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アースクライシス2019⑫~汝、人々の盾であれ

#ヒーローズアース #戦争 #アースクライシス2019 #センターオブジアース

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●嘆く女は力を欲す
「なにが守護の神殿よ……私の家族は、護ってくれなかったくせに!」
 悲鳴にも似た女の叫び声が神殿内に響き渡る。神殿というには禍々しい様相のそこは、本来の姿ではない。
 センターオブジアースには、巨大な世界樹に果実のように連なる「神の神殿」が存在する。しかしいくつもあるそれらの内、すでにオブリビオンの手に落ちてしまった場所も多い。堕ちた神殿……「オブリビオン神殿」となった場所は本来の神性を失い、敵に巨大なエネルギーを与えてしまっている。これがある限り、敵に負けはない。
「ふふ、ふふふふふふ、でもね、許してあげるわ。だって今ここは私たちの神殿……この力があれば復讐は遂げられるもの!」
 哄笑する女のオブリビオン。その姿はなんら普通の人と変わりないのに、彼女には狂気が満ちている。
 女はかつて、ただ忍の血を引くだけの普通の女であった。ごく普通に恋に落ち、結ばれ、母となった女であった。
 ヴィランの自爆テロで夫と子どもを失う日までは。
「ヴィランは全て殺す……助けに来てくれなかったヒーローも、猟兵も、あの世界そのものも! 全てが憎たらしいわ!」
 狂気に堕ちた女の名はアゲハ。いまやヒーローズアースすべてに、その牙を向く者であった。

●乗っ取られた神殿
「っつーわけで、次の作戦が決まったぜェ」
 例のごとくデバイスで任務地の様子を再生しながら、一門・楔は集まった猟兵たちへ前髪の奥の目を向けた。
 向かう先はセンターオブジアースのとある神殿。かつては「盾の守護神」が祀られていた神殿だ。ただし今はその神殿を乗っ取られ、オブビリオンのエネルギーの源となってしまっている。
「ここのオブリビオン神殿をブッ壊すのが最終目的。だけどなァ、オブリビオン神殿を護っているヤツがいる上に、そいつも神殿の力でパワーアップしてンだよなァ。神殿にダメージを与えつつ殴るっていうのが一番早いかもな」
 つまり、ド派手にやれと。楔はニヤリと笑ってうなずいた。「オレも行きてェなァ」などとつぶやきつつ、転送の準備を始める。
「あ。あとな。ココは元々『盾の神』、まァつまるところ守護に特化した神様がいたみてェだな。誰かを護ったり、護りたいって気持ちを強く表せたら、自然と神殿を取り戻そうとオブリビオン神殿を攻撃してくれるかもしれねェ」
 その神殿の本来の主が手伝ってくれるのならこれより心強いことはないだろう。その手を試してみるのもアリかもしれない。
 そんなことを猟兵たちが考えているうちに転送準備は整った。腹を決めた者はすぐに、その禍々しい神殿の前へたどり着いていることだろう。


夜団子
●今回の概要
 このシナリオは「戦争シナリオ」です。今回の目的は「神殿をブチ壊しながら敵を倒す」こととなっております。

●プレイングボーナス
 このシナリオには特別な「プレイングボーナス」があります。これに基づく行動をすると有利になります。
 今回の条件は「敵のパワー供給源を断つ。」ことです。

●判定について。
 夜団子の基準になりますが、上記「プレイングボーナス」を満たしたものを大成功判定とし、そうでないものを苦戦といたします。そしてその合間(悩んだもの)が成功になります。
 基本的に「大成功」判定になるものだけをリプレイ化し、シナリオのクリアが難しいようであれば他のものもリプレイ化します。シナリオクリア地点で成功以下のプレイングは素早く流しますので、他のシナリオでその☆を活かしていただけたらと思います。

●「オブリビオン神殿」について
 「オブリビオン神殿」は、そこにあった「神の神殿」を破壊して、その上に造られています。オブリビオン神殿を破壊して、敵のパワー供給源を絶たない限り、敵は超絶パワーアップされてしまうので、勝利は至難となるでしょう。
 オブリビオン神殿の破壊は、神殿のような巨大建造物を破壊するのに相応しいユーベルコードで、戦いながら神殿を破壊する事が可能です。
 また、『破壊された神殿に祀られていた神の力を呼び起こすような戦い方』で戦闘を行っても、神の神殿の力が蘇る事でオブリビオン神殿が崩壊していきます

●「神の神殿」について
 今回もともと祀られていた神は「盾の守護神」です。盾というより守護神と思った方がわかりやすいかもしれません。誰かを護りたい、そんな気持ちや覚悟が守護神を呼び覚ますかもしれませんね。
 もちろん無視して物理で神殿を壊しても全く問題ありませんよ。

 それではみなさまのプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『哭死蝶アゲハ』

POW   :    あの時ヒーローも猟兵も来なかった!なのに今更!
自身が【何故家族は助けてくれなかったという怒り】を感じると、レベル×1体の【息子がくれた蝶の髪飾りを模した血吸いの妖】が召喚される。息子がくれた蝶の髪飾りを模した血吸いの妖は何故家族は助けてくれなかったという怒りを与えた対象を追跡し、攻撃する。
SPD   :    あの人は若くあの子は未だ四歳だった!なのに!
自身からレベルm半径内の無機物を【嘗て家族を喪った時を思わせる業火製の紅葉】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
WIZ   :    二人は悲しまない!もう悲しむ事も出来ないのよ!
自身の装備武器を無数の【触れた者を麻痺させる、夫が愛した八車菊】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。

イラスト:安子

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠饕・餮です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ウィルヘルム・スマラクトヴァルト
全てを救えるなどと考えるのは、きっと傲慢なのでしょう。
ですが、貴方を救えなかったことは申し訳なく思います。
――しかし、その復讐はやらせはしない!

世界や人々を護る固い意志を込め、
ハイパー・ガーディアン・モードを発動。
最大速度で可能な限り高く飛翔して、緑の大盾を構えて
最大速度で急降下して神殿に激突するのを
何度も繰り返して神殿の破壊を狙います。
隕石落としと言うには質量が足りませんが、
その分は最大でマッハ約4.5のスピードで補えるでしょう。
衝突の衝撃は「オーラ防御」で防御力を高めてダメージを抑えつつ
「激痛耐性」で堪えます。

敵の攻撃は敢えてこの身で受けつつ、
衝突の衝撃に耐えるのと同じようにして耐えます。



「全てを救えるなどと考えるのは、きっと傲慢なのでしょう。ですが……貴方を救えなかったことは申し訳なく思います」
 コツ、とウィルヘルム・スマラクトヴァルト(緑の騎士・f15865)の靴が神殿の床を打つ。頭の頂点から足の指先までの全身が緑の輝きを放つ、人呼んで「緑の騎士」。虐げられる人々や危険にさらされている民を護り続ける彼はなればこそ、己がどれだけ取りこぼしているかを理解している。そして目の前の女が、そのひとりであることも。
「――しかし。だからこそ! その復讐はやらせはしない!」
 この世界を、人々を、この緑の大盾で必ず護る。その想いを強く宿すウィルヘルムの体をエメラルドのオーラが包み込んだ。もとより緑の輝きを持つウィルヘルムの光はより強く瞬き、その想いに比例してその力を増強させた。力強く神殿の床を蹴り、ウィルヘルムは空高く飛びあがる。
「忌々しい、忌々しい……! その戯言、私の家族の前で宣って見なさいよ! 助けてくれなかったくせに、私の邪魔だけはするのね!」
 ウィルヘルムの言葉は狂気に堕ちたアゲハには届かない。彼女の髪を飾る蝶の髪飾りから、分身するように何羽もの蝶が飛び立った。しかしその色は赤黒く禍々しく、まるでウィルヘルムの緑をかき消さんとするように襲い掛かる。
「その言葉も痛みも、甘んじて受けましょう……」
 緑の大盾を下に構え、その身を強く固めてウィルヘルムは急落下した。その質量と最大出力のスピードを利用したその一撃はまさに隕石のごとし。勢いよくぶつかった神殿の箇所はひどく損傷し、崩壊する。
 反面、その衝撃はウィルヘルムにも襲い掛かった。ダメージを薄れさせているとはいえ神殿を破壊するほどの衝撃。耐性で堪えつつもその表情は歪む。
 そこへアゲハの蝶たちが追い打ちをかける。鎧の隙間から噛み付かれ血を吸われるも、最後までウィルヘルムは苦痛の声を上げなかった。
 助けられなかった人たちの苦しみはこの程度ではない。贖罪の痛みを背負い歯を食いしばって、世界や人々を護りぬくのだ。
「うおおおおお!!!」
 もう一度飛びあがったウィルヘルムの声に呼応するように、突然神殿を地震が襲った。アゲハの足元がおぼつかなくなり、神殿の崩壊が促される。それはウィルヘルムの想いにわずかに力を取り戻した「盾の守護神」による援護。
 二度目の疑似隕石落としもその衝撃のままに神殿を破壊し、猟兵たちの目的達成への一歩を、確実に進めたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鈴木・志乃
この歌を、今戦下にある全ての住人の為に
そして囚われの身である神様の為に捧げます【祈り】

――全ての生命を守ろう、『ミコト』

【オーラ防御】展開
UC発動
【全力魔法】で拡声した【大声】による【歌唱】の【衝撃波】で敵のUCを封じながらすべてを【なぎ払い】ます

【第六感】で敵の攻撃を【見切り】かわしながらも、常に途切れることなく歌い続けましょう
何より必要なのは祈ることだから
敵の言葉に惑わされないで

片手には誰より一番大切な人がくれたお守りを持って
守りたい人がくれた【勇気】を握って、ぶたれても何されても歌い続ける
私が戦い続けるたった一つの理由の為に、喉が枯れるまで歌い続けましょうとも



「―――この歌を、今戦下にある全ての住人の為に。そして囚われの身である神様の為に……捧げます」
 その純白の翼を広げ、神殿へ鈴木・志乃(ブラック・f12101)が降り立つ。胸の前で握られているのはお守り……誰よりも大切な人からもらったそれを持って、志乃は真正面にアゲハを見つめ返した。相手にどんな思いがあろうとも、“二人”が願うのは皆が幸せになること。その口は生命賛歌のしらべを唄う。
「――全ての生命を守ろう、『ミコト』」
 その願いを、唄を、志乃の握るマイクが神殿へと届ける。魂の乗ったその歌声はマイクによって衝撃波に変換され、アゲハごと周囲の神殿を攻撃し始めた。痛んだ場所から神殿は崩れ、亀裂を大きく入れていく。
「―――ッ!! うるさい、うるさいッッ!! 何が全ての生命を守る、よ! 護ってくれなかったじゃない! 私の家族を、二人をッ見殺したじゃないぃぃッ!!」
 歌に負けない大声で、アゲハが絶叫する。その声に乗るは憤怒に哀愁、引き裂くような悲嘆。家族を失った悲しみと、救ってくれなかったヒーローたちへの失望と強い怒りだ。アゲハを狂気に落としたその感情は、未だにアゲハを支配し続けている。
「止めなさいッ! その鬱陶しい歌を止めなさいよッッ!!」
 その身を拘束され、技を封じられてもアゲハの怒りは止まらなかった。体を捻らせ、その懐から取り出した苦無を志乃へ投げつける。それでも、その軌道を読み避け続けながら、志乃は歌い続けた。
 ―――何より必要なのは祈ることだから……。
 ―――敵の言葉に惑わされないで……。
(……うん、大丈夫)
 攻撃は避けられてもその言葉を避けることはできない。皆の幸せを願う者として、耳をふさぐことも許されない。
 アゲハとその家族が救われなかったことは現実で、事実なのだから。その苦しみをなかったことにするのはきっと、違う。
 だからこそ志乃は祈る。全ての生命と意思のため。今も苦しむ人々のため。
 その手に握る勇気を糧に、志乃は歌い続ける。その頬を苦無が斬り裂こうと、その身に刃が突き刺さろうと。志乃は志乃が戦い続けるたった一つの理由の為に、喉が枯れるまで歌い続けることだろう。
 グラグラと、先ほどよりも少し大きな地震が神殿を揺らした。生命を守らんとする意思と、捕らわれの神に対する祈りが、眠る「盾の守護神」へ更に力を与えたのだ。
 光明は差し始めた。それでもなお、志乃の賛歌は神殿に響き渡り続ける……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四宮・一希
では、銃器を召喚してファンネルの様に展開。
周囲にいる猟兵やヒーローなどに襲い掛かる攻撃や怪物などを射撃することで守ります。

俺は対物戦車ライフルやレーザーライフルなど神殿に損傷を確実に与えられる銃器を多数使用して着実に破壊していく。
無論隙があればボスも攻撃するが、今回の戦いは援護射撃と遠距離攻撃による相手の供給源を絶つ方向に徹する。

ふと、オブリビオンからの自分に対する攻撃が途切れて安全にリロードが行える中、思うのは大切な妹である『司季』のこと。
彼女が生まれた世界を守るべく、俺は着実に神殿の破壊を進めて行く――!!


トリテレイア・ゼロナイン
(神殿の破壊には回らず、若しくは破壊する味方を●かばいつつ超強化された敵の蝶をセンサーで●情報収集し飛来を●見切り、格納銃器での●スナイパー●武器落とし、●武器受け●盾受けで防御。UCで辛うじて対抗して立ちはだかり)

貴女の怒りと悲しみを理解できるなどと烏滸がましいことは申しません
ですがその凶行を許せば第二、第三の貴女のような人々が生み出される

お気付きですか
貴女の手が罪なき人々の血で汚れた時、その手を動かした理由…愛したご家族の思い出が、存在が同時に血に塗れることを

家族を奪ったヴィランの行動原理と同じ物に堕ちることを

騎士として
貴女の手とご家族の存在がこれ以上血で染まらぬよう護る為

討たせて頂きます



 今回の任務の目的は「オブリビオン神殿の破壊」だ。無論陣取るオブリビオン、哭死蝶アゲハを倒すことも必須になってくるだろうが、今彼女は神殿の力によってパワーアップをされている。
 明らかに力を強めている彼女を、先に排除しようというのは困難だ。そうなると猟兵たちの行動は破壊活動に専念するか、彼女と同時に神殿を攻撃して気をそらしつつ神殿を破壊することである。
 四宮・一希(シューティングゲーマーヒーロー CV松岡禎丞・f23834)はその前者の行動をとっていた。真っ先に神殿を壊すことで他の猟兵たちへの支援とする。
 その狙いに応えるように、銃器が一希を中心にして展開した。呼び出されるのは対物戦車ライフルやレーザーライフルなど、対建造物に特化されたものばかりだ。
「この世界は壊させない……!」
 リロードを行いながら一希はとある少女のことを思い出していた。大切な大切な妹、『司季』。この世界は彼女が生まれ落ちた世界。護る理由はそれだけでも十分だ。
 派手に神殿を崩れさせる一希の行動は、猟兵たちの中でもひどく目立ってしまっていた。武器は大物ばかりで、アゲハではなく神殿を狙う徹底ぶり。そして大切な家族のために戦う姿自体も、アゲハにとっては癪に障った。
「そうよ……思い知ればいいのよ……助けに来なかった猟兵も、救ってくれなかったヒーローも! あの子とあの人が苦しんだ業火の痛みを、知ればいいのよ!!」
 その叫びと共に、一希の周囲の瓦礫が朱に染まっていく。紅葉の形を成したそれに一希は素早く銃口を向けるが、業火でできた紅葉は撃ち落とされずにそのまま一希へと向かってきた。その熱が集まる感覚に、一希が火傷を覚悟した瞬間―――
「御伽噺に謳われる騎士たちよ。鋼のこの身、災禍を防ぐ守護の盾とならんことを……いざ、ここに誓わん!」
 白き鋼の体躯が一希と業火の間に立ちはだかる。その盾に阻まれ業火がかき消される中、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)へアゲハは忌々しそうに顔を歪めた。
「あの時も、そうやって現れてくれればよかったのに……!」
 その嘆きの言葉にトリテレイアも一希も言葉を返さない。己らの手が届かなかったことは事実で、届いていたら救えたかもしれない一家なのだ。
「……貴女の怒りと悲しみを理解できるなどと烏滸がましいことは申しません。ですが……その凶行を許せば第二、第三の貴女のような人々が生み出される」
 それを見過ごすことはできない。
 トリテレイアが壁となり、一希はまたもう一度、その銃器を展開する。背中を任されたトリテレイアはその肩、両腕、頭に格納された機銃をアゲハへと向けた。
「あなたたちは私たちを守ってくれない……それどころか私の邪魔ばかりをする……」
 彼女の足元から一匹、二匹と蝶が現れる。血を啜る妖であるその蝶はもはや愛する我が子がくれた髪飾りとは似ても似つかない。しかし、復讐と狂気に目を曇らせたアゲハにはそれがわからないのだろう。
「……お気付きですか。貴女の手が罪なき人々の血で汚れた時、その手を動かした理由……愛したご家族の思い出が、存在が同時に血に塗れることを。家族を奪ったヴィランの行動原理と同じ物に、堕ちることを」
 トリテレイアの機銃たちが的確に蝶へ照準を合わせ撃ち抜いていく。撃ち抜かれた蝶たちはバラバラに砕け散りひとつまたひとつと神殿の床へ落ちていった。一匹とて通さない。仲間たちを守りながらトリテレイアはアゲハへ語り掛ける。
 しかしその言葉は彼女へ届かない。もう手遅れなのだとトリテレイアもわかっていた。
「騎士として、貴女の手とご家族の存在がこれ以上血で染まらぬよう護る為……討たせて頂きます、哭死蝶アゲハ」
 一希のブラスター光線が神殿の天井を破壊する。同時にまた一層強くなった地震が神殿を根本から揺らした。天井がひび割れ、瓦礫が降り注ぐようにして神殿の一角は崩壊。猟兵たちは神殿の完全破壊へのコマをまたひとつ進めたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流

隠密行動が基本だがら、逆にここは最初に宣言した方がいいか。
俺は黒鵺。マスカレイドより人々を守るエンドブレイカーに見出された武器。守る為の刃。
例え闇に紛れ闇討ちを行うとしても、人々の安寧たる夜を守る為。いざ参る。

こんなものかね。

【存在感】を消し【目立たない】ように移動し、奇襲をかけ【マヒ攻撃】を乗せた【暗殺】のUC剣刃一閃で攻撃を行う。
外しても無理に止めず、そのまま神殿の破壊する。
相手の攻撃は【第六感】で感知【見切り】で回避。回避しきれない物は【オーラ防御】と【激痛耐性】【呪詛耐性】【狂気耐性】でしのぐ。


ボアネル・ゼブダイ
アドリブ連携OK

悲境に狂った女か…
もはや、愛した夫と我が子の顔すら、奴はもう思い出せまい…

黒剣グルーラングで自分の手首を深く切り付けUCを発動
失血死寸前量の血液で作った血鍵を使い、見上げる程に巨大な「死の王」を召喚する
悍ましい叫び声で血吸いの妖達の動きを止め
無数の魔剣が生えた巨大な骨塊を嵐のように振るい神殿を破壊する

自分は失血死しないように倒れたまま体力を温存し
敵が瀕死の自分を見つけ攻撃を加えようとしたら最後の力でカウンターを行い反撃
剣を通して吸血し生命力吸収で回復する

私が護るもの…それはかつての貴様自身と同じ、この世界に生きる人々だ
罪なき彼らを護るためならば、この苦痛は甘んじて受け入れよう



「悲境に狂った女、か……もはや、愛した夫と我が子の顔すら、奴はもう思い出せまい……」
「ここまで堕ちたらもう戻れない。なら、止めてやるのも救い、だよな?」
 黒剣グルーラングを手にしたボアネル・ゼブダイ(Livin' On A Prayer・f07146)と右手に胡、左手に黒鵺の二刀を構えた黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)が、それぞれの想いを胸に神殿へたどり着く。
「俺は黒鵺。マスカレイドより人々を守るエンドブレイカーに見出された武器。守る為の刃だ」
 暗殺者である瑞樹が珍しく、その身を隠すことなく前へと一歩歩み出した。狂気に満ちるアゲハの前に堂々と立ちふさがり、彼女の視線を奪う。その狂乱の表情を向けられてもなお、瑞樹が臆することはなかった。
「例え―――闇に紛れ闇討ちを行うとしても、人々の安寧たる夜を守る為。いざ、参る」
 名乗りが終わった瑞樹はダンッと強く床を蹴って崩壊して穴の開いた天井へと飛び移る。しかし、それを追うことはアゲハにはできなかった。
 一歩前に出ていた瑞樹の影に隠れ、アゲハの死角をついていたボアネル。彼はその手のグルーラングで己の手首を深々と斬りつけ、自らの血を大量に使い召喚の媒体を作りだしていたのだ。
「我が血潮よ、秘された掟に従い大いなる血鍵となり、呪われた門を開け! ……そして忌まわしき死者達の王を、我は此岸に呼び寄せん!」
 詠唱が終わると同時にボアネルは膝をつき、神殿の床へと伏した。しかし彼との間を遮るように出現した地獄の門が、黒々とした瘴気を漏らしながら開かれていく。そこから溢れだした『死の気配』に、アゲハは思わずその扉を凝視した。
 そこより現れたのは『死の王』。ボアネルの血鍵より喚び出された巨大なボーンゴーレムは、その手に持つ骨塊を大きく振り上げた。無数の魔剣が棘のように飛び出したその骨塊は、一振りで木偶のように神殿を破壊し、瓦礫の山へと変えていく。
「こッの、小癪なことを……!」
 血を流し倒れたボアネルに向かい、無数の血吸い蝶が飛び立つ。ボアネルの真っ赤な血に群がるように襲い来る血吸い蝶を見て、死の王はその皮膚も肉もない口を大きく開けた。
 まさに咆哮、放たれた叫び声は妖である蝶の動きさえ止めた。魂を揺さぶるその声はアゲハの足さえ止める。
 そして、死の王にくぎ付けになったアゲハは忘れていた。この場にはもうひとり、刺客が居たことを。
「―――ッ!!」
 天井から飛び出し、その二刀の刃を容赦なく突き立てる。麻痺毒を込めたその一撃は奇しくも直撃はしなかった。直前に気が付いたアゲハは体を大きく横に逃がし、致命傷を避ける。が、その腹は大きく裂かれ、麻痺によって反応は鈍った。
「私が、護るもの……」
 そんなアゲハの胸を、黒き剣が貫いた。息も絶え絶えに背後へ迫ったボアネルは、アゲハの足が止まった隙を見逃さず、アゲハの背中からグルーラングを突き刺したのだ。剣越しに吸い取られる生命力が、ボアネルの傷を癒す。
「それは、かつての貴様自身と同じ……この世界に生きる人々だ。罪なき彼らを護るためならば、この苦痛は甘んじて受け入れよう……!」
「っ……! その、中に……!」
「!」
 アゲハの首を斬り裂き終わらせようとした瑞樹が、次の攻撃の初動に気が付いた。素早く地を蹴り、瀕死のボアネルを庇いながらアゲハとの距離を取る。アゲハの周囲から舞うように現れた血吸い蝶を見切り、その刃で斬り捨てながら油断なく二刀を彼女に向けた。
「私たちは入っていないのね……ッッ!!」
 崩壊の進む神殿、その中で血を吐きながらもアゲハはまだ立っている。普通であれば既に致命傷だったかもしれない。しかし逆に考えれば、パワーアップされていたはずの彼女に攻撃が通るようになったのだ。それは神殿の力が失われつつあることの証拠に違いない。
 狂気の女は嗤う。まだ戦える、と。彼女を眠らせ、神殿を完全に破壊するには、もう少しの戦闘が必要だろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セゲル・スヴェアボルグ
なるほど、盾か……それならちょうどいいものがあるな。
まぁ、俺からしたら普段とやることが変わらないわけだな。
実意に分かりやすい、良い神を祀っていたようだ。
無論、誰かを守るというのは専売特許ではあるが、それだけでは状況の打破は出来ん。
攻撃は最大の防御ともいうだろう?
盾で紅葉を凌ぎつつ、じりじりと距離を詰めさせてもらおう。
無論近づきすぎなければいいわけだが、こうした方が俺に攻撃が集中するので、周りに被害が出んだろう。
少なくとも、向こうさんが生きているのであれば、庇護対象遭ったんだろうがな。
悪いが、俺には今この時代に護らねばならんものがある。
それに仇成す存在であるなら、俺はこの手を槍を汚させてもらう。



「なるほど盾か……まぁ、俺からしたら普段とやることが変わらないわけだな」
 重盾スィタデルを手にセゲル・スヴェアボルグ(豪放磊落・f00533)が半壊の神殿へ現れた。血を流すアゲハに向かい、その大盾を向ける。その巨体と共に構えられた盾の存在感にアゲハが気が付き振り返った。
「あ、なたも、役立たずの猟兵さん? それとも、私たちを守ってくれなかったヒーローさん?」
「はは、確かに守るのは俺の専売特許みたいなものだ。少なくとも、お前さんたちが生きているのであれば、庇護対象であったんだろうがな」
 セゲルの言葉に迷いはない。過去がどうであれ、今、人々を害そうとするのならば、セゲルはその槍を振るうことに躊躇はせず、その盾を退けることはしないだろう。その守護の意思に、揺れ続ける地震がまた一層強くなっていく。
「実に分かりやすい、良い神を祀っていたようじゃないか。俺とは相性がいいらしい」
「何が庇護よ……今来られたってもう遅いのよ……あの人もあの子も、もう死んでしまったの……まだまだ未来のあった私の家族は! もう死んだのよ!」
 盾の守護神が力を取り戻せば取り戻すほど、アゲハの怒りは高まっていく。それは邪魔をされ力を失うことに対する怒りでもあるだろうが、それ以上に「なぜ自分たちの時は」という気持ちが強くなるからだろう。
 豪ッ、と音を立てて紅葉が散る。業火でできたそれは散らばった瓦礫から姿を変えて次々生み出され、アゲハの怒りのままにセゲルへと殺到する。それを重楯で受け止めながら、セゲルはじりじりと前に進んだ。
「お前さんには悪いが……俺には今この時代に護らねばならんものがある」
 炎を盾で弾き打ち消しながら、じりじりと迫りくるセゲルにアゲハの視野が狭まっていく。業火の勢いが増しながらも向けられる先はセゲルに集中し始め、結果攻撃が他の猟兵に向かなくなっていった。
「……それに仇成す存在であるなら、俺はこの手をこの槍を、汚させてもらう」
 盾を支えながら、セゲルはその手の槍を深々と神殿の床へと突き刺した。突き刺されてできた床の亀裂から、大量の水が湧きだし始める。勢いよく噴き出るそれは業火をかき消し、ひび割れた神殿に波を打ち付け、手当たり次第に暴れまわった。
「待てば海路の日和あり……お前さんも、するべきは傷が癒えるのを待つことだったんじゃないのか」
 大波が放たれ、地震も相まって津波のように神殿を破壊していく。その大波が流れ切ったころには、神殿の大部分が崩壊しきって流れてしまっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヨナルデ・パズトーリ
守る、のう
そも、此の戦を妾が駆けるは妾の民の末裔達の未来を守る為
そして此の戦場に立つは勝手な想いではあるが・・・己の庇護する
幼子の親に罪を犯させぬ為でな!

人の子達の未来も守れんで神を名乗る事等出来はせぬさ!

其方が罪を犯し続ける事を知れば何れ嘆く事になる者がいるのでな!
故に止める!其れだけじゃ!

原則魔法は『高速詠唱』

八車菊は氷の『属性攻撃』の『なぎ払い』や氷の『属性攻撃』の『全力魔法』
による『範囲攻撃』で凍らせて砕く形で対応

其の上で『野生の勘』で敵の動きを『見切り』つつ『空中戦』で敵に肉薄
『怪力』による『グラップル』で抑え込み『破魔』の力を込めた『全力魔法』を
『零距離射撃』で叩き込む『二回攻撃』



「守る、のう」
 愚問じゃな、とヨナルデ・パズトーリ(テスカトリポカにしてケツァルペトラトル・f16451)はつぶやいた。そもそも、ヨナルデが今回の戦争を駆け巡るのは、ヨナルデの民の末裔達の未来を守る為だ。そのためにその戦斧を振るい、ヒーローズアースのアメリカ全土を駆け巡った。その中でも、この戦いは、この相手は、ヨナルデにとって特別なものであった。
「此の戦場に立つは勝手な想いではあるが……己の庇護する幼子の親に罪を犯させぬ為でな!」
 ヨナルデの脳裏に浮かぶは、茶髪茶眼の子供の姿。アリスラビリンスを生き抜き、苦しみを背負いながらも生き延び、そして己が庇護した……その小柄な背中。
「其方が罪を犯し続ける事を知れば何れ嘆く事になる者がいるのでな! 故に止める! 其れだけじゃ!」
「何を訳の分からないことを……そう、今度は煙に巻くつもりなのね。そうやって私を誤魔化すつもりなのね!!」
 例えば。アゲハがオブリビオンと化す前に、ヨナルデがアゲハと出会っていたら、なにかが違ったかもしれない。アゲハが狂気に堕ちることはなく、涙の再会があったかもしれない。でもそれはもはや、ただの仮定になってしまった。すでに過去の存在と成り果てた彼女には、幸せな未来は用意されていないのだ。
 なればこそ、未来あるあの子にこれ以上の苦しみを抱えさせたくはない。
「我ジャガーにして煙吐く鏡、テスカトリポカにしてケツァルペトラトルたる者! 民と共に在った嘗ての妾の猛き力、目に焼き付けるが良い!」
 ジャガーを模した黒曜石の鎧がその体を包み込み、その背には血と骨でできた禍々しい翼が生まれる。嘗て神たるヨナルデに捧げられた生贄たちによって形作られた翼。それは力強く風を掴み、ヨナルデを空へと舞いあげた。
「逃がさない……! あの人の無念、わからせてあげるッ!!」
 アゲハの放った無数の苦無が、空中で花弁へと変わっていく。散った八車菊の花弁は、まるで嵐に巻き上げられるようにしてヨナルデへと襲いかかった。
 美しい光景だがその花弁には麻痺毒が含まれている。ヨナルデは氷の魔術を編み、空からその花弁たちを凍りつかせた。凍りつきパラパラと落ちていく花弁と共に、彼女も急降下する。
「……あの子の心配ならば、無用じゃ。妾が責任をもって、護るからの」
 その怪力で肩を鷲掴み、腹辺りで魔術を展開する。ヨナルデの左手に現れた氷の結晶が鋭く外を向き、破裂とともにアゲハへと突き刺さった。
 狂乱しながらヨナルデを振り払うアゲハはもはや虫の息だ。彼女を、そして偽りの神殿を眠りにつかせるまで、あともう少し。

大成功 🔵​🔵​🔵​

出水宮・カガリ
カガリはなぁ、ひとを守れなかった盾にして、門だから
ちょっとわかるのだ
ここの神も、決して見殺しにしたのではなく、届かなかっただけ、なのだ。
世界の全てを、脅威から必ず守る、には…「こうする」しかない、から

【内なる大神<オオカミ>】の力を呼び起こし、【大神の神眼】で女を捉え【死都之塞】を
その意志は復讐、怨恨、悲哀、憎悪、憤怒、慈愛、恋慕…燃え盛るような、意志の渦
この眼にしかと、捉えた
業火の紅葉を起こされようと、女を見つめ続ける

……全てを守る、とは
助けて、と願う意志も全て閉じ込め、壁の内に眠らせてしまう事だ
苦しみも悲しみもないまま、心安らかに…
意志を閉ざした女に、【命の篝火】でとどめを


西条・霧華
「…同じですね。でも…。」

歩む道は全くの真逆なんですね

私も全てが灰塵に帰した、『あの日』の絶望を…
大切な家族や親友の最後を、忘れた事はありません
それでも…いいえ、だからこそ私は【覚悟】を決めました
あの時護れなかった私は、同じ悲劇を繰り返さない事でしか…
多くの方々に振り掛かる悲劇を払う事でしか、喪った大切な人達に報いる事ができないって…
それが私のあの日の誓い、守護者の【覚悟】です

纏う【残像】で眩惑し、【破魔】と【鎧砕き】の力を籠めた[籠釣瓶妙法村正]にて『君影之華』

私は…あなたの家族への想いも護りたいと思います
だから怨みは、ここに置いていって下さい
せめて最後は…
家族への想いと共に穏やかな眠りを…



「う、ふふ、ふふふふ、やっぱり、猟兵なんて、ヒーローなんてッ! 助けてくれなかったくせに講釈ばかり垂れて、私の邪魔をするッ! あなたたちの語る“守る”も、ここの神が掲げる“守護”も! ロクなものじゃないわッ!!」
 アゲハは哄笑する。その体は傷つき声はかすれているが、まだ戦いの意思を捨ててはいない。神殿もそのほとんどが崩れてしまったが、アゲハの背にある祭壇だけは無事で、かろうじてそこからパワーを吸い取っているのだろう。
 足掻く彼女へ引導を刺そうと、二人の影が彼女へ歩み寄る。祭壇に向かう猟兵が多い中、二人はぶれることなく彼女の前へ立つ。そんな二人の様子が癇に障ったか、アゲハは金切り声を上げた。
「なに、よッ! 力を無くした私を、笑いにきたのッ!? それならせめて、あなたたちだけでも道連れに……!」
「……私と、同じですね。すべてを無くして、力を求めたのは」
 アゲハの言葉を遮るように西条・霧華(幻想のリナリア・f03198)が口を開いた。霧華の言葉に、アゲハの目が見開かれる。
「でも……歩む道は全くの真逆なんですね。私の力は同じ悲劇を繰り返さぬために。あなたの力は惨劇を再現するために、使われる」
「ちがう……ちがうッ! 私は家族を奪ったヴィランに復讐を、家族の無念を晴らすために力を得たのよッ! 痛みを忘れて、のうのうと生きているあなたとはちがうッ!」
「私も全てが灰塵に帰した、『あの日』の絶望を、大切な家族や親友の最後を! 忘れた事などありません!」
 腰の籠釣瓶妙法村正を強く握りしめ、霧華は少しだけ声を荒上げる。忘れたことなどあるものか。あの日を、すべてが燃えおちたあの日のことを。
「それでも……いいえ、だからこそ私は覚悟を決めました。あの時護れなかった私は、同じ悲劇を繰り返さない事でしか……多くの方々に振り掛かる悲劇を払う事でしか、喪った大切な人達に報いる事ができないのだ、と」
 まっすぐ見つめ返す霧華の強い瞳を見て、アゲハはじり、とあとずさった。アゲハの眼に映るのは様々な感情。怒りだけじゃない、もっとも色濃く映るのは「どうして」という嘆きだ。
「は、ははは……それで、あなたは守る側に立とうというの? 無駄よ、すべて無駄なのよ。だって……あなたたちは救えないのよ。私の家族が救われなかったように。すべての人を守ることなんてできないのよ……そうじゃなかったら、どうして、私の家族は守ってもらえなかったのよ!!」
 頭を掻きむしり激情を露わにしたアゲハ。祭壇からこぼれ転がる像が、彼女の瞳に映りこむ。破壊されたそれは、元々ここに祀られていた「盾の守護神」のもの。その姿がアゲハの激情に油を注いだ。
「こんな役立たずの神ならばいらないわ! あの人とあの子を見捨てた神なんて、いるべきじゃないのよ!」
「それは違う、だろう」
 かつん、ともう一人の足音が響く。霧華とアゲハのやり取りを後ろで静かに見守っていた出水宮・カガリ(荒城の城門・f04556)がその口を開き、語り掛けた。
「カガリはなぁ、ひとを守れなかった盾にして、門だから、ちょっとわかるのだ。ここの神も、決して見殺しにしたのではなく、届かなかっただけ、なのだ」
 思い出されるのはあの忌まわしき黄金都市。カガリが内と外を隔て守っていた、過去の場所と人々だ。
「確実に、世界の全てを、脅威から必ず守る、には……『こうする』しかなくなる、から」
 カガリの瞳が紫から柘榴へと変貌する。その神々しい輝きはアゲハを魅入らせ、硬直させた。
 すべての人々を守るには。その意思を奪い堅牢な牢に閉じ込めて危険から切り離さねばならない。カガリはそれを知っている。そして、それを実行できる力を持っている。
「その意志は復讐、怨恨、悲哀、憎悪、憤怒、慈愛、恋慕……燃え盛るような、意志の渦。―――この眼にしかと、捉えた」
 コツコツと、二人の足音が静かになった神殿の床を打つ。自由意志を奪われ行動ができなくなったアゲハへと二人は近づいていく。かたや倶利伽羅の刻まれた刀を、かたや炎の宿る剣をその手に持って。
「……全てを守る、とは。助けて、と願う意志も全て閉じ込め、壁の内に眠らせてしまう事だ」
 それをすべきだとは思わない。だが、それをしなければこうして取りこぼしてしまう命が生まれる。護る者の持つジレンマだ。
「私は……あなたの家族への想いも護りたいと思います。だから怨みは、ここに置いていって下さい」
 先に刀を振り上げたのは霧華だった。ひとかけらの迷いもなく、その刀を袈裟懸けに斬り下ろす。しかしアゲハの体は斬れず、刀は彼女の体をすり抜けた。霧華が斬ったのはこの世への執着、すなわちアゲハの害意や悪意である。
 その表情から狂気が消え落ち、その両眼に正常な光が宿ったその瞬間に。カガリはそっと剣、命の篝火をアゲハの胸へと差し込んだ。
「……せめて最後は、家族への想いと共に穏やかな眠りを……」
「苦しみも悲しみもないまま、どうか心安らかに」
 二人の猟兵の願いを受けて、アゲハは暴れることもなく地へと伏した。その最期は先ほどまでと同じ人物であることが嘘のように穏やかで、悲鳴を上げることもなく静かにこと切れた。

 こうして哭死蝶アゲハは倒され、オブリビオン神殿は壊された。多くの猟兵の想いを受け取った「盾の守護神」はその神性を取り戻し、本来の神殿の形を取り戻していく。幾分もすれば神殿は元の姿へと戻り、今までのようにセンターオブジアースを守っていくことだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年11月22日
宿敵 『哭死蝶アゲハ』 を撃破!


挿絵イラスト