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ゆきぎつねのおよめいり

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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●雪狐の嫁入り
 ほろり、ほろり。
 咲き出した桜が風に舞う。
 はらり、はらり。
 舞う桜に雪が紛れる。

 暖かさも増した今日日に雪。
 珍しげに空を見上げる男に、茶屋の娘が声を掛けた。
「雪狐のお嫁入りだねぇ。お兄さん、知らないの?」
「雪狐? 何だい、それは」
「狐の嫁入りは知っている? 雪狐の花嫁行列の時は、雨じゃなくて雪が降るのよ」
 それは、よく晴れた青空の日に行われ、季節や気候に左右されること無く触れれば溶けて消える雪を降らせるのだと言う。天から舞い散る雪花は婚礼を祝い、そして花嫁の白い衣装をより映えさせる。
 この地では稀にあるけれど、出会えたら縁起の良いものだと云われている。
 短くとも一時間は続くから、ゆっくり楽しんでいきなよ。娘が微笑んでその場を離れようとしたその時――。
「……あら」
 ぴたりと雪が止んでしまった。
 常ならば一時間は続くはず。どうしたのだろうと、娘と男は顔を見合わせた。

 りぃん、りぃん。
 幽き凛と鈴が鳴る。
 ――そうして続くは、楽しげな笑い声。

●尾鰭のいざない
「お前たち、雪と桜は好き?」
 執事人形に抱えられ、眠たそうに欠伸を零していた少年――雅楽代・真珠(水中花・f12752)が、その蕾が綻ぶような唇を開いた。こぼれ落ちた言葉には暖かさよりも冷ややかさが目立つが、聞く者によっては美しいと感じられる硬質さがあった。
「どうなの? 好き?」
 猟兵たちの言葉を長くは待たず再度尋ねると、絹糸のような髪がさらりと肩を滑り落ちた。
 まぁいいやと興味を無くしたように呟いてから、真珠は続ける。
「僕の故郷――サムライエンパイアに、雪狐の嫁入りというものがある」
 雪狐の嫁入りについて軽く説明をし、それが突然止んでしまったのだと告げる。
 何故止んだのか、理由は解っている。雪狐の花嫁行列を邪魔する者が現れたからだ。
 山中のお社へ向かう行列の前に其れは現れる。
 鈴の音纏う、魑魅魍魎。
 数は多いけれど、其れ等は然程強くはない。
「其れ等は配下。首魁は……」
 言い掛け、口を閉ざす。顎の下に白い指を宛て、言葉を探すように視線を斜め下へと一度落とし。
「……なんか、うるさそうなやつ。木槌を持っている。『アタシが主役ー!』って言っていたよ」
 うり坊を従えた大きな木槌を持つ少女の姿をしたオブリビオンだ。主な攻撃は木槌だろう。
 何か理由があるのかもしれないが、他人の婚礼を邪魔するなど言語道断。さっさと終わらせて婚礼を再開させてあげようと真珠は一度目を伏せた。
「行ってきてよ。お前たちなら何とかできるでしょ」
 瞳を開くと同時に、真珠の掌の上に蓮の蕾が現れる。その周りをくうるりゆらゆら金魚が泳ぐと、蓮の蕾が綻んで。
「そうそう。首魁を退治したら花嫁行列は再開されるから、雪と桜を楽しんで行くといいよ」
 縁日のような賑やかさはないけれど、山中のお社では雪狐たち宴会を開いている。雪狐たちは助けてくれた猟兵たちを快く迎えてくれることだろう。
 真珠の掌の上で蓮の花が完全に開ききると、侍世界への”門”が開かれる。
 じゃぁね。花のように幾重にも重ねられた袖が、ひらり、振られた。


壱花
 お目に留めてくださってありがとうございます、壱花と申します。
 今回は『サムライエンパイア』のシナリオをお届けです。
 皆様の物語を彩れるよう頑張らせて頂きます。

 第1章、集団戦『黄泉の本坪鈴』。ぽこぽこ倒してください。
 第2章、ボス戦。えいやーっとやっつけてください。
 第3章、日常。山中のお社にて花嫁行列が見れます。

●3章について
 舞台は山の中の広い神社。山の高い位置にあり、桜の裾野が見下ろせたりと、とても綺麗です。
 雪狐たちが居ます。花嫁行列が通り、挙式し、宴会が行われます。
 POWSPDWIZは一例と考えてくださって大丈夫です。
 振る舞い酒等もありますので飲酒可能ですが、未成年の方の飲酒は描写致しません。
 当然ですが、人や神社に迷惑が掛かるような行為も禁止です。
 真珠は静かに花見を楽しんでいるので、お声が掛かれば反応いたします。(特に無ければ描写はありません)
※こちらのプレイングの受付開始は告知しますので、お手数ですが確認お願いします。

●迷子防止とお一人様希望の方
 同行者が居る場合はプレイングの最初に、魔法の言葉【団体名】or【名前(ID)】の記載をお願いします。指定が一方通行の場合、判断に迷って描写できない可能性があります。
 掛け合わせるのが好きなので、軽い気持ちで誰かと絡ませてしまう事が多いほうです。お一人様での描写希望の方は【絡みNG】【単独】等の記載をお願いします。
 また、文字数軽減用のマークをMSページに用意してありますので、そちらを参照ください。

 どの章からでも、ひとつの章だけでも、気軽にご参加いただけるとうれしいです。
 それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『黄泉の本坪鈴』

POW   :    黄泉の門
【黄泉の門が開き飛び出してくる炎 】が命中した対象を燃やす。放たれた【地獄の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    人魂の炎
レベル×1個の【人魂 】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
WIZ   :    後悔の念
【本坪鈴本体 】から【後悔の念を強制的に呼び起こす念】を放ち、【自身が一番後悔している過去の幻を見せる事】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

赫・絲
雪狐サン達だってこの日を楽しみにしてただろうし、
折角の華々しいお嫁入りが邪魔されるのはがっかりだよねー
早いトコ退治しちゃおう!

君達とは違う狐サンだけど、広ーい意味ではお仲間だし、手伝ってくれるでしょ?
さ、お出で。紅藤、白藤、遊びの時間だよ

二匹の狐を呼び出しつつ、大鋏を持って【先制攻撃】
武器と狐達の牙には【属性攻撃】の力で焔を纏わせ
敵を牽制しつつ、狐達が攻撃する隙を作るよー

敵の攻撃はしっかり【見切り】、狐達へ向くものも含めて捌く
お前のと私の、どっちの焔がよく燃えるかな?

後悔の念を見せられれば、嗤う
だって後悔なんて、今まで一度だってしたことがない
あるとすればそれは、生まれたその日のことだから


シュシュ・シュエット
見ているだけでこころがぽかぽかしてくるような、
そんなしあわせいっぱいの花嫁行列さんのお邪魔をするなんて……ゆるせませんっ。

ここは【ライオンライド】のライオンさんのお力をお借りしましょう。
人魂さんに狙われないよう本坪鈴さんの動きを*見切りつつ、
*勇気を出して一息に近づき、ライオンさんのお爪でびしばししたり、がおーっと噛みついてもらいますっ。

危ないときは無理せず、他の猟兵の皆さんのサポートに回りますっ。
人魂さんに囲まれて集中攻撃を受けないよう、*野生の勘を駆使して駆け回りましょう。

……雪と桜も好きですが、愉しくお花見するのはもっと好きですっ。
雪狐さんたちのため……ライオンさんも、もう一息ですよっ!


ユナ・ニフェトス
まあ…とても可愛らしい
だからと言って、手加減は致しませんが

きっと、誰にとっても大切な儀式
人も動物も、それはかわらない
不躾な行いは控えていただきましょうね

鎌を持ち【範囲攻撃】【2回攻撃】
たとえ一個体の戦力は高くなくとも束になられては面倒です

炎への対応は水の【属性攻撃】で対応を
消火、相殺、臨機応変に
不可能な場合は鎌での【見切り】で回避

ああ、後悔を見せるなんて恐ろしいこと
私の後悔?ええ、きっとあの日の事
全てを失って、自分の無力さを呪って

ふふっ。でも、逆効果でしたね
あの日の出来事は、私の行動原理

さあ、可愛らしい魑魅魍魎さん
おいたはこの辺でおしまいです


♢♡


冴島・類
はい、好きですよ
雪も桜も
とても

そんな綺麗なものに彩られ
お嫁に行くはずの狐さんを
邪魔はさせませんとも

近くに他の猟兵さんがいれば
補い合える箇所は、連携意識

さて、りんりんと鳴らす子は誰ですか
この参列に鳴るのは
祝いの音色だけでいいはずですよ?

糸手繰り、背負う箱から瓜江を起こし
多数いる敵の攻撃の挙動を見切る為に
注視し、引きつけるよう
フェイントを用い動かし

炎の攻撃は、多少であれば耐性があるので
自身へのものは見切りで避けるようにしますが
他者への攻撃で避けきれぬと判断したものはUCの舞いで軽減しながら庇う

隙みれば破魔の力込めた薙ぎ払いで
惑わす音色ごと、断ち切る

後悔は、暴かせたりしないよ
君達へは、見せたりしない


華折・黒羽
※アドリブ、連携歓迎

雪と桜、か…
前にも一度そんな光景を見たことがある
あれは綺麗な光景だった

今回の雪狐の嫁入りとはきっと関係の無いものなんだろうが

数が多いならば今回は『揺』で
【獣舞ふ有明】
篠笛を吹き奏で何体もの影烏を喚ぶ
音に命令を
影烏達は命令通り敵へと仕掛けていくだろう
敵の攻撃は可能な限り喰らわない様影を盾に

呼び起こされる一番の後悔の記憶は
“あの子”が傷だらけになりながらも尚敵の只中へと駆けて行った記憶
守れなかった、共に戦えなかった
そんな弱い自分の記憶――

動けなくなったその時に備え
影烏の一羽に気付けの攻撃を命じておこうか

使用技能:第六感、動物と話す、おびき寄せ、カウンター、武器受け、楽器演奏


朱葉・コノエ
雪狐の嫁入り…噂は耳にした事がございます。
しかし妨害する者が現れるとは、祝福の場には喜ばしいものではございませんね。
…山の警備は私の仕事です。邪魔者には去って頂きましょう。

相手は炎を使ってこちらを襲ってくるようです。
距離を取って最初は攻撃をいなしつつ、【紅颪流・迅旋】であれば、抜刀した勢いの風で炎をかき消せることでしょう。
炎が消えて無防備な姿を晒した後は、そのまま居合斬りで斬り込んで、本体へと攻撃してみせましょう。
「…黄泉の炎というのも、大したことございませんでした」

※他猟兵との絡み、アドリブ歓迎


逢坂・理彦
【ザッフィーロ(f06826)】ちゃんと一緒に。

ゆきぎつねさんも同じ狐だし。
大事な花嫁行列だもん邪魔させたくないよね。
俺の花嫁さん?どうだろうね…俺なんかじゃ幸せには出来なさそうだし未定かな。

まずは数で勝負か。ならこっちも其れ相応の対応をさせてもらうよ。
【早業】で【なぎ払い】切り込んでいくよー。
性質的に効きそうだし【破魔】ものせていこうか。
はい、残念。それは【残像】です。
そっちが人魂ならこっちは妖狐らしく
UC【狐火・椿】を使うよ。
椿のように落ちようか…。

っ、これはもしかして後悔の念ってやつか。
今更後悔したって仕方ないんだけどね。
(襟巻きをぎゅっとよせ歯をくいしばる)


ジェラルド・ボノムドネージュ
晴れた青空に舞い散る雪の花、か……
普段見慣れた風景も、雪を纏うと違った趣を見せるのだろう
……花嫁の為にも邪魔者は早々とご退場願おう

気付かれてない状態なら【目立たない】ように【ダッシュ】で駆け込み
【先制攻撃】で有象無象の魔物に氷の戦鎚の【なぎ払い】で発生した
冷気を伴う【衝撃波】で【吹き飛ばし】を狙う

魔物の攻撃には【第六感】、或いは【地形の利用】を駆使し
建物の壁等を足場に使用した【ジャンプ】や
合間等を【スライディング】で潜り抜けたり等
目標を絞らせない様に立体的に動き回りながら回避を狙う

一時的にとはいえ、行動を封じられるのは厄介だ
【ユーベルコード】を使用し、封じれる前に斬り伏せるとしよう


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
【逢坂f01492】と
雪狐で雪ならば逢坂の場合は何が降るのだろうな…と
…そうか?いつも頼りにさせて貰っている故、家族を護れる良き父親になると思うのだがな?

切り込んでいった逢坂を見れば『高速詠唱』を使い逢坂が薙ぎ払った敵を中心に【罪告げの黒霧】を放ち攻撃をして行こう
互いに一撃で倒しきれなかった敵も、重ねて攻撃すれば確実に撃破して行けると思うからな
炎には『火炎耐性』と『気合』で炎を手で払い消そうか
襟巻にふれる逢坂を見れば、大丈夫かというかの様に軽く背で逢坂の背を押しながら背を護る様に立とう
…怪我はなさそうだが…俺で良ければ背ぐらいは護ってやる故。…このまま一気に殲滅するぞ、理彦


リインルイン・ミュール
雪狐、という生物……妖怪? なんですか?
いずれにせよ、結婚式をしているという事ですよネ! ならばお邪魔虫は排除しなくては!


基本的には遠距離での攻撃デス
黒剣を鞭剣に変形させて振り回したり、サイキックエナジーの電流を撃ち放ったり
呪詛を込めたユーベルコードはそれらの攻撃が届かない、或いは味方が射線上にいて使えないような位置の敵を対象にします

飛んでくる念は、此方も念で察知する事にして、極力見切っていきマス
過去の記憶が無いので、後悔するような事があっても覚えちゃいないんですガ!
ともあれ暫く遠距離攻撃した後は、敵も対策を立ててくるでしょうから
隙を見てダッシュで近付き、電撃纏わせたガントレットで殴りまショウ


糸縒・ふうた
♢♡

折角一番の晴れの日なんだから
みんな幸せいっぱい、
笑顔たくさんな想い出にして欲しいよね!

たくさんいる上に飛んでるし
それになんだかすばしっこそう

一体一体付き合っていたらキリがなさそうだから
周りを巻き込まないように気をつけつつ
【人狼咆哮】でまとめてやっつけちゃお!

攻撃は【野生の勘】と
もし周りに動物たちがいるなら【福音】もお願いして
炎は実体が無くて避けるのは難しそうだけど
なんとか躱していこう

避けられなさそうなら
自他ともに【オーラ防御】を使うのも手かな?

足場は階段、とかなのかな
落っこちちゃいそうになったり
そうなりそうな人がいたら【疾風】を喚んで
助けてもらうぜ


リル・ルリ
■櫻宵(f02768)
アドリブ等歓迎

「雪狐の花嫁行列?はなよめ、というのは何、櫻宵?」
小首を傾げ、櫻宵――僕の櫻に問う
はらはら舞う雪も桜もすき
櫻宵が喜んでいるからきっとそれは美しいものなのだろう
「なら
僕もみてみたいな」
花嫁行列を君と

「そうだね、大事な行列なら
邪魔するのはダメだ」
君が剣舞を舞うならば
僕がその場を整えよう
櫻宵が存分に刀をふるえるように、まず【歌唱】を最大限にいかして歌うのは「凱歌の歌」
櫻宵の足でまといにならないよう僕への攻撃は空中戦で躱す
櫻宵が悪い過去に囚われないよう
傷つかないように「星縛の歌」を歌い
鈴音を打ち消す
櫻宵は僕の歌だけ聴いてればいいんだよ

みせて
君のいう祝いの場
僕もみたい


誘名・櫻宵
🌸リル(f10762)
アドリブ等歓迎

結婚式!いいわね!
いつだって婚礼の時は心華やぎ幸福を分けてもらえる
そんな気持ちになるものよ
…あたしには縁がないけれど

花嫁っていうのは――リルは花嫁行列、知らないのね
ならいい機会だわ!
見た方がはやいもの

リルの歌に合わせ剣舞を舞うわ
最高の歌をよろしくね
炎には水を
刀に水属性を纏わせ
なぎ払いっては斬り裂いて衝撃波を込めて斬り裂いて
何度も斬りつけ傷口を抉ってあげる
ちょこまかと動かれても逃げられない様に広範囲攻撃するわ
攻撃は第六感で察知して見切り躱し
リルに手出しはさせないと彼を庇う
仕上げは鬼哭華
綺麗に啼いて頂戴

あたしの可愛い人魚に桜と雪の舞う祝いの場を
みせてあげなきゃ


佐々・夕辺
レイン(f10073)と同行

「レイン、あまり先行しては駄目よ。一緒に貫いてしまうから」
といっても、私の敵を貫くと言ってくれたのはあなただったわね
その力、頼りにしているのよ。……本当よ?

出来るだけ敵の攻撃を受けないように立ち回るけど
そうね、後悔があるとしたら……故郷の精霊を何も言わずにおいて行った事くらいかしら
きっと寂しがっている 私を探しているかも知れない
でも、わたしはあの森が何処にあるのかを知らない。だからもう帰れない――

……。
イライラするわ。私たちのプライベートに入って来ないで

レインが集めた敵に、思い切り管狐行軍を叩き込む
私たちの心を覗き見しないで!


氷雫森・レイン
夕辺(f00514)と一緒に

敵の目的や理由なんて知らないけど婚礼行列の邪魔なんて無粋だわ
夕辺は妖狐…雪狐も狐ですもの
助けてあげましょうよ

鈴もこの数あると流石に…いやもう景色が煩い
見えざる輝きの手を使って出来るだけ多くの敵を1か所に集めてみるわね
向かってくる奴らには神鳴呼雨をお見舞いするわ
撃破というよりは牽制目的だけど…夕辺に変な事する奴なんて焼けてくれても結構よ?
「言ったでしょう、貴女を曇らす輩は全て射貫くと…古の朋へ乞う、我が祈りに応え給え!」
さ、真打は任せたわ
「夕辺!」

後悔?故郷を飛び出さなければしてたでしょうね
でも飛び出した私には何一つ無いのよ、お生憎様


朧・蒼夜
幼馴染の咲夜(f00865)と一緒に

雪狐の花嫁行列か
行列が行わなければ花嫁も困るし
それを楽しみにしてた者もいるからな

だが桜の花の姫を護り怪我しない事が一番だ


まずは沢山いる敵の数を減らそうか
【藤乱舞】で複数の敵に藤の花弁の舞を
その藤の花びらの舞に動揺している敵に妖刀で【殺気】し攻撃をする

咲夜ありがとう
彼女のサポートに感謝しつつ
彼女に敵が攻撃をしかけるのなら
黒剣を鞭へと変化させ敵を絡ませて彼女から遠ざけつつ【生命力吸収】


ん?俺は大丈夫
咲夜は大丈夫か?無理せずに
そっと彼女前に立ち彼女を護る

一番は横で一緒に戦う桜の姫
これが無事に終わり
行列と桜を観れる事
彼女が笑顔で喜ぶのなら…それでいい


東雲・咲夜
幼馴染のそうくん(f01798)と

初めてそうくんの漢字を見た時
間違えて読んだままこの呼び方になってしもたんよ

お目出度い日を邪魔する人は
馬に蹴られても文句言えへんのよ?
それも、結婚言うたら一生にそう何べんもあらへん大事やから
争い事は苦手やけれど
無事に幸せな時間を過ごしてほしい…
そうくんにも、怪我がありませんよう

彼の攻撃に合わせ
水と桜の『属性攻撃』『援護射撃』を
もしこちらに炎が向かってくれば
『破魔』の力を籠めた歌声で『歌唱』し
桜色の光の『オーラ防御』を張ります

そうくん、だいじょうぶ?
あちらはんが焔を操らはるなら
こちらは水神様をお喚びしましょか
扇を開き…我が身に降りませ願い奉る

手荒な真似して堪忍な…


ヴァーリャ・スネシュコヴァ

綾華(f01194)と!

結婚式、幸せいっぱいな筈なのに、それを邪魔するなんて…
というか! 人の幸せも祝えないなんて器の小さいヤツだな!(ぷんすこ)
…そうかもしれないな? でも、守られるだけでは幸せは育めない、だろう?

炎を使う敵…俺とは相性が悪いな…
だが俺も氷しか使えないわけではないからな
ここは水の魔法を使わせてもらう!…ふ、不安はあるが

『トリニティ・エンハンス』の水の魔力で攻撃力を上げ、
その後は水の魔法を纏った攻撃で斬り倒していくぞ!

相手が炎を出してきたら、水の魔法を操って消火…む、制御が効かな…おわーっ!
(噴水のように水が噴き出し、辺り一面びしょびしょに)
うう…上手くいけると思ってたのだ…


浮世・綾華
ヴァーリャちゃん(f01757)と

怒る彼女の優しい言葉にはくすりと笑って
けれども気持ちは同じと頷く

女性の幸せを守るのは男の役目でしょ
――多分。そうゆうもんのはず

へえ、水魔法も使えんだ
いいじゃん、効きそうな気がする

俺も花片やら炎の攻撃が多いから
正直相性はあんまり良くないんだよネ
まあ、そしたら物理でしょ
巫覡載霊の舞で攻撃軽減して衝撃波を食らわせたり
絡繰ル指で黒鍵刀を複製して手数で挑む作戦
カウンター、フェイントやらで敵の攻撃を利用してく
数があるから、いざとなりゃヴァーリャちゃんの防御もできっと思う

――どう、消化できそー?
って、おお…あはは…って
笑ってる場合じゃなかった
お、でも攻撃は防げてるんじゃね?



●めでたきひ
 しゃらぁん、しゃらぁん。
 雪狐の花嫁行列が、ゆっくりと山中を往く。
 しゃらぁん、しゃらぁん。
 歩く度に揺れる装飾の音が、何か神聖なもののように聞こえる。
 しゃらぁん、しゃらぁん。
 一歩ずつ足を合わせ、行列は山のお社へと向かう。

 白い毛皮に白い衣装。この日の為に両親が拵えたとびきりの婚礼衣装。花婿狐の隣を歩く花嫁狐の頬が薄ら色づいているのは、化粧のせいだけではない。幼い頃から夢見ていた、大好きな雪狐(ひと)との婚礼だ。桜の季節で無くとも、この世の春が来たような幸せな心地でいた。
 ――りぃん、りぃん。
 そこへ、違う音が混ざる。最初は気のせいかと思えるくらいの音だった。けれどその音は次第に気のせいとは思えぬ音となる。
 りぃん、りぃん、りぃん、りぃん、りぃん、りぃん、りぃん。
 花嫁行列は足を止め、前方を注視する。この晴れの日に何か起こるのではないか。花嫁狐が不安そうに手を握ると、花婿狐は護るようにそっとその手を握った。
 りぃん、りぃん、りぃん、りぃん、りぃん、りぃん、りぃん、りぃん、りぃん、りぃん、りぃん、りぃん、りぃん、りぃん、りぃん、りぃん、りぃん、りぃん、りぃん、りぃん、りぃん――りぃぃん。

●鈴の音響く
 木々の合間から本坪鈴を掴んだ鳥のような妖たちが現れた。『黄泉の本坪鈴』の名を冠するオブリビオンたちだ。
 本坪鈴とは本来、昇殿参拝で巫女が舞う時に鳴らす神楽鈴の代わりとなる鈴。魔を祓い、場を清め、神と繋げるために鳴らす鈴。
 しかし、黄泉の本坪鈴は違う。その鈴の音は黄泉の国への扉を開き、生者の命を奪おうとする。禍つ鈴の音。その鈴の音がりんりんと鳴り、辺りの音を支配していた。
「ヒッ」
「なんて不吉な……」
「こんな晴れの日に……」
 足を止めた花嫁と花婿の親族たる雪狐たちが口を開くと、黄泉の本坪鈴たちは嗤うようにコロコロと鈴を鳴らし襲いかかる。行列に並ぶ雪狐たちに次々と飛びかかり、そして絶望の色を濃くしている花嫁を見つけると本坪鈴本体から黒い炎が溢れ――
「――させません」
 今にも花嫁へ魔の手が伸びんとしていたその時――花嫁と黄泉の本坪鈴の間に、朱葉・コノエ(茜空に舞う・f15520)が舞い降りる。山を守護する黒き風はその一太刀を伴い、襲いかかろうとしていた黄泉の本坪鈴は斬られ、コロリと地に転がった。
 そこを駆ける、山では見られぬ獣の姿。ライオンの背に跨ったシュシュ・シュエット(ガラスの靴・f02357)が、雪狐の周りに居た黄泉の本坪鈴たちを蹴散らしていく。
「雪狐さんたちに近寄らないでっ」
 見ているだけで心がぽかぽかしてくるような、そんな幸せいっぱいの花嫁行列。雪と桜に彩られた美しい景色の中行われるそれは、当事者の花嫁たちにとっても、また参列者たちにとっても記憶に残る幸せな想い出となったことだろう。それなのに今、それが悲しみで塗り潰されようとしている。
(――お邪魔をするなんて……ゆるせませんっ)
 シュシュはライオンの背から振り返り、怯える花嫁を一度見て。そして強い瞳で前方の黄泉の本坪鈴たちを見据え、ライオンへ指示を出した。駆け回りながら、爪で引っ掻いて、牙で噛み付いて。一刻も早く花嫁行列を再開できることを願った。
「山の警備は私の仕事です。雪狐の皆さんは、下がって身を護っていてください」
「花婿さんは花嫁さんをしっかり支えてあげてね」
 背後に庇った雪狐たちへとコノエが声を掛け、彼等の不安を軽減すべく糸縒・ふうた(風謳エスペーロ・f09635)もまた雪狐たちに笑顔とともに優しい言葉を届ける。
(折角一番の晴れの日なんだから。みんな幸せいっぱい、笑顔たくさんな想い出にして欲しいよね!)
 向けられた笑顔に少しだけ安堵した表情となった花嫁へ、ふうたは「さぁ、あっちへ」と指を示して見送って。それから、戦闘を開始した仲間の猟兵たちの後に続いた。
 突然現れた猟兵たちに、黄泉の本坪鈴たちは警戒を示す。シュシュとライオンによって散らされ標的たる雪狐から離されて、再度近付こうとすればコノエととふうたが黙っては居ない。
 付かず離れず、じり、と僅かに近寄ろうとする黄泉の本坪鈴たち。完全に意識は目前の猟兵たちに向かい――その背後に迫る黒い影には気付きもしていなかった。
 ――り、りぃん!
 低姿勢で駆けてきた黒い影――黒いフードを目深に被った氷術士ジェラルド・ボノムドネージュ(氷結の暗殺者・f09144)が氷の戦槌『ジーヴルマルトー』を振るい、冷気を纏った衝撃波で強襲する。高い鈴の音を立て、黄泉の本坪鈴の一体が地に転がった。
 目深にフードを被っていても、その目に空は映る。フードの向こうの空は、青々とした晴天。舞い散る雪花は止んでしまっている。
(――普段見慣れた風景も、雪を纏うと違った趣を見せるのだろう)
 標的が自身に移る前に、ジェラルドは『ソブリオマント』を翻す。
「邪魔者は早々とご退場願おう」
 花嫁の為にも。
 そう思うのは、ジェラルドだけではない。
「折角の華々しいお嫁入りが邪魔されるのはがっかりだよねー」
 雪狐サン達だってこの日を楽しみにしてただろうし。唇を尖らせてそう口にするのは、長い黒髪とリボンを風に遊ばせた少女――赫・絲(赤い糸・f00433)だ。
 淡紫の瞳に怯える花嫁行列と猟兵たちを警戒する黄泉の本坪鈴を交互に写すと、うんとひとつ頷いて手の内の大鋏『鈍』を確りと握りしめた。
「君達とは違う狐サンだけど、広ーい意味ではお仲間だし、手伝ってくれるでしょ? さ、お出で。紅藤、白藤、遊びの時間だよ」
 おいで、お前たち。
 少女の声に応じて喚ばれた紫炎に包まれた二匹は、少女とともに地を蹴った。焔を纏った大鋏と獣の牙での、暫しの危ない遊び。戯れるように跳んだ髪に、ひらりと桜の花びらが止まった。
 りぃん、りぃん。悲鳴のように鈴の音が響く。
(――まあ……とても可愛らしい)
 場違いだと解っていても、修道服に身を包んだ少女――ユナ・ニフェトス(ルーメン・f13630)はつい銀の瞳を和らげてしまう。黄泉の本坪鈴たちは一見愛らしく、年頃の少女ならばその反応も当然と言えよう。しかし、だからと言って、手加減をするつもりはユナにはなかった。
 婚礼は、誰にとっても大切な儀式。きっとそれは、人でも動物でも変わらない。
「不躾な行いは控えていただきましょうね」
 愛されることしか知らなそうな無垢なる手で強く握り、大きく振りかぶるのは『Mort』。数の利を生かして絲と狐たちを狙おうとした黄泉の本坪鈴たちの意識を刈り取った。

 ――時間は少し、遡る。
「雪狐の花嫁行列? はなよめ、というのは何、櫻宵?」
 リル・ルリ(瑠璃迷宮・f10762)は尾鰭をはたりと動かして、傍らの己の櫻――誘名・櫻宵(誘七屠桜・f02768)にそう問うた。傾げた首に合わせ秘色の髪がさらりと揺れ、櫻宵はつい目で追ってしまう。
「花嫁っていうのは――リルは花嫁行列、知らないのね」
 立てた指を頬に添わせた櫻宵は、女性と見紛う容姿で軽く眉を寄せた。その姿さえも、僕の櫻は美しいとリルは瞳を瞬かせるが、当の櫻宵は気付いているのだろうか。
 櫻宵にとってのそれは、心華やぎ幸福を分けてもらえるものらしい。幸せな婚礼について語る櫻宵の横顔を、リルはジッと見つめていた。自分には縁がないと、落ちる声音も表情も、全部。
(――櫻宵が喜んでいるから、きっとそれは美しいものなのだろう)
 けれど、櫻宵より美しいものはあるのだろうか。
 そう思ったリルは己の望みを口にする。
「僕も見てみたいな」
 そうして今、二人はこの場に居る。
 きれいなきれいな花嫁行列。怯えた姿しか未だ見れてはいないけれど。
「さ、いきましょうか。リル」
「うん」
 僕の櫻が存分に舞えるようにと、リルは喉を震わせる。君に届ける最初の歌は《凱旋の歌》。玲瓏と響き渡る歌声は、時に強く、時に優しく、櫻宵の心へ染み渡るように響き、彼に力を与える。
(――さぁ、いっておいで。僕の櫻)
「ありがと、リル」
 あたしの可愛い人魚に桜と雪の舞う祝いの場を見せてあげなきゃ。そう思う気持ちが出立前よりも増した気がするのは、綺麗で可愛い歌声に背を押されたせいだろうか。それとも、少しでも良い姿を見せたい欲目だろうか。チラと浮かんだ思考を瞬きひとつで瞼の裏に隠して、櫻宵は水の力を纏わせた刀――『屠桜』を振るった。
 無駄のないその姿は剣舞そのもの。
 例えどんなに愛しい櫻が美しかろうとも、決して見とれていた訳ではない。けれど、黄泉の本坪鈴の黒い念はリルへと迫る。体当たり等は躱せても、心を縛る黒き念からは逃れられない。
 しかし――。
「あたしの可愛い人魚に手出しはさせないわ」
 誰の許可を得ているのよ。不敵な笑みを忍ばせ、櫻宵がリルと黒念の間に身を踊らせる。間に合えたのは、リルの加護を身に得ていたからこそ。
 刀が届くのが早いか、黒念が届き心惑わされるのが早いか。同時とも思えそうな其れは……。
(――櫻宵は僕の歌だけ聴いてればいいんだよ)
 想いは、口にせずともきっと彼に届く。リルの喉を震わす歌には、リルのありったけの想いが篭められているのを、きっと櫻宵も知っているから。だから、だから。僕の歌だけを聞いて。
 彼の心を縛るのも、惑わすのも、許しはしない。《星縛の歌》が黒い炎を打ち消した。けれどそれは、身を蝕む歌でもある。櫻宵の背に護られながら、リルは小さく眉を寄せ、気付かれぬように小さく息を吐いた。
 そうしてその間に、櫻宵の刀は敵へと届く。
「歌いなさい、屠桜。散りゆく華へ、華麗に美しく――啼き歌え」
 綺麗に啼いて頂戴と愛刀に願えば、応じるように剣先は黄泉の本坪鈴を捉え――そして、真二つとなった本体の鈴がカラリと転がった。
 背を預けられる相手と戦場をともにするのは櫻宵とリルだけではない。逢坂・理彦(妖狐の妖剣士・f01492)も友人であるザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)とともにそこに在った。
 ゆきぎつねさんも、おじさんと同じ狐なんだよねぇ。それに大事な花嫁行列だ。邪魔させたくはない。
「だからさ、そこ、退いてくんない?」
 のらりくらりと口にした言葉とは一転、切り込みは鋭利な言葉とともに。
 踏み込みからの一閃。目にも留まらぬ刀さばきに、カランと割れた本坪鈴の本体が転がった。破魔の力を纏わせた薙刀は魑魅魍魎へ有用のようだ。
 その背を追うように《罪告げの黒霧》が広がり、罪なき者には効かぬ黒霧が黄泉の本坪鈴を襲う。理彦の大立ち回りで取り零した生へ其れは確実に終焉を告げて。
「雪狐で雪ならば逢坂の場合は何が降るのだろうな……」
 少し前まで雪がふわりと舞っていたが止んでしまった空を視界に入れたザッフィーロが、軽口を。それに理彦はどうだろうねぇと笑み混じりに応じて。
「花嫁行列の予定は?」
「俺の花嫁さん? どうだろうね……俺なんかじゃ幸せには出来なさそうだし未定かな」
「……そうか?」
「そうだよ……っと、はい残念。それは残像です」
「いつも頼りにさせて貰っている故、家族を護れる良き父親になると思うのだがな?」
 ザッフィーロちゃんこそどうなのよ。軽口を叩いて笑い合いながらも、薙刀を振るい敵を伏す。
「……椿のように落ちようか」
 吐息とともに静かに吐き出した言葉とともに、理彦の周囲にぽつりと狐火が浮かび上がる。
 ぽつり、ぽつり。狐火踊らせて。
 ぽとり、ぽとり。本坪鈴が地に落ちる。花盛りの過ぎた、椿のやうに。
 負けじと黄泉の本坪鈴も、音を鳴らす。りぃん、りぃん。
 黄泉の本坪鈴が開けし門から飛ばした炎をザッフィーロは手を伸ばして握りつぶしたが――別方向からの黒き念は理彦へと届いていた。
「っ」
 知らず、理彦は奥歯を噛み締める。震える心が自動的に自衛姿勢を取らせたのだ。
 これが後悔の念か。と、まるで他人事のような感想を抱くのはその後で。
(――まぁ、今更後悔したって仕方ないんだけどね)
 されど、手は襟巻きを手繰り寄せる。手繰り寄せた其れの下、隠した傷跡の上へと自然と手が這っていた。
 襟巻に触れる友の姿に気付いたザッフィーロは、その背を友の背に触れさせる。背から伝わる熱で、己も此処に居ることを伝えるように。その背を預かれる存在が此処に居るのだと。大事を訊く言葉など、二人には要らない。気遣えばきっと、理彦は押し隠して無理をする。
 眼前の黄泉の本坪鈴への警戒は怠らず、背に庇った友を視界に入れて傷の有無を確認すると、小さく安堵の吐息が溢れた。
「……このまま一気に殲滅するぞ、理彦」
「応ともさ」
 常ならば名字で呼ぶ友が口にした名に、三角の耳を思わず立てて。けれど即座に其れに応じた。
 いけるかと問えば、応と返してくれる友がすぐ傍らに居る。其れがどれ程心強いものか。二人は改めて心をひとつにすると、同時に地を蹴った。
 美しい紫藤の花びらが、桜に染まる山中に舞う。それはただ美しいだけではなく、敵を切り刻む刃の花嵐。その中心に居るのは、藍色髪の羅刹の青年――朧・蒼夜(藤鬼の騎士・f01798)だ。幼馴染の彼の桜姫――東雲・咲夜(桜歌の巫女・f00865)とともに、彼もまた雪狐たちの花嫁行列を護りにきていた。
 行列が行われなければ花嫁も困り、それを楽しみにしていた者も残念がるだろう。……それに、と常に視界の端に映るように気を付けている幼馴染へと意識を移し。
(――咲夜も残念がりそうだ)
『結婚言うたら一生にそう何べんもあらへん大事やから、争い事は苦手やけれど無事に幸せな時間を過ごしてほしい……』
 大切な幼馴染の彼女がそう願い、行動しようとしている。ならば彼女を隣で護り、助けてあげたいと思うのは自然なことだろう。争いが苦手な彼女のためにも、一体でも多く斬り伏せようと妖刀を握る手に力を篭めた。
 ……だと言うのに。蒼夜の周りの黄泉の本坪鈴たちはあまり減っては居なかった。彼の《藤乱舞》を黄泉の本坪鈴たちは軽々と躱し、妖刀さえも避けてしまう。しかし、彼は一人ではない。自分を一番に理解してくれている幼馴染がすぐ傍に居た。
「お目出度い日を邪魔する人は、馬に蹴られても文句言えへんのよ?」
 蒼夜の攻撃を避けた黄泉の本坪鈴の軌道を見越し、咲夜桜の花びらを纏った水属性の衝撃波をお見舞いした。
「咲夜ありがとう」
「そうくん、気ぃつけてな?」
 彼女のサポートは的確で、蒼夜の動きの援護をしてくれる。長年ともに過ごしてきた二人には、声を出さずとも相手がしたいことを理解し、ともにフォローしあい戦場でも滑らかな動きが叶った。お互いの胸中の底にあるのは、お互いの無事。どうすれば相手が怪我をしないで済むか、どうすれば相手を守れるか、どうすれば笑顔を守れるか。積み重ねて来た想いは、今もこの場に。この胸に。
 黄泉の本坪鈴がりんりんと鈴を鳴らし、黒い念を喚ぶ。その軌道が蒼夜にあると見た咲夜は咲夜は蒼夜に防御の術式を重ねるが、それは途中で動きを変える。
「っ」
 自身に向かって来ると気付いた咲夜が防御行動を取ろうとするが、間に合いそうに無いことを理解して――。
「そうくんっ」
「俺は大丈夫。咲夜は?」
 守護を得ていた蒼夜が黒い念が届くより先に割り入り、黒剣でそれを払った。
 大きくなった、幼馴染の背中を咲夜は見つめる。幼き日に、彼の名を読み間違えた日が懐かしい。今日まで変えずに呼び続けているのは、自分だけの呼び名だからだろうか。
「あちらはんが焔を操らはるなら」
 こちらは水神様をお喚びしましょか。
「扇を開き……我が身に降りませ願い奉る」
 咲夜が、舞う。手にした『神籠』を振るい、立て、払い。桜花と藤花舞い散る中、神降ろしの舞は艶やかに。そうして呼び寄せた力で黄泉の本命鈴たちを捕縛し、そこを蒼夜が斬り伏せた。
「手荒な真似して堪忍な……」
 小さな呟きが花嵐の中――溶けて、消えた。

「人の幸せも祝えないなんて器の小さいヤツだな!」
 幸せいっぱいな筈なのに、それを邪魔するなんて! とヴァーリャ・スネシュコヴァ(一片氷心・f01757)がぷんすこと憤りを見せれば、ヴァーリャの言葉にいくつもの鍵を頭髪に付けたヤドリガミ――浮世・綾華(❂美しき晴天❂・f01194)は頷きを返した。
「女性の幸せを守るのは男の役目でしょ。――多分。そうゆうもんのはず」
 だからこの場は俺が守らないとねと告げれば、ヴァーリャはゆるく首を傾げて。
「……そうかもしれないな? でも、守られるだけでは幸せは育めない、だろう?」
 純粋で真っ直ぐな言葉で綾華に問うた。どちらもきっと、違う立場から見れば正解なのだろう。
 炎を扱う敵との相性が良いとは言えないヴァーリャが、んむむと小さく唸る。
 綾華もそれは同じだが、ヴァーリャとは違う理由から相性が良くなかった。炎を扱う綾華に同じ炎の敵は相性が悪く、氷を扱うヴァーリャには氷を溶かす炎の敵が相性が宜しくない。
 そしたらまあ、物理で殴れば問題ないでしょ。綾華は《絡繰ル指》で『黒鍵刀』を複製し、黄泉の本坪鈴へ向けて片方を飛ばし、片方を手に切りかかる。未知と道を切り拓くための鍵刀で、本坪鈴の本体の穴に鍵穴を開くように差し込みくるりと回せば、ぱかりと鈴が拓かれた。
 ヴァーリャとて、氷属性しか使えぬ訳ではない。……ただ少し、不安なだけで。
 そう、不安なだけである。しかし俺は出来る子だ。出来る子のはずだ。
 己を鼓舞したヴァーリャは自身に水の加護、そして『スノードーム』に水の魔法を纏わせ、綾華の後に続いた。
 氷のブレードでステップ踏むのと変わらぬ脚さばきに、舞を踊るような脚さばき。仲良しの二人は息を合わせ、黄泉の本坪鈴を屠っていく。
「あっ、炎を出したな。ここで消化……っと」
 意気揚々と水を操るヴァーリャ。先程まで上手に扱えていたからか、その表情はとても明るい。けれど……。
「――どう、消化できそー?」
「……む、制御が効かな……おわーっ!?」
「って、おお……あはは……」
 制御出来なかった水が噴水のように噴き出して、周囲一帯をビショビショにしてしまいヴァーリャは濡れ鼠に。その姿が思わぬ事故で濡れてしょんぼりする子犬や子猫のように見え、綾華はついつい笑ってしまう。
 うえー。っと情けない声を漏らし、しょんぼり眉を下げたヴァーリャはピピッと手の水を払う。獣耳のように跳ねる髪も、水に濡れてへんにょり。思わず笑ってしまった綾華だが、笑っている場合ではなかったと一応取り直してみるものの――矢張りどうしても頬が緩んでしまい、口元に一度拳を当てた。それでもくくくと笑みが漏れ、肩が揺れて。
「うう……上手くいけると思ってたのだ……」
「お、でも攻撃は防げてるんじゃね?」
「はっ! ほんとだっ」
 一瞬前までのしょんぼりは何処へやら。大成功! と明るい笑顔で綾華へピース。
 そんなヴァーリャを見て、黄泉の本坪鈴を全部倒し終えたら鬼火で乾かしてやろう、と密かに思う綾華だった。

 氷雫森・レイン(雨垂れ雫の氷王冠・f10073)には黄泉の本坪鈴たちの目的など解らない。理由なんて知らない。けれどどんな理由があったにせよ、婚礼行列の邪魔をするなど無粋にも程がある。
『夕辺は妖狐……雪狐も狐ですもの、助けてあげましょうよ』
 口を開いても素直の言葉を吐かない彼女だが、佐々・夕辺(チャーミングステップ・f00514)へ声を掛け、ともに助太刀に来ていた。
(――夕辺が妖狐だから)
 後悔を押し殺すタイプの夕辺が、雪狐を救えず後悔をしないように。
 ふいに、レインの小さな姿が夕辺の視界から消えた。光の矢を放っていた小さな身体が、黄泉の本坪鈴の体当たりを受け吹き飛んだのだ。
「――!?」
「レイン!」
 すぐさま夕辺は地を蹴って、その小さな身体を手で受け止める。相方に外傷がほぼ無いことを確認するとホッと息を吐いた。
「レイン、あまり先行しては駄目よ。一緒に貫いてしまうから」
「ええ。ありがとう、夕辺。けれど、前にも言ったでしょう?」
 貴女の敵は私が貫いてみせるわ。手の内で、小さな彼女が以前にも口にした言葉を告げれば、夕辺も解っていると頷いて。
「その力、頼りにしているのよ。……本当よ?」
 けれどあまり先行はしないで。心配しているのよとは素直に言えずにいる夕辺だけれど、その想いはしっかりとレインに届いている。
 りぃん、りぃん。鈴の音が響く。
 黄泉の本坪鈴の本体から黒い念が生まれ、後悔の念で惑わそうと二人に魔手を伸ばしてくる。
 押し殺した後悔を誰にも告げるつもりのない夕辺だが、その胸で何度も燻る後悔はある。それは、故郷の精霊を何も言わずに置いて出てしまったこと。育った森の精霊たちはきっと寂しく思っていることだろうし、きっと今でも夕辺を探しているに違いない。
 けれど夕辺には精霊たちの元に戻ることは叶わない。何故なら……
(――わたしはあの森が何処にあるのかを知らない。だからもう帰れない――)
「……」
「させないわ」
 思わず足を止めてしまった夕辺に近付こうとする黄泉の本坪鈴たちだったが、見えない何かによってぐいと引っ張られるように、捕まえられるように、ひとところに集められてしまう。レインの《見えざる輝きの手》によるものだ。
「言ったでしょう、貴女を曇らす輩は全て射貫くと……古の朋へ乞う、我が祈りに応え給え!」
 本日は晴天なり。けれど所により雷が降るでしょう。
 指差す先は、《見えざる輝きの手》で集めたばかりの黄泉の本坪鈴たち。威力が然程強くはない。元より牽制を目的としており、ひととき動きを封じているその隙に――。
「夕辺!」
「任せて!」
 夕辺の周りに、ぽぽぽぽぽんと沢山の管狐たちが現れる。
 心を覗かれた不快さも伴ってか、いつもより沢山の管狐たちを呼び寄せて。
「行きなさい! 遊び相手は目の前よ! ――私たちの心を覗き見しないで!」
 真打ちを任された夕辺の《管狐行軍》。一見可愛らしい子狐たちが、一斉に黄泉の本坪鈴へと襲い掛かった。
 ――カラン。黄泉の本坪鈴の本体の鈴が地に転がる。
「少しは静かになったわね」
 耳にも目にも煩すぎたのよ。満足気にレインが笑った。

 雪と桜は好きかと問うたグリモア猟兵にとても好きだと返してゲートをくぐったヤドリガミ、冴島・類(公孫樹・f13398)は真っ直ぐに前を見つめる。その眼前で繰り広げられている戦闘と、猟兵たちに護られていても未だ怯える雪狐たちを。
 雪と桜。そんな綺麗なものに彩られお嫁にいくはずだった花嫁狐の姿が目に入れば、森の恵みと同じ色の柔和な瞳を痛ましげに揺らした。
「さて、りんりんと鳴らす子は誰ですか。この参列に鳴るのは、祝いの音色だけでいいはずですよ?」
 背負い箱に収まった、『瓜江』を起こすは赤い糸。
 愛縁繋ぐ糸にも似た赤糸を器用に操り、類の瓜江は濡羽色の髪を揺らし黄泉の本坪鈴を翻弄する。糸で括られた人形が、踊るように鈴の怪を相手取り。
 多勢に無勢な状況で、瓜江が舞えるのは類の技量だけではない。勿論類の技量あってのことだが、そこには仲間の猟兵の援護もあった。
(――お邪魔虫は排除しなくては!)
 雪狐が生き物か妖怪なのかは解らないけれど、結婚式をしているという事ですよネ! それならば、とサイキックエナジーの電撃を飛ばすのはリインルイン・ミュール(紡黒のケモノ・f03536)。
 類からも少し離れた位置から、瓜江が相手取れなかった黄泉の本坪鈴を電撃で撃ち落とした。ついでとばかりに類に迫る一体も、鞭剣に変形させた黒剣『真銀の尾』を振り回して撃ち落としておくことも忘れない。
「ありがとう」
「困った時はお互い様デス!」
 どろどろ系女子は元気いっぱいに笑って応える。獣の姿を取っているが、類にも伝わったことだろう。
 りぃぃん。甲高い音を震わせ、黒き念がリインルインへ飛ぶ。リインルインには記憶がない。故に後悔するような事柄も覚えてはいない。けれど当たるのも癪だし、もしかしたら記憶の蓋も開いてしまうかもしれない。動きを見切ったリインルインは避ける事を選んだ。
 しかし――。
「あっ」
 見切って避けてしまったが故に、黒念が類へと向かってしまう。
 獣に模した身体に慌てた表情を作るリインルイン。
 されど大丈夫だと言うように微笑む類。
 類の瓜江が、動く。瓜江が向かうのは黒念ではなく、それを放った黄泉の本坪鈴。破魔の力を篭めた腕で黒念を生み出した本体の鈴を薙ぎ払う。黒念は類へ届くこと無く、惑わす音色ごと断ち消えた。
(――後悔は、暴かせたりしないよ)
 君達へは、見せたりしない。指の隙間に落ちそうになる視線を引き上げ、類は糸を手繰って。
 リインルインも類の瓜江に続く。瓜江から距離を置こうとする黄泉の本坪鈴へと駆け寄って、電撃を纏わせたガントレットでガツンと殴って本体の本坪鈴を粉々に粉砕した。
「本体を狙っていった方が効率良さそうネ!」
 木々を利用して跳躍して黄泉の本坪鈴の攻撃を避けたジェラルドは、その声を聞いた。都度状況を判断し立体的に動きながら、敵の本体を狙って戦槌を振るい一体一体確実に仕留めていく。
からんと転がった敵の本体へ石突きを刺せば、砂のように崩れて消えて。
(――雪と桜、か)
 前にも一度その景色を見たことがある華折・黒羽(掬折・f10471)は、あれは綺麗な光景だったと思いを馳せる。黒い猫人紛いに鳥の羽。歪にさえ見えるその姿は切り抜かれたように自然に馴染むことはない。されど此処は戦場で。周りに居るのも同胞で。それを気にかける者は一人とて居ない。
 仲間の背を見つめ、黒羽は篠笛『揺』を唇の下に当て、息を深く吸い込む。
 奏でるは《獣舞ふ有明》。
 篠笛の穏やかな音が木々の合間に響き渡り、細く長く奏でられる音が辺りに満ちる。りぃんりぃんと鳴り続ける本坪鈴の音は既に不快な音にしか聞こえないが、黒羽の穏やかな笛の音は深く耳に染み渡り、周りの猟兵たちの口の端も心なしか上がって。
 舞えや踊れや、笛が唄う。
 有明の下に身を照らせと影烏を喚ぶ。
 影烏と黄泉の本坪鈴。二種の鳥たちが啄み合う様は、黒い嵐が訪れたよう。
 雪狐たちの近くで近寄る黄泉の本坪鈴たちを払い除けていたコノエとふうたが前に出る。
「――飛びなさい、鴉の刃」
 影烏舞う中、己も同類と云わんばかりに共に斬り込んで、《紅颪流・迅旋》を見舞う。高速で振り抜かれた抜刀による、見えない風の鴉刃。黒い同胞を斬り付けることなく、黄泉の本坪鈴のみを斬り伏せた。
「駆けよう、一緒に――疾風!」
 ふうたは影烏たちよりも先の黄泉の本坪鈴たちを狙い、狼――『疾風』の背に跨がり駆ける。仲間や雪狐、仲間の使役する存在が居ない場所を見極めねば、無差別に攻撃してしまう《人狼咆哮》は使えない。
 駆けて、駆けて。
 それから、跳ねて。
 疾風が大きく跳躍したその瞬間、咆哮を響き渡らせた。
 如何に相手が空飛ぶ怪であろうとも、その咆哮を防ぐ術は持たない。からん、ころんと地に鈴が転がり消えていく。
 迫る炎は、ユナの水が打ち消して。ふうたも疾風もその毛皮に焦げ跡ひとつ残らなかった。
 ――りぃん。
 りぃん、りぃん、りぃん、りぃん、りぃん、りぃん、りぃん、りぃん、りぃん、りぃん、りぃん、りぃぃぃぃん!
 一斉に、けたたましく鈴が鳴る。
 黄泉の本坪鈴たちの数は着実に減ってきており、黄泉の本坪鈴たちも焦りを憶えたのだろう。一斉に黒き後悔の念を放ち、辺りに満ちさせた。
 篠笛の音が、止んだ。
 炎を相殺していた、水が掻き消えた。
「――っ!」
 黒羽は、思わず胸を掻き毟るように抑える。
 呼び起こされる後悔の記憶。“あの子”が傷だらけになりながらも尚敵の只中へと駆けて行った記憶。守れなかった、共に戦えなかったと浮かび上がる後悔の念。
 守りたかった。共に戦いたかった。けれどその時の黒羽にはそれが出来なかった。弱い自分は、ただ背中を見送るしか無かった。
 事前に足を止めた己を攻撃するように命令を下していた影烏が飛来する。強制的な、気付けの為の一撃。
「自分を攻撃するなんて、ダメですっ」
 ライオンに乗って躍り出たシュシュによってそれは阻まれ、届くことはなかった。
「……雪と桜も好きですが、愉しくお花見するのはもっと好きですっ。わたしは雪狐さんと、みなさんと、みんなでお花見がしたいからっ」
 だからライオンさん、もう一息ですよっ!
 頑張ってとライオンの鬣を撫でたシュシュと疾風に跨ったふうたが駆け回り、辺りに満ちた黒念をかき消すように晴らしていく。
 ユナの元にも、後悔の念が届く。
 胸に染み渡り、思い起こされる後悔は――あの日のこと。全てを失って、自分の無力さを呪ったあの日のこと。
 けれどそれは、今のユナの行動原理。
(――逆効果でしたね)
 儚げな容貌に、笑みを湛え。思わずふふっと音も漏れる。
 僅かに一時の幻に心を縛られたけれど、それは懐かしさ故かもしれない。
「ああ、後悔を見せるなんて恐ろしいこと」
 恐ろしいなどと言う気持ちは微塵も感じられないその声は、可愛らしいと思った気持ちと幾分も変わらぬ気持ちで呟くせいだろうか。
 全く本当に、お可愛らしいこと。
「さあ、可愛らしい魑魅魍魎さん。おいたはこの辺でおしまいです」
 そして仲間たちの何と頼もしいことか。動物たちで駆ける仲間の援護にと、ユナは再度水を飛ばした。
 黒羽の篠笛の演奏が再開され、リインルインも類も舞うように黄泉の本坪鈴たちに止めをさしていく。黒烏の群れの中、藤花に桜に水に光も混ざれば、終焉も近い。
 黒い後悔の念が己にも向かえば、絲は口元を歪める。
 後悔なんてしたこと、今まで一度だってしたことはなかった。あるとすれば、それは――。
「はーい、おつかれさまー」
 最後の足掻きと放たれた黒い念ごと大鋏で斬り伏せた絲は、口元を歪め、ただ嗤う。
(――後悔があるとするなら、生まれてきた日のことだから)
 そうして最後の一体が倒れると、辺りは静まり返った。

 ――鈴の音は、もう、しない。

●鈴散らし
 花嫁行列を護るため、沢山の猟兵たちが駆けつけてくれた。
 そのため、花嫁たちに大した被害は無く、無事に護り切ることが出来た。せいぜい襲われた時に転んで出来た土汚れくらいだろう。それもレインと夕辺がポンポンと叩けばきれいに落とせた。
 雪狐たちは人間の言葉を喋ることは出来ないが、人間の言葉はある程度理解している様子。それに加えてビーストマスターのシュシュとふうたと黒羽を通し、簡易的な意思疎通が叶った。それぞれが感謝していることを伝えれば、櫻宵とリルも顔を見合わせ微笑んで。
 何度も感謝を伝えてくる雪狐たちに、その場に穏やかな空気が流れかける。が、グリモア猟兵の言葉では黄泉の本坪鈴たちは配下に過ぎない。絲やジェラルド、コノエ、リインルインを始めとした猟兵たちは周囲の警戒を怠らず、少し見てくるよと理彦とザッフィーロは討ち洩らしの確認にその場を離れ木々の合間に消える。
 その間にと綾華は鬼火でヴァーリャの衣服や髪を乾かした。ありがとうと満面の笑みが返れば、綾華は満足気な笑みと頷きを返し、それを見た雪狐たちも釣られるように小さく笑んで。
 雪狐たちの無事を確認し、我が事のようによかったぁと咲夜が微笑み、その笑顔を横から見守る蒼夜の表情も自然と穏やかなものとなる。ユナと類も、二人と同様に雪狐たちを見守り、柔らかな笑みを見せたのだった。

 黄泉の本坪鈴の討ち洩らしが無いことを確認出来たため、猟兵を含めた花嫁行列の一行は神社へ向かう事となる。
 花嫁行列は今、山の社へ向かう山中に居る。
 と言っても、既に目の前に神社へ続く長い階段は見えている。そこを登れば神社に到着し、式を挙げ、神への報告を終えれば花嫁行列は無事にお終い。
 もう少しだ、頑張ろう。と猟兵たちに励まされた雪狐たちが頷きを返し、行列を再開させようとしたその時――。

「こらー! 何してくれちゃってるのよ、アンタたちーーーー!」

 晴天の下、木々を揺らすような大声が辺りに響いたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『妖怪・猪子槌』

POW   :    どっかーん!
単純で重い【不思議な木槌】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    不幸になーれ!
【不思議な木槌を振ること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【不運なこと】で攻撃する。
WIZ   :    とっつげきー!
自身の身長の2倍の【うり坊】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
👑17
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は御狐・稲見之守です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●主役のアタシが登場!
「こらー! 何してくれちゃってるのよ、アンタたちーーーー!」
 年頃の少女と思われる、高い声が森に響く。
 声が聞こえた方へと顔を向ければ、神社への階段の中腹あたり。そこに明るい着物を着た少女が見えた。先程までは確かに居なかった。けれど、叫ぶと同時に階段脇の木々から飛び出したのだろう。明るい緑の髪に、木の葉がついているのがその証拠。
 少女は大きな木槌を軽々と片手で肩に担ぎ、残る片手を腰に当て、どうやら猟兵たちを睨んでいるようだった。
 大きな木槌、そしてうるさい。グリモア猟兵の言葉通りの姿に、猟兵たちは警戒を顕にする。コイツか……と何故だか頭が痛くなったように眉間を押さえる猟兵も居た。
「もー! ほんとそーゆーの困るのよね! アタシの手下にひどいことするし、ぜーったい許せない! アタシ、怒ってるんだからねっ」
 ひらり、と。
 木槌の重さも、重力も。感じさせられない動きで少女が跳躍する。
「っせーの!」

 ――ドシーン!!!

 中空で振り上げた木槌を地面に叩き付け、少女は階段下に難なく着地をする。――長い階段の中腹から、だ。笑顔が戻りつつあった雪狐たちは息を飲み、身体を強張らせ、花婿はそっと花嫁を抱き寄せた。
「あのね、アタシが主役なの! アンタたちはお呼びじゃないの!」
 叩き付けられてヒビ割れた地面から、また軽々と木槌を持ち上げて肩に担ぎ直した少女が、ビシッと猟兵たちを指差す。
 そうして大きく息を吸うと、よく通る声で告げた。
「アタシは『猪子槌』! 文句があるならかかってきなさい!!」
 返り討ちにしてやるんだからっ!
佐々・夕辺
レイン(f10073)と同行

本当ね…私としてはこっちの煩さの方が嫌いだわ
何か勘違いをしているようだし
空気が読めないのなら、叩き伏してしっかりと読ませてあげないとね
つまり、早々に立ち退いてもらうって事

私たちはサポートに回るわ
スカイステッパーで、三角跳びの要領でうり坊と中空を蹴りつけて
猪子槌と視線を同じ高さに
「こんにちは、お嬢さん。覚悟は良いかしら」
視線が向いたら笑ってあげるわ
私はあくまで陽動。本命は私の後ろにいる可愛くて怜悧な雨妖精なんだもの
レイン、貴方の氷でブチ抜いちゃって頂戴!

「管狐たち、今よ!」
落ちる矢を捕まえて、一緒に氷となって落ちなさい!


氷雫森・レイン
夕辺(f00514)と一緒

煩いのが片付いたと思ったらもっと煩いのが来ちゃった…
出しゃばりなんだか目立ちたがりなんだか
空気の読めない子はお仕置きよ
花嫁行列の花嫁が主役なのは確定事項なんだから

とはいえ猪と力尽くで真正面からやり合うのは得策じゃないわよね
多対個だし今回の真打は他の人に任せて動きを止めたり余力を削ぎましょう
氷漬けにまで至らなくとも部分的に凍ったり温度が下がれば動き難くなる筈
氷雨を放つわ
夕辺、貴女の管狐にも手伝ってもらえるかしら

祈雨とは本来雨乞いのこと
呼び声の一矢を敵の真上へ打ち上げて空から凍てつく魔法の矢雨を招く
「今よ!鏃の先を捕まえて!」


ジェラルド・ボノムドネージュ
……成る程、猪突猛進とはこのことを言うのだな
主役だが何だか知らないが、人の恋路を邪魔した無粋な奴は
犬に喰われても、仕方無いだろうな

先ずは【属性攻撃】で強化した氷塊を【投擲】して【先制攻撃】
【フェイント】や【だまし討ち】で惑わしながらも
【武器落とし】で攻撃の妨害を狙う
妖怪の攻撃には【第六感】、【見切り】、【地形の利用】を
活かして回避を狙う

木槌の一撃を喰らえば一溜まりも無いだろう
【ユーベルコード】を使用し、妖怪の動きを氷漬けて封じよう
――冷たき抱擁を受けるがいい


シュシュ・シュエット
あの……っ! 格好いいご登場をされたところ申し訳ないのですが……。
今日の主役は満場一致で雪狐の花嫁花婿さんたちだと思うのです……っ!
おふたりの大切な一日を*勇気をだして守りますっ。

皆さんの『しあわせを祈るこころ』を胸に【シンフォニック・キュア】を*歌唱。
他の猟兵の皆さんが思いきり戦えるよう、傷を癒してさしあげたいですっ。
うり坊さんが突進されてきたら*野生の勘で回避をこころみます。

……わるいことが続くと、花嫁花婿さんたちが気落ちされないか心配です。
花嫁さん、大丈夫です。わたしたちが必ず雪を降らせてみせますっ。
花婿さんは花嫁さんをお願いしますね。
……と、おふたりをすこしでも*鼓舞してあげたいです。


糸縒・ふうた
♢♡

違うよ! 今日の主役はこのふたり!
だから邪魔しないで

とってもしあわせな日なんだ
一緒にお祝いしてくれないなら退場してもらうよ!

どうするか迷っちゃうけど、やっぱり身軽な方がいいよね
【疾風】の背に乗って闘おう

木槌の一撃は予備動作と【野生の勘】で感知
それに合わせて飛び上がれば地面が揺れてもへっちゃらだよね

近づくとそれだけ不運に見舞われる可能性もあるけど
近づかなきゃ始まらない、から

突然バナナの皮が出てきて滑ったりしませんよーに
ってお祈りしつつ、懐へ

わわ、このサイズのうり坊はもうただのでっかい猪だよ~!
真っ直ぐしか進んでこないから踏みつけちゃえ

話が通じるようなら一緒にお祝いしようって誘ってみたいな


ユナ・ニフェトス
まあ、とても賑やかなお方
話しに聞いていた通りですね

それに、とても腕の立つ方なのでしょう
豪快で力強く、清々しい
見ていてとても気持ちいいですね
――敵でなければ

あの木槌を振り回すのです
足はあまり速くないのでしょう
油断は禁物ですが

うり坊へはメイスで【気絶攻撃】【2回攻撃】
愛らしい相手であろうと遠慮は致しません
引きずり下ろしてしまいましょうね

不幸は怖いですが…まあ、幸運ばかりではないのです
【覚悟】を決めておきましょう

直接攻撃は【見切り】、回避

猪子槌へは出し惜しみせず
ジャッジメント・クルセイドで光の裁きを

残念ですが、主役は貴方ではないの
舞台から降りてくださいね


冴島・類
♢♡

これがうるさそう…
送り出された時が過ってしみじみ頷き

文句?というのは特段…
自分が主役!と仰る理由を
聞いてみたいところかな

祝言の日
門出の2人の邪魔をして良い理由に足るものがあるとはとても
亥年だからー!とか言いませんよね?

開戦次第行列に被害及ばぬよう
彼女へ迷わず駆け

一撃が強力でも
見切りと第六感を活用し避け
残像重ね惑わしながら
攻撃と注意を引くように

不幸になれ、には特に警戒
側に味方あれば
そちらは必ず瓜江手繰りかばい
不運も、僕になら別に構わない
災禍など周りには決して降りかからせない

槌を振り上げ跳躍したり
騎乗突進するようなら
力抜き射線に割り込みUCで受け
相手へ返す

邪魔したらその分身に返るものですよ


朱葉・コノエ
随分と騒がしいお方が来たものです。…なるほど、あの方がこの騒動の元凶と
大した力はお持ちのようですが、所詮はそれくらいでしょう
「…お言葉ですが。お呼びではないのは貴女です。」

脅威なのはあの木槌。重い一撃は私の速度であれば上回れるはず。
であれば…あの面倒な木槌を破壊してしまいましょう。
まずは【残像】と【先制攻撃】で目をくらませつつ、居合切りで攻め立てましょう。
攻撃を避け続ければ相手は苛立ちを感じるはず。

相手が木槌を大きく振り下すタイミングで、【武器落とし】【鎧砕き】を乗せた【紅颪流・無風】で木槌の根元めがけて叩き斬ってみせましょう。
「…猪突猛進も限度が過ぎれば、狩られるだけですよ。猪様」


朧・蒼夜
幼馴染の咲夜(f00865)と一緒に

今度は女の子とウリ坊?
主役になりたいのか?
普通に可愛いのだからこんな風に邪魔しなくても別の所で主役になれるのでは?と不思議そうに問いかける

咲夜を怪我させるわけにはいかないな
彼女に攻撃があれば
白藤で【武器落とし】【武器受け】でガードし【かばう】

【紅蓮鬼】で戦闘能力を上げ
黒藤で【殺気】【恐怖を与える】敵が慄いている隙に
【2回攻撃】【暗殺】でとどめを刺す

倒した後、元に戻って
咲夜大丈夫か?怪我はないか?


東雲・咲夜
幼馴染のそうくん(f01798)と

わ、わっ…
大きな音に怯みそうになったり
うり坊ちゃんのかいらしさにうっとりしそうになったり
…あ、あきまへん、気を引き締めな

そうくんが言わはるんも尤もです
そないにかいらしいのに
わざわざ花嫁さん方の邪魔せんと…

足場を崩す攻撃は厄介やから
うちはなるべく近づかんときましょ
《花漣》から放つ水の矢
『属性攻撃』『スナイパー』で
近接で戦うそうくんを地形の悪い場所から引き離すよう援護

もし味方はんやそうくんが負傷しはったら
桜の神様を宿す歌で癒しましょう
『歌唱』には『破魔』の力も籠っているさかい
少しくらい動きを鈍らせられるんちゃうかな

そうくん…うちは無事よ
守ってくれはっておおきにな


誘名・櫻宵
🌸リル(f10762)
アドリブ等歓迎

あら元気のいいお嬢さん
祝いの場には不釣り合い
可愛い子達の祝詞と旅立ちを壊されるわけにはいかないの
リルにも見せると約束したもの

ええ
花嫁行列には必要ないわ!
リル?顔が赤いけど大丈夫?
あなたはあたしが守るから安心なさい
リルを優しく撫で庇うように前へ
心昂る歌に微笑む
歌もだけど添えられたリルの想いが力になるのよ
刀握る手に力を込めて
怪力なら怪力で受け止めないとね
なぎ払い、傷口を抉るよう穿いて斬り裂いていくわ
第六感を働かせ見切りと残像を使い分け躱す
あたしのリルばかり見てないで
懐に踏み込み、絶華を
あなたの首、頂戴な

過去は過去へおかえり
今は
新たな未来への門出を祝うときなのよ


リル・ルリ
■櫻宵(f02768)
アドリブ等歓迎

「櫻宵
これは花嫁行列、に必要なもの?」
ではないよね
ふと花嫁を守ろうと抱き寄せる花婿の姿が目に入り
それはいつも、君が僕にしてくれるような――って
それはあと!
「ごめんね
今日の主役は君じゃない」

「櫻宵、君の為に歌うよ。元気がいいのはいいけれど――僕の櫻は傷つけさせない」
君の言う幸せな婚礼を、美しい光景を
何より
笑顔がみたい
【空中戦】で攻撃は躱し
【歌唱】を活かし前に立つ櫻宵へ歌うのは
桜剣舞の為の凱歌
不幸も全部吹き飛ばす歌を
僕が望むのは君の幸福
櫻宵ばかりに突っ込んでこないでよ
「魅惑の歌」で猪突猛進な彼女をとめたなら
ほら
君の華をみせておくれ

祝いと結びの幸福を
砕かせない為に


逢坂・理彦
【ザッフィーロ(f06826)】ちゃんと一緒に。 ザッフィーロちゃんの言う通り結婚式は花嫁さんと花婿さんが主役なのは明らかじゃないかなぁ。それを邪魔しちゃってるのは君達なわけだし。花嫁行列を守るのは当然でしょ? さてまさしく猪突猛進な子だね。薙刀と槌なら間合い的には薙刀の方が有利なんだけどあの槌の一撃をくらうのは避けたいところ。 【なぎ払い】で切り込みつつ【フェイント】や【残像】翻弄しつつ攻撃。 ザッフィーロちゃんが詠唱してる間は攻撃を逸らしてもしもの時は【かばう】でしっかり守る! そうだね折角だし綺麗にUC【墨染桜・桜吹雪】といこうか。 UCの攻撃とともに花びらで視界を奪うよ。


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
理彦f01492と共に

結婚式は花嫁花婿が主役だろうに
少女にも理由があるのかもしれんが…結婚式を壊して良い理由にはならんからな
…全力で阻止させて貰おう

『先制攻撃』を使い先ずはメイスにて切り込んで行く
猪に騎乗した際は…猪が厄介故
猪毎『高速詠唱』『全力魔法』を使い【蝗達の晩餐】にて攻撃を
詠唱の途中理彦に庇われた場合は視線を向け頷き感謝を伝えつつ詠唱を終える
…影の蝗達も猪肉ならば喜んで喰らいに行くだろう…沢山食い腹を満たせ?
外した場合は地面を喰らう蝗達の上に立ち回復しつつメイスでと【蝗達の晩餐】を使い攻撃を続けよう
先に庇われた故、理彦が大打撃を受けそうな場合は『かば』いながら交互に攻撃を出来れば幸いだ


リインルイン・ミュール
まあ、人生の主役は自分とも言いますケド
アナタ、オブリビオンですし? 今この場の主役は雪狐さん達ですし?
ですのでご退場頂きマス!


うり坊に乗られると、速度も力も厄介ですネ
とはいえ猪突猛進とも言いますから、動き自体は直線的で単調のハズ
突進してくる気配を第六感で察知、見切って横に飛び躱し
黒剣を鞭状に変形させ、通り過ぎざまにうり坊の足を狙いマス

そうして動きが鈍った所に心食む波撃を使用、猪子槌へ衝撃波をぶつけ念を注入
念の内容は「真っ暗で何も無い空間にひとり放り出される混乱と恐怖」、まあ宇宙世界出身者にとっては馴染みのある幻を見る事になるでしょう
あとは幻覚から復帰するまで斬ったり殴ったり電撃浴びせるだけデス


ヴァーリャ・スネシュコヴァ

引き続き綾華と!(f01194)

お前か、空気の読めないヤツは!それはこっちの台詞だ!
主役はみんなから認められてこその主役だ!そっちの方がお呼びじゃないぞ!(ぷんすこと言い合いする姿勢)
綾華、ここはボコボコにしてわからせねばな!

綾華と息を合わせ連携しつつ攻撃
綾華の観察がうまくいくよう、速さと手数を重視して攻撃し、こちらに注意がいくようにする。

敵の攻撃には【第六感】で察知
避けやすいよう、綾華に攻撃が来る前に呼びかけ
自分は【ジャンプ】か【スライディング】で回避

綾華が攻撃するときは一旦退き
綾華の咎力封じが効いたなら
高く【ジャンプ】し、落ちる勢いを乗せて、『亡き花嫁の嘆き』をまっすぐに叩き込む!


浮世・綾華
ヴァーリャちゃん(一片氷心・f01757)と

おーおーそうだぞ
もっと言ってやれーと野次でヴァーリャちゃんに加戦
そんなに主役になりてえなら
お前も運命の相手でも見つけたらどー?

うん、おっけ
かわいこちゃんだってオブリビオンだ
俺もしっかりぼこぼこにする

基本的にはヴァーリャちゃんのサポート
連携はすっかり馴染んでいるはず
彼女の攻撃がうまく通るように
間合いを取りながら敵の動きを観察し動く

よめたならフェイントで避け
――おせえと笑ってカウンターで黒鍵刀の居合い
俺にとってのこの戦闘の主役はヴァーリャちゃんなんで
お前にいいとこはやらねーよ
咎力封じで攻撃を止め後は彼女を信じるだけだ


赫・絲
何してくれちゃってるのよ、って、何してくれちゃってるのよはこっちの台詞じゃない?
どう見たって今日の主役はお前じゃなくて雪狐サン達でしょー。
……まいっか、あんまり話通じなさそうだし、言い合うよりもこっちの方が効きそうだよねー。
かかってきなさいって言ってくれてるコトだし、それじゃ、遠慮なくー。

手の中の半数の鋼糸を放って【先制攻撃】
あんな木槌の一撃もらったらたまったもんじゃないから、攻撃はしっかり【見切り】、捌きつつ
跳び上がる脚でも振り上げた腕でも、身体の一箇所でいい、糸で捉える
捕まえたなら、もう離さない
残りの糸を追うように放ち、【属性攻撃、全力魔法、2回攻撃】で強化した雷を糸を通してお見舞いする



●猪突猛進娘
 ――ごう。
 花嵐が駆け抜ける。
 お山から吹いた風が社の階段を駆け下りて。
 桜色に染まる視界の向こう、好戦的に笑むのは『妖怪・猪子槌』。
 対する猟兵たちは、どちらかというと呆れた色を示していた。
「煩いのが片付いたと思ったらもっと煩いのが来ちゃった……」
「本当ね……私としてはこっちの煩さの方が嫌いだわ」
 出しゃばりなんだか目立ちたがりなんだか解らないわね。とレインが呟けば、夕辺は頷いて同意を返す。グリモア猟兵の言葉を思い出していた類も得心した様子でしみじみと頷き、ユナはと言うと、「まあ、とても賑やかなお方」と相も変わらずおっとりと微笑んでいた。
「あの……っ! 格好いいご登場をされたところ申し訳ないのですが……」
 言葉通り、申し訳なさそうに、シュシュが声を上げる。このタイミング声を掛けて良いのかも迷ったのか、言いにくそうな声にそれが混ざっていた。
「今日の主役は満場一致で雪狐の花嫁花婿さんたちだと思うのです……っ!」
「……そうです。お呼びではないのは貴女です」
 シュシュの言葉に続いて、コノエは猪子槌の言葉をバッサリと切り捨て否定する。あの方が騒動の原因、と見つめる赤い瞳は常時と変わらぬ落ち着きよう。元より感情表現を得意とはしないコノエだが、それを差し引いてもその眼差しは静かなものだった。
「何してくれちゃってるのよ、って、何してくれちゃってるのよはこっちの台詞じゃない? どう見たって今日の主役はお前じゃなくて雪狐サン達でしょー」
「う、うるさい! アタシが主役なのは決定事項なの! ふーんっだ!」
 本当に申し訳なさそうにシュシュが切り出したものだから、目をぱちくりとしていた猪子槌は、絲の言葉でようやく思い出したかのように木槌を振りかぶる。
「雪狐もアンタたちも、みーんなみーんな! 《不幸になーれ!》」
 猪子槌の木槌に合わせ、突風が吹き抜ける。先程吹き抜けた花嵐よりも強く、強く。
 小さな、悲鳴がふたつ上がる。ひとつはレイン、もうひとつは夕辺のものだ。突風に巻き上げられた石礫がレインを襲い、そして吹き飛ばされた。全員に向けられた不幸。そしてそこに、不運が重なってしまい。
「――レイン!」
 直ぐさま夕辺が後を追い、小さなレインを大事そうに両手で包んで支える。当りどころが悪かったのだろう、不幸に見舞われたレインが動けるようになるまで暫く掛かりそうだった。
 突風を逆に縫うように、黒い風が疾走る。黒いフードを目深に被った、魔術師にして暗殺者――ジェラルドだ。そのジェラルドに追尾するように、縁を手繰る赤糸も風を舞う。黄泉の本坪鈴を倒した後も匣へとしまわずに居た瓜江とともに、類は駆けた。
 ジェラルドが魔法で生み出した氷塊が、彼の身体の周囲に浮かぶ。駆けながら前方に手を向ければ其れ等は一斉に射出され、まっすぐに猪子槌へと向かった。
 猪子槌が木槌を振るって氷塊を弾く。そこへ、一呼吸も開けず類の瓜江が足技を掛け、躱した横顔へジェラルドが短剣『ピティエクトー』を振り払う――と見せかけた。ジェラルドの真の狙いは猪子槌の木槌。叩き落としてやろうと、死角から蹴撃する。
 ――が。
獣の勘なのか、戦闘経験故なのか、猪子槌は身を捩って跳躍し、それを避けた。
「っと! ……ふぅん、なかなかやるじゃない」
「……それはこちらの台詞だ。猪突猛進するだけが能かと思えば……考える脳はあると言うことか」
「獣の勘、かもしれませんけれど」
 猪子槌に対峙した二人の視線が交わされて。
 距離を取った猪子槌は、従えていた小さなうり坊たちに命令を下す。見目は小さくとも、まだ子どもでも、立派な猪。ころんころんとまぁるい姿でまろぶように類とジェラルドの間を駆け抜けて。
 ころんころん、とったかた。軽い足取りで駆けてゆく。
 駆ける先に居るのは、ユナと櫻宵とリル。そして更に後ろには雪狐たち。
「まぁ、可愛らしい」
 思わず感想を零した口元へ手を当てたユナは淑やかに微笑んで……残る片手で確りとメイスを握り絞める。
「でも……ごめんなさいね」
『ぴぎゃっ』
 ――ビュッ。
 メイスが振り下ろされ、短い悲鳴とともに小さなうり坊が消滅した。
 振り下ろすのは一度だけではない。まずは一陣をと、出来る限りの小うり坊たちの数を減らすべく、ユナは幾度もメイスを振り下ろす。すばしっこいうり坊たちは、避けはするが基本的に真っ直ぐ動くため、軌道を読めば確実に数を減らしていけた。
「あっ、可愛い。――櫻宵、これは花嫁行列、に必要なもの?」
「ええ、リル。花嫁行列には必要ないわ!」
 あちらの方にも、お帰り願わなくては。リルに向ける優しい視線から一転、櫻宵は険の含んだ目で猪子槌を流し見て。
 ころころころん。まろぶように駆ける小うり坊を見て、リルは瞳をぱちぱちと瞬いた。賑やかで可愛くて。これくらいなら花嫁行列にあってもいいような気がしなくもない。けれど、リルにとって櫻宵の言葉は常に正しく自分を導いてくれるもの。
「――そう」
 僕の櫻がそう言うのなら。
 リルは喉を震わせ衝撃波を放ち、櫻宵は『屠桜』を振るって小さなうり坊たちを斬り刻んだ。

 小うり坊を飛ばしてすぐ、猪子槌は巨大なうり坊を呼び寄せていた。大きなうり坊はうり坊ではなく猪なのではと疑問に思う猟兵たちの前にそれは現れ、くるりとつぶらな瞳で猟兵たちを見下ろした。身体は確かに大きいが、成獣となった猪とは違うあどけなさの残るその顔立ち。確かに巨大な”うり坊”である。
「よーし、いっくよー! 《とっつげーき!》」
 巨大うり坊が、大地を引っ掻いて。爆発するような突進を見せる。
「――!」
「っ」
 間近からの直撃は危険と咄嗟に判断した類とジェラルドは間一髪で飛び退いてそれを避ける。猪子槌を背に乗せた巨大うり坊は、巨体とは思えぬ速さで地を駆けた。
 ダカダッダカダッと地を蹴る足音は重く、そして地を揺らすように響く。
 巨大とは言え、直線的で単調。そう読んだリインルインはそれを確認しようとうり坊の斜線上に立ち、そして感性を研ぎ澄まして横に飛び退ってこれを避けた。動きは速いけれど、練度の高い猟兵が身構えて見極めたのであれば然程難しいことではない。
 リインルインには、鞭状に変形させた『黒剣』で通り過ぎざまのうり坊の足を狙うことさえ可能であった。リインルインの狙い通り『黒剣』はうり坊の足に絡まって――
「――!?」
 喚ばれたばかりの元気が有り余る巨大うり坊は、リインルインを連れて駆けていってしまう。ガツンゴツンとリインルインの身体に地面が当たる。
「……これはいけませんネ」
 もっと体力を削ってからにしマショウ。そう判断したリインルインは鞭状の『黒剣』を緩め、元気良すぎる動物と散歩する飼い主状態から脱し、駆けゆく背中を見送った。
 危ないから下がっていてねと雪狐に告げたふうたは、雪狐たちを庇うように一歩前に出ると、アタシが主役と譲らない猪子槌を睨めつけた。
「違うよ! 今日の主役はこのふたり!」
 背後で手を握り合う花嫁狐と花婿狐の気配を感じながら、ふうたは強く言葉を放つ。
 駆けるべきか迷ったけれど、ちらりと震える雪狐たちを見て。そして、雪狐たちの傍らにシュシュが寄り添うのを見て、ふうたは心を決めて『疾風』の背に飛び乗った。
 ふうたは言葉を発しはしなかったけれど、雪狐たちをお願いねと瞳に篭めた思いは確りとシュシュに伝わっている。シュシュは任せてくださいと頷きを返し、あたたかな祈りを胸に灯した。
 あたたかな想いが溢れたような表情と声で、大丈夫ですよと花嫁狐を励まし、花婿には花嫁のことをお願いする。
(――雪は、必ずわたしたちが降らせてみせますっ)
 寄り添い合う花嫁狐と花婿狐を見守ったシュシュは、決意を胸に仲間たちの背中へと視線を向ける。仲間が傷ついた時に、すぐに癒せるように。シュシュは胸の前で手を汲み、幸せを祈り、そして無事を願う。
(――バナナの皮が出てきませんように)
 シュシュとはまた違う願いを胸に、ふうたは疾風を駆けさせる。その姿は正に疾風。あっという間に巨大なうり坊へと迫って。
「わわ、このサイズのうり坊はもうただのでっかい猪だよ~!」
 間近に迫った巨大なうり坊はふうたが思っていたよりも大きく、普通の猪よりも大きなその姿に疾風の背でふうたはあんぐりと口を開ける。しかし、凶暴そうで飛び越える邪魔をしてきそうな牙はなく、ふうたは疾風に命じて跳躍させた。
 タンッ。疾風が地を蹴る。
 タッ。前足で巨大うり坊の鼻面を踏みつけて。
 トンッ。
「わわっ」
 背のお尻近くを蹴られた巨大うり坊の身体がぐらりと傾ぎ、猪子槌は慌ててうり坊から飛び降りた。
 再び地に降りた猪子槌を、ヴァーリャの蹴撃が襲う。
「もー! 空気読めないこと、しないで!」
 木槌で受けて、払い、振りかぶる。
「空気の読めないヤツは、お前の方だ! それはこっちの台詞だからな!」
「そんな訳ないでしょ! アタシの方がずっとここにいるもの! バーカ!」
「な、なにおっ……バカって言った方がバカなんだからなっ! バーカ!」
「おーおー、そうだぞ、ヴァーリャちゃんもっと言ってやれーって……ヴァーリャちゃん……」
 思わず言い返したヴァーリャに、やんやと野次で加勢していた綾華が思わず苦笑する。眼の前で繰り広げられるそれが同じ年頃の子供の喧嘩のようで。
「……って、違う! 主役はみんなから認められてこその主役だ!」
「アタシが認められてないって言いたい訳?」
「そうだ! お前なんてお呼びじゃないぞ!」
「そうだそうだー、ヴァーリャちゃんの言う通りだー」
 喧嘩のような応酬をしながらもヴァーリャは冷気を纏ったスケート靴のような靴――『トゥーフリ・スネグラチカ』で蹴撃し、綾華は鍵を投擲して猪子槌を牽制していた。二人の連携はこれまでの経験で培われ、氷上でダンスを踊るようなヴァーリャの動きを阻害するような事にはなり得ない。
 対する猪子槌は木槌を振り抜いて相殺――以上の威力を出し、ヴァーリャの身体に傷を負わせた。しかし、それが最小限に抑えられているのは綾華のサポート有ってこそのことだろう。
「アタシは!」
 猪子槌が憤ったような声を上げる。
 ヴァーリャと綾華、二人の視線が交わる。
「ちゃんと!」
 元来素直な性質なのか、木槌は真っ直ぐに振り抜かれる。
 素早く二人の位置が入れ替わり、
「認められている! ――もうアンタたちとは遊んであげない! 《どっかーん!》」
「――おせえ」
 ヴァーリャに向けられた猪子槌の《どっかーん!》は、ヴァーリャを戦闘不能にし、そして地面をも抉る……はずだった。しかし、木槌は地面を抉ること無く、綾華の《咎力封じ》によって動きを封じられていた。どうしてと言いたげに猪子槌はぱちりと瞬いて、己の手元を見、そしてゆるゆると綾華を見れば……そこに、笑みを見つけた。
 綾華はただ、野次を飛ばしていただけではない。猪子槌の動きを観察していたのだ。猪子槌の木槌がフェイント等を挟まず振り抜かれるのを見抜き、ヴァーリャに合図をし、猪子槌の動きを、ユーベルコードを、不発に終わらせた。
 嘲笑するような笑みに、猪子槌の眉がこれ以上ないくらいに跳ね上がる。文句を言おうと口を開き、――そして。
「――よそ見してたら、足元を掬われるぞ?」
 煌めいたのは、氷のブレード。綾華の背を踏み台に飛び上がったヴァーリャは、くるりと宙で回転し、真っ直ぐに猪子槌へと落ちた。
 きらり。陽の光を反射して。輝きを伴って。
 キラキラの光の中の彼女は流星みたいだと、綾華は会心の笑みを浮かべたのだった。
 猪子槌が悲鳴を上げながら吹き飛んたその勢いのまま二転三転と後転し、立ち直した巨大うり坊のもとまで飛び退り。
「バーカ!!!! アンタたち、きらい!」
 再度巨大うり坊の背に飛び乗ると一度振り返り、あっかんべーをして二人の前から立ち去った。
 向かってくる巨大うり坊の前に、蜂蜜色の髪が揺れる。
「さっきはレインによくもやってくれたわね。覚悟は良いかしら」
 中空を蹴って跳んだ夕辺と猪子槌の視線がひと時交わった。ひらりと翻る着物の袖が、艶やかに残像を残して。戦闘で無かったら、舞を思わせる優雅なものだっただろう。
 けれど夕辺の瞳に密かに浮かぶのは苛立ち。大切なレインが怪我を負ったのだからそれも当然のこと。笑みの中に苛立ちを隠し、蹴撃した。
「覚悟? それが必要なのはアンタたちの方だわ!」
 すぐに邪魔しに来るのだから! と猪子槌が頬を膨らませ、夕辺の蹴りを木槌で払い退けた。払われた夕辺は宙を蹴り、ぽぽぽぽぽぽんと管狐たちを召喚して猪子槌の注意を自身に向けさせた。
(私はあくまで陽動。本命は私の後ろにいる可愛くて怜悧な雨妖精なんだもの)
 小さくて可愛い雨妖精。小さな身体で、夕辺の為に何でも貫くと憚らぬ、可愛い人。その人が、後ろに、居る。視線を自分に向けさせて、彼女を視界から隠す。それは大切な存在を誰にも見せぬようにするのにどこか似ていた。
 気付かれないように、密やかに。レインは小さな指を、天に向けた。
(――魂に残る冬の世界、)
 辺りの空気に、水の気が混じり出す。
 しゃらん。レインの腕のブレスレット『祈雨』に付いたロザリオが揺れて。
「――その断片よ、降り注げ!」
 声と同時に、天に向かって氷の矢が放たれる。
「今よ! 鏃の先を捕まえて!」
「管狐たち、今よ!」
 レインの声に合わせ夕辺は飛び退き、同時に管狐たちに命を下す。
 命を下された管狐たちは主の意を確りと汲み、天から降る氷の矢雨を捕まえに飛び上がり、矢雨とともに猪子槌へと落ちていく。その矢雨は驟雨の如く、猪子槌とへと降り注いだ。
「結婚式は花嫁花婿が主役だろうに」
「ザッフィーロちゃんの言う通り」
 猪突猛進、まっしぐら! 雨から逃げるように真っ直ぐに走ってくる巨大うり坊へ、理彦は薙刀の切っ先を向ける。小さく響く友の詠唱を背に、地を蹴った。
 大きな斜線しか走れぬが、巨大うり坊は縦横無尽に走り回る。その背の猪子槌へ攻撃を当てようと思うなら、夕辺のような工夫が必要となる。理彦が薙刀を振るえども、うり坊上の猪子槌に当たりはしない。何せ、うり坊だけでも三メートル程もあるのだ。巨大なうり坊を前にした理彦は猪子槌へ薙刀を向けるのは止め、詠唱中のザッフィーロを護るべくうり坊の身体や足へと狙いを変え、攻撃を逸らす事に徹した。
 ドカドカと猟兵たちの間を走り回る猪子槌と巨大うり坊を相手取っていると、如何に直撃は避けようとも猟兵たちにも疲労と負傷が目に見えて。
 足の速い猪子槌へと黒い礫が飛来する。襲い掛かるのは蝗達。詠唱を終えたザッフィーロの《蝗達の晩餐》だ。放たれた蝗達は寸の間タイミングが合わずに外れてしまったが、当たらずともその上に立てば回復が行える為無駄が生じない。ザッフィーロは蝗達に地面を喰らわせ、自身の傷を癒やし、そして次なる蝗たちの召喚に移行した。
「ああっ! アンタ、なんて事を!」
 大地を、草花を、触れた物の生気を喰らう蝗を見て、猪子槌は少女らしい悲鳴を上げる。
 ザッフィーロは、驚いたように僅かに目を見開いて。
「――君がそれを言うのか」
「アタシは地面を割ってるだけだもの! 後からちゃんと均せばへーき! だけどアンタのソレは違うでしょ!」
 大地を喰らう蝗。山の命を喰らう、蝗。
 妖怪・猪子槌――今はオブリビオンとなってしまって居る彼女だが、元々は良い妖怪か福の神だったとされている。この山に長く住まう彼女にとって、山の命を奪う者は何よりも許し難いものである。見れば、後方の雪狐たちも耳を伏せて震えてしまっている。地が痩せる事を望む原住民など居ない。大地が枯れれば緑は芽吹かず花も咲かない。ザッフィーロの《蝗達の晩餐》は触れた物の生気を奪う為、その行為は今後周りの状況を判断して用いた方が良いのかも知れない。仕事を終えた後の地がどうなろうと気にしないならば考えずとも良いことだが、ザッフィーロはそういった男ではない筈だ。
「――許せないっ」
 先程までとは違った怒りを篭めた声を発し、巨大なうり坊がザッフィーロへと突進する。
 ひらり。うり坊の鼻先に、花びらが舞う。舞い散るは、黒い桜の花びら。
 黒染桜の乱舞が、視界を奪う。
『だいじょうぶ』
 そう言うように、友の唇が、音を無さずに動いて。
「……影の蝗達も猪肉ならば喜んで喰らいに行くだろう……沢山食い腹を満たせ?」
 今度は外すまじ。決意を篭めた黒き群れが飛ぶ。
 黒染桜に視界を奪われ身を刻まれた、巨大うり坊の、その上に。
「わっ、ちょっ、何よコレ! いたっ! 痛いってば!」
 茶色の毛皮をふたつの黒に染めた巨大なうり坊は、黒を振り払うべく駆け抜けた。
 向かう先には、櫻宵とリルの姿。
 花嫁狐を抱き締め寄り添い合う花婿狐をチラリと見たリルは、普段彼がしてくれている事を思い出して頬を染める。
「どうしたの、リル? 顔が赤いけど大丈夫?」
 もしかして風邪かしら? 可愛い人魚に何かあっては大変だ。衆目がある場だというのに、額で熱を測ろうとする櫻宵にリルは更に赤くなって。
「さよ、さよっ! それはあとでっ」
 グイグイと手で押しのけようとするも、その手にはあまり力が籠もっていない。
「そ? リル、あなたはあたしが守るから安心なさい」
 するりと優しく頬を撫で、笑みを残して背を向ける。庇うように一歩前へ出た背中に見惚れそうになったリルはぷるぷると頭を振って思考を切り替えた。
 リルは喉に、そっと手を当てる。
 空気を震わす、愛しい人魚の声。
「……何だかアタシ、おじゃま虫みたい」
「櫻宵、君の為に歌うよ。元気がいいのはいいけれど――僕の櫻は傷つけさせない」
 小さなうり坊たちの突進を躱しながら、君に贈る歌を。
 呆れたような半眼になりながらも巨大うり坊ごと突っ込んでくる猪子槌。
「見せつけちゃったかしら。ごめんなさいね?」
 リルから《凱旋の歌》を受けた櫻宵は真正面から巨大なうり坊に相対する。歌の力だけではない、そこに篭められたリルの想いにも意味があるのだと、身に湧き出る確かな力を握りしめて。
 猪子槌の木槌への対策であったならば、充分受け止められていたことだろう。
 しかし、向かってきているのは巨大なうり坊だ。うり坊とは言え、体長三メートル近い猪だ。その重量は五百キロ近いことだろう。それに速度が加わればどうなるか。
「きゃぁあああああ」
「櫻宵っ」
 乙女のような悲鳴を響かせて櫻宵は投げ飛ばされ、リルは慌ててその後を追うことになった。

「わ、わっ……」
 向かってくるうり坊たちに、咲夜は思わず声を上げてしまう。
「咲夜」
「だ、だって……うり坊ちゃんたちがかいらしくて……」
「咲夜」
「……あ、あきまへん、気を引き締めな」
 二度も名を呼ばれて注意されてしまった。咲夜は両頬を押さえて、そっと目を伏せ、気持ちを振り払うように眼前へと視線を向ける。
 駆けてくる可愛らしい小さなうり坊のその向こう。見た目だけは可愛いが、大きさと力は可愛くない存在が迫ってきていた。
 ドドドドドドド。
 土煙を上げて向かってくる猪子槌と巨大うり坊を前にして、蒼夜は首を傾げる。
「普通に可愛いのだからこんな風に邪魔しなくても別の所で主役になれるのでは?」
「そうくんが言わはるんも尤もです。そないにかいらしいのにわざわざ花嫁さん方の邪魔せんと……」
 蒼夜が不思議そうに問い、咲夜はその通りだと頷いて。
 しかし、当の猪子槌はうり坊の背の上できょとんと首を傾げる。
「アタシが可愛いのはアタシがよーく理解しているわ! 別の所も何も……」
 そういう事ではないのだと主張した。
 可愛らしいと称されたその身も、今は既に血に汚れ、そして地に汚れ。けれどその状態ですら自身の可愛さに自信を持っている声で。
「”今”が、アタシが主役の時なのだもの! 場所とかは関係ないの!」
 巨大うり坊の背に立った猪子槌が「とうっ」と声を上げて跳躍する。階段中腹から飛び降りてきた時と丸っきり同じ動きで、木槌を蒼夜へと振り下ろした。
「《どっかーん!》」
「咲夜、危ない――!」
 咄嗟の判断で《紅蓮鬼》で『麗しい紅キ鬼』に変じた蒼夜は、傍らの幼馴染を抱いて地を蹴る。その背を背筋が凍る風が掠り、大地を陥没させた。
 腕の中で、咲夜が息を飲む気配が伝わる。大地をも穿つ一撃必殺の木槌。まともに当たっていたら、自分も彼も、ひとたまりもなかったことだろう。
 充分に距離を取ってから大切な幼馴染を地へ下ろし、蒼夜は真っ先にその顔を覗き込んで無事を確認する。
「咲夜、大丈夫か?」
「そうくん……うちは無事よ」
 守ってくれはっておおきにな。柔らかく微笑む幼馴染の姿に、蒼夜は詰めていた息を吐いた。
 けれど、と咲夜は眉を釣り上げる。《紅蓮鬼》が寿命を削ることを知っている幼馴染は、「無理したらあかんよ」と釘を刺すのも忘れない。
「咲夜には敵わないな」
 小さく笑みを零した蒼夜は咲夜に背を向けると猪子槌へと駆け、名刀『白藤』を振るう。その背を追うように咲夜が水の矢を放つのを肌で感じるおかげか、その動きは伸びやかに。
 ――カンッ!
 木槌と刀が乾いた音を立てた。木槌が刀を押し返し蒼夜が体勢を崩すが、すかさずそこへ咲夜が『花漣』から水の矢を放ち蒼夜との距離を開けさせる。咲夜の牽制に距離を開けたその隙に巨大なうり坊が両者の間に割り入って、猪子槌はひらりとその背に跨るとタッと駆け去ってしまった。
 その背に水の矢を放つか否か、一瞬の迷い。
 けれど咲夜が選んだのは、幼馴染の為に癒しの歌を歌うことだった。

 猪子槌も巨大なうり坊も、今や数多の傷をその身に刻んでいた。
 幼獣特有のふわふわの毛皮は幾度も斬られ、穿たれ、ボサボサに。
 猪子槌も幾度も猟兵たちの攻撃を受け、顔にも怪我を負っていて。
(――そろそろ良さそうですネ)
 機を窺って、巨大うり坊が間近を通る度に足を斬りつけていたリインルインは、再度『黒剣』を鞭状に変化させる。
 傍らには、絲とユナの姿もある。
 三人は視線を交わし、こくりと頷き合うと同時に地を蹴り、巨大うり坊へと肉薄した。
 最初に仕掛けたのは、絲。まずは鋼糸のひとつを放ち木々に絡め、木の枝の上へと己が身を持ち上げて。次に手の内の半数を木槌へと放ち、不幸をばらまかれないように拘束した。
 巨大うり坊の眼の前で回避したリインルインは、再度過ぎ去り様の足を狙い、『黒剣』で拘束。
 鋼糸と鞭とで拘束された巨大うり坊と猪子槌だが、気を抜けば直ぐ様その拘束を解くことだろう。
「ちょっと! 何するのよ!」
 抗うその姿を見て、ユナは更に豪快で力強く、清々しいと思う。
(見ていてとても気持ちいいですね、とても。――敵で無ければ)
 うり坊の鼻面へ、メイスを一度、二度、と振り下ろせば、ぐらりとうり坊の身体が揺れ――何とか踏みとどまる。
 猪子槌が、純粋な力技で鋼糸を破ろうとする。
 そうはさせじと、残り半分の鋼糸が絡んで。
「びりびり、しとこっかー」
 絲が手の内の鋼糸をクッと操れば、鋼糸に雷が走る。ゆるっとマイペースな口調とは裏腹に、その雷は絲が全力の魔力で編んだもの。
 鋼糸から伝わった雷に、びくんと大きく猪子槌の身体が跳ねた。
 そこへ、歌が混ざって。
「――さぁ、桜のように潔く……散りなさい!」
 あなたの首、頂戴な。
 花あかりの淡墨が、風に舞う。
 櫻は”恋”を纏って、壮絶なまでに艶やかに。
 うり坊の懐へと踏み入ったリルの櫻は、鮮やかな切り口でその首を切り落とした――。

 ――ドウ……。

 ついに巨体が、地に沈む。
 巨大うり坊の身体が、光に分解されて消え――その場には地面に転がった猪子槌だけが残った。
 ふらつきながらも、猪子槌は立ち上がる。傷だらけの身体で、木槌を振るう。
「ねぇ、お嬢さん。どうしてあなたは自分が主役と仰るのですか?」
「……主役だから、に決まっているわ!」
 ぶぅん。風が唸り、木槌が振られる。声を掛けながらも、類は瓜江と同じ動作でそれを躱す。明らかに威力は落ち、容易に躱すことが叶って。
 猪子槌からは答えらしき答えが返ってこない。けれど類はふと思いついて口にする。
「もしかして……亥年だからー! とか言いませんよね?」
「そうよ……当たり前じゃない!」
 それは本当に、『もしかして』の問いではあった。しかし、返ってきた声は其れ以外に何があるとでも言いたげな真っ直ぐなもので。類は送り出したグリモア猟兵が少し言葉に悩む様子を思い出し、再度しみじみと得心が行ったのだった。
「そう、それならば……いえ。だからと言って、門出の二人の邪魔をして良い理由に足るものではありません」
 類が糸を手繰り寄せる。
「あ、」
 類が、息を飲む。
 糸がひとつ、弛み。瓜江の四肢から力が抜けて――
「亥年だからって、何がいけないの? 十二年に一度しかないのよ!? 長く待って、せっかくの! アタシの!」
 好機と見た猪子槌が木槌を振るう。元来は願いを叶えるための木槌で《不幸になーれ!》と誰かの不幸を願って。オブリビオンになってしまった彼女は、もう、そうとしか願えない。
「……残念です。邪魔したらその分身に返るものですよ。――廻り、お還り」
 からから回る、《糸車》。紡いだ糸を巻き取って。からからから、からからと。
 罠を張った糸の上。気付かず落ちた君も絡めて。
 猪子槌の攻撃の力を《糸車》は絡め取り、瓜江を繋ぐ力となる。ピンと張った赤糸へぐっと力を篭め、その力を倍にして瓜江は排出した。
「ああああああああああ――!」
 身を仰け反り晒された猪子槌の喉から、悲鳴が上がる。
 けれど、猪子槌とて負けられない。そのまま後ろに倒れそうになる身体を、下げた足で踏ん張って。腰を落として木槌を握る。
「……寄って集ってアタシをいじめて! ひどいじゃないっ」
 明るい着物を血に染めて、猪子槌が木槌を振るう。幾度も、幾度も。
 ぶんっと風を切る音が聞こえ。
「え」
「……猪突猛進も限度が過ぎれば、狩られるだけですよ。猪様」
 突如、猪子槌の手の内の木槌が軽くなった。柄は握っている感触がある。それなのに、どうして?
 猪子槌の視線が泳いだ先に、刀を収めるコノエの姿。
 振るう瞬間を見極めて、木槌の根本目掛けて神速で放たれた抜刀術《紅颪流・無風》が、見事木槌を叩き斬ったのだ。
 ――嘗て、猪子槌の木槌は願い事を叶えたり、思い通りの物を出現させるものであった。オブリビオンとなった猪子槌はその力を悪戯や人を驚かすことにしか使用していなかったが、今尚その力は変わらず木槌に有る。が、――その木槌はコノエの剣術によって破壊された。
「……あ」
 手の内に残された柄が抜け落ちて、からん。と虚しく音が響く。
 身体だけではなく、心的要因による衝撃で、猪子槌はふらりとたたらを踏んで。
 うり坊は首を切られて消え、木槌は破壊され、武器はなく。
 自身のその身も、刻まれ焦がされ、満身創痍。
 しかしそれでも戦おうと意思を見せる猪子槌へ、声を掛けたのはふうただった。
「ねぇ、一緒にお祝いはできないの? ……一緒にお祝い、しようよ」
「……一緒に? ……ううん」
 少し心が惹かれたのか、猪子槌は澄んだ瞳の彼を真っ直ぐに見つめて。そして、ふるりと頭を振る。主役として、一番に皆に優しくされて、一番に褒められて、一番に輝いて……猪子槌が欲したのはそういうものだ。一番じゃないなら、主役じゃないなら、意味がない。
 こうして話が出来るのに、どうして平行線なのだろう。ふうたは悲しくなり、自慢のふかふかな尾がへたりと垂れた。
「少年、下がっておいで。長く生きているとどうしようもない事に直面するからさ。こういうのはね、おじさんたちの出番。そうだよね、ザッフィーロちゃん?」
「ああ」
 短く首肯する友とともに、理彦が薙刀で肩を叩きながらふうたと入れ替わるように前に出て。
 切り結ぶそこへ、コノエとリインルインもユナも飛び込んで。絲も仲間たちに合わせ、鋼糸を放つ。
「俺たちもいくぞ、綾華!」
「ああ、行こう、ヴァーリャちゃん!」
 もうひと頑張り、援護をよろしくな! 快活で頼もしい笑顔を向けるヴァーリャに、綾華も続く。
 木槌はコノエに切られて既に無く。猪子槌は素手で応戦するが、長くは保たないことは誰の目にも明らかで。
 そこへ管狐と氷の雨と裁きの光が降り、藤に桜に水が舞えば、猪子槌はキャンっと小動物じみた悲鳴を上げて膝をつく。
 それでもよろよろと猪子槌は立ち上がり、
「……どう、して? だって、アタシが、アタシは主役、なのに……」
 こんなの納得いかない。何度もそう口にして。
 既に小さなうり坊すら呼び出せないのだろう。残されたのはその身ひとつ。
 それでもふらり。一歩前へと足を踏み出す猪子槌。
 その姿を見た咲夜は、きゅっと傍らの幼馴染の袖を握った。
「――冷たき抱擁を受けるがいい」
 落ちるのは、無慈悲な声。慈悲も同情も、そこには何一つ無い。
 ジェラルドが片掌から放った氷塊が、猪子槌を凍らせる。
「主役だが何だか知らないが、人の恋路を邪魔した無粋な奴は……犬に喰われても、仕方無いだろうな」
 自業自得だと告げた黒い暗殺者の短剣が氷塊へ突き刺さる。
 短剣から生じた小さな罅がみるみる内に広がって。
 ――ぱりん。
 澄んだ音を立てて氷は砕け、そして妖怪・猪子槌と言うオブリビオンは骸の海へと返っていった。其処此処に、大地の陥没だけを残して――。

 歌が、響く。
 シュシュの謳う癒やしの歌が、戦闘で傷を負った猟兵たちの傷を癒やしていく。
 歌が、響く。
 シュシュの歌声に、咲夜も癒やしの歌を合わせる。
 その歌声に篭められたものを読み取って。


 しあわせを、さいわいを。
 幸あれかしと、切に切に、希う。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『狐の嫁入り』

POW   :    紙吹雪や折り鶴シャワーを撒く

SPD   :    花嫁行列が来るよ、と先々に告げて回る

WIZ   :    行列に合わせて音楽を奏でる

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●再開
 ほろり、ほろり。
 桜の花弁が風に舞う。
 ほろり、ほろり。

 ――はらり。
 舞う桜に再度雪が紛れて落ちてきた――。

 猟兵たちに守られた雪狐たちが歩き出す。
 一歩ずつ、ゆっくり、ゆっくり。
 新たな幸せへと、近づいていくように。
 ゆっくりと行列は山のお社へと向かっていく。

 ――さあ、花嫁行列の再開だ。
朱葉・コノエ
…さて、無事に目的は果たされました。
邪魔者は退場されましたし、これで花嫁行列も再開されることでしょう。
元より私はここの警備を任されたのみ…宴に介入するつもりはございません。
「では…私はこれで」

一足早く行列の場から去った後、遥か空の上でその様子を眺めます。
…無事に花嫁達が社へ到着して宴も華やかになったら、辿ってきた行列に合わせて、羽根を広げて一気に飛びながら、空の上から集めてきた白い羽根を雪と合わせて降らせておきましょう。
…私にできる事はこれくらいですが、遥か空の上ではお祝いくらいはいたしましょう。
「これからも、お二人に良き祝福を」

※多少のアドリブ、他猟兵の絡みはOK



●雪に紛れて祝い羽根
 雪狐たちの安全が確保され、行列を再開する、その少し前。
「元より私はここの警備を任されたのみ。無事に目的は果たされました」
 刀を鞘へ収めると、「では……私はこれで」と折り目正しく面々に頭を下げ、コノエはひとり、その場を後にする。
 翼を上下に大きく動かせば、その身は蒼い空の上。
 木々に隠れて見えなくなるまで手を振っていた花嫁行列が動き出すのを確認し、コノエは羽根をバサリと動かしてその場を後にした。
 山の中を周り、白い鳥たちを見つけては抜け落ちた羽根を頂いていく。そうして一抱えくらいの量が集まれば、充分だろうと判断したコノエは真っ直ぐに神社へと向かって飛んだ。
 神社への階段は長く、花嫁の衣装では一段ずつ登らねばならず、時間も掛かる。
 ちょうど鳥居をくぐった花嫁行列の姿を見つけたコノエは、そのまま大きく翼を広げて一気に飛び、遙か上空から雪とともに舞うようにと集めてきた白い羽根をばらまいた。
 警備を任されたのみ、と宴等に介入するつもりはなかったコノエ。
 しかし、こうしてひっそりと祝うことぐらいは良いだろう。
「これからも、お二人に良き祝福を」
 ふわふわと、雪に混ざって白羽根が舞う。
 落ちてきた白い羽根に気付いた花嫁狐が空を見上げるが、遥か上空のコノエの姿を捉えることはできず、ただ眩しげに目を細める。
『白い羽根が降るなんて、吉兆の印だねぇ。やぁ、めでたい』
『空も山も、祝ってくれているのだろうね』
 雪狐の親族たちが明るい声を上げ、花嫁狐と花婿狐も嬉しげに顔を見合わせていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

東雲・咲夜
幼なじみのそうくん(f01798)と

みてみてそうくん、皆さん来はりましたえ
…しあわせそうな花嫁さん、改めて見てもえらい別嬪さんや
末永く仲睦まじく過ごせますように…
巫女として社から感じる神様の気配に
そうっと祈りを捧げます

両手に乗せた紙吹雪を飛ばすも別方向へ落ちたりと
なかなかうまくいかへんね
…と、ふわり優しい風が吹き
新郎新婦を包むように紙吹雪が舞い踊って
嗚呼…神霊たちもお祝いしてくれはってるんやね

優しい指先には微笑んで身を預け
美しい雪から藤色へ隠されれば
安心してその胸に寄り掛かります
…うちの未来は不鮮明やけど
どんなときもそうくんがいてくれはったら、きっとだいじょうぶ

…ね。ずっとうちの傍におってね


朧・蒼夜
幼馴染の咲夜(f00865)と一緒に

あぁ、そうだな。
花嫁行列無事に出来て良かったな。
咲夜の方をふと見ると
とても嬉しいそうにしている姿にふっと微笑んでしまう

一緒に紙吹雪をしつつ
彼女の可愛い行動にくすりと笑う
咲夜動かないで
彼女の綺麗な髪に絡まった紙を除ける

ちらちらと降る雪に
自分の藤の着物を両手で彼女の上に広げ
風邪を引いたらいけないからこっちへ

花嫁行列…
彼女がいつかそうなる時も
その後も彼女の傍で彼女を護る
俺はあの時誓い、そう願った

ん、また一緒に行けたらいいな

彼女の笑顔をずっと傍で見続けば幸せだ



●藤の帳、桜の想い
 しゃらぁん。
 装飾が音を立て、社の参道を静々と花嫁行列が進む。
 その行列を見て、みてみてそうくん、皆さん来はりましたえ。と咲夜は傍らの幼馴染――蒼夜に声を掛け、蒼夜もそうだなと短く頷きを返す。
 雪のような白い毛に、目元に赤い化粧を載せた花嫁狐は、伏せ目がちの静かな表情でゆっくりと一歩ずつ花婿狐と歩いていく。先程までの喧騒等無かったかのような静けさと清らかさを纏い、幸せな未来を信じ切った様子で歩を進めるふたりに、咲夜はほうっと息をつく。
「……しあわせそうな花嫁さん、改めて見てもえらい別嬪さんや」
 声には愛おしさ、表情には喜びを。嬉しそうな幼馴染の姿を横目に見た蒼夜は、満足気に小さく笑みを零す。彼女の喜ぶ顔が見られることこそ、蒼夜の幸い。いついかなる時も彼女を護り、彼女の幸せを護り、彼女の笑顔をも護る。遠き日に誓った願いは、常に胸の内に宿っている。
 散る桜に、舞う雪。そこに祝いの紙吹雪も混ざって。
 ひらりひらりと、目に楽しい。
 咲夜も花嫁たちに紙吹雪を贈ろうと両手に紙をすくい、ふうっと息を吹きかけようとしたその時、隣からくすりと笑みの気配。
「上手に飛ばせるか?」
「もう、そうくんったら。いけずなこと言わんといて」
 出来ますーと思わず頬を膨らませ。拗ねた様子を見せてから、ふーっと優しく息を吹きかけた。
 自由奔放な紙吹雪たちは、あちらこちらへ飛ばされて、戯れるように風に舞う。
「あ、あら……なかなかうまくいかへんね」
 もう一度。次こそはと再度両の手に紙吹雪を乗せる。――と。
 ふうわり、優しい風が掌の上の紙吹雪を浚い、花嫁狐と花婿狐のふたりを包むようにくるりと舞って。さらりと消えるように散り散りに。
「嗚呼……神霊たちもお祝いしてくれはってるんやね」
 紙吹雪さえも愛おしげに見つめる咲夜の姿に、蒼夜も小さく笑みを零して同意を示した。
 神霊たちの寿ぎ。そして社殿からも神の気配を感じ、咲夜は手を合わせそっと目を閉じ、新しい道を歩むこととなるふたりの幸せを祈る。
(――ふたりが、末永く仲睦まじく過ごせますように……)
 しゃらぁん。響いた音に、目を開ける。
 花嫁の衣装よりも程近く。頭の中に直接聞こえたような音に驚いて。
 次いで湧き上がるのは、感謝の気持ち。それから心が華やぐような温かな気持ち。
 そんな幼馴染を、蒼夜は邪魔はしない。祈りも願いも、彼女にとって大切なものだと知っているから。
 祈りを終えたのを確りと待ってから、蒼夜は傍らの彼女へと手を伸ばす。
「――咲夜、動かないで」
 桜銀の髪へと指を伸ばし、髪に絡んだ紙を除けた。頭に触れられる事を厭わずに大人しく身を委ねてくれる彼女の姿。信頼の証とも言えるその姿に、蒼夜も温かな気持ちとなる。
 きれいに取り除けたことを確認し、蒼夜は肩に羽織った着物を広げる。
「風邪を引いたらいけないから、こっちへ」
 触れれば消える雪に、暖かな日差し。
 きっと風邪は引かないだろうけれど、大切な君を隠してしまいたかっただけなのかもしれない。
 晴天の空色と桜色、それから雪の白色。三色に染まっていた視界が、藤色一色に染まる。
 胴裏の藤は、表地よりも優しい色。それが正しく彼のようだと、咲夜は安心してその胸に寄りかかる。口数少なく、表情も乏しい彼が、誰よりも優しいことを咲夜は知っているのだから。
 不鮮明な未来のことは、彼も彼女も解らない。
 けれど、誓いも願いも。いつだって、ふたりの胸の内に灯っている。
「……ね。ずっとうちの傍におってね」
 藤色の帳の下、蒼夜にだけ聞こえるように囁いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

糸縒・ふうた
♢♣①

再び降り始めた桜の雪を見上げ
良かった、これで無事に再開出来るね

訪れた最良で最高の日
“しあわせ”に包まれる花婿と花嫁と
彼らの大切な人たちと

綻ぶ彼らの表情にひと安心
視線があえば、小さく手を振って

そっと、お祝いの列から外れよう

オレたちがいなくなった後も彼らの生活は続く
山中に住むであろう猪たちに
暫くはそっとしておいてあげてと告げて

君たちのことを見ると
怖かったことを思いだしちゃうだろうから

お願いね

聞き分けの良い彼らの頭を撫でて
思い出すのはわかり合えなかった彼女のこと

泡沫であったとしても幸せを呼ぶ筈だった小槌が
不幸ばかりを求めるようになった理由を考えて

次は君が、常に主役で在れる場所に居られれば良いと



●猪への願い
 ――はらり。
 再び降り始めた雪が、ふうたの鼻の頭にひととき留まって。
 熱ですぐに溶けて消えてしまうそれを払わずに、一人静かに桜と雪を見上げていたふうたは瞳を柔らかく細める。
 胸に満ちるのは、花嫁行列の再開を祝う想い。
 よかったと息を吐いて、”しあわせ”を紫の瞳に映す。
 ふうたが助けた花嫁行列たちの一行は、桜と雪が舞う中、しあわせを纏って参道を行く。花嫁と花婿の後ろを歩く親族の狐たちなど、喜びが隠しきれない様子だ。
 人々の祝いの声と紙吹雪の舞う中心に居る彼等を見ると、ふうたもホッと息をつくことができた。
 伏し目がちに歩いていた花嫁狐とふと目が合って。
 お・め・で・と・う!
 音を出さずに、大きく口をパクパク。
 そうして笑顔で手を振れば、目礼を返された。
 ぽかぽかと胸が暖まる。しあわせが、確かにここにあった。

 そっとお祝いの列から外れたふうたは、ひとり山の中に戻っていた。
 ふうたの眼の前には山中に住まう猪たちの姿。
「暫くはそっとしておいてあげて」
 雪狐たちの感じた恐怖は、きっと時期に癒えるだろう。けれどそれはすぐではない。時間が必要だ。猪たちを見て雪狐たちの”しあわせ”が崩れないようにと案じたふうたは、猪たちにお願いにきたのだ。
「お願いね」
 ふうたの願いに猪たちは優しく鳴いて了承を示し、ふうたはそんな彼等の頭を優しく撫でてやる。一匹が撫でられれば、我も我もと囲まれて。ぎゅむぎゅむと鼻を押し付けられながら、ふうたは彼等を撫でた。
 猪たちを優しく撫でながらも、ふうたの胸を占めるのは鮮緑色。
 振るう木槌とともに揺れる、お日様色。
 願いを叶える木槌を持つ彼女のこと。
(――次は君が、常に主役で在れる場所に居られれば良い)
 オブリビオンに対して、そう思うのはいけないことなのだろうか。
 ふうたには、解らない。
 けれど、ふうたの心はふうただけのもの。ふうたが何を祈っても許される。
 ふわり。風がお山を吹き抜けていく。
 吹き抜けた風が桜を連れて、心優しい少年の頬を撫でていった。
 優しく、優しく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

誘名・櫻宵
🌸リル(f10762)
アドリブ歓迎

祝いの詞
満ちる幸せに微笑み
花を雪を人魚の笑みを楽しみ見守る

みえる?
幸せな花嫁に花婿
婚礼をあげるとかぞくになるの
2人で手を取り合って幸せな家庭を築くの
婚礼に縁がないのが残念ね

リィは白無垢すごく似合いそう
白い尾鰭に白い無垢―人魚の嫁入りね
隣に並ぶ花婿はさぞ幸せでしょう

あたしにも似合うと思うけれど
リルに着て欲しい

――言葉もない
それって、もう、ばか
重ねられた人魚の手を返事代わりに指絡め繋ぎなおし

その気にするなら
後悔しても知らないわ

心臓は騒がしいし顔が赤いのを見られたくなくて視線は明後日へ

雪も溶けそうな位
熱いわ
桜もさっきより満開になってる気がする
あなたの可愛さは反則よ


リル・ルリ
■櫻宵(f02768)
アドリブ歓迎

「これが花嫁行列。櫻宵、皆、幸せそうだ。よかった」
綺麗だね、櫻宵
雪と舞う桜と幸せそうな雪狐に微笑んで
それに隣には僕の櫻
嬉しい

櫻宵
婚礼、をするとどうなるの?
「かぞく……」
僕にはいないもの
かぞくに、なれる
君となれたらいいな、なんて
縁ならここにあるのにとか恥ずかしくて言えないけど

ええ?僕が花嫁?
花嫁衣裳なら櫻宵の方が似合うと思うけど

……じゃあ
着せてよ。着てやるから
隣にいてよ。その時も

緊張しながらそれとなく彼の手に手を重ねて
絡められた手にドキとして櫻をみやれば

顔を逸らしても角の桜が満開だから喜んでくれてるのがバレバレだ
安堵し微笑む
後悔なんて、何で?

君って案外可愛いよね



●かぞく
「これが花嫁行列。櫻宵、皆、幸せそうだ。よかった」
 雪狐たちを守れたからだね、とリルが嬉しそうに花嫁行列を見つめ、櫻宵はその姿を愛しげに見守っていた。
「――櫻宵。婚礼、をするとどうなるの?」
「婚礼をあげるとかぞくになるの」
「かぞく……」
 かぞくになれる。胸の内にころりと言葉が転がった。
 リルに、家族は居ない。けれど、家族になれる? 家族は作れるものなのだろうか。
 作れるなら、なれるなら、君と――。
 ぱちぱちと瞬きを繰り返すだけのリルを見て、櫻宵は伝わらなかったのかと言葉を足す。
「二人で手を取り合って幸せな家庭を築くの。――婚礼に縁がないのが残念ね」
 語尾が落ちた櫻宵の横顔を、リルは見つめる。縁ならここにあるよ。そう、真っ直ぐに想いを口にする勇気があればどんなに良かっただろうか。
 口開いて、閉じて。結局恥ずかしさが勝って言えなかったリルは、僕が居るよとだけ伝わるように、ただ櫻宵の袖へと指を触れさせた。
「雪狐の花嫁さん、きれいだね」
「あら。リルの方が似合うと思うわ」
 隣に並ぶ花婿はさぞ幸せでしょうね。
 櫻宵の言葉が、リルの胸にちくんと刺さる。
 まるで自分がその時隣に立つなんて想像もしていない言葉。
 リルが家族になれるなら君がいいと望んでいるのに、君はそうは思ってくれていないのだろうか。リルは少し、ムッとしてしまう。
 だからだろうか、言えた。恥ずかしさに打ち勝って。
「……じゃあ、着せてよ。着てやるから」
「……リル?」
「隣にいてよ。その時も」
 僕の櫻に届ける、僕の精一杯の気持ち。
 届きますようにと願いを込め、けれど不自然にならないように気を付けて、ぎゅっと櫻宵の手を握った。顔を見て言うのは恥ずかしくて、思わず伏せてしまったせいでその時櫻宵がどんな顔をしていたか、リルには解らない。ただ静かに返事を待った。
 櫻宵はと言うと……とにかく大変だった。息を飲んで固まって。いいのとか本当にとか、色んな言葉が頭の中を大忙しにぐるぐる駆け回っていた。一周回って落ち着いたら、あたしの人魚が可愛すぎて自分に都合のいい夢でも見ているのかしらなんて思ったりもして――そうして想像してしまった。白い尾鰭に白い無垢姿は、とてもきれいで愛らしくて――誰にも渡したくない、と思った。
 櫻宵からの、返事は返ってこない。リルは少し不安になる。
 けれど。
(――!)
 握った手に指を絡めて繋ぎ直され、リルは跳ねるように櫻宵の顔を見てしまう。
 見つめた先の彼は視線を明後日の方向へ向けていたけれど、リルにはバレバレだ。
 櫻宵の桜咲く角が今にも満開になろうとしている。彼が喜んでいる証だと、リルは安堵して微笑んで。
「――後悔しても知らないわ」
「後悔なんて、何で?」
 バクバクと騒がしい心臓を宥めようとしながら、最後の防波堤を築いたのに。櫻宵の人魚はそんなものは知らぬと言うように、詰め寄って。
 するはずがないよと落ちる声に、櫻宵は顔の熱さを増々自覚してしまう。
 あ、満開になった。なんて、いちいち報告してこないで欲しい。そんなのあたしがよーくわかってる。
「君って案外可愛いよね」
 微笑む傍らの可愛い人魚が可愛いだけではないことも、櫻宵はよく識っていた。
『幸いあれ、幸いあれ!』
『おめでとう、末永く幸せに』
 花嫁行列へと人々が口々に祝いを口にする。
 その言祝ぎが自分たちにも告げられているようで、二人はとても幸せだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

花葬・ラヰア

ゆきぎつね、ですか。このせかいにおりたてど、しらぬことはおおいですね。
のんびりながめてゆきましょう。おいわいは、しあわせなことですから。
かたなはいりませんね。さやにしまっておきましょう。

神社へ歩むその姿。雪狐という知らぬ者を瞳に収めつつも、邪魔はせず。
幸せな顔。幸せな音。華やかな世界。
物たるわが身には新鮮で、婚礼の儀などまだ見ぬ境地で。
確りと行列を見守りながら、周りに倣って祝ってみましょう。
降る雪と桜も、きらきらと輝いて見えます。

しっています。おいわいのときは、おめでとうございます、というのですよね。
えっと。あるじさまがたが、しあわせでありますように。
そっとみまもっています、ね。



●皓
「ゆきぎつね」
 花葬・ラヰア(鍍のココロ・f12936)は小さくポツリと呟いた。
 ゆきぎつねは、しらない。
 知らない。けれど、祝い事は幸せな事だから、眺めていこう。そう、思った。
(――かたなはいりませんね。さやにしまっておきましょう)
 今日はもう、あるじさまたちのために振るう必要はないだろう。ラヰアは大太刀――『雪風』をしっかりと抱えた。
 賑わいを見せる参道の脇、人の列へとラヰアも並ぶ。
 前に居た見物人の一人が小さなラヰアに気付くと手招いて、よく見えるようにと場所を変わってくれた。大太刀を抱えたまま深々と頭を下げようとすれば、「今日は祝いの日だからいいんだよ」と告げられて。
 雪のように真っ白な毛並みの狐たちの花嫁行列を、ラヰアは無垢な瞳で真っ直ぐに見つめる。
 それは、幸せな顔。
 それは、幸せな音。
 それは、華やかな世界。
 桜の花弁が舞い、雪が降る。その中を行く花嫁行列はとても幸せそうで、この場の全てに祝福されているのだと解る。
「良かったら、どうぞ」
「あ、ありがとうございます。これは……」
 隣の見物人に紙吹雪を手渡されたラヰアは周りを見渡して。それに倣うことにした。
 紙吹雪を掛けるように撒いて、ラヰアも祝う。
 雪狐は知らないけれど、お祝いの時に言う言葉は識っていて。
「えっと。あるじさまがたが、しあわせでありますように」
 あるじさまがたのしあわせを、そっとみまもっています、ね。
 片手であるじさまを護る大太刀を抱いて、残る片手で祝いの紙吹雪を撒く。
 桜と雪に紙吹雪も合わさって、世界がより一層きらきらと輝いて見えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

赫・絲
これで無事に雪狐サンもお嫁に行けるね、よかったよかった

花嫁行列を少し離れたところから眺めて
寄り添って幸せそうに歩く新郎新婦にいつかこんな式を挙げられたらいいなー、なんて
相手もいないしそれまで生きてられるかもわかんないケドねー

ひらり、落ちる花弁と雪は美しくて
写真に残すのは簡単だけど、きっと今この目で見ているこの瞬間が一番美しいから
瞬きの時間も惜しんで目に焼きつける

落ちてきた花弁と雪を手に
雪はすぐ消えてしまうけれど、花弁は消えないから大事に握って
幸せ、ちょこっともらってくね
代わりにそっと置いていくのは、赤い飾り紐で作った淡路結びの飾り
護った二匹の縁が、末永く続きますように



●桜化粧
 桜と雪が降り、紙吹雪が舞う中、たくさんの言祝ぎを受けながら花嫁行列が少しずつ歩んでいく。
(これで無事に雪狐サンもお嫁に行けるね、よかったよかった)
 そんな花嫁行列を、絲は少し離れた位置に立つ灯籠に手を預けて眺めていた。
 紙吹雪まみれになっている花嫁狐と花婿狐は、幸せをぎゅっと詰めた幸せの塊のようで。
 だからだろうか。
(いつかこんな式を挙げられたらいいなー、なんて)
 相手も居ないし、それまで生きてられるかも解らない。なのに、そう思ってしまったのは。
 ひらり、ふわり。桜花と雪花が視線を奪う。
 空を見上げれば桜と雪のシャワーみたいで、心も奪う。
 写真で撮れば色褪せることなく鮮明で、誰かに見せることも叶う。けれど。
(きっと今この目で見ているこの瞬間が一番美しいから)
 機械で切り取った景色よりも、目と心に確りと焼き付けた景色。
 絲は瞬きも忘れるくらい、桜と雪に見入っていた。
 無意識に開いた掌の上に、ふたつの花が舞い降りる。
 雪花はひやりと冷たさだけを残して消えてしまうが、その儚さが美しい。
(幸せ、ちょこっともらってくね)
 消えずに残った桜花へ視線を落とし、包み込むように握って。
(――護った二匹の縁が、末永く続きますように)
 桜花を握った手を、残る片手で包んで、新たな夫婦となった雪狐の幸せを祈った。
 幸せを貰う代わりに、と。赤い飾り紐で作った淡路結びの飾りを灯籠へ置いてから、絲はそっとその場をあとにする。
 動物の言葉が解らない絲には言葉として聞き取れないが、神社の出口へと向かう絲とすれ違った雪狐が何かを囁きあっていた。
『見て、あの子。黒髪に桜があんなに』
『ああ。桜を縫いとめて飾ったようだ』
『花嫁さんみたいに、きれいだねぇ』
 楽しげに囁きあった雪狐たちは、祝いの列へと戻っていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

逢坂・理彦
【ザッフィーロ(f06826)】ちゃんと一緒に。
花嫁行列を守る事が出来てよかったね。ザッフィーロちゃんさっきのことまだ気にしてる?それなら『大丈夫』だからね。さぁ、花嫁さん達を祝おうか。紙吹雪とこれは折り鶴だよ。折り鶴はザッフィーロちゃんはみたことある。一枚の紙を折って出来た鳥だよー。ほらこれ。興味があるなら今度折ってあげるよ。へたくそだけど鶴はなんとか折れるから。
とりあえず今はお祝いだ祝う方も幸せな気分で祝う方がいいんだよ。

お二人さん結婚おめでとう!

ふふ、まぁこれくらいの賑やかしはしとこうか。


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
理彦f01492と

ああ、無事守る事が出来て良かった…と
ん?いや、花嫁達を怖がらせてしまったと思ってな
俺の性質上仕方ない事ゆえ、気にはしては居らんのだが…
だが…理彦が『大丈夫』というならば『そう』なのだろう?と笑みを返してみよう

後折り紙はエンパイアには長く居るが…見る機会は余り無かったからな
興味深げに手にもって掲げつつも、折ってくれるという理彦の声を聞けば楽しみにしているとそう返そう
余り器用ではないが…教わり新しい事を学ぶのは楽しいからな
花嫁行列が来たらおめでとうと、声を掛けつつ紙吹雪と折鶴を掛け祝おう
二人の門出が良きものになる様、祈っている



●折り紙の鶴と
 しゃらぁん。装飾の音を鳴らして一歩ずつ歩く花嫁行列の姿が、参道の脇に並んで待つ理彦とザッフィーロにも見えるようになった。
「花嫁行列を守る事が出来てよかったね」
 拍手で迎えながら、理彦が傍らの友へと声を掛ける。
「ああ、無事守る事が出来て良かった……」
 理彦にはその声が少し気落ちしているように聞こえて。
「ザッフィーロちゃんさっきのことまだ気にしてる? それなら『大丈夫』だからね」
「ん? いや、花嫁達を怖がらせてしまったと思ってな」
 ザッフィーロの性質上、それは仕方がないことだ。そこは気にならない。けれど、怖がらせてしまったと気持ちが引かれていたのだ。
 けれど。
「だが……理彦が『大丈夫』というならば『そう』なのだろう?」
「『そう』だよ。――さぁ、花嫁さん達を祝おうか」
 信頼する友へと笑みを向ければ、頷きと共に笑みを返されて。
 ほら、近付いてきたよ。と理彦は花嫁行列を示して、懐から折られた鶴を取り出した。
 手元を覗き込む気配に、ほらこれ。と理彦はザッフィーロの手に折り鶴を一羽載せてみる。折られてぺたんとした細い、膨らませる前の鶴だ。
「ザッフィーロちゃんは見たことある? 一枚の紙を折って出来た鳥だよー」
 理彦に手渡された折り紙の鶴をザッフィーロは指で摘んで、掲げてみる。本当に一枚の紙から折られたものなのだろうか。サムライエンパイアには長く居るが、折り紙を見る機会は余り無かった彼の視線は興味深げで。
 その視線に気付いた理彦は笑みを浮かべる。
「興味があるなら今度折ってあげるよ」
「いいのか? ……楽しみにしている」
「へたくそだけどね」
「構わない。そうだな、良ければ折り方も教えてくれ」
 器用ではないが、新しい事を教わり、学ぶのは楽しい。
 そう告げれば、傍らの友から承諾の声が返った。お互いに器用でないのなら、多少不格好だろうと気にはならないだろう。
「……っと、もうすぐ目の前だね。その前に、仕上げをしないとだ」
「仕上げ?」
 理彦は懐から自分用の折り鶴を取り出すと、ニヤリと意味ありげに友へ笑みをひとつ向け。
 鶴の羽の根元近くを両手で左右に広げると、ひっくり返して息をふうっと吹き込んで膨らませる。幸せを祈る気持ちや祝う気持ちをこうして吹き込むのだと告げれば、ザッフィーロも成る程とそれに倣った。
 二人の前に、花嫁行列が差し掛かる。
 幸せそうなその姿に恐怖の色はひとつも見えず、人々の祝福で満たされていて。
 知らず、ため息が漏れたのを、傍らの友だけは耳に拾い。そして、気付いていない振りをした。
 桜と雪の舞う中、紙吹雪に、祝いの言葉が飛ぶ。
 周りの人たちに倣い、理彦とザッフィーロも紙吹雪を飛ばして。
「お二人さん結婚おめでとう!」
「おめでとう」
 二人に気付いた花婿狐が目礼を送り、伏し目がちの花嫁狐の手を握って知らせたのだろう。花嫁も二人を見ると、幸せそうな笑顔を浮かべた。
(――二人の門出が良きものになる様、祈っている)
 そしてその笑顔がいつまでも続くように。
 祈りを載せて、折り鶴が飛んだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シュシュ・シュエット
②♢♡

猪子槌さんとの戦いで舞った桜の花びらが、まるで絨毯みたいに敷きつめられて、とってもきれいですっ。
これも災い転じてなんとやら、ですよねっ。

雪狐さんたちさえよろしければ、ご一緒にお祝いさせてください。
花嫁花婿さんたちにもお酌をしますので、ぜひぜひおふたりの馴れそめについて聞かせてくださいねっ。
やっぱり、おふたりは幼なじみさんなのでしょうかっ?
あっ、わたしはお酒じゃないお飲みもので……!

雅楽代さんもいらしているのでしょうか。
ご迷惑でなければお酌させていただきますねっ。

雅楽代さんは雪と桜、どちらがお好きなのでしょうか?
雪ならこちらの甘酒、桜ならこの桜餅をどうぞっ。おいしいですよっ。
……両方です?


ユナ・ニフェトス
――ふわり
翼をはためかせ、木の枝へと腰を下ろす

この世界の文化のなんと美しいことでしょう
私の生まれた世界にはなかった人、物、営み

その中でも、今日の主役は一際美しい
お祝いの気持ちをたっぷりと籠め、紙吹雪を散らす
ああ、私まで幸せをもらってしまった気分

「幸多からんことを」

行列を見届けたら、花見をしている彼の元へ足を運んでみましょう
邪魔をするのは悪いから、挨拶だけ

…でも、せっかくなら少しだけご一緒したいな
言葉はなくても、この時間を誰かと共有したい
これは、私のほんの少しのわがまま

「だから、お隣いいですか?」


♢♡



●美し愛おし花降る世界
 ――ふわり。
 翼をはためかせ、ユナはひとり、境内の木の上に。
 サムライエンパイアの春の美しい景色を、美しい文化を、木の枝に腰掛けて見下ろしていた。
 ユナが生まれた世界には無かった、人、物、営み。この世界の全てが恵まれているようで眩しくて――そして愛おしく思えた、目を細めた。
 美しい文化と景色の中、一際美しく見えるのは今日の主役。
 幸せを、祝い、祈る声。
 幸せを、祝福を、浴びるその姿。
(ああ、私まで幸せをもらってしまった気分)
 桜と雪と紙吹雪の中、それはきらきらと輝いて見えて。
「幸多からんことを」
 ユナも気持ちをたっぷりと篭めた紙吹雪を散らした。
 ゆっくりと歩を進める花嫁行列を、社殿に入るまでたっぷり心に納めるように見届けて。そうして、ふわりとまた翼をはためかせた。
 向かう先は、一人で花見をしているであろうグリモア猟兵――真珠の元。空から探せば、その姿はすぐに見つかった。
 池の近くの桜の木。その下に用意された緋毛氈敷きの床几に腰掛ける背中へと声を掛けた。
「こんにちは、真珠さん。ユナです」
 名を告げれば、しゃらりと装飾の揺れる音がする。頷いたようだ。
 風でふわりと揺れる白い髪は変わらずに、視線は桜が浮かぶ池にあるのだろう。振り向く気配はない。
「誰かとこの時間を共有したいと思ったのです。――だから、お隣いいですか?」
「うん、許すよ。――おいで」
 背を向けたままの姿で、腰掛けた隣の緋毛氈をトンと軽く叩いた。


 しゃらぁん。
 装飾の音を残して、花嫁行列が社殿へ消えた。
 近しい親族狐はそれに続き、遠縁や友人の雪狐たちは宴会の場へと移動する。
 少し待てば、神前への誓いを終え新たな夫婦となったふたりがその場に現れ、宴会の場は大いに賑わう。酒や肴が振る舞われ、甘味も沢山並び、みな幸せそうに笑い合う。
 その宴会の上座に座る、晴れて夫婦となった若い雪狐のふたりは、とても幸せそうに微笑み合っていた。

●桜の絨毯
 新たな夫婦となったふたりに話しかける者は多く、みな順番に並んでいた。挨拶に祝いの言葉、懐かしい昔話など、話したいことは山のようにあるのだろう。
 その列に、シュシュの姿もあった。
 周りの雪狐たちが、どうぞどうぞと譲ってくれたため、順番はすぐにやってくる。
「やっぱり、おふたりは幼なじみさんなのでしょうかっ?」
 婚礼の祝いを口にしてから花嫁の盃へお酌をしながら問えば、恥ずかしそうに小さく頷きが返ってくる。
『ええ。小さな頃から、憧れのお兄さんだったのです。ずっと、ずっと今日の日が夢で……助けてくださってありがとうございます』
「そうだったのですね……間に合ってよかったです」
 今も未だ、幸せすぎて夢のようだ、と花嫁狐が泣きそうな顔で笑いながらシュシュにも飲み物を勧めてくる。
「あっ、わたしはお酒じゃないお飲みもので……!」
 手にした徳利を見て、シュシュは慌てて手を振って。
 用意してもらった甘酒を口にしながら、シュシュは暫く花嫁狐と恋の話に花咲かせるのだった。

 今日の主役を独占しすぎないように。けれどたっぷりとお話をして満足したシュシュは、甘酒や甘味を載せた盆を手に真珠を探してみる。
 池の近くの桜の木、そこに真珠とユナの後ろ姿を見つけて近寄った。
「雅楽代さんっ、わたしもご一緒してよろしいでしょうか?」
 ユナとシュシュが先程はお疲れ様でしたと挨拶を交わして。
「――お前は、シュシュだね? うん、許すよ。……僕の隣とユナの隣、どちらが好み?」
「あっ、ご迷惑でなければお酌をさせていただきたいです」
「じゃあ、僕の隣。此方へおいで」
 トンとユナとは反対の隣の緋毛氈を叩いて、真珠がシュシュを呼んだ。
 シュシュはいそいそと示された場所へ、お邪魔しますと二人に告げてから腰を掛け、持ってきた盆を真珠に見せる。
「雅楽代さんは雪と桜、どちらがお好きなのでしょうか? 雪ならこちらの甘酒、桜ならこの桜餅をどうぞっ。おいしいですよっ」
「片方しか貰えないの?」
「いえ、いえっ! どちらもどうぞです。ユナさんも、いかがですか?」
「まぁ、私もよろしいのですか? では、いただきますね」
「はいっ」
 三人で並んで桜と雪と桜の池を眺め、そして甘味を頂いて。
 猪子槌との戦いで舞い上げられた桜の花びらは、風が山の上に運んで。そうして今、三人の目の前の池にも桜の絨毯を作っていた。
 きれいですねとシュシュが口にすれば、ユナがそれに頷きを返し、真珠は目の内に光景を閉じ込めるように瞳を閉じて。
「雪も桜も好き。お前たちは?」
 おいしいですねと笑いあい、質問もすっかり忘れた頃、答えが返される。
 真珠越しに顔を見合わせた二人は、笑顔を浮かべ――それぞれの答えを口にするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

氷雫森・レイン
夕辺(f00514)と一緒

雪狐達には詫びと…そして祝いを述べなければ
ついでに宴会の末席でお茶でも…
何を言ってるの?貴女が助けてくれたじゃない
自分だって浴びたくせに…ばかね

ご両人、怖い思いをさせて悪かったわ
もう少しさくっとやれたらよかったのだけど…未熟者でごめんなさいね
それと結婚おめでとう、私達からも祝福を
夕辺が上手に笑えないなら肩に座って頬に触れていましょう
温もりで緩めばいいし、悪い子でないのが伝わればいいのよ

結婚ね…あの2人には恋があったのかしら
私はまだ知らない感情
物心ついた時には家族も既婚者すら周りには居なかった
でもいいのよ
今の私に貴女が居るなら“これで”


佐々・夕辺
レイン(f10073)と同行
一緒に宴会に参加するわ

私たち、お酒は飲めないから
暖かいお茶でも頂こうかしら
レイン、怪我は大丈夫? 痛みはない?
私は平気よ。こう見えても丈夫なの

めおとの二人に挨拶に行きましょう
まずはご結婚おめでとう
それから、お騒がせしてごめんなさいね
これからはきっと平和だから、仲睦まじく暮らして頂戴
……。(笑顔を作ろうとして)
……。(頬に触れた温もりに、口元の緊張が和む)

…恋か。
私は、生まれ育った森ではずっと一人で
親の顔も、同胞の顔も知らないわ
昔も今も、恋なんてしたことないけれど……
恋して一緒になったなら、それは素敵な事ね

そうね、私たちが今ここにいる
それでいいのかも
……綺麗な桜ね。



●ふたり
 挙式を終え上座に並んで座った花嫁狐と花婿狐は、猟兵たちや親族友人たちに声を掛けられ忙しそうだ。この晴れの日の主役なのだからそれも当然、とレインと夕辺の二人はのんびりと暖かいお茶を飲みながら挨拶出来る機会を窺っていた。
「めおとのふたりに挨拶に行きましょう」
 人の波が途切れたのを見逃さず、夕辺はレインを伴って席をたって、上座に座る夫婦になったばかりのふたりに近付いた。
「まずはご結婚おめでとう。それから、お騒がせしてごめんなさいね」
 夕辺が祝辞と共にそう謝れば、新しく夫婦となったばかりのふたりは不思議そうに顔を見合わせて。
「ご両人、怖い思いをさせて悪かったわ。もう少しさくっとやれたらよかったのだけど…未熟者でごめんなさいね」
 レインが言葉を継ぐと、雪狐の夫婦にはやっと意味が解った。けれど猟兵たちは悪くない、助けて貰ったのにそんな気持ちにさせてごめんなさい、と花嫁狐と花婿狐は意思を伝えようとする。少しだがレインには雪狐の言葉が伝わり、それから慌てた仕草に、今までの晴れやかな空気から一転して申し訳なく思わせてしまったことを知る。
「……結婚おめでとう、私達からも祝福を」
「仲睦まじく暮らして頂戴。……」
 ぶっきらぼうにも聞こえる、夕辺の言葉。
 彼女が笑顔を作ろうとしているのを察したレインは、夕辺の肩に乗り頬に触れてその頬を温める。
(――悪い子でないのよ)
 ほわりと微かに頬に熱を感じて、夕辺の頬が微かに綻んだ――気がした。けれど微かな笑みであろうとも、柔らかな空気は伝わる。その不器用な笑みに、花嫁狐と花婿狐は再度顔を合わせて破顔して『お二人のご多幸もお祈りいたしております』と頭を下げた。
 花嫁狐と花婿狐に挨拶を済ませた二人はその場を後にして、桜の木がよく見える位置へと移動する。
「あのふたり、なんて言っていたの?」
「私たちの幸せも祈っている、って」
「そう」
 夕辺にはふたりの言葉は解らなかったけれど、柔らかな雰囲気から何となくは通じていた。素っ気なく返す夕辺の頬が、微かに熱を帯びたのを知っているのはレインだけ。
「……あのふたりには恋があったのかしら」
 ポツリ、と夕辺が零す。
 親の決めた相手と結婚。そういった婚姻も世の中にはある。どうだったろうと思いを馳せて。けれど、幸せそうな姿を思い出せば、先でも後でもあったのかもしれない。そう、思えた。
 レインも夕辺も、まだ恋を知らない。
 けれど。
「でもいいのよ。今の私に貴女が居るなら“これで”」
「そうね、私たちが今ここにいる。それでいいのかも」
 肩に乗ったままのレインを見つめ、そう言って。
 ふわりと桜を乗せた風が吹けば、視線は自然と桜の木へ。
「……綺麗な桜ね」
 蜂蜜色の髪を押さえ、レインはそう零す。
 その声が夕辺にはとても穏やかに聞こえ、そっと彼女の頬に身を寄せた。
 生まれ育った森ではずっと一人だった、夕辺。
 物心ついた時には家族も既婚者すら周りには居なかった、レイン。
 似た境遇で育った二人は元よりひとつであったかのように、暫く寄り添い合っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴァーリャ・スネシュコヴァ

綾華(f01194)と②

エンパイアの結婚式って、厳かだけど綺麗で、とても素敵だ
そうなのか?
俺も結婚式は初めてだから、綾華とお揃いだ!
うむ! 見よう見まねでやってみるぞ

綾華の隣、少し離れた縁側に並んで座って
雪と桜、綺麗に混じり合って
空からも地上からも仲間からも祝福される
…二人はとても幸せ者だな

え?俺が!?
ま、またそんな…(顔真っ赤)
綾華は意地悪だな…!
雨宿りのときも思ったけど…女はな、花に例えられるとめちゃくちゃ嬉しくなってしまうのだ
舞い上がってしまうのだぞ

俺も綾華を恥ずかしがらせたいけど
…思いつかないから諦めるのだ

むむむ…!綾華はいつも余裕そうで羨ましいぞ
いつか絶対照れさせてやるのだからな!


浮世・綾華
ヴァーリャちゃん(一片氷心・f01757)と②

エンパイア住んでるケド
俺も婚礼って出たことねえんだわ
宴にも作法なんてあんのかね?
ふふ、うんうんお揃い
じゃあとりあえず一緒にまねっこしよ

縁側なんかがあれば腰かけ
雪と桜の共演を楽しむ
降る雪も桜も
花嫁を祝福してるみてえ

UDCで桜、見た時も想ったこと
ヴァーリャちゃん、雪はもちろんだケド
桜――花も似合う
ちっちゃくってひらひらって楽しそうなとことかさ
あんま言ってると信じて貰えなくなっちゃいそーでも
本当のことなので躊躇わず

嗚呼、あんときゃ確かデイジー
それ、素直に言うのもかわいいからダメー
舞い上がっていーよ

えーなんでよ
ま、なんか思いついたら
恥ずかしがらせてみて?



●華と花
 神前の儀を終えた花嫁たちを迎えての宴会の席。
「エンパイアの結婚式って、厳かだけど綺麗で、とても素敵だ」
 花嫁行列も素敵だった! と、ヴァーリャは目を輝かせた。
 宴会の場、ずらりと並んだ膳にもキラキラと輝かせた目を向けてしまう。だって、とてもおいしそうだ。
 結婚式へ初めて参加するヴァーリャはきょろきょろと周りを見渡して、勧められた膳の前にお行儀よく座った。綾華はその隣へ足を崩して座ると、チラと膳を見て。
「宴にも作法なんてあんのかね?」
 婚礼に出た事がないから解らないと告げながら箸へと手を伸ばせば、俺も結婚式は初めて! と元気な声が返ってきた。
「綾華とお揃いだ!」
「ふふ、うんうんお揃い。じゃあとりあえず一緒にまねっこしよ」
「うむ! 見よう見まねでやってみるぞ」
 雪狐や他の猟兵たちをお手本に頂くことにした。
 最初はチラチラと見て気にしていたが、おいしい食事を食べればそれもあまり気にならなくなる。楽しんで食べた方が、食事はおいしい。
「この魚おいしいぞ」
「こっちの慈姑もいーかんじ」
 祝いの歌や音楽、舞なんかも堪能しながら、二人は宴会を楽しんだ。

「おなかいっぱいだ!」
 身も心も満足した満面の笑顔で、縁側に二人並んで座っていた。
 舞う花と雪とを二人で見上げ、同じことを思う。
 天からの祝福と、地からの祝福。
 そしてそれらに祝福された花嫁たちはとても幸せ者だと。
「ヴァーリャちゃん、雪はもちろんだケド、桜――花も似合う」
「え? 俺が!?」
「ちっちゃくってひらひらって楽しそうなとことかさ」
「ま、またそんな……」
 ビャッと口を開けてから、モゴモゴむにゃむにゃと口を動かすヴァーリャ。
 沢山表情を変えるのも花のようだと笑う綾華。
 綾華はすぐにそういう冗談を言う……ともごもご言えば、本当のことだと返されて。更に口がむにゃむにゃしてしまう。
「雨宿りのときも思ったけど……女はな、花に例えられるとめちゃくちゃ嬉しくなってしまうのだ」
 舞い上がってしまうのだぞ、と頬を両手で押さえて目を閉じる。赤くなっている自覚のあった頬は、触れるととても熱く。雪狐の嫁入りの雪など、触れれば瞬時に消えてしまいそうだ。
 嬉しい気持ちはふわふわと。辺りに舞う桜と雪のように舞い上がる。
「舞い上がっていーよ」
 くつくつと喉を鳴らして綾華が笑う。無責任なのか、それともふわふわと舞い上がってしまっても手を引いて責任を取ってくれるのだろうか。その笑みだけでは解らない。
 キッと眉の上がった顔が、掴みどころの無い綾華へと向けられて。
「俺も綾華を恥ずかしがらせたいっ」
「いーよ。何してくれる?」
「な、何って……」
 えーっとえーっとと考えてみるけれど、駄目だ。思い浮かばない。
 そもそも恥ずかしがる顔すら想像できない。
 視線をウロウロと彷徨わせてから、しょんぼり視線を落とす。
「ま、なんか思いついたら恥ずかしがらせてみて?」
 何だかすっごく余裕そうで羨ましい!
 綾華の表情や言動に、ヴァーリャはムムムッと唸ってしまう。
「いいか、綾華! いつか絶対に照れさせてやるのだからな!」
「いつでもどーぞ」
 ビシィッと宣言すれば、楽しげに余裕の表情で返されて。
(――いつかいつか、絶対にだからな! その余裕を崩してみせるからな!)
 更に強く闘志を燃やすこととなったヴァーリャなのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

冴島・類
ようやくお祝いの再開ですね
行列と祝言を見守った後宴会に参加できたら

花と雪に彩られてなんて
お伽話もかくやという景色だ
それに…お嫁さんをしっかり守ろうとしてた旦那さんを見るに
仲睦まじい夫婦になるだろうから
微笑ましくてお祝いの言葉動物会話で告げ
末永くお幸せに
演奏や歌はできぬ代わりに
祝いの舞を

振る舞い酒は避けて
茶か水があればいただき

真珠さんがいれば
送り出してくださりありがとうとだけ伝えれたら
おかげで、随分ときれいな雪と花と
めでたいのが見れました

舞い落ちる花びらを掌に受け止め
ぼんやり
帰る前に消える前の猪子槌のことを思い出して
こそり、折り紙で猪を折り
後で桜と共に閉じようと
あの子が、骸の海で泣いてないように



●おりがみのしし
 雪狐たちの宴会はとても賑やかで、とても楽しげなものだった。
 猟兵たちの姿があるものの、圧倒的に雪狐たちの姿が多く、
(――お伽話もかくやという景色だ)
 なんて、茶を口にしながら類は思った。
 既に仲睦まじく見える新郎新婦へ祝いの挨拶をし、祝いの舞を披露したいと告げれば、『では三味線を』『私は琴を』『それでは笛を』と周りの雪狐たちが申し出て、明るくも落ち着いた、祝いの場に相応しい楽曲を奏でだす。
 類は音楽に合わせ、祝いの舞を踊りだす。
 桜のように、ひらりと優雅に。
 雪のように、ふわりと軽く。
 最後にとんっと軽く足を合わせ、片腕を胸、片腕を広げて。
「末永くお幸せに」
 雅やかな礼とともに、祝辞を口にした。

 遅くまで続くであろう宴会を辞した類は、境内をいくらも歩かぬ内にグリモア猟兵の姿を見つけ、声を掛ける。
「真珠さん。ああ、よかった。まだいらして」
「……僕を、探していたの?」
 先程まで他の猟兵と居たのだろう。甘酒を手にしたまま類を見上げ、首を傾げる真珠。
 その顔に、ええと頷いて。
「送り出してくださりありがとうございます。おかげで、随分ときれいな雪と花と、めでたいのが見れました」
「そう」
 言葉は短いが、微笑む気配。
「僕はもう帰るけど、お前は桜を見ていくといいよ。特等席を譲ってあげる。感謝して」
 ここが一番の気に入りなのだと告げた真珠は、それではねと袖を振ると使用人人形に抱えられて神社を出ていった。
 池近くの桜の木の下、緋毛氈の敷かれた床几にひとり座り、桜色に染まった池を見る。
 掌を開けば、ひらりと花びらが舞い降りて。
 ぼんやりと見つめながら、心に浮かぶのは橙色の着物の少女のこと。
 座したまま、懐から折り紙を取り出して、猪を折る。
(――あの子が、骸の海で泣いてないように)
 慰めにはならないかもしれないけれど、餞に。
 折り紙の猪にも、ひらりひらりと桜が舞い降りて、可愛らしくなったと小さく笑みが浮かぶ。
(後で桜と共に閉じよう。けれど、今は――)
 緋毛氈の上に折った猪を置き、類は暫し、紙の猪と桜を愛でてから帰ることにした。



●ゆきぎつねのおよめいり
 こうして雪狐の婚礼は執り行われて、一組の夫婦が誕生した。
 どこかの茶屋でも、晴れの日に降る雪――雪狐の嫁入りを見られていたことだろう。

 猟兵が、雪狐の家族が。たくさんの人々が祝福した雪狐のふたりは、時に辛いことがあろうともこの日のことを思い出し、二人で寄り添い合って暮らしていくことでしょう。
 いつまでも幸せに。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月30日


挿絵イラスト