――度しがたい。
があがあと鳥が鳴く。
ぶんぶんと虫が飛ぶ。
アレらは一様に肉を貪っている。
先ほどまで村人と呼ばれていたものたちの残骸を、単なる食糧として消費していく。
見飽きた光景だ。別段珍しいことでもない。
不出来な家畜を間引くのも領主の仕事だ。
たとえそれが『目当てのものが用意できなかった』程度の理由だったとしても、彼ら彼女らにとっては正当な理由としてまかり通るのだろう。
そこに人の意思は存在しない。否、介入してはならない。奴らにとって敗者どもの戯言など、耳を貸すこと自体が罪なのだろう。
ふと、うめき声が聞こえた。
「母さん、父さん……みんな……うああ……」
たまさか村の外に出ていたのだろう。人間の少年は、状況を認識するや否やその場に頽れた。
……まったく間の悪い。
どうしてこのような手落ちが毎度のように起こるのか。実はわざとやっているのではないかと訝しんでしまう。こういった手落ちから破綻していくのだと数多の前例が実証しているだろうに、オブリビオンというものはつくづく学習しない。
「どうして、どうしてだよ……!」
少年の声は絶望に染まっている。あまりに悲しくて、哀れだ。心からそう思う。
――力が、欲しいか。
だから、ついいつものように声をかけてしまった。先に立たないから後悔と言う。
少年はしばし呆然とした後、こっくりと確かに頷いた。
こうなっては仕方ない。
哀れな彼に救済を与えよう。
オブリビオンは学習しないものだと自分で結論を出していたことだし、せめてゼロに帳尻を合わせなくては。
人々に救いを与えるために、ありきたりな復讐譚を始めよう。
●
「えーっとですね……こう、洞窟行ってたら村焼きがあって生き残ったから……みたいな感じで」
グリモアベースにて。
猟兵に招集をかけたトモリ・ツキミサト(何見て跳ねる・f24067)の説明は、実に要領を得なかった。
「あ、あれ、えーっとですね。ダークセイヴァーで一人生き残った少年が、魔法の杖を手にして領主に復讐するので……」
で、だからどうすればいいのよ、と。
「す、すみません……不慣れなもので……」
はじめての予知にがっつり混乱してしまった新入猟兵を、優しく手ほどきする先輩猟兵一同の図。
ともあれ。
「こほん。え、えーと……今回の問題は、『オブリビオンを狩るオブリビオン』……です」
ダークセイヴァーにおいて、これを『同族狩り』と呼ぶ。
オブリビオンが支配階級に位置するかの世界において、稀に発生するバグのようなものだ。何らかの理由で、攻撃対象が同じオブリビオンに移ってしまった異常個体である。
「ええっと……同族狩りさんは、『魔法の杖』です。オブリビオンに村を滅ぼされた男の子に憑依して、その復讐のお手伝いをするみたいで」
お手伝い、というか代行である。少年を媒介として自身の力を振るい、少年の仇を討つ――これだけなら、まあそこそこの美談である。
「で、えっと……。復讐する相手は……ごめんなさい、ちょっと見えませんでした。でも村の領主であることは間違いないです。男の子と杖さんを追っかけていけば分かるかと思います」
じゃあ、先にその杖を破壊したらどうなるのか、と質問が出た。トモリはややまごつきながらも答える。
「あっ、それは……やめておいた方がいいと思います。その、倒すべき相手が見つけられなくなりますし……。それに、同士討ちしてくれるなら願ったり叶ったり、と言いますか……」
ならば、説得は出来るのか? これにもトモリは首を横に振った。
「難しいと思います……。男の子は復讐に囚われてますし、杖さんがそれをがっちり補強してますし……杖さんも、多分話通じないです。オブリビオンですし」
要するに、『杖と少年を領主と同士討ちさせ』『その後、杖を破壊する』。
依頼の趣旨としてはこういうことだろう。
「うえぇ、すみません。次はちゃんとカンペ用意してきます……。えっと、それでは皆さん、準備出来たら言ってくださいね!」
●
ぶんぶんぶん。
世界に降り立った猟兵たちが最初に見たものは、屍肉に集る数多の蝗だった。
村だったものは虫に蹂躙され、きっと後には何も残らないのだろう。
ぶん。
新しい餌が来た。そう言わんばかりに、奴らはその牙を猟兵たちに向けてきた。
むらさきぐりこ
今日は豚キムチと白米で優勝していくことにするわ(1日ぶり2回目)とかやってきたので初投稿です。レパートリー少ねぇなオイ。
今回は3章通して戦闘シナリオです。
1章は集団戦、2章はボス戦、3章もボス戦です。
オブリビオンが同士討ちしてくれるので、うまく活用しましょう。
1章・2章が「領主陣営」戦、3章が「同族狩り」戦となります。
注意点として、「同族狩り」は1章、2章では「倒せません」。
これを主目的にしたプレイングは著しく不利になることをあらかじめご了承ください。
それでは、よろしくお願いします。
第1章 集団戦
『暴食飛蝗の群れ』
|
POW : 選択進化
戦闘中に食べた【肉】の量と質に応じて【各個体が肉を喰らう為の身体へと進化して】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : 飢餓
戦闘中に食べた【動植物】の量と質に応じて【少なければ少ない程に攻撃性を増して凶暴化】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ : 大繁殖
戦闘中に食べた【動物の肉や植物】の量と質に応じて【群れの個体数が飛躍的に増殖して】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
イラスト:純志
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
エル・クーゴー
●POW
躯体番号L-95、ダークセイヴァー指定座標に現着
作戦行動を開始します
交戦地帯に於ける点在物の把握_及び_敵能力傾向の照合を完了
敵性体には「継戦時間に応じて指数関数的にその強度・戦闘力を向上させる仕様」が確認されました
>適解算出...完了
オーダー_敵集団内の各個体に対する一射一殺を期した【範囲攻撃】の逐次実行
――ザミエルシステム、起動
・【空中戦】用バーニアを展開/噴射、暴食飛蝗に囲まれぬよう飛翔し機動
・運用火器に【武器改造&メカニック】による装弾数増加改造(2回攻撃)を施し攻勢に出る
・【狩猟の魔眼(攻撃力重視)】発動、攻撃一発辺りの威力を高め臨む
・誘導弾の一斉発射による範囲攻撃で蹂躙する
「躯体番号L-95、ダークセイヴァー指定座標に現着」
銀の髪をなびかせながら、機械じみた口調で少女は呟く。その目を覆うバイザーが、正常稼働を示す緑色に輝いた。
「作戦行動を開始します」
エル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)はすかさず周囲に視線を走らす。
屍肉を蹂躙する蝗の群れ。その総数は把握しきれない。
一つ一つは小さかろうと、群れがまるで一つの生き物のように蠢いている。ある小魚の寓話を思い出すような、しかし悪夢的な光景だ。
――いや。
エルの関心は既にそんな所にない。戦場で最初に感傷に浸るような余分は、今のところ持ち合わせていない。
「――照合完了。『継戦時間に応じて指数関数的にその強度・戦闘力を向上させる仕様』が確認されました」
村を覆い尽くす蝗の群れ。
しかしそのどれもが『肉』の恩恵にあずかれるわけではない。『餌』が少なすぎるからだ。あぶれる個体は当然出てくる。
それらの個体を比較した結果、『摂取量に応じて捕食に特化した形態に進化する』という生態が算出されたのだ。
「オーダー。範囲攻撃の逐次実行」
ぶん。蝗が飛んでくる。
エルはすかさずバーニアを展開すると、囲まれないように空を駆けた。
狙うは一射一殺。進化した個体を的確に破壊しつつ、範囲攻撃で群れを薙ぎ払う。
「――ザミエルシステム。起動」
ブン。
電子音と共に、エルの視界が一気に開けた。
バーニアが火を噴く。虫はそれを追従する。
撃ち出される鉛玉が的確に粉砕し、さりとて連中は仲間の死など気にも留めない。
「適解が更新されました」
エルは小さく独りごちた。
オブリビオンであろうと習性はどうしようもないらしい。あるいは「虫とはそういうものだ」という認識がそうさせるのか。
どちらでもよい。要するに。
「ライブラリ参照_火に飛び入る何とやら」
『光に引かれる』。
暗黒の世界で、エルのギミックが放つ光はさぞ眩しいことだろう。
撃ち出された弾丸は、光の尾を引いていた。まさしく誘蛾灯のごとく、そして妙にうねった軌道を辿る。
それが『なるべく多くの個体を巻き込めるように計算された弾道』とは余人の知るよしもない。
果たして、炸裂した誘導弾は蝗どもを焼き払った。誤差はおおむね、許容範囲内。
大成功
🔵🔵🔵
荒谷・ひかる
復讐、ですか……
もしわたしの故郷の村が、同じような事になったら……
(想像する)
(姉を筆頭に屈強な村の戦士たちがオブリビオンを伸すイメージが浮かんでくる)
だめですね、姉さんたちが負ける姿が想像できません……
(※ひかるの故郷は戦国の世の中で傭兵稼業で食ってきた羅刹の村です)
ともあれ、まずは害虫駆除ですね。
敵群を捉えると同時に【幻想精霊舞】発動
炎の精霊さんと風の精霊さんにお願いして「火炎の竜巻」を生み出し、虫の群れを吸い込みつつ焼き尽くす
死体や村の跡もそれ以上蹂躙されないよう火炎竜巻で焼却、火葬する
今は時間が無いですけれど……全部終わったら、戻ってきて弔いたいです。
できれば、復讐に向かった彼も共に。
滅ぼされた村の惨憺たる有様に、荒谷・ひかる(精霊ふれんず癒し系・f07833)は心を痛めた。
――なんて、酷い。
次に、一人残されたという少年に思いを馳せる。
ささやかな生活が一瞬にして奪われる。自分以外の全てを蹂躙される。その心境たるや察するに余りある。
――もしも、わたしの故郷がこんなことになったら……。
それでもひかるは想像することを止められなかった。心優しいが故に、せめてその傷に少しでも寄り添うことが出来れば――。
故郷の村にオブリビオンがやってきた!
『イヤーッ!』
羅刹の姉が出てオブリビオンを殺す!
リテイク。
故郷の村をオブリビオンが蹂躙、
『グワーッ!』
羅刹の家族が総出でオブリビオンを蹂躙!
蹂躙していいのは蹂躙される覚悟のあるものだけだ!
……無理でした。想像できませんでした。
戦国の世を傭兵稼業で食ってきた羅刹集団が滅ぼされるようなことがあるとすれば、それは本気で世界が終わるときでしょう。
閑話休題。
「まずは害虫駆除ですね……」
虫には火だ。それは既に実証されている。
ならば、と。ひかるの行動は早かった。
「火の精霊さん、風の精霊さん……これこれこういう感じで、お願いしますっ!」
たとえ戦闘力がなくとも、彼女には頼もしい精霊たちが守護に付いている。
空気が渦を巻く。
たとえ蝗が尋常ならざる虫であったとしても、飛行する以上は影響を直に受ける。それが強力な精霊によって生成されたものならなおさらだ。
大多数の個体がなすすべもなく呑み込まれていく。
そこに、ぼう、と火気が滑り込んだ。
大量の酸素を送り込まれた火は瞬く間に炎となり、取り込まれた虫を融かしていく。焼却など生ぬるいと言わんばかりに、業火の竜巻が唸りを上げた。
――後には何も残さない。
これ以上蹂躙されないように、村も、人も。
ここで火葬するのが、今の自分たちに出来る弔いだと信じて。
「……出来れば」
全てが終わった後、復讐に向かった彼と共に、改めて。
大成功
🔵🔵🔵
ミリア・ペイン
…戦っても戦っても終わりが見えない
この世界ではいつまでこんな悲劇が繰り返されるのかしら
【WIZ】《黒き怨恨の炎》
…汚らわしいハエ共ね
二度と繁殖できない様燃やし尽くしてあげるわ
兎に角数減らしが先決ね【先制攻撃】
炎を個別操作して体力の少ない個体を優先
タフな個体は炎を合体させて強化しつつ攻撃
炎に【呪詛】を込めて魂ごと消滅させてやるわ
囲まれない様敵の攻撃を予測したり
位置取りに気を付けましょう【第六感】
【オーラ防御】での自衛もしっかりね
同族狩りが現れたらさりげなく援護しつつ共闘
刺激しない様にしつつ後を追いかけましょう
…彼はもう、正気には戻らないのかしらね
いえ、今は余計な事は考えない様にしましょう
――地獄に墜ちろ。嫌だと言うなら堕としてやる。
燃える、燃える、燃える。
世界に染みついた怨念が、炎となって虫どもを燃やす。
――地獄すら生ぬるいから、このまま消してあげないと。
人の魂が21gだとするなら、小さな羽虫にはいかほどの質量が載っているのか。知ったことではない。屍肉漁りの汚らわしいハエに、五分の魂があるかも怪しい。
ただ灼き、呪い、潰す。
終わりが見えない。この世界には常に悲劇が渦巻いており、慣れることなど永遠にない。
――おまえ(わたし)がころした。
そんな自責が、呪縛のように自分の中を反響し続ける限りは。
「……ああ、数しか取り柄がない。無価値な汚濁の分際で手間だけはかかるなんて、本当、何様のつもりなのかしら」
ミリア・ペイン(死者の足音・f22149)は吐き捨てると、怨恨の炎を燃やし続ける。
容赦はしない。そんなものはいらない。ただ、オブリビオンは悉く殺し尽くす。
ごう。
瞬間。蝗の幕の向こう側から、『圧』が届いた。
「――」
ほとんど直感でミリアは半身をひねる。するとあらかじめ張ってあったバリアを光線が掠めた。どうやら広範囲型のエネルギー攻撃らしい。
「……あれが」
攻撃の主をミリアは確かに見た。
ぱっと見、平凡な少年。その両手には大仰な杖が握られており、そこから膨大な魔力があふれ出している。
少年がそれを制御しているようには見えない。つまり、あれが。
「同族狩り、ね」
少年は猟兵たちに目もくれず、蝗に向けて杖を振るい続ける。
――霊が見えた。それが魔を呼び寄せ、最後には厄を引きつけた。
「――正気には、戻らないのかしら」
ふと、そんな言葉が口をついて出た。理由は――いや、そんなことは今はどうでもいい。
作戦の鍵となる存在の姿をとらえた。刺激しないように追いかけよう。それがミリアの役割だからだ。
少年の背後を取ろうとした虫を焼き払う。
その援護のような攻撃に何らかの思惑があったのか、ミリア自身にもわからなかった。
大成功
🔵🔵🔵
真宮・響
【真宮家】で参加。
11年前、瞬と出会った出来事を思い出すね。瞬の故郷も理不尽な襲撃で故郷の人が皆殺しにされ、瞬1人生き残った。アタシと奏が通りがかったのは、瞬が1人で取り残されていた所だった。
だから、同族殺しになった子の気持ちも分からないんではないんだ。あの子にも傍に寄り添う人がいれば、違ったかもしれない。
敵が一箇所に集まった所を一気に叩くよ。敵の攻撃は【残像】【見切り】【オーラ防御】で凌いで、虫が集まった所に【先制攻撃】【二回攻撃】【串刺し】【範囲攻撃】で爆炎槍を投げ込む。害虫はさっさと消し飛びな!!
真宮・奏
【真宮家】で参加。
そうですか、住んでいた村が焼き尽くされ、1人生き残った・・・瞬兄さんも故郷を滅ぼされ、1人生き残った身です。瞬兄さんはすぐ響母さんと私がその場に通りがかりましたが、同族殺しになってしまった方は1人きりになってしまったのですね・・・彼も救ってあげたいですが。
禍を起す不吉な虫は炎で焼き払いましょう。【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【盾受け】【拠点防御】で防御を固め、【二回攻撃】【範囲攻撃】で煌く神炎を使います。跡形も残さず、焼き尽くしましょう。
神城・瞬
【真宮家】で参加。
同族殺しの「彼」も故郷を滅ぼされ、1人生き残った。僕もそうでした。突然故郷が滅ぼされ、1人生き残った。大きな違いは僕は母さんと奏に会えましたが、「彼」は1人である事。僕も少し歯車が違っていれば。出来れば、「彼」にも手を差し伸べたいですが。
まずは目の前の不吉な虫の群れを倒さねば始まりませんか。【オーラ防御】を展開してから、【高速詠唱】【全力魔法】【二回攻撃】【範囲攻撃】で凍てつく炎を使います。下手に増殖される前に、容赦なく焼き払いますね。
あの日のことを思い出す。嫌でも思い出してしまう。
『故郷を滅ぼされた』。それは神城・瞬(清光の月・f06558)にとって、消えない傷として残っている。
――そのような猟兵は多い。
そんな文句は慰めにすらならない。それはつまり、同じような境遇の者が多すぎるということなのだから。
「兄さん」
真宮・奏(絢爛の星・f03210)にそっと腕を掴まれ、瞬は物思いを止めた。
この義妹の手は変わらず暖かい。熱がじんわりと胸に染みいり、古傷の疼きを止めてくれる。
「ぼんやりしてる場合じゃない。行くよ!」
そんな二人の様子を微笑ましく思いながら、真宮・響(赫灼の炎・f00434)は檄を飛ばす。
こういう人だからこそ、瞬はここまで生きてこられた。
「ええ、そうですね」
依然として蝗たちはうごめいている。
目の前の肉を食らう。ただひたすら本能に従って、人々の尊厳を今もなお奪い続けている。
許すわけにはいかない。
「跡形も残しません――!」
奏の放った聖なる炎が、虫どもを焼き尽くす。毒々しい群体を、白く清廉な炎が追い詰める。
「凍てつけ」
逃げようとした群れの行く手を、瞬の『炎』が阻む。呪詛によって編まれた炎は、羽虫を悉く『凍らせて』砕いていく。
そして。
「さっさと消し飛びな!」
二人の子供たちの炎によって生まれた『吹きだまり』に、響は槍をぶち込んだ。それは刹那のうちに着弾すると、轟という爆風とともに蝗どもを蹴散らす。
――十一年前の話だ。
突如降り注いだ理不尽な暴力によって、瞬の故郷は灰燼と化した。
父も母も、里の誰もが帰らぬ人となった。
瞬は、どうすればいいのかわからなくなっていた。ただ確実なのは、一人ぼっちになってしまったこと。そしてすぐさま心が絶望に塗りつぶされるであろうこと。その末路は――
そこに、響と奏が通りかかった。
それは本当にただの偶然だった。
けして余裕があるとは言えない、母と娘の放浪生活。
そこにもう一人子供を抱え込む決意をしたのは、果たしていかなる心境だったのか。
義を見てせざるはなんとやら。それもあるだろう。
細かいことは気にしない。それが響の生き方だ。
それに――。
父親を亡くしたばかりの奏にとって、この出会いは。
「同族殺しになってしまった彼は……一人きり、なんですね」
ぽつりと奏がつぶやく。
「ええ、話を聞く限りはそうでしょう」
もし、あの時の瞬の元に誰も現れなかったのなら。歯車が一つずれていたのなら。
「――――」
それは、あり得た一つの可能性だ。復讐に燃える鬼となって、ひたすら力を振るうだけ。
「……そんなの、悲しすぎます」
「そうですね――」
それはもしかすると、ただのエゴかもしれない。それでも、このまま見過ごすのは何かが違うのだ。
そんな子供たちに、響はこくりと頷いて見せた。
「ああ。まだ手遅れじゃないかもしれない。だから追いかけるよ!」
――せめて、その孤独に寄り添いたい。
だから、三人の親子は炎を振るう。それが真宮家のあり方だと信じて。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ナターシャ・フォーサイス
WIZ
哀れな魂が復讐を、ですか。
いずれ彼も導かねばならぬ存在、とはいえ彼の願いを聞き届けることもまた使徒としての役目でしょう。
…ですが。その前に。
空腹に喘ぐ彼らを楽園へと導きましょう。
案ずることはありません。食物に困る必要など最早ないのです。
天使を呼び、彼らの力を封じたうえで誘いましょう。
光をその標とし、【高速詠唱】【全力魔法】【2回攻撃】【範囲攻撃】で纏めて誘うのです。
皆様には守護の加護を与えましょう。
生けるものも哀れな魂も、皆我らが救うべき同胞。
であるならば、同胞同士の争いなど不要なのですから。
さて…あの少年はどこでしょうか。
多少なりとも、お話してみたいのですが。
――哀れな。
主は言いました。汝の隣人を愛せよ、と。
それはナターシャ・フォーサイス(楽園への導き手・f03983)の奉ずる神とはまた違う者の言葉だが、その意図は理解できる。
あまねく世界は調和に満たされ、一様に幸福であるべきだ。
すべてが満たされているのだから、誰もが誰かを傷つける必要などないのだ。
だのに。
「ああ――なんて、哀れな」
修羅の形相で杖を振るう少年を見やる。なんと痛ましい。
復讐。それは何も残らない愚かな振る舞い。相手に自分と同じ痛みを強いる、不毛極まりない行動だ。
だが。
「それが、今の彼の望みなら致し方ありません」
束縛してはならない。望みを強引にねじ伏せることは、それもまた使徒としての役割に反する。
彼の救済は、その衝動が満たされてからだ。それからでも遅くはない。
それよりも、今は。
「お待たせしました。空腹にあえぐ同胞たちよ」
常に餓え、群れて腐肉を漁らねば生きていけぬ小さなものたち。
「今、楽園へと誘いましょう」
――大丈夫、もう争う必要などないのです。
この光の向こう側に、あなたたちへの救いを。命に、魂に貴賤はなく、みな一様に幸福な世界が待っているのだから。
救いの結界が【守護結界が】、あなたたちを包み、蝗を包囲し】、御遣いたちが【天使を模した力が】、楽園への門を開いた【高エネルギーの光を放出し焼き尽くした】。
「さあ、肉体を捨て、穏やかに。――同胞たちよ」
そのナターシャの在り方は、さながら聖母のようであった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『シエラ・ロスト』
|
POW : 鳥の舞
【鳥の大群 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : イーグルシュート
【鷲を乗せた右腕 】を向けた対象に、【鷲が相手に向かって飛びつき攻撃】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ : ウィングソング
【歌声 】を聞いて共感した対象全てを治療する。
イラスト:utgw
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「シエロ・シーカー」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
――度しがたい。
女にとって、『翼』とはすべてであった。
そこに理由などない。
翼持つものは美しく、そうでないものは醜かった。
ただ、それだけだ。
領主である女にとって、愚民を選ぶ基準などそれ以外にあり得ない。
故に。
「どうして……どうしてみんなを殺した!」
杖を向ける少年に向けて、女はひどくつまらなさそうな顔をした。
「翼も持たないただの人間の分際で、どうして生きているのかしら。恥を知りなさい」
理解できない、といった風の少年に、女は気だるそうに答えた。
「オラトリオの一人も用意できないんだから。そんなもの、あってもしょうがないでしょう?」
問いの答えが、それだった。それですべてだった。
ただ『村に翼あるものがいなかった』。たったそれだけの理由で、少年のすべては奪われた。
――まったくもって、度しがたい。
少年は杖を振るう。杖はそれに応え、女を殺すために動き出す。
――すべては救済のために。
まずは、この偏愛主義者を倒すとしよう。
エル・クーゴー
●POW
新たな敵影を確認
>撃破対象が更新されました
『魔法の杖』へ一時的に友軍マーカーを設定
積極攻勢、及び【援護射撃】を開始します
躯体番号L-95
当機はオラトリオ種には非該当です
が
鋼とバーニアの翼を有します
・【嵐の王・空中行軍】発動(空中戦)
・高速航行で敵後方へ弧を描き抉り込むように機動、照準を絞らせない
・アームドフォートはじめ、各種搭載火器をフルに用いての【一斉発射】
・鳥の大群を真っ向【範囲攻撃】で【蹂躙】する
・『魔法の杖』が敵に対し有効打を放ち得る緩急+敵が『魔法の杖』へ攻撃を投射した
・この二条件を満たした際は『魔法の杖』に対する敵の攻撃を【スナイパー+誘導弾】で迎撃相殺する援護を提供する
暴虐そのものな女の「理由」を知った猟兵たちの反応は様々だった。
程度の差こそあれ、少なくとも好意を抱いたものは誰一人としていなかったであろう。
「撃破対象が更新されました」
エル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)は極めて淡々と宣言し、行動を開始した。表情は動かず、声色は機械的。彼女の真意は伺いづらい。
しかし。
「『魔法の杖』に一時的に友軍マーカーを設定します」
バーニアが展開される。鋼の翼と共にエルは飛び上がる。
「――高出力空戦モードへ移行。積極攻勢、および友軍への支援を行います」
果たしてそれは『この戦場における最高効率』を取っただけのことなのか。それともそれ以外の意思が介在しているのか。それは分かりようがない。
「醜い……醜い、醜い……」
一方、領主の女はひどく不機嫌そうだった。
攻め込まれていることが、ではない。
「視界に入るな、ニンゲン」
ただ、『翼も持たない何か』が視界に山ほどいる。それが許せなかった。
だから、目の保養をしなければ。
うつくしい翼で世界を覆わなければ。
「お、ま、えぇぇえええ――ッ!」
飛び込んできた有象無象――オブリビオンだろうか? どうでもいい――を鳥で覆い被せる。骨は仕方ないとして、原型は留めないようにしないと気分が悪い。
ばばば。
それを、空から降ってきた弾丸が打ち落とす。
忌まわしくも翼のない何かの攻撃が女を掠める。
そんなことはどうでもいい、今の攻撃はなんだ――と女は空を見上げた。
そこには鋼鉄の翼を以て飛翔するエルがいる。炎を吹きながら、空を駆けるためのその部位は――。
「ああ――悪くないわ、それ」
彼女の美意識からは少しずれるが、さりとて無碍にしたものでもない。知らない形状だが、悪くない。
「当機はオラトリオ種には非該当です。が――鋼とバーニアの翼を有します」
もし、その返答に乗った感情があったとしたなら。読み取れたのはほんのわずかな者だけだろう。
成功
🔵🔵🔴
ミリア・ペイン
領主だか何だか知らないけど…くっだらないわね
お前みたいな危険思想の持ち主はね、存在しているだけで迷惑なのよ
害獣はさっさと駆除してあげないとね
【WIZ】《黒き怨恨の炎》
配下の鳥が鬱陶しいわね、【先制攻撃】で撃ち落としておきたいけど…耳障りな歌で治療されたら面倒だわ
チャンスを見計らって【部位破壊】で鳥女の喉元を狙って攻撃
【呪詛】による【精神攻撃】で声帯をイカれさせてあげる
…序にその汚らわしい翼も燃やしてあげましょうか?
鳥の大群は【オーラ防御】で弾き【第六感】で回避
同族殺しを盾にしつつ、援護を装い誤魔化す
彼も災難よね、こんな屑女に人生を狂わされるだなんて
ああ、もう…さっきから最悪な気分だわ
「くっだらないわね」
吐き捨てると、ミリア・ペイン(死者の足音・f22149)は女の呼び出した鳥を悉く焼き捨てる。
そして女はうろんな目をミリアに向けてきた。
「耳障りで目障り。ああ、最悪の気分だわ」
「奇遇ね、私もよ。目障りの具合は――言うまでもないわよね」
鳥が舞い、歌う。その度に女と、女の呼び出した鳥たちの傷が癒えていく。
「ええ。お前みたいな害獣は、存在するだけで迷惑なのよね」
「ええ、羽なしの雑音って、それだけで耳が痒いのよね」
ミリアの呪詛が女の喉を狙う。蝕んだが抵抗された。女の眉間に深い皺が刻まれる。
「あらそう。じゃあ炎症ついでに喉まで燃やしてあげるわ。あと、その醜い翼も焼いてあげる」
「結構よ。代わりにその醜い根性ごと啄んであげる。そこの何かも、盾にされて可哀想よねえ」
どこまでも相容れない。
女にとって、猟兵たちは十把一絡げに無価値な存在であり。
ミリアにとって、この女は唾棄すべきオブリビオンである。その中でも最悪の部類だ。
――翼がないから滅ぼした。
何の理由になっていない。ただの趣味嗜好の延長で滅ぼされた方はたまったものではない。挙げ句に『私は正しいことをしています』と居直っているのなら尚のことだ。
ああ、最悪だ。最悪の気分だ。
涼やかに流せ、というのは無理な相談だ。
罵倒の一つもしたくなるし、返されれば応えざるを得ない。それほどまでに相容れない。
――許せない。
たとえ、少年がオブリビオンの力を借りるという愚行に走っていたとしても。
今だけは同情しよう。
燃えろ。
「――この、屑女」
怨恨の炎が燃え盛る。その余裕に満ちた態度が無様に崩れ落ちる瞬間まで、悉くを燃やし尽くしてやる。
成功
🔵🔵🔴
真宮・響
【真宮家】で参加
こんな奴に故郷を滅ぼされちゃ堪ったもんじゃないだろう。翼無いものは価値がないか。こういう偏った奴は嫌いだね。そこの杖持った少年、話は後だ。手を貸すよ。
まず【オーラ防御】を展開し、爆炎槍其之弐を発動。ご自慢の鷲の攻撃をそのまま返してやる。寵愛するご自慢の鷲の攻撃を返される気分はどうだい?【見切り】【残像】で流れ弾を捌きながら、ダメ押しで【二回攻撃】【串刺し】で槍投げをして容赦なく貫いてやる。今まで好き勝手やってきた報いだ、存分に受けな!!
真宮・奏
【真宮家】で参加
翼あるものがいないから滅ぼした、ですか。無茶苦茶ですね。そんな理屈で全てを奪われた無念、察するに余りあります。(杖を持つ少年に隣接して)詳しい事情は後でお話しします。まずは目の前の存在と決着をつけましょう。
トリニティエンハンスで防御力を高め、【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【盾受け】【拠点防御】で鳥の大群の攻撃に耐えきり、【属性攻撃】【二回攻撃】【衝撃波】で攻撃します。状況によっては【かばう】の範囲は杖を持った少年も対象に。トドメは出来れば、件の彼にさせてあげたいですね。
神城・瞬
【真宮家】で参加
そんな理由で人の営みを滅ぼしますか。僕だったら杖の少年のように復讐に我を忘れるのも分かるような。杖を持つ少年に「僕も故郷を滅ぼされた身ゆえ。加勢します」と声を掛けて並んで杖を構えます。
敵は手数が多い。なら僕も数で対抗します。【高速詠唱】【全力魔法】【二回攻撃】で氷晶の矢を撃ちます。追撃として【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】【武器落とし】も乗せます。杖の少年に攻撃がくるなら【オーラ防御】で盾になる。「放って置けないんだ。君を」
「そこの少年! 話は後だ、手を貸すよ!」
高らかに叫ぶと、真宮・響(赫灼の炎・f00434)は同族狩りの背後を狙っていた猛禽を迎撃する。槍をくるくると器用に回し、さながら盾のように鳥の射線を阻む。
「……僕も故郷を滅ぼされた身。加勢します」
行動を阻害された鳥を、神城・瞬(清光の月・f06558)の放った氷が撃ち落とす。手数が多いのなら、こちらも手数で対抗するまでだ。容赦なく連射していく。
「詳しい事情は後でお話しします。……まずは目の前の存在と決着を付けましょう」
それでも防ぎきれなかった鳥たちを、真宮・奏(絢爛の星・f03210)が盾で受ける。
協力に入った三人を、しかし少年はちらりと一瞥するだけで終わった。
「別に。頼んでないし」
素っ気ない返答に、響は気にした風もなく槍を振るった。
「そりゃそうだ。これはお節介ってやつだからね! もらえるものは素直にもらっとくものだよ、少年!」
響の槍から爆炎が吹き出し、鳥を一斉に打ち払う。これで少年は先へ進める。
駆けだした彼を邪魔するようにまた鳥が召喚されるが、
「これはお返しだ!」
響の爆炎槍がコピーした『鳥の群れ』がそれに立ち向かう。その行動に、女が露骨に顔を顰めた。真似られるのが相当な屈辱と見える。
――とはいえ、予想以上に激しいねえ。
響としては、この槍であの女の翼を撃ち抜きたい。偏執的な趣味嗜好を持つ相手には似合いの仕打ちだからだ。
しかし、まだ防戦。攻撃に転じる時ではない。
「くっ……!」
嵐のような鳥の群れを、奏は盾で受け止め続ける。
「まだ来ますか……!」
瞬の魔法と奏の盾。二人で少年をカバーするが、それでも敵の攻撃は苛烈だ。いつまで受けきれるのか、いつ弾切れになるのかが見えてこない。
二人に庇われながら、少年は杖から光弾を撃って女を狙う。しかし狙いが定まらず、らちがあかない。このままではジリ貧だ。
「――アンタらには関係ないだろ!」
露骨に苛立った声を上げながら、少年はそれでも攻撃の手を緩めない。
奏と瞬が抑えてくれているから攻撃に専念できる。しかし、見ず知らずの二人がどんどん傷ついていく。それが少年の良心に響く。
「これはおれの戦いだ! 引っ込んでろ!」
それでも、と瞬は思う。
「放っておけないんだ、君を」
捨て鉢になってはいけない。全てを奪われ怒りに駆られたとしても、死ぬことだけはよくない。生きてさえいれば、いつかは報われる日が来るのだ。
それに、と奏は思う。
「翼がないから、なんて無茶苦茶です……!」
そんな取るに足らない理由で地獄に堕とされた少年が不憫でならない。このまま泣き寝入りなんて据わりが悪すぎる。
殴り返すべきだ。一発と言わず、何度でも。
「同情なんて、いらないんだよ……!」
少年の悪態は、しかしどこか泣いているように聞こえる。
心の柔らかい部分を覆い隠す、強気の嘘。そうしないと立っていられないから。
それはつまり、このまま放っておけば、たとえ復讐を完遂してもそのまま折れるということなのだ。
――そうはさせない。
その傷に寄り添ってみせると、真宮家の三人の決意は固かった。
苦戦
🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
ナターシャ・フォーサイス
WIZ
翼をもつ者こそが美しい、と。
美術的価値観を否定は致しませんが、だからと他を切り捨てるのはいかがなものでしょう。
人として怒りはしますが…使徒として、貴女もまた赦し導きましょう。
翼があるものが美しい、と仰るのでしたら。
真の姿の限定解放、機械仕掛けの大天使となり天使達を呼びましょう。
皆様に加護を授け、光を以て導くのです。
その鎌は罪と闇祓うため。
その弩は道示すため。
その刻印は救いの灯火。
皆貴女を導くためにこそあるのです。
翼をもぐようなことは致しません。
地に墜ち自ら醜いものとなるなど、救い足りえないでしょうから。
案ずることもありません。
悠々と空を舞い、風と共にある貴女の夢の続きは、楽園にて。
「美術的価値観の否定はいたしません。ですが、その愛の形には同調が足りません。あなたに救済を。翼を愛するあなたの報われる世界への、救済を」
人としては許しがたい。さりとて、使徒としては彼女もまた、救済をもたらす対象である。
「赦しを。救済を――さあ、楽園へ」
そしてナターシャ・フォーサイス(楽園への導き手・f03983)は、大きな翼を広げた機械仕掛けの大天使へとカタチを変えた。
同時に天使たちが舞い降りる。
その手に鎌を、弩を、刻印を。救済に至るための祭具を持って。
それを見て、女の反応は実に分かりやすかった。
「ああ、ああ。そう、そういうのでいいのよ」
顔に喜色が浮かぶ。眼福、というヤツだ。
多少は好みから外れるが、それはそれである。許容範囲であり、
「あなたに導きを。この鎌はその罪と闇を濯ぐため。弩は道を示すため。この刻印を灯火として、楽園へと至りましょう」
ナターシャが手を振るう。
――その翼をもいではならない。それは彼女を辱めること。救済になりはしない。
楽園に至りし時、その翼で悠々と空を飛べなければ意味がないのだ。
「おかしなことを言うのね、あなた」
女は嘲笑うようにそう言った。
「誰かを救うなんて、誰にも出来やしないのに」
「それもまた、主の前では些細なこと」
ナターシャは慈愛の笑顔を浮かべた。
「大丈夫です。あなたの魂を、救済します」
ざん。
鈍い音がした。
大成功
🔵🔵🔵
荒谷・ひかる
……まあ、その程度の理由だとは思っていました。
人間と似たような見た目、通じる言葉を操る存在。
それでいて、絶対的に人類と相容れない存在。
……いちいち怒るだけ無駄、というものですね。
害獣みたいなものですから、粛々と行きましょう。
【氷の精霊さん】発動
330本の氷の槍のうち
100本を鳥や鷲の迎撃に
200本を本体への攻撃に
残りの30本は5本ずつ板状に束ねて6枚の氷の盾にする
基本わたし自身は狙われないよう後方に引っ込みつつ、杖の少年を援護する
氷の盾は少年の死角をカバーさせ、本体へ攻撃する氷の槍も少年の攻撃を当てやすくするよう追い込むような狙いで動かす
荒谷・ひかる(精霊ふれんず癒し系・f07833)は一つ息を吐いた。
――まあ、その程度の理由だとは思っていました。
領主の女をそう評価する。
暴虐に走る為政者には様々なパターンがあるが、とりわけダークセイヴァーでは理不尽なものが多い。
そもそもオブリビオンの思考回路を人間の常識で計ろうとすることが無駄な行為に等しい。
人と同じような見た目をし、人と同じ言葉を操り、それでいて絶対にわかり合えない断絶がある。
――いちいち怒っても、疲れるだけですね。
すなわち災害そのものだ。
ならば、粛々とやれることだけやってしまおう。
「精霊さん、精霊さん――」
氷の妖精が氷の槍を編み上げる。
六割を本体めがけて投射、二割を使役する鳥たちに、残りを自身と少年の防御にあてる。
何も考えない。今は猟兵としてやるべきことをなす。
――度しがたい。
少年は走る。援護はあるがどうでもいい。一人でもやれた。やれるはずだった。
それが少し楽になっただけのことだ。
光を放つ。また捌かれる。しかし明らかに疲弊が見え、女はヒステリックに叫んだ。
「この、この――」
ありとあらゆる罵倒を受け流し、少年は一歩詰める。そして先端に魔力を纏わせた杖でその胴体を貫いた。
「死ね――!」
「ハネナシ、ども、がぁ――」
ごぶり。
女は口から黒い何かを吐き出しながら、そのまま崩れ落ちた。
成功
🔵🔵🔴
第3章 ボス戦
『星杖『ゲファレナー・シュテルン』』
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POW : 星槍モード
技能名「【第六感】【見切り】【なぎ払い】【串刺し】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
SPD : 錬成カミヤドリ
自身が装備する【自分の本体(星杖)】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 世界の滅び以外に人々への真の救済を行えるものか
対象への質問と共に、【次々と骸の海】から【かつて自身を装備していた者達】を召喚する。満足な答えを得るまで、かつて自身を装備していた者達は対象を【それぞれの手に持つ星杖による魔法攻撃】で攻撃する。
イラスト:山本 流
👑8
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠リカルド・マスケラス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
――度しがたい。
杖は、本来の名を『シュテルン』と言った。
人を救う流れ星。迷う子らを導く正義の魔杖。使い手を何度も変えながら、闇を切り払う帚星として何度も何度も何度も何度も人を救ってきた。
――まったくもって、度しがたい。
だのに。
人は、どうしようもなく愚かだった。
魔王を倒した英雄を排斥する民を見た。救世の魔法使いを異端として虐殺する民を見た。己の私利私欲のために破滅していく英雄を見た。
つまるところ、人々は救われない。どうしようもなく愚かで、ほとほと愛想が尽きて、しかし私にとってはそんな人々を救うことが存在意義であり、
結論として――。
「永遠に停滞していればいい。人は、そうすれば一様に幸福だ」
少年の声帯を借りながら、杖はそう言った。
重苦しい、苦悩に満ちた声だった。
「この子供に手を貸したのは、ひとえに据わりが悪いからだ。人間だけが破滅するのではバランスが悪い。ならば、オブリビオンも同様に滅ぼされなければ」
天秤が傾いたままでは、誰も救われない、と。
否。『不幸が不平等である』と、杖は言った。
「故に――この子供がどうなろうと知ったことではない。私を引きはがすもよし、もろとも滅ぼすもよし、あるいは私の理念に賛成してこの世界を滅ぼすもよし。その選択に応えよう。私は――そういうものだからだ」
そうして堕したる救済の杖(ゲファレナー・シュテルン)は、猟兵たちに向き直った。
少年の意思は、そこに介在していなかった。
真宮・響
【真宮家】で参加。
アンタがそれなりの修羅場を潜って来たことは分かる。なんかごちゃごちゃ言ってるようだが、持論を展開するならこちらはこちらの勝手でやらせて貰うよ。さあ、その子の手から離れて貰おうか。(真の姿解放。黒髪金眼になり赤いオーラを纏う)
こちらは三段構えの作戦で行くよ。爆炎槍・其之弐で飛んでくる杖に対抗しながら回避しきれない分は【オーラ防御】【見切り】【残像】で対抗。足元に【槍投げ】【二回攻撃】でランスと槍を突き刺して牽制する。さあ、奏、瞬、やっちゃいな!!
真宮・奏
【真宮家】で参加。
(首傾げ)なんか難しい事言ってますね?色々大変そうですが、杖持ってる人の意志まるっきり無視ってのが気に入りませんね。その方の仇討ちは終わりましたし、用無しの杖はとっととその方から離れて貰いましょうか。(真の姿解放。黒髪金目になり青いオーラを纏う)
母さんが杖に対応しているのを【二回攻撃】【衝撃波】で援護。槍が足元に突き刺さって、杖が手から飛んだら【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【盾受け】【拠点防御】で防御を固めた態勢で【シールドバッシュ】で突っ込んで、流星のタックルで少年に突撃して少年を確保します!!その方は保護しました!!後はお願いします!!
神城・瞬
【真宮家】で参加。
ふざけんなこのやろう。自分の勝手な論理の為に他人を巻き込むんじゃねえ。貴様がそういう持論でいくなら、俺たちは俺たちのやり方でやらせてもらうさ。(真の姿解放。両目が赤くなり、銀髪に。銀のオーラを纏う)
簡単にこちらの戦法が通用するとは思ってないさ。連携戦法でいく。【オーラ防御】を展開し、月光の狩人を展開。鷲に牽制して貰いながら、槍とランスが足元に突き刺さったら、【高速詠唱】【全力魔法】【二回攻撃】で【マヒ攻撃】【武器落とし】を乗せた【誘導弾】を少年の腕に撃って星杖を落とさせる。少年を無事確保したら戦場から離脱。後続の猟兵の皆さん、後はお任せします!!
「ふざけんな、このやろう」
普段の紳士然たる振る舞いからは想像も付かぬ。神城・瞬(清光の月・f06558)の声色は怒りに満ちていた。
「自分勝手な理屈に他人を巻き込むんじゃねえ!」
逆鱗に触れると瞬はこうなる。すなわち、杖の言い分が特級の地雷だったということに他ならない。
両の瞳が赤く染まる。金色の髪が銀色に変わる。銀のオーラを纏い、殺意を杖に向けて叩き付けた。
「あんたはあんたなりに相当な修羅場を潜ったようだがねえ……」
真宮・響(赫灼の炎・f00434)はぐるりと槍を回すと、石突きを地面に突き立てた。
「何やらごちゃごちゃやかましいんだよ。そっちがそのつもりなら、こっちも持論を押し通すまでさ」
赤いオーラと共に、黒髪、そして金の瞳へと変じる。
「――さっさとその子の手から離れな」
「なんか小難しいこと言ってますけど……」
そして、真宮・奏(絢爛の星・f03210)は首をかしげた。あの杖は言い回しが迂遠で分かりづらい。そして奏にとってそれらは屁理屈と同様である。
だって、母と兄があれほどまでに怒っているのだから。きっとそれは間違っているのだ。
それに、
「――本人の意思をまるっきり無視するというのが気に入りません。用済みになったなら、さっさと離れてください」
奏が青のオーラを纏うと、応じて黒髪と金の瞳という親譲りの色に変わる。
三人の親子の意見は一致した。オーラを纏い、髪と瞳の色が変化する。
それが真宮の『真の姿』である。
対して、少年――いや、杖は小さく嘆息した。
「自身の都合しか見ていない。目の前の小さな不幸に執着し、対極を見れない。挙げ句に対話は放棄する。そうすれば戦争しか道はないと何度も立証されているのに――なんとも、度しがたい」
ひどく、疲れ切った声だった。
「言ってな!」
響が先陣を切る。それに迎撃する形で、杖が自身の分身のようなものをいくつも生み出した。
むろん、会話に乗ってやろうとは思わない。それが挑発だろうが心底からの嘆きかなどどうでも良い。
「その人の敵討ちはもう終わったんです。解放しなさい!」
奏が盾を展開し、繰り出された射撃から仲間を守る。
『少年を自身の傀儡にしている』。この一点は、いかなる理屈を持ってしても擁護できない落ち度である。
「その『自分が一番正しいです』みたいな態度が! 気にくわねぇんだよ!」
先ほどの意趣返しか偶然か、瞬は狩猟用の大鷲を繰り出した。
かつて踏みにじられた者として、この杖の説く『救済』とやらは酷く腹立たしいものであった。
――踏みにじられたならそのまま待っていろ。他の奴らも同じ所に堕としてやる。
瞬にとって、そう言われたに等しいのだから。
撃っては弾き、弾いては撃ち返す。その均衡状態を崩したのは、響だった。
「奏、瞬! やっちゃいな!」
相手の技を十分に『取り込んだ』爆炎槍が吼える。大量に複製された槍が敵の攻撃を悉く打ち払い、隙が生まれる。
「はぁぁぁっ! 食らえ~っ!」
そこに奏が突撃をかける。盾を前に構えたシールドバッシュ。青いオーラと共に、全てをなぎ倒す突進攻撃だ。
「落ちろッ!」
そうして生まれた、視界が開ける。その瞬間に、瞬は少年の持ち手めがけて光弾を撃ち込んだ。
高速の麻痺弾のラッシュに、少年の、杖の動きが鈍る。アレを叩き落とすなら、今だ!
「いや、それにはまだ早い」
重苦しく言う。そして少年は華麗なバックステップで距離を取った。
「――なんとも、度しがたい」
その言葉にはいかような感情が込められているのか。
疲弊か、苦悩か、あるいは――激情か。
だが、届いている。真宮家の攻撃は、少なからず杖の支配に罅を入れた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
白斑・物九郎
●POW
●目標:杖のみを狙っての破壊
グダグダ議論する気はありませんわ
そもそもおたく、全人類の是非・善悪・幸不幸をまとめて裁ける程大したヤツなんスか?
・【野生の勘】フル稼働
・狙うは、杖の打ち込みに対する魔鍵での【武器受け】
・敵に卓絶の第六感+見切りがあることを承知の上で、その挙動の更に未来を覗き込まん
・勘をひたすら先鋭化させ(限界突破)、行動によって結果を得るではなく、望む結果を視た上でそこに至る行動をなぞる――因果の逆転じみて動作する
・杖に魔鍵を合わせた瞬間を以って【砂嵐の王と狩猟の魔眼】二撃目照準箇所を規定
・即ち、高命中力を以って「少年の肉体を害さず杖のみを」正鵠に照準し抜きエルに狙撃させる
狙う、穿つ、弾く、避ける、殴る、斬る、捌く。
どこから現れたのか。黒い猫耳の少年が、杖の群体をするりとすり抜ける。そして少年に向かって巨大な鍵を振るった。
まったく気取られることのなかった白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)の不意打ちは、
「――――」
しかし、さも当たり前のように躱されてしまった。あたかも未来でも視ているかのような挙動だった。
「――――ハ」
皮肉げに笑う。不意打ちが当たらないなどよくあること。
『特にこの相手はそうなのだろう』。
根拠はない。だが物九郎にとって、『その直感こそが根拠たり得る』。怯む要素などどこにもなく、当たるまで魔鍵を振るうだけのこと。
――度しがたい。
あまりにも度しがたい。
「それ、おたくの口癖ッスか」
杖と鍵による演舞。本気の一撃同士が火花を散らし、そして百を数えてなお有効打は一度もない。
「……癖というのなら、そうなのだろう」
少年の口を借りて、杖はそう答えた。
「ハ。なくて七癖みたいなもんですかよ」
見えている。この打ち合いがどこまで続くか見えている。
――終われない、終わらない。
これは『お互いに』未来視じみた第六感、あるいは直感持ちの争いなのだ。まっとうな演算処理をするなら、どちらかが音を上げるまで続く。
けれどどこかで限界が来る。演算はあくまで机上のもの。実際に走らせるのであれば、様々な外的要因によって誤差を積み重ねていき、
「ところで。おたく、全人類の善悪、是非、幸不幸をまとめて裁けるほど大したヤツなんスか?」
今回は、それが致命傷だった。
――人を救い、導き、永遠の安寧をもたらす。
かくあれかし。そう思われて杖(わたし)は作られた。
そうあれると、思っていた。
「――いや、そうでもない。私は、そうありたかっただけの――」
がちり。
巨大な鍵を武器として運用するなら、『突き』こそ最も警戒すべき挙動だった。見えていたが、避けられなかった。
「三千世界より群れ集え――」
ひねりの動作。『開けられてしまう』。研ぎ澄まされた野生の勘の向こう、物九郎が視た『かくあれかし』がやってくる。
空より流星のような一撃が降ってきた。堕ちた星には似合いの、流星の一撃だった。
大成功
🔵🔵🔵
ミリア・ペイン
…神様にでもなったつもり?
余計な事考えなくていいから黙って骸の海に還って
【WIZ】《冥き深淵の守護者》
攻撃を受けない様に【オーラ防御】で自衛しつつ守護者の陰に
【第六感】で攻撃の軌道も予測
私は同族殺しになりたくないもの
召喚者達を捌きつつ【部位破壊】で杖を破壊するわ
戦況が悪化するなら…覚悟を決め少年諸共滅ぼすわ
人間は愚かだけど様々な可能性を秘めているわ
滅びで未来を潰して救済なんか出来る訳ないでしょ
聞こえてる?盾にした事は今は忘れて頂戴
私の家族や友達も皆殺しにされたの、でも私は生きてるわ…例え無様でも
皆の想いを背負って生きる義務がある、そう思ってるから
此処で死んで後悔しないなら好きにしなさい【挑発】
よろけた少年――杖めがけて、死神の鎌が振り下ろされる。
それは確かに杖の存在を揺らがす一撃であった。
「神様にでもなったつもり?」
召喚した主であるミリア・ペイン(死者の足音・f22149)は冷たく言い放つ。
人類の救済。なるほど、うたい文句としては上等だ。
「この詐欺師。余計なこと考えなくていいから。黙って、骸の海に還って」
あの杖がどのような苦境からそのような考えに至ったのか。そんなことはどうでもいい。重要なのは『アレはオブリビオンであり』『人類に害なす存在』であること。この二点のみ。
悪意だろうが善意だろうが、主義主張の是非だとか、そんなものはミリアにとってはじめから考慮するに値しない。
「――度しがたい」
「そればっかり。思考停止してるのね。反論があるならもっと真面目にやりなさいよ」
杖が放った光弾を、不気味なウサギのぬいぐるみが弾き返した。
「……あなたもよ。こんなのにいいようにされたままでいいの?」
そして、ミリアは少年に向けて言葉をかける。
「おれ、は――」
「さっき盾にしたことは忘れて頂戴。それよりも、あなたはこれからどうしたいの? 生きたい? 死にたい?」
杖の群体が雨あられと弾を降らす。死神とウサギがそれをはじき返す。
「おれ、は」
「同情心からではないと言っておくけれど。私も家族や友達を殺されたわ。それこそ死んでしまいたいほど辛かったわ」
――霊が見えた。それが魔を呼び寄せた。最終的に災厄となった。
今でもあの時の光景が自分を追い詰める。『私がいなければ良かったのに』。
「それでも生きている。安易な結末なんて嫌だからよ。みんなの思いを引きずって、どんなに無様でも生きていかないと。みんなの生きた証を無駄にしたくないの」
「――それ、は」
杖を持つ少年の手が震える。瞳の色が揺れる。敵の攻撃にまとまりがなくなってくる。
「別に、傷の舐めあいがしたいわけじゃないわ。それとも、ここで死んでも悔いがないなら好きにしなさい」
――きちんと殺してあげるから。
同族殺しに堕ちるつもりはない。しかし、オブリビオンに阿るつもりなら、それはミリアの『敵』だと。
「うう、あ、――ッ!」
少年は、吼えた。杖を振りかぶり、自分の意思でミリアに向かって飛びかかる。
それは、今までのどれよりも拙く、そして強い攻撃だった。
大成功
🔵🔵🔵
荒谷・ひかる
……なるほど。
つまるところ貴方(星杖)は……実現できない理想を抱えて、絶望し躯の海で溺れ死んだ、そういうことですね。
……こう言っては何ですけれど。
「真の救済」なんて、殆どの人は望んでもいない……ただの貴方のお節介だと思いますよ?
貴方は永く在り過ぎて、神の目線を持ってしまった。
巨視的になりすぎたんです。
でなければ、そんな極端でシンプルな答えには至らないはず。
だから、ここで終わらせてあげます。
例え、次の貴方がいずれ何処かに現れるとしても。
【本気の闇の精霊さん】発動
杖の外観を見る限り、完全に木製という訳ではなさそうなので、持てないレベルにまで負荷をかけてやる
その上で、精霊銃(火炎弾)で本体を攻撃
――度しがたい。
もはや、何についてそう考えていたのかも分からなくなった。
人を、助けたかった。そう作られたはずだった。なのに――。
「アア、ア、アアア――!」
苦悩に満ちた叫びは、しかし少年のものではない。あくまで身体の支配権は杖にある。
「どうして、どうして、人というものは――!」
「……なるほど」
荒谷・ひかる(精霊ふれんず癒し系・f07833)は、その在り方をこう評した。
「つまるところ貴方は、実現できない理想を抱えてしまった。絶望と共に骸の海に溺れてしまった――そういうことですね」
理想を抱えて溺死した。その一例が目の前にある。
「そうだ、そうだ……! 人はどこまでも愚かだ! 身勝手な願いだけ押しつけて、そのくせ自家中毒ばかり起こし続ける!」
悲鳴だった。限界が近いからだろうか、杖の持つ本音のように聞こえた。
オブリビオンへと堕ちるに至った核の部分。
「――それは。言っては何ですが、『ただのお節介』というものです」
静かなひかるの指摘に、少年――杖はぎらりと目を輝かす。
「何だ、と」
「あなたは長く在りすぎた。人という存在を俯瞰できる神の視点に至ってしまった。だから、『救うには滅ぼすしかない』なんていう極端な答えに至ってしまったのです」
きっと、オリジナルの杖は善良な人格を持っていたのだろう。人に寄り添い、真剣に憂うことが出来た。故にこそ――人間の持つ悪性を看過できなかった。
それは悲しいことだと、ひかるは思う。
「――ハ」
は、はは、ははは。
杖はげらげらと笑い出す。
「だから、ここで終わらせてあげます」
闇の精霊がうねりを作る。杖の周囲にのみ重力が増幅され、軋む。
「ハハハ、ハ、ハハハ!」
その哄笑は、泣いているように聞こえた。
――たとえまた現れるとしても。
「これで、終わりです」
ぼきり。
成功
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ナターシャ・フォーサイス
WIZ
生けるものも哀れな魂も…と言うのは、我々の教義に近いですが。
救うべくある貴方が破滅を望むのですか。
生けるものは、祈り歩むことで楽園へと至るのです。
停滞が幸福など、それは偽りの救済。
ゆえに。そこに直りなさい。
救いとは、導きとは何かを使徒として説きましょう。
これより此処はまだ見ぬ楽園が一端。
天使を呼び、貴方の力を封じます。
彼を傷つけぬよう、聖なる光を以て貴方の闇を祓いましょう。
楽園へ至ること、それが救済のひとつの形。
ですから。生けるものたる彼へは道を示し。
哀れな魂たる貴方は、我々より一足先に道行きへと導きましょう。
…それとも。
救済を願う心は変わらないのです。
私と共に、皆を導きませんか?
――どこかで気づいていたのかもしれない。
真に度しがたいのは、人ではなく――。
「生ける者は、歩むことでこそ楽園と至れるのです」
杖は折れた。少年との同調は放っておいても切れるだろう。
それでも万が一があってはいけないから、誰かがトドメを刺そう。その役目を買って出たのは、ナターシャ・フォーサイス(楽園への導き手・f03983)だった。
「停滞が幸福など、それは偽りの楽園です。一つ、説法をいたしましょう」
――何を言っているんだ、この女は。
融けていく意識でそう悪態を吐く。
だって、あまりにも場にそぐわないから。
猟兵がオブリビオンを倒して、後は被害者である少年を助けてめでたしめでたし。これはそういう流れではないのか。
それほどまでに、ナターシャの顔は、『慈愛』に満ちあふれていた。
通常なら絶対に信じることもない、美(おぞま)しい笑顔。
「これより此処はまだ見ぬ楽園が一端――」
聖なる母。まさしくそう呼ぶに相応しい彼女の傍らに、天使が降りてきた。
「生ける彼には道を示しましょう。哀れな魂である貴方には、一足先に楽園へ導きましょう――」
――希望(ゆめ)を見た。
勇者は正しく報われた。悪人は正しく更正した。民衆はそんな彼らを優しく称えた。
そう、そうだ。私が見たかったのは、こういった人々の――。
「救済を願うのは私も同じです。共に、皆を導きませんか――?」
――そうだ。そうしよう。この楽園を、世界中のみんなに、もっとみせて、
からん。
「――ああ」
ナターシャは嘆息した。
『また救えなかった』。
最期の杖(かれ)は分かってくれたはず。それでも、共に行くことは叶わない。
「皆さん、討伐は完了したようです」
ぐずぐずと塵に還っていく杖を見下ろしながら、ナターシャは『任務成功』を優しい声で伝えた。
成功
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