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メリークリスマス、ミスターメカサンタ

#キマイラフューチャー #【Q】 #お祭り2019 #クリスマス


●誰もが何かを欲してる
『ください!! 新しいオブリビオン・フォーミュラください!!』
『良い子にしていればもらえるって聞いたからずっとお仕事頑張ってました!!』
「「「イヤアアアアア!?」」」

 ここはキマイラフューチャー、いつでもどこでもお祭り騒ぎ。
 いやいや、それにしたって大騒ぎが過ぎやしませんか? その通り、事件です。
 良く見れば人間の頭部だけが段ボール箱になった――ああ、どう見ても怪人です本当にありがとうございました。
 そんなお騒がせ連中が、メカメカしいソリに乗ったメカサンタ――文字通り『メカのサンタ』である――にすがり付くように追いすがっているではないか。
 ちらりと聞こえた単語がまた聞き捨てならない、今『オブリビオン・フォーミュラが欲しい』って言った? 駄目ですよせっかくみんなで頑張って退治したのに!

『めっちゃ仕事頑張ったんですよ!! オブリビオン・フォーミュラくださいよ!!』
「「「ムリデスウウウウウ!!!」」」

 メカサンタたちの悲鳴が、冬の寒空に響き渡った。

●朝起きたら枕元に欲しかったものが
 年末が近いグリモアベースはいつも以上に――まるで戦争中かのように忙しない。
 そんな中でも猟兵たちには事件解決の要請が容赦なく出されるのだ。ああ、暦を見ればもうすぐクリスマス。頑張っている自分にご褒美を、誰かくれないものだろうか。

「ひと仕事片付けて貰えれば報酬として好きなものをプレゼントして貰える仕事が有る」

 まるで人の弱みにつけ込むような台詞だが、間違ったことは言っていない。
 そんな顔で、ニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)はいつも通り懐中時計を片手に猟兵たちを待っていた。
 数名の猟兵たちが興味を持って集まってくれたのを確認すると、ニコは目線を時計から彼らに移して説明を始める。
「皆は恐らく『クリスマス』と『サンタクロース』については良く御存知の事と思う。故に其の辺りの説明は省かせて貰おう、今回の事件はキマイラフューチャーのとある遊園地で発生する」
 最近覚えたというホログラフ投影による説明を早速駆使するニコが中空に表示させたビジョンは、絵に描いたような遊園地の景色。

「これ、どこかで見覚えが……」
「ご明察、以前怪人に狙われて皆に窮地を救って貰った『わくわくキマイラランド』だ。だが、あの事件の事は御存知無くとも大丈夫だ。此度は偶然同じ場所で事件が起きるだけなのでな」

 すいと指を動かしもう一枚のビジョンを浮かべると、そこに映ったのはメカメカしい何かと段ボール頭の怪人めいたもの。
「かの世界では此の『メカサンタ』を捕まえるとリクエストした『プレゼント』を貰えるという。当然、住人達にも大人気で其の大半が無事捕まえられるのだが――」
 そこで一度言葉を切って、ニコは段ボール頭の怪人を指し示す。
「捕まえきれなかったメカサンタを、怪人共の残党が捕らえようと追いかけ回している。リクエストは――『新しいオブリビオン・フォーミュラ』だ」

 願いの規模が……大きすぎる……!

「皆のお考えは大体理解出来る、メカサンタのスペックで其のような大それた願いが叶うとは到底思えぬ。だが、捨て置く事も出来ぬ――という訳だ」
 という訳で、とニコは展開していたビジョンを閉じて虹色の星形のグリモアをかざす。
「例によって遊園地のチケットは此方で手配して置いた。皆を転移出来るタイミングは『遊園地のエントランス広場でメカサンタが怪人に追い回されている所』にて、到着し次第怪人の魔の手からメカサンタを助けてあげて欲しい」
 其れから、と。ニコが一歩前に進み出て付け加えた。

「俺が視たのは――『段ボール怪人には指揮官が他に居る』事と『無事メカサンタを救出した暁には一つだけだが好きなプレゼントを貰える』事だ。相応の報いはある、何卒よろしくお願いする」

 次々と転移を受けて現地へと赴く猟兵たちに、ニコは深く一礼をした。


かやぬま
●ご挨拶
 初めまして、若しくはお世話になっております。かやぬまです。
 クリスマスと聞いて我慢できずにね……こう、楽しんで参りましょう……!

●構成について
 ・第1章:集団戦「押し込みクーリエズ」
 ・第2章:ボス戦「きらきらさん」
 ・第3章:日常「テーマパークで宝探しイベント!」

 新しいオブリビオン・フォーミュラをプレゼントしてもらうんだと意気込む怪人たちの魔の手から、メカサンタを救ってついでにプレゼントを貰っちゃって下さい。
 特に集団戦では怪人に追われるメカサンタを助ける工夫をして頂ければプレイングボーナスとして加味致します。

 なお、第3章でプレイングにてお誘いがあった場合のみグリモア猟兵のニコがお邪魔することも可能です。
 やらせたいことがございましたら何なりとお申し付け下さい。
 (お声が掛からなかった場合は登場しません)

●プレイング受付について
 今回はノリと勢いとクリスマスまでの完結を目指すのとで、
 プレイングを頂戴したらすぐ着手する方向で参りたく思います。
 全ての章で「冒頭文を投稿したら受付開始」、〆切は都度記載、
 (MSページとツイッターをご確認頂けると幸いです)
 という運営方針で頑張ります、ご縁がありましたら何卒よろしくお願い致します!
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第1章 集団戦 『押し込みクーリエズ』

POW   :    パック!
【味方に声掛けをしてタイミングを合わせて】から【一斉に突撃してダンボール箱やロープ】を放ち、【無理やり梱包すること】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    ライド!
【味方の押す台車に乗る(※危険です)】事で【高速戦闘モード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    デリバリー!
いま戦っている対象に有効な【グッズ(プレイングで指定可能)入りの箱】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。

イラスト:sio

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●お届けしちゃおうねー
 キマイラフューチャーには、至る所にコンコンコンと叩けば何かしらが出てくるスポットが存在する。
 だが、出てくるものは決まっているので欲しいものがある時は素直にお店で買うのが手っ取り早い。
 故に、実店舗だけでなくネット通販という流通方法も当たり前のように存在しており、それに伴い運送業も毎日大忙しだったのだ。
 そう、彼らこそが――。

『毎日毎日不在にもめげずにお届け! 戸建てのおうちもみんな宅配ボックスつけなさいよ!!』
『めげてんじゃねえか!!』
『その点メカサンタはいいよな、向こうから捕まえてもらえてプレゼント渡すだけの簡単なお仕事!』

 身勝手なぼやきと共に、遊園地の大規模搬入のどさくさに紛れて遂にその本性を現した『押し込みクーリエズ』。
 オブリビオン・フォーミュラ亡き今、彼らはひっそりと運送業に従事するフリをして世の中に溶け込んでいたのだが、メカサンタ登場を機に蜂起したのだ。
 その影には黒幕がいるとかいないとか、今は置いておいて。
 メカサンタには何の罪もなければ大仰な願いを叶えるだけのスペックもない。彼らを助けて、クリスマスを騒がせる怪人どもを退治して――。

 欲しいものを一つだけ、自分へのご褒美として手に入れよう!

●プレイング受付期間
 この冒頭文の投稿と同時に承り、執筆が完了次第随時投稿して参ります。
 (ただし17日までお休みがないので、のんびりペースとなります)
 システム的に〆切られるまで受け付けておりますので、よろしくお願い致します!
薄荷・千夜子
メカサンタ……キマイラフューチャーなんでもありますね!?
驚きもありますが、サンタさんの邪魔はさせません!
彗、行きますよ!!
UCを使用して巨大化した相棒の鷹の騎乗

『獣奏器』を警笛のようにピピーッと鳴らしながら
そこの台車止まりなさい!!その乗り方は危険ですしスピード違反です!
サンタさんの業務威力妨害も合わせて一発逮捕ですよ!!
まぁ、警官ではないので逮捕はできませんがさくっと縛り上げてみせましょう
彗と【空中戦】を仕掛けながら『操花術具:藤巡華簪』を放ちまずは台車を押している方から【早業】で絡み取り
ほらー、そんなスピード出すからこけたら大惨事ですよ!
残りの人たちも一気に縛り上げちゃいますね


狭筵・桜人
ええ!?メカサンタを助けたら現金一億円が貰えるんですか!?!?

おっとそれ以上私の一億円(メカサンタ)に近付けばどうなるかわかってますよね。
エレベーター無しのマンション5階の部屋あてに
荷物を届けさせられたいんですか?
意味もなく忙しい時間の午前指定にして
連日不在届けを発行させられたいと?

詰め寄り脅してる隙にエレクトロレギオンで包囲を試み。
【制圧射撃】でまとめてしばきます。
あのダンボール頭を蜂の巣にしてやりましょう。

えっそんな換金グッズ(プレイングで指定可能って書いてあった)を
見せられたら私……

まあでもメカサンタを助けたら一億円貰えますしね!
身を呈してかばいますから安心して現金の準備をお願いします!



●メカサンタを守れ!
 冬の『わくわくキマイラランド』の一番の売りは、日が落ちる頃から催されるキラキラのイルミネーションだ。それを楽しみにやって来た、日中は寒さにも負けずアトラクションで楽しむ住民たちの姿がそこかしこに見られる。
 そんなわくわくキマイラランド――長いので略して『WCL』としよう――のエントランス広場は、ちょっとした騒ぎになっていた。

『くださいよ!! 減るもんじゃなしいいでしょ!!』
『世界中どこへだって頼まれればブツ運んだんですから!! ねえ!!』
「「ヤメテクダサイイイイ! ムリナモノハムリナンデスウウ!」」

 赤いモコモコした衣装にとんがり帽子をかぶった銀色のメカこと『メカサンタ』の小柄な姿を、段ボール頭の怪人どもが無茶苦茶言いながら追いかけ回していたのだ。
 メカトナカイが引くメカソリで飛んで逃げてしまえば話は早いのだが、何しろこの段ボール怪人たちときたら恐るべき機動力でどこまでも追ってくる。
 騒ぎを見て何かのショーかと勘違いしたキマイラたちは、スマホを向けて動画を撮ったり呑気なものだ。これはもう猟兵たちの力で何とかするしかない。

「ええ!? あのメカサンタを助けたら現金一億円が貰えるんですか!?!?」
「貰えません!!!」
 頼みの猟兵は! ちょっとお金にうるさい! ツッコミ役がいてくれて良かった!
 自分の欲望に忠実な狭筵・桜人(不実の標・f15055)のド直球な台詞を、ほぼ同時に転移を受けて降り立った薄荷・千夜子(鷹匠・f17474)がズバンと斬って捨てた。
「だって貰えるんでしょう? プレゼント」
「それはそうですけど……それは怪人の要求と似たり寄ったりじゃないですか」
 何故ダメなんですか? とでも言いたげに小首を傾げる様だけなら美少年のそれである桜人を改めて正論でたしなめつつ、千夜子はメカサンタたちと怪人たちとの間に割って入るようにザッと力強く立ちはだかった。
(「メカサンタ……キマイラフューチャーなんでもありますね!?」)
 内心では千夜子もこのしっちゃかめっちゃかな事態に軽く目を回していたのだが、ツッコミに回ったおかげで気を取り直す。
「――色々と驚きもありますが、サンタさんの邪魔はさせません!」
 餌掛を嵌めた左手を高々と掲げ、千夜子が頼もしい相棒を呼ぶ。
「彗、行きますよ!」
 ピィ――――ッ!!
 凜々しい姿とは裏腹に存外可愛らしい鳴き声で飛来する千夜子の相棒たる鷹こと『彗』は、文字通り彗星のごとく飛来して――たちどころに巨大化したではないか。
「わあ、ダイマックスかな」
「違いますー! ユーベルコードですからー!!」
 千夜子の身の丈のおよそ二倍ほどの大きさになった彗の背にひらりと飛び乗りながらも、ツッコミは欠かさない千夜子であった。

●とりあえず猫砂はクッソ重い
 空を飛び回るメカサンタに対し、怪人たちは仕事道具のロープの先を輪っかにして投げることで捕獲を試みているようだった。
『クソッ、猟兵め! よくもドン・フリーダム様を!』
『まあまあ過ぎたことはしょうがない、メカサンタをたくさん捕まえて、みんなの願いをひとつにすればきっと新しいオブリビオン・フォーミュラだって……』
 宙を舞いメカサンタを守るように並走を始めた千夜子を見て、口々に好き勝手を言う怪人たちは迷わず追跡を再開しようとするも――。
「おっと、それ以上私の一億円(メカサンタ)に近付けば――どうなるかわかってますよね」
 今度は桜人が立ちはだかる番だった。「桜人君、逆ゥー!」と、本音と建前が入れ替わっているのに気付いた千夜子が顔を覆う。
『な、何だ! 何がどうなるって言うんだ』
 ああ、怪人どもは恐れを知らぬ。ならば教えてやろうと口の端を歪めて、桜人が告げた。

「エレベーター無しのマンション五階の部屋あてに、荷物を届けさせられたいんですか?」
『……ッ!!!』
『それは……ッ』

 その一言だけで、一瞬にして段ボール頭どもが震えた。
「中身は当然、まとめ買いした猫用のトイレ砂です」
『ああああああ!!?』
『鬼かな!? せめてエレベーターのあるマンション住みなさいよ!!』
 言葉を少し投げかけただけでこれだから恐ろしい。世を忍ぶ仮の姿ではあるがそれなりに長く付き合った運送業の地獄あるあるを叩きつけられて、怪人たちは段ボールの頭を抱えて阿鼻叫喚である。
 だが、桜人の口撃がこの程度で終わる訳がない。みんな知ってたよね!
「それとも、意味もなく忙しい時間の午前指定にして、連日不在届けを発行させられたいと?」
『やめてえええ!!!』
『指定したからにはおうちにいて下さい!!!』
 これではメカサンタを追いかけるどころではない。すっかり脅されて足止めを喰った怪人たちにゆっくりと詰め寄りながら、桜人は静かに電脳魔術士たる本領を発揮し、密かに小型の戦闘用機械兵器を多数展開させていた。
 その数、およそ285体に及ぶ。あっという間に、包囲網が完成した。
『しまっ……』
「これはあくまでも正当防衛ですからね、合法ですよ合法」
 いい笑顔で言い放ち、桜人は自動拳銃を巧みに操り――ぱぁん。
『ぐあっ……!』
『ひっ、東地区担当がやられた!』
『囲まれてる、逃げ場がない……!』
 ――そりゃあそうですよ、制圧射撃するために囲んだんですから。
 言葉にはせずあくまでも笑んだまま、拳銃に乾いた音を立てさせ続け、桜人は次々と怪人たちの頭部の段ボールに穴を開けていった。

●藤の花の幻想と妄想
『こんな所にいられるか! 俺はメカサンタを追うぞ!!』
 なかなかガッツのある個体も居たもので、機械兵器自体は攻撃を喰らうと一撃で消滅してしまうことに気付いたのか、強引に包囲を突破する連中が現れた。
 こともあろうに――二人一組で片方が押す台車に乗って爆走することで!
(「なっ、何てことを!」)
 様子を見守っていた千夜子がいよいよ動く。笛の形をした『獣奏器』を警笛のようにピピーッと鳴らしながら、片手を口元に当てて言い放つ。
「そこの台車止まりなさい!! その乗り方は危険ですしスピード違反です!!」
『知らんなあ! 走り出した俺たちはもう誰にも止められない!!』
 暴走族かな……? と、相手の職業が軽く分からなくなった千夜子だったが、それは些事だとすぐに気付いて気を取り直す。
「サンタさんへの威力業務妨害も合わせて一発逮捕ですよ!! 免停どころの騒ぎじゃないですからね!?」
 運送業たるもの、免停なぞ喰らっては一巻の終わりだろう。それどころか、前科持ちになってしまっては、この先社会で生きていくにあたって――あれ? 割とその辺この世界ユルい?
『逮捕できるもんならしてみろってんだ! そもそも姉ちゃん警察か?』
「バレたか……!」
 勢いで警察テンションで攻めてはみたものの、真顔で返されては仕方がない。大人しく猟兵として怪人に挑むことにした千夜子だった。

「ヒエエ……」
 メカソリの上で震えるメカサンタをかばうように慎重な位置取りを心掛けつつ、千夜子が懐から取り出したのは、今とはまた違う装いを身に纏う時に髪に飾るかんざし『操花術具:藤巡華簪』。
 藤の花が美しいかんざしを手に、地上から投げつけられるロープを巧みに躱しつつ機を見計らう。
(「……よし、今っ!」)
 爆走する台車たちのうち一台が迫ったところで、そのすぐ脇の地面に突き立てるようにかんざしを鋭く投げる。
 これはただの威嚇にあらず、地面に挿されたかんざしは地下深くの龍脈に接続し、飾られた藤の花をたちまちのうちに成長させる。
『おわぁ!?』
『あっ、相棒!』
 それは、まるで鎖のように。藤の枝花は狙った対象をぐるりと囲み、あっという間に台車を押していた方の怪人をぐるぐる巻きにして地に叩き付けた!
 勢いがついていた分、突如動きを止められた怪人はギュイイイと締め上げられてなかなかに可哀想なことになる。
「ほらー、そんなスピード出すから。こけたら大惨事ですよ!」
『おのれっ、よくも俺の相棒を!』
 その台詞に一瞬千夜子は「BLかな?」と思ったとか思わなかったとか。両者とも顔は同じ段ボール箱だが、首から下はなかなか鍛え上げられた男性の身体をしていたものだから。
 ――いやいや、いくらなんでも段ボールで妄想はないない!
 ふるふると首を振って、千夜子は藤の花を繰って残りの怪人たちを次々と縛り上げていった。

●買収計画、発動
 せっかくの包囲網が破られはしたが、そこは同道の鷹匠の少女が上手いことやってくれている。
 さあ、残りの怪人もこの調子で仕留めてしまおう――そう思った桜人の前に、ある段ボール頭がずいと何かを差し出してきたではないか。これは一体何事か。
『お納め下さい……ほんの、気持ちです……』
 段ボールが小さな箱を差し出してくる姿はなかなかにシュールではあったが、まあ見るだけ見てやりますかと桜人は素直にそれを受け取り蓋を開け――瞠目した。
「こ、これは……!?」
『各種サービスチケット……いわゆる換金グッズ一式です』
『それでひとつ、見逃してくれませんかね……?』
 何ということか、この怪人たちは猟兵たる桜人を買収しようとしている!
「えっ、そんな、いや、こんなものを見せられたら私……」
 しかも、普通に買収に応じようとしている! まずいですよ!
 ――勝ったな。怪人たちが内心でガッツポーズを決めた瞬間、ちゃきっと銃の音がした。

「まあでも、メカサンタを助けたら一億円貰えますしね!」
『ええええええ!?』
 自分たちで無茶な願いをしておきながら、人の願いにケチをつけるのはどうなの。
 ともあれ、交渉は決裂だ。ぱぁんと一体段ボールを撃ち抜きながら、桜人は上空のメカサンタに笑顔で告げた。
「こちらは身を呈してかばいますから、安心して現金の準備をお願いします!」

 一方、彗の背に乗ってメカサンタと会話ができる程の距離を保てる千夜子は念の為に聞いてみた。
「えっと……『現金一億円欲しい』ってクソデカ派手フォントで要求されたとして、実際問題応えられるものなんですか……?」
「……ネ、ネダンコウショウシテミマス……」
「価格次第では現金もアリなんですか!?」
 もっとこう、せめて商品券とか……学生さんへのクリスマスプレゼントの定番こと図書カードとか……。
 千夜子は(一応)真っ当な感性の、至って普通の女の子だ。プレゼントと言われれば夢のあるものを連想するが故に、色々と考え込んでしまう。

「トニカク、ヒトマズアリガトウゴザイマス。ヒトダンラクシタラ、ミナサンニハキチントプレゼントヲオクリマスノデ」
 ――それまでに、欲しいものを決めておいて下さいね。そう言われた千夜子は、知らず胸に手を当てていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木常野・都月
え…好きなもの…くれる?
そしたら…俺…

っいやいや、ちょっと待った。
俺は大人の狐だ!
欲しい物なんて…

そ、それに!
なんで何もしないのに、物をくれるんだ。

そうやって俺を騙して、誘惑しようと狙っている、オブリビオンの手口じゃないか?

とはいえ、仕事は仕事だ。
サンタがオブリビオンかどうかは後で考えよう。

サンタを守りつつ、怪人を倒したい。

UC【狐火】を使用、火力強めで。

敵のUCは[呪詛耐性]あたりで我慢したい。
そもそも、まだ本当にプレゼントが貰えるか疑っているんだ。
おいそれとは引っかからないぞ。

あと、予知では指揮官もいると聞いた。
[野生の勘、第六感]で[情報収集]も行いたい。
風の精霊様にも手伝って貰おう。


ケルスティン・フレデリクション
メカサンタさんにひどいことするのは、めっだよ!
段ボール頭の怪人さんにはおしおきしなきゃ!

「へんなおねがいごと、するのもめっ!」
自分の短刀…いのりで、攻撃をするよ
メカサンタさんを守る形でかばい、攻撃受けるよ
「いたくない、もん…」
激痛耐性で我慢して
箱に梱包されてもめげずにいのりで切り裂き出てきて
台車で来たら攻撃受けてカウンター!
欲しい物はあまーいお菓子だけど、箱の中から出てくると誘惑に負けそうになりつつも
「おかし…おなか、すいたー…」
守るべき存在を思い出し
「でも、メカサンタさん、いじめちゃ、めっ、だもん!」
ひかりのしらべを使いきらきら、ふわふわー、と敵を倒す為に頑張る!



●常識を、疑え
「「あ」」
 同時に転移を受けて、ばったり顔を合わせた二人の猟兵が互いの顔を見て声を上げる。
 そう、木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)とケルスティン・フレデリクション(始まりノオト・f23272)は、つい最近も異世界のお仕事で同道した間柄だったから。
「ど、どうも……」
「その、よろしくね……?」
 こういう時、どう振る舞ったものかにやや不慣れな都月がおずおずと挨拶すれば、ケルスティンもちいさな身の丈で都月の顔を頑張って見上げて返す。

「プレゼントをくれるサンタさんを守らなきゃ!」
「え……本当に好きなもの……くれる?」
 さも当然と信じる眼差しで、今なお怪人たちに追われるメカサンタの方を見て決然と告げたケルスティンの言に、都月が狐耳をぴくりと動かした。
「? そうよ、サンタさんはクリスマスにプレゼントをくれるすてきな人で……」
 この世界のサンタさんは銀色のメカだけど、と言い添えつつ。ケルスティンは何故か難しい顔になってしまった都月を、ちょっぴり心配そうに見遣った。
「そしたら……俺……」
 初めて見る『メカサンタ』なる存在がプレゼントをくれるのは、ヒトの間では当然のこととして認識されているようであり。
 ならば、と衝動的に口を衝きそうになるのを――しかし都月はグッと堪えた。

(「っいやいや、ちょっと待った。俺はもう大人の狐だ! 欲しいものなんて……」)

 誰かに何かをねだるような歳ではない、そんな矜持が都月の中には確かにあった。ぶんぶんと首を振ると、守ってこいと言われたメカサンタに向けて鋭い眼差しを向ける。
(「そ、それに! なんでこちらが何もしないのに、物をくれるんだ。そうやって俺を騙して誘惑しようと狙っている、オブリビオンの手口じゃないか?」)
 黒いふさふさの尻尾が、苛立たしげにゆらゆら揺れていた。そんな都月のただならぬ様子に、ケルスティンが思わずクイクイと都月のマントの端を引いて意識を引き戻す。
「大丈夫? やっつけるのは、あっちの段ボール頭の怪人さんよ?」
「あ、ああ……仕事は仕事だからな、ちゃんとやるぞ」
 実は都月だけではなく、一般的に知られているサンタクロース像とはちょっとばかりかけ離れたメカサンタなる存在を『倒す』ものだと勘違いしていた猟兵も散見されたのだ。
 なので一応念のためと、ケルスティンは都月に確認を促した次第であった。しっかりしたお嬢さんである。大人の狐として、都月も負けてはいられない。
(「……サンタがオブリビオンかどうかは、後で考えよう」)
 二人は顔を見合わせると、同時にメカサンタと怪人たちの方へと駆けていった。

●ケシィさん、めっちゃ頑張る
『別に難しいことは言ってないじゃないですか! 新しいオブリビオン・フォーミュラさえ貰えれば、我々はそれで充分なんです!』
「ダカラ、ソレガムリナンデスウウ!!」
 宙を飛び交う梱包用ロープと、それから必死に逃れるメカサンタ。怪人たちの蛮行を阻止すべく、ケルスティンがびしっと指さして言い放った。

「メカサンタさんにひどいことするのは、めっだよ!」
『ひどいことなんてしてませんよ、欲しいものをお願いしているだけですって!』
「……へんなおねがいごと、するのもめっ!!」

 とにもかくにもメカサンタさん、困っているでしょ? そんなのは――めっ。
 とりあえずこの段ボール頭の怪人さんには『おしおき』が必要なようだ。そう判断したケルスティンは、愛用の短刀『いのり』を抜き放ち怪人と対峙する。
 ふわふわ愛らしい乙女が構える短刀の周りには、きらきらと光が舞う。年端も行かぬ子供と侮るなかれ、ケルスティンは立派な猟兵なのだから。
『ええい、構うな! メカサンタを捕まえればこちらの勝ちだ!』
「イヤーッ!?」
 怪人たちは数にものを言わせて各個撃破ならぬ一体ずつメカサンタを捕らえる方向に切り替えたか、手近なメカサンタ目掛けて一斉に先端を輪っかにしたロープを投げる。
「させない……っ」
 それを見たケルスティンは咄嗟に地を蹴り跳躍し、メカサンタを救うべく文字通りその身を挺して自らが代わりにロープの襲撃を受けた!
『なっ……!? 正気か小娘!』
 これには敵である怪人たちも驚愕する。何重ものロープの縛りを受けて、為す術なく地に叩き付けられるケルスティンはしかし泣き言ひとつ言わずに、身体中の痛みを我慢した。
(「いたくない、もん……」)
 無闇な痛覚の遮断は、時に生命をも脅かすが。それ以上に大切なものが――護らねばならないものがあるから。少女は、歯を食いしばって耐えたのだ。

『お、お嬢ちゃん……その、今のはわざとじゃあないんだ。済まなかった……』
『これ……良かったら、どうぞ……』
 ふわふわのロリータファッションについた埃をパンパン払って立ち上がるケルスティンに、何だか自分たちが悪いことをしてしまったかのような気分になった段ボール怪人たちが、お詫びとばかりにそっと何かが入っているらしき箱を差し出してきた。
「えっ……? こ、これって……」
 敵からの贈り物なんて、ろくなものではないに決まっている。頭では分かっていても、思わず受け取ってしまうのは何故だろう。
 ケルスティンがそっと箱を開ければ、中には――何と、欲しくてたまらないと思っていたあまいあまーいお菓子が!
『こういう時は……菓子折り持ってごめんなさいするって……』
 何とも、変な所でマナーがなっている怪人であった。それを弁えられているのならば、どうして新しいオブリビオン・フォーミュラなんて欲しがってしまうのか。
「……っ」
 フィナンシェ、マフィン、クッキー……どれも絶妙な焼き加減で袋詰めにされており。
 ああ、今すぐにでも紅茶をお供に食べてしまいたい!
(「おかし……おなか、すいたー……」)
 誘惑に負け、菓子折りを手に踵を返しそうになるケルスティンだったが、何の偶然かふと仰いだ空に浮かびことの成り行きを不安げに見守るメカサンタの姿を見た。
 そして、思い出す。己には守るべき存在があるということを。

「……でも! メカサンタさん、いじめちゃ、めっ、だもん!!」

 菓子折りを叩き返すこともできたはずだが、ケルスティンは大事そうに足元にそっと置くに留めた。お菓子に罪はなく、無碍にするのも気が引けたのだ。
「ぴかぴか、くるくる、ふわふわ――」
 呪文のように愛らしい言葉を重ね、すいと怪人たちを指さすと、メカサンタよりもさらに上のいと高き天よりまばゆい光が射して――。
『ま、まぶしい……!!』
『あと何か痛い気がする……!!』
 それは、【ひかりのしらべ】。翼持たぬ天使がもたらす、裁きの光。
 光に包まれた怪人たちは、次々とその場に膝を折ったのだった。

●都月くん、案外容赦ない
 ケルスティンの奮戦を見守っていた都月は、序盤に一斉攻撃を受けて少女が地に墜ちた時こそ思わず駆け寄ろうとしたが、信じて見守ることにした。
 結果、ケルスティンは見事きらきらふわふわと怪人たちに少なからぬダメージを与えることに成功した。
(「俺も、頑張らないと」)
 ヒトとしての暮らしにもそれなりに慣れてきた都月は、段ボール怪人の頭部に注目する。
(「……よく燃えそうな頭をしている」)
 何一つ間違っていない感想だし、狙いも的確なのだが、物騒に聞こえるのは気のせいだろうか。
 都月が掌を上にかざすと、ポウと炎の玉がひとつ、ふたつ――。炎は次々と増え、遂にはその数を65個まで増やした。
 ここまでの数を一度に行使できる猟兵はそうそう居ない、都月がそれだけの手練れであることの証左であった。
『あっ! お客様困ります、ここは火気厳禁ですよ!!』
「それだったら、メカサンタを困らせることはもっと駄目なんじゃないのか?」
『だから、困らせてなんか――」
 これ以上の問答は無用と、都月がぶんっと掌中の火の玉を投げた。それを追って、火の玉が行列を作る――その様まさに【狐火】である!

「燃えてしまえ」
『無慈悲――!』

 この妖狐だけでも何とか買収できないかと、怪人たちは都月が欲しそうなものをうんうん唸って考える。もちろん、火が付いた頭部を必死にはたきながらではあるが。
 だが――。
「俺はそもそも本当にプレゼントが貰えるか、まだ疑っているんだ。おいそれとは引っかからないぞ」
『そんな……!?』
『まさかの反サンタ勢力……!!』
 プレゼントを貰えると信じて疑わぬものであれば、贈り物を喜んで受け入れたであろう。だが、都月はどうだ。慎重に物事を判断し、いまだ警戒を解かぬ。

 そんな都月が、思わぬ言葉を口にした。
「――お前たちには指揮官がいると聞いた、そいつの正体を白状すれば、火を消してやる」
『マ!!?』
『でもそんな、簡単に言えるわけないでしょ! あっ熱い』
 グリモアベースで敵の指揮官の存在を耳にしていた都月は、先んじて情報収集も試みたのだ。生命がかかった取引ともなればあるいは口を割るやも知れぬ。
 しかし敵もさるもの、かたくなに自力で炎を消すべく互いをはたき合うなどして頑張っているではないか。
 都月は一度嘆息すると、『風の精霊様』と慕う存在にこう呼びかけた。

「精霊様、あいつらに向かって思い切り風を吹かせて下さい。火力強めにしたいです」
『あらエグいわねぇ、でもいいわよ。任せておい――』
『アーッ! すみませんごめんなさい! 言います! 言いますから燃やさないで!!』

 ――いよいよもってヤバいと判断した段ボール怪人が、地に頭を擦り付けて懇願する。
『うちのボスは……言葉はしゃべれませんけど、きらきらしてて素敵なボスです』
『ボスはただ……私たちと同じで、新しいオブリビオン・フォーミュラをもらって、キラキラな世界を作りたいだけなんです……』

「……精霊様、どう思いますか?」
『……少なくとも、嘘はついてないみたいよ。火、消してあげたら?』
 約束は、守られなければならない。たとえそれが、オブリビオン相手でも。ならばと都月はひとつ念じて、たちどころに炎を消してみせた。

●メカサンタ、また救われる
 ひいひいと後ずさっていく段ボール怪人を尻目に、都月はケルスティンの方に向かって歩み寄りながら問う。
「世界中をキラキラさせる……新しいオブリビオン・フォーミュラを貰うのと、何の関係があるんだろう?」
「怪人たちの考えることだから……」
 深く考えても、理解しようとしても、それは無駄なことかも知れない。
「……とりあえず、会ってみないと分からないってことか」
「うん……」
 そう結論づけて、二人は感謝するように上空を舞うメカサンタを見上げる。

「アリガトウ、リョウヘイサン。プレゼントヲタノシミニシテイテクダサイネ」

 メカメカしいサンタの機械音声を聞いた二人は――少女は目を輝かせ、青年は顎に手を当てる。
 この調子で怪人たちを蹴散らしていけば、キラキラしたものに行き当たるのだろうか。
 事件の少し先を垣間見た猟兵たちは、また一歩解決へと前進した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

桜雨・カイ
サンタクロースは良い子の元にくると聞いていたのですが、大人にも来てくれるんですか、優しいですね
……でも追いかけ回すのはだめだと思います

【錬成カミヤドリ】発動
すがりつく段ボールさん達をメカサンタさんから引きはがしていきます

!?ものすごい勢いで近づいてくるもの(台車)があるんですが!?
半数の錬成体でスクラムを組んで台車を止めます。

「ここは食い止めますから、メカサンタさんは先へ!」
残りの錬成体でメカソリを押して逃げてもらいます

戦闘後:
あの……お仕事大変ですね。オブリビオン・フォーミュラは無理ですがせめてこれでひと息どうぞ(コーヒー差入れ)
お仕事に頑張る人が飲むものとテレビ(CM)でやってたので…


ヘスティア・イクテュス
本当、無茶言ってるわねえ…
それじゃあ、あの段ボール怪人を倒してメカサンタを助けるとしましょうか!
…プレゼント、重力衝撃砲とか時粒子砲とか、相転移砲とかそういう…
無理?ですよね!

サンタって良い子にプレゼントあげるものよね?ああいう危険なまねしたら貰えなくなりそう…
ティターニアを機動、アベルで敵の進路予想
ちょっと面白そうだから突撃してくる彼らを闘牛のようにひらりと回避して様子見
こけないかしら?こけないかしら?
壁に激突も楽しそうね!

飽きたらその辺りで拾った石を台車の車輪下に向かって投擲


すっ転んだ彼らにマイクロミサイルを発射しながら一言
危険だから、良い子はマネしないでね!ああなるわよ!



●プレゼントは平等に
 メカサンタは小さくて数もそこそこいるが、それと同じくらい段ボール頭の怪人たちもいまだ多数存在する。
 こうなったら、猟兵側も数にものを言わせて地道に退治していかねばなるまい。
 そうして、今また二人の猟兵が転移を受けてここ『わくわくキマイラランド』にやってきたのだった。
「サンタクロースは良い子の元にくると聞いていたのですが、大人にも来てくれるんですか」
 優しいですね、と微笑むのは桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)だ。メカサンタの行為を疑う者もいる中で、カイは素直に状況を受け入れていた。
「それにしても、本当、無茶言ってるわねぇ……」
 その横で息を吐くヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)は呆れ声ではあったものの、追いかけっこを繰り広げるメカサンタと怪人とを見る目はどこか楽しげで。「そうですね……追いかけ回すのはだめだと思います」
 ヘスティアの表情に気付かずにいたカイは、至極真面目に止めに入ることを提案し、ヘスティアもまた強く頷く。
「ええ、それじゃああの段ボール怪人を倒して、メカサンタを助けるとしましょうか!」
 猟兵vs怪人、第3ラウンドの開幕である――!

●メカサンタの限界にチャレンジ
『そろそろ観念して新しいオブリビオン・フォーミュラください!!』
「ダカラ、ソレハムリダッテイッテルデショー!!」
 メカソリを駆り必死に逃げるメカサンタだが、放っておけば捕らえられてしまうのは時間の問題。
 一足先に動いたヘスティアはすかさず飛行用ユニット『ティターニア』を展開、あっという間に冬の遊園地の空を舞い、メカサンタと同じ高度に達する。
「ねえ、あいつらを追い払ったら後でプレゼントがもらえるって本当かしら?」
「ハイ、イマハソレドコロデハナイデスガ……カナラズオレイハシマス」
 地上からひゅんひゅん飛んで来る投げ縄をひょいひょい躱しながら、ヘスティアはふうむと腕を組む。お礼に貰うとしたら、何が良いだろうか。

「……プレゼント、重力衝撃砲とか時粒子砲とか、相転移砲とかそういう……」
「……」

 ピーガガ、ピー。何やらメカサンタが異音を発して口と思われるパーツから白煙を吹き始めてしまったではないか。これは控えめに言ってマズい。
「無理? ですよねー! ごめんなさいね、忘れて忘れて!」
 しっかりして、とメカサンタの頬らしきあたりをペチペチするヘスティア。そんな空中の二人を狙って、なおも投げられるロープを阻止せんとカイも行動を起こした。

「行きます――【錬成カミヤドリ】」

 カイが操るもう一人の『カイ』。その姿が、瞬時にして『分身』した。
『ええっ!!?』
『ニンジャか何か!?』
 錬成体、合計63体。カイの本体にして器物である『からくり人形』――狐面の『カイ』を合わせて、64体。怪人たちが驚くのも無理からぬことだったろう。
「いいえ――ただの『ヤドリガミ』です」
 あくまでも穏やかに応えるカイは、くいと糸を繰って『カイたち』を一斉に動かした。
 数には数を、大量の段ボール怪人たちが次々と複製された本体たる『カイたち』に制圧されていく。

『一人になるんじゃない! 二人一組で行動するんだ!』
『例のアレっすね、了解っす!!』
(「……? 何を企んで」)
 あからさまに怪しいやり取りを聞き逃さず、カイが振り返った先に見たものは――。

 ゴオオオオオオオオオオオ!!!!!

「!? ものすごい勢いで近づいてくるものがあるんですが!?」
『『ハーーーイ!!! 台車通りまーーーす!!!』』
 注意喚起すれば台車に乗って爆走していい訳ではない。カイはすぐに気を取り直して錬成体のおよそ半分を即座に眼前に呼び寄せスクラムを組ませる。
「お願いします、あの台車を止めてください……!」
(「……こくり」)
 複数の暴走台車が迫るのを、がっちりスクラムを組み防衛線を張った『カイ』の錬成体が待ち受ける。両者の距離はあっという間に縮まり、そして。

 どんっ。

 台車が、怪人が、そして錬成体が。衝突の勢いで盛大に宙を舞う。
 上空で見守っていたメカサンタが、思わずメカハンドで目のあたりを覆った。

「錬成体……残り半分! メカサンタさんの護衛を!」
 メカソリを強引に押してでもこの場を離脱させたい所だったが、メカソリは飛行中。ならばと地上での護衛に徹することにして、カイはその旨をメカサンタに申し出た。
「ここは食い止めますから、メカサンタさんは先へ!」
「……!」
 逡巡するメカサンタに、ウインクひとつ。暗に「任せておいて」と告げたヘスティアが、いよいよ戦場にその身を投じる時が来た。

●良い子悪い子悪役令嬢
(「サンタって良い子にプレゼントあげるものよね? ああいう危険なマネしたら貰えなくなりそう……」)
 ヘスティアにしては珍しい正論だった。プレゼントが欲しいならもっとこう……あるじゃない……? という思いではあったが、どのみち怪人たちの願いは叶わないことだろう。
 華麗に空を滑るように飛ぶヘスティアはサポートAI『アベル』を起動させ、問うた。
「アベル、状況把握。あの台車の進路予想をお願い」
『かしこまりました、お嬢様。早速ですが、五時の方向より三台参ります』
「えっ!? もう!?」
『『『うおおおおおおお!!!!!』』』
 危機一髪、ひらりと身を捩った所を暴走台車が駆け抜けていく。想像以上にすごい勢いだったものだから、ヘスティアはある期待をしてしまった。

(「あれ、こけないかしら? こけないかしら?」)

『次でございます、正面と背後からの挟撃が』
「あらやだこわーい!」
 有能な執事を持つと強すぎて謝々状態になってしまうな、と頭の片隅で思いつつ。突撃してくる台車たちを次々と回避するヘスティアは最早完全にこの状況を楽しんでいた。
『『アッ』』
 ――がっしゃあん!!
 盛大に正面衝突をした台車と怪人が、再び冬の空に舞う。
「……壁に激突しても楽しそうとは思ったけど、自爆は予想外だったわ……」
 どさどさっと地面に落ちた怪人の上に、後から降ってきた台車がズドンと落ちたのを見た時は流石にうわっとなったが、まあ言ってしまえば自業自得であるからして。

「さって、そろそろ飽きてきたし……終わりにしましょうか」
『悪役令嬢だ!』
『悪役令嬢の台詞だ!』
「……」
 本物初めて見た! などと変な方向で盛り上がる怪人たちが乗る台車の車輪目掛けて、適当に拾った小石をシュッと投げ入れれば。
『『オワーーーッ!!!』』
 ゴロゴロゴロン、と哀れ豪快に横転する。そこで満足しないのがヘスティア流、追撃のマイクロミサイルが怪人たちを襲う!

「危険だから、良い子はマネしないでね! ああなるわよ!」

 ――ちゅっどーーーーーん。

 火薬マシマシの大爆発を背に、ヘスティアがカメラ目線でビシッとキメた。

●この惑星では、働かなくてもサボれる
 今回の交戦も、猟兵たちの勝利に終わったと言えよう。
 転がる台車と凹んだ頭の怪人、そこかしこで立ち上る炎と黒煙。
 そんな中、呻き声を上げる怪人のそばにしゃがみ込む人影があった。――カイだ。

「あの」
『ううっ、何だ……』
「……お仕事、大変ですね」
『世間話とは、余裕だな……』

 いくらふざけた連中とはいえ、まがりなりにも怪人だ。それなりの矜持で対応するのは当然のことだったろう。しかし、カイが取った行動は驚くべきものであった。
「……オブリビオン・フォーミュラは無理ですが、せめてこれでひと息どうぞ」
 こと、と置かれたのは小ぶりの黒い缶コーヒーだった。
『何の、つもりだ』
「お仕事に頑張る人が飲むものと、テレビでやってたので……」
 正確にはテレビのCMでそういった趣旨のショートストーリーを放映していたのを見たのだが、カイには確かに、こう労えば良いのかと教えてくれたのだ。

 怪人は震える手で缶コーヒーに触れる。あったかかった。
『……配達の途中でさ、たまにいるんだよ。こういう差し入れくれるキマイラとか』
「そう、でしたか」
『キツい仕事だし、ぶっちゃけこんな高度な文明世界で配達なんざお呼びじゃないかも知れなかったけどさ』
「……」
 訥々と語る怪人の声を、カイは一言も逃さず聞いていた。

『ああ――悪くなかったなぁ』

 そのまま動かなくなった怪人は――気絶しているだけだった。
 一瞬肝を冷やしたカイだったが、安堵してその場を離れた。

「アリガトウゴザイマス! デモ、マダメカサンタハイルンデス」
「任せて、まだまだ他の猟兵たちも来るから!」

 ヘスティアもまたアベルを引き連れて、メカサンタと空中で一度別れる。
 さあ――次に会うときは、何を貰おうかしら?

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鵜飼・章
サンタさん…
子供の頃ヘラクレスオオカブトが欲しいって言ってごめんなさい
朝起きたらちゃんと飼育セットまで置いてあって…
理解のある親でよかったなあ

この世界にも社会問題に言及するオブリビオンがいたんだね
不在なわけじゃないんだ…
きみ達が寝起きやお風呂上がりに来るから居留守を使ってるんだ
宅配ボックスがあるのに気づかないで帰る人もいるし
お怒りの様子で殴り書かれた不在伝票を見て
なんかごめんって思ってはいる
思ってはいるけどよく探してほしい
僕だって無駄な悲しみは生みたくないよ…

そう…悪いのは大体僕らなんだけど
それはそれとしてさよならだ
あの頃飼っていたかっこいいヘラクレスを思い描くよ
僕は大人しく詫び梱包されておく



●マイペース、マイワールド
「サンタさん……」
 その言葉は冬の寒空を行くメカサンタに向けられたものだったろうか、それとも独りごちただけであったか。
 鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)は、ひとり段ボール頭の怪人たちの前に立ち、武器も持たずにただそこに佇んでいた。
『こ、こいつも猟兵だよな……!?』
『どうする、やられるまえにやった方がいいんじゃあ』
『でも……さすがにそれは』
 怪人たちの間でヒソヒソとやり取りがなされるのも気に留めぬ様子で、章は再び口を開いた。

「子供の頃、ヘラクレスオオカブトが欲しいって言ってごめんなさい」
 『『『はい???』』』
「「「エッ」」」

 怪人たちのみならず、上空のメカサンタたちからも変な声が上がった。眼前の青年は一見しただけではまるで虫などとは無縁そうな、こう、もっと儚げなイメージで……。
「朝起きたらちゃんと飼育セットまで置いてあって……」
 理解のある親でよかったなあ、と瞳を閉じてしみじみ言う章。
『そ、そう……もらえたんだ、ヘラクレスオオカブト』
「ヨカッタデスネ……」
 怪人たちとメカサンタたちの心が、初めて一つになった瞬間であった。

「それはそうと、この世界にも社会問題に言及するオブリビオンがいたんだね」
『話の切り替え早くね!?』
 カブトムシもらえて良かったねえという所からいきなり自分たちのことらしき話題に持って行かれて、怪人たちが思わずツッコミを入れるが気にしない。だって章さんですよ?
「不在な訳じゃないんだ……きみ達が寝起きやお風呂上がりに来るから居留守を使ってるんだ」
『あああーーー!!!』
『クソッ、そういう奴多いんだよ! 間が悪いのはこっちも悪いけどさあ!』
 ガムテープを、ロープを、それぞれ手にしていた得物とも言える仕事道具を次々と地面に叩きつける怪人たち。わかりみ半分、ふざけんな半分といった所だろうか。
「宅配ボックスがあるのに気づかないで帰る人もいるし、お怒りの様子で殴り書かれた不在伝票を見てなんかごめんって思ってはいる」
 粛々と語る章から伝わるのは――嘘偽らざる本音であった。特に猟兵稼業などをやっていると、家を空けがちにすることも多い。
 章さんのおうち? 今はそこには触れないで置きましょう……シュレディンガーの自宅っていうことで……。
 ともあれ、色々な事情で不在にしがちな人々にとって宅配ボックスの存在は双方にとって有難いものであり。章も自宅に宅配ボックスを設置しているのだが、それに気づかず持ち帰ってしまう宅配員が多いことに、章自身も心を痛めていたのだ。

「……思ってはいるけどよく探してほしい、僕だって無駄な悲しみは生みたくないよ……」
『アンタ……』
『ま、まあ、受け取る側にも事情があるのはこっちだって分かるし……』
 世界に溶け込むための擬態だったはずの宅配業に、いつしか喜怒哀楽を覚えるまで入り込んでしまっていた怪人たち。
 その凝り固まった心が、章の巧みな話術(という名の言いくるめ)とコミュニケーション能力(ヒトよりヒトたらんとあろうとした結果)によって解きほぐされていくようだった。
『……まあ、それはそれとしても』
『新しいオブリビオン・フォーミュラはやっぱり欲しいんですよね……』
 だが、それでもしぶとく諦めない怪人たち。ならば章も相応の対応をせねばならぬ。
「そう……悪いのは大体僕らなんだけど、それはそれとしてさよならだ」
『結局戦わなきゃいけないのね、ヘラクレスオオカブトのお兄さん……』
 首から下が女性の怪人が、悲しげにガムテープをビッと伸ばす。章はゆるりと首を振り、ちょうど今呼ばれた名をもって――脳裏に思い描く。その偉容を、その強き姿を!

「あの頃飼っていたかっこいヘラクレスは最強だよ――【確証バイアス】」

 顕現するは、すごくかっこいい巨大カブトムシ――ただでさえ甲虫類最長にして最強を誇るヘラクレスオオカブトが、めっちゃでっかくなって怪人たちをそのすごい角でばったばったとなぎ倒していく!
『うおおおおおあああああ!? カブトムシ強ええええええ!!!』
『きっ、北町担当ーーーッ!!!』
『本体だ、あの兄ちゃん本体を……!』
 飛び交う怒号とロープとガムテープと梱包材、そして段ボール箱。
 気がつけば章は、大人しくみっしりと梱包されていた。

「ア……アレハ『詫び梱包』!」
「シッテイルノカ、メカサンタ53号!?」
「ハイ……『色々事情はあるけど大体自分が悪い』トミトメタモノガ、アエテテイコウセズコンポウサレルコトデ……オワビノキモチヲヒョウメイスルノダト」
「ナンテ……イサギヨイヒトナンデショウ……」

 詫び梱包……年の瀬にまたひとつすげえパワーワードが生まれてしまいましたね……。

成功 🔵​🔵​🔴​

城島・冬青
【橙翠】

アヤネさんとWCLに来たのは初めてですね
え、拗ねてたんですか?
都合が合わなくてごめんなさい

楽しく遊園地で遊びたいところですが
まずは仕事ですね

襲われてるメカサンタさんはどこかな?
いた!!
見つけ次第【夜歩く】発動
音速でかっ飛んで超格好良く助けに入ります
サンタさんを虐める悪い段ボールはいねがぁぁぁ!!(飛び蹴り)
…決まった✨

あ、突然驚かしてすみません(サンタに向き直り)
名乗るほどの者ではないのですが
しがない猟兵です
いやー、秋田には縁もゆかりも無いですけどなんかぽろっと

さぁアヤネさんと一緒に敵を倒しますよ
UCとダッシュを合わせた素早い攻撃で段ボール達を翻弄していく
残像で回避しつつ防御は武器受け


アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
WCLに来たのが初めて?いや僕は来たことあるしソヨゴも…
ああ、一緒に、だネ
記録によるとソヨゴが僕と一緒じゃなくて、僕めちゃ拗ねててすごかったらしい
一緒でうれしいよ
と素直に笑う

まずはメカサンタを救出しなくては
見つけたらUC発動
サンタを守るように半球状に配置
さらに電脳ゴーグルを展開
サイバーアイと中距離ライフルの照準器にリンクしつつ
310体のUCにマーキング
敵がUCに触れたらロックオンするようにシステムを作成
僕は指示通りに引き金を引くだけ
半自動射撃システムでメカサンタを守り抜く
攻めは全部ソヨゴに任せた

ソヨゴ、いねがあじゃないでしょ?!
悪い段ボールはそこにいるし
なんか別のヒーロー混じってない?



●WCLよ、僕たち私たちは帰ってきた
 キマイラフューチャーに数多く存在するレジャー施設のひとつでもある『わくわくキマイラランド』は、初夏の頃にも怪人が事件を起こした過去を持つ。
 その時に城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)とアヤネ・ラグランジェ(災魔・f00432)の二人は事件解決のために活躍した、のだが。
「こうしてアヤネさんとWCLに来たのは初めてですね!」
「WCLに来たのが初めて? いや僕は来たことあるし、ソヨゴも……」
 ああ、まさか何の気なしに話しかけたはずの冬青の言葉がいきなり波乱を呼ぶことになろうとは、誰が想像しただろうか。
「……ああ、『一緒に』だネ」

 言葉というものは難しい、同じ文章から複数の解釈が生まれるのだから。今回の例で言えば冬青は『アヤネと連れ立って来園するのは初めて』という意味で声を掛け、それにアヤネは『自分もソヨゴもWCLに来たことはこれが初めてではないだろう』と返した。

 前回、冬青は弟分と、アヤネは友達と。それぞれ別の相手と二人で遊園地を満喫した。
 だが、後の記録を紐解くと『冬青と自分とが一緒に来られなかったことに、アヤネはひどく拗ねていてそれはもうすごかったらしい』との事実が明るみになったのだ。
 その記録の媒体が古式ゆかしい日記帳なのかデジタルデータなのか、いかなるものかは不明だが、とにかくアヤネは正直にその事実を伝えた。
「え、拗ねてたんですか!?」
 よもやまさかそんなことになっていたとは、と心底驚く冬青だったが、眼前の少女が己に向ける感情に、気がつかないほど鈍くはない。
「あの時は……都合が合わなくてごめんなさい」
「ううん――今日は一緒で嬉しいよ」
 ぺこりと頭を下げる冬青に、アヤネは素直に笑って見せる。あの時はあの時で楽しかったのは確かだし、今日はソヨゴと一緒だし、何より最後は頑張ったご褒美がもらえるというのだから。
「楽しく遊園地で遊びたいところですが、まずは仕事ですね」
「だネ、まずはメカサンタを救出しなくては」
 そう言葉を交わす二人の前に、程なくして騒がしい声と、珍妙な光景が飛び込んできた。

●臨機応変こそ作戦の要(多分)
『そろそろいいでしょメカサンタさん!! これ以上猟兵が来る前に新しいオブリビオン・フォーミュラくださいよォン!!』
「サッキカラムリダッテイッテルデショ!!」
 段ボール頭の異形に、メカメカしいサンタ。間違いない。
「「いた!!」」
 冬青とアヤネは息もピッタリに声を上げると、ほぼ同時に地を蹴って走り出す。いざ、メカサンタ救出作戦のスタートだ。

「行きますっ、音速で駆け抜けますよ!」

 今は昼だが【夜歩く】――由緒正しい女子学生の姿をした冬青を、たちまちのうちに黒蘭の花弁が包み込んでいく。
 誰よりも速く、速く――翔びたいと願う気持ちは冬青に尋常ならざる力を与える。
 そう、今の冬青なら音速でかっ飛んで、超絶カッコ良く助けに入れるに違いない。
「サンタさんを虐める悪い段ボールはいねがぁぁぁ!!!」
『ギャアアアアアア!!!??』
 何かもう数値化するのも難しい勢いで放たれた冬青の飛び蹴りは、メカサンタに群がろうとする段ボール怪人のうちの一体を盛大にべっこりと凹ませて、真昼の空の星にした。
 ズシャアァァァ! となおも止まらぬ勢いを地面との摩擦で何とか殺しつつ、冬青がウインクしてカメラ目線でキメ顔をする。
「……決まった✨」
「ソヨゴ、いねがあじゃないでしょ!? 悪い段ボールはそこにいるし、なんか別のヒーロー混じってない?」
 そう、そもそも冬青は意志を力に変えて戦うスーパーヒーロー。だが、アヤネから見た感じ、こう……どこぞのご当地ヒーローというか、そういう……。
「リョウヘイサン……!」
 マッハで飛び蹴りかまして敵をお星様にするという衝撃の出会いではあったが、自分たちを助けに来てくれたのだということは理解できると、メカサンタが嬉しそうな声を上げる。
「あ、突然驚かしてすみません! 名乗るほどの者ではないのですが……しがない猟兵です」
 てへへと片手を後頭部に回しながら、メカサンタの方に向き直り挨拶をする冬青。次いで視線をアヤネに向けててへぺろしながら弁明も忘れない。
「いやー、秋田には縁もゆかりも無いですけど、なんかぽろっと」
「やっぱりアレをリスペクトしてるんじゃないか……」
 時期的にそろそろと言ってもいいですからね、あながち間違いでもないかも知れませんね! 冬青さん、仮面かぶって藁の衣装着ないと!

「おっと、お仕事だったネ」
 気を取り直したアヤネがすらりと伸びた腕を大きく振るえば、その軌道をなぞるようにずらりと小型の機械兵たちが顕現する。その数なんと、310体。
「さあ行って、メカサンタを守るんだよ」
 アヤネに指示にキビキビと応じる機械兵が、地上と空中とを分担してあっという間に宙に浮くメカサンタと地上の怪人たちとを分断する防衛線を張った。
『チッ、またこの作戦か!』
「失敬だネ、僕の作戦が誰かの二番煎じな訳ないだろう?」
 チッチッと立てた人差し指を左右に振るアヤネは、空いたもう片方の手で器用に電脳ゴーグルを装着。幾多の情報によりナビゲートが為された視界でサイバーアイと中距離ライフル『Phantom Pain』の照準器をリンク、完了。
 先立って展開した機械兵たちのすべてにマーキングを施したところで、怪人たちが痺れを切らして動き出した。
『うおおおおお! こいつら攻撃すれば一撃で消えるんだ! 俺は詳しいんだ!』
『よっしゃああ! はかない命の機械兵たちにいいものあげちゃうぞ!!』
(「え、ええ……」)
 予定では、怪人たちが機械兵に触れると同時にライフルがロックオンするように組まれたシステムが作動し、それに従って引き金を引くだけの簡単なお仕事になるはずだった。
 しかし、怪人たちは何かが入った箱を一斉に機械兵に差し出すという受け身の姿勢で、なかなか機械兵に自分たちから触れてくれない。
(「ああ、もう――これだから何を考えているか分からない怪人は!」)
 アヤネ自身は否定をするが、彼女の頭脳は明晰だ。故に、そうではないものの思考に振り回されてしまうことがままある。そう、今のこの状況のように――!

(「……ははぁん、なるほど?」)
 そんな親友……いやそれはもう超えた? でもまだ恋人とは言い難い? 今後に期待ですね! うん、要するに冬青がアヤネの困惑を察したのだ。
「ほらほら、お届け物なんですよね? さっさと手渡しちゃいましょう!」
『オワッ!!!』
 今度はいわゆるヤクザキックで、じれったい怪人の背中を思いっきり蹴り飛ばす冬青。
 当然その勢いで、怪人は機械兵に触れて――。
「オッケー、ソヨゴ! 攻めは任せた!」
 半自動射撃システムにより即座に段ボールの頭部を撃ち抜かれる怪人と、不敵な笑みを取り戻すアヤネに、冬青はグッと親指一つ立てて返す。
「任されちゃいましたね、そういう訳なので覚悟して下さい」
 こちらは爽やかな笑みで、仲間を倒された怒りに燃える怪人たちと対峙する冬青。身に纏う黒蘭の花弁をはらはらと散らせながら、エントランス広場を縦横無尽に駆け巡る!
『あっ、ちょっ、捕まえられねえ!』
『この子めっちゃ速い! うちで働いて欲しいレベル!!』
「いや……それはちょっと遠慮しておきます……」
 例えば冬青が将来的に免許を取って、運送業を生業にしたいと言ったら家族はどんな反応をするだろう。職業に貴賎はないが、少なくとも――お父さんは反対しそうだなあと思いながら。
 思いに応じて加速する身体と、ダッシュによる変幻自在の方向転換で、怪人たちはことごとく翻弄されていく。
 痺れを切らしてメカサンタの方へと迫る怪人は、狙い違わずアヤネの狙撃で頽れる。

『全員、かかれ! チームワークで梱包だ!!』
『『おうっ!!』』
 怪人たちなりに笑顔が絶えない職場なのだろうか(顔ないですけど)、人ひとりすっぽり入れそうな大きさの段ボールが即座に組み立てられ、ガムテープがビッと引かれ、紐が伸ばされてテキパキと整えられた準備。そして。
『『『パック!!!』』』
「えええええ!!!??」
 冬青を箱詰めにするため、怪人たちが一斉に飛びかかってきたではないか。間隙を縫って駆け抜けようにも、逃さぬとばかりにロープが用意されているのが見えた。
(「わ、私が梱包された上でどこかにお届けされてしまう……!」)
 せめてもの抵抗にと鞘に収めたままの『花髑髏』をかざして防御を試みる冬青を、しかし怪人たちはあらゆる方向から狙う。

 ――そして、その怪人たちを。さらに、アヤネがすごい顔で狙っていた。

「……っ!?」
 乱射に近いレベルの銃声が響く間、冬青はぎゅっと目を閉じていた。静寂が訪れた頃、恐る恐る目を開けると――そこには、倒れ伏す怪人たちの姿だけがあった。
「あ、アヤネさん!」
「ソヨゴに手を出そうなんて、いい度胸してるよネ」
 全弾撃ち尽くしたアサルトライフルを手にしたまま両手を軽く掲げて、歩み寄るアヤネ。
 控えめに言って――カッコ良かった。当初の作戦とはちょっぴり予定が狂った感もあるが、要はメカサンタを守れればこちらの勝ちだから良いのだ。

「アリガトウゴザイマス、オフタリハナカガイインデスネ」
「プレゼントハ、オソロイガイイデスカ?」
 ふよふよとメカソリに乗ってお礼を言いに来たメカサンタたちに、二人は一度顔を見合わせて、ふふっと笑った。

「それは……後で教えますね!」
「もうちょっとだけ、我慢してネ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャック・スペード
わくわくキマイラランド、久々だな
皆の遊び場に平和を取り戻す為、尽力したい

Odileに搭乗し参上、敵前に車を止め追跡妨害
降車した当機はサンタ庇う壁と成りつつ
リボルバーからマヒの弾丸を乱れ撃ち、敵の足止めを
撃ち漏らしは怪力とグラップルで掴まえ
物理的に行動を妨害しよう

サンタが嫌がる事をしては駄目だ
そもそも台車は乗って遊ぶものでは無い
子供たちが真似をしたら危険だろう
……という訳で、それは破壊させて貰う
スナイパーの心得活かし台車へ誘導弾放つ

聴けばこの1年、頑張って働いたそうだな
お前たちには俺からプレゼントをやろう
ショットガンに転じた片腕から、炎の弾丸を放ち範囲攻撃
――さあ、躯の海でバカンスを楽しむと良い


有栖川・夏介

オブリビオンフォーミュラをプレゼントとして願うとは、どこまで本気で言ってるんでしょうか?
……いや、敵のことなんて考えるだけ無駄か。

段ボール怪人を退治します。
仕事熱心(?)なのは感心ですが…こちらも仕事ですから、手加減する気は毛頭ありません(真顔)
「処刑人がお相手します…」

敵の連携技は厄介そうなので、その動きを封じます。
UC【何でもない今日に】で針を【投擲】し、敵の動きを牽制します。
他の猟兵の援護ができればいいのですが……。
私単体であれば、UCで敵の動きを封じ、その後距離を一気に詰めて追撃しましょうか。

さて、あなた方の後ろにいる今回の黒幕に、さっさと登場していただきましょうか。



●ようこそ、わくわくキマイラランドへ
 キマイラフューチャーに四季という概念があるかどうかは不明だが、猟兵たちの基本的な認識で言えば冬の遊園地は他の季節と比べてその気候が主な原因となって客足が遠のきがちに思える。
 その打開策として最も多く見受けられるのが――冬空に映える大規模で美しいイルミネーションだ。果たしてここ『わくわくキマイラランド』にも、それはあるのだろうか。
 時刻は昼過ぎ、どのみちイルミネーションが催されるとしてもまだ早い。エントランス広場こそ今は大騒ぎとなっているが、園内は至って平和に見える――今のところは。

「――『わくわくキマイラランド』、久々だな」
 色々な意味を孕んだ喧騒を前にして、とってもカッコいいメカメカしい軍装の男性――ジャック・スペード(J♠️・f16475)はよく晴れた晴天を仰ぎ、そして今なお必死に逃げ惑うメカサンタを確認する。
(「このままでは彼らだけではなく、園内の人々にも被害が及んでしまう」)
 前回WCLにジャックが到着した時は、事件はまさに佳境といった所であった。もう日も暮れた頃合いで、ろくに遊園地を楽しむ余裕もなかったけれど。
「皆の遊び場に平和を取り戻す為、尽力したい」
 そう決然と告げて、メカサンタを追いかけ回す段ボール頭の怪人たちを見据えた。

 守るべきものと倒すべきものとの判別は一目瞭然、少し間を開けて広場に降り立った有栖川・夏介(白兎の夢はみない・f06470)もさっそく愛用の『処刑人の剣』の先端を――切っ先がない故こういった表現となる――地面に軽く擦らせると強く握る。
「モウワカッタデショウ、ミナサンノオネガイハキケナインデス!」
『何であきらめるんだよそこでェ!! やってみなけりゃわかんねえだろ!?』
 ああ、間違いない。この無茶苦茶な問答こそが、今回解決して来いと頼まれたメカサンタと怪人の事件だと有栖は理解し、盛大なため息をひとつ吐いた。
(「オブリビオン・フォーミュラをプレゼントとして願うとは、どこまで本気で言ってるんでしょうか?」)

 ――新しいオブリビオン・フォーミュラが欲しい。

 それは途方もなく壮大で、物騒で、過剰な要求であった。願うものが木っ端の怪人だからとかそういう問題を超えて、誰かの力でどうにかなるものとは到底思えなかった。
 だが、この様子だと怪人たちは真剣にそれを願っている。首謀者がいて、この段ボールどもがその手下に過ぎぬとしても、この熱狂と執着とは相当なものだ。だが。
(「……いや、敵のことなんて考えるだけ無駄か」)
 そう、どのみちこれから『処刑』してしまう相手に思いを馳せるなど、時間と労力の無駄でしかない。仕事に余計な感情は持ち込まないのが、夏介なりの流儀と言えよう。
 いよいよ怪人たちに色々と『分からせてやる』時間であると、夏介とジャックがほぼ同時に動いた。
 仄かな金色の光を放つジャックのアイセンサーと、夏介の紅玉とが交わったのがその合図。ジャックが漆黒のスーパーカー『Odile』を召喚し、夏介は剣を半ば引きずるように駆け出した。

●殺意が高いんだよなあ
『何のために一年間お仕事頑張ってきたと思ってるんですかぁ!!』
「ワタシタチダッテ、ムリナモノハムリッテイイマスヨ!」
『メカサンタのばか! 無能! どうして新しいオブリビオン・フォーミュラは駄目なんですか!!』
(「……これではもはや、ただのクレーマーですね」)
 嘆息する夏介はしかし、これで何の躊躇いもなく己の『仕事』が出来ると認識する。そう、この怪人どもは速やかに退治しなければならない。
「仕事熱心なのは感心ですが……」
『何だ何だまた猟兵か!? 俺たちはあきらめないからな!!』
「それで結構です、こちらも仕事ですから――手加減する気は毛頭ありません」
 真顔だった。夏介は、至って真剣だった。すっと片手を怪人たちに向けると、すぐ胸元に当てる。儀式めいた仕草の後、夏介は改めてこう告げた。
「『処刑人』が、お相手します……」

 ジャックの愛車『Odile』のドアは、スーパーカーらしく扉の開閉ひとつ取ってもカッコいい。いや、スワンスイング・ドアと呼ばれるやや斜め上に開く姿はまるで白鳥――いや黒鳥か――が羽を広げるような美しさで主を招き入れた。
「よし、行こう。お前にも少し働いて貰うが、後できちんとメンテをする故に」
 許せよ、と一言添えて、ジャックは運転席にその巨体を納めると一気にアクセルを踏み込む。黒鳥は優雅に、そして驚くべき速度で、メカサンタと怪人たちとの間に割り入った。
『おわあ!? きゅ、急に黒塗りの高級車が!!』
『あっぶね、配達中じゃなくてマジで良かったわ』
(「……彼奴らは何を言っているのだ……?」)
 颯爽登場、再び優雅にその羽を広げた黒鳥から飛び降りたジャックは、まるで意味が分からぬ会話を繰り広げる怪人たちを思わず怪訝な顔で見てしまう。
「……失礼。多分、まともに取り合う必要はないと思います」
 怪人たちが何やかやと言いつつも、その手にいかにもなガムテープやロープ、そして段ボール箱を用意している様を、夏介は見逃さずジャックに注意を促す。
 実際問題、こう、色々な意味で知らなくても良い内容なので……。

「承知した、アレは――任せても良いか」
「喜んで、援護します」
 手短に言葉を交わし、二人の猟兵はいよいよ怪人たちを迎撃する態勢に入る。
『よし、行くぞ! これまで培ってきた俺たちの連携を見せつけてやれ!』
『『了解!!』』
 怪人たちがテキパキと動き出し、連携攻撃を繰り出す旨をバレバレにしてジャックと夏介に迫る。黙っていては梱包されてしまうが、果たして夏介はともかくジャックを収められる梱包道具が存在するのだろうかという素朴な疑問がよぎったとか何とか。
「……まず、貴方からです。そもそもの段ボール組み立てを『させません』」
『あ痛っ!!?』
 夏介は、ただ何も持たない片手を内から外へと振っただけだった。にもかかわらず、段ボールを組み立てる担当の怪人が突然大事な梱包道具を取り落として手を押さえる。

 その業(わざ)は、【何でもない今日に(デッドエンドアニバーサリー)】。たった今投擲した針の他にもナイフなど、様々な『暗器』を駆使して間合いの開いた相手を攻撃することができるのだ。
「連携攻撃は、成立すれば確かに脅威となります。ですが、肝心の連携を乱したらどうなるか……」
 お分かりいただけましたか、とでも言わんばかりに夏介が再び腕をだらんと下ろす。凝ったデザインをした夏介の洒落た衣装は、ただ華美なだけでなく様々な暗器を隠し持つのにも適していた。ああ――一番敵に回してはいけないタイプだ。

『だ、大丈夫か中央区担当っ!』
『クソッ……済まない、誰か箱を……あいつを必ず梱包して……』
『任せて!』
 カバーリングが早い。役割の再分担が早い。次はどの対象を狙うべきか、それともいっそまとめて攻撃してしまうか――。
 夏介が判断に一瞬の時間を要したその隙を、決して突かせぬもう一つの連携が生まれた。

「俺を忘れて貰っては困る」

 淡々とした機械音声と共に唸るのは、ジャックが持つ機械仕掛けの神の名を持つリボルバー。掠るだけでも即効性の麻痺効果を持つ想像以上に凶悪な弾丸が乱れ撃たれ、怪人たちを次々とその場に転がせる。
『ふ、二手に分かれよう! ここは引き受ける、みんなはメカサンタを!』
『そうね……数はまだこっちの方が多い……ああっ!?』
 メカサンタの方に踵を返した怪人たちから、すぐさま悲痛な声が上がる。進路が、ジャックのスーパーカーによって完全に塞がれていたのだ。
 こんなにも広い広場なのに、よりにもよって植え込みと植え込みの間にすっぽりと駐車されていたそれは完璧にメカサンタをかばう壁となっていた。

『クッ……お前みたいな規格外は箱には入らない!』
『プチプチのロールを用意するんだ、くるんでバリテでぐるぐる巻きにすれば……!』
『台車部隊、準備できましたっ』

 弾丸の雨を掻い潜って果敢にも攻め込んできた怪人を相手に、一体一体丁寧に頭を掴んで物理的に動きを封じていたジャックが、不穏な気配にふと気付く。
 おもむろに段ボールを放り出せば、自分目掛けて幾台もの台車とそれに乗った怪人たちの姿が見えた。
「先程から、お前たちは強引が過ぎるというもの」
 その台車で突撃してくるつもりなのだろうと一目で見抜いたジャックは、ちゃきっとリボルバーを構えながら冷静に告げる。
「良いか、サンタが嫌がる事をしては駄目だ」
『それは別の猟兵にも言われたけどさあ!!』
「……そもそも台車は乗って遊ぶものでは無い」
『うるせえこれは遊びじゃねえんだよ! 真剣(マジ)なんだよ!!』
「……だが、其れを子供たちが真似をしたら? 危険だろう、責任は取れるのか?」
 むぐっ、という音が聞こえたような気がした。完全論破である。一瞬の逡巡を見せた台車部隊の車輪を狙い、すかさずジャックが狙い違わぬ誘導弾を放った。
『『『ぐわーーーーーーーーーーッ!!!』』』
 本日何度目の光景だろうか、足元を的確に攻撃された台車と怪人とが宙を舞う。

 がしゃん、どさりと次々地に墜ちるそれらに重々しい足取りで近付くと、ジャックはおもむろに声を掛けた。
「聴けばこの一年、頑張って働いたそうだな」
『ああ……この日のために頑張ったようなものさ……』
 そうか、とだけ返したジャックは、すっと片手を怪人たちに向けて差し伸べた。
(「あれは……」)
 夏介はいち早くジャックの意図に気付き、静観を続ける。
「お前たちには俺からプレゼントをやろう」
『何だって!?』
『新しいオブリビオン・フォーミュラ……ウォーマシンのお兄さん、あなたこそが本当のサンタクロース……!?』
 ジャックの大きな手を取ろうとした怪人たちが次の瞬間見たものは、大きなショットガンの銃口だった。
 人はそれを【我が身総てが引鉄也(トリガーハッピー・クリーチャー)】と呼ぶ。機械の身体を銃火器と化し、一切の慈悲なく容赦なく使い潰す。
 手を差し伸べたのは、ただ狙いを定めるため。喜びを顕わにした怪人たちは、何が起きたかも分からぬままに、次々と炎の弾丸によって焼却せしめられた。

●事件の黒幕への道
「――さあ、骸の海でバカンスを楽しむと良い」
「これはまた……段ボールだから余計に燃えるのが速いですね」
 あらかたの怪人たちを焼き払ったジャックの横に、素直に感心しながら夏介が立つ。一体でも燃え残っている個体がいれば、言いたいことがあったのだ。
『う、うう……』
 同胞が盾にでもなったか、難を逃れたらしき段ボール頭の怪人が一体這い出てくる。その前に夏介がザッと靴音を立てて立ち塞がった。
『ヒエッ……!?』
「さて。あなた方の後ろにいる今回の黒幕に、さっさと登場していただきましょうか」
 這いつくばる怪人を見下す夏介の顔はちょうど影が差して表情が読めない。それが余計に恐怖を煽る。
『あ、ああ、ボスは……まだ』
「もういいでしょう、何か問題でも?」
『ボス……もうちょっと日が落ちないと、多分出てこないっす……』

 ――キラキラする己の姿が、日中ではイマイチ『映え』ないから。

「「……」」
 夏介とジャックが身長差にもめげずに顔を見合わせる。アイコンタクトひとつで「どうする、どちらが殺る?」的なやりとりをしていた。
 その一方で、守ってもらったお礼を言うタイミングがなかなか掴めないメカサンタが、オロオロとスーパーカーの周りを飛び回っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

オルハ・オランシュ
ヨハン(f05367)と

遊園地に来たからには早く遊びたいのに……!
ヨハンってば知らないの?
サンタさんはお伽噺じゃなくて、
その正体は普通に一般家庭のお父さんやお母さんなんだよ?
私はプレゼントなんて貰ったことないから半信半疑だけど

プレゼントに興味がないわけじゃないけれど
誰から何を貰っても嬉しいもの……なのかなぁ
君も特に何かを欲しいわけではなさそうだし、そうだね
早く片付けちゃおうか!

メカサンタの救出は任せようかな
私の役割はこいつらの足止め
再配達も仕事のうちでしょ、めげるとか無しだから!
召喚されたお菓子に気を取られない……ように頑張る
UCでの強化を図りつつ、【範囲攻撃】で一纏めに薙ぎ払う


ヨハン・グレイン
オルハさん/f00497 と

はぁ……先ずサンタという生き物について思う所はありますよ
ガキくさいお伽噺のような存在でしょう
対価もなくプレゼントを配る? はっ。どんな企みがあるのやら
大体良い子のところにしか来ないだのなんだのどうやってそれを判断(以下延々と文句を垂れる)

こほん
まぁいいです

俺は別に欲しいものは……まぁ、
欲しいと思う人から貰わないと欲しくないというか
渡される人の方が重要というか
……特にないので。さっさと終わらせてやりましょう

敵への攻撃は彼女にお任せして、メカサンタの救出の方に注力しましょうか
蠢闇黒から闇を網状に広げて、投網のように捕まえます
箱やロープはすべて刃で切り落としてやりましょう



●サンタさんは本当にいるのでしょうか
 遊園地は、朝一番に乗り込んでも夕方から駆け込んでも、何かしらの魅力でもって来園者を出迎えてくれる。
 こんな仕事ででもなければ、ここ『わくわくキマイラランド』のエントランス広場に立つ園内案内図を見て、どこをどう回ろうかと早速作戦を練りたかったのに。
 そう思うオルハ・オランシュ(アトリア・f00497)からは、自然とこんな言葉が漏れた。
「もう、遊園地に来たからには早く遊びたいのに……!」
「ひと仕事片付ければすぐですよ、オルハさん」
 ぷうと頬を膨らかせて拗ねた声をあげる愛しいひとはいつもの調子で、だからヨハン・グレイン(闇揺・f05367)もまたいつものように淡々と応じた。

「それにしても……」
 眼鏡の奥の藍の瞳を少し細めて、ヨハンが宙を舞うメカサンタを視界に捉えるとひとつ息を吐く。
「先ずサンタという生き物について思う所はありますよ、ガキくさいお伽噺のような存在でしょう」
 それを聞いたオルハが心底驚いた顔で、ピンと立った獣耳を少し動かした。
「ヨハンってば知らないの? サンタさんはお伽噺じゃなくて、その正体は普通に一般家庭のお父さんやお母さんなんだよ?」
「……それはそれで夢のない話だとは思わないんですか?」
 ヨハンは敢えて強めの言葉で皮肉るようにサンタを呼んだが、果たしてそれはオルハの間違ってはいないが夢や幻想をぶち壊す言とどちらが破壊力が高かっただろうか。
「うーん、私はプレゼントなんて貰ったことないから半信半疑だけど」
「……そう、ですか」
 分かっている、オルハは決してネガティブな意味合いで言葉を発した訳ではないと。ただ、事実を述べたに過ぎないと。
 だからヨハンはヨハンで思うところを素直に口にした。
「――対価もなくプレゼントを配る? はっ。どんな企みがあるのやら」
 そこだ、それを疑う猟兵は他にもいた。いくらこの世界が誰にでも分け隔てなくコンコンコンさえすれば惜しみなく与えられる世界だと言っても、都合が良すぎやしないか。
「大体、良い子のところにしか来ないだのなんだの、どうやってそれを判断……」
「うん、そうだね! そろそろ行こうかヨハン!」
 このまま放っておけば、ヨハンは延々とサンタクロースという存在に対して文句を垂れ続けるに違いない。そんな彼の扱いは慣れたもの、オルハが花のような笑顔で背中を押してエントランス広場――今回の戦場へとぐいぐい進んでいく。
「こほん……まぁいいです」
 あなたがそう言うのなら、とは口に出さずに。ヨハンは自分で歩けますからと、苦笑いでオルハを見てそう告げた。

●プレゼントに込められた意味
「――あれ、思ったより怪人の数が少ない?」
「俺達の前に来た猟兵たちが、大体片付けてくれたという所ですか」
 オルハとヨハンの眼前に広がる光景は、見るも無惨に焼け焦げた段ボール頭の怪人があちらこちらに転がる様子。
 それでもなお二人の前に立ち塞がるのは、おおかた残党といった所だろうか。
『まだだ……まだ俺たちの夢は終わっちゃいねぇ……!』
『メカサンタを捕まえて、新しいオブリビオン・フォーミュラをゲットだぜ……!』
 夢はでっかい方がいいとは申しますが、デカすぎても叶わぬことに歯ぎしりする羽目になるので程々が一番です。
 その点どうひっくり返っても叶わない夢を抱いてしまった怪人たちは、否が応でも猟兵たちと戦わなければならなくなったのだ。
「リョウヘイサン、タクサンタスケテクレテアリガトウゴザイマス」
「プレゼントハ、カナラズオワタシシマス。モウチョット、ヨロシクオネガイシマス」
 メカソリの上から抑揚の少ない機械音声で二人に助けを請うメカサンタを見上げて、プレゼントという単語にどう反応したものかと首を捻る二人がいた。

「プレゼントに興味がないわけじゃないけれど、誰から何を貰っても嬉しいもの……なのかなぁ」
「俺は別に欲しいものは……」
 あれ? イマイチ反応が鈍いですよ? これにはメカサンタも焦る。何せ基本的には自分がプレゼントを渡すという存在であることに、ほとんどのものが食い付いてきたのだから。
 決してそれをチラつかせて己の保身に走るつもりではないけれど、サンタたる己ができるお礼といったらそれくらいしかないのだ。
 それにあまり興味ないとされてしまうと、どうしたものか――。
「まぁ、欲しいと思う人から貰わないと欲しくないというか、渡される人の方が重要というか」
 ――『何を貰うか』より『誰から貰うか』に重きを置くが故であれば、この反応も理解はできる。
 極論『モノ』ならば自分で手に入れることはできる。『この人から貰った』という付加価値だけは、それこそ贈り物をされなくては手に入らないというもの。
 ならば――かく言うヨハンに、そういった何かはあるのだろうか?
 無意識にヨハンの顔を覗き込んでいたオルハの顔の近くに一瞬驚くも、すぐにいつもの無愛想とも取れる顔つきを取り戻したヨハンが、短く答えた。
「……特にないので」
「君も特に何かを欲しいわけではなさそうだし、そうだね! 早く片付けちゃおうか!」
「さっさと終わらせてやりましょう」

●つまらないものですが、冬
 オルハは得物の三叉槍『ウェイカトリアイナ』を構え怪人たちに向き直り、ヨハンは中指に嵌めた『蠢闇黒』なる黒玉の指輪に触れつつメカサンタの方へと。
 せっかく二人でいるのだから、役割分担だ。オルハが攻め、ヨハンが守る。敵ながら段ボール箱の怪人たちが連携して攻めてくるならば、こちらも負けてはいられない。
「ヨハン、お願いね!」
「そちらこそ、大丈夫とは思いますが――」
「心配ありがとう、無事に戻るから」
 背中合わせに言葉を交わし、そして同時に地を蹴った。

『アッ、これはカップルの気配!』
『デートで不在にして荷物を受け取らない悪い子の気配だ!!』
「再配達も仕事のうちでしょ、そこでめげるとか無しだから!」
 そう言うオルハもここキマイラフューチャーでジャム屋に勤めるいわば看板娘的ポジションだ。もちろん、お使いで配達に行くことも時にはあるだろう。
 なればこそ分かるのだ、多少お仕事で上手く行かなくても、そこは凹む所ではないと。
 なお、デートで不在にして荷物を受け取れなかったことがあるかなしかで言えば――そこの所はプライベートなので詮索しないでおきましょう。
『そんな悪い子にはこうだ! 焼き菓子デリバリー!!』

 スッ……。

「……っ!!」
 鋭く突き出した三叉槍の穂先をオルハが急停止させたのは――怪人たちがうやうやしく可愛らしい包装紙に包まれた小さな箱を差し出してきたからだ。
 ああ、これは明らかに罠なのだから、容赦なく箱ごと貫いてしまえばそれでおしまいだったろうに。反射的に攻撃の手を止めたオルハは、恐る恐る小箱を受け取ってしまう。
『これで心を入れ替えて、今度からはちゃんと荷物を受け取るんだぞ! お嬢さん!』
「えっ……これ、マドレーヌとフィナンシェと……ああっ、あの三丁目の洋菓子店の!」
 知っているのかオルハさん、と後方のヨハンが耳を動かすが、正直お菓子の誘惑でオルハはそれにさえ気付かない。
 可愛い包装紙を解けば、中の小箱にはぎっしり詰められた美味しそうな焼き菓子がずらり。賞味期限はぶっちゃけそんなに長くない、受け取るか否かの決断が迫られた。
 だが――。

「うううううん、お菓子で買収なんかされないように頑張るって決めてきたんだから!」
『★鋼の意志――!!!』

 投げ返すのも気が引けたので、適当な植え込みの陰にそっと焼き菓子詰め合わせの箱を置くと、オルハは今度こそ『ウェイカトリアイナ』を横薙ぎに一閃する!
「この槍から――逃がしはしないよ!」
『ギャーッ! 交渉が決裂したー!』
『どっちかっていうと買収だけどねー!!』
 ひいひい言いながらちょこまかと身を翻して槍から逃れるこしゃくな怪人たちだったが、それで誰が終わると言ったのか。
 白金の三叉槍の軌跡は地面に魔法陣を描き、とんっとその上に乗ったオルハに更なる力を与える。穂先が輝きを増し、尋常ならざる力の高まりを可視化させた。
「逃がさないって、言ったよね!」
『『『うわああああああ!!!!!』』』
 再び大きく振るわれた三叉槍は、今度こそ怪人たちを一纏めになぎ払い、吹き飛ばした。

 オルハの役目は、怪人たちの足止めであった。
 そして彼女は確実にその役割を果たしていた。
 おかげでヨハンは、妨害らしい妨害を受けぬまま――メカサンタを『救出』するという名目で『捕獲』することができた。
 あれ? ヨハンさん、メカサンタを捕まえても特に欲しいものはなかったんじゃあ……?
「仕事ですから、それに一応捕まえておけば――気が変わった時に嘆かずに済みます」
「ネンイリデスネ……」
 黒玉の指輪から生じた闇は網を形作り、それを巧みに繰ればまるで投網の要領で次々と宙を舞うメカサンタが捕れる捕れる、大漁である。
 先程からあれだけ頑張って一体も捕獲できずにいた怪人たちの立場は……え? そんなものはない? アッハイわかりました!
(「箱やロープが飛んできたら片っ端から切り落としてやろうと思っていましたが」)

 流石と言うべきか、オルハが奮戦した結果ヨハンとメカサンタには一切の被害無し。ついでに言うとオルハにも怪我はなく、ヨハンは内心で安堵したとか何とか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

可愛猫・仮面
欲しいもの……いっぱいあるのである!
「あたしもー!」
でもいっこだけで我慢するのである!
「そーだそーだ!」
だって我輩たち……
いい子なのであるからなっ!「いーこだからねっ!」

そういうわけである!
集団には集団で抵抗である!
UC「ネコチャンを呼ぶ」にてねこちゃんロボをメカサンタさんの護衛につけるである!
なるべく一対一で戦わないようにすれば、ほどほどになんとかなる計算である。

ふふふ、我輩たち、この時期のためにいい子やってるようなもんである。
「んふー。悪い子は、めっ! だよ!」
さあ! ねこちゃんロボよ! めっ! しに行くのである!


満月・双葉
願いが壮大すぎて胃もたれ起こすでしょうよ
チェンジで

ほらほら、子供の頃、そんな危ないことしたら怪我するよって教わらなかったんですか…ちょっとやりたくなる気持ちは解るけども
【早業】で加速した【逃げ足】で逃げ回り翻弄しながら、別の【敵を盾にする】ことでお互いにガチャコンとぶつからせ
行動不能に陥ればそこを攻撃しましょう
寿命を削ってそうですから、そこを更に【生命力吸収攻撃】で追撃する形とさせていただきたい
危ない動きは【野生の勘】で察知し次第【見切り】か【オーラ防御】で何とか回避しましょう
まぁ避けきれなければ、ダメージ【激痛耐性】で乗り切るとします

クリスマス…サンタクロース…うちはパパが代理を務めてたぞ!



●来たぜ……今回のヤベーヤツらが……(褒め言葉)
 その少女は――いや幼女は、齢一桁にも関わらず余命いくばくもないと宣告された。
 そんな酷い話があるだろうか、あってはならぬ。そんな神の思し召しだろうか、ある日幼女の元に謎の『袋』が現れた。
 一見怪しい袋だが、よくよく見ればなかなか可愛いネコチャンの姿形をしていたものだから、幼女特有の好奇心ですっぽりかぶればあら不思議――。
『という訳で、我輩たちもはや一心同体も同じ!』
「ようじょせんぱい、ありがとー!」
「要するに、ヒーローマスクたる貴方が仮面(ますく)さんの病気を何やかやでどうにかして、今に至ると」
 このように可愛猫・仮面(我輩は猫ではない・f23412)と満月・双葉(神出鬼没な星のカケラ・f01681)が世間話に花を咲かせていられるのも、おおかたの段ボール頭の怪人たちは既に倒され、事態はもはや残党狩りの様相を呈していたからだ。
 しかし、残っている以上は倒しきらねばメカサンタに迫る脅威は取り除かれない。それに、まだ怪人たちの背後には黒幕たる存在がいるというではないか。
 楽しいクリスマスと素敵なプレゼントのためにも、あとひと息だ。

『ううっ……諦めたらそこで試合終了って言うじゃない……』
『新しいオブリビオン・フォーミュラが……欲しいっ……!』
 執念深く、初志貫徹。そんな怪人たちの願いを実際耳にした双葉が肩を竦める。
「……願いが壮大すぎて胃もたれ起こすでしょうよ、チェンジで」
『『ええーーーっ!!』』
 しっしっとまるで動物を追いやるような仕草をされて、怪人たちがそんなあという声を上げた。だが、上空のメカサンタはこくこくと頷いていた。うーん正直。
「リョウヘイサンタチニハ、アトデプレゼントヲサシアゲマスノデ」
『何と、欲しいもの……いっぱいあるのである!』
「あたしもー!」
 わあわあと諸手を挙げて、『幼女先輩』と仮面とが歓声を上げた。うーん、こちらも正直。でも大丈夫? メカサンタがくれるのは一つだけですよ?
『……でもいっこだけで我慢するのである!』
「そーだそーだ!」
 一瞬だけピタリと動きが止まった仮面だったが、すぐに両手を腰に当てて胸を張る。
『だって我輩たち……』
 仮面は右手の人差し指を、天高く突き上げて宣言した。

『いい子なのであるからなっ!』
「いーこだからねっ!」

 その純粋無垢さが……眩しい……!
 メカサンタも、怪人たちも、双葉さえも。幼女(先輩)の尊さに顔を覆った。

●230体ネコチャン大行進
 仮面がズビシと指先を怪人たちに向けて、いよいよ宣戦布告をする。
『そういうわけである! 集団には集団で抵抗である!』
『いやいやいやちょっと待って、もう俺たちそんなに数いないから!』
『その顔は他の猟兵たちもやってきた戦闘機械を喚ぶ顔だな!!』
 顔? 顔……? うん、まあ、オッケー。雰囲気で察したんだな! 指摘通り、確かに仮面と『幼女先輩』はいわゆる【エレクトロレギオン】を下地にしたオリジナルの必殺技で対抗しようとしていた。
 その名もズバリ【ネコチャンを呼ぶ】! 小型の戦闘用ねこちゃんロボが……今の仮面の実力だと合計230体召喚される!
「にゃんちゃん、バレてるよー?」
『心配無用である! 早急に来るのだ、ネコチャンよ!』

 ――ニャアアアアアアアン。

『本当に来たアアア!!!』
 怪人たちがこのユーベルコードで酷い目に遭わされるのは、本日これで三度目。でも実際そこそこ有効だから仕方がない。
『ネコチャン……可愛いネコチャン……』
『どんなに爪を切ってもやっぱり先はそこそこ尖ってるからフミフミされた時肌に傷が付くネコチャン……』
「何やらやたら生々しい表現をしますね……?」
 様子を見守っていた双葉が思わずツッコミを入れる中、召喚されたねこちゃんロボはにゃーんにゃーんと可愛い鳴き声を上げながら次々とメカサンタを守る布陣を固める。

(『なるべく一対一で戦わないようにすれば、ほどほどに何とかなる計算である』)
(「にゃんちゃん、すごーい」)
 以心伝心、幼女先輩の壮大な策に素直に感心する仮面であった。

●台車爆走はマジで危ないからねというお話
『おのれ! こうなったら少数精鋭ということにして最後まで戦い抜くぞ!』
『みんな台車は持ったな!? 行くぞぉ!!』
 速やかに二人一組になった怪人たちは、台車を押す担当と台車に乗る担当とに分かれて戦闘態勢に入る。
 ずらり並んだ台車が明らかに自分を狙っていると知った双葉は、淡々とした表情こそ崩さぬものの、頭部のピンと立ったアホ毛だけをひとつ揺らして向き直った。
「……いいでしょう、受けて立ちます」
 その台車で、見事僕を轢いてみなさい――。
 宝石に例えるならば、オパールと言うべきか。双葉の瞳が、そう言わんばかりに怪人たちを視た。

『突撃ィィィ!!!』
『『おおおおお!!』』
 ガラガラガラガラと、台車が猛スピードで次々と殺到する。絶妙なバランスで乗りこなしているようだが、その技能は果たして生きていく上で本当に必要なものなのだろうか。
「よっ、と」
『ギャーッ!』
 まず一台目を、半身をずらすだけで余裕で回避する。次に迫る二台目は、咄嗟に地を蹴って宙に舞い上がり躱す。
「ほらほら、子供の頃、そんな危ないことしたら怪我するよって教わらなかったんですか?」
 オラトリオの虹色の翼で悠々と宙に浮きながら、降りてこいとわあわあ騒ぐ怪人たちを見下ろしながら純粋な疑問をぶつける双葉。
『こ、子供の頃言うても……』
『俺たち、怪人っつうかオブリビオンだし……』
「……分かりました、この話は止めましょう」
 アホ毛が少しだけ垂れた気がした。表情に出なくても、このアホ毛は双葉の胸中を何より雄弁に語ってしまうから良し悪しである。
(「台車に乗る……ちょっとやりたくなる気持ちは解るけども」)
 そこでわざと再び地上に戻り、さあ来いとばかりに悠々と両手を広げた。
 そんな双葉に、当然ながら殺到する台車たち――!

「よいしょ」
『『アアーーーーーッッ』』

 まるで成長していない……! 挟み撃ちは大体の場合躱されて自分たちが激突するって……さっきもやったでしょ……!
 衝撃の勢いで宙を舞う台車と怪人の姿は、最早アトラクションか何かのようで。
 どさりどさりガシャーンと地に落ちる怪人や台車を『視た』双葉は、今度こそ本気の顔をしていた。
 瞳が揺れると、視線を浴びた怪人たちが次々と呻き声を上げてもがき苦しみ出した。
「ただでさえ寿命を削っているんでしょう、このままだと――本当に死にますよ」
『ヒエッ……』
 冷えた声が響いた。ここに来て命が惜しくなったか、次々と台車の力を解除していく怪人たち。だが――一台分、取り逃していた。
『えーーーーーーーーーーいっ!!!』
「~~~~~~~~ッ……」
 ガーーーーーーーーーーッとすごい音を立てて突撃してくる台車を、今度こそ避けきった――はずだった。
 咄嗟の回避だったので半身を逸らす最低限の動きだったが、残った軸足のつま先辺りを地味に轢かれたのだ。
 痛い、めっちゃ痛い。だが、双葉は声を上げそうになるのを何とか耐えた。
 その姿は、傍から見たら「避けきった」かのようで。怪人たちからは、畏怖の眼差しを向けられたという。

●ネコチャンと段ボールの相性は
 双葉が怪人たちを相手取っている間、メカサンタの守りに徹していた仮面たち。
 それが遂に、攻勢に転じる時が来たのだ。
『ふふふ……我輩たち、この時期のためにいい子やってるようなもんである』
 アッ、本音が出た。でもいい子だった実績は正当に評価されるべきですよね。
 それに比べて、嫌がるメカサンタに無茶な願い事を押し付けたばかりか、台車を爆速で乗り回すというどこに出しても恥ずかしくない悪行まで重なった怪人たちときたら!
 悪い子である、圧倒的悪い子である。という訳で。
「んふー。悪い子は、めっ! だよ!」
『さあ! ねこちゃんロボよ! めっ! しに行くのである!』

 ――ニャン、ニャアアアアアアン!

『アーッ! 可愛いネコチャンに肉球パンチされる喜び!』
『程々に強いのがまたたまらない!!』

 猫パンチに始まり、組み付いてからの甘噛み、猫キックに至るまで。おおよそネコチャンがやらかす攻撃を一通り受けてなお、怪人たちは妙な反応をしていた。
「……にゃんちゃん、もしかしてこうげききいてない?」
『案ずるな、効果は抜群である!』
 様子がおかしい怪人たちに思わず不安になった仮面が口元にそっと手をやり『幼女先輩』に問えば、自信満々な答えが返ってきた。かぶり物の後頭部付近に縫い付けられた尻尾が、ぴんと立っていた。
 段ボール頭の怪人たちは――至福のうちに気を失い、バリバリと爪を研がれていることにも最早気付かない。何なら頭部を開梱して中に入ろうとするねこちゃんロボまでいる。

『ふはは、大勝利である! さあ、プレゼントを――』
「スミマセン……モウチョットアトデオワタシシマス」
 仮面と『幼女先輩』に期待の眼差しを向けられたメカサンタは、ちょっぴり申し訳なさそうに「もうちょっと頑張って欲しい」旨を伝えたのだった。

「クリスマス……サンタクロース……」
 双葉が顎に手を当て思いを馳せる。
「うちはパパが代理を務めてたぞ!」
 うーんこの、代理という言い回し。子供の夢は壊さない、優しい双葉さんでした!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

エミリロット・エカルネージュ
【なめろう餃子】で参戦

何かトンでもない事をお願いしようとしてるみたいだけど

無理だろうけど……それでも変な事で追われてる状況は頬って置けないよね。

ビスマスちゃん、ここは同時変身で行こうっ!

●POW
『早業』でUCを攻撃力重視で発動、水餃子バリアを『属性攻撃(スープ)』と『オーラ防御』を込め『範囲攻撃』で広げ

メカサンタさん守りつつ
庇う様に立ち回りつつ

怪人のUCのダンボールを水餃子バリアの『カウンター』で溶かし

UCの錬成シャオロンで
数を増やしたシャオロンを『念動力』で遠隔操作

シャオロン(本体)と一緒に『乱れ撃ち』でメカサンタさんに近付けさせない様に怪人達を『吹き飛ばし』だよ

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎


ビスマス・テルマール
【なめろう餃子】で参戦

実際叶ったら大問題ではあるんですけどね、メカサンタさんも迷惑でしょうし、行きましょうかエミリさん。

●POW
メカサンタさんを庇いながら戦うなら

コレが最適でしょうか?

『早業』でUC発動
南瓜砲弾を放ち『念動力』で遠隔操作し怪人を妨害してから

鎧装を装着

このUCの効果でレベル300まで強化された『オーラ防御』を『範囲攻撃』で広げ『庇う』しつつ

エミリさんの水餃子バリアがダンボールに負けない様に補助を

後はディメイション・なめろうブレイカーで『誘導弾』とフランスのクリスマスにちなんで『属性攻撃(鮭)』を込めて『鎧無視攻撃』の『一斉発射』で仕留めちゃいましょうか

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎



●ここまでは真面目だったんです
 遊園地のエントランス広場で繰り広げられている戦いにも、そろそろ終わりが見え始めた頃。そんな時こそ油断大敵、段ボール頭の怪人を討ち漏らさぬようにせねばならない。
 今や残った怪人たちの数は小規模営業所二ヶ所程度、言ってしまえば猟兵たちがあと二組もやってくれば残らず一掃できるだろう。
『クッ……目の前にメカサンタがいるのに、どうして手が届かない……!』
『おのれ、猟兵たちさえ邪魔しなければ』
 最早戦の趨勢は決まったかに思われたが、しかし怪人たちは諦めない。今日のこの日をと信じて雨の日も風の日も働き続け、いい子ポイントを貯めてきたのだから。
 ――まあ、その積み重ねもメカサンタ襲撃ですっかりおじゃんになったんですが!

「何か、トンでもない事をお願いしようとしてるみたいだけど」
「『新しいオブリビオン・フォーミュラが欲しい』……実際叶ったら大問題ではあるんですけどね」
 いよいよ怪人たちに引導を渡すべくやって来たのは――赤き体毛持つ竜派ドラゴニアンのエミリロット・エカルネージュ(この竜派少女、餃心拳継承者にしてギョウザライダー・f21989)と、蒼鉛のクリスタリアンたるビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)の二人だった。
 紅と蒼、それぞれ一般的な人間のそれとは程度の差こそあれ異なる姿に、怪人たちはもちろんのこと、メカサンタたちも己の姿を棚上げにして興味津々に寄ってくる。
「フワフワデキラキラナリョウヘイサンタチ、ヨロシクオネガイシマス」
「ダンボールハカナリヘリマシタガ、キヲツケテクダサイ」
 小さなメカソリがかなり低い位置まで降りてきて、エミリロットとビスマスとに激励の言葉を掛ける。
 ならば期待には応えねばなるまいと、二人の猟兵たちは顔を見合わせてひとつ頷いた。
「説得……は無理だろうけど、それでも変な事で追われてる状況は放って置けないよね」
「はい、メカサンタさんも迷惑でしょうし……行きましょうか、エミリさん」
 決然とした台詞と共に、遂にダンボール頭の怪人たちと対峙する少女たち。
 ここまでは――まっとうな戦いの幕開けに思えただろう。この後の展開を、誰が想像できただろうか。まあまあ、とりあえず見守っていて下さい。

●スーパーなめろうタイム!
『おうおう、何か梱包して売り飛ばせばいい儲けになりそうな連中が来たぞ!』
『この世界基本的に生活に困ってる人はいないから……』
『つまり――道楽で買ってもらえる可能性が高いと!』
 味方の数を壊滅的なまでに減らされたとは思えぬ呑気さで、事もあろうにエミリロットとビスマスを売り飛ばす算段を立てる怪人たち。
 その手にはガムテープ! ロープ! 段ボール! もうすっかり梱包する気満々だ!
(「狙いがメカサンタさんではなくわたしたちに向いたのはラッキーですね」)
(「うん、元々かばいながら戦うつもりだったし良かったよ」)
 互いにのみ聞こえる程度の小声を交わしつつ、二人の少女は――おもむろに南瓜やらゴツいベルトやらを取り出してじゃきんと構えたではないか。
「メカサンタさんを庇いながら戦うなら、コレが最適でしょうか」
「ビスマスちゃん、ここは同時変身で行こうっ!」
『『『なっ……!?』』』
 はいここで画面が二分割! エミリロットさんとビスマスさんの二人の変身シーンが同時展開されます! 決して尺の都合とかじゃないですよ、熱い演出です!

「『Namerou Hearts Generalnes! Squasharmed!』」
「『Chilled Standby!』」
 その声は、二人のものとは明らかに異なる。いかにもな機械音声は南瓜――と思われたバズーカ砲から、そして他ならぬビスマスから強引に押し付けられ――いや、受け取ったチルドドライバーから発せられたものだった。
 ビスマスは南瓜砲弾をぶっ放し、エミリロットはドライバーを腰の辺りに当てる。同じ変身戦士でありながら全く異なるプロセスを踏む二人の変身バンクは、ちょっと目で追うのが大変かも知れませんがとくとご覧あれ!
 放たれた砲弾は幾多のパーツに分かれると、それぞれがビスマス本人の念動力により自由自在に宙を舞い、途中怪人たちを牽制するかのように迫った後にいよいよビスマスの青いボディに装着――いや、『鎧装』されていく。
 変身の途中でついでに攻撃もしちゃうのは特殊演出の中でも相当燃えるヤツですね!
 一方のエミリロットのチルドドライバーも唸る。ゆっくりと両手を大きく動かす様は功夫の構えを思わせるが、それがただの構えではないことを、右手に握られた光るキーのようなものが物語っていた。

「沖膾南瓜行列、いざ開幕ですっ!」
「此処は、なめろう餃子の力に頼るかな……」

 ガシャン! ガシャコンガッシャン! ピカー(天からの謎の光) ギュイイイン!
 沖膾で南瓜行列って何だよ(真顔)とかなめろう餃子って何だよ(哲学)とかそういう疑問を全部ぶっ飛ばす超カッコいい変身バンクは、遂にこの一言をもって完了する!

「「――変身ッ!!!」」

 ビシイッ! と決めポーズがバッチリ決まった。
 ビスマス曰く『南瓜沖膾暗黒大将軍』の出で立ちは、言うなればサムライエンパイアの位の高い武将が身に纏うような鎧の意匠がことごとく南瓜になったもの。
 なめろう餃子の力を宿したエミリロットの手には、クロマグロソードから変形したガントレットと熱々の水餃子が入った食器一式があった。
 なお、ここまでの一連の過程を怪人たちは基本的には大人しく見守っていた。途中ビスマスに牽制された個体は演出の都合上の例外ということでひとつ。
『なっ、何だ!? 生放送始めたらめっちゃバズりそうな絵面になったぞ!?』
『トレンド一位間違いなしですよ!』
『いやいやいや、誰も放送機材なんてさすがに持ってないし』
 怪人たちは――何ということだろう、呑気にキマイラフューチャーの人気者になることを考え出してしまったが、落ち着いて考えて欲しい。明らかに君らがやられる側だから。
「エミリさん、私のすごいオーラ防御で援護します。その間に」
「オッケー! ボクの水餃子バリアも負けないからね!」

 水餃子バリア……とは……。怪人たちが誰も何も言わないのは、ツッコミ所が多すぎるからだろうか。ひとつ口を衝けば、止まらなくなってしまうからだろうか。
『うおおおおお! 者共かかれ!!』
『『パック!!!』』
 一歩前に出ていたエミリロット目掛けて投げつけられる段ボール箱を、すかさずエミリが水餃子の入ったお皿を掲げる。
 するとどうだろう、たちまちのうちに立ち上るスープの湯気が辺り一面に広がり防御障壁と化して怪人たちの段ボールをドロッと溶かしたではないか。
『ば、馬鹿な……!? クーリエズ特製段ボールが溶けるだと……!!』
『貴重品専用の段箱持ってきてー!!』
 飛び交う怪人たちの指示により、何だか見るからに頑丈そうな段ボール箱が持ち出された。さすがの水餃子バリアでも、これは――。
「大丈夫です、エミリさん! 援護します!」
 そこでビスマスが動いた。エミリロットのオーラ(属性:スープ)に自身のオーラを乗せて防御を強固なものにして、どんな段ボールにも負けない加護を与える。
『ぐぬぬぬぬ……!!』
『だ、段ボール、在庫ほとんど溶けました!!』
 じゅわあああ。明らかに美味しそうな匂いが立ちこめるエントランス広場はまるで餃子のキッチンカーがやってきたようだった。実際降臨したのはギョウザライダー・チルドさんなんですけど。

 めっちゃ頑張ったエミリロットを労うようにその肩に手を置いて、変身の代償に機動力を大きく落としたビスマスが、しかしそれ故の荘厳さでずしんと前に出る。
 その身体に装着された『ディメイション・なめろうブレイカー』の偉容とマゼンタ色は、怪人たちの視界に鮮烈に焼き付けられたという。――冥土の土産とも言う。
 展開される固定砲台は、その全てが怪人たちをピタリと狙っていた。
「では、フランスのクリスマスにちなんで『コレ』で仕留めちゃいましょうか」
 発射の反動に備えて、ビスマスがザッと右脚を引く。次の瞬間、砲台から一斉にあるモノが射出された。

『えええええええええええ!!!!!???』
『鮭じゃねえかあああああ!!!!!!!!』

 もうね、属性攻撃(鮭)って何だよって言うのは野暮だなって……そうですね一年前にクリスマスにはサーモン食べなさいよって言った悪役がいましたよね……令和になって時代が追いついちゃいましたね……。
 ドスドスと鮭が突き刺さり、ビチビチと鮭が打ち据える。何が起きているのかよく分からないまま、怪人たちはいよいよ全滅の刻を迎えようとしていた。

(「ドウシマショウ……アノフタリニナニヲワタシタライイノカ」)
(「ワカラナクナッテキマシタネ……ナニガホシインデショウカ」)
 守ってもらったはずのメカサンタたちが、二人の猟兵たちに畏怖の眼差しを向けていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シャルロッテ・ヴェイロン
「オブリビオン・フォーミュラが欲しい」って、マジで世界を滅ぼすつもりですかアータら。
とりあえずうっとうしいのでさっさと骸の海に消えてください(つかこの世界、文明が相当進んでるはずですよね?何で無人配達システムとか稼働してないんでしょうか?)。

まずはFPSの兵士たちを召喚して、メカサンタに襲い掛かる怪人を片っ端から打倒していきましょう。動きが早いようなら戦闘ヘリも呼んで追撃させちゃいましょうかね?

――あぁ、そうだ、プレゼントは最新式のゲームデバイスでも希望しましょうか。



●無双かと思ったらPUBGだった感じ
「――無双系アクションになると思っていましたのに、これではまるでゲーム終盤のバトルロイヤルじゃないですか」
 シャルロッテ・ヴェイロン(お嬢様ゲーマーAliceCV・f22917)が転移を受けて遊園地のエントランス広場に舞い降りた時に見た光景は、こう評されたという。
 そう、イメージしていたのはわらわらと迫り来る怪人たちの群れという敵戦力だったのだが、ここまでの猟兵たちの奮戦もあり、その数は両の手で数えられるほどに激減していたのだ。
 傲り高ぶり、相手を侮る訳ではないが。正直な所、恐らく自分の番でこの戦いに決着が付くだろうとシャルロッテは感じていた。
 何を以てそう思うのか――『ゲーマーとしての勘』だ。自分と相手の力量を正しく見極め、最適解を導き出してその通りに『操作』する。
 アマチュアのゲーマーでも一応そこに思い至ることは出来ようが、手腕がついてくるかどうかはまた別の話で、そういった点でシャルロッテは――いや、プレイヤーネーム『AliceCV(アリス・セ・ヴィ)』は、まさしく凄腕のゲーマーであった。
 さあ、存分にご覧に入れよう。『AliceCV』の華麗なテクニックを!

●ゲーミングノートの性能って実際どうなのか気になります
『大丈夫だ……俺たちが何のために群れていたと思っている……』
『最後の一人がメカサンタを捕まえて、願いを叶えればそれでいい……』
 ゆらりゆらりと最後の執念をたぎらせ、段ボール頭の怪人たちがシャルロッテと、その後方に位置するメカサンタに迫る。
 怪人たちの願いは揺るがない、徹頭徹尾変わらない。アレです、アレ。
 本気も本気だったのかと、シャルロッテは思わず盛大なため息を吐いた。
「『オブリビオン・フォーミュラが欲しい』って、マジで世界を滅ぼすつもりですかアータら」
『そんなつもりはない! ただ……』
『ボスの願いだし、それに……ウチの従業員もそろそろ新しく雇いたいし……』
「それ」
『エッ』
 怪人たちとの問答の間に何気なく飛び出した一言に、シャルロッテが鋭く指摘を入れた。怪人たちは何かおかしなことを言ったかと不安げに互いの段ボール顔を見合わせる。言っていることの全てがおかしいと言ってしまうと話が終わってしまうのでもうちょっと待って欲しい。

「確認ですが、この世界は文明が相当進んでるはずですよね? 何で無人配達システムとか稼働してないんでしょうか?」
『『そっ、それは――!!!』』

 もしかしたら、そこを疑問に思っていた人も多かったかも知れない。その謎を突き止めるべくシャルロッテさんには秘境の奥地へ――じゃなかった、最後にご登場いただきました。
 あまりにも鋭すぎる、かつ自身の存在意義を揺るがされる質問に、怪人たちは律儀に答えた。
『……確かに、ドローンとかでの無人配達システムはもう構築されてる』
『梱包だってほとんど自動です、本来は俺たちの出る幕なんかじゃなくて』
 でも、と言いながら手袋をした拳を握る怪人を、じっと見つめるシャルロッテ。
『俺たちはここの住民とは違う、何もしないで遊んで暮らすなんてできない。だって、俺たちは荷物を運ぶためだけに生まれてきた存在だから』
「……だから、世を忍ぶ仮の姿として、敢えて運送業を?」
『……人がモノを運んでくるなんて面白い、って』
『色々仕事の愚痴も言ったけどさぁ、案外悪くなかったんだよ』
『ボスも俺たちの仕事ぶりを褒めてくれるし、もっと頑張ろうって』
 一人が熱く語れば、残されたわずかな段ボールたちも揃ってどこからともなく熱意のこもった声を上げる。
「もっと頑張るために、事業拡大のために、新しい怪人が必要だったと」
 そして、そのためにはどうしても『新しいオブリビオン・フォーミュラ』が必要だったと。ああ――大体の経緯は理解できた。

 理解することと、納得することとは、また別として。

「わかりました」
『!! じゃあ』
「とりあえずうっとうしいので、全員さっさと骸の海に消えてください」
『無慈悲――!』

 どこの猟兵が今の話をよしとして受け入れるというのだ。宣戦布告と共にゲームスタート。シャルロッテはお嬢様ゲーマー『AliceCV』の顔になり、バッと右腕を横に振る。
 すると、額に1の刻印が施された8ビット時代のドット絵でできたキャラクターたちが合計53体召喚された。うわあかわいい。そして懐かしい。
 なお、初期のドット絵なのでちょっとわかりづらいかも知れないが、彼らは皆FPSに登場する兵士たちである。誤射に気を付けてね!
 ハイスペックスリムゲーミングノートを片手に(排熱ばかりはどうしようもないのでそこは我慢である)右指一つだけで的確なエイムを見せつける『AliceCV』の動きに合わせて兵士たちも連動して動き、執拗にメカサンタを狙う怪人たちを片っ端から撃ち抜いていった。

 複数の兵士たちを一人で同時に操作して、巧みに怪人たちを地に這いつくばらせるシャルロッテの視界に、猛然とメカサンタ目掛けてダッシュする個体が入ってきた。
『ちっくしょおおおお!!! 叶えてくれよぉ、俺たちの願いを――!!!』
「……はあ、仕方ないですね」
 本当は片手で兵士たちだけで、かつ一度も合体させないという縛りプレイを成立させたかったのだが仕方がない。
 シャルロッテが画面端に並ぶアイコンのうち一つをクリックすると――どこからともなく戦闘ヘリが飛来して、機銃の雨を最後の怪人に容赦なく浴びせかけた。
『あ……』
「うーん残念、次があればその時こそ成功させましょうか」
 縛りプレイは上級者の……貴族の遊びって感じしませんかね……?

●ステージはボスを倒すまでがクリア条件です
 遂に、文字通り山ほどいた段ボール頭の怪人たちの脅威は去った。シャルロッテの元にメカソリに乗ったメカサンタたちがふよふよと降りてきて、ぺこりと頭を下げた。
「ホントウニ、アリガトウゴザイマス、リョウヘイサン」
「いいのよ別に――あぁ、そうだ。プレゼントは最新式のゲームデバイスでも希望しましょうか」
「アノ……ソレナンデスガ……」
「分かってますよ、ボス戦が残ってるんでしょう?」
 性急な要求と取られただろうか、おずおずと声を発するメカサンタに、大丈夫だと言ってのけるシャルロッテ。
 こんなに歯応えのない試合で終わってなるものかという所だった、ボスがいるなら戦って倒すまで。だって、シャルロッテは凄腕のゲーマーなのだから。

 念願のプレゼントをもらうまで、あともうちょっとだけ頑張れ、猟兵たち!

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『きらきらさん』

POW   :    ギンギラ流れ星さん
【ギンギラ輝く流れ星】が命中した対象を燃やす。放たれた【ギラギラの】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    ぴかぴか流れ星さん
単純で重い【ぴかぴか流れ星】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
WIZ   :    きらきら流れ星さん
レベル×5体の、小型の戦闘用【きらきら流れ星】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。

イラスト:天都 深杜

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

●流れ星は世界中をきらきらさせたい
 窮地を脱したメカサンタたちが一先ず猟兵たちに礼を述べるも、聞けばまだ油断ならないという。
 メカサンタたちを捕獲しようとした段ボールの怪人たちから『ボス』と呼ばれる、今回の騒動の黒幕。
 それが、今、猟兵たちの前に姿を現そうとしていた。

『……(そろそろ、イルミネーションの時間だろうか)』

 エントランス広場の柵に張り巡らされたLEDの小さな照明たちの方に金平糖のような頭部を向けて、白手袋に包まれた手を軽く動かした。
 その名を『きらきらさん』、世界中をきらきらさせるために同胞を再び集めるべく『新しいオブリビオン・フォーミュラが欲しい』と願い、利害が一致したクーリエズと手を組んだ強力な怪人である。
 諦めきれなかったのか、志半ばで散った段ボール頭の怪人たちに思うところがあったのか。きらきらさんは敢えて猟兵たちの前に姿を現したのだ。

 いざ、聖夜決戦。
 SNSが趣味で映える写真を撮って投稿するのが得意なこの怪人を相手に、思う存分その力を見せつけてやって頂きたい!

 ※今回はメカサンタを守る行動は含めなくて大丈夫です

●ご連絡
 今回から、プレイングの受付期間を設けさせて頂きたく思います。
 「12/21(土)8:31~、一日に最大6名様まで」
 という形式を取らせて下さい。
 「○人挑戦中」の数字をご確認頂きながら、分割送信にご協力頂けますと嬉しいです。
 (受付状況は可能な限りMSページとツイッターの両方でお知らせしたく思います)
 お手数をお掛けしてしまいますが、よろしくお願い致します!
●ご連絡・追記
サポートプレイングをお預かりしたのですが、こちらは余裕があればの採用とさせて頂きたく思います。
これに伴いまして受付内容を
「21(土)8:31〜22(日)8:29の間、上限8名様まで」に変更致します。
●ご連絡・最終
最終受付は「24(火)8:31~23:59」とさせて下さい。
なお、これまでに承ったプレイングのうち「〆切宣言後に送信されたもの」は
執筆時間の都合上申し訳ありませんがほぼ流れますこと、ご容赦下さい。
期日内に頂戴できてさえいれば問題なかったのにと、悔しく思うばかりです。
申し訳ありませんが、よろしくお願い致します。
狭筵・桜人
段ボール頭倒したのに一億円くれないんですけど……。
ははあ、わかりましたよ。
くれないとみせかけて~落として上げるサプライズですね?
いやあ楽しみだなあ一億円!!

SNS映えしそうな奴がいるので
アイツを殴って暇を潰します。

趣味はSNS投稿と聞きました。
エレクトロレギオンを召喚。
小型機械兵と流れ星がぶつかり合うとキラキラして映える……これは映えです。
動画を撮りたくなること間違いなし。
食い付いて撮影しにきたところを殴る作戦です。

作戦が上手くいかなかったら普通に近付いていって殴ります。
暇をもて余してるので。

素手で殴ると手が痛くなりそうなので予め
木の棒とか殴るのに丁度いいアイテムを拾っておきます。かしこ~い。


ジャック・スペード


怪人が言っていた通り
あのボスはキラキラしているな……
成る程、夜景によく映えそうなシルエットだ

煌めくものや、星の類は嫌いじゃないが
フォーミュラを復活させる訳には行かない
その企み、邪魔させて貰うぞ

黒き機翼を展開して空を翔けよう
飛行時に煌めく粒子をばら撒いて、敵の気を惹ければ僥倖だ
コレはコレで結構"映える"だろう?

降り注ぐ流れ星は軌道を見切って躱し
避け切れなかったモノは涙淵で武器受けからの
カウンター攻撃で無力化していこう

敵本体に肉薄すれば、涙淵で斬り付け捨身の一撃
反撃は怪力とグラップルで防ぎ、損傷は激痛耐性で堪えよう

世界は既に数多の煌きに溢れている
だから、オブリビオン・フォーミュラなんて必要ない



●きらきらさん、顕現
 言うならば、宝石の結晶体でこんな形をしたものがあったような気がする。
 または、照明器具のシェードでも見かけたような……?
 とにかく、そんな頭部を持ったひときわ強い気配を湛えた『ボス』こと『きらきらさん』が、遂に猟兵たちの前に現れた。
 頭部が重いのか、元々姿勢が悪いのか、若干前屈みの体勢で両手を合わせると、すうっと引き離す。すると、手と手の間を糸を引くように宇宙空間が生じたではないか。
 その中で、きらきら光る星たちが星座のように何やら文字を描いている――。

『……(ようこそ、猟兵。君たちが守ったメカサンタの力を奪い、私は私の願いを叶える)』

 そんな大胆不敵なる宣言と同時、怪人の頭部もほの青くきらきら光った。
(「段ボール頭の怪人が言っていた通り、あのボスはキラキラしているな……」)
 ジャック・スペードは新たなる脅威にも怯むことなく、冷静に敵の様子を観察する。
「成る程、夜景によく映えそうなシルエットだ」
 基本的に黒で統一されながらも、細々したカラーリングや装飾の組み合わせはスタイリッシュの一言に尽きる。そんなジャックも素直に認めたきらきらさんの出で立ちは、首から下こそごく普通の藍色のスーツではあるが、頭部が光ることによって絶妙な色合いになり、当の本人こそがいわゆる『映え』の対象になるのだろう。

 無音にて交錯する男たちの思惑とはまた違ったところで、こちらはわあわあと何やら賑わっている。どうしたことだろう。
 ジャックが振り返り、ぎょっとした。同じ猟兵である狭筵・桜人がメカサンタのメカソリにしがみついてゆさゆさと左右に揺らし、何事か訴えているのだ。
「桜人、どうし――」
「聞いて下さいよジャックさん、段ボール頭倒したのに一億円くれないんですけど……」
「……」
 鋼鉄の身体にそんな仕掛けはないはずなのに、ジャックは頭痛と目眩を覚えた気がした。宿った『こころ』に因るモノか、いや今はそれどころではない。軽く額に当てた手はよく馴染む手袋に包まれている。そのままジャックは桜人とメカサンタの仲裁に入った。
「見てくれ、段ボール頭が『ボス』と呼んでいた奴がまだ残っている。あいつさえ倒せば」
「デ、デモ、ドノミチ……イチオクエンハ」
 ここでジャックが「駄目なのか?」という顔でメカサンタを見た。頭を抱えるメカサンタ。そこで桜人が弾かれたように顔を上げて元気良くこう言ったのだ。
「……ははあ、わかりましたよ。くれないとみせかけて~~~落として上げるサプライズですね?」
「ア……アア……」
「いやあ楽しみだなあ、一億円!!!」
 言うだけ言って意気揚々と、それまで歯牙にも掛けずにいたきらきらさんの方へとずんずん進んでいく桜人の背を見送りながら、ジャックがメカサンタの方を見遣る。

 メカサンタは、口から少し白煙を漏らしていた。

●映えのためなら命をかける
 ぱん、と乾いた音で白手袋の両手を合わせたきらきらさんが青く光る頭部をゆらりと猟兵二人の方へ向け、宣戦布告の意思を告げる。
『……(機械兵と男子学生……それぞれ単体で撮った方がウケが良さそうか)』
 ぴかぴかと頭部の光量を上げたり下げたり、何か考えていることを思わせる仕草で合わせていた手を頭上でバッと広げると、一気に広がる銀河の帯と――きらきら光る無数の星が。
 それを見たジャックのセンサーアイに金の光がひときわ強く灯るようだったのは、現れ出でた空の星に思うところがあったからだろうか。
「煌めくものや、星の類いは嫌いじゃないが」
 否定はせぬ、だが許容もせぬとジャックはその重々しい口調でしかと告げた。
「フォーミュラを復活させる訳には行かない――その企み、邪魔させて貰うぞ」
 ざ、と遊園地の舗装された地面を踏みしめる。そして、洒落た軍服の外套を大きく一度なびかせて、一対の機械仕掛けの翼を顕現せしめた。
『……(パシャッ)』
 ジャックの機翼が展開し、外套がバッサアァァとなった絶好の瞬間を、きらきらさんがすかさずスマホカメラに収めていた。
「……それを投稿するというなら、相応の対価を貰わなければ、な――!」
 ユーベルコード【天翔る黒き機翼(チェロ・スターロ)】の力で、黒き機械の翼から煌めく粒子をばら撒きながら瞬く間に日が落ち始めた遊園地の空を舞うジャック。
 きらきらさんはといえば、そんなジャックの様子もしっかりバッチリカメラに収めていた。本当に、映えるものが大好きなのだろう。

 だが、きらきらさんが喚んだ星たちがじっとしている訳もなく。広がる銀河の帯から、尋常ならざる数の流れ星が文字通り『落ちて』き始めた。
「――いいでしょう。一億円を貰うまでの間ぶっちゃけ暇なので、あのSNS映えしそうな奴を殴ってその暇を潰します」
 清々しいほど! 自分に正直! 全ては一億円を手にするための『過程』に過ぎない!
 まあでも戦ってくれるなら何でもいいですありがとうございます状態なので大丈夫。桜人はパチンと小気味良い音で指を鳴らしながら、降り注ぐ流れ星を必死に躱すジャックを見遣って言った。
「趣味は、SNS投稿と聞きました。現に、空飛ぶ変形メカとかいう刺さる人には刺さるものに夢中になっていますね」
 不敵に、冷静に。召喚された【エレクトロレギオン】はその数およそ三百にも迫ろうとしていた。
 それが、次々と地を蹴り宙を舞い――流れ星とまるで相討ちになるように砕けて散っていく。
『……(あれは、小さきものどもが流れ星に挑みその儚き命を散らせる姿)』
「そう、『小型機械兵と流れ星がぶつかり合うとキラキラして映える』……」
 爆ぜて燃えて消えて。実際、桜人が召喚した機械兵たちのおかげでジャックは随分と飛びやすくなったので絶妙なアシストであるとも言えよう。
「これは『映え』です。動画を撮りたくなること間違いなし」
「成程……むっ」
 愛用の刀『涙淵 〜 ruien 〜』を手に、避けきれなかった流れ星を刀身に滑らせるようにして受け流すなどで反撃の機を窺っていたジャックが、きらきらさんの様子に目を光らせた。

 きらきらさんは――スマホの撮影モードを録画に切り替えて、立ち尽くしていた。

 それはもう微動だにせぬものだから、手ブレも一切ない美しい動画が撮れていることだろう。あとはこれを適当なところで編集してアップすれば――。
「いやいやいや待て待て待て」
「駄目ですよ撮影しているところを不意討ちで殴る作戦なんですから」
 血も涙もない猟兵たちの会話だった。何も間違ったことは言っていないのに何だかこちらが悪者になったみたいでちょっと釈然としないのはどうしてだろう。

「でも、素手で殴ると手が痛くなりそうなんですよね」
「任せておけ、援護の礼はする」
 どこかに適当な木の棒でも落ちていないかと辺りを見回す桜人だが、遊園地の整備された環境にはなかなか都合のよいものがなく。
 そこでジャックが『涙淵』を構えると、きらきらさんには気付かれぬようにそっと近付き――大きく刀身を振り上げ、一気に斬り付けた。

『……!!!(アアアアア痛いいいいいい)』
 もんどり打って地面をゴロゴロ転がるきらきらさんだが、大事なスマホだけは抱え込んで手放さない。
 反撃に覚悟を決めてきたジャックだったが、ことのほかあっさりと攻撃が決まったので若干首を傾げてしまう。

「……ま、まあ良い。世界は既に数多の煌めきに溢れている。だから、オブリビオン・フォーミュラなんて必要ない」
「そうですよ、一億円のために早くお星さまになって下さい!」
 遠回しにきらきらさんの存在を否定しつつ、ジャックと桜人は上々の戦果を上げたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

満月・双葉
えすえぬえすってなんですの?
スマホとかないと出来ないやつですの羨ま…カエルのマスコットさぁぁぁぁん?!
貴様いつの間にスマホを?!
ヨコセぇ!って爆笑するから要らねぇ!くっそ!

ソノアタマ、ウマソウ、(イノチ)ヨコセ!
眼鏡を投げ捨て…ようとして寒気を感じそっと懐にしまい、虹瞳を解放
【生命力吸収攻撃】を放つ
カエルのマスコットさんを(恨みがましく酷使する)ユーベルコードを放つ
その傍ら大根とライターを投げまくり爆発を起こして撹乱し、カエルのマスコットさんが動きやすいように配慮はする。でも酷使する

サンタさんの代理って何歳からつとめるんでしょ
僕はどっちの立場なのかね
ベルクシュタインさんに後で確認を…


エミリロット・エカルネージュ
世界中をキラキラさせたいって願いは……まぁ、全うな願いではあるのかな

でもフォーミュラー復活は不可能でも看過は出来ないんだ(クライングジェネシスを脳裏に浮かべ)あんなのは……絶対に。

●POW
だから奥義(UC)で全力でお相手するよ

『早業』でUC発動後
【鮭の焼き餃子のオーラの乱気流】と【緋色の龍の炎】を拳に纏い

『空中戦』で『ダッシュ』加速し敵の攻撃を『第六感』で『見切り』『オーラ防御』を込めた『残像』を置き張りソレで『盾受け』し回避しながら撹乱

懐に潜り込んだら『早業』
で武装の尻尾、健脚、発剄、餃子の皮手拭い(※)で『グラップル』のコンボ

※濡れ手拭いは、達人が使うと凶悪な鈍器になる
使い方はソレと同様





●スマホとSNSは現代っ子の必需品のはずだった
 猟兵からの痛烈な先制打を浴びたきらきらさんは、しかし何とか守り切ったスマホを手に再び立ち上がる。
 彼には彼なりの、譲れない願いがあるから。そしてそれはそれとして、『映え』も追求する。それが――きらきらさんの流儀だった。

 そんな怪人に立ち向かう次なる猟兵は、エミリロット・エカルネージュ。今はまだ構えず、真っ直ぐにきらきらさんの頭部を見据える。
(「世界中をキラキラさせたいって願いは……まぁ、まっとうな願いではあるかな」)
 その願いの文言だけなら、どんなにか素敵な願いだろう。叶えば、誰もが幸せになるに違いない。だが、そこは怪人、オブリビオンの願い。恐らくそう上手い話はないだろう。「……でも」
 エミリロットは脳裏に先の戦争のことを――そして、その首謀者たるオブリビオン・フォーミュラ『クライング・ジェネシス』のことを思い浮かべて、首を振った。
「フォーミュラ復活は不可能でも、看過は出来ないんだ」
 あんなのは……絶対に。金の瞳に込められた意志は強く、赤い拳はぎゅうと握られる。

 ――そこへ、トントンと肩を叩き誰かがエミリロットを呼んだ。
「えっ?」
「えすえぬえす、って、なんですの?」
「えっ???」
 呼ばれた方を振り返れば、そこには同じ猟兵である満月・双葉の姿があった。魔眼殺しの眼鏡の奥の瞳がちょっぴりうるうるしている。
「えすえぬ……ああ、SNS! 双葉ちゃん、知らないの? スマホとか持ってないの?」
 シリアスブレイクにも気を留めず、エミリロットは快く双葉の問い掛けに応じた。自分も今まで食べ歩いたり自分で作ったりしたスイーツ餃子を撮影しては時折SNSにアップして同好の士と楽しみを共有しているエミリロットは、そもSNS自体を知らぬという双葉に内心驚きと戸惑いを隠せなくもない。
「その、体質で……電子機器を持つともれなく爆発するんですよ。なのでスマホとかも持ち歩けなくて」
「ええっ、それは大変だね……見るだけなら大丈夫? こういうのなんだけど」
 正直に己の事情を打ち明けた双葉に難儀なものだと驚きつつ、そっとSNSアプリを開いた画面を双葉に見せるエミリロット。
 そこには、ずらりと並ぶ『とても見映えが良い写真』たち。美味しそうだったり、綺麗だったり……ああ、世の人はこれを楽しんでいたのかと、双葉は天を仰いだ。
「ありがとうございます、スマホとかないと出来ないやつですの……羨ま……」

 何故か、双葉の言葉はそこで一旦途切れた。視線の先には――いつも一緒の、カエルのマスコットさん。その手には、小さなスマホが抱えられていた。
「カエルのマスコットさぁぁぁぁぁん!? 貴様いつの間にスマホを!?」
 そもそもこのカエルのマスコットさんは、双葉が内包する膨大な魔力の逃げ場として作られた常時召喚型の使い魔であるはずだ。ツッコミどころは色々あるが、とにかくスマホを持っていて良い存在では――ない。
「ヨコセぇ!! って駄目だ爆発するから要らねぇ!! くっそ!!」
「あはは、まあまあ。とりあえず先にあっちからやっつけようか」
 双葉の中でいい感じに怒りという名のエネルギーが高まったところで、上手くそれを怪人へと誘導するエミリロット。
 対するきらきらさんは、新たなる猟兵たちの姿に興味津々だ。虹色の翼、漏れ聞こえた『スイーツ餃子』なる単語。できればゆっくり話を聞かせてもらいたいが、残念ながらそうもいかない。
 ぱん、と手を合わせ、バッと広げる。展開された銀河には、再び星々が煌めいた。

●燃える炎の一大決戦
 ギラギラ輝く流れ星はひときわ大きく、きらきらさんが腕を振り下ろすと同時にまずはエミリロット目掛けて火の玉めいて降り注ぐ。
『……(死なない程度に痛めつけて、映える写真を見せてもらうか)』
 そう、これはほんの小手調べのつもりだった。
 だから、まさか最初から全力全開でお相手されるとは思わなかったのだ。
 要するに――エミリロットはいきなりフルスロットルだった。

(「餃子を焼く熱と蒸気をイメージした気の練り方、呼吸や挙動は餃子を皿に返すが如く一挙一動を……」)

 すうう、と滑らかに動く両の腕。迫るギラギラの流れ星。さあ、どうする――!?
「これで行ける筈っ! 餃心拳が奥義っ! 【餃牙練空拳・緋龍咆】!!」
 カッと見開かれた瞳が合図となり、エミリロットの身体がたちまちのうちに緋色の龍の炎と鮭の焼き餃子のオーラによる乱気流に包まれた。
 すみません、私何も間違ったこと言ってないです。全部本当です信じて下さい。でも鮭餃子って真面目な話美味しそうですよね、タルタルソースと一緒に食べたい感があります。
 荒れ狂う鮭餃子のオーラと緋色の炎を拳に一点集中させると、ユーベルコードの力で得た飛翔能力で地を蹴り一気に舞い上がる。
 ぐんぐん加速して迫るギラギラの流れ星を正面から打ち砕くかと思いきや、鮭餃子の美味しそうな匂いをほのかの残したままギリギリのところでエミリロット自身は空中で身を翻した。流れ星は残り香を貫いて落ちていく。
『……(来るか、だが映える餃子の情報を得るまでは負けない)』
 きらきらさまは一応それなりに腹を据えて、迫り来るエミリロットを待ち受けた。ああ、猟兵と怪人という間柄でなければ、もしかしたら話が通じたかも知れないのに。

「ボクたちは……絶対にっ! 負けられないんだっ!!」
『……(ぐふっ……)』

 流れ星を躱した勢いで一気にきらきらさんの懐めがけて急降下、着地と同時に身を翻して竜種の証たる太い尻尾でそのスーツ姿の胴体をしたたかに打ち据え、地面に叩きつける。
 鍛え上げられた脚で踏み込み、身体中に力を行き渡らせ――手にしたのは餃子の皮だ。これを濡れた手ぬぐいのようにして、仰向けに倒れているきらきらさん目掛けて鋭く振り下ろした!
『……(のわああああああ!!!??)』
 達人の域にあるものが振るえば、ただの濡れた手ぬぐいさえも立派な武器となる。その気になれば骨を折るくらい造作もないらしい。
 エミリロットさんのガチさ、お分かりいただけただろうか……。

●映えない相手には割と興味がない
 一方、カエルのマスコットさんと追いかけっこをしていた双葉もまたそろそろ自分の出番かときらきらさんの方へと向き直る。
 見たところもうこれ以上やると割とマジで死ぬんじゃあというダメージを受けているようだが、だからといって情けをかける義理もなし。
 それに良く見れば、よろよろと立ち上がるきらきらさんの頭部は――金平糖によく似ているではないか。
「ソノアタマ、ウマソウ……ヨコセ!」
 ああっ、双葉さんの種族が魔獣に! コンゴトモヨロシク!
 しかしさすがの怪人も頭部を喰われては絶対に死んでしまう。よって、両手をぶんぶん振って断固拒否の姿勢を見せた。
 振った手からきらきらと、小さな流れ星があふれ出る。それを見た双葉はやってやろうじゃねえかよと眼鏡を投げ捨て……ようとして、突然の寒気により思いとどまる。
 眼鏡ごしにでも、放たれる虹瞳による生命を削る攻撃は強烈だ。
『……(あの娘は映える翼を持っているが、放置しておくと危険だ)』
 きらきらさんが敵対的な深い青で頭部を染めた時、双葉のユーベルコードの発動条件が満たされた。すかさず双葉がきらきらさんを指し示して言い放つ。
「さあ、カエルのマスコットさん。吸い取ってしま……あ痛っ」
 敵を攻撃する前にまず主人に飛び蹴りを一撃かまさないと気が済まないこのマスコットさんは、今回も例に漏れずいい蹴りを放ちそれを反動にきらきらさんに迫る!
『……(見え見えだ、払い落とすまで)』
 映えると判断したもの意外には興味を持たないのか、淡々とカエルのマスコットさんに対処しようとする怪人に、すかさず双葉が援護に回る。
 大根やら着火されたライターやらが次々と投擲されれば、それを撥ねのけるために気を取られてしまう。そして一瞬の隙を突いて、遂にカエルのマスコットさんがきらきらさんの頸部に絶妙な角度での飛び蹴りを入れた!

『……(ぐっ……)』

 声を発することができないきらきらさんは、ドサッと倒れ込みしばし打ち震えることで痛みを表現していた。エミリロットと双葉の攻撃は、めっちゃ効いていた。
「やったね!」
「やりました。ところで……」
「うん?」
 ストレートに喜びをあらわにするエミリロットに、あくまでも淡々とした表情を崩さない双葉が問うた。そのアホ毛は、元気にピンとしていた。
「サンタさんの代理って、何歳からつとめるんでしょ。僕はどっちの立場なのかねって」
「う、う~~~~ん……双葉ちゃんはボクより大人だから……もういいかも……?」
 唐突な問いに、エミリロットは頑張って自分なりの答えを返すも。
「そうだ、ニコくんに聞いてみたらどうかな?」
「なるほど、僕達より大人のベルクシュタインさんなら……」

 その時、グリモアベースでくしゃみの音が響いたとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

可愛猫・仮面
SNS映え……であるか。なるほど。
我輩、もしかしたら特効のユーベルコードを持ってるかもである……

そう!
UC「ふわふわのネコチャンを呼ぶ」である!

此度の報酬はこのネコチャンのおやつである!
ゆけっ! ふわふわのネコチャン!
きらきらさんの注意を引き、他の猟兵の手助けをするのであるっ!

どうであるか? こんなにふわふわのネコチャンを前に、写真を撮らないという手はないのであるぞ?
「きゃ~、ころころってした! かわいい~! ふわふわ~!」
幼女先輩……魅了されてどうするのである。
「でも、かわいいよ?」
うむ、それは事実である。仕方ないのである。

ネコチャンはかわいい。
それは永久普遍の事実なのであるからな……



●閑話休題
 まだ二組の猟兵を相手取っただけなのに、もう既に相当なダメージを受けている『ボス』こときらきらさん。大丈夫? 頭割れてない?
 だが、そんな怪人の都合などお構いなしに、猟兵たちはまだまだたくさんやって来るのだ。さーて、今回の刺客は誰かな~? とか、もうそういうレベルですよ!

『SNS映え……であるか。なるほど』
 己を被る『幼女先輩』の身体を借りつつ、青猫柄のヒーローマスクこと可愛猫・仮面は深く頷いてみせた。
「にゃんちゃん、いいことかんがえたの?」
『我輩、もしかしたら特攻のユーベルコードを持ってるかもである……』
 そう告げた仮面の声は、心なしか震えていたかのようだった。そう、それは――勝利を確信した時の、まだ確定してもいない事柄なのに感じてしまう――歓喜!
 一方のきらきらさんは、もう少し日が落ちたらそろそろイルミネーションの時間だろうか的にきょろきょろと辺りを見回していた。
 なんでや! 幼女先輩かわいいやろ! 猫袋かぶった幼女かわいいやろ!

『……(ほーん……)』

 あっクソこいつ本格的に興味ないな。仮面さん、分からせてやって下さい!
『良かろう、ならば【ふわふわのネコチャンを呼ぶ】である!!』
『……(ネコチャン、だと……!?)』
 ぴかぴか青く光る怪人の頭部が、ぐるりと仮面たちの方へ向けられる。そんな怪人に見せつけるようにスマホを高々と掲げた仮面が、疾く来たれと喚ぶのは――『悪魔』であった。
 その愛らしく手入れの行き届いたフワッフワの被毛を纏った姿で全ての生きとし生けるものを魅了する様は、まさしく悪魔。
 使役主たる仮面の交渉次第ではあるが、その力を存分に発揮してくれれば勝ち確というもの。そしてそのために、仮面は取っておきの報酬を用意していたのだ。
『ニャンニャ、ニャーン(わかってんだろうな)』
『勿論である! 此度の報酬はこのネコチャンのおやつである!』
 じゃん、と取り出されたのは、猫飼いならば誰もが知っているであろう、あのパウチの最終兵器だ。ネコチャンによって味の好みが変わるのが地味に大変である。
 封を切って直接ペロペロと味わってもらえば、数口ですぐ口を離す。どうした、失敗か……!?
『ニャオン(残りは終わってからだ、きちんと取っておけよ)』
『良し! ではゆけっ! ふわふわのネコチャン!!」

 ――ニャーン、アーン。ナァ~ン。

『……(ネコチャン……!)』
 ネコチャンの魔力と魅力には逆らえない。しかも気まぐれなネコチャンが自らあざといポーズで床をのたうつものだから、きらきらさんはスマホをへし折れんばかりに握りしめて震えてしまった。
『どうであるか? こんなにふわふわのネコチャンを前に、写真を撮らないという手はないのであるぞ?』
『……(ぐ、ぐぬぬぬぬぬぬ)』

 ……。
 ……。

 夕暮れ時の遊園地に、しばしの緊張を伴った沈黙が流れた。
(『どうした、我慢などする必要はないのである……!』)
 痺れを切らした仮面が思わず追撃の言葉を掛けようとした、その時だった。

 ――ガバッ!!!

『お……おお!』
 きらきらさんが――屈した。ネコチャンと同じ目線になるべくほぼ腹ばい状態となり、カメラは写真どころか動画モード。静止画は後から切り出せば良いのだ、今は動画だ。動画を――!
『……(○ゅ~るメーカーでCM風動画に……しかしあれは自分の飼い猫でないと駄目だったか……無難にあざといシーンを捉えるまで粘るか……)』
 そんな怪人が向けるカメラが映すものはネコチャンだけだったのだが、不意にそこに小さな人間の手が入り込んできた。
「きゃ~、ころころってした! かわいい~! ふわふわ~!」
『幼女先輩……魅了されてどうするのである』
 仮面はいわば『被られている側』。となると当然『被っている側』の存在がいる。それが――『幼女先輩』であった。
 大事な撮影中に余計なものが映り込むと、概してひとは気分を損ねるものだが――怪人は意外にも無心に撮影を続けるばかり。
 内心安堵する仮面に、幼女先輩がネコチャンをもふもふしながら返す。
「でも、かわいいよ?」
 それを聞いた仮面は、これだから幼女先輩には敵わないのだと思う。
『……うむ、それは事実である。仕方ないのである』

 ネコチャンはただそこにいるだけで、可愛い。
 それを幼子の手が撫ぜたりしたら、どうだろう。
 可愛い×可愛い=無敵ですね! ありがとうございます!
 そんな訳で、きらきらさんはほっこり癒し動画を無事ゲットしたのだった。

 怪人がさっそく動画の編集と投稿に勤しんでいる傍ら、ふわふわのネコチャンに報酬のおやつを与えながら仮面は思う。
(『ネコチャンはかわいい。それは、永久不変の事実なのであるからな……』)

 なお、今回は戦闘するとガチのマジできらきらさんが死んじゃうということから、クールダウンタイムとさせていただきました。大丈夫! ちゃんと成功してるよ!

大成功 🔵​🔵​🔵​

鵜飼・章(サポート)
僕は鵜飼章。現代地球人の男。
職業は絵本作家で趣味は一人旅。
ステシも参考に自由に動かしてね。

●性格
『マイペース』『良くも悪くも人間離れしてる』ってよく言われる。
焦ったり怒ったり、その他激しい感情を覚えることは無いかな。
【コミュ力】や【優しさ】で誰にでも人当たりよく接するよ。

●行動
話術で敵や人を動かしたり、鴉や虫を使った偵察や小細工が得意なんだ。
魔導書【自然数の集合】で色々な動物を出せるから必要なら使ってね。
戦闘には動物も使うけど【早業/投擲】で物理攻撃もする。
痛覚は鈍いけど打たれ弱いから、攻撃は受けずにかわすタイプ。

何でもやってみたいから日常も楽しみたいな。
UCはMSさんが使いたい物を使ってね。


木常野・都月
さっきの怪人やサンタより、よっぽど普通のヒトに見えるんだけど、気のせいなのかな。

俺は、すまーとふぉん…不慣れだから、俺の代わりに、綺麗な写真を撮ってもらえたらなぁ。

匂いこそ違うけど、見た目金平糖で美味しそうなヒトだし、凄く、きらきらしてるし。

本当…きらきらさんが、オブリビオンじゃなかったら…。
残念で仕方ない。

自主的に、骸の海に帰ってくれるといいんだけれど…ダメかな。

UC【精霊の矢】を炎の精霊様に頼んで使用したい。

敵のUCは[高速詠唱]した[範囲攻撃]を[カウンター]で使用、迎撃したい。

防ぎ切れないなら、[オーラ防御]で相殺したい。



●段ボール箱から人間が発見される事件
 その者の願いは、世界中をきらきらさせること。
 その者の趣味は、SNS映えするものを見たり撮ったりすること。
(「さっきの怪人やサンタより、よっぽど普通のヒトに見えるんだけど、気のせいなのかな」)
 スマートフォンを大事そうに手にして、画面を見つめるような仕草をしているきらきらさんを見た木常野・都月は素直にそう捉えてしまう。
 メカサンタのことはあれだけ疑っていたのにと言われてしまいそうだが、ヒトの心は複雑怪奇なのだとしか言いようがない。

 ――がたん、ごとごと。

 そんな都月の足元で、明らかに人一人入っていそうな段ボールが『動いた』が、考え事をしている都月はまだそれに気付かない。
(「匂いこそ違うけど、見た目金平糖で美味しそうなヒトだし、凄く、きらきらしてるし」)
 警戒するしないの判定基準が若干主観に因りすぎているきらいもあるが、それもまたヒトの心のありようだ。誰が都月を責められよう。

 ――ごとん、がったん。

 ここで遂に都月が足元の動く段ボールの存在に気付いた。気付いてしまった。
「うわあ!? だ、段ボールが……動いてる!?」
 上手に梱包された『それ』は、間違いなくプロの犯行だった。たまたま持っていた片刃の担当で中身を傷つけないようにそっと開梱していく。何となく、このまま放っておいてはいけない気がしたのだ。
 そうして――暗闇に包まれた段ボール箱の中に、夕暮れ時ではあるがまだ若干の光を残す空の色が差し込んだ。
「あ……ああっ……!?」
 箱を開けた都月は、思わず驚愕の声を上げた。箱の中にはみっしりと――成人男性の身体が収められていたからだ。
 男は――鵜飼・章は、久々の自然光にやや眩しげに目を細めながら反応を示した。
「……」
「だっ、大丈夫ですか!? 生きてますか!? そっ、そうだこういう時は水の精霊様を……」
 大慌てで杖を振るおうとする都月を、章は箱から手だけそっと伸ばして制する。
 そうして、まるでもったいぶるかのように窮屈な段ボール箱の中から脚を、腕を、そして上半身と下半身とを順に出し、遂にかの『詫び梱包』の禊を終えたのだ。

「初めましてかな、僕は鵜飼・章。現代地球人――要するにUDCアースの男」
 段ボール箱から登場した一見優男にも見える青年は丁寧に自己紹介をし、都月に向かって淡く笑んで見せた。
「あ……お、俺は木常野・都月です。さっきの怪人にやられたんですか……?」
「うーん、やられたというか、甘んじて受けたというか……まあ、そんな所かな」
 章が梱包されていた段ボール箱を、邪魔にならぬよう遊園地の隅に一旦追いやってから問う都月に、章は曖昧な答えを返す。
 例えここで事実をありのままに伝えても、かえって混乱させてしまうだろうから。

●情けのかけかた
 ぱんぱんと豪奢な衣装をはたいて埃を落とし、章はきらきらさんを見遣った。
「さて、あれが例の『ボス』だね。映えるものが好きと言いながら、自分が一番映える見た目をしているだなんて」
「俺は、すまーとふぉん……不慣れだから、俺の代わりに、綺麗な写真を撮って貰えたらなぁ」
 ぽそりと続いた都月の言を聞き漏らさず、章がおやと興味深げに反応する。
「都月さんは、あの怪人と仲良くなりたいのかな?」
「そ、そういう訳じゃあ」
 慌てる都月は頭の狐耳をぴこぴこさせつつも、否定しきれない部分もあるのかこう続けた。
「本当……きらきらさんが、オブリビオンじゃなかったら……」
 残念で仕方ない、という顔できらきらさんを見る都月の視線の向こうで、当のきらきらさんは早く日が落ちてイルミネーションが始まらないかとソワソワしていた。
「自主的に、骸の海に帰ってくれるといいんだけれど……ダメかな」
「都月さん、もしもきみが『世界のために死んで欲しい』と言われたらどうする?」
「え……えっ」
 二人してきらきらさんを見ていたはずの位置関係が、気がつけば向かいあう形になっていた。ほぼ背丈は変わらぬ二人の猟兵だが、かたや『ヒト』の心を学ぶ途上にあるもので、かたや『ヒト』の形をしながら内側がそれからかけ離れてしまった『ヒトを目指すもの』。
「『そういうこと』だよ、僕たちは僕たちの手であの怪人と向き合わなければ」
 そう告げる章は、しかし都月を決して咎める訳ではなく。
 ただ、覚悟を決めろと背中を押したに過ぎなかった。
 都月は全てを理解して、静かに、しかし大きく頷いた。

●その剣は頭上に在りて
『……(狐か、最近は犬猫以外も映えるからな)』
 きらきらさんはいよいよ猟兵二人を視野に捉え、合わせた掌を広げて銀河を伸ばす。煌めく星の輝きは、まずは章に向けられた。
「おっと、随分とぴかぴかした流れ星だね」
 流れ星――という可愛い域を超えた、これは最早『隕石』だ。光る隕石は直撃した場所の地形をも変えてしまうだろう。当然、そんなものを直撃した日には――。
「危ない……っ!」
 都月の鋭い声が響く。光る隕石は章のすぐ上に。もう回避動作を取る余裕もない!

「――ご覧、きみの上にも。【ダモクレスの剣】」

 ど、があぁぁぁん!!!
 隕石が――砕け散った。何が起きたかと言えば、隕石のさらに上に現れた章のユーベルコードによる黒き剣が、すいと落下して真下の隕石をかの説話のごとく貫いたのだ。
『……(なっ、隕石を砕くなんて……! 言ってくれれば撮ったのに)』
(「きらきらのものは誰もがもてはやすだろうね、だからこそきみもSNSに夢中になったりするのだろうから」)
 ユーベルコードの副次的作用で、隕石の行使者たるきらきらさんの感情の一部をも知覚した章は、ぼんやりと愛する鴉たちに思いを馳せる。
(「あの子たちはきらきらしたものが好きだけれど、それは『人間』の感覚で言う『好き』じゃない」)
 ああ――人間やそれに類するものどもと関わるのも悪くはないけれど、自分はやはり動物や昆虫と向き合っている時の方が明らかに活き活きしているに違いない。
 それを決して悲観することはないが(どうしてその必要がある?)周りからどうしても浮きがちになってしまうのは確かで。
 ならば、SNSたるコミュニケーションの世界の真っ只中に生きるかの怪人の方が、よほど『人間らしい』のかも知れない。
「――ヒトであることの度合いでする勝負じゃなくて、本当に良かったよ」
 思考の読めぬ柔らかな笑みだけを残して、破砕された隕石を躱しながら章は踵を返した。

●未来を見届ける意志
 きらきらさんの頭部はきれいだが、顔面が存在するわけではない。よって、感情の起伏めいたものはその光の強さである程度推測するより他になかった。
 そうして今都月が油断なく観察する金平糖……ではない、きらきらさんの頭部は、青く明滅していた。長い右手をバッと動かす様を見て、都月も豊かな尻尾をピンと立てて鋭く反応する。
『……(砕かれた隕石をきらきら流れ星に変えて、あの狐に向ける)』
「くっ……やるしか、ないのか!?」
 星のかけらが、小さな流れ星と化して都月めがけて一斉に襲い掛かる。対する都月は、杖をしっかりと構えて眼前に広がる光景から決して逃れず――助力を請うた。
「炎の精霊様、ご助力下さい――!」
 その言葉に応じるように、都月の背後にぶわっと広がった炎が次々と矢の形を為して、完成したものから発射された。
 数には数を、降り注ぐ流星群を炎の矢が迎撃して、互いに消滅していく。どちらかが根負けするまでの戦いに、都月の額にじわりと汗が浮かぶ。
(「くっ……」)
 弱音は見せぬ、ただ――負けられないことだけは分かっていた。
 自分は、あのうさんくさいメカサンタの正体を突き止めなければならないのだから!

「うおおおおお……っ!!!」
 杖と掌とに込める力を今一度強くすれば、炎の矢の勢いは薪をくべられた暖炉のように増して、遂に流星群を一掃することに成功した。

 張り詰めた気が抜けてふらふらと二、三歩後ずさってしまう都月を、章がそっと支える。
「気付いたかい、彼――ずっと僕たちの戦いをスマートフォンで撮影していたよ」
 呑気だねえ、と笑いながら肩を竦める章に、都月はようやく表情を和らげて応えた。
「どうせなら……思い出は多い方がいい、から……」

 怪人はいまだ健在ではあるが、その攻撃の手は確実に封じられつつあった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

オルハ・オランシュ
ヨハン(f05367)と

わぁすごい……!
見て見て、とっても綺麗!
はっ、SNS映え間違いなしじゃない?
まずは取り出したスマホで写真を撮りまくる
倒すのが惜しい気がするよ
でも君は容赦なくやりそうだね……

私はヨハンのフォローに徹しよう
鎧砕きで守りを崩して、彼の攻撃がより通りやすいように
召喚された星は範囲攻撃で効率よく潰していく
他、第六感で嫌な予感を覚えたら敵の行動を阻害
こちらが足止めしているうちに彼が強力な攻撃を浴びせてくれると信じて

……お腹が空いた
さっきのお菓子、後で回収しなくっちゃ
またそうやって呆れた目を向けるー
さっきも機嫌悪かったみたいだけど、
イライラには糖分が効くんだよ
ヨハンにも分けてあげるね


ヨハン・グレイン
オルハさん/f00497 と

…………そうですね。綺麗ですね(1mmも心の籠もっていない声)
何やら楽しそうに撮影しているので止めはしませんが
……何故でしょうね。いらいらする。光ってんじゃねぇよ
別に彼女が夢中になってるから気に食わないだとかそういう訳ではないが?

さて、殺りましょうか
粉々に砕いて塵も残さず抹消してやりましょう
<呪詛>と<全力魔法>で『蠢闇黒』から喚んだ闇を操ります
目障りな流れ星は黒刃で切り払う
彼女の作った隙に【蠢く混沌】を喰らわせてやろう

……はぁ。食欲があるのはいいことですけどね……
拾い食いとかしないでくださいよ……



●妬いてませんよ、やきもちなんか
 きらきらさんは、先程の賑やかな段ボール頭の怪人たちとは異なり、声を発することができない。意思表示はもっぱら頭部の輝きやジェスチャー頼りとなる。
 今、洒落た照明にも見える形状の青い頭部をほわんほわんと明滅させるきらきらさんは、何を思っているのだろうか。
『……(本当は、映えるものを撮ってSNSにアップして褒めてもらえるだけの人生で満足だったはずが)』
 欲が出てしまった。一度は失われたオブリビオン・フォーミュラが再び自分たちを率いてくれれば、ひっそりと生きる今よりずっと生きやすくなるだろうと。
 そうして今、配下に就いた運送業一味はことごとく全滅し、自分の攻撃も徐々に対策が施され始めている。
 だが、きらきらさんはまだここで倒れる訳には行かないのだ。
 なぜなら、もう少しだけ頑張れば、お待ちかねのイルミネーションが始まるのだから。

 若干フライング気味に、頭部をきらきら光らせて心躍らせるのを隠せない怪人を見て、すかさずオルハ・オランシュがヨハン・グレインに向けて声を上げた。
「わぁすごい……! 見て見て、とっても綺麗!」
「……、……そうですね。綺麗ですね」
 うわあ二人の声音の温度差がすごい。どうしたの? ケンカした?
『……(何だ、まだイルミネーションは始まっていないのに映える何かが……?)』
 きらきらさんは、まさか自身が『映え』の対象として見られているとは露知らず、日が沈みつつある遊園地の薄暗い空にその頭部を文字通りきらきらさせて首を捻る。
 ぴかぴか光る青い頭部は――そう、とっても『映え』ていた。
「はっ、これはSNS映え間違いなしじゃない?」
 心なしか拗ねたような様子の恋人もそこそこに、オルハはいそいそと愛用のスマートフォンを取り出すと、ぴかぴかさん……じゃなかった、きらきらさんを撮影しまくった。
「う~~~ん、やっぱりナイトモードとかついた最新機種には敵わないかぁ。なかなか上手く撮れない……っ」
 オルハが手にしたスマートフォンに生えた大きな耳はケース由来のもの。発売元自体は老舗の有名メーカーだが、いかんせん型落ちで機能充実とはいえない。
 それでも通信端末として必要最低限の役目は果たしてくれるから取り立てて不便はなく、写真の画質もSNSにアップする範疇であればそう多くは求められないだろう。

 そして、きらきらさんを撮りまくるのに四苦八苦するオルハの姿を、やっぱり明らかに不機嫌な様子でじとっと見据えていたのはヨハンだった。
 先程は辛うじてオルハの言葉に相槌を打つのに成功したが、ミリも心が籠もっていない声だったのは許して欲しい。ヨハンとしては無視しなかっただけ偉いのだ。
(「……何故でしょうね、いらいらする。ああ――光ってんじゃねぇよ」)
 言葉には出さずに堪えたが、だだ漏れた本音は心の侭に。
 ここで度量の大きさを示すならば、可愛い彼女が素敵なものに夢中になっている姿さえもまるごと愛おしく見守るのが筋なのかも知れないが、なかなかどうしてそうは行かない。
 素敵なものを愛でるのは良い。だがそれは――自分と二人分け合ってであって欲しい。
 そう願うのは、我が儘が過ぎるというものだろうか?
 ――いいや、好きな人の興味は、常に自分に向いていて欲しいもの。それを、誰が咎められましょう!

「……オルハさん、そろそろ」
「あっ、うんごめんヨハン!」
 そうこうしている間に、オルハのスマートフォンの写真フォルダには随分きらきらさんの画像が溜め込まれたことだろう。
 頃合いを見計らって――そして、己の我慢の限界に達する前に、ヨハンはオルハに咳払いひとつ声を掛けた。
「どうも倒すのが惜しい気がするよ、でも君は容赦なくやりそうだね……」
 オルハとて、ヨハンの様子に全く気付かなかった訳ではなかった。何せヨハンは自分にとっては『特別な人』、先程はちょっと夢中になりすぎてしまっただけなのだ。
「いや……決して、そんな事は」
 常の無愛想を装い、ヨハンが夜空のような紺青の外套を翻らせてきらきらさんに向き直る。ただならぬ気配を察したか、きらきらさんもまた静かに両手を合わせた。
(「――別に彼女が夢中になってるから気に食わないだとか、そういう訳ではないが?」)
 ド直球に答えを出しながら、ヨハンはオルハと並んで得物を構えた。

●流れ星と光と闇と
『……(カップルは……SNSでは取り扱いが難しいのだよな)』
 などと考えつつ、ほの青い光を放つ頭部できらきらさんは一気に両手を広げた。
 まるでファスナーを開くように展開される銀河には、無数の小さな流れ星。
 望むところだと一歩前にザッと踏み込んだのはヨハン。そのやや後ろでは愛用の三叉槍を手にしたオルハが控える。
「さて、殺りましょうか。粉々に砕いて、塵も残さず抹消してやりましょう」
(「ヨハン……?」)
 気合い充分、魔力はここに満ち。敵対するものへの呪詛への念と昇華した心の澱は明確な敵意――いや殺意を以て『蠢闇黒』に嵌まる黒光石から質量を伴った闇として喚ばれ、ヨハンの周囲を重々しく取り囲む。
『……(まあ、良い。降りかかる火の粉は払うまで)』
「……どうやら、目障りに感じているのはお互い様のようですね」
 すいとこちらを指さして小さな流れ星をけしかけ始めたきらきらさんに向けて吐き捨てるように言うと、ヨハンもまた鋭く左腕を振るった。
 その動きに伴って形状を瞬時に変えた闇は一部がまるで刃のように尖り、キッとヨハンが眼鏡越しに鋭く睨め付けた先の流れ星たち目掛けて飛来していく。
 がきっ、ばりん。
 金属めいたもの同士がぶつかり合うやや耳障りな音が響き、しかし黒き刃は確実に流れ星をひとつひとつ真っ二つにしていくではないか。

 それを見たオルハも、ヨハンの援護をすべく『ウェイカトリアイナ』をしっかり握ると、流れ星の操作に専念していたきらきらさんの綺麗な頭部を容赦なく狙いに行く――!
『……(困るな、そういうのは)』
「くっ……!」
 躱された穂先は地面に、だが即座に後方に一歩飛び退って体勢を整える。
(「今はフォローに徹しよう、タイミングが来たらヨハンが決めてくれる……!」)
 際限なく召喚される流れ星は容赦なくヨハンを襲う。少しでもそれを止めなくては。
(「……っ!? 気配が、大きく」)
 散発的に降らせていた流れ星を、まとめ上げて落とそうという気配。嫌な予感がした。
 オルハは思い切って前転で先程三叉槍の穂先が刺さった地面の上に立つ。すると突然、煌めく魔法陣が展開され、オルハにみなぎる力を与えてくれるではないか。
「まとめて――行くよっ!!」

 ――ごうっっっ!!!

 頭上でくるくると器用に回した槍を思いっきり魔法陣の中心に突き立てれば、光の矢が次々と魔法陣から生じて凶悪なる流れ星を迎撃していく。
「――ヨハン!」
「ええ、感謝します――【蠢く混沌(ケイオティック・ダークネス)】」

『……(な、に)』
 己の足元に広がる影、そこからぞぶりぞぶりとどこまでも黒い闇があふれ出てくる。
 それは、彼がこよなく愛する『映え』とはおよそ程遠い――恐るべきものであった。
 闇は螺旋を描くようにしゅるしゅると下から上へきらきらさんの身体に絡み付き、これでもかと強く締め上げ、気が済んだところでぽいっと地面に放り投げた。

●甘いものの効能
「……お腹が空いた」
「……はぁ。食欲があるのはいいことですけどね……」
 脅威がまだ去った訳ではなかったが、ひとまず自分たちの仕事はここまでと、オルハとヨハンが植え込みのブロックに並んで座りながら言葉を交わす。
「さっきのお菓子、後で回収しなくっちゃ」
「ええ……拾い食いとかしないでくださいよ……」
「まーたそうやって呆れた目を向けるー」
 苦笑いでそう言いつつ、先にオルハがすとんと立ち上がった。
「……さっきも機嫌悪かったみたいだけど、イライラには糖分が効くんだよ?」
「べ、別に……そんな事は」
 段ボール頭の怪人から渡された焼き菓子詰め合わせは、少し離れた茂みに今も隠されているはず。
「ヨハンにも、分けてあげるね」

 ――ああ、そんな目で、そんな顔で、そんなことを言われては。
 全てを許してしまうではないか!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

城島・冬青
【橙翠】

メリークリスマス!
メリークリスマス!
ミスターきらきら!!

クリスマスっぽく挨拶したくなりました

アヤネさん
この戦いが終わったら…一緒に遊園地で遊び倒しましょうね
志半ばで倒れそう?
そんなフラグは粉砕します!
あと遊園地は喜びますが怖がりはしませんよ?
お化け屋敷なんて冷静に演出を品評しちゃいますからね!
…あとカメラ泥棒には似てないと思います…

刀を抜き前へ
相手のギラギラ流れ星を警戒しつつある程度の距離を取って戦います
斬っては離れ斬っては離れのヒット&アウェイですね
炎が飛んできたら夜歩くでの高速移動で回避
というか遊園地で火遊びはいけませんよ!
すかさず衝撃波で反撃します
衝撃で炎が消えたらラッキーかな


アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
メリークリスマス
ミスター♪
坂本□一の曲を口ずさみながら
敵を一瞥
頭がガチャ石?

きらきらが好きなのネ?
僕も風景写真ならSNSにあげているよ
新宿南口の地上イルミネーションが今のシーズンはオススメだネ
とスマホを見せ
この冬はソヨゴと一緒にここを歩きたい

遊園地?
ちょっと考え
ソヨゴが怖がったり喜んだり><になったりするところが見られるならそれはきっと楽しい
いいよ
倒れない程度にがんばるネ

え?黒幕なの?
そう言えば映画泥棒に似ているから悪役かもしれない

遊園地で火遊びは危ないよネ
観覧車が転がり出したらどうするの?
UC発動
電脳魔法で一つ一つにイルミネーションを灯して
エレクトリカルパレード攻撃だネ
流れ星に対抗だ



●いきなりラストシーン
「ミファミシミ〜♪ ミファミファラファミファミシミ〜♪」
「メリークリスマス! メリークリスマス! ミスターきらきら!!」
 アヤネ・ラグランジェが口ずさむメロディーに乗せて、城島・冬青が切なげにきらきらさんに向けて手を伸ばす。茶番? いえいえ、オマージュです。

『……(何のつもりかな)』
 ほわほわと、やや訝しげに頭部を光らせるきらきらさんに向けて真顔に戻ると、冬青が説明した。
「クリスマスっぽく挨拶したくなりました」
『……(アッハイ、ドーモ)』
 自然と互いにやや上体を傾けてのお辞儀をしてしまう。そんな両者の様子を遠目に見ていたアヤネはぼんやりと「ガチャ石みたいな頭」などと思っていたとか何とか。

 さて、と一区切りついたところで冬青はアヤネの方に向き直り、その冷えた両手を取って胸の辺りまで持ち上げると、しっかりとアヤネの翠玉の瞳を見据えて言った。
「アヤネさん。この戦いが終わったら……一緒に遊園地で遊び倒しましょうね」
「ソヨゴ、僕にだって分かる。それは」
「志半ばで倒れそう? そんなフラグは粉砕します!」
 決してネタで死亡フラグを立てた訳ではない、冬青は心からこの後アヤネと楽しむ遊園地を楽しみにしていたのだ。
 アヤネはアヤネで、不意に握られた手から伝わる冬青の温もりが沁み入るようで何だか少し赤面してしまう。
「遊園地? うーん……」
 しかし口を衝くのは素直じゃない言葉の羅列。ああ、そういうとこだぞ自分――!
「……ソヨゴが怖がったり、目をバッテンにしたりするところが見られるなら、それはきっと楽しい」
「……遊園地は喜びますが、怖がりはしませんよ? お化け屋敷なんて冷静に演出を品評しちゃいますからね!」
「そいつはいい、やっぱり僕らはとても気が合うネ」
「もう!」
 どうして素直に「お互い楽しみだね」と結論づけられないのだろう。思わずアヤネの手を離して紅潮した己の頬に両手を当てる冬青。

『……(女学生同士は……一定の層に刺さるな)』
 きらきらさんが、そんなことを考えると同時に頭部がぴかぴか光った。

●映えは世界を救うか
 アヤネの手には最新機種のスマートフォン。機種変更をしたばかりとはいえ、データ移行は完璧で今まで撮り溜めたたくさんの思い出がしっかりバックアップされている。
 きらきらさんに端末をちらと見せるようにして、アヤネが口を開いた。
「きらきらが好きなのネ? 僕も風景写真ならSNSにあげているよ」
『……(ぴくっ)』
 明らかに、きらきらさんが反応した。だが、それに気付かぬふりでアヤネは隣に立つ冬青の方へスマートフォンの画面を見せた。
「新宿南口の地上イルミネーションが、今のシーズンはオススメだね」
「わあ、すごい……! アヤネさん、夜景撮るの上手ですね!?」
「カメラも進化したからネ、そのおかげもあるよ。この冬は、ソヨゴと一緒にここを歩きたい」
『……(うずうず)』
 ここでたまらず、きらきらさんがおずおずと二人の猟兵へと歩み寄った。異形の頭が迫る様は怯みそうにもなったが、それがかざすスマートフォンの画面に表示された文字を見て――冬青はアヤネの方を見て、アヤネはニィと笑って画面を向けた。

 ――少し、見せて下さい。

 その程度なら、お安い御用。次々画面をスワイプし、アヤネはきらきらさんにご自慢の画像をたんまりと見せてやった。
 しばらくして満足したのか、きらきらさんは深々とお辞儀をして再び距離を取った。
『……(ありがとう、アップしたらきっとバズる。それはそれとして、戦いの時だ)』
「えっ? 君が黒幕なの?」
「そうですよ!? 今更何言ってるんですか!?」
 妙なところで抜けているアヤネを、冬青が慌ててフォローする。ふーむと顎に手を当ててきらきらさんを見据えて、アヤネはようやく納得したような声を上げた。

「そういえば、カメラ泥棒に似ているから悪役かもしれない」
「……いや、カメラ泥棒には似てないと思います……」

●星を墜とせ、星と輝け
 きらきらさんの掌からあふれ出す銀河から、まずびっくりするほどギンギラに輝く流れ星が冬青目掛けて飛来した。
「――来ましたね!」
 冬青があらかじめきらきらさんと距離を取っていたのは決してドン引いていたからという理由だけではない。この攻撃を警戒してのことでもあったのだ。
 ある程度の間合いさえあれば、余裕をもって対処ができる。愛刀『花髑髏』を振りかぶって一刀両断、すぐ飛び退って次の流れ星の飛来に備えるヒット&アウェイである。
(「やっぱり、飛び散った破片から炎が」)
 残念ながら、斬って終わりではなかった。燃えさかる炎はいまだ尽きず、徐々に冬青に迫る。そうして、意志でも持つものかのごとく襲いかかって来ようとしたその時――!

「残念でした――【夜歩く】!」

 ごうっ! と炎が渦巻いたその中に、冬青の姿はなかった。一体どこへ? 25mほど後方だ。その手にはしっかりと『花髑髏』が構えられている。
「というか! 遊園地で火遊びは! いけませんよっ!!」
 ぶんっ! と思い切り振りかぶられた刀の一閃からはすさまじい衝撃波が放たれ、一直線に駆け抜けていき――両断された炎の塊は、たちまちのうちに霧散したのだった。

「そうそう、遊園地で火遊びは危ないよネ」
『……(は、花火とかあるしセーフでは)』
 お前のそれは全然セーフじゃない。それはさておき、今度はアヤネが小さな流れ星の大群をどうにかする番だ。
「観覧車が転がり出したらどうするの?」
 まるで指揮者が指揮棒を振るように、すいとアヤネが両手を恭しく動かした。
 すると、足元からたちどころに小さな機械兵たちがぞろぞろと現れたではないか。
 指揮棒や魔法の杖へ、機械兵たちの頭上でくるりと輪を描けば、無骨な造りの機械兵に色とりどりの光が宿る。
『……(そ、それは)』
「エレクトリカルパレード攻撃だネ、これで君の流れ星に対抗だ」
 どかん、どっかん。相討ちになるように儚く散っていく流れ星と機械兵の姿は、しかしとても美しく。

 しまいにはきらきらさんが攻撃の手を止めてしまうほどに、美しかったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

薄荷・千夜子
映える……写真?
何かクリスマスっぽいことをすれば良いのでしょうか?
と、いうことでメカサンタさんの代わりにサンタ衣装ー!(サンタ服JCで登場)
ダンボールさん追いかける時から着てればよかったですね(遅い)

それでは、サンタさんから綺麗な鈴の音をプレゼント!
『操花術具:神楽鈴蘭』をシャンシャン鳴らし、クリスマスベルの代わりに
ちょっと和風じゃない?とかのクレームは受付ませんよ!
そして、鈴の音とともに雪の代わりに真白の花を
UC発動
素敵で楽しいクリスマスを皆で過ごすのです
そんな【祈り】を【破魔】の白花に乗せて
花嵐とともにキラキラさんも【吹き飛ばし】てしまいましょう!


ビスマス・テルマール
その願い自体はわたしも解ります、わたしにも全ての世界になめろうの可能性の布教と

『【青魚】だけが、なめろうじゃないっ!』と言う事を広めたい願いがありますし

わたしの原点のなめろうも鮪を使いますからね……ですが

万が一にもフォーミュラを召喚されたら世界が大変ですから

⚫POW
『早業』で攻撃力重視でUC発動

『第六感』で怪人のUCを『見切り』『属性攻撃(雪)』を含んだ『オーラ防御』を込めた実体『残像』を置いて回避しながら低空で『空中戦』を『水泳』する様に『ダッシュ』で撹乱し

『属性攻撃(なめろう)』と『怪力』を込めた【鮭キック】
で『2回攻撃』し『早業』でなめろうフォースセイバーで切り抜け一撃離脱を繰り返しを





●メリークリスマス、ショーダウン!
 怪人たちが求めたのは『新しいオブリビオン・フォーミュラ』。これがなくては怪人としては新しい仲間が増えない、人手もそうだし、『映え』を共有する仲間も足りない。
 故にこんな事件が起きてしまったのだが、実現するかしないかは別として、猟兵としては捨て置くわけにはいかないこの案件。対処すべく続々と増援がやって来る。

 一人目、ビスマス・テルマール。共感の心できらきらさんと対峙する。
「その願い自体はわたしも解ります、わたしにも全ての世界になめろうの可能性の布教と」
 ――世界中に、広めたいものがある。それは、ビスマスも同じだった。
「『【青魚】だけが、なめろうじゃないっ!』と言う事を広めたい願いがありますし」
『……(食べ物か、映えるな)』
 地味にきらきらさんが話題に食い付いたことに、果たしてビスマスは気付いただろうか。
「わたしの原点のなめろうも鮪を使いますからね……」
『……(それは、ねぎとろとどう違うのか)』
「ですが!」

 きらきらさんのぴかぴかの頭部をよぎっていった疑問は、ビスマスの強い宣言に遮られた。でも、それで良かったのかも知れない。下手につつくと大演説が始まる案件だったかも知れなかったのだから。

「万が一にもフォーミュラを召喚されたら世界が大変ですから、ここで止めますっ!!」
 そうして、戦いの火蓋が切って落とされようとした――その時だった。
「すみませーーーん、ちょっとトップ出演とか色々あって遅れましたーーーっ」
 二人目、薄荷・千夜子。どこに出しても恥ずかしくないサンタガールの衣装が眩しい。
「あっ、あなたも変身の使い手……!? でも、流派が(放映時間帯的な意味で)少し違うような……」
「いやー、映える写真とか、何かクリスマスっぽいことをすれば良いのかなということで!」
 メカサンタさんの代わりに、と自らがサンタ衣装を身に纏い馳せ参じた千夜子の姿は、女の子らしいフリル盛り盛りのミニスカートやニーハイソックス、ケープや帽子を飾る装飾品もオーナメントがモチーフとなっており、デザイナーのセンスが光っていた。
『……(お前が一番映えるわ!!!)』
 口元(らしき箇所)を押さえたきらきらさんの頭部はめっちゃ青く光っていた。アッこれは感情を激しく揺さぶられた時の反応ですね。
「段ボールさん追いかける時から着てればよかったですね!」
「いえ、今このタイミングだからこそ良いんだと思いますよ」
 テヘ、と舌を少しだけ出す千夜子に、ビスマスが透き通った青い瞳で笑む。
「少しくらい夢を見させてあげるのも、悪くはありませんね。それはお任せします――ではっ!!」
「あっ、ビスマスさん!?」
 千夜子を置いて、ビスマスがきらきらさん目掛けて走り出した!

●なめろう、奥が深い
「『Namerou Heart Omaguro!』海と沖膾の鮪の覇者は今此処に、オーマグロ転送!」
 ビスマスさんは一部の例外を除き、基本的に敵の先手を取って変身(ユーベルコード発動)することができる。何故ならそれは、ビスマスさんが変身ヒロインだから――!
 今もこうしてきらきらさんが感極まっている隙を突き、地を蹴って華麗に空中で一回転。三点着地と同時に謎の天からの光がビスマスを包み――腕を、胴を、頭を、鎧装が包み込む!
 立ち上がると同時に謎の爆発が背後で起き、装備の布部分がばさばさと揺れる。装備品は『蒼鉛式ご当地ビーム砲』と『ご当地キック用ビスマスブレード』。神秘遠単怒りと術式近単フィニッシュですねわかりました。ガチですね。
『……(しまった)』
 慌ててぐいっと銀河を開き、燃えるギラギラの流れ星を喚び出すきらきらさん。オーマグロとなったビスマスはその鎧装から六花の結晶――雪をきらめかせて、まるで自分をそこに『置いていく』感覚ですっと地を滑るように後方へと移動した。
 そこにはまるで、ビスマスが『二人』。降り注ぐギラギラの流れ星は手前側のビスマスを思い切り押し潰すように降り注ぐも、本体は後方に下がった方。
 次弾が到達する前にぐぐっと身を屈めると、一気に自らが弾丸のように――いや、水の上を滑る魚類のように、きらきらさんの懐に潜り込んだのだ。
『……(早いっ)』
「なめろうの力――見せてあげますっ!!」
 ――鮭も、なめろうにできるのか。新たな知見を得た、という顔をその場の(ビスマス以外の)皆がしたという。振るわれた鮭の力を宿した『なめろうフォースセイバー』は、そのサーモンピンクの刀身を思いっきりきらきらさんの胴体にめり込ませた。

●和洋折衷、チヨコサンタの贈り物
「う、うわあ……何だか大変なことになっちゃいましたね」
 事の成り行きを呆然と見ている他なかった千夜子だったが、自分も呆けてはいられないと背負ってきた大きなプレゼント袋をよいしょと担ぎ直した。
『……(う、うう……酷い目に遭った)』
「それでは、そんなあなたにサンタさんから綺麗な鈴の音をプレゼント!」
 よろよろと腹部を押さえて立ち上がるきらきらさんに向けて、千夜子が天高くかざしたのは『操花術具:神楽鈴蘭』だった。
「クリスマスベルの代わりに――」
 鈴蘭の形をした神楽鈴は一見和の雰囲気を纏っており、クリスマスベルと呼ぶにはいささか無理があるような……その……。
「そこ! 『ちょっと和風じゃない?』とかのクレームは受付けませんよ!」
『……(そうだよなあ、これはこれで映えるからいいじゃないか)』
 むしろきらきらさんの方がノッていらっしゃる。ああっ、呑気にスマホカメラ構え出した! あれ!? 流れ星で攻撃しなくていいんですか――!?
(「攻撃して来ませんね……? それじゃ、遠慮なくっ)」

 ――しゃん、しゃん、しゃん、しゃん。
 ――咲き乱れて、破魔の鈴。雪の代わりに真白の花を。

「【操花術式:花神鈴嵐(ソウカジュツシキ・カガミスズラン)】っ!!」

 素敵で楽しいクリスマスを、皆で過ごすのです。
 チヨコサンタの祈りと願いは鈴の音と共に、巻き起こる破魔の白花の花嵐できらきらさんを押し包む。
『……(ああっ……映えている……誰か、撮影を……)』
「いやいやいやいや、少しは反省して下さいー!?」
 花の嵐に巻き上げられて天高く舞うきらきらさんは、落ちかけた夕暮れの空にきらめいて。偶然目撃した来園客たちから、こっそり撮影されていたという。

「ふぅ、これでひとまずは……」
「千夜子さん、思わぬ強敵の登場ですよ」

 息を吐く千夜子に、鎧装を解いていないオーマグロことビスマスが小声で告げる。
 自分たちを遠巻きに指さし、中にはこちらに寄ってこようとする来園客の姿が――!
 このままでは危ない、まだ戦いは終わっていないのだ!
 二人は大慌てで、即興のヒーローショーの体で別の場所へと来園客を誘導したのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

インディゴ・クロワッサン

「メカサンタ防衛戦は終わっちゃったか…」
ま いーや 防衛戦得意でもないし
【SPD】
「きらきら光るお空の星…みたいなオブリビオンだねぇ」
UC:舞う藍薔薇 で敵の流れ星を避けながら
「あんまりそれ…使ってほしくないなぁ」
なんて呟いたら、拷問具:嘆きの金糸雀をチリリと鳴らして、UC:咎力封じ を発動させるよー
「ま、動けない訳じゃないから良いよね!」
そうしたら、鎖付き短剣:Piscesの鎖を【ロープワーク】でオブリビオンの身体に巻き付けて、僕が跳んでくよー!
「あっは♪受け止めてね!」
そう言いながら、UC:絶える事無き血の渇望 を発動して、オブリビオンに抱き付くよ!
どさくさに紛れて啜っておこうっと!


ヘスティア・イクテュス
あら、綺麗な頭のオブリビオン…
頭部が輝いてるわね!頭部が輝いてるわね!!
あの首取ったら10連に使え…

相手が流れ星ならティターニアをフルドライブ!【空中戦】
流れ星、つまりデブリ…デブリはスペースノイドにとっての敵よ!
きらきら流れ星に対抗してフェアリーズを展開
妖精と星によるダンスを奏でましょうか!

フェアリーズはアベルに操作を一任
そして二つで潰し合ってる間にミスティルテインで牽制射撃をしながら接近
首を狙ってビームセイバーで!
ツリーにその首吊るせばSNS映えはしそうね



●日が落ちて参りました
 ゴロゴロ転がる段ボール頭の怪人たちは、最早何も言わない。
 彼らは『ボス』が倒されれば、いずれ後を追って在るべき場所へと還るのだろう。
(「メカサンタ防衛戦は終わっちゃったか……」)
 結わいた藍色の長髪を揺らして、やや遅れてエントランス広場にやって来たインディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)が、そんな景色を見渡して独りごちた。
「ま、いーや。防衛戦得意でもないし」
 段ボール頭たちに一瞥くれると、己もまたきらきらさん討伐に参戦すべく駆け出した。

『……(コスプレメカ少女……フェスで良く見る風物詩だ)』
「あら、綺麗な頭のオブリビオン……」
 一方のヘスティア・イクテュスはご自慢のジェットパック『ティターニア』がまさかコスプレ道具扱いされているとも知らず、きらきらさんの頭部を素直に褒めた。
 ヘスティアの藍色の瞳が、きらきらさんの明るい青の光を受けて不思議な揺らめきを見せる。何やら考え事をしているのか、怪人の頭部はぴかぴか明滅していたのだ。
 そんな様子をしばし見守っていたヘスティアが、とうとう堪えきれないといった様子で声を上げた。
「――頭部が輝いてるわね! 頭部が輝いてるわね!! あの首取ったら十連に使え……」
「おっとそれは七色に光るやつだよね、あれはあくまでも青一色だからちょっと」
 お目々をぐるぐるさせて支離滅裂な発言に及ぼうとしたヘスティアを、背後からその小さな肩に手を置いてインディゴが笑顔で止める。そう、それ以上はいけない。
「あ、あら、もちろん冗談に決まってるわよ嫌ねえ」
 オホホホ、と乾いた笑いで誤魔化しながらヘスティアがその長い髪を一度後ろになびかせると、それでも戦って倒すことには変わらないけれどと不敵に笑う。
「きらきら光るお空の星……みたいなオブリビオンだねぇ」
 とんとん、と黒のブーツのつま先で数度地面を叩くと、インディゴもまた臨戦態勢へ。
『……(世界中をきらきらさせる……この夢のために)』
 そして対峙するきらきらさんもまた、ぐいっと掌中より銀河を広げて星を喚んだ。

●どうしてこいつから血を吸おうと思ったんですか?
 生み出された銀河から最初に姿を現し、ぐわっとインディゴ目掛けて降ってきたのは――ぴかぴか光る凄まじい質量の流れ星。直撃などしようものなら、ひとたまりもない。
 インディゴは一度強く地を蹴ると大きく跳躍し、間一髪で光る隕石の強烈な一撃を回避する。広場の地面に蜘蛛の巣状の派手なヒビが入ったが、後できっと何とかなるはずだ。
「あんまり『それ』……使ってほしくないなぁ」
『……(どういう、ことだ)』
 インディゴのそれはあくまで独り言であったし、怪人のそれはそもそも言葉になっていない。よって、問答は成立することなく戦いは続いていく。
 まずは、あの物騒な隕石をどうにかしないといけない。インディゴは愛用の『嘆きの金糸雀』たる名を冠した拷問具をチリリと鳴らし、おもむろにきらきらさん目掛けて仕掛けを放つ!
『……(くっ、この)』
「ま、動けない訳じゃないから良いよね!」
 きらきらさんのしなやかな胴体に喰らい付いて動きを鈍らせる手枷やら拘束ロープやらが何だかちょっとけしからん雰囲気を醸し出しているのは気のせいだろうか。
 怪人が次の流れ星を喚べぬことを確認したインディゴが、いよいよ仕上げにかかった。鎖のついた短剣『Pisces』を取り出すと、一対二本のうち一本を鎖の重しもかねて思い切り投擲する!
『……(しまっ、た)』
 ジャラララララッ! と鎖は遠心力の助けを借りて、一気に怪人の身体にぐるぐると巻き付いた。インディゴが試しにグンと一度引っ張っても、ほとんど動かない程に。
「いいじゃん――あっは♪ 受け止めてね!!」
 鎖の先端を持ったインディゴの金の瞳が妖しく光り、一気に跳躍して怪人に迫るその気配は明らかに『ひと』のそれとはかけ離れており――。
 がしっ! とオブリビオンに抱きついたのは、決して道楽のためだけではない。
 これは【絶える事無き血の渇望(モード・ヴリコラカス)】による逃れがたき吸血のための――儀式なのだから。
『……(何を、考えて)』
「首から下が人間ってことは、流れてるんでしょ? 血」
 そうインディゴが言うのと、ぞぶりと鋭い歯が首元に突き立てられるのとはほぼ同時。
(「どさくさに紛れて啜っておこうっと!」)

●でもこういうオーナメント本当にありますよね
(「うわあ、エグいことになってるわね……」)
 本能のままに動くインディゴの様子に若干引きながらも、ヘスティアもまた己の役割を忘れない。いまだ中空に開かれたままの作り物の銀河からは、ちいさな流れ星の大群が飛来しようとしていた。
「相手が流れ星なら……ティターニアをフルドライブ!」
 対するヘスティアは飛行ユニット『ティターニア』を展開し、自らも宙を舞う。
 ほぼ日も落ちようとしている中、遊園地内にはぽつぽつと照明が点き始めていた。
「流れ星、つまりデブリ……」
 いよいよ迫る小さなきらきらの流れ星を見据えて、一切の容赦なくヘスティアが告げる。
「デブリは――スペースノイドにとっての敵よ!!」
 一度胸元で交差させた両腕を思い切り広げれば、ヘスティアの周囲を大量の妖精型ドローンが展開される。それら全てには、最新鋭のビーム砲が装備されていた。
『……(はっ、映えの予感)』
 インディゴに血を吸われながらも、愛する『映え』への情熱は忘れない怪人がヘスティアの方を見上げた――ように思われた。
「さあ、妖精と星によるダンスを奏でましょうか!」

 ヘスティアに常に付き従うサポートAI端末『アベル』――正式名称『ティンク・アベル』も健在だ。今日も忠実に『お嬢様』の手足となって働くのだ。
「『アベル』、フェアリーズの操作は任せます」
『かしこまりました、お嬢様。お気を付けて』
 そう言うと、一度ヘスティアは戦闘空域を一気に離脱したではないか。残されたフェアリーズは、AI執事アベルの指示のもとひとつにひとつぶつかりあい、きらめいて消滅していく。
(『この戦い方はあくまでも時間稼ぎ、お嬢様……ご武運を』)
 そんなアベルの願いを背に、ヘスティアはビームセイバーを手に怪人本体に迫る。
「ねえ、そろそろ満足でしょう? 私にもやらせてくれないかしら!」
「ちぇー、しょうがないなぁ」
 ヘスティアの悪戯っぽい声に、やれやれと怪人に組み付いていたインディゴが離れる。
 よろりとなりながらも、しかし踏み止まったきらきらさんの首を狙って――!

「ツリーにその首吊せば。SNS映えはしそうね!」
「うっわ、この子も結構キてるぞお」
『……ッ!!』

 ビームセイバーの軌跡が描かれ、哀れきらきらさんの頭部がクリスマスツリーのオーナメントの仲間入り……かと思われた。
「……ちっ」
 心底悔しそうな、ヘスティアの舌打ちが聞こえた。お嬢様、お口が悪うございますわよ!
 よろよろと不安定な足元は、悪運強くビームセイバーの切っ先を間一髪躱したのだ。

『……(死ぬかと、思った)』
 正直、その時はもう遠くないんですけどね……!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

桜雨・カイ
第一章では色々と悩ませてしまって申し訳ありません。でも考えていたイメージで描写されていたので個人的には満足です、ありがとうございました。

◎●
世界をきらきらさせるのは良い…のですが、それをオブリビオン・フォーミュラにつなげるのはダメです、穏便に行きましょう穏便にっ。

きらきらしたものはないのですが、冬の桜吹雪なら少しは「はえる」写真にならないでしょうか…?
【花嵐】発動
桜吹雪を辺り一面に咲き散らします。
あ、もちろん攻撃もします。
桜吹雪は流れ星にぶつけ攻撃します。

その間に「念糸」を張り巡らせ、きらきらさんの手を拘束します。これでももう召喚は行えないですね
後はそのまま桜吹雪で攻撃します


有栖川・夏介

……きらきらしてますね。率直に言って、眩しい。
ふむ、先ほどのダンボール怪人たちが「映え」がどうのと言っていたのはこういうことだったんですね。
黒幕の姿を見て納得。

こうもきらきらされていると、闇に紛れて背後から首を刎ねる…なんて暗殺めいた真似は難しそうですね。
敵は「映え」というものを気にしているようですし、こちらもいっそ派手に動いたほうがいいか…?
「……そうですね、花なんていかがでしょう?」
そう言ってUC【血を欲す白薔薇の花】で白薔薇の花びらを展開。

「雪のように真っ白でしょう?……貴方が倒れる頃にはきっと紅く色づきますよ」
色の変わる花、なんて「映え」てるでしょう?(真顔)



●それは、優しいエピローグ
 先程の猟兵たちはとんでもなくぶっ飛んでいたけれど、血の吸い方はとても手慣れたものだったのか。牙を離されればすぐに血は止まり、服などを汚すことはほとんどなかった。
 だが、ここまで蓄積されたダメージは正直大きい。もう、立っているのもままならない。
 怪人は――きらきらさんは、その頭部の煌めきも、命の輝きさえも。
 最早、風前の灯火であった。

『……(諦めない、世界中をきらきらさせるまで、決して)』

 道を照らす照明が灯され始めたが、イルミネーションにはまだ早い、そんな頃合い。
 桜雨・カイと有栖川・夏介の二人が、きらきらさんと向かい合う。
 二人は気付いただろうか、きらきらさんの様子に。ともすれば、最早手を下すまでもないくらいに弱り切った、それでも希望の光を絶やさないその姿に。
「……きらきらしてますね。率直に言って、眩しい」
 目元に掌をかざすように言うのは夏介だ、この死に体とも言える身体のどこにこんな気力があるのだろうと驚きもしつつ。
(「ふむ、先ほどの段ボール怪人たちが『映え』がどうのと言っていたのはこういうことだったんですね」)
 段ボール頭たちから『ボス』と慕われていた黒幕たるきらきらさんの姿を見て、夏介は一目で納得した。なるほど――頭部が物理的に眩しい。あと、確かに見映えが良い。
「世界をきらきらさせるのは良い……のですが、それをオブリビオン・フォーミュラにつなげるのはダメです」
『……(ダメ、とは)』
 カイもまた怪人に向けて無駄を承知で声を掛ける。もっとこう、方法があるのではないかという気持ちが捨てられなかったのだ。
「そう、穏便に行きましょう! 穏便にっ!」
「……穏便に」
 そんなカイの懸命な言葉に、夏介は思う。
(「闇に紛れて背後からひと思いに首を刎ねるのが一番妥当かと思ったんですが」)
 こうもきらきらされていると、そんな暗殺めいた真似はなかなかに難しそうだ。
 それにしてもここに来て一気にその首を狙われるようになりましたね!?

 ふむ、と顎に手を当て考える余裕はありそうだと思案する夏介に、カイが突然振り向いて話しかけたものだから内心ちょっとびっくりした。
「あの、きらきらしたものはないのですが……冬の花吹雪なら少しは『はえる』写真にならないでしょうか……?」
 カイの言葉に夏介は一度目をぱちくり。そして、すぐに合点がいった。
(「敵は『映え』というものを気にしているようですし、こちらもいっそ派手に動いたほうがいいか……?」)
「……そうですね、良いと思います」
 普段はあまり感情の起伏を表に出さない夏介が、うっすらと柔らかく笑んだのを、カイは確かに見逃さなかった。
 ひとでありながらこころを殺すものと、ひとにあらずしてこころを想うもの。
 それらは確かに、今こころを同じくして――花の嵐を喚ばんと決めたのだ。

『……(きらきらの流れ星よ、どうか私の願いを叶えておくれ)』
 ばっ、と両手を大きく広げれば、きらきらさんが宙を切り裂くように銀河を生み出す。その向こうには、無数の小さなきらきらの流れ星が光っていた。
「――では、行きましょう」
「――はい、いつでもどうぞ」
 きらん、きらきら。夜空が瞬いたと思ったその刹那、一斉に流れ星がカイと夏介目掛けて落ちてくる!
「貴方への手向けとして、花なんていかがでしょうか?」
 まずは夏介がすいと処刑人の剣を天高く掲げると、それは一瞬のうちに眩い光に包まれ――白き薔薇の花弁と化して一面に散ったのだ。
『……(お、おお……)』
「『映え』は、まだまだ続きますよ」
 白薔薇の嵐にすっかり魅了されていたきらきらさんを呼ぶ声はカイのもの、構えたなぎなたの刀身から解けるように変じていくのは――薄紅色の桜の花弁だ。

「「――舞い踊れ」」

 白薔薇と桜とが、渦を巻いて降り注ぐ流れ星を包んでは煌めきと共に消し去っていく。
『……(ああ、何という……何という……)』
 己の攻撃がことごとく打ち消されているというのに、その事実よりもむしろ眼前に広がる『映え』の極地たる光景に、きらきらさんは膝を突いて打ち震えるばかりであった。
 愛用のスマートフォンで撮影することさえ忘れているようだ。本当に心を震わせる物事に遭遇すると、それどころではなくなってしまうのだろうか。
(「今のうち、『念糸』で拘束させてもらいますね」)
 しゅっと巧みな手さばきで、そんなきらきらさんの両手を抵抗できないように縛るカイ。
 これで、新たな流れ星の召喚は行えないだろう。

 流れ星をすべて消し去った花弁たちが次に向かうのは――きらきらさん本体。
 そっと目を閉じるカイの横に並ぶ夏介は、特にこれといった感慨も持たずただそこに在った。――少なくとも、見た限りでは。その胸中を、この処刑人は容易く見せぬのだ。

『……(ああ……きれいだ、素晴らしい……)』
「雪のように真っ白でしょう? ……貴方が倒れる頃には、きっと紅く色づきますよ」
『……、……』

 さああぁぁぁ……と、薔薇と桜とが文字通りの花嵐を巻き起こして、怪人の姿を覆い隠す。白と薄紅のグラデーションだったものが、夏介の言の通りに次第に赤みが強まっていく。それはつまり――きらきらさんの命の輝きと引き換えということであった。

 召喚された超常の花弁たちが去ったあとには――何も残らなかった。
 きらきら頭の怪人も、段ボール頭の怪人たちも、何も残らなかった。
 クリスマスの遊園地に、遂に平和が取り戻されたのだ。

「……」
 だが、カイはそっと目を閉じて骸の海へと還った怪人たちの安らぎを祈る。
 そんなカイを、夏介は見て見ぬ振りをして再び本来の形を取り戻した剣を手に取った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 日常 『テーマパークで宝探しイベント!』

POW   :    目についた所を片っ端から探す

SPD   :    あたりをつけて素早く効率的に探す

WIZ   :    ちょっと変わったユニークな方法で探す

イラスト:pico

👑5
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●わくわくキマイラランドでプレゼントをもらおう!
「リョウヘイサン、ホントウニアリガトウゴザイマシタ!」
「コレデアンシンシテ、プレゼントをオワタシデキマス!」
 機械音声が愛らしいメカサンタたちは、メカソリを飛ばして大喜び。
 この時のために今まで頑張ってきた猟兵たちも、当然大喜びだ。

「さあ、メカサンタ! プレゼントを――」

 そこで、ある猟兵にスッと何かのメモのようなものが手渡された。
 訝しみながら開いてみれば、暗号めいた文章が書かれているではないか。

『ティーカップ乗り場の植え込みの中』

 これは、どうやら書かれている場所に各自が欲しいと願うプレゼントが隠されているということだろうか。
 直接手渡しされてめでたしめでたし、と思っていた者たちは思わずええー、と声を上げるが、既にメカサンタは全員分のプレゼントを書いた場所を用意したようだった。

 仕方ない、園内散策も兼ねて付き合ってやるとしよう。
 君たちは、メモを手に園内へと散っていった。

●ご案内
 ・プレゼントの隠し場所はプレイングで指定して頂いて大丈夫です。お任せでも可。
 ・プレゼントの内容はメカサンタが頑張れそうな範囲でお願いします(笑)
 ・この章のみ、プレイングでお呼びが掛かった時のみニコが登場します。お気軽にご用命下さいませ。
 ・この章のみのご参加、大歓迎です。是非、ご一緒にクリスマスを楽しみましょう!

●プレイング受付期間
 初日は「12/28(土)8:31から、6名挑戦中になるまで」とさせて下さい。
 次の日からはMSページとツイッターで随時ご連絡差し上げますので、
 お手数ですがご確認頂いた上での分割送信に、何卒ご協力下さいませ。
●補足:プレゼントを探す行動について
 PSWの選択肢は無視して、ご自身が『ここに隠されていて欲しい』という場所を指定して頂くだけで大丈夫です。
 残りの文字数は、他の心情や行動に回してあげて下さい。よろしくお願い致します。
●大事な補足:遊園地内のシチュエーションについて
時間帯は夜で、園内で一番大きい広場には大きなクリスマスツリー、
それをはじめとした園内全てにイルミネーションが飾られています。
シャルロッテ・ヴェイロン
あぁ、なんでか知りませんが、唐突に謎現象に巻き込まれちゃいましたよ(前の章でプレイングをはじかれちゃった人)。
――で、怪人たちは片付いちゃいましたか?んでもって今度は宝さがし?
――まぁいいでしょう。この際ですからもう少し楽しんでいきましょうか。

〇希望するプレゼント
(前にメカサンタにも告げた)「最新式のゲームデバイス」
〇隠し場所
ゲームコーナーの景品展示用の棚(ご丁寧にほかの景品に紛れているように隠されている)

――あとはまぁ、時間の許す限りテキトーに楽しんでいきましょうか。

※アドリブ・連携大歓迎です。



●もうひとつの、ゆずれない戦い
 猟兵たちが怪人どもとすったもんだしている最中、舞台であるエントランス広場こそ大騒ぎだったが、一度園内に入ってしまえばそこはいつもの遊園地。
 クリスマス特別イベントなるものもたくさん催され、お祭り騒ぎだったのだ。
 園内を練り歩くパレードをはじめ、屋内外でさまざまな企画が催され、園内放送でも大々的にアナウンスが行われていた。
 猟兵たちは基本的に怪人たちにかかりきりだったのでそれに気付くことはなかったが、唯一シャルロッテ・ヴェイロンのみが耳敏くとあるアナウンスを捉えたのだ。

 ――50vs50の大戦争! 今、キマイラフューチャーで話題のアクションPvPの公式大会をやっちゃうよ~☆

「……まぁ、100人同時対戦とは随分と大規模なゲームシステムですね。少し見るだけなら大丈夫でしょう」
 ちょっとだけだから。これが盛大なフラグだった。いざ現場に顔を出してみれば参加者に欠員が出たとか聞こえたものだから、気がつけばシャルロッテはバッチリヘッドセットをして愛用のマウスを持ち込んでスタンバイ。初見のゲームだがまあ何とかなるなる!

 ――Fight it out to survive!!

 力強い戦闘開始のメッセージと同時にわっと盛り上がる会場。シャルロッテが操るアバターは小柄な身の丈の割に巨大な両手斧を持った少女。
(「敵も味方も50人いれば、役割分担が重要ですね。幸い、後方支援は別の人が担当してくれているようですから……」)
 マウスの左クリックひとつで選択しているスキルが繰り出されるようだ。どうやらこのアバターは攻撃力に特化したパワーファイターと見える。ならば、為すべきことはひとつ。「おおっと、青チームここで怒濤のBOXだ!」
「隙を見せた相手から確実に捕まえてキルしていきますねー」
「数的不利は致命的! 流れは一気に青チームへと傾いていきます!」
 近接職同士の激突を、隙を見てスタンで動きを封じた味方に合わせて周囲の味方が攻撃を被せて打ち消してしまわぬようタイミングを見ながら、敵のHPを削り切っていく。
 キルを取れば画面上部に誰が誰を倒したというログが出るのだが、会場の人々の目にひときわ印象的に刻まれたのは――『AliceCV』の名。
 ワンゲーム終わってみればシャルロッテ所属の青チームが快勝、個人成績でもキルランキングでぶっちぎりの一位を取り、またひとつその名を知らしめてしまった。
 あくまでイベント、ということでゲーム非売品グッズをもらった程度だったが、まあまあ楽しめたと会場を後にし――シャルロッテははたと顔を上げた。

「――で、怪人たちは片付いちゃいましたか?」
「アリガトウゴザイマス、オカゲサマデジケンカイケツデス」
 ちょうど目が合った宙に浮くメカサンタに問えば、首肯と同時に何から紙切れが渡された。ミントグリーンの紙は、丁寧に折り畳まれていた。
「んでもって今度は宝探し? ――まぁいいでしょう、この際ですからもう少し楽しんでいきましょうか」
 かさり、と紙切れを開くと、中には一言『ゲームコーナーの景品展示用の棚』と書かれていた。場所は――先ほどのゲーム大会があった所とほぼ同じだ。
「あれっ、君は……! さっきは凄かったねえ、初見とは思えないセンスだったよ」
 撤収作業中と思しきスタッフに声を掛けられ、にこりと笑みだけで返すシャルロッテ。何しろ、ようやく念願のクリスマスプレゼントが貰えるのだ。気も急くというもの。

(「――あれ、かしら」)
 常設されているゲームコーナーの横に、山と置かれた景品たち。一見しただけでは、どれが自分宛てのものなのかさっぱり分からない。
 ――いや、他の景品に紛れるように、しかしそれ故に不自然さが目立つあのトランプのスートをプリントした包み紙の箱は。
「シャルロッテ・ヴェイロン様ですね? お待ちしておりました」
「!」
 妖狐とはまた異なる、狐がベースと思われるキマイラの女性がまさにその箱を丁寧に取り出すと、シャルロッテに向けてそっと差し出してくれた。
「メカサンタさんから伺っております、どうぞ――『最新式のゲームデバイス』です」
「……っ」
 受け取った箱は、想像以上に大きかった。マウスやヘッドセットにしては、明らかに過剰梱包だ。キーボード? ううむと唸りながら、丁寧に包装を解くシャルロッテが目にしたものは。

「な……何、これ……」
 箱の中には、伸縮性のある生地でできた『何か』があった。手触りだけではさっぱり分からないので取り敢えず引っ張り出すと、それは人間の形をしていた。

『ゲーミング着る毛布の最新バージョンです 風邪に気を付けて下さいね』

 そんなメッセージカードが添えられていた。メカサンタが書いたのだろうか。
 そりゃあ確かに『最新式のゲームデバイスが欲しい』とは言ったが。まさか誰が着る毛布を寄越されると思うだろうか。
「まぁ確かにゲーミングマウスは手の大きさとかいろいろあるから最新式=手に馴染むとは言えないかも知れないけれど……だからって、こう……」
 むにーん、とよく身体に馴染みそうなゲーミング着る毛布を引っ張りながら、シャルロッテは首を捻り続ける。確かにこれは暖かそうだが、着た時の見た目がなかなかアレだ。

 だが、いつまでもそうしていても仕方がないと意を決して毛布を畳み小脇に抱えたところを、呼び止める声があった。
「お嬢さん、これからスキル調整テストをやるんだけど、少し協力してもらってもいいかな?」
 先ほどのゲームのスタッフだ。これは、余程気に入られたと見える。悪くない。
(「そうね、時間の許す限りテキトーに楽しんでいきましょうか」)
 ふふ、と笑ったシャルロッテは、やるからにはビシバシ意見してくれようと意気込んで試遊台の方へと向かっていった。ゲーミング着る毛布と共に。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
目的地はティーカップネ
そこまで寄り道しよう

ジェットコースター
落ちる瞬間もずっとソヨゴの顔を見ているけど
全然怖がらなくて残念
やっぱりネ
と苦笑
いや楽しそうにしているのは好き

次は…なんだアレ?
絶凶戦慄病院って前はなかったけど
嫌々ながら入る
ソヨゴにぴったりくっついて進む
大丈夫じゃない
研究所とか病院は苦手
ゾンビに襲われてキャー!と悲鳴をあげてしがみつく
ううう情けない
僕のイメージが崩れる

ティーカップ乗り場で
赤い薔薇の花束を見つける
ソヨゴにプレゼントだよ

花言葉は
いつも貴女を愛しています

こんな豪華な花は初めて見た
僕も花を贈られるなんて初めて
ありがとう

二人して顔を見合わせて笑う
メリークリスマス!


城島・冬青
【橙翠】

ジェットコースターで大騒ぎ
ひゃっはー!楽しー
あ、ごめんなさい
騒ぎすぎですね

お化け屋敷は病院ですか
ワクワク!
中は暗いから手を繋ぎましょう
怖いのも平気
面白いですね
というか
アヤネさんはこういうの
鼻で嗤いそうなイメージあったんですけど…大丈夫です?
今からだと戻るのも時間かかりますし
このまま進みましょう
目を閉じてしがみついてて下さい
私が進みますので

大丈夫ですよ
何があっても守ります


アヤネさんが花束を見つけるのと同時に私も花束を発見
ストレリチアのブーケです
鳥さんみたいな花でしょう?
花言葉は輝かしい未来
貴女に沢山の幸運を

ありがとうございます
薔薇の花束とか貰うの初めてです
良い香り…
えへへ
メリークリスマス



●プレゼントをもらおう!
 無事に任務を果たしたアヤネ・ラグランジェと城島・冬青の二人にも、メカサンタからのメモは届けられた。
 同時に受け取って、同時に紙を開き――そして、二人は同時に口を開いた。
「「ティーカップ」」
 綺麗にハモった互いの声に思わずフフッと笑みを漏らせば、どちらともなくその手を取って遊園地の中心へと走り出す。
 せっかくの遊園地――しかも念願の相手と二人なのだから、ちょっとくらい寄り道したってプレゼントは逃げないだろう。だから、少しだけ待っていてね。

●観察するアヤネさん
 そびえ立つ鉄のレールの上を激走するのはジェットコースター、寒空の中でも不動の人気を誇り、ちょっとした行列ができていた。
 待っている間にも先行して搭乗した来園客の歓声やら悲鳴やらが聞こえてきて、果たしてアヤネと冬青の心地たるやいかがなものだったろう。
「……」
「……」
 何となく、掛ける言葉がなかった。常ならば主に冬青の方がアヤネに何かと声を掛けていただろうに、今は不思議と言葉が出てこない。
 それどころか、顔を見て目を合わせることさえ難しいとはどうしたことか。二人横並びで仲良く順番を待っているはずが、どうしてこんなに気まずい空気が流れるのか。
 幸い、列はゆるゆると進んでいき、じきに二人に番もやって来た。どちらともなく嘆息したのはここだけの話、座席に着いて安全バーを下ろせばようやく冬青にワクワクの笑顔が戻った。
 そんな冬青をアヤネは優しく見守る。カンカンカンカン……とレールの上をゆっくり巻き上げられている間も、今まさに落下するというその瞬間も。

「う、っきゃーーーーーーーーーーーーーーーっっっ!!!」
 安全バーから両手を離して万歳ポーズ、笑顔で歓声を上げる冬青を、表情一つ変えずに見守るアヤネは思う。
(「……全然怖がらなくて残念」)
 そうは言っても言葉の割には落胆している訳ではなく、ああ――ソヨゴらしいな、と。
「……やっぱりネ」
「ひゃっはー! たーのしー!! ……あ、ごめんなさい、騒ぎすぎですね」
 そろそろ終点というところだろうか、アップダウンも緩やかになってきたところでアヤネの呟きを耳にした冬青がはたと我に返り隣のアヤネに手を合わせて謝罪する。
「いや、楽しそうにしているのは好き」
 だから大丈夫、そう言ったところでジェットコースターは終点へとたどり着いた。
「アヤネさんて、本当にジェットコースターに無反応なんですね……」
「嫌いではないよ、ああいうのに『怖い』という感情を想起させられないだけで」
 出口の階段をカンカンと降りながら、そんな言葉を交わす二人であった。

●頼もしい冬青さん
 いつしかその手を繋いで足早にわくわくキマイラランド内を駆ける二人が次に目指したのは、大きな鬱屈とした外見の建物であった。
「おおっ、ここのお化け屋敷は病院ですか! わかってますね、ワクワクしますね!」
「次は……なんだアレ? 『絶凶戦慄病院』って、前はなかったけど」
 そう、以前アヤネがここWCLを訪れた時に入ったお化け屋敷は、もっとこう……努力は認めるがどうにもカレーで言えば甘口というか、子供騙し感が否めなかったというか。
 だが、今眼前にそびえ立つ廃病院の偉容は、アヤネに一切の油断を許さない。隣の冬青にも相応の心構えを求めんと振り向けば――何と、お目々キラキラ状態ではないか。
 唖然とするアヤネの手をとった冬青は、まるで頼れるお姉さんムーブでアヤネの手を取ると、ぎゅっと握りしめる。
「よし、中は暗いから手を繋ぎましょう!」
「う、うう……」
 病院の受付を模した入場口を通り抜ける冬青はニッコニコの笑顔で、アヤネはすごく嫌そうな顔で。
 そりゃあ、正直に言えば冬青だってちょっぴり怖い。けれど、アヤネが一緒だからと思うとそれも不思議と平気に思えた。むしろ、自分がしっかりしなければという気持ちにさえなってくる。
 自分にぴっとりくっついてじりじり進むアヤネに「大丈夫ですよ」との言葉の代わりに振り返り笑顔を送る冬青。ついでに一言添えてみる。
「面白いですね――というか、アヤネさんはこういうの鼻で嗤いそうなイメージあったんですけど……」
 大丈夫です? と問う冬青に、アヤネは珍しく真顔でこう答えた。
「……大丈夫じゃない、研究所とか病院は苦手」
「……」
 少し、シリアスな部分に触れてしまっただろうか。だが、もう相当歩を進めてしまっているし、今更ギブアップという訳にも行かない。
「今からだと戻るのも時間かかりますし、このまま進みましょ……」
「キャーーーーー!!!」
 そう言って己の腕をずいと差し出す冬青に、空気を読まずに(職務に忠実とも言う)襲いかかってきたゾンビからひいこら逃れてきたアヤネががっしりしがみつく。

「アヤネさん、目を閉じてしがみついてて下さい! 私が進みますので!」
(「ううう、情けない……僕のイメージが崩れる」)
 今更なんじゃないかな、という気がしなくもなかったが。そんなこんなで恐怖のお化け屋敷を駆け抜ける二人であった。
(「大丈夫ですよ――何があっても守ります」)
 冬青の固い決意をアヤネが聞いたら、きっと感極まったに違いない。

●花は未来を祝福する
 予想外のスリリングな出来事に遭遇したが、終わってみれば存外楽しいもので。すっかり笑顔になった二人はついに目的地である『ティーカップ』乗り場の前にやって来た。
 植え込みの前にシートが敷かれて、そこに横たわっていたのは二束の花束だった。
 ひとつは真っ赤で、もうひとつはまるで南国の鳥のようで。アヤネが前者を、冬青が後者を手に取って大事そうにそっとかき抱く。
 まずはアヤネの方から、赤い薔薇の花束を冬青に向かって迷わず差し出した。
「花言葉は――『いつも貴女を愛しています』」
 アヤネの気持ちは薄々勘付いていたつもりではあったが、こうも直球で告げられると恥ずかしい。冬青の橙の瞳が揺らぐも、今日こそは――受け止めると決めた。
 冬青もその腕の中の花束をアヤネに差し出す。パッと見た感じ、珍しい花だった。
「ストレリチアのブーケです、鳥さんみたいな花でしょう?」
 極楽鳥花の異名を持つそれの花言葉は――『輝かしい未来』。
 過去がどんなものであったにせよ、これから紡いでいくのは未来であればこそ。
「貴女に、沢山の幸運を」

 互いの花束を受け取ろうとすれば、自然と身を寄せる形となった。身体の間に挟まれた花束たちが心なしか苦しそうだった気もするが、どうか頑張って耐えて欲しい。
「……こんな豪華な花は初めて見た」
「ありがとうございます、私も薔薇の花束とか貰うの初めてです」
「……うん、ありがとう」
 自然、二人の額がこつんとぶつかり合った。鼻腔をくすぐる花々の香しさに、そしてこみ上げてくる嬉しさに、二人は顔をくしゃりと破顔させた。

「えへへ、メリークリスマス!」
「メリークリスマス!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オルハ・オランシュ

ヨハン(f05367)と

宝探しみたいだね!わくわくしちゃう!
……なんだかんだ付き合ってくれるあたり
本当に優しいなって思うけれど、口には出さずに
回収した箱からフィナンシェを半分こ
これで疲れもとれたでしょ?
行こ、ヨハン!

手をしっかりと握り返したら
この寒さを忘れるほど、あたたかい

私のは『宇宙船の中』だって
スリル満点のアトラクションみたいだね
大丈夫だよヨハン、酔い止めの薬持ってきたから!
観覧車も乗りたいな
ただ貰って終わりじゃ勿体ないもの

イルミネーションの中を歩く彼は、いつもと雰囲気が違って見える
うるさい心臓の音がどうか聞こえていませんように
あ……あのね?
君と一緒に写真撮りたいな
だめ、かな


ヨハン・グレイン

オルハさん/f00497 と

はぁ……何故わざわざ園内に隠しやがったんですかね
別にそこまで欲しい訳でもないですし、もう帰りません……か……
いや、そうか。そうだな。探そうとするとは簡単に予想がつくわけで……
付き合いますよ。一人で探させる訳にはいかないでしょう

まぁ園内の散策も悪くはない、か。
文句ばかり並べ立てても隣の彼女に悪いので
とりあえず手を取りながら歩いていきます

『観覧車のゴンドラの中』って、これ乗らないといけなかったりするんでしょうか
そちらはどうですか?

煌くイルミネーションよりも、その輝きに瞳を光らせるあなたの姿が目に眩しい
そんな浮いたセリフは口には出来ないから、
緩く笑みながら共に歩んでいく



●甘いお菓子を召し上がれ
 メカメカしいサンタから直接手渡されると思っていたプレゼントは、何と指定された場所へ行って自ら探し出して来いという実に回りくどいものであった。
「はぁ……何故わざわざ園内に隠しやがったんですかね。別にそこまで欲しい訳でもないですし、もう帰りません……か……」
 この時点でヨハン・グレインの我慢は限界、今度こそ踵を返して遊園地のエントランスをくぐって立ち去ってしまわんばかりの勢いだったが――。
「宝探しみたいだね! わくわくしちゃう!」
 そんなオルハ・オランシュの跳ねるような声が耳に飛び込んできたものだから、一転、そういう訳にも行かなくなった。
 己と同じく、メカサンタかた手渡された紙切れを開いて嬉しそうにしている。
 ただそれだけの姿なのに、決して捨て置けぬ何かがあった。
(「いや、そうか。そうだな。探そうとするとは簡単に予想がつくわけで……」)
 心なしかぐぬぬという顔をしながら、手の中の紙切れをくしゃりと握り潰すヨハン。そんな彼の姿を横目に、オルハはそそくさと回収してきた焼き菓子詰め合わせの箱を開く。
(「……なんだかんだ付き合ってくれるあたり、本当に優しいなって思うけれど」)
 多分これは、本当に口に出したらいよいよもって捻くれた彼は立ち去ってしまうかも知れないからと呑み込んで。

「はい、ヨハン。これ、さっきもらったフィナンシェ」
「もらった、って……食べて大丈夫なんですか、それ」
「大丈夫だよ、ほら(ぱく)」
「……っ!!」

 元々は段ボール頭の怪人から賄賂的に渡された焼き菓子だったので、ヨハンの疑念ももっともであった。だが、オルハは躊躇うことなく箱からフィナンシェをひとつ取り出し半分に折ると、片方を事もなげに口に含んだのだ。これにはヨハンも動揺を隠せない。
「……本当に、何ともないんですか」
「平気だよ、ほらヨハンも」
 身を案じる声に、ずいとフィナンシェの片割れを差し出して笑顔で応えるオルハ。ちょっぴり口をもぐもぐして「あまーい」なんて言っている。
「……全く、毒でも入っていたらどうするつもりだったんです」
 心底苦々しい顔をしながらもフィナンシェの片割れを受け取り、一度つまみ上げ睥睨した後ようやく自身も口に放り込んだヨハンは――途端に口内に広がる風味に思わず目を丸くする。こればかりは、隠しようがなかった。
 そんなヨハンの様子を見届けてふふーんと笑むオルハは、両の手を腰のあたりに当てて少し屈んだ姿勢で言った。
「これで疲れも取れたでしょ? 行こ、ヨハン!」
「……ええ、付き合いますよ。一人で探させる訳にはいかないでしょう」
 焼き菓子で少々口内の水分を持って行かれてしまった二人は、まずは園内で何か飲もうかなどと話しながら歩を進めるのだった。

●ゴーゴー・ジェットコースター
 ホットワイン――にはまだ早いので、温かいぶどうジュースを振る舞ってもらいながら園内を行くオルハとヨハン。
(「まぁ、園内の散策も悪くはない、か」)
 言いたいことは数あれど、文句ばかり並べ立てても隣の彼女に悪いので、と。
 さりげなく――とてもさりげなく、ヨハンはオルハの手をそっと取ってエスコートするかのごとく園内を行くのだった。
(「……っ」)
 特に問われるでもなく、自然に握られた手はとても温かく、何より頼もしい。
 きゅっとしっかり握り返すことで返事と為し、オルハはこの冬の寒空さえ気にならないほどの温もりに包まれる。嬉しさに吐いた息は、うっすらと白かった。

 二人の目的地は別々であり、まず最初に向かっているのはオルハの『宇宙船の中』。いわゆるジェットコースターのひとつで、ほとんど暗闇に近いコースを爆走していくものだから疾走感が尋常ではないという。実際、速度も園内トップクラスを誇るのだ。
「スリル満点のアトラクションみたいだね!」
「……」
「だ、大丈夫だよヨハン! 酔い止めの薬持ってきたから!」
 準備万端、良くできたお嫁さんになりそうだ。ヨハンはと言えばここまで来たのだからと潔く搭乗口にオルハと二人仲良く並んでいた。ぶどうジュースで酔い止めの薬をあおると、やけに据わった目でその時を待つ。
 そんなヨハンの様子に、あまり無理はしないでもいいのにと若干ハラハラするのはオルハだ。彼女自身はいわゆる絶叫マシン系への耐性はどうやら高そうだが、相手がそうだとも限らない場合地味に気まずい空気が起きる。大丈夫だろうか。
 そして、そうこうしているうちに――遂に、二人が乗る車両が滑り込んできた。

 ~しばらくお待ち下さい~

「ね、乗ってみれば意外と楽しかったんじゃないかな」
「……ええ、まぁ、何事も経験とは良く言ったものです」
 実際に乗っていた時間は、およそ3分もなかったのではなかろうか。それくらいのあっという間の出来事だったが、わあわあきゃあきゃあと大騒ぎであったり、終始全身を硬直させていたりと、それはもう色々あったという。
 ともあれ、ひと段落だ。そんな訳で、出口から退出しようとしたその時だった。
「お客様、おめでとうございます! 今日いちばん当アトラクションを楽しまれた方にプレゼントするキーホルダーです、是非受け取って下さい!」
「え、ええ!? ど、どうしよう……!?」
 店員のキマイラに朗らかに声を掛けられ、どういう訳か(確かに乗っている間中ずっとはしゃいでいたけれど)プレゼントを渡されたオルハは、思わず助けを求めるようにヨハンを見た。
「決して怪しいものでもないようですし、折角ですから貰っておいてはどうです?」
「そっか……確かにこのアトラクション楽しかったし。それじゃ、遠慮なくっ」
 流線型のロケットの絵柄のかわいいキーホルダーを手にえへへと笑うオルハが、ふとヨハンにあることを問うた。
「そういえば、ヨハンのプレゼントってどこにあるって書いてあったの?」
「ああ――『観覧車のゴンドラの中』だそうです」
 一度はくしゃりと丸めてしまった紙を広げて確認すれば、オルハがすかさずヨハンの手を取ってくいっと引っ張った。驚いたヨハンが嫌な予感を覚えつつ、一応問う。
「……これ、乗らないといけなかったりするんでしょうか」
「そうだよ! きっと、乗ることによってようやく手に入るものなんだよ!」
 向かう先は、ぴかぴか光る大きな観覧車。それに、とオルハは呟く。
「観覧車も乗りたいな――ただ貰って終わりじゃ勿体ないもの」
「……」
 首肯の代わりに、ヨハンはオルハの手をやや強く握り返した。

●イルミネーションの魔力
 ――ごうん、ごうん、ごうん。
 観覧車のゴンドラに係員に誘導されて乗り込む時こそ向かい合わせだったが、二人きりになった今は片方の座席に並んで座っている。
 ちなみにオルハの方から移動してきたのだが、最近は女の子の方がちょっぴり大胆なのかも知れない。
 どんどん小さくなっていく遊園地の景色は、事前に知らされていた通り色とりどりのイルミネーションに彩られてとても綺麗だ。どんな魔法を使っても、こうまでのものは見られまい。
(「……もしかしたら、この景色こそが。いや、このひと時こそが、俺への贈り物とでも言いたいんでしょうか」)
 だとしたら、あのメカサンタは随分とロマンチストなものだと息を吐く。悪くはない。
「ねえヨハン、あそこの広場のイルミネーションがすごいよ! 降りたら実際に行ってみたいんだけど……」
「今更俺が断ったりすると思いましたか? 滅多に見られない景色ですしね」
 ぱあぁと顔を輝かせる愛しい人の背中の黒い翼が、心なしか嬉しげに開いた気がした。

 ゴンドラを下りて向かうは、約束のイルミネーションの広場。そこに向かうまでの通路から既に洒落た飾り付けが施されており、まるで雪の回廊を進んでいるかのようだった。
「す……ごい! きらきらさんも、こういうのが見たかったのかな」
 映える。それに命を賭けたかの怪人が見たら、どう感じただろう。弔いという訳ではないが、オルハは手始めにと数枚夜景を撮影するが、これがなかなかに難しい。
「ああっ、どうしてもブレちゃうな……うーん……」
 最新機種だと上手く撮れるのかなあ、などとうんうん悩むオルハの姿はイルミネーションにすっかり夢中で、少しばかり妬けなくもなかったが。

『煌めくイルミネーションよりも、その輝きにこそ瞳を光らせるあなたの姿が目に眩しい』

 そんな浮いたセリフは、例えそれが真実のものであったとしても、とても口には出来ないからと。ヨハンは傍らでそっとオルハの様子を緩く笑んで見守っていたのだ。
 そして、ハッと顔を上げたオルハの視界に飛び込んできたそんなヨハンの姿は。
(「――ヨハン、いつもと雰囲気が違って見える」)
 夜空を照らすきらきらのイルミネーションは、藍に沈む愛しい人を星瞬く夜空のように彩っていた。静謐なる雰囲気も勿論好きだけれど、煌びやかな印象もまた素敵だと。
 熱くなった耳の、鼓膜の内側を早鐘が打って止まない。ああ、何てうるさいの。ヨハンに聞こえちゃったらどうするの。

「あ……あのね?」
 絞り出すように、オルハが声を出す。手にしたスマートフォンが震える。どうか、寒さのせいだということにしておいて欲しい。
「何でしょう?」
「君と一緒に、写真……撮りたいな」
「……」
 すぐに返事をしなかったのは、もったいぶってのただの意地悪だ。当然、断る気などないのだから。それでもオルハにとっては、勇気を振り絞ってのお願いだったのだ。
「だめ、かな」
 そこでゆるりとかぶりを振って、ヨハンは一歩オルハに近付いた。

「……自撮りなるものはあまり得意ではないのですが、頑張りましょう」
「ヨハン……!」
 背の高い方が撮影役を担当した方が、多分上手く行くと思うのです。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エミリロット・エカルネージュ
○プレゼント
チルドドライバーをエ●ルドライバーっぽくしたドライバー

島唐辛子と餃子の追加デバイス付き(戦争依頼で似た変身デバイスで戦った事あったなぁ……と思いつつ)

無理なら等身大
チョコ餃子怪人のヌイグルミ
(アイコンの)

○場所
観覧車周辺

●POW

メモを手掛かりに
『空中戦』であっちこっち飛び回りながら『第六感』を便りに探しまくるよ

それにしても、メカサンタさん
あの時、何かボク達を見て怯えてた?けど……プレゼント大丈夫なのかな。

もしかして見繕えるのが無いってオチは無いよね

観覧車周辺は、探したけど
……そうなると残りは観覧車の中かな?

UCを使ってチョコ餃子怪人になって、観覧車一つ一つ隙間から入って調べよう。





●メカサンタ会議
 時は少し遡る。
 他ならぬ猟兵たちのお願いとあっては是が非でも叶えなくてはと意気込むメカサンタたちが、可能な限りのプレゼントを集めては丁寧に梱包して、ちょっとしたサプライズとして隠し場所をメモした用紙をセットにする作業に勤しんでいる時であった。
「アノ……」
「ドウシマシタ、ミナイソガシイノデス。モタモタシテハイラレマセンヨ」
 やや困惑した様子でメカサンタのうちの一体が、指揮を執るベテランっぽいメカサンタに声を掛けたのだ。そのメカメカしい手には、ある願い事が書かれた紙が一枚。
「コレハ……ドウシタモノデショウ」
「ナニナニ? ……ッ、コレハ」
 周囲で作業をしていたメカサンタたちまで集まってきて、ぐるり囲まれたとあるプレゼントの要望書には、こう書かれていた。

『チルドドライバーをエ●ルドライバーっぽくしたドライバー、島唐辛子と餃子の追加デバイス付き』

 メカサンタたちが、まるで雷に打たれたかのように一斉に動きを止めた。
「コレハ……ハンケンガドウノトイウイゼンニ……」
「アア……アマリニモ『オンリーワン』ガスギルトイウカ」
「ニッチ……デスヨネェ……」
 そう、さすがのメカサンタでも叶えられない願いというものは確かにある。
 残念ながらこの願いは――エミリロット・エカルネージュの願いは、協議の結果『難しい』という結論に至ってしまったのだ。
 ちょっとね……この世に一つレベルの希少品は難しいみたいですよ……!

●新年初笑いを(勝手に)頂きました
「……トイウワケデゴメンナサイ、ダイイチキボウハムリデシタガ」
「ううん、無理なら別のものでって最初からお願いしてたし、大丈夫だよ」
 心底申し訳なさそうなのが、メカのくせの表情から伝わってくる。それを見たエミリロットはいつもの笑顔で受け入れて、隠し場所の紙を手渡されるままに受け取った。
「ほうほう、『観覧車周辺』……?」
「ハイ、カワリノモノヲソコニヨウイシマシタ。ヨロシケレバ、ウケトッテクダサイ」
「ありがとう、さっそく探してみるよ!」
 イルミネーション輝く夜の遊園地へと、早速飛び出していくエミリロット。メカサンタは、その背中をただ見送ることしかできなかった。

 それにしても『観覧車周辺』というのは範囲指定が随分ざっくりしてはいないか。
「困ったなあ……まずは上空から見下ろしてそれらしいものを探してみるかな」
 遊園地のあちらこちらに立つ街灯や樹木などを器用に蹴って飛び回り、いかにもプレゼントという感じの品物が置いていないかどうかを注視するが、なかなかそれらしいものが見当たらない。
(「それにしても、メカサンタさん……あの時、何かボク達を見て怯えてた?」)
 エミリロットの脳裏に浮かぶのは、段ボール頭の怪人たちからメカサンタを守った時に向けられた意味深な視線だ。そして、今さっきのメカサンタの反応も気になる。

(「……プレゼント、大丈夫なのかな? もしかして、見繕えるのが無いってオチは無いよね?」)

 ――ぎくっ。と。どこかでメカサンタたちが肩をすくませたような気がした。

 飛んだり跳ねたり、観覧車周辺とされるところはあらかた探した。
 それでも気配がないということは――消去法で探すべきは『観覧車の中』ということになる。
 だがここでいちいち並んで観覧車に乗って確かめるというまどろっこしいことをしないのがエミリロットのぶっ飛び度合いを示していた。
 バッ! と功夫の構えをひとつ、大きく息を吸って、吐いて。

「此処に残りし餃子の担い手一人、意志を継ぎし餃子の護人となりて……身体は餃子に堕ちようと、この力は正しくあらんっ! 【招餃功・餃怪変(ショウギョウコウ・ギョウカイヘン)】っ!!」

 餃子堕ちとかいう新しいパワーワードが出ましたね……令和二年一発目の爆笑ワードですよ……アッいやそれはともかく。その身をチョコレートの餃子怪人(だってそう書いてあるんだもん!!!)に変異させたエミリロットが、ゴンドラの昇降口に降り立つと、すわ怪人かと怯む遊園地スタッフのキマイラたちを半ば押しのけてにゅるりと身体をゴンドラの中に滑り込ませてひとつひとつ調べるという、地道な作業に入ったのだ。
 そうしてしばし――スタッフのキマイラさんがそろそろ猟兵さんを呼ぼうかという雰囲気になった頃――。

「あった! これだ!!」

 エミリロットの嬉しそうな声が響き、そのまま箱と共にゴンドラで上空へと運ばれていく。箱は結構な大きさをしていたので、ゴンドラから引っ張り出せなかったのだ。
 ごうんごうんと音が響き、かすかにクリスマスソングが流れるゴンドラ内で、エミリロットがご対面したのは――大好きなスイーツ餃子がひとり、チョコ餃子怪人の等身大ぬいぐるみだった。
「ドライバーは残念だったけど……あれは猟兵の力でないと作れないのかも知れないね」
 エミリロットは年相応の少女の顔で、大好きな餃子怪人のぬいぐるみをぎゅうと抱きしめた。

 ――ありがとう、メカサンタ!!

大成功 🔵​🔵​🔵​

鵜飼・章

ああ楽しかった
本来の目的を達成しに来たよ、ニコさん
僕の話は禅問答と揶揄されるけど
きみは真面目に聞いてくれるかな

僕には物欲がない筈なんだ
でも僕の渡された紙には
『ニコさんのポケットの中』って書いてあってね
僕の欲しいものは今きみが持ってるらしい

僕が予想できる解は大きく四つ
①人間の心
②大切な思い出
③カブトムシ
④僕自身を刺せるナイフ

持ってる?
…⑤それ以外、かもね
僕は何も欲しくないはずだけど
きみがあると思ったら何故かそこにある

そう
『正解のない謎』
それが僕の本当に欲しい物だ
実はニコさんに何か贈り物をしに来たんだけど
『今年の思考実験の結果発表』って事で

聖夜だもの
不思議なことも起きるよ
きみは何を持ってるのかな



●交わる世界線
 鵜飼・章のクリスマスは――実にどったんばったんしていたものだから。
「ああ、楽しかった」
 と、当の本人がそう振り返るのも無理からぬことであった。
 運送業者と対話を試み結果梱包されるに至ったり、せっかちなグリモア猟兵に転送の手違いを受けたり、しかしそれら全てが何やかやで――楽しかった。

 故に、眼前のグリモア猟兵ことニコ・ベルクシュタインを責めたりはしない。
 きらきら煌めくイルミネーションに包まれて、二人の青年は対峙する。

「本来の目的を達成しに来たよ、ニコさん」
「はは――まるで、俺こそが事件の黒幕のような言い回しだ」
 章とニコはそう言って互いに薄く笑う。かの堅物が、冗談を言うとは少し驚いたと思うも、あくまで人の好い笑みのままで章は続けた。
「僕の話は禅問答と揶揄されるけど、きみは真面目に聞いてくれるかな」
「人様の話を真面目に取り合わぬ方が失礼というもの、どうか其処は案じずに」
 そう言うとニコは右手を軽く差し出す仕草で、言葉の続きを促した。

 章はメカサンタから受け取ったと思しき紙切れを片手で弄びながら、目線はニコから外さない。
「僕には『物欲』がない筈なんだ。でも僕の渡された紙には『ニコさんのポケットの中』って書いてあってね」
「……ほう、つまり、其れは」
「僕の欲しいものは、今きみが持ってるらしい」
「……」
 章もニコも、強いて言うならば上流貴族やら執事めいた、どこか浮世離れした格好をしている。胸ポケット、ズボンのポケット、それこそ複数あるだろう。
 言われた側のニコはまず無意識に己が『本体』が収められているベストのポケットに手を当てる。だが、此れは章が欲するものとはきっと、違う。

 一度は外した目線を再び向ければ、赤眼と紫眼とがぶつかり合った。紫眼の青年が指を立てて、再び言葉を紡ぐ。
「僕が予想できる解は大きく四つ。一つ、『人間の心』。二つ、『大切な思い出』。三つ、『カブトムシ』。四つ、『僕自身を刺せるナイフ』」
「……っ」
 最後の予想の物騒さに息を呑む懐中時計の化身に向けて、一言ごとに指折り数えて候補を挙げる章の表情は、表向き穏やかながらにして、純粋な好奇心に満ちていた。
「持ってる? ……五つ、『それ以外』かもね」
 五本の指が、全て折られてグーの形になる。
「僕は何も欲しくないはずだけど、きみが『ある』と思ったら何故かそこにある」
「……」
 ニコは、眉根を寄せてきゅっと口を引いていた。眼前の青年に、渡してやれるものもなければ、期待に応えられるような言葉をも持ち合わせておらず。
 だが、その様子をこそ期待したのか、章は両手を広げて朗々と語った。
「そう、『正解のない謎』――それが僕の本当に欲しい物だ」
「なん、と」
 答えがないことこそが、答え。それでいいと、章は言うではないか。
「だが、それでは――」

「実はニコさんに何か贈り物をしに来たんだけど」
 ――『今年の思考実験の結果発表』って事で。

「は、はは――そうか、そういう――!」
 ニコは、幾度となく章に事件解決の助力を賜ってきた。報告書を作成する過程で、鵜飼・章という『人間』がどのように変化していくかを、知らずのうちに見守ってきたとも言えよう。
 その『彼』からの直々の発表とは――何とも粋なプレゼントではないか!

 遊園地はきらきらのイルミネーションに包まれ、相変わらず二人を照らす。
「聖夜だもの、不思議なことも起きるよ。きみは、何を持ってるのかな」
「そうだな、俺は――」
 章の問い掛けに、ニコは今一度胸元の懐中時計に服の上から触れる。
 メカサンタが『章へのプレゼントは己のポケットの中にある』と言ったのならば、それは間違いなく果たされなければならぬものだろう。章自身が必要とするかはさて置き。
「……鵜飼、俺のポケットの中には俺の『本体』――懐中時計が入っている。此れは常に未来を刻み、歩みを止めぬ者に必ず明日を齎すものだ」
 ほう、という顔で章がニコを見る。眼鏡越しの赤眼で、ニコは続けた。
「君は先程『己には物欲が無い』と仰ったが、明日もまた生きていたいという『希望』となれば――如何かな?」

 生物である以上、何者もが持ちうる『生存本能』であっても。
 知的生命体たる人間であるがゆえの『明日への希望』であっても。

「――予知をした際の俺は酷く無力でな、またこうして助力を賜れれば幸いだ」
 それだけ言うと、ニコは一礼して光の海へと消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

有栖川・夏介

……プレゼントにはそこまで興味ないんですが、せっかくメカサンタが用意してくださっているようなので探してみましょうか。
ええと、メモに書かれているのは―
『入口広場にあるうさぎの銅像』
………うさぎ。いえ、なにも悪くはないんですけれど。

メモの指示通りに入口広場に向かいます。
うさぎの銅像は、これですね。
(……じーーーー)
……意外とかわ…、あ、いえ、そういう場合ではないですね。
プレゼントは…ウサギの足元においてあるこれでしょうか?

メカサンタに何かをお願いした記憶はないのですが、プレゼントは一体…。
『医学書』
これは、俺には必要のないもののように思うが……ありがたく頂戴します。(珍しく口元に笑みを浮かべ)


狭筵・桜人
『兎の足もと』

うん?も~焦らすんですから~。

兎、うさぎ。どれのことでしょうね?
それっぽい形のオブジェを一つひとつ調べていきますよ!
一億円、一億円。ウフフ。
一億円のためなら全然疲れませんねえ!


あ!プレゼント……!?
……、
…………。

桁が全然足りてないんですけど…………。

ちょっとニコさんいいですか?
そうそこの。
お気軽にご用命下さいませって書いてあったニコさんです。

メカサンタに用があるんですけど、どこですか?
プレゼント?
いやいや探すのはメカサンタです。
大切なお話があるので引きずり出すの手伝ってくださいよ!

必ず見つけ出してソリを質に入れさせてやりますから……。
ンッフフ……。



●せっかくだからの精神
 ここ『わくわくキマイラランド』に数あるマスコットキャラクターの中でも、メインを張るとも言われるのがピンクのたれ耳うさぎである。
 ジトッとした目が特徴のうさぎは、隠れモチーフや大きなオブジェクトなどとして、園内のそこかしこで目撃することができた。
(「……プレゼントにはそこまで興味ないんですが」)
 それでも、半ば強引にプレゼントの場所が書かれた紙切れを手渡されては無碍にも出来ぬというもの。有栖川・夏介はすっかり日が落ちてイルミネーションに彩られた園内を軽く見回す。
(「せっかくメカサンタが用意してくださっているようなので、探してみましょうか」)
 そうして、かさりと紙切れを開いて中の文字を周囲の光を頼りに確認する。
「ええと、メモに書かれているのは――」
 明滅するイルミネーションの輝きが最高潮に達した時、その文言ははっきりと見えた。

 ――『入口広場にあるうさぎの銅像』

(「……うさぎ」)
 何か皮肉めいたものを感じずにはいられなかったが、WCLの名物マスコットがたまたまうさぎだったということを思えば、決してそう作為的とも言えないというもの。
(「いえ、ええ、なにも悪くはないんですけれど」)
 それでもやはり、ちょっぴり複雑な胸中のまま、夏介は件の銅像を探しにかかった。

●ジト目うさぎの足元で
 ――『兎の足もと』

「うん? も~~~焦らすんですから~~~」
 狭筵・桜人が一億円に、おっと失礼メカサンタに願ったプレゼントは、この紙切れによるとうさぎのオブジェクトの足元に用意されているらしい。
 奇しくも夏介とほぼ同じところと見て間違いなさそうだった。うさぎと言っても園内には山ほど居るが、パッと思いつくのはエントランス広場に鎮座ましまししていた大きな銅像のジト目たれ耳うさみの姿だ。
(「一億円、一億円。ウフフ。一億円のためなら探し回るのも全然疲れませんねえ!」)
 ご覧下さいこのメカサンタから絶対一億円を貰うという熱い確定ロール! この後の展開が、私、気になります!

「――おや、有栖川さん」
「どうも……狭筵さんも、プレゼントを探しに、ですか?」
「ええ! 私の一億円は、うさぎの足元で待っていてくれるそうなのですよ」
 ンッフッフ、という明らかに物欲全開な桜人の笑みに夏介は珍しく柔らかい笑みで返し、自らも恐らく正答と思われるうさぎの銅像を見上げる。

 じーーーーー……。

(「何だろう、このジト目……意外とかわ……あ、いえ、そういう場合ではないですね」)
 目線をうさぎの銅像の足元に向ければ、確かに二つの包みが置いてある。巻かれたリボンには『Dear Arisugawa』のタグが括りつけられており、桜人のものとは一目で区別がついた。
 それにしても、自分のものと比べて桜人のものと思われる包みはとても小さいが、本当に彼は一億円を手にすることができるのだろうかと考えてしまう。
(「……小切手形式とか、でしょうか」)
 思考の渦に巻き込まれそうになり、危うく首を振って逃れる夏介。折角貰ったのだから、まずは自分のプレゼントを確かめなくては。

(「メカサンタに何かをお願いした記憶はないのですが、プレゼントは一体……」)
 赤を基調にした、緑が差し色の典型的なクリスマスのラッピング。金のシールを外せば、ぺろぺろんと包装紙が解かれていき、あっという間に中身がその姿を現す。
「……これ、は」
 妙に分厚くて重いと思った。武器かな? とまで思うほどだった。だが夏介は、その正体を見て合点がいった。

 ――『医学書』、だった。

 夏介はしばし分厚い書物を両手にしたままじっと見つめるばかりだった。
(「俺には、必要のないもののように思うが……」)
 処刑人たるもの、より効率の良い処刑を実行するにあたって必要な知識だとでも言うのか。だとすれば一見納得も行くだろう。
 だが、ならば人体解剖について特化した別の書物を用意するべきだ。この医学書は、明らかに人を『治癒』することに特化した内容が網羅されているのだから。
 何故、この本が夏介にプレゼントとして贈られたのか。今は分からなくとも、もしかしたら、何時か――必要になる時が来るかも知れない。

(「……ありがたく、頂戴します」)
 夏介は珍しく口元に笑みを浮かべると、分厚い医学書をいかなる仕組みか懐にひょいと仕舞い込んだ。
 その胸の奥に燻る、夢の種火が消えぬ限り。何時か、その日は来るかも知れないから。

●一億円への絶対の意志
 夏介に遅れること少々、残された紙幣程度の大きさのペランとした包み紙をうさぎの銅像の足元で発見した桜人は、最初はそれはもう嬉々として飛びついていったという。
「あ! プレゼント……!?」
 ここでまず桜人は首をひねった。現金一億円ならば、札束が山と積まれていなければおかしい。いやいや待て待て、セキュリティの都合上、金券で渡されるのやも知れぬ。
 という訳で、とりあえずプレゼントの包みをピッと開く。中から出てきたのは、紙幣――サイズの台紙に差し込まれた、所謂『図書カード』、額にして一万円分だった。
「……」
 台紙を裏表にして、もう何枚か入っていないか確認する。残念ながら、入っていない。
「……」
 今度は念入りにうさぎの銅像の周りを再度確認する。見落としはないか? 本当はもっとたくさん置いてあるのではないか? ……残念ながら、その気配はない。

「桁が全然足りてないんですけど……」

 しかもコレ図書カードだから基本的に本屋さんでしか使えないんですよね……。
 欲しいと言ったのは現金一億円だったはずなのに、どうしてこんなことに……。

「どうした狭筵、随分と落胆しておられるようだが」

 そこへ通りかかったニコ・ベルクシュタインが桜人の様子を案じて声を掛けたその時だった。ガシッとニコの両腕を掴んで文字通り食ってかかった。
「ちょっとニコさんいいですか? そう、何かあればお気軽にご用命下さいませって書いてあったニコさんです」
「あ、ああ……其のご様子だと、何かあったのだな」
 桜人が終始プレゼントに一億円をと主張していたことはニコも把握していたので、何となくそれ絡みだろうなというのは想像できた。
「こんな子供騙しでねえ! やり過ごせると思ってもらっては困るんです! という訳でメカサンタに用があるんですけど、どこですか?」
「ま、待つんだ狭筵。俺にもメカサンタがどこに居るのかまでは視えないし分からない。それに、見たところプレゼントはもう貰っているようではないか――」
 それに満足している訳ではないからこんなことになっているんだろうとは理解しつつ、努めて穏やかに事を収めようと試みるニコだったが。
「プレゼント? いやいや探すのはメカサンタです。大切なお話があるので、引きずり出すの手伝ってくださいよ!」
「ちょっ、待ちなさい! お兄さん嫌な予感しかしないのだが! さ、狭筵――!!」
 今分からないなら、分かるまで監禁して吐かせるまでよ。これぞグリモア猟兵拉致監禁プレイ!(誰もそんなことするなんて言ってない)
 ともあれ、ニコは桜人に首根っこを引っ掴まれてずるずると園内へと連行された。

「必ず見つけ出して、ソリを質に入れさせてやりますから……」
 ンッフフ……と、桜人の悪そうな笑みが冬の夜空に密かに響いた。成程確かに、あのソリだけでも高く売れそうですからね……!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

満月・双葉
クリスマス、イルミネーション…わーいきれい(棒)
あっちこっちで花火あげないように気をつけないと(あほ毛ぷるぷる)

さてと、隠し場所は何処でしょうか
『観覧車 上から三番目の屋根の裏』


カエルのマスコットさんや、観覧車って何だろうか
電気を使って動くものだろうか
あのくるくる回っているやつ?
これはあれだよマスコットさん
爆発オチなんてサイテー!

ベルクシュタインさん助けてー…
助けてくれたら双葉サンタがクリスマスプレゼントに何かあげますからっ
観覧車の上から三番目の・・・
(回っているのを見て)
・・・上から三番目だそうですぇぇ。
メカサンタ爆発させても?


ジャック・スペード


宝探しみたいだな……取り敢えず
また此処に来れたのだから、何か乗ってみたい

ああ、ジェットコースターなら
園内のイルミネーションも見れるし
プレゼントが隠されている場所に見当をつけられる
ひとりで乗るのも侘しい、ニコも一緒に如何だろうか
勿論、無理にとは言わないが

じりじりとレールを登る間に、煌めく園内装飾を楽しんで
勢いよく高所を滑れば、想像以上に爽快だ
……もう一回乗っても良いか?

プレゼントの天体望遠鏡は結局
コースター乗り場の側に
星の好きな友人へのプレゼントにしよう

しかし、俺ばかり貰うのも心苦しい
近場のワゴンで買った温かい飲み物と、チュロスをニコへ
付き合ってくれた礼だ
ささやかだが……メリークリスマス


薄荷・千夜子
まさかプレゼントをすぐ頂けるというわけでなくプレゼント探索タイムがあるとは……!!
わーい!楽しみー!!ときゃっきゃとはしゃぎながら
それじゃ、皆で探しましょうね!とどこからともなくUCで大量の風呂敷わんこを呼び出して
さぁ、くまなく探していきましょう!!

あ!ニコさん!こんばんは!
こちらはメカサンタさんからプレゼント捜索中なので……お、楓が見つけましたか、偉いですよ
とプレゼントを開ければたくさん入った花のケーキ
わぁ、可愛くて美味しそう!!
いっぱいあるので良ければニコさんもご一緒にいかがですか?

【プレゼントの場所:花のイルミネーションの下(花の形をしたケーキ)】



●メリークリスマス、ミスターベルクシュタイン~薄荷・千夜子の場合
 メカサンタから小さな紙切れを受け取った薄荷・千夜子は、素直に瞳をきらきらさせてすぐにぺこりと一礼して紙切れに書かれた場所を探索するべく走り出した。

(「まさかプレゼントをすぐ頂けるというわけでなく、プレゼント探索タイムがあるとは……!」)

 そう、朝起きたら枕元には「台所へ行け」と書いてあり、行ってみたら今度は「厠のドアを見ろ」とあり、そうしてほうぼう走り回った末に指定された戸棚の中に贈り物が用意されていたりして。
 そんな懐かしい思い出が千夜子にあったかどうかはさておき、一見回りくどそうな手法も見方を変えればとても楽しいイベントになるというもので。
「わーい! 楽しみー!!」
 と無邪気にきゃっきゃとはしゃぐ千夜子は、ぴんと天高く夜空を指し示して告げる。
「それじゃ、せっかくだから皆で探しましょうね! 【樺召援犬(カショウエンケン)】!」

 ――わわん! きゃわん! わんわんっ!

 ああああああ! ユーベルコードによって召喚されし大量の豆柴たち! 背負った風呂敷も毛並みの色もみんな違ってみんないい! 鳴き声もまだ高くて愛らしい!
 それらをはいはいいい子いい子と統率して引き連れる千夜子さんこそがナンバーワンなんですが……。
「さぁ、くまなく探していきましょう!!」
 アッハイ、プレゼント探しでしたね! えっと、千夜子さんの指定場所は……?
「ええと……『花のイルミネーションの下』ですね! これは人海戦術……ならぬ犬海戦術ですよ! 頑張って探しましょうね、見つけた子にはご褒美です!」
 千夜子の言葉に、豆柴ちゃんたちからきゃわわんと歓声が上がった。

 光の花はわくわくキマイラランドの中でも点在しており、大樹を彩るイルミネーションや輝く街路樹など、園内を絞り込むのが地味に難しい。
 ここで、数に物を言わせた千夜子の戦術が活きた。豆柴部隊を手分けして放ち探させつつ、自身もひとつひとつ丁寧に探して回る。ベンチなどを見つけては念入りにその下を覗き込んだり、暗がりにもその鋭い瞳を向けてみたり。
 そうしてふとたどり着いた先は――。

「……わぁ!」

 まるで、本物の藤の花が咲き誇っているようだった。藤棚を模した天井からつり下がる紫色の照明は、幻想的な音楽に合わせて明滅を繰り返す、光の藤の花であった。
「……おや、薄荷ではないか。君も宝探しの最中かな?」
「あ! ニコさん! こんばんは!」
 このグリモア猟兵もまた、危機は去ったと判断して自らも遊園地のイルミネーションを楽しんでいたのだろうか。声を掛けられた千夜子は元気いっぱいに返す。
 色々と話したいこともあるが、何しろ今はメカサンタからのプレゼントを捜索している最中だ。世間話は諸々がひと段落してから――おや?
「わんっ」
 くるりと巻かれた尻尾をちぎれんばかりに振って、千夜子を呼ぶ緑の風呂敷の豆柴――花犬たちのリーダー『楓』の姿があった。
「お、楓が見つけましたか。偉いですよ」
「わふっ」
 しゃがみこんで楓のまあるい頭部を撫ぜてやれば、嬉しそうに頬をすり寄せる楓。さすがはリーダーと言ったところか、導かれるままに足を運べば、そこには白い箱が置かれていた。ああ――これは、人の目線ではなかなか気付かないかも知れなかった。
「流石だな、此の子達も薄荷の相棒なのか」
「えへへ、最近色々な相棒が増えまして」
 千夜子の連れ合いと言えば鷹であったが、猟兵としての実力が上がったことによるものか、はたまた数奇な縁からか、今では多種多様な動物と心を通わせるようになった。

 そんな訳で、ベンチに二人並んで腰掛けると千夜子が膝の上で白い箱をそっと開ける。
「わぁ――可愛くて美味しそう!」
 箱の中には、いわゆるフラワーカップケーキと呼ばれる、カップケーキの上にまるで花が咲いたかのようなデコレーションが施されたものが、ぎっしりと。
「此れは凄いな、あの映えに拘る怪人が見たら何と言ったか」
「ふふ、こんなにいっぱいあるので。良ければニコさんもご一緒にいかがですか?」
 思わず箱を覗き込むニコに、千夜子がおひとついかがと提案する。まさかの提案だったのか一瞬目を丸くしたニコだったが、ならばと一つ笑んでから、ラズベリーの花咲くカップケーキを手に取った。
「有難う、良きクリスマスを。今度は、仕事抜きでゆるりとお会いしたいものだな」
 そう言って立ち上がるニコを、千夜子はにっこり笑って見送った。

●メリークリスマス、ミスターベルクシュタイン~ジャック・スペードの場合
 無骨さを感じさせない洒落たセンスを身に纏い、ジャック・スペードもまたメカサンタからプレゼントの在処を示された紙切れを受け取って、目的地周辺まで足を運んでいた。
(「宝探しみたいだな……」)
 そう、難易度がとっても簡単な、ちょっとした謎解き。見つけるまでも楽しんでもらおうというのがメカサンタの心意気だったのだが、果たして全ての猟兵たちに伝わったかどうか。
 その点、合法的に遊園地を楽しんでも良いというのだから、以前にここWCLを訪れたは良いが遊具を堪能する間がなかったジャックとしてはとても都合が良く――。
(「取り敢えずまた此処に此れたのだから、何か乗ってみたい」)
 そう思ったジャックのちょうど頭上を、悲鳴と歓声と轟音とが通過していく。
「ああ――ジェットコースターなら」
 ポンと手を打つジャックの計画はこうだ。ジェットコースターに乗れば園内のイルミネーションも一望できるし、プレゼントが隠されている場所に見当をつけることもできるというもの。
 幸いWCLの遊具はいかなる仕組みか種族フリー、フェアリーとウォーマシンとが同席しても問題なく楽しむことが出来ちゃうのだ。
 だが、乗れるは乗れるで――ひとりで乗るのも正直侘しい。そう思っていたところに、園内を回る猟兵たちの様子を気に掛けて巡回めいたことをしていたニコがやってきた。
「ジャックか、此度はお疲れ様だ。君も是非楽しんで――」

 ――がッし。黒手袋に包まれたジャックの逞しい手が、同じく黒手袋をしたニコの手をしかと掴んだのはその時だった。

「俺はこれからジェットコースターに乗る、ニコも一緒に如何だろうか」
「あ、ああ……」
「勿論、無理にとは言わないが」
「とんでもない――嬉しいお誘いだ、是非ご一緒しよう」

 だが、少々気合いが入り過ぎであるなとニコが笑えば、慌ててジャックが手を離す。悪気がないのは分かっていても、物理的に耐えられるかどうかはまた別の話であった。

「ジャックがお持ちのヒーローカーだが、あれは本当に格好良いな。俺は運転免許を持っていないので憧れる」
「ニコは律儀だな、世界によっては免許不要で乗り回せる所もあるだろうに」
「はは、性分でな――だが確かに、その気になれば何時でも乗れると言う事か」
 他愛ない話に花を咲かせているうちに、いよいよ二人の搭乗順がやってきた。本当に不思議なことに、ジャックの巨躯もニコの一般男性の身体も、普通に車体に収まった。
「……」
「……」
 じりじりと車体がレールを登る間、ジャックは高度が上がるにつれてその全貌を明らかにしていく園内の煌めく装飾を存分に楽しんでいた。ニコもきっと、同様だったろう。
「……!!!」
「……っ!!」
 ゴオオオオオオオオオオ!!!!! と勢い良く頂点から一気に地上近くへと落下していく時、生身の人間ならば内蔵に違和感というか、こう、ゾクゾクするモノを感じるのだが、果たしてジャックはどうだったろう。
 実際ニコは(彼は彼で仮初めの肉体ではあるが)気になってジャックの方をチラと見れば、実に爽快といった表情をしていたので、とりあえず良しとしておいた。

「……ふう、容赦のないスリリングさであったな」
「……もう一回乗っても良いか?」
「えっ」
 ジャックさんのアンコールに、思わず声を上げながらもしっかり付き合うニコでした。

 幾度目かのチャレンジだと駆け上がろうとしたコースターの搭乗口の横に、遂にお目当てのプレゼントの箱を見つけたジャックは、決して本来の目的を忘れてなどいないぞという涼しい顔で箱を手に取ると、包装を丁寧に開けていく。
「これは……天体望遠鏡だ」
「凄いな、生々しい話で恐縮だが買うとそこそこの値がするものだぞ」
「ああ、これは――星の好きな友人へのプレゼントにしよう」
 それを聞いてニコが眼鏡の奥の赤眼を丸くしたが、それもまた一つのプレゼントの形。すぐに笑って、良い考えだと肯定してみせた。

「しかし、俺ばかり貰うのも心苦しい。少々ここで待っていて貰えるか」
「ジャック?」
 言葉を残すやいやな、ジャックがすぐそばのワゴンに向かって走り去っていったものだから、ニコは大人しくその場で待つことを余儀なくされたが、それはすぐに驚きと喜びとに変わった。
 ワゴンから戻ったジャックの手には、ホットコーヒーとチュロス。それを両方ともニコへと差し出すと、厳かに、しかし優しげに告げた。
「付き合ってくれた礼だ。ささやかだが……メリークリスマス」
「……! そ、そんな……恐れ入る」
 ホットコーヒーもチュロスも好物だ。それだけでも嬉しいのに、嬉しい労いの言葉までかけてもらって、何と感謝すれば良いのか。

「……ジャック、有難う。そしてメリークリスマス、どうか良い夜を」
 そう告げたニコの顔は、少しだけ泣きそうな顔にも見えたという。

●メリークリスマス、ミスターベルクシュタイン~満月・双葉の場合
 満月・双葉がWCLにやって来るのは、これが二度目となる。最初の来園時もそうだったが、こと『触れると爆発する』電子機器の宝庫とも言える遊園地で、双葉が取れる行動は存外少なかったりする。
「クリスマス、イルミネーション……わーい、きれい」
 そう声を発する音程はどう聞いても棒読みだ。仕方がない、あちらこちらでイルミネーションとはまた違った花火という名の爆炎を炸裂させないように気を付けないとならないのだから。緊張感にアホ毛がぷるぷるする。

 だが、せっかくだからメカサンタからのプレゼントは貰っていきたい。手渡された紙切れを開いて中を確認する双葉。
「さてと、隠し場所は何処でしょうか」

 ――『観覧車、上から三番目の屋根の上』

 ここで、双葉が硬直した。頼りのアホ毛もピンとしたままだ。どうにかこうにか口だけ開き、肩に乗るカエルのマスコットさんに問い掛けた。
「……カエルのマスコットさんや、『観覧車』って何だろうか」
 ちょいちょい、と双葉の肩の上から少し身を乗り出して、大きくて丸いぴかぴか光るものを指し示すマスコットさん。
「……電気を使って動くものだろうか、あのくるくる回っているやつ?」
 こくこく、とマスコットさんが頷いた。ぎぎぎ、という音でもしそうなぎこちなさでカエルのマスコットさんの方を向いて、双葉はぶわっと泣きながら言い放った。
「これはあれだよマスコットさん、爆発オチなんてサイテー!!」
 普段は双葉の扱いがぞんざいなカエルのマスコットさんも、これには双葉の頭をよしよしせざるを得なかった。

「……ふむ、プレゼントの場所自体もややこしいし、双葉にとっては近付くことさえ難しかろうな」
「ベルクシュタインさん助けてー……」
 ここで遂に双葉が都合良く通りかかったニコを捕まえて助けを請うた。
「助けてくれたら双葉サンタがクリスマスプレゼントに何かあげますからっ」
「いや結構、特に手料理などと気合いを入れなくても良いからな! お気持ちだけで!」
 本来ならここで『ん? 今なんでも』という様式美に持ち込むべきだったのだが、何だか嫌な予感がしたのでニコはネタに走らず無難に回避した。

「観覧車の上から三番目の……」
「……常に緩やかに回っているから、特定がそもそも難しいな……」
 ぴかぴか光る観覧車を見上げる二人の目はだんだん虚無に近くなっていく。
「上から三番目だそうです、ぇぇ」
「……これはメカサンタが悪いな」
「爆発させても?」
「まあ待て、何とかしよう」
 そう言うなり、ニコは――何たることか、おもむろに双葉を抱え上げたではないか。いわゆる『お姫様抱っこ』状態である。
「ちょっ、待って下さいベルクシュタインさん!?」
「俺が間に入れば、双葉は直接観覧車に触れずに済むだろう。取り敢えず乗ってみて、探してみないか?」

 実は双葉の身長はニコのそれとあまり大差ない。強いて言うなら体格差があるくらいか、それで何とか見た目は様になっているのだが、そういう問題でもなく。
「……多分、大丈夫だと思いますが」
「はは、万一の時は何とかしよう」
 どうするつもりなんだろうか、そう思いながら。
 意外とすんなりと、観覧車に乗れた二人であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

桜雨・カイ
◎●
隠し場所:お任せ
プレゼント:星形に切られた紙が箱いっぱい(金銀などキラキラした紙)

これは…?
欲しいと思うプレゼント……あぁ、そういう事ですね
この施設で高い所…観覧車へ行きます

きらきらさんとの話を思い出す
どうやったら穏便にきらきらできるか考えたら
メカサンタさんがこれをくれました。

観覧車の一番上から、星形に切った折り紙を窓から外へ
あとは風の精霊にお願いして、遠くにも飛ばしてもらいます
(明かりに照らされて、星が降るように紙がきらきらと)

自分はサンタではないけれど、この景色をみてみんなが喜んでもらえたら、その笑顔が一番嬉しいプレゼント
きらきらさんも、このきらきらで満足してくれるでしょうか…?



●その笑顔を見たくて
 メカサンタは感謝の言葉と共に、桜雨・カイにもプレゼントの隠し場所を書いた紙切れを渡していった。
 かさりと開いてみれば、ただ一言『チケット売場3番窓口』とだけ書かれており、他の猟兵たちと比べるとずいぶん難易度が低いように思われた。
 戦いを繰り広げたエントランス広場からほど近いチケット売場の指定された窓口に声を掛ければ、係員はすぐに笑顔でブースから出てきて何やら小ぶりな箱を手渡してくれた。
「これは……?」
「メカサンタさんが、素敵な贈り物になるからよろしくって言ってましたよ」
 手をひらひらさせながら、すぐブースに戻る係員を見送って、カイは手中にある謎の箱に目を落とす。取り敢えずと手近なベンチに腰掛けて封を切り箱を開けると――。
「……わあ」
 箱の中には、いっぱいに詰められた星形に切られた紙が。金色銀色、赤青緑、どれもメタリックに煌めく紙を切り抜いて作られたものだった。
 しかしこれが、果たして『自分が欲しいと思うプレゼント』と何の関係が?
 そう言い掛けたところで、はたとカイは気付く。

 きらきらした園内。段ボール頭が欲しかった安らぎに、きらきらさんが欲しかった映える景色。カイの手の中にある『これ』こそが、確かにその答えなのだと。

「――よし、行こう」
 この施設の一番高いところへ――観覧車へ!
 本来観覧車の窓は安全管理上開かないようになっているのだが、事情を説明すると係員のキマイラは快くカイのゴンドラだけ窓が開くようにしてくれた。
 いっそゴンドラの上に乗っていくのも悪くはなかったのだが、万が一落ちたら大変だ。

 ゴンドラの中で箱を抱えて静かに頂点を目指すカイは、きらきらさんとの話を思い出す。
 ――どうやったら穏便にきらきらできるか。
 それを考えて、考えて――そうしたら、メカサンタがカイにこの箱を託してくれたのだ。

「……よし、そろそろですね」
 頂点近くに至ったゴンドラの窓を開け、箱いっぱいに詰められたきらきらの星形の紙を思い切り窓から外へと文字通り『降らせる』。
 全部ぶちまけたならば、カイは目を閉じて風の精霊に願う。
(「どうか、この星たちを遠くまで。明かりに照らされて、きらきらと輝くように」)
 ざあぁ、と応えるように風が吹き、きらきら星は園内中に降り注ぐ。

 ――わあ、きれい……!
 ――すごいすごい、写真撮ろ!
 ――おほしさま、ひろったー!

 遊園地でイルミネーションを、アトラクションを、その他思い思いに楽しむ人々に、カイが降り注がせたきらきら星は等しく輝き、舞い降りる。
 徐々に降下していく観覧車のゴンドラの中からその様子を眺めると、カイは目を細めて緩く笑った。
(「自分は、サンタではないけれど」)
 ――この景色を見て、みんなが喜んでもらえたら、その笑顔が一番嬉しいプレゼント。
(「きらきらさんも、このきらきらで満足してくれるでしょうか……?」)

 誰もが、笑顔で遊園地の夜を過ごしている。
 それこそが、カイにとってのプレゼントなのだとしたら。
 カイは、今まさに両手で抱えきれぬほどのたくさんのプレゼントを手にしている。

 もしかしたら、きらきらさんもちゃっかりどこかで写真を撮っているかも知れない――というのはさすがに冗談だけれども。
 そんな都合の良い話のひとつやふたつ、あってもきっと許される。
 だって、今日はクリスマスなのだから!

大成功 🔵​🔵​🔵​

照宮・連火
●◎
俺もプレゼントを貰ってもいいのか?
それなら俺はカラフルな玩具のブロックを貰うぞ!
組み合わせたらロボットも車も城も作れるやつだ
今は家族の中で俺が一番下だが、これから弟や妹が出来たら一緒にブロックで遊んでやるんだ!

……ええっ!?マジか!探さないとダメなのかよ!
しかもブロック1個1個散らばってやがる。マジ勘弁……
でもブロック1個だけ持って帰ったって意味ないもんな……しゃーない、頑張るか!

ティーカップ乗り場の植え込みの中を虱潰しに探す
他の猟兵にも見つけたら教えてくれるよう頼んでおこう
俺もお返しに探すのを手伝うぞ
ブロックは色が目立つから見つけること自体は簡単かもな
問題は数……一体何個あるんだ!?


ビスマス・テルマール
◎プレゼント内容
可能なら水陸両用クロマグロ型鎧装『オーマグロ』(2章で変身したソレでアイコンの)

のアトランティックサーモンverのを

無理ならカンガルーの肉や海亀の肉を所望しましょうかね。

アレにも、なめろうには適性あるんですよ、昔それを出していたお店もあったそうですし

海亀の肉は今も……でしょうか?

◎場所
お任せ

取り敢えず、探索しまくって『第六感』で怪しいと思った箇所から、片っ端から探していきましょうか

『継続活動』で根気強く体力の限り、まぁ……体力が尽きそうでも『限界突破』でプレゼントが見つかるまで徘徊しますが

メカサンタさんに少々無茶ぶりしたかも知れませんが、他に何を注目しようか浮かばなかったので





●れんがくんがほしいもの
 その髪の色は、人の営みを支える煉瓦の色。
 その瞳の色は、かつて見守りし黄金都市を映したかのような金色。
 内に秘めた正義感を以て遊園地を騒がせる悪に鉄槌を……下すには少々到着が遅かったが、メカサンタは誰にでもプレゼントをくれるから大丈夫。
 そんな訳で、照宮・連火(楽園の赤れんが・f24537)は少なくとも肉体年齢相応の屈託のなさでメカサンタに問うた。
「俺もプレゼントを貰ってもいいのか?」
「ハイ、オツカレサマデスリョウヘイサン。コノカミニカカレタバショニ、アナタノホシイモノヲヨウイシマシタ」
「そうか、それなら俺はカラフルな玩具のブロックを貰うぞ!」
 メカサンタから紙切れを受け取った連火は、嬉々として今一番欲しいものをめっちゃ具体的にイメージしながら意気込んだ。
 赤、青、黄色、緑、白、黒、その他色々。ブロックの形状は多岐にわたり、その組み合わせは例えなどではなく本当に無限大。
 連火曰く「組み合わせたらロボットも車も城も作れるやつだ」というのは本当で、子供の玩具と侮ってはいけない。大人も夢中になって超大作を組み上げる魔性の玩具なのだ。
(「今は家族の中で俺が一番下だが、これから弟や妹が出来たら一緒にブロックで遊んでやるんだ!」)
 待って、ちょっと待って、齢十一にしてこのしっかり度合い、凄くないですか!? しかもヤドリガミだから血縁云々に意識が薄い個体も多く見受けられるこんなご時世に、家族愛が熱い……!
 その辺りはまあ連火の出生や家庭環境が色々と影響しているのだが、それはそれとして。
 連火は『ティーカップ乗り場の植え込みの中』と書かれたメモを手にして、意気揚々とプレゼントの回収に向かったのだった。

●ビスマスちゃんがほしいもの
『サンタさんへ クリスマスには水陸両用クロマグロ型鎧装『オーマグロ』のアトランティックサーモンバージョンを、無理ならカンガルーの肉や海亀の肉を所望します』
 ビスマス・テルマールは良い子なので、あらかじめ自分が欲しいものをメカサンタたちに熱烈アピールするのも忘れない。
 これだけ念入りに熱意を込めてお願いすれば、きっと願いは通じることだろう。今年のクリスマス、どうやらエミリさんは妥協されたようですが。私は、勝ったな……!
 さあ、いつでもどうぞ! メカサンタが紙切れを持ってやって来るのを、ビスマスはイルミネーションに包まれたエントランス広場で待ち受けていた。
 待って、待って――そろそろこれは様子がおかしいと訝しみ始めた頃に、ようやく気の弱そうなメカサンタが一体、よろよろと紙切れを持って飛んで来た。
「メカサンタさん、待っていましたよ。大丈夫ですか? 何か問題でも――」
「イ、イイエ、ダイジョウブデス。アナタノホシイモノ、ヨウイシマシタ」
 これ人間だったら絶対息絶え絶えですよねという様子で、メカサンタがビスマスに紙を手渡す。受け取ったビスマスは即座に紙を開き、中の文字に目を通す。
「……ここに行けば、わたしが欲しいと思うプレゼントがあるんですね」
「……ハイ、オマタセシテスミマセンデシタ」
 ここでビスマスは瞳を閉じてかぶりを降った。これだけ見れば聖女もかくやである。
「楽しみにしていました、ありがとうございます。では――行ってきます!」
 メカサンタに一礼するや、ビスマスはダッと地を蹴り目的地へと走り出す。

 ――『ティーカップ乗り場の植え込みの中』。
 ビスマスのメモにも、間違いなくそう書かれていたのだった。

●メカサンタだって手違いは起こす
「……ええっ!? マジか! 探さないとダメなのかよ!」
 一方先にティーカップ乗り場の植え込みの前に実際たどり着いた連火は、頭を抱えて悲痛な声を上げていた。
 無理もない、誰だって「箱に梱包されたブロック一式」が最初から用意されていると思うだろう。まさか、こんなことになっているなんて思うまい、そう――。
「しかもブロック一個一個散らばってやがる……マジ勘弁……」
 ブロックはワンセット平均千五百個程度の数を誇る。それを? 一つ一つ? いやある程度は固まっているかも知れないけれど、それにしたって鬼畜の所業ではないか。
 けれども嘆いていても事態は解決しないことを、聡い連火はすぐに受け入れた。
(「でもブロック一個だけ持って帰ったって意味ないもんな……」)
 ぱぁん、と両手で頬を挟むように軽く叩くと、連火は植え込みと向かいあう。
「――しゃーない、頑張るか!」
「その心意気やよし、です! 一緒にプレゼントを探しましょう!」
「って、誰!?」
「敢えて名乗るなら、通りすがりのご当地ヒーローです」
 突如背後から上がった己とは別の声に驚愕する連火に、それは本当に名乗りなのでしょうか的な自己紹介をするビスマス。
「実はわたしのプレゼントも、この植え込みの中に隠されているようなのです」
「そうなのか? 奇遇だな! じゃあ俺もお返しに探すのを手伝うから、こう……玩具のブロックを見つけたら教えて欲しいんだ」
 そう言って自分のお目当てを伝える連火は、当然ながらビスマスが何を探しているのかをヒントとして問うのは当然のことで。
 何一つ間違っていない説明を受けたにも関わらず、分かったような分からないような顔で「とりあえず頑張る」とだけ返したことをここに記しておく。

 植え込みを痛めてしまわぬように細心の注意を払いながら、煉瓦色の少年と蒼鉛色の少女は植え込みの中をしらみつぶしに捜索していく。
 単調な色合いの植え込みにカラフルなブロックは良く映えて比較的見つけやすいからか、連火が用意したブロック用のカゴはじわじわと満たされていくが、ビスマスの捜し物の方は一向に見当たらない。
「俺の方は見つけること自体は簡単みたいだが……数がなあ、一体何個あるんだ?」
「そうですね、そちらもそちらで大変そうです。メカサンタさんの方に何か手違いがあったのかも知れませんよ、後で問い合わせてはどうでしょう」
 冷静に対策を練るビスマスもまた、先程から根気強く捜索を続けていた。常人ならば既に気力も集中力も切れてしまっていただろうに、この執念はどこから来るのか。
(「……メカサンタさんに少々無茶ぶりしたかも知れませんが、他に何を注文しようか浮かばなかったので……」)
 だって欲しいもの何でもくれるって言ったじゃん、という思いと。
 でもちょっと無茶振りが過ぎたかな、という若干の申し訳なさと。

 そこで連火がおもむろにビスマスの方を向き、堂々と問うたのだ。
「なあ、ビスマスはメカサンタに何をお願いしたんだ?」
「えっ? あっ、それは……離すとややこしいのですが」
「よし分かった、なら無理には聞かない! だが、どうしても見つからないってことはさすがにないと思うぞ!」
「れ、連火さん……」
 連火の脳裏に引っかかっていたのは、『メカサンタ側に何かの手違いがあったのかも知れない』という、他ならぬビスマスの言葉。思えばブロックが散乱してたのもおかしいし、ビスマスのプレゼントが見つからないというのもおかしい。

 連火はビスマスの青い瞳を見据えて、どうだろうと提案する。
「なあ、メカサンタに確認してみようぜ。呼べばきっとすぐ来てくれるだろ、きちんと話せば、対応してくれるさ」
「そ、そうですね……わたし、無茶なお願いをしてしまったから貰えないのかなと諦めていましたけど……」
 二人は顔を見合わせて頷き合うと――その名を呼んだ。

「「メカサンタさーーーん!!!」」

 ――事の顛末を、簡潔に記す。
 まず、連火のプレゼントがバラバラになっていたのはサプライズのつもりだったのだが、悪ふざけにも度が過ぎたということで陳謝を受けて、正式にセットになった箱を受け取ることができたという。これで連火がどんな芸術作品を作り上げるのかが楽しみである。床に散らばせたままにして踏んづけて大惨事にならないことを、祈るばかりだった。
 
 次に、ビスマスの『オーマグロ・アトランティックサーモンバージョン』については、実はメカサンタに技術ではどうにもならなかったとのことで、かといって代替品のカンガルー肉や海亀肉も手に入らず、手渡されたのはどう見ても鎧装のハリボテ――だったのだが、メカサンタなりに頑張った形跡はあったので、ビスマスは笑ってそれを受け取ったという。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘスティア・イクテュス

あっ、わたし達で探しにいくのね
まぁ、これはこれでお宝探しって感じで楽しそうではあるけど…


ティターニアでふわりと空へ
上から見るイルミネーションってのも綺麗ね………
ええっと、メモの内容は…あっ………(風で飛ばされるメモ)


(ひらひら落ちるメモを追って降りてきて)あっ、ニコ、ニコ!それ!メモ!拾って!!ついでにそのメモに書いてある場所ってどっちかしら?




クリスマスツリーの木の中に手を突っ込んで
プレゼントを発見。さぁ、何が入ってるかしら?
そういえば、ニコはメカサンタに貰えるとしたら何をお願いするの?


プレゼント:何か依頼とかで使えそうなものでおまかせ


ケルスティン・フレデリクション
クリスマスプレゼントをさがすの?
自分に渡されたプレゼントの在り処は『おまかせ』
一人で回るのは寂しい…ので
「ニコ、あのねえっとね、ついてきてほしいの!」

ゆうえんち、くるのはじめて!
「あれはなにー?」
「あのおっきいのは?」
「すごーい!はやーい!」
はしゃぎながらプレゼントの在り処に辿り着けばそこを探して
届かない場所ならニコにおねがい…
中身はもふもふのマフラーと手袋
寒い時期にぴったりのアイテムに嬉しくて笑って
「メカサンタさんに、ありがと、って言わなきゃ!」
付いてきてくれたニコにも、ありがと!


アドリブOK



●前途多難じゃねーか!
 メカサンタから紙切れを受け取ったヘスティア・イクテュスは、すぐに事態を飲み込んでポンと手を打った。
「あっ、わたし達で探しにいくのね」
 宝探しとは、海賊らしくて悪くない。そんな心地がして、思わず笑みが漏れた。
「まぁ、これはこれでお宝探しって感じで楽しそうではあるけど……」
 そう言いつつ、ヘスティアは迷わずジェットパック『ティターニア』を展開。ふわりと空へ舞い上がり、イルミネーションに包まれた遊園地を一望する高さまで到達した。
「上から見るイルミネーションってのも綺麗ね……ええっと、メモの内容は……」

 ――ごうっ!

 その時だった。上空をひときわ強い風が吹いて、ヘスティアの手元にあったプレゼントの場所が書かれた紙切れをあっという間に吹き飛ばしてしまったではないか。
「あっ! ちょ、待ちなさい!」
 メモは、ひらりひらりと風に乗り、徐々に下へと落ちていく――。

●お手をどうぞ、お嬢さん
 一方、園内の猟兵たちの様子を見て回り、何かトラブルなどは起きてはいないかと気を配っていたニコの視界に、ケルスティン・フレデリクションのふわふわとした愛らしい姿が飛び込んできた。
 小さな手には、メカサンタから手渡された紙切れ。心許なさげにきょろきょろしているものだから、ニコは思わずケルスティンに声をかけてしまう。
「今晩は、ケルスティン。メカサンタからプレゼントの案内は受けたかな?」
 少女と目線を合わせるべく、片膝をついて見上げるようにそう問うニコに、ケルスティンは紙切れを手の中で遊ばせながら応えた。
「クリスマスプレゼントをさがすの? 私のプレゼントは……『チュロスのワゴン』って書いてあるの」
 そこでニコは少し目を丸くした。チュロスが販売されているワゴンと言えばこの近くであり、つい先程他の猟兵と立ち寄りもした。
 ケルスティンはそんなニコをじっと見つめ、次いでその橙の瞳を泳がせ始めた。
(「一人で回るのは寂しいから……」)
「どうした? 困り事かな?」
 そんな所に、ニコが穏やかな声でそう問い掛けるものだから。
「……ニコ、あのねえっとね、ついてきてほしいの!」
 思わず、甘えてしまった。懐中時計の化身は、それを微笑んで受け入れた。

●とてもやさしいものがたり
 ケルスティンは、遊園地というところに来ること自体が初めてであり。見るもの全てが珍しく、楽しく、それはもう目移りしてしまう。
 お化け屋敷のおどろおどろしい外観を器用にも木陰の向こうに見出して問う。
「あれはなにー?」
「お化け屋敷と言ってな、所謂度胸試しをするところだ」
 ケルスティンも行ってみるかい? とニコに問われると、ふわふわアメジストの少女はふるふるっと首を振って辞退の意思表示をした。
 次にケルスティンが目を付けたのは、ぴかぴか光る大観覧車。
「あのおっきいのは?」
「観覧車だな、小さな丸い部分に乗り込む事が出来て、園内を一望する人気アトラクションだ」
 あれなら怖くはないぞ、と言うニコに、次もケルスティンは大丈夫と遠慮する。
 興味はあるが、寄り道をするほどではなく。その興味は今やプレゼントに――。

 ――ゴオオオオオオ!!!

「すごーい! はやーい!」
 ゆるりと二人歩調を合わせながら進んでいた、ちょうど頭上にジェットコースターの線路があったのだ。悲鳴や歓声と、轟音とが通過した時は驚いたが、すぐにその楽しそうな様子につられてはしゃいでしまうケルスティン。
 そんな姿に、ニコも常の生真面目な表情を緩めて優しく見守っていた。そして、そんなニコが指し示した先には――お目当てのチュロス販売ワゴンがあったのだ。
「あのっ、メカサンタさんからのプレゼント、もらいにきましたっ」
「いらっしゃいませ、小さなお客さま。こちらにご用意しております」
 ワゴンの中の店員さんから、すんなりと手渡されたのは、手触りからして柔らかい赤と緑のラッピング袋。
 もしも自分の手が届かないところにあれば、ニコに助けてもらおうと思っていたがそれには及ばなかったようだ。

 ワゴンの近くのベンチに二人並んで腰掛けて、イルミネーションの光を頼りに包みを開いて中身を確認する。
「わぁ……! もふもふのマフラーと手袋……!」
「此れからより一層寒い時期になっていくからな、ぴったりのアイテムで良かった」
 ふわふわ素材のピンク色をしたマフラーと手袋はお揃いの柄とデザインをしていて、セットで身につけるときっと良く似合うことだろう。
 ケルスティンは心からの嬉しさにふにゃんと笑って、メカサンタへの感謝の気持ちを口にした。
「メカサンタさんに、ありがと、って言わなきゃ!」
「はは、優しいな。また会える事があれば、是非伝えてあげると良い」
 そう応じたニコの方をも見て、ケルスティンはこう言い添えたのだった。
「――付いてきてくれたニコにも、ありがと!」
「……!」
 まさか、自分が礼を言われるとは思っていなかったニコは。
 目を思い切り丸くして、少しばかり赤面して言葉を失ったそうな。

●虹の尾を曳いて飛ぶというのはいかがでしょう
「ニコー! ニコ、ニコ! それ! メモ! 拾って!!」
「なっ……此れかっ」
 呆ける暇も与えず、天から降ってくる声はヘスティアのもので。ニコが指示のままに慌ててひらひら落ちてくる紙切れを何とか受け止める。
「拾ったぞ、ヘスティア。お返しするので、此方に――」
「ねえねえ、ついでにそのメモに書いてある場所ってどっちかしら?」
「……こらこら、手を抜くものでは無い。『クリスマスツリーの木の中』だそうだ」
 咎めながらも何やかやで答えてやるのは世話焼きの性分か、長い付き合いからか。
 ありがとうーと華麗に宙を舞い再び去って行くヘスティアを、二人はただ見送るのみであった。
「……ケルスティン、チュロスも恐らく食べたことは無いだろう。ご馳走しよう」
「ありがとう、うれしい!」
 決して幼女をお菓子で買収しようとしている悪い大人の図ではないので誤解なきよう。

 中央広場にどーんと飾り付けられた大きなクリスマスツリーは、てっぺんのお星さまをはじめとして様々なオーナメントと電飾に彩られて、人々を夢中にさせていた。
 写真を撮るものも多い中、ヘスティアはそんなの関係ねえと言わんばかりにどーんと飛来しツリーの中に手を突っ込むと、確かな手応えを感じて一気に引っこ抜く。
「こ、これは……!」
 中くらいのサイズの、そこそこの重さの箱を開けた中には、見るものが見ればすぐ分かる機械部品が入っていた。
「ティターニアに装着すれば……軌道が七色の光になる追加パーツじゃない……!」
 なお戦闘能力の向上には一切役立たない、あくまでも演出重視のパーツです。

「ちょっとー! そろそろどいてもらえませんかー!?」
「写真、撮れないんですけど-」
「あ、あら、ごめんなさいねっ」
 そそくさと箱を抱えて、その場を離脱するヘスティアだった。

●もらうもの、あげるもの
 チュロスをもぐもぐするケルスティンとニコの元に、箱を抱えたヘスティアが飛んで戻ってきた。
「おやヘスティア、プレゼントは如何だったかな?」
「うーん……気が向いたら使うかもって所かしら……」
 そういいながら、自分もベンチの空いていた場所に腰を下ろすと、ものは試しにと早速ティターニアにレインボージェットパーツ的なものを器用に組み込み始めた。
「……そういえば、ニコはメカサンタに貰えるとしたら、何をお願いするの?」
「俺、か? ううむ、考えてもいなかったな。そうだな……」
 顎に手を当てて真顔で考え込むニコを、ケルスティンも思わずじっと見つめる。
「……万年筆、かな。インクの色を好きに選んで、物書きを楽しみたい」
「ふぅん、それ、お願いしてみたら? 予知だって立派な仕事だし、もらえるかもよ」
 ヘスティアにそう促されるも、ニコは静かに首を振るばかりだった。
「お気持ちだけ頂戴しておこう、俺はもう、どちらかと言えば渡す側だよ」
「ニコ、おにいさんだから……?」

 懐中時計は、笑うばかりだった。
 その身は、既に百年を経ているということもあったが。
 この身を得るに至るまで、たくさんのものを貰ってきたのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木常野・都月


他のヒト達も、プレゼントを疑いなく探してる…
メカサンタ、本当にオブリビオンじゃないのか。

疑って悪い事をしたかも。
メカサンタに謝っておく。

俺もプレゼントを探すか。

…俺は大人の狐。
それでも、狐の本能的にずっと欲しくて。
でも、理性が抑えられなさそうで…
遊んでる所をあまり見られたくないんだ。

メリーゴーランドの脇の花壇の中、手の平位のプレゼントを探す。

狐を魅了する…自然界には存在しない完璧で綺麗な…丸!

ボール!

俺だけの!ボール!!

気がついたら狐の姿になってた。
ここはヒト目につく。

残った理性を振り絞って、メカサンタに一礼して、ボール咥えてヒトがいない所へ!

「キュゥーー!!」
(ボールに大興奮でじゃれだす


可愛猫・仮面
ふ、ふふふ。
これは我輩たち有利な案件であるな。
「にゃんちゃん、なにかさくせんが?」
うむっ!
我輩たちは全力で遊ぶのである!
「あ、そっか! あそんでいいんだ!」
そうなのである!
プレゼントを探しながら遊ぶのである!
「わーい!」
というわけである。目につく限りのアトラクションを楽しんでいくのである!
先輩どのからも聞いたことがあるのである。
キマイラフューチャーは楽しんだものが勝つ、と!

しかし、プレゼントは何であろうな~。
楽しみであるな!
「あたしねえ、クレヨンほしい!」
我輩も~!
「色とかいっぱいあるといいよね!」
お絵かきがはかどるのである!



●合法的に人の金で豪遊できるって最高ですね!
 きらきら光るイルミネーションに彩られた夜の遊園地の中央広場に、可愛猫・仮面はひとり――いや正確にはひとりとひと袋セットで堂々と腕組みをして立っていた。
 普通ならば謎の被りものをした幼女が一人で遊園地に立ち尽くしている姿を見れば、誰かしらがすわ迷子かと声を掛けるだろう。
 しかし、『仮面』を被った『幼女先輩』から放たれる圧倒的な強者のオーラ(と、猟兵は基本的にどんな姿をしていても違和感なく受け入れられるという特性)で、往来を行く人々は誰も仮面を気に掛けない。自由ッ……! 圧倒的自由ッ……!

『ふ、ふふふ。これは我輩たち有利な案件であるな』
「にゃんちゃん、なにかさくせんが?」
『うむっ! 我輩たちは全力で『遊ぶ』のである!』
「あ、そっか! あそんでいいんだ!」

 そう、仮面と幼女先輩とに手渡された紙切れには『乗ったアトラクションのどこかの出口』と書かれていたのだ。一見大雑把すぎる指定に見えるそれは――逆に考えれば『合法的に好きなだけ遊んで良い』と言われているも同じこと。
 これこそが冒頭の仮面の不敵な笑みの理由であった。何しろここは夢の国とも称される大遊園地『わくわくキマイラランド』、その気になればアトラクション全制覇など余裕も余裕。
 幼女先輩の手元にあるメモを改めて確認しながら、仮面は眼前に広がる獲物……じゃなかった、アトラクションをぐるり眺めた後、強く宣言した。
『そういうわけなのである! プレゼントを探しながら遊ぶのである!』
「わーい!!」
 そんなこんなで、仮面と幼女先輩のコンビ『可愛猫・仮面』の楽しいアトラクションツアーが始まった。なおチケットは一枚で済む上にグリモアベースで既に支給されている。人の金で遊ぶ遊園地は楽しいか? んなもん楽しいに決まってますがな!!

(「先輩どのからも聞いたことがあるのである。キマイラフューチャーは楽しんだものが勝つ、と――!!」)

 誰かは存じ上げませんが、いいことを言う人もいたものですね!

●秘密のプレゼント
 同行していた猟兵たちが、次々とメカサンタから紙切れを受け取って園内に散っていく様子を、木常野・都月はしばし呆然と眺めていた。
(「他のヒト達も、プレゼントを疑いなく探してる……」)
 都月は油断なくメカサンタの正体が実はオブリビオンなのではないかと疑っていたのだが、事ここに至ってはその疑念を解くより他になさそうだと思い至る。
(「疑って悪い事をしたかも」)
 そんな都月の元にも、メカソリに乗ったメカサンタはやって来た。都月に紙切れを渡そうとするメカサンタに、手を差し伸べてそれを受け取りながら都月は謝罪を口にした。
「……俺、お前達のことをずっと疑っていた。その……ごめん」
「イインデス、ソウイウオトシゴロモアルデショウ」
「いや、俺はもう大人の狐……」
「デハ、メリークリスマス!」
 紙切れを押し付けて去って行ってしまうメカサンタを見送るしかなかった都月だったが、すぐ我に返って紙切れを開く。

 ――『メリーゴーランドの脇の花壇の中』。

 ごくり、と知らず喉が鳴る。都月が本当に欲したものが、ここにあるというのか。
(「……俺は大人の狐。それでも、狐の本能的にずっと欲しくて」)
 豊かな黒い尻尾を揺らしてきらきらの道を進みながら、都月が目指すはメリーゴーランド。見たことも乗ったこともないけれど、風の噂では聞いたことがある。馬車や木馬がぐるぐる回る、不思議で素敵な乗り物だとか。
「わ……っ」
 その全容を視界に入れた時、都月は思わず声を上げてしまう。周囲のイルミネーションに負けない豪奢な照明と装飾に、回る遊具に合わせて流れる優雅な音楽。
『ふははははは! 我輩、気分は白馬の王子様である!』
「にゃんちゃん、つぎはカボチャのばしゃにのろー!」
 どこかで聞いたような、無邪気なはしゃぎ声も聞こえる中。自分も乗りたいという欲求を堪えつつ、都月はどこか人目を憚るように花壇を探す。
(「もし『プレゼント』を見つけたら、理性が抑えられなさそうで……」)
 できれば、プレゼントで『遊ぶ』自分を見られたくない。そう思いながらも、その目は、その手は、憧れのプレゼントを求めてがさごそと彷徨い――。

「……あった!」

 都月の大きな狐耳がピンと立つ。その掌にはちょうど良い大きさの、丸い何かがあった。
 狐を魅了する……自然界には存在しない、完璧で綺麗な……丸!
 そう――ボールである!
「俺だけの……! ボール……!」
 気がつけば都月の姿は人々の前から消えた――ように思われた。足元を見れば、黒い狐の姿になった都月に気付いた者もいたかも知れないが、暗がりできっとよく分からない。

(「ここはヒト目につく」)
 それでも狐の都月は油断なく、内心でメカサンタに今一度の感謝を捧げつつ、いよいよボールを加えてヒト気のない所へ……!

「キュゥーーーーー!!!!!」

 それはもうとても愛らしい声を上げて、狐の都月は大興奮でボールにじゃれ続けたという。

●カラフルなプレゼント
 メリーゴーランドに乗った時は地味に都月とニアミスしたが、他はマイペースにアトラクションを楽しんだ仮面と幼女先輩。
 ジェットコースターなどの絶叫系では仮面くんがぶっ飛んで行かないかこっそり心配しましたが、その辺りは不思議な力でセーフセーフ。
 ひとつアトラクションを乗り終えるたび、出口付近の植え込みやお土産屋さんなどを逐一確認はしたのだが、今のところまだプレゼントらしきものは見つからない。
『しかし、プレゼントは何であろうな~。楽しみであるな!』
 何しろ、繰り返しになるが今日のこの日のために一年良い子にしてきたような仮面である。いよいよプレゼントを手にする時が近いと思うと、わくわくが止まらないというもの。
「あたしねえ、クレヨンほしい!」
『我輩も~!』
「色とかいっぱいあるといいよね!」
『うむ、お絵かきがはかどるのである!』
 実際、色数の多いクレヨンを持っていた子は学校内ヒエラルキーの上位に立っていたような気がしなくもないが、今はそういう生々しい話は止めておこう。
『では次である! 目指すはあのティーカップである!』
「わーい、ぐるぐるするー!」
 ああ、願わくば仮面と幼女先輩にティーカップ耐性があらんことを祈ります……。人によってはぐるんぐるんさせすぎた結果自爆して酔ったりするので……。

『楽しかったのである!!』
「ぐるぐる、すごかったね!」
 ――ご無事で何よりです! さあ、出口に向かいましょう! ……おや? 係員さんが何かを手にして仮面と幼女先輩を待ち受けていますよ?

「メリークリスマス、メカサンタさんからの預かり物です」
『おお、遂にプレゼントが!』
「にゃんちゃん、よかったね!」
 手渡された包み紙の中には、36色入りのクレヨンセットと、スケッチブックのセット。
 ゴッドペインターたる可愛猫・仮面ならば、きっとこのキャンバスに素敵なお絵描きをしてくれるに違いない。

 良い子には、プレゼントをあげましょう。
 メリークリスマス、素敵な夜を!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

インディゴ・クロワッサン

「んー…謎解きは好きだけども…」
ぶっちゃけ報酬目的で参加した訳じゃないから、僕は参加辞退しとこーっと。
欲しい物も、今の所特に浮かばないからね(笑)
「んじゃ、お疲れ様ー」
って手を振りながら帰ろーっと。
・゜・。*。・゜・
あ、グリモア猟兵にベースまで送ってもらったら
「はい。めりーくりすまーす ってね」
全くもって関係ないけど、ほぼお世話になってるし、お歳暮がてらに夜糖蜜の入った小瓶を渡してお裾分けだよ。
「結構甘いから、ミルクとかに溶かして飲むのとかオススメだよ~」
……え、何でって…
「…理由って必要かな?
ま、必要なら日頃の感謝、って事で」
じゃ、これからも宜しくね~
僕は面白そうな依頼探すからー♪



●まさかの事態!? プレゼント辞退!!
 夜も更けてきて、家族連れの姿が徐々に減り始め、逆にカップルの姿が多く見られるようになる時間帯を迎えた『わくわくキマイラランド』。
 残る猟兵はインディゴ・クロワッサンと、転移を担当するニコ・ベルクシュタインの二人だけであった。
「インディゴも助力を有難う、メカサンタから紙切れは受け取ったか?」
 そう問うニコに、インディゴは緩く笑って、しかし左右に首を振った。
「んー……謎解きは好きだけども……」
「どうした、何か問題でも?」
 常と変わらぬ真面目な様子で事情を聞こうとしたニコが聞いた答えは、意外なものだった。
「ぶっちゃけ、報酬目的で参加した訳じゃないから。僕は参加辞退しとこーっと」
「なっ……」
 思えばかのインディゴ・クロワッサンなる猟兵は元々こういうふわふわと掴み所のない性格をしていればこそ、この反応も納得は行く。
 本名、出自、その他諸々を曖昧なまま受け入れて――そうせざるを得ない事情があるとしても、それはなかなか難しいことだ――ふらり気の向くままに生きている。
「欲しい物も、今の所特に浮かばないからね」
 そう言って屈託の無い笑みを向けると、「んじゃ、お疲れ様ー」だなんて。
「ま、待て! 一人で帰るつもりか――送る、転移するから少し待て!」
 これにはグリモア猟兵も、大慌てでグリモアベースへの転移を開始するのだった。

●心優しき君に幸あれ
「はぁ、はぁ……転移でこんなに疲労を覚えたのは、初めてやも知れぬ……」
 決して責めている訳ではないが、と言外に含ませつつ、ニコは共に帰還したインディゴを見る。その視界に、何か光る硝子瓶のようなものが飛び込んできた。
「はい。めりーくりすまーす、ってね」
「……此れ、は」
 インディゴが差しだした小瓶の中身は、色艶からして美味しそうな夜糖蜜だった。お歳暮がてらに、と言いながら、おずおずと差し出されたニコの掌の上にぽんと乗せた。
「結構甘いから、ミルクとかに溶かして飲むのとかオススメだよ~」
 普段自身も愛飲しているもののお裾分けだろうか、レシピの提案は素直に有難いが。
「よ、良いのか? 俺が、斯様な良き物を頂戴してしまって……」
「……理由って必要かな?」
「いや失礼、決して訝しんでいたりという訳では」
「いいよ、じゃあ……『日頃の感謝』って事で」
 前髪から覗く金の瞳は悪戯っぽく光りニコを捉え、ニコもまたようやく柔らかく笑んだ。
「ああ、ならば――有難く頂戴しよう。お心遣い、感謝する」
 夜糖蜜を、そっと大切そうに握りこみ、ニコはインディゴに一礼した。
 それを聞き届けるや否や、インディゴはひらりと踵を返してグリモアベースの人並みに向かって歩き出した。
「じゃ、これからも宜しくね~。僕は面白そうな依頼探すからー♪」
 背中を向けたままひらひらと手を振って、今度こそインディゴは見えなくなった。

 その言葉はもう届かないと知りながら、グリモア猟兵はそっと呟いた。
「有難う、君の道行きに――幸いあれ」

●メリークリスマス、フォーオール
 聖夜の大騒ぎは、猟兵たちの活躍によって無事解決を迎えることができた。
 モノであったり、時間であったり、思い出であったり。
 手に入れたプレゼントは様々だが、それが良きものであることを祈るばかり。
 オブリビオンの脅威は尽きねど、今は楽しいひと時を過ごそうではないか!

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年01月05日


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#クリスマス


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はテト・ポーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト