠れ潜む駅舎から獲物を追い出そうと砲撃を開始したのだ。
「来たね。あの大砲のは、さすがにマリアたちでやっつけないと危ない、ね」
「そうですね、ですが皆さん。さっき言った通り、機械の強みはそのまま弱みになります。しっかり見ていてくださいね!」
 ホームから地上に飛び降り、戦車隊に近づいていくサフィリア。
 すかさず散弾が放たれるのを、大事に懐に抱えた宝石袋を通じて竜の箱庭に逃げ込むことで回避する。対人の散弾は人間であれば全身をズタズタに引き裂いて殺傷する強力な兵器だが、小さな宝石袋に狙って当てることは不可能に近い。よほどの不運がなければやられることは無いだろう。
 そうして宝石袋への出入りを繰り返し、敵の攻撃を躱し続けたサフィリアは、一気に戦車隊との距離を零に。長い砲身の鼻先に張り付くほどの距離で駆け続け、撃たせないほどのすばしこさで砲塔をぐるぐると旋回させる。
 戦車人形が砲撃する。宝石袋へ逃げ込む。この繰り返しだ。だが、サフィリアはその大立ち回りの中で自然に、さり気なく戦車人形の視界を自身の身体で塞ぐ間合いを見出していた。
 砲撃。――退避。サフィリアが消えた向こう側に僚車。散弾が比較的軽装甲の手足を穿ち、撃破された車輌が擱座する。
「こうやって!」
 ――出現。砲撃。――退避、撃破。繰り返される友軍誤射。彼らは敵味方識別装置を絶対であると信じ、自己の視界いっぱいに映る敵性を捉えた瞬間、必中を確信して砲撃する。
 結果、それまんまと回避された末に壮絶な同士討ちを演じてみせたのだ。
「敵の判断の速さを利用すれば手を出さずに倒すこともできます!」
 最後の二輌が互いに互いを撃ち抜き爆散する。
「ただひとつ、残念なのは仕留めても食べられないことです」

一方駅舎入口付近の階段を駆け上る戦車人形は、その前に立ち塞がる幼い少女――アヴァロマリアによってその侵攻を阻止されていた。
「反逆者さん、あぶないから下がっててね?」
 後ろにいれば守ってあげられる。けれど、万が一のときは戦闘経験のある者が他のものを守って欲しい。アヴァロマリアの頼みに幾人かが頷いて、じりと小さな少女の邪魔にならないよう後退する。
 それを追うように前進する戦車人形。階段を器用に登るその脚部を見て、アヴァロマリアは思う。
「大砲は強そうだけど、変な形……」
 歪な形状は、やはりバランスが悪い。機動力はそれなりにあるようだが、引き換えに安定性がよろしくないようだ。
「だったら転ばせるのがいいかな?」
 クリスタリアンの得意とするサイコキネシスが瓦礫をふわりと浮かす。戦車人形に認識されないように密かに、彼らの背後、階段下のフロアから。
 それらが勢いよく上階目掛けて引き上げられれば、背後から膝裏を強か打たれた戦車人形はたまらず姿勢を崩して僚車を巻き込み転げ落ちてゆく。
 小型とはいえ機械、重量は結構なものだ。その重い機体が幾つも上から落ちてきたせいで下敷きにされた機体は潰れ、火花を散らしながら四肢をバタつかせたきり動かなくなる。
 だが、幸運にも下に僚車があった機体の幾つかは無事に――とはいえ腕がちぎれかけたり装甲が拉げてはいるが――攻撃を凌ぎ、どうにか起き上がり進軍再開しようともがいている。
「ああやって機械は諦められないから、隙ができるんだよね」
 人間ならばああなった時点で諦めて、転がってでも一時撤退を選ぶ。だが戦車人形は侵攻に固執するあまり、ジタバタと無駄な時間を、敵の目の前で晒していた。
 マリアが念動力で操る土砂が次々と砲口に押し込められてゆく。起き上がり、重機関銃で上階に立つマリアを撃とうとした戦車は、先の滑落でそれが根本から失われたことを理解して主砲を大きく掲げた仰角を取り――そのまま暴発で頭を喇叭に咲かせて動かなくなった。
「賢い機械は故障に気づくこともあるけど、あれはそうでもなかったみたい。こうやって大砲に土とか詰めれば、無理に撃とうとしたとき暴発するから倒せるよ」
 アヴァロマリアとサフィリアの講義は、やはり只人に真似するのは少し難しいようだが――それでも、確かな知恵のひとつとして反逆者達に刻まれた。
「これで戦車の相手も平気だね。あとはあのピエロさんをやっつけるだけだから、待っててね!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

山猫・ラン子
(ゴンちゃんと一緒)
どうしてこうなったのかしら
(荒れ狂うモヒカンどもを見つつ思い出す)

よく聞きなさいモヒカン人間ども
一時的にアナタ達の雇用主はゴンになったわ
今からアナタ達モヒー・カンプ運送の力を持って
あの戦車達に目に物を見せてやりなさい
配達するものは荷物ではないわ・・・「死」よ!!

(思い出し終了)
勢いあまったわね。

・モヒカン軍団に前もってグレネードやら爆弾やらをUCで増やして持たしている
・ラン子は遠くでゴンの頭に乗って観測&大砲にて援護射撃
・奴隷だけどー、まあいいわね。なんとかなるわよきっと

(アレンジアドリブ大歓迎!)


龍神家乃・ゴンちゃん
(ラン子ちゃんと行動)

アドリブ、連携大歓迎!

■行動
前章にて合流したモヒカンのお兄さんたちに協力をお願いする。

🐶ねぇねぇ、人間さん。
ゴンちゃんのバイク、皆にあげるでしから力を貸してほしいでし。

UC【ゴンちゃんとはたらく~】を使用して、サイドカー付きのバイクをモヒカンの人数分複製し、交渉を試みる。


🐶ラン子ちゃん、人間さんって頼りになるでしねー。
ゴンちゃん配送にも社員で欲しいでし。

■雇用契約
🐶この場で同意書に判子貰えるなら、即採用でし!
血判でもオッケーでしよ!


では、みんなー!
美脚戦車に突貫でしー!!
うおおおーーん!
(自身は途中で離脱して、突撃せずにラン子ちゃんと戦況を観測)




 ぱらりらぱらりら。
 響くラッパ。靡く砂煙。唸るエンジン、周るタイヤ。
「ヒャッハー! トラックの仇討ちだァー!!」
「ぶいはち号の恨み、はらさでやるぜぇー!!」
 布袋に重しを詰めた、所謂ブラックジャックをぶん回しながら疾走するモヒカンたち。
 その先頭を駆けるバイクに乗るのは、ゴンちゃんとラン子の二匹だ。
「どうしてこうなったのかしら」
 親鳥の後を追う雛のように付いてくるヒャッハーなモヒカンたちを遠い目で振り返り、ラン子はほんの数分前を回想する。

「ねぇねぇ人間さん。トラック壊されちゃったでし?」
 人形を蹴り壊し、当面の危機を脱したことで愛車を失った悲しみを思い出し悲嘆に暮れるモヒカン達。蹲るその肩に肉球をぽんと乗せて、ゴンちゃんはつぶらなお目々で問いかけた。
「ああ……ぶいはち号、社員みんなでバイトしてよォ、コツコツ貯めた金で買ったトラックが……」
「社長になんて詫びりゃいいんだ……ぶいはち号を一番可愛がってたのに……」
「それもそうだけどよォ……生きて帰れたって足がなきゃ仕事もできねぇぜぇ……」
 たとえ生還できても食いつなぐための術は失われてしまった。少なくとも運送業の継続は絶望的だ。
「そういうことならゴンちゃんのバイク、皆にあげるでしから力を貸して欲しいでし」
 どういうことかと視線を上げたモヒカン達の視界に映るのは、新品同様のサイドカー付きオフロードバイク。サイドカーに荷物を乗せれば運送業も問題なく耐えうる素晴らしい逸品だ。
「柴の兄貴……いいんですかい?」
「もちろんでし。その代わり、ごにょごにょ……ねぇランちゃん、この人達に武器を貸したげてほしいでし!」
「はぁ? ゴン、アナタ何考えてるのよ……えっ、ええっ……正気? まあいいわ、ゴンがそうまでいうなら……」
 斯くしてラン子が増やした爆弾を靴下に詰め込み対戦車ブラックジャックをせっせと作り、ゴンちゃんが与えたバイクに跨るモヒカンライダーズが誕生したのである。
「同意書にハンコは押したでしか? 押した人は即採用でし! ハンコ持ってないなら血判でもオーケーでし!」
 一時的にゴンちゃんを代表とする雇用契約を結び、戦闘中の労災とか諸々に対する保障などの条件を定めたモヒ―・カンプ運送あらためゴンちゃん配送の臨時社員一同。
「よく聞きなさいモヒカン人間ども。その血判をもって一時的にアナタ達の雇用主はゴンになったわ」
「うす! ゴン社長についていくぜェ!」
「ヒャッハー! ゴンちゃん配送に一時転職だァーッ!!」
「よろしい。今からアナタ達モヒ―・カンプ運送の力をもって、あの道化の戦車人形に目にものを見せてやりなさい」
「うおーっ! オレはやるぜオレはやるぜオレはやるぜ!」
「子猫ちゃんの期待に応えてやらァーッ!!」
「アナタ達が配達するのは荷物じゃないわ――「死」よ!!」
 エンジン音とともに、ラン子の言葉に呼応したモヒカン共のヒャッハー唱和が轟いた。
 回想終わり。

「勢い余ったわね」
 勢い余っていた。さておき、前方には迫る戦車隊。向こうもヒャッハーぱらりらブオンブオンとやかましいこちらを捕捉し、既に砲撃を繰り返している。が、モヒカンどもは最初からバイクと一体であったかのような操縦テクでそれを躱す。
 ゴンちゃんも巧みなドライビングテクニックで砲撃の雨を切り抜けるが、それに見劣りしない腕前だ。
「ではみんなー! 美脚戦車に吶喊でしー!! うおおーん!!」
 ゴンちゃんの遠吠えにヒャッハーと呼応したモヒカン達が増速、戦車人形に肉薄して対戦車ブラックジャックを叩きつける。爆ぜる靴下、よろめく戦車人形、そこへ追撃のブラックジャック。二発も打ち込まれればいくら戦車人形でも大破は免れない。当りどころが悪くてそれでも駄目だった個体には直接爆弾を張り付けて走り去るモヒカン達。
「ヒャッハー! 見ましたかいゴンちゃん社長ォ、子猫ちゃん!!」
 ドヤ顔でリーダーを探すモヒカン。だが居ない。
「社長ォ!? まさかやられちまって……」
 否。ゴンちゃんは突入の寸前、大きくハンドルを切って隊列を離脱していたのだ。
「ランちゃん、人間さんって頼りになるでしねー。正社員にほしいでし」
 ヒャッハーと戦車人形をボコる姿を後方から眺めながらゴンちゃんが言えば、ラン子はあからさまにげんなり。
「……まあ、ちょっとは骨があるやつらみたいだし。奴隷だけど。まぁいいわね、なんとかなるわよきっと。勧誘するならすればいいんじゃない?」
 それでも、あのやかましいモヒカン人間がそれなりに実力を持った上で群れの秩序を理解した生き物だというのはラン子も認めるところなのだ。
 それはそれとしてモヒカン共が張り付けて回った爆弾の起爆スイッチは押すけど。モヒカン共の退避を確認してないまま押すけど。
「ヒャッハーッッッ!?!?」
 戦車人形の隊列をまるごとふっとばす大爆発。その轟音に混じって、モヒカンの鳴き声が聞こえた気がした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

緋月・透乃
よし、逃げる時間は終わり!人形の相手は丁度いい準備運動になったし、ここからが本番だね!
ウォーキングタンクも全部ぶっ壊して、更にゲームを盛り上げよう!

まずは持っている食べ物を一気に食べて【色々食べよう!】を防御力重視で発動させるよ。
そして、身を守るように斧を構えたまま真っ直ぐ敵へ突っ込み、力ずくで叩き割りに行くよ!
分かりやすく突っ込んで敵に私を狙わせることで、奴隷達に攻撃が向かないようにしつつ、ガンガン攻めていくって狙いだね。
敵の機銃は手数が多くて避けるのは難しそうだし、避ける時間で少しでも敵に接近したいから、気合いと強化した防御力で耐えつつごり押しをしていくよ!


セラエ・プレイアデス
うーん、絶妙にキモい!
でも見た目は味に影響しないしね、美味しくいただくとしようか。

んで、ボク自身が身軽に戦うのは得意なんだけど
何かを守るって結構苦手なんだよねェ……
努力はするって事でいつもみたいに直接斬り刻むんじゃなくて【先制攻撃】気味にUCで竜巻を放って攻撃を封じるよ。
機銃や散弾なら巻き上げられるだろうし、砲弾も竜巻に斬られれば爆発するんじゃないかな。
それを左右の鉤爪から放つから、単純に二体は無力化出来そうだし
何体か纏められればそれだけ多く巻き込めると思う。

難点は……仮に奴隷が銃とかで援護してくれても、竜巻が弾を見境なく巻き上げちゃうところかなァ……




 上半身を僅かにも揺らすこと無く、手足だけを振って行進する車列。それらは微塵の迷いもなく、ただ一直線に逃げた奴隷を追って駆ける。
 追いかけて殺す。ただそれだけに最適化された兵器が彼らであるならば、只人に過ぎない奴隷たちがいくら武器を手に逃げ、あるいは立ち向かったとしても待ち受ける最期は死であろう。兵器とは目的を絞れば絞るだけ、人を殺すための力を研ぎ澄ますのだ。
 だが。逃げる相手を追い掛けることに特化した戦車人形は、故にその光景を前に僅かに思考を停止した。
 路上に立ち塞がる二人の女。片や巨大な重戦斧を。片や鋭い鉄爪を。電子制御された火砲を装備した戦車人形にしてみればあまりに原始的な武器を手に、待ち構えていたその人影に戦車人形は僅かに混乱してしまう。
 これまでにも運良く機械人形を出し抜き武器を手にした人間が抵抗したことはあった。だが、彼らは自分が、そしてその武器がスペックにおいて戦車人形に大きく劣ることを理解し、罠を仕掛け身を隠しての奇襲攻撃に活路を見出してきた。
 実際にそれで一、二輌の僚車が行動不能に追い込まれたこともある。だがそれはあくまでこちらの装甲を貫徹でき、接近のリスクを犯さずに攻撃可能な武器を手にした場合の話。
 あんな白兵戦用の兵装で人間が抵抗を試みるなど、合理を重んじる軍用人形の思考回路では理解できない行いだ。
 故に、思考停止に続いてそれが狩るべき敵性であるのかそうでないのか識別するためにほんの僅かに思案を挟んだ戦車人形。それぞれはごく一瞬のことでも、それが重なれば――透乃とセラエ、ふたりの猟兵にとって十二分に先手を奪える停滞が生まれる。
「よし、逃げる時間は終わり! さっきの人形たちはちょうどいい準備運動になったし、お腹も満たしたからここからが本番だね!」
 回収した物資にあった干し肉を平らげ、炊いた野菜の缶詰を味わい、しっかり咀嚼した握り飯を胃の腑に飲み込んで、指先の塩気と海苔の名残をぺろりと舐めて透乃が笑う。
「そうだね。キミはさっき食べたみたいだけど、ボクはまだお腹が空いてるんだよ。見た目は絶妙にキモいけど……美味しく頂くとしようか!」
 透乃が駆け出す。セラエが両腕の鉤爪を構える。二人共に奴隷たちの護衛に付くという判断はない。
 透乃は振るう武器の破壊力が故に。セラエはその自慢の機動力を活かすために、奴隷たちとは距離を置かざるを得ない。
 もし戦車人形が近い二人ではなく、あくまで奴隷の殺害に意識を向けて攻撃を開始すればその時点で奴隷を守るという目標は失われてしまうだろう。だが二人はそのリスクを負ってでも自らの得意とする間合いで戦い、速やかに戦車隊を掃討することに活路を見出したのだ。
「なるべくキミたちの事も守るつもりではいるけどさ、基本的に自己防衛でよろしくね!」
 鉤爪が空を裂き、真空の渦が竜巻となってセラエの手元から解き放たれる。
 斧の巨大な刃を盾のように構え突進する透乃の両サイドを固めるように追走する竜巻は、すなわち模倣されたオブリビオン・ストーム。飲まれれば兵器と言えど無事では済まない禁断の渦だ。
「あんた達は全部ぶっ壊すよ! その方がゲームも盛り上がりそうだもんね!」
 何処かでどうにかしてこの戦いも見ているのだろう道化へと透乃は呼びかけながら駆け抜ける。敵戦車に自身を脅威と認識させ、後方で緊張に身を硬くしている奴隷たちへその殺意が向かぬように。
 そして二人が行動を開始したのに一瞬遅れて、戦車人形も現状を認識して活動を開始する。まず狙うべきは至近の一人。次いで奥の一人。二人を撃破すれば、奴隷を殲滅することは容易い。
 砲塔に併設された重機関銃が連続した絶叫をあげ、透乃の構えた盾を打つ。火花が散り、衝撃が歩みを押し返し、あるいは肉厚の刃にぶち当たって砕けた弾丸の破片が大きく露出した素肌を穿つ。
 肌が裂け血が流れても、透乃はそれでも怯まない。回避など選ぶ暇があれば、それを一歩でも多く踏み込むために使う。そうして、
「力の限り――ぶっ壊せぇ!」
 強烈な薙ぎ払いが戦車隊の前列をまとめて押しのけ、続く竜巻に放り込んでいく。耐えることもできない空中に放り出された戦車人形たちは、破壊の渦の中で細切れに裁断されて爆散した。
「それぞれで一体ずつでも行ければ、って思ったけどこの調子なら纏めて巻き込めるね。透乃、どんどん竜巻に放り込んでいって!」
「任せて! 次、いくよ――ッ!」
 守りもそこそこに攻めて攻めて攻め抜く透乃によって、戦車人形は次々竜巻に叩き込まれる。
 ならばと機関銃より強力な対人兵器である散弾を主砲から撃ち出し、透乃をズタズタに引き千切ろうとすれば、質量の軽い散弾はまたたく間に竜巻に吸い上げられて囚われた同胞を貫く礫と化した。
「……凄い」
 奴隷だった誰かが呟く。これが猟兵かと。
 力なき者には自由すら許されないこの世界で、力なき者の自由を取り戻すために戦ってくれるお人好し。彼ら彼女らは、ただの強いおせっかい焼きなどではない。
 オブリビオンストームという最強の存在の前に、等しく膝を折るしかないこの世界を救いうる存在なのだという希望が奴隷たちの胸に宿る。
「あの人達に頼り切りで見てるだけなんて恥ずかしい。だろう皆!」
「ああ。おう、そうだな!」
「わたし達も戦おう!」
 銃を手に勢いづく元奴隷たち。彼らが戦車人形へと狙い定めた銃撃を加えようとしたその時、振り返ったセラエが苦笑して肩を竦めた。
「……ごめん、援護は嬉しいけどこの竜巻見境なしに巻き上げちゃうんだ。その弾はピエロ相手に取っておいてよ!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

メイスン・ドットハック
【SPD】
次は歩行型戦車とはのー
どうやらピエロ君は楽しんでくれているようじゃし、張り切っていくかのー

本体の制御ではなく、照準システムに的を絞って【ハッキング】、【暗号作成】と文豪の力で作成した標的を誤認して撃たせるウィルスシステムを感染させて、対猟兵弾を当たらないように仕向ける
自身は二足歩行戦車「KIYOMORI」に搭乗して、【誘導弾】ミサイル・榴弾・ビーム機銃で敵戦車を攻撃していく
味方がいないことを確認したら、UC「祇園精舎の鐘の音、諸行無常の響きあり」を発動して巨大化、集団に【一斉発射】で掃討する

カメラなどで拝見していると想定して、ピースしながら報告する
いえーい、ピエロ君。見てる見てるー?


仇死原・アンナ
アドリブ絡みOK

あの頭でっかちが相手か…
足が四本あろうが二本あろうが叩き潰せばいい…
行こうか…

逃走者達を鉄塊剣で[かばい]、[存在感]を放ち敵を自身に[おびき寄せ]て彼らが狙われないように惹き付けよう
[オーラ防御、なぎ払い、武器受け]で敵の攻撃を弾きつつ
[ダッシュ、ジャンプ]で敵の懐へ近づこう

敵の足元に鎖の鞭を投げつけ縛り上げ[マヒ攻撃、ロープワーク]で転倒させよう

倒れた敵の頭部に目掛けて[怪力、鎧砕き、2回攻撃]を用いた
【炎獄殺】を喰らわせよう

[部位破壊、吹き飛ばし、武器落とし]でその巨大な頭を落としてやる…!




「あの頭でっかちが相手か……」
 拳銃ではとても装甲を貫くことなど不可能であろう。巨体の装軌車両としての戦車に比べれば装甲は薄く、歩兵でも戦術の如何によっては十分に対抗できそうな戦車人形。だが、奪還者として身を守る訓練を受けたとはいえ子供が拳銃で挑んで勝てる相手ではない。
 蜘蛛のような人形を仕留めたアンナは、そのまま逃げていった少年を追って現れた戦車人形の群れと相対していた。
 このままこいつを通過させれば、あの少年は頭部を模した砲塔からの砲撃で跡形もなく引き裂かれてしまうだろう。だから此処を通すわけには行かない。路地から飛び出し、戦車隊の前に立ち塞がる黒衣の処刑人は静かに物々しい巨剣を抜いた。
「足が四本あろうが二本あろうが、車輪だろうが関係ない。叩き潰せばいいだけよ……」
「そうじゃのー。歩行型戦車といっても機械にかわりないからのー、僕にすればいいカモじゃの」
 アンナが背を向けたまま警戒を向けていた、形式の違う戦車――彼女はてっきり戦車人形の親玉か何かだと、挟撃をされたのだと認識していた――から響く、気楽な声。
 ウォーキング・タンクに比べて洗練された技術体系。無骨な陸戦兵器であることに変わりはないが、数世代の技術格差を感じさせるフォルム。なにより人間大の敵とは異なり、旧来の戦車を拡大したような大型の体躯。
 メイスンが駆る陸戦用二足歩行戦車KIYOMORIが、その砲身で矮小な戦車人形を睥睨する。
「猟兵……? なら、討ち漏らしの始末は任せる……行こうか」
「どっちかって言うと僕の討ち漏らしを片付けてほしいんじゃけどのー、ま、どうやらピエロ君は楽しんでくれているようじゃし、張り切っていくかのー」
 二人が戦闘態勢に入ったその瞬間、戦車人形の隊列が崩壊した。
 まず最初に起こったのは、地面に這う鎖が一気に巻き上げられた事による足場の崩壊だ。
 自動人形ゆえの無神経さで鎖を踏み、あるいは輪の中に足を突っ込んでいた戦車人形のいくらかが、アンナが一気に手繰った鎖によって引き倒され、あるいは街灯の成れの果てに吊るし上げられる。
 そうして行動不能に陥った戦車人形は、さらなる追撃に狂わされる。
 メイスンが放ったウィルスによって、火器管制システムが発狂したのだ。敵味方識別装置までも崩壊し、感染機体の視界から猟兵の姿が文字通り消滅し、敵を捉えられない機体の攻撃はその命中精度を著しく落とされてしまう。
 それでも流石は軍用人形、直前まで猟兵二人が居た方向へと対猟兵徹甲弾による砲撃と重機関銃による掃射が襲いかかる。狙いを付けられなくとも、僚車との連携で面制圧をしかければ当たるものだ。こういう不測の事態を想定した安全策を、この機体を設計した者たちは仕込んでいた。
 ――尤も、その「二人が居た方向」自体の認識を狂わされていては手も足も出ないわけだが。
 足を止め、四方八方に砲弾を撒き散らす戦車人形どもはもはや二人の敵ではない。
 メイスンのKIYOMORIがそれらをロックオンし、榴弾砲やミサイル、ビーム機銃の一斉発射で区画諸共に戦車人形を消し飛ばす。
 その爆炎の中、瓦礫を蹴飛ばし跳躍して頭上から切り込んだアンナが戦車人形の上半身に取り付いた。流れ弾を大剣で弾き飛ばし、その重量にぐらりと傾いだ戦車人形の砲塔に炎を纏った踵を叩き落とす。
 砲塔内部の弾薬に誘爆し、上半身が粉々に吹き飛ぶ人形。その爆発に押し出されるように次々に戦車人形を破壊していけば、メイスンの制圧射撃がその後を追うように残骸を消滅させてゆく。
 たった二人の猟兵を相手に、戦車部隊は全く為す術無く壊滅したのである。
「いえーいピエロ君、見てる見てるー?」
 殲滅され燻る戦車人形の残骸をバックにKIYOMORIのハッチから顔を出したメイスンは、監視役の人形が潜む辺りにピースサイン。
「遊んでいないで……移動しよう……」
 逃げていった少年の元に別の部隊が現れていないとも限らない。早急に合流して護衛してやったほうがいいと、アンナは道化を煽るメイスンを急かすのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フィーナ・ステラガーデン
【PPP】
この前はやたらでかい戦車だったけど今度は歩いてるわよ!?
いったい戦車って何なのかしら・・!よくわからないわね!
うーん。とりあえず無駄に堅そうね!
足とかちゃんと狙えれば良いのだけど
ちゃんと狙うこと自体が苦手だわ!

というわけで前衛はアリシアに任せて
今回はアイの力を借りて
イデアールと3人で後方一斉射撃を行うわ!
アイが出してくれる目印に【属性攻撃】やらUCやらを一気に放つわね!
UCは分裂させた火球を多数のロックオンした敵に当てる感じね!
一気に焼け野原にしてやるわ!

(アレンジアドリブ大歓迎!)


アイ・リスパー
【PPP】
「二足歩行の戦車ですか。
オベイロン、あなたと同じような存在が相手ですね」

……って、オベイロン、なに横向いて拗ねてるんですか!?
ほら、今回はあなたが勝利の鍵なんですから、拗ねてないで合体ですよ!

パワードスーツ形態に変形させたオベイロンに乗り込み
【夏の夜の夢】でティターニアをバックウェポンシステムとして合体。
空を飛びながらセンサーで二足歩行戦車をロックオンしていきます。

ロックオンした情報は、仲間にも連携。

「タイミングを合わせて一斉射です!
いきますっ!」

仲間の攻撃に合わせ、翼状に展開したティターニアのバックウェポンシステムからロケットランチャー、ミサイル、荷電粒子砲を全弾発射します!


アリシア・マクリントック
【PPP】
ウォーキングタンクですか。って、え?そういう……
動揺している場合ではありませんね。こちらに接近してくる敵を迎撃してみなさんが斉射に集中できるようにしましょう。
敵は重心が高くてバランスが悪そうです。砲塔は回るのでしょうが、あの体では腰をひねるのは難しいでしょう。側面や背後に回れば対応するのに少しはスキができるはず。
とはいえあの装甲は侮れませんね。それならこれです!変身!ヘパイストスアーマー!
ジェネシスハンマーで文字通り叩き潰して……武器へと作り変えましょう。スキを見つけて私も創った武器で斉射に参加したいですね。……射撃はあまり得意ではありませんけど。


イデアール・モラクス
【PPP】
フン、人形の次は足の生えた戦車か…その程度で我らとゲームをしようなどとは笑止!
そういうところだぞ!と、言ってやろう。

・連携攻撃
フィーナ、アイと連携し『一斉発射』の『範囲攻撃』を敢行、戦車軍団を『薙ぎ払い』『蹂躙』する。
「観測と砲撃、科学と魔法、それらを融合させた究極の一撃を見せてやろう」
アイの観測情報を元に敵を捕捉、私はフィーナと合わせてUC【七星覇天煌】を『全力魔法』と『高速詠唱』で練り上げ究極の合体砲撃魔法を創り上げアイの砲撃と共に放つ。
「力無くば想いは果たせず、想いなくば力は無軌道に道標を失う…見よ!これが自由への光…正義の雷!フリーダムジャスティスレーザー!」

※アドリブ歓迎




「この前の戦車はやたらでっかかったけど今度は歩いてるわよ!」
 ジリジリと進軍する戦車人形の群れから飛来する砲弾が、空中で炸裂し散弾を降り注ぐ前にレーザーめいた焦熱魔法で撃ち落とし、敵を指差したフィーナが首をかしげる。
「戦車っていったい何なのかしら! ……わからないわね!」
 先日撃破したあの陸上戦艦じみた巨体や人々が使っていた大型車両も戦車であるならば、目の前でアンバランスな体躯を砲撃の反動に揺らしながら行進するそれも戦車。そして――
「二足歩行タイプの戦車ですか。オベイロン、あなたと同じような存在が相手ですね」
 マスターであるアイの言葉に砲撃を中断してまで砲塔をぷいと横に向けて拗ねる、大型犬のような仕草をみせた白い兵器もまた戦車。
「拗ねないでくださいオベイロン!? ほら、今回はあなたが勝利の鍵なんですから……!」
 アイはあんなのと一緒にするなと不貞腐れる機械じかけの妖精王を宥め賺す。オベイロンだってあんな歪な兵器と一緒にされては不満に思うのも当然であろう。
「しかし戦車、戦車か……多少の火力と装甲はあるようだがその程度で我らとゲームをしようなど……」
 笑止。その見積もりは甘いと言わざるを得まい。陸上戦艦をダースでもってこいとイデアールは傲慢に笑う。
「そういうところだぞ、オブリビオン。弱者を嬲ることには天才的だがな、格上を相手にするのが致命的に下手なんだよお前達は。クク……」
「すみません、戻りました! 皆さん無事ですか!?」
 普段どおりの気楽さで構える三人の下へ、奴隷たちを下がらせマリアに護衛を任せたアリシアが戻ってくる。高所からの偵察中に戦車人形部隊を確認した三人にそれを伝えられた彼女は、奴隷を逃がすために戦場を離れていたのだ。
 代わって防衛線を敷くため地上に降りた三人に礼を言いながら前へ飛び出したアリシアは、爆煙と砲弾が巻き上げた砂塵の向こうに敵影をようやく認め、そして絶句した。
「ウォーキングタンク、歩行戦車――って、え? そういう……?」
 もっとこう銀河帝国の四脚型とか。二脚の大型もいましたね。ああいう兵器として威圧感に満ちた重厚な機体を想像していたが、まさか戦車の車体からほっそりした手足を生やした人間大の兵器だとは思わなかった。とはいえいくらアンバランスでも胴体より上は小型ながらも正しく戦車のそれ。
「ならば動揺している場合ではありませんね。変身! ヘパイストスアーマー!」
 装甲も、火力も、見た目で侮って良い相手ではない。アリシアは紅蓮の鎧を身に纏い、火焔を帯びた巨槌を携え一直線に敵陣へと切り込んでゆく。
「あの機体、重心が高くてバランスが悪いようですね……!」
 ヘパイストスアーマーをして直撃は避けねばならないと直感した徹甲弾を、戦鎚を地面に叩きつけその柄を使って高跳びの要領で飛び越えたアリシアは、砲撃の度に上半身を激しく揺らす戦車人形を見た。
「それなら側面に回り込めば!」
 砲塔は旋回するようだが、人間真横への衝撃は中々踏みとどまれないものだ。人型を模した戦車人形も同じ――いや、トップヘビーである分その脆弱さは人間以上であろう。
 着地したアリシアは身を低く、砲弾を掻い潜ってハンマーを車体に叩きつける。
 ぐしゃり拉げた車体が吹き飛び、真上に弾け飛んだ砲塔がくるりくるりと落ちてくる。その砲身を掴み、鍛冶神の灼熱で鍛造しながら、旋回する槌の勢いのままにアリシアは次の標的へと槌をぶちこんだ。
「……ようやく機嫌を直してくれたんですね、オベイロン!」
 本格的に戦端が開かれた。それ故渋々にといった風ではあるが、オベイロンが砲身を敵へと向け直したのでアイは歓声を上げてその車体を撫で回す。
「アリシアが突っ込んだおかげでこちらへの砲撃は薄くなったな。フィーナ! 迎撃ご苦労、良くやった!」
「そうでしょ! 私にかかればこの程度造作も無いわ! ……イデアールあんたやっぱサボってたのね! 道理で大変だと思ったのよ!!」
 魔女たちもそれぞれの杖を構え直し、反撃の為に魔力を高める。
「前衛をアリシアが張ってくれてる今がチャンスね! 纏めてふっとばすわ!」
「おうとも! 全て焼き払う我らが魔法の真髄を道化師に見せつけてや――」
「ちょ、ちょっとまってください!!」
 うふふクハハハと危ない笑い声を上げながら巨大な攻撃魔法を練り上げる二人へと、アイが冷や汗を浮かべて待ったを掛ける。
「おふたりとも……アリシアさんがまだ前で戦ってるんですよ!?」
 それがどうした、とキョトンとした顔の魔女たち。
「アリシアならなんかこういい感じに変身して耐えるわよ!」
「うむ、あいつは要領がいいからな! 区画ごと消し飛ばす私達の攻撃もなんか上手いこと捌くに違いない!」
 根拠のない信頼が姫剣士を襲う――!!
 このままではアリシアも纏めて消し飛ばされる。アイの脳裏に高笑いする脳筋ウィッチ二人と黒焦げアフロにされてしまったアリシアの姿が浮かんだ。絶対に阻止せねばならない。そして今、それができるのは自分だけだ。
「そ、それより精密射撃で敵だけを倒したほうがスマートで格好いいですよ! 私が誘導しますから! だから区画ごとはやめましょう!?」
 む、と考える魔女どもは、すぐにそれもそうだなと笑顔になる。上手く操縦できたことに胸をなでおろし、アイはオベイロンを人型に変形させ乗り込んだ。
「上空待機中のティターニアを合体、リフトオフ! 戦車は空中からの攻撃に弱いものです……!!」
 事実、上昇してゆくオベイロン=アイを戦車隊は捕捉こそすれ、あくまで対人、対軽装甲車両用の重機関銃の対空迎撃は彼女の高度に至る頃には装甲を貫くだけの威力を維持できていない。
「目標をマルチロックオン……全車輌を捕捉……車輌? うん、まあいいでしょう! フィーナさん、イデアールさん! タイミングを合わせて!」
「クク、アハハ、アーッハッハッハ! そういうことか! ならば観測と砲撃、科学と魔法の融合たる究極の一撃を見せてやろう!」
「あら? 狙うのはあんまり得意じゃないけど……なぜだか今日は的がよく見えるわね! アイのおかげかしら、ありがとうと言っておくわ!」
 これ見よがしに標的をハイライトし、捕捉誘導用のビーコンまで添付したアイ。その照準をガイドラインに、魔女二人は練り上げた大魔道を即興で分割して多目標殲滅術へと組み替えてゆく。
「力無くば想いは果たせず、想いなくば力は無軌道に道標を失う……見よ! これが自由への光……正義の雷! フリーダムジャスティスレーザー!」
「何そのギリギリアウトくさい詠唱!! とにかく一気に焼け野原よ! 其は以下略凄く熱い黒い炎、焼き尽くせぇぇぇ!!」
 頭上からの爆撃が、魔女たちの放つ光線が、火球が、精密な誘導で戦車人形を粉砕する。
「これは……」
 鉄槌の一撃で吹き飛ばした戦車人形が、そのまま降り注ぐ破壊の渦に貫かれ爆散する。後方の仲間たちが放った特大の一撃は次々と戦車人形を撃破していく、が。
 ごく一部の戦車人形が、アリシアの攻撃で擱座した僚車を盾に攻撃を凌ぐような行動を見せ始める。戦車人形一輌を破壊するのにちょうどよい威力の砲撃は、残骸までも貫くだけの威力を持たない。
「そのための両腕と……いうことですか!」
 無意味そうに見えた両の腕は、こういう小細工の為に在ったのか。アリシアは、アリシアだけはその様を間近で目に収めていた。だがこの爆炎の中、さらに白兵戦を挑むのは誤射を招きかねない危険行為。
「ならば有効な武器を作るまでです!」
 奪った砲塔が一際熱く燃え、戦車砲をベースとした対戦車砲を生み出した。
 砲声が轟き、そして――
「全機撃破、これで私達の勝利ですね!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レナ・ヴァレンタイン
随伴歩兵なし、航空支援なし、偵察ドローンの類もなし
――仮にも戦車が単独で市街地戦とは舐めた真似を

ユーベルコードで武装複製
1、拳銃とマスケットによる陽動と誘導
装甲をノックするだけの豆鉄砲だが、哀れな獲物を装うなら丁度いい

2、敵主砲の発射に合わせて周辺に伏せていたアンカーワイヤを射出
特に足回り、主砲周辺の回転軸を中心に絡めとる。合金製の特殊ワイヤーだ、千切り取るにも一瞬とはいくまい

3、動きが鈍った瞬間、複製したアームドフォートを遠隔操作で突撃、装甲に密着させての全力射撃
「装甲破砕攻城砲」等と大仰な名前だが、伊達や酔狂でついてる名ではないことを教えてやる

戦車1つに数押しで悪いが、卑怯とは言うまい?


カイム・クローバー
寛大な主催者様は獲物が増えたと喜ぶ所だろうが…甘いね。これから始まるのは脱出劇じゃなく、主催者様の転落劇って訳だ。

随分とデカイ砲台を携えたのが現れたな。威力はともかくその見た目は――俺の男心を擽るモンじゃないってのが残念だ。
二丁銃を構えて【二回攻撃】に紫雷の【属性攻撃】。人質は一ヶ所に集めて、少し伏せて貰うぜ。
UCを発動し【範囲攻撃】を交えて【早業】で広範囲に銃弾を見舞う。狙うは馬鹿デカイ主砲の筒の中。外装はともかく、中身まで硬いとは限らねぇだろ?
オマケに主砲の中に雷の入った銃弾だ。例え無事だとしても主砲を撃てばドカン、だ。
忠告しとくぜ、主砲は止めときな。…って、言葉は理解出来ねぇんだったか?




「随伴歩兵なし、航空支援なし、偵察ドローンの類もなし――仮にも戦車が単独で市街地戦とは舐めた真似を」
 接近する戦車人形のあまりにずさんな運用にレナは悪態を吐く。戦車というものはとかく視野が狭い兵器だ。その視野の狭さは罠や伏兵に対して大きな弱点となるため、そういったモノが潜みやすい市街地では目の代わりに歩兵を連れ歩くのが常。
 だが、弱者を狩ることしか知らぬ道化の従える人形はそういった目を伴わない。
 あるいは戦車人形自体が市街戦を前提とした兵器だ。多少の対策はあるのかも知れないが。
「随分デカい大砲持ちが現れたな。アレの威力はともかく、見た目は――」
 スマートな手足にアンバランスな無骨さを残す胴体。工業製品としての合理性は感じなくもないが、しかし。
「オレの男心を擽るもんじゃないな。残念だ」
 カイムの皮肉にそうだね、とレナも笑う。歩兵の代替たるロボットとしても、戦車の代替たる戦闘車両としても半端。ひとつの目的のために狂的なまでに洗練された兵器こそが最強であるならば、あの兵器は失敗作もいいところだ。
「そういえば彼らは無事に隠せたのかい」
 ふと、カイムの分身に預けてあった奴隷たちは無事に安全な場所に隠せたのかと問えば、カイムは問題ないと返す。彼らは今、どこかの廃墟でじっと息を潜めている頃だろう。戦車人形が掃討されるまで、万にひとつも間違いが在ってはならない。故に二人も彼らを戦力としては数えなかった。そも、銃を手にしたとはいえ彼らが戦線に加わっていくらの戦力になるのかは疑問である。
「それに、手数だけなら私一人で十分に過ぎる」
 ざらり、拳銃からマスケットまで、小火器の様々を広げ念動力で操る探偵。
「俺も手数自慢だが……流石にすげぇ数だな。頼もしいぜ」
 援護は任せた。カイムが飛び出し、戦車人形に奇襲攻撃を仕掛ける。二丁拳銃が弾け、紫雷の弾丸が先頭を行く一輌の膝を貫き動きを止めた。後続がすぐさまカイムを補足し、対猟兵徹甲弾を装填した砲塔の無機質な視線を追尾させる――そこへレナの従え瓦礫に隠した銃火器による援護射撃が戦車人形の装甲を打った。一発たりとも装甲を貫通することはない。だが、戦車人形のAIはその攻撃の起点に敵が居ると誤認した。小火器しか持たぬ哀れな獲物、つまり奴隷たちだ。
 砲塔がさらに旋回し、銃火器を隠した瓦礫の山へと砲撃を加え――その刹那、アンカーワイヤーが道路脇の廃墟の至るところから射出され、砲塔旋回軸に絡みつく。ぎしりと絡め取られ砲塔が旋回できなくなったその隙は、銃士たちにとってあまりに長い好機である。
「いいトラップだぜ。やるな、あんた!」
「どうも、きみの陽動あってこそでもあるけれどね」
 姿を現したレナへと笑顔を向けるカイム。だが、そこへワイヤーの巻きつきの甘かった車輌が無理やり砲塔を向けて照準する。
「おいおい……忠告しとくぜ、主砲はやめときな」
 カイムの言葉を戦車人形は命乞いとしてしか認識できない。そして彼らは命乞いする奴隷を狩るために放たれた猟犬だ。
 忠告を無視して射撃体勢に入った戦車人形へ、カイムの早撃ちが決まる。
 砲の射撃システムに関係のない手足であれば貫通もできよう。だが、装甲に守られた上半身はそうは行かない。
 しかし一箇所だけ、上半身にあって拳銃でも攻撃可能な場所がある。主砲の砲身内部だ。そこへ飛び込んだ雷の弾丸は、戦車人形の主砲撃発と共に弾頭に火を付け内側からその頭を四散させた。
「言ったじゃねえか、主砲はやめとけって。……って、言葉は理解できねぇんだったか?」
 一方でレナは、ギチギチとワイヤーに巻き上げられながら藻掻く戦車人形に対して自らの持つ最大火力を押し付けていた。
「罠に掛けた上に数押しで悪いが、卑怯とは言うまい?」
 随伴歩兵を付けないきみ達が悪いのだからね、と。遠隔操作で機動する“装甲破砕攻城砲”に射撃命令を下すレナ。
 一発一発が装甲を粉砕する榴弾。それを押し込めた散弾が、接射距離で放たれる。
 砲自体も吹き飛ぶ相打ち覚悟、自爆同然の攻撃で跡形もなく上半身を消滅させる戦車人形ども。
 取り残された両足を冷ややかに見下ろして、レナはひとりごちる。
「装甲破砕攻城砲などと大仰な名前だが、伊達や酔狂でついた名では無いことは理解してくれたかな?」
 なにはともあれ、このエリアで活動する戦車人形はこの部隊で最後だろう。他の地区に散らばったものは仲間たちが倒してくれているはず。
「寛大な主催者様は獲物が増えたと喜んだろうが……甘いね。これから始まるのは脱出劇じゃなく、主催者様の転落劇って訳だ」
 気狂い道化の殺人ゲームを盛り上げる一番の役者である戦車人形が失われれば、演目自体が変わるだろう。
 カイムは奴隷狩りの殺人ゲームが奴隷たちによる逆転劇に入れ替わる瞬間を感じ取り、くつくつと余裕の笑みを浮かべるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

葛葉・アリス
【恋華荘】
相変わらずジャバウォックに理緒を同乗させてるわ
「あの不格好な戦車モドキは、私達の相手ね?」
防御は理緒がしてくれるようだから、私は攻撃に専念

「ジャバウォック。攻撃開始」
ジャバウォックの爪……翼の下に格納されている左右二対のガトリング砲と嘴の中の主砲で制圧射撃
生体からつながる火器ゆえ弾切れも気にせず乱れ撃つわ

ジャバウォックの弾幕と、理緒に守られながら、私は戦場全体を電脳空間を通して見る
【世界情報更新】にて戦車モドキのパラメータを書き換え、装甲の数値を薄くし、命中弾が容易く弾薬庫に火をつけるように状況を改変
あるいは脚部の耐久を弱くしたり、まぁ色々
目につくもの片っ端から壊していきましょう?


菫宮・理緒
【恋華荘】

さて、少しずつ体勢も整ってきたっぽいですし、
ここからは反撃タイム開始です!

自動人形はみなさまにお任せできそうな感じですので、
わたしたちの狙いはウォーキングタンク。

相手に姿を見せつけるように動いて、こちらにひきつけ、
1両ずつしっかり叩いていきたいですね。
「かわいくない『2本足』には、退場してもらいましょう」

引き続きアリスさんのジャバウォックに乗せてもらいつつ、
タンク相手への攻撃は、アリスさんにお任せして、
わたしは【等価具現】を使って、相手の攻撃を相殺していきたいな。
「アリスさん、防御は任せてくださいっ。」

もし攻撃する余裕があるなら、
【Nimrud lens】で援護させてもらうね。




 ゲームは猟兵有利に傾いた。
 各地で戦車人形は部隊ごとに各個撃破され、その活躍に勇気づけられた奴隷たちは反撃に闘志を燃やしている。
 今頃あの気狂い道化は予想外の展開に狂喜し、そして歯噛みしていることだろう。
 その証拠に、アリスと理緒の前に現れた戦車人形は縄張りを守るというルールを犯してまで自動人形を引き連れている。
 随伴歩兵の動員は市街地における戦車戦の基礎。道化もそのくらいの軍事知識はあったらしい。
「待ち伏せ用の人形まで使って、ルール違反ね。いえ……ああいう手合いはこういうのもゲームを面白くするためのスパイスだとか、ふざけたことを言うのかしら」
 何処かで白塗りの顔がくしゃみをしたような気配を感じながら、歩兵を引き連れた戦車人形を見遣るアリス。
 自動人形はマネキンのように整ったヒトガタだが、戦車人形は名の通り戦車に手足を生やしたような不気味な姿。どうやら手足の規格は自動人形とよく似ている辺り、戦車人形も火砲を用いない単純なパワーならば自動人形とさして変わらないのだろう。
 ジャバウォックの背中で冷静にその仕様を分析したアリスは、緊張した面持ちで背後に並ぶ奴隷たちに聞こえるように理緒に問う。
「あの不格好な戦車モドキは、私達の相手ね?」
「はいっ。自動人形はみなさまにおまかせできそうな感じですので、わたしたちはあれを狙いましょう!」
 装甲らしい装甲もない自動人形ならば、奴隷たちの持つ小火器でも相手ができる。けれど戦車人形の相手となれば荷が重かろう。理緒の言葉に、奴隷たちも全てを猟兵任せにしていてはいけないと勇気を奮い立たせて銃を握りしめた。
「では。ここからは反撃タイム開始です!」
 理緒の号令に、奴隷たちは反撃の雄叫びを上げて手にした銃の引鉄を引き絞る。
「走りなさいジャバウォック、攻撃開始」
 奴隷たちの弾幕が自動人形を穿ち倒してゆくその中を走り抜けるジャバウォック。その両翼が開き、ガトリング砲がその冷たく輝く銃身を見せつける。砲身が高速で回転し、吐き出された弾丸は凄まじい勢いで戦車人形の装甲を叩くが貫通しない。腐っても戦車、その装甲厚は正面から貫通するに相応の威力を必要とするのだろう。
「なら主砲よ」
 主の命令に従って、両の足を突っ張り緊急停止、砲撃姿勢を取ったジャバウォックの嘴の中から最大威力の砲が展開した。これならば戦車人形の装甲を真正面から貫けるだろう。
 だが、その脅威は戦車人形も承知。高脅威目標が足を止めたならばその隙を逃しはしない。車列を組んだ人形たちが一斉に砲身を旋回させジャバウォックを照準する。
 制動、照準、砲撃。ジャバウォックのそれに対して、最初から足を止めて砲戦するつもりだった戦車人形たちは照準を合わせて撃つだけだ。ワンアクション早い戦車人形から、高威力の徹甲弾に加えて回避機動を制限するための散弾が放たれる。
「させませんっ!」
 それに対して動いたのは理緒。その砲の口径や形状から推測できる敵の砲弾と同質量の仮想情報を現実世界に具現化して真っ向から砲弾にぶち当て迎撃を試みたのだ。
 最初の一撃は精度が甘く、一方的に砕かれながらも弾道を逸して直撃を回避した。
 二撃目は紛うことなき同質量だが、散弾に対して徹甲弾の迎撃は効果が薄い。
 そうして一瞬の内にいくらかの試行錯誤と失敗を経て、着弾の際に飛び散った礫による僅かな傷と引き換えに理緒は迎撃を完成させた。
 等しく同質量。全く同じ弾道を、まるで逆回しのように飛翔する迎撃砲弾。電脳魔術士である理緒によって演算された、未来予知めいた結果予測から放たれる相殺のための等価具現が戦車人形の攻撃を撃ち落とす。
「アリスさん、防御は任せてくださいっ」
「そう、頼んだわ。――さて、私も電脳神らしいところを見せてあげようかしら」
 神ならば、神らしく。現実に仮想を召喚するのが理緒の魔術だと言うならば、アリスは神として現実そのものを改変する。
「さぁ、世界の書き換えを始めましょう?」
 ――神の権能が世界をゼロとイチの組み合わせへと堕とす。全ては数値によって定義され、数値で表せない揺らぎは世界から排斥される。
 そして、神だけがその数字に干渉できるのだ。
 装甲を薄く。弾薬庫の誘爆可能性を高く。誘爆の威力を大きく。砲撃の不発率を高く。
 思いつくままに数字を改変してゆくアリスによって、戦車人形は木偶人形へと堕ちてゆく。
「……こんなところかしら。ジャバウォック、撃ちなさい」
「はい! かわいくない二本足には退場してもらいましょう!」
 背に乗せた二人の少女の声に応えて、二脚の獣戦車が二脚の軽戦車へと主砲の連続射撃を叩き込む。
 紙切れのように装甲を貫かれ、弾薬庫に引火しては僚車を巻き込み吹き飛ぶ戦車人形。
 その爆発は、奴隷たちに撃たれ攻めあぐね、足を止めていた自動人形達をも巻き込み道化の配下を根こそぎ焼き払った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フローラ・ソイレント
※アドリブ歓迎、共闘可

WIZ判定

・行動

円の動きで敵の回りをすり足で回るような歩法で散弾を回避しつつ
その間に地面に触れながら磁力刻印を浸透させてまわる

辺り一帯を自身の支配下の磁界で覆い
破壊された地形の瓦礫を操って敵に殺到させて圧壊する
その後は瓦礫の塊を転がしながら他の敵も押しつぶして回る

・セリフ

ここまで接近すれば
面制圧の散弾でも砲塔の向きに気を付ければ躱すのは容易ですね
それに……

いいのか?
そんな派手に瓦礫を巻き散らかしてよぉっ!

(UC詠唱後に瓦礫を操って敵を巻き込みながら押しつぶし投射する)

こんなにレーンが荒れていちゃストライクはとれそうにねぇな
まあ、何投かかろうと全部ぶち倒すだけだ!


チトセ・シロガネ
いつもうまくいくとは限らないのが人生というゲームなんダヨ。

相手は機関銃、それなら……【光輝体系】を発動ネ。
そこら辺の金属スクラップを怪力と念動力を駆使してグラップル、
電気の特性とオーラ防御で簡単な電磁装甲を作成、
それを振り回しつつ機銃掃射を防御、そのまま突っ込んでいくヨ。
地形の利用方法の一つネ。

近くまで来たら、スクラップを機銃にポイ、
散らばった瓦礫は目くらましに使い、
ボクはそのまま頭部に今まで溜めた電気を流してセンサーをかく乱。
ほかの猟兵が接近できるチャンスを作るヨ。

【アドリブ歓迎】


レッグ・ワート
自力整備が厳しそうな奴来た。救護者乗せて無茶はしたくないし、さてどうするか。

迷わずゴッドスピードライドの逃げ足で撒くわ。安全運転かっ飛ばす。一応跳んだり急にきったりしなくて良いように、地形や位置の情報は迷彩かけっぱなしのドローンで情報収集していくよ。ついでに逃げながらでも敵の砲塔向きやレンジ、威力はサンプル撮り続ける予定。死角の別口にうっかり出くわすのも嫌なんで、視力も聞き耳も外さないかな。もし一網打尽の準備している猟兵がいたら、巻込めるように誘導しよう。その時は礼を忘れずに。とは言え出来れば先に、良い護衛役がついてるグループに連れてきた一般を預けたいね。とりま、諦めなきゃから逃げきろうな。




「いつもうまくいくとは限らないのが人生というゲームなんダヨ」
 感慨深く呟くチトセ。
 彼女を包囲する戦車人形。
 進軍中の戦車人形の大部隊に真上から飛び込んだチトセは、砲塔をくるりと旋回して足を止めた戦車人形たちに取り囲まれていた。
 無論、望んでやったことである。陣のど真ん中に居る敵を狙うならば、誤射の被害が大きい散弾や榴弾は使えまい。徹甲弾で狙い撃つにも近すぎ、必然相手の攻撃手段は――よほどトチ狂ったAIを搭載しているのでもなければ――車体上面に積んだ重機関銃に限定できる。
 小口径の銃弾ならばなんとでも対応できる。チトセはその身を稲妻へと転じ、周囲一帯に雷雲の如き膨大な電気を放って電磁装甲を纏う。
 吸い寄せられるように手の中に収まった標識を武器代わりにつかみ取り、一斉射撃を回避した戦車人形たちの攻撃を跳んで走って躱し標識をくるくると回して打ち返してそれでも回避できなかった分は強力な電磁装甲で弾き駆ける。
「こういうモノが多いところで戦ったのがユーたち間違いネ」
 戦車人形の一体に飛び乗り、ぐらりと倒れ込むその重機関銃の根本に標識を突き刺し電撃を流し込む。機体内部の精密な思考ユニットに高電圧の負荷を掛けられた戦車人形は黒煙を噴き出し機能停止。
 識別信号を喪失し、ただの鉄くずと化した僚車だったものにもお構い無しで放たれた機銃掃射を引き抜いた標識を投げつけ、あるいは念動力で浮かべた石ころを砲塔側面に力いっぱい叩きつけることで撹乱したチトセは、次々と辺りのスクラップを手にとっては大胆で派手な動きで戦車人形を各個に無力化してゆく。
 踊る稲妻の勢いは止まらない。その勢力を増し、電気に通じるものなら誰でもが感じ取れるほどの強さ鮮やかさで戦車人形を翻弄し続ける。

「この圧は……一網打尽の大技準備ってとこかね。だったら少しでも巻き込んで貰うか。爺さん、振り落とされるなよ」
 助けた老人を後ろに乗せて、レグはバイクを加速させる。一度死にかけたばかりの老人を後ろに乗せたまま、砲撃を避け接近戦を行うような戦闘機動は無茶だ。
 レグの技量ならば不可能ではなかろうが、その前に老人の身体が持つまい。
 故に、護衛対象を背にしたレグの判断は迷わず退避、その一択。戦車人形への対処は放置する形になるがやむを得ない。老人の生命が最優先だ――そんなところに、巨大なエネルギー反応。
 他のもののような、攻撃の際に感じられる瞬間的なものではなく、継続して発せられるそれを戦車人形を一網打尽に殲滅する大技の準備行動だと判断したレグは、そちらに向けてハンドルを切る。
 路地を駆けるバイクを追って、手足を使い路面のみならず壁面をさえ虫のように這って高速で追い掛ける戦車人形は、四足の奇怪な姿で射撃安定性を増し、二足歩行時よりよほど安定した照準で砲弾をレグのバイク目掛けて送り出す。
「こちとら安全運転だぞ、ちった手加減してくれよ……!」
 老人に負荷を掛けるような急旋回はできない。障害物をジャンプ台代わりに跳躍するなどもってのほかだ。その曲芸を成功させた暁には、後席の老人を路上に落としてしまいかねない。
 レグは先行させたドローンが送るなるべく平坦かつ直線の長く道幅の広いルートを選んで駆け、ついでに戦車人形の性能データの収集も忘れない。
 そのスペックを少しでも理解していれば、予想外の伏撃に遭うリスクも減るだろうし、今後同型機に出会った際の参考になるだろうからだ。
 とまれ。
「この先目的地まで直進、爺さん最後まで気張れよ……!」

「この感じ、さっきの……」
 奴隷たちと別れ、追撃に繰り出された戦車人形を逆にこちらから打って出て迎撃していたフローラは、覚えのある波長の電気にその足の向きを変えた。
 近い。びりびりと肌を突き髪を逆立たせるような電力。その持ち主が今戦っている。
 幾つかのストリートを横切って、円陣を組むように道を塞ぎ何者かと交戦中の戦車人形の背後に飛び出したフローラ。
 その姿に気づいた数輌が重機関銃で陣形の中の誰かを牽制したままくるり砲塔旋回、次々に散弾をぶっぱなす。それを僅かな踏み込みでするりするりとすり抜けるフローラは、戦車人形の迎撃が温いと笑う。
「ここまで接近を許した時点で、面制圧の散弾でも砲塔の向きに気をつければ躱すのは容易です。それに――」
 にこやかな表情は一転鋭く。
「いいのか? そんな派手に瓦礫を撒き散らかしてよぉッ!!」
 握る拳に浮かぶ種字。師より学んだ流派の奥義。電磁を操る異形の格闘術。
「内なる小宇宙を外界に投影す、これ成るは我が世界なり。磁極流、法界曼荼羅――!!」
 戦車人形を穿った拳。磁力の反発で吹き飛ばされたそれが僚車を巻き込み横転する。此れこそ奥義、ではない。そのまま地に拳を振り下ろし、大地に刻印を刻みつけることでフローラの精神が磁界となって現世に再現された。
 ――そこへ。
「さっきのビリビリのユー! なんだかわからないケド、その技でアイツラなぎ倒しちゃいなヨ!」
 戦車人形の群れを蹴飛ばし高らかに飛び上がったチトセが、その身そのものである電力で磁界の出力を跳ね上げる。
「よっし爺さんまだ後ろ乗ってるな?! お前さんら悪いが追いかけてくる連中頼む!」
 ストリートを疾走するバイクに跨り、ガサガサと不気味に手足を振り乱し追いかけてくる戦車人形の始末を――とはいえそもそもの速力差を無理に補おうとしたせいで手足の基部から火花を散らし煙を噴く瀕死だが、それを知らぬは前を見据える当人ばかり――任せて横切ってゆくレグがさらなる獲物を引きずり込む。
 最大を越えた最大出力。そしてそれを披露するに不足ないほど多数の敵。この上ないほど整った舞台にフローラの口の端が楽しげに吊り上がる。
「こんなに荒れたレーンじゃストライクは取れそうにねぇな――って思ってたけどよ。こりゃ一投で根こそぎぶち倒せちまうぜ!!」
 地面と瓦礫は反発を。地面と戦車人形は引き合って、つまり瓦礫と戦車人形も引かれ合う。
 両の脚が地面に張り付き動けない戦車人形目掛けて砲弾もかくやという勢いで地面から跳ね上げられた瓦礫が、落下の勢いすら乗せて降り注ぐ。
「これが磁極流、法界曼荼羅だ!」
 根こそぎ押しつぶされた戦車人形の残骸を前に、拳を打ち合せるフローラ。
「ヒュー、ド派手な技だネ。ボクといい勝負なんじゃなイ?」
 その威力に舌を巻きながらも、自分も負けちゃいないと胸を張り、ようやく彼女と顔を合わせたチトセ。
 そこへ、老人を乗せた宇宙バイクがゆっくりと近づき停車する。
「マジで助かったぜ。恩に着る。押し付けちまって悪いね」
 レグが頭を下げれば、後席の老人も二人の美女に両手を合わせてお迎えがきた、女神様じゃと拝みはじめる。
「いや爺さん死んでねえって。しっかりしろ、生きて逃げ切るんだろ?」
 そのまま死にそうなほど満ち足りた――あるいは高速での逃走劇に精魂尽きた――穏やかな顔の老人の肩を優しく揺するレグ。
 そんな姿に、チトセとフローラはキョトンとした顔を見合わせて、どちらからともなく噴き出すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『レイダーピエロ』ジミー・ザ・ジョーカー』

POW   :    血みどろのスペクタクルショー
【手品や曲芸】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    大虐殺道化モード
【箍が外れ、笑いながら攻撃し続ける状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    キリングマイム
対象のユーベルコードを防御すると、それを【パントマイムで表現し】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。

イラスト:V-7

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は熊猫丸・アカハナです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



『ウゲゲェーッ!! 私のウォーキングタンク君が全滅ゥ?! 一時間持たずにか!』
 抱えたポップコーンのバケツを放り投げ、湿気た白い花を全身に浴びながら頭を掻き毟る道化師。
 テーブルを蹴飛ばし、不愉快な展開を披露したモニターに散弾銃をぶっ放して、地団駄を踏むその道化の表情はしかし笑顔。黄ばんだギザギザの歯を剥いて、ニッコリと口の端を吊り上げた笑みを張り付けて、道化の足踏みは次第にリズミカルなステップへ。
『まあ、まあいいさ。ゲームはまたやり直せばいいからね。そうとも、あいつらが全員逃げおおせたところで次の連中を攫ってきてゲームの仕切り直しと行こうじゃァーありませんかッ!』
 コツコツ、カカカッ。踵を軽快に打ち鳴らして踊る道化が、楽しげに散弾銃に弾丸を押し込めくるくると銃を回し、あるいはジャグリングのように放り投げるガンプレイ。
『ホギャーッ!! 誰ですかねェ弾込めた銃で遊ぶ悪い子は! パパママに銃で遊ぶなって言われなかったのかな!? 言われてねぇや! アヒヒヒヒ!!』
 案の定暴発した散弾で危うく頭の上半分を落としそうになるのを、とっさのブリッジで回避してゲラゲラと笑い、道化はそうと決まればともう一度弾込めをやり直しながらスキップでシアターを飛び出した。
『修理、修理、タンクくんの修理ー♪ つなげて ふさいで くっつけろー♪ ネジが余った? 大丈夫♪ 部品が足りない? 大丈夫! 笑顔があればァー なんとかなるのさァー♪』
 たった一人、観客も居ないステージで上機嫌にひとしきり歌って踊ってからテントを出た道化。直後突きつけられる銃口。テントを取り囲む殺気立った元奴隷たち。
『………………?』
 それをくるりと見回して、道化は跳んで驚いた。
『ギョエーッ!? 奴隷、奴隷ナンデ!? 逃げたんじゃないんですかァ!?』
 ウォーキングタンク全滅のいらだち任せにモニターを割っていなければ、猟兵達の先導でテントに逆侵攻する元奴隷達の動きを捉えることもできたろう。
 歌って踊って無駄な時間を過ごしていなければ、迫る猟兵と元奴隷たちが完全に包囲を敷く前に各個撃破だってできたかもしれない。
『なるほどなるほどこりゃ私が悪い! 来ちゃったモンは仕方ありませェーん! かくなる上はさあさみなさんご覧あれ! ジミー・ザ・ジョーカーのおもしろ殺戮ショー、第三部は私自らとっておきの血みどろグチャグチャスプラッタを披露致しまショー!!』
 ド派手な金色蝶ネクタイをピッと引っ張り、身につけた無数の武器を誇示するようにその場でくるりと一回転。そのまま胸に手を当て深々一礼。
『今日のゲストは猟兵の皆サン! 観客席の方、流れ弾で死んでも当方責任は追いかねますしご遺族にお見舞いのフルーツセットとか贈りませんのでご容赦を……』
 フザけた物言いだが、この狂った道化の戦闘力は本物だ。正気ではない分行動を予測しにくいというのも厄介だろう。
『それではではでは、イッツ!! ショォォォォォ!! タァァァァァァイム!!!!』
セラエ・プレイアデス
グチャグチャのスプラッタショーだって、まぁ行儀悪い。
テーブルマナーとか本の中でしか見たことないボクでも、もう少し上手く食べるけどなぁ。

敵は色々武器持ってるみたいだね。
ボクに武器はもう十分だけど奴隷の人達にとっては多ければ多いほどいいよね。
って事で【早業】込みのUC駆使しつつ鉤爪のワイヤー伸ばしたり、近接武器で切りかかってくれば【武器受け】からパクってくよ。
【念動力】で操る円月輪で引っ掛けて盗むのもいいかもね。
銃の類は奴隷さん達に投げ渡して、近接武器は【念動力】で背後に保持。
丸腰にできなくてもある程度数溜まったら一気に攻勢をかけるよ!

ズルいけど、ボクも行儀良いなんて一言も言ってないしね。


カイム・クローバー
きっちりステージが用意されてるなんざ、準備良いじゃねぇか!
転落劇のクライマックスだ。演出は任せな

アンタが主役か?俺はカイム・クローバー。転落劇の道先案内人さ。どうぞ宜しく(胸に手を当て一礼しつつ【挑発】)…なんてな?
UCを発動しつつ、魔剣を顕現。へぇ、曲芸か。面白い見世物だ。
【挑発】しつつ、【見切り】と【第六感】にて躱していく。で、曲芸はもう終わりか?
【二回攻撃】に黒銀の炎の【属性攻撃】を刀身に宿して魔剣を振るう。こういう手品はどうだ?【フェイント】交えて【残像】が残る斬撃。
最後はステージを彩るか。炎を【範囲攻撃】でステージ周囲に。演出みたいなもんさ。クライマックスなんだ。派手なのが良いだろ?




「聞いた? グチャグチャのスプラッタショーだって。まぁ行儀悪い」
 眉根を寄せひそひそと、しかしジミーにはしかと聞こえる声量で囁くセラエ。
「テーブルマナーとか本でしか見たこと無いボクでももう少し上手く食べられるのに」
「そこォ! 聞こえてございますでしてよ! 演目に文句はご法度! 嫌なら見るなって格言をォご存じない!?」
「見せにかかってんのはお前だろうが!」
 無駄に上体を反らし、目玉が溢れそうなほど目を剥いてセラエを指差すジミーにカイムは思わずツッコミを入れてしまう。
「ンンンー確かに私が皆さん拉致って見せつけてるトコもありますケドねえ? 猟兵の皆さんは自分から首突っ込んでいらっしゃったじゃァありませんか!」
 見たいんでしょ? 見たいんですよね? 見たいに決まってる! 自分勝手な三段論法で猟兵の意見を決めつけた道化が背筋を戻した勢いで宙返り。同時に背後に聳える大型テントの後方から花火が上がり、いつしか日の沈みかけた空に七色の大輪を咲かせた。
「おー。ショーの趣味は悪ぃがきっちりステージを用意しとくなんざ、いい心がけじゃねえか」
「デショー? 私、この道ン十年の大ベテランですからしてェ、盛り上がりどころもぜェーんぶ承知! であるからして皆さん、改めて血みどろグチャグチャスプ――」
 ケタケタと嗤う道化のセリフをカイムのよく通る声が遮った。
「此処からはイカれ道化の転落劇、そのクライマックスだ! 俺はカイム・クローバー、この劇の案内人さ。主演はコイツ、ジミー・ザ・ジョーカー! 客席の皆も参加自由のフリースタイルで行こう、どうぞ宜しく……なんてな?」
「はァー!? 勝手に演目変えないでいただけますかァー!?」
 胸に手を当て一礼、ジミーの動きを真似た開演の挨拶。と同時にセラエがジミーに飛びかかる。
「ちょっとアナタ! まだ私が喋ってるでしょうがお行儀悪いですよォ!!」
 鉤爪の鋭い一撃をカエルのように飛び退って間一髪で躱した道化がすぐさま拳銃を抜き撃ち三連。その弾道を潜って再び距離を詰めたセラエの爪が銃口を跳ね上げ、四射目からの弾丸は紺色の空に消えてゆく。
「キミの行儀が悪いとは言ったけどさ!」
 腰の後ろに括り付けた金属バットをスラリと抜いたジミー。頭蓋骨を柘榴のように叩き割る、シンプルかつ身近な凶器を振り下ろさば、それを手甲で受け止める。重量物が直撃した衝撃は彼女の腕の骨をびりりと震わすが、お構いなしにバットの表面に爪を滑らせアルミ合金の金属棒を絡め取った。
「うわぁ痛ちゃァ!!」
 大きな鉤爪に巻き上げられたバットによって指をひねられ、たまらず手を離したジミー。吹っ飛んだバットは念動力でセラエが奪い、ついでにそいつで拳銃を思い切り打撃する。
 気持ちのいい打撃音とともに吹っ飛ぶ拳銃は、そのまま地面を回転しながら元奴隷達の方へと転がっていった。
「ボクも行儀いいとは一言も言ってないんだよね!」
 一瞬の内に両腕の武器を奪われたジミーは、頬に汗を一筋流して狼狽える。
 ――その焦燥の顔が、満面の笑みにすり替わった。
「いやいやいやいやいやいやいやいや! お見事お見事私ってば一瞬の内に武器を取られてしまいましたねェ――!」
 両手を挙げ、素手をアピールするジミー。だが指を鳴らせばその手の中にトランプが一枚。絵柄はJOKER。道化のカード。
「コイツは参っちゃいますねェ!」
 カードを一閃、咄嗟身を翻したセラエの髪が一房切り裂かれて宙を舞う。
「んな無茶あるの!?」
「私手品師ですからしてねェ! 十八番の鮮血喉噴水を披露しようとしたんですが逃げないでくださいますゥー!? ウヒャヒャヒャハ!!」
 そんなの逃げるわ! カードサイズの単分子カッターの類だとその正体を見抜いたセラエが焦る。いくら偽神兵器であっても、あの手の武器を受け続けられるようにはできていない。万に一つでも関節の隙間に刃が入れば、中の手首も無事で済むまい。
「へぇ、手品か。面白い見世物だ!」
 ひゅんひゅんと空を裂き、時に左右の手の間をピッと弾いて持ち手を入れ替えながら絶え間ない斬撃を繰り出すジミー。あまりの連撃に防戦に入ったセラエを元奴隷たちも援護しようとするが、それに気づいて必要以上に距離を詰める道化に味方撃ちを恐れて射撃ができない。万事休すかと思われたその時、揺らめく黒銀がセラエに代わって道化の前に割り込んだ。
「で? そっからどうするんだよ。俺のポケットにそのカードを瞬間移動でもさせてみるか? まさかその「よく切れますー」ってので終わりじゃねぇよな?」
 黒銀の炎を纏った魔剣がカードとぶつかり火花を散らす。左右をしきりに入れ替えながら襲いかかるジミーの小細工をカイムは単純な速度で迎え撃ち、両者は加速してゆく。
「アハーッハハハハァ! 手品ってのはシンプルな方が驚きが大きいんですよォ! 複雑なのは派手ェですケドね、その分仕掛けを勘ぐる余地が大きいのでェ!!」
「そうかい、じゃあお前のそいつはそれでお終いの芸なのな!」
 もう一手はない。そう判断したカイムの、残像すら残るような剣閃がJOKERのカードを切り裂いた。
「クヒッ……!?」
 喉を引きつらせ、笑みを硬直させるジミー。そこへ、
「さっきはやってくれたね! これ要らないから返すよ!!」
 セラエが念動力で撃ち出した金属バットが突き刺さる。脇腹を抉るように命中した金属塊に、身体をくの字に折り曲げて吹っ飛ぶ道化師。
 それがテントに突っ込んでいくのをバックに互いの手を叩きあった二人の猟兵を、激しい戦いで散った炎がまるでステージを彩る演出のように照らしていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フローラ・ソイレント
※アドリブ歓迎、共闘可

WIZ判定

・行動
敵が爆発物を投擲する瞬間を狙ってUC使用
ピンを抜いた手りゅう弾で自爆する様に仕向ける

その後コピーされても自分も再度、使用して相殺
その間に他の猟兵達に攻撃してもらいコピーしても無駄だと悟らせる

・セリフ
さて、笑えねえジョークに付き合うのもうんざりしてきたところだ
此処で終わりにしようか!

・UC演出
(敵が手りゅう弾を投擲すると目の前の空中に静止してしまう
自身も動けないことに気付き、目の前の手りゅう弾が時間切れで爆発する)
どうだい、オレの芸もちょっとしたもんだろ?

(コピーされたUCを相殺しながら)
タネが割れた手品をいつまでも使ってるようじゃ芸人としても失格だぜ!


チトセ・シロガネ
さて、ここまでやったオトシマエを付けてもらおうカナ!

相手は防御するユーベルコードならボクの出番。
これまで捕食でいただいた電力をすべて使うヨ!

まずは限界突破するためにスタードライヴの出力を高めるヨ。
その間、攻撃されるだろうから念動力とオーラ防御で攻撃を弾く、
援護してくれる人がいるならその人にも頼っちゃうネ♡

エネルギーが臨界まで来たら、UC【破邪光芒】を発動。
限界を超えた高出力の刃を煌めかせ、早業でピエロのユーに接近。
刃を振り下ろしてそのユーベルコードごとバラバラに切り裂いて使いものにさせなくしてやるネ!




『げぇーっほ! アイテテ。私がオブリビオンじゃなきゃ死んでましたよもう!』
 バットをぶち込まれてテントに突っ込んだジミー・ザ・ジョーカー。円形のステージの真ん中で大の字に伸びていた彼がぴょんと撥条仕掛けの玩具のように飛び起きれば、テント内部に仕掛けられたスポットライトが一斉に点灯して彼を照らした。
『うおっ眩し! 何ですか何ですかァ、これはプログラムに無い演目ですよォ!』
 ニマニマ笑顔のまま困惑する道化師に、頭上から彼より、彼を照らすスポットライトより明るい声が降り注ぐ。
「ヤッホー、ピエロくん。ショーの調子はどうカナ?」
 見上げた天井、布張りのテントを支える鉄骨の上に立つ女。光を纏った彼女が飛び降り――空中ブランコに足を引っ掛けテントを大きく横断、最も高度が低くなったタイミングでブランコを離れて空中で何度も身を捻り回転しながらすたりとジミーの前に降り立った。
『ブラボーブラボー! すばらしい! 私より目立ったのは癪ですケド。イヒッ、イヒヒッ! 見事な曲芸でございましたですねェ!』
 ぱちぱちと大げさに手を叩く道化師にウィンクをひとつ。四肢より伸びる光刃を携え女――チトセは笑う。
「さて、ここまでやったオトシマエ、そろそろ付けてもらおうカナ!!」
『落とし前ェ? さてはてなぜなぜ、楽しいショーのどこに落とし前要素があるんでしょうねェ?』
 身につけた反物質エンジンの出力を高め、予備動力としてここまでの戦いで人形たちから奪った電力を費やし力を溜めるチトセに対し、ジミーは容赦なく機関拳銃の弾丸を浴びせ撃つ。
 反撃はおろか回避すらしない。ただ念動力と纏った闘気で弾丸を弾き、只管反撃の機を伺う彼女に、ジミーの刻む軽快なダンスのステップは次第に苛立ちを帯びて荒々しくなってゆく。
『ンアアアアアアー! もう! 人形撃ちじゃショーにならないでしょうが! やる気あるのかなァ! 無いのかな! ならもう吹っ飛ばしちゃいまショーね!!』
 ずだん。靴底がステージを叩く。
 ひらり。コートの裾を翻す。
 じゃら。吊り下げられた手榴弾が揺れて擦れる。
 それを木から林檎をもぎ取るように引きちぎり、ピンをギザギザの黄ばんだ歯で噛み引っこ抜く。
『ンではァ、ピッチャー振りかぶってェ……投げたァァァァァ……あ?』
 ぶん、と勢いよく放り投げた手榴弾は、そのまま前方へ飛翔――することなく、その場でぴたりと空中浮遊。
『ありゃ。私ってば空中浮遊マジックの仕込みはしてなかったと思うんですがねェ……?』
 ところで。手榴弾というものは、ピンで固定されたレバーが外れることで、数秒程度設定された時限信管が作動して殺傷力を行使する兵器である。
 で。空中でぴたりと止まった手榴弾にはすでにレバーは無く、見下ろせば床に転がる銀の握手。
 そこでジミーは気がついた。視線しか動かせないことに。
『ゲゲェーッ! 私達、金縛られてるゥー!?!?』
「気づいたか? どうだい、オレの芸もちょっとしたもんだろ?」
 その声にジミーが視線を動かせば、客席に立って掌を構えるデッドマンの女。
 ナース服に身を包んだ彼女がにいっと獰猛な笑みを浮かべてその手を交差する。
「さて、アンタの笑えないジョークに付き合うのもうんざりしてきたところだ。そろそろ終わりにしようか!」
 コツン。小気味よい音がテントに響き、そうして。
『あっちょっと待っ――――』
 床に落ちた手榴弾が爆ぜ、爆風と破片を全身に浴びて道化師が吹っ飛んだ。
「――――フローラ!」
 長いタメ時間、どうしても生じる隙。それをフォローしてくれた同じ電気使いの女の名を呼び、チトセは歓声を上げる。
「もうちょっとだけ援護お願いネ!」
 語尾にハートマークが付くような。手足が自由ならばとびきりのポーズで投げキッスをプレゼントしてあげたいような。そんな喜色を帯びた頼みごとに、フローラも肩をぐるりと回して任せとけと頷いた。
 一方爆発に吹っ飛ばされたジミーは、衣装のあちこちを焦げ付かせながらもステージへと這い戻る。
『アナタ達猟兵のユーベルコードはどうしてマァそんな出鱈目クソ仕様なんですかねェ! まぁでもええハイ、理解しましたとも! 体術とちょっとの手品ですねェ!』
 コミカルな焼け焦げ表現のつもりか、黄緑色のアフロウィッグを毟って投げ捨てジミーは拳の構えを取る。その構えたるやフローラの鏡写し。
「へぇ……あの一瞬でオレの構えをそこまでコピーできんのか」
『そりゃまあネ、同業者の手品のタネを見破れないくらいじゃ道化師失格ですからして!』
 あとはちょっとのパントマイム。磁力を操る電磁の拳を高い精度でコピーしてのけたジミーが、もしオブリビオンでなかったならば。もし気狂い道化に成り果てず、真っ当な人間として誰かの笑顔のために生きる芸人であり続けたならば。
 もしかしたら、フローラのような己の拳と武を磨く人々にとってよきライバルのような存在に成れていたのかもしれない。それほどまでの観察力と、その場で手品のタネをも駆使して相手の鍛えた技を模倣するアイデア。
 引と斥、互いの力が打ち消し合い、互いに互いを金縛りに落とそうとする静かなる格闘戦。両者の距離が離れていても、傍目には構えを見せつけ合うだけのように見えていても、それでも両者は達人同士の領域で技をぶつけ合っていた。
「猿真似の割にやるじゃねえか!」
『お褒めに預かり恐悦至極、アンコールも随時受付中でございますからァお気軽に!』
「いや――そろそろ終いさ。タネが割れた手品をいつまでも使ってるようじゃ芸人失格だぜ!」
 ちらりと視線を横目に逸らせば、チトセはそれにウィンクで応える。
『はァ? そりゃごもっとも! ですけどタネが割れてなお巧妙にそれを隠せてこそ一流の芸人でありますからァ! アナタだって私のこの芸、見切れ――』
 銀閃が疾走った。
 その力を臨界に高めたチトセがテントを縦横無尽に駆け抜け、仕掛けられた無数の“手品のタネ”を切り刻む。
 それは大小の道具や仕掛けに限らず――
『ずんばらり……ってェェェ、私のテントがァ!!』
 テントを支える支柱までもが滑らかな断面を晒して滑り落ちてゆく。布とはいえこれだけ大規模なテント、崩れて潰されれば大怪我では済まない。
 必死の形相で四つん這いになりながら、それでも虫のような速さでテントの裏口へと逃げてゆくジミー。
「野郎、待ちやがれ!」
「ヘイ、フローラ。ボクらも逃げなきゃペッシャンコのハンバーガーヨ?」
 それを追いかけ決着をつけようとするフローラを抑え、彼女を抱えて落ちてくる布を切り裂きテントから離脱するチトセ。
「ま、コレで仕掛けはあらかた潰したからネ。アイツの陰湿なトラップも使えないでショ」
 空中に飛び出したチトセがぽいと真二つに裂かれたリモコンを放り捨てる。
 ジミー・ザ・ジョーカーの最後にして最悪の罠。街中に仕掛けた爆弾の起爆スイッチは、後生大事に隠し持ったなんだかヤバそうなスイッチという至極アバウトな理由で猟兵の手によって人知れず破壊されたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

山猫・ラン子
【ゴンと一緒】
なにあの気持ち悪いの(ピエロ)
とりあえず近づきたくないわね

遠くから大砲で支援するけど、全然当たんないわね
何か虚を付くような攻撃で一撃に賭けた方が良いけど何か

良い方法がある?不安しかないわね。
どうすればいいのかしら?
判子・・?いいから早くなさい(同意書は読まずに肉球ぺたん)
高い所にいくのね。わかったわ。

(黙々、着々と準備され、戦車にセッティングされたあたりで)
・・・ゴン!?ちょっとアナタ待ちなさいよまさか
に”ゃあああああああああああ!!(ぶっとぶ)

もうこれでも食らいなさい!(近づき)
(アイテム:猫のぬいぐるみをUCで大量に量産し埋めてドローンで打ち抜く)

(アレンジアドリブ大歓迎!)


龍神家乃・ゴンちゃん
(ラン子ちゃんと協力)

柴犬型戦車に乗り込み、砲戦

🐾流石ピエロでしね。
すばしっこくて全然当たらないでし

こうなったら稜線射撃でチャンスを待つでし
ラン子ちゃん、移動するから捕まっててくだしよ。



■UC【ちょートッキューびんでし!】
仲間を弾丸として撃ち出す非人道技

契約書にサイン、判子、血判などを得られれば威力が増し、ゴンちゃんに責が及ぶことがない。


🐾ラン子ちゃん、必殺の弾丸を使う時がきたようでし。

はい、これ。(と契約書を渡す)


🐾装填!
(ラン子ちゃんを詰め込む)


🐾ふぁいあーでし!
(発射)


🐾必要な犠牲だったでし……。
ラン子ちゃん、君の子と忘れないのでしよ。

※アドリブ、連携大歓迎!




「ヒャッハー! ピエロ野郎が出てきやがったぜェー!!」
 ぱらりらぱらりら。
「ぶいはち号の仇だァー! ぶいはち号を崇めろォー!!」
 ぱらりーらり、ぱらりらりらー。
 這う々々の体でどうにかテントの崩落から逃げ延びたジミー・ザ・ジョーカー。
 煤けた道化を取り囲むのは、バイクに跨ったモヒカンの集団だ。戦車人形とのしばきあいを制したカンプ運送の社員一同は、その戦いでの疲労を癒すため小休憩を取っていたことでテントへの逆侵攻に遅れて到着していた。
 そしてそれが故に、たまたま今、かつて裏口だったそこへとたどり着きたまたま今、崩れたテントから這い出した道化に出会ったのだ。
 武器らしい武器はないが無駄にラッパの音を鳴らして道化の周囲をぐるぐるぐるぐるするモヒカン。
『えぇ……なんですかァこれ』
 人は――オブリビオンでも――よくわからないものに出会うと理解が追いつくまでの数瞬呆然としてしまうらしい。
 狂人でさえ唖然とさせてしまうほどの意味不明さ。それはジミーを取り囲むモヒカンどもの存在だけにあらず。
 その向こうに威圧感とともに存在する戦車の姿によるものだ。
 戦車。古くはチャリオット、新しいものではタンク。
 牛馬に引かせる戦闘用の車であったり、機関銃座を塹壕を踏み越え進軍させる移動トーチカであり、あるいは装甲標的と正面から砲撃戦を繰り広げる陸戦の王者であるそれは、得てして兵器然とした――一部の新概念の実験車両を除いて――無骨なシルエットを得るものだ。
 が。
 ジミーの前に鎮座するそれは、なんというか丸かった。
 丸くて、そんで柔らかそうだった。触ったら硬いのかもしらんけど。
 で、つぶらなお目々とどこか笑っているようなお口がある。なんだこれ。
『なんでしょうねェこれ……えェ…………?』
 困惑するジミー。攻撃を仕掛けるでもなくぱらりらぱらりらするモヒカン。笑顔のまま鎮座する戦車(?)。
 履帯が付いている以上戦車っぽい気がするが、それを言ったらトラクターだってショベルカーだってブルドーザーだって履帯が付いている。アポカリプスヘルの人々は場合によってはこれらの車輌を無理やり装甲化して武装を施し戦車と呼ぶこともあるのだから、そういう面では戦車のような気がしなくもない。
 が。
 が、それにしたってこの戦車(?)は異形であった。だってさ、車体がデカい柴犬の顔なんだぜ?
『しかも後頭部からしっぽも生える。しかもそんなナリして砲撃までしてくるとはつくづくこの戦車っぽいものは度し難いですネェェ!?』
 アイテム説明を見る限りどこかにあるはずの砲塔。でも見た目の上ではどこにも無い砲塔。そこから撃ち込まれた砲弾をピエロならではの軽快な身のこなしで回避するジミー。流れ弾でバイクごと吹っ飛ぶモヒカン。何しに出てきたの君たち。
「すばしっこくて全然当たらないでし」
 一方その柴戦車(?)ことゴンちゃんタンクの操縦席では、龍神さんちのゴンちゃんが操縦桿や主砲の発射ボタンを四つの肉球で器用に操り気狂い道化へと砲撃を繰り返していた。
 そのことごとくをカートゥーンめいた挙動で回避するジミー・ザ・ジョーカーの動きたるや、同乗するラン子をして気持ち悪いと言わしめるほど。デフォルメされた二次元の物理法則が三次元空間に出てくると気持ち悪くなるんだねって一つ賢くなった気分になった。これを見ている諸氏は緑色の仮面を被ったジム某主演作品をご想像いただければだいたいあんな感じの動きをしている。
「とりあえず近づかないであいつなんとかする方法を考えなさいよゴン」
 気持ち悪いから一ミリでも近づきたくないと、猫顔を歪めて無茶振りするラン子にゴンちゃんは首を傾げて思案する。連動してゴンちゃんタンクも少し傾く。
「こうなったら稜線射撃でチャンスを待つでし。ラン子ちゃん、掴まっててくだしよ。人間さん、ちょっと後お願いするでし」
「任せてくださいよ柴の兄貴ィ!」
 砲撃で吹っ飛ばされても健気にゴンちゃんタンクの後退を支えるモヒカン達はゴンちゃんよりよほど犬だと思う。
『なんだかわからないのがなんだかわかりませんが逃げていきますねェ! まったくひどい目にあった!』
「なんだかよくわからないのとは何だ! 柴の兄貴のアレは…………なんだかよくわからないが凄いんだぜぇ!!」
 その様を見てゲラゲラ笑う道化師と憤るモヒカン。
 そして彼らの睨み合いを、後方に下がり身を隠したゴンちゃんタンクが砲塔(※要出典)からの視界で睨みつける。
「今ならピエロさんも気づいてないみたいでしね。ラン子ちゃん、必殺の砲弾を使う時が来たようでし」
「必殺の砲弾? そんなのがあるなら早く出しなさいよ! ……ちょっとまって、アナタがそういうのもったいぶる時って大抵……不安しかないわね」
 怪訝な視線を向ける黒猫に、柴犬はきょとんと首を傾げて舌を出す。
「……まぁいいわ、続けなさい」
「ん、それじゃはいこれ。印鑑ほしいでし」
 はやくしなさいと渡された紙にろくに目を通さず肉球スタンプを押すラン子。
 あーあー、印鑑押す紙はしっかり読まなきゃ。
「じゃ次はそこの穴に入ってほしいでし」
「穴ぁ? しょうがないわね……」
 観測手でもやればいいのかしら。言われるがまま穴に身体を潜り込ませたラン子の背後で閉まる閉鎖扉。
「…………ゴン? ゴンちょっとアナタ待ちなさいよまさか私を砲だ」
「ふぁいあーでし!」
 気づいたときには既に手遅れ。
 この柴犬、ラン子よりふわふわの雰囲気を纏いぽやぽや生きてる割に容赦ない生き物なのである。友を詰め込んだ砲の発射ボタンを遠慮容赦の欠片もなく押しちゃうゴンちゃん。
 だって同意書はもらったでしからね、とは後の彼の弁。
「に゛ゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!?」
 砲身(※どこ?)から発射された黒猫が涙とか鼻水とか涎とかダバダバで吹っ飛ぶ。
「うわあああああああああぁぁぁ子猫ちゃんだぁぁぁあああ!?」
 慌ててモヒカンどもは散開してゆく。
『ハァァ? 子猫ですってェ? 寝言を言うにはまだ早、子猫ちゃんだぁぁぁああァ!?』
 ジミーも飛来するラン子に気づいて悲鳴を上げる。
 そんな阿鼻叫喚の中、ラン子はせめて着弾の衝撃を少しでも和らげようと手持ちの猫のぬいぐるみをユーベルコードで増やして放る。ピエロに直撃するよりも、あるいは回避され地面に叩きつけられるよりいくらかマシだろうと信じて。
 だが。
 だが、である。ラン子は失念していた。普段の狡猾な彼女が、このぬいぐるみを罠として使うべく内部にみっちり火薬を詰め込んでいたことを。
 腹に抱えた危険物の存在を忘れられたまま増殖する火薬猫。地面に積み上げられる火薬猫。
 飛来する黒猫を間一髪ジミーが回避し、そのまま火薬猫の山に突っ込んでいく黒猫。
 閃光。焦熱。衝撃波。
 猫耳付きのドクロ雲が立ち昇るのを遠目に見て、ゴンちゃんは呟く。
「必要な犠牲だったでし……ラン子ちゃん、君とのことはわすれないのでしよ」
 敬礼。ドクロ雲の右上辺りに在りし日の黒猫のツンとした横顔を幻視して、柴犬はくぅんと淋しげに鳴くのだった。
 ――とんだ畜生である。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アヴァロマリア・イーシュヴァリエ
※アドリブ歓迎

ピエロのおじさんは強そうだけど、反逆者さん達と一緒に頑張ればきっと大丈夫!

クリスタライズで姿を消して、銃声に紛れてピエロのおじさんの後ろを取って、祈りの剣で……!
それで動きが止まれば念動力で捕まえて、一斉に反逆者さん達の攻撃を当ててもらうね。

パントマイムは「在るように見せる」ものだから、「見えない」ものなら表現はきっとできない、よね?

もし真似されちゃっても、砂埃を巻き上げたりすれば姿は見つけ出せると思うし、マリアは念動力で砂埃を避けられるから見つかる心配もないし、きっと完璧……!


サフィリア・ラズワルド
POWを選択

【白銀竜の解放】で四つ足の飛竜になり反逆者さん達の前に陣取って盾役になります。一緒にぶち壊すと約束しましたから、一発叩き込みたい人はどうぞ私の陰から攻撃を。
反逆者さん達の攻撃が止んだら敵に突撃します。

折角手に入れた物資を分けて貰うのは悪いし、でも敵は機械人形で次の敵も戦車のロボットで……もういつお腹が鳴ってもおかしくなかったんです!だから私貴方に会えるのを楽しみにしていました!機械じゃないなら食べられますよね?!

あ、大丈夫ですよ皆さん!どんなにお腹が空いてても敵と味方の区別はつきますから、間違えませんよ大丈夫!

アドリブ協力歓迎です。




『一体全体なんなんですかァ猟兵ってのは! 私らよりよっぽどめちゃくちゃじゃァないですか!』
 爆風に煽られゴロゴロと転がってきた道化師が、土まみれのコートを叩いて起き上がる――跳躍。
 一瞬前までその頭が転がっていた辺りに銃弾が跳ね、小さな石ころを弾いて飛ばす。
「くそっ、外した!」
「みんなよく狙って撃つんだ! 野郎だって元は人間なんだ、人形どもみたいに無茶苦茶な動きはできっこない!」
 髭面の元奪還者に率いられた奴隷たち――反逆者たちが、手に手に銃を握って積年の恨みを晴らすべく鉛玉を叩き込む。それを道化師はケタケタ笑って躱しながら、腰に挿した散弾銃を抜き放った。
『おやおやおやおや! 観客の皆さんも飛び入り参加でございますかァ! いいですねェいいですよォ、そういうイベントもショーの華ですからネ!』
 ギロリ。血走った黄色い目玉が反逆者たちを睨めつける。先のわけのわからない集団より余程わかりやすい、恨みを燃やし武器を持った群衆。彼らは今、猟兵という強い戦力が味方につき、銃という武器を手にしているから抗えているのだ。
 だが。
『音頭を取ってる何人かを始末すればあーっと言う間に総崩れするんですよねェ、こういう人って!』
 BANG! 水平二連の散弾銃が叫び、細かな鉛の礫が髭面奪還者をズタズタの肉片に変えるべく凄まじい速度でぶち撒けられる。
「――させません! みなさんと一緒にこのショーをぶち壊すと約束しましたから!」
 その礫は果たして人間の柔な肉を引き裂くこと無く、硬質な銀の鱗に跳ね返される。
 虹を纏い、翼の内に星空を抱いた白銀の竜。真の姿、完全なる白銀竜に変身したサフィリアが、その大きな身体を盾にするように両者の間に割り込んだのだ。
「竜!? ミュータントか!?」
 すわ野生のミュータントの乱入かと目を白黒する反逆者たち。
『犬のバケモノの次はトカゲのバケモノですかァ!? まったく、とっ捕まえて見世物にしちゃいまァすよォォ!』
 新たな敵の登場を察し、猟銃代わりの散弾銃を構えて唸るジミー。
「――お腹が空いていたんですよ」
 世にも珍しいドラゴンの調教ショーだと盛り上がるジミーを睨みつけて、サフィリアはくるると喉を鳴らした。
 その発言に反逆者達がぎょっとして、竜身の庇護から飛び出しそうになるのをしっぽでそっと連れ戻し、優しい瞳で彼らを振り返った白銀竜。
「大丈夫ですよ、皆さんは食べません。敵味方の区別はつきますから」
「そ、そうか。足りないだろうがとりあえず食ってくれ」
 ジミーの散弾銃の連射を広げた翼のカーテンで完全に遮るサフィリアに、髭面奪還者が回収した携行食を開けて差し出そうとするのを彼女は止める。
「それはあなた達がせっかく手に入れた物、分けてもらうのは悪いです。大丈夫、食べ物は他にありますから――ね?」
 弾切れた散弾銃をガチャガチャとリロードするジミーを見る眼差しは、反逆者達に向く知性と慈愛に満ちたそれとは真逆、爬虫類にして絶対強者たる狩人の眼。
「機械人形に戦車人形。食べられない敵ばっかりで、私もういつお腹がなってもおかしくなかったんです! だから貴方に会うのを楽しみにしていました!」
 その言わんとする所は正しく伝わったことだろう。背後で反逆者たちがやめなよ、腹壊すよと宥めるのを聞きながらも、善の竜とは悪人を食い殺すものであるなら斯くあらんとする彼女も道化を喰らって無辜の人々を救済せん。
 竜が翼を一度羽撃かせ、反逆者達が援護のために弾幕を張る。道化がそれを避けるためにぴょんぴょんと飛び跳ねたその瞬間、竜が地上を飛んだ。
 わずか地面から数十センチ。四肢を少しでも伸ばせば爪の先が掠めるような極限の超・超低空飛行。その飛翔でサフィリアはジミーの胴体にがぶりと食らいつく。
 枯れ木が軋むような歯ごたえ。ガソリンめいた油臭い体液が口内に流れ込み――サフィリアは慌ててそれを吐き出す。
 ジミーではない。吐き出されたそれは、ジミーと同じ色のコートを纏い、ナイフでジミーの自画像が留められた丸太の身代わり人形。ガソリンをたっぷりと染み込ませたそれが、何処かからの銃撃で爆発する。
「……いつの間に! くぅっ、この私がしてやられるなんて!」

『そうでも無いんですよねェ……!』
 あわよくば噛み付いた顎ごと頭を爆破してやろうと身代わり爆弾を撃ち抜いたジミーは、拳銃を持たぬ左腕を見下ろして渋面を作る。
 手品のタネの殆どをテントごと潰された今の彼に取れる策はそう多くない。そんな中で爆弾脱出マジック用の身代わり人形が残っていたのは幸運だったが、しかしそれを万全のタイミングで使う余裕をあの奴隷どもが邪魔したのだ。
 間一髪で逃げ延びたものの、タイミングをズラされたジミーは竜の大質量による突撃を受けて左腕を強かに打ち据えていた。ビリビリと痺れ、脳が揺れるような痛みはおそらく骨にもなにかの異常を来している証だろう。
『ま、そういう不調を気取られないスマイルこそ一流ピエロでありますからして! 私、いつでもどこでもニコニコ笑顔で参りンまァァァァ!』
 ケタケタ笑いを張り付けて、隠れた狙撃ポジションから飛び出した道化師ジミー。
 その腹から光の刃が飛び出した。
「マリアひとりじゃ敵わないかもしれない、って思ったの」
 道化師は巫山戯たナリだが周到な準備とそれらを即興で引っ張り出す戦術眼を持っている。
 猟兵の能力が如何に優秀でも、その罠の真っ只中に飛び込んでは翻弄され各個撃破されることもあり得ただろう。
 だが、今回は違う。この世界に生きる人々のたくましさが。どれだけ押さえつけても人は命おしさに歯向かうことはできないという道化師の慢心が。
 立ち上がった人々の援護という形で猟兵に向くべき道化の視線を惹き付け、猟兵の策動を覆い隠す。
『お…………やァ…………? ドナタかいらっしゃる?』
 背中から深々と光の剣を突き刺した見えざる何か。目を凝らせばかすかに少女めいた輪郭を認められるそれ――アヴァロマリアは、すぅと息を吸い込んだ。
「みんな、ここだよ――」
 その叫びに、竜の、人々の、道化に抗う者たちの視線が一斉に集まった。彼らの背後へ回り込んだ道化師は、慌てて逃げようとするがアヴァロマリアはそれを許さない。
 見えざる少女をユーベルコードの為せる技と見抜いたジミーが、念動力で押さえつけられた身体を必死に動かし得意の模倣で自らの姿も消そうとするが、見せることで再現する技と見えなくなる為の技の相性は最悪だ。
『エ、チョット、まっテぇぇぇぇ!?』
 銃撃が防弾衣を纏った胴体に吸い込まれるように集まり、道化の悲鳴がこだまする。
 続いて突進してきた竜に吹き飛ばされ、公園に茂る木の幹に叩きつけられる道化師ジミー。
 寸前で剣を抜いたアヴァロマリアは巻き込まれぬよう念動力を道化の動きを封じるそれから自らをふわりと浮かせるそれへ、サフィリアの突進を飛び越え彼女の背中にゆっくりと着地する。
「やったね、サフィリアさん!」
「はい、でも……」
 食べそこねた。くきゅううと体躯の割に可愛らしい悲鳴を上げる白銀竜の胃袋の声を聞いて、アヴァロマリアは荷物をゴソゴソ。
「よかったら食べる?」
 握り拳で差し出された甘い香りに、いいんですかと大きく口を開ける竜。
 そのお口に持ち込んだお菓子を放り込んで、アヴァロマリアはニコニコと笑う。
「グミですか? 美味しいです!」
 そうでしょう、どんどん食べていいよとアヴァロマリアが引っ張り出したグミの袋を見て、道化に続いて竜の叫びがこだまする。
 ――世界の虫さんグミ。やたらリアルでグロテスクな造形のそれを見て、いくら竜でもちょっと引いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

葛葉・アリス
【PPP】
「アイたちを見かけたわね。合流しましょうか?」
相変わらず理緒をジャバウォックの背中に同乗させたまま
アイやフィーナ教官と合流して行かせてもらうわね

「ジャバウォック、砲撃」
フィーナ教官たちと連携して、ガトリングや主砲を適当に撃って、狂ったピエロをけん制、アイの大技のチャージ時間を稼ぐわ
そもそも合流したは、それを特等席で見物したいからだし
「アイ、『月は見えている』から、遠慮なく撃っちゃって!」
たとえ曇りで月が隠れていようとも、【世界情報更新】の前には空のパラメータなんて晴れに変わるわ
ついでに余波で余計な環境破壊しないように、敵以外は無敵設定
さぁ、あとは、アイの新技楽しませてもらうわよ!


フィーナ・ステラガーデン
【PPP】
えらい器用に避けるわね!
それなら話しは簡単ね!避けきれないようなやつでぶっ飛ばせばいいのよ!

メインの一撃はアイに任せて私は準備が出来るまで場を繋ぐとするわ!
なんかアイが月を気にしているらしいから
もしも雲とかあればマグロで雲に穴をあけるとするわ!
マグロに跨って何度も突撃といくわ!
別に当てれなくても時間を稼げれば問題ないわね!
多少マグロが刻まれても大丈夫よ!
諦めることを知らない私の愛馬は凶暴よ!
んん?そんな死んだ魚の目でこっち見てんじゃないわよ!ほら突撃よ!突撃!!
それはそうとマグロのパントマイムって逆に見てみたいわね?

アイの準備が出来れば離れるとするわね!
(アレンジアドリブ大歓迎!)


アイ・リスパー
【PPP】
「この事件の黒幕はあなたですねっ!」

引き続き【夏の夜の夢】でパワードスーツを装着。
上空からレイダーピエロの前に着地しましょう。

「手品や曲芸などといった小手先の攻撃、このオベイロンには通用しません!」

接近してきたレイダーピエロの攻撃を装甲で弾きますが……

あれ、その手に持ってるものは?

「って、それ、私の下着ーっ!?」

気密性の高い操縦席から下着だけ抜き取るなんて手品の域を越えてませんかっ!?

「お、乙女の敵なんか、こうですっ!」

オベイロンのマイクロ波受信機を展開。荷電粒子砲を構えて【月世界旅行】によりエネルギーチャージ!
最大威力の荷電粒子砲で変態ピエロなんか消し炭にしてあげますっ!!


アリシア・マクリントック
【PPP】
こちらが見せてもらってばかりというのも悪いですからね……私の新しい芸も見ていただきましょう。新たな扉よ開け!……マリシテンアーマー!
さぁ、シノビのジツ、とくとご覧あれ!カミカクシ・クロスで姿を隠し、ハヤテ・ワイヤーガンで死角へと素早く移動、ナイフで奇襲を仕掛けます!
そして一撃当てたら煙幕タイプのホウロク・グレネードで敵の目をくらまして離脱!
その後はゲンジュツ・プロジェクターの幻や今までに使った道具を活かしてみなさんのサポートに回ります。
最後は一斉攻撃とかしたいですね。イッツ・グランドフィナーレ!です!


イデアール・モラクス
【PPP】
クク…ようやくお出ましか道化師、ゲームの終わりを告げる女帝が遊びに来てやったぞ。

・行動
UC【魔剣の女帝】を『高速詠唱』で行使。
真の姿となり『全力魔法』の力で威力を増した魔剣を無尽蔵に召喚し『乱れ撃ち』や『一斉発射』で雨霰と射出、圧倒的弾幕の『範囲攻撃』と成して『制圧射撃』をかけ『蹂躙』してやる。
「踊れ踊れ、私を愉しませろ!」
そして更には高速飛翔の『空中戦』で斬り込み、敵の反撃を『属性攻撃』で炎を纏わせた魔剣ドミナンスで斬り払い『武器受け』して『薙ぎ払い』、返す刀で『串刺し』にし『吸血』して『生命力吸収』しつつ『焼却』してやる。
「猿真似で私に勝てるものか、道化師が!」

※アドリブ歓迎


菫宮・理緒
【PPP】
猟兵以外のみなさまには、少し離れて包囲していてもらいたいな。

いよいよクライマックスですね。
「ショーにはどんでん返しがつきものですよね?」

今回は、PPPさんとの合同作戦。
そしてなんといってもアイさんの新技!
なので、しっかりフォロー入りたいと思うよ。

特にピエロが
猟兵以外のみなさまに手をだそうとするのには注意しておくね
「周りは気にしないでだいじょぶですから、ねー!」

引き続きジャバウォックの上から、みんなを援護。
ピエロの攻撃には【等価具現】を使って対抗するよ。
できる限り攻撃を無力化して防御していくね。

アイさんの新技がとどめを刺すところ、
見られたらいいんだけどな。
「アイさん、いっちゃえ!」




「あら。あれはアイに……フィーナ教官かしら」
「教官?」
 見かけた猟兵の一団を視線で追うアリスに問いかける理緒。尊大にして泰然と構える神、という印象の強いアリスが教官と呼ぶ相手が居るというのが彼女には意外だったのだ。
 ともあれ。
「合流しましょうか。構わないわよね、理緒?」
 勿論です、と同意してくれる理緒に頷いて、アリスはジャバウォックの進路を彼女たちに寄せてゆく。

「ホントに間違いないの、アリシア?」
「ええ、マリアの鼻もこっちだと言ってますから」
 竜に轢かれて吹っ飛ばされ、姿を晦ました道化師ジミー。とはいえ死んでは居ないはずだというのが猟兵達の見解で、彼らはテントから公園全体に捜索範囲を広げて追撃戦に移行していた。元奴隷たちも、いくらかの非戦闘員を除いて捜索に加わっている。手負いとはいえ危険な相手、見つけても絶対に猟兵にまかせて戦わないように、という制限のもとで、だが。
 そんなわけで新たなる姿、マリシテン・アーマーを展開し、暗視ゴーグルの視界を頼りに暗い夜の公園を往くアリシアと、そして狼のマリアに先導されるPPPの一行。
「それにしても手品師ですか。この公園敷地内も安全ではないかもしれませんね」
 本拠地であったテントほどではないだろうが、街全体に機械人形を仕込むような周到な相手ならば公園内――特に視界の悪いこの林の中などではどんな罠があってもおかしくない。
 重装甲に守られたオベイロンの操縦席に座するアイは、自分ならば最悪の事態でもオベイロンから脱出して戦闘続行可能だろうが、生身の仲間たちはそうではないだろうと周囲に気を配る。
 が、如何に強力なセンサーやレーダーを積んでいても木々の多い林ではノイズも多く、思うように情報収集できないのが実情だ。これで月明かりでもあればよいのだが、丁度分厚い雲が月に覆いかぶさり、その上ほぼ無風の風模様が雲をいつまでもそこに留めてしまっている。
「クク……どんな罠があろうと粉砕して前進するまでさ。我らはいつだってそうしてきた、だろう?」
 腕を組みくつくつと笑うイデアールが、ぶんと魔剣を振り抜き茂みに突きつける。
「こんなふうになぁ!!」
「ひゃあっ! 味方、味方ですっ!!」
 イデアールの直感が怪しいと睨んだ茂み。そこから顔を覗かせたのは、一行を追って合流するため近づいたアリスと理緒、そしてジャバウォックであった。
「久しぶりねフィーナ教官。それからそっちのパワードスーツはアイね?」
 剣を突きつけられたまま、顔色一つ変えず淡々と話しかけるアリスにイデアールは知り合いか? と二人に視線を向ける。
「え? んーと誰だったかしら……」
「アリス先任軍曹よ、覚えてないかしら?」
 その言葉でフィーナの脳裏に蘇る鮮やかな記憶。
 蛆虫――スパルタ――鬼教官。
「ああーっ、アリス!! ほんとに久しぶりね!」
「アリスさん! 貴女も来てたんですね!」
 思い出したフィーナと、同じ寮に住むアイが彼女たちの身分を保証することでイデアールも剣を収める。どうやら同士討ちの危機は回避されたと理緒が胸をなでおろしたその時、アリシアが音もなく樹上から降り立った。
「ひゃあっ……」
 思わず悲鳴を上げそうになる理緒の口をアリスが塞いで、貴女もアイ達の仲間ね、と問えば首肯するアリシア。
「ピエロを見つけました。今、マリアがあとを追っています。まだこちらには気づいていません、行きましょう!」

『イテテ……うえっ、関節変な方向に回ってるじゃないですかーヤダー!』
 茂みに潜むマリアの眼に気づくこと無く、悪態を吐きながらネジ曲がった手足をバキバキメキメキと適当に繋ぎ直して添え木を雑に括り付ける道化師ジミー。
 それでなんとかしようという根性もだが、それでなんとかなってしまうオブリビオンの出鱈目さも彼が言う猟兵の無茶苦茶さに勝るとも劣らない。
『プロたるもの、笑顔をお届けするためには休んでる暇なんかありませんからねェ……動く動く、よォしショーに復帰……ン?』
 ぱしゅん、と。葉擦れの音に紛れるほど静かに撃ち込まれたワイヤーガンの音に、ジミーの耳がピクリと動く。
『気の所為…………じゃァありませんよネェ!!』
 死角から迫る不可視。先程一撃を受けて警戒心を研ぎ澄ませていたジミーは咄嗟に肉厚のマチェットを振り払う。ぎぃん、と火花が散り金属音が夜の林に鳴り響いた。
「気づきますか、出来る…………!」
 煙幕仕様のホウロク・グレネードを放り、不可視のままに離脱する暗殺者――アリシア。
 奇襲攻撃は防がれたが、グレネードから噴出する煙幕が道化の視界を封じてくれる。その上に見えない暗殺者が潜んでいるとなれば、道化は全方位に注意を張り巡らせねばならない。
 必然一方向への密な警戒は解かねばならず、あるいは全方位警戒を諦めたならば二撃目を入れる好機。アリシアはただの一撃でジミーの警戒を操り、ただそこにいるだけで脅威として道化の行動を縛る影となる。
「ククク……ようやく会えたな道化師。ゲームの終わりを告げる女帝が遊びに来てやったぞ……!」
 その煙幕を引き裂いて飛来する無数の魔剣、加えて砲弾の嵐。
『ヒトが休憩してる時にドカドカ大勢で押しかけて何ですかアナタ達はァ! ピエロがご飯食べてるでしょうが!!』
 真の姿を顕にし、その有り余る魔力を片端から魔剣に成形して射出する銀の魔女イデアールと、ジャバウォックの全兵装を一斉射撃するアリス。
 二人の途轍もない物量による制圧攻撃をくねくねと身を捩って回避しながら、ジミーは懐から取り出したクッキーバーをもりもりと頬張ってさえみせる。
「いちいち癇に障る道化ね。ジャバウォック、遠慮は要らないわ。やってしまいなさい」
 アリスは無表情のまま、しかし確かに怒り苛立ちを込めた平坦な声音で世界を改変する。――猟兵の攻撃に対して、道化以外の全てがダメージを受けることはない。
 流石に当たり判定を消すレベルの改変は疲弊するために控えるが、それでも攻撃の余波で地形が崩壊することはないというのは遠慮なく全力を出すためにこの上ない支援だ。
 特に、PPPが誇る魔女二人の常識外れの火力にとっては。
「適当に撃ちまくりなさい。当たらなくっても気にしないでいいわ」
「アーッハッハッハ! 遠慮なく撃ちまくれるというのは気持ちがいいな! 踊れ踊れ、道化と言うなら私を愉しませてみせろ!!」
 神と女帝の飽和攻撃を汗だくで躱し、パントマイムで作り上げた架空の銃や剣を使って同等の攻撃を撃ち返すジミー。
『花火はもう少し計算して撃つんですよォアナタ達! 無闇矢鱈にバカスカ撃てばいいってのは下品でしょうが!』
「あなたがそれ言うんですか……?」
 首を傾げながら、二人の武器情報を元に複製具現化した――即ちジミーがパントマイムで模倣したそれと同等、いやそれ以上の完成度を誇る武器で道化の反撃を迎え撃つ理緒が問う。
 道化は黙った。自分が下品という自覚はあったようだ。
「それにしてもアイツ、えらい器用に避けるわね!」 
 その攻防を珍しく静かに見守っていたフィーナがここでようやく動き出す。
「面制圧でも一発一発が小さいと隙間を縫われるってことね。じゃあ話は簡単じゃない!」
 避けられないような巨大な一撃でぶっ飛ばせばいい。
 脳筋魔導ここに極まれり。然るに不壊の地形、遠慮無用、なれば行使するに最適な魔法はこれを置いて他になし。
「出番よ来なさい――」
 それは分厚い雲を突き抜けて、天空高くより舞い降りた。
 紅き炎を身に纏い、銀のその身を月光に輝かせて。戦車より巨大な――ビルほどの巨体をうねらせて空を泳ぐその姿は――
『また竜で――いや違ェなアレ。ツナじゃねェですかァ!? 誰だあんなトンチキ呼んだの!!』
 さすがのジミーもマグロは模倣できない。だってデカいもんあれ。
 咄嗟、ジャバウォックのそれをコピーしたガトリングガンでマグロを迎え撃つ。鼻面に弾丸を浴びて涙目になるマグロ。吸血鬼の翼を広げ、その背に跨るフィーナがドヤ顔で道化師を見下ろし笑う。
「諦めることを知らない私の愛馬は凶暴よ。そんな抵抗で止められるもんですか!」
 めっちゃ涙目かつ死んだ魚の目(比喩)で主を見上げながら突進するマグロ。
「アーッハッハッハ! なんだアレ、面白い芸じゃないか!!」
「……なんか少し哀れになってきたわ」
「ですね……あっ、アイさんの準備が整いそうですって」
 道化と物量戦を繰り広げていた三者が揃って哀れみの目を向ける程度には圧倒的なマグロの質量。
 それを命がけで避け続ける道化。
 そして、白銀のパワードスーツが砲撃姿勢のままその姿を道化の前に現した。
「皆さん、準備完了です! 退避してください!」
 荷電粒子砲を構えたその威容は、いつにもまして神々しく聳えている。
「理緒、月は出ているかしら」
「……はい?」
 突然空模様を気にするアリスに思わず聞き返す理緒。
「月は出ているかと聞いているの」
 見上げた空にはマグロが穴を開けたドーナツ雲。その穴から注ぐ月光は、気づけばオベイロンを美しく照らしている。
「マイクロ波……来ました! エネルギーチャージ……」
 月面への送電施設召喚。惑星規模のユーベルコードの行使には時間がかかる。
 姿を隠し、施設召喚は成った。あとは装甲を信じ、月光の下に姿を晒して給電するのみ。
『なんだかわかりませんがソイツはヤベェ匂いがプンプンしますねェ!』
 飛翔するマグロに飛び乗って、斜線上から退避していく猟兵達。冷や汗を浮かべてオベイロンに銃弾を浴びせる道化師ジミー。
『畜生まるで効いちゃいませんかァ! かくなる上は瞬間移動マジック! どうやら精密機械のようですからァ、制御装置をスッちまえば――』
「させませんッ!」
 指をぱちんと鳴らした道化。同時に森の中に潜んでいたアリシアのハヤテ・ワイヤーガンが撃ち出したアンカーがその手を縛り上げる。
『くゥー!! 狙いが逸れちまいやがったじゃあないですかァ!!』
 歯噛みするジミー。その手の中に収まるのは、大小三つの三角形。
『この布絶対制御装置じゃァねェですもの! ヤバ、ヤバ――』
 逃げ出そうとするジミーをアリシアが引き倒せば、手の中のそれがアイにもよく見えた。
「あっ。ああっ! それって――」
 ぺたぺたと我が身を触れば、ない。あるはずのそれが。
「…………お、乙女の敵!! あなたなんかこうですッ!!」
 エネルギーチャージ100%。アリシアがそそくさと姿を隠して離脱していく中、月からの力を受けてヴェルヌ・キャノンが夜の林を白く照らす。
『違、これは流石に冤罪ですっテばぁぁぁぁああああ!?』

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

緋月・透乃
いよいよこのゲームの主催者との対決だね!
……こいつヒーローズアースっぽくない?
まぁいっか。どうせ倒す相手だし、外見とかよりどれくらい強いかの方が重要だよね。ちゃんと強いといいねー。

戦闘方法はとにかく接近して重戦斧【緋月】で叩き割りにいく!避けられたりしてもしつこく武器を振っていくよ。
そして、そればかりという印象をつけたところで罷迅滅追昇を狙っていくよ!
単純だけれど、一応手品はお客さんが近いほどタネを隠すのが難しいらしいし、曲芸も広いスペースあったほうがやりやすいイメージがあるから、接近戦に持ち込むのは悪くはないかな?
敵の攻撃は多分避けられないから気合いで耐えてみせるよ!




「いよいよ主催者との対決だね!」
 公園を横切るような閃光。不思議なことに木々や地面、そして射線上にあった敷地外のビルには一切の被害を及ぼさなかった極大のビームが薙ぎ払ったその跡を、さくりさくりと進む透乃。
 重戦斧を肩に担いで、邪魔な茂みを切り開き――さっきまで不思議なほどしぶとかった茂みも、今はどうしてかさくさくと切り払える――敵を追う彼女は、黒焦げで襤褸布のようになって地面にへばりつく紫色の影を見た。
「お、いた!」
『いませんヨ。此処にあるのは可哀想な死体ですってばァ』
 居るじゃん。透乃は容赦なく重戦斧を振り下ろす。
 それが頚椎を砕き斬るより早く、自称可哀想な死体は飛び起きた。そのままバック転の連発で距離を取る死体ことジミー・ザ・ジョーカー。
「生きてるじゃない! ……あんたヒーローズアース出身だったりしない?」
 起き上がった道化をまじまじ見てみれば、どうにもなんとも、ヴィランっぽい容貌である。具体的にはアメリカでコウモリ男と延々煽り合いバトルしてる感じの。
『はぁヒーロー? あーハイハイハイ、私ってば皆さんに笑顔を届けるピエロでございますからァ? そういう意味ではヒーローに間違われるのも致し方ないところでございまァすねェ!』
 襤褸布のごとき満身創痍でなお、透乃の振るう速く重い斬撃をひょいひょいと躱していく道化師ジミー。
「そうじゃないんだけど、違うならいっか。どうせ倒す相手だし、見た目より強さが大事だよね」
 しぶといだけじゃなくて、ちゃんと強いといいねー。のほほんと笑いながら斧を振り回す健康優良美少女に、ジミーは己と同類――とは言わずとも底しれぬ恐ろしさを感じ取った。只者じゃない、コイツは見た目通りのマシュマロガールだと思っていたら痛い目を見るぞ、と。
『お客様のご期待にはなるべく沿うのが一流ピエロですけどねェ、さてさてどうでしょうネ!』
 じゃらりと五指の間に現れたナイフを勢いよく投擲すれば、急所を捉えた不意打ちを斧の一振りで叩き落とす。
 ならばと斬撃で落とせぬ軽いトランプを視界いっぱいに撒き散らし、背後に回って機関拳銃を――体ごと回転して放った横薙ぎ一撃で危うく上半身と下半身が泣き別れしかかった。
『回避ナシのシンプルにパワー任せの癖して隙がありませんねェ! アナタ手品師の才能あるんじゃないですかァ!?』
 手品もシンプルであればあるほど隙がない。複雑さは派手さと引き換えにタネが露呈する危険を伴う諸刃の剣。
 そういうところで透乃の戦闘スタイルを手品師向きだと評したジミーは、またも間一髪で斬撃を躱す。
「うーん、私は手品師には興味ないかなあ!」
「そうですかァ、そのボディだったら視線誘導だって思いのまま、マジシャンで名を馳せるのにコレ以上無い逸材だと思ったンですがねェ!」
 自慢の身体を評価された事に僅かな高揚を覚えながらも、紙一重で回避する余裕を見出し始めた道化に好機の到来を伺う透乃。
 ジミー・ザ・ジョーカーの根っこはエンターテイナーである。
 娯楽を提供したいという善意が狂気の根っこに存在するなら、熱い戦いを求める透乃が一騎打ちを望めばギリギリの接戦という形でそれに応えようとするはず。
 透乃の予測はぴたりと当たり、ジミーは彼女の攻撃を見切るや回避に余裕を作らなくなった。
 全ては“接戦である”という幻想で、たった一人の観客を満足させるために。
 その道化師の歪んだ善意を見抜いていた透乃は、一気に勝負を畳み掛ける。
「くぅー、お互い攻撃が通用しないね!」
『えェ、ええ! やりますねェアナタ!』
 通じ合う好敵手――みたいな空気を醸しつつ、透乃はおもむろに肩からジミーにぶつかっていく。
 重戦斧を遠心力と重量に任せて振り回すスタイルから突然のタックル。
『えェーッ!? ここに来て!!』
 予想外の攻撃に体勢を崩すジミー。透乃はそのまま両足を踏ん張り、筋力だけで一緒に倒れ込む身体を持ち直す。からの、腕力に任せて重戦斧を手繰り下から上へとカチ上げる一撃。
「くたばれ、消え去れ、あの世の果てまで飛んでいけーっ! 罷迅滅追昇!!」
『そこまで言うことナイでショおぉぉおおお!!』
 ごすん。鈍い音を立てて、しかし雑な添え木を防具代わりに割り込ませ、断ち切られることだけは避けたジミーが月夜に吹っ飛んでゆく。
 ――飛んでいく先は再び旧テント方面。やかましい絶叫とともに夜空を横切る流星に、きっと皆も気付いたことだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レッグ・ワート
引っくり返されても対応してくるしショーの根っこが物騒で一貫してるし元気だなマジで。畳む予定はいつごろだ。

ゲストの俺等が出張ってれば問題無いだろうが、攻め手が集中できるように流れ弾の対処を主にするかな。各位置や立回りの情報収集するドローンは戦況に合わせて位置調整かけてく。あちらさんが読み辛かろうが、攻め時に精度ははねあがる。交戦情報を元に、作られた隙に一般が食いつこうとしてたら、声かけや糸で止めはしたいね。基本見切って鉄骨の武器受けで捌ければ有難いトコだ。まあかばうのも視野にいれとくさ。そんで一般カバーにも余裕があったら、俺は屋内外の逃げに使えそうなネタをメカニックで直せる範囲で外しにかかるよ。


メイスン・ドットハック
【SPD】
随分と余裕がなくなっておるのー
観戦者からプレイヤーになる気分はどうじゃのー? ま、僕は許さんけどのー

最初は電脳魔術による【誘導弾】ミサイルやレーザー砲ユニットでアウトレンジから攻撃
さらに空間【ハッキング】で座標把握からの電脳地雷を埋め込んでトラップも設置する【罠使い、地形の利用、破壊工作】
大虐殺道化モードに入ったらUC「生者は微睡み、夢は過去に落ちる」を発動してナイトメアを召喚
理性がない状態で何気ない問いを投げかけ、答えられない状態をキープして、過去の傷病発症やナイトメアが斬った過去斬撃で攻撃
敵はミサイル発射して追いかけるよう仕向ける

まさにピエロじゃのー


レナ・ヴァレンタイン
さて、一つちょっとしたマジックをご披露だ
まずは簡単な不意打ちから、な?

ユーベルコードで幼い子供に変化、元奴隷たちの衣装を借りて変装
周辺の元奴隷とは若干離れた位置、未熟さ故に連携しきれていない戦闘員を装う
後は外見で狙いやすいと判断してきた敵にクイックドロウの拳銃抜き打ちでまずカウンター

あとは敵の攻撃方法を見極め、その都度身長や手足の長さを逐一変化させて回避しつつ反撃
ちょっとした賭けだが、「他の世界の人種」になれるかも試そう
ウォーマシンなどはその装甲で安い銃弾なら弾ける、人間が急にフェアリーになれば照準など狂って当たり前
そうやってどんどん変化することで撹乱してやるとも
さあ、精々楽しむがいいさ




『はい、人間砲弾でござァいまァァす!!』
 ずどんとテント跡のド真ン中に着弾した道化師ジミーは、地面にめり込んだ頭を十秒近くバタついてなんとか引っこ抜きにこやかに宣言する。
 実際は重い攻撃を受け吹っ飛ばされただけだが、それすら現場――タネを見られてさえ居なければ手品の一つに変えてのけるのが、彼のいう一流のエンターテイナーの手腕だ。
 崩れた髪型をコートの内ポケットから取り出した櫛で整えて、追撃戦に参加しなかった者たち――戦う力に乏しい女子供の前にニヤニヤとした笑顔を向ける
 くるりくるりと指を滑らかに開いては握り込む手の中に、いつしか手斧が現れた。
『POM! と出てきた手斧は如何ですかァ? いえね、猟兵たちとのバトルショーもまァ演目としては嫌いじゃないですヨ。ちびっこはああいう暴力的なヒーローショーがだァい好きですもんネェ?』
 でも、とジミーの爛々と輝く両の眼が子どもたちを睨めつけた。あくまで笑顔、しかしその目に宿るのは、イカれたショーへの執着心だけだ。
『でもねここはジミー・ザ・ジョーカーの楽しいゲームの会場なのさ! キミたちは獲物、狩られる側! ヒーローが来たってそれは変わらなァァい……』
 ゲームの主役である人形たちは始末されてしまったが、それなら手ずからに奴隷を殺すゲームに変えても構わないだろう。猟兵の邪魔が入らないのならば本来のゲームの趣旨である奴隷殺戮に戻すのもまた、彼にとっては自然な思考だ。
 物色するような視線を子どもたちに這い回らせ、中から一人の少女を選んだ道化師は、斧の柄を掌にぱしんぱしんと打ち付けながら少女に歩み寄る。
「やめて!! やめてください!!」
 その子を庇おうとする女性を叩いて押しのけ、満面の笑みで少女の前に屈み込む道化師が、ゆっくりとその薄汚れた白手袋で彼女の頭を撫でてやる。
『ン、いいねェ、その怯えた顔は嫌いじゃァありません。ケドね、ここは楽しいゲーム会場だっていったでショ? 笑って笑って。……笑えよ』
 少女の顎を掴むように、その頬を持ち上げて無理やり笑顔を作らせようとする道化師。そこへ、拳銃の弾丸が掠めて飛んだ。
「そ、その子から離れろよ!」
「わっ……私が代わりになるから!」
 拳銃を握りしめ、次は当てるぞと威嚇する少年と、身代わりになると勇気を振り絞る幼い少女。
『ンンンー、いいですねェ、なけなしの勇気を振り絞っちゃってまァカワイイ。でもねキミぃ、鉄砲で遊ぶなっておじさんさっき言ったろォ!』
 斧の柄で少年を殴りつけ、昏倒させて道化は笑う。
『そっちのお嬢ちゃんの勇気は気に入ったネ。さあさみなさんご注目! 勇気ある少女がその勇気ゆえに凶刃にかかるその瞬間を! コイツはめったに見れません!』
 掴んだ少女を解放し、身代わりに立ち上がった彼女をその手で捉えた道化は楽しげなスキップでステージ代わりの転げた木箱に登る。

「あんだけ何度もひっくり返されてもまだ対応してくるのか。その上ショーの根っこが物騒で一貫してるし元気だなマジで。畳む予定はいつ頃だ」
 ドローンが送ってくる道化の蛮行に、声音を苦々しげに歪めてレグが唸る。
 道化があそこまでタフネスだったというのが猟兵の誤算だったのだろう。あるいはその狙いが奴隷たちであるという根底を上手く隠しおおせた道化が一枚上手だったのか。ともかく猟兵は守るべき人々の側から離れてしまった。
「こりゃ失態だな……ああクソ、間に合ってくれよ……」
 アクセルを回して加速するレグのバイク。その後席で、電脳魔術の媒体たる仮想ツールを展開して状況を解析するメイスンが首をわずかに傾げた。独自のセンサー群に加えて、レグのドローンの目も経由して調べたデータが、ただ一点だけ違和を訴えかけるのだ。
「んー……?」
 メイスンの視線は、画面越しに道化に囚われた少女に注がれている。

『さぁてさて、ゲームはまだまだ継続中ですからネ。武器を手に入れて気が大きくなったのかもしれませんケドね、戻ってきて捕まったからにはゲームオーバーに変わりはありません。私ってばそのへんのルールには厳しいですからネェ!』
 ゲタゲタと嗤い、斧を振りかぶって少女を見下ろす道化師ジミー。彼がえい、と斧を振り下ろした瞬間、少女の頭は無残に叩き割られることになるのだろう。
 元奴隷たちの誰もがその残酷な光景を想像して目を瞑り、あるいは逸らす。
 ただ一人、道化師に囚われた少女だけを除いて。
「――さて。ひとつちょっとしたマジックをご披露だ」
 それまでの怯えきった表情が一転、いたずらが成功したような笑みを浮かべた少女が粗末な奴隷服の胸元に手を突っ込み――斧を振りかぶる道化の顎先に拳銃の銃口を押し当てトリガー。
 乾いた銃声、道化は咄嗟に上体を限界まで反らしてそれを回避。
『うおっあっぶねェじゃないデスカ!! 何考えてんだこのガキァ!』
 そのまま反らした上体を戻す勢いで斧を振り下ろせば、その一撃は鋼の腕で受け止められる。
「やって出来るか少し心配だったんだけどね。やれば出来るものか」
 兵器然とした機械じかけの鋼の人形が、道化から手斧をもぎ取りへし折り捨てる。
『はァー!? くっそ、そりゃいくらなんでもインチキ手品でショ!!』
 少女が機械人形に化けたことを理解した道化が機関拳銃を構え、銃弾をぶちまければ跳弾を厭うた鋼のひとが今度は急激に縮んでいく。背中に蝶のような輝く翅を生やした手のひらサイズの小人、フェアリーの姿に転じた少女は、その姿でようやく元の容貌を表出させた。つまりは猟兵、レナの千の貌が少女であり、ウォーマシンであり、フェアリーである――という外観と身体性能の変化を以て道化を惑わしたのだ。
「少年、きみには痛い思いをさせて済まなかったね。おかげでこいつを騙すことができたよ」
 妖精がひらりひらりと銃弾を躱しながら言えば、殴りつけられ少女と女性に介抱されていた少年が倒れたまま腕を掲げてサムズアップ。
『むぎぎぎぎぎィ!! 手品師を騙そうなんてクソ客じゃないですかァ! クソ客!!』
「そもそもお前の客になりたいやつなんて居ないだろう。――さて、そろそろ到着する頃合いかな。時間稼ぎは大成功ということさ」
 妖精レナが見上げた夜空には、月明かりに照らされたドローンが一機。
 その主が放つバイクの駆動音が、みるみるうちに接近す。

「そういうわけだ。飛び入りゲストの参加はオーケーだよな?」
「観戦者からプレイヤーになった気分はどうじゃのー? ま、僕はそのくらいじゃ許さんけどのー」
 高速で乱入するバイクにこれでもかと盛られた仮想兵器の数々。
 それらは攻撃の瞬間に弾体のみを実体化させるために、あるいは実弾ではなくレーザーを使用するためにバイクの速度や機動性を殺さない。
 メイスンが構築した無数の兵装が一斉にその攻撃を実体化させ、元奴隷たちと道化師ジミーを分断せしめた。
『クソったれめ、もう来やがった! 少しはタメとか余韻の美学ってものを考えたらどうなんですかねェ?』
 爆風にコートを翻して銃弾をばら撒く道化師の反撃に、バイクを操るレグはギリギリを駆け抜けるハンドルさばきで対応する。だが大柄なウォーマシンを乗せて走るバイクだ。機関拳銃の弾幕を無傷とは行かない。
 ならば。
「嬢ちゃん少し揺れるがしっかりしがみついとけ!」
 自分より前にある重要区画を守るように鉄骨を構え、自分より後ろの重要部分――メイスンを守るようにその身を壁として、レグは身体を超防御モードへと変化させる。
 疾走する鋼鉄の要塞を、機関拳銃ごときの弾丸が射抜けるものか。
『は? ……ひひ、あははははは! なんじゃそりゃ! 無敵モードはズルすぎですヨ!!』
 そのあまりにも無体な無敵ぶりに、顎が外れるほどあんぐりと口を開けて、それから箍が外れたように嗤い出した道化師は、ならばとあらゆる武器を入れ替わり立ち代わりにレグのバイクめがけて乱射する。機関拳銃、散弾銃、ライフル、銃が駄目ならナタを投げ、あるいは手榴弾を放り投げ。その全てを弾いて道化とバイクがすれ違うその瞬間、メイスンは道化師に囁いた。
「お前は誰を笑わせたくてこのゲームを始めたのかのー」
 その問いは何気ない日常会話のように軽く、しかしてどんな毒より重く道化の精神を蝕んだ。
『あェ……私、笑顔……誰の? えひっ、えひひひひひ!』
 ケタケタと笑う道化師は、自らの身体に次々と此処までで受けた猟兵からのダメージの再現が襲いかかっている事に気づかない。気づけない。
 狂気の底で歪んだ願いに囚われた彼は、その身をズタズタに破壊されてもその事を理解できぬまま嗤い続ける。
「うぇ、えげつねえ……」
「あれでもまだ足りないくらいじゃよー。ま、まさにピエロって感じになったのー」
 再現された攻撃を受け、踊るように身を翻す道化師ジミーを冷ややかに見据えて、二人を乗せたバイクが走り抜ける。
「まったくだよ。精々楽しむがいいさ」
 それに並走する妖精姿のレナは、ピエロの狂った哄笑の中に、微かにかつて失ったであろう人間らしい温かみの残滓を感じ取ったのだった。
 せめて彼がとどめを刺されるまでの間、その幸せを思い出せていることを願おう。レナはわずかの哀れみを、踊り続ける道化へと投げかけた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

仇死原・アンナ
アドリブOK

ショウタイムはこの辺でおしまいだ道化師…
貴様の悪ふざけに最後まで付き合う気はない…!

真の姿の[封印を解く]としよう

敵を[挑発しおびき寄せ]、その攻撃を鉄塊剣での[オーラ防御、武器受け、限界突破]の防御で耐え抜こう

【大鴉の訪問】を使い鴉達を空に飛ばし、敵の攻撃を空舞う鴉達に惹き付けてもらおう

鴉に気をとられてる敵を鎖の鞭の[マヒ攻撃]でギチギチに巻き付けて[怪力、力溜め、ロープワーク]で振り回し、[地形を利用して]硬い地面に何度も何度も頭から叩き付けよう

最後は敵を空中高く放り投げて[吹き飛ばし]、そのまま硬い地面へと落下させてやろう…

…惨めで呆気ない、詰まらない最後だな




 彼の始まりはもう朧げだ。オブリビオン・ストームによってズタズタに引き裂かれた原初の記憶は、もはや自力で思い出せるものではない。
 ただ確かなのは。彼は幼少の頃より誰かの笑顔が大好きな男だったということ。
 彼が戯けると家族の誰もが笑顔になった。彼の話術で学友たちが笑い転げた。だから彼は芸人になった。そのために彼は技を磨いた。
 タネが見破れない、もはや魔法――ユーベルコード――の域にまで至った手品は多くの人々に驚きと笑顔を届けただろう。
 見るものを引き込む笑顔は、鮮やかで優しい感情すらも周囲に伝播させたことだろう。
 空想を現実に招来させるほどの卓越したパフォーマンスは、彼の芸を低俗と唾棄する者たちすらも虜にした。
 輝かしき、笑顔に包まれた過去。それはオブリビオン・ストームによって破壊された。
 誰かの笑顔のためにひた走り続けた男は、笑わせたい誰かを、その根底の想いを砕かれ、そして。
『あひひひひひ! ひゃはっ、くーふふふふ!! いひっ、いひひひひ!』
 衣装は薄汚れ、あちこちにドス黒い血を滲ませて。白塗りのメイクは流れ落ち、地肌の色が透けて見える。びしりと整えられた髪も今は乱れて顔に掛かってしまうほど。
 落ちぶれたコメディアンの男は、それでも“ジミー・ザ・ジョーカー”として笑顔を求めて走り続ける。周囲の誰もが恐怖と憎悪と侮蔑と憐憫の眼差しを向けてくるならば、せめて己だけでも笑い続けねば。嗤い、続けねば。
『んーフフフフ! あっは、あっはっはっはっはっはっは!』
 残り少ない手榴弾でお手玉をしたかと思えば、高く放ったそれを金属バットで打球してそこらに爆発の華を撒き散らす。
 手榴弾の残りがなくなるや、銃を抜いて狙いも付けずに乱射する。
 そうして武器を使い尽くした道化師は、その全てを元奴隷たちが躱し逃げ延びたことを指差し嗤う。

「ショウタイムはこの辺でお終いだ、道化師……」
 嗤う男の前に立ち塞がる、黒衣の女。アンナは多少の哀れみを込めて、その真の姿を――処刑人の姿を解き放つ。
 黒髪は燃えるような赤へ。炎を纏い、鴉の仮面を身につける。
「貴様の笑えない悪ふざけに最後まで付き合う気はない……!」
 拷問具を模した巨大な剣を担ぎ上げ、些かの喜びも楽しみも見せずに男の前に立てば、彼の黄色い目玉がぎょろりとアンナを捉えた。いや、その視線はアンナを視ていない。アンナを通して、忘却の彼方に追いやられた、彼が真に笑わせたかった誰かを見ているようだった。
『ンヒッ……! そ、そそ、そこに居たのかい? ククッ、ウヒッ。い、今キミを笑わせてあげよう。なんたってワタシはジミー・ザ・ジョーカー! 世界一の道化師ですからねェ!』
 さあさ皆さんご覧あれ。世界一の芸で、世界一の笑顔をあなたに。男の目に映るのは在りし日の栄光、笑顔に包まれた世界の残滓のみ。そこに現実の、アンナの姿はありはしない。故に、アンナが呼び出した凶鳥の群れ――夜空を覆い尽くし、月光を遮る大鴉の大群に向かって発砲される拳銃は、それを狙ってのものではない。
 きっと彼の脳内では、あれも手品の小道具だという事になっているのだ。現実の肉体が脅威に向かって漠然と銃口を向け、幻想の彼が幻想のために銃口を引く。
 猟兵の精神攻撃に拠って過去に囚われ、その居心地の良さに自らとらわれる事を選んでしまった男に、戦いらしい戦いを行うだけの狡猾さはもはやない。
「厄介な狂人も狂いきればこんなものか……」
 弾切れを迎えた拳銃を後生大事に、いつまでもかちかちと引鉄を引き続ける男へと、アンナの放った鞭が捕らえる。先端の棘付き鉄球の重みで幾重にも男の胴体を巻き上げて、最後に鉄球が男の腹にめり込んだ。
『ごほぉ! えふっ、おげっ……えひ、おえっ、へへへへへ……』
 内臓のいくらかが叩き潰され、血を吐きながらも嗤い続ける姿は痛ましい。口の周りにべっとりとついた吐血の跡は道化師の流れかけた化粧を塗り直すが如くに鮮やかだが、それは笑顔には程遠い死に化粧だ。
「……なら、終わらせてやろう」
 罪人に最後の哀れみを。それこそ処刑人の役目であろう。世界の誰からも憎まれた罪人に、せめて憎悪によるものではない死を。
 そして罪人によって人生を狂わされた者たちが、胸のすくような思いでその死を区切りに出来るように、鮮やかで無残な最期を与えよう。
 鞭を手繰ればじゃらりと鎖の音がする。それが楽しいかのように男が一際笑い転げる。しなる鞭を通じて男を引き倒したアンナは、それを振り上げ振り下ろす。
 男を頭から地面に叩きつける。硬いもの同士がぶつかる鈍い音。何度も、何度も、何度も何度も何度も。男が人形のように四肢を投げ出し、笑い声が掠れて消えかけても、それでもアンナは努めて作業的に男を殴打し続ける。
『ひ…………ひひ…………かひゅっ、ひひ…………』
 もはや末期の呼吸なのか、それとも並外れた笑顔への執着と生命力が嗤い続けさせているのかすらわからない、弱々しい息。
 そこに至ってようやくアンナは男を解放する。
 鞭を一際強く振り上げ、しゃらしゃらと鎖が解けてゆく。男はそのまま天高く跳び上がり、そうして。
「……惨めで呆気ない、詰まらない最期だな」
 彼によって、彼の笑顔のために死を強いられていた元奴隷たちの目の前で、男は地面に叩きつけられその二度目の生の幕を閉じた。
 多くを笑わせた笑顔の伝道師は、最後にその死によって人々に笑顔を齎したのだ。


「本当に世話になった」
 元奴隷、あるいは反逆者の――道化が居なくなった今、生存者というべきか――人々は口々に猟兵達の救援を感謝し、そして道化師の死を歓喜した。
「俺たちはやっと自分の意志で生きられる。クソッタレたゲームの駒じゃない、俺たちの人生を取り戻せたのはあんたたちのおかげさ」
 髭面の奪還者が代表となったチームは、猟兵達に笑顔で手を振り町を出てゆく。
「おじさん、あっちだよ!」
 拳銃を携えた少年に導かれ、彼らはこれから少年の故郷であるベースを目指すのだという。
 そこを拠点に近隣のベースと連絡を取るのだと。
「短い付き合いでしたけど、居なくなると寂しいですね」
 立ち去っていった者たち――奪還者を中心とした、あの環境にあって体力を温存し、そしてこれからの苦難にも対処できるだろう者たちの背中を見送って、中年女性が呟いた。
「だいじょうぶ、おばさん。また会えるってあの子いってたよ」
 その手をぎゅっと握って幼い少女が笑顔を作る。
 彼女たちは、もともと荒野を渡る訓練も受けておらず、体力に不安のある女性や傷病者、高齢者、幼い子どもたちはこの街に残るのだという。
 嫌な思い出がこびり付く土地だが、道化師が残した物資はあの後もいくらか見つかっている。探せば暫くは生き延びられる量が出てくるだろう。荒野を強行軍で渡るよりもずっと生存率は高いはずだ。
「そうね、あの人達が戻ってきた時にびっくりするように、皆でこの街を立派なベースに整えましょうね」
 廃墟をベースに変える。多くの先人達が取り組んできた大業に挑む。
 それは荒野を渡るのと同じか、もしかしたらそれ以上の苦難の道かもしれないけれど。
 助けを連れて必ず戻ると約束した彼らに応えるためにも、諦めるわけにはいかない。
 老いも幼きも、男も女も笑顔を浮かべて、新しい未来のためにまずどこから手を付けようかと話し合う。
「ヒャッハー!! 調整はモヒ―・カンプ運送におまかせだぜーッ!!」
 この街をベース化し、近隣のベースと連絡を取り合い物流の中継点とする。
 そんな遠大な計画を立てたのは、意外なことにモヒカンたちであった。
 見た目や言動がアレなので忘れられがちだが、彼らは本職の物流屋だ。目立った産業はまだないこの街をベース化するにあたって、比較的保存状態のいい道路や道化師が拠点にしていた広い公園をウリにすることを発案したのは彼らだ。
「野郎どもー!! まずは街中走り回って道路のチェックとメンテナンスだァー!!」
「ヒャッハー!!」
「終わったら公園の片付けして集積所作んぞォ!!」
「ヒャッハーッ!!!!」
 凶悪な笑顔でバイクに跨り街中に散らばっていくモヒカン達。
 いずれは社長に連絡し、モヒ―・カンプ運送の本拠地を此処に誘致するのもいいかもしれない。

 残酷で、理不尽で、笑顔を奪うような事件があった。
 けれど人々は猟兵とともにそれを乗り越え、逞しく明日のために生きている。
 心が折れない限り、人は笑顔のためにひた走れる生き物なのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年02月10日


挿絵イラスト