もこもこランドの冬支度
#アリスラビリンス
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●予期せぬ訪問
冬が来るよ、冬が来る。冬が来ると、アリスが来るよ。
歩きつかれたアリスのため、うんとあたたかくしておかなくっちゃ!
ひとりぼっちのアリスのため。ぬくーいぬいぐるみも用意しておこうね!
枯草が撫でつけられるみたくささやかな声を交わして、毛玉は――それによく似たいきものはせっせと動き回る。
あちらへころり、こちらへころり。その度に少しずつ抜け、解ける体毛を、宙に漂う大きな針が縫い留めてゆく。
地面がもふっ、天井がもふんっ。
もふもふもふんっ。
やわらかく弾んだ先で仲間とごっつんこしては、ひとつのもっと大きな毛玉へ。
いまはまだまだ準備期間。
だから色も鮮やか賑やかしい往来に、ほかのいきものがやってくるなんて、とっても不思議なことなのだ。
「あれ? きみはあわてんぼうのアリスだね?」
門をくぐる訪問者へ、ちいさな毛玉は陽気に声をかける。
冬はまだなのにと、ならもっと急がなきゃとすぐにころころ持ち場へ転がってゆくけれど。
『いいえ。わたくしこそが、冬よ』
かつん。一歩を踏み出す人型。
その足取りに付き従う風にみしりと音を立てて突き出した氷柱は、ひどくつめたくふかふか大地を引き裂いた。
●もこもこランドの冬支度
冬ですねぇ。
霜に覆われた真っ黒い塊は誰にともなく零して。
「こんな日に、もっと寒い場所へご案内するのはじつに心苦しいのですが……」
そうして皆々へ向き直れば、むにょんと折れるニュイ・ミヴ(新約・f02077)。ひとつの不思議の国へと急行してほしいのだ。
フェルト玉や毛糸玉じみた球体……愉快な仲間が集うそこは、さながら"もこもこランド"?
体毛を駆使して作り上げられた街並みは、触れればほわんとやわくぬくく、実用性はともかくなんだかほっとした心地にさせてくれる。この国へ渡ったアリスの心にも、ひとときの安らぎを届けて――きた、のかもしれないが。
「すでにオウガによる侵攻がはじまっているようです。虫のようなオブリビオンと、それから、雪ですね」
雪。豪雪だ。しかしそれは自然発生したものではない。
本来であればこの地域の冬本番はもうすこし先だったはず。冬支度のピークな今、愉快な仲間たちは、それはもう一層の大慌てで逃げ回るばかり!
このままでは彼らはもとより、じきに訪れるであろうアリスにも危険が及ぶ。ゆえにこそ、猟兵の出番。
「無事に"冬"を追い返せたなら、現地の方々といっしょに冬支度をしてくるのも楽しいかもしれません」
雪風もなんのその、もこもこマフラー。雪あそびし放題、もこもこ手袋。
お布団の中でくっつくしあわせ、もこもこフェルトぐるみ……。
身も心も凍える季節をいかにすれば楽しく乗り越えることができるか、よく知っている隣人たちが待っているだろうから。
「あたたかな、本物の冬を迎えられるよう、ぜひみなさんのお力をお貸しください!」
zino
ご覧いただきありがとうございます。
zinoと申します。よろしくお願いいたします。
今回は、もこもこもこもこもアリスラビリンスへとご案内いたします。
●第1章・第2章について
愉快な仲間たちとの共闘となります。
彼らは体毛や針を飛ばしたり猟兵のクッションとなり援護しますが、戦闘力についてはキャタピラーに軽々一掃される程度です。
●第3章について
時間帯は夜。暖炉のあたたかな火に照らされる、もこもこ造りの屋内にて。
愉快な仲間たちからおすそわけしてもらう体毛を用いてフェルトぐるみ、マフラー、手袋や帽子など編み物をどうぞ。
編めない場合は手伝ってくれます。また、完成品はひとりでに動いたり喋ったりすることがあるようです。
※アイテムの自動発行はございません。
お手数となりますが……。
複数人でのご参加の場合、【お相手のIDと名前(普段の呼び方で結構です)】か【グループ名】をプレイングにご記入いただきたく。
個人でのご参加の場合、確実な単独描写をご希望でしたら【単独】とご記入ください。
ニュイ・ミヴ(新約・f02077)はお声掛けいただいた場合のみお邪魔します。
●その他
導入公開次第プレイング受付開始。
補足、詳細スケジュール等はマスターページにてお知らせいたします。お手数となりますが、ご確認いただけますと幸いです。
セリフや心情、結果に関わること以外で大事にしたい/避けたいこだわり等、プレイングにて添えていただけましたら可能な範囲で執筆の参考とさせていただきます。
第1章 集団戦
『グリードキャタピラー』
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POW : キャタピラーファング
【無数の歯の生えた大口で噛みつくこと】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : 脱皮突進
【無数の足を蠢かせての突進】による素早い一撃を放つ。また、【脱皮する】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 汚らわしき蹂躙
全身を【表皮から溢れる粘液】で覆い、自身が敵から受けた【敵意や嫌悪の感情】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
イラスト:猫背
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
食い千切られた毛糸の屋根や看板から、汚らしい極彩色へ染め変えられた縮れ毛が舞い落ちた。
虫食いでスカスカの柱は真ん中から崩れてしまって、その根元に隠れていた毛玉はぴょんぴょこ跳ねて逃げ道を探している。
飛び出した先はぽっかりと黒。
こんなところにトンネルなんて作ったろうか?
――ばくんっ!
急ブレーキをかけたって手遅れ。あわれ弱いいきものは、不気味にうごめく巨虫の口へひとくちに呑まれてしまうのだ。
アリスはどちら?
ごちそうをおだしよ!
いくら食べたって腹が膨れぬと当たり散らすみたく頭を、胴をふりふり進むキャタピラーたちは止まらない。
ぱき、べき、音を立てるのは噛み砕かれるやわい命ではなくて、足元。割れる氷柱、そこから次々と湧く虫、そしてそんなおぞましいパレードを急き立てるように吹き付ける、強烈な冷気だ。
キトリ・フローエ
チロ(f09776)と
寒いみたいだから、ちゃんとあたたかくして行くのよ
チロは大丈夫?ソルベがいるから寒くないわね
ふふ、チロのお洋服の中なんて特等席、一刻でも早く楽しみたいけれど
まずは愉快な仲間の皆と一緒に、オウガをやっつけるわ!
チロやもこもこな皆が狙われないように
あちこち飛び回って虫達の気を引きつつ
炎のエレメンタル・ファンタジアで範囲攻撃を
こんなに寒いんだもの、少しくらい暖かくなったりはしないかしら?
…あっ、もこもこの皆、焦げないように気をつけて!(鼓舞)
虫の全身が粘液で覆われたら
やだ気持ち悪い!なんて思わず声に出てしまうけど
次の攻撃が届くより先に倒してみせるわ
あたし達、とっても強いんだから!
チロル・キャンディベル
キトリ(f02354)と
チロ、寒いところはだいじょうぶなの!
ソルベもいっしょだからぬくぬくなのよ
キトリも寒かったら、チロの服の中へどうぞ
愉快な仲間のみんなといっしょに、がんばるの!
エレメンタル・ファンタジアで、キトリといっしょにほのおを作るの
寒かったら、あったかくすればいいのよ!
突進してきたらよけるの
ソルベだって、本気を出せば早いのよ(えへん)
でも、飛ばされちゃったらけだまさんが助けてくれるかしら
ころころのけだまさんも、ふわふわの街も
もえちゃわないように注意するのよ
あと、みんながケガしちゃわないように注意なの
ソルベ、みんなを守ってあげてね
チロたちとっても強いの
この世界だって守れるんだから!
瞼の裏、世界渡りのましろい光が止んだとて、開いた其処も白。
肌へ頭へ降るどっしりと重い雪の結晶に、ぱたたとキトリ・フローエ(f02354)の薄い翅がたちこめる冷気を打つ。
「随分な歓迎ね……チロ、大丈夫?」
「チロ、寒いところはだいじょうぶなの! ソルベもいっしょだからぬくぬくなのよ」
隣へ降り立ったチロル・キャンディベル(雪のはっぱ・f09776)は如何なる季節にも変わらぬ晴れやかな笑みでにぱり応え、キトリの頭上にちいさな両手をかざしてナイナイを。
寒かったら、チロの服の中へどうぞ。
もこもこお洋服の特等席も白熊ソルベもとってもあたたかそうで、その魅力的な提案とやさしさについつい頬が緩んでしまう。
「ふふ、チロのお洋服の中なんて特等席、一刻でも早く楽しみたいけれど」
妖精の娘は、繰り返し頷いて――だからこそ、キリリ。
うん。キトリのためにも、がんばる! まかせてとチロルが拳を突き上げれば。
ふたりと一匹は愉快な仲間たちと共にオウガをやっつけるため、ちょっぴりつめたく冷えたそれぞれの"力"へ手を触れる。
「もこもこの皆、凍えちゃうにはまだ早いわ!」
「寒かったら、あったかくすればいいのよ!」
構え、そうして息ぴったり天を指したなら、さながら時を逆戻りさせるかの如くに夏色を連れてくる。
滾る生命の赤。 揚々と噴き出した炎は二手に躍り、あと数秒先の未来で毛糸を呑んでいたであろう虫数匹を舐めるみたく焦げ付かせて。
チロルの魔法を追いかけるよう雪を跳ね上げ飛び出したソルベの身体は、未だ残っていたもこもこ地面でひときわ大きく沈んだのち、近しいサイズの一匹へ弾丸めいた体当たりをお見舞いした。
「ふふふ、チロたちとっても強いの」
「焦げないようにね、気を付けて!」
そんな逞しい白熊の背、上手に乗りこなすチロルは衝撃でぽぉんとトランポリンしてきた毛玉たちをナイスキャッチ! 間近で明るくも勇ましくも輝く翠の瞳へ、わっと大いに湧く毛玉。冬が似合いながらも春を連想させる光景にこっそり笑み深め、入れ替わりに空を縫い翔けるキトリは、地でほよほよとする彼らを後方へ吹き転がしながら次なる力を望んだ。
やだ気持ち悪い! ……ぬらりと鈍く光る異形へ思うところこそあるものの。
「そっちの皆にはこんがり焦げてもらうけれど。いいわよね?」
勿論、いやとは言わせない。
呼び掛けもそこそこ、本人の気質のように弛まぬ炎が触れる前から雪をも溶かしてキャタピラーを襲う。たちまち頭部とそれ以下が別たれた幼虫は、もんどりうって体液を飛ばしはじめる。
が。
「おねがいっ!」
ソルベだって、本気を出せば早いのだ。
不届き者へ大きな氷塊をぶつけながらふさふさの白熊が突撃して、背を蹴りチロルがめいっぱい伸ばした両手に妖精を包めばふたりいっしょに転がる雪の上。
――もふんっ。
いえいえ、毛糸の上?
すさっと集まった仲間たちはクッションへ。追撃は防がんと宙を舞う針はほんの待ち針程度の太さしかないが、それでも共に戦う気満々の彼らはまさしく、少女らの在り方に鼓舞されたのだ。
「もこもこ……」
「もこもこね……」
あたたかくなった気がするのは、エレメンタル・ファンタジアの影響だけではないのだろう。
旅して、触れて、慈しんで。ありがとうとともに"大地"をひと撫で身を起こし、波か雪崩か殖え続けるキャタピラーを前にも意志固く。
「今の子、ちょっとソルベのふかふかに似てたかも」
「ね。たのしみが増えちゃったのよ、キトリ」
ごうと音立ててふたりの炎は渦を巻き、その輪の中、抉り落とした虫肉を払い悠々と戻ってきたソルベも肩を並べたなら。
負けるだなんて、こわいだなんてこれっぽっちも思えない――。 この世界だって、守れるんだから!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
セロ・アルコイリス
オズ(f01136)と!
うぅうっ、そう、寒いのは苦手なんですけど!
こんなイイコで優しい毛玉サン達を放ってはおけねーですよね!
行きましょう、オズ
って視線を交わすのは、きっと彼なら判ってくれる
毛玉サンを護るのを優先しましょう、って
そのためならおれは別に多少傷付いたって平気
こらこらこら、虫が毛糸喰うとか夏場の行李ですか
やめてください、冬に蓋開けたときショックでしょーが
基本的にはダガーで攻撃、敵の突進にゃカウンターできりゃ最良
なるべくオズの傍に居て
呼ばれりゃ当然、不敵に笑って馳せ参じますとも
そのぶん、あんたの相棒(ガジェット)もおれのこと助けてくれるでしょ?
うまいこと連携取り合って戦えたらいいなぁ
オズ・ケストナー
セロ(f06061)と
みんなあったかそうだねっ
はやくたおして、セロもぬくぬくしよ
さむいのにがてだものね
攻撃は武器受け
みんなに攻撃がいかないように
セロはきっと自分でなんとかするって思うから
頷き返して
もこもこなみんなを優先するよ
そんなくちでかみつかれたら、もこもこがボロボロになっちゃう
ふさがなくちゃね
ガジェットショータイム
大きな鉄球振り回し
うまく口に入らないのは、ごめんねっ
頭から狙って攻撃
突進は武器とオーラ防御で真正面から受け止め
援護にはお礼を
さがっててね
みんなのもこもこにさわるのは
おわってハイタッチするときだもの
きみにはさわらせないよと押し返し
セロ、と呼べば
彼がきてくれる
足止めも兼ねてるからねっ
新雪のうちへしんしんと差し込む陽光にも似た、薄明の紫。
やわらかな毛質をした髪はまた白く、マフラーで口閉ざし佇めば雪国生まれの出で立ちとも映る精巧なミレナリィ・ドールがひとつ。
しかし。
「――さむっ!」
セロ・アルコイリス(花盗人・f06061)は寒さが苦手。音立てそうな我が身を抱く様に、同じく人形として生を受けたオズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)は、励ましの握りこぶし。
「でもみてみてセロ、みんなあったかそうだよっ」
あちこちで跳ねている毛玉たちを指す逆の手では共に喝を入れる風に、早くもHermesがもうもう蒸気を吐いていた。
「はやくたおして、セロもぬくぬくしよ」
「うぅうっ、そう……寒くたって! こんなイイコで優しい毛玉サン達を放ってはおけねーですよね!」
その熱気を拝借するように――ひとつだけはぁと息継ぎしたセロの、行きましょう、と、震えぬ眼差しがオズのそれと交わる。
滑らせた手指でダガーの柄に懐く雪へ突きつけるノーセンキュー、抜き放つと同時低く踏み出す一歩目、飛び掛かり来た青虫頭を左から右へ刎ね上げた。腕への負担は相応――だがスピード殺さずくぐり抜けセロは、背で聞くどごんとパワフルな音も案ずる必要などないと心得る。
「わあ。すごいね、じまんの歯なんだろうけれど」
ふさがなくちゃね。 オズによる出迎えのガジェット・ショータイム。
唾液溢れる口内を見せつけられようと、むしろ前のめりに観察してみせるほどの胆力と好奇心は平常運転。
お礼代わりフルスイングで振るわれた斧はいまやキャタピラーの口へ食い込み、そのご自慢を歯肉のうちへ埋め戻しているし。
零れだす体液をも一度に蒸発させる煙を噴出し、直後には歪なトンネルを四散させながら突き抜けるのだ。瞬きの間に組み変わる形状は鉄球へ、半ば振り回されるかたち、いや勢いすら利用して殴りつける先は第二第三の幼虫。
「どーも、お食事中にジャマします?」
――柔い大地は盗人に味方し、吹雪に紛れた足音をも消していた。
かまいたちの如く。影のあとに刃が続く。
圧し通らんと身に切れ込みを入れ脱皮をはじめたキャタピラーは、しかし、皮のみならず細切れにバラされて。
達磨落としか胸部を蹴り抜きこじ開ける道。
降る肉塊を躱し、縮こまっていたフェルト玉をお宝をそうするみたく掻っ攫ってから漸く止まったセロの指は、てのひらで軽くもそもそを弾ませた。
「良かった、まだ喰われてやいませんね。虫が毛糸喰うとか、夏場の行李かってんですよ」
やめてください、冬に蓋開けたときショックでしょーが。次の言葉は、鉄球をごちそうされ吹っ飛んでゆく穴だらけへ向けて。嘯く男がちいさき仲間を懐へしまえば、物陰からざわっと湧き出た毛玉たちも弾んで飛びついてくる。
「いっしょに戦ってくれるんだ? ありがとう!」
針の雨に数秒とはいえ縫い留められた巨虫をしっかりと潰し、ちょっとだけさがっててね、とオズは更に前へ。
みんなのもこもこにさわるのは、おわってハイタッチするときだもの。
きみにはさわらせないよ。
がぢん!! 脱皮強化を諦めたキャタピラーの突進を、真っ向から受け止めるガジェットが火を吐いた。青年が勢いに押し込まれるのは二歩までで、雪の下、本来のたのしくてかわいい地面を踏みしめるゆえに力が湧く。
「そうだよね。 セロ、」
「ええ、ええ。似合いのモンを馳走してやりましょ」
はじめにズレるのは頭。 なに、口なんて所詮一方向にしかついていない。
見事傍らより通された本命の"牙"が抜けたとき、けたたましく唸る蒸気の噴射が、自分たちの側へと崩れ掛かる残骸を弾き返して。
――まだまだいける?
――当然!
零れる微笑と不敵な笑み、
本日二度目の視線の交錯は、信を置きあっているからこそ、やはり一瞬きり。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジャハル・アルムリフ
師父(f00123)と
…ふむ
糸も食えば美味いのだろうか
さておき躾のならぬ大食らいには
きつい仕置きが必要だな
なにせ、たいそう師の好みそうな場所だ
派手に暴れる師の魔術に惑う蟲らの只中を駆けて
結わえた真っ赤な毛糸玉ひとつ
疑似餌がわりに<おびき寄せ>
そら口を開けてみろ
餌の代わりに【暴蝕】で喚び出した群魔どもをけしかける
敵意も嫌悪もあろうはずがない
…そいつ等にとっては「ご馳走」だ
まだ動く個体から庇い、耐えながら
師に余波が及ばぬよう掻っ攫う
愉快な連中ともども安全地帯へ
よくやってくれた、毛玉よ
ふかりと弾んで沈む足元
転ぼうと身が傷付くはずもない地面
…むう、なかなかに魅力的
師父、我等が屋敷もこのように改築しよう
アルバ・アルフライラ
ジジ(f00995)と
やれ毛糸に虫食いは大敵ぞ
邪魔な害虫は根こそぎ駆逐してくれる
…云っておくが、ジジ
流石に糸は止めておけ
魔方陣より召喚するは【愚者の灯火】
先ずは毛玉を喰らわんとする蟲から一掃
その後、氷より出ず輩を炎で蹂躙せしめよう
ほれ、鬱陶しい氷雪ごと燃え尽きよ
敵意も憎悪も隠す心算はない
力の糧とするならば
圧倒的な数と魔力で捻伏せるのみ
ふふん、私を誰だと心得る
仲間達へ流れ弾なぞ当てるものか
暴れ狂う従者の業魔
次々増殖するそれ等を眺めては
…これではある種の災害よな
惑う毛を逃す折
感触をもそっと堪能したくはあるが
…っは!
いかん誘惑に負ける所であった
阿呆、全てを改築するに
一体如何程の毛玉が必要と考えておる
猟兵の介入により、そう広くもない国の随所で同時多発的に繰り広げられる激しい攻防。
ちょろちょろ逃げまわる毛玉、毛玉、毛玉……。
背後で巨虫が倒れ伏す。風圧! ワッッと跳ねた手乗りサイズの彼(?)は、空へ――瞬間、そこに伸びてきた武骨な三本指にわしっと摘まみ上げられる。
「…………」
じぃ。
至近。覗き込むは夜空の闇より深いようで、あえかに彩を揺らがす双つ目。ジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)。
不穏に物言わぬ弟子とびゃぁっっと毛を逆立てる球体とを見遣り、こら、と分厚い背を叩くのはアルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)。
「怯えておろうが。……云っておくが、ジジ。流石に糸は止めておけ」
「……ふむ。食えば美味いのか否か。ならば、あの大食らいに尋ねるしかあるまいな」
本日はまだ聞き分けが、よい。
解放された毛玉がそそくさ自分の陰に隠れるのにも気をよくして、ふふんと鼻を鳴らすアルバは星追いのつるぎを取り回した。挑発的に、異形を指せば。
はじめからそこに描かれていたかの如く、足元に滲む六芒星はトルマリンの雪化粧。さてはて、思考し答える暇をくれてやる心算もないが。
「ときにジジよ、お前、蟲の言語なぞいつ学んだ?」
「ああ」
――星が尾を引く風に。光と影とが寄り添う風に。間髪置かず射出されるイグニス・ファタスに煌々と輪郭を照らされ、拳を固める竜人は飛び出していた。 つまるところ、問う術とは。
きつい仕置きが必要だ。
精練された魔術は、毛糸玉の代わりキャタピラーの口へうねり舞い込んでゆく。見目のうつくしさによらず、一度腹に潜ったならば供連れに燃え尽きるまで暴れまわる荒くれ。
「よほど腹の足しにもなろう」
ドミノ倒し或いは倒壊するアーチ、焦げ臭く進路に頽れる虫どもをひととびに踏み越えジャハルは先へ。ひとつ、舞い上がる雪中にも鮮やかな赤の毛糸玉を弾ませた。
淡いパステルカラーのものたちを見失ったオブリビオンは、引き寄せられるよう黒に赤、霞まぬ竜の目立つ背を追う。最中にも変わらず無尽蔵に思える火球が躍るというのに、単細胞なことだ。
だがそれでいい。
「そら。口を開けてみろ」
踏みしめての一投、ぐんと高く放られた赤玉はぐねり、形状を移ろわせ羽音を響かせる。ひと、ふた、み――ジャハルの手より解き放たれた、無数のそれは暴蝕の小竜たち。
死して尚も餓え、欲する魂は巨虫と相違ない獰猛さでその生へと喰らいつくのだ。粘膜などとお構いなし、アルバの手向けた炎と連れだって、進み侵す皮膚のうち。 斯様な醜悪であれ、
「……そいつ等にとっては"ご馳走"だ」
「ほれ、頃合いだ。鬱陶しい氷雪ごと燃え尽きよ」
ある種の災害の幕開けに余す灯火を添えたなら、ぐつぐつ煮立つ氷柱は仕込まれた虫ごと溶けてゆく。他方でついには腹を喰い破り倍以上溢れ出す霊の群れを後目に、てんてんと転がるフェルト玉へとアルバは歩み寄っていた。
汚れたいくつかをやんわり払ってやれば、ふかりとした手応えが返る。
……これは中々どうして。
「師よ」
「――……っは!」
いけない誘惑に負けるところだった。時間差で爆裂が続く中、回るジャハルの腕がアルバを空へ吊り上げたため、宝石は竜人の胸いっぱい抱えられたふわもこな先客らに自然包まれることとなる。
ぐっと目を伏せ無心を装う横顔は、しかし、足をつけた先の地の柔さに繰り返し瞬いてしまい。
一等慕う、きらりとした輝き。瞳に映すから似た色を湛え、ジャハルも転び放題の毛糸大地をふみっと確かめる。 間。 取り繕う必要こそ失せたものの――。
「……むう、なかなかに魅力的。師父、我等が屋敷もこのように改築しよう」
「阿呆、全てを改築するに一体如何程の毛玉が必要と考えておる」
アルバがまた別の意味で額を押さえることとなったのは、言うまでもない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
絢辻・幽子
まあ!もこもこですって?!
そんな子達が一大事なんて、幽ちゃん頑張っちゃうわあ。
でも私、寒いの苦手なのよねえ……
あらあ……おっきな、芋虫
美味しくなさそうね、あなた。
とりあえず、縛っちゃう?その大きなお口もご一緒に
私がふかふかもふもふを満喫するまえに
めいっぱい満喫した罰ですよ、えぇ
その段々腹にいくつのもふもふを溜め込んだのかしらねぇ?
憎たらしいわあ。
『地形の利用』と『ロープワーク』で、蜘蛛のように
糸を張り巡らせて、虫さん達の動きをとめちゃいましょうねえ
最後は仕上げに『咎力封じ』でみのむしにしてあげましょ
あなたも冬支度ね、なあんて。
愉快な仲間なクッションを体験したら
しばらく動きたくないわねぇ……。
コノハ・ライゼ
うわ、ホントもこもこ……
肌触りの良いモノに弱い身としては、思わず釘付けになっちゃう訳ダケド
ピンチと言うなら手を貸さなくっちゃネ
さあ愛しいコ達
あの虫からは出来るだけ離れてちょうだい
せっかくの毛並みが台無しになってよ
愉快な仲間達『かばう』ように立ち
彼らの前に『オーラ防御』を『範囲攻撃』で展開するヨ
自分への傷は気にせず『激痛耐性』で凌ぐねぇ
近付かせないよう、近い距離の敵から優先して狙い【彩雨】降らすわね
粘っこいモノって凍らせると格段に剥がしやすくなるンだよ
実証してアゲル、と『2回攻撃』で
右目の「氷泪」から雷奔らせ粘液剥がし貫いていこうか
そのまま雷で『傷口をえぐって』『生命力吸収』し傷塞いできましょ
悍ましいまでの冷気に血相を変える者も多い中、絢辻・幽子(幽々・f04449)に至ってはいささかベクトルが違っていた。寒いのは苦手。それは本当。
だがしかし眼前には所狭しともこもこ……、頬に赤みが差さぬよう、とは、無理な相談である。なにより、そんな毛玉が頬に肩にもっふぁもふぁと擦り寄ってくるものだから。
「……幽ちゃん頑張っちゃう。とっても頑張っちゃうわあ」
「うわ、ホントもこもこ……」
狐尾がびったんびたん雪風をかき混ぜるほど近く、コノハ・ライゼ(空々・f03130)も今しがた拾い上げたフェルト玉に纏わりつかれていた。肌触り、満点――。
とはいえ愉快な彼らがこれだけいるということは、そばに邪魔者もいるわけで。
「美味しくなさそうね、あなた」
「ふは。コレの調理法はちょーっと浮かばないカモ」
鷹揚としたやり取りに隠しもしない刺すような眼差しを受け、ずんぐりとしたグリードキャタピラーが咆哮を上げる。漏れ出る粘液を狐らは即座に見切り、迎え撃つかたちでぐわんと風起こす糸と光とが周辺の毛玉たちを後方へやさしく送り出した。
「さあ愛しいコ達。せっかくの毛並みが台無しになってよ」
「おねえさんを応援していてね」
くすり。
互いの物言いに俄かに肩揺らし、しゅるるる! 大気裂く音も冷ややか、虫の口にだって到底開けぬほど広範囲に広がった幽子の赤糸は、クロスする指の動きに従い一息に収束する。
「私がふかふかもふもふを満喫するまえに、めいっぱい満喫した罰ですよ。えぇ」
「幽ちゃんの恨みを買うなんてツイてないわ」
おたく、と軽快な口振りこそ同情する風で、ぎゅちぎゅち軋みながら畳まれ緑に紫に濡れる巨虫へコノハが贈るは氷柱以上に鋭い水晶針。
巻かれ貫かれ一切の抵抗を禁じられた数匹は、なすすべなくひとつの標本と化す。
もっとも、コレクション欲だって湧かぬから、肉の一欠残さず抉り尽くしてしまうけれど。
弾力のある地を波打たせ、目論んだフルパワーの突進は正しい矛先を見失えば自殺行為となる他ない。
頭部と胸部の境目の溝をぐるぐる巻きにされた虫同士が、妖力と呼ぶべきか――不思議なほど抗えぬ力に引き回されぐちゃり、醜く轢き潰し合う。ふたつが混ざり溶け、尚の事増えてみえる歯の気色悪さときたら!
「その段々腹にいくつのもふもふを溜め込んだのかしらねぇ? 憎たらしいわあ」
「まったく。そだ、粘っこいモノって凍らせると格段に剥がしやすくなるンだよ」
投げ出され、まだ動く気配のあるべったり毛玉をすくいあげ。獰猛に牙覗かせておきながら、歌うに近く紡ぐのはまるで平和な家庭のライフハック。
空間にピンと張られた糸を潜り抜けるコノハは虹色相まって蝶の側のようでいて、小回りを利かせキャタピラーらを誘い込むことに成功していた。もがもがと食いついた糸に絡まる異形に目と鼻の先、向き合って。
「実証してアゲル」
降らせ続けた氷雨に凍てつく額へと、もうひと手間。
獣が咢を開くが如く、右目のアオより放たれたいかづちは氷一枚といわず、奥で喰われる順番待ちをしていた虫のもとへも貫き届く。散り際の結晶だけは、極彩の輝きで――。
「まあ、さすが我らが店長さん」
「ふふっ、ヨイショしたって奢んないわよ?」
軽口の応酬。ゆるーい手拍子だってしてみせた幽子のゆびさきは、砕けた死肉の影からコノハへ躍りかかる素振りをみせた一匹を細長く縛り上げている。
まるでみのむし?
「あなたも冬支度ね、なあんて」
――備える冬も、二度とは来ないのだけれど。
ばぢっ、と、稲光が巨体へ空洞を開け。ざらざら零れてくる毛玉たちはちょーっぴりぬるっとしているけれど、愛すべきもふを取り戻すべく抱き上げるふたりは頷き合った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
イーサン・ライネリス
あーヤダヤダ、かわいくないったら!
っていうかアンタ、どっかで見たようなカッコしてんじゃないわよ!
チョサクケンってもんを知らないワケ? ……知ってるはずもないか。
まっいいわ。アタシ編み物とかだーいすきなの。
ふわふわな街なんて、とってもファンシーじゃなぁい?
それを壊す奴は邪・魔・よ。ぶっ殺してあげるわ!
・作戦
キャタピラーを引きつけて、噛みつきを誘う。
こっちから飛び込んで歯より奥に入ったらピラーズチェーンをに自分の血を塗って武器強化、超巨大化して胴体両断してやるわ。
スピレイル・ナトゥア
私、ああいう毒々しい色合いの虫って嫌いなんですよね
敵なんですから容赦はいりませんし、徹底的にやっつけるとしましょう
精霊印の突撃銃で、愉快な仲間さんたちを【援護射撃】します
それにしても、毛糸には虫が天敵さんですか
これまで考えたこともなかった強弱関係です
ですが、その強弱関係のまま、愉快な仲間さんたちを倒させるわけにはいきません
平和なもふもふランドを取り戻すために、愉快な仲間さんたちは絶対に傷つけません!
グリードキャタピラーさんの群れは、対大型怪獣用に開発したこのユーベルコードで殲滅させてみせます!
あ、そういえば私、敵意や嫌悪の感情を向けてばっかりですね
もしかしたら、これはまずいかもしれません……!
どうせ瞳に映すならば、うつくしい方が好いに決まっている。
だというのに――。
「あーヤダヤダ、かわいくないったら! っていうかアンタ、どっかで見たようなカッコしてんじゃないわよ!」
いまイーサン・ライネリス(有閑ダンピ・f22250)の視界いっぱい懐いてくるものは、思わずチョサクケンを尋ねたくなってしまう巨大青虫のみである。
「親の顏が見てみたい虫畜生ねぇ、まずはにこやかな挨拶からって教わってないかしら?」
そも吹雪が濃い。横から後ろから次々に顔を出すキャタピラーに対して器用に身を捩り、ときに薄皮一枚掠められ、声を張り上げながら開けた場所へと駆け出るイーサン。
降りかかる粘液がじゅわり、足元を溶かす様に鳥肌を宥めるうら若き乙女じみたムーブをしながらも、陰ながらその指に手繰られているのは鎖だ。
じゃら、しゃら。雪風にひそやか誘うかの音を混ぜて。
まっいいわ。言い捨て歩を緩めたのは、なにもエサになってやる心構えができたからではなく。
「アタシ編み物とかだーいすきなの。ふわふわな街なんて、とってもファンシーじゃなぁい?」
それを壊す奴は邪・魔・よ。
まるで"追い詰められた"演出。 一区切りずつ、突きつける手のうちよりぶわりと蠢くピラーズチェーン。洒落たネックレスにも見えたそれは薄ら流れる血に一変、
「――ぶっ殺してあげるわ!」
重く、大きく。"願望"を叶えるため怒り狂う捕食者の牙へ。
烟る白の向こうが瞬間、赤に溢れた。
旅慣れたスピレイル・ナトゥア(蒼色の螺旋の巫女姫・f06014)の双眸はその意味を正しく悟る。風が運ぶ毒々しい臭気にも、一層血の香りが濃くなって――はじまっている。
「続きましょう」
抱え直した突撃銃から炎の精霊が出入りして、ぼんやり的の所在を照らす。元はなんの建造物だったのか、都合の良い雪だまりに身を隠しての一射。
わっと連続音が弾け、毛玉に執心していた巨虫の頭部が蜂の巣になるまでには一拍だ。
間を置かずに駆け次、そうして次。咀嚼の刹那を撃ち抜いたなら、二度とは顎など開けぬように。
(「毛糸には虫が天敵さん……これまで考えたこともなかった強弱関係ですが。容赦はいりません。徹底的にやっつけてしまわないと」)
平和なもふもふランドを取り戻すため、愉快な仲間を倒させるわけにはいかない。強い決意とは別に軽いからだが反動に押し返されぬよう、風の精たちも肩を支え力を貸してくれている。
GHrrRRRR!!
盛大に雪を巻き上げ倒れる同族をときに盾に、ときに踏み潰しながら、這い来る新手数匹が娘ごと呑まんと牙を剥く。寸でで身を転がしたスピレイルの頭上、雪の塊はごっそり食まれて失せて。
氷上で背を打ち、ついた手の腹にぬると緑色の液体が触れた。焼けるみたいにあつい――あつくとも!
「っ……殲滅、してみせますっ!」
逃げを選ばず引くトリガー。
空を喰らうほど大きくまばゆく、閃光奔らせ炸裂するはラグナロククライシス――漂う精霊力をひとときに集め込めたユーベルコードだ。絶え間なき虫の叫び、べちゃべちゃ水っぽい肉片の散る音。
しかし純粋な敵意嫌悪を糧として、粘度を増した体表の虫どもは消し飛び折れ曲がりながらも、おぞましい挙動でスピレイルへ迫った。
牙の数をかぞえられるほど間近に開かれたトンネル……、腕を捨てればまだ銃は差し込める!
ずぐ、
と。
「追いかけっこはおしまい」
甘やかな囁き声がして。
血飛沫と音を立てたのは、割り入るずっと背の高い男の――イーサンの半身であった。ぼたぼた垂れ落ちる液はけれど、赤よりも緑が色濃い。
足元から順に見上げるスピレイルの瞳は、それもそのはず、巨虫の肉体を突き抜けなおも余りある長大な杭を見とめる。
「ぁ。 ありがとう、ございます……?」
「アタシから逃げようたってそうは――あら。うふふ、怪我はないかしら」
両断され頽れる醜悪に目もくれず、ヤダお肌が荒れちゃうと頬の粘液をぬぐうイーサンは、随分と久方ぶりに思える"うつくしい"へうっそり微笑んだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
エンジ・カラカ
賢い君、賢い君、ムシ。ムシがいる。
アァ……食べられたヤツもいるのか。
どうする。どーしよ。うんうん、そうしよう。
寒くはないサ。オオカミは寒いのに強いからなァ……。
でも、足場が崩れると絶体絶命になってしまうンだ。
コレはそのくらい知ってる知ってる。
相棒の拷問器具を使って腹をすかせたムシを捕まえようそうしよう。
君はムシ平気?平気?
アァ……ダメだったなァ。
ちょーっと我慢してくれ。すぐに終わらせよう。
コレに任せてくれくれ。
前に前に進むならムシの前に君の糸を張り巡らせよう。
そう、蜘蛛の巣みたいに!
そうやって動きを止めれば誰かが代わりにやってくれるサ。
賢い君も一安心に違いない。
そうだろう?
鳳仙寺・夜昂
極悪そうな顔してんなあ。
俺は喰われる気もねえし、轢かれる気もねえし。
まあ、大人しくなってくれや。
(頭の上にひよこ(雛鳳)を乗っけながら)
(ぴよぴよ)
まず『不転』で自己強化して
狙われてる味方がいれば【かばう】で割り込んだりして
錫杖で【武器受け】しつつ、【カウンター】【グラップル】で殴る。
うわあ、ぬめぬめしてら……。
でも嫌とか言ってらんねえしな。
お前は間違っても落ちるなよな。食べられても知らねえからな。
(頭の上のひよこを気に掛けながら)
(ぴよぴよ)
※絡み・アドリブ歓迎です
※ひよこはぴよぴよ応援してます
エドガー・ブライトマン
街並みがふわふわしている
この国の民もふわふわしているみたいだよ
珍しいものを見たよね。レディ、オスカー!
やあ、毛玉君って呼んでいい?
私の名はエドガー。通りすがりの王子様さ
――さて、キミらとキミらの国の平和を守ってあげる
民と国を守ることこそが王子様の仕事だから
でも民の協力があれば心強いなあ
ね。私と一緒に戦ってくれるかい?
このレイピアでキャタピラ君に立ち向かう
毛玉君には援護を頼むけれど、彼らは決して傷つけないさ
彼らが攻撃されそうな際は身を挺して《かばう》
私の体は痛みに鈍いみたいなんだ《激痛耐性》
だから平気
キャタピラ君と間合いを詰められたなら“Jの勇躍”
キミの突進との速さ比べをしよう
私、負けないよ!
ふわふわの街並み。住人。
そのふわふわを喰らいながら、肥え太り蠢く醜悪――これもまた旅の一頁。
「珍しいものを見たよね。レディ、オスカー!」
エドガー・ブライトマン(“運命”・f21503)の輝石の青は今日も澄み。とんと胸に当てる拳、声は朗々と響かせ、キャタピラへ巻き込まれんとす毛玉の前へ歩み出た。
「私の名はエドガー。通りすがりの王子様さ」
やあ、毛玉君って呼んでいい?
分け隔てなく手を差し伸べる、絵本から飛び出してきたかの穏やかなかんばせで。
承諾も含まれていたか、なにやら跳ねて危険を伝える彼らにうんうんと頷いて、きらり。次に輝かせるのは携える細剣の切っ先。
微かな鞘の震えが遅れて耳に届くほど、剣閃は速く。
「嬉しいよ。――さて、」
民とのふれあいの邪魔立ては見過ごせない、振り返りざま斬り払われた青虫の不揃いな脚が地で跳ねるのを一瞥もせず、ピッと緑の粘液を血払いして。
キミらとキミらの国の平和を守ってあげる。
王子様の仕事をこなすのだと、笑う。
見れば見るほど極悪そうな面構え。出会って十数分の間柄ではあるが、鳳仙寺・夜昂(仰星・f16389)的にグリードキャタピラーはもう腹一杯。
「……俺は喰われる気もねえし、轢かれる気もねえし。まあ、大人しくなってくれや」
ぬめる利き手の黒手袋を引っ張り直して構える。
手指の感覚は未だ衰えてはいない。どころか、こんな不快生物に追い回される災難な毛玉の前に立つからこそ、研ぎ澄まされるものがあった。
(「嫌とか言ってらんねえよ」)
誰であれ、何であれ手が届いてしまうなら。
ぞぶりと湿った音。青虫の表皮から吹き上がる粘液を旋回させる錫杖にて散らし、儘、踏み込みの重みを乗せ打ち据える。
ぴよっ。
いやに愛らしい衝撃音――ではない"エール"は、夜昂の頭上から。
「お前は間違っても落ちるなよな。食べられても知らねえからな」
バディペット・雛鳳。 雪にも負けず燃える尾羽は、主の黒髪をまだらにする雪をせっせと溶かすようで。その能天気さに微苦笑、握り固めた拳を揮いぶよぶよ虫肉を割る夜昂の視界に、異彩を放つ黒が、またひとつ舞い降りた。
――賢い君、賢い君!
「ムシだけじゃない。トリもいる。かわいいねェ、ちいさいねェ」
青くはないけれど、鳥はトクベツ。鳥はイイ。
寒さ知らずの闇色襤褸雑巾が風にはたはた。伸びる赫糸は足跡であり血痕であり、雁字搦めに引きずってきた巨虫はばたばた。パーソナルスペース度外視でひよこを見つめ来る男、エンジ・カラカ(六月・f06959)に思わずと飛び退く夜昂。
「っ新手じゃねえだろうなぁ!?」
「アラテ? コレはなかよくムシ捕り中だ。ホラ、こうやって」
張った氷に罅を刻みながら迫るキャタピラーへ、指し向ける指先を"くいっ"。
それだけで。 賢い君、こと、エンジ相棒の拷問器具は意図通り赤々とした糸をあたり中へ吐きつけた。蜘蛛が巣作りでそうする風に、氷柱、死肉、使えるものはなんでも使い張り巡らせされた狩人の罠へと、知性の乏しいはらぺこ虫は飛び入るのみだ。
うご、うご、もがく程絡まり深みに嵌る有様も本物に似て。 伸びて軋んで綻んで、それでも逃さぬえにしは薬指の褪せた傷痕をひと回り。
「賢いだろう?」
「へっ、成程……――ガラ空きだ」
掌底。 叩きつける刹那、千切れながらも齧りたがる強欲な頭は突き入れる錫杖で串刺して。爆散は直後に、弾みで数メートル滑りひっくり返った巨体は三度限り脚をかさつかせ、動かなくなった。
見届けた夜昂はふうと息をつく。ついて整えたからこそ、エンジの後方で丸く固められたままのキャタピラーが気になるというもの。
「そんで、引き摺ってるありゃあんたの連れか何かか?」
「いいや? 賢い君はムシがダメ。アレはあげる、あげる」
マジかよ。
潰すものがまた増えた――。 これで"君"も一安心に違いないと相棒を撫でる狼男の向かい寒空に呟きが溶けたとき、通りの奥、雪煙が高く巻き上がった。
毛糸を狙う質量任せの猛突進をいなす度、王族に相応しく美しい装束には傷が、血汚れが増えてゆく。
しかし王子様が己が身を顧みることはない。背に庇う民のため、膝を折ることも。
「たのしいかい、キャタピラ君」
傷だらけのからだで揺らめき、怒れる虫は奇声を発する。
おそろしい。でも。 一緒に戦ってくれれば心強い――抗う機をくれた存在が、こんなにも体を張っているのだ。おかげで逃げおおせた毛糸玉たちも奮起して、針が一斉に宙を追った。
巨虫の脚を縫い止め、つくり出されるのは瞬き程の間。
否、"術"持つエドガーにとってそれは大きな意味を持つ。握りしめ高く放られたマントが雪白の空を今一度、安寧の青へ染め変えて。
「嗚呼、愛すべき国の民に幸福を!」
この手で届けようとも。 ――踏み込んで誘う、Jの勇躍。肉薄。風鳴り放たれた一閃は、防御すら間に合わぬキャタピラーを斬り飛ばした。
白く煙り立つステージで舞踏は続く。たちまちいくつも頭が舞って、舞えずに落ちて。
――GGGgrr!
隕石めく肉塊に貰い事故を喰らって身を欠けさせ、暴れのたうつ虫の数匹が激しい揺れをもたらすが、二度はない。
「アァ……、退場はおしずかに。賢い君がご機嫌ナナメになってしまう」
「はー、こりゃまた毒の海みたくなってんな」
オオカミは寒さに強いけれど、足場が崩れてはたまらない――ぐるぐるり巨体を吊り上げる赤い糸。やれやれと、呆れを乗せながらも振り抜かれた破戒僧の拳撃が、くれてやる慈悲もなく分厚い肉を抉るから。
「おや」
生まれた穴からひょっこり覗くエンジとご対面しエドガーは、記憶に新しい顔にぱああと華やいで。折れかけの足を引き摺る下半分と上半分で、いっそ別の生き物らしく優雅な一礼を。
「王子サマ。王子サマはムシが好き?」
「いや偶然にも通りかかってね――ああ、そちらのキミもありがとう! 握手はどうだい? きっといい記念になる!」
「うわっせめてソレ落としてからにしてくんね? って俺も大概か……」
かたちだけお辞儀を真似るエンジ、身を引く夜昂。ぴよぴよひよこ。言いつけ通りに下がっていた毛玉たちもわさわさとやってきて、いくらばかりか気の早い祝勝会ムード。
傷付き、汚れた手で称え合う健闘もまた尊い一頁――なのかも、しれない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
アナンシ・メイスフィールド
ラフィ君f19461と
ふふ、他でもないラフィ君の誘いだからね
喜んで受けさせて貰うのだよ…と
もこもこ…柔らかな毛並みを持つ住民達とは
ラフィ君、紛れないよう気を付けてくれ給えよ?と笑みを向けつつ剣を抜き敵へと向かおう
優先順位はもこもこ君達を狙っている敵>ラフィ君や私に近い敵
『目立たない』様に『早業』にて近づきつつ剣を振るい、もこもこ君やラフィ君から敵を離す様『吹き飛ば』さんと試みながら行動をして行こう
もし距離があり駆け寄るのが間に合いそうにない場合は【贄への誘い】にて敵を攻撃、足止めながら駆け寄り剣にて切りつけよう
芋虫は蜘蛛に食べられると決まっているではないね?さあ、大人しく観念するのだよ
ラフィ・シザー
アナンシ(f17900)と
アナンシ!今日は付き合ってくれてありがとな!
ここのもこもこさんたちをオーガから守る依頼だぜ。
もこもこしたものは俺も好きだからなこのもこもこランドの惨状は見過ごせないってわけさ!
まずは芋虫が相手だな!
正直この芋虫は苦手なんだよなー…切った時の感触が…でも、そんなことは言ってられないからな!
もこもこさん達は出来るだけ下がっててくれよ。
まずはUC【Dancing Scissors】で攻撃だ!
踊れ!踊れ!踊れ!
さて、俺も踊るとしますか♪
【盾受け】で攻撃をいなし【ダンス】で軽やかに避ける♪
【戦闘知識】で敵の動きを考えながら【二回攻撃】や【暗殺】で攻撃。
●
「おっと! へへ、ほんとに良いもこもこ――じゃないや、大丈夫か?」
吹雪に飛ばされてきた毛糸玉を受け止めて、ラフィ・シザー(【鋏ウサギ】・f19461)はニカリ頼もしく笑う。
はじめましての挨拶するみたく揺れる兎耳。腰では愉快な楽器のように、よく手入れされた鋏たちが音を奏でていた。
「……アナンシ、虫だ」
「はじめようか、ラフィ君。さあ、もこもこ君たちはそちらへ」
比べてゆったりと、泰然たる足取りで追いついたアナンシ・メイスフィールド(記憶喪失のーーー・f17900)が並び立つ。道中でふたりに救い出されたのだろう、腕の中いっぱいのフェルト玉は己ずと飛び降りれば跳ね、応援を送り物陰へ。
rrR Gyy――!!
嗅覚、聴覚、……いずれかの感覚器官を有してはいるらしい、その長大なからだをぶよぶよ波打たせたキャタピラーは兎少年と紳士とに向き直って。
「あっちはあっちで、何度相手したって好みじゃないけどなー……でもま、これももこもこランドのため!」
「ラフィ君、次はもこもこに紛れないよう気を付けてくれ給えよ?」
びりり、鼓膜を震わせる咆哮。 意に介さず、微笑むままアナンシは仕込み杖よりすらりと麗しき刃を抜く。
どっちにしろ助けてくれるだろ、と、笑い返したラフィがたんっと凍る地を蹴りつけ跳べば、星が零れ落ちるよう数多の鋏が宙を舞った――Dancing Scissors。切り心地が苦手だって、切れぬものなどないということ。
証明すべく一斉に開かれた凶器たちは鋭い矢となって巨虫の腹へと撃ち込まれる。万華鏡の中の世界がそうである風に、並び、輪を描き、崩しては組み立てて――。
踊れ! 踊れ! 踊れ!!
「ご一緒させていただこう。さて、キミはダンスが得意とみた」
そのお祭り騒ぎに身を潜ませて黒衣のエージェントは接敵。シルクハットのつばを押し上げ、覗くさめた青目とよく似た剣閃の光が、虫を真中から断つ。
薄い皮だけで繋がる頭部をもたげんと悶えるキャタピラー。
「リズムに乗れてないってなっ」
びた、びたと不格好に。降る鋏はそれを許さず地へ縫い戻し、身の丈の半ばほどもあるinnocence……巨大鋏を振り回すラフィが、歪な顔面にトドメの刺突を見舞った。
後方からは住民の支援だろう、時折針も舞い来る。持ち前の身軽さで空中階段よろしくそれを飛び移る黒兎は、真下を空振りし突進していった虫が"引き摺り込まれる"様を見る。
まったく、よく動き回ってくれるものだが。
「芋虫は蜘蛛に食べられると決まっているではないかね?」
上質なインバネスのコートが翻って。
かつんと氷雪の地面を鳴らし、アナンシが辿る道には黒色の樹木が突き出していた。もとよりあったものではない。この世界のものでもない、喚び出された怪異。蠢くそれは、蜘蛛の脚。
「さあ、大人しく観念するのだよ」
巨虫の腹を貫き自由を奪った黒をひと撫でして、"贄"を食むMasefieldの刀身。眉間へ突き立った銀は、血汚れにもうすぼんやりと輝きを返す。
「さっすが♪」
隣へと舞い降りるラフィにハイタッチを求められゆるやかに応じるアナンシは、逆の手で迫るキャタピラーの疣脚を斬り払う。スピンし雪だまりに突っ込むかたちとなったオブリビオンなど、次に顔を出す前に下から順にバラバラとなる散々な末路だ。
元凶たる大鋏を抱える少年は濁って滴る液体にいやぁな顔をしつつも、視界の端でもこもこが跳ねればにこやかに手を振る。すぐに取り戻してやるからなと拳を掲げ。
「もっともーっと騒ごうぜ、次のお相手はどいつだ?」
「彼の言う通り、退屈などさせてくれぬように頼みたいものだね」
すこしの地響きをもたらしながら雪に覆われる大地を割って、八本の蜘蛛脚が手招いた。
GrrRRoOOooo!!
駆け出す端から学習もせず弾き転がされるキャタピラー。迎える鋏群に削られる肉体。その丸々として涙を流す緑目に映り込む人影ふたつは、手際よくいのちをバラす。
――退屈。
依然として疲れ知らずで"躍る"ラフィを背に、アナンシは剣を振り上げて。
地を這うばかりで芸のひとつもできぬとは、到底興醒めであるから。 そう云いたげに、ただ真下へ振り下ろした。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
雨野・妙
雲珠/f22865
何だお前さん、此処がどんな世界か知らねえでついてきたのかい。
じゃ、周りを助けることだけ考えてな。
人間の形はしてねえ分だけまだよかろ。
さあて虫退治だ。表面には触れねえよ、毒が滲んでるだろ。
距離取って燃やしちまうのが一番だ。
火気厳禁の気があるが、すぐ消せるんで許してくれ。
滅多と使わん煙管の出番よ。【凍風】を乗せた煙を《吹き飛ばす》
君らも災難だな。
冬の後ろについてったって羽化の春は来ねえし、
僕にゃあ周りを暖かくもしてやれねえのさ。
…ああ。そういや、地面だのなんだの柔らかいんだっけかね。
もののついでに床を踏んづけて弾ませて、
雲珠の箱宮へ現地民を放ってみるか。
上手くやってくれよ、少年。
雨野・雲珠
◆先生と/f22864
・元里の守り神と桜の精
・今は帝都で探偵と助手ごっこ
……怖い世界ですね?
ここ、すごく怖い世界ですね?
人肉食って、な、なに…
あっ知ってて黙ってましたね!?信じられな…!
初めての世界のエグさもさることながら、
敵の見た目が怖すぎて半泣きです。
なんですかあの邪悪な腹ペコあおむし
俺はほとんど攻撃手段がないので救助活動です。
助手から少年に格下げされている気がする…俺が役たたずだから…
とか考えているうちにも前線からぽんぽんふわもこさんたちが放られてくるので
慌ててキャッチしては【UC】に避難させていきます。
箱の中も冬の里ですが安全なので、
…今出てきちゃ駄目です、怪我はあとで治しますから!
おしゃべりするかわいい花? わたしを食べてとささやくお菓子?
誰も彼もがなかよくたのしく茶会を共にできる――いえいえここは食人種の跋扈するハテのハテ、アリスラビリンス。
「……怖い世界ですね? ここ、すごく怖い世界ですね?」
迷い込んだがさいご。
一歩ごと足元でぐじゅりと音を立てる肉塊に目を覆いながら、雨野・雲珠(f22865)は嘆いた。半泣きだ。すたすた先行く背は雨野・妙(落伍・f22864)、歩幅は手前で合わせろとばかり。
「何だお前さん、此処がどんな世界か知らねえでついてきたのかい」
「あっ知ってて黙ってましたね!? 信じられな……!」
たまらず小走りで追いかけるも、抗議を続けることは徒労であると誰より知っている。そういうおひとだと。それよりも今、雲珠が案ずべきは何か。
……醜悪な姿を晒しつつ、ぐんねりこちらを窺う腹ペコあおむしズに他ならない。
「え、エグいっ……」
「人間の形はしてねえ分だけまだよかろ」
――さあて虫退治だ。
ほんの日常の延長のように傾けられる煙管。妙がふうと吐いた紫煙が、くゆりながら白へとグラデーションしパキリ、ペキリ、罅割れるかの音を立てた。
凍風。
刹那、吹雪はより烈しきに喰らわれる。
煙の正体は冬をしらせるユーベルコードの凍てつく炎。風の行きつく先、キャタピラーを取り巻き躍らせる。転がりまわる地に生えた氷柱で血を流して、燃やされて、液を撒き散らして、焼け焦げて、 ――繰り返し。繰り返し。
「君らも災難だな」
小洒落た帽子を目深に被り、仕掛け人たる男は他人事めいて言った。
冬の後ろについてったって羽化の春は来ねえし、僕にゃあ周りを暖かくもしてやれねえのさ。
事実、他人事なのだから。
……どうしよう、どうすれば。
眼前で繰り広げられる惨劇から目を逸らさぬ意気やよし。とはいえ戦いに貢献する術こそ浮かばぬ雲珠は、右へいったり左へいったり。
"じゃ、周りを助けることだけ考えてな"。
幕開けの際に降ってきたアドバイスを脳裏で何度もなぞる。
(「助手から少年に格下げされている気がする……俺が役たたずだから……」)
すこしでも命じてくれれば。
いいや仕事は己で探すべき。
空いた手はものを掬い上げることができる。意を決して踏み出した足元に、同時、前方からもふんとした球体が転がってきた。
「? これは」
ぽふ、ぽん。ぽろぽろ。 次々と。恐る恐る出処を見遣ればなにやら弾む大地でトランポリンに興じる妙の姿。触れてみたならわずかに震える毛糸玉。なるほど――成程?
「上手くやってくれよ、少年」
(「――やっぱり格下げ!」)
「なに遊んでるのかと思いましたけど。そういうことなら」
お任せあれ。 確りと"助手"の貌をして、下ろす箱宮の扉を叩く雲珠。桃花のかすかな香。描かれた神紋が光り転がり来る彼らを吸い込めば、この場においてのなによりの安全地帯へと招くのだ。
ユーベルコード・一之宮。
同じ冬の里だとて、繋がる先はよほど居心地でも好いのだろうか。おとなしく応じ、出てくる気配のない毛糸玉に安堵の吐息を漏らした雲珠ははたと顔を上げる。
ぱかりと開かれたキャタピラーの口に、よく知るひとが呑まれたように見えたから。
「せんせ、――っ!」
「どうだいありゃ、キンキン騒がしいったらないだろ」
冬が遠のいちまうと嗤う。それは、濃く立ち込める煙の齎す残影だ。
ハラヘリの虫が食めるのは、とっくに地を蹴っていた妙の肉ではなく残り火。脂をタネにごおおおと燃え上がる一瞬に、ほうら明るくなったろう――なんて使い古された冗句がよく似合う。
「…………」
「にしたって浮かねえ面だな。ちょいと遊んでくるか?」
怪奇・ニヤニヤ笑い男がほれと煙管で新手を指すので、結構です! とそっぽ向いた雲珠は毛糸玉たちをかき集めるおしごとに戻るのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
リオネル・エコーズ
走るより飛んだ方が早いしオーラ防御展開しつつ全力飛行
彼らを食べようとしてる虫の頭にズドンと着地からの飛び降り
クッションありがとう…って想像以上のもこもこ…!
守りたい、このもこもこ…
(きりっ
もこもこランドと愉快なみんなの為
あと俺の翼を冷凍手羽先にしない為
虫は白薔薇の歌姫と一緒にマッハで倒――うわ
いや『彼女』の手を取ったまま一瞬固まったけど違うから
初めて見た口に浮かんだの敵意とか嫌悪じゃなくて
凄いって驚きだし
…って見てたらマジで凄く思えてきた
コレはありよりの…いやオウガだから無し
視力で敵の動きしっかり見ながら
魔鍵で虫をドスッと突いたりフルスイング
白薔薇の君と一緒にヤバイ虫を蹴散らしていこう
冴島・類
来る季節を厭うでなく、暖かく乗り越えていく為に
素敵な、優しい愉快な子ら
この世界に来るには、早いふゆ
何も、奪わず
お帰り頂かないとね
愉快な仲間君達、こんにちは
君らの援護は嬉しいが
巻き込まれて、自慢のふわふわや君らが傷付いてはアリスもきっと悲しむ
僕も、ね
だから、遠距離からの援護に留めてね?
お願いしてから前へ
虫の突進と牙の気を引く為に
瓜江と僕は、わざと羽織の裾をはためかせ
こちらにおいでとひらひら挑発しながら
薙ぎ払いで攻撃
来たら、攻撃は見切りで出来る限り回避
おや、随分なのろまな虫もいたものですねえ
避けきれぬ時、または愉快な仲間君らに行きそうになった攻撃はかばう為割り入り
糸車で返す
はらぺこ君に、左様ならだ
まんまるランタンのあたたかな灯は、まだ遠い朝を届けるようだ。
雪上に確かな色と影を落としながら、リオネル・エコーズ(燦歌・f04185)の大きな翼が冷気を叩く。展開した防護の祈りは雪風をも寄せ付けず、前だけ見据え続ける力を与う。
(「冷凍手羽先はごめんだもん。愉快なみんなだってさ、同じ気持ちだよね」)
そうして見つけた標的へとオラトリオは即断・急降下。
――GrrAaa!?
鳥が獲物を狩るように。涎を撒き散らすキャタピラーの頭部を、自身が矢であるかの如き鋭さで蹴り抜いた。
空を駆ってのヒーローの登場。超絶テンサゲだった毛糸玉たちは一斉にあげみざわ!! わささっと跳ねれば、浮き上がって落ちるリオネルの元にクッションよろしく集合する。
……本当はぜんぜん余裕で格好良く着地できたのだが。
「ありがとう――って想像以上のもこもこ……!」
気持ちが嬉しく、ありがたく甘えることにしたリオネルはもこに包まれつつワッと目を見開く。守りたい、このもこもこ……。 毛糸仲間? みたいなフレンドリーさで翼にくっついてくる数匹のとうとさに顔を覆いつつ、しかし、パッと手を離してからはキリリ。
「マッハで倒す」
倒す。
びたびた悶えていた巨虫が同じタイミングで顔を上げたから、"すごい"姿形とダイレクトに見つめ合うこととなろうとも。
たお……――。
「手分けしよっか姫様!」
リオネルの声にならぬ動揺を案じたか手を取り舞い降りたホワイト・ローズは、頷きひとつ、その清涼なる声音でひかりのうたを紡ぎはじめる。
――歌が聴こえる。
素敵で優しい愉快な子らの暮らす世に添えるには、雪の無音よりずっと似合いの。
「…………」
飛び散った粘液を払い落とし、一度だけ瞬き冴島・類(公孫樹・f13398)は先を急ぐ。望まれぬ冬を蹴り上げて、かじかむことを知らぬ手指は細い臙脂と千歳緑を風に遊ばせた。
青年と糸を追っていくつもの虫が振り返る。
「こちらにおいで」
ひらり、ひら。
はためく秋の残照がいざなう先は、片道切符の夜の底。
「連れていってあげよう」
何も奪えぬまま――おいかけっこに勢いづいて我先に顔を突き出す芋虫らを、急停止するや否や横薙ぎに振るわれた刀が丁寧にスライスした。枯れ尾花。短刀は、巻き起こす風でその尺の何倍もの爪牙を見舞う。
二太刀目でいちょう切りにされた肉塊が跳ね転がる中、視界の端に積み上がる毛糸山をみとめた類は、なんともいじらしい自己主張にくすりと笑いを零して。
「愉快な仲間君達、こんにちは。そのまま下がっていておくれ」
自慢のふわふわや君らが傷付いては、アリスもきっと悲しむ。 僕も、ね。
言の葉届け、仁王立つかたちで刀握る指に力を込めるのだ。
……ありよりのありなのでは?
その頃リオネルは真顔になっていた。
香り立つ白薔薇の花弁に守られながら、審議中の文字が脳内で躍る。手にした魔鍵はもっと凶悪な音立て躍る。ぶち抜かれるキャタピラーの衝撃吸収ぬめっとボディとか、超速く這える脚とか、よく見ればつぶらな……お目目は、無限に続きそうな口内を見せつけられながらだとやはりすごいヤバい!!
「やっぱオウガだから無し! いや別に嫌いとかじゃないんだけど、」
「永劫膨れぬ腹というのも虚しかろうね」
だけど、との言に続け。駆け来た類は殴り倒された虫に致命の刃を見舞う。それを白華が抱擁した、後には雪が残るのみ。
「あざまる水産!」
「……? こちらこそ」
前へ立ち力を揮う主らの目を掻い潜ろうとて、守るべきを傷つけることなど白薔薇と絡繰りとが許さない。雪中をそろり、そろ、と這い寄っていた個体を引き摺り出すのが舞踏なら、突進を受け止めるのが傀儡のからだ。
軋む音を立てつつも"吐き出された"力は同等の烈しさをもって虫頭を吹き飛ばす。
ぐうらり、 倒伏に愚鈍な数匹は圧し潰され、
「おや、随分なのろまな虫もいたものですねえ」
雪を掻くだけの疣脚を再び自由にしてやるのは、風の刃の他にない。
左様なら、はらぺこ君。
――――。
――白き壁を切り抜けて。
あらかたの巨虫を屠りふたりは、毛糸玉とともに次なる呼び声を目指す。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
境・花世
英(f22898)と
すばやさが身上だもの、普段から薄着がち
けれど虫食い穴だらけの世界は妙に寒々しくて
まって本気でさむい!
ぷるぷる震えながら訴えて、
もこふわの仔らを掴まえ――もとい助けよう
英と一緒に両脇に抱えて温もりながら、
真剣な顔で敵と相対して
この世界の平和を(もこ)
まもってみせるよ(もふ)
春めく風に薄紅の花びら散らして
前往くきみの背の助けになろう
ぬくい柔いものがお好みならば、
心ゆくまで齧らせてあげる――
っと、こらあおむし、英は齧ったらだめだよ?
颯爽と扇を翻して彼のピンチを救ったら
もこふわたちにかっこよくウインク
ふふ、だってときめいてくれたら、
もっとあったかいに違いないもの
榎本・英
花世(f11024)
嗚呼……寒いね(もこもこ)
それなのに青虫は元気そうだよ。
ほら花世。君とは正反対だ。
もこもこを脇に抱えて青虫の懐に飛び込む。
戦う事はあまり得意では無いのだが援護があるなら大丈夫だろう。
その花と間違えて私を齧らないでくれよ。
私はこいつのような生き物でも無ければ食料でもない。
嗚呼。ただの人なのだからね。
花弁に紛れて得物を振るう。
死角から狙おう。
花世。とても頼もしいが、気を付けてくれ給え。
今、花弁と一緒に齧られそうになった。
青虫の腹を切り裂いて出て来るのも良いが
ふわもこが驚いてしまいかねないからね。
ほら。彼女を見ていると良い。
格好いいだろう?
ほんの少し温かさが増した気がする
――寒々しい光景だ。
もとは色とりどりの毛糸で溢れていたのであろう、通りが虫食いの黒か雪の白にて覆われた様は。
非対称の瞳を細める境・花世(*葬・f11024)。剥き出しの肩をするりと撫ぜる凍り付きそうな指先で――。
「まって本気でさむい!」
むり!
いちもにもなく暖を求め、今しがた救い出したばかりの毛糸玉を抱きしめた。こんな景色には花だって上手に咲けやしない。悲痛な叫びを間近に拾いながらも隣り合う榎本・英(人である・f22898)は、平静と硝子越しの視線を動かすのみ。
「嗚呼……寒いね。それなのに青虫は元気そうだよ、ほら花世」
君とは正反対だ。 ――大口を開け威嚇するキャタピラーと相対しての一言目にしては、随分とまぁ平坦な。
もこもこ。
ふたりして小脇に抱えている仲間たちが怯える素振りを見せるので、花世は頭を振って力強く踏み出してみせる。雪も覆えぬ薄紅の花がひとひら零れ落ちて、
「きみたちを――この世界の平和を」
もこ。
「まもってみせるよ」
もふ。
とてもしんけんに。地につくより先に舞い上げる、春風を贈る。
その薄明るい嵐に押し出されるみたく、ゆるやかで、しずかな所作だった。
前へ、と跳ぶ英のまなこの輝きも、なにもかもを花が隠す。手には糸切り鋏。筆だったかひとだったか、ひと殺しの道具だったか、そんなことは最早些事なのだ。
「花と間違えて齧らないでくれよ」
私はこいつのような生き物でも無ければ、食料でもない。
――嗚呼。ただの人なのだからね。
ザ、と、振りかざせば肉を抉ることができる。インキが零れだす。浸す、綴る、紙上に筆を走らせるのとなんら変わりない、単調な作業。
痛みに絶叫、より大きく開かれた吻を男の代わりに埋めてやるのが柔い花色。
「きみのために散らすんだ、求めてくれなきゃさみしいな」
心ゆくまで齧らせてあげる。
直前まで息衝いていたかのぬくもりを添え降り積もる慈悲はたちまち内より溢れ出し、腹へ、脚へ、連れゆくかたちで満ち満ちて虫どもの終の褥となった。
掠める花の中、幾度目か切っ先が瞬く。
「青虫の腹を切り裂いて出て来るのも良いが、ふわもこが驚いてしまいかねないからね」
だろう、と問えば腕に返るもふっとした手応え。しがみついているのかもしれない。面妖ないきものにこうして向ける眼差しの方が、有象無象へ向けるそれよりまだ濃い彩をしている。
作品の役に立つか、否か。
「私はもう選んださ」
差っ引くべき登場人物は何れであるか。
茫洋と夢中にあるようで明け透けに、文豪たる英の"筆"は、破り捨てる駄作同然容赦なく巨虫をなぞって。
「――っと、こらあおむし、だから英は齧ったらだめだよ?」
刻まれ千切れ、尚も牙で触れんとすものなら合間へ差し込まれるはうるわしき刃。さあさあと収束するはなびらは花世の手のうちで扇を模り、そして再び開花する。
散る。
欲にくらむ緑眼が映す最期の一拍、なにものよりも咲き誇って。
袖の端を引かれる英。頭を失いどうと倒れ伏す巨体から鮮やかに距離をとったふたりは、這い寄る新手へと息も乱さず向き直る。
さりとて怯えることはない。もふもこ、と二度三度、ペンだこの出来た手が存外やわらかく撫でつければ。見たかいと一声。
「引き続き彼女を見ていると良い。格好いいだろう?」
「ふふ、何度だってときめかせるとも」
ばちん! 花の乙女が決めるウインクに毛糸玉はわんさか跳ねた。
――ほんのすこし、あたたかさが増した気がする。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
穂結・神楽耶
【炊事課】
ニルさん/f01811
匡さん/f01612
季節先取りの強硬突破とは…
礼儀のなってないオウガがいたものですね。
ニルさん匡さん、体動きます?
【焦羽挵蝶】を飛ばすので暖取ってくださいな。
わたくしはその辺り鈍いので大丈夫ですし。
もちろん、オウガの方にも飛ばしますね。
こうやってひらひら舞ってると愉快な仲間達に見えませんか?
まあもちろん「ウソですよ」ってことで。
炎の塊に噛みついた、おばかな虫から片付けましょうか。
モグラ叩きと違って潰すとボーナスですよー。
…あ、えっと。
わたくしの近くだと燃えてしまうかもしれないので。
あっちのお兄さんたちを温めてあげてください。
寒がりなので、きっと喜びますよ。
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
【炊事課】
匡/f01612
穂結/f15297
先取りにしても酷すぎねえか??
ここで越冬は絶対無理だな……
あー、本当寒いな、冬眠しそう(体内の焔の温度を上げる)
雪中行軍とか匡は色々やってんのな……
お、ありがとな穂結、助かる!
さて、まずはこの気味の悪い芋虫どもを叩きのめすか
冷気には事欠かない
天罰招来、【氷霜】
作り出した氷に呪詛を載せて
穂結の蝶に気を取られた奴を串刺しにしてやろう
……これ、モグラ叩きみたいで楽しいな
何匹叩けたか勝負しようぜ勝負
お、何だ……愉快な仲間たち、暖めてくれるのか?有難い!
冷気に巻き込まれないように気を付けていろよ
私たちが守ってやるからな!
可愛いなァ、連れて帰ったら……駄目だな
鳴宮・匡
【炊事課】
ニル/f01811、穂結/f15297
いやいくらなんでも寒すぎだろ
雪中行軍の経験がないわけじゃないけどさあ……
うん? そりゃ年中戦ってりゃ雪だってあるよ
ああ、穂結サンキュ、助かる
さすがに防寒対策はしてきたつもりだけど、
人間の身体じゃあれこれ限界があるっていうか
……凍える前に終わらせないとな
炎の蝶と氷の槍がちょうどいい隠れ蓑だ
怯んだ相手や刺し貫かれて負傷した敵から狙撃
効率よく数を減らしていくよ
……数勝負?
いいけど負けるつもりはないぜ
特に、……あー、愉快な仲間たち、だっけ?
そいつらの方へ向かう敵は最優先
いいよ、無理に戦わないで隠れてな
……欲を言うなら指先とか暖めてくれるとありがたいけど
ひらひらと。
吹雪の中を飛ぶ蝶がある。
赤々、鱗粉にかわり散らすは火の粉。仄かに浮かび上がる惨たらしい虫食いの痕跡に、幾度目か瞳を伏せる揮い手、穂結・神楽耶(舞貴刃・f15297)。
「季節先取りの強硬突破とは……。礼儀のなってないオウガがいたものですね」
「虫は虫らしく土の下で眠ってろっての。いくらなんでも寒すぎだ」
鳴宮・匡(凪の海・f01612)がぼやくのに、ここで越冬は絶対無理だとニルズヘッグ・ニヴルヘイム(竜吼・f01811)が同意を重ねた。
冬眠しそう……。
ドラゴニアンの弱弱しい呟きに、神楽耶の分け身たる刀より新たな炎蝶が零れ出た。それは舞い上がり男ふたりの傍らに寄り添って、焦がすためでなく温めるための熱を齎す。
「ありがとなぁ穂結、ほんと助かる!」
「サンキュ。凍える前に終わらせないとな」
匡の雪中行軍経験を活かした万全の装備が、雪を踏み固め蝶とともに道を作る。進むほど本数の増えはじめた粘液がこびりつく轍はグリードキャタピラーの荒らした証だ。 ――近い。
「そうですね。あとは運動で、からだをあたためるとしましょう」
我々らしく。
微笑み湛えるヤドリガミの刀がごうごうと炎を立てたなら、開戦の合図。
ひと踏みに炎色が弾けた。
反応が追い付かず背を向けたままの青虫が一匹、群れる蝶に呑まれ火柱になる。零れ落つ炭の塊を踏みつけ最中を駆け抜けた灰燼は、つい数瞬前までがら空きだったはずの手に一本の氷柱を掴み取って。
――天罰招来。氷霜。
「ははっすごいぞ、間近で見ると尚更に気味が悪い!」
ザンッ! 漸くもぞりと動きはじめたキャタピラーの"装甲"を深々貫く。吹き出す粘液が触れる前に蹴って身を離したかと思えば、あいた空間へ地より突き出る何本もの氷槍が巨体を串刺しにした。
「ったく、楽しんでら」
火と氷とで傷を負ったものを刈り取るのは、狙撃手たる匡の務め。最後方に居ながらも標的を見落とすことのないFatal Logicが死を読み解く。 数える。そこに数字以上の意味などありもしないように――音もなく撃ち出された銃弾は風雪に流されることもせず、重く、しずかに狩りを終えるのだ。
「確かにすこしネバネバが……けれど、燃やしてしまえば同じこと」
強かな刀は蝶に塗れ、すれ違い様に虫の疣を焼き切る。粘液をも焦がして絶えさせる灼熱に、のたうつ巨虫は頭を撃ち飛ばされ間髪入れず"おわり"を迎えるのだから、しあわせものかもしれないが。
他方、宙に地に一見してハチャメチャに乱立する氷柱は、扱うニルズヘッグの都合の良いようにだけできていた。引き抜く。突き立てる。使い捨てる。掴み取る。
フッ、と息吐いてどデカい口へと一本叩き入れた男は、口内で爆発的に増殖する凍てつく針山を余所に「はた、」とした顔で戦友らを振り返った。
「……これ、モグラ叩きみたいで楽しいな? 何匹叩けたか勝負しようぜ、勝負」
「えっ。どうしましょう、これまでの分は含まずですか?」
数え損ないました――などと悩まし気な声を上げる神楽耶の手は早くも一を足している。斬り飛ばされた虫頭が別な一匹の口へ飛び込んだ瞬間、まとめて撃ち抜いて匡は慣れたものだと親友の提案に手をひらつかせた。
「いいけど負けるつもりはないぜ」
「そうこなくっちゃな! よぉーし、虫よ! おかわりが足らんぞ!」
もっと集まってこーいとニルズヘッグが高々笑うなら、共鳴するが如くピキピキ大気が凍り付き氷柱が形成される。いち、にと、不揃いな形状のまま空を滑るそれらは、大食らいの虫だって大満足のサイズ感。
ガゴ、
ガゴッと鈍い音吐いて、穴だらけになり後ろへ後ろへと倒れるキャタピラーらは多重事故を起こしている。
追い込まれふるふる身を寄せ合っていた毛糸玉は慌てて飛び出して、頼もしい猟兵のもとへと一斉に転げはじめた。
追わんと腹を捩じる巨虫の前に、はためく赤い線。解れ、毛糸の端にも似た――さしたる視力も持たぬ虫はぐりんと頭を傾けて、その色に喰らいつく。
「ウソですよ。 ――おばかさん、」
自殺行為とも知らず。
ちいさく微笑う女の吐息が吹きつけたかのように、赤は……赤き蝶はぶわと燃え盛り、並ぶ歯の合間からも噴き零れるほどの業火を運ぶ。
「その調子だ、私たちが守ってやるからな!」
「後ろは気にしないで真っ直ぐ来りゃぁいい」
続けざまに氷と鋼とが巨体を押し返した。
打ち合わせたわけでもないのに、匡の眼は他ふたりと被らず、且つより住民を脅かすであろう個体を選んで吹き飛ばしている。戦場で培ってきた勘はこうしたときに役立った。 ……こうしたときくらいしか役に立たぬと、自嘲が滲む笑みは雪風の中、誰に見られることもなく。
リロードの束の間すらオブリビオンに逃げ場はない。
炎が舐め、凍り付いたあとの地に横たわるはモノクロの死骸ばかり。
三人の休みない援護の甲斐あって、ついに合流を果たした毛糸玉らはぴょんと飛び上がった! 着地先は肩に頭、指先であったり、もふもふもふと恩人に積もった雪を払う。
「お、何だ……愉快な仲間たち、暖めてくれるのか? ――あたたかい!」
「そうだな、無理に戦わないでそういう形で協力してくれたら……うん、ありがたい」
にぱーと笑いかけるニルズヘッグ、指先でとんとんと撫でる匡。
「わたくしの近くだと燃えてしまうかもしれません。是非、あちらのお兄さんたちの方へ」
困ったような、さみしいような、うれしいような。眉を下げ相好を崩す神楽耶の手からふわり降りたミニフェルト玉は、なんだかすこしだけ距離をあけた先で変わらず彼女を応援することにしたらしい。
可愛いなァ、連れて帰ったら……。
「やめとけよ」
「分かってる分かってる、てかまだ何も言ってねえだろ!?」
両手で包んで真剣に見つめるニルズヘッグには、やれやれ感を隠さぬ匡の釘刺しが入ったのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
赫・絲
薺サン(f00735)と!
うっわー……いや無理無理全然無理!
虫は嫌いなんだよー!
こんなの写真に残すワケにいかないもん、ぱぱぱーっと早いトコやっつけるに限るよー
ガンガンやっつけてガンガン進んで、寒さもどっかにやっちゃお!
そういえば初めてだねー
おっけーおっけー、そしたら張り切ってやっつけちゃうね
今日は私に任せて、薺サン!
とりあえず近づかれるのは嫌だよねーあの見た目だし
薺サンが足止めしてくれるタイミングに合わせて、敵へ鋼糸を射出
動かれないように絡め取ったら
それを指針に【エレメンタル・ファンタジア】で作った炎の氷柱を仕留めきるまで叩き込む
全部燃やし尽くせば、ちょっとあったかくなんないかなー、なんてね!
勾坂・薺
赫さん(f00433)と
うわ、ちょっとホラーな見た目だなぁ。
赫さん、ああいうのいける?無理?
……SNS映えはしなさそう。うーん。
ま、いっか、手っ取り早くやっつけちゃおっか。
寒いし。めちゃくちゃ寒い。わたし寒いの大っ嫌いなんだよね。
倒してできるだけ早くあたたかい所に行きたいというか。
あ、そういえば本格的な戦闘での連携ははじめてだっけ。
わたしは援護に専念するね。でもあんまり慣れてないし
あてにはしないでね。
レクチャーもよろしくお願いしまーす、赫"先輩"。
あの口で噛みつかれても体当たりされても怖いし
【Hello, world!】、そこから動かないように
動きを止めたら赫さんにチャンス、というか出番の合図
ぱかぁー、と。満面の笑み(?)でグリードキャタピラーが懐いてくるので。
その熱いベーゼを全力疾走掻い潜る赫・絲(赤い糸・f00433)は無の心でトリハダを宥めていた。いける。 いやムリ。 無理無理絶対無理!!
「虫は嫌いなんだよー!」
「ちょっとホラーな見た目だなぁ。……SNS映えはしなさそう。うーん」
一方、勾坂・薺(Unbreakable・f00735)はぼやーっと見上げて首を傾げる。ときめきもない。嫌悪もない。しかしめちゃくちゃ寒いなぁって、過るのはそれくらいだった。
はやくかたづけたい。
ふたりの思考はその一点において完全一致しており、躱す絲の動きについてこれず頭から雪だまりへ突っ込んだ虫へは鋼糸が伸びる。あかく、少女の手元に結ばれた鋼は腕の一振り、ぶよぶよ肉を輪切りに裁断して。
「こんなの写真に残すワケにいかないもん、ガンガンいっちゃお」
「だね。援護はするからレクチャーもよろしくお願いしまーす、赫"先輩"」
先輩?
一瞬はてなを浮かべた絲はそういえばと、彼女とは今日がはじめての本格的な連携であることに思い至る。手応えも気色悪かったな……とひっそり擦り合わせていた手をぐーに握り直すには余りある理由、
「おっけーおっけー、そしたら張り切ってやっつけちゃうね」
今日は私に任せて、薺サン!
の、宣言通り。
いざ定めた"敵"と向き合ったなら、凛と立つ少女が纏う外套の下、心音は一定。
「さて――ごらんよ、すこしは愛らしくなれるかも」
吐息混じりに呟き、後方を担う薺はといえばなんとシャボン玉遊びに勤しんでいた。……否。当人の性質同様ふわふわ気儘に漂う虹の泡は、力の一端。
電脳魔術入門、第23頁。 Hello, world!
あおむしの目元でぱちっと弾けて、瞬きの合間にぎこちなく明滅するホログラフィーの星々。反転、欠落、崩壊――バグだ。めくるめく、バグの悪夢を撒き散らす。
「そこから動かないように」
RrRRa?
術者の囁きで星は朽ち、"ふれてしまった"まるい緑眼いっぱいに狂ったコードが流れはじめる。除けぬ致命的なエラーは痛みを齎すのか、頭を振る数匹の段々腹の境目に、赤糸はしずかに食い込んでいて。
「あは。やっぱりダメだよ、似合わない」
グロい×カワいい=グロい。
――形式上とはいえ――イマドキの乙女たる絲のこころには響かなかった模様。すっぱりきっぱりと、繰り出し叩きつける焔の氷柱がその動けぬ頭を抉り落とした。
次なる命令をと尾を振る獣に似て、灰桜の短杖ははたはた火を揺らしている。そうだね、全部燃やし尽くせばちょっとはあったかくなるかも――微笑みかける背後で、ずべんと湿った音がひとつ。
振り返ったそこには巨大青虫の。
脱ぎ捨てられた皮が、転がっていた。…………。
「きっもちわるっ!!」
自己強化のための一手も、虫嫌いを前に愚策といえよう。俄然燃え立つ氷はたちどころに乱打され、身を捩って回避を試みたとて、そこには数多のシャボンが浮いている。
ふうわり膨らむ黒衣のローブに浮き出た回路がまぶしくて。
「へーこんな風に脱皮するんだ。間近で見たのははじめてかな」
「二度と見たくないけど、ねっ」
――。 続いて、電子と炎の光が炸裂。
ふたつの力に挟まれたキャタピラーは身動きひとつ許されず、消し飛んでおしまい。
終わった……。
感謝とともにぴょんこと飛びついてきた毛糸玉たちもいる。気持ち程度はあたたまったろうか、はじめより幾分か歩みの速まった薺の横で目を擦るのは絲。
「ゆめにでそう」
「そのときは呼んでいいよ」
いい夢見せてあげる、との電脳魔術士の台詞は虫どもの末路を知る限り、疑わしくも。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ロシュ・トトロッカ
うっひゃあ、さむーい!
いつもより着こんでポンチョもかぶったけど
足元ももっとあったかいのにしとくんだったな
ぽんっと冷たい空気を足場に蹴って
上からちょーっと、失礼!
キャタピラーの頭にえいやっと上からキック
ついでに蹴った勢いで次の一匹にもきーっく!
だいじなだいじな冬支度をジャマするなんて、とんだふとときものってやつだね!
これ以上は食べさせないよ!
突進に弾かれて着地した先はふわふわもっふん
あ、すっごくきもちいいふわふわかも、これ
もふもふあったかいのって、なんだかしあわせだよね…
はっ
うっかり楽しんでる場合じゃなかった!
きみたちも食べられないように気をつけてね
もう一回いってきまーす!
リリヤ・ベル
さむくなるのはいけません。いけないのです。
つめたいよるは、かなしくなります。
おたすけにまいりましょう。
ちいさいふわふわ。
ふしぎですけれど、生きていらっしゃるのなら、うしなわれないように。
愉快な仲間のみなさまを、おまもりするのです。
おてつだいはありがたく。
でも、どうぞご無理をなさらずに。おまかせくださいましね。
わたくしだって猟兵ですもの。がんばるのです。
みなさまが食べられてしまわないよう、キャタピラーの前へ出て気を惹きましょう。
おなかをいっぱいにしたいなら、おおきな方がたべやすいですよ。
引き寄せたなら、ひかりを降らせて攻撃を。
おおきな口も、粘液も、すべてまっすぐ貫くように。
おひきとりください。
くらい。
吐く息は白く。震えたがる手指にそうっと吹きつけて、リリヤ・ベル(祝福の鐘・f10892)は歩いている。
(「さむくなるのは、」)
いけないこと。 こんな景色に取り残されたものたちを、ただ。たすけてあげたくて。
縮こまる毛糸玉に迫る巨影を目にしたならば、足取りはより確かなものへ。たっ、た、割り込んだ先でうんと両腕を伸ばした。
「だめです」
おなかをいっぱいにしたいなら、おおきな方がたべやすいですよ。
突きつけるその勇気は、虫から見れば毛糸玉のひとつにでも映ったのかもしれない。ずぞ、と狙い通りに自身の側へ寄せられる顔を、しゃらり銀輪を鳴かせリリヤのゆびが指した。
「おひきとりください」
ひかりを呼ぶ。
ジャッジメント・クルセイド。
――天より射す光芒は悪しきを灼き、氷雪をも溶かす。埋もれていたのだろう、ふるふる這い出るフェルト玉らが足元に寄り付いて共闘の意志をみせるのに、ご無理をなさらずと一歩前へ出た。
少女の目の前でぼこぼこと膨れ上がり、脱皮をはじめようとするキャタピラー。
おぞましい姿には怯えない。もっとおそろしいものを知るからこそ、リリヤは覆い隠した耳と尾をピンと立てて立ち向かう。
そのときだ。
「上からちょーっと、失礼!」
ぱぁんと高らか響く衝突音。皮ごと蹴り飛ばされる巨大青虫?
南国の彩を引き連れて、闇夜に流れ落ちるひとしずく。スカイダンサー、ロシュ・トトロッカ(マグメルセイレーン・f04943)が空に現れた。
いつもより厚着にしてきたのだ。さむさなんてへっちゃら――うそ、やっぱりさむいし足はジンジン痺れるけれど、
「だいじなだいじな冬支度をジャマするなんて。これ以上は食べさせないよ!」
ふとどきものを見過ごせない! 蹴りつけた反動を利用しくるんと身を飛ばしたロシュは、突き出される虫頭のぬろぬろ斜面に羽のように軽やかに手をついて、その額にも深々足跡を。
反転した世界に見上げる幼い女の子を見つけ、逆さのまま片手をびっと翳しご挨拶。
「やっほー! きみはー……あわてんぼうのアリス?」
「いいえ、いいえ。りっぱなひとりの猟兵なのです」
このとおり、がんばります。
挨拶を返す風にもかかげた手が空を向けば、少年のキックで目を回した虫たちへ、ぴしゃんと落ちる裁きの光。まばゆく揺れる閃光は海の中から見る空みたい! ぱあっと瞳を輝かせ、すごいねと笑うロシュにリリヤもとっても得意げだ。
「ふふふ――ハッ、落ちっ、」
あぶない!
そのまま落下してゆくロシュへ思わず手を伸ばしかけたリリヤよりも早く、足元をさわさわ横切るものがあった。愉快な仲間の群れ。すさーっと落下地点へ滑り込んだ彼らによって、もう一度少年のからだは低く跳ね上げられる。
ふわふわもっふん!
……バウンドして沈んだ彼が中々起きてこないのに、そろりと歩み寄るリリヤ。けれども覗き込んだロシュはくつくつちいさな笑い声を零していて。 かと思えば、おおきな毛糸玉を抱きしめて仰向けに転がった。
「すっごくきもちいいふわふわかも、これ。もふもふあったか……しあわせ……」
「む。 そんなに……?」
そわりとしてリリヤは、両手でちょっと押し込む。
もこ……。
もこもこもこ。
最早習慣化しているものの、ひとりの今は"おとな"として気張り続ける必要も薄い。声もなくうっとり頬を寄せる娘のしあわせそうな横顔をにこやかに見つめたのち、「それじゃ」とロシュは跳ね起きる。
「ありがとね。もう一回いってきまーす! きみたちも食べられないように気をつけて」
「あっあっ、わたくしもゆくのです」
おたのしみの続きはあとで! 海色の装束を躍らせてたんとひと蹴り、地続きであるかの如く容易く空へ舞い戻る少年の後を追い、少女もめいっぱい走り出す。歩幅は未だちいさくとも。
霞む雪白の向こうへ。かなしいよるを、つめたいよるをおわりにするため。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『雪の女王』
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POW : 【戦場変更(雪原)】ホワイトワールド
【戦場を雪原(敵対者に状態異常付与:攻撃力】【、防御力の大幅低下、持続ダメージ効果)】【変更する。又、対象の生命力を徐々に奪う事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD : 【戦場変更(雪原)】クライオニクスブリザード
【戦場を雪原に変更する。又、指先】を向けた対象に、【UCを無力化し、生命力を急速に奪う吹雪】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ : 【戦場変更(雪原)】春の訪れない世界
【戦場を雪原に変更する、又、目を閉じる事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【除き、視認外の全対象を完全凍結させる冷気】で攻撃する。
イラスト:熊虎たつみ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「アララギ・イチイ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
跳ねる毛玉に案内されるようにして、猟兵が辿り着いた其処は国一番の大広場。
近付くほどに肌刺す冷気――その真中でちいさな氷柱を抱く先客、黒衣の女が元凶であるとは疑いようもなく。
「まあ。今日は"ヒト"に逢えないものかと思っていたけれど」
喜ばしいこと。
振り返る周囲には、大小様々毛玉を閉じ込めた氷柱がいくつも生えていた。
それらの乱雑な扱いと異なり、大事そうに抱かれるものは氷漬けのテディベア。この国の住民が作ったのだろう、にっこりスマイルを浮かべたいきものは、氷の中だからこそ解れることも汚れることも、逃げ出すことも、泣き出すこともない。
さみしがりやのいとし子へ持ち帰る特上のともだち。 ……たったそれっぽっちが、この惨劇の目当てだったとでも云うのか。
「ええ、そうね。きっと喜ぶ。一日に、ひとつ、ふたつ、みっつ……――こんなに多くのおともだちが増えるのだもの」
ごおと雪風が湧き立つ。
永遠の恋なら溶けぬ氷のうちに、今も。オウガ・雪の女王。
「わたくしの国へおいでなさい。あの子のそばで、ずっと大切にしてあげる」
いのち連れ去る、冬が来た。
イーサン・ライネリス
はーん、ナルホドねぇ。こーゆー手合いなワケ。
目に鏡の破片を入れていいなりにしたりはしないのね。
さーて……ねえアンジー、なにか名案なぁい?
(ちゅうちゅう)……なるほどね♪
外套のフードを深くかぶって前も閉じて姿を隠すわ。
他の人が歩いた後を歩いて足跡をごまかして、
動きをよく見ながらそーっと死角へ移動するでしょ。
そこで【咎力封じ】!
闇に紛れる、地形の利用、忍び足あたりの技能もフル活用よ。
コソ泥らしくコソコソしましょ!
うまく封じられたら、そのままピラーズチェーンでテディベアに攻撃!
アラ大事なものだったのーごめんなさいねぇ!
アハハ怒ったの? でもアタシばっか追っていいのかしら? 他にも強いヒトいっぱいよ?
鳳仙寺・夜昂
そりゃ閉じ込めたらずっと可愛いままで
手元に置いておけるのかもしれねえけど、
何て言うかさあ、意味を感じないよな。
傍に死体を置いてるのと何が違うんだ。
(ひよこが同意するようにぴよぴよ)
さっみいなあ……
とりあえず自分は『不転』で覆って、
毛玉たちは、巻き込まれないようにどっか物陰にでも行ってもらって。
味方とか毛玉が狙われたら錫杖の【武器受け】で【かばう】。
隙が出来ない程度に【カウンター】的に反撃したり。
雪と風。嫌いじゃねえけど、昔の記憶を思い出す。
あの時と同じことは二度としねえって思ってるからこそ、
こんなとこで凍死なんて出来ねえんだよ。
※絡み・アドリブ歓迎です!
※ひよこは引き続きぴよぴよしています
エンジ・カラカ
氷だー。寒い寒い。
でもコレは寒さに強いンだ。
賢い君、賢い君、今度はアイツを狙うンだって。
アァ……ミンナ寒そうだよなァ……。
そうだ。氷を溶かそうそうしよう。
薬指の傷を噛み切って君に与えよう。
傷も食事も凍りそうだなァ。
すこし我慢してくれヨ。
アァ……寒い寒い。
でも君は凍えない。
熱い熱い情熱的なアカイイトを敵サンに結ぼう。
賢い君は情熱的だろうそうだろう。
敵サンの攻撃は自慢の足で回避。
もこもこの仲間はなるべく助けたい助けたい。
君の炎で氷の柱も溶かせない?時間がかかる?なーんでもイイや。
もこもこ弱いヤツは守れって賢い君が言ってるンだ
ちゃーんと守るサ。
守れたら褒めてくれヨ。
エドガー・ブライトマン
ごきげんよう、雪の女王君。キミに会いに来たよ
やわらかなはずのクマ君と毛玉君、この国の平和、そのすべて
さあ、返してもらおうか
マントは毛玉君たちに預けておくよ
防寒だとか、範囲攻撃や氷柱避けになるだろう?
それに、大事なものなんだ。そのマント
私のお気に入り
だから、キミたちがちゃあんと持っていてくれ
後で取りに行くからさ
寒さや氷柱による痛みは感じない、気づかない
鈍いみたいなんだ《激痛耐性》
毛玉君らに攻撃が及びそうな際は《かばう》
キミの国には行かないよ
誇るべき祖国があるからさ
私に氷の棺は必要無い
“Sの御諚”
数秒でも隙が出来たなら十分さ
《早業》《捨て身の一撃》
心まで氷では、女王なんて務まらないさ
立ち去りたまえ
「賢い君、賢い君、今度はアイツを狙うンだって」
武器?
「さーて……ねえアンジー、なにか名案なぁい?」
ハツカネズミ。
「やあオスカー、すこし彼らと待っているかい?」
ツバメ。
……頭上のひよこ。
「…………いまいち締まらねぇが、」
咳払いして錫杖揺らす夜昂の脇を、"王子様"はまるで気に留めず歩み出て。
ごきげんよう、雪の女王君。キミに会いに来たよ。 もこもこランドの主であるかの顔で堂々と、広げる両手は歓待のそれ。鞘が鳴る。
「やわらかなはずのクマ君と毛玉君、この国の平和、そのすべて――さあ、返してもらおうか」
大事なもの。お気に入りだと伝えたうえで敢えて預けたマントは今、住人たちのもとにある。
後でかならず取りに行くからと、記す紙、結ぶ指がなくとも構わない。
いま。
ここで。
目の前で、果たしてみせるから。
『あなたの瞳はこどものようね。あの子の前でも輝き続けてくれるかしら』
「キミの国には行かないよ。誇るべき祖国があるからさ」
私に、氷の棺は必要無い。
吹きつける雪風が金糸をぱらぱら躍らせる。エドガーが真正面から挑むタイプならば、とっくに散開して姿を消したエンジ、イーサンはその真反対。
「――っで結局こうなんのか、よ! つぅぅ」
そして夜昂はといえば、つくづく放り出せぬ性質であった。
エドガーを指しかけたオウガの指を咄嗟に弾き上げての、かわりにお見舞いされた氷柱が脇腹を削ってゆく。
あんの薄情者ども! などと悪態ついてみせたりするが、本心ではすこしの困惑もない。男は適材適所を心得ていた。こうしてぶつかり合う役は、俺が。 泥臭い在り方がお似合いだ。
「キミの献身に報いよう」
「そーしてくれっとありがてえわ」
稼いだ一瞬へ信念の剣が振るわれる、一方で身を低く駆ける狼は、過ぎる視界にぽつぽつと山をつくる毛玉たちを見た。冬のトリみたい。
そういえばさっきの赤毛玉……もとい小鳥も寒そうだったなァ。
「コレには分からないが、ウーン、君もそういうなら」
氷を溶かそうそうしよう。呟き躊躇いなく噛み切る薬指の傷痕。傷も食事も凍りそう……薄れかけ、その度、何重にも刻まれたアトは絡む茨みたいにズタズタ。君こと拷問具は咎める素振りもなくしんと、伝う血を呑みうれしそうに脈打つ。
それもまぼろし? どれもまぼろし?
「なァんでも、イイよ」
エンジは利口な狼だから、むずかしいことは考えない。くっと愉しげに喉を鳴らして、いいや唸って、手のうちを零れてすべるアカイイトを解き放った。
まるで賢い君だ。情熱的な、熱い熱い。
『――あら。赤はね、わたくしの国ではめずらしいの』
しゅるんと腕を捕らわれて、断ち切るため振るわれる氷柱。ところが炎は氷を溶かして女王の足取りを鈍らせる。積もる雪嵩が急激に減ったためか、がくんと踏み外しかけた一歩、
「らぁ! さっきの礼だ」
見極めた夜昂の拳が飛んだ。
顔の前に辛うじて差し込まれた細腕が鈍い音で軋む。手応えやあり、殴り抜ける背に降る氷雪を断ち切ったのは、一閃。ではこちらもと語る眩しいまでのエドガーの笑み。
剣戟の音。 あちこちで弾ける赤に、すべてを押し殺さんとより強く吹きつける白雪の風。間近へ踏み込んで戦う猟兵らに纏わりつく氷は、炎の手助けがあっても尚しつこいか。
(「はーん、ナルホドねぇ。いいなりにってより、あーゆー手合いなワケ」)
とはいえ此方へ力を割く暇もないとみた。隠密に向く外套をすっぽり被り、猟兵たちのそれに足跡を重ね走るイーサンが選んだ作戦は曰く――コソ泥らしくコソコソ。
仮に詰問されたとて、最後に笑っていたいじゃない、なんてにこやかに囀るのであろうこの男はうず高く積もった雪の陰にて、肩口で鳴く相棒・アンジェラの"声"に耳を傾ける。
ちゅうちゅう?
「そうね、やっちゃいましょ♪」
くすくすご機嫌に返して、鎖分銅の要領でピラーズチェーンをぐるんとひと回し。
すくい上げるように宙翔く大杭の側を頭に見立てたなら、それは猛禽の嘴か蛇か――同時に切った手札は御用達・咎力封じ。ぱっ! と、手品めいて鎖の周囲に現れ出た拘束具らがまずオウガへと降りかかり。
「へェ」
誰より早くにまりと口角を上げたのはエンジだ。
馴染みのある力。コレはよぉく知っている、上手な嵌め方だって、何度も何度も。
次に狼男がとった行動は、気狂いだとて結果としては援護になっただろう。氷柱で刻まれた生傷を掻き、血を振り撒いて相棒の火を盛り立てる。
『ああ……あまり傷付いてはならないわ。うつくしいままいなくては、』
「――なぁにお高くとまってるんだか。手に入らなきゃ同じでしょお?」
かしゃん、
微かな音。笑い混じりの半妖の声。吹雪を防護へと回しガラ空きとなった背を越え女王の両手首へ、手錠はかけられた。 氷柱が雪原へ転がり落ち、逆の腕に抱かれていたテディベアが宙に浮く。
「もーらい」
夜道だもの。スリには気を付けなくっちゃ。ねえ?
……その一瞬に、辿り着く杭は氷塊を弾き上げ伸ばした指を空振らせる。――アラ大事なものだったのーごめんなさいねぇ! 揶揄に雪原を波立たせるほどの冷気が弾けるが、手枷ら拘束具を朽ちさせることに注力したらしく猟兵に傷を増やせない。
『……無礼者。いいわ。あなたたちを凍り付かせた後にでも、整え直すもの』
「アハハ怒ったの? ――それね、命取りよ」
拳が空を切る音で耳まで千切れてしまうんじゃないか、などと、他人事のように思う。
はじまりと比べ随分と足は重くなっていた。
――雪と風。
(「ああ。寒ぃ、な」)
夜昂の脳裏、過るのは遠い記憶。我知らず首に指が這う。つめたい、けれども薄皮の奥はどうしたって、まだぬくい。……あのときと同じことは、二度としないと心に決めているからこそ。
「こんなとこで凍死なんて出来ねえんだよ」
拾った命だ。
捨てきれなかった。
「永遠だのなんだの、おたくに安売りしてやるのもまっぴら御免ってな」
生き生きと牙剥き笑い、足掻く、証明としての拳を振り抜く。
破れかぶれだったろうか? けれども一打は機を捉え、あばらにめり込みオウガの肉体をぬいぐるみ同様に浮かせた。
『ハ、 』
「キミの矜持はそんなものかい」
斬り繋ぐ剣閃で追いかけて、飛び退った先、折れかかる足がざりりと雪を踏みしめる様をエドガーはただ見下ろす。
紫味を帯び血まで滲む、露出した青年の手指は傍目に人のそれと相違ない。故、レイピアという精密さが要求される得物をなんの加護もなくここまで振るい続ける事実は不可思議であった。
もっとも。
身のうち深くに根付いたものを、加護――祝福――或いはのろいと称するならば。
「立つといい」
一向に輝きをうしなわぬ眼差しにも、理を跳ね除ける力を宿すのだろう。
……キッと睨めつけ返す無彩の目。しかし一歩が踏み出せぬのは、何故か。鉄の檻に閉じ込められたかのように王の時が止まる束の間に、エンジはもうひと仕事。
「もこもこ、もこもこ。ちゃーんと守るサ、褒めてくれヨ」
なんてったって"君"の言いつけだ! 到着時には既に氷漬けだった毛玉たちが入った氷柱に炎を伝わせる。目論見通り、それはじわりと氷を溶かして。
「……いやすげえけどさ、焦げねえのか?」
「ヤダ、ダメージ加工の服じゃないんだから」
問題ないと。賢い君のやさしさすばらしさを説くエンジを余所に炎が深くへと浸透する前、夜昂とイーサンとが担ぎ出す。先では毛玉仲間らが待っていて、歓声とともにパスを受け止める。
無辜のものが守られる。
あるべき国のかたちだ。
「その芯に響くことはないのだろうけれど――ね」
"運命"。 この剣だけは違わず届く。
心まで氷では、女王なんて務まらないさ。
「立ち去りたまえ」
――――。たった一度にかけた刺突に。
戴かれた冠は割れ。厚く降り積もった雪の上、冷えた血とともに無音のまま落ちた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
キトリ・フローエ
チロ(f09776)と一緒に
もこもこさん達になんてことをするの!
オウガの国へなんて行かないし、おともだちなんてもってのほか!
もこもこさん達を解放して、大人しく骸の海へ還りなさい!
特にもこもこさんが狙われないよう
女王の気を引くように飛び回りながら狙いを定め
炎の熱を籠めた全力の夢幻の花吹雪で攻撃を
動きを封じ、チロとソルベが攻撃する隙を作るわ
氷柱は第六感で見切って回避
羽虫みたいに叩き落されてたまるものですか!
凍らせてしまったらおしゃべりも出来ないし
一緒におやつを食べることも出来ないわ
…あたしは、そんなのは嫌
チロと一緒にたくさん笑いたいもの
あなたの『あの子』は、こんなおともだちを貰って喜んでくれるの?
チロル・キャンディベル
キトリ(f02354)と
けだまさんをとじこめるなんて、チロゆるさないのよ!
けだまさんも、この世界も
ぜったいに助けてみせるの!
けだまさんがおうえんしてくれたら、チロがんばれるのよ
この世界を雪だけにしないために
ぱぱっと終わらせちゃうのよ
チロ、今日はやる気まんまんなんだから!
めいっぱいの力をこめて
エレメンタル・ファンタジアの大きなほのおで世界をとかすの!
キトリがつくってくれたタイミングを、のがさないのよ
あの子ってだれかしら?
ふつうのおともだちなら、チロはなりたいの
でもね
こんなふうに、ほかの子のこと考えないのはダメなのよ
ないたり、わらったり、あそんだり
いっしょすることが、なかよしなの
ね、キトリ!
『わたくし、は』
オウガを引き起こすかの如く、吹雪が勢いを増す。
縮み上がり、けれど毛玉たちが逃げぬのは、立ち向かうものが絶えぬため。
熊のするどい爪が雪原に立てられれば、ふかふかな尾でまがいものの白をぴしゃんと払い背にて、チロルは前を見据えている。凍えていそうなミニ玉を掬い上げてはやってきたから、ソルベの背はいまや毛玉でいっぱいだ。
こんなにもよいこたちなのに!
「けだまさんをとじこめるなんて、チロゆるさないのよ! けだまさんも、この世界もぜったいに助けてみせるの!」
「ひどいことして……オウガの国へなんて行かないし、おともだちなんてもってのほか!」
頷いたキトリが繋ぐ。同時、光とともに解き放たれたFleur belle――花蔦の精霊杖――は氷雪よりもひときわ輝く白色に散り、嵐へと溶け入って。
ちいさな二人組だ。
加えて、花の影響もある。はじめその姿を捉えるのが遅れたか、女王の手指が明後日を滑るうちに駆け行く狼少女が念じるのは、このつめたい景色を、溶かしてしまえる強い力。
(「あの子ってだれかしら? ふつうのおともだちなら、チロはなりたいの」)
叶うのなら、誰とだって笑いあえるお話がすき――でも、それでも。
雪の花なら、わくわくするもの。故郷で見た、キトリと遊んだ、たのしいからこそ「とけないで」って思えるものじゃなくちゃ、だめ。
「こんなふうに、ほかの子のこと考えないのはダメなのよ」
呼応するようにパッと次々瞬いて、集まりゆく魔法の炎の引く尾も揺れる。誘われたか、女王の視線はしずかに動いた。それを遮る風に横切るのはキトリだ。
「こっちよ。もっともあなたじゃ、羽虫一匹捉えられないと思うけれど!」
うつくしく舞う花吹雪が、術者の声が響いた途端にぼうと燃え立つ赤色を帯びる。そうして一層色濃くオウガへ降りかかり、薙ぎ払うために一手を使わせた。
十分。 でも、もっと――、
晒した翅が凍り付くほどに羽ばたきの数は減り、がくんと下がる軽いからだ。 だとして。
ひとりでだって、幾度の冬を越え来たはずではないか。
それにどうだ。いま傍らには大切な。 だいじょうぶ。
――飛べる、
「ね。あなたは……っほんと に、それで、 いいの」
風に支えられ舞い上がる。妖精は己が呼び出した燃ゆ花嵐へ包まれる。弱いだけのいのちであれば焼き尽くすであろう、この花弁は武器である以前に、キトリにとっての朋だ。翅に纏わる氷のみ溶かし、その言葉を、覚悟を届けるための道をつくる。
「あなたの、"あの子"は。こんなおともだちを貰って、喜んでくれるの?」
凍らせてしまったらおしゃべりも、一緒におやつを食べることも出来ない。
……あたしは、そんなのは嫌。 強い、キトリの羽ばたきが花吹雪を前へと運んだ。振るわれた氷柱を端から溶かす熱、間近に瞬いたこおりの瞳に映るはちいさな妖精、
「おともだちと――チロと一緒に、たくさん笑いたいもの」
「そうよ。ないたり、わらったり、あそんだり……いっしょすることが、なかよしなの」
それに、とびきり大きな火球。
ね、キトリ! 背に降る声に、呼ばわれた娘はふっと微笑み一段高く飛び立つ。硝子玉の中の己へ。泣きだしてしまいそうな、でも悲しげではなくて、――あたたかさを知れた。永遠より今に、生きていたい。
ゴッ、 と。
炎は一瞬ののち弾け、雪原を明々照らし出す。弾き上げられた雪や火の粉から自主的に毛玉を庇ったソルベの逞しさたるや、しがみつくもこもこなファンが増える一方!
『く、ぅ』
返せる言葉など、持っていたろうか?
よろめく女が声もなく後退るを、続けざまに手向ける炎と花とが追い立てる。過程でキトリの元へ駆け寄ったチロルは、その無事を確認してからへにゃり。すぐに、おそろいの表情でキリリ。
「キトリにもけがさせない。チロ、今日はやる気まんまんなんだから!」
「骸の海への還りみち、あたしたちが用意してあげる!」
湧き立つ炎もまた絶えず。
陽光は吹雪く夜空のむこう。しかし雪解けは、はじまっていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
セロ・アルコイリス
オズ(f01136)と!
ちょいと名残惜しいけど胸元に入れた毛玉サンは、ほら仲間と一緒に離れててくださいよ
さァて、どうしましょうか、オズ
なかなか厄介な敵サンですよ
おれも炎系の魔法習得してりゃ良かったな
凍らされねーように距離取って銃を中心に
えっマシュマロ?! えっ食べ?!
向けられる砲の口に驚きつつも、でもオズのやることなら信じられる
肯いて受けたなら、暖かくなる身体とダガー
なるほど、これなら
【曙光】の速度も上がって指先も避けられるでしょ
ありがとですよ、オズ!
礼を叫んで振り抜きましょう
女王サマ、ガキのためのオトモダチ探しなんですか
ならソイツ連れて来りゃいいだけでしょうが
普通にめいっぱい遊ぶのに
ねぇ?
オズ・ケストナー
セロ(f06061)と
ふふ、そうだね
わたしもまほうはつかえないけど
これならつかえるよ
ガジェットショータイム
ロケットランチャーと色とりどりのマシュマロ
白いのをえいっと打ち出せば
大きな壁になって吹雪を防ぐ
みんなこおっちゃう前にさがってっ
オレンジを手に取ればふわっとあたたかい
ためしに食べてみる
おいしい
なんだかあったかくなってきたっ
セロ、セロ。これっ
セロに向けて発射
まほうの熱がセロとナイフを包む
セロ、おねがいっ
UCが無力化されても
シュネーがいるからねっ
うんうんっ
いっしょにあそんだりおはなしするのがともだちだよ
こおりづけならおきものといっしょだ
いっしょにてをつないであそんだほうがたのしいにきまってるよっ
派手な炎柱を目印に駆け来たふたりは、キキーッとブレーキを踏んで。靴が雪に埋もれるぎしりとした感触が、これまでよりもずっと強い。寒さもそうだ。
「おれも炎系の魔法習得してりゃ良かったな……」
……。ヒトの模倣に過ぎぬけれどつい、スンと鼻を鳴らしたセロを労わるようにオズと胸元の毛玉が覗いてくる。それにぶんぶん両手を振って、胸を叩いてみせ。
「なんてことありません、ほら、盗みと同じでむずかしいほど滾るってモンですよ」
「ぬすみ……あ。わたしはどっちもできないけど、まねっこならできるよ」
と、オズがぐるんと回して真っ白地面に突き立てるHermes。
がごっ! ――音がひとつ、伸びて丸まる刃は砲身となって。音がふたつ、持ち手にトリガーが生える。がこがこ賑やかしく組み変わってガジェットは、もっこもこな毛に包まれたロケットランチャーとなったのだ。
「なる、ほど? ですよね、距離取って削ってくのが手だとおれも」
「うんっ。でね、こう!」
もふんっ!
ちいさく煙を立てて出てきた"弾丸"を手に、オズはすぐ詰め射出した。発射音も、着弾音まで同じくもふん。はじめ雪の塊にでも見えたそれは、随分と柔らかく、そしてふしぎなもののようである。
「みんなこおっちゃう前にさがってっ」
地につくや否や巨岩めいて膨れ上がるもふ物体! 吹雪の流れが乱される中、セロはこれ幸いと手元の骨董銃に神経を集中。弓と銃では勝手が違うが、気分を寄せるなら件の義賊だ。――女王の、指が向く。それはこちらの銃口を合わせる好機とも同義。
一瞬の判断ならば、いたみを恐れぬ人形が先をゆく。
「ま、伊達に仮装してねーですからね」
回避のためと踏まれるであろうステップを読み、叩き出した銃弾は煙を纏いてその腿を抉る。噴き出してすぐ凍り付く血が、また一段と強まる冷気を予見させた。
周囲の毛玉が逃げおおせる程の時は稼げた。オズを連れ狙撃場所を移そうとセロが振り返ったときだ。あろうことか、当のオズから銃口を突きつけられたのは。
「――へ?」
もきゅもきゅ口に吸い込まれてゆく、 オレンジマシュマロ。
戦いをセロに託してお茶会タイムだった――なんて、いくらアリスの世界でもありっこない。オズはオズで打開策を見つけ出していたのだ。こくんと呑めば肩に担いだランチャーを叩き「いくよ」の合図。
「あのねセロ、このマシュマロっ、食べるとあったかくてすごいからっ。それにおいしい」
「っと……、えっマシュマロ!? えっ食べ?!」
何を――いや、いやいや。オズのやることならばまず信に足る、頷いて受け止めるセロをぴかぴか橙の光が呑んで――……。
「!」
枷が落ちた風な、不思議な感覚だった。感じていた節々の軋みはまほうの熱に溶け、今日一番にからだが軽い。それに、牙も。
――お・ね・が・い・っ!
背を押すみたく向けられたサムズアップにキッチリ役立てると回すダガーの滑らかさ、セロの脚は、迫る吹雪も追いつけぬ速さで駆けだしていた。
「ありがとですよ、オズ!」
寝かせた刃で濃霧同然に立ち込める氷雪を切り開く。グロリアのまばゆい光が四方へ零れ出して、稲光のよう。詰め――目一杯に振り抜く、刹那の鮮烈も。
『ぁ、ぐっ……』
「女王サマ、ガキのためのオトモダチ探しなんですか。ならソイツ連れて来りゃいいだけでしょうが」
この通り、かけっこだって大の得意。普通にめいっぱい遊ぶのに。 ねぇ?
罅の刻まれた胸元を押さえるオウガ。ぶおんと過る氷柱は光の筋を裂くのみで、身を引いたセロの背をマシュマロ……ではなく、オズの手が支える。
あそんだり、おはなしするのがともだち。こおりづけならおきものといっしょだ。
「いっしょにてをつないであそんだほうがたのしいにきまってるよっ」
嘗ての自分が、したくても、できなかったこと。今やすっかりヒトらしい振る舞いを身につけた人形が、その口で、こころでだれの想いをも語っているのか。
いとしきものを氷の中へ閉じ込めた。さみしい雪の女王はきっと、おわりまで気付けない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
榎本・英
花世(f11024)
さて。この現状は?
私はまだ氷漬けにはなりたくないのだがね。
先程抱えていたもこもこを服の中に仕舞い込んでしまおう。
そうすればこの氷の舞台も多少は我慢出来ると云うものだ。
雪だるまと名乗っても違和感ないだろう。
引き続き、私は前衛で戦うとしよう。
丁度好い。
花世、少し手伝ってくれないかい?
今の私はもこもこと一緒の雪だるまだ。
そして彼らはこの空気に慣れている。
だから、このまま彼奴に突進してしまおうかと思ってね。
嗚呼。氷の柱を振り回されてはたまらない。援護を頼んだよ。
さて、もこもこ。少し我慢して呉れ。
私一人では凍死してしまうのでね。
境・花世
英(f22898)と
永遠に融けない恋は美しく
褪せず枯れない花は麗しい
だけどそれじゃあ物語は面白くないんだ
英もそう思、……んんん!?
しりあすな顔で隣を見遣ってみれば、
いつものきみの代わりに鎮座するもっこもこの雪だるま
あんまり丸くて思わず吹き出してしまうよ
だって英、そんな飄々とした顔して、
いやいやうん、さすがの作戦だ
援護は任せてとやわらかく笑えば、
氷る世界に甘い夢うつつの馨が満ちるだろう
まぼろしの春で女王の瞼を絡め取って
駆けてくきみの道を拓きながら、
懐に抱いた幾つもの毛糸玉たちに語りかける
ごらん、これは勇敢な雪だるまのお話だ
ふわもこのきみたちを力にしていくんだよ
ねえ――かっこいいね
永遠に融けない恋は美しく。
褪せず枯れない花は麗しい。
だけど。
「それじゃあ物語は面白くないんだ。英もそう思、……んんん!?」
何故なのか。 (寒すぎる所為も大いにあるが)白く雪化粧した豊かな睫毛は憂い伏せられ、しかし冒せぬ色付く口許という絵に文に映える横顔で花世がことばを紡ぐその隣、英がいなくなっているのは。
いや、厳密には、いる。
「ふむ。これならばこの氷の舞台も、多少は我慢出来ると云うものか」
見違えるほど全体的にもこもこしているだけで。
……。そろり、花世が伸ばしてつついた指にはもふんとした手応えが返ってきた。何故なのか。次は思考停止するまでもなくて、代わりにくっと吹き出してしまう。
英の服の中にところせまし詰め込まれた毛玉。はみ出しがち。 ……雪だるま?
「凍死が遠のく。これは良いものだ」
「英、そんな飄々とした顔して――あっははっ、もう……いやいやうん、さすがの作戦だ!」
堪え切れないといった様子の娘の頬がやや上気している。横目に、次は女王を見。あれだけ集めて、もしやあのオウガも毛玉だるまになりたいのか。推理癖が導き出した推論。
「真似をしてはどうだい。そして私は今後ハイカラさんと」
「そうだね、今はいいや」
からり。……乙女の審美眼は、厳しいのだ。
映え重視のようでいて、とはいえ花世のこの装束にも大切な意図がある。
まずなによりも動きやすい。仔細乞われるまでもなくひとつ、任せてとやわく笑えばふわりと袖を翻し、その右目の大輪よりひとひら花弁を舞い落とす。
だけではない。より遠くへ、深くへ、雪風に乗り漂いゆくのは夢想の如くに甘き花の馨。
玻璃の瞳を閉じさせぬためには、まず、"安全地帯など一瞬たりとてない"と知らしめてやらねばなるまい。……じっくりと。
『花ね。ええ、わたくしも、多く飾って愛でているのよ』
「それなら分かってくれるだろう、とびきりだってこと」
わかったところで、遅いことも。
――スクワッド・パレヱド。
駆け出した英が、沈んで跳ねて、雪と花とをない交ぜに地を蹴りつけ女王へと迫る。吹雪の中心へ、小細工も抜きに? 否、凍り付く身なら抱き込んだ毛玉らが幾分も楽にしてくれていた。
何故だか知覚が遅れた。すかさず飛び退かんと膝を曲げるオウガであったが、首から下が凍り付いたかのように動かない。伝達が遮断されてしまったかのような。有様は、皮肉なことに凍傷の症状にも似ていて。
『なに、を』
ごらん、これは勇敢な雪だるまのお話だ。
「ふわもこのきみたちを力にしていくんだよ。――見ていて、」
芳しい香。耳を擽る囁き。 成程、何処かの書店で目にした気もする。
「さて。直に解けるさ」
微かに笑み。
眼前、踏み込み、言い放ち。直後だ。気持ちもこもこな纏う闘気のあるがまま、
傍目にも文化系である英が、その身ひとつ……もとい愉快な仲間たちをも力として、オウガのからだを渾身のタックルで轢き飛ばすのは。
一拍ズレて振り抜かれた氷柱の軌道と筆が僅かに削り合ったとき、それ以上を進ませること許さず止めたのはユメウツツのまじないであり。ちらと赤、紅、目線が交わるのはほんの一瞬。
「さすがだ、英」
「そうかい。君がいなければ今頃何枚になっていたか」
雪上を転がり遠のくオウガへ、この機を活かせと次なる猟兵が向かうのが見える。
物語の行く末は委ねたとばかりすまし顔で眼鏡を押し上げる英はけれど、見つめ追い続けた花世にとって主人公のひとり。
「ねえ――かっこいいね」
そうっと、ひそひそ話のように。抱いてともに眺めた毛玉たちへの一声は、やっぱり湧き立つその他大勢に大波じみて広まってゆくこととなる。
ヒトの懐に入りたがる住民が増えた、とか。……それは確かなつづきのおはなし。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
コノハ・ライゼ
幽ちゃん(f04449)と
ほんっと寒いコト
ふさふさ尻尾をちょっと羨ましく見つつ
幽ちゃん、暖房のご用意はあって?
お寒い手は速攻封じたいよねぇ
動き読み『見切り』出来るだけ近くへ踏み込んで『先制攻撃』
影より【黒嵐】呼び起こし至近から『スナイパー』で敵へとぶつけるヨ
一度でダメなら『2回攻撃』も駆使し何度でも
幽ちゃんの攻撃も利用させてもらいつつ
派手に立ち回り『誘惑』し気を引こうか
隙みて『傷口をえぐる』よう「氷泪」の雷奔らせ『生命力吸収』もしないとネ
ええ、まったく同感だわ
隠れてるコ達に危害及びそうなら
『オーラ防御』展開し割り入って『かばう』わね
お人形サンは趣味じゃナイし
あいにく先約があんの、じゃあネ
絢辻・幽子
コノちゃん(f03130)と
あぁ、やあだもう。さむいわぁ。
尻尾と毛玉ちゃんで暖をとるのも……限界よねえ
視線には自慢の尻尾をぱたぱた得意気に
ふふ、そうだ、そうねえ……賢い狐は火が使えるのよ
いっちゃえーコノちゃん、攻撃は任せるわあ
私は『地形の利用』をしつつ
氷柱の陰とか『目立たない』所から狐火ぶつけて燃やして
赤い糸で繋いで縛っちゃうから、女王さまを
もふもふをいじめる悪い子は、糸で『傷口をえぐる』わよ
それに、生命力奪うなら奪い返してやらないとねぇ?
あーらら、お嬢さん残念ねぇフラれちゃったぁ
うーん、大切にしてくれるのは嬉しいけれど
幽ちゃんはお人形さんにする側ですから。
「あーら幽ちゃん、ごちそうから転がり込んできたわヨ」
「うふふコノちゃん、日頃の行いの良さゆえね」
――我々の、と。 いつものやり取り、嘯く獣の影ふたつ。
いいや無数。
コノハの足元より爆発的に膨れ上がった影はそのひとつずつが狐の姿をしていた。巻き起こせ、黒嵐。蹴りつける踵が"待て"の終わりを告げ、一斉に飛び出したそれらは旋風となり獲物へ向かう。
つられて幽子の尾がふっさり揺らされるのを、見遣るときのコノハはちょっとかなり羨ましげだ。"そうありたくて"ここにない種族特徴も、このときばかりは惜しくなる。
「はぁ、にしてもほんっと寒いコト」
……抱いていた毛玉らを避難のため手放してからは一層凍える心地で、己が肩を摩る手はこれで何往復か。主同様に震え、出遅れた影の一匹がヒュンと追いかけてゆく。
「ね。暖房のご用意はあって?」
「ふふ、そうだ、そうねえ……賢い狐は火が使えるのよ」
くすくす見送り、閃いた女狐はご自慢の尾っぽを右へ左へ、それから次に指を揺らして。ぼんっ! 影狐らのあとに翔け出したのは褪めた色した鬼火たち。あたたかい?
――それはもう、一度繋いだなら永遠に焦げ付いてしまうほど。
『ふ、……わたくしの、雪は溶けないわ』
影狐に食まれながらも身を起こしたオウガがすうと瞳を細めた。目蓋の裏へ再び春を遠ざけんとす魂胆であろうが、予想外にもはやく灼熱感は身を焼いて。
っ、と引き攣る息が届くほど近くコノハが笑っている。男が影を呼んだのか。影が男を呼んだのか――"流した"雷のあとがぱちりと小気味よく挨拶して、零れぬ薄氷、片側伏せるのも愛嬌とばかり。
「綺麗だからって飾れるほど、オレたち安くないモンで」
『くぅ――、散りなさい!』
最短を掻い潜ってきたのだろう。声を荒げる女王の足元から氷柱が突き出せば、蹴り折りながらたんたんとバックステップを踏む男も無傷ではない。入れ替わりで狐火が辿り着いた。意思持つかのようにゆうらり、ゆらり。
「もふもふをいじめる悪い子は、くびっておきましょう」
そうしてオウガの身に憑りつくと、直後、爆炎を上げる。
もうもうと立ち昇る紫の煙。温泉宿の景色みたい、などと、笑ったのはどちらからだったか。
すくなくとも女王そのひとではないはずだ。
氷柱は防御の役割も為していた。折られた分の衝撃はまさに直撃といっていい、焦げ付いた半身を庇いながらまなこは懸命に見開かれ影を探す。
足首に絡むひとつを凍らせる。いいやこれは管。耳元を撫でるひとつを凍らせる。いいやこれは炎。ごとごとと鈍い音で、おともだちにもならない氷像が増えてゆく。先の負傷も災いした。うちひとつに縺れて傾ぐ、眼前に映った、これは――。
「第一お人形サンは趣味じゃナイし、あいにく先約があんの」
――じゃあネ。
『!』
隠した牙たるアオ。
至近より刺し貫く閃光はどうと女のからだを押し込んで、雪上へと頽れさせた。
「あーらら、お嬢さん残念ねぇフラれちゃったぁ。でも、私の答えも同じなの」
降るのは声だけでない、気付けばそこに這い寄る幽子の炎は反撃のためと呼び起こされた吹雪を守りに割かせて。コノハの離脱を手伝うだけに飽き足らず、欲張っちゃっても――ほしがりの狐ですもの。いいでしょう?
「大切にしてくれるのは嬉しいけれど、幽ちゃんはお人形さんにする側ですから」
オウガの拒絶をくんと留めるはいつしか絡まる赫ゐ絲。
熱い色して酷くつめたい鋼のそれが、作品を作り上げるみたく淡々。欠け、細まった手首の片方を括り落とした。
「ちょっとアイスみたいデショ?」
「わかる。ミント系かしら……もっと甘いとしあわせだったのに」
じっさいのあじ? 言葉遊びに正答は野暮。芸の駄賃はその命。舌覗かせる妖狐たちには生か死かのやり取りさえも、慣れた食事の時間に過ぎない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
赫・絲
薺サン(f00735)と!
おともだち、って言う割には随分な歓迎の仕方だよねー
こーんな寒いところでずっと大事にされるなんて嫌に決まってるでしょー!
確かに溶けない氷はキレイだけど、私は薺さんとあったかいお茶飲んで甘いモノ食べてる方が楽しいもん
というわけなので。バイバイ、きれーな女王サマ
とにかく吹雪が寒いし氷柱は冷たいし痛いし
でも、雪で押し切ってくるならこっちは溶かしにかかるだけ
もこもこ毛玉ちゃん達を燃やさないように気をつけて、さっきまでの倍以上の焔の氷柱で周囲の吹雪と氷柱に対抗を
これでちょっとは寒くなくなったかなー
ほらほら薺サン、寒いのわかるけど出番だよーがんばって!
お手柄お手柄、ばっちりだよー!
勾坂・薺
赫さん(f00433)と
寒い所でずっと大事にかぁ、うーん。
寒いのは嫌だけど三食ちゃんとつけてくれるなら
……冗談冗談。
まぁ、わたしもちょっと遠慮しておきたいかな。
赫さんからの折角のお誘いもあることだし。
でも、あー寒、やる気出ないなぁ。
最初は赫さんの支援しながら
相手の動きを見てから動こうかな。
赫さんの魔法?魔術?派手だなぁ。
わたしもああいうの欲しかったかも。
ああ、そうそう、完全凍結とか困るし、えっと。
何かいいのあったっけ。
……あった。しゃぼん玉当たりますよーに。
当たったら【Daydream Order】、わたしを見続けるように。
目を閉じるなんてもっての外だよね。失礼だし。
こんな感じでどう?お手柄?
急激に低下した気温は薺の歩みを止めさせるに十分であった。
というよりも、その副産物が。 どべちと湿った音立てて、顔面に飛び込んできたこぶし大の雪玉が。
「ぅ」
「なっ、な――薺サぁン!」
傾きかけるからだを慌てて引き起こす絲へと大丈夫、急所は防いだと言外に雪塗れの片手が掲げられる。じとりと伏しがちの眼差しは出処へ向けられた。……大丈夫、なのだろうか。なんだか大概とろんとしているもので量りかねるが、一体全体。
「おともだち、って言う割には随分な歓迎の仕方だよねー。こーんな寒いところでずっと大事にされるなんて嫌に決まってるでしょー!」
「三食ちゃんとつけてくれるならまだ、ね」
……冗談である。先とは別の意味で揺れた絲の瞳を視界の端に、ごそごそと服の袖口を漁る薺。探り当てたメンダコスクイーズをこれでもか握りしめ――ではなかった、シャボンの容器を取り出す。
確かに、溶けない氷は綺麗だ。
「でも私は、薺さんとあったかいお茶飲んで甘いモノ食べてる方が楽しいもん」
「まぁ、わたしもちょっと遠慮しておきたいかな。赫さんからの折角のお誘いもあることだし」
並び立つ絲の足元に擦り寄る焔の子狼が、ひとつ高らかに咆えた。吐き、零れる炎に包まれるようにしてゆらと、かたちは杖へと溶け変わる。「よろしくね」バトンめいて回し、契約者は駆けるのだ。
というわけなので。 ――バイバイ、きれーな女王サマ。
色なき瞳は瞑られたまま、か。荒ぶ吹雪にも腕の感覚を保たせてくれる炎熱の使いに改めて感謝を抱きつつ、命ずることといえば極めてシンプル。
「溶かしちゃおうよ、みんな」
ほたり。 短杖より零れた火の粉が歩みに沿って雪原へ縞をつくり。
ぴこん! 跳ねて道を開ける毛玉らを、はーいこっち寄っててねーと後ろの方で回収してゆく薺の声が聴こえる。かき集めて暖を取る強かさは、知っての通り心配など無用だろう。
ゆえに前だけ見て、ピンと巡らせる鋼糸で雪玉真っ二つ踏み越えて、どデカい火柱を打ち立てる。――縞模様を火口とするならマグマ。わんさか噴きだしたそれらは、踊り揺らめき氷雪を食んだ。
荒くれ。それでいて綺麗だから。オーロラのカーテンのようだ。
(「派手だなぁ。わたしもああいうの欲しかったかも」)
吹きつける風が弱まったのを感じる。熱に溶かされ雪はやがて水へと変わるのだと。しみこんでしまう前に、積もった雪を払いながらふうと薺はシャボンを飛ばす。
吹く端からぴきぴき凍てつき透明は白へ。四角く花開く結晶同士が瞬きの間に繋がってゆく、それならこれはスノードームみたい。……大本が記憶媒体である女の頭には、様々なものが過っては消えてゆく。
浮かんで弾ける泡と同じ。どうだっていいことが、ほんのすこし多いだけ。
「さっきから失礼なんだよ。ひとの顔に雪玉ぶつけたり。その、目を閉じるなんてのももってのほかだよね」
――そんな中でも許せぬことはあった。指導熱心かといわれればそんなことはまるでない、むしろ任せきりの常日頃であるが。
接客の基本を説くかの口振り。炎をすりぬけた先、氷の重みでシャボン玉はゆっくり女王へ寄り付く。殺意、音、衝撃、何れかがあれば身を躱せたであろうオウガは、唐突にぱちんっと目元で弾けたものに瞬いて。
かちあった硝子玉へ命ずる。仮想魔術中級、第357頁――Daydream Order。
「わたしを見続けるように」
『っ、ふ。お望み通り』
氷漬けにして見つめ続けてあげる。指をかざしたオブリビオンの間近に、ちらと赤が更に"一本"増えた。思わず視線を巡らせ辿る、――途端、針山に落とされたかの鋭い痛みがその脳を侵す。
「ふふ――いただき!」
何が起きたのか、咄嗟には分からなかったに違いない。
頭を押さえる手を追いかけるように振るわれた灰桜の杖は、防護の数本を呑み込みながら真っ直ぐに、燃ゆる氷柱を叩き込んで。
あんな感じでどう?
お手柄お手柄、ばっちりだよー!
きまぐれなねこかなにかかも。一撃離脱を果たし、さっさと舞い戻った絲の艶髪とリボンがゆらり。駆けつける足音に手を振ればさてさて。お疲れ様会にふさわしい、あたたかな場所はどこだろう?
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ラフィ・シザー
アナンシ(f17900)と
「雪の女王」か…そう言う童話があったよな。
冷たい冷たい女王様。お前はゲルダの涙を知らないだろうから誰かを思う温かさ…いや熱さなんて知らないんだろうな。
…一人じゃないって結構強いんだぜ?【挑発】
UC【悪い子のクリスマス】
ちょっと早いけど来てもらおうか?
クランプス!悪い子へのプレンゼントは鞭と鉤爪の攻撃だ!【恐怖を与える】
あと、ちょっとその体。風雪除けにさせてもらうな!
アナンシも隠れて大丈夫だぜ!
【ダンス】をする様に戦う♪軽やかに鋏を振り回し投げつけ切り刻む。
女王様も一曲いかが?
アナンシ・メイスフィールド
ラフィ君f19461と
友かね?私にはもう頼もしい友がいるゆえ間に合っているのでねえ
友人にはなれないけれど…遊んであげる事は出来るのだよ
さあ、全力でやり合おうではないね
私もラフィ君も簡単にはやられはしないのだよ?
戦闘時と同時『早業』で敵へと間合いをつめんと地を蹴ろう
雪に体力を奪われかけるも間合いを詰められたならば手にした剣を『吹き飛ば』さんとするかの様に振いながら至近距離から【蜘蛛の毒炎】を
凍える寒さなど、炎で掻き消してしまおうではないね
クランプス君を見ればラフィ君の友人は頼りになるねえとラフィ君と共に背後に隠れようか
閉幕までまだまだ時間はあるからねえ
ラフィ君とだけでなく私とも踊ってくれ給えよ?
「トモダチ、かぁ。言っとくけどさ、なれないぞ」
雪の女王――童話にもそんな登場人物がいたろうか。目の前のつめたいつめたい女王様は、こころを溶かす涙のひと雫すら、凍り付かせて此処まできたのだろう。誰の声をも聞かないで。
誰かを思う温かさ、いや、熱さなど知らぬ瞳。どこか似た色の輝きを湛えながらも、ラフィは真っ向からはねのける。このオウガ自体友とは呼べない。いまから"バラす相手"とあらば。
『……はじめはみな、そう言うの。けれどそれも、一刻だけ』
「おや。嫌がる子を攫う行いは感心しかねるよ」
――裁かれたとて文句はいえまい。
途切れた片腕を抱き。吹雪を乞い瞳を伏せんとすオウガは、けれど横合いから突き出されたつるぎの一振りに阻まれる。ぴりりと裂ける頬から零れる赤、それすら踏み消し、女が後ろへ跳んだ分だけ大股に間合いを詰める長躯。アナンシだ。
槍が謁見の間への道を閉じる風に、合間に張り出された幾多の氷柱をポッキリ折るのは冷え冷えとした大鋏。鎌の投擲に似て宙で横旋回をしたそれは、吸い込まれるように兎少年の手へと戻ってゆく。 肩でとんとん、リズミカルに遊ばせて。首をこてり。
「……一人じゃないって結構強いんだぜ?」
「その通り。私にももう頼もしい友がいるゆえ、間に合っているのでねえ」
但し。遊んであげる事は出来るのだよ。
とっ、と、浮いた帽子を紳士の挨拶よろしく被り直す。鋏の通ったあとに難なく着地した愉快犯も、また笑んだ。
みしり。大気の罅割れる音。 耳をぴくと動かしラフィの手がベルトポーチからメルヒェンな仕上げのランプを取り出した。
「ちょっと早いけど来てもらおうか? クランプス!」
そうして翳せば跳ねる蓋、ぽわんと夢色煙を吐いて。もくもくが収まったふたりの前には、醜悪な虫でも動くトランプ兵でもない、獣めいた異形が佇んでいた。
突き出た角に捩じれた巻き爪。棘の生えた鞭は尾のよう。この怪物こそクランプス。サンタクロースとは正反対の形相をして、悪い子にとっておきのクリスマス≪悪夢≫を!
「――やっちゃいな!」
「これはこれは。頼りになる友人ばかりだ」
Groooooa!! およそ化物じみた咆哮を上げ突進してゆく巨体。脇目も振らずに女王へ襲い掛かる背を見送り、それでは怪物劇場の一役買った、蜘蛛男はひそやかに剣を握り直し。
『あなたのおともだちは、野蛮だわ』
「そうか? 殺して奪うことに、綺麗も野蛮もありっこないだろ」
おなじだよ。自らの"サガ"を認めながらも飄々と返すラフィ。刻む爪痕と引き換えに吹きつける氷雪の大半を引き受けたクランプスのからだが崩れはじめれば、隙間にちかりと光が瞬いた。
貫くひと突き。
左胸の僅かに下――深々、"投げ入れられた"のは雪明かり弾く銀の杭。
『ぁ、かッ ァ、』
「すまないねえ。好んで痛めつけたいわけではないとも、ただ――閉幕まで、まだまだ時間があるだろう?」
ラフィ君たちとだけでなく、私とも踊ってくれ給えよ?
目晦ましとも働いてくれた肉壁を押しやり。縺れる女の手を取り抱き寄せたアナンシは、力任せに刃を引き抜くとともに微笑み滲ませる口許そのまま、毒炎を吹きつける。
零れる血と似て炎は紅蓮。溶けるか、燃えるか。何方にしても喰らう分には変わりない……くぐもった叫びを上げ、ぎゅっときつく目を瞑るオウガが猛吹雪を呼び起こす!
ぱき、ぺき。さりとて逃さぬアナンシのガントレットへ氷の輪が巻きついてゆくけれど、すべては先の言葉通り。 こちらはひとりではない。
「――で、あるからね」
「女王様。 も一曲いかが?」
場違いに穏やかなそれに、いやに陽気な誘い文句が重ねられた。
背の高い男の後方より軽やかに跳ね来た少年の鋏が、チョッキンとその大口を開きオウガのひとみ一杯、映し出されて――――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
スピレイル・ナトゥア
あれが……"冬"!
凄い存在感です
強敵な予感がします
もこもこランドのみなさんも猟兵さんたちも私が傷つけさせません!
みんなの負傷と状態異常を自分の身体にに転移させて、みんなのことを癒します
その代わりに得た生命力吸収能力で、自分の身体を回復させます
雪の女王さんが与えるダメージや状態異常と、私の生命力吸収能力のどちらが上か勝負です!
この勝負に負けたとき、私は倒されてしまうかもしれません
ですが、こんな自分勝手な理由でみんなを殺そうとする雪の女王を私は許せません!
精霊印の突撃銃でみんなを【援護射撃】しつつ、私以外の誰も死傷者が出ないような完勝を目指します
あなたのような冬は誰も楽しみにしてません
去りなさい!
●
――夜空を裂いた悲鳴は、童話と同じにうつくしいものではないようだ。
赤黒い手で目元を押さえる女王を囲い、守るべく激しい雪風が渦を巻く。
距離を保ち援護射撃を続けていたスピレイルのもとまでも粗い雹が飛ばされて、そこらへ穴を開けはじめた。
(「あれが……"冬"!」)
高まり続ける強敵の気にじり、と、引く一歩はだが、弾みをつけて踏み出すため。
武骨な装備をがしゃりと鳴らし、いつものように飛び込むだけ。
「みなさん! お怪我はないですか……っ」
駆け付けてすぐ、娘は膝をつき雪に埋もれた毛玉たちを掻き出す。多くは先達の猟兵が盾となってくれたらしい、依然としてナイスもこもこを保ったまま端にまとまっている。
それにほっと息を吐いて――瞳の青にくゆる怒りは、見据える先の女王ひとりへ向けるもの。
「もこもこランドのみなさんも猟兵さんたちも、これ以上、私が傷つけさせません!」
落ちこぼれと呼ばれても、譲れぬ一線があった。
ユーベルコード。 ドレインワース。
吹雪が奪う体力、気力、抗う力。……齎す痛みそのもの。救いたい存在を蝕むなにもかもを、己の身に引き受ける呪いのような奇跡。
「つ、ぅ――く」
ひたり。舞い込む凍傷。 裂傷。 砕ける骨に、割れる肌。
"吸収"が追い付かない。これだけ寒いのに、熱い。滲む脂汗を自覚できるなんて。
すぐに凍り付き瞼をくっつけかねないそれを腕が上がるうちに拭う。膝が笑いはじめて、突き立てる銃で支えた。力を。修復を優先させるべき箇所はどこか、はじめから決めている。
「わたし、は、……絶対に、」
自分勝手な理由で、みんなを殺そうとするあなたを。許しませんから。
ついにはずり落ち寄りかかってしまうと、崩れるのは一瞬だ。
それでも。こうべは、垂れない。
立てた右膝に乗せる精霊銃。ゆるされた数秒に、スピレイルが指を伸ばすのは頭でも、心の臓でも、仲間でもない。いつだって同じ。一射に託す、引き金。
……"間に合った"力もあるだろう。安定を得て射撃は、今日のどの局面よりも真っ直ぐに炎弾を運んだ。 そう、思えた。だから晴れ晴れ、
――あなたのような冬は、誰も楽しみにしてません。
「去りなさい」
遮られずに、突き抜けて。
たすけてくれて、ありがとう。満身創痍の娘を、素早く集まった毛玉たちが後方へ運びはじめる。
燃えるオウガの追撃はない。
前に立つ影が、それを許しはしなかった。
成功
🔵🔵🔴
穂結・神楽耶
【炊事課】
氷漬けになる趣味もされる趣味もありませんのでお断りします。
というかそもそも、自分の欲求を押し付けるのは「お友達」ではありませんよ?
軽く挑発したところで【焦羽挵蝶】を展開。
ニルさんと匡さんに近づく寒さを遠ざけて。
愉快な仲間を閉じ込めている氷柱から溶かしていきましょう。
匡さんの足止めもあるので、まず逃がせるかと。
吹雪の只中だろうと炎は消えずに舞い。
掴もうとしてもすり抜ける。
きっと煩わしいのではないでしょうか?
鬼さんこちら、手の鳴る方へ…と。
冬に相反する熱量の存在感に惹きつけられたが最期です。
影の魔弾も、双獄の竜も、決して過つことはない。
背中を任せられる友達とは、こういうものですよ。
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
【炊事課】
友達を氷漬けとは、私とは徹底的に意見が合わんとみえる
行こうぜ、二人とも
とっとと解放してやらねえとな
この寒さだ、とっととケリつけないと本当に冬眠しちまう
蛇竜を槍に変じる――こら、お前も冬眠には早いぞ
皆で頑張ってんだ、お前も頑張れ、相棒
穂結に気を取られている間に接近、匡の足止めに乗じて槍で串刺しにしてくれる
穂結の炎と匡の足止め、『友達』にこれだけ協力してもらって、外すわけがないってもんだ
痛いか?あァ、そいつは結構
悪いがまだ終わらんよ
起動術式、【ドラゴニック・エンド】
さァ蛇竜、終わらん冬など喰らってしまえ
雪は融けるからこそ美しいものよ
焔と氷の竜たるこの身、鎖せるものならやってみろ
鳴宮・匡
【炊事課】
悪いけどあんたの我侭に付き合ってやる義理はないんだ
それに、(ニルと穂結を見て)
友達なら間に合ってるしな
ああ、行こうぜ
こっちが凍えるほど強くなるんなら
冷え切る前に倒すのが定石か
最初はアサルトライフルで動きを牽制
周囲にいる愉快な仲間たちが逃げられるように相手の足を止めるよ
相手の動きからは視線を切らず、挙動の一つも見落とさない
穂結のほうへ気を取られた一瞬が勝負だ
影を纏わせた拳銃で“最も当てやすい箇所”へ狙撃を
初撃、影の魔弾は当たりさえすればどこでも構わない
本命は次――力も命も食い破る【虚の黒星】
折角奪ったところ悪いが、返してもらうぜ
――さて、これならニルの攻撃も十全に通るだろ
あとは頼んだぜ
「そうやって氷のうちにすべて追いやるならば、さぞ楽なんだろうよ」
果ては友をも氷漬け、と。――私とは徹底的に意見が合わんとみえる。
寄りつく蛇竜の鱗を撫で、ニルズヘッグは出番を告げた。ぱち、と紅い瞳が開く。かしゃ、かしゃん。左右では同様に得物が構えられる音。
氷雪と氷焔。怪物と幻想種。遠くて近い力を持つふたつを別つはなんであろうか。『共に在ることを望んだとしても、ひとはいずれ死ぬわ。ずっと早く、この手を零れる』……激しさを増す風雪は、悲痛な想いをがなり立てるような。
それを言葉と捉えたとして、承知したうえで選び取ってきた男だ。
拒まれて。置き去られて――それでも嫌うことなど、到底できない。 すべて愛すべき、ひとの世のため。
「行こうぜ、二人とも。とっとと解放してやらねえとな」
「ああ、行こう」
友達なら間に合ってるしな。
「――というかそもそも、自分の欲求を押し付けるのは"お友達"ではありませんよ?」
音もなく仕事をはじめる銃弾とともに、羽化する蝶らが火の粉を撒いて刀身より飛び立った。
匡に神楽耶。
何れに瞳を奪われたとして致命的。白い大気は切り裂かれ、その向こうに俯く女の輪郭が見える。夥しく流れていた血は凍り付き、炎熱に曝され溶けだした地へまばらに春が顔を出すかの色模様。
雪は融けるからこそ美しいもの。
「相棒、皆で頑張ってんだ。お前も頑張れ」
相棒……蛇竜はいまや長槍に姿移ろわせニルズヘッグの手に収まる。ずしりと馴染む重みが応え、燃え立つ蝶がひら、ひら、穂先に舞い遊ぶのに笑みを深めて探る機は、どうやらそう遠くないらしい。
「お迎えにあがりました」
「つくづく謎の生き物って感じだが。ま、無事ならいいさ」
焦羽、はばたく神楽耶の炎は群れることで雪風を薄めながら女王の左右頭上をすりぬけて、その奥の氷柱から囚われの毛玉らを救いだす。道中で燃え尽き雪に掻き消えたとて、顧みることはしない。だれかの性質がそのまま形を為したかの紅蓮。
うすら明るい翅が鏡面の如き結晶に映り込む様が、本来この国に相応しかろう絵本めいた幻想を呼び戻すよう。
いつから凍っていたのか知れないが、のたりと。それでもしっかりと動き、いきる意思をみせる彼らをサポートするのは匡。
BR-646Cの連射で撃ち込む先はオウガの足元のみならず。
余波で戦場に弾き上げられる氷片や雹にもあのやわい身は傷付けさせぬと、あらゆるものを払い道筋を示す。細かに砕かれた雪の結晶は、光の粉みたいに――それをうつくしいと愛でる感性は、なくとも。差し伸べる手に偽りこそなく。
『どうして、わたくしの……邪魔をするのかしら』
「見る目がなかった。簡単なお話ではありませんか?」
一本になった腕を垂らしたオウガは、毛玉たちを追おうとはしない。
自らのもとから一目散に逃げだすのを、砕けつつあるしずかな瞳で、見下ろすだけ。――諦観。苛立ちなどよりずっと救いのない、絶望すらヤドリガミは斬って捨てた。
ひとは途絶えぬさいわいを希う。 知っている。知っているから。
「伸ばす手も持たぬモノに戻るなど、死んでも御免ですから」
"やっと棄ててきた"永遠などに、靡くはずがない。
ふわり。 唯一寄り添う炎蝶に、カミの声に、顔を上げたオウガの指が持ち上がる。触れたか、触れないか。より早くその身を焼いたのは、くらがりを翔けた影だった。
『ァ、ぐ』
「おしゃべりは終わりだ」
匡。黒の銃弾が肩肉を吹き飛ばす。当たればどこだってよかった。なにせ"契機"に過ぎぬのだから。
――折角奪ったところ悪いが、返してもらうぜ。
宣告。
アナイアレイト。
虚空から滑り出たかの如く、前触れなく現れた"本命"はオウガの身へと避けようもなく喰らいつく――力も、命も、食い破る虚無の魔弾。
荒れ狂う波を越えた先、沖が凪ぐような。
その数瞬、吹雪はぴたりと止んだ。
「ニル」
「――はは。なぁ、女王よ。"友達"というものは、尊いものだと私も思うさ」
これだけ協力してもらって、外すわけがない。
決して過つことはない。
跳ねる赤の髪紐を真似る風に。ざあああ、と、傍らで翅を休めていた燃ゆ蝶たちが一斉に舞い踊った。赤。赤赤赤赤、そして、金。見開かれたオウガのまなこの焦点は定まらない。踏み損じた雪が鳴る。悲鳴じみたそれを、殺して突き立てる槍の一突き。
どうと貫き鎖すは此方。
「悪いがまだ終わらんよ。 さァ蛇竜、終わらん冬など喰らってしまえ」
くちびるから空気が零れるを間近に、ニルズヘッグが使いを喚ばう。起動術式。ドラゴニック・エンド。
後背高くより降り来た黒き竜は、ひとつ咆え、その鋭い爪牙を振り下ろして。
――――。
果実を潰す音で次の赤は弾け散った。
美麗だった装束は襤褸みたく揺れる。
玉の雫が地を濡らす前に、漸く戻り来た風雪が巻き上げて。半身をごっそりと削りとられた女王は、なにかの――妄執。そんな言葉で表そうか。それだけで呼吸し、軽いからだを風に任せる。
「我々は、いつも諦めが悪いですね」
呟きは誰へと向けたものか。
竜らが前へと駆けるように、焔は絶えること知らず。神楽耶が腕を、自身をふるい新たな蝶を向かわせる傍らでは、匡が変わらずアサルトライフルを構える。銃床で砕き氷柱から助けてやった毛玉が足元に纏わりつく。一瞥。だけ、
「それでいいんじゃないか」
だからこの言葉も、ただのひとりごとだ。
永遠に愛し続けたいだとか――喜ばせたいだとか――力になりたいだとか――身勝手に、守りたいだとか。人ではないくせ、やめたくせ。ひとたらしめる心の機敏。 凍り付いても失くせぬらしい剥き出しの心の臓へ、照準は合わせて。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
雨野・妙
雲珠/f22865
物語の国で一番強いのは物書きだぜ。
お前さんなら童話の弱点を知ってるだろ?
思い当たる節を片っ端から教えな、雲珠。
…ふむ。まるで冬の凌ぎ方だな、そりゃ。
確かに寒いもんは仕方ねえや。
じゃ、こういう手で行くか。
※方針
①状態解除+支援
②地形破壊+攻撃
②
殴る。
殴るとだな、周辺の氷だのなんだのも余波で砕ける。
砕けた破片を蹴り上げて、殴って、飛び道具にする。
悪魔の鏡の話じゃないがね。
寒さの弊害は雲珠がまとめてカバーするさ。
どうせ吹雪くなら桜のひとつも欲しいとこだろ。
故郷を想うにゃあ、ちと殺風景に過ぎる。
冬ってのは静かにそこにあるだけでね。
何も生みゃしないが、奪いもしねえのよ。
雨野・雲珠
◆先生と/f22864
またそういう無茶を…!
…童話の『雪の女王』は、多分人の身じゃ倒せませんよ…
彼女は理不尽で美しい、冬そのものですから。
子どもたちは愛で誘惑と呪いを解いて、逃げ切って終幕。
生き延びられたら勝ちなんです。
童話において季節やお天気をどうにかするのは、
大抵の場合人ではなく…
※方針①
彼女の瞬きと挙動に全神経を集中し、指先が向くたび息を吐きます。
怯えるな、力むな、祈れ…
【三之宮】
自分及び周囲の状態異常解除に専念。何度でも。
下がりすぎず、先生やお味方に桜が届く範囲に。
吹雪に桜、添えて御覧にいれます。
…冬を恐ろしいと思ったことないな…
春が好きな神様が、ずっと里を守っていてくださったから。
ヒュウと軽やかに鳴るは、風でなく口笛。
大荒れの通りの真中を普段の散歩道のように、我が物顔で妙が歩くので雲珠もそれを追う他なかった。
「そんで、どうよ」
「は はいっ?」
前方から飛んでくる氷塊、霰、諸々から枝角を庇い屈むのに忙しいというのに"はじまった"。
なにが、と、眉をひそめ見上げる雲珠の角度からは三日月に細まった鮮やかな緑がみえる。
――そういえば、冬を恐ろしいと思った試しはなかった。
春が好きな神様が、ずっと里を守っていてくださったから。
やおら姿勢を正す少年に「弱点だよ、弱点」妙の手がひらひら。
「物語の国で一番強いのは物書きだぜ。お前さんなら童話の弱点を知ってるだろ?」
「何かと思えば。またそういう無茶を……! ちょっとは周りみてくださ」
前! の、ささやかな手助け程度も口にさせてくれないのだ。背中に目でもついているのか、飛来物をぬるりと躱す様に二の句も告げず、なら告げられるとすれば、――たしか。
童話の中の雪の女王は、理不尽でうつくしい冬そのもの。
子どもたちは愛で誘惑と呪いを解いて、逃げ切って終幕。
「生き延びられたら勝ちなんです。当たり前の話ですが……なにか参考に?」
「……ふむ。まるで冬の凌ぎ方だな、そりゃ」
寒いものは仕方ない。
仕方ないなら、うまく付き合うくらいがいい。 つと、妙の靴先がオウガへ向く。
「プランCだ」
そうして氷雪で覆われた大地を殴りつけた。
きらきらに七彩を色映りさせ、削り合いながら舞い上がる結晶。目にしてみたかった"不思議の世界"はこっちの方で、ほんとうに――雲珠は女王の瞳が自分たちを捉えたことを見とめ、細く息を吐く。……C。初耳なのだが。
(「怯えるな、力むな、祈れ……」)
先の欠けた女の指。 白い息は、すこし震える。
真っ直ぐに指し示される。 ……怖くないはずがない。
それでもこの身は桜の精。「さくらをみせて」と乞われたなら、一等綺麗な薄紅を咲かせご覧に入れる――その役目だけは譲れない。
ユーベルコード。三之宮は、背負った箱宮から霧雨めいて溢れ出した春の奔流。
「ほぉらな、やりゃ出来んだよ」
故郷を想うにはちいとばかり殺風景が過ぎたところ。どうせ吹雪くなら、桜のひとつ。
抱かれるように花吹雪の中、妙は氷のかけらを蹴りつけた。ちょうど幾多が一文字に並んだ刹那だ、絵面は手品のナイフか散弾、女王の御前までみんななかよく突き抜ける。
『ッ』
「おーっとこわいこわい。けどもまぁ、見つめてくるだけじゃその辺の猫ちゃんと変わんねえわ」
(「なに挑発してるんですか!」)
骨肉を削ぎ落されたとて、雲珠少年の杞憂をよそにオウガの吹雪は妙のもとまでは届かない。そこで季節が切り替わっているかのように、桜に阻まれて。
よそ――ではないか。そう仕向けたのだ。いつしか足元に薄紅の絨毯。氷雪を打ち消す春の息吹に、毛玉たちも興味津々転がっている。
「……ええ、休まれていて結構ですよ。すこしばかり早い、花見の席とでも」
此度の依頼も、我々が解決しましょう。
視線の先にはオブリビオンがいて、妙がいて。追われるものと追うもの、繰り返し蹴り出される氷塊が徐々に二者間の間を詰めてゆき。
『寄るな。わたくしに……わたくしの冬に、』
「別段寄る気もなかったんだがね。如何せんトロいもんだから」
とんと踏み込む最後の間合い。
開く左は硝子の瞳を視界から消し、握り込む右に桜ひとひら。
「届いちまった。――なんかのついでだ」
とっときな。言い捨て、
"天罰"。 偶然めいて振るわれた必然の拳撃は、雪の女王のからだをしとど穿ち砕いた。
冬ってのは静かにそこにあるだけでね。
何も生みゃしないが、奪いもしねえのよ。
――諸共叩き込まれしカミの教え、はたしてマガイモノに受け取れたものか。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アルバ・アルフライラ
ジジ(f00995)と
ふふん、折角の御誘いだが御免被る
寒いのは苦手故
毛玉共と戯れて居た方が幾倍ましよ
冷気は冷気で制する
召喚するは【女王の臣僕】
貴様に、我が女王との謁見の名誉をくれてやる
光栄に思うが良い
ほれほれ目を開けよ、不敬であるぞ?
この身を蝕む魔なる力は
オーラの護り、そして破魔の力で効果の減衰を試みる
氷で動きは出来ずとも
詠唱のみでも叶えば幾らでも戦えよう
故に、私は良い――問題はジジだ
彼奴め、直ぐに無茶をする故
私の為ならばその身を氷漬けにする事すら厭わぬ
睨めつけては舌打ち一つ
…此度はこれで勘弁してやる
――女王に楯突く叛徒を、喰らい尽くせ
やれ、彼のもこもこが恋しいな
事が片付けば存分に戯れてやろう
ジャハル・アルムリフ
師父(f00123)と
…友が欲しいのか
物言わぬ人形が欲しいのか
どちらなれど師をくれてやる心算はないが
氷漬けにするというなら
師父、あまり動かぬよう
それから――辛抱してくれ
仕掛ける【叛虐】の発動は遅い
敢えて女王の視界に入るよう前へ
瞳を閉じられ徐々に凍結されようと
無理矢理に動き負傷を誘発
背へと感じる視線は灼けるようで
手厳しい仕置きが脳裏を過ぎれども
…済まぬな
こんな手しか知らぬ不出来な弟子故
ここは退けぬ
完全に動けなくなれば
意識が途切れる前に『返す』
師父の氷で包まれた身体
さて喰われれば如何なることか
やれ、随分その毛玉が気に入ったようだな
新しい弟子にでもする気か?
そこな毛玉も、くれぐれも調子に乗るでないぞ
春も間近にどっと雪の降る日があるだろう。
ここにきて呼び起こされた吹雪は、そうした去り際の――去り際に相応しい、猛烈なものだった。
「おい。ジジ……」
「これは都合が良いかもしれんな。師父よ、毛玉とともに下がっていろ」
広がる上衣の裾は、仕舞いこんで尚も勇壮な竜翼のよう。
アルバへ、毛玉らへ降りかかる雪風をまとめて庇い出たジャハルはそのままの足取りで前へと歩み出た。
……間際、アルバに抱えられる愉快な仲間に向けた一瞥についてはギラギラと鋭くはあったが。
吐きかけた言葉の先を呑み、ふっとアルバは息をつく。おかげでここまで――女王の喉元に辿り着くまで――力を温存できたものの、ジャハルが倍を負ったと同義。
「……まったく。彼奴め、ああして直ぐに無茶をする」
育て方でも間違うたか。抱いたもこもこにもふと指を埋めての呟きは、ペットかなにかにひとりごとを聞かせる様相だ。
住民らの声は中々ちいさく「キミがだいすきなんだよ」などと説かれたこと、宝石が気付く由もない。三度ほど撫でつけたのちより後方へとぬくもりを手放す。
事が片付けば存分に戯れてやろう。うむ……、と、頷いてからは遠のく竜の背へ、手を添える風にも五指をひらいた。
「貴様に、我が女王との謁見の名誉をくれてやる――光栄に思うが良い」
ヴィルジナル。
雪の白に青く、青く光を落として無数の蝶が出づ。それらは褒美を授けるように術者の手首を悠々と一周し、無節操に羽ばたいた。振る舞いは驕傲。
齎すは、災厄。 空行き違う雪の結晶をも塗りつぶす、鱗粉が頭の高い尽くを冱てつかせる。
『……わたく の、ほかに。いらない』
あるべきではない――せせらぎめいた虫の羽音に、長く伏せられていた無彩の双眸はうっすら開かれて。
自らのつくりあげた"世界"が侵されることを厭うたか、吹雪の多くを蝶へと向けるオウガ。
その手を掴んだのは、蝶の青にいざなわれ白の只中を切り抜けてきたジャハルだった。
「……友が欲しいのか。物言わぬ人形が欲しいのか。その様子では、なにひとつ手に入らずとみた」
言うまでもなく、師をくれてやる心算もない。
ギリリと爪を食い込ませる手が瞬時に凍り付く。否、そもそもが凍っていた。氷雪に曝され続けた皮膚は火傷に近く爛れている。
地獄からの死者、そんな表現が似合いで。己もまた彼の喚んだ霊のようだと思えば、俄かに口角が歪んだ。
『そう――なら、あなたが ひとつめ』
「出来るものなら」
脚は既に地へ縫い付けられ。氷が肩を覆い這うほど、ジャハルの視界に青は増える。叱責するみたく頬を掠める。
背に感じる眼差しに至っては灼けるかの。
(「……済まぬな、こんな手しか知らぬ不出来な弟子故」)
ここは退けぬ。 ――――刻が来るまで。
ちいさく響いたのは舌打ちだ。
きっとあちらへは風雪の音以外届かぬのだろう。その事実すら苛立たしくも。
「……此度はこれで勘弁してやる」
纏わる雪を塵同然に払い捨て、アルバは命ずる。
――女王に楯突く叛徒を、喰らい尽くせ。
仕上げを告げるつめたいくちづけが触れんとしたとき、重なりかけたジャハルの影からついに"それ"は躍り出た。
がち、 と、
オウガの身を捉える黒き竜の顎門。生と死、その瀬戸際までに高められたいのちしらずの"返礼"。
『 ァ』
掴み上げた男の腕ごと空間が消し飛べば。引き倒されるように、王位を追われた女が頽れる音だけが残った。
さんざ青き蝶らの鱗粉を浴びていたオウガは脆く、いつしか自分の側が氷像へと近づいていること――知覚出来なかったのは、目前にした達成への盲目ゆえか。
「ふ、」
ジャハルが吐いた音は言葉を成さず。
縫い合わされた瞳では、事の成り行きも知れはしない。
ただ。
耳と凍えぬ心とは、己の名を呼ぶ双星にのみ傾けられている。いまも。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
冴島・類
そんなことの為に、と僕らは思う
そんなこと、ではないんだろうね
彼女からすれば
思い交わさぬ氷柱にして、飾る
友にするとはよく言った
それは、彼らが大切に大切に用意したもの
横取りにして良いものじゃない
連れ去らせたくない、から
させない
できる範囲で他猟兵と協力
愉快な仲間君達は、可能な限り下げさせ
新たな氷柱にはさせぬよう
彼らや仲間に向かう吹雪は…
瓜江を手繰り
なぎ払いの衝撃ぶつけ相殺狙い
氷柱は、愉快な仲間君が凍らされてないもののみ同じくなぎ払い
いるものは、避ける
また、自身への攻撃は
見切り、放たれる瞬間
相棒や氷柱足場に上へと跳び
彼女へ向け、真っ直ぐに赤い糸を放つ
雪遊びするのとは、わけが違う
君に、ここの熱はあげない
リオネル・エコーズ
大切な人の為に
その気持ちはわかるけど
ああいう事をした後に何が残って何が生まれるのかも、わかるから
無しよりの無し過ぎるテディベア誘拐
もこもこランド凍結現象
どっちも全力で反対させてもらうよ、女王様!
どれくらい冬に耐えられるかわかんないけど
無いよりマシって事でオーラ防御
もこもこ達にもお願いしてくっついてもらおう
冬毛の鳥ってこんなかな
なんて思いつつ、暖を取れるだけ取りながらUC使用
目を閉じ続けられないよう
流星は一気に全部じゃなく一つ二つと順に女王様へ叩き込む
テディベアは誰かの家族か友達かな
ちゃんと帰してあげたいからあの子だけは傷付けないように
ごめんね女王様
貴女という母親を、俺は否定するよ
ロシュ・トトロッカ
…やっぱりもっとあったかいの着てくるんだった!
おいで、と呼んでライオンの背中に飛び乗って
くっついてれば寒いのもちょっぴりマシ
こおっちゃいそうなもこもこたちは
入る子は服の中にぎゅぎゅっとおさまっててもらおう
これなら守りやすいしあったかいし、一石二鳥! …かも?
氷づけになっちゃった子も、あとで助けてあげるからね
冬はいつかくるものだけど
でも、無理やり早めちゃうのはいい迷惑!
ましてや連れさろうだなんて、悪いけどゆるさないよ!
滑っちゃいそうな床はさけてこういう時はやっぱり上から
ライオンごと体重を乗せて強襲
あったかぬくぬくの準備ができてから出直しておいで!
この世界に必要なのは、きっとやさしい冬だ
リリヤ・ベル
ともだちは、むりやりにうばうものではないのです。
動けなくして、凍らせて、ずっとわらっているだけなんて。
ただそこにあるだけなんて。
きっと、もっとさみしいのに。
鐘を鳴らして、降らせるのは。
熱を持ったたくさんの花片。
冷気になんかまけません。
めかくしをして、とかしてしまいましょう。
――これもまかやしです。けれど。
ゆきのはてには、はるがくるのです。
あなたがどうして、ひとをつれてゆきたいのか。
だれがまっているのか。
……知っても、わたくしは、なにもできません。
あなたのおともだちには、なれません。
うばったものを、かえしていただきに来たのです。
雪に鎖すのは、まだはやいのですよ。
あたたかいおうちにかえりましょう。
大変だったね。
抱きとめたテディベアを、リオネルの手がゆっくり撫ぜた。
毛艶は残念になってしまったけれど、覆っていた氷はもうない。欠けず綿も出ずいまもちゃんとくまのかたちをして、家族や友達にそうするように懐っこく笑いかけてくる。
……大切な人の為に、か。
(「その気持ちはわかるけど。ああいう事をした後に何が残って何が生まれるのかも、わかるから」)
そっと愉快な仲間たちのもとへ下ろせば、作り手だろう数体の毛玉が受け止めた。ぺこりと礼……なんて器用なことはできないが、踵を返すリオネルの翼にもふんっ。
飛び込んでくるのは共に戦う覚悟だとか、守りたいという意志だとか……きっとそんな、雪にも埋もれぬあついもの。
後方のやり取りに安堵したのは類も同じ。
大切に大切にこの世へ生みだされたぬいぐるみ。愛し、愛され、モノにだって心は宿る。……その作り手も作品も、決して連れ去らせたくなどないから。
「往こう」
「うん。今度は絶対、無しよりの無しだ!」
向かい風へと飛び込む。
"そんなことのために"。 育みを、巡りを易々と断ち切る。
ヒトを模り揺れているものは、最早オウガですらなく雪のつくりだす幻なのかもしれない。
燃え、断たれ、穿たれ砕け蹲り。割れた瞳はなにを見ているのだろう。
それでも已まぬ偽りの冬を、終わらせる術は唯ひとつ。
「――つかまって!」
「わっ」
殴りつけるように強まる吹雪、浮き上がったリリヤのからだが引き上げられる。後方ではなく上方へ?
はためくフードを押さえ、見遣ればそこには先ほどの人魚少年。そしてここは黄金獣の背のうえ、で?
「集まった方があったかいし、こわくないよ。もこもこいる?」
「もこもこ……す、すこしなら。冷気になんて、まけませんが」
やっぱりまだまだ寒かったからと詰めた服の間からころころころころ。凍えそうなところ、ロシュの体温を分けてもらえた毛玉らは、次は自分たちが救う番とリリヤにぴっとり。
(「……あたたかい」)
ともだちとは。
動けなくして、凍らせて、ずっとわらっているだけ――ただそこにあるだけ。そんなさみしいものでいいなんて、思いたくはなくて。
眼下に近付いた冬の中心。我知らず、カンパニュラを握る手に力がこもる。
世が世ならばクリスマス。
更にはホワイト――なんてロマンチックも、こんな調子じゃ台無しだ。
「もういっかい、塗り替えちゃってもいいよね?」
いーよー! 毛玉のウェーブが跳ねたなら、星降る夜へ。
雪煙がどんなに厚く星の海を隠しても、ここに輝く極光。
「女王様。貴女も見ていて」
リオネルが振ったCelestial blue。はじめ零れでた銀の粒は、だれかが零した涙のように――そしてまばゆく増える色数、ついには七彩、滑りだしてひとつずつがオウガへとぶつかってゆく。
目を瞑る間などないとはこのこと!
弾幕めいた軌道と間隔で流し込まれる星々に、ときに色濃く照らされ、隠され、地を駆けるのは類とその半身・瓜江。後方の愉快な仲間たちへは勿論自分も、誰も攻撃を通させぬだろう。となるとあとは、あの女の――足元か。
「いけるね」
くんと指が糸を引けば。
応えた瓜江はダンと雪原に靴跡刻み、およそひとには真似できぬ跳躍を披露する。鴉がそうである通りに、飛び立った先、オウガの頭上で黒衣を広げて。
「いまだ」
ぐ――息を詰め力強く腕を振り下ろす類の指示に、従って風を薙いだ。
パパパパパパ!!
野菜を細かにするかの軽快な響きで、刃の通ったのち一拍遅れ、ぐらりと氷柱らは思い思いの側へ倒れ込む。
雪上に触れた途端、より細かへと砕ける幾つかは"ハズレ"。
転がされただけの方は"アタリ"。 救うべきを屠らぬように――絡繰にそのまま伝わる極めて難しい糸捌きは、周囲の援護、そして類を類たらしめる信念こそが為せる業。
それでは空から飛来して、アタリを咥えてしまうライオンは新手?
「まっかせて! 遠ざけちゃうよ、もう心配いらないからね」
いえいえ、こちらはビーストマスターとその朋。それにちいさな娘がひとり。
ぶぃんと首振り放れば、半欠け氷柱は奥で待つ毛玉らのもとへ。あとでもいいのかもしれない。でも、こんなにも近く手が届くんだ。助けたい! こわい思いから、すこしでも早く。
「んしょ……はい。おとしてはだめなのですよ」
「すごいや、重いの持てるんだ」
……裏表なきロシュによるこども扱いの気配にちょっとぷくーっとするものの。
同乗していた毛玉へと氷柱を託せば、おせわになりましたとぺこり。リリヤはえいや! 流星の最中へ飛び降りた。
世界へひかえめな真鍮の鐘の音もが加わったなら、ちょっと――かなり、ますます聖夜のひとときめいて。
「いってらっしゃい!」
「りりやくろぉすから、あなたへ花のおとどけを」
姿はまるで黒フードサンタ? 下から風が吹きつけるから長く感じる滞空時間、振り撒くのは鐘が呼んだ熱のはなびら。
これもまやかし。いまはまだ、まやかしに過ぎぬけれど。雪の果て、春は来るから。
「うばったものを、かえしていただきに来たのです」
代わりに――と、淀むことなく娘は言った。
どうしてひとをつれてゆきたいのか。だれがまっているのか。さみしいのはだれ。だれ、だれであっても、"おともだち"にはなれないと。
キャッチについては愉快な仲間たちにおまかせあれ。ぽよよと一度バウンドして、着地は百点満点のそれ。遅れてふわり降った花々が、雪と氷、それから女王とをやわらかく溶かして。
直ぐに戻り来たロシュのライオンががうと咆えたて吹雪を食めば、ここまで殆ど反応を示さなかった女王の目が向くのが見えた。
すてきなおともだちね。
わたくしの国へおいでなさい。
――きっと、言葉が紡げたならそんな。こわれてしまっているのだ、もう。
「なにもあげない。連れさろうだなんて、悪いけどゆるさないよ」
「ごめんね。女王様」
貴女という母親を、俺は否定するよ。
胸に抱く面影の素晴らしさを知っているから、こそ。リオネルの声は、しずかに落ちただろう――これでさいごの星が流れる。次にみんなで見たいのは、吹雪の向こう、本物の。
一息にカーテンを引くみたいに、星の尾が雪煙を、氷柱を切り裂いた。
あたりに散りばめられる氷のかけら。
踏み跳んで枯野色は、高く。 速く。
「雪遊びするのとは、わけが違う。君に――ここの熱はあげない」
「あったかぬくぬくの準備ができてから出直しておいで!」
頂点にて類が打ち下ろす業滅糸。交錯して、直滑降で突き抜けるこんじきの獣。
ふたつが目指す先、雪の女王と呼ばれたオウガは、ただゆっくりと。末期の吐息でなにかを呼んだ。
――この世界に必要なのは、きっとやさしい冬だ。
ひっくり返したスノードームの終わりのひとひらみたい。
はじめにあちこちの雪や氷がなくなって、いま、リリヤのてのひらに落ちてきたものが溶けて消えた。
「…………」
ほうと長く息を零して、張り詰めていたきもちを解きほぐす。……がんばったって、褒めて認めてくれるだろうか。おおきな手がすこしだけ恋しい。ほんのすこし。ほんのほんのほんの……――、
と、自然見上げることとなった夜空にひらりと白いものがまた無数。
「おはな。……じゃ、なさそうなのです」
「――これは。本物の、冬の訪れ?」
「わ。ホントだ、触っても痛くないヤツ!」
「さわってもいたくないやつ!」
気温が引き下げられたから? なんにしてもまぁ気の利いた奇縁。癖になってしまったのだろうか、すさっと自分と瓜江の陰に入り込んでくる毛玉によしよしと類が笑いかける横、リオネルとロシュは掴み取ろうと手を伸ばす。
触れればひんやりつめたいのは同じ。
風邪引いちゃいそう? 雪遊びしなきゃ! ねむくなってきた……。
あたたかなおうちへかえりたい。
大丈夫!
この国は――みんなで守ったもこもこランドは、そんなキミのためにあるんだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
第3章 日常
『ワーク・ワーク・ニードルワーク』
|
POW : 気合でやればどうにかなる、とりあえず針を手にしよう。
SPD : こういう物は機械を使えば早くできるものだ、手早く縫う。
WIZ : こういう事は知識が物を言う、情報を仕入れてから作り始めよう。
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
ぬいぬい、ぬい。ぬいぬいぬい。
ごめんね、まだまだ支度の途中だったんだけれど――。
ようこそボクらの国へ!!
パチパチッと目覚めの音がして。遠くの方まで次々に、綿花みたいな街灯へぼんやり色がともる。
あちこちから転がり出てきた毛玉は、来訪者たちに……恩人たちに感謝してもしきれないといった様子。声については相変わらず、ほっぺにくっつくほど耳を寄せて、やっと聞き取れるくらいだが。
虫食い被害はいままさに縫い合わせ中! 忙しく舞い飛ぶちくちく針の先っぽと、穴には落っこちないように。どうかお気をつけあれ。
道なりに歩んだなら、両サイドに立ち並ぶ家々もまた毛糸製。
大人だってちょっと屈めば入れそう。小窓から中を覗いたそこには愉快な仲間たちが住んでいて、せっせと縫い物に勤しんでいる。
作品だろうか。くつろいでいる色とりどりのフェルトぐるみたちが顔を上げるとはしゃぎだし、扉を開けて中へと手招いた。
「そうだ。このくらいしかお礼ができないんだけどね」
「キミもどうかな。ボクたち、自慢だけどとってもあたたかいよ」
しゅるるっと解けながら毛玉が差し出してくるのは糸、綿、布に針。机に乗り切らないほどたくさん! 年代物のロッキングチェアは引かれてキィキィ、着席を促す。
望むまでもなく首に手に"出来たて"たちが飛びついてくるだろうけれど。
乳白色の液体はミルク? 湯気を立てるマグを受け取り、ゆっくりしていくのもいいかもしれない――あたたかく揺れる暖炉の火は燃え移らないようで。不思議なほどじんわり熱が沁みるはず。
「ぬいぬいははじめて? それともせんぱい?」
「ふふふ。なんでも聞いてね! なんでも聞いて!」
ちらほらと雪が降ってくる。
キミが凍えてしまわぬようにと、もこもこランドは冬支度の真っ最中。
イーサン・ライネリス
あらあらぁ、かわいいわねえ。ふふふ、たっぷり楽しませて貰いましょ!
この火は不思議ね……なんで燃えないのかしら……。
ホットミルクを頂けて? アンジーの分もよろしくね。
そんで何作ろうかしら。アタシ大抵の物は縫えてよ。
うーん……そうねえ。
ちょっと、いえ、ガッツリ本気を出しましょうか!
毛糸たっくさん使わせて貰うわよ。かわりにとびっきりの力作をプレゼントするから許してね。
1メートルくらいのクリスマスツリーを作るの。編みぐるみでね!
ちゃーんと飾り付けから植木鉢まで付けるわ。お星さまもね!
うなれ~アタシの才能~!!
鳳仙寺・夜昂
編み物とかほとんどやったことねえけど、勝手に動くのか……へえ……。
(頭上から降りてきたひよこを見る)
……うーん、出来んのかな、これ。
このひよこっぽい感じの、編みぐるみ的な。
貰ったホットミルクを飲みながら、ちくちく動く編針を見てる。
あったけー……ミルクもそうだし、暖炉も毛玉たちも。
そういえば、このひよこの仲間を見たことがない。
ひよこっぽいからひよこって呼んでるけど、多分ニワトリの雛じゃない。
何なんだろうなあ、お前。(ひよこを指先でつつく)
完成したら、編針たちに礼言って、ひよこと並べて見たり。
間違いない。かわいい。
※絡み・アドリブ歓迎です!
※ひよこの方は自分が何なのか分かってる雰囲気
エンジ・カラカ
あったかい?あみもの?
賢い君、賢い君、知ってる?知ってる?
ちくちく縫い進める愉快な仲間たちが賢い君って分かった。
アァ……賢い君の糸で何か縫ってほしいなァ……。
そうだそうだ、もこもこマフラー。
できる?できる?
もこもこな愉快な仲間たちの邪魔をしながら
……邪魔じゃないサ。
コレは遊んでいるのサ。
もこもこしてて手触りもイイからついつい触りたくなるなる。
ちょーっと突いて遊ぶ。
ウン。邪魔じゃない。
君の糸は真っ赤で綺麗だろう。そうだろう。
賢いからもこもこも扱いやすいだろうなァ。
出来た?出来た?
うんうん、すごいすごい。
あったかーい。
追いかけられてたのが嘘みたいな仕事っぷり。
もこもこアリガトアリガト。
またあそぼ
スピレイル・ナトゥア
もこもこランドを無事に救うことができて良かったです
もこもこランドの愉快な仲間たち全員を助けることができなかったことは悲しいですが、いまは被害が復旧できる程度で済んだことを喜びましょう
これから、たくさんのアリスさんたちを迎えることになるんでしょうし、もこもこランドの愉快な仲間たちさんもあんまり無茶はしちゃダメですよ
寒い日が続いていますし、私は毛玉さんから貰った毛糸でセーターやニット帽やマフラーを編むとしましょう
こう見えて、裁縫はできるのですよ。着ている衣装も自作ですし
だけど、毛玉さん
私たちがいま消費しているこの毛糸ってまた生えてくるんですよね?
毛玉さんの命とか削れてたりしません?
大丈夫ですか?
「あらあらぁ、かわいいわねえ。毛並みの調子はどう? そう、バッチリって?」
ぴょいーんと大歓迎ジャンプした毛玉をがっしと抱き留めたのがイーサン。さながら感動の再会めいてくるくる回るその横を、するーっと屈んで通る夜昂にエンジ。
パチリと火の粉が跳ねる。
香ばしい白樺の香りが漂う室内ではすこし先に尋ねていたのか、スピレイルが糸と針を手に会釈をする。裁縫の手つきは慣れたもので、出来上がりたてのマフラーやニット帽が卓上でもこもこと躍っていた。
「無事、救うことができて良かったですね」
「まぁ――って完成品まで動くのかよ!? 軽くホラーじゃん……」
「アァ……にぎやか、あったかい、あみもの。珍しいねェ、賢い君」
知ってる? 知ってる? 手元へと問いながらエンジが椅子を引けば、一歩じりっと引いた夜昂もじわりそれに続く。指を伸ばして摘まみ上げる毛糸山がうにょんっ。エサと見たか飛びつくひよこ! はっしと両手でつかまえ引き戻してと、早くも大忙し。
「編め、縫えんのかね……これ」
「あーら、アタシ大抵の物は縫えてよ。大事なのはパッション、それにイメージね」
先の毛玉を小脇に抱え輪に入ったイーサンは頬に手を添え卓上を物色し、脳内の構想に適した素材を選んでいるらしい。お揃いのミニマグを手にしたアンジェラが鼻先に白い輪っかをつくりつつ、ミルクの味を満喫していて。
楽しいですよ、と微笑むスピレイルは次は大物、セーターとのバトル。
あんたは? という風に夜昂が目配せした先ではエンジが、自前の……賢い君の赤糸をしゅるりと広げていた。糸使いとあらばこちらの手際もいいのだろうか。となると自分が一番初心者ということになる――がしがしと一度頭を掻き、愉快な仲間たちへ夜昂は向き合って。
「このひよこっぽい感じの、編みぐるみ的な。作れそうか?」
問うたなら、もちろん! 赤や橙の毛糸がわんさか躍り出た。
ちくちく縫い進めるちいさく利口な彼らは、エンジの"賢い君"判定に合格。
働きものの棒針が行ったり来たり、縮んでは大きくなる毛糸玉。不思議な合体の度、ぽわわんと伸縮して上がる煙もがどこかあたたか。それにちょっとばかり手を突っ込んでしまうのも、仕方ないこと?
「縫えねえどころか邪魔かよ」
「……邪魔じゃないサ。コレは遊んでいるのサ」
だって、もこもこしてて手触りもイイんだもの。突っついてころころ転がすエンジは悪びれぬ様子。とはいえ隣の席でマグに口をつけたまま喋る夜昂も、完全に「せんせいよろしくおねがいします」モードに突入していた。
背もたれに目一杯体重をかけてから、足を離すと割と楽しい。ときに頭上に戻り、この揺れを誰より要求してくるのが連れる赤い鳥なわけなので、つくづく甘いのかもしれないが。
「こーら、お前も降りておとなしくしとけ。モデルさんだろ?」
やんわり摘まみ上げ卓上へ。ぴよっと返る声こそひよこながら……、まぁ、如何せんニワトリの雛には見えない。同種の仲間だって見たことがない。
「そういやあんた鳥に詳しいんだって? こいつに心当たりとか」
「トリ? トリはトリだ、みィんなカワイイ」
――――。
――。
ぴ! と翼を開いて抗議した風な赤色ひよこは、己の存在になんらかのプライドがあるのやも?
毛糸を逆に指に絡められ、なにやら綱引きしているエンジは今日も平常運転。針こそ自ら持たないが、たまに蠢く赤糸は男の意思か"君"の意思か――、モノの完成にすこしは貢献していたようで。
「出来た? 出来た?」
真っ赤で綺麗な君の糸。
その寄り集まったマフラーを首に巻いて、にぃんまり笑う狼男。炎の揺らぎに時折きらりと光るのは鱗片に宝石、すべてがすべて君特製!
「うんうん、すごいすごい。あったかーい。追いかけられてたのが嘘みたいな仕事っぷり」
「たしかに。ま、得意なこと極めてりゃそれでいいのかもな」
経文唱えるよりぐーで殴る方が得意な自分もいるわけで。素直にクオリティに感心していた袖の端を、左右から同時に引かれる気配。
……?
夜昂が視線を移した先では、ひよこが。
「やっぱそうなるか……」
生身と毛糸、二羽のひよこがそれぞれ嘴で遊んでいた。
すすすと両手で寄せ集め、並べてみると間違いない。かわいい。手間が二倍にだとか、文句のひとついえない。……礼を言えば、編針たちはぎゅるんぎゅる回転して「いいってことよ」感を醸し出してくるのだった。
「あの……それは一体、なにを作られているんです?」
「よぉく聞いてくれたわね!」
はじめ同じ机の上で作業していたはずだが。
いまや床板もとい床糸の上。イーサンが編み出している壮大な作品の背が伸びるにつれ、抜群の集中力を発揮していたスピレイルの意識も持っていかれるというもの。
「ツリーよ」
うなれアタシの才能!! どでん!! と音でもしそうな毛糸の山!
その中央に聳えるのは、まさしく大樹――男の腰の高さくらいはありそうな、編みぐるみ製・クリスマスツリーであった。
ただいま植木鉢の製作真っ最中。倒れてしまわぬように、愉快な仲間たちが四方をもこもこと固め雪だまりみたくなっている。
曰く、ちょっと……否、ガッツリ本気を出した末の産物。
「ツリー」
「そ。冬のお祭りっていえばキホンでしょ? アリスちゃんたちがどこの世界から来るかは知らないけど、楽しい方がいいじゃない」
せっかくなんだし――そうウインクするイーサンに毛玉たちも大いに同調しているのか、さわさわとちいさな何かを縫っては差し出している。……靴下。ステッキ。仄かに光るボール?
ちんまり受け取るアンジェラが相棒の頭からツリーへと駆け上り引っ掛けたなら、それは立派な飾り付けになるのだった。
「素敵ですね。これからたくさんのアリスさんを迎えることになるんでしょうし、きっと喜んでくださいます」
戦いで傷付いてしまったもこもこランドが華やぐのは、スピレイルの願いでもある。
普段の服も自作しているだけあって、手際よく編み上がったうちのいくつかはこの国への置き土産とするのもいいのかもしれない。自分ならばどんなデザインのものを身につけたいか。ならではの視点で、一段ずつ、一段ずつ、思いを込めて。
……はじめ気掛かりだった愉快な仲間たちの毛糸事情に関しては、どうやら心配ないらしい。
ぽよんっと合体を繰り返しまた大きくなる彼らは、痛みなど感じる素振りもなくぬいぬいに勤しんでいる。ほっと安心してからは、作業スピードもより上がったというもの。
「ちいさいのに器用ねぇ。そうだ、なにか飾りたいものとかなーい?」
「ん……そうですね。狼……いえ、大鷲なんてどうでしょう」
クリスマスという行事に詳しい身の上でもない、咄嗟に過ったのは馴染みの深い精霊獣。イーサンはそれを揶揄するでもなくくすりと笑めば、いかしてるじゃない、と綿を跳ねさせた。
「糸は大丈夫とのことでなによりでしたが、愉快な仲間たちさんも、あんまり無茶はしちゃダメですよ」
先に助けた個体だったりして? スピレイルの手で編み上がったちいさな帽子を被せてもらった毛玉が、照れたように仲間たちの後ろへ隠れる傍ら。
――てっぺんには星。
窓辺、完成したもこもこツリーはとびきりの力作で。
「よいしょっと……暖炉このくらい近くでも平気? 不思議ね、あたたかいのに」
「なんっだこれ」
「キラキラ。君も仲間に入りたい? イチゴ、リンゴ、ハート……君ならなァんでもなれるなれる」
呆ける人間を余所に瞳光らせ狼男は糸遊び。
糸に針。意を汲んだ賢きものたちがすーぐにぬいぬいを始めるのを、やはり楽しげに双眸細め見つめるのだ。
もこもこアリガト、またあそぼ。
呼び掛けには、言葉以上に分かりやすい。いくつものジャンプが返って。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ラフィ・シザー
アナンシ(f17900)と
アナンシ。実はここを守りきったらさ作りたいものがあったんだよ。
俺はそれを作るけれどアナンシはどうする?
よう、もこもこさん達。俺さマフラーを作りたいんだけどさ。
でも、縫い物は初めてだから。もこもこさん達に手伝ってもらいたんだ。
真っ黒な黒兎特製の手作りマフラーが完成予定だぜ!
本当は『家族』全員につくりたいけどさすがに無理だから。
一本だけ。
案外…難しいな。いつもは鋏で切る専門だからな編み針は難しな。
よし!完成!予定以上にくたくただけど…喜んでくれると嬉しいな。
え、この帽子俺にくれるの?
じゃあ、アナンシにはこのマフラーだ。
クリスマスプレゼントだぜ
アナンシ・メイスフィールド
ラフィ君f19461と
ん?編み物かね?
ラフィ君は何をつくるのかなと興味深げに手元を見つめながらも
私も簡単な物を作ってみようと思うのだよ
編み物自体初めてゆえもこもこ君達に聞きながら何かを作ってみようと思うのだけれども…
…、…何故毛糸という物は絡まるのだろうねえ…?
ラフィ君此処はどうすればよいのかね…?と眉を下げつつラフィ君やもこもこ君達に助けを求めよう
私の身から出た糸ならば幾らでも操れるのだけれども…本当に難しいねえ…?
何とか出来たならば少し考え込んだ後ラフィ君の頭に乗せんと手を伸ばしてみよう
丁度耳が出る穴が出来たからね。君に合うと思い作ってみたのだよ
良ければ使ってくれると嬉しいのだよ、うんうん
背もたれにコートをかけて、シルクハットもぽふんと置けばくつろぎ空間に溶け込んで。
「はは! なんか似合うな、隠居風っていうか?」
「まだまだ現役のつもりなのだがねぇ」
キィキィとおしゃべりな椅子に腰かけ、談笑に興じるラフィとアナンシも編み物は初体験。
「さてと、じゃあ始めるか。もこもこさんたち、よろしく♪」
ここを守りきったら作りたいものがあったのだ、とはラフィ。
山積み毛糸のうち黒一本をにょーんと伸ばしてなにやら思案顔となった少年が、はたしてなにを作るものかとアナンシの興味も向く。
(「ふむ……」)
私も簡単なものを作ってみようか。
卓上、スススと視界に転がりアピールしてきた毛糸玉を手招けば、喜んで弾み寄ってきた。
…………。
しかし何故、毛糸というものはこうも絡まるのか。
「もこもこ君、ちょっと」
棒針を構える姿こそ様になっているものの、針を通す宛をすこし間違うだけで歪んでしまう世界だ。眉を下げてヘルプを呼ぶアナンシの周りには毛玉だかりが出来ている。
こうだよ。そうだよ。だいじょうぶ! だいじょうぶ!
絡まった分だけ転がることで解いてくれる愉快な仲間にすまないねと微笑む男を、今度はラフィが物珍し気に見つめていた。
「意外だな、なんでもスマートに出来そうなのに」
「いやあ。身から出た糸ならば幾らでも操れるのだけれども」
本当に難しい。バツが悪そうに頬を掻くアナンシに、あっ次通すとこ隣だぜ、なんて指差し破顔するラフィ。珍しく隙のある一面が面白いと思っても、カッコ悪いだなんて思うはずもなくて。
「けど、たしかに案外難しい。いつもは鋏で切る専門だからさ、編み針ってなるとどうもなぁ」
「完成した暁には、君の腕前がまた上がっていそうだ」
戦いの? もちろん、などと今日の健闘を称え合う。
和やかなやりとりの間にも指を動かして、そこに毛玉たちの助力も加わったなら、御伽噺のページを捲るほどの着々と毛糸はかたちを成していった。
――針を置いて。
アナンシが両手で摘まみ上げてみる塊は、まあちょっとばかり"味がある"出来かもしれないが。
「……うん、はじめてにしては」
偶然の産物とはいえお誂え向きな耳穴もできたことである。仕上げにパチンッと鋏で糸を切っている兎少年の頭へ乗せることで、本当の完成だ。
「わ」
もふんっとした感触に瞬いて顔を上げるラフィ。「え、この帽子俺にくれるの?」サプライズに銀がきらきら煌めくのは、手元の真っ黒黒兎特製マフラーも、何故なら"家族"へのプレゼントにと決めていたから。
頭上のふわふわに手で触れて、頷く送り主を見遣ってと大忙し!
「君に合うと思い、ね。良ければ使ってくれると嬉しいのだよ、うんうん」
「すっげー嬉しい! えーっとちょっと、待てよ……」
出来立てマフラーの表裏を急いでひっくり返し、大丈夫そうなことを確認すれば背伸びして(さりげなく頭を差し出してくれる)アナンシの首にせいっと一周。
「はい、アナンシにはこのマフラーだ。クリスマスプレゼントだぜ!」
「おや、この歳になっても貰えるとは。……ふふ」
歳といっても概算でしかないのだが――穴の開いた記憶をまたひとつ、こうしてあたたかなものが埋めてゆく。ありがたいやら嬉しいやら。先とは別の意味で眉を下げる男へ、へへへと得意げな笑いが返って。
一足早いクリスマス、家族のたのしいプレゼント交換会。
――な。もうすこしお邪魔してく? 俺、みんなの分も作りたくて。
――次はもっと手際よく出来そうだ。
ゆっくりどうぞと愉快な仲間が身を揺らす。しっかりと守ったたのしい時間は、まだまだ続いてゆくのだから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
セロ・アルコイリス
オズ(f01136)と
フェルト玉サンを見つけたなら手に掬って
ほら、ハイタッチ!(その子をオズに向けて
ふかふかなその子見てると
…連れて帰りてーな(ぽそ
だめ?
フラれても笑って
はい、今をめいっぱい楽しみましょう!
そもそも毛糸をぬいぬいってどういう…?
編むんじゃなく?
オズが教わってんのをじぃっと見つめる
見れば盗める
ナルホド判りました! おれ手先は器用ですよ!
あとはこっそりぬいぬい
へへ、楽しい
作ったのはたんぽぽ色のフェルトマフラー
おれのよりは短いから巻いたらひよこサンの翼になるかも
贈り物にゃ目をまんまるに
わ、ちょうど欲しかったんです!
お礼告げて
けど、先にやられちまいましたね
はい、オズ! ってお返しを
オズ・ケストナー
セロ(f06061)と
わあ、みんなぶじだったんだね
よかったっ
あ、セロがたすけた子だね
セロにくっつく姿に微笑んで
なかよしだ
ふふーハイタッチっ
頬よせたらあったかくてくすぐったい
セロ、いこいこっ
もこもこな子たちを抱いて
ぬいぬいははじめて
おしえておしえてっ
セロもやろうっ
ないしょの設計図を告げてぬいぬい
やりかたを見せてもらえば
それなりにちゃんと縫いあがっていく
むずかしい柄とかはつくれないけど
ぽんぽんはつけるよ
でーきたっ
白いミトンの手袋
ぽんぽんは夜明けのあたたかなピンク色
手を離れてセロのところへ飛んでいく
セロにはあったかくなってほしいもの
あげるっ
えっ、わあ
ありがとう、うれしいっ
もこもこに頬よせ
あったかいね
無数にいる住民たちの中、再び出会えたのならば、それはもう運命なのでは?
賑わう家々に足取り弾ませるオズ、そしてセロのもとにぽんぽんびょいん!! 飛び込んできたのは、もしかして――。
「あんたさっきのフェルト玉さん?」
「あ、セロがたすけた子だね?」
――届かぬ高さは、掬い上げるセロの手が埋めてあげた。
相も変わらずふかふかな感触に「ご無事でなにより」すべて終わったらの約束通り、オズに向ければハイタッチ! 二人と恐らくひとつの間でふふふーと緩やかな笑いが広がる。
「みんなぶじでよかったっ」
「やー、気張った甲斐があったつーヤツです」
オズが抱え上げたデカ毛玉はいくつかが合体した姿だろうか?
まるでさっきの白マシュマロだ。頬を寄せるとあったかくて、くすぐったい。ボクたちの家はすぐそこだよ! ――どうやらお招きしてくれるらしく。
ふかふか。
ふかふか。
……。…………。
「連れて帰りてーな」
歩みながらぽそりと落ちたセロの呟きは、耳元でさわさわしていた件のフェルト玉には届いた模様。
だめ?
窺う風にほんの少し首を傾げると、擦り寄ったあと自ずと懐へ飛び込んできたもこもこ。答えはイエス? きっとそう。口下手な、ちょっぴりはにかみ屋さんなのかもしれない。
おじゃましますと元気よく挨拶して、いざ! ぬいぬいタイム!
「ぬいぬい?」
「ぬいぬい! はじめてなんだ、おしえておしえてっ」
すっかり意気投合した様子のオズがはい、セロもと棒針を手渡す。"せんせい"に一礼する二人が思い思いに構えた針はちぐはぐで、早速もこもこ指導が入ったり。
何をするにも至福の肌触り――。
「おれが住むってのも一興なのでは」
「いつの間にかわたしたちももこもこになっちゃったり?」
なんて、おしゃべりにも花が咲いて。
毛糸のぬいぬい。謎の多かった工程は、オズが教わる姿を見て盗むことにしたセロ。すこしずーつ、さりげなーくその眼差しに背を向けてゆくオズは、先生へないしょの設計図を伝えているから。
(「どうかな? わたしできてる?」)
(「すごい! じょうず! 次は裏返してね……」)
ひそひそたのしい作戦会議みたい。
ボクも手伝う? と顔を覗かせるフェルト玉に腕まくりしてみせて、ナルホド判りました――おれ手先は器用なんで、と、言ってのけるセロの腕前は。
言葉通り。 ――でーきた!
の声は、ほぼほぼ二人同時だったろう。
「えっ。セロはやいねっ」
「へへ、作りたいモンがもう決まってましたからね」
「むむっ、それならわたしも……」
はい、と、オズが手を離せばふんわり飛び立つのは白いミトンの手袋。
もこもこほんわか、夜明け色のぽんぽんが泳ぐように揺れて、セロのもとまで。ぱち、と目をまんまるにするセロへと次に相好を崩すのはオズだ。ご協力の皆様方も肩へ飛び乗りゆらゆら。
「セロにはあったかくなってほしいもの。あげるっ」
「わ――ちょうど欲しかったんです! ありがとですよ、オズにセンセー方」
けど、先にやられちまいましたね。
早速指を通して鼻の頭を擦り、すこし照れくさそうにするセロはこのココロが"よろこぶ"であることを、今、ちゃんとわかっている。そして、自分も同じ想いをオズにあげたかったこと。
はい、オズ! 開いた手からぴょーんと飛んで、巻きつくのはたんぽぽ色のフェルトマフラー。
「! えっ、わあ」
「お返しです。っふ、なんかおれらきょうだいみてーですね」
それか戦隊もののヒーロー? 青と黄色、すこし短めのオズの丈は、ひよこさんの翼かも。元気にはためいて、空だって自由に飛べそうな、綿毛の軽さ。
ありがとう、うれしいっ。
こちらこそ、大事にします。
自分だけのもこもこに頬寄せるオズもセロもとてもしあわせそうで。
寄り添って眺める愉快な仲間たちも、それはそれはしあわせそうに。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
チロル・キャンディベル
キトリ(f02354)と
ぬくぬくはしあわせね
チロはふわふわぼうしを作りたいの!
ソルベと、キトリとニュイのぶんも作るのよ
でもチロ、こういうの作ったことないの
だから毛玉さんにそうだんするのよ
耳を近づけて、作り方とかコツを聞くの
まっ白な、雪みたいなぼうしが作りたいの!
みんなといっしょなら、きっとステキなものができるのよ
キトリだいじょうぶ?チロがひつようなら声かけてね!
できたらみんなにプレゼント!
チロと毛玉さんのどりょくのあかしなのよ(えへん)
キトリのマフラーは、チロの好きな葉っぱの色があるのよ!
ニュイは寒そうだったけど、気に入ってくれたかしら
このふわふわといっしょなら、きっと今年の冬はあったかなのよ
キトリ・フローエ
チロ(f09776)と
あったかぬくぬくなものをぬいぬいするのよ!
毛糸のおうちはとってもあたたかくて
ミルクも美味しいのよ、ありがとう、もこもこさん!
チロが帽子ならあたしはマフラーを
もちろんニュイの分も作るのよ
もこもこさんと相談しながら、お手伝いもお願いして
ニュイもあったかくなれるようなものを作ってあげたいの!
でも、もしかしなくともあたしが出来ることって…
毛糸を引っ掛けることくらい?
…ニュイやソルベのフェルトぐるみでも作ろうかしら(ちくちく)
真っ白なマフラーにそれぞれの色をアクセントに
チロとソルベは若葉の色、ニュイは紫がいいかしら?
ね、これで寒くないでしょう?
きっと今年の冬もバッチリ乗り切れるわ!
暖炉の前に寝そべって、もふんもふんと毛糸の床を撫でるもこもこ。
これは愉快な仲間たちじゃなくて、白狼チロルのご機嫌な尾っぽ。
「ぬくぬくはしあわせね……」
「しあわせね。とってもあたたか……」
よく似たとろりん顔をして。翅を休めたキトリは卓上でいただく飲み物にうっとり。毛糸のおうちは燻された木の香り。吸い込む息まで胸の奥へと熱を運ぶよう、ありがとう、と告げたならどういたしまして! と言いたげな住民らがからだを揺らす。
これなら手もばっちり動かせそうだ。
「毛玉さん、チロね、ふわふわぼうしを作りたいの!」
「素敵。だったらあたしはマフラーを」
教えてくれる? お手伝いしてくれる?
そんな二人ともこもこが計画立てる窓の外、白熊ソルベと雪遊びして、うごうご蠢く黒はニュイ・ミヴ(新約・f02077)。雪が降り積もる姿を「寒そうだから」と、心やさしい娘たちはちょっと多めに毛糸を拝借して。
はじめてみたなら、ぬいぬいする指そのものに魔法がかけられた心地!
「ソルベのしっぽみたいなのをね、ここに付けるのよ」
「それなら真ん中に針を通してね……」
くるくる、ねじねじ。二本の棒にあやとりみたく毛糸を通して、抜いて。不思議なほどに順調に作業は進む。
愉快な仲間たちへ目一杯頬を寄せてコツを聞くチロル。ふわふわ耳が四つや六つに増えたみたい、毛玉に覆われる姿は部屋のあったかさ以上に微笑ましくて。
(「ふふ、チロったら。もう帽子が完成しちゃったみたい!」)
くすくすとキトリが笑えば、毛玉たちもさわさわと楽しげ。
ぴこんと本物の耳を揺らしたチロルは顔を上げ、暖炉の傍からだと見えそうで見えない卓上が気になって尾も同じ動きで左右へ。
「キトリだいじょうぶ? チロがひつようなら声かけてね!」
「ええ、ありがとう。大丈夫よ。……うん、どっちがお手伝いかは分からないけれど」
実作業の大半は毛玉たちが。フェアリーであるキトリがマフラー作りに貢献できるのは、毛糸を引っ掛けることくらい?
いえいえ、想いのこもったデザインは「作りたい」キトリがいてこそ。新雪のようなやわらかな白に、アクセントとしての色彩。贈られる側に寄り添って、一点ものへ仕上げてゆくのだ。
手持無沙汰でちくちくしていた筈のフェルトぐるみはさすがの細やかさ!
ボクたちにも難しいや、とは、愉快な仲間たちの総評。人間の親指大、ちょこんと完成したミニミニ・ソルベとニュイは、たちまち注目の的となって。
「ふわ……あなたは!?」
「あらソルベ、ニュイ、おかえりなさい。ええっと、この子たち毛糸だからね?」
窓から滑り込んできたブラックタールに至ってはお仲間と勘違いした模様。
完成品がてこてこと動くものだから、追いかけて動くニュイとテーブルから転げ落ちないように飛ぶキトリと。興味津々、鼻先を寄せるソルベ。そんな三人に、ぽふんっ! あたたかな毛糸帽子が被せられた。
見遣ればふっふふーと躍り出しそうな得意顔のチロル。……現にもこもこ波打って躍る帽子。
「みんなにプレゼント! チロと毛玉さんのどりょくのあかしなのよ」
「すごいじゃない、チロ! 世界にひとつだけの帽子、大切にするわ」
えへんと胸を張る頭を撫でるのは妖精の手、それに毛玉、頬ずりする白熊のふかふかほっぺ。えっえっと白黒するタールを余所に、あたしたちも完成よとキトリが白マフラーをふぁさりとさせた。
チロルとソルベにはお揃いの若葉が――チロルの好きな葉っぱの色が、鮮やかに芽吹いていて。
ニュイには銀河に映えそうな紫が点々。
「キトリ、だーいすきっ」
「い、いただいていいのでしょうか……!」
にっこりチロルの周りは春も爛漫。
……素敵なプレゼントにふるふるするタールに二人は顔を見合わせるが、寒さのせいじゃないと分かるから。計画は成功、微笑み交わす瞬間は、こころが通じ合ったかの如くに毛玉らも飛びついてきた。
「もちろんっ。これで寒くないでしょう?」
「気に入ってくれたならうれしいの!」
それではニュイも何か……と、わくわくプレゼントの輪はどこまでも続いてゆく。
みんなといっしょだから、ステキなものはできて。
今年の冬だってあったかに乗り切ることができるはず。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
境・花世
英(f22898)と
うんとあったかいのをつくりたいんだ、
一緒に手伝ってくれるかな
呼び掛ければ次々やってくる毛玉たちを
肩に膝に腕にこんもりのっけて
ふわもこはーれむを堪能しつつも
棒針を動かす指先は本気モード
やだなあ英、それほどでもあるよ
かわいい仔たちが一生懸命教えてくれるから、
今この針にはぬいぬいの神が宿ってる
さあみんな――力を!
毛玉の中からもこっと爆誕した作品は、
大きくて白い毛玉ぬいぐるみ
みんなのやさしさを集めたんだ、
きみにも手ざわりを確かめてもらおう
英、あったかい?
すっかり見慣れた雪だるまさんに
くすくすと笑っていれば
毛玉たちからの期待の視線がふわもこと
ふふ、しょうがないなあ、ちょっとだけね
榎本・英
花世(f11024)
私は不器用だからね。
編み物も縫い物も何もできない基礎も知らない。
君たちが頼もしいという事は私が一番良く知っているよ。
暖の取れる物が欲しいんだ。
教えてくれるかな?
教わっても難しいものは難しいのだよ。
ただの玉と化した糸は毛玉に任せよう。
嗚呼。花世はさすがだね。
ぬいぬいの神が降臨しているそうだよ。
あれが本気の目だ。
隙あらば服の中に潜り込もうとする毛玉たちに語りかけながら
彼らをそっと退ける。
完成したらいくらでも入るといい。
これがぬいぬいの神の力かい?
触れたぬいぐるみは彼らと同じくらいあたたかく手触りも良い。
嗚呼。でも見てくれ。
君の力作に負けまいと毛玉が雪だるまになりに来た。
「うんとあったかいのをつくりたいんだ、一緒に手伝ってくれるかな」
……英がもこもこ雪だるまなら、花世はもこもこの木?
ロッキングチェアに落ち着くや否やわさわさとやってくる愉快な仲間たち。軽く手を差し伸べてあげるだけで、もこ地面を跳ねてぴょんと飛び移る肩、膝、腕。
「君たちはこっちでいいのかい。私は不器用だからね、彼女の何倍も世話をかけてしまうかもしれないよ」
編み物、縫い物の基礎すら知らない。英はそう語るも、ここまで抱えてきた住民一同が外に出る気はないらしく。
すっかり住処みたい。光景にくつりと花世が笑う頃、では、と、隣人らに英も頼み事ひとつ。そのあたたかさ頼もしさを称え。同じように、暖のとれるものが欲しいと教えを乞えば、もちろん!
彼の彼女の頼もしさを知っているのもまた自分! と云わんばかり、風船よろしく毛玉はふんすと膨らむのであった。
一番大きなもこもこが偉い――なんて、仕組みもなさそうだけれど。
「ますますあったかいや。すごいねえ、ふわもこはーれむだ……!」
「冬場の作業机に潜んでいてほしい存在ではある」
包まれる側としては願ったり叶ったり。
棒針たちが二人の周りにくるくる躍って「いつでもどうぞ」。ありがとうとよろしくを告げ、花世の手指がそれを掴めばはじまりだ。
――ところで君、縫い物の経験は?
問いの答えの通り、ぬいぬいと針をくぐらせる女の指先に迷いはなく。
「嗚呼。花世はさすがだね」
「やだなあ英、それほどでもあるよ」
曰く、今この針にはぬいぬいの神が宿っている――。 編み終わりにすいっと翳した針の先が、自信に満ち咲く瞳同様、暖炉の火にきらりんと煌めいて。
対して男の手元には人間の頭大のけむくじゃらが転がっていた。
……いえ、これは決して新たな怪異とかそういうのではなく。ちょっと毛糸が絡まっただけ。絡まって英の手では行くも帰るもできなくなったから、せっせと住民らが転がり解いているところ。
ときにそのころころを押し手伝うのが今の英のおしごと。
「ぬいぬいの神が降臨しているそうだよ。あれが本気の目だ」
もうひとつ、隙あらば服へ潜り込まんと飛びつく毛玉をいなすおしごとも。両手の平で覆うみたくつかまえたなら、それはそれで心地好いのか。もぞりと大人しくなるのに、いいこだと撫でつけた。
さあみんな――力を!
着々と縫い上げた乙女の高らかな呼びかけに応じて、ぬいぬいぬいっと手元へ集まる毛玉たち。
それぞれがちいさな綿を抱えて向かう先、もこもこの波が止んだあとには……爆誕! まるで彼らがそのまま合体したかのような、大きな白毛玉ぬいぐるみ!
「これがぬいぬいの神の力かい?」
「みんなのやさしさを集めたんだ。そっくりそのまま、ほら、触れてごらん」
微かにもごつく塊を抱き上げて差し出す花世、触れる英。
――あたたかい。
手を滑らせれば、ふさっと伝わる感触は綿毛のようにやわらかく。同時に、長毛種の獣のようにしっかりとしている。
どうだろう? あったかい?
花世と毛玉たちは同じだけわくわく前のめりに見つめて(?)、ひとつ頷く英にわっとちいさく歓声を上げ抱き合った。
「やった、お墨付きだ。……、それにしても。ふふ、英はすっかりもこもこランドの住民として馴染んだね」
「毛皮を持つ生き物の生きやすさを学んでいるところさ。――嗚呼。でも見てくれ」
君の力作に負けまいと、毛玉が雪だるまになりに来た。
青年雪だるまの囁きに、ぱち、と見遣れば作業中よりも数の増えた住民たち。
ふわもこ、ふわもこ……寒そうな装いの花世を気遣ってか、はたまた"ブーム"に乗せられて。きっとそのどちらも。ボクたちもぬくぬくできるよ! 卓上跳ねる彼らを、しょうがないなあ、ちょっとだけね――微笑んでお招きしたならば。
ふたり並んだ雪だるまは人間いちもこもこ、大ぐるみを背もたれにそのうちうとうと――……空想物語の中みたいに。あたたかな冬を堪能できたことだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リオネル・エコーズ
ニュイくん(f02077)誘って
折角の初もこもこランド
何かするなら
俺的にはもこもこハウスにお邪魔して編み物一択かな
なんてね
人生初の編み物したいだけ
人が編み物しているところは見た事あるんだけど
どんどん形が出来てくのが魔法みたいで憧れてたんだ
て事で飾りの無いシンプルな膝掛けに挑戦
サイズ?
ニュイくんもぬくぬく出来そうな大きいやつ!
もこもこパイセンに教わりながら
青系のまだら糸でゆっくりぬいぬい
この糸なら夜空みたくなるかなと思って
お喋りしつつナゾ飲み物を一口(ホワイトチョコ風味
!
ニュイくんこれヤバい超美味しい
ここの冬、温くて優しくて最高
また一口飲もうとして、ハッ
…ニュイくんが飲んだら天の川が出来るのかな
暖炉の火がゆうらり、椅子に揺られるオラトリオのシルエットを床に照らし出している。
冷凍手羽先化も無事免れて、ぬくぬく乾いた翼。
「リオネルさん、慣れてますねぇ」
「んー? はじめてだよ、人が編み物しているところは見た事あるんだけど」
どんどん形が出来ていくのが魔法みたいで、憧れていた。
のびのびしてじっと見遣るニュイへと、そう穏やかに語りながら棒針を動かすリオネルの手元でもいま、同じ魔法が紡がれている。
空……青を主体とした夜色のまだら糸は数体の"先輩"がくれたもの。リオネル風に云えばパイセンで――時たま、ここどうしよう? と問えば、そこはね! とひょっこり耳元でさわさわ。それが擽ったくて、またあたたかくて。
「んーむ、はじめてとはとても……やっぱりマフラーです?」
「ふふふ、何でしょー」
同時に当てっこゲームがスタート。
色んな角度から覗いてくるタールにはふふりと悪戯っぽく笑うだけ、ゆっくり、しかし着実に手を進めるリオネル。憧れの一頁に描かれてあるような――膝掛けは実用性ピカイチであたたかいんだもの、すこしシンプルめでいい。サイズは……、
(「ニュイくんもぬくぬく出来そうな大きいやつにしよっと」)
時折ちらっと横目でサイズを確認されるタールが、不思議そうに折れ曲がったり。
「そういえば、ニュイくんのそれは?」
「手袋です! お返しがしたくて」
どどん! 紹介される白色物体は未だ糸くず状態ながら。
想像だけでヒト用を作るのは、難しいのかも。閃いて俺の手でよければモデルにどーぞ、なんて、ぐーぱーしてくれるやさしい青年の提案にふるふるするタールなのであった。
わっ、と次に声を上げたのはリオネルの方。
手でもぬいぬいしてしまったのか――愉快な仲間たちとニュイが覗き見ればそこには、マグの水面を見つめて肩と翼を震わせる姿が。
「ニュイくんこれヤバい超美味しい」
「?」
にょーんと伸びて真似っこタール。
一口いただくと乳白の煙が銀河にぶわわわ木の根っこよろしく広がって、なんだか天の川みたい?
「ヨーグルトのほっとするお味なのです!」
「ね。ここの冬、温くて優しくて最高ー…… ん、激あまチョコ味じゃなくて?」
もしかしてちょっぴり味が違う? 交換っこもまた楽しい。
――夜色には白もすこしだけ足しておこうかな、リオネルの口元、笑みもひそやかに深まって。
できあがり!
立派に縫い合わされた夜空を――膝掛けをよろこび一杯ふわりと浮かせ、ふたりでわーいって頭から被ったら、そこはもう毛糸天国の入り口。
炬燵というモンスターに人々が囚われるように。毛玉たちが心配して覗きにくるまで半分夢の中、もこもこドリーム・ランドでのぬくぬく魔法は続くのだ。
大成功
🔵🔵🔵
雨野・雲珠
先生と/f22865
おそろしい目にあっても、
ふわもこさんたちは親切でおかわいらしい…すごいことです…
あたたかいのと夜なのとで、俺はもうだいぶんねむい…
先生になにか差し上げたいんですが手袋はもうお持ちですし、
スーツに編みのマフラーというのも…帽子…腹巻き…?
…あ、冬の間、事務所のソファにかけるカバー。
バネが飛び出てるんです。
先生があそこでよく寝ておられるし、お客様のお尻も不意打ちから守れるし、
なかなかよい思いつきではないかと。
針仕事は繕い物くらいしかできません。手伝っていただけますか?
うとうとしながら頑張ります。
えっあっ、…いつの間に。
鹿だ…
(枝角にぽこぽこ白い桜が咲く)(嬉しいのでありました)
雨野・妙
雲珠/f22864
冬の良いのはこういうとこだな。
寒くなきゃ暖まろうとする工夫もせんよ。
知恵と団結を生む季節さ。
…いやしかし、マジに何もかも布で出来てやんの。
こりゃ良いや。どこで寝ようが暖かいってこった。
てわけで、僕には毛布だけ貸してくれ。
軽くひと仕事した後でよ、目が疲れてんのさ。
雲珠のやつは何かデカイのを作るらしいが…
…気づかんフリをしとくかね。
不慣れな手つきなんざ見られたくなかろ。
よう、お疲れさん。
頑張った雲珠君にいいもんやるよ。
羊毛なんとかの小せえ鹿。
さっき(魔法の針が)作った。
“軽くひと仕事した”つったろ?
盆栽の横にでも置いときな。
…にしても眠そうだねえ。
少し寝てっちゃどうだい。温いぞ。
うららかに注ぐ陽光、一面の雪景色にふわりと薄紅が舞う。
同じように色付いた人々の頬。社から望む眼下は、今日も穏やかで――。
かくんっ。
……と、針と糸で辿っていた網目が一列分ズレた。
「はっ――、ね、ねむって」
はたはたと頭を振り、雲珠がまず窺い見るのは妙の方向。お子様はもうおねむ~だなんて、言われてしまっては格好がつかない。
当の妙はといえば部屋の端の方でごろりんと横になっていた。もはや自宅。いつもの事務所の光景。
床板はそも板ではなくて毛糸。こりゃ良いや、どこで寝ようが暖かいってこった、なんて台詞を開口一番にくあり欠伸、毛布だけ借り受けすたすたと。
――軽くひと仕事した後でよ、目が疲れてんのさ。
寄り集まる毛玉たちを半分枕にしながら、ああしてくつろいでおられる。
……見つめたところで起きているか眠っているか、帽子に前髪の鉄壁で分からないし。ふう、と深呼吸して手元に意識を戻す雲珠。
「先生が休まれているうちに、なんとか形にしなくては」
がんばれ、雲珠!
両頬を叩けば人間めいてぺちっと音が鳴る。
つくると決めたものは冬用ソファカバー。事務所での妙の実質寝床であり、もちろん客人も利用する座椅子はバネが飛び出ているものだから、この機にくつろぎ空間を取り戻すべく。
「……すみません、一列分解いていただいても?」
「まかせて! がんばってね、がんばって」
さわさわーと愉快な仲間たちが揺れ動く。うとうと時々しゃっきり、針仕事は日進月歩。
冬の良いのはこういうところだ。
とは、家屋に踏み入った際の妙のもうひとつの感想。不思議に燃え続ける暖炉の火も、溢れんばかりのもこもこ要素も、集っておしくらまんじゅうの毛玉たちも。
寒いからこその暖まろうとする工夫。知恵と団結を生む季節。
(「は、何処でも変わんねえか」)
時に舟を漕ぐ少年が、なにやら大物を作ろうと励んでいるのもすべて見えたうえでの知らんぷり。
不慣れな手つきを見られたくもないだろう。そんな男心を一応は尊重してはいたし、自分の目がないときに絶妙な働きをする――したがるのは今日に限ったことでもない。
だから妙は妙でひそかに呼びつけた針に一言二言囁くのみで、時たま「はーあったまんなぁ」などとマグ片手にひとりごちて雲珠をビクッとさせるなどしていた。
遊び、戯れ。そんな風にも。
そうこうしているうち、数十分は経ったのだろうか。
毛玉ではない何か――もっと形ある何かがすとんと頭に乗ったことで、雲珠はぱっと目を開ける。眼前には"先生"がいて。
「っ! え、あ」
「よう、お疲れさん。頑張った雲珠君にいいもんやるよ」
いいもの?
糸始末の際に握ったまま固まっていた鋏をテーブルへ置けば、痺れかけた手で傾いて落ちかける頭上のそれに触れる。掴む、下ろす。
もこもこ。 四肢に、胴に、花咲く立派な角は。
「鹿だ……、いつの間に」
「さっき作った。"軽くひと仕事した"つったろ? 盆栽の横にでも置いときな」
ただし魔法の針が――なんてのは言いやしないし、聞こえてもいない。羊毛フェルト製の鹿は、ちいさくたって少年の瞳には神々しい。冬景色の枝角にもぽぽぽ、とよろこびの春が来るのを最初に視認したのは誰より妙で、息落とす程度の笑いとともにもう片手に掴んだブツを上げた。
にしてたって、そう。
「……眠そうだねえ。少し寝てっちゃどうだい。温いぞ」
「ねむ――いえ、そんなことは。ほんのちょっと、小指の先程度しかありませんが」
ぎくりと視線を向け映る、見るからにぬくぬくの毛布。
真似て軽くひと仕事、なんて言ってみたい。"努力の結晶"をそそくさ懐へ仕舞いこみ、まあ。先生がそうおっしゃるなら――あくまで相手ありきという澄まし顔をして。
絶え間ない誘惑も正当な報酬のうちだと受け取れば、あとすこしくらい。この冬に、甘えてみたって。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
【炊事課】
おおー、何でも揃ってんだな!
これなら何でも作れそうだ
縫いぐるみか!良いな、乗った!
えっ、蛇竜?
いいけど……ほら、出て来い、ここなら暖かいから
レディって言うんだっけ、その……黒いもこもこの……竜……?と遊んでな
こういう細かい作業は結構好きなんだぜ
妹の服の直しとかも私がやってたしな
ちゃちゃっと綺麗に作っちまおう!
私は弟妹たちに小さいのでも作ろうかな
デフォルメした奴で
蜘蛛と、鳥と、鮫と、白い竜二匹
時間が余ったら、こっそり鈴型のと黒い鳥も
こっちの二つは匡と穂結にやるんだ
お!良いの?ありがとな穂結!じゃあ私もこれやるよ
やったな蛇竜!ほら、お前だってよ!
……遊ぶのは良いけど、壊すなよ、お前
穂結・神楽耶
【炊事課】
おー、色々ありますねぇ。
折角ですしぬいぐるみ作りましょうよ。
ニルさんほら、槍に変わる竜のあの子出してください。
あ、匡さんも竜連れだったんですね? じゃあその子も是非いっしょに。
作りがいがありそうですね。
愉快な仲間たちの皆さん、よろしくお願いします!
とはいえわたくしもはじめてなんですよね、編み物。
編み目が…毛糸が太いと編みにくい? でも鱗の感じってこう…
あっ待ってお二方とも動かないでください!? 主人の言うことなら聞くんですね…。
うーん…さっきのポーズがかわいいけどこれもいいような……
……よしできた!
はいどうぞ。
ちょっと早いけど、お二人にクリスマスプレゼントです!
鳴宮・匡
【炊事課】
ニルの蛇竜に興味津々のレディが影から顔を出してる
手を差し伸べて掌に載せてやって
だってさ、レディ
モデルになってくれる? よし、いい子だ
ニルの蛇竜と遊んでな
俺、編み物からしてやったことないから
基本から愉快な仲間に教えてもらわないと
あ、こら、教えるのはいいけど頭の上に乗るな
教えてもらいつつこっそり二人用のプレゼントも作っておくんだけど
何食わぬ顔で作ってればばれないかな……
なんだ、ニル、随分たくさん作るんだな
妹たちにあげるのか?
ああ、ほら、レディ、あんまり動かないでやってくれよ
穂結が困ってる
え、俺に?
……、うん、ありがとう
(咄嗟に背中に隠した贈り物を見やって)
……いつ渡せばいいかな、これ……
●
わいわい扉をくぐるのは炊事課のみなさん。
あっこんなところにツリーが……針も糸も色々、と、戦場での冴えた振る舞いから一転、学生のような賑わいで同じテーブルにつく。
せっかくなのでぬいぐるみを。神楽耶の提案に良いな、乗った! こう見えて細かな作業が得意であるニルズヘッグは二つ返事。
「ニルさんほら、槍に変わる竜のあの子出してください」
「えっ、蛇竜? いいけど……ほら出てこい、ここなら暖かいから」
呼べばすると足元から滑り出る赤黒の竜は、きょろり周囲を窺うと、椅子の脚を伝い主の膝へと。あたたかな場所を探す小動物のよう。
ニルズヘッグが抱き上げればにょろりんと卓上に乗せられ、あらかわいいとほこほこ笑う神楽耶に匡……は、自分の足元に手を差し伸べていて。
「レディ。蛇竜が気になるのか」
影は次第にかたちを移ろわせ、紅色瞳がチャーミングに瞬く霧状のちいさな竜を模る。ぱち、ぱち。肯定らしい。主のてのひらで掬い上げられ、こちらも卓上へご案内。
「おーもこもこだ」
「あ、匡さんも竜連れだったんですね? じゃあその子も是非いっしょに」
「だってさ、レディ。モデルになってくれる?」
早速追いかけっこでも始めんとしていた二匹だが、主たちからの「よろしく」は決して無視することなく、尾をぺしぺしして答えてあげるのだ。
「よし、いい子だ」
「遊んでな。落っこちないようにしろよ?」
その光景に、作りがいがありそう、と長い袖を後ろへ流す神楽耶はやる気モード。
――愉快な仲間たちの皆さん、よろしくお願いします!
呼び掛けたなら、待ってましたとばかりたくさんの毛玉がやってきて。
「それではニルさんが一番先輩、ということになりますね」
「まあ、妹の服の直しとかもやってたしな。このくらいなら朝飯前だ」
「それにしても随分たくさん作るんだな。妹たちにあげるのか?」
ぬいぬい、ぬいぬい。
なかよしが集えばおしゃべりも弾む。
言葉通り、匡の問いに頷いてみせるニルズヘッグの手元には解れの無い綺麗な仕上がりのミニぬいぐるみが。蜘蛛と、鳥と、鮫と。それに白い竜。二匹目の白竜が綿を詰められ、ちょうど膨らんできたところ。
「あ。こら、教えるのはいいけど頭の上に乗るな」
「あら、なんだか懐かれてます? 毛玉さーん、わたくしの頭でしたらどうぞ御贔屓に」
ぬいぬい初体験の他ふたりには先生がつきっきり。
熱血指導――かは不明だが、こんもり乗ってくるものだからちょっと重いのはご愛嬌、だ。それどころでなく神楽耶の戦いは白熱していた。竜の鱗を再現しようとなると、クロコダイルステッチ……毛糸は太い方が? 細い方が?
「もしかしてラスボス級に手を出しました? ――あっ待ってお二方とも動かないでください!?」
「ああ、ほら、レディ、あんまり動かないでやってくれよ。穂結が困ってる」
「はっは、おーい蛇竜! 楽しそうだな、こいつめ」
ニルズヘッグの声にぴたり。いっしょになって大暴れ……もといじゃれていたもこもこ影竜・レディはといえば、差し入れられた匡の手に何事もなかったかの如くひたり。
とぐろを巻いて丸まってみるとか。
尾を咥えて流し目カメラ目線とか。
戦闘でのクールに加え、キュートもセクシーも心得ておられるドラゴンさんたちの強さたるや。
「主人の言うことなら聞くんですね……」
あっ。針通すとこ間違えた。
……前途多難とはいえ、進み続ける限り道は開けてくるのは、裁縫も生も同じであり。
……。
そんな二人と二匹の傍ら、涼しい顔で多くは語らぬ匡が何をぬいぬいしているのかといえば。
(「バレてないよな。……バレてない、な」)
ニルズヘッグ、神楽耶へのプレゼントであった。
お試し、練習として縫った竜二匹がえらくデフォルメされたまろやかな見た目で「かくすことないのにぃ」と云っているような。――隠すことは、ある。裁縫上手のニルズヘッグが納得するクオリティが保てるか自信はないし、神楽耶はそもそも自分からこんなもの貰って嬉しいのか。
これは読みあいである。戦いである。
「ところで匡さん」
「 、はっ? なに」
勘づかれたか――!
しかし顔には出ない匡。視線だけで冷静に見遣れば、糸くずをねじねじして竜の尾の位置をシミュレーションしている神楽耶がそこにいた。
「どちらのポーズがかわいいと思いますか? わたくし、迷っちゃって……」
――。
いやどっちでも、好みの方で。
ふうっっと吐息混じり淡泊な男のアドバイスを、じゃあこっち! なんて直感のまま快活な竜人の指が継ぐ。
竜たちが遊び疲れてころころ寝転ぶ頃。
もこもこ端切れをそうっとかけてあげる神楽耶は、その手でじゃーん! と、完成品を二人へと差し出した。はい、どうぞ。
「お二人にクリスマスプレゼントです!」
「お! 良いの? ありがとな穂結! じゃあ私もこれやるよ」
同じだけのじゃーん! 見て! 感でニルズヘッグが手渡すのは、鈴に黒鳥のぬいぐるみ。ぷくぷく鈴は焼きたてカステラみたいで「おいしそう……いえありがとうございます」と口元を押さえる女がいたのはここだけの話として。
匡は、一瞬固まっていた。
ちょうど自分の中で許せるラインの出来となり、渡そうとしていた贈り物は咄嗟に後ろ手へ。読まれたかの如く先を行かれて。
戦場ではこんなことないのに――なんて、ちょっと、笑って。
「俺にも。……、うん、ありがとう」
「やったな蛇竜! お前だってよ!」
活気にぱちりと赤目を開いた竜たち。
目覚めてみれば目の前に鎮座するドラゴンぐるみ。それはまるでサンタクロースからの贈り物のような――もちろん、仲間に加えてもうひと遊びがはじまる。
壊すなよ、とぐるみを動かすニルズヘッグ。気に入ってもらえたようでなにより、見つめる神楽耶。
(「……いつ渡せばいいかな、これ……」)
なんだか固まったままの主を、おともだちをもちゃもちゃと転がしてはレディが不思議そうに見上げていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
勾坂・薺
赫さん(f00433)と
やっと人心地ついたかも。
寒いし冷たいしもうダメかと思ったけど
これなら少し頑張った甲斐はあったかなぁ。
編み物かぁ。うーん。
わたしやったことないからなぁ。
あったかくなるなら、まぁ折角分けて貰うんだし
やってみたいけど。赫さん教えてくれる?
作るにしても何にしようかな。うーん。
無難にマフラーでも作ろうかなぁ。
青っぽい毛糸でちょっと他の色も混ぜて水玉模様っぽく
……って赫さん上手だなぁ。
ファー、とてもおしゃれでいいね。
今時の女子って編み物ちゃんとできるんだなぁ。感心。
わたしはちょっと不恰好だけど、まぁいっか。
赫さんのお墨付きもあるし。
先生がよかったお陰でなんとか作れそう。ありがと。
赫・絲
薺サン(f00735)と!
はーぬくぬくー
やっとあったかいトコ来れたね、薺サン
へー、糸分けてくれるの?
折角だし久しぶりに編み物したいなー
薺サンも一緒にどう?
ほら、この子達の糸であったかくなるようなの作ったら苦手な寒いのもきっとマシになるよ!
もちろん教えるよー!任せて!
マフラー首がぬくぬくになっていいよねー
私はミトンにしようかな
赤をベースに慣れた手つきでさくさく編み編み、雪の模様もつけちゃって
最後にふあふあのファーを手首側に飾ってアクセントにしたら完成!
私は手先が器用になるからって小さい頃やってたんだよね
えへへ、褒められちゃった!生徒さんの筋がいいからなー
水玉模様綺麗に入ってるしばっちりだよー!
向かい合わせ。
ふたりして椅子に深く腰掛けて、ふうー……と息継ぎ。ああ、酸素が喉にやさしい。
「はーぬくぬくー。やっとあったかいトコ来れたね、薺サン」
「ん。寒いし冷たいしもうダメかと思ったけど、これなら少し頑張った甲斐はあったかも」
ようやく人心地。
うんとのびのびする絲の手がふと触れるのは糸の束。自前の硬いのじゃなくって、柔いの。
視線を落とせば毛玉たちが「おつかれさま!」と言いたげにカゴと湯気立つマグとを差し出していた。
「わーいありがと、糸? 糸も分けてくれるんだ。編み物、久しぶりだなー……薺サンも一緒にどう?」
「編み物かぁ。うーん。わたしやったことないからなぁ」
飲むでもなく湯気のぬくぬくに手をかざして、思案顔の薺には「この子たちの糸あったかいよ!」と売り出し上手の絲がまぶしくにこり。ふぁさぁっ――その手によって厳かにてのひらへ乗せられた毛糸の束は、もふもふで、もこもこで。たしかに、あたたかくなれそう。かも。
まぁ、折角分けて貰ったし。
「やってみたい。って言ったら赫さん教えてくれる?」
「もちろん教えるよー! 任せて!」
びしっ!
おいでませと立てられる親指は、戦いのとき同様の頼もしさ。
手袋。ニット帽……無難にマフラー?
なにを作ったものか。両手に棒針を構えた姿勢でもくもくと考えを巡らせる薺の前、絲は早くもぬいぬいロードへ滑り出している。
「うんうん、マフラー首がぬくぬくになっていいよねー」
「赫さんは?」
「ミトン!」
編みかけ毛糸に片手を通して、ぱたんと挨拶。赤色ベースにちらほらと降る雪模様は普段使いにも活躍しそう、お店に売ってるものと違いない。へぇ、これがじきに手袋に……じいと見つめる薺から見ても、解れの見当たらない進捗は見事なもので。
「……上手だね。今時の女子って編み物ちゃんとできるんだなぁ。感心」
「へへ、手先が器用になるようにって小さい頃やってたからね。大丈夫、基本は繰り返しだから」
こう?
そうそう!
表編み、裏編み……マイペースにぬいぬいを進める薺が選んだ色柄は青がいっぱいと、光の中のシャボン玉風味にも、色々水玉模様。
ちゃんと丸になってるなってる、と応援しながら、絲は仕上げのふあふあファーをミトンの手首へ縫い付け完了! 手が通せなくなる……といった凡ミスをすることもなく、ばっちりな仕上がりの防寒アイテムが出来上がりだ。
「速い。し、ファー、とってもおしゃれでいいね」
「薺サンのにも付けてみる? んーでも待って、レース編みっぽくした方が合うかもだしー……」
なんて向かいの薺にあやとり糸を重ね合わせるような仕草の絲、プチファッション会がはじまったりもして。
――ちょっと不格好でも、いざ巻いてみるなら「まぁいっか」と思える心地。なにより、お墨付きなのだ。もこ……と口元まで引き上げる姿は冬毛の鳥の仲間みたいに。
「生徒さんの筋がいいからなー。水玉模様綺麗に入ってるしばっちりだよー!」
「先生がよかったお陰でなんとかここまで作れたよ。ありがと」
えへへと得意げな絲とにぎにぎゆるい握手をすれば、ミトンのあたたかさが薺にも伝わってくる。
やっぱり手袋もいい。……。このマフラーも、もっと伸ばせば凍風の完全防御だってできるのでは?
「ハイ先生。一体型って、どう思う?」
「一体型!? そうだね、着る毛布みたいなのも作って帰る?」
どうぞ使ってもこもこもこーと誘う愉快な毛糸束たちの合間から、未使用ブランケットの切れ端をいただいて。好きな端からパッチワークだ。
これならふたりで縫えるから、きっと早くて楽々だよ。
いいかも。ヤドリガミがこくんと頷けば返る笑み。 あたたかな冬、初の本格共闘を乗り越えて一段と息の合うようになった、先生と生徒のゆるゆる編み物教室は続く。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
コノハ・ライゼ
幽ちゃん(f04449)と
ニュイちゃんにも声掛けて
あらナンてあったかそう
おもてなしだけでも寒さが吹き飛んじゃいそう
いやいやオレもぬいぬいはからっきし
ニュイちゃんなんかとっても器用そうなンだけど、ドウ?
所で自分で動く針とか居るンだとか……そのお仕事っぷり見せてもらってもイイ?
ナニ縫って貰おうかなと首をひねったトコで目に入る増量尻尾
ああ、あんなふさふさ尻尾がイイなあ
お願いできる?
あっさりミルクを頂きながらすごいねぇと感心しつつ針のオシゴト眺め
気付いたらナンかすげーあったかーい、ともふもふに埋もれたり
幽ちゃんの視線追ってニュイちゃんを見ては
ニュイちゃんをもふもふで包んだら最高ヨネ……と悪魔の囁き
絢辻・幽子
コノちゃん(f03130)と
よければ、ニュイちゃんもさそって
暖炉に、もふもふに、温かい飲み物……!
冬のしあわせいっぱいねえ
ふふ。テンション上がっちゃって尻尾増量しちゃうわあ
コノちゃんとニュイちゃんはぬいぬいお得意?
……あら、動くのねえこの子。
苦手な幽ちゃんは、おふたりともふもふの観察しつつ
ぽかぬくとホットミルク(ホワイトチョコ)を楽しむわあ
ちょっとしたお遊びでふたりのそばに
せっせともふもふ毛玉ちゃんをつみつみ。
はた、と
……ニュイちゃんのもちもちにふわふわとか
それはとても、罪な触感?感触なのでは……?
(真の姿はもふもふの狐尻尾4本とぴんと立派な狐耳)
妖狐だイヌ科だというけれど。雪やこんこ! ぬくいお家で丸まるだけは退屈! なんてことはなくて。
むしろ極楽――。
「おもてなしだけでも寒さが吹き飛んじゃいそう……」
「冬のしあわせいっぱいねえ」
毛糸の床に敷かれた毛糸のカーペットという底なしもこもこに沈み込むコノハと幽子。
暖炉に、もふもふに、暖かい飲み物。最強の三拍子に更にもふ要素を添えるのが、いつからかぶわりと数の増えた幽子の尻尾だった。
「幽子おねえさんが増えて……!?」
「うふふ、これはおねーさんのテンションメーターなのよ」
なにか怪我でもしてしまったのだろうか。ぎょっとするニュイであったが、いつもの調子の幽子にほっ。お酒でも入っていたり――? いいえ素面です。
一方でねえねえ、と手招いて呼び掛けるコノハの声色も常以上に弾んでいる。
「ぬいぬいしましょ? こぉーんなにサービスしてもらっちゃった」
溢れんばかり、両腕いっぱいのカラフル毛糸を抱き上げながら。
コノちゃんとニュイちゃんはぬいぬいお得意?
時に頬ずり、肌触りを存分に確かめつつ糸を選び取ってゆく幽子の問いにはふるふるっとふたつ首が振られる。
コノハはあっさりミルク風味を味わっている最中で。煙草の煙で遊ぶように細く吐き出された息は、家の中でも冬の色。
「オレはからっきし。ニュイちゃんなんかとっても器用そうなンだけど、違くて?」
「針がね、持てないのです! ここの針さんはひとりで頑張ってくれるのですごいですよ」
「そう、動くのねえこの子」
ちょん、と指先でつついたなら、くるんと回転してみせる魔法の針はお任せあれと語るよう。
"自分"の好きに選んでいい――コノハとしては、逆に迷っちゃったりして。題材を探すべく誰かの作品でも眺めようか、ひそり滑らせた視線の先には他のなによりもっふぁもふぁと揺れるご機嫌な。
「決めた。ね、職人サン。あんなふさふさ尻尾ってお願いできる?」
「あら。幽ちゃんついにモデルデビュー?」
とびきりステキにお願いね。大増量四本の尾っぽが混ぜるあたたかな風に、お誂え向き毛足の長い毛玉たちがきゃっきゃと転がっていった。
……そこからの住民たちの仕事ぶりときたら、動画の早送りみたい!
暖炉の傍に腰を下ろせば、火の粉の音まで心地よい。ゆったりと届くリズムと彼らのてきぱき具合がなんだかアンバランスで、思わず見入るコノハの口からもすごいとの感想が零れる。
「何年練習してりゃああなるのかしら。店んクロスとか、繕い放題よネェ……」
「ニュイは針にもなれなさそうです……」
隣で寝そべるニュイは半分溶けているのでは?
まっ……たりするふたりのやや後方。暖炉に一番近いところを陣取って味わうぽかぬくドリンクはホワイトチョコ風味、しばらく静かな幽子は絶賛つみつみ中だ。ぬいぬいでなく、つみつみ。やってくる毛玉を掬い上げては狐男とタールのそばに転がし、毛玉山を生み出すお遊び。
「――ハッ」
「ナンかすげーあったかーい」
幽子さん!? ぐんにょり振り返られてもころころ笑う女狐は、ええ、素面です。
住民もこれはこれで嬉しいらしく、ノリノリでえーいと押し返すものだからいい塩梅に低反発のクッションじみている。体半分埋もれてうっとり――コノハの目を再び開かせたのは、突如として切迫した風に息を呑む幽子だった。
「……ニュイちゃんのもちもちにふわふわとか、それはとても、罪な触感? 感触なのでは……?」
「――ああ」
「しょっ、かん……?」
三者三様ざわりとする一同。
もふもふで包んだら最高ヨネ……。にまり笑むコノハの悪魔の囁きがやけに通り良く場に落とされたとき、毛玉合戦の幕は上がる。
「おふたりもとてもよくお似合いですよ!」
「遠慮しなくたっていいのよ。さあ毛玉ちゃんたち、かかりなさい!」
「あっはは、いつの間に毛玉テイマーになったの幽ちゃん!」
飛び交うもこもこ――。の、笑い声もがさわさわと。
ああ、本当に極楽。
癒し濃度の高さに早々に休戦協定が結ばれる頃には、ベルトに連れても首に巻いてもしあわせになれる、特製ファー尻尾が生み出されていた。
大成功
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アルバ・アルフライラ
ジジ(f00995)と
幼き頃より編み物を嗜む身故
慣れた手付きで棒針を操る
触れる糸は心地好く
これならば極上の品が作れそうだ
弟子が棒を手にしたと共に耳にした音
噴出しそうになるのを堪えるだけで大変だ
何、予想はしておったが…いやはや然し
お前は想像を裏切らぬなあ、ジジよ
弟子へ集る毛玉を横目に針を進める
塒の冬は冷える
肉を器を持つ彼奴には堪えよう
ならばと用意したのは腕まで覆うそれ
ふふん、所謂アームウォーマーと云う物だ
暇を持て余し仔竜の編みぐるみを作っていると
斜陽に染まる膝掛けに瞬く目
拙くとも弟子の贈り物がこうも愛しいとは
早速膝に掛け、暫しぬくもりと戯れる
――いとし子達よ、礼を言いましょう
此処は実に良い国です
ジャハル・アルムリフ
師父(f00123)と
活き活きと輝く師の顔は
そのまま光得た宝石のようで
二本の棒は魔法が如し
飛び付く毛玉をまとめて摘み掌の上
…俺には困難故、助力を乞う
その、拵えたいものがあるのだ
持った途端みしりと軋む編み棒
笑うな、師父よ
見ていられぬと毛玉達が集うも時間の問題か
…火花の出にくいものがいい
…わんぽいんと?如何すれば良いだろうか
要領得ぬ手と口ばかりを出し乍ら
やがて薔薇に茜
温かく移ろう夕陽色の毛糸で
黎明色の師に合わせた膝掛けを師へ贈ろう
師の手掛けたそれは柔らかく
戦場でついた傷も汚れも覆い隠す
…これは汚さぬようにせねばな
ありがとう、師父
…大事にする
お前達にも礼を言うぞ、毛玉たち
温かな冬
ここはとても良い国だ
塒で過ごす昼下がりにも似て、穏やかに流れるひととき。
読み物、書き物とも同じだ。針に糸と向き合っていると、寝食はおろか時間の概念すら忘れてしまいそうな。それほどアルバにとって編み物とは、長く身近な存在だった。
(「これならば極上の品が作れそうだ」)
上質な手触りの、うつくしい色味の布地を見ているとき。一番に湧いてくるアイディアは、今は大抵が其処な竜人のためのもので――ミシリと届く微かな音に吹き出してしまいかけて咳払いで誤魔化……せずやはり若干零れてしまったり。
「笑うな。折れてはいない。……未だ」
「ふ、くく、……いやはや。お前は想像を裏切らぬなあ、ジジよ」
手にしただけで編み棒が軋んでしまうなどと。ぐ、と固まってしまったジャハルを宥める毛玉たちが新たな、もういくらか太く頑丈そうな針を運んでくる。
ついでにと膝にでも飛び乗ろうとしてくるのを、針とまとめて一度に摘まみてのひらの上。
「……俺には困難故、助力を乞う。その、拵えたいものがあるのだ」
尻すぼみな声となったこと、本人は気付いたものか。ジャハルが気にしているのは今だってアルバの存在で、ああ活き活きと針仕事に向かう横顔が光得た宝石のようだ――そして彼が扱う"魔法"の行方に、幼子みたいに心動かされる。
(「師父ほどの仕上がりとは云わんが、傍らに置いて得のある程度には。……なにより、実用性か」)
贈りたいものは膝掛け。
黎明色の宝石のひとに合わせた、温かに映ろう夕景色がいい。
如何なるアルバでも、そんな弟子の心中がすべて目に見えるものではない。
背や腕を上ってもこもこと集ってゆく毛玉たちは見えるけれど。
「中々様になっておるではないか、なあ。幾もこか連れ帰るか?」
「いいや。そう言って朝寝坊が長引かれては敵わん」
なにせ良質な枕となり得る。……ひと匙分の対抗心は相変わらず尾を引いているも、ジャハルにとって彼らの指導は只ありがたく。わんぽいんとに手が止まったなら先ゆく仮縫い、次の糸はこれとにょろり差し出され至れり尽くせりだ。
(「ジジ。尤もらしくは言うが、真に暖を必要とすべきは肉の器を持つお前なのだぞ」)
先ほどの痛ましい姿が過っては眉間を揉み解し、ならばとアルバが仕立てているのはアームウォーマー。
ふふん、我ながら――。
ぱちんっ。 糸始末の音がちいさく落ちてもまだ、弟子の方は毛糸と格闘中らしい。
急かすこともなく仔竜の編みぐるみ作りで暇を潰すアルバの膝に、ふぁさと布が渡されたのは、それから数十分後のことであった。
薔薇に茜。
燃えるような朱は、溶け入るかの如く宝石の髪色へと馴染む。
拙くとも弟子の手掛けた一点もの。ぱち、と瞬いたアルバの瞳がその一瞬、なにより煌めいたこと、ジャハルだけが知っていて。
「……ふむ。毛玉らの執る教鞭も見上げたものよ」
――愛おしい。
中々口から漏れぬよろこびは、そっと撫でつける手つきに表れている。
「それで、これは」
「ああ。お前のものだ。腕にでもつけておくが良い」
まじない程度にはなるだろう、等とアルバ。腕に通せば不思議なほどに――何故なら常日頃より多くを与えられているから――ぴたりとくるやわらかさに、ジャハルは生真面目に礼を言葉にした。
「……これは汚さぬようにせねばな」
ありがとう。大事にする。
こんなときの瞳のゆらぎを、うつくしいものと慈しむ心は一方通行に非ず。
「お前達にも礼を言うぞ、毛玉たち」
ひとしきりぬくもりを堪能したなら、次の出逢いを求める途へ。
戸口までころころと見送りにくる愉快な仲間たちに、ふたりは折り目正しく向き直って。
――いとし子達よ、礼を言いましょう。
此処は実に――とても良い国だと、増えた宝物を抱き心からの賛辞を添えた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ロシュ・トトロッカ
ふわー、あったかーい!
まずは暖炉の前でちょっと一服
こくりと傾けたマグはホワイトチョコ風味
あったかいと甘いはとってもステキな組み合わせ
うんうんと満足げにうなずいて
こてんとロッキングチェアにおさまれば
ぬいぬいは初めてですと毛玉たちに耳をよせて
ふわふわもこもこと言えばやっぱり羊さん!
心をこめてちくちく、ぬいぬい、もこもこ
難しいところは針にちょっとだけ頼りつつ
まんまるひつじのできあがり!
どうかな?と毛玉たちに見せてご意見拝聴
みんなはどんなの?
他にも何か作ってる人がいれば、ひょっこりのぞきにお邪魔
君のもこもこもかわいいねぇ、なんて見せあいっこ
せっかくだから記念撮影とか?
毛玉ともこもこを並べて一枚ぱしゃり
エドガー・ブライトマン
へえーすごい。あたたかいものはこうして作られていくんだ
完成したものしか見たことなかったんだ、多分
勿論作ったこともないんだ。……これも多分ね
なぜって、王子様だからさ
理由になってないかなあ?フフ
毛玉君、作り方を教えてくれる?
多分私はこういうのが上手じゃないんだよね
手記を読み返しても、一度もそんな記録がないんだ
こういうのをやってみて、上手くいったら絶対に手記に書いてるもの
危うい手つきで道具を使いながら
毛玉君の指導のもと、毛糸を編んでゆく
あっ、このホットミルクおいしい
――よし!ようやく出来たよ!
白い手袋、右手だけ
左はいつもつけてるけど、右手が寒いんだ
これであたたかい冬を迎えられそう
ありがとう、毛玉君!
冴島・類
すっかり近距離で耳打つのに慣れた
毛玉君達のふわふわがなんとも擽ったい
可愛いし、暖かいねえ君達とこの国は
糸を手繰るのは慣れっこなのに
かたちを残すための編み物は
あまりしたことないから教えてくれるかい?
暖かい白を側に、揺れる椅子に腰掛けたら
鉤針と彼らの糸に力を借りて
そうさな…あみぐるみ、と言うのを編んでみようか
君らのかけらから成るならば
気の良く懐こい子になるだろう?
かたちは、糸がどうなりたいかを聞きながら
囁きに、返して笑い
後は、うーん
飲み物を飲んで悩み
浮かぶ様がいくつか
可愛らしい襟巻きを、作ってみようか!
木枯しに負けず暖かに
外をかける子らに贈れるように
練習として教えてもらいながら
良い冬に成ると良いね
リリヤ・ベル
マフラーなら、わたくしにも編めるでしょうか。
冬にも枯れない緑色の毛糸を分けていただいて、
もこもこのみなさまに教わりながら、すこしずつ編み進めてゆきましょう。
あたたかな暖炉。
ふわふわとした座り心地はきもちよくて。
あたたかいよるは、しあわせなのです。
ついついこころがゆるみます。
だんだん慣れてきた編み物は、決まったゆびはこびが眠気を誘ってうとうと。
……は。
おきています。おきているのですよ。
続きをちゃんと編みましょう。
おおきいのですもの。ながく、ながくしないといけないのです。
…………はっ。
……お、おきています。おきています……。
ふやふやと居眠りをしながら、編み上がったマフラーはちょっとだけでこぼこ。
綿花の灯に導かれ、膝を突き合わせることとなった猟兵がここにも四人。
それぞれがそれぞれ、ぬいぬい教えてください、とぴしっと手を挙げたものだから。愉快な仲間たちはうれしい悲鳴で大忙し!
まかせて、そう言っているのだろう。聞き分けることにも、この擽ったさにも随分と慣れた気がする。かわいいし、あたたかい――頬のあたりでふわふわする彼らが落ちぬよう、類は自然からだを傾けて。
「糸を手繰るのは慣れっこなのに、勝手が違うものだなあ」
「私は完成したものしか見たことなかったんだ、すべてが新鮮だよ。あたたかいものはこうして作られていくんだね」
はじめて――多分、多分ね。
じーっと手元に集中するヤドリガミの横で、エドガーは自身の手記をぱらぱらと捲っている。やはり。一度もそんな記録はない、試して上手くいったなら絶対にこの中で文字も躍っているはずが。
ぱたむ、閉じれば起きたささやかな風にはっとして顔を上げたリリヤが左右を窺い見る。
……寝ていた?
きのせい、きのせい。
「あったかいもん、眠たくなっちゃうよねぇ」
「そうでしょうか。よいのですよ、帰りにわたくしが起こしてさしあげるのです」
暖炉脇にてのほほんととろけるロシュの一声にだって、大人ぶりたいレディなのだ。
ひとりだったらとっくに夢の中だったかも――テーブルの下、ぎゅむっと握りしめる作りかけマフラー、娘は気合を入れ直す。冬にも枯れない緑色の毛糸。これだけはなんとしても編み上げなくては。
「ぼくね、眠気覚ましには甘いのって聞いたことあるよ」
「脳に糖分を――と、はは。果たして僕にも効くのかどうか」
「ホットミルクのような……おいしいこれはなんという味だったかな? 皆のものとは違うのかい?」
熱の移ったマグを抱いて席へ戻り来る人魚少年に、スペースを開けてあげる男二人。
器用なもので、鉤針を扱う手指は数分前よりも格段に進歩していた。類。お題目はあみぐるみ、毛玉たちのかけらから成るならば、きっと気の良く懐こい子になる――見立て通り。すくすくと生えた突起は翼だろうか。針のゆくえは糸と"相談"しては笑み、着々と。
時折その手捌きを眺めちいさく歓声を漏らすエドガーはといえば、些か危うい手つきだ。
先のまるい針でなかったなら、指が穴だらけになっていたかも。多分、多分の理由は「王子様だから」。はじめ不思議そうにしていた毛玉らも見守るうちすっかり納得したらしい。
おうじさまは、ぬいぬいをしないひと。でも今日は、一緒にぬいぬいしたいひと。
「ああ、ありがとう。毛玉君。こうだよね、この隙間に……」
「その横じゃないかなぁ?」
「した、だと思うのですよ」
――惜しい、正解はもう一列そのまま縫い続けて!
王子に人魚、フード娘。一斉にもこもこ集まり教えたがる毛玉たちの光景に、ついつい肩を揺らした類の手元もはじめてよれてしまったり。
普段使いする得物の慣れも大きいのだろうか。
一番に完成したのは、やはりといえよう類の鴉あみぐるみであった。
「……馴染みのある姿に落ち着いたね、君はまた」
それでよかったのかい? 問えば、濡羽色のふわもこはくわりと嘴を開閉してみせる。そうか、そうか。指を差し伸べれば軽く羽ばたき飛び移る彼は、すこし動きが鈍いくらいで、利口にも類の次作を手伝わんと糸を咥えはじめた模様。
「かっこいーい! ね、ね、ぼくの羊さんともともだちになってくれる?」
きらりんと瞳輝かせたロシュ少年の手の中には、まだ足が数本と綿の足りないあみぐるみ。いつか夢に見たもこもこみたい! 難しくとも毛足の長い糸を選んで、心を込めてちくちく、ぬいぬい。精一杯もっこもこに仕立てた表面はいまでも十分貫禄がある。
「ふふ、そちらは愛らしい。それなら少しでも早く共に遊べるように、お手伝いしなくては」
ね。そう、類が目配せすると鴉ぐるみは綿を咥え直してロシュのお手伝いへ。
わ! それじゃあね、いっぱい丸めてもこもこさせてね……と身振り手振り、見るからに微笑ましい劇場が繰り広げられてゆく。
あたたかな暖炉。ふわふわな座り心地――こころもゆるむしあわせの、あたたかいよる。
……そうなのだ。
加えて決まった指運びの繰り返し、だから。
「――よし! ようやく出来たよ!」
「ひゃわっ」
傍でエドガーの声がぴっかぴか響く頃、再び眠りの淵を彷徨っていたリリヤは椅子ごと跳ねてしまう。早鐘を打つ胸を押さえつつ、見遣ればそこには白手袋を凛々しくはめる王子様がいた。とてもドヤ顔で。
「かたほうだけ、……です?」
「うん。左はこの通りいつもつけているからね、右手だけ寒かったんだ」
ひらりと翳される左の手は、暖炉のあかりを透かしてもその白の下を覗かせない。ただ、ひとひら、落ちた紅色があるだけで――やっぱり寝惚けてしまっているのかも。くしっと目を擦るリリヤ。
さむい。さむいのはいけないこと。
「あたたかなら、おめでとうございます」
「ありがとう、自信作だとも。――おっと、キミのヘビ君は大丈夫かい? なんだか元気がないようだ」
ヘビ君――!
うんと長く大きく、渡したいひとを脳裏に思い描きながらぬいぬいしてきた緑色は確かにでこぼこにょろりんとして……、いっそかわいいお目目をつけてみるのも? 直後過った着用イメージに、ぶんぶんっ!
かぶりを振ってリリヤは「ここからもっとりっぱに育つのです」キリリとしてみせた。
外をかける子らが、木枯らしに負けず暖かに在れるように。その贈り物の、練習として。
類が可愛らしいねこの顔付き襟巻を編み終えたとき、あちこちで完成! の声が上がってきた。
「マフラーに、羊ぐるみ。――うん、気持ちのこもった仕上がりです、糸たちも嬉しそうだ」
「! そうなのです、マフラーなのです」
「鴉さんもありがと、おかげで捗っちゃった!」
どことなく先生に見てみてーして褒めてもらうような構図。
どうかな? 続けてくるり駈け寄るロシュに尋ねられた愉快な仲間たちは、もちろん大跳ねして大絶賛である。一仕事終えた戦士の顔をする少年少女――みんなのもこもこかわいいねぇ。飲みやすい温度のまま保たれた、マグの中の甘さはもっと増した心地。満足げに見渡すロシュの頭にぴこん! ひとつの閃きが。
「そうだ。せっかくだから記念撮影とか?」
「きねんさつえい」
耳慣れぬワードに瞬くエドガーも手招いて。並べる新たないのちを得たもこもこズと、お集りの先生兼住民らをともにパシャリ!
ながーいマフラーを抱き上げるなどしてひかえめに協力したリリヤは十分なあたたかさだろう、そのナイスもこもこを一足お先に味わうこととなり。
「もうふ……これはお布団の、もうふ」
「ぬくぬく思い出のひとつだね。ふふー、今日もたのしい夢が見られそうっ」
にこにこロシュ。
――なるほど。私の手記のようなものか。
もしかしたら之もはじめてではないかも。はじめてかも。
いいや、そんな些事よりも今は、と、清々しい面持ちをして「ありがとう、毛玉君!」。これであたたかい冬を迎えられそうだとエドガーが微笑めば、窓の外。
本降りになりはじめた本物の雪を穏やかに見つめ、類が頷いた。
良い冬に、成ると良いね。
●
綻んで失せた雪の国。永遠の氷が解け、目覚めたひとりのアリス。
冬が来て。
さみしい少年をあたたかく迎え入れるひとつめの国がもこもこランドであったこと。未来はきっと、偶然でもなんでもない、皆で繋げた糸の上。
大成功
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