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Attack on Black

#アリスラビリンス

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#アリスラビリンス


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 とある小世界の一角、息を切らせながらも、その少女…アリスはそこに駆け込んだ。
「…はあ、はあ、やっと、やっと着いた…!」
 逃走の末、遂に辿り着いた『扉』の前。この『扉』を開けば、元の世界へ帰れる。
 追いかけて来ていたオウガはどうにか撒いた。追いついてくるとしても、もう暫く後だろう。
 もう大丈夫。さあ、『扉』を開いて、元の世界へーー少女が扉に手をかけようとした、まさにその時。
 不意に、脳裏を数多の情景が流れだした。それは開かれるべきではなかったパンドラの箱――。

「尚美?いいえ、それはこの偽りの世界を生きる為の『虚』の名前。『闇鳳魅=ブリュンヒルデ=ヒンメルベルグ』、それが私の『真』の名前よ」
 黄昏を背に、片目を手で覆いながら告げる『私』。

 嘲るような笑いを上げる男子生徒達。その輪の中で広げられているのは一冊のノート。不思議な記号や図形が書き連ねられたそれは『私』のもの。
 案ずるような女子生徒に、『私』は涼しい顔で答える。
「良いの。彼らはあれで良いの。あの『アルドナムの書』の意味は、凡人に理解できて良いものじゃないのだから」

 遠い外国でテロ事件が起きたというTVのニュースを見た『私』が、何かを悟ったような顔で語る。
「過激派組織の犯行、というのはあくまで表向き。これは『機関』の仕業よ。彼らの『計画』に邪魔な人を消す為に、無関係な人達を巻き込んで…」

 何だこれは。
 何で私はそんな妄想を得意げに語っているんだ。
 今戻ったら、この妄想を散々聞かせた家族や友人にどんな顔をすればいいんだ。
「いや本当どうしたらいいの!?私ってばあんな痛い子だったの!?ちょっと、ちょっと勘弁してよぉ!?」
 その場に蹲り頭を抱えてしまうアリス。過去が、彼女の心を押し潰そうとしていた。『黒歴史』という名の過去が。

 そうこうしているうちに、とうとうオウガ…四本の剣を携えた少女剣士が追いついてきた。アリスを殺し喰らおうと、その剣を差し向けようとした彼女であったが…アリスの様子を見て、何かを思い出したかのように語りだす。
「…そう。やっと思い出したのね。貴女の本当の名前、果たすべき使命。なら、もう恐れることはないわ。征きましょう、私と。この世界を、新生させるために」
 何やらこのオウガ、ノリノリである。



「なんかよく分からないけどアリスがピンチなの!みんな、助けてあげて!」
 メニス・ソルタ(リトルヴィジランテ・f19811)、今年で7歳の少年グリモア猟兵には、アリスの絶望はよく分からなかったようだ。
 しかし、放置しておける状況でないことだけは良く分かる。
「このアリス――尚美、って名前なんだけど、『自分の扉』から元の世界へ戻ろうとした時に、元の世界での辛い記憶を思い出して心が折れちゃって。そこをオウガに捕まって、新しいオウガに変えられそうになってるの」
 辛いというか痛い、では。一部猟兵がその言葉を飲み込んだことに、メニスは気付かない。
 ともあれ、オウガは尚美の『扉』があった世界を、彼女の記憶を反映した『絶望の国』に変え、以てその国に適応した存在――即ちオウガへの変異を促そうとしているらしい。
「絶望の国では、なんか天使と悪魔がいっぱいいて争いあってるけど、これは皆の敵じゃないと思うの。だからオウガを倒すことに専念してね」
 殲滅対象のオウガは『廃亡の剣姫マウラ』。元はアリスだった少女がオウガとして再生された存在だが、此度の彼女は絶望の国の影響を受けてか、無駄に格好つけた言動が多いらしい。彼女に合わせた言動を取れば、隙を見出せる可能性が高いかもしれない。

「オウガを倒したら、アリスを説得して立ち直らせてあげてね」
 そのアリス・尚美は、現実世界で己が繰り返していた言動があまりにも恥ずかしすぎて、すっかり己に絶望してしまっている。おまけに、彼女の妄想を反映して生まれた『D機関』のエージェント達が、彼女を捕らえようと追いかけてくる。
「エージェントは凄く弱いけど、とにかく数が多いから…逃げた方がいいと思う」
 逃走しながら、並行して尚美を説得する必要があるということだ。

 そうして尚美が立ち直ったら、改めて『自分の扉』まで連れて行くだけであるが。
「でも、『扉』の周りにオウガの群れが集まっているみたいだから…まず、これをやっつけないといけないんだ」
 尚美の『扉』周辺には、D機関のエリート兵士という設定を得たオウガ『うさうさトランプ兵』の軍団が待ち構えている。これらを殲滅せねば、尚美を元の世界へ帰すことは叶わない。
 因みにこのオウガ達、尚美の妄想の影響はあるものの、元々兵士であるせいかそこまで突飛な言動は取らない。それを聞いた一部猟兵が残念そうな表情を見せたが、メニスにはその意図が掴めなかった。

「こんな感じでいろいろいっぱいあるけど、アリスを助けるために頼れるのはみんなだけなんだ!お願いしますっ!」
 ぺこり、と頭を下げるメニスに猟兵達が是を返せば、少年グリモア猟兵は嬉しそうな笑みを浮かべ。
 掲げた木の枝の先端にグリモアの光を走らせ、以て猟兵達を『絶望の国』へと送り出してゆく。


五条新一郎
 昔の恥ずかしい思い出を思い出すと奇声を上げたくなります。
 五条です。

 さて此度の舞台はアリスラビリンス。
 中学二年生によくある妄想をこじらせ過ぎて帰るに帰れなくなってしまったアリスを立ち直らせてあげましょう。
 今回は基本コミカルタッチでお送り致します。

●目的
 アリス「尚美」の心を救う。
 それが達成されていれば、彼女が元の世界に帰るか否かはシナリオ成否に影響しません。

●救助対象
 尚美:15歳。セーラー服の女子中学生。右手に包帯巻いてますが怪我はありません。
 元の世界では『終末戦争』にて新世界の導き手となる宿命を背負う者『闇凰魅=ブリュンヒルデ=ヒンメルベルク』として、終末戦争後の世界の支配を目論む『D機関』を相手に日夜暗闘を繰り広げている――という設定を軸にした妄想を家族友人問わず語り聞かせていた。
 尚『闇凰魅』と書いて『なおみ』と読む。

●舞台
 尚美のかつての妄想を元に形作られた『絶望の国』。
 荒れ果てた現代風のビル街で、天使と悪魔の軍勢が最終戦争を繰り広げています。
 天使も悪魔も猟兵達には基本干渉せず、また戦う場合でも凄く弱いです。

●第一章
 尚美をオウガに変異させようとしている『廃亡の剣姫マウラ』との「ボス戦」です。
 マウラも絶望の国の設定に合わせた結果、『闇凰魅の前世での戦友』という設定になっているようです。彼女のノリに合わせたプレイングにはボーナスがつきます。

●第二章
『D機関』のエージェントから逃げつつ、尚美を説得して立ち直らせる「冒険」です。
 エージェントは弱いですがほぼ無限湧きです。

●第三章
 尚美の『自分の扉』周辺にて『うさうさトランプ兵』との「集団戦」です。
 この兵士達は『闇凰魅の抹殺命令を受けたD機関のエリート兵士』という設定がついてます。それに合わせた言動を取るプレイングにはボーナスがつきます。

 それでは、皆様の誰にも止められないプレイングお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『廃亡の剣姫マウラ』

POW   :    我流:インガオーホーザン
対象のユーベルコードに対し【自身のレベル倍の威力にして斬り返す斬撃】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
SPD   :    フォースート・ストライザー
【紋章剣の四つのスート属性を一つに束ねる事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【空間断層を引き起こす聖剣による光の斬撃波】で攻撃する。
WIZ   :    剣霊姫招来
自身の【装備する紋章剣の使用封印(最大四本まで)】を代償に、【使用を封印した紋章剣に宿る少女聖霊】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【敵の弱点を突くスートの属性攻撃と属性防御】で戦う。

イラスト:おきな

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は七那原・エクルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

サエ・キルフィバオム
アドリブ絡み歓迎

「……ま、まぁ、私もそういう歳だけど、うーん、こういう経験も将来の糧ってのに、なるんじゃないかな?」
実際、超能力で戦っている身としては複雑なようです

黒い和服を着て、如何にも”闇属性の巫女”的な立場を装います
「前世の因縁を今に持ち込むべからず……」
【演技】【変装】【コミュ力】【パフォーマンス】で厳かに言い放ちます

「抵抗を試みますか、やめた方がよろしいですよ」
剣霊姫招来を敢えて受け、僅かに出血

「愚かな……」
自らの血で怪しげな紋章を描く演技をしつつ【貫通する悪意】を発動し、剣霊姫招来をコピーして、紋章剣が使えないマウラを剣霊姫で攻撃しようとします
「己の因果で清算されるが良い!」


荊城・蕾
自分もアリス故、初仕事で早速ラビリンスに里帰りかと苦笑。
だが助けが必要な女の子がいるなら、ただ行くのみ。

「前世での苦難を知りながら、現世でも尚美を闘争に巻き込むのか。その非道、この『薔薇十字の騎士』が許さん!」

と、現世の尚美を争いから守るポジで参戦。
経験不足を補う為相棒の力を借り、「生贄に捧げられし薔薇十字の騎士」で周囲に薔薇の花弁が舞う騎士に変身。

「悪魔の力を得た我が剣技を見よ!」

爆発的に増大した運動・反応速度で敵の斬撃を躱し、薔薇の花弁から形成した赤い革命剣に呪詛を込め刺突。

(この一戦は助力しよう。だが、帰ったら三日は閨から出られぬと思え)

代償を求める「薔薇の悪魔」の宣告に、背筋がぞくり。


火土金水・明
「相手が剣を使うのでしたら、こちらも剣で受けて立ちましょう。」銀の剣を右手に持って構えます。
【SPD】で攻撃です。
攻撃方法は、【破魔】と【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【銀の流れ星】で『廃亡の剣姫マウラ』を【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】【見切り】でダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでも、ダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等はお任せします。



 紅く燃え上がる空。
 無残に荒れ果てた街並み。
 かつては人々で賑わっていたであろうビル街は、今や罅割れ崩れ落ち、延びる道路には大破した自動車や枯れ折れた街路樹が随所に転がり。
 人の影など何処にも見えず、ただ遠くの空に、翼持つヒトに似たる影――天使と悪魔の争う姿が見えるのみ。
 それはまさしく、ハルマゲドン、ラグナロク、或いはアポカリプス――ひとつの歴史の終末の光景。
「宿命の少女『闇凰魅=ブリュンヒルデ=ヒンメルベルク』が隠し持っていた『アルドナムの書』に記されし『第七の時代』の終わり、『終末戦争』――天界と魔界の、次なる時代の主導権争い」
 片道四車線の道路同士が交差する大交差点の中央、空を見上げながら、四本の剣を背後に従えし少女――『廃亡の剣姫』マウラは呟く。
「けれど、勝者はそのいずれでもない。この戦争は勝敗を決めるためのものではなく、『彼女』が『新生』するための『儀式』――そういうことですね?」
 その背後より聞こえる声。マウラが振り向けば、そこに在ったのは三つの人影。黒衣の魔女、桃髪の妖狐、そして薔薇を纏う女騎士。
「――貴方達は」
 此処に至って妨害者か――眉根を寄せるマウラに、黒衣の魔女――火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)は艶然と微笑んで。
「『荒廃の魔王』アゼル=イヴリスの落とし子。オーヴァーランダー:F.E.A.R.。故あって、闇凰魅=ブリュンヒルデ=ヒンメルベルクに助成するものです」
 堂々と名乗ってみせたその名は、まさしくこの世界――絶望の国に相応しいもの。此度の任務のための急造とは思えぬ、或いは常よりの自称か。何しろステータスシートに書いてあった名乗りである。
「オーヴァーランダー…まさか『異界』からの干渉者とは。そこまでして、世界の新生を妨げたいと?」
 憮然と返すマウラ。唐突に捻じ込まれた追加設定にも即座に対応するアドリブ力である。
「彼女は――闇凰魅は。前世においても『帝国』に追われ捕らわれ、尽きることなき苦難に苛まれていたと聞く。…お前は、そうと知っていながら彼女を…!」
 薔薇の女騎士――荊城・蕾(薔薇の奴隷王子・f27724)は怒りの滲む表情でマウラを睨む。硬く握ったその拳を強く震わせて。更に設定を盛る。
(――いや、まさか猟兵としての初任務でいきなりラビリンスに戻るとは思わなかったが。こんなオウガもいるのか…)
 しかしその内心は若干の戸惑いも滲んでいた。何しろ彼女も元々はアリスであり、『裏技』を用いたことで猟兵となりラビリンスからの脱出を果たした、という経緯を有するが故。初任務がいきなりアリスラビリンスで、しかもこのような珍奇なる状況。戸惑うのも無理からぬ話である。
(だが、助けが必要な女の子がいるならば。ただ行くのみ)
 とはいえ、此度の任務への意気込みは高い。正義感が強く、特に女性を救うことには使命感じみたものすら感じる王子様気質の蕾。闇凰魅――もとい尚美を救う為なら躊躇などしない。
「『帝国』は彼女の力を世界征服に悪用しようとしていた。私は違う。世界を正しき姿に。人類をより高き次元に。彼女の背負った運命を、手助けしたいだけ」
「ふざけるな…ッ!その為に、彼女の犠牲を許容しろというのかッ!!」
 平然と返すマウラに、激する蕾。ノリが良い。そのやり取りを眺めつつ、桃髪の妖狐――サエ・キルフィバオム(突撃!社会の裏事情特派員・f01091)は少々困惑していた。
(ま、まあ、私もそういう歳ではあるけど……うーん)
 サエ15歳、丁度尚美と同じ歳であるが、自分にここまでの経験があったかどうかと言われると、ちょっと首を傾げるところではある。
(なまじ超能力とか使ってるから、妄想が妄想で済まないっていうか…まあでも)
 この手の妄想の源泉は、得てして超常の力への憧れであるもの。猟兵として既にそうした力を得ている分、妄想の高まる余地が無いのかもしれない。しかし。
「前世は前世、今生は今生です。前世の因縁を、今生に持ち込むべからず…」
 この場のノリに合わせたほうが、戦いを優位に進められるというならば、と。此度は漆黒の袴姿で『闇属性の巫女』を演出していた。持ち前の演技力に自前の狐耳尻尾も合わさり、普段の彼女とは打って変わって神秘的な雰囲気が演出されていた。
「いいえ、これは彼女自身が望んだこと。歪みきったこの世界を壊し、正しき在るべき世界に作り直すという、前世からの理想…」
「彼女が!そのようなコトを望むはずが無いッ!」
 応えるマウラの言葉を、蕾が遮る。
「お前を倒し!彼女を取り戻す!話はそれからだ!」
 蕾の周囲に舞う薔薇が、その量を増やす。それは彼女と契約せし相棒――『薔薇の悪魔』の力の証。彼女に猟兵としての力を齎した『裏技』の正体。
「お前の非道、この『薔薇十字の騎士』が許さん!覚悟しろ!」
 着衣も禍々しさと神々しさを共に増し、その様はまさしく悪魔の力もて尚気高く咲く魔性の薔薇。
「仮に、これが彼女の望みであったとしても。止めねばならないことは同じです」
 明もまた応え、その手に銀の剣を構える。闇を払う輝き帯びし、清浄なる白銀の剣である。常よりの愛用品だが、此度の状況にも実に適合する一振りである。
「人類の未来は、人類の手によってのみ定められるべきもの。栄光であれ破滅であれ、たった一人の少女が背負うべきものではないのです」
「そんな屁理屈は!私達には、私達の背負う運命には通用しない!」
 続く言葉に反論するマウラの背後、四本の剣が輝きながら浮かび上がり。彼女の周囲を巡りだす。
「抵抗を試みますか。やめた方がよろしいですよ」
「黙れ!あなた達のような輩に、私達は止められない!」
 サエの忠告じみた言葉にも耳を貸さず、マウラは片手を頭上に掲げる。
「支配のスペード!戦乱のクラブ!飢餓のダイヤ!疫病のハート!此処に集いて力となれ!」
 やがて四本の剣――マウラの自前の剣だが何処ぞの四騎士っぽい名前は即興――は形を失い、光となってマウラの手に集う。そして形作られるは、一本の白く輝く巨大なる剣。
「聖剣アポカリプス・アルケイン!我に仇なす全てのものに、等しく裁きを齎さん!」
 振りかぶったその剣は、これまた即興で付けられた名前を呼ばれれば光を放ち、伴って周囲の大気を激しく震わす。設定はノリだが威力は本物だ。
「奥義!フォースート・ストライザー!!」
 そして振り下ろされれば、光は斬撃波となって三人を目掛け放たれて。のみならず、周囲の空間をすら引き裂き大規模な空間断層を広げて三人を襲い――その全てを斬り裂いた。そう見えた。
「――残念、それは残像です」
「!?」
 背後から声。振り向けば銀の剣閃。咄嗟に聖剣を掲げ防げば、そこには明の姿。残像を残す程の速度にて回避し、更にはマウラの背後にまで回ってみせるという、極めてこの場のノリに相応しい回避行動を取ってみせたのだ。
「悪魔の力借りた今なら、かわせない攻撃ではない」
「くっ…!」
 蕾の追撃。真紅のレイピアが弧を描き斬りつける。飛び退き辛うじてかわすマウラ。
 騎士たる身の力を解放した蕾、その速度を以てすれば、かの如き攻撃をかわすことも決して不可能ではないのだ。
 そのまま始まる、明と蕾の攻勢。黒き外套を纏った明の剣は分裂すらして見える程に早く、蕾の剣もまた、悪魔の力で高まった運動速度によって経験不足を補って余りある冴えを見せる。
「ぅあっ!つ、強い…!」
 明の立て続けの斬撃をかわしきれず傷が積み重なったところに、蕾の紅剣が突き刺さる。流れ込む呪詛が、マウラの動きから精彩を奪う。そこに。
「――愚かな」
 サエの、嘆きとも失望とも見える呟き。彼女だけは元の位置に留まり、マウラの奥義を正面から防いでいた。両腕から少なからぬ出血。だが、彼女が顔を顰めるのは、その痛みにではなく。
「己の力に酔い、只それのみにて全てを得たつもりの愚者。救い難し」
 両腕を振るう。飛び散る血が、空間に奇妙な紋章を描き出す。意味は無い。あくまで演出である。
「力の意味、その代価。その身を以て、知らしめてあげましょう」
 紋章に片手を突きこみ、引き出す仕草をすれば。現れたのは白く輝く大剣――
「な…っ!?そんな、それは…!?」
 聖剣アポカリプス・アルケイン。マウラが携えるそれと寸分違わぬその剣。終末と審判を司る、己のみにこそ扱うを許されたはずの剣が、サエの手にも齎された事実に、マウラはただただ驚愕するばかりで。
「己の因果にて、清算されるが良い!」
 そして振るえば、巨大な光の斬撃波が空間断裂を伴ってマウラを襲う。それは寸分違わぬ彼女の奥義、フォースート・ストライザー――
「きゃああああっ!?」
 驚愕のあまりに反応が遅れたマウラ、自らの技を受け全身を引き裂かれ。その勢いのままに、吹き飛ばされていった。
 追撃に向かわんと駆け出す三人。と、そこで蕾の脳裏に響く声。
(この一戦は助力しよう。だが、帰ったら三日は閨から出られぬと思え)
「…っ!」
 それは彼女と契約する『薔薇の悪魔』の宣告。かの存在が蕾に求めるのは、彼女の肉体。任務の後に待ち受ける『履行』の予感に、蕾は背筋を震わせた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

七那原・望
シララさん(f17818)と参加

剣姫を騙る愚か者。その口を閉じなさい。剣姫マウラはもういない。
彼女は導師を転生させる為に存在の全てを世界に捧げたのです。

さて、お久しぶりですね、導師ブリュンヒルデ。
黙示録のラッパが鳴り響きました。
天使リリアーレ。盟約に従い天界と決別し、参上致しました。

導師よ、わたし達を新世界へと導いてください。

ユニゾンに触れてもらい、尚美さんから力を貰ってユーベルコードが使えるようになった風に演出します。

背中の翼で【空中戦】

【第六感】と【野生の勘】で相手の動きや攻撃を【見切り】、回避しつつ攻撃回数重視の【Lux desire】を相手のユーベルコードを誘発する囮として放ちます。


シララ・ミーファ
七那原・望ちゃんと参加するよっ♪

シララちゃんは悪魔勢力の設定で演技しよっと~♪

「炎獄魔将姫シララちゃん参上っ♪」

天使側の望ちゃんとは協力関係なのだっ♪最終戦争で滅ぶなんて馬鹿らしいので~っ♪闇凰魅さんの創る新しい世界でハッピーにやりたいことして暮らすのだっ♪シララちゃんマジ冴えてるぜぃ♪(自画自賛)


紅蓮血爪で重傷にならない程度に自分の肉体を斬り裂いて「地獄の炎」を噴出させるよっ。同時にスカーレッドフォースも強化、敵の攻撃は鎧岩龍の千年鱗を肉体に発現させて剣撃から硬化防御、その剣で鱗を斬れるかにゃ~?スカーレッドフォースの範囲内に入ったら全て燃やしちゃうよっ♪カウンターに必要な剣を攻撃だ~っ♪



 公園跡と思しき開けた広場。悪魔の騎士、魔王の落とし子、闇の狐巫女ら――言うまでもないが全員猟兵である――の襲撃を受けたマウラは、ここまで落ち延びていた。そこには、蒼い宝石じみた結晶に閉じ込められた尚美の姿。新世界の導き手として真なる覚醒へ至らんとする繭――という設定。実際は云うまでもなく、オウガになり果てようとしている過程である。
「ぐ…っ、強い…。けれど、儀式の完遂まではもう少し…廃亡の剣姫の名にかけ、儀式は何としても――」
「剣姫を騙る愚か者。その口を閉じなさい」
「っ!?」
 マウラが振り返れば、そこに在ったのは幼い少女の姿をした天使。その瞳には黒き封印が施されているが、正面のマウラを認識していることは確実。
(この天使…『出来る』…!)
 心中で戦慄するマウラ。尚、いかなる意味で出来ると判断したのかは定かではない。
「剣姫マウラはもういない。彼女は導師を転生させる為に、存在の全てを世界に捧げたのですから」
 マウラについての設定を盛りつつ語る天使。マウラの向こう、蒼い宝石の中の尚美に意識を向けて、語りかける。
「さて、お久しぶりですね、導師ブリュンヒルデ」
 導師とはどうやら闇凰魅のことらしい。
「黙示録のラッパを以て、機は満ちました。天使リリアーレ。盟約に従いて天界と決別し、参上致しました」
 闇凰魅に向けて両手を組み、天使リリアーレ――実際の名を七那原・望(封印されし果実・f04836)と云うオラトリオもといその天使は告げる。どうやら、天界に在った闇凰魅の協力者という設定らしい。
 更に。
「炎獄魔将姫シララちゃん参上っ♪」
 リリアーレの傍らに飛び込んできたもう一つの影。蒼い肌、二本の角、更には蝙蝠翼と太い尾を具えた姿は紛うことなき悪魔――っぽい神。シララ・ミーファ(魔獣姫・f17818)。此方は本名名義での参戦である。
「くっ…天使のみならず悪魔にまで『こちら側』に気付くものが現れようとは…!」
 歯噛みするマウラ。実の所彼女、天使と悪魔は単なる舞台装置としか認識していなかったので、両勢力から自分達の戦いに参戦するものが現れることは完全に予想外だったのだ。何故かといえば、尚美がそこまで設定作ってなかったため。
「だってねぇ~?終末戦争で滅ぶなんて馬鹿らしいので~っ♪」
 闇凰魅の創る新しい世界でハッピーにやりたい事して暮らす。その動機は実に悪魔らしかった。いや、悪魔らしいからこそ…なのかもしれない。
「だから望ちゃ…じゃない、リリちゃんと一緒に闇凰魅さんに協力するのだっ♪シララちゃんマジ冴えてるぜぃ♪」
 自画自賛するシララの様子に、口元を綻ばせるリリアーレ。その懐から取り出すは黄金の林檎じみた果実。それを目にしたマウラの表情が驚愕に染まる。
「な…!?そ、それは『エリクセスの果実』!?ま、待ちなさい、今それを彼女に近づけたら…!!」
 リリアーレの行動意図に予測がついたのか、設定を盛りつつ制止せんとするマウラ。
「導師よ…どうか、わたし達を新世界へと導いてください――」
 構うことなく、リリアーレはエリクセスの果実――もとい『真核・ユニゾン』を、尚美を閉じ込めた宝石の表面へ触れさせる。直後、黄金の果実が眩い光を放ち、それは瞬く間に広がって――
「…おおっ!?な、なんだか力がみなぎってきた気がするっ!?」
 驚きと歓喜の混じった顔で、シララが飛び跳ねる。身体に満ち溢れる力を抑えきれないとばかりに。
「――これは。貴女様の御力の一端――」
 リリアーレもまた、驚いた様子を暫し見せ――ややあって、悟ったように頷いて。
「分かりました。貴女様より授かりし力で、貴女様の敵を、退けてご覧に入れましょう」
 そう、二人はエリクセスの果実を通して、放出された闇凰魅の力の一部を授かり、以てユーベルコードを扱う力を手に入れたのだ。無論、望がそのように演出したものである。
「く…っ、私以外に闇凰魅と『繋がる』者が現れるなんて…!」
 悔しげに歯噛みし、マウラは己の周囲に四本の剣――黙示録の四剣を展開する。闇凰魅との繋がりを、己一人のものとするべく。
「ざーんねんっ♪もう闇凰魅さんはあなたとはお別れだよっ!うまいことそそのかして闇に堕とそうったってそうはいかないんだからっ!」
 だがシララが動くのが早い。片手の焔色の爪で自らの左腕を突き刺せば、傷口から溢れ出すは黒き地獄の炎。渦巻くそれらを伴って、シララは一気にマウラへ肉薄し斬りかかる。
「ぐっ、小賢しい…!」
 炎に巻かれながらも爪はハートの剣で防御、続けざまクラブの剣をシララの肩口へ振り下ろすが。衝突と共に響くは金属質な硬い音。
「へへんっ、そんな剣じゃシララちゃんの鱗は斬れないにゃ~♪」
 シララの表皮は鎧じみた龍の鱗に覆われていた。鋭い刃に打たれて尚、堅牢なる鱗は傷一つつかぬ。
「我等が導師の理想導くために…!」
 空中からはリリアーレ。尚も輝き続けるエリクセスの果実を掲げれば、そこから迸る無数の光の奔流が、マウラを目掛け降り注ぐ。次々と地面を穿ちながらマウラへ迫る光の雨。
「甘い…!そんな攻撃、この剣姫には通用しない――」
 だがマウラも黙ってはおらぬ。右手にスペード、左手にダイヤ。掲げた二刀に、膨大なる魔力が迸る。以て、降り注ぐ光を斬り裂き、更にはリリアーレをも――
「そうはいかないねっ!」
 その瞬間であった。懐へと飛び込んできたシララの爪が、漆黒の炎纏いてマウラの腕を斬り裂いたのだ。炎は龍じみた姿を形作り、傷口に喰らいつく。
「あうっ!?く、腕、が…!!」
 傷口に咬みつく漆黒の炎龍。その痛みはマウラの集中を乱し、双剣に纏いし魔力が霧散する。炎は広がり、マウラの全身を包んでゆく。
「灰も残さず消えなさい、愚かしきものよ」
 そこに集束してゆくエリクセスの光。輝きの雨が、マウラを激しく打ち据えていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

彩波・いちご
咲耶…ではなくサクヤさんと

サクヤさんノリノリですねぇ…まぁ、今回は最後まで付き合いますか(覚悟完了)

「つまり闇凰魅さんは、私にとっても前世の戦友というわけですね」
「私こそ、銀河の戦士サクヤの片腕の戦士唯智護(いちご)です」
そう、触手マスターと呼ばれた…いえ、そんなのは古き名、思い出してくださいサクヤさん!
「『♰闇の聖剣ダークネスカリバー♰』を操る剣士、唯智護=ツェッペリン=シュベルトテンタークとは私のことです!」
【異界の邪剣】を手に取って、堂々と宣言しましょう

「サクヤさん!今こそ貴女の天地神明全てを見通す魔眼(イービルアイ)で真実を!」
マウラの正体が明かされたら、♰闇の聖剣♰で切り裂きます!


天樹・咲耶
いちごと
裏人格のサクヤ(中二病)

「尚美……いえ、闇凰魅=ブリュンヒルデ=ヒンメルベルク!
騙されてはダメよ!
その女……廃亡の剣姫マウラこそ『D機関』から送り込まれたエージェント!
あなたの命を狙うものよ!」(最後だけ合ってる

闇凰魅の前世での戦友――それは私と触手マスターであるいちごなのだから!
その証拠に私の封印された右腕が闇凰魅の右腕と共鳴してるわ!(包帯を巻いた右腕を抑え

「見てなさい、闇凰魅!
私の魔眼が『D機関』のエージェントの正体を見破るのを!」

左目の眼帯を外し、赤い瞳(カラーコンタクト)で敵を睨み【呪いの魔眼】でその正体を見抜くわ!

「この魔眼はアカシックレコードにアクセスし……(以下略)」



「ぐ…っ、はぁ、はぁ…っ」
 傷つき、荒い息を吐きながらも、蒼き宝石柱――尚美を閉じ込めたそこに縋るマウラ。
「闇凰魅…あなたは、私と共に在るべきもの…大丈夫、全て私に任せて――」
「待ちなさいっ!!」
 尚美に語りかけるその言葉を遮り響く声。見れば、逆光の中に両腕を組んで仁王立ちする少女の姿。
(…こいつは…!?)
 その出で立ちを認めたマウラの表情が驚愕に満ちる。右腕には尚美と同様の包帯を巻き、左の瞳には眼帯を嵌めて。何より纏う雰囲気は紛うことなき『本物』。
「そこまでよ!あなた達の邪悪な『計画』…この私『銀河馳せる漆黒の堕天使サクヤ』が叩き潰しに来たわ!」
 堂々たる態度でもって宣言する天樹・咲耶(中二病の二重人格・f20341)――の裏人格サクヤ。生粋の中二病罹患者もとい魂に輝き秘めし者たるサクヤにとって、この戦場はまさしく運命に導かれし約束の地。
「そして私は銀河の戦士サクヤの片腕たる戦士――唯智護です」
 更に、サクヤの傍らに進み出る少女――のような出で立ちの少年が一人。彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)である。因みに『唯智護』と書いて『いちご』と読む。
 正直な処、いちご自身はサクヤ程の魂の輝きは持っていないのであるが。此度の状況でサクヤが暴走もとい覚醒することは予測がついていたので、自らも最後まで付き合おうと覚悟を決めてきた次第である。
「な…っ!?何を根拠にそのような…!私はただ、闇凰魅を救おうと――」
「嘘ね」
 マウラの反論を、端的な一言で以て斬り捨てるサクヤ。
「尚美――いいえ、闇凰魅=ブリュンヒルデ=ヒンメルベルク!騙されてはダメよ!」
 そしてマウラの背後、宝石柱の中の尚美に対し呼びかける。
「この女…廃亡の剣姫マウラ――貴女の前世の友の名と姿を奪った女こそ『D機関』から送り込まれたエージェント!機関が企む『クリフォート計画』を完遂するべくあなたの命を狙うものよ!」
「……!!?」
 一気に上乗せされた設定、その中に織り込む形で盛大な誤解を叩き付けられたマウラはただただ驚愕し言葉を失う。尚美の命を狙っていたわけではなく仲間に引き込みたかったのだがと。
「根拠は――そう!私達は本当のマウラを知っている!闇凰魅と、本当のマウラ――そして私と、触手マスターたる唯智護!前世で『帝国』の野望を挫くべく世界を股にかけ戦った記憶が、私達にはあるのだから!」
 ずびし、っと力強くマウラを指差しながら宣うサクヤ。その勢いに内心苦笑しつつも、いちごは彼女へ並び立ち。
「いえ、それはあくまで前世における古き名。今生において私は『九頭竜の試練』を経て新生したのですから――」
 その足元の影がマグマじみて粘性をもって沸騰し、不気味な触手がざわめく。その触手に押し出されるようにして姿を現すのは、脈打つ血管や蠢く眼球を宿した禍々しき大剣。その柄をいちごは握り、生物の肉体からそうするように影から引き抜いて担ぐ。
「そう。『闇の聖剣ダークネスカリバー』を操る剣士、唯智護=ツェッペリン=シュベルトテンタークとは私のことです!」
 真っ直ぐにマウラを見据え、唯智護――もといいちごは宣言する。その佇まい、まさに平凡たるそれまでの人生を捨て、己の使命に目覚めた戦士の態。
「ぐっ…!よくもまあそんな流れるように出任せを!証拠なんて何も――」
「証拠ならばここにあるわ!」
 どうにか反論せんとするマウラに、今度は右腕を掲げてみせるサクヤ。尚美のそこと同様、包帯を巻き覆った右腕を。
「前世で私と闇凰魅が交わした『誓い』が宿る右腕――こうして再会を果たしたことで、再び繋がろうと共鳴しているのよ…!」
 宣う言葉の後半は苦しげに。左手で右腕を抑える。無論実際には何ともないが、本当に共鳴の痛みがあるかの如き迫真の様相である。
「な…!?そ、その共鳴は…っ!?やめなさい、今すぐ闇凰魅から離れなさい…!」
 あまりにも堂に入ったその様相は、マウラにも真実と感じさせ、以て恐怖を感じさせたらしい。サクヤを阻止せんとばかり、四本の剣を融合させて。
「聖剣アポカリプス・アルケイン!我等を惑わす偽りの使徒に裁きを――」
「今です、サクヤさん!今こそあなたの天地神明全てを見通す魔眼で真実を!」
 聖剣による一撃を繰り出さんとしたその時、いちごはサクヤへと呼びかける。魔眼と書いてイービルアイと読む。
「ええ、今こそこの魔眼の封印を解く時!そしてマウラを騙る魔性の者、あなたの正体、見抜かせてもらうわ!」
 応えてサクヤ、左目の眼帯を引き剥がす。露となった左目は、鮮血が如き真紅の色。因みにカラーコンタクトである。だがそこに篭る膨大なる魔力は本物だ。視線がマウラの姿を捉える。
「この魔眼はアカシックレコードにアクセスしこの宇宙全ての存在から視線に捉えた存在に適合ないし近似する存在を検索してその本当の姿を暴き出し視線を以て繋がる対象の本質を捉え以て全ての欺瞞と偽装を引き剥がして本当の姿をこの場に引きずり出すのよ!」
 物凄い早口で魔眼の設定を述べるその合間にも、魔眼から放たれた魔力が呪詛という形でマウラを侵食。その肉体のみならず、精神と思考からも欺瞞を引き剥がしていく。その手の聖剣が見る見るうちに黒く染まり、マウラ自身の姿も禍々しき様相を増していく。
「ぐ…ぅっ。おのれ、もう一歩だったというのに…!終末戦争が起きてしまえば闇凰魅は用済み、始末してクリフォート計画の完遂を動かぬものと…!」
 憎々しげに呻くマウラ。その表情も既にオウガらしい邪悪さを剥き出しとした様相となっていたが、場のノリからは脱却できていないらしい。
「ええ、だからこそ私達が来たのです。そして貴女の企みもここまでです!!」
 その隙を逃さず、いちごはダークネスカリバー――自前のユーベルコードで生成した邪神の眷属たる剣――を振りかざしマウラへ肉薄。
「な――っきゃあぁぁぁぁ!!」
 袈裟がけの一太刀は狙い違わず、マウラの胸を深く、深く斬り裂いて。
「お…のれ。…でも、無駄よ。私は只の尖兵…機関の兵はまだまだ沢山いるのだもの。彼らが居る限り、クリフォート計画は止まらない…!」
 捨て台詞じみた断末魔を残し、マウラは倒れ。直後、その背後で宝石柱が砕け――尚美が、目を覚ました。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘NG
グロNG
WIZ

ふふっ、そういうノリは嫌いじゃないけど
後戻り出来なくてよ。
私の体が貴女を欲して疼いているの

左腕の包帯を解くと呪印が禍々しく輝いている。
守護霊の憑依【ドーピング】で戦闘力を高め
雷の【属性攻撃】を槍状に圧縮し【槍投げ】
剣で弾かれたり回避されても【念動力】で軌道を変え
マウラの影を縫い付けて動きを封じる【呪詛・マヒ攻撃】

剣霊姫を召喚されたら
『私達の楽園』で80人の守護霊を召喚。
全員が私と同じ強さ。しかも再生能力つき。

私を含め81人がかりの【誘惑・催眠術・全力魔法】で
剣霊姫もマウラも魅了し
愛撫と濃厚なキスで【慰め・生命力吸収】

黒歴史もまた一つの理想(ゆめ)
私の中で永遠に愛してあげる



「……ぅ……」
 猟兵達が尚美を伴ってその場を離れた後、マウラは目を覚ました。
 傷は深いが、まだ生きてはいる。まだ動ける。まだ戦える。
「…闇凰魅。もう一度捕まえて、今度こそ…」
 内なる衝動の求めるままに、オウガとして。立ち上がったマウラは、その直後、己へ迫り来た影に気付く。
「ふふっ、そういうノリは嫌いじゃないけど――もう、後戻りはできなくてよ」
 闇を纏うかの如き昏く、艶めいた雰囲気の女。ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)。
「私の身体が、貴女を欲して疼いているのだもの…」
 言いながら、左腕の包帯を解く。その下から現れるは、禍々しく輝く呪印。迸る雷の魔力が、ドゥルールの周囲で槍じみた形を成し、放たれる。
「くっ…!?邪魔を、しないで…!!」
 無論マウラも黙ってはいない。四本の剣をその手で、或いは念動力で振り回し、飛び迫る雷槍を弾き、ドゥルールへ迫らんとする――が。
「無駄よ、ほら、何度でも――」
 言葉通り、弾かれた雷槍はその都度向きを変えて、再びマウラへと。そしてついに、足元に突き刺さった一本が雷電を放ち、マウラの動きを縫い止める。それは電流による物理的な、呪詛による魔術的な行動阻害であった。
「あうっ…!で、でも、まだ…!」
 身動きを封じられてもマウラは諦めない。四本の剣を、それぞれに戦乙女じみた四人の剣霊姫へと変身させて。以てドゥルールを強襲する。
「あら、四人がかりだなんて――それなら、私も数を増やしてお相手しないとね?」
 しかしドゥルールはあくまで艶然と微笑んで――その微笑みが、数瞬後には数を増やす。彼女が『守護霊』と呼ぶオブリビオンの霊、それらがユーベルコードによって肉体を得て顕現したのである。その力はドゥルール本体と同等。
「私の術の真髄は不変不朽の美、そして永遠の愛――そう、貴女も――」
「あ――」
 ドゥルール本体を含め総勢81名の視線が、剣霊姫達とマウラを見据える。滾っていた力が抜け、ふらふらと力なく歩むのみとなり果てる五人。
「ふふ…いい子ね」
 ドゥルールはマウラへと歩み寄り、確りとその身を抱き締めて。優しく身を撫でながら、その唇へ己のそれを重ね、吸い上げてゆく。残る生命の全てを取り込まんとばかりに。見れば、剣霊姫達も守護霊達に同様の行為をされている。
「黒歴史もまた、一つの理想。私の中で、永遠に愛してあげる――」

 そうして、廃亡の剣姫マウラはこの絶望の国から完全に姿を消したのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『不思議の国のデス・レース』

POW   :    障害を強引に突破したり破壊しながらゴールを目指す。

SPD   :    障害を正攻法でクリアしつつ、仕掛けに細工をして破壊しゴールを目指す。

WIZ   :    障害の仕組みを解明し、機能不全にしてから突破してゴールを目指す。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「…あ、あなた達が、私を助けに…?」
 意識を取り戻した尚美は、己を救いに来たという猟兵達を前に、戸惑いを隠せない様子であった。己の黒歴史の一部となったかのような猟兵が何名かいたのもあるが。
「で、でも、こんな恥ずかしいコトばっかり言ったりやったりしてさ…今更全部忘れたみたいに付き合うなんて、ちょっと無理がある気が…」
 元の世界に戻った後、己のそうした振る舞いを覚えている家族や友人にどんな顔して会えばいいのか。
「――ああ、もう!アルドナムの書だとかD機関だとか!何でそんなコト思いつくかな私!!」
 黒歴史のむず痒さが閾値を超えたらしく、思わず大声で叫んでしまう尚美。と、その直後。
「見つけたぞ!闇凰魅=ブリュンヒルデ=ヒンメルベルク!」
「我等の計画を妨げる偽神の使徒!生かしてはおかん!」
 廃ビルの中から飛び出してきた無数の黒スーツの男達。全員が一様に同じ顔をし、同じように拳銃やナイフを構えて迫り来る。あれが『D機関』のエージェントという設定の存在のようだ。
「私をその名前で呼ぶなぁぁぁ!!?」
 本気で嫌そうな声で叫びながら逃げようとする闇凰魅もとい尚美。迫り来るエージェントの数はあまりにも多く、猟兵達の力を以てしても全滅は難しい。だが尚美の逃げ道を確保するくらいは何とかなるはずだ。
 彼らの手から尚美を守ると共に、迷ったままの彼女の背中を押してやって欲しい。
荊城・蕾
話をするには、ここは騒がしすぎるな。
まずは囲みを抜けるとしよう。

「白馬の王子様」で愛馬アイスバーグを召喚。

尚美の手を取り自分の前に乗せ、彼女が快適に乗れるようUCの産物故の人馬一体感ある騎乗で跳躍し駆け抜け、敵を赤一輪で鎧無視攻撃の串刺しにし、蹴散らして囲みを突破。

敵を撒いたら改めて話を。
帰る帰らぬは彼女次第だが、どちらにしてもこの様子では辛かろう。

「なら、新しい自分に『成って』はどうかな?」とイメチェン提案。

似合いそうな髪型と、校則に掛からず(誤魔化せる)可能な範囲でのメイクを教え(後者は実際に施し)、恥ずかしさ耐性と勇気を与え鼓舞。

「君は恥じる事など何もない、素敵なレディだ。胸を張り給え」



 荒れ果てたビル街の中、尚美を追うエージェント達、そこから逃れんとする尚美と猟兵達。
 敵の数はあまりに多く、逃げる先からも回り込んできた敵が現れる状況。
「やれやれ…これではゆっくり話も出来ないではないか」
 肩を竦める荊城・蕾(薔薇の奴隷王子・f27724)。このままいけば、完全に包囲されるのも時間の問題だ。
「逃がさんぞ、闇凰魅=ブリュンヒルデ=ヒンメルベルク!」
「闇凰魅=ブリュンヒルデ=ヒンメルベルク、貴様はここで死ぬのだ!」
「だからあたしをその名前で呼ぶなぁ!?」
 そして一方、ご丁寧にも『真の名』で呼び続けトラウマを刺激し続けるエージェント達。流石は絶望の国の住人、容赦が無い。
 たじろいだ先、けたたましいガラスの割れる音。ショーウィンドウを突き破りエージェントが飛び出してきたのだ。
「ひっ!?」
「闇凰魅=ブリュンヒルデ=ヒンメルベルク、その命貰った!」
 ナイフを振りかざし、尚美へ飛びかかろうとするエージェント…だが。
「ぐぎゃ!?」
「…え?」
 突如上空から降って来た『何か』がエージェントの背に着地、そのまま地面へと叩き付け消滅せしめる。目を閉じ顔を逸らしていた尚美が前を見れば、そこに在ったのは光り輝く白馬と――
「すまない、少し目を離してしまっていた。まずはこの囲みを抜けよう、さあ」
 そこに騎乗する蕾の姿。一度馬から下りて、尚美に手を差し出す。躊躇する尚美だが、状況に猶予がないことは理解している。その手を取り、導かれるままに白馬の上へ。
「彼女には指一本触れさせん!行くぞ、アイスバーグ!」
 尚美の後ろに、彼女を両腕で庇うような形で騎乗し直した蕾、手綱を振って愛馬――アイスバーグに促す。応えた白馬、素早く駆け出してゆく。
「くっ、逃がすな!止めろ!」
 エージェント達が銃を撃ち制止を図るが、蕾は巧みな馬術でアイスバーグを制御、アイスバーグも応えて細かく進路を変え駆ける。その様、まさに人馬一体。
 エージェントの一団を駆け抜け、強引に飛びかかって二人を引き摺り下ろそうという者は紅薔薇の細剣で串刺しに。前方で銃を構えるエージェント達をアイスバーグの蹄が蹴飛ばせば、漸く襲撃が途切れる。
「な、何であたしのことを…?」
「それは勿論、君のような女の子を助けることが私の使命だからだ。そして元の世界へ無事に送り出そうとね」
 落ち着き、アイスバーグに駆ける速度を落とすよう命じたところで、尚美からの問い。さも当然とばかりに答える蕾だが。
「元の世界…で、でも、あんな恥ずかしいコト言って、どんな顔して帰れば…うあー!」
 黒歴史に苛まれ奇声を上げる尚美。やはり今では相当恥ずかしい模様。
「そうだな、家族はともかく友人相手を考えるならば…」
 その様子に、蕾は考えること暫し。そうだ、と顔を上げて。
「…新しい自分に『成って』はどうかな?」
「…新しい自分に『成る』?」
 鸚鵡返しに問う尚美に蕾は頷き。
「要するにイメチェンだ。髪型を変え、化粧を行う。それだけでも随分と気分は変わるものだぞ」
 一旦アイスバーグを停め、そこから下りる二人。蕾は尚美に向き合うと、徐にメイクセットを取り出し。
「通っている学校の校則でまた変わってくるかもしれないが…こう、ナチュラルメイクだけでも随分違うぞ」
 己の語った通りに、その顔へ化粧を施してゆく。未だ己を飾るを知らなかった素朴な少女の顔が、随分と大人びた様相と化していく。
「こ、これ…私…!?」
 己の姿が信じられぬとばかり、驚愕の声を上げる尚美。
「そう、君は大きく咲くその直前の存在。まさにこれから咲く、ね」
 その肩を軽く叩き、蕾は語る。己に自信を持たせることで、勇気を高め過去を乗り越え得るように、との願いを込めて。
「君は恥じる事など何も無い、素敵なレディだ、胸を張り給え」
 そんな蕾の言葉に、尚美は躊躇いがちに、しかし確かに頷いたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サエ・キルフィバオム
アドリブ、絡み歓迎です

「さぁーて、なんて言ったもんかな?」
中々ないタイプなので、ちょっと頭を抱えます

「過去に負けちゃだめだよ」
「今の自分は過去の上に立ってるんだよ。どんな過去でも、踏み固めて土台にしていくしかないし」
【コミュ力】で話しかけつつ、【絡みつく金縛】で【おびき寄せ】【救助活動】【敵を盾にする】等を活用して敵を足止めし、逃走経路を確保しようとします

「いつか、自分で昔を笑い飛ばせる日が、……きっとくるよ」
最後に応援として、さらに声をかけます



「あそこだ!闇凰魅=ブリュンヒルデ=ヒンメルベルクだ!」
「逃がすな!クリフォート計画完遂のため、奴を生かしておくわけにはいかん!」
 再び尚美の姿を認め、追跡を開始するエージェント達。
「だから大真面目にそういうコト言うのやめてよー!?」
 自分の妄想の産物とも言える彼らに追われ、尚美はその事実以上に参っている様子。
「さぁーて、なんて言ったもんかな…?」
 その両者の間へ割り込むように走りこみながらサエ・キルフィバオム(突撃!社会の裏事情特派員・f01091)は考える。潜入捜査等を多く行う任務傾向故、様々なタイプの人物と接触するサエだが。尚美のようなタイプとのコミュニケーション経験は多くない。そのため、正直に言えば軽く頭を抱えていたりする。
「貴様、邪魔をするぐわぁぁ!?」
「あんた達こそ人の仕事の邪魔をするんじゃないの!」
 追いかけてくるエージェント達には、目に見えない――くらいに細いワイヤーを放ち、絡みつかせて転ばせ動きを封じる。その間に尚美へ追いつくサエ。
「や、尚美ちゃん。助けに来たよ」
「あ、あなたは…で、でもあたし…」
 人懐っこそうな笑みを向けるサエに、尚美は警戒を解きつつも躊躇いがちな声を漏らす。
「月並みなコトを言うけどさ、過去に負けちゃだめだよ」
 そんな尚美に、走りながらも穏やかに、しかしはっきりと告げるサエ。尚美の過去の化身たるエージェントを、不可視のワイヤーを放って押し止めつつ。
「今の自分は過去の上に立ってるんだよ。どんな過去でも、踏み固めて土台にしていくしかないし」
「あ、あんなのでも…?」
 サエの言葉に困惑気味に応える尚美。妙に挙動が不審なのは、まさしくその『過去』を思い返しているがためであろう。
「そ。寧ろあんなのだからこそ、かな。何年かすれば、そんなこともあったねと笑い話にできるやつだよ」
 その懸念を宥めるようなサエの言葉は、目の前の少女と同年代とは思えぬくらいに重みがあった。それは半ば、彼女自身の願望とも言えるのかもしれない。
「そう、いつか自分で昔を笑い飛ばせる日が…きっと来るよ」
 それ故か、最後の言葉は酷く優しく。尚美の心に、深い印象を刻み込んだとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

七那原・望
シララさん(f17818)と参加

D機関の追手はエリクセスの果実から【Lux desire】を連射して蹴散らしながら進みます。

いきなり全部変える必要はないと思うのです。
赤の他人ならともかく、相手は家族や友達。今の貴女ともずっと一緒にいてくれた人達なのでしょう?
それなら少しずつ、一歩ずつ普通の喜びを分かち合っていけば、きっといつか今の貴女の印象も遠い過去になるのです。
そんなこともあったねって笑い会える日が来るのです。
だから、こんな所で立ち止まっちゃ駄目なのです。

シララさんの竜巻ぐーるぐるに【全力魔法】の雷を纏わせます。

くすっ……わたしには見えないですけれど、この光景って神の裁きみたいかもですね?


シララ・ミーファ
七那原・望と参加するよっ♪

望ちゃんの説得に耳を傾けながらもエージェントの迎撃は怠らず

身体に発現させた強硬な龍の鱗を弾丸のように打ち出して攻撃、剣技に長けているわけでもないので鉄塊剣は力任せに振り回して斬りつけるというよりは叩きつけるようにして扱います

(へぇ…このロリッ娘は、その歳で人生感を語るんだ…仲間とか、そういうの単体で完成された存在には必要ないのに…まぁ神の私だからそう思えるのかもしれないケド…)

はいそこーっ!目隠し幼女が深イイ話しているのに邪魔しなーいっ♪ペナルティーとして竜巻ぐーるぐるの刑なのだっ♪

へぃ尚美ちゃんっ♪自分に正直になっちゃいなYO!我慢するのは身体に毒だぞぃ♪



「な!?あ、あれは『エリクセスの果実』!?天界の至宝が何故…ぐわぁぁぁ!!」
「馬鹿な、天使と悪魔が何故あの娘と共に…うわぁぁぁ!!」
 先程のマウラとの戦いで生えた設定は、既にエージェント達にも反映されていたらしい。七那原・望(封印されし果実・f04836)が手にする黄金の果実を見た彼らは一様に驚愕の表情を浮かべ、そこから溢れ出す光の奔流に押し流されてゆく。
「ふふ~ん、それはもちろん尚美ちゃんの力になるためだともっ!」
 それを凌いだ者達には、シララ・ミーファ(魔獣姫・f17818)の放つ龍鱗の弾丸が降り注ぎ。次々とエージェント達が倒れていく中、少数の者はシララへ肉薄するも鉄塊剣の一撃で吹き飛ばされる。剣術の心得の無いシララだが、力任せに振り回し叩きつけるだけのその動きもエージェントにとっては十二分の脅威だ。
「…わ、わぁ…」
 天使と悪魔。尚美から見れば正しくそうとしか見えぬであろう二人の奮闘ぶりに、思わず暫し見入ってしまう尚美。エージェント達の出現は尚も留まることを知らぬが、彼女達を突破することは叶わぬだろうと――そう確信できる程の圧倒振りだ。
「――さて、闇凰…じゃない、尚美さん」
「は、はい!?」
 黄金の果実からの光の奔流の放射を止めぬまま、望は徐に尚美へと語りかける。唐突に声をかけられ慌てる尚美。
「元の世界へ帰ることに、躊躇いがあるようですけど…」
「…う、うん」
 振られたその話題に、尚美の表情が曇る。
「赤の他人ならともかく、家族や友達…今までの貴女とも、ずっと一緒にいてくれた人達がいたでしょう?」
「……あ……」
 だが続けての望の言葉に、はっとした表情を浮かべる。自分の妄言を理解できないまでも、決して馬鹿にはしなかった人達が。確かにいたと。
「それなら、いきなり全部変える必要は無いと思うのです。少しずつでも、普通の気持ちを…喜び、怒り、悲しみ、楽しみを分かち合っていけば。きっといつか、今の貴女の印象も遠い過去になるのです」
 そんなこともあったね、と笑い合える日が来ると。天使の少女は語る。
「そういうもの…なのかな」
「なのです」
 確認めいた尚美の問い。是と返す望。
(へぇ…このロリっ娘、その歳で人生を語るんだ)
 一方のシララ。迫るエージェント達を龍鱗弾幕で抑え込みつつも、二人のやり取りを聞いていたようで。齢十にも満たぬ幼い娘が人生を語るその有り様に、口元を笑みと歪める。尤も、それは嘲りの類ではなく、純粋に面白みを感じてのものであったようだが。
(仲間とか、そんなもの…完成された存在には必要無いのにね)
 他者の存在を前提とするその思考は、今ひとつシララには理解できないもののようであった。尤も、それは彼女自身が神――単独で完結した存在であるが故、との認識は持ち合わせている。何より。
「ええい突破だ!一斉に突撃して突破するんだ!」
「天使も悪魔も何するものぞ!うおおおおお!!」
 一斉突撃で突破を図ろうとするエージェント達。その前に立ちはだかってシララは言い放つ。
「はいそこーっ!目隠し幼女が深イイ話しているのに邪魔しなーいっ♪」
 望がいい話をしている、ということは理解できている。故に邪魔はさせない。
「ペナルティー!竜巻ぐーるぐるの刑なのだっ♪」
 直後、エージェント達の足元に転がる瓦礫や周囲の車の残骸が一斉に形を失い。無数の超自然の竜巻となってエージェントを巻き込んでゆく。
「あら、それではおまけもつけておきましょう」
 それに気付いた望。黄金の果実の輝きが増すと共に、竜巻に雷が纏わりついていく。風と雷とが、エージェント達を片っ端から薙ぎ払うその光景は。
「くすっ…わたしには見えないですけれど、この光景って神の裁きみたいかもですね?」
 あまりにも終末感溢れるその状況に、尚美はただ呆然とするのみだった。そんな彼女へ、二人が声をかける。
「こんな処で立ち止まっちゃ駄目なのです。行きましょう」
「自分に正直になっちゃいなYO!我慢するのは身体に毒だぞい♪」
 天使と悪魔――そう見える二人の言葉に頷いて。尚美は力強く、己の黒歴史渦巻くその世界を歩み進んでいくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『うさうさトランプ兵』

POW   :    落雷II
無敵の【空飛ぶイボイノシシ型の対地攻撃機】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD   :    そう、我々はやればできる!
自身の【ゴーグル】が輝く間、【軽量自動小銃】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    バーガータイム
【ハンバーガーとフライドチキン】を給仕している間、戦場にいるハンバーガーとフライドチキンを楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。

イラスト:しちがつ

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵達の説得もあり、再び元の世界へ戻る意思を固めた尚美。
 エージェント達を振り切って、やってきたのは荒廃都市の一際高いビルの屋上。
 だだっ広いその空間の中央に、何の脈絡もなく立つ一枚の扉。それこそが尚美の『自分の扉』、即ち彼女が元の世界へ帰るための出口だ。

 だが、その前に最後の障害が待ち構えていた。
「ラビット1よりCQ、『ブリュンヒルデ』を発見した。これより殲滅にかかる」
 扉の前に屯するは、現代的な軍隊装備に身を固めた兵士の一団。頭から兎の耳が生えているのが最大の特徴であろうか。
 隊長と思しき兵士がトランシーバー片手に何処かへ通信を行えば、返ってくる仲間と思しき存在の声。
『CQより各隊、ラビット隊が『ブリュンヒルデ』を発見。合流し殲滅せよ』
『バニー1了解、バニー隊至急急行する』
『ヘアー1了解、クリフォート完遂のために』
『ラット1了解、アルドナムの予言成就のために』
 直後、左右と背後より響いてくる無数の足音。増援を以て一行を四方より包囲せんとする構えらしい。
「くっ、ここまで来て…!でも、立ち止まってるワケにはいかない!」
 歯噛みする尚美。彼女一人では到底振り切れない戦力。だが今の彼女は、心までは折れていない。
「あの扉さえ抜けられれば…!みんな、もう一度だけ…力を貸して!」
 今度こそ己の世界へ帰るべく。猟兵達に協力を求める尚美。
 かの兵士達を蹴散らし、彼女を元の世界へ送り出すのだ。
シャルロット・アルバート
知らないの?
対地攻撃機は戦闘機に弱いんだよ、
ルーデルでも載ってるなら話は変わるけどね。
というわけで指定UCで空飛ぶイボイノシシ型の対地攻撃機の攻撃を掻い潜りながら、
その攻撃機をトランプ兵に誘導させてトランプ兵自体を攻撃させるつもりだよ。
もちろん自分も攻撃して攻撃機の誘導をしやすくしたり、
攻撃をかわしにくくしたりする気だよ。



「ラビット1よりCQ、敵戦力が想定より多い。『ブリュンヒルデ』の同盟戦力と予測。増援を要請する」
 尚美を守るように身構える猟兵達の姿を認め、うさうさトランプ兵の隊長が再度何処かへ通信を行う。
『了解、『落雷II』による航空支援を行う。各員、攻撃地点より退避せよ』
 トランシーバーから応答が返った直後、遠くの空から何かが飛び来たる。それは大きなイボイノシシ――を模した対地攻撃機の編隊。尚美と猟兵達の姿を捉え、その高度を下げてくる。
「うっ、あんなにいっぱい…!ど、どうしよう、逃げ場なんて…」
「大丈夫!」
 迫り来るイボイノシシ達を前とし怯む尚美だったが、その怯懦を打ち砕くかの如き明るい声。振り向きかけた尚美の横から飛び出すは、白き装甲を身に纏った少女――の如き少年。シャルロット・アルバート(閃光の戦乙女(ライトニング・ヴァルキュリア)・f16836)。
「相手が対地攻撃機なら、こっちは空を飛んで戦うまでのことだよ!まあ見てて!」
 尚美に対し明るい笑みを残して、パワードスーツの出力を一気に最大まで上昇。ブースターから噴出する黄金の粒子を残し、弾丸じみた超高速度で空へと飛翔。そのまま一気にイボイノシシの群れへと肉薄する。
 いきなり眼前へと敵に迫られたイボイノシシ達は、混乱したかのように隊伍を乱し、てんでバラバラにシャルロットへと攻撃を仕掛けるも、その悉くは彼まで届かない。
「ふふん、知らないの?対地攻撃機は戦闘機に弱いんだよ」
 得意げな笑みを浮かべながら、イボイノシシの銃撃を余裕をもってかわしていくシャルロット。そも対地攻撃機というのは空中戦をあまり主眼に置いていないが故、空中戦に最適化された戦闘機には圧倒的に不利なのである。かの『東部戦線の鷲』と呼ばれた英雄級のパイロットならばまだしも、このイボイノシシ達にそこまでの技量は無い。
 挑発するようなシャルロットの銃撃。光子の弾丸は表皮に弾かれ大した傷を与えられぬが、シャルロットとしてもそれは織り込み済みだ。反撃せんと迫るイボイノシシ達。反転し急降下していくシャルロット。向かう先には兎兵の一団。
「うわっ!?こ、こっちに来た!?」
「CQ!CQ!攻撃機が我々の陣地に…うわぁぁぁぁ!!?」
 そのままイボイノシシ達が銃撃を繰り出せば、弾丸は録にシャルロットを捉えることなく地上へと逸れ、そこにいた兎兵達をものの見事に巻き込み吹き飛ばしていく。
「自軍にばっかり被害を与えるなんて、兵器として失格だね!」
 兵士の一団を自ら吹き飛ばしてしまったが故か、イボイノシシ達の動きが目に見えて悪くなる。そこに降り注ぐは、急降下から一気に宙返りじみて高度を上げたシャルロットが放つ、ビームマシンガンの光子弾。今度は過たず表皮装甲を射抜き、これを爆散せしめるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サエ・キルフィバオム
アドリブ・絡み歓迎です

「さて、ケリをつけてやりますか♪」
気合十分で臨みます

「無敵の対地攻撃機、ねぇ……♪」
ニヤりと笑うと【絡みつく金縛】のワイヤーを伸ばしイボイノシシに引っ掛け、【ロープワーク】で自らを持ち上げると空中機動で【敵を盾にする】ように戦います

「対地で無敵でも、空中に浮いちゃえばどうってことないって事だよね、それ♪」
【だまし討ち】【演技】【フェイント】【挑発】で、精神攻撃を狙います



「CQ!此方バニー1、ラビット隊が壊滅状態だ!何があった!」
 対地攻撃機の第一波が粗方掃討されたその直後、うさうさトランプ兵の別部隊が屋上までやってきた。その隊長がトランシーバーに戦況をがなりたてる。
『敵の誘導に引っかかり誤射の末壊滅。『雷鳴II』の第二部隊を送る、連携し敵を殲滅せよ』
 そのやり取りを眺めつつ、サエ・キルフィバオム(突撃!社会の裏事情特派員・f01091)はにやりと笑う。敵は混乱の只中、いくら数が多くても対処のしようはあるというものだ。
「さーって、尚美ちゃん。ちゃちゃっとケリつけてくるから、ちょっと待っててね?」
「あ、う、うん!気をつけてね…!」
 尚美の声を背に受けてサエは駆け出す。向かってくるのは、再び呼び出されてきたイボイノシシ型対地攻撃機の編隊。
『敵性存在を確認、各機飛行戦力に警戒せよ』
 対するイボイノシシ達は向かいくるサエに警戒しつつも、高度を下げ機銃での攻撃を開始する。ビルの床面を無数の鉛弾で穿ちながら、掃射攻撃は徐々にサエへと迫る。
「無敵の対地攻撃機、ねぇ…それじゃ、これはどうかなっ!」
 掃射弾幕がついにサエの身を捉えんとしたまさにその時。サエが右手を掲げたかと思えば、その身は浮き上がり先頭のイボイノシシ目掛け飛翔する。彼女の右手から伸びたワイヤーがイボイノシシを捉え、そのまま彼女の身を上空に引き上げたのだ。
「ほらほら、こっちこっち!」
 更に別のイボイノシシへワイヤーを伸ばし、空中を振り子移動したと思えば、自由落下しつつまた別のイボイノシシへ。編隊の間を巧みに飛び回るサエの動きに、イボイノシシ達は狼狽るように挙動を惑わせる。
「ふふん、やっぱり。対地で無敵でも、空中の相手にはどうしようもないって事だね!」
 苦し紛れの銃撃もサエを捉えることは叶わず、別のイボイノシシに突き刺さりこれを撃墜してしまう。更にはイボイノシシ同士の衝突すら引き起こされる始末。兎兵部隊の方へと墜落、彼らを巻き込んで爆発するものさえも。
「こんなので私達は止められないよっ!ね、尚美ちゃん!」
 華麗に一軍を翻弄してみせたサエの笑みに、尚美は輝くような眼差しで頷いたとか。

成功 🔵​🔵​🔴​

春夏秋冬・ちよ(サポート)
良き景色を探して絵にする為に旅するお節介な老猫

優しいお婆ちゃん猫で猟兵としての経験は浅いですが、アルダワの学生としてはとても長い間戦い続けた歴戦の戦士です
その為、謎の強キャラ感あり
しゃべり方は優しいお婆ちゃんをイメージ

動物と会話して道や情報等を得られます

UCは竜を疑似再現、その力を借りる物
何竜の力かは状況、やりたい事によって指定を
(例:火竜・刃竜・筋肉竜等々 真面目からネタまで可)

戦闘は素早い身のこなしで回避重視、杖か閉じた傘(又はUC)による鋭い攻撃
所謂蝶舞蜂刺です
必殺技はUCで騎乗か飛行してのランスチャージ

一人称追加・おばあちゃん

禁止事項
真の姿の解放(覚醒)
UC『凶夢の魔竜騎士』二種の併用



 壊滅状態に陥ったうさうさトランプ兵の二隊――バニー隊とラビット隊は合流し、改めて尚美の『扉』の守りを固める。
「くっ…あれじゃまだ出られない…っ」
 猟兵達も戦っているが、自分には何もできない。無力感に歯噛みする尚美。
 と、そこに。
「気にすることはないのよ」
 不意に膝あたりで聞こえる声。驚き尚美が視線を下に向けると、そこには二本足で立つ黒猫の姿。しかも着物を着ている。この世界で何度か見た愉快な仲間かと思ったが違う。
 彼女は春夏秋冬・ちよ(旅する老猫・f19400)、ケットシーの猟兵である。
「自分でどうしようもないことなら、他人を頼ることは悪いコトじゃあないの」
 落ち着いた声音には深みが伴う。百年もの時を生き、その大半――猟兵となってからのそれを遥かに超える長い時を、アルダワ魔法学園の学生として戦ってきた彼女。実力以上の人生経験が、その言動に力を与えていた。
「でも…」
「そこで迷えるなら大丈夫。今は、おばあちゃんに任せておきなさい」
 戸惑う尚美を、微笑と共に諭すちよ。他人に任せることを躊躇う程度に『己が為さねば』という意識があるなら、己の為すべき時を間違えはしない。そう認識したが故に。
 と、そこに。
「此方ヘアー1、『ブリュンヒルデ』を確認した!これを抹殺する!」
 更なる兎兵の増援部隊だ。尚美が思わず後ずさったその時、ちよは既に動いていた。
「無粋な真似はお止めなさい?」
「ぐはっ!?」
 疾走からの跳躍、突き出したるは紅の和傘。閉じたままのそれはランスの如く。兎兵の鳩尾を打ち抜きこれを昏倒せしめる。
「た、隊長!?」
「くそぉっ!!」
 いきなり隊長を倒され動揺する隊員達。だがすぐに気を取り直せば軽機関銃を一斉に放つ。
 着地しその動きを見据えるちよ。避ければ尚美が危ないか。なれば。
「――彼の娘に降りかかりし、全ての禍災を砕くその為に」
 ちよの纏う装いが光を帯びれば形を変え、黒銀の鎧姿となる。その両手には意匠を合わせた篭手。其を掲げ守りの構えを取れば、軽機関銃の弾丸は容易く弾かれ、ちよ自身のみならず尚美をも傷つけさせない。
「彼方より来たりて、その力此処に示したまえ――」
 弾幕の途切れたところで両手を前に突き出せば、渦巻く風が両腕に纏わりて。
「――風の竜よ!!」
 裂帛の声。同時に放たれた風の奔流が、銃撃繰り返す兎兵達を巻き込んで――一気に、ビルから叩き落していった。

成功 🔵​🔵​🔴​

荊城・蕾
ああ、いい表情だ……花は開いたな。
ならば最後に再び、薔薇十字の騎士の役目を果たそうか。

「既に彼女は新たな道を選び、貴様らの計画は御破算だ。それでも立ち塞がるなら、この『薔薇十字の騎士』が相手だ!」

と尚美の前に立ち革命剣を掲げ大見得。

「おや、剣一振りで何ができる、と?」

革命剣で空に方陣を描き、「血塗られた花園」発動。
瞬時に具現化した大量の白薔薇による誘導弾の範囲攻撃で、敵に暇を与えぬ先制攻撃。

「薔薇十字の騎士が、悪魔の秘跡を受けし者が、剣しか使えぬと思ったか?」

呪詛による生命力吸収で敵を消し尽くし、残るは赤薔薇で彩られた扉への道。

「君の未来が、この道のように薔薇色であることを祈ろう」と、尚美に。



 猟兵達の攻撃を受け着実に数を減らしつつも、『扉』の守りを固め、尚美を抹殺せんと軽機関銃を掃射するうさうさトランプ兵達。
「もう、いい加減諦めればいいのに!」
 走り回って銃弾から逃れつつ悪態をつく尚美だが、その表情は絶望に暗く沈んだものでも、己の無力に嘆き歪んだものでもない。必ずこの場を切り抜けんとする決意に満ちたものだ。
「ああ、いい表情だ」
「って蕾さん!?」
 驚く尚美。いつの間にか、己と併走する形で男装のアリス――荊城・蕾(薔薇の奴隷王子・f27724)が隣にいたからだ。
「花は開いた。今の君ならば、元の世界に戻ってもきっと大丈夫だ」
 尚美に微笑みかけ、蕾は銃撃を繰り返す兵士達を見据える。
「最後に再び、薔薇十字の騎士の役目を果たそう。君の行く道を開くために」
「う、うん…!お願い、します…!」
 そして身を捻り、兎兵部隊を正面から見据えるように立つ。その背に尚美を守り、その手には紅き薔薇の革命剣。
「愚かしき機関の兵達よ!」
 剣の切先を向け、兎兵達に呼ばわる。
「既に彼女は新たな道を選び、貴様らの計画は御破算だ。それでも立ち塞がるというなら!」
 手首と腕とを巧みに捻り、応えて剣は空裂きの音を伴って踊る。それは蕾の確かな闘志の表れ。
「この『薔薇十字の騎士』が相手だ!」
 やがて剣が『扉』の上空を示すかの如く掲げられ、蕾は見得を切り締める。
「我等の計画は終わってなどいない!その娘さえ、『ブリュンヒルデ』さえ殺してしまえば我等の勝ちだ!」
「そもそもそんな剣一本で何ができる!此方には銃があるんだ!」
 しかし兎兵達も負けてはいない。一斉に軽機関銃を構えれば、銃口は全てが蕾の方を向く。だが、蕾は不敵に笑う。
「――本当に、そう思うか?」
「…何?」
 掲げた革命剣が、再び兎兵達に向けられたその直後。空中に輝くは白き方陣。先程彼女が剣の軌跡を以て描いた、秘跡の方陣。その軌跡の全てから一斉に、白き薔薇が花開く。
「薔薇十字の騎士が、悪魔の秘跡を受けし者が、剣しか使えぬ――そんな筈が、ないだろう?」
 そして全ての薔薇が、弾けるに乱れ飛ぶ。幾何学的な軌道を描いて飛翔するそれらの目指す先は、無論、兎兵達。鋭い茎が次々とその身へと突き立ち、宿す呪詛が命を啜る。
「手向けだ、せめて美しく咲き誇る薔薇の糧となるがいい」
 白き薔薇は兎兵達の命を吸って色づいていく。鮮血を思わせる真紅の色へと。吸い尽くされた兵達は消え失せ、後に残るはただ紅い薔薇。
 白薔薇の嵐が収まれば、最早そこに兵の姿は無く。乱れ咲く赤薔薇が『扉』の周りを鮮やかに彩っていた。
「――君の未来が、このように鮮やかな薔薇色であるように。祈っているよ」
 流麗なる所作で尚美を振り返り、薔薇の花咲くその『扉』を示し。薔薇の王子は、微笑んでみせた。尚美は頬に朱を散らし、その様に一時魅入っていたとか。

成功 🔵​🔵​🔴​

七那原・望
シララさん(f17818)と参加

もちろんです、導師ブリュンヒルデ。貴女が望んでくれるのであれば、わたしは与えられた全ての力を貴女に捧げましょう。
【果実変性・ウィッシーズホープ】
さぁ、エリクセスの果実に貴女の願いを。

終末戦争、黙示録の最後の一幕です。
導師ブリュンヒルデは天使も悪魔も存在しない。ヒトのみが在る争いのない新世界へと旅立ちます。
そして導師を喪ったこの世界は文字通り終焉を迎える。

故に『終末戦争』
終末戦争後の世界など存在しない。在るのはただ、無限に続く無という無間地獄のみ。

貴方達は選ばれなかったのです。

【全力魔法】の【神罰】を執行。

導師……いえ、尚美さん。
どうか、新世界でもお幸せに。


シララ・ミーファ
七那原・望ちゃんと参加


ゴッド・クリエイションでうさうさトランプ兵のハンバーガーとフライドチキンに生命を与えて元の原材料に戻しちゃうのだっ♪そして重視するのは繁殖力さぁさぁ生命よ地に満ちるのだっ♪たまにはシララちゃんも神っぽいことしちゃうのだっ♪

そして異空間から取り出したるは「叡知の杖」この逸品はなんでも遥かな太古より存在するという、時空を揺るがす魔力を秘めた杖なのであ~るっ♪ぶっちゃけシララちゃんもよくわかんにゃいケド…時空を揺るがすってほどだからシララちゃんのまわりの時間を操作して敵ユーベルコードの効果で行動速度が5分の1になっちゃった戦場でも普通に活動できちゃう環境耐性があるはずなのだっ♪



 猟兵の力によって退けられた兵達、その後に残るは薔薇の花園。花々の間を歩み、尚美は『自分の扉』を目指す――が。
「きゃっ!?」
 突如横合いから突風じみて襲い掛かる、銃弾の群れ。咄嗟に身を伏せる尚美だが、弾丸は止むことなく降り注ぐ。尚美と『扉』とを隔てるように。
「此方ラット1、ラビット・バニー・ヘアーは全滅した!だが未だ我々が残っている!」
 通信機にがなりたてる隊長らしき兵を先頭に、機関銃を構えながら迫り来る兎兵の一団。『扉』を囲む薔薇を踏み荒らし、尚美へ迫る。
「『ブリュンヒルデ』さえ仕留めれば…我々の、『機関』の勝利だ…!」
「うぅ、もうちょっとだってのに…!」
 悔しげに唇を噛む尚美。だがその横から進み出る姿がある。尚美の胸に届かぬくらいの小さな少女と、尚美より頭半分ほど大きな娘。
「案ずることはありません、導師ブリュンヒルデ。わたし達が、ついておりますから」
 小さな少女、七那原・望(封印されし果実・f04836)――再び天使リリアーレとして振舞う少女が、口元で微笑んでみせつつ告げる。
「そーそー!シララちゃん達がいる限り、闇凰魅さんには指一本触らせないのだっ♪」
 大きな娘、シララ・ミーファ(魔獣姫・f17818)も応えて声を上げる。
「…二人とも…うん、ありがと」
 先の遣り取りの末に吹っ切れたか、『真の名』で呼ばれることにもむず痒さは感じず。
「リリアーレ、シララ。あなた達の力、もう一度だけ、私に貸して…!」
 今ひとたび『闇凰魅=ブリュンヒルデ=ヒンメルベルク』として。二人に助力を請う。
「勿論なのだっ♪シララちゃん達がみんなやっつけちゃうのだ♪」
 明るく笑ってみせながらシララは杖を掲げる。それは遥かなる太鼓より存在し、時空を揺るがす魔力を秘めた杖。
「もちろんです、導師ブリュンヒルデ。貴女が望んでくれるのであれば、わたしは貴女より授かりし力の全てを捧げましょう」
 リリアーレもまた応え、その手に黄金の果実を掲げる。さながら、闇凰魅に捧げるかのように。
「さあ、エリクセスの果実に、貴女の願いを――」
 あらゆる願いを叶える叡智の果実。闇凰魅の手が、そこへ翳されて。

「た、隊長!あれはエリクセスの果実!『ブリュンヒルデ』があれに触れたら…!」
「落ち着け!落ち着いて狙い撃て!今なら奴は隙だらけだ!」
 うろたえる兎兵達。それを叱咤するように怒鳴りたてつつ、隊長は徐にハンバーガーを食べ始める。それに倣って兵士達が次々とハンバーガーやフライドチキンを食べ始める。
 現実逃避ではない。これは立派な彼らのユーベルコード。これらを食べていない者達の行動を鈍らせ、その間に撃ち殺さんとする狡猾――そのはずであった。
 コケコッコー!!
「!?」
 突如、兵士の手にあったフライドチキンから鳴き声が上がる。驚きチキンを取り落としてしまう兵士の前で、複数のフライドチキン同士が集結し、形を変え――数秒後、そこには数羽のニワトリがいた。つまりは原材料だ。
 それだけではない。ハンバーガーはそのバンズの表面から唐突に芽が出て、ビルの床面で逞しくも根を張り、瞬く間に成長し――やがて黄金の麦穂をつけるに至る。
「ふふーん、たまにはシララちゃんも神っぽいことしちゃうのだっ♪」
 杖を振るうたび、鶏肉が、小麦が、命を手に入れ形を取り戻していく。それは命なきものに命を与える、正しく神の権能。
 更にニワトリは一気に数を増やし。小麦は『扉』の周囲で次々と芽を出し実ってゆく。繁殖力を強化されたそれらは、瞬く間にその数を増やしビル屋上を満たしていく。
「く、くそっ!だが何故平気でいられる…!?まだハンバーガーを食ってる奴はいるはずなのに…!」
 悔しげにしつつもその事実を指摘する隊長。実際彼らの背後では、まだ何人かの兵士がハンバーガーを食べていたが。
「残念っ、この杖には時間を操作する力が宿っているのだっ♪」
 シララが掲げたその杖は時空を揺るがす――即ち時間にも干渉可能な代物。如何に敵のユーベルコードで行動速度を鈍らされようとも、この力で加速すれば良い。故にシララの挙動に一切の鈍りは無く。やがて、兵士達が持つ全ての食料が生命を宿すに至り。
「隊長!もうバーガーもチキンもありません!」
「何だと!?おのれ、このままでは…!」
 ユーベルコードを封じられ歯噛みする兵士達。そして、時は満ちた。

「終末戦争、黙示録の最後の一幕です。アルドナムの書にも書かれていなかった、正しき終わり」
 闇凰魅の願いを受けて、エリクセスの果実が眩い輝きを放つ。
「導師ブリュンヒルデは旅立たれます。天使も悪魔も存在しない、ただヒトのみが在る、争いのない新世界へと」
「な…!?では、この世界は…!?」
 愕然とする兎兵達。仮にクリフォート計画――尚美をオウガと変生せしめる計画が失敗しても、この世界――絶望の国が無くなるわけではない、そう考えていたらしい。
「無論。導師を喪ったこの世界は、文字通り終焉を迎えるのです」
 故に『終末戦争』。以て世界には終末が齎される。故に終末戦争後の世界などは存在せず。在るのはただ、無限に続く無という無間地獄に他ならない。
「貴方達は、選ばれなかったのです。観念し、滅びを受け入れなさい」
 リリアーネの宣言と同時に、エリクセスの果実から迸る光が更に力を増して――世界を、白く染め上げた。

 光が退いた後、兎兵達の姿はその全てが消え失せ。ビルの屋上には『扉』が残るのみ。
「これで邪魔者はいなくなったね。さ、闇凰…じゃない、尚美ちゃん」
 あまりにも眩い光に顔を覆っていた尚美だったが、シララの促しに応え改めて『扉』へ足を踏み出す。
 ドアノブに手をかける。新たな記憶のフラッシュバックも無い。大丈夫。これなら帰れる。
「――ありがとう。リリアーレ…じゃなくて、望さん、シララさん」
 振り返り、二人へ礼を述べる尚美。その表情は吹っ切れて、晴れやかであった。
「導師…いえ、尚美さん。どうか、新世界でもお幸せに」
 望の言葉に確りと頷いて。尚美は『扉』を開いた――



 行方不明になっていた女子中学生が数日ぶりに発見、保護されたというニュースは、その日のテレビや新聞をそれなりに賑わせた。
 誘拐、事故など様々な可能性を想定し捜査を行っていた警察であったが、保護された当の女子中学生はこう答えたという。

『世界の終わりと始まりを見てきた』

 数日振りに再会した家族や友人は相変わらずと呆れていたが。そんな彼らに、彼女はこう告げた。
「これで『闇凰魅=ブリュンヒルデ=ヒンメルベルク』としての使命は終わり。今の私は、ただの『尚美』よ」
 と。
 それは、『成長』という名の、彼女の新たな目覚めの物語――だったのかもしれない。
 その軌跡の一端は、今も彼女の机の中に。『アルドナムの書』と表紙に書かれたキャンパスノート、その最後に書き加えられた『終末戦争の詳細と結末』として。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年06月26日


挿絵イラスト