Operetta the Vendetta
「あら?」
少女が愛らしく小首を傾げた刹那、その白い頬の僅か外を銀弾が掠める。背後で響くは、白磁の花瓶の砕け割れる音。
眼前には、いつの間にかそこに居た黒衣の男。己へ銃を突きつける彼を前に、
「どうして?わたし、あなたになにもしていないのに」
心底不思議そうに問いかける少女。可憐な貌はただ純粋な疑問のみを映し、明確な殺意を前にしながら微塵の恐怖をも見せない。まるで、己の死という結末を想像できていないかのように。
「……………」
男は、その問いに言葉を返すこともなく。其に代えて、少女を見据える昏い瞳…漆黒の憎悪の燃える瞳と、再度放たれた銃弾を以て返答とした。
「きゃっ。…もう、おしえてくれないなんて、いじわるなひと。いいわ、もういいわ」
驚き飛び退き銃弾をかわした少女が、可愛らしく頬を膨らませてみせた直後。
彼女の背後と、男の背後から響く無数の規則正しい金属音。
「いじわるばっかりのおじさんは、しんじゃえばいいんだわ!」
獣の意匠を施した漆黒の鎧に身を包んだ者達。或いは、鎧に擬した漆黒の獣達。
少女の宣言と共に襲い来たるそれらを前に、男の総身が躍動し、銀弾の嵐が乱舞する――。
●
「良く集まってくれた、猟兵諸君」
グリモアベースを訪れた猟兵達を迎えたのは、軍服じみた装いに身を包んだ少女。未だあどけなきその貌は、しかし傲岸なる笑みの形を取っていた。
「黄昏大隊指揮官、グリモア猟兵、ギージスレーヴ・メーベルナッハ(AlleineBataillon・f21866)である。呼び難ければ、ギジィとでも呼ぶが良い。以後、宜しく頼もう」
集う猟兵達を見回しつつ名乗る少女…ギジィは、早速とばかりに本題へと入る。
「此度、貴殿らに向かって貰うのはダークセイヴァー。その一地方にある領主の館にて、オブリビオン同士の戦闘が起こっている」
オブリビオン同士の戦闘。その言葉にはっとした表情を見せる者もいるだろうか。
「察しの通りよ。『同族殺し』と呼ばれるオブリビオンが、かの地域の領主であるヴァンパイアを襲撃しているのだ」
同族殺し。
何らかの理由で、同族たるオブリビオンを襲撃するようになったオブリビオン。
かの世界のオブリビオン達にとって、最も…猟兵以上に…忌むべき存在である。
「此度の襲撃者は、元は人間の身でありながらヴァンパイアを狩らんとした者の成れの果てだ。あらゆる手段を探り続けた結果として狂気に堕ち、死した後に彼奴らと同じオブリビオンと成り果てた」
そして本当にヴァンパイアを狩り得る程の強大な力を得た。皮肉なものよな、とギジィは嗤う。
彼の目には、もはや全ての存在がヴァンパイアとしか映っておらず、故に人間にとっても危険な存在である彼だが。元々ヴァンパイアである存在に対し襲いかかるのは、ある意味必然と言えるのかもしれない。
「一方の領主ヴァンパイアだが…これがまた、愛らしい娘の姿をした奴でな」
幼い少女の姿に違わぬ、純真にして悪意なき世間知らずの少女とのこと。
だが、そこはオブリビオン。悪意はなくとも、自分のために周囲の者が犠牲になるのは当然、という思考の持ち主。そこに幼さ故の視野の狭さと容赦の無さが合わされば、己こそ世界の中心と信じて疑わぬ立派な暴君である。
「然しそんな娘であってもオブリビオンとしては中々に強大でな。配下の者達と合わされば、我ら猟兵のみにて討ち果たすは叶わぬほどの存在となる」
業腹だがな、と鼻を鳴らすギジィ。然し、直後に再び笑みを浮かべれば。
「いずれも強大な、人類の敵たるオブリビオン同士の衝突。利用せぬ手はあるまい?」
争いに介入して領主ヴァンパイアを殲滅し、然る後に同族殺しをも討ち倒す。それが此度の依頼である。
ギジィが語る作戦の内容はこうだ。
現場は小高い丘の上にある領主の館。時刻は夜半、既に領内の村は寝静まっているだろう時間帯だ。
転移時点で、館内にて戦闘が始まっているので、猟兵達はその中へと突入。
まずは領主の館の警備役であろうオブリビオン達を殲滅し、然る後に領主ヴァンパイアを仕留める。この間、同族殺しへ積極的に攻撃を仕掛けることは推奨しない。領主は猟兵の力のみによる討伐の困難な存在。奴より先に同族殺しが斃れてしまっては作戦の意味が無いが故に。ただ、そうならない程度に同族殺しの消耗を狙う手立てを講じるのは悪くないだろう。
そして領主を撃破したらば、後は同族殺しを仕留めるのみ。奴も領主に劣らぬ強力なオブリビオンであるが、ここまでの戦いを単独で進めてきた以上、少なからず消耗しているはず。故に十分撃破は可能である、とギジィは見立てる。
「以上、問題はないな?では、転送を開始する」
ギジィが片手を差し出すと、その手の上にグリモア…彼女の掲げる『黄昏大隊』の紋章を模したそれが輝きだす。
「夜を忘れし者達に、黄昏を。――征くがよい、猟兵諸君。貴殿らに武運あれ」
五条新一郎
復讐劇を始めましょう。
というわけで、此の度新たにMSとなりました五条新一郎でございます。以後よしなに頂ければ幸いであります。
さて、初めてリリースさせて頂きますシナリオはダークセイヴァー、同族殺しによる領主襲撃への介入でございます。
戦闘を主体としたリプレイになるかと思っておりますが、頂きましたプレイング次第ではまた別の可能性も開けるやも?
以下、補足情報です。
●戦場
領主館、時刻は深夜。
中は広く天井も高いので、立体的な機動も問題なくこなせるかと。
ただし、随所に同族殺しが仕掛けた罠があるようです。
●シナリオの流れ
第一章:護衛オブリビオン戦。
第二章:領主ヴァンパイア戦。
第三章:同族殺し戦。
※第二章までは同族殺しとの共闘となります。
●領主ヴァンパイアについて
一部ユーベルコードにおいて、対象のトラウマを惹起する効果があります。
プレイングにおいてトラウマ内容を指定頂くと、より良い感じに描写できるかと。
●同族殺しについて
完全に発狂しているので意思疎通は不可能です。
ただ、発言や行動の内容によっては何らかのリアクションがあるかも?
以上となります。
それでは、皆様のプレイングお待ちしております。
第1章 集団戦
『怪物に堕ちた黒騎士の群れ』
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POW : リピート・ナイトアーツ
【正気を失いなお残る、磨かれた騎士の武技】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
SPD : 無数の飢牙
【鎧】から【無数に伸びる蛇や狼、竜の首】を放ち、【噛み付きによる攻撃をし、拘束】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 鎧装転生・鋼獣群集
自身の【五体と生命力】を代償に、【吸収してきた生命の形をした鋼の生物たち】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【鋭い探知能力の下、生命力を吸収する牙や爪】で戦う。
イラスト:にこなす
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
シャルロット・クリスティア
皮肉なものですね……。
忌むべきものと同じ存在に成り果てたからこそ、望んだ力を手に入れた、というのは……。
……思うところはありますが、今は彼を追うしかありませんね。
阻むのは黒騎士たちの末路……かつて、彼らがどのような思いでその武具を手に取ったのかは、知る由もありませんが。
ただ吸血鬼に使役されるだけというのは本意ではないでしょう。仕留めさせていただきます。
室内ならば、反射させる壁や天井には事欠かない。
いくら技量に秀でていようと、不意の角度からの攻撃は捌くのは困難です。
味方や同族殺しへの誤射をするようなヘマはしません。
敵だけ、確実に撃ち抜かせて頂きますよ。
黒騎士達の群れを乗り越え、領主を追う同族殺しの男。
その姿を目で追うシャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)の表情は複雑であった。
(皮肉なものですね… 忌むべきものと同じ存在に成り果てたからこそ、望んだ力を手に入れた、というのは…)
されど、今できるのは彼を追うことのみ。その為には…と、己に迫らんとする黒騎士達を見据える。
かつて、彼らがどのような思いでその武具を手に取ったのかは、知る由もないが。
「ただ吸血鬼に使役されるだけ、というのは本意ではないでしょう。仕留めさせていただきます」
冷然と、或いは凛然と宣言し、愛銃マギテック・マシンガンを構え発砲する。
ただし、壁や天井へ向けて。
己へ向けての発砲ではない、そう見た騎士達は一気にシャルロットへ肉薄せんと駆け出す…が、それは大きな、そして致命的な間違いであった。
「!?」
突如、死角からその鎧を貫いた弾丸。それを皮切りに、彼らの側面、頭上、或いは背後から次々と術式弾頭が飛来し、彼らに襲い掛かってくる。
それは即ち跳弾。壁や天井、時には柱までも使った多重跳弾射撃、シャルロットによるユーベルコードの域まで達した超絶射撃技巧「災厄の檻(パンドラ・ジェイル)」。
「あなたは既に檻の中……正面から飛んでいくばかりが、弾ではありませんよ」
成功
🔵🔵🔴
リオン・エストレア
相手が同じ吸血鬼であろうと、元人間であろうと……仇なすなら敵だ。敵ならば…屠らなくてはな。
護衛のUCに対し、UC【Ritter Angriff】を使用。
一時的に目が蒼く輝いた状態になる。
口調はプロフィールの”覚醒時”に変化。
相手が騎士達なら、こちらも騎士団で行く。
まだ未熟ではあるが、俺自身、主としての【威厳】も持ち合わせている事だしな。
実は後もう1つ狙いがある。
死霊騎士団の総突撃で罠を誘発させ、護衛と同族殺しを巻き込みつつ、後続の猟兵のリスクを減らす作戦だ。
初めての参加故に文章が拙くて済まない。アドリブや多少の改変もどんどんして欲しい。
ウィーリィ・チゥシャン
今回の作戦について思うところがあるのは否定しない。
それでも、同族殺しに救いを与える為にはこの戦いを乗り越えて彼の元に辿り着かなければならない。
だから。
「悪いけど、邪魔者には退場してもらうぜ」
同族殺しを攻撃に巻き込まない様に注意し、黒騎士達の相手を引き受ける事で彼の負担を軽減させる。
奴らの攻撃を盾代わりの鉄鍋で受け止めるフリをして【フェイント】で身代わりにし、奴らの連続攻撃を回避する。
そして生じた隙に【飢龍炎牙】で奴らを一掃し、残敵を炎の【属性攻撃】を付与した大包丁の【二回攻撃】で仕留めていく。
狂騒の中心、男と領主を蒼き双眸に映し、リオン・エストレア(蒼血の半魔、昏き蒼焔の残響・f19256)は刹那、黙考する。
片や己と同じ吸血鬼。片や旧ては人間であったもの。
思う処はある。なれど今やいずれもオブリビオン。世界に仇なす敵。
(敵ならば…屠らなくてはな)
決意は蒼焔となって身より噴き上がり、随う残響の輪郭を朧と浮かばせる。
思う処あり、という点に於いては今一人、ウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)も同様であった。
如何に強大なるオブリビオンであるとて、争っている処へ乱入し諸共に潰す、という作戦である。卑劣と謗る向きもあろう。
それでも、彼がこの作戦への参加を決めた理由。真っ直ぐに見据えた瞳の先には、吸血鬼を狩らんとして自らも同類へ堕ちた男。
(救って、やらなきゃな)
決意と共に、愛用の大包丁…料理人を志すが故の、その得物を握る手に力を籠める。
同族殺しへ立ち向かわんとしていた黒鎧の騎士達、その一部が彼の蒼と紅、二人の少年に気付く。
纏いし決意は敵対の意思、そう判ずれば直ちに反転、その意を引き裂かんばかりに各々の得物を構え駆け迫る。
己を失って久しかれども、その動きに一切の油断は無く…然し。
「忘れられし我が騎士達よ…」
静かな、然し力強い声音でリオンが呼ばわるは、その周囲に随い続ける残響。
「昏き世界でもまた、私に従うと言うのなら…」
光を放つ蒼き瞳、その輝きが強まるに比して、残響は次第にその輪郭を確と浮かばせ。
「我らと共に来い!」
一際強く、高らかに発すれば、そこに現れたるは闇蒼の甲冑に総身を包みし騎士の一団。その姿は勇壮なれど、冑の合間、瞳ある筈の空洞より覗く蒼白き灯火は、彼らが生あらざるモノであると示す。
然し彼らは命尽きせど尚、若き君主の命に応え参ずる。其は紛れもなき忠義の賜。
「華々しく死後を飾るとしようか!総員、突撃せよ!」
騎士の群れには騎士の軍団を。号令一下、闇蒼の騎士達が、迫る漆黒の騎士へと突撃していく。
それと同時に、ウィーリィもまた駆け出していた。
同族殺しの男、彼の下へと辿り着くには何よりも先ず、眼前の騎士達を排除し乗り越えねばならぬが故に。
「悪いけど、邪魔者には退場してもらうぜ」
不敵なる宣言と共に、大包丁が紅蓮の焔を纏う。駆けながら、其れを思い切り振りかぶって。
「喰らい尽くせ、炎の顎!!」
裂帛の叫びと共に振り下ろせば、放たれた炎は膨れ上がり広がり、龍が如き姿となって黒騎士達へと襲いかかっていく。
龍の顎に喰らいつかれた黒騎士達を、闇蒼の騎士達が吹き飛ばし、踏み砕く。
彼らの踏み砕くは黒の騎士のみならず、その経路に仕掛けられた同族殺しの罠をもまた破砕していった。
然し彼らも精強なるもの。紅蓮と闇蒼の蹂躙を乗り越えた騎士が、疾走するウィーリィを迎え撃つ。
槍矛を構え、その紅衣を纏いし身へ突きを繰り出す。己見失って尚曇らぬ鋭い刺突に、ウィーリィは咄嗟に背負った中華鍋を引っ張り出して受けんとする。
鍋の底が槍先を弾けば、騎士はその反動を利してウィーリィへと肉薄、更なる連撃を繰り出さんと迫る…が。
「悪いな、俺はこっちだぜ!」
追撃を予測したウィーリィは、中華鍋を即座に手放し囮とし、騎士の側面へと回っていたのだ。
完全に虚を突かれる形となった騎士に、その動きへの対応は間に合わず。
炎纏った大包丁の袈裟懸け、更に返す一斬を受け、漆黒の鎧は崩れ落ちた。
闇蒼の騎士団は、中心にて争う同族殺しの男と、領主のもとへも迫っていた。
「…………!」
槍の一撃を咄嗟に横跳びで回避し、彼らの来たりし方向へ視線を巡らす。
「…………」
その瞳は憎悪と殺意に昏く染まり。駆ける蒼と紅の少年達を数瞬睨むと、再度領主へと向かう。今は貴様だ、と言わんばかりに。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
エメラ・アーヴェスピア
ついこの前まで戦争をしてたのにもう次の依頼…本当に猟兵は忙しいわね
まぁ、泣き言は言っていられないわ…時間よ、猟兵の仕事を始めましょう
とりあえず『突き進め我が不屈の兵よ』
…名前と違いその場で盾を構えて防御陣形を取らせるけれど
攻撃には【盾受け】で【かばう】させるわ
自分の安全が確保したなら【情報収集】
罠が仕掛けられているのでしょう?その場所を【罠使い】の知識も使って探すわ
場所を特定後、兵が盾で敵を弾き飛ばして罠にかけさせる
罠も敵も減らせて一石二鳥ね
それと黒騎士や同族殺しの動きも記録よ
後者はこの後の為に
前者は…折角見せてくれる武技、記録を取っておけば私の兵器に役立つのではないかしら
※アドリブ・絡み歓迎
開かれた戦端を翠晶の瞳で眺めながら、エメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)は嘆息を一つ。
「ついこの前まで戦争をしてたのにもう次の依頼…本当に猟兵は忙しいわね」
手の中で開いた懐中時計の文字盤を睨む。何しろヒーローズアースにての大戦終結から一週間も経っていないのだ。ぼやきたくなるのも無理からぬ話か。
「まぁ、泣き言は言っていられないわ」
気持ちを切り替えんとばかりに懐中時計の蓋を閉め、再度戦場へ視線を向ける。彼女の姿を認めた黒騎士の一団が迫り来るのが見えた。
「時間よ、猟兵の仕事を始めましょう。セット!」
宣言すると同時、虚空より出で戦場へ降り立つのは魔導蒸気機関仕掛けの重装兵。通常兵とは段違いの重量を持つ、総勢62体ものそれが同時に着地すれば、エメラの小柄な体が僅かばかり跳ねる程の振動が館を揺らす。
「私を守りなさい」
命令受諾。兵士達は蒸気を一際勢いよく噴出し応え、黒騎士達の振るう剣や矛、槍や斧といった攻撃を大盾で以て受け止めていく。
その合間に、エメラの身に着けた種々の端末が情報収集を開始する。残存する罠、黒騎士並びに同族殺しの挙動。
黒騎士達の技は己を失って尚巧みであり、重装兵達もその全ては防ぎきれず徐々に損傷が増えていく。それは即ち更なる改良の余地があるということ。
このデータは必ずや役に立つだろう…思案しつつ流した視線が一点に留まる。
「…そこね。三番機、敵を右30度の方向へ吹き飛ばしなさい」
命令に応え、重装兵の一体が相対する黒騎士に対し、攻撃を弾くに合わせて盾を突き出し吹き飛ばす。
堪えられず柱の傍らへ弾き飛ばされた彼の脚へ、太いスネアが飛び出し拘束する。もがく鎧を、遠間から飛び来た弾丸が撃ち抜き止めを刺した。
その一連を見届け、エメラは同族殺しの男へ視線を移す。
同族殺しの男は、群がる黒騎士達を乗り越えつつ尚も領主たる少女へ迫らんとする。その動きは執拗でありつつも無駄が無く。時折、姿を消したかと思えば付近の暗がりから少女へ刃を突き出す攻撃も見せる。
と。
「……?」
身を翻し黒騎士の攻撃をかわす同族殺し。その身に纏う黒衣の間、胸元で何かが光ったように見えた。
成功
🔵🔵🔴
鞍馬・景正
駆虎呑狼の計、というものですね。
それぞれと万全な状態で切り結びたい欲も無くはありませぬが、勝つ算段を捨て去るも愚かというもの。
さて、先ずは前座が如何程か楽しませて頂きましょうか。
◆戦闘
突入後、【視力】を凝らし周囲の状態、此方にもっとも近い敵の数など素早く把握。
もし光源が乏しければ【暗視】にて注視。
鎧の下に潜む害意を【第六感】で感じ取り、此方に首の向かってくる拍子を【見切り】、掻い潜る形で接近。
【影踏】による【鎧砕き】の太刀を浴びせ、次の敵を仕留めて参りましょう。
もし回避が難しければ、脇差による【武器受け】で刀身なりを噛ませ、動きを止めた隙に【衝撃波】による遠間からの斬撃で騎士本体に反撃を。
同族殺しの銀弾が、また一体の黒騎士を撃ち倒す。続けて放たれた二の弾が、少女吸血鬼の腕を浅く抉る。
その様を瑠璃の瞳に映しながら、鞍馬・景正(天雷无妄・f02972)は胸中の疼く感覚を自覚する。
共に強大たるオブリビオン。万全たる状態のあれらと切り結ばんと欲するは、死線欲する種族の性か。
なれど此度の作戦意図を理解できぬ程の戦狂いには非ず。駆虎呑狼の計。打ち勝つ為の算段は捨てぬ。故に。
「先ずは前座が如何程か。楽しませて頂きましょうか」
視線巡らせれば、向かい来たる黒騎士の姿。疼きを抑える役には立とうか。濤景一文字、荒波の如き威を放つ愛刀を構え、踏み込む。
長剣と太刀が交錯する事、幾度。人の意識と心失って尚、その剣筋は鋭く。景正をして、容易く決するには至り得ぬ敵。
…正確には、その技の冴えのみが理由には非ず。景正の直感…数多の戦経たが故の感覚が、思い切った攻勢を引き止めていた。何かがある、と。
なれど徒に切り結ぶのみでは埒が開かぬ。手首を返して鍔迫り合う剣を逸らすと、そのまま斬り上げんと太刀を振り上げ。
刹那、鎧の胸甲が歪み、牙持つ獣頭が伸び出でた。
其は景正の頚を狙い、真っ直ぐに喰らい付かんとしたが。
その獣頭を、太刀の一撃が断ち割る。
次いで伸び出る別の獣頭もまた叩き割られ。同時に元の鎧自体にも深い刃傷が刻まれていく。
鎧そのものからの奇襲、其を警戒した景正の、一手先んじた後の先。奥義『影踏』であった。
「如露亦如電――留まる心はなく、二重、三重、猶四重、五重」
黒鉄の鎧にすら刃を徹す、重く巧みな剣閃の嵐。黒騎士だったモノが、その形までを失うまでに、長い時間は不要であった。
成功
🔵🔵🔴
アイ・リスパー
「オブリビオン同士の戦いということなら、この隙を逃すことはできません!」
私も館に突入し、ヴァンパイアと同族殺しの排除にあたりましょう。
「同族殺し――吸血鬼殺しさん、ここは一時共闘です!
お互い手出しなしで行きましょう!」
相手に言葉は通じないでしょうが、一応声をかけつつ領主配下たちとの戦闘を開始します。
「あなたたちの攻撃はシミュレーション済みですっ!」
【ラプラスの悪魔】を起動。
敵の攻撃をシミュレートし、その軌道を見切ります。
攻撃の軌道が分かれば回避は難しくありません!
「オブリビオンは骸の海に還るのですね!」
【マックルウェルの悪魔】で炎を生み出して燃やしたり、氷の棺に閉じ込めます。
アドリブ大歓迎
「初期パラメータ入力、変動補正範囲設定、完了。シミュレーション実行」
仄かに光るホログラフ・モニタに敵の姿を映し、アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)の声がプログラムを走らせる。
モニタ上で展開される行動シミュレーションの向こうから、現実の敵…黒騎士の一体がアイを目掛けて右腕ガントレットの変じた蛇頭を伸ばし噛み付きにかかる。
「あなたたちの攻撃はシミュレーション済みですっ!」
身を捻り、飛び退く。突入の後、ここまで黒騎士達の戦闘、そのデータを収集・分析してきたアイは、既に彼らの攻撃軌道の予測を完了していた。
予測が可能ならば、回避は困難に非ず。襲いくる獣の牙を巧みにかわしながら、アイは次なるプログラムを起動する。
「エントロピー・コントロール・プログラム起動。オブリビオンは骸の海に還るのですね!」
宣言と同時に、黒鎧の獣が猛火に包まれる。マックスウェルの悪魔。熱エネルギーの急速な変動を実現するプログラムによって、その空間は炎に包まれたのであった。
「同族殺し――吸血鬼殺しさん!」
更なる反撃がないことを見届けると、アイはその向こうで別の黒騎士と切り結ぶ吸血鬼殺しの男へ呼びかける。
「ここは一時共闘です!お互い手出しなしでいきましょう!」
意志疎通が不可能であるのは百も承知。行為そのものに意味はなくとも、果たしておきたい行為であったが故の言葉であったが。
「…………」
一瞬、男の視線がアイを見た。その視線は果てしなく昏い憎悪と殺意に溢れ、瞳に理性の輝きはなく…
アイをもヴァンパイアとして狩らんとせんばかりの様相に、喉を鳴らす音を発したのはいずれか。男は視線を外すと、再び領主を見据え駆け出していく。
成功
🔵🔵🔴
願夢・貴宝
化け物を討つなら
己も化け物とならぬ様に心せよ
と諌める者はいなかったのか
あるいはいなくなったからこそ
成り果てたか
どちらにせよ同じ化け物と成り果ててでも殺したいと願った相手との大一番だ
花を持たせてやるのが情けであり慈悲だろうよ
先ずは露払い
と言いたいが発狂し誰も彼も理解出来ん者の前に立つのは得策ではないな
技能『目立たない』と
戦闘の余波で照明が壊れ闇が生まれるなら技能『闇に紛れる』も使用
護衛と同族殺しの認識から外れつつ
UC『絶望の福音』で護衛の動きを予測
技能『二回攻撃、見切り』で同族殺しに致命打となる攻撃を捌き護衛を削る
無理にトドメを狙わず
同族殺しに任せるよう立ち回ればこちらが消耗する事もないだろう
松明と化し燃え上がる黒鎧の獣、一際明るく照らされる柱や調度が、対角の陰影をより濃く、深くする。
その闇に溶け込むが如くして戦場を渡る猟兵が一騎。願夢・貴宝(ジョン・ドウ・f23301)。闇に沈む四肢が躍動する中、唯一の色彩――真紅の瞳が、三騎の黒鎧と対峙する同族殺しの男を捉える。
(化け物を討つなら、己も化け物とならぬ様に心せよ…と、諌める者はいなかったのか)
心中、彼の男の在り様に思い馳せる。
(あるいは。いなくなったからこそ成り果てたか)
其は推し量るより他に無かれども。確信できることはある。
(どちらにせよ、同じ化け物と成り果ててでも殺したいと願った相手との大一番だ)
視線を騎士達の向こう、無邪気に過ぎる声を上げ彼らを応援――或いは駆り立てていく領主の少女へ一時、向けて。
(花を持たせてやるのが情けであり慈悲だろうよ)
視線を最前線へ戻した時には、その身は捉えた先へ向け跳躍していた。
黒波じみて連ね来たる刃を、同族殺しの男は巧みに身を逸らし、捻り、かわしていく。都度、その手より閃く剣閃が、轟く銃声が鎧を打つ。
なれど黒鎧達もまた、騎士として高めし武技を未だ宿すモノ達。振るわれた剣を手甲にて受けた一騎が身を当てて男を崩し、別の一騎が槍を突き出す。辛うじて飛び退きかわした男だが完全に姿勢が崩れた。
そこへ止めとばかり、巨斧を振り上げ飛び込んできたるもう一騎。咄嗟に剣を掲げる男だが、間に合うか否か…。
だが、その一撃は男より逸れ、傍らの木台を粉砕するに留まる。
男は見た。横合いより飛び込んできた黒影が、騎士の脇腹と太股を刃で薙ぎ裂いていく様を。
姿勢立て直せば、斧を持ち上げかけた黒鎧の喉元を剣で貫き止めとする。
別の騎士の足甲を刈り、そのまま闇中へ跳び戻った貴宝は、その騎士の冑を同族殺しの弾丸が貫くのを見届ける。
黒騎士達を削り、同族殺しが止めを刺すよう立ち回る。それが彼の方針。
(露払いとしてはこんな処だろうよ)
再び逃げ始めた領主を追いかける男を、闇の中から追っていく。
成功
🔵🔵🔴
テラ・ウィンディア
之が噂の同族殺しか
本来なら解りあいたいけど…残念だ
基本この章では無視して己の行うべき役目を果たす
取りあえず今はオブビリオンとも共闘しないといけないんだったな
【属性攻撃】
剣太刀槍に炎付与
【戦闘知識】で敵の陣形を把握
更に同族殺しの立ち位置も補足して妨害しない位置を見極めれば
敵陣の真ん中へと突入
槍で【串刺し】にして
更に周囲の敵は【早業】で剣と太刀に切り替えて斬り捨て乍ら
敵が密集しつつ同族殺しを巻き込まない位置を把握すれば
グラビティブラストによる範囲攻撃による殲滅
グラビティバスターも同時に使い【一斉放射】で破壊力を増強!
これでも殲滅戦は割と得意だぞおれは
だから…しっかりとその悪夢から解放してやるよ!!
駆け去る同族殺しを見届けたテラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)は、己の前に立ちはだかる黒騎士達へと視線を移す。
かの男とは分かり合いたかったが、それは恐らく叶わぬ事。残念とは思うものの、執着はしない。それより、今は眼前の堕ちた騎士達だ。
「おれの役目、果たさせてもらうぜ」
宣言と同時、携えた得物が炎を纏い轟と燃える。其に照らされし少女の貌は、愛らしくありながらも戦士の威風を纏っていた。
視線を巡らせ、騎士達の陣容を確かめる。領主への道を妨げるように複数体。長い回廊を立ち塞いでいる。
同族殺しは…その更に向こう、曲がり角を曲がっていこうというところだ。
「…なら、遠慮は要らないな!」
疾風が如く踏み込めば、猛火と共に突き出した槍が至近の黒鎧を串刺しとする。横合いから殺到する兇刃を、抜き放った双つの刀剣で捌き返しの刃で斬りつける。迸る紅焔が、斬り裂いた刃痕を灼く。
槍を回収しつつ飛び退けばそこには騎士達が密と集っていた。即ち好機。
「しっかりと、その悪夢から解放してやるよ」
培った武技も、命喰らった覚悟も、今や奪う者の走狗と費やされるのみ。ならばせめて、ここで終わらせる。
殲滅は得手との自負と共に構えられるは、星霊の力もて稼動する重力砲。自らも両の手を突き出せば、掌に集うは星の力。
「グラビティ・ブラスト…往けぇ!!」
裂帛と叫ぶが同時、掌と砲口より同時に放たれる重力の波濤。其が騎士達を襲えば、黒鉄の装甲が超重の斥力の前に数瞬で砕け、潰れ去っていく。
「っしゃ、次だ!」
撃破を見届ければ再び駆け出す。曲がり角の向こう側、剣戟と銃声が聞こえてくる。
成功
🔵🔵🔴
バーン・マーディ
残念だ
その叛逆の闘いもまた世界に滅びを齎すならば
だが…この瞬間だけは貴様の叛逆に手を貸そう
【戦闘知識】で黒騎士の陣形と同族殺しが仕掛けた罠の位置も捕捉
哀れなる黒騎士共よ
せめて騎士として引導を渡そう
デュランダル騎士団招来発動
見よ
己の在り方も忘れた哀れな騎士共を
己が信念も忘れ尚戦い続ける者共を
引導を渡す事を許す
陣形を組
先陣を切り
【オーラ防御】展開
敵の攻撃は正面から【武器受け】で受け止
容赦なく【カウンター・怪力・二回攻撃・吸血・生命力吸収】による反撃で切り捨て
騎士団
基本的に三人で一体の黒騎士を攻撃
確実に数を減らしつつ敵の攻撃は庇い合い
主が示した同族殺しの仕掛けた罠へと誘導
掛かった黒騎士を打ち倒し
黒鎧の偉丈夫――バーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)は、疾走する同族殺しを見遣り、思う。
(残念だ)
叛逆の闘いは尊かれども、それもまた世界に滅び齎すものであるならば。理不尽なる正義に抗い悪を救わんとした彼であれど、手を差し伸べることはできぬ。
だが。それでも。
(この瞬間だけは。貴様の叛逆に手を貸そう)
許される限りの助勢を。信念故に神と成り果てた身は、オブリビオンと化した彼方に何かを感じたのかもしれない。
更なる敵襲を迎え撃たんと迫る黒騎士の一団へと意識を移せば、徐に両の腕を広げ、声を張る。
「死して尚共に在りし忠臣たる騎士達よ。我が声に呼応せよ。今が戦いの時だ」
叫ぶような激しさは無くも、朗々と響くその声。まさに呼応するが如く、背後の闇が波打ったかと思えば、そこより現れたるもまた黒騎士の一団。
デュランダル騎士団。かつて彼が率い、死して尚付き従う不滅の忠臣。
「見よ、己の在り方も忘れた哀れな騎士共を」
隊列を揃え、見据えるは堕ちたる騎士の成れの果て。
「己が信念も忘れ尚戦い続ける者共を」
其々の手に剣を、槍を構え、切先は旧て騎士だった獣へ。
「引導を渡す事を許す。――征くぞ」
号令と同時、バーンは自ら先陣を切って黒騎士達へ肉薄する。
最前の騎士の身が崩れ、鎧が複数の獣となって黒鎧の将へ襲いかかる。
三方より襲い来る獣爪は立ち昇る神気の障壁が退けるも、正面より突っ込む狼の爪は其を切り裂き、バーンへと黒鉄の牙が迫る。
「させぬ!」
禍々しき覇気と神気を帯びた魔剣を以て牙を弾き、返す刃は剛力を以て振り下ろされる重撃。狼を両断し、残る生命力をも簒奪する。
将の勇姿に戦意昂ぶったか、デュランダル騎士達も彼に続けと敵群目掛け吶喊、其々に交戦を開始。
戦場は乱戦の様相を呈し始めていく。
成功
🔵🔵🔴
深護・刹那
人と人との関係には余人の入る隙間は無いと思いますけども
オブリビオンと猟兵の関係ならばこの好機、逃すわけには参りませんものね
「ではでは。不肖、深護・刹那、参ります」
護衛オブリビオンたちは速やかに突破するとしましょう
『からくり那由多演舞』で仕掛けますわ
黒子モードは人形繰り専門モードなので
那由多を前線に押し出してガンガンいきますわよー!
飛翔能力も活用して黒騎士に素早く接近
那由多で攻撃していきますわ
敵が鋼の生物を出してきたなら
わたくし自身は目立たないように振る舞いつつ
那由多にオーラ防御を纏わせて物理強度アップ!
フェイントも絡ませて黒騎士もろともまとめてなぎ倒しますわ
攻防一体の人形演舞、とくとご覧あれ!
メリッサ・ウェルズ
同族殺しが何を考えているのかは知らないけれど
いい機会だから利用はさせてもらうね
館に突入次第【血統覚醒】でヴァンパイア化するよ
「さぁ、来なよ。片っ端から投げ飛ばしてあげるっ!」
強化された身体能力で、黒騎士の間を駆け巡り飛び回るよ
まずは先制のドロップキックから
鎧の胸元ど真ん中に叩き付けて蹴り飛ばす
騎士の剣の攻撃を避けながら、スライディングして足を狩り、両脚をもってジャイアントスイングで他の騎士めがけてぶん投げたり
華麗な空中殺法からフランケンシュタイナーで首をホールドして地面に叩きつけたり
関節技は通じなさそうだし、打撃と投げでとことんまで攻めてあげるよ
ゴングの音が聞こえないのが残念だねっ
騎士と騎士とが打ち合い、無数の弾丸が跳ね飛ぶ戦場を見渡し、深護・刹那(花誘う蝶・f03199)は相棒たるからくり人形『那由多』を床へと立たせる。
人と人との関係ならば余人の入る隙間は無し、なれどオブリビオンと猟兵の関係ならば逃す手は無し。この好機、必ず成してみせねば。
「ではでは。不肖、深護・刹那、参ります」
宣言すると共に、その身が黒衣に包まれ、闇に溶け込んでいく。一方の那由多はその身を拡張、拡大し、装いも煌びやかとなっていく。その背には風を孕んだ蝶の翅。
「那由多、これよりの主役はあなたですわ。ガンガンいきますわよ!」
刹那の声に応えんばかり、飛翔して黒騎士へと向かっていく那由多。『からくり那由多演舞』開演である。
そんな一人と一体の横を駆け抜けて、メリッサ・ウェルズ(翡翠の吸血姫・f14800)もまた黒騎士達へと仕掛けようとしていた。
その両瞳、常ならば青赤のオッドアイである瞳は、今は共に赤。『血統覚醒』により、彼女のヴァンパイアとしての力が励起されているのだ。
「同族殺しが何を考えているのかは知らないけれど。いい機会だから利用はさせてもらうね」
独りごちた直後に跳躍。スピードの乗ったドロップキックが騎士の胸元ド真ん中へ突き刺さり、四肢の関節を有り得ない方向に曲げながら吹っ飛ばした。
刹那の指遣いに応えるように、那由多が飛翔し暴れ回る。
拳で冑を殴り抜き、飛行からのタックルが鎧の獣を吹き飛ばす。
騎士達も無論黙ってはおらず、五体を分離させての獣の群れを那由多目掛け嗾ける。
「なんの!那由多、防御致しますわ!」
それを見た刹那の声が響くと同時、那由多の身体が淡い色のオーラに覆われ、獣達の牙を悉く受け止めていく。中にはオーラの守りを貫くものもいたが、人形たる那由多からは生命力を奪うこと叶わぬ。
腕を振って牙を払えば、直ちに蹴りを放ち黒鉄の獣体を打ち砕いた。
花誘う風の翅にて飛翔する人形を前に黒騎士達は身構え…そのうちの一体の足元が、衝撃と共に崩れる。メリッサの鋭いスライディングが足を刈った。
「綺麗だとはボクも思うけど。見とれすぎで足元お留守だよ」
倒れ込む騎士の両脚を、左右の脇にそれぞれ抱えると、そのまま身を捻り回転を開始。己が身を支点に、黒鉄の質量を振り回す動きは、瞬く間にその速度を増して。
「ってぇぇぇぇいっ!!」
その勢いのままにかの両脚を解放すれば、飛び交う弾丸もかくやの速度で飛ばされた騎士が別の騎士と衝突。諸共に黒鉄の五体を凹み歪ませながら転がっていった。
緩やかに回転速度を落としていくメリッサの横合いから新手。その隙を突かんばかり剣を振り上げる。
「那由多、そこですわ!」
刹那の操作に応え、その更に横合いから飛び来た那由多の拳が騎士を殴り飛ばす。その間に態勢を整えたメリッサはかの機巧に短く礼を告げると跳躍、新たに迫り来た黒騎士の冑を蹴り反動で更に跳躍。
花誘う蝶の飛翔にも劣らぬ華麗な空中殺法。最後はそのしなやかな両腿の狭間に冑を挟み、体重に勢いと筋力を乗せ諸共に後転。冑の脳天を思い切り床へと叩き付ける。
白亜の床面に蜘蛛の巣状の皹を走らせる程の衝撃、マットの上であればその場でゴングが乱れ打たれるであろう鮮やかなフランケンシュタイナーであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
リーヴァルディ・カーライル
…ん。同族殺しに堕ちた吸血鬼狩りの復讐者ね。
思う処が無い訳では無いけど、このまま捨て置く事は出来ない。
危険を感じるまで同族殺しには手出しをせず、
第六感を頼りに目立たない罠の存在感を暗視して回避する
今までの戦闘知識から敵の殺気を読んで攻撃を見切り、
怪力の踏み込みから呪力を溜めた大鎌を振るいUCを発動
…貴方達も同族殺しも、今の在り方は本意では無いはず。
…この地の吸血鬼共々、此処で終わらせてあげるわ。
生命力を吸収する呪詛のオーラで防御力を無視して、
傷口を抉る闇属性の2回攻撃で獣ごとなぎ払い仕留める
…呪いを受けてなお誰かの為に戦ったその志は私が引き継ぐわ。
もう苦しむ必要は無い。眠りなさい、安らかに…。
乱戦の最中、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、同族殺し…吸血鬼狩りの成れの果て、その背を垣間見る。
彼女自身もまた、己を吸血鬼狩りと定義する身。その在り方に思う処はあれど、捨て置くことはできない。
故に、今は此処に。
(…まずは、彼等)
紫苑の瞳に、眼前で対峙する二人の騎士を映す。次第に数は減ってきたが、未だその数と攻勢は到底無視できるものではない。
矛が、剣が、リーヴァルディの身を引き裂かんと振るわれる。
「…貴方達も同族殺しも、今の在り方は本意ではないはず」
吸血鬼狩りとして、これまで積み重ねてきた戦闘経験。殺意に満ちた彼等の刃。放たれる斬撃の軌道、避ける為の最適解は、彼女の身に染み付いている。
身を捻り矛の刺突をかわし、大鎌の柄を唐竹の剣に当てて逸らす。飛び退いて矛の横薙ぎをかわせば、大鎌の刃に禍々しき紅き光が迸る。その黒刃にて刻んだ過去の想念が、呪力となって纏われる。
「…この地の吸血鬼共々、此処で終わらせてあげるわ」
かの領主吸血鬼は無論、この騎士達も、あの同族殺しも、全ては過去。故に、終わらせる。
「…限定解放」
一歩、踏み込む。容易く手折れかねぬと見える華奢な脚が、想像を超える力強さで石床を踏みしめ、白亜に皹を走らせる。刹那に解き放たれし、その身に宿る吸血鬼の力。
その力を乗せ、漆黒の大鎌を大きく振り抜き、紅き呪力と共に打ち放つ。
「…薙ぎ払え、血の波濤…!」
呪の力は血色の波動と化し、膨れ上がって波濤と溢れ、眼前の騎士達を、その先にいた騎士達をも飲み込み押し流す。
次々と崩れゆく黒鎧。然し、一騎の騎士がそれらを乗り越えリーヴァルディへと肉薄。冑が禍々しき蛇頭と化して喰らいつかんとする。
だが、そこまでだった。
彼女の身より迸った呪詛の奔流が牙を押し止め、命を逆に啜り上げる。次いで振るわれた刃が、蛇頭を狩り、闇き呪と共にその断面へと突き刺さる。
「…その志は、私が引き継ぐわ。もう、苦しむ必要は無い」
呪われて尚、誰かの為に戦わんとした、その意志は尊き故に。残る命と共に刃へ吸い上げ。
「…眠りなさい、安らかに…」
崩れ落ちる黒鎧に、弔いを残して。駆け出していく。
成功
🔵🔵🔴
セシリア・サヴェージ
力を求めた結果狂気に堕ちた者、そして怪物と成った黒騎士たち。
いつか自分もそうなるかと思うと……いえ、今は目の前の事に集中しましょう。
彼らの磨かれた武技を【見切り】【武器受け】で防ぎ、UC【暗黒剣技】による【カウンター】で応戦します。
数が多いのであれば一体一体に時間をかけている暇はありません。破壊力を重視して確実に仕留めていきます。
【なぎ払い】で複数人まとめて斬るのもいいでしょう。
同族殺しは既に領主と交戦状態のようですね。
下手に刺激せず、彼らの攻撃の範囲内に入らないように心がけます。
まずはこの黒騎士たちを斃す。彼らへの対処はその後でも遅くはないでしょう。
セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)は、未だ残存する黒騎士達を前に、巨大なる暗黒剣を構える。
己が力に喰われ、ヒトではないモノと成り果てた果ての姿。心身蝕む暗黒の力を振るう彼女にとって、彼らは全くの他人ではない。いつか自分も、彼らのように――。
そこまで考えてセシリアは頭を振る。果ての事など今考えるべきではない。集中せねば。
思考を切り替えたその直後、眼前へと迫るは矛の斬撃。刹那の見切りで身を捻りかわすも、続けざま横薙ぎの一撃が襲う。巨剣の胴で受け、その反動を利して飛び退く。
戦の趨勢は猟兵達に傾きつつあるが、彼等の士気に衰えはないらしく。振るわれる技にも一切の惑い迷いが無い。この後の戦いも考えれば、時間をかけるは得策とは言えぬか。
更に迫りきた袈裟懸けの斬撃を弾き、体勢を崩した騎士を前に、暗黒の力を一時、解放する。
(………!)
巨剣を闇が覆うと同時に生ずる、命が削れ、失われゆく感覚。何より、胸中を疼かせる衝動。破壊への誘い。
否、これはあくまで護る為の力――その信念で以て衝動を抑え込み、セシリアは宣言する。
「現世に繋がれし者よ…我が暗黒剣で、お前を在るべき場所へ還そう!」
振り下ろされた暗黒の巨剣が破壊力を増し、黒鉄の鎧に食い込み、闇を噴出しながら断ち割る。旧て黒騎士だったモノを、闇へと飲み込んでいきながら。その姿の全てが消え果てるまで、長い時間はかからなかった。
「………」
仕留めたことを確かめ、再度暗黒を戒める。この感覚、この衝動。屈した時、己は彼らと同じモノと成り果てるのだろう。
視線を先に向ければ、別の黒騎士を打ち倒し駆ける同族殺しの背中。彼もまた、力を求めた果てに堕ちた者。
「――私は。正しき闇の力を以て、弱き者を護る剣であり盾」
己に定めた在り方を、改めて口にする。彼らと同じ道へ堕ちぬように。『己』で在り続ける為に。
成功
🔵🔵🔴
アルトリウス・セレスタイト
とりあえず今はこれを超えるか
どうせ終わったもの。正しく眠れ
敵へは顕理輝光で対処
攻撃へは『絶理』『刻真』で異なる時間に自身を起き影響を回避
全行動は『刻真』で無限加速し隙を作らず
攻撃分含め必要な魔力は『超克』で“外”より汲み上げる
破天で掃討
高速詠唱を『再帰』で無限循環
『解放』で全力の魔力を注ぎ生み出す数百の魔弾を統合した巨大な魔弾を無数に、瞬時に生成
天を覆うそれを嵐が如く叩き付ける
目標周辺を巻き込む範囲攻撃で回避の余地を与えず
攻撃の密度速度威力で反撃の機を与えず
飽和攻撃による火力と物量で全て圧殺する
味方と、いれば「同族殺し」に当てない程度には狙いを絞る
戦場の只中、悠然と佇む姿が蒼い朧光に照らされ浮かび上がる。
アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)。『原理』に触れその端末と成り果てた、ヒトの形を残しつつもヒトならざるもの。
超然たるその佇まいからは心中推し量ること叶わぬものの、鋭く見据える瞳の先には同族殺し。其と己の間に立ち塞がる黒鎧の獣。己の為すべきことは、そこに。
「とりあえず今はこれを超えるか」
呟くと共に、彼を包む蒼光――顕理輝光、原理示す光がその輝きを強める。
絶理。黒鎧が崩れ生まれた獣達の刃牙を、断絶の原理以て己の存在時間をずらしかわしていく。
刻真。アルトリウスの時間は時の原理によって加速し、隙を見せることなく戦場を駆ける。
超克。創世の原理にて『外』より汲み上げられる力が、アルトリウスの魔力を高めていく。
到達せしは戦場を一望にて把握し得る位置。残る騎士達の存在位置を確かめながら、詠唱を開始する。
再帰。高速にての詠唱は循環の原理にて円環を成し、瞬く間に術式は積み重ねられていく。
解放。無数の術式に高められた魔力が自由の原理へと注がれ、数多の巨大なる魔弾として天井を埋め尽くす。
「行き止まりだ」
其の銘は『破天』。存在根源を粉砕する死の原理の顕現。
アルトリウスの腕が振るわれると同時、それらは騎士、或いは騎士であった獣達目掛けて驟雨が如く降り注いでいく。
圧倒的物量による飽和攻撃。それでいて、他の猟兵や同族殺しは巻き込まぬ集束率。
「どうせ終わったもの。正しく眠れ」
蒼の流星群が収まった時、もはや黒鎧の獣はただの一人も、ただの一匹も残ってはいなかった。
護衛を失った領主は逃げる。同族殺しは更に追う。アルトリウスの視線は、その先を見ていた。
成功
🔵🔵🔴
第2章 ボス戦
『エシラ・リデル』
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POW : いやなら、しんだらどうかしら?
自身の装備武器を無数の【薔薇とスミレ 】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : わるいこには、おしおきね
【クイーンのチェス駒 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【トラウマを呼び起こす言霊の刃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ : へいたいさん、あそびましょう
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【赤いトランプ兵 】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
イラスト:OG
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「有栖川・夏介」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
逃げる領主、追う同族殺し。二人を更に追う猟兵達が辿り着いたのは館の中庭。
そこは、冬を迎えたこの時期にありながら、無数の花々が咲き乱れる花園であった。特に多いのは、周囲の燭台からの光を受け淡い輝きを放つ鈴蘭。何故、この時期に…?そんな疑問を抱いた猟兵もいただろうか。
「――もう。こんなところまでおっかけてくるなんて。わたし、すこしつかれちゃったわ」
庭園の中央までやって来た領主の少女は振り返りながら、少しおどけた調子で言う。疲れたと言いながら、全く息の上がった様子は無い。
そんな彼女に、同族殺しの男は銃を向けるが。
「ダメよ、そんなおもちゃはおもしろくないわ」
腕を振り、何かを投げつける。それはチェスの駒…白のクイーン。男の肩に軽く当たっただけのそれは――彼の表情を瞬く間に歪め、片膝を地につかせしめた。
「まあまあ、いきなりどうしたの?あなた、そんなつらいことがあったのかしら?」
そんな彼に上体ごと小首を傾げ問う少女。言葉こそ心配げだが、声音は寧ろ…楽しそうにすら聞こえる。
「…貴…様…!!」
そこで初めて、同族殺しの男が口を開いた。苦悶と、憎悪に震える声音が溢れ出る。
「まあこわい。どうしてそんなおかおをするの?わたし、なにもしていないのに」
頬に手を当て少女は言う。心底不思議で仕方がない、とでも言いたげに。
その言葉に、男の双眸が大きく見開かれる。昏い瞳で、闇が燃える。
「貴様は…貴様らは!!私から全てを奪った!父を、母を、友を!妻を…娘を…故郷を…!許さん…私は、貴様らを決して…!!」
狂気と憤怒に満ち、しかし悲哀も滲む男の叫び。それを受けた少女の口から出た言葉は。
「そんなことで?」
驚きすら見える表情で言ってみせた少女。そんな些細なことで?信じられない。それは侮蔑でも傲慢でもない、完全なる無理解であった。
「あなたたちが、わたしたちのためにしぬのは、あたりまえじゃない。そんなことでおこるなんて、いけないことなのよ?」
まるで駄々を捏ねる子供に言い聞かせるかのような調子で、少女は続ける。
それはまさしく、ヴァンパイア達がこの世界に布く闇の秩序。己らには人類の全てを思うがままにする権利があり、人類にはそれを甘受する義務がある。
彼女もまた、それを『常識』と考えている存在なのだ。
「――あなたたちも、おじさんのおともだちかしら?それなら、いっしょにおしおきしてあげないといけないわね」
そこで初めて、猟兵の存在に気付いた少女は宣言する。と同時、庭園の花々がざわめき、花弁が吹雪めいて舞い散り踊る。その下から、トランプの兵士が立ち上がる。その貌は髑髏。死して尚、少女に操られる哀れな民の骸。
――もしや。少女は同族殺しから逃げていたのではなく。己の力を最も発揮できるこの場所に、彼と、猟兵を誘い込んでいた…?
「舐めるな…!仕置きを…罰を受けるのは、貴様だ!吸血鬼!!」
再び立ち上がり、吼える同族殺し。
「もう、わからずやさん。みんないっしょに、しぬまでおしおきね。そうしたら、わたしのおともだちにしてあげるわね」
あくまで悪意はなく。あくまで彼を、猟兵を常識知らずの悪い子とする価値観で。少女――領主吸血鬼『エシラ・リデル』は宣言する。
そして、戦いの幕は上がる――。
アイ・リスパー
「人間を……この地に生きる人々を……
踏みつけるようなその言い分、後悔させてあげますっ!」
ヴァンパイアの論理に柄にもなく冷静さを欠いてしまい
勢いで【チューリングの神託機械】を発動。
私が使う電脳魔術の中で単体攻撃能力の一番高い
【アインシュタイン・レンズ】で重力レンズを生成して
光線を収束させてヴァンパイアに向けて撃ち出します。
「反撃など当たりません!」
【ラプラスの悪魔】でチェスの駒の動きをシミュレーションして予測。
動きを完全に見切った駒を回避しようとして……
「はうっ」
足を滑らせて顔から地面にダイブ。
そして駒に当たってしまいます。
蘇るトラウマは領主の少女にも負けた胸のサイズ……
「うう……胸なんか……」
真っ先に動いたのは、意外なことにアイ・リスパー(電脳の天使・f07909)であった。
「人間を…この地に生きる人々を…踏みつけるようなその言い分、後悔させてあげますっ!」
常ならば敵の挙動や能力を分析、然る後に動く彼女であるが。領主吸血鬼の言葉、傲慢に過ぎるヴァンパイアの論理が、本来冷静沈着な彼女の逆鱗に触れたのかもしれない。
激昂の勢いのまま、電脳空間へと接続。かの空間に座す万能演算装置、その計算能力を以て己の電脳魔術を超強化する。
「重力レンズ生成…けほっ、ターゲット、ロック…!」
己の限界を超えた演算能力により喀血しながらも、電脳魔術を行使。アイの頭上の空間が歪み、その背後の壁面が広がったかのように見える。空間が、レンズ化していく。
「こうかい?どうして?わたしは、まちがったことはしてないのよ」
吸血鬼の少女は、その変化の意味を理解していないのか、特段の動きを見せない。アイの激昂に油を注ぐが如く、言葉を返すのみ。
「……!全てが、間違っていると知りなさい…!集束光線、発射…!!」
燃える怒りは、重力レンズの中心へ光と集い。庭園を照らす仄かな灯り、その光の全てを束ねた光線が、エシラめがけて放たれた。
「きゃっ!」
完全に予想していなかったのだろう、その光はエシラの身を直撃し、焼き焦がす。だがしかし、致命には程遠い。
「…もう、びっくりしたわ。ちょっと、まぶしかったけれど」
余裕のエシラ。戦場の光量の不足ばかりではない。この幼い身に宿る、並みのオブリビオンより尚強大なる力。一度の光撃のみでは揺らがぬという事であろう。
「でも、おもしろかったわ。おれいをしてあげないとね」
続く言葉と同時に放り投げられたのは、チェス駒…白のクイーン。先刻、同族殺しに対し用いたものか。
ただ放り投げられただけにも関わらず、その速度は弾丸じみて。瞬く間にアイへ迫る。だが、彼女の高められた演算能力は、その軌道も飛翔速度も着弾地点もシミュレート済みであった。
「甘いです!反撃など当たりませ…」
…はずだったのだが。
「…はうっ!?」
回避を試みんと重心を移した瞬間、踏みつけた花で足が滑ったか。その身は前方へ180度近く回転し花々で埋め尽くされた地面へ衝突する。顔面から。そこへ飛んできた白のクイーンが、アイの頭で跳ねた。
「う、うう……っ……」
何とか起き上がらんとするアイであったが、両手両膝を地に着けたまま、立ち上がれない。チェス駒の命中によって惹起されたトラウマが、彼女の心に刃突き立てる。そのトラウマが何かといえば…
「うう……む、胸なんて……っ!」
…アイ最大のコンプレックス、胸の小ささ。少女吸血鬼、見目は明らかに己より幼い彼女と比べてすら、その膨らみは、薄かった。
苦戦
🔵🔴🔴
カシム・ディーン
はあ…吸血鬼って美味しそうな美人さんだと思ったのに…(心底残念そうに現れる盗賊
これならギジィでしたか…あのお姉さんと遊ぶ方が楽しそうですね(再び溜息。年齢気づいていない
【属性攻撃】
光を全身全装備に付与
【医術】でエシラの肉体情報と身体の状態から動きと癖と急所の把握
特に眼球の動きからも死角の捕捉
我が転移術を見せてあげます(此処から詐欺
光属性を利用して光学迷彩
更に【迷彩】で存在を隠す(その場で消えたかの様
接近してわたぬき発動
その美しい片方の「眼球」を強奪
(姿現し眼球を手元で弄
まぁこわい
どうしてそんなおかおをするのです
僕、何もしていないのに
(怒号に
そんなことで?
別に目玉を一個取っただけですよ(踏み潰し
先に参戦した猟兵達より一歩遅れて、花園に現れた盗賊の少年、カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は心底残念そうな表情をしていた。
(はあ…吸血鬼って、美味しそうな美人さんだと思ったのに…)
失望を隠さない様相でエシラを見る。どうやら彼は年上嗜好らしく、見目が幼いエシラは『対象外』である模様。
(これならギジィさんでしたか…あのお姉さんと遊ぶ方が楽しそうですね)
かのグリモア猟兵の姿を思い浮かべ、再び嘆息。尚、件のグリモア猟兵も彼より年少だが、体格の早熟さのせいなのか気付いていない様子。
「あら、どうしてそんなにざんねんそうなのかしら?」
そんな彼に声をかけるエシラ。
「いいえ、何でもないですよ。そんなことより」
応えるカシムの視線が、エシラの全身を舐めるように注視する。尚これは、その身体の特徴と状態、動きの癖を把握し、急所を見出す為である。
「可愛らしいお嬢さんに、我が転移術を見せて差し上げましょう」
「まあ!よくわからないけど、おもしろそうね」
などというカシムの提案に、両手を合わせて興味深げなエシラ。
「よーくご覧になっていてくださいね…では、参ります」
告げた直後、カシムの姿がそこから消える。口元を抑えて驚嘆の様相を見せたエシラに、銀の雨が降る。同族殺しの男が放った弾丸だ。
驚き、身構えるエシラ。弾丸の驟雨が止んだ直後、その身が傾ぎ…左のこめかみを、何かが抉るように掠めていった。
「…おや。今ならいけるかと思いましたが」
眼前の空間が揺らめき、カシムの姿が現れる。転移術というのは偽り、実際は着衣に付与した光の属性と、己の迷彩技能を駆使した擬似的な光学迷彩である。これを以て身を隠し、同族殺しの攻撃に乗じて眼球狙いの攻撃を繰り出さんとしたのであるが。領主吸血鬼の知覚能力か第六感か。その攻撃は寸での処で回避されてしまった。
「もう、ひどいのね。もうちょっとで、おめめとられるところだったわ」
怒った…というよりは、拗ねたような声音でエシラ。
「そんなことで?目玉の一つくらい、いいじゃないですか」
平然とした調子で返すカシム。その言い草は、彼女の語ったヴァンパイアの論理の借用だろうか。
「わたしのおめめはたかいのよ?あなたひとりのいのちじゃ、たりないくらい!」
言い放ち、その手よりチェス駒を放る。黒のポーンが二つ。それはすぐさま弾けて、無数の花弁と化して渦を巻き、庭園の花々を巻き上げる。
そして生じた花の嵐が、カシムと同族殺しを吹き飛ばした。
苦戦
🔵🔴🔴
エメラ・アーヴェスピア
はぁ…まぁ典型的なダークセイヴァーのオブリビオンの思考よね…
同族殺しの事も分かる気がするわ
それに、他人事じゃないと思えてしまうのはなぜでしょうね?
私の失われた記憶にそういう事があったのかしら…
なるほど、この集団の為にこの場所に誘われた、と
…残念だけど、私に対して広い場所での数頼り、と言うのは悪手としか言いようがないわよ?
『この場は既に我が陣地』、中庭を囲むように包囲展開、同僚さんや同族殺しを外しつつ広範囲砲撃よ!
私に容赦をする理由は無いわ、骸の海へと沈みなさい!
…出来れば同時に同族殺しの動きを引き続き情報収集よ
色々と思う所はあるけれど、彼も還すべき存在には変わりないから…
※アドリブ・絡み歓迎
戦場となった庭園を俯瞰しながら、エメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)の嘆息は、作戦開始時よりも尚深く。
「…まぁ、典型的なダークセイヴァーのオブリビオンの思考よね…」
人類にとっての理不尽をこそ当然とするヴァンパイアの論理。人の側に在る者として、共感できようはずも無く。寧ろ、其れは同族殺し――狂気に堕してでも彼らを討たんとした彼にこそ。然し、それだけではなく。
(他人事じゃないと思えてしまうのは、なぜでしょうね?)
幼き頃、傷つき死に瀕したことで機械仕掛けに置き換えられた身体。引き換えに失われたかつての記憶。その中に、似たような出来事があったのだろうか?
「あそびましょう、へいたいさん。わるいこたちをおっかけて、やっつけちゃいなさい」
領主吸血鬼の命ずるがまま、仮初の命と形を得て立ち上がり迫り来るトランプ兵の群れ。『素材』がそこにあるが故、彼女はここを戦場に選んだのだろう、とエメラは推測する。
だが。開けた場所での物量戦とは、即ち。
「…残念だけど、私に対してそれは悪手としか言いようがないわよ?」
数多の魔導蒸気兵器を操るエメラにとっても、それは最も得手とする戦の一つ。
「ここは既に、私の砲撃陣地なのだから」
庭園外周の空間が歪み、金色の砲身が次々と進み出てくる。簡易的構造の自走式魔導蒸気砲台。その数、実に三百基超。中庭を囲むように立ち並ぶ威容は『この場は既に我が陣地』と号するに相応しい。
「まあまあ、かっこいい。すごいおもちゃね」
「本気でそう思っていると、痛い目見るわよ?――骸の海へと沈みなさい、撃ぇっ!!」
領主たる少女の無邪気に過ぎる煽りに冷然と返し、号令一下。
――刹那、轟く砲声に続き。爆音と、爆炎、爆風、硝煙が、庭園を席巻した。
爆炎に焼かれ、爆風に潰され、トランプ兵達が次々と吹き飛ばされていく。花園に植わる花々と、其に埋め尽くされていた骸をも。
玩具と称して赦されるのは、一基ごとの耐久性のみ。その火力、破壊力は、兵器として十二分。何よりその物量が齎す制圧力は、戦術を担うに価する領域である。
それでいて、砲弾は他の猟兵や同族殺しを巻き込むことなく。領主の少女と、彼女に操られる兵士達のみを襲う。
「あーあ、いけないのよ。わたしのものをこんなにして…っ」
砲弾の直撃は避けつつも爆風の煽りを受ける吸血鬼に、同族殺しが刃を掲げ斬りつける。
砲撃を続けさせつつ、その様をエメラは見守る。所々焼け焦げる衣は、己自身を砲撃に巻き込む事を厭わなかったが故。
先の黒騎士達との戦い、先刻領主から受けた攻撃。その男の様相に消耗は見えるが、動きに大した鈍りはない。
再び投げられたチェス駒を、銃身で弾いた処に、領主狙いの砲弾が飛来。爆風で男の外套が大きくはためく。
――その胸元に揺れるは銀のロケット。
大成功
🔵🔵🔵
バーン・マーディ
真の姿発動
……貴様の言う事は正しいのだろう
この世界において貴様らこそ理
貴様らこそ正義
故に貴様らの行いに牙を剥くこの男こそ悪なのであろう
その上で
ユベコ発動
【怪力】でその顔面に拳を叩きこみに掛かる
故に我はこの男に力を貸すのだ
我はヴィラン…即ち悪なり
【オーラ防御】展開
吸血鬼の攻撃は
【武器受け・カウンター・怪力・二回攻撃・生命力吸収・吸血】によって魔剣と車輪剣によって切り裂きその首筋に喰らいつきその肉ごと食い千切り血を啜る
不味い
腐っている
(べっと吐き捨て
ああ…そうか
貴様の様な存在は我が世界にも存在する
蚊だ
だが貴様は蚊の子供なら
精々…水に漂うボウフラと言った所か
…失敗した
殺虫剤を忘れていたな(圧倒的煽り
爆風を利して飛び退いたエシラ。再び地に降り立った彼女へ、バーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)は告げる。
「…貴様の言う事は正しいのだろう」
仁王立ちするその姿は、常より尚雄々しく、禍々しく。猟兵たる身の真の姿、其を解き放ったが故。
「この世界においては、貴様らこそ理、貴様らこそ正義」
エシラを見据えていた視線を一時、遠間で姿勢を立て直す同族殺しの男へ向けて。
「故に。貴様らの行いに牙を剥くあの男こそ、悪なのであろう」
再び視線を戻したバーンに、エシラは嬉しそうな笑みを浮かべて応える。
「そう、そうなのよ。あなたはいいひとね、ちゃんとわかって…」
だがその言葉は最後まで紡がれることなく。彼女の体が錐揉みしながら宙を舞う。
彼女の応える間にユーベルコードを発動したバーンが、それにより得た飛翔能力を以て刹那の間に踏み込み、神たる身の膂力で彼女の頬を殴り飛ばしたのだ。その身を包むは禍々しき紅のオーラ。『ヴィランズ・ジャスティス』、彼の不倒にして不屈の精神を力と為すユーベルコードである。
「故に。我はあの男に力を貸すのだ。我はヴィラン…即ち悪なり」
錐揉み回転から着地したエシラは、彼の宣言に対しチェス駒――黒のナイトを以て応えた。
「わかってたのは、じぶんがわるいひとだってことだったのね。じゃあ、いまからいいひとになるといいわ」
駒が弾けて吹き荒ぶ花の嵐、なれど悪の正義を力と為す今のバーンに乗り越えられぬ脅威ではない。
魔剣と、かつて合見えた怪人の遺せし車輪剣を以て花弁を斬り裂き、漏らした分は紅のオーラで防ぎ。
そのままエシラへ組み付くと、彼女の白く細い首筋へ喰らい付き。肉を食い千切り、溢れた鮮血を啜り上げる。
「………!?」
エシラの瞳が驚愕に見開かれる。なれど驚くばかりでなく、身を捩ればバーンの怪力をも振り切り距離を取る。
「…不味い。腐っている」
口中の肉と血を花散る地面へ、その味の所感と共に吐き捨てるバーン。そして何やら得心がいったかの如く続ける。
「…ああ…そうか。貴様のような存在は、我が世界にも存在する」
首筋の傷を気にしている様子のエシラへ、バーンは言い放った。
「蚊だ」
エシラ、首を傾げる。
「だが貴様は蚊の子供なら、精々…水に漂うボウフラといった処か。…失敗した。殺虫剤を忘れていたな」
吸血という行為を以て、両者を同一視せんとする煽り。だが、エシラの反応は。
「…どういうことなのかしら」
己とかの虫を結びつける発想に、想像力が追いつかなかったらしい。
成功
🔵🔵🔴
メリッサ・ウェルズ
ヴァンパイアの呪われた血はボクにも
だからこそ許せないものはあるよね?
チェス駒に当たってしまい
…そして聞こえる声
ボクには2人の母親がいて、父親がいない
どちらが実の母か不明…ダンピールの血はその片方からと信じてるけど、母とボクは似ていない…
もう1人の母にはヴァンパイアの血は流れてない
だから自分が大好きな母達と血が繋がってない、そう思ったり…人から突き付けられたり
そんなトラウマが…耳鳴りのように
だけどっ!
血の繋がり関係なく、2人を好きなのは変わらないって
こんな悩みは乗り越えたんだっ
嫌なこと思い出させてくれて…ありがとう
お礼に【咎力封じ】で縛った後、豪快に垂直落下式バックドロップで沈めてあげるよ!
「ヴァンパイアの呪われた血は、ボクにも流れているんだけど」
メリッサ・ウェルズ(翡翠の吸血姫・f14800)はじめ、ダンピール――吸血鬼の血をその身に宿す猟兵は少なからず存在する。此度の作戦に参加した者にも何名か。
「…だからこそ、許せないものはあるよね?」
エシラを見据えて言う。対するエシラは平然と。
「はんぶんはにんげんなのよね。それじゃ、だめよ。あなたははんぱなひと」
その言葉に、彼女へ向け駆け出さんとしたメリッサの足が一瞬、止まる。そこへ投げつけられた白のクイーンが、メリッサの額を打った。
メリッサの脳裏へ、様々な声が響く。それは、彼女の複雑な家庭環境に起因する、かつてのメリッサの苦悩。
『…ボクには父さんがいない…』
母親が二人いる一方、父親はおらず。
『…ボクは母さん達と似ていない…』
どちらが実母なのかも分からず。己の身に流れる吸血鬼の血はいずれかからとメリッサは信じているが、どちらも彼女と似ておらず。更に片方の母に吸血鬼の血は流れていない。
『…ボクは母さんの子じゃない…』
故に、どちらも実母ではないのではないか。愛する母達は、本来赤の他人ではないのか…?
「いや…っ!そんなっ、そんなことは…っ!」
頭を抱え、叫ぶメリッサ。しかし響く声は鳴り止まず。その様を、エシラは冷たく微笑みながら見守っていた。
『そうよ…あの人達はあなたのお母さんじゃない。きっとあなたは捨てられていたのよ』
『吸血鬼の血が流れるあなたは、本当のお母さんの手で捨てられてしまったのよ』
かつて突きつけられた言葉。本当の母に捨てられたと。この身に流れる呪われし血のせいで――。
「違うっ、違う…っ!あぁっ、ああ…っ!!」
頭を掻き毟り、髪を振り乱す。このまま、己の過去に押し潰されるなら、その時は――そうエシラが算段を立て始めた、直後。
「……ぁ……」
その手が己の頬に触れた時、メリッサは思い出す。二人の母に注がれた愛を。巫女の母の跡を継ぐと決めたことを。
「そう…だ…そうだよ…!」
曇りかけたメリッサの瞳に、光が戻る。
「血の繋がりなんて関係ない!」
そしてあらん限りの声で叫ぶ。
「ボクは!母さん達が!大好きだ!!」
その想いだけは紛れもない、覆しようのない事実。以て苦悩を乗り越えたのだと。思い出し、メリッサは立ち上がった。
「っ!?そんなっ…」
予想外の復帰に驚くエシラの両手を手枷が、口を猿轡が、四肢をロープがそれぞれ戒めてゆく。
「嫌なこと思い出させてくれてありがとう!」
続いて飛びかかったメリッサが、エシラを背後から抱え込めば。
「お礼は豪快に、決めさせてもらうよ!!」
そのまま身を反らし、しなやかな肢体は見事なアーチを描き――エシラは、脳天から垂直に、地面へ突き刺さった。見事なる、垂直落下式バックドロップである。
成功
🔵🔵🔴
深護・刹那
常識なんて人によって違うものですし
わたくしたちは猟兵なのですから
オブリビオンの存在を許す道理もなく
「ではでは。不肖、深護・刹那、参ります!」
広範囲に仕掛けて来るなら
回避する手間を惜しんで
オーラ防御をわたくしと那由多に纏わせて
リデルの攻撃を受け止めつつ接近して攻撃
「貴女はこんな遊びはご存知ないでしょう?」
とても人形遊びをするようなには見えませんし
ですから教えて差し上げますわ、人形との遊び方
さあ、わたくしの那由多と踊っていただきますわよ!
…とかなんとか言いながら本命はこちら!
リデルに肉薄して
「ポニーテールにはこんな使い方もありますのよ?」
と目の前で反転して『ポニテ一閃!』
この一撃にかけますわ!
立ち上がるエシラへ向け疾走しながら、深護・刹那(花誘う蝶・f03199)は思う。
(常識なんて人によって違うものですし)
ヴァンパイアの論理も、あくまで彼らの常識。それ自体は否定しない。なれど。
(わたくしたちは猟兵なのですから。オブリビオンの存在を許す道理もなく)
己は猟兵の論理で動くのみ。即ち、オブリビオン滅ぼすべし。
「ではでは。不肖、深護・刹那。参ります!」
「それはいけないことなのに。どうしてわからないのかしら?」
迫る刹那に気付いたエシラ、白のビショップを放り上げる。弾け散った花弁が地の花弁と共に渦巻き刹那を襲う。
「押し通りますわっ!」
己と相棒たる人形――那由多の身をオーラに包み、花の竜巻へ突入する。幾らかはオーラの護りを突破し刹那の身を斬りつけるが、構わず前進。ついにエシラの眼前へ迫る。
「貴方はこんな遊びはご存知ないでしょう?さあ、踊って頂きますわよ!」
那由多を放り上げつつ、繰り糸を引く。自ら立ち上がった人形が、エシラへ踊りかかる。
「おにんぎょうあそびね、したことはあるのよ。あのへいたいさんとね」
微笑み、那由多の拳打を軽やかにかわすエシラ。示すのは先の黒騎士達か、或いはこの戦場に未だ残るトランプ兵か。刹那の糸繰る指が忙しなく動き、エシラの反撃をかわしつつ更に攻撃。
「でも、こういうのはしたことないわ。たのしくないもの」
エシラの手が閃き、那由多を打ち据える。一瞬、動きの止まったそれを壊してしまおうと、エシラが手を握りこんだその時。
「でしたら此方は如何ですかしら!」
突如、刹那が身を翻す。何事かと訝しんだその直後、横殴りの衝撃がエシラを吹き飛ばした。
「ポニーテールにはこんな使い方もありますのよ?」
意外、それはポニーテール。彼女のそれを以て為す一撃は、超至近距離でのみ発揮されるユーベルコード。人形の髪は、何かと怖いのである。
成功
🔵🔵🔴
アルトリウス・セレスタイト
まともな教育を受けていないと見える
敵へは顕理輝光で対処
常時身に纏う故、準備不要
攻撃へは『絶理』『刻真』で異なる時間に自身を起き影響を回避
攻撃分含め必要な魔力は『超克』で“外”より汲み上げ、全行動を『刻真』で無限加速し隙を作らず
『解放』を通じ全力で魔力を注いだ魔眼・封絶で拘束
行動と能力発露を封じる魔眼故、捕らえればユーベルコードも霧散する
何をしていようと消え失せるだろう
拘束中は魔力を溜めた瞳の中に『再帰』魔眼の力を循環させ保持
拘束を逃れたら即座に再拘束し逃さない
「準備」も高速詠唱の技法と『刻真』の加速で即座に終える
自身はそれに専念
捕らえておけば他の猟兵か同族殺しが始末するだろう
シャルロット・クリスティア
なるほど、解りました。
怒るだけ無駄なようです。ただ、殺すとしましょう。
あなたに理解できるかはわかりませんが、ヴァンパイアも人も、さしたる違いはありませんよ。
撃たれれば死にますからね。
まぁ言っても理解できる頭ではないようですので……
あなたの死を以て、その思い上がった傲慢の証明としましょうか。
炎爆弾をセット。
直撃できればしめたものですが、そうでなくとも周囲の鬱陶しい花は焼き払うことは出来ます。
焼き払い、逃げ場を奪い、追い込んでいく。
私でなくとも誰かが狩れればいい。自分が仕留めることに固執せず、仲間が攻撃しやすい場所へと誘導するのも視野に。
「もう、きかんぼさんね。あたりまえのことなのに、どうしてわからないのかしら?」
吹き飛ばされつつも空中で姿勢を建て直し、着地するエシラ。その背に、何者かの声。
「当然の事項に、理解及ばんか。まともな教育を受けていないと見える」
振り仰げば、睥睨する藍い瞳。アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)。時の原理を以て無限加速を可能とする彼なれば、この少女の背を取るなど造作もない事。
「怒るだけ無駄なようです。ただ、殺すとしましょう」
前方から、淡々とした声。シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)。その声音に宿る静かな、確かな怒りを、アルトリウスは見る。
この世界に生まれ、ヴァンパイアの暴虐に抗わんとした両親を故郷諸共に奪われた彼女である。彼の怪物の論理を、許容できるはずもない。
その怒りの裡は、アルトリウスの知る処ではないが…『原理』の端末と化した己が持ち得ぬモノ、憧憬抱く眩さを、彼女に見た。そんな気がした。
「ころす?わたしを?ダメよ、ダメよ」
人差し指を唇に、エシラはあくまで微笑み。横合いから向かってきた同族殺しを制するように、二つのチェス駒を宙へ放る。黒のビショップと、白のルーク。
「しぬのは、あなたたちの、おしごとよ?」
宣言と同時、駒が弾けて無数の花弁と化し、三人を襲う。先の砲撃でかなりの花弁が散った分、地上からの花弁は少ないが、それでもこの量は脅威だ。
「………」
断絶と時の原理によって異なる時間に身を置くアルトリウスに、その攻撃は届かぬが。シャルロットと同族殺しはそうはいかぬ。対処が必要だ。
『外』より汲み上げた創世の魔力を、解放の原理以て魔眼へと全力で注ぎ込む。心眼を以て標的――エシラを捕捉する。
「淀め」
アルトリウスが告げた瞬間、エシラの身を重力めいた――否、重力より更に大きく、重い力が拘束する。『魔眼・封絶』。世界の根源より直に存在を捉える原理の魔眼の凝視。
そしてかの魔眼は、行動のみならず能力をも封じる。荒れ狂っていた花弁の嵐が、たちどころに力を失い、地へ舞い落ちる。
「……助かりました」
体勢を立て直しつつ礼を告げるシャルロットだが、アルトリウスの応えはない。その意を、シャルロットはすぐに悟る。
魔眼の凝視の中、小さく身動ぎを繰り返すエシラ。かの凝視に曝されたものは『一切の行動を禁じられる』。それが、身動ぎという『行動』を取り続けている。
アルトリウスは循環の原理による魔力の保持と高速詠唱によって、エシラが動いた瞬間再度魔眼の力を発動する。その鬩ぎ合いが、現状だ。
即ち。かの領主吸血鬼は、この超越者をして、拘束にそれ程の力と集中を要する相手ということ。
「――解りました」
この好機、逃すわけにはいくまい。取り出したる術式弾に、印を刻む。
「さて。あなたに理解できるかはわかりませんが、ヴァンパイアも人も、さしたる違いはありませんよ」
マギテック・マシンガンの通常弾倉をパージ、術式弾入りの新たな弾倉を接続しながらシャルロットは語る。
「撃たれれば死にますからね」
射出モード確認、単射モード。
「まぁ言っても理解できる頭ではないようですので……」
射撃姿勢。目標捕捉。距離、クリア。動作予測省略。
「あなたの死を以て、その思い上がった傲慢の証明としましょうか!」
術式刻印弾・炎爆、発射。同時に襲い掛かる、同族殺しの放ちし無数の銀弾。
銀の驟雨が細き肢体を容赦なく撃ち据え――炎爆弾、着弾。
瞬間、炎と光が膨れ上がり――爆炎の嵐が、花々と、その下の骸を吹き飛ばした。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
セシリア・サヴェージ
あどけない少女の姿をしていても、その邪悪さは正しくヴァンパイア。
問答したところで相互理解は不可能でしょう。ただ斬るのみです。
トランプ兵……元は罪のない民だと思うと心が痛みますが、強敵を前に躊躇している場合ではありませんね。
暗黒剣で斬り伏せ、さらにUC【終焉の業火】で焼き尽くし再利用を防ぐために灰にします。
同族殺しにはまだ倒れてもらっては困るので、彼を狙おうとする個体を優先して撃破します。
ヴァンパイアが同族殺しへの対処に意識が集中しているタイミングで背後から【だまし討ち】を仕掛けます。
生憎、私は正道とは無縁の騎士ですので。
ヴァンパイアを殺すためならどんな手段でも選り好みはしません。
鞍馬・景正
やれ、同族殺し殿の胸中を察するも余りある。
天災や害獣の類がなまじ人の姿して人の言葉を喋る故に、ただでさえの怒りも先鋭化するというもの。
……その共倒れを狙う私も、偉そうな事は抜かせませんがな。
◆戦闘
相手が地形を利用するならば、それを破るまで。
【紅葉賀】による火矢を【2回攻撃】の【早業】で移動しながら連射し、花園を焼き払って進ぜる。
そのまま吸血鬼を囲むよう炎の壁を築き、花びらへの盾に。
他猟兵の邪魔とならぬよう適宜消去しつつ、数か所ほど突破口を残し、同属殺し殿が少女を狙う援護を。
そのまま互いに撃ち合って貰い、彼の方が不利と見えた場合は【怪力】で引き絞った渾身の一矢で少女を射抜きましょう。
炎が晴れ、花も骸も吹き飛んだ庭園の一角。その下に敷き詰められていた土壌が露となった中心、倒れていたエシラがゆらり、と起き上がる。
着衣は所々が焼け落ち、露となった肌からは血が滴る。未だ致命傷とはいかぬが、負傷は蓄積されている。
「――わたしは、しんでいないわ。しなないわ」
土壌露わな一角から歩み出でれば、いつの間にかトランプの兵士達が後に随う。
「ころしていいのは、わたしだけ。わたしがいいといったものだけ」
そのスートはハートとダイヤ、赤色のみ。血の色を染めた印のみ。
「さ、あそびましょ、へいさいさん。わるいひとたちをやっつけるの」
未だその数は無視し得ず。命を塗り篭められた死兵達が、猟兵達へ襲い掛かる。
迎え撃つは二人の猟兵、そして同族殺し。
猟兵の一人、鞍馬・景正(雷霆万鈞・f02972)は前を征く同族殺しの背を見、次いで兵達の向こうのエシラを見て、呟く。
「――やれ、胸中察するも余りある」
傍らの今一人、セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)が応える。
「あどけない少女の姿をしていても、その邪悪さは正しくヴァンパイア――ですね」
頷く景正。あれは天災や害獣の類。それらがそのままの姿であればまだ嘆き悲しみで済むものを。なまじ人の姿で人の言葉を語るが故に、怒りも先鋭化しよう――と。
「…尤も。それらの共倒れを狙う私も、偉そうな事は抜かせませんがな」
それが作戦なれど、卑劣とは言えよう。自重気味に語る景正にセシリアは頭を振り。
「問答したところで相互理解は不能な輩。それらを討つに手段選ぶは不要かと」
何より、滅ぼすには斯様なる謀を要する程に強大なる敵ゆえに。
正道を良しとする武士と、邪道を負うとした騎士。征く武の道は真逆なれど、猟兵としての志は同じく。
同族殺しの男が、トランプ兵達と交戦を開始。強大なオブリビオンたる彼の前に死兵は次々と屠られてゆくが、数は未だ多く。
ダイヤの7を身に刻む兵が、男の脇腹に槍を突き立てる。小さく苦悶を漏らす男。更に追撃せんとばかり、ハートの4を刻まれた兵が剣を振り上げ迫り…二体ともが、漆黒の炎に包まれた。
「お前達に罪は無かれども…灰燼と化し、土へと還るがいい」
険しい表情でセシリアが告げる。その身の暗黒を解放し、炎と為した其を次々とトランプ兵達へ浴びせてゆく。漆黒の炎は瞬く間にトランプを焼き払い、元の骸をも灰へと還していく。二度と領主の玩具とされないように。
暗黒の解放に加え、元は罪なき民であった者達を焼き払う行い。セシリアの表情が歪む。それでも。
「其を弄ぶ行為は、なお罪深い!」
吼え、炎を乗り越え迫ってきたトランプ兵へ暗黒剣の斬撃を浴びせる。ハートのAが切り裂かれ、その身諸共炎に消えていく。
「わるいのはあなたたちなのに。まだわからないのかしら」
暗黒騎士の覚悟も、かの領主吸血鬼には子供の我侭の如くとしか映らぬか。呆れたような声と共にチェス駒を放る。白と黒、共にナイト。黒白の騎士駒は花弁の嵐と変じ、地に散った花弁をも巻き上げて迫る。
そこに飛来するは、無数の火矢。景正の射技『紅葉賀』。ユーベルコードの火を帯びた矢を、双射と速射の技巧を最大限に活かしての走射によって、同族殺しとセシリアの前方、そしてエシラを囲むように撃ち放っていく。
着弾せし矢から立ち昇った炎が壁を為し、花の嵐を、庭園に残る花々を焼き払ってゆく。熱された大気が熱風となり庭園を駆け巡る。
「月に叢雲、花に風――ならぬ焔、ですかね」
花の嵐が衰えたと見えた刹那、同族殺しの眼前の炎壁が消えた。ユーベルコードの産物故に、燃やすも消すも景正の随意。
なれば、と疾走する男。再び領主の少女へ肉薄し斬りかかる。ひらひらとした動きでかわすエシラであるが、かわしきれぬかその身へ幾筋かの刃傷が生じる。
つんのめり、仰向けに倒れかかる少女。そこを貫かんと迫る男。だがその眼前に黒のクイーン。命中、再び己の過去に苛まれた男が蹲る。
少女を飛び越え、生き残りのトランプ兵が槍を構えて躍り出る。ダイヤのK。逆手の槍が男を串刺しにせんとしたその刹那。
「――焼き滅ぼさむ、天の火もがも」
男の危地に備え、更なる一矢を構えていた景正。常にも増す剛力を以て弓を引き絞る。五人張の剛弓はかの怪力にも応え、過不足なくしなり力を蓄える。
躍り出るトランプ兵を視野に捉える。かの死兵と領主吸血鬼の身が重なる刹那を狙い澄ます。その様、サムライエンパイアに縁ある者ならば、剛弓無双を謳われし伝説の武者を思い起こしたろうか。
そして、時が重なる。
番えた手を放し、蓄えた剛力を得た矢が放たれる。虎落笛の銘に相応しい、凄風が如き弦打ちの音を残して。
飛び出でた矢は炎を纏いて瞬く間に戦場を横切り、ダイヤの王を射抜く。のみならず、その後ろの吸血鬼、彼女の肩までを撃ち抜く。その衝撃、かの身体を後方へ吹き飛ばさんばかりの剛弓である。
噴き上がる紅炎に苛まれながらも、トランプ兵へしがみつき踏み留まるエシラ。しかしその背後より振るわれる刃が、彼女の背を大きく斬り裂く。
セシリアである。彼女は景正の起こした炎に紛れ、同族殺しの交戦の合間を縫ってエシラの背後を取っていたのだ。
闇にあって闇を屠る、その意を銘に宿せし暗黒剣が炎を噴き、エシラのみならずトランプ兵をも焼く。赤と黒の炎に包まれた死兵は、そのまま灰も残さず燃え尽きた。
「くぅ…っ、せなかからなんて、ずるいのね、あなた…」
「生憎と、私は正道とは無縁の騎士ですので」
苦悶を帯びたエシラの抗議に、セシリアは冷然と言い放つ。
「ヴァンパイアを殺すためなら、どんな手段でも選り好みはしませんとも」
敢えて邪道を征く騎士の、矜持であった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
テラ・ウィンディア
……常識ってなんだろうな
世界によって色々あるけど…駄目だ
お前らには…敬意が無い
怒りという感情を否定するお前を認められない
お前がおれをお仕置きするなら
おれもお前をお仕置きしてやるよ…!
真の姿発動
【戦闘知識】で敵の動きと癖の把握
攻撃に対しては【見切り・第六感・残像・空中戦】で飛び回りながらの回避と共に【早業】による剣と太刀による迎撃を試みる
そのまま太刀と剣での猛攻を仕掛けつつ
闘いながらも己だけでなく他の猟兵が刻んだ斬撃の軌跡も把握
その場所に踏み込めば
痛いのとかそういうのってどう思う
結構きついけど
まぁきっとそれは
お前がこれまでやってきた事だ
だから…しっかり味わえよ
消えざる過去の痛み発動
斬斬斬斬斬斬!
ウィーリィ・チゥシャン
エシラ、だったな。
俺がこの人(同族殺し)の友達かどうかは今はまだ何とも言えないけど、
少なくともお前とは友達にはなれそうにないな。
「俺は、『わるいこ』なんでな」
同族殺しに構わず、宣戦布告と共にエシラに歩み出る。
彼女が花びらでの攻撃を仕掛けてきたら、こっちもその花びらを目標に指定して【飢龍炎牙】を繰り出して迎撃し、その炎に紛れて彼女に肉薄。
炎の【属性攻撃】を付与した大包丁での【二回攻撃】を繰り出し彼女の体を十字に斬り裂く。
ただし、トドメは同族殺しに譲りたい。
彼がその身をオブリビオンに堕としたのもこの瞬間のため。
それが、『ひと』としての彼の望みだから。
「――もう、こんなだだっこさんたちははじめてよ」
白金の髪が焼け焦げ、ドレスも至る処が血で汚れ。それでも少女は、エシラは平然とした態度を崩さない。事ここに至っても、己の敗北――死など有り得ないと確信、或いは思い込んでいるのか。或いは。
「エシラ、だったな」
一歩進み出るのは、紅衣の少年、ウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)。苦悶より立ち直ろうとしている同族殺しの男を横目に一瞥し。
「俺がこの人の友達かどうかは今はまだ何とも言えないけど。少なくとも、お前とは友達にはなれそうにないな」
彼に気付いたエシラはただ、小首を傾げている。
「俺は『わるいこ』なんでな」
ウィーリィの宣言を受け、応える。
「そう。じゃあわたしが『いいこ』にしてあげるわね。それなら、おともだちになれるでしょう?」
そのやり取りを、テラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)は一歩後ろで眺めつつ、思う。
(…常識ってなんだろうな。世界によって色々あるけど…)
彼女なりに、かの少女の思考を理解しようと試みていたようだが。やはり、答えは一つであった。
(…駄目だ)
顔を上げ、エシラへ向けて決然と言い放つ。
「お前らには…敬意が無い。怒りという感情を否定するお前を、おれは認められない」
なれど、エシラはただただ平然と。
「あなたは、なにをいっているの?」
敬意も、怒りも、彼女の価値観においては理解のできない感情なのかもしれない。
「お前がおれをお仕置きするなら!おれもお前をお仕置きしてやるよ…!」
テラの宣言と同時に、彼女の姿が変化を始める。着衣は黒衣から焔色の長衣へ、頭には焔色の翼を意匠した紅の兜。そして背には炎が形作る翼。猟兵が持つ『真の姿』。
「だめよ。おしおきはわたしがすること。あなたたちが『わるいこ』なんだもの」
それにもエシラは当然とばかりに答え。白のルークと黒のナイト、二つの駒を宙に放り上げれば。弾け変じた花弁の嵐が二人へと襲い掛かる。地より巻き上がるそれは随分と減ったが、それでも無視はできぬ勢いだ。
「何の!喰らい尽くせ、炎の顎!!」
なればとばかり、ウィーリィは愛用の大包丁を振り上げ炎の龍を撃ち放つ。龍の顎は花の嵐を飲み込み焼き払い、辺りに炎を撒き散らしていく。
其に続く形で、ウィーリィは大包丁を、テラは剣と太刀を構えエシラへ肉薄。更に復帰した同族殺しも、横合いから剣を構え吶喊。近接戦闘へ移行する。
「まあ、こわい。そんなものをふりまわすなんて、あぶないのよ?」
振るわれ続ける四本の刃を、軽やかな足取りで回避するエシラ。幾筋は避けきれず白い肌に紅い軌跡を残すも、大した傷とは言い難い。
(まだ足りない、もう少し…)
炎の翼で低空飛行しながら剣と太刀を振り回しつつ、テラはその刃の軌跡の把握に努めていた。己のだけではない。ウィーリィの大包丁、同族殺しの剣。
そして、三度同族殺しを過去で苛もうとばかり、エシラがチェス駒を取り出そうとした、その瞬間。
「なあお前…痛いのとかそういうのってどう思う」
不意にテラが問う。
「? それは、にんげんさんのおしごとよ?」
駒を取った手を思わず止め、エシラは返す。
「そっか。――まあきっとそれは。お前がこれまでやってきた事だ」
テラの言葉の意味が理解できないのか、エシラはただきょとんとするのみだったが。
「だから…しっかり味わえよ、おれが知る恐るべき刃…!」
吼えると同時に、突如、空間に無数の『斬撃』が現れる。それはつい今しがたに至るまでに三人が刻んだ、この空間の過去。
これこそは『消えざる過去の痛み』。かつてテラが合見え、為す術なく敗れた黒騎士、彼女の絶技。その悔恨と共に己がものとしたユーベルコード。
刻み込まれた過去の斬撃は、今エシラが立つ空間に密集している。即ち、その過去の全てがエシラに牙を剥く…!
「きゃああああっ!?」
全身を切り刻まれ、夥しい鮮血が溢れる。その猛烈な痛みに、堪らず上がった悲鳴と共に。
「人の痛みを、知れ…っ!」
過去の斬撃が消えると共に、ウィーリィが再度肉薄する。振り翳した大包丁に、燃え上がる炎を纏わせながら。それは怒りの具現であったろうか。
唐竹、横薙。立て続けに二度振るわれた刃が、エシラの胸を十文字に斬り裂く。傷口から、炎混じりの血が噴き出す。
「さあ、決めてやれ!」
ウィーリィは飛び退きエシラから距離を取ると、同族殺しの男を振り向き叫ぶ。
トドメは彼に譲る。ウィーリィはそう決めていた。応えるかのように、男は銃を彼女へ向け。
「…だめ、だめよ…!そんなことは、いけないの…!」
顔を上げ、エシラは叫ぶ。その様相に、男の指が、止まった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
リーヴァルディ・カーライル
…ん。同じ吸血鬼狩りを生業とする者の誼よ。
この狩りが終わるまでは、貴方の復讐に肩入れしてあげる。
【吸血鬼狩りの業】で吸血鬼や兵士の動作を暗視して、
今までの戦闘知識から存在感を消した同族殺しの殺気を見切り、
それぞれの動きを予測して【破邪顕正の型】を発動
…無様ね、同族殺し。猪のように真面からではなく、
闇夜に濡れ血を断つのがお前の狩りだったはず。
…後の始末は私達がつけてあげる。
本懐を果たすが良い、復讐者。
第六感を頼りに不意討ちを行う同族殺しの背後に回り、
怪力の踏み込みから魔力を溜めた残像の光刃をなぎ払い、
同族殺しの肉体を透過して吸血鬼の傷口を抉る光属性攻撃を行う
…吸血鬼狩りの真髄を知れ。
願夢・貴宝
さて
同族殺しにとっては焦がれ願い待ちに待った大一番だ
変わらず脇は固めてやるとも
だからまぁ
存分に殺し合えよ化け物共
負傷は抑えたかったが
エシラ・リデルの範囲攻撃の前ではそうもいかんな
多少の傷は『激痛耐性』で無視だ
【絶望の福音】を使用
常に敵側の攻撃を予測
致命打やチェス駒は
『見切り』で捌く
化け物共が殺し合えるよう
『怪力、2回攻撃』を用い
迅速にトランプ兵を断ち切っていく
エシラ・リデルが他者へ
チェス駒を投げる体勢になった時
『目立たない』を使用
エシラ・リデルに接近し
『部位破壊』でチェス駒を掴む手の手首を『怪力、2回攻撃』で奇襲
投げるという動作を行う以上
握る手に異常があればチェス駒の命中率は下がる
と期待しよう
「――無様ね、同族殺し」
同族殺しの男の傍らに、いつの間にか歩み出てきていた娘。リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)。
淡々とした声音は、侮蔑でも失望でもなく。何処か期待を滲ます。
「猪のように真面からではなく。闇夜に紛れ血を断つのがお前の狩りだったはず」
己の遣り方を思い出せと。その言葉が届いたか定かではないが。同族殺しの男は、その場より姿を消す。なれど、僅かに感じる殺気が彼の存在を報せてくれる。
(…この狩りが終わるまでは、貴方の復讐に肩入れしてあげる)
同じ吸血鬼狩りを生業とする者としての誼として。
(さて。同族殺しにとっては焦がれ願い、待ちに待った大一番だ)
僅かに残ったトランプ兵を刃の餌食としつつ、願夢・貴宝(ジョン・ドウ・f23301)は彼方の様子を見守る。
道中と変わらず、同族殺しが領主へ専心する為の脇固め。彼が己に任じた役割。なれど、此度は今一仕事。
(存分に殺し合えよ、化け物共)
「…だめ、だめなのよ。こんなことは」
ふらつく足でどうにか身を支えつつ、エシラは云う。ドレスは既に襤褸切れと化し、全身の裂傷から夥しい血を垂れ流しながらも。、
「にんげんが、わたしたちを、ころすなんてこと」
半ばうわ言めいて、変わらぬヴァンパイアの論理を説く。その手にはチェス駒、黒のキング。…のみならず。黒のポーンが幾つも。
「せかいを、すきにするのは、わたしたち、なのよ…!」
全てを纏めて放り投げれば。全てが花弁と弾け散り。これまでにない勢いで、花の嵐が庭園を席巻した。
「最後までそればかり。他に頼る手はないの?」
冷然と告げつつ、エシラへ歩み寄るリーヴァルディ。『吸血鬼狩りの業』として彼らの攻撃手段を熟知している彼女は、これ程の猛嵐をも凌いでみせる。
(…ちっ、無傷とはいかないか…)
そこまで対吸血鬼に特化している訳ではないが故、貴宝は嵐を凌ぎきれず身を打ちすえられ傷が重なる。なれど、暗殺者として負傷の痛みを殺す訓練は積んでいる。この程度で闇を駆けるに障りは生じぬ。
そして二人は共に、その時を待つ。
「………!!」
嵐が収まりかけたその刹那、エシラの背後へ現れた影。同族殺し。刃以て首を刈らんと迫る。
だがエシラもそれに気付き、振り返り再度駒を投げつけんとするが。
「――させんよ」
その手首を掴む影。貴宝である。その動作に警戒を続けていたが故に為しえた反応。エシラの細い手首がミシミシと悲鳴を上げる。駒が手より零れ、地に落ちる。
果たして、同族殺しの刃はエシラの首筋を捉える。噴水が如く鮮血が溢れ、荒れ果てた庭園の地を濡らしていく。
そして同族殺しの背後。彼の動きを殺気から予測していたリーヴァルディが、既に刃を構えていた。
「……奥義、抜刀」
告げると共に、大鎌が白い光を帯び輝き始める。宿る力は吸血鬼が忌み嫌う彼ら最大の弱点。即ち――太陽。
力強く地面を踏みしめ、大鎌を振りかぶる。放たれる光が、極限まで強まったその瞬間。
「…吸血鬼狩りの真髄を知れ」
振るわれた大鎌より放たれた光の刃が、貴宝や同族殺しの身を透過し。エシラの傷口にのみ突き刺さる。
破邪顕正の型。吸血鬼狩りの奥義。吸血鬼を吸血鬼たらしめる、その因子のみを太陽の力もて焼き払う。即ち。
「―――ぁああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
傷口から体内へ侵入する、己の存在を灼く光の奔流。全身を灼く激痛に耐え切れず、絶叫が木霊する。
「…後の始末は私達がつけてあげる。本懐を果たすが良い、復讐者」
リーヴァルディの声に後押しを受けるが如く。男は銃を抜く。『後の始末』、その意味は恐らく理解しておらずとも。
銃口が、激痛に喘ぐ少女の額へ押し付けられ――
「どうして…どうして…?わたし…わるいこと、なにもして――」
吸血鬼の妄執を打ち砕く銃声が、荒れ果てた庭園に響いた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第3章 ボス戦
『狂気に飲まれた復讐者』
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POW : 闇夜に濡れ血を断つ
技能名「【不意打ち、早業、暗視、暗殺、二回攻撃】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
SPD : 狩場
【罠】が命中した対象に対し、高威力高命中の【弾丸】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ : 飛来する銀の雨
【歴戦の感覚】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【無数の銃弾と跳弾】で攻撃する。
イラスト:善知鳥アスカ
👑8
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「フィーナ・ステラガーデン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
領主吸血鬼エシラ・リデルは滅びた。彼女の無邪気な暴虐に曝されていた領民達も、これで解放されることだろう。
だが。まだ終わりではない。
領主たる少女の消滅を見届けた男は、周囲を見渡す。焼け焦げ、荒れ果てた庭園。己以外に複数の人影。
己と縁あったものは、皆殺された。
無愛想ながら頼もしき父も。
心配性ながら優しき母も。
軽薄ながら気のおけぬ友も。
臆病ながら気丈な妻も。
御転婆ながら愛らしき娘も。
決して豊かではないながら、穏やかで平和だった故郷。その全ても。
吸血鬼共によって、奪われ、殺された。奴らにとっては只の娯楽で、己にとっては人生の全てであったそれらを。
残されたものは唯一つ。吸血鬼共への、憎しみ。奴らを一匹残らず狩り殺さねば収まらぬ、憎しみ。
なれど奴らは強い。まともに戦っても、奴らの遊び気分の一撃すら此方にとっては致命傷だ。
考えろ。奴らの弱点は。奴らの攻撃から身を守る方法は。奴らの隙を突く方法は。奴らの息の根を確実に止める方法は――。
――そして気付けばここにいた。
今、吸血鬼を一匹滅ぼしたが、まだ終わりではない。周りにいる奴らは何者だ?
己の知る人間は皆死んだ。奴らは私の知らない誰かだ。それに、ただの人間より余程強い。…ならば、答えは一つだ。
こいつらも、吸血鬼だ…!
●
素早い跳躍で、同族殺し――吸血鬼殺しの男は庭園を離脱した。猟兵達が反応するよりも早く。
その後に、何かが落ちているのが見えた。それはどうやらロケットのようで…中に、肖像画が収まっている。
それは幼い少女の肖像。年の頃は…つい先刻滅びたエシラと同じくらいだろうか。無論、明らかに別人ではあるが、雰囲気は何処か似たものを感じる。
もう少し詳しく――そう思った矢先に、庭園の外から次々撃ち込まれてくる銀弾の嵐。やはり、奴の目には猟兵もまた吸血鬼としか見えていないのか。
このまま捨て置けば、いずれ民にこの凶弾が撃ち込まれることとなろう。そうなる前に。彼が完全に堕ちきる前に。終わらせなければならない。
――最後の戦いが、始まる。
テラ・ウィンディア
真の姿発動
…そっか
あんたは本当は…きっと
あんたが大切に思ってた人達と一緒に…「死んで」いるんだ
だがそれが許せなくて…憎くて…そうなっちまったんだな
なら
あんたに強さを示す
吸血鬼達を打ち破るだろうおれ達の強さを!
【戦闘知識】で周囲の罠の捕捉と敵の動きの解析
【空中戦】で飛び回り罠の回避に努め
銃撃に対して【第六感・見切り・残像】を駆使しての回避を試みる
銃撃の射線から冷徹に敵の居場所の捕捉
【属性攻撃】
炎を全身と武器に付与
槍で【串刺し】
【早業】で剣と太刀による猛攻
その上で空中を制すれば
メテオブラスト
之が我が原初の技だ!
全てを忘れ…大地に…鎮めぇ!
【踏み付け】で更に破壊力を増強させる!
おれ達は吸血鬼を倒すよ
(…そっか)
焔色の衣と緋の装甲。飛翔する翼は炎にて形作りしもの。真の姿と変じたテラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)は油断なく周囲を警戒しながらも、かの男――吸血鬼狩りの在り様に思いを馳せる。
(あんたは本当は…きっと、あんたが大切に思ってた人達と一緒に…「死んで」いるんだ)
飛来する無数の銀弾。培った経験よりの知識、動体視力、そして直感を総動員。上下左右に飛び回り紙一重で回避。それでも掠めた一部が衣を裂き、頬に一筋の紅を走らせる。
(だがそれが許せなくて…憎くて…そうなっちまったんだな)
掻い潜り接近。罠をやり過ごすべく飛行してきたが、それすら想定の内なのか柱との間に黒の網。太刀を閃かせ斬り払う。
(…なら)
射線の出処を探れば、見出したるはかの男の姿――剣を構え、不意を打たんとしたまさしく刹那の遭遇。
「おれは!あんたに強さを示す!吸血鬼達を打ち破るだろう、おれ達の強さを!!」
テラの全身が炎に包まれる。姿を見出せたのは僥倖、闇に潜む間を与えぬうちに押し切る。
「行くぞ!!」
錆付いた鞘から抜いた太刀を片手に、星の力を宿す宝剣を片手に。炎に包まれた両の刃持て急降下。仕掛ける。
その速度、技巧、かの男をして逃れるには難く。剣にての防戦を強いる。
跳躍にて上を取る選択は完全に奪った。確信したテラ、その身を捻り片足を高く掲げ上げる。
「星よ…世界よ…流星の力を我が身に宿せ…!今こそ我が身、一筋の流星とならん…!」
掲げた足に力が集束し周囲の空間が歪む。重力、即ち星の引力。今の彼女は、今まさに流れ落ちんとする流星の如し。
「之が我が原初の技だ!メテオ・ブラスト…受けろぉ!!!
引力が男の足を惑わせ、回避の機を奪い――そして星が、振り落とされた。
流星が男の肩に沈み、そのまま彼の全身を床へ沈めんとする。白亜の床に亀裂が走る。
「全てを忘れ…大地に…鎮めぇ!」
その背を踏みにじり、更に押し込み、埋め込みにかかる。床の蜘蛛巣が広がりゆく。徹底的な破壊を、確実な殲滅を。
「――アァァァァァァァ!!」
だが男は吼える。忘れるものか、止まるものか、己は、己は未だ――!!
「…んなっ!?」
男の手が、テラの、今その背を踏みにじる側と逆の足を掴む。そして強引に引き倒す。踵が浮かされ、重力の戒めが破られる。そのまま流れるように立ち上がれば、投げ飛ばし回廊の向こうまで。
「…くっ!」
空中で焔翼を羽ばたかせ姿勢を立て直すが、既に男は知覚できぬ範囲まで離れてしまった。
「まだ止まれないってのかよ…。…でも、おれ達は」
意志を新たに、翼羽ばたかせ追跡を開始する。
成功
🔵🔵🔴
リーヴァルディ・カーライル
…ん。先の言葉を違えるつもりは無い。
同族殺し。お前のその手が更なる血で穢れる前に、
その呪わしき命運を絶ち切ってあげる。
今までの戦闘知識から同族殺しの行動を見切り、
真の姿の吸血鬼化して存在感を放ち囮になり、
第六感を頼りに敵の目立たない殺気を暗視して捉える
…さぁ、吸血鬼は此処にいる。
その業で吸血鬼を狩りに来るが良い。
魔力を溜めた踏み込みから残像を置き去りに接近してUCを発動
生命力を吸収する呪詛の掌打で敵を掴み、
怪力任せに地面に叩き付けながら血杭で貫き、
傷口を抉る2回攻撃のカウンターを行う
…二度も三度も同じ手を見せたのは間違いだったわね。
冷静さを失った狩人に勝機は無いもの。
…眠りなさい。安らかに…。
振るわれた剣を大鎌の柄で退け、反撃の刃を振るうも、かの男は再度闇へ潜む。されど焦ることなく、その闇の向こうを見据えるリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)の纏う気配は、先程までと全く趣を異としていた。
銀糸の髪は地を擦らんばかりに長く伸び、その身に纏うは、宵闇を孕むドレスに。真の姿を露としたことで、その身に流れる吸血鬼の血が励起。夜と闇の存在感が、放たれているのだ。
(――先の言葉を違えるつもりは無い)
奴が吸血鬼を憎むなら。己はこの血を以て奴を引き付け、仕留める。全ての者が吸血鬼と見えるとて、その匂いをより強く纏うものにこそ惹かれるはず。
(お前のその手が更なる血で穢れる前に、その呪わしき命運を絶ち切ってあげる)
直感が、男の殺気を捉える。仕掛けてくるか。
(…さぁ、吸血鬼は此処にいる。その業で、吸血鬼を狩りに来るが良い)
果たして、吸血鬼狩りの男は飛び出でてきた。大鎌の柄を掲げ、振り下ろす刃を受け――否、戦闘経験よりの確信。彼方の刃は振るわれぬ。鎌を引く。
その読み通り、男は攻撃せぬまま着地。間髪入れず横薙ぎの一閃。立てた大鎌の柄で受けるも、斬撃の重さに柄が流れる。
受けの反動を利しての刺突が、リーヴァルディの白く細い左肩を穿つ。迸る鮮血。紅と変じた瞳が見開かれる――今ぞ好機、と。
「――捉えた」
リーヴァルディの輪郭が揺らめき、一歩前へ確かなる姿。突き立つ刃を残像へ残し、至近距離へと肉薄。その身の魔力が、右掌へ集束する。
呪詛と変じたそれ諸共に、掌を胸へ叩きつける。細腕より想起されるそれとは、あまりに隔絶した膂力。男の身体が浮く。更に一歩踏み込み、呪詛もて男の生命力を吸い上げながら床へと叩きつける。
と同時、掌に集束した魔力を解き放つ。杭の形と変じたそれが、直ちに男の胸を貫く。穿たれた孔から溢れる鮮血。
「…二度も三度も同じ手を見せたのは、間違いだったわね」
これが正気なれば、また別の手も取ってきたのかもしれないが。狂気が、冷徹なる判断力と共に、彼の勝機を奪い取っていたのだろう。
「…眠りなさい。安らかに」
止めを刺さんと、今一度杭を繰り出さんとした、一瞬の間隙。
渾身の力で放たれた蹴りが、リーヴァルディの身体を跳ね飛ばしていた。
「…っ!?」
空中で姿勢を立て直したリーヴァルディ、しかし男は、その視界から既に逃げ去っていた。
成功
🔵🔵🔴
メリッサ・ウェルズ
そうだよね、ボクらとも戦わないと止まらないよね?
いいさ、そのすべてを受け止めて、休ませてあげる
相手の連続攻撃を、血統覚醒で強化された体で、受け止め、避け、すべて捌ききりながら
「気がすむまでやるといい、全部出しきるといい」
そして攻撃に合わせてカウンターのベアナックル
こういうときは足を止めての打ち合いこそがふさわしい
「キミの全てを受け止めて、返してやるよ!」
※真の姿が発現していたら、このあたりで本人も気づかないうちに、髪が銀になりロングヘアになってます
殴りあいから、少し距離が離れると、そこから蹴り技主体の空中殺法に
最後は飛び関節から、極めつつ投げ飛ばしてやろう
「これで、おわりだっ!」
背後より現れた男の兇刃、其を握る腕に己の腕を当てて止めながら、メリッサ・ウェルズ(翡翠の吸血姫・f14800)は彼の昏く燃える瞳を見返す。
「そうだよね、ボクらとも戦わないと止まらないよね?」
見返すメリッサの瞳、蒼い右の瞳が、左と同じ紅へと染まっていく。血統覚醒。己に流れる吸血鬼の血より力を引き出す。
「いいさ、そのすべてを受け止めて、休ませてあげる」
続けざま、繰り出された左の拳は敢えて受け、交差させるように右ストレートを叩き込む。
追撃の左フックは半歩下がってかわされるが、合わせるように半歩踏み込む。打ち合いの間合いから、逃がしはしない。
「気がすむまでやるといい、全部出しきるといい」
応えるように放たれたボディブローを、腹筋に力籠めて受け止め。浮いた勢いでアッパーカットを打ち込みにいく。
互い、足を止めての殴り合い。メリッサが仕掛けたその戦。己の遣り方ではないにも関わらず男が応じたのは、彼女の吸血鬼の血を嗅ぎ取ったが故か、或いは。
「キミの全てを受け止めて、返してやるよ!」
切れた口元から流れる血を拭いながら、男の拳を巧みに受け止め、反撃の拳を繰り出していくメリッサ。黒かったその髪は次第に白銀へと変じ、長く伸びてゆく。
殴り合いを繰り返すうち、互いの体格差もあってか次第に間合いが離れる。男の攻めを受け止めては返す戦いに徹していたメリッサだが、ここにきて自ら攻勢に出る。
徐に跳躍からのローリングソバット。振るわれた剣へ更に身を捻ってのサイドキックを当てて弾き、男が銃を抜いたところへ飛び蹴りを叩き込む。その反動で壁まで跳べばトライアングル・リープ、弾丸が如き勢いでのクロスチョップ。
メリッサ本来の華麗なる空中殺法を以て男へ打撃を重ねていく。それでも幾らか反撃は受け、四肢の斬痕や銃創が生ずるも、その飛翔は衰えず。
「これで、おわりだっ!」
銃を構えた腕へ跳びかかっての十字固め。そのまま背後まで回り、勢いを利して男の背をその片腕で背負い、一気に投げ飛ばす。関節を破壊せんとする逆一本背負いであった。
だが、ダメージは与えども腕を破壊するまでは至らず。投げ飛ばされた男の気配は、そのまま離れていった。
成功
🔵🔵🔴
カシム・ディーン
はぁ…復讐か
僕はそういうのはあんまり考えませんけど
お前にとってそれほど大切なものが一杯あったって事ですよね
…ちょっとばかり羨ましいですよ
まぁ…それを奪われてこうなったのであれば
少しばかり同情はします
大きなお世話でしょうけど
復讐が終わったなら
もっと今を楽しむ事を考えるべきでしたね
ユベコ発動
【医療】で復讐者の身体の動きと眼球から敵の攻撃の方向性の解析
狂気に犯されてるなら恐らく本能に近い動きと見たがどうか…!
【属性攻撃】で光属性による光学迷彩と【迷彩】で此方も姿を消し
不意打ちで【溜め攻撃・盗み攻撃・盗み】による攻撃
可能な限り拳銃や罠などの武装の強奪を行い戦力低下を狙う
ああ、やっぱり戦闘って嫌いです
(はぁ…復讐か)
乱れ飛ぶ銀弾を掻い潜り、足元を捉えんとする罠を紙一重で回避しながら、カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は男へ迫り。
「僕はそういうのはあんまり考えませんけど。お前にとって、それほど大切なものが一杯あったって事ですよね」
肉薄、互いの瞳が刹那、交錯する。
「…ちょっとばかり羨ましいですよ」
それを奪われてこうなったのであれば、少しばかりは同情する。大きなお世話とは思いながらも。
「でも。復讐が終わったなら、もっと今を楽しむ事を考えるべきでしたね」
カシムの言葉を受けた男の瞳、昏い焔を宿したそこが、更に激しく燃える。まだ、復讐は終わっていないと吼えるかのように。
「…それこそ大きなお世話、でしたか。まあ仕方ない」
その眼の動きと、身のこなしを観察し。己の医療知識を元に、男の攻撃の方向性を把握せんとするが。
「…っ、消えた!?」
男は闇雲に突撃するでもなく、館内の闇へ身を潜ませた。本能任せに近い動きを予測していたカシムは、予想外の行動に狼狽。なれどそればかりでもなく。
「ならば僕だって…!」
対抗するかの如く、装備に宿した魔力を用い、光を屈折させることでの擬似光学迷彩を発動、自らも不可視の状態となる。
互い、姿を隠し探り合う攻防。闇に潜む吸血鬼殺しと、光で欺くカシム。見えざる丁々発止。
なれど先に敵を捉えたのは、男の放つ殺気を感知したカシム。身軽になった身体を活かし、壁や天井を蹴り渡りながら接近、不可視の身に四方八方からの跳躍音を合わせることで所在位置を絞らせぬ。
そして、男をを飛び越え背後へ着地してから背中を――そう予測した男が剣を構えた瞬間。着地音は、正面から聞こえた。
敢えての正面への着地で不意を突いたカシム、その勢いを乗せてダガーの一突きを放つ。貫かれた腹から鮮血が溢れ、男の口元が苦悶に歪む。
乗じて得物を盗まんとするカシムの手は、剣にて斬り払い遠ざけ。そのまま飛び退き闇へと消えた。
片腕に裂傷、少なからぬ流血。擬似光学迷彩が解け、カシムの姿が露となる。
「ああ…やっぱり戦闘って嫌いです」
男の消えていった闇を、カシムは溜息と共に見送った。
成功
🔵🔵🔴
深護・刹那
想いとはどこかで顕れるもの
わたくしのように現(うつつ)から未来に結実することもあれば
貴方のように過去から現に結実することもある
二つの想いが邂逅したならば
わたくしは猟兵として貴方が未来を食い潰すのを止めるのみ
「ゆえに。不肖、深護・刹那、参ります!」
『からくり仕掛けのセツナ』で真っ正面から、いきますわよー!!
オーラを手脚に纏わせてダッシュで接近
徒手空拳による攻防一体の攻撃を仕掛けますわ
罠も弾丸も真っ正面から受け止めて差し上げます
食らおうとも防ごうとも
これが貴方の相対する、せめてもの礼儀かと思いますので!
その妄執は現に顕れた貴方の悪夢
それが消えることはなくとも……
いま一度骸の海で揺蕩いなさいませ
疾走する吸血鬼殺し。並走する、金の髪の人形。深護・刹那(花誘う蝶・f03199)である。
彼の姿を見据え、刹那は思う。
(想いとはどこかで顕れるもの。わたくしのように現から未来に結実することもあれば、彼のように過去から現に結実することもある)
ヤドリガミたる己、生きた人々の想いを受けて未来に開花した己。片や、死した者の想いが過去から漂着した彼。その二つが邂逅したならば。
(わたくしは猟兵として、彼が未来を食い潰すのを止めるのみ)
いずれ新たな己に繋がるやもしれぬ未来を守る為。刹那は宣言する。
「ゆえに。不肖、深護・刹那、参ります!」
それと同時に、闇より現れしもの。人形遣いを模した姿のからくり人形。
「夢はうつつ。うつつの私はヒトガタ」
その十指から伸びる糸が刹那の五体へ繋がり、彼女を意志ある操り人形と変化せしめていく。
「ヒトガタは繰られ夢を見る」
だらり、下がった四肢に燐光が灯り。人形遣いの手により更なる鋭さを得て動きだす。
「これが、人形の、刹那の、夢」
仄光る脚が、速度を上げて男へ迫る。
ベアトラップや飛び出す杭といったトラップもあったが、燐光によって保護された脚を傷つけるには至らず。
放たれた弾丸、両の腕を以て受け止める。少なからぬ弾痕が腕に刻まれるも、構わずその腕を振り上げ、男の胸へと打ち込む。
「真正面から、いきますわよー!」
剣と銃、男の攻勢。刹那の俑なる四肢が欠け、削れ、その内側までが露出する。
なれど刹那は止まらず。操られることで限界を無視した機動。己の破損を厭わぬ拳の猛撃。男の身を激しく打ち据える。
全てを失いし憤怒と悲哀で狂気へ堕ちたかの男。死して尚止まらぬその狂気と相対するならば、己もまた全てを擲ち戦うべし。それが礼儀と考えるが故に。
「その悪夢、一度覚める時…ですのよ!」
剣が肩へと深く食い込み、苦悶に刹那の顔が歪む。だが操られる身はその程度で止まらぬ。交錯させるように放った渾身の右拳が、男の頬を殴り飛ばした。
闇の中へと転げていった男の身は――そのまま、気配を薄れさせていった。
「未だ、骸の海を揺蕩う身と戻る気はなし、ですか」
繰り手が動きを止め、文字通り糸の切れた操り人形の如く崩れる四肢。闇の向こうを、刹那は悲しげに見送った。
成功
🔵🔵🔴
アルトリウス・セレスタイト
止まる時間だぞ
顕理輝光で対処
常時身に纏う故、準備不要
攻撃へは『絶理』『刻真』で異なる時間に自身を起き影響を回避
攻撃分含め必要な魔力は『超克』で“外”より汲み上げ、全行動を『刻真』で無限加速し隙を作らず
絢爛で戦域全体を支配
起点は撃ち込まれ散らばっている銀弾の一つ
時の原理と自戒の原理で領域内を満たし調整
オブリビオンが行う攻撃を全て攻撃者自身へ向け、着弾と同時に抱く悔恨や執着を辿り遡行
復讐心に焼かれて消えた人間性を理性と共に引き戻し、眠る側に回ったのだと自覚させる
抗うなら静止の原理で縛り他の猟兵に委ねる
終わりを受け入れるなら安寧を祈っておく
男の前方の闇に、蒼き光が溢れる。原理顕す輝光、その中心に立つのはアルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)。
「止まる時間だぞ」
静かに、しかし確と、男へ――最早吸血鬼と他の区別も失った吸血鬼殺しへと告げる。
男は、銃弾を以て返答に代える。されど、異なる時間にその身を置くアルトリウスに、その弾丸は届くことはなく。男の目には、銀弾が彼の身を透過していったようにも見えたろうか。
だが男は銃撃を止めない。弾丸は益々その数を増やし、その全てがアルトリウスの身を通り抜けていく。
無駄、とも見えようか。否、これこそがこの吸血鬼殺しである。決して届かぬ敵を討ち果たさんと抗い、足掻き続けたが故にこそ、彼は今ここに居る。
かつては己の全てを奪った吸血鬼に。今は己の前に立ち塞がる超越者に。その在り方だけは、かつてと変わることなく。
「………」
アルトリウスは見る。鬼気迫る男の表情を。眼前の『吸血鬼』を必ず討ち滅ぼす、その執念を燃やす瞳を。そして感じる。その一念、或いは断絶と時の原理をも捻じ伏せて、己が身に銃弾を届かせるやもしれぬと。
それ程の激情を、僅かばかり眩しく思いながらも、否、それ故にこそ。ここで終わらせる。アルトリウスはそう決める。
幾度目かの斉射。館内と壁や床、天井を跳ね回った無数の銀弾が、全て完全に同一のタイミングでアルトリウスの身へ着弾するよう、全方位から迫り来る。
その全てに宿る、殺意、憎悪、妄念。万一、それが原理の壁を貫いたならば――彼の身には、蜂巣が如く無数の弾痕が刻まれることであろう。
「――煌めけ」
だが。その弾丸の全ては…アルトリウスの直前で、静止した。
静止寸前、彼を…正確には、彼の眼前に飛び来た弾丸の一つを起点に展開された領域。『絢爛』、己が意で世界を超える権能。其を以て空間を掌握、弾丸の全てを支配下に置いたのである。
そして。その弾丸は飛来軌道を逆転させ、本来の射手たる男の全身へと叩き込まれていく。
「…がぁ…ぁ、あぁ…っ!!」
全身を穿たれ、苦悶の呻きが溢れる。無数の銃創から夥しく流血しながらも、しかし、その脚は崩れることなく。
「…っぐ、ぅ…!?」
だが、それで終わりではなく。その銃創を起点に、己の心に何かが入り込んでくるかの如き感覚。記憶が、無理矢理に遡られていく。
「…ぁああぁぁぁぁっ!!」
その叫びは、否定か、拒絶か。未だ衰えぬ脚力を以て、男は闇の中へ飛び込んでゆく。
「…未だ眠りを迎える気はないか」
精神を遡行させ、人間性と理性を奪還せんとしたアルトリウスであったが、その前に対象に離脱されては中断せざるを得ぬ。静止の原理にての束縛すら、奴は振り切ってみせた。
それ程までの妄念か――彼の者が消えた闇の向こうに、超越者は何を思ったか。
成功
🔵🔵🔴
鞍馬・景正
分かっていた事ですが、問答無用ですか。
良いでしょう、鬼を殺すべしというなら――見事この二本の角を圧し折って御覧にいれよ。
◆戦闘
斜めに疾走しながら銃弾をやり過ごし、接近。
元より人を捨て魔道に堕ちるまで鍛えた武芸、盲撃ちではなく確実に命中させてくる筈。
なら眉間や心臓などを刀と脇差で庇う形での【武器受け】で防御しつつ、多少の被弾は【激痛耐性】にて耐え、斬り合いの間合に。
【第六感】を研ぎ澄まし、僅かでも殺気を覚えた瞬間に【無明剣】にて迎撃。
どれだけ巧妙な奇襲とて、間合に入った瞬間【怪力】と【早業】で斬り捨てさせて頂く。
貴殿は見事仇討ちを果たされた。
ならば、黄泉路で待つ御家族に逢いに行って良いでしょう。
「分かっていたことですが、問答無用ですか」
銃弾の飛び来たる方角を見据え、鞍馬・景正(雷霆万鈞・f02972)は呟く。此処までの戦いの中、もしかしたら――そんな期待も、僅かばかりはあったが。やはり。
「良いでしょう、鬼を殺すべしというなら――」
利き手に太刀、濤景一文字。今一方の手に脇差、鬼包丁。二刀を構え。
「見事、この二本の角を圧し折って御覧にいれよ」
弾丸の雨へ飛び込むかの如く、疾走する。
一歩、二歩、切り返し。一歩、切り返し。稲妻めいた足運びで射線をかわしてゆくも、それすら読んでいるかの如く、少なからぬ銃弾が景正の身へ殺到してゆく。
景正にとってもそれは予測の内。何せ彼の者は人の身で吸血鬼を討たんとし己を鍛え抜いた者――魔道へ堕ちる程までに。なればこの程度の機動に対応しきれぬはずも無い。
眉間狙いの弾丸は太刀で弾く。心ノ臓へ喰らいつきかけた一射は脇差にて防ぐ。肉厚の刃に、弾痕が穿たれる。肩口への銃弾は、致命たり得ぬゆえ敢えて受ける。鮮血が噴出し激痛が走るも、精神を研ぎ澄まし耐え抜く。
そして太刀の間合いへ吸血鬼殺しを捉えんとした刹那。彼の者の姿が消えた。闇に紛れ強襲を狙うか。なれば闇雲に動くは危険。此の場にて迎え撃つ。
脇差を納め、太刀を構える。感覚を研ぎ澄まし、殺気を探る。
経た時は数瞬か、数刻か。
景正の背後、真後よりやや左。金属の跳ねる音。
そこか――
――否! この殺気は――右!
「我空、人空、剣空――右三空一心観。無明にて断つ」
瞬間、景正の瞳が光を捨てる。無明剣。我を、理を捨て、間合いに入りしもの全てを斬り捨てる剣鬼と化す奥の手。
果たして、彼の右方より現れた吸血鬼殺し、景正の頸を狙い刃を振るう。超速の一閃。なれど景正の太刀、その上を行かんばかりの速度で振るわれる。
吸血鬼殺しの刃、景正の首根を捉えるも、動脈に至らず。景正の太刀、男の脇腹へ深く食い込む。
「――貴殿は見事仇討ちを果たされた。ならば、黄泉路で待つ御家族に逢いに行って良いでしょう」
瞳に再び光を灯し、景正が告げる。なれど吸血鬼殺しは、食い込む刃を振り払い、跳躍から再び闇へと消える。
今の一撃、完全に入った筈。これまでに仲間が負わせた傷も相当に深い。だが、未だかの男は止まらぬというのか――。
成功
🔵🔵🔴
願夢・貴宝
ようやくか
焦らすものだ
伽藍の殺意しか放たん鎧に骸の兵
挙げ句悪意も敵意も殺意すらない領主様
これではダンス・マカブルと
踊る事も出来ん
だが
貴様からは甘ったるい憎悪の腐臭がするぞ
実にそそる
だからさぁ
存分に殺し合おうぜ化け物
常に【風天の凶刃】
痛みと傷は激痛耐性、生命力吸収で無視だ
回避する暇があんなら
野郎に接近し怪力、2回攻撃で切り結ぶ
弾が肉を穿ち
刃が骨を断ち
憎悪が臓腑を抉ろうとな
野郎の今までの戦い方からして不意を打つ時は首と見るぜ
なら不意打ちは見切りで首を庇い対処
それに合わせ
瀕死上等のカウンター、怪力、捨て身の一撃、部位破壊で野郎の首を狙う
他の部分?
呵々、くれてやるよ
あばよ
名も知らねぇ狩人
愉しかったぜ?
「ようやくか…焦らすものだ」
時の刻は既に未明。静寂と闇が支配する館内を疾走しながら、願夢・貴宝(ジョン・ドウ・f23301)は、此処にきて高揚を覚えていた。
伽藍の殺意しか放たぬ鎧、骸の兵。挙句、悪意も敵意も殺意すら無い領主。ダンス・マカブルを舞うにはまるで物足りぬ。
「――だが。貴様からは。甘ったるい憎悪の腐臭がするぞ」
前方より感じられる其の気配に、ぞくり、背筋を震わせる。無論、恐怖にではない。――実にそそる。
「だからさぁ――存分に殺し合おうぜ、化け物」
此処まで暗殺者として影に徹してきた間は抑えていた本性。血みどろの殺し合いに歓喜する狂戦士としての面を露に、『奴』が待ち伏せているだろう闇へと飛び込んでゆく。
闇溜まりに潜んでいたベアトラップが、踏み込んだ足を噛む。だが構わぬ。前方、跳躍する男の姿を見出す。
降り注ぐ弾丸。肩を、脇腹を、太股を穿つ。戦の狂熱で痛みを呑み込み、生命力を搾り出し鉄鋏を強引に振り切る。再度疾走。
肉薄。色即是空、空即是色。両手に短剣を抜き、斬りかかる。吸血鬼殺し、剣を抜き迎え撃つ。
速度に膂力を乗せた連斬。守りを押しきり、男に傷を重ねていく。返しの刺突、肩を穿つも攻撃は緩めず。
不意に男が姿を消す。暗殺者としての経験と、それまでの彼の戦い方から、次の一手を予測する――
「そこかぁ!!」
身を捻り、首狙いの斬撃を肩で受ける。同時。短剣を捨て、更なる一刀を抜き放つ。涅槃寂静。あらゆる意思の炎を生命と共に吹き消す、外法司る大刃。
「っらぁぁぁぁぁぁ!!」
もう一方の腕に吸血鬼殺しの刃が食い込みゆくのも構わず。全力を籠めた捨て身の一斬を、男の首筋に叩き込まんとし――
「…っ!!」
男もまた、咄嗟に身を捻り刃を肩で受ける。深く食い込んだか顔を顰めるも、銃を抜き発砲。貴宝の腹を穿ち、そのまま蹴り飛ばすと離脱。
「が…っ! …ち、逃がしたか…」
床を数度転げ体勢を立て直すも、立ち上がらんとした膝が崩れる。痛みは無視できるが、負傷のダメージ自体は誤魔化しきれない。ダンスはお開きか。
「だが、それなりには愉しかったぜ…あばよ」
闇へ消える背中へかけた言葉。どのみち今生の別れだろう。手向けは、無駄ではあるまい。
成功
🔵🔵🔴
アイ・リスパー
「吸血鬼殺しのオブリビオン……
あなたが何者か、過去に何があったのかは知りません。
ですが、はっきりしていることは一つ。
私は猟兵。オブリビオン殺しのために造られた存在です!」
【チューリングの神託機械】で情報処理能力を向上。
【ラプラスの悪魔】で空気分子の運動をシミュレートし、【マックスウェルの悪魔】で空気分子に僅かな揺らぎを与えます!
わずかな揺らぎは計算に従って、やがては竜巻に変じて銃弾を飲み込み、吸血鬼殺しを切り裂くのです!
「どのような経緯でオブリビオンになったか。
何故吸血鬼と敵対しているかなど些細なこと。
あなたがオブリビオンであるという事実だけで、その存在を滅する意味があるのですから」
滂沱と流血しながらも、男の戦意は衰えることなく。一匹でも多く、吸血鬼を滅ぼす。その意思が、自然と足を速めさせてゆく。その負傷の度からは想像もつかぬ速度。
行く先に、白髪紅瞳、白い肌。アルビノめいた様相の少女。アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)だ。
「吸血鬼殺しのオブリビオン…あなたが何者か、過去に何があったのかは知りません。ですが」
瞳に宿すは、確たる戦意。流れる血涙は憐憫に非ず、純然たる殺意。
「私は猟兵。オブリビオン殺しのために作られた存在です!!」
宣言に対し、銃を抜き身構える吸血鬼殺しの男。同時、周りにホロディスプレイを展開していく、オブリビオン殺しの少女。互いが互いを殺めんとする戦が始まる。
「初期パラメータ入力…シミュレーション実行…」
万能電算装置の助けを得、駆動させるは因果律を統べるプログラム。以て戦場の空気分子運動を把握すれば、更なるプログラムを走らせる。
「初期運動量コントロール開始、ローレンツ・アトラクタ・プログラム起動!」
それは、空間の空気分子に揺らぎを与えるプログラム。蝶の羽ばたきが如く僅かな揺らぎは、しかし瞬く間に周辺へと波及し、プログラムによって与えられた運動ベクトルに従って男の方へと揺らぎを拡大しながら向かっていく。
対する男も、歴戦の感覚にて異変を察知。致命的変化の生ずる前に彼女を仕留めんと、その銃を立て続けに発射。天井、壁、床で反射した跳弾が、上下左右からアイへと迫る。
空間シミュレートで弾丸の軌道を把握していたアイだが、全ては回避できず複数発がその身へ着弾。堪らず膝をつく。
「…どのような経緯でオブリビオンになったか、何故吸血鬼と敵対しているかなど、些細なこと」
止めを刺さんと、彼女自身へ男が銃を向けた直後。揺らぎは、致命的変化を齎した。
「あなたがオブリビオンであるという事実だけで、その存在を滅する意味があるのですから…!」
唯純粋にオブリビオンを滅する。冷徹なまでのアイの意思は竜巻と変じ、止めの兇弾もろとも男を巻き込み、その身を切り刻む。
漏れる呻きと噴出した血を周囲へ残し、男の身はそのまま何処かへと飛ばされていく。
「…とはいえ…っく、予測以上に手が早かったですね…」
弾丸を受けた身の負傷は軽くない。万能電算装置の制御負荷も相俟って、暫しの間、アイは立ち上がること叶わなかった。
苦戦
🔵🔴🔴
ウィーリィ・チゥシャン
俺達の声が届くかどうかわからない。
それでも、せめてあいつの魂は救いたい。
あいつが同胞を手にかける前に、あいつの悪夢に終止符を打つ。
戦いの年季は圧倒的に向こうが上だ。
銃弾を鉄鍋の【盾受け】で凌ぎながら接近し、暗殺の刃を【見切り】ながら【フェイント】で回避し、そして【カウンター】で【武器落とし】を放ちながら同族殺しの男に呼びかける。
「目を覚ませ!お前の知り合い以外みんな敵なのかよ?」
「過去に囚われたままじゃお前も奴らと同じになっちまうだろ!」
それでも、もし心を取り戻せないのなら。
手向け代わりに【神火の竈】の業火で奴を包み、炎の【属性攻撃】を付与した大包丁で介錯する。
後は俺達に任せてゆっくり休みな。
立ち上がった男の前には、紅衣を纏う少年の姿。ウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)。未だあどけなさ残るその貌に、決意を漲らせて。
(俺達の声が届くかどうかわからない…それでも、あいつの魂は救いたい)
彼が、元は同胞であった民を、その手にかける前に。
「お前の悪夢に、終止符を打つ!!」
決意が炎となって、携えた大包丁より迸った。
吸血鬼殺しが銃を撃ち放つ。ウィーリィは足捌きを以て射線をかわす。それでも向かいくる弾丸、背負っていた鉄鍋を盾とし弾丸を凌ぎ、距離を詰める。
大包丁の間合いに踏み込む――と見せ掛け、浮かせた足を逆に一歩後ろへ。直後、男の身が掻き消え、振り下ろす刃と共にウィーリィの頭上へ。踏み込んでいたら反応が間に合わなかっただろう程の速度。
戦の年季は彼方が圧倒的に上。確実に相手の攻めへ対応することを主眼にウィーリィは立ち回る。そして。
「目を覚ませ!お前の知り合い以外みんな敵なのかよ!?」
男の振り下ろす剣に自らも大包丁を振り上げながら叫ぶウィーリィ。両者の刃がぶつかり合う。
「過去に囚われたままじゃ、お前も奴らと同じになっちまうだろ!!」
交錯する視線。ウィーリィを見返す男の瞳は、憎悪と憤怒に昏く燃え――それは、先程領主吸血鬼へ向けていたものと全く変わりなく。即ち。
(こいつにとっちゃ、俺達もあいつと同じ――)
やはり、自分達の声は届かないのか。唇を噛む。
「それなら、せめてもの手向けだ…!!」
大包丁を包む炎が膨れ上がり、業火と化す。迸る業火は大包丁から男の剣へと伝わり。
「人類で最初に火を手にした人間はこう叫んだ!『我こそは料理人なり』…!!」
神火の竈。人類最初の火を模した業火が、男の身を包み込んだ。燃え上がる黒衣。漏れる苦悶の声。
「もういい…もういいんだ、後は俺達に任せて、ゆっくり休め…!」
崩れかけた男の脳天目掛け唐竹。介錯の一斬は、しかし跳躍によってかわされた。男は床を転がり強引に炎を消し、そのまま走り去ってゆく。
成功
🔵🔵🔴
シャルロット・クリスティア
動きに無駄も躊躇いもない……!
なるほど、骨身に叩き込まれた動きです。いったいどれほどの執念でここまで来たことか……!
しかし、あなたの戦いはもう終わった。
せめてもの手向けです、あなたが『吸血鬼狩りの戦士』であるうちに、罪なき人々にその刃を向ける前に叩く!
私とて【地形の利用】法や【罠使い】としての知識はある。
即席で罠を仕掛けるのならばできることは限られる。
【視力】を凝らし、よく周囲を見渡せばある程度の罠の配置や種類の予測はつく。
場所さえわかれば、銃撃なりなんなりで先んじて破壊することは可能です。
余裕があったら本人にも撃ちこんでいきたいところですが、それが無理でも他の仲間が戦いやすくはなる筈……!
エメラ・アーヴェスピア
…まぁ、こうなるのは仕方ないわよね
猟兵らしく貴方を送り還すわ
彼の速度に対抗するには複数で守るか速度で上回るか…
…決めたわ、まずは『馳せ参じよ我が騎士よ』
呼び出すのは白騎兵、持ち前のスピードと今まで【情報収集】した情報から精度を上げた予測でその速度に対抗
罠に関しては私が最初の方にしたように探知、白騎兵の情報に随時更新
念の為の私の護衛には猟犬と浮遊盾よ
ある程度のダメージを与えたなら最後の攻撃
…この技は突撃するだけじゃないわ
もう一つの使い方、ブースターを全開にした魔導蒸気推進槍を投げ貫く…投槍『死闘制すは我が白槍』…!
貴方はもう休んでいいのよ
骸の海へ…いえ、家族の元に還りなさい
※アドリブ・絡み歓迎
館の大ホール内を飛び交う無数の銀弾。牽制と本命とを巧みに織り交ぜ、時には跳弾さえ駆使してみせるその銃撃に、シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)は只管に驚愕する。
「動きに無駄も躊躇いも無い…!なるほど、骨身に叩き込まれた動きです…!」
更にその身は無数の銃創と裂傷が刻まれ、黒衣も半ば燃え落ち既に満身創痍。にも関わらず大ホールを縦横無尽に跳び回るこの動き。その執念の程の深さを思い知らされる。しかし。
「あなたの戦いは、もう終わったのです…!せめて、あなたが『吸血鬼狩りの戦士』であるうちに…!」
罪なき人々にその刃を向ける前に。それが彼への――或いは己が辿っていたかもしれない末路へ至ってしまった男への手向けと。シャルロットは愛銃を構え直す。
「…まぁ、こうなるのは仕方ないわよね」
魔導蒸気仕掛けの浮遊盾で弾丸を凌ぎながら、エメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)は嘆息一つ。作戦開始時や領主吸血鬼と対面した際のそれに比して、何処か哀しみを感じるのは気のせいか。
「猟兵らしく、貴方を送り還すわ。――出撃の時よ、私の白騎士」
ひとたび伏せた瞳を開けば、命令を発する。応じて空間の向こうから現れるは、魔導蒸気仕掛けの白騎士。速度と予測演算能力に長けた精鋭である。これに、ここまで集めた吸血鬼殺しの戦闘データを入力。予測精度の強化を図る。
シャルロットの頭上に現れ刃を構えた男に対し、白騎士が槍を突き上げる。男は身を捻り刺突をかわし、槍に剣を当て、反動を利して距離を取る。シャルロットが銃撃で追撃するも、有効打は入らず。
「ありがとうございます…然しこれでは迂闊に動けませんね」
礼を述べつつ、シャルロットは戦場を見渡す。光源はあるものの薄暗い大ホール内。恐らくはこの周囲、かの吸血鬼殺しが仕掛けた罠が敷き詰められていることだろう。
エメラの白騎士は彼女の罠の知識に基づく探知を基に罠を回避してはいるが、全てを把握しているわけではないが故、思い切った攻勢には出られずにいる。
「そうね、あの速度で動きながら罠を撒くとなると、目ぼしい場所には全部罠が仕掛けられていると考えた方がいいかしら」
己の知識を上回られれば、白騎士が罠にかかることも有り得る。悠長にやっている暇はなさそうだ。
「ならば、私が何とかしてみましょう…!私だって、罠の扱いは心得ていますから」
シャルロットが動く。こめかみに指を当てれば、その視界がより明確に、広範に広がっていく。
「任せたわよ、迎撃は任せておきなさい」
エメラの意思に応え、白騎士が飛び来る弾丸を槍の回転で弾き、刃が迫れば猟犬が魔力刃で牽制し退ける。
「届かせてみせる、この闇の奥底まで……そこですね!」
強化された視界が、柱のそばにある罠を見出す。他、床の中央でも戦闘で踏み込みかねぬ位置にベアトラップ複数。天井にもスネアが見える。
マギテック・マシンガンを連射モードに設定、構える。吐き出された弾丸が、見出した罠を次々に撃ち抜き、破壊していく。その先に男の姿。掃射を撃ち込む。やはり有効打とはいかぬが、男の動きが鈍る。
「その辺りは大丈夫そうね、行きなさい!今が攻め時よ!」
エメラの命を受け白騎士が疾走する。男に槍で突きかかり、更なる裂傷を刻んでいく。
男が退く位置へシャルロットの射撃が飛び、罠諸共に男を撃ち抜いていく。そして迫る白騎士。二人と一機の連携が男を追い詰めていく。
「…今ね」
エメラの瞳が光る。シャルロットの足元狙いの掃射を、跳躍で回避した男。既に新たな傷は少なからず。なれど決定的な一撃が必要だ。切り札を切る時が来た。
「アーマーパージ、投擲構え!」
命令に応えて白騎士の装甲が脱落していくと共に、槍を逆手に、振りかぶるように構える。即ち、投擲体勢。
「…悪いわね、未来は譲れないわ。…射出!」
男の跳躍が頂点に達した瞬間、白騎士の槍が炎を噴き猛烈な推進力を得る。この槍の奥の手、魔導蒸気推進機関。
これに白騎士自身の投擲力が重なり、弾丸をも上回る超速度で投射。砲弾が如く男の腹に命中、そのまま背後の壁まで突き刺さる。
壁へ縫い付けられた男の口から喀血。常人ならば間違いなく致命傷…だが。
「…貴方はもう、休んでいいのよ…。骸の海へ、いえ、家族の元へ還りなさい」
エメラの言葉にも答えることなく、男は――突き刺さった槍を渾身の力で抜く。そして着地…なれど膝は崩れる。
「まだ…動くというんですか…!?」
驚愕するシャルロットの、単射モードの一射を胸に受け。それでも男は立ち上がり、大ホールより飛び出ていく。
なれど、決着は近いか。二人は頷きあうと、男を追って走りだした。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
セシリア・サヴェージ
やはり私たちのことも憎悪の対象としか見えていないのですね。
このまま民を殺めるような事態は彼も望んではいないはず……ここで食い止めます。
UC【闇の戦士】を発動。恐らく仕掛けてくるであろう不意打ちを看破することに集中します。
それが剣撃にしろ銃撃にしろ、【第六感】【見切り】を駆使して回避します。
位置さえ特定できればあとは正面からぶつかるだけです。
再度闇に姿を隠そうとしても【暗視】によりこれを防ぎます。
【武器受け】【二回攻撃】等を駆使して接近戦をしかけます。
領主館、エントランス。この館の唯一の出入り口まで辿り着いた男の前に、今一人、猟兵が立ち塞がった。
暗黒騎士、セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)。このまま彼を外へ出せば、きっと民をもその手にかけてしまうだろう――彼自身もそれを望んでいないだろうにも関わらず。
ならば、ここで食い止める。その意思のもと、彼女はここで男を待ち構えていたのだ。
(…やはり、私たちのことも憎悪の対象としか見えていないのですね)
最早生きていることさえ不思議なほどに傷ついた身体。だがセシリアを見据える瞳は、未だ漆黒の憎悪が轟と燃える。戦意も、殺意も、些かも衰えてはいない。
(ですが、行かせはしません。決して…!)
セシリアの身から暗黒のオーラが溢れ、その身を覆う。
「私は決めたのだ、たとえこの身が人々に恐れられようとも、彼らを護ってみせると…!」
力と共に纏わり付く破壊と殺戮の衝動に抗うかのように、セシリアは吼える。男は闇に姿隠し、セシリアへ不意打ちの攻撃を狙う。
それを迎え撃つべく、セシリアは集中を高める。溢れる暗黒が、集中力を研ぎ澄まさせる。己の身を蝕む悪心も、一度遠ざかる中。
闇の中から襲い来た兇刃。常ならばセシリアの集中を凌駕していただろうその一刃に、彼女は暗黒の力を以て反応し、紙一重で身を捻り回避する。腕が浅く裂かれるが、行動に障りはない。
間髪入れず、暗黒剣を振り上げれば、男の胸に深い斜めの裂傷を刻み込む。続く横薙ぎ、壊れかけていた片腕を斬り飛ばす。
吼える男、残る片腕を抱え退かんとするが、闇を見通すセシリアは逃がさず捉え、力強く一歩踏み込み。勢いを乗せ、暗黒剣を振り下ろす。男は咄嗟に抜いた剣で受け止めるも、重さと膂力に耐え切れず倒される。
銃を抜き、足掻きの銃弾を放つ男。セシリアは剣の腹で弾丸を受け止め、そのまま突き下ろし――男の喉元を、刃が貫通した。
倒れたまま、喀血する男。その瞳で燃えていた憎悪は消え、燃え尽きたかのような虚無が瞳を占めていた。
言い残すことはないかと問うセシリアの姿も、最早認識できていないように見えるが…それでも、問いには応え。
「願わくば…私、のような者が……、もう、二度…と…」
そこまで言った男の身体が、末端より形を失いだす。
「どう…か…、この…世界…に、ひか…り、を…」
その言葉を最後に、男の身体は、完全にこの世界から消え去った。
復讐劇の、終幕である。
●
猟兵達が去り、動くもの全てが失せた領主館に、朝の光が流れ込む。
彼らの活躍により、一つの悲劇が潰え、一つの悲劇が防がれ、一つの悲劇が終わりを告げた。
なれど、真の黎明は未だ遠く。数多の悲劇を終わらせるため、猟兵達の戦いは続く――。
成功
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